幻想仮面少女 (サードニクス)
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解説系
募集要項 必読のグリニッジ


一言で言えば東方キャラがライダーになります。


というわけで募集でございます!八百語の経験とナイトオブの反省を活かしてやっていきます。

というわけで、応募の際には活動報告の方もご参照を。

 

・オリジナルライダーを!

すでにあなたが書いたライダーや、原作ライダーはなし!オリジナルで考えて下さい!

・原作キャラの能力を意識してね!

そういうことです。変身システムはクウガ的妖怪の肉体変化でもアギト的神霊の奇跡でもファイズ的河童の技術でもウィザード的魔女の魔術でも何でもあり!

・今回も最終フォーム必須!

はい。最終フォームをメッセージで送ってください。メッセージ確認して初めて変身させられるので、最終フォームは同時に書いといたほうがいいかも?

どーしても考えたくない人はお前に任せると一言ください。

・マシンも必須。

やっぱり『ライダー』ですし。しかしドライブやエグゼイドみたいな変則的なマシンもあり。マジーンみたいな変形ロボもありやで。生き物なんかもあり。華仙とかだとドラゴンに乗ったりするだろうしね。

・原作設定から大きく外れないで!

考察の成分も多分に含む作品なので、二次設定はありですが、ギャグ寄りの設定。それこそヤンデレアリスとかそういうのは無しです。

・二次創作キャラはなし。

基本的に原作重視!ただぁし!特例でみとりはありですっ!半公式みたいなもんやし。申し訳ないがミラミカルリランはNG。

・申し訳ないですが、旧作はなし。

ひっじょーに申し訳ない。本当に。世界観の関係で旧作キャラは出せません。本当にすみません。

・キャラが被ったら。

被った相手と話し合って下さい。選択肢は三つ。『片方に譲る』『二人で作る』『一人が二つのライダーになる』です。どうしても使いたいキャラが居るなら質問部屋に予約しといてネ!

・一人三ライダー。

三ライダーなだけで三キャラではありません。イクサみたいな色んな人がなるライダーもありです。

・強すぎるのはなし!

だいたいクウガマイティぐらいの強さ?最強形態の方は制限ないですが、強い奴には出来ればデメリットが欲しいです。

・ビギニング書いてもええんやで?

ええんやで?蓮メリ以前から変身してる人なら、初変身ストーリーはないので、特に。別に蓮メリより後に変身したキャラでも書いてええんやで?書いたらメッセージで私に送って下さい。口調やらの修正ののち誰が書いたか明言の上出させていただきます。

・質問しようぜ!

迷うことがあったらとりま聞いてね!

 

 

以下シート。記入例は活動報告の募集の方に。

 

ライダー名:

変身者:

概要:

マシン名:

マシン概要:

セリフ:

 

フォーム名:

概要:

武装:

変身アイテム:

変身シークエンス:

必殺技:

 

 

解説

ライダー名:(そのまま。ライダーの名前。仮面ライダー〇〇)

変身者:(誰が変身するか)

概要:(重要ポイント。どういうライダーで何故、何の力で、いつから変身してるか。などなど)

マシン名:(乗り物の名前)

マシン概要:(誰が作ったとかそう言う。河童大活躍の予感)

セリフ:(あまり多くなくていいです「変身の言い方」「変身後決め台詞」「必殺技決め台詞」などなど)

 

フォーム名:(フォーム名。フォームチェンジのないライダーでも、基本フォームとして分けて書いていただきます。その場合はフォーム名無しでよし)

概要:(どういうフォームか。より具体的で戦闘の性能によった概要をば。基本フォームならそう書いておいて下さい)

武装:(使う武器。ないならなしでオーケー)

変身アイテム:(このフォームになるためのアイテム。ベルト、ブレス、銃、剣なんでもあり。小物もどうぞ)

変身シークエンス:(どういうシークエンスで変身するか。変身音もここに書いて下さいね)

必殺技:(必殺技。必殺発動シークエンスと必殺音声もね)

 

お待ちしてまーす!



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解説コーナー 解説者メリー

語感で選んだだけなんで別にメリー関係ないです。
説明は東方の知識前提なのでご了承を。あと最新話ネタバレ多数。
更新ごとに追記どんどんしてくんで、足されてることに気づいたら反応くださいな。


登場キャラ&変身ライダー解説

 

『グリニッジの化鳥(けちょう)

・宇佐見蓮子

第1話登場。冗談みたいな話だが、謎の組織の陰謀により幻想入り。帰る方法を模索しつつも何となく人助けをしている。というか後者がメインになりつつある。

 

『シュレティンガーの化猫』

・マエリベリー・ハーン

第1話登場。蓮子と一緒に幻想入り。彼女と行動を共にしつつ人助け中。バイクの免許を持っているのは彼女だけなので、蓮子は後ろに乗ってもらう。

 

『アナログコンピュータの最高到達点』

・八雲藍

第9話登場。しかし、ノヴェムフォックスとして。変身前が出たのは15話。ガスの影響で九尾への支配が弱まり、意識をほぼ乗っ取られていた。ガジェットスマートに移動したことで助かり、現在は式アプリの中にいる。

 

仮面ライダーヒール スターボウモード

第1話変身。メリーが蓮子に取り込まれて変身する。謎の組織の物をパクって来たので今のところ誰が作ったとかの素性は不明。黒と白、そして赤を中心としたカラー。帽子っぽいデザインが蓮子らしさを際立たせる。トゲトゲしており、プロレスのヒール(悪玉)っぽい。目は赤。フォンブレイドによる近接戦がメイン。

 

仮面ライダーヒール ナイトメアモード

第1話変身。蓮子がメリーに取り込まれて変身する。紫と白を中心としたカラー。こちらも帽子風デザイン。謎の古代文字や、ゆったりしたデザインはどちらかというとヒール(癒し)っぽい。目は青。テレガンによる射撃戦とトリッキーな能力による近接戦がメイン。

 

仮面ライダーヒール エクストラモード

第15話変身。蓮子とメリーの融合したボディを藍が操作する。ゴツめの体躯は紺と黄色を中心としたカラーで、目は紫。尻尾型ミサイルポッドがあり、これでの攻撃を行う。またパンチ力は今後登場する最終フォーム含め最強。その上で射撃を行う、まさにオールマイティタイプ。

 

仮面ライダーヒール セカンドモード

後悔の山前編にて変身。蓮子とメリーの融合したボディをなんか蓮子に取り憑いていた橙が操作する。ゴツめの体躯は赤と黒を中心としたカラーで、目は紫。右手の実体爪と左手のビーム爪を武器とし、それぞれライドグリップとライトニンググリップで操作する。手数戦向きと言える。

 

チェイスナイター

第3話登場。紫、黒、白を基調とした長いバイク。シートが二人乗りの特別仕様。本編では省かれているが、ネコ女撃破後、目を覚ました橙に『二人組の戦士が現れたら渡せと紫しゃまが言っていた』という理由で正式に託された。マシントルネイダー的スライダー状態とオートバジン的ロボット状態へ変形する。

 

 

『アースクエイクの有頂天』

・比那名居天子

第2話登場。月に呼び出されたのがかったるくて地球に逃げて来た。わがままながら面倒見の良さや見栄っ張りが重なって人助け中。本格的に地上が心配になって来た模様。

 

仮面ライダーガイア グランドアース

第2話変身。大地の力を宿す姿。月の科学で生まれたスーツで、天子が地下の研究所から勝手にパクった。地球の大地に触れることでその力を発揮する。赤茶けたごついアーマーが目立つデザイン。目は黒。武器として緋想の剣を使う。自身の能力を強化した大地操作が協力。

 

仮面ライダーガイア グランドルナ

第2話変身。月面の力を宿す姿。満月の光を浴びることでその力を発揮する。グランドアースの色違いの銀のごついアーマーが目立つデザイン。目は変わらず黒。武器として緋想の剣を使う。攻撃の反射能力が脅威。

 

仮面ライダーガイア マックスグランド

第19話変身。修行により、彼女の比那名居家の神官としての力と諏訪子に託された坤の力が覚醒した姿。更には緋想の剣と要石が融合し、その力は強大。スカイブルーや銀のツインアイがその爽やかさを際立てる。戦闘には武器を用いないが、剣の『気質』の力により天候が自由自在。

 

仮面ライダーガイア レガレクスグランド

ガイア外伝にて変身。グランドルナにレガレクスのアーマーを装備した姿。青いバイザーに加え、全身のプロテクターのおかげでグランドルナのような雰囲気は少ない。リボン型ブースターによりその瞬発力は凄まじく、反射と月光吸収も健在。緋想の剣で戦う。

 

グラウンドスピーダー

第2話登場。赤茶色のパワフルな大型バイク。大地に触れているとパワーアップするモンスターマシーン。ガイアに変身した際にパクって来た。さらに地中を掘り進む機能まである、とことんパワー重視のバイク。

 

 

『ネヴァーダイの世捨人(よすてびと)

・藤原妹紅

第3話登場。フェザーチェイサー(後述)と出会ったことで仮面ライダーに。騒動に巻き込まれつつも、平常通り人助けをしている。しかし竹林に迷い込んだ人を、というより積極的に人里に出るように。現在地底に居る。

 

仮面ライダーフェネクス ブレイズフォーム

第3話変身。白いボディに赤いラインが基本となったデザイン。また、赤熱した四肢と肩と腰の鳥っぽい装飾もポイント。輝夜が月の科学で開発したアイテム。自分用と言いつつも、どう見ても妹紅向けの機能のあたりツンデレが光るポイントである。炎の羽での簡易飛行も可能で、彼女の呪術合わせて、高温攻撃全振りのステータス。常人には扱えない物だが、蓬莱人ゆえのガッツと耐久力で戦う。変身アイテム兼ナックルのバーンスマッシャーでの格闘戦がメイン。

 

仮面ライダーフェネクス フェニックスフォーム

第8話変身。五回バーンスマッシャーを握ることで変身する。フェザーチェイサーが背に合体した姿。ブレイズフォームに肩から胸にかけて真紅の追加装甲が装備される。巨大な羽が特徴で、ブレイズフォームよりも素早く高出力での空中戦を可能とする。遠距離武器が増えるので、遠くを飛び回りながらに戦闘スタイルがメインとなる。

 

仮面ライダーフェネクス ゼロブレイズフォーム

第20話変身。輝夜開発の追加アイテムヘリオスコアをバーンスマッシャーにセットすることで変身する。グレーの重厚なアーマーに熱をギッチギチに詰め込んだフォームであり、その一撃はプロミネンススマッシュに匹敵する。動きが鈍重ではあるが、そんなものはデメリットにならない強さと言える。

 

仮面ライダーフェネクス ライトニングフォーム

フェネクス外伝にて変身。5回バーンスマッシャーを握ることで変身する。一巡後の世界においてフェザーチェイサーは存在せず、水陸両用マシンのフィンズチェイサーが存在するためこの姿に。ピンク、赤、黒というふうに輝夜を意識したカラーリングであり、青い雷光が目立つ。ごついが粒子ブースターにより、凄まじい機動力を誇る。ちなみに鈴仙が歌う変身音がメインのフェネクスであるが、このフォームは想定外なので鈴仙をもとにした合成音声である。

 

フェザーチェイサー

第3話登場。鳥の頭風デザインが特徴的な白基調のオフロードバイク。こいつも輝夜製で、月の技術によるAIを持っており、リア部のマニピュレータで意思疎通が可能。ブースターによる高速移動と短時間滑空が強み。輝夜達をさらったネコ女から逃げ、妹紅と出会った。

 

 

『ウィザウトスピーキングの神霊』

・稀神サグメ

第3話登場。月の要人が怪しいと勘づき、独自行動のため離反。変身アイテムの都合で、ベラベラ喋るようになった。というか今まで喋らなかったフラストレーションと反動でそこら辺の人より饒舌。だぞと言う強がった口調であるが、本来は女口調。

 

仮面ライダーワードレス アナライズワードレス

第4話変身。自身が開発していたアイテムで変身する。緑を基調としたシンプルなデザイン。ツインアイは緑。両肩の『観』と足裏の『蹴』の字が目立つ。ベーシックな様子見用のフォームで、全体的にノーマルで平凡な性能。それで十分に渡り合えるあたりがサグメの強さ。近接、射撃切り替えながら臨機応変に戦う。

 

仮面ライダーワードレス バトルワードレス

第9話変身。紫をメインとし、黒い鎧をまとうヘビィなデザイン。ツインアイは紫。実際は依姫のために開発されていたフォームで、全体的に強めで扱いづらい性能。サグメでは100%を引っぱり出せない。

 

仮面ライダーワードレス ウィングワードレス

第20話変身。白黒銀の三色をまとめたローブが特徴的なデザイン。ツインアイは白。サグメ用に調整されているので使いやすく、あまり強いフォームではないのだが、他のフォームと同等の性能。片翼に装備されたアーマーを盾にしたり羽を射出したりの攻撃がメイン。空中戦を展開できる。

 

コードランナー

第8話登場。目的地を入力しての自動操縦や、敵の自動追跡など、月の科学を見せつけてくれるバイク。サグメはこれと月の装置を使って地上に来た。

 

 

『クリムゾンムーンの御令嬢』

・レミリア・スカーレット

第4話登場。サカナ女の襲撃に際して、変身。基本的に家族を守ると言いつつも人里の人間の救命に走っている。『人を支配するなら民を救うのも義務』とか何とかいうが、要は心配なのである。

 

仮面ライダージェヴォーダン

第4話変身。黒い体と赤いラインが目立つ。牙や爪、ボロボロのマントなど他のライダーとは一線を画す全体的に鋭く禍々しい見た目。ぱっと見の印象はエクシードギルスをもっとやばくした感じ。代々スカーレット家に伝わって来たベルトで変身する。ズバリ身体変化系ライダーである。変身すると野生が抑えきれず暴走気味になるので、制止役との共闘が望ましい。引っ掻きや噛みつき、巨剣ドラクリヤブレードとグングニールなどでの近接戦を基本とする。

 

仮面ライダージェヴォーダン ワラキアフォーム

第19話変身。ドラクリヤーの持っていたドラクリングバックルをヴァンパイアリングに合体させ、シークエンスを行うことで変身できる。簡単にいえばスペクターのフーディーニ魂である。要はドラクリヤーが合体するフォーム。最大の特徴は日光が大丈夫になる点。中世の騎士に似るデザインで、その仮面はコウモリの顔にも見える。巨大斧ヴァンパイアックスをその武器とする。

 

マシンドラクリヤー

第4話登場。半機械生命体。コウモリとオフロードバイクをくっつけたような見た目が特徴的で、色は黒、紫、そして白銀をメインとする。フランクでノリのいい性格で、普通に喋る。実は最古参レベルの住民で、レミィ、フラン、パチェなどの愛称で呼ぶ。彼もドラドラの愛称を好む。口内のガトリングで本気の戦闘も可能。最近にとりのおかげで日光に強くなった。

 

 

『ハーフアンドハーフの発達中少女』

・魂魄妖夢

第5話登場。唐突に託された桜刀のアイテムで変身し、何となく戦うことに。とりあえず、怪人達を倒して人助けをしている。基本的に正義感が強く、忠誠心も強いので、託されたことに意味があるのだろうと己を鍛えながら模索中。

 

仮面ライダー桜刀(おうとう) ヒトノカタ

第5話変身。白楼剣で霊の力を抑え込むことで変身する、半人部分を基本としたフォーム。緑のスーツの上に黒い甲冑がまとわれる。全体的に和風で渋い印象を与える。もともと魂魄家で受け継がれてきていたもので、術によって鎧を召喚する、原始の装着型ライダーと言える。武器は楼観剣。

 

仮面ライダー桜刀(おうとう) レイノカタ

第9話変身。楼観剣で人の力を抑え込むことで変身する、半霊部分を基本としたフォーム。黒のスーツの上に黒い陣羽織が着せられる。全体的に和風でスッキリとした印象を与える。変身する際は半霊が人型になる。また、現世の物体を透過する能力を持つ。

 

仮面ライダー桜刀(おうとう) シノギノカタ

後悔の山後編で変身。半人にスーツを着せ、半霊をエネルギー源とすることで変身する。ヒトノカタとレイノカタのスーツ及びアーマーをごっちゃごちゃに張り合わせて作った急場しのぎで、ごつい印象を与える。幽々子から借りた銃と爪で戦う。

 

仮面ライダー桜刀(おうとう) サクラノカタ

桜刀外伝で変身。西行妖の力で覚醒したフォーム。スーツや布をメインとした軽い外見なのだが、その力は全ての形態と並べても最強。ヒトノカタとレイノカタのいいとこ取りの上、反魂蝶の不死の力が宿った恐ろしい形態である。外伝本編においては、最強の一撃で西行妖を切り落としただけであるが…。

 

オウカオー

第9話登場。かつての桜刀たちが乗っていた馬の魂を込めた黒いバイク。亡霊となったのを地底で捕まえられ、冥界から盗んだ素材でお燐が完成させたバイク。しかし妖夢の方を主人と認めたために妖夢が乗ることに。物体をすり抜ける特性を持つ。余談であるが、聖白蓮はこれに自分を魔界から呼び戻す術を仕込んでいた。

 

 

『パペットショウの猛毒姫』

・メディスン・メランコリー

第6話登場。いつもどおり人形解放を目指してじわじわ情報を集めたり世間を知ったりしていたが、怪人騒動に巻き込まれて以降は、自分でもよくわからないうちに戦うことに。

 

仮面ライダーメディス ブラッドリリィフォーム

第6話変身。白い装甲の上の血走ったような赤いラインが特徴的。目も赤と、基本カラーコンセプトはフェネクスと共通しているが、似ても似つかない不気味でグロテスクなデザイン。強烈な毒薬での身体強化の上にアーマーを着せる上、そのアーマーさえ毒を纏う。故にかなり強力ながら生き物が使うと死ぬという悪魔のアイテム。外のとある財団による科学技術で生み出された。

 

仮面ライダーメディス スターライトペンタスフォーム

第14話変身。流星をかたどった青いラメ入りの仮面が特徴的。基本デザインはメディスだが、不気味でグロテスクなデザイン性は薄れ、綺麗さが増す。しかしこんな見た目でも強烈な毒薬は変わらず。ノヴェムフォックス何故かもっていたカプセルを奪取した。超高速での戦闘を強みとする。

 

仮面ライダーメディス グリッドアカンサスフォーム

後悔の山後編で変身。工房の職人を思わせるバイザーが特徴的。紫のからくりのアーマーが目立つ。特筆すべきは両手型兵器である。空中に浮いたマニピュレーターが打撃斬撃射撃全てをこなすトリッキーなフォーム。毒は他形態より弱いが、手数や技で補う。

 

仮面ライダープロトメディス/ 仮面ライダーメディス プロトリリィフォーム

メディス外伝登場。後者はそれ以降の登場時の名称。敵からの外部魔力、鈴蘭の魔力、満月の魔力、持ち主の阿弥の想いが呼応して生まれた形態。メディスン本体変化の上に関節部が壊れた拘束具が乗り、禍々しくもかっこいい感じの姿。壊れた機械という見た目である。のちに財団Xにより再現され、緊急時用のものとしてメディットブレス内部にカプセルが内蔵されている。制御されていないため他のフォームより毒がはるかに強いが、魔力消耗が激しく長く変身はできない。

 

トライサイカー

第10話登場。アリスが魔界に居た頃に作り、置いていった自分用三輪車。アリスと人形以外は起動できない。聖が神綺の協力のもとオウカオーにこいつのワープ呪文を仕込み、木札をトリガーとした。32km以内で主人が自分を呼べば駆けつける恐ろしい三輪車。しかしメディは立ち漕ぎじゃないと乗れない上なかなか辛いので変身時のみしか乗らない。

 

 

『アルコールジャンキーの鬼大将』

・伊吹萃香

第5話登場。最初は楽しそうだから混ざりたいと言う理由でライダーへの変身アイテムを河童に作らせていたが、事情の重さを知り、騒ぎの根元を叩き潰すことを目的へと変えた。

 

仮面ライダー酔鬼 酒鬼

第10話変身。こんな名前だが、酒を使わないで変身するフォーム。右が重装甲で左が軽装甲のアシンメトリーなデザイン。全体的に真っ白で、その上に血管のようなものが脈打つ奇妙な見た目。ツノは曲がった一本角。バランスのとれた身体強化を強みとする。ドライバーはにとりとみとりに作らせた。

 

仮面ライダー酔鬼 乱鬼

第11話変身。マシュヒョウタン『ランシュ』を使って変身する。左の軽装甲部分に赤色の差し色が入り、左腕をゴツくした見た目。ツノは反り返った一本角。攻撃力の高さが特徴で、2m越えの太刀『乱喰刃』を武器とする。

 

仮面ライダー酔鬼 金剛鬼

第14話変身。マシュヒョウタン『コンゴウシュ』を使って変身する。右の重装甲部分に青色の差し色が入り、全体的にアーマーを多くした見た目。ツノは短い二本角。攻撃力の高さが特徴で、2m越えのスパイク付きの盾『鬼骸壁(きがいへき)』を武器とする。

 

仮面ライダー酔鬼 狂鬼

第15話変身。マシュヒョウタン『キョウシュ』を使って変身する。左の軽装甲部分に緑色の差し色が入り、全体的にアーマーを減らした見た目。ツノは右が途中で折れた二本角。身軽さが特徴で、光反射で目潰しを可能とする小刀『滅鬼』と光に溶け込む小刀『総屠』を武器とする。

 

仮面ライダー酔鬼 紅鬼

酔鬼外伝にて変身。レミリア製のマシュボトル『コウシュ』を使って変身する。アーマーの量は酒鬼程度。黒をメインに赤の血管的意匠が大量に走り、吸血鬼感が際立つ。背中のマントと顔のバイザーが西洋風。ショーテル『血斬』とレイピア『緋閃』をメインに、手数で攻める攻撃を行う。

 

仮面ライダー酔鬼(めい)(やっ)()

第24話変身。今までのマシュヒョウタンを合わせた『ヤクメイシュ』で変身する。ゴツさの雰囲気は酒鬼に近いが、装飾は増し、色も乱金剛狂の三形態の色が入っている。大剣『鬼叫』と刀『錠鬼』には弾薬による威力強化機能がある。加えて、腕のガード『鉄鬼』などと今までのフォームの要素を思わせる。

 

イシグマスラッシャー

第10話登場。みとりがもともと持っていたアメリカンをいじって作った。かつての部下である石熊童子の魔力を込めた金属を仕込んであり、オフロードも走れるアホみたいな逸品。ツノを模したスパイクと巻きつく鎖がアウトローな雰囲気を醸し出す。なんかマフラーから紫のエネルギーを吐き出している。

 

 

『ロストパワーの黒女神』

・へカーティア・ラピスラズリ

第8話登場。敵に洗脳されたクラウンピースに寝首をかかれ、力を封印されて三界の能力を失った。故に力は中級神霊ほど。マグマの中を気合いで泳ぎ、封鎖された通路をこじ開けて旧灼熱地獄エリアに侵入した。最初は力を取り戻すことを目的としていたが、騒ぎに月の何物かが関わっていると知り、事件解決を目的に動くことになる。

 

仮面ライダーヘルゴット バランスフォーム

第11話変身。ストーンをセットせず変身する。黒い目と黒いボディ、そして腕に巻きつけた鎖が特徴的な、シンプルなデザイン。これと言って特徴のないステータスだが、その名の通りバランスが取れている。地獄に投げ捨てられていた魔力による身体強化装置に、さとりがスーツ出現機構を仕込んだ。

 

仮面ライダーヘルゴット エリエンフォーム

第11話変身。ドライバーと一緒に拾った赤い石で変身する。異界の力を宿したフォーム。バランスフォームに赤い装甲が追加されている。パワフルさをウリとしたフォームで、武器は斧を使う。

 

仮面ライダーヘルゴット ルナフォーム

第14話変身。サグメから渡された黄色い石で変身する。月の力を宿したフォーム。バランスフォームに黄色い装甲が追加されている。硬さをウリとしたフォームで、武器は剣を使う。

 

仮面ライダーヘルゴット ティエラフォーム

第15話変身。蓮子がお守りとして持っていた青い石で変身する。地球の力を宿したフォーム。バランスフォームに青い装甲が追加されている。素早さをウリとしたフォームで、武器は棍を使う。

 

マシンラピス

第12話登場。へカーティアの能力のデータからさとりが作成。ベルトから召喚するバイク。別界へのワープ機能を持っており、月、地球、異界を行き来できる。自動操縦やレーザー攻撃など、多彩な能力を持つ。

 

 

『イデアリスティックな聖魔人』

・聖白蓮

第6話登場。蓮子達の話を聞き、手助けを約束する。しかしその後メディットブレスにより死亡。その場にいた者達に深いトラウマを植え付けた。…が、オウカオーに仕込んだ術を使って魔界から復活。以降はライダーとして戦う。

 

仮面ライダードグマ 僧術ヘビィフォルム

第12話変身。黒いライダースーツの上にゴテゴテとした黒と紫の二色アーマーを乗せたもの。下半身はロングスカート型ブースターとなっており、ホバーで移動する。ジオングと言えば分かりやすいか。聖の私服イメージ。

魔界、河童の技術とエソテリア産の魔力鋼で出来ている。

聖の仲間のものをモチーフとした武器を使う。

 

仮面ライダードグマ 僧術ライトフォルム

第12話変身。黒いライダースーツとプロテクターをメインとした姿。ターボババアの聖モチーフ。ヘビィフォルムのアーマーがバイクとなっており、それに乗る。

バイクアクションと軽やかな攻撃をメインとしており、仲間のものをモチーフとした武器を使う。

 

仮面ライダードグマ 仏術ヘビィフォルム

第15話変身。白にグレーのプロテクターをつけたボディスーツに虎柄とオレンジと黄色の重いアーマーを乗せた外見。マッシブ極まりない見た目。凄まじい防御力と単発攻撃力を強みとする。武器はタイガのストライクベントから二回りほど大きい虎柄クロー。目は緑。

 

仮面ライダードグマ 仏術ライトフォルム

第15話変身。白にグレーのプロテクターをつけたボディスーツに、グレーのうっすいアーマを乗せた見た目。紙防御だが、スピードが凄まじく、回避と手数で押し切る。ナズーリンのダウジングロッドを小さくしたものが武器。目は緑。

 

仮面ライダードグマ 法術ヘビィフォルム

第18話変身。グレーとパープルに金の入ったスーツで、そこに金をメインとしてブランなども混ぜた派手なアーマーが載る。神子をイメージした形態で、はためくマントも目を引く。その武装は全身の重火器である。凄まじい火力でもって、敵を圧倒する。

 

仮面ライダードグマ 法術ライトフォルム

第19話登場。全身のアーマーが合体してスカート型を為す。こころをモチーフとしており、流麗な印象を与える。質量はヘビィフォルムと変わっていないが、スラスターによる機動力で舞のような独特なスタイルでの戦闘を行う。

 

マッハラギャテー

第12話登場。僧術ヘビィフォルムのアーマーが合体してバイクとなる。なので僧術ライトフォルムでのみ使う。下半身ブースターは後ろのブースターとなっており、強力な加速を強みとする。実は見た目はスクーターに近いので、年末によく見るスクーターに乗る僧侶的なアレになる。

言わなくてもわかるであろうがマッハと波羅羯諦がかかっている。

 

 

『オープニングマインドの小石姫』

・古明地こいし

第9話登場。いつも通りふらふらして居たが、夢の中にドレミーが侵入して以降サードアイが開き、無意識の能力が消えた。

 

仮面ライダーU ライジングアップ

第13話変身。誰が、何の目的で、いつ作ったのか。全ては謎だが、とにかくこいしが持っていたアイテムで変身する。黒のスーツに銀を入れ、胸部のクリスタルから緑の線を引いたような見た目。すごくシンプル。ジャンプ力と浮遊能力、そして格闘能力を武器とする。基本フォームが他ライダーの中間フォームに当たる。

 

仮面ライダーU クロニクルゼアル

第13話変身。黒地の体に紫のラインが引かれ、シルバーのアーマーを着る。通常形態、ミラクルドラゴン、ストロングマイティになる。それに応じて額のランプが緑、青、赤に変わる。それぞれバランス、スピード、パワー重視となる。またミラクルドラゴンでは槍を使った戦法を取ることも。

 

仮面ライダーU ウィンドギャラクシー

第18話変身。黒と赤のボディに全身のクリスタルがきらめく。雷と風のエレメントで攻撃する。さらには肉弾戦も強みであり、逆境が迫るほどそのパワーが上がる特性から、計り知れぬ爆発力を秘める。

 

仮面ライダーU バスターエネミー

第20話変身。黒を下地に、赤と銀が走る。とにかく激しいアクションがその強みで、近接戦が強い。赤い杖『エイトケイン』は武器としてそのまま使う他、雷撃を放つ機能が備わっている。

 

仮面ライダーU ザナドゥフォーエバー

U外伝にて変身。黒地の体に銀と白のゴツいアーマーが重なる。頭部はバイザーとヘッドギアを合体させた外見で、かなーりメカニカル。腕や足にエックスゴースター怪人をもとにしたアーマーを装備して戦う。

 

仮面ライダーU アナーキーノーチス

U外伝にて変身。黒の上に金銀のアーマー、プロテクターを乗せ、さらに赤と青の差し色が入った姿。いかにも鎧らしい外見。グリップからビームの剣と薙刀を出せる。戦えば戦うほど進化する力を持つ。

 

仮面ライダーU/UE スケアードマッドネス

U外伝にて変身。黒銀赤の三色が特長的。クローから放つ赤い雷光で戦う。夢の世界のこいしが使う闇の姿だったが、闇を受け入れたこいしが、正義の心で使うように。

 

仮面ライダーU ドーンオー

第22話変身。黒が下地だが、ピンク色のアーマー部分が多くその印象が強い。胸部のクリスタルパーツはO型になっている。四つのエレメントをまとった斬撃がその特徴である。また、この形態は他のクリスタルの力もいくつか使える模様。

 

ヴァースサイクロン

第13話登場。さとりが自分用に作っていたバイク。普段はト◯カぐらいの大きさだが、放り投げることで巨大化する。妖術とサグメが持ってきた月の技術の合わせ技である。やろうと思えば時速900kmがでるアホみたいなマシン。

 

 

『シャーマン・イン・幻想郷』

・博麗霊夢

第1話登場。最初の方は生身で戦っていたが、なんだかんだで仮面ライダーに。しかしだいたい生身で撃退できていたのだから恐ろしい。

 

仮面ライダーリブレッス ミコフォーム

第13話変身。紫のスーツに、紅白のアーマーを着せたどこか旧作っぽくもある姿。スペック的にはヒールのスターボウモードと同じぐらいだが、霊夢の強さのおかげで中間フォームほどに。訳あって体を失い、魂を機械に入れた河童『センニンタートル』が手伝って菫子が作った。

 

仮面ライダーリブレッス ヨウコフォーム

第17話変身。藍を思わせるカラーが特徴的なフォーム。幻術を使う力を付与するのが最たる特徴である。タブレット型マシンが変形して合体し、ゲンソウスペルレッカーは鎌モードになる。

 

仮面ライダーリブレッス センニンフォーム

第20話変身。センニンタートルをベルトにセットし、内部の仙人のゲンソウレイスカードで変身する。白いスーツに青緑メインのアーマー。両腕のシールドやそこのヒレ型カッター、錫杖をメインに戦う。闘魂ブーストのようにこっからフォームチェンジも可能。こんなコンセプトだがセンニンタートルはただの河童である。

 

仮面ライダーリブレッス センニンミコフォーム

第22話変身。センニンの素体の上にミコのアーマーが乗る。両腕のアーマーはブレードが展開した状態で両足に移動し、キック力を高める。バランスの良い戦闘能力がその特徴である。

 

仮面ライダーリブレッス センニンシンレイフォーム

第24話変身。センニンの素体の上にオレンジのアーマーが乗る。これはシンレイフォーム共通アーマーである。両腕のアーマーは合体した状態で左腕に移動し、ナックル兼シールドへ。霊体化が可能。

 

タートルライダー

第17話登場。亀らしさ全開の緑のバイク。カメ仙の指導の下、にとりが作った。亀型スライダーに変形して滑空するなどの機能も持っている。

 

メガミーリュウジン

第18話登場。巨大な竜であるが、タートルライダーと合体して人型のメガミモードに変わる。さすがに河童だけにやらせたらまとめて過労死するので、アリスからゴリアテ人形関連で力を借りている。

 

 

『アブソリュートゼロのおてんば姫』

・チルノ

第14話登場。敵に追われる中でクロッカーに出会い、手から離れなくなった。変身できるため渋々使っているが、落ち着けば無理矢理外そうと思っている。

 

仮面ライダーラビウィンゲルフォーム

第14話変身。見た目の一番の特徴はやはり身長が伸びること。ドレス的デザインで、どこか可憐で細い見た目。何より特徴的なのはゴーグルのような目で、そこには・・だとか><みたいな顔文字が出る。防御力の低さを機動力と遠距離武装の火力で補っている。開発者は不明。

 

仮面ライダーラビメイプルチェルカトーレフォーム

後悔の山後編で変身。伸びる身長はそのままに、さらに装甲を減らしたオレンジ色の姿。見た目の軽さが凄まじく、その外形に違わぬスピードと攻撃力を持つ。全体的に風を感じさせる流麗さである。そのメイプルフォームの上に黒と白のアーマーを乗せ、機械のウィングをつけたのがこのフォーム。素早い空中戦を展開する。

 

スラッグスクーター

後悔の山前編で登場。隠岐奈が作成し、プレゼントした。周りに氷の道を作ってホバーする、超高性能のマシン。

 

 

『ゼロ・エントロピーの白黒色』

・霧雨魔理沙

第7話登場。霊夢を追って地底に行き、そこでベルトを手にする。霊夢の怪我を見て状況の深刻さを感じ、真剣に事件と向き合うように。

 

仮面ライダースパーク マホウツカイフォーム

第14話変身。紅のスーツに、白黒のアーマーを着せた姿。スペック的には若干リブレッスより高いが、だいたいジェヴォーダンの基本フォームほどのもの。ただし魔理沙の慣れや能力で強くなっている。武器はビームや遠距離系が多い。作ったのは同じくセンニンタートル。

 

仮面ライダースパーク ミコフォーム

第16話変身。何気なく手に取った巫女のカードで変身した。スーツはスパークそのままであるが、アーマーはリブレッスのものと共通。ちなみに、すでにカードは霊夢に渡しているので事情なければ変身はないと思われる。

 

仮面ライダースパーク マチョウフォーム

第17話登場。黒い翼と黄緑を中心としたアーマーが目を引く。カメラ型アイテムとゲンソウスペルアンロッカーを合体させたキャノンモードと、全身のレイブンキャノンにより遠距離戦を展開する。

 

仮面ライダースパーク マジシャンフォーム

第20話変身。センニンタートルが開発した『コウモリマジシャン』をベルトにセットし、内部の魔術師のゲンソウレイスカードで変身する。黄色いスーツに紫色メインのアーマー。魔術によるトリッキーな攻撃と火力を武器としており、左腕の弓はブレードやハサミになり、さらに隠し銃も持っているという戦闘スタイルに合った多彩さ。リブレッスと同じくここからフォームチェンジ可能。

 

仮面ライダースパーク マジシャンウィザードフォーム

第21話変身。マジシャンの素体にマホウツカイのアーマーが乗る。魔術の扱いがさらに強くなり、引き出しの多さがその強さでもある。武器はマホウツカイのものがメインであるが、左腕の弓は足にブレードとしてセットされ、キック強化に使える。

 

バットライダー

第19話登場。コウモリ型に変形するマシン。レーザー射出など、タートルライダーより幾分か攻撃的。

 

 

『ミラクルプレイの神の遣い』

・東風谷早苗

第14話登場。普段通り守谷神社で生活していたが、神奈子が洗脳されたのをきっかけに命蓮寺へ。そして映姫の持っていたアイテムを借り、戦いに身を投じることに。

 

仮面ライダーモノ ヴァイストルネイド

第14話変身。映姫のためにさとりが作ったアイテムを早苗が使って変身する。装着者の服装と能力を反映するシステムゆえに早苗にもフィットする。白のアンダースーツの上に緑と青のツートンのアーマーと布を着る。フリルも多くかわいげなデザイン。早苗らしさと映姫らしさが同居する。戦闘スタイルは風を利用したスピーディなもの。目は赤。

 

仮面ライダーモノ シュバルツディーアティー

第15話変身。黒のアンダースーツの上に緑のアーマーを着る。白蛇を模した尻尾が装備されており、また背中には神奈子のようなリング状の注連縄が。両腕は御柱のようなデザインになっている。胸はカエルの頭部を模す。目は赤。

 

 

『シャイニーナイトの踊り子』

・ルーミア

第16話登場。あまり自体に危機感は無く、そもそも一連の事件を知らなかった為に蚊帳の外感がある。しかしなんだかんだで友達を守るために戦いへ身を投じる決意をする。

 

仮面ライダーリライ S・ダークフォーム

第14話変身。真っ黒のボディが何より特徴的。そして首に巻く純白のマフラーが、なおのこと黒を目立たせる。言うなればシンプルイズベストを地で行くデザインである。闇の力を扱う。武器はバナスピアー型のランスのS・スピアーを使う。誰が作ったかと言った詳細は不明だが、少なくともルーミアとベストマッチと言う点は疑いはないだろう。

 

仮面ライダーリライ H・サンフォーム

第14話変身。真っ白のボディが何より特徴的。そして首に巻く漆黒のマフラーが、なおのこと白を目立たせる。言うなればシンプルイズベストを地で行くデザインである。光の力を扱う。武器は光弾を放てるH・ライフルを使う。

 

仮面ライダーリライ W

第21話変身。白黒のツートンのボディが特長的。彼女のリボンが外れ、マフラーとなっている。部分的ながらルーミアの潜在力を解放することでパワーアップしているが、そのせいで制限時間がある。武器を使わず戦う。

 

第19話登場。バイクからリライの意思に呼応して出現する。飛行などもできるのだが、慣れの問題でルーミアはうまくこのバイクを扱いきれていない。

 

 

『アンダーワールドの赤河童』

・河城みとり

第8話登場。酔鬼のアイテムを完成させたりと、裏方的な行動をしていた。しかしその裏で自身のアイテムを作っており、映姫を連れ出すのと同時に地上へ出た。現在は河童のアジトにて妹と生活中。

 

『リバーサイドの青河童』

・河城にとり

第7話登場。酔鬼のアイテムを作る他、他の河童たちを巻き込んで技術開発をしたりと、ライダーたちを支える。みとりにアイテムを渡されてからは、幻想郷を守るべく自身が奔走する。

 

仮面ライダーリヴィエル レッドフェイズ

第16話変身。パイプが通う軽そうな外見のフォーム。みとりが変身するだけあり赤を基調としており、ツインアイはイエローである。スピーディな近接戦闘と、戦闘機形態のKP-310による空中戦を展開する。また、水妖エネルギーにより水を利用した戦い方も。みとりが個人的に開発していた。

 

仮面ライダーリヴィエル ブルーフェイズ

第16話変身。パイプが通う重そうな外見のフォーム。にとりが変身するだけあり青を基調としており、ツインアイはグリーンである。ヘヴィな近接戦闘と、重戦車形態のKP-210による火力戦を展開する。また、水妖エネルギーにより水を利用した戦い方も。

 

仮面ライダーリヴィエル レッドフェイズL

第24話変身。レッドフェイズを基本として見た目ステータス共に軽さが増した形態。見た目通りの凄まじいスピードを持ち、さらにKPマシンの制御機能もアップ。KP-310Lでのさらに高火力な戦闘を繰り広げる。

 

仮面ライダーリヴィエル ブルーフェイズR

第24話変身。ブルーフェイズを基本として見た目ステータス共に重さが増した形態。見た目通りの凄まじいパワーを持ち、さらにKPマシンの制御機能もアップ。KP-210Rでのさらに高火力な戦闘を繰り広げる。

 

KP-010

第14話登場。ライダーに先立っての登場である。KPマシンたちを積んだ巨大トレーラー。リヴィエルの指令で駆けつけ、リボルギャリーくんのようにマシンを届ける。

 

KP-110

第16話登場。スパイクでの壁走行やスライダーでの浮遊、さらには光学迷彩など技術のびっくり箱のようなマシンである。「聞くまでもなく姉さんは光学迷彩を積んでると思った」とにとりは語る。

 

KP-210

第19話登場。青い支援マシン。KP-110と合体して戦車形態になる。凄まじい火力と重量がその自慢。

 

KP-210R

第24話登場。KP-210に追加装備を乗せたもの。ブルーフェイズRおよびハーフパスのシステムあってやっと動かせる。

 

KP-310

第16話登場。赤い支援マシン。KP-110と合体して戦闘機形態になる。凄まじい火力と速度がその自慢。

 

KP-310L

第24話登場。KP-310に追加ブースターを乗せたもの。レッドフェイズLおよびハーフパスのシステムあってやっと動かせる。

 

 

 

『オートマタは手の上に』

・アリス・マーガトロイド

第17話登場。神綺の手紙やらで魔界が話に上がることなどはあったものの、実は登場は中盤である。東方の可愛い担当とかできる女アリスのような二次ネタは多いが、本作では『リライをクッソ危険視してるなんか変わった優しいお姉さん』である。ライダーになる前は人形で兵器などを作っており、またスーツの試作もしていたようであり…?

 

仮面ライダーエレンツ ツバイスターター

第17話登場。白と金の素体に青と緑の羽織を着ており、軽量な印象。風と水のエレメントを使って変身するのがその特徴である。正式名称は初期型・αという名前なのだが、ダサいという理由でアリスが勝手に呼んでいる。二丁拳銃形態のツインツインガンを武器として扱う。魔界の神綺から輸送された。

 

仮面ライダーエレンツ ツバイブースター

第17話登場。白と金の素体に茶と赤のアーマーを着ており、ゴツめな印象。火と土のエレメントを使って変身するのがその特徴である。正式名称は初期型・βという名前なのだが、これまたダサいという理由でアリスが勝手に呼んでいる。ショットガン形態のツインツインガンを武器として扱う。

 

ドールシャイナー

第19話登場。他のライダーたちのバイクを見て開発したバイクであり、ゴリアテ人形の技術も使われていたりする。なので実はトライサイカーの後継機だったりもする。アリスが自分に合わせたカラーリングで作成した。普段使いも結構する。

 

 

『ワンハンドの救世仙人』

・茨木華扇

第7話登場。その後もチラチラ出ており、実は結構レギュラーとも言える。霊夢に味方するような形で解決に乗り出す。

 

仮面ライダーハーミット ハーミットモード

第17話変身。女性的フォルムのボディに、緑を基調として赤を入れたデザイン。茨や鎖の装飾が目立つ。茨のようなトゲのあるイバラムチと短剣のカクガをメインウェポンとする。テクニカルな戦闘がその特徴と言える。にとりが作ったようで、仙術による霊力を動力としてるのだが、なぜか青娥は動かせなかった。

 

仮面ライダーハーミット オーグリスモード

第18話変身。男性的フォルムのボディに、赤を基調として緑を入れたデザイン。煙のような装飾と羽衣が目立つ。透明化の術を施したハセンゴロモと巨大ハンマーゲキメツコンをメインウェポンとする。パワフルな戦闘がその特徴と言える。

 

仮面ライダーハーミット トリックモード

第21話変身。中間強化が出るにしては早すぎるもののそんな強くないので許せ。ハーミットモードを基本とし、青と金をメインに足したドレス的外見が特徴のフォーム。カンザシ型アイテム『ホールクラッカー』によりジッパーを生成して穴を開けられる。カクガは刃が伸びてカクセイガへ。ダジャレです。

 

紅飛馬(こうとば)

第17話登場。紅い体が特緒的な天馬。ものすごく速いらしく、バイクと並走しても負けない速度をその足で生み出す。

 

 

『ルナティックタイムは突然に』

・クラウンピース

第18話登場。何らかの精神干渉をされており、ライダーたちを敵として襲いかかってくる。部下のランパースどもが変身したフェアリートルーパーを引き連れて戦う。

 

仮面ライダーフール

第18話変身。道化のようなスマートな外見が特徴的な基本フォーム。黒赤のオッドアイと肩に燃え盛る炎のオブジェが目を引く。ピースの体格通り華奢な印象を与えるが、その実パワーに満ちたフォームである。

 

仮面ライダーフール サンフォーム

後悔の山前編で変身。燃え盛るようなデザインのボディが特徴的な強化フォーム。イエローとオレンジのオッドアイと一本角、そして背中の炎輪が目を引く。全体的にゴツく見える装飾で、放つ熱のパワーでなおさらパワフルに見える。その力も見た目に違わぬ物。

 

CRAZY=CROWN

登場時に詳細を追記。

 

 

『フォガトゥンメモリーの亡霊少女』

・西行寺幽々子

第7話に通話で登場。初登場はバインさんの書いた桜刀外伝だったりする。妖夢の様子を見て、自分も戦う決意をする。どこか呑気な雰囲気は変わらずだが、妖夢からすれば「あんな真面目な幽々子様は久しぶり」とのこと。

 

仮面ライダーブロッサム セレゾフォーム

第18話変身。水色と桃色を基調とした優雅なデザインで、まさに幽々子らしい。桜刀に比べて現代的であり、機械的。しかし布素材も多く、舞うような戦闘スタイル含め融合したデザインと言えよう。剣モードと銃モードに変わるトランスフロートを武器とするが、妖夢との共闘の都合上ブレイドモードを使うことが多い。父の夢を見たのちになぜか持っていたので出所は不明。

 

オウカオー

上記。

 

 

『陽光のフラワー・クイーン』

・風見幽香

第21話登場。いつも通り太陽の畑で過ごしている。本作にしては珍しく『リグルと住んでいる』というような二次設定をメインに置いている。妖怪らに協力するという形で、面白そうを理由に戦いに身を投げ込む。

 

仮面ライダープランゼ ブルームフォーム

第21話変身。数少ない肉体変化ライダーである。メインカラーはグレーで、頭に緑、体に赤黄白が差し色としてスッキリと入る。ボディラインが浮くのが特徴的で、お胸やお尻などとっても女性的。魔理沙曰く「目のやり場に困る」。変身後に服がぶっ飛ぶ。武器としては強化した傘と背中のツタを使う。

 

 

『ムーンサルトの地玉兎』

・鈴仙・優曇華院・イナバ

第4話登場。ネコ女に拉致られたところをサグメに保護され、地霊殿に。九尾に洗脳され、暴走。現在は地上にいる。ライダーとなることを決意し、戦いに今一度身を投じた。

 

『月光の跳躍』

・鈴仙・優曇華院・イナバ(PW)

後悔の山前編で登場。クォーツァーと戦うが負傷し、アルナブの力を奪われてしまう。椛が取り返したが、今どうなってるかは不明。

 

仮面ライダーアルナブ ジェネラルフォーム

後悔の山前編で変身。異世界の鈴仙が持っていたアイテムがライドウォッチにされたのち、本編世界の鈴仙に渡ったもの。曰く「馴染みのある手癖でできてる」らしく、異世界の自分が作ったものだと推察している。マゼンタや紺を中心とし、鈴仙らしいデザイン。落ち着いた遠距離及び中距離での戦闘を展開する。

 

 

『スピードスクープの文々。』

・射命丸文

第1話登場。何者かにライダーに敵対心を抱くよう洗脳され操られていた。その後権力争いに天狗として突っ込んでいこうとするも、異世界の彼女の邪魔でベルトを奪われることに。

 

仮面ライダープレカース

後悔の山前編で変身。怨霊の崇徳上皇の力を使った呪術で変身するライダー。和風な外見が特徴的。凶悪な呪いの力で戦う。このライダーのデータをどうにか手にした異世界の文がハーフカースを完成させた。

 

 

『黒翼の手紙』

・射命丸文(PW)

後悔の山前編で登場。別世界の住人であり、目的のため本編の世界の住人と対立した。

 

仮面ライダーハーフカース

後悔の山前編で変身。悪魔のマルファスの力を使った呪術で変身するライダー。西洋的外見が特徴的。土や建造の能力を使う。本編世界からのデータを元に作った呪術であり、本編世界の文からアイテムを奪取すること前提のライダー。それでも補強すれば世界間をつなげる歪むを作れるレベルの魔力。

 

仮面ライダーカース

後悔の山後編で変身。ハーフカースとプレカースの両方が合体したライダー。これが完成形であり、和洋折衷なデザインが禍々しさと刺々しさを際立たせる。怨霊と悪魔との契約によって成り立っている通り、凄まじい魔力を持っている。

 

 

『群狼の咆哮』

・犬走椛(PW)

後悔の山前編で登場。別世界の住人であり、目的のため本編の世界の住人と対立した。なんか本編世界の彼女より性格が悪い気がする。

 

仮面ライダーエラーブル

後悔の山前編で変身。様々な技術を集約してできた仮面ライダー。椛だと一眼で分かるデザインが特徴的。他の技術系のライダーのデータを瞬時に解析して武装化する他、ウイルスにより変身不能に追い込む機能を持つ。どうやら異世界のライダー達の技術も取っている模様。

 

 

『紫電の念力』

・姫海堂はたて(PW)

後悔の山前編で登場。別世界の住人であり、目的のため本編の世界の住人と対立した。

 

仮面ライダーグラフィ

後悔の山前編で変身。幽香の変身能力から取ったデータをもとに生まれた生体系ライダー。身体自体はプランゼに似ながらも、はたてらしさを押し出すデザイン。念写を活かした攻撃や、変形武器による遠近両方に対応した戦い方などマルチに強い。

 

 

『クォーツァーからの悪夢』

・ドレミー・スイート(OQ)

後悔の山前編で登場。別世界のドレミーであり、自身をクォーツァーの一員と語るが…?

 

仮面ライダートゥキッサ

後悔の山前編で変身。顔面の『らいだー』の文字が目立つ。全身に金の歯車の意匠が散りばめられている点がバールクス達に似る。全体的には赤と白をメインに黄色が入っており、それは『冴月麟』を思わせる。

 

 

 

 

怪人紹介

 

『アンダーワールドの捕獲者』

・黒谷ヤマメ

第1話登場。クモ女として暴走させられていた。治療後は霊夢によって地底に強制送還。

 

クモ女

細身で小柄。茶と黄色を基調としたシンプルなカラー。背中に二対のクモ脚が生えている。手から糸を生成しての攻撃や高速、防御などが可能。第1話、ヒールのライダーストライクによって撃破。

 

 

『クリムゾンムーンの御令嬢』

・レミリア・スカーレット

上記。

 

コウモリ女

ぱっと見のシルエットはズ・ゴオマ・グに近いが、もっと女性的で小柄。水色と紫を基調としたカラー。全体的に刺々しく綺麗。第3話、フェネクスのブライトドロップ、ヒールのライダースラッシュ、ガイアの通常斬撃によって撃破。

 

 

『パワフルキャットは式の式』

・橙

第3話登場。ネコ女として暴走させられていた。戻ったのちは普通に目覚めてに秘封倶楽部にバイクを託した。

 

ネコ女

茶と黒をメインカラーとしたネコ怪人。足の速さと凶悪な爪を武器とする。また、他の化け猫の統率も可能。数の暴力である。第4話、ヒールのライダーディバイトによって撃破。

 

 

『ブルースプラッシュの人魚姫』

・わかさぎ姫

第4話登場。サカナ女として暴走させられていた。治った後は紅魔館での治療ののち霧の湖に帰った。

 

サカナ女

全身が鱗に包まれた鋭い姿。顔は怪物っぽくなっているが、髪はそのまま。下半身は人間態よりもっと長くなっている。口からの水流弾が武器。第5話、ガイアのナイトブレイカーとジェヴォーダンのストライクファングによって撃破。

 

 

『ホウルアンドラウドの人狼』

・今泉影狼

第5話登場。オオカミ女として暴走させられていた。治ったあとは普通に部屋に寝かされていた。

 

オオカミ女

これぞ人狼みたいな見た目。下半身はスカートっぽいデザイン。鋭い牙と爪での攻撃を基本とする。第5話、桜刀のゲンセスラッシュにて撃破。

 

 

『コピーフォトグラフの念写鴉』

・姫海棠はたて

第6話登場。カラス女、そして電波女として暴走させられていた。治ったのちは文に連れられて自宅に戻った。

 

カラス女

巨大な羽と鋭い羽根が特徴的。全体的に黒くスタイリッシュ。羽は腕と繋がっておらず、背から羽が生えている。第6話、ヒールのライダーブレイクによって撃破。

 

 

電波女

全身が青白い電気でできてるような姿が特徴的。電波化による瞬間移動が可能。電撃ショックによる攻撃など、全体的にトリッキー。怪人としての特性も異質で、詳細がよくわからない。第6話、聖が変身したメディスのローズチャージインバレットによって撃破。

 

 

『ゴッドグロウの毘沙門天』

・寅丸星

第7話登場。トラ女として暴走させられていた。治ったのちは命蓮寺で休んだ。

 

トラ女

黄と黒のスタイリッシュな姿。硬い皮膚、鋭い爪、そして口からの光線が武器。第7話、メディスのライダーキックで撃破。

 

 

『グリーンジェラシー世捨て姫』

・水橋パルスィ

第9話登場。オウカオーを探していた妖夢に親切を働いて地霊殿に案内。その後、ブラックキャットによって暴走。ちなみにこのあとめっちゃ陰口を叩いた。

 

緑目女

茶色のボディに緑色の目をめっちゃ埋め込んだみたいなキモかっこいい見た目。嫉妬するたびに強くなるが、理性を失って暴走中なので、嫉妬の対象となるのは力のみ。それでもやはり厄介ではある。第9話、桜刀のゲンセスラッシュとジェヴォーダンのフランスズナイトメアにて撃破。

 

 

『ビューティフルシャウトの夜雀』

・ミスティア・ローレライ

第5話登場。いつも通り屋台を経営をしていたが、フォックスによって怪人化される。

 

スズメ女

ピンクとブラウンを基調とした怪人。全体的に刺々しく、長い手足の爪と、翼が特徴的。持っていたランタンは藍の私物。第14話、ラビのフリーズパーフェクターによって撃破。

 

 

『キャプテン船幽霊』

・村紗水蜜

第15話登場。基本的に命蓮寺におり、度々聖を心配するような様も見られる。一度無理矢理に怪物化された。

 

船女(ふなめ)

青、緑、白を基調としている。体がびしょ濡れであり、首を掴んだ敵を溺れさせるなどの攻撃が可能。第20話、ドグマのブーストスラッシュで撃破。

 

 

『ネクロマンサーの地底猫』

・火焔猫燐

第7話登場。洗脳されていた。地底に潜み、何かをしていたようだがもはやその記憶はない。

 

ブラックキャッツ

エックスゴースターで変身する。アーマーだが分類上は怪人。ナイトローグ的な。金属的な黒くスタイリッシュな姿。タイガのあれみたいな巨大なクローを武器とする。第13話、Uのライダーレイキックで撃破。

 

 

『スピードスクープの文々。』

・射命丸文

上記。

 

ファストクロウ

エックスゴースターで変身する。アーマーだが分類上は怪人。ナイトローグ的な。巨大な翼が目立つ黒く機械的な姿。エックスゴースターでの射撃と翼での攻撃、そして蹴爪でのキックを武器とする。第8話、フェネクスのボルケニックカノンで撃破。

 

 

『ムーンサルトの地玉兎』

・鈴仙・優曇華院・イナバ

第4話登場。ネコ女に拉致られたところをサグメに保護され、現在は地霊殿に。謎の女に洗脳され、暴走。

 

クレイジィラビット

エックスゴースターで変身する。アーマーだが分類上は怪人。ナイトローグ的な。白くてスタイリッシュな見た目。第10話、フェネクスのフルブライトドロップで撃破。

 

 

『ハッピースキャムの白兎』

・因幡てゐ

第4話登場。ネコ女に拉致られたところをサグメに保護され、現在は地霊殿に。謎の女に洗脳され、暴走。

 

ハピネスラビット

エックスゴースターで変身する。アーマーだが分類上は怪人。ナイトローグ的な。白くてふわっとした可愛らしい見た目。第10話、酔鬼のオーガブレイクで撃破。

 

 

『バグスライトで夜が照り』

・リグル・ナイトバグ

第15話登場。九尾の手によってライダーに敵意を持つよう洗脳されていた。現在入院中。

 

バーニングバグ

エックスゴースターで変身する。アーマーだが分類上は怪人。ナイトローグ的な。炎と光を扱う。黒を基調に緑を入れたスタイリッシュな外見。これで炎の手とか、主人公張れる外見やでおまえ。第16話、ラビのフリーズパーフェクターとリライのH・ライジングバーストによって撃破

 

 

『ダークサイドに泳ぐ厄神』

・鍵山雛

第16話登場。いつも通り山で過ごしていたが、ストームスネイクの手により洗脳される。後に劇場版で、今度は味方側として戦う。

 

厄女

エックスゴースターで変身する。アーマーだが分類上は怪人。ナイトローグ的な。緑の鎧から紫のトゲを生やし、赤のレースを巻いた姿。可愛さと禍々しさを混ぜた雰囲気。蹴り技をメインとして戦った。第16話、リヴィエルのコードレッド・フルバーストによって撃破。

 

フェイツ

赤と緑メインの刺々しく禍々しい姿が特徴的。渦のような形のトゲが多く、彼女らしさを表してるとも言える。

 

 

『スクラッチアンドスラッシュの白狼』

・犬走椛

第18話登場。洗脳されていたようで、祭りの騒ぎに乗せて混乱を起こそうとした。

 

ノーザンウルフ

エックスゴースターで変身する。アーマーだが分類上は怪人。刺々しく、白をメインとした中に赤を混ぜたデザイン。バインドボイスにより飛行を阻害する能力を持つ。第18話、ドグマのフル・バースト、Uのダブルクロスシュート、ハーミットのオーグリスドライブによって撃破。

 

リーヴス

ターンブレイカーで変身する。掛け声は醒妖。一番最初に変身したのは異世界の方の椛。上記のバインドボイス能力を持つ。デザインはノーザンウルフに似るが多少ヒロイックなもの。ごつめになっている。

 

 

『エクストーショーナーはご満悦』

・依神女苑

第17話登場。八坂神奈子の目を盗んで守矢神社に入り込み、エックスゴースターを盗み出す。姉を正気に戻すのは自分だと固執しており…

 

福女

エックスゴースターで変身する。アーマーだが分類上は怪人。ナイトローグ的な。ブラウン、ゴールド、ピンク、オレンジなどなどを散らした女苑らしくそしてマッシブな外見。悪霊を利用しての異世界生成や金銀財宝の精製、さらには使役など恐ろしい能力を使う。第19話、天子の説得によりエックスゴースターを手放す。

 

 

『ベッガーはご不満』

・依神紫苑

第16話登場。八坂神奈子に連れ去られた模様。その後、怪人として天子たちに襲いかかり…

 

(まがつ)

エックスゴースターで変身する。アーマーだが分類上は怪人。ナイトローグ的な。青とグレーを中心としたマッシブな体型。怪物然とした外見で、全身から水色のエネルギーを吹いている。不幸の能力が増大し、災いを引き起こす能力となっている。第19話、福女のバブリックエクストーション、ガイアのグランマックスエンド、ジェヴォーダンのツェペシュオブファングで撃破。

 

 

『エネルギーエヴォリューションの地底鴉』

・霊烏路空

第9話登場。洗脳されていた。地底に潜み、何かをしていたようだがもはやその記憶はない。

 

アトムアヴェム

エックスゴースターで変身する。アーマーだが分類上は怪人。ナイトローグ的な。金属的な黒くスタイリッシュな姿。巨大な羽が目立つ。右手の制御棒を外し、エックスゴースターに合体してライフル型にする。一撃一撃がえげつない威力。アヴェムはラテン語でカラスである。第14話、Uのライダースレイキックとリブレッスのフウインスタンパーで撃破。

 

 

『アナログコンピュータの最高到達点』

・八雲藍

上記

 

ノヴェムフォックス

スーツタイプの怪人。九尾がその体を操作しており、藍は時々出るのみ。九本の尻尾はミサイルが仕込まれており、それで攻撃する。第15話、ヒールのライダーキリングで撃破。

 

 

『ゴッドスネイクの建御名方』

・八坂神奈子

第11話登場。何者かに操られ、ライダー達を始末しようとする。

 

ストームスネイク

白い体を基調とし、青のアーマーを着せた姿。全身にしめ縄を巻きつけたような見た目であり、蛇らしさ以上に神奈子らしさを押し出す。第20話、フェネクスのゼロプロミネンススマッシュ、ガイアのグランマックスエンド、ヒールのライダーパンチ、モノのライダー剛力パンチで撃破。

 

 

『アースクエイクの有頂天』

・比那名居天子

上記。

 

ソルラテール

ターンブレイカーで変身する。掛け声は「醒妖」。禍々しい青の怪人。天子の力を増幅する。ガイア以上に剣の扱いへのアシストが強い。

 

 

『ライトニング少女怨霊』

・蘇我屠自古

第18話登場。神霊廟の住人が一人として、神子たちと共に戦う。ツンツンした雰囲気のキャラ付け。

 

・タンスィオン

ターンブレイカーで変身する。掛け声は考え中。足がドリルなのが目を引く怪人。さらに電撃など、彼女らしい攻撃が可能である。

 

 

『バーニング空船』

・物部布都

第18話登場。神霊廟の住人が一人として、神子たちと共に戦う。仏教に良い印象はないが、聖達は人間として信頼している模様。

 

サーモバリック

ターンブレイカーで変身する。掛け声は「紅業(こうごう)」。白と紺をメインにしつつ、気体爆薬の名の通り全身が燃え盛る凄まじい外見。

 

 

『リトルガールの大反逆』

・少名針妙丸

第21話登場。自身の野望のため、正邪を利用して戦う。

 

ラルジュネヌ

ターンブレイカーで変身する。掛け声は「醒妖」。マゼンタやパープルをメインとした針妙丸らしいデザイン。刺々しい全身は怪人らしい外見である。針を武器としており、その体は普通の人間大となる。

 

 

『ガール・オブ・超叛逆』

・鬼人正邪

第21話登場。自身の野望のため、針妙丸を利用して戦う。

 

リヴァーシブル

赤と白を主体にしたデザイン。他のターンブレイカー怪人以上に凶悪さが増し、モールドの多さも怪人らしさを際立てている。その武器は悪役らしくクロー。かなり尖った凶悪な形状である。

 

 

『ドラゴンガールよ天にて舞え』

・永江衣玖

第16話登場。天子へアドバイスと強化アイテム、そして要石を渡す形で登場。劇場版にて、泥棒に来たエラーブルを倒すべく怪人に。

 

レガレクス

ひらひらのリボンが特徴的などこかかわいくどこか怖いデザイン。ヒレやウロコを模した魚的パーツが多く、返り血のようなデザインが少し凶悪。雷を扱う。

 

 

『スリラー・ザ☆幻想郷』

・宮古芳香

第23話登場。いつも通り青娥に従って戦う。

 

メタリカ

ターンブレイカーで変身する。掛け声は「芳嚼(ほうしゃく)」。ダークブルーとくすんだ灰色がメイン。錆びた風のウェザリングの入る凝ったデザイン。青娥に施された呪術のおかげでさらに凶悪な姿になっている。

 

 

『ユアンシェンは何見て笑う』

・霍青娥

第17話登場。神霊廟のメンバーとは別行動が多い。夫に会うためいろいろ企んでいた。現在は自身の術のせいで心がやられてる真っ最中。

 

アズーロレイ

ターンブレイカーの改造品タオブレイカーで変身する。掛け声は「蒼光(ツァングァン)」。爽やかな色が基本なのだが、その上に黒い装甲や紫の煙、大量のお札などが乗るせいでかなり狂気的デザイン。腕から出す光のブレードで戦う。

 

 

『ディセイビング未確認飛行少女』

・封獣ぬえ

酔鬼外伝にて登場。のちに本編において第21話で登場。騒ぎに乗じて…騒ぎたいようだが、本気で聖白蓮を心配してはるようだ。

 

アンファイルド

ターンブレイカーで変身する。掛け声は「惑変」。ブラック一色にブルーとレッドのオッドアイが目立つ。羽は彼女のものそのまま飛び出ている。変身前から持つあの槍で戦う。

 

 

『デッドリィガール』

・?????

 

ビランアニヒレイト

謎の怪人。真っ黒なボディに赤黒い装飾がつくのが特徴的な悪い外見。謎のアイテム『チェンジブレイド』と黒い炎『ナーグフレイム』がその武器。

 

 

『ゲートキーパー的最終兵器』

・八雲紫

第20話登場。外伝ではよく出てる。怪人になっており、幻想郷はピンチになっていて…。

 

隙間女

オカルトと名前は同じだが別物。紫色に刺々しい体で、手は傘のように変異している。紫色の尖った目など、凶悪な印象を受ける。リブレッスっとスパークの強化フォームでやっと撤退するほど。

 

 

『ダークナイトの支配人』

・ドレミー・スイート

第11話登場。目的は不明だが、ライダー達に襲いかかった。

 

ズェッケロティパー

ものすごくふわぁっとしたドレスアーマー。他の怪人達とは比較にならないパワーでライダーを圧倒した。名前は砂糖を表すイタリア語とバクを表す英語からきている。

 

おもちゃ風アイテム紹介

 

・ヒール変身アイテム

二人で変身!ヒール!

二種類のライドレンズをセット!

『look the star…』

『look the line…』

レバーを押し込んで変身!

『star night fantasy!』『dream night fantasy!』

二つのモードに変身せよ!

ガジェットをライドグリップに装着!銃と剣で攻撃!必殺技を発動だ!

DXアイズバックル&ガジェットセット!発売中!

 

新たなライドレンズ!

アイズバックルにセット。

『look the fantasy!』

紫の力で融合だ!

そしてガジェットスマートを腕輪に!

『インディゴブルゥ!』

エクストラモードに変身!

『bewitching night fantasy!』

DXパープルライドレンズ&ライドブレスセット!好評発売中!

そして、グリップと合体してフォックシューターに変形だ!

DXガジェットフォックス&ライトニンググリップセットも!

 

・ガイア変身アイテム

『グランドライバー!』

ベルトを装着!オーブをセット、レバーを引いて!

『ガイア・ザ・アース!』

『ガイア・ザ・ルナ!』

大地の力と月の力を手に入れろ!

レバーを引いて必殺!パンチで粉砕せよ!

DXグランドライバー!発売中!

緋想の剣も。

 

更なるオーブで進化せよ!

『マックスタァァァァッ!!』

大地のパワーをセット、レバーを引いて!

『ブレイク・ザ・ディスパー!!!』

マックスグランドの力を放て!

DXマックスターオーブ!

 

・フェネクス変身アイテム

炎のナックル、登場!

『ignition…』

グリップを握って爆炎を纏え!

『phoenix blaze!』

仮面ライダーフェネクスに変身だ!さらに、ベルトと合体!

『over drive!』

握って、握って、握って!キックを放て!

DXバーンスマッシャー&ボルコネクターセット!発売中!

 

さらにヘリオスコアをセット!

『zero ignition!』

パワーアップだ!

『burn up complete zero phoenix!』

DXヘリオスコア。

 

・ジェヴォーダン変身アイテム

悪魔の女王、ついに変身!

『覚醒!』

レバーを引いて、バックルの口の中がが回転!

口を閉じ、ジェヴォーダンに変身せよ!

『ジェ・ヴォー・ダン』

ドラクリヤブレードとグングニールを振るえ!

レバーで必殺を発動!

『ファング!ドラクリヤエンド!』

キックで敵を倒せ!

DXヴァンパイアリング!好評発売中!

 

そして、今新たな姿へ!

ヴァンパイアリングにセット、レバーを引いて鎧を纏え!

『ワーラーキーアーッ!ヒャッハッハッハー!!』

武器と共に必殺を発動だ!

DXドラクリングバックル!

 

・桜刀変身アイテム

剣を振るえ、桜刀!

『人か霊か?』

ベルトを装着し、刀を挿せ!

『変・身・承・知!』

『ヒトノカタ!』『レイノカタ!』

二つのフォームをセレクトせよ!

刀を挿し直して、必殺技だ!

敵を真っ二つにしろ!

DXオビドライバーセット!好評発売中!

 

・メディス変身アイテム

死のブレス…登場!

ブレスレットにも、ベルトにも。

カプセルを使って、変身!

『GRADE UP…… FAZE 1』

最悪の猛毒、君は耐えきれるか!

さらにエクスブライガンとカプセルで攻撃。

『INCREASE EFFECT』

猛毒の弾丸とキックを食らわせろ!

DXメディットブレスセット。発売中!

 

新たな力をその手に!

『FAZE 2』『FAZE 3』

カプセルセットも。

 

・ワードレス変身アイテム

『コトダーマ!』

『観!』

コトダーマを起動!

扉を開け、ワードレッサーにセット。

レバーを引いて!

『ブレイクオープン!ドレスアップ!』

ワードレスに変身だ!

『メイクアナライズ!ワードレス!』

『アタックフィール!』『シューターフィール!』

二モードの武器に変化だ!

『戦!』『メイクバトル!ワードレス!』

セットの戦コトダーマで、バトルワードレスに!

DXワードレッサー!好評発売中!

 

・酔鬼変身アイテム

お酒で変身だ!

マシュヒョウタンをセット!

『set confirmed』

レバーを引いて…変身準備!

『confirmed change standby……3……2……1 ready?』

カウント後にもう一度引いて!変身だ!

『formname is 乱鬼!GOGOGO!』

その怪力を振るえ!

酒がなくても!『formname is 酒鬼!』

DXサカズキドライバーセット!発売中

 

三つの酒の力を合わせろ!

『Extenditem 『マスコア』 let's mixing』

瓢箪三つをセット。レバーを引いて…!

『formname is 鳴厄鬼 let's battle!』

酔鬼の進化だ!

さらに、二つの武器で戦え!

DX鳴厄鬼セット!

 

・ヘルゴット変身アイテム

力を解放しろ!

ストーンをセットせよ!

『Set!Alien power!』

ボタンを押して変身だ!

『Perfect!HellGod Alien!』

ボタンをもう一度押し、必殺技!

『Invocation Deathblow!』

パンチを叩き込め!

ストーンなしでも変身だ。『HellGod Balance!』

DXヘルドライバーセット!好評発売中!

ヘルスウェポンセットも。

 

・U変身アイテム

謎のアンノウンドライバーで、変身だ!

クリスタルをセットせよ!

『R』『U』『クリスタル!』

ボタンを押して…!

『エレメントフュージョン!』

仮面ライダーUに変身だ!

『ライジングアップ!』

そしてボタンを押し、クリスタルをもう一度押し込んで必殺を発動!

『放て戦士の力!』『ヒーロータイム!』

キックを放て!

『ライダーレイキック!』

DXアンノウンドライバー、発売中。

DXドラゴンランス&クリスタルセットでクロニクルゼアルにも変身だ!

 

『カメンライド』『フュージョンアップ!』

二つの旅人の力をその手に!

『ネオフュージョン!エレメンタルカリバー!!』

破壊の聖剣で心の力をまとえ!

『覚醒せよ!仮面ライダーU、ドーンオース!』

DXエレメンタルカリバー&クリスタルセット!

 

・リブレッス及びスパーク変身アイテム

主人公、ついに変身!

『巫女!』『wizard!』

カードを読み込んで、ディスクを回して…!

二人のライダーに!

『博麗の〜巫女!』

『White & Black wizard!』

リブレッスとスパークに変身だ!

DXサォルブドライバー発売中!

そしてDXゲンソウスペルレッカー、DXゲンソウスペルアンロッカーで戦え!

リブレッスとスパークの武装セットも。

 

カメ仙とコウモリをバックルへ合体!

『読み込み!仙人!』『&仙獣!』

『reading!magician!』『& magical beast!』

変身だ!

『神秘なる仙人!』『仙獣タートルゥ!』

『beautiful magician!』『magical beast!KO・U・MO・RI!』

二人の新たな形態へ!

DXセンニンタートル&コウモリマジシャンセット!

 

カードを取り出せ!

サォルブドライバーでフォームチェンジだ!

『妖狐!』『神霊!』『dark bird!』『vampire!』

DXスペルホルダー&カードセット!

 

・ラビ変身アイテム

美しく変身せよ!

ウィンタースフィアをセットして、

『がっちーん☆』

砕いて!砕いて!

『ばっきーん!』

仮面ライダーラビに変身だ!

『うぃんげるふぉーむ!』

DXクロッカー!好評発売中!

装動もお菓子売り場で。

 

・モノ変身アイテム

早苗、変身!

『guilty or not?』

五枚のコインをセット。

『start up…』

さらにもう一枚!トリガーを引け!

『OK!ROKUMONSEN! white monotone!』

『black monotone!』

対応したコインで武器と必殺だ!

『finish monotone!』

DXギルティドライバー。好評発売中。

 

・リライ変身アイテム

シャドウライトで変身せよ!

闇の力!

そして光!

槍とライフルを構えろ!

必殺音声は武器も対応!

DXリライセット!

さらに対象商品を買うと、DXヒールライドウォッチがもらえる!

『HEÆL!』

 

・リヴィエル変身アイテム

にとりとみとりが変身だ!

『set up Code 01』

『Code 02』

声に反応して起動!

『phase red!version 0.1!』

『phase blue!version 0.1!』

コアをセット、レバーを引け!

『armored rider phase blue!』

『armored rider phase red!』

コントローラーからはKPマシンの音が鳴る!

DXコアドライバーセット。好評発売中。

 

新アイテムで二人がパワーアップだ!

『connect on!update!version 0.2!』

もう一度レバーを引け!

『armored rider phase blue R!』

『armored rider phase red L!』

強さと速さの二人に!

DXハーフパス、発売中!

 

・エレンツ変身アイテム

『ready…go』

ディスクをセット、エレメンツドライバーを起動だ!

『α・mode ACTIVE』

ボタンを押してツバイスターター変身!

『β・mode ACTIVE』

さらにツバイブースターだ!

ツインツインガンを変形!合体!

『FIRE』

必殺を放て!

DXエレンツセット、発売中。

 

・ハーミット変身アイテム

『Checking……Checking……』

ドライバーに手をかざせ!

手を握って変身!

『Confirmation Exit』

『Humanside……change modehermit!』

『Monsterside……change modeogress』

二つの姿で戦え!

DXキセンドライバー!

 

仙人の力をその手に…!

『Humanside……change modetrick!』

仮面ライダーハーミット、トリックモードに。

ベルトから外し、ジッパーを開け!

DXホールクラッカー!好評発売中!

 

・ブロッサム変身アイテム

チェリムドライバーを装備!

扇子を差し込め!

『Mai bloom!Selezo!』

セレゾフォームに変身だ!

さらに必殺!

『fullburst!』

華麗に決めろ!

そしてトランスフロートは2モードチェンジ!

必殺と同時にグリップを引くと、必殺音声が変わる!

DXブロッサムセット!発売中!

 

 

 

戦歴まとめ

●が撃破、◯が撃退、敗北、中断。要は●なら爆殺したってことですな。黒星白星が逆転してます。あ、外伝は入っていません。

 

ヒール

●●◯◯●●◯◯●◯●●●◯

ガイア

●◯●◯●◯◯◯●◯●●

フェネクス

●◯●◯◯◯◯◯●◯

ワードレス

◯◯◯◯◯●●●

ジェヴォーダン

●◯◯●●◯◯●◯●●◯

桜刀(幽々子含む)

●◯◯●◯●◯◯●◯◯◯●

メディス(聖含む)

●●●◯◯◯◯◯◯◯●◯●

酔鬼

●◯●◯●◯●●●◯

ヘルゴット

◯●◯●◯●

ドグマ

◯◯◯●●○◯◯◯

U

●◯●●●●

リブレッス

●◯●◯●●◯

スパーク

◯●◯◯◯○◯●

ラビ

●◯●◯●◯●

モノ

◯●◯●

リライ

●◯◯◯◯●●◯

リヴィエル

●◯●◯(みと)

●◯●◯●●(にと)

エレンツ

◯◯◯◯●○◯◯

ハーミット

◯●●◯◯◯

フール

◯◯◯◯◯◯

ブロッサム

●◯●◯◯

プランゼ

○●

アルナブ

◯●

 

エラーブル

◯●●●●●●●●●●●◯

グラフィ

◯◯●●◯

カース

●●●●●●●●◯

 

トゥキッサ

●◯




DX長瀬ショットガンとDX難波ロッドが欲しいサードニクスです。バンダイのアンケートとかに送ろうかな。
ひじりんは後で書き足します。
変身ポーズ講座も出揃ったら載せます。
あと、この解説にこう言うコーナー足すといいよってのあったら言ってくださいね。

24話まで終了!意外と把握に役立ってます


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ライダー例 凡例一覧の少年少女

ライダー名:仮面ライダーヒール

変身者:宇佐見蓮子/マエリベリー・ハーン

概要:二人が外の世界の謎の組織のビルで発見したアイテムで変身した。初戦闘ののち謎の人物の手によってタイムスリップ&幻想入り。以降は戻る方法を模索しつつ放浪して人助け中。

マシン名:チェイスナイター

マシン概要:マヨヒガにあった二人乗りバイク。ヒールに何故か呼応して動き出した。橙曰く「紫しゃまがこれを動かせる人間が現れたら、渡しなさいと言っていた」とのこと。以降移動用に使う。二輪免許を持つのはメリーだけなのでそちらが運転する。

セリフ:

「変身!」共通

「満点の月夜、見せてあげるわ」スターボウ決め台詞

「ライダージャンプ。からの〜!ライダーシュート!」スターボウ必殺決め台詞

「幻想の境界、見せてあげるわ」ナイトメア決め台詞

「はぁぁぁぁ!ライダーストライク!」ナイトメア必殺決め台詞

 

 

フォーム名:スターボウモード

概要:蓮子の体にメリーが取り込まれて変身する。黒いボディと刺々しい白い鎧、赤いアクセントと赤の複眼、ハットのような頭部デザイン。近接をメインとしたパワータイプ。座標をうまく見極めて弱点をつきながら攻撃出来る。

武装:

「フォンブレイド」

ライダーグリップにガジェットスマートを取り付け、高圧粒子ブレードが展開されることで完成する剣。任意の対象にはノーダメージにすることが可能。ただし壁に当たれば途切れるので、ノーダメージでも透過は不可。

「アタックドロップ」

目薬型のアイテム。バックルのスロットに差し込み、スロットを動かすことで能力を発動出来る。『ジャンプ』『ダッシュ』『キック』『パンチ』『スラッシュ』『バレット』『バースト』『イリュージョン』『スピニング』がある。

変身アイテム:

「アイズバックル」

巨大な目のデザインが不気味なベルト。アタックドロップのスロット、レンズのスロット、レバーがある。

「ライドレンズ」

大きな赤いレンズ。アイズバックルの目の上に重なって、コンタクトレンズのようになる。

変身シークエンス:

1:バックルを腰に当て、ベルト装着。

2:ポーズを決めたのち、レンズをバックルに挿入。

『look the star…』

3:メリーと手を繋ぎ、レバー操作。

『we are star night fantasy!』

必殺技:

「ライダーシュート」

『jump eyes!』

『kick eyes!』

ジャンプとキックのアタックドロップを読み込んで放つ。ジャンプからのキックという単純な物。

「反転ライダーシュート」

『jump eyes!』

『kick eyes!』

『spinning eyes!』

ジャンプとキックとスピニング。V3のアレみたいな。

「ライダースラッシュ」

適当にアタックドロップを読み込んだのち、スマホの「必殺」アプリを起動して斬るもの。

 

フォーム名:ナイトメアモード

概要:メリーの体に蓮子が取り込まれて変身する。白いボディと美しい紫のアーマーとスカート、謎の古代文字と青の複眼、あのZUN帽のような頭部デザイン。遠距離をメインとしたトリックタイプ。スーツ状の結界をいじることでドライブのディメンションキャブみたいなアレとか、体をバラしたりなど不思議な行動が可能。

武装:

「テレシューター」

ライダーグリップにガジェットガラパゴスを取り付け、開くで完成する銃。ビームガンを放つ。

「アタックドロップ」

同上

変身アイテム:

「アイズバックル」

同上

「ライドレンズ」

同上だが、色は青。

変身シークエンス:

1:バックルを腰に当て、ベルト装着。

2:ポーズを決めたのち、レンズをバックルに挿入。

『look the line…』

3:蓮子と手を繋ぎ、レバー操作。

『we are dream night fantasy!』

必殺技:

「ライダーストライク」

『dash eyes!』

『kick eyes!』

ダッシュとキックのアタックドロップを読み込んで放つ。駆け寄ってからの飛び回し蹴り。ガタックみたいな。

「幻惑ライダーストライク」

『dash eyes!』

『kick eyes!』

『illusion eyes!』

ダッシュとキックとイリュージョン。キックの直前に瞬間移動して回り込んで当てる。

「ライダーブラスト」

適当にアタックドロップを読み込んだのち、ケータイの「Enter」を押して放つもの。

 

フォーム名:エクストラモード

概要:蓮子とメリーの体が完全に融合した形態。しかし意思の主導権の関係で操作できずにいたのだが、式のシステムを使って藍に操作させる形で解決した。

グレーの素体の上に青と黄土色のごついアーマーを装備する。九尾型のミサイルポッドが腰に装備される。頭部は紫のツインアイと金髪風のデザインと耳風のデザインが特徴的。

武装:

『フォックシューター』

小さなキツネ型のアイテム。ライダーグリップと接続して拳銃型に変形する。

ライトニングテレガンを合体する事でショットガンモードになる。

変身アイテム:

『ライドブレス』

ガジェットを接続出来るブレスレット。ガジェットを充電できる以上の機能はないが、スーツに接続することが出来るのを応用的に利用している。

『ガジェットスマート』

この中に藍をプログラム化して入れている。式はコンピューター的なものなので、問題なく作動中。話す時は某アマデウスみたいな感じ。

『ライドレンズ』

菫子が開発した紫色の物。二人が完全に融合できる。

変身シークエンス:

1:片方がベルト巻く。蓮子とメリーどっちでも良し。

2:ライドブレスを巻きつけ、ガジェットスマートを接続する。

『インディゴブルゥ!』

3:ライドレンズを挿入する。

『look the fantasy!』

4:藍の「変身!」の掛け声と同時にレバー押し込み。

『we are bewitching night fantasy!』

必殺技:

「ライダーパンチ」

『punch eyes!』

『punch eyes!』

『burst eyes!』

パンチ技。飛び込みつつエネルギーをまとった右手でのパンチ。

 

「ライダーキリング」

『Enter…Ready…Go!!』

ショットガンモードのフォックシューターで狙い撃つ技。適当にアタックドロップを読み込んで行う。

 

 

ライダー名:仮面ライダードグマ

変身者:聖白蓮

概要:魔界を通して復活。以降は普段通りに過ごしつつ怪人を倒す。

聖の持つ魔界の技術でかつてより開発していた。魔力と法力を合わせて使うことでスーツと鎧を形成する。

マシン名:マッハラギャテー

マシン概要:僧術ヘビィフォルムのアーマーがバイク型に変形したもの。黒をメインとしたカラーリング。

セリフ:

「変身!」

「見せてあげましょう…これが法の光!」

 

フォーム名:僧術

概要:基本フォーム。アーマーを装備したヘビィフォルムとパージしたライトフォルムになる。黒いライダースーツの上に、黒と紫を中心としたカラーのアーマーを載せる。彼女の仲間の力を使って戦う。ヘビィフォルムは下半身がブースターとなっており、ホバー移動する。対しライトフォルムはマッハラギャテーでの移動を中心としたもの。ヘビィは普段の聖、ライトはターボババアのライダースーツをモチーフとする。

武装:

「クラウドリング」

一輪の持つもののをモチーフとした輪っか。持つことで雲山を模した腕を生成して攻撃できる。

「アンカーブレード」

村紗の持つ碇をモチーフとした大剣。重くて鋭い以上の強みはないが、それが恐ろしい。

「ボイスバスター」

響子の持つマイクをモチーフとした銃。マイク部分に吹き込んだ声の大きさに合わせて威力が上昇する。

変身アイテム:

「三宝の巻物」

ドグマに変身する魔術を詰め込んだもの。

「エイディングドライバー」

大きなスロットのあるバックル。上部にレバーがある。

「僧の腕輪」

数珠をモチーフとした腕輪。

変身シークエンス:

1:まず腕輪を装備し、エイディングドライバーを装備。

2:大きく構えをとり、エイディングドライバーに三宝の巻物を挿入。

『南無三宝!』

3:レバーを倒して変身。右手側に倒してライト、左手側に倒してヘビィに変身する。

『heavy!』or『light!』

『光照らせ!その救い!輝く魔界の魂!』(感情の摩天楼のサビ。「ひーかーり〜!照らせ〜!そのすーくい〜!かーがーやーく!魔界のたまっしー!」って感じ)

必殺技:

「ブーストクラッシュ」

『波羅羯諦!』

パンチ技。ヘビィフォルムで放つ。

「フォガトゥンララバイ」

『波羅羯諦!』

キック技。ライトフォルムで放つ

 

フォーム名:仏術

概要:毘沙門天の力を込めた姿。素体は白で、部分部分にグレーのプロテクターがある。顔はグレーと白のシンプルなデザイン。目は緑。ヘビィフォルムは虎柄とオレンジのゴツめのアーマーをまとっている。機動力をかなぐり捨てた代わりにとてつもない防御力攻撃力を持つ。対しライトフォルムはグレーのうっすいアーマーで、機動力全振り。

武装:

「タイガースクラッチ」

でかい爪。タイガとか以上のクッソでかい爪。オレンジと黄色。ヘビィフォルムでのみ使う。

「マウスダウザー」

ダウジングロッド。ナズーリンの本物より小さく、振りやすい。ライトフォルムでのみ使う。

「マウスペンデュラム」

ちっさいモーニングスター。これまた振りやすい。ライトフォルムでのみ使う。

変身アイテム:

「三宝の巻物」

同上

「エイディングドライバー」

同上

「仏の腕輪」

黄色の数珠をモチーフとした腕輪。

変身シークエンス:

1:まず腕輪を装備し、エイディングドライバーを装備。

2:大きく構えをとり、エイディングドライバーに三宝の巻物を挿入。

『南無三宝!』

3:レバーを倒して変身。右手側に倒してライト、左手側に倒してヘビィに変身する。

『heavy!』or『light!』

『閃光!救って!栄光!描いて!』(虎柄の毘沙門天のデーンデデーン・・・デッデッデデーン!のリズム。せーんこー!すくぅってー!えーいこー!えっがいてー!って感じ)

必殺技:

「グロウイングクロー」

重さに任せて相手を引き裂く技。ヘビィフォルムで使用。

「アクセルカッティング」

マウスダウザーでめっちゃくちゃに切るつける技。ライトフォルムで使用。

 

フォーム名:法術

概要:神子の仙術の力を使うフォーム。素体はグレーと紫のツートンで、金の差し色がちょくちょく入っている。目は水色。ヘビィフォルムはゴツく全身に砲台やら何やらのついた神子モチーフの射撃寄りの姿。対しライトフォルムはヘビィフォルムのアーマーが全て合体してスカートになる、こころモチーフのゆったりとした姿。なので、実はヘビィとライトの重量は同じ。ライトはブースター展開で機動力が上がっているのである。

武装:

「ディッシュアタッカー」

肩の側面についた砲台。ガタックバルカンみたいな。皿が飛び出ていく。

「ライトニングバスター」

ももの側面の装置。電撃を放出できる。

「ツインカノン」

肩の上部についた砲台。ガンキャノンみたいな。グレネード弾を発射できる。

「ハンドガトリング」

両腕の小型ガトリング。デストラみたいな。

「ブレストミサイル」

胸部アーマーのミサイルポッド。ガンダムヘビーアームズみたいな

「シャックシューター」

神子の尺を模したショットガン。

変身アイテム:

「ロウズマジェスティリスト」

本来神子が仮面ライダーに変身するアイテムであったが、なんだかんだで聖が託される。金一色で派手な色合い。

変身シークエンス:

1:まず腕輪を装備し、エイディングドライバーを装備。

2:大きく構えをとり、エイディングドライバーに三宝の巻物を挿入。

『南無三宝!』

3:レバーを倒して変身。右手側に倒してライト、左手側に倒してヘビィに変身する。

『heavy!』or『light!』

『変わらぬ麗光(れいこう)!続くは研鑽(けんさん)!揺るがぬ神仏!』(聖徳伝説のアレ)

必殺技:

『フル・バースト』

ヘビィフォルムで使用。一斉砲撃。視覚的にうるさい。

 

フォーム名:南無三宝術

概要:聖、星、神子の三人が融合したフォーム。質量保存の法則完全無視の形態である。名前の通り僧術仏術法術の融合形態であるが、顔やアーマーはむしろ誰にも似つかない。白黒グレーを同じほどに配分したアンダースーツに三人に共通する金色が入る。マントと軽めのスカートアーマーが特徴的で、全身のブースターと射撃武器も健在である。三つの腕輪達は変化して首輪になる。右目は赤だが、左目には丸いドラゴンボールのスカウターみたいなバイザーが付いている。そちらは聖が操作する場合は紫、星なら緑、神子なら水色に光る。

ちゃぶ台を囲んだ畳の精神空間に三人は存在している模様。また、聖の位置にこころ、神子の位置にこころ、隠岐奈、星の位置にナズーリンなど、入れ替えが効く模様。

武装:

「ナックル・ザ・ヒジリ」

サイドバックルについているナックル。手に持ってパンチ力をアップする。

「クロー・ザ・トラマル」

腕に固定されているクロー。せり出てくることで使える。

「ソード・ザ・トヨサトミミ」

ごつめの剣。右肩に取り付いているものを外して使う。七星剣との二刀流も。

「ファン・ザ・ハタノ」

リアスカートについている巨大な扇子。こころが居る時のみある。

「ダウザー・ザ・ナズー」

背中についている小さなダウザー。ナズーリンが居る時のみある。

変身アイテム:

「三宝の巻物」

同上

「エイディングドライバー」

同上

「太平の腕輪」

三つの腕輪をもとに作られた腕輪。ロウズマジェスティリスト程ではないが、装飾の多い黒い腕輪。

変身シークエンス:

1:聖、星、神子がそれぞれ僧の腕輪、仏の腕輪、ロウズマジェスティリストを巻く。

2:三人のうち誰かが反対の腕に太平の腕輪を巻く。

3:エイディングドライバーを巻き、三宝の巻物をセットする。

『南無三宝!』

4:レバーを倒す。どちらでもOK。

『unite!夢とともに!光とともに!三条の希望!』(順也のいつものフレーズ。心綺楼OPを聞きながらだとイマジンしやすいかも)

必殺技:

「リリジャストライデント」

『波羅羯諦!』

両足キック。金のオーラを纏う。

「トリニティクラッシュ」

『天符!ブーストクラッシュ!』

敵に飛びかかっての右手パンチ。ヒットの直前にドグマ僧術ヘビィフォルムのビジョンが現れ、左手で同時パンチを繰り出す。

ナックルのボタンを押して発動。

「トリニティスクラッチ」

『光符!タイガースクラッチ!』

右、左の順で繰り出す引っ掻き。ヒットの直前にドグマ仏術ヘビィフォルムのビジョンが現れ、左、右の順で引っ掻きを繰り出す。

クローのボタンを押して発動。

「トリニティブースト」

『仙符!フル・ブースト!』

敵に近づいての斬撃技。ビームをまとった斬撃を叩き込む。ヒットの直前にドグマ法術ヘビィフォルムのビジョンが現れ、左手で同時斬撃を繰り出す。

ソードのボタンを押して発動。

 

 

ライダー名:仮面ライダーモノ

変身者:東風谷早苗

概要:本来は映姫が変身するものであったが、なんやかんやあって早苗が変身した。しかし変身者にフィットするシステムのおかげで早苗要素の強いものとなった。

マシン名:フルブレッサー

マシン概要:自転車。もう一度言うがチャリである。BMXである。カラーリングは青と緑を基調としている。ヒヒイロカネを使っており、何があっても曲がらない歪まない。タイヤもシリコンの詰まったタイプなのでパンクの心配はない。

セリフ:

「変身!!」

「奇跡の神風を見よ!」

 

フォーム名:ヴァイストルネイド

概要:風の力をメインとしたフォーム。白いボディスーツの上に青のアーマー、そしてフリフリが目立つ。胸に小さな鏡がある。映姫4割早苗6割と言う感じの見た目。超スピードでの連続攻撃を強みとする。

武装:

「ヌサスラッシャー」

幣をモチーフとした剣。風を巻き起こす力も持ち、敵を吹っ飛ばすような芸当も。「剣」のジャッジメントコインを入れることで出現する。

「シンミラージュ」

胸部の鏡。相手の飛び道具を吸収し跳ね返すことができる。映姫が使えば全攻撃反射できたはずのもの。

変身アイテム:

「ギルティドライバー」

上に小銭用のスロット、側面にグリップとトリガー、前面にスロットがついたバックル。コンパクトで小さい。

「ジャッジメントコイン」

セルメダルより一回り小さいぐらいのコイン。それぞれ漢字が一文字ずつ書かれている。セットしたものに対応する力を扱える。

変身シークエンス:

1:ギルティドライバーを巻く。

『guilty or not?』

2:「是」「非」「曲」「直」「庁」のコインを上のスロットに入れる。

『start up…』

3:「白」のコインを前のスロットに挿入し、グリップを握ってトリガーを引く。

『OK!ROKUMONSEN!white monotone!』

必殺技:

「ライダー超絶キック」

『finish monotone!』

「決」のコインを前面スロットに入れ、引き金を引き、発動する。回し蹴り。

「ライダー神風ウィンドスラッシュ」

『finish monotone!』

同上。

風に乗って高速で接近したのち、斬りつける技。

 

フォーム名:シュバルツディーアティー

概要:神の力をメインとしたフォーム。黒いボディスーツの上に、レース、緑のアーマーと、カエルの顔を模した胸部アーマーを装備する。腰からは尻尾の様な感じで蛇が生えており、背中には神奈子とかスターゲイザーのアレみたいなリングが付いている。両前腕が御柱っぽくなっている。早苗2割映姫2割諏訪子3割神奈子3割と言う感じ。

武装:

「スネイクウィップ」

腰に生えている白蛇。噛み付いて掴む使い方や、名前の通り叩きつける使い方がある。

「フロッグブレイカー」

カエルの頭部を模したハンマー。普通に殴るほか、口を開いて舌で捕まえるような芸当も。「槌」のコインで呼び出す。

変身アイテム:

「ギルティドライバー」

上記

「ジャッジメントコイン」

上記

変身シークエンス:

1:ギルティドライバーを巻く。

『guilty or not?』

2:「是」「非」「曲」「直」「庁」のコインを上のスロットに入れる。

『start up…』

3:「黒」のコインを前のスロットに挿入し、グリップを握ってトリガーを引く。

『OK!ROKUMONSEN!black monotone!』

必殺技:

「ライダー剛力パンチ」

『finish monotone!』

同上。

敵に飛びかかりつつ繰り出すパンチ技。

「ライダー重量クラッシュ」

『finish monotone!』

同上。

敵をスネイクウィップで捕らえたのち、引き寄せてフロッグブレイカーを叩きつける。




まさか5000字書くとは思わなんだ。


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キャラまとめ 青木ヶ原のまとめ

不定期更新
全キャラ登場させるのが野望。


●が本編、◯が外伝登場。・は未登場。

 

主人公 

●博麗霊夢

仮面ライダーリブレッスに変身する。

 

●霧雨魔理沙

仮面ライダースパークに変身する。

 

東方紅魔郷 

●ルーミア

仮面ライダーリライに変身する。

 

●大妖精

チルノとの散策のシーンで登場。

 

●チルノ

仮面ライダーラビに変身する。

 

●紅美鈴

一応第4話と第19話で天子たちに話しかけている。

 

●小悪魔

劇場版にて登場。パチュリーのお付きという感じ。

 

●パチュリー・ノーレッジ

劇場版にて登場。割としっかりめに話す。

 

●十六夜咲夜

言うまでもないだろう。現時点でもレミリアと一緒に何度か登場。

 

●レミリア・スカーレット

仮面ライダージェヴォーダンに変身する。また、コウモリ女にも。

 

●フランドール・スカーレット

サカナ女に襲われそうな形で登場。

 

東方妖々夢

・レティ・ホワイトロック

未登場。主役回を予定。

 

●橙

ネコ女として戦った。さらに劇場版にてヒール新フォームへ。

 

●アリス・マーガトロイド

仮面ライダーエレンツとして登場。

 

・リリーホワイト

未登場。主役回を予定。

 

・ルナサ・プリズムリバー

未登場。登場予定あり。

 

・メルラン・プリズムリバー

未登場。登場予定あり。

 

・リリカ・プリズムリバー

未登場。登場予定あり。

 

●魂魄妖夢

仮面ライダー桜刀に変身する。

 

●西行寺幽々子

仮面ライダーブロッサムに変身する。

 

●八雲藍

ヒールの強化フォームに一緒に変身する。体である九尾は大活躍。

 

●八雲紫

外伝にはよく出る。本編では隙間女として登場。

 

東方萃夢想

●伊吹萃香 

仮面ライダー酔鬼に変身する。

 

東方永夜抄

●リグル・ナイトバグ

バーニングバグとして戦った。

 

●ミスティア・ローレライ

屋台として登場。妹紅が飲んでた。

 

●上白沢慧音

妹紅の相談相手として登場。

 

●因幡てゐ

ハピネスラビットとして戦った。

 

●鈴仙・優曇華院・イナバ

クレイジィラビットとして戦った。そして…?

 

●八意永琳

地底に逃げた永遠亭メンバーとして登場。妖夢を鼓舞したりする。

 

●蓬莱山輝夜

上に同じく永遠亭メンバー。

 

●藤原妹紅

仮面ライダーフェネクスに変身する。

 

東方花映塚

●射命丸文

仮面ライダーカースに変身。さらにファストクロウとして戦った。

 

●メディスン・メランコリー

仮面ライダーメディスに変身した。

 

●風見幽香

外伝において遠くから見られる形で登場。さらに仮面ライダープランゼに変身する。

 

●小野塚小町

メディス外伝とフェネクス外伝に登場。さらに華扇宅の客としても登場。

 

●四季映姫・ヤマザナドゥ

さとりと会話する形で登場。変身する気だったようだがなんやかんやで早苗の元へアイテムがいく。

 

東方風神録

●秋静葉

チルノに力を託す形で登場。そのシーンのみである。

 

●秋穣子

上に同じく。

 

●鍵山雛

厄女として戦った。劇場版ではフェイツになったり。

 

●河城にとり

仮面ライダーリヴィエルに変身する。

 

●犬走椛

仮面ライダーエラーブルに変身する。さらにノーザンウルフとして戦った。俊泊さんの提案したあっし系キャラいいんだけどね。本作は性格に関しては原作に寄せつつ普遍的イメージにしたい。

 

●東風谷早苗

仮面ライダーモノに変身する。私のライダーだから、他の方のライダーのために出番削られまくり。

 

●八坂神奈子

ストームスネイクとして戦った。

 

●洩矢諏訪子

命蓮寺で療養中。天子に力を託したりと、実は重要キャラ。

 

東方緋想天

●永江衣玖

地震お知らせ役兼天子の知り合いとして登場。今後はどうだろう。

 

●比那名居天子 

仮面ライダーガイアに変身する。

 

東方地霊殿

●キスメ

質問に答える「知らないなー」のみで登場。

 

●黒谷ヤマメ

クモ女として戦った。第1話の敵は蜘蛛じゃなきゃ。

 

●水橋パルスィ

緑目女として戦った。出番が多いかと言えば…。

 

●星熊勇儀

蓮メリが泊めてもらった。結構メインにいた。

 

●古明地さとり

永夜抄&地霊殿編ではほぼ出ずっぱり。こいし関連で衝撃的なシーンもやってくれたし満足!私のさとりん好きが浮き出るね。

 

●火焔猫燐

ブラックキャッツとして戦った。永夜抄&地霊殿編のボス。

 

●霊烏路空

アトムアヴェムとして戦った。永夜抄&地霊殿編のボスその2

 

●古明地こいし

仮面ライダーUに変身する。

 

●河城みとり

仮面ライダーリヴィエルに変身する。

 

東方星蓮船

●ナズーリン

星を心配する子。そんなに多いわけではない。

 

・多々良小傘

あれ?出てないっけと思ったら実は出てない子。登場予定あり。

 

●雲居一輪

姐さんを心配したり薬の在り処を話したりと、割とよく出る。

 

●雲山

一輪の隣にいる人。耳打ちする形で喋ったり。

 

●村紗水蜜

一輪と基本的立ち位置は同じ。姐さんを心配したり人質に取られたり。

 

●寅丸星

トラ女として戦った。とてもいい子。さらにドグマに変身したり。

 

●聖白蓮

仮面ライダードグマに変身する。

 

●封獣ぬえ

マミゾウと企む役で登場。今後に期待。

 

東方非想天則

・非想天則

外伝で登場予定ございます。

 

ダブルスポイラー

●姫海棠はたて

仮面ライダーグラフィに変身。さらにカラス女として戦った。

 

東方神霊廟

●幽谷響子

会議に出席したり寺の前で襲われかけたり。

 

●宮古芳香

メタリカとして戦った。

 

●霍青娥

アズーロレイとして戦った。

 

●蘇我屠自古

タンスィオンとしてライダーと協力。

 

●物部布都

サーモバリックとしてライダーと協力。

 

●豊聡耳神子

18話でアイテムを託したりと重要キャラ。果てはドグマに変身。

 

●二ッ岩マミゾウ

もこたんと呑む。ぬえと企んだりも。

 

東方心綺楼

●秦こころ

マスカレイダーとして戦った。舞を邪魔されてばかり。

 

東方輝針城

●わかさぎ姫

サカナ女として戦った。さらにオフルーヴとして戦う。

 

●赤蛮奇

影狼を追いかけ回す形で変な登場を果たす。

 

●今泉影狼

オオカミ女として戦った。さらにクロルーヴとして戦う。

 

・九十九弁々

未登場。登場は未定。

 

・九十九八橋

上に同じく。

 

●鬼人正邪

針妙丸と企む形で登場。リヴァーシブルとして戦う。

 

●少名針妙丸

正邪と企む形で登場。ラルジュネヌとして戦う。

 

・堀川雷鼓

未登場。登場は未定。

 

東方深秘録

●宇佐見菫子

地底でメカ作ってた。今後も…?

 

東方紺珠伝

・清蘭

登場予定あり。

 

・鈴瑚

登場予定あり。

 

●ドレミー・スイート

ズェッケロティパーとして戦う。今後も登場。

 

●稀神サグメ

仮面ライダーワードレスに変身する。

 

●クラウンピース

仮面ライダーフールに変身する。

 

●純狐

地上を見にくる形で登場。そして…。

 

●ヘカーティア・ラピスラズリ

仮面ライダーヘルゴットに変身する。

 

東方天空璋

・エタニティラルバ

未定。シーズン2では変身予定。

 

●坂田ネムノ

妖怪どものチームの一人として登場。

 

・高麗野あうん

色々未定だけど竜一兄貴のせいであう霊好きになったし出したい。

 

・矢田寺成美

未定。チョイ役で出そうではある。

 

●爾子田里乃

劇場版にて一瞬登場

 

●丁礼田舞

劇場版にて一瞬登場。

 

●摩多羅隠岐奈

フェネクス外伝に一瞬登場。さらに劇場版において、二つの怪人態で登場。

 

東方憑依華

●依神女苑

福女として戦う。

 

●依神紫苑 

禍女として戦う。

 

東方香霖堂

●森近霖之助

メディス外伝に登場。アリスにアドバイスをあげたりも。

 

東方三月精

●サニーミルク

メディス外伝にて初登場。遊んでいた。本編においてはルーミアにむにむにのほっぺを引っ張られる。

 

●ルナチャイルド

上に同じくメディス外伝。一応ルーミアに時計をあげた子として名が出てる。本編では居ただけでセリフなし。

 

●スターサファイア 

メディス外伝に初登場。観戦者。本編では仮面ライダーWのビデオを見ていた。

 

幻想郷縁起二作

●稗田阿求 

大活躍。主に稗田亭が。

 

東方儚月抄

・綿月豊姫

登場予定あり。

 

・綿月依姫

登場予定あり。

 

・レイセン 

登場予定あり。

 

東方茨歌仙

●茨木華扇

仮面ライダーハーミットに変身する。

 

東方鈴奈庵

●本居小鈴

文と話す形で登場。

 

秘封倶楽部シリーズ

●宇佐見蓮子

仮面ライダーヒールに変身する。

 

●マエリベリー・ハーン

仮面ライダーヒールに変身する。




全キャラ頑張る


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おさらい集
おさらい・導入編


1〜7話
様々な少女達がが変身。怪物にされた者達を助けながら、事態の解決を目指す。そして、それぞれの向かう先はどうやら地底であり……。


第1話「仮面秘封倶楽部」(5/14昼)

秘封倶楽部(蓮子とメリー)が、探索していた廃ビルでロボットに襲われる!窮地の中置かれていたバックルでとっさに変身した蓮子が、その場を切り抜ける!しかし謎の女の手により、2018年の幻想郷へ迷い込む…。その先で出会った怪人クモ女を、今度がメリーが変身して倒したのであった。

・仮面ライダーヒール スターボウモード

・仮面ライダーヒール ナイトメアモード

・警護ロボット

・クモ型兵器ロボット

・クモ女

 

第2話「有頂天変身 〜 wonderful moon」(5/14昼)

天子は月面の天人の旧居住区を探索していた。そんな中、ベルトを発見!しかし同時にロボ達が襲い掛かる。とっさに変身し、天子はそのパワーでボコボコに。そうしてポータルで地上へ向かい、博麗神社へ。同じく博麗神社に来ていた秘封倶楽部へ、バトルを挑むのであった。勝者は天子!仲を深めた三人は人里へ。そこに現れたコウモリ女と戦うも、逃げられてしまい…。

・仮面ライダーガイア グランドアース

・仮面ライダーガイア グランドルナ

・月の戦闘用ロボット

・コウモリ女

 

第3話「エクステンドフェザー 〜 豪炎人」(5/14夕)

永遠亭の住人が拉致された!?輝夜が作ったAI搭載バイクが、それを伝えに妹紅の元へ。さらに輝夜が作ったという変身アイテムを持ってきたのだ。そんな中、コウモリ女を追うヒールとガイアが現れ、妹紅も変身してその戦いへ。見事撃破した。そして突如現れるネコ怪人。追ってみれば、何といっぱい居るではないか!妹紅と天子が輝夜たちの救助に向かい、秘封倶楽部の二人はリーダーのネコ女を叩く事に。戦いの中で、ヒールは謎のバイクチェイスナイターを発見。どうやらヒールと互換性があり…。

・仮面ライダーフェネクス

・ネコ女

 

第4話「ツェペシュの鋭き遺産」(5/14夜)

バイクの力も借り、ヒールはネコ女を撃破!そして輝夜達の元へ向かう一行だが、サグメがその身を預かると宣言し、変身。フェネクスとガイアが追い詰めるも、永遠亭の面々もろとも逃してしまう。帰路に着く中、天子とメリーは紅魔館へ向かった。二人は咲夜、レミリアに出会う。そんな中、レミリアは夜風を浴びるべく散歩に。突如として現れたサカナ女に襲われ、紅魔館へ戻ることになる。全く倒せず、サカナ女がフランドールへと迫る。しかしそんな状況で、レミリアはバックルを見つけた。…変身!爆誕したライダーは月夜へ飛び上がり、サカナ女を外へ叩き出したのであった。

・仮面ライダーワードレス アナライズワードレス

・仮面ライダージェヴォーダン

・サカナ女

 

第5話「広有極剣撃事 〜 Will You?」(5/14夜)

ジェヴォーダン、サカナ女を撃破!そのころ、幽々子からベルトを託された妖夢が人里で買い物中。そんな時に遭遇したのは蓮子と妹紅であった。そして、突然の咆哮!現れたのはオオカミ女だった。妹紅どこかへ行ってしまい、蓮子はメリーが居らず変身不可だ。妖夢はベルトを巻き、変身!見事オオカミ女を倒すのだった。終わったころに帰ってきた妹紅、彼女はサグメと何やら約束を取り付けたらしく…。

・仮面ライダー桜刀 ヒトノカタ

・オオカミ女

 

第6話「法界の血」(5/15)

サグメは永遠亭の住人を地底で保護しているという。それを信用した妹紅と共に、彼女は地底へ…。そのころ、秘封倶楽部と天子は稗田邸へ。この幻想郷について様々なことを学ぶことにした。そんな時、カラス女に遭遇。逃げられてしまうが、三人は倒すことを決意。天子が捜査を続ける中、秘封倶楽部は命蓮寺へ協力を仰ぐのであった。すぐに向かおうと言う聖を追い、人里へ。ドグマとガイア、遭遇したカラス女を撃破!しかし、はたては間髪入れず電波女へ。ガイアヒールともに負け、ピンチ。そんな中、聖が人里に来ていたメディスンからアイテムを奪う。そして、変身。電波女を倒すが、変身の副作用で体が溶けて死亡してしまう。

・仮面ライダーメディス ブラッドリリィフォーム

・カラス女

・電波女

 

第7話「ポイズンリリィ 〜 Forbidden Doll」(5/16)

人里の被害状況を見て、ライダーになる事を急ぐ萃香。彼女にベルトを作ったにとりいわく、完成には地底にいる姉の力が要るという。同じ頃、人里に居る妖夢とレミリア。聖が残したメッセージによれば、地底に行けとの事。相談する中、トラ女が現れる。ジェヴォーダンと桜刀が戦うも、逃してしまう。そんな中、命蓮寺にで一人考え事をするメディスン。人間とどうあるべきか考える中で、トラ女が現れる。苦戦するガイアを見て、ついに決心!メディスに変身してが撃破するのであった。そんな様子を見届ける妖怪。メディスンは、そいつが地底の者であることは知っていた。魔理沙は、霊夢を追うため。メリーは、蓮子の傷を治すため。様々な思惑が重なり少女達は準備を始めた。目指す先は決まっている…。

「「「「「「地底へ」」」」」」

・トラ女




分けていこうと思います。


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おさらい・地霊殿&永夜抄編

8〜14話
地底で激化する戦い。さらなるライダーやさらなる怪人達が現れ、混沌を極める幻想郷。地上でさらに大きく物語が動き始め、皆それぞれの理由を胸に地底を去る。


第8話「豪炎人形」

地底に向かった少女達が地底に到着した。蓮子、メリー、レミリア、妖夢、萃香、メディスンがそのメンバー。そんな彼女たちの前火焔猫燐が現れ、ゾンビフェアリーをけしかける。勝利するライダーたちだが、お燐は去ってしまう。そしてお燐は文と何やら企んでおり…。

お燐の撃退ののち、萃香はみとりの元へ。彼女にアイテムを託し、メリーとメディスンに合流して勇儀の元へ向かった。その前に、文が立ちはだかる。

その頃、地霊殿の一室で、妹紅とサグメは永遠亭の面々を保護していた。そんな地霊殿に、地獄からヘカーティアが避難してきた。彼女の髪は黒く…。曰く、クラウンピースが操られ、その力を奪われたようだ。

そんな時、外での戦いの炎を妹紅とサグメが発見。向かってみれば、それは文と酔鬼、メディスの戦いだった。追い詰めたかに思われたが、一気に盛り返される。しかし助けに来た輝夜がフェネクスの強化アイテムの存在を語る。それにより新フォームへ。そのまま文を倒し、その洗脳を解いた。

「真相に迫る何かがあるのでは?」と、メリーは不安に、萃香は楽しみに感じた。

・仮面ライダーフェネクス フェニックスフォーム

・ブラックキャッツ

・ファストクロウ

 

第9話「戦月のスペルワード 〜 Lunatic Blade」

ヘカーティアは地獄から、魔術具と思しき謎の装置を持ってきていた。さとりはそれにパワードスーツを格納し、ヘカーティアを変身させられるという。

そんなころ、妖夢とレミリアは聖の残したメッセージに従い『オウカオー』を探していた。聞いたことがあるというパルスィと共に地霊殿へ。しかし突如現れたブラックキャッツがそれを阻む。さらにはパルスィを怪人化させて、二人を襲わせる。二人は変身しこれに対処。ジェヴォーダンが緑目女と戦う中、桜刀はブラックキャッツを追う。そしてブラックキャッツはバイクに乗り攻撃をしかける。だがどうやらそのバイクの名は『オウカオー』のようだ。妖夢はそれを奪い取り、逃げていくブラックキャッツは追わず緑目女の元へ。二人でパルスィを正気に戻すことに成功する。

戦いを終えた二人は、永遠亭の面々とともに地霊殿にいることに。怪我の手当てをしながら、永琳は自信を無くしつつある妖夢を元気付けた。そんなときに謎の怪人が現れる!姿を隠したそいつによって鈴仙とてゐが洗脳。クレイジィラビットとハピネスラビットへと変わる。ライダー達が追おうとするも、行く手をブラックキャッツに阻まれる。ワードレスと桜刀が戦い、妹紅はうさぎ二人をどうにか追った。

新たなフォームでブラックキャッツを追い詰める二人だが、最終的には逃げられてしまう。

同じ頃、途中で合流したレミリアとメディスンとともに、妹紅はうさぎ達を追う。二手に分かれたうちの鈴仙の方を妹紅が追う。そして鬼ごっこは終了。フェネクスvsクレイジィラビット、ジェヴォーダン&メディスvsハピネスラビットが始まる!

その頃の勇儀宅。蓮子は無事薬を飲んで回復し、眠っていた。勇儀曰く宇佐見と言う名の外来人がすでに地底にいると。メリーは気づく。宇佐見菫子、蓮子の祖母だ。

・仮面ライダー桜刀 レイノカタ

・仮面ライダーワードレス バトルワードレス

・緑目女

・クレイジィラビット

・ハピネスラビット

 

 

第10話「地底の国の鬼が島 〜 Waking Power」

フェネクスによりクレイジィラビットは撃破。しかし、ハピネスラビットには逃げられてしまうのであった。

翌日。蓮子とメリーが目を覚ます。同じく起きていた萃香とともに、外出をすることに。そんな萃香の元に、みとりが訪れる。変身アイテムを渡したかと思えば、彼女はそそくさと去ってしまう。行き先を教えてくれなかった萃香。言われるがままついて行った家は、菫子が地底に用意した隠れ家であった。二人からしてみれば、驚きの連続だ。

同じ頃、地霊殿にて。オウカオーと聖の遺した札が反応し、どこからか巨大な三輪車が現れた。妖夢はいらなかったために、メディスンの手に渡ることとなる。

その直後、ハピネスラビットが散歩中のメディスンの前に現れる。メディスに変身するも、敵わず。ヒールの加勢も虚しく、再び逃げ始める。そこに回り込む萃香。彼女の変身した酔鬼が、見事ハピネスラビットを打ち倒した。

・仮面ライダー酔鬼 酒鬼

 

 

第11話「ライデモニックプラネット」

ストームスネイク、八坂神奈子。友人の諏訪子さえ顧みない冷酷な彼女の攻撃に、ガイアは苦しんでいた。当然勝利などできず…。

深夜。ひと作業終えた菫子とともに、居酒屋に行く萃香と蓮子。先客のヘカーティアと魔理沙とともに、宴会…かと思えば、割り込むようにブラックキャッツが現れる。酔鬼が立ち向かうが、いささか押されてしまう。ジェヴォーダンがピンチから酔鬼を救出し、さらにヘカーティアに彼女用の変身アイテムを渡す。新たな仮面ライダー、ヘルゴットの誕生である。だが、第三者の手によって、ブラックキャッツへのトドメは逃してしまう。

翌朝、地底にいるライダー達をかき集めてサグメは告げた。「この事件には月の要人が関わっている」。動きやすくなることこそサグメが月を裏切った理由だった。そのご、レミリアの提案と蓮子の提案により、『仮面ライダー』と言う呼び名が彼女達の変身後の姿に付くこととなった。

そんななか、さとりから助けを求める声が。こいしの目が覚めなくなったという。サグメは夢の中に原因があると考え、ヘカーティア、萃香、妹紅らを彼女の夢の世界へ送った。そこにいたのは、なんとドレミー。しかし怪人となった彼女に誰も敵わない。始末しちゃっては困ると言ったかと思えば、夢塊で妹紅の偽物を作り、けしかけた。早々に倒される妹紅だが、彼女が稼いで時間で酔鬼とヘルゴットが別形態へ。偽物であるシャドーフェネクスを撃破した。

目を覚ましたこいし。彼女の手には、不思議な石が握られていた…。

・仮面ライダーヘルゴット バランスフォーム

・仮面ライダーヘルゴット エリエンフォーム

・仮面ライダー酔鬼 乱鬼

・ズェッケロティパー

 

 

第12話「駆動の摩天楼 〜 Toxic Mind」

地底に突如爆発が。ヒール、メディス、酔鬼、ヘルゴット、ワードレスが飛び出るが、ヒールとメディスが足止めを喰らう。そこに現れたのは、なんと身体中が溶けた聖白蓮であった。シャドーのようだ。メリーのトラウマがえぐられて動けないヒールを前に、メディスvsシャドーメディスへ。互角で逃げられてしまう。

爆発の正体は怪人となったお空によるもの。ライダーの攻撃も虚しく、妹紅にかばわれた上逃げられてしまう。

メリーの状態を見て、2人は地上へ戻ることに。レミリアと妖夢も一緒に帰っていく。それを見送ったのち、鬼3人とメディスは朝風呂のため銭湯へ。サグメ、妹紅の先客とともに堪能した。

守矢神社。天子たちを励ます諏訪子のもとへ、地底を発ったライダーたちが到着した。そして事情を説明していた頃に、シャドー白蓮が現れる。逃げ出すメリーと追う蓮子。戦うことになった妖夢だが、押されていく。

そこに助けを出したのは、復活した聖白蓮だった。星が使えなかったアイテムを使い、変身。撃破することに成功した。

実際は、川を流れて逃げていた。だがもはや体力など残っておらず、恐怖を乗り越えたメリーによるヒールの一撃で、完全に撃破されたのであった。

・仮面ライダードグマ 僧術

・アトムアヴェム

 

第13話「熱地の太陽信仰 〜 Nuclear Bomber!」

温泉に向かった面々が地霊殿見つけたのは、こいしの開いたサードアイを潰そうとするさとりだった。必死の説得でどうにかなったところに、次に来るのは血まみれの霊夢。藍が怪人になったと告げた。

同じころ、古明地姉妹は中庭でブラックキャッツの襲撃を受ける。ピンチの中、その手の中の石でこいしが変身。ブラックキャッツを撃破し、さらに援護に来たフェネクスとともに、アトムアヴェムとも戦う。逃げられてしまうが。

戦闘を終え、こいしたちは昼食へ。魔理沙と遭遇し、一緒に食事を始めた。霊夢の所在を聞いて飛び出た魔理沙だが、小さなマシンを追ううちに菫子の隠れ家へ。魔理沙用にとベルトを渡された。霊夢と華扇も現れ、同時に帰路へ。それを阻んだアトムアヴェムを、Uと酔鬼がまた同時に阻む。しかし見えない勝ち目を感じ、霊夢が魔理沙の持つサォルブドライバーを装備、変身。

同じころ、アトムアヴェムの爆発を追って、ライダーたちが向かう。ヘルゴットは通り抜けたが、式の弱まった八雲藍、言うなれば九尾によって阻まれてしまう。ヘルゴットを追う九尾へ付き、メディス、フェネクス、ワードレスとのバイクチェイスへ。追い詰めたものの、逃げられてしまう。

・仮面ライダーU ライジングアップ

・仮面ライダーU クロニクルゼアル

・仮面ライダーリブレッス ミコフォーム

・仮面ライダーヘルゴット ルナフォーム

・ノヴェムフォックス

 

第14話「おてんば恋娘の変身」

リブレッス、U、酔鬼のアトムアヴェムとの戦いに、ヘルゴットが到着。確実に追い詰め、ついに撃破。追いついたサグメ達も変身を解き、他の面々へ地上へ戻る準備を促した。

さとりはこいしへ、地上へ向かうことを促す。すぐのちに、地霊殿に映姫が来た。地底の様子に話すのもそこそこに、さとりが彼女用に作ったアイテムを渡す。そして、そこでノヴェムフォックスの襲撃。映姫へ逃げるよう促し、追いつかれそうなところへ巨大なマシーンに乗ったみとりが。一気に地上へと逃げて行った。

霧の湖で、妖精たちを襲うフェアリートルーパーとスズメ女。湖底に逃がれたチルノだが、そこで不思議なアイテムを発見する。直感が当たり、チルノ、変身。ミスティアを正気に戻し、妖精たちを取り戻すことに成功した。ライダーの集まる命蓮寺へと連れて行く。

そのさなか、命蓮寺へストームスネイクの襲撃。みとり達が到着するが、それはつまりノヴェムフォックスも加わるということ。ノヴェムフォックスに対して魔理沙が変身。さらにメディスも新たな形態へ。だが追い詰める様子もなく、取り逃す。

そしてストームスネイクとの戦いは不利の一方。そんな中、早苗は映姫の使うはずのアイテムを手に取り……。

・仮面ライダー酔鬼 金剛鬼

・仮面ライダーラビ ウィンゲルフォーム

・仮面ライダースパーク マホウツカイフォーム

・仮面ライダーメディス スターライトペンタス




日数は要らんなと思い。


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外伝
桜刀外伝 離れた花弁を掴んで


「……退屈だわあ」

 

白玉楼の主、『西行寺 幽々子』はぽつりと呟いた。

館の中で寝そべり、憂鬱とした顔で黄昏ながら、退屈げに呟いた。

従者である妖夢は里へと買い出しに出掛け、弄くる相手もいない。

異変でも起こそうか、友人を呼んで早い時間だが酒盛りでもするか、そんなことを考えていて、気づいた。

 

()()()()()が舞っていることに。

 

「……まさか」

 

花びらの一つを掴みとり、一つの可能性にたどり着き青ざめる。

そして……そこで意識が途絶えた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「メリーさん!蓮子さん!それに早苗さんまで!」

 

同じ頃の命蓮寺、聖は目覚めない少女たちの方を揺さぶっていた。しかし誰も動く気配はせず、眠ったように倒れ伏していた。

 

「生命エネルギーが…ごっそり抜かれてる…」

 

冷たくなって眠る天子の胸に触れ、それを確かめた。そんな時、彼女の脳内に嫌な予感が浮かぶ。

 

「…西行兄さんが、言っていた」

 

恐怖に唾を飲み込むが、そうもしていられないと、彼女はエイディングドライバーを装備した。

 

「うう…くっ………」

 

しかし、突如彼女の意識も薄れゆく。身を引きずって、無理矢理にでも進もうとしたが、完全に意識が途絶えたことでそれは叶わなくなった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

魂魄妖夢は、背徳的な喜びを感じていた。

彼女は今、人里にある小さな甘味処にて、『アイスクリーム』を味わっていた。

甘く、ひんやりとした甘味。他の甘味処では売っておらず、ここでも個数が限定され、決して安くはない金額で売り出された贅沢な品。(外の世界から来た緑の巫女や最近来た外来人にとっては驚くほどの額らしい)

買い出しという口実を使い、こっそりと小遣いでアイスクリームを食べる。主である幽々子が聞いたら激怒するか自分も食べたいと言い出すか……いずれにせよ面倒となることは間違いない。

そんな考えを浮かべている間に、妖夢は小皿にのったアイスクリームを食べきってしまっていた。

無くなったアイスクリームの皿を物足りなげに見やったのち、代金を払おうと立ち上がって、気づいた。

 

店内にいる者で、今立っているのが自分だけであり、それ以外は人間、妖怪を問わず倒れている。

近くにいた一人の人間を揺すり、起こそうと試みる。しかし、少しの反応すら帰ってこず、また体に触ってみて、体が冷たくなっていることに気づいた。

助けを呼ぼうと外に出れば、同じように大通りに倒れる無数の人。

状況が全く掴めず、困惑する妖夢。

すると間もなく、目の前の空間が避け、一人の紫の導師服を着た女性が現れる。

 

「……ここにいたのね」

 

女性の名は『八雲紫』。主である幽々子の親友にして、この幻想郷の『管理人』である妖怪。

いつも人を煙に巻くような妖しい笑みを浮かべている、余裕の表情ではなく、険しい顔をしており、口調もどこか荒く、焦った様子である。

妖夢が何事かと尋ねようとする前に、紫が続けざまに話し出す。

 

「時間が無いわ。……貴方に、『西行寺幽々子』を殺してもらいたいの」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「……今、なんと?」

 

「手短に話すわ。現在、……あの『西行妖』が満開になっているわ」

 

『西行妖』。その単語を聞いて、驚きの表情を浮かべ、信じられない、といった様子で紫を見やる。

春雪異変で幻想郷中の春を集めてすら、八分咲きが限度であったはずのあの桜が、満開に。

 

「……どうやって、春が集まったわけでもないのに」

 

「吸ったのよ。『当時』と同じように、人の精を養分として満開になったのよ。……春を集めるなんてまどろっこしいことなんてしなくとも、こちらの方がすぐ咲く」

 

「……幽々子様は」

 

「言わなきゃ分からない訳でもないでしょう?……西行妖は咲き、あの娘は『黄泉帰った』。……このまま放置していれば、封印の解けた西行妖は幻想郷中の精を吸い付くすでしょうね」

 

ありえない。信じられない。

そんな言葉が妖夢の脳内に浮かんでは消え、纏まらない。

 

「どう、すれば……」

 

「いえ、すぐなんとかなるわ。……貴方の協力さえあればね」

 

呆然としたまま口から出た言葉に、紫は事も無げに答える。

その言葉に歓喜し、表情を明るくする妖夢だったが

 

「オビドライバー……『桜刀』はこのために作られたもの。桜刀の鎧であれば、大妖怪ですら近づけない西行妖の根本へと近づける。そして……『白桜剣』で幽々子を斬って、『殺す』。そうすれば西行妖は確実に枯れる」

 

その提案は、主の命と引き換えであったが。

 

「他に方法があるとでも?……西行妖そのものを斬れれば、まだどうにかなるでしょうねぇ。でも、それが出来るかしら?……『半人前』。さ、近くまで『飛ばして』あげるから、さっさと変身しなさい」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーーーーーーー寒い

歩みなれた白玉楼に続く階段を登り、ふとそう思った。

冥界は決して暖かみを感じられるような大層な場所ではないが、それにしても寒すぎる。

 

(春を奪ったとき以上だ)

 

春雪異変の際、自分は幻想郷中の春を奪っていった。その際、春を奪われた場所には、冬の寒さが戻っていた。その際は冬の妖怪や氷精がはしゃぎ回るほどには寒かったが、この寒さは冬妖怪でも閉口しそうなほどの寒さだ。(それでも喜びそうだが)

そして一方で、空気が澄んでいる。……まるで『何もかもが死んで、なにもなくなった』かのように。

実際そうなのだろう。自分は今纏っている、『桜刀』の黒い甲冑を模した装甲で守られているが、それ以外のありとあらゆるものは、西行妖に精気を、吸われて『死んでいる』。

よくこれほどの鎧を造れたものだ、と先人への関心を抱いていると、階段の頂上が見え、見慣れた白玉楼が目に写る。

門をくぐり、そのまま庭へと向かい、そして圧倒された。

 

(……これが、満開の……西行妖……?)

 

西行妖の美しさに、圧倒された。

生命を吸い、咲き乱れる花。……罪深いまでに美しい、その偉容。

その美しさに呑まれながらも、歩を進める。

しかし

 

「ぐっ……!?」

 

全身から力が抜け、思わず膝を付く。

……防護がある筈の桜刀の装甲すら、この距離では無力であった。

守りを通り抜け、妖夢の精力を奪い取る。

 

「……なん、の……これ、しきで……っ!」

 

それでも、再び立ち上がり、一歩、二歩と歩みを進める。

しかし、近づくにつれ、脱力感は増していく。

ついには、倒れ伏し動くことさえ出来なくなる。

 

(……ゆ、ゆこ……さま)

 

薄れゆく意識の中で、今までの事が、浮かんでは消えていく。

そして

意識が途切れた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

動くものがなくなった、白玉楼の庭。

意識を失った桜刀の体へ、無数の桜の花びらが覆い被さる。

無数の花びらは、桜刀の体をすっぽりと覆い隠し、埋めてしまうほどとなった。

そして

 

花びらがほんのりと光り、薄れていく。

そして、桜刀の鎧へ張り付き、その姿を変えていく。

姿が完全に変わると同時に、意識を失った筈の桜刀が、立ち上がる。

 

「……これは、一体?」

 

桜刀が不思議そうに、自らの体を見やる。

先程の甲冑を纏った武者のような姿から一転、振り袖のような軽鎧を纏った軽装の姿となり、まるで歌人、貴族のような優雅といった言葉が似合う姿となっていた。

姿の変化に戸惑いを見せる桜刀だったが、ふと、先程までの精気を奪われる感覚がなくなったことに気づく。

 

「……これならば、いける」

 

倒れたときに取り落とした白桜剣を拾い上げ、構える。

先ほど圧倒された西行妖を、今度は面と見据える。

そして……一閃。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「……まさか、あの半人前がやってのけるとは、ね」

 

「ふふふ、妖夢ももう子供じゃないってことよ」

 

数日後。

白玉楼の縁側には、西行妖の切り株とそばに無造作に転がるその片割れを眺める、紫と幽々子がいた。

妖刀は西行妖を見事両断。吸われた幻想郷中の精気は元に戻り、事は万事解決と相成った。

 

「紫、私の事見捨てようとしたの?幽々子、悲しい~」

 

「……私が悪うございました。でもね、手段がそれしかなかったのよ」

 

幽々子はふざけた調子で泣き真似をし、それを見た紫が仏頂面で答えるのを見てクスクスと笑う。

 

「……にしても、誰かしらね、こんな真似してくれたのは。……今度、お礼参りに行かなきゃね」

 

「はいはい、また今度ね。それより、妖夢にかまかけて聞き出した『アイスクリーム』を出す甘味処に行きたいんだけど……支払いは、誰が持ってくれるかしらね?」

 

「……はいはい」

 

紫が渋々、といった様子でスキマを開き、意気揚々と幽々子がその中へと入っていく。

二人が去った後、一つの花びらが机の上に舞い落ちる。

 

「幽々子様、紫様、今買い出しから戻りまし……あれ?いない?」

 

ちょうど入れ違うようにして、妖夢が部屋へやってくる。

両腕いっぱいに持った買い物袋を下ろし、机の上の花びらを拾い上げ、ぼんやりと見つめた。

 

「……今度の春、幽々子様達つれて、お花見行きたいな」

 

誰に言うでもなく呟いたその言葉は、宙へと消えていった。




フォーム名:サクラノカタ
概要:桜刀の全身に西行妖の花びらが覆い被さり、鎧が変質した姿。
振り袖のようなスーツのみで、装甲が薄いように見える姿をしており、正直戦闘力は低く見えそうである。
しかし、反魂蝶の力……『死人を甦らせる力』を持つ鎧であり、無限に復活・再生ができるインチキじみたフォーム。
実は最終フォームよりも身体能力が高く、またヒトノカタ及びレイノカタの能力を使用可能。その上対霊装備でなければまともにダメージすら与えられない、その上不死と妖刀最強フォームだったりする。
残念ながら西行妖は両断され、花を付けることが難しくなったため再登場は難しい。

武装:楼観剣と白楼剣を両方使用可能

変身アイテム&変身シークエンス:偶然&奇跡の産物の為に再現は不可能

必殺技
『西行春風斬』
西行妖の力を刀に乗せ、相手を居合い切りで一刀両断する。西行妖をぶったぎったのもこの技




…というわけで、バインさん作の外伝でした!こういう奇跡のフォームってのはやっぱり素敵ですね。簡潔で分かりやすくて、凄く素敵だと思います。今週は私の更新がないのですが、これを楽しんでいただけたので問題はないかと思います。
ちなみに、現在ガイア、U、フェネクス、ジェヴォーダン、リブレッスの外伝が決まってます。
…それ以外のライダーで、俺が書くぜという方いたら言ってくださいね!
ちなみにタイトルは幽閉サテライトの『壊れた運命を紡いで』より。花弁はハナビラって呼んでね。
外伝は本編中に出したり後に出したりと、私の気分によって変わるのでその辺は気長にお待ちください。


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メディス外伝 she's guilty

私は『アナ』。本当はアナスタシアなんだけど、この子が私をアナって呼ぶの。

この子は私と始めて友達になってくれたヒト。お父さんは私のことを愛していたけど、私だけへの愛情じゃないんだ。仕方ないよね。お父さんはいっぱい娘がいるもん。

 

私は『マリア』。このお爺さんの娘。この人は私の新しいお父さん。本当は、マリアって人間の女の子が居たんだって。でも、今はいない。

だからそのこと同じブロンドの私マリアって呼ぶんだ。

 

僕は『ニコラ』。女の子みたいな顔だけど、男の子なんだ。彼がそう言ったから、そうだよね。

僕は彼と、そして彼の友達と寮ってところで暮らしているんだ。いつもお留守番だけど、他にも熊さんとかが居るから退屈はしないな。

 

私は『鈴子』。本当は海外生まれなんだけど、この子の妹だから、今は日本人の名前なの。素敵でしょう?

でも、この子はだんだん私のことを見なくなった。…もう、私は要らないのかな?

 

…いや、どれも違う。全部思い違いだ。

私は、今は『メディスン』。この子がそういう名前をくれた。多分、私のお母さん。ここは、幻想郷って場所らしい。すごく綺麗な場所なんだぁ。でも、この子はいつも咳き込んでる。大丈夫かな?

 

 

 

 

 

 

 

 

「先月で、21歳だったかしら?」

 

「…はい」

 

真昼の人里は活気がある。しかしこの稗田家においては例外で、全員が暗い顔をして静かに暮らしている。

 

「そう、…歓迎ならするわ。いつもみたいにね。阿弥(あや)

 

普段は能天気な西行寺幽々子でさえ、ここではあまり楽しそうな様子ではない。淡々と目の前の女性と会話を広げていた。

対し女性、稗田阿弥も苦笑いとも取れる薄い笑顔で答えるのであった。

 

「今まで歓迎されたことも残念ながら覚えてはないんですけどね」

 

「ふふふ、そういえばそうね。…昨日、うちの庭師が息子の40歳の誕生日だったのよ。人の年齢なら8歳くらい?」

 

「それはそれは…」

 

世間話さえ淡々としていて、どこか寂しげなもの。

それが阿弥に関することというのは、想像に難くない話であった。

 

「…やっぱり、怖いの?」

 

「…………また生まれ変わった時、ここに居た人の事も、ここでの日々も、全く覚えてないんだって!それが……それが怖くて!ねぇ、メディスン…私…」

 

阿弥は袴をくしゃくしゃに握り、側の人形へ話しかけた。人形は依然薄く笑顔を浮かべ、音一つ立てなかった。

 

「メディスンって、名付けたのね。そのお人形さん」

 

「……かわいい、ですよね」

 

幽々子は露骨に話をそらし、人形へと目を向けた。対し阿弥は涙を無理矢理押さえつけた空元気の笑顔で応えた。幽々子はただただ痛ましくその笑顔へと頷きを返すのであった。

 

「………死ぬ前に、色々見たいです。この幻想郷の自然を、目に焼き付けたいんです」

 

「…護衛を頼みなさい。人里によく出入りする藤原妹紅っていう子がいるわ。その子は妖術が使えるのよ」

 

「分かりました。ありがとうございます」

 

 

 

 

 

「そんで、私に頼んだったわけね」

 

「はい。お願い、できますか?」

 

「稗田乙女の願いとあっちゃあ断れんな。いいよ、どこ行く?」

 

翌日、阿弥は一人妹紅の元へ訪ねていた。護衛の依頼に対し、妹紅は快諾で返す。

 

「えっと、山、とかですかね?」

 

「ん、分かった。絶対離れるなよ?」

 

そう言って立ち上がると、阿弥を招いて歩き始めた。

そのまま人里を抜け、襲いかかった妖怪を軽く蹴散らして妖怪の山へと向かった。

 

「はぁ、はぁ、けっこう、急ですね」

 

「うん、まあ、山だしね」

 

しかし運動にはあまり慣れない阿弥は、少し登るのでも苦労である。だが降りようかという妹紅の提案には、決して首を縦には振らなかった。

 

「絶対目に焼き付けて…次の一生でも忘れないようにするんです!」

 

「そんなら仕方ないな」

 

そう言って歩き出したその瞬間、黒い服を着た男たちが二人を取り囲んだ。妹紅は阿弥を庇い、守る姿勢をとった。

 

「稗田阿弥で間違いない。押えろ!」

 

黒服の一人の放った言葉に応え、男たちが飛びかかる。しかし妹紅の火をまとった拳を叩きつけられ、焼けながら悶え苦しむのであった。

 

「妖術か…ならば!」

 

その様子を見て、男の一人がト字管を取り出し、そこに魔力を込めて放った。

 

「あぶねっ!」

 

妹紅はそれを避けると、一気に男に接近してアッパーをぶつけた。そしてト字管を奪い取って粉々に握りつぶし、その砕けたガラスを男に叩きつけた。

 

「うぐっ!」

 

「予想外だ…ただの女だと思ったが…仕方ない」

 

残る一人の男もト字管を取り出したかと思うと、中にお札を丸めて詰め込み、自分に向けて発射した。

 

「何ですって…!?」

 

「聞いたことあるぞ……こういう術…確か冥界の……鎧を召喚する。桜刀とか言ったか」

 

阿弥が驚くのも無理はない話だ。なにせ男の身にはプロテクターが一瞬で装備されたからだ。

 

「でやっ!……いでっ!硬いぞ…鎧か?」

 

妹紅のキックを受け、男は若干苦しむが、気絶はしなかった。そして改めて妹紅へト字管を向けた。

 

「無駄だねっ!」

 

確かに魔力弾は妹紅の心臓を貫いた。しかし、意味などない。胸に小さな風穴を開けたまま、男へ頭突きをぶっかました。

 

「おごっ」

 

今度こそ男が気絶したのを確かめ、あたりで転がる男たちを脱がせて縛り付けた。

 

「妖怪には食われないようにっと…」

 

そして木には天狗の言葉で『殺すな。人里に連れて行け』と刻み込んだ。

 

「阿弥、大丈夫か?それにその人形さんも」

 

「ええ、メディスンって呼んであげて下さい」

 

「うん、よろしくねメディスン」

 

そう言って人形の頭をグリグリと撫でると、前へ向き直って山の頂上へと向かった。

 

「あれま。どうなさったんです?」

 

そんな中、風を巻き起こしつつ文が現れた。その手にはメモとペンを持ち、取材する気満々で詰め寄った。

 

「ひっ」

 

対し阿弥は妖怪にほぼ会うことがないのもあり、メディスンを守るような姿勢で妹紅の後ろへ隠れた。

 

「む、心外ですなあ。別にあなたを攫おうってわけじゃあないんですよ」

 

「妖怪ってだけで怖がる対象なんだよ。で、なんだ。何を聞きにきた」

 

「単純!稗田乙女が何故ここにいるかですよ」

 

文のその一言に頷くと、妹紅は阿弥へと視線を送った。しかし阿弥はプルプルと震えつつかぶりを振るだけ。妹紅は呆れ気味に笑うと、文へ答えを返した。

 

「観光だよ観光。今一度幻想郷の絶景を目に焼き付けるとさ」

 

「なぁーるほど?…しかしそんなに震えることないじゃないですか。同じアヤなんですから。まあ、次に会うときあなたはアクかアキュウになってるかもしれませんが」

 

それに対し、阿弥は薄っすらと笑顔を浮かべつつも、表情を暗くした。それを見た文はなんと言えばいいか分からない様子で頭をかいた。

 

「まあとにかく…。怪我しないでくださいね。その人形も大事になさってくださいね。妖怪になっちゃいますから」

 

それだけ言い残し、文はそそくさと去っていった。その背を眺めながら、二人はあと少しの頂上へと向かっていった。

 

「わぁ…」

 

しばらくして、妹紅は立ち止まって後ろを見やるように言った。秋めくその美しき木々を見て、阿弥はただただ小さな歓声を漏らすのみであった。

 

「美しいでしょ。…改めて来ると、いいねここ」

 

「ええ、本当に…」

 

しばらく、10分ほど居ただろうか。頂上での風景を堪能したのち、次の目的地に向かうべく来た方向とは反対へ下山を始めた。

 

「気分乗って来たよ!次は玄武の沢だ!」

 

楽しげに降りる妹紅の後につき、木漏れ日を浴びながらまっすぐと進んでいった。

 

「あ、お供えしときましょうよ」

 

そんな中、神秘的な雰囲気を湛えた大蝦蟇の池へと出た。葉に照らされた金色の光が散ったその空間に、阿弥は圧倒されつつ、祠へと供え物の餅を置いた。

 

「軽いものですが…」

 

阿弥と同時に妹紅も祠へと手を合わせ、無事を祈り、先へと進んだ。

 

「やぁー!」

 

「ちょっ!音消してかけるのはずるいでしょ!」

 

「透明化してた奴が何を言うー!」

 

「頑張れ二人ともー」

 

そして玄武の沢へと出れば何やら騒がしい。見れば、川で三月精が水遊びをしていた。サニーとルナがごちゃごちゃ言い合いながら水を掛け合うのをスターがニコニコ眺める、いつもの光景である。

 

「いつもここで遊んでるの?」

 

「ええ、楽しいですよ」

 

阿弥の問いに、スターは変わらずニコニコと返した。思わずメディスンを抱えたままその横に座り込んで観戦を始めた。妹紅もスターを挟む形で座り、適当に応援など始めるのであった。

 

「はぁー、はぁー」

 

「やっぱルナは鈍臭いねえ」

 

「なんだとぉ!」

 

「勝負あったね」

 

スターの一言に対し、ルナはずぶ濡れのまま悔しげに肩を落とした。対しサニーはこれまたずぶ濡れで岩の上に立ち、勝ち誇ったポーズ。その時初めて、座っていた阿弥を認識した。

 

「あ〜、えっと、なんだっけ。この前侵にゅ…お邪魔しようしようとしたお家のお嬢さんだよ」

 

「ん?じゃあこの人が稗田阿弥?」

 

「うん、よろしくね。妖精さん」

 

阿弥の差し出した手に三人は続けて握手をすると、それぞれ名前の紹介を始めた。

 

「私はサニーミルク。負けたのがルナチャイルド。で、観戦してたのがスターサファイア」

 

「私は…。知ってるみたいだけど一応言うと、稗田阿弥。よろしくね。この子はメディスン」

 

「藤原妹紅。よろしく」

 

そうして挨拶を終えたのち、三月精達は日光の向きを見てそそくさと去っていった。

 

「予定でもあったのかな?」

 

「妖精さんも忙しいんですね。もう少し沢沿いに歩いてみましょうか」

 

阿弥のその提案に妹紅は頷き、ゆっくりと降りるようなルートへと変えた。

 

「なんか、広いとこですね」

 

すると出たのは崖の上であった。玄武岩の柱状節理を見ればわかるように、変わらず玄武の沢エリアなのだが、どうも崖底が広い。不思議な地形だと眺めていたその時。

 

「俺たちのアジトに勝手に入るなよ」

 

やれやれとでも言いたげな呆れ気味な態度で、河童の男は二人へ話しかけた。咄嗟に妹紅は阿弥をかばうような姿勢を取り、会話を始めた。

 

「別にあんたらの邪魔はしないさ。この子はもう先が長くなくてね。…最後に幻想郷を目に焼き付けたいんだとさ」

 

「そういう事なら…まあいいだろう」

 

意外にもあっさりとした許可で二人とも拍子抜けした。しかし阿弥の表情はそれ以上の驚愕に染まった。

 

「あなたは……み、みとりちゃんは!」

 

同時に駆け出し、男へと詰め寄った。男の目は驚きと焦りに包まれたが、その表情はすぐに暗いものになり、後ろを向いて「知らないね」と言い放った。

 

「……そうですか」

 

しかし阿弥にはこれ以上詰め寄って聞けるような気がしなくて、去っていく男の背をただ見つめていた。

 

「パパ〜!みんなっ……わたしが人間の子だっていじめるの……!」

 

そんな男へ、泣きながら赤髪の小さな女の子が駆け寄ったのを尻目に、二人は河童のアジトを旋回して降りていった。

 

「…人妖って、どう生きるべきなんでしょうか」

 

「その手本みたいな人が居るところに今から行くんだよ」

 

そう言って木をかき分けて進んだ先には、一面の花畑が広がっていた。春夏秋冬関係ない花々が咲き乱れるその景色に心を奪われつつ、花を踏まないようにゆっくり前に進んでる。

 

「見なよ。あんなとこでお茶してる奴がいる」

 

「ああ見えて凶悪妖怪だった気がします。風見幽香ですね」

 

「ふーん」

 

優雅に紅茶をすする幽香を横目に眺めながら、太陽の畑を進んだ。ひまわりのそばにコスモスが舞うのはやはり異様で、どう言うことだと妹紅は疑問を抱いた。

 

「しかしこいつはどう言うことだ?今は秋だよね?」

 

「60年周期で生命が活性化してこうなるんですよ」

 

「ほえー」

 

そんなことを語りながら、二人は魔法の森へと進んだ。先ほどまでの美しき自然はどこへやら、薄暗く空気も淀んだむしろ不気味な魅力さえこもる風景へと変わった。

 

「これ、一応口に巻いとくといいよ」

 

それを気遣い、妹紅はハンカチを阿弥へと渡し、もう一つの布を自身の口に巻いた。

 

「ここだ、店主いるかー?」

 

そして進んだ先に、ゴチャっとした小さな建物が現れた。やけに瘴気というか妖気的な物も漂っており、咳き込みそうな雰囲気であった。

しかしその『香霖堂』は名前だけは聞いたことがあったので、特に警戒のようなものはなかった。

 

「ああ、君か。どうしたんだい、急に」

 

「いや、深い目的はないさ。こういう奇怪(きっかい)な空間も見せたいと思ってね」

 

中では霖之助が何やら不思議な紙を鑑定していた。

妹紅はそれを覗き込む形で近づいた。

 

「紙幣…か?」

 

「でも西暦2014年なんだよね。未来のお金かなあ」

 

虫眼鏡での鑑定を終え、額縁に入れて飾った。非売品にするつもりなのだ。そういうところが商売に向かないポイントなのだが。

 

「そういえばその子。僕が売った人形じゃないか。君、もしかて稗田阿弥かい?」

 

「え、ええ、そうです」

 

「君のとこの召使いが買いに来たんだ。阿弥様へプレゼントって。大事にしてくれてるようで何よりだよ」

 

霖之助の言葉に意外な様子で頷き、メディスンを改めて抱きしめた。

 

「器用なんですね…」

 

「ん?いやぁ、僕の人形じゃあないさ。外の世界から流れ着いた子だよ。背中にブカレスト製って刻印されてる」

 

「ぶく…レ?」

 

「ルーマニアって国の都市さ。そこでどうも作られたっぽいんだよね」

 

そんな具合に他愛ない話を続け、昼過ぎになった頃、二人は香霖堂を去った。

 

「外の世界から流れ着いた…のか。なら外の世界に縁のあるとこに行こうか」

 

妹紅の提案についていき、森を抜けた。そこに広がったのは一面の彼岸花とまっすぐ続いた道。鳥の鳴き声だけが響き、妹紅が黙り、阿弥が息を飲んだそこは、まさに『静』の一文字で表現するのがふさわしいものであった。

 

「すごい…」

 

ただその一言を漏らすと、噛みしめるようなゆっくりとした歩みで一歩一歩進んでいった。

 

「キレーな風景だよね」

 

妹紅はそんなことを言うと、再び黙り、静かに歩き出した。

 

「…これも、もう見れないんですね」

 

そんなことが思われ、突然阿弥の目に波が溢れた。歩く速度をゆっくりと落とし、ギュッとメディスンを抱きしめ、その涙をこぼした。

 

「いやだ…死にたくない!まだ死にたくない!もっとみんなと居たい!もっとここに居たい!先に行きたくない!いやだ!いやだ!」

 

抑えていた何が爆発し、ついには膝をついて、声を上げて泣き始めた。死を躊躇わせる。それが再思の道なのだ。

 

「…もう一度、忘れてからこの風景を楽しめるって思いなよ」

 

妹紅のその言葉を涙と一緒に飲み込み、道の先へトボトボと向かった。

 

「ん、こんなところに人間とは。珍しいね」

 

進んだ先の行き止まり、無縁塚では小町が岩に座ってサボタージュ中であった。二人に目を向け、驚きと心配の混ざった表情で見つめた。

 

「妖怪でもないってのに、ここにいて大丈夫かい?」

 

「私が妖術を使うのさ。死神こそ、なんでここに」

 

「あたいにゃ小野塚小町ってな立派なお名前があるんだ。これからはそれで呼んでくれると嬉しいね。…あたいはまぁ、休憩中さ」

 

それに対し二人は静かに頷き、静かにその彼岸花たちを眺めていた。

 

「あんた、もしかして死を躊躇った人間かい?」

 

「…」

 

「でも、そんならそんな暗い顔しないか。…あれ?あんたの魂どっかで見たこと……あ、稗田の人間かい。…そうか。怖いんだね?」

 

「…はい」

 

それに対しどうしたものかと小町は息を吐いた。諦めて死んじゃえとは口が裂けても言えないし、とは言え生きる道があるわけでもない。何と言おうか。

 

「本当にやりたいことに従うべき…だよ」

 

当たり障りのないことしか言えず、何とも歯がゆい気分であった。それを受け、阿弥は何とも言えないような顔だった。

 

 

 

 

 

「満月、すごいわね」

 

「ええ、そうですね」

 

翌日の夜。薄暗い空を見つめて寝込む阿弥の元には、紫が見舞いに来ていた。

 

「…今日、なのかしら?」

 

紫のその問いに、阿弥は静かに「かもしれない」と呟いた。それを受け、紫はちょっとだけ寂しげに苦笑いを浮かべた。

 

「げほっ……私は……」

 

そんな中、阿弥はゆっくりと起き上がり、メディスンを強く抱きしめた。

 

「私は………私…は………!!」

 

「どうしたのよ、急に…。落ち着いて阿弥」

 

「私は……この美しい幻想郷に……身を捧げたいって、そう思います」

 

歯ぎしりを鳴らしながらさらに強くメディスンを抱きしめ、着せられた服を涙で染めた。

 

「自然への埋葬をお望みね?」

 

「はい。…この自然に、還りたいんです」

 

涙をためた目に月を写しながら、そんなことを呟いた。それを受け、紫は何とも言えない顔であった。

 

「…あなたのお葬式は盛大に行われるはずよ。人里の稗田家の墓地に……」

 

「それなら……!!」

 

突如顔色を変え、立ち上がった。その目には涙こそ湛えているが、眼光に覚悟を秘めていた。そして何を思ったかメディスンを抱きしめて夜の森へと駆け出した。

 

「待ちなさい…とは言えないわね」

 

紫は追おうと立ち上がるものの、再び座り直し、駆け出していくその背を見つめるだけであった。

 

「私は…私は……美しい自然に…!」

 

訳もわからず、とにかく自然として消えたい。だからどこでもいいし、妖怪に食われたって構わないと、走る場所に意味などなかった。

 

「…ここは」

 

そうして体力が尽き、無明の丘でぶっ倒れた。鈴蘭を照らす月光は狂気的なゴールドを放っていて、これの下で消滅できるならいいかとむしろすがすがしい笑顔であった。

 

「素敵ね、メディもそう思わなくて?」

 

ぼうっと、そのまま意識を投げ出そうとしたとき。

 

「見つけたぞ…!稗田阿弥だ!」

 

男達の声が耳に突っ込む。まさかと思って立ってみれば、先程のような四人の黒服の男が迫っていた。

 

「やめてっ!」

 

「捕らえろ!殺すな!」

 

「やだっ…やだっ……!」

 

その腕を乱暴に掴み上げられるが、余力を振り絞って抵抗し、男が落としたナイフを拾い上げた。

 

「こ、来ないでっ!」

 

「くっ…最悪稗田の魂を入手できればそれで良い!」

 

一人の男がそう言うと、お札とナイフを取り出し、腰を抜かした阿弥に詰め寄った。

 

「いやああああああ!」

 

自然の中で死にたかった。あのまま月の下で消えたかった。それなのに、なぜ。

阿弥は絶叫し、目をつぶった。

 

「な!?」

 

次に聞こえたのは、ナイフが自分に刺さる音ではなく、男達の驚愕の声だった。

 

「守……ル…………」

 

「声!?…まさか…妖怪化したのか!?」

 

ゆっくりと、身を引きずるような動作でメディスンは立ち上がった。男達が驚愕し、ト字管を向ける。

 

「始末しろーーっ!」

 

声の合図に合わせ、妖力弾がメディスンの体へと刺さった。

 

「やったぞ!」

 

「ア……ヤ…」

 

しかし倒れるどころか体にはむしろ妖力が溢れていた。その上、月光の魔力と鈴蘭の魔力。…そして阿弥の思いが重なる。

 

「消エ……ロッ!」

 

その体に、血管を刻み込むようにビキビキと赤いラインが通い、じわじわとその体が変化を始めた。

 

「拘束弾だ!」

 

対し男の一人はト字管にお札を詰め込み、メディスンへ発射した。それはメディスンにヒットした瞬間に拘束具を召喚し、森の中で男がやったように、メディスンの体にフィットした。

 

「無駄……よ……!」

 

しかしその拘束具の間接部の留め金や布が壊れ、完全に動ける姿へとなった。むしろ鎧として効果をなしてしまい、魔力による肉体変化も相まって、異形と呼ぶにふさわしい姿へと変わった。

 

だが、その背の守ると言う決意は、未来に生まれる『仮面ライダーメディス』という戦士のものに違いなかった。

 

「アヤには…触らせない……!!」

 

逃げようと背を向けた男の肩を掴み、歩くのを阻んだ。同時に男は溶けていき、黒服を残して消滅した。

 

「ヒッ……や、やめろ」

 

腰を抜かして、ト字管から魔力を放ちまくる男へ迫り、肘を男のアゴへぶつけた。同じく溶けていき、服とト字管を残した。

 

「て、撤退する!」

 

いつしか一人だけになり、背を向けて逃げ出した。メディスは冷静にト字管を拾い上げ、その腿を撃ち抜いた。

 

「逃がさない…わよ…」

 

「うっ、うわああああああ!!」

 

銃のけがをかばいつつ跪いて怯える男へ、メディスは手を振り上げた。

 

「ライダー……スラップ!」

 

そして頰へと手のひらを思いっきり叩きつけた。男は絶叫をあげる間も無く溶け落ちて消滅した。

 

同時に雲が月を隠し、メディスンの変身は解け、拘束具も壊れて地に落ちた。

 

「終わっ……」

 

そのままメディスンも地に倒れ伏し、ただの人形へと戻っていた。

 

「ありがとう…メディ」

 

目の前に眠る、うっすらと笑った人形へとそんな感謝を述べ、今度こそ阿弥は意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

「生前の希望でもって、この無明の丘にての埋葬を執り行う。始めるわ」

 

紫のその一言に、阿弥の召使い達は()()を棺桶に寝かせ、あらかじめ掘った穴へとゆっくり入れた。メディスンは坂の下に転がっており、誰もそれには気づかなかった。

 

「今までありがとう、稗田阿弥。次は、稗田阿求として会おう」

 

召使い達に続き、紫は静かに手を合わせた。そしてゆっくりと振り向くと、帰るように言い、無明の丘を後にした。

 

「この幻想を見て、あなたはどう生きるのかしらねぇ?……いつか、妖怪になる日を待つわよ。メディスン」

 

前言撤回しよう。八雲紫はメディスンに気づいていた。にやぁっと口を歪め、振り向きざまにそう言い放ち、歩みを止めることなく人里へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

私は『メディスン・メランコリー』

捨てられた、人形。守ったあの子はいつのまにか姿を消した。いつのまにか私の目の前から消えた。……捨てられたんだろう、私は。

 

「死ぬって、なんだろう」

 

ふと、口から疑問が溢れた。死というものをなんとなく理解し始めた私は、なんとなく自分の行動指針に疑問を抱き始めていた。

 

「…居なくなることだね。現世から」

 

「居なくなる…」

 

私の独り言に、妹紅が答えた。その答えを繰り返し、改めて理解しようと噛み砕いてみる。

ーー無理だ。分からない。それでもゆっくりと言葉を紡いでみた。

 

「置いていかれた物って、捨てられたのかな?」

 

「…死ぬだけじゃ、絆は切れないよ。死んでも大事に思ってれば、その心がそばにいるんだって、私は思うよ」

 

その答えに、何か光明が見えた。この訳の分からない気分が、スッと晴れた訳じゃあないけど、どうにか晴らせるかもしれない糸口を見つけた気がして、地霊殿のベッドで一人考え事を続けるのであった。




フォーム名:仮面ライダープロトメディス
概要:まだ人形だった頃のメディスンが打ち込まれた魔力、鈴蘭の魔力、満月の魔力、持ち主の想いの四つが呼応して動き出し、変身した姿。つけられた拘束具をむしろアーマーにしている。見た目は一言で言うとアナザーメディス。怪物っぽさと封印されてる感が不気味なデザイン。ただアナザーライダーとかよりは機械的な印象も目立ち、毒々しくもかっこいい。奇跡の変身なので完全には再現できない。しかし財団Xは逃げ帰った男が持ち帰ったこれのデータを元にメディスを作ったので、探せばFAZE0のカプセルがあるかもしれない。
武装:
「ト字管」
財団Xの職員が魔術の放出に使っていた武器。魔力を通して放つ以上の効果はない。
変身アイテム:なし。
変身シークエンス:なし。
必殺技:
「ライダースラップ」
平手打ち。相手へ直に毒を叩きつける凶悪な技。

というわけでメディス外伝。過去編ならもう出せるかなと思って書きました。次は第13話ですね。
タイトルもとは凋叶棕(ティアオイエツォン)のshe's purityです。凋叶棕はいいぞ。
分かるかと思いますが、時期は地霊殿にいる頃ならいつでもOK。
しかしアレだね。こんなにも主役の出番がない外伝も珍しいね。物足りなさあったら言ってね。何かしらでもっとメディ活躍させるから。
ちなみに阿弥は、背と髪が伸びたあっきゅんを想像すれば大体合ってます。
ちなみに地霊殿、とあるので、8〜12話のどこかで想像してくだされば。


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ヒール外伝 たいせつな未来のために

はっちゃけました。
ジオウ的タイトルは「フューチャー・ザ・ヒール・2068」です。
オリキャラ要素あるのでご注意を。


2068年、この日明光院ゲイツは決心した。

オーマジオウとなる男、常盤ソウゴを過去へ行って抹殺することを。

 

「行くのね…」

 

「ああ、タイムマジーンは準備した。準備を終えたらもう出るさ」

 

心配げに自身を見つめるツクヨミに、安心しろと言い放ち、ゲイツはカバンを背負った。

 

「このジクウドライバーがあれば…!」

 

「…ゲイツ君、いるかしら?」

 

そうして出ようと立ち上がった時、背中から声がかかった。振り向いて見ると、物陰から女がキョロキョロとしている。そしてゲイツと目が合い、そちらへと駆け寄った。

 

「これ、渡しておくわ」

 

そうして女が取り出したのは、紫と黒の二色で彩られたライドウォッチだった。

 

「…!?」

 

「…これはオーマジオウも知らないライダー。必ず奴への決定打になるわ」

 

女がそう言ったのを受け、ゲイツは驚愕と懐疑の顔を女へと向けた。

 

「こいつは貰うが…貴様、何者だ?」

 

「ヴィオレット・ハーン。…それ以上は言えません」

 

「ハーン?…マエリベリーの親戚か?まあ、いい、ここまで来れるということは怪しいものじゃないんだろう。いいだろう、使ってやる」

 

そう言うと彼は今一度女へ背を向け、タイムマジーンへ乗り込んだ。

 

「時空転移システム起動!」

 

そして計器の表示を2018に合わせると、ゆっくり空へと飛び立ち、時空の狭間へと消えていった。

 

「…どうか、今を変えて…!」

 

旅立つその背に、女から声を受けた気がして、ゲイツは今一度オーマジオウを抹殺する決意を抱くのだった。

 

 

 

 

 

「おーい!ゲイツくぅーん!」

 

「…。夢か、あの日の…」

 

次にゲイツの視界へ飛び込んだのは、クジゴジ堂の屋根だった。二階の質素な寝室を出ていき、一階のリビングへと入った。

 

「いやぁー、ゲイツくんが最後って珍しいね。いつもソウゴくんが最後なのに」

 

「まぁ、連休中だしね!ほら、ゲイツそこ座って」

 

「何故貴様に指図されなければならん」

 

そんな文句を言いつつも、ゲイツはソウゴの向かいの席に座った。そしてパンにバターを塗り、口へと運ぶ。

 

「そういえば俺さ、今日友達のお見舞いに行くんだ」

 

「フン、勝手にしろ」

 

「あれ?二人は来ないの?」

 

ソウゴは軽い様子でそう言った。対しゲイツはため息をつき、ソウゴへ指差し、こう告げる。

 

「お前は俺の敵だ。…誰が貴様なんかと…」

 

「あれ?見張らなくてもいいの?じゃあめっちゃ魔王っぽいことしちゃおうかな〜」

 

ソウゴの一言を聞き、ツクヨミとゲイツはものすごい形相でソウゴを睨みつけた。

 

「ほら、研究所とか爆発させたり?」

 

「フン、それには乗らん。貴様の思う魔王とはかけ離れているからな。……っ、別にお前を信用してるわけじゃないからな!?」

 

「…やれやれ、私はついて行くわ。ソウゴ」

 

「…ハァ、俺もお前を監視しといてやる」

 

そう言うこともあり、文句言いつつもなんだかんだで三人揃って聖都大学病院へと来ていた。

熱心に働く永夢を横目に、同級生の児蓮 真墨(コハス マスミ)の休む病室へと入っていった。

 

「失礼するよー」

 

「…その声、常盤くん?」

 

ソウゴの声を受け、真墨はゆっくりと起き上がって声の方を向いた。その目には包帯がグルグル巻かれており、目は見えていないようであった。

 

「僕と常盤くん意外に…もう二人分の呼吸音が聞こえるね。誰?」

 

しかしその分他の感覚は鋭いようである。ツクヨミとゲイツの方へと、音を頼りに顔を向けた。

 

「私、転校生のツクヨミ。こっちが…」

 

「明光院ゲイツだ。見舞いに来た」

 

「初めてなのにわざわざ僕のお見舞いにありがとね。ところで…」

 

真墨はふと話題を変えるように口を開き、あたりの音に耳を澄ませた。数秒ほどその様子をみせ、ニヤッと笑顔を浮かべる。

 

「みんなの視力は?」

 

「俺は1.2」

「1.0よ」

「…1.5だが?」

 

「オッケー、十分過ぎるっ!」

『HEEL…』

 

そう叫んだかと思うと、黒のエネルギーが彼女の体を包み込み、一瞬のうちにバケモノへと変えた。

スターボウアナザーヒールである。その黒い体にはところどころ赤が入り、頭部は帽子のようにも見える。目には傷が刻まれており、包帯のような布が巻きついている。

 

「いただきますッ!」

 

そしてソウゴたちへと飛びかかった。三人はとっさにそれを避け、それぞれ変身とファイズフォンXでの射撃を準備した。

 

『ZI-O!』『GATES!』

 

「「変身!」」

 

二人もそれぞれウォッチを起動してセットすると、変身ポーズをとった。そして、ジクウドライバーを回転させる。

 

『『RIDER TIME!』』

『仮面ライダ〜!ジオウ!』

『…仮面ライダーゲイツ!』

 

瞬時にアーマーが形作られ、そのゴーグルに「ライダー」と「らいだー」が刻まれる。

 

『ジカンギレード!ケン!』

『ジカンザックス!oh!no!』

 

二人はそれぞれ武器を構えると、アナザーヒールへと走った。

 

「…っ、今までバレずにやってきたんだけどね…!あんたらあの女の子が言ってたライダーって訳ね!」

 

アナザーヒールも右手にビーム剣を生み出し、二人へと切りかかった。

 

「ぐっ!」

 

「けっこう強いね…!」

 

二人は軽く吹っ飛ばされ、ゲイツの方は武器をぶっ飛ばされていた。こうしてはいられないと、ゲイツはライドウォッチを取り出した。

 

『555!』

『RIDER TIME!…仮面ライダーゲイツ!』

『ARMOR TIME!complete…ファイズー!」

 

そしてファイズアーマーへと変身した。ファイズフォンXでヒールを狙い撃ちつつ、近接格闘を仕掛ける。

 

「おっとっと」

 

しかし大きなダメージではないようだ。軽く怯むが、同時にジオウの斬りかかりもいなし、二人同時に斬り払った。

 

「くっ…それならこいつだ!」

 

『DE・DE・DE・DECADE!』

 

ジオウはディケイドライドウォッチを準備すると、左のスロットにセットし、一回転させた。

 

『RIDER TIME!仮面ライダ〜!ジオウ!』

『ARMOR TIME!カメンライド!ワァーオ!ディケイド!ディケイド!ディケイドー!』

 

バラバラの十パーツが重なり、ディケイドアーマーが完成した。そしてもう一つウォッチを起動する。

 

『W!』

『ファイナルフォームタイム!ダ・ダ・ダ・ダブル!』

 

そしてディケイドウォッチにセットした瞬間、ジオウの顔面が仮面ライダーW ファングジョーカーのものに。そして素体は黒白の二色のものへと変わり、ダブルフォームへと変身完了した。

 

「だああああ!」

 

そしてアームファングを発動し、アナザーヒールへ斬りかかった。ガードしたそのビーム剣を突き抜け、そのまま胸へ一撃が入った。

 

「おっと…」

 

「次はこっちだ!」

 

そうしてショルダーファングを発動した。だが、出ない。

 

「フンっ!ヌっ!でやっ!……アーマーが突っかかって出ない…。仕方ないか。それならこうだ!」

 

『ZI-O!』『DE・DE・DE・DECADE!』

『ダ・ダ・ダ・ダブル!ファイナルアタックTIME BREAK!』

 

ショルダーファングのブーメラン攻撃は諦め、そうそうに必殺技を発動し、飛び上がった。

 

「ディケイドストライザー!」

 

そして足をピンと伸ばし、縦回転で突撃。両足サマーソルトを連続で叩きつけた。

 

「うぐっ!」

 

最後にファング要素0のパンチをくらい、アナザーヒールは窓から叩き出された。

 

「ちょうどいい…僕はこのまま逃走といきますか」

 

そう言って落ちるのを受け入れたかと思えば、すぐに姿を消していた。ゲイツはすぐさま降り、その後を追った。

 

「…私達は一旦帰りましょう。少し気になることがあるの」

 

「分かった。ゲイツなら大丈夫…だよね」

 

ソウゴは変身を解除しつつ若干心配するような様子を見せたが、彼への信頼を思い出し、一旦クジゴジ堂へと足を進めた。

 

 

同じ頃、ゲイツはアナザーヒールを探して駆け回っていた。…だが、気配すらない。まさか瞬間移動でもできるのかと、焦りを表して、さらに走った。

 

「…何だと!?」

 

突如、道の横にあった研究所が爆煙を上げた。ここに居るのかもしれないと思い、彼はその『岡崎技術研』へと足を進めた。

 

「…ここ、まさか夢美のっ!?」

 

そんな時、彼の脳内に2068年の光景が蘇る。科学技術により、自分達を支えてくれた、レジスタンスの一人の老人の姿だ。岡崎夢美、それが名である。

 

「なら…なおさらここで死なれては困る!」

 

ゲイツは一層意思を強め、被害状況を見て、避難を勧めつつ爆発があったであろう場所へと駆け出した。

 

「吐いてもらう…私は知ってるわよ。あんたが魔術研究をしてるって事をねっ!」

 

「知らないっ!何の話よっ!」

 

所長室では、少女が赤髪の女性へと詰め寄っていた。アナザーライダーではないのかという疑問はあったが、とにかく夢美に間違いなく、助けなければという意思に、足が呼応した。

 

「な…に……!」

 

そうして跳んだと同時に彼の体は空中で止まった。炎すら形が固まり、しっかりと動けるものは誰ももいないようであった。

 

「本来…お前はこのあと警察に捕まり、意味不明な供述と吐き捨てられる。そして、様々な罪状の元、懲役を課される。16歳からの若い人生を棒に振るわけだ」

 

そんな中、スウォルツが少女、小泉エリへと近づいた。スウォルツが彼女をちょんと触れると同時に、エリの時間が動き出す。

 

「あなたは…」

 

「俺はタイムジャッカーのスウォルツ。会いたい人が居るのだろう?会わせてやろう。意見は求めん」

 

スウォルツはエリへ詰め寄り、驚く彼女へとアナザーライドウォッチを入れた。

 

『HEAL…』

 

「うぐっ…うあああああああ!!」

 

そして、紫のエネルギーがほとばしると同時に、彼女の姿が怪人へ変わる。ナイトメアアナザーヒールである。白と紫を基調とし、金の模様が入っている。全身にスキマが開き、不気味そのものな見た目である。

 

「見える……境界が…見えるッ!」

 

「…さっきのもそうだったが…また見たことのないライダーか。ヒールだと?…ヒール?それにその色…まさか!」

 

ヒールへと対峙したゲイツの脳内に一つのものが駆け巡った。そして、出発前にヴィオレットとか言うからもらったライドウォッチを出して見た。

 

「…何?」

 

しかし起動しない。いくら押せど反応はない。ため息をつきつつ、彼はライドウォッチを二つ起動した。

 

『GATES!』『WIZARD!』

 

『RIDER TIME!…仮面ライダーゲイツ!』

『ARMOR TIME!プリーズ!ウィッザード!』

 

そして素早く変身を終えると、ジカンザックスを構え、アナザーヒールへと斬りかかった。

 

「でやぁ!」

 

そして斬りつける直前にエクステンドを発動し、鞭のような形で斬撃をぶつけた。

 

「いててて…」

 

軽く怯んだかと思うと、左腕からビーム弾を放って素早い反撃を送り返した。

 

「やれやれ…」

 

『you!me!』

 

ゲイツはそれをサイドステップでかわし、ジカンザックスを弓モードへ。コネクトでウィザーソードガンも召喚し、二丁拳銃スタイルでの攻撃へと切り替えた。

 

「私の邪魔をしないで…!先輩と…東風谷先輩と会うには!この目が要るのよっ!」

 

そう絶叫をあげると、青い目をギラギラと輝かせて銃撃をばらまいた。

 

「フン!」

 

しかしそれもディフェンドで防ぎ、出来た隙に銃撃を返した。

 

「くっ…!」

 

ダメージを負った彼女は、撤退を選んだ。空間のスキマを広げ、体をバラバラにしながらその中に入って逃げた。

 

「…逃したか」

 

「…ありがとう。誰かは知らないけど…本当に」

 

夢美の言葉に礼には及ばんと軽く返し、手早く消化を済ませてクジゴジ堂へと帰っていった。

 

 

 

 

 

 

「……見えるッ!ああ、夕陽が見えるよ!」

 

病院から遠く離れた公園で、真墨は一人笑っていた。

光を失ったはずの目に、オレンジの光が差し込んでいた。

ぼんやりと光を感じ、今一度星を見れると、希望を抱くのであった。

 

「…悲願は叶いそうかい?」

 

その時、風に舞った砂つぶが空中で止まり、風さえも動きを止める。同時にウールが現れ、彼女の元に接近した。

 

「君は…」

 

「オーラの仲間さ。君には時の女王になってもらうんだ」

 

「…僕が、女王ね…。とにかく、視力が戻ってからね」

 

「まぁ、好きにするといいよ。君を…立派擁立させてもらうさ」

 

そうウールは言い残し、去っていく。同時に時が動き、砂つぶが地面へと落ちた。

 

 

 

 

 

「…見覚えがない?」

 

「そう、オーマジオウの並べた石像にヒールなんてライダーは居なかったの」

 

「…ああ、これだ」

 

そう言ってゲイツは机の上に、ヴィオレットから受け取ったライドウォッチを置いた。

 

「…コレがおそらくヒールだ。2068年で謎の女に渡された。…オーマジオウの知らないライダーだとさ」

 

「…それ、俺に言っていいの?」

 

「お前がオーマジオウにならない事を…俺は信じる。だからだ」

 

ゲイツは覚悟を決めた顔でソウゴを見据えた。ソウゴはそれをしっかり受け止め、口を開く。

 

「…児蓮が事故にあったのは今年の5月。えっと、14日。…多分、その辺でタイムジャッカーが」

 

「…決まりだな。行くぞ。ツクヨミは一応こっちにいてくれ」

 

ゲイツはそう言い渡し、表へ出てタイムマジーンを用意した。ソウゴもマジーンを用意し、タイムスリップ先を5/14に設定し、時空転移を開始した。

 

 

「急がないと…流星群に間に合わない!」

 

2018/5/14、真墨は山の展望台へ向かうべく走っていた。すでに夕方となり、急がねばならない時間である。彼女はさらに足を早めた。

 

「あ…」

 

そんな時、彼女は双眼鏡を落としてしまう。…その時、目の前に迫るトラックには目が行かなかった。

 

「ううっ!」

 

急ブレーキをしていたのもあり、ぶつかる衝撃は大したものではなかった。どこの骨も折れず、軽く投げ出されるだけ。

 

「ああっ!うぅ…あっ!ああああああああ!!」

 

だが、その投げ出された先には、ガードレールの先端があった。両目を叩きつけられ、どくどくと血があふれ始める。激痛のあまりもはや叫ぶこともできず…ただただ気を失うのであった。

 

「嘘だ……!」

 

次に目覚めたのは病院である。彼女の視界は真っ暗で、どこからか声が聞こえるだけ。

光のない空間に、彼女は言い得ない恐怖を抱いた。

 

「あっ…」

 

そして、動こうとしたその時、その手がとなりのペットボトルにぶつかった。

 

「…?」

 

だが、床とペットボトルの衝突音はいつまでたっても聞こえない。それどころか、音の全てが消えていた。

そんな中、足音だけが響く。

 

「あなたにちょっと悪い知らせと…めちゃめちゃ良い知らせがあるの」

 

オーラである。真墨はその声方をゆっくり向き、誰かと問うた。

 

「タイムジャッカーのオーラ。…まず、悪い知らせは、君はそのまま…光を失うってこと」

 

オーラは空中のペットボトルを拾い上げて、元の位置に置きながらそう語った。良い知らせは何なのだとすがりつく真墨へ、ニヤッと笑顔を返した。

 

「いい知らせは…その盲目が治るってこと」

 

『HEEL…』

 

そしてウォッチを起動し、彼女の胸に埋め込んだ。瞬間、真墨の姿がスターボウアナザーヒールへと変異する。

 

 

 

『Application!Ready?』

 

「理解理解……ん?あれ!?」

 

その頃、幻想郷ではコウモリ女とヒール、ガイア、フェネクスの戦いが繰り広げられていた。

フェネクスがブライトドロップを食らわせてコウモリ女と共に落ちているとき、突如ヒールの変身が解け、蓮子とメリーに。

 

「仕方ないわね!」

 

ガイアはそういうと、どうにかコウモリ女へ攻撃を当て、撃破することに成功した。

 

「…やれやれ、どうしたのかな」

 

フェネクスは不思議そうに二人のことを眺めていた。

 

 

 

 

「コレがあれば…僕はっ!」

 

「その時は…女王になってもらうわ。…誰か来たみたいね。早速奪ってみなさい」

 

場所は戻って病院にて、オーラはそう残して物陰へとゆっくり入っていった。そして、真墨は光を取り戻す第一歩に薄く湧き上がる喜びを感じる。

 

「俺は…最善の王でいるために!君を救わなきゃいけない!」

 

扉をあけて来たのはソウゴだった。真墨はその声が常盤くんである事はすぐに分かったが、言っていることの意味はよくわからない。真墨は警戒を見せた。

 

「…俺だ」

 

『まずい…アナザー…ライダーがっ!』

 

そんな時、ツクヨミからゲイツの元へ連絡が来る。それは2018/12/23からであり、自分が先ほど発った時空である。

 

 

 

 

「まずい…アナザー…ライダーがっ!」

 

その頃、ツクヨミはナイトメアのアナザーヒールに追われていた。何故ゲイツがやけに遅かったか気になり、外へと出ていたのだ。

 

「その電話…あの仮面ライダーとか言う男が持ってたやつね?」

 

エリは彼女の持っていたファイズフォンXを見たのである。ゲイツの仲間であると判断し、その後を追っていたのだ。

 

「死ねっ…!」

 

邪魔をされてたまるか。その思いを込めて銃を構えた時、バイクがアナザーヒールを吹っ飛ばした。

 

「やれやれ、わざわざ別世界の過去に行くなんて…お人好しね、蓮子は」

 

「お人好しはあなたもよ」

 

そしてその『チェイスナイター』から、ゆっくりと蓮子とメリーが降りた。

 

「ひっさびさのヒール、行くわよ!」

 

「OK!」

 

『どうした!何があったツクヨミ!』

 

「…助けが来た。…切るわね。貴方達…蓮子にメリー。なんでここに」

 

「…多分貴方の知る私とは別人よ。パラレルワールドのね」

 

そう告げたの秘封倶楽部がベルトを構えたのを見て、ツクヨミは彼女らがライダーであると確信した。何故、アナザーライダーと同時に存在できるのか。それは分からなかったが。

 

「私から行くよ!」

「ええ、任せたわ」

 

『look the star…』

 

「「変身!」」

 

ポーズ構えてバックルにレンズを挿入し、手を繋いだかと思うと、蓮子はレバーを押し込んだ。

 

『we are star night fantasy!』

 

瞬間、光がほとばしり、粒子化したメリーがベルトに収納される。そしてアーマーが装着され、ヒールは変身を終えた。

 

「満点の月夜…」

『「見せてあげるわ!」』

 

そしてフォンブレイドを構え、アナザーヒールへと斬りかかった。

 

「はっ!」

 

アナザーヒールは体をバラバラにしてそれをかわすと、距離を置いて銃撃を始めた。

 

「危ないなぁ…!」

 

『dash eyes!』

 

対しヒールは高速ステップで接近し、斬りあげをかました。

 

「…こっちにしますか!」

 

そしてグリップを変え、ライトニングフォンブレイドへ。ビームは短くなるが、より高圧になり電撃が通う。

 

「だああああ!」

 

そしてさらに連続で斬りはらい、二の腕の棘をラリアットでもって叩き込んだ。

 

「くっ!」

 

対しアナザーヒールはワープを行い、より距離を離しながらのスタイルへ切り替えた。その様子を見て、ヒールはレンズを抜いた。

 

「それならこっちね」

『そうね』

 

『look the line…』

 

そして青のライドレンズを入れ、手を前に構えてひっくり返すポーズをとった。

 

「『変身!』」

 

『we are dream night fantasy!』

 

そしてレバーを押し込んだ瞬間、変身が解け、蓮子が粒子化しつつメリーが実体化する。瞬間、その身にアーマーが装備され、ナイトメアモードへと変わった。

 

「幻想の境界…」

「『見せてあげるわ!』」

 

アナザーヒールの銃撃をかわしつつ、テレガンでの狙撃を行なった。緊迫の銃撃戦の中、何を思ったかヒールは駆け出し、拳を構えた。

 

「だああああ!」

 

ビーム弾はヒールの体のスキマを通り抜けて彼方へ消えていく。そして目の前にまで接近したヒールの拳をくらい、アナザーヒールは思い切り吹っ飛ばされた。

 

「さ…一気に行くわよっ!」

 

『dash eyes!』

『kick eyes!』

『illusion eyes!』

 

そしてヒールはアタックドロップを読み込み、アナザーヒールへと駆け寄った。

 

「幻惑!」「『ライダーストライクッ!』」

 

そして体をバラバラにして地面を這ったのち、アナザーヒールの背後で合体してその背に飛び回し蹴りを叩き込んだ。

 

「ぐぅっ!」

 

苦悶の声とともに爆炎を上げ、転がり落ちたライドウォッチが砕け散った。

その破片を握りしめ、エリは嗚咽とともに震え始めた。恨みを詰め込んだ目でメリーの方を睨む。

 

そんな時、エリの元へとコツン、コツンと足音が近づいた。

 

 

 

 

「どうした!何があったツクヨミ!」

 

『…助けが来た。…切るわね』

 

その声を最後に、ツクヨミとの通話は終了した。ファイズフォンXを閉じ、ゲイツは今一度真墨へ向き直った。

 

「お話は終わったかい?さ、貰うよ、君の眼をっ!」

 

「人の命を奪おうとするなど…!この手段は間違っている。俺は…お前を正す!」

 

飛び起きてアナザーヒールへと姿を変えた真墨に対し、二人はベルトを装備して、変身の準備を始めた。

 

『ZI-O!』『GATES!』

 

「…あとは、ゲイツのそれだ」

 

「…だが、起動しなかったぞ?」

 

ゲイツのその発言に対し、ソウゴはニヤッと笑ってライドウォッチを手に取った。

 

「アナザーライダーが二人いるんでしょ?それなら二人で変身出来るんだよ。きっと、ヒールもそういうライダーなんだ」

 

「Wみたいな感じか…。試す価値はある」

 

『HEÆL!』

 

二人が並び立ち、ソウゴはライドウォッチを起動した。動かなかったのは、ゲイツ一人だったから。二人は納得し、ゆっくりと構えた。

 

「…お前が使え!」

 

「分かった!」

 

そしてウォッチをセットし、変身ポーズをとる。ソウゴは手のひらをバッと返し、ゲイツは腕を構え、同時に叫ぶ。

 

「「変身!」」

 

『『RIDER TIME!』』

 

「僕は…この力でもう一度っ!星を見るんだあああああ!」

 

バックルをグルンと一回転させたソウゴに向かって、アナザーヒールは駆け出した。同時にソウゴの姿がジオウに変わり、ゲイツが粒子化してジクウドライバーに入っていく。

 

『仮面ライダ〜!ジオウ!』『…仮面ライダーゲイツ!』

 

『ARMOR TIME!』

 

そしてアナザーヒールが斬りかかった瞬間、巨大な紫の瞳を持った、機械の目玉が現れ、弾け飛ぶ。その勢いにアナザーヒールは吹っ飛ばされてしまった。

そしてバラバラになったパーツがアーマーになり、目の上についていた赤と青のコンタクトレンズは肩につく。そして、最後に紫の瞳が胸部のアーマーとなり、飛び出たマフラーがネクタイのように結ばれて胸にはためいた。

 

『we are ヒール!!』

 

「祝え!全ライダーの力を受け継ぎ、時空を超え、過去と未来をしろしめす時の王者。その名も仮面ライダージオウ……あー、一体…」

 

『ヒールだ』

 

「…コホン、仮面ライダージオウ!ヒールアーマー。また一つライダーの力を継承した瞬間である!」

 

どこからともなく現れたウォズの言葉を受けながら、自分の姿を見た。

頭部は右半分は蓮子の帽子、左半分はメリーの帽子を模したものが被せられる。胸はネクタイと紫の目のようなアーマーで形成される。トゲトゲしい左腕のスマホパーツからクリアカラーの刃が伸び、ふわっとした右腕のガラケーパーツの銃口がきらめく。そして、両肩に赤と青の半円が光る。

 

最後に「ひ」と「ヒ」を重ねた文字、「ー」、「る」と「ル」を重ねた文字がオレンジの目を形作った。

 

「ねぇ、境界とか夜空とか…見たいかな?」

 

いまいち決まらないセリフをアナザーヒールへと向け、駆け出した。

 

「姿が変わっても同じだねっ!」

 

アナザーヒールはビーム剣を振るった。その隙間をくぐり抜け、ジオウは斬撃を叩き込んだ。

 

『ジオウ、お前とで一人のライダーってのは癪だが…今回は手伝ってやる』

 

「そうかな?俺はかっこいいと思うよ?」

 

軽い調子でそういうと、右手から弾丸を散らした。アナザーヒールはそれをもらって怯む。その隙に横蹴りを叩き込み、さらに斬り上げで吹っ飛ばした。

 

「やっぱり…この力に弱いんだね!」

 

「…フフフ、私の知らない力まで手に入れた…。私が知る以上の我が魔王へと成長するということ!楽しみだ」

 

ウォズの笑い声を背に受けながら、ジオウはさらに格闘でアナザーヒールを追い込んだ。

 

「くたばれっ!」

 

その時、転ぶと見せかけてアナザーヒールは斬撃を放った。避けきれない距離で、ジオウはとっさに防御をとった。

 

「うわぁ!まずいよ、上半身と下半身が!」

 

しかし間に合わず、体が上下に分断される。しばらく焦ったのち、ジオウは自身が痛みを全く感じていないことに気づいた。

 

「…体をバラバラにできるのか!」

 

そう納得すると、さらに細かく体を分解し、アナザーヒールの背中側に瞬間移動してキックを食らわせた。

 

『なかなか不気味だな…』

 

「ま、便利だからいいでしょ!」

 

体が完全に動くことを確認すると、改めて右腕の銃口をアナザーヒールへ向けた。

 

「それに…弱点が見えちゃう!俺が攻撃した胸!脚!そして頭!」

 

銃撃をドカドカと浴びせ、ついにアナザーヒールに膝をつかせた。そして今がチャンスとばかりに必殺を準備した。

 

『ZI-O!』『HEÆL!』

 

『FINISH TIME!eyes!TIME BREAK!』

 

そしてベルトを一回転させ、発動。身を低く構え、宙へと飛び上がった。その瞬間、ナイトメア部分のアーマーを着たジオウとスターボウ部分のアーマーを着たゲイツに分裂した。

 

「ライダーストライクシュート!」

「やあああああ!!」

 

そしてジオウがそのまま降下キックを浴びせ、ゲイツは飛び回し蹴りを叩き込んだ。

同時にアナザーヒールの胸に激突し、アナザーヒールは爆発を起こした。そしてライドウォッチも砕け落ち、消滅した。

 

『…こっちでいいのか?逆な気がするが』

 

「いいんじゃない?よく知らないけど」

 

そう言って変身を解き、ゆっくりと真澄に近づいた。屈んで視線を合わせると、口を開く。

 

「…児蓮ってさ、優しいじゃん?…誰かを犠牲にしてて本当に幸せなの?」

 

「…うるさい!…僕は…僕は…」

 

「…帰るぞ」

 

「でも…」

 

「ツクヨミから連絡があった。…そいつも救えるさ」

 

ゲイツがそう告げたのを受け止め、ソウゴは渋々な様子でタイムマジーンへ乗り込んだ。

 

「「時空転移システム起動!」」

 

『『タイムマジーン!』』

 

そして、二人は2018/12/23の、戦闘を終えたツクヨミと秘封倶楽部の元へ着陸した。

 

「来たわね」

 

そこには、エリ、ツクヨミ、そして秘封倶楽部以外に、一人の女が居た。

 

「貴様…ヴィオレット・ハーンか!?」

 

「…?誰かしら、私は八雲紫。まぁ、覚えることでもありませんわ」

 

紫は妖しげにそう告げると、道の先を見やった。その先では、杖を持った真澄がこちらへと来ていた。

 

「…用事って何?」

 

真墨は紫の方を見て、疑問の表情を送った。対し紫はニッコリと笑顔を浮かべ、エリと真墨のことを交互に見た。

 

「貴女、会いたい人が居るんでしょう?…来なさい。それに児蓮真墨。貴女にも会わせたいの。…彼女は奇跡を起こせるから」

 

そういうと、二人を連れて紫は消えてしまった。その様子を見届け、蓮子とメリーはチェイスナイターへと乗り込んだ。

 

「何故ここに居るか聞きたいが…まぁ、大方言えないことだろう?」

 

「分かってるわね少年。ま、そういうことだから。こっちの秘封倶楽部にもよろしくね〜!」

「じゃあね!さ、行くわよ蓮子」

 

そう言って手を振ると、二人はそそくさと姿を消してしまった。だが、ひとまず事態が落ち着いたことに安堵し、ひとまずクジゴジ堂へと帰路に着くのであった。

 

 

 

 

「入部希望?…えぇっと…そういう冷やかしはお断りしてるのよ」

 

「…私は幻想郷を知ってるのよ?東風谷先輩とは…仲も良かったわ」

 

東京、某高校の放課後。菫子の元に居たのはエリであった。紫の暗躍で岡崎技術研は綺麗に直され、彼女の侵入も爆弾設置も無かったことにされたのだ。…無論、罪悪感だけは彼女の胸にとどまっているが。

菫子は最初は門前払いをしてしまおうかとも思ったが、彼女の口から出た情報に、NOとは言えなかった。

 

「…来なさい。詳しく聞くわよ」

 

そしてひとまずエリを部室へ招き入れ、スマホを開いた。

 

「…そう言えばすごいニュースよね」

 

菫子は携帯に表示されたネットニュースをエリに見せた。そこには、「視力回復。驚きの回復速度と絶たれていたはずの望み」と書かれていた。

 

「本当に、『奇跡』…よね」

 

そして彼女は一人の少女のことを思い出し、優しい微笑みを浮かべた。

 

 

 

「こうして、ヒールの力は我が魔王へ受け継がれた。私の知る魔王以上の成長を遂げていく彼の前に…もう一人のライダーが現れる」

 

そしてウォズの開いた逢魔降臨伝には、つまらなさげに桃にかぶりつく少女の姿が映った。

 

 

 

 

次回、仮面ライダージオウ!(BGM:Over “Quartzer”)

 

「地震…?」

 

「ここのところな」

 

突如連続する地震。

 

「ぶっ壊してやる…こんな町!」

 

「次の地震はこの日です。…それと、総領娘様…比那名居天子様からプレゼントです」

 

アナザーライダーと謎の女。

 

「…そうではない」

 

「キャーイクサーン!」

 

次々と沸き起こる疑惑と思念。

 

第X話『ルナ・アース・ガイア・2008』




上記は嘘予告です。ガイア外伝とは微塵も関係しません。
多分比那名居天子役の人が呼べなかったんで、永江衣玖役の人を加え、なおかつワードレス編とくっつける感じなんでしょうね。2008は緋想天発売年です。
まぁ、時系列的に次外伝はガイアかなー。22話頃を予定。
しかしギッチギチだったね今回。戦闘4回やってるからしゃーない。
…ていうか設定集にヒールアーマーの設定は載せたほうがいいのでしょうか。
タイトルは凋叶棕の「たいせつなもののために」より
外伝とか部屋では「これからのふたりたち」でしたが、これは本家が「これからのわたしたち」というフェイクタイトルを使ったことから。


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フェネクス外伝 泡沫、永のまほろば

今回は強烈な話。
あ、先週は更新なくてごめんね。でもほら、仮面ライダーは年末やってないし?


「太陽を見たいの」

 

全ては、その一言から始まった。

輝夜のその言葉を受けた鈴仙は、見ればいいじゃないですかと、天を見上げた。対し輝夜は、そうではないとかぶりを振る

 

「水面がシャットアウトしない、空気だけがカーテンになった太陽を、ね」

 

そう言って彼女は尾ひれをはためかせた。それを聞いた鈴仙は、無理だと否定を送る

 

「幻想郷の外は、地獄よ」

 

「ほら、師匠だってこう言ってるんです」

 

永琳も間に入り輝夜を止めた。輝夜はつまらなさそうにぶすっとした表情を作ると、永遠亭から飛び出ていった。

 

「絶対に出て見せるのよ。外の世界にね!」

 

「できるかしら」

 

永遠亭の外でぶつくさと呟く輝夜に対し、紫がスキマを切って現れた。

 

「ここのところ、パワードスーツ技術を悪用する妖怪が現れ始めたわ。貴方達には技術があるのだから、奴らを止めるのを手伝って欲しいのだけれど」

 

「知ったこっちゃないわね」

 

輝夜の突き放すような返答を受け、紫は深めのため息を吐き出した。手伝ってくれないとわかってはいたが…。

 

「でも、私達の体で水から出れるとでも?」

 

「大丈夫よ紫。その辺の準備はしてるわ」

 

とりあえず無謀な試みだけ止めてみようかと、魚のような下半身をペチンと叩いてネガティブな一言を向ける。とは言え、それが効く輝夜ではない。地上行動用の車椅子を見せつけ、自慢げにするだけである。

 

「言ったでしょ!私は絶対に出るのよ!」

 

「…好きになさい」

 

説得は無駄と判断し、紫は早々に泳いで行ってしまった。

その背を見送ると、輝夜は遥か上の水面を眺めた。

 

この湖底都市幻想郷は、霧の湖というところにある。周りには森があり、人里があったとか。

 

輝夜はかつて聞いた昔話に思いを馳せつつ、水面へと浮上していった。

 

「懐かしいわね。静かの海から来たのが」

 

輝夜は永琳とともに月の海底都市から逃げてきたので、一応外は見たことがある。しかしちゃんと探索などしてる暇は無かったので、よく見たことなどないのだ。

 

「っふう、思ったより浅いもんね」

 

結構簡単に水面に出れてしまうものだ。だが夢中になっていたのもあり、結構な距離泳いだようである。下を見ても湖底の人里は見えなかった。

 

「さ、こいつの出番ね」

 

そして麓へとゆっくり車椅子を置き、その上にズルズルと座り込んだ。

 

「…うん。結構動けるもんじゃないのよ」

 

そして、彼女の外の世界探索が始まった。

 

「結構広いもんね。草原ってのも」

 

「ん?…ほう?人魚の嬢ちゃんが居るなんて珍しいねぇ」

 

そうして車椅子を操作しながらあたりを動き回っている時、一人の少女が輝夜へ話しかけた。背丈はほぼ同じだが、足がある。これが"ヒト"かと軽い関心を抱きつつ、少女をまじまじと見る。

 

「あんたは…」

 

「久しぶり。…そして、初めまして、輝夜。私は藤原妹紅。…あんたのライバルだよ」

 

「え?何言ってんのアンタ。っていうか、なんで名前を?」

 

「説明はめんどくさいな…。ま、察して」

 

妹紅の返しを受け、何をどう察するのだと苦笑いを含んだため息をついた。同時に彼女に興味が湧き、意識するまでなく言葉を送っていた。

 

「ま、いいや。外の案内、頼める?」

 

「フフフ、ああ、いいとも」

 

妹紅は快諾を返すと、車椅子の後ろをつかんだ。そして彼女の行くぞと言う言葉に頷き、冒険が始まった。

 

「しかし…ここは森って聞いたんだけど…。草原って言い切れないほどに草がパラついてるだけじゃない」

 

「…知らないのかい?忌々しき、キノコ戦争だよ。昔は森だったんだ。おっと、たけのこは関係ないよ?」

 

輝夜の問いに対し、妹紅は悲しげな顔を作って答えた。その表情に、ただ事でないことを彼女は察した。

 

「…キノコ雲からその名がついたんだ。地球の三割はこんな感じにぶっ飛んだよ」

 

「残り七は生きてるの?」

 

「海」

 

簡単な一言でズバッと切り返され、輝夜の表情もかげっていく。だがそれを振り切るようにかぶりを振り、改めて前を向き直った。

 

「すまないね。辛気臭くて」

 

「別にいいのよ。こういう事実は受け入れなきゃいけないからね」

 

そう語ると、力強く胸を張ってみせた。妹紅は心強いなと笑うと、さらに進んだ。

 

「もともとあそこは魔法の森って名前だったんだよ。…ここは無明の丘って言うんだ」

 

「ふぅーん」

 

草がチラチラと生える草原を進んでいく。ハゲ散らかした髪か何かみたいね。そんなことで妹紅を軽く笑かしながら果てのない草原を行った。

 

「もう暗くなるよ。そろそろ帰るかい?」

 

「いや、まだ帰らないわ」

 

「でもなぁ…仕方ない。うちに来るか?」

 

妹紅に提案に食い気味に頷くと、早く行くのだとバタバタと急かした。

 

「やれやれ、昔っからわがままな姫さんだよ」

 

呆れ気味、けどどこか嬉しそうに呟くと、くるっと曲がって別の方向へと進んだ。

 

「…この辺は迷いの竹林って場所だったんだ」

 

「ふーん。あれがあんたの家?」

 

それを聞き、妹紅は複雑な表情で頷き、家へと輝夜を案内した。彼女のイメージにやけに似合わない高級そうな屋敷を見て、輝夜は首をかしげた。

 

「永遠亭っていうんだ。…もともとは私の家じゃない」

 

「永遠亭ぃ?私の家と同じ名前よ。湖底にあるわ」

 

「ああ、そういえばそうなんだっけ」

 

妹紅のとった態度に、輝夜は訳がわからないという感想を抱いた。しかしどう聞き出せばいいかわからず、グルグル思考しているのであった。

 

「ゔっ、お゛ああああああ!!!」

 

家に入ろうと玄関を開いたその時、おぞましい声をあげ、薄ピンクのドロドロとした肌の生物が、外から輝夜に襲いかかった。

 

「ヒッ、う、うわああああ!」

 

「どりゃああ!逃げルォ!…って無理か!仕方ないなっ!」

 

妹紅は恐怖で固まりきった輝夜を助けると、キックを叩き込んだ。そしてバケモノが見せた怯みの隙にパンチをぶつけると、フィニッシュに横蹴りを叩き込んだ。

 

「おごっ、ゔぉっ!」

 

「死ねぇーッッ!」

 

そして最後に火炎弾を投げつけ、バケモノを炎上させて始末した。

 

「…い、今のバケモノは…」

 

「シカ、だった生き物ってとこかな?ま、あの個体は多分生まれた時からアレだけど」

 

「ど、どういうこと?」

 

輝夜の問いを受け、妹紅は複雑な顔になった。バケモノの肉を片付けつつ、ゆっくりと口を開いた。

 

「ウイルス。アレは180年前のことだった。…何処ぞの国が生物の構造を変異させるバイオ兵器を生み出した。敵国のスパイがそれを盗み出し、そして行われた実験中に最低の事故が起きる」

 

それを続けようとした彼女の口は怒りと、悔やみにも似た理解しがたい負の意識が詰まっていた。

 

「…その国こそ日本。効果を強くしたウイルスは国中に広がり、文字通りバケモノの国に変化させた。パンデミックさ。私は蓬莱の薬のせいで変化はなかったがね。変化開始と再生のループでものすごい激痛だったよ」

 

次に彼女の顔には悲しみが溢れかえった。同時に仲良く過ごした人が脳内を駆け巡り、涙を流した。

 

「そしてウイルスを国外に出してたまるかと水爆を日本にぶちかましたのさ。しかし日本はまさかの反撃。そして危うく世界が滅びかけたのさ」

 

妹紅は家に改めて彼女を入れると、世界地図を取り出して続きを語り始めた。

 

「トドメを刺したのは、冷静さを失ったウイルスの開発国がトップの独断で敵国にそいつをばらまいちまったとこかね。見事に自国にも広がって、いろいろあって他大陸も食らって…。バケモノの闊歩する地球の出来上がり」

 

世界地図の国一つ一つにバツをつけていく。その様子は軽いモーションながら、重苦しいものを秘めていた。

 

「その国はウイルスのみを滅する毒を開発していた。自動装置で世界中に撒かれたさ。…が、ウイルスが消滅しても変異は変わらず。私が苦しまなくなったぐらいかな。ウイルスのサンプルさえ消滅し、もはや打つ手なし…ってとこ」

 

「…わ、訳がわからないわ。えっと…」

 

「あー、ごめん。急に色々言い過ぎたな。混乱したかな」

 

申し訳無さげな妹紅の言葉を受け、輝夜はゆっくりと考え始めた。そんな風に世界が滅びかけているのか。いや、もうすでに滅んでいるのだ。乾いた笑いを浮かべ、同時に疑問も飛び出た。

 

「なんで、幻想郷は…」

 

「ウイルスは水の中を行けない。それが原因さ」

 

それを聞き、輝夜は一応は納得したような様子を見せた。

 

「…で、これが何故ここに?」

 

だが、妹紅の家の中に置かれたものへと視線を移し、再びその顔に疑問の表情を浮かべた。バーンスマッシャーとボルコネクターである。

 

「私が開発中のものよ。色が違うけど」

 

そう言って詰め寄った輝夜に対し、妹紅は悲しむような笑みを浮かべ、輝夜を見た。

 

「お前は変わらないな。世界が一周しても同じものを作ってるんだから」

 

「…は?」

 

そう言って、倒れこむように妹紅は座った。

 

「お前、不死が消える薬あったらどうする?」

 

「迷わず使うわ」

 

「前のお前もそうだったよ。…私がトドメを刺した。あいつがそうしてくれって言ったんだ」

 

「だからなんの話よ!」

 

痺れを切らした輝夜が声を張り上げた。対し妹紅は、涙を浮かべながら笑っていた。

 

「蓬莱の薬ってのはすごいなぁ。地球がぶっ飛んでも宇宙がぶっ飛んでもそれが再始動しても死なねーんだもん」

 

「…ッ!?まさか…」

 

妹紅の言葉から、彼女は大方の事情を察した。度肝を抜かれたような表情で後ずさった。

 

「宇宙だいたい一周分を生きたんだよ、私は。本来この世界に妹紅が産まれるはずだった。しかし私が存在するせいで因果が捻じ曲がり、この世界で藤原不比等は五女を作らなかった」

 

「…」

 

「…世界は本当は前の一周と同じように産まれて消えるはずだった。私がいたせいで…バタフライ効果だったか。因果が歪んだせいでパンデミックが起こった。人類の滅亡がかなり前倒しになったんだ」

 

妹紅の表情は悲しみや達観を超え、絶望一色だった。もうどうすればいいかわからないとさえ言った。

 

「仮に私がこの世界で死を選んだとしても、運命は歪んだままだ。…だから」

 

「…別に元の形じゃなきゃいけない訳じゃないでしょ。落ち着きなさい。…しかし、たしかに所有者の魂に取り憑く裏機能はつけたけど…やっぱり残るのね」

 

そう言って輝夜はバーンスマッシャーを見た。妹紅は力ない頷きで応えると、ゆっくりとバーンスマッシャーとボルコネクターを持ち、外に出た。

 

「家の中は安全だ。出ない方がいい。…私は夜風に当たってくる」

 

そう残し、布団の位置伝えると、そそくさと駆け出していった。

 

「…やれやれ。ここんとこ参ってるのかな」

 

宇宙で独りのときから、今までずぅっと感じているのは孤独である。誰が隣にいても、自分より先に消えるのだと。そして、同じ時代を生きた人間ではないのだと。

…しかし、この体を諦めて死ぬことは、殺してしまった岩笠の命を軽んじる事と捉える。

だから彼女は死ねない。死ぬわけにはいかないのである。

 

『ignition…』

 

故に、バーンスマッシャーは常に輝夜を感じられるアイテムなのだ。親友である慧音がくれた黒板だとかは、守りきれなかった。…でも、こいつだけは一緒にいるのだ。

おもむろに握り、ポーズをとってみる。

 

「変身…ってね」

 

『burn up complete!phoenix blaze!』

 

そして炎が彼女を包み、フェネクスのスーツが形成される。水たまりに映してみたその姿は懐かしいもので、軽くパンチのアクションなんかもとってみたくなるのだ。

 

「フフフ、初めての変身もここだったなぁ。一巡前の…えっと、確か…うーん…あっ!レミリアと戦ったんだ!メリーと蓮子も居た。天子も居たなぁ」

 

今や跡形もない竹林に想いを馳せながら、ゆっくりと変身を解いた。その時、ピピッという音と共に、ボルコネクターが光を放った。

 

『…変身を解いたということは、戦いは終わったのね?』

 

空中に産み出されたスクリーンに映ったのは輝夜の姿だった。妹紅は驚愕の様子を浮かべ、スクリーンへと詰め寄る。

 

『私の持つタグをしばらく検知しないまま時間が経ち、であなたが変身を解除した時に起動するメッセージよ。現在は2181年!…蓮子の訃報を聞いたあたりの録画ね』

 

画面の中の輝夜は少し困りげに溜息を吐き、あたりをちらっと見た。そして再び溜息を吐いてカメラを見る。

 

『これを起動したってことは、私はすでに蓬莱消しを飲んでいて、あんたはまだ死んでないってこと。…なんのつもりか知らないけど、地獄で待ってるわよ。じゃあ、また殺し合いましょ』

 

メッセージはそれだけであった。だが、孤独で冷え切った彼女の心には十分なものだった。自分と同じ時代の人間の、自分に向けた言葉。

 

「うう、はぁ、はぁ、うううあああああああああ!!!」

 

気づけば慟哭を上げていた。かつての思い出が爆発するかのように湧き上がって消え湧き上がって消え。そして彼女は、今更輝夜へのただならぬ愛を理解した。

 

「困った子ねぇ」

 

そして、泣きわめく頰に口づけが当たった。何事かと振り向けば、輝夜がその唇を突き出していた。ビチビチした下半身を見て我に帰るが、しかし隠しきれない驚愕を渦巻かせていた。

 

「お前っ!お前っ!……お前ぇ!」

 

冷静になって、改めて彼女は顔を真っ赤にした。対し輝夜は得意げな様は崩さず、若干見下し気味にドヤ顔を向けた。

 

「…あなたがそんなに苦しむと知ってたら、私は死を選ばなかったわ」

 

「…え?」

 

「たしかにあんたとは今日初めて会ったけど、私は紛れもなく蓬莱山輝夜よ。…つまり、生まれ変わりなの。そうでしょ?なら、簡単よ。今度こそ一緒にいてあげる。独りじゃないのよ。…あんたが望むなら殺し合いだってやるわよ」

 

その言葉を聞き、妹紅は静かに泣いた。しかしその顔は晴れ渡るかのような笑顔であり、彼女自身、もやが吹っ飛ぶような感覚を覚えていた。

そうして、二人は永遠亭に戻ると、泥のように眠り込んだ。

 

 

「…おはよう」

 

「お前、引きこもりの癖にやけに朝早いんだな」

 

「…私って前世から朝早いんだね」

 

「ああ、っていうか水の中に居る以外はそんままだと思うよ」

 

輝夜はそれを聞き、今一度疑問を浮かべた。むしろなぜ我々は水中に産まれたのか。妹紅の存在だけで種族が変わるほど前世から運命がねじ曲がるのか?その疑問を、何気無く口にしてみた。

 

「…確かにな。バタフライ効果と思って自分をごまかしてきたが…。ちょっと謎だな」

 

ほんの少しだけ考え込み、そして何かを思いつきぽんと手を叩く。

 

「お前、古明地さとりって知ってるか?」

 

「…?誰?」

 

「フフフ、これは調べる価値ありだ!」

 

そう言うと朝飯をババっとかっこむと、そそくさと準備を終えた。

 

「お前は朝飯は終わってるな?行くぞ!」

 

「終わってるけど…。行くってどこによ!」

 

「ヒントのありそうなとこだよ」

 

そう言うと車椅子を押して駆け出し始めた。風を体に受けながら、輝夜はスピードを楽しんでいた。まっすぐ向かう先は、妖怪の山麓の間欠泉センター入り口である。

 

「ここは妖怪の山だったところだ。木が吹っ飛んだせいでもはやただの荒野の火山だがな」

 

寂しげに笑いつつ、上へと登っていった。そして頂上の火口付近には、エレベーターが設置されていた。

 

「さすがの強度だ。シェルターにもなる構造って話だが…」

 

「…何、地底に街でも?」

 

「旧都。かつて地獄だった場所を利用してるんだよ」

 

ふーんと息を鳴らし、少し楽しみそうにエレベーターが付くのを待った。そして数分ののち、エレベーターが開いた。そこから降り、ゆっくりと歩き出した。

 

「寂れてるな…」

 

「そうね、もう誰も居ないみたいな」

 

間欠泉温度調節センターのメインのフロアに出るが、がらーんとしており、遠い遠い地上から風が吹き抜けるだけ。

 

「…妖怪もウイルスにやられたのか?幻想郷のやつはみんな水中にいるから参考にならないな」

 

そんなことを呟きつつ、地霊伝に出た、その時。

 

「お゛っあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ!!!」

 

絶叫とともに、バケモノがその足を振り下ろした。受け止めた妹紅は相当のパワーで吹っ飛ばされ、壁へと思いっきり叩きつけられた。

 

「…お空、か?」

 

足と羽の生えた肉塊のようなバケモノを見て、妹紅が抱いた印象はそれであった。ウイルスはどうやら地底へと回り、ウイルス殺傷ガスも回ったようだ。

だが水爆だけは浴びなかった。故に強力なバケモノが未だに生きているのだ。

 

「逃げろ輝夜っ!私は不死身だっ!」

 

「私も一応不死身なんだけどっ!」

 

妹紅は必死にバケモノを止め、逃げろと放つ。だが輝夜は嫌だとでも言うように石を拾い上げ、バケモノへ投げつけた。

 

「ゔぉっ…ん゛あ゛あ゛…」

 

バケモノは一瞬うずくまったかと思うと、再び立ち上がって攻撃を始めた。

 

「…妖獣が変化したからか?…やけに強いな!」

 

『ignition…』

 

威勢良く言い放ったのち、バーンスマッシャーを構えた。

 

「変身!」

 

『burn up complete!phoenix blaze!』

 

そしてポーズののち爆炎が渦巻き、それを振り払ってフェネクスへの変身を終える。バケモノの蹴りを受け止め、その体に炎を叩き込む。

 

「お゛っ!あ゛あ゛あ゛!」

 

苦しみながらも炎を振り払い、再び妹紅へと近づいた。

 

「だああああああ!」

 

「ん゛っ、ゔぉっ!」

 

しかし、空中へと逃げることでこちらキックの威力は大きく下がる。元はやはりカラスなのか、薄黒く気持ち悪い翼を蠢かせながら空を這いずり回るように飛んだ。

 

「ったく…どうすっかな」

 

炎の翼を生み出して追ってみるが、空中は敵のホームグラウンドである。大したダメージは入らず、こちらがむしろ被弾する。

 

「…五回握りなさい」

 

「は?」

 

「五回握るのよ!いいから!」

 

地底でそう叫ぶ彼女の顔が、何かと重なる。思わず何かが溢れ出そうになるが、そんなことを言ってる場合ではない。言われた通り、グリップを五回握りこんだ。

 

「…私が完成させてないのは排熱システムよ。合体システムは出来てるの。そしてそんなに似通ったものなら、電波も同じはず!」

 

「すでにフェニックスフォーム相当は出来てるって訳か。なら待つ必要がありそうだな!」

 

霧の湖から来るということを考え、時間を稼いで待つことに決めた。空中で戦闘を続けながら、逃げて少し攻撃をしてというループでの攻撃を始めた。

 

「…来たわ!フィンズチェイサーよ!」

 

「翼じゃなくてヒレなんだな」

 

そんな時、火口を突き抜け、ホバーマシンがフェネクスの元に現れる。水陸両用らしいそのマシンは、フェネクスの前に停まったかと思えば、弾けるようにバラバラになった。

 

『system loading……rising up complete!phoenix electricity!』

 

バーンスマッシャーには未確認システムを解析して、自動的に音声を構築するシステムが用意されている。故に、普段の登録された鈴仙ボイスに比べてたどたどしいもので、いかにも鈴仙を元に作った合成音声という感じであった。

 

だが、その『始めて聴く』音声というのは、彼女にとって生きた、前の世界を感じさせるものであった。

 

「…ありがとう輝夜。あんたからすりゃ前世の話だが…。とにかく礼を言わせてよ」

 

そう言って化け物の方を向き直ったフェネクスの姿は、追加されたアーマーにより大きく変わっていた。上半身はピンクのアーマーが足され、下半身は赤のアーマースカートが着せられる。

黒いラインがわかりやすく通り、その上には艶めく髪の光のように青い雷光が煌めいた。

仮面ライダーフェネクス ライトニングフォームである。

 

「輝夜ぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああアアアアァァァァァァッッ!!!!」

 

「!?」

 

恨めしさと嬉しさを煮詰め合わせたような複雑な表情で絶叫をあげる。それを受けた輝夜は、それが自身へのものでありながら、もう一人の輝夜に送られたものでもあることを理解した。

 

「おらああああ!!」

 

フェネクスの跳び上がりを、背中とスカートのブースターが応援する。そして袖から棍棒が飛び出した。それを素早く取り、バケモノの身へと叩き込んだ。

 

「お゛っ!」

 

「重いアーマーだけど…推進力のおかげでスピーディーって訳か!」

 

「水中でも動きやすいほうがいいもの。それなら軽くするより粒子ブースターの方が効率的な訳よ」

 

「なるほどねぇ」

 

のたうちまわるバケモノへと警戒を解かぬまま近づき、今一度その手の棍『ピンインブレイカー』を構え直した。

 

「ゔっ、ごぷっ、お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!」

 

「喰らえっ!」

 

そして飛びかかるバケモノへと、腕のブースター総動員でピンインブレイカーを叩きつける。同時に電気がバケモノの体を伝い、焼け跡をつける。

 

「オラオラオラオラァ!」

 

そして連続での突きを繰り出し、さらにパンチをその頭(と言っても頭部なのかはだいぶ危うい見た目だが)へと叩きこんだ。

 

「お゛あ゛あ゛お゛お゛お゛お゛!」

 

バケモノは再び空中へと飛び上がった。だが、フェネクスは高速で壁を駆け上がり、バケモノの上へと回り込む。そして降下と同時にピンインブレイカーを叩きつけた。

 

「ゔっ」

 

「でやぁーっ!」

 

そして怯むバケモノへと振り上げを叩き込み、大きく吹っ飛ばす。さらに雷撃を飛ばしてその身へは食らわせた。

 

「どらららららっ!どりゃああ!」

 

さらには火炎と雷撃の交互の連続パンチをくらい、バケモノは大きくのけぞった。

 

「だあーーっ!」

 

さらに回し蹴りをぶち込み、再び大きく吹っ飛ばす。

 

『over drive!』

 

そしてボルコネクターと合体した状態でグリップを三回握る。音声と共に彼女の体にエネルギーが伝い、七色の光が棍棒から放たれる。

 

「キルラヴシャイニング!!」

 

そして跳び上がりつつ膝蹴りを叩き込み、ピンインブレイカーを投げつける。怯むバケモノへと、降下しつつ踏みつけるような連続キックを叩き込んだ。

 

「お゛ごっ!」

 

バケモノは苦悶の声を上げ、ビクビクと痙攣を始めた。

 

「クッソ…。まだ生きてるか」

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ…」

 

「妹紅!後ろっ!」

 

時間切れで変身が解除された妹紅の後ろへ、赤と黒の二色のバケモノがのしかかろうとする。逃げようにも、一瞬のことでもはや間に合わない。妹紅は目をつぶった。

だが、その身へはバケモノの重量は来ない。目を開ければ、ロケットランチャーの弾がバケモノの顔に突っ込んでいた。

 

「妹紅!輝夜!乗るのです!」

 

その声は、真上のヘリコプターからものだった。そこからは、映姫の顔とロケットランチャーの銃口が覗いていた。

妹紅はとっさに輝夜の襟を掴み、空を飛び『是非曲直庁』と書かれたヘリへと乗り込んだ。

 

「映姫……随分派手な格好だな。こっちの世界ではお偉いさんか?」

 

「2兆も閻魔やってりゃ勝手にトップに近づきますよ。さ、逃げますよッ!」

 

映姫は操縦席の小町に行くように告げると、扉を思いっきり閉めた。

 

「…やれやれ、まさか人が居るとはあたいは思いもしませんでしたよ」

 

「小町もちょっと堅苦しい格好だなぁ」

 

「あたいも2兆年はやってんだ。最古参レベルだよ」

 

「…2兆って、まさか!?」

 

「あんたと同じく一巡前から生きてるよ。っていうか地獄はまだ滅びてないよ。これからも滅亡なんつー概念はないさ」

 

小町は軽い様子でそう言いながらヘリを操作する。

ヘリはステンドグラスをぶち破って地霊殿を抜け、旧都へと出た。

そこにはバケモノが溢れかえっており、まともに行動など出来なさそうである。ヘリはそこに何かを散布しつつ、反対側の抜け穴を目指した。

 

「これは?」

 

「催眠薬品です。一回食らうと爆音が耳の中で響こうが数日は寝てます」

 

「そいつは心強いわね」

 

輝夜と妹紅は正直自分がどんな状況に置かれているのかイマイチ理解できない様子であったが、とにかく逃げられたという安堵を見せた。

そしてヘリが縦穴を抜けたと同時にシェルター構造の扉が多重に閉まり、一切の出入りができないようになった。

 

「…お待たせしました」

 

ヘリが着陸した場所には、かなりの数の人間が立っていた。妹紅は驚愕の表情を浮かべた。無理もない。人間の形を成しているのが自分だけであることをまざまざと見せつけられてきているからである。

 

「お久しぶり。その手のやつ、いつぞやの変身アイテムね」

 

そう言って、人の群れから歩み出たのはさとりであった。服装や体から放つオーラはもはや他人レベルだが、しかしその表情は変わりなく古明地さとりであった。

そして人間の群れは、よく見れば皆妖怪のようである。ツノが生えた者も多い。

 

「一巡前、地底の人間は地獄に逃げたのよ。そのあとこの地球が出来た時にまた地底に住んだの。…でも、戦争のせいでまた地獄に逃げざるを得なかったけどね。…私も長い年月の中で神霊になっちゃったわ。ほら、こいし」

 

「久しぶりだね、フェネクス」

 

そう言って現れた少女の手には、懐かしきドライバーが握られていた。訳がわからず、妹紅は脳内が情報と感情でオーバーフローし、知らずのうちに涙を零していた。

 

「ああ、本当に久しぶりだよ、U」

 

「覚えてるんだねぇ…」

 

「…お燐と、お空は?」

 

それを聞いたこいしは表情をかげらせ、ボソボソとした声で語り始めた。

 

「私たちが地獄に逃げられるように、バケモノの群れや兵器を止めてたの。…感染、してたよね?」

 

「ああ、…私と輝夜に襲いかかった」

 

「…そのためのこれです」

 

そう言ってさとりはギチギチに閉じられた試験管を取り出した。

 

「これに込められたのは、戻すウイルスの試作品。…いきなり実用実験は無理だけど…。いつかは実用段階まで持って行って見せるわ」

 

その言葉を受け、妹紅は力強くうなづいた。

 

「皆さん、よくお集まりで。…意図せず関係ない子も居るみたいだけれど」

 

そこへ、ゆっくりと紫が近づいた。

 

「あんた…足が!?」

 

「その辺の境界はいくらでもいじれますわ」

 

そう言って不適に微笑むと、スキマの椅子を作り出して座り込んだ。そしてあたりを軽く見回し、妹紅へと目を向けた。

 

「しかし…前の地球から生きている…マユツバですわね。ま、事実なのでしょうけれど」

 

「あんたは違うのか?」

 

「私はたったの数千歳よ。…で、幻想郷復興の話は信じていいのね?」

 

簡単に話を終えると今度は映姫の方へと視線を向けた。映姫はゆっくりと頷き、大量の妖怪が居て、皆が手伝うことを告げた。

 

「そろそろ…戻す準備が要るわね」

 

「戻す…?」

 

「…何の話かしら?」

 

「ふふふ、私の記憶改変は本当によく作用してるみたいねぇ」

 

紫は今一度妖しい笑みを浮かべると、輝夜へ向けて指を弾いて見せた。すると、輝夜の下半身は一瞬で二脚へ変わり、服が着せられた。

 

「え…え!?」

 

「ハイ終わり」

 

もう一度指を弾くと、その下半身は再び魚のようなものへと戻った。

 

「術で魚のものに変えてるだけよ。…みーんな記憶をいじられて、もともと人魚だったと思い込んでるだけ。あ、わかさぎ姫は記憶だけいじってるけど」

 

「ど、どういうことよッ!私は…!」

 

「貴方がもともと住んでたのは地上の方の永遠亭。…ウイルスを聞きつけた私は、みんなを水中に移住させて記憶改変をやっただけよ。…そろそろ、元に戻るのよ」

 

それを聞き、輝夜は喜んでいいのだかなんだかと絶妙な表情を浮かべた。そんな彼女は意に介さず、紫は映姫たちの方へ向き直った。

 

「復興の協力、本当に感謝するわ」

 

彼女は頭まで下げ、軽く涙を流しながらにっこりと微笑んだ。

 

「隠岐奈が聞いたらどんな顔するかしら」

 

涙を流し続けながらもその笑顔をより大きな物にし、希望を見せたような表情を見せた。

 

「さ、私もこっちの復興の手伝いはしなきゃな。でも戦う必要はない。…これ、お前に渡すよ」

 

それを横目に、妹紅はボソッと語った。その手で、バーンスマッシャーとボルコネクターを輝夜に渡した。

 

「アンタは復興前の準備として色々やらにゃならんことがあるんじゃないか?」

 

妹紅はそう言うと、お姫様抱っこで輝夜を抱え、霧の湖の麓に輝夜を座らせた。

 

「…じゃあね。私のこと、忘れないでよっ!」

 

「忘れないさ。永遠にな。それに、またすぐに会えるからさ」

 

簡単に別れを告げると、輝夜は底の方へと尾びれをはためかせ始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「変身!」

 

『burn up complete!phoenix blaze!』

 

輝夜の体を炎が包み込み、その姿を一瞬でフェネクスへと変えた。

竹林に立つその影は、月光を浴びながら目の前の怪人へと近付いた。

 

「燃え尽きて貰うわよ!」

 

「私はこの力で幻想郷のヒエラルキーを…ひっくり返すんだ!」

 

相手は正邪が変身した怪人のようである。逆女(さかさめ)とでも呼ぶか。スーツと鎧からなるシルエットが、刺々しく煌めいた。

 

「…永琳の記憶までいじったと言うのに…。輝夜はいいのかい?」

 

観戦しつつ竹に背を預けながら、隠岐奈はそんなことを言った。それに対し、観戦仲間の紫はニヤッと口をゆがめた。

 

「いいのよ。想い出はとぉーっても大事ですもの」

 

紫が見ていたのは、フェネクスと逆女の戦いでも、隠岐奈の顔でもない。

月をバックに空を舞う妹紅と慧音の影であった。




フォーム名:ライトニングフォーム
概要:本来ならフェニックスフォームになるはずだが、この世界にはフェザーチェイサーがなく、代わりにフィンズチェイサーが存在するため誕生したフォーム。上半身はピンクで、赤のスカートアーマーを履く。そして全身には黒のラインが通う輝夜っぽいフォーム。目は青。
本文にある通り、変身音声は鈴仙を元にした合成音声なので、他のフォームとは雰囲気が違う。
雷を武器として使う。一応炎も扱える。
重いアーマーながら、粒子ブースターによる高速移動を可能としている。
武装:
『ピンインブレイカー』
中国語の蓬莱(ピンイン)が由来。茶色を中心に七色が煌めく綺麗な色の棍棒。雷撃を通して戦う。
変身アイテム:
『フィンズチェイサー』
ピンクと赤、そして若干の青を中心にした水陸両用ホバーマシン。形はダンデライナーが近いか。
変身シークエンス:フェニックスフォームと同じ。
必殺技:『キルラヴシャイニング』
意訳するなら「殺し愛の輝き」と言うところ。
飛び蹴り、ピンインブレイカー投げつけ、ベノクラッシュ式バタ足キックで構成される技。

かぐもこ増っし増しでお送りしました。
こんな強烈な設定を10000字で使うんだから贅沢よね。
新フォームというよりかぐもこ中心のストーリー。ずっと世界観を喋ってるだけだったけどまあいいだろう。
これ多分やろうと思えば5話に分断できる内容だよ。
そして外伝に皆勤賞の紫さん…。いろいろ便利すぎるキャラ。
訳がわからん方は言ってください。できる限り噛み砕いて説明します。
…矛盾があってもそれは脳内補完で頑張ってください。
しかし世界の一巡っていうとどうもプッチ神父が出てくるぜ。

外伝はみんなこんぐらい尖った感じでやっていきたいところ。
次回はもっとほのぼのした話にしたい。


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酔鬼外伝 萃剣〜 Suika‘s wine

鬼形獣体験版ネタバレ注意です


「祭りの始まりだあああ!!!」

 

魔理沙のけたたましい叫び声に合わせ、この日の祭りはショーダウンした。時刻は4時半。まだ日が高いその頃に、この長い長い一夜が始まったのだ。

 

「本当にもうなんと詫びればいいか、頭を下げても下げきれませんいや本当に」

 

神社の中で、椛は埋まろうかという深さの土下座を決めていた。諸君達に合わせメタなことを言うなら…本日は第18話の直後だ。つまり彼女はノーザンウルフとして暴れたことに関してを謝罪をしていたのだった。

 

「幸い死人はいない。ストームスネイクがあんたを洗脳しちゃったからだしね、根本的にはあいつも操られてる状況だし」

 

「…とはいえですよ、私は!」

 

「あーもうかったいわねあんたも!」

 

強情に星座を続ける椛に霊夢は呆れつつ、祭りの方の様子見に戻った。そんな時、黒い羽を舞わせながらはたてがそこに飛びよる。

 

「あんたどうしたのよ」

 

「あ、姫海棠様」

 

「堅苦しいわね、はたてでいいってば」

 

そんなことを言われてもと彼女は強情に言った。そんなもみじに呆れつつ、はたては彼女の手を掴んだ。

 

「なんでもいいけど行きましょう。…私も罪の意識で潰されそうな時もあったわよ。でもね、誰もあんたを責めない。みんなあんたを大切に思ってるの。あげるって厚意を受け取らないのは失礼でしょ?」

 

「…それは」

 

「まあんなメンドクサイこと考えるよりさ、楽しもうよお祭りをさ!踊らにゃ損て言うでしょ!」

 

そしてその手を握ったまま、外へと飛び出す。人妖関係なく入り乱れる。それがこの夜なのだ。

 

「あんた達が出店ていうからまた珈琲かと思えば…果実酒とはねぇ。いやー美味しい」

 

「そうね、やっぱいいものよねー」

 

「葡萄酒もいいが…林檎や柑橘の酒もいいなー」

 

そんな他愛のない話をしながら、二人は酒を減らしていく。そうしてワイングラスを空けたころ、萃香は屋台を後にした。

 

「お、チルノじゃん!いつもみたいにかき氷?」

 

「でも毎年進化してるよ。今回は練乳をメインに扱ってるのよ!」

 

「じゃあいちご練乳くれよ」

 

「まいどあり〜!」

 

萃香はサングラスを頭の上に掛け直しながら、チルノの様子を楽しげに眺めていた。こいつも結構成長してるもんだとどこか上から目線に思いつつ、代金を払って店を後にする。

 

「あ、萃香さーん!」

 

「ん、ミスティアじゃんか。ってぇと…夜雀庵出張版てとこかい?」

 

「ええ、縁日メニューなんかもあるんですよ。このミニうな重とだし汁セットとか」

 

「ん、じゃあそいつ頼むよ」

 

そう言ってかき氷をかっこんで空にすると、ワクワクとその商品の登場を待つ。そんな中、ヤツメウナギを焼きながらミスティアは萃香の方に目を向けた。

 

「ずいぶん着崩した浴衣ですね。はだけまくってるけどいいんですか?」

 

「せくしーなふぁっしょんってやつだよ。かっこいいだろ?」

 

「縁日をエンジョイしてるのはすごく伝わりますね」

 

そんなことを言いながら、うな重をテーブルの上に置いた。萃香はそれを一瞬でかっこみ、汁物を飲むと、たいそう満足した様子で出張夜雀庵を後にした。

 

「なかなか美味しいじゃない!」

 

「まさか本気で焼き鳥始めちゃうとはね」

 

「私自身ここまで美味いと思わなかったわ」

 

次に目に飛び込んだのは天子と蓮子とメリーである。見れば、どうやら妹紅が焼き鳥屋を開いていた。タレとお肉の香りが鼻をくすぐり、萃香の口にはつばがこみ上げた。

 

「タレももちょうだい」

 

「お、萃香!なんかライダーがわちゃわちゃしてんなー」

 

「惹かれ合うんかねー」

 

「まあ私たち四人は共闘してたり話し合ったりしてたもんだから」

 

そんな様子になるほどと頷きつつ、萃香は渡された焼き鳥を口に運んだ。するとどうだ、かなりの味である。萃香は続けて皮とぼんじりも買い、満足げに頬張った。

 

「外来人…宇佐見と半ってんだっけ」

 

「ハーンよ。日本語じゃないわ」

 

「そっか、あんたたちは幻想郷どう?」

 

藪から棒にそんなことを尋ねてみる。いきなりのことにふふっと笑いつつ、蓮子は口を開いた。

 

「私はとっても気に入ってるわよ。想像してた以上のものを暴いちゃったわ。こんな混乱してる時じゃなきゃもっと良かったんだけどね」

 

「まあこれも縁ってやつよ。私もここ、好きだわ」

 

「そいつは良かった」

 

萃香は嬉しげにその言葉を受け止めると、最後の一粒を口に放った。

 

「いやー、美味しい!こいつは今後の出店にも期待だ。じゃあね!」

 

「あ、待て萃香。私も行くわよ」

 

そうして去ろうとした背に天子が付いた。二人で妹紅の店を後にし、あたりの散策へと戻っていく。

 

「あ、ネムノじゃないか」

 

「んー?お、酒呑童子でねぇが!元気やっとったか」

 

「名前で呼べよなー。なんだ、牡丹肉?猪とかここんとこ全然食ってないなー」

 

通りがかりに見かけたネムノの店で立ち止まり、横のテーブルに座った。見れば、あまり見かけないような肉料理がメニューに並んでいる。

 

「外でジビエって呼ばれてるやつね。こういう珍しい肉は食べたことないわね」

 

「おススメは紅葉肉だ。クセがなくていい。別にあの天狗じゃないからな?」

 

「鹿肉でしょ?知識としてならあるよ」

 

「あと桜肉もだな。んだども、ここの塩問屋がやらかしたせいで馬は出しづれぇんだべ」

 

ため息混じりにネムノは語った。文々。新聞に乗っていた塩屋敷の馬肉と首無し馬の騒ぎこそがその原因である。

 

「残念極まるわね…あ、この鹿と猪のステーキセットちょうだいよ」

 

「じゃあ私は小鍋にしよ」

 

「了解だべー」

 

注文を受け、ネムノは手早く肉を焼き始めた。いい香りが二人の食欲をさらに加速させていく。

 

「レアがいいか?ミディアム?」

 

「生っぽく。にしてもステーキといいあんた結構外来語知ってるのね」

 

「最近人里に来るようにしててな。だからたまーに聞くだよ。さ、天人さんのは完成だべ。味わってくんろ」

 

「こいつは美味そうだな、いただきます」

 

天子はがっつき気味に箸を伸ばした。一口運んだかと思えば、思いっきり米をかっこむ。

 

「米泥棒ってやつだな。このクセは最高のアクセントになってる。焼き加減や塩味も申し分ない。メチャクチャに美味いわ」

 

「えーうまそー!鍋が楽しみだね」

 

「ん、完成だべ」

 

「お、言ったところにちょうどだ!いただきます!」

 

そして小鍋をつつき、口へと運んでいった。柔らかい食感と特有の風味が広がり、その手が止まることを知らない。

気づけば、二人は一瞬で皿を空にしていた。

 

「あー、うまかったー!こいつはいいね、あんた人里で店開けるよ。じゃあね!」

 

「考えておくべ。じゃあな!」

 

そうして店を後にし、人ごみに流れていく。相変わらずの活気にあふれた祭りをエンジョイしながら歩いていく、その時。

 

「紐引きどうよお姉さんたち〜」

 

聞き覚えのある艶かしい声がかかった。見れば、女苑が胡散臭さ全開の紐引きを広げているではないか。手に取らなくてもインチキとも思える風貌だ。

 

「…って、お前比那名居天子!…ここで会ったが百年目!!姉さんを救うのは私だぁー!!」

 

「なんだその金型でとったみたいな悪役セリフは!」

 

天子を見るなり表情を変えて飛びかかった。エックスゴースターはその手にないが、そもそもステゴロスタイルの格闘戦こそ強みである。激しい肉弾戦が始まった。

 

「おいおい大丈夫かよ」

 

「私は平気だよ。あんたは先に回ってて。…来な、女苑!!」

 

「おい待て何やってんだお前らー!!」

 

突如始まった喧嘩へと霊夢がすっ飛んでいく。騒がしい喧嘩をカラカラと笑いながら眺めつつ、萃香は店巡りを続けた。

 

「ん、あ、潤美!!ひっさしぶりだなー!!」

 

「あ、伊吹さん」

 

「萃香でいいよ」

 

「お得意さんは大事にするさ。間をとって萃香さん」

 

そんな最中見つけたのは潤美の店である。正直飯はもういいかという気分の萃香であったが、並べられたうまそうな珍魚たちを見れば腹が減るのも当然極まる事実だ。気づけばカウンターに腰掛けていた。

 

「炙り古代魚盛り合わせちょうだいよ」

 

「了解!…っと、ほい!」

 

「いただきます!」

 

そして口に運んでみれば、初体験の味がそこに広がった。酒に合うのか、萃香はぐびぐびとその瓢箪から飲み込んでいく。

 

「いやー、こりゃ美味い!新鮮さが流石だよ」

 

「そりゃさっき釣った奴らさ。また魚買ってくれよ」

 

「もちろん!よろしくね!」

 

そしてカウンターから立ったとき、レミリアがそのそばを通った。すばやくお代を払い、レミリアを追う。

 

「あら、萃香じゃないの。そんな目立つのに気づかなかったわ、ごめんなさい」

 

「私は気づいていましたわ」

 

「じゃあ言えっての」

 

咲夜と小漫才のようなことをしつつ、流れていく。そんな中、目に留まったのはお面屋である。もしやと思ったとおり、店主はこころだ。

 

「おー、仮面ライダーのお二方ではないか。見ていけ見ていけ」

 

「聞けばさっき、白蓮と神子が活躍したんだっけ?」

 

「したともさ。私にとってみてもちょっと誇らしい。…さて、お一つお面などいかが」

 

世間話の流れから、こころはお面を取り出してみせた。見れば、仮面ライダー桜刀のものである。よもやと見てみれば、あるではないか、酔鬼が。

 

「いいねぇ〜、こういうの面白い。そこのライダーちょうだい。白いやつ」

 

「酔鬼か、お前自身に合わせてだな!…いや、実は早苗が言ってたんだ…ヒーローのお面は売れるとなー!」

 

「そこのヒソウテンソクもか?」

 

「かっこいいだろー」

 

「じゃあ私それ買いますわ」

 

ヒソウテンソクを指差したのは咲夜である。よりにもよってそれかという萃香とレミリアの視線を受けつつ、ウキウキと代金を払った。

 

「うぅー…」

 

そんな中、男が焦った様子で神社の方へ向かっていった。見ればそこには、ヤマメが担がれているではないか。

 

「…またか。ったく…、これで何人目よ、倒れたやつ」

 

「飲み過ぎだろ?みんな飲みすぎる日もあるさ」

 

萃香の呑気な言葉に体操、レミリアはかぶりを振った。どういうことだという萃香の視線に、重げに口を開く。

 

「酒飲み勝負に負けたって話だが…あれは違う」

 

「なんでさ。この祭りならあり得るでしょ」

 

「あの聖白蓮が公衆の面前で飲むとでも?彼女が雲山に抱えられてくのを見たわ」

 

それを聞き、萃香は口にをつぐんだ。あの頑固坊主が酒を飲みにいくとは到底思えないのだ。

 

「ヤマメの来た方を戻りましょう。この祭りには…何者かが…居る!」

 

「聞き捨てならんねぇ、楽しみを荒らすモンは!」

 

萃香はそう息巻いて歩き始めた。そうして向かったのち、少女が倒れている店があるではないか。人混みをかき分け、その『正体不明酒』とかいう出店に向かった。

 

「お前…何をしてるんだ!…事情によっちゃ命はないぞ」

 

「勘弁してくれよ、俺はただ賭けをしてるんだよ。アイツらが勝手に盛り上がって倒れちまうだけさ」

 

そこでは、ぬえが客の男に詰め寄っていた。大まかの事情を察し、真っ先に動いたのはレミリアだ。男の向かいに座り、上のトランプを適当に退けた。

 

「ずいぶん近代的にやってんのね、トランプカードとは」

 

「…お嬢さんもお客か?一つ、賭けをしないかい?」

 

レミリアの睨みつける視線にも怯まず、男は酒を注文した。余裕綽々の態度で、その視線をレミリアに返している。

 

「席を使うなら飲み物を頼まねぇとな?」

 

「…フン」

 

そして男は机に置かれた二つ黄緑色の酒の片方レミリアに渡した。しかしレミリアは男のものと自分のものをすり替え、口をつけた。

 

「毒なんか仕込まれてたらたまったもんじゃないからね」

 

「…私は入れてないわよ。このお酒は私の能力で色、香り、味がバラバラになった文字通り正体不明の酒だ」

 

「状況が状況じゃあなきゃうまそうなんだけどね」

 

そんなことを言いながら、ぬえに二杯目を注文した。そして、届いたコップを机の中央に起き、男にコインを渡した。

 

「外の世界のコミック本で知ったゲームなんだがね。ここにこのコインを入れるんだ。一枚でも二枚でも。で、自分のターンで溢れたら負けってね」

 

「面白そうだな。…いいだろう、乗ってやる」

 

「あんたが何やってるか知らんけどね、祭りの空気を乱した罪は重いのよ」

 

そう告げ、レミリアは先行を任せるといった。そして男がコインを入れようとした時、レミリアは男の手に鋭いチョップを入れる。

 

「ぐぎゃああああ!!!俺の左手が曲がっちゃいけない方向に!!何しやがんだー!!」

 

「右手じゃないからいいじゃないのよ。あんたさてはジョジョ読んだことあるわね?なんでこれでいけると思ったのよ」

 

そんなことを言いながら、レミリアは酒のコップの底を拭いた。するとどうだ、チョコがついてるではないか。

 

「適当なタイミングでそのランタンを机の上に置いて溶かそうしたわね?」

 

「どういうことだレミリア」

 

「傾いてたら溢れやすくなるでしょう?そして私がギリギリに入れた時にランタンの熱でチョコを溶かすの。そうすれば平に戻ってでアイツが一回入れる分だけ許容量が増えるのよ」

 

「チョコってとあの洋菓子か。薄汚いねぇ…」

 

「さて、切り札は無くなったわね」

 

「…じゃあ、君がコインを削ってるのは何故かな?」

 

「…っ!」

 

そうして数秒睨み合ったのち、二人は同時に笑い声をあげた。二人ともイカサマを仕掛けていたという点で、この勝負はリセットである。

 

「さて、次だが…」

 

「…どいてレミリア。私がやるよ」

 

「…いいだろう、君と賭けよう」

 

萃香の提案を受け、レミリアは席を譲った。そして萃香はレミリアが飲みかけた正体不明酒に視線をやり、次に男の酒に目を向ける。

 

「…同じ酒、らしいな?」

 

「そうだ」

 

「じゃあちょうどいい。私は利き酒を提案しようじゃないか」

 

萃香はコイン勝負用に置かれた酒を飲みきると、次の酒に手を置いた。男の方も男の方で酒に手を伸ばし、勝負体制が完成する。

 

「…なるほど、ここの正体不明酒の正体を突きとめろ、と」

 

「ああ、頼れるのは味だけだ。…だから宣言してやる。お前の仕込んだ毒に関係なく、私が勝つとな」

 

「…なんのことかな?」

 

「鬼をなめるな、妖力で分かる。お前、蛇の妖怪だな?何かしらの術、いや、純粋な化学物質か?とにかくお前の毒で中和される毒が仕込まれている。感覚を狂わせる毒か?私が今そこの酒を飲みきったが…お前の毒など物ともせず勝ってやるさ」

 

「…何を言ってるかわからないな。さぁ、行くぞ」

 

強引な男の合図と同時に、二人は緑色の酒を飲み干した。そしてコップを置き、萃香が先に口を開いた。

 

「…芋焼酎だ」

 

「白ワインだ」

 

やはり香りが違うためか、二人が言ったのはかなり大まかな種類である。だが、大きく種類の違う酒だ。勝敗が決まるのは確実であった。

 

「驚いた、萃香の正解だよ。この正体不明酒Eは芋焼酎にビールの香りと黄緑色を合わせた酒だ」

 

そんなぬえの言葉に、男は驚いて立ち上がった。そんなはずはないとばかりに萃香の方を見るが、萃香は表情を崩さない。

 

「感覚の誤認具合から白ワインを導き出したか?残念だが私の味覚は正常だよ。…線香に乗せて水溶性の毒でも撒いてたかな?」

 

「…」

 

「毒ってからにはタンパク質だろうな。アルコールとの分離なんざ容易い。私の力がありゃね。言ったろ?お前の毒なんざ物ともしないとね」

 

「なんだと…」

 

「危なかったわ。イカサマ見つけてなきゃ私やられてたわね」

 

レミリアがそんなことを言って安堵するその横で、萃香は男の左に置かれた酒に手を伸ばし、飲み干した。

 

「…これには毒と結合して昏睡毒に変わるやつでも入ってんのかな?負けたらこれを一気飲みしろとでも言ったか?…何が目的かは知らんが」

 

「貴様ら…」

 

男は口をつぐみ、震えているではないか。もう言い逃れはできないと萃香が語りかけたのに対し、男は激昂した。

 

「黙れ!貴様らが邪魔をしなければ…!!」

 

「ねぇ咲夜、こういうの外来語でなんて言うんだっけ?」

 

「逆ギレです」

 

「そう。それそれ!」

 

殴りかかった男へと構えを取りつつ、レミリアは余裕の態度だ。そして男のパンチへカウンターをしようとしたその時、すでに男の拳がレミリアに届いていた。

 

「痛いっ!!…何よ、なんでパンチが当たんないんだ…」

 

「…感覚がズレてるんだ、毒の影響で」

 

そうして飛びかかったのは萃香である。その膝蹴りは男の胸をとらえ、軽く吹っ飛ばした。

 

「俺は…お前に勝たなければいけない…!!!絶対にだっ!!!」

 

男が叫んだかと思えば、その体が肥大化していく。そして、瞬く間に巨大な蛇の化け物と変わった。人々が逃げ惑う中、萃香はサカズキドライバーを腰に装備した。

そして変身しようとしたその時、レミリアが萃香を呼び止めた。

 

「…このワインボトルね、河童を参考に術を仕込んでみたのだけれど…術の再生機がなくてね」

 

「というと…私が?」

 

「使ってちょうだい」

 

投げ渡された小さなワインボトルをセットし、一度レバーを引いた。

 

『set confirmed』

 

『confirmed change standby……3……2……1ready?』

 

さらにジェヴォーダンを真似て顔に手を重ねるポーズをとり、続けていつもの拳を包むポーズののちレバーを引いた。

 

「たまにはこんな酒も…ね!変身!!」

 

『formname is 紅鬼 GOGOGO!』

 

そして全身に赤いワインが流れていき、装甲を成した。赤いが派手にその身を彩り、血管やコードのようなパーツが目立つ。さらに小さな三本角と騎士のようなバイザーが顔面に存在感を見せ、赤黒いマントがはためいた。

 

「さて、宴の始まり…ではないな、とにかく祭りを邪魔するもんはぶっつぶす!」

 

そしてショーテル『血斬』とレイピア『緋閃』を構え、大ヘビへと駆け出した。一発目の血斬は防がれるが、緋閃の一撃は鋭くヒットする。

 

「ぐっ…」

 

「くらえっ」

 

続けて蹴りを叩き込もうとするが、大ヘビの重いタックルがダメージとなる。さらにその隙に尻尾を打ち付けられ、大きく怯みが生まれる。

 

「うごおおおお!!!」

 

口を開いて噛み付こうとしたその瞬間、口に緋閃を突き立て、カウンターを決める。だがそれで怯む大ヘビでもない。毒液を吐いて反撃した。咄嗟にマントで防いだものの、ダメージは未知数である。警戒を強めた、その時。

 

「たああああ!!!!」

 

青い閃光が大ヘビに激突した。さらに連続で蹴りを叩き込み、銃撃で追撃をぶつけた。

 

「うぐおぉ…」

 

「ったく…毒ヘビってなら私の得意なタイプの敵よね」

 

その姿はまさしく仮面ライダーメディスである。スターライトペンタスフォームの煌めきが素早く連撃をぶつけていく。

 

「だあっ!!」

 

「ぐあっ!」

 

そして酔鬼も血斬と緋閃を叩き込んだ。怯んだ一瞬を追うように激しい連続斬りを浴びせ、続けてエクスブライガンの援護が入る。

 

「やぁっ!おらっ!!」

 

「俺は勝つんだァーーー!!!」

 

そんな中、大ヘビが暴れを増す。さらには妖力を増しながら体格も大きくなっていき、回復しているようにも感じる。

 

「くそっ…今んとこ毒がどうにかなんのって私たちだけなのか!?」

 

「そのはずよ!頑張って倒すのよ!」

 

自分を鼓舞するように叫びながら、メディスはエクスブライガンにランチャープルーネラをセットした。必殺を構えるその横を抜け、酔鬼は攻撃を続けた。

 

『INCREASE EFFECT』

 

「おりゃりゃりゃりゃー!!!」

 

そしてメディスによる連続射撃がぶつかっていき、少しずつ相手の体力を削っていく。だが、決定打にはならない。

 

「捕らえた!」

 

しかもメディスは大ヘビに絡め取られ、その身を拘束されてしまった。超高速でバタ足をしてみるものの、効果はない。酔鬼が助けるべく駆け出した。

 

「無駄だな!」

 

だが、尻尾を叩きつけられ、膝をついてしまう。そうして追撃をもらいそうになったその時、どこからマミゾウが駆け寄り、口からパイプの煙を吐き出した。

 

「うぐっ、あんた、うおおおおお!!」

 

突如、大ヘビは苦しみ始め、その体がさっきほどのサイズへと戻った。そして今が隙だとばかりに酔鬼は攻め込む。そして大きく怯んだところに、脱出したメディスが構えた。

 

『INCREASE EFFECT』

 

「スターシャワードロップ!!」

 

メディスが駆け出し、流星のように走り回る。すれ違いざまに連続で大ヘビに攻撃を当て、最後に飛び回し蹴りをかました。さらに、そこに酔鬼が向かう。

 

「センケツザシッ!!」

 

そして大ヘビの反撃を血斬で押し返し、胸元を緋閃が捉えた。続けて血斬で切りつけ、同時に大ヘビは爆発した。

 

「くそっ…なんでだ…!!」

 

すっかり術の解けた男は、だらしない様子で座り込んでいた。戦闘が終わったそこに永琳が駆けつけ、解毒剤を振りまいていく。

 

「なんだってこんなことしたんだい…」

 

「…俺は強くなければいけなかった。あの人は自分を守ってくれるほど強い人がいいって言うんだ。だから俺なりに悪知恵を働かせて…」

 

そんな風に男がうつむいた時、早苗が様子を見に来ていた。男は目を見開くと、トボトボと早苗に近づいた。

 

「早苗さん、俺…」

 

そうして何か言おうとしたとき、その頰を早苗は思いっきりひっぱたいた。思わず倒れ、涙を浮かべながら男は早苗を見つめた。

 

「まずはその性根を直してくるのよ。私はね、そういう関係ない人を騙す騙すような強さは嫌いです」

 

ツンとした態度で背を向け、去っていった。その背を悲しげに見つめる男の襟を掴み、マミゾウが引きずっていく。

 

「儂の教育が足りんかったのか?前も食い逃げだの悪さしおって…。今度という今度は人間の常識を儂がみっちり叩き込んでやるわい」

そうして影は小さくなり、路地裏に去った時にはすでに何事もなかったかのように祭りは再開していた。

 

「あのザコ妖怪が……営業妨害で訴えてやろうか…」

 

ぬえはそんなことをぶつぶつと言いながら店を片付けていた。あんな騒ぎが起きただけあって、やはり客足はあまり向かないようである。萃香はそこに座り、正体不明酒Bを注文した。

 

「あんだけ騒いじまったせいでろくに味わなかったよ。だからね」

 

「じゃあ私も飲んで行こうかしら」

 

続けてレミリアも正体不明酒Cを頼み、届いた奇妙な色のドリンクを口に運んだ。萃香は疲れたとばかりにため息をつき、肩を鳴らす。

 

「やれやれだよ…」

 

「お疲れさん、私のワインどうだったかしら」

 

「結構戦いやすかったよ。速い動きが要るから疲れるけどなー」

 

それを聞いて、レミリアは満足げに頷いた。その時、メディスンがテーブルにちょこんと座った。咲夜含めた三人で座っていたために、席が空いていたのだ。

 

「…私も飲むわ。この紫のやつ」

 

「はいよ、正体不明酒Aね」

 

そうして置かれたお酒をおっかなびっくりに飲みながら、メディスンも疲れ気味に息を吐いた。

 

「美味しいじゃない!私お酒自体ちょっとしか飲んだことないけど…これが一番だわ」

 

「この奇妙な味わいは本当に面白いと思うなぁ〜」

 

「そう?私に会いに来れば飲ませてやれるわよ」

 

「私も新しいお酒を作ってみましょう」

 

「咲夜が作る酒はうまいときとまずいときの波がひどいんだよなぁ…」

 

そんな風にぬえも含め笑い合いながら、時間は夜へとさらに近づいていく。

これが、この長い長い縁日の夜のごくごく一部分である。

 

夜は、まだまだ続く。




フォーム名:紅鬼(こうき)
概要:ワイン『コウシュ』で変身したもの。基本的に酔鬼らしいデザインで、赤い血管的パーツとコード的パーツがより浮き立つ。ちょっとグロテスク。角は小さな三本角で、目のあたりに龍騎のようなバイザーがあり、背中の赤黒いマントが西洋的雰囲気を醸し出す。
武装:
『血斬』
赤いショーテル。酔鬼の武器にしては珍しく短い。
『緋閃』
赤いレイピア。刃渡り20cmほど。
変身アイテム:
『サカズキドライバー』
通常と同じ。
『コウシュ』
術を仕込んだ小さめのワインボトル。レミリアがこっそり開発してたものの、術の再生用機器がなかったため萃香にあげた。
変身シークエンス:
1ドライバーを装着
2部品に[マシュボトル『コウシュ』]をセットレバーを引く
「set confirmed」
3レバーを一回引くとマシュヒョウタンから酒がサカズキドライバーに注がれはじめる
4全てが注ぎ終えられたときにもう一度レバーを引く
「confirmed change standby……3……2……1ready?」
5最後にもう一度レバーを引くとサカズキに満ちた酒が光り全身に広がり始め
徐々に形を作りながら装甲へ変化し変身完了する
「formname is 紅鬼 GOGOGO!」
必殺技:
『センケツザシ』
相手の攻撃を血斬で押しのけ、緋閃で心臓を突き刺す。更に血斬で袈裟斬りする技。



お分かりでしょうけど、今回の敵たるヘビくんは鈴奈庵の蟒蛇です。マミゾウのセリフからお察しください。そういうわけでオリキャラでないですね。
しかしもっと上手く博打の表現できんかったのか…?クソみたいなテンポ……でもどうしようもない…。しかも短い。
クレーエさんにすごく申し訳ない出来…。
メディスンが出たのは、彼女がメディス外伝であんまり動かなかったからというのもあります。それなしに毒云々もあるけど。
書き直す必要あるかも……。


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ガイア外伝 FUWA・FUWA

「ごほっ、申し訳ありません…」

 

「ホントよ…」

 

タオルを絞りながら、天子はため息を吐いた。布団に寝込む衣玖の頭へと乗せる。辛そうな彼女を見て、天子は二発目のため息である。

 

「あんたねぇ、自分の健康管理ぐらい自分でどうにかしなさいよ」

 

「まあ…今日は休むという連絡もしておいたので」

 

「そーゆー問題じゃない!私の手を煩わせてる訳だしね」

 

永江衣玖、本日珍しくも風邪である。最近働き詰めで疲れていたのも祟ってか、その体調は決していいとはいえないもの。天子は面倒だのなんだの文句を垂れているが、要は心配なのだ。

 

「にしてもなんだってこの最悪のタイミングで風邪なんぞひくのかな」

 

そういう天子が居るのは、彼女が地上の拠点として借りている長屋。そう、ここは天界などでなく人里なのである。

 

「ったく、さっきから外がクッソうるさいわね」

 

外で何やらガタゴト騒音。誰がどんぱちやってるのかと、彼女は戸を開いて顔を出した。そこで目に飛び込むのはカラス怪人とモノの戦闘である。天子はデザインした身故に、そいつが射命丸のチェルカトーレであることはすぐに察しがついた。

 

「おぉ?天子さんでしたか!」

 

「でしかたじゃないんだよでしたかじゃ…。うるさいのよあんたら」

 

「え?そんなこと言われましても…」

 

「とにかく我々の戦いを邪魔しないでいただきましょう!」

 

そう言って、チェルカトーレは駆け出していった。天子は振り返り、衣玖が騒音で寝辛そうであることを確かめた。

 

「邪魔すんなはこっちのセリフなんだけど…!!」

 

そう言ったかと思えば、緋想の剣を投げつける。思わぬ不意打ちで変身が解け、射命丸のアーマーが消滅した。驚くモノの方へ、射命丸から奪ったターンブレイカーでパンチを喰らわせ、続けて変身解除へ。

 

「私はそんなこと言える分際じゃないけどさ!そもそもの常識として…」

 

数分後、二人は正座していた。天子の()()()()()説教をがみがみと浴びせられながら、二人はぺこぺこ頭を下げる。他人のことでキレる彼女も珍しいものだと思う射命丸だが、口に出せる状況ではない。

 

「マジでいい加減にしなさいよッ!」

 

そのセリフを残し、彼女は長屋へと戻っていった。そうしてため息をついた瞬間、自分が収録したうるさい変身音と戦闘音が。聞こえたのはディスガイズのものである。

 

「だあああ!」

 

杖の武器を構えるマミゾウ怪人ディスガイズの横へ寄り、足を引っ掛けて転ばせた。リヴァーシブルになろうとしていた正邪も目の前の事態で困惑中である。

 

「変身解きなさい」

 

「儂?え、なんだって」

 

「早く」

 

すごむ天子に気圧され、マミゾウは変身を解いた。瞬間、天子は思いっきりビンタを叩きつけた。メガネを吹っ飛ばしながら転ぶ姿を正邪は指差して笑った。二発目のビンタは正邪へのもの。

 

「くそっ、私もぶへぇ!?」

 

「ガッデム!」

 

なぜか正邪だけはもう一発ビンタを食らう。仲良く路上に倒れる二人へといい加減にしろと吐き捨て、天子は長屋へと戻った。そうして扉を閉めた瞬間、今度もガタガタと騒音が。

 

『ガイア・ザ・アース!』

 

「いい加減にしなさいよ…!」

 

今度という今度はしょっぱなから変身状態で戸を開けた。そこに立っていたのはこころであり、どうやら舞を披露するようだ。なら戦いよりかはマシかなとため息。変身を解こうとしたそのとき。

 

「まてぃ!貴様件の天人だな。貴様のせいでこの舞が台無しだ、どう落とし前をつけてくれる!」

 

そうして無表情なままこころは天子へと突っかかっていった。その手に握っているのはターンブレイカーだ。自分が作ったものなのだがという軽いイラつきを覚えながら、構えた。

 

『turn on!emotion girl!マスカレイダー!』

 

「行くぞー!」

 

「待ちなさい」

 

「待てと言われて待つ奴が」

 

「いいから待てつってんのよ洗面器」

 

「私は面霊器だ!」

 

「ここで戦うのは困るのよ。病人が居るから。場所変えるわよ」

 

「む!?なら仕方あるまい!ママ……じゃなくて白蓮が弱っている人はいたわれと言っていた!」

 

そんな風に言ったかと思えば、素直に少し離れた広場へ。そして観客たちも騒ぐ中で、二人の戦いが始まる。

 

「だああああ!」

 

「よっと」

 

魅せる戦いこそが幻想郷のものである。弾幕を交えながら、華やかに戦いが始まったキラキラと光る雨の中、二人が舞う。

 

「せいやっ!」

 

「はっ!」

 

そして近接格闘も展開する。ぶつかり合う剣と扇の間に美しく火花が舞い、押されたのはマスカレイダーである。しかし踊るように体勢を立て直し、すぐさま反撃に向かう。

 

「ちょっと強くしすぎたわね…敵対する可能性を考えておけばよかったわ」

 

「ふふん!自分の作った力と戦う気分はどうだっ!」

 

「なんであんたが…偉そうなのよッ!」

 

今一度近づくマスカレイダーにパンチをたたき込み、続けて回し蹴り。しかし攻撃の流れに慣れたのか、ギリギリではあるが完全にいなしてしまう。

 

「なんだってのよ…」

 

「ふはは!我々を舐めるな!」

 

そうして攻撃を続けるものの、いい加減天子も飽きてきた。基本的に慈悲は考えない彼女である。自分が『魅せる』のが面倒になるや否や、すぐさま強化アイテムを取り出した。

 

『マックスタァァァァッ!!』

 

「なっ」

 

「ショーは終わりってわけ。こっちに事情があんの」

 

『ブレイク・ザ・ディスパー!!!』

 

そうして、要石と緋想の剣は吸収されて爽やかな青が煌くボディと銀の目のマックスグランドへ。戸惑うマスカレイダーへ容赦ない右フックを叩き込んだ。

 

「ぶぐぇ!」

 

「オラァ!」

 

「もうちょっと何か…」

 

「うっさいわね」

 

急に劣勢になるマスカレイダーを、容赦なく追い詰めていく。吹っ飛ばされてよろよろ立ち上がるマスカレイダーを前に、ガイアは身を低く構えた。

 

『スーパーグランドフィニ『仙人!チョウゼツムソウカイホウ!』

 

「たぁっ!」

 

「ちょっえっ、うぐぁっ!」

 

「そっち!?」

 

必殺を発動しようとするガイアへ、リブレッスからの割り込み。亀と華扇のヴィジョンが二人へとダメージを与え、リブレッス本人はガイアへと連続回し蹴りを叩きつける。

 

「がーがー人里で騒いでんじゃないのよ。だいたいあんた人里の権力争いに関わってないでしょうよ。見世物にもならないってなら…」

 

「うっさいわね!この人里はどいつもこいつもうるさくてどーしようもないのよ!あんたも文句あるなら具体例あげなさいよ!静かなところ!!」

 

「あー?んなもん自分で探しなさいよ。自分で!」

 

「文句言うだけ言ってそれだわけ?ほんと使えない巫女ね」

 

ばちばちさせた雰囲気を漂わせたのち、天子はきびすを返した。そのまま衣玖を寝かせている長屋へと向かう。目の前で聖と神奈子が弾幕ごっこをしており、どうも衣玖は寝れなさそうである。

 

「あっ天人さま」

 

買い物に行かせていた紫苑が帰宅済みである。小銭を落としたと申し訳なさげだが、そんなことは想定内。ネギや生姜の入った買い物鞄を持たせ、天子は衣玖を抱えた。

 

「冥界に行くわよ」

 

「えっ!?私たち死ぬんですか……?」

 

「ちーがうわよ。フツーに行くの!隙間を通ってね。あそこなら静かだし妖夢とはいくらか交流があるわ」

 

「そんな…総領娘さまのお手を煩わせるわけには…」

 

「さっさと治してもらわないとウザいのよ。にっっしても軽いわね、ちゃんと食ってるのか?」

 

その言葉を受け、衣玖は沈み気味な表情をする。そんな彼女へ、天子はため息を吐き出した。

 

「自己管理ぐらいどうにかしなさいよ」

 

「そうですよ衣玖さん!天人さまがこう見えてものすごく心配してるのはお分かりでしょう!?」

 

「なんですってぇ?」

 

「ウフフ、そうですね」

 

そんな風に話しながら、彼女らは冥界を目指して進んだ。

 

「ええ、いいわよ。妖夢、お布団を」

 

「はいっ!」

 

結果として、幽々子は快く彼女らを受け入れた。客室の隣の部屋へと案内され、衣玖はゆっくりと布団へ入った。

 

『ヒー!ヒー!ヒーヒーヒー!!』

『さあ、ショータイムだ!』

 

だが、隣から聞こえる音声で眠れない。少しすれば静かになるかとも思うが…。

 

『シャバドゥビタッチヘンシーン!シャバドゥビタッチヘンシーン!』

 

一向に静かにならない。何事かと思ってふすまを開けてみれば、隣に置かれたTVで二人が何かを見ていた。

 

『キャモナスラッシュ、シェイクハーンズ!』

 

「…それ」

 

「え?仮面ライダーウィザードよ。面白いわよ!あなた達も見る?」

 

「…うるさいのだけれど」

 

「そーお?でも変えるつもりはないわよ?」

 

「………」

 

キレ散らかしてやろうかとも思うが、天子は場所を借りている身分である。それにここでガイアvsブロッサムを繰り広げるのも面倒である。ため息ののち、彼女は衣玖を抱えた。

 

「あんま横で流れてると続きも見たくなるしね」

 

「おじゃましました〜」

 

「そうね、またね〜」

 

そうして冥界を後にする。一旦人里に戻った時、ぐぅっと衣玖の腹がうめき声を上げる。思わず笑う紫苑であったが、彼女もほぼ同時に腹の声。ご飯でも食べるかと、三人は決めた。

 

「じゃーあ」

 

「あっ天人様だ!」

 

「…針妙丸」

 

そこで、針妙丸と合流する。どうやら正邪はいない模様。ちょうど四人だしと言うことで、風邪に優しいうどんの店へと入った。

 

「「「いただきます!」」」

 

「…」

 

「ほら、総領娘様も!」

 

「私は食べ物を作らせて当然の…」

 

「いーから!」

 

「………いただきます」

 

静かに手を合わせ、四人の食事は始まった。その中で話題となるのはやりここ数週間の争いについて。里の支配を目論む妖怪たちへの、針妙丸視点の意見がメインである。

 

「自分で言うのもなんだけどさー、私個人の意見だし多分偏見もあるよ」

 

「だいたい信用ならないみたいですね」

 

「そりゃあね。いちばんマシなのは神社だけどさ、霊夢たちはあんま活動に乗り出そうとしないからさあ」

 

「へぇー…。私は詳しくないけど……。小人さん的に里はどうしたいの?」

 

如何ともし難いという顔をして、針妙丸は紫苑の質問を受け取った。どう言おうかというふうに辺りを見たのち口を開く。

 

「弱者の誇れる社会…ってのが理想だけど、現実的にはは現状維持がしたいかな。信用ならない河童やら天狗やらに里の人間は守らせたくないってとこ」

 

「…あんたって小さいなりに頑張ってるのね」

 

「ふふん、自慢じゃないけどね!」

 

そんな真面目な話の中、食事は進んでいく。病人に焦らせても良くないと、ゆっくり食べ進める。

 

「針妙丸のうどんなんかかわいいわね」

 

「そりゃ私サイズだもの」

 

意外と言ってみるものである。うどんを細く切ったものを醤油皿に入れる形で解決し、この量ならお題は天子のものに含まれているんだとか。

 

「しかしこんなおいしいお店があったとは思いませんでした」

 

「なんとなく入った割に結構いい店じゃないの」

 

そうして、衣玖がうどんを食べ終える。お代は天子が全て持ち、3人揃って頭を下げる。なんだかんだ言って面倒見はいいのである。

 

「あ、そうよ針妙丸。こっち来なさい」

 

「ん?」

 

無邪気に飛びよる彼女へ、天子は無慈悲にチョップを繰り出した。頭を押さえて涙目の針妙丸を見て、少女たちは困惑。それに対し、びしっと指を刺して天子は告げる。

 

「あんた勝手にターンブレイカー持ってったでしょ!」

 

「………あっ。そういえばそうね」

 

「二発目は許してあげるから代金払いなさい」

 

頭を擦りながら、不満気味に針妙丸は背負っている袋からお金を渡した。次は無いわよと睨みつけ、天子はお金を財布へとしまう。

そうして、針妙丸はその場を後に。今一度3人で静かな場所を探す最中。

 

「あっ、天子!それに紫苑とりゅーぐーの使いさんまで!」

 

「永江衣玖と申します」

 

「私古明地こいし!よろしくねー!」

 

多少激し目に握手をし、3人の目的を聞く。そうして、こいしは静かな場所として地霊殿を提案した。

 

「…いいんですか?」

 

「お姉ちゃんならいいって言ってくれるよ!」

 

そうして、四人は地底へ。多少時間はかかるが、人数が居るのであまり退屈はしない。地底に到着してしまえば、地霊殿に着くのはすぐである。

 

「ええ、いいわよ。御足労ありがとうございます」

 

「比那名居サンちょっといい?病人はやっぱベッドにね」

 

さとりがOKを出すや否や、お燐が衣玖を天子から受け取る。看病は任せなと告げ、そのまま運び去った。

 

「さて、貴女も機械を作っていると聞きます」

 

「そうだけど?」

 

「お話をお聞きしたいのです。私のペットの看病を信用してくれるならば、ついてきてはくださいませんか?」

 

それは質問であるが、彼女に対して回答の必要はない。一瞬ののち自分の地下室へと天子を案内した。

 

「…予想以上に機械的ね」

 

「ええ」

 

紫苑もふらふらと付いてくる。周りにおかれた様々なアイテムを見て、表情を分かりやすく躍らせた。天子も顔にこそ出てはいないが、そうとうテンションが上がっている。

 

「あのタンクは?」

 

「発電装置です。月読神社の分社を迎えまして、月光の妖力から発電する機構でして。まだ稼働はしないのですが、ほとんど実用段階です」

 

「神社が建物の中に?」

 

「いえ、上空…というよりは洞穴の天井に。107mほど上でしょうか。鬼の技術も交えた妖器パラボラアンテナでエネルギーを受け取ります。地底に光源を作る計画も兼ねてるんですよ」

 

「空飛ぶ神社ってわけね。にしてもネーミングもっと無いのかしら」

 

「…よ、よくわからないけどすごいです!」

 

困惑する紫苑を置き去りに、二人は技術者トークを展開する。新しいパワードスーツや、バイクなど。もっぱらライダーの話である。

 

「…そうそう、これ、見ていただきたいんです」

 

そうしてさとりが切り出したのは、『サイバー怪人』であった。なんでも、データに合わせた形状にエレクトロ粒子を定着させることで、無人の怪人を実体化させて戦力にするものだという。

 

「…そいつはすごいわね」

 

「いえ、しかしまだ実体化には至っていないんです。着るのが限界…というところでしょうか」

 

そう言いながら、さとりは腕輪『ライドデバイザー』を装着し、『召喚』のボタンを押した。

 

『サイバーブラックキャッツをロードできません』

 

「で、こっちが…」

 

『サイバーブラックキャッツをロードします。ブラックキャッツアーマー、アクティブ』

 

続けて押した『装着』のボタンで、さとりはサイバーブラックキャッツの姿へ。しかしこれではターンブレイカーやエックスゴースターと変わらないと呟く。

 

「…そうねぇ」

 

「どうにかできますかね…」

 

そんな風に会議のさなか、轟音が響き始める。何事かと頭をかく天子へ、さとりは最近よく工事をやっていることを語る。いい加減ムカついたのか、階段を駆け上がって工事現場へと走っていった。

 

「おー?天人様だ!また会いましたね」

 

「あんたなの?コレ」

 

「あと私もだよ。…さっきはよくも叩きやがったな」

 

無邪気に手を振る針妙丸に続き、鉄骨の裏に逆さまに立つ形で正邪が現れる。下半身はズボンである。髪は流石に重力に従っているが。

 

「…なんのつもり?こっちには寝てない病人がいんのよ」

 

「それは私の知ったことじゃ無いですもんね!」

 

「私達の叛逆を邪魔してくれるなよ」

 

「あんま調子乗んじゃないわよ、針妙丸!それに天邪鬼!あんたはしっかりと礼儀ってもんを教えるべきね!」

 

『グランドライバー!』

 

いい加減我慢の限界である。戦闘態勢を取る天子に、二人もターンブレイカーを構えた。私から持っていったのだろと言う天子に、正邪は利用できるもんはなんでも使ってやるぜと続け、髪を揺らしながら飛び降りる。

 

「変身!」

 

『ガイア・ザ・ルナ!』

 

『『get started!』』

 

「せいよっ…うだとそのままだから…えっと……わかんない!醒妖」

 

叛駁(はんばく)!」

 

「ちょっと!なんで先に掛け声考えてんのよ!」

 

「いいから行きますよ」

 

「…そ、そうね!行きますよ、天人様!」

 

『turn on!little girl!ラルジュネヌ!』

 

『turn on!chased girl!リヴァーシブル!』

 

そうして、ライダーと怪人の戦いが始まる。流石に元の強さもあり、ガイアはかなり優勢である。そんな中、ラルジュネヌはガチャガチャと何かを取り出した。

 

「実戦投入か?」

 

「そうよ、いくわよツクモガミども!」

 

そのボディに装着したのはアーマーである。針で斬りかかり、そのパワーが一気にガイアを押す。その状況を見て、紫苑もメモリを取り出す。そしてターンブレイカーへとセットした。

 

『turn on!miserly girl!マガツヒメ!』

 

「…大丈夫ですか?」

 

「そうね…でも1対2は分が悪いかも」

 

そうして、リヴァーシブルの方へと殴りかかる。歪さを減らした禍女とでもいうところか。しかしその特徴である肉弾戦のパワーは相変わらずだ。

 

 

 

 

「もー永江ちゃんってば無理しないでって言ったのにさー」

 

「そんなこと言われてもねー」

 

「おねーさんもわかるんじゃないっすか?女にはそんな時もあるって」

 

「んもーなーにそれー!」

 

同じころ。衣玖の元へ来ていたのは彼女の同僚の佐島であった。わざわざ居場所を調べて来たようで、どうやって知ったか聞いても秘密だと笑うのみ。お燐とのジョークも交えながら、心配の言葉を語る。

 

「私が来たわけどさ、他の子達も永江ちゃん休むの珍しーって心配してたんだよ」

 

「えー?ほんと?」

 

「ホントだって!」

 

「あたいもお空が風邪ひいた時は心配しすぎてもうね、死ぬかと思ったよ」

 

そんなふうに談笑を続けたのち、佐島はお見舞い品の林檎を置いた。お礼を言う衣玖へ、心配してるんだぞと笑う。

 

「ってか騒音ひどいわね。永江ちゃん大丈夫?」

 

「…全然寝れないよ」

 

「あちゃー。ごめんね衣玖さん」

 

あなたは悪くないでしょうと衣玖が言うが、それでもお燐は申し訳な下げである。工事の音を不快に思いながら、話は続く。

 

「あー、あと上司陣からもね、神官のとこの長女任せたぞー!って言ってた」

 

「うっわ、プレッシャーだね衣玖サン」

 

「ホントですよ…。面倒見に期待しないでって言っといてよ!」

 

そうして話してみて、ふと天子が心配になってきた。さとりと話しているのだろうが、何故か少し不安な気分が募る。彼女は、布団を退けて立ち上がった。

 

「ちょっとー?用なら私がいくけど?」

 

「そんなねーさんの手を煩わせはしないよ。あたいが行くけど…」

 

「…いえ、私が行きたいんです」

 

「天人さんかい?フフフ、止めるのは粋じゃないさね。行ってきな」

 

お燐の言葉に背中を押され、衣玖は駆け出す。そうしてさとりの方へと向かうが、そこに天子はいない。

 

「そうry」

「天子さんなら騒音の方へ」

 

読心により、すぐさま答えが返ってきた。軽くお礼を言うと、衣玖は少し駆け足気味に騒音の方へ。頭痛を感じてふらつくが、その肩をこいしが支えた。

 

「ほら、あっちに居るよ」

 

そうして指差す先に、苦戦しているガイアが見えた。マックスグランドであるが、多少押されてもいる。

 

「…総領娘様」

 

「戦ってるんだよ。…あなたのためにね」

 

こいしの言葉を聞き、衣玖は感謝をいっぱいに感じる。力になれないかと思ったとき、彼女のポケットの中のアイテムに目が行った。

 

「…総領娘様ーーーーー!これをッ!」

 

「!?…コレは」

 

リュウグウノツカイUSBとターンブレイカーであった。彼女はコレに強化アイテムとしての側面も持たせており、衣玖がそれを思い出したが故なのである。

 

「…でも、マックスグランドじゃ出力が高すぎるのよね」

 

必殺技を使ってはいるが、それを使っての変身はできない。衣玖はどうにかできないかと考えた。…そんな時。

 

「……そういえば、なんか月光みたいな…妖力が」

 

「ん?おねーちゃんが月光発電機作ってるんだってさ。で、ツクヨミのパワー引っ張ってるとかなんとか」

 

それを聞き、衣玖の頭に一つのアイデアが浮かび上がる。振り向けば、アーマーを着たラルジュネヌにガイアが吹っ飛ばされている。マガツヒメは若干リヴァーシブルに優勢だが、ラルジュネヌから貰えば相当吹っ飛んでいた。

 

「…総領娘様ッ!グランドルナになってください!」

 

「えっ?……まあいいわ」

 

『ガイア・ザ・ルナ』

 

衣玖の言うことを信じ、フォームチェンジ。しかし相手の攻撃力故反射能力が発揮しきれない以上、マックスグランドからすれば純粋な弱体化である。それを見届け、衣玖はさとりの方へと走っていく。

 

「さとりさん!」

 

「………無茶を言いますね」

 

「まだ言ってはいませんよ」

 

「フフフ、まあ、まだ動かしてはいない段階です。どうぞ、このタンクへ」

 

そうして彼女が入って行ったのは月光発電機の充電タンクである。さとりがコンピューターへデータを打ち込み、発電機のスタンバイが終わった。

 

「逆行させることで()()()()()()()()()()()とは。本当に無茶を言う!」

 

そんな風に言いながらも、さとりは完全に準備を終えていた。パラボラアンテナは、ガイアへと向いている。

 

「行きますよ、衣玖さん」

 

「ええ…はああああああああああああああぁぁぁああああああああぁーーーーーーッッッッ!!!!」

 

タンクの中、衣玖は持てる力全てで、電光を放った。順調に稼働し、どんどんと月光のエネルギーが生み出されていく。

 

「…!!」

 

何事かと振り向く彼女の元へ、月光のエネルギーが一気に放出された。そのパワーを受け、グランドルナは凄まじい力を生む。殴りかかったラルジュネヌを跳ね返し、仮面の中でニヤリと笑った。

 

「…なるほど。グランドルナなら十分こいつの制御もできるしね!」

 

『get started!』

『ガイア・ザ・仮面ライダー!』

 

相手の攻撃を避けたり跳ね返したりしつつ、ターンブレイカーへUSBをセットする。続けて、そのターンブレイカーをバックルへと合体させた。

 

「力借りるわよ、衣玖!」

 

『dragonic girl!break out!』

 

そうして、グリップとして引っ張る。同時に飛び出した光のカーテン…聞き馴染むようにいえば畳。そいつに向かって駆け出した。

 

「…だぁっ!」

 

「おっとっと」

 

白銀のグランドルナの上に、リボンのような装甲が乗せられる。ゴツい外見ではあるが華麗な装飾と爽やかな色合いがすっきりとした雰囲気を与える。何より目を引くのはツインアイに重なるバイザーであろう。ブルーのバイザーが、黒の煌めきに色を足していた。

 

「レガレクスグランドってとこかしら」

 

そんな風に呟きながら、緋想の剣で一撃。一気にダメージを喰らい、ラルジュネヌを跳ね飛ばした。そんな彼女を前に、ガイアは衣玖のスペル宣言ように天に右手を掲げる。そんな彼女に送るべき言葉はただ一つ。

 

「えっと、キャ-テンシチャ-ン!…ですっけ」

 

「うん、苦しゅうないわね!」

 

マガツヒメからの声援の中、月の力満ち満ちたガイアが構えた。駆け出した彼女をリボン型ブースターが支え、超高速の移動へ。その勢いに乗せた斬撃が、一気にラルジュネヌを押した。

 

「そっちもよ!龍魚の…一撃ぃ!!!」

 

そして隙を見てリヴァーシブルの方へ。腕のリボンをドリル状に巻き、雷光と疾風をまとって殴りかかった。大きく怯んだ彼女を前に、マガツヒメは一気に身を引く。

 

『マガツヒメ!turning-breaking!』

 

「せやああ!!」

 

『salut!』

 

凄まじいエネルギーとともに、パンチをたたき込んだ。元々非力で、機械で強化するだけの彼女ゆえに威力自体は高くない。だが、同時に放たれる衝撃波は耐えがたいもの。爆風とともに、変身を解かれた正邪が転げ出た。

 

「でやっ!」

 

「うぐっ!」

 

そうしてラルジュネヌの元へ。腕や肩のブースターの力で高速の斬撃を叩き込み、空中からの急襲攻撃も織り交ぜる。

 

「…こうなれば…出力全開よー!」

 

「おい待て…それは」

 

正邪の制止も聞かず、ラルジュネヌはアーマーのパワーを最大に。しかしその瞬間、特に爆発などはないにもかかわらずアーマーが弾け飛び、()()()()()()()その場から去って行った。

 

「付喪神だって言っただろ。自我がある程度あんだよ」

 

「…じゃあ、パワーをいっぱい持つと」

 

「そらお前にこき使われるより自由を選ぶだろうな。私だってそうする」

 

間抜けにも、ラルジュネヌは弱体化してしまったわけである。殴りかかろうとするマガツヒメを「一対一だから」と止め、ガイアは構えた。

 

『IKU NAGAE!ザ・ライダーフィニッシュ!』

 

「でやああああ!」

 

慌てるラルジュネヌへ、無慈悲に回し蹴りを一発。

 

「はっ!」

 

二発。

 

「せやっ!」

 

三発。

 

「とりゃっ!」

 

トドメにサマーソルトを叩き込み、着地。「おいたが過ぎたわね」とキメたと同時に爆炎が巻き起こり、ラルジュネヌの変身は解除された。

 

『salut!』

 

 

 

 

「はぁ…ったく」

 

戦いが終わった地霊殿で、天子は盛大なため息を吐き出した。何せ、自分のために体力を使い果たして衣玖がまた寝込んだのである。佐島も一緒にため息をつくが、しっかり休みなさいと告げるだけで責めることはない。

 

「もう、ほんっと手間かけさせるんだから」

 

呆れるように言いながらも、天子は笑顔であった。

 

 

 

「ラッキーだったな。ほとんど完成段階だよ」

 

「今度はこき使ったりはしない!一緒に我々の自由を掴み取るのよ!」

 

地底で目を煌かせる『ツクモガミロボ』を前に、針妙丸は腕を突き上げた。応えるようにロボがうなずく。始まりは、近い。

 

Continued on Side story of Masked Rider U




男なら 誰かのために強くなれ

「結局みんなそんなもんよ!」

歯を食いしばって 思いっきり守り抜け

「もう逃げない…受け入れる!」

転んでもいいよ また立ち上がればいい

『Mクリスタル!』『Sクリスタル!』

ただそれだけ できれば

『Nクリスタル!』『Aクリスタル!』

英雄さ

「変身!」

男なら 誰かのために強くなれ

「オーブさん!」「ディケイドさん!」

女もそうさ 見てるだけじゃ始まらない

「心の力、お借りします!」

これが正しいって 言える勇気があればいい

「絆…ネクサス!」

ただそれだけ できれば

「これが…私の心だあああああッ!」

英雄さ

外伝 仮面ライダーU『いと恋し -イドコイシ-』


フォーム名:レガレクスグランド
概要:マックスグランドの性能がグランドアース的だったのに対し、こちらはグランドルナに近い反射などの機能を持った姿。外見としては、グランドルナが衣玖風アーマーを纏った感じ。目にはブルーのバイザーがつき、リボン型ブースターなどで爽やかさが足された外見。機動力と反射能力、そして雷撃による攻撃がその魅力。力関係としては月光下においてはマックスグランドと同等。そしてこの外伝では月の妖力を送り込まれてるのでそれ以上のパワー。
武装:緋想の剣、要石、ターンブレイカー
変身アイテム:
『グランドライバー』
グランドルナと同じ。
『ルナオーブ』
グランドルナと同じ。
『リュウグウノツカイUSB』
エックスゴースターやターンブレイカーで使うUSB。衣玖の物。
『ターンブレイカー』
本編中に登場したもの。ベルトなどの変身アイテムと対応して、ライダーに強化アーマーを装備する機能がつけられている。
変身シークエンス:
1.バックルを装着
『グランドライバー!!』
2.オーブを装着
『ルナオーブ!』
3.USBをターンブレイカーにセット。
『get started!』
4.ターンブレイカーをグランドライバー右側にセット。
『ガイア・ザ・仮面ライダー!』
5.ターンブレイカーとレバーを同時に引っ張る(ルーブジャイロ参考)。
『ガイア・ザ・ルナ!』(グランドライバー)
『dragonic girl!break out!』(ターンブレイカー)
6.体の岩を砕いた後、出てくる畳を通り抜ける。
必殺技:
『ナイトブレイカー』
キック技。
『グランドフィニッシュ!!』
『ナイトブレイカー!!!』

『ライトニンググランストライク』
右回し蹴り、左回し蹴り、右回し蹴り、サマーソルトキックの順で行う電撃を纏ったキック技。
『IKU NAGAE!ザ・ライダーフィニッシュ!』
『salut!』



ものすごく嘘予告甚だしいですねコレ。
もともとは天子が一日竜宮の使いをやらされる話だったのですが、面白さとかその他の兼ね合いでこんな感じに。天界も登場しないと言う。
しかしこの限定フォームは大変気に入っております。
タイトル元は豚乙女の『GURA・GURA』です。ゲーム曲ながら、注目されるべき名曲だと思っています。
さて、次回は上記の通り仮面ライダーUです。何と何のエレメンタルフュージョンかものすごくわかりやすいですね!そんなわけで乞うご期待!!!


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U外伝 いと恋し -イドコイシ-

ガイア読んでからがいいっすよ。
オータは多分お酒好き。


「タイガ、トライブレード!」

 

ヒロユキの掛け声とともに、タイガスパークが煌いて剣が現れる。握ったトライブレードへ、手を当てた。

 

「燃え上がれ!仲間と共に!」

 

「『『『バディーーー…ゴォォォ!!』』』」

 

重なったフーマ、タイタス、タイガのビジョンと共に、ヒロユキは剣を掲げた。そうして、三つの光が集まり友情の炎が燃え上がる。

 

『セヤッ!』『フン!』『シュワっ!』

 

三人それぞれのポーズを取りながら、巨大化する。そして剣を構え、敵、ゼガンへと駆け出した。

 

『俺はウルトラマンタイガ…トライストリウムだっ!』

 

「いやぁーあなたも恐ろしい人ですよ、霧崎さん」

 

「お褒めに預かるほどじゃないさ」

 

その戦いを眺める、二つの影。霧崎ことウルトラマントレギアと、マーキンド星人オータである。シャドー星人を唆した犯人でもある霧崎は、箱と引き換えにエネルギー結晶体のようなものをオータへ渡した。

 

「確かに受け取りました。ゼットンニウム感応石、間違いありません」

 

「ああ、コレも…本物のスペースビースト因子で間違いなさそうだね。ご苦労様」

 

そして、彼は階段を上って屋上へ。箱を開き、街へとビースト因子を解き放った。彼が笑い声を上げた、そのとき。

 

「風真烈火斬!!」

 

『セイヤッ!』

 

タイガの放った光輪と、ゼガンの放ったゼガントビームがぶつかり、ブラックホールが発生した。その出力故か、時空間レベルの歪みまで発生している。

 

「…ゼガンを行かせたのは失敗だったか」

 

ため息をついた霧崎を前に、ビースト因子はブラックホールへと飲み込まれていく。それを追ってか、謎の光が飛び込み、それを最後にブラックホールは消えた。

 

 

 

 

 

「本当にお世話になりました!」

 

「いえ、今度は健康な時にお会いできればと思います」

 

頭を下げる衣玖に対し、さとりも深々と返す。いかにも大人な付き合いの横で、天子は相変わらず偉そうな態度である。しかし、その奥には治ってよかったという安堵も見える。対し紫苑はいつも通りの雰囲気。

 

「おかげさまで明日には復帰できそうです」

 

「それは大変よかったです」

 

そして、こいしが三人を見送る。空へ舞う少女達へ手を振り、彼女は地霊殿へと帰って行った。

 

「あれ、それは?」

 

「お礼ととして佐島さんがくれたのよ」

 

ダイニングに座ったこいしの前に、さとりはお菓子を置いた。結構お高い天界のクッキーらしい。仕事が休憩に入ったお燐も呼び、三人はお茶を始めた。

 

「……言っていいのかな」

 

「言わなくてもわかるわよ」

 

さとりが読んだお燐の心は、「味が薄い」というモノである。しかしそれはさとりも同じこと。苦笑いのまま砂糖をかけた。

 

「あ、おいしい!」

 

「コレぐらいがちょうどいいわね」

 

「そうですネー。…おっと、あたいは」

 

「いってらっしゃい」

 

「頑張ってねおりーん!」

 

手を振る姉妹に振り返し、お燐はその場を去って行った。置かれたクッキーを食べ進めながら、二人は話を続ける。

 

「…仲間って、いいね」

 

「どうしたのよ急に」

 

「天子と衣玖とか…地上の妖怪達を見ててね」

 

そんな風に楽しげに語る。妹が幸せで、さとり自身もうれしく感じてしまう。にこやかに時は過ぎ、こいしは腕時計を気にし始めた。

 

「…時間?」

 

「うん、菫子とね」

 

「そういえば彼女はまだ地底にいたわね」

 

聞けば、もうそろそろ予定の時間だという。ささっと準備をさせ、寝癖が消えない頭へ押し付けるように帽子をかぶせる。

 

「そうそう。何かあるかもわからないわ」

 

こいしの持つ鞄の中に、ライドデバイザーを持たせる。あなたの助けになるわとその背を押したのち、問題ないことを確認してそうして彼女を見送った。

 

「…仲間」

 

そんな彼女に、消えぬ違和感が残る。こいしが今までと違いすぎるのだ。心を開き、そして他人を受け入れるようになった。喜ぶべきことであるが、変化が急すぎるように感じてしまう。

 

「そりゃあそーだよ」

 

「…!?」

 

そんな時、さとりの肩の上にこいしの顎が置かれた。戻ってきたのかとも思ったが、どうもまとう雰囲気が違う。何者か、ゆっくり問うてみる。

 

「んー?私はね、夢の世界のこいし。あの子のホントのこ・こ・ろ!」

 

さとりの輪郭をなぞりながら、そんな風に呟く。ゾッとする心を抑え、彼女は夢の世界のこいしへ、目的は何かと続ける。

 

「この腐った世の中を潰すのよ。汚れに汚れたこの世界をね」

 

「…そう」

 

「なんで私の心が読めないかって顔だね?おねーちゃんや私のサードアイは意識の接続で成り立ってる。潰しちゃえば意識のコネクトが消えて認識されなくなっちゃう。つ・ま・り…夢という意識下の世界ならそんなのいくらでもいじられるってわけ」

 

さとりのまわりをクルクルと歩き回りながら、夢のこいしは続けた。ひとしきり自慢げに語り終えると、彼女はさとりに別れを告げて戸を開けた。とっさに電撃銃を放ち、気絶を狙うが、すでに姿を消しており、影もなかった。

 

「…夢の世界……ねぇ」

 

その言葉に、さとりはドレミー・スイートの姿を思い浮かべる。こいしは『ビランアニヒレイトは心が読めない』と語っていた。その言葉に、不安を抱いてしまう。

 

 

 

 

 

「こいつが…」

 

「ウルトラマンゼロよ。こいつは仮面ライダークウガね」

 

約束の時刻には間に合い、二人はジュース片手に話をしていた。その内容は、直球に仮面ライダーUの姿についてである。

 

「えっと、クロニクルゼアルはこの二人っぽいのね?で…ライジングアップは仮面ライダー1号と…ウルトラマン」

 

「ええ。戦闘スタイルを見てるとどうもね」

 

Uの写真と、ウルトラマンやライダーのフィギュアを置いて菫子は語る。写真を畳の上に置き、その上にSHフィギュアーツを立たせる。もっとも、ウルトラマンは大半がソフビだが。

 

「バスターエネミーが…このエイティとRX」

 

「そう。ウィンドギャラクシーは分かりやすくギンガとWね」

 

戦闘の様子について語りながら、原作のヒーローたちについて聞かせていく。興味が湧いてきたのか、こいしは見てみたいと言う。昭和作品は集まるか分からないと言いながらも、菫子は嬉しそうだった。

 

「映像買うお金なら私からも出すからさ!」

 

「ありがたいわね。…ま、私も実際はそんなに詳しくないんだけど」

 

そうして次の話題に移ろうとした、その時。

 

「いたいた、こっちの私」

 

扉を蹴り壊し、現れたのはこいしである。雰囲気の異様さ以外は、何一つ自分と変わらない。夢の世界の自分であることにこいしが気づくのにそう時間はかからなかった。

 

「くらえっ!」

 

「あぶなっ!」

 

振り下ろした包丁を避け、こいしは外へ。夢のこいしはそれを追いながらアンノウンドライバーを装着した。

 

『Mクリスタル!』『Sクリスタル!』

 

『エレメントフュージョン!』

 

「…変身!」

 

『スケアードマッドネス!』

 

その身に闇をまとい、爆発するように黒が燃え立つ。そうして、黒と赤と銀が狂気的に光る戦士が現れた。仮面ライダーU スケアードマッドネスである。

 

『恐怖に駆られる狂気の心、向かい合わねば勝機はない!仮面ライダーU、スケアードマッドネス!』

 

「…シャドームーン…ダークメフィスト!」

 

「へぇー。あなたヒーローに詳しいのね?」

 

そんな風に言いながら、菫子の方へと目を向けた。しかし狙うつもりもない。あくまで、こいしの方である。対し彼女もOとDのクリスタルをその手にしていた。

 

「偽物ってわけ?シャドーUってわけね」

 

「違うわよ。あくまで仮面ライダーUの一つの姿。あんたがくれればウィンドギャラクシーにでもライジングアップにでもなってあげるよ。そうね、わかりやすさのためにもUE(ユーイヴィル)とでも名乗ってあげようかな」

 

確かに目は黒いが、シャドーのような紫のオーラはない。それはただただ、仮面ライダーUそのものであり、ただただ闇を使うだけの戦士なのだ。偽物などでは、ない。

 

「フン、そんなのどうだっていいわ。あなたはこれから強制送還だもの!そのボディを壊してやれば夢の方に消えるでしょう?」

 

『Dクリスタル!』『Oクリスタル!』

 

「…あれ?剣は!?」

 

鉤爪を構えるUEを前に、こいしはあたふた。いくらやってもエレメンタルカリバーは姿を現さない。仕方なく、彼女はウィンドギャラクシーへ。

 

「変身!」

 

『風が銀河に吹く時に、受け継がれしは英雄譚!仮面ライダーU、「ウィンドギャラクシー!」』

 

「はっ!」

 

「効かないよ!」

 

素早くキックを繰り出していくが、このフォームはすでに()()()()()ようだ。あまり通用はしない。さらには鉤爪『サタンクラッシャー』からの赤い雷光がUを襲う。

 

「マキシマムサンダーボルトぉ!!」

 

Uはやけくそで雷光をため、黄色く染まるクリスタルを煌めかせながら解き放った。しかし簡単に振り切られ、至近距離での一撃を叩き込まれてしまった。

 

「…!」

 

そんな時、彼女はさとりに渡されていたライドデバイザーの存在を思い出す。それをすぐさま腕に装備。瞬間、呼応するように新たなクリスタルがUの手の上に現れた。

 

「…いけるわ、これ」

 

『Xクリスタル!』『Fクリスタル!』

 

『エレメントフュージョン!』

 

「行くよ!」

 

『ザナドゥフォーエバー!』

 

X字の光と蒸気が溢れ出し、菫子とUEは思わず目を背けてしまった。溢れるスチームの中、サイバーに煌く戦士が姿を現した。白と銀をアーマーのメインカラーに取り入れ、バイザーのかかった目やヘッドギアのような頭部が目を引く。

 

幻想郷(ここ)に絆がクロスして、宇宙と永遠がユナイトする!仮面ライダーU、「ザナドゥフォーエバー!」』

 

「宇宙キターーーーーーーーーッッ!!!…って、あれ、なんだこれ」

 

「…こいしちゃん、フォーゼ見たことあるの?」

 

「分かんない…頭に浮かんだ」

 

新たな姿に戸惑いながらも、彼女は殴りかかっていった。予想外の事態ゆえか、UEもそれなりにダメージをくらっている。さらに、直感でライドデバイザーの使い方もわかった。ホルダーにマウントされているUSBから4本抜き取り、ライドデバイザーにセットする。

 

『サイバーブラックキャッツ・アクティブオン』

 

「たあっ!」

 

『装着』を押すと同時に、右腕にはサイバーブラックキャッツのクローがセットされた。相手のクローとぶつかり合い、ギリギリ音を立てる。さらに。

 

『サイバーアトムアヴェム・アクティブオン』

 

「おりゃ!」

 

「…っと」

 

左腕に装備されたのは制御棒型の砲身モジュールである。相手もいい加減苛立ったのか、電撃をばら撒き始める。直撃したダメージはかなり大きい。既に何発かもらったが、これ以上は危ないとアーマーを起動する。

 

『サイバークレイジィラビット・アクティブオン』

 

右足のアーマーで空中へとハイジャンプ。さらに波長がずれ、狙いが定まらない。そんな中、彼女は左腕のアヴェムアーマーをロケット型に展開。ブースターで高速移動しながら、続けてアーマーを起動した。

 

『サイバーハピネスラビット・アクティブオン』

 

『放て!友情の力!ヒーロータイム!』

 

「いいいいいいぃぃぃぃぃっ、さああああああああああ!!」

 

『ライダーロケットザナディウム!』

 

幸運のパワーにより、攻撃がほとんど当たらない。電撃を突き抜けながら、X字のエネルギーとともに急降下キックを繰り出した。

 

「うぐぅっ!」

 

軽く爆煙が舞い上がるが、大ダメージではない。変身こそ解けて居るが、余裕の態度で立ち上がり、ニヤッと笑う。

 

「一杯食わされたなぁ。でもこれで勝ちじゃないよ。……私が見てきてみにくい者達の心を…潰してやる」

 

そう吐き捨て、彼女はその姿を消した。ほぼ同時に、ライドデバイザーへとさとりから連絡が入った。曰く、夢のこいしが地上を狙うであろう点から、地底の入り口の封鎖を行っているため、一旦去るようにヤマメらに言ってきてくれとのことである。

 

「いいよいいよ。他の子達もここから立ち退くってんだし」

 

案外、素直に彼女らはOKした。ぼんやりとではあるが、『古明地のとこの子だし従っとかなきゃ』やら、『こいしの言うことならNoとは言えない』やら、それぞれの思惑が読める。それでも、話を聞いてくれたことが彼女にとっては嬉しかった。

 

「それで……!?」

 

「地震!?」

 

何かをヤマメが言おうとしたその時、凄まじい地震が大地を襲う。さらに、その原因と思われる、巨大なロボットが立ち上がった。それはどうやら例の騒音騒ぎの場所である。こいしはヴァースサイクロンに乗り、そこへと急行した。

 

「うぅ…くっ…」

 

「しっかりして!」

 

「…これは」

 

「こいし…!正邪が怪我を…!」

 

ロボットのすぐ下で、倒れ伏す正邪とその治療をする針妙丸の姿が。曰く、空間に歪みができたと同時に、謎の粒子がロボットに入り込んだと言う。指差す先に、その歪みが。

 

「…ブラックホールってのに似てるわね。もっと強いと聞くけど」

 

彼女らには知りようのないことだが、それはスペースビーストがツクモガミロボに取り付いたが故の事態。とにかくどうにかせねばと思い、アンノウンドライバーを手にした。瞬間、落ちてきた瓦礫にこいしが下敷きに。

 

「うぐっ…」

 

大怪我は免れたようだが、挟まって動けない。手を伸ばすが、ギリギリアンノウンドライバーに届かない。あとちょっと頑張ればという時、現れた夢のこいしが、そいつを蹴り飛ばしてしまった。

 

ずぶ濡れになったままで アクセルを踏み込んで

 

「あははっ!好都合好都合!このまま腐った生き物どもを消し去っちゃいなさい!」

 

そんな風に愉快そうに笑いながら、去っていく。針妙丸ではアンノウンドライバーを持ち上げられない。どうすればいいのか。ロボが足を振り上げ、絶望に染まろうかというとき。

 

あの頃の情熱をもみ消す

 

『諦めるな!』

 

そんな声が聞こえた気がした。こいしはただ必死に、歪みから現れた光を掴み取る。動けないまま、なんだそれはと吐き出す正邪を前に、こいしは頭に流れ込んだ光を、ただ言葉にした。

 

高鳴る鼓動暴れる ガムシャラだったあの頃の

 

「絆…ネクサス!」

 

そして、手の上で形をなした光、『エボルトラスター』を引き抜いた。ただただ、夢中…ほぼ無意識下のことであった。

 

僕に僕がほらもう追いつかれる

 

「シュワ!」

 

溢れ出る光の中、右腕を突き上げながら、巨人がその姿を現す。銀の体が煌めく巨人を見て、遠巻きに見ていた菫子は感嘆のため息と驚愕の表情を見せた。

 

後ろなんか見ずに走り続けてきたけど

 

「ウルトラマン…ネクサス!?」

 

何が起きたのだろうかと、こいしは自分の体を見る。意外にも、巨大化することに違和感やその類はない。むしろどうすればいいかは頭に流れ込む。

 

知らぬ間に甘い誘惑に流されていたんだ

 

「デュアッ!」

 

駆け出し、キックを放つ。怯んだツクモガミロボにさらに拳を叩き込んでいき、一気に突き飛ばした。そんなロボを前に、ネクサスの姿が変わる。

 

パワーを絞り出せ ハダカのままの欲望で

 

「シュアっ!」

 

体に全体的に青が入り、さらに緑の差し色が多くかかる。ジュネッスブルーに近いが、しかし一目で違うとわかる。それがこいしのジュネッスである。

 

僕はちっぽけな 青い果実でしょ

 

「だあああああ!」

 

全身でぶつかっていくようなファイトスタイルで飛び込み、連続でパンチやキックを叩き込んでいく。ツクモガミロボはどんどんとダメージを負っていく。そう、その付喪神の恐怖心こそがビーストの餌。ゾンビのように、ロボは何度でも立ち上がった。

 

勇気を捻り出せ 今の現実に

 

「…はっ!」

 

その腕のアローアームドネクサスからシュトロームソードを出現させ、一気に斬りかかる。ばちばち雷光を放つロボへさらに追撃を行い、爆破。分子レベルで消滅し、ビースト因子は跡形もなく消えた。

 

満足したら 届かないこの想い

 

「一瞬だけの付き合いですが…ありがとうございました!」

 

自分の元を去っていく光へと礼をし、こいしは見送った。彼女へと、『信じることを諦めないでくれ』と残してウルトラマンネクサスは去っていく。

こいしの手に、Nのクリスタルを残して。

 

 

 

「あーあー結局どうするのが正解なのかなー」

 

「その…ドーンオースってのになりたいんだっけ?さあねぇ。鍛え足りないとか?」

 

「一回変身できたよ」

 

「じゃあ力を貯め直さなきゃいけないとか?」

 

「そんな長期間?」

 

あまりにいろいろあり過ぎた。訳がわからなくなったこいしは呑むことにした。勇儀達鬼に混ざり、談笑と共に酒を減らしていく。結構楽しいものである。

 

「…はぁ、切り札も暴走して謎の巨人が破壊かぁ」

 

「ウルトラマンネクサスっていうらしいよ」

 

「んなことどうでもいいんだよぉ」

 

すぐ近くの席で、正邪と針妙丸がヤケ気味に呑んでいた。一応里の争いでは対立する者同士だが、いくらかかわいそうにも思う。そんなこいしへ、二人は睨みの視線を向けた。何せ、彼女は目の前でネクサスの正体を見たのだから。

 

「…ま、実際は助けてもらったんだよね」

 

「それはそうだけどよ」

 

正邪は納得いかない様子である。そんな二人を見届けながら、勇儀はこいしへと、最近はどうなのかと問うた。

 

「んー?すっごく楽しいよ、みんないい人だし!」

 

「そ、そうか」

 

あまりにも昔と違いすぎるというのは、さとりが思ったのと似た感覚。だが、無理をしているわけでも嘘をついているわけでもなさそうなのが、さらに変であった。

 

「なんか…うーん、『感じ』がこもってないんだよ」

 

「え…?」

 

「こいしの中の優しさだけを残したっていうかさ。前の人間や妖怪の心の汚さへの怒りがさ、ないんだよ。乗り越えたとか受け入れたじゃなくて…消滅」

 

それを聞き、こいしの心へと浮かんだのは夢の自身の存在であった。奴の言うことは、かつてこいしが思ったことを極端化させたもの。そう、言うなれば自分の思いが『分離』したのだと彼女は気づいた。

 

「…結局アイツも私…なのかな」

 

もしかして、ドーンオースになれないのも。そんな風に、ぼんやりと考え始めたそのとき。

 

「んだこれ!?」

 

突如大声と共に正邪が立ち上がった。あまりにも急だったので、鬼達もほぼ全員同時にビクッとしていた。曰く、付喪神達の魔力が勝手に動いてると言うのだ。

 

「なんで分かるの?」

 

「状態把握の術を仕込んでるからな。…ったく!」

 

そう言って面倒そうに駆け出していく。ほぼ同時にリヴァーシブルの変身音も響き、さらには正邪が苦しむ声まで。流石に異常事態であり、こいしや鬼達は何事かと外へ出た。

 

「うぐっ…」

 

「何よアレ…」

 

リヴァーシブルを蹴り倒していたのは、ラルジュネヌが着てガイアと戦ったツクモガミアーマーであった。だが、中身はなく、鎧だけがカタカタ音を立てて歩いている。

 

「…死ネッ!」

 

正邪の元へ駆け寄る針妙丸に近づき、鎧は掴みかかった。その手に力を込めるのは、握り潰すためであろうか。こいしは考えるより先に変身していた。

 

『仮面ライダーU、「ライジングアップ!」』

 

「ぜああああ!」

 

「邪魔ヲスルナ…我々ハ叛逆スル!」

 

右腕にブレードを展開し、鎧はUへと切り掛かった。バリアでそれを防ぎ、相手がのけぞった瞬間につかみかかる。その隙を見て、正邪は針妙丸を変身させた。

 

『turn on!little girl!ラルジュネヌ!』

 

「感謝するわっ!」

 

人間大へ変化しながら、ラルジュネヌは針で斬りかかる。しかしあまりダメージは入らない。怨嗟の声を上げながら、鎧はさらに暴れた。

 

「…オマエ達ハ理解シテクレルト思ッテイタ!ダガ…都合ガ悪ケレバスグ破壊…ドイツモコイツモ同ジダッ!」

 

「…っ!この子たちの言ってることはもっともだわ…」

 

「だからって…死ぬつもりないでしょ針妙丸!」

 

「でも!」

 

ラルジュネヌの決意が揺らぎ、さらに不利な状況に。そもそもパワー面でも2人でやっとどうにかできたレベルである。UはDとOのクリスタルを悲しげに見つめた。

 

「モット…進化シテヤル!生キテヤル!」

 

「うぅっ…」

 

さらにラルジュネヌは心理的にも迷いが見られる。そんな中、追い討ちのようにUEが現れた。Uの首を掴んで投げ飛ばし、クローで斬りかかる。

 

「ライダーアタックパンチ!」

 

リング状のエネルギーをまとったパンチをくりだす。初めて見る技が故か、いくらかダメージが入る。しかし、2、3発は効くがだんだんと対処するようになるのはさすが自分というところか。

 

「やれやれ…」

 

『時が終わりを告げようと、倒すは悪の侵略者!仮面ライダーU、「バスターエネミー!」』

 

エイトケインを構え、改めて飛びかかる。激しい動きと共に、プロレス技やら武道の投げ技。さらにはフェンシングのフォームまで試し、新たな方向から攻めていく。読み物の知識だけではあるが、ある程度は効果を見せる。

 

「…はっ!」

 

「っ!」

 

しかしネタも尽きるというもの。杖からの光線は、もはやあまり効果を見せない。ある程度の疲弊はあるようだが、UEは未だ優勢だ。

 

「にしてもさ、あなたは何だって私を邪魔するの?」

 

「何でって…大事な人を傷つけられるかもしれないってのに!」

 

「大事な人?薄汚い欲に塗れた汚い生き物達が?」

 

「薄汚っ…!」

 

「違わないよね?そう、結局みんなそんなもんよ!この世界を変えられる力を持っている今…大チャンスでしょ?」

 

UEが心底謎であるかのように言う。それはこいしの「人を信用できなかった心」である。今のこいしの元にあるのは「人を信用しようと決めた心」。

 

「……結局誰かを信じることなんかできないのかな」

 

「そーだよ!だって夢のあなたが私として……感情の分離までしちゃってるぐらいだもん!無理するよりさぁ、もう諦めよ」

 

「……」

 

「あの付喪神もだよね。進化したいとか何とか思ううちに…だれかを疎んだり心の奥底で嘲笑う醜い心を持つんだ。そういう意味では…生まれるべきじゃないのかもねぇ」

 

「…!」

 

夢の自分のささやきを聞き、こいしの中に怒りが沸き始める。それは、こんな心を抱え、さらにはごまかし続けていた過去の自分に対するものでもあった。

 

「先に進もうとする意思を…笑うな……」

 

「だって愚かじゃない。これはあなたが思ってる事なんだよ?」

 

「違う!!私は…先に進もうと」

 

「うっさいなさっきからァ!先に進んだ結果がこれだ。結局心の闇に負けちゃうんだよ」

 

苛立ってきたUEが爪を振り上げたそのとき、こいしの手の中に新たな光が煌めいた。そのAクリスタルを改めて握り、そして前を見据える。

 

「違うね。あなたのおかげで…本当に信じる事に気づけたのよ。一種の自問自答だね!

 

『Nクリスタル!』『Aクリスタル!』

 

『エレメントフュージョン!アナーキーノーチス!』

 

眩い光がUを包み込み、爆発するようにその姿を現す。黒のボディをメインに、金と銀が光る。さらには赤と青の鎧が乗るその姿は、美しきものであった

 

『叛逆の魂に気づくとき、目覚めるは進化の絆!仮面ライダーU、アナーキーノーチス!』

 

「…はっ!」

 

ネクサスと融合した時と同じように、駆ける。その新たな攻撃一発一発がダメージを与えていく。さらにグリップを出現させ、そこに光剣が現れた。

 

『放て!進化の力!』『ヒーロータイム!』

 

「くらえッ!」

 

『オーバーレイ・セイバー!』

 

「ううっ!」

 

炎をまとった光の一撃が爆裂し、UEを一気に吹き飛ばす。続けて光剣を縮め反対側からも同じ長さに展開。薙刀の形状にし、続けて斬りかかった。

 

『放て!進化の力!』『ヒーロータイム!』

 

「ぜあっ!」

 

『アローレイ・ハルバード!』

 

「ぐぅあ!」

 

続けて薙刀を弓の形に変え、射出。打ち上げる形で飛ばし、地面に墜落した。さらに足にエネルギーを貯め、連続でキックをぶつけていく。

 

「…なんで…こんなに強いの!」

 

「お前が諦めた進んでいく力だからだよ!」

 

『放て!進化の力!』『ヒーロータイム!』

 

ふらふらとしたUEを前に、ボタンを押し、スロットを展開する。そうして今一度押し込み、三度目の必殺を発動させた。

 

『クロスレイ・ライダーキック!』

 

「であああああああ!」

 

「うぐぅあああ!」

 

大地に出現した紋章を吸収し、スパークさせた光と共に空へ跳び上がる。そしてそのまま急降下キックを叩き込み、爆発と共についにUEの変身を引き剥がした。

 

「…っ、私のボディを壊すのね。…また、見ないフリを」

 

「しないよ。もう逃げない…受け入れる!」

 

膝をつく夢の世界のこいしへ、ゆっくりと歩み寄り、変身を解いて視線を合わせるように彼女も膝をつく。その目は優しく、決意に満ちたもの。

 

「私は…自分を信じることを諦めない。あなたの憎しみも全部…受け止める!」

 

「…そんなのできなかったじゃない」

 

「だけど今は違う。昔より強くなれたはずだよ、みんなのおかげで」

 

そう言って抱きとめると同時に、夢のこいしは溶け、夢塊へと戻っていった。夢が夢へと戻っていったのだ。そして、こいしの手の中にはSとMのクリスタルが。

 

「…っ」

 

ふと、あんな奴ら助けなきゃいけないのかと、疑問が浮かぶ。しかし彼女はそれを振り払い、駆け出した。

 

「こいし…!」

 

ようやく立ち上がったリヴァーシブルと共に、ラルジュネヌは鎧相手に粘っていた。しかし二人とも今にも負けそうである。こいしは今一度クリスタルを構えた。

 

『Sクリスタル!』『Mクリスタル!』

 

『エレメントフュージョン!』

 

「変身!」

 

『スケアードマッドネス!』

 

まとう闇のオーラから、雷光と共にその姿を現す。しかしもう迷いはない。今や心の闇は受け入れ、彼女のものなのだから。

 

『恐怖に駆られる狂気の心、向かい合わねば勝機はない!仮面ライダーU!、「スケアードマッドネス!」』

 

「闇を抱いて光となる!」

 

正義の闇でもって、彼女は鎧を追い詰めていく。しかし、相手は意思の集合体である。その攻撃にこもった感情のパワーは凄まじい。

 

「…今ならいけるよね」

 

そして、彼女はDとOのクリスタルを手にした。きっと、自分の本当の心を解き放って変身できるのであろう。初めての時は、まだ分離する前で、さらに本心からやらねばと思ったから。

 

「闇を受け入れた…本当の私なら!」

 

そうして、二つのクリスタルを握ったとき、心の中のヴィジョンが映る。子供達の声、大人達の夢。愛された、二人の旅人が。ハーモニカが響く中、カメラのシャッター音が刺さる。

 

「何で変身解い…えっ何その格好!?」

 

「ふざけてんのか!」

 

「…こういうものなんだよ」

 

瞬間、こいしは黒の全身タイツになっていた。だが、それがどういうことなのかは、とうにわかっていた。

 

「ディケイドさん!」

 

『Dクリスタル!』

 

『フン』

 

「オーブさん!」

 

『Oクリスタル!』

 

『デュワッ!』

 

こいしが二つのクリスタルを入れると、それぞれのタイミングで仮面ライダーディケイドとウルトラマンオーブ オーブオリジンのヴィジョンが現れる。

 

『ネオフュージョン!エレメンタルカリバー!!』

 

そして現れた聖剣を握り、ポーズをとってベルトへ接続。二横に出現したディケイドとオーブも動きをリンクしながら、オーブカリバーとライドブッカーを動かした。

 

「心の力、お借りします!」

 

『纏え、心の力!』

 

「変身!」

 

『ドーンオース!!』

 

ハーモニカとギターが優しく奏でるリズムの中、二人のヴィジョンがこいしに重なり、光が足元からその形を成す。さらに10個のアーマーが全方位から合体した。そうして、胸のクリスタルの形状に合わせてO字を手で作り、仮面ライダーU ドーンオースがその姿を現した。

 

『自身を取り戻した時、夜明けに誓う物語が始まる!覚醒せよ!仮面ライダーU、「ドーンオース!」』

 

世界中が君を待っている

 

「通りすがるは銀河の光!これが…私の心だあああああッ!」

 

手をぱぱっと払い、エレメンタルカリバーを構え、今一度駆け出した。その攻撃にもはや迷いなどない。吹き飛ばした鎧を前に、Uは今一度剣を握る。

 

闇夜を照らせ光の戦士よ

 

「あなたの生きたい、進みたいという意思は素晴らしいものだよ。でも、誰かを傷つけるってなら…今は力を失っていて」

 

「ナゼダ…我々ハ……!」

 

世界中が君を信じてる

 

リヴァーシブルとラルジュネヌが押さえ込む鎧へパンチを叩き込み、改めて向き合う。相手の感情は否定できない。だが、怒りに駆られる付喪神をそのまま自由にさせることはできない。そんな鎧を前にこいしは、三つのクリスタルを空へ解き放った。

 

「ゼロさん!ギンガさん!エックスさん!」

 

二つのパワーで

 

『デエエリャァ!』『シャオラ!』『イィーーサァァーーーッ!」

 

フルムーンウェーブ、ギンガコンフォート、ピュリファイウェーブ。三つの光が重なり、エレメンタルカリバーで空中に描いたOの文字と重なる。

 

戦えウルトラマンオーブ!

 

「はっ!」

 

そして放った粒子が鎧を浄化し、暴れる力だけを鎮静化させた。

 

「…ごめんね、みんな」

 

「潰しといた方が楽だろうが…」

 

変身を解いて膝をつく針妙丸に対し、正邪は腑に落ちない様子だが、一旦はそれを見守っていた。

 

 

 

 

「どいつもこいつもアホばっかよ!ほんときったないことばっかでさー!まあそーいうのも面白いんだけどね!」

 

翌日、こいしは鬼達と昼間っから飲んでいた。いつもと違い、その内容は愚痴や文句である。

 

「分かるよそーゆー気持ち。すぅーぐ嘘つくからさ!」

 

「勇儀さん分かってる!ほんとだよ!一回ぶっ飛ばそうかなみんな」

 

ゲラゲラ笑いながら吐き出す文句に、勇儀は「本音」を感じ、どこか嬉しく感じた。




フォーム名:アナーキーノーチス
概要:黒と銀のスーツに赤と青二色のアーマーを乗せ、金の模様を多く入れた複雑な姿。その特徴は『進化』という点。経験を積んでいくとともに必殺技や武器が進化していく。『仮面ライダーアギト』と『ウルトラマンネクサス』を思わせるフォーム。
武装:アームドグリップ
光剣が飛び出すグリップ。薙刀と剣になる。
変身アイテム:
アンノウンドライバー
ライダークリスタル(NA)
変身シークエンス:
『Aクリスタル!』
『Nクリスタル!』
『エレメントフュージョン!』
『アナーキーノーチス!』
必殺技:
『クロスレイ・ライダーキック』
全身にエネルギーをまとい、スパークさせてから放つキック技。
『放て!進化の力!』
『ヒーロータイム!』
『クロスレイ・ライダーキック!』

『オーバーレイ・セイバー』
グリップから展開するブレードで放つ必殺斬撃。
『放て!進化の力!』
『ヒーロータイム!』
『オーバーレイ・セイバー!』

『アローレイ・ハルバード』
光の槍を弓状に射出する必殺技。
『放て!進化の力!』
『ヒーロータイム!』
『アローレイ・ハルバード!』
変身口上
『叛逆の魂に気づくとき、目覚めるは進化の絆!仮面ライダーU、アナーキーノーチス!』


フォーム名:ザナドゥフォーエバー
概要:黒地のスーツに白と銀が入り、四肢には白黒ツートンのアーマーが重なる。頭部はヘッドギアっぽくなっており、クリアのバイザーがちょっと宇宙服っぽい。全体的にゴツく、堅い。『仮面ライダーフォーゼ』と『ウルトラマンエックス』を思わせるフォーム。
武装:モジュールアーマー
両手足に付く装備。サイバー怪人から作ったアーマー。
『キャッツアーマー』
ブラックキャッツの爪
『アヴェムアーマー』
制御棒型砲身
変身アイテム:
アンノウンドライバー
ライダークリスタル(FX)
変身シークエンス:
『Fクリスタル!』
『Xクリスタル!』
『エレメントフュージョン!』
『ザナドゥフォーエバー!』
必殺技:
『ライダーロケットザナディウム』
モジュールアーマー発動でのキック技。X字のエネルギーをまとうz
『放て!友情の力!』
『ヒーロータイム!』
『ライダーロケットザナディウム!』
変身口上
幻想郷(ここ)に絆がクロスして、宇宙と永遠がユナイトする!仮面ライダーU、ザナドゥフォーエバー!』


いうまでもありませんが、ネクサスとアギト、エックスとフォーゼですね。スケアードマッドネスはすでに貰っていた設定で、使いどころがなかったのをこのタイミングで。Uは並列フォームをいっぱい妄想できて楽しいですねぇ。個人的にはニュージェネ以外の平成ウルトラマンがゼロしか居ないのが寂しかったのでネクサスを加えた感じです。ティガか迷いましたが。
好き勝手やったの極みみたいな回でしたね我ながら。ギチギチすぎた感はありますが。結果としてはドーンオースに落ち着く感じで。挿入歌演出も今後たまーにやろうと思います。
タイトルは直球に石鹸屋の「いと恋し idこいし」から。ネクサス風に!


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導入編
第1話 仮面秘封倶楽部


タイトルは全て曲タイトル風。今回は「少女秘封倶楽部」より


「はぁ…はぁ…こっちは手が薄そうね!」

 

少女宇佐見蓮子は親友を抱きかかえて駆け回っていた。

なんとも奇妙な話だが、彼女は人型の武装警備ロボに追われている。山奥の廃ビルへと結界暴きに来たはいいが、中が現役の秘密組織だと予想できるわけないではないか。

彼女は事の理不尽に溜息をつく。外に逃げようにも行く手が阻まれており、中を動き回る他ない。適当に扉を開け、急いで入るとバタンと大きな音を立てて閉めた。

彼女は古いビルで助かった、という風に自動ドアでなかった安心感とともに、警戒を解かぬまま座り込んだ。

 

「ごめんなさい…ねぇ蓮子、私を置いて逃げて。私ならどうなってもいいわ!」

 

「あぁ!?何言ってんのよ!んなことするわけないでしょ!ほら、しっかり掴まりなさい」

 

少女マエリベリー・ハーンは自分の傷ついた足を申し訳なさそうに見つめた。

そんな彼女を蓮子はただ大事に抱えるだけである。ゆっくりと立ち上がり、再び出口を探し始めた。

 

さなか、突如爆音が響き渡った。振り向いた先は扉だ。砕け散った扉を尻目に蓮子は片っ端からドアノブを握る。

しかしどれ一つ動く様子はなかった。蹴破る力も、19歳の少女にあるわけがない。

 

焦り、いや、絶望と言うべきか。暗い感情が爆ぜるように彼女の中に広がる。

 

「クソっ!」

 

らしくない汚い罵声さえ飛び出る。そんな彼女に、警備ロボは銃口を向けた。

 

そして、銃声。しかし結果として近くのプラスチックボックスが砕け散っただけであった。

 

さらに続けて銃声が放たれた。弾幕とも言える凶弾たちが箱に壁に窓に天井に銃痕を残す。そんな中、一個の箱から、撃たれた勢いに任せてジュラルミンケースが飛び出た。

 

「…!」

 

蓮子はそれを、無意識に手に取っていた。手に取らなければいけない気がした。

 

「うわああああぁぁぁ!!!」

 

メリーを床に座らせると、意識を自分に向けるよう大声をあげる。こちらにカメラを向けるロボットの脳天に、重力加速度×ジュラルミンケースの質量の一撃をぶち込んだ。

 

ビリビリと電撃を起こすロボから拳銃を奪い、他のロボットへ銃撃を向ける。破壊こそできないが、動きがおかしくなっているのは確実である。やった。そう思った瞬間に、銃は反応をやめた。

 

「弾切れ…」

 

焦りに再び声が漏れる。ロボットの繰り出した蹴りをとっさにジュラルミンケースで防御した。それでもケースごと壁までぶっ飛んで、そして勢いそのままにケースから何かが飛び出る。

 

「何……これ?」

 

巨大な目のような気持ち悪い、しかしどこかかっこいいデザインの機械だ。何これと声を上げつつも、蓮子にはそれの使い方はなんとなくわかっていた。

腰にそれを当てると、ベルトが巻かれる。やはりバックルだったか。一人頷く彼女。続けてケースから赤いレンズのようなクリアーのプレートを取り出し、バックルの側面に差し込んだ。

 

『look the star…』

 

ちょうどコンタクトレンズのように目の上に重なると、光とともに、起動音が響く。

これを使って奴らと戦えるはず。レバーを操作し、その身を構える。

 

…しかし、何も起きない。再び焦り。

 

「何よ!動いてよ!」

 

いくらレバーを押し込んでも音一つ立てない。ロボットの警戒は蓮子から離れ、メリーへ。排除せんと近づくロボ達。させまいと蓮子は駆け寄り、メリーを庇うように抱きついた。

 

「動けよぉっ!!」

 

今一度、レバーを操作する。しかしロボット達は無慈悲にグレネード弾を飛ばす。そうしてあたりに爆炎が広がった。

 

『we are star night fantasy!』

 

その豪炎の中、光、音、粒子が爆散する。

ゆっくりと立ち上がる影は、マエリベリー・ハーンでも、宇佐見蓮子でもない。フルフェイスの異形の鎧をまとった騎士であった。

 

「あれ・・・メリー?メリー!?どこ!?」

『私はここよ!…あなたこそどこ?』

 

キョロと振り向く鎧の女。ふとその動きを止め、自分の手を見た。

 

『私…体が勝手に…いえ、私の胸はもっと大きいわ。私…蓮子の中に入ってる!?』

「うるさいわぃ!しかしまあ…私は自由に動いてるあたり、貴女が私の中にいて視界を共有してるって言うのが妥当かしら?」

 

一瞬でその事態を飲み込むと、鎧をまとった蓮子は、ロボットへフックを叩き込んだ。

ぐしゃっと重い音を立ててロボットは歪む。そして動くのをやめると、べこんと鳴らして壊れた。

 

「圧倒的パワーね。貴女を傷つける心配もないし」

 

『任せたわよ、蓮子…!』

 

近くのロボの腕を引きちぎり、それを武器に他をなぎ倒す。自分で恐ろしくなるほどのパワーである。大学生がこんなもん持ってていいのかとメリーは思ったが、状況が状況だ。神様だって文句は言わないだろうと言葉を飲み込んだ。

ふと横を見れば、放射状に亀裂の入った窓ガラスに、その姿が映っていた。

 

黒と白を基調に、赤のアクセントを入れた刺々しくメカメカしいスーツと鎧。帽子ようなデザインと、星の模様、赤の複眼レンズが目を惹く。

 

『まるで貴女のために生まれたようなスーツね。ちょっとプロレスの悪役みたいだけど』

 

「ならヒール。この姿の名前はヒールでどうかしら」

 

『まんまプロレスじゃないのよ』

 

「いいじゃないの、響きがいいわ。さ、いつまでもしゃべってるわけにゃいかなさそうね」

 

そう言ってロボの増軍に目を向ける。さらには蜘蛛のような戦闘用ロボットまで。蜘蛛ロボの指揮に合わせ、警備ロボが駆け出した。

 

蓮子、いや、ヒールと呼ぶべきか。ヒールは先ほどのジュラルミンケースに近づくと、中からガチャガチャとアイテムを取り出し、ベルト側面の専用フックにかけた。

 

「あら、これスマホって奴よ。おじいちゃんが持ってたわ」

 

『これがガラパゴスケータイよね?実物見る初めてよ』

 

その中からグリップとスマホを取り出し、その二つを合体させる。誰に言われたわけでもないが、こう使うということは何となくわかった。

 

その使い方は正解だったらしく、高圧粒子ブレードがスマホの先端から飛び出る。ブンブンと試し振りののち、警備ロボへ斬りかかった。

 

その一閃で、ロボ達は綺麗に二つに割かれてしまう。あまりのエネルギーに、オーバーヒートの末爆発した。しかしヒールがブレードに触れても一切ダメージなし。恐ろしい武器であると自分の獲物ながら冷や汗をたらした。

 

ジュラルミンケースを拾うと、行く手を阻むロボ達を適当にぶった切りつつ、廊下を駆け抜けようと先を向く。しかし蜘蛛ロボがそこに立つ。

 

「でやぁ!」

 

ブレードで斬りつけるが、真っ二つとはいかない。どうやら軍事用として生まれただけあって警備用より硬いらしい。しかしダメージが入っているのは確か。脚を狙ってさらに斬撃を加える。

 

「…そんなに効いてなさそーね」

 

蓄積があるものの大きなダメージとなる様子はない。できれば手早く倒したいのだが。そう思ったとき、右腰にかけたアイテムに目がいく。目薬型のアイテムがジャラジャラかかっていた。うち一個、剣の模様の書かれたアイテムを取り、バックルにセット。スロットを動かした。

 

「使ってみますか…」

 

『slash eyes!』

 

ブレードの圧力がさらに強化。横切りの一撃が前脚を二つ折った。

 

『チャンスじゃないの!必殺技とかないの?』

 

「えっと…これかな?合わせて使っちゃおうかしら」

 

続いてジャンプが書かれたアイテムを装着。スロットを操作した。

 

『jump eyes!』

 

「ジャーンプ!からの〜!」

 

続けてキックのアイテムを装着。操作。

 

『kick eyes!』

 

「シューット!!」

 

右足を前に突き出し、蜘蛛ロボの頭部に打ち込む。頭部が弾け飛び、うなだれたと同時に爆散した。

 

『お見事ね』

 

「でしょでしょ!」

 

仮面の下でニコッと笑い、廊下の先へ走った。固そうな扉が目の前にはだかったが、高圧粒子の元に意味は成さない。

 

「結局こうなるのか…」

 

扉の先に広がるのは広大な空間と謎の機器だ。その先にカーテンに囲まれた何者かの影が映った。

 

「やはり運命は収束するものなのだな」

 

『何の話よ。私達はここから出してもらいたいの。悪意はないわ』

 

「そういうこと」

 

そう言ってカーテンに向かって歩き出すが、足元にレーザーガンを撃ち込まれ、その歩みを止める。

 

「逃げることなどできはしない。悪意の有無は関係ない。貴様らには消えてもらう…と言いたいところだが、運命がそれを許さない」

 

「はぁ?私達は迷い込んだけだって!」

 

『違うわ蓮子、【誘い込まれた】のよ』

 

「…まぁ、そういう事だ。とりあえず目の前から消えろ」

 

その一言とともに指を弾くカーテンの中の者。同時にとてつもない暴風が生まれ、ヒールを襲う。中央にどんどんと飲み込まれていき、二人はその意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

「……あれ?ここ…」

 

次に蓮子が見たのは、日本的な建物の天井である。ゆっくり起き上がると、横には窓から外を眺めるメリーが居た。

 

「あら、お目覚めね」

 

「…夢?」

 

「それがヒールの話なら悪いけど現実よ。ほら」

 

そう言ってメリーは部屋の角に置かれたジュラルミンケースを指差した。蓮子は溜息と共に頭を抱え、窓を覗き込む。

 

「…撮影用のセット?」

 

第一印象はそれ。目の前に広がる風景は、そうとしか形容できないほど江戸時代であった。

目を見開いてメリーと外を交互に見る蓮子に対し、メリーは分からないわとかぶりを振る。

 

「よう、起きたか」

 

扉が開くと同時に、気の良さそうな男性が二つお盆を置いた。上に置かれていたのは蕎麦だ。二人は、そういえば結構食べてないなと思い、自身が空腹であることを自覚した。いただきますと一言放ち、箸を手に取った。

 

「しっかり治るまで居ていいからな。治ったらとりあえず博麗神社に行くことだ」

 

そう言って男性が去ろうとする背中をメリーが呼び止め、一言をかけてみた。

 

「今は、何年ですか?」

 

「今年?えっと、135季で…外の世界は2018年、かな」

 

そう言い残し、男性は階段を降りていった。それを聞き、二人は訝しげに顔を見合わせる。

 

「…半世紀近くタイムスリップしたわね。でもこれどう見ても江戸よね?天皇歴2018かしら」

 

「とりあえず現代じゃないのは確実ね。私達は未来人って訳」

 

「訳わかんないわ。あなたの夢ならともかく、私も一緒にタイムスリップだなんて」

 

蓮子は困り気味に頭をかいた。ひとまず食べ終えた食器を下に運び、キッチンへ置く。彼女達が居たのは蕎麦屋の二階で、一階は人で賑わっていた。

 

「あー、体痛いな〜、動くのもだるいわ」

 

「あんだけ戦ってればそりゃあね」

 

暖簾をくぐって、外へ出てみる。見れば見るほど江戸時代だ。しかし、ゲーム機を持って意味わからずこねくり回す子供や、眼鏡をかけた男、カメラを持った少女とその後ろをついて歩くガラケーを持った少女。二人はますます訳がわからない顔だった。

 

さなか、人だかりから叫び声。突如何かから逃げ惑う人々。何事かと向かってみれば、そこでは蜘蛛のような怪人が暴れていた。空を飛ぶ、紅白の服を着た巫女のような少女が応戦していたが、防戦一方であり、どちらが優位かは見て取れる。

 

「蜘蛛型ロボの次は人型クモって訳?全く」

 

バックルをケースから取り出す蓮子。しかしその横からメリーがバックルを奪い取り、腰に巻きつけた。

 

「?…何のつもりよ」

 

「私、あなたより1時間ぐらい早く起きたからマニュアル読んでたのよ。…フォームは二つあった」

 

そう言って、蓮子のものとは違う、青いレンズプレートを取り出し、ベルトに挿入。

 

『look the line!』

 

しっかりと蓮子の手を握ると、レバーを押し込んだ。

 

「変身!」

 

「変身!?」

 

『we are dream night fantasy!』

 

光が放たれると同時に、蓮子が粒子化。メリーに取り込まれたのち、スーツが装着される。

 

白と紫を基調とし、青い複眼レンズが目立つ、ゆったりとした姿。謎の文字が刻まれたスカートは神々しく、悪役のheelよりは癒しのhealが似合う姿である。

 

『貴女が動くこともできるのね』

 

「そ、どうやらこの姿、仮面ライダーというらしいわ。ご存知のヒーローね。どうする?」

 

『その人気シリーズに合わせて仮面ライダーヒールでどうかしら。この姿はナイトメアモード。私はスターボウモード。どう?』

 

「いいじゃない。仮面ライダーヒール ナイトメアモード。うん、じゃあ行くわよ!」

 

威勢良く向き直ると、グリップを取り出しスマホではなくガラケーを合体させると、ガラケーを開き、銃が完成した。

銃口を妖怪へ向け、射撃を飛ばす。怯む蜘蛛へ駆け出しつつ、射撃を続けた。

 

「ぐぉ!」

 

呻き声と同時に、蜘蛛が糸弾を発射する。鋭い糸弾が真っ直ぐヒールへと向かった。

 

『ちょっと!来てるわよ!』

 

「まあまあ見てなさい…結界を…」

 

焦る蓮子をよそにメリーは構える。当たる!その一瞬に連呼は心の中で目をつぶった。

ボフン!と、着弾した音が響くが、明らかに体に当たる音ではない。ヒールの振り向いた先には、穴が空いた土があった。

 

『え?』

 

「アーマーに張られた結界をいじって体をバラバラにしたり穴をあけたりできるのよ」

 

『なかなかすごいわね…』

 

余裕の様子で立ったまま銃を構えるヒールに苛立ちを覚えたのか、蜘蛛は巣を一気に広げ、防御しつつ遠方から糸弾を発射する。当たらなかった糸弾が広がって壁に張り付いてるを見て、二人は拘束目的の糸であることを察っした。

 

『これはすり抜けられないわよ…?』

 

「なら切り抜けるだけよ!」

 

『slash eyes!』

『spinning eyes!』

『bullet eyes!』

 

『それってまとめて読み込めたのね…』

 

目薬型のアイテムを三つ、順番にバックルに取り付け、操作する。そしてゆっくりと銃を構え、連続で発射した。放たれたリング状のブレード弾迫り来る糸弾を切り裂きつつ、盾となっていた蜘蛛の巣をバラバラにし、更に怪人にヒット。蜘蛛の怪人は無防備な姿を晒した。

 

「チャンス…!」

 

『dash eyes!』

『kick eyes!』

 

「はああああああああ!!」

 

素早くアタックドロップを読み込ませると、大声を上げつつ全力で接近する。そしてのっそり立ち上がる蜘蛛の前で跳び…

 

「ライダーストライク!」

 

飛び回し蹴りをぶちかました。ぶっ飛ばされたのち小さく爆発を起こす。爆風の晴れたそこには、金髪の少女が倒れていた。

 

「こいつ…地底の蜘蛛じゃないのよ」

 

巫女、博麗霊夢はそう言うと、ヒールへ軽く礼をする。そのまま空へ舞い、どこかへ消えていった。

変身を解いた二人に、衆目の歓声が襲い掛かる。恥ずかしげにそれを受けつつ、逃げるように二人は去った。

 

 

「こいつはスクープの予感ですね…!」

 

影の中、天狗の少女がその風景を写真に収めていた。

これが、二人がこの幻想郷に来るまでの物語である。

 

Continued on next episodes.




次回!幻想仮面少女は!

「大地の力を操るのは、得意なのさ!」

ガイア、その圧倒的パワー!

次回、「有頂天変身 〜 wonderful moon」
乞うご期待!

みなさんこんにちは。蓮メリちゅっちゅ至上主義者サードニクスです。見切り発射だけどやる気は多分史上最大。東方が好きでライダー好き。なら合わせればいいのです!応募楽しみにしてまっせ。
やっぱ第1話は蜘蛛だべってことで蜘蛛のあと蜘蛛。次回は多分コウモリだネ。
ダブルみたいな変身をするライダーです。


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第2話 有頂天変身 〜 wonderful moon

テンション上がってすぐ書いちゃった

さて、前回第1話は!
秘封倶楽部(蓮子とメリー)が、探索していた廃ビルでロボットに襲われる!窮地の中置かれていたバックルでとっさに変身した蓮子が、その場を切り抜ける!しかし謎の女の手により、2018年の幻想郷へ迷い込む…。その先で出会った怪人クモ女を、今度がメリーが変身して倒したのであった。
・仮面ライダーヒール スターボウモード
・仮面ライダーヒール ナイトメアモード
・警護ロボット
・クモ型兵器ロボット
・クモ女


「まったく…めんどくさいことで一々呼び出してくれちゃってさあ…」

 

溜息をつく天人、比那名居天子は今月面にいた。月の天界、正式名称を旧月面天人居住区に少女はいた。

一緒に行動をしていた貧乏神についての処遇で呼び出されたという事情が事情なので、どうも面白くない気分である。

どうせなら有頂天で話せばいいだろと思ったし言ったが、父の上司のお偉いさんがそうしろと言ったんならどうしようもない。めんどくさくともいる他ないのである。

 

「しっかし…寂れてるわねぇ、ここも」

 

暇つぶしに散歩中、辺りを見渡しつつ毒づく。とはいえ、そんなことを言いつつも廃墟の探検というのは彼女の好奇心旺盛な性情をくすぐるに十分なものである。叫べば声が反響するゴーストタウンの中、彼女は緋想の剣片手に駆け回っていた。

そんな中、かつての竜宮であったと記される巨大タワーを発見する。

 

「あら、面白そうじゃん!」

 

そんな風に好奇心いっぱいに錆びついたドアを開けて中に入り込んだ。

竜宮の面影を残す不思議な建物に、彼女は一発で心を奪われる。壁のドアを片っ端から開けまくりたい気分に駆られた。時間が十二分にあることを確かめ、彼女はど真ん中の部屋へ駆け出す。

 

「パパの…上司の上司がここに居たんだっけ」

 

真ん中のふかふかの椅子に座り辺りを見渡す。月面には細菌がいないから腐敗というものがない。故に埃を被りつつもその美しさは相変わらずであった。

 

「探索再開っと…」

 

飛び跳ねるかのように椅子を降り、また面白そうなものがないか探し始めた。

そして部屋を出た彼女の目に、ひっそりと隠れるような地味な扉が飛び込む。

 

これだ。何か隠れてるに違いない。ワクワクと確信の元、その扉をこじ開けた。先に広がるのは地下への階段だ。やはりいいものを見つけたと、さらに膨らむ好奇心に背中を押され彼女は地下へ駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

「いやー、本当に助かったよ!」

 

同刻、先程の蕎麦屋にて蓮子とメリーは拝み倒されていた。とりあえずはここに泊めてもらうつもりだったので、今はここが帰る宿のようなもの。うっとおしい、というわけではないがこんなお礼をされるにはおこがましく感じていた。

 

「ハハハ…」

 

そんな風にして二人ともに微妙な笑顔でヘラヘラしているほかない気分である。

 

「しかしあのカラクリ…あんたらもしかして河童か?」

 

「…河童?」

 

「いやほら、この幻想郷だと河童がああいうカラクリに長けてるからさ。まあ、違うみたいだけど」

 

男性は「外から来たんだからそんなはずないよな、疑っちまって悪い」と続け、台所へと消えた。

二人は顔を見合わせて不思議だと見つめ合う。そんな中、メリーが何かを思案する。

どうしたのだと覗き込む蓮子。三分ほど考え込んだと思えば、何かを思い出したかのように立ち上がった。

 

「幻想郷…あの赤い屋敷の、あの竹林の!」

 

「あの夢の…?」

 

メリーは蓮子の返しに興奮気味にうんうんと頷く。しかし蓮子はにわかには信じがたいという顔で疑わしげに見ていた。

 

「まあ、まずは博麗神社ってとこに行ってみましょうか。そこでヒントを得られるはずよ!」

 

メリーはそれもそうねと同意の頷き。ゆっくり立ち上がると、博麗神社への行き方を知るべく人里へ向かった。

 

 

 

 

 

 

「綺麗ね…これ」

 

その頃月面、天子は不思議なアイテムを見つけていた。用途はわからないが、機械とオーブらしきものが二つ置かれている。手にとってみようとした、その時。爆音。扉を粉々にして、戦闘用ロボが突入してきた。

 

「月の都の軍事ロボ…? なんでここに?」

 

戸惑いつつも、なんとなく機械をその手に取り、いじくりまわす。これが戦闘用のものではないかというのは簡単に想像ついた。

なんとなく腰に当てたその一瞬、ベルトが彼女の腰を捉える。

 

『グランドライバー!!』

 

「あら、自己紹介とは丁寧なベルトね」

 

ロボ達の攻撃を緋想の剣でいなしつつ、軽口を空中へ。しかし対応こそできても月の機械はアホみたいな耐久がウリである。緋想の剣でも破壊は難しそうであった。

 

「えっと…?」

 

そのためのグランドライバーである。ベルト上部のレバーを操作して正面の球体パーツが展開、そこに半ば直感的にオーブを入れた。

 

『アースオーブ!』

 

どうやらあっていたらしい。上部のレバーを逆に操作して球パーツを閉じ、側面レバーに手をかける。

 

「変身っ!」

 

構えて掛け声に合わせてレバーを引き、手をクロス。

拳を作ってその腕を開くと同時に彼女の体が白い岩で包まれる。そして近づいたロボットもろとも岩をぶっ飛ばし、その姿を現わす。

 

『ガイア・ザ・アース!』

 

黒い二つ目と赤茶の鎧の戦士、仮面ライダーガイア グランドアース。それがそいつの名である。もっとも、『仮面ライダー』と付くのは後の話なのだが。

 

「なかなか面白いじゃない!」

 

仮面の中で不適に笑み。背を伸ばして身構えると、ロボへと緋想の剣を向けた。迫り来る敵たちに一閃を叩き込んでいく。バラバラに砕け散った残骸を踏みつけ、その力を確信する。次はその拳でもってロボット達を葬った。

 

「なかなかイケるわね!」

 

しかし、辺りを見れば囲まれてるといってもいい状況。流石にこの数を切り抜けることは難儀なのではと冷や汗を浮かべる。解決策はないかとふと横を見ると、乗り物のようなものを発見した。上のカバーを適当に投げ捨てて乗り込むと、驚くことにすぐに起動したではないか。エンジンから感じるそのパワフルさを信じ、突進。目の前のロボットをなぎ倒し、次々道を切り開いた。

 

そしてそれに呼応するかのように、タワー全体に電源が入る。電気やら機械やらが起動する中掲示板に現れた『向地上ポータル』の表示を彼女は見逃さなかった。

 

「やああああああ!」

 

思いっきりハンドルを振り上げて飛び上がると、壁を突き破ってそのままポータルへ落下。そうして地面へと着地した。

 

舞い上がる砂けむりの中、見えたのは博麗神社。ワープの座標はここだったのかと、少し驚きつつキョロキョロしてみる。すると、横にはガイアを見て絶句している二人組が居た。蓮子とメリーである。

 

人里で色々聞いた末に博麗神社に来てみれば突如空からバイクに乗った何者かが出現したのだ。言葉を失うほど驚くのも不自然ではない。

 

「逃げるついでに面倒ごとからも逃げられたー!ラッキーラッキー。ねぇ、そこの地上人」

 

「え、はい?」

 

「博麗の巫女はどこよ。どうせなら遊びに付き合ってもらいたいんだけど」

 

ガイアはバイクから降りて、横から腰掛ける形に座り直してさらにキョロキョロ。蓮子は巫女というワードで先ほどの紅白の少女を思い出していた。

 

「巫女っぽい人なら、地底に向かうとかなんとか」

 

「地底かー。よーしじゃあ追うとしますか」

 

そう言って背を伸ばしたガイアの身にに何かがぶつかる。痛みを全く感じないどころか重量をほとんど感じないそれは、新聞であった。顔からどけて見てみれば、緊急号の今日の夕刊である。つまり刷りたてホヤホヤだ。

そこに書かれているのは、謎の二人組と、変身したヒールを名乗る紫色の戦士である。二人組の写真と蓮子とメリーを交互に見た後、ガイアは仮面の中で口角を吊り上げた。

 

「あんたらも戦えるのね。私は今すごく気分がいいからさ、一戦お願いしたいのよね」

 

どうすべきかというメリーの視線に、みなまで言うなと蓮子。右手にはアイズバックル。腰に巻きつけると、拳を作って左手を腰にし、右手を斜めに構える。ポーズを終えてライドレンズを挿入した。

 

『look the star…』

 

「満足させてあげましょう。殺されることないだろうし…訓練にもなるじゃない!」

 

「それもそうね。じゃ、行きましょうか」

 

「「変身!」」

 

レバーを倒し、二人声を合わせて掛け声を放つ。手をつないだ二人を光の粒が覆い、粒子化するメリーが取り込まれると同時に鎧を形成した。

 

『we are star night fantasy!』

 

「あら、新聞とは全く違う姿ね」

 

「かっこいいでしょ?」

 

「確かにね。さ、行くわよ!」

 

緋想の剣を片手に駆け寄るガイア。対しヒールもスマホとグリップでフォンブレードを完成させた。

 

その剣がぶつかり、お互い弾かれて距離が出来る。再び斬りかかるヒールに、ガイアは一瞬の隙を見つけ、屈み込みつつパンチを叩き込む。腹に入った衝撃に、蓮子は仮面の下で苦悶の表情を浮かべた。

 

『大丈夫?』

 

「思った以上にすごいの来るわね…」

 

「動きがど素人だな。ま、いいわ。くらえ!」

 

ガイアが大きな予備動作ののち、地面を踏みつける。すると地面がドンドンと盛り上がり、ヒールの目の前まで伸びた。

 

「大地の力を操るのは、得意なのさ!」

 

『jump eyes!』

 

自慢げなガイアをよそにヒールはとっさににアタックドロップをロード。大ジャンプで盛り上がる土をかわした。

 

「それで逃げ切れるかな?」

 

余裕の態度で屈み込むガイア。彼女が跳ねた一瞬に、同時に足元から土が盛り上がる。

 

「カタパルトって訳ね…」

 

『地面を操るってなら…なかなか厄介ね』

 

フォンブレードで防御態勢をとるヒールに対し、ガイアはかかと落としをぶつける。そのまま地面へと叩きつけた。

 

「ぐっ…」

 

ヒールはそのまま一切動けない状態にされた。脱出しようにも天人のパワーには敵わない。そんな中、ガイアは足を緩め、ゆっくりと退き、緋想の剣を拾い上げた。

 

「勝負あったわね!」

 

「そうですね、むしろ素人の私達がここまで戦えたことがびっくりですよ」

 

ゆっくりと起き上がり、その辺の階段にヒールは腰掛けた。ガイアもまた先程のバイク、グラウンドスピーダーに腰掛けていた。

 

「堅っ苦しいから敬語はいいわ。私は比那名居天子。あなた達は?」

 

『紫の服を着てた方が私。マエリベリー・ハーン』

 

「白シャツを着てたのが私。宇佐見蓮子。よろしくね。天子ちゃん。テンシってどう書くの?エンジェル?」

 

天子(てんこ)って書いて天子(てんし)って読むわ。そういえば貴方達外来人よね?」

 

ヒールは肯定を返すべくうんうんと頷く。自己紹介を終えた三人はしばらく変身したまま話していたが、五分ほどたち、突如ガイアが立ち上がった。

 

「そういえば巫女は地底にいるんだっけ?そんなら向かうとしますか!」

 

背を伸ばしてバイクに乗り込むと、ブルブルとエンジンを鳴らし、身構えた。

 

「乗ってく?」

 

「あ、だったら人里に寄ってくれるかしら」

 

そう言ってヒールは後ろに詰めて乗り、トゲが刺さらないよう細心の注意でもってガイアにつかまった。

 

「落とされないよう気をつけなさい」

 

そう言って加速。階段を降りるガイアに、早速ヒールは振り落とされかけるが、必死につかまった。階段から飛んで着地した時は浮遊感すら覚えたが、どうにか落ちずに済んでいた。どんだけ荒い運転なんだとメリーは溜息(息は吐けないが)。そうは思いつつも楽しく思う彼女がいるのも事実であった。

 

 

 

 

「ここで降りるの?地底まで行きましょうよ」

 

もう月も出たころ、人里に到着した。蕎麦屋の前で降ろしてくれというヒールに、ガイアこと天子は仮面の下で面白くない顔を浮かべる。申し訳無さげにヒールが変身を解こうとしたその一瞬。人々からざわめきが響いた。

上空を指差す男性の先を見れば、上空を何かが舞っている。その黒い影はガイアへ向かって少しずつ大きくなっていく。

小柄なコウモリの怪人、言うなれば、コウモリ女。そのバケモノの突進を、パンチでもってガイアは迎えた。

 

「がっ…」

 

しかし怯むだけで、大したダメージではないように感じた。あのロボを粉砕したガイアの拳であるのにだ。ガイアは一筋縄ではいかないと察し、もう一つの方のオーブを取り出す。

 

『遠距離攻撃の方がいいと思うわ。運転代わって、蓮子』

 

「了解!」

 

続けてヒールも青いライドレンズを取り出し、アイズバックルにセットした。

 

『ルナオーブ!』

 

『look the line…』

 

アイテムを入れ替え、ガイアは手を構え、ヒールは右手を前に突き出し掌を返す。それぞれポーズののち、それぞれ変身シークエンスを終えた。

 

『ガイア・ザ・ルナ!』

 

『we are dream night fantasy!』

 

変身音ののち、二人は姿を変えた。ヒールはナイトメアモード、そしてガイアは白銀のグランドルナへ姿を変えた。

 

迫り来るコウモリ女へ、テレガンで射撃を飛ばす。一瞬の怯みに、ガイアが拳で追撃をする。

叩き落されるものの、コウモリ女はそれをあまり脅威とはしていないようであった。

 

「かったいわね…」

 

ぼやくガイアの元へコウモリ女が今一度突進を繰り出す。ない胸を張る体制で、身構えた。

激突、怯んだのはコウモリ女であった。

その光景に、ガードしたガイア本人驚きを隠せずにいた。腕の防御が間に合わないから厚い胸部装甲でどうにかしようと思ったのだが、偶然グランドルナの反射機能が輝いたのである。

 

フラフラ飛び上がるコウモリ女にメリーはチャンスを感じ、アタックドロップを手にした。

 

『bullet eyes!』

『spinning eyes!』

『illusion eyes!』

 

『Enter…Ready!』

 

三つ読み込んだのち、テレガンのEnterをタッチする。そうして必殺技を構え、銃口をコウモリ女へ向けた。

 

「ライダーブラスト!」

 

『武器の必殺技なんかもあるのね…』

 

蓮子の感想を受けつつグリップを引き、発射する。ドリル状の強化弾がコウモリ女を追うように進路を変え、ヒットした。地面へと落ちてくる相手を見据え、二人は構える。

 

『dash eyes!』

『kick eyes!』

『illusion eyes!』

 

『グランドフィニッシュ!』

 

かたやアタックドロップをロード、かたや側面レバーを操作。必殺技を用意し、二ライダーは同時にコウモリ女へと走った。

 

「「はあああああああ!」」

 

一気に接近!着地した敵を前に二人は跳び上がった。

 

『ナイトブレイカー!』

「やあああああ!」

 

「幻惑ライダーストライク!」

 

体育座りのようなガード体制のコウモリ女へ、ガイアはキックを浴びせた。続けてヒールの回し蹴りも当たるかというその瞬間、背中側へヒールが瞬間移動を発動。挟撃の形で飛び回し蹴りを当てた。

 

前後両方からのダメージに、吹き飛ばされることもできず立ち尽くすコウモリ女。やったかと目を見合わせるガイアとヒールであったが、現実は非情だ。コウモリ女は翼で暴風を巻き起こし、ガイアとヒールを押し退けて空に消えた。しかしその飛び方から、ダメージが入っているのは確実である。三人は頷くと(一人は心の中で頷いただけだが)、追跡するべくグラウンドスピーダーに乗り込んだ。

 

「あれ?戦ってる間気づかなかったけど…あんた胸大きくなった?」

 

『誰が貧乳って!?』

 

「…ああ、入れ替わったからなのね。ま、いいわ。とにかく向かうわよ」

 

そんな風に吐きながらガイアは首を鳴らすモーションののち、緋想の剣を腰にさしてコウモリ女を追った。

 

Continued on next episodes.




「燃え尽きてもらうよ!」

獄炎の不死鳥。その力!

次回、「エクステンドフェザー 〜 豪炎人」

お楽しみに!


みなさんこんにちは。天子周りでは普通にてんしおんといくてんが好きなサードニクスです。今回は変身しっぱなしでしたな。
妙にテンション上がって翌日に上げる謎。よもや妹紅編も書いちゃうのでは?
しかしそうすると次回予告が書けないな…。
そうそう、話変わるんですが。私秋例大祭行って参りました。50分並んで暁recordsの新譜「ブラブラブラ!」をゲット!春には紅楼夢新譜だった「ちまみれダンシンパーリナイ」も欲しいところ。
いつか小説でサークル参加を夢みたり。
ともかく次会いましょう。では


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第3話 エクステンドフェザー 〜 豪炎人

いつもより早いね。でもこっからプライベートが忙しいから更新超滞るんで、ご留意を。

さてさて、前回第2話は!
天子は月面の天人の旧居住区を探索していた。そんな中、ベルトを発見!しかし同時にロボ達が襲い掛かる。とっさに変身し、天子はそのパワーでボコボコに。そうしてポータルで地上へ向かい、博麗神社へ。同じく博麗神社に来ていた秘封倶楽部へ、バトルを挑むのであった。勝者は天子!仲を深めた三人は人里へ。そこに現れたコウモリ女と戦うも、逃げられてしまい…。
・仮面ライダーガイア グランドアース
・仮面ライダーガイア グランドルナ
・月の戦闘用ロボット
・コウモリ女


コウモリ女VSヒールとガイアの戦いから戻ること一時間ほど。トワイライトが竹林の隙間を埋める夕方。藤原妹紅は迷子がいないかと竹林の巡回中であった。

 

「なんだこれ?」

 

その最中、彼女は奇妙な機会を見つけた。輝夜の開いた月万博に置かれていたバイクとかいう乗り物であるということは一目で分かった。しかしこんなブルブルうるさいものであったか?

疑問を抱きつつ触れた一瞬、そのバイクが自分の方を向くように動いたことに驚愕。思わず腰を抜かす。

 

そして謎のリズムを刻むバイク。それがモールス信号であると気づくのにそう時間はかからなかった。

 

「S、E、G、I、V、E、M、E、S、O、M、E、T、H、I、N、G、T、O、W、R、I、G、H、T。…終わった。セ、ギブ、ミー、サムシング、トゥ、ライト…最初聞き逃した所は聞き逃したのはプリーズか?えっと、たしか…何か書くものをくれ。かな」

 

たどたどしくもバイクの意思は汲み取った。彼女は懐から小さい黒板とチョークを取り出した。慧音からもらった、イマイチ使いどころが分からない筆記用具である。

 

バイクリアについた機械の腕でチョークを掴み、器用にもそこに文字を書き始めた。妹紅はロボットアームは河童のものを知っていたので特に驚きはなかったが、それを機械が自由に動かしているという点には驚きがあった。

 

「『えーあい』ってんだっけ。いつぞやに来た外来人の子が言ってたな。あれももう百年前か…」

 

ふと思い出したこの竹林での出会い。もううっすらとしか記憶がないが、紫の服が似合う美少女だったのは覚えていた。長年生きていると物覚えが悪くなる。慧音から受けた英語の授業も他の記憶に流されて結構うろ覚え。

その分経験があるので、余程のことには動じない。

 

「…そう、思っていたんだけどね」

 

しかし目の前のカラクリには動じてばかりである。やはり歳になると文明の発展に置いていかれる。彼女は自分に対して皮肉気味にフッと笑った。

 

「ん、書き終わったの?」

 

バイクがロボットアームの動きを止め、黒板を持ち上げた。そこには以下の内容があった。

まずは自己紹介。名はフェザーチェイサーと言い、蓬莱山輝夜によって作り出されたこと。

次に経緯。永遠亭の住人がネコ怪人へ拐われ、そこから逃げ出してきたこと。

そして願い。妹紅にこの武器とベルトでもって怪人を倒して、輝夜たちを取り戻して欲しいこと。

 

淡々と、そして簡潔にその願いを記した黒板を、ゆっくりと妹紅に手渡した。

その無機質な手はどこか震えているようでもあり、主人を引き剥がされた悲しみを抱えているようであった。

 

その黒板を見つめた妹紅は、自分に対する願いの欄だけを消した。戸惑っているような様子で動きを止めるフェザーチェイサーに妹紅は笑い、こう言い放った。

 

「あいつらを取り戻す?そんなのお前に言われるまでもやるさ。だからこの文はいらない。元から私の願いでもあるんだ。自分のことはよーく知ってるさ。あいつを殺していいのは…私だけ」

 

そうして黒板をしまい、フェザーチェイサーの後ろから置かれたアイテムを持つと、フェザーチェイサーの前に座り込んだ。あたりはすでに暗く、妹紅は照明代わりに、妖術による炎片手に機械を弄っていた。

 

「これ、どう使うんだ?」

 

かちゃかちゃとナックル型の武器とベルトのバックルをいじくり回す妹紅に、フェザーチェイサーはチョークを拾い上げ、書くモーション。妹紅はすかさず黒板を渡し、その手元を照らしてやった。

 

先ほどの願いのあった欄に、図付きの使い方講座を書き加える。変身の仕方、必殺の出し方。丁寧な解説をしっかり読み込み、妹紅はその黒板を箱に入れて懐にしまった。曰く、掠れて消えては困るということ。

 

 

「そこー!撃って撃って!」

 

 

どこからともなく騒がしい声。さらに乗り物の音。このフェザーチェイサーの音にどこか似ている。そう感じた妹紅は、よもやバイクの音ではないかと推察。その予想は正解のようで、鎧を着た女二人がバイクに乗って上空を見上げていた。ヒールとガイアである。

 

「おいおい何してんだお二人さん?」

 

「え!?あんた、いつぞやの蓬莱人!ほら怪人倒してんのよ!上の!」

 

指差すガイア。妹紅はその声ですぐに中身が天子であると理解。聞きたいことはいくらでもあったが、これは長くなりそうだと後に回すことに。

言われた通り見上げてみれば、コウモリのような美しくも禍々しい怪人が空にいた。

 

『あいつなかなか強いのよ!えっと蓬莱人さん?』

 

「藤原妹紅。さんはいらない」

 

『で、妹紅?あなた炎出せるって認識でいいのよね?』

「ほら、左手!」

 

「え?手伝えってこと?」

 

「そうそう!」

 

正直一人の人間から二人分の声が聞こえたことに驚いており、状況も相まって半パニックだったが、そう言ってる暇もない。とりあえず上空の怪人に炎の球を撃ち出す。

しかし大きいダメージは認められない。どうしようかと思った時、彼女の目にフェザーチェイサーのフロントカウルに置かれたバーンスマッシャーとボルコネクターが飛び込んだ。

 

「いいよね!?」

 

そういう妹紅にフェザーチェイサーはサムズアップ。ならばとボルコネクターを腰に巻き、バーンスマッシャーを強く握りこむ。

 

『ignition…』

 

ガチンという音と共に電子ボイス。さらには発火。

手を前に突き出し、こう一声。

 

「変身!」

 

気合いの掛け声と共に前を薙ぎ払うと、炎の竜巻が彼女を包む。その業火を振り払ったそこに、もはや藤原妹紅は居なかった。

 

『burn up complete!phoenix blaze!』

 

「あなたも…仮面ライダー…」

 

メリーがつぶやく横に立つ炎の戦士。白い体と赤のラインが美しく光る流麗な姿。赤き鳥風の装飾と真紅の両目が闇夜に浮かぶ。

 

その名を、仮面ライダー、

 

「…フェネクス。さあ、燃え尽きてもらうよ!」

 

その言葉を放つと、一息。ゆっくりと上空を見上げた。その先にはコウモリ女。こちらの動きを警戒しつつ、されど逃げれば追われる。今ここで仕留めんと上空で留まっていた。

 

フェネクスは一瞬屈むと、炎の翼を作ってハイジャンプ。そのまま空へ舞い、コウモリ女へ向かった。

 

「はあああああああああ!!!」

 

渾身の拳。怯むコウモリ女へ、蹴りを交えた追撃を行なった。

 

「ぐおおおお!」

 

呻き声ののち、牙を見せて飛びかかるコウモリ女。吸血をしようとフェネクスのその腕を噛んだ。しかし無駄である。その腕から放たれた爆炎に、むしろ弱点である口の中を焼いただけであった。

 

「えっと…三回だっけ」

 

黒板の内容を思い出し、ボルコネクターへバーンスマッシャーを接続。グリップを三回強く握りしめた。

 

『over drive!』

 

「ブライトドロップ!」

 

真っ白に白熱した右足を突き出し、コウモリ女へ突撃。そのまま重力を味方に降下する。

 

「近接で仕留めるわよ。メリー、蓮子に代わって」

 

「了解」

 

『look the star…』

『変身!』

『we are star night fantasy!』

 

手早くスターボウモードへチェンジ。フォンブレイドを構える横でガイアも緋想の剣を構えた。

「メリー、武器必殺ってどうやるの?」

『必殺技ってアプリ起動して』

「こう?」

 

『Application!Ready?』

 

「理解理解」

 

剣を構えつつ、スラッシュ、バースト、スピニングのアタックドロップをロード。チェーンソー状になったフォンブレイドを改めて構え直す。その横でガイアも同じく武器を構える。緋想の剣の性能を鑑みれば、必殺など不要なのであろう。

 

フェネクスの右足に押され、燃え盛りながら迫るコウモリ女。そしてヒールとガイア同時の一撃。三人による必殺に、耐えきれずついに爆発。爆炎の中からは、白い服とコウモリの羽が目立つ少女が現れた。倒れ込んでいるが、胸は上下している。安堵の溜息と共に三人は変身を解いた。

 

「この子、赤い館のヴァンパイアじゃないかしら?」

 

天子の一言に、妹紅は頷いた。なら連れて行くかと担ぎ上げたその瞬間、メリーの目の前にメイド服の少女が現れる。

驚いてずっこける蓮子とメリーを交互に見たのち、少女十六夜咲夜はメリーに一言。

 

「お久しぶりですわね」

 

「…この前は、クッキーありがとうございます」

 

その一言にニッコリと笑顔で返す咲夜。その様を目にして、蓮子はある日の出来事を思い出した。

メリーが夢から覚めてクッキーを持ってきたことがあったのだ。夢を覗かせてもらった記憶を思い出すと、確かに紅の館とこのメイドがいた気がする。

あれは事実だったのかと一人驚く蓮子。話しかけようとするも、すでに視界に咲夜はいなかった。

 

「150年近くタイムトラベルねぇ。にわかには信じらんないけどこの目で見たからには事実よね」

 

視界の端ではすでに妹紅とメリーの会話が始まっていた。なんでも会ったことあるとかなんとか。一人幻想郷トークに置いてかれた気がして、蓮子は面白くないと感じた。

 

そうして人里へ帰る道に出た時、黒い影が蓮子を襲った。とっさに天子が緋想の剣で一撃。見ればネコ怪人である。

 

「コイツ…永遠亭を襲ったっていう…」

 

そうつぶやく妹紅に対し、フェザーチェイサーはかぶりを振るようにフロントを横に降る。

次に妹紅の発した別個体?と言う問いにはサムズアップ。困りきった顔で三人を見た。

 

「どうやらもう一体いるみたいだよ。コイツ。いや、怪人化の対象が猫又ならいっぱい居るかもね…」

 

その一言に三人も事態を飲み込んだ。何かあったらと蓮子がアイズバックルを構えた。

 

「悪いけどトゲ刺さって痛いからメリーが変身して」

 

「だってさ。借りるよ」

 

『look the line…』

『we are dream night fantasy!』

 

メリーが手を裏返すポーズののち変身。蓮子が取り込まれ、ヒール ナイトメアモードに。

 

『burn up complete!phoenix blaze!』

『ガイア・ザ・アース!』

 

続けて二人も変身。それぞれバイクに乗り込んだ。

 

「それ慧音に聞いたぞ。母音が来る前はジでしょ?」

 

「そんなこと気にしてたらハゲるわよ」

 

「ハゲてもすぐ生える体だから関係ないさ」

 

軽口を叩き合いつつグラウンドスピーダーにヒールを乗せたとほぼ同時にネコ怪人も立ち、逃げ始めた。

 

「待てー!」

 

その背を置い、二つのバイクが走る。猫だけあって、かなり足が速く、ほぼバイクと等速。埋まらない広がらないスペースに苛立ちつつ、その先を追った。

 

複雑な道を通り、訳の分からないほど同じ道を繰り返す。しかしこの二つのモンスターマシンを前に、巻くとかガソリン切れとかそう言うのはありえない。どこまで行っても無駄。

 

しかしネコ女の目的が別にあることをメリーは察していた。

 

「…分かったわ。これ、移動ルートをキーにする結界よ!」

 

『って、結界暴きのプロフェッショナルは仰ってるけど?』

 

「ならマヨヒガで迎え撃つ気かな。だったら好都合。多分八雲藍の式の…えっと、橙。あいつが操られてるはず。司令塔を叩けば雑魚の洗脳も解けるはず!」

 

『マヨヒガ…まるで遠野物語ね』

 

妹紅の推察に頷きつつ、蓮子はマヨヒガというワードに想いを馳せた。そんな中、魔法の森へ突入。一直線に突っ切ったのち、現れた広大な草原に、ポツンと屋敷が一つ。

遠野物語を知るなら誰もマヨヒガというであろうルックスの建物の周りに、ネコ怪人が集っていた。

 

屋根の上には仕切っているであろうネコ女。猫語で司令を出し、ライダー達に向かわせた。

 

「メリーは本体を叩きに。天子は雑魚どもの対応を頼む!私は輝夜たちの救助に向かう!」

 

その司令に応と返事。それぞれ戦闘を始めた。

 

地面から屋根の上を狙い撃つヒール。しかしガイアの攻撃で多少減るとはいえ、周りの怪人はうっとおしく感じた。

 

『jump eyes!』

 

ハイジャンプで屋根の上へ。飛びのくネコ女に対し、中距離での銃撃戦へ。しかしネコ女はそのスピードで銃撃をかわしつつ接近。両足から放たれるドロップキックをモロにくらい、ぶっ飛ばされて近くの納屋へ壁を貫いて突入。崩れ落ちる納屋から、藁をかき分けて立ち上がるヒール。迫り来るネコ女の蹴りを寸前でかわし、距離を置いた。

 

蹴りと爪による一撃を、体を分解したり穴を開けたりしてトリッキーにかわす。防戦一方で、非常にまずい。そう思った時、蓮子の目に納屋の中にあった何かが飛び込む。

 

『あれバイクじゃない?使えないかしら?」

 

「使えるわけ…」

 

そう言って触れてみると、反応するかのように起動。驚きにメリーは腰を抜かした。

 

『これで逃げれば、追わせながら戦えるはずよ!』

 

「な、ナイスアイデアよ蓮子」

 

戸惑いつつもすぐさま乗り込んだ。二人分のスペースのある、巨大なバイクである。フロントに書かれた『Chase Nighter』の文字で、二人はその名を認識した。

行けるか。多少不安は残るものの、とりあえず発信。砂けむりを巻き起こし、逃げ始めた。予想通り追ってくるネコ女。しかし相手の方が速い点は全く予想外であった。

 

「まずい、追いつかれる!」

 

後ろを振り向いて銃撃にて牽制するが、大した効果は見込めない。

どうしようとメリーが慌てふためく中、蓮子が計器群の中にあるものを見つけた。

 

『このスリット…グリップと似てない?使ってない方。スマホ挿してみなさいよ』

 

「ええ、意味ない………!?」

 

意味ないでしょという言葉が驚きに飲み込まれる。画面に『チェイスナイター』の名を持つアプリが出現したのだ。

訳がわからないまま、彼女はとりあえずそいつを起動した。

 

 

 

 

 

 

同じ頃、月では。

 

「なんですかこれは、サグメ様!」

 

フェムトファイバーに縛られた玉兎たち。その前に立っていたのは、稀神サグメ。自身の部下たちを見下ろし、こう一声。

 

「稀神サグメは……謀反した。そう伝えろ」

 

運命の変動が起こらない程度の軽く簡潔な一言。しかしその中には玉兎たちを絶望に叩き落とすに足る重さがこもっていた。

 

Continued on next episodes.




「さあ、楽しい殺戮を始めましょう」
「行くぜレミィ!」

禍々しく美しく。究極のヴァンパイア降臨!

次回、「ツェペシュの鋭き遺産」
乞うご期待!

みなさんこんにちは。もこけーねも好きだけど圧倒的にてるもこ派のサードニクスです。大事な人を失い続けてもいつでも殺しあえる彼女にただならぬ思いが…みたいな。素敵じゃありません?暁recordsの「Killove fireproof」は対てるもこ信者最終兵器だから聞こう!
こいついつも暁recordsの話してんな。
妹紅の変身ポーズはうどんげっしょーで見せたデレ期はないのポーズです。
コウモリ怪人に大苦戦だったのは単純。レミリアだからです。


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第4話 ツェペシュの鋭き遺産

感想にゃいとモチベ下がっちゃうからもっとくれると嬉しいなーだなんて?
まあ今の溢れ出るモチベなら書くのをやめるこたないだろうけども。

さてさて、前回の第3話は!
永遠亭の住人が拉致された!?輝夜が作ったAI搭載バイクが、それを伝えに妹紅の元へ。さらに輝夜が作ったという変身アイテムを持ってきたのだ。そんな中、コウモリ女を追うヒールとガイアが現れ、妹紅も変身してその戦いへ。見事撃破した。そして突如現れるネコ怪人。追ってみれば、何といっぱい居るではないか!妹紅と天子が輝夜たちの救助に向かい、秘封倶楽部の二人はリーダーのネコ女を叩く事に。戦いの中で、ヒールは謎のバイクチェイスナイターを発見。どうやらヒールと互換性があり…。
・仮面ライダーフェネクス
・ネコ女


チェイスナイターへ繋がれたガジェットスマートの『チェイスナイター』アプリを起動。何が起きるのだと身構えたその瞬間、バイクが浮遊!

驚く秘封倶楽部をよそになんと変形。タイヤは横に90度傾き、スライダーのような形に。

 

構造的にその上に座るわけにもいかず。ゆっくりと立ち上がった。すると、磁石が作動。足の裏がシートに固定された。

 

重力の呪縛を離れ、一気にスピードアップ。一気に距離を離すとUターン。ネコ女へ渾身の突進をぶちかました。

 

「ぐおっ!」

 

悶えるネコ女の周りを飛び回りつつ射撃。ネコ女の跳力を超える機動力で追い詰める。全弾命中である。

 

この隙にと、アタックドロップを用意。スピニングとキックとを読み込んだ。

 

「ライダーディバイト!」

 

そして一旦距離を置くと、加速からの急ブレーキしつつ足のマグネット解除。体育座りの姿勢で回転ののち、足を伸ばす。繰り出すのは分身しつつの逆サマーソルトかかと落とし。ネコ女の頭に三人のヒールから一撃が叩き込まれ、爆散した。

 

そして倒れ臥す橙。息があること確認し、マヨヒガへ戻った。

 

 

 

 

 

 

「おっと…おっとっと…」

 

橙が元に戻ったことで、ネコ怪人たちはすぐに猫又に。妖怪とはいえ、ふわふわの猫に囲まれる幸せすぎる状況であるが、そうも言ってられない。妹紅は輝夜たちの元へと駆け出した。

 

「ここか!」

 

穴の空いた障子から見える四人の姿。無事だった喜びとともに思いっきり開け、畳へ足を踏み出した。

 

「止まれ。それ以上動くな」

 

そんな妹紅の喉元に、死角から刀が突きつけられる。ギョッとして振り向いた先に立つのは稀神サグメ。妹紅は鈴仙からその存在を聞いていたので、彼女が何者であるかはすぐに気づいた。

 

『コトダーマ!観!』

 

「この方々の救助の手間が省けた。彼女たちの身柄は私が預かる」

 

そして『観』の文字と仮面ライダーのような何かの顔が刻印されたアイテム、コトダーマ観を取り出し、左腕についていたブレスレットの扉パーツに挿入。ゆっくり左腕を伸ばす。

 

そして右手でサムズアップをしたかと思うと、クルッと180度回して親指を下に。ポーズを終えると、こう一言。

 

「変身…!」

 

その言葉を放つと、ブレスのレバーを引いた。すると扉型パーツが開き、さらにコトダーマも展開し、ライダーの姿が映し出される。

 

『ブレイクオープンドレスアップ!』

 

電子音ののち、閃光。粒子。そこには先ほどまでの稀神サグメはおらず、居たのは緑の鎧の戦士である。

 

『メイクアナライズ!ワードレス!』

 

名を、仮面ライダーワードレス アナライズワードレス。時計のようなツノと緑の複眼が特徴的な、その姿は、一目で只者ではないと思えるオーラを放っていた。

 

「身柄を預かる?ふざけないで!今更月に連れ戻すって!?」

 

『ignition…』

 

「変身!」

 

手を前に突き出したのち斜に構え、振り払う。巻き起こる爆煙がマヨヒガに火傷を残しながら、彼女の姿をフェネクスへと変えた。

 

『burn up complete!phoenix blaze!』

 

「燃え尽きてもらうよ!」

 

炎をその手に集め、パンチ。少し後ずさるワードレスだが、ダメージは大したものではなさそうだ。ワードレスはのっそり立ち上がり、左腕のブレス、ワードレッサーを操作。『アタックフィール!』の音声と共にブレードをワードレッサーより出現させ、構えた。

 

「悪いがもはや月は私の味方ではない。連れ戻すわけじゃない」

 

「どこ連れてかれんのか分かんないんじゃ尚更うんとは言えないね!」

 

「貴様の許可は求めない」

 

ブレードとバーンスマッシャーの激突音の中、同時に舌戦。しかしどちらともワードレスが有利と言える状況。窓の外からこちらへ走ってくるガイアを尻目に、フェネクスは時間を稼ぐよう防戦を選んだ。

 

「だあ!」

 

しかし先に到着したのはチェイスナイターに乗っていたヒールの方。ただならぬ状況を察し、ワードレスへ射撃。そうして生まれた一瞬の隙を見て、ワードレスのアゴにアッパーを決めた。

 

「よっと」

 

そして苦しむワードレスの元にガイア到着。フェネクスと顔を見合わせて頷き。ガイアはレバーを引き、フェネクスはガキガキガキンと強く三連続でバーンスマッシャーを握る。

 

『アークブレイカー!』

 

『over drive!』

 

「でやああああああ!!」

 

「プロミネンススマッシュ!」

 

そして二人同時のパンチ。変身解除とはまでは行かなかったが、壁に叩きつけるほどぶっ飛ばした。

 

「くっ…用意していて助かった」

 

『シューターフィール!』

 

その一言と共にワードレスは煙幕放出。急いで輝夜たちを救出しようとする三ライダーに対し、ワードレスは銃撃を浴びせた。怯んだ一瞬のうちに煙は晴れ、四人はワードレスとともに居なくなっていた。

 

「くっそぉ!!」

 

溢れ出るほどの悔しさを捻り潰すように怒号。壁を殴った勢いで屋敷が軽く揺れた。変身を解いた四人は暗い顔のまま自身のマシンに乗り、帰路へついた。

 

 

 

 

「私、ちょっと紅魔館行ってくるわね」

 

帰り道の途中でメリーがバイクを止めた。道の途中で霧の湖の横を通っていたので、紅魔館は目の前である。

 

「行ってらっしゃい。バイク私運転できないから任せたわよ。気をつけなさいよ?」

 

「待ちなさい。危ないし暇だから私も行くよ」

 

天子もついていくことに。降りた蓮子はフェザーチェイサーの後ろに乗り、妹紅に掴まった。そして離れていく影を見送りつつ、二人は人里へ向かった。

 

 

 

 

「そーれにしても無駄にでっかい館よね。まあ私の家もあんなもんだけどさ」

 

「天子もお嬢様なのね」

 

「そりゃあ比那名居家は有頂天の神官だもの。あなたたち地上人とは格が違うの。格がね」

 

話しながら走ること五分ほど。その館の前に到着した。バイクを停めて降りた所に、怪しんだ顔で門番が近づいた。

 

「あなたたち、天人と外来人よね?なんだってこんなところに?」

 

「メイドさんに会いたいんです」

 

なんだお客さんかと安堵の顔。門番、紅美鈴は門のところまで戻ると、咲夜さーんとその名を叫んだ。

 

「何よ…って、お客様じゃない」

 

「咲夜さんに会いたいんですって。だから…」

 

「皆まで言わなくて結構。お通しするわ。比那名居様、ハーン様。ようこそ紅魔館へ」

 

恭しく礼をすると、美鈴と二人で門を開け、二人を中へ通した。

 

「私の名も知れたものね」

 

「あら、でも私は悪評しか聞いたことありませんわ」

 

「妬みというのは人を醜くするわ。やはり皆私が羨ましいのねぇ」

 

館の中は薄寒く不気味で、どこか妖しい。その雰囲気に呑み込まれそうで、メリーは深呼吸一つ満足に出来そうではなかった。しかし目の前の少女二人はそんなこと一切気にする様子はなく、自身のか弱さをメリーは思い知った。

 

「私とお話してもいいんですけど、その前にお嬢様に挨拶を」

 

そう言って咲夜は巨大なドアを開け、二人を通した。

その先では、テーブルについて食事中のレミリア・スカーレットが。ゆっくりと振り向き、笑顔を見せた。

 

「歓迎するわ。歓迎するんだけど…その、これ食べ終わってからでいいかな」

 

ちょっと困り気味に食卓を見ると、二人に椅子に座るよう勧めた。堂々と座る天子と、その横で申し訳無さげに座り込むメリー。対照的な二人を興味深げに眺めつつ、レミリアは納豆をかき混ぜた。

 

「日本食ってほんと素晴らしいよね。旨味って言うんだっけ?アミノ酸とグルなんとか酸がスーパーベストマッチでワンダフルとかなんとか」

 

「ね、ねぇ、天子」

 

「何よ」

 

「その、聞く通りなら吸血鬼よね?この人。思った以上に庶民派っていうか…」

 

「聞こえてるわよ」

 

ヒソヒソと話すメリーと天子に対して釘を刺すレミリア。しかしその顔は不快というより、楽しげなものであった。

 

「私はオンオフ激しいのさ。本気出したらそれこそカリスマどばどばよ。民草みんな釘付けよ。ね、咲夜」

 

「今も十二分にカリスマですわ」

 

「いや、そう言うことじゃないのよ。そうじゃなくて同意が欲しいのよ。オンオフ激しいって言ってるの聞こえてた?」

 

「聞こえましたわ」

 

「その上であれ?」

 

そう言って笑うと、アホな従者で悪いわねとメリー達へ微笑み。気取らずとも人に懐かれ人心を天然に掌握できるこのキャラこそ、むしろカリスマなのではないかとメリーは一人思った。

 

「そういえばあんた、咲夜と話したいんだって?なんの話題?」

 

「実は一度会ったことがあって…その時にクッキーを…」

 

「クッキー…ね。そういえばちょうど二ヶ月前に外来人を門前払いしたとかなんとか」

 

その言葉にメリーは疑問を抱いた。秘封倶楽部がそのクッキーを食べたのもちょうど、きっかり二ヶ月前だったからである。時空の歪みとか境界なんぞという不安定なものの仕業ならもっとバラバラなタイムスリップをしてもいいのだが。それこそ百年前の竹林の時のように。偶然で片付けきれない一致に何者かの意思を感じ、彼女はぞっとしない気持ちを抱いた。

 

 

 

 

 

「ヤケ酒とはらしくないのぉ、妹紅殿」

 

「ん?ああ、狸の旦那か」

 

同じ頃の夜雀庵。稗田家は明日に来てくれというので、妹紅は蓮子を連れて呑み途中であった。とはいえ蓮子はギリギリ成人ではないので酒は飲めない。ヤツメウナギを口に運び烏龍茶を煽りながら妹紅のする輝夜の話を聞いているのであった。

その中声をかけたのはマミゾウ。珍しく不機嫌そうな妹紅を見て声をかけたのであった。

 

「そこの方はご友人かえ?」

 

「ん?そうだよ」

 

「ほう、二ツ岩マミゾウじゃ。よろしく頼むぞい」

 

「宇佐見蓮子です。よろしくお願いします」

 

妹紅を挟んで半立ち状態で握手を交わす二人。軽く挨拶を終えると座り直し、再びヤツメウナギに手を伸ばした。

 

「何があったかは聞きませんけど、ずっとそんなんじゃ慧音さんも悲しみますよ」

 

ヤツメウナギをひっくり返しつつ、店主のミスティアが言った。その視線はどこか心配のこもったものであった。

 

 

 

 

 

 

 

「あなた達が咲夜と話してる間、私は夜風に当たってくるわ」

 

そう言って席を立ち、皿を重ねて背を伸ばした。

 

「ドラドラ!」

 

そう叫んだレミリアの元に、どこからともなくエンジン音。現れたのは、黒いボディにパープルとシルバーが光るバイク。しかしバイクと呼ぶには余りにも生命的で、コウモリと呼ぶには余りにも機械的。そいつの名はマシンドラクリヤー。機械と生物の中間生命体である。

 

「オイラみたいなのが珍しいか?」

 

奇異の目を向ける天子とメリーにそう一言。よもや喋るとは。メリーは腰を抜かし、天子は感心。なんの物怖じもなく天子は近づき、しゃがみこんで視線を合わせた。

 

「あんた妖怪よね?」

 

「オイラは妖怪と機械の中間!人造生命体って奴さ。まぁ、妖怪みたいなもんだと思ってくれればいいぜ!あんたは知ってるぜ。天人の…」

 

「比那名居天子。あっちは外来人の未来人マエリベリー・ハーンよ。よろしく」

 

軽く挨拶を済ませて立ち上がると、天子は駆けていくレミリアとドラクリヤーの背を見送った。

 

 

 

 

 

「やっぱ寝起きは風に当たると最高ね。起きて、納豆ご飯、そしてこのドライブ。やっぱいいわね」

 

「そうだな!オイラとしても気分いいからどんどんドライブしようぜ!」

 

「無論!」

 

笑い合う二人。その最中、レミリアは湖に異変を感じた。ドラクリヤーの首を横に向かせ、湖に近づくようにじわじわと走った。

 

「キシャアアアア!」

 

突如バケモノの咆哮。そして高圧水流弾。とっさにドラクリヤーから飛び降り、かわした。

 

「流水って…ヤなことしてくれるじゃないか…」

 

吸血鬼は流水というものに強烈な嫌悪を覚える。死ぬわけではないが、嫌なものは嫌なのだ。ドラクリヤーに乗り直すと、警戒した状態でじわじわバック。近づかないレミリアに苛立ったのか、バシャンと水面を荒だて、怪物が現れた。

 

魚のような下半身を蛇のようにズルズル引きずりながら、迫り来るサカナ女に抱く感想はただ一つ!

 

「ウゲェー!きもーい!!!」

 

高速でUターンし、紅魔館へ逃げ帰る二人。しかしかなりのスピードで身をうねらせ、サカナ女は追ってきた。より一層加速し、半ば突撃する形で紅魔館の庭に帰還。門番を轢いた気がしたが気にしない方向に。大声で咲夜を呼びつけ、追い払うよう命じた。

 

「ぐあっ!」

 

しかし投げたナイフ全て肌に刺さらず、しかも水圧弾にぶっ飛ばされ、壁に叩きつけられた。気を失って咲夜は戦闘不能。レミリアは立ち上がり、スピア・ザ・グングニールを用意。しかし投げつける前に水圧弾。うずくまって動きを止めるレミリアにドラクリヤーが駆け寄り、その身を心配する言葉をかけた。

その様を見て、サカナ女はボソッとこう言った。

 

「吸血鬼ヲ殺セ…」

 

何者かに言われた言葉を反芻するようにつぶやくと、紅魔館の中へ。

その言葉を聞き、レミリアは青ざめた。

 

「中にいるヴァンパイアって…」

 

自身の妹、フランドールの顔を思い浮かべ一層その顔を青くする。咲夜が気を失い、空間操作が解除された今、地下室を見つけるなど造作もないだろう。レミリアはさせまいと立ち上がった。

 

体を伝う流水の不快感に思わず嘔吐。さらには聖水だったのか、焼ける感覚さえする。それでも彼女は走り出した。

 

「待てレミィ!無理をするな!フランなら負けることはないだろ!万一のためにオイラが向かう!だから…!」

 

「ダメよ…あいつの攻撃をすぐに見きれなければすぐ倒されてしまう。それに…あの子は…私が救う!」

 

真剣な眼差しでドラクリヤーを見つめると、何を思ったかおもむろにドラクリヤーの上に乗った。

 

「紅魔館が主人として命ずる。私をフランドールの元まで導け!」

 

猛々しくそう叫ぶレミリアに、仕方ないぜと溜息。一呼吸ののち、ドラクリヤーは地下室へと飛ばした。

 

「なんの騒ぎですか!バイクが全力疾走してるし咲夜さんは急に消えちゃうし!」

 

「ホントよ!」

 

遅れて駆けつけた天子とメリー。近くの妖精メイドから事情を聞き出すと、それぞれグラウンドスピーダーとチェイスナイターに乗り込み、レミリアの後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

「キシャアアア!」

 

「よせえええええ!!」

 

眠るフランドールへ襲いかかるサカナ女。そいつを轢いてドラクリヤーが現れた。驚いて飛び起きるフランドールをかばうように立ち、レミリアは逃げろと告げた。

 

「でも…お姉様!」

 

「いいからっっ!」

 

レミリアの命を削ったような絶叫に半ば押されつつもその覚悟を汲み取り、フランは出口へと走った。

サカナ女の尾ビレの一撃によりレミリアドラクリヤー共々壁に叩きつけられ、穴を開けて突っ込んだ。

 

「…意外と脆いわね。いや違う?これは…隠し部屋!?」

 

偶然の発見に驚きつつも、それを気にしている暇はない。再び立ち上がり、サカナ女を見据えたその瞬間。目の前のサカナ女の上から巨大なバイクが天井を突き破って突撃。押し倒す形であったが、無理やりバイクを押しのけて体制を直した。

 

『ガイア・ザ・ルナ!』

「まさか地中移動が出来るとはね。さぁ、土に還れ!」

 

変身しつつバイク、グラウンドスピーダーから降りた天子。ポーズをバッチリと決め、サカナ女に向かった。

 

「一人で来たのがミスだったわ」

 

後悔の念をつぶやきながら正規の入り口からチェイスナイターで入るメリー。ガイアの様子を観戦しているだけであった。

 

「くっそ!サカナのくせに強いわね…!」

 

状況としては、一進一退という感じ。ネコ戦の疲労を思えば、若干ガイアが不利であった。

このままではまずい。レミリアはそう思い、どうにか武器がないかと隠し部屋の中を探した。

 

「…これ、お母様が昔語ってくれた…!」

 

「ヴァンパイアリングじゃねえか!こんなとこにあるたぁ、オイラも知らなかったぜ!」

 

モンスターの顔を模したそいつを持ち上げ、かつて彼女が聞いたように、腰に巻きつけた。

 

『覚醒!』

 

ベルトからの声。悠久を終わらせるように、その埃が落ちる。それがきっかけなのか、一気に母の想い出父の想い出、そして妹の想い出。溢れ出るように脳内を駆け巡った。

 

「ヴァンパイアリング。お前もわかってくれるよね。私の、護りたい思い!」

 

その右手をベルトのレバーに起き、引く。モンスターの口が開き、中の渦が光りながら回転。

右手を天を指差すように伸ばし、ゆっくりと下げ顔に重ねる。

 

「変身」

 

その一声と共に、開いたモンスターの口を閉じた。

 

『ジェ・ヴォー・ダン』

 

再びベルトから音声が放たれると同時に、ビキビキと体が変化。洋服が鎧に変異し、皮膚は固まり髪はツノへ。

赤く血走ったラインの目立つ黒い体と古ぼけたマントの戦士へ。

 

バケモノよりバケモノらしい姿であったが、その背に込められた覚悟は、正義の味方『仮面ライダー』の称号を贈るにふさわしいものであった。

 

「ぐっ」

 

サカナ女の首根っこを掴み、グラウンドスピーダーの掘った穴を抜け、窓を突き破り外へ。赤く煌めく月をバックに、サカナ女を地面に叩きつけた。

 

その後を追うガイア、メリー、そしてマシンドラクリヤー。サカナ女の前に降り立ったライダーはこう名乗った。

 

「この姿、ジェヴォーダンと呼べ!さあ、楽しい殺戮を始めましょう」

 

「行くぜレミィ!」

 

その身を構え、サカナ女へと駆け出した。

 

Continued on next episodes.




「この姿では…斬れぬものなどほぼない!」

剣を抜け、半人前の戦士!仮面ライダー桜刀見参!

次回、「広有極剣撃事(ひろありけんげきをきわめること) 〜 Will You?」

個人的にドラクリヤーとかフェザーチェイサーみたいな意思あるバイクはバックできるイメージ。
レミィの口調は女性よりの中性的です。だよ、だねにだわが混ざる感じ。これも儚月抄を中心に原作に寄せてですね。
「ぞっとしない」はZUNがよく使う印象。ググれば分かりますが、「ゾッとする」とはそんなに関係ないです。
で、分かってると思いますが、最終形態無けりゃ登場させられませんからねー!つまりへカーティアとメディはまだ変身しません。お待ちしてますぞーい。


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第5話 広有極剣撃事 〜 Will You?

ちょい短め。言っても5000字だけども。

さて、前回の第4話は!
バイクの力も借り、ヒールはネコ女を撃破!そして輝夜達の元へ向かう一行だが、サグメがその身を預かると宣言し、変身。フェネクスとガイアが追い詰めるも、永遠亭の面々もろとも逃してしまう。帰路に着く中、天子とメリーは紅魔館へ向かった。二人は咲夜、レミリアに出会う。そんな中、レミリアは夜風を浴びるべく散歩に。突如として現れたサカナ女に襲われ、紅魔館へ戻ることになる。全く倒せず、サカナ女がフランドールへと迫る。しかしそんな状況で、レミリアはバックルを見つけた。…変身!爆誕したライダーは月夜へ飛び上がり、サカナ女を外へ叩き出したのであった。そのころ、妹紅は蓮子を引き連れヤケ酒中…。
・仮面ライダーワードレス アナライズワードレス
・仮面ライダージェヴォーダン
・サカナ女


「つまり…私が受け継げ、と?」

 

「そう。あなたのお爺様が私に預けたこれ、そろそろ使う時だと思うの」

 

場所は変わって白玉楼。幽々子に呼び出された妖夢は、渡されたアイテムを不思議そうに見つめていた。

 

これが何であるかは知っていたが触るのは初で、ましてや自分のものになろうとは思っていなかった。喜びと恐縮で奇妙な気分なまま、幽々子の話を聞いていた。

 

「今日から…あなたが『仮面ライダー桜刀(おうとう)』よ」

 

覚悟を問うような眼差しで、妖夢を覗き込む。その目に未だ残る迷いを理解しつつも、幽々子は何も言わずにそれを渡した。

 

「使い方なら聞かなくても理解するはずよ」

 

そう言い残して姿を消す幽々子。妖夢はよくわからないままその『オビドライバー』を俯き加減に見ていた。

 

「それはそうとね妖夢。今夜は紫と朝まで飲むからお酒に合うお料理お願いできるかしら?野菜がいっぱいあると助かるわ」

 

無理矢理空気を戻すようにおどけ気味に話す幽々子。妖夢は顔を笑顔に戻して承諾し、オビドライバーをバッグにしまい、買い物に出た。

 

「さぁ、仮面ライダーの経験でどう成長してくれるかしら…」

 

幽々子は真剣な眼差しを作り、パタパタと駆けていく妖夢の背を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

「ま〜だ呑むの妹紅?」

 

「どんだけ酔っても一夜で元に戻るんだよ。だから呑みたいだけ呑むの!」

 

半ばフラフラ気味に叫ぶ妹紅。しかし呑んだ量の割には酔っていない。蓮子はいい加減水も茶も飲み飽きたのだが、相手がそうするならついてくしかない。苦笑いとともに次の店へ着いて行った。

 

次に入ったのは人里のうどん屋。非人食いの妖怪が住み込みで働いているので夜遅くまでやっているのだとか。

 

「ん?妹紅じゃないか」

 

先に店にいたのは上白沢慧音。妹紅の方を向いて手を振った。座っていたのがカウンター席だったので、妹紅と蓮子も慧音の横に座り、かけうどんを頼んだ。

 

「もう10時過ぎだぞ?外には気をつけろ」

 

「…怪物の話か」

 

「ああ。…やけに不機嫌じゃないか。無責任に元気を出せとは言えんがあまり落ち込むなよ?で、そこのお嬢さんは?」

 

妹紅に心配げに声を掛けると、続いて隣の蓮子の方を見た。お互い軽く自己紹介を終え、握手。ふと慧音が座り直し、蓮子を見つめた。

 

「そういえば文々。新聞に載ってたな。あれはデマばかりの新聞…というか娯楽誌みたいなものだからな。実際はどうなんだ?」

 

「なんて書かれてたかは知らないですけど変身するのは可能ですよ。まぁ、相方がいれば、の話ですけどね?」

 

「そうか。それは面白いな。二人で一人分の戦士になるとはな…」

 

「ま、私も相棒も半人前ってことですよ。なーんて」

 

 

 

 

「へっくしょん!」

 

「どうしたのよくしゃみなんて。格好は暖かそうだけど?」

 

「さぁ…?」

 

メリーとガイアは二人、外へ消えたジェヴォーダンを追っていた。地下を上がって、正門を蹴り開け、紅い月の下に飛び出た。その上空には巨剣ドラクリヤブレードを構えた黒の禍々しき悪魔。急降下と同時に斬撃。起き上がると同時に体に切り傷をぶち込まれたサカナ女は思わずうずくまった。

 

「でやぁ!!」

 

さらにアッパー。浮き上がったその上半身に乱暴に爪をぶつけ続けた。

 

「まだ…足りない!もっと斬らせなさい!!もっと争いなさい!この渇望を満たさせなさい!」

 

乱暴に声を上げ、ヤクザ蹴りを腹に叩き込んだ。ぶっ飛ばされるサカナ女の後をさらに追撃。雄叫びをあげて牙を見せるその女は、まさに化け物。異形。

先ほどの覚悟の姿はなく、ただ血を求むばかり。見かねたガイアが肩を掴んで止め、かぶりを振った。

 

「落ち着きのないやつは勝てないわよ。必死なんなのかなんなのか知らないけどさ、一旦冷静になりなさい」

 

そう言って緋想の剣を向け、サカナ女へ駆け出した。

 

 

 

 

 

「え、いいの?」

 

「いいよ。蕎麦屋だと衆目があるだろ?」

 

一杯の後のうどんを終えて二人は人里で買い物中であった。そろそろ寝た者も多いので、開いてる店はかなり少なく、ポツポツと灯りが見えるだけだった。慧音に悩み苦しみを吐き出した妹紅は、先ほどよりいくらか希望の灯った顔をしていた。

 

そんな中、妹紅が提案したのは、蓮子とメリーの妹紅宅への宿泊。先ほど語った理由もあり、蓮子はありがたくもそうさせてもらうことに。『帰るときは妹紅の家まで天子に送ってもらって』とメリーへ手早くメール。

 

帰ったら食事を振る舞おうという事で、見ていたのは野菜。河童から貰った冷蔵庫のおかげで魚は完璧に保存中なんだとか。

 

「お酒に合う野菜か…」

 

そんな中、隣で野菜を見つめていた妖夢。横が見えていなかったらしく、蓮子に衝突。お互い驚いたのち、深々と謝罪。顔を上げて二人を見て、妖夢は不思議げにその組み合わせを眺めた。

 

「妹紅じゃないの。それにあなた、夕刊に居た二人で鎧を着て戦う外来人よね?」

 

「ハハハ、宇佐見蓮子よ。相方はマエリベリー・ハーン。会ったらメリーって呼んであげて」

 

そう言って蓮子の方からハグ。銀髪少女二人は驚いた様子で蓮子を見た。

 

「初対面に抱きつくってお前…。いくら愛らしい少女だからってお前…。メリーって言う相方がいるのにお前…」

 

「握手にも飽きてきたし?今時の少女っていうかグローバルな世界なら昔からある挨拶よ!」

 

「じゃあ親しい人との挨拶は?」

 

「ほっぺにちゅー」

 

「キッス!?」

 

「そう言うもんだよ。まあ別に私が普段からそうやって生きているかって言うとノーだけども」

 

ケラケラと笑う蓮子。なにかを話そうと口を開いたその瞬間、遠くからアオーンと咆哮。うるさいなと思うものの、今日は満月。オオカミが荒ぶるのも仕方ないかと思ったそのとき、妹紅の顔が不穏に。何かに押されるように駆け出した。

 

「何か心当たりでもあるの!?」

 

「一応ね!」

 

その背中を追う蓮子と、二人の勢いにつられる妖夢。路地裏をかけ抜けてまっすぐどこかに向かう彼女。辿り着いた場所は

 

「誰もいない…くっ」

 

もぬけの殻。しかし布団の温もりでついさっきまでいたのがわかる。どうすべきか、立ち上がった瞬間、何かの影が妹紅の横を通った。瞬間的に振り向き、その影を妹紅は追った。

今度は急な出来事すぎて追えなかった二人。すっかり妹紅を見失った。

 

「ここ…あのオオカミ妖怪の家よね?」

 

疑問を抱きつつその室内を眺めるが、外へ向き直る。そして蓮子の手を掴むと、今泉影狼を探し走り出した。

 

「きっと怪人化させられたのよ!そう遠くには居ないはず!危ないからちゃんと着いてきてね!」

 

そうしてあたりを探しながら、道を駆け抜けること3分ほど。目的の相手を見つけた。刺々しい茶の怪物は、まさにオオカミ。オオカミ女と呼ぶにふさわしいものであった。

 

「はああああああああ!」

 

楼観剣で斬りつけ。しかし切り傷はあれどその身に大きなダメージはなかった。オオカミ女に胸倉を掴まれ、投げ飛ばされた。

 

「なぜ…楼観剣が!」

 

「見た感じ斬れ味というより力よ。もう少し力を入れて斬れば…!」

 

「あれで全力!」

 

蓮子の発言に焦りを見せる妖夢。もう少し力が。その発言が脳内でこだまし、あるものにぶつかる。

 

「この鎧を着れば…!」

 

オビドライバーである。ベルトであるのは帯という名前からすでに察しており腰に当て、腰の後ろでベルトを繋げた。

 

『人か霊か?』

 

「顕界の獣なら…人で倒す!」

 

そう言って心の中で変身の準備。どうすれば変身出来るかとふと左腰を見れば、鞘が固定されていた。これを見てピンときた妖夢は白楼剣を背中から抜き、鞘に収めた。

 

『変・身・承・知!ヒトノカタ!』

 

半霊が消え、その体に緑のボディスーツがフィット。黒い鎧が体を包み、兜のようなメットが装備される。

 

一言で形容するなら、黒と緑の侍。そういうのがふさわしい見た目であった。

 

「はあああああ!」

 

「これが…仮面ライダー、桜刀。…この姿では…斬れぬものなどほぼない!」

 

楼観剣をその手に一言決め台詞。オオカミ女へ駆け寄り一撃。その袈裟斬りにダメージを受け、苦しむ動きをとった。

 

「行ける…!」

 

さらに攻撃。しかしオオカミ女側も警戒が強まったのか、爪を構えて応戦の体制をとった。

 

しかし、その五本の右爪も、楼観の一閃で全て池に落ちる。

 

驚き、恐れるオオカミ女。そこにさらに柄殴りで追撃。怯んだところにさらに横斬りを入れた。

 

「ぐおおお!」

 

「すごい…!」

 

「私も驚いてるわよ…!」

 

再びかがんで苦しむオオカミ女へさらに突き。怯みの隙にハイキックを叩き込んだ。ぶっ飛ばされ、橋に。川に逃げ込もうとするが、それを許す桜刀ではない。

すぐさま駆け寄り、蹴り上げて土の上に吹っ飛ばした。

 

懲りずに牙で襲いかかるオオカミ女。しかし噛み砕かんとしたその刀の硬さ故に、むしろ歯を傷つける。すなわち、口内という大弱点をさらすこと。そのまま喉を斬りつけた。

 

「ーーー!ーーー!」

 

出せぬ声で叫びながら蠢くオオカミ女。

その化け物を前に、ゆっくりと白楼剣を引き、カンと音を立てつつ再び納めた。

 

それは必殺の合図。楼観剣にオーラを纏わせ、オオカミ女へ駆け寄ると、すれ違いざまの横斬り。

 

一瞬その動きを止め、うなだれたのち爆発。その爆風より、影狼が現れて倒れた。

 

「元に戻った…んだよね」

 

「少なくともレミリアはそうだったわ」

 

そう言って影狼を抱え上げる蓮子。息があるのを確かめ、その家へと寝かせてやった。桜刀もベルトを外してその姿を解いた。

 

 

 

 

 

 

「えっと、妹紅さんの家に泊めてもらう…?」

 

同じ頃の紅魔館前。ガイアとジェヴォーダンの姿を眺めるメリーの元へ蓮子からメール。『了解。終わったら向かうよ』と返信し、ガジェットガラパゴスをしまった。

 

当のガイアとジェヴォーダンは未だサカナ女と戦闘中であった。ジェヴォーダンの凶暴性がはじけそうになればガイアが抑え、ガイアが攻撃。そしてジェヴォーダンが攻撃し、凶暴を抑えづらくなる。この連鎖を繰り返し、決定打が入っていない状況である。

 

「シャッ!!」

 

さらにはこの流水ビーム。恐ろしい速度のそれは、流水云々以前に誰が食らってもやばそうなシロモノである。

 

ガイアもジェヴォーダンも一旦距離を置くほかない。ステップで飛びのいて避けに専念。

 

「ドラドラ!」

 

近接攻撃は難しいと判断。ドラクリヤーを呼び、攻撃するよう命令した。

 

「オーケイ!伏せろレミィ!天人!」

 

そう叫ぶと口の中よりガトリング準備。吐き出すように弾丸を撃ち放った。

 

「ぐがががが!」

 

その一撃を喉にくらい、苦しむサカナ女。水を吐こうとするも、掠れた風音がするだけ。早々に水弾を諦め、尾びれでの攻撃。近づいてきたガイアぶちかました。

 

「…ったく!」

 

仮面ライダーガイアこと比那名居天子はどちらかといえば短気な人間。冷静にジェヴォーダンを抑えて戦うより、サカナ女をすぐに倒してから抑え込む方にシフトチェンジ。ジェヴォーダンから手を離し、拳をサカナ女へ叩きつけた。

 

「シィイイ!」

 

威嚇の声を上げるサカナ女へジェヴォーダンが回し蹴り。思いっきりぶっ飛ばして、追撃せんと爪を構える。

 

「だーかーらー!落ち着きなさいなってば。ほら、私が隣にいてあいつが少し距離のある場所にいる。さぁ、どうすべき?」

 

「…一緒にフィニッシュを叩き込む」

 

「そう、正解。必殺技とかないわけ?」

 

「どうかしら。こう?」

 

『グランドフィニッシュ!』

 

『ファング!ドラクリヤエンド!』

 

ジェヴォーダンに言いつつ、レバーを引いて必殺技発動。身を低く構え、キックの体制をとった。真似るようにジェヴォーダンもレバー操作。必殺を発動した。

 

「ストライクファング」

 

『ナイトブレイカー!!』

 

「でやあああああああああ!!」

 

ジェヴォーダンはサカナ女へ向かって脚を広げてジャンプで接近。顔の前で脚を閉じ、首を締め上げた。ガイアはその下を抜けるようにスライディングキック。二人の攻撃に耐えきれず爆発。倒れ込んだわかさぎ姫を確認し、二人はベルトを外した。

 

「ふぅ、あんたはまだ訓練が要りそうね」

 

「未熟感は否めないわね」

 

ため息に二人はわかさぎ姫を抱え、紅魔館へ。問題も残りさらには建物もボロボロであったが、一応の安全の確保に安堵を抱いていた。

 

 

 

 

 

「ああ、妹紅!」

 

「どこ行ってたの?」

 

戦いが終わり、影狼の家の前で妹紅を待っていた二人。15分ほど待ったのち、彼女は走ってきた。

 

「倒せたん…だね?」

 

「私がね。それはそうと一体何を追ってたのよ」

 

「いや、人違いだった。私たちに驚いた人間だったよ」

 

そう言って申し訳無さげに頭をかく妹紅。二人の背中を押し、野菜を買うべく八百屋まで戻っていった。

 

その背を、遠くより見つめるものが一人。

 

「逃げた影は稀神サグメであった…とは言えんか。せいぜい上手くやってくれよ、藤原妹紅」

 

そう言って片翼の神霊は妹紅に背を向け、己の帰路へついた。

 

振り返りざまに、こう一言。

 

「明日の12:00、旧都入り口前。忘れるなよ」

 

そう残すと、口角を歪めて再び歩みを進めた。

 

Continued on next episodes.




「聞こえますか、これが怨嗟の声!」

その覚悟を問え。

次回、「法界の血」

乞うご期待。

みなさんこんにちは。細川さんインタビューでよもや響鬼本人出演かとざわめくサードニクスです。そこの君!細川さんが撮影とか言っててもジオウですかとか失礼なこと言うなよ!!
で、以下東方の話。
天子は偉そうでわがままだけど気に入ったやつには面倒見よくて姉御気質のイメージ。
前半は蓮刈天妹の四人三ライダーがメインになりつあります。登場の早さもそうだけど、定住してなくてもいいキャラで従者とか同居キャラが居ないから歩き回りやすいというのが理由。でもこの後の展開でこの固定はすぐなくなるからご安心を。



みんなの!変身ポーズコーナー!

はい、みなさん。このコーナーでは本作品の全ライダーのポーズをちょっとずつ紹介しようと思います。今回は〜

『仮面ライダーヒール スターボウモード』
『仮面ライダーヒール ナイトメアモード』

でございます。ではスターボウから。
まずはレンズを入れます。
そして、一号のあれ!左腕を拳にして腕を腰にして、右手を斜めに構えるアレからのレバー押し込み。

次ナイトメア!
一言で言えばブレイド!若干違うのは指を折らず、フラットな状態で甲を前にして右手を伸ばします。そしてくるっとして掌を見せ、レバー押し込みです。

ってなわけでまた今度!お楽しみに!


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第6話 法界の血

急になげえよお前。

さて、前回の第5話は!
ジェヴォーダン、サカナ女を撃破!そのころ、幽々子からベルトを託された妖夢が人里で買い物中。そんな時に遭遇したのは蓮子と妹紅であった。そして、突然の咆哮!現れたのはオオカミ女だった。妹紅どこかへ行ってしまい、蓮子はメリーが居らず変身不可だ。妖夢はベルトを巻き、変身!見事オオカミ女を倒すのだった。終わったころに帰ってきた妹紅、彼女はサグメと何やら約束を取り付けたらしく…。
・仮面ライダー桜刀 ヒトノカタ
・オオカミ女


「ふぁ〜、今何時?」

 

少女宇佐見蓮子は妹紅の家にて目を覚まし、布団からのっそり起き上がった。差し込む日の角度で朝11時過ぎ頃であろうと予測。立ち上がって視線を送った先の河童製時計は11:12分を指し示していた。一人得意げな顔を作り、縁側へと出た。

 

「あら、おはよう蓮子」

 

「呑んでないくせによーく寝るねぇ」

 

「疲れてるんでしょ」

 

メリー、天子、妹紅がそれぞれ朝の挨拶。全員起きたのを確認し、妹紅は朝食の準備を始めた。

 

「あんたってば不良くさいのに料理は上手なのね」

 

「不良はお互い様だよ。ま、1000年生きてりゃすることもそれぐらいになるさ」

 

米をよそってちゃぶ台に起き、続けて味噌汁と卵焼き。ちょうど四人で囲む形で朝食を始めた。

 

「実は私達今日は稗田家行こうと思うんだけどさ、妹紅と天子はどうするの?」

 

「私は用があるからパスだね」

 

「私はいいわよ。付いて行くわ」

 

味噌汁をすすりながら問うメリー。肯定の念を返したのは天子。四人はささっと食べ終え、準備。慌てて寝癖を直す蓮子をメリーと天子はバイクを用意しつつ待機。フェザーチェイサーに乗って先に去る妹紅を二人が見送ったころ、蓮子が準備完了。チェイスナイターの後ろに乗ってメリーの腹に手を回して掴まった。

 

「じゃ、行くわよ!」

 

天子の元気満点の声に合わせて、メリーもバイクを前進させた。

 

 

 

 

 

「さぁ、約束は果たしてもらうよ」

 

「若干早いな。まあ、いいか」

 

腕時計を確認しつつ、稀神サグメは旧都入り口前にて妹紅を手招いた。

 

「罠だったとしたらどうなるかは分かっているよね?」

 

「八意様や姫様をダシにして罠などしかけるつもりはない」

 

「なら信用させてもらうよ。永遠亭の住人は地底で保護してるんだな?」

 

その言葉に真剣な眼差しで頷く。その顔に偽りはないのだろうと信用し、彼女の後を追った。

 

 

 

 

 

「ひっろい屋敷…」

 

「予想以上よ…」

 

稗田家に入れてもらった三人。屋敷の召使いに連れられつつ、阿求のいる部屋へと向かった。見渡しながら驚く二人をよそに、まるで実家を歩くような堂々さで天子は突き進んでいた。

 

「あの図々しさ、いっそ貰いたいぐらいね」

 

半笑いにため息の蓮子。聞こえていたのか、天子は振り向くと得意げな顔で蓮子を見た。シャフ度ドヤ顔と言うべきか。

 

しばらく廊下を歩いたのち、大きな客間へ案内された。その先では阿求が座って彼女達を迎えていた。

 

「ようこそ、私が稗田家現当主の稗田阿求です」

 

「「はじめまして」」

 

「久しぶりね」

 

しっかり頭を下げる二人の横で堂々の態度の天子。縁を踏むのも気にせずズカズカと畳の上を歩行。阿求の前にどっしり座った。

 

「貴女は何の用なのよ」

 

「用なら無いわよ。あの子達に付いてきたの」

 

「その子達がまだ座ってないのに付いてはどうお考えで?」

 

「鈍臭いなとしか」

 

ベラベラと皮肉の応酬を続ける二人を尻目に、蓮子とメリーも座り込んだ。

 

「私達は幻想郷について知りたくて…その、外来人なんで」

 

「しかも未来からの」

 

その言葉に頷き、書斎へ三人を招くモーション。従ってついて行く三人。大きさのあまり、秘封倶楽部は屋敷を見たときと同じような動きで驚きを晒した。

 

「そう言うことなら幻想郷縁起が…」

 

背伸びしつつ取った和綴じの本から何かが落ちた。メモ用紙のような古ぼけたそれを蓮子は拾い上げて返そうとした。しかし部屋を見たとき以上の驚きの表情でフリーズ。何事かと覗き込んだメリーも、蓮子ほどではないが驚いていた。

 

「私の書いたメモじゃない!100年前に迷い込んだ時のよ!」

 

驚いきつつ蓮子の手からメモを取り、阿求に返却。未だに不思議そうな顔をしつつも、二人は阿求に招かれて椅子に座った。

 

「まずはここの地理から…」

 

 

 

 

 

語ること3時間ほど。二人は食い入るように幻想郷縁起を見つつ、阿求の話を聞いていた。

地名、施設、歴史。しかし最も興味深いのは妖怪についての話。それこそ本に出てくるような多種多様な妖怪達の話に二人は興奮しっぱなしであった。

 

「と、まあこんなものですね」

 

「天人の項があるんなら私についても記しなさいよ」

 

「現在執筆中よ。…そういえば、少し前に外来の機械がここに持ってこられてたんですよね。先ほど話したメディスン・メランコリーが先日盗んでしまったのですが、現場を見た人によると、鎧を着るためのアイテムなんだとか。使うと死亡すると言うことですが、貴女達はなにかご存知だったり?」

 

「いえいえ、このアイズバックルを使うまでただの一般人だったんですから!」

 

「ただの一般人は貴女みたいに境界は見えないわよ」

 

「歩く月時計にそれを言われたくないわね。まぁ、ただの計算なんでしょうけど」

 

「失礼しちゃうわ。れっきとした超能力よ!」

 

阿求は皮肉気味にじゃれ合う二人を楽しげに眺めていた。そんな最中ふと立ち上がって外を見上げた。

 

「アレ…」

 

指差すその先の黒い点を見た天子はまたかと顔をしかめて飛び出した。秘封倶楽部もよくわからないままその後を追った。

 

「どうしたのよ!」

 

「天人の視力なめないでよ!アレはカラスの怪物。多分天狗よ!」

 

そう言ってグラウンドスピーダーに飛び乗り、空の点を追った。同じく二人もチェイスナイターに乗り込み、その轍を踏みなおした。

 

『ガイア・ザ・アース!』

 

『we are star night fantasy!』

 

変身しつつ先を急ぐ。すると、こちらに気づいたのか急降下。立ちはだかる形でカラス女は着地した。

 

「さぁ!地に還れ!」

 

『「満天の月夜、見せてあげるわ!」』

 

ガイアとヒールは決め台詞を放ち、カラス女へ突撃。同時にキックを叩きつけた。カラス女はぶっとばされつつも受け身。空へ舞い、すれ違いざまの羽根での攻撃へシフトチェンジした。

 

ガイアとヒールもそれぞれ緋想の剣とフォンブレイドで応戦。横を呼ぶその一瞬に、刃をぶつけた。

 

しかしそこまでのダメージではないらしい。悠々と飛び回るカラス女に三人は苛立ちを覚えていた。

 

『ねぇ、代わって!ナイトメアで狙い撃ちましょう!』

 

「あなたアレを撃ち落とすエイム力あるの?スターボウのまま近づいたところをやった方がいいわ!」

 

『それも…そうね』

 

結局モードチェンジはやめ、この戦い方に。そんな中、ヒールはアタックドロップを構えた。

 

「くあああああ!」

 

『jump eyes!』

 

近づくカラス女の前で大ジャンプ。飛び上がるカラス女の背に掴まった。振り落とさんと暴れるカラス女の背にブレードを突き立てた。

 

「ギッ!」

 

しかし痛みのせいでさらに暴走。そのまま目の前の店の壁に激突。舞い散る土埃の中、カラス女は飛翔、ヒールは墜落。姿が見えなくなるほど遠くに消え、追跡は不可能となった。

 

「こいつは面白い…仮面ライダー、か。河童に作らせてみるとするかね!」

 

その姿を影から見ていたのは萃香。楽しげに笑うと、パタパタと走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

「うーむ…」

 

戻ってきてみると阿求が部屋の中を悩ましげに歩き回っていた。

 

「どうしたんですか?」

 

「うーん…その、これがおそらくあの怪物によるものと思われる被害者の住んでいた家なんですが…」

 

そう言って見せた地図を見て、天子は少し不思議に思った。やけに範囲が広いのだ。殺害された時間も細かく書かれていたが、明らかに移動できる時間ではない。というか3分とか、そういう間隔で起こっていた。

 

「複数居るかもしれないってわけ?」

 

「ええ、暴れまわるスパンは他の怪人と同じなんですが、いかんせん場所の検討がつかないんです。その辺について鈴奈庵で聞いてくるので、一旦お話は終わりということで…」

 

その言葉に秘封倶楽部二人は頷き、クルッと踵を返した。

 

「予測をつけるためにも被害者の居た部屋を見て回りましょう。天子も一緒に来てくれるかしら?」

 

蓮子はそういうと、足早に駆け出した。その背を天子は半ば感心の混ざった顔で見ていた。

 

「やけに頑張るわね」

 

「あの子、あれで責任感強いから。合理主義的な所もあるし、これ以上絶対に被害は出さないっていう強い思い入れがあるんじゃないかしら?まあ、私もそこは全く同意だけど」

 

そう言って駆け出すメリー。その背に追いつくと、天子は二人の肩に手をおいた。

 

「捜査も良いけど、まずはここの奴らに協力を仰ぎましょう。幻想郷の大半の勢力はここ二日で巻き込まれたせいで動き出すはず。でもここは別」

 

そんなことを言いながら、天子はささっと書いたメモを蓮子へ渡した。命蓮寺。それがその寺の名である。

 

「そこの奴らは篭ってることが多いからね。こいつらが動けば仙人どもも動く。調査は私の方でしとくわ。あなた達で話しなさい」

 

そういうとグランドライバーを装着。グラウンドスピーダーに乗り込み、真っ直ぐ人里へ走らせた。

 

「全く、無茶言うんだから」

 

そんなため息をつきながら、メリーはチェイスナイターを駆動。後ろに蓮子が乗ったのを確かめるとメモを貼り付け、そこを目指して走り出した。

 

 

 

 

 

 

「あら、こんなところで吸血鬼達がピクニックとはね」

 

「無明の丘は今日が初めてね」

 

日傘の下でのんびり寝転がるレミリアに対して話しかけたのはメディスン。その声にサングラスを外し、レミリアは起き上がった。

 

「毒人形のあなたこそ、ここで何してるのかしら?」

 

「私はここに住んでるのよ」

 

「ふーん、そういえば咲夜。ここなんか空気淀んでない?」

 

そう言って振り返った瞬間飛び込んだ咲夜を見た瞬間レミリアは驚きつつ吹き出してしまった。

やけにごついガスマスクをしていたのだ。見れば、一緒に来ていたパチュリーもしていた。

 

「いえ、実はここには強烈な毒を持つ妖怪がいると聞いていたので」

 

「それは最初に言いなさいよ。私だってちょっとは影響あんのよ」

 

そう言って紙マスクを装備。それでいいのかという視線を送るパチュリーをよそに、レミリアはくつろぎ直した。

 

「あなた、変身する外来人のこと知ってる?」

 

「知ってるわよ。メリーって言うんだけどね」

 

「今どこに居るの?無縁塚に埋まってる?」

 

「なんで死んでること前提なのよ。人里に居るわ」

 

レミリアの一言にメディスンは困ったような顔をした。人は嫌いなのだ。そのことを伝えつつ頭をかいてみるが、レミリアは依然笑ったまま余裕の様子である。

 

「でも別に見たらすぐ殺すとかそう言うわけじゃないでしょ?」

 

「嫌いだし慣れ合う気もないけどね…。でも、閻魔様に言われてからは見に行くぐらいはしてるけどね」

 

「なら良いじゃない。人をよく知らぬあなたのためにも人里案内してあげるわ。もちろん、メリーに会わせたらね。それにしても、なんだって例の外来人に会いたいのよ」

 

「これよ」

 

そう言って彼女が見せたのは何やら奇妙な機械とカプセル群。いかにも危険そうな見た目で、積極的に触る気はしないものであった。

 

「それ…もしかして変身アイテムだったりするわけ?」

 

「さあ?それを知るためにも…」

 

「人里に…ね。咲夜、準備して。人里に向かうわよ」

 

レミリアはそう言って素早くピクニックのセットを片付けた。パチュリーは先に帰ると伝えると、空を舞って紅魔館へ。残された三人は無明の丘を離れ、人里へ向かった。

 

 

 

 

 

 

「なるほど…怪人被害、ですか」

 

命蓮寺に到着した秘封倶楽部は彼女らが思う以上の歓迎ムードを浴びた。命蓮寺は人里から結構近く、歩いても良いのではというほどであった。

 

住職、聖白蓮の元で二人は簡潔に事件の概要を話していた。自らが未来からの外来人であること、戦った三人の怪人、人の被害が広がっていること。その話全てを聖はしっかりと受け止めていた。

 

「ですから、妖怪たちから信頼が厚く、自身の力も強いあなたなら…」

 

「状況の打開に一役買える…と。分かりました」

 

聖は深刻な顔で頷き、立ち上がると外出の準備を始めた。

 

「今すでに怪人がいるんでしょう?向かいましょう!」

 

そう言って飛び出した彼女の後を追い、秘封倶楽部も外に。

結局移動の都合で三人でチェイスナイターに乗るというシュールな状況となった。

 

 

 

 

 

「あなたは隠れてなさい!」

 

「大丈夫よ!あんな妖怪!」

 

「大丈夫じゃないから言ってんのよ!」

 

同刻の人里。現れたカラス女に人々は逃げ惑っていたら。その中立ちはだかるのは仮面ライダーガイアとレミリア。その後ろのメディスンを守る形でレミリアは立ちはだかっていた。

 

「怪人は妖怪でも大怪我するレベルに化け物なの。怪人退治は…」

 

『覚醒!』

 

「仮面ライダーの仕事よ。変身」

 

そうカッコつけた一言を放ったのち、腰に巻きつけたヴァンパイアリングのレバー引いて右手を掲げる。ゆっくりと下げつつ顔に当てるポーズののち、ヴァンパイアリングの口を閉じシークエンスを終わらせた。

 

『ジェ・ヴォー・ダン』

 

「さあ、楽しい殺戮を始めましょう」

 

決め台詞。心の中でキマッたと得意げな顔。日傘を投げ捨て飛び掛った。

 

「あっづ!あづづづ!」

 

飛びかかった瞬間煙を上げつつ転倒。その勢いをそのままにゴロゴロ転がって屋根の下に。情けない様子で首を横に振った。

 

「変身したら大丈夫とかそういうことはないのね…」

 

時刻は現在15:04。日光は下がりつつも凶暴に照っていた。

 

「あー、その、ご苦労様」

 

いつのまにか到着していたメリーからの優しげな言葉。しかしレミリアからすれば、その気遣いこそ恥ずかしさの起爆剤である。顔を真っ赤にして目を背けた。

 

「白蓮さんはここにいてくださいね。私達が戦うんで」

 

『look the star…』

 

「「変身!」」

 

『star night fantasy!』

 

そんなレミリアをよそにバイクを降り、聖を残して二人は手早くヒールスターボウモードとなり、フォンブレイドを組み立ててカラス女へ向かった。

 

「だあああああ!」

 

「でやっ!」

 

ガイアとヒールの同時パンチ。しかし咄嗟で避けたカラス女のせいで、二人はその拳をぶつけ合ってしまった。手をさする二人をよそにカラス女は飛び立った。その下をグラウンドスピーダーとチェイスナイターが駆ける。

 

「…そういえばここ、ガラケーの方つけたらどうなるのかしら」

 

そんな中蓮子がふと疑問を口にした。メリーのやってみなさいよの一言にて決定。ガジェットガラパゴスを取り出し、バイクの計器たちの横のスロットへセット。Enterボタンを押した。

 

その瞬間、何やら音を立て始めたチェイスナイター。戸惑う秘封倶楽部をよそにガタゴト変身。気づいてみれば、そこには巨大なロボットが立っていた。

 

「嘘でしょ…」

 

『何目輝かせてんのよ。追いなさいよ』

 

メリーの促しに頷き、走ってそのあとを追う。しかし、空中でカラス女がグルグル旋回しているのを見て、チェイスナイターは立ち止まった。何事かと疑問符を浮かべる三人をよそに、チェイスナイターはガトリングガンを構え、発射。いくらか当たったのか、ふらつくカラス女。

 

『今よ!』

 

「そんなの…」「分かってるわよ!」

 

メリーの合図にそう返しつつ、かたや土のカタパルトで、かたやジャンプのアタックドロップを使い、ガイアとヒールはハイジャンプ。緋想の剣とフォンブレイドで切り掛かり、その翼に傷を入れる。

 

「クエエ!」

 

奇声をあげてフラフラと落ちるカラス女。そこに対してチェイスナイターの追撃。猛烈なパンチにぶっ飛ばされ、床を滑った。さらに土がカラス女を拘束。重力に任せたガイアの急降下パンチがカラス女を襲った。

 

「ぐううう!」

 

悲鳴をあげるカラス女へさらに回し蹴り。ヒールもアタックドロップを持ち、必殺技の準備をした。

 

そんな中チェイスナイターが何かを思い出したかのようにダッシュ。カラス女を掴んで引きずると、ヒールの目の前で空中にぶん投げた。一瞬戸惑うも、すぐさま準備。

 

『kick eyes!』

『spinning eyes!』

 

「ライダー…ブレイク!」

 

落ちてきたカラス女へサマーソルトキックを叩き込んだ。その様子を見守ったのち、チェイスナイターはバイクへと戻った。大爆炎ののち、煙の中からはたてが起き上がった。ヒールは安心した様子でガジェットガラパゴスを外した。

 

「結構派手なもんね」

 

「よかった…」

 

遠くから眺めるメディスンと安堵した様子ではたてへ駆け寄る聖。しかしはたてはそんな聖とヒールへ回し蹴りを叩き込んだ。

 

「何…!?」

 

今まさに変身を解こうとしていたガイアも手を離して警戒態勢へ。そんな少女達をよそにはたてはその体から電撃を放った。

 

舞い散る砂煙。防御姿勢を解いた彼女らの視界から携帯を残し、はたての姿が消えていた。焦りにも似た戸惑いを抱き、辺りを見渡す。そんな中、ヒールの腿横で何かが振動する。恐る恐るそのガジェットガラパゴスを開く。

 

「unknown addressから…メール?」

 

そう言って戸惑う蓮子の肉体に突如電撃が伝う。悲鳴をあげて身悶えていたが、その体の動きはすぐに止まり、変身が解けてメリーを弾き出しつつ蓮子は倒れ伏した。

 

「ねえちょっと!蓮子!」

 

その体を揺さぶるメリー。命のあることにひとまず安心しつつも、戦えない状況に置かれてしまった。日はまだ照っている。ガイアからの目配せに、レミリアはうつむいたままかぶりを振った。そんな事情はよそに、携帯から青白い異質の怪人が這い出た。電気を固めたようなその見た目の怪人。電波女である。

 

「私がやるしかないって訳!?」

 

ため息をつきつつ拳を構えて殴りかかるガイア。しかし、突如その姿を消して背後に出現。ヤクザキックをガイアの背に叩き込んだ。

 

「携帯からワープできんのね…!」

 

天子はその能力に気づいたが、もはや遅い。転んだガイアに対して電波女は蹴り上げを叩き込み、転がし、さらに踏み付け。首を掴み、長屋の壁へぶつけた。

 

「ぐっ…」

 

力尽きて変身が解けるガイア。無理矢理起き上がろうとするも、邪魔者を倒した為に電波女はその注意を天子から外した。そしてゆっくりと携帯に歩み寄った。

 

「そうか…移動経路が分からなかったのって…電波時計を買った家にワープしてたから…」

 

その真相を掴み、天子はワープをさせまいと体を引きずりながらその手を伸ばした。しかし届く気配すらない。また人が死ぬのか。絶望したその一瞬、踏みつけられたことで携帯が破壊された。

 

「させませんよ」

 

聖であった。移動手段を一つ断たれ、立ち止まる電波女。しかし聖が邪魔者であることを認識したのか、右手でパンチを叩き込んだ。ぶっ飛ばされたその先にいたのはレミリア、咲夜、そしてメディスン。焦るレミリアは何かを思い出し、メディスンの方を見た。

 

「その紅白のカプセルとその機械で…」

 

「変身しろって?いやよ。なんで人間のためにわざわざ殴り合わなきゃいけないのかしら?」

 

「今更そんな…!」

 

困った様子で立ち尽くすレミリアをよそに聖がメディスンに接近。毒も気にせず、その手から複数のカプセルと機械を取った。

あまりに自然な、躊躇いのない仕草だったが故にメディスンは思わず手を離してしまった。

 

「…って、なんのつもりよ。返してくれるならいいけど、その毒、絶対ヤバいわよ。スーさんの毒も一切比べ物にならない。即死モノ」

 

「だからといって、あなたが今使うわけでもないでしょう?」

 

その一言に黙ったメディスンを尻目にその腕にその機械を巻きつけた。その名を、メディットブレス。

 

「これ、妖夢さんに渡しておいてください」

 

そう言ってレミリアに木札を渡すと、電波女の前に立ちはだかった。

 

「……正直、ここに来て怖いと思うなんて予想してませんでした。生の執着はともかく、死そのものを恐れるなんて」

 

自嘲気味にため息をつき、赤と白のブラッドリリィカプセルをメディットブレスの試験管型のパーツに挿入した。

そして身を低く構え、両腕を左側で構えるポーズ。

 

「…………変っ………身っ!」

 

その掛け声を放ちつつ、ゆっくりと息を吐いてメディットブレスの試験管を内側に畳み込んだ。

 

『GRADE UP……… FAZE 1』

 

カプセルから飛び出た液体が聖の血管を伝い、全身に赤い線を刻み込んだ。そして紅白の溢れ出た粒子が鎧を形成し、その姿をなした。

 

仮面ライダーメディス。白き機械の装甲を血管のごとき赤いラインが走っている。不気味で、どこか禍々しいものであった。

 

「あっ…がっ…うああああああああ!!」

 

絶叫。悶絶。倒れこみ、苦痛にのたうちまわるメディス。その姿を誰もが絶句したまま見つめていた。

 

「ダメですよ……聖さん、死んじゃいますよ!」

 

堪らず駆け寄ったのはメリー。しかしその歩みをメディスは制し、首を振った。

 

「大丈夫です…んがっ」

 

体内を這いずり回る激痛に、人と思わじき声をあげる。しかしそれでも無理矢理立ち上がり、マスクの奥の両目で電波女を見据えた。

 

いいかげん苛立ってきたのか、電波女がバチバチと音を上げながら駆け寄り、その首根っこを掴んだ。

 

「うっぐっ…」

 

そしてジュウジュウと焼けるような音が響く。

 

「ギエエエエエエエエエ!!」

 

その音は、電波女の右手からのものであった。焼けただれるその手を抑えながら後ずさる電波女に、一歩ずつメディスは詰め寄った。

 

「聞こえますか、これが怨嗟の声!命を奪われたものの声です!」

 

まるで苦しみを誤魔化すような強気な一言。そして右手を握り、その拳を電波女の腹に叩き込んだ。

 

身をかばいながら、電波女は近くの電波製品を探した。そして見つけたのは蓮子の手元に転がるガジェットスマート。逃げられる!飛び込むように駆け出す電波女。その手を触れようとした。

 

「させませんよっ!げほっ!」

 

咳混じりの聖の声。手がガジェットスマートに触れようかという一瞬、銃弾がそれを弾き飛ばした。驚いて振り向いた電波女の顔に銃撃。メディスの手にはト字管を模した銃、エクスブライガンが握られていた。

 

続いて赤と茶のカプセルをエクスブライガンに挿入。メディットブレス右部のボタンを押し、必殺を発動した。

 

『INCREASE EFFECT』

 

身を低く構え、そのトリガーを引く。エクスブライガンから放たれた弾丸が着弾。同時に電波女の体をツタが締め上げ、バキバキと気味の悪い音を立てた。小爆発ののち、草がほどけ落ち、はたてが倒れ伏した。

 

「終わった…」

 

ため息をついたその時、エネルギーを使い果たしたのか、変身が解除。膝をついた。

 

「白蓮さん!」

 

再び駆け寄るメリー。無事でよかったとその顔を覗き込んだその瞬間、顔を真っ青にして後ずさった。

 

「う、おえぇぇっ!」

 

突如の嘔吐。どうしたのだと他の少女達も聖の元へ顔を向けた。

 

そんな彼女の元からボトボトとなにかが煙を上げつつ溢れ落ちた。

肌色と赤が溶け合い、ピンクとなったその液体を見て、天子も、咲夜も、レミリアも、メディスンでさえもその口をつぐんだ。

 

「あっ…アアッ……」

 

喉が焼かれたのか声にならぬ嗚咽をこぼす白蓮。まるで何かをつかもうとするかのようにその右手を目の前に伸ばす。

 

「にぃ………」

 

その一言を残し、ついにその身は人に形を保つのを諦め、タンパク質の塊として地に溶け落ちた。

 

「うわあああああああああああああああああ!!!」

 

ショックのあまりの絶叫、号泣。メリーは吐瀉物と涙の混ざった唾液を吐き出しながら泣き叫んだ。

他の面々も暗い顔をしたり、目を背けたり、青ざめたまま事実を受け入れきれず目を見開いていたりと、目の前で起きたその事実に動揺のない者はいなかった。

 

Continued on next episodes.




「こんなわけわかんない気分にさせてくれたお礼はしてやるわ」
次回、「ポイズン・リリィ 〜 Forbidden Doll」

みなさんこんにちは。5話の感想の無さに心折れかけのサードニクスです。しかもお気に入り七人やで。私の作品だから人が来ないのかクロスオーバーだから単にダブってる人が少ないだけなのか…
で、今回の話ですけど。トラウマ回になったらいいなだなんて。しかしレミリアといいゲロシーン多いな。食事中の方いたらごめんなさいね。確実におらんけど。
個人的にフェネクスがあまり活躍してないのが問題点。まあ、ちょっと後に強化あるからええんやけど。
というか今回はあんまりガイアが戦えてなかったな…。みんな活躍させんのってむずいね。しかしいつもメディっていうせいで地の文でメディスンって書くのに違和感すごいな。しかもメディスとメディスンが一緒に居るしな!
さて、私が更新のない間は何をしていたか。実はプロットを作っとりました。なんで、もう第10話までストーリー出来てます。こっからは早めに出来るかなーとか。


みんなの!変身ポーズコーナー!

今回はガイアです。ポーズは両フォーム共通!
まずオーブをグランドライバーに入れて閉じます。この後、左腕を横腰にやりつつ、右腕を構えます。その後は逆転させつつレバーを引きます。ちょっと橘さんポーズに近いかな。でもわかんないと思うんでアナログで書きました。5分ぐらいで書いたんで下手なのは気にするな精神。グランドライバーはカラーリング決まっとらんのです。

【挿絵表示】

このポーズを左右逆転させつつレバーを引きます。
で、その後左腕を内側、右腕を外側にして胸の前で腕をクロス。岩が体にまとわれたのち、手を広げつつ岩をキャストオフ。ガイアが中から現れます。と、同時に変身音。これで変身完了。後は「さあ!地に帰れ!」の決め台詞で変身完了です。


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第7話 ポイズンリリィ 〜 Forbidden Doll

さて、前回の第6話は!
サグメは永遠亭の住人を地底で保護しているという。それを信用した妹紅と共に、彼女は地底へ…。そのころ、秘封倶楽部と天子は稗田邸へ。この幻想郷について様々なことを学ぶことにした。そんな時、カラス女に遭遇。逃げられてしまうが、三人は倒すことを決意。天子が捜査を続ける中、秘封倶楽部は命蓮寺へ協力を仰ぐのであった。すぐに向かおうと言う聖を追い、人里へ。ドグマとガイア、遭遇したカラス女を撃破!しかし、はたては間髪入れず電波女へ。ガイアヒールともに負け、ピンチ。そんな中、聖が人里に来ていたメディスンからアイテムを奪う。そして、変身。電波女を倒すが、変身の副作用で体が溶けて死亡してしまう。
・仮面ライダーメディス ブラッドリリィフォーム
・カラス女
・電波女


「はい…そういう訳でご葬式の予定は今日は入れられないんです。本当に申し訳ありません」

 

「分かりました…。じゃあ、せめてこの人形の供養をお願いできますか?あの子のお気に入りだったんです。…妖怪になって人を傷つけたりしたら、あの子も悲しむから…」

 

雨というのは人ならば誰でも気が滅入るもの。今日とてそれは例外ではなかった。

聖白蓮が()()()()()()丸一日。人里の人々にはそう伝えていた。どうしたのだと心配する人達に、住職たちは「きっと気になることでもあったのでしょう。すぐ帰ってくるはずです」と、笑って答えていた。

 

聖が居なくなったせいで予定が混み合い、今日の葬式はお断りせざるを得ない。娘を失った父に、星はそう語った。

 

「このお人形はお預かりします」

 

丁寧に頭を下げて小さな人形を受けとると、星は本堂へと戻って行った。

 

「全く、ご本尊がこんな走り回って、感心しないなあ」

 

ナズーリンは苦笑気味、されどどこか誇らしげな様子で溜息をついた。

 

「…あの子、泣いてる」

 

そんな中、廊下を走る星を見ながらメディスンが一言。ナズーリンは疑問を抱いて顔を向けた。

 

「あの子?」

 

「あの虎さんが持ってたお人形。あの子、主人が居なくて悲しいって…。そんなに人間と居たいのかしら。好き勝手いじられて操られるだけなのに」

 

「…我々妖怪、無論君も、人間ありきと言える存在だ。まあ毘沙門天様の使いの私は微妙なラインだが…人形ならなおのことだろう。自分の存在意義を果たすのは幸福じゃないのかい?」

 

「私の存在意義って…捨てられることなの?」

 

「…果たせなかったのか、君は。だったらむしろ、他の人形に職務を全うさせてやるべきだと思うが?」

 

「…よくわかんないわ」

 

メディスンはそう吐き捨てた。しかしナズーリンに言ってこそいたものの、これはむしろ自身の心境に対するものであった。目の前で人間が死んだだけ。しかし、少なくともいい気分と言える心持ちではなかった。そんな自分に、彼女は、その言葉をぶつけてもいた。

 

「また外出かいご主人は。私が行こうかい?」

 

「いえいえいいんです!」

 

そんな中、星が再び廊下をパタパタ駆けた。話しかけるナズーリンに対し、遠慮気味に手を振って星は外に消えて行った。

 

 

「ちょうどいいね…これは」

 

そんな毘沙門代理の背を、黒い影が追っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あーれ?霊夢は居ないのか?」

 

「今日は居ないみたいよ。というか、地底に行ったまま帰ってこないとか。なんとか」

 

同じ頃の博麗神社。魔理沙が来た時には華仙がすでに先客として来ていた。

 

「やれやれ、雨の中来たってのにあいつは」

 

ケープの水を払いながら、つまらない顔で縁側に座った。そうして外を眺めていたのは、華仙も同じであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなた、まだ食べてないの?もう24時間近くそんなじゃない」

 

「うん…」

 

所は変わって妖怪の山。はたては自分の小さな家の中で、布団に丸まったままぼうっとしていた。隣で心配の言葉をかけ、おにぎりを置いた文にもただただ生返事。そんな様子を見つつも、できることが見つからなかった文は、とりあえず外に出た。

 

「雨、ひどいな」

 

「…伊吹様ではないですか」

 

そんな文に対し、いつのまに来たのか、萃香が話しかけた。背を家の壁に預け、腕を組んだポーズ。いつものハイテンションとは似ても似つかない、落ち着き気味の声色だった。

 

「よそよそしいな。もう立場なんてないんだ。別に萃香って呼び捨てでもいいんだけどね」

 

「そうはいきませんよ」

 

「…はたてはどんな様子だ」

 

「もしやあの子が心配で?」

 

「そんな訳ないだろう。たまたま玄武の沢の方に用事があったからさ」

 

「…レミリアさんも橙さんも暴れていた記憶はないって言うんですがね、なぜかはたてはあるんですよ。人を殺した記憶も、目の前で…自分を止めるべく人が死んだことも。原因は分かりませんけど…」

 

萃香はそうか、と軽く返して若干俯いた。流れる沈黙はそう続かず、萃香が再び口を開いた。

 

「…目の前で命の掛かる戦いを見んのは久しぶりだったよ」

 

「あの住職の話ですか?」

 

「そう。近くじゃなかったから助けにも入れなかったしね。あんま気分がいいもんじゃないね、人が溶ける瞬間てのは。最近食べてないからちょっと驚いちゃったよ」

 

「それは、まあ確かに。…人里の被害者の人数、知ってますか?」

 

「死亡者83人。大怪我は71人。そろそろシャレにならない段階だね。例の戦士、仮面ライダーだっけ?あいつらがいなきゃもっと多かったろうね」

 

「…異変、なんですかね」

 

文のそのつぶやきに、萃香はかぶりを振って応えた。

 

「そんなもんじゃないさ。…異変なんかじゃ、済まされない。事件、かな。もしくは災い。こんなんじゃ祭りも出来ないし、そこもかしこも葬式ムードだ。神社には霊夢はいないし。おかげさまで久しぶりにシラフの感覚を味わったよ。幻想郷のせいで一人酒が出来ない体になっちまった訳だ」

 

「それは困りますね。萃香さんの体の98%はアルコールだと言うのに」

 

「スピリタスかわたしゃ。ったく、このままじゃつまらんしさ、さっさと怪人騒ぎの首謀者、ぶっ倒して欲しいんだよね」

 

「それで河童に、ですか」

 

「なんだい、知ってるのか。ま、そういうことだ。私はそっちに用があるんだ。じゃあね」

 

そう挨拶をすませると、後ろ手で手を振り、雨に打たれながら森の中に消えて行った。

 

「人里が心配ならそう言えばいいのに」

 

萃香の目にこもる感情を文は見逃していなかった。人の優しさに触れたような温もりを感じつつ、文は再びはたての家の扉を開けた。

 

「おーい、進捗どうだーい」

 

玄武の沢の河童のアジトにて、萃香はにとりの様子を見ていた。かちゃかちゃと弄る手を止めて、深いクマを刻んだ顔を上げた。

 

「あと8日。徹夜です」

 

カッスカスの声をひねり出してそう告げた。

 

「…もう少し、早くできないかい?」

 

「これでも急いでるんですけどね」

 

「……頼む」

 

萃香の出した声色に、にとりは首を傾げた。やけに深刻で、いつぞやの「みんな楽しそうだから私も混ざりたい!」と言った時の雰囲気とは似ても似つかないものであった。

 

「一体どうしたんですか?」

 

「どうもしてないよ。ただ、暇だなって」

 

その様子を見て、にとりは何か深い事情を感じ取った。どうしようかとしばらく頭をかいていたが、仕方ないなと溜息を吐き出した。

 

「おーいみんなー!悪いけど私のやってる作業手伝ってくれないかなー!」

 

拡声器を取り出し、ラボ中に響く大声で河童たちに声をかけた。しかしどの河童も作業から手放せないようで、誰も彼も口々に否定の意思を述べるだけであった。

 

「…責任は全部私が取る!依頼者のいる案件なら私が頭を直に下げに行く!個人的作業なら私が何かしら埋め合わせをする。だから!」

 

大声でそう言い切ると、腰を折って、90度を超えるレベルで頭を下げた。皆気圧されたのか、戸惑っていたが、すぐにその手を止めてにとりの元へ来た。

 

それぞれ仕方ないなとか、飯は奢れよとか口々に語り、にとりのデスクの機械を弄り始めた。

 

「これなら…3日で終わります。何があったか知りませんが、頑張ってくださいね」

 

そういうと近くに置いてあったエナジードリンクのタブを上げ、一気に喉に流し込んだ。

 

「おっしゃあ!じゃあやりますかぁ!」

 

萃香へとサムズアップを送ると、腕を回し、体を伸ばしたのち自分のデスクへ駆け寄って行った。

 

「…悪いね。いい友人を持ったもんだよ」

 

そういうと、萃香は自分も準備をしなくてはと外へ駆け出した。

 

 

 

 

 

 

「…ひどい雨ですね」

 

「日が照ってない点は助かるんだけどねぇ。対流水魔術はせいぜい10時間が限界だからそんなに外には出たくないのよね」

 

団子屋の外の椅子でドラクリヤーに乗ったレミリアと妖夢はみたらし片手に話していた。レミリアから聖の話を聞き、妖夢は微妙な顔をしていた。泣くような接点はないが、気分のいい話じゃないのは確かである。なんとも言えない気持ちで文々。新聞を取り出した。

 

「こんな大騒ぎなのに、今日のはなんというかスクープ性というか、面白さを煽らない記事ですよね」

 

「オイラはあんまり信用しないことにしてるんだけど…確かにヘンだな」

 

命蓮寺住職失踪。それは一面を飾りつつもあやふやことしか書かれておらず、いつものような捏造と偏見にあふれたものではなかった。事実でないという点では捏造と言えるのだが、命蓮寺の対応と全く同じことが書かれているのは文々。らしくない。それが妖夢の見解であった。

 

「それもそうね、あのブン屋にしちゃ珍しいよ。…そういえば、あなたにこれ。あの坊主からよ」

 

突如何かを思い出したレミリア。ゴソゴソと手提げカバンの中を探し、木札を取り出した。

 

「渡してってさ」

 

「これ…魔界語のメッセージとなんかの呪文ですね。法術?」

 

「なんて書いてあるんだ?」

 

「…『地底にオウカオーが居る』『これを持っていなさい』の二文です。呪文は…なんだろう、不完全な召喚系魔法に似てるけどイマイチ分からないなー」

 

不思議そうに見つめていたが、頷くと懐にその木札をしまった。

 

「とりあえずの行動の指針は決まったかな。後で伝えとかなきゃ」

 

「一回帰るの?」

 

「いえいえ、この陰陽玉。紫様が作ったんですけど、これで通信ができるんです」

 

それに対して、レミリアは便利なものねと繋ごうとした。しかしその声が悲鳴にかき消される。

 

何事かと二人はそこの現場に向かった。

予想の通り、そこに居たのは怪人であった。黄色と黒のラインが目立つ、トラ女。誰が操られているかは明確であった。

 

「全く…このタイミングで…」

 

「とにかく倒しましょう」

 

『覚醒!』

 

『人か霊か?』

 

二人は溜息をつきつつ、ベルトを装備。トラ女の前に立ちはだかり、かたやレバーを引き、かたや背から白楼剣を抜いた。

 

「変……「変身」……身!」

 

二人の声は重ならず、雨の音に混ざってずれて響き渡る。それぞれポーズを決め、シークエンスを終えた。

 

『ジェ・ヴォー・ダン』

 

『変・身・承・知!ヒトノカタ!』

 

「この桜刀の振るう妖怪の鍛えた楼観剣に…斬れないものなど…ほぼない!」

 

「さあ、楽しい殺戮を始めましょう」

「行くぜレミィ!」

 

桜刀とジェヴォーダンが並び立ち、トラ女へと駆け出した。その後ろでドラクリヤーは援護態勢をとった。

 

「でああ!」

 

ジェヴォーダンの鋭い爪が刺さる。しかしそこまでのダメージではないらしく、トラ女も爪で応戦した。

 

「うおおおおおおお!!」

 

しかしジェヴォーダンは下がらず、噛みつきへとつないだ。さらに桜刀の横斬り。しかし怯みつつも、大きなダメージとはいえない。

 

「くっ!」

 

桜刀は一歩下がり様子を見ることに。ジェヴォーダンは依然暴れるように突っ込んでいた。

 

「ごおおあああ!」

 

そんな中、トラ女が口からビームを発射。二人ともすんでで避けるが、その光線が地面に残した跡を見て、二人は青ざめずには居られなかった。

 

「これ…食らったら…」

 

「そうね、背後に回った方がいいわね」

 

ジェヴォーダンは若干冷静になり、落ち着きを取り戻した。溜息を一つ吐き出すと、ドラクリヤーブレードを用意。その背に斬りかかった。

 

「はっ!」

 

爪でそれを防がれるが、今度は背中がガラ空き。その背に桜刀は楼観剣での一撃を叩きつけた。

 

「ごああああああ!」

 

しかし大きくひるむ様子は無い。口に光を集め、一直線に放射。ジェヴォーダンはそれを避けようとした。しかし、背後に人の気配。振り向けば、逃げ遅れた少年がまっすぐ走っていた。

 

「仕方ない…!」

 

必要に迫られ、ジェヴォーダンはドラクリヤブレードでの防御を選択。漏れた光と衝撃がその体を襲うが、耐え抜いた。すでに子供が逃げ切ったのを確認し、膝をついた。

 

「大丈夫かレミィ!」

 

「ええ…それよりあなたは妖夢の援護をなさい」

 

「…ああ、オイラに任せな!」

 

胸を張るような仕草をすると、ドラクリヤーが羽型パーツを展開して本物の羽に。空を舞い、旋回しつつガトリングでトラ女へと攻撃を始めた。

 

「がああああああ!」

 

しかし、効かない。その硬い皮膚に弾かれ、意味をなさない。斬りかかる桜刀に横蹴りを叩き込んで吹っ飛ばすと、さらに爪での追撃。足を打ち付けられ、起き上がれない桜刀にトラ女はにじり寄った。

 

「させるかっ!」

 

ドラクリヤーの上空からの降下突進。しかし回し蹴りをぶつけられ、ジェヴォーダンの横へあっけなくぶっ飛ばされた。

 

「ううっ…」

 

恐怖のあまり兜の中で目をつぶった妖夢。トラ女が手を振り上げたその瞬間。

 

「うぐっ!」

 

トラ女の背に何かが刺さった。苦しみながら身悶えるトラ女から転げ落ちたのはグングニールであった。

 

「ハハハ…結構痛いでしょう…」

 

苦し紛れに笑うジェヴォーダン。実際効いていたらしく、トラ女は撤退を選んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…」

 

「見てりゃ起きるわけじゃ無いんだ。そろそろ飯食ったらどうなのさ」

 

「そう…ね」

 

縁側が目の前のこの部屋は、やたら雨音がうるさい。

命蓮寺にてメリーは眠る蓮子のそばでずっと座っていた。お盆を持ってきた天子のかける心配の言葉さえ届いておらず、この姿勢になってから二十余時間が経つ。座ったまま眠る様子こそあれど、蓮子の横からはひと時も離れはしなかった。

 

「ぞっこんねぇ。…でも二十時間以上起きないってのは確かに妙ね」

 

「…うん」

 

 

静かに頷くメリーの横から、障子を開けて何者かが入ってきた。見上げた二人の目には、ピンクの雲が写り込んだ。

 

「うわっ」

 

「その入道。雲山ね。…って事は」

 

黙って頷く雲山の後ろから一輪が歩み出た。心配そうな目線で秘封倶楽部の二人を見つめると、蓮子を挟んでメリーと向かいになる形で座った。

 

「…この子の火傷、妖力の影響を受けてるわ。このままじゃ、目を覚まさないまま餓死してしまう」

 

「そんなっ!」

 

衝撃の告白に身を乗り出す形でメリーは一輪に詰め寄った。その気迫に若干の仰け反りつつ、一輪は首を振った。

 

「方法がないわけじゃ無いわ!…というか、あると言い切れる。けど…」

 

「けど…?」

 

「妖怪関連でしょう?」

 

天子のつないだ言葉に、一輪は頷いた。その目には、軽い不安のようなものを込めていた。

 

「地底の鬼がね、持ってるの。その薬」

 

「星熊勇儀?」

 

「正解。だから…」

 

「どうやって行くの!」

 

一輪が言い切る前に、メリーは立ち上がって素早く荷物を用意した。

 

「ちょっと落ち着きなさいよメリー。地底は危険よ。蓮子がこうなってる以上仮面ライダーっていう手も使えないのよ?」

 

「でも…」

 

「その間地上で怪人が現れないとも限らないわ。一旦落ち着いて策を立ててから向かいましょう。そのためにも仮面ライダーを呼び集めて一度話し合うべきよ。蓮子は倒れたままでも水は飲んでくれたし命蓮寺の薬箱に点滴もある。だから落ち着いて」

 

天子の説得に、暗い顔をしつつもメリーは頷いて座り直した。その様子をメディスンは奥の部屋から覗き込んでいた。

 

「はぁ…」

 

彼女は先ほど抱いていた訳の分からない気分を一層膨らませていた。

 

「ご主人なのかっ!」

 

そんな考えをぶった斬り、耳をつんざく叫び声。同時にナズーリンがメディスンの座る部屋に吹っ飛ばされつつ突撃してきた。

 

「ぐおおおおお!」

 

そこには咆哮を響かせるトラ女。背中の傷はすでに治り、完全回復していた。

 

「くっ…!」

 

『グランドライバー!』

『アースオーブ!』

 

奥の部屋の天子はその様子を見て、グランドライバー装備。アースオーブをセット。トラ女へと廊下を駆け出しつつ拳を固めてポーズを取った。

 

「変身!」

 

走りつつ右手でレバーを引き、シークエンス終了。腕をクロス。まとわりつく岩石をぶっ飛ばしながら、トラ女へ殴りかかった。

 

「ぐっ」

 

しかし一瞬の怯みを見せたのみで、大きな一撃では無い。その肩を掴み、投げ飛ばした。

障子を破りつつ別の部屋に。さらに追撃として放ったビームが畳をえぐった。

 

「こいつはやばいわね」

 

そう呟くと、背より緋想の剣を抜いて距離を置いた。

 

「そっちがビームなら。こっちも!全人類の…緋想天!」

 

スペルでも宣言するかのように技名を叫び、腕を突き出して緋想の剣を回した。

 

「くらえええええええ!」

 

絶叫とともに気を放射。トラ女のビームとぶつかり、爆発。その煙を潜り抜けつつ、ガイアはトラ女の喉へ緋想の剣を突き立てた。

 

「がはっ!げほっ!」

 

苦しみの声を上げつつ起き上がるトラ女。その口から光線を放出!

………できなかった。掠れた音が口から響くだけだった。

 

「ビーム……潰したわよ!」

 

威勢良く叫び、さらに拳を叩き込もうとした。しかし、ビームだけがその強みでは無い。拳が顔に届くより前に、トラ女のツメが腹に叩き込まれた。

 

「おごっ」

 

呻き声を上げて跪くガイアをトラ女は蹴り上げて吹き飛ばした。同時に変身が解け、その姿は天子へと戻った。

 

「うぐっ…」

 

そしてまさにトドメをささんと爪を振り下ろす。

 

カァン!

そんな音を立てて、爪はガイアへと到達を阻まれた。

 

「もっと使いやすい剣だと思ってたんだけどね…」

 

そう言って無理矢理トラ女を押しのけたのはメディスンであった。その手には、拾い上げた緋想の剣。

 

「気質の能力は天人しか使えないわよ。…感謝するわ。にしてもなんだって私を助けたのよ」

 

「さぁ、ね」

 

他人事のようにそういうと適当に緋想の剣を投げ捨て、トラ女の前に立ちはだかった。

 

「そこで見てなさい」

 

そうつぶやくと、メディットブレスを腰に当てた。すると側面からベルトが飛び出て、メディスンの腰のサイズで固定された。

 

「私の目的は相変わらず…人形解放よ。でも、少なくとも人間を必要とする人形がいる事は分かったわ。それに……こんなわけわかんない気分にさせてくれたお礼はしてやるわ。あなたを、そしてあなたを操ってる奴を苦しめるまで…気が済まない!」

 

トラ女を睨みつけて、叫んだ。その脳の裏には、先ほど供養された人形の姿が浮かんでいた。あの子は、主人を必要としていたのだ。それを改めて飲み込み、メディスンはブラッドリリィのカプセルをメディットブレスに挿入した。

 

「変身!」

 

右手を左頬の近くに寄せ、指を弾いてパチン。左手でカプセルのセットされた試験管パーツを折り込み、両手を広げた。体に赤のラインが血管のように走る。

 

『GRADE UP…… FAZE 1』

 

そして音声とともに赤と白の粒子がアーマーを形成した。

 

仮面ライダーメディス。聖の変身したものよりかなり背は低いが、見た目は大きく変わらない。その姿に昨日のことを連想し、メリーと天子は目を伏せてしまった。

 

「ごああああああ!」

 

飛びかかってキックを叩き込んだその一瞬。トラ女の足が焼けただれ、シュウシュウと音を立てながら煙を生んだ。

 

「ぐぐぐっ!」

 

「すごいね…これ。苦しいどころか、パワーが溢れてくる…」

 

己の力を確かめるかのように手を握り、開き。転げ回るトラ女を見据え、駆け寄った。

 

対し、爪を突き立てるトラ女。しかしその体躯の小ささを利用し、メディスは股下を潜り抜けた。振り返って攻撃を仕掛け直すトラ女に対し、パンチを叩き込んだ。

 

「うぐぐぐ…」

 

「どんだけ肌硬くても溶けりゃ同じって訳ね」

 

そう呟きつつ、トラ女を蹴り上げた。肌を焼かれつつ吹っ飛ばされる怪人にさらに蹴りの追撃。障子を破壊しつつ縁側の外へ叩き出された。

 

『INCREASE EFFECT』

 

そんなトラ女へ近寄りつつメディットブレス上部のボタンを押して必殺を発動。駆け出した。

 

「ライダーキック!」

 

技の名を高らかに叫びつつジャンプ。空中で何度か回転したのち、左足をトラ女へ叩きつけた。

 

「ぐううううああああああ!」

 

絶叫とともに溶けつつ爆発。その煙の中から星が倒れ出た。

 

「ご主人!」

 

そこへナズーリンが駆け寄り、お姫様ダッコの姿勢で抱え上げた。

 

「…一度爆発すると怪人時の怪我はリセットされるのか。それなら良かった。ご主人は寝かせとこう」

 

そう言って奥に消えたナズーリンの背を見つめつつ、メディスは変身を解除した。

 

 

「結構あっけなくやられちゃったなぁ。やっぱ普通の暴走じゃ足りんのかねぇ」

 

そんな声が茂みから聞こえた。メディスンは驚きつつも振り向き、その後ろ姿を目撃した。

 

「あいつ…本で見た…地底の妖怪!…あいつが操って…いや、あいつも操られて?…まあ、目的地は決まったわ」

 

 

 

 

 

 

「八割、出来ましたよ」

 

にとりは萃香に機械を渡しつつそう言った。

 

「三日って言ってたよね?まだ数時間…。残り二割は?」

 

「最後の仕上げに妖術が必要です。…私に、つてがあります」

 

「誰だい?」

 

萃香の問いに一瞬にとりは俯くが、何かを振り切るかのようにかぶりを振り、目を上げた。

 

「私の…姉さん。地底にいる、姉さんです」

 

それを聞き、萃香は溜息とも聞き取れるような声でそうかと呟いた。

 

「なら、向かうとするか…地底に」

 

 

 

 

同刻の博麗神社。

 

「全く…戻ってこないなあいつ」

 

「そうねぇ…」

 

「いつも居るんですけどねぇ」

 

つまらなさげに雨を見つめる二人の横に早苗も座っていた。やはり彼女も浮かない様子であった。

 

「仕方ない…」

 

そう呟くと、魔理沙は帽子とケープを装備し、箒を手に取った。

 

「どこに行くんですか?」

 

「この魔理沙さんがわざわざ迎えに行くんだよ。…地底にな!」

 

 

 

 

 

 

 

『なんで聖白蓮はオウカオーを知ってるのかしら』

 

「そもそも何なのですか…オウカオーというのは?」

 

人里の柳の下。レミリアと妖夢はドラクリヤーに腰掛けつつ幽々子と連絡中であった。渡された木札の話を聞き、陰陽玉の向こうの幽々子も疑問を抱いた顔であった。

 

『先代までの桜刀が乗ってた名馬。まあ、先代が地獄で魔物と戦った時に……死んじゃった、けどね』

 

「でも、居るって……」

 

『バカね、だから疑問なのよ。それに彼女、冥界に来てないのよ』

 

「え?」

 

幽々子の一言に、部外者のレミリアとドラクリヤーさえ驚いていた。では、どこに居るのか。妖夢はそう聞いた。

 

『不明、よ。幻想郷で死んで仏教徒なら…ここに来ないのはおかしいのに』

 

「変な話ね…」

 

「はい…」

 

『とにかく分かったわ。あなた、向かうのね?』

 

「はい……地底に」

 

 

 

 

 

 

 

 

「その子を救うなら…薬をもらう必要があるんでしょう?」

 

「そう…」

 

「私も実は地底に向かうわ。妖怪に殺されたくないならついて来てもいいけど?」

 

メディスンの提案に、メリーは頷いた。天子は地上を見守るということで、留まることに。とにかく二人は手早く準備を終え、命蓮寺の外に。

 

「さあ、行くわよ。…地底に」

 

 

 

 

少女たちはそれぞれ別の目的を持ちながら、一つの場所を目的地とした。雨の中立ち上がり、旧都の入り口を目指し消えていく影を、天子は不安を込めた目で見つめていた。

 

Continued on next episodes.




「バーンスマッシャーを五回握るのよ!!いいから!早くっ!!」

燃えよ、不死鳥。地底を焦がせ!
次回、「豪炎人形」


皆さんこんにちは。ルパパトの商品展開が残念なサードニクスです。ストーリー良いぶん、なおさら残念よね。ルパンの優遇ぶり。まあ目新しさやダークなかっこよさはルパンの方が断然上だしね。でも私は圭一郎が一番好きです。

というわけで次回から地底編です。
「変……「変身」……身!」
これがやりたくて妖夢との同時変身をさせた感あります。アクセルとWの同時変身みたいな。
そうしてもう一個。ずっと書きたかったダッシュ変身。やっぱライダーなら一回流行らせたいよね。今回はてんこちゃんにやってもらいました。あと普通にスペルカードっぽい技も使っていただきました。全人類の緋想天って語呂よくて好きなんすよね。
本作品は週二更新での半年完結を目標にします!一年経つとプライベートが色々面倒な時期なんで。全45話くらいの構成?全然遠いZE!


みんなの!変身ポーズコーナー!

今回はフェネクス!今回出てねえだろとか気にしたら負けDA!
まず、一回握ります。ignitionの音声ののち、両腕を突き出します。
そして私にデレ気はないのポーズ!気になる人はググるかうどんげっしょー買おう!
そして手を広げつつ炎の渦を作り、ビーストが変身するとき魔法陣出す時みたいな感じで両手を広げつつ炎を吹っ飛ばして変身完了!

じゃあ、次回もみてくださいねー!


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地霊殿&永夜抄編
第8話 豪炎人形


今回はみとりが出ます。誰だそいつって人は河城みとりをググってください。概要を見たあとニコ動の東方弾幕風のみとりの動画を見てみてくださいな。

さてさて、前回の第7話は!
人里の被害状況を見て、ライダーになる事を急ぐ萃香。彼女にベルトを作ったにとりいわく、完成には地底にいる姉の力が要るという。同じ頃、人里に居る妖夢とレミリア。聖が残したメッセージによれば、地底に行けとの事。相談する中、トラ女が現れる。ジェヴォーダンと桜刀が戦うも、逃してしまう。そんな中、命蓮寺にで一人考え事をするメディスン。人間とどうあるべきか考える中で、トラ女が現れる。苦戦するガイアを見て、ついに決心!メディスに変身してが撃破するのであった。そんな様子を見届ける妖怪。メディスンは、そいつが地底の者であることは知っていた。魔理沙は、霊夢を追うため。メリーは、蓮子の傷を治すため。様々な思惑が重なり少女達は準備を始めた。目指す先は決まっている…。
「「「「「「地底へ」」」」」」
・トラ女


旧都奥の地獄の釜の真上。そこには巨大な屋敷、地霊殿が建っている。

その中に住むのは動物と妖怪だけ。しかし、変わった客人も来るものである。

 

「こんなところにいたんですね」

 

八坂神奈子も、そして彼女の目の前に座るサグメもその一人である。

 

「神奈子…もう、探女(さぐめ)おばさんなんて呼んでくれたりはしないのか?まあ、最後に会ってから久しいからな。仕方もないか」

 

「いやに饒舌ですね。もう居る場所も違えば立場さえ違うの。先祖にスサノオ様がいる。いまやそれだけの関係ですよ」

 

話し合う二人の横では妹紅と永遠亭の住人が好き勝手に過ごしていた。サグメが彼女達の身柄を置くのに選んだ場所。それこそこの地霊殿であった。死ぬほどある使われていない部屋を一つ使わせてもらっている。そういう状況であった。

 

「で、こんなところに閉じ込めてなんのつもりなんですか?」

 

「保護だ。あの方たちは何かしらの形で人質にされかねない」

 

「この状況も結構人質っぽくないか?」

 

妹紅は広い部屋の中を見てそう呟いた。自由に行動させ、特に脅迫もないあたり、人質を取ることが目的ではない。そう分かりつつも、その目的がつかめない以上キナ臭さは隠しきれない。そういう皮肉も込めて妹紅は呟いていた。

 

「…まだ話せない。もう少し全貌がつかめてからがいい」

 

「それは好きにしてくれって話ですけど…なんだって探女様がそんなに話してるのかって疑問が残るんですよね。舌禍は大丈夫なんですか?」

 

神奈子が口にした疑問に対し、サグメはフッと笑って左腕のワードレッサーを見せつけた。神奈子は相変わらず疑問を残していたが、少なくとその機械のおかげであることは理解し、頷いてなるほどと呟いた。

 

「便利なもの作ったわね。あなたも」

 

「八意様からお褒めいただけるなんて光栄です」

 

「弱点完全カバーですものね」

 

永琳も輝夜も見せつけたワードレッサーを興味深げにジロジロと見ていた。そんな様子を見て神奈子は微笑みつつも薄く溜息をついた。

 

「あんまり派手に動かないように、探女様に言っておいてちょうだい。この状況、何が裏目に出るかわかないわよ」

 

そう言って妹紅の肩に手を置きつつドアを開けた。

 

「わっ」

 

「おっと、危ないわね」

 

その瞬間誰かとぶつかりかけた。さとりであった。神奈子の脇を急ぎ目に通り抜け、サグメの前へと立った。

 

「あなた…一応神霊なんですよね?」

 

「む、そうだが?」

 

「ならちょっと来てください。私はそういう神様の話は専門外ですので」

 

そう言って招くのにつられ、サグメ、そしてついでに妹紅が廊下を駆け抜けていった。

 

「一体どうしたっていうのよ」

 

その背を不思議そうに見つめつつも、神奈子はひとまず帰途についた。

 

そんな彼女に別れの挨拶を告げつつ、さとりは一つの部屋へと二人を案内した。

 

「実はこの女神様が地獄の旧連絡通路をこじ開けて入ってきたんです。マグマを泳いで」

 

その一言に、妹紅はおろかクールで売るサグメさえも正気かという様子で顔を引きつらせた。それと同時に、そんな無茶に耐える力を持つ地獄の女神に、サグメは一人しか思い当たるフシはなかった。

 

「……あなた…月面のっ!」

 

サグメと顔を合わせた黒髪の女神は席を立ち上がって詰め寄るがごとき気迫で声を放った。

 

「く、来るなっ!」

 

対しサグメは若干こけつつ妹紅の後ろへ回り込み、壁にする形で隠れた。

 

「ちょうどいいわ…」

 

「待て待て待て待て待て待て待て!私はもう月側の存在じゃない!もはや月を敵に回した!お前たちに近い立場だ!」

 

立ち上がって拳を振りかざす女神へカーティアに対し、腰を抜かしつつ手を振って否定した。その様子を怪しむ顔で見つめていたが、その眼差しを見て信じることに。溜息をつきつつ、椅子に座りなおした。

 

「理解してくれて助かった」

 

「…あなた、私のことそんなにビビってたかしらん?」

 

「こんなもんだったと思うが?」

 

「…やっぱり演技入ってない?」

 

へカーティアの疑いの眼差しに、サグメは否定の視線を返した。どうだか、とへカーティアは怪しげに思いつつ、視線を妹紅に移した。

 

「あなた、名前聞いたことあるわよん。確か藤原妹紅」

 

「そっちこそ。えっと、へカーティア・ラピスラズリ。でも、鈴仙ちゃんから聞いた限りでは赤髪だったんだけどね」

 

「実は…それについて話があるの」

 

妹紅の一言を聞き、彼女は旧に視線を落とした。さとりはすぐにわかるので、深刻そうな顔で頷いている。しかし妹紅とサグメは訳が分からない顔であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ついたわ。ここからもう少し進んだら旧都らしいわよ」

 

レミリアと妖夢はドラクリヤーに乗って着地を済ませたところであった。先ほど蓮子を抱えたメリー、メディスン、そして萃香の三人と出会い、同時に降りることに。チェイスナイターもパラシュートを広げ、じわじわ降下を終わらせた。

 

「あっちね?よしじゃあ行きましょう」

 

「おーっと!行かせるつもりはないよ!」

 

「あなた…あそこにいた!」

 

突如、メリーたちの行く手を阻むように火焔猫燐がその前に立ちふさがった。メディスンは燐を睨みつけつつ、とっさに前に出てメディットブレスを腰に装着した。

 

「落ち着きなさいよメディスン!相手は妖怪とはいえ生身よ!?」

 

「いーや、あたいとしてはそのまま変身してもらって構わないよ」

 

『X!』

 

燐は黒い拳銃、エックスゴースターを取り出し、USBメモリを挿入。前方へ向け、防御態勢をとるメディスンをよそにその引き金を引いた。

 

「醒妖!」

 

『cat…change』

 

掛け声と共に銃口から煙と粒子が放たれ、装甲を形作った。煙の中に現れるのは黒の鎧の猫怪人、ブラックキャッツ。鋭いクローを向けて、メディスン達へ近づいた

 

『覚醒!』

『人か霊か?』

 

その様子を見て、戦闘が必要と判断しレミリアと妖夢もベルトを装備。三人並び、それぞれ変身するべく準備を始めた。

 

「変…「変身!」「変身」…身!」

 

掛け声と同時に、剣を収め、バックルの口を閉じ、試験管型パーツをしまい込み。シークエンスを終えて桜刀、ジェヴォーダン、メディスがその姿を現した。

 

「……参ります!」

 

真っ先に駆け出した桜刀の一撃。ブラックキャッツは軽くいなし、裏拳で転ばせるとジェヴォーダンへ駆け出した。

 

「さあ、楽しい殺戮の始まりよっ!だああああああ!」

 

対しジェヴォーダンも野生を爆発させつつ突撃。すれ違いざまに爪を突き立て、引き裂くものの、傷は見られない。むしろブラックキャッツのクローでの一撃をもらっているようであった。

 

「ぐうう…」

 

苦しむ声を捻り上げつつも、ジェヴォーダンは立ち上がって飛びかかった。

 

「無駄無駄!」

 

オーバーヘッドキックで叩き落とし、さらにその流れでエックスゴースターをメディスに向け、射撃。今まさに撃とうとしていたエクスブライガンを弾き飛ばした。

 

「隙あり!」

 

さらに連続で射撃。まるでメディスには触れてはいけないことを知ってるかのように近づこうともしない。

 

「どりゃあ!」

 

「変身してもいないってのにねぇ!」

 

萃香の投げた大岩も回し蹴りで破壊。さらには起き上がった桜刀に追撃の銃弾。怯んだところにさらに銃撃。膝をついた桜刀を見て、ブラックキャッツは小さくため息をついた。

 

「やれやれ…今戦っても面白くなさそうだなぁ。任せたよ」

 

そう言って手を振って誰かに向かって簡単に指示を出すと、燐へと戻り、ジャンプ力でもって姿を消した。

 

「なんだ…こいつら…」

 

続いて現れたのはオフロードバイクに乗ったゾンビフェアリー達。その手には謎の銃が。

 

『ready…』

 

同時に銃達から音声が響くと同時に妖精達の姿が銀の軽装の戦士、フェアリートルーパーへと変化。青いバイザーの奥に生気を無くした目を光らせ、一斉にバイクから降車。

 

『go!』

 

その音声と共に駆け出し、ライダー達へ攻撃を始めた。

 

「はあ!」

 

桜刀の横切りを食らった三体は簡単に怯んだ。行けるのではと踏み、白楼剣を勢いよく収めなおして必殺。

 

「ゲンセスラッシュ!」

 

勢いよく駆け抜けつつ五体ほどに攻撃。まとめて撃破。アイテムごと爆裂し消滅したが、妖精ゆえに気にしないことに。やはり次から次へと迫り来るフェアリートルーパー達に気は抜けず、すぐさま次の攻撃を構えた。

 

「数の暴力って訳ね…」

 

『INCREASE EFFECT』

 

そう呆れ気味に呟きつつ、メディスはエクスブライガンにランチャープルーネラを挿入。必殺を発動し、フェアリートルーパー達へと発射。拡散した弾丸が彼女達を貫き爆発した。

 

「あと残りも少ないわね…!」

 

『ファング!ドラクリヤエンド!』

 

ジェヴォーダンも必殺を発動。その爪を構え、ドラクリヤに乗り込んだ。

 

「行くぜ!」

「デスクロー!」

 

走る勢いそのままにフェアリートルーパー達を引き裂く。最後にはUターン。急ブレーキの勢いで飛び出し、そのままドラクリヤブレードで五人ほど串刺しに。爆炎がジェヴォーダンを包み、フェアリートルーパーは全滅した。

 

「全く…」

 

三人は同時に変身解除。生身であった秘封倶楽部と萃香の安全を確認し、先へ進んだ。

 

「ねぇ、あれ、スクープだと思わないかい?」

 

「記事にしてあげてもいいんですけど、始末しに来た手前それが最優先ですとも」

 

そんな少女達を物陰から見つめるのは燐と文。文は見えないように起き上がり、右手にエックスゴースターを持って襲撃の機会を伺いつつ追跡を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

「…私の妹が、これを…ほーう」

 

暗い地底奥の屋敷。河城みとりは萃香から渡された機械をまじまじと見つめていた。しばらくして頷くと、机の上に置いた。

 

「あいつの意図は分かった。あんたって確か勇儀の友達なのよね?それなら彼女の顔に免じてやってあげるよ。明日にはできる」

 

「そいつはありがたい」

 

みとりは何やら呪術に使うらしい道具を出し、ガチャガチャと準備を始めた。

 

「…頼んだ」

 

そんな彼女の背を見て、萃香は若干俯き加減に外に出た。

 

「ふぅー、勇儀んとこに呑みに行くかね!」

 

元気を入れ直すように顔を叩き、星熊宅目指して駆け出した。

 

「ありゃ、あんたはさっき。えっと、メリー」

 

そんな中、目的地を同じとするメリーと出会った。よく見れば横にはメディスン。単純に地霊殿に向かう道が同じだったのだとか。その顔は特に照れ隠しはなく、本気でメリー達のことはどうでも良さそうであった。

 

「確か勇儀の家で薬を貰いに行くんだっけ?」

 

「はい…この子が妖力を含んだ火傷しちゃったんです…」

 

暗い声色で答えるメリーに対し、萃香は頷きでのみ答えるのであった。

 

「おーっと、これ以上は行かせないわよ!少しばかり、死んでもらわなきゃならないんです!」

 

それを叩き斬るような叫び声。風を巻き起こしつつ、文が目の前に立ちふさがった。

 

『X!』

 

「…醒妖!」

 

燐がやったように、USBメモリを挿し込んで掛け声。エックスゴースターを上へと向けた。

 

『crow…change』

 

そしてトリガーを引く。現れたのは鋼鉄の鳥女、ファストクロウ。その翼を広げ、メディスンへと飛びかかった。

 

 

 

 

 

 

 

「…つまり、地獄が襲われていると?」

 

「そう、何者かの手によってね。その何者かがわからないんだけど…私はクラウンピースに寝首をかかれてね。力を拡散させられたの」

 

そう言ってへカーティアが手の上に広げたのは赤い石。しかし握っても転がしても反応はなかった。へカーティアは溜息をつきつつ首を振り、赤い石をしまい込んだ。

 

「…なるほど。いいだろう、今は目的は同じだ。お互い怪人達を倒して行って黒幕を突き止めたいんだろう?」

 

「私も最終目標は幻想郷の安全とはいえ過程は同じだ。とりあえず手は組んだほうがいいかもね」

 

サグメと妹紅の一言にへカーティアは深刻な顔で頷き、席を立った。サグメのどこに行くかという問いには答えず、ただ「少しね」と残して外へ消えた。

 

「…どこに行ったんだ?」

 

「彼女は聞かれたくないと思ってたみたいなので一応」

 

そう言ってさとりは口の前でバツを作った。妹紅は喉まで出かかった「お前にそんなモラルあったんだな」というコメントを飲み込み、外を見た。

 

「おい…アレ!」

 

その瞬間妹紅の目に、空を舞う小さな黒点と火花が見えた。戦い、それも仮面ライダーの物によるものと理解し、彼女はすぐさま飛び出した。

 

「戦闘があったんだな!?…ああ、あれか!へカーティアは待っていてくれ!」

 

サグメもへカーティアの肯定の頷きに目も向けずに飛び出た。

 

「行くよ!」

 

妹紅がフェザーチェイサーに飛び乗ったのを見て、サグメもすぐさまバイク、コードランナーを用意。計器たちのあるエリアに代わって設置されたキーボードを操作。戦闘のある場所に向かうよう入力した。

 

「…え、ハンドルはいいのかい?」

 

「自動操縦だ」

 

「便利なもんだね」

 

そう呟きつつ道を抜けた妹紅。その先にいたのはファストクロウとメディス。見たとこファストクロウの方が優勢。そしてそばにいた萃香とメリー、そして蓮子をファストクロウが襲おうとしているのを見て、妹紅はメディスが味方と判断。バーンスマッシャーを取り出した。サグメもコトダーマとワードレッサーを用意。変身の準備をした。

 

『ignition…』

 

『コトダーマ!観!』

 

「変身!」

「変身……!」

『ブレイクオープン!ドレスアップ!』

 

爆炎と粒子の閃光。それを吹っ飛ばした中に、仮面ライダーフェネクス。そして仮面ライダーワードレスが現れた。

 

『burn up complete!phoenix blaze!』

『メイクアナライズ!ワードレス!』

 

「燃え尽きてもらうよ…!」

「運命だと思って諦めるんだな」

 

それぞれ変身を終えて構え、ファストクロウへ接近。

 

『シューターフィール!』

 

途中ワードレスは立ち止まってワードレッサーを射撃モードに。空を駆け回るファストクロウを狙い撃った。

 

「はっはっは!遅い遅い!」

 

しかしそれは当たる様子は見せず、ときおりエックスゴースターでの銃撃をする余裕さえあるようだった。メディスもランチャープルーネラをセットしたエクスブライガンによる拡散弾を散らしていたが、こちらも当たる様子はない。

 

「くっ…」

 

フェネクスは炎の翼を構え、ファストクロウを追った。しかし簡単に避けられ、銃撃。怯んだその瞬間に鋼鉄の蹴爪がフェネクスを叩き落とした。

その着地からすぐさまメディスに飛びかかってのキック。エクスブライガンを弾き飛ばし、戸惑う彼女の腹にヤクザキックを叩き込んだ。

 

「貴様…!」

 

『アタックフィール!』

 

着地したのを見て、ワードレスも接近することに。ワードレッサーより緑のレーザー剣を構え、斬りかかった。

 

「おっと!」

 

対しファストクロウは扇子で受け止め、回し蹴り。しかしそれをワードレスは跳び避け、すぐさま着地。ファストクロウの背にキック後の隙を見つけ、レーザーブレードを叩きつけた。

さらにパンチ。怯んだタイミングでさらに連続攻撃。レーザーブレードの斬り上げで吹っ飛ばした。

 

「このっ…」

 

「今ね…!」

『INCREASE EFFECT』

 

空中で態勢を立て直したファストクロウに対し、メディスは必殺を発動させ、アイスドロップを装備したエクスブライガンからの氷冷弾。

 

『ブラストアタック!』

 

そのままの形で凍りつき、地面へと墜落を始めた。対しワードレスはワードレッサーの扉を閉じて必殺準備。

 

『over driver!』

 

『アタッカーブレイズ!』

 

フェネクスがバーンスマッシャーを3回握り込んだと同時にレバーを操作し、扉を展開させつつ必殺発動。

 

「プロミネンス…スマッシュ!」

 

「はっ!」

 

炎の渦をぶつけるパンチと、高圧力が切り裂くブレード。その二つに挟まれ、ファストクロウは爆炎をあげた。

 

「よし…」

 

安堵の溜息をつき、ワードレッサー手を伸ばすワードレス。

 

「…ぐがっ」

 

爆風から飛び出た漆黒の手がその首を掴み、持ち上げたのちメディスへ叩きつけた。

 

「なぜだ…!」

 

目の前に依然立ちふさがっていたファストクロウを見て、フェネクスは思わず跳び退いた。

 

「ダミー爆炎よ。こういう風に逃げることもできるのよ」

 

そうの残す、逃げるどころか翼をカッターのように広げ、メディスとワードレスへ接近。間を通り抜けつつウィングブレードを叩きつけ、変身解除へ追い詰めた。

 

「ハハハ!これで二人!ライダーが始末できる!」

 

XX(ダブルエックス)!…good bye!』

 

高笑いと同時にUSBを抜いて再びセット。必殺を発動し、サグメとメディスンに向けた。

 

「やめろおおおおおお!!」

 

絶叫とともにフェネクスが駆け出すも虚しく、どれだけ急いでも届きそうになかった。フェザーチェイサーも向かっているが、いかんせん位置が遠すぎる。こちらも届きそうになかった。サグメはとっさにメディスンをかばい、目をつぶった。

 

「させないわっ!」

 

その脇を駆け抜けた影。その少女は手を広げ、全身でもってその光弾を受け止めた。爆炎が少女を包み、力なく倒れ伏す。

ファストクロウは目的の二人を仕留め損ねたことに溜息をつき、再び銃を構えた。

 

「させないって言ってるでしょ…!」

 

突如、燃え尽きた少女が飛び上がり、ファストクロウへ駆け寄った。驚いてマスクの中で目を見開く文。そこにまっすぐ写り込んだのは火傷が治りつつ走る蓬莱山輝夜の姿であった。

 

「このっ…!」

 

そしてファストクロウの腕を抑え込み、フェネクスへ顔を向けた。

 

「バーンスマッシャー…五回…!」

 

「は?」

 

「バーンスマッシャーを五回握るのよ!!いいから!早くっ!!」

 

「こ、こうか?」

 

戸惑いつつもフェネクスは右手のバーンスマッシャーを五回握り込んだ。それをよそに輝夜はファストクロウに振り払われていた。彼女は嫌な予感を感じ、敵をフェネクスへシフトチェンジ。エックスゴースターを構えつつ駆け寄った。

 

『over change!』

 

バーンスマッシャーから音声が鳴り響いたと同時に、フェザーチェイサーがファストクロウを突き飛ばしつつ接近。

フェネクスの後ろに回ると、ガシャガシャと変形。背のアーマーと合体し、さらに肩から胸にかけた追加装甲がフェネクスに装備された。

 

『burn up complete!phoenix feather!』

 

紅の装甲と、フェザーチェイサーから成る巨大なウィングブースターを持つ姿。仮面ライダーフェネクスはフェニックスフォームへと姿を変えた。

 

「姿が…変わった!?」

 

驚きつつも様子見のためにファストクロウは飛び退いた。

その瞬間、フェネクスのウィングより、羽型のエネルギー弾がスペルカードのごとき密度で展開。しかしその速度は避けさせる気など微塵もないもの。エックスゴースターで撃ち墜とさんとするが、間に合わず被弾。

よろめきつつも立て直すファストクロウを見て、フェネクスも飛翔。ブレイズフォームとは比べ物にならない速度でファストクロウを追った。

 

「バーンスマッシャーをブースターと接続して!」

 

「…こうか!」

 

輝夜の言うように、ウィングに取り付けられたブースター前方に向け、右翼のものにバーンスマッシャーを接続。チェイスブラスターを完成させると、トリガーを握って火炎弾を連射。連続で被弾しつつも、エックスゴースターでの反撃を行った。

対し今度は熱戦射出で対抗。正面から浴び、大ダメージ、勝てないと判断し、ファストクロウは逃亡態勢を取った。

 

「逃がしゃしないよ…!」

 

『over drive!』

 

ブレイズフォームと同じく三回握って必殺を発動。二門のチェイスブラスターにエネルギーを溜め、発射。

 

「ボルケニックカノンッ!」

 

白熱した極太のビームが一本に収束し、ファストクロウの背にヒット。今度こそ大爆発を起こし、爆風から文が墜落。フェネクスは一瞬で近づき、文をキャッチ。ゆっくりと地面に寝かせ、砕け散ったエックスゴースターを横目に変身を解いた。

 

「これで名実共に焼き鳥屋だな………あづっ!?」

 

突如妹紅の体が爆発。心配するように近寄るフェザーチェイサーをよそに熱い熱いと叫びながら飛び跳ねた。弾幕ごっこの際に自爆したりしているが、急に燃えれば驚くと言うもの。

 

「おいっ!てめっ!輝夜ぁ!これはどう言うこと!?おい!?」

 

「オーバーヒートよ。蓬莱人なら耐えなさいよ。私もさっき一回燃えたんだから」

 

「そー言う問題なの!?あっっっっづ!」

 

メリーはそんな妹紅を心配しつつも、メディスンと別れ、そして萃香に連れられ勇儀宅へ向かった。

 

「意思のある怪人、って言うべきかわかんないけど、そう言うのに立て続けに襲われた…」

 

言いつつ立ち止まり、萃香は文をお姫様抱っこの形で抱き上げた。

 

「…妙、ですよね」

 

「うん、でも射命丸は何というか、様子が変だったんだよなぁ。意思を持ったまま洗脳されてるっていうなら…地底に来て急に怪人操作のレベルが上がってるってこと。つまり…」

 

悩ましげに呟く萃香に対し、メリーはもしかしてと続けた。

 

「ああ、地底に何かしら核心に迫るキーがあるはず」

 

決意を固めた声色で言い放つ萃香。対しメリーは不安げに溜息をついた。

 

Continued on next episodes.




「怨霊を操るなら…霊で斬る!」
「…力、借りますよ。依姫様!」

二人の剣で貫け!

次回、「戦月のスペルワード 〜 Lunatic Blade」

みなさんこんにちは。原作と鈴奈庵と茨歌仙で早苗の口調が違って困惑中のサードニクスです。本作品では茨歌仙準拠の敬語メインの話し方です。頭には双葉があります。
あ、この前週二更新とか言ってたけど忘れてください。忙しくて無理です。せいぜい週一です。
しかしチェイスブラスターの解釈合ってたかな…?片方にだけバーンスマッシャーを接続する感じなんだけど。
ちなみにバーンスマッシャーの声は鈴仙です。輝夜が入れさせました。
ちなみに。今回のタイトル元ネタは蓬莱人形な訳ですが、もこたんと何の関係もない曲です。なぜこれを選んだかっていうと単純でもこたんのスペルに蓬莱人形があるから。以上。それ以上のつながりはございませんわ。

みんなの!変身ポーズコーナー!
今回はレミリア!これできみもジェヴォーダンに!
すごく分かりやすいポーズです。
まず、レバーを引きつつ手のひらを前にして右腕を上へと挙げます。
そしてゆっくりと右手を裏返しながら下げ、最終的に顔に手のひらを当てる中二ポーズをとります。
「変身」
で、そのまま左手でヴァンパイアリングのバックルの口を閉じて、肉体変化開始。これまたゆっくり手を両方に広げて変身完了です。凶暴な戦闘スタイルに似合わぬ優雅な変身ポーズですな。では、また来週。


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第9話 戦月のスペルワード 〜 Lunatic Blade

さて、前回の第8話は!
地底に向かった少女達が地底に到着した。蓮子、メリー、レミリア、妖夢、萃香、メディスンがそのメンバー。そんな彼女たちの前火焔猫燐が現れ、ゾンビフェアリーをけしかける。勝利するライダーたちだが、お燐は去ってしまう。そしてお燐は文と何やら企んでおり…。
お燐の撃退ののち、萃香はみとりの元へ。彼女にアイテムを託し、メリーとメディスンに合流して勇儀の元へ向かった。その前に、文が立ちはだかる。
その頃、地霊殿の一室で、妹紅とサグメは永遠亭の面々を保護していた。そんな地霊殿に、地獄からヘカーティアが避難してきた。彼女の髪は黒く…。曰く、クラウンピースが操られ、その力を奪われたようだ。
そんな時、外での戦いの炎を妹紅とサグメが発見。向かってみれば、それは文と酔鬼、メディスの戦いだった。追い詰めたかに思われたが、一気に盛り返される。しかし助けに来た輝夜がフェネクスの強化アイテムの存在を語る。それにより新フォームへ。そのまま文を倒し、その洗脳を解いた。
「真相に迫る何かがあるのでは?」と、メリーは不安に、萃香は楽しみに感じた。
・仮面ライダーフェネクス フェニックスフォーム
・ブラックキャッツ
・ファストクロウ


「…戻ったぞ」

 

「妹紅は?」

 

「外で姫様とガヤガヤやってる」

 

ファストクロウとの戦闘を終え、サグメは一足先に地霊殿に戻っていた。先程の部屋にはさとりはおらず、へカーティアが本を読んでいるだけであった。

 

「…それは?」

 

「さとりが書いた本。心理描写が素敵よ」

 

そう言ってへカーティアはしおりを挟んで本を閉じ、机の上に置いた。

 

「その子は?」

 

「メディスン・メランコリー。今回の騒ぎの首謀者を探して地底まで来たらしい」

 

「ふーん、なら私と目的は同じね。協力しましょう」

 

「…あなた人間?」

 

へカーティアの差し出した手に対し、メディスンは訝しげな視線を送った。その様子を見て、へカーティアはニヤッと口をゆがめた。

 

「神様よ、地獄のね」

 

「ならいいわ。友達になりましょう」

 

そう言って握手に応じたメディスンに対し、へカーティアは満面の笑顔を向けた。

 

「あっはっはっは!面白い子ね。真っ先に聞くのが人間かどうか、で、この反応。あなた色々と見込みあるわよん」

 

そんな事を言いながら笑うへカーティア。突如、何かを思い出したかのようにピタリと止まって自身のスカートの中をゴソゴソと探り始めた。

 

「おい、どうした急に」

 

「……これ、月の技術でどうにかできたりしないかしら?」

 

そう言ってへカーティアは薄汚れた機械を取り出し、机の上にどんと置いた。

 

「地獄で見つけた機械よ。私の部下が勝手に作ったのか何なのかわからないけど…もしかしたら武器だったり何だったりしないかしら?」

 

「…魔術による身体強化装置じゃないか?」

 

サグメはそれをまじまじと見てそんな事を呟いた。その最中、扉を開けてさとりが部屋へ戻った。

 

「あら、お戻りでしたか。……それはそれは」

 

第三の目をへカーティアへ向け、事情を読み取ったのかうんうんと頷いた。

 

「…見せてください。それ」

 

へカーティアが差し出した機械を受け取りつつ、さとりはその隣に座った。

 

「ふーむ…なるほど…これ、貸していただけませんか」

 

「え?」

 

戸惑った様子のへカーティアをよそに、演説でもするようなテンションで立ち上がった。

 

「私が地底にいる間、していたのがよもや読書と執筆と怨霊管理だけだとでも?」

 

「違うのか?」

 

「違いますとも。暇で暇で……バイクとパワードスーツの研究なんかをしちゃいましたから。この機械に格納するなんて朝飯前です。へカーティアさん。変身…したいと思いませんか?」

 

得意げにそう告げるさとりに対し、二人は驚いた様子であった。数秒ののち、へカーティアは強く頷いた。

 

「頼んだわよ」

 

「…頼むのはこっちですよ。どうか私のペットを…敵の支配から自由にしてあげてください」

 

対しさとりは頭を下げてそう言った。サグメもへカーティアも頷き。メディスンはどう言うべきかと戸惑った様子を見せた。

 

「…あの子、素敵な人形ね」

 

そんな中、突然メディスンは外を指差してそんな事を言った。全員が目を向けたその先にはこいしがフラフラと歩いていた。

 

「こいしったらあんなところにいたのね…。ある意味人形と言えるわ。無意識下の操り人形。それを言えば我々も意識の人形ですが。…空っぽな分あなたにはお仲間のように見えるんでしょうね」

 

そう語ったさとりに対し、メディスンはよく分からないという表情を作った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なかなかいいわねここ。日が差さないからもはや私の天下じゃないの」

 

所変わって旧都。レミリアと妖夢は聖の残した木札の語る『オウカオー』を探して探索をしていた。

 

「知らないなー」

 

そう言うキスメに対し、妖夢は軽く肩を落として礼を言うのであった。こう言った聞き込み形式で続けてはいるが、イマイチ成果はない。かつて地獄にいたと言う鬼からその伝説を聞くぐらいのものであった。

 

「オウカオー…最近聞いた気がするわね」

 

そんな中、橋姫のパルスィは聞いたことあるという反応を示した。妖夢は心の中で喜びつつも、「聞いた気がする」という曖昧な情報ゆえに信用しすぎてはいけないと自分を落ち着かせた。

 

「なんだったかしら。えっと…うーん…地霊殿が関係してたような気がするわ」

 

「だったら地霊殿に向かいましょう。さ、行くわよドラドラ」

 

レミリアは手早く準備をし、行くように促した。妖夢もとりあえず地霊殿に行ってみようという事になり、歩き出した。

 

「おいおい、オイラには乗らないのかい?」

 

「あなた三人の荷重に耐えきれるわけ?」

 

「…うーん、耐えることはできるけどスペースがないな」

 

ドラクリヤーは残念そうに首を振るモーション。結局三人と一匹(?)が歩いて向かうことに。

 

「しかし…あんたは別にわざわざ来てもらわなくていいのよ?面倒でしょ」

 

「そんな事ないわよ。細かいこと思い出すかも知れないしね」

 

レミリアの一言に対し、パルスィは軽いテンションで返した。レミリアは思っていた印象と若干のズレを感じつつも、地霊殿へと進んだ。

 

「うーん、どこで聞いたんだったかしら」

 

「思い出したら言ってくださいね」

 

少し悩ましげなパルスィを横に、彼女達はまっすぐ道を進んだ。ドラクリヤーに外で待つように言うと、そびえ立つ地霊殿の扉を開けさとりの元を目指して中央のロビーを進んだ。そこに

 

「ちょーっと待った!あんまり探って欲しくないんだよねえ」

 

 

突如ブラックキャッツが飛び出た。戦闘態勢をとるレミリアと妖夢をよそに、パルスィへとエックスゴースターを向けた。

 

「洗脳してる暇はないからねぇ…暴走だけでお願いね!」

 

避けようとするも間に合わず。銃口から飛び出た煙を浴び、倒れ伏すように眠り込んだ。

 

「パルスィさん!」

 

「さあ、名付けて緑目女!戦えー!」

 

ブラックキャッツの指を弾く合図と同時に立ち上がり、エネルギーを放出。暗い緑のオーラを放ちながらその姿を怪物へと変えた。

 

「パルスィさん…!」

 

「…こいつは私が相手する!妖夢は火車を追いなさい!」

『覚醒!』

 

レミリアはヴァンパイアリングを装備しつつ緑目女へと身を構え、妖夢に対しあごで合図。妖夢はそれに対して頷くより先に変身の準備をして駆け出した。

 

『人か霊か?』

 

「変…「変身」…身!」

 

かたや緑目女へ、かたやブラックキャッツへと駆け出しつつ変身シークエンスを終えた。

 

『ジェ・ヴォー・ダン』

『変・身・承・知!ヒトノカタ!』

 

「でやああああ!」

 

爪による乱暴に、猛々しく、鋭く、そして美しい連撃。一瞬の怯みに対し、ドラクリヤブレードでさらに斬りつけ。

吹っ飛ばされた緑目女を蹴り込んだ。

 

「強サ……妬マシ…イ!」

 

意志を感じさせないカタコトの一言。起き上がりつつ放つ言葉に多少警戒しつつも、ジェヴォーダンは攻めに出た。

 

「ぎょああああ!」

 

「うおおおおおお!」

 

互いに怪鳥のような絶叫を上げつつ、その拳をぶつけた。果たして吹っ飛んだのはジェヴォーダンの方であった。

 

「パワーが上がってる…わね」

 

手をブンブンと振って痛がるようなモーション。ドラクリヤブレードを構え直し、斬撃での攻撃をメインへとシフトチェンジ。攻撃を避けつつの攻撃へ。

 

「…ドラドラ!」

 

しかし、それでは追っつかず、ドラクリヤーを呼び出した。ステンドグラスを突き破る!……のは気が引けたのか、ドアを乱暴に開けつつ突入した。

 

「おらああああ!」

 

緑目女を軽く撥ねてUターン。起き上がった緑目女へとガトリングを叩き込んだ。

 

「ぎぎぎ…妬マシイ…!」

 

声を上げつつ、再びジェヴォーダンへと駆け出した。

 

 

 

 

 

 

「追い詰めたわよ…!」

 

桜刀は廊下の奥までブラックキャッツを追い詰めた。側面に幾らか部屋はあるものの、隠れ切れる構造ではない。とはいえそれは誘い込んだとも言える。一度戦った経験があるとはいえ、ブラックキャッツが強い点に疑いようはない。桜刀は警戒を解かぬまま詰め寄った。

 

「やれやれ…あれを使うとしますか!」

 

ブラックキャッツは依然余裕を見せた様子で奥の扉へ。無駄なあがきをなどと毒づきつつ、その後を追った。

 

「ハッハッハ!行くよ!あたいが主人だオウカオー!」

 

薄暗い部屋の中では、ブラックキャッツが置かれた何かの上に乗っていた。「なんだそれは。今オウカオーと言ったか」と、そう問おうとした。しかし口を開くより先に強烈な閃光と轟音がそのオブジェクトから放たれた。

 

「バイク…!?」

 

自身めがけて駆け出したバイクを桜刀は全力で押さえ込んだ。しかしながら、その馬力は凄まじく、押されていってしまう。

 

「くっ…」

 

悔しげに声を上げるも虚しく、ブラックキャッツの斬りあげクローでぶっ飛ばされて壁に叩きつけられた。

 

「そのままミンチになりな!」

 

そして再びエンジンをかき鳴らし、突撃。潰される!恐怖に目を瞑った妖夢。しかし、バイク、オウカオーは桜刀の元へはたどり着かなかった。

 

「なんで動かないのさ…!?」

 

恐る恐る目を開けると、そこにまっすぐフロントのライトが飛び込んだ。彼女は、オウカオーが自分を見つめていると、そう感じた。

 

「だああああ!」

 

桜刀はブラックキャッツの戸惑う様に隙を見つけた。とっさに立ち上がり、すぐさま白楼剣を勢いよく納めるモーションを二回行ってジャンプ。右足を伸ばした。

 

「ヒトライダーキック!」

 

その足をブラックキャッツの胸に叩きつけ、オウカオーの上に着地。ブラックキャッツはダメージこそ少ないものの、転げ落ちてバイクのハンドルを完全に離した。

 

「怨霊ならバイクに突っ込んでも操れると思ったんだけどな…主人の孫が出りゃそっちに従うか…」

 

ため息混じりに立ち上がり、エックスゴースターを桜刀へ向ける。連続で放たれる銃撃をオウカオーで駆け回りつつ避け、さらに轢こうと接近。スレスレで避け、窓際へ。

 

「この狭い部屋でこれはやだな。めんどくさいし」

 

そういうとブラックキャッツは窓から飛び降りた。急いで駆け寄って見下ろすが、そこにすでに姿はなかった。

 

「…ど、どうしようかしら。逃げられちゃった…レミリアさんに追ってと言われた手前…うーん…いや、助けに行かなきゃ…いけないよね」

 

戸惑いつつもオウカオーにまたがり、元のロビーへ。未だにジェヴォーダンは緑目女と戦っていた。

 

「レミリアさーん!」

 

「妖夢…ちょっと手伝ってくれるかしら?」

 

レミリアの一言に頷きつつ、緑目女へ突撃。撥ね飛ばしたのち、オウカオーから飛び出して思いっきり斬りつけた。

 

「…何よそのバイク」

 

「奥にありました。オウカオーの魂が入ってるらしいですけど…」

 

「居るってそういうことだったのね」

 

ジェヴォーダンは一人納得するような様子を見せ、再び構えた。視線を合わせて二人は頷き、同時に必殺の準備。

 

『ジェヴォーダンフィニッシュ!』

 

ドラクリヤブレードをかざしつつレバー操作。その横で桜刀は剣を納め直すモーションを一回。緑目女へ駆け出した。

 

「フランスズ…ナイトメアッ!」

 

「ゲンセスラッシュ!」

 

ドラクリヤブレードからオオカミの頭のようなオーラが出現。緑目女噛み付いて持ち上げ、地面へと叩きつけた。さらには桜刀の一閃。緑目女は一瞬うなだれたのち爆発。煙の中からパルスィが倒れ出た。

 

「助かったわ妖夢」

 

「…いえ、そんなことは」

 

二人は同時に変身を解除。レミリアは安堵の息を吐いてパルスィを抱え上げた。

 

「この子、家の方に連れて行くわね」

 

「ありがとうございます」

 

扉が閉じると同時にバイク音。ドラクリヤーに乗って去っていったのだ。妖夢も妖夢で目的は果たした。あとは主人に戦闘があったことについて詫びを入れなくては。

そう思って剣を収めた。

 

「なんだ今の爆音は!」

 

そこに妹紅が飛び出た。あたりを少し見渡し、カーペットの焦げに目をやった。

 

「戦ってたの?」

 

「はい。レミリアさんと一緒に、怪人と。レミリアさんは今暴走させられてた人を帰しに行ってます」

 

「そっか。さとりなら今出てる。私達が居る部屋で待ってるといいよ」

 

「助かります」

 

そう言って頭を下げると、レミリアに対しての書き置きをロビーに残し、輝夜達を匿う部屋へと案内した。

 

「あら、妖夢じゃない」

 

「あ、鈴仙。…永遠亭のみなさんが居るんですね」

 

見渡したのち、鈴仙の隣に座った。すでにさとりとメディスン、そしてへカーティアはおらず、永遠亭のメンバーと妹紅、サグメの六人であった。

 

「あなた達交流あったの?」

 

「人里でたまーに会うだけです」

 

「そう…しかしあなた、結構怪我してるわね」

 

鈴仙の返答に頷いたのち、永琳は妖夢へと顔を向けた。切り傷や擦り傷、打撲があちらこちらに見え、少し痛ましい見た目であった。

永琳はどこからともなく薬箱を取り出すと、怪我の手当てを始めた。

 

「あなたも変身して戦ってるらしいわね。仮面ライダー桜刀…だったかしら?」

 

「はい…でも、まだ未熟で…弱くて…他の仮面ライダー人達にも…全然及ばなくて…負けて…」

 

暗い表情で俯く妖夢。それを見て永琳は溜息をついた。

 

「あなたが弱いわけないじゃない。他の仮面ライダーって…戦闘経験ほぼ0の外来人も居るのよ?」

 

「…実際、その人ほどの人助けもできてませんし、負けてばかりで……」

 

「…あなたの敗因がわかったわ」

 

湿布をゆっくり貼り付け、上着を着せたのち、わざとらしく妖夢の前に座り込んでほほ笑んだ。妖夢は少し驚いた様子で見上げた。

 

「自信。圧倒的に自信がない。決断に対してきっぱりと割り切れてないのよ」

 

「…自信」

 

永琳の言葉をしっかりと反芻し、脳内でどういうことか探った。思い当たるフシはいくらでもあった。

 

「無責任に自信を持てなんていえないけど…割り切りなさいと、それだけは言うわ。その決断を間違えても、誰もあなたを責めない。誰かが責めるのなら…私と、多分幽々子はあなたの味方で居るわ」

 

腕に包帯を巻き終え、妖夢の目をしっかりと見据えて言った。妖夢も目を離さず、しっかりとその言葉を受け取った。?

 

「…八意様はきっぱり赤青ですものね。真っ二つに割ってみたいです」

 

「冗談が言える余裕があるなら結構」

 

そう言うと手当てを終え、永琳は座り直した。妖夢の顔が心なしか明るくなっているのを確認し、少しだけほほ笑んだ。

 

「ハッハッハ!感動的ねぇ!」

 

その空気を叩き斬る笑い声。全員が振り向いた影の中に、青い眼光が煌々と輝いていた。その光の形、そしてうっすらと見えるエックスゴースターを見て、ブラックキャッツのような怪人である点は簡単に察せた。

 

「貴様…!」

 

手早く変身の準備をする三人。そんなライダー達をよそに、影に潜む女はゆっくりとエックスゴースターを構えた。

 

「下準備はキャッツがやってたみたいね。…『ライダーを殺せ』…これでよし!」

 

エックスゴースターからマイクを展開。声を吹き込むと、部屋全体に広がる大量の煙を発射した。

 

「なんだこれ!」

 

「伏せてっ!」

 

全員が口元を押さえて屈む中、女は物陰からゆっくりと歩み出ると、エックスゴースターとUSBメモリを2セット地面に投げ置いた。

 

「安心しなさい。これが効くのはこの二人だけだからね。じゃ、任せたわよ」

 

煙の中、誰もそのしっかりとした姿を認識できぬまま女は姿を消した。

 

「…げほっ」

 

程なくして煙は晴れた。軽く咳き込みつつ一同は立ち上がり、周囲を見渡した。

 

「任せたって…まだ敵が!?」

 

『コトダーマ!観!』

 

『ignition…』

 

『人か霊か?』

 

一行が変身の準備をする中、てゐと鈴仙はゆっくりとエックスゴースターとUSBを拾い上げ、セットした。

 

『『X!』』

 

「「醒妖」」

 

そして上へと振り上げ、トリガーを引いた。煙と粒子が彼女たちを包み、その姿を変える。

 

『『rabbit…change』』

 

「行くわよてゐ」

 

鋼鉄の妖兎は目を合わせて頷くと、ドアを蹴り壊して廊下へと駆け出した。変身する暇もなく三人はその後をバイクで追う。しかし追いつくことはなく、結局ロビーへ。二人が正面ドアを蹴り開けて飛び出たのを三人は追おうとした。

 

「おーっと!あたいが相手するからサ、先には行かせらんないんだよね!」

 

しかしそうは問屋が卸さない。再び現れたブラックキャッツがその行く手を阻んだ。

しかしフェザーチェイサーの咄嗟の判断によりフェネクスだけは外へ。少なくとも現在一番の戦力を持つのが彼女であったので、サグメと妖夢は任せることに。それぞれオウカオーとコードランナーを降り、変身の準備をした。

対しブラックキャッツも怨霊とフェアリートルーパー達を呼び、行くように合図した。

 

「怨霊を操るなら…霊で斬る!」

 

「今度は逃さん。アナライズよりこっちだな。…力、借りますよ。依姫様!」

 

『コトダーマ!戦!』

 

対し妖夢とサグメはそれぞれ楼観剣と紫のコトダーマを用意。それぞれ剣を構えるポーズと、親指を下げるポーズを取った。

 

「変…「変身……!」…身!」

 

『ブレイクオープン!ドレスアップ!』

 

そして楼観剣を挿入、レバーを引き上げる。妖夢の半人が消えたかと思うと、半霊が人型となって鎧は出現。その横では紫の粒子が甲冑のような鎧を形作った。

 

『変・身・承・知!レイノカタ!』

 

『メイクバトル!ワードレス!』

 

黒いスーツの上に黒い陣羽織をまとう桜刀 レイノカタ。紫目が輝く鎧のバトルワードレス。並び立ち、白楼剣とアタックフィールのレーザーブレードを構えた。

 

「この姿を…斬れる者は、ほぼいない!」

 

「運命だと思って…諦めるんだな!」

 

そして同時に駆け出し、あたりのザコたちを蹴散らしつつブラックキャッツへ。対しブラックキャッツはベアハッグの体勢で攻撃。しかし当たったのはワードレスの方にのみ。それさえブレードに塞がれている。どういうことだと振り向いたその先には、自分の体を貫通しつつ移動する桜刀が。

 

「にゃぁに〜!?」

 

驚きつつエックスゴースターより銃弾をばらまくが、避けようとする様子すら見せない。全て貫通し、ステンドグラスの雨を降らせるのみ。一瞬ビクつく桜刀であったが、振り切るように頭を振り、空に胸を張った。

 

()()()()のよ…私は霊体。恐れちゃいけないっ!」

 

迷いを捨てる。永琳のその言葉を咀嚼し、強く頷く。そして今一度白楼剣を構え、ブラックキャットへ斬りかかった。

 

 

 

 

 

「何の騒ぎよ!」

 

場所は変わって旧都。妹紅がフェザーチェイサーで突っ走る横に、ドラクリヤーに乗ったレミリアが接近。妹紅が指差した先のウサギ怪人二人を認識し、スピードを上げた。

 

「あいつを追うのね!」

 

さらに加速。追いつこうかというとき、妖兎二人は二手に分かれた。鈴仙の変身するクレイジィラビットは妹紅が、てゐの変身するハピネスラビットをレミリアが追った。

 

「そこの人形!えっと…」

 

「メディスンよ。メディスン!その兎を止めて!」

 

道を曲がった先にいたメディスンへドラクリヤーは叫んだ。それを補足しつつレミリアも叫んだ。しかし、あまりに急なコト。驚いてる間にその横をハピネスラビットが駆け抜けていってしまった。

 

「乗せて!」

 

しかし咄嗟にドラクリヤーに掴まり、後ろに飛び乗った。レミリアはすごい反射神経だと驚きつつもその手は止めず。さらに追った。そんな中、ふとハピネスラビットは振り返り、戦闘態勢をとった。

 

『覚醒!』

 

対しレミリアとメディスンもドラクリヤーから降り、ベルトを装備した。

 

「変身」

「変身!」

 

『ジェ・ヴォー・ダン』

『GRADE UP…… FAZE1』

 

「さあ、楽しい殺戮を始めましょう」

 

「…いくわよ」

 

 

 

 

同じ頃。家も見当たらない岩場にて、すでに変身を終えたフェネクスの目の前でクレイジィラビットも止まっていた。

 

「ごめんね妹紅。でも誰かが私に言うの。ライダーを殺せって。…戦えなくなってもらうわ!」

 

「全く…まあいいさ、燃え尽きてもらうよ!」

 

バーンスマッシャーをその手に、クレイジィラビットへと駆け出した。

 

 

 

 

 

 

「だあっ!」

 

ブラックキャッツの一撃。しかしワードレスには避けられ、桜刀へは当たらない。その一瞬の隙にビームブレードと楼観剣が襲う。大きくないとはいえ、怯む程度のダメージはもらう。少し警戒を強めつつ、高く飛び上がってシャンデリアの上に。

 

「そっちがそのつもりなら!」

 

指を弾いて部下たちに合図。怨霊を桜刀へ向かわせ、フェアリートルーパーをワードレスへ。しかし軽く蹴散らしてしまう。

 

「…強化攻撃準備」

 

妖精達が意思を感じさせない声を上げ、イーヴィルトリガーの引き金を引き続けてチャージ。ある程度溜め終え、ワードレスへ放射。鋭いレーザー達が向かう。

 

『シューターフィール!』

 

「言ったろ、諦めろとな」

 

対しワードレスは銃撃で対抗。イーヴィルショットを撃ち落としつつゾンビフェアリー達を撃破した。

同じく桜刀もまとめて怨霊達を一刀両断。上で様子を伺うブラックキャッツへ視線を上げた。

 

「なかなかやるじゃないのさ」

 

そう言ってエックスゴースターを構えるブラックキャッツへワードレスが銃撃。得意げに避けるものの、シャンデリアを吊るすパーツを破壊。ブラックキャッツもろとも重力に従い始めた。

 

「え、ちょちょちょちょ!」

 

「行くぞ」

『ブレイクダウン!バトル!』

 

「ええ!」

 

焦りつつ飛び降りる準備をするブラックキャッツに対し、二人は必殺の準備。それぞれその剣と銃口を構えた。

 

『コトダーマエンド!』

「バトルエンド…!」

 

「カクヨギリ!」

 

ワードレッサーからの巨大なビーム。そしてそれとはさみ打つように迫る斬撃波。二つがぶつかり、大爆発。ガラスが散り、雨のように降り注ぐ。かたや鎧で弾き、かたや体をすり抜け。あたりが静まったのを見て、二人は変身を解いた。

 

「…倒れてないな」

 

「逃げちゃったみたいですね…」

 

二人は困り気味にあたりを見渡すものの、何かできるわけでもないので、とりあえず妹紅の後を追うことにした。

 

 

「助かったよ、お空」

 

「あそこでお燐がやられてたら困るもん。さ、行こっか」

 

地霊殿の外の暗がり。二人はエックスゴースターを片手に座り込んでいた。空が立ち上がったのに合わせ燐も立ち、一時撤退。闇へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

「…よし、これで寝れば治るはずさ」

 

「ありがとうございます…!」

 

「そんな頭下げるなって。そのかわり、解決したら一発戦わせてくれよ?」

 

その頃、勇儀宅。萃香が瓢箪を煽る横で、蓮子は眠っていた。例の薬をもらい、あとは覚めるのを待つのみ。やっと気の抜ける感覚に、メリーは安堵の息を吐いた。

 

「この子って、宇佐見蓮子ってんだよね?」

 

「そうですけど?」

 

「宇佐見といやぁ…そんな名前の外来人が地上から逃げてきたって話だよ」

 

「本当ですか!?」

 

驚きのあまり、メリーは詰め寄るような姿勢で聞き返した。勇儀は若干仰け反りつつ頷き、話を続けた。

 

「菫子と言ったか…ジョシコーセーっていう人類最強種族って聞いたけど」

 

「多分それ冗談ですよ」

 

「え…そうなのかい?」

 

「ええ、……菫子?それって……」

 

笑っていた様子から一転。考え込むような様子に。そしてはっと目を見開いた。

 

「おじいちゃんは婿養子で菫子……それって!」

 

「ど、どうしたんだい急に」

 

「それって……蓮子の…おばあちゃんよ…!」

 

奇跡の出会いに目を見開くメリーであったが、鬼二人はメリーの語る意味がよくわからず首を傾げているのであった。

 

to be continued…




「酒がなくてもいいって聞いたけど…どうなんだろ」

地底を肴に飲め!唄え!

次回、「地底の国の鬼ヶ島 〜 Waking Power」

『キャッツアイ』とか『キャッツパンチ』ってぇのはよーくわかる。スゲー(ディ・モールト)よくわかる。c()a()t()()s()()()()()()()()()だからな。でもよおおおぉぉぉ!ブラックキャッツって何だよッッ!『猫の』何なんだよおおおおお!!舐めてんのかッ!くそッ!くそッ!『複数形』でも()()()()()()()()だろうがよおおッ!!くそッ!くそッ!ブラックキャットだろうがテメェーはッ!
というわけでこんにちは。ギアッチョもといサードニクスです。
なんかレミリアと妖夢にセット感が生まれてますね。原作で繋がりあったっけ?一応春雪異変で咲夜が解決に走ったなら知ってるんかね。
桜刀が噛ませ役ばっかだったのはこの回で学ぶシーンのため。以降は活躍するんでご安心を!
ちなみに。次回はこんなタイトルですが萃香そんなに活躍しません。実は別ライダーの変身イベントだったのを捻じ曲げてるんですよね。許して。

みんなの!変身ポーズコーナー!
今回は桜刀!
まずはオビドライバーを装着!個人的解釈だけどアマゾンズドライバー的な構造。
そして背から抜いた刀を右手に持ち、右下に向けてビシッと背を伸ばします。
そして鞘の鯉口に峰の付け根を当てつつ「変…」
そしてゆっくりと引いて切っ先を鯉口まで持ってきて…「…身!」で納めます。
「居合 納刀」ググるとイメージがつかめるかと。


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第10話 地底の国の鬼が島 〜 Waking Power

前回の第9話は!
ヘカーティアは地獄から、魔術具と思しき謎の装置を持ってきていた。さとりはそれにパワードスーツを格納し、ヘカーティアを変身させられるという。
そんなころ、妖夢とレミリアは聖の残したメッセージに従い『オウカオー』を探していた。聞いたことがあるというパルスィと共に地霊殿へ。しかし突如現れたブラックキャッツがそれを阻む。さらにはパルスィを怪人化させて、二人を襲わせる。二人は変身しこれに対処。ジェヴォーダンが緑目女と戦う中、桜刀はブラックキャッツを追う。そしてブラックキャッツはバイクに乗り攻撃をしかける。だがどうやらそのバイクの名は『オウカオー』のようだ。妖夢はそれを奪い取り、逃げていくブラックキャッツは追わず緑目女の元へ。二人でパルスィを正気に戻すことに成功する。
戦いを終えた二人は、永遠亭の面々とともに地霊殿にいることに。怪我の手当てをしながら、永琳は自信を無くしつつある妖夢を元気付けた。そんなときに謎の怪人が現れる!姿を隠したそいつによって鈴仙とてゐが洗脳。クレイジィラビットとハピネスラビットへと変わる。ライダー達が追おうとするも、行く手をブラックキャッツに阻まれる。ワードレスと桜刀が戦い、妹紅はうさぎ二人をどうにか追った。
新たなフォームでブラックキャッツを追い詰める二人だが、最終的には逃げられてしまう。
同じ頃、途中で合流したレミリアとメディスンとともに、妹紅はうさぎ達を追う。二手に分かれたうちの鈴仙の方を妹紅が追う。そして鬼ごっこは終了。フェネクスvsクレイジィラビット、ジェヴォーダン&メディスvsハピネスラビットが始まる!
その頃の勇儀宅。蓮子は無事薬を飲んで回復し、眠っていた。勇儀曰く宇佐見と言う名の外来人がすでに地底にいると。メリーは気づく。宇佐見菫子、蓮子の祖母だ。
・仮面ライダー桜刀 レイノカタ
・仮面ライダーワードレス バトルワードレス
・緑目女
・クレイジィラビット
・ハピネスラビット


『phoenix blaze!』

 

「でやああああああ!」

 

フェネクスは爆炎をまとった右腕を振るった。しかしクレイジィラビットはそれを余裕を込めた態度でかわす。続けるキックも当たらず、反撃の横蹴りにぶっ飛ばされるのであった。

 

「…やれやれ。熱いからあんまり嬉しくないフォームなんだがなぁ」

 

そんなことを言いながら、グリップを五回握ってフェニックスフォーム発動。フェザーチェイサーが変形を始めた。

 

『burn up complete phoenix feather!』

 

そして背に合体し、フェニックスフォームへ。跳びはねるクレイジィラビットへとフェザーシューターを放出。

 

「おっと!危ないなぁ!」

 

しかし、あまり直撃する様子はない。時に跳びのき、時に撃ち落とし。ファストクロウほどの俊敏さではないにもかかわらず、当たりづらい。妹紅は疑問を抱いたが、考える暇はない。攻撃を続けた。

 

 

 

 

 

「なんで当たらないのよっ!」

 

「…全く!」

 

そしてこちらはジェヴォーダンとメディスvsハピネスラビット。エクスブライガンの銃撃は一発たりとも当たらず、ドラクリヤブレードは全て急所を外れる。何か裏があるように思うが、そんな様子はない。

しかし相手はあのてゐである。どんなペテンが隠れているかわかったものではない。二人は一層警戒を強めた。

 

「ならこいつだ!」

 

メディスはプラントローズのカプセルをセット。ハピネスラビットへ撃ちはなった。

しかし、その隙間を抜け、かすりさえしない。遠距離は無駄であると判断。すぐさま近接に切り替えた。

 

「おおっと!いやぁ…わたしゃ運がいいなあ!」

 

しかしそれはアーマーへとしか当たらない。素肌に近いスーツなら効くが、アーマーに当たったところで毒は入り込まない。むしろジェヴォーダンの方にかすってそちらがダメージを食らうほど。

 

「うぐっ!」

 

そして至近距離での銃撃。二人の胸にヒットし、思わずうずくまる。その隙を見てハピネスラビットは姿を消してしまった。

 

「くっ…」

 

「幸運…みたいね。あのウサギ…」

 

疲労のあまり座り込んで、変身を解きつつため息のレミリア。対しメディスンはまだ元気なようで、もう一体の方へと案内するようにドラクリヤーへと騒ぎ立てた。

 

「どうするよレミィ。オイラは行ってもいいけど…」

 

「…いや、私も行くわ」

 

 

 

 

 

 

 

「…感覚が若干おかしいから…うまいこと狙えなくなってるって訳か」

 

フェネクスは戦闘方法を高速接近によるヒットアンドアウェー近接に切り替えた。

 

「うぐっ!」

 

どうやら効果的だったらしい。ときにウサギ足のキックを食らうが、空中に逃げるので効果は薄い。すぐさま態勢を立て直し、再び接近した。

 

「でやぁ!」

 

身構えるクレイジィラビットへと蹴り上げ。腕を弾き、開いた胸へ零距離射撃を叩き込んだ。

 

「おごっ…」

 

さらに白熱した右手でのフックを叩き込み、左のストレートを打ち込む。そして体勢も直せないほど怯んだ一瞬を見逃さず、その首根っこを掴んだ。

 

「離しなさい!」

 

「それで離すと思うかい?」

 

掴むその手をより一層強め、そのまま宙へと舞った。

 

「とべえええええええ!!」

 

そして空中へ放り投げる!あたふたと戸惑いながら重力に引きつけられるクレイジィラビットをフェネクスが追い抜き、上空からこれまた重力を味方に降下を始めた。

 

『over drive!』

 

そしてボルコネクターとバーンスマッシャーを接続し、三回握り込んで必殺を発動した。

 

「フルブライトォ!ドロオオオオオォォォォップ!!」

 

ブースターの加速をも味方につけ、白熱した足をぶつけてそのまま急降下を続ける。燃え盛りながらクレイジィラビットとフェネクスは床へと接近していた。

 

「何よあれ…!」

 

「多分妹紅…ね」

 

そんな様子を遠くからレミリアとメディスンは見つめていた。アレには到底近づける気はせず、それをただ見つめているだけであった。

 

「やめろおおおお!」

 

「目ェ覚ましな!」

 

そして爆風が地底を揺らす。轟音と熱風が駆け抜け、8mほど先にいたレミリアの帽子が風に舞った。

妹紅は煙の中から抱え上げ、同時にあたりに民家がなかったことに安心するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

蓮子が起きたのは翌朝のことであった。

早朝5時。日の光も差し込まない地底に、彼女は違和感を覚えた。

 

「確か…カラス女を倒して…えっと…」

 

「んー?…ああ、目ぇ覚めたんだ。相棒なら寝てるよ」

 

そう言って萃香は中庭を眺めつつ縁側で酒をあおっていた。蓮子は初対面であったが、会話の流れからメリーとは交流があることと自分が気を失ってから時間が経ったことを察した。

 

「…私、宇佐見って言います」

 

「蓮子でしょ。メリーが言ってた。私は萃香、伊吹萃香。鬼さ。そこで寝てる一本角は勇儀。あいつも鬼」

 

萃香の軽い自己紹介に頷き、縁側の隣に座り込んだ。はっきり言って、巨大な角が非常に邪魔であった。

 

「…ここ、幻想郷ですよね?」

 

「そりゃもちろん。ここは幻想郷の地底。つまはじきにされた妖怪どもの溜まり場だよ。気をつけなよ。ここじゃ力がルール。まあ、仮面ライダーにゃ関係ない話か」

 

蓮子は身支度を整えつつ、「そりゃあメリーと私が揃ったら怖いもの無しですわ」などと冗談交じりに返答を投げる。そして帽子を被り、ケラケラと笑う萃香の横に座り直した。

 

「そういえば…これ、花果子念報?占いが書いてありますね」

 

何気なく蓮子はそばに置かれた新聞を拾い上げ、目を通し始めた。

 

「はたての新聞だよ。立ち直ったみたいで結構」

 

「………ですね。…なになに、『日本生まれの女性の人間のあなた、めちゃくちゃびっくりする出来事に遭うでしょう』んでもって…『横から生えた二本角の鬼と額から生えた一本角のあなた、禁酒で超ハッピーになれるでしょう』…ですって」

 

「えぇ…やだなぁ」

 

そう困り気味に言いつつも、飲むのをやめて栓をし、腰に瓢箪を掛け直した。

 

「んでもこの占いやけに当たるんだよなあ」

 

「私もびっくりして心臓止まらないように頑張りますよ」

 

「…起きたのね。楽しそうでなによりだわ」

 

冗談を飛ばしつつ笑い合う萃香と蓮子の元に、目をこすりながらメリーが座り込んだ。

 

「あらおはよう。ご覧の通り元気いっぱいよ」

 

「本当に良かった…。心配したんだからね?」

 

「まあ、また怪我しないように気をつけな」

 

そんなことを言って萃香は立ち上がり、寝っ転がる勇儀を見下ろした。

 

「気持ちよさそうに寝てんなぁー…よし、じゃああそこに行くか!」

 

起こすのは申し訳ないと判断し、外出の準備を始める。一瞬で終えると、メリーに対して着替えるよう促した。

 

「どこに行くんですか?」

 

「んま、そいつは秘密ってね」

 

ニッと笑ってそう答え、外に出ると、秘封倶楽部二人を招くように指をちょいちょいと引いた。

 

「やっぱ勇儀んところにいたね。今から外出かい?」

 

そんな萃香の元にみとりが駆け寄った。問いに対して頷くと、蓮子とメリーを指差し、ツレだと示した。

 

「…人間か。観光にでもついていくのか?この地底にそんなとこあるかね。で、これ、頼まれてたもの。『サカズキドライバー』。それと私が勝手に作った『イシグマスラッシャー』。もともと持ってたばいくってやつの改造品。そこにおいてある。酒の方はもうちょっと時間かかるから。それでも変身はできる。じゃあね」

 

早口で、畳み掛けるように言うことだけ言うと、後ろ手に手を振って足早に去っていった。

 

「…急だなぁ」

 

そんな感想を述べつつ、停められたアメリカンバイク『イシグマスラッシャー』に目をやった。かつての部下、石熊童子の妖力を仕込んだものであるが、その実力やいかに。期待を抱きつつ乗り込み、また、秘封倶楽部にもチェイスナイターに乗るように促した。

 

「ま、ちょうど乗り物渡してもらったとこだし…これで目的地に向かいますか!行くぞー!」

 

「ほら、行くわよ蓮子」

 

萃香の威勢良い掛け声とイシグマスラッシャーの発進音に合わせ、チェイスナイターもそのあとを追った。

 

「おおう!いい風だなぁ!バイクってもうちょっと扱いづらいもんだと思ってたけど…いいねえ!」

 

「ほら、初めて触った人もああいってるんだしあなたも帰ったら免許取りなさいよ」

 

「考えておくけど、こうやってあなたに掴まってる方が好きだわ。いつも私が動き回ってあなたの手を引っ張るんだしね。その分あなたに引っ張って欲しいのよ」

 

「あら、嬉しいこと言ってくれるじゃないのよ」

 

風の音を聞きつつ、くだらない話をしながら二人は萃香の後ろについて走った。

 

「よし、ここだって勇儀は言ってたけど…」

 

長屋の部屋の一つの前で止まり、スペースにイシグマスラッシャーを駐車して扉を開けた。

メリーもチェイスナイターを停め、荷物を持つと、萃香に続いた。

 

「…誰もいないじゃない?」

 

「そう言う時間帯なんだよ」

 

そういうと萃香は適当に床に座り込み、瓢箪を出した。しかし今朝の占いを思い出し、その手を止めた。

 

「やめとくか」

 

そんな萃香をよそに蓮子はやけにキョロキョロしては頷きを繰り返した。

 

「どうしたのよ」

 

「ここ…長く住んでないみたい。それに土間に机があって、西洋風の椅子が置いてあるわ。でも小説が畳に積まれてるわ。椅子を座るのが普通なのに、畳文化に対する理解が深い…つまりここは外来人が一時的に泊まってると考えるのが自然よ」

 

「よくわかるねぇ!」

 

「あ、やっぱそうですか?」

 

蓮子の推理を聞いた萃香は驚いた顔で感心の色を見せた。メリーもなるほどと頷き、軽く部屋の中を見渡した。

 

「……!?ねぇ蓮子!れ、蓮子!コレコレ!つつつ、机の上!!」

 

机の上の物体へと目を向けた瞬間、メリーが形相を変えて騒ぎ立てた。

 

「なによ一体…」

 

「落ち着きなさい」と一言放つと積まれていたアガサクリスQの新刊から目を離し、机の下へと駆け寄った。

それを見て蓮子は目を見開き、驚愕の表情を浮かべた。

さらには「信じられない」と小さく呟き、後ずさった。

 

「これって…なんでここにコレが…なんでここに…『アイズバックル』があるのよッ!」

 

蓮子はメリーの右手のスーツケースに目を向けた。よもや超能力かなんかで私を驚かそうと?蓮子の向けた疑いの視線に対し、メリーはスーツケースの中身をしっかりと見せることで応えた。

 

「じゃあ…これって…なんなのよ!」

 

「ここに住む人が…開発した…?」

 

二人が机に対し疑惑の視線を送った時、そこには、先程までいなかった何者かが座っていた。

 

「「うわぁー!!だだだだ誰!?」」

 

「そ、それはこっちのセリフよ!…萃香が連れてきたの?」

 

萃香は肯定の頷きを返した。そして現れた少女へと近づき、肩を組むと、驚く秘封倶楽部二人に対して笑顔を向けた。

 

「宇佐見菫子!それがこいつ。寝てる間だけ幻想郷に来る外来人さ!」

 

手を広げてわざとらしく紹介。それに対してメリーは納得の表情。対し蓮子は目をがっつり見開いたままであった。

 

「…おばあちゃん?」

 

「「は?」」

 

訳の分からない様子の萃香と菫子をよそに蓮子は飛び跳ねて騒ぎ立てた。メリーは「落ち着きなさい蓮子」と声をかけ、菫子に近づいた。

 

「はじめまして。私、マエリベリー・ハーン。メリーって呼んでくれると嬉しいわ。…実はその、未来人なの。私達」

 

「ジョン・タイターみたいな話ね…ってことは、その、えっと蓮子ちゃん?は…私の未来の孫ってわけ?」

 

「あくまで同姓同名ってだけ」

 

それを聞き、菫子はウンウンと頷いて蓮子の元へ近づいた。

 

「…でも、心なしか私と似てる気も……あなた、おじいちゃんの名前何?」

 

「聞いちゃう?まあでも中学から知り合いって言ってたしいいか」

 

そう言って納得すると、菫子へと耳打ちをした。瞬間、爆発するように菫子の顔が紅潮。蓮子へ向き直ってゆっくり頷いた。

 

「…うん、あ、あなた、私の孫よ。彼との出会いまで知ってるなんて…」

 

「ファーストキッスの話も聞く?」

 

「もう結構よ…」

 

恥ずかしげに目を背ける菫子に対して蓮子はニヤニヤ。そんな蓮子へ、メリーは机の上を指差す合図を向けた。

それを見て蓮子は真剣な顔に戻り、メリーからスーツケースを受け取った。

 

「…これ、おばあちゃんが作ったのよね?未来で…私が手に入れたの」

 

「へぇー。血縁の人のアイテムを受け継ぐネタはよく見るけど、実際にそうなるとはね!」

 

誇らしげに笑う菫子に対し、蓮子は静かにかぶりを振った。

 

「謎の組織が保有してたわ。私たちが殺されそうになったときに、咄嗟に発見したの。偶然ね」

 

「…これが持ってかれるってことかしら…でも、あなたたちに渡ったならいいかな。自分の孫なら信頼できるし」

 

それを受けて蓮子は照れるような様子だった。菫子は微笑ましく思いつつ、机の上からアイテムを取り、蓮子へ渡した。

 

「…何があったか知らないけど、そのスーツケースにはそれ入ってなかったわね。入れるスペースはあるのに」

 

その言葉と共に蓮子が受け取ったのは、緑にラインの入ったライドグリップであった。

 

「ライトニンググリップよ。活用してね!…さあ、三人はそっちの畳にいてね」

 

そう言って三人へと笑顔を向けると、机へと向き、作業を始めた。邪魔するわけにはいかないと彼女たちは畳の上に座り、置かれた小説たちを読み始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おつかれ様です。…お燐をわざわざ助けてくれようとしてくれて本当にありがとうございます」

 

「いえ、心を見ればわかるかと思いますが…結局のところ自分のためなので…」

 

頭を下げて礼を送るさとりに対し、妖夢はオウカオーを拭きながら謙遜の言葉を送った。はっきり言ってしまえばさとりとはあまり同じ空間には居たくないと、妖夢はそう思った。しかしそれさえ筒抜けなので、話すに話せない。もどかしい気分でただただ手だけを動かしていた。

 

「…ん?」

 

そんな中、突如聖の残した木札が光り始めた。どうしたのだと驚く妖夢をよそに、さらに光を強め、さらには宙に浮き、オウカオーへとぴったり貼りついた。

 

「一体何が…」

 

「起きたのよ?」とさとりが続けて言い切る前に、光はついに閃光となり、二人は目を瞑ってしまった。

 

 

 

「で…これを私にくれるってわけ?」

 

5分後。妖夢に呼ばれたメディスンは目の前の物体に驚愕しつつ困惑していた。

しかしそれは妖夢もさとりも同じで、どういうことだと、その物体を眺めていた。

 

「ええ、私はバイクあるし、さとりさんは要らないって」

 

「嘘でしょ?『バイクからバイクが出てきた』だなんて」

 

「ほんとなの!…聖さんの木札が光ったら、なんかバーって出てきたの!」

 

その一言にメディスンは相変わらず疑いの様相でじろじろと巨大なバイクを眺め、何気なしに触れた。

 

『認証完了。アリスもしくはドールの条件に合致。設定します』

 

「うわ喋ったぁ!」

 

妖夢とメディスンは尻餅をつきつつびっくり。バイクのハッチが開き、シートが現れた。

 

「トライ…サイカー?」

 

シート前に置かれたモニターに映る魔界語を妖夢は無意識に読み上げた。そしてよく見るとこいつはバイクではなく三輪車であったことに気づき、より一層困惑の表情を強めた。

 

「…これ、書き置きよね」

 

そんな中、シートに貼られたメモを見つけ、それを拾い上げて妖夢は読み上げを始めた。

 

「なになに…『白蓮ちゃんが桜花王の魂に術を仕込んだみたい。私の愛娘がお家に置いてっちゃった自慢の乗り物です。これを読んでるのが誰かは知りませんが、きっと白蓮ちゃんが信頼できる人なんでしょう。このトライサイカーを役立ててね。人形しか乗れない設定とかだったらゴメンなさいね。ーーー魔界の最高神 神綺よりーーー』…は?」

 

「結局私のものでいいのよね?あなたが持つ資格があって、私にくれたのだから」

 

「いいけど…乗れるかしら?」

 

妖夢は不安げにそういうが、メディスンが人形であったことを思い出した。なら乗ってみてとメディスンへ促した。

対しメディスンも、「ありがとう」と軽く礼を返し、トライサイカーへと踏み込んだ。結論から言うと…

 

「これ…かなり辛いわね」

 

シートが高く、立ち漕ぎ以外不可能である。パワーが上がるライダー時ならいざ知らず、普段使いは無理と判断し、置いておくことに。モニターに映るマニュアル曰く、持ち主の「トライサイカー」の呼び声で32km先までなら駆けつけるとか。変身時に使うことに決め、ひとまず地霊殿にに置いてメディスンは散歩へ出ることに。

 

「…?あれって…」

 

そんな中、地霊殿の門の前を何やらピンクの影が駆け抜けるのを目撃した。一瞬だったのでよく分からなかった、どこかで見覚えがある。よく考える前にメディスンの足は動いていた。

 

「待ちなさい!」

 

「…毒人形?誰が待つか!」

 

その声がハピネスラビットのものであったことで、メディスンの中で全てが繋がった。地霊殿にいた因幡てゐはピンクの服を着ていたのだ。話したわけではなかったのでいまいち覚えていなかったが、この瞬間につながった。

しかしあのハピネスラビットである。勝てるか若干の不安を覚えた。

 

「いや、待ってあげてもいいかもしれないウサ」

 

てゐは突然そんなことを言って立ち止まった。そして素早くハピネスラビットへ。突如の行動にメディスンは戸惑ったが、走る足と変身の準備はやめなかった。

 

「変身!」

 

『GRADE UP…… FAZE 1』

 

指を弾いて素早く変身シークエンスを終え、そのままパンチを放った。しかしそのパンチは空を切っただけ。一瞬で間合いを空けられ、銃撃をぶつけられる。

 

「くっ…」

 

「なんの騒ぎよ!」

 

メディスが悔しげに声を上げたとほぼ同時のタイミングで長屋の一室の戸が開き、蓮子が顔を出した。その目にハピネスラビットが写り、彼女は素早くメリーを引っ張り出した。

 

「敵よメリー!ほら、準備!」

 

「さっきからメディスンの攻撃を避けてるわね。素早いんならナイトメアで行くわよ!」

 

『look the line…』

 

メリーはアイズバックルを装備し、手を返すポーズの後、青のライドレンズを挿入した。

 

「「せーの、変身!」」

 

そして蓮子と手を繋ぎ、レバーを押し込んで変身シークエンスを完了した。光と粒子の後、ヒール ナイトメアモードがその姿を現す。

 

『we are dream night fantasy!』

 

「幻想の境界、見せてあげるわ!」

 

高らかに叫ぶと、早速渡されたライトニンググリップを用意し、ガジェットガラパゴスと合体させた。

 

『なかなか強そうね。いいじゃないの』

 

完成したライトニングテレガンで狙い撃ち。放たれた電撃がハピネスラビットを襲った。

 

「おっと、危ない危ない」

 

もっとも、一発たりとも当たっていないのだが。

 

『illusion eyes!』

 

続けて追尾弾を放った。しかし相手の硬いアーマーの上を電気が伝うだけであり、あまり大きなダメージではない。

 

「何が起きたのさ!」

 

長屋からたいそう邪魔そうに角を避けつつ、顔を出した。それに対しヒールは視線でハピネスラビットを示した。

 

「なるほど…こいつの出番ってか!」

 

そう言って盃を模した機械、その名もサカズキドライバーを腰に装備。

 

「酒がなくてもいいって聞いたけど…どうなんだろ。ま、いっか!変身!」

 

勢いよく叫び、バックル上部のレバーを引いた!

 

『error There is no alcohol』

 

対しベルトからの返信はこれ。萃香私は英語は分からんのだとヒールへ視線を送った。

 

「アルコールがないから変身できないってことみたいですね」

 

「え?嘘でしょ、変身出来るって言ってたんだけどなぁ…」

 

残念そうにそういうと、生身で戦うべくファイティングポーズポーズをとった。

 

「当たってないし痛くもないよ!めんどくさいし撤退としますか!」

 

しかしそれと同時にハピネスラビットはその脚力でもって逃走を始めた。

 

「トライサイカー!」

 

それを見てメディスはすぐさまトライサイカーを召喚。ハッチを閉じ、立ち漕ぎでの追跡を始めた。ヒールも一瞬出遅れるが、すぐさまチェイスナイターに乗り込み、スライダーモードで後に続いた。

 

「…それなら!」

 

しかし萃香は全くの明後日の方向へ。逃げたのかと蓮子は思ったが、それよりハピネスラビットへ意識を向けることに。

しかしエクスブライガンの銃撃もライトニングテレガンの銃撃も当たる様子はない。ただただ時間と体力と精神を浪費するのみであった。

 

「当たんないわね…」

 

『INCREASE EFFECT』

 

たまらずランチャープルーネラをセットしチャージインバレットを発動した。しかし拡散するミサイルのどれ一つとして命中せず。ど真ん中に向かったミサイルはエックスゴースターに撃ち落とされるのであった。

 

「全く…」

 

『当たんないことに何かしらのパワーが働いてるみたいね。…運とか』

 

「運…ねえ」

 

『illusion eyes!』

『spinning eyes!』

 

続いてドリル弾が分裂しつつ不規則に動き、ハピネスラビットへ収束した。

…結果は言うまでもないだろう。メリーはどうすればいいか迷い、マスクの中で顔を歪めた。

 

「おらおら!蹴っ飛ばされたくなきゃそこどくウサ!」

 

そんな中、バイクに乗った一つの影がハピネスラビットの前に立ちはだかる。その影はバイクから降り、拳を構えた。

 

「無駄だって……ぶぼぉお!」

 

右手のフックがハピネスラビットのマスクを捉え、正確に顔面に衝撃を伝え、脳みそを揺らした。

 

「おごっ…なんで…当たるのさっ…」

 

マスクの下で鼻血をこぼしながら立ち上がり、目の前で立ちはだかる萃香を見据えた。

 

「地底は入り組んでるからね、こう言う先回りもできるのさ。しかし、禁酒してラッキーてのは本当みたいだね。こっから休肝日を設けよう…とか言ったりして」

 

動揺とともにハピネスラビットはエックスゴースターから銃弾を振りまくが、避けるかガードされるかしてしまった。

 

「おっと、これは幸運とかじゃなくて単なる実力の違いってやつさ。…しかしみとりのやつ、バイクの後ろに説明書あるならそう言ってくれっての」

 

『error There is no alcohol』

 

ぼやきながらレバーを引く。今度はエラー音に対しても寸分の戸惑いもなく対応。続けてレバーを掴み、2度引いた。

 

『error clear change standby ……3……2……1 ready?』

 

「やっと戦いに混ざれるよ…。変身!」

 

待ちくたびれたよとため息を吐く。そして胸の前で右手で作った拳を左手で受け止めるポーズをとり、和風な待機音の中、手を広げつつ再びレバーを引いた。

 

『formname is 酒鬼!GOGOGO!』

 

鳴り響く変身音の中、萃香の体を妖力が駆け巡り、その肉体が異形に変化する。

右半身にアーマーが寄り、全身を血管のような脈打つラインがその身に走る異形に姿へと変わった。何より目立つのが曲がった一本角。勇儀のようにも見えるが、そこに宿るオーラと体格は紛れもなく伊吹萃香であり、仮面ライダー酔鬼である。

 

「さぁ…宴の始まりだ!」

 

手を広げて楽しげに叫んだのち、構えを取る。ハピネスラビットは駆け寄りつつエックスゴースターを乱射するが、どれ一つも避けない。その身で完全に受け止め、正面からストレートを頭にねじ込んだ。

 

「うぐっ!」

 

続けてキックを腹にぶち込み、ラリアットを顔面にぶつけた。

 

「ぐぅ…」

 

「どりゃあ!」

 

苦しむハピネスラビットを休ませることなく蹴り上げ。開いた顎にアッパーを叩きつけた。

 

「おぐっ…げほっ…」

 

「チャンスね…!」

 

しかしヒールとメディスの弾丸は依然当たらない。当たるのは酔鬼の攻撃のみ。とはいえ、その攻撃がどれもこれも急所に入っているので援護の必要はないと三人は判断。その戦いを見守ることに。

 

「なんで…私が運を使い切ったのかな?ならあいつらの攻撃も当たるはず…?」

 

「これ見りゃわかるんじゃないかね」

 

酔鬼は辺りを転がっていた花果子念報を拾い上げ、広げつつハピネスラビットへ渡した。

 

「なになに…『横から生えた二本角の鬼と額から生えた一本角のあなた、禁酒で超ハッピーになれるでしょう』…まさか、うそでしょおおぉぉ!?」

 

ハピネスラビットは新聞を前に驚愕し、同時に脱力。酔鬼の手がその新聞を突き破り、ハピネスラビットの顔面を掴んだ。

 

「おごっ…な、何する気よ…」

 

「こうする気だ!」

 

必死に抵抗するが意味は成さない。そのまま空中へぶん投げたかと思うと、酔鬼はそれ跳びこえる大ジャンプ。くるくると回ったのち…

 

「オーガブレイクッ!」

 

その脳天にかかと落としを叩きつけ、そのまま地面まで。

爆発が広がり、その後を爆風が駆け抜ける。その真ん中に立つのは酔鬼一人。粉々になったエックスゴースターを尻目に、てゐを抱え上げた。

 

「さ、帰るよ」

 

ヒールへそう言葉をかけると、イシグマスマッシャーへ乗り、後ろへ落ちないようてゐを固定。メディスンへ軽く別れの挨拶を告げ、勇儀宅へと向かった。

 

to be continued…




「異界の力…味わうといいわ!」

その力の片鱗を見よ!

次回、「ライデモニックプラネット」

感想なくて寂しいサードニクスです。まあでも最終回まで書くってことだけで今んとこモチベ保ってるけど…中盤あんまりド派手なことやらないまま淡々と続くから感想減りそうなのよね。新フォーム登場で感想0ならなんも出ないとなるとどうなるんだろう。既にある感想が減ってくのかな?しかしなんか感想くれくれ言い過ぎるのもウザいと思う人は居るんかな。そう言う方はすみませんね。
しかしまあ前にもらったというか、たかったお褒めの言葉で千年は生きていけるんでその辺はご安心をば。
体言止めが多くてリズムが悪いと言われ、若干改善(?)。読みやすくなってますかね?リズムとは別問題なのかな?
あ、そうそう。来週は更新遅くなるかと。何故かって私の学業でございます。テスト近いんスよ。
しかし追い詰められると逆にこういう遊びというか趣味が捗っちゃいますよね。だいぶ前のテスト期間では装動で仮面ライダーノースが完成してました。

そういえばめっちゃ久しぶりにヒール書いた気がする。6話以降出てないのか…。そりゃ久しぶりな感じもするわ。実は「幻想の境界、見せてあげるわ」っていう掛け声を忘れてました。
あと酔鬼の変身音が不自然だったから直しましたが、あえてsutannbaiにしてたんなら一言ください。直します。




みんなの!変身ポーズコーナー!

今回はメディス!ただしメディスンの方。実は本作品は変身者ごとにポーズが違います。
至極単純!
まず左手でメディットブレスを腰に巻きます。で、右手でブラッドリリィカプセルを挿入します。ここで全身に血管のようなラインがビキビキという音とともに走ります。
そして右手を左頬のそばに持ってきて指パッチン!そして左手で試験管パーツを押し込みます。
以上で変身完了。

またね〜


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第11話 ライデモニックプラネット

さて、前回の第10話!
フェネクスによりクレイジィラビットは撃破。しかし、ハピネスラビットには逃げられてしまうのであった。
翌日。蓮子とメリーが目を覚ます。同じく起きていた萃香とともに、外出をすることに。そんな萃香の元に、みとりが訪れる。変身アイテムを渡したかと思えば、彼女はそそくさと去ってしまう。行き先を教えてくれなかった萃香。言われるがままついて行った家は、菫子が地底に用意した隠れ家であった。二人からしてみれば、驚きの連続だ。
同じ頃、地霊殿にて。オウカオーと聖の遺した札が反応し、どこからか巨大な三輪車が現れた。妖夢はいらなかったために、メディスンの手に渡ることとなる。
その直後、ハピネスラビットが散歩中のメディスンの前に現れる。メディスに変身するも、敵わず。ヒールの加勢も虚しく、再び逃げ始める。そこに回り込む萃香。彼女の変身した酔鬼が、見事ハピネスラビットを打ち倒した。
・仮面ライダー酔鬼 酒鬼


半月が綺麗にきらめく夜に、天人は山の頂上にてその剣を神霊へと向けていた。

 

「ふぅ…ふぅ…」

 

しかし天人、ガイアは息も絶え絶えで、すでに立っているのもやっとである。反射能力を持ってしても捌ききれない猛攻に、もはや変身解除は目の前であった。

 

「もう諦めることね。素直に人里を明け渡せばいいのよ」

 

目の前に立ちはだかるストームスネイクはあまりに強かった。どれだけ殴っても防がれ、どれだけ蹴ってもいなされ、どれだけ斬っても弾かれる。気質を見極める緋想の剣が示した弱点でさえ、単純にパワーが足りずにダメージが入らない。相手の銃撃と格闘にその体力を削るだけであった。

 

「やめてよ神奈子っ!」

 

そんなストームスネイクの元に、両手を広げて諏訪子が立ちはだかる。これ以上誰も傷つけるなと涙を流して叫んだ。その声を聞き、ストームスネイクは諏訪子の目の前で立ち止まった。

 

「そうか…」

 

「…やめて、くれるよね」

 

「ごめんなさい、諏訪子。あなた、邪魔なのよ」

 

そう言い放ったマスクの中の神奈子の目は冷ややかで、微塵の情もないようであった。諏訪子はそうなってしまった相棒の姿に絶望した。…だが、次の瞬間、すでに意識は神奈子へと向いていなかった。

 

「がふっ」

 

口から血を飛ばし、ストームスネイクの白いボディが赤黒く色づく。そしてズルズルと倒れ込んだ諏訪子の腹には、土床が見えるほどの大穴が開いていた。

そして、ストームスネイクの右腕は真っ赤に染まった。

 

「…あなたの声よりも、頭に響くこの声に耳を傾けようと思ったのよ」

 

「くっ…」

 

「そんな、そんなっ!諏訪子様ああああああああああああぁぁぁぁぁぁーーーッ!」

 

早苗の絶叫も虚しく、諏訪子は目を閉じたまま動くこともなかった。そしてストームスネイクは汚れたぞうきんでも避けるかのような動きで諏訪子をどかし、ガイアへとエックスゴースターを向けた。

 

「お前…紫苑だけじゃなく……仲間の諏訪子までもッ!」

 

『グランドフィニッシュ!』

 

対しガイアは怒りの絶叫を上げる。レバーを操作し、必殺を発動して接近。大地を蹴って飛び上がり、右足をストームスネイクへと伸ばした。

 

「ムダだよ」

 

しかし、ストームスネイクが軽く手を動かしたと同時に御柱が飛び、ガイアの腹へと激突した。

 

「がはっ!」

 

硬いアーマーとしっかりとしたスーツでさえその衝撃に耐えかね、仮面の内側を吐血で染めた。

 

「うぐっ…くっ…」

 

すぐに変身が解け、地面を転げ回る。腹を抑えて血を吐きながらのたうちまわる。その様を見下して鼻で笑うと、ストームスネイクは奥へと消えた。

 

「紫苑…を…返せっ!」

 

必死の叫びもただ一瞥をくれるだけ。天子はそこで目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

「あんまり根を詰めちゃいけないよ?」

 

「気遣いありがとね。でも大丈夫。そんな時間のかかる作業じゃないから」

 

その頃の地底。すでに誰もが寝静まる中、むしろ少女菫子は幻想郷で活動する時間。その様子を、心配げに勇儀が見ていた。

 

「応援してるわよおばあちゃん!」

 

蓮子も目が冴え、眠れなかったので勇儀、そして萃香とともに菫子の長屋に来ていた。長く寝すぎたからなのだが、かといってメリーの寝顔を眺めるのも飽きてしまう。暇つぶしの目的もあった。

 

「そのおばあちゃん呼び…ビミョーな気分ねぇ」

 

一作業終え、背を伸ばしながらそう呟いた。事実とはいえ年上の少女からおばあちゃんと呼ばれるのは、JKにはなんとも言えないものであった。現に隣の勇儀も訳の分からない顔をしていた。

 

「ああ、未来人なんだっけ?宇佐見………え、孫なのか!?」

 

やっと自体を飲み込んだらしく、納得と驚愕をかき混ぜたような表情で二人の顔を交互に見ていた。

 

「…よし、そういえばさっき片手間で作ったんだよね。あげる。いらないだろうけど」

 

何かを思い出したのち、机の上からブレスレットのようなものを蓮子へ投げ渡した。しっかりキャッチし、それを見つめるが、なんなのかわからない表情を送った。

 

「充電器。変身中の余分な電力を使ってない方のガジェットの充電に使えるの。それだけ。名付けるならライドブレスかな」

 

「一応貰っておくわ」

 

そう言って腕に試し付けをしてみる。どうやら気に入ったらしく、外さずそのままにした。

 

「一仕事終わったんてなら呑みに行こうよ。もうちょっとで12時過ぎるしさ、私の禁酒デーも終わるのさ!」

 

萃香がハイテンションに右手を振り上げるが、蓮子と菫子は呆れ気味に笑った。私は酒が飲めないのに。二人は水片手に鬼に付き合わされることを想像し、少し苦笑いを浮かべた。

 

「私はさっき飲んだからいい。この屋敷で見張りでもしてるさ。おあつらえむきに本もあるしね」

 

そう言って勇儀は小説片手に寝転がった。萃香たちは彼女に手を振って外に出ると、三人で旧都へと繰り出した。

 

「…そういえば、おばあちゃん。これってどう使うの?」

 

「ん?」

 

そんな中、蓮子はガジェットスマートを取り出し、うち一つのアプリを見せた。『式』とだけ単純に書かれたもので、押しても謎の設定画面が出現するのみ。それを見て菫子は得意げに鼻を鳴らした。

 

「式アプリ。なんと妖術を利用して人工知能をまるごと機械に入れられるのよ!オフラインであってもね!」

 

「へぇ、2018年段階の女子高生の技術とは思えないわね」

 

「でしょ?近くに人工知能の入った装置をおいて新規登録するだけ!」

 

得意げにそう語り、続いて別のアプリについてドヤ顔での解説を続けるのであった。

 

「人間の技術ってのもすごいねぇ」

 

しかし萃香はそれに全くついていけずただすごいねと相槌を送るのみ。ものすごいアウェー感と戦いながら、真っ直ぐ飲み屋へ向かった。

 

「おお、菫子に萃香!それに噂の外来人じゃないか!」

 

「お先してるわよん。ご一緒どう?」

 

先客に魔理沙とへカーティアが六人テーブル席に居た。店は時間帯もあって空き気味であり、店主も特に文句を言う様子もなかった。二人はすでにほろ酔いであり、軽いものをつまみながら日本酒を流し込んでいた。

 

「じゃあお言葉に甘えちゃおうかしら」

 

菫子が魔理沙の隣をもらったのに続き、三人の前に萃香と蓮子が座った。そうして萃香が酒を頼みんだのち、蓮子と菫子も軽くメニューを注文した。

 

「この席、火車も一緒させてくれないかニャー…なんてね」

 

『X!』

 

突如かかった声に、五人は振り向きつつ警戒態勢を取った。声の主お燐がエックスゴースターを取り出したのをキッカケに、店員と客が避難。鬼や妖怪が逃げ惑う様はなかなか異様である。

 

「醒妖!」

 

『cat…change』

 

粒子と煙をまとい、ブラックキャッツは変身を終えた。そして爪を構え、その命を奪わんと近づいてくる。萃香は逃げろと三人に促し、サカズキドライバーを装備した。

 

『error There is no alcohol』

 

「楽しませてくれよ…」

 

『errorclear change standby 3……2……1……』

 

「変身!」

 

レバーを立て続けに引き、右拳を左手で包むポーズをとる。そして最後に一度引き、変身を完了した。

 

『formname is 酒鬼 GOGOGO!』

 

純白の鬼がその拳を構え、ブラックキャッツへ振るう。

 

「おっと、危ないなぁ!」

 

小手でガードし、腕を蹴り上げる。しかしそう簡単には行かない。あげた右足は両腕で掴まれ、持ち上げられたのち、地面に叩きつけられた。

 

「いてて…あたいも本気出さなきゃなあ!」

 

すぐさま立ち上がり、弾丸をばらまく。そうして生まれた隙にクローを叩きつける。相当な距離をぶっ飛ばされ、大地を転がる。受け身を取り、接近しようとするも、すでにブラックキャッツは構えを取っており、隙はなさそうであった。

 

「にゃぁあ!!」

 

そしてどう仕掛けようかと思案する間も無くカチ上げをくらう。落下の勢いでかかと落としをたたきつけようとするも、一瞬早く、そして酔鬼のものより長い脚から繰り出したハイキックを貰い、今度こそ地面に叩きつけられる。

 

「さ、大人しく死ねっ!」

 

そうして両腕を振り上げるその瞬間、間にへカーティアが入った。しかし生身な上弱体化した彼女に防ぎきれるわけもなく、思わず目をつぶってしまった。

 

「どけどけー!ドラクリヤー様とレミリア様がお通りだぜ!」

 

「ぎにゃっ!」

 

そのとき、けたたましいエンジン音と叫び声とともにブラックキャッツがぶっ飛ばされた。

上手く着地して、見据える先にはジェヴォーダンがドラクリヤーから降り、立っていた。

 

「ほら、完成したらしいわよ」

 

そう言ってへカーティアへと機械を投げ渡すと、ドラクリヤブレードとグングニールを構えて戦闘態勢を取る。

対しブラックキャッツもクローを構えた。

 

「…なかなか良さそうじゃないの」

 

へカーティアはその機械を改めて見つめる。『ヘルドライバー』彼女はこの場でそう名付け、腰へと装備した。

そしてバックルのボタンを押し、待機音が響く中今一度深呼吸をした。

 

「変身」

 

続けて、叩くような乱暴な操作でバックル側面のボタンを押し、シークエンス終了。彼女の背後に現れた影の塊が彼女を飲み込み、その姿を漆黒の戦士へと変えた。

 

『Perfect!HellGod Balance!』

 

真っ黒な複眼と、両手の鎖が目を引く、仮面ライダーヘルゴット バランスフォームへとなったのだ。

 

「さぁ、地獄を見せてあげるわ」

 

身を低く構え、睨みつけたのち気取り気味にセリフを吐く。そしてブラックキャッツがこっちを見た一瞬ののち、敵へと突進した。

 

「だぁ!」

 

左手の鎖を叩きつけられ、ブラックキャッツは地面に倒れ伏した。さらに蹴り上げを貰い、二発三発と鞭のように鎖をぶつけられる。

 

ひるんだその瞬間にジェヴォーダンと酔鬼からのパンチをぶつけられ、再び地面へ叩きつけられる。

 

「離せ!」

 

「誰が離すと!」

 

そして胴に鎖を巻きつけ、引きつけたのちヤクザキックを叩き込む。腹を押さえながら苦しむブラックキャッツを見据え、バックル側面を再び叩いた。

 

『Invocation Deathblow!』

 

「…ヘルスストライク!」

 

高く飛び上がり、キックの姿勢。さらに、まるで電動リールのように鎖がヘルゴットの腕に収められていく。その勢いままに足裏を叩きつけ、鎖を解き放ってぶっ飛ばした。

 

「ぐっ!」

 

そのままうずくまり、苦しむ所にチャンスだと酔鬼とジェヴォーダンが駆け寄る。

 

「うわっ!」

 

「んだよこれっ!」

 

その瞬間、猛烈な爆風が少女たちを襲う!連続であたりを業火が焼く。ヘルゴットさえ防御体勢を取るなか、爆風は止まない。

 

「見つけたよ!」

 

「ああ、悪いねお空」

 

その爆風の中、黒い影がブラックキャッツを連れ去った。

ジェヴォーダンがドラクリヤーに乗って空に舞う黒い影を追おうとするが、間に合わず視界から消えてしまう。

 

「…逃しちゃったみたいね」

 

「仕方ないさ、予想以上に奴が強かっただけだ」

 

そう言って一同は変身を解いた。しかし店に戻ろうにもボロボロで、店主も避難済みである。面白くない気持ちを抱きつつ、それぞれの帰路に着いた。

 

「じゃあ、私は帰って休むわ」

 

蓮子は萃香とともに勇儀宅へ戻る事に。対しレミリアは地霊殿へ、魔理沙は宿へと戻っていった。

 

 

 

 

 

「で、こんな朝早くに呼んでなんのつもりだい?」

 

翌日、地霊殿にはライダー達が全集合していた。萃香はみとりから先ほど受け取ったひょうたんをいじりつつ疑問を飛ばす。

サグメ曰く自身が集めたとのこと。全員が座ってるのを一人一人達の顔を見つめて確認し、深刻な顔で頷いた。

 

「…お前達が、何と戦ってるか、話そうと思う」

 

その一言が耳に入り、好き勝手騒いでいた面々も黙り、サグメの方を向いた。

 

「やっと話す気になったのね…あんたがここにいる理由を」

 

妹紅は少し語気を強めて言う。それには、目的もわからず付き合わされた鬱憤もこもっているようであった。

 

「…おそらく、月の要人が手を引いている」

 

サグメの放った一言に対し、それぞれ疑問符を浮かべたり顔をしかめたり驚愕したり好き勝手な様子であった。それに対して一番納得の様子を示したのは妹紅であった。

 

「だから裏切った…と」

 

「依姫さまレベルの可能性もあるからな。ここにはいないが…例の天人が侵入したおかげで旧竜宮の秘密の研究所が発見された。そこにあった機密事項は私でさえ知らないことがチラホラあるレベルのものだったからな」

 

「内部でそいつを追放しようとするより自分が裏切って行動した方が動きやすいと思ったって訳ね」

 

へカーティアはサグメの発言に対して頷き、より一層深刻な面持ちを見せた。

 

「ってことは…相当厄介な敵が最後にいそうね」

 

「ああ。だから、戦うつもりのものは全員覚悟した方がいいと伝えておこうと思ってな」

 

サグメはため息混じりに頭をかきつつ語った。メディスンや蓮子とメリーのように話の内容をいまいち飲み込めない者も居たが、ことの深刻さは伝わっていた。

そんな中、重苦しい空気に耐えかね、レミリアは口を開いた。

 

「それなら、協力が必要になってくるわよね。区別したりわかりやすくする民に…私達でそれぞれあの姿に名前をつけようじゃないの」

 

そう言ってヴァンパイアリングを机の上に置いた。それに対し、他の面々も納得の表情を見せた。

 

「それなら提案がありまーす」

 

真っ先蓮子が手を挙げた。一同はそちらへと目を向け、話を聞く姿勢に。そんな中、彼女はスーツケースから説明書を取り出した。

 

「この姿、私達はヒールって呼んでるんですけど、正式名称は仮面ライダーなんです。新聞で見ましたかね?これって、外の世界で昔やってた…ってのは私たち視点だから…今やってるテレビ番組に出るヒーローの名前なんですよ」

 

蓮子のその説明に対し、一同は口々に意見を述べ始めた。…結論として、それでいいのではと言うことになった。

 

「ヒーローの総称を仮面ライダーにしちゃえってこと?じゃあ私は…仮面ライダーフェネクス…かな」

 

妹紅のその一言を皮切りに、それぞれで勝手に話を始めた。サグメも緊張が解れたのか、気楽な様子で話していた…重く堅苦しい空気よりもこちらが幻想郷らしいと、レミリアは蓮子に対してサムズアップを送った。

 

「…仮面ライダー、桜刀」

 

そんな中、一人、妖夢は釈然としない様子であった。

 

「どうしたの?」

 

「…実は、幽々子様にこれを渡される時、『あなたは今日から仮面ライダー桜刀』…って、言ったんです。新聞を受け取る前です。それに外に世界にも詳しい方ではないし…」

 

「それは…変な話ね」

 

その言葉を受けた蓮子、そして横で聞いていたメリーも疑問を浮かべた顔であった。しかし考えても分かるわけもないので、不思議だね、で話を終えた。

 

「皆さん、お揃いみたいですね」

 

そんな中、扉を開けてさとりが入った。辺りを見渡して頷いたのちサグメの方を見て、手招く動作をとった。

 

「少し…来てもらっていいですか?…他にも何人か、戦える方を」

 

その誘いに対し、好奇心混じりに全員が立ってそのあとを追う。さとりは驚きつつもなんだか嬉しく思い、心強げに案内した。

 

「…急に目を覚まさなくなったんです」

 

さとりは寝室の一つへと全員を案内した。ベッドに眠るこいしを見て、薄暗い表情でそう呟く。サグメはそんなこいしの額に触れ小さな声でポツポツと呟いた

 

「夢の世界…か」

 

さとりはサグメのその声の方を見ると、お願いしますと呟き、頷いた。

 

「原因は夢にあるはずだ。…夢の中に向かう。伊吹とへカーティア、それと…妹紅。来てくれ」

 

「夢に…。そんなことできるの?」

 

「ああ、夢の管理者から教わった。簡易的なやつだがな」

 

レミリアの疑問に対して簡潔に答えると、魔法陣を展開し、祈るような姿勢をとった。

 

「この中に入るんだ。おそらく夢の中で何かを仕掛けてる奴がいる。戦う準備はしておけ」

 

サグメの招くのに従い、三人は魔法陣へと踏み込んだ。瞬間、三人は倒れこむように眠り、夢の世界へと誘われた。

 

「…ここが、夢の中」

 

起き上がった妹紅が辺りを見渡しつつ呟いた。側ではへカーティアと萃香もキョロキョロとしており、夢の中へと侵入したのだと実感した。

 

「術者は入ってこれないのねぇ」

 

へカーティアは背を伸ばしつつそんなことを言った。そうして萃香と妹紅の方を見たのち、頷いた。

 

「原因を手分けして探しましょう。あんな言い方をしたからにはそれこそ夢魔とかが居るはずよ」

 

それに対し二人は頷いて肯定の意思を見せ、三手に分かれての探索を開始した。

 

「しかし…夢ってのはもっと騒がしくてはちゃめちゃだと思ってたんだけどなぁ。無意識ってのはこういうことなんかね」

 

人がいない旧都を駆け回りながら妹紅はそんなことを呟いた。普段見る旧都とのあまりのギャップに奇妙な感覚を覚える。そしてうっすらと不気味さも。

 

「待てっ!」

 

そんな中、彼女は一つの影を目撃した。路地裏を走り抜けたそいつをしっかりと視認はできなかったが、萃香とへカーティアではないのはすぐに分かった。すぐさま駆け出し、そのあとを追った。

 

「すばしっこいな…」

 

妹紅の追跡に気づいたのか、謎の影も逃げるような急ぎ足で路地裏へ消えていく。あいにくフェザーチェサーはいないので、走る他ない。ボルコネクターとバーンスマッシャーを用意し、さらに足を早めた。

 

「もう逃げられないな」

 

逃げた何者かを行き止まりまで追い詰め、その姿を見据えた。

妹紅はサグメから聞いていたその姿と脳内で照らし合わせ、そいつが他でもなくドレミースイートであることに気づいた。

 

「夢の…管理者だっけ」

 

「一応そういう者ですね」

 

「お前も探してるのか?こいしを眠らせたままにした張本人を」

 

「さぁ…どうでしょうかね?しかしまぁ、あなたを始末しなきゃいけないって点では…敵ではありますが。眠妖!」

 

『X!』

『tipper…change』

 

帽子の中からエックスゴースターを取り出し、USBを挿入した。身構える妹紅をよそに、銃口を右下に向けて発射。

その姿を鎧の怪人、ズェッケロティパーへと変えた。

 

『ignition』

 

「あんたもそういう感じか…変身!」

 

『burn up complete!phoenix blaze!』

 

対し妹紅もフェネクスとなり、ズェッケロティパーへと向かった。

 

「くらえっ!」

 

「くらうわけないでしょう」

 

しかし飛びかかりつつ放つパンチは軽くかわされ、続けて繰り出すキックもチョップも当たらず。しかしズェッケロティパーの重い頭突きは正面から叩き込まれる。怯んだところに間髪入れず銃撃を飛ばす。どの怪人のものより高圧で高温で、まるでパンチを食らったかのような動きでぶっ飛ばされた。

 

「こんなんじゃフェザーチェイサーとの合体形態も大したことなさそうですねぇ」

 

 

さらに蹴り込みを叩きつけられ、長屋を二つ突っ切って大通りへ。ボロボロの身を庇いつつ起き上がるが、すでに疲弊しきっており、これから勝てる見込みなどありはしなかった。

 

「お前かあああああ!」

 

「見つけたわよんッ!」

 

そんな中、酔鬼とヘルゴットが助太刀に。しかし同時に繰り出した飛び蹴りは軽く防がれ、思い切り弾かれるだけ。二人の着地を狙った射撃を喰らい、軽く跳ね飛ばされるのであった。

 

「…まーだまだですねぇ」

 

立ち上がろうとするヘルゴットと酔鬼に対し、屈んで目線を合わせつつそう言い放つ。酔鬼は立ち上がって殴りかかろうとするが、肘を叩きつけられ、さらに膝蹴りをねじ込まれる。再び倒れこむような姿勢に。それは見てズェッケロティパーは背を向けた。

 

「このまま仕末しちゃっても困りますし。とりあえず…こいつの相手でもしててくださいな」

 

そうしてエックスゴースターを何やらいじったのち、正面へ発射した。紫の塊と煙が飛び出て変形したかと思うと、真っ黒な目の妹紅へと姿を変えた。

 

「任せましたよ」

 

 

そう一言残すと、空間に穴を開けてその中へ飛び込んだ。その穴が消滅したと同時に、ドレミーが生み出した偽物、シャドー妹紅が三人の元へ近づいた。

 

「ライダーは始末する。悪く思わないでよね、本物さん」

 

妹紅の声でスラスラとそんなことをつぶやくと、ポケットの中からバーンスマッシャーを取り出した。

 

「変身…」

 

ボルコネクターを装備し、グリップを握りこんだのち変身シークエンス完了。中から真っ黒な目のフェネクスが現れた。立て続けに五回バーンスマッシャーを握り、フェニックスフォームへ。空間から現れた紫の塊がフェザーチェイサーになり、変形してシャドーフェネクスの背に合体した。

 

「死ねっ!」

 

フェネクスへハイキックを浴びせ、さらに回し蹴り。自分の強化フォームに対応などできるわけもなく、なすすべもなく変身解除に追い込まれた。

 

「やあああ!」

 

ヘルゴットが鎖を伸ばしその足を捕まえようとするが、その素早さゆえに捉えきれない。さらにフェザーシューターが突き刺さり、怯んだ一瞬にキックを叩きつけられる。

 

「どりゃああ!」

 

「無駄だよっ!」

 

酔鬼の投げつけた岩もチェイスブラスターによって粉々にされ、続けてフェザーシューターの弾幕を舞わせるのであった。

 

「くっ…」

 

膝をつく二人の元に、拳を構え、シャドーフェネクスが迫る。そしてとどめを刺そうとしたそのとき、抱きつくような姿勢で妹紅がシャドーフェネクスを拘束した。

 

「離せっ!」

 

「いまだっ!別のフォームとかあるんだろっ!」

 

そう叫びつつ、自ら炎上。抵抗するシャドーフェネクスをしっかりと掴んだ。

 

「助かるわっ!」

『Set!Alien power!』

 

「ありがたいよ!」

『set confirmed』

 

シャドーフェネクスが動き回っても全く離さず、ついには自爆。シャドーフェネクスが膝をつき、よろよろと立ち上がった。そのとき、すでに二人はフォームチェンジの準備を終えていた。かたや赤い石をベルトにセットし、かたやベルトに酒を注ぎ込む。

 

「異界の力…味わうといいわ!」

 

「さあ、暴れますかね!」

『confirmed change standby……3……2……1』

 

それぞれ身構え、ボタンを押す。レバーを引く。赤い球体がヘルゴットに合体し、酒が酔鬼の鎧を形作る。

 

『Perfect!HellGod Alien!』

 

『formname is 乱鬼!GOGOGO!』

 

ヘルゴットには赤い鎧が足され、異界のへカーティアを思い起こさせる姿のエリエンフォームへ。

酔鬼には左半身に赤い差し色が入り、左手が強化。反り返る一本角の乱鬼へ。

 

赤い女神と赤い鬼がそれぞれ巨大な斧と太刀を構え、シャドーフェネクスへと駆け寄った。

 

「色が変わったところで…無駄だね!」

 

そう叫びブースターで加速して接近するシャドーフェネクスに対し、酔鬼は2mを超える乱喰刃を叩きつけた。怯んだそこへ、ヘルゴットは斧をぶつける。さらに吹っ飛ばされ、今度は警戒態勢をとった。

 

「あんま見くびるべきじゃなかったかな…」

 

そうしてチェイスブラスターを向け、熱線を放射。あたりの長屋をぶっ飛ばしつつ、じわじわと酔鬼へ向かった。

 

「危ないな!」

 

それを上手く潜り抜けて避けると、再びシャドーフェネクスへ接近。左の拳を叩き込んだ。

 

「おごっ!」

 

両腕でガードするも、それでさえ激痛。腕を抑えて屈んだところに、ヘルゴットの蹴り上げが入った。

 

「でやあ!」

 

さらに落下を狙って斧を振り落とし、フェザーチェイサーを真っ二つに。シャドーフェネクスが立ち尽くすその一瞬に、二人は立て続けてパンチを叩きつけた。

 

「うぐっ…熱い…体がっ!」

 

「オーバーヒートか…いくら体をコピーしたと言っても…私の『慣れ』まではコピーできなかったってわけか」

 

突然苦しむシャドーフェネクスに対し、妹紅は一人納得する。屈むそいつへ蹴りをぶつけ、怯ませた。

 

「くそっ…一旦夢の外へっ!」

 

彼女はライダー達に背を向けると、欠けた羽を炎の羽で補い、ふらふらと空へ飛んだ。

しかしそれを許すライダーではない。ヘルゴットは腕から鎖を伸ばし、その足を捕捉。引き寄せつつ、側面のボタンを押した。

 

『Invocation Deathblow!』

 

右拳を構え、一気に引き寄せる。対し酔鬼も、乱喰刃を引きずりつつ駆け出した。

 

「ヘルスブレイクッ!」

 

そしてその顔にパンチをたたき込む!ぶっ飛ばされたその一瞬、酔鬼は切り上げを繰り出し、シャドーフェネクスを真っ二つに。空中で爆音が響いたかと思うと、あたりに紫の液体が飛び散った。

 

「…ったく、面倒な敵もいてくれたもんね」

 

あたりに敵がいないことを確認し、一行は変身を解いた。そしてへカーティアは頭をかきむしりながらため息を吐き出す。月の要人が関わっているというのは嘘ではないらしい。改めてその事実を認識し、へカーティアは今後の苦戦を想像した。

 

「…終わったか」

 

瞬間、視界は無人の旧都からこいしの寝室へ。すでに他の少女たちは帰るなり別室に行くなりしており、残っていたのはこいしを見守る姉と、帰った三人とサグメだけであった。

 

「黒幕っぽいのは逃した。…ドレミーだったわ」

 

へカーティアがポツポツとそう告げたのに対し、サグメはショックで目を見開き、受け入れきれない様子であった。

 

「…そうか」

 

唾を飲み込みつつ、表情をかげらせて部屋を去る背を、妹紅は心配げに見ていた。

 

「…んん、お姉ちゃん?…それに、えっと、妹紅」

 

そんな時、こいしは目を覚まして辺りを見渡した。

いつのまにかその手に握っていた青緑のクリスタルと、謎の機械に疑問を抱きつつも、ひとまず起き上がって広間へと向かった。

 

to be continued…




「やだ…やだっ!来ないでっ!来ないでっ!」

シャドーはトラウマを抉る。

次回、「駆動の摩天楼 〜 Toxic Mind」


皆さん御機嫌よう。東方曲では実は廃獄ララバイが一番好きなサードニクスです。2位は砕月。ZUN曲で2位なら霊地の太陽信仰かな。お前地霊殿好きだな。
今回はどどんと強キャラと伏線を叩き出した回です。これからヤベーのが出るぜっていう感じで。まだ11話やぞと言えなくもないけど、言い換えればだいたい4分の1。結構進んだねぇ。こっからもショッキングな展開が割と出ると思うからお覚悟を。
次回もタイトルとtoxicってのを見ればわかると思いますが。アレな回です。

で、予約した方!早めの投稿をお願いします。多少遅れるとはいえ、もう15話も近づいてきております。ストーリーのギチギチぶりの関係でそれ以降に頂いたフォームはお受付は難しいのです。
つまり、最終フォームのないライダーとして出ますし、その分出番は減ります。ただし、「いつ頃完成予定」とか、「最終フォームはどうしても作りたくない」とか、「思いつかないからあんたが考えろ」と言う場合はそう言ってください。それを前提としてストーリーを組ませていただきます。



みんなの!変身ポーズコーナー!
今回はワードレス!

まず左手にワードレッサーを装備します。で、マコト兄ちゃんっぽくコトダーマを右手に持って、そして挿入。
『コトダーマ!◯!』の音声とともにゆっくり両手を若干クロスしつつ前に伸ばします。
そして右手をサムズアップにしたのち、180度回してバッドサインに。右手でワードレッサーのレバーを引き、ゆっくりと手を広げて変身完了です。


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第12話 駆動の摩天楼 〜 Toxic Mind

もう1クール終わっちゃったよ。
さて、前回の11話は!
ストームスネイク、八坂神奈子。友人の諏訪子さえ顧みない冷酷な彼女の攻撃に、ガイアは苦しんでいた。当然勝利などできず…。
深夜。ひと作業終えた菫子とともに、居酒屋に行く萃香と蓮子。先客のヘカーティアと魔理沙とともに、宴会…かと思えば、割り込むようにブラックキャッツが現れる。酔鬼が立ち向かうが、いささか押されてしまう。ジェヴォーダンがピンチから酔鬼を救出し、さらにヘカーティアに彼女用の変身アイテムを渡す。新たな仮面ライダー、ヘルゴットの誕生である。だが、第三者の手によって、ブラックキャッツへのトドメは逃してしまう。
翌朝、地底にいるライダー達をかき集めてサグメは告げた。「この事件には月の要人が関わっている」。動きやすくなることこそサグメが月を裏切った理由だった。そのご、レミリアの提案と蓮子の提案により、『仮面ライダー』と言う呼び名が彼女達の変身後の姿に付くこととなった。
そんななか、さとりから助けを求める声が。こいしの目が覚めなくなったという。サグメは夢の中に原因があると考え、ヘカーティア、萃香、妹紅らを彼女の夢の世界へ送った。そこにいたのは、なんとドレミー。しかし怪人となった彼女に誰も敵わない。始末しちゃっては困ると言ったかと思えば、夢塊で妹紅の偽物を作り、けしかけた。早々に倒される妹紅だが、彼女が稼いで時間で酔鬼とヘルゴットが別形態へ。偽物であるシャドーフェネクスを撃破した。
目を覚ましたこいし。彼女の手には、不思議な石が握られていた…。
・仮面ライダーヘルゴット バランスフォーム
・仮面ライダーヘルゴット エリエンフォーム
・仮面ライダー酔鬼 乱鬼
・ズェッケロティパー


「なんなのよっ!」

 

とんでもない轟音でへカーティアは目を覚ました。時間は朝5時。まだ眠いというのに。彼女は不平を言いつつも、すぐさま準備を終え、外へと駆け出した。爆音がかき鳴らされるたびに地霊殿中のステンドグラスは揺れ、いまにも割れるのではという心配さえ起こさせる。

 

「うるさいな…」

 

同時にサグメも飛び出し、玄関のドアを開けた。同時に轟音と閃光が飛び込む。爆風こそないものの、目を背けるほど大きな爆発に、人々は逃げ惑っていた。

 

「行くぞ!」

 

「ええ」

 

サグメはすぐさまコードランナーに乗り、発進。へカーティアもヘルドライバーよりバイク『マシンラピス』を出現させ、そのあとを追った。

 

『蓮子、どうしましょう…』

 

「うーん…とりあえずあいつを倒すしかないかなあ」

 

爆破を前に逃げ惑うのはライダーも同じ。ヒール、酔鬼、そしてメディスの四人も爆発を避けつつ戸惑っているようであった。

 

「どうしたんだお前たち」

 

「私とメリーが地上に帰るって言ったら萃香が付き添いに来てくれてね。メディスンとはたまたま旧都で会ったの」

 

サグメはそうかと頷き、ワードレッサーを装着し、コトダーマを用意した。同時にへカーティアもヘルドライバーを装備し、変身の準備を終える。

 

『コトダーマ!観!』

 

「変身……!」

『ブレイクオープン!ドレスアップ!』

「変身」

 

サグメがバッドサインを作ってレバーを引いたのち、へカーティアもバックルのボタンをぶっ叩いた。緑の粒子がサグメを覆い、ワードレスに変えるその横で、黒い塊がへカーティアを包んでヘルゴットへと変えた。

 

『メイクアナライズ!ワードレス!』

 

『Perfect!HellGod Balance!』

 

「あいつを倒せばいいのよね?」

 

そう言ってヘルゴットはマシンラピスを駆り、遠くへと離れていく黒い影を追う。そのあとをコードランナーとイシグマスラッシャーが追った。

 

「行くわよメリー!」『了解!』

 

「トライサイカー!」

 

ヒールとメディスも追うべくバイクを用意した。しかしその瞬間、建物が崩れ落ち、瓦礫が三人の行く手を阻む。一瞬防御態勢を取ったのち、一歩下がって身構えた。

 

「蓮子さん…メリーさん…あとメディスンさん…ですね」

 

その瓦礫を踏み倒し現れた人物に三人は目を見開いて驚愕した。

何せ、聖白蓮その人であったから。

しかしその体は半分溶けかかり、目は真っ黒。顔はどうにか人間としての美形の様相を保っているが、ドロドロと血なのか溶けた肉なのかわからないものをこぼしている。さらにはうっすらと骨さえ見える。

 

『う…ううっ!おえっ!』

 

その姿に、メリーの脳内で聖の最後がフラッシュバックする。その見た目ゆえに妹紅に化けたとかいう怪物であることはすぐにわかった。それでもあまりにもグロテスクで、あまりにもショッキングであった。

今にでも胃の中身をぶちまけそうであったが、あいにく今は粒子化しベルトに収まっている状態。声でえづくだけであった。

 

「ちょっと、メリー!」

『やだ…やだっ!来ないでっ!来ないでっ!』

 

「ごめんなさい…あなたを守れなくて…今…楽に……」

 

そんな中、身を引きずりながらシャドー聖は二ライダーに接近した。その手にはいつの間にやらメディットブレスが握られており、ゆっくりと左腕に装着すると、ブラッドリリィカプセルをセットした。

 

「変身」

 

『GRADE UP…… FAZE1』

 

そして試験管パーツを折りたたみ、変身を完了した。真っ黒な複眼と背丈、そしてメディットブレスの位置でいとも簡単に見分けがつく。

だが、それが問題なのだ。背が小さくなり、ブレスの位置も違うがゆえにメリーはメディスンの変身する姿には思うところは少なかった。

だが、目の前でうなだれ気味に立ちはだかるメディスはあんまりにも聖のものそのままで、あの時の風景がより鮮明に想起される。

 

『うわあああああああ!!』

 

「落ち着いてメリー!」

 

ヒールの頭の中にメリーの絶叫がこだまする。さらには夢を見せてくれる時のように、蓮子にもその風景と恐怖がなだれ込む。

 

「ううっ…」

 

ヒールはそのまま膝をつき、頭を抑えてしまった。メディスはその様子を一瞥すると、もはや自分で倒す他ないと決断した。

 

「そんなボロボロで私に勝てるかしら?私はこの毒と相性がいいのよ」

 

メディスンは小さな人形を指の上に乗せて仮面の中で笑った。それに対し、シャドーメディスは「それはそれは」とむしろどこか嬉しそうに答えるのであった。正直不気味で、メディスンは一転して顔をしかめた。

 

「救って…あげますから…!」

 

焼けた喉から出した掠れた声と共にボロボロの腕を振り上げ、拳を突き出した。メディスも対抗し、拳を放つ。

結論を言えば、押し負けたのはメディスンであった。

 

「いったい……!」

 

衝撃にビリビリする腕を抑えながら、メディスは後ずさった。しかしシャドーメディスも無事ではないらしく、右前腕が真ん中から折れ曲がっていた。

 

「あら…」

 

それを軽い調子で直すと、辺りを見回したのち、ズルズル体を引きずって姿を消した。

 

「くっ…」

 

「うっ…ううっ…おええええええ!げほっ!うぇええ!」

 

ヒールの変身が解けたその瞬間、メリーは膝をついて四つん這いの姿勢に。どうにか駆け出して路地裏に行くと、飲食店のそばの大きなゴミ箱に胃の中身を全てぶちまけた。

 

「…相当、辛かったのね」

 

蓮子は自分の相棒がショッキングなものに弱いのは知っていた。背中をさすりながら墓場探索の際に現れたゾンビの幻に対する反応を思い出した。ここまでではないにしろ、気持ち悪そうにしていて、守らなければと、そう思った。

彼女はその思いを一層強くし、メリーを弱く抱きしめた。

 

 

 

 

 

 

 

「あんたたちもしつこいねー!」

 

その少し前、黒い影を追った三人はゆっくりとそいつに接近していた。予想通りそいつは霊烏路空で、制御棒を砲身のようにエネルギー弾をばらまいているのであった。すでに住民の避難しきった無人の旧都に対し、破壊の限りを尽くしているのだ。

 

「ま、いいか、ここで始末しちゃお!」

 

ワードレスのシューターフィールをくらい、うざったそうに振る舞ったかと思うと、そんなことを言って地上に着地した。

 

『X!』

 

「醒妖!」

 

『crow…change』

 

そして制御棒を外し、エックスゴースターを用意したかと思うと、USBを挿入し、姿を変えた。メタリックな黒と、全身から吹き出る水色の炎が目を引くアトムアヴェムである。

 

「「さぁ」」

「地獄を見せてあげるわ」

「宴の始まりだ!」

 

「運命だと思って、諦めるんだな…!」

 

対峙する三人もセリフをぶつけ、構えをとった。対しアトムアヴェムは制御棒をエックスゴースターと合体させ、アトムゴースターへと。ライフルのような形で構えた。

 

「くらえ!」

 

そしてエネルギー弾を放出した。とっさに危険と判断し、ヘルゴットは素早くそれを飛び避ける。

そして50mほど遠くの家に着弾し、爆風を巻き起こした。その衝撃がヘルゴットの腕の鎖を乱雑に揺らした。

あれをくらえばどうなるか。食らった自分を想像し、三人は青ざめた。

 

「あまり近づいて攻めるわけにもいかんか」

 

『シューターフィール!』『コトダーマ!戦!』『ブレイクオープン!ドレスアップ!』

 

『メイクバトル!ワードレス!』

 

銃撃戦を仕掛けるべく、ワードレッサーを銃撃モードに切り替え、バトルワードレスへ。紫のエネルギー弾を連続で放射した。

 

「おっと、いてっ」

 

何発かもらって痛がりつつも決定打にはならず。しかし隙が生まれたのもまた事実である。その背中へと酔鬼が拳をぶつけた。

 

「あいてっ!」

 

軽く怯み、転んでしまう。しかしすぐさま体勢を取り直し、酔鬼に向かって熱弾を放った。かといって素直にくらう酔鬼でもない。すんでで回避して、殴りかかった。

 

「…そんなら!」

 

放った拳を、アトムアヴェムは胸であえて受け止める。そして、苦痛で顔を歪めつつ、後ろに向かってアトムゴースターを振るった。

 

「おごっ!」

 

その銃身が後ろから接近していたヘルゴットにジャストヒット。床に叩きつけられた。さらに酔鬼の腕を掴むと、振り向く勢いのまま背負い投げ。ヘルゴットの上に叩きつけた。

 

「後ろからの接近…気づかれてた…のか」

 

「あいにくレーダー機能があるんでね!」

 

そう言って真上へと飛び上がると、銃を構え、USBを一度抜いた。

 

『XX!』

 

「ぶっ飛べ!」

 

そして再び挿し直して必殺を発動し、真下へと向けた。酔鬼たちは青ざめ、防御体制を取った。ワードレスは焦って撃ち落そうとした。通常攻撃であれなら必殺ならどうなるのだ。そう、三人は焦らずにいられなかった。

 

『…good bye!』

 

しかし焦る以上のことはできず。一行は目をつぶって屈むのであった。

ビームが地上に着弾し、その一瞬後、爆炎が円柱のように昇った。あたり15mほどを焼き尽くし、爆風がその何倍もの距離を伝う。羽型の装飾を揺らしながら、アトムアヴェムはマスクの中で不適に微笑んだ。

 

「三人、倒しちゃった!」

 

そう言って飛び去ったのち煙が次第に晴れていく。その中で三人は健在で、ただただ一人が爆炎をその身に受けていた。

 

「私があと一秒…遅れてたら…全滅だったな…」

 

焼けてもはや誰なのかわからないその人を、三人は声で妹紅だと判断した。なら良かったと安堵のため息をつくと、三人は変身を解いた。

 

「あのバクほどじゃないけど強いわね…」

 

「ドレミーは…そんなに強かったのか?」

 

サグメの問いに対し、へカーティアは無言の頷きで答えた。対しサグメはそうかと弱く返すのであった。

 

 

 

 

 

「……ううっ」

 

「あの子は来た時からあの調子なのかしら?」

 

蓮子とメリー、そしてメディスンは勇儀宅へと来ていた。先ほどの戦闘と溢れかえる記憶のショックでうなだれるメリーと、その背中をさすりながら優しく話しかける蓮子を見て、もう一人の来客、茨木華扇は心配げな様子を見せていた。

 

「さっきちょっと強烈なものを見ちゃってね。あれで弱るとは、人って貧弱ねぇ」

 

「でも人じゃないとできないことも多いんだぞ?」

 

メリーの背へ吐き捨てるメディスンに対して勇儀はそんなフォローを差し出した。

それに対して華扇は呆れ気味にため息をついた。

 

「けれど人間が肉体においては弱いのは事実よ。…こんな瘴気に満ちたところにいれば気は滅入る一方です。早く地上に帰した方がいいわよ」

 

「そんなもんかねぇ」

 

「帰るなら私たちもご一緒させてくれるかしら?」

 

勇儀が帰すべく準備を始めたその時、入り口のあたりから声がした。振り向いた先にはレミリアが偉そうに、そして妖夢が申し訳なさそうに立っていた。

 

「…そうだな。目的も達成したろ?」

 

勇儀のその問いに、メリーは蓮子を一瞥したのち静かに頷いた。

 

「よし、あんたらのバイクなら外に置いてる。運転はできるか?」

 

「はい…」

 

続いた問いに対し、メリーは再び小さな頷きで返答した。そしてゆったりと立ち上がると、フラフラと外へ向かった。

 

「「お世話になりました」」

 

二人は同時に礼をすると、勇儀宅を出て、チェイスナイターへ乗り込んだ。

 

「あっちの出口なら壁を登ったりしなくてもいける。坂は多いけどバイクならいけるだろ?」

 

勇儀の指差した方に続く道を見据え、蓮子とメリーはチェイスナイターをそちらに向けた。それに続いてレミリアと妖夢も、それを追った。

 

「結局オイラたちって何しに来たんだ?」

 

「さあ?遊びにきたんじゃない?」

 

レミリアはそんなことを言って笑うと、後ろ手で勇儀に手を振って消えていった。

 

「…あなたはまだここにいるの?」

 

「うん、奴らは人形たちを苦しめかねないからね。地底に何かあるかもしれないうちは居るわよ」

 

そう言ってメディスンはメディットブレスを強く握った。

覚悟を決めた様子であったが、華扇はその瞳に迷いを見つけた気がした。

 

「おーい、勇儀ー!風呂行こうぜフロー!朝風呂だー!」

 

そんな中、バイクのブレーキ音が聞こえ、家の中にけたたましく高い声が響き渡る。聞き慣れた萃香の声に、華扇は立ち去ろうとした。しかしその腕を勇儀は掴み、逃げることないだろと言い放った。

 

「おお、華扇も来てんのかい。そんなら三人でお風呂行こうよ。地霊殿で温泉入れんだとさ!」

 

「…あなたたちと?」

 

「別にいいだろ?」

 

「ま、いいでしょう。行きますよ。ちょっと疲れてたしね」

 

華扇は諦めたように笑うと一転、肩を回して腕を伸ばした。

 

「メディスンも来ないかい?」

 

「いいじゃない、行くわ」

 

メディスンも少しウキウキとした様子で立ち上がり、三人へと付いて行った。温泉というものを知らない彼女は純粋に興味もあるのである。

 

「そういえば萃香、あなた聖白蓮のことは聞いてるわよね」

 

「聞いてるも何も、遠くから見てたさ。それがどうした?」

 

行きの最中、華扇の出した話題に、メディスンと萃香は暗い表情を見せた。華扇も話すのを躊躇うような様を見せたが、ゆっくりと口を開いた。

 

「最後の言葉、『にいさん』だったみたいね」

 

「そんなこと言ってたわね」

 

「…彼女に、兄なんて居ないのよ」

 

華扇の放ったその一言に、三人の顔は疑惑の色へと変化した。

 

「にいさんと慕う人が居たのかしら?…でも、弟の命蓮や仲間たちよりも優先される人なのかしら?そんな人…」

 

「あんま悩んでも解決はしないよ。ほら、着いた。さ、暗いことは忘れて入るぞー!」

 

萃香がやかましく駆け出したのに合わせ、他三人も暗い顔をやめ、まっすぐ温泉へと向かった。

 

「で、まさかあんたたちが居るとはねえ」

 

到着した温泉にはサグメと妹紅の先客がいた。すでに二人は湯船に浸かり、リラックスしきっているようであった。

 

「ふうぅぅぅ…疲れが取れるなあ」

 

サグメはより一層リラックスし、大きく息を吐き出した。そんな様子を、勇儀たちは湯を浴びながら微笑ましげに眺めているのだった。

 

「でも…今襲われたらどうするのよ」

 

「抜かりはない」

 

メディスンの放った疑問に対し、サグメは左手を掲げることで答えた。驚愕しつつ若干引く面々に対し、続けて胸の間からコトダーマを取り出して見せつけた。

 

「隠し場所考えろよ…」

 

「他にどこに隠せる。あるものは活かさなければな」

 

「胸がない人が聞いたら憤死ものね。ほら、タオルで隠すとかあるじゃない」

 

「それもそうだな」

 

盲点だったとでもいうような様子で返すと、続けてバトルコトダーマも取り出した。二つも隠せんのかよという面々の驚きの視線に、サグメはドヤ顔で答えるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でやっ!たっ!はっ!」

 

「あんまり根を詰めないでくださいねー!」

 

朝7時。外の世界ではすでに初夏の凶悪な日光がきらめいており、外にいる者はみな軽く汗を流していた。

命蓮寺で木刀を振るう早苗も例外ではなく、運動の分むしろ汗は増えていた。

そんな様子を、天子と星は縁側で心配げに眺めていた。

 

「私が…もっと強ければ…!」

 

「天子さんも気負い過ぎないでください。あなたがそう思えば思うほど早苗さんも気負ってしまうんですから」

 

天子も一緒に稽古をしたいところだが、ストームスネイクに手酷くやられたのは先日の深夜のことである。いまだ体は痛み、動き回ることを許してくれない。

心の奥底で不甲斐なさと戦う天子を見て、星はなおさら自分の無力を悔やんだ。

 

「…あんたらは無力なんかじゃないよ」

 

「諏訪子…」

 

奥の布団で寝たまま、諏訪子は口を開いた。傷が塞がりきっていないのだから、あまり喋るなと星は言ったが、それでも言わせてくれと、力強く答えた。

 

「とくにあんたがいなきゃ私も早苗も今頃死んでたよ。ありがとう、天子。あんたなら…いや、あんたたちなら倒せるよ。あいつをね。だから、お願い…神奈子を……げほっ、ごほっ!!」

 

一通り語り終えたのち、天子の手をしっかりと握ったかと思うと、疲れ切ったのか再び眠り込んでしまった。しかし、その目に輝くものを見た気がして、天子は改めて覚悟を固めた。

 

「…着いたわよ」

 

そんな中、バイクの音がする寺の前で止まった。誰が来たのかと、天子と星が見れば、そこにはチェイスナイターが止まっているではないか。そばに停まるオウカオーのことは知らなかったが、妖夢が乗っていたので特に何かを疑うことはなく近づいた。

 

「帰ってきたのね…地底から!」

 

「ただいま、天子」

 

「別に私の住処じゃないんだけどね」

 

天子は苦笑いで答えると、三人を奥へと案内した。謙遜こそしていたが、やはり実家を行くかのような堂々とした闊歩を見せた。それに対し、蓮子とメリーはどこか頼もしいような感じであった。

 

 

 

「…そんなことが。大変だったわね」

 

三人は地底で起きたことをつらつらと語っていた。ブラックキャットに負けたこと、妹紅が新たな姿を手に入れたこと、妖夢も新たな姿を手に入れたこと。萃香とへカーティアが変身したこと。そして何より…。

 

「月の偉いのが一枚噛んでる…ねえ」

 

「うん、だからサグメさんが天子に感謝の言葉、述べてたよ」

 

「喜んでいいんだかなんだか」

 

妖夢の言葉に微妙な反応を示した。結果として味方だったとはいえ、彼女の中のサグメ像は輝夜たちを拉致して以降更新されていない。いまいち仲間として自身を褒める姿が浮かばなかった。

 

「うわあああああああ!!」

 

そんな中、強烈な悲鳴が寺全体にこだました。何事かと心配して声の元に向かったその時、彼女らの足元に、人が吹っ飛んできた。星はギョッとしつつも、すぐさま倒れる男性を抱え上げ、息のあることを確かめ、奥へと連れて行った。

 

「救って……あげ…ます…」

 

「白蓮っ…溶けて……」

 

「あいつは偽物よ、騙されないで」

 

目の前に現れたシャドー聖に戸惑う天子へとそう告げ、妖夢は戦闘態勢を取った。

 

「やだっ…おえっ……うえっ…やだ、やだああああああ!」

 

そんな中、メリーは絶叫を上げ、胃の内容物…と言ってももはや胃液だけだが…そいつを吐き出し、泣きながら後ずさって行った。そして立ち上がると、シャドー聖へ背を向け、駆け出した。

 

「メリーッ!待ちなさい!ちょっと!」

 

その背を蓮子が追う。シャドー聖はどんどんと遠くなっていくそのシルエットを見ていたかと思うと、ゆっくり振り向き、妖夢の方を見た。

 

「まずは…あなたを……」

 

「地底から追ってきたのね…!」

 

ぼたぼたと赤い何かをこぼしながらメディットブレスを装備し、ブラッドリリィカプセルをセットした。同時に体に走る赤いラインさえもはや痛ましさを感じないほどその姿は不気味で、天子でさえ眉をひきつらせるものであった。

 

『GRADE UP…… FAZE1』

 

シャドーメディスに変身したのに合わせ、天子はグランドライバーを用意した。しかし妖夢は怪我をしてるんでしょと天子を制し、オビドライバーを装備した。

 

『人か霊か?』

 

「あまり触れたくないわね…。なら!」

 

そうして楼観剣を構え、腰横に挿入した。半人が消え、半霊が人型になったかと思うと、その身に黒いスーツがまとわれる。

 

『変・身・承・知!レイノカタ!』

 

最後に陣羽織が装備され、レイノカタへの変身を終える。そして白楼剣を構え、シャドーメディスへと飛び出した。

 

「やあああ!」

 

「…あら」

 

桜刀が振るった刀をシャドーメディスが避ける。しかしその左腕にヒットし、綺麗にスパッと切れて地に落ちた。

しかしあまり意に介する様子はなく、拾い上げてくっつけた。

 

「バケモノね…」

 

「そうかも…しれません…」

 

そう言うと少し桜刀から距離を置き、手で何やら印を組んだ。

 

「ほら、救ってあげます……苦しまないで…」

 

「何をして…!?」

 

そして手を広げたその瞬間、桜刀の体が遠くへとぶっ飛ばされた。対しシャドーメディスも反動のせいか手がグニャリと曲がっていた。

 

「魔界の、対霊魔術か…」

 

彼女はそれを理解すると、仕方なさげに楼観剣を抜き、白楼剣に挿し替えた。

 

『変・身・承・知!ヒトノカタ!』

 

桜刀が姿を消したかと思うと、半人が現れ、スーツと装甲が装備された。

 

「でやああああああ!」

 

そして斬りかかる。その一閃は肩にしっかりと刺さるが、再び大きなダメージとはならず、毒をまとったパンチを叩き込まれる。

 

「うぐっ…」

 

音を立てて焼ける肌を抑えつつ、シャドーメディスから後ずさった。

 

「させませんよ…!」

 

そんな中、星が奥から機械を持ち出し、腰に装備した。

 

「これで…変身できるはず…!」

 

その『エイディングドライバー』を見つめたのち、腕に数珠風の腕輪『僧の腕輪』を巻いた。

 

「変身!」

 

そして、ドライバー上部のレバーを操作する。…だが、反応はない。何度倒しても逆に倒してもただエラー音声が鳴るのみ。

 

「なんで…何で動かないのっ!」

 

シャドーメディスが焦る星へと駆け出し、腕を振り上げた。

 

「何でっ!」

 

そして振り下ろさんと力をかけたその一瞬、オウカオーからまばゆい閃光が放たれた。

その場の全員が目をかばうほど閃光が収まった時、シャドーメディスは自分の腕が何者かに抑えられていることを認識した。

 

「私の…錫杖……ね」

 

自分の邪魔をする袈裟を着た女を怪訝に見つめると、体を引きずりつつ後ずさった。

 

西()()()()()を頼って正解だったわ。…ね、あなたもそう思うでしょう?偽物さん」

 

錫杖でシャドーメディスを殴る女の姿、一同は今度こそ目を見開いて驚愕した。

その少し高い背丈も、その白く繊細だが力強い肌も、その長く鮮やかな髪も、その身から放つ法力のオーラも、その美しい顔も、すべてに見覚えのある聖白蓮であったからだ。

 

「復活…したん……ですね……やっと、救われたのに……」

 

「死は救いであるが、終わりではない。ただ求むべきは、生きる道。ですよ」

 

得意げに笑うその姿に星はいつしか涙を流していた。そして手を差し出した彼女の意図を汲み取り、その手にエイディングドライバーと僧の腕輪を乗せた。

 

「復活の方法、何個か用意しておいたのがこんな形で役立つとは思わなかったですよ」

 

そう言ってドライバーと腕輪を巻くと、懐から巻物を取り出し、身を低く構えて両腕を向かって左側で構えるポーズを取り、エイディングドライバーに巻物を差し込んだ。

 

『南無三宝!』

 

「変身!」

 

そうして左手を広げつつレバーを倒した。その体をオーラが伝い、光を放った。

 

『heavy!光照らせ!その救い!輝く魔界の魂!』

 

神々しいBGMに乗せた変身音ののち、聖の身に黒いスーツと重々しいアーマーがまとわれた。

 

「見せてあげましょう…これが法の光!」

 

その名も、仮面ライダードグマ 僧術ヘビィフォルム。スカートのような巨大ブースターが唸り紫の目が煌めく戦士である。

 

「でやああああああ!」

 

その手に一輪のものを模した『クラウドリング』を握り、拳を振るった。

 

「おっと……」

 

かわそうとしたその一瞬、ドグマの右手にピンク色の雲が出現し、伸びたリーチで拳を腹に叩き込んだ。

 

「うぐっ…」

 

苦しむメディスに対し、さらに拳をぶつけ続けた。コンボのフィニッシュに繰り出したストレートで、かなりの距離を吹っ飛ばされ、石畳に落下跡をつけた。

 

「ちょっと、アンタがやられてどうすんのよ」

 

突如、木の陰からそんな声がした。振り向いた先には、青いバイザーの煌めく怪人がいた。そのシルエットは煙でぼやかしているが、黄色いボディが薄く見える。

 

「私のバイク、貸したげるからこれで逃げなさい」

 

そう言って女が投げたマシンが巨大化し、紺色と黄色のバイクに変化した。シャドーメディスは助かりますと答えると、それに乗って駆け出していった。

 

「待ちなさい!」

 

『light!』

 

そう叫ぶと、ホバーで追いながらバックルのレバーを逆方向に倒した。すると、アーマーがパージされ、変形合体ののち、バイク『マッハラギャテー』へと変わった。

すでに木陰の怪人は姿を消していた。

 

「逃がしませんよ!」

 

「私だけ…救われる訳には……」

 

すぐさま追いつき、シャドーメディスと並行状態に。そしてエイディングドライバーから三宝の巻物を抜くと、もう一度挿し直し、必殺技を発動した。

 

『波羅羯諦!』

 

そしてマッハラギャテーの上に立ち上がり、そこからシャドーメディスへ飛び蹴りを放った。

 

「ぐっ…」

 

防御態勢をとったのが仇となり、その腕のメディットブレスが粉々に。爆散したかと思うと、紫の液体となって消滅した。そしてシャドー聖はバイクもろとも脇の川へと落ちていったのであった。

 

「よし…」

 

そしてドグマはUターンし、命蓮寺へと帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…助かったわ…」

 

シャドー聖は土手から必死に這い上がった。零れ落ちる体液の中には川の水が紛れていた。

 

「本当に、助かったと思う?」

 

そんな中、頭上から声がかかった。身を引きずりながら立ち上がり、その声の主を見据えた。

それは、逃げたはずのメリーであった。目の前のグロテスクな怪物の姿を見ても、吐き出すどころか弱音を吐く様子もなくアイズバックルを装備して変身の準備をした。

 

「…あなたみたいに、苦しむ人を、二度と出さない!そう決めた。蓮子が背中を押してくれた…。だからもうあの光景は乗り越える。忘れはしない。でも、受け止めて、立ち向かう!蓮子と一緒なら…!」

 

『look the line…』

 

「私と一緒なら?」

「あなたと一緒なら…なんだってできる!空だって飛べる!…変身!」

 

蓮子の手を強く握り、しっかりとシャドー聖を見据えると、力強くアイズバックルのレバーを叩いた。

 

『we are dream night fantasy!』

 

蓮子が粒子化し、ベルトに格納されたと同時にメリーの姿は仮面ライダーへと変わった。

 

「まだ……」

 

直感的に勝てないと悟り、背を向けてズルズルと身を引きずって走り出した。

 

『kick eyes!』『dash eyes!』『illusion eyes!』

 

そんな背を見据え、無慈悲にアタックドロップをロードすると、シャドー聖へ駆け出していった。

 

「幻惑ッ!ライダアアアアアアアアア!!!」

 

そしてキックが背中に当たろうかというその直前!

 

「ストラアアアアアアイク!!」

 

シャドー聖の目の前に瞬間移動し、胸に飛び回し蹴りを叩き込んだ。

 

「うぐっ!ううう!」

 

苦しんだのち、ドロドロに溶け落ち、爆発した。あたりには紫の煙と液体が飛び散った。

 

「倒した…のね…」

 

変身を解いたと同時に倒れそうになったメリーを、蓮子は肩を組んで支えた。

 

「これからも支えてあげるわよ、メリー」

 

「頼んだわよ、蓮子」

 

二人は向かい合って微笑むと、命蓮寺へと足を進めた。

 

to be continued…




「粉々にしてあげるよっ!」

燃えよ核熱!

次回、「熱地の太陽信仰 〜 Nuclear Bomber!」

皆さん騙してごめんなさい。ひじりんの乳で圧死したいサードニクスです。
ひじりん復活します。はい。
でもね、見返してくだいよっ!
・一回変身にしてはやけに凝った変身ポーズ
・「生の執着はともかく、死そのものを恐れるなんて」つまり死ぬけど生には執着する=復活するつもり。
・冥界に行かず魔界に行った=復活する気マンマン
・「にいさん」の不自然さ。
っていう具合に伏線というか答えがあるんですよっ!
それともオウカオーのくだりでバレてましたかね?とにかくひじりんはハナから生き返る予定でした。
そんな時にどどんとシャドーメディスの設定が送られてきてっ!
ビビっときましたよね。気づいたらプロットできてましたよ。
そういうわけでドグマをよろしくです。
シートは募集の活動報告に追加します。
しかし本作品ゲロシーン多いですね。ごめんなさいね。強烈な不快感の表現に便利なんですよ。
それはそうとプロットのストックがもう13話と14話だけ…。さっさと書かねば。
あ、来週多分更新ないです。許して。

で、みんなの変身ポーズコーナー!
今回は萃香&へカーティア!
まずは酔鬼。
サカズキドライバーを装備します。で、酒鬼以外のフォームならここでマシュヒョウタンをセットします。
で、このままポーズをつけずにレバーを引きます。
『error There is no alcohol』もしくは『set confirmed』が鳴ります。
続けて酒鬼なら二回、他なら一回、これまたポーズなしでレバーを引きます。
で、『3……2……1』のあと、クローズみたいな感じで、顔前で右拳を左手で掴むポーズ。そのあと手を広げつつレバーを引き、変身終了です。

続いてヘルゴット。死ぬほど単純。
まず、ストーンをセットします。バランスならなし。
で、バックル前面の向かって左……バグルドライバーならAボタンがある位置のボタンを押します。(ボタンの位置は追加設定なんで、問題ありゃ言ってください)。バランスなら一回、他なら二回です。
続いてバックルの向かって左側面……ビルドドライバーならレバーの付け根がある位置のボタンをぶっ叩くような動作で激しく押します。お子さんが真似するからDXのベルトは頑丈に作らなきゃね。で、変身完了。
上記シークエンス間、一切ポーズなし。仕方ないでしょ。そう書いてあるんだから。クールでカッコいい変身だと思います。


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第13話 熱地の太陽信仰 〜 Nuclear Bomber!

今回の前に桜刀外伝『離れた花弁を掴んで』が入ります。読んでなくても問題はありませんが、時系列で読みたい方はどうぞ。
というわけで、前回!
地底に突如爆発が。ヒール、メディス、酔鬼、ヘルゴット、ワードレスが飛び出るが、ヒールとメディスが足止めを喰らう。そこに現れたのは、なんと身体中が溶けた聖白蓮であった。シャドーのようだ。メリーのトラウマがえぐられて動けないヒールを前に、メディスvsシャドーメディスへ。互角で逃げられてしまう。
爆発の正体は怪人となったお空によるもの。ライダーの攻撃も虚しく、妹紅にかばわれた上逃げられてしまう。
メリーの状態を見て、2人は地上へ戻ることに。レミリアと妖夢も一緒に帰っていく。それを見送ったのち、鬼3人とメディスは朝風呂のため銭湯へ。サグメ、妹紅の先客とともに堪能した。
守矢神社。天子たちを励ます諏訪子のもとへ、地底を発ったライダーたちが到着した。そして事情を説明していた頃に、シャドー白蓮が現れる。逃げ出すメリーと追う蓮子。戦うことになった妖夢だが、押されていく。
そこに助けを出したのは、復活した聖白蓮だった。星が使えなかったアイテムを使い、変身。撃破することに成功した。
実際は、川を流れて逃げていた。だがもはや体力など残っておらず、恐怖を乗り越えたメリーによるヒールの一撃で、完全に撃破されたのであった。
・仮面ライダードグマ 僧術
・アトムアヴェム


「いやぁー、リラックスできたな」

 

「温泉ってあんな感じなのね。普通にお風呂に入るのとは違って不思議な気分ね」

 

地霊殿にて、少女たちは絶賛リラックス中であった。素早く着替えると、マッサージマシーンやら飲み物やらでこれまた好き勝手に楽しみ始めた。

 

「これっ…いいな。立てなくなりそうだ。んっふうううぅぅ。いいな、これ」

 

サグメはその筆頭であり、柄にもなくマッサージマシーンに居座っていた。しかし左腕にはワードレッサーが、ポケットにはコトダーマがあり、本当に気を抜いていられるわけではないようであった。

 

「そうだねぇ…」

 

そんなサグメの様子を見て、萃香は心の底から楽しめない気がし、一刻も早く安全な状況にしなければと決意を今一度胸に叩き込んだ。

 

「このまま去るのもアレだしねえ。一旦さとりの奴にも挨拶をしとこうかい」

 

勇儀のその一言に全員が賛同し、メインのロビーからさとりの部屋へと向かった。

 

「あれ?さとりー?」

 

しかしそこには誰もおらず、妹紅の呼びかけも真っ暗な部屋に反響するだけであった。

しかし、そんな時。

パリン!と、陶器か何かが落ちて砕ける様な音が響いた。

 

「ーーっ!」

 

同時に内容までは聞き取れないながら必死な様相の叫び声が聞こえた。何事かと一行は駆け出し、反対側の部屋と向かった。

 

「いま、ら、楽にしてあげるわ…!」

 

そこで、彼女たちはさとりがこいしへとカッターを振り上げる信じられない光景を目にした。やめろと掴んで止めるが、必死にもがいてやめようとはしなかった。

しかし力の強さもあり、すぐに押さえ込まれる。よく見れば、その左手には、こいしにつながったサードアイが握られていた。

 

「離してください!!離して!」

 

「どうしたんだ、落ち着け!」

 

妹紅は涙を撒き散らしながら騒ぎ立てるさとりの肩を掴み、強く語りかけた。

 

「…こいしに意思が…あの子の心が……少しだけ…読めるっ!彼女が今…私を怖がってるのが分かるっ!」

 

それに対し、さとりは膝を落として手も床につき、声を荒げながら告げた。その告白に対し、他の面々は驚愕の様子を見せた。

 

「こいしって…無意識状態なんじゃ?」

 

勇儀の問いにさとりは静かに頷き、こいしのサードアイを見るよう促した。

その目はしっかりと開いていた。

 

「こいしは悩み抜いた末…見ないことを選んだのに……その決断を揺るがせちゃダメなのよ!……この目は、潰さなきゃいけない……。私みたいに身勝手にも自己評価過大にもなれない優しいこいしは……見てちゃダメなのよ!!」

 

「やめろっ!」

 

無理矢理カッターを振り下ろそうとした彼女を突き飛ばし、勇儀は今度こそその腕を掴んだ。

 

「それを決めるのはこいしだ!…再び縫い付けるのも、今一度見ながら生きるのも!これはあいつの選択だ!」

 

「見ながら何十年生き続けて、その末目を閉じることを選んだんですよ!?だからっ!」

 

「やめてよお姉ちゃん!」

 

こいしの声を受け、揉み合う二人は動きを止めた。しかしやはりさとりは釈然としない様子だった。

そんな彼女に近づき、こいしはゆっくりと姉を抱きしめた。

 

「ありがとう…こんなに心配してくれて。ごめんなさい…こんなに不安にさせて」

 

その一言に、さとりは再び涙を流した。慟哭と言ってもいい。とにかく大声をあげながら、咳き込みながら、全てを吐き出すように泣き叫んだ。その側でこいしは姉の背をさすり、暖かく見つめていた。

 

「解決してくれそうだね…二人で」

 

妹紅がそう言い、扉を閉じてロビーへと戻ったその時、正面玄関に乱暴な開閉音が響いた。

何事かと一行が駆け寄る。

 

「はぁ……はぁ…もこ…う…ね」

 

そこに倒れていたのは、他でもなく霊夢であった。その体はすでにボロボロで、白かった服も面積の1/3ほどは赤くなっていた。意識はもはや飛びかけで、立ち上がる体力など微塵もないようであった。妹紅は竹林でこういう人は手慣れである。霊夢を脱がせると、自分の服の袖をちぎってそれで包帯を作り、出血を抑えた。

 

「あそこに寝室がある!血とか汚れとかそういうのは私が謝っておく!だからそこに連れて行くぞ!」

 

サグメが霊夢に駆け寄ったのを受け、萃香と勇儀も手伝い、三人で霊夢を抱えて連れていった。華扇も治療のため付いてき、他の面々は永遠亭のメンバーを呼びに向かった。

 

「…何事よ。あなたがこんなになるなんて」

 

永琳の治療しながらのその問いに対し、霊夢は口をゆっくりと開き、掠れた声をひねり出した。

 

「…八雲、藍……ゲホッ!」

 

咳混じりに告げたその言葉を受け、全員が目を見開いて霊夢の方を見た。

 

「あいつが…」

 

「ええ、怪人に変身したの。…こほっ、紫も怪人にされたわ……。口をきかない怪人だけど。そいつに、力を奪われた」

 

霊夢は半身だけ起こすと、手を開いて、そして閉じるのを繰り返すモーション。おもむろに前方に手を広げるが、何も起こらない。霊弾一つ出ない。ため息をつくと、再びベッドへ倒れ込んだ。

 

「どうしようかしら…」

 

 

 

 

 

「どうしようかしら…」

 

ため息をつくのは古明地姉妹も同様であった。二人は裏庭に出て無言のまま座り込む。こいしは自分で決めると言ったもののどうすべきか迷うし、さとりは妹をどう支えていくべきか迷っていた。

 

「死んじゃったら楽になりますよ!」

 

そんな時、その声と同時に蹴りが吹っ飛んできた。こいしはとっさに受け身をとるが、さとりはぶっ飛ばされ、壁に叩きつけられた。

 

「うぅっ!…うう…」

 

足を折ったのか、立つことはできず、ズルズルと体を引きずって移動する他ないようで、蹴りをかました張本人の燐が追いつくのは一瞬で終わりそうであった。

 

『X!』

 

「醒妖!」

 

『cat…change』

 

そしてその姿をブラックキャッツへと変え、さとりにゆっくりと距離を詰めはじめた。

 

「やめてお燐!」

 

そのあいだにこいしは立ちはだかり、両手を広げた。その前でブラックキャッツは立ち止まり、思案していたようだが、ヘルメットの中で嘲笑を見せたかと思うと、その腹を蹴り込み、標的をこいしへ変えた。

 

「えいやっ!」

 

まるでネコがネズミの死体で遊ぶかのように蹴り転がし、さらに蹴り上げてぶっ飛ばした。

 

「ちょっとこいし様〜。もうちょい骨あると思ったんですけどねぇ?」

 

倒れたまま咳き込むこいしを嘲笑いながらそう言った。

それを睨みつけながら、こいしはまだ立ち向かってやろうと、立ち上がった時。

こいしの服から何かが落ちた。どさっと大きな機械が一つ。小さなクリスタルが四つ。

 

「そういえばこんなの持ってたわ…。起きた時に、持ってた」

 

半ば直感的に機械を拾い上げ、腰に装備した。腰にベルトが巻きつくのを見ても驚きはなく、むしろこの使い方を知っているようでもあった。

 

「あなたをアンノウンドライバーと呼ぶわ。どこぞのぬえは関係ないわよ?」

 

そんなことを言いつつ、クリスタルを拾い上げると、うち二つをしまい、残り二つを両手に持った。

そしてゆっくりと前へ見せつけるようにポーズをとると、手を下でクロスしつつクリスタルを挿入した。

 

『Rクリスタル!』

『Uクリスタル!』

 

「おうふ、まさかこいし様までライダーになっちゃうとは。まあ、あなた達の殺害とは別にライダーの始末も任されてましたし?あたいとしちゃ好都合なんですが」

 

「なんとでも言ってなさい。今、正気に戻してあげる」

 

そして手を腰に構えつつ、アンノウンドライバーの中央部のボタンを押した。

 

『エレメントフュージョン!』

 

「変身!」

 

『ライジングアップ!』

 

同時に彼女の洋服が黒いライダースーツに変異し、銀のラインが引かれる。そして胸にクリスタルが煌めいたと同時に、放射状に赤いラインが通った。

時代を築いた二人のヒーローを合わせたような、かつての子供の理想のいいところどりをしたような、そんな姿であった。

 

『戦士の力が時代を呼んで、高まり続ける向上心!仮面ライダーU、ライジングアップ!』

 

ベルトの叫んだ口上に、こいしは自身のこの姿の『仮面ライダーU』の名を認識した。

そしてブラックキャッツを見据えると、ゆっくりと構えを取り、相手の動きを待った。

 

「やああああ!!」

 

ブラックキャッツは飛び上がり、その爪を振り下ろした。それを軽くいなすと、ブラックキャッツの背中側へと回り込み、体を掴んだ。

 

「ライダーきりもみシュート!」

 

ハイジャンプと同時にブラックキャッツの体をぶん回しつつ地面へ叩きつけた。

 

「おごっ!」

 

「だあああああ!」

 

そしてそのまま浮遊したかと思うと、急降下でパンチを叩きつけた。

 

「いっでえ!…この…!」

 

フェアリートルーパー達を呼び出し、行かせた。そしてその隙にブラックキャッツは撤退を図ろうとした。

 

「八つ裂きライダーチョップ!」

 

しかし、特に効果はない。右手に出現させた光輪で敵をぶった切りながら突っ走り、ブラックキャッツの背に蹴りを叩き込んだ。

 

「くっ…」

 

そして姿勢を崩したブラックキャッツの頭と肩を両足で拘束し、逆立ち状態から飛び上がった。

 

「ライダー……キャッチリングヘッドクラッシャー!」

 

そして光輪でブラックキャッツの体を拘束したかと思うと、地面へブラックキャッツをぶつけた。

 

「ぐうう!」

 

再び苦しむブラックキャッツをよそに反動を生かして飛び上がり、空中でアンノウンドライバーのボタンを押した。

 

『放て、戦士の力!』

 

そして軽く飛び出たスロット二つを押し込み、必殺を発動した。

 

『ヒーロータイム!』

 

「でやああああああ!」

 

『ライダーレイキック!』

 

ベルトが高らかに叫ぶと同時に青の雷光が足にまとわれる。そして降下しつつブラックキャッツへと足裏を叩き込んだ。

 

「うぐああああ!」

 

遠くまでぶっ飛ばされたと同時に爆風が巻き起こり、中からは気を失った燐と粉々になったエックスゴースター、そしてUSBが飛び出た。

 

「…よかった。無事みたい」

 

脈を確認し、安堵のため息を吐いた。そんなとき、爆発がUを襲った。とっさにかばったために燐は無傷で、爆風はさとりには届いてはいなかった。

 

「ありゃりゃ。始末失敗かあ」

 

そこに降り立ったのはアトムアヴェムであった。その声とアトムゴースターを見て、そいつが空であることは簡単に理解した。

 

「お空…」

 

「さ、二発目行くからぶっ飛んでくださいよこいし様!」

 

『phoenix feather!』

 

エックスゴースターを構えたその時、炎を吹き出しながらフェネクスが蹴りをぶつけた。アトムアヴェムは吹っ飛ばされはしないが、体制は崩し、攻撃は放てなかった。

 

「大丈夫か!……こいしだよな?」

 

「う、うん」

 

「よし、行くよ!」

 

そしてチェイスブラスターを構えると、炎弾を連続で叩きつけた。しかし大きなダメージではない。アトムアヴェムが飛び上がったのに合わせ、空中射撃戦へ。弾幕ごっこでは比較にならないレベルの殺意に満ち溢れたものだった。

 

「お姉ちゃん、今のうちに」

 

Uの合図を受け、さとりは左脚を引きずりながら地霊殿へ消えていった。

 

「…こっち、試してみようかな」

 

『Cクリスタル!』

『Zクリスタル!』

 

『エレメントフュージョン!』

 

RとUのクリスタルを抜き、変身した時と同じように二つのクリスタルを入れ、中央のボタンを押した。

 

「超変身!」

 

『クロニクルゼアル!』

 

そうしてその姿を仮面ライダーU クロニクルゼアルへと変化させた。

黒い体に紫のラインが走り、銀の鎧を着せた姿へと変わった。

 

『熱き情熱伝播して、ゼロより紡ぐ新たな歴史!仮面ライダーU、クロニクルゼアル!』

 

「だああああ!」

 

思いっきり跳び上がってアトムアヴェムへと拳をぶつけた。一瞬の怯みを見逃さず、フェネクスはアトムアヴェムへと熱戦をぶつけた。

 

「おっと、すごいね」

 

だいぶ消耗したのか、地面に着地し、そこからUとフェネクスを狙う戦闘スタイルへ変えた。

 

「だあ!」

 

Uはアトムアヴェムへとパンチをぶつけた。しかしダメージは小さく、アトムゴースターでの殴打攻撃で吹っ飛ばされるのであった。

 

「死ねーーーっ!!」

 

そしてアトムゴースターを向け、エネルギーを溜めた。

 

「させるか!」

 

それもフェネクスの加速キックに阻まれるが、このままでは勝てないと、こいしは感じた。もっと、パワーが出せないかと。そう思ったとき、Uの額のランプが煌めいた。同時に緑だったそれは赤色へ変わった。クロニクルゼアル ストロングマイティである。

 

「これなら…!」

 

改めて殴りかかる。すると先ほどの余裕ぶりは何処へやら。一発の怯みに大きな隙を作り、連続パンチを叩き込まれていた。

 

「ぐっ……」

 

もう近寄らせてなるものかと小さな爆撃を繰り返すスタイルへと切り替えた。パワーでは度し難く、Uはそれを避けきれずにいた。

 

「大丈夫かこいし!」

 

「スピードの方が入用みたいだね…」

 

そんなことを呟き木に隠れたその時、ランプが青く変化し、握っていた木の枝が折れたかと思うと、突如変異を始めた。驚愕するこいしをよそに龍を模した槍『ドラゴンランス』に変わった。クロニクルゼアル ミラクルドラゴンだ。

 

「今度はやっぱ…!」

 

こいしの予想通り、青く光る時の力は高速移動。爆風を縫ってアトムアヴェムに近づき、ドラゴンランスをぶっさした。

 

「あいっっでぇ!」

 

叫ぶアトムアヴェムへより深く槍を刺し、持ち手先端のレバーを引っ張った。同時に衝撃と斬撃がアトムアヴェムの体を伝った。

 

『XX!…good bye!』

 

焦った様子で必殺を発動し、Uの肩へと突きつけた。しかし素早くそれもかわし、光線ただ空を切って遠く遠くの洞窟の壁で爆裂した。

 

『放て!新時代の力!』

『ヒーロータイム!』

 

「だああああああ!」

 

『ドラゴンマイティショット!』

 

『over drive!』

 

「ボルケニックカノン!!」

 

自分の放った光弾の反動に怯むアトムアヴェムへ、二人は必殺を発動した。

Uは両手重ね、赤青交わった龍型の光線を発射した。

同時にフェネクスも極太の熱戦をチェイスブラスターから放った。

 

「うわあああああ!!!」

 

二つの光線に襲われたアトムアヴェムは大爆発を巻き起こした。やったぞとフェネクスが駆け寄って見てみた。

だがその場には空もエックスゴースターも転がってはいなかった。

 

「け、消し炭に…?」

 

「いや、ダミー爆炎で逃げたんだ。前にお燐がやってた」

 

それを受け、こいしは逃してしまったと悔しげにため息をついた。

 

「なんだ今の爆音は!敵と出くわしたのか!?」

 

そんな中、バタバタとサグメが飛び出た。そしてあたりを見ると、Uへ視線を移した。

 

「なるほど…。理解した!」

『コトダーマ!戦!』

 

「そうではない!そうではない!この子はこいしだから!変身したの!」

 

「…ああ、なんだそういうことか。っておい待て藤原妹紅。お前鈴仙から純狐の騒ぎは聞いてるんだよな?今のそうではないってもしかして私をからかってるのか?」

 

「いや、別にそういうわけじゃないよ。使いたかっただけ」

 

それってからかってるんじゃないかという疑惑も生じないでもなかったが、とりあえず飲み込み、元いた場所へ戻っていった。

 

「どうせ外に出たんだ。…裏口だけど。このまま外に出て昼メシでも食べようじゃないの」

 

「いいわねそれ!」

 

変身を解いた妹紅の誘いに乗り、Uも変身を解いて軽く身を整えて旧都へと繰り出した。

 

「ん、こいしと妹紅か!」

 

そうして何気なく入った店には魔理沙が先客として座っていた。親子丼を食べ始めていたらしく、こいしはスプーンを奪って一口だけ口に運んだ。

 

「ん〜、おいしい!」

 

「お前ッ!…さすが無意識だぜ」

 

呆れ気味に言った魔理沙の隣に座ると、こいしは一転して深刻な表情を作った。

 

「それなんだけどさ、これ、見て」

 

そしてサードアイを持ち上げ、ゆっくりと魔理沙の目の前へとやった。

 

「…これは、どうコメントすりゃいいのか…」

 

「祝ってくれていいよ。新しい私の幕開けってわけよ」

 

「それならいいんだがな。おめでとさん」

 

そんなことを話しながら、妹紅とこいしもそれぞれ思い思いの丼物を頼んだ。

 

「いただきまーす!」

「いただきます」

 

二人は箸を取り出すと、具と米をつまみ上げ、口に運び始めた。

 

「ほういうへはは」

 

「飲み込んでから喋れよ」

 

「……うん、そういえばさ、魔理沙ってなんでここいんの?」

 

「霊夢のやつを探しにきたんだよ」

 

「霊夢なら地霊殿にきたけど?」

 

妹紅のその発言に、魔理沙は本当かと叫んで立ち上がった。落ち着けという二人に言われ、座り込んだかと思えば、ものすごいスピードで親子丼をかっこみ始めた。

 

「ごちそうさん!」

 

「いい食べっぷりだな嬢ちゃん!」

 

「そいつはどうも!っと、こうしちゃ居られねえぜ!いくとするか!釣りはいらないぜ!」

 

魔理沙はドンと代金を置くと、こうしちゃ居られないと箒にまたがりすぐに飛んでった。

 

「ん?なんだありゃ」

 

しかしその魔理沙の意識は地霊殿から離れ、道を飛ぶ小さな何かに行った。どうせ地霊殿にいるなら今行かなくてもいいだろうということで、目的を小さな物体へと変えた。

 

「おーい!待て待てー!」

 

どうやらその小さな何かは亀型のマシンだったらしい。隙間を縫って逃げていくそいつを追いかけるうち、魔理沙は長屋の一室へたどり着いた。

 

「捕まえてやるぜー!」

 

そしてその手を伸ばそうとした時、「誰よ!」という声が魔理沙の背中にかかった。

 

「誰って私は……お前、菫子じゃないか!」

 

「え?魔理沙じゃないの」

 

そこは菫子の作業部屋であり、寝ている間だけ来れる場所でもある。授業中の居眠りを利用して来たのだ。

 

「さてはセンニンタートルさんを追ってきたのね」

 

『しつこいから困ったよ』

 

「喋ったぁ!」

 

亀ロボット改めセンニンタートルから男の声が聞こえた事に腰を抜かし、魔理沙は目をぱちくりとさせた。

 

『私はこれでも誇り高き河童なんだ。訳あってこんななりだが』

 

「この人の技術提供で色々出来たのよ。アイズバックルは私一人だけどね」

 

「…お、おう。じゃあ何かしらアイテムを作ったって訳か?」

 

魔理沙の問いに、菫子はウキウキ顔で機械を取り出した。

円盤、画面、キーボードが並んだ黒いそれは、いまいち用途の掴めないものであった。だが、魔理沙はそれに対しなんとなく察しがついた。

 

「仮面ライダーになるためのベルトか?」

 

「そう!サォルブドライバー!あなたように出来てるからね。あげるわ」

 

自慢げにそう告げたかと思えば、サォルブドライバーと、カードを何枚かを魔理沙に渡した。

そして何かを思い出したかのように机の上をごちゃごちゃといじり、何かを取り出した。

 

「あとこれ、蓮子とメリーって言う二人組の外来人に渡しといて!えっと、仮面ライダーヒールの!」

 

「ちょっと前に新聞に載ってた奴らか。いいぜ!渡しといてやる!」

 

受け取ったのは()()()()()()()()()であった。

しっかりとそれをスカートのポケットにしまって、落とさないようボタンをした。

 

「ん、じゃあ私は地霊殿に行くとするか!」

 

そうして扉を開けて、外に出たたその時。

 

「うわっ!びっくりした!」

 

「あ、あんたこんなところに…!」

 

霊夢と華扇にぶつかりそうになり、三人揃って転んでしまった。

 

「おいおい、気をつけてくれよな」

 

一足先に魔理沙が立ち上がり、二人に手を貸した。

 

「ごめんなさい…」

 

「悪いわね」

 

「お前たちはどこ向かってるんだ?」

 

それに対し霊夢は帰るのよと一言で告げ、小さく駆け出した。

 

「全く、さっきまでぶっ倒れてたとは思えない回復力ね。さすがは巫女。そして若さってとこね」

 

華扇はしみじみとそういうと、彼女も駆け出した。そのあとを魔理沙も追い、三人で出口の穴へと向かった。

 

しかしその時、目の前で大爆炎が巻き起こった。魔理沙のとっさの防御魔法で全員無傷であったが、魔理沙はその衝撃を受け、立てないようであった。

何事かと見やった先には、アトムアヴェムがアトムゴースターを構えていた。

 

「全く、また仕留め損なっちゃったな」

 

残念そうにそう言うアトムアヴェムに対し、三人は精一杯の防御をしながら怯える以上のことはできなかった。魔理沙の頭にはサォルブドライバーのこともあったが、変身なんてできる体力はない。エネルギーを溜め始め、三人が目をつぶったその時。

 

白いバイク、ヴァースサイクロンに乗ったこいしがアトムアヴェムを撥ねた。

 

「お姉ちゃんってばこんな凄いもの作ってたなんて」

 

そんなことを言いつつ降りた瞬間、ヴァースサイクロンは小型化してこいしの手のひらに収まった。

 

「凄いもんだねえ」

 

それにイシグマスラッシャーから降りた萃香も追いつき、二人ともベルトを用意した。

 

『error There is no alcohol』

『error clear change standby ……3……2……1 ready?』

 

『Rクリスタル!』『Uクリスタル!』

『エレメントフュージョン!』

 

「「変身!」」

 

『formname is 酒鬼!GOGOGO!』

『ライジングアップ!』

 

二人は同時にシークエンスを終え、それぞれ酔鬼とUとして、アトムアヴェムへ向かった。

 

「やああああ!」

 

「とう!」

 

二人が同時に放った拳はダメージを与えたが、倒せるもののほどではない。超近距離爆破で二人とも吹っ飛ばされ、再び殴りかかった。

 

「無駄だね!粉々にしてあげるよっ!」

 

しかし羽ばたきの風圧で二人を退け、今一度爆破弾を放った。

 

「…アレじゃ、勝てない」

 

霊夢は二人の様子を見てそう言った。魔理沙も華扇も「勝てるから心配すんな」ってとは言えず、ただ黙るだけであった。

 

「それなら!」

 

突然、霊夢が駆け出した。そしてサォルブドライバーを拾い上げたかと思えば、それを腰に装備し、地面に散らばったカードを拾い集めた。

 

「無理だ…それは私用に作ったって…」

 

「『専』用じゃあないんでしょう?見なさい。巫女のカードがあるわよ」

 

だが、そんなことを言っても何をすればいいのかわからない。どうしようかと戸惑っていたとき、センニンタートルが長屋から飛び出し、霊夢へと近づいた。

 

『あんたが使うのか。まあいい。まずそこのキーボードに文字を入力しろ。CH016 Enterだ』

 

「キーボード…この文字盤ね。えっと、シーがこれで、エイチっと、で、016、エンターっと」

 

『チェンジ コード確認 reimu!』

 

音声と和風な待機音に少し驚いたのち、亀へと視線をやり、次の指示を求めた。

 

『ポーズをとってカードを挿すんだ』

 

「ポーズねえ」

 

適当に胸の前で右手を握るポーズをとり、左手でカードを挿入した。

『読み込み!巫女!』

 

『何かカッコつけたこと言うんだ』

 

「ハァ!?」

 

『いささか急だったかい?では次までに考えていてくれ。ほら、変身と叫んで円盤を回せ』

 

「えっと、こんな感じね。変身!」

 

言う通りに円盤を回し、両手をバッと広げた。するとバックルの画面にカードの絵柄が浮かび上がり、そこからアーマーが実態化した。

 

「な、なにこれ」

 

『いいから突っ立てるんだよ』

 

驚く霊夢をよそにアーマーは霊夢の周り高速回転を始め、同時に霊夢の体へボディスーツが装着された。

 

『楽園!神の使い!博麗の〜巫女!』

 

『さあ戦うんだ仮面ライダー!名前はなんと言う!?』

 

「名前?………リブレッス!」

 

問いに答え、改めて彼女は自分が変身したことを実感する。

仮面ライダーリブレッスがその名である。

紫に青の差し色が入ったスーツの上に、彼女らしい紅白の鎧が着せられ、スカート型アーマーが風に揺れる。

あまりにも霊夢らしく、頼もしい姿であった。

 

左腰横からお祓い棒を模した武器『ガイネンブレイカー』を取り、構えてアトムアヴェムへと向かった。

 

 

 

 

 

 

「これ、渡しておくぞ」

 

同じ頃の地霊殿も爆発に気づき、妹紅、サグメ、へカーティア、メディスンもそこへ向かっていた。

メディスンはトライサイカーには乗れないので、コードランナーの後ろに掴まっていた。

そんななか、サグメは何かを思い出したかのようにポケットから黄色い石を取り出し、へカーティアへ投げ渡した。

 

「走ってる時に…危ないわね。ん、これって」

 

「旧天人居住区で見つけた。月の力の入った石。お前が使えるんじゃないかと思い出してな」

 

へカーティアはそれに礼を軽く返すと、ドライバーにセットした。

 

「お先変身しとこうかしら」

 

『Set!Luna power!』

 

「体力消耗は抑えた方が……いや、お前なら気にする必要ないか」

 

サグメはフフッと笑い、そんなことを言った。対しへカーティアは素早く変身シークエンスを終えた。

 

『Perfect!HellGod Luna!』

 

黒い塊が彼女を飲み込んでバランスフォームになったかと思うと、黄色の装甲と黄色の球体が装備され、ヘルゴット ルナフォームとなった。

 

「さ、急ぐわよ!」

 

そう言って加速したその瞬間、ビームが全員へと飛んだ。コードランナーとフェザーチェイサーはそれをどうもできず、サグメと、メディスンを抱きしめた妹紅はバイクから飛び降りた。対し、変身していたヘルゴットはそれを胸で跳ね返し、そのまま撃った張本人の横を駆け抜けた。

 

「おっと、行っちゃったわね」

 

その女の後ろ姿に、妹紅は見覚えがあった。もはや見間違えようのない九本のふわふわとした尾を振り、妹紅達へ向き直った。

 

「八雲、藍っ!」

 

「今の私にそれは適さないわね。…うーん、本名なんてないし……いいや、九尾さんとでも呼びなさい」

 

「…式としての性格が消えたのか…」

 

「八雲紫暴走のおかげさんで式が弱まったのよ。今でもたまーに出てきて邪魔したりするけどネ」

 

歌うような軽いテンションでそういうと、エックスゴースターを取り出し、USBを挿し込んだ。

 

『X!』

 

「醒妖!」

 

『fox…change』

 

そうして黄色の鎧を着たノヴェムフォックスが放った青色の眼光に、妹紅は何かを思い出した。

 

「鈴仙とてゐを暴走させたのはお前だったわけだ」

 

先に言葉にしたのはサグメであった。煙の中で見た女の青い光と重なったのだ。

 

「そーよ。そのあと地上に行ったり貸したバイク水ぽちゃされたり散々だったんだから。ま、回収したけどさ。行くわよ、インディゴナイター!」

 

そして投げた小さな機械は巨大化しながら変形してバイクになった。その名も『インディゴナイター』。紺と黄色のマシーンだ。

 

そして先に行ったヘルゴットを追うべくそいつを走らせた。

 

『メイクアナライズ!ワードレス!』

『GRADE UP…… FAZE1』

『burn up complete!phoenix blaze!』

 

三人も手早く変身し、メディスはトライサイカーを呼び、ノヴェムフォックスを追った。

 

「邪魔くさいわね…」

 

インディゴナイターからガトリングを展開して後方へ発射するが、ライダー達は素早くそれを避け、横についた。

 

「でやあ!」

 

そしてフェザーチェイサーの体当たりを食らって、一瞬ひるんだ。そこにフェザーチェイサーはマニピュレーターにバーンスマッシャーを持ち、パンチを叩きつけた。

 

「予想以上に頑張ってくれちゃうわね!」

 

今度はフェネクス狙いでガトリングを向けた。しかし。

 

『phoenix feather!』

 

その瞬間乗ったまま空中で合体し、フェニックスフォームへと変身した。射角外の斜めうしろに付き、チェイスブラスターで狙った。

 

「危ないわね!」

 

さらにはトライサイカーの体当たりにより、横の川へとぶっ飛ばされた。しかしそのままインディゴナイターを小型化してしまうと、水没し、姿を消した。

 

「くっ…逃げやがった」

 

悔しげにワードレスが呟いたが、そう言ってもいられない。アトムアヴェムの元へと向かった。しかしバイクチェイスの間にかなり遠くに来ており、向かうにはだいぶ遠そうであった。

 

「やれやれ」

 

三人は呆れ気味にバイクの向きを変え、爆発の方へと向かった。

 

to be continued…




「ギルティ…ドライバー」
『guilty or not?』

「なんだこれ!趣味悪い腕輪だなぁ…」
『がっちーん☆』

凍てつけ空!煌めけ黒!
次回、「おてんば恋娘の変身」

みなさんん今日は。茨歌仙と鈴奈庵の最新刊と三月精の新シリーズが欲しいサードニクスです。空から降って来ねえかなあ。
敵に一回は死ねー!って言わせてみたかった。空は言いそうなキャラかと言われればビミョーだけどそこは操られ補正ってことでひとつ。
本来今回は実はリブレッスデビュー戦のvsお空もちゃんと書くつもりだったんですが、10500字超えたあたりで諦めました。次回冒頭に。
タイトルの件なんですが、
・お空の曲は今後使う予定ないから敵として出しゃばる回で使おう。
・霊夢の曲はいっぱいあるけど強化フォームん時に使いたい。
・こいしちゃんはハルトマン(とラストリモート)しかないからまだ使いたくない。
上記の理由でこんなタイトルに。

みんなの!変身ポーズコーナー!
今回はひじりん!
まず腕輪を巻き、エイディングドライバーを装備します。
で、巻物片手にビーストのあれ。以下ネットの拾い画。

【挿絵表示】

これ。で、エイディングドライバーに巻物をぶっさします。
「変身!」
そして手を広げつつレバーを倒します。ヘビィかライトかで倒す手は変わります。


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第14話 おてんば恋娘の変身

私、こう見えて結構東方にわかなんすよ。だから設定ミスってたら言ってね。実はさっきてんこの設定ミスに気づいて急いで修正したんですよね。HAHAHA。
もう最終フォーム待っててもしゃーないんで出しました。

さて、前回13話は!!
温泉に向かった面々が地霊殿見つけたのは、こいしの開いたサードアイを潰そうとするさとりだった。必死の説得でどうにかなったところに、次に来るのは血まみれの霊夢。藍が怪人になったと告げた。
同じころ、古明地姉妹は中庭でブラックキャッツの襲撃を受ける。ピンチの中、その手の中の石でこいしが変身。ブラックキャッツを撃破し、さらに援護に来たフェネクスとともに、アトムアヴェムとも戦う。逃げられてしまうが。
戦闘を終え、こいしたちは昼食へ。魔理沙と遭遇し、一緒に食事を始めた。霊夢の所在を聞いて飛び出た魔理沙だが、小さなマシンを追ううちに菫子の隠れ家へ。魔理沙用にとベルトを渡された。霊夢と華扇も現れ、同時に帰路へ。それを阻んだアトムアヴェムを、Uと酔鬼がまた同時に阻む。しかし見えない勝ち目を感じ、霊夢が魔理沙の持つサォルブドライバーを装備、変身。
同じころ、アトムアヴェムの爆発を追って、ライダーたちが向かう。ヘルゴットは通り抜けたが、式の弱まった八雲藍、言うなれば九尾によって阻まれてしまう。ヘルゴットを追う九尾へ付き、メディス、フェネクス、ワードレスとのバイクチェイスへ。追い詰めたものの、逃げられてしまう。
・仮面ライダーU ライジングアップ
・仮面ライダーU クロニクルゼアル
・仮面ライダーリブレッス ミコフォーム
・仮面ライダーヘルゴット ルナフォーム
・ノヴェムフォックス


「でやあああああああ!」

 

リブレッスの放った一撃を、アトムアヴェムは腕で受け止めた。ポーンと跳ね返されたリブレッスに生まれた隙に、アトムアヴェムは蹴りを叩き込んだ。

 

「うぐっ…」

 

「猛々しく突っ込んで来たと思ったら。異変の時みたいな強さはどうしたの?」

 

「こっちは怪我してんのよ…!」

 

毒づきながら後ずさり、武器を左腰の銃『ゲンソウスペルレッカー』へと変えた。

 

「だーかーらー、無駄だって言ってんでしょ!」

 

今度はぶっ飛ばす。とでも言わん勢いでアトムゴースターを向け、エネルギーをチャージする。

その背中に、バイクが接近した。

 

「…なんてね!」

 

しかし想定内である。素早く身をかわすと、溜めていた核エネルギー弾をバイクの上のヘルゴットへとぶちかました。

 

「……防げた」

 

しかしその爆風の中から、自らの防御力に驚きつつヘルゴットが出た。そしてマシンラピスから飛び降りると、ヘルスウェポンソードを叩き込んだ。

 

「おっと…油断はできないね」

 

「…そうか、防御力を上げれば!」

 

そんな中、酔鬼はその姿に光明を見出した。説明書の記憶から、防御力に優れた金剛鬼の記憶を掘り出した。

 

「…いっちょやってみますか!」

 

そしてマシュヒョウタン『コンゴウシュ』を腰から取り出し、サカズキドライバーへセットした。

 

『set confirmed』

 

酒がドライバーに注がれたタイミングでレバーを引く。

 

『confirmed change standby……3……2……1 ready?』

 

変身ポーズと同じように拳を握るポーズをとり、バッと手を広げつつレバーを再び引いた。

 

『formname is 金剛鬼 GOGOGO!』

 

そして軽装だった左に厚い鎧が着せられ、重装だった右にはさらに厚い青の鎧が着せられた。そしてその手に2mは越えようかという巨大なスパイク付きシールド『鬼骸壁』を握られた。

 

「どりゃああああ!」

 

そして鬼骸壁で銃撃を受け止めつつアトムアヴェムをぶん殴った。ぶっ飛ばされたわけではないが、かなり大きな怯みが生まれた。そこにUとリブレッスの拳が叩きつけられた。

 

そうしてさらなる怯みの隙にリブレッスはゲンソウスペルレッカーを弓モードへ変え、ヘルゴットの斬撃を援護した。

 

「くっ…」

 

そんな中突如アトムアヴェムが爆発した。酔鬼はそれがダミーの爆炎であることに気づき、必殺の準備のため、盾を空へぶん投げた。

 

「撤退!」

 

そして飛び去ろうとした瞬間酔鬼も跳び、空中で鬼骸壁を掴んだ。

 

「カチオトシィ!!」

 

そして地面を蹴ったアトムアヴェムへと全力で叩きつけた。衝撃のあまり、地面に凹みが出来るほどのスピードで地面激突した。

 

「今よんっ!」

 

「ぶっかませ!」

 

そしてアトムアヴェムの両肩をヘルゴットと酔鬼が掴み、拘束する。その前にUとリブレッスは並び立った。

 

『巫女!ムソウカイホウ!』

 

一足先にリブレッスが必殺を発動し、空中へ飛び立った。そして分身しながら飛び回ったかと思うと、連続で飛び蹴りを叩きつけた。

 

『放て、戦士の力!』

『ヒーロータイム!』

 

続いてUも必殺技を準備した。リブレッスの分身の最後の一体がかかと落としを決めた瞬間に駆け出し、リブレッス本体と同時にキックを放った。

 

「だああああああ!」

『ライダーレイキック!』

 

「フウインスタンパァァアアアアア!!」

 

その飛び蹴りに、さらにヘルゴットと酔鬼の追撃を叩き込まれ、ついに爆発した。そして転がり出たエックスゴースターが粉々になっているのを確認し、四人は変身を解除した。

 

「…ん、もう終わったのか?」

 

そんな中、ワードレスがコードランナーに乗って来る。その後をメディスとフェネクスも追って現れた。

 

「うん、一応ね。さ、帰りましょう魔理沙、華扇。コレ魔理沙に返しとくわね」

 

そういうと霊夢は二人を招き、サォルブドライバーを渡すとさっさと飛んで行ってしまった。その様子を見て、サグメは変身を解き、バイクに横から座り込んだ。

 

「…それなら話しておくか。…もしかしたら異変の首謀者は地上にいるらしいということがわかった」

 

それを聞き、全員が表情を真剣なものとした。サグメは淡々と続ける。

 

「私と妹紅は残るが…実動隊であった黒猫と核鴉を倒した事情を考えれば、地底での動きは静まると考えていい。つまり、異変解決のために来た奴らは帰って地上で戦った方がいいということだ。萃香、へカーティア、メディスン。君たちは地上に行くべきだ」

 

そう言ってサグメは三人に順で視線を送った。それぞれでごちゃごちゃ話していたが、結局は地上に戻るという結論に。一度地霊殿に戻って帰るべく準備をすることとなった。

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…あれ、なんなんだろう…」

 

「あたい知らないわよ!大ちゃんこそ知ってたりしないの?」

 

「全く!」

 

同じ頃の霧の湖の麓では、大妖精とチルノが妖精にしては物騒な様相で逃げ回っていた。それもそのはず、フェアリートルーパー達に追い回されているのだから。無鉄砲に突っ込もうともしたが、サニーミルクがランタンに閉じ込められたのを見て、一回休みでは済まない気がした。

 

「来る、逃げるよチルノちゃん」

 

「もちろん!」

 

そう言って飛び出したその時、大妖精の足をビーム段が貫いた。

痛みつつチルノを突き飛ばし、そのまま地面に倒れ伏した。

 

「ーっ!」

 

チルノは転び、腕を落ちていた謎の機械にぶつけた。だが、大ちゃんに恨み言は言えないと痛くないふりをし、ゆっくりと立ち上がった。

 

「うわああああ!」

 

そんなチルノの腰を、大妖精は全力で蹴った。何をするんだと言おうとしたが、それが自分を湖に逃がすためであると理解した。

 

「そんな…ダメだよ!」

 

水中で叫んだが、当然声は届かず、ランタンに閉じ込めるのを見ているだけであった。かといって、自身を助けようという意思を無下にできず、チルノは泣きながらも逃げることを選んだ。

 

「…うわぁ、なんだこれ!趣味悪い腕輪だなぁ…」

 

そんな中、自分の左腕の機械に目がいった。そんなことを気にしてる場合ではないのだが、さっきまで見覚えのなかったものなので、驚かずには居られない。

 

「ん?これって、氷?……レティと似たパワーを感じる」

 

そして壁に冬のエネルギーがこもった謎の氷が埋まっているのを見て、チルノの頭の中で何かがきらめいた。

そして何を思ったか一気に浮上すると、去ろうとするフェアリートルーパーと、そいつらを指揮していたスズメ女へと待ったをかけた。

 

「取り戻す…そして、あんた多分ミスティアよね?正気に戻してあげるわ!」

 

これを見たチルノは、『変身アイテムではないか』と、巷で噂の『がいあ』とか言う奴と似た姿になれるのではと、そう思ったのだ。

 

そしてその趣味の悪い腕輪『クロッカー』に、先ほどの氷『ウィンタースフィア』をセットした。まるでそのために生まれたかのように、ピッタリと入った。

 

『がっちーん☆』

 

「うわぁ…何この声…ダサい…なんか聞いたことあるけど…」

 

若干というかだいぶ引きつつ、腕側のリング状のグリップを握ると、それをグリンと手首側に回し、押し込んだ。

 

『ばっきーん!』

 

その音声とともに氷が砕け、中から冬のエネルギーが溢れ出た。同時に花びら散ったかと思うと、いきなり凍りつき、真っ白に変わった。

 

『ういんげるふぉーむ!』

 

その中から、純白と青の氷をまとった少女が歩み出た。

いや、チルノの体型は少女のものではなくなっていた。腰にはリボン型スラスターが目立ち、体はすらっと滑らかで、線の細いハイヒールの姿は、かわいさや天真爛漫さよりむしろセクシーさや可憐さが漂うものだった。

 

「これであたいもオトナのレヂーってやつね」

 

伸びた身長とまとわれたスーツを見て、言った。そう、大人のレディは形容として最もふさわしい。もっとも、クロッカーの声に大人っぽさなど砂つぶほどもないのだが。そして何よりシュッとした顔は目がゴーグルのようにモニターとなっており、[・ ・]という具合に目が写っていた。そんなかわいらしさも秘めた外見が何より特徴的である。

 

「派手にぶち凍らす!」

 

力強く決め台詞を放つと、両腕に6連装ガトリング『ブリザードダイヤモンダー』を精製し、スラスターで思いっきり接近し、殴りかかった。

 

「おごっ」

 

しかしその瞬間にスズメ女の蹴りを腹に叩き込まれ、ぶっ飛ばされる。ダイヤモンダーを杖にし、腹を抑えてゆっくりと立ち上がった。

 

「そんなに硬くはないみたいね…」

 

そう呟くと接近はやめ、スラスターで飛び回りながらの射撃に戦闘スタイルを切り替えた。

 

「チチチチチ……」

 

効いていたらしく、スズメ女は痛がるような声を上げた。いい加減耐えられなかったのか、土を蹴って飛び上がると、ラビに接近し、翼をぶつけんと高速接近を繰り出した。

 

「どりゃああああ!!」

 

対しラビはバック推進で離れながら、正面から弾丸を浴びせた。雨のような隙間無い攻撃が、スズメ女の体を凍らせ、翼を固める。飛行手段を失い、スズメ女はきりもみ回転をしながら霧の湖に叩き付けられた。

 

「チチチ…」

 

悔しそうに鳴き声をあげたその瞬間、ラビは再びダイヤモンダーを向けた。このままでは湖ごと氷にされかねんと脚力でもって水上へ跳び上がる。瞬間、湖の表面は凍てつき、スケートリンクのようにツルツルになった。

 

「やっぱこれがいいわね!」

 

その上をラビはヒールで滑り、スズメ女の周りをくるくる旋回しながら狙撃した。スズメ女は避けようとするも追い付かず、腕で防がざるを得ない状況に。数秒と経たず左腕は凍り付いてしまった。

 

「よっしゃ、今だ!」

 

その隙を見て、今がチャンスとばかりにラビはダイヤモンダーを構えた。だがむしろその動作にこそ隙は多い。立ち止まったその瞬間を狙い、スズメ女は距離を詰める。驚くラビの胸へとクローを叩きつけた。

 

「いっでぇ!…あんたには爪を切れって言ったはずなんだけどねっ!」

 

痛がりつつもジョークを交えて言い放ち、スズメ女の胸にヒールを突き立てた。そして、かかとの隠し散弾銃『フォールアイシクラー』の出番である。

 

「発破ぁ!」

 

「ぐっぎぃ!」

 

いかにも痛そうな絶叫を上げ、スズメ女は後ずさる。ラビはスラスターでその懐へと飛び込み、アッパー気味のパンチをみぞおちにねじ込んだ。

 

「ぶっ飛べええええええええええ!!」

 

威勢良く言い放ったその瞬間、ラビの肩から発射台が生成される。さらにそこに2mは越えようかというミサイルが生成され、スズメ女の胸に押し付けられた。『フリーズパーフェクター』だ。驚くスズメ女に有無を言わせず、ミサイルは火を噴いた。

 

「ぐぎっ」

 

スズメ女は無論逃げようとした。だが推進力と風圧がそれを許してはくれない。依然上空へとミサイルは向かう。

 

「ええっと…なんてんだっけ。あの、ほら、爆弾の中の。えっと…まあ、アレは割り増しに…」

 

カッコつけたことを言おうとしているうちに、スズメ女はブッ飛んでしまった。いまいちキマらないうちに、太陽をバックに昼の花火が散った。チルノは釈然としない様子であるが、そう言ってる暇はない。ランタンから解放されたサニーミルクと大妖精で、変身を解いて落ちてくるミスティアのキャッチへ走った。

 

 

 

 

 

 

「…えっと、もう一回言ってくれるかな?」

 

「簡単な話よ。自身の成長の為に、地上に行くべきと言ったのよ」

 

同じ頃の地霊殿では、さとりがこいしにそんなことを告げていた。てっきり地底に居ろというだろうと小石は思っていたので、戸惑うばかりであった。

 

「せっかく無意識が消えたんだから…お姉ちゃんともっと居たいなぁ」

 

「まあ、それはあなた決めることだけどね。でも私の言葉もよく覚えておきなさい。地上に渦巻く愛憎を愛せると言うなら、あなたは自分の能力を愛せるはずよ。私は出来なかった。だから閉じこもった。自分を過剰評価しないと自我を保てなかった。11/10…なんてね。ふふふ」

 

「…。ちょっと考える時間が欲しいわ」

 

「そう。…そろそろね。今のあなたに言う必要があるとは思わないけど一応言うわ。今からお客さんが来るから粗相のないようにね」

 

「うん、分かった」

 

そうしてさとりはしきりに腕時計を気にした。三分ほど経ち、ドアをコンコンと叩く音が。燐が開けた扉から入って来たのは映姫であった。

 

「ご足労いただき光栄です」

 

「いえいえ、閻魔たる者フィールドワークにも力は抜けません」

 

「相変わらずストイックですね」

 

そんな会話を玄関で繰り広げ、さとりは映姫を地霊殿に入るよう促した。映姫は上着を脱ぐと、丁寧に畳んだ。その顔は何処か暗い者であった。

 

「見ましたよ。旧都の荒れた様子。…操られていたと言う話なのですからね。誰を恨めばいいかわからない。黒幕もわからない。…やけに活気がないのも頷けますよ」

 

「空の方も罪悪感で落ち込んでいますからね」

 

さとりのその一言に、映姫はより一層表情をかげらせるのであった。対しさとりは何か話題を変えようと、食事の準備ができていることを告げた。映姫は遠慮しようとしたが、そのタイミングで狙ったかのように腹が鳴ってしまった。

 

「やっぱり、お空きなんですね」

 

今更断りづらいのもあり、映姫は赤面しながら静かに首を縦に振った。

 

 

 

 

 

同じ頃の命蓮寺では、猛烈な紫外線、熱戦、太陽波が少女達の肌をブッ刺していた。それでも夏を味わおうと言い出したのは蓮子で、ゆえに聖、メディスン、天子、魔理沙、そして言い出しっぺとその相棒は縁側でそうめんを啜っていた。氷をいれた器につゆと麺を入れており、そこからズルズルとすする音が響く。

 

「もう夏って感じねぇ…」

 

「そうねえ」

 

そんな他愛のなさすぎる会話をぼんやりと広げていた。しかしその目の前にはただならぬ表情とただならぬ汗の量で木刀をぶん回す早苗がいた。

 

「おーい、そろそろ死んじゃうわよー?」

 

「でもっ!」

 

天子の心配の一言も聞かず、一心不乱に木刀を振った。やっとその動きを止めたかと思えば、今度はどこぞからロープをくくりつけたタイヤを持ち出し、腕で掴んだまま走り回るのだった。

 

「本気で心配だよ。全く」

 

そんな様子を諏訪子が布団に寝たまま心配げに見ていた。少し経つと、諏訪子の視線は天子の方に移った。

 

「あんたもだよ。御柱を土手っ腹に受けてなんだってそんなピンピンとしてるかね」

 

「天人の鋼鉄皮膚を舐めないでもらおうかね」

 

天子はドヤ顔でそう呟いた。しかし魔理沙がその腹をペチンと軽く叩くと、そうめんを吐き出しそうな勢いで咳き込んだ。

 

「お前こそこそ死ぬぜ?気を付けろよな」

 

「…やれやれ。そういえばあんた達、疫病神見てない?」

 

「私達は迷い込んだだけだしなぁ…」

 

蓮子が頭をかいたのに合わせ、メリーも肯定の頷きを示した。それを見ると、天子は聖の方へ視線を送った。

 

「私が死ぬ少し前に外出してから帰ってきませんね。女苑さん…元気だと良いのですが」

 

「私が死ぬ前ってヒドイ文面ねぇ」

 

そんな風に笑っていたその時、けたたましい声が命蓮寺に接近した。

 

「びゃくれーん!あそびに来たぞー!」

 

チルノである。ミスティアをお姫様抱っこの姿勢で抱え、ゆっくりと着地した。

 

「ここなら安全かなーと思ったんだよねー。ほら、いっぱいいるし。いっぱいいるからあそんぶのも楽しいし」

 

そんなことを言いながらさっと布団を用意し、そこにミスティアを寝かせた。

 

「…ミスティアさん、どうしたんですか?」

 

「あたいが倒した」

 

「はい?どう言うことですか?」

 

「あたいが変身したのよ。らいだーっていうんだっけ?」

 

それを聞き、一行は目を見開いて驚いた。まさかまたライダーが増えるとは。しかしチルノを知る少女達は、変身するのがチルノである事に、安心感と心強さを抱いていた。

 

 

 

 

 

 

「準備…できてるんですよね」

 

「無論です。……これです」

 

食事を終えたさとりと映姫は、二人きりでさとりの部屋の隠し部屋。機械やら部品やらが散っており、足の踏み場がなかった。その機械をなんのためらいも無く踏みつけながら机の上の機械を持ち上げた。対し映姫は踏んだまま突っ込んで行くのは気が引け、その様子を眺めているのであった。

 

「これがギルティ…ドライバー」

 

渡された銃の様でもありバックルの様でもある機械『ギルティドライバー』とアイテムを入れた袋を受け取り、映姫は静かに頷いた。

 

「やっぱりそんな事だろうと思ったわ」

 

その瞬間、二人のものではない女の声がこだました。振り向いた先ではノヴェムフォックスが入り口に腰掛けながらエックスゴースターを向けていた。

 

「貸してください!」

 

さとりは咄嗟にギルティドライバーを奪い取ると、袋から『銃』と書かれたコインを取り出し、ギルティドライバーにセットしてトリガーを引いた。

 

『bullet monotone!』

 

どう言うことかと戸惑う映姫をよそにさとりはノヴェムフォックスへと銃撃を浴びせた。

 

「それ、銃になるんですね」

 

「便利でしょう?」

 

そう言うとエックスゴースターの銃撃を撃ち落としながらさらに銃撃を浴びせ、隙が生まれたのを見て、映姫の手を引いて外に逃げた。

 

「ったく!」

 

しかし撃ち落としきれなかったビームがさとりの足にあたり、さとりは転んでしまう。

 

「逃げてくださいっ!!」

 

しかし転んだ拍子にギルティドライバーを映姫に投げ渡す事には成功した。しっかりとそれを掴むと、一瞬のためらいの後外へと逃げ出した。

 

「逃げられるわけがないじゃない」

 

しかしノヴェムフォックスはインディゴナイターを呼び出した。一瞬で追いつかれようかと言うその時。

 

「乗れっ!」

 

その時、轟音で地底を揺らしながらトレーラーからみとりが手を伸ばした。驚くより先に手が伸び、映姫はその『KP-010』に乗り込んだ。

 

「あなたは…」

 

「無駄話はいいっ!地上に逃げるぞっ!」

 

インディゴナイターがそいつを追い、トレーラーとバイクによる旧都チェイスが始まった。

 

 

 

 

 

「フン、甘いわねっ」

 

ストームスネイクの襲撃によって、命蓮寺は先ほどの平穏が嘘だったかの様な戦場となっていた。ヒールとドグマで迎え撃つが、ぼろ負けと言って差し支えない状況である。続いてメディスンとチルノも変身しようとしたその時。

 

「どけどけどけどけどけーーーーー!!!」

 

KP-010が突撃した。そしてその後ろをインディゴナイターが追っていた。みとりと映姫は急ブレーキの勢いで叩き出され、動けずにいた。

 

「変身も…出来ない…」

 

さらにはギルティドライバーとアイテムも遠くへぶっ飛び、ノヴェムフォックスは軽く二人を始末できる様子であった。

 

「チルノさんとメディスンさんはそっちへ!」

 

「でも…」

 

「人の命がかかってるのはそっちです!」

 

 

聖の声の気迫に押され、二人は加勢をやめノヴェムフォックスの目の前に立った。

 

『がっちーん☆』

 

「ま、閻魔さまにはちょっと借りもあるわね」

 

二人はそれぞれクロッカーに氷を、メディットブレスにカプセルを入れ、腕を大きく旋回させるポーズと指を弾くポーズをとった。

 

「「変身!」」

 

『ばっきーん!うぃんげるふぉーむ!』

 

『GRADE UP…… FAZE1』

 

そして同時にシークエンスを終え、ラビとメディスとしてノヴェムフォックスの前に立ちはだかった。

 

「派手にぶち凍らす!」

 

威勢良く叫ぶと、チルノはバックステップそのままに飛行し、スズメ女にやった様にダイヤモンダーを乱射した。

 

「ちょっと、危ないじゃない!」

 

「そこに居るのが駄目なのよ!最強のあたいに任せてていいからあっちを手伝ってもいいわよ!」

 

「そりゃ無理な相談よ」

 

メディスは銃撃を浴びないようにエクスブライガンでの遠距離攻撃に切り替えた。だがノヴェムフォックスは命蓮寺に侵入し、上手いこと壁を盾にしたり、屋根を盾にして逃れている。

 

「やっぱり私も混ざるしかないか!」

 

だが室内には変身アイテムを持った魔理沙が居る。外に出れずにいた彼女も戦闘に入れるのだ。だが、

 

「うぐっ」

 

「少しでも戦うそぶりを見せたらこの子の首はないわよ」

 

生身の妖怪がいるのも事実。村紗を人質に取りその場を動くなと言った。

 

「テメェ…!」

 

「それ以上喋るのも駄目。この子…の…頭……ううっ!…こんな時に…!」

 

そんな時、突如ノヴェムフォックスが苦しみだした。何を思ったか、村紗を解放し、自分を撃てと言わんばかりの勢いで手を広げた。

 

「早く…しろ…私も長くはもたないっ!」

 

「その喋り方…藍か!」

 

魔理沙は状況を素早く飲み込むと、サォルブドライバーを装備し、コードを入力した。

 

『コード確認 marisa!』

 

そして帽子からゲンソウレイスカード『魔法使い』をセットし、腕をブンブンと回すポーズをとった。

 

「行くぜ……変身!」

 

そして勢いよく円盤を回すと、バッと手を広げ、変身シークエンスを終えた。

 

『spark, great miracle magic!White & Black wizard!』

 

霊夢と同じように、現れたアーマーが彼女の周りをぐるぐると回り、スーツをまとった魔理沙に合体した。

 

「マジで助かったぜ藍」

 

そうして仮面ライダースパークは爆誕した。赤地に紫の入ったスーツの上に、紫がかった白黒のアーマーを着せたその姿は、いかにも魔理沙であった。

 

「ったくよぉ!めんどくさい時に出てくれるわねっ!」

 

そうして毒づくノヴェムフォックスはすでに九尾のものになっていた。だがすでに住職たちは隠れ、目の前には三人のライダーが立ちはだかっていた。仕方ねえなとでも言う様子を見せ、ノヴェムフォックスは格闘線を始めた。

 

「相手が強いほど燃えるってもんだぜ!」

 

対しスパークは箒型の武器『マジシャンライザー』を構え、殴りかかった。そして一瞬の隙を見せたノヴェムフォックスに、ダイヤモンダーの銃撃が叩き込まれ、更にはメディスのランチャープルーネラの銃撃も入った。

 

「いい加減うっとおしいわねっ!」

 

ノヴェムフォックスは苛立ちを感じて声を荒げた。その瞬間、彼女の尻尾アーマーが展開し、ミサイルが飛び出た。

 

「本能寺みたいにしてあげるわっ!」

 

スパークは急いでマジシャンライザーをバスターモードに変形させると、ミサイル一発一発撃ち落とした。しかし寺が焼けるのは阻止しつつも自身はミサイルをもろに受けていた。

 

「あと何発耐えるわけ?」

 

嘲笑うようにノヴェムフォックスは言い、倒れこむスパークに蹴り上げを叩き込んだ。

 

「…フフフ、別に攻撃を受けてやったのはそれしかないからじゃあないぜ。お前の下半身に自然に近づくために転ぶ理由が要るんだよ。メディイイイイイイイ!!プレゼントだぜっ!」

 

そう得意げに叫び、メディスへと()()()()()投げ渡した。箔付きの青と綺麗な黒で構成されたカプセルを見て、当の本人は目をパチクリさせていた。

 

「お前っ!私が地底で作ったモンを!人のものは盗っちゃダメって習わなかったわけ!?」

 

「お前こそ人質は卑怯って習わなかったのか?」

 

魔理沙はそう皮肉を込めて返すと、立ち上がりつつ斧型の可変武器『ゲンソウスペルアンロッカー』を胸に叩き込んだ。

 

「くっ…」

 

そしてラビの銃撃も降り注ぐ中、メディスはカプセルをバックルに挿入した。

 

「なんであんたが持ってるか知らないけど…ありがたく使うわ」

 

そして指を弾くポーズをとり、バックルの試験管パーツを畳み込んだ。

 

『GRADE UP…… FAZE2』

 

瞬間、青の粒子と小さな光たちがメディスの体を包み込み、その姿を変化させた。

青い流星のような意匠の仮面に、ラメが散った軽装が目立つ姿である。禍々しく不気味なブラッドリリィとは対照的に美しく幻想的なスターライトペンタスフォームとなった。

 

「さて、どんなもんかしらね…」

 

そうして駆け出した瞬間、目の前からはスパークもノヴェムフォックスも消滅していた。どういうことだと戸惑うメディスンの耳に、後ろで唸るダイヤモンダーの音が聞こえた。

 

「これって…」

 

まさかと振り向いてみれば、戦闘中のスパークとノヴェムフォックスがおり、その後ろには自分が蹴ったはずの地面が見えていた。

 

「なるほど…」

 

そして再び駆け出した。瞬きのまもなくノヴェムフォックスが後ろに消えたことで、改めて彼女は「自分が高速移動していること」を認識した。

 

「でやあああああ!!」

 

素早く踵を返すと、ノヴェムフォックスへと連続蹴りを叩き込んだ。

 

「速いわね…」

 

「隙あり!」

 

困ったような様子を見せながら立ち上がるノヴェムフォックスに、ラビは続けて着地してフリーズパーフェクターをぶつけると、庭へと叩き出して爆発を叩き込んだ。

 

「くっ…」

 

屈んで痛がるノヴェムフォックスを前に、三人は並び立った。

 

「行くぜ!」

 

『yeah!shooting Star break!』

 

そしてスパークはバスターモードのマジシャンライザーのグリップを五回引き、必殺技を発動した。

 

『INCREASE EFFECT』

 

続けてメディスはメディットブレスから外したカプセルをエクスブライガンに入れ、スターライトペンタスチャージインバレットを発動した。

 

スパークの極太のビーム、メディスの超高速連射弾、ラビの六連ガトリング弾が同時にノヴェムフォックスを襲った。

そして大爆発が巻き起こり、草木を揺らした。

 

「よっしゃ!」

 

『XX!…goodbye!』

 

倒してやったぜとスパークがガッツポーズをとった瞬間、超高圧の極細レーザーがラビの頭部を貫いた。

 

「なっ……」

 

戸惑う隙すらなくラビは弾け飛び、氷がジャラジャラと地面に落ちた。

 

「あらら、氷精だけ…かあ。それじゃあ復活されるじゃないのよ」

 

爆炎の中、ノヴェムフォックスはゆっくりと立ち上がった。スーツには、焦げ跡ひとつない。

 

「この程度じゃ効かないわよ」

 

「なんだと…!」

 

そして煙幕を張ったかと思うと、ノヴェムフォックスは姿を消していた。

 

 

 

 

 

「ぐああああ!!」

 

「大丈夫ですか!?」

 

ガイアも加わっていたが、彼女はけが人である。依然ストームスネイクが完全に優勢であった。

 

「さ、諦めて消えることね!」

 

『…魔理沙が持ってきた奴、試しましょう』

 

ストームスネイクはもうトドメを刺すだけという状況下であり、もはや有無は言えない。菫子から託された紫のライドレンズをアイズバックルにセットした。

 

『look the fantasy!』

 

『「変身!」』

 

そしてヒールがレバーを押し込んだ瞬間、二人の変身が一瞬だけ解けた。かと思えば、どちらも粒子化せず、二人が光の塊に。そうして一つの塊へと融合していった。

 

「二人が…完全に一つに…」

 

そうしてヒールの新たな姿が誕生しようかという瞬間、二人の融合は解けて弾き飛ばされた。

 

「え…?」「出来ないのね…」

 

「なーんだ。焦って損したよ」

 

そしてストームスネイクは改めて余裕の態度を取り、蓮子とメリーの始末に向かった。

 

「喰らえっ!」

 

そして拳を振り上げたその瞬間、銃撃がストームスネイクの腕に当たった。

 

「今度はなんだい…」

 

そして見た先には、ギルティドライバーを構えた早苗がいた。

 

「映姫様っ!お借りしますよ!」

 

『guilty or not?』

 

そして腰に装備すると、ストームスネイクの前に立ちはだかり、その姿を見据えた。

 

「でも…それは私用ですから…動くかどうか…」

 

「大丈夫。奇跡で動かしますから!」

 

そう威勢良く叫ぶと、「是」「非」「曲」「直」「庁」のコインをスロットに挿入した。

 

『start up…』

 

続けて「白」のコインをセットし、トリガーを握り、叫んだ。

 

「変身!!」

 

to be continued…




「奇跡の神風を見よ!」

奇跡を起こせ、仮面ライダーモノ!

「行くよメリー!」「オーケー蓮子!」
『大変身!』

そして…

次回、「煌々跋扈」


みなさんこんにちは。最近メディスンのせいでロリコンが切り開かれつつあるサードニクスです。
今回はだいぶ駆け足な上、戦闘ばっかりな回でした。

・リブレッス初陣
・スパーク初陣
・ラビ初陣
・酔鬼新フォーム
・メディス新フォーム
・ヒール新フォームフラグ
・モノ変身フラグ
・リヴィエルビークル

詰め込みすぎだぜ…まあ詰め込まないと話が進まんので。
どれぐらい詰め込むかっていうとあれですよ。最終フォーム初登場は一話二人ずつですからね。ヤベェよ。



みんなの!変身ポーズコーナー!
U。
一言で言うと木野さんですね。

まずエボルトみたいな感じで手を広げつつクリスタルを見せつけます。
こっから完全にアナザーアギト。腕を下でクロスしつつクリスタルをセットし、手を広げつつボタンを押して変身ですね。
ではまた


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憑依華&風神録編
第15話 煌々跋扈


前回、14話は!
リブレッス、U、酔鬼のアトムアヴェムとの戦いに、ヘルゴットが到着。確実に追い詰め、ついに撃破。追いついたサグメ達も変身を解き、他の面々へ地上へ戻る準備を促した。
さとりはこいしへ、地上へ向かうことを促す。すぐのちに、地霊殿に映姫が来た。地底の様子に話すのもそこそこに、さとりが彼女用に作ったアイテムを渡す。そして、そこでノヴェムフォックスの襲撃。映姫へ逃げるよう促し、追いつかれそうなところへ巨大なマシーンに乗ったみとりが。一気に地上へと逃げて行った。
霧の湖で、妖精たちを襲うフェアリートルーパーとスズメ女。湖底に逃がれたチルノだが、そこで不思議なアイテムを発見する。直感が当たり、チルノ、変身。ミスティアを正気に戻し、妖精たちを取り戻すことに成功した。ライダーの集まる命蓮寺へと連れて行く。
そのさなか、命蓮寺へストームスネイクの襲撃。みとり達が到着するが、それはつまりノヴェムフォックスも加わるということ。ノヴェムフォックスに対して魔理沙が変身。さらにメディスも新たな形態へ。だが追い詰める様子もなく、取り逃す。
そしてストームスネイクとの戦いは不利の一方。そんな中、早苗は映姫の使うはずのアイテムを手に取り……。
・仮面ライダー酔鬼 金剛鬼
・仮面ライダーラビ ウィンゲルフォーム
・仮面ライダースパーク マホウツカイフォーム
・仮面ライダーメディス スターライトペンタス


「変身!!」

 

早苗はそう叫び、気取ったポーズを決めてトリガーを引く。瞬間。白い粒子たちが早苗の周りを飛び交った。

 

『OK!ROKUMONSEN! white monotone!』

 

そんな音声が流れ、白い粒子が早苗の体を包み込む。純白のスーツと、青と緑のレースが美しいドレスアーマーが形成された。映姫のような早苗と言うのが最も似合う姿であろうか。その名は、仮面ライダーモノ。

 

「崇めよ我を!祀れよ山を!讃えよ神を!謳えよ幻を!そして吹き荒れる奇跡の神風を見よ!」

 

前方へと勢いよく手を広げ、そう叫んだ。その声はどこか震えたようなもので、泣いたようなもの。

その様子を見て、ストームスネイクは面白いとばかりに笑った。

 

「ククク…私の真似事とはよくやるわ」

 

「…あなたを正気に戻すと約束します。だからこそ、あなたの居ない間も守矢神社を守り抜いてみせます!」

 

そうして涙ぐみながらも覚悟を込めた目でストームスネイクを見据え、「白」を外し、「剣」のコインをセットしてトリガーを引いた。

 

するとの彼女の手元に『ヌサスラッシャー』が現れた。名の通り幣を模した剣である。

 

「でやあああああああ!!!」

 

「おおっと、速いわねぇ」

 

ストームスネイクはモノの連続での斬り付けを余裕の表情で受け流しながらそんなことを言った。

その態度がより怒りを煽る。ドグマも飛び出し、殴りかかった。

 

「無駄!」

 

「おぐぁ!」

 

しかし叩き込まれた蹴りに苦しみの声を上げる。そうして怯んでいる間はモノが1vs1の状況である。やはり押され気味どころか、負けかけている状況だった。

 

「こうなれば…もっと重量が必要ね」

 

そんな中、ドグマは僧の腕輪を外し、金色の数珠のような腕輪を取り出した。

 

「力、お借りしますよ星!」

 

そしてその『仏の腕輪』を左腕に取り付け、レバーを倒した。

 

『heavy!閃光!救って!栄光!描いて!』

 

すると変身音がドライバーから響き、ドグマの姿が変わった。閃光と共に白いスーツが着せられ、グレーのプロテクターが重ねられる。そしてそこに虎柄のの超重装がさらに載る。

仮面ライダードグマ 仏術ヘビィフォームである。

 

「これまた一段と重そうになったねぇ!」

 

そこにストームスネイクの操作する御柱が突撃した。しかしドグマはそれを胸アーマーで受け止め、手に現れた巨大クロー『タイガースクラッチ』を叩きつけたのだ。

 

「喰らえっ!」

 

そして肩のの宝塔型パーツでストームスネイクへと高熱レーザーを浴びせた。ストームスネイクはそれを腕でガードしたが、隙は生まれた。その背中にモノが連続で攻撃を叩き込んだ。

 

「煩わしいっ!」

 

ダメージこそないが、うっとおしそうな様子を見せ、エックスゴースターでの射撃を飛ばす。しかしそれはモノの胸の鏡が放った光を受け、反射するのであった。

 

「いでっ!」

 

自分の攻撃だからか、多少は効いたようだ。いまがチャンスとばかりにモノとドグマは駆け寄った。

 

「でやぁ!」「くらえ!」

 

「くどいぞ!」

 

しかしストームスネイクのパンチを受け、ドグマは大きく怯み、モノはぶっ飛ばされた。まだ勝てる様子はない。

 

「だあああ!」

 

「よいしょっと!大丈夫かいあんたら!」

 

その時、イシグマスラッシャーとマシンラピスがストームスネイクへと突撃した。

 

「うおう!危ないねぇ」

 

ストームスネイクはそれをスレスレでかわし、エックスゴースターでの銃弾を向けた。

 

「危ないはどっちのセリフだい」

 

「ああいうのは避けるに限るわよん」

 

「そいつはごもっとも」

 

『set confirmed』

 

へカーティアの一言に同意を見せつつ、酔鬼はマシュヒョウタンをセットし、フォームチェンジするべく姿勢をとった。

 

『confirmed change standby……3……2……1』

 

そしてレバーを引き、変身のシークエンスを終えた。その体から重装が剥がれ軽装になり、軽装が剥がれ超軽装になる。その二本角は片方が折れたものであった。

 

『formname is 狂鬼!GOGOGO!』

 

その名は仮面ライダー酔鬼 狂鬼である。小刀『総屠』『滅鬼』を構え、ストームスネイクへ駆け出した。装甲の少なさ故の軽さで、身軽かつ高速に攻撃を叩き込んだ。

 

「小賢しいねっ!」

 

そしてストームスネイクが拳を振り上げた時、滅鬼は光を反射し、ストームスネイクの目に飛び込ませた。

 

「目が…!」

 

だが追い詰めた訳ではない。怯んだ隙を狙って攻撃をしてみるが、今一つダメージは小さい。

あとひと押し足りない。誰もがそう思った時、蓮子の頭の中に一つのものが浮かんだ。

 

「もしかしたら…!」

 

そんな希望とともに、ポケットからお守りのネックレスを出した。

 

「へカーティアさん!これもしかしたら!」

 

そしてそのネックレスから青い石を外し、ヘルゴットへと投げ渡す。彼女はうまいことキャッチし、瞬時に言いたいことを理解してベルトにセットした。

 

『Set!Tierra power!』

 

「やっぱりね…!」

 

そしてボタンを押し、フォームチェンジのシークエンスを完了した。

 

『Perfect HellGod Tierra!』

 

そんな音声とともに青の装甲が着せられ、ヘルゴットはティエラフォームへと変わった。すぐさま状況を理解すると、棍棒『ヘルスウェポンロッド』を構えて、ストームスネイクへ迫った。

 

「どいつもこいつちょこまかと!」

 

うっとおしそうに酔鬼を蹴飛ばし、背後に迫ったヘルゴットへ回し蹴りを繰り出した。

しかしそれはジャンプでかわされ、再び回り込まれて酔鬼と一緒の連続攻撃を叩き込まれるのであった。

 

「やれやれ…」

 

しかし余裕の態度は崩さない。実際未だにダメージは小さく、うっとおしい以上のことはなさげだった。

 

『light!』

 

対しドグマは装甲をパージしてライトフォルムになった。グレー一色にまとまったアーマーと、胸のペンデュラムがナズーリンを思い起こさせる。

 

「たっ!」

 

両腰の『マウスダウザー』を手に持ち、連続での斬り付けを繰り出した。そのスピードは先程の重さからは想像できないほど早く、ドグマ、酔鬼、ヘルゴットの猛攻に怯んだ体制を直す余裕は無いようであった。

 

「このっ!」

 

「させませんよっ!」

 

ストームスネイクが耐えかねて御柱を飛ばさんと準備したとき、前にはモノが立ちはだかった。

 

『OK!ROKUMONSEN! black monotone!』

 

そしてジャッジメントコインを「白」から「黒」へと入れ替えて、フォームチェンジした。

黒い体にヘビのような尻尾とカエルのような胸部アーマーが目立ち、背には注連縄のようなリング、両腕は御柱のようなデザインとなった姿、仮面ライダーモノ シュバルツディーアティーだ。

 

「でやああああ!」

 

『hammer monotone!』

 

そして「槌」のジャッジメントコインでカエルの頭部を模す巨大ハンマー『フロッグブレイカー』を呼び出し、三人のトリッキーな猛攻に怯んだストームスネイクの胸に叩きつけた。

 

「くっ…まあいいか、ここは撤退させてもらうわ」

 

そう捨て台詞を残すと、煙幕を放出し、そこから姿を消した。それが晴れた頃には戦いの残骸と疲れ果てた少女が残っており、命蓮寺の玄関はボロボロだ。

 

 

 

 

 

「あー、私らも鍛えにゃいかんねー」

 

「そうねぇ、変身は出来ないにせよ…戦いの邪魔にならないくらいはしたいわねえ」

 

村紗と一輪は治療を受けながらそんな話をしていた。慕う聖が戦っているというのに何もできない不甲斐なさが二人の中にはあった。

 

「多少協力はしたいが…どうすればイイのだか」

 

「…」

 

ナズーリンと星もまた同じ感想であり、どうにか鍛えなければと、天子に止められつつ木刀を振る早苗を見ながらそう思った。

 

 

 

時を同じくして、カメ仙ことセンニンタートルと霊夢は河童のアジトへ来ていた。一見洞窟のようであるが、入ってみれば中はまさしくラボである。

 

『やはりいいものだな。我が家というのは。…ほら、あそこにサォルブドライバーがある。あれが私が殺される直前に完成させたものだ。君にやるよ。カードなら魔理沙にもらえ』

 

「ん、ありがとう」

 

そんな風にして、霊夢はカメ仙からいくつかアイテムをいただいていた。

 

『外にロボットとバイク一セットがある。片方をくれてやるよ』

 

「それは助かるわね!」

 

カメ仙の気前のいい様子に、霊夢も大感謝中であった。ケチな河童の癖に一体なぜこんなにも協力的なのかという疑問もあることはあったが、それを吹っ飛ばす気分だ。

 

「…あんたは」

 

そうして霊夢が言われたように外のマシンを見てみようと、そう思ったとき。外に立つみとりが視界に飛び込む。

 

『…みとり!』

 

「…その声!……おじさん」

 

みとりの言葉を受け、霊夢は訝しげな視線を送った。対しカメ仙はメカでもわかるほど言葉に詰まった様子を見せていた。

 

『ちょっとだが……河童は変わった。お前のことも、受け入れるはずだ』

 

カメ仙が絞り出したのはそんな言葉であった。対しみとりはそう、と軽く答え、霊夢達へ近寄った。

 

「おじさんは優しかったね、昔から。……お父さんは?」

 

『……30年前に姿を消したあとは分からない。私も探したが…ついに会えなかった』

 

「そっか。……にとりはどこにいる?」

 

『あいつならあっちに居る。用ならそっちに行くといい』

 

カメ仙の返答に無言で頷き、みとりはその場を去った。しかし少し歩いたのち立ち止まり、振りまかないまま

 

「でも私は…私を愛さなかった河童を許さないし…私を恐れた人間も許すつもりもない」

 

そう言い放って去っていった。その背をカメ仙は寂しげに、霊夢は気まずげに眺めていた。

 

「…河童にも色々あんのね。にとりの姉だっけ?」

 

『ああ、そして私の姪だ。だがにとりとは腹違いで…人間のハーフさ。だから追い出された。……かつての河童はもっとコミュニティが小さかったんだよ』

 

「そう、……で、そのマシンってのはどこ?」

 

『ん、忘れた。あっちに置いてある』

 

カメ仙は霊夢を案内し、滝の裏へと消える。そのすぐ横の住居へとみとりは向かった。

 

「人間の匂いだな。魔理沙の紹介か?それとも霊夢か?文か?…いや、河童の匂いもする。ナニモンだ?」

 

「…半妖じゃないか?」

 

そんなみとりを迎えたのは、河童二人だった。茶髪と黒髪の二人は不審者に対し訝しげではあったが、半妖である事実に特に疑問や嫌悪はないようである。

 

「姉さん…!?」

 

「久しぶり…だな」

 

目をぎょっと開いて飛びでたにとりに暗く沈み気味な声色でみとりは挨拶をした。

 

「その錠、ずっと持っててくれたんだ…!」

 

「お前だってその鍵を…」

 

みとりは泣きながら抱きついてきたにとりに戸惑う様を見せたが、すぐに笑顔を浮かべた。少し、涙もこぼれた。

 

「にとりの姉ちゃんってこと?」

 

「そうなんじゃない?事情わかんないけど」

 

そんな様子を、仲間の河童達は困り気味な様子で見つめていた。だが、全員で見合わせると、にとりの家族なら仕方ないと結論づけ、みとりを歓迎する姿勢をとった。

 

「河童が変わったのも嘘じゃない……のかな」

 

 

 

 

 

「へぇー、50年でそんなに文明が進歩するものですかぁ!」

 

同刻の人里にて、メリーと蓮子、そして早苗は焼肉中であった。外の世界にいた三人故にそういった話題でおおいに盛り上がり中だった。

 

「まあ、これでもだいぶネタバレ控えめにしてるけどね」

 

「ハハハ、ナイス配慮です。来年は元号も変わるって話ですからねぇ。…まあ、幻想郷にはそんな関係ないですけど」

 

「そっか、早苗ちゃんって平成生まれなんだもんねぇ。平成生まれの17歳と話すのって不思議なものね」

 

メリーは空を見上げるような遠い表情でそんなことを言った。そんな中、秘封倶楽部二人の視線は早苗の手に持ったコップへ向かった。

 

「…お酒?」

 

「ん?ああ、そう言えばそうですね。外の世界じゃあ犯罪ですね。犯罪的美味しさ。なんてね、ハハハ。…もうお酒に違和感とか抵抗とかないですね。ここってお酒のコミュニケーションがメインなんで」

 

「そんなもんかしらねぇ」

 

「どうせ帰らないっていうので後ろめたさもないですよね。…あ、二人はおやめくださいね。あなた達は帰るんで」

 

そう語った早苗は笑っていたが、目の奥には覚悟にも似た、力強さのような眼光が潜んでいた。

 

「…それもそうね」

 

メリーはそういうのには敏感である。早苗はこんなふうに休んでいても、頭の奥は神奈子のことでいっぱいなのだと、容易に考えついた。

 

「さ、私お腹一杯になっちゃいました!…デザートと行きませんか?紅魔館なんかで」

 

そんな表情をすぐ一転し、二人に微笑みかけた。二人は顔を見合わせ、頷く。よその館で?と思わなくもないが。ともあれ早苗はそれ受けて立ち上がり、会計を始めた。

 

「私が払いますよ!」

 

「いやいやいや。悪いわよ。私達は自分で払うわ」

 

「いいんですよ。あなた達のおかげで助かってる面もあるんですから!…さ、行きましょうか!」

 

蓮子達に有無を言わせずすぐに払ってしまった。二人はどうしようかと顔を合わせたが、厚意なら受け取るほかないと、二人は諦めるのだった。

 

 

 

 

 

「ほーう、納豆トーストねぇ。意外と美味しいもんなのかね」

 

その頃の紅魔館には、萃香が来客としてそこにいた。レミリアのテーブルの前に座り、一緒に軽く食事中だ。

 

「納豆は何にでも合うもんよ」

 

「吸血『鬼』がよくいうよ」

 

「全く別物よ。あなた日光平気でしょう?むしろ日光浴とか好きそうね」

 

「カカカ、違いないね」

 

そんなくだらないことを話しながら、二人は食事と一緒に酒を嗜んでいた。萃香は初ワインだが、お気に召したようである。

 

「なんか遠慮気味ね。じゃんじゃん飲みなさいよ」

 

「いやぁ…でもさ、葡萄酒って高いんだろ?その瓶、いかにも高級そうだし」

 

「鬼にもそんな気遣いあるのね」

 

「失礼しちゃうねぇ」

 

そんなことを話すうちに、食事が終わってしまった。萃香は命蓮寺で食事を済ませていたのと、レミリアは寝起きだったのもあり、食事が軽いものだったのだ。

 

「さあ、夜風を浴びに行こうかしら。ドラドラ!」

 

「参上!…またドライブか?」

 

外に出たレミリアが呼んだのに合わせてドラクリヤーが飛び出た。ドラクリヤーの問いにレミリアは頷きで返し、その上に乗ってヘルメットを被った。

 

「あんたも行く?」

 

「もちろん!私のバイクは門の外にあるからさ」

 

萃香は満点の笑顔で返し、美鈴の横に置かれたイシグマスラッシャーに飛び乗った。

 

「珍しく寝てないわね」

 

「寝てたことなんてありませんよっ!」

 

そんな軽口を美鈴にぶつけると、反論を聞き流しながら霧の湖へと駆け出した。

 

「いやー、いいねえ。キレーな湖だよねぇー。夜だから若干視界が悪いけどさ」

 

「そこがいいのよ。月がまん丸って訳じゃないけど…キレーね」

 

「それって外の世界では愛の告白らしいよ」

 

「Souseki Natumeぐらい知ってるわよ。でもそれ、本当は言ってないんだってね、フフフ」

 

レミリアの笑みを受け、萃香は彼女の本気度のつかめなさを今一度認知した。そんな時、イシグマスラッシャーのフロントライトに湖の麓の人影が映った。

 

「おい、あんた、どうしたんだ?こんな時間帯に外に居ると危ないぜ?」

 

ドラクリヤーのかけた心配の一言を受け、照らされた女は振り返った。影に紛れていた九本の尻尾が見えたことで、そいつが八雲藍であることはすぐにわかった。そしてその手で、リグル首根っこを掴んでいるのが見えた。

 

『覚醒!』

 

『set confirmed』

『confirmed change standby……3……2……1』

 

二人はすぐさま変身の準備を終え、それぞれ手を顔に重ねるポーズと拳を包むポーズをとった。

 

「変身」

「変身!!」

 

『ジェ・ヴォー・ダン』

 

『formname is 乱鬼!GOGOGO!』

 

そしてジェヴォーダンと酔鬼が同時にバイクから降り、それぞれドラクリヤブレードと乱喰刃を構えた。

 

『X!』

 

「人の顔見るなり剣構えるなんてひどいわね。…醒妖!」

 

『fox…change』

 

それを見て彼女もリグルを投げ捨てると、ノヴェムフォックスへと姿を変え、戦闘態勢をとった。

 

「さぁ、楽しい殺戮と…」「…宴の始まりだ!」

 

二人はリグルの命のあることを確認し、合図で逃げるよう促した。そして決め台詞を飛ばす。

同時にノヴェムフォックスも駆け出し、二人へ拳を叩き込んだ。

ジェヴォーダンは素早く受け身を取り、酔鬼は避けつつ乱喰刃の圧倒的リーチでカウンターを決めた。

 

「ふぅーん、結構やるじゃないのさ!」

 

大したダメージではないが、多少の怯みはあるようだ。ドラクリヤーからのガトリングも受け、大きく隙を作ったその時。

 

「うぐっ!」

 

『あんまり暴れないでほしいわねー』

 

「やれやれ」

 

スライダーモードのチェイスナイターに乗り込んだヒールと自転車『フルブレッサー』に乗るモノが突撃した。

 

『ファング!ドラクリヤエンド!』

 

チェイスナイターにぶっ飛ばされ、転がった隙を見てジェヴォーダンが蹴りを放った。その首を締め上げたその瞬間に、酔鬼からの斬りあげをくらい、爆炎を巻き起こした。

 

「やったわ…」

 

「…あんまり舐めないでもらいたいわねっ!」

 

その爆煙を振り払い、ノヴェムフォックスはかかと落としを叩き込んだ。

 

「無事…ですって…」

 

「偽爆発か…ったく…!」

 

「硬さなら自信ありでね!」

 

そんな風に胸を張ると、ビーム弾を全方向に放射し始めた。

 

「危ないわね…!」

 

「……メディットブレス、知ってる?」

 

「あ?知らないわよっ!」

 

「よし、そんなら死んでもうわ!」

 

ジェヴォーダンの返答を受け、改めて攻撃を強めた。ジェヴォーダンと酔鬼は距離を置かれて一向に攻撃できないままであり、銃を武器とするヒールだけが攻撃できる状況だった。

 

「くっ…!」

 

耐えかねたモノはフルブレッサーに乗り直し、ノヴェムフォックスへと近づく。放つ銃撃は反射能力を使ってかわし、ヌサスラッシャーを叩き込める距離まで接近した。

 

「どりゃ!」

 

しかしノヴェムフォックスはパワーも武器である。拳を顔面に叩きつけられ、フルブレッサーから叩き落とされた。銃撃をやめた隙に近づいたジェヴォーダンと酔鬼も回し蹴りでふっ飛ばし、乱喰刃が軽く肌を切られるだけであった。

 

『どうしましょう…メリー…』

 

「…もう一度試しましょう」

 

『look the fantasy!』

 

三人がダメージを負った状態であり、追い詰められているといって差し支えない状況である。

そんな中、メリーは今一度紫のライドレンズを試した。

 

「うわっ!」

 

「きゃっ!」

 

結果はやはり失敗であった。メリーと蓮子は尻餅をつき、さらに追い詰められたのである。

 

「馬鹿ねぇ、二人の人間が融合なんて無理よ。いったい誰が体を操作するのよ。魂同士が喧嘩するに決まってるじゃないの」

 

そんな二人を見下して嘲笑を送ると、トドメをささんとエックスゴースターを構えた。

 

「…くらえっ!」

 

「誰が喰らうかっての!」

 

いつのまにかシュバルツディーアティーとなっていたモノが、ノヴェムフォックスの背に迫った。しかし裏拳を叩きつけられるのみである。ふっ飛ばしたモノの方を見て、先にこちらにトドメを刺してやろうと振り向いた。

 

その瞬間、ノヴェムフォックスの動きが止まった。

 

「てめぇ……!…………今だ!…私が止めていられるうちに仕留めろ…!」

 

藍が出たのだ。その隙に三人は立ち上がり、必殺を用意した。その様を見て、蓮子はニヤッと口角を上げた。

 

「式アプリ…そういうことね!!」

 

雄叫びのような声をあげ、ノヴェムフォックスの背中にぴったりとガジェットスマートを当てた。

 

「こっち、来てもらうわよっ!」

 

そして式アプリを起動し、新規登録タブを押した。一瞬の読み込みのうち、登録完了の画面へと変わった。

 

「っ!」

 

その瞬間、ノヴェムフォックスは再び動き出した。しかし、すでに必殺技の準備を終え、三人のライダーはノヴェムフォックスへと迫っていた。

 

「フランスズナイトメアっ!」

 

「クイチギリ!」

 

まずジェヴォーダンがドラクリヤブレードがら出現させた狼のビジョンで空中へノヴェムフォックスを打ち上げた。そして酔鬼が斬り上げを叩き込む。

 

『finish monotone!』

 

「ライダー剛力パアアァァァンチ!!」

 

そこに一瞬遅れて「決」のコインを読み込んだモノが近づき、右拳を腹へと叩きつけた。

 

「いってぇ…やれやれ」

 

しかしまだ倒せない。どんな防御力してんだと三人が顔をしかめる中、蓮子だけは得意げな笑顔で立ちはだかっていた。

 

『ここは…どこだ?』

 

その手に持ったガジェットスマートからは、藍の声が響いた。驚いたメリーが画面見てみると、そこには3Dモデルとなってキョロキョロする藍の姿があった。

 

「式を移動できるアプリ…って訳ね。藍さん、協力頼みますよ」

 

『よくわからんが…まあいいだろう。紫様が自身のものを託すような人間だからな。信頼はするさ』

 

「…なるほど!私達が操れない融合ボディなら…式が操ればいい!よく考えたわね…蓮子…」

 

メリーのその言葉を自慢げに受けとると、腰にアイズバックルを巻き、腕にはライドブレスを装備した。

 

「もっと褒めて貰ってもいいんだけど…そうも言ってらんないわね。行くよメリー!」

「オーケー蓮子!」

 

『look the fantasy!』

『インディゴブルゥ!』

 

そしてアイズバックルに紫のライドレンズを挿入し、ライドブレスにガジェットスマートをセットした。

 

「準備はいいですね?藍さん!」

 

『ああ、分かってるさ。ライダーだろう?……大変身!』

 

藍がガジェットスマート越しに掛け声を放ったと同時に蓮子はメリーと手を繋ぎ、レバーを押し込んだ。

 

「無駄なことをっ!」

 

そんな彼女達に、体勢を取り直したノヴェムフォックスが銃撃を加えた。あたりは爆発を巻き起こし、豪炎が吹き上がった。

 

『we are bewitching night fantasy!』

 

そんな中、けたたましい音と眩い粒子の閃光と同時に、炎の中からゆっくりと足音が迫った。

 

グレーのボディスーツをまとう体は身長体格共に蓮子ともメリーともつかないもの…いや、二人をちょうど合わせたような体型であった。

 

そのアーマーは青と黄土色の二色からなり、頭部は金髪を模したものだ。狐風の耳と九尾らしい尻尾型ミサイルポッドが目立つ姿は、まさに八雲藍らしきもの。

何より目を引くのは、紫のツインアイである。

 

「パクりやがって…九尾の姿は私のもんなのよっ!」

 

そんな文句を言いながら、ノヴェムフォックスは銃撃を飛ばした。その全てを胸部アーマーで受け止めつつ、ゆっくりと接近した。

 

「「このフォーム…名付けてエクストラモードだな」」

 

蓮子とメリーのものが重なった声で、ヒールは言った。その語り口は何者でもなく明らかに藍のものであった。

 

「「改めて言うが…体、貸してもらうぞ!」」

 

そう言い放つと、ゆっくりだった足を早め、走る勢いそのままにパンチを叩き込んだ。

 

「ぐごっ!」

 

先程のモノとは違う、本気で効いたパンチのようである。さらにそこに、至近距離でミサイルを叩き込み、その怯みにヤクザキックを叩きつけた。

 

「この…!」

 

このままやられてたまるかと距離を置き、エックスゴースターでの射撃に切り替えた。

 

「「やれやれ…」」

 

そうして手を広げたヒールの手の上に、チェイスナイターから飛び出た小さな狐型マシンが乗る。

 

「「そっちが遠距離で来るならこっちもそのつもりだ」」

 

そのマシンを変形させ、ライドグリップと接続し『フォックシューター』を完成させた。そしてライトニングテレガンも組み立て、二丁拳銃スタイルでの射撃へ。

 

「うおおおおお!!」

 

そしてノヴェムフォックスがヒールに集中するあまり背面に晒した隙に、ジェヴォーダンは引っ掻きを繰り出した。

 

「こいつっ!」

 

ジェヴォーダンから距離をとった瞬間に、モノと酔鬼のキックを叩きつけられた。

ミサイルと銃撃の猛攻もあり、完全に体勢を崩し、転んでしまった。そのまま四人に囲まれる。

 

「くそっ!」

 

このままではまずいと判断し、煙幕を展開した。

 

「「今更足掻くだけ無駄だ!」」

 

だが、藍は戸惑わない。フォックシューターとライトニングテレガンを合体させ、ショットガンモードへと変えた。

 

『illusion eye!』

『Enter…Ready…Go!!』

 

そしてアタックドロップを読み込んでEnterボタンを押し、必殺を発動した。

 

「「ライダー…キリングッ!!」」

 

その光弾が煙幕を貫き、ノヴェムフォックスの青い眼光向かって飛んだ。

 

「撃ち落としてあげるわよっ!」

 

それを撃ち落そうとするが、グッと軌道を変え、背面からノヴェムフォックスを撃ち抜いた。

 

「うぐっ!」

 

今度こそ煙を吹っ飛ばしながら爆発し、中から砕けたエックスゴースターとUSBが転がり落ちた。

 

「…大丈夫ですか?」

 

「「近づくなっ!!」

 

早苗が接近しようとしたその時、ヒールが全力でそれを止めた。しかしそれも虚しく、九尾に首根っこを掴まれた。

 

「うぐっ!」

 

「ハハハハハ…ハーハッハッハッハッハ!!」

 

「「洗脳を受けてなくても…九尾はそう言うやつだっ!!」」

 

ヒールは九尾の右手を狙って銃撃を放った。避けたことで早苗は離され、脱出に成功した。

 

「くっ!…それなら!」

 

そして体に戻ろうとヒールが近づいたその時、九尾は自分の体に火を放った。

 

「あんた…イカれてんのかっ!」

 

「あいつに体を奪われるぐらいなら…こうして死んでやるわっ!アーッハーハッハッハッハ!!」

 

萃香の怒号も受け流し、大声あげて笑ったまま燃え尽き、黒焦げの遺体が霧の湖に沈んでいった。

 

「「…っ!」」

 

その様子を見てひとまず戦闘は終わったのだと、ヒールも変身を解いた。

 

「っぶっはぁ!……変な気分ね」

 

「っふう…。そうね。ええと、藍さん大丈夫ですか?」

 

『体を失っても問題はない。…多少面倒だが、新しい体を探すさ』

 

そう言ってスマホの中の藍が笑ったのを見て、ひとまず事態は解決したと判断し、少女たちは紅魔館へと帰って行った。

 

to be continued…




「川を荒らさないでもらいたいね」

「「変身!」」

次回、「山は河を惟ひ、河は山を惟ふ」


感想のなさで心がもう息苦しいサードニクスです。
まあでも、最終回には「面白くなかったけど続けた根性は認める」って言ってくれる人ぐらいは現れるはず…!
で、今回以降は、ほぼ全話において新フォームか新ライダーが二個ずつ出ます。尺が足りねえのよ。
そうそう。幻想仮面少女、外伝まで全部書き終わったらシーズン2やろうかなーとか。
募集ライダー数を絞り、そしてシーズン1で未変身キャラへスポットを当ててやろうかなとか。
って思ったんで仮募集しちゃいまーす。そうしないとストーリーができないということですね。これはこのシーズン1を書いてての反省点です。
しかし今回はサードニクス要素てんこ盛りの皆さん的にはクッソどうでもいい回ですよね。ドグマ新フォーム、ヒール新フォーム、モノ初陣ですもんね。
次回はタイトルでお察しのあの子です。

みんなの!変身ポーズコーナー!
今回はリブレッス!すっごく単純!
キーボードにコードに入力します。
そしてゆっくりと右手を握りながら胸元へ近づけます。同時にカードをセット。
そして手を広げつつ円盤を回して変身です。


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第16話 山は河を惟ひ、河は山を惟ふ

真冬に真夏の話を書く違和感。


「…つまり、地震が近々起きるってわけ?」

 

「…ええ、そうです」

 

夕食を終え、皆が寝静まった中、天子はただ一人命蓮寺の縁側でボーッとしていた。

そこに訪ねたのは衣玖であった。

 

「しかも連続的に。…なおかつ大きいのが。だから総領娘様も気をつけてくださいね。…あとこれ、プレゼントです」

 

衣玖が告げたのは、地震のことである。要は彼女の本業だ。そんな中、彼女は背中に抱えた袋を丁寧に天子に渡した。

 

「…幸い、あなたのお父様はあなたの活動を応援しています。…地上を救いなさいと、そうおっしゃいました」

 

「てっきり比那名居家の長女がどうのとか言われると思ったら…」

 

袋の中は要石だった。その手にしっかりと受け取ると、衣玖に感謝を述べた。

 

「ありがとう、衣玖」

 

「全く、説得大変だったんですから。…いつからこんなにあなたに首突っ込むようになったんですかね。私は」

 

「…私は、あんたがご近所さんでいつも助かってるわよ」

 

「やれやれ…」

 

衣玖は恥ずかしげに顔をかくと、視線を変えてあからさまに話題を逸らした。

 

「あと、一つ。伝えておくことがありました」

 

「なによ」

 

「…比那名居家は神官の家系。…だからあなたが託された力も、あなたならうまく使える」

 

「…は?」

 

「洩矢様に、手を握られたりしましたね?そういうことです。というわけでこれも渡しておきます」

 

疑問を浮かべる天子を気に留めずバンバン話を進め、続いてアイテムを投げ渡した。

それが何か思い出すのには、少し時間がかかった。

 

「…これ、サグメの変身アイテム…?でも、色も文字も無い…」

 

「ブランクのものです。彼女にワードレッサーを借りるなり、中身を出すなりしてください。……あと、託された力も、何もなしには開花しませんからね?…では、私は他にも伝える所があるので」

 

そう言い残すなり、羽衣で風に乗り、ふわふわと飛び去っていった。聞きたいことはいくらでもあったが、天子は彼女の背をひとまず見送ることにした。

 

 

 

 

 

翌日の魔法の森で、ルーミアは朝の散歩中であった。そこで見かけた灰色の厚い円盤型の宝石に、彼女は興味津々。

 

「きれいな宝石ねー…。もらっちゃお」

 

周りに持ち主がいないことを確かめ、それをポケットにしまった。一応「宝石はもらいました。ルーミア」と地面に書き、散歩を続けた。

 

「…んー、そろそろかなー」

 

そんな中、反対側のポケットから懐中時計を取り出し、時間を確認した。ルナチャイルドからもらったお気に入りのアイテムである。

 

「チルノと合流しなきゃ」

 

今日は散歩だけが目的ではない。怪我をした親友のお見舞い、それも目的の一つなのだ。

 

「おーい!ルーミアー!」

 

「お、チルノー!」

 

霧の湖で二人は合流した。お互い目を見合わせると、人里へ足を進めた。

 

「…それにしてもどうしたのよ、その服」

 

「え?いや、えっと、いめちぇん…ってやつ?」

 

彼女を一目見たルーミアの一言はそれであった。長袖を着たチルノは珍しく、寒くもない、むしろ暑いこの季節に着ているのは違和感の凄まじいものなのだ。

 

「腕に怪我でも?…でもすぐ治るしね。まあ、いいや」

 

「ファッションだってば!あたいはいつもどおりだって!」

 

多少の疑問を抱きつつも、とりあえずルーミアは真っ直ぐ目的地に向かった。

 

「やっぱ活気があるわねー」

 

「だからあたいは人里もすきなのよ」

 

怪人被害が落ち着いた人里は、あの時のような警戒と閉塞感のあるものではなかった。しかし地底の実働隊が倒された関係で、地上での活動が激化するのは目に見えたこと。

しかし無邪気な妖精と妖怪はそんなことを知るはずもなく、ただただ純粋に元気を取り戻したというふうに感じていた。

 

「でも…なんで稗田家なんかに連れてかれたんだろうなー」

 

「レミリアの話だと逃げた先の人里で倒れてたとこ見つかったみたいよ。で、夜だったから竹林に行く余裕もないし人里の病院も閉じてたんだって。だから見つけた阿求が自宅に運び込ませたらしいわ」

 

「ふーん、大変だなー」

 

そんなことより早く行こうとルーミアが急かしたのを受け、急ぎ気味に稗田家に入っていった。

思った以上にしっかりともてなされたのに多少驚きつつ、客間に寝る患者の元へ向かった。

 

「私のためにわざわざお見舞いありがとね…」

 

上半身を起こし、患者リグルは二人へ感謝を口にした。二人はそんなこと気にすんなと返し、リグルの元へ座り込んだ。

 

「大丈夫なのかー?」

 

「そうだよ、首絞められたって」

 

「うん、そのあと投げられたけど、まあ大丈夫。もう帰ってもいいぐらい」

 

「それならいいんだけど」

 

元気そうに語るリグルを見て、二人は安堵の表情を作った。訳あって来れなかった大妖精とミスティア、そして響子と三月精にも伝えなければと思い、見舞い後の予定を軽く決めた。

 

「…幽香さんにも心配かけちゃうなあ」

 

「幽香さん…って、ああ、そういえばリグルって幽香のところに住ませてもらってるんだっけ。いいなー、あたいもレティあたりの家に押しかけようかなー、三月精でもいいなぁー」

 

「風見幽香かぁー、怖いって聞くけど…」

 

「変わった人だけどすごくいい人だよ!私も色々面倒見てもらってるんだぁー。ちょっと怖いけど」

 

その言葉を受け、二人は少し意外そうな様子でふーんと返した。その時、足音が客間へと近づいた。

 

「んー?リグルじゃないの。なんだってここに?」

 

「九尾に攻撃されて怪我してたのよ」

 

通り過ぎようとしていた天子、そして蓮子とメリーの三人だった。ふすまが開いていたために、寝ているリグルの様子が見えたのだ。

 

「ヒール…と、ガイアっ!」

 

突如リグルは目の色を変え、布団の中から飛び出すと、エックスゴースターを取り出した。

 

『X!』

 

「醒妖!」

 

『firefly…change』

 

「ッ!…洗脳されてるわよっ!」

 

閃光と炎が彼女の鎧を形作り、緑の怪人バーニングバグに姿を変えた。驚愕する面々だったが、チルノはすぐさま前に立ちはだかり、秘封倶楽部と天子に逃げるように促した。

 

「ここはあたいが戦う!あんたらは目的があるんでしょ?まかせなさい!あたいは最強だからね!」

 

そうして左の袖を捲り上げ、クロッカーを露出させ、手からカチカチとウィンタースフィアを固め上げた。

 

「成功…!あたいはやっぱ冬の力を持ってるのね!」

 

「…どうする、メリー」

 

「任せましょう。チルノちゃんだっけ?問題あったらすぐ呼んで!すぐ向かうから!」

 

「了解!」

『がっちーん☆』

 

自慢気味に氷をセットし、クロッカーのレバーへと手を向けた。

 

「仮面ライダー…だったんだね。チルノちゃん。それなら始末させてもらうよ!」

 

「やれるものならやってみなさい!…にしても、やっぱダサい腕輪だなあ…だからわざわざ隠してたのに…。まあいっか、変身!」

『ばっきーん!』

 

自分へとエックスゴースターを向けるバーニングバグをしっかりと見据え、くるんと周り、ピースサインを決め、クロッカーのレバーを180度回転させた。

 

『うぃんげるふぉーむ!』

 

氷が砕けると同時に、花びらが散る。冷気が彼女のスーツを形作り、胸には氷の花が咲いた。

 

「派手に…ぶち凍らす!」

 

ファイティングポーズをとり、ホバー移動で真っ直ぐに接近していった。しかし、近く途中でそういえばこの姿近接に弱かったと思い出し、ぐるっと軌道を変え、バーニングバグを庭に誘い出した。

 

「くらえ!」

 

予定通り誘い出されたバーニングバグはその名の通りと言うべきか、ラビへと火炎弾を放射した。

 

「うおっと、危な!」

 

すんででかわし、ダイヤモンダーを発射した。しかし相手の火炎放射をくらい、弾丸は一発残らず溶け落ちてしまった。

 

「このっ!」

 

素早く回り込み、続けて弾を放った。一応当たったものの、いとも簡単に溶かされ、氷での拘束は叶わない。

 

「だっ!」

 

さらにまっすぐ飛び蹴りを叩きつけられ、一気にダメージをもらった。

 

「おごっ…げほっ!」

 

防御力が低いラビには大ダメージであり、当たりどころが悪ければ変身解除や一回休みもあり得る威力である。

ラビは警戒を強めて立ち上がった。

 

「…くらえ!」

 

そしてもういっぱつ蹴りをぶち込もうとした時、バーニングバグにルーミアが掴みかかった。

 

「離して。あなたを傷つけるつもりはないんだよ」

 

それを軽く投げ飛ばし、再びラビへと視線を向けた。

止めなければと、今一度体に力を入れた時、ポケットから先ほどの石が転がり落ちた。

 

「…」

 

何気なく拾ったその瞬間、石はルーミアの体内へと消える。驚く彼女をよそに、バックルへと変化して彼女の腰へ出現した。

 

「…もしかして!」

 

彼女は確信のもと、バックル『シャドウライト』の上部のボタンを押し、両手を勢いよく広げた。瞬間、灰色の宝石から白の成分は消え、真っ黒に変わった。

 

「へーん、しんっ!」

 

ルーミアの掛け声に合わせ、黒い光が彼女を包み込んだ。

その様子を見て、バーニングバグはラビ、ルーミア両方が視界に入る位置に移動した。

 

「まさか…ルーミアも」

 

バーニングバグが視線を送ったと同時に黒の輝きは消え、中からは漆黒の戦士が現れた。

 

「ま、なんとかなるのだー!…なーんてね!」

 

仮面ライダーリライ S・ダークフォームである。

その首にはためく白のマフラーが逆に黒さを目立たせるその姿は、朝の庭にはなんともミスマッチで、昼間っから闇をまとって飛ぶルーミアらしいものであった。

 

「氷と闇…どっちも火の弱点だと思うんだけどね!」

 

そうしてバーニングバグはリライへと向かった。リライは素早くかわすと、ハイキックを横顔へ叩きつけた。

 

「うぐっ…結構痛いことしてくれるね…!」

 

今度はエックスゴースターでの火炎放射を飛ばした。リライはそれをスライディングでかわし、さらに直感のもとベルトに手を当て、そこから『S・スピアー』を召喚した。

 

「だあああああ!」

 

そして槍を突き立て、蹴りを叩き込んだ。ラビの足元に吹っ飛ばされ、さらにラビからはかかとのフォールアイシクラーでの攻撃をぶち込まれた。

 

「ぐう…こうなれば!」

 

突如拳のアーマーをかちんかちんとぶつけ始めた。何をするのだと身構える二人をよそに、彼女は思いっきり手を広げた。

瞬間、閃光が放たれ、二人の目に直撃した。

 

「うぐっ…ずるい……光るのはオスだけなんだぞ!」

 

「私自身、ちょっと光ってみたかったんだよね」

 

騒ぎ立てるラビへとゆっくり近づき、エックスゴースターを向けた。

 

「させない…!」

 

そんな中、リライはバックル下部のボタンを押した。すると、シャドウライトの色が白へと変わり、光がリライを包んだ。

 

そして彼女はH・サンフォームへ。純白の体に黒のマフラーがはためく、先ほどとは真逆の姿だ。

 

「これなら…!」

 

ベルトから出現したのはライフルであった。その『H・ライフル』を構え、光弾をバーニングバグへ発射した。

 

「いでっ!」

 

どうやら効果はあった模様。もう一度足止めをしてやるとばかりに、閃光を放った。だが、それはリライが吸収し、エネルギーに変わるのみ。光をまとったパンチを胸に叩き込んだ。

 

「うぐぁ!」

 

さらにその背後にはラビが居る。背中へと拳を叩き込み、肩からフリーズパーフェクターを出現させ、背中へとミサイルを押し当てた。

 

「こいつっ!」

 

「正気に戻れっ!」

 

バーニングバグが避けようとするも虚しく、空中へと一気にぶっ飛ばされる。

 

「えっと…そう、かやく。かやく割り増しにしといたから、綺麗な花火になるといいわね」

 

そう決め台詞を決めた瞬間、リライもH・ライフルへとエネルギーを集め、空中のバーニングバグへと撃ち放った。

 

「うぐああああああ!!」

 

そして空中ではまだ東にいる日光を浴びながら、花火が咲いた。

 

「よっと」

 

「危なっ」

 

落ちてくるリグルを二人でキャッチし、今一度先程の布団に寝かせた。

 

「やれやれ、またお休みだよ」

 

ルーミアがため息をつく。二人ともリグルのそばに座ろうとしたその瞬間、大地が大きく揺れだした。

チルノは完全に座りかけだったので、派手に足を投げてずっこけてしまった。頭を庇いながら立ち上がった彼女の元には、さらに地震が襲った。

 

「ただごとじゃ…なさそうだね。よく分かんないけど」

 

 

 

 

 

そこから戻ること数十分前。

天子と蓮子、メリーの三人は阿求の元で最近の人里のことを聞いていた。

 

「あー…つまり、ここんとこ洪水とか害虫被害が相次いでると…」

 

「ええ、いまいち原因が分からなくて…」

 

報告書の束を文章に書き起こしながら、阿求は困り気味に告げた。人里の雰囲気こそ明るいが、奥には妖怪や巫女への不信感が募っているとか。

 

「そいつはヤな話だねぇ」

 

そんな中、にとりが阿求の後ろからひょっこりと現れた。天子は若干驚きつつ、何故ここにいるかと尋ねる。その横にはみとりもおり、ただ黙々と阿求の作業を眺めていた。

 

「…災害やらそういうのは我々としても困るんだよ。どうにかしたいんだけどね。誰にせよ、川を荒らさないでもらいたいね」

 

みとりがそう答えたのに頷き、天子は資料へと視線を戻した。その横にみとりが近づいて耳打ちを送る。

 

「姉さんは…人里がどうなってるか知りたいんだ。110年ぶりぐらいの地上だからさ」

 

天子はそれを聞いて頷き、ニヤッと笑顔を浮かべてみせた。

 

「フン、この地上は私のものさ。案内ぐらいならしてやらんでもないが?」

 

「…助かるよ」

 

にとりは気取った様子の天子へ感謝を告げると、阿求へ軽く礼を言い、姉を連れて外の調査へと出た。

 

「ほら、来てよ天人サマ」

 

「はいはい」

 

にとりに招かれ、三人も彼女の後を追って人里の中心部へと出た。

 

「うおっと!」

 

そんな中、地面が揺れる。なかなか大きな揺れで、蓮子は転びかけてメリーに助けられるほど。

 

「…思ったよりデカイわね。案内なら今度するわ。今は一旦解散して調査といきましょう」

 

それを聞き全員が納得し、秘封倶楽部、河城姉妹、天子へと別れ、それぞれ調査を始めた。

 

「…ん、あんた、河童の…えっと、にとり!文から話は聞いたわよ。私は姫海棠はたて!新聞記者!」

 

そんな河城姉妹の元に飛びよったのははたてであった。にとりは一応文から話は聞いていたので、軽く挨拶を済ませ、先を急ごうとした。

 

「もしかして…災害のことについて調査中?」

 

その背に、まさに図星の言葉が投げかけられた。

 

「何か知ってるのかい?」

 

「守谷神社…それだけ。八坂神奈子が怪人になった情報を持ってるなら…まあ、どうすべきかはわかるんじゃない?」

 

それを聞き、にとりは行動指針を決めた。対しみとりもそこに行くことに同意し、二人は妖怪の山へと足を進めた。

 

「…それならこいつの出番だね」

 

そう言うとみとりはリモコンのようなものを出し、『KP010』を入力した。にとりの何をしてるんだという視線に対し、ドヤ顔で応えた。

 

「うおおおおお!ロマンっ!全河童の浪漫ッ!」

 

「ふふ……まぁ、私もその血が流れてるってわけよ」

 

瞬間、巨大トレーラーKP-010が空を飛んで二人の元に降り立った。にとりは目をギラッギラに煌めかせ、みとりとKP-010を交互に見つめた。

 

「ここの獣道なら通れるね。行くよにとり」

 

「ほいほーい!」

 

ハイテンション気味に操縦席に乗り込み、二人は頂上めがけて駆け出した。

 

「へいへいへーい、これ絶対河童の機械だよな?にとりー、乗ってるー?」

 

そんな中、魔理沙が箒に乗って並走した。呼びかけを受けたにとりはスピーカーを展開し、マイクへ返答を返した。

 

『にとりだよ。ほらほら、姉さんも』

 

『久しぶりだね。相変わらずムカつく顔だな霧雨魔理沙』

 

「おおーう、みとりも居んのか。勇儀とは仲良くやってるかー?」

 

『それなりにね』

 

それを聞いて、魔理沙は優しい笑みを浮かべ、そうかと返した。

 

「さ、ここを登りゃ…!」

 

魔理沙はそう言うとサォルブドライバーを装備し、変身の準備を始めた。

 

「うぐっ!」

 

その時、悲鳴とともに早苗がフルブレッサーごと石段を転がり落ちた。

 

「大丈夫か!?」

 

「おい、早苗!…気絶してる」

 

「一人で戦ってたのね…」

 

魔理沙が駆け寄ったと同時ににとりも操縦席から顔を出し、早苗の様子を見た。しばらく考えたのち、KP-010に早苗を乗せ、石段へとペダルを踏んだ。

そうして三人が到着した守谷神社には、すでに戦っていたであろうストームスネイクの姿はなかった。

 

「…奥にいるのか?」

 

「さあね、もう別の場所で行動中かも…」

 

二人はKP-010から飛び降り、警戒を解かぬまま境内を見渡し始めた。

 

「あら、いらっしゃい、もう八坂様ならいないわよ」

 

その時、神社の方から声がかかった。にとりにはあまりにも聴き慣れた声で、思いっきり振り向いてしまった。

 

「…遊びたいなら、私が相手してあげるわ」

 

雛である。その手にはエックスゴースターとUSBが握られていた。

 

「…変身!」

 

『reading!shrine maiden!』

『eden!great miracle power!shrine maiden!』

 

魔理沙は手早くスパークに変身を終え、ゲンソウスペルアンロッカーを構えた。何気なく取ったカードは巫女だ。紅いボディスーツと頭はそのままに、アーマーがリブレッスのものとなっていた。

 

『X!』

 

対し雛も変身すべく準備をし、エックスゴースターをゆっくりと前へと突き出した。

 

「醒妖!」

 

『disaster…ready』

 

瞬間、どす黒い煙がくるくると回りながら雛を包み込んだ。すぐさま煙は晴れ、薄暗い緑の鎧の怪物が現れた。厄女だ。

 

「ふふふ…あなたが相手してくれるのねっ!」

 

「いくらでもしてやるぜっ!まぁ、一瞬でお前の負けだけどな!」

 

そうして睨み合うと、二人はお互いに突撃した。攻撃を仕掛ける一瞬、スパークはゲンソウスペルアンロッカーを投げ捨て、戸惑った厄女の胸に拳を叩きつけた。

 

「…まぁ、結構強いじゃない?」

 

しかし余裕の態度である。スパークの頭へと蹴り上げを叩き込み、エックスゴースターを接射した。倒れこむスパークを再び蹴り上げると、空に浮いたスパークへ回し蹴りをぶつけた。

 

「くっ…。なぁ、にとり。これ武器とか積んでないのか?機銃とかそういう」

 

「うーん…姉さん、どう?」

 

「ない事はないけど…もっといい方法がある。これを読み上げなさい」

 

そうしてみとりが取り出したのは一つのメモ用紙であった。にとりに持たせると、読むように今一度促した。

 

「こ、コアドライバー、コード2…?」

 

『set up Code 02』

 

「!?」

 

言われた通りその言葉を口にしたにとりの腰に、突如銀色のバックルが現れた。

 

「まさか…ナノマシン!?さ、さすがだよ姉さんっ!」

 

にとりは驚愕したままベルトと姉を交互に見たが、厄女が戦闘態勢を取っているのを見やると、にとりもゆっくり身構えた。

 

「これを使いなさい」

 

「了解!」

 

『phase blue!version 0.1!』

 

渡された青い記録媒体『サファイアコア』を『コアドライバー』にセットし、ゆっくりと相手を指差すポーズを取った。

 

「さ、妹とその友達ばっかにやらせてもいられないね。コアドライバーコード1!」

『set up Code 01』

『phase red!version 0.1!』

 

みとりもルビーコアをセットし、にとりの隣で同じく指差すポーズを取った。

 

「「変身!!」」

 

「姉妹仲のいい事でっ!」

 

その時、厄女が駆け寄って接近した。ゲンソウスペルアンロッカーの銃撃も気に留めずに跳び上がると、二人に当てるべく両足でのキックを繰り出した。

 

『armored rider phase blue!』

『armored rider phase red!』

 

当たろうかというその瞬間、二人はレバーを引き変身シークエンスを完了した。すると二人の全身にパイプが巡り、厄女の両足を跳ね飛ばした。

 

「どりゃああ!!」

 

そこにスパークからのキックをもらい、厄女は姿勢を崩した。そして、同時に変身を終えた河城姉妹が蹴りを繰り出す。

 

「ここで沈んでもらうよ、あんたにはもう手は残されちゃいない!」

「ここで詰みよ、あなたにはもう進む道はない!」

 

パイプが放った水蒸気から、緑と黄の眼光がきらめく。歩み出た細い赤と厚い青のシルエットの戦士。

 

「貴女は…」

 

「この姿?…仮面ライダーリヴィエル、レッドフェイズ!そう呼びなさい!」

 

「それなら私はブルーフェイズってとこかな?…さ、行くよ!」

 

真っ先にリヴィエルブルーフェイズが駆け出し、腰からグリップを取り出した。そのグリップから緑のビーム曲剣が生成される。C2ブレードである。

 

「でやあああ!!」

 

その重々しい一撃をくらい、厄女は大きく怯んだ。そしてブルーフェイズの背を飛び越え、レッドフェイズが一撃を叩き込んだ。さらに軽く何発も斬りつけ、最後にブルーフェイズが重いのをぶつける。

 

「…なーるほど、にとりってば強いじゃないの。にとりのお姉さんも…でも、無駄っ!」

 

だが厄女に大きくダメージのある様子はない。平然と立ち上がり、スパークに銃撃を浴びせると、目の前の二人のリヴィエルに連続で回し蹴りを叩き込んだ。

 

「他のライダーよりかは多少弱いみたいね。一人ずつなら潰せるわ!」

 

「やめてくれ…雛っ!」

 

真っ先にリヴィエルブルーフェイズの元へ駆け出し、その首根っこを掴んで壁に叩きつけた。片手で迫り来るスパークへ銃撃を当てると、首を掴むその手を一層強くした。

 

「にとりっ!…いいだろう、リヴィエルの真髄を見せてやるわ!」

 

そんな彼女を尻目に、リヴィエルレッドフェイズは素早くリモコンを操作した。すると、KP-010が展開し、中からバイク飛び出る。その『KP-110』は厄女を跳ねてブルーフェイズを救出し、レッドフェイズの前へと戻った。

 

「さ、吹っ飛んでもらうよ!」

 

そう言って続けてコードを入力すると、KP-110がのタイヤが90°回転し、スライダーのような形へ展開した。

その後ろへと小型のマシン『KP-310(みと)』が合体し、戦闘機のような形態へ変化した。

 

「なによ…そ、うっごぉ!?」

 

ようやく起き上がったかと思うと、その胴へとKP-110のボディが再び追突した。先ほどより長距離ぶっ飛ばされた、その隙に、スパークは銃撃を飛ばした。

 

「そりゃあ!!」

 

そこへとさらにチョップを叩きつけ、リヴィエルブルーフェイズの斬撃も入る。ついには転んでしまい、大きく隙を晒した。

そしてKP-310からのビームカッターをくらい、さらにダメージを負った。

 

「さぁ、フィニッシュだ!」

 

『climax charge!KP red!』

 

そしてリヴィエルレッドフェイズは腰からグリップをとってKP-110へと接続し、必殺を発動した。

 

「くっ…!」

 

「おっと、逃がさないぜ!」

 

『shrine maiden!wrecking spark!』

 

「くらえっ!」

 

『climax charge!KP red!』

 

逃げようとする厄女を狙い、二人はそれぞれレバーを引き、円盤を回す。必殺を発動し、空中へ飛び上がった。

 

「スプラッシュスライダアアアアッ!」

 

「オンミョウ張り手!!」

 

激流を右足に発生させ、キックをかました。スパークは同時に張り手を繰り出した。

 

「…切り札にしといて良かったわ」

 

だが二人の攻撃は()()()外れた。お互いにぶつかってかき消えたと同時にKP-310からの大量のビームカッターが放たれる。

 

『XX!…bye-bye!』

 

対し厄女も必殺を発動した。そして飛び交うカッター弾を回し蹴りで全て跳ね返し、銃口をリヴィエルレッドフェイズへ向けた。

勝った。マスクの中で雛がニヤッと笑ったとき、KP-310の主砲が光った。

 

「…なに、ビームもあるの!?」

 

油断しきっていた厄女はそれを避けきれず、全身でその光線を受け止めてしまった。瞬間、爆風が三人んを撫で、中からは砕け散ったエックスゴースターとUSBが転がり出た。

 

「八坂神奈子…許さない…!よくも雛を操ってくれたな!」

 

真っ先に変身を解いたにとりは、ゆっくりと雛を抱きかかえた。そして、戦う決意を固めると、雛の無事を確認してKP-010へ乗せた。

 

「…人里で災害が増えてたのはこいつの厄のせいだったわけだ」

 

魔理沙は溜息をつくと、自宅へとそそくさと帰った。みとりはその背を見つめつつ、KP-010に乗り込んで玄武の沢へと戻ることにした。

 

 

 

 

 

「…!?地震か?けっこうでかいぜ」

 

「…これはひどいわねー」

 

突如起きた地面の揺れに、魔理沙は目を覚ました。

彼女は影狼と呑んでいるうちに寝てしまい、人里の彼女の家に居たのだ。

 

「…なんか外もやかましいぜ」

 

そして、外のガヤガヤとした騒ぎ声を聞き、扉を開けて外に出た。

そんな彼女の目に飛び込んだのは、真っ赤に燃え盛る向かいの家であった。

 

「…ここんとこ火事多いなぁー、地震も」

 

やれやれという様子で放った影狼の言葉に、魔理沙は顔をしかめた。…おかしい、雛はもう厄を振りまいては居ないはず。

 

「原因は他にあんのか!?」

 

焦った様子で博麗神社へと飛んでいくその背を、路地裏で女の影が見つめていた。

 

「…せいぜい、頑張るといいわ」

 

青白いオーラを放ちながら、女は影へと消えた。

 

to be continued…




「…あなたにその力を持たせちゃいけない気がするの」

母の言葉に、従って。

次回、「ブルシヴァントの人形師」

みなさんこんにちは。圧倒的エタリグ信者サードニクスです。ゆうリグも好きだしこの小説はゆうリグ推しだけど。
個人的にルーミアはバカルテットの中では飛び抜けて頭がいいイメージです。でもバカっぽい雰囲気と話し方で特に頭良さげに認識されてない…っていう。
アホの子が聖者は十字架に〜って言わんでしょ。っていう感じ。
対してクロッカーのアホみたいな音声大好きです。固い見た目をぶっ飛ばす音声。☆がつく音声とか初めて見ましたよ。そこはやっぱセンスですなー。
そうそう、平ジェネfinal見ました!
いやぁー、名作でした。ネタバレするとクウガがサムズアップします。


みんなの!変身ポーズコーナー!

今回はラビ!割と地味。
まず、ウィンタースフィアを精製します。
氷精なので、冬以外はできない模様。で、クロッカーにセットでがっちーん☆。
そしてピースサインの右手を左肩の前にやり、「変身!」
レバーをぐるっと回し、押し込んでばっきーん!
手を広げ、うぃんげるふぉーむ!で変身完了です。


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第17話 ブルシヴァントの人形師

更新が遅い男!
スパイダーマッ!!
(約:スパイダーマンのゲームやってました)


「幽々子……お前なら……託せる……。これを……」

 

光の中、声が響いた。とても優しい声で、聞いているだけで何故か涙が湧きそうなもの。グッと涙をこらえ、幽々子はゆっくりと頷いた。

 

「……変な夢ね」

 

夢であることはすぐわかったのだが、なによりも今まで見たことのない風景である。起き上がった幽々子は布団を片付けながら思案していた。

 

「何ですかそれ?……外の世界のおもちゃですか?それとも変身のアイテムですか?」

 

そんな幽々子に、妖夢が話しかけた。何の話だと思って足下を見れば、そこには確かに謎の機械らしきものが。

 

「私も初めて見たわ」

 

「えっ、じゃあそれって…」

 

「…でも、どういうものかは分かるわ。()()()がくれたんだもの。きっと、私の助けになるはずよ」

 

幽々子の言葉に対して妖夢は、よくわからないという印象を抱いた。しかし、何を考えてるかわからないのはいつものこと。それなりに根拠あって助けになると言っているのだと、妖夢は信じた。

 

 

 

 

 

「…何かしら、これ」

 

同じ頃の魔法の森の、アリス宅にて。

曇った空は太陽を隠し、あまりスッキリしない朝だ。

彼女はポストに何やら包みが投函されていることに気付いた。ガサゴソと開けてみれば、何やら機械のようなもの。

 

「…!?」

 

何気なく触れてみれば、突如脳内に情報がなだれ込んだ。驚きつつ、再び拾ってみる。

 

「…ママ!?」

 

改めて見た脳内映像に映ったのは、神綺の姿である。魔界人である自分からすれば、母のようなもの。母からと思しきものがいきなりポストに入っていれば、驚くのも無理のある話ではないだろう。

 

「ん?お前のママからか?」

 

「…お母さん、ですか」

 

そんなアリスの元を訪ねたのは、魔理沙と聖であった。珍しい顔触れだななどと言いつつ、彼女は来客分含めて朝食の準備を始めた。

 

「あら、わざわざ悪いですよ」

 

「いいのよ。ほら、ブッキョーではくれるものは受け取らないと失礼なんでしょ?」

 

「…よくご存知ですこと」

 

聖は微笑みつつ、ゆっくりイスへ腰掛けた。対し魔理沙は自宅かなんかのような態度で座り込み、コップの水を飲み干した。

 

「いやぁー、しかし直射日光が無くても暑いなこの季節。…アリスは相変わらず厚着だな」

 

「魔界に比べりゃ涼しいわよ」

 

「え、魔界ってそんな暑いのか?」

 

「私が居たエソテリア郊外は凄かったですよ、本当に。太陽が二個あるんじゃないかってぐらいで」

 

「嘘だろ。聞いてるだけで暑いぜ」

 

魔理沙はそんなことを言うと、スカートから扇子を出して仰ぎ始めた。コスチュームに似合わぬ和の雰囲気に、アリスはふふっと笑いを漏らした。

 

「…あー、すみませーん!」

 

そんな中、もう一人の来客が。開いたままの扉から中を覗き込み、知った相手の魔理沙へと挨拶を送った。

 

「あなた…確か闇の妖怪さんですね」

 

「うん、ちょっと道に迷って。そしたらお家があったから…」

 

アリスはそんなルーミアをイスに座らせ、その前に一食食べていくことを勧めた。

 

「あとでとりあえず人里に送るわ。あなたはルーミアね、幻想郷縁起で見たことあるわよ」

 

「阿求のやつかー。意外と私って知れてるのかなー」

 

「私も幻想郷縁起で知りましたしね」

 

聖がそんなことを言ったタイミングで、アリスは全員の前へとサンドイッチを置いた。それぞれ礼といただきますを言うと、朝食が始まった。

 

そうしてアリスが口にサンドイッチを運んだ、その時。

 

「楽しそうにしてるねぇ…」

 

爆風が室内へと吹き荒れた。同時に、青の禍々しいエネルギーを着た怪人が現れる。

ただ事ならぬ気配を感じ、四人は怪人から距離を置き、警戒態勢をとった。

 

『南無三宝!』

 

『コード確認 marisa!』

『reading!wizard!』

 

そして、三人はアリスを守るような態勢で変身の準備をし、それぞれポーズをとった。

 

「「「変身!」」」

 

『heavy!閃光!救って!栄光!描いて!』

『spark, great miracle magic!White & Black wizard!』

 

聖と魔理沙の方からけたたましい変身音が鳴り響き、その姿がスパークとドグマへ変わる。同時に光がルーミアを飲み込み、その姿をリライへと変えた。

 

「バトルスタートだぜっ!」

「これが…法の光!」

「行くわよっ!」

 

そしてドグマとスパークが駆け出し怪人「禍女(まがつおんな)」へとそれぞれに攻撃を叩き込む。その後ろからリライは「H・ライフル」で援護を行った。しかし禍女は怯まない。攻撃をその体で受け止め、パンチをドグマの頭に叩きつけた。

 

「うぐっ…!」

 

「消えなさい!」

 

そして蹴り上げを叩き込む。アーマーの厚い仏術ヘヴィが故に大きなダメージではないが、スペックに依らない性能のスパークが食らえばどうなるか。そんな警戒が湧いたとき、魔理沙の脳内にふとカメ仙が思い浮かぶ。同時に、彼のくれた武器もだ。

 

「試してみるか…!」

 

そしてカメラ型のガジェット「ウォッチングレイブン」を取り出し、カラス型に変形させて飛ばせた。すると、巧みに攻撃をかわしつつ禍女の気を引いてくれるではないか。その隙を見て、魔理沙は魔鳥のゲンソウレイスカードをセットした。

 

『reading!dark bird!』

 

そうして読み込み音声が響く中、腕を振り回し、ポーズを決めた。そして円盤を勢いよく回し、フォームチェンジを始める。

 

『beat!burst!dynamic dark bird!』

 

そんな音声と同時に、アーマーが別のものに変わる。全身に黒と黄緑を散らし、カラスらしさを見せるそのその姿の名はマチョウフォーム。その体には大量の銃口が煌めいた。同時にウォッチングレイブンは変形し、ゲンソウスペルアンロッカーと合体してキャノンモードを成した。

 

「くらえっ!」

 

リライとスパークの銃撃、そしてドグマの自身を顧みない突撃により、禍女は大きく怯みを見せた。だが、決定打ではない。すぐに体勢を立て直して反撃を繰り出した。それは、暴風と同じく災厄、隕石である。

 

「うごぉっ!」

 

ドグマはそれを一身に受け、一瞬にして変身解除に追いやられた。気絶した聖にアリスが駆け寄り、その身を案じる。そんな聖の袖から、ふと手紙が落ちる。何かと目を向ければ、それは魔界で受け取ったものらしい。差出人は神綺だ。

 

「…ママ!」

 

そうして、力になれない悔しさが、彼女の中を駆け巡った。しかし、それは一瞬。すぐさま決意を固めると、人形たちへ糸を伸ばした。

 

「行くわよっ!」

 

人形たちが禍女へと向かう…が、それは簡単に跳ね返されてしまう。驚くアリスへ近づき、禍女は横蹴りを叩きつけた。

 

「おごっ…」

 

「アリスっ!!」

 

「ライダーみたいな戦闘手段もないくせに…」

 

禍女の吐いたその言葉を受けたとき、アリスは今朝のことを思い出した。送られた機械は、もしや。そんな考えの下彼女は今朝の機械を取り出し、魔理沙や聖のやったように腰に押し当ててみた。

するとどうだ、やはり予想通りに、腰にベルトが巻かれたではないか。

 

「へぇー、めんどくさいことになったなあ」

 

禍女はため息をつきつつ、アリスへと向かう。だがスパークとリライはそれを許さない。連続の銃撃を叩き込み、その行く手を阻む。

対しアリスは、同梱されていた四つのディスクと説明用紙を眺めた。素早く目を通すと、「アクア」と「ウィンド」のディスクを、そのエレメンツドライバーにセットした。

 

『アクア・ウィンド』

 

「この形態は…初期型・αかぁ…。イマイチ好きになれない名前ね」

 

『ready…go』

 

イマイチなセンスへとぼやきつつ、上部のボタンを押した。そして、ゆっくり腕を前へと伸ばし、親指と人差し指で三角を形作る。

 

「…変身!!」

 

『α・mode ACTIVE』

 

掛け声とともに大きく手を広げる。させるかと禍女は駆け寄り、拳を構えた。その瞬間、アリスが光に包まれる。突然のことに目を瞑った禍女の腹に、蹴りが叩き込まれた。

 

「そうね…。ツバイスターターと呼ぶわ!」

 

そう宣言したそのアリスの姿は、先ほどまでの華奢な儚さを吹き飛ばすものであった。金の模様が引かれる白いボディに着せられるのは、青と緑の羽織。魔道士のようなその姿は、美しさと同時に強さを見せつけるもの。

仮面ライダーエレンツ ツバイスターターである。

 

「でやああああ!」

 

まず繰り出したのは、風をまとった蹴り込み。続いて水圧を込めたパンチを顔面へ叩き込む。吹っ飛ばされるようなものではないが、怯みが生まれているのは確かだ。

そこへスパークの集中砲火とリライの頭部を狙った銃撃が刺さる。

 

「今ねっ!」

 

そしてエレンツは腰のショットガン「ツインツインガン」を取り出し、暴風弾を連続で浴びせた。さらに水流弾を叩き込む。

 

「くらえっ!なのだああああああ!!!」

 

そしてのっそりと気だるげに起き上がった時に、リライのH・ライジングパンチを叩き込まれる。今度は大きく仰け反る。その隙に、エレンツとスパークは銃口を向けた。

 

『blast α ready…FIRE』

『dark bird!GENSOU deleter!』

 

「スタートブラストッ!」

「ダァーイナミック!ニュークリアキャノォォオン!!」

 

かたやベルト上部ボタンを押し、かたやカードを武器にセットする。双方のエネルギー弾が、渦を描いて一つになりながら禍女へ飛んだ。

 

「やれやれ…」

 

そう気だるげに呟くと、青いオーラを放出しながらエックスゴースターの銃口をいまやと迫るエネルギー弾へ向けた。

そして、放たれる。必殺ですらないたったの一発で、二人の合体技は消し飛び、空中に爆風を生んだ。

 

「くそっ…。逃げたぜ!」

 

そしてもはや姿はなかった。魔理沙は悔しげにため息をつくと、暴風で荒らされた屋内を片付け始めた。

そんな中、変身を解こうとしたリライの手を、エレンツが掴んだ。

 

「…どうしたの?」

 

外骨格が形作る仮面の中、ルーミアは疑問を浮かべた顔をした。アリスは数秒の思案ののち、リライへと強烈な頭突きを叩き込んだ。戸惑う彼女へ詰め寄り、ベルトへツインツインガンを当てた。

 

「…あなたにその力を持たせちゃいけない気がするの。いえ、その力自体危険よ。…消させてもらうわ。安心なさい。暴れなきゃあなたは傷つけないわ」

 

そう言って、シャドウライトへ風圧弾を放った。リライは転がって避けると、起き上がりつつエレンツの腹へ両足キックをねじ込む。

怯みつつも、エレンツは蹴られた勢いままに距離を置き、ディスクを抜いた。

 

『フレイム・グランド』

 

「初期型・βってのはやっぱりセンスないわよねえ」

 

『ready…go』

 

新たに二枚ディスクを挿入し、今一度変身ポーズを取ると、ベルト上部のボタンを押した。そうして、エレンツの体を光が包み込む。

 

『β・mode ACTIVE』

 

そんな音声とともに光の塊がリライへ駆け出した。それに対抗して、リライもS・ダークへと姿を変えてアリスを迎え撃った。

 

「名付けて…ツバイブースター!」

 

白と金のボディスーツは変わらず、その上に赤と茶のツートンでなるプロテクターとスカートが現れた。腰のツインツインガンは分解して二丁拳銃型に変えた。

 

「喰らえっ!」

 

そこから放ったのは土塊。リライは素早くS・スピアーでどけると、アリスのベルトを弾き飛ばすような蹴り上げを放った。しかしそれはスレスレでかわされる。

 

「抵抗しなきゃこんな目にも会わないってのにね!」

 

そう言ったエレンツは、リライの眼前へツインツインガンを突きつけた。そして超至近距離で火炎を放つ。顔面にくらい、怯んだところに、ゆっくりと歩み寄った。

 

「何やってるんだよお前っ!」

 

その時、魔理沙はエレンツからエレメンツドライバーを剥ぎ取った。瞬間、その姿はアリスへと戻る。彼女は頭を抱えてしゃがみこむと、ゆっくりとリライの方を見た。

 

「…ごめんなさい。なんか、あなたが。いや、あなたのそのシャドウライトのことが…許せなくなって…」

 

「どうしたのですか、一体…」

 

いつの間にやら起きていた聖も、アリスの方へ寄って怪訝な表情を見せた。ルーミアはいつの間にやら逃げており、もはや姿は見当たらなかった。

 

「…そのベルトか?でもお前のママからのもんなんだろ?」

 

「そのはずだけどね…」

 

アリスはなんと言えばいいかと、微妙な表情を浮かべた。

 

 

 

 

 

「はあ…やれやれ」

 

同刻の博麗神社で、霊夢は深々とため息を吐いた。心は休まらないが、かといって今すぐできることもない。ソワソワとした焦燥感が居るだけである。

 

「…八坂神奈子は、次どう動くんでしょうかね」

 

「さあね。警戒は必要だけど…あんまり好き勝手できないのも事実よね」

 

そんな霊夢のため息に応えたのは華扇とレミリアであった。その声に振り返ってみれば、二人ともちゃぶ台で何かをいじっていた。何をしているのだと、上からその姿を覗き込んだ。

 

「これは…ヴァンパイアなんとかよね」

 

「ヴァンパイアリングだ」

 

「そうそれ。…で、華扇のは?」

 

続けて視線を向けたのは、華扇の持つ機械であった。霊夢はそちらには見覚えはなかったが、変身用のバックルであるのはうっすらと想像がつくものだった。

 

「この手紙と一緒に置かれてたの」

 

そう言って見せた手紙に書かれたのは、「頼む」と「お願いします」の二文だった。霊夢はそれを訝しげに見るが、だからといって分かることもない。どことなく見覚えを感じるのみだ。

 

「仙力で動く構造に見えるんですがね。私では動かなかったんですの」

 

そう続けたのは青娥だ。トレーニングをする天子のことを眺めたまま、特に霊夢の方を見るでもなく呟いた。それを聞き、霊夢はことさらわけがわからなくなった。

 

「新聞ですよー!」

 

そんな中、バサバサと羽音が神社に近づく。音の主の文はゆっくりと降り立ち、霊夢へと文々。新聞を渡した。それを受け取ると、彼女は早速パラパラとそれを開く。

 

「読まないと妖怪化しちゃうからねー」

 

「ええ、そうですとも。それにしても相変わらず賑やかですねぇー」

 

三月精と仕掛けたいたずらはまだ効いていたらしい。心の中でクスクスと笑いつつ、霊夢の読む記事へ指を向けた。

 

「…この記事、重大さは分かりますよね?」

 

一気に真剣になったその声色を聞き、他の面々も霊夢の新聞を覗き込んだ。そこに書かれるのは、『疫病神、守矢神社から兵器を盗み出す!』という内容である。

そこには、八坂神奈子がおかしくなったこと、それを救おうと早苗が奔走していること。そして…。

 

「疫病神と言われて分かりますか?…依神女苑です」

 

「あいつが?」

 

女苑が兵器つまりはエックスゴースターを盗み出したことと、それを河童が匿ったことが続けて書かれていた。

それはすなわち、洗脳がないまま相手側の武器を手に入れたということである。仮に相手側の罠でも放置はできない。ライダー達は頷くと、それぞれ移動の準備を始めた。

 

「行くぜレミィ!玄武の沢だな?」

 

「そう。向かうよ」

 

そしてドラクリヤー、グラウンドスピーダーが並ぶ。霊夢が天子に向かって後ろに乗せろと言おうとした、その時。カメ仙が邪魔するように霊夢の前に来て、なにやら起動音のようなものを鳴らした。

 

『お前さんのバイクなら既にあるさ。我ら河童の最高知能の結晶!』

 

「…亀」

 

自動運転で現れた緑のバイクに真っ先に抱く感想はそれであった。その名を『タートルライダー』。霊夢はカメ仙の言葉に従い、そのタートルライダーの上に飛び乗った。

 

「皆さん乗り物で移動するんですね」

 

「飛ぶよりも疲れないし地上移動の方が色々都合いいしね」

 

「なら竿打(かんだ)じゃなくてあの子の出番ね」

 

そう言って、彼女は口笛を響かせた。それに呼ばれ、バサバサと羽の生えた赤い馬が降り立った。河川はヒョイとその上に飛び乗り、首を撫でてやった。

 

「行くわよ紅飛馬(こうとば)。…さ、玄武の沢に向かうとしましょう!」

 

そうして少女四人は、妖怪の山の方へとまっすぐ向かっていった。三つのバイクに劣らぬ速度で紅飛馬は駆け抜けた。

 

「さ、この辺でいいでしょ」

 

十数分のうちに、玄武の沢へと到着してしまった。三人は文明の利器の凄さと紅飛馬の凄さを思う知り、なんとも言えない笑い顔を浮かべた。

 

「…あ、天人様じゃないですかー」

 

そんな少女達の元に、紫苑が現れた。匿われたのは女苑じゃなかったのかと、三人が訝しげに視線を送る中、天子だけはグランドライバーを装備して完全戦闘態勢であった。

 

「…こいつ、八坂神奈子に連れてかれてたわ。…洗脳済みよ。確実にね。また会えたのは嬉しいけど…。感動の再会とは言えないね」

 

『アースオーブ!』

 

「ハァ…。もうちょい騙されてもいいじゃないですか」

 

『X!』

 

天子の様に紫苑はため息をつき、エックスゴースターを取り出した。他三人も、流石にその様子を見れば、警戒しない道はない。それぞれ変身の準備を始めた。

 

「変身ッ!」

「…醒妖!」

 

『ガイア・ザ・アース!』

『misfortune…ready』

 

真っ先にガイアが変身を終え、青い煙をまとう紫苑の元へ駆け出した。そして、その拳を一気に振り下ろす。

だが、煙の中から粒子と共に飛び出した手によって、ガイアの手はいとも簡単に止められる。

 

「残念だけど…。あなたを倒さなきゃいけないんですよ」

 

そう語って煙を払ったのは禍女である。青の禍々しいエネルギーを放ちながら、ガイアへと追撃の蹴りを叩き込んだ。同時に暴風がガイアを襲い、さらには落雷が追撃となる。

 

『博麗の〜巫女!』『ジェ・ヴォー・ダン』

「ちょっと、大丈夫?」「怪我はないかしら?」

 

「ああ、大丈夫よ」

 

ガイアは心配して駆け寄ったリブレッスとジェヴォーダンへと気丈な言葉を返し、再び立ち上がった。しかしそれはすでにふらふらとした立ちであり、勝てるとは到底思えないものであった。

それでもガイアは立ち向かう。…とはいえ力の差は歴然。ガイアはあっけなく変身解除に持っていかれた。

それを見て、このままでは勝てないと、霊夢は別の戦闘手段を取ることに。

 

『読み込み!妖狐!』

 

フォームチェンジである。魔理沙から渡されたカードの中にあった「妖狐」を使ってみることにした。待機音が響く中、右手を胸の前で握りしめ、手を広げつつ円盤を回転させた。

 

『宴!踊れ!惑わしまくれ〜!妖術の妖狐〜!』

 

音声とともにミコフォームのアーマーが弾けとび、吹き出した紫の炎が新たなアーマーを形作った。

狐面を中心に、藍を思わせるカラーリングと尻尾パーツが何よりも目を引く。その名もヨウコフォームである。

 

「だああああああああ!!」

 

まずはパンチを繰り出してみる。一応当たるものの、禍女にはほとんどダメージがない。ならばとゲンソウスペルレッカーを構えたその時、タートルライダーのリアががたがたと動く。何事かと見てみれば、タブレットが飛び出てくるではないか。

 

「なによそれ」

 

『あいぱっどだったか。それを元に作ったアイテムだよ。…そして!』

 

カメセンが得意げな様子を見せたかと思えば、タブレットがキツネ型へ。そしてゲンソウスペルレッカーに合体し、刃に変わって鎌をなした。

 

「フン、武器が変わっても無駄よ!」

 

禍女は威勢よく叫び、指を弾いた。すると、後ろの河が突如氾濫を始める。流水をくらってはまずいと、ジェヴォーダンはすぐに飛び上がり、華扇を引っ張り上げた。リブレッスも天子を抱え、飛んでそれを避ける。しかし、それが続いてはこちらから攻撃は仕掛けられない。

さらにはエックスゴースターによる銃撃も少女たちを襲う。

 

「くっ…」

 

避けに熱中することを強いられるし、なにより誰一人として手が空いていない。変身しようと華扇はベルトを持っていたが、それもできない。

だが、いつまで経っても氾濫が収まる様子はない。ジェヴォーダンが片手で槍を投げてみるが、当たらない上その度バランスを崩して危なっかしい。どうしようかと、霊夢が策を練り始めた、その時。

 

『fortunate…ready』

 

「醒…妖!!」

 

エックスゴースターを持った女苑が、禍女へと飛びよった。驚く禍女の元へぐんぐんと近づくその体に、ギラギラしたマッシブなアーマーが着せられる。そうして爆現した「福女」は、禍女へと拳を叩き込んだ。

 

「おごっ!!」

 

「どりゃああああああああああああ!!!!」

 

さらに首根っこを掴み、顔面に拳を連続でブチ込む!

最後の腹パンで地面に叩きつけ、大きくダメージを与えた。ほぼ同時に隕石が福女を狙い、姉妹共々地面へと転げ落ちる。氾濫は、すでに止んでいた。

 

「味方…なのね」

 

そう言ってジェヴォーダンが倒れた福女へと肩を貸す。そうして起こそうとした時、福女はジェヴォーダンの胸にエックスゴースターを押し付けた。驚くレミリアへと、容赦無く引き金を引く。

 

「ぐがっ!」

 

「姉さんを救えるのは私だ…。天人でも巫女でも仙人でも吸血鬼、あんたでもない」

 

そういうとさらに追撃の射撃をぶつけ、改めて禍女へと向かった。戸惑う少女たちであったが、禍女の攻撃が止んだのもまた事実。一行はひとまず福女vs禍女を見守ることにした。

 

「でりゃあああああ!!!」

 

「このっ!」

 

禍女の蹴り込みを、福女は腕で受け止める。そうして生まれた大きな隙に、さらに連続パンチをねじ込み、最後に顔面にヒジ鉄を叩きつける。かといって、それで素直に受ける禍女でもない。落雷による反撃で、福女に大ダメージを叩き込む。

 

「洗脳はされてないけど…」

 

「…味方ではないな」

 

ドラクリヤーとレミリアは目を見合わせて事実確認をすると、福女に対しても警戒の態勢を見せた。

 

「やれやれ…」

 

そんな中、禍女は煙を振りまき、自分の姿を溶け込ませた。福女は待てと叫び、その拳を振る。

しかしながら既に青いシルエットは消え、そこにはただ福女が残された。

 

「…クソっ!」

 

悔しげな声をあげ、彼女は木を殴りつけた。大きく穴が空き、今すぐにも倒れそうな状態へ。

さらに二発目の腹いせで蹴りこんだ時、ついに木は折れてしまった。

 

「…逃してしまいましたね」

 

華扇はそう言って福女へと近づいた。慰めようとして、言葉を続けんと口を開いたその時、福女からのスラップが入る。

 

「な…」

 

「逃したじゃんか。()()()()()()()()!…えぇ!?」

 

さらに銃撃をジェヴォーダンとリブレッスに当て、蹴りを当ててやろうと天子へ近づいた。

 

「やめなさいっ!怪我人よ!?」

 

「気持ちは分かるけどさ…」

 

「うるさい!天人に私の気持ちがわかってたまるか!」

 

そんな怒号をあげると、天子へ近づく足をさらに力強くした。二人はまた止めようとするが、次は揃って腹パンを喰らい、吹っ飛ばされた。

 

「いいか!姉さんを正気に戻すのは…戻していいのは私だけだ!…二度と戦う気なんて起きなくしてやる!」

 

続けてそう叫んだかと思えば、手を高く掲げ、パチンと指を鳴らした。

瞬間、全員の視界が闇に包み込まれる。

 

「ここはっ!」

 

「見えない…。カメ仙!ライト機能とかないの!?」

 

『あるとも。まずは…』

 

一行が戸惑う中、ゆっくりと光が現れる。ポツポツと輝く一列の光に、霊夢は見覚えがあった。見まごうはずもない。菫子と戦った時のことである。

 

「これ、街灯?外の世界の…」

 

「外の世界ってこんななのね」

 

「でも人はいっぱい居たはずよ。ここは無人じゃない…」

 

見渡せば、建物にもチラチラと光が点く。深夜の無人の都会とでも言うか。しかし店の様相はいつぞやに見た2017年の外の世界とは違うものである。どこか、悪趣味なのだ。

 

「…異世界生成!これが私、福女の能力よ!ここは1980年ごろの東京。私が外の世界に居た頃の街」

 

福女は手を広げて自慢げに叫んだ。そしてキラキラとした体に街灯を受けつつライダー達へ駆け出した。

それに対抗して突撃したのはジェヴォーダンである。ドラクリヤブレードとグングニールを構え、槍と巨剣の二刀流を振りかざした。

 

「甘い甘い!」

 

しかし福女は、それを二本の腕で軽々と捕まえる。そして弾き飛ばそうとしたその時。ジェヴォーダンはむしろ、福女の方へ頭を突っ込んだ。

 

「いだっ!」

 

ほのははひからひなはい(このまま干枯らびなさい)!」

 

勢いままに噛み付くと、吸血攻撃を繰り出した。絶対に離してたまるかという執念と顎力で噛み付き続ける。連続の腹パンも気合いで受け止め、歯をより深く刺し込む。

 

「このっ!」

 

福女の全力の頭突きを喰らい、離してしまう。が、そうして福女に生まれた隙に、リブレッスの連続攻撃が入る。華扇も加わるべく、福女へと駆け出した。

 

「くそっ!お前ら!」

 

福女がそう叫んだかと思えば、どこからともなく仮面を被った屈強な男達が現れる。そうして福女の命令を受け、男達がリブレッスを押さえ込む。

 

「来るなっ!」

 

『XX!』

 

そして華扇の足元へ牽制射撃を繰り出し、今度はジェヴォーダンへ向き直る。そうしてUSBを挿し直す。必殺を発動した状態で、一気にジェヴォーダンへと駆け寄った。

対しジェヴォーダンもフラフラとしつつも反撃すべく必殺を発動した。

 

『ファング!ドラクリヤエンド!』

『XX!…bye-bye!』

 

「イーターフィニイイイイイッッシュ!!」

「バブリック・エクストーション!」

 

福女は差し押さえ状を空へ舞わせて目くらましを行い、ジェヴォーダンへ拳を放った。ジェヴォーダンはそれをあえて胸で受け、一気に噛み付いた。

 

「離せっ!」

 

福女はジェヴォーダンを蹴り上げ、変身解除へと持ち込んだ。だが生気や血を奪われ、十分な体力とは言えない様子であった。やっと接近できた華扇は福女に横蹴りを叩き込み、ベルトへ左手をかざした。

 

『Checking……Checking……』

 

不気味な手を模すパーツと人間らしい細い手を模すパーツがついたそのキセンドライバーが、しばらくののち反応する。応えたのは人間の手のパーツの方であった。動き出して手をかざした左手で握る。

 

「スゥゥゥゥ……変身!」

 

『Confirmation Exit』

 

そうして、光が華扇を包み込んで行く。光の塊は福女へと駆け出し、光の中から拳を突き出す。

 

『Humanside……change modehermit!』

 

その拳に続き、軽快な蹴りや手刀が入る。福女は全てガードするが、披露もあり、小さく後ずさった。

光の中から、仮面の戦士が現れる。緑の体に赤い差し色が入り、全身には茨が巻かれる。

その両腕の枷にも似た鎖には、短剣がつながる。

 

「仮面ライダー、ハーミット!…我が信念にかけて、必ず救う!」

 

名乗り上げたその戦士へ、福女はキックを繰り出した。それをいなしたかと思えば、むしろ回転に利用して拳を叩き込むではないか。

 

「おらあああああ!」

 

その背に、やっと男達を振りほどいたリブレッスが鎌を振り下ろす。軽く怯んだその瞬間に、リブレッスの狐火とハーミットの短剣『カクガ』からの一撃をもらう。

 

「ったく…。仕方ないね」

 

そうぼやいたかと思うと、何を思ったか、男の背に手を突っ込んだ。そしてちょいと動かしたかと思えば、男の体が一瞬のうちの金銀財宝へ変わる。

福女はそれ振り撒いたかと思うと、

 

「さあ、こんだけくれてやるんだ。もうちょっと頑張りなさい!」

 

金で釣る作戦である。男達はみな喜びの絶叫をあげると、リブレッスとハーミットへ攻撃を繰り出した。数で押す攻撃に、二人は若干圧倒される。

 

「…宝石に…術…なるほどねっ!」

 

そんな時、仮面の下で華扇は得心する。そして右手で、男の胸へと手刀を突き刺した。さらに他の男へカクガでの攻撃や、『イバラムチ』での縛り上げなどを行う。

瞬間、男達が雲散霧消した。驚く福女へと、ドヤ顔で語る。

 

「怨霊…ね。金の亡者だった者の怨霊!そういう人間の執念からは金銀財宝が精製される。それには財禍のパワーが含まれる…。それを利用した異世界生成と怨霊使役!…でしょう?…怨霊なら恐るるに足りないわ!」

 

得意げに飛び上がると、リブレッスの周りの怨霊へ、まとめてイバラムチをギチギチと巻きつける。そうして信号機の上を通したかと思えば、全力で引っ張り上げる。

 

「爆散しろ!」

 

そして一気に煙と化す。リブレッスはフワッと着地し、鎌の一撃と妖術を福女へ放った。大きくできた隙を見て、二人は身を低く構えた。

 

『ヨウコ!ムソウカイホウ!』

 

「アヤカシランブ!!」

「ハーミットドライブ!」

 

狐火で福女を苦しめたと同時に茨を巻きつけ、飛び蹴りを繰り出した。

 

「ぐあっ!」

 

福女が大きく転んだと同時に異世界は搔き消え、曇りの玄武の沢へと戻る。だが、その時に福女の姿は無い。川から逃げたのだ。

 

「…もっと本格的に修行しなきゃね」

 

天子はそんなことをつぶやき、グラウンドスピーダーを跨いだ。その横に、ドラクリヤーに乗ったレミリアも近づく。

 

「力不足は…私も感じたわ。修行、付き合わさせてもらう」

 

そんなこと言いながら、二人は命蓮寺の方へと向かっていった。その背を眺めながら、霊夢は今後に関して、大きな不安を募らせるのであった。

 

to be continued…




「笑顔にしてやるぜっ!」
「一緒に踊らせてあげるわ♪」

星条旗が唄い、花が舞う。

次回、「ゴーストシェード」

皆さんこんにちは。最近女苑ちゃんが好きなサードニクスです。そこに福女!うん!(ご満悦)
あのステゴロスタイル好きなのよね。
しかし今回は戦ってばかりの話でしたねぇー。
なんか地の文の比率が多くなった気も。PCで書いてるとなんか長くなんのよね。地の文。
禍女と福女はこういう関係性です。強化イベントなら一緒にやりたいでしょ?その方が燃えるじゃないの。
あ、ちなみにお嬢様が平気なのは曇りのおかげです。
まあそんなこんなで変身ポーズコーナー、行ってみよう!
今回はスパーク!

腕をぶん回すってのが地の文ですね。
まずキーボード入力をパッと済ませ、カードをセットします。
そして、スカイライダーのポーズ風に、突き出した右手をブンブン回し、そして左手で円盤を回転させつつ両手を広げます。
そして変身完了!すごく単純でわかりやすいでしょう?
ではまたー!


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第18話 ゴーストシェード

感想…(遺言)
タイトルは神霊廟&ゆゆさまという点から



アレマジでMAX大草原


「やっぱりしっかりとした対策が要るということね」

 

玄武の沢での戦闘を終え、神社へ帰った霊夢は、疲れ果てた表情でそんなことを吐き出した。来客の冥界二人と、ヘカーティアも深刻そうにため息。

どうすればいいのかと会議が始まった。

 

「やはりそれなりに協力が要るのでは」

 

そう言ったのは、もう一人の来客である聖白蓮である。ツレのこいしもうんうんと頷き、それぞれが考え込むような様子を見せた。

 

「ところで…あんたは何で来たわけ?」

 

霊夢がそんな疑問を向けたのは、幽々子であった。彼女は用がなきゃ来ちゃいけないの?と軽い様子で答えるが、この状況を思えば、わざわざ幽々子のような立場のある人間が来るとは考えづらいのである。

 

「…んー、まあ言っておいても良いかしら」

 

少し迷ったのち、幽々子がちゃぶ台の上に置いたのは、機械と扇子だった。何だコレと言う少女たちの視線に対し、分からないと彼女は首を振る。変身アイテムのようだとただ予想を立てるのみだ。

 

「どうせなら怪人とかでも現れた時に試し切りしようと思ってたのだけれどね。その前に神社で今後について少し話をしておこうかなと思ったの」

 

「だったら尚更早いうちに言っておきなさいってのに」

 

「フフフ、ごめんなさい」

 

そんな風にニコニコとしている彼女らを見て、妖夢は困り気味な様子でため息を続けた。

 

「あのね、霊夢。そんな風に言うなら、なんだってお祭りを敢行するなんて馬鹿げたこと言ってるのよ。4時半からだっけ?怪人が狙ってくるなんて簡単にわかるじゃない。浅慮がすぎると思うんだけど」

 

クドクドした説教を続け、呆れ気味に語る妖夢に対し、幽々子はつまらなさそうな顔をした。

 

「そんなつまんないこと言う子に育てたつもりじゃないんだけどなぁ。妖忌ならそんなこと言わないわよ?それともあなたが未熟ってだけ?」

 

「え?幽々子様はお祭りに賛成なんですか?」

 

「…霊夢が堂々としてなきゃ人里は折れちゃうのよ。そこに悪意はつけ込むわ。いい?どんな敵がいても、問題ないって言う態度を取らないと人里の方に不安が広がっちゃうの」

 

「この状況で祭りの中止を叫べばどうなるか…。想像には難くないと思うわよん」

 

「…そーゆーこと。幸いこの神社は空、外の世界、石段以外の出入り口はないわ。だから見張りさえ徹底すれば問題ないわけ」

 

その言葉を聞き、妖夢は納得したと同時に、少し恥じる様子を見せた。幽々子はその頭を撫でると、コレから成長なさいと言葉をかけた。

 

「…さ、私は一旦帰るとします。この後協力してくれるであろう人の元へ行くのですが…」

 

「私がついていくよ」

 

「それなら私も向かわせていただきましょう」

 

聖の語りかけに真っ先に答えたのはこいしと華扇であった。そして幽々子に背中を押され、妖夢もそちらへと向かった。その背を霊夢達は見送る。

 

「さて、私もどっかしらに声掛け行こうかしら」

 

そんなことを言ってヘカーティアが立ち上がった、その時。

ドゴン!という衝撃音とともに、境内に何かが降りてくる。

 

「早速お空からの侵入者ね」

 

「一体なんなのよ…」

 

「ゥレディイイィス、ェァアアンドッ!レァディィイイィィス!!」

 

降りてきた何者かが、ハイテンション気味に声を張り上げた。そしてその手に松明を掲げ、参道へとゆっくり歩み寄る。

 

「イッツ、ゥルナティック…テァァーイムッッ!」

 

続けて叫び声を上げるその声は間違えようもないクラウンピースのものであった。ヘカーティアは顔を引きつらせながら、戦闘態勢を取った。

 

「…この子、洗脳済みよ」

 

『Set!Alien power!』

 

その言葉を受け、霊夢もサォルブドライバーを装備する。対しヘカーティアは素早く変身を準備し、ピースへ駆け寄っていった。

 

「あはは、ご主人様ってば必死ですねぇ!」

 

クラウンピースは嘲るような様子で叫ぶと、彼女もまたバックル『アルカナドライバー』を装備し、戦闘態勢を取った。

 

『EMAXAJENSIXI!WARNING!WARNING!WARNING!WARNING!』

 

待機音が響く中右手で松明を掲げ、左手でタロットカードをバックルに挿入した。

 

『Hulu!』

 

そして入れ替えるように右腕を下げたかと思えば、松明を空中へとぶん投げる。同時にヘカーティアも掛けながらボタンの上に指を乗せた。

 

「「変身!」」

 

『DANGER!DEXIZASUTAXA!大・狂・乱!愚者の一手!破滅の一手!』

 

『Perfect!HellGod Alien!』

 

赤黒のオッドアイがきらめき、炎のオブジェが目立ち、そのスタイルはスマート。落ちてきた松明を蹴り飛ばし、構えをとった。

現れたその仮面ライダーフールと、ヘルゴットの拳がぶつかる。果たして押し負けたのはヘルゴットであった。そこに、援護をせんとリブレッスが駆け寄った。

 

「みんなまとめて笑顔にしてやるぜっ!行くぞランパースどもっ!」

 

そんな中、フールは指を弾き、仲間の地獄妖精達を呼んだ。そしてまとめてフェアリートルーパーとなり、リブレッスへと向かった。

 

「…教育が要りそうね、ピース」

 

「最近外の世界で虐待とか問題じゃないですか。もっとコンプライアンスを意識して発言してくださいよっ!」

 

「どうでもいいわよんっ!そんなこと!」

 

ヘルスウェポンアックスを構え、フールへと振りかざした。フールはそれを簡単に掴み、開いた腹にドロップキックを叩き込む。さらに腕力で立ち上がりつつの両足サマーソルトをかまし、大きく怯んだところにパンチをぶつけた。

 

「くっ…」

 

「随分と弱くなっちゃいましたねぇ!」

 

そんな苦戦の様子を見て、リブレッスもそちらへ助けに入ろうとした。だが、ランパースたちが強いがために、フェアリートルーパーもそこそこ強くなっている。数で行く手を阻まれれば、手が出せないのも致し方ないのだ。

 

「…試してみようかしら」

 

そんな時、幽々子は手の中の機械に『チェリムドライバー』の名を付け、腰へと装備した。やはりそれは変身用バックルであったらしい。

 

「これで仮面ライダーになっちゃうのね」

 

少しワクワクを込めた様子で扇子『フロードジャビ』を広げ、舞のようにくるんと一回転すると、その手を前に構えた。

 

「見てなさい…私の変身♪」

 

歌うようにそう言うと、バックルへと素早くフロードジャビをセットした。桜吹雪が散ると同時に、その身に鎧が着せられていく。

 

『Mai bloom!Selezo!』

 

「一緒に踊らせてあげるわ♪」

 

そんな決めゼリフを放ち、ブレイドモードの武器『トランスフロート』を構え、リブレッスの元に向かった。

ピンクとスカイブルーを基本とし、桜の花びらが散るデザインである。桜のような顔パーツがその気を引く。

仮面ライダーブロッサムである。

 

「はっ!」

 

舞うようにその刃を振り上げ、さらにくるっと回りながら優雅にその斬撃を当てた。フェアリートルーパー達は大きく怯むが、そう簡単にはやられないようである。

 

「やれやれ…」

 

改めてリブレッスは構え直す。ゲンソウスペルレッカーを剣モードに変え、さらにガイネンブレイカーをブレードモードへ。二刀流スタイルでズタズタ斬り込んでいく。

 

「これ結構いいかも…どりゃああ!」

 

仮面の中で少し満足げに笑ったかと思うと、さらに連続での斬撃を放つ。ブロッサムの斬撃が同時にヒットし、ファアリートルーパーのうち一体が爆散した。その勢いままにブロッサムは花びらを散らしながら舞う。

 

「たぁっ!!」

 

さらにふわっと飛び上がると、ピンクの弾幕を展開させ、その奔流のなかで舞を見せつけた。斬撃と旋風がランパースたちを襲い、リブレッスがそれにつなげる。このコンボを繰り返し、さらにトランスフロートをガンモードへ変え、光弾を散らした。

 

「めんどくさいわね…こうなりゃまとめて!」

 

『必殺でも撃つ気か?それよりいいもんがあるぞ』

 

「カメ仙じゃないのよ。なんだって急に」

 

『いいから見てろ。あいつを呼ぶ』

 

あいつってなんだという視線を受けつつ、カメ仙は得意げに電波を送った。同時に、雲の隙間を割って機械的な龍が現れる。ギョッとするリブレッスへ、カメ仙はタートルライダーを見やり乗れと言うふうに仕草で促した。

 

「乗ってどうすんのよ……ってうわあぶねっ!!ちょっとあんた!あのポンコツ龍!私の方撃ったわよ!!」

 

『おちつけ』

 

「無理に決まってんじゃないの!さっさと幽々子の援護に入りたいんだけど!?」

 

『ほら、すぐ終わるさ』

 

カメ仙が余裕の様子でそんなことを言ったかと思えば、突如龍『メガミーリュウジン』が変形を始める。同時にタートルライダーも変形を始め、両機が合体した。戸惑うリブレッスであったが、その手のハンドルが自分が今乗る巨大女神型マシーンの操縦桿であることを、『勘』で理解した。

 

「でぃやあああああああ!!!」

 

早速思いの儘に操り、フェアリートルーパーたちを一瞬吹っ飛ばした。そしてさらに必殺を続ける。

 

『巫女!ムソウカイホウ!』

 

「メガミィ…フウウウゥゥゥゥィン!スタンパァァァァァアアアアアアア!!!」

 

虹色の光をその足に纏いながら、メガミーリュウジンが急降下した。そして着地の衝撃波で、フェアリートルーパー達が一掃される。唯一避け切ったフェアリートルーパーを前に、今度はブロッサムが構えた。

 

『fullburst!』

 

「サイクロン…ドロップ!」

 

桜吹雪を纏いながら空を舞い、優美な舞ののち飛び蹴りを叩き込む。ふわりと投げ出されたかと思えば、空中で爆散した。

 

「おっと、三対一をやる体力はないなぁ」

 

フールはそんなことを言うと、最後にヘルゴットに膝蹴りを決め、飛び去って行く。その背にリブレッスとブロッサムは銃撃を飛ばしたが、簡単に避けられそのまま姿を消してしまった

 

「くそっ…」

 

霊夢は変身を解きつつ悔しげにそう吐いた。

 

 

 

 

 

「はっ!ふっ!」

 

「あんた休憩したら?はっ!だっ!」

 

「こっちのセリフよ!たっ!はっ!やっ!」

 

同刻の命蓮寺にて、レミリアと天子は木刀を振っていた。あまり気分の上がらない曇り空であったが、むしろレミリアには好都合。二人は庭で特訓中である。

 

「どちらも休みなさい。天人と吸血鬼とはいえ、休憩なしで続けられることでもないでしょうに」

 

そんな二人に言葉を贈ったのは聖だ。一旦帰って、こいしと華扇とともに今一度人里へ向かう準備中であった。二人の修行風景を見る聖の目には、今まで以上の強固な覚悟と焦りに似た険しさがこもっていた。

 

「…私も強くならなきゃ」

 

妖夢も何かが動かされたのか、木刀をとって訓練に加わる。それを見て、聖の目の奥の光は一層固まった。

 

「…こんなことして欲しかないんだけどね」

 

「姐さんがやりたがってんだから仕方ないでしょ」

 

命蓮寺を発つ聖のその背を見ながら、村紗と一輪はそんなことを話した。せっかく封印も解けて若返ったと言うのに、いまだに戦うべく奔走する。宗教家争いはまだ楽しんでいるようにも見えたが、今は苦しみさえ抱えているようである。その様子をよく思わないのは、他の面々も同じようである。

 

「ま、確かに聖様って人助け好きだもんなぁ」

 

うっすらとした苦笑いを浮かべつつ、小さく消えるその背を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

「お前のとこの神が企んでるんだろ!白々しいぞ!」

 

「ですから、私たちはそれを救うべく!」

 

「何もできてないじゃねぇか!」

 

「今後の活動で!」

 

人里を行く聖の目に、早苗が映る。ヤジの飛ばされる様は見ていて胸糞の悪いもので、聖は柄にもなく舌打ちなんかを飛ばし、険しい顔で見つめていた。

 

「…おねぇちゃん、僕は信じてるよ」

 

話を終え、暗い顔の早苗に一人の少年が話しかけた。綺麗な茶髪に目の隠れたその少年は、その手に和綴じのノートを抱えながら心配そうな様子を見せた。

 

「…ッ!」

 

早苗は、鈴奈庵でその子を見た覚えがあった。そして、その少年の妖気が分からないはずもない。なんと皮肉なことだろうか、彼女に理解を寄せたのは、退治対象たる妖怪だけだったのだから。

 

「ありがとうございます…。ええ、本当にね…」

 

感謝と申し訳なさを噛みしめるような顔でその少年の頭を撫で、自嘲気味に笑った。去る少年を見つめるその肩に、華扇が手を置いた。

 

「お昼、一緒にいかがです?」

 

それだけ告げる。振り向いた早苗の目に、屈託のない一つの笑顔と柔らかな二つの笑顔が映った。早苗はその嬉しさを隠すことなく頷いた。それに応え、聖を先頭に一行は歩き始めた。

 

「いらっしゃい!」

 

四人が入ったのは蕎麦屋であった。全員おもいおもいの付け合わせとざるそばを頼み、待つ姿勢に入った。そんな時、店主が早苗の元に近づく。また何か言われるかと、彼女は俯いた。

 

「…色々言われてるみてーだが、まあ、頑張れよ。ここんとこの不作だ地震だ、そういうの終わらせるって」

 

「…?」

 

しかし、彼女が向けられたのは意外にも感謝であった。驚く早苗に対し、店主が言葉を続けた。

 

「この店さ、宇佐見ってのとハーンってやつがなった…仮面ライダーだっけ。そいつに守られたことがあるんだよな。あいつらの守らなきゃって意思がさ、カッコよかったんだよ。守屋の巫女さん、あんたも仮面ライダーなんだろ?…見せつけてやりなよ。あんたに文句を言う輩にさ。おっと、そば作る手伝いしねぇと。かみさんにぶっとばされるぜ」

 

店主はそれだけ残すと、そそくさと厨房に戻って行った。だがその言葉は、早苗の心の不安を晴らすに十分なものであった。

 

「こう言う風にあなたを信じてくれる人もいるってことです。自信を持つといいわ」

 

華扇はそんな勇気づけをおくり、彼女を鼓舞した。だが聖からしてみれば、その言葉は自分へのものを兼ねているのは想像に難くない話である。なんとも言いがたい感情をその顔に浮かべた。

 

「みんな辛気臭いよー。せっかくご飯なんだから明るい話しようよ!」

 

こいしの言葉に、三人はそうかと気を抜く。これから真面目な話をしに行くのだからここでそんなことを話す必要はないと、話題を変えた。それとほぼ同時のタイミングでそばが来る。

 

「「「「いただきます!」」」」

 

四人は元気よく食事を始めた。会話の内容は、至ってくだらないものたちである。夕食がどうのとか、お祭りがどうのとか、そんなこと。

 

そうこうしてるうちに、四人は昼食を終えてしまった。丁寧にごちそうさまを告げ、そのお代全てを聖が持った。申し訳ないからと他が言うが、彼女は気にするなと告げ、店を出て行ってしまう。

 

「悪いですって」

 

「いいんです。人の厚意は受け取れと言うでしょう?」

 

お金を取り出した華扇にもいいのだと押し返し、そそくさと歩き始めた。早苗は予定のためここで分かれ、再び三人で人里を行く。

 

「…つまり!八坂神奈子を救うべく、一致団結が要るのだ!この戦いにおいて、目に見える敵はいない!今震わせるのは報復の怒りではない、応援の喉である!」

 

そんな中、三人の元に演説の声が届く。今ので締めだったらしく、以降演説主からの声は続かなかった。その声に、聖はニヤリと口角を上げる。

 

「見つけましたよ、神子さん。この時間帯なら居ると思ってました」

 

「ん?ああ、君か聖」

 

演説を聞き終えて散っていくオーディエンスの隙間から、まっすぐと聖が出た。対し神子も彼女の元に近づき、視線を合わせる。

 

「相変わらず妖怪くさい生臭坊主ですこと」

 

「あらあら、ガチガチ頭の仙人がなんか言ってますね。ファミコンでも入ってます?」

 

「なんだそれは」

 

「あら、そういえばあなたの記憶媒体は木簡だったわね!」

 

デコでも擦り付けるようなメンチ切り合いの状況の中、華扇がどうしようかとオロオロする。対しこいしはニコニコとその様を眺めていた。

 

「あの二人あれで結構仲良いから気にしない方がいいと思うよ。…ぼんやりとした読心だけど、少なくとも悪い感情は持ってないみたいだしね」

 

ニヤッとして語るこいしを見て、華扇は一応納得したような様子を見せた。たしかに冷静に見れば、乳繰り合いにも見える。急に微笑ましさを覚え、こいしのニコニコ観戦へと加わった。

 

「…っていうか、そんなこと言いに来たんじゃありませんよ。私には別で言いに来たことがあるんです」

 

「なら最初に言ってよ」

 

「あの、太子様。この場合だと多分喧嘩売ったあなたに問題ありです」

 

屠自古の冷えたツッコミを受け流しつつ、神子は本題に入れと告げた。聖の様子から、ただ事でないことは容易にわかる。聖も静かに頷き、口を開いた。

 

「ここのところ戦いが激化しています…」

 

「だから手伝って欲しいと?」

 

「いきなり欲を読むのは失礼ではないんですかね」

 

「読心妖怪を連れてよく言うよ。…ま、協力なら惜しまないさ」

 

「え?寺に協力を?良いのですか?別に反論では無いのですが…。我としては…」

 

何かを言いかけた布都の口に人差し指を乗せ、一度静かにしてくれと伝える。そして聖の方に向き直ったかと思うと、胸元からゴソゴソと腕輪を取り出した。

 

「一応私も変身を準備してるんだ。力になれるよう尽力するさ」

 

「…ふむ」

 

「布都、君は頭が回るわりに考えないで物を話しすぎる。よく冷静になれ。ここで寺と対立したらどうなる?」

 

「…分かりました。申し訳ありません!それと、無礼を働いた、すまないな聖殿」

 

帽子を抑えつつ、ぺこりと頭を下げた。聖は申し訳なさげにやめてくださいと言い、神子へと話を続けた。

そんな時、どこからともなく楽しげな声が響く。聞けば、今夜のお祭りのことである。そのタイミングで、神子が思い出したように目を開いた。

 

「そう言えば縁日じゃないか、今日。確かこころが踊るんだったか…」

 

「本当ですか?それはいいことを聞きました!…もう向かっておきましょうか!」

 

「ん?みんな行くの?私も行く!」

 

こいしの声に続いて華扇も頷く。そうして神霊廟一行も連れ、博麗神社へと足を進めた。

そんな時、ふと聖の視界の端に椛が映った。そして、その手のエックスゴースターも。

 

「間違いないわ…。待ちなさい!!」

 

「聖!…屠自古と布都は先に行っててくれ、私は聖を追う!」

 

「私達も追いますよ!」

 

「了解!」

 

駆け出した聖の後を、三人が追う。布都はつまらなさげにその背を見送り、神社へと向かった。

 

「そこで立ち止まりなさい!」

 

「誰が止まるか!」

 

脇道を抜けながらであったが、椛は博麗神社へ向かっているようである。走っているだけに、布都達より先に石段の前にたどり着いた。まだ人もおらず、階段の目の前に、少女たちだけが居る。

 

「ここを…!」

 

そんな中、椛は何やら札を取り出した。その様子を見た聖が青ざめ、弾幕を放つ。一発ヒットしたようで、階段を転げ落ちた。

 

『X!』

 

「こうなれば…。醒妖!」

 

『wolf…change』

 

転がり落ちる勢いままに煙を払い、中から純白の走行の怪人が現れた。ノーザンウルフである。素早く態勢を立て直し、今一度階段を上らんとする。

 

「「「変身!」」」

 

『光照らせ!その救い!輝く魔界の魂!』

 

『Humanside……change modehermit!』

 

『戦士の力が時代を呼んで、高まり続ける向上心!仮面ライダーU、ライジングアップ!』

 

同時に三人がライダーとなり、ノーザンウルフの行く手を阻む。特にドグマは前へ前へと出て、行く手を塞ごうとした。その手の札が何者か見破っていたがゆえである。

 

「結界破壊の札…。祭りに備えて今神社の周りに貼られてる、対怪人用の結界。それを破壊するつもりです!」

 

自分が確認した事実を他にも伝え、その危険性を語る。それを聞き、真っ先に駆け出したのは神子であった。空中に舞い、弾幕と剣でもってその足止めをする。しかし大きな効果は見られず、ダメージは内容である。

 

「オオオォォォォォォォン!!!」

 

そんな中、ノーザンウルフが突如咆哮をあげる。かと思えば、神子の空中浮遊が強制終了し、そのまま重力に従い始めた。姿勢を直そうとしても直せない。このまま地面にたたきつけられれば…!ハーミットの茨も捕らえきれず、一瞬一瞬と床に近づく。

 

「させない!!」

 

そんな時、ドグマが飛び降りる。何事かと驚く少女たちをよそに、下方向へブースターを展開して神子を抱きとめた。そしてそのまま、自分を下にして地面に墜落する。

 

「君…危ないだろうが!また死んだらどうするつもりだったんだ!!」

 

「危ないのはあなたじゃないの。…こころの異変の時、あなたは任せろと行ったわね。今度は私が戦う番なんです。あなたを生かすために」

 

「…フフフ、ハーハッハッハッハッハ!!!君は本当に面白い人だよ!そうさなぁ、君が戦うと言うなら…これを託そうじゃないか」

 

そう言うと、先ほどの腕輪をドグマに渡し、ゆっくりと立ち上がった。聖もその意図を汲み、しっかりと頷く。

 

「術で鎧を形成するんだ。君なら使えるさ」

 

「分かっていますとも。任せることです!」

 

そうしてドグマは僧の腕輪を外し、『ロウズマジェスティックリスト』をその腕にはめた。そして大きくポーズをとり、今一度レバーを倒す。

 

『heavy!』

 

『変わらぬ麗光(れいこう)!続くは研鑽(けんさん)!揺るがぬ神仏!』

 

音声と同時に重装がまとわれていき、そこに仮面ライダードグマ 法術が爆誕した。グレーとパープルのツートンに金が入ったそのボディに、黒と紫と水色の鎧が着せられ、赤いマントがなびく。耳のようなデザインが神子を彷彿とさせるその体には、大量の重火器が着せられた。

 

「これこそ法の光!」

「見せつけてやれ!」

 

ハーミットとUが必死に押さえつけるノーザンウルフに、銃型武器『シャックシューター』を向ける。そして放った光弾が敵の足を捉える。さらに階段を駆け上がりつつ、肩の『ディッシュアタッカー』『ツインカノン』から皿弾とグレネード弾を放ち、大量の炎でもって攻める。

 

「それなら!!」

 

そして追撃とばかりにUが空へと飛び出した。

 

「飛んだか…。それなら!!ゴオオオオオォォォォォォォ!!!」

 

ノーザンウルフは再び、飛行バインドの声を上げる。しかしUは汗ひとつ垂らさず、そのままかかと落としを叩きつけた。

 

「飛んだじゃあなく跳んだだけっ!これで分かったよ。あなたのオタケビが飛行を止めるものだってね!」

 

威勢よく叫びつつ、素早く関節技につなぐ。さらにハーミットの蹴り上げとドグマのビーム弾をくらい、階段を転がり落ちる。しかし中程で体勢を立て直し、今一度登ろうとする。

 

「させませんよ!」

 

『Checking……Checking……』

『Confirmation Exit』

 

そしてハーミットはノーザンウルフに接近しつつ、その手をキセンドライバーの、もう一方の怪物のような手にかざす。そして動き出した手を握り、光がハーミットを駆け巡る。

 

『monsterside……change modeogress』

 

そして光の中からは、打って変わった男性的フォルムのライダーである。オーグリスモードがその名だ。赤い素体に緑の装甲、そして煙のような装飾が目立つ姿である。

 

「でやあああああああ!!!」

 

そして背中からハンマー『ゲキメツコン』を手に取り、ノーザンウルフの腹に叩きつける。そうして体勢を崩したところに、ドグマのももの『ライトニングバスター』による電撃をくらい。大きく怯みを晒した。

 

「だああああ!!」

「はあああ!!」

 

さらにハーミットの蹴りと、ドグマの零距離射撃をくらい、再び転げ落ちる。しかし落ちきる前に飛び、空中からエックスゴースターによる射撃を向ける。しかし遠距離装備の塊であるドグマには無意味。展開した『ブレストミサイル』を一気にもらい、墜落と同時にUとハーミットのキックをもらうのみである。

 

「お前ら…!!」

 

ノーザンウルフの焦りと怒りは限界に。爪を展開してUとハーミットを切りつける。大きなダメージではなかったようだが、一瞬の怯みは生まれた。ドグマの砲撃をかわしながら、ジャンプも交えて石段を登っていく。

 

「でやああああ!!」

 

それを、ハーミットがハンマー投げで止めんとする。が、それを跳び避け、Uに向かって投げ返す。重力加速度も加わったその重量に耐えきれず、転がるまでもなく宙に投げられて墜落していく。

 

「大丈夫ですか!?」

 

「うん、一応ね』

 

その腕をドグマがしっかりと掴んで止めた。しかしながらゲキメツコンは下に落ちてしまう。変身していない神子がもって運べる重さでもなく、回収は難しい。自分を止めるものがまたひとつ消え、ノーザンウルフはさらに駆け抜ける。

 

「やめろっ…!」

 

Uはダメージを負ったにも関わらず、今一度登ろうとする。そんな彼女の意思に答えてか、いつの間にかその手にクリスタルが現れる。

 

「なんだろ…。いや、考える暇はないよね!」

 

『Wクリスタル!』

『Gクリスタル!』

 

新たなクリスタルをアンノウンドライバーにセットし、その中央のスイッチを押す。瞬間、光が彼女を包み込む。

 

『エレメントフュージョン!』

 

「いくよ…!」

 

『ウィンドギャラクシー!』

 

現れたのは、黒のボディに赤いラインが走り、緑の差し色が目立つ姿である。風を纏いながらまっすぐに駆け出し、ノーザンウルフの顔へとハイキックをぶつけた。

 

『風が銀河に吹く時に、受け継がれしは英雄譚!仮面ライダーU、ウィンドギャラクシー!』

 

その口上が語った英雄は、今一度構え、下の段のノーザンウルフへじりじりとにじり寄る。そして背中の方にはハーミットがおり、さらにドグマが下から砲を向けている。動いた瞬間やられる。この状態で、ノーザンウルフはゆっくりとエックスゴースターを構えた。

 

『XX!…good bye!』

 

そして必殺を発動する。爪でハーミットとUを滅多打ちにすると、今度はドグマへ大量の銃撃を向ける。

 

『波羅羯諦!』

 

「フル・バースト!!」

 

対しドグマは全射撃で対抗する。光弾が爆風が閃光が雷撃が。ノーザンウルフのビームを搔き消しながら押し寄せた。

 

『放て!受け継ぎし力!』

 

『ヒーロータイム!』

『ダブルクロスシュート!』

 

「でぃやあああああああああ!!!」

 

さらにUもX字の光線を放ち、そこに向かって蹴り込む。爆風を浴びながら、蹴りとともに地面へと接近していく。そして銃弾の雨は止まない。さらにはハーミットが地面に駆け下り、ゲキメツコンを構えた。

 

「オーグリスドライブっ!」

 

そして落ちて来るノーザンウルフへと叩きつける。打撃、蹴撃、銃撃。その挟み撃ちに耐えきれず、ノーザンウルフは爆散した。晴れた煙の中には、気絶した椛と砕け散ったエックスゴースターが。

 

「やれやれ。これで洗脳は解けるんだっけ?」

 

変身を解いたこいしの言葉に対し、これまた変身を解きながら二人は頷いた。そうして彼女を抱きかかえたとほぼ同時に、布都と屠自古が追いつく。その様子から戦闘を察したようで、力になれずに申し訳ないと告げた。

 

「いいんだ。彼女らがどうにかしてくれたさ。さ、ちょいとばかり早く神社に着いたんだ。お祭りの準備を楽しもうじゃないか!」

 

そう行って駆け出す神子の背を、少女たちはまっすぐに追った。

 

to be continued…




「私が私らしくあるために……もう誰も、悲しませないっ!」

「今なら、天道さまだって私の味方だ!」

決着をつけろ!仲間のために!愛する者のために!
次回、「今宵は優艶なエゴイスト 〜 Egoistic dreamers(Long ver)」


ひじみこ流行らせコラ!!!!!!険悪な雰囲気にちらっと信頼とかが見えるのがステキなのだ!!!
はい、みなさんこんにちは。始原のビートつい最近まで原始のビートだと思ってたサードニクスです。(至言)のビート。
いやしかし遅れて申し訳ない。ヘカーティア風のSDガンダムつくってたら遅れました。ツイッターにアップしてるから見て。
にしてもヘカーティア、幽々子、霊夢とかいう謎メンバーはこの幻想仮面少女以外で見ることはそうそうないと思う。しかもvsクラピーが謎を加速させる。謎は加速する…メイドインヘブンッ!
そして聖華扇早苗の敬語トリオ!女言葉ばっかで区別つかないってのはよくあるけどこれは初だ。
布都ちゃんはこういうキャラ。実は頭いいけど生き方が勢いメインだからバカっぽい設定。
ウィンドギャラクシーくんは今後もっと活躍するから許して。
まあそんなこんなでみんな変身ポーズコーナー!
今回はモノ!
下のポーズののち右手でベルトを操作します。

【挿絵表示】

絵ぇ下手すぎひん?MMDとか使っちゃおうかな。
そういうわけでまた今度!
先週できなかった分今週は多分二話更新よん


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第19話 今宵は優艶なエゴイスト 〜 Egoistic dreamers(Long ver)

全ライダー描こうと思ったけど、デザインがみんな似通っててうーんなんだよな…。描いたヒールとガイアはいつかUPるかも


「だあああああああ!!!」

 

「いででで!あぶないあぶない!」

 

朝っぱらから、魔法の森は喧騒に包まれる。騒がしい爆音と銃撃音の波に木々が揺れた。リライvsエレンツが巻き起こすその騒ぎを眺めるのは、魔理沙とそいつに連れ出されたみとりである。

 

「がんばれー!」

 

「やれやれ…」

 

魔理沙の叫び声に鼓舞されて、エレンツが力を強める。リライも対抗せんと反撃を返した。そうして拮抗したまま戦いは終わらない。

 

「やめてってのに…!」

 

「やめて欲しきゃそいつを渡しなさい!」

 

そんな状況だがあまり緊迫感はなく、ポップコーン片手に見てられるような軽いテンションである。

 

「でやあああああ!!」

 

「このお!」

 

だが二人は必死である。H・サンとツバイスターターによる弾幕勝負のような中距離戦が展開される。一方が逃げ、一方が追うような変化のない戦いに、魔理沙は少し飽きを感じてきた。

 

「ああ!もう付き合いきれないわよっ!逃げるのだー!!」

 

リライの叫び声に呼応するように、シャドウライトからバイクが飛び出る。驚きつつも利用しない手はないとばかりに『カオスグライダー』に飛び乗り、森の中逃亡を始めた。

 

「逃がしゃしないわよっ!」

 

また同時にアリスは呼び出したバイク『ドールシャイナー』に乗り、突如魔法の森バイクチェイスが始まった。展開が変わり、魔理沙はウキウキ気味に飛んでその先を追う。みとりも仕方なさげにその後についた。

 

「待ちなさいっ!」

 

「しつこいわねぇ〜!」

 

エレンツの銃撃を撃ち落としながら、リライは先に先にと逃げていく。そんな時、突如正面から強力な銃撃をぶつけられる。衝撃のあまり吹っ飛ばされ、エレンツへと体をぶつけた。

 

「あー、ごめんアリス」

 

「あんだけされといてよくごめんとか謝れるな」

 

魔理沙はそんなジョークを飛ばしつつ、銃撃の主の方へ視線を寄せた。その先には、エックスゴースターを構えるストームスネイクが立つ。そうして、四人は完全な警戒態勢をとった。

 

「…一時休戦よリライ」

 

「ルーミアと呼びなさいよ。そもそも開戦なんかしてないし」

 

そんな言葉を飛ばし合う二人の前に出ると、魔理沙とみとりは変身アイテムを構え、ゆっくりとポーズをとった。

 

「…ふーん、ゴミが四人よって勝てるんでしょうかねぇ?」

 

「…フン、言ってなさい」

 

「「変身!」」

 

『spark, great miracle magic!White & Black wizard!』

 

『armored rider phase red!』

 

そうしてスパークとリヴィエルも変身を終え、ストームスネイクの方へと向かった。対しスネイクは改めて構え直し、来いとばかりに武器を用意する。

 

「でりゃああ!」

 

まずスパークの連続蹴りが入る。さらにリヴィエルが連続でC2ブレードをぶつけ、連続パンチをぶつけた。さらに数歩引いた距離からリライとエレンツの銃撃が舞う。

 

「おっとっと…」

 

しかしダメージは大きくない。余裕の態度で向き直ったかと思えば、思い出したかのように飛び始めた。すでにバイクに乗っていたエレンツは真っ先にその後を追い、リライも乗り直す。

 

「…こうなりゃカメ仙の奴が言ってたので行くか!」

 

スパークがそう言ったかと思えば、ロボットのコウモリが彼女の元へ飛びよってバイクへと変形を終えた。そうして素早く乗り込み、二人に続く。『バットライダー』こそそのマシンの呼び名である。

 

「やれやれね」

 

そんな中、リヴィエルはコントローラーにて110と310を入力。呼び出したKPマシン二期が合体し戦闘機モードへと変わる。リヴィエルは素早く乗り込み、空ルートで回り込むようにストームスネイクを追った。

 

『wizard!wrecking spark!』

 

「バットッ!!ツインスパーク!!」

 

対しスパークはリライトエレンツを押しのけると、ど真ん中から突っ切って行ったのちビームをチャージした。放たれた極太の光線が森を焼きながらストームスネイクを襲う。流石に警戒し、両腕での防御体制をとった。

 

「やはりなっ!!」

 

『climax charge!KP red!』

 

瞬間、ストームスネイクの背をビームカッターとエネルギーの弾幕が包む。流石に防ぎきれず爆発を巻き起こした。強烈な爆風のあまり、四人が防御体制をとるほどだ。

 

「困った人たちだわ」

 

『XX!…good-bye!』

 

…しかし、ダミー爆煙である。驚く暇すら与えず、御柱が四人にに激突した。吹っ飛ばされた魔理沙が目を開いてみれば、もはやそこには誰もいない。彼女は悔しげに木を殴りつけた。

 

 

 

 

 

 

「…準備は終わりました。本当に、ありがとうございました」

 

「いや、いいんだ」

 

さとりの深々とした礼に、妹紅は謙遜を返す。

彼女の開発が完成し、ライダーにずっと守ってもらう必要がなくなった。故に妹紅とサグメは、味方の多い地上で永遠邸の住人を保護することにしたのである。

 

「こいしも地上に向かいました。…どうかあの子にも色々見せてあげてください」

 

「それは命蓮寺のやつらに伝えておくさ。…さあ、向かうぞ妹紅」

 

「ああ、行こうか。さとりも頑張ってね」

 

その妹紅の声掛けにさとりはしっかりと頷き、去って行く少女たちを見送った。視線の向けられるライダー二人の背は一抹ほどの不安もあったが、それでも大丈夫と言い聞かせるに十分なものである。

 

「やっと地上に戻れるわねー」

 

「そうですね!日光を浴びれるんだー!」

 

住処のことへと想いを馳せつつ、先を目指して歩みを早めて行く。しかし流石に距離というものがあり、早朝の出にも関わらず、命蓮寺への到着は昼過ぎとなった。

 

「んっ、妹紅じゃないの!!」

 

その姿を最初に見つけたのは天子である。その声に呼ばれ、命蓮寺に留まる居候どもがひょこひょこと飛び出した。

 

「お、みんな帰還だー」

 

村紗が素早く部屋の準備をすませると、六人を案内した。歩き疲れたためか、サグメ以外の五人はお昼寝を始める。その様をしばらく眺めたのち、彼女は風呂に入らせてもらうこととなった。

 

「…私、どうすればいいのかしら」

 

強がる口調も抜けて、深く深くため息が飛び出た。

 

「ドレミー…」

 

「お呼びしましたぁ?」

 

ふと親友を思ったその時、張本人からの声がかかる。サグメは驚き交じりに湯船から飛び出し、胸元からコトダーマを取り出した。

 

『シューターフィール!』

 

変身よりまず先に銃撃を展開し、ドレミーヘ光弾を飛ばす。夢塊がそれを防ぎ、ドレミーはため息をついた。

 

「せめて動くなとかの警告はないんですかね。お風呂のぞいちゃったのは謝りますって」

 

「黙れ。今の貴様はドレミー・スイートではなくズェッケロティパーとして扱う」

 

「あー冷たい。お話をしに来ただけなんですがねぇ」

 

「…聞く気は無い。たとえ親友でも、今は敵だ」

 

その言葉を受け、ドレミーは残念そうに息を吐き、去って行った。誰もいないからんとした風呂場の中、サグメは静かに落胆した。

 

「…風呂長いわねあいつ」

 

庭掃除の聖を眺めつつ、木刀を振りながらレミリアはそんなことを呟いた。一旦休憩に水を飲み、一つ思考を広げてみる。何気なく妹の顔が浮かび、彼女は一度帰宅することにした。

 

「紅魔館?なら私も同行するわ」

 

そんな中天子も素振りを止めてグラウンドスピーダーに乗り込んだ。そして傘をさしたドラクリヤーと並び、命蓮寺を後にする。

バイクゆえに到着にそう時間はかからない。昼のうちに紅魔館の正門へとたどり着いた。

 

「お嬢様!おかえりなさいませ!それに天人さんも。お客様が来てますよー!」

 

「お客様?」

 

歓迎の美鈴の言葉に、レミリアは誰だと返した。それに対し、会ってみればわかりますとにこやかに答えて見せる。仕方ないとレミリアはロビーへと向かった。

 

「待ってたよ。主サン」

 

そんな彼女を迎えたのはにとりであった。まあ、彼女の方が客人なのだが。

 

「…要件は?」

 

「単刀直入に言えば技術的協力だ。あんたの友人の魔術とか、あんたの個人的研究とかそういうのの協力をお借りしたい」

 

「なんで私の生物研究を知ってるかわかんないけど…、まあいいわ」

 

「よし。あんたにももちろんメリットはある。紫外線を周りに散らせるマシンをお試しで作ってみたんだ。あとで使ってみなよ」

 

にとりの自慢げな顔へ感謝を送ると、レミリアは咲夜に客へ紅茶を出すよう命じた。

 

「…ずいぶん深みのある紅茶だな。外国の茶自体あんま飲んだことないんだけどね」

 

「私も好きなのよ。天人に似合う高貴な味だわ」

 

そんな軽い調子の三人であったが、表情は和らぎ切ったとは言えないものだ。誰しも、脳裏によぎるのは幻想郷中の災害のことである。そこかしこに被害が散らばっており、安心できるとは到底言いがたい状況なのだから。

 

「…原因が貧乏神だと大きく報道された今、あんたに自作自演の疑惑がかかってるらしい」

 

最初に口を開けたのはにとりであった。視線とともに言葉を受けた天子は、どういうことだと表情を険しくする。

 

「それは…」

 

「私たちはあんたが仲間で、少なくともそんなことはしないとわかってる。むしろ、アイツを取り戻したいんだろ?」

 

「ああ、私を全く予想外に持っていけるのはあいつだけだ。今回も例外でなく、ね」

 

帽子を手のひらでくるりと回しながらつまらなさそうに吐き出して見せた。続けて、レミリアが言葉を紡ぐ。

 

「つまりあなたが戦ったらなお怪しまれるわけね」

 

「…でも、あいつを取り戻せるのは、私か肉親だけだ」

 

「肝心の肉親はあんなだものね。それにアイツには私も借りがあるわ…」

 

「ずいぶん硬い意思だな。ま、それならそれでいいんだ」

 

そんな風に話がひと段落した時、強烈な揺れが彼女たちを襲った。落ちかけたカップをうまいこと受け止め、紅茶を飲み干すと天子はゆっくり立ち上がった。

 

「…来たわね」

 

「行くよ!お嬢さんは日陰で休んでな!」

 

ここで決着をつけてやろうとばかりに決意を固め、二人はベルトを装備しつつ駆け出した。

 

「あ、いたいた、天人様だ!」

 

「…変身!」

「変身!!」

 

『ガイア・ザ・アース』

『armored rider phase blue!』

 

立ちはだかる禍女へと二人は同時に拳をぶつけた。ほんの少しばかり怯む禍女へとリヴィエルはビシッと指をさした。

 

「ここで沈んでもらうよ、あんたにはもう手は残されちゃいない!」

 

「さあ、こちらに帰れ!」

 

素早く決め台詞を向けたあと、さらに攻撃を開始した。だがそうなんども食らうわけではない。次は両手で受け止め、二人を投げ飛ばす。追撃の標準はリヴィエルだ。思い蹴りが腹に沈んだ。

 

「このっ…」

 

それならばと距離を置き、KP-110、-210を呼び出した。そして合体ののち、戦車のような形態となる。リヴィエルの合図と当時に、一気に放射を始めた。さらにC2ブレードのグリップをセットする。

 

『climax charge!KP blue!』

 

「コードブルー・フルバースト!!」

 

そして副砲が禍女を襲いかかり、幾多もの爆風が巻き上る。さらに主砲が禍女を狙う。

 

『XX!…bye-bye!』

 

黒煙の中、禍女は必殺を発動した。そしてKP-210のチャージも終わったという時に、禍女は天へ銃撃を飛ばした。どうしたのかと訝しげにするが、そんなのはもはやどうでもよかった。リヴィエルはそのグリップを引いた。

 

結論から言えば、そのビームは当たらなかった。盾となったのは隕石である。そのままリヴィエルに激突し、変身解除へと追い込んだ。

 

「最大の厄災のお味はどうかしら?…最大火力だとキョーリューだって滅びるわ。ま、私には無理だけど」

 

そんなことをぼそぼそと呟きながら、今度はガイアへと視線を向ける。勝機を疑う彼女の元へ、追い討ちのように女苑まで現れた。

 

「言ったでしょ。グズの姉さんでも、それ以下のあんたらには救えないと」

 

『X!』

「醒…妖!」

『fortunate…ready!』

 

「…まずいな、コレはっ!」

 

そんなピンチに立っていられず、傘を持ってレミリアが駆け出した。そしてガイアのもとに寄るが、だからと言ってできることもない。ただただ二人して立ち尽くすだけであった。

 

「どーすんのよコレ…」

 

「こっちのセリフだ!全く…。私が倒すしかないでしょ」

 

「…陽の中で動けたなら!」

 

レミリアの悔しげな声を聞き、にとりの中で何かが弾けた。ボロボロの体から残る全てのエネルギーを使って駆け出して行く。

 

「ドラクリヤー!!ちょっと体貸せ!」

 

そうして、駆けつけたドラクリヤーへと件の対日光装置を乗せた。すると装置はばらけていき、ドラクリヤーの体にしっかりと装備された。

 

「こいつはあんた用の『防具』だ。行けっ!!」

 

「助かるぜ河童!」

 

駆け抜けて行くドラクリヤーを見送り、一旦にとりは気を失った。

 

「あんたはもともと日光は大丈夫なハズ…あっ!私が乗ればいいってわけ!?」

 

「そうだ。でも…」

 

レミリアの発言に対し、肯定はしつつも言い切りはしない。そしてその顔は、得意げなものだった。

 

「オイラに秘策ありだ。…今のレミィならいける」

 

「ドラドラ…?」

 

「任せたぜ!」

 

そんな言葉と共に、ドラクリヤーのリアより、バックルのようなものが飛び出た。それがどう使うかは、なんとなく分かる。

 

「あっっっっっづ!!!」

 

そんなレミリアの横で、突如ガイアが騒ぎ立てる。腰の横にマウントされた熱源たるブランクコトダーマを持ち上げ、覗き込んでみる。

何も書かれていなかったそこに、『地』の文字が刻まれた。

 

「…そういうことか。感覚として分かったぞ!」

 

かと思えば、ガイアはそのコトダーマを握って粉々にすると、中から蒼くきらめくオーブを取り出した。

 

「…準備はいいわね、天子」

 

「聞かれるまでもなし!」

 

様子見していた怪人二人も、しびれを切らし駆け寄って来た。そんな中、二人は己の敵を見据えて準備を開始する。

 

『覚醒!』

 

『マックスタァァァァッ!!』

 

かたやバックルを合体させて装備し、かたや新たなオーブを入れる。傘を持たぬ右手で顔を隠すポーズを決め、またいつも以上に激しめに体を構える。

 

 

「「変身!!」」

 

 

二人の声が重なり、同時にレバーが引かれた。怪人二人が同時に銃撃を放つ。しかしそれは、光と岩とドラクリヤーに弾き飛ばされる。

 

『ジェ・ヴォー・ダン』『ワーラーキーアーッ!ヒャッハッハッハー!!』

 

『ブレイク・ザ・ディスパー!!!』

 

そして音声が叫び続ける中、鎧が彼女にまとわれ、七色の光が彼女を包み込む。

騎士を思わせる意匠とコウモリのような姿のが特徴的な仮面ライダージェヴォーダン ワラキアフォーム

水色の体に銀の目がきらめく、爽やかかつマッシブな仮面ライダーガイア マックスグランド

新たな姿と共に二人の戦士が降臨した。

 

「私が私らしくあるために……もう誰も、悲しませないっ!」

 

「今なら、天道さまだって私の味方だ!」

 

そうしてキメたところで、二人は異変に気づいた。

 

「…要石と緋想の剣は?」

「…ドラクリヤーは?」

 

持ち物と、相棒がそこから消えていたのだ。そんな中、二人は「よもや」とばかりに自身のアーマーを見た。

 

『少なくともオイラはそうだぜ』

 

それを言われて初めて、レミリアは自分の肩に乗ったタイヤに気がついた。

 

「…私も要石と剣がアーマーと合体した感じかな」

 

そんな風に確認をしていたが、そんな場合でもない。目の前に迫った禍女へと、ガイアはパンチを繰り出した。

その一撃目は意図せずともクロスカウンターである。結論として、押されたのは禍女だった。

 

「でりゃあああ!」

 

「おごっ!」

 

さらにその足が叩き込まれる。今までより自身が確実に強いのを、その手でしっかりと確かめた。

 

「だあああああ!!!」

 

そして、ジェヴォーダンもまた福女に少し優勢を見せていた。巨大斧ヴァンパイアックスを振るい、重い一撃を叩き込んで行く。

さらに巨大槍ワラキスピアーに持ち替え、グングニールとの二槍流スタイルで攻めた。

 

「このやろ…!」

 

福女は立ち上がり、今一度拳を振るった。ジェヴォーダンの回避によりその拳はガイアへと向かう。だが、ガイアはむしろそれを背で受け止め、肘打ちを返すのみであった。さらにそこにジェヴォーダンの追撃が叩き込まれる。

 

「どらあ!」

 

続けてガイアは怪人二人に連続でキックを叩きつける。禍女は一瞬体制を崩すが福女は怯まない。エックスゴースターでメダル型弾幕を展開し、一瞬の攪乱を行った。

 

「やっぱここじゃ最大限は無理そうね…来いっ!怨霊ども!!」

 

その福女の呼び声に惹かれ、周囲にエネルギーが溢れ始める。よもやと思ったその時にはすでに視界は暗転し、ゆっくりと街灯が煌めいた。異世界生成である。

 

「行けっ!」

 

ボディガードのような男たちをジェヴォーダンの方へとやり、彼女は禍女の方へと向かった。しかしガイアがそれを阻み、しかもジェヴォーダンは一瞬にて雑魚どもを切り払った。

 

「依神女苑!貴様の敵はこの私!レミリア・スカーレットだ!」

 

そう高らかに叫び、今一度福女へと向かった。だるそうに仕方ねぇなと呟くと、標的を変えてジェヴォーダンの方へと拳を向ける。

 

「このおおお!!」

 

悔しげな声と共に禍女は落雷を放った。しかし、その『気質』はもはやガイアのものである。ガイアは自身の周りに小さな電気を発し、その落雷を取り込んだ。驚愕の様子の禍女へと、雷撃をプレゼント。さらに拳でもって追撃をぶつけた。

小さいながら確実な怯みは生まれている。しかしやられてばかりの紫苑でもない。近接戦の間になすりつけた不運のエネルギーがじわじわと襲う。

 

「どりゃああ!!」

 

「おごっ!」

 

禍女の一撃は、腹へと大きく入った。そこは、いまだにストームスネイクのダメージが響く場所である。目眩さえするような強烈な苦痛に、その体制を大きく崩す。

 

「天子ッ!!」

 

「…ビビらせてくれましたね、天人様ぁ…」

 

「うぅ…」

 

「なっさけないわね。そんなんで姉さんを救うとかほざいてたわけ?」

 

周りからの言葉を受け、天子は仮面の中で血が出るほど歯を食いしばった。地に這いつくばる思いは、二度とごめんだと、怒りが溢れ出す。しかし、やっと立っても腹のダメージはいまだ響く。そんな天子の元へレミリアが駆け寄った。

 

「…大丈夫かしら?」

 

「…やってやるわ」

 

「提案なのだけど…あいつらに対抗するならアレでどうかしら?」

 

「あんた、アレやったことあるわけ?」

 

「パチェと試したことはね。…マスターは私よ」

 

それを聞き、天子は仕方ないなと、どこか嬉しげに吐き出す。そしてお互いの合意の下、『完全憑依』が成立した。

 

「一対二の状況わかってんの?」

 

「わかってるともさ!」

 

ジェヴォーダンは今一度ヴァンパイアックスを構え、二人へと攻撃を続けた。

 

「…さて、天子があんたに叩き込んだ攻撃は18回!バラせば666!!分かってるな…*デビルズナンバー666!*」

 

そして、禍女へと追撃としてオカルトラストワードを叩き込む。『呪いそのもの』こそがその力である。

 

「うぐっ…胸がっ……お前、都市伝説の異変でっ!」

 

「あの時はハデには動かなかったけど…やらせてもらったよ!お前が不幸を扱うならこっちは呪いだっ!」

 

心臓を刺すような痛みが、禍女の足止めをする。その隙にジェヴォーダンは福女へと斧を叩き込んだ。そしてドラクリヤブレードとの無理やりの二刀流にシフトチェンジ。連続で斬撃を叩きつけた。さらにはバックルを斧に取り付け、必殺技を発動する。

 

『ワラキアカーニバルッ!!ヴァンパイアックス!!』

 

空中より生じた魔法陣が鎖でもって一気に福女を引き寄せる。そこへと、ジェヴォーダンが一撃を振り下ろした。

 

「うぐぁ!!」

 

「そしてっ!貴様も18回食らったな!」

 

さらに呪いが追撃する。そんな頃天子は回復し、スレイヴ側の出番である。ジェヴォーダンの攻撃に加えるように、そのまま蹴りを繰り出した。さらにパンチを叩きつけ、立ち上がって襲いかかってきた禍女は回し蹴りで退ける。

 

「邪魔をするな…!!!」

 

「…もうやめにしよう。自分が救うと躍起になるのは結構だが、犠牲を生みながらする事じゃないぞ」

 

「黙れ…!今まで虫ケラを踏み潰しながら生きてきたお前に何がわかる!」

 

「わかるとも!お前が姉をどう思っているか、お前の身じゃないがわかるさ。私は目に見えるものすべて救う!いくら下賤でもだ!踏み潰す?抱擁の間違いだわ」

 

「ふざけるなああああ!!!」

 

福女はその拳を振り上げる。防御しようとしたその隙に首根っこを掴み、腹に重い連撃を叩き込んでいく。レミリアが替わろうかと言うのを断り、天子はスーツの中でその怒りを受けとめ続けた。

 

「HAARP…!!」

 

そして静かに、されど確実に、己のオカルトを吐き出した。まずいとばかりに警戒態勢をとる福女へ、容赦なき雷撃が激しく襲う。

 

「うぐぁ!!」

 

「…目は覚めたか?さもなくば、これが目覚ましだ!」

 

さらに蹴り上げを叩きつけ、迫る禍女共々回し蹴りでぶっ飛ばした。

 

「…冷静になりなさい。あんたが本当に想うなら、それが正しい行動じゃないでしょ?…意地だけが前を突っ走っているのよ」

 

「…」

 

「私は散々迷惑がられたけどね、『自分』を曲げたことはないわ。本当にしたいことを考えなさい」

 

「…愚妹に説教はありがたいんですけどぉ…、一応私はあなたを倒さなきゃいけないんですよねっ!!」

 

どうやらレミリアが引っ込んだことで呪いが弱化したようだ、調子を取り戻し、禍女はガイアの元へと向かった。

 

「答えを出すんだ。本当にアイツを救うために…!」

 

「……」

 

「隙だらけですよ天人様!」

 

「レミリア、同時に行くわよ!」

 

「了解…!」

 

立ち尽くす福女をよそに、ガイアとジェヴォーダンは禍女の方へ向かった。禍女も禍女で全力を振り絞り、二人のパンチを両手で受け止めていた。そんな中、福女がゆっくりため息を吐き出す。

 

「…ったく!」

 

『XX!…bye-bye!』

 

「でやあああああ!!!」

 

駆け出す。ライダー二人の肩をがっしりと掴んだ

…そして二人を無理やり退けると、禍女へとパンチを叩き込んだ。続けて、ライダーを一瞥。

 

「グズグズすんなッ!偉そうに説教垂れた身分でぼーっとしてんなっ!」

 

「言われずとも!」

 

「助かったわよ疫病神!!」

 

『スーパーグランドフィニッシュ!』『グランマックスエンド!』

 

『ファング!ドラクリヤエンド!』『オーバードライブ!ツェペシュ・オブ・ファーング!』

 

禍女に生まれた大きな隙を見て、二人は同時にレバーを引いた。二人は飛び上がり、キックの態勢をとる。

 

七色の光が天子の足を包む。

尖った赤い光がレミリアの全身を覆う。

 

二つの衝撃が禍女の体を貫いた。

巻き起こる爆風の中、砕け散ったエックスゴースターが転がり出る。

同時に女苑も変身を解き、あたりは紅魔館の前へと戻った。

 

「やっとだ…。おかえり、紫苑」

 

「やけに甘い声で…。天子らしくもないわねぇ」

 

煙の中に横たわる細すぎる体を、天子はゆっくり抱え上げた。そこへ、女苑が近づく。

 

「…これ、もう要らないわ。あんたが役立てなさい」

 

差し出したのはエックスゴースターとUSBであった。天子はしっかりと受け止め、去っていこうとする女苑の背へ声をかけた。

 

「…聖がお前を心配してたよ」

 

「あの生臭坊主が?フン、考えてやるとだけ言っておくわよ」

 

その言葉とともに、完全に森へと姿を消してしまう。

少女たちは一度、紅魔館へ戻ることとした。

 

 

 

 

 

「この季節にマフラーなんて怪しすぎますよぅ。暑いですしー」

 

「仕方ないだろ。姿を隠すのよ」

 

後日、天子は人里へ買い出しに来ていた。命蓮寺に居座る都合上買いに行かせてもいいのだが、実は天子、料理への興味のあまり材料へもこだわり始めているのだ。

だが、件の自作自演疑惑というものがある。あまり派手にも動けず、変装するほかなかった。

 

そして、八百屋を物色する、その時…。

 

「かわいそうだよな、例の天人も」

 

「!」

 

自分の話題が聞こえ、そちらへ耳をすます。よく聞こうと近づくが、どうも人の気配がない、ゆっくり見渡してみるが、その声はどうも虚空から聞こえる気がする。

 

「…この声、どうもこいつからっぽいですよー」

 

紫苑がそう言って指差したのは、まぎれもない箒であった。言われれば、不思議な気質を示している。

 

「おお、ご本人登場じゃのう」

 

突如後ろからかかった声に驚き、後ろの方へと緋想の剣を向けた。

 

「おいおいあぶないのぅ、わしじゃ、マミゾウじゃ」

 

「例の狸ね。…何の用?」

 

「この付喪神の様子見じゃ。どうだ、ちゃんと働いてるか?」

 

その言葉に、天子はどういうことだと視線を向ける。対しマミゾウは、ニヤッと余裕のある様子だ。

 

「お前さんの疑惑を晴らすように噂を流しとるんじゃ。お前は陥れられたって具合に」

 

「なんでそんなことを…」

 

「妹紅殿の頼みじゃ」

 

それを聞き、天子はぎょっとしつつ嬉しいような様子を見せた。そしてそこに、文が現れる。

 

「マミゾウさんにこの前の貧乏神さん!…それと?」

 

「私だよ」

 

「ああ、天子さん!」

 

そんな三人へ、新聞を手渡して行く。号外らしく、お代はいただかないと続けた。

 

「当然よ。誰がインチキ新聞に金なんて…『いたずら天人の素顔。この里を守る姿勢に涙!』…ですってぇ?」

 

「うわー、天人様が一面だー!」

 

「…伊吹様が、あなたの疑いを晴らす記事を作れって言ったんですよ。だったら、あなたの仮面ライダーの顔を取り上げるチャンスでしょう?」

 

そう言い残すと、そそくさと去って行った。目指す先は鈴奈庵である。

 

「…まったく、どいつもこいつも勝手に粋なことしやがる」

 

どこか嬉しげにため息を吐き出し、新聞をしまいつつ彼女は通りへ戻って行った。無論マフラーと上着は脱ぎ、帽子はいつもの物に替えて、だ。

 

To be continued…




「決戦だ。身構えておけよ」

全ての力が、激突する!
次回、「御柱の戦場」

お  ま  た  せ
というわけでハローみなさん。最近CJD×CJDに目覚めたサードニクスです。
CJDわかる?コスプレ女装男子。
私最近蓮子コスやっててですね。いつか聖もやりたい。見事にここのライダーだね、うん。
いあやーホント遅れて申し訳ないっす。忙しかったという一応の言い訳はしときましょう。
結構大事な話で、10話時点でもう決まってたんですけどねこの話。
何がいけなかったんでしょうねー。
今回はオカルトや完全憑依など原作に寄せた感じ。そういえばガイアこの前も原作技使ってたな。
レミリアは『666』、天子は『HAARP』ですね。
あ、令和楽しみですねー!!五月ですっけ。

そういうわけで久しぶりにみんなの変身ポーズコーナーです。
リライ!
まずクウガっぽい感じでシャドウライト出現!そして左手を前に突き出します。
そして胸元に持っていき、パッと下げてボタンを押します。
そして聖者は十字架ポーズ!彼女のみを闇か光が包んで変身完了です。
そういうわけで、チャーオ!


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第20話 御柱の戦場

アリスとルーミアの決め台詞は勝手に考えてたり。


「世話になったよ」

 

妹紅は聖にそう告げ、輝夜たちとともに命蓮寺を後にした。小さくなっていくその背を見送り、聖は早朝の掃除を続けた。

ひとまず問題はないと、妹紅は永遠亭の面々を連れ帰ることにしたのである。

 

「…本当に良かったよ」

 

ぞろぞろと帰路を行く中、通った人里を見渡してみる。その風景は平和そのものであり、災害が収まったのがよく分かるものであった。

チラチラとライダーの名前も聞こえ、妹紅は少しばかり誇らしい気分である。

 

「…やっぱり目下の問題は八坂神奈子…ストームスネイクね」

 

しかし、平和な雰囲気に隠れて深刻な顔つきな者たちもいた。小鈴の理解と協力体制の下、この鈴奈庵はライダーたちが会議に使い始めていた。妖怪が居てもあまり違和感はないから、と自虐を乗せた上での使用許可である。

 

「どうするんだ?最強とはいえ…あたいも苦戦するぞ」

 

ルーミアの発言に乗ってチルノが続ける。呑気な妖怪と妖精の雰囲気ではなく、明らかに口調が重い。こいしと萃香も、いつになく真面目極まる雰囲気であった。

 

「やっぱり一斉に力を合わせるのが賢明だろうよ。…わたしたちで呼びかけをしよう。…これが味方の名簿だ」

 

萃香は瓢箪片手に立ち上がり、メモを卓上に置く。そうして全員と目を見合わせ、続いて言葉を紡いだ。

 

「…すぐに相手側に知れちゃうんじゃない?」

 

「だから急ぐんだ。…明後日の早朝に設定しよう。そこで守矢神社へ向かうよ」

 

「おっけー…チルノ、わたし達は白玉楼に行って声をかけてこよう」

 

「じゃあ私は河童の方に声をかける。こいしは紅魔館へ行ってくれ」

 

「了解!」

 

そうして会議は終わり、面々が散っていった。ルーミア達が冥界の入り口へ向かおうとしたその時、早苗が横に現れる。驚きつつも二人は行き先を説明し、早苗も加わって行動することに。

 

「…」

 

重い雰囲気ゆえか、三人は一切の会話なく冥界へと向かった。何度か早苗が口を開こうとするも、特に何か言い出すことは出来ず、ついには到着してしまう。

 

「…あら、用かしら?妖夢なら今席を外してるわ」

 

そんな彼女らを迎えたのは幽々子であった。主人自らお茶を入れ、その席を用意した。

 

「…手短に言います。明後日の早朝、守矢神社へと攻め込みます。神奈子様…いや、ストームスネイクを倒すためです。ですから…」

 

「協力なら惜しまないわ。…明後日ね、準備ならしておくわ」

 

二つ返事の幽々子に驚きつつ、早苗は頭を下げて全力で感謝を示した。幽々子はそれほどの事ではないと言い、頭をあげるよう言う。

 

「…さぞかし辛いでしょう。おかしくなっているとはいえ自分の神を撃たねばならぬことは。…頑張って。私からかけられるのはその程度の安っぽい言葉よ」

 

寂しげに幽々子が告げたその時、扉を開けてアリスが現れた。

 

「お手洗いありがとね。……幽々子、この子達は」

 

「明後日八坂神奈子と戦うから…付いてきてくれって」

 

「ふーん……」

 

アリスは深く思わしげにうつむいたかと思うと、ルーミアの方へ視線を向けた。そして厳しめに表情を作って口を開く。

 

「リライ」

 

「ルーミアと呼びなさいよ」

 

「フン、あなたの持つ力はとっても危険よ。事情があったにしても…持たせておきたくはないわ」

 

「何を偉そうに」

 

吐き捨てるルーミアに対し、アリスは今一度ため息を飛ばしてその右手を差し出す。そして続ける。

 

「シャドウライトを渡しなさい」

 

「やだね、そもそも出せないわよ」

 

「…じゃあ力ずくよ」

『β・mode ACTIVE』

 

「やっぱそう来るのかー」

 

「「変身」」

 

そうしてお互いがリライとエレンツに変わった、その時。砂煙を巻き上げながら目に悪いカラフルな妖精が着地した。チルノは真っ先に反応し、クロッカーを構える。

 

「イッッッツァ…ルーナーティーック!ッタァーイム!!」

 

『WARNING!WARNING!WARNING!WARNING!』

 

「変身!」

 

『ばっきーん!うぃんげるふぉーむ!』

 

「…アリス」

 

「分かってるわよ」

 

けたたましい待機音の中、砂を払ってクラウンピースが顔を見せる。そして松明を空中にぶん投げ、構えを取る。

『WARNING!WARNING!WARNING!WARNING!』

『Hulu!』

「変身!」

『DANGER!DEXIZASUTAXA!大・狂・乱!愚者の一手!破滅の一手!』

 

「おーっと、そのままあたいをリンチってのも心苦しいだろ?今日はお客様をお呼びしてるぜぇ!」

 

松明を蹴り飛ばしつつフールはケラケラと笑った。その松明をランスで弾きとばしつつ、フールの手をかざす方向へリライは一瞥を送る。

見てみるとどうだ、立つのはヘカーティアではないか。

 

「あら…初めましてがいっぱいねぇ。そこの子は知ってるわよん…私の格好に文句つけちゃった生意気な子!」

 

そう言って早苗の方を見る目は、真っ黒なもの。怪しくきらめく瞳は、シャドー怪人のそれであった。

 

「…アリスさんとルーミアさんは妖精を。…西行寺さん」

『start up…』

 

「幽々子と呼びなさいな」

 

「あら、やる気満々ねぇ!」

『Set Tierra power!』

 

「変身!!」

「変身♪」

「変身」

 

『OK!ROKUMONSEN! white monotone!』

 

『Mai bloom!Selezo!』

 

『Perfect!HellGod Tierra!』

 

花びらを桜が振りまく中、それぞれの姿が変わった。そうして構えた瞬間、駆け出したのはモノである。

 

『slash monotone!』

 

ヌサスラッシャーを構え、風に乗り高速で攻撃を叩き込む。対しシャドーヘルゴットもスピード形態だ。ヘルスウェポンロッドを巧みに振るって一撃ずつ防ぎ、見つけた隙に蹴りをねじ込む。

 

「はっ!」

 

が、蹴った直後のそこにトランスフロートソードモードを叩きつけた。シャドーヘルゴットはモノ以上に大きな隙を晒し、さらなる追撃を許す。

 

しかしフールはそうはいかない。三人にとっては慣れない相手なのもあるが、ランパースの部下も巧みに使い、一方的戦闘を展開していた。

 

「やっぱ偽物は偽物だなぁー…っと」

 

余裕気味にそう呟くと、こちらへ来るようシャドーヘルゴットへ声をかけた。

 

「帰りましょご主人様。地獄からの通り道で喧嘩売っただけですから」

 

「そうね。じゃあーねー」

 

そして投げキッスをシャドーヘルゴットが飛ばしたかと思えば、紫の煙があたりを包み、敵の姿はもはやなかった。舌打ちをするリライの方へとエレンツが近づく。

 

「…邪魔者はどっか行ったわね」

 

「体力は明後日に温存しときなよ」

 

「あんたがその石を持ってたらその明後日に何が起きるか分かったもんじゃないわ」

 

「…はぁ、仕方いないなッ!」

 

そうしてリライは槍を構え、エレンツは二丁拳銃を向けた。

 

 

 

「…で、相変わらず決着つかずと」

 

「アホらしいったらないわね」

 

「あたいでもどうかと思った」

 

サグメと天子…さらにはチルノの毒舌がルーミアに飛ぶ。対し彼女は戦いを要求するのは自分ではないとばかりにため息を吐いた。

白玉楼の彼女らはもう向かっておこうと言うことで命蓮寺に来たのである。

 

「にしてもこんだけの人数収容できる空間と布団があるのすごいわよねー」

 

蓮子が行ったのに対し、レミリアも頷いた。紅魔館ほどではないと付け足しつつ、幾分か驚きはあるようだ。

平常に話しながら、緊張も流れる空気の中、一つの風が吹く。

 

「八坂様が…ストームスネイクが弱小妖精を引き連れて…命蓮寺に向かっています!!」

 

文の放ったその言葉を受け、空気が一気に凍りつく。しかしそれも一瞬。ほぼ全員が変身アイテムを持って立ち上がった。

 

「予定変更。…八坂神奈子およびその軍勢に対し、迎撃戦を行う!!決戦だ。身構えておけよ」

 

サグメの一言に、一同の警戒態勢が一層強まる。そして真っ先に動いたのは蓮子だ。にとりへと電話をかけ、命蓮寺に来るようライダー達に伝言を送らせた。

 

「にとりさんがテレパス通信機で可能な限りは来るよう言うみたい」

 

「グッジョブよ蓮子。…さて、奴さんは意外と早い到着みたいだ」

 

「…まさか襲撃を予定した翌々日にそっちから襲撃を企ててたなんてねぇ。タイミングの悪いことこの上なし」

 

天子の目の前に、ストームスネイクが着地した。そしてライダー達も身を構え、変身の準備を終わらせる。

 

『look the fantasy!』

『グランドライバー!』『マックスタァァァァッ!!』

『覚醒!』

『コトダーマ!翼!』『ブレイクオープン!ドレスアップ!』

『人か霊か?』

『南無三宝!』

『Bクリスタル!』『Eクリスタル!』『エレメントフュージョン!』

『がっちーん☆』

『start up…』

『ready…go』

 

「「『大変身!』」」

「変ッ身ッ!!!」

「…変身」

「変身…」

「変…身!」

「変身!」

「変身…!」

「変身っ!」

「変身ッ!」

「変身!!」

「変身…なのだっ、てね」

「変身」

「変身♪」

 

『we are bewitching night fantasy!』

『ブレイク・ザ・ディスパー!!!』

『ジェ・ヴォー・ダン』『ワーラーキーアーッ!ヒャッハッハッハー!!』

『メイクウィング!ワードレス!』

『変・身・承・知!レイノカタ!』

『GRADE UP…… FAZE2』

『light!』『変わらぬ麗光(れいこう)!続くは研鑽(けんさん)!揺るがぬ神仏!』

『バスターエネミー!』

『ばっきーん!うぃんげるふぉーむ!』

『OK!ROKUMONSEN! black monotone!』

『α・mode ACTIVE』

『Mai bloom!Selezo!』

 

けたたましく光が舞う、機械が飛ぶ、アーマーが展開される。鳴り響く音の中ライダー達は一斉にその姿をヒーローのものへと変えた。

 

「「調停の真理…教えてやろう!」」

「土に還してやるッ!」

「さぁ、殺戮の時間よ!」「ショータイムだぜ!」

「運命だと思って…諦めるんだな」

「この私に切れぬものなど…ほぼない!」

「はぁ〜、なんだって私は人間と共闘してんのかな。…ま、あんたは倒すけどね」

「見せてあげましょう…これが法の光!」

「…行くよ」『時が終わりを告げようと、倒すは悪の侵略者!仮面ライダーU!』「『バスターエネミー!』…ってね」

「派手に…ぶち凍らす!」

「勝手に定義するわ。…あなたは食べてOK!」

「…そこまでよ」

「一緒に踊らせてあげるわ」

 

「崇めよ我を!祀れよ山を!讃えよ神を!謳えよ幻を!そして吹き荒れる奇跡の神風を見よ!今ここに…貴方のために!そして神々が恋した幻想郷のために!!我々は立ち上がった。見ていてください神奈子様、諏訪子様。我ら戦士の…勇姿をっ!!」

 

まとまりのない掛け声をまとめたのは涙を押さえたような声の早苗だった。槌を構え、神奈子へと近づいていく。

 

「…やかましい奴らねぇ。相手してあげなさい」

 

『ready…go!』

 

ストームスネイクが指を弾いたのに合わせ、妖精たちが駆け出す。それに対して先陣を切ったのはラビである。前方にダイヤモンダーを展開し、弾幕をかましながら無理やり突っ切った。

 

「邪魔だっ!!」

 

しかしストームスネイクの銃撃で一旦距離を置かれる。そのラビの肩えお飛び台にして、Uが跳ねた。

 

「どりゃりゃりゃりゃりゃ!ていっ!!」

 

赤の杖エイトケインを振るい、フェアリートルーパーを蹴散らしていく。縦横無尽に駆け、ガトリングと共にモノが進むホワイトスネイクへの道を切り開いていく。

 

「どきなさいっ!コンパロコンパロッ!!」

 

さらには星のような瞬きと共に、メディスが駆け抜ける。煌めく輝きと共に毒を振りまき、拳や蹴りを食らった妖精が怯んだ。味方の多いのを考慮して弱めの毒である。だがそれは一発の話。

 

「でやあああああ!!」

 

跳んだかと思えばバタ足のようなスピードで下方へ連続蹴りである。妖精達が消滅していく中で、エクスブライガンを構えていた。

さらにはそこを交差するように片翼が空を舞う。白黒銀の三色がまとまった、ローブのような姿がきらめくウィングワードレスだ。

 

「自分用に調整して緊急実戦だったが……十二分に実用に耐えうる性能だな」

 

金属製の翼を弾幕のように広げながら、シューターフィールの白き光弾をばらまいて妖精を蹴散らす。さらにはすれ違いざまにストームスネイクに一撃をかまし、ほんの小さな隙を生んだ。

 

『finish monotone!』

 

「ライダー!重量クラアアアアアアッッッシュ!!!」

 

そこに「決」のコインを読み込み、跳び寄る勢いそのままに槌を振り下ろした。だが、せいぜい怯むだけ。膝を入れられ、モノは屈み込む体勢になってしまった。

 

「このっ…!」

 

その苦戦に援護を送ろうと、エレンツとヒールからの銃撃が入る。だがエックスゴースターで簡単に撃ち返し、エレンツを大きく怯ませた。ヒールは避けたものの、ストームスネイクを狙うのは難しい状況へ。

 

「…!」

 

だが、エレンツは隙を晒してしまった。フェアリートルーパー達の一斉攻撃を受け、さらにダメージを負う。そんな中、すり抜けて援護に来たのは桜刀であった。

 

「はっ!たぁっ!」

 

確実に妖精達を叩き斬っていき、数を減らす。そしてエレンツに手を貸すと、立ち上がった彼女と背中合わせの姿勢に。

…そして桜刀はエレンツをすり抜けながら切り抜け、エレンツもその援護を行った。

 

『blast α ready…FIRE!』

 

「ブラストスターター!!」

「カクリヨギリ!」

 

さらに水流と爆風の砲撃が妖精達をぶっ飛ばし、そこを斬撃波が襲っていく。そしてその風に乗ってブロッサムが可憐に切り抜けてきた。

 

「だああっ!!」

 

そしてUが暴れるなか、爪をぶん回してジェヴォーダンが現れる。いつも以上に本能全開で剣と斧を振り回すその姿は、悪魔そのもの。

こいしは多少気圧されつつも、エイトケインを構え直した。

 

「チャージ完了!」

 

そして光線を放ち、妖精どもをぶっ飛ばしていく。そしてその中をリライが駆け抜け、銃弾を振りまく。

 

「H・ライジング!バァアアアストッ!!」

 

そして巨大な光弾を妖精達に放っていく。エイトケインとH・ライフルの激しい閃光のなか、今度は機械的な光が飛び出てきた。

 

『armored rider phase blue!』

『armored rider phase red!』

 

「遅れて参上!ここで沈んでもらうよ、あんたにはもう手は残されちゃいない!」

「ここで詰みよ、あなたにはもう進む道はない!」

 

そしてリヴィエル二人がストームスネイクを指差すようにポーズをとりながらKP-010から現れた。みとりはすかさずリモコンを操作し、KPマシン達を一気に呼び寄せた。

そして戦闘機形態と戦車形態のKP-110が暴れ始める。妖精達の数も減り、勝機が見え始める。

 

「トゥデイズルナティックタイム…アゲイン♡」

『大・狂・乱!愚者の一手!破滅の一手!』

『Perfect!HellGod Allien!』

 

だがそうもうまくはいかない。先ほど以上の数のランパースフェアリートルーパー達の援軍が入り、さらにはフールとシャドーヘルゴットまで割り込む。

 

「はあああああ!!!」

 

フールの方へ真っ先に向かったのはドグマだ。こころを模したような法術ライトフォルムは、そのスカート内部のブースター機構での独特な動きを強みとする。

フールと不規則な動きでお互いを撹乱しつつ、扇子と拳がぶつかり合う。

 

『愚者の一撃!』

『波羅羯諦!』

 

炎を纏ったかかと落としと旋風を纏った突進がぶつかり合い、空中で熱風として弾けた。両者着地し、今一度インファイトが始まろうという、その時。

 

「主役は遅れて登場ってな!」

 

「あー?ま、そういうことかしら」

 

霊夢と魔理沙がそのランパース達の間を押しのけて現れた。さらに後ろには華扇、萃香、ヘカーティアが神社から駆けつけたようである。

それぞれ変身の準備を終えており、一人一人構えをとった。

 

「待ってね、この前決め台詞考えたのよ。現代と幻想の……なんだっけ魔理沙」

 

「この際それはいいから」

 

「仕方ないわね…」

 

「「「「「変身!」」」」」

 

『楽園!神の使い!博麗の〜巫女!』

『spark, great miracle magic!White & Black wizard!』

『formname is 金剛鬼 GOGOGO!』

『Perfect!HellGod Luna!』

『monsterside……change modeogress』

 

「退治…開始ッ!」

「行くぜ!!」

「我が信念にかけ…必ず救ってみせる!」

「「さぁ…」」

「宴の始まりだァ!」

「地獄を見せてあげるわ!」

 

石畳を前に、五人の戦士が並び立つ。そしてそれぞれに武器を構え、妖精達の元へと突っ込んでいった。

 

「たあああああぁぁっ!!!」

 

「おらおらおらぁ!!」

 

ヘルゴットと酔鬼はその圧倒的な防御力でもってど真ん中に突撃し、それぞれ剣とシールドをぶん回していた。さらに酔鬼の拳がシャドーヘルゴットに叩き込まれ、ヘルゴットもまたフールへと剣を向ける。

 

「たっ!!」

 

さらにはハセンゴロモで透明に姿を変えたハーミットが不意をつく形でシャドーヘルゴットへ一撃を与えた。だがそれで黙っているわけでもない。

 

『Invocation Deathblow!』

 

鎖をハーミットと酔鬼に絡め、一気に引き寄せる。そしてその斧を振り下ろそうとする…が、ハセンゴロモがそれを捕らえる。

 

「オーグリスドライブッ!!」

 

そして振り下ろされたハンマーがその斧を叩き落とした。さらに酔鬼が構え、空中に盾を投げる。そして跳んで盾を掴み取ると、重力そのままにシャドーヘルゴットにプレスをかました。

 

「カーチーオートーシー!!!!」

 

「うぐあぁっ!!」

 

そして爆風。紫のゲル状のものが飛び散り霧散する。軍勢が減ったフールは流石に焦りを見せ、増援を呼び出していった。

 

「お前だっ…洗脳させてる暇はねぇがな!」

 

そうしてフールは薬剤のようなものを命蓮寺の中に居た村紗を引きずり出してかけ、さらに炎を見せて凶暴化させた。彼女の体はみるみる変異し、水に濡れた刺々しい化け物が現れた。

 

「う…ああああ!!」

 

「行け船女(ふなめ)!!ライダーどもをぶっ殺せ!!」

 

「ぶっころ…す……うううぅぅあああああ!!!」

 

ドグマは真っ先に船女の方へと向かい、フールvsヘルゴットの構図に。しかしそこにワードレスが入り、状況は大差はない。ストームスネイクが居るとはいえ、多少焦りが見られた。

 

「だああああ!!!」

 

だが、ストームスネイクは依然余裕である。モノとガイアの両方の攻撃を軽く受け止め、蹴りを返している。

 

「「はぁっ!!!」」

 

続けてヒールがチェイスナイタースライダーモードに乗って、連続銃撃をかます。だがそれさえノールックの銃撃をもらい、墜落してしまう。

 

「弱い弱い!!」

 

「「こいつ…今までとは格が違う…」」

『四人で撃退がやっとだったみたいね』

『天子が強くなってるとは言え…どうしましょう…』

 

「くそっ…」

 

そんな苦戦の方へ、リブレッスは助太刀に入ろうとした。…だが、突如彼女は裏の方へと向かい始める。スパークもどうしたのだとその後を追い、リブレッスに追いついた。

 

「こっちに何かあんのか霊夢」

 

「…そこの草陰が動いた気がした。気をつけなさい。()()わよ」

 

「……お前の勘なら確実だな」

 

そうして二人が身構えたその瞬間、草むらから影が飛びかかった。

 

「ハァッ!」

 

その一瞬を捉え、リブレッスはすれ違いざまにガイネンブレイカーを当てた。だが怯む様はない。二人は今一度肩を並べ警戒態勢をとる。

 

「ヴゥ…ウォアアアアアアアア!!!」

 

そして立ち止まったことでようやく認識できたその姿に、魔理沙は目を疑った。紫の体に棘が生え、腕が傘のように変質し、さらには紫に染まったその目。…その姿が思いつくのは、八雲紫ぐらいのものだからだ。

 

「アッ…うゔぁああああ!!!!」

 

奇声をあげて飛びかかる『隙間女』の攻撃をかわしつつ、二人は警戒をさらに強めた。そして目を見合わせ、うなずく。

 

「カメ仙!」

 

『なんだ』

 

「目の前の強敵見りゃわかるでしょ。この前言ってたアレよ」

 

『ん、それなら魔理沙のも呼ぶか』

 

カメ仙がそんなことを呟いたかと思えば、バットライダーからコウモリ型のマシン『コウモリマジシャン』が現れ、魔理沙の手の上に収まった。

 

「ううぅぅ…がああああああ!!!」

 

『ほらさっさと変身しろ!』

 

「分かってるよ!」

 

二人は焦った様子で手に持ったマシンを分解し、ベルトに合体した。体が機械とは言え、ベラベラ喋るカメ仙をバラすのはいささか抵抗ありだったものの、気にする暇はない。さらに、それぞれ軽くポーズをとりつつ、マシンの中から取り出したカードをセットした。

 

『読み込み!仙人!』『&仙獣!』

『reading!magician!』『& magical beast!』

 

そうして二人は隙間女の攻撃をスレスレで避けながら、円盤を回転させた。変身シーケンス完了である。

 

「げ、ゲンソウチェンジ!」

「え、何よその掛け声知らないんだけど」

 

『八卦、神通力!神秘なる仙人!!』

『戦乱!閃光!仙獣タートルゥ!!』

 

『mysterious , illusion! beautiful magician!』

『bad?nightmare?not…magical beast!KO・U・MO・RI!』

 

それぞれのボディスーツが、リブレッスは白、スパークが黄へと変わる。さらにカメとコウモリがバラバラになり、その身にアーマーとして着込まれていく。

青緑にまとまったリブレッス センニンフォームと青紫にまとまったスパーク マジシャンフォームにその姿を変えた。

 

「ゔっ!!」

 

隙間女がリブレッスに飛びかかったのを、彼女は腕の甲羅型半円シールドを展開し、両腕を合わせてガード体制をとった。

鋭い右腕による突き攻撃を跳ね返していくが、ついには防ぎきれずその両腕弾かれる。

 

「はっ!」

 

だがその勢いままに背中のタートルセンニンシャクジョウを手にとって、防いだ。同時にスパークは左手のバットウィングアローを展開し、中距離からの射撃を行う。

 

「かったいわね…」

 

「当たってはいるんだがな…」

 

だが、イマイチ大きなダメージではない。バットウィングアローからエネルギーブレイドを広げ、ウィングシザーでの攻撃に切り替え、二人で近接を試みるものの、大きなダメージではないようだ。

 

「こうなりゃ…!!」

 

だが方法があるわけでもない。二人ともゴリ押しで無理やりダメージを与える形での戦闘をとった。

 

 

 

 

「だああ!!」

 

ヘルゴットの斧とワードレスの斬撃が、フールの体にクリーンヒットした。フール尻餅をついたその瞬間、ワードレスはブレスを操作し、必殺を構える。

 

『ブレイクダウン!ウィング!コトダーマエンド!』

 

「くらえ…!!」

 

瞬間、ワードレスの背中からエネルギーでできた左翼が生成された。華麗に空を舞っていき、すれ違いざまに翼でフールを切りつける。

さらにはきりもみキックをくりだし、木へとフールを叩きつけた。

 

「ぐぅあ!!」

 

その変身が解除され、クラウンピースは膝をつく。そして砂嵐を巻き起こしたかと思えば、姿を消していた。

残る船女へと、ドグマは攻撃を続ける。

 

「はあああああ!!!」

 

「そこっ!」

 

飛びかかる船女を避け、その背に舞うような扇子での斬撃を叩き込む。怯んだ船女は土の中に潜航し、不意打ちを狙う。

 

『heavy!光照らせ!その救い!輝く魔界の魂!』

 

そんな中ドグマは腕輪を変え、重装備の中それを待ち構えた。

 

「があああああ!!」

 

そして、目の前に飛び出た船女へとアンカーブレードを振り下ろす。めり込むような衝撃にめまいを起こしたそこに。

 

『波羅羯諦!』

 

「あなたの武器ですよ…水蜜ッ!!」

 

さらに必殺斬撃をくりだし、瞬く間に船女は爆風に飲まれた。

さて、残るはランパースとストームスネイクである。ワードレスは妖精達を片付け始める中、モノ、ガイア、ヒールは相変わらずストームスネイク相手に苦戦中である。

 

「だああああ!!」

 

「っと…」

 

効くと言えばガイアの近接ぐらいのもの。このまま押すには何かが足りないと、そう思ったとき。

白のバイクがストームへと突撃した。そしてさらにウィーリーのような状態でタイヤを押し付け、多少ながら怯みを生んだ。

 

「妹紅!」

 

「…遅れた。ごめんね」

 

「ほら、やっちゃいなさいな妹紅」

 

「オッケー…」

 

そしてフェザーチェイサーから降りた妹紅は、輝夜からの声援を受けつつストームスネイクへ駆け出した。

 

『limit over charge!』

 

そして結晶型のアイテム『ヘリオスコア』をバーンスマッシャーにセットし、炎とともに走り抜けていく。

 

『zero ignition!』

 

「変身!」

 

『burn up complete zero phoenix!』

 

全身に溢れる煙が、その爆炎を閉じ込めるかのようにグレーの鎧が形成された。今までのフェネクスとは比べものにならぬマッシブさを誇るそいつは、明らかな異彩を放つ。

 

「行けっ!フェネクス ゼロブレイズ!」

 

「燃え尽きてもらうッ!!」

 

輝夜のノリノリの紹介を受けながら、その拳をストームスネイクに振るう。とてつもない熱とパワーを受け、大きく後ずさった。戸惑うその隙に、一発、二発。さらにモノとの同時攻撃。

 

「うぐあっ!」

 

少し転ぶほどのダメージである。妖精どもをけしかけるが、フェネクスが軽く殴っただけで爆散し、もはや意味はない。さらに蹴りを叩き込み、戸惑う顔面に頭突きもかます。

 

「上白沢印の頭突きだよ」

 

『zero over driver!』

『XX!…good bye!』

 

続けて三回握り込み、必殺を発動する。対抗してストームスネイクも必殺を発動し、二人がその距離を詰めた。

 

「ゼロッ…プロミネンススマッシュ!!!」

 

「…!!」

 

同時に拳がぶつかり、その力は同じぐらいのもの。どっちが押し負けるかという、その時。

 

『punch eyes!』『punch eyes!』『burst eyes!』

『スーパーグランドフィニッシュ!』『グランマックスエンド!』

 

「「ライダーパンチ!!!」」

「でやあああああ!!!!」

 

ヒールとガイアが必殺をを叩き込む。

ヒール、ガイア、フェネクス。最初の三人の拳が集まり、炎の渦とともにストームスネイクは大きく跳ね飛ばされた。

 

『finish monotone』

 

「ライダー剛力パァアアアアァァァンチ!!!!」

 

さらにそこへモノのパンチがぶつかる。続けて、二発目。

三、四、五、六。

無数の連撃を叩きつけ、最後に頬をモノの拳が捉えた時、静かに爆風が踊った。

 

「うぅ…」

 

「神奈子様!!!!………おかえりなさい!」

 

倒れる彼女をモノは静かに抱きとめ、そしてほぼ同時にランパースは狩り終わった。やっと戻ってきた安心を追うように、強敵を倒した達成感が少女たちの中に爆発した。

蓮子、メリー、天子、そして妹紅は跳び上がり、空中ハイタッチを決める。ガジェットスマートからその様子を眺めつつ、藍は静かに笑った。

 

 

 

 

「…紫が怪人に!?」

 

こんな空気の後である。面々は博麗神社へと移動し、宴会が始まっていた。寺で飲めや騒げやとしないあたり、妖怪といえど人間基準の良識はあるようだ。

だからこそ、霊夢が振った話題に幽々子は目を見開くのである。

 

「私と魔理沙でようやく撃退よ。…苦戦は必至だわ」

 

「そうね、表立った敵は倒せたからともかく…」

 

イマイチ喜びきれない表情で、二人は寝込む神奈子のことを見ていた。体調以外にもやはり精神面での苦痛が見られ、諏訪子が大丈夫だよと慰めても聞く様子はない。

 

「まだまだ問題は山積みね」

 

霊夢はひょうたん片手に爆笑する萃香に視線を移しつつため息をこぼした。

 

to be continued…




「面白いものを見せてあげる」

花が咲き、欲望燃える。

次回、「栄衰幻想郷 〜Flower World〜」

みなさんこんにちは。最近憑依華を楽しんでるサードニクスです。漂う今更感。
しかしねー、感想ないの寂しいわよーん!!
読んでないのかもしれんけど、活躍があった回で応募主の人が反応ないのは悲しいよー!
最近はサウスさんと俊泊さんだけが感想くれる人じゃないかー。
正直わたしは見て欲しくて書いてる面も大きいのだから反応あってくれた方が嬉しいのだ…
しかし遅れてほんと申し訳ない。
にしても今回のギチギチ感。まじでずっと戦っとるやんけ。初登場のオンパレードだったし。これで書き漏らしライダーとかいたらどうしよう。
あと絶対前半の戦い要らなかったよね。反省!

さて、こんな中でもみんなの変身ポーズコーナーです。
リヴィエルは簡単。
にとりが右手で指差し、みとりが左手で指差し。
で、レバー引くだけ。並んで変身が前提。でも地の文の表現の問題でバラバラの方が多そう。
そういうわけでまた今度ー。
次回から新章だよん。


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輝針城&鈴奈庵編
第21話 栄衰幻想郷 〜Flower World〜


『RIDER TIME!』

全ては、予想外だった。

「もうこれしかないのよッ!」

誰一人として、この状況を知ることができなかった。

『FAZE3』

「改めて…心からあなたを尊敬するわ、アリス」

複雑に絡み合う思念の中、確固な意思を持つものだけが歩き始める。

「この体ちょっと借りるわよ!」

「いくぜ、ルナティックタイムだ…」

誰かのために戦う者をライダーと呼べるなら、いかなる手段だろうと…

「変身!」

「…変身!!」

「醒妖ッ!!」

…彼女達もまた、間違いなく仮面ライダーなのである。

「ウオオオオオオォォォン!!!!」

「にゃにゃっ!!」

今、幻想少女達の枝のような物語が紡がれる。

『がっちーん☆』

「名づけるならば、仮面ライダーグラフィ!」

大木は横へ横へ枝を広げる。

「この二人の…復讐、ですかねェ!」

「はぁ…ほら、行きますよ文さん、はたてさん」

だが、絡み合って、散らかったとしても…

「変身!」

『turn on!little girl!ラルジュネヌ!』

最後は、一つへと収束するのだ。

「「『大変身!』」」

劇場版(?) 幻想仮面少女『後悔の山』



最初に入れときました。


「いやー、あっついわね…」

 

朝10時、額の汗をぬぐいながら、蓮子はぐでぐで歩いていた。表立った争いが消えた以上、巻き込まれた一般人である秘封倶楽部に出番はないのだ。

 

「どうにか帰れるかしらねぇ…」

 

メリーもまただるそうにそう呟く。一応彼女達は異世界に来た上に過去に来てしまっている。どうしようもない事この上ない状況であるが、しかし二人は呑気である。

 

「なんかもういっそ帰らなくてもいいかなぁ〜。あぁでも父さんも母さんが心配するよなぁ〜」

 

「そうねぇ…」

 

正直言って心配と言えば家族と大学ぐらいのもの。お互いがいれば問題はあまりないのであった。そうしてぼんやりと氷菓子を食べていたとき。

 

「人里を守るのは私達だ!あんたらは引っ込んでなさい!」

 

「それは支配という形になり得るわ。いけません」

 

なにやら喧嘩をしていた。並び立つのはチルノとルーミアで、その前で睨みつけているのは華扇だ。よく分からない1対2であるが、意外と空気は重めである。

 

「…どうする?」

 

「私たちが割り込む話でもなさそうじゃないかしら?幻想郷のことだしさ」

 

その意見にメリーも賛同し、観戦体制へ。らちがあかないと、クロッカーとシャドウライトを出現させた。同時に華扇もキセンドライバーを構え、お互いポーズをとる。

 

『Checking……Checking……』

『がっちーん☆』

 

「変身」

「「変身!!」」

 

『Confirmation Exit Humanside……change modehermit!』

 

『ばっきーん!うぃんげるふぉーむ!』

 

氷と闇が爆発するその前で、光とともにハーミットが姿を現わす。直後にリライとラビも変身を終え、お互いが構えた。

 

「どりゃりゃりゃー!!」

 

ブリザードダイヤモンダーでの銃撃を叩き込むが、軽い様子で避け、イバラムチをリライへぶつけた。しかしリライはそれをランスで防ぎ、距離を取った。

 

「無駄ですよッ!」

 

だが、ランスへあてたのは目的通りである。一気に浮かせて引き寄せ、カクガを投げつけた。

 

「でやっ!」

 

「なにっ!」

 

しかしそれは想定内。カクガを蹴り飛ばしつつ、パンチをハーミットへとぶつけた。さらには背面へと回り込み、盾にでもするような形でラビの元へ叩き出す。

 

「ぐががががが!!」

 

防御こそするものの、イバラムチもカクガも腕もろとも凍ってしまう。防御しようのない状況であり、どうにか避けに専念する。

 

「どっこいせー!」

 

「いてっ!」

 

しかしリライの切り上げで大きく隙を晒し、さらなるダメージを負っていく。膝をついた彼女の元に、リライとラビは近寄った。

 

「八雲紫が動けない今、誰かが管理する他ない。この幻想郷に最も多い存在は何かしら?…妖精よ。そして私のような弱小妖怪もね!」

 

「博麗神社がするべき管理です。あなた達が手を出すべきではないわ…」

 

そうして今一度立ち上がったとき、その背に二人の足音が近づく。振り向けば、そこに居たのは聖白蓮と霍青娥であった。

 

「妖精達が幅を効かせるのは私たちも面白くないですわ」

 

「…そういうことです。渡していいんですね?青娥さん」

 

青娥が頷いたのに合わせ、聖はかんざしを取り出す。青娥のものに似てはいるが、飾りが少なくて幾分か小さい。それをハーミットへと握らせ、続きをするように背を押した。

 

「お願いしますよ、華扇さん。たぶんあなたのドライバーなら握らせることができます」

 

そして二人は秘封倶楽部と同じように物陰に下がる。受け取った『ホールクラッカー』をその手に、華扇は試してみることにした。

 

「こう…でしょうか」

 

『Confirmation Exit』

 

今一度手をかざし、人間サイドの手を動かしてみる。そしてその上にホールクラッカーを当ててみれば、握って来るではないか。こう言うことかと納得しつつ、その手を離した。

 

『Humanside……change modetrick!』

 

「華扇が…変わった!」

 

瞬間、ハーミットの素体の上に青いドレス型アーマーが着せられていく。金の差し色の入って適度に高級的な外見は青娥そのもの。どっちかといえば、華扇が青娥の服を着ていると言うのがそれらしい表現である。

 

「これは…トリックモードと呼ぶべきかしら」

 

そうして全身を見渡してみる。イバラムチは巻きついて引っ込み、カクガには追加ブレードが足され『カクセイガ』へと変わっていた。

 

「…行ってみるとしますか」

 

駆け抜けつつ、ハーミットはカクセイガを構える。そして槍を構えるリライへと、斬り付けを放った。防ぐリライであるが、大きく押される。防御しなくてはと、その辺の木の板を押し付けた。

 

「もしかして…これならっ!」

 

「!?」

 

そんな時、ハーミットはホールクラッカーを板へと当ててみる。予想通りであるが、板にはジッパーとともに穴が空きリライの姿がはっきりと見えた。驚愕する彼女へ、拳を叩き込む。

 

「ぐはぁっ…」

 

「ルーミア…ッ!!」

 

ハーミットの方へ、今度はラビがブリザードダイヤモンダーを向けた。そして弾丸をばらまくが、ハーミットはホールクラッカーで地中へと潜行する。戸惑うラビの真下から飛び出し、カクセイガをぶつけた。

 

「このっ…くらええええええ!!!!」

 

目の前のハーミットへかかとを当て、フォールアイシクラーより弾丸をぶつける。一瞬ひるんだハーミットへ、続けてフリーズパーフェクターを向けた。

 

「火薬モリモリよッ!!」

 

「…っ!」

 

そうして、とんでもない爆発を叩き込む。リライもほんの少し巻き込まれつつも、チルノは勝利を確信した。だが、爆風の中からよろめくことさえなくハーミットが立ち上がる。その爆煙には、ちぎれたジッパーが舞っている。

 

「爆炎に穴を開けるなんて芸当もできるとは…ね」

 

「なんだってぇ〜!?」

 

「ケリをつけさせてもらうわっ!」

 

困惑を隠しきらないチルノの元へ駆け寄り、ジッパーで地中へ。戸惑って地面へフリーズパーフェクターを放ちまくるラビへ、飛び出しながらヒザ蹴りをねじ込んだ。もともと防御力の高いと言えるラビではない。爆炎を巻き上げながら一回休みとなった。

 

「…クラッキングドライブ。必殺名言うの忘れてました」

 

「…ったく!くやしー!」

 

その様子を見て、リライは変身を解いて逃げ出した。真っ黒な塊がちょこちょこ壁にぶつかりつつ、晴天の空へ消える。それはそれは目立つ姿だ。

 

 

 

 

「…なんであんたらがいんのよ」

 

「観戦よ。私達外来人には関係のある話じゃないもん」

 

ルーミアは三月精の家にて、イラついた様子でコーヒーを飲んでいた。秘封倶楽部も影の行く先を追い、同じ場所へ。遊びに来ていた鳥獣戯楽とリグルを含め、木っ端妖怪&妖精連合チームの会議が始まっていた。

 

「…なんかいい方法ないかな。ハーミットも強くなったし、聞けばリブレッスとかスパークも強化をゲットしたとかって話だしさ」

 

「私たちもライダーになれればなぁ」

 

「手伝ってよ蓮子にメリー」

 

「中立よ」「うんうん!」

 

そんな様子で、会議はイマイチ進まない。一応スズメ女やらバーニングバグも居るのだが、それは操られていた時の話。今戦力となるのは仮面ライダーであるチルノとルーミアだけである。そんな中、ルナは香霖堂で買ったTVで何かを見ていた。

 

『エクストリーム!』

 

『…この敵に関する全ての情報を閲覧した』

 

「これは…」

 

「仮面ライダーダブルってやつのビデオ。私達も合体して変身とかできたらなぁー」

 

蓮子はヒールに似たシステムだなとか思いつつ、それをぼんやりと眺めている。彼女からすれば50年以上前のものであるが、TV内の技術はもう停滞している。見劣りしないなと思いつつ、少し童心に帰って楽しんでいた。

 

「リグル何かない?」

 

「ないなぁ………。あっ、そういえば幽香さんg」「やだ!!風見幽香怖いもの!」

 

何かを言おうとしたリグルを遮り、ルーミアはかぶりを振る。しかしサニーは他人事のように行ってきなよと言う。お前は戦わないくせにとルーミアはほっぺたを引っ張り、餅のようにむにぃっと伸びる。

 

「幽香さんは優しいわよ。ちょっと戦いとかは好きだけど」

 

「あれをちょっとと形容するなら私が超絶平和主義の人格者になるわよ。聖はホンモノの聖人」

 

「…でも私が頼めば」

 

結構堅めなリグルの意思についに折れ、仕方ねぇなという様子でルーミアは上着を脱いだ。そしてリグルと二人で太陽の畑へ。蓮子とメリーもその後を追い、観戦に向かった。

 

 

 

「八雲紫が居ない今…。幻想郷は支配者が居ないわけよねぇ」

 

「なんじゃ、急に」

 

廃墟の中で酒を飲みながら、ぬえは笑う。あんまりに急な話だったもので、マミゾウは疑問符を浮かべてしまう。しかし、一瞬ののちその顔は何かを企んだ笑顔に変わった。

 

「…お主もでっかい野望を持つよのう!この幻想郷を手に入れてみるのも悪くはないな」

 

「勘違いしないでよねー。管理のないせいでこの世界が破綻しないようにさ。善意よ、ぜ・ん・い!アッハッハッハッハッハ!!」

 

「ハハハハハハハハハハ!」

 

そして一通り笑い終えたのち、ぬえは真顔に戻る。指先でくるんと槍を回しつつ、打って変わって真面目な様子で口を開いた。その様子に、マミゾウも引き締まった表情を向ける。

 

「実際さ、心配なのよね。ここがさ。なんだかんだ惚れちゃってるんだよなぁーこの幻想郷にさー。…聖もそうみたいなんだ」

 

「聖殿が?ほーう」

 

「正直に言えば私はあいつを手伝いたい。あいつは神霊廟側と組むみたいだがそれもまあ悪くない」

 

興味深げにタバコの息を思いっきり吐き出す。せめてあっち向けよと文句を言いつつぬえが煙を払う。素で謝るマミゾウへ、ぬえは今一度同じ話題を向けた。

 

「…どうかしら。マミゾウ、興味ない?」

 

「フン、大妖怪殿に言われて断れるわけもなかろう。どうにか戦力が欲しいところだな」

 

そんな風に話しながら、二人はその場を後にした。

 

 

 

 

「つまりだ!今こそ鬼の権威を見せつけるんだ!」

 

同じ頃、紅魔館では萃香がワイン片手にそんなことを語っていた。レミリアも興味深げに聞きながら、グラスの中を減らしていく。

 

「いいじゃない。私は権力争いなんてどうでもいいから首を突っ込む気なんてないけどね」

 

「それでいいさ、あんたにしてもらいたいのは応援だよ」

 

「フフフ、それならいくらでもするわ」

 

「頑張りな、オイラも応援してるぜ!」

 

声援を受けて嬉しげな萃香であるが、その眼差しは真剣なもの。今の今まで怪人と戦い、彼女なりに人を守っていたがゆえの心境であろう。

 

 

 

 

「総領娘様…それは?」

 

比那名居天子は天界の方へと戻っていた。どうしたものかと様子を見に来た衣玖の目に飛び込んだのは、グレーと赤を基調としたアイテムである。

 

「この前女苑がくれたエックスゴースターを元にね、新しいアイテムを作ってるんだ。このエックスゴースターは財団Xというところによるものらしいけど…面白いわね、データ的には全種族のメモリがあるわ。この『プラネット』や『リュウグウノツカイ』、さらには『グリーンアイズ』…明らかに特定の誰かの使用を想定したメモリもあるわ」

 

「リュウグウノツカイ…」

 

「あんた用でしょうね。ほら、作ったし。あげるよ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

渡されたUSBの模様をマジマジと眺めながら、さらに天子の話へ耳を傾ける。なにやらPCに何かを打ち込んでおり、詳しくない衣玖もこれがプログラムであることはよくわかった。

 

「総領娘様…いつの間にそんな技術を」

 

「独自言語だってさ。どうにかして勉強したのよ」

 

恐ろしい能力だと改めて天子の背中を眺めたのち、衣玖はその視線を今一度先ほどのアイテムへ向けた。その様子を見て、天子は誇らしげな様子を見せる。

 

「名付けてターンブレイカー!ナックル型変身アイテムさ。色々デザインも私が描いてるんだけどね、ライダーってよりは悪そうな怪人寄りかも。私の趣味よ」

 

「…こっちの計画書は」

 

「あんたのアーマー。レガレクス!リュウグウノツカイの学名からとったわ。いいでしょ?」

 

「ええ、とても」

 

画面に映った計画書デザインに目を向けながら、衣玖は静かに頷いた。幾分か期待を隠しきれないような表情をして、ターンブレイカーへ触れてみる。

 

「試しに装着してみる?」

 

「いいんですか?開発中では…?」

 

「ターンブレイカーはもう完成済み。五個ぐらいあるよ。今作ってたのはこいつ」

 

そうして天子の指差した先には、どうやら装着型のようである機械だ。置かれた説明書を読んだところ、それは『ウィングブースター』という妖精用の飛行能力強化ブースターらしい。

 

「同じく財団X製のものを改造したのさ。チルノ用よ。あいつも速い移動手段が欲しいっていうからね」

 

「…なるほど」

 

改めて、衣玖は天子のポテンシャルを思い知った。

 

 

 

 

「コレね、天人様からもらったんだ!」

 

「なるほど?」

 

そして、同じ頃の逆さ城では針妙丸と正邪の会議が行われていた。針妙丸の前にはターンブレイカーとUSBが。必死に押しながら、正邪へと見せる。

 

「それどうやって変身すんですか」

 

「それを正邪に頼みたいの!使い方なら教えるから!」

 

「…この幻想郷を獲る気で?」

 

「もちろんだよ」

 

ニヤッと頰をあげ、両者はその瞳をぶつけ合った。お互いに思うことは「利用してやる」であるが、その表面に仮面をつけて接する。わざとらしくグーをぶつけたりして、心の中で二人はほくそ笑んだ。

 

 

 

 

「幽香ぁ、なんか来客だぜー?」

 

「リグルは最近同棲中よ。横の外来人と闇妖怪は知らないけど」

 

「おいおいそれ健全なのかァ?」

 

「最近危ないからよ」

 

ちょうど正午ごろ、ルーミア達は太陽の畑に到着した。紅茶を飲んでいた魔理沙が、家主たる幽香へと言う。幽香も幽香で日傘を差し、来る少女たちを迎え入れた。

 

「よく来たわね。お茶を飲んでいく?向日葵でも見るかしら?」

 

「えっと…」

 

「単刀直入に言うわ風見幽香。我々妖怪と妖精に手を貸しなさい」

 

「いやよ。…サシで私を負かしたら考えないこともないけど」

 

ルーミアのまっすぐな視線に、幽香はニヤッと笑顔を浮かべる。優しいようでもありながら狂気を孕んだ笑顔に軽めの寒気を覚えるが、そうも言っていられない。ルーミアはファイティングポーズをとった。

 

「だああああああっ!」

 

「威勢はいい…わ…ねっ!!」

 

駆け寄る彼女へ、依然日傘をさしたまま蹴りを繰り出す。大きく仰け反るルーミアであるが、そう簡単に倒れもしない。倒立の姿勢になり、腕力で飛び上がると肩へ蹴りをねじ込んだ。

 

「へぇ…。面白いじゃない!!」

 

「くらえ!」

 

そうして今一度拳を向けたルーミアへ、今度は幽香も拳を構える。そして傘をたたみ、左拳でルーミアを受け止める。結果で言えば、幽香の圧勝である。幽香は汗一滴をハンカチで拭き取るのみであった。

 

「…なりふり構ってらんないわね。…変身!!」

 

「えっ、生身相手だよ…?」

 

「幽香自体怪人みたいなもんだろ」

 

魔理沙の吐いたセリフに睨みを送りつつ、傘を置いてリライへと戦闘態勢をとる。対しリライも槍を捨て、殴りかかった。結果として押されたのは幽香である。ある程度善戦しているが、闇のエネルギーはガードしきれず、吹っ飛ばされてしまう。

 

「くっ…!」

 

「どりゃあ!!」

 

そしてリライの攻撃を傘でどうにかガードすると、ズルズルと後ずさった。辺りを見渡すと、不気味に口角を上げる睨みつけるリライのその目の前で、腰へ手をかざした。

 

「…そうねぇ、面白いものを見せてあげる」

 

「それは…」

 

彼女が手をかざしたその位置に、シンプルな外骨格的バックルのようなものが出現する。リライのものにも似るそのバックルからゆっくり手を離し、そのまま手を広げた。

 

「…変身」

 

瞬間、彼女の身が変化する。花が咲いては朽ちを一瞬にして繰り返し、塵の中から静かに姿を現した。

ダークグレーを基本とした外骨格に、隙間隙間で筋肉組織のようなものが見える。頭部には緑の差し色が入り、ボディには服にも似た赤黄白が主張をせず入ってくる。一見細部はグロテスクながら、スッキリとまとまった、シンプルな外観である。

 

「…仮面、ライダー?」

 

「そうなるのかしら?よくわからないけれどね」

 

そういって手を伸ばしてみれば、彼女と一緒に変異した傘がその手に飛んできた。その『万能重傘』を構え、ゆっくりとリライへと寄っていく。

その名は仮面ライダープランゼ ブルームフォーム。緑と花の戦士である。

 

「…やけにボディラインそのままだな。なんか目のやり場に困るぜ」

 

「はっ!」

 

そして重傘を振るい、リライへと攻撃する。同時に彼女はS・スピアーをシャドウライトから出現させ、プランゼの攻撃を跳ね返した。その槍を掴み、プランゼへ斬りかかる。

 

「あんたも変身できるとはねっ!」

 

「なぜかは覚えてないけどね」

 

リライの連続突きをはじき返し、さらに蹴りを入れながらそう答える。リライは闇をまといながらの攻撃に切り替え、その威力を上乗せしていく。だがあまり大きいダメージではなく、プランゼも特に大きなダメージを負う様子はない。さらに傘にエネルギーを注ぎ、光剣のように変えた。

 

「うぐぁっ!」

 

「フン、大したことないわね」

 

リライの攻撃を切り返し、さらに連続斬りを叩き込んでいく。大きく仰け反ったリライにハイキックを叩き込み、さらに吹っ飛ばした。土を転がりながら、H・サンへ。H・ライフルでの狙撃に切り替える。

 

「あいてっ…やるじゃないの」

 

「一応光の力なんでね…」

 

さらに彼女はカオスグライダーに乗り込み、中距離を保って攻撃を繰り出す。幽香はいい加減しびれを切らし、攻撃手段を変えた。身を低く構えたかと思えば、肩甲骨あたりの外骨格カバーが開きツタが伸びる。

 

「何よそれっ!」

 

「さぁ、何かしらねぇ!」

 

警戒するリライであるが、対応してきれず銃をツタに弾かれてしまう。まずいと防御するも防ぐこともできず、拘束されてしまった。そして床に叩きつけられたのち、プランゼよりヒザ蹴りをねじ込まれる。

 

「だあっ!!」

 

「おごっ!」

 

咄嗟にS・ダークになって槍にて攻撃をガードするが、追っつかない。傘での優雅な攻撃を正面からくらい、倒れ込んでしまう。さらに蹴り上げをもらい吹っ飛ばされる。どうしようもないと、膝をついた、その時。

 

「光ってる…シャドウライトが!」

 

「目くらましにもならないわねっ!」

 

光を放つバックルから何かを感じ取り、上下ボタンを押したその時、ルーミアから衝撃波が放たれる。頭部のリボンが外れたのである。そうして空を舞ったリボンを前に、白と黒の爆炎が周りに弾ける。咄嗟に防御するプランゼをよそに、煙の中からリライが姿を現した。

 

「…白と…黒が…両方だわ」

 

白と黒と灰の混ざったスーツに、モノクロのツートンカラーのアーマーが着せられる。最後にリボンがマフラーとして巻かれ、その『W・カオスフォーム』が爆誕した。

 

「…いける、いけるわ!」

 

そうして、確信とともに駆け出す。跳びながら放った拳がクロスカウンターの形でぶつかった。結果として、押されたのはプランゼである。連続パンチにひるんだのち、さらにキックがねじ込まれる。

 

「闇と光…両方使うってわけね」

 

「そうらしいわね、私自身初乗りだからなんとも言えないけどっ!」

 

さらに闇をまとった蹴りをぶつけ、反転するように逆回転で光の蹴りをぶつけた。ツタでの攻撃を手でちぎり、さらに駆け寄って肘を叩き込む。プランゼは今一度重傘にエネルギーを送り、開くことでシールド状に展開した。

 

「無駄ッ!」

 

そして放ったのは「W・ツインパンチ」である。光が炸裂し、闇はその後を追う。防ぎこそすれど大きくひるんだところへ、さらにカオスグライダーが飛び出しウィーリーの姿勢で押していく。

 

「うぐあっ!!」

 

「結構硬いじゃないの…」

 

ようやく仰け反ったプランゼを轢き飛ばし、カオスグライダーの上で立ち上がる。そうして空中に飛び、左足にエネルギーを集める。今一度バイクから追撃をもらったプランゼへ、闇を叩き込んだ。

 

「ぐうううっ!!」

 

そして続けて光が追って炸裂し、プランゼを変身解除にまで追い込んだ。瞬間、少女たちは幽香から目をそらす。なにごとかと辺りをキョロキョロ見たのち、リグルのマントが体にかかったことで、自分が完全に裸であったことを自覚した。

 

「あぁっ…これ変身で服ダメになるんだったわ…」

 

「ほんと気をつけてよ…」

 

「そうね…。一応私の負けね。リグルも世話になってるみたいだし…手伝ってあげてもいいわよ?」

 

ルーミアは頭を下げて感謝を送り、家屋の中に戻っていく幽香を見送った。向日葵などを眺めたのち、変身を解こうしたその時。

スーツを着た何者かが近づいてきているのが視界に入った。同時に魔理沙と秘封倶楽部もベルトを用意する。

 

「誰よ…あんた」

 

『…ビランアニヒレイト。そう呼んでもらおうかな』

 

エフェクターのかかった、男から女か分からない声でビランはそう告げる。真っ黒な体と赤黒い装飾が、凶悪な外見である。その手の『チェンジブレイド』を向けたかと思うと、黒焔をまとって斬りかかった。

 

「危ないわね…」

 

『どけ、いや消えなさい。邪魔よ!』

 

そのナーグフレイムを放ちながらリライと闘う横で、メリーと魔理沙は変身すべくアイテムを取り出して構えた。事情によりガジェットスマートは命蓮寺であり、エクストラにはなれないのだが。

 

「…行くわよ蓮子!魔理沙!」「おっけー!」

「了解!」

 

『look the line!』

『reading!magician!』『& magical beast!』

 

「「「変身!」」」

 

『we are dream night fantasy!』

『mysterious , illusion! beautiful magician!』『bad?nightmare?not…magical beast!KO・U・MO・RI!』

 

そうしてナイトメアとマジシャンへ。それぞれテレガンとバットウィングアローを構え、リライの援護へ向かう。しかし突然リライが苦しみ始め、心配して駆け寄る暇もなく彼女の変身が解けてしまった。未知の相手と二対一という如何ともし難い状況である。

 

「制限時間、なのかぁー…?」

 

『甘いわね…』

 

ヒールの攻撃を怯みもせず押し返し、スパークへナーグフレイムを向ける。スパークの攻撃はいくらか食らうものの、ヒールのものは一切ダメージなしである。アタックドロップを使いつつどうにか食らいつくが、しかし効果はなさげであった。

 

「こうなりゃ…シザースカッティング!!」

 

『っ!』

 

スパークはバットウィングアローをハサミ型に変え、挟み込んでの必殺を行った。幾分かダメージが入るが、大きいわけではない。ビランもチェンジブレイドを操作して焔をまとった斬撃を叩きつけた。さらにヒールにもぶつけ、彼女らを変身解除に追い込む。

 

「うっ…」『やられちゃった…わね」

 

膝をつく秘封倶楽部に一瞬目をやったのち、スパークはカードを取り出す。近づいたビランへバットウィングアローでの矢を叩き込み、一瞬の怯みの隙にシークエンスを終えた。

 

『spark, great miracle magic!White & Black wizard!』

『bad?nightmare?not…magical beast!KO・U・MO・RI!』

 

飛び出た星の塊がビランにぶつかってダメージを与えつつアーマーに変化。マホウツカイフォームと同じアーマーがマジシャンフォームのスーツへと乗った。腕のバットウィングアローは、足へ。

 

「名付けてマジシャンウィザードフォーム!行くぜッ!」

 

『フン…』

 

マジシャンライザーでの殴りつけを行なったのちバスターモードへ。アンロッカーをガンモードへと変えて二丁拳銃スタイルへと変えた。それがチェンジブレイドに弾き返されると、肩から取り出したコウモリマジシャンズガンを超至近距離で放った。

 

『なるほど…なかなか引き出しが多いじゃないの』

 

「その通りっ!」

 

さらにキックでバットウィングスマッシャーをぶつけていく。大きく仰け反ったそのタイミングで、ドロップキックをさらに叩き込んだ。そしてコード入力ののち円盤を回転。必殺で追い討ちをかける。

 

『っ!』

 

「くらえっ!スターダスト…!」

『wizard!super wrecking spark!』

 

マジシャンライザーのエネルギーで跳び、コウモリマジシャンズガンでの連続銃撃をかます。ナーグフレイムでどうにか防ぐが、少しダメージは負っているようであった。続けて、背中から魔力を噴出して突撃した。

 

「マジックラッシュバースト!!!」

 

『ふぐぅあ!』

 

最後にキックをくらい、ビランは大きく吹っ飛ばされた。爆発まではいかないものの、戦闘続行は難しげな様子だ。黒煙を放ち、その姿を消した。

 

「…逃げたか。おーい、大丈夫かメリー、蓮子。ルーミアもだな」

 

仲間へと駆け寄っていく魔理沙の背中を、木の上から眺める者がいる。射命丸文だ。ペンを片手に、記事の構想を進めていた。

 

「ライダーを扱うのは確定ねー。抗争を書けばいいのかな。それに、こっちでの実験もうまくいってるようだしねぇ…」

 

そうして風見邸を眺める彼女の手には、メモ帳が握られている。そこに書かれた『プロジェクト・フォトグラフ』には、プランゼに似たライダーの絵が描かれていた。

 

Continued on next episodes.




「今、私たちが立ち上がる他ないんだッ!」

全ては、みんなとその夢のため。

次回、「ハルトマンと妖怪少女達」

突然ですがみなさん!!怪人の命名法則発表!!!

・肉体変化系
生き物:(カタカナ生物名)女「クモ女」
無生物:(漢字物体名)女「船女」
・エックスゴースター系
生き物:(カタカナ単語+カタカナ生物名)「バーニングバグ」
無生物(漢字物体名)女「厄女」
・ターンブレイカー系
両方共通:かっこいいカタカナ「ラルジュネヌ」

こうです!わかったか!!!

と、いうわけでマジでお待たせしましたサードニクスです。
新章ですわね。最近エンジンかかってきたんでこのまま書き進めたいのよ!
というのも、合同誌寄稿文は終わったから!!残るはわたし自身の分だけ!こっちで書く時と寄稿文書く時で書き方違いすぎて我ながらうわおってなります。
劇場版的なのも書きまっせ。そして劇場版はもう一個やります。40話ごろかな?それまでにはOver Quartzer見といて欲しかったり。ガッツリ絡むんで。まあ別に見なくても分かるように作りますが。
しかしもう感想が決まった人からしかきませぬなぁ。悲しいね。
それはそうと。プランゼ出たりスパークとハーミット強化されたりとギッチギチ。みんなの活躍が薄れておりますね。許しておくんなまし。カクセイガは即興だったりします。

ハイではみんなの変身ポーズコーナーァ!!
今回はエレンツさんです。
ボタンを押したのち、腕を前にビシッと伸ばします。
この時親指と人差し指で△を作りましょう!
ここから大人のお姉さんのエロさを込めて流麗さとしなやかさでもって手を広げましょう。これで完了!
では次回会いましょ!


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第22話 ハルトマンと妖怪少女たち

ターンブレイカーはイクサみたいな感じで起動します。


「…やはり目的と勢力的位置が不明瞭という点で最も注意が必要だな」

 

「そうねぇ…」

 

月に照らされる人里を歩きながら語り合う二人の話題、その中身はビランアニヒレイトである。先程現れてライダー達と交戦した謎の存在であり、いまいち正体が掴みがたい。

 

『一応こちらからも強化アイテムなどがあるが…』

 

「仙人系でしょ。どうにかなるのかしら」

 

「…うむ、私も何か考えておいた方がいいかも知れない」

 

そうして歩み進めていた時、どこからともなく人々の騒ぐ声が聞こえた。何事かと駆け寄ってみれば、宗教戦争を思わせる言い争いである。立っていたのは針妙丸と神子だ。その後ろにいくらかメンバーはいるが。

 

「この人里を守るのは私だ!仙人どもにやらせてられるか!」

 

「そうかい?残念だが私達には協力者がいてだね。…彼女らは誰よりも人間に近く誰よりも妖怪に寄り添う者たちだ!」

 

そうして神子が叫んだその横から聖が歩み出る。その手に握られているのはスペルカードであるが、針妙丸が持っていたアイテムに目を向けたのち、エイディングドライバーへと持ち変える

 

「久し振りにリトルグリーンマンと戦うものだと思っていたんですがね」

 

「こっちだって本来ならターボババアと戦うつもりだったさ」

 

そう言った針妙丸の横で正邪はUSBメモリを取り出し、ゆっくりと身構える。対し聖も巻物を取り出し、睨み合いつつ少しずつ歩み寄った。

 

『南無三宝!』

 

『get started』

 

「変身!」

 

「さあ、ご準備を姫」

「醒妖!」

 

そして二人はアイテムをセットし、かたやレバーを倒しかたやナックルを手のひらで押し込む。針妙丸と聖の身にアーマーが装備されていき、戦士がその姿を現わす。仮面ライダードグマ、そしてラルジュネヌである。紫と赤みがかったピンクが目立ち、小さかったはずの針妙丸の体は普通の少女大のものだ。

 

『heavy!変わらぬ麗光(れいこう)!続くは研鑽(けんさん)!揺るがぬ神仏!』

 

『turn on!little girl!ラルジュネヌ!』

 

「…聖殿。我や住職達の力は借りぬということでいいのだな?」

「公平な勝負にしたいですから」

 

「これを」

「ありがと!」

 

ドグマがシャックシューターを向けたと同時にラルジュネヌは正邪からターンブレイカーを受け取り、駆け出した。皿やビームの弾をスライディングで避けつつターンブレイカーでの拳をぶつける。銃であったエックスゴースターに続き、ナックルなのである。

 

「おりゃおりゃ!!」

 

「…っと、危ないですね」

 

ドグマはギリギリぎみに攻撃をかわしつつ、銃撃をぶつけていく。対しラルジュネヌも巨大針を構えて槍のようにして突撃した。だが幾分かドグマが優勢である。そんな中、ラルジュネヌは突如横にあった樽をターンブレイカーで思いっきり殴りつけた。

 

「…!?」

 

「いけ!タルルン!」

 

針妙丸の適当命名を受けながら、樽は巨大化しながらその形を変異させる。いまだ様子見にまわりながらも、霊夢は驚愕を隠しきれない様子であった。ラルジュネヌはさらに仲間の小人を連れていたらしく、緑の鎧のようなものを着込んだ小人達がドグマに襲いかかった。

 

「…フン、これじゃあ対等じゃないだろう。私がやる」

『get started!』

 

「ありがとうございます!」

『light!光照らせ!その救い!輝く魔界の魂!』

 

「いいよ別に。醒妖…ってんだっけ?」

 

樽怪物の相手は自分がすると、屠自古が構えた。聖は感謝を告げつつ僧術ライトフォルムになり、小人達を蹴散らしながらバイクで突進をかます。舌打ちを放ちながら、ラルジュネヌは針を構えた。

 

『turn on!hateful girl!タンスィオン!』

 

「やってやんよ…っと!」

 

その横で屠自古もアーマーを装備し、樽怪物へと突撃した。白とグリーンをメインにしたいかにも屠自古らしい姿である。何よりも目を引くのがドリルになった足であるが。そして電撃を放ちながらあたりを飛び、確実にダメージを叩き込む。困惑した様子のラルジュネヌをよそに、グリップを操作して平手で拳を打ち、必殺を発動する。

 

『タンスィオン!turning-breaking!』

 

「どりゃああああああああああ!!!」

 

『salut!』

 

そしてドリルキックをねじ込み、木っ端微塵に。変身を解除しつつ、ボロボロの樽と一緒に着地した。そうして今一度サシになったとき、霊夢が歩き出す。

 

『そろそろ割り込むのかね?』

 

「ええ、またあんなことされたらシャレにならない被害が出るわ」

『読み込み!巫女!』

 

「そうだな。行くぞ」

『コトダーマ!翼!』

 

「「変身!」」

『博麗の〜巫女!』

『ウィング!ワードレス!』

 

同時に変身を終えると、リブレッスはドグマ、ワードレスはラルジュネヌの方へと向かった。そして対面いきなりヤクザキックである。ライトフォルム故にダメージも大きく、かなり激しめに投げ出されてしまった。

 

「それなら…」

 

『heavy!閃光!救って!栄光!描いて!』

 

ならばと今度は仏術ヘビィフォルムへ。リブレッスの攻撃を受け止めながら、タイガースクラッチを叩き込んだ。

 

「他愛もないな…」

 

「うぐぅ…」

 

「大丈夫ですか姫さまー」

 

「正邪ちょっと本心じゃないにしても棒読みすぎない?」

 

どうでも良さげな正邪にツッコミを入れているが、こう見えてラルジュネヌは結構ピンチである。しかし特に手立てもない。何かしらを怪物にしようとするが、全て途中で弾かれてしまう。しかしこうやって飛び出した手前、撤退というのがしづらいのか彼女の性格である。

 

「だああああ!!」

 

「甘いな!」

 

そうしてワードレスが蹴り込んだその横で、リブレッスは相変わらず苦戦気味である。仕方なさげにカメ仙を呼ぶと、呼ばれたなり彼はサォルブドライバーに合体して、カードもセットし勝手にセンニンフォームへの変身を終えた。

 

『八卦、神通力!神秘なる仙人!!』

『戦乱!閃光!仙獣タートルゥ!!』

 

『やれ、霊夢!』

 

「はいはい…たぁっ!!」

 

「…おっと」

 

錫杖での攻撃にはさすがにドグマの防御力でもダメージがあるらしく、割と大きめな怯みを晒した。そして追撃を叩き込んでいき、ドグマはついに転んでしまう。

 

「さて…さっさと片付けましょ」

 

「…!」

 

そしてリブレッスはキーボード操作ののち円盤を回転。エネルギーをたぎらせながらオーラをまとい、背後には錫杖を持った仙人と亀のビジョンが現れる。

 

「…やっぱ私の中の仙人ってこいつ(華扇)なのかしら。錫杖とか持ってるイメージないけどなぁ」

 

『いいからさっさとキックをするんだ』

 

少しめんどくさそうに駆け出すと、ドグマへ連続で回し蹴りを叩き込んでいく。亀は回転でダメージを与え、仙人改め華扇のヴィジョンが錫杖を叩き込み、最後は同時攻撃をぶつけた。

 

「ったく…」

 

『light!』

 

「あー…?」

 

しかしどうやらドグマは逃げ切っていたようである。幾分かダメージはあったが、仏術ライトフォルムでそこに立っていた。マウスダウザーでの攻撃を叩き込み、これまた少しであるが、リブレッスが怯む。いい加減イライラしてきたのか、別カードを構えて変身した。

 

「ねぇカメ仙。魔理沙がこの前なんかフォームチェンジの掛け声言ってなかった?」

 

『ゲンソウチェンジとかなんとか』

 

「いいかも。…ゲンソウチェンジ!」

 

『博麗の〜巫女!』

『仙獣タートルゥ!!』

 

そうしてセンニンミコフォームへ。素体そのままにミコフォームのアーマーが着せられ、シェルガーダーは足に移動してタートルスマッシャーに。

 

「…これならいけるわ!」

『そいつはよかったな』

 

そして、再びドグマへと飛びかかる。ゲンソウスペルレッカーとガイネンブレイカーでの二刀流スタイルへ。さらに錫杖もぶつけ、蹴りをも叩き込む。ドグマもいくつけ避けるか、流石に全ては避け切れず一発一発を確実に食らっていった。

 

「ちょこまかとっ!」

『巫女!超絶ムソウカイホウ!』

 

続けて必殺を発動。ガイネンブレイカーでの赤い光の斬撃と、錫杖での緑の光の攻撃を、虹色とともに叩き込んでいく。疲弊もあって避けきれなかったドグマはそこで膝をつき、さらに連続蹴りを叩き込んだ。

 

「うぅっ…」

 

爆炎とともに倒れ込み、霊夢が勝利。その後ろでうなだれた針妙丸がサグメにつままれていた。勝負はあったようである。

 

「…いい?あんたたちは八雲紫が居ないというこの状況の重大さを分かっていないわ」

 

「であればこそ、この状況は誰かが指揮をとることで打開すべきです。貴女達はあまり動かない上統率者がいない。守るだけでは今は無理ですよ」

 

「…弱者が声を上げるチャンスをそう見逃すつもりなんかないね」

 

負けた二人はその場を立ち去りつつも、そんな言葉を残す。神子や正邪もそのあとに付いて去っていき、霊夢はなんとも言いがたい苛立ちを覚えた。

 

 

 

 

『…お前たちはそれでいいのだな?』

 

藍の静かな問いに、蓮子とメリーはゆっくりと頷いた。マヨヒガの中で、橙の持つガジェットスマートを前にしてのことである。

 

「もともと長居なんかする気は無かったけどね。戦うつもりも」

 

藍曰く、二人は帰れるのである。はみ出た時間軸の存在である二人は、大結界による閉じ込めがなければすぐ元の時間軸に戻っていくというのだ。

 

「いままでありがとね。藍さんとは短い付き合いだったけど…助けられたわ」

 

メリーの感謝を恥ずかしげに受け取りながら、藍は笑う。橙も橙で怪人化の時に助けられたりとそれなりに恩もあり、どこか残念なようでもあった。

 

『さて、準備はできている。あちらの部屋へ』

 

「こっちよ」

 

橙の案内に従い、ボロボロの一室へ。壁一面に謎の術が書かれ、札も貼られている。どこか不気味なその空間に二人は座りこみ、術の発動を待つ。

 

『…いけるな?橙』

 

「無論です。さぁ、行くわよ…」

 

体が動かせない藍に代わり、術の発動役は橙である。空中に指でなぞるように何かを描き、ぶつぶつと何かを唱えている。

 

「…そんなことだろうと思ったわ」

 

「な…」

 

そんな彼女らの元に、天子が現れる。お互い初めて出会ったライダーである彼女らは、なんとも言えない様子で見合っていた。

 

「あっちでも元気にしてなさい。じゃなきゃ許さないわよ!」

 

どこか涙をこらえたような声で、天子は光にゆっくり消えていく彼女らを見送った。最後に、閃光と同時に二人はその姿を消す。

 

「うぐあっ!」

 

「ああっ!!」

 

しかし想定外にも、謎の衝撃波が放たれてしまう。大した痛みではないが、どういうことだと天子は立ち上がる。橙も同時に立ち上がり、辺りを見回す。

 

「…橙はどこだ?」

 

「は?」

 

「ん?この体…感覚…視界…橙か!?私は今…橙の、いや化け猫の体に!?」

 

その言葉を聞き、その橙の中身が藍であることを認識した。天子はなんとも言い難い顔でその様子を見てみる。

 

「…くそっ!どういうことだ!!術の失敗か!?何故だ…?私は捜索に行く!じゃあな天人!」

 

そうして橙、いや藍は駆け出していき、森の中をかき分けて姿を消した。追おうとするがすぐに見失ってしまい、置いてかれたような気分で天子はいじけ気味にその場をあとにした。

 

「ガゥ…」

 

そんな時、天子は不穏な唸り声を聞く。その場に立ち止まって耳を澄ました瞬間、草むらから飛び出た野良の狼妖怪が飛びかかった。迎え討とうとしたその時、突如妖怪の首が地面に落ち、血を垂れ流しながら倒れる。

 

「ん?おめえさん噂の天人さまでねえか。助けるまでもなかっただな」

 

「…山姥」

 

「んだ」

 

鉈片手に妖怪を始末したそいつは、まさしく坂田ネムノである。ケラケラ笑いながら、死体の首根っこを掴んで森をかき分けていった。

 

「今日は狼鍋だな。…おめさんももちっと耐えてりゃ影狼みたいになれたべ。惜しいことをしたな」

 

「…食べるわけ?」

 

「それが最大の供養だべ。少なくともうちら山姥はそうして生きてきた。肉となってくれる者たちへの感謝のもとな」

 

そう言って彼女は天子を自宅に来るようにと案内した。彼女は遠慮の様子を見せていたが、押しの強いネムノについに負けて仕方ないなと、しかしどこか嬉しそうにその後を追った。

 

「今戻ったべー」

 

「お、ネムノさん!いいキノコ取れた?」

 

「ん。こいつが成果だ!狼もだげど」

 

何故か家にいたこいしへと、袋いっぱいのキノコを見せる。というか、彼女の家には結構な人数の妖怪がいる。幽香のような強い妖怪もおり、どういう状況かいまいちよくわからなかった。そうして困惑する天子に、こいしは笑って告げる。

 

「これはね、妖怪たちの会議!権力争いとかで荒れる幻想郷の今後について話し合う場所をネムノさんが用意してくれたんだー」

 

「んだ。おまえも何かしら思うことはあんだろ?会議に妖怪も天人様もない!座った座った!」

 

戸惑い気味な天子を椅子に座らせると、水を置いて会議に混ざるよう言った。見わたしてみれば影狼やらわかさぎ姫やら九十九姉妹やら見慣れた面々ばかりである。

 

「この状態で誰かに味方するなら博麗神社側なんだろうけど…」

 

「彼女らは動かなさすぎるのよねぇ。誰かが表に出て声張り上げないと何起こるがわからなくてねー。安心してライブもできやしない」

 

そんな鋭い意見を述べたのはミスティアである。響子も激しめに肯定の頷きをし、全体的にもその通りだという感じだ。

 

「私は正直太陽の畑さえ無事ならなんでもいいんだけどねぇ」

 

「じゃあなんで来たのよ」

 

「面白そうじゃないのよ」

 

クスクス笑う幽香に呆れ笑いを向ける天子であるが、それよりも妖怪たちの真面目な会議に気を引かれる。自分たちの存続に要るとはいえ、弱小寄りの妖怪たちまで人里に注意を向けているというのは、天子的にも驚きであった。

 

「どうしたの?」

 

「いや、なんでもないわ」

 

「…そう。ねえ天子、あなた」

 

「断るわ。悪いけどこの件では誰の味方でもない予定なの」

 

そうかと残念に頷くこいしであるが、天子はそれを受けて不敵に微笑む。どうしたんだという視線を浴びながら、彼女はターンブレイカーを机に置いた。

 

「…ただし、誰の味方でもあるわ。プレゼントよ」

 

「いいの?」

 

「すでに針妙丸とか話をした霊廟勢は持ってるわ。頼ってくれればそれなりに考えるわよ。今回の一個以外は有料だけど」

 

影狼の金取るのかという絶妙な表情にふっと笑いながら、彼女は大量のUSBを見せる。どれを選ぶかという話であろうと、一行は悩ましげな顔をした。

 

「無意識とか向日葵とか闇とかは要らないわよね。ライダーだもの」

 

幽香の声に全員がうんうんと頷いたそのとき、突如爆音のようなものが響き渡る。何事かと外に飛び出てみれば、エレンツがビランと戦っているではないか。

 

「嘘でしょ…。ここに居るライダーは?」

 

「私と幽香だけ」

 

「闇とか言ってたからルーミア居るもんだと…。まいいわ。ちょうどいいしここで実践販売してあげるわよ」

 

『get started!』

 

「醒妖!」

 

『turn on!ecstatic girl!ソルラテール!』

 

中距離戦を展開するビランとエレンツを前に、青色の戦士がその姿を現わす。ガイアに比べて悪役感の強いデザインであるが、スタイリッシュという点に疑いはないだろう。あとに続くように幽香とこいしも構える。

 

「変身」

「変身!!」

 

『Rクリスタル!』『Uクリスタル!』

『エレメントフュージョン!ライジングアップ!』

 

「たぁっ!!」

「とうっ!」

 

プランゼが重傘を構え、ビランの方へと斬りかかる。驚きつつビランはとっさにエレンツを盾にし、プランゼは急なことだったために思いっきり振り下ろしてしまう。

 

「あううぁっ!!!」

 

絶叫とともに血しぶきのような火花を散らし、エレンツが膝をつく。そうしてうなだれたかと思うと、爆炎ののち草の上に倒れこんだ。

 

「アリス…!ごめんなさい…!」

 

「うふふ……あとで覚えておきなさい……」

 

冗談か本気かよくわからない脅しを飛ばしながら、アリスは気絶した。弁々へとネムノ邸に入れるように言いつつ、プランゼは今一度構える。

 

『フン、弱い弱い』

 

斬りかかったプランゼをチェンジブレイドで抑え込み、殴りかかったUへ蹴り込む。怯むUを踏み台にしつつ、今度はソルラテールが飛びかかった。

 

『学ばないねッ!』

 

「うぐっ…」

 

そうして繰り出したパンチをプランゼを盾にして防ごうとする。…のだが、幽香はそれを読んでいた模様。背中のツタを叩きつけて拘束離れ、寝転がる。そして下から蹴り上げる形でソルラテールのカタパルトの役を果たした。

 

「でぃやああああ」

 

『くっ…!!』

 

ビランは悔しい様子を晒しながら膝をつき、すぐに立ち上がる。ナーグフレイムを展開してライダー達を押し退け、ソルラテールに集中して斬撃を浴びせた。

 

「ぐあっ!」

 

「天子…!」

 

その様子を心配したUが駆け寄る。ビランの攻撃を受け止め、そのまま肩で持ち上げて床へと叩きつけた。しかしその勢いを利用して回転斬りを繰り出し、さらにヤクザ蹴り。ノックバックしたところでプランゼのツタ攻撃が入った。

 

「それなら…!!」

 

『エレメントフュージョン!』

 

『風が銀河に吹く時に、受け継がれしは英雄譚!仮面ライダーU』

「『ウィンドギャラクシー!』…っと、行くよ!」

 

この逆境に立ち向かう姿として、こいしはこのフォームを選んだ。風と雷を放ちながら、確実に一発一発のキックをぶつけていく。

 

『あんたら…!』

 

「…世話がやけるな。こいつらを倒せばいいのね?」

 

そんなとき、木の陰からもう一人天子が現れる。戸惑う一行を前にグランドライバーを巻き、オーブをセットしたのちポーズを構える。

 

「変身!」

 

『ガイア・ザ・ルナ!』

 

そして駆け出しならソルラテールに向かい、クロスカウンターになる形で拳をぶつけ合った。忘れてはならないのが反射機能である。月光に照らされてその力も強くなり、ソルラテールは大きく押された。

 

「フン、大したことないわね」

 

その姿は紛れもなくガイアであるが、暗い紫の目が、そいつがシャドーであると示していた。なるほどと頷きつつ、天子vs天子が展開される。

 

『なかなかやるな』

 

「誰目線よっ!」

 

Uの電撃を避けつつ、スライディングで抜けながらプランゼへと斬撃をぶつける。重傘でガードするプランゼであるが、そのままビランがドリフトのような姿勢転換と同時に繰り出した攻撃をUは貰ってしまう。

 

「負けてたまるか…!!」

 

しかしウィンドギャラクシーは逆境を力に跳び上がるフォームである。くらってもくらっても立ち上がってくらいついていく。そうして叩き込んだ風をまとったパンチに大きく仰け反り、さらにプランゼからキックが叩き込まれた。

 

「無駄に硬いわね…!!」

 

『褒め言葉として預かるよ』

 

ナーグフレイムで反撃したかと思うと、今度はUを狙って連続斬りを叩きつけていく。しかしUもUでそう簡単に追い詰められるわけでもない。寝技なども取り入れながら超接近戦を繰り広げた。

 

「…あんたがそうくるなら私はこれだ!」

 

シャドーガイアの攻撃をかわしたかと思うと、ソルラテールはターンブレイカーを腰にマウント。女苑から渡されたエックスゴースターでの射撃を繰り出す。

 

「うぐっ…」

 

「私の力は私が分かってるってね。不意打ちは反射できないかつ連続で反射するには凄まじい集中力がいる!」

 

そうして光弾に紛れながら緋想の剣を叩き込み、さらに視界の外から要石をぶつける。ソルラテールも至近距離パンチをくらい、ほとんど拮抗状態である。

 

「ムカつくわね…」

 

「こっちのセリフだ!」

 

そうしてぶつけあう状態にいい加減苛立ちを覚えたのか、シャドーガイアはとどめを刺さんと必殺技を発動した。ソルラテールも同じくシークエンスを終える。

 

『グランドフィニッシュ!』

 

『ソルラテール!turning-breaking!』

 

「「でやああああああ!!」」

 

『ナイトブレイカー!』

 

『salut!』

 

シャドーガイアの低姿勢キックを緋想の剣でどうにかガードするが、押されていく。しかし自身も攻撃力を上乗せし、どうにかシャドーガイアを押し返しかけた。だがビランがUを蹴り込んでソルラテールにぶつけ、その姿勢を崩す。

 

「あぅあっ!!」

 

「うぐああああ!」

 

そうしてナイトブレイカーを食らったソルラテールの爆破に巻き込まれたUもダメージをくらい、変身解除はしないがダメージを負って転んでしまう。

 

「…ライダーに対抗できるぐらいには強いのよ。負けたけど」

 

天子はそんなことを言い残しながら奥に運ばれていった。2対1の状況でも幽香の強さもあってどうにか防ぎ切れているが、ギリギリ感はある。他の妖怪たちも弾幕で援護するが、大した効果はないようだ。

 

『惨めね、そして愚かだわ。勝てもしないくせに』

 

「ほんとバカよ。あんたらはただ強いものに従ってればいいのよ!」

 

二人の蹴り込みがプランゼに叩き込まれ、ついには吹っ飛ばされてしまう。連絡はしたがまだ援軍はない。そんな中、こいしはゆっくりと立ち上がった。

 

「天子は……この姿を嘲笑ったりはしない!偉そうだし鼻につくしなんか上から目線だよ。でもっ!必死に誰かを守ろうとする姿を笑う人なんかじゃあない!自分以外を全て弱者として自由を許しながら守る、どうしようもなく自己中心的な、巨大すぎる器の女だ!!」

 

「…こいし。あなた戦えるの?」

 

「できるかじゃないんだ。今、私たちが立ち上がる他ないんだッ!」

 

「…それも、そうね。私は平和なんざどうでもいいけれど…。あんたらは癪にさわる!」

 

「黒いの、ビランだっけ?あんたドレミーに言っておきなさい。天子のキャラを作り違えたってね!」

 

そう言ってUは駆け出し、シャドーガイアに掴みかかった。離せと振り払った、その瞬間。

 

『Dクリスタル!』『Oクリスタル!』

『ネオフュージョン!』

『エレメンタルカリバー!!』

 

「ぐああ!!」

 

アンノウンドライバーから飛び出た大剣『エレメンタルカリバー』に突き飛ばされる。特にガードもできずに転がるその横で、ビランは警戒態勢を取る。と、言ってもプランゼの攻撃を防ぎながらであるが。

 

「…いつの間に持ってたんだっけ。まいいや、これなら勝てるって、分かるわ!」

 

そうしてエレメンタルカリバーのグリップの底面をアンノウンドライバーに接続し、柄のボタンを押した。シャドーガイアが拳を構えたその目の前で、光が放たれる。

 

『纏え、心の力!』『ドーンオース!!』

 

そうして、光の中から月光に照らされてUが歩み出る。ピンク色のアーマーと青いクリスタルがきらめくその姿は、今までのどのフォームとも違う特別なもの。頭部は今まで以上に流線的であり、しかしスタイリッシュである。

 

『自身を取り戻した時、夜明けに誓う物語が始まる!覚醒せよ!』

「『仮面ライダーU、ドーンオース!』…行くわよ」

 

プランゼがツタを叩きつけたと同時に、エレメンタルカリバーでビランへと斬りかかった。チェンジブレイドでガードし、ナーグフレイムでダメージを与えて押し返そうとする、が。

 

『フレイムライド!』

 

「無駄だよっ!!」

 

さらなる炎で押し切る。一気に斬りはらいをくらった、その上に連続斬りを叩き込んで行く。続いて回し蹴りのそののち。

 

『スプラッシュライド!』

 

「はぁっ!!」

 

『ハリケーンライド!』

 

水圧で斬撃ダメージを増しながら、ナーグフレイムを消火してしまう。続けて風とともに高速連続切断を食らわせ、怯ませる。

 

「こいつっ!」

 

「とう!」

『グランドライド!』

 

プランゼを押し退けてシャドーガイアが殴って来たのに対しては、大地の力をまとった重く強い一撃で返す。そこにプランゼの斬りつけも入り、転ばされた。

 

『放て!自分の思い!ヒーロータイム!』

 

「はああああああぁぁぁぁ…!」

 

ボタンを押してスロットを押し上げたのち、今一度押し込む。エレメンタルカリバーを投げ捨てながら構えるその横で、プランゼも姿勢を低くとった。

 

『ディメンションアタック!』

 

「でええええええやああああああああああああ!!!」

「たあぁっ!!」

 

『くそっ…』

 

エネルギーと花びらをまといながらの飛び蹴りを同時に放ち、二人はビランへと迫る。しかし彼女はとっさにシャドーガイアを盾にし、その姿を消した。

 

『ブレイク・ザ・ディスパー!』

「来いっ…」

 

しかしシャドーガイアもやられっぱなしではない。マックスグランドへ姿を変え、防ごうとする。一度食らい、耐え切れるという瞬間、彼女の背後にオーロラのようなものが現れ、それを通り抜けるようにキックの押しが加速していく。

 

「なんなのよ……うああああああ!!!」

 

そうしてディメンションアタックとストライクブルームにて、シャドーガイアは爆散した。安心感がどっと襲うように、変身を解きながらこいしは姿勢を崩した。

 

「…あんたじゃなくて天子だったら防ぎ切れたわよ」

 

そう言いながら、こいしはゆっくり立ち上がる。同時に幽香も変身を解き、ネムノの家へと戻っていった。

 

「…これじゃあターンブレイカー売るには説得力ないかな」

 

「量産できてあれなら相当なもんよ」

 

「天子は技術でどうにかしてるとこあったけどねぇ」

 

そんな風にして、会議兼飲み会は翌日朝まで続いた。

 

 

 

 

「…これで完成よ!」

 

「おー。なかなかすごいじゃないのよ」

 

暗いアジトの中、文とはたてが話している。文の手に握られているのは鋭い形状のバックルであり、さらにはたてが持つのはプロジェクトフォトグラフの計画書である。

 

「我々天狗もいい加減動かねばいけないわ。情報を制するものが勝負を制するわけですから」

 

「そうね。さ、始めましょう」

 

また一つ、新たな影が動く。

 

Continued on next episodes.




「この術が使えるのは…今日、この月食の日なんです!」

恋い焦がれ、信念を犠牲にして。

次回、「久しユアンシェン」


みなさんこんにちは、待機音は原曲フレーズで考えてしまうサードニクスです。
今回はターンブレイカーが出まくってましたね。タンスィオンはフランス語で電圧という意味です。ソルラテールもソル(土壌)ラ・テール(大地)の合体。salutもフランス語。『サリュ』と読みます。意味は要するとチャオ。
Uの短縮変身音はどうするか悩みどころでした。
とりあえず最終回まで書いたら誰かしらには褒めてもらえるだろうということを目標に頑張ってます。俊伯さんはいつも長々感想くださるので励み。感想乞食うるせえと思うんなら与えることで黙らせてください♡
さて、そんなことはどうだっていいのです。最終回までの超簡易プロットができました。こっから劇場版や今後の話のプロットを書いていくという関係で更新結構遅れそうです。またかよ…。
ただ書き溜めたら早いと思うんで許したまえ。
一回プロットなしのいきあたりばったりで書こうかね…。
とりあえず全ライダーほぼ同じ登場回数を目指して書こうと思います。二話あたりの改稿もせねば!
さて、続いては劇場版です。ご期待ください。

最後にみんなの変身ポーズコーナーです。
考えてなかったので今から考えます。
まず手をベルトにかざします。
そうしてもう一方の手を下げて木野さん的にクロス。
で手を広げます。
広げ方に注意!一巻のこのポーズです。

【挿絵表示】

で、光に包まれて終了です。シュールだけどかっこよく見えなくもないですね。では!


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劇場版幻想仮面少女 後悔の山 前編

劇場版ってことにしといてください


『TUKISSA!』

 

「…変身!」

 

椛が変身したライダーが構えるその目の前で、ドレミーはライドウォッチを起動した。金と赤の装飾のそれをジクウドライバーにセットし、ベルトを回転させる。

 

『RIDER TIME!仮面ライダー!トゥキッサーッ!!」

 

「…さて、お眠りいただきましょう!」

 

白と赤を基本とし、金の歯車の装飾が腕をメインに彩る。頭部も刺々しいながらリボンにも見えるものである。その仮面ライダートゥキッサが迫りくる。椛ライダー、エラーブルも迎え撃つべく武器を構えた。

 

「うぐぁ!!」

 

「弱いですねぇ…こっちが眠くなるっ!」

 

だが一方的な戦いである。仮面の中で血を吐きながら、椛は剣『オータムブレイド』を杖のようにして立ち上がる。今一度斬りかかるが同じように吹き飛ばされ、トゥキッサはトドメを刺さんとブレイニコを振り上げた。

 

『全てをcontrol…アルナブジェネラル!』

 

「椛ッ!!」

 

そこへ、鈴仙が仮面ライダーアルナブへと変身しながら駆け寄る。ピンクとネイビーがメインの、鈴仙らしさを感じるうさぎ風デザインだ。人差し指を伸ばして手を銃の形にし、光弾を放っていく。

 

「甘いですね」

 

「ぐあっ!!」

 

だがそれさえも大したダメージとはならず、一歩ずつ確実に近づいていく。そして隙を晒したところで斬りあげを叩き込まれてしまった。膝をついたアルナブへ、トゥキッサは近づく。

 

『ARNEB!』

 

「いただきましたよぉーんっと」

 

そしてブランクウォッチを押し当てたかと思うと、その力をライドウォッチへと封じ込めてしまった。さらに、鈴仙へトドメを刺す。急所は外したようだが、状況的に死んだふりをしている。その隙にエラーブルは近づく。

 

『シジュワイフ!仮面ライダーフィニッシュ!ザ・シジュワイフ!』

 

「でやああああああ!!!」

 

肩に装備した『ホーンキャノン』から連続で砲撃を叩き込み、一瞬だけ隙を作った。その隙に腕のライドウォッチホルダーからアルナブのものを盗み取り、追撃で至近距離砲撃必殺を叩き込んだ。

 

「くっ…」

 

「今の内に文さん!!」

 

「ええ、行くわよ、変身!!」

 

同時に文は尖った形状のバックルを巻き、レバーのように動かす。同時に赤黒い魔法陣が彼女を包みこみ、仮面ライダーハーフカースとしてそこに立った。西洋風な姿が特徴である。

 

『RESURRECT ON』

 

「まだ不完全…ですね」

『私の復活には程遠いでしょう。しかし、時間の問題!あなた方の世界を救うという約束は違えません。さあ、我が力を使うのです射命丸文!』

「もちろんですとも!…喰らえっ!」

 

「ぐぅっ!」

 

衝撃波をまとったパンチをもらい、トゥキッサは大きく怯みを晒した。同時に三座トライク『レーサートリニティ』に乗ったはたてがエラーブルとハーフカースを拾い、逃げ去っていく。

 

「変身したってことは…!」

 

「ええ、準備完了よ。行きましょう、異世界へ!!」

 

去っていくレーサートリニティを、トゥキッサはタイムマジーンに乗って追う。ナイトメアオブキメラ時のマシーンのようなそいつからの猛攻をかわしながら、三人は姿を消した。

 

「…っと。我々クォーツァーから逃げようとは、甘いことこの上なしですねぇ」

 

 

 

 

 

劇場版 幻想仮面少女

 

後悔の山

 

 

 

 

「見つけましたよ〜っと!」

 

暗いアジトの中、椛はもう一人の椛を縛り、肩に担いだ状態で部屋へと入った。縄の中にいるのはこの世界の椛であり、逆に担いでいるのはエラーブルの椛だ。

 

「こっちも準備完了ですよ!」

 

「んぐー!んぐ〜!!」

 

また、文やはたても似た状況である。何かしらの薬品投与を受けていたはたてを殴り倒し、異世界のはたてが縛り付ける。その様子を見て、この世界の文は抵抗するべく構えた。

 

「三対一よ、こっちの私」

 

「こっち…?意味のわからないことを言わないで!」

 

そう言って構え直したその時、はたてが拘束から紐をちぎって脱出し、その姿をカラス女へと変えた。暗い部屋の中暴れまわり、異世界の三人は煩わしげな様子を見せる。

 

「まだ計画の途中だったのに…!薬品の投与が不十分だったから!!」

 

「こっちの世界での計画かしら?まあいいわ、私が倒す!!」

『RESURRECT ON』

 

ハーフカースへと変身したかと思うと、宿す悪魔『マルファス』の魔術を解放し、土と岩でカラス女を追い詰めていく。そして墜落したところへ蹴り込むと、トドメとばかりにかかと落としをぶつけた。

 

「うぐっ…ああっ!!」

 

さらに爆発まで起こし、その姿はすぐにはたてへと戻った。彼女を縛っていく様子に耐えきれず、こちらの文も、鋭い形状のバックルを装備する。

 

「はたてと椛は連れていかせませんよ…!!変身!!」

『儂の力を使うか…』

『りぃざれぇくとぉ!ぅおん!』

 

そうして、ボタンを押して歌舞伎調な声とともに和風な装甲の戦士へと変わった。だが、ハーフカースは余裕の態度どころかどこか笑っているようでさえある。立ち向かった彼女へと、拳を構える。

 

「そのライダーに名前は?」

 

「え?まだ決めてないけど?」

 

「なるほど。じゃあプレカースと呼んであげるわ。私の仮面ライダーカースの合成素材ってとこね!!」

 

そうしてクロスカウンター式に拳がぶつかり、双方が怯む。だが、踏み直したのはハーフカースの方である。無慈悲に拳と膝を叩き込み、プレカースからベルトを剥ぎ取った。

 

「戦い慣れの問題ねぇ?さ、力を借りますよ崇徳上皇」

 

『儂の名を知っているのか』

 

「ええ、もちろんですとも。厳密に言えば…」

 

『皆まで言うな。儂の復讐を手伝ってくれるならどの射命丸文でも構わん』

 

「柔軟で助かりますよ。さ、ちょうどいいですしこっちの世界の計画も利用させていただきましょう」

 

そんなことを言うと、こちらの文を拘束してしまう。さらにこちらのはたてが先ほどまで座っていた椅子にはたてを座らせ、プロジェクトフォトグラフの計画書を渡した。ほくそ笑む二人を背に、椛は別の目的のため目的地を後にする。

 

「さて、どっからかかりましょうかねぇ」

 

「どこにも行かしゃしないよ。コアドライバー、コード2ッ!!」

『set up Code 02』

 

「ここで止まりなさい。…残念なことに天狗たちの救助はもう無理そうだけど」

『get started!』

 

そうして玄武の沢を降りていくその前に、立ちはだかるような形でにとりと雛が現れた。訝しげな椛の視線を受けながら、それぞれコアドライバーとターンブレイカーを構える。椛が四角形のアイテムを取り出したと同時に、二人はシークエンスを終えた。

 

「変身!」「醒妖ッ!!」

 

『phase blue!version 0.1!』『armored rider phase blue!』

『turn on!spinning girl!フェイツ!』

 

「ここで沈んでもらうよ、あんたにはもう手は残されちゃいない!」

 

リヴィエル ブルーフェイズと、赤と緑メインの刺々しく禍々しい姿の怪人フェイツがその姿を見せた。同時に椛は手の上の『エラーブルローダー』へと指を乗せる。

 

『scanning user authentication』

 

「よいしょっと」

 

そして腰に出現した『ミュンテーションベルト』へとエラーブルローダーを装填した。同時にベルトへとエネルギーがチャージされていく。

 

『link!5…4…3…2…1…』

『change Material』

 

「させるかっ!!」

 

C2ブレードを構えるリヴィエルを前に、椛の体にアンダースーツが装備された。さらに彼女の真上に、工場を思わせる機械の塊が出現する。リヴィエルの斬撃とフェイツのキックをいなし、構えをとった。

 

「変身!」

 

そして飛び込むように機械へとジャンプし、その身にアーマーが装備されていく。一瞬での変身ののち、地面へとキメながら着地した。

 

『complete』

『ヘンカ!ショウカ!止まらぬシンカ!カメンライダー・エラーブル!』

 

「さて、行きましょうか!!」

 

そうして『オータムブレイド』を構えたかと思うと、リヴィエルへと斬り込んでいく。押され気味ではあるが、そう簡単にやられる河城にとりでもない。リモコンを操作したと同時に水中から合体済みのKP-210が出現した。

 

「さらにはオカルトで追い討ちさ!いけー!!」

 

同時に武装したネッシーも現れ、KP-210のレーザーと共に砲撃を加えていく。爆風を食らって怯むそこへ、フェイツの重い蹴りが入っていく。しかし、体制を立て直しながら仮面の中で彼女は笑う。

 

「ならこいつだ!」

 

そうして構えたのは銃兵器『フォールバスター』である。何発か光弾をフェイツにぶつけたかと思うと、ツマミを操作。今度はネッシーとKP-210に放った。

 

「…?ダメージはないじゃんか。弱いね!さあやっちゃえ!」

 

にとりが命令を飛ばす。…が、何故か呼応しない。ネッシーも弾が出ないと首を傾げているではないか。さらにはリヴィエルへと銃弾を放った。ガードして余裕の態度であったが、謎の異常を起こし始める。

 

「…この銃は外界のバグスターウイルスとかいうのの技術を応用してましてね。コンピュータウイルスを実体化させてるんです。ダメージはないですが…それは機械以外に限った話です!!」

 

そんなことを語りながら、迫り来るフェイツを斬りつけ、さらにはリヴィエルへと剣を突き刺した。

 

『…entry』

 

「でやああ!」

 

続けて斬り返しをくらい、リヴィエルは変身解除へと追い込まれた。その様子を見たフェイツは今一度体制を立て直し、エラーブルへと駆け出していった。

 

「くらええええええ!」

 

「誰が喰らいますか」

 

そんなフェイツを前に、エラーブルは剣からUSBメモリ『マスカレイドコア』を抜き取り、ミュンテーションベルトのスロットへセット。ボタンを押した。

 

『リヴィエル!仮面ライダーフィニッシュ!ザ・リヴィエル!』

 

「…!?」

 

同時に彼女の右腕にKP-210に酷似した砲身とレーザー射出器が現れ、フェイツへと巨大なビームを浴びせた。爆発ののち、ふらふらと雛がその姿を現す。

 

「おおっと、逃げられると思わないでくださいよ!」

 

そんなことを言ったかと思えば、腕で壁に叩きつける形で、雛の首を押さえ込んだ。にとりが目を見開き、痛む身体へと鞭打って立ち上がる。

 

「…にとりのアレはまあ河童の技術で納得行きますよ。でもあなたはデザインとか以前にシステムが根本的に別の者に作られたと思しきものを使ってましたね。誰のものですか」

 

「言うもんですか…」

 

「なるほど命は惜しくないと…!!」

 

「やめろ!!…天人だ、比那名居天子だ!!」

 

苦しむ雛の姿に耐えきれず、にとりが言葉を放つ。それを聞いて仮面の下で満足げに笑うと、今度はにとりへ近づいた。

 

「じゃあ、天子さんはどこに?」

 

「…天界。有頂天だ」

 

「いい子ですね。じゃあ向かうとしましょう」

 

『サブジュゲーター!』

 

「これなら天界にも行けますかね」

 

そして左脚にアーマーを展開したかと思えば、空間に青娥のように穴を開け、姿を消してしまった。身を引きずりながら、二人は悔しげに顔を歪める。

 

「…間違いなさそうです」

 

そうしてたどり着いた天界では、どうやら天子は留守のようである。比那名居邸へと入り込み、白昼堂々空き巣を始めた。真っ先に天子のコンピューターを見つけ、機材にデータを取り込んでいく。

 

「完了っと!」

 

「…逃しはしませんよ。はぁ、なんだって休みの日に泥棒なんて来るんでしょう」

 

去ろうとする椛の目の前で、心底面倒臭そうに衣玖が立ちはだかった。睨み合いつつ、両者エラーブルローダーとターンブレイカーを構えた。

 

『scanning user authentication 』

『リヴィエル!』『アルナブ!』『ターンブレイカーズ!』

 

『get started!』

 

出現したミュンテーションベルトへと3つマスカレイドコアを挿入し、対し衣玖もUSBをターンブレイカーにセットした。そしてほぼ同時に変身シークエンスを終える。

 

「変身!」

「醒妖…」

 

『link!5…4…3…2…1…change Material』

『turn on!』

 

機械の塊が装備を形作ると同時に、静かに黒と青を基調にしたアーマーが衣玖にまとわれていく。装備が増えたエラーブルを前に、赤いリボンたちが揺れる。

 

『complete ヘンカ!ショウカ!止まらぬシンカ!カメンライダー・エラーブルブレイカー!』

 

『dragonic girls!レガレクス!』

 

「とうっ!」

 

「だあああああああ!!!!」

 

レガレクスがターンブレイカーを構え雷撃と共にパンチを繰り出すが、同時に至近距離砲撃が叩き込まれる。さらにはアルナブをもとにした光弾まで飛び交う。

 

「こう言うおまけもあるんですよ!」

 

「…!?」

 

そう言ったかと思えば、エラーブルの手の上にレガレクスのUSBが現れる。これがターンブレイカーズマスカレイドコアの力である。驚くレガレクスを前に、ベルトの残り一つのスロットへ差し込んだ。

 

『レガレクス!ファントムフィニッシュ!ザ・レガレクス!』

 

「でやああああああ!!!」

 

「うぐぅあああ!」

 

そうして一回転ののち電撃をまとったキックを叩き込み、爆炎とともに吹き飛ばした。気を失う衣玖へ煽り気味に別れを告げると、地上へと戻っていく。

 

 

 

「あ、お目覚めですね!」

 

蓮子が目を開けたと同時に、その視界に赤い髪が入る。起き上がってみてみれば、巨大な図書館である。自分へと視線を合わせる小悪魔に会釈を送ると、同じく目を覚ましつつある相棒の方へ視線を向けた。

 

「ここは……」

 

「紅魔館です。レミリアお嬢様やメイド長とは会っているはずですね」

 

「ああ、ええ、会っているわ。でも地下に図書館、それもこんな大きいのがあるだなんて」

 

そうして興味深げにあたりを見回すと、その視界にパチュリーが入る。彼女もこちらに気づいたらしく、のっそりと歩き始めた。

 

「…パチュリー・ノーレッジ。親友のレミィが世話になってるわね」

 

「…あ、ときどきレミリアが言うパチェって」

 

「私よ。あの子外で私の話を…」

 

「まああなたのこと知らなかったんでよくわからなかったですけど…大抵愚痴に見せかけた自慢でした」

 

「…ふん、余計なことを」

 

どこか照れ臭げに言いながら、秘封倶楽部の二人が寝るソファの前にテーブルを挟んで置かれた椅子に座った。コーヒーを口に運びながら、読書を再開する。

 

「しかしあのネコの子もまだ未熟だったのねぇ」

 

「橙ちゃん。忘れたらかわいそうよ。私たち帰る予定だったんだけどね…」

 

どこか残念そうに起き上がり、二人はソファへと座り直した。二人の言葉を聞き、パチュリーはどこか訝しげな表情になる。

 

「八雲藍の式神にやらせたのね。彼女を擁護するってわけじゃあないけど…、今博麗大結界には妙な呪文がかけられているわ。そのせいよ、きっと」

 

「あら、じゃあ橙ちゃんは悪くないのね。ごめんなさーい!!」

 

『ホントよ!』

 

空に向かって謝るような様子を見せたかと思えば、どこからともなく返答が返ってくる。あたりを見回す蓮子であったが、メリー、パチュリー、小悪魔、三人揃って蓮子を見ていた。

 

「え…どういう………まだるっこしいわね!!この体ちょっと借りるわよ!」

 

「…蓮子?」

 

「違う!私は橙さ!」『…な、なによ』

 

瞬間、蓮子は急に様相を変える。メリーが覗き込むが、その様子と漏れるように聞こえる声から蓮子が橙に体を奪われている状態なのは容易にわかった。柄にもないモーションで動き回る相棒に複雑な表情をしながら、心配げである。

 

「まあいいじゃん!しばらく借りてるわ!そうだ、外に出ましょう。藍様とか私の体が心配だわ!」

 

「…そ、そうね。ちゃんと蓮子は解放するんでしょうね」

 

「そりゃそうよ!」

『じゃないとマジで困るわ』

 

そうして小悪魔の丁寧な見送りを背に、二人は外へと駆け出していった。レミリアに挨拶をしようとするものの外出中とのことだ。残念そうに紅魔館を出た時、空から影が降りてきた。

 

「…あんたらは」

 

「天狗さんじゃないですか!この前の電波女の件は…」

 

「ふぅーん、こっちの世界の私と交流ありかぁ」

 

そう語ったはたての腰には、バックル状の外骨格が出現していた。そしてゆっくりと駆け出して加速するそこへ、横切るようにオウカオーが停車した。ヘルメットを外しながら幽々子と妖夢が降り、二人が同時にベルトを装備する。

 

「結界が変だと思ってみれば…あなたはどうもこっちの世界の子じゃなさそうね」

 

「…その異世界というのがよくわからないのですが。まあ幽々子様がそう言うなら敵でしょう」

 

『人か霊か?』

 

「変身!」

「変身♪」

 

『Mai bloom!Selezo!』

『変・身・承・知!ヒトノカタ!』

 

ブロッサムと桜刀が同時に剣を構え、はたてへとじわじわと近づいた。同時にはたても軽めにポーズをとると、その姿を変えながら駆け出す。

 

「…変身!!」

 

そうしてその肉体が変化していく。深紫の外骨格をメインに、体系に沿った姿で、黒や白が差し色に入り、ブラウンが頭部へと入る。ツインテールに見えなくもない頭部飾り含め、それはまさに姫海棠はたてであった。

 

「そうね…名づけるならば、仮面ライダーグラフィ!」

 

爆誕したグラフィはブロッサムと桜刀の斬撃をかわし、二人の背中に拳を叩き込む。さらに手に持ったガラケーが変化し、スマホ型メリケンサック『ストライクフォトグラフ』へ。強力な拳をぶつけ、さらには光刃が追い詰めていく。

 

「けっこう…強いじゃないの」

 

「…助けに入るわよ橙。変身!」

 

『dream night fantasy!』

 

グラフィの背後にヒールが入る。ナイトメアがその姿であり、テレガンでの中距離攻撃を行う。だがグラフィにたいした怯みは見られない。さらにはストライクフォトグラフを銃モードに変型させ、銃撃戦を展開した。

 

「くそっ…それなら!」

 

膝をついたヒールがドロップを読み込もうとするが、それさえ妨げられる。その隙に桜刀が斬り掛かり、ブロッサムは銃撃を放った。が、グラフィは黒の翼を展開してその攻撃を避けてしまう。

 

『…どうすればいいのかしら』

 

『さあね…』

 

「藍さんも居なくて………!」

 

バックルの中で話す蓮子と橙を見て、メリーは何かに気づいたようである。おもむろに紫のライドレンズを取り出すと、青に取り替える形でバックルに挿入した。

 

「…橙。あなた他人の体の操作できるのよね」

 

『できるけど…』

 

「OK。じゃあいけるわ!」

 

『look the fantasy!』

『オレンジ!』

 

戸惑う蓮子を横に、メリーはレバーを押し込んだ。飛び出した蓮子とメリーの体が融合していき、ライダーのスーツが装備されていく。さらにライドブレスにガジェットガラパゴスをセットした。

 

「これにはシステム演算補強昨日があるわ。…さあ、せーので大変身よ。せーのっ!!」

 

「「『大変身!』」」

 

『we are scratching night fantasy!』

 

そうして融合体が構えた瞬間、その身に赤と黒をメインとしたアーマーが装備された。猫耳が目立つその姿はまさに橙である。右腕にクローが装備されており。180°回す形でマウントされている。

 

『…ヒールの、新しい姿?』

 

『橙が居る間の期間限定フォームよ!」

 

「「急だなぁ…まいいや、暴れてやるさ!」」

 

『OK!腰にあるグリップを取るのよ!』

 

メリーの言った通りヒールは二つのグリップを手にする。右手で握ったライドグリップのトリガーを握ると同時にクローが展開。さらに左手のライトニンググリップを握ると、ガジェットガラパゴスから電撃をまとったエネルギークローが飛び出た。

 

「「いいねこれ、イケる!」」

 

そうして構え直し、グラフィへとクローを食らわせていく。大きいものではないが確実に怯みを見せたかと思うと、続けて連続引っ掻きを叩き込んだ。

 

「「にゃにゃっ!!」」

 

「…っと、さっきよりかは効くじゃないの!」

 

余裕の態度ではあるが、勝っているというわけでもない。拮抗したその状態に桜刀が斬り込んでいき、さらにブロッサムから舞うような連撃が入った。今度こそグラフィは確かに怯みを見せる。

 

「…ったく」

 

そうボソッと言ったかと思うと、グラフィは今一度構え直し、拳での攻撃へと切り替えた。ヒールとの押し合いにはギリギリ勝ち、がら空きの胸に拳を叩き込む。さらに桜刀とブロッサムには銃撃をぶつけ、回し蹴り。転げ回る二人を背に、ヒールへと迫った。

 

「本気出させてくれちゃって…!」

 

そうして駆け出したその瞬間、スライダー形態のチェイスナイターがグラフィへと突進をかました。空を舞って軽く避けるが、思わぬ援軍である。上に乗った化け猫姿の藍はサムズアップを送り、チェイスナイターをヒールに渡した。

 

「「ありがとうございます藍様!」」

 

『礼には及ばないさ』

 

「乗り物が増えたからなんなのよっ!!」

 

そう言って、グラフィは翼で加速しながら接近する。対しヒールはチェイスナイターの上に立ち、すれ違いざまに爪をぶつけた。転んで姿勢を崩したグラフィを前に、アタックドロップを読み込む。

 

『spinning eyes!』

『dash eyes!』

『punch eyes!』

 

「「ライダードリル!!!」」

 

そして発進したかと思うと、急ブレーキで飛び出す。さらにその腕をまっすぐ伸ばし、横回転。まさに全身をドリルにするような攻撃で吹っ飛ばした。

 

「行くわよ妖夢!せーの!」

 

「はいやぁ!」

「たぁ!」

 

さらに吹っ飛ばした先で、二人が斬撃攻撃を繰り出した。さらにダメージを負ったようであり、グラフィは膝をつく。しかし三ライダーみな疲弊しているが、グラフィはその様子は見せない。軽い調子で飛ぶと、ヒールの必殺が当たった場所だけをゆるくかばいながら立ち上がった。

 

「残念だったわね!このまま………あ?もしもし!ん?え?ああ、はいはい。人使い荒いわねまったく」

 

トドメを刺してやろうと構えるが、同時に文からの連絡である。何かを話したかと思うと、あたりに銃撃を飛ばして去っていってしまった。悔しげに膝をつきながら、少女たちはその様子を見送る。

 

 

 

 

「ったく…よく飽きないわね!!」

 

「使命だもの!」

 

同じ頃、魔法の森では相変わらずのリライvsエレンツが展開されていた。横でラビとフールも戦っているが、アリスはそれを意に介さない。ただ黙々と二丁拳銃でリライを追い詰めていく。

 

「オラオラどうしたチルノぉ!!その程度じゃあたいにゃ勝てないぜ!」

 

「うっさいわね…!!」

 

そうして弾幕と光弾が飛び交う中、突如ラビがどこかへ視線を向ける。本来なら隙だが、そこは妖精のおつむである。ピースもそちらへと目を向けた。

 

「椛が…椛を運んでる…?」

 

「偽物じゃないか?」

 

「何でもいいわ!」

 

「えー、あんなのほっといてあたいと遊ぼうぜチルノ!!」

 

駆け出すラビを抑えたことにより、再びラビvsフールとなってしまう。だがその騒ぎをリライとエレンツも見ていた。さすがはヒーローということもあり、一時休戦という形で椛を呼び止めた。

 

「…あんた」

 

「うげっ。人通り少なめなとこ選んだんですけどねぇ……。ま、いいか」

 

『scanning user authentication 』『リヴィエル!』『アルナブ!』『ターンブレイカーズ!』

 

「変身!」

 

『link!5…4…3…2…1…change Material』

『complete ヘンカ!ショウカ!止まらぬシンカ!カメンライダー・エラーブルブレイカー!』

 

素早くシークエンスを終え、ライダー達の頭上を飛び上がる形でアーマーを装備する。すぐ横ということもあり、ラビはブリザードダイヤモンダーを向け、連続射撃を繰り出した。

 

「煩わしい…!」

 

「…!!」

 

そしてエラーブルがフォールバスターを向けたと同時にラビはフールを盾にして攻撃を防いだ。エラーブル的にはどうでもいいので、そのままフールへとウイルス弾を当て、さらには斬撃もぶつけていく。

 

「…動きづらい!?」

 

「そうですよ〜。さて、データももらったことですし、このまま変身できなくなってもらいます」

 

『エラーブル・バスターブラスト!』

 

「たぁっ!!」

 

続けて放ったウイルスの塊のような光弾を、フールは避けようとする。バグにより動作は不良であるが、ギリギリでエレンツを盾にすることに成功した。瞬間、エレンツのアーマーが弾け飛び、一切の怪我なくアリスが変身解除に追い込まれた。

 

「…ベルトが反応しない!?」

 

「そりゃそういうウイルスですからねー」

 

さらにエレメンツドライバーから一瞬でデータを回収し、メモリへ。ミュンテーションベルトへセットしたかと思うと、必殺を発動させながらリライの方へ駆け出した。

 

『エレンツ!仮面ライダーフィニッシュ!ザ・エレンツ!』

 

「とぉーう!」

 

そして左足に生まれたツインツインガンのような砲身で蹴り、W・カオスに変身する暇すら与えず至近距離で発射した。ぶっ飛ばされながら変身解除に追い込まれるリライへとラビは駆け寄り、心配するような様子を見せる。

 

「ルーミア…」

 

「…あー、いってー。あとは任せるのだー」

 

「任せるって言われてもなぁ…」

 

「勝てませんしねぇ?」

 

煽りげに言うエラーブルを睨みながら、ラビは銃口を向けた。しかし華麗な様子で攻撃をかわすと、オータムブレイドで一撃。怯んだ彼女へと、追い打ちで必殺を発動した。

 

『エラーブル・ブレイドスラッシュ!』

 

「でや!」

 

「うぅっ!」

 

「…この剣はやっぱ直接データ取れるのが便利ですねー」

 

爆発を起こして倒れるラビを背に、今度はフールの方を向く。果敢に駆け出すフールであるが、誰が有利かは目に見えた状況である。無慈悲にも先程の斬撃で作ったフールマスカレイドコアをオータムブレイドへとセットした。

 

『フール・ブレイドスラッシュ!』

 

「だあああ!!」

 

「うぐあああ!!」

 

すれ違いざまに炎を纏った横切りを叩き込み、一発にしてフールを変身解除へ追い込む。ご満悦の様子で去ろうとしたその時、ちょうどあたりを歩いていたメディスンがその様子を目撃した。

 

「…これは」

 

「ちょうどいい、データ貰いましょうかね」

 

「逃げなさいメディスン!!勝てないわ!!」

 

メディットブレスを構えるが、アリスの声を受けてメディスンは後ずさった。そんな彼女に、アリスは全力で何かを投げ渡す。キャッチして見てみれば、何かの鍵である。

 

「…部屋の中に入って!私からのプレゼントよ!!そこのバイクも貸すわ!!」

 

「注文が多いわね!!」

 

ゆっくりと歩みの速度を速めていくエラーブルに背を向け、メディスンは駆け出した。しかし歩幅が違いすぎる。言葉に甘え、メディスンはドールシャイナーに飛び乗って発進した。トライサイカーと同じくアリスであることもしくは人形であることが条件である。簡単に起動した。

 

「全く…!」

 

そうして追いついてやろうと踏み出した時、アリスが後ろから組みつく。何事かと驚くエラーブルであるが、すぐにエラーブルローダーを抜き取られ、椛をへと戻ってしまった。アリスは得意げにエラーブルローダーをタッチする。

 

「頂いたわよ!」

 

『error』

 

「…え?」

 

「指紋認証ですよ。貴女じゃ変身できないんですよね!!」

 

得意げに言いながら、アリスへと殴りかかった。しかし素直にやられるアリスというわけでもない。それなりに格闘戦を展開する。

 

「甘いわね!」

 

「…!」

 

目の前にドール爆弾を投げつけ、さらにはゴリアテ人形まで呼び、弾幕までも広げての総力戦である。椛も椛で盾でのガードや剣での跳ね返しなど使える限りを使って対抗した。

 

「たぁっ!!」

 

「はうあっ…!」

 

しかし、哨戒というのも体を張った仕事である。格闘に持ち込めばほんの少しであるが椛が優勢である。たまたま空いた右頬へフックをねじ込み、エラーブルローダーを奪い返した。

 

「くそっ、時間は稼がれましたね…」

 

そう吐き捨ててアリスにヤクザキックをかますと、その場を去ろうと踵を返した。だがその前に、今一度クラウンピースが立ち上がった。椛を睨みながら、アルカナドライバーを装備した。

 

「緊急用の切り札だけど…。今は超の付く緊急事態だよなぁ?いくぜ、ルナティックタイムだ…」

「…はぁ」

 

『SUN』

『リヴィエル!』『アルナブ!』『エレンツ!』『ラビ!』

 

「変身!!」

「…面倒ですねー。変身!」

 

『RISING!GURO-RIASU!超・高・熱!太陽の一手!審判の業火!』

 

『complete ヘンカ!ショウカ!止まらぬシンカ!カメンライダー・エラーブルブラスター!』

 

強烈な閃光があたりを包み込んだと同時に機械が鎧を組み立て、フールとエラーブルが睨み合う形で変身を終えた。

フール、サンフォーム。太陽らしく全身が燃え盛るようなデザインであり、目はオレンジとイエローのオッドアイだ。一本角のような姿が目立ち、さらには背後には巨大な炎の光輪がきらめく。

 

「姿が変わろうと無駄ですよ!!」

 

「どうだかな。あたいは無性に腹が立ってるんだ。奴らとかはもうどうでもいい。あんたを倒す!!」

 

二人同時にパンチを繰り出し、拳と拳がぶつかり合う。エラーブルは今だとばかりに光弾を放つが、効いている様子ではない。高熱を力とするサンフォームには無駄であるのだ。

 

「どりゃりゃりゃりゃ!!」

 

「うおっと…あちちっ」

 

「その程度で済まさねぇぜ!!」

 

さらに蹴りも交え、炎での激しめの攻撃である。あれほど脅威であったエラーブルが、はっきりと押されつつある。敵であるフールであるが、アリス達はなかば応援しているようでさえあった。

 

「だったら!!」

 

「二度も三度も食らうかっつーの!!コンピューターウイルスとかいうが…実態があるなら!!」

 

続いてウイルス弾を連続で放つがフールの放った爆熱によって消滅してしまう。目を見張って驚くエラーブルへパンチを叩きこみ、さらにその手からフォールバスターを弾き飛ばした。

 

「それなら水妖エネルギーですっ!!」

『リヴィエル・ブレイドスラッシュ!』

 

「無駄だっつってんだろ!!」

 

続けて水をまとった斬り付けを放つが、熱によって蒸発し、ただ煙を生むのみ。悪い視界の中、光を放ちながらフールは拳を叩き込んでいく。エラーブルもすぐやられるほどヤワではないが、確実にダメージは入っている。

 

『太陽の一撃!』

 

「であああああああああ!!!!」

 

「…ったく!」

『リーヴス!ファントムフィニッシュ!ザ・リーヴス!』

「ウオオオオオオォォォン!!!!」

 

炎をまとった飛び蹴りに対し、エラーブルはターンブレイカーの椛怪人の技を読み込んだ。飛行バインドの攻撃ゆえ、フールは地面に落ちる。が、その勢いままにドロップキックを叩き込んだ。吹っ飛ばされたエラーブルが膝をつき、フールは着地した。

 

「ぐぅっ…」

 

「このままぶっ殺して……!?」

 

さらにフールが詰め寄ったそのとき、突如彼女は歩みを止める。そして猛烈に熱がりながら、うごめき始めた。その様子を見てエラーブルは仮面の中でニヤリと笑う。

 

『フール!仮面ライダーフィニッシュ!ザ・フール!』

 

「もっと燃えるといいですよ!!!」

 

そして炎の蹴りを叩き込むと、フールはさらに苦しみ始める。オーバーヒートだ。ついに耐えきれず爆発するようにスーツが燃え尽き、ピースはあたりの草の灰の上に倒れ伏した。

 

「…やれやれ、焦らせてくれましたね」

 

そんな捨てゼリフとともに、ウイルス弾をアルカナドライバーへと撃ち込み、完全に機能停止へ。そして今更メディスンの後を追って宙へ舞った。

 

「…やっと追いつきました。アリス邸にご用ですか?」

 

「!!」

 

ドールシャイナーを停めて家に入ろうとする彼女を見つけ、エラーブルは迫っていく。そんな時、彼女の道を塞ぐようにレーサートリニティが停まった。乗るのは文とはたてである。

 

「なーに油売ってんのよ。ほらあんたと文はやることあるんでしょ。さっさと向かってなさい。…こいつの相手なら私がする」

 

そうして文と椛を送ると、バックルを出現させながらはたてはトライクを降りた。メディスンもメディットブレスを腰に装着し、睨み合いつつ距離感を作る。

 

「「変身!」」

 

『GRADE UP……… FAZE2』

 

直接スターライトペンタスに変身し、高速で飛びかかって蹴り込んでいく。同時に変身を終えたグラフィも腕で防御し、隙をついて拳をぶつけた。

 

「いったいわね…。肌ってかこの外の硬いとこ溶けてんじゃないのよ」

 

「…治ってる」

 

「そうね、結構すごい治癒力ね。グラフィ、ますます気に入った!」

 

毒で焼けたはずの外骨格はすぐに治っていき、毒のダメージには期待できなさそうである。今度はランチャープルーネラでの爆撃を繰り出していくが、空を舞ったグラフィに簡単に避けられてしまう。

 

「くっ…!!」

 

メディスも高速で空を飛びながら攻撃を放つが、避けられるかダメージが少ないかである。さらには直線移動のタイミングで銃撃を当てられ、墜落した。

 

『INCREASE EFFECT』

 

「当たれッ!!」

 

「バレットカッティング!」

 

今度は空中のグラフィへと連続射撃である。だが、グラフィはストライクフォトグラフのカメラを起動。撮影と同時に光弾が消失した。

 

「なによそれぇ!!」

 

「さあね!!」

 

悪態をつきながら構え直したメディスへ、グラフィは急降下パンチを叩き込む。吹っ飛ばされたと同時に、メディスの装甲の毒の流れが不安定になった。

 

「…鎧の負担が。ならっ!」

 

『GRADE UP……… FAZE1』

 

これ以上スターライトペンタスで戦っていられないと、今度はブラッドリリィへフォームチェンジする。そして今一度エクスブライガンを向け、今度はアイスドロップでの銃撃を行った。

 

「っと!!」

 

イナバウアーの姿勢で避けながら、グラフィはメディスへと向かっていく。着弾地点の木が凍ったのを確認しつつ、殴り込んでいく。さすがにスターライトペンタスよりも下位のフォーム故に、さきほど以上に押され気味である。

 

「フン、弱いわね!!」

 

「くっ…」

 

一撃自体の威力はスターライトペンタスより高いが、それでもダメージには不十分な毒である。蹴り上げをもらい、ごろごろとその場を転がった。

 

「もう終わりにしましょ。ウィンドフルホーミング!!」

 

「くそっ…」

 

さらに、グラフィが技名を叫んだと同時に、ファインダー型のエネルギー体がメディスを狙った。そしてそのまま飛び蹴りを放つ。バックステップでかわすが、軌道を一気に変え、追跡する形でメディスへとヒットした。

 

「うぐぅああ!!」

 

「よいしょっと」

 

爆破ののち、メディスンがそこに転がる。もう用はないと踵を返した、そんな時。

 

『Two systems down…. Reloading…emergency treatment. Unlock prototype』

 

「…あ?」

 

「…これは?…頭が………阿弥…。…?だれよそいつ…ううっ…」

 

メディスンが頭を抱えながら立ち上がる。同時にメディットブレスからカプセルが飛び出し、慌ててそれをキャッチした。謎の記憶が反芻するなか、涙とともに彼女はそのカプセルをセットし、パーツを畳んだ。

 

「…変身」

 

『GRADE UP……… FAZE0』

 

ビキビキと赤いラインが血走り、拘束具のようなアーマーが装備されていく。それは間違いなく仮面ライダープロトメディスで、フォーム名で呼ぶなら…プロトリリィというところか。

 

「行けるって気はしないけど…!!」

 

拳を構え直すと、今一度グラフィへと殴りかかった。腕でガードする彼女であるが、どうやら毒は強力で、先ほどと違い一瞬ではない。さらにメディスが攻撃を止めるわけでもないので、追っつかずどんどんと肌は焼けていく。

 

「なんなのよこいつ!」

 

「こっちが知りたいわよ!」

 

今度は双方銃を構えての銃撃戦である。これに関してはやはりグラフィの方が有利であり、彼女はこちらで戦うことに。それならばとメディスも得意な戦い方を繰り広げることにし、近接格闘へ持ち込む。

 

「うぐぁ…!」

 

「手間かけさせてくれたわね…!!」

 

『INCREASE EFFECT』

 

「ライダースラップ!!!」

 

グラフィが一瞬見せた怯みに対し、メディスは思いっきり平手打ちを叩き込んだ。後ずさって木に背をつけながら、グラフィは苦しみの声を上げる。

 

「あぁ…うぅっ……うあああああ!!!」

 

「…くっ」

 

しかし同時にエネルギーが切れ、メディスの方も変身が解けてしまった。とはいえグラフィも反撃できるような感じではなく、そのまま飛び去っていく。

 

「…やれやれ」

 

ため息をつきながら、メディスは膝をついてひとまず安堵の吐息を吐いた。

 

 

 

 

「ぐぅっ!!!」

 

守谷神社にて、攻撃の末変身解除に追い詰められ、這いずりながら早苗はエラーブルを睨みつけた。対しそれを意に介さない様子で、何か巨大なマシンを起動させる。

 

「…文さん、あなたの方の準備もOKですか?」

 

「ええ、始めましょう!これがステップ1よ!」

 

そう高らかに叫んだ瞬間、守谷神社を中心に気候が変化していく。葉もオレンジに染まっていき、その季節は一気に秋へと変動した。神社に居るものに限らず、幻想郷中がざわめきはじめる。

 

「季節があっちに揃って…融合の準備完了。ほらほら、見えてきたわ!!」

 

「おぉ…エニグマとかいうマシンはすごいんですねぇ。あと48時間でしたっけ」

 

そう言って見上げる上空の遠方には、もう一つの幻想郷が迫っていた。ぶつかるその瞬間を心待ちに見上げていたが、突如その動きが止まる。

 

「…これは」

 

「誰かが融合の時を止めたんだわ。紅魔館のメイド長か輝夜さんとかね」

 

「どうします?」

 

「消しましょう。行きますよ!」

 

そうして、二人はレーサートリニティに乗り込んだ。




フォーム名:セカンドモード
概要:蓮子とメリーの体が完全に融合した形態。しかし意思の主導権の関係で操作できずにいたのだが、なんか取り憑いていた橙に操作させる形で解決した。
グレーの素体の上に赤と黒の軽いアーマーを装備する。頭部は紫のツインアイと茶髪風のデザインと耳風のデザインが特徴的。
武装:
『ライトニングクロー』
ガジェットガラパゴスから飛び出る電撃ビーム三本爪。オーズのトラクローに近い。ライトニンググリップで操作する。
『ライドクロー』
右腕のクロー。ライドグリップで操作する。
変身アイテム:
『ライドブレス』
ガジェットを接続出来るブレスレット。ガジェットを充電できる以上の機能はないが、スーツに接続することが出来るのを応用的に利用している。
『ガジェットガラパゴス』
システム制御補助機能により、橙が二人の体を操作するのを支えている。
『ライドレンズ』
菫子が開発した紫色の物。二人が完全に融合できる。
変身シークエンス:
1:片方がベルト巻く。蓮子とメリーどっちでも良し。
2:ライドブレスを巻きつけ、ガジェットガラパゴスを接続する。
『オレンジ!』
3:ライドレンズを挿入する。
『look the fantasy!』
4:橙の「変身!」の掛け声と同時にレバー押し込み。
『we are scratching night fantasy!』
必殺技:
「ライダードリル」
チェイスナイターで飛び出したのち、手を突き出して高速回転でゴリゴリ攻撃するフォーム。



アルナブが先行登場ライダー、クラピのサンフォームが先行登場フォームですね。そして上記セカンドフォームが劇場版限定フォームってわけです。
プロトメディスの登場は予想外だったのではと思います。
いやーしかしずっと戦ってますねぇ…。特別編なんだしそういうもの!許せ!
いつもの1.5倍ほどなので、後半もこうなら大体冬映画と同じ尺ですわな。ちょうどよし。
そういうことで、次回の後半に続く!


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劇場版幻想仮面少女 後悔の山 後編

なんか色々コメントいただけました
後半も感想くるといいなー


「…さて。貴女達に任せていいかしら?」

 

「ヤバけりゃ連絡するわよ」

 

「それは心強い。頼んだわよ」

 

勇みながら三人してレーサートリニティに乗り込んだがいいが、誰かはここに留まるべきということに。守谷神社にてエニグマXを操作することになったのは文であり、椛とはたてがトライクに乗り込んだ。

 

「……あら、お出迎えとは有り難いですね」

 

「馬鹿ってのも居るものねぇ」

 

そうして少し進んだ先にて、レミリアと妹紅が立ちはだかる。その視線から、戦う準備はできているようだ。輝夜と咲夜にやらせた時点で、二人とも命を狙われるという事はわかったようである。

 

「やっぱなんかする気だったらしいね。悪いけど輝夜を殺すのは私だよ」『over change!』

 

「オイラ達の予想通りだぜ」

「こっちは守んなきゃいけない大事な部下がいるものでね」『覚醒!』

 

「「変身!!」」

 

『burn up complete!phoenix feather!』

『ジェ・ヴォー・ダン』『ワーラーキーアーッ!ヒャッハッハッハー!!』

 

「燃え尽きてもらうよ!」

「さぁ、楽しい殺戮を始めましょう…」

 

変身を終えて歩み寄る二人。はたては椛に目配せをしたかと思えば、変身の準備をしながらゆっくりと近づいた。椛もまたミュンテーションベルトを出現させ、準備完了である。

 

『リヴィエル!』『フール!』『エレンツ!』『ラビ!』

 

「「変身!」」

 

『complete ヘンカ!ショウカ!止まらぬシンカ!カメンライダー・エラーブルバースト!』

 

そうして、二対二の勝負が始まった。ウイルス弾をばらまくエラーブルであるが、ジェヴォーダンがガードし、駆け寄って殴りかかった。そしてフェネクスはグラフィへ向かう。

 

「そうか…。肉体変化と単なる鎧!あなたたちにこの銃弾は効かないわけですか」

 

「どうやらね…!」

 

距離を寄せながら、ワラキスピアーとグングニールでの二槍流で一気に斬り込んだ。対しエラーブルは避けながら距離を取り、砲撃を連続で放っていった。だが、ジェヴォーダンは動じない。

 

「やっぱ結構防御力あるんですねぇ…」

 

「一応そのつもりよ」

『ワラキアカーニバルッ!!ワラキスピアー!』

「はッ!」

 

今一度エラーブルが離れたタイミングで、ジェヴォーダンは必殺を発動。思いっきり槍を振り下ろし、同時に地面から大量の槍が飛び出た。

 

「いででっ…!やれやれ…!!」

 

いくらかダメージを食らいつつも立ち上がるその上で、フェネクスとグラフィによる高度な空中戦が展開されていた。チェイスブラスターによる高温砲撃を避けるなりファインダーで切り取りながら、グラフィが銃弾を放つ。

 

「危ないね…!!」

 

「そいつはこっちのセリフ!」

 

フェザーシューターを撃ち落としつつ、グラフィは近接戦を仕掛けた。しかしナックルという武器さえも同じ状況だ。バーンスマッシャーとストライクフォトグラフがぶつかり、両者体勢を崩した。

 

「くっ…」

 

「やれやれ…」

 

しかし相手のスピードや性能もあり、少しだけグラフィが優位をとった。落下していくフェネクスへ、ファインダーが現れ、爆発することで追撃を加える。地面に叩き出されつつも、フェネクスはすぐに体勢を直した。

 

「…熱いんだけどな、これを使う他なさそうだ!」

 

『limit over change!』

 

『zero ignition…』

 

「おえっ、煙ったいわね……!!」

 

煙を払うグラフィの前で、フェネクスはグリップを握りこんだ。同時にフェザーチェイサーがグラフィに突撃していき、さらに凄まじい熱量がフェネクスを覆った。

 

『burn up complete!zero phoenix!』

 

「ったく…」

 

そしてゼロブレイズへと姿を変え、グラフィへゆっくり近づいていく。その状況に、彼女は不利を感じた。

 

「ったく…」

 

「見つけましたよ。白狼天狗も変身してます!」

 

さらに援軍としてブロッサムと桜刀まで駆けつけた。それぞれグラフィとエラーブルの方に向かっていき、戦況はさらに混沌としていく。

 

 

 

 

 

「…援軍が来ちゃった上妹紅さんが強い?ハイハイなるほど」

 

はたてからの連絡を受け、文はエニグマXに問題がないことを確認したのち山を降りるべく駆け出した。しかし彼女の元に、左右を邪魔する形で二人が現れる。

 

「…さて、こっから行かせないわよ!」

 

「我々の叛逆に邪魔なんだよ」

『『get started!』』

 

針妙丸と正邪である。二個同時にターンブレイカーを起動したかと思えば、片方を針妙丸に投げ渡し、自分はもう一方を構えた。

 

「醒妖!!」

「醒妖」

 

『turn on!little girl!ラルジュネヌ!』

『turn on!chased girl!リヴァーシブル!』

 

そして現れたのはラルジュネヌと、正邪のリヴァーシブルである。赤と白をメインとしたデザインが、刺々しくきらめく。そして二人は同時に駆け出し、針とクローを構えた。

 

「…なるほど。ちょうどいい、カースの完成祝いです。肩慣らしでもしましょう」

 

「舐めてくれるねぇ…!!」

 

二人の前で、こちらの世界の文から剥ぎ取ったプレカースのバックルを取り出す。そしてハーフカースのものと合体させ、カースドライバーを完成させた。

 

「じゃ、行きましょうか」

 

『RIZAREKUTO ON』

 

近づいてくる二人の前でカラスの側頭部のようなバックルの口を開き、ボタンを押した。同時に黒い術の文字列と赤い魔法陣が彼女を飲み込み、仮面ライダーカースが誕生する。赤黒い和洋折衷な外見が特徴であり、ところどころ漢字の意匠も見られる。

 

「さて、お二人の復讐のお手伝いといきましょう」

『その前にあなたの悲願があるのでしょう』

『その後に暴れさせてもらおう』

 

「今ここで負けるやつの態度じゃあねえなぁ!!」

 

飛びかかかったリヴァーシブルの写真を撮ると、そのまま流れるようにソバットを放った。怯んだリヴァーシブルに続いて突撃してくるラルジュネヌは、血の文字が描かれた剣『ノロイコロース』で迎えうった。転がるラルジュネヌも写真に納めると、二人の方へ顔を向ける。

 

「カッコいい鎧じゃありませんか。死装束にはもったい無いぐらい」

 

「勿体無いついでにあんたが死ね!!」

 

すぐさま起き上がったかと思えば、リヴァーシブルとの同時攻撃である。抜群のコンビネーションでの攻撃であるが、カースに効く様子はない。軽い様子で押し返され、さらには追撃までもらった。

 

「骨がないですねぇ!!」

 

『もういいだろう。トドメを刺してしまえ』

 

「ええ、そうしますよ!」

 

そうして、ノロイコロースを構え直し、二人に向かった。マスクの中で血相を変え、リヴァーシブルは駆け出した。そして、ターンブレイカーを押し込み、構える。

 

『リヴァーシブル!turning-breaking!salut!』

 

「たああああ!!」

 

爪をぶつけるような姿勢で飛びかかり、斬撃を食らいながらも詰め寄っていく。だがカースの斬り下げをもろに食らってしまい、爆発とともに倒れこんだ。

 

「正邪!」

 

「…来んな!姫は逃げて…!」

 

「誰が逃げるってのよ!」

 

「あーあーもう良いですって逃げてください。私は向かうところがあるんで」

 

息絶え絶えの正邪を背に、カースは翼を広げて舞った。エラーブルとフェネクスのもとにたどり着くのにそう時間はかからない。すぐに到着した。

 

「とぅ!!」

 

着地と同時にジェヴォーダンを斬りつけ、大きな隙を作る。土で固めたのち、エラーブルからの強烈な砲撃が叩き込まれていく。

 

「ちょうど良いですね、感謝しますよ文さん!」

 

『ラビ!仮面ライダーフィニッシュ!ザ・ラビ!』

 

さらには凍結弾によるガトリングである。全身が凍ったのち、カースとエラーブルの同時攻撃をもらい、変身が強制解除されてしまった。倒れ伏すレミリアを横目に、カースとグラフィは続いてフェネクスへ。エラーブルは白玉楼コンビの方へ向かった。

 

「だぁっ!!!」

 

「あづっ!!!はたてこの人熱い!」

 

「だーっ、強いって言ったでしょうーに」

 

続いてフェネクスに剣と拳での攻撃を繰り出すが、押している様子はない。それどころか同時にフェネクスのパンチをくらい、吹っ飛ばされてさえいる。構え直す二人だが、不利気味だ。

 

「ったく、世話が焼けますねほんとお二人は!私より年上でしょう!」

 

『エラーブル・バスターブラスト!』

 

「うっさいわね!」

 

「んだっ…これっ!」

 

噛みつきつつも、エラーブルの銃口の方へフェネクスが向くようにグラフィは仕向けた。急なことで避けきれず、ノイズが走ったのちスーツが消滅する。妖術で戦いを続けようとするも、グラフィの膝蹴りで完全に意識を失ってしまった。

 

「さて、あとはあなた方ですねぇ?妖夢さんに幽々子さん…!!」

 

「よし、じゃあ…」

 

「いえ、さっきからちょっとしか戦えてないし…試運転させて。私だけで結構!」

 

「信じていいんでしょうね…」

 

グラフィとエラーブルへそう告げて行かせたかと思うと、カースは桜刀とブロッサムの方へと向き直る。そして二人の写真を撮影し、怪しげに笑った。

 

「遺影なら撮ってあげました。これで存分に死ねますよ!」

 

「あいにくもう死んでるわよ」

 

ノロイコロースで斬りかかったのを、二人は楼観剣とトランスフロートで迎えた。剣としての優秀さもあり、押し返していくのは楼観剣である。ブロッサムは一歩引き、銃モードにて射撃を飛ばした。

 

「…痛いですねぇ!!」

 

「!!」

 

対しカースは、真っ先に攻撃対象としてブロッサムを選ぶ。ブロッサムはカースが地面から出現させた塔のようなオブジェにぶっ飛ばされ、転がっていった。心配して振り向いた桜刀を殴りつけ、怯んだ隙に斬撃を連続で叩き込む。

 

「くっ…!」

 

「サクラノカタでもあればねぇ……」

 

「あれは奇跡だと幽々子様も言ってたでしょう。いいから行きますよ…!!」

 

立ち上がって再びカースへと向かっていくが、確かにダメージをくらって行き、そのダメージは致命的なものである。もう一度膝をついた時には、もはや立ち上がる気力はなかった。

 

「…さて、終わりにしましょう」

 

そんな二人を前に、カースは構え直す。そうして駆け寄ったかと思えば、暴風とともに飛び回し蹴りを繰り出した。ブロッサムは咄嗟に前に飛び出ると、完全には防げなかったが盾になる形で桜刀を庇った。

 

「…嘆きと涙の復讐劇(ヴェンデッタ)

 

「うぅっ…!!」

 

「幽々子様ァ!!」

 

技名を静かに呟きながら、カースは着地した。片方のダメージが大きいとはいえ、二人とも食らったことには変わりはない。同時にその変身が解け、生身の妖夢は気絶してしまった。

 

「フフフ、私の勝ちですね」

 

「待ちなさい!」

 

そう笑って去っていこうとする背中に、幽々子は声を飛ばした。どうしたのかと視線を向けるカースの目の前でチェリムドライバーを投げ捨て、妖夢の腰からオビドライバーを外す。

 

「…まだ勝負は終わってないわ」

 

「盾になって妖夢さんを守ったというのにまだ戦いますか。フフフ、いいでしょう」

 

「あなたを逃すわけにはいかないのよ」

 

『人か霊か?』

 

「そんなの決まってるじゃないの!変身♪」

 

『変・身・承・知!レイノカタ!』

 

素早く装備をし、レイノカタへと変身した。これでも妖忌から習っていた身である。その構えと目つきは鋭く、いつものどの顔とも違う『剣士』のものであった。

 

「たあぁああッッッ!!!」

 

「おぅっ!?」

 

普段の声色から想像もつかない威嚇のごとき絶叫とともに、凄まじいパワーでの一撃を放つ。とっさに妹紅を盾にするが、その妹紅を真っ二つに斬り裂きながら、カースへと斬撃を叩き込んだ。

 

「…ごめんなさいね」

 

「幽々子…てめっ……」

 

リザレクション中の妹紅へと声をかけつつ、静かににじり寄っていく。間合いが掴めずカースは不安定な動きでノロイコロースを構えた。次の一撃を土壁でどうにか防ぐが、石程に硬い土の塊をバターの切ってしまい、そのままカースへ斬り込む。

 

「危ないですねっ…!」

 

「…はっ!!」

 

ノロイコロースですぐさま防ぐが、桜刀は鍔迫り合いはしない。ぶつかった瞬間、刃を引いた。カースによる斬撃が腹を切ったのち仮面にぶつかり、半分が砕け散った仮面はごとりと地面に落ちる。口から血を垂らしつつも、幽々子の目つきは変わらない。

 

「ふっ!!」

 

「ふぐぁっ!!」

 

肉を切らせて骨を断つというやつか。腹を抑えることもなく、むしろ力を入れて、渾身の斬撃を放った。ノロイコロースがばきんと折れ、驚愕する間もなく次が放たれる。

 

「私を舐めないでいただきましょう……」

 

「…ごぶっ」

 

しかし、カースが一瞬だが早かった。光弾を宙を舞う刃のかけらに飛ばし、その勢いままに桜刀の胸に突き刺さった。げほげほと血を吐き出す彼女の写真を撮りながら、文は変身を解いて木に寄りかかる。

 

「呪術入りの斬撃はどうでした?あなたは死にはしないようですが…死ぬほど痛いでしょうね…。いい顔してますよ、剣士の顔そのものです」

 

足取りのおぼつかないまま去っていき、幽々子の負けという形で終わってしまった。先に行かせた以上、二人に追いつくなら飛ばなくては。めんどくさそうに羽を広げた時、目の前には停車中のレーサートリニティが居た。

 

「待っててくれたんじゃないの…なんだかんだ優しいわねぇ」

 

「ちょっと息上がってますけど?」

 

「あんな余裕ぶっこいといてそれって…」

 

「それ言えばあなただって妹紅さん相手に!!」

 

「はぁ…ほら、行きますよ文さん、はたてさん」

 

二人がメンチを切りながら言い合うのを横目に、椛は運転席に乗り込む。呼ばれた二人も後ろに続き、トライクは発進した。

 

「…仲よくて結構です」

 

「なに、あんたも混ざりたいわけ?」

 

「誰が」

 

くだらない会話をしながらアジトへと向かってみるが、そんな三人の前に、誰かが立ちはだかった。急いでトライクを止め、警戒の眼差しを三人は向ける。そんな中、文だけは顔をしかめた。

 

「…隠岐奈さん」

 

「例の異変以来だねぇ、天狗の。というかお前たちみんな天狗だったか」

 

「その手のものは…」

 

余裕気味な態度で語る隠岐奈の手には、ターンブレイカーが握られていた。椛が前に出たのにあわせ、隠岐奈も準備を始める。

 

『get started!』

 

『scanning user authentication』『フェネクス!』『ブロッサム!』『リヴィエル!』『エレンツ!』

 

「他人の作品を借りるのは乗り気じゃないんだがね。醒妖!」

 

「知ったことですか…。変身!!」

 

『turn on!hidden girl!グランシャリオ!』

 

『link!5…4…3…2…1…』

『change Material』

『complete ヘンカ!ショウカ!止まらぬシンカ!カメンライダー・エラーブルエレメンタル!』

 

二人に同時にアーマーが着せられていき、仮面ライダーエラーブルと、怪人グランシャリオがその姿を現した。エラーブル剣を構えて斬りかかったのに対し、グランシャリオは掌底で跳ね飛ばす。

 

「どうした犬走椛。その程度か?」

 

「…っ!」

 

対しエラーブルはフェネクスの拳のようなアーマーを装備し、爆炎とともに殴りかかった。グランシャリオは少し熱そうにするが、その態度は余裕しゃくしゃくである。

 

「なら急速水冷です!」

 

『リヴィエル・バスターブラスト!』

 

「頭を使うね」

 

続けて赤熱しているグランシャリオの装甲に向かって、水妖エネルギーを全力でぶちかました。しかしその中をゆっくりと歩み寄りながら剣で思いっきり斬りかかるのみ。

 

「…私も行くわよ」

 

「まだジャマなんではたてさんは下がっててください。文さんもです」

 

「邪魔って…」

 

ベルトを出現させるはたてを止めると、にじり寄ってくる隠岐奈を見据え、エラーブルは地面に腰をついたまま待ち構える。警戒をしながらも歩んできたグランシャリオに対し、今度は立ち上がってゼロ距離でフォールバスターを当てた。

 

「そう来るか」

 

『エラーブル・バスターブラスト』

 

「きっと予想外ですよ!」

 

ガードの姿勢をとったグランシャリオに思いっきり銃弾を当てた。すると、怪我はないまま、隠岐奈のアーマーが弾け飛んだ。ウイルス弾の効果である。

 

「…ま、想定内だ。……はぁぁぁああああああ!!!!」

 

「…!?」

 

変身が解けた隠岐奈は、今度は手をクロスしたのち気合いを入れるようにシャウトを放った。瞬間、彼女の体が変異し、服が術によって消滅。まごうことなき怪人のものに姿を変えた。

 

「…ふぅ、自我を保ったままこの怪人になるのは大変なんだよな」

 

「そう来ますか…。今度こそ手伝ってください。文さんも拗ねないで。さっきは間合いを見る必要があったんですから」

 

「はいはい…」

 

「「変身!」」

 

『RIZAREKUTO ON』

 

そうしてカースとグラフィが並び立った。三人同時に相手の『扉女』へと駆け出していく。折れたノロイコロースも短剣として見れば十分なもの。三人は絶妙なコンビネーションで扉女を追い詰めていった。

 

「あなた自身が強くとも怪人化の伸び率が低ければダメってわけです!」

 

「そうかい!」

 

カースの攻撃を扉に飛び込んで避け、さらには上から扉を出してかかと落としを叩き込む。しかしグラフィがガードし、その隙にエラーブルが斬りつけた。

 

「私達いいトリオなれるわね!」

 

「すでにそのつもりでしたが」

 

「ツンデレって奴ね椛!」

 

どうにか軽口を叩けるほどには余裕は出たようだ。しかし優位寄りの互角という程度のものである。扉女とグラフィのパンチがぶつかった瞬間に押されたのはグラフィの方だった。痛そうに手を振りつつ、構え直す。

 

「…もう決めた方が良さそうですね」

 

「一発にかける感じ?」

 

「相手も疲弊してるわ」

 

『エラーブル!仮面ライダーフィニッシュ!ザ・エラーブル!』

 

「まとめて来るがいいさ」

 

「はあああああぁぁぁぁ!!!」

「とおおおおぉぉう!!」

「でぃやああああああああああああああああああ!!!!」

 

三人は同時に構え、扉女へと駆け出していった。ファインダー型エネルギーを展開させながら飛び、蹴りを放ったグラフィの横でエラーブルもハイジャンプをからの跳び蹴りをかます。同時にカースも飛び回し蹴りを叩き込み、トリプルライダーキックが完成した。

 

「くっ…」

 

静かに声を上げながら、扉女は爆炎を放った。しかし隠岐奈のその顔は笑っており、作戦は成功だと呟く。まさかと文がアジトの方を見れば、こちらの世界の天狗どもを抱えた二童子とチルノが。飛び去っていくのを追おうとするが、そんなはたてを文が止める。

 

「いまはやるべきことがあるでしょう?」

 

 

 

 

 

 

「…これは」

 

戦いを終えたアリス邸にて、メディスンは渡された鍵がはまりそうな場所を探していた。そうして見つけたのは隠し扉である。しかし鍵など無くとも開くではないか。残念そうに中を見てみた。

 

「地下室が…こんなに……?」

 

すると、階段から続く形で大量の扉が広がっていたのだ。一室一室にライダーの名前や敵の名前、人物の名前がごちゃごちゃに書いてあり、少しして『メディスン・メランコリー』の部屋を見つけた。

 

「ここの鍵なのね」

 

そうして戸を開けてみると、中には綺麗に片付いた布やら鎧やらが置かれてた。手書きの説明書を見るに、どうやらメディットブレスのスーツ圧縮と毒を調べていたようだ。

 

「こんなびっしり……。改めて…心からあなたを尊敬するわ、アリス。人形に愛と共に接するだけじゃなくて、こんな向上心と研究意欲があるなんて」

 

そう言いつつ置かれたもの達を見ると、説明書が正しいなら材料は全て足りているようである。すでにアーマーらしきものも完成しており、コードやら何やらのデザイン性含め、しっかりメディスを踏襲していた。

 

「…これが必要な工程リストね。えっと、『メディの採寸((かっこ)自動的にスーツの大きさを変えるシステムは再現不能)(かっことじ)』と『カプセルの毒の複製』…機材はあるわね、なんだ、私でできるじゃない!」

 

だから鍵を託したのかと頷きつつ、スーツを引っ張り出した。白をメインとしたスーツで、手触りは今までのものより良い。伸びもよく、良い素材を見つけるものだなと感心と共に組み立て始めた。

 

「この前縫う練習しといて良かったわ」

 

自分サイズに切ったスーツを合わせながら、そんなことを呟いてみる。アーマーも簡単に合体でき、彼女の几帳面さがよく表れている。そうして、マネキンに着せる形でスーツが完成した。

 

「私がもう一人居るみたいだわ…これにこのブレスを装着して…。この装置を取り付ける。そこにカプセルを差し込む」

 

説明書を復唱しつつ、一つ一つ丁寧に準備を進めていく。最後の準備を終えると、装置のボタンを押した。同時にスーツがカプセルに閉じ込められ、メディットブレスに新たにデータが読み込まれていく。

 

「…これが、『アカンサス』ね」

 

しっかりとカプセルをしまうと、彼女は地下室を後にした。

 

 

 

「ぶっっはぁ!!」

 

「あぁー!死ぬかと思った!」

 

この世界の天狗等が連れていかれたのは河童達のアジトである。さるぐつわを外し、息苦しそうにどっかり座りこんだ。どうやら先客も居たようで、すでに河童達はせわしない様子だ。

 

「妖夢!それに幽々子も!」

 

「チルノじゃない、それに……こっちの天狗って認識でいいのかな」

 

「そうですよ!私のベルト奪ったり勝手に発明品やら持っていって!許せません!」

 

憤慨する文のその目の前で、妖夢と河童達はガチャガチャと何かの作業をしていた。包帯を巻いた幽々子の指揮を受けながら動く少女達を見ながら、隠岐奈は興味深げである。

 

「ここのパーツは胸に使っちゃいましょう。あ、それは腿。下のスーツはヒトノカタメインでレイノカタを足しながら作りましょう!うーん、これじゃあ妖刀扱うパワーはなさそうね」

 

「半霊どうするの?」

 

「パイプにでも詰めて運動エネルギーにでもしましょう」

 

「ここはどうする?」

 

「6個あるわね。鋭いから研磨してブレードにしましょう。指に爪としてつけて。余りは背中の装飾に。できる限り重ねて厚くして。残ってるものはみんな使いましょう」

 

「頭部は私が作っていいですか?」

 

「妖夢は器用だものね。あなたが被るって事を忘れずに作りなさい。私は胸部装甲を作るわね」

 

どうやら余りを縫い合わせて、パッチワークで桜刀のスーツを作っているようである。のっぴきならない状況というのもあり、テキパキとした動きだ。

 

「…私も手伝おう。これをどうすればいい?」

 

「あなたも器用だったわね。いいわ、脚部のアーマーを組み直して」

 

「何を使えばいい?」

 

「もうサイズ合うパーツ適当に貼り合わせちゃって」

 

幽々子の適当な指示に笑いながらも、隠岐奈は自分のセンスに合わせて足アーマーを組んでいく。胸のごちゃごちゃしたスチームパンク調に合わせ、ごちゃごちゃ感と刺々しさを重視。幽々子の評価は結構良さげであった。

 

「…しかし幽々子様。オビドライバーは……」

 

「にとりー!マイナスドライバー持ってきて!ちっさいの」

 

「ほれ。しかしそれマイナスドライバーなんだね」

 

「そうよ〜。ほら!中身は無事よ〜」

 

「機械ではないんだねー。呪術が込められてる金属かな?」

 

「そうね。そんなこともあろうかと!」

 

自慢げに幽々子は何かを取り出した。見てみれば、色合いの違うオビドライバーである。机の上に置いたそれをよく見ると、オビドライバーではなくカバーであった。

 

「色がくすんできたから変えたのよね。傷アリも歴戦感あっていいんだけどね〜。動作不良起こされると困るわ」

 

「くすんで…あっなんか陽に当たり続けたみたいな色合いだよく見ると」

 

「魔界は日差しが強いの」

 

「あぁー西行様と魂魄家が出会った時の任務ですか」

 

「そうよー。鞘から放たれる術によって連鎖発動ねー。隠岐奈あなた呪術使えたりする?」

 

「えっ?使えるけど…」

 

いきなりの声掛けに戸惑いつつ、隠岐奈は手を止めずに耳だけを傾けた。この術を再現できないかと渡された鞘を見たのち、頷き。サラサラと書いて作業に戻った。

 

「これでいいだろう?」

 

「ありがとうほんとに〜!あっ、この爪もっと強くできないかしら?私から強化とかできないかなー」

 

そうして桜刀がどんどん完成に近づいていくなか、何者かが扉を開け、中へと転がり込んだ。戸の近くにいた椛がその姿を見て、ギョッと表情を変える。

 

「秋神さま!」

 

「…椛ちゃんじゃないの」

 

ふらふらと立ち上がる二人に、手の空いていたチルノが駆け寄った。ちょうど二人もチルノに用があったようで、すぐさま事情を語り始める。

 

「この幻想郷が急に秋になった時…私達の力も一気に吸い込まれていったわ」

 

「むしろ勝手に使われてたってとこかしら?」

 

「なんだっていいわ、あなた、冬のパワーが入った氷使うっていうじゃないの」

 

そう言った静葉が指差すのはクロッカーである。静かに頷いたチルノの両手に触れ、二人は何か力を貯めるような様子を見せ始める。少しだけチルノもエネルギーを吸われたかと思った瞬間、二人はその姿を消した。

 

「……これは」

 

『使って、私達の…』

『私達の最大の余力…』

 

「ありがとう…!!秋神さま!」

 

そんなチルノの手には、二つの氷が握られていた。オータムスフィアとフォールスフィアである。全身に残るエネルギーを使ってまで。チルノは感謝を送りながら、大事にそれをしまった。

 

「お借りしちゃっていいんですか?」

 

「さっきの戦いで壊れて銃にしかならないけどね」

 

その横を、妖夢はトランスフロートを受け取りながら通り抜けた。そしてオビドライバーにチェリムドライバーのサイドバックルを取り付け、そこにマウント。大事にしまってオウカオーに乗った。

 

「チルノさんも後ろ乗ります?」

 

「じゃあお言葉に甘えて」

 

「待つんだ氷精」

「待ってくださいチルノさん!」

 

オウカオーの後ろに乗ろうとしたチルノに、同時に待ったがかかる。隠岐奈が譲ったことで、まずは文からである。彼女が手に持ったのは、ターンブレイカーだった。

 

「…これ、天子さんが色々合わせたおかげでさまざまな変身アイテムに対して拡張パーツになるんだそうです。あなたの腕輪にも使えるかもしれません」

 

「ありがとう、文。隠岐奈は?」

 

「私からもステキなプレゼントさ」

 

そう言った隠岐奈が空中に出現させた扉を開くと、ミサイルを思わせる意匠のマシンが飛び出た。ホバーマシンと言うべきか、浮いているそいつに乗るようチルノを促す。

 

「滑走するかのような飛行が特徴だ。360°が君のスケートリンクさ」

 

「隠岐奈もありがとね!」

 

「後ろに乗る必要はなさそうですね。敵の方の文さん達は今どこへ?」

 

「守谷神社にいるみたい。行ってらっしゃい、時間的余裕はないわよ」

 

幽々子の言葉を背中に受けながら、二人は山頂目指して玄武の沢を後にした。そして大きな道に出た時、追うように、後ろからドールシャイナーが合流した。

 

「この…バイクっての?扱いやすいわね。あの三輪車よりよっぽど」

 

「あんた…メディ!」

 

「…あいつらをぶっ倒さなきゃ気が済まないのよ」

 

「アリスさんのバイクですか?」

 

「勝手に拝借したわ」

 

そうして、三人並んで山頂へ。迎え撃つかのように、天狗達は装置の前に立っていた。後ろには磔にされたレミリアと輝夜が。輝夜のものは常に燃え続け、死に続けているようだ。

上空のもう一つの地球は、どんどん近づいている。

 

「これは…!!」

 

「レミリアさんを人質にしたら咲夜さんってばすぐやめてくれましたよ。私達はどうやら時間停止の影響を受けないんですよね。住んでる時間軸が違うもんですから」

 

「説明してる場合?」

 

「私は今気分がいいのよ。こう言う時ぐらいベラベラ喋らせてよ」

 

軽い様子で語る文に対し、一番わかりやすく怒りを見せたのは妖夢であった。鋭い視線を向けつつ、少しずつ歩み寄っていく。

 

「…では、もうあなた達の目的は達成されるわけ?」

 

「いえ?この幻想郷を血の海にするんですって。…それで私達の世界が救われるなら構いません」

 

「何が目的よ!」

 

「この二人の…復讐、ですかねェ!協力者とはWIN-WINを保たねば!」

『そういう事です』『邪魔はするな』

 

「あっそう、なら……止めるのが私達の仕事になるわけね」

 

『人か霊か?』

 

オビドライバーを装備し、妖夢は文へと駆け出していた。対し文もバックルを構え、奥へと進んでいく。それを尻目に、はたてが立ちはだかった。

 

「…私がやるわ。コイツだけは私が!!」

 

「威勢いいじゃないのよ!」

 

メディスンがはたてに殴りかかったのを受け、チルノは椛の方へ。椛も椛ですでにミュンテーションベルトを用意しており、完全に戦う気だ。

 

「変身!」

 

『complete ヘンカ!ショウカ!止まらぬシンカ!カメンライダー・エラーブル!』

 

そうしてアーマーを装備し終えたエラーブルが構える。それを見据えながら、チルノは二つのスフィアをセットし、さらにUSBをセットしたターンブレイカーをクロッカーに合体させた。

 

『がっちーん☆』『get started!』

 

そしてはたては腰にバックルを出現させ、変身の準備を終える。翼と広げ、戦いを始めるべく彼女は構えた。対しメディスンもメディットブレスを腰に巻き、カプセルを入れる。

 

「変身」

 

「…いくわよ、アリス」

 

そうしてはたてはグラフィへ。彼女らを前に、文はカースドライバーを装備し、ゆっくりと変身ポーズをとる。対し妖夢も、札を持って身構えた。

 

「変身!」

 

『RIZAREKUTO ON』

 

そして天狗達が戦闘準備を終えたのに対し、少女たちは一気にその心を奮い立たせる。

 

「変…「変身」「変身!!!」…身!!」

 

 

『ばっきーん!めいぷるふぉーむ!』『sonic girl!break out!』

 

 

『GRADE UP…… FAZE3』

 

 

『人・霊・一・体!』

 

 

グリップを押し込み、スロットを倒し、札を貼る。一瞬のうちに少女達は仮面ライダーへとその姿を変えた。

仮面ライダーラビ メイプルチェルカトーレフォーム。

仮面ライダーメディス グリッドアカンサスフォーム。

仮面ライダー桜刀 シノギノカタ。

三人は、それぞれの敵へと駆け出していった。

 

「だあああああ!!!」

 

「危ないですね!」

 

「当然だ…あんたを倒すんだからね!」

 

メイプルフォームの特徴はその素早さと手数である。ウィンゲル以上にスマートな、オレンジをメインとしたデザインであり、見た目通りの性能というわけだ。上に白黒のアーマーが足されたのが、今チルノがなっているメイプルチェルカトーレであり、最も特徴的なのはその背中の機械の羽であろう。

 

「速い…ウイルス弾が当たらない!」

 

「そいつに仲間が目の前で倒されてるもんでね…。ラビじゃなくなったら面倒なのよ!」

 

スカートにぐるっと取り付けられたナイフ『ブレイドオブフェイス』がその武器だ。持ち替えながら斬りつけていき、銃弾は回り込んで回避する。

 

『フェネクス!』

 

「やれやれ…!」

 

空へと舞ったエラーブルは、下のラビへと銃弾を飛ばした。しかし、今のラビには翼がある。文がくれた、カラスの翼だ。

 

「コイツでどうだ!」

 

「いででっ!」

 

その手に持つのは『クロウバスター』文の怪人が本来持つ、天子お手製の銃だ。エラーブルバスターより威力は低いようだが、当たらないエラーブルの攻撃と違ってラビのものは確実にダメージを与えている。その差は大きい。

 

「そっちが風なら!」

 

『ブロッサム・バスターブラスト!』

 

「弾速が上がった…!」

 

エラーブルからの連続での銃撃を避けながら、球を描くように回り込み、銃撃を返していく。さらにエラーブルはラビのUSBでガトリングを作り出し、数の暴力に出た。

 

「避けるのが精一杯でしょう!」

 

「くっ…」

 

『エレンツ!』

 

さらに砲撃まで加わる。椛の言うように避けるのが精一杯であり、どうしようもない。そんな中、エラーブルは追撃にとリヴィエルのUSBを取り出した。彼女はその隙を見逃さない。

 

「あいでっ!」

 

「だあああああ!」

 

一気に加速ののち接近。リヴィエルのマスカレイドコアを奪取し、さらに近接戦に持ち込んだ。風のごとき移動で避け、そして嵐のように攻める。怯むエラーブルから剣を奪い取り、セットした。

 

『リヴィエル・ブレイドスラッシュ!』

『AYA SHAMEIMARU!ザ・ライダーフィニッシュ!』

 

「くらええええええ!!!」

 

『salut!』

 

「誰が喰らいますか!」

 

『エレンツ・バスターブラスト!』

 

二人の光弾が、同時に放たれる。しかしラビのものは飛ばした水流斬撃に光線を乗せたものである。避けるようにエラーブルの放った光弾はかき消え、いとも簡単に弾き飛ばされてしまった。

 

「くっ…」

 

「しぶといわね。…でもこれで終わりよ!」

 

落ちていくエラーブルへと、周りを旋回しながらブレイドオブフェイスを投げ続ける。そして何本も刺さった彼女に、チルノは推進力最大でのキックを繰り出した。

 

「ライダーストライク!!」

 

「ふっ…うぐぁあああああ!!!」

 

そうして、エラーブルは地面へ叩きつけられた。そんな激戦の横で、グラフィとメディスの戦いが繰り広げられていた。

 

「…なんなのよそれ」

 

「さあね、今回が初乗り。ついでにあんたへのリベンジ!」

 

紫のからくりのアーマーをメインとし、バイザーが目立つその姿。しかし何よりも特徴的なのは、空中に浮いた巨大な両手『ハンズドメイカー』である。

 

「だぁっ!!」

 

「こんども手数で攻めるってわけ?」

 

「多彩さを忘れてもらっちゃ困るわね!」

 

パンチだけかと思えば、エネルギーをまとったチョップにより斬撃を繰り出し、さらには指でグラフィを弾き飛ばすという多彩ぶり。グラフィは距離を置いて銃撃戦を繰り広げるが、それも想定内。ハンズドメイカーの人差し指から光弾が飛ぶ。

 

「いったいわね…!」

 

「そのままくたばりなさい!」

 

平手でハンズドメイカーがグラフィを挟み込もうとするが、飛ぶことによりそれを避ける。下方からの銃撃よりも、こちらが優位である。グラフィは心の中でにやっと笑いながらストライクフォトグラフでの射撃を繰り返した。

 

「まどろっこしいわね…やっちゃえー!」

 

「おぶぅっ!」

 

そんな時、ハンズドメイカーは石ころを拾いあげ、思いっきりグラフィへと投げつけた。強烈なダメージに、墜落しはじめるがタダではそれを許さない。

 

『INCREASE EFFECT』

 

「捕まえたっ!」

 

『INCREASE EFFECT』

 

まずはプラントローズでの拘束である。どうにか撃墜しようとグラフィはエクスブライガンの方に銃口を向けた。しかしハンズドメイカーの10本の指先からも放たれるのは完全に想定外である。続けて食らったランチャープルーネラにより、大ダメージを食らう。

 

「…無駄よ!」

 

射撃後の隙を突こうと、囲うようにファインダーがメディスンを覆う。さらに爆発までするが、ハンズドメイカーに包まれたメディスは完全に無傷であった。

 

「あんたたち…なんだってこんなことするの?この世界で強いなら、あんたらの世界もどうにかできたり…」

 

「今劣勢な私への皮肉?悪いけど…もうこれしかないのよッ!悪魔の手を借りるならこっちの世界を燃やさなきゃいけない。私の愛する人々のためなら…知らない者たちの命なんて潰してやる!」

 

「あっそう、そんならこっちも容赦はなし!」

 

『INCREASE EFFECT!』

 

「はぅっ!」

 

そんなグラフィへと続いて叩き込んだのはアイスドロップである。いくつかは撃ち落とすが、銃口は11個である。みるみるうちに完全に体が凍ってしまった。

 

「隙だらけねぇっ…!」

 

『INCREASE EFFECT』

 

「うぐううああああ!」

 

今度はスターライトペンタスだ。毒をまとった超連続の銃弾がグラフィを貫いていき、大ダメージを与えた。膝をついて反撃もままならない彼女に、トドメである。

 

『INCREASE EFFECT』

 

「これで終わりよ…!グランドブロウニング!」

 

最後にボタンを二連続で押し、エクスブライガンにブラッドリリィを入れてのチャージインバレットとメディットブレス側の必殺を同時発動。毒弾を連続で浴びせながら、ハンズドメイカーがラッシュパンチを仕掛けていく。

 

「うぐっ…ぅうっ…ぐぅううぅあっ!!」

 

「いいことを教えてあげるわ、簡単なこと。私はね、強いのよ!このまま人形解放よ!」

 

最後にグラフィをハンズドメイカーが握りつぶした。爆発ののち、気絶したはたてが倒れ出た。同時にエラーブルも墜落。桜刀とカースの方を見てみるとしよう。

 

「ぜあああああ!!」

 

柄にもなく、桜刀は拳を振るった。ごちゃっとした全身と、胸に巻かれたガタガタのパイプがその特徴。パイプにはギッチギチに詰め込まれた半霊が回ってエネルギーを産んでいる。その場しのぎだからシノギノカタというのはひどい話だ。

 

「くらえっ!」

 

「っと!」

 

右手のクローでの一撃をくらい、カースは大きく仰け反った。しかしそう簡単にやられるわけでもない。すぐに態勢を立て直し、ノロイコロースで斬り込んだ。

 

「ふっ!」

 

「結構硬いんですねぇ」

 

カースの斬撃を左腕で受け止めると、思いっきり回し蹴りを叩き込んだ。今一度怯むカースであるが、すぐさま斬りかかる。今度は跳ね返されてもすぐに斬り返し、連続攻撃を叩き込むスタイルだ。

 

「…はぁ!!」

 

「おぶぅあ!!……いったいですねぇ。妖夢さんてばどうしちゃったんですか」

 

「幽々子様の分ですよ!これもそれもねぇ!!」

 

「主人のために強くなれる。さすがというところですか。でも!」

 

「うぐっ!」

 

「そんなツギハギでいつでも優位に立てると思わないことですよ、妖夢さん!」

 

一発の重さや、呪いの脅威度ははるかにカースが上である。どんどんと追い詰められていく桜刀であるが、しかし何度でも立ち上がる。幽々子のために、また拳を振るう。

 

「無駄なことを!」

 

「本当にそうですかね!」

 

そしてまた斬りかかろうとした時、殴ると見せかけて腰だめでトランスフロートにて銃撃を放った。急な事態に怯んだカースへ、クローを突き出して一気に引き裂く。

 

「うぅぐあああ!!」

 

「逃がしませんよッ!!」

 

一旦立て直すのだと翼を広げて宙に舞ったカースに、連続で銃弾を叩き込んでいく。思わぬ事実であるが、妖夢には凄まじい銃の才能があったようだ。

 

「なんでこんなうまいんですっ!」

 

「さぁ?全力で撃てば結構当たるもんですね。銃なんて初めて触りますが」

 

「刀は鍛えてて銃は天才…ですか。手がつけられないですねぇ?」

 

『まあよかろう。儂らはお前の体をいくらでも治せる』

 

『存分に戦うのです』

 

「ええ!」

 

今一度駆け寄り、呪術を込めてカースはパンチを放った。それを桜刀はスレスレでかわし、ゼロ距離射撃を繰り出す。膝絵付きつつカースは剣を振るが、それを回り込むように避け、そのまま左手で首をつかんだ。

 

「妖夢さん…あなたは恐ろしく強い…。あなたという人が分からない、それで未熟だなんて」

 

「未完成な方が良かったりもするんですよ…っと!」

 

「あぅぐっ!?ごぶっ!ぐえっ!!」

 

ざく、ぶしゅり。気持ちの悪い音とともに、桜刀の右手の手刀が、カースの背中へと突き刺さっていた。激痛のあまり術を保ちきれず、顔だけの変身が解けた。苦痛に顔を歪めながら、どぼどぼと吐血。バタバタと暴れる体を押さえつける。

 

「教えてあげますよ…これが!」

 

「ぐぅえ!?あぅっ、ぐぼっ!おごぉっ、おうぅえ!!」

 

「これが…妖夢さんだああああぁぁぁあああああぁぁ!!!!」

 

そして一気に心臓を貫通させ、引き抜く。痛みを脳が拒絶し、気絶とともに爆発。気を失ったまま無傷の文が倒れ出た。

 

「いくら治せても…そんだけ食らえば変身は解けるでしょうね…っと」

 

倒れる文の横のカースドライバーを踏み壊し、妖夢は二人の絶叫を聞いた。同時にメディスンとチルノも戦いを終えたらしく、またカースが消えたからか別世界も遠ざかっていく。

 

 

 

 

『…季節が戻ったな』

 

「ですね」

 

「私と藍様も戻ったことですし!」

 

橙が言ったのに対し、メリーは寂しそうに頷いた。手を握る蓮子とメリーへと術を放ち、今度こそ消えていくのを二人は見送る。

 

『また…会いたいな』

 

 

 

 

そうして戦いを終えた三人であったが、ただ一人。椛だけはゆっくりと立ち上がった。どうやら、ギリギリながらミュンテーションベルトも無事なようだ。

 

『ターンブレイカーズ!』

 

「変身は…できなさそうですね」

 

ミュンテーションベルトにマスカレイドコアを刺したと同時に、その手にはターンブレイカーと狼USBが握られた。そして、怪人への変身を始める。

 

『get started!』

 

「醒妖……でしたっけ?」

 

『turn on!clairvoyant girl!リーヴス!』

 

白をメインにとオレンジを走らせた、いかにも狼らしい怪人リーヴスである。そうして駆け出したその瞬間、レーサートリニティとはまた別のトライクが石段を登って突撃した。ウサギの意匠を持つ『サンミーバトラー』に乗るのは、鈴仙だ。

 

「この時計みたいなのに書かれてるの…ウサギっぽい。私に似合うかもね」

 

『ARNEB!』

 

リーヴスからくすねたライドウォッチのカバーを回し、ボタンを押す。するとそれは黒いトランシーバーへと姿を変え、もう一方の手にはカードが握られていた。

 

「こっちの鈴仙さんも使えるわけですか」

 

『セット ジェネラル…』

『コード認識 チェンジモード』

 

「…変身!!」

 

『全てをcontrol…アルナブジェネラル!』

 

「…いける!」

 

仮面ライダーアルナブが、こちらの世界に誕生した瞬間である。駆け出していき、拳を放つ。もともとエラーブルより断然弱いリーヴスゆえに、大きく押されてしまう。さらに銃による追撃ももらう。

 

『ジェネラル!マインドクラッシュ!』

 

その手の銃『ルナティックマグナム』にカードをセットし、極太のビームを放つ。一瞬にして椛へとその姿を戻され、今一度彼女は倒れ込んだ。

彼女の上に落ちた葉は綺麗な緑色で、変身を解いたチルノの横には秋姉妹が立っていた。

 

「…消えるしか、ないのかしらね」

 

はたてが虚しげに空へと吐き出した、そんな時。

 

『タイムマジーン!』

 

「っと!一体ここどこなの?」

 

「幻想郷だ」

 

「それどこなの?」

 

別世界の三人には聞き覚えのあるタイムマジーン起動音だ。しかし出会ったライダーのどれとも違うシンプルな見た目で、中から降りたディケイドとジオウは初めて出会うライダーでもある。

 

「あなたは…」

 

「この世界…いや、お前達の世界を破壊しに来た。乗れ」

 

「えぇ〜、狭くない?」

 

ディケイドが天狗達をマジーンへと引っ張り込み、そのまま空へと消えていった。いきなり何事もなかったかのようにいつも通りになった幻想郷に、少女達は驚きを隠しきれずにいた。

 

 

 

 

「…ジオウの干渉か」

 

「問題ないよ、我々クォーツァーが…幻想郷の歴史も奪う。奴にその邪魔はできないさ」

 

Continued on next movie『童祀 〜 Innocent Histories』




フォーム名:メイプルチェルカトーレ
概要:フォールスフィアとオータムスフィアとターンブレイカーで変身した秋の姿。装甲および素体は秋の紅葉した葉っぱをモチーフとした優雅なデザイン。追加で白と黒のアーマーが乗っており、黒い機械翼が生えている。秋のエネルギーを奪われたために秋姉妹は自分の体のエネルギーまで使っており、二人揃ってやっとほかのスフィア0.7個ほど。しかしそれでは対抗には不十分であり、ターンブレイカーと接続して装甲を追加している。白黒アーマーはそれによるものである。もともと風を巻き起こしてスピード戦を展開するフォームだが、そこに足されたブースターでさらなる高速移動と空中戦を展開する。
武装:
ブレイドオブフェイス
オレンジ色のナイフ。腰のスカートに15本ぐるっと装備されている。斬れ味はそこそこだが軽く振りやすい。
マウンテンウィンドウ
全身の風圧変化機構。近接攻撃に風の刃を追加する。
クロウバスター
ギャレンラウザーほどのサイズのグレーの銃。本来は射命丸のターンブレイカー怪人の武器。高威力のビーム弾が放たれる。
変身アイテム:
クロッカー
いつもの。
ロックスフィア
オータムとフォールを使う。前者が静葉、後者が穣子。
カラスUSB
エックスゴースターやターンブレイカーで使うUSB。文の物。
変身シークエンス:
クロッカーにオータムスフィア、フォールスフィアを同時にセットする。そしてカラスUSBをセットしたターンブレイカーを肘側にセットし、クロッカーの持ち手を半回転させて押し込む。
『がっちーん☆』
『get started!』
『ばっきーん!めいぷるふぉーむ!』
『sonic girl!break out!』
必殺技:
超絶最強あたいっくライダーストライクぶれいく
相手の周りを高速で旋回しながらブレイドオブフェイスを投げ、ライダーキックを叩き込む。チルノかと思えば文命名。
チルノティックバースト
クロウバスターでの最高出力射撃。劇中ではエラーブルの武器とともに繰り出した。
『AYA SHAMEIMARU!ザ・ライダーフィニッシュ!』
『salut!』

フォーム名:シノギノカタ
概要:その場しのぎだからシノギノカタというひどいネーミング。妖夢がヒトノカタ幽々子がレイノカタで戦ったが、カースにやられ、アーマーがぼろぼろに。そのアーマーを無理矢理つぎはぎして組み立てたフォーム。半人で変身する。妖刀を扱いきれるパワーが残ってないので、別の武器で戦う。つぎはぎなのだが、レイノカタの右胸を右胸にというわけではなく、面積が合った部分をパッチワークにしている。一応新規パーツとしてパイプが胸部にガタガタに巻かれており、ここに半霊を詰め込んで循環させることでエネルギー生成に役立てている。なので各部装甲およびスーツはごちゃごちゃ感満載。ちなみに幽々子が低めに見積もってしまったせいで胸がちょっときつい。その部分のアーマーがそのままその位置に使われているのは頭部ぐらい。その頭部も複眼がしっかり逝っており、右眼にはヒビが入り左眼は完全に割れたため鉄板で塞いでいる。視界は片方のみなのだ。スーツアクター的にもクッソ見づらくて苦労が語られる(裏設定)。ちなみにこのデザインだが頭部含め新規造形で、アップアクション兼用一着のみしかない(超裏設定)。
武装:
『凄い爪』
右手指のクロー。ウルヴァリンというよりシザーハンズ。順也の描いた橙の爪ほどの長さ。破片を頑張って研磨したあと幽々子ができる限りの術をねじ込んだもの。幽々子が適当に名付けた。多分ふざけている。
『壊れたトランスフロート』
トランスフロートこわれる(絶望)。壊れているので銃モードにしかならない。せめてブロークントランスフロートにしろよと妖夢は言うが、幽々子は多分ふざけている。
変身アイテム:
『初期型オビドライバー』
どうにか内部が無事だったオビドライバーくんに、昔のオビドライバーの外装をくっつけたもの。色がくすんでいる。トランスフロートをマウントするためチェリムドライバーのサイドバックルがついている。
『お札』
幽々子が術を仕込んだお札。術が発動することで燃え尽きる。普段は鞘から発せられる鎧召喚の術を札で直接発動させる。5枚しかない。
変身シークエンス:
1.オビドライバーを装着
『人か霊か?』

2.バックル部分に札を貼る
『人・霊・一・体!』

必殺技:
『妖夢サンダー』
仮名というか、多分ふざけている。押さえつけ相手の胸をゆっくり貫く。そして思いっきり引き抜くえげつない技。妖夢要素どこ…ここ…?

フォーム名:グリッドアンカサスフォーム
概要:
メディス第三のフォーム。
スピードやバランスに偏った前2種の形態に対して、火力と精密さ、一度に取れる手数の多さに特化した形態。
メカニックさながらのバイザーで目元を隠し、紫色のからくりの装甲で身を覆っている。
戦士というより、工房の職人、技術者を彷彿とさせる。

武装:
「エクスブライガン」
『プラントローズ/PLANT ROZE』
『アイスドロップ/ICE DROP』
『ランチャープルーネラ/LAUNCHER PRUNELLA』
同上。
「ハンズドメイカー」
巨大な手型浮遊マニピュレーター。
二つの手を駆使し、薙、突、打、払、射、斬をこなす万能武装。
分かりやすい例を挙げれば、マスターハンド&クレイジーハンド。

変身アイテム:
「メディットブレス」
同上。
「アンカサスカプセル」
カプセル型変身アイテム。
紫色と白色にアンカサスの花の意匠が為されている。
変身シークエンス:
同上。
「GRADE UP……、FAZE 3」
必殺技:
グランドブロウニング
ライダーパンチ。
ハンズドメイカーで猛ラッシュを仕掛けると同時に至近距離でエクスブライガンを連射、体力を削った後、止めとしてハンズドメイカーで塵を丸めるように握り潰し、圧縮する。
チャージインバレット
エクスブライガンにカプセルを装填した状態でメディットブレス上部(右側)のボタンを押して発動。
それぞれのカプセルの能力を強化して放つ必殺技。
このフォームの場合のみ、ハンズドメイカーの十指の指からも射出される。


以上劇場版限定3ライダーでした。グリッドアカンサス以外はわたしオリジナルのサプライズフォームです。

いよおおおおし!!!
終わったァ!!!
詰め込みまくったおかげで面白みがあるかと言われると微妙ですが、この達成感はやはり凄まじいものがあります。
そしてこの場で様々な方に謝らさせてください。
まずクレーエさん。
エラーブルのシステム難しくてだいぶ簡略化されちゃったことと、変身音だいたい短縮版だったこと。
続いて俊伯さん。
グラフィが技名を叫んだこと。書き直せってなら書き直しましょう。はたてにはそっちのが合うかなーというのはいささか短絡的でしょうか。
そしてyukizakeさん
カースがあまり活躍しなかったこと。前二人に比べて戦闘回数も少ないですし、剣おられてますしね…。もっとどうにかすべきでした。
さらに立伝さん。
勝手に秋フォーム出した上純粋なフォームじゃないという暴挙。文救助からの流れと、純粋にかっこよさで考えました。冷静になると良くないな。どっかでメイプル出すんで許してくだち。
そしてひがつちさん。
グリッドアカンサス勝手に劇場版限定フォームにしちゃってすみません。本来は中間強化なんですがね…。
さらにはバインさん。
急に変な限定フォームすいません。桜刀のコンセプトガン無視の超デッドヒートドライブでしたね…。
最後にサウザントピースさん。
アルナブ先行登場なのに見せ場全然なくてすみませんね…。

そのほかの方々にも活躍しなくてごめんとか負けただけだったねごめんとか色々ありますが…。でも個人的にごり押しチャージインバレットはお気に入りシーンです。
一応ヒールが表に出過ぎない感じに作りました。彼女らは主人公なんですが、それでもこの劇場版では違う、と。そういうことです。
まあできの悪い文ですが、『醜くて何が悪い!』とソウゴ的に言い訳しておきましょう。
最後を片付けるのにあの二人出すのは適当がすぎるんではと言われても…うん、反論できんけど。
そういうわけで、続いては23話です!
さらに次回劇場版をお楽しみに〜。終盤でやりまっせ。


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第23話 久しユアンシェン

何事もなかったかのように。


「…心待ちにしておりましたわ。この日!」

 

日めくりカレンダーをめくって捨て去り、青娥はニヤリと笑う。この月食の日、彼女は企みと共に神霊廟を後にした。

 

「ここ…ですか?」

 

「ええ、この空間は妖力が多いですもの」

 

そうして向かったのは命蓮寺である。頼み込む青娥に快諾し、聖は広間を貸し出した。恭しく頭を下げたのち、彼女は座り込む。その様子を見て、来客であった布都は青娥に近づいた。

 

「…青娥殿ではないですか!」

 

「あら、物部様」

 

「どうなさったのです?」

 

「少し術に用事がありまして…」

 

ならば失礼したと、布都はその場を後にした。軽い挨拶で布都を見送り、数秒眼を瞑ったのち、彼女はため息をつく。

 

「ダメそうですか?」

 

「…ええ、仙力とか様々なものが足りなくて」

 

少しのちの聖の声かけに、彼女は残念そうに頷いた。休んで行くといいとお茶を用意する村紗であったが、青娥はそれを断り。去っていってしまう。

 

「お気持ちだけ受け取りますわ」

 

そうして、彼女はすぐにそこを後にしてしまった。そうして草むらを行く中、どこからともなく、ガサリとビランが現れる。警戒する青娥であるが、相手に敵意はなさそうである。

 

『…あんた、なんか術をやろうとしてるね?でも妖力仙力どれも足りない感じかしら?』

 

「ついでに血もです。魔法使いの聖さんの血とかはちょうどいいと思ったんですけどね」

 

『黙って血を出させてやろうと?悪いやつねぇ』

 

「別に死ぬような量じゃありませんわ」

 

そんな会話を続けたのち、ビランはゆっくりと青娥に近づく。殺意こそないが、どこかぞっとさせる雰囲気を持っている。深呼吸ののち、ビランを見据えた。

 

『私が手伝ってあげようか?』

 

「…と、いうと?」

 

『血の調達と力の調達よ。手伝ってやろうって言ってんのさ』

 

「…ええ、期待していいんですね?」

 

『ああ、絶対に裏切りはしないわ』

 

そうして二人が結託した時、バイクの駆動音が響いた。そこから降りたのは聖と布都である。降りたと同時に睨みつけ、ゆっくり二人へ近づいた。

 

「…青娥殿」

 

「これは物部様。何かご用で?」

 

「そいつから離れてください」

 

「イヤですわ。たった今、協力者になったんですもの」

 

「そうですか。そう言うなら…我にも考えがある」

 

青娥の目の前に立ち、布都は袖からターンブレイカーを取り出した。ビランは先に行くように青娥へと促すと、剣を構え、様子を見る。

 

「しかしいいのか聖殿。わざわざ買っていただいて」

 

「天子さんの割には良心的な価格でしたし…。一緒に戦ってくれるなら全然」

 

「一応別の宗教家という身なのだが。…我仏像苦手だし」

 

「いいのです。与えられたものを受け入れるのが仏教の教えです」

 

「仏教徒ではないと言っておろうが。まあいい、厚意は受け取るのが人間かんk」

『あのさぁ!喋ってないで変身してもらっていいかしら!?』

 

ビランのツッコミを受け、二人は咳払い。ビランの方を向き、それぞれエイディングドライバーとターンブレイカーを構えた。

 

『南無三宝!』

『get started!』

 

「変身!」

 

「聖殿、掛け声は必要なのか?変身とか。あと醒妖とか」

 

「え?気合いを入れるスイッチみたいなものです。特に決まってないですよ。変身はライダーの人達が言うってぐらいですね」

 

「外来語はあまり使わないでいただきたい……。そもそも我h」

『早く!!』

「すまん、えっと……紅業(こうごう)!!」

 

『light!閃光!救って!栄光!描いて!』

 

『turn on!explosive girl!サーモバリック!』

 

そうして、仏術ライトフォルムが変身を終える横で、大爆発。収まった後も炎は消えず、見てみれば布都の怪人から火が吹き出てるではないか。サーモバリック、白に炎の赤が色をつける刺々しい怪人である。

 

「さーも、ばりっく?ってなんじゃ聖殿?」

 

「え?いや知りませんけど…」

 

「お主、そこの黒い敵。知っておるか?」

 

『ビランアニヒレイトって呼びなさいよ。知らないし』

 

「うむむ…。自分の鎧の名前がわからんと釈然とせんなぁ」*1

 

「そんなことはいいのです」

 

ドグマが構えたのに合わせ、ビランも剣を向ける。そして素早く駆け出してからの連続斬撃をもらうが、あまり大きいダメージではなさそうだ。しかしサーモバリックが駆け出したのを見て、青娥は口笛を吹いた。

 

「どうしたせいがー!」

 

「聖さんと物部様が私の邪魔をするの」

 

「倒せばいいんだな!」

 

「そう、いい子ね芳香ちゃん」

 

『get started!』

 

地面から飛び出てきた芳香の肩に手を置き、ターンブレイカーへUSBをセットした。そして拳を押し込み、丁寧に芳香へと手渡す。

 

「いくぞー!」

 

「頑張りなさい、芳嚼(ほうしゃく)

 

「ほーしゃく!」

 

青娥が代わりに掛け声を言い、しかし芳香がそれを繰り返す。そうして真っ黒な闇と札が彼女を包み込み、無理やり押さえつけるようにアーマーが装備された。

 

『turn on!decayed girl!メタリカ!』

 

「…ふううぅぅぅ」

 

「やってあげなさい」

 

口がむき出しのようにも見える、牙が並ぶ凶悪なクラッシャー、黒い煙を薄く放つ邪悪な外見、中華的なアーマーと尖った爪がその目を引く。青娥の命令を受け、少女達へと飛びかかった。

 

「うおぉ!!」

 

「あぅっ」

 

驚きながらも、サーモバリックは炎をまとったパンチを繰り出した。しかしあまり効く様子はない。さらにメタリカは口笛を吹き、同時にキョンシーたちが大量に現れる。全て今まで現れた、エックスゴースターもターンブレイカーを使わない、すなわち肉体変化怪人を模したもの。

 

「……ッ!!」

 

電波女を模したキョンシーを前に、一瞬だがドグマが固まる。脳裏に返った死の瞬間の熱さと痛みと苦しみが喉奥を焼くように貫く。さらにカラス女キョンシーの蹴爪が入り、激痛が鮮明に蘇った。

 

「げほっ、ごほっ、おぅっ……」

 

吐き気と咳の唾が邪魔になり、彼女はマスクを収納した。同時にさらりと髪が広がる。そんな彼女に迫るキョンシー達だが、それを前に聖は深く深く息を吸った。

 

「……負けるものですか…お前ごときに!!」

 

そして歯を食いしばり、思いっきり拳を叩き込んだ。ばきりと醜い音を立てながら、キョンシーの体が歪む。さらに回し蹴りを叩き込む。横に90°歪んでもなお動くキョンシー、そんな化け物達を前に聖は構え直す。

 

「破ァッ!!!」

 

そして扇で叩き込んだ青いエネルギー弾がキョンシーの体に広がっていく。伝わる光はエア巻物にも似る術式の紋様。それは死骸にかけられた術を解き、無理やりくくりつけていた肉片をばぁんと散らした。

 

『heavy!』「三度は死にません…!」

 

『…!?あっっづ!!』

 

さらに迫るビランのチェンジブレイドを片手で受け止め、さらに唾を吐きかける。術が仕込まれた唾液が爆散し、さらに呪術が追撃を与える。続けて0距離のブレストミサイルがビランへ叩き込まれていく。

 

「唾というものは大百足の話からも分かる通り魔力や霊力が伝わりやすいものです。失礼を承知の上使わせていただきました」

 

淡々と述べながら、聖は砲撃を続ける。ビランも反撃とばかりに必殺斬撃を叩き込むが、砲撃のシャワーは続く。不利と判断し、ビランはそそくさと去っていった。しかし同時に聖のスーツも砕け散った。限界だったようである。彼女自身も傷を負ったようで、そのまま倒れ臥してしまった。

 

「…っ!」

 

対しサーモバリックは苦戦気味である。ドグマはたった今変身が解けた以上助っ人は出来ない。おぼろげな意識まま弾幕を向ける聖であったが、その横を轟音とともに電光が駆け抜ける。

 

「雷怨!」

 

『turn on!hateful girl!タンスィオン!』

 

「…ライオン?」

 

「あ?かっこいいでしょ」

 

「……ライオンって動物は知っておるのか?」

 

「え?そんなん居るの…?醒妖じゃ前の敵どもと同じだって考え直したんだけどなぁー。また考え直しか」

 

メタリカへ電撃をぶつけながら、屠自古は到着した。同時に変身を終え、布都とくだらないことなども話してみる。しかしすぐに終え、メタリカへと向き直った。サーモバリックと同時に蹴りを叩き込み、続けて雷と炎が炸裂した。

 

「いででぇー、こいつ…」

 

それなりに痛手だったらしい、メタリカは飛び去っていく。追おうとするも青娥の手助けで姿を消し、追跡不能に。見せ場が少なすぎたことを悔やみながら、タンスィオンは変身を解いた。

 

「…なんかいい掛け声ないかね」

 

「我が知るか。…しかし青娥殿、仙術がどうのこうの言っておった。仙力目的で茨華仙を狙うやもしれぬ」

 

そんなことを言いながら、布都は聖を抱えた。しかし不器用ゆえかキン肉バスターのような姿勢である。屠自古がちぎるような勢いで聖を掴み、しっかりとした姿勢で抱え上げる。

 

「バカでしょあんたさては」

 

「人を抱えるのに慣れておらんだけだ」

 

そうして、二人は一度寺へと戻っていった。気絶する聖が視界に入り、二人が到着した瞬間に青ざめた星が駆け寄る。事の経緯を聞き、彼女は悔しげに拳を固める。

 

「堕ちた仙人という話ですが…偽りではなさそうですね」

 

「うむ、あの人は本質的に言えば自分を邪悪とは思うておらん。……興味があればどこまでも闇に手を突っ込めるというところか…。彼女には止めてやる者が要る」

 

「…やはり…豊聡耳さんが?」

 

「無論。今回も殴って引っ張り戻さねばならんな」

 

そんなふうに話しながら、二人は聖を着替えさせて布団に寝かせてやった。一時的に気を失っているだけなのだろうが、チラチラと怪我もある。包帯などされながら、心配げな視線が彼女に向く。

 

「聖!?大丈夫か!?……あっ」

 

そんな中、どたばたと走りながら神子がすさまじい形相を晒して飛び出る。しかし猛烈に心配しているのを見られるのが恥ずかしくなってきたのか、顔を赤くしてそっぽを向いてしまう。それでも横目に聖を見るあたり、本当に心配しているのだろう。

 

「…なーんか静かな気がするよねー」

 

「なんの話じゃ」

 

「帰っちゃったじゃないのよ、未来人二人」

 

聖の側を神子に任せ、一輪は布都へと近づく。梅雨の時期のくせに死ぬほど晴れたアホみたいに青い空を見上げ、そんなことを言った。昨日一昨日と雨続きだったが故に庭は湿っており、照らされた湿気が風と共になだれ込む。

 

「それもそうだな」

 

「今日はあんたたち以外にも青娥と華扇さんが入れ替わりで来たり…来客自体は多いのだけどねえ」

 

「…む、茨華仙がおるのか?」

 

「居るわよ。あっちの部屋でなんかしてた」

 

「それは助かった!ありがとう一輪!」

 

それを聞き、布都は方向転換。一輪も用事があったようで、そのまま別の部屋へ。入れ替わるようなタイミングで屠自古が現れ、後ろから声をかけた。

 

「今の戦力の状況を見れば…寺側を助けてあげてる状況だよな。こちらの態度ももう少し大きく出れるんじゃねーか?」

 

「分かっていないな屠自古、その関係は太子様は望まぬ。我らも聖殿には世話になっているだろう?この状況なら宗教敵もなにもないしな」

 

「ああ、悪ぃ、変なこと言っちまって」

 

「やけに素直じゃな気持ちの悪い」

 

そんなことを話しつつ、布都はふすまを開けた。その部屋の中で、華扇はぼんやりとキセンドライバーを見ていた。程なくして布都に気づき、彼女は立ち上がる。

 

「お帰りだったんですね。どうせなら白蓮さんにもご挨拶を……」

 

「聖殿なら今はお休みになっている。茨華仙、お主はそれより先に用がある」

 

「用……?」

 

そうして、布都は華扇に青娥に狙われるかもしれない旨を告げた。それを聞き、この前強化アイテムをもらったばかりということを思い、少し複雑そうな表情を作る。

 

「ま、気をつけてくれという話じゃ。ここにいる限りは我らが守らせていただく。お主も戦うためにも警戒しておけ」

 

「えぇ、そうさせていただきます。……あっ」

 

そんな中、何かを思い出したかのように華扇は立ち上がった。聞けば、仙術の書などを自宅に置いていたとのことだ。確かにそれはまずいと、一度帰ることに。布都は屠自古はここに居るよう任せ、自分が護衛に名乗り出た。

 

「私だけでも大丈夫ですよ。戦えます!」

 

「相手が複数で来る可能性もある」

 

「そーよ、足手まといにはならないから私もね!」

 

そこに雲山と一輪も寄り、三人で護衛することに。雲山もサムズアップで応え、華仙は嬉しげに頷いた。そうして人里を抜け、自宅へ向かうことに。

 

「安いよ凄いよ河童印のスーパー家電製品!!外の世界のヤツをお持ちかい?もともとお持ちの家電があればお引き取りでお値段一気に安くなる!」

 

「超便利な河童の家電だぜー!技術なら我ら河童にお任せー!」

 

「お前河童じゃねえだろ」

 

通りがかりの人里で、家電販売する河童が目に飛び込む。数人で売る横で魔理沙も手伝っており、顔の広さで結構売れている模様。その様子を華扇も横目に見る。

 

「…あなたは神社側では」

 

「私は私だぜ。バイト代くれるってんだからな!お前たちも双方に得があれば手伝ってやるぜ」

 

一輪をビシッと指差し、魔理沙はそう告げる。雲山はフンと鼻を鳴らして固めの態度を取り、頑固だねえと彼女が笑う。そんな視線のぶつかり合いであるが、隣でがっつり商売をする河童のせいで緊迫感は0である。

 

「いやぁーお前もう私達の子になっちゃえよ。あんた看板娘として養っていいレベルだよホント」

 

「悪いが私はみんなの魔理沙さんだよ」

 

ケラケラとそんなことを言いつつ、魔理沙は後ろ手に手を振って華扇達を見送った。先をいく中で、華扇は途中で団子を買いそうになるが、太ってはいけないと考え直し、歩み出す。

 

「……」

 

歩み出す。

 

「……っ」

 

歩み出す。

 

「……おいしそう」

 

歩み出……。

 

「…二つお願いします」

 

歩み出せなかった。ついに欲望に負け、みたらし団子を二つを買い、今度こそ歩き始めた。

 

「…罪の味は美味しいか?って、雲山が」

 

「ええ、とっても……」

 

どこか申し訳なさそうに頬張る華扇であるが、食べるたびに幸せに満ちた顔へと変わっていく。苦笑しながらも、三人も美味しそうだと思ってしまう。

 

「…ごちそうさまです」

 

食べ終えたゴミを紙袋へ入れると、その辺のゴミ箱へ。最近の覇権争いの良い影響として、人里の環境が良くなったことが挙げられる。ゴミ箱を設置する案は妖怪たちのものであり、お陰で綺麗になったという声も聞かれる。

 

「さて、ここです」

 

「!……グルグルしてたのは迷ってたわけじゃないのね」

 

「移動経路を鍵とする結界……といったところか」

 

華扇宅への到着にそう長い時間はかからなかった。居住者の案内あってのものでもあるので、迷ったり手間取ることなどもなくて当然であろう。

 

「おかえりー」

 

「この声……小町?」

 

戸を開けた途端自分に飛んだ声に驚きながらも、華扇はその声の主の方へと駆け寄っていった。予想通りではあるが、やはり窓越しの小町。首に鎌を突きつけられ、手を上げて白旗のポーズの青娥のおまけ付きである。

 

「お話でもしてやろうかと思えば……空き巣がいたモンでね。この通りさ」

 

「逃げようがなくなってしまいました。フフフ」

 

「ありがとうございます。小町、鎌を離して」

 

「あいよ」

 

そうして自由になった青娥へ、一瞬のうちに掌底を叩き込んだ。吹っ飛んで外の森へ投げ出される彼女をよそに盗まれた書物などがないことを確認。全てを鞄に入れた。

 

「…そーいや四季様と摩多羅サンが話してたんだよね。あたいは関係者じゃないから深い事情は知らないけどサ、十中八九この幻想郷で起きてることに関してだろーね」

 

「そうね。警戒はしておくわ」

 

「そうしな。あ、あと今日は月食だってさ。余裕ありゃ見に行きなよ」

 

それだけ残すと、小町はその姿を消した。それを受け、一行もその場を後にすることに。華扇以外入れないよう厳重に結界を張り、彼女達は去っていった。

 

そうして人里へ。夜になっても相変わらず商売中の河童と相変わらずバイト中の魔理沙の元へ寄り、布都は興味深そうにその家電達を眺めた。

 

「一個買うかい?魔力で動かせるから電源要らずだよ」

 

「むむっ……我が使い道に困って貯めてた小遣いで買える…………」

 

「いい機会じゃないのお姉さん!」

 

そうして商売が広げられていたその時。紙の鳥が華扇の背中から飛び上がったかと思うとバサバサ広がり、中からお札の吹雪と共に青娥が現れた。

 

「さっきぶりです♪」

 

「…どこにいたのですか」

 

「貴女の背中と服の間に」

 

「えっ…………」

 

「貴女は少し糖質を控えましょ」

 

それを聞いた布都と一輪はふふっと笑いをこぼすが、華扇の睨みを受け、ピタッと止まった。後に彼女らは弾幕ごっこ以上の気迫だったと語る。

 

「…何がお望みで」

 

「さぁ?どう思いますか?」

 

そんな風にとぼけながら、彼女はパチンと指を弾いた。同時に地面からドリルのように芳香が飛び出、さらに地面に散っていた札から湧き出るようにキョンシー怪人が現れる。

 

「芳香ちゃん、やってやりなさい。掛け声は覚えてるわね?」

『get started!』

 

「おう!ほーしゃく!」

『turn on!decayed girl!メタリカ!』

 

「大人しくしていてくださいね」

 

「誰がしますか……変身!」

『monsterside……change modeogress』

 

向かってくるメタリカにオーグリスで対応。ハンマーを振り回し、周りのキョンシーを叩き潰しながらメタリカにも打撃を加えていく。その状況を見て、他の連れ三人も戦う準備をした。

 

「…こうなるなら天子から買っておけばよかった」

 

「残念だったな。なんならサーモバリックになるか?」

『get started!』

 

「結構よ!雲山と戦える姿じゃないと納得いかないわ」

 

「そう言うと思ったぞ!紅業!」

『turn on!explosive girl!サーモバリック!』

 

炎を振りまきながら、サーモバリックは駆け出した。それを見届けながら、雲山と一輪は肉弾戦でキョンシー達を潰していく。時に光弾や光線を飛ばしながら、怪人やライダーに勝てるペースではないが倒していった。

 

「おらおら楽しそうだなァ!あたいも混ぜろ!」

 

そこに割り込むようにフールが突撃。一応味方ということなのか、キョンシーにダメージは与えず、サーモバリックの方へパンチを叩き込んだ。

 

「うぐぇ…!」

 

「ったくよぉ……炎属性が被ってんだよアホンダラ!!」

『愚者の一撃!』

 

続けて蹴りと連続パンチをぶつけ、蹴り上げでつなぐ。怯んだサーモバリックへ、勢いそのままにかかと落としを続けた。焔の一撃に爆発を起こし、軽い排熱と共に布都が倒れた。

 

「……っ」

 

「ヒャーッハッハッハッハッハ!キャハハッ!あたいの勝ちだな!次はあのドぴんくhairの仙人だぜ!」

 

「させっかよ!」

 

そうして構えたフールの前に、キョンシーを蹴り倒しながら魔理沙が現れた。河童を逃したりキョンシーに阻まれたりで変身できていなかった模様。

 

「変身!」

『beat!burst!dynamic dark bird!』

 

「フン、ちょうどいい。ピエロの役目は笑顔にすること。敗北を楽しませてやるぜ!ルゥウウウナァティーーーックタアアアアァァイム!!!」

 

駆け出して拳を放つフールであったが、スパークはそれを避けて空中戦を開始。投げる火炎弾を避けながら銃撃を放った。

 

「たっ!」

 

そんな中であるが、ハーミットは結構優勢である。メタリカも噛みつきなども使って文字通り食らいつくが、それでもイマイチ押しきれないというところだ。

 

「うーん、仕方ないわねえ」

 

『g,g,ge,ge…get star started…』

 

「ん、やっぱり勝手にいじると変になるものねえ」

 

メタリカとハーミットの戦いを見ながら、青娥は黒と青に彩られたターンブレイカーを取り出した。何かを押さえつけるように小さな札がびっしり張られており、USB挿入時音声も狂っている。ため息と共にスピーカー周りをコツコツ叩いた後、その『タオブレイカー』を起動した。

 

蒼光(ツァングァン)!」

 

(turn on)!desire girl!アズーロレイ!』

 

ノイズのかかった変身音に似合う真っ黒なオーラを放ち、紫の煙が舞う。中から青く漏れ出す光ごと押さえ込むように札が張り付き、全て封じ込めたその姿を現した。

 

「…いけるわ」

 

天子の設計図よりも禍々しさを増したアズーロレイが、ハーミットの元へと駆け出した。その手に出現させた光剣で一撃を叩き込み、さらに衝撃波でハーミットをぶっ飛ばした。

 

「…やられるものですか。我が信念にかけ…貴女を救ってみせましょう!」

 

「貴女がやられてくれた方が私的には救いなんですけどね」

 

駆け寄るアズーロレイへ蹴りを返すが、その瞬間メタリカに後ろを取られる。キョンシー怪人どもからの追撃も入るが、こちらは大きなものではない。適当に反撃すると、今一度立ち上がった。

 

「とりゃ!」

 

「……っと、いい蹴りではありませんか!」

 

アズーロレイは蹴るその足を掴んで、ハーミットをぶん投げた。位置がよかったのか、雲山がどうにかキャッチ。布都の手当てをする一輪を背にする形で、ハーミットは今一度立ち上がった。

 

「……守るべきものがある。私を深く知る者でなくても……私が深く知る者でなくても!貴女の行動には意味があるのでしょうけど…それを考えるより先に…潰させていただきます!貴女の力でもって!」

 

『Humanside……change modetrick!』

 

ホールクラッカーを握らせ、ハーミットはフォームチェンジを終えた。その手にカクセイガを握り、今一度駆け出す。寄ってきたメタリカへパンチをぶつけ、さらにアズーロレイへ迫った。

 

「だあああ!」

 

「っ……。これは」

 

「よそ見などしてる場合ですか!」

 

パンチを受け止めた拳を見て、青娥はマスクの中で何かを思案する。しかし思考の暇を与えずハーミットは飛び蹴りを放つ。それを羽衣をロープのようにして拘束し、振り回したのち遠心力フル活用で遠投。転がるハーミットへ指で招く挑発を向けた。

 

「…なるほど、余裕という態度ですか!」

 

「ええ、かかって来なさい!」

 

「言われずとも!」

 

ハーミットがカクセイガ向けて来たのを受け、アズーロレイは腕で防御態勢をとった。

 

「たぁっ!」

 

「ふっぐぅ……!あぁっ!!うぅあっ……あああっ!!!」

 

「なんのつもりですか!?」

 

瞬間、彼女は腕だけスーツを解除し、素肌に刃を受ける。真っ白な柔らかい肌をてらりとした赤が彩る。うっすら涙を流しながらも、彼女は笑っていた。そして数秒ののち、ハーミットの変身は解けてしまった。

 

「前、見させていただきましたよねぇ?貴女のベルト!それは仙力で動くと言いました。そして貴女が私の術を使って変身していたのはまさに僥倖!私と()()()()()()なら…吸収ができる!」

 

「だから変身が解けた」

 

そう一人で飲み込む。しかし青娥は足りないと告げ、のけぞるような不気味な姿勢で布都へと目を向ける。まさかと駆け出すも華扇は間に合わない。

 

「……っ!」

 

「立ちはだかろうと無駄ですよ一輪さん!貴方はいmぶへぇっ!!」

 

「……愚かな師を持つと苦労する。ペットを置いて行くべきではないよ、華扇」

 

剣を向けたアズーロレイを蹴り飛ばしたのは紅飛馬であった。その上から、ゆっくりと神子が降りる。ご苦労であったと紅飛馬の頭を撫でてやった。

 

「神子さん…。ありがとうございます!」

 

「礼に及ぶことではないさ。嫌な予感がしたものでね」

 

そう言ってアズーロレイを睨みつける。その手に握るのはエイディングドライバーである。よもやという視線の中、彼女はベルトを巻いて巻物をセットした。

 

『南無三宝!』

 

「他人の物を使うのはいささか不満だが……この際仕方がないか。変身!」

 

『heavy!変わらぬ麗光(れいこう)!続くは研鑽(けんさん)!揺るがぬ神仏!』

 

そしてアズーロレイを前にドグマ 法術ヘビィフォルムへ。全身の火器を放ちながら、アズーロレイへ近づいていく。今一度駆け寄るメタリカにはシャックシューターでの射撃をぶつける。

 

「…やれやれ」

 

「何がやれやれだ霍青娥ッ!」

 

ブレストミサイルが宙を舞うが、それを全て光剣で破壊。続く電撃をジャンプでかわし、肩のキャノン砲からの砲撃も全てガード。そのまま掌底を叩き込んだ。

 

「……っと」

 

「十分な防御力ですこと!しかし……まあ貴女に触れた時点でほぼ目的達成ですね」

 

「なんだと?」

 

「あと少しだったんです。触れて吸える分のちょっとの仙力でいいんですよね」

 

それだけ言うと、羽衣を巻きつけてドグマを拘束した。一瞬でちぎられてしまうが、その一瞬で十分である。瞬間、元々暗かった周囲がさらに暗くなり始める。月食が始まったのだ。

 

「ちょうどいい……!」

 

「させない!」

 

「いけー!せいがー!」

 

メタリカ自ら盾となり、ドグマの攻撃を受けた。鎧が弾け飛び、芳香が転がる。同時にキョンシー達も肉塊になったかと思えば、札の中へと消えていった。

 

「だぁっ!」

 

「痛い!」

 

「んだテメ味方だろコラ!」

 

その横を駆け抜けたアズーロレイは、未だに戦闘中のスパークとフールの頭を掴み、地面へと叩きつけた。瞬間、地面へ魔法陣と術式のような物が同時に広がり、手を伝った血がさらに光を生む。

 

「魔力、仙力、仙人の血!あぁ、揃いましたわ!あははははは!ハハハハハ!この術が使えるのは…今日、この月食の日なんです!あっっはっはっは!ハァーッハッハッハッハッハ!!」

 

そんな笑い声の横で、変身の解けた魔理沙とクラウンピースが転がっている。無防備な彼女らの魔力を吸い込み、凄まじい光の中彼女は笑う。近づいてはまずいと他の少女たちが様子見をするなか、ピタッと彼女は笑い止む。

 

「…あぁっ、あ……あああああああ」

 

そしてマスクを外したかと思えば、涙を流しながら光と向き合った。まさか世界の終わりでも来るのか?それを止められなかったのか?面々が絶望していくのに反して、光は一瞬で消えた。

 

「桓……さま」

 

「……ちょっとなんなのよ今の!」

 

その騒ぎと人里のどよめきを引き裂きながら、幽々子が現れた。かすれた魔法陣と青娥を交互に見ると、彼女は表情を変えて俯いた。

 

「よほど会いたかったのね。……振り向くこと無かれと…言うのに」

 

そう言った幽々子に肩を掴まれた青娥は、流し込まれたかのように幸福に満ちた表情。しかしぶつぶつ何かを言いながら、焦点の合わない目から涙を流している。

 

「…どういうことだ!」

 

変身を解いて詰め寄る神子に対し、幽々子は俯いたまま告げる。

 

「冥界が無理矢理、一瞬だけ顕界と接続されたの。きっと、彼女が死んだ夫の顔を見るために」

 

「何だと……!?」

 

「そのせいで『戻って来れなく』なったのね。半ば魂が引っ張られている」

 

「そんな……!!」

 

 

 

 

ーー結局、彼女は幸せそうな、そして虚ろな顔を浮かべたままである。食事も睡眠も着替えもままならないもはや廃人同然の生活を送りながら、彼女は今日も呟いている。

 

ーー霍桓、夫の名前を。

 

ーー彼女が『戻って来る』のは、もう少し後の話。

 

Continued on next episodes.

*1
サーモバリックは爆薬の一種です。気化して爆発する恐ろしいヤツだ!




「河童の誇りを侮辱するか!」
「お前らが鬼に刃向かうか!」

激化する戦いの中で。
次回、「お姉様の云う通り」

めっちゃお待たせしました。例大祭関連で5個書いてたし多少はね?
予想外の展開だったかなーと思います。シリアス風。このエピソードの直接的な続きは、もうしばらくお待ち下さいな。次回はだいぶ前から書くことを予定していた回。分かりやすい話です。
怪人が擬似仮面ライダーになってる点ですが、これは登場回数と強さで違いを見せつけていこうと思っています。この前ソルラテールが通常形態と同系列であるグランドルナに負けたのもそう言うことです。
メタリカはラテン語で金属!といっても、バンドの方を思い浮かべるでしょうけど。
そろそろ、やっと折り返し地点です。さらにだいたい一年の連載。いやぁー長かった。前半の速さに対して後半のアホみたいな遅さ。
慢心が出てますね慢心が。
ライダーの例に漏れずだいぶ瞬瞬必生にやってきた本企画。いつになったら終わるのでしょうか。


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第24話 お姉様の云う通り

「んだよコレッ!」

 

新聞を前に、にとりは怒りを込めて叫んだ。そうしてテーブルに叩きつけるのは文々。新聞である。書かれているのは、『河童の陰謀』。

 

「…ま、仕方ないんじゃない?あなたたちはいつも通りの商売をしてただけだもの。信頼を落とすなら今のうちと思っても仕方がないでしょう」

 

「だからって話でもないでしょ…。どうすりゃいいかなあ」

 

みとりのアドバイスを受け取りながら、彼女は家の戸を開けた。崖の壁に立った階段から、アホみたいに晴れた6月末の空を見上げて息を吸う。水場に吹く風は爽やかなものであり、見下ろした玄武の沢には遊ぶ妖精たちがいる。

 

「サニー姿消すのずるい!!」

 

「水しぶきをよく見たら分かるわよ?」

 

「えー?ホントだ。そこにいんのね!」

 

三月精たちが水の掛け合いをしている。ルナとサニーが全力で戦うのを、ニコニコとスターが見つめていた。時折両方に戦略を告げ、その争いを加速させて楽しんでいるようだ。

 

「あんたらは呑気でいいねぇ」

 

「コレでも幻想郷の未来とか色々考えてるのよ」

 

「嘘つけ」

 

「そうだよ。こいつらは昔っからずーーーーっとこんなことやってる」

 

そうして現れたのは妹紅である。タバコを吸いながら、スターの横に座り込んだ。そして観戦する妹紅の横に、続けて阿求とメディスンが現れる。随分賑やかだなと呟き、にとりは少し下がった位置へ。

 

「なぜ…私達を?」

 

「この風景懐かしくないか?」

 

「……?」

 

「ああ、阿礼乙女は完全に記憶を継承するわけじゃないんだっけか。メディスンも阿弥のこと良く覚えてないとか言ってたし」

 

「そもそも誰よそいつ」

 

そんなことを言いながら、その平和な風景をぼんやりと眺めている。得体の知れない何者かがこの幻想郷へ今も脅威を及ぼしていると思うと、あまり気は休まらないが。

 

「くだらない内輪揉めなんか……。平和になればいいねぇ」

 

そんなことを言いながら、みとりも階段を下りた。その手に小さな機械を持ち、にとりの方へと寄って行く

 

「これ…今までの戦闘データを元に作った強化アイテムよ。平和のために使いなさいよ」

 

「いいの?ありがと!」

 

その手に握ったアイテム『ハーフパス』を見つめ、お礼に頭を下げたのちポケットへ。ひとしきり妖精達を眺めたのち、ラボの方へと歩いて向かった。

 

「やっぱ売るもんだよなあ」

 

そうして準備するのは数々の家電である。ひとまずこれを売って人気を得るのが、当面の目標だ。鞄に詰め込み、さらに台車も用意し、仲間の河童たちと共に人里へと繰り出した。

 

「ほらほら安いよー!寄って見てみなこの便利な品々!!」

 

途中ですれ違った魔理沙を雇い、いつも通り売り子に。前々からの話ではあるが、やはり顔の広さもあって客寄せ効果は凄まじい。だが、今朝の新聞もあってかいつもの「飛ぶように」という感じではない。

 

「…ったく。河城たしか射命丸の奴に交流あったよね?」

 

「この状況で直談判しろって?煙に巻かれるだけだろ」

 

「姫海棠さんならいけたりしない?怪人化で人里襲っちゃった件で多少負い目とかありそうだし」

 

「私ら河童だしそれは交渉材料にはならないっしょ」

 

今朝のことをどうにかできないものかと話してみるが、これといった手は思い浮かばない。魔理沙は一回ぶん殴ってみろだとかなんの参考にもならないことを言うだけ。河童達はほぼ同時にため息をついた。そんな時、霊夢が現れる。

 

「…あんたら、なーんか企んでたりしないわよね?」

 

「人聞き悪いなあ。私達河童はいつも通り商売してるだけだぜ」

 

「あんた河童じゃないでしょ」

 

「種族人間、所属河童ってとこさ。金を渡されてる間は」

 

「それは河童と金銭的契約をしてる人間って言うのよ」

 

魔理沙といつものような応酬をしたのち、視線は河童達の方へ。一番霊夢に交流がある奴ということで、にとりを盾にして他の河童は後ろへと下がってしまった。

 

「で?何がしたいわけ?」

 

「いえいえ、人里に素晴らしい技術をね。我々も儲けられて相互に得にわけですわけです!」

 

「あっそ、信用できないわね」

 

「ほらほらそんなこと言わないでよ霊夢さーん」

 

「なっ、なによコレ」

 

毅然とした態度の霊夢へ、ぐりぐり押し付けるように電子レンジを見せる。最初は取り合っていなかったが、ゆっくりと目を逸らせなくなっていく。

 

「…ほっ、本当にぽちっと押せばいいの?」

 

「そーだよ。鍋みたいに見張る必要ナッシング!」

 

「本当に…火傷しないの?」

 

「むしろ電子レンジでする方が難しいよぉーん?」

 

「でもね、私も外の配電のシステムぐらい…」

 

「魔力か霊力で動いちゃうんだよね」

 

問答の末、霊夢は明らかにおろおろし始める。そして考え込む中、ベリーショートの河童が耳元でささやいた『交換・修理には迅速に対応いたします♡』が決め手に。

 

「今日は…見逃しといてあげるわ」

 

そう吐き残し、明らかに浮かれた様子で空へと飛んでいった。入れ替わるように、幽香が傘片手に現れる。威圧感こそ凄まじいが、敵意はなさそうだ。

 

「幽香さん、コレ」

 

「…あら、いいじゃない。ちょうど欲しかったわ」

 

一緒に来ていたリグルが、ミシンを指差した。しかしそれとは別に、幽香には目的がある。依頼品であった散水機の受け取りである。

 

「えっと、コレです」

 

「なんかすごい顔してるわよ。重圧に耐えかねる顔」

 

「幽香さん分かって言ってません?」

 

散水機と代金を交換し、さらにミシンまで売り商売は大成功。お互い満足げに、取り引きは終わった。

 

「幽香って雑魚妖怪達に味方してるって聞いてたがな」

 

「こういう利用関係は要るのさ」

 

そんなふうに自慢げに語ったとき、すぐ近くから悲鳴が。急いで向かうと、2mほどの人型ロボが暴れ回っていた。物的被害や怪我人はなさげだが、放っておくわけにもいかない。魔理沙とにとりは戦闘態勢をとる。

 

「コアドライバー、コード2!」

 

『set up Code 02』

『phase blue!version 0.1!』

 

「行くぜ!」

 

『reading!magician!』『& magical beast!』

『reading!wizard!』

 

「「変身!」」

 

『armored rider phase blue!』

 

『spark, great miracle magic!White & Black wizard!』『bad?nightmare?not…magical beast!KO・U・MO・RI!』

 

リヴィエルとスパークが変身を終え、ロボットへと駆け出した。スパークは強化フォーム派生のマジシャンウィザードである。キックと同時にブレードを叩き込み、リヴィエルもC2ブレードで斬りかかる。

 

「…っと、硬いな」

 

「だな…オラァ!!」

 

ホウキ型武器、マジシャンライザーで殴りつける。そちらは多少効いているのだが、リヴィエルの攻撃が全く効かない。KP-110とKP-210をリモコンで呼ぶ、そんな時。

 

「ぜあっ!!!…ったく、騒いでくれるねえ!」

 

イシグマスラッシャーが煙と轟音を巻き上げて現れる。そしてウィーリーでぶつかり、怯んだロボットを前に酔鬼が構える。フォームは乱鬼であり、ロボットと同じほどの背丈の剣『乱喰刃』を振った。

 

「どりゃああ!」

 

「くらえっ!!」

 

スパークと酔鬼の攻撃がロボットへ大ダメージを与え始めたころ、続けてKPマシン二機が到着。合体し、副砲からのレーザーを放った。

 

「よっしゃ効いてる!」

 

「行くぜ2人とも!」

 

「はいはい…!」

 

『wizard!super wrecking spark!』

 

『climax charge!KP blue!』

 

スパークが跳び上がったのに合わせ、リヴィエルはC2ブレードのグリップをKP-110に接続。その横で酔鬼は剣を引きずりロボットへ向かう。

 

「スターダストえっと、なんとかバースト!!」

 

「コードブルー・フルバースト!!」

 

「クイッッチギリィ!!!」

 

三人が少しずれたタイミングで掛け声を出し、それぞれ必殺を繰り出す。酔鬼が思いっきり斬り上げたのに続いてKP-210の副砲とスパークの銃撃が叩き込まれる。

 

「でやあああああああぁぁぁぁあああ!」

 

「ぶちかませ!!」

 

そしてスパークがキックを叩き込み、同時に主砲からの凄まじい光線がロボットを襲う。ぼごんという音と同時に爆発を起こし、パーツが辺りに転げ落ちた。

 

「ってめ、にとりィ!私が居るタイミングで撃ってんじゃねーよ!」

 

「アッハッハ!悪い悪い」

 

変身をときながら文句を言う魔理沙に対し、リヴィエルは仮面の中でケラケラ笑って答えた。そうして彼女も変身を解こうとするが、視点を感じてその手を離す。

 

「…なんすか伊吹さん」

 

「これ、お前らの機械だろ?」

 

「そんなわけ…!」

 

「じゃあ誰だってんだよ…こんな技術持ってるのは!お前らだったらやりかねないよなァ、自作自演!」

 

リヴィエルの方へと詰め寄り、酔鬼は仮面がぶつかり合いそうな勢いで顔を引き寄せた。怒りを浮かべているのが簡単に分かる。だが犯人扱いににとりも怒りを隠しきれない。

 

「……マッチポンプだってんですか?…河童の誇りを侮辱するか!!我々はなァ!こんな危ない橋は渡らないし…そもそも人里で人間相手に暴れる無粋はしないねっ!」

 

「河童が粋を語るつもりか?そもそもお前らは」

 

言い終える前に、リヴィエルがその拳を振り上げていた。その様子を見た仲間の河童達がざわめき始める。酔鬼はすぐさま掴み取り、仮面の中の視線を鋭くした。

 

「河童が…お前らが鬼に刃向かうか!」

 

「このままじゃ溜飲が下がらないんですよねェ!!」

 

そうして、リヴィエルが蹴りをぶつけた。後ずさった酔鬼もそろそろ我慢ならないらしく、今度こそ本気で殴りかかる。そこは力量の差もあり、リヴィエルは大きくぶっ飛ばされてしまう。

 

「えぇ?おい河童が舐めた事してくれるじゃないのさ。今なら話ぐらい聞いてやるよ。遺言にならないよう気をつけなよ」

 

少し冗談めかして、酔鬼は語る。にとりは、このまま取り引きをしてやってもいいと思った。だが、それでは気に入らない。答えとして出したのはC2ブレードの突きである。

 

「…あっそう、じゃあこっちも応えるだけだ!」

 

「まともに戦うとでもお思いで?ここで沈んでもらいます。あんたにはもう手は残されちゃいませんよ!」

 

拳を構えて駆け出した酔鬼の背中に、凄まじい爆撃が打ち当たる。続けて光弾の嵐。後ろからKP-210が狙っていたのだ。…しかし。

 

『formname is 金剛鬼 GOGOGO!』

 

「まともに食らうとでもお思いで?さぁ、宴の始まりだァ!!」

 

「ちっ、そうくるかい」

 

巨大なシールド『鬼骸壁』が全てを跳ね返していた。パラパラと砂埃が舞う中、青と白の鬼がズルズル盾を引きずって現れる。リヴィエルの斬り付けとKP-210の砲撃を跳ね返しながら、重い拳をたたき込んだ。

 

「…っ」

 

「っと…」

 

だが流石にKPマシンの火力を受け止めていれば、盾越しでも苦しいものがある。酔鬼は膝をつき、肩を上下させていた。その隙を見て、にとりは今朝を思い出す。

 

「恨まないでくださいね、伊吹さん。平和のためなんですよ!」

 

「…あ?」

 

リヴィエルの手に握られるのは、ハーフパスであった。萃香は初めて見るが、状況的に強化アイテムであることは想像に固くない。睨みつけながら、警戒態勢を取った。フェネクスのように空を飛びかねないし、ヒールのように銃撃メインになりかねない。

 

『connect on!update!version 0.2!』

 

「…やっぱそう来るよな」

 

「……そんな事言っってる余裕あるんです?すぐ倒されちゃいますよ?」

 

その挑発を受け、酔鬼はシールドを構えて駆け出した。その目の前でリヴィエルはレバーを引き、シークエンスを終える。全身にさらにパイプが巡り、生み出された装甲が重なっていく。

 

『armored rider phase blue R!』

 

「…これが…私の新形態!」

 

「いっちょまえにゴツくなりやがって…」

 

酔鬼が言う通り、その装甲は凄まじい分厚さに。仮面ライダーリヴィエルブルーフェイズRである。同時にKP-010が駆けつけ、KP-210を格納。さらに武装を増やしてKP-210、いや、KP-210R(にとり)は爆誕した。

 

「お前ごときどんだけ装備しても無駄だね」

 

「どうだかね!」

 

その手に立ち入り禁止標識を模した斧『パーミッションプレート』を構え、駆け寄る酔鬼へ一発をたたき込んだ。いままでの攻撃より明らかに重くなっており、大きく隙を晒した。そこにC2ブレードの追撃が。

 

「…くっ、こいつが防御力で言えば最強なんだがな」

 

「そいつはいいことを聞きましたよっ!」

 

さらに凄まじいパワーでパーミッションプレートを振り下ろす。それをどうにか避けながら酔鬼は狂鬼にフォームチェンジ。こうなれば避けながら戦おうという戦略だ。

 

「…!!」

 

「隙アリだっ!」

 

『滅鬼』の反射で一瞬リヴィエルの視界を潰し、一気に切り掛かった。しかし連撃に対しパーミッションプレートをシールド状に変形させ、リヴィエルはそのダメージを完全に無効化させてしまう。

 

「ったく…」

 

「こうなればKPマシンを使わなくて良さげかなあ」

 

トドメとばかりにリヴィエルが構えた、その時。

 

「これ、星熊の姐さんから!」

 

彼女の部下の鬼が、何やらパーツのようなものを酔鬼へ渡した。遅かったじゃないかと呟くように言うと、酔鬼はベルトへその『マスコア』をセットした。

 

『Extenditem 『マスコア』 let's mixing』

 

「なっ…!」

 

「驚いたかな?私だって強化ぐらい考えてたさ。勇儀にお願いをね」

 

『set confirmed』

 

今度はリヴィエルの方が警戒態勢を取る中、マスコアへとランシュ、コンゴウシュ、キョウシュをセット。レバーを引き、手をクロスして構えた。

 

『confirmed change standby……3……2……1』

 

「全部載せかよ…」

 

「行くぞっ!」

 

『formname is 鳴厄鬼 let's battle!』

 

酔鬼がレバーを引きシークエンスを終えると同時に酒がベルトへ注がれ、それが光と共に全身に広がり鎧を形成した。ベルトが宣言する通り、仮面ライダー酔鬼 鳴厄鬼がその名だ。重装軽装入り混じった白い姿が特徴的。

 

「でやああああ!」

 

その手に呪術で出現させた武器を構え、斬りかかる。180cmはあろうかという剣『鬼叫(ききょう)』である。重苦しく持ち上げ、振り下ろさんと構える。

 

「ふん、遅…!?」

 

余裕の態度でリヴィエルがパーミッションプレートを構えたその瞬間、剣が爆裂音と共に加速。シールド形態だったのだが、それでもぶっ飛ばされる威力を生み出した。

 

「爆薬ってか…弾丸でこの威力ってわけね…」

 

「どうやらね…」

 

そうしてリロードする隙を狙い、リヴィエルはC2ブレードで斬りかかる。瞬間、酔鬼は腕のシールド『鉄鬼(てっき)』で攻撃をいなし、半分ほどの刃渡りの剣へ持ち替えて斬り付けた。

 

「…そっちはスピード系ですかい」

 

「多分ね!」

 

その『錠鬼(じょうき)』で連続攻撃を叩き込んでいく。咄嗟のことにガードは出来ず、もろにくらってしまう。爆薬での加速は鬼叫より弱いが連続性がある。

 

「うぐぐ…」

 

「このままぶっとびな!」

 

そして再装填ののち鬼叫を構えた、その時。KP-210Rからのおびただしい量のビーム弾が飛ぶ。4連となった主砲からのものだ。そうして出来た隙にリヴィエルはKP-210Rに乗りこみ、素早く回避しようとする酔鬼を正確なエイミングで襲う。

 

「ったく!」

 

流石に凄まじい弾幕故に避けは諦め、鉄鬼でのガードに。元々凄まじい戦いだったが、ビームがやらがえげつない戦場故に、見物人はどんどんと戦いから距離を置いていく。

 

「…動きづれえ。人里での戦いには向いてないな」

 

ほとんど固定砲台となったKP-210Rに近づくのは、酔鬼の防御力前提ではあるが容易だ。鬼叫の斬り上げを食らい、機体が大きく揺れた。傷がつかないのはさすがというところか。

 

「…くそっ!」

 

「っぶね!」

 

振り落とされながらも、リヴィエルはギリギリのタイミングでKP-210Rの副砲を放つことに成功した。直撃しなかったが、鬼叫を吹っ飛ばして地面に突き刺すことにも成功。しかし同時にパーミッションプレートを落とした点で、ほぼ同じ状況だ。

 

「たあああっ!」

 

「どらああ!」

 

C2ブレードと錠鬼がぶつかり合う。しかし元々のパワーを考えれば、萃香に軍配が上がる。若干ながら優勢である。だが、蹴り飛ばした瞬間、リヴィエルが腕を掴んだことで一緒に転がることに。武器を落としながら転げていく彼女らへ、見物人が一気に駆け寄る。河童や鬼を含む大勢に見守られる中、二人は河へと水没した。

 

「墓穴掘りましたね…伊吹様!」

 

「…まさか!」

 

にとりが名乗る能力は「水を操る程度の能力」である。それは水における確固たる自信の現れだ。この状況も例外ではない。パイプを伝う水妖エネルギーが生まれ、全身から蒸気が吹き出る。

 

『climax charge!hydro!』

 

「ぜあああああ!」

 

「うぐぅあ!」

 

凄まじい水圧をまとったキック、ハイドロスライダーを喰らい、酔鬼は膝をついた。さらにそのまま立てなさそうであり、自ら変身を解いた。一気に歓声が上がる中、にとりも変身を解き、川から這い上がる。

 

「…人里の平和は…他でもない、我々河童が守る!人間は技術を持つ生き物、我らと共に進もうではないか!」

 

足元に転がっていたロボの頭を踏みつぶし、右拳を天へ掲げる。河童達が一層強く声を送り、鬼達が怒りをあらわにする。しかし萃香は鬼達に抑えるよう言った。自分が負けたのは事実だと、悔しげに噛み締める。

 

 

 

 

 

「…つまり、これで萃香を倒したのね」

 

「そうさ!辛勝ではあったけどね!これで人里が…」

 

戦いの疲弊でベッドに横たわり、にとりは自慢げに語る。だが、みとりはそんな彼女へ気遣うことなく思いっきりビンタをくらわせた。

 

「…!?ね、姉さん!?」

 

「こんなことのために渡したんじゃないわ。…私が謝ってくる。そこで頭冷やしてなさい」

 

「でも…!」

 

「どうせ本当なら会話で解決できたんでしょう?頭に血が上ったからと戦って…お子様には過ぎたおもちゃだったね。弾幕ごっこで満足すればいいものを…」

 

ハーフパスを取り上げると、呆然とするにとりを背にみとりはKP-110でその場を後にした。そして居場所を聞きながら移動し、萃香のいる神社へたどり着く頃にはすでに夜になっていた。

 

「…私はそのつもりはないわ」

 

「あくまで霊夢達とってか?お前はこっちにいればもっと輝けるのに」

 

三日月を盃に映しながら、萃香は華扇へと語る。霊夢は外出しているようで、二人きりの空間である。包帯を巻いて明らかに疲れた様子の萃香へ、彼女は心配の目を送る。

 

「…おっと?誰かが隠れてるねぇ」

 

そんな中、萃香は突如盃をぶん投げる。草むらの中に隠れていたぬえが一滴も溢さずキャッチし、一気に飲み干した。

 

「投げちゃっていいわけ?」

 

「そいつは安物さ。私は瓢箪だけありゃいい」

 

「あっそーお?ま、そんなことはどうでもいいんだ。もうちょっと叩きのめしてしばらく戦えなくなってもらうよ!」

 

ターンブレイカーを構えるぬえ。立ち上がろうとする萃香だが、休んでいてくれと華扇が止める。そうして彼女はキセンドライバーを取り出し、腰へ。

 

「惑変!」

 

『turn on!mysterious girl!アンファイルド!』

 

「変身!」

 

『Humanside……change modetrick!』

 

アンファイルドとハーミットが向かい合い、仮面の下視線をぶつける。そうして、お互い槍とカクセイガを構え駆け出そうとした瞬間。遠くからの銃撃が二人を怯ませた。同時に振り返ると、屋根の上にエックスゴースターを構えたビランが。

 

『私も混ぜてもらおうかしら』

 

「…信念にかけて守るわ」

 

萃香の方を一瞬だけ見ると、果敢にも二人に向かって駆け出した。と言っても、三つ巴の状況だ。やはり見ていられず立とうとする萃香だが、体が痛み、転びそうになってしまう。そんな時、砂埃とともに颯爽とみとりが現れる。萃香を支え、縁側へ今一度座らせる。

 

「…妹が粗相をしたね」

 

「ああ、おかげさまでこの通りだよ」

 

「許してあげてほしい。…きつめに言っといたから」

 

こう素直に来られると、逆に萃香はなんとも言えない気分である。そっぽを向いて黙る彼女を背に、彼女はビランとアンファイルドを見据えた。その手には、ハーフパス。

 

「…ま、ちょうどいい。この際実験台になってもらうわ。コアドライバー、コード1」

 

『set up Code 01』

 

『phase red!version 0.1!』『connect on!update!version 0.2!』

 

「変身!」

 

『armored rider phase red L!』

 

リヴィエルレッドフェイズが変身を終え、同時に追加ブースターが装備される。さらに装甲をいくつかパージし、レッドフェイズLが完成した。

 

「たぁっ!」

 

『速いのねぇ』

 

ビランが言うように、そのスピードがリヴィエルレッドフェイズLのウリである。ビランの攻撃を食らうことなく、淡々と攻め立てる。

 

『…くそっ!』

 

とっさにアンファイルドを盾にするが、トリックモードはホールクラッカーがあり、レッドフェイズLにはスピードがある。回り込むのは簡単な話だ。

 

「人を盾にしやがって…!」

 

アンファイルドの怒りも彼女へ向き、圧倒的に不利な状況である。撤退も考えた、その時。

 

「ヘイガールズ!ルナティックタイムの始まりだぜ!みーんな楽しませてやるよっ!」

 

『お前は…』

 

「ビランちゃんだっけぇ?あたいはね、あんたを手伝えって言われてんのさ!」

 

爆熱と共に着地したのはフールである。サンフォームの特色はやはりその凄まじい高温。ランパースが変身したフェアリートルーパー達と共にハーミットに狙いをつけ、一気に攻め込む。

 

「うぅっ!」

 

「くたばりなァ!」

 

そうして放つ火炎弾だが、それは穴を開けて対処ができる。しかし、その隙を狙ってすでにフールは構えていた。

 

『太陽の一手!』

 

「…させるか!」

 

ハーミットへと火炎を纏ったキックを繰り出す。…が、そこにはパーミッションプレート片手にリヴィエルが立っていた。一瞬のうちに間に入ったのである。

 

「…んだとぉ?」

 

『やれやれ、面倒になってきたわね』

 

「余裕ぶってんじゃないよ!」

 

今一度構え直し、リヴィエルはフェアリートルーパー達をまとめて狩り始める。フールも同時に相手取りながらであり、簡単ではない様子。続けてハーミットはビランへと駆け出し、アンファイルドもそれに続く。

 

「おりゃりゃりゃ!」

 

『バラバラねぇ』

 

「えー?なんで私がこんな仙人と息わせなきゃいけないのよ」

 

「あなた一人で勝てるならそれでもいいのですがね」

 

ビランの攻撃を巧みに避けながら、ハーミットは小さいながらダメージを与えていく。アンファイルドもそれなりに戦えているのだが、ハーミットを押し退けながらである。ペースを掴んだのか、ビランが押し返し始めた。

 

「…あなたは槍を使った大振りな攻撃がメインのはず」

 

「こうして欲しいって…事かなァ!」

 

流石に危機感があるのか、ハーミットの連撃でできた隙に一気に叩き込む戦い方に。一進一退の戦いの後ろで、リヴィエルは若干ながら押されつつあった。

 

「おらおらおらぁ!どうしたァ!」

 

「…っ」

 

スピードがあるとはいえ、炎の範囲攻撃はガードがメインになってしまう。シールドがあってもダメージは響くというものだ。萃香もそろそろ心配になってきた、その瞬間!

 

「はっ!」

 

KP-010がフェアリートルーパー達をまとめて撥ね飛ばし、さらにお札がフールも巻き込んでダメージを与えていく。何事かと見てみれば、KP-010に霊夢が乗っているではないか。

 

「ったく、いきなりこのデカブツが来たと思えば……乗れって何事よ」

 

「…助かったよ博麗の」

 

霊夢が降りると同時にKP-110が発進。その後ろからKP-310の改良品『KP-310L(みとり)』が降りた。そうしてリヴィエルが乗り込むと同時に霊夢がサォルブドライバーを装備、神霊のカードを取りだす。

 

「別に。神社を守りに来ただけよ。あと、友達を。…変身!」

 

『読み込み!神霊!』

 

『煌き!ハジャケンセイ!魅惑の神霊!』

『戦乱!閃光!仙獣タートルゥ!!』

 

萃香の方を一瞬見ると、シークエンスを終え、センニンシンレイフォームへ。オレンジをメインに、耳パーツやヘッドホンなど神子のデータから作られたのが割りやすい形態だ。センニンフォームのシェルガーダーは合体し、左腕の『トータスナックラー』へ。

 

「どらああああ!」

 

そうしてフールの元へ駆ける、その一瞬。霊体化して回り込み、後ろからパンチを叩き込む。さらに目にも止まらぬスピードで、KP-310Lからの銃撃が。さらにすれ違いざまに主翼をブレードにフェアリートルーパー達を一掃。軽く音速を超える。

 

「おい逃げるぞビラン」

 

『はァ?…仕方ないわね、この状況じゃ』

 

そうして二人は近づき、エックスゴースターから煙をまく。リヴィエルがすぐさま飛ばした銃撃がヒットするが、それを最後に完全に姿を消してしまった。

 

 

 

 

「お姉さんは…家族は大事にするものですよ」

 

「それは分かってるよ…でも!」

 

「私、両親死んじゃったんです。事故っていうか…私のせいで」

 

うつむく早苗に、にとりは何といえばいいかわからなかった。相談しようと神社へ来たはいいが、何かをほじくってしまったのではと不安に。時間帯は夕方。みとりが人里で萃香の居場所を尋ねている頃だ。

 

「…頭に血がのぼっちゃうんですよね」

 

「うん、そう…だね」

 

静かに言ったかと思うと、早苗はおもむろに立ち上がる。にとりに目で追われながら、彼女は近くの葉っぱを取った。そうして今一度座り込んだかと思えば、葉の香りを嗅ぎ始める。

 

「いい香りの葉なの?」

 

「いいえ。でもこの青臭さも生命って感じしませんか?大空の香りっていうか。私は一番レモンが好きでしたけど」

 

「…そうかな?まあ、そうかも……」

 

「落ち着きたい時、おすすめですよ」

 

そう言われ、真似したにとりはたしかにリフレッシュできたような気分であった。自分のKP-110に乗り、彼女は博麗の方の神社へと向かう。あそこにいっぱ居る人妖なら、「謝り方」についてもっと深く聞ける奴ぐらいは居るような気がしたのだ。

 

「…霊夢、居るかい?」

 

一度頂上に行ってからの下山というのもあり、たどり着いたのは夜である。その時、すでに戦いは終わり小さな宴会が始まっていた。

 

「…にとり」

 

「伊吹様……」

 

にとりは言葉に詰まってしまった。本当に謝ればいいのか?それは河童としてしゃくに触らないか?でも鬼との関係を悪くするのか?そもそも私の行動の一番の問題は?様々な不安やらを処理し、にとりは畳に膝をついた。

 

「…怪我は、大丈夫ですか?」

 

「さーね」

 

「……思えば、今あなたと戦う意味は何もありませんでした。ただ気に入らないから、頭に血がのぼって…」

 

「河童は無駄にプライドが高いからな?」

 

みとりとにとりを交互に見ながら、萃香は言う。気に入らない物言いだが、にとりはキレようとはしない。ポケットに入れたミントの香りを吸い込み、続けた。

 

「私は…本当ならただ人里を守りたいだけで…人間と、もっと妖怪が近づける社会が欲しいだけなんです」

 

にとりは、一瞬だがみとりの方を見る。彼女のような存在が生きやすい社会、そう言い換えてもいい。

 

「言い訳、いろいろしましたけど…。言いたいのは…えっと……………すみませんでした!深く考えもせず、話そうともせず」

 

「…私も悪かったよ。お前が…あんなもん作るはずないって、知ってたんだけどさ。お前に一言でも『目指すとこは同じだろ』と言えてればな。私もさ、呑みたいだけなんだよ、みんなでね。だから今後は伊吹様〜なんてくっそ堅いのは結構だよ」

 

萃香はそういうと、升へと酒を注ぎ、にとりへ。そんな鬼へ、河童は「ありがとうございます、萃香さん」と優しく応えた。

 

 

 

 

「…やっぱダメですねぇ」

 

翌日、鈴奈庵へ届いた新聞の感想を片手に文は苦い表情であった。呆れながらお茶を出し、小鈴は告げる。

 

「あのですね、被害が出ないように暴れると、そう作られたマシンでもですよ。そーいうのを人里に放つのはどうかと思うんですよ」

 

「河童の自作自演を装えるかと思ったんですけど」

 

「失敗してるじゃないですか」

 

「それは言ってはいけないですよー…」

 

鬼と河童が手を組んで商売し始めた、というのはかなり大きい事実である。何せロボに関して疑った側と疑われた側だ。その両方の和解というのはすなわち「河童は犯人でないと鬼が判断した」ということ。

 

「…鬼は嘘つかない。人間でもみーんな知ってることですよ」

 

「…なるほど。とにかく振り出しですね」

 

「聞けば最近ベルトをもう一人の自分に奪われたそうですね。もう厄年じゃないですかねぇ」

 

小鈴はケラケラ笑いながら続けた。静かなため息ののち、文は今一度頭を抱える。権力争いは、未だ激しくなる一方だ。

 

Continued on next episodes.




「なるほど…これが…夏!」

「いや、それたぶん溶けてるだけよ」

夏に舞え、氷精よ!

次回、「夏の氷精 - 動 -」



いやーおまたせしました。最近の外伝の流れからなんで割と早いかな?とりあえず最近なりきり系のロールプレイが楽しいサードニクスです。今回はちょっと長くなりましたが。言っても1000ちょい多めなだけだけども。主な原因はにとりvs萃香の長引きだよね…。今回はなんというか、東方っぽい話にできたかなーと思いますね。キャラが全体的にいい人化するのはライダー作品の宿命だから許して…。ホントはみんなもっとゲスめでもいいとは思うものの。いやしかし一年以上やってやっとはんぶ…え待ってもう一年以上経つの!?仮面秘封倶楽部の2018/10/26で震えてます。びょえー更新おせー!ホントお待たせしてます。
恐ろしいのは導入編と地&永が2018の間に終わってること!16話以降急に遅くなる…そもそも去年の12月の16話からまだ8話しか進んでない恐怖。このままだとあと四年はかかるぞぉ〜?合同参加したり原稿書きまくったりのせいなのよね。来年ははだいーぶ少なめになるからいけるはず…。
今プロットが6話分あるんですがね、これがあとどれほどで書き上がるかですよね。とりあえず25話26話はいろいろ好き勝手やってる回ですし、27話はプロット時点ではかなり気に入ってる回なんで…早いといいなぁ……。

まあそんなこんなでおおよそ3ヶ月ぶりのみんなの変身ポーズコーナー!
仮面ライダーフールだぜ!
まずはアルカナドライバー装備。右手で松明を掲げ、左手でカード挿入!
続けて右腕を下げつつ左腕上げる!さらに左腕を下げて一号のポーズのように腰に構えながら、松明ぶん投げ!
「変身!」
そして落ちてくる松明を蹴っ飛ばして完了です。ワイルドだろォ?

ではまたー


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第25話 夏の氷精 - 動 -

まだ7月なったばっかという恐怖。


「正直言っちゃうと私達はまあ楽しけりゃいいんだけどね」

 

「妖精は大半がそうよ」

 

「まああたいもそうだけど…。でも!やっぱ正体が分からない敵は警戒しないとだし」

 

博麗神社の裏の林にて、三月精は絶賛会議中であった。ライダーに変身できるルーミアとチルノの二人も呼び、今後の不安についての会議である。

 

「ひとんちの敷地で何やってんのよ」

 

「会議だけど?」

 

「迷惑行為よ。退治しようかしら?」

 

スペルカードを片手に睨みつける霊夢に対し、自信ありげにチルノが歩み出る。そうして弾幕ごっこが始まろうかというとき、突如落ちてくるかのような砂埃を巻き上げてクラウンピースが現れる。

 

「…リベンジさせてもらうぜ、霊夢!」

 

『EMAXAJENSIXI!WARNING!WARNING!WARNING!WARNING!』

 

「霊夢とチルノは続けてなさい。…私も一回戦っておかなきゃ、データ収集なのだァーーっ!」

 

シャドウライトを出現させながら威勢よく蹴り込み、ベルトを装備した状態で二人は格闘を始める。そして距離を置いた、その一瞬。ピースは松明をぶん投げ、ルーミアがその手を十字に広げた。

 

「「変身!」」

 

『DANGER!DEXIZASUTAXA!大・狂・乱!愚者の一手!破滅の一手!』

 

蹴っ飛ばされた松明をS・スピアーで弾き飛ばし、リライは飛びかかった。その横で、二人は構える。そうして始まった弾幕ごっこを尻目に、リライとフールの戦いは続く。

 

「…ったく、らちがあかねぇや」

 

『RISING!GURO-RIASU!超・高・熱!太陽の一手!審判の業火!』

 

「こっちのセリフなのだー…っと」

 

お互いの戦闘能力はどっこいどっこいな様子。クラウンピースがサンに変身したのとほぼ同時に、リライはW・カオスへ。お互いの拳がぶつかり、両者体勢を崩す。

 

「すごいのーどだねっ!あたいがあまりに強いから本気出しちゃったわけ!?」

 

「誰が妖精なんぞに…」

 

上空で綺麗な弾が飛び交う中、混沌と爆熱の拳がぶつかり合う。そもそも長時間変身のできる形態ではない。お互いささっと戦いを終わらせてやろうという気であった。

 

『太陽の一撃!』

 

「とあああああああ!」

 

「ハアアアアアアアァァァァ!」

 

二人が繰り出したキックがぶつかり、闇と光と炎が溶け合う。同時に爆風が起こり、上空の霊夢とチルノの髪を揺らした。

 

「…ったく!」

 

「…っ!」

 

ほぼ同時に転げ出た二人であったが、体勢を立て直してから駆け出すのはフールが速かった。自身のスーツを一気に高熱化させ、タックル。凄まじい大爆発と共に、リライの変身が解けた。

 

「うっ…ぐぅ……」

 

「ハァ…ハァ…」

『愚者の一手!破滅の一手!』

 

だがフールとて無事ではない。流石に維持してはいれず、フールフォームへと逆戻りである。その様子を見て、ぎょっとした様子で霊夢とチルノが止まる。流石にこれはということで、命名決闘を中断し降下。

 

『がっちーん☆』

 

『読み込み!神霊!』『&仙獣!』

 

「「変身!」」

 

『ばっきーん!うぃんげるふぉーむ!』

 

『煌き!ハジャケンセイ!魅惑の神霊!』『戦乱!閃光!仙獣タートルゥ!!』

 

そうして変身しながら同時に着地。カラフルな閃光と華麗な冷気がふわりと広がり、フールへと飛びかかった。しかしその瞬間、二人に向けて光弾が飛び出す。リブレッスは防ぐが、ラビは吹っ飛ばされてしまう。

 

『全く…考えも無しに神社襲撃なんかするもんじゃないわよ』

 

「あんたも一昨日似たことしてただろ〜!」

 

ビランである。フールへ適当に言葉を送ると、剣を構え、ナーグフレイムと共に斬りかかった。リブレッスはそれを霊体化で避けながら、冷静にパンチを叩き込んでいく。

 

「あいててて…」

 

砂を払いながら、ラビがダイヤモンダーをビランへ向け、銃撃開始。リブレッスにもだいぶ当たっており、ちょうどよくビランは彼女を盾に。

 

「いったいわね…ちょっとなんのつもりよチルノ!」

 

「えっ…別に…攻撃したかっただけだけど」

 

「もっと攻撃範囲ってものをねぇ…」

 

ビランをぶん殴りながら、リブレッスはため息。相手にあまり怯む様子はなく、フールも疲弊しながらもリブレッスへキックをぶつけた。仮面の奥でチルノは考える。もっとどうにかできないものか。そんな時、ふと別の思考が浮かび上がる。

 

「あっちー…」

 

いや、口から飛び出ていた。7/1とはいえその日光は凶暴。スーツ内部はひんやりしてはいるものの、顔だの関節だのは蒸れるのだ。そんな時、ふと思い立つ。そう、ウィンタースフィアはチルノの氷の力で生み出す冬の力。

 

「…えいやっ!」

 

試しにやってみたら、出来た。夏のロックスフィア、サマースフィアである。砕けたウィンタースフィアを取り出し、改めてクロッカーへセット。そのレバーを回転させた。

 

『がっちーん☆』

『ばっきーん!』

 

「なるほど…これが…夏!」

 

「………いや、それたぶん溶けてるだけよ」

 

霊夢に言われ、自分の手を見てみる。どうも夏という感じがしない。…と、いうか、ウィンゲルそのままである。よくわからないままダイヤモンダーを構えるが、いきなりふらついてしまう。

 

「溶けて…あっ」

 

まさかと思いながら、池に自分を写してみる。…溶けていた。ウィンゲルメルトとでも呼ぼうか。これはこれでデザインとしてはありだが、まともに戦えないようではどうしようもない。だが、ビランからの銃撃の中、今一度ウィンゲルに戻るのは難しい。

 

「…だあああああああ!」

 

「おごっ!?てめっ…離せコラ!」

 

半ばヤケクソでフリーズパーフェクターを展開。フールにつかみかかり、そのまま炸裂させた。爆風の中、変身の解けたチルノとピースが転がる。

 

『…っと、最悪ね』

 

その状況を見て、撤退することに。だが、易々逃しはしない。一瞬のうちに霊体化し、もぎ取るようにクラウンピースを取り返した。

 

「…あっ!てめっ!置いてくんじゃねぇ!ちょっ…コラァ!おい!」

 

「よぉーやく捕まえたわよ」

 

「…えへへ?」

 

数分後。縄で柱にくくりつけられ、謎の札を貼られていた。さらに霊夢は呪文を唱え、バタバタあばれながらピースは抗議する。

 

「…なんのつもりだ!このヤロー!」

 

「よし、あとは猛烈なパワーを叩き込めば()()()()はずよ」

 

「えっ何が!?何があたいから出てくるの!?」

 

「やって」

 

「あいあいさー!」

 

「ちょっ嘘だろチルノ!私達友達だろ!?」

 

「縄ほどいたら襲いかかってくるくせに」

 

「そーだぞ!」

 

「ご名答、こっちもなんでかわかんないけどライダーをぶっころさ…待て待て待てなんでそんなためらいなく拳振り上げられんだよチルノォ!」

 

「今正気に戻してあげる!」

 

「フン!あたいはそもそもルナティックな妖sぶほぉっ!おげっ!」

 

「弱いわね、殺す気でやって。どうせ妖精なんだし」

 

「あいあいさー!」

 

「はァ!?抗議!お前もあいあいさーじゃねぇよ!あたいは妖精の人権をしゅちょおぐぇっ!?」

 

「がまんしろー!あたいと同じ妖精なんだろ!しかも地獄の!」

 

「おっぶっっっ!!……ゔっ、ゔぉお…うぉええぇ」

 

最終的に、チルノが放ったヤクザキックが決め手になり気絶。同時に、ゲロでも吐くようにびちゃびちゃと紫のゲル状の何かを吐き出した。数秒のうちに消滅したそれが、夢塊であるのは明らかである。

 

「…どんな気持ち?」

 

「ピースがあれで助かるなら…って。……ちょっとどうかとは思うけど」

 

その光景を眺めるヘカーティアに、ルーミアは問う。戦いが終わる頃にちょうど来た彼女だが、見ていればこれである。複雑に思うのも仕方がないというものだ。

 

 

 

「つまりあたいは強くなりたい。うぉんと、とぅー、びー、べりー、すとぉおおおおんぐ!!」

 

「うっさいわね…幻想郷はいくら隔離されてても日本なんだからそこの言語喋りなさいよ」

 

数分後、境内だと怒られたのを受け、三月精宅にてチルノは会議中であった。遅れてきたメディスンとリグルを加え、お菓子片手の会議だ。仮面ライダードライブを流しながら、話は進む。

 

「強くなりたい…ねぇ」

 

「さっき草むらで見てたけどさ、夏の力を全く引き出せてなかったよね」

 

「ざっつらいと!」

 

「だからなんなのよさっきから」

 

「早苗が英語を教えてくれる。マンマミーアはイタリア語らしい」

 

「あっそう…」

 

「あっ、針妙丸のラルジュネヌは…」

 

「脱線はいいから!どう強くなるかでしょ?」

 

サニーと盛り上がる中、ルナチャイルドはそれを止め、話を戻す。しかし特訓と言っても何をすればいいのか、というもの。それぞれで考える中、リグルが口を開く。

 

「…この前、幽香さんと銭湯行ったんだけど、そこで……」

 

「むしろそれについて詳しく聞きたいわね…」

 

「どういう状況かしら」

 

「私は絶対嫌…」

 

リグルの出す話題にスターとメディスンが食いつくなか、ルーミアは顔をしかめる。幽香の威圧感を受けてよく平気だなと、チルノとリグルを除くその場の者ほとんどが思っていた。

 

「いや、早苗もいたわよ?」

 

「なにその緑の集い…」

 

「どうせなら閻魔さまいればいいのに!」

 

「…で、そこで私はサウナってとこに入ったの。暑すぎてすぐ出ちゃったんだけど…それなんかどうかしら?」

 

「ん、いいんじゃない?」

 

「そうと決まればいくぞー!」

 

そうして、全員が外へ出て行こうとする中。スターが待ったをかける。曰く、修行で行くのにこの人数で動くのは面倒とのこと。じゃあ誰が行くかとなり、ライダーは一人は付いて行った方がいいのではということに。

 

「…むり」

 

包帯に巻かれた右手を上げ、ルーミアは言う。そうして、全員の視線が向いたのはメディスンである。

 

「はぁ…仕方ないわね」

 

「あと…なんか夏っぽいからサニー、行ったら?」

 

「頭は春なのに」

 

ベロを出してふざけるルナの方を睨みながら、サニーは家を出た。リグルはささっと地図を描き、チルノへ。見送られながら、三人は空へと舞っていく。

 

「あっはっはっはっはっはっはっは!だはははは!!!」

 

「笑うなー!」

 

「いやだって滑稽じゃないか!サウナだの釜茹でだの色々やって()()()()ってさぁ!あっはっは!!」

 

翌日の早朝。相変わらず凄まじい日光の中、妹紅が笑う。人里でたまたま会った彼女にことの顛末を話したためだ。度重なる実験に耐えきれず、チルノは融解。先ほど復活したばかりだと言う。

 

「仕方ないな!そんなら私が稽古付けてあげようか?」

 

「いいの!?」

 

「ああ、お前らのチーム、言ってたメンバーと同じだろ?つまりは愚かにも今日も特訓しにきたわけだ」

 

妹紅はチルノ、メディスン、サニーを順に指差しながら言った。ため息をつくメディスンを横に、サニーとチルノは恥ずかしそうである。

 

「ただ…今日はちょっと寺子屋に用事あってな。昼過ぎに来てくれりゃ稽古できるさ。だからそれまでは死なないように頑張ってこーい!」

 

そう言ってチルノの背中を押すと、食べていたアイスの皿を店員に返し、立ち上がる。そして何かを取り出したかと思うと、チルノの背中へと当てた。

 

「それあげるよ。天子がチルノに渡してくれとさ」

 

「これは…」

 

ベルトが胸や脇に巻きつき、肩甲骨のあたりに機械が装備される。同時にチルノの羽が巨大化し、それを見送って妹紅は寺子屋へ去っていった。

 

「いいわねこれ!めっちゃ早く飛べそう!」

 

「いいなー!」

 

サニーの羨ましげな視線を受けながら、チルノは誇らしげにする。そんな中、ふと彼女は思案を始める。

 

「……あっ、そうだ!あたいはさては天才か…!」

 

「んー?なに思いついたのよ」

 

「今は夏の始まりだよね?」

 

「そうだね」

 

「春の要素が消えれば真夏に近づくよね」

 

「んん?まあ…多分…」

 

「リリーを倒せばあたいの中の夏のパワーもげっとすとろんぐ!行くわよー!」

 

「まってリリーはダメ!!勝てないわ!」

 

「春の話でしょ!今ならいけるいける!」

 

そういうと、メディスンとサニーの手を掴み、空へと飛び上がってしまった。そうして真っ直ぐに進む先は妖怪の山。途中で侵入がどうのとごちゃごちゃ言う文を無視しながら、九天の滝前の吊り橋に着地した。

 

「たのもーーー!」

 

「うるっさいですねぇ…」

 

「あわっ…リリーを起こしてしまった…」

 

「春じゃあないんですよぉ、今はッ!私の季節が終わってイラついてるんです出てってください!」

 

早口に言ってチルノを追い返そうとするが、チルノ的にそうするわけにもいかない。バシバシたたくリリーに対しとった行動は、顔面へのビンタであった。

 

「えっっっっ……私…なんかしました?」

 

「ごめんリリー!…あたいのパワーアップのえっと…そう、かてになって!」

 

「か、糧ぇ…?いったいなにをおっっぶえぇ!?」

 

「とりあえず死ねぇ!」

 

「あっ…頭おかしいですよぉー!」

 

慌てふためき、サニーに近寄るリリー。サニーもサニーでなんと言えばいいのか分からない。数秒考えたのち、リリーをぐっとチルノの方へ。

 

「恨まないでねリリー。これもチルノが強くなるためだから!私は殴らないからさ!」

 

「殴るのも殴らせるのも同じでしょう!ええいこうなれば!」

 

向かってくるチルノに対してファイティングポーズを取り、氷と春。二つの属性の拳が今ぶつかった。

 

「なんか根本的に間違ってる気がするわ…」

 

「……言われてみれば」

 

メディスンとサニーの会話をよそに、二人は戦いを続ける。噛みつきや目潰し、落ちてた廃棄蛍光灯でのぶん殴りに春パワー全開リリー汁の毒霧。果てには壊れたパイプ椅子など、見てられない戦いに激化していく。

 

「だぁーっはっはっはっはっはっは!こりゃおかしい、いっひっひっひっひっひ!!ひぃーっ」

 

「引き笑いまでしやがって…」

 

「こちとら必死だったんですよ…いででで」

 

「いやーでもさぁ!面白いじゃんそんなの!なにがどうなれば暑さ克服したいでそうなるんだよかっはっはっは!!!」

 

昼過ぎの人里。妹紅は涙目のチルノのとどでかいたんこぶのリリーを指差しながら笑っていた。メディスン曰く、リリーの毒霧パフォーマンスとテクニックはぜひ参考にしたいとのこと。

 

「なんだよ毒霧って!!あっチルノの目痒そうなのってそういう!?ギャハハハハハハ!!!」

 

ゲラゲラ笑い転げる妹紅。ひとしきり笑ったのち、笑いすぎかすこし息苦しそうに話を始める。

 

「…で、特訓したいんだって?」

 

「また私のとこカチコミ来られても困りますからね…。さっさと教えてあげてください」

 

半ギレ気味にリリーが言ったのを受け、妹紅はチルノを招く。メディスンとサニーに加えてなぜかリリーもそのあとを追い、妹紅について行った。

 

「無様見せんじゃないわよ妹紅!」

 

「うるせぇー!」

 

そうして稽古をつけるべく竹林の自宅に向かってみれば、輝夜が様子を見ているではないか。適当に暴言を飛ばし、視線をチルノへと戻す。

 

「…熱さを操れるようになりたいんだな?」

 

「ああ!あたいがんばるよ!」

 

「できるかなぁ…氷の妖精が」

 

「できなくても無駄にはならないはず!だから教えて!」

 

本気のチルノの様子を受け、妹紅にも火がつく。やるかと叫んで気合いを入れると、チルノのそばへ立った。

 

「まず…霊力っていうか妖力かな!それを一点に集中するんだ」

 

「……こうかな。はっ!」

 

チルノが力を貯めると、それは氷として現れた。指先に氷の塊が弾け、そうじゃないんだとチルノは肩をがっくし。そこへ輝夜が近づき、手を当てる。

 

「息、吸いなさい」

 

「…?うん、すうううぅぅぅ………」

 

「どう?夏のけがr…生命力を感じる?」

 

チルノはよく分からないという顔をした。だが輝夜は続ける。その口調は、まるで先生のような優しさだ。

 

「ゆっくり…その息を指先に流し込む感じ」

 

「こうか…?…!?」

 

「うおっ!?」

 

「な…なによそれ」

 

ぱぁんと弾ける音ののち、人差し指の先端が爆裂する。サニーや妹紅がびくっと驚く中、チルノは喜び飛び跳ねていた。先ほどと違い、『熱い』し『溶けている』のだ。

 

「これって…あたいがあついのを出したってことか!」

 

「そうなるみたいだな…。輝夜に助けてもらうとは。癪にさわるね」

 

「フフフ、そっからは貴女の領分でしょう?生み出せたならあとは扱うだけ」

 

「わかってるよンなこと」

 

そうして、指を治すチルノへと妹紅は説明をする。『包み込んで外で解放する感じ』というアドバイスが効いたのか、指を犠牲にせずとも火は出ないが暖かい空気を飛ばすことぐらいはできるように。

 

「これは予想以上の出来だな。さて、今度は温度を上げるか」

 

「どうやるの?」

 

「いっぱい吸った分を、ギチギチに詰め込むんだ。ぎゅって圧縮すると物は熱くなる」

 

「豆腐はならないよ」

 

「崩れるからな。崩れないよう、エネルギーの形をを保ったままぎゅーぎゅーにするんだ」

 

そのアドバイスが決め手となってか、ついに指先から火炎が。縁側に座っていたメディスンとサニー、リリーは立ち上がりながらびっくり。楽しげにチルノに近づいた。

 

「すごいのねチルノ…」

 

「あんたならやると思ってたよー!!」

 

「私の殴られ損…」

 

サニーが肩をバンバン叩き、チルノは照れ臭そうにする。そうして火を扱う特訓をしていると、もう夕方に近づく頃に。買い物をしなければと妹紅は人里へ。また、チルノ達もその後について行った。

 

「…特訓するチルノさん!これは何かネタになるかしら」

 

「さあねぇ?ま、まだ全部憶測を出ないわ。もうちょっとチルノ張ってみましょ」

 

その後ろに、文とはたてがつく。カメラ片手に、二人はバレない位置を飛んだ。

 

「ほらほら!しっかり運ぶんだぞ新入り!」

 

「はいはい…」

 

人里を行くチルノ達の目の前に現れたのは、ぬえと女苑であった。大量の野菜を持っているあたり、買い出しで間違いないだろう。カッコつけていっぱい袋を持つぬえであるが、明らかに女苑よりキツそうである。

 

「ねーぬえ大丈夫なの?」

 

「ふ、ふふん!命蓮寺仕込みの肉体をなめちゃいけない!」

 

「鍛えてるって話なら私の方が自信あるんだけどなぁ」

 

そうして筋肉自慢が始まった二人の元へ、チルノは割り込んでいった。あまりに突然なので、ぬえは驚いてしまう。

 

「あんた怪人になれるんだろ!あたいと戦え!」

 

「えっ…?いいけど…」

 

「荷物なら私が持ってくわよ」

 

「いいよ別に。さっさと終わらせるから待ってて」

 

そう言って荷物を丁寧に道端に置き、女苑にそこに立っていてくれと指示。クロッカーを構えるチルノを前に、ターンブレイカーを取り出した。

 

「おっと、戦うみたい」

 

「これこそネタになるじゃないの!」

 

物陰の中の天狗二人が話す中、かたやウィンタースフィア、かたやUSBをセット。ほぼ同時にシークエンスを終えた。

 

「変身!」

 

「惑変!」

 

『ばっきーん!うぃんげるふぉーむ!』

 

『turn on!mysterious girl!アンファイルド!』

 

槍に対して銃弾を送るのを見て、メディスンもメディットブレスを構える。だが妹紅はそれを止めた。これはあいつの特訓の成果なのだと言い、仕方ないなとでも言うような雰囲気でメディスンは下がった。

 

「とぅっ!たいしたことないねぇ…所詮妖精ッ!」

 

槍の持ち手で殴りつけ、怯むラビへ今度は刃を叩き込む。転ぶギリギリでかかとのフォールアイシクラーをぶつけるが、ダメージはたいした物ではない。見物人も集まり始めた中、このままでは勝てないと、ラビは決心する。

 

「うおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

「うわびっくりした!いきなり叫ぶんじゃないわよ…」

 

驚くアンファイルドをよそに、ラビは気合いを入れる。そして全身から夏のエネルギーを吸い集め、炎を作ったときのように氷として固め上げた。そうして生まれたサマースフィアをセット、ラビは構える。

 

「うああああああ!」

 

『がっちーん☆』

 

突如爆発するかのように熱波が溢れ出る。ラビの装甲は溶け、中からはチルノが現れる。この状態、普通なら死んでもおかしくはないが…特訓の成果で耐えていた。

 

「…っ」

 

「何か来ると思って警戒したの、判断ミスだったかなァ!」

 

しかし、チルノは膝をついてしまう。何事かと近づくサニーは、チルノの頬に()()()()()()。そう、溶けているのだ。慌てふためくサニーをよそに、チルノの表情が沈み込んでいく。

 

「…ダメだ…操りきれない…。あたいはダメなのか…」

 

悔しげに地面を殴ったチルノ。いい加減待ってられないのか、アンファイルドも歩み寄る。そんな彼女に、柔らかい光が当たる。振り向けば、リリーが春の生命力を送り込んでいた。

 

「春は…冬から夏に向かう力ですっ!あなたの力の制御に役立つはずっ!!」

 

「それなら…私もっ!」

 

さらに、サニーが屈折させた日光をチルノへと送る。制御する力と加速させる力。それを吸い込んだ彼女は、すでに解き放ち方を知っていた。

 

「ギチギチを包み込んで…外で放つ!」

 

「…!?」

 

瞬間、彼女の体から再び爆熱が放たれ、みるみるうちに姿が変わる。そう、日焼けしたのである。そして今一度レバーに手をかけ、グルンと回す。

 

『ばっきーん!さむ・らいずふぉーむ!』

 

「…負ける気がしねーぜ!!」

 

爆炎の中、日焼けしたチルノに灼熱の鎧がまとわれる。紅蓮にオレンジ色が煌めき、さらに炎でできた花びらが全身に揺らめく。炎の華、そう呼ぶのがまさにふさわしい姿だ。

 

「…これまたあっつそうなのが」

 

「行くぜー!」

 

アンファイルドが槍を構え直す中、仮面ライダーラビ サム・ライズフォームが構える。夏のエネルギーが手のひらへと集まり、それが直剣『サンフラワリングソード』を生み出した。

 

「これはまた…見てる方が暑くなるわねぇ」

 

屋根に登り、戦いを見下ろしながら文は語る。そのすぐ下の軒下で、妹紅と妖精達ははしゃいでいた。メディスンも飛び跳ねながら喜び、その戦いを見届ける。

 

「どらああ!」

 

「っ!」

 

素早い連続斬りをくらい、アンファイルドは怯んでしまう。一撃一撃が帯びる高熱に、体力を奪われていく。

 

「ぜりゃああああああ!!」

 

「うっぐぇ!急に強くなりやがって!!」

 

斬りかかったソードを弾き飛ばし、チャンスとばかりにアンファイルドが槍を振り上げる。瞬間、ラビから溢れ出た蒸気がアンファイルドの視界を阻む。排熱機能『クールアイシング』である。

 

「見えねぇ…っ!」

 

「どりゃああああ!」

 

そして、腕からブレード『サマーパーフェクション』を展開し、殴る勢いで斬りかかる。飛び散った火花に、サニーがテンションを上げながらガッツポーズを取る。

 

「優勢だぞチルノー!」

 

「そうですよっ!私の毒霧も耐えたんですっ」

 

「毒霧…?」

 

「こっちの話だぜ!」

 

一瞬戸惑うアンファイルドへ、落ちてきた剣を掴みながら斬り付け。槍を杖代わりに立ち上がる彼女に対し、ラビは身を低く構えた。

 

「あたいっくダイナマイト!!」

 

ソードを投げ捨て、パーフェクションに熱を集中。さらに全身からクールアイシングを使って超高熱を放ち、アンファイルドへと突っ込んだ。相手が盾にした槍を弾き飛ばし、そのまま全身から熱を解き放った。

 

「うぐぇっ!!」

 

そして、大爆炎が巻き上がる。中から変身が解けた両者が現れ、膝をつくのはぬえの方。あたりの炎を消しながら、チルノは喜びながら飛び上がった。

 

「イェスッ!よっっしゃーチルノさんサイコー!!」

 

「うっさ……あんたやけにチルノに甘いわね」

 

「べ…別にそういうわけでは……」

 

同じくチルノの勝利に喜ぶ文であるが、その喜びようはメディスンやサニー以上。柄にもなくガッツポーズをしながら、はたての言葉に少し赤面した。

 

 

 

 

「いやーそれにしてもほんとお疲れ様!」

 

完全に日は落ちて、チルノを囲みながら妖怪や妖精達は酒を飲み始めていた。三月精の家に、幽香という来客は珍しいものである。だがチルノはあまり物怖じはしない。

 

「…黒くなったわね、なんか」

 

「おう!あたいはなんたって夏の氷精だぜ!小麦色の肌と真っ白な歯!」

 

「なんかいつも以上に暑苦しいのね」

 

ふふっと笑いながら、幽香は酒を飲み進める。妖精でもこんな良い酒を持ってるのだと意外に思いながら、三月精たちを見やる。

 

「それは…」

 

「コーヒーよ」

 

「苦いものを好く妖精ね…。変わってるのねぇ」

 

そんなことを言ったのち、視線をチルノに戻す。今日、三月精宅のこの夜は、チルノのためのものである。毒舌な評論を交えながらも、彼女を褒め称えながらその夜は続いた。

 

 

 

 

50年後、どこかの廃墟ビルにて。

 

「ダメ…ダメよ蓮子目を閉じないで!」

 

「…ごめん、もう……」

 

焦点の合わない目で、蓮子は言う。メリーの腕の中で、その息吹は沈んでいく。もう、助からない。大きく引き裂かれた胸がそう教えてくれる。

 

「お願いよ…メリー!」

 

「そんな…これは…あなたが使ってたものじゃない!!」

 

震える、冷たい手でメリーへと赤いライドレンズを渡す。受け取ろうとしないメリーを無視し、無情にも蓮子の手はもう掴む力を失った。彼女の手から離れ、レンズは濁り、赤だったその色を失う。

 

「ママ…パ…パ……お…ばあ、ちゃん…ごめん…なさい…。メ……」

 

「ああっ…うっ…うああああああああああ!!!」

 

ついにその体は鼓動をやめ、冷たく力を失う。涙と共にメリーはライドレンズを拾い、立ち上がる。蓮子を抱き上げ、破壊された武装警備ロボの山の上を行く。蓮子は命を犠牲に、メリーを救ったのである。

 

「…許さない……蓮子を奪ったこと…」

 

引き返せば、追われることはないはず。それでもメリーは先へと進み、厚い扉を開く。広大な空間の中、カーテンに囲まれた何者かの影。

 

「…また、ダメか」

 

「なんなのよ…あなた一体!……許せない…!」

 

「やはり運命は収束する。いい加減にして欲しいものだがな」

 

メリーは怒りを胸に叫ぶと、蓮子を壁に背をかけて寝かせる。そしてアイズバックルを装備し、白く曇った…そう、蓮子が託したライドレンズをセットする。

 

『can't look…』

 

「…変身」

 

『I was star night fantasy!』

 

レバーを倒し、現れたのは白く曇りがかった目のスターボウモードであった。蓮子の姿のはずだが、今変身しているのはメリー。そもそも、ヒールであるのに蓮子は後ろで静かに眠っている。

 

「…あんたのせいなのよね。……何が目的!?」

 

「私の最終目標は単純。平和だよ。だが…そのためには君達の力が要るんだ。だから一つ愚かな問いを。稀神サグメと…レミリア・スカーレット。彼女らは生きているか?」

 

「それがどうしたの…。生きてるわよ」

 

吐き捨てるように言うヒールであるが、カーテンの奥の女の「そうか」という声はどこか嬉しそうであった。そして、女は立ち上がり、剣のような何かを持った影が映る。

 

『ON……Villain……』

 

「…結構、苦労したんだ。少しずつではあるが報われているな。君たちの次の挑戦が…どうか正解であることを願わせてくれ」

 

「どういう意味なの?次があるって言うの!?」

 

「ああ。宇佐見蓮子を失ったのは君としても私としても失敗だ。似たような失敗を繰り返している。我々はね。だから例の如く…試させてもらおう」

 

「…」

 

「今度こそ消えてもらおう。今はまだ…再ロードでセーブ地点からやり直せる。…チェンジ!」

 

『……Rogue the Nought Elimination』

 

女は剣を振り、カーテンを切り裂く。しかし黒い炎と闇に包み込まれたその姿はよく見えず、次に見えたときには、スーツを着て変身を終えていた。その姿に、メリーは顔をしかめる。

 

「…あなたは!!」

 

「ん?ああ、過去の私が…世話になってるかな?」

 

その黒いボディや、その手の()()()()()()()()。放つ黒い炎。そう、見まごうことなくビランアニヒレイトのものであった。

 

「…であああああ!」

 

殴りかかったヒールの拳をその手で受け止めると、チェンジブレイドを叩き込み、さらにはナーグフレイムでの追撃まで。一度戦ったビラン以上にその動きは洗練されている。

 

「…っ!」

 

「甘いな。…まだ、もう少し強くなる必要がある。それに必要なのはマエリベリー・ハーン、お前だけではないというのは分かるな?」

 

そう言って指を弾く。同時に世界は揺らぎ、ズレた世界線の位相と共に、彼女たちの意識もぶっ飛んだ。

…これが何度目であるか、もう数える事もやめた。

 

Continued on next episodes.




「ここのところ…こうではなかった…!でも……なぜか怒りが湧き立ってくるの…!あの……巫女や…鈴仙が来た日からッ!」

月を燃やし、その憎しみの瞳は何を見る。

次回、「僅か38万キロよりのボヤージュ」



グリウサを買いたいものの機会と金がない男…スパイダーマッ!
そういうわけでリリーのセリフを見たことがありません。多分普通に女口調なのでしょうけれど、とりあえず春ですよー準拠の敬語口調。でもグリウサ買ったらセリフ差し替えると思います。密かに更新されてたらそう思ってくだせ。
さて、久しぶりの一週間以内更新ですねぇ。お待たせしました。
ビランの正体が分からんと思ったら正体のわからん女がビランに変身しましたね。誰か推測してみよう!
あ、言うまでもないですが、1話の廃ビルですぞ。
明るい話だったところで唐突に蓮子死亡!いやなんかシリアスたりねぇなと思いましてね?まあ嘘なんですけどね。元々入る予定でした。
ちなみに。戦いが終わった後、ぬえはバテバテになりながら野菜を持ち帰ったとさ。
ま、そんなこんなで!みんなの!変身ポーズコーナー!
ブロッサムです!
単純ですね。チェリムドライバーを巻き、広げたフロードジャビ片手にくるん!そしてフロードジャビを前方に向け、「変身♪」
あとはセットして完了です!
ではまた!


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第26話 僅か38万キロよりのボヤージュ

お待たせしました!


「あんた…!」

 

「久しぶりね、巫女さん」

 

「結構最近だと思うけどねぇ…」

 

7/5、昼前。縁側でぐでんとしている霊夢のもとへ、純狐が現れた。キョロキョロとする彼女へ、霊夢はヘカーティアとクラウンピースはもっと奥に居ると告げる。それに頷き、純狐は歩き始めた。

 

「友人様ァ!」

 

「えっ、あっ純狐!!」

 

「心配したのだからね…二人とも」

 

チルノと遊ぶクラウンピースと、それを見守るヘカーティア。そんな彼女らの元へと純狐は寄り、ヘカーティアの横へと腰をかけた。

 

「…髪、黒くなったのね」

 

「私としたことが力を失っちゃってね。腑抜けてたのかなぁー」

 

「確かに、あなたらしくもないわ」

 

「それもこれもピースを操ったドレミーのせいよん!ただでさえ月に味方してる点で気に入らないのに!!」

 

「そうね。でも…あまりにも急で、これまたドレミー・スイートらしくもない手段だわ」

 

「それもそう。だから事情を掴み兼ねてんのよね〜」

 

ため息をつく主人を、ピースは心配そうに、そして申し訳なさそうに見つめる。ボールを投げようとしていたチルノもその手を下ろし、視線の先を追う。

 

「ピースも知り合いきたなら話したいでしょ!あたいサニーたちんちこ行ってくる!」

 

「わりーなチルノ!」

 

手をふりながら、ピースも純狐のもとへ。ヘカーティアとピースで純狐を挟む形になり、彼女は少し照れ臭そうにした。

 

「…大変だったのね、ピース」

 

「ええ。あんまり記憶はないんですけど、ご主人様にもいっぱい迷惑かけちゃって」

 

「あーもうそんなの気にしちゃダメ!」

 

がしっと、少し激しく肩を組み、ヘカーティアは告げる。面倒見がいいものだなと、純狐は友人として誇らしく思う。そんな二人の姿が『何か』と重なり、純狐の胸に虚しさのようなものが膨らむ。

 

「…っ」

 

「……?」

 

「どうしたの純狐」

 

「いえ、なんでもないわ」

 

己の何かを振り払うかのように言うと、純狐はおもむろに立ち上がった。曰く、人里に行きたいのだとか。どうせ幻想郷に来たのだし、それも悪くない。ヘカーティアとピースはささっと準備を終える。

 

「あっそーだ。あんた誕生日6月よね。暴れてる間だから渡せてなかったわね」

 

「えっ!?いいんですか!?」

 

ヘカーティアが魔術で呼び出したのはバイクであった。真白いボディに炎と星のステッカーが煌く、スポーツタイプである。ヘカーティアの方もベルトからマシンラピスを出し、乗り込んだ。

 

「よっし!お前の名前は今日からCRAZY=CROWNだっ!」

 

「素敵だわ」

 

「かっこいいじゃないのよん!」

 

ニカっと笑い、続けて純狐へ後ろへ乗るように言う。そして二つのバイクが神社を後にして、人里へと向かった。

 

「そいつを渡しなさいっ!」

 

「渡せないってのが聞こえないのかー!」

 

「知ったことじゃないわね!」

 

人里に到着し、いきなり遭遇したのはリライとエレンツの戦いだ。H・サンとツバイスターターの空中銃撃戦を眺め、純狐は楽しげである。戦いの方だが、W・カオスによりリライの勝利だった。

 

「あー、いてて」

 

カオスグライダーに乗って去っていくルーミアを見届け、アリスは悔しげに砂を払う。その様子を観戦していた者たちの中には、サグメも居た。

 

「あー、サグメちゃん!」

 

「…ヘカーティア女史。って、そっちは!?」

 

「………」

 

「あ、純狐は知らないわよね!こっちのサグメちゃんはね…」

 

「ああああああぁぁぁ!!」

 

「おっぐぇ!?」

 

ヘカーティアが紹介しようとする声も聞かず、純狐はサグメの首を掴んだ。誰の顔に浮かぶのも見たこともない、必死の形相にサグメはかなり気圧されてしまう。

 

「何してんですか友人様!?」

 

「ちょっとどうしたのよ純狐!!」

 

ピースがサグメを、ヘカーティアが純狐を掴み、引き剥がす。それでも執念で掴みかかろうとする純狐だが、数秒ののち、ハッと正気を取り戻す。

 

「……ご、ごめんなさい!」

 

「な…何すんのよいきなり!」

 

「おいちょっと女神サマ、口調。作ってる口調崩れてるぜ」

 

「え?あっ…!そうだな…。ごほん、なんのつもりだ純狐ッ!」

 

「いえ、こんなつもりでは…」

 

離した手を震え気味にさせながら、純狐は首を振る。サグメは戸惑いは隠し切れていないが、状況を把握すべく、かすれ気味の息で話を続けた。

 

「…恨みは薄まっているとか、言っていた気がするんだがな。この前も我らの策略に満足したとも」

 

「ええ、そうね…。その時はそうだったわ」

 

「その時…は?」

 

「わからない…!わからないのよっ!」

 

今度は泣き始めてしまう。今度こそヘカーティア、ピース、サグメ三人揃ってあたふたし始める。慰めようとするヘカーティアに対し、純狐はいいのだと止める。

 

「ここのところ…こうではなかった…!でも……なぜか怒りが湧き立ってくるの…!あの……巫女や…鈴仙が来た日からッ!なぜかはわからない!まるで『あの日』みたいに…あいつが…嫦娥が憎い!お前ら月人もっ…なぜか憎い!」

 

「…そ、そうか」

 

魂を吐き出すような純狐の叫びを受け、サグメは静かにため息をつく。少しののち、ヘカーティアへと目配せ。近づき、小声で作戦会議を始めた。

 

「不本意ながら…ほんの少しでも…スッキリさせてやろう。それしかない。私がヒール…じゃ外来人だな。ビラン…でもないな。ローグ、そう、ローグをやる」

 

「素直に悪役と言いなさいよん」

 

「かっこがつかんだろう」

 

「…ま、いいわ。ヒーローショーってわけね」

 

サグメはワードレッサーを、ヘカーティアはヘルドライバーを装備する。うつむいていた純狐の視線は、二人の方へと向いた。

 

「フーッハッハッハッハ!我こそは天探女(アマノサグメ)!この地上は高天原の支配する世界となり、土着神は奴隷となる!」

 

『コトダーマ!観!』

 

「許さんぞ!三界の女神、ヘカーティアここに見参!お前の野望など止めてみせる!」

 

「「変身!」」

 

『Perfect!HellGod Balance!』

 

『ブレイクオープンドレスアップ!メイクアナライズ!ワードレス!』

 

ヘルゴットバランスフォームと、アナライズワードレス。睨み合う状態の中、純狐は唐突なことに戸惑う。だが、ルンルンした様子のクラウンピースや、先ほどのセリフを思い返し、演じて行う遊戯なのだと納得した。

 

「やったれご主人様ー!」

 

「この宇宙を守るのよー!」

 

二人の声援を受け、ヘルゴットは駆け出した。両者がクロスカウンターでぶつかり、一瞬体勢を崩す。しかしすぐさま立て直し、改めて組み合う形へ。

 

「…適当なタイミングで合図をしろ。そこで私が負ける」

 

「あら、悪役としてその辺はわかってんのね。でも…んなことしてくても私のが強いわよん」

 

「どうだかね」

 

小声で応酬を続けながら、二人は近接戦を繰り広げる。たしかにお互い互角なようではあるが、疲れが見えてくるのはサグメの方である。

 

「…そうねぇ」『Set!Tierra power!』

『Perfect!HellGod Tierra!』

 

「なんのつもりだ」

 

「見た目を変えるのは大事よん?パフォーマンスってやつ」

 

「なるほどな!」『コトダーマ!戦!』

『ブレイクオープンドレスアップ!メイクバトル!ワードレス!』

『シューターフィール!』

 

お互いがその姿を変え、戦いが再開する。ヘルゴットの素早い攻撃をかわしながら、ワードレスは銃撃を放っていく。

 

「…っと!」

 

「へぇ、粘るのね!」

 

「すぐ負けるわけにもいかないからなっ!」

 

そんな状況を、大勢が観戦していた。一発食らわせるたびにガッツポーズをきめるクラウンピースというのも後押しになっているのか、ヘルゴットは派手に、かっこよく、パフォーマンスらしく戦う。

 

「ヘカーティアと…サグメが…!」

 

その様子を、妹紅が見ていた。状況がよく分からない彼女からすれば、少なくとも協力中の二人がああなっているのは異常事態である。焦り気味に、その辺の少年へ声をかけた。

 

「ボーヤ、悪モンはどっちだ!」

 

「…あの人」

 

正直、手を組んでるとはいえ月の民も地獄の連中も妹紅的には信用ならない。オーディエンスに頼ることにしたのだ。少年が指さしたのはもちろんサグメ。妹紅は寂しげにバーンスマッシャーのグリップを5回握った。

 

『over change!』

 

「変身!」

 

『burn up complete!phoenix feather!』

 

フェザーチェイサーが合体し、フェニックスフォームへ。そして、組み合う二人の元へブースターで急速接近。ワードレスへバーンスマッシャーを叩き込んだ。

 

「うごぇ!?」

 

「えっ誰!?あっ妹紅か!ちょっと、え、どうしたのよ」

 

「裏切りモンを倒すんなら手伝ってあげるよ」

 

『over drive!』

 

「フルブライト…ドロオオオオオオォォォォッップ!!!」

 

有無を言わせず、爆熱のキックを叩き込む。完全に不意打ちだったので、対応しきれず爆散。変身が解けたサグメが転がり、同じように変身を解いたヘカーティアはその様子をぽかんと眺めていた。

 

「あーっはっはっはっはっは!妹紅ってば早とちり!」

 

「そうではないだろ…笑い事では…」

 

数分後。ぐったりしたサグメと大爆笑のヘカーティアとピースに対し、妹紅は申し訳なさそうな様子だった。自分の思い込みでショーを台無しにしたのだから。だが、純狐は満足であり、サグメ的にも最悪の形ではあるが目的達成である。

 

「にしても…戦わせちゃってごめんねサグメちゃん」

 

「フン…私はお前らの味方ではない。この戦いだってな」

 

「あら、あなたはヘカーティアの味方ではないの?裏切ったのでしょう?」

 

「……根本的に言えば、裏切ったのも月のためさ」

 

それを聞き、純狐の表情は複雑なものになった。ヘカーティアとピースは、先ほどのように錯乱しないかと純狐を心配そうに見つめていた。

 

「あなたは…月の味方?なら…我々の敵?」

 

「…お互い利用し合ってる敵…かな」

 

「ま、サグメちゃんはその辺の損得わかってるわ。敵と手を組むのもオツでしょ?」

 

ヘカーティアの言葉を聞き、妹紅は考える。明確な敵対勢力が手を組むという、かなりの緊急事態である。彼女自身輝夜を宿敵と認識しているが、この状況ならばもはやそうは言っていられない。

 

「…永遠亭、行ってくるよ」

 

そう言い出す妹紅に対し、四人は付いていくと言う。特にそれを止めず、彼女らは永遠亭へと向かった。

 

「あ、純狐さんだ。長旅お疲れ様です」

 

「あなたは…そう、鈴仙。元気だったかしら?」

 

「そりゃもう!」

 

「鈴仙ちゃん今日は薬いいの?」

 

「てゐの方に売らせに行ってますよ。お願いして」

 

門の掃除を終えたところだったらしく、鈴仙は妹紅を置いてぞろぞろ入っていく三人に付いていく。妹紅とサグメの方は横から庭へと向かい、輝夜の元へ。

 

「居ると思った」

 

「…あら、今日だったかしら」

 

「いや?でも…ちょっと気が向いたからね」

 

「そう?観客まで連れてくるだなんて」

 

「…いい機会だからな」

 

「フフフ、まあいいでしょう。来るがいい!」

 

サグメを観客に、殺し合いを始める、そんな頃。掃除を終えた報告とともに鈴仙が永琳の部屋へ。それに続き、三人が永琳の元へ。なかなかに濃い面子で、永琳はフフっと小さく笑った。

 

「…今日は何の御用でしょうか?」

 

「相談です。私の心の…中の……」

 

「?…どうしたのですか?」

 

答えようとして止まる純狐に対し、永琳は不思議そうに顔を覗く。瞬間、純狐は思いっきり手を振り上げた。しかし、すぐに正気に帰り、フラフラと後ずさる。駆け寄る少女達をよそに、顔を押さえて泣き始めてしまった。

 

「ぇう…月人は憎いけど…それを……理性的にしていられない自分が怖いっ!……いつか、いつか…大事なものまで…!」

 

そう言って涙を流したかと思えば、そのままへたり込んで気を失ってしまった。

 

 

 

 

「お師匠様曰く…単なる過労だそうです。精神的にも疲弊してるんでしょうね」

 

「私達が話してた頃はそんなでもなかったのにねぇ…」

 

「あなたや…私や霊夢、早苗に魔理沙。そういう出会いが刺激になってるんでしょう」

 

輝夜と妹紅の凄まじい戦いを眺めながら、ヘカーティアと鈴仙は話していた。サグメも静かに聞いており、どこか不安な様子。それもそうだ、いつ何をしでかすか分からないのだから。

 

「今は色々吐き出すフェーズなんですよ、きっと」

 

「そうねぇ、ならいいのだけど」

 

「…ランパースは?」

 

「ん?ピースは純狐の様子見てるわよん」

 

「お前はいいのか」

 

「ウサちゃんに相談したかったの」

 

ヘカーティアはぼんやりした目でそう言った。その瞳の奥にあるのは、やはり純狐。友を心配するが故、見守るだけではなく解決を探る。いい友情なのだなと、鈴仙は思った。

 

「…んしょっと。なんだこの金属…。一応地球素材の合金っぽいけどなー。うむむむ」

 

そんな風に考えながら、彼女は機械をいじり続ける。異世界から来た機械、バーサークドライバーだ。とはいえ、ヘカーティアやサグメの話はちゃんと聞いているようだが。

 

「見たことない…な」

 

「ですよねぇ?サグメ様も分からないなら…フィーリングでいくしかないわね!」

 

「見せてくれ」

 

「ヤですよサグメ様おっちょこちょいですから」

 

「えっ、サグメちゃんそうなの」

 

「一応ワードレッサーを作ったのは私なのだが…」

 

サグメはため息をつき、左腕を見る。それでも鈴仙は自分の手を離さない。異世界の自分が作ったものが故に、自分自身が最も信用できるのであろう。この世界で長時間使うべく、改造が要るのだ。

 

「っぐえ!」

 

そんな時、ふすまを張り倒してクラウンピースが吹っ飛んでくる。ヘカーティアがうまくキャッチするが、異常事態に変わりなし。見渡した奥には、立ち上がった純狐が。

 

「…邪魔をするというのね!?」

 

純狐はそう叫び、掴みかかる永琳を投げ、ピースの元へと駆け寄った。だが永琳もただの月人ではない。特にダメージはなく、今一度掴みかかる。

 

「…離しなさい。穢れていても…月の民は許せないッ!」

 

そんな永琳へ、至近距離で光弾をぶちこみ頭部爆散。再生する間に再びピースの元へ。錯乱しているのだろう。予想以上の深刻さで、ヘカーティアはため息をついた。

 

「本当になんだっていうのよ!」

 

「ハァ、ハァ、あなたも私の邪魔をするのね…?残念だわヘカテー!」

 

ヘカーティアへ飛んだのは、純粋極まる拳であった。弱体化しているヘカーティアである。そのダメージはかなり大きい。さらに、同時に後ろで大爆音。燃えカスになった妹紅とバラバラに飛び散った輝夜を尻目に庭へと押し出され友人同士の戦いは続く。

 

「ご主人…様っ!」

 

ピースは未だ立てない。この状況の中、サグメは永琳の方へ向かうことを決めた。脳みそをグズグズ復活させている彼女をしっかり部屋へ運び、再生の助けになるよう医療器具を用意する。そんなさなか。

 

「…っ!?」

 

突如後頭部に重い痛み。完全なる不意打ちだ。薄れる視界の中、黒と赤の影が見えた。ビランアニヒレイトである。

 

『……?なによ、この感じ』

 

倒れるサグメを見て、ビランは不思議そうに首を傾ける。だが、その違和感の正体はよく分からない。白い髪と肌に触れてみるが、特に何かを感じ取れず、ひとまず部屋を抜けて純狐達の元へ。

 

「…っ、なんで…こんなに……」

 

頭を抱えながらも、馬乗りになってヘカーティアを殴り続ける純狐。その様子にビランは仮面の中で笑い、駆け出した。その手には、どこからともなく取り出したターンブレイカーが。

 

『ねぇお嬢さん?自分に素直になりなよ』

 

純狐へとターンブレイカーを握らせ、ヘカーティアから引き剥がす。何を言ってるのよと抗うが、その手はもはや準備を完了しているようだった。

 

『ほら、初めっから()()()()()でこんなことしてんでしょ?』

 

「違う…私は……仕方なく…」

 

『あっはっはっはっ!仕方なくであぁーんなえげつないことできないわ・よ・ん♪』

 

その声に完全に負け、純狐はUSBをターンブレイカーへとセットした。電子音声が響き、純狐はゆっくりとナックルを押し込む。紫のオーラが爆発するように放たれると、そのまま鎧を形成する。

 

『turn on!   girl!フィルトレッジ!』

 

彼女の服がそのままアンダースーツとなり、クリアーのアーマーが装備された。さらに顔の狐風のマスクも若干透け、純狐の虚ろな顔が見える。

 

「……あぁ…うぅあああ!」

 

「…変身」

 

『Perfect!HellGod Luna!』

 

言葉を忘れた憎しみの絶叫とともに、駆け出す。ヘカーティアも防御に寄った形態に変身し、フィルトレッジとビランの攻撃を耐え凌ぐ方向へ。妹紅は再生中、サグメは気絶中、ピースは再起不能。ライダーのアイテムを持つのは鈴仙のみ。

 

「…最終調整なしのぶっつけねぇ」

 

『セット・ジェネラル…』

 

「C、H……011000!」

 

『コード認識・チェンジモード』

 

トランシーバー型アイテム『バーサークドライバー』へカードをセットし、コードを音声入力。待機音が響く中、左手にバーサークドライバーを持ちかえ、円盤を回転させる。

 

「変身!」

 

『全てをcontrol…アルナブジェネラル!』

 

奥のフィルトレッジを指差し、バーンと銃のモーション。同時にカードの模様が畳サイズに出現。そこから現れたホログラムの兎が畳をぶん投げ、鈴仙へ叩き落とす。同時に粒子がスーツを成し、アルナブへ変身が完了した。

 

「ブチ抜いてあげるわっ!」

 

そうして手を銃のようにし、狙うのはビラン。そうしていつもの弾幕のように、指先から光弾を放つ。だがその威力は、弾幕ごっこの『遊び』のためのものからは程遠い。

 

「目を覚ましなさいよっ!」

 

「あああああああ!!!」

 

同時に、ヘルゴットは友人のため剣を構え斬りかかる。割れたアーマーがすぐ再生し、ひるみもしない。放ってくる光弾を防ぎながら、ヘルゴットは何度も立ち上がる。

 

「…うぅおおおおおおおおお!」

 

「なんとか言いなさいよッ!」

 

斬りかかるヘルゴットを蹴り飛ばし、同時にアルナブもビランの切り返しに後ずさる。意図せず背中合わせになった二人はクルンと位置を入れ替え、敵を交換した。

 

『Perfect!HellGod Alien!』

 

「たっ!」

 

ヘルゴットがフォームチェンジする中、アルナブはサイドバックルから『ルナティックマグナム』を取り外し、銃撃戦を繰り広げた。だがフィルトレッジの攻撃は激しい。ビランとヘルゴットが拮抗する中、アルナブは押されつつあった。

 

「…っ!」

 

「…?」

 

突如、アルナブが攻撃の手を止める。疑問を浮かべ、フィルトレッジが攻撃を止める。しかしコレはチャンス。絞め落としてしまおうと、腕を伸ばした。

 

「…フフフ。あっはっはっはっは!もう危ないなァ純狐さぁあん!!」

 

「!!」

 

しかし次の瞬間、アルナブはフィルトレッジへと超至近距離銃撃を浴びせる。怯む彼女へヤクザキックを叩き込み、さらに首につかみかかる。

 

『セット・ナックラー…』

 

「CH 011000!」

 

『コード認識・チェンジモード』

 

さらにパンチを叩き込まれ、割れたマスクを再生させながら純狐はアルナブを睨み付ける。体勢こそ怯むが、体へのダメージは小さい。そんな彼女を前に、アルナブはカードを入れ替えてフォームを変えた。

 

『全てをdelete…アルナブナックラー!』

 

「アッハハ!ハッハッハッハッハッハ!!なんか楽しいです!うふふふふ、ねぇ純狐さんっ!」

 

「……うぅえあああああああああああああ!!!!」

 

駆け出すアルナブのアーマーが変化する。頭部や胸部の赤紫のアーマー、全身のブースター、赤いつり目。凶悪なデザインが目を引くナックラーフォームである。

 

「はっははははは!!!」

 

「…ぅうええええああ!」

 

ルナティックマグナムをナックル型に変形させ、思いっきり殴りかかる。受け止めるフィルトレッジだが、そのダメージは先ほどより明らかに増している。

 

「あっはぁ!ははははははは!!」

 

「…っ」

 

さらにアルナブはその手を止めない。ゴリゴリと攻め込んでいく。…が、まだひと押したりない。アルナブの手は緩まないが、しかしフィルトレッジも下がらない。

 

『…くっそ』

 

「あんたもタフねぇ」

 

また、ビランとヘルゴットの戦いも一進一退を抜けない。パワフルに攻め込むが、それが単純に通じる相手でもないのだ。そうして全く進展しない、そんな時。

 

「…見つけましたよ。困るんですよねぇビランさんこういうの」

 

『X!』

 

どこからともなくドレミーが現れ、ビランへ告げる。その手には、エックスゴースター。「眠妖」の掛け声とともに、そのトリガーを引いた。

 

『tipper…change』

 

放たれた粒子が鎧とスーツを形成し、ズェッケロティパーへ。後ろから殴りかかったヘルゴットへ、振り向きもせず銃撃。キックでも食らったような衝撃波とともに、ヘルゴットは地面に叩きつけられた。

 

「…純狐さんは問題なさげですね。ライダーたちにやらせちゃっていいでしょう。で、も、あなたにはもう少し落ち着いていただこうかと」

 

『何よ偉そうに…私に指図しないでくれるかしら?そもそもへぶっ!?』

 

「減らない口ですねぇ。ほら、帰りますよ」

 

抗議するビランへぶつけたのは、軽い蹴りであった。だがそれだけでも竹をなぎ倒して9mほどぶっ飛ばす威力である。仮面の下で気絶した様子のビランを引っ張り、そのまま姿を消した。

 

「ちょっと予想外だけど…邪魔者が減ったわね」

 

「きゃはっ!!えへへへへ!!行きますよ純狐さーん!」

 

「…ユルサナイ…ジョウガ……邪魔ヲスルナァ!!!」

 

透けるマスクの下、純狐は必死の形相で叫ぶ。ようやく言葉を取り戻しつつあるようだが、片言だ。ただ一応言葉の様相を呈した、恨みの塊とでも言うか。復活が進み、引きずりながら身を起こす妹紅は、その様子にかなり気圧されていた。

 

「だああああああ!」

 

「あっはっはっは!えーい!」

 

だが、地獄の女神と狂気にあてられた兎は怯まない。両者駆け出し、同時にフィルトレッジにパンチを叩き込んだ。攻撃特化形態二人での攻撃というのもあり、大きめに隙を晒した。

 

「そいやー!」

 

「うぉらああ!」

 

「レイ…セン…ヘカー…ティア……ナゼ…!」

 

続けてアルナブが光弾を掌底と同時にぶつけ、ヘルゴットが斧を思いっきり叩きつける。純狐は恨み言のように、なぜ邪魔をするのかと吐き出した。暴れ続けるアルナブをよそに、ヘルゴットはその手を止める。

 

「…余裕を失ってはいけないわ。今回は見逃してやる、っていう余裕!それがなければ勝てないわよ。相手がアレならね」

 

「…ヨ…ユウ……アァ…ああああああああ!!」

 

「叫んでて楽しそうですねっ!ふふふふ!」

 

戸惑うフィルトレッジへ、アルナブは攻撃をぶつけていく。ヘカーティアとしても、変身の影響で純狐がおかしくなっているのは想像に難くない。ゆっくり必殺を構え、同時にアルナブもカードをマグナムにセットする。

 

『InvocationDeathblow!』

 

「ぜああああああああ!」

 

『ナックラー!マインドストライク!』

 

「あっはは!ツインナックル〜マグナム!!ハハハハハハハハハ!!!」

 

ヘルゴットは腕から鎖を放ち、フィルトレッジへ巻きつける。そしてその鎖を引き寄せ、その勢いで近づきながら拳を叩き込む。同時に、アルナブは左手にナックル型のエネルギーを作り出し、右手のナックルモードのマグナムと同時に発射。ロケットパンチがフィルトレッジへ追撃を繰り出した。

 

「ぅあぁ…ああああああああ!!!」

 

絶叫を上げ、爆発と同時にアーマー弾け飛ぶ。煙の中から、純狐が膝をつく。さらに追撃を繰り出そうとするアルナブからドライバーを奪い、カードを抜きながら、変身を解いたヘカーティアは純狐を見つめる。

 

「……あぁ…私…あなたに…こんなこと…ごめんなさい…」

 

「いいのよん。貴女は一度落ち着いて吐き出す必要があるわ」

 

そんな二人の様子を、ようやく完全回復した輝夜が眺めていた。それから程なくして、純狐は仙界へと帰ると告げた。永琳のカウンセリングも断り、彼女は夕陽と共に竹林へ出た。

 

「…また、何かあったらくるのよん?」

 

「ええ、でもここは刺激が多すぎるわ。私は大人しくこもっていることにします。また、来てね?ヘカテー」

 

「もちろんよ」

 

純狐の背中に静かに抱きつき、ヘカーティアは数分を過ごした。寂しいけれど、コレが一番純狐のためになるのだ。ヘカーティアとクラウンピースは少し悲しそうな顔で手を振った。

 

 

 

 

 

(…月の要人……まさか…XX(嫦娥)様が?いや、そんなわけないわね!)

 

無言無表情であるが、心の中の稀神サグメはかなり表情豊かである。永遠亭のあたりの謎の電波を探りながら、サグメは考える。PCのようなマシンをいじる、そんな中。

 

「…財団X!?」

 

驚愕のあまり声を上げてしまう。そう、電波の発信源と発信先を探るなかで、謎の組織のサーバーへ侵入できたのだから。横で地球産のPCをいじり、財団Xを検索する。

 

(聞いたことある名前だと思ったら、やっぱりね。でも、このサーバーが…本当にTVの架空組織のパロディなんかだったりするのかしら?)

 

さらにハッキングを行い、部分的だがエックスゴースターの設計図を発見した。なぜ『平成仮面ライダーシリーズ』に登場する組織と同じ名前か。そんなことはもはやどうでも良くなっていた。いったい何であるのか。それが最も重要だ。

 

『……わ…さ……ぐ………、っと、繋がった。サグメさんってば良くないですよ?ハレンチです、覗きだなんて♡』

 

「…!?」

 

画面に現れたのはドレミーであった。ノイズがかった映像の中彼女は語り、最後に指を弾くと同時に画面が割れた。ため息をつきながら、サグメは続ける。

 

「……鈴仙の通信機ね」

 

発信源は突き止められた。どこかで盗聴器具でも付けられたのだろう。携帯通信機を破壊させるべく、サグメはその席を立った。

 

 

 

 

「…つまり…君は永遠亭の側に着くということだな?」

 

「ああ、そうさ」

 

「いいんじゃないか?君も輝夜を他に殺されたくはないだろう?」

 

「アイツはあんまり出歩かないけどね」

 

同じころ。中途半端な形の月光に照らされながら、妹紅と慧音は話す。酒を片手に、静かに夜は進む。

 

「…寺子屋の子達もな、怪人に対してそれなりに恐怖を吐き出している」

 

「…そっか」

 

「ああ、頼んだぞ。頼りにしてるからね」

 

慧音の言葉を受け、妹紅は改めて覚悟を決める。カチンと器をぶつけ、今一度乾杯。酒へと月光を写し込んだ。

 

Continued on next episodes.




「豊聡耳さん…私は……霍青娥を殺す!本尊としてではなく…ただの虎として…!」

「変身!」

仏教と道教、その行末は?
次回、「数多の欲望の星空」

皆さんこんにちは!フランはキャハハ壊したい!系のクレイジーでは絶対ない根拠は文花帖侍のサードニクスです。なのでその役割は暴走モードのアルナブへ。フランはどうなるのか。お楽しみに(?)
実はこの26話、めちゃくちゃ急に差し込んだものでして、31話プロット作成後に挟んだものだったりします。対し次の会は前々から予定のあったもの!書きたかった話であります!
今回はアルナブ初変身でした。急な気はしますが、仕方ないね!!!

さて、みんなの!変身ポーズコーナー!
今回はプランゼございます!余談ですが、私の提案した「プランツェ」が発音しづらいとのことでそう言う名前になったという経緯があったり…。
あまりポーズをつけるべからずという発注通り、ほとんど無いと言って差し支えないポーズですね。
まず両手を下腹部あたりにかざし、ベルト出現!ゆっくり手を広げることで変身完了です。


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第27話 数多の欲望の星空

お待たせしました


「……もう会えない…あの会えた瞬間が…一番…………」

 

「…そう、ですか」

 

7/9昼ごろ、光の入らない薄暗い霊廟の一室。聖は青娥から話を聞き、その様子を書き出していた。あまり多くの情報は得られないが、これが少しでも彼女を助ける手立てになれば。その思いが彼女を動かしていた。

 

「…これ、ちゃんと食べてくださいね?」

 

仙人にとって食物は不要だが、食べることを習慣にしていた彼女にとっていくらか気分転換になるのはず。そう思って屠自古は青娥の分を作ることをやめていなかった。

 

「…どうだ?」

 

「一応、前よりは食べるようになってます。味わうっていう、原始的感覚は…戻ってきつつありますよ」

 

「…そうか」

 

そうして、聖は食べかけの朝食を屠自古へ渡す。彼女はどこか悲しそうに、台所へ向かった。入れ替わりに神子が現れ、聖が話しかけようと歩き出す。

 

「…っ!」

 

「あぶなっ…いなぁ!」

 

もつれるように転んだ聖を受け止め、神子はため息をつく。見てみれば、彼女の顔はかなり疲れているようである。そのまま抱え上げ、神子は聖を布団に寝かせた。

 

「休んでいろ」

 

「でも…他の勢力の人達が……」

 

「ドグマには私が変身してるだろう?君以上に扱ってやるさ。芳香が青娥を任せると言ってくれたのも私だとも」

 

そう言って、芳香のターンブレイカーを見せ、去っていく神子。聖はため息をつき、その背中を見送った。自分はそこまで消耗しているわけではないのだが。そんなことを考える。

 

「太子様はあんたにイイところを見せたいんだろう」

 

「何ですって?それは…どういう…」

 

「それ以上の意味はありはせん」

 

そんな風に残し、布都は去っていった。いまいちよくわからないまま、厚意に甘え、休むことにした。昨日の夜、少し術もいじっていた。疲弊していたのは事実であり、そのまますっと眠りに入っていく。

 

「…霍青娥なんかに…邪仙なんかに…」

 

「そう言ってやるなご主人」

 

「……そうですね」

 

聖の様子を見て、星はため息。ナズーリンの言葉を受けながら、彼女は青娥の元へと向かった。少し暗い部屋に軟禁された彼女。その腕や足、口には自殺防止の拘束具が。苦しくないよう最大限の配慮があるが、それでも痛ましい。

 

「…寅丸さん」

 

「霍さん。あなたは……何がしたいのですか?」

 

ぐるぐる考えたのち、星が出した問いはそれだった。自分の…しかも他人を巻き込んだ欲のせいで面倒を起こした霍青娥。しかし、彼女の瞳に力強さはない。気持ち悪いのだ、直球に言えば。

 

「会いたい…。桓さまに。もうこの世に………用は無くなりましたの。だから!」

 

暴れはじめた彼女を宥め、星はその部屋を後にした。出口に立っていたナズーリンが、薄くため息をつく。そしてスッと切り替えると、星に買い物のお誘い。

 

「いいですね!行きましょう!」

 

「ならよし。準備をしてくれご主人」

 

その言葉に頷き、ささっと外出準備を完了。人里へと繰り出した。人里はいつも通りの賑わいである。そんな中、演説中の早苗に出くわす。

 

「えー、しかも!最近は夜遅くに、人を追いかけ回す謎の不審人物まで!妖怪かも分かりません。絶対に戸締りはちゃんとしておくのです!」

 

「えー!どうしよう姫!」

 

「影ちゃんは強いから大丈夫よ」

 

フードの少女が怖がるのを、車椅子の少女が慰める。微笑ましいですねと笑う星に、気づいてないのかとナズーリンが呆れのため息。そう言われてもなお、星は首を傾げる。

 

「妖怪だろうあの二人。怪しい雰囲気でわからないかね…」

 

「え?あー、確かに匂いが」

 

「……ま、そう言うことさ。なんだって不審者を怖がるんだか」

 

けらけら笑うナズーリン。その後ろに続き、買い物を続けた。そんなふうに野菜をいろいろ見る彼女たちのもとへ、ぬえが現れる。

 

「お、夕飯?」

 

「ええ、そうですよ!」

 

「ああ、そうそう。今日はご主人は私の家の方に泊まる。聖に伝えておいてくれ。なんなら君も来るかい?」

 

「いいの?だったらマミゾウに伝えて貰おうかなー」

 

そう言うと、ぬえはぴーっと口笛を吹いた。するとどうだ。何処からともなくタヌキが現れる。そいつへマミゾウへの伝言を残し、とてとてと去っていくのを見送った。

 

「よし、じゃ、買い物続けようか。私も着いていくよ」

 

「そうですね。野菜はあらかた買っちゃいましたしー…」

 

「魚でも買おうか」

 

「ナズーリンはともかく星的にはいいの?」

 

「ご主人は別に修行中ってわけでも無いさ。それに御本尊!虎であるからにはご飯ぐらいしっかりしてもばちは当たるまい」

 

ならいいかとぬえはうなずき、三人は魚屋へ。そこには先程の演説を終えた早苗が居た。近くの魚屋なのだが、いわゆる仮店舗。売りに来た潤美の店なのだ。

 

「おー、外では見ない魚ですねー!」

 

「そうなの?潤美の奴がよく売りに来るから知らなかったなー」

 

「三途の川で獲れるのは絶滅種だけだからね。外では買えなくて当然だ」

 

「確かに幻想郷で初めて見た魚ばかりだね」

 

興味津々の早苗に対し、ぬえと潤美が言う。その言葉に、早苗の興味はますます魚に向く。ナズーリンはと言うと、手頃な魚を一つ。それでも結構大きいので、三人には十分である。いつも通りに潤美にお礼を言うと、買い物袋片手に家へと向かった。

 

「「「いただきます!」」」

 

封獣ぬえはああ見えてそれなりの礼儀は知る女。手を合わせ丁寧に告げると、綺麗に食事を始めた。魚のみの崩し方からも、その丁寧さが伺える。

 

「…さて、君はどうするんだい?」

 

「どうする、っていうと?」

 

「とぼけなくていいさ。ぬえ、君が何かしら動こうとしていることぐらい察しはつく。牛の首の件だって、私はお見通しさ」

 

ナズーリンの物言いに、ぬえは参ったよとでも言うようなポーズをとる。対し星はイマイチ状況が飲み込めていない。頭は悪くないが、はかりごとをするタイプではないのだ。

 

「ま、ご主人は気にせんでもいいさ。ぬえの動向に対して思うことがあるわけでもないんだろう?」

 

「まあ、そうですね」

 

「話半分で聞いててもいいさ。で、君は結局どうするつもりなんだい?」

 

早々に食事を終え、ゆったり続ける二人をよそにナズーリンはぬえの方へと詰め寄る。やれやれと言うふうな様子で、ぬえは口を開いた。

 

「正直どうしようって考えはないんだよねぇ。人里の掌握には興味ないし」

 

「まあ、確かに野心家ってタイプでもない、か。君は」

 

「どうだかね。…多分聖達の手助けをするかな。この前妖精どもに痛い目見せられたけどさー」

 

米の最後の一口を飲み込んだのち、ぬえはつまらなさそうに言う。周りの勢力もかなり強くなっているのは事実。ナズーリンはしばらく考え込み、ため息をついた。

 

「こんな時に…霍さんは……」

 

「文句を言っても仕方ないだろう。もとより彼女を頼る気にはならないな私は」

 

「そもそも神霊廟の奴ら自体信用ならんのだけどねぇー」

 

ため息と共に、酒をあおるぬえ。酔う量ではないが、興が乗ってきたもよう。半ば認めているようなことも言ったかと思えば、文句。慣れてるんだがそうじゃないんだかよくわからない雰囲気である。

 

「…話変わるけどさー」

 

「急ですね」

 

「明日のヤツ、見に行くよね?」

 

「こころのかい?それはもちろん」

 

そう言ったかと思えば、ナズーリンは家にかけられた時計へ目を向けた。もうそろそろ休もうじゃないかという彼女の言葉を受け、少女達は就寝した。

 

 

 

 

「貴様の命、貰い受ける!」

 

こころの披露するものは大衆に受けるように、かなり劇めいている。分かりやすく、話も聞きやすい。激しい動きや静かな動きを一人で表現し、落語のような特性も持っているのである。

 

「おぉー…コレは…いいな!」

 

「能、ではないと言っていましたが…こういうことだとは」

 

「……」

 

神子と聖が眺めるその横で、青娥もまた静かに見つめていた。外の空気を吸い、しっかり外を見れば気分も変わるものかと考えてのものである。うつろな視線のまま、じっとりとこころを見つめた。

 

「死してまた会おうぞ!貴様の代わりなら我がしてやる!」

 

「…死、して。……代わり!」

 

こころが放ったセリフを聞き、突如青娥の目が煌めき始める。そして何かが壊れたようにげらげら笑い声をあげ、舞台の方へと駆け出した。止めねばと走る聖を蹴り倒し、その口からタオブレイカーを吐き出す。

 

蒼光(ツァングァン)!」

 

(turn on)!desire girl!アズーロレイ!』

 

「あんなところに隠していたのか…!」

 

「ええ、何かあった時に、と思いまして。…私に足りなかったものが分かりましたわ」

 

霍青娥は目的のために手段は選ばない。そこに正義も悪もなく、純粋に霍青娥のみがある。目的のためならば誰かを救い、目的のためならば誰かを殺せる女なのだ。変身した彼女を見て、観客たちは一気に下がっていく。

 

「…何をするんだ」

 

「さぁ?」

 

アズーロレイはとぼけて見せた。神子が手綱を取れていないこの状況で、霍青娥は手段をそのままに選ぶはずだ。そしてこの状況なら、最悪の手段が彼女にとっての最短だという事もありうる。

 

「よくも私の舞を邪魔してくれたな!許さんぞ!!」

 

『get started!』

 

「どいつもこいつも邪魔ばかりだ!!!醒妖!!」

 

『turn on!emotion girl!マスカレイダー!』

 

飛びかかるマスカレイダーに、アズーロレイは光剣で迎える。巨大な扇を跳ね返すが、そこにのけぞりを見せる。今の隙にと聖がエイディングドライバーを鞄から取り出すが、それを神子が奪うように取った。体調が万全でなく、さらに先ほど蹴られたという事実もある。星も聖を守るようにし、神子を見送った。

 

「うっぐ……。強いな青娥!肉弾戦もできるとはな…」

 

「術のおかげですわ。…あなたに用はないのよ。邪魔をしないでくださるかしら!」

 

「だが私から文句があるのだ!!」

 

駆け寄る神子を尻目に、マスクの下で青娥はため息をついた。この状況、不利である。こうなれば仕方がないと、彼女は札を取り出し、マスカレイダーへと貼り付けた。

 

「本当なら私の強さを見せつけたかったのですけど…。利用するしかなさそうですわ」

 

「…ん!?体が動かんぞ!いや、勝手に動いている!?」

 

「洋服を使って拘束、擬似キョンシー化を施す術です。全身にぴっちりのスーツならなおさら。どうもライダーの皆さんには効かなかったのですが…ターンブレイカーの防衛システムはあまり強くはないようですね」

 

そういうと、くるんとマスカレイダーの向きを変え、背中を押した。神子の方である。関節が曲がりづらくなったようであり、その動きはキョンシーそのもの。スーツが操られているだけとは言え、見ていて気分のいいものではない。

 

「おぉ!?おう!?助けてくれパ…神子ー!!」

 

「…もちろんだ。変身!!」

 

『heavy!変わらぬ麗光(れいこう)!続くは研鑽(けんさん)!揺るがぬ神仏!』

 

聖が見届ける中、ドグマがマスカレイダーへと斬りかかった。だがパワー自体は結構上がっており、すぐに倒れるというものではない。さらにアズーロレイの蹴りを貰い、怯んでしまう。

 

「くそっ…」

 

「愛する者が居るからといって……貴女は…!!」

 

星が声を上げ、槍を構えて突撃する。だが放った衝撃波を受け、触れることすら叶わない。そうして、今一度ドグマとアズーロレイが向き合う。一対二の状況だが、外部から見ればただの仲間割れ、他勢力からすれば放っておくのが吉であるのだ。…だが、一度神霊廟に突っ込んだ身である彼女は黙っていなかった。

 

「ていやーー!!東風谷早苗の参上ですよ!」

 

「早苗さん!」

 

フルブレッサーのペダルを激し目に漕ぎ、ドグマと怪人二人の間に割って入る。目立ちたがりや人の良さ、様々な理由を背負い、キラッと歯をきらめかせた笑顔を浮かべてぬさを向けるのであった。

 

「さてさて、ここで守谷神社のすごさを見せつけるとしましょうか!変身!」

 

『OK!ROKUMONSEN! black monotone!』

 

シュバルツディーアティーとなり、その武器フロッグブレイカーを構える。やれという命令に不本意ながら体が勝手に従うこころへ、そいつをぶつけた。

 

「ナイス威力だ!だいぶ痛いぞ!この調子でスーツを爆破しろ!」

 

「殴った相手にこれ言われると調子狂うなぁ…」

 

モノがもう一度突撃するその横で、ドグマはアズーロレイへと攻撃を繰り出した。剣と剣がぶつかり、双方が怯みを見せる。しかしそこを埋めるようにドグマがブレストミサイルを飛ばし、一気に隙を作った。

 

「…っ」

 

「考え直すんだ、青娥。欲望のために破滅をしては本末転倒ですよ」

 

「勝手を言わないでくださいまし。私はね、このために生きてきたんだと、月食の日に思えたのです。あの人に自分を高めること以外のことを教えてもらったのです!!」

 

「…」

 

青娥の目的は夫である。神子は彼女から、『もう一度会いたい』という欲の爆発的な膨らみを感じ取っていた。そう、もう一度会う方法を見つけたのであろう。理由が理由なので、完全に止めてやる気にはなれなかった。

 

「どりゃあああ!!!」

 

「おっご…おっ、ばちばち行ってるぞアーマーが!あとちょっとだ!」

 

「ちょっと待ってください……硬いですね…疲れた…」

 

「諦めたら終わりだぞ早苗!あーほらほら!私の体が勝手にお前に襲い掛かろうとしてるぞ!!」

 

「……」『波羅羯諦!』

 

膝をついて肩で息をするモノを見て、ドグマは必殺を発動させた。その場を退こうとするアズーロレイへ斬撃をぶつけつつ、発射!宙を舞う火炎雷撃ミサイル皿ビームが、マスカレイダーとアズーロレイへと直撃した。

 

「うごっっ……自由だ!ハッハッハ!」

 

相変わらず無表情のまま狂喜乱舞のこころ。未だ倒されてはいないアズーロレイへ、ライダー達の敵意が向いた。よろよろ立ち上がりながら、アズーロレイは星を見つめる。

 

「足りなかったのは…魂と神通力ッ!!」

 

そういったかと思えば、がしょんがしょんと腕の装甲が変形し、その手から禍々しい術を放った。余りにも急のことで、避けきれない。目をつぶった彼女が次の瞬間に見たのは、自分の身を突き飛ばすナズーリンだった。

 

「うっ…くぅっ……なんだこれ…」

 

「さぁ、なんでしょうね、フフ、フ……」

 

青娥にも負担が凄まじいようだ。いや、むしろ青娥の方が、だろうか。ナズーリンは割と余裕があるように立つのに対し、青娥がかなりキツそうに身を引きずっていくのであった。

 

 

 

 

「それって…!?」

 

「…ええ、死ぬ…と、言うより毘沙門天様の御本体に強制移動とでも言いましょうか。そして二度と…こちらの世界に来れないかも、知れませんね」

 

沈み込んだ様子で、聖は言う。壁に背中をかけて座るナズーリンが、自分がこれからそうなるのか、と少し怯えたような様子を見せた。静かに考え込むナズーリンに対し、星は騒ぎ立てる。

 

「そんな…でも……っ!!」

 

ナズーリンは神通力を奪われ続けている。それは彼女の生命につながった力を失っていると言うことである。神通力を分け与えながら解術を試みるが、効かない。

 

「まあいいさ、この中で死の意味が一番薄いのは私だ。毘沙門天様に霊として仕えればいい話だし、私の代わりなら来るさ」

 

「それはダメです!貴女と…会えなくなるなんて……」

 

「…やめてくれよ。そんな顔されると死にづらいだろう」

 

ぐっと星の頭をどけながら、ナズーリンは言う。青娥の術ならばと神子と布都も見てみるが、どうもわからない。複合的に様々な様式が使われており、複雑を極めている。

 

「…はぁ、どうにか力押しなら解けそうだが……そのレベルの仙力はなし、か」

 

「力押しで…?」

 

「知恵の輪を筋力で開ける、と言えばわかるか?だが我らそんな力はないんじゃ」

 

ため息をつく神子を見て、星の焦りは爆発する。こうなれば青娥に無理やり解術をさせてやると、彼女は命蓮寺を後にした。虎の走力というのもあり、そのシルエットはどんどんと小さくなっていく。どこへ行くのですかと聖が呼ぶ声も、もはや聞こえなかった。

 

『……聞いたよ、あんた部下が死にかけてるらしいじゃないのよ』

 

駆け抜ける星に、ノイズのかかった声がかかる。思わず立ち止まる彼女に、木の上からビランが言葉を飛ばしていた。青娥を唆した者である。ナズーリンのことをどう知ったのかという疑問はあったが、前面にはただ警戒を見せる。

 

「…何の用だ」

 

『教えてあげるのよ、この私がね』

 

「…お前の話を……」

 

『ナズーリン!…生かしてやりたいでしょ?』

 

「…っ」

 

『必要なのは仙人の魂よ。死神から狙われるのを思えばわかるでしょう?仙力や生命力がたっぷりなの』

 

その声を聞き、星の心が揺れていく。そして、ビランが握らせた注射器を拒みきれなかった。右手に握ったそいつを見つめ、星は深く息を吸う。どうすればいいのか。

 

「…そいつから離れろ寅丸!」

 

「星!!」

 

「豊聡耳さん…聖…」

 

『そいつだなんて…大層な言い方ねぇ』

 

駆けつけた聖と神子へ、ねっとりした鋭い視線を向けるビラン。想像できない仮面の下だが、それでも視線を感じる不気味さである。そんな彼女の前に出て、星は神子を見据えた。

 

「豊聡耳さん…私は……霍青娥を殺す!本尊としてではなく…ただの虎として…!」

 

「…は?」

 

「何を言ってるん、ですか?」

 

「そのままですよ。私はナズーリンのために…あの人の魂を利用します」

 

「…そうか、それならば!」

 

「神子!」

 

エイディングドライバーを構える神子へ、星は右手の中の注射を腕に突き刺しながら駆けた。どくんという鼓動ののち、トラ女へと変異し、野性的に飛びかかる。聖は急な状況に慌てふためき、どうしようか思考をめぐらせる。

 

「何だと…!」

 

『よそ見は良くないわよ?』

 

さらにビランからの銃撃も入る。避けながらも怯んでしまう彼女の手から、トラ女はドライバーと巻物を奪い取った。さらに蹴り上げを叩き込み、受け身を取る神子が落とした仏に腕輪を拾った。

 

「…まさか!」

 

「初めは出来なかったのですが…この巻物があればできるようですね。貴女が出来ているのですから。…変身!」

 

『heavy!閃光!救って!栄光!描いて!』

 

その身にアーマーが着せられ、仮面ライダードグマが姿を表す。緑色に目が煌くその姿は、デザインの元だけあってかなり星に似合っている。

 

「やめなさい星!!」

 

「貴女の言葉であっても私はやめるわけにはいきません!!」

 

「…話を聞く状態じゃないだろう」

 

ツメを向け、脅すように睨みつけるドグマに、神子はジリジリと下がっていく。ビランが楽しげに眺めるなか、神子は服の中にしまった物を思い出した。

 

『get started…』

 

「…えっと、何だったっけ」

 

「それ芳香さんのですよね?なら…ほうしゃく、では」

 

「そうだった。芳嚼!」

 

『turn on!decayed girl!メタリカ!』

 

ツメを向けたまま警戒を解かないドグマ。それを前に、神子は託されていたターンブレイカーでメタリカへ。結果として、青娥を助けるために使う事になったとも言えよう。

 

「はっ!」

 

「でやああ!」

 

肩からのレーザーを避け、メタリカはピンと伸ばし足で蹴りを喰らわせる。神子用で調整された物ではないが故、かなり動きづらい。それどころかところどころの関節は曲げることを想定されていない構造だ。

 

「どっせい!!」

 

「大した威力じゃあないですね!!」

 

ごりごり追い詰められていき、不利であるのが良くわかる。当然といえば当然である。さらに観戦しているビランが入ってくれば、もはや勝ち目はない。

 

「ったく……勝手に騒いでくれるわねぇ」

 

「ほらほら、いいから助けましょ!白蓮さんと神子さんが居るから…ドグマは敵なんですね!」

 

そんな時、間に入ってきたのはハーミットとリブレッスだった。紅飛馬とタートルライダーから降り、ビランとドグマへ駆け寄り、カクガとガイネンブレイカーを構えた。

 

 

 

「…フフ、フ……魂、を……」

 

その身を引きずりながら、青娥は命蓮寺へと近づいていた。季節は夏、鋭い日光が刺さるなか、彼女は響子の背中へと近づいていた。

 

「うぁっ!!」

 

「…油断も隙もねぇな」

 

そんな青娥を止めたのは屠自古であった。膝をつく青娥を睨みつけ、さらには詰め寄る。そんな時、今一度身を引きずって立ち上がる青娥へと近づいたのは芳香であった。

 

「…大丈夫か?」

 

「芳香ちゃんは優しいのね。…大丈夫よ」

 

「苦しそうだぞー?なんか、つらそう」

 

「辛いなんてことあるものですか。やっと会えるのよ。会いたかった人へ」

 

そう言って青娥は芳香を撫でる。襲われかけた事に気付いていなかった響子は、首を傾げてその様子を見ていた。屠自古は、ため息をつく。

 

「自分の作ったキョンシーに心配される仙人があるかよ。お前、鏡見てみろよ」

 

屠自古が指さしたのは、昨日の夕立のあとの水たまりだった。映る青娥の顔は疲弊し切っており、クマややせこけがひどく目立つものだった。男を狂わせると神子が言った事がある。それほどの美しさも、感じられないものだった。

 

「……。これもまた、あの人に会うためなんですよ」

 

「今まで出会った全員に見限られてもか?」

 

「…っ」

 

「前、言ってただろ。記憶の顔もうっすら消えつつあるって。なんだって急にまた会いたいだなんて言ったんだかな」

 

「たまたま術を思いついただけですわ。冥界について調べていた時に」

 

そうかとため息をつき、屠自古は髪をかりかりとかいた。そうして今一度青娥へと目を向け、口を開く。

 

「私とお前の付き合い、何年だっけ?1000年?」

 

「だいたい…1400年ですわ」

 

「そうか…その関係、今更捨てる気なのか?」

 

「……」

 

「私としちゃ、そりゃお前なら必要とすればやるだろうなって感じ位だからさ。特に失望もしねぇよ。でも…立場ってもんはどうしようもないからな」

 

「そう、ですね」

 

「お前の夫が喜ぶかはこの際無視してやるよ。知った事じゃないからな。だが…それからの数十年のために今までのものを壊せるのか?」

 

黙って考えこむ青娥に、芳香が近づく。首を傾げて心配そうに見つめる瞳に負けたのか、彼女は指を弾いてへたり込んだ。

 

「…霍青娥!!」

 

そんな時、神子と聖に連れられ星が命蓮寺へと戻ってきた。ハーミットのトリックモードにしっかり負け、ビランもリブレッスが追い払っていたのだ。

 

「……寅丸さん」

 

「貴女という…人はっ!」

 

「よせご主人!私の術は解いたんだ!」

 

「!…それは、よかったですが……でも!!」

 

いつのまにかそこにいたナズーリンが言う、星は止まらない。青娥の襟首を掴む星を引き剥がし、聖は星の肩を掴んでその瞳を見つめた。優しさに満ちた目で。

 

「貴女だって、傷つけたでしょう?愛するもののために。神子を」

 

「それは…!」

 

「なんなら殺す気だったでしょ。心あるものは愛が関わるとちょっと乱れちゃうんです」

 

「ちょっと…乱れちゃう…」

 

「それが一度バランスを崩せばこの通り。それは決していいことではありませんが、攻め切れるものではありません。私も…弟を慕っていただけのつもりが……こんなとこにまできてしまったんですから」

 

「…」

 

「魔界で知り合った人…西行兄さんは言っていました。俺はそれが怖くて妻を残して旅立ったのだと」

 

ゆっくり語り掛けられ、星の表情は沈んでいく。その顎を優しく持ち上げ、聖は微笑みを送った。そうなって、彼女は初めて冷静に自分の姿を見た。邪仙とする事が同じ…いや、憎しみもあって動いていたぶん、自身の方が醜いかもしれないと。

 

「……ごめんなさい。貴女に対して…私は感情で殺意を向けてしまった」

 

「そう、でしたのね。当然といえば当然でしょうけど」

 

何かが抜け落ちたような声で、空を見上げながら青娥は呟いた。色々な事がどうでも良くなる、清々しい青。

 

「あの人と結ばれた日も…こうでしたわね」

 

「…」

 

「ねぇ…私を諦めさせてくださいます?まだあの人に会いたいと思ってしまう私を」

 

「諦めさせる…か」

 

「負かしてくださればいいのです。全力で戦って負ければ…きっと諦めがつきますわ」

 

タオブレイカーをその手に、青娥は神子を見据えた。疲弊もあるが故、そもそも勝てるのだろうか。不安の中エイディングドライバーを用意する。そんな彼女の手から、聖がドライバーを取った。いつのまにか布都やら村紗やらの面々が揃っており、その様子をざわざわ見つめる。

 

「…君が行くのか?しかし……大丈夫なのか?」

 

「そうです。ここは豊聡耳さんに……私だって構いません!だから…」

 

「大丈夫です。一人ではないのですから」

 

そう言った聖は、僧の腕輪をつけた右腕に対し、左腕へと新たな腕輪を取り付けた。その様子を見て、神子と星は自分の腕につけっぱなしの腕輪へと気が行った。だが、聖は外さなくていいと言う。

 

「…みなさん一緒に。変身です」『南無三宝!』

 

「え?」「はい?」

 

「せーの!!」

 

「ちょっと、何する気だ!」「一緒に…一緒に!?」

 

戸惑う神子と星、そして何が起こるのだろうかと待ち構える少女たち。それに構わず、問答無用で聖はレバーを倒した。

 

「変身!!」

 

「…へぇ」

 

慌てる二人と首を傾げる青娥。訝しげにアズーロレイに変身し、向かって来る聖を見据えた。瞬間、彼女は光の塊となる。いや、星も神子もである。

 

「わわわわわ!!」

 

「なんだこれ!!」

 

そして三人が一つの光となり、人型を成したと同時にスーツが纏われる。白、黒、グレーが同じ割合のアンダースーツに、軽めの金のアーマーが目立つ。

 

『unite!夢とともに!光とともに!三条の希望!』

 

右腕の腕輪たちが外れ、首輪へ。そして完全に変身を終えるドグマ。三形態のどれとも似ない顔が特徴的である。赤く煌く右目、紫のバイザーがかかる左目。仮面ライダードグマ 南無三宝術である。

 

「…えっ?」

 

「こ…コレは……」

 

「急なことでごめんなさいね」

 

直後、三人は真っ白な空間の中でちゃぶ台に座っていた。わたわたとする星と神子に対し、聖は余裕そうな態度で微笑む。よく分からないまま、聖は行きますよ、と続けた。

 

「…行きましょう、青娥さん」

 

「その声は…聖さんですのね」

 

「それだけではありませんよ」

 

ドグマが静かに頷いたかと思えば、紫だったバイザーが水色へと変わった。かと思えば、とたんにキョロキョロし始める。そして薄くため息をつき、青娥を見据えた。

 

「…なるほど、そう言うことか。三人力、と。今は私が体を動かしているのか」

 

「今度は豊聡耳様?…では、やはり寅丸さんも」

 

「そうらしいですよ」

 

バイザーを緑に煌めかせながら、ドグマは言った。ようやく事態が飲み込めたようである。そしてようやく構え、両者駆け出した。

 

「でやぁっ!!」

 

両腕の「クロー・ザ・トラマル」を展開し、連続で攻撃を叩き込んでいく。それを光剣で受け止めながら、アズーロレイは下がっていく。

 

「はっ!」

 

「…!?」

 

そんな時、アズーロレイは軽い呪術でドグマの動きを止める。だがバイザーが水色へと変わった途端、動きを再開する。魂側に影響を与える呪術故だ。

 

「食らえっ!」

 

「…っ」

 

神子は自身の七星剣と肩にマウントされたソード・ザ・トヨサトミミの二刀流でアズーロレイを追い詰めていく。負けじと斬りかかった光剣に跳ね飛ばされるソードだが、腕からバルカンを放って対処。ソードの回収の前に、聖へとバトンタッチした。

 

「…せわしないな結構。あ、コレ食べていいかい?」

 

「構いませんよ」

 

ちゃぶ台にはお茶とせんべいと3つのモニターが置かれている。自分が体を操っているときは目を瞑るので、聖は瞑想のような状態に。アズーロレイに殴りかかる様子をモニターで眺めながら、神子はせんべいをバリバリと食べた。

 

「せいやっ!!」

 

ドグマは連続で殴りかかり、アズーロレイとぶつかっていく。だが格闘も苦手ではない。両者ぶつかった拳に、アズーロレイがほんの少し押されるだけだ。その状況の中で、サイドバックからナックル・ザ・ヒジリを取り、両手に握った。

 

「ぜやっ!」

 

「うっ…ぐぅ……」

 

打って変わり、一気に吹き飛ばされる。その勢いの中で、アズーロレイのマスクが割れた。青娥は笑っていた。清々しいほどに。目の前で巻物を外し、再装填するドグマをにっこり見つめていた。怪我は大丈夫かと近寄ろうとする芳香をいいわと止め、今一度構える。

 

『南無三宝!』

 

「行きますよ、技名はコレです」

 

ちゃぶ台空間で、聖は必殺技の名前を二人に書いてみせる。そしてドグマが跳ね上がり、両足を向けてアズーロレイへと進んだ。対してアズーロレイも、タオブレイカーを持って拳を繰り出す。

 

『アズーロレイ…tu,turning-breaking!』

 

「はあああああああああ!!」

 

「「「リリジャストライデント!!」」」

 

両足キックと拳がぶつかり、爆発。炎の中に立ち上がるドグマは、スーツの砕けていく青娥を眺め、うなずいた。バイザーのいろは水色だ。

 

「終わりのようですね」

 

「どうやら」

 

変身を解き、三人に分離。神子が青娥へと手を差し伸べ、立ち上がらせる。だがどうやら結構足に来ているらしく、バランスを崩してしまう。その肩を支えたのは、星だった。

 

「…ごめんなさい」

 

「いいえ、私こそ」

 

「頻繁に道を間違えるからね、青娥殿は。我らがあなたを正すとしましょう」

 

「頼みましたわ、豊聡耳様」

 

日光とセミの声の中、青娥は笑った。

 

「あー!!やっぱここに居たか!!この前はよっくも…!!」

 

「なんかいい感じの空気なってんじゃねぇぞお前!!終わりました顔してんなタコ!!」

 

がやがや騒ぎながら石段を登ってきたのは魔理沙とクラウンピースである。そう、月食の日青娥にひどい目に遭わされた二人だ。嫌がる青娥の腕を掴み。ずるずる引っ張っていく。

 

「ちょっと、離してくださいまし!!豊聡耳様!聖さん!」

 

「罪は償うものですよ〜」

 

「頑張ってくださいねー」

 

微笑んで見送る聖、呑気に手を振って見送る星、ニヤニヤ見送る神子。青娥は諦め気味引きずられていった。その様子を眺め、屠自古は笑顔を浮かべていた。

 

Continued on next episodes.




「自分の…意志ねぇ」

目覚めよアリス、心に従って!!

次回、「人形革命 〜 人の形と生けし少女」


みなさんこんにちは。最近またコスプレがしたいサードニクスです。1ヶ月以上…たいっへん申し訳ないです。ほんとにお待たせしました…。プロットはできてたんですけどね、他にも色々やってたので。
というか芳香と華扇が出るのに会わないっていうね…。二人の話は多分シーズン2でする。シーズン2ではもっと青娥を活かしたいところ。単純な悪役になっちゃわないのがポイント。しかしまあ、未遂とはいえ星にも色々やらせちゃいましたね。今回はギチギチでこうなりましたが、お咎めに当たる話もしたいところ。というか言ってない気がしましたが、青娥は夫を蘇らせようとしてました。見てりゃわかるか。
で、今回は中間強化の初登場でしたね。ドグマだけにクローズアップしてたので、どうでもいい人にはわりとどうでもいい話です。
南無三宝術ですが、言うまでもなくジオウトリニティです。とりあえず細かい仕様はライダー例を見てくれればと思います。
さて、今回でとりあえず変身ポーズコーナーは最終回!他のライダーはポーズ決めてないので。ラストはアルナブです!!

バーサークドライバーカードを入れ、スイッチを押してコードを音声入力!!
そして左手に持ち、ウィンクして右手で投げキッスからの人差し指でバーン!
「変身!」
そして円盤回してシークエンス完了です。かわいいですね。

また遅れるかもしれませんが…そのときはお許しを。ではまた!!


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第28話 人形革命 〜 人の形と生けし少女

確認してないので誤字がありそう


『X!』『get started!』

 

「行くわよ」「えぇ」

 

廃ビルの中、ビランアニヒレイトを前に二人はターンブレイカーとエックスゴースターを構えた。ビルでたまたま見つけ、ホコリかぶるそいつを引っ張り出したのだ。

 

「「醒妖!!」」

 

『fantasia…ready』『exposing girl!break out!』

 

幻想と秘封のメモリをセットした二機を合体させ、変身。二人の体が一つになり、白黒のシンプルなアーマーが着せられる。怪人、ミスティックの誕生である。

 

「…へぇ、やっと二人揃ってくれたと思えば、そんな隠し球が」

 

チェンジブレイドを構えるビラン。対するミスティックの腰に巻かれているのは大きく亀裂の入ったアイズバックルだ。ヒールに変身できないが故の応急処置、それがこのミスティックだ。

 

「だあああ!」「おらぁ!!」

 

「おっと……」

 

二人が融合して、やっとスターボウとナイトメアよりちょっと弱いミスティックだが、ビランをむしろ押しているようにさえ見えた。

 

「…あんた、結構弱いのね」「幻想郷にいた頃のあんたは強かったのよ」

 

「フフフ、ハッハッハ!!なぜ私が負けているか、分かるか?」

 

「え?」「…どういうこと」

 

「お前らが揃っているからさ。これはちょっとした試験だよ。まだ君たちが戦えるのかという、ね」

 

ビランは笑いながら言う。男とも女ともつかないエフェクトとは違い、こちらは女性であることがはっきりと分かる。落ち着いた調子だが、どこか焦っているようでも作っているようでもある。

 

「…まあいい、よぉーくわかったとも。やっと運命がお前らに向いたと言うことが。もう何千回目だろうかね。いや、何万だったか?案外数十回だったり」

 

「…」「何が言いたいの?」

 

蓮子の問いには答えず、ビランは静か指を弾いた。

 

「やはりここにいられては邪魔だ。運命が今一度収束した以上、貴様らは目障りでしかない。では、良きタイムスリップを」

 

突如暴風が吹き荒れる。あの時と同じだ。幻想郷へと飛んでいく!

風にぼやけていくビランのシルエットが言う。

 

「レミリア・スカーレットの好奇心を止めるべからず。稀神サグメの言葉を止めるべからず。そして…君たちの探究を止めるべからず。まだ幻想郷には秘封ばかりだ。暴いてくるがいいさ」

 

その言葉を最後に、二人の視線は暴風から突き抜ける青空へと変わった。その身を起こす蓮子。見てみれば、そこは見知らぬ場所。だが、阿求の話からそれが無縁塚であることが分かった。そして、訝しげにこちらを見るアリスの姿も飛び込んでくる。

 

「…戻って、来たのね。秘封倶楽部(あんたたち)

 

「どうやら」

 

メリーはなんとも言い難い表情で頭をかいた。どうやら、自分たちが去った後の幻想郷へと来たようだ。聞けば、この日は7/9だとか。とりあえず人里に連れてってやるという優しさで、三人はその場を後にする。

 

「うわああああああん!!!」

 

人里に到着した頃、同時に凄まじい泣き声と同時にバイクが道を駆け抜けた。三人を横切ったのち、突き当たりにストップ。乗っていた少女がヘルメットをかぶった頭を抱え、泣き喚く。

 

「ひいいいい!助けて…た…助けてー!」

 

「ふーっはっはっはっは!!」

 

そのあとを、真っ赤なスーツを着た誰かが追う。ステレオタイプなショッカー怪人のようでもある。遊んでんのかなと思い、三人はその場を後にしようとする。

 

「ひいいいいいいいいいい!!うえええええええええん!!!」

 

しかしうるさくてたまらない。アリスもイライラしてきたのか、怪人へとヤクザキックをくらわせた。転ぶ赤い変質者、そいつを尻目に、アリスは少女へ手を差し伸べた。

 

「ありがと〜…」

 

「泣くにしてもうるさすぎるのよね」

 

「…あらら?」

 

ヘルメットを外した少女が、蓮子の視線に気付いて慌ててフードをかぶる。だがもはやバレバレである。少女改め今泉影狼は、恥ずかしそうに俯く。しかし、思い出したかのように視線の先を変える。

 

「そ、そういえば外来人さん!!黒髪と金髪の女性の外来人さんよね?ヒーローだって聞いたわ!!怪人を倒して!!」

 

涙ぐんだ目で二人に駆け寄り、変質者を指差す。その声を聞き、不審者はピタッと止まり、ゆっくり起き上がった。布製のフルフェイマスクをグイッと持ち上げ、赤い髪とともに耳を晒した。

 

「…な、なんのつもり!?」

 

「その声…まさか」

 

そう言いながらマスクを外し、赤蛮奇がその顔を現した。驚く影狼とアリス、そしてピンと来ていない秘封倶楽部をよそにうちわで顔を仰ぎ始めた。どうやら蒸れるようだ。更に櫛を通し、リボンを結び直す。

 

「…え、ばんきちゃん?」

 

「やっぱり影狼だ。なーんか楽しくないと思ったら…通りで」

 

ピッチピチの全身タイツのままスカートとシャツを装備し、何食わぬ顔で影狼が倒したバイクを起こしてやった。そんな赤蛮奇の赤い線のある首筋を眺めるメリー。彼女に対し、赤蛮奇は言ったら殺すという視線を送った。

 

「結局なんでこんなことしてんのよ」

 

アリスの問いはもっともである。路地裏に五人だと流石に密集しすぎというのもあり、人里へとそのまま繰り出していた。そんな中放たれた問いに、赤蛮奇は小さな声で答える。

 

「…ああやって人間を脅かさないと存在意義が保てない。深夜の警戒がここ最近しっかりしてるじゃない」

 

「その姿のままやればいいのに」

 

「私はハイカラな少女お(せき)で通してるのよ。あそこの呉服屋、私の勤め先」

 

「なるほどね」

 

赤蛮奇は深くため息をつく。怪人やライダーの騒動はこんな形でも波及しているのかと、バイクを押しながら影狼は考えた。

そうして大きめの道に出た時、魔理沙とクラウンピースに引きずられながら青娥がやってきた。

 

「はーなーしーてーくーだーさーいーまーしーーー」

 

「いいから変身しろ」

 

「でもォー」

 

「しろってんだよ。早く!!!」

 

何事かと、人がざわざわ集まり始める。アリスたち五人もその様子を見物することにした。

 

「全く…芳香ちゃん!!」

 

「おう!戦えばいいのかー?」『get started!』

 

「あら、太子様から返していただいたのね、ターンブレイカー。掛け声は覚えてる?」

 

「えっと……」

 

「芳嚼、よ」

 

「そうだった!ほーしゃく!!」『turn on!decayed girl!メタリカ!』

 

変身した芳香に対し、魔理沙もサォルブドライバーを装備して立ちはだかる。そして飛んでくるコウモリマジシャンを掴み取り、バラしてバックルにセットした。そしてスペルホルダーからカードを取り出し、見せつけるようにポーズを取る。

 

『reading!vampire!』

 

「ヴァンパイアー?」

 

「吸血鬼だよ。レミリアみたいな」

 

「誰だそいつー」

 

「会ったことないのか?」

 

律儀に変身するのを待ちながら、メタリカは首を傾げた。対し魔理沙は腕をグルンと回し、ポーズをとってバックルの円盤を回す。

 

「変身!」

 

『brad drain!dark night ruler!perfect vampire!』『bad?nightmare?not…magical beast!KO・U・MO・RI!』

 

水色をメインとした、マジシャンヴァンパイアフォームだ。赤い目が煌めき、マントがはためく。バットウィングアローは両腕にばらけ、バットウィングスィーパーとなっている。しかしどうも動きづらい。夕方とはいえ日があるうちに使うフォームではなかったななどと思いながら、スパークは構えた。

 

「それは貴女は変身しないの?って顔か?それとも逃げ損ねちゃったわ、かな?どっちにせよあたいはお前を逃がしやしないぜ」

 

スパークとメタリカがぶつかるその横で、青娥を指差してピースは言う。青娥はため息をつき、タオブレイカーを取り出す。そうこなくっちゃと笑い、ピースもアルカナドライバーを装備した。

 

蒼光(ツァングァン)!」「変身!」

 

(turn on)!desire girl!アズーロレイ!』

 

『DANGER!DEXIZASUTAXA!大・狂・乱!愚者の一手!破滅の一手!』

 

「はっ!」

 

「ずおりゃあああ!!」

 

変身を終え、二人のキックがぶつかる。そのままアズーロレイの足を土台に跳ね上がり、急降下でパンチを放った。しかし光剣で跳ね飛ばし、さらには仙術でぶっ飛ばす。

 

「がんばれようせーい!!」

 

どうやら神子がその様子を見ているようだ。青娥は自分を応援してくれりゃいいのにと思いつつ、今一度駆け出した。

 

「どりゃーー!!」

 

「っと…死んでりゃ恐怖心はないのかね。気の毒だぜ」

 

そして、スパークはバットウィングスィーパーのブレードをぶつけていく。それによってエネルギーを奪えるのだが、相手に生気はない。奪えるエネルギーは少なく、さらに日光下。だが今更フォームチェンジも面倒である。さっさと終わらせるべく、スパークは構えた。

 

「ったくよぉ……」

 

その横でフールは立ち上がり、新たなカードを取り出した。警戒するアズーロレイに、にじり寄りながらドライバーへセットした。

 

『DEVIL』

 

「…行くよ」

 

『GENOCIDE!FANNTAZUMA!絶 対 悪!悪魔の一手!崩壊への王手!』

 

そして炎が灯るように闇が集まり、爆発。新たな姿を現す。渦巻いた角と、紺青のオッドアイ。肩に燃える紫の炎が煌めく仮面ライダーフール デビルフォームだ。道化と悪魔を混ぜたような不気味な外見が、地獄の妖精によく似合う。

 

「だァ!!」

 

「…っ」

 

構えたかと思えば、凄まじいスピードでアズーロレイへと迫った。さらに空気を裂く高速蹴り。ぶっ飛ばされたアズーロレイへ、翼を広げて狭った。

 

「こりゃまた派手にやるのね」

 

「魔理沙も戦ってんのねぇ、ずいぶんがっつりと」

 

アリスと影狼が関心深く眺めるその前で、二人は必殺を構えた。

 

『vampire!super wrecking spark!』

 

『悪魔の一撃!』

 

「はっ!」

 

あたりにコウモリが飛び、それに紛れてスパークが駆け出した。防御態勢のメタリカから離れ、狙ったのはアズーロレイ。奪ったエネルギーでキックを放った。

 

「どりゃああ!!」

 

さらにフールはメタリカのほうへ、蹴り上げを飛ばす。そして空高く高くぶっ飛んだメタリカに続けて飛び蹴りをぶつけ、地面に叩きつけた。魂に直接食らわせるその一撃は、肉体がゾンビであろうと大ダメージだ。

 

「…負けましたわね」

 

「そうだなー」

 

地面に大の字で倒れる青娥を神子が抱え、帰っていった。更に布都が芳香を抱える。連れて行かれる青娥に、二人はこれに懲りたらもう面倒ごとに巻き込むなと吐き捨てるのであった。

 

「…凄かったわね、なんか」

 

「派手に戦うわねぇー」

 

きゃいきゃい騒ぐ蓮子とメリーの横で、影狼はぼそっと「力が欲しい」と呟いた。アリスは彼女の方をチラッと見て、赤蛮奇はしっかり目線を向ける。

 

「天人から買えばいいんじゃないか。あいつ鎧を売っているんでしょ?」

 

「だね!天子さんか…ら…買え、ば……」

 

言いながら、影狼の顔は沈んでいく。あらかた察しはつくだろう。赤蛮奇は直球に、金がないんだなと突っ込んだ。悲しそうにため息をつく彼女に対し、赤蛮奇はバイクへの視線を送る。

 

「……あー…姫と乗り回す夢はもう叶ったからいいんだけど… でも買い手が居ないなぁ」

 

「その辺もまた考えなきゃね。そうだ、私お腹が空いたわ。何か食べましょうよ」

 

アリスの提案に、一行はうなずいた。影狼もそのお金はある。…が、むしろ蓮子とメリーは置いてきてしまったようだ。どうしようかと悩む、そんな時。

 

「あら、我が孫にその親友じゃないの。帰ったて聞いたのだけど。挨拶も無しに」

 

幽香と二人の菫子が二人へ声をかけた。聞けば、地底を去った直後に会ったらなんか仲良くなったのだとか。財布を前に立ち尽くす二人を見て、菫子はニヤリと笑う。

 

「おばあちゃんからお小遣いよ。ご飯でも食べるんでしょう?」

 

それを受け取り、ぱあっと明るくなる二人。満足げな菫子だが、周りを見て人数が思わず結構多くなってしまったなと考える。

 

「あ、私お昼食べたよ」

 

「私も」

 

「私もだ」

 

「じゃあこの四人で行きましょうか。じゃあね幽香!」

 

「ええ、またね」

 

秘封倶楽部とアリスで食事する店を探すことに。残された幽香は影狼のバイクへと視線を向けた。その威圧感に押されながらも、影狼は近づいてみる。

 

「…コレ、欲しいかしら?」

 

「ええ、素敵な車ね。くれるの?」

 

「えっと…売る、って形かな」

 

「へぇ?いくら?」

 

「天人さんから…えっと、あの鎧の機械。ターンブレイカーを買って欲しいの。私と姫の分!」

 

「……いいわ。彼女は人里に居るはずよ」

 

そう言って、彼女は二人についてくるよう言った。正直、なぜ自分まで一緒なのかと思う赤蛮奇だったが、どこか嬉しく思うのも事実。なんとも言い難い感情のまま、二人の後についた。

 

「でさー、あの店肝心のお茶が美味しくないのよ!」

 

「あ、それわかる!あたいもさ、たまにあの店でサボっ、休憩するんだけどさ」

 

「今サボるって言いかけたでしょ」

 

すぐ近くのうどん屋に、目的の人はいた。店の外に影狼と赤蛮奇を待たせ、幽香は華扇と小町との三人でがやがや騒ぐ彼女のもとに近づく。

 

「あ、察したわ。コレでしょ?誰用に?」

 

「人狼と人魚よ。あと…ろくろ首にも」

 

「ろくろ首って首が外れる奴だよな。赤なんとか」

 

ターンブレイカー三つとUSBをたしかに受け取り、お金を渡した。天子は金額を確認し、毎度ありと適当に彼女を見送る。

 

「…ありがとう!!」

 

「礼には及ばないわ。ただの取引ですもの」

 

そう言ったかと思うと、ターンブレイカーとUSBを持たせ、自分へ影狼にバイクを渡すよう手で促した。影狼はしっかりうなずき、彼女へ渡して乗り方を教えた。

 

「へぇ…面白いじゃない」

 

「改造のしがいなんかもあると思うわよ。シンプルだから」

 

それを聞き、幽香は満足げ。そして早速初乗りとまたがったその瞬間、ずでんとすっ転んでしまった。ゆっくり起き上がりながら、「不良品掴ませやがったのか」という視線をブッ刺す。

 

「さっきまで動いたのよ…!!えっと…な、直すわよ!きっとさっきの事故で壊れたんだわ!」

 

「…直せるの?」

 

「うん、まあ人里の方の自宅なら」

 

「連れて行きなさい」

 

今一度うなずいたかと思えば、バイクを押して歩き始めた。そんな中、幽香は赤蛮奇へとUSBとターンブレイカーを渡した。

 

「私は頼んでないんだけど」

 

「あんたあの狼の友達なんでしょ。なら持っときなさいよ」

 

「…別に友達のつもりもないんだけどな」

 

なんと言えばいいのやらという表情で、赤蛮奇はうつむく。そして影狼の家に着いたタイミングで、彼女は別れを告げて帰って行ってしまった。

 

「影狼ちゃんおかえり!」

 

「…あ、来てたんだね姫」

 

「お邪魔するわよ」

 

「えっと、風見さんだっけ。何の用事で来たの?」

 

「この子からバイクを買ったのよ」

 

靴を脱いで畳の上に優雅に座り込み、その様子を眺めることに。中の壊れた部品をがちゃがちゃいじる影狼と、何やら魔術の本を読みこむわかさぎ姫。そんな幽香の元に、来客が。

 

「やっぱり居ましたね」

 

「あら、リグルあんたよくここがわかったわね」

 

「ミスティアが見てたんですよ。幽香さんが入っていくの」

 

影狼の見学に参加し、バイクの様子を眺め始める。そんな時、おもむろにわかさぎ姫が車椅子を動かし始めた。そして通りがかりに幽香の髪を引っこ抜き、慌てる彼女をよそに、何やら術を始めた。

 

「えっと、これで合ってるはず…」

 

「幽香さん大丈夫?何のつもりよ…」

 

「付喪神を定着させる術よ。コレで…このバイクが風見さんに従ってある程度勝手に動くようになるはずよ!」

 

得意げに言う彼女を、頭を押さえながら幽香は見つめていた。

 

 

 

「なんか色々面白いパーツがあるのね」

 

同じころ、香霖堂にて。昼食を終えた少女たちは各々作業をしていた。

 

「コイツ、やっぱり自己学習なのよね」

 

「そうよ。だからここの記録媒体の移植が必要になるわね」

 

「それはこのPCでやれ、と」

 

蓮子とメリーはアイズバックルを失ったが、菫子がこの時代で作った新品がある。コイツを調整し、自分達に会うようにしているのだ。

 

「うーん、ドッペルをどう扱うのかって話ねぇ」

 

対し菫子は二人が未来の廃ビルから持ってきたターンブレイカーとエックスゴースターを元に新しいアイテムを作っている。さとりや河童の影響で何となく始めたスーツ作成も、かなりこだわるようになってきている。

 

「…あー、ママに呼ばれてるっぽいわね。そろそろ起きなきゃ」

 

そう言った彼女は、諸々の機器を抱えすぅっと消滅した。自分の世界へと帰って行ったのだ。

 

「お茶を入れたぞー…っと、菫子は帰ったのかい?やれやれ、タイミングでが悪いことだ」

 

入れ替わるように出てきた霖之助が、礼を言う蓮子とメリーへ紅茶を渡し、空席に一つ置き。考え事をしているアリスへも紅茶を置いた。

 

「あら、ありがとう」

 

「別にいいさ。君は何かすることはないのかい?それとも考えるべきことが?」

 

「…いえ、別に」

 

「そうかい。力不足とかはないのかい?」

 

「……あるかもしれないわ」

 

「なら何かしないのかい?誰かを頼るとか。既にしてるのかな?」

 

「いえ、特には」

 

静かに砂糖の入った紅茶をかき混ぜながら、アリスは答える。波立つ赤い面が、人形のようなアリスの顔を写す。

 

「君は何故戦ってるんだい?」

 

「…壊さなきゃいけない兵器があるの」

 

「壊さなきゃいけない?」

 

「ええ、ママ…まあ、魔界からそうせよっていう意味で送られてきたのよ。このベルトが」

 

「…君の意志なのかい?ソレ」

 

「さぁ?……自分の…意志ねぇ、よく分からないわ」

 

そう言われてみて、アリスはふと考えてみた。そういえば自分から戦おうと思ったことなどあったのだろうかと。ライダーの力を手に入れてからというもの、ルーミアからシャドウライトを奪おうとするか、半ば受け身で敵を迎え撃つかだ。

 

「滑稽ね」

 

「…?」

 

コレでは自分が人形ではないか。一人笑いながら、アリスは今一度考える。この力で何がしたいだろうか?いつもの習慣を引っ張るだけの、他のライダーたちの研究だけをしていても意味はない気がした。

 

「ありがとう、香霖。だったかしら」

 

「魔理沙は僕をそう呼ぶね。だが礼には及ばないよアリス・マーガトロイド」

 

「いえ、言わせてもらうわ、ありがとうをね。貴方のおかげでちょっと考える気になれそうよ」

 

そう言って席を立ち、アリスは店を去っていった。そして彼女は自宅へと向かう。ここから森の中の家はかなり近い。到着するなり、彼女はテーブルの上にパーツを広げた。

 

「…魔法研究の始まりね」

 

本の知識、持っている道具、昔作った機械の技術。全てを総動員して彼女はぶつかった。久しく人形以外には向けることのなかった『本気』である。

 

「…ここは……ああ、統合させちゃばいいわね」

 

ほんの少しのパーツを編むように組み上げていく。その作業が終わるのは翌朝のことであった。とはいえ魔法使いにとって、睡眠がないことは大したダメージでもない。その魔法具と変身アイテムを持ち、彼女はドールシャイナーへと乗り込んだ。

 

「我々妖怪は確かに恐れられる存在!でもそこに意味があるのも事実!だが、幻想郷が揺れたとき!巫女の後ろを追って戦うのもまた私達なんだ!」

 

人里に着いてみれば、こいしが演説をしているではないか。リグルやらチルノ、メディスンなど、多くの妖怪達が集まっていた。そして幽香さえも例外ではない。物好きの人間がチラホラいただけのそこに、だんだんと大勢が集まってくる。野次馬だった人間達も、彼女の言葉を聞いた考え始める。その列を裂き、アリスは前へと出て行く。

 

「…聞いただろうか!何と一方的で何と短絡的なことだろうか!理想論でまくし立てるだけのなんの中身もない…愚かで空っぽの言葉よ!」

 

何を思ったか、アリスは喧嘩を売ったのである。ざわざわし始める住民達。人達からすれば、彼女は人形劇のお姉さんなのだから。主にルーミアの視線がきっかけにビリビリし始める空気。そんな中、アリスはメディスンへと近づいた。

 

「私に手を貸して欲しいの。貴女はこんなところでくすぶっているべき存在ではないわ!!」

 

急な事でおたおたし始めるメディスン。前に出ていった幽香がアリスを威圧的に睨みつけ、その目的を問うた。アリスは不敵に笑う。

 

「解放…そう、人形の解放よ!!人形を持つべき人間とそうではない人間へと分け、この世界を人形にとって存在しやすいものとする!この幻想郷を捨てられる人形が生まれない場所にするのよ!」

 

その言葉に、妖怪一同は驚愕を浮かべる。メディスンもそうであったが、だんだんと瞳を煌かせる。困惑の妖怪を置いてけぼりに、自分が作る理想の世界を語る。オーディエンスはもはやメディスンだけだったが、それでも十分である。

 

「…もういい。黙りなさいアリス」

 

「へぇ、ずいぶんと喧嘩腰ね」

 

「自己紹介かしら?」

 

睨み合い、そしてベルトを構える二人。一緒に戦おうとするチルノやルーミアを止め、サシで戦うという宣言を放った。両者睨み合ったままにじり寄る。

 

『ready…go』

 

「「変身」」

 

『α・mode ACTIVE』

 

エレンツとプランゼは変身を終えてもその距離感を崩さない。静寂ののち、動いたのはエレンツの方である。ドールシャイナーに飛び乗り、投げキッスの挑発ののち走り出す。ちょうど良いとばかりに幽香も『ブーストフラワー』を名付けたバイク乗り込み、その後を追う。バイクチェイスだ。

 

『…へぇ、面白そうなことになってるのねぇ』

 

その様子を、人気のない道でビランは眺める。チェンジブレイドを構えたそこに、菫子が現れる。

 

「邪魔するってなら…させない」

 

『言うじゃないのよ。なら止めてみなさい。私をね』

 

「…そりゃもちろんね」

 

『X!』『get started!』

 

「醒妖!」

 

『psychic…ready』『occultic girl!break out!』

 

現れたドッペルゲンガーと融合しながら、菫子へ鎧が装備されていく。ナチュラリア、それがその怪人の名前だ。ライダーほどの能力はないが、それでも今ビランを食い止めるには十分だ。

 

「でやあああ!!」

 

その特性は至極単純な超能力強化だ。いつもより巨大な岩が飛び、いつもよりパワフルに標識を叩きつける。だが怪人としての性能や通常の戦闘能力ではビランの変身者が上手らしい。徐々に押されていく。そんな時、ビランの後ろから鋭い攻撃。隙を狙われぶっ飛ばされたビランのマスクに、影狼とわかさぎ姫の姿が映るのであった。

 

「…醒妖!!」「醒妖!」

 

『『turn on!』』

『shouting girl!クロルーヴ!』『splash girl!オフルーヴ!』

 

更に怪人の姿へ。パワフルな狼らしいデザインのクロルーヴに対し、流麗な印象のオフルーヴが並ぶ。オフルーヴは宙に浮くシステムのようだ。水弾とクラッシャーの同時攻撃がビランを襲った。

 

『雑魚が調子に乗るのは…困るわねェ!!』

 

ナーグフレイムをぶつけるが、水の壁がそれを阻み更に足のクローでのキックが続く。最後にナチュラリアの放つパンダの乗り物が突撃し、ビランはそのまま撤退していった。その小道の横を、二台のバイクが通り抜ける。

 

「とりゃあ!!」

 

「…っ!」

 

プランゼのツタ攻撃をツインツインガンでさばいていく。両者あまりダメージは入っていない状態である。それをいつのまにか乱入した文が追い、写真を撮っている。

 

「…ぜあっ!!」

 

「直接くんの…ねっ!!」

 

車体をぶつけるプランゼに、エレンツはキックを返した。離れる両者。バイクに対する慣れであればアリスに軍配が上がる。だがパワーなどの面で、エレンツの一方的勝負ではない。

 

「それなら…!!」

 

プランゼが突然立ち上がったかと思えば、なんとブーストフラワーが変形。タイヤが90°傾き、車体が伸びてスライダーへ。思わぬ隠し球に驚くアリス。変身を解いた影狼は、その様子を見て誇らしげである。

 

「パワーも上がってるのね…」

 

「あんた自身よくわかってないわけね」

 

「でも…こんなことができんのは知ってるわよ!」

 

「うぐっ!」

 

ブーストフラワーの回転攻撃にぶっ飛ばされ、エレンツはドールシャイナーもろともすっ転んでしまう。プランゼが勝負あったわねとツタを構えた、そんな時。間に挟まるようにトライサイカーがやってきた。

 

「コレって…メディスンの……!」

 

「あら、タイミングいいじゃない。あの子が貴女を応援してるのかもね」

 

「結構…いいこと言うじゃないのよあんたも」

 

今一度立ち上がり、エレンツはトライサイカーへと乗り込む。かつて自分の作った三輪車である。自分の手には馴染んでいる。振り返れば、追いついたメディスンがエレンツを見ていた。仮面の奥だが、目があった気がした。

 

「…目的なのよ。コレが私の……意志、成すべきこと!!」

 

激しくペダルを漕ぎ、トライサイカーは駆け出した。ブーストフラワーもすぐに続き、並ぶ。

 

『β・mode ACTIVE』

 

「食らえっ!」

 

「今度は強目にくるってことね!」

 

銃撃とツタの中距離攻撃の中、アリスはツバイブースターへとフォームチェンジ。ショットガンモードのツインツインガンで銃撃をぶつけていく。

 

「…っ!」

 

開けた道に、二台が止まる。バランスを崩しながら降りるプランゼに対し、エレンツはいささか余裕があるような様子で降りた。追いついた妖怪の面々が見守り、文がばしばし写真を撮る中、両者は直接対決を始める。

 

「ぜあっ!!」

 

真っ先に切り掛かったのはプランゼだ。光をまとった斬撃を避けきれず、エレンツはぶっ飛ばされてしまう。立ち上がりながらの銃撃もはたき落とされ、さらに近接格闘となればエレンツの不利は確実であった。

 

「うあっ!!」

 

「フフフ、結局ダメみたいね。このまま眠りなさいッ!」

 

そうして傘を振り下ろしプランゼ。だが、エレンツは避けない。むしろ全力で飛び込み、0距離銃撃を叩き込んだ。攻撃の手が止まるプランゼを前に、エレンツは金色のアイテムを取り出した。

 

「…!」

 

『アクア、ウィンド』

 

ベルトにその『フォースチェンジャー』を取り付け、増えたスロットへと残りのディスクをセットした。つまり今、エレメンツドライバーには4つのディスクが入っている。

 

「こっちだってね、ある程度隠し球持ってんのよ」

 

「貴女らしくもない。貴女は…そんなモノをすぐ使うタイプじゃないわ」

 

「保身に走って力のセーブはもうやめってこと」

 

『ready…go 4つのパワー!ムテキのパワー!フォースエレメンツ!!』

 

アリスの声で、ベルトが歌い上げる。プランゼが構え直すその前で、仮面ライダーエレンツはフォースエレメンツの姿を得る。白と金をメインに、赤青黄緑の四色を入れた姿が輝く。

 

「正直なんとか型って名前好きじゃないのよねぇ」

 

「フォースエレメンツ、って言うのね。みんな姿に名前をつけるものなのかしら」

 

軽い調子で言い飛びかかるプランゼへ、エレンツはハイキックを叩きつけた。先ほどとは大違いの攻撃力だ。よろめいたプランゼへ、更なる連続攻撃が入る。

 

「…このっ!」

 

傘を振り下ろすプランゼへ、エレンツはライフル『ツバイスナイパー』を向ける。放った風の弾丸が傘を弾き、さらに炎がダメージを与える。

 

「食らいなさい!!」

 

「誰が食らうものですか!!」

 

崩れる体勢を活かし、プランゼはそのまま流すようにパンチを放った。対しエレンツは水圧弾で弾き飛ばし、土弾で続けて吹っ飛ばす。ぶっ飛ばされた先で構えるプランゼに対して、エレンツはベルトを操作して迎える。

 

『フォースパニッシャー・レディ・フィニッシュ!!』

 

「おりゃああああああああ!!!」

 

「ぜああああああああああああ!!」

 

ツバイスナイパーを向けるエレンツを前に、プランゼは傘を拾い上げ、エネルギーをまとわせて投げつける。そして、その傘をねじ込むように、キック。向かってくる傘を、エレンツは虹色のビームで迎えた。

 

「…っ」

 

「うぅっ…」

 

閃光が散り、立ち上がる両者。夕陽の中、ライダー二人が照らされる。果たして、負けたのはプランゼであった。爆発を巻き起こし、倒れ込む幽香。対し、膝をついたエレンツは、静かにスーツが粒子化した。

 

「…ありがと」

 

リグルが渡したロングコートを羽織り、幽香は裸になってしまった体を隠す。それを見届け、大の字の姿勢でアリスは倒れ込んだ。メディスンが遠くから見つめ、何やら考え込む。

 

「…でも、あいつ疲弊してるわ。今ならベルト壊せるわ」

 

そういった、アリスへ向かって歩き出したのはルーミアだ。当然と言えば当然だ。彼女に、散々戦いを吹っ掛けられた身なのだから。しかし、そんな彼女を幽香が止める。

 

「アリスはね、全力を出して勝ったのよ。その価値を邪魔してはいけないわ。潔く負けましょう」

 

「…意外と戦士の思考なのねー」

 

すこしつまらなさそうに言うルーミア。彼女を見届けるアリスの目は、優しいものだった。エレンツの、本当に使いたい道を見つけたのだ。単なる義務感は、とりあえずお預けだ。

 

Continued on next episodes.




「貴女の言葉が正しいなら…曇りなんです、私の人生って」

それは雨の日のこと。愛を忘れた風の子の話。

次回、「少女が飛ぶ日本の原風景」

一定数見かける幽アリ。今回はCP要素は全くなかれど、その二人の戦いでしたね。アリスの曲を冠した話ではありますが、幽香のまわりのエピソードも起き、草の根妖怪ネットワークも多少変わったり…。そして何より秘封倶楽部の帰還です。早いですね。自分でも早すぎたなと思いました。別の回でやっても良かったかもしれない。ここのところ設定集も更新してないので、どうにかしようと思います。
この話ですが、アリスの本気を出さない設定を前提としたものでした。まあ有名な設定なのでご存知でしょうけどね。
次回はちょっと切ない話です。皆さん、家族は大事にしましょうね!


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