遊戯王 デュエリスト・ストーリーズ (柏田 雪貴)
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一章
始まりの時


初投稿です。
稚拙な内容ですが、よろしくお願いします。


 デュエルスクールへの道のり。デュエリスト達の学びやに続く道。デュエリスト達が他愛ない会話(に、思えるが、実際は高度なコンボやレアカードについてなどの会話)をしながら進んでいる。

 そんな中を、俺は歩いていた。

 

「むー、どうすれば勝てるのでしょうか・・・」

 

 黒髪の美少女、真宮 虹花(まみや にじか)は少しふくれっ面で呟く。

 

「俺に勝つには、まず学年最強から学校最強くらいにまでランクアップしないとだぜ?」

 

 虹花に対し、少し挑発的な笑みを浮かべる、この俺、如月 遊羽(きさらぎ ゆうは)。

 

「今日こそは、貴方に勝ちます! 貴方の相棒も倒します!」

「おう、頑張れー」

 

 ふんす! と決意を固める虹花と、軽薄そうな笑みを浮かべ、ヘラヘラする俺。

 

 対照的だなぁと他人事のように思う。

 

「これで生徒会長ってんだから面白いよなー」

 

『それは良かったな、遊羽』

 

 俺の精霊が俺達を見て感想のようなものを述べた。

 

「おいレヴ。頼むから人に見られるなよ?」

 

『安心しろ。虹花にも見えていない』

 

「万が一ってのがあるだろ? それと、周りの視線が地味に痛い」

 

 端から見れば、こちとら独り言を呟く不審者だ。

 

「? どうかしましたか、遊羽」

 

 虹花が可愛らしく小首を傾げる。ナニコレ役得。

 

『こんな可愛い彼女が、昔ロックデッキを使っていたと知ったら、皆はどう思うのだろうな?』

 

 ろくでもないこと考えるなよ、レヴ。今度試してみるか。

 

 そんな会話をしながら俺達がデュエルスクールに入ろうしたとき。

 

「おい、如月遊羽!」

 

 俺に、声がかけられた。

 が、そんなものは聞こえないとでも言わんばかりに進む。虹花は困惑しながらも俺に着いて歩く。

 

「おい、無視するな! 如月遊羽! このオレ様とデュエルしろ!」

 

 声の主たる大柄な男子生徒が俺の肩を掴む。

 

「人違いです」

「んなわけあるか!」

 

 俺の白々しい返答に、怒鳴り声をあげる男子生徒。

 

「これ以上生徒会長を苦しめるわけにはいかない! 今日こそは生徒会長を解放する!」

「応援するぜ。頑張ってくれ」

「貴様ァ!」

 

 虹花は生徒会長だ。それが男と連れ立って登校ともなれば、人気のある彼女を守ろうとしている親衛隊の皆さんが黙っていない。

 

「デュエルだ!」

 

ーーーーーーーーーー

 

「ば、馬鹿な。このオレ様が、ワンターンキルされるだとぉ!?」

 

「どうでもいいから、黙れ。もう終わりにする」

 

 俺はそう告げ、トドメをさす。

 

「うわぁぁあー!」

 

 男子生徒は無様な声をあげる。

 

「面白いこと、どこかに転がってないかなぁ」

 

 俺は、誰に言うでもなく呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、担任教師に登校中にデュエルするなと絞られた。解せぬ。




次回予告

デュエル描写のない遊戯王とは。
ワンターンキルしたらしい遊羽の前に、もう一人の主人公が姿をあらわす。
次回、『二人の出会い』

デュエルがないのは、遊羽のデッキをとっておきたかったからです。
次回もよろしくお願いします。


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二人の出会い

二話です。
デュエルが始まります。

あと、内容グチャグチャです。



 僕、遊民 戦(ゆうみ いくさ)は、いじめられっ子だ。

 

 デュエルの腕前もなく、レアカードも持っていない。いや、持っているけどほとんど使えない。僕には、心の強さが足りないらしい。不甲斐ない。

 

ーーーーーーーーーー

 

 ここはデュエル場。授業でしか使わないこの場所は、絶好のいじめスポットらしい。

 

 そこで僕は男子生徒三人に囲まれて、寝転がっている。今も絶賛いじめられ中だ。

 

「おら! どうした、弱虫が」

 

「気合いが足りないぞ、気合いが!」

 

 それでも、一つだけ言いたいことがある。

 

 蹴られて、お腹痛いけど。デュエルに負けて、心も痛いけど。

 

「・・・・・・じゃ、ない」

 

「あ?聞こえねぇな!」

 

「何か言ったかぁ?」

 

「聞こえねぇのは言ってねぇのと同じだろ?」

 

 なら、聞こえるように言ってやるよ。

 

「僕は、弱虫じゃ、ないッ!」

 

 これだけは、譲れない。

 これを譲ることは、僕自身の否定だ。それだけは、したくない。

 

「うるせぇんだよ、弱虫がッ!」

 

「あぐッ!」

 

 腹部を再度蹴られる。昼食が出てきそう。

 でもッ!

 

「僕は、弱虫じゃ、ないッ!」

 

 僕は叫びながら身体を起こす。

 

「あぁそうかよ!」

 

 今度は別の生徒が僕の顔を殴ろうとした。

 

 そのときだった。

 

「あークソ、先公のせいでイライラしてんだ。八つ当たりするぜ?」

 

 一迅の、風が吹いた。

 

「あぁ!? 何だテメェ」

 

 僕を殴ろうとしていた生徒がそっちを向くのに釣られて、僕も声のした方へ顔を向ける。

 

 そこにいたのは、一人の男子生徒だった。

 制服を着崩し、両手をポケットに突っ込み、こちらを睨んでいる。

 

 そして、その後ろにいる――――竜。

 剣を携え、橙色の翼と鱗を持つ、美しい竜。

 

「て、テメェは!」

「如月遊羽!」

「なんでこんなところに!」

 

 ・・・・・・何故か、皆さん三下になってらっしゃる。

 

「に、逃げろッ!」

「ヒィッ!」

「うわぁあ!」

 

 ・・・・・・うわぁ。僕、こんなのにいじめられてたんだ。ちょっとショック。

 

「あー、平気か?」

 

 いつの間にか僕の前に来ていた男子生徒―――たしか、如月くん―――は、そう言いながら僕に手を差し出す。

 

 僕は素直にその手をと―――

 

「弱いものいじめとか、やること古すぎんだろ」

 

らずに、叩いた。

 

「あ? なんのつもりだ?」

 

 疑問符を浮かべながら睨む彼。

 

「助けてくれたことには感謝してる。でも」

 

 僕はいったんそこで区切って、自分で立ち上がる。それから、目の前にいる彼を睨み、

 

「僕は、『弱いもの』じゃない」

 

 その言葉を聞いた彼は、「ハッ」と鼻で笑い、

 

「面白い。ならデュエルで証明してみろよ」

 

 そう言って、腕に付けているデュエルディスクを起動した。

 

 僕も黙ってディスクを構える。

 

「「デュエル!」」

 

如月遊羽 LP8000

遊民戦  LP8000

 

 お互いにデッキからカードを五枚抜き取る。

 

「さてと、お手並み拝見といこうか」

 

 僕が『弱くない』ことを証明するためのデュエルが、今始まった。




次回予告

主人公二人のデュエルが始まった。
戦が『弱くない』と言う理由とは。そして、遊羽の精霊とは。
次回、『戦のデュエル』 デュエルスタンバイッ!

デュエル、本当に始まっただけ。どうしてここまで引きずるのか。
次回は遊羽目線でのデュエルです。


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戦のデュエル

やっと、やっとデュエルです。


Side遊羽

 

 授業が終わり、今日も行き着けのカードショップにでも行こうかと席を立つ。虹花は生徒会で仕事があるらしいので、一緒には帰れそうにない・・・・・・一応、待つか。

 

 そう思っていると、担任教師に呼び出された。なんでも、登校中にデュエルしたことについての説教らしい。面倒くさい。

 

ーーーーーーーーーー

 

 説教を聞き流し終えて、ようやく帰れるかと思ったが、どうにもイライラした。

 

 理由は簡単。さっきの説教に朝の・・・・・・誰だっけ、アイツ。まぁアイツが呼び出されてなかったからだ。権力者の息子だかららしい。アホか。

 

 苛立ちを抱えたまま、ふと見た窓の外のデュエル場に、いじめられっ子一人といじめっ子を発見。

 

 ちょうどいい。八つ当たりしよう。

 

 俺は口角を思いっきり上げた。

 

ーーーーーーーーーー

 

「「デュエル!」」

 

 そして、今にいたる。

 

 目の前にいるのは、全身ボロボロの少年。名前? 知らないな。

 

 虹花がくるまでの時間つぶしのデュエル、開始だッ!

 

「先攻はいただく。俺のターン」

 

 手札確認。まあまあかな。

 

「俺は調和の宝札を発動。手札から攻撃力1000以外のドラゴン族チューナーを一枚捨てて、二枚ドロー」

 

 下ごしらえはこんなものか。

 

「俺はドラグニティ-ドゥクスを召喚。効果で墓地のドラグニティ-ファランクスを装備っと」

 

ドラグニティ-ドゥクス ☆4 攻撃力1500

 

 今日も頼むぜ、モンスター達。

 

「さっきの手札交換の時に・・・・・・」

 

 他にないだろ?

 

「んでファランクスの効果。装備しているこのカードを特殊召喚。来い、ファランクス」

 

ドラグニティ-ファランクス ☆2 チューナー 攻撃力500

 

「チューナーと、それ以外のモンスターが一体。シンクロ召喚だね」

 

「もちろん。シンクロ召喚! ドラグニティナイト-ガジャルグ」

 

4+2=6

 

 黄金色の鎧に身を包んだ竜騎士が現れる。

 

ドラグニティナイト-ガジャルグ ☆6 攻撃力2400

 

「効果発動。デッキからBF-精鋭のゼピュロスを手札に加え、そのまま墓地へ送る」

 

 先攻だとあんまりやることないんだよなぁ、ドラグニティ。

 

『遊羽。彼には私が見えているようだ』

 

「マジか」

 

『あぁ。あまり見下さない方がいいかもしれない』

 

 まぁ、平気だろ。様子見程度ってことで。所詮は虹花が来るまでの時間つぶしだし。

 

「つーことで、ターン終了だぜ」

 

如月遊羽

LP8000 手札4

場 EX:ドラグニティナイト-ガジャルグ

 

「僕のターン。ドロー」

 

 さてと、ボロボロ少年くんは、どんなデッキかな。

 

「僕は、手札から魔法カード、妨げられた壊獣の眠りを発動」

 

 待て待て待て! 壊獣? ワンキルじゃねぇか!

 

「効果で場のモンスターを全て破壊。その後、僕のデッキからカード名の異なる壊獣を、お互いの場に特殊召喚する。君には多次元壊獣ラディアンを、僕の場には壊星壊獣ジズキエルを出すよ」

 

 地面に亀裂が走り、ガジャルグが飲み込まれる。いや、飛べよ。申し訳なさそうにこっち向くな! 仕方なく破壊されてるのはわかったから!

 

壊星壊獣ジズキエル ☆10 攻撃力3300

 

多次元壊獣ラディアン ☆7 攻撃力2800

 

 俺の場に真っ黒なちょっとカッコいい巨人(?)が、ボロボロ少年の場には無機質な破壊兵器が現れる。

 

「僕はSRアクマグネを召喚」

 

SRアクマグネ ☆1 チューナー 攻撃力0

 

 ? スピードロイドは汎用カードとして有名だが、聞いたことないカードだ。マイナーカードか?

 

「アクマグネの効果。相手のモンスター一体と風属性シンクロモンスターをシンクロ召喚する。対象はラディアン」

 

7+1=8

 

「集いし星よ、空に輝く綺羅星となれ! シンクロ召喚! 飛翔せよ、スターダスト・ドラゴン!」

 

 星屑の輝きを持つシグナー竜が降臨する。

 

スターダスト・ドラゴン ☆8 攻撃力2500

 

 ・・・・・・は? ナニソレ強くね?

 

 このコンボを考えたのがコイツだとしたら、俺は彼を舐めすぎていたかもしれない。

 

『だから言っただろう』

 

 ・・・・・・うっさいぞ、レヴ。デッキから抜くぞ。

 

『それは困るが、そんなことして君のデッキが無事で済むと思うか?』

 

 回転力や安定性に問題はない。火力がちょっと欠けてこのデッキを作った意味がなくなるだけだ。

 

『そうだったな。私のために作ってくれたデッキだったな、これは』

 

 あとは、俺が個人的にコイツが大好きってだけだ。

 

「速攻魔法、リミッター解除を発動」

 

 ・・・・・・あ。

 

「僕の場の機械族モンスターの攻撃力を倍にする。かわりに、ターン終了時に破壊される」

 

 ジズキエルの目が赤く光る。赤いオーラまで現れた。

 

壊星壊獣ジズキエル 攻撃力3300→6600

 

 ワンキルだよぉ! やっぱりワンキルだよぉ!

 

「行くよ、バトル」

 

 その宣言は、俺にとって死刑宣告に等しかった。

 

「君の場にモンスターはいない。よってジズキエルでダイレクトアタック! 壊星の一撃!」

 

 確かに今の攻撃力なら星もイケルかもしれない。

 

「だが残念だったな! こっちもワンキル対策ぐらいできている! 来い、バトルフェーダー!」

 

バトルフェーダー ☆1 守備力0

 

 去年、ワンキル・ソリティア研究会と全面戦争をしてから、俺のデッキにはコイツが入っている。・・・・・・よくあそこに勝てたよな、俺。

 

「・・・・・・リミッター解除の効果でジズキエルは破壊される。それに対して、速攻魔法、禁じられた聖衣を発動。破壊を免れる。僕はカードを二枚伏せて、ターンエンドだよ」

 

 悔しそうな顔と共に、ボロボロ少年くんのターンが終わる。

 

遊民戦

LP8000 手札0

場 EX:スターダスト・ドラゴン メイン:壊星壊獣ジズキエル 伏せカード:二枚

 

 ・・・・・・正直、危なかった。侮っていた。コイツの実力を。

 

「すげぇよ、ボロボロ少年くん」

 

「僕は遊民 戦だ」

 

「そうか。なら戦」

 

 俺は、万感の思いを込めて、告げる。

 

「素晴らしいコンボだった。誇っていいぜ。・・・・・・だが、ここまでだ」

 

「!?」

 

「お前に、次のターンはないッ!」

 

 デッキの一番上のカードに手を掛けながら、宣言した。

 

「・・・・・・僕のライフは一つも減っていないよ。伏せカードもある。それでもかい?」

 

「あぁ。その上で、だ」

 

 その上で、全てを砕くッ!

 

「ファイナルターン!」




次回予告

3ターン目にして告げられたファイナルターン。
戦はこのターンを凌ぎきることが出来るのか!?
次回、『遊羽のデュエル』 デュエルスタンバイッ!

長くなりそうだし切りがいいので前後編に。
遊羽の精霊、呼び方と姿とデッキから、もうバレバレですね。

追記
アクマグネで出すのが閃珖竜スターダストだったんですが、光属性だったので直しました。禁じられた聖衣はその代わりです。


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遊羽のデュエル

遊羽vs戦、決着です。


Side戦

 

如月遊羽

LP8000 手札4

場 メイン:バトルフェーダー

 

「ファイナルターン!」

 

 彼によって告げられた、余命宣告。・・・・・・これ、外したりしたら面白いのに。

 

「いくぜ、ドロー!」

 

 だけど、彼の気合いによって、そんな考えは吹き飛ばされる。

 

 ・・・・・・本気だ。彼は本気で僕を倒しに来ている。

 

「俺は竜の渓谷を発動! 来いッ、俺のフィールド!」

 

 今まで殺風景だったデュエル場の景観が、竜達の住む谷へと塗り替えられる。

 

「そのまま効果発動! 手札を一枚捨て、二つの効果から一つを選ぶ」

 

 確か、ドラゴン族を墓地へ送る効果と、ドラグニティを手札に加える効果だったはず。

 

「俺が選ぶのはドラグニティを手札に加える効果。俺は二枚目となるドラグニティ-ドゥクスを手札に加える」

 

 恐らく、またシンクロ召喚だろう。

 

「やることはさっきと同じ! ファランクスを装備して特殊召喚、そしてチューニング!」

 

 ファランクスが輪っかに変身(?)し、ドゥクスを包む。

 

4+2=6

 

「竜との絆を束ね、全てを貫く神槍とせよ! シンクロ召喚! 最強の竜騎士、ドラグニティナイト-ヴァジュランダ!」

 

 現れたのは、橙色の鎧と槍を持つ竜騎士。

 

ドラグニティナイト-ヴァジュランダ ☆6 攻撃力1900

 

「攻撃力1900? なら何か効果があるのか」

 

「当たり前だ。シンクロ召喚成功時の効果で、墓地のファランクスを装備、さらに、手札からドラグニティの神槍を装備! 攻撃力がレベル×100上がるぜ」

 

ドラグニティナイト-ヴァジュランダ 攻撃力1900→2500

 

 ヴァジュランダの持つ槍が、文字通り神槍へと替わった。神とつくくらいだ。まだ効果があるに違いない。

 

「ドラグニティの神槍の更なる効果。デッキからドラゴン族のドラグニティチューナーを装備モンスターに装備出来る。来い、ドラグニティ-ブランディストック!」

 

 ヴァジュランダの手に、新たに武器が現れる。・・・・・・ファランクスと合わせて三本目だよね? 結構持ちづらいよねぇ!?

 

 如月くんも苦笑いしてないでなんとかしてあげて!?

 

「ヴァジュランダの効果。装備カードを墓地へ送れば、攻撃力が倍になるぜ。俺はファランクスを墓地へ送る」

 

 装備していたファランクスが消え、ホッとした様子のヴァジュランダ。良かったけど、攻撃力上がってるからね!? パワーアップ中だよ!?

 

ドラグニティナイト-ヴァジュランダ 攻撃力2500→5000

 

 攻撃力5000。確かに脅威だ。でも、どうってことはない。伏せたトラップで返せる。

 

「あ、そうそう。神槍を装備したモンスターに罠は効かないからな。それと、ブランディストックを装備したモンスターは二回攻撃できる」

 

「!? なんだって!?」

 

 聞き間違いを疑ってみたけど、そうではなかったらしい。

 

「でも、このターンで僕を倒すことはできないよ」

 

 攻撃力5000の二回攻撃でも、僕が受けるダメージは合計4300。8000には届かない。

 

「それはどうかな? バトル! ヴァジュランダでスターダスト・ドラゴンを攻撃、破壊だッ!」

 

 僕に力を貸してくれる数少ないレアカード。

 

 ゴメンね。スターダスト・ドラゴン。

 

遊民戦

LP8000→5500

 

 でも、ここまでだ。彼の手札は一枚、墓地のカードだって・・・・・・。墓地のカード?

 

「そしてジズキエルに攻撃! そして墓地のタスケルトンの効果ッ!」

 

 竜の渓谷で墓地に送ったカード!

 

「攻撃を無効化! そして速攻魔法、ダブル・アップ・チャンスを発動!」

 

「そのカードはッ!」

 

「攻撃が無効化されたとき、もう一度攻撃する権利と、攻撃力を倍得るッ! スターダストとジズキエルを屠れ、ヴァジュランダ!」

 

ドラグニティナイト-ヴァジュランダ 攻撃力5000→10000

 

「うわあぁあ!」

 

 僕のモンスターが槍で貫かれ、その余波を受ける。

 

遊民戦

LP5500→0

 

 僕は伏せていたトラップも発動できないまま、敗北した。




次回予告

・・・・・・未定ッ! 以上!

次回はデュエルなしの日常系になるかと。
遊羽と戦のデッキですが、今回出せなかったコンボとかがあるので、デッキ紹介回とかあるかもです。(こちらも未定)

とりあえず一区切り。
今後もよろしくお願いします。


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パック開封

日常回です。
デュエルしません。(元々一回しかデュエルしてないけど)


Side遊羽

 

 山のようなフライドポテト。そしてそれを食べる戦。眺めている俺。それが今起きていることの全てだ。

 

 あのデュエルの後、コイツと話をしてみたくなって、近くのファミレスによった。おごってやるからと言って。その結果が、この有り様だ。虹花にはここにいると連絡してある。

 

「・・・・・・なぁ、戦」

 

「・・・・・・、ふぁに(何)?」

 

 ・・・・・・食うの止めないのな。

 

「お前のデッキって・・・・・・」

 

「ふぃふぇふぉうふぁ(見せようか)?」

 

「きたねぇし何言ってるかわからない。食うかしゃべるかどっちかにしろ」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 食う方選びやがった、コイツ。

 

「・・・・・・パックでも開けるかな」

 

 確か昨日あたり箱で買ったはずだ。バックの中に、と。よしあった。

 

「・・・・・・」

 

 戦が視線を向けてくるが、無視だな。

 

ペリッ

 

 えーと、何々? 星杯? このテーマは使わないなぁ。お、マジカルシルクハットか。使い方次第で面白いことができるんだよな、このカード。

 

 続けてパックを開けていく。

 

 お、ドラグニティ! セナート? 新しいカード出てたんだなー。クーゼ? こっちもか。・・・・・・ん?この効果ってバルーチャ出しやすいな! 帰ったらデッキを組み直そう。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 次のパックは、WW? ウィンドウィッチ? バーンデッキか? いやでもチューナー? シンクロ召喚とバーンを組み合わせたテーマなのか? あ、トリックスターにも融合モンスター出たのか。バーンデッキならこっちの方が有名だな。

 

 お、コレって・・・・・・!

 

「♪~~♪~~~」

 

 ちょっと上機嫌になってきた。欲しいカードが出たからな。鼻歌ぐらいは勘弁して欲しい。

 

『・・・・・・』

「・・・・・・」

 

 レヴとか他のお客さんとかの視線も痛いけど、気にしない気にしない。あと27パックも残ってるし、今日は大勝利だぜ。

 

「・・・・・・何をしているんですか?」

 

 声に反応してそちらを見れば、般若心経が。拝むか。

 

「南無三」

 

「何故拝むんですかっ!」

 

「? 般若心経が見えたから」

 

 拝むだろ? 普通。

 

「まぁ冗談はこのくらいにして。仕事は終わったのか、虹花?」

 

 なんと般若心経の正体は怒る生徒会長、真宮虹花だったのだ! シャレにならねぇ。

 

「えぇ、終わりました。貴方がデュエルしている間に」

 

 ・・・・・・あ、マズい。これ結構怒ってる。

 

「い、いやー? これには訳がありまして?」

 

 ヤバいって。冷や汗が止まらない。

 

「それで? いったいどのような理由で私を置いていき、デュエルを楽しんでいたんですか? 是非とも聞きたいですね?」

 

 ヲーのよく死ぬ竜さんホルアクティさん三幻魔ドン千バリアン三邪神ズァーク。伝説のデュエリストの皆さん! 俺に(言い訳する)力を!

 

「・・・・・・あ、ちょっとお花摘みに「行かせるとおもいますか?」・・・・・・はい」

 

 神は死んだ。

 

『はぁ、説明くらいしてやったらどうだ?』

 

 いや、この怒り様だと、何言っても通じないだろ?

 

『諦めろ』

 

 ・・・・・・お前マジでデッキから抜くぞ?

 

『それでどうする気だ?』

 

 さっき当てたウィンドウィッチとドラグニティを合わせてクリスタルウィングのデッキを作る。

 

『・・・・・・すまなかった。共に説教を聞いてやるから、それは止めてくれ』

 

 説教確定かよ!

 

「戦! お前から説明を」

 

 してくれ、とは続かなかった。

 

「・・・・・・?」

 

 コイツ、追加オーダーしてやがる。

 

「さて、抵抗はもう終わりですか?」

 

「い、いや、ちょっ、待っ」

 

ーーーーーーーーーー

 

 お、終わった・・・・・・。やっと説教終わった・・・・・・。

 

 一時間だぜ一時間! 辛ぁ・・・・・・。

 

『自業自得だな』

 

 とりあえず、俺のパック5つで今のところは手打ちにしてもらった。

 

「♪~~♪~~~~♪~~」

 

 ホクホク顔でパックを開ける虹花。俺も開けるかな。

 

 BF・・・・・・あ、またウィンドウィッチ。これはもう本格的にデッキ組むかな。お、クリバンデットか。虹花が欲しいって言ってたな。

 

「なぁ虹花」

 

「何でしょうか♪」

 

 ・・・・・・いいカードでも出たのか? 超上機嫌じゃん。

 

「クリバンデットが出たんだが、何かとトレードしないか?」

 

「勿論です!」

 

 うおっ。凄い食いつきいいな。

 

「何がいいですか? ドラグニティの新規は生憎持っていませんけども・・・・・・」

 

「このウィンドウィッチっていうのをだな・・・・・・」

 

「は?」

 

 ん? あれ? 虹花さん、凄い怒ってらっしゃる?

 

「に、虹花? どうしたんだ?」

 

「ドラゴンならまだしも、美少女カードですか? 何のつもりですか」

 

 何ギレ!? ねぇこれ何ギレ!? さっき説教食らったぜ!?

 

「はぁ、まあいいでしょう」

 

 よくわからない怒りはおさまったようだ。意味わからん。

 

「ですが、WWはカードが5種類しかないですよ? そんなカードで何を?」

 

「デッキパーツとして使えねぇかなと。相性はわからないが、カードがないことには始まらない」

 

 風属性だし、シンクロ軸だし。バーンは使わないけど、あって損はないだろう。ブラックフェザードラゴン使うやつなんてほとんどいないし。俺がさっき当てたカードを使われたら困るけど。

 

「で、お前はいつまで食ってるんだ?」

 

 俺の目線の先にいるのは、俺が説教されてる間にもずっとフライドポテトを食っていた戦。

 

「ふぁふぁっふぁ。ふぉうふぁめふ(わかった。もうやめる)」

 

 口の中のものを飲み込み、戦はようやく食事をやめた。

 

「それで、僕に何の用?」

 

 やっと、ようやく本題に移れる。

 

「お前のデッキを見せて欲しい」

 

「・・・・・・えーと、それは何で?」

 

 戦は困惑した表情を浮かべる。ま、さらそうなる。

 

「お前のデッキって、多分コンボデッキだろ? 他にどんなコンボがあるのか気になってな」

 

 いちいちコンボの説明をされるより、デッキを見せてもらった方が早い。

 

「遊羽、今日はもう遅いです。また後日にしてはどうです?」

 

 ・・・・・・もう遅いって、説教がなければ余裕でしたよ?

 

「何か?」

 

「いいえ、なんでもありません」

 

 この光景を見ていた戦はアハハ、と笑って

 

「僕は基本暇だし、いつでもいいよ。同じクラスだし」

 

「・・・・・・マジで?」

 

 同じクラスだったのか?

 

「まったく、遊羽は・・・・・・」

 

『もう少し他人に興味を持ってはどうだ?』

 

 レヴまで・・・・・・。

 

「じゃあ戦。一つ頼みがあるんだ」

 

「頼み?」

 

「今後、俺以外に負けるな」

 

「えーと、何で?」

 

「俺は弱いものいじめはしない主義なんでな。お前が負けると、俺の株が下がる」

 

 それに、と続けて

 

「お前、『弱くない』んだろ?」

 

 特大の挑発をしてやった。

 

 それに対して、戦は。

 

「わかった。僕は『弱くない』ことを、証明しよう」

 

 満面の笑みで答えた。




次回予告

『弱くない』証明のために負けないことを決めた戦。
そんな彼に、デュエルをいどむ者がいた。
次回、『証明の第一歩』 デュエルスタンバイッ!

ノリと勢いで書きました。
とりあえず、次回はデュエルします。


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証明の第一歩

デュエルはしますが、今回はあまり重要じゃありません。
内容も薄いです。


Side戦

 

 如月くんとデュエルした翌日。

 

 何かが劇的に変わるようなこともなく、僕はいじめられていた。

 

「よぉ、戦ちゃぁん?」

 

「いつ聞いても戦って名前、似合ってねぇよなぁ!」

 

「生意気だなぁ。身の程ってもんを教えてやるよ!」

 

 という次第で。

 

「まぁ、変わったのは僕自身の意識かな」

 

「あぁん!?」

 

 僕は特に気負うこともなく、いじめっ子達を眺める。

 

「ねぇ、僕とデュエルしようよ」

 

「あぁ? デュエルだぁ?」

 

「何のつもりだ、テメェ」

 

「今までオレ達に勝ったことないのを、忘れちまったのかぁ!?」

 

 僕が勝てなかったのは、僕の心が弱かったせいだ。スターダスト・ドラゴンを始めとする、多くのモンスターが力を貸してくれなかった。

 

 でも、昨日のデュエルでスターダストは力を貸してくれた。それだけで、充分。

 

「今日のデュエル授業。君達を倒すよ」

 

「ハッ! 上等だ!」

 

 同じ鼻で笑うのでも、如月くんとは大違いな、人を馬鹿にした笑い方。

 

「そんなのに負けたら、僕は『弱いもの』だね」

 

 あぁ、早く授業が始まらないかなぁ。

 

ーーーーーーーーーー

 

「「デュエル!」」

 

男子生徒A LP8000

遊民戦   LP8000

 

 待ちにまったデュエル授業。

 

 僕の『弱くない』証明のためのデュエル、開始だ!

 

「オレの先攻! ゴブリンドバーグを召喚! 効果でゴブリン突撃部隊を特殊召喚! ゴブリンドバーグは守備表示になるぜ」

 

ゴブリンドバーグ ☆4 攻撃力1400→守備力0

ゴブリン突撃部隊 ☆4 攻撃力2300

 

 出た、いじめっ子Aくんのゴブリンデッキ。いじめっ子くんの名前? 聞いてないけど。

 

 いじめっ子はA、B、Cでいいでしょ。

 

「カードを二枚伏せてターン終了だぜ!」

 

いじめっ子A

LP8000 手札1

場 メイン:ゴブリンドバーグ ゴブリン突撃部隊 伏せカード:二枚

 

「僕のターン。ドロー」

 

 あ、ワンキルできる。

 

「僕は調律を発動。デッキからジャンク・シンクロンを手札に加えて、デッキトップを墓地へ」

 

 落ちたのはドッペル・ウォリアー。

 

 勝ったな。

 

「僕はジャンク・シンクロンを召喚。効果でドッペル・ウォーリアーを特殊召喚」

 

ジャンク・シンクロン ☆3 チューナー 攻撃力1300

 

ドッペル・ウォリアー ☆2 守備力800

 

「いつも通りの弱小モンスターか。飽きたぜ」

 

「・・・・・・僕のモンスターは、弱くない」

 

 証明開始だ。

 

「僕はジャンク・シンクロンでドッペル・ウォリアーをチューニング!」

 

3+2=5

 

「集いし星が、鋼に打ち勝つ戦士となる! シンクロ召喚! 力を貸してくれ、ジャンク・ウォリアー!」

 

 弱きを助け、強きを挫く戦士が、僕の相棒だ。

 

ジャンク・ウォリアー ☆5攻撃力2300

 

「ドッペル・ウォリアーの効果! シンクロ素材となったとき、場にドッペル・トークン二体を特殊召喚する。来い、トークン達!」

 

ドッペル・トークン ☆1 攻撃力400

 

「そしてジャンク・ウォリアーの効果! シンクロ召喚成功時、僕の場のレベル2以下のモンスターの攻撃力分、ジャンク・ウォリアーの攻撃力を上げる!」

 

ジャンク・ウォリアー 攻撃力2300→3100

 

「こ、攻撃力3100だと!」

 

 ? 何を驚いているんだろう? 僕は昨日攻撃力10000を見たよ?

 

「ジャンク・ウォリアーでゴブリンドバーグに攻撃!」

 

「だ、だが! ゴブリンドバーグは守備表示! ダメージは受けないぜ!」

 

 わかってるよ、そんなこと。だからッ!

 

「速攻魔法、スクラップ・フィスト! ジャンク・ウォリアーに5つの効果を与える!」

 

「5つだと!」

 

「面倒だから詳細は省くけど、戦闘ダメージ倍化と守備貫通がある!」

 

「なんだと!」

 

 これでトドメだ!

 

「さらに、ダメージ計算時、手札からラッシュ・ウォリアーを捨てて効果発動! 攻撃力を二倍にする!」

 

ジャンク・ウォリアー 攻撃力3200→6400

 

「全てを砕け! スクラップ・フィスト!」

 

 ジャンク・ウォリアーの拳が、ゴブリンドバーグを打ち砕く。

 

「グハアァ!」

 

いじめっ子A

LP8000→0

 

「僕の、勝ちだ」

 

 ちなみに、残りの手札はワン・フォー・ワンとドッペル・ウォリアー。調律で落ちなくてもワンキルできた。

 

「馬鹿な・・・・・・。有り得ない・・・・・・!」

 

 いじめっ子Aくんが何か言っているけど、多分僕には関係のない話だよね。

 

「さてと」

 

 僕は残ったいじめっ子BくんとCくんに目を向ける。

 

「残り二人・・・・・・」

 

「ヒィッ!」

 

「殺さないでぇ!」

 

 あれ? 僕の顔ってそんなに怖い? まぁ、どうでもいいか。

 

「どっちからデュエルする? かかって来なよ」

 

ーーーーーーーーーー

 

 放課後。

 

 僕の目の前では、如月くんが笑い転げていた。

 

「アッハッハッハ! プッ、クハハハハ!」

 

 僕らは今、昨日も来たファミレスにいる。今日はおごってくれないらしいので、フライドポテトは自粛した。仕方がない。

 

「いや、だってよ。お前三人連続ワンキルとか、もう笑うしかねぇだろ! クッ、アハハハハハ!」

 

 そう、僕はあの後、残りの二人もワンキルした。先攻をとった彼らが悪い。

 

「しかも全部別の方法って、お前デッキいくつ持ってるんだよ!」

 

 笑いながら如月くんが言う。

 

「いや、一つだけど」

 

 そう答えた時、彼の笑いがピタリと止まった。

 

「・・・・・・は?」

 

「だから、全部同じデッキだって」

 

「イヤイヤ、ジャンドとあの壊獣アクマグネ、あとサイバー流の三つが?」

 

「うん」

 

 いやー、よくワンキルのセットで手札に来たよね。普段はもう少しバラけるのに。

 

「・・・・・・お前マジで一回デッキ見せてくれよ。どうやったらそんなデッキになるんだ?」

 

「え、別にいいけど・・・・・・」

 

 僕のデッキなんて、見ても参考にならないと思うし。

 

「・・・・・・」

 

 デッキを手渡すと、如月くんは食い入るように確認した。

 

「・・・・・・」

 

 黙って、何も言わずにデッキを見る。

 

 ・・・・・・暇だなぁ。あ、そうだ。

 

「ねぇ、君」

 

 僕は彼の背後に佇んでいた竜に話しかけた。

 

『む? 私か?』

 

「うんそう。君だよ」

 

 すると、その竜は驚いたように僕を見つめる。

 

『見えるだけではなく、話すことも出来るのか・・・・・・』

 

 うん? 普通は話せないのかな?

 

「君ってカードの精霊だよね!」

 

『あぁ。そうだ』

 

「話す機会がなかったから、話したいなと思ってさ。暇だし」

 

 格好いいな、この竜。

 

「僕は遊民戦。君の名前は?」

 

『私はレヴ。ドラグニティアームズ-レヴァテインだ。よしなにな』

 

 おぉ! 名前まで格好いい。

 

「レヴが見えるだけじゃなくて、話すこともできるとはな」

 

「如月くん。デッキはもういいの?」

 

「あぁ」

 

 ? 何か僕を信じられないものを見る目で見てくるんだけど。

 

「どうしたの、如月くん」

 

「お前、自分のデッキの状態がわかっているか?」

 

 デッキの状態? 一般的なデッキじゃないことぐらいはわかっているけど・・・・・・。

 

「その顔だと、わかってないみたいだな」

 

「何が?」

 

 如月くんは意を決したような顔をして、告げた。

 

「戦。お前のデッキには、精霊が宿っている」

 

「? そう」

 

 それで?

 

「・・・・・・それだけか?」

 

「え、何が?」

 

「反応が」

 

 ・・・・・・質問の意味がわからない。

 

「いやほら、『そんなっ!僕のデッキに精霊が!?』とか、色々あるだろ?」

 

 いや、特になにも?

 

「精霊が宿ってるって言われても、僕には見えないし。話せたら楽しそうだけど」

 

 あれ、なんで如月くん頭抱えてるの? 救急車呼ぼうか!?

 

「精霊にはな、三種類あるんだ」

 

 お、何か説明始めた。

 

「レヴみたいなのが高位精霊。精霊を感じられる人には見える。お前のデッキにいるようなのが下位精霊。人が感じるのは難しい。三つ目が悪霊。人の悪意が精霊に宿った姿で、人に害なす存在だ」

 

 へー。

 

「でも残念だなぁ。つまり、僕のデッキの精霊は見えないってことでしょ」

 

「そんなことはどうでもいい」

 

 あれ!? 辛辣!?

 

「お前のデッキのモンスターな、全員が精霊なんだよ」

 

 ・・・・・・マジで!?




次回予告

告げられた衝撃の事実。
デッキのモンスター全てが精霊だと、どうなるのか。
次回、『戦のデッキ』 デュエルスタンバイッ!

戦のワンキルですが、一戦目がジャンク・ウォリアーのごり押し、二戦目が壊獣アクマグネ、三戦目では相手がマシンナーズだったのでサイバー・ドラゴンを特殊召喚してキメラテック・フォートレス・ドラゴンに融合してリミッター解除、という方法です。

三戦目は、明らかに相手の責任。


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戦のデッキ

説明回です。
戦のデッキのほとんどがバレますが、気になる人は飛ばしてください。


Side遊羽

 

 戦からデッキを受け取った俺は、その中身を確認する。

 

 ジャンク・シンクロン、団結の力、ジズキエル、サイバー・ドラゴン、・・・・・・、あ、クモグスも入っているのか。巨大化、スクラップ・フィスト、アクマグネ、DNA改造手術? 何に使うんだ? まさかジャンク・ウォリアーを機械族にしてリミッター解除・・・・・・は流石にないか? ・・・・・・バルブ、ジェット・シンクロン、フルール・シンクロン? フルールとか何に使うんだ?

 

 次はエクストラデッキか・・・・・・ジャンク・ウォリアーが二枚、俺とのデュエルで使ったスターダスト・ドラゴン、怪刀乱破ズール、キメラテック・フォートレス、イゾルデ? ジャンク・シンクロンから出すのか? ・・・・・・マネキンキャット!? 何で!? DNA改造手術で全員機械族にして、機械族なんでも出すとか? アホすぎるだろ・・・・・・。

 

 でもまぁ、コイツのデッキがおかしいことはよくわかった。

 

 それを伝えようと思って顔を上げると、戦はレヴと話していた。

 

「レヴが見えるだけじゃなくて、話すこともできるとはな」

 

「如月くん。デッキはもういいの?」

 

「あぁ」

 

 ・・・・・・本当にコイツはおかしな奴だ。レヴと話せることが、どれだけ異常かわかっていないのか?

 

「どうしたの、如月くん」

 

 俺は半信半疑で戦に質問する。

 

「お前、自分のデッキの状態がわかっているか?」

 

 俺の質問に対して、戦は心底わからない、という表情をした。

 

「その顔だと、わかってないみたいだな」

 

「何が?」

 

 言うべきか、言わないでおくべきか。

 

 俺は意を決して、告げた。

 

「戦。お前のデッキには、精霊が宿っている」

 

「? そう」

 

 ・・・・・・は?

 

「・・・・・・それだけか?」

 

「え、何が?」

 

「反応が」

 

 またも惚けた顔をする戦。何か、俺が一人おかしいみたいじゃんッ!

 

「いやほら、『そんなっ!僕のデッキに精霊が!?』とか、色々あるだろ?」

 

「精霊が宿ってるって言われても、僕には見えないし。話せたら楽しそうだけど」

 

 ・・・・・・頭が痛い。

 

 救急車呼ぶ?、じゃねぇよ。お前が頭見てもらえよ!

 

 俺は諦めて説明パートに入った。

 

「精霊にはな、三種類あるんだ。レヴみたいなのが高位精霊。精霊を感じられる人には見える。お前のデッキにいるようなのが下位精霊。人が感じるのは難しい。三つ目が悪霊。人の悪意が精霊に宿った姿で、人に害なす存在だ」

 

 まぁ、『闇のカード』ってのもあるけど、今はいいだろう。

 

「でも残念だなぁ。つまり、僕のデッキの精霊は見えないってことでしょ」

 

 そんな脳天気なことを言う戦を、俺はバッサリ切り捨てた。

 

「そんなことはどうでもいい」

 

 一番の問題は、コイツのデッキだ。

 

「お前のデッキのモンスターな、全員が精霊なんだよ」

 

「・・・・・・はい?」

 

 そう、コイツのデッキのモンスターカード、全てが、だ。

 

 今日の引き運の良さも、恐らくはそのせい。

 

 もし無意識にやっていたんだとしたら、それこそ天文学的な数字になりかねない。

 

「え、じゃあなに!? もしかして、僕のモンスターも話したりできるの!?」

 

「そこかよッ!」

 

 今まで生きてきた人生の中で、今ほどハリセンが欲しいと思ったことはない。

 

 惚けた顔するなッ! マジで救急車呼ぶかッ!?

 

「ちょ、何でそんなに怒ってるの!? 僕何かした!?」

 

「お前の行動全てを省みろ!」

 

 つ、疲れた・・・・・・。俺はツッコミ担当じゃねぇんだよ。どちらかというとボケだよ。虹花がツッコミだよ。

 

「ツッコミってこんなに疲れるんだな・・・・・・。ボケ増やすか」

 

「それよりも如月くん! 僕のモンスター達は話したりできないの?」

 

 マジでツッコミプリーズ。ボケが通じない。

 

「下位精霊も、きっかけあえあれば高位精霊になることがある。そこに期待しろ」

 

「うん、そうしようかな!」

 

 あれー、コイツこんなハイテンションだったっけー?

 

遊羽SideOut

 

ーーーーーーーーーー

 

Side戦

 

 あの後、デッキを返してもらって、解散となった。

 

 にしても、精霊かぁ。僕も自分の精霊が欲しいなぁ。

 

「あ、もうこんな時間か」

 

 デッキの調整をしていたら、すっかり夜になってしまった。

 

「お休み、皆」

 

 デッキを机に置いて、ベッドに潜る。

 

 そのまま、まどろみに身を任せた。

 

 ・・・・・・。

 

 ・・・・・・・・・。

 

 ・・・・・・・・・・・・。

 

 ・・・・・・。

 

『・・・・・・きよ。起きよ』

 

 ・・・・・・ん? あと五分・・・・・・。

 

『起きよ! 主殿!』

 

 なんだよもう。

 

 目を開けると、視線の先には、

 

「・・・・・・は?」

 

 ジャンク・ウォリアーがいた。




次回予告

高位精霊として戦の前に姿を見せたジャンク・ウォリアー。
ちょっと! いくらなんでもフラグの回収が早すぎでしょ!
次回、『新たな出来事』 デュエルスタンバイッ!

書きたいことが多すぎて、更新が早くなる(その分間違いが多い)。
どうか間違いを発見しましたら、ご報告ください。


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新たな出来事

短いです。
デュエルもありません。


Side遊羽

 

「来週から、林間学校が始まります。男女混合五人班を組んでください」

 

 朝のホームルーム。

 

 戦が「僕もジャンク・ウォリアーが見えるようになったよ!」とか登校中に叫んできて、周りを誤魔化すのやら何やらですでにライフが0な中。異次元の女戦士ならぬ担任の女教室が告げた。ちなみにこの担任、外見も異次元の女戦士に似ていたりするから不思議だ。恋人はダイ・グレファーかな。

 

 にしても班決めねぇ。

 

「如月くん!」

 

「お前とは断固拒否だ」

 

 早速やってきた戦を斬って捨てる。

 

『何故断ったのだ?』

 

 ツッコミで過労死するぞ?

 

『・・・・・・そうか』

 

 色々察してくれたらしいレヴ。ありがたい。今度レヴ以外モンスターを入れずにデッキを作ろうかな。

 

『実用性は?』

 

 皆無。

 

「ならば、私と組みませんか?」

 

「勿論だぜ、虹花」

 

 話しかけてきた虹花を二つ返事で承諾する。

 

 むしろこっちから頼みに行こうと思っていたくらいだ。

 

「ただし、遊民くんも班に入れることが条件です」

 

「言っていることが無茶苦茶だって理解してるのか? 主に論法とか」

 

 まぁ、虹花の頼みならしゃーない。

 

「つー訳で戦。オーケーだ」

 

「如月くんは真宮さんに弱いね」

 

 うっせ。

 

「あと二人だね」

 

「なら、ボクも入れてくれないかな?」

 

 唐突に誰かが会話に入ってきた。

 

 女子みたいな顔をした、一人の男子生徒だ。

 

「えーと、君は?」

 

「ボクは永野 遥(ながの はるか)! よろしくね!」

 

 何か、勝手に入ることが決まってるんだが・・・・・・。

 

「ならオレも入れてくれ」

 

 またしても、唐突な登場! しかもイケメン! こっちの対応くらい待ってくれませんかね?

 

「オレは四谷 陽樹(よつや はるき)だ。一応学級委員をやっている」

 

「そして、ワンキル・ソリティア研究会の副会長だな」

 

 俺の指摘に、首を縦に振って肯定する四谷。

 

「ワンキル・ソリティア研究会って?」

 

「去年、遊羽と全面戦争を繰り広げた、ワンキルやソリティアについて研究している会です」

 

「何でも、デュエルは壁とするらしいよー」

 

 戦の質問に答える虹花と永野。あの全面戦争がなければ、今の俺のデッキには、手札誘発が一枚もなかっただろう。

 

「流石に壁とばかりやる訳ではないがな」

 

 肩をすくめて四谷が言う。

 

「ていうことは、壁とすることも?」

 

「勿論ある」

 

「・・・・・・うわぁ」

 

「コイツらのデッキと頭はお前以上におかしいぞ。関わらない方がいい」

 

 一応、戦に忠告しておく。こうして関わった以上、無意味に等しいが。

 

『して、レヴ殿。遊羽殿が全面戦争をした理由とは?』

 

『嬉しいことに、彼らが遊羽の切り札を私ではなくヴァジュランダだと言ったのが理由らしい』

 

『なんと!』

 

 ちょっと黙ってろ、レヴ。

 

「真宮さん、如月くんの切り札って?」

 

「? ドラグニティアームズ-レヴァテインですよ」

 

「戦テメェ! 虹花もあっさりと人の切り札教えるんじゃねぇよ」

 

「これは面白い林間学校になりそうだねー」

 

「来週が楽しみだな」




次回予告

唐突に現れた、二人の新キャラ。
彼らの林間学校の行方やいかに。
次回、『林間学校にて』 デュエルスタンバイッ!

次回はもう林間学校が始まります。
デュエルスクールの林間学校って、実際何をするんでしょうね?


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林間学校にて

今日は平日なので学校行ってました。疲れた。
今回は新キャラの片方がデュエルします。


Side戦

 

 林間学校へと向かうバスの中。

 

 僕は、結構ウキウキしてた。

 

『上機嫌ですな、主殿』

 

 そりゃそうだよ。

 

 去年までは班決めって言われたら、誰にも声かけてもらえなくて、「あ、入れてもらってもいい?」って訊いたらすごく嫌そうな顔で「・・・・・・いいよ」って言われてたのに、まさか生徒会長やワンキル・ソリティア研究会の副会長と同じ班になれるなんて思わなかったし。

 

『・・・・・・申し訳ありませぬ。そのような暗い過去を思い出させてしまい・・・・・・』

 

 その分、今の状況が嬉しいってことだよ!

 

 それに、精霊もいるしね!

 

『主殿・・・・・・!』

 

 感極まった様子のジャン。

 

 僕は幸せ者だなぁ。皆はどうだろ?

 

「今一度、ワンキル・ソリティア研究会副会長として、君に挑もう」

 

「いいぜ! かかって来いッ!」

 

「「デュエル!」」

 

 バスの中でデュエルて・・・・・・。

 

 あ、もちろんデュエルディスクを使わないテーブルデュエルだよ。

 

「そのカードなら、アンデット族と組み合わせてみるのは?」

 

「うーん、でもそれだとこのカード主体にはならない気がするんですよね・・・・・・」

 

「えー、名案だと思ったんだけどなー」

 

 こっちはカード談議かな?

 

「ま、林間学校でも結局やることは変わらないってことだね」

 

『そうですな、主殿』

 

 というわけで、パックを二箱開けようと思う。

 

『・・・・・・主殿?』

 

 この間如月くんにやられて、結構腹が立ったんだよね。仕返しってことで。

 

『窓の外の景色なんかは・・・・・・』

 

 林間学校でも結局やることは変わらないってことだね。

 

『・・・・・・』

 

 お、シンクロ・フュージョニスト? 面白そうなカードだなぁ。超融合? この間準制限になったカードだね。針虫の巣窟。単純な効果だけど汎用性がありそうだ。あ、このカードって・・・・・・!

 

『・・・・・・お、富士山ですぞ。雄大ですなぁ』

 

『そうだな。いつか行ってみたいものだ』

 

 こうして、僕達の乗ったバスは、目的地に向かって行った。

 

ーーーーーーーーーー

 

 泊まる宿が山奥にあるというので、僕達は班ごとに山を上っていた。

 

「♪~~♪~~~」

 

 皆が四苦八苦する中、僕はとても上機嫌だった。

 

「どうかしたのか、遊民。機嫌がいいようだが」

 

 お、流石は四谷くん。

 

「いいカードが出てさ。面白いことができそうで」

 

 バスの中ではデッキを組むほどの時間はなかったから、デッキに入れるのは宿に着いてからだけど。

 

「よっこいせ、と。ようやく到着か」

 

 先頭を歩いていた如月くんに続き、僕らも目的地に到着する。

 

 そこにあったのは、オンボロ屋敷。

 

「「「「「『『ボロいッ!?』』」」」」」

 

 精霊を含めた全員の意見が合った瞬間だった。

 

「いらっしゃい。宿屋『凪庵』へようこそ」

 

 そのボロい扉を開け、中からお婆さんが出てきた。

 

「外装だけじゃなく、管理人もボロいのか・・・・・・」

 

「遊羽、流石に失礼ですよ」

 

 真宮さんも同意見だと顔にかいてあるけどね。

 

「ほっほっほ。いいのじゃよ、言われなれておるからの」

 

 寛大なお婆さんで良かった。

 

「さてと。それでは各自部屋に移動してください。その後、この場に集まってデュエルを行います」

 

 異次元の女戦士似の先生が指示を出す。

 

『ここでも、デュエルなのですな』

 

 林間学校でもやることは変わらないってことだね。

 

『主殿、さすがに使いすぎですぞ』

 

 ・・・・・・うん、僕も思った。

 

ーーーーーーーーーー

 

 というわけで、デュエルをするんだけど・・・・・・。

 

「僕、余ってない?」

 

 如月くんは真宮さんと、四谷くんは永野さんとデュエル中だ。精霊達は景色を見に行った。遅くなる前には帰ってくるらしい。

 

 ・・・・・・って、四谷くんがワンキルした。早い。ワンキル・ソリティア研究会副会長の名は伊達じゃないらしい。

 

「あー、負けちゃったかー。お、遊民くん! ちょうどよかった! デュエルしよ!」

 

「こっちから頼みに行こうと思っていたところだよ」

 

 これで素通りされていたら、僕は泣いていただろうしね。良かった良かった。

 

「それじゃあ始めようか」

 

「モンスターと共にうんぬんかんぬんどーたらこーたら! スタンディングゥー」

 

「「デュエル!」」

 

遊民戦

LP8000

 

永野遥

LP8000

 

 ・・・・・・さっきの永野さんの詠唱は何だったんだろ。

 

「先攻はもらうよー。ボクのターン!」

 

 気を取り直して、デュエルに集中しよう。

 

「まずはEMギタートルをPスケールにセット! 続けてEMリザードローをセット! ギタートルの効果で一枚ドロー、さらにリザードローの効果で自身を破壊して一枚ドロー」

 

 すごい連続ドローだ! だけどさ・・・・・・。

 

 リザードロー、破壊される時めっちゃ涙目だったよ!? 『ここまでか・・・・・・』ぐらいのテンションで震えながらステッキで自分の首を突こうとして、それに失敗して『グエッ』てなってたけど!

 

 哀れだ・・・・・・。一枚ドローするのがこんなに大変だったなんて・・・・・・。

 

「そしてEMドラネコをPスケールにセット! ペンデュラム召喚!

 

ペンデュラムスケール 2ー6

 

「エクストラデッキからEMリザードロー、手札からEMペンデュラム・マジシャン!」

 

EMリザードロー ☆3 守備力600

 

EMペンデュラム・マジシャン ☆4 守備力800

 

「ペンデュラム・マジシャンの効果! 特殊召喚に成功した場合、ボクのフィールドのカード二枚までを破壊して、その数EMを手札に加える! リザードローとペンデュラム・マジシャンを破壊!」

 

 リザードローが『え!? また!?』みたいな顔をしてるんだけど!? それをペンデュラム・マジシャンが腹パンして破壊してるし! EMってどうなってるの!?

 

「デッキからEMダグ・ダガーマンとEMリターンタンタンを手札に加えるよ!」

 

 ペンデュラム・マジシャンは自身をサーチすることはできないらしい。できたら強すぎるしね。

 

「カードを二枚伏せてターンエンドー」

 

永野遥

LP8000 手札3

場 伏せカード:二枚 Pゾーン:EMギタートル EMドラネコ

 

 何か場がすごいことになってるんだけど・・・・・・。あれで通常召喚してないんだよね。

 

「僕のターン、ドロー」

 

 手札は・・・・・・うーん、そこそこ? モンスターがいないから、壊獣は出せないし。

 

「まずはワン・フォー・ワンを発動するよ。手札一枚を墓地に送って、手札かデッキからレベル1モンスターを特殊召喚するよ。来い、チューニング・サポーター」

 

チューニング・サポーター ☆1 守備力300

 

 永野さんの場にモンスターはいない。・・・・・・怪しいし、慎重に行こう。

 

「僕はジャンク・シンクロンを召喚! その効果で墓地のラッシュ・ウォリアーを蘇生」

 

ジャンク・シンクロン ☆3 攻撃力1300

 

ラッシュ・ウォリアー ☆2 守備力1200

 

「僕はジャンク・シンクロンでチューニング・サポーターとラッシュ・ウォリアーをチューニング! シンクロ召喚!」

 

3+1+2=6

 

 バスで開けたパックで手に入れた、新たな仲間!

 

「来い、スターダスト・チャージ・ウォリアー!」

 

スターダスト・チャージ・ウォリアー ☆6 攻撃力2000

 

 デッキを調整する時間はなかったけど、エクストラデッキに入れるくらいはできたからね。真打ち登場だよ。

 

「チューニング・サポーターとチャージ・ウォリアーの効果で二枚ドロー。バトルだ!」

 

 伏せカードは気になるけど!

 

「スターダスト・チャージ・ウォリアーでダイレクトアタック!」

 

「EMドラネコの効果! 1ターンに一度、ダイレクトアタックのダメージを0にできる!」

 

 ドラネコがお腹のドラムを叩く。その音に驚いたチャージ・ウォリアーがその場に立ち竦む。

 

「なら、カードを一枚伏せて、ターン終了だよ」

 

遊民戦

LP8000 手札4

場 EX:スターダスト・チャージ・ウォリアー 伏せカード:一枚

 

 ・・・・・・あれ? あんまり手札が減ってない。チャージ・ウォリアー様々だね。

 

「ボクのターン、ドロー!」

 

 とはいえ、永野さんの手札も全然減ってない。あんなにドローして、何をするんだろ?

 

「ボクはリバースカードを二枚とも発動するよ。永続トラップ、連成する振動! そして永続トラップ、臨時収入!」

 

 伏せカードは二枚とも永続トラップだったのか。

 

「連成する振動の効果で、EMドラネコを破壊して一枚ドロー。さらに臨時収入の効果でこのカードに魔力カウンターを一つ置くよー」

 

臨時収入 魔力カウンター 0→1

 

「手札からEMリターンタンタンをPスケールにセット! ギタートルの効果で一枚ドロー、そしてペンデュラム召喚! エクストラデッキからEMペンデュラム・マジシャン、手札からEMダグ・ダガーマン!」

 

ペンデュラムスケール 3ー6

 

EMペンデュラム・マジシャン ☆4 守備力800

 

EMダグ・ダガーマン ☆5 守備力600

 

 あ、またペンデュラム・マジシャンってことは!

 

「ペンデュラム・マジシャンの効果! リターンタンタンと自身を破壊して、デッキからドラネコとリザードローを加えるよー」

 

 ペンデュラム・マジシャンがPゾーンのリターンタンタンに腹パンをする。・・・・・・もう、ツッコまないからね。

 

「それで、臨時収入にカウンターが置かれる」

 

「その通り!」

 

臨時収入 魔力カウンター 1→2

 

「さらにさらに! リザードローをPスケールにセットして即、破壊! 一枚ドロー!」

 

 『もうイヤだ~』と泣くリザードロー。抵抗も虚しく、破壊され新たな手札変わる。

 

「臨時収入にカウンターが乗るよ! 三つカウンターが乗った臨時収入は、墓地に送ることで二枚ドローできる! 二枚ドローだよー」

 

臨時収入 魔力カウンター 2→3

 

 永野さんの手札はもう八枚になった。・・・・・・まさかとは思うけど、あのカードじゃないよね・・・・・・?

 

「ダグ・ダガーマンの効果! ペンデュラム召喚したターンのメインフェイズに、手札のEMを墓地に送って一枚ドローできる! さっきサーチしたドラネコを墓地へ、そして一枚ドロー」

 

 アレなのか? まさか本当にアレなのか・・・・・・?

 

「闇の誘惑を発動して二枚ドロー! そして手札からEMドクロバット・ジョーカーを除外、揃った!」

 

 え、揃ったって・・・・・・。

 

「エクゾディア完成! 私の勝ちだよ!」

 

「・・・・・・うわぁー」

 

 僕の前に、伝説のモンスター、エクゾディアが現れる。

 

「焼き払え、エグゾート・フレイム!」

 

「うわぁぁああ!」

 

 まさかの、敗北。

 

 それにしても、さっき「私」って・・・・・・?

 

 ま、いっか。




次回予告

まさかのエクゾディア。
EMの長所はドローだけなのか。
その議論がされる一方で、遊羽もデュエルを開始する。
次回、『五虹トラップ』 デュエルスタンバイッ!

今回も間違いがあるかもしれません(主に手札枚数)。
一応、確認はしたんですが・・・・・・。
次回は遊羽と虹花のデュエルです。


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五虹トラップ

今日も学校。
平日は1日1話ですかね。


Side遊羽

 

「さてと。デュエル開始といくか、虹花」

 

 デュエルディスクを構え、眼前の虹花を見据える。

 

「山奥まで来てデュエルというのも可笑しな話ですが・・・・・・」

 

「まあ、そこは気にするなって」

 

 ため息をつきながらも、ディスクを構える虹花。

 

「いくぜ!」

 

「「デュエル!」」

 

如月遊羽

LP8000

 

真宮虹花

LP8000

 

「先攻は頂きます。私のターン。私はカードを二枚伏せ、クリバンデットを召喚です」

 

クリバンデット ☆3 攻撃力1000

 

 盗賊のコスプレか、あの格好。クリボーってコスプレ好きなのか?

 

「エンドフェイズ、クリバンデットの効果で自身をリリース。デッキの上から五枚をめくり、魔法・罠を手札に加えて残りを墓地へ送ります」

 

 加えたのはツインツイスター。便利な汎用カードだ。

 

「ターン終了です」

 

真宮虹花

LP8000 手札3

場 伏せカード:二枚

 

「俺のターン、ドロー」

 

 虹花のデッキは現在、ロックデッキではなくコントロールデッキとなっている。場にモンスターがいなくても、油断はできない。

 

「ドラグニティ-レギオンを召喚」

 

ドラグニティ-レギオン ☆3 攻撃力1200

 

 図体のデカいオッサン。・・・・・・いつ見ても、オッサンが羽付けて飛ぶとか、違和感しかないな。強いけど。

 

「そのままバトルだ」

 

「これ以上展開しないんですか?」

 

「一応、こっちも警戒してんだよ」

 

 俺の読みが確かなら、虹花はあのトラップを伏せている。その場合、大量展開しても意味はない。

 

「レギオンでダイレクトアタックだ」

 

「トラップ発動、くず鉄のかかしです。その効果で、攻撃を無効にします。そして、このカードをもう一度セットします」

 

 やっぱりな。そして、カードを伏せたということは・・・・・・。

 

「墓地のEM五虹の魔術師の効果発動です! 私のフィールドに魔法・罠カードがセットされた場合、このカードをPゾーンに置きます」

 

 虹花のフェイバリット。EM五虹の魔術師。使いにくいが、使いこなせればトリッキーな戦略をとれるとい使用者を選ぶカード。

 

「本当に、よくそんなカード使えるよな」

 

「誉め言葉として受け取っておきます」

 

「バトル終了。カードを伏せてターンエンドだ」

 

如月遊羽

LP8000 手札3

場 メイン:ドラグニティ-レギオン 伏せカード:一枚

 

 五虹の魔術師には、お互いに対してセットカードがなければモンスター効果の発動と攻撃を封じる効果を及ぼす。

 

 モンスターの動きを制限されると辛いから、カードを伏せざるを得なくなる。

 

「私のターン、ドローです」

 

 まったく、恐ろしいカードを使う。

 

「墓地のクリバンデットとエフェクト・ヴェーラーを除外して、カオス・ソルジャー -開闢の使者-を特殊召喚します」

 

カオス・ソルジャー -開闢の使者- ☆8 攻撃力3000

 

 マズいな、もっと恐ろしいモンスターが出てきた。五虹の魔術師のもう一つの効果を使われると、ピンチだ。

 

「カードを二枚伏せます。五虹の魔術師の効果、セットカードが四枚あれば、そのプレイヤーのモンスターの攻撃力が二倍になります」

 

カオス・ソルジャー -開闢の使者- 攻撃力3000→6000

 

「げッ!」

 

 しまった。よく考えれば、さっきのは盛大なフラグじゃねぇか!

 

「バトルです! カオス・ソルジャー -開闢の使者-でモンスターに攻撃!」

 

「何もねぇな」

 

 開闢の使者とかいうカッコいい名前の騎士が、オッサンを切り刻む。・・・・・・やっぱ違和感しかねぇわ、コイツ。

 

如月遊羽

LP8000→3200

 

 一気にライフを持っていかれた。痛い。

 

「カオス・ソルジャー -開闢の使者-の効果! 戦闘でモンスターを破壊したとき、もう一度だけ攻撃できます! ダイレクトアタック!」

 

「手札から速攻のかかしを捨てて、バトルフェイズを終了させる」

 

 この一週間で、俺のデッキ内容が少し変わった。今はバトルフェーダーではなくコイツを採用中。理由は後でわかる。・・・・・・このターンで負けなければ。

 

 願わくば、あの伏せカード郡がチェーンバーンではありませんように。三幻神様三幻魔様三邪神様三従神様お願いします。

 

「私はこれでターン終了です」

 

「シャオラッ!」

 

 デュエルモンスターズ界の神に祈ってよかった。使う予定もお礼もないけど。

 

真宮虹花

LP8000 手札1

場 メイン:カオス・ソルジャー -開闢の使者- 魔法・罠:EM五虹の魔術師 伏せカード:四枚

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 ハーピィの羽根帚が欲しいところだが、生憎俺の手札にはない。多分、やぶ蛇とか伏せてあるし。

 

 それでも、今引いたカードで突破の目処が立った。

 

「引いたカードはツインツイスター! そのまま発動! 手札一枚をコストに、五虹の魔術師とくず鉄のかかしを破壊!」

 

「早速ですか・・・・・・。これでは、伏せカードの意味もほとんどなくなりましたね」

 

 虹花の伏せカードのほとんどは、伏せカードを破壊するものだったんだろうな。五虹の魔術師の効果で攻撃できなくするための。

 

カオス・ソルジャー -開闢の使者- 攻撃力6000→3000

 

 これで準備は整った!

 

「行くぜ、真打ち登場だ! 手札のWW-アイス・ベルの効果! 俺の場にモンスターがいなければ、コイツを特殊召喚できる! さらにデッキからもWWを特殊召喚できるぜ! 来いッ、WW-アイス・ベル、WW-グラス・ベル!」

 

WW-アイス・ベル ☆3 守備力1000

 

WW-グラス・ベル ☆4 チューナー 守備力1500

 

 アイス・ベルは場にモンスターがいないときに特殊召喚できる。バトルフェーダーは場に残るから、相性が悪いんだよな。

 

「それは、この前の!」

 

「アイス・ベルの効果で相手に500バーン、グラス・ベルの効果でデッキからWWを手札に加えるぜ! 俺はWW-スノウ・ベルを手札に加える」

 

真宮虹花

LP8000→7500

 

「まさか、バーンで削りきるつもりですか?」

 

「残念ながら、ウィンドウィッチにそこまでのバーン性能はねぇな」

 

 バーンはオマケみたいなものだ。その本質は、展開力にある。

 

「俺は今手札に加えたスノウ・ベルの効果発動! 俺の場に風属性が二体以上いて、風属性以外存在しなければ、特殊召喚できる。スノウ・ベルを特殊召喚!」

 

WW-スノウ・ベル ☆1 チューナー 守備力100

 

「俺はグラス・ベルでアイス・ベルをチューニング!」

 

4+3=7

 

「重なれ、輝きの翼! 舞え、白き竜! シンクロ召喚! クリアウィング・シンクロ・ドラゴン!」

 

 一週間前のパックで手に入れた、新たな白竜。

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン ☆7 攻撃力2500

 

「綺麗・・・・・・」

 

「だろ?」

 

 これからよろしくな、新入り。

 

「ですが、その竜でもカオス・ソルジャーを倒すことはできません」

 

「そうだな。だから、進化させる!」

 

「進化!?」

 

「俺はクリアウィング・シンクロ・ドラゴンに、WW-スノウ・ベルをチューニング!」

 

1+7=8

 

「重なり合え、水晶の翼! 舞い踊れ、白銀の竜! シンクロ召喚! クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン!」

 

クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン ☆8 攻撃力3000

 

 出会って一週間で、しかも初登場で進化とか、ある意味期待の新人だ。新竜か?

 

「こっちも綺麗だろ?」

 

「・・・・・・そうですね。言葉にできないくらい」

 

 それは良かった。そのために、WWのシンクロモンスターには今回休んでもらって、クリアウィングから出したんだしな。

 

「バトルだ。クリスタルウィングでカオス・ソルジャーを攻撃!」

 

 俺の命を受け、クリスタルウィングが空を舞う。

 

「攻撃力が同じモンスターで攻撃ですか?」

 

「クリスタルウィングには、レベル5以上のモンスターとの戦闘時、そのモンスターの攻撃力分自身の攻撃力を上げる能力があるぜ」

 

「ッ! ならば、くず鉄のかかしを発動します! 攻撃を無効化です」

 

 現れたかかしによって、白銀の竜の飛翔は阻まれる。

 

「もう一枚とか聞いてないぜ・・・・・・」

 

「さらに、墓地の五虹の魔術師の効果発動です!」

 

 マジかよ! クリバンデットで二枚落ちてたのか!

 

「チッ! ターン終了だ」

 

如月遊羽

LP3200 手札0

場 EX:クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン 伏せカード:一枚

 

 まっず・・・・・・。俺、負けるかも。

 

「私のターン、ドロー」

 

 虹花の手札はこれで二枚。クリスタルウィングを突破されると、俺が勝てる確率は、かなり低くなる。対抗策がないと良いんだけどな・・・・・・。

 

「速攻魔法、サイクロン発動です。伏せカードを破壊します」

 

「あ、やっべー」

 

 これでクリスタルウィングは効果発動ができず、攻撃もできないタダの壁になった。

 

「さらに、カードを一枚セット」

 

カオス・ソルジャー -開闢の使者- 攻撃力3000→6000

 

「バトルです! カオス・ソルジャーでクリスタルウィングに攻撃!」

 

「墓地のタスケルトンの効果! 墓地のこのカードを除外して、モンスターの攻撃を無効にする!」

 

 墓地から豚の骨が飛び出し、カオス・ソルジャーにぶつかった。

 

「効果で除外しておくべきでしたか・・・・・・。ターン終了です」

 

 プレミかよ!

 

真宮虹花

LP7500 手札0

場 メイン:カオス・ソルジャー -開闢の使者- 魔法・罠:EM五虹の魔術師 伏せカード:四枚

 

「俺のターン、ドロー! 貪欲な壺発動! WW達三枚とレギオンをデッキに、クリアウィングをエクストラデッキに戻して、二枚ドロー」」

 

 ・・・・・・。やぶ蛇がなければ、いける。博打に出るか!

 

「魔法カード、ハーピィの羽根帚だ。魔法・罠を全破壊する」

 

「ここでそのカードを!?」

 

カオス・ソルジャー -開闢の使者- 攻撃力6000→3000

 

 ・・・・・・どうやら、何もなかったらしい。

 

「クリスタルウィングで攻撃! さらに速攻魔法、アクションマジック-フルターンを発動! モンスター同士の戦闘ダメージが倍になる」

 

「何ですって!?」

 

「クリスタルウィングの効果! カオス・ソルジャーの攻撃力分自身の攻撃力を上げるぜ」

 

クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン 攻撃力3000→6000

 

 白銀の竜のブレスが、混沌の騎士を砕く。

 

真宮虹花

LP7500→1500

 

「ターンエンド」

 

 ここから更に逆転されると、本当に何もできない。

 

「・・・・・・ターンエンドです」

 

「・・・・・・マジで?」

 

「ええ、マジです。大マジです」

 

真宮虹花

LP1500 手札1

場 なし

 

「ならドロースタンバイメインバトル。クリスタルウィングでトドメ」

 

「ライフで受けます」

 

真宮虹花 LP1500→0




次回予告

遊羽の新たなカード、クリアウィング。
それによって、彼のデッキは攻撃性を増す。
彼らがデュエルしている中、精霊達は何をしていたのか。
次回、『精霊達の探検』 デュエルスタンバイッ!

間違いが多かったので、だいぶ書き直しました。
ちなみに、虹花の最後の手札はカオス・エンペラーです。墓地にモンスターがいなかったので出せなかったようです。


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精霊達の探検

Q 今まで何してた?
A 風邪で寝込んでた。


 宿屋『凪庵』のある、とある山奥。

 

 その道を、二体の精霊が進んでいた。

 

『おお~! 自然がいっぱいですぞ!』

 

 ジャンク・ウォリアーのジャンと、

 

『そうだな。デュエルスクールのような都会では見れない景色だ』

 

 ドラグニティアームズ-レヴァテインのレヴである。

 

 彼らは主の下を一時離れ、山の散策をしていた。

 

『あ、あれは!』

 

『ジャン? どうかしたのか?』

 

 何かを発見した様子のジャン。そばに生えていた木に駆け寄る。

 

『カブトムシですぞ! カブトムシ!』

 

『・・・・・・そうか』

 

 あまりのはしゃぎ様に若干引き気味のレヴ。

 

 しかし、ジャンがはしゃぐのも、ある意味仕方がないのかもしれない。

 

 彼はつい先日までは下位精霊で、ただ存在しているだけだったのだから。高位精霊で、遊羽と出会ってからずっと一緒にいたレヴにとっては珍しくもないようなものも、ジャンにとっては初めて見るものなのだ。

 

『・・・・・・』

 

 そのことに気づいたレヴ。大人しくジャンを見守ることにしたようだ。

 

『ふう。そういえばレヴ殿』

 

 ある程度はしゃいで疲れたのか、レヴの下へと引き返して来たジャン。

 

『遊羽殿とはいつからの付き合いなのですかな? ずいぶん長く共におられるようですが』

 

『ふむ。では、私と遊羽の馴れ初めでも話すかな』

 

『お願いしますぞ』

 

 そうして、レヴは歩きながら遊羽との出会いについて語り始めた。

 

『私が遊羽と出会ったのは、彼が初めて買ったパックでのことだ』

 

『なんと! 運命的ですな』

 

『ああ。彼は私に気づいて、話しかけてくれた。第一声には驚いたな。なんせ「カッコいい!」だったからな』

 

『遊羽殿らしいですなぁ』

 

『だが、他の人には私が見えなくてな。私を両親に紹介しようとしてくれたのだが、両親は困惑するばかり。次第に遊羽も諦めた』

 

『・・・・・・それは、残酷ですな』

 

 子供が味わうには早い現実。当時、遊羽はまだ五歳だ。

 

『彼はだんだん人とは話さなくなっていった。幼なじみである虹花はまだ話せたが、他は駄目だった。敵対心を抱き、周囲を自らに近づけなかった』

 

『何故その様なことに?』

 

『決まっているだろう』

 

 レヴは歩みを一度止めた。

 

『彼らは、私を見ることができなかったからだ』

 

『どういう意味ですかな?』

 

『彼らは見えない私と話す彼を気味悪く思ったらしく、彼を馬鹿にし始めた。それだけならまだ良かったのだが、それが一緒にいる虹花にも及んでしまってな』

 

『虹花殿はレヴ殿のことを?』

 

『見えていないな』

 

『ならば何故・・・・・・』

 

『虹花はそんな外聞を気にしない子だったのだ。気にしない、というよりは自分の見たものしか信じないタイプだな』

 

『なるほど』

 

『彼女は私の存在の有無に関係なく彼と共にいた。素晴らしい子だ』

 

『そうですな』

 

『しかし、遊羽はそれを良しとはしなかった。虹花とも、距離を置くようになってしまった』

 

 そして、彼は一人になった。

 

『それだけではない。彼らは私がいないと彼に言い聞かせた。優しさ故の行動だったのだろうが、遊羽はそれに激怒した』

 

『して、どうなったのですかな?』

 

『蹂躙した』

 

 それを聞いて、ジャンは絶句する。

 

『デュエルで徹底的に叩き潰した。再起不能になった者もいた。その過程で、ワンキル・ソリティア研究会に切り札をヴァジュランダだと言われ、彼らとの全面戦争ともなった』

 

 それが、彼が恐れられている理由。初等部からデュエルスクールにいる生徒は、彼とは関わろうともしない。

 

『戦は、確か高等部からデュエルスクールに通い始めたのだろう? だから、遊羽を恐れていない』

 

『・・・・・・そう、かもしれませんな』

 

 ジャンも己が主を弁護したいが、その壮絶な過去を聞いた後では、そうではないと断言できない。

 

『レヴ殿は』

 

『何だ?』

 

『レヴ殿はそれを、どう思っているのですかな?』

 

『・・・・・・』

 

 その、壮絶な過去の原因は、何を思ってその蹂躙を見ていたのか。

 

『すまない。上手く言葉にすることができない』

 

『そう、ですか』

 

『ただ、嬉しさと悲しさはあった。遊羽に大切に思われて嬉しい。だが、彼が友人を得る機会を奪ってしまって悲しい、と』

 

 精霊は、基本的にその主人のことを第一に考える。『自分が』どうなるかではなく『主が』どうなるかを優先する。そういうものなのだ。

 

『・・・・・・お、レヴ殿! 祠がありますぞ!』

 

 暗い雰囲気をなくすため、ジャンは話を切り替える。それに気づいたレヴは、ジャンに心の中で感謝する。

 

『そうだな。行ってみるか』

 

 彼らはその祠に向けて歩き出した。

 

『そう言えばレヴ殿』

 

『どうかしたのか?』

 

『その割には、デュエルでレヴ殿を見かけないのですが』

 

『・・・・・・』




次回予告が何も思いつかない・・・・・・。
とりあえず、デュエルはしません。


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林間学校の夜

Side遊羽

 

 夜。他の生徒が寝静まった頃。

 

 俺は一人ベランダで黄昏ていた。

 

「遅ぇな、レヴ」

 

 遅くなる前に帰ってくると言っていたのに、もう夜だ。精霊にとってはまだ遅い時間じゃないのか?

 

「・・・・・・何か、あったのか」

 

 心配だ。探しに行くか? 

 

『・・・・・・ただいま、遊羽』

 

「レヴ! 遅いぞ、って、え?」

 

 声のした方に振り返ってみれば、レヴがどんよりした空気と共に佇んでいた。

 

「どうしたんだ? やっぱり何かあったのか?」

 

 余計心配になって訊いてみた。

 

『いや、問題ない』

 

 いやいや、そんな空気で言われてもな・・・・・・。

 

「何かあったなら話してくれよ、レヴ」

 

『・・・・・・なぁ、遊羽』

 

 俺は大人しく続きを待つ。

 

『・・・・・・私の出番、少なくないか?』

 

 ・・・・・・は?

 

「え、そんなことか?」

 

『何を言っている。重要なことだ』

 

 はぁ~~~。そんなことかよ。心配して損した気分だぜ。

 

「俺としては、お前は家族みたいなものだ」

 

『ああ。私も遊羽を家族だと思っている』

 

「そんな家族を、戦いに出したいか?」

 

『・・・・・・そうか』

 

 俺の言いたいことが伝わったらしい。

 

『それを聞いた安心した。私は遊羽の役に立てていないのではないかと思ってしまってな』

 

「役に立つ立たないじゃねぇだろ、家族ってものは」

 

『そうだな』

 

 ・・・・・・ヤバい。くっさいこと言ってしまった。後で後悔しそうだ。具体的には布団の中で。

 

遊羽SideOut

 

ーーーーーーーーーー

 

Side戦

 

「あ~、寒いな」

 

 夜。皆が寝静まった頃。

 

 布団に入って寝ようとしたんだけど、どうにも寒くて寝れなかった。

 

「・・・・・・お風呂行こ」

 

 先程入ったばかりだけど、寒いんだから仕方ない。僕は布団から出た。

 

「あれ? 永野さんもお風呂かな」

 

 部屋は班ごとだ。如月くんはさっきからベランダで黄昏てるからいいにしても、永野さんの布団も空っぽだった。真宮さんと四谷くんはぐっすり寝ている。・・・・・・寒くなったのって如月くんが窓を開けてベランダに出たからかな。

 

「それよりお風呂っと」

 

 僕は部屋を出て大浴場に向かう。

 

「あれ、先生」

 

「遊民さんですか。あなたもお風呂に?」

 

 大浴場の前のマッサージチェアに、異次元の女戦士似の先生が座っていた。

 

「はい。どうにも寒くって」

 

「そうですか。永野くんも入っていますから、仲良くしてくださいね」

 

 あれ? 僕、そう言えば永野さんに負けたような? 早速、如月くんとの約束破っちゃったような?

・・・・・・あれはノーカンだね。運命力も実力の内とか僕知らない。あのままだと毎ターン五枚ドローとかしそうだし。

 

 脱衣場で服を脱ぎ、腰にタオルを巻く。永野さんいるし。

 

 ということで、準備オーケー。

 

ガラガラガラ

 

「あ、永野さん。やっぱりいたんだ」

 

 僕は永野さんの隣に腰を下ろした。

 

「・・・・・・は? え? え?」

 

 あれ? よく見れば、永野さんの胸にラーの翼神竜が二つ・・・・・・。

 

「うわあああぁぁぁぁあああ!?」

 

 お風呂に永野さんの悲鳴が響き渡った。

 

戦SideOut

 

ーーーーーーーーーー

 

遊羽Side

 

 戦と永野がいない。ま、風呂にでも行ったんだろう。

 

 ・・・・・・部屋の隅でジャンが落ち込んでんだけど。床に『の』の字書いてるんだけど。

 

「あーっと、何かあったのか、ジャン」

 

 さすがにスルーできずに声を掛けた。

 

『聞いてくだされ遊羽殿ぉぉぉお!』

 

 ヤッベこれ長くなる。

 

ーーーーーーーーーー

 

一時間後

 

 ・・・・・・話をまとめると、自分が帰って来たのに主がいなくて寂しいし、部屋の過半数がいなくて怖いしと、踏んだり蹴ったりだったらしい。この話に一時間かかった。嘘だろありえねぇ。

 

「俺らはベランダにいたぞ」

 

『何やらくっさいことを言っておりましたな』

 

「グハァッ」

 

 お前ら、まだ布団の中じゃねぇぞ・・・・・・。

 

『ゆ、遊羽殿ぉぉぉお!?』

 

『希望の花が咲いているな』

 

 羞恥心を誤魔化すために鉄華団団長の力を借りた俺は、気を取り直してジャンに向き合う。

 

「戦ならたぶん風呂だぞ。それまで待ったらどうだ?」

 

『なんと! 背中を流しに行かねば!』

 

「さわれねぇだろ」

 

『風呂くらいゆっくりさせてやってはどうだ?』

 

 同じくさわれない俺の代わりにレヴがジャンを止める。・・・・・・精霊同士だとさわれるのな。

 

遊羽SideOut

 

ーーーーーーーーーー

 

Side戦

 

「あぅ・・・・・・もうお嫁に行けない・・・・・・」

 

 お風呂の隅で『の』の字を書く永野さん。一時間前からずっとあんな感じだ。

 

 ・・・・・・男装していたのが悪いとか、口が裂けても言えないね。

 

「貰い手がいなくても、僕で良ければもらうから」

 

 元いじめられっ子でパッとしない外見の僕で良ければ、だけど。

 

「・・・・・・ホント?」

 

「うん」

 

 とりあえず安心させないと。先生を呼ばれたら退学は確実だ。

 

「・・・・・・うぅ。ま、嘘泣きだけどね!」

 

 元気になったらしい永野さん。目の下のあれは涙じゃなくてお湯なんだろう。頬が赤い気がするのも、のぼせたからなんだろう。

 

「それにしても、何で男湯に?」

 

「・・・・・・先生がいて、女湯に入れなくてね」

 

 ・・・・・・異次元の女戦士似の先生。元凶はあなたですか。

 

「というか、先生方は君の男装を知らないの?」

 

「校長先生しか知らないよ」

 

 ・・・・・・僕が全て悪いわけじゃなさそうだ。良かった。

 

「というか、何でキミはそんなに落ち着いているのッ!?」

 

 ちょっと正気に戻っちゃったらしく、耳まで真っ赤に染まる。真紅眼もびっくりなくらいの赤さだ。

 

「自分より取り乱してる人がいると、冷静になれるものだよ?」

 

「あれぇ私がおかしいのかな!?」

 

 「おかしい・・・・・・こんなの絶対おかしい・・・・・・」とか呟く永野さん。・・・・・・そういえば、僕ずっと永野『さん』って呼んでたな。

 

「・・・・・・どっかで気づいてたみたい」

 

「嘘ッ!?」

 

 他の人にはバレてない・・・・・・といいなぁ。

 

「じゃ、そろそろ僕出るね」

 

「えッ!?」

 

「いや、僕ここにいちゃマズいでしょ」

 

 先生が見回りに来たら退学決定だし。

 

「それじゃ、ごゆっくり」

 

 ・・・・・・もう一時間だから、ごゆっくりはおかしかったかな。




次回予告が思いつかないのでちょっとした小ネタを。

レヴ『なぁ遊羽』

遊羽「なんだ?」

レヴ『この小説って作者がドラグニティ使いたいから書いたのだったな』

遊羽「そうだな」

レヴ『なら私の出番が一回も無いのは、さすがにおかしくないか?』

遊羽「・・・・・・作者が書いてる内に、こんな展開かっこいいかな、とかやってたら、出番がなくなったみたいだな」

レヴ『・・・・・・』

ジャン『ゆーて拙者も出番一回ですぞ』

遊羽「お前、一人称『拙者』かよ」


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挫折

タイトルからもうネタバレ感ありますが、どうかご容赦を。


Side遊羽

 

 林間学校二日目。

 

 デュエリストなのに何故か体を鍛えるようなことばかりしながら、俺は退屈さを感じていた。

 

「今日はデュエルなしと言われちゃ、モチベーション下がるなぁ」

 

「自分には体力も筋力もあるっていう嫌味?」

 

「そんなことはある」

 

「あ、あるんだ」

 

 (幽鬼)うさぎ跳びをしながら戦がちょっとイマイチなツッコミをしてくる。虹花ならもうちょい上手いんだけどな・・・・・・。

 

 ちなみに虹花達女子は別メニューらしい。デス・ウサギ跳びでもしてるのか? 女子なのに男子よりハードそうだな。

 

「ん? 誰だ、あれ」

 

 四谷が誰か見つけたみたいだ。俺と戦が二人してそっちを向く。

 

 ―――――背中に、悪寒が走った。

 

「戦、アイツ・・・・・・」

 

「うん、とんでもなく強いね。どこかで見たような・・・・・・?」

 

 白髪でメガネをかけてヒョロッとしているが、デュエリストとしての直感が告げている。アイツは、ただものではないと。

 

「ちょっとデュエルしてくる」

 

「え、ちょっと如月くん!」

 

 戦の声を無視してその青年の方へ走った。

 

『いいのか?』

 

 レヴが心配したような声をかけてくる。

 

「アイツと戦って罰一つなら安いな」

 

 それに対して、俺は自らの本心を述べた。

 

 そして、俺はその青年の前にたどり着くなり言い放った。

 

「おい、デュエルしろよ」

 

「・・・デュエルですか。いいでしょう」

 

 お、ノリがいいな。

 

「「デュエル!」」

 

如月遊羽

LP8000

 

青年

LP8000

 

「先攻は私がもらいましょう。まずは神獣王バルバロスを妥協召喚」

 

神獣王バルバロス ☆8 攻撃力3000→1900

 

「そしてフィールド魔法、ディフェンスゾーンを発動。カードを二枚伏せてターン終了しましょう」

 

青年

LP8000 手札1

場 メイン:神獣王バルバロス フィールド:ディフェンスゾーン 伏せカード:二枚

 

 なんだ、ただのスキドレバルバか? それとも8軸エクシーズか? 思っていたほどじゃないな。

 

「俺のターン、ドロー」

 

「ドローフェイズにリバースカードを発動しましょう。スキルドレイン。お互いに場のモンスター効果が無効となります」

 

青年

LP8000→7000

 

神獣王バルバロス 攻撃力1900→3000

 

 やっぱただのスキドレバルバか・・・・・・。今時流行んねぇぞ?

 

「ちなみに、ディフェンスゾーンの効果でお互いに自分のモンスターゾーンにモンスターがいれば、その列の魔法・罠は相手に破壊されず、効果の対象にもなりません」

 

神獣王バルバロス 攻撃力3000→1900

 

 えーと、スキルドレインの位置は、っと。・・・・・・やっぱりバルバロスの後ろかよ。

 

「えーい、面倒な。ハーピィの羽根帚発動だ! 全部破壊だ破壊」

 

「早速対処してきましたか。ならばリバースカード、針虫の巣窟。デッキからカードを五枚墓地へ送りましょう」

 

 ディフェンスゾーンは破壊できた。とはいえ、スキルドレインはどうにもできないんだけどな。

 

「モンスターをセット、カードをセット、ターンエンドだ」

 

如月遊羽

LP8000 手札3

場 メイン:伏せモンスター 伏せカード:一枚

 

 ・・・・・・あれ、他にも除去カード来てから羽根箒使った方が良かったんじゃ? やべー、プレミったかも。

 

「私のターン、ドローしましょう」

 

 さて、次はどんなカードが出てくるかね。

 

「私はテラ・フォーミングを発動しましょう。デッキからディフェンスゾーンを手札に加えてそのまま発動」

 

 さっきのターンとやっていることは同じだな。つまらねぇ。

 

 ・・・・・・あれ? でもこれ無理ゲーじゃね? 俺のデッキってモンスター効果でモンスターを展開するデッキだから、スキルドレインが痛いほど刺さる。

 

「さらに私は可変機獣ガンナー・ドラゴンを妥協召喚しましょう。効果が無効化されるので、攻撃力は元通りですね」

 

可変機獣ガンナー・ドラゴン ☆7 攻撃力2800

 

「バトルに入りましょうか。ガンナー・ドラゴンで伏せモンスターに攻撃」

 

ドラグニティーセナート ☆4 守備力600

 

 セナート、初登場なのに見せ場なし、か。

 

「バルバロスで追撃」

 

如月遊羽

LP8000→5000

 

 ・・・・・・久々だな、ここまでライフが削られるの。あ、虹花とのデュエルではもっとライフを減らされたか。

 

「ターン終了としましょうかね」

 

青年

LP7000 手札0

場 メイン:神獣王バルバロス 可変機獣ガンナー・ドラゴン フィールド:ディフェンスゾーン 魔法・罠:スキルドレイン

 

 手札誘発を気にしなくていいのは正直ありがたい。虹花は五虹の魔術師で動きを封じた上で手札誘発を使ってくるからなぁ。・・・・・・今の状況と大差ないな。

 

「俺のターン、ドロー」

 

 よし、一応動ける。

 

「手札からWWーアイス・ベルの効果発動! 俺の場にモンスターがいなければ、デッキのWWと共に特殊召喚できるぜ! 来いアイス・ベル、グラス・ベル!」

 

WWーアイス・ベル ☆3 守備力1000

 

WWーグラス・ベル ☆4 チューナー 守備力1500

 

「俺はグラス・ベルでアイス・ベルをチューニング!」

 

4+3=7

 

「重なれ、輝きの翼! 舞え、白き竜! シンクロ召喚! クリアウィング・シンクロ・ドラゴン!」

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン ☆7 攻撃力2500

 

 まだだ!

 

「俺はドラグニティーブランディストックを召喚! そのままクリアウィングをチューニング!」

 

ドラグニティーブランディストック ☆1 チューナー 攻撃力600

 

1+7=8

 

「重なり合え、水晶の翼! 舞い踊れ、白銀の竜! シンクロ召喚! クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン!」

 

クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン ☆8 攻撃力3000

 

 手札で腐ってたブランディストックを使えてよかった。

 

 でも、これだけじゃ足りない。

 

「リバースカード発動! 追走の翼! クリスタルウィングは戦闘、効果で破壊されなくなり、レベル5以上のモンスターとの戦闘時、そのモンスターを破壊してその攻撃力分自身の攻撃力を上げる効果がある」

 

「しかし、それはダメージステップ開始時の効果。巻き戻しは発生しませんね」

 

 ・・・・・・ずいぶん詳しいな。

 

「あぁ、そうだな。でも、これで破壊されなくなった。それに、この効果発動は任意だから、使わないって選択肢もあるしな」

 

 バルバロスの攻撃力は3000、クリスタルウィングと互角。戦闘破壊されない今なら、相打ちじゃなくて一方的な破壊になる。伏せカードもない今が好機だな。

 

「行くぜ、バトル! クリスタルウィングでバルバロスを攻撃! 相打ちだ!」

 

「クリスタルウィングは戦闘破壊されないので、バルバロスだけ破壊ですね」

 

 これで、一応巻き返しただろ。

 

「カードを一枚伏せて、ターンエンドだ」

 

如月遊羽

LP5000 手札2

場 EX:クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン 魔法・罠:追走の翼 伏せカード:一枚

 

「私のターン、ドロー」

 

 今マズいのは、追走の翼を除去するカードだ。それを引かれると、こっちも返す手段がほぼない。

 

「強欲で貪欲な壺を発動しましょう。デッキ上十枚を除外して二枚ドローしますね」

 

 ここでドローカード!? 何つー運命力だ。

 

「サイクロン発動、追走の翼を破壊ですね」

 

 ・・・・・・終わった。今の手札じゃ返せない。スキドレバルバを舐めていたな。

 

「では、私も切り札を出しましょう。墓地のバルバロスとカードカーDを除外。現れよ、獣神機王バルバロスUr」

 

 神に最も近いと云われるモンスターが、フィールドに現れた。

 

獣神機王バルバロスUr ☆8 攻撃力3800

 

「バルバロスUrは、本来ダメージを与えられないモンスター。しかし、スキルドレインの効果でそれは打ち消されています」

 

「そうだな」

 

 ここで、クリスタルウィングを超える攻撃力のモンスター。

 

「・・・・・・これが、詰みってやつか?」

 

 初めて、生まれて初めてデュエルで勝てないと思った。

 

『・・・・・・遊羽』

 

「・・・・・・レヴ、俺が勝てないのはお前のせいじゃないからな」

 

 俺の実力不足だ。

 

「・・・精霊を連れていましたか」

 

 ・・・・・・コイツ。見えてるのか、レヴが。

 

「あぁ。ついでに訂正しとくと、コイツが俺の切り札だ。クリスタルウィングじゃないぜ」

 

 抗議の声を上げるな、クリスタルウィング。これは昔決めたことだ。諦めろ。

 

「そうでしたか。すみませんね」

 

「・・・・・・なぁ。お前、名前は?」

 

 俺は謝罪を無視して質問を投げかけた。

 

「私のでしょうか?」

 

「あぁ。生まれて初めて負ける相手だ。名前くらい知っておきたい」

 

 俺の言葉に少々驚いた様子の白髪メガネ。

 

「私もまだまだ、ということでしょうか」

 

 一つため息をついて、名前を告げた。

 

「私は凪 風磨(なぎ ふうま)と申します」

 

「凪風磨な。覚えたぜ」

 

 ・・・・・・どっかで聞いたことある気がするが、今はどうでもいいな。

 

「・・・・・・サレンダーだ」

 

如月遊羽Lose

 

ーーーーーーーーーー

 

『大丈夫か、遊羽』

 

「・・・・・・レヴ」

 

 デュエルが終わった後。

 

 凪は用事があるとかで凪庵に向かっていった・・・・・・名前からして、あのバーサンの孫か何かだろう。

 

「・・・・・・負けたな」

 

『あぁ。負けたな』

 

「・・・・・・負けるのって、こんなに悔しいんだな」

 

『そうだな。悔しいな』

 

「・・・・・・クソッ! 悔しいなぁ・・・・・・」

 

『・・・・・・遊羽』

 

 今日、この日。

 

 俺は、生まれて初めて『悔しさ』を知った。




ちょっとした小ネタ

戦「あーあ、如月くん行っちゃった」

春樹「授業すっぽかしてデュエルとか、ある意味デュエルスクールの生徒らしいな」

戦「・・・・・・春樹って誰?」

春樹「忘れているみたいだが、四谷だ」

戦「・・・・・・ごめん。影薄くって」

春樹「ただお前らが名字で呼んでるからだよな? オレ、影薄くないよな?」

戦「本当にごめん・・・・・・」

春樹「せめて否定くらいはしてくれよ・・・・・・」


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遊羽の失踪

またタイトルからネタバレ感が・・・・・・。


Side遊羽

 

 今思えば、俺は油断ばかりしていた気がする。

 

 この前の虹花とのデュエルでは、レギオンを攻撃表示で出して、そのまま攻撃した。デッキ内容をほとんど知っていたにも関わらず、安易なプレイングだった。本当に警戒していたら、裏側守備表示で出すはずだ。

 

 戦との初めてのデュエルでさえ、俺は油断して追い込まれた。もし手札にバトルフェーダーがなければ、俺はあのまま負けていた。

 

 最終的には勝ったが、どちらも運によるものが大きい。元々俺のデッキは展開力ばかりで、相手を妨害するようなカードはほとんど入っていない。それは、相手を妨害するまでもない、という見下した考えからくるものだ。

 

 去年、ワンキル・ソリティア研究会とデュエルしまくった時は、こんなに油断していなかった。妨害系のカードも今よりは入っていた。

 

 要するに、俺は調子に乗って浮かれていたんだな。あそこに勝ってから、俺は恐れられてデュエルを挑まれることがほとんどなくなった。それで、お山の大将でも気取ってたんだろう。バカバカしいことこの上ない。

 

 レヴと出会って、自分が特別だと思い込んで、それを誰にも直されなくて。

 

 ちょっとばかし強いからって、油断して、追い込まれて。

 

 いつもヘラヘラ笑って、全て自分の思い通りになると勘違いして。

 

「こんなんじゃ、ダメだな」

 

 今の俺は、レヴに相応しくない。

 

 胸張って、アイツの『家族』だって言えない。

 

「だから、ちょっとお別れだ」

 

遊羽SideOut

 

ーーーーーーーーーー

 

Side戦

 

 

 林間学校が終わって、日曜休みを挟んだ月曜日。

 

 ちょっと前から変わった、僕のいつも通りの日常は、やって来なかった。

 

「如月くんがいない?」

 

 僕の言葉に、神妙な顔で頷く真宮さん。

 

「はい。朝起こしに家まで行ったんですが、留守みたいでした」

 

 ・・・・・・朝、真宮さんに起こされてるんだ。

 

「単なる寝坊ってことは?」

 

「私もそう思って合い鍵で部屋まで行ったんですが、これが・・・・・・」

 

 ・・・・・・合い鍵まで渡してるんだ、じゃなくて。

 

「これは、手紙?」

 

『自分を見つめ直してくる』

 

 手紙には、それだけが書かれていた。

 

「それと、これも置いてありました・・・・・・」

 

「これは・・・・・・デッキ!? 如月くんの!?」

 

「はい。恐らく」

 

 よく見知ったカードの中には、ドラグニティアームズ-レヴァテインのカードもあった。

 

 その中から、橙色の竜が現れる。

 

『レヴ殿!? どうなされたのですか!?』

 

『・・・・・・私にもわからない。気がついたら、遊羽がいなくなっていて・・・・・・』

 

 レヴまで置いていくだなんて、一体何があったんだ・・・・・・?




唐突なるシリアス。そして短い内容。
次回はデュエルする予定です。


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カードショップ

これまでのあらすじ

主人公二人が出会いました。
デュエルしました。
林間学校行きました。
主人公の一人が失踪しました。←イマココ


Side戦

 

 如月くんが失踪してから、三日ほど経った。

 

 彼がいなくなったことで、真宮さんはやつれ、皆どこか活気が無い。僕も、何もする気が起きない。・・・・・・なんてことは無く。

 

 僕らはいたっていつも通りだった。

 

『戦。資料にあるエジプトの石版のモンスター、わかるか?』

 

「如月くんが失踪したはずなのに、何で平気なの、レヴ?」

 

 あと今のはトラゴエディアだよ。

 

『そういう年頃なのだろう。なら仕方あるまい』

 

 レヴは特に心配している様子無い。

 

『それに、こういうことは昔からちょくちょくあったのだ。突然いなくなって、ひょっこり帰ってくる。特に心配はいらないだろう』

 

「遊民くん。授業中ですから静かにしてください」

 

「あー、うん。ごめんね真宮さん」

 

 真宮さんも変わった様子が無い。

 

「さっきから、独り言ですか? 遊羽ならその内帰ってきますよ。心配するだけ無駄です」

 

 うーん、如月くんがそれだけ信頼されてるってことなのかな、これは。判断に悩むなぁ。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 休み時間。

 

「それにしても、如月くんはどこに行ったんだろう?」

 

 二人(一人と一体)がそんな様子だから、僕は特に何も気にすること無くこの話題を出せた。

 

「昨日、隣町のカード屋で見かけたな」

 

「・・・・・・え?」

 

 隣町? カード屋?

 

「本当ですか? 四谷くん」

 

「あぁ。カードが足りない、とか言いながらカードを買っていた」

 

 ・・・・・・うわぁ。本当に心配するだけ無駄だったね。

 

「あ、ボクも一昨日見かけたよー」

 

 こちらにも目撃情報が。

 

「コンビニでお弁当買ってたよー」

 

「・・・・・・失踪しきれてないね」

 

「ええ本当に。失踪、というよりは不登校に近いですね」

 

 ・・・・・・あの意味深な置き手紙は何だったんだろう。家にも帰ってないみたいだし。

 

『遊羽は昔から他人に頼れない性格なのでな。思い詰めると一人になりたがる』

 

『拙者達の心配とは・・・・・・』

 

 これは酷い。いくら何でもこれは酷い。

 

「あれ、じゃあ何でデッキを置いていったの?」

 

 思い詰めただけなら、デッキを置いていく必要は無いはず。

 

「遊羽は新しいデッキを作る時にこうするんです。一度、リセットしてから作りたいんでしょうね」

 

 ・・・・・・デッキを作るために失踪ですか。もう無茶苦茶だね。

 

『レヴ殿まで置いていくのですかな?』

 

『あぁ。今のデッキを作る時も、私を置いて失踪していた』

 

 ・・・・・・うわー。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 放課後。

 

 四谷くんがカードショップに行くというので、ついて行くことにした。

 

「・・・・・・僕、誰かとカードショップに行くの初めてかも」

 

「そんな告白をされて、オレはどうすればいいんだ?」

 

 いや、反応を期待したわけじゃ無いんだよ?

 

 そんなこんなで、カードショップに着いた僕ら。自動ドアから店内に入る。

 

「・・・・・・あれ?」

 

 そこには、見知った顔があった。

 

「お、四谷か。今日は戦も一緒なのか?」

 

「如月くん!?」

 

「? 他の誰かに見えるか?」

 

 見えないからこそ驚いているんだけどね!?

 

『遊羽、デッキは順調か?』

 

「デッキ作りなら順調だぜ。必要なカードが売ってないこと以外はな」

 

 いつも通りの会話をする如月くんとレヴ。・・・・・・本当にいつも通りだね。

 

「ここで話すのもなんだし、そっち座ろうぜ」

 

 その言葉に大人しく従い、近くのテーブルデュエル用のスペースに腰掛ける僕ら。

 

「必要なカードが手に入らないのか。レアカードか?」

 

「あぁ。青眼の亜白龍だ」

 

「・・・・・・確かに、手に入りにくいカードだな」

 

「あれってレアなだけじゃなくて、恐ろしく高いんだよね」

 

『ワンキル・ソリティア研究会は持っていないのですかな?』

 

「おい副会長」

 

「断る」

 

「せめて聞いてからにしろ。というわけで、一枚でいいから譲ってくれ」

 

「・・・・・・それをオレが呑むとでも?」

 

 如月くんの頼みに渋い顔をする四谷くん。まぁ、高価なカードだし、渋るのは普通だ。というか、僕なら譲らないと思うし。

 

「呑まないなら仕方無い。お前のデッキ内容を全て公開する」

 

「・・・・・・脅しか?」

 

「というのは冗談で。何でも一つ、お前の言うことを聞いてやる、というのはどうだ?」

 

「・・・・・・今なんでもすると」

 

「言ったな」

 

 ・・・・・・如月くん、本気かな? 何か、カードをもらったらすっぽかしそう。

 

「なら、今すぐオレとデュエルしろ」

 

「・・・・・・それだけでいいのかよ? もっと色々あるだろ?」

 

 本当にそれだけでいいの、四谷くん? 今までのこと全てに謝罪させる、とかでもいいんだよ?

 

『何のつもりだ?』

 

『ワンキルでもして、遊羽殿へのストレスを解消する、とかですかな?』

 

 うーん、どうだろ?

 

「それと。オレにはお前らが見えている」

 

 そう言った四谷くんは、真っ直ぐレヴとジャンを見た。

 

「・・・・・・なんだと」

 

「ドラグニティアームズ-レヴァテインと、ジャンク・ウォリアーだな。別に、オレがデュエルする理由はストレス解消ではない」

 

『・・・・・・どうやら本当のようだな』

 

『なんと! 主殿と遊羽殿の他にも、拙者達を見える者がいたとは!』

 

「・・・・・・でも、どうして今そんな事を?」

 

 理由がわからない。今まで僕らに隠していたみたいだし、バラす必要は無いはずだ。

 

「オレのデッキにも、精霊がいるのでな。紹介しようかと思ってな。いや、それはデュエルで見せるとするか」

 

「・・・・・・そうだな。展開が急すぎて付いていけねぇ。なら、デュエルでもして頭をスッキリさせるか」

 

 そう言いながら立ち上がる二人。

 

 僕は観戦でもしてよう。あ、ポップコーンないかな? できればフライドポテトも。

 

戦SideOut

 

ーーーーーーーーーー

 

Side遊羽

 

 さてと、四谷とのデュエルは半年ぶりくらいだったな。

 

「・・・・・・あ。俺のデッキ、まだ出来上がってねぇんだけど」

 

「そうだな。お前を倒すにはまたと無い機会だ」

 

 ・・・・・・四谷ぁ! 図ったな、四谷ぁ!

 

「一応、形にはなっているのだろう? さぁ、ディスクにデッキをセットしろ」

 

「クソ、そういうことかよ」

 

 コイツ、地味に去年の事を根に持ってんな。

 

「四谷くんて、以外と小さいのかな」

 

『主殿、恐らく聞こえておりますぞ。もっとオブラートに包むとかですな・・・・・・』

 

「そこ、後で覚えておけよ」

 

 うっわ。小っさ!

 

「実はこのデッキ、39枚なんだ」

 

『・・・・・・遊羽』

 

「もちろんレヴ、お前の枠だ。出番は減るかもしれないが、俺のデッキにお前が入ってないなんて事は有り得ねぇ」

 

『・・・・・・そうか』

 

 レヴのカードを戦から受け取り、デッキに入れる。・・・・・・つうか、ポップコーン食うなよ。映画じゃあるめぇし。

 

「そろそろいいか?」

 

「待たせたな。いくぜ!」

 

「「デュエル!」」

 

如月遊羽

LP8000

 

四谷春樹

LP8000

 

「先攻はもらうぜ。俺のターン!」

 

 俺の新しいデッキは、前のデッキよりも更に展開力がある。足りないカードが多いが、充分に動けるはずだ。

 

 まぁ、先攻1ターン目から動くのは難しいけどな。

 

「俺はモンスターをセット、カードを伏せて、ターンエンドだ」

 

如月遊羽

LP8000 手札3

場 メイン:伏せモンスター 伏せカード:一枚

 

「オレのターン。カードドロー」

 

 さっき、四谷は『オレのデッキ』と言っていた。恐らく、ワンキル・ソリティア研究会副会長としてではなく、アイツ本人のデッキだ。

 

 まぁ。だとしても、恐らくワンキルかソリティアのデッキではあるんだろうけど。

 

 細かい説明は長いから省く。

 

「オレは覇王眷竜ダークヴルムを召喚。効果でデッキから、覇王門零を手札に加える。手札から慧眼の魔術師と黒牙の魔術師をPスケールにセット。慧眼の効果で自身を破壊しデッキから紫毒の魔術師をPスケールにセット。ペンデュラム召喚。エクストラデッキから慧眼の魔術師、手札から覇王門零、覇王門無限、調弦の魔術師。調弦の効果でデッキから虹彩の魔術師を特殊召喚。オレはダークヴルムと慧眼をリンクマーカーにセット、リンク召喚。ヘビーメタルフォーゼ・エレクトラム。効果でデッキから白翼の魔術師をエクストラデッキに加える。零の効果発動、紫毒と自身を破壊しエクストラデッキから覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴンを効果無効、攻守0で特殊召喚。零はPゾーンに置かれる。エレクトラムの効果で1ドロー。無限の効果発動、黒牙と自身を破壊しエクストラデッキから覇王白竜オッドアイズ・ウィング・ドラゴンを効果無効、攻守0で特殊召喚。無限もPゾーンに置かれる。リベリオンとウィングをリリース。覇王眷竜スターヴ・ヴェノムを特殊召喚。Pゾーンの零の効果発動。零と無限を破壊しデッキから簡易融合を手札に加える」

 

「長ぇよ」

 

 ちょっと状況整理するか。

 

覇王眷竜スターヴ・ヴェノム ☆8 攻撃力2800

 

調弦の魔術師 ☆4 守備力0

 

虹彩の魔術師 ☆4 守備力1000

 

ヘビーメタルフォーゼ・エレクトラム link2 攻撃力1800

 

 もうホント壁とやってろと思う。手札誘発を引けてない俺も悪いけど。

 

「簡易融合を発動、LL-インディペンデント・ナイチンゲールを特殊召喚」

 

 鳥のような、美しい女性型モンスターが現れる。

 

LL-インディペンデント・ナイチンゲール ☆1 攻撃力1000→1500

 

「ん? お前が精霊か?」

 

『正解よ。よろしくね』

 

 てっきり魔術師のどれかかと思っていたけど、ハズレだったな。

 

「ディペ。今はデュエル中だ」

 

『えー、少しくらいいいじゃない。それに、このデッキ私の見せ場ほとんど無いし』

 

「それはすまないと思っている」

 

 ・・・・・・四谷が素直だ。ナニコレ珍しい。

 

『・・・・・・やはり出番が少ないものですな』

 

『精霊の宿命か呪いなのか? これは』

 

 おーい、そこの二体。出番に関しては俺らも申し訳ない気持ちくらいあるぞ。

 

『あら。私は見せ場が少ないだけで、このデッキでのデュエルにはほぼ毎回出ているわよ?』

 

『なんと!?』

『なんだと!?』

 

 ・・・・・・うわー。後で面倒だな、これ。

 

『遊羽! 早く私を出してくれ! 新参者に負けてはいられない!』

 

 何の勝負だよ。

 

『主殿! もっと拙者が活躍するデッキを!』

 

「いや、それだと他のカードに申し訳ないし。とりあえず、考えておくよ」

 

『頼みますぞ、主殿!』

 

 あっちもあっちで大変そうだな。

 

「・・・・・・もういいか?」

 

『えー。私、もう少し居たいのだけれど』

 

「後で機会を設けよう」

 

『そう。それならいいわ』

 

 四谷はコホン、と咳払いをした。

 

「仕切り直しだ。ディペの効果発動。レベル×500ポイントダメージだ」

 

如月遊羽

LP8000→7500

 

「ディペとエレクトラムをリンクマーカーにセット。リンク召喚。セフィラ・メタトロン」

 

セフィラ・メタトロン link3 攻撃力2500

 

「スターヴの効果。ディペの名前と効果を得る。得たディペの効果発動。レベル×500ポイントダメージを与える」

 

如月遊羽

LP7500→3500

 

「バーンだけでこれかよ。酷いな」

 

 ・・・・・・あれ? 覇王眷竜スターヴ・ヴェノムの効果って、名称指定ついてたっけ。

 

「虹彩と調弦をリリース。二体目の覇王眷竜スターヴ・ヴェノムだ」

 

覇王眷竜スターヴ・ヴェノム ☆8 攻撃力2800

 

 ・・・・・・うわー。終わったー。

 

「スターヴの効果でディペの名前と効果を得る。レベル×500ポイントダメージ、お前の負けだ」

 

「納得いかねぇ!?」

 

如月遊羽

LP3500→0

 

 ・・・・・・これ、俺が相手する意味あったのか? つーか新デッキ・・・・・・俺の新デッキ・・・・・・見せ場が一つもねぇよ・・・・・・。

 

「ふぅ。スッキリした」

 

『・・・・・・やはり、ワンキルしてストレスを解消したかっただけなのでは?』

 

「うん。今となっては僕もそう思う」

 

 俺は、そんなことを話している二人に向かって言った。

 

「ポップコーンはおいしかったか? 一つわけてくれよ」

 

「もう全部食べたよ」

 

「早ぇなおい」

 

 いや、普通残しとくだろ? デュエルお疲れ様的なあれで。

 

『あー、疲れたわ。出番は少ないのに効果だけ乱用されて、普通の精霊なら激おこよ?』

 

「そうか。ならオレはディペに感謝しないとな」

 

『そうよ。沢山感謝なさい』

 

「そうだな。感謝する」

 

 ・・・・・・ブラックコーヒー買ってきていいか?




小ネタ

遊羽「そもそも、何で亜白龍が出回ってないんだ?」

春樹「・・・・・・元々数が少ない上に、オレ達ワンキル・ソリティア研究会がワンキルのパーツとしてほぼ全員が三枚持っている。流通していないのはそのせいだろう」

遊羽「つまり、お前らが諸悪の根源、と」

春樹「・・・・・・根源と言えば、混源龍レヴィオニアだな。どうだ? 一枚くらいなら譲るが」

遊羽「それは根源違いだ。レヴィオニアはもらうが、お前はしばく!」

春樹「理不尽なッ!」


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イベント告知

Side戦

 

 如月くんが失踪してから約一週間。

 

 ・・・・・・まぁ、失踪という名の不登校なんだけど。

 

「もう! いい加減学校に来たらどうですか、遊羽!」

 

「いや、あと一枚である程度動けるようになるんだ。それまで待ってくれ」

 

 という感じで、昨日も真宮さんとカードショップでもめて(?)いた。

 

「まったく。遊羽ったら、どうしてあんな我が儘になったんですか」

 

『虹花殿が甘やかしたからでは・・・・・・?』

 

 ジャン、それ聞こえてたら危なかったよ?

 

 ちなみに、レヴは如月くんのところにいる。あとはカードを探すだけだからとかなんとか。

 

「あ、ホームルーム始まるよ」

 

 教室に、担任の異次元の女戦士似の先生がやってきたのが見えた。

 

「皆さんにお知らせです。来週から、中間テストが始まります。今回のテストでは、一週間のデュエル結果で成績を決めます。簡単に言うと、デュエルしまくって勝ちまくった人がいい成績をもらえます。その後、上位者でトーナメントを開催し、学年のランキングを決めます」

 

 ・・・・・・中間テストまでデュエルなんだね、この学校。

 

『あら。これから一週間、大変ね』

 

 最近、僕や如月くんにも姿を見せてくれるようになったディペが言う。

 

「ワンキルはいいが、ソリティアは控えた方がいいかもしれないな」

 

「デュエル結果、っていうのも曖昧だしねー」

 

 それに続く四谷くんと永野さん。

 

「デュエル結果は、デュエルディスクから自動的にデータが送られますので、生徒が何かする必要はありません。それと、教師とのデュエルでは加点を期待してください」

 

 その言葉に、教室中で歓声が上がる。

 

「・・・・・・あれ、ただ教師達もデュエルしたいだけだよね?」

 

「恐らくそうですね。普段、教師達は生徒とデュエルしませんから、こういう機会を設けたのでしょう」

 

「いや、生徒に勝ってストレス解消をしたいだけだと思うぞ」

 

 いやいや四谷くん。いくらなんでも、流石にそれはないんじゃない?

 

「・・・・・・よし、これで暫くはストレスを気にせずに済みますね」

 

 先生。小声ですけど、本音漏れてます。

 

『・・・・・・ストレス解消のための様ですな』

 

『あらあら。春樹をストレス解消の道具にするだなんて。許せないわね』

 

『そうですな。許しがたい行いですぞ』

 

 精霊達の反感まで買ってる。・・・・・・四谷くんは教師達とデュエルしても、問題なく勝ちそうだけど。

 

「落ち着け、ディペ。教師達にも色々あるのだろう」

 

『・・・・・・そう。春樹がそう言うならいいけど』

 

「ジャンもだよ。別に、いつも通りにデュエルするだけなんだから」

 

『むう。主殿がそうおっしゃるのであれば』

 

 さて。帰ったらこのことを如月くんに伝えないとね。

 

ーーーーーーーーーー

 

 放課後、僕は如月くんのお家にお邪魔していた。・・・・・・色合い的に、ジャンがブラック、僕はブルーかな。

 

『イエローとグリーン、レッドが足りませぬが』

 

 そこはほら、気にしない気にしない。

 

「それで、何の用だ?」

 

「来週、中間テストがあるでしょ? それでさ・・・・・・」

 

 僕は簡単に今日の話を伝える。

 

「・・・・・・なるほど。去年と同じか。なら、来週だけじゃ終わらないな」

 

 え、どういう事?

 

「成績上位者同士でのデュエル大会があるだろ? これが中々長くてな。もう一週間かかる」

 

「・・・・・・時間のかかるテストだね」

 

「デュエルが全てと言ってもいい学校だからな。もし不正や間違いがあったら困るんだろ。それに、強いデュエリスト同士でのデュエルによって、生徒全体の意欲向上を狙ってる」

 

 そんなことまで考えてるのかなぁ?

 

『流石に深読みのしすぎだろう』

 

 ほら、レヴもこう言ってるし。

 

「俺としては、普通の考えだと思うんだがな・・・・・・。ま、それまでに最後の一枚を探さないとな」

 

「デッキ、まだ完成してないの?」

 

 なら、前のデッキを使えばいいんじゃ?

 

「俺は色んな意味で有名だからな。デッキが対策されやすい」

 

 ・・・・・・あぁ、確かに。

 

「トーナメントでも新デッキだな」

 

「勝つことが決まっているような言い方だね」

 

「まぁな。負けるつもりはねぇ」

 

 グッ、と拳を握りしめながら宣言する如月くん。格好いいなぁ。

 

「お前も、他人事じゃねぇぞ」

 

「えっ、どういう事?」

 

「お前、『弱くない』ことを証明するんだろ? もってこいの機会じゃねぇか」

 

 ・・・・・・うん、そうだね。

 

「んじゃ、俺はカード探しに行ってくる」

 

「うん、いってらっしゃい」

 

「いや、帰れよ」

 

 ・・・・・・そういえば、ここ如月くんの家だった。




デュエル描写を書きたいんですが、持っているデッキが少ないんですよね。学生なので(お金がない)。

面白いデッキを探すので、暫く投稿しなくなるかもです。


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闇のカード

お久しぶりです。面白いデッキ探しの旅に出てました。

ちなみに、今回は面白いデッキは出てこないです(おい)。


Side遊羽

 

 戦から中間テストのことを聞いた俺は、デッキを完成させるべく駅四つ離れた町まで来ていた。

 

「たっく、どこもかしこも売ってねぇ。ドラゴン族人気すぎだろ」

 

 ドラゴン族は人気が高いから、カードの値段も高くなる。それでも欲しがる奴が多いんだが。

 

 まぁ、俺もそんなドラゴン族大好きな奴らと同じく、ドラゴン大好き人間だし。気持ちも分からんでもない。

 

『しかし、どこにも売っていないとはな。お陰でこんなところにまで来る羽目になってしまった』

 

 ま、観光とでも思えばいいだろ。・・・・・・あのカードが売ってないのって、ワンキル・ソリティア研究会が買い占めたからじゃねぇよな? もしそうだったら、今度春樹をしばこう。

 

「お、ここか」

 

 駅からしばらく歩いたところで、カードショップを発見。早速中に入る。

 

『中々賑わっているな』

 

 店内では盛んにデュエルが行われていて、活気がある。

 

「さて、ここにはあるかな」

 

 俺はショーケースの前まで移動し、中のカードを眺める。

 

「お、ダークブレイズドラゴンじゃねぇか! クソ、欲しい・・・・・・だが、ここで金を使うわけには・・・・・・」

 

 まだ持っていないドラゴンを見ると、すげーテンション上がる。が、残念ながら金が足りない。

 

 そして、目的のカードは・・・・・・なかった。

 

「クソ、ここもダメか。これじゃあ中間テストに間に合わねぇじゃねぇか」

 

 俺は諦めて、店からでようとした。だが。

 

「・・・・・・ォオ。デュエ、ル。オ、オレトォ、デュエルシロォ」

 

 店に不審者が入ってきた。にしても、少し様子がおかしい。

 

『ッ! 遊羽、闇のカードだ!』

 

「何ッ!」

 

 俺は不審者が手元に持っているデッキらしきものに目を向けた。そこから立ち上る、黒い瘴気。・・・・・・間違いない。闇のカードだ。

 

「レヴ。久々にやるぞ」

 

『・・・・・・あぁ。闇のデュエルだ』

 

 闇のデュエル。下手すれば命を失うこともある、危険なデュエル。だが、それ以外に闇のカードを無効化する方法はない。

 

「デュエルアンカー射出、っと」

 

 俺はデュエルディスクの機能の一つ、デュエルアンカーを不審者のデュエルディスクに向けて放った。俺のデュエルディスクはちょっと改造してあるのだ。ドヤァ。

 

ーーーーーーーーーー

 

 俺は店の迷惑にならないよう、店の裏に連れていってから、デュエルディスクを構えた。新しいデッキではなく、今までのデッキをセットする。

 

「さて。ご所望のデュエルをしてやろうじゃねぇか」

 

「ガァア!」

 

「「デュエル!」」

 

如月遊羽

LP8000

 

不審者

LP8000

 

「オ、オレノターン、オレハ手札カラ銀河戦士ノ効果発動ォ。手札カラ銀河眼の光子竜ヲ捨テテ特殊召喚。ソノ効果デ銀河騎士ヲ手札ニ加エ、通常召喚スルゥ!」

 

銀河戦士 ☆5 守備力0

 

銀河騎士 ☆8 攻撃力2800

 

「銀河騎士ノ効果ァ! 自信ノ攻撃力ヲ1000下ゲ、墓地ノ銀河眼の光子竜ヲ特殊召喚!」

 

銀河騎士 攻撃力2800→1800

 

銀河眼の光子竜 ☆8 攻撃力3000

 

 レベル8が二体。来るぞ遊馬!

 

「オレハ二体ノモンスターデオーバーレイ! エクシーズ召喚! No.38 希望魁竜タイタニック・ギャラクシー!」

 

No.38 希望魁竜タイタニック・ギャラクシー ★8 攻撃力3000

 

 あれは、確か魔法を無効にするギャラクシーアイズ。俺のデッキには少しキツいカードだな。

 

「オレハコレデターンエンドォ」

 

不審者

LP8000 手札3

場 エクストラ:No.38 希望魁竜タイタニック・ギャラクシー メイン:銀河戦士

 

「俺のターン、ドロー」

 

 問題はどこで無効にしてくるか、だな。・・・・・・手札に魔法カードが二枚しかねぇし、魔法カードを使わなければいいか。

 

「俺はWW-アイス・ベルの効果発動! デッキのグラス・ベルと共に特殊召喚する」

 

WW-アイス・ベル ☆3 守備力1000

 

WW-グラス・ベル ☆4 チューナー 守備力1500

 

「グラス・ベルの効果でデッキからスノウ・ベルを手札に。アイス・ベルの効果で500ダメージだ」

 

不審者

LP8000→7500

 

「グウゥァア!」

 

「・・・・・・」

 

 闇のデュエルでは、ダメージが身体に現れる。わずか500とはいえ、その分の痛みが奴を襲っているのだろう。

 

「俺は二体のモンスターをリリース! アドバンス召喚! 来い、轟雷帝ザボルグ!」

 

轟雷帝ザボルグ ☆8 攻撃力2800

 

「ザボルグの効果発動だ。モンスター一体を破壊し、光属性だったらエクストラデッキからそのモンスターのレベル分お互いに墓地に送るぜ。タイタニック・ギャラクシーを破壊!」

 

 本来なら自害なんだが、相手のデッキに救われたな。

 

「さて。エクストラデッキから八枚、送ってもらおうか」

 

 俺はメリットだらけだが、奴にとってはそうではないだろう。ザボルグの効果で墓地へ送られたモンスターは、蘇生することができないしな。

 

「ルルルオォァア! オ、オレノデッキガァ!」

 

「うるせぇぞ」

 

 フォトン・サンクチュアリで出していれば、相手のエクストラデッキを見れたのに。闇のカードの確認も兼ねて。

 

「バトル! 銀河戦士を攻撃!」

 

 ザボルグの拳が甲冑に覆われた戦士を砕く。・・・・・・いや、雷使えよ。轟『雷』帝なんだからさぁ。

 

「俺はこれでターン終了だ」

 

如月遊羽

LP8000 手札5

場 メイン:轟雷帝ザボルグ

 

「ルルゥゥ。オレノターン、ドルォー」

 

 闇のカードの影響だってわかってるが、耳障りだな。あのうなり声。

 

「スタンバイフェイズ、俺はキメラフレシア二枚の効果でデッキからミラクルシンクロフュージョンを二枚、手札に加えるぜ」

 

 ザボルグの効果で送ったモンスターだ。

 

「オレハ手札から銀河の修道師ヲ捨テ、再ビ銀河戦士ヲ特殊召喚」

 

銀河戦士 ☆5 守備力0

 

「銀河戦士ノ効果デ銀河騎士ヲ手札ニ加エ、通常召喚! 更ニ墓地ノ銀河眼の光子竜ヲ特殊召喚ダァ!」

 

銀河騎士 ☆8 攻撃力2800→1800

 

銀河眼の光子竜 ☆8 攻撃力3000

 

 またレベル8が二体ッ!

 

「オレハ二体ノモンスターデオーバーレイ! エクシーズ召喚! 銀河眼の光波竜!」

 

銀河眼の光波竜 ★8 攻撃力3000

 

「サイファーだと!」

 

 銀河眼のカードでもレアカードのはずだ! なんでこんな不審者が持っている!?

 

『遊羽、切り抜けられるか?』

 

 これでザボルグが寝取られて、サイファーの直接攻撃受けて・・・・・・。あ、これ闇のデュエルじゃん。痛いのは嫌だなぁ。

 

「オレハ銀河眼の光波竜ヲエクシーズチェンジスル!」

 

「ッ! 何だと!」

 

 寝取り効果を使わずに? この状況、どっちだ? いや、選択肢は一つか。

 

 

「マズハFAフォトンチェンジ! ギャラクシーアイズ FA・フォトン・ドラゴン!」

 

ギャラクシーアイズ FA・フォトン・ドラゴン ★8 攻撃力4000

 

 フルアーマー!? また高いカードを!!

 

「FAノ効果発動! ザボルグヲ破壊スル!」

 

 フルアーマーの尻尾により、俺のザボルグが破壊される。

 

「マダダ! ランクアップエクシーズチェンジ! 出デヨ、我自身! No.95 ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン!」

 

「何だと!」

 

No.95 ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン ★9 攻撃力4000

 

 ダークマターから、ソリッドビジョンとは異なる黒い瘴気が吹き出す。それにより、辺り一体が黒い霧のようなもので包まれる。

 

『ッ! 遊羽!』

 

「コイツが闇のカードか!」

 

 目的のカードが見つかっただけじゃなく、闇のカードとはな!

 

『しかも、オリジナルのナンバーズだぞ、遊羽!』

 

「マジか!」

 

 レヴの喜ぶ声に、俺もまたテンションが上がる。

 

 元々、ナンバーズのカードは世界にそれぞれ一枚。それをコピーし量産したのが俺達の持つレプリカのナンバーズだ。だが、その世界に一枚の大元のナンバーズカードもある。それが、オリジナルのナンバーズ。

 

 そして、俺が必死になって探していたカード。No.95 ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン。

 

「こいつはツイてるぜ!!」

 

 このデュエルに勝てば、闇のカードは俺のものだ。つまり、俺は目的のカードを手に入れられるだけではなく、それがオリジナルのナンバーズであるというオマケまで付いてくるというワケだ。

 

『ルルルオォァア! キサマゴトキニ、我ヲ従エル事ナドデキヌハ!』

 

 ダークマターが顕現したことで、不審者は完全に気を失っている。

 

「上等! かかって来いやぁ!」

 

『我ノ効果発動ォ! デッキカラドラゴン族を三種墓地ヘ! キサマハデッキカラカードヲ三枚除外セヨ!』

 

 俺はデッキからザボルグ二枚とグラス・ベルを除外した。

 

『バトルダ! 我デ攻撃!』

 

「受けてやるよ!」

 

 ダークマターの纏う闇が、俺を切り裂く。

 

如月遊羽

LP8000→4000

 

「ぐあああぁああああああああ!!」

 

 全身に激痛が走る。

 

『遊羽!』

 

 心配したらしいレヴが俺に駆け寄る。

 

「レヴ、まだ大丈夫だ」

 

『だが!』

 

「なに、デュエルが終わるまでは持つさ」

 

 それに、奴が出てきたことで、あの不審者が怪我をする心配も必要なくなった。

 

『ホウ、耐エルカ。ナラバ我ハコレデターンエンドダ』

 

ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン

LP7500 手札2

場 エクストラ:No.95 ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン メイン:銀河戦士

 

「俺の、ターン。ドロー」

 

 クソ、若干視界が歪む。引いたカードが上手く見えない。

 

 が、特に問題はなかったりする。

 

「俺はミラクルシンクロフュージョンを発動! 墓地のドラグニティナイト-ガジャルグと、スターダスト・チャージ・ウォリアーを除外! そのモンスターで融合する!」

 

『墓地ノモンスターデ融合ダト!』

 

「槍の竜騎士よ! 星屑の戦士よ! その魂交わりて、新たな鼓動を刻め! 融合召喚! 来い、波動竜騎士 ドラゴエクィテス!」

 

波動竜騎士 ドラゴエクィテス ☆10 攻撃力3200

 

「ドラゴエクィテスの効果発動! 墓地のドラグニティナイト-ヴァジュランダを除外し、その名前と効果を得る!」

 

 そして、最初から手札にあった魔法カード。

 

「ドラグニティの神槍を、ドラゴエクィテスに装備!」

 

波動竜騎士 ドラゴエクィテス 攻撃力3200→4200

 

『攻撃力、4200ダト!』

 

「ドラグニティの神槍の効果、デッキからファランクスをドラゴエクィテスに装備。そしてドラゴエクィテスが得たヴァジュランダの効果発動! ファランクスを墓地へ送ることで、攻撃力を倍にする!」

 

波動竜騎士 ドラゴエクィテス 攻撃力4200→8400

 

『クッ! ダガ、我ノライフポイントヲ削リキル事ハデキマイ!』

 

『遊羽、このターン引いたカードを使え!』

 

「わかった」

 

 俺は躊躇なくこのターン引いたカードをデュエルディスクに差し込んだ。

 

「で、後は?」

 

『攻撃だ』

 

「おいおい、俺は何のカードを使ったんだ?」

 

『攻撃すればわかる』

 

 そうかよ。レヴがそう言うなら信じるぜ。

 

「俺は波動竜騎士 ドラゴエクィテスで、ダークマターを攻撃! 波動竜螺旋突き!」

 

 ドラゴエクィテスがその槍でダークマターを貫く。

 

ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン

LP7500→0

 

『ガアアァァァァァァアア!? ナ、何故ェ!!』

 

 ライフが0になり、苦しみだすダークマター。

 

「なるほど。アクションマジック-フルターンか」

 

『正解だ、遊羽』

 

 俺のそばにドラゴエクィティスが降り立つ。・・・・・・おい、首を傾げるな。『何で倒せたんだろう? ま、いっか!』的な顔をするな!倒した当事者がそれでどうする!

 

『グウゥゥ、ガアァァァァァァァァァァァァァッァアア!』

 

 その叫びを最期に、ダークマターは散った。それと同時に、辺りを包んでいた黒い霧も晴れる。

 

『これで、闇のカードの無効化はできたな』

 

 そう。無効化であって、カードの闇が消えたわけじゃない。ダークマターの人格(人?)は消えたが、カードは闇のカードのままだ。

 

「んじゃ、回収して帰るか」

 

 俺は重い身体を動かし、不審者のデッキたらダークマターのカードを取り出す。

 

「あー、虹花に何て説明するかな。闇のデュエルとか、虹花には言えないし」

 

 ひとまず思考を放棄して、今は帰ることに集中しよう。

 

 でないと、今にも倒れそうだ。




普通のデュエルディスクにはデュエルアンカーは付いてないです。遊羽が改造したんです。

面白いデッキは、次回以降に出せると思います。

追記:またルールとか効果を間違えまくったので、直しました。確認してから投稿するようにします。


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テスト開始ィ!

デュエルしないので早めの投稿。

磯野、テスト開始の宣言をしろ!


Side戦

 

 先日、如月くんが傷だらけで帰ってきてからが一週間。

 

 今日から、中間テストが始まった。

 

「覇王眷竜スターヴ・ヴェノムでトドメ」

 

「ドラゴエクィテスで攻撃、速攻魔法、アクションマジック-フルターン! これでトドメだ!」

 

「ということで、エクゾディア!」

 

「カオス・ソルジャー -開闢の使者-で攻撃です!」

 

 登校して、校門をくぐったと思ったら、すぐにこれだ。授業開始までデュエル三昧だね。

 

「ジャンク・ウォリアーで攻撃、速攻魔法リミッター解除! DNA改造手術の効果で機械族だから、攻撃力二倍! ダメージ計算時、ラッシュ・ウォリアーを捨ててさらに倍! 終わりだよ!」

 

 でも、デュエルする以上は勝ちたいし、テストのためには効率よく勝たないといけない。

 

 よって、ワンキル乱発。永野さんは違うけど、四谷くんや如月くんはワンキルばっかりだ。

 

「オレに勝ちたければ、ワンキル・ソリティア研究会まで来い」

 

「手札誘発握ってないのが悪い」

 

 二人とも、こんな調子だしね。あと、四谷くん。勧誘はやめようよ。

 

ーーーーーーーーーー

 

 放課後、僕は逃げるように図書室へ向かった。図書室ではデュエルが禁止されているからだ。帰ろうにも、校門まで行くのに、何時間かかるかわからない。

 

「ずっとデュエルとか、死んじゃうって・・・・・・」

 

『そうですな。休むことは大切ですぞ』

 

 ありがとう、ジャン。

 

 図書室には、一人だけしか利用者がいなかった。きっと、皆デュエルしているんだろう。

 

「何か本でも読もうかな」

 

 図書室に来たんだし、読書はしないとね。

 

 僕は本棚に近づき、置いてある本を眺める。

 

「『不動性ソリティア理論』、『ミザエル先生のドラゴンイラスト 傑作集』、『月刊デュエルモンスターズ』、『週刊少年デュエリスト』、『星遺物ストーリー』、『ドラゴン擬人化図鑑』、『古代エジプトから学ぶ、デュエルモンスターズ史』・・・・・・」

 

 うわ、全部デュエルモンスターズ関係じゃん! 特に『ドラゴン擬人化図鑑』とか、誰が借りるんだろう・・・・・・。

 

「・・・・・・あのー」

 

 突然声をかけられたので振り返ってみると、一人だけいた利用者さんだった。

 

 とても小柄で、黒髪を短めのポニーテールにした、可愛らしい女の子だ。

 

「えっと、僕に何か用かな?」

 

 初対面、だよね? 僕、何かしたっけ? もしかして、図書室の利用規約的な何かに違反しちゃったりしたのかな? ほら、図書室で音を立てるな、みたいな。

 

「えと、デッキに入れるカードに迷ってしまったのです・・・・・・。どちらがよいと思うです?」

 

 その少女が見せてきたのは、ギャラクシーサーペントと守護竜ユスティア。どちらもレベル2、通常モンスター、チューナー、ドラゴン族と共通点の多いカードだ。

 

「一概には言えないと思うよ。どっちにも魅力があるし、デッキによるんじゃないかな?」

 

 僕にはどちらがいいとかわからないので、笑顔で当たり障りない返答をする。・・・・・・初対面で訊くことじゃないと思うんだけど。

 

「そうですか・・・・・・。なら、デッキを見て欲しいのです!」

 

 何でここまで友好的なんだろうね!? ちょっと怖いよ!?

 

「えーっと、流石に他人のデッキを見るっていうのには抵抗があるんだけど・・・・・・」

 

「なら、お友達になれば他人じゃないです! 是非お友達になって、デッキを見てください!」

 

 この子、フレンドリーすぎない!? 笑顔を維持してるけど、苦笑いになりそうだよ!

 

「いや、突然お友達って言われてもね・・・・・・」

 

「駄目です? ならなら、お友達未満の関係からならよいです?」

 

 ・・・・・・ギブ。もう無理。頭が痛くなってきた。

 

「わかった、とにかくデッキを見せてもらうよ」

 

「本当なのです!? ありがとうなのです!!」

 

 パァっと花が咲くように喜んだ表情になる女の子。

 

『主殿が折れた・・・・・・?』

 

 ジャン、君は僕を何だと思ってるのかな? 僕ってそんなに折れないキャラだったっけ?

 

『いえ、ちょっとシリアスっぽくしてみようかと』

 

 すごいいらない気遣いありがとう!? ・・・・・・デッキから抜こうかな。

 

『冗談ですぞやめてくだされ何でもはしませぬが』

 

 今なんでもって・・・・・・。

 

「では、こちらなのです!! ふんす!」

 

 ・・・・・・正直、普通に帰れば良かったと思う




中途半端な終わりですがご容赦を。

次回はデュエルします。


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如月レポート

注意!

ちょっとしたキャラ崩壊が起きます。


Side遊羽

 

 戦がどこかへ逃げ出してから、約一時間。

 

 いい加減デュエルに飽きた俺は、コッソリ戦のデュエルディスクにつけておいた発信機を使うことにした。ふむ、図書室か。

 

「これでトドメだ如月! マシンナーズ・フォートレスでダイレクトアタック!」

 

「ヌルい。速攻のかかしを捨ててバトルフェイズを強制終了する」

 

「クソ、ターンエンドだ!」

 

 マシンナーズ・フォートレスとか初めて見たな。まぁいいか。

 

「俺のターン。ドロー。ミラクルシンクロフュージョン発動。来い、波動竜騎士 ドラゴエクィテス。ドラゴエクィテスの効果でヴァジュランダの効果を得る。ドラグニティの神槍を装備して効果、ファランクスを装備。得たヴァジュランダの効果でファランクスを墓地へ送って攻撃力二倍。トドメだ」

 

波動竜騎士 ドラゴエクィテス 攻撃力8400

 

「罠発動! マジックシリンダー!」

 

 お、トラップかマジックかよくわからんカードじゃねぇか。

 

「神槍の効果でトラップは効かねぇよ」

 

「そんな!」

 

男子生徒A

LP5600→0

 

「ふう。じゃ、図書室行くか」

 

『・・・・・・遊羽。私の出番がないのだが。せめてこんな時ぐらいは私を出してもいいと思うのだが』

 

 意味のわからないことを言うな。図書室行くぞ。

 

ーーーーーーーーーー

 

 図書室の扉を開けると、戦と知らない女子がデュエルしていた。・・・・・・図書室ってデュエル禁止じゃねぇっけ?

 

「・・・・・・戦ってもしかしてロリコ『言うな、遊羽』」

 

 いや、だってあんな小さい女子だぜ!? どう見てもロリータだろ!?

 

『人の性癖に触れてはいけない。それより、デュエルを見よう』

 

 ・・・・・・そうだな。

 

 デュエルは、ちょうど始まったばかりのようだった。

 

「僕のターンだね。モンスターをセット。カードを二枚セット。これでターン終了だよ」

 

遊民戦

LP8000 手札2

場 伏せモンスター:一枚 伏せカード:二枚

 

「私のターン、ドローなのです!!」

 

 声がもうロリだな。『なのです』って今日日聞かねぇな。

 

「私は調和の宝札を発動するのです。手札のガード・オブ・フレムベルを墓地に送って、二枚ドローするのです。更にトレード・インでラビー・ドラゴンを墓地に送って二枚ドローなのです」

 

 ドラゴンデッキか!? ドラゴンデッキだな!! いやー、ドラゴン好きは多いに越したことはないぜ。ロリとか言ってごめんな。ドラゴン好きに悪い奴はいない。

 

『すごい手の平返しだな・・・・・・』

 

 オイコラ、レヴ。今度お前主軸のデッキを組んでやるから黙ってろ。

 

『その言葉、忘れるな』

 

 さて、デュエルに目を戻そう。

 

「復活の福音発動なのです。墓地から来るのです、ラビー・ドラゴン!」

 

ラビー・ドラゴン ☆8 攻撃力2950

 

 ラビー・ドラゴン!! あのカードの良さがわかる奴がいるとは!! アイツ、やっぱいい奴だな!!

 

「ほわ~。可愛いのです~」

 

 だろ~。

 

『・・・・・・会話すらしていない筈だが・・・・・・』

 

 ドラゴン好きの間に会話は不要!

 

「バトルなのです! ラビー・ドラゴンで攻撃するのです!」

 

「伏せモンスターはフルール・シンクロンだよ」

 

フルール・シンクロン ☆2 チューナー 守備力200

 

 なんか変なタマネギもどきを尻尾で壊すラビー・ドラゴン。何だよあのタマネギもどき。

 

「ターンエンドなのです」

 

ロリっ子

LP8000 手札5

場 メイン:ラビー・ドラゴン

 

 復活の福音があるから、破壊される心配はないな。もしあんな可愛いラビー・ドラゴンを除去する奴がいたら、ぶっ飛ばす。

 

「僕のターン、ドロー。フォトン・スラッシャーを特殊召喚するよ。更にジェット・シンクロンを通常召喚。ジェット・シンクロンでフォトン・スラッシャーをチューニング! シンクロ召喚。ジェット・ウォリアー!」

 

フォトン・スラッシャー ☆4 攻撃力2100

 

ジェット・シンクロン ☆1 攻撃力500

 

ジェット・ウォリアー ☆5 攻撃力2100

 

「ジェット・ウォリアーの効果! ラビー・ドラゴンを手札に戻すよ!」

 

 戦テメェ後でぶっ飛ばす!!

 

『お、落ち着け遊羽』

 

 ・・・・・・おう、そうだな。今はデュエル中だしな。

 

「ジェット・シンクロンの効果でジャンク・シンクロンを手札に加えて、バトルだよ。ジェット・ウォリアーでダイレクトアタック!」

 

「受けるのです~」

 

 ジェット・ウォリアーがロリっ子にパンチをする。

 

ロリっ子

LP8000→5900

 

 戦テメェ、いたいけなロリっ子になんてことを!!

 

『遊羽、キャラが危ない。そろそろ大人しくしてくれ』

 

 ・・・・・・そうだな。デュエルで疲れてるみたいだ。大人しくするわ。

 

「僕はこれでターン終了だよ」

 

遊民戦

LP8000 手札2

場 エクストラ:ジェット・ウォリアー 伏せカード:二枚

 

「私のターン、ドローするのです」

 

 さて、次はどんなドラゴンかな~。

 

『・・・・・・』

 

「調和の宝札発動なのです。守護竜ユスティアを墓地に送って二枚ドローなのです。次に、竜の霊廟を使うのです。デッキから青眼の白龍を二枚、墓地に送るのです」

 

 青眼の白龍か。ワンキル・ソリティア研究会以外だと、使ってるのは青眼クラブぐらいだな。真紅眼クラブとの争い事が絶えないから、あんまり関わりを持たないようにしてるんだけどな。最近、銀河眼クラブを作ろうっていう話も出てるみたいだし、これからも関わらない方がいいだろう。

 

『本当に、この学校はどうなっているのだ』

 

 いや、知らねぇよ。

 

「古のルール発動なのです。三枚目の青眼の白龍なのです!!」

 

青眼の白龍 ☆8 攻撃力3000

 

「・・・・・・ふつくしい」

 

 思わず声を出すほどふつくしい。攻撃力3000と、通常モンスター最大の攻撃力を持つドラゴン。最近コモンでの再録があって、俺達一般人にも手に入れやすくなったんだよな。

 

「ふつくしいのです・・・・・・」

 

 だよな!!

 

『遊羽・・・・・・』

 

「このモンスターを、更にふつくしくするのです! 龍の鏡を発動するのです! ブルーアイズ三体融合なのです!!」

 

 何!? まさか!?

 

「青眼の究極竜なのです!!」

 

青眼の究極竜 ☆12 攻撃力4500

 

 ・・・・・・感動的だ・・・・・・。この時代に、まだアルティメットを使う者がいるとは・・・・・・。真青眼の究極竜が出てから、見かけることはないと思っていたが、まだ見れるとはな・・・・・・。

 

「バトルなのです!! 青眼の究極竜の攻撃! アルティメット・バースト!! なのです!」

 

 青眼の究極竜が、その三つの顎からブレスを吐き出す。

 

「くっ」

 

遊民戦

LP8000→5600

 

「ターンエンドなのです」

 

「強いね・・・・・・。僕のターン、ドロー!」

 

 戦ァ・・・・・・。もしアルティメットを破壊したらどうなるか、わかってるよなぁ・・・・・・?

 

「・・・・・・なんか、悪寒がするんだけど。ま、いっか。僕はシンクロン・エクスプローラーを召喚するよ。その効果で、墓地のフルール・シンクロンを特殊召喚」

 

シンクロン・エクスプローラー ☆2 攻撃力0

 

フルール・シンクロン 守備力200

 

 チューナーとそれ以外のモンスター。シンクロか。

 

「僕は二体のモンスターでオーバーレイ! エクシーズ召喚!」

 

 何!?

 

「No.29 マネキンキャット!」

 

No.29 マネキンキャット ★2 攻撃力2000

 

 戦がエクシーズ召喚とか、違和感半端ないな。

 

「いくよ。リバースカードオープン! DNA改造手術! フィールドのモンスター全てを機械族にする!」

 

 あ、アルティメットが・・・・・・機械族に・・・・・・。

 

「更に、マネキン・キャットの効果発動だよ。オーバーレイユニットを一つ使って、君の墓地のガード・オブ・フレムベルを特殊召喚してもらうよ」

 

ガード・オブ・フレムベル ☆1 攻撃力0

 

「こ、攻撃表示なのです!?」

 

「もちろん」

 

 鬼か!? 戦、お前いたいけなロリっ子何て事を!?

 

「そして、マネキン・キャットの更なる効果! 相手のフィールドにモンスターが特殊召喚された時、そのモンスターと種族か属性が同じモンスターを特殊召喚できるよ。おいで、壊星壊獣ジズキエル」

 

壊星壊獣ジズキエル ☆10 攻撃力3300

 

 ・・・・・・まさか、本当にこのコンボを使っていたとはな。前に戦のデッキを見た時、もしやとは思ったが・・・・・・。

 

「速攻魔法、リミッター解除発動だよ」

 

 ・・・・・・あ。

 

No.29 マネキンキャット 攻撃力2000→4000

 

壊星壊獣ジズキエル 攻撃力3300→6600

 

「バトル! マネキン・キャットでガード・オブ・フレムベルを攻撃!」

 

「う、受けるのです」

 

 マネキン猫がガード・オブ・フレムベルを掴み、ロリっ子にぶつける。

 

ロリっ子

LP5900→1900

 

「トドメだよ! ジズキエルで青眼の究極竜を攻撃! 壊星の一撃!」

 

ロリっ子

LP1900→0

 

 ・・・・・・脳筋め。

 

ーーーーーーーーーー

 

 デュエルが終わった後、俺は戦に話しかけた。

 

「いいデュエルだったぜ、戦。まさか本当にマネキン・キャットをあんな風に使うとはな・・・・・・」

 

「如月くん。見てくれてたんだ」

 

 嬉しそうに笑う戦。

 

「む~、負けたのです~」

 

「そっちも、素晴らしいデュエルだった。今度でいいから、ドラゴンについて語り合おう」

 

「貴方もドラゴン好きなのです!? もちろんなのです!!」

 

 テンション高ぇな。

 

「なら、お友達になって欲しいのです!!」

 

「おう。こっちから願い出たいくらいだな」

 

「嬉しいのです~! 今まで、ドラゴンについて語り合えるお友達なんていなかったのです」

 

 チョロいな、コイツ。

 

「そうだな。俺も一人いたが、ドラゴン性の違いで最近会ってねぇ」

 

「音楽性ならぬドラゴン性!?」

 

 戦、最近ツッコミ上手くなってきたな。ボケ増やそう。

 

『・・・・・・そういえば、図書室はデュエル禁止ではなかったのか?』

 

「「「・・・・・・あ」」」




ロリっ子ちゃんのデッキは、昔懐かしの通常ドラゴンデッキでした。

次回はデュエルしません。


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ドラゴン談議

始めに言っておきます。

ドラゴン擬人化を否定するつもりで書いたわけではありません。

むしろ私はドラゴン擬人化肯定派です。


Side戦

 

 僕らは今、前にも来たことのあるファミレス『バーガーワールド』にいる。

 

「む~、後はホーリー・ナイト・ドラゴンだけなのです。通常ドラゴンコンプリートまで」

 

「ホーリー・ナイト・ドラゴンか。少しボロボロだけど、持ってはいるな」

 

「本当なのです!? 譲って欲しいのです!!」

 

「おう。明日あたり持って来るぜ」

 

 と言っても、話しているのは二人だけで、僕はフライドポテトを食べてるだけなんだけどね。

 

「でも、ただで譲って貰っては申し訳ないのです」

 

「じゃあ友達になった記念、って事にしてくれ。俺もドラゴン好き友達ができて嬉しいんだよ」

 

『遊羽に友達ができる日がくるとはな・・・・・・』

 

 そういえば、僕と如月くんの関係って何だろう? ライバル? 友達? 

 

『あんまり気にする必要はないと思いますぞ。強いて言うなら、『仲間』ですかな』

 

 仲間か~。うん、それでいいや。

 

「ありがとうなのです!! あ、自己紹介してなかったのです」

 

 そうだったね。初対面でどっちのカードがいいかを訊かれて、デッキを見せてもらって、調整したら試運転として即デュエル、だったからね。自己紹介する隙間がないよ。

 

「そうだったな。俺は如月遊羽だ。よろしくな」

 

「私は龍塚 手鞠(りゅうづか てまり)というのです。よろしくお願いします、なのです」

 

 如月くんが笑顔で話していたのに、彼女の名前を聞いた瞬間真顔に戻った。

 

「龍塚? お前、息吹(いぶき)の妹か?」

 

「お兄様を知っているのです?」

 

 その息吹って人も龍塚性なんだね。

 

「あぁ。ちょっと前にな」

 

 何があったんだろう?

 

「ふぁ、もひかひふぇ」

 

「口の中を空にしてからじゃべれ」

 

 ゴクン。

 

「もしかして、それがドラゴン性の違いで会ってないっていうドラゴン好き友達?」

 

「・・・・・・そうだ」

 

『さすがは主殿ですな』

 

 ありがとう、ジャン。

 

「それで、何でお兄様とは会わなくなったのです?」

 

「・・・・・・アイツが、ドラゴンは擬人化に限るとか抜かしたからだ」

 

 ・・・・・・ワッツ?

 

「そんな事をお兄様が!?」

 

「あぁ。アイツは、俺がドラゴンについての魅力を語った後、『ならこれでも読んでみたら? 遊羽ならオレの好みを理解してくれそ~』とか言って俺に『ドラゴン擬人化図鑑』を差し出してきやがった・・・・・・」

 

 その本図書室のだよね!?

 

「そんな、お兄様がそんな事を・・・・・・」

 

「アイツはドラゴン好きの風上にも置けない。擬人化至上主義者なんだよ・・・・・・」

 

「その様なのです。お兄様の事、信頼してたのにです・・・・・・」

 

 僕、帰っていい? その話、微塵も興味がわかないんだけど。

 

『主殿、少しの間ですぞ。我慢してくだされ』

 

 いや、ドラゴン好きなのは同じなんだし、仲良くすればいいじゃん。

 

「最近、ドラゴエクィテスも擬人化したらしいし、擬人化ってそんなに人気なのか?」

 

 それ、色々マズい発言だからね。バレないようにこっそり言ってね。

 

「どうりで最近お兄様が部屋に入れてくれないと思ったら、そんな、擬人化なんかに気を取られていたのです? 恥ずかしいのです・・・・・・」

 

 恥ずかしいとまで言っちゃったよ。フライドポテトおいしい。

 

「ところで、そちらのドラゴンさんはどなたなのです? さっきからずっと気になっているのです」

 

 彼女の目線の先にいるのはレヴ。

 

『あれ、拙者は?』

 

「ごめんなさい、気にしてなかったのです・・・・・・」

 

 これは、もしかして・・・・・・。

 

「手鞠。お前、精霊が見えているのか!?」

 

「? もしかして、見えたらまずいものです? 悪霊とかです?」

 

『悪霊・・・・・・』

 

 あ、レヴが地味にダメージ受けてるよ! やめてあげて!? フライドポテトおいしい。

 

『主殿・・・・・・』

 

 いや、おいしいものはおいしいもん。

 

「いや、見える人がそんなにいないものなんだ、精霊って」

 

「あぁ! どうりで店員さんが『三名様ですか?』って言っていたと思ったら、そういうことなのです」

 

 ポム、と手を打ちながら納得したような表情を浮かべる龍塚さん。いや、そこで疑問を持とうよ。

 

「・・・・・・精霊に対しての反応って、コレが普通なのか? 戦も変な反応してたしな」

 

 失礼な。

 

「あ、私、精霊さんともお友達になりたいのです~! なってもらってもよいです?」

 

『勿論だ。私はドラグニティアームズ-レヴァテインだ。レヴと呼ばれている。よろしく頼む』

 

『ジャンク・ウォリアーのジャンですぞ。以後、お見知り置きを』

 

 やっぱりフレンドリーすぎないかなぁ龍塚さん。少し怖い。




『バーガーワールド』って、わかる人どれくらいいるんですかね?

次回はデュエルする予定です。


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遊羽の新デッキ

ようやく面白デッキを出せました。


Side遊羽

 

 さて。今日も中間テストとしてデュエルしまくるかな。

 

「遊羽、昨日の放課後はどこに行っていたんですか? 探したんですよ」

 

「あ~、すまねぇ。ちょっとドラゴン談議で盛り上がっちまってな」

 

「・・・・・・そうですか」

 

 虹花の逆鱗に触れないように、言葉を選んで返すと、一応は納得してくれたみたいだ。

 

「今日もデュエル三昧になりそうですね。体力の方は大丈夫ですか?」

 

「おう。今日こそは新デッキを使いたいしな」

 

 実は、昨日うっかり家に忘れていて、今日が初使用になってしまった新デッキだ。春樹? あぁ、あれはノーカンだな。

 

ーーーーーーーーーー

 

 ということで、放課後。

 

「如月殿。某と決闘をしてくだされ」

 

「遊民殿は拙者と」

 

 よくわからん武士っぽい奴と、忍者っぽい奴に絡まれるとかいう謎イベントが発生したりしている。

 

「俺は構わねぇな。戦はどうだ?」

 

「デュエルなら大歓迎だよ」

 

 おー、たくましくなって。

 

『むむむ、拙者とキャラが若干被っている気がしますな。主殿、コテンパンにしてくだされ』

 

「じゃ、僕らはあっちで」

 

「御意」

 

 御意とか言う奴初めて見た。

 

「では、某達も始めようぞ。某は仁藤 実篤(にとう さねあつ)と申す」

 

「その口調、疲れねぇの? ま、いいや。如月遊羽だ。行くぜ」

 

「「デュエル!」」

 

如月遊羽

LP8000

 

仁藤実篤

LP8000

 

「俺の先攻だ。モンスターをセット。これでターンエンドだ」

 

如月遊羽

LP8000 手札4

場 伏せモンスター:一枚

 

「某のターン。ドローさせていただこう」

 

「お、おう。いいぜ」

 

 変な口調で調子狂うな。ハッ! コレが奴の狙いか!?

 

『いや、流石に違うと思うぞ?』

 

「ゴブリンドバーグを通常召喚する。効果でH・C エクストラ・ソードを特殊召喚し、ゴブリンドバーグは守備表示となる」

 

ゴブリンドバーグ☆4 守備力0

 

H・C エクストラ・ソード ☆4 攻撃力1000

 

 レベル4が二体。来るぞ、遊馬!

 

「某はゴブリンドバーグとH・C エクストラ・ソードでオーバーレイ! エクシーズ召喚! 出でよ、ガガガザムライ!」

 

 『我!』という主張が激しいサムライが現れる。

 

ガガガザムライ ★4 攻撃力1900

 

「H・C エクストラ・ソードを素材としたエクシーズモンスターは、攻撃力が1000上がる」

 

ガガガザムライ 攻撃力1900→2900

 

「更に、ガガガザムライの効果を発動。オーバーレイユニットを一つ取り除き、このターン二回攻撃が可能となる」

 

 ガガガザムライが腰から二本目の刀を抜く。

 

「バトルに入らせていただこう! ガガガザムライで攻撃! ガガガ斬り、一連打!」

 

 そこは一連『打』なのか!? 斬るのに『打』なのか!?

 

「伏せモンスターはエクリプス・ワイバーンだ」

 

エクリプス・ワイバーン ☆4 守備力1000

 

 ガガガザムライの刀によって、エクリプス・ワイバーンが綺麗に真っ二つにされる。

 

 オイコラ教室の連中。ガガガザムライに拍手を送るな。虹花も混ざるな。ガガガザムライも照れるな!!

 

「エクリプス・ワイバーンの効果で、レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンを除外するぜ」

 

「まだだ。ガガガザムライの二回目の攻撃! ガガガ斬り、二連打!」

 

「チッ!」

 

如月遊羽

LP8000→5100

 

「某はこれでターン終了とさせていただこう」

 

仁藤実篤

LP8000 手札4

場 エクストラ:ガガガザムライ

 

 ・・・・・・なるほど。コレは、あれか。二回攻撃デッキか。ロマン溢れるな。

 

「俺のターン。ドロー」

 

 ・・・・・・よし、そこそこ動ける。

 

「俺はドラゴン・目覚めの旋律を発動。デッキから青眼の白龍と青眼の亜白龍を手札に加えるぜ」

 

 ありがとう春樹。お前の事は忘れない。

 

「青眼の亜白龍の効果発動だ。手札の青眼の白龍を見せびらかせば特殊召喚できる。来い」

 

青眼の亜白龍 ☆8 攻撃力3000

 

 そう言えば、コイツも擬人化してたんだっけ。こんなカッコいいドラゴンが、あんなに残念になるとはな・・・・・・。

 

『遊羽、色々危ない』

 

 気にするな。

 

「そのまま効果発動だ。ガガガザムライを破壊する」

 

 亜白龍のブレスでガガガザムライが砕ける。

 

「更に、俺は墓地のエクリプス・ワイバーンを除外し、暗黒竜 コラプサーペントを特殊召喚」

 

暗黒竜 コラプサーペント ☆4 攻撃力1800

 

「そして、除外されたエクリプス・ワイバーンの効果で、レダメを手札に加えるぜ」

 

 うむ。ふつくしい流れだ。

 

「俺は青眼の亜白龍と暗黒竜 コラプサーペントをリンクマーカーにセット。リンク召喚! 来い、天球の聖刻印」

 

天球の聖刻印 link2 攻撃力0

 

 よくわからん球。コイツで相手ターンにガンドラXを出したりできる。お仲間に神龍の聖刻印とかいうよくわからん球がいる。

 

「コラプの効果。デッキから輝白竜 ワイバースターを手札に加え、そのまま特殊召喚するぜ。除外するのはコラプだ」

 

輝白竜 ワイバースター ☆4 攻撃力1700

 

「更に、ワイバーを除外して、レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンを特殊召喚する」

 

レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン ☆10 攻撃力2800

 

「そして効果発動だ。墓地から蘇れざんね、青眼の亜白龍」

 

青眼の亜白龍 ☆8 攻撃力3000

 

 亜白龍の効果は墓地に行ったことでもう一度使えるが、生憎対象となるモンスターがいない。

 

「更に竜の霊廟発動。レヴを墓地へ送る。復活の福音発動。来い、レヴ!」

 

ドラグニティアームズ-レヴァテイン ☆8 攻撃力2600

 

『久しぶりの出番だ。暴れさせてもらうぞ』

 

 おう。そうしてくれ。

 

「レヴの効果で、墓地のドラグニティ-ブランディストックを装備! これでレヴは二回攻撃が可能となった!」

 

 目覚めの旋律のコストにしたカードだ。相手が二回攻撃デッキだから、ちょっとした皮肉も込めてある。

 

「バトルだ。ダークネスメタルでダイレクトアタック!」

 

「ぬぅう!」

 

 ダークネスメタルの翼から羽が飛び、仁藤を切り裂いた。

 

仁藤実篤

LP8000→5200

 

「続けてレヴで攻撃! レヴァンティンスラッシュ!」

 

『オォオ!』

 

 レヴがブランディストックで仁藤に突貫する。

 

仁藤実篤

LP5200→2600

 

「くぅ、おのれ・・・・・・」

 

 トドメだ!

 

「レヴでもう一度攻撃! レヴァンティンスラッシュ!」

 

『ハァ!』

 

 仁藤に風穴を開けるほどのスピードで、レヴがもう一度貫いた。

 

仁藤実篤

LP2600→0

 

 ジャストキル! ・・・・・・あれ? これオルタいらなくね?

 

『じーーーー』

 

 俺を不満そうな顔で見てくるオルタ。・・・・・・精霊じゃないよな? 何かあったりしてこの世界に来たわけじゃないよな?

 

『遊羽、深く考えない方がいい』

 

 ・・・・・・そうだな。

 

「あ、如月くんも終わった? 僕で今終わったところだよ」

 

「そか。なら適当にデュエルしながら帰るか」

 

 そうして、俺達は教室を後にした。




これ、大丈夫ですかね? 名前とか出すようなことになったら、本人に許可をもらおうと思います(当たり前)。

次回は忍者っぽい奴と戦のデュエルです。


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戦の新デッキ

面白デッキ、その2です。


Side戦

 

 これは、如月くんの知らない出来事。

 

ーーーーーーーーーー

 

 あれは、中間テストが始まる三日前くらいのことだ。

 

「本日はプロデュエリストのデュエルをビデオで見ます。今後の参考にしてください」

 

 異次元の女戦士似の先生の授業で、プロデュエリストのデュエルビデオを見ることになった。

 

 先生が大画面のテレビを用意し、DVDを入れる。

 

『さーて! お次のデュエルは、Trumpfkarteの結束 遊騎(ゆいつか ゆうき)対毛虫坂45の蛾虫寺 京(がむしじ きょう)だー!』

 

 早速、再生された。

 

「あれ、先生! 確かその結束ってデュエリスト、プロリーグを追放されたんじゃ?」

 

「確かにそうです。しかし、彼のデュエルセンスは素晴らしい。ならば、参考にするべきです」

 

 永野さんの質問に対し、淡々と答える先生。他の生徒も疑問に思ったみたいだけど、先生の言葉で一応納得したみたいだ。

 

『おぉーっと! バトルフェイズ中に絵札の三銃士が揃ったー! これは素晴らしい!』

 

 凄い。バトルフェイズ中なのに、絵札の三銃士を揃えるなんて。

 

『さらに瞬間融合発動だー! バトルフェイズ中にも関わらず、アルカナ ナイトジョーカーのご登場だー!』

 

 圧倒的な、奇襲能力。カードとの強い繋がり。・・・・・・こんな人が、本当に他人のデッキを盗み見たりするわけがない。

 

 そのデュエルは、結束さんの勝利で終わった。

 

「・・・・・・素晴らしいデュエルでしたね」

 

「うん、そうだね」

 

 真宮さんも、何か思うところがあったみたいだ。感慨深そうな顔をしている。

 

「続いて、冬城 闇(ふゆき やみ)さんのデュエルです」

 

 先生がDVDを入れ替える。こっちは最近のものみたい。

 

 画面に現れたのは、ゴスロリ服を着た、小さい少女。

 

「・・・・・・小学生?」

 

 うん、そうとしか思えない。ゴスロリが凄い似合ってる。

 

「氷の女王と呼ばれるデュエリストです。プロリーグでも上位に入っています。確か、現在4位のはずです」

 

 4位!? 人は見かけによらないね。使っているカードは・・・・・・

 

「ヴェルズ? 聞いたことのないカードだね」

 

 でも、どこか見覚えのあるような・・・・・・。気のせいかな?

 

「どうでしたか? 参考になるものがあったなら幸いです」

 

 ビデオが終わるころには、授業時間は終わっていた。

 

「結束 遊騎というデュエリストですが、実は以前にデュエルしたことがあります。彼は人のデッキを盗み見るような人ではありませんでした。なので、授業に使って問題ない教材だと判断しました。上にも許可を貰っています」

 

 先生、元プロデュエリストだからね。

 

「では、本日はここまでです。休み時間にしてください」

 

 そう言って、先生は教室から出た。

 

「あの冬城って子、可愛いかったね!」

 

「あのエンペラー・オーダーとカゲトカゲのコンボ、俺も使おうかな?」

 

「結束って人も、凄いカッコよかった!」

 

「そう? あの人、プロリーグを追放されたんでしょ? あのデュエルでもイカサマしてたんじゃない?」

 

 そんな言葉が飛び交っている。

 

「・・・・・・ジャン。僕、決めたよ」

 

『何をですかな? 主殿』

 

「僕、あの人をリスペクトする」

 

ーーーーーーーーーー

 

 そして、現在。

 

「それではデュエルを始めるでござるよ」

 

 この忍者みたいな生徒と僕で、デュエルをすることになった。

 

 向こうでは如月くんが武士っぽい人とのデュエルを始めようとしている。

 

「拙者は服部 サスケ(はっとり さすけ)でござる」

 

「僕は遊民 戦。よろしくね」

 

 デュエルの前には自己紹介をしなきゃね。前回は忘れてたから。

 

「「デュエル!」」

 

服部サスケ

LP8000

 

遊民戦

LP8000

 

「拙者の先攻でござる」

 

 さてと。僕の新デッキ、初手は・・・・・・結構いいんじゃないかな?

 

「拙者は忍者マスター HANZOを召喚するでござるよ」

 

忍者マスター HANZO ☆4 攻撃力1800

 

「その効果で、山札から『忍法』を手札に加えるでござる。拙者は忍法 変化の術を手札に加えるでござる」

 

 名前はサスケなのに、召喚するのはHANZOなんだ・・・・・・。

 

「カードを二枚伏せて、ターン終了でござる」

 

服部サスケ

LP8000 手札3

場 メイン:忍者マスター HANZO 伏せカード:二枚

 

「僕のターン、ドロー」

 

 うーん、まずは下準備が必要なんだよね・・・・・・。

 

「僕はカードを四枚セット。モンスターを伏せて、ターンエンドだよ」

 

遊民戦

LP8000 手札1

場 伏せモンスター:一枚 伏せカード:四枚

 

「む、普段とは違うデッキでござるか?」

 

「そうだよ。ちょっとリスペクトしたい人がいてさ」

 

 サイバー流もリスペクトは大事って言ってるしね。

 

「では拙者の番でござる。カードドロー。まずは伏せカードを発動するでござる。忍法 変化の術!」

 

 問題は、出てくるモンスターだ。この状況でダーク・シムルグとか言われるとマズい。

 

「忍者マスター HANZOを、究極変異態・インセクト女王に変化させるでござるよ!」

 

究極変異態・インセクト女王 ☆7 攻撃力2800

 

 インセクト女王!? 見たことのないモンスターだ。

 

「更に拙者は、輪廻天狗を召喚。フィールド魔法ブラック・ガーデンを発動するでござるよ」

 

輪廻天狗 ☆4 攻撃力1700

 

 教室がバラのツルで覆われる。・・・・・・これ、忍者デッキじゃなくない?

 

「バトルでござる! まずは、輪廻天狗で伏せモンスターに攻撃でござる」

 

「・・・・・・ドッペル・ウォリアーだよ」

 

ドッペル・ウォリアー☆2 守備力800

 

「更に、インセクト女王で直接攻撃するでござる!」

 

「受けるよ」

 

遊民戦

LP8000→5200

 

「インセクト女王の効果発動でござる! 攻撃した後、自分のモンスターをリリースすることで、もう一度モンスターに攻撃することができるでござるよ」

 

 もう一度モンスターに攻撃? でも、僕の場にモンスターは・・・・・・。

 

「リリースされた輪廻天狗の効果発動でござる。山札より、二枚目の輪廻天狗を特殊召喚するでござる!」

 

輪廻天狗 ☆4 攻撃力1700

 

「ここで、ブラック・ガーデンの効果発動でござる! 輪廻天狗の攻撃力は半分になり、貴殿の場に、ローズ・トークンを特殊召喚するでござる!」

 

輪廻天狗 攻撃力1700→850

 

ローズ・トークン ☆2 攻撃力800

 

「インセクト女王でローズ・トークンに攻撃でござる!」

 

遊民戦

LP5200→3200

 

「やることは同じでござる。輪廻天狗をリリースし、もう一度攻撃可能となるでござる」

 

輪廻天狗 ☆4 攻撃力1700→850

 

ローズ・トークン ☆2 攻撃力800

 

「インセクト女王でさらに攻撃でござる!」

 

遊民戦

LP3200→1200

 

「輪廻天狗で直接攻撃でござる!」

 

遊民戦

LP1200→350

 

 くっ、結構ライフ持っていかれた。痛い。

 

「これで拙者はターン終了でござる」

 

服部サスケ

LP8000 手札3

場 メイン:究極変異態・インセクト女王 輪廻天狗 魔法・罠:忍法 変化の術 伏せカード:一枚

 

「・・・・・・ドロー」

 

 残りライフは風前の灯火。

 

『主殿・・・・・・』

 

 安心して、ジャン。

 

「ファイルターンだよ」

 

 僕の言葉に、教室内がざわめく。

 

「はったりでござるか?」

 

「そんなわけないじゃん」

 

 僕がこのターンで勝てば僕の勝ち。次に服部くんにターンが回れば、僕の負け。

 

「・・・・・・なるほど。そういうことでござるか」

 

 どうやら、理解してくれたらしいね。良かった。

 

「僕は調律を発動するよ。デッキから、ジャンク・シンクロンを手札に加える。そしてそのまま通常召喚!」

 

ジャンク・シンクロン ☆3 チューナー 攻撃力1300

 

「ジャンク・シンクロンの効果発動!」

 

「リバースカード、神の通告を発動でござる。そのモンスター効果を無効にして破壊するでござるよ!」

 

服部サスケ

LP8000→6500

 

「なら、伏せておいた強欲で貪欲な壺発動! デッキから十枚除外して、二枚ドローする!」

 

 よし、これなら!

 

「戦士の生還を発動! ジャンク・シンクロンを手札に戻すよ。それとサイクロン発動。ブラック・ガーデンを破壊」

 

 ふぅ。教室が明るくなった。

 

「それで、どうするつもりでござるか?」

 

 今から見せてあげるよ。

 

「バトル!」

 

「ッ!? モンスターのいない状態で、バトルでござるか!?」

 

 結束さん、力を借ります!

 

「リバースカード、オープン! 速攻魔法、ライバル・アライバル! 手札からモンスター一体を召喚する! おいで、ジャンク・シンクロン!」

 

ジャンク・シンクロン ☆3 チューナー 攻撃力1300

 

「ジャンク・シンクロンの効果発動!」

 

「ちょっと待つでござる! ジャンク・シンクロンの効果は召喚成功時のもののはず!!」

 

「ライバル・アライバルはモンスターを召喚する効果だよ!」

 

「ッ!?」

 

 そう、ライバル・アライバルによって行われるのは『召喚』であって『特殊召喚』じゃない。つまり、召喚成功時の効果の発動ができる!

 

「僕は墓地のドッペル・ウォリアーを特殊召喚!」

 

ドッペル・ウォリアー ☆2 守備力800

 

「いくら弱小モンスターを並べたところで、インセクト女王には届かないでござるよ!」

 

 僕のモンスター達は、『弱くない』!

 

「トラップ発動! 緊急同調! バトルフェイズ中にシンクロ召喚を行う!」

 

「バトルフェイズ中にシンクロ召喚でござるとっ!?」

 

「レベル2、ドッペル・ウォリアーに、レベル3、ジャンク・シンクロンをチューニング!」

 

3+2=5

 

「集いし星が、鋼に打ち勝つ戦士となる! シンクロ召喚! 来い、ジャンク・ウォリアー!」

 

『出番ですな!』

 

ジャンク・ウォリアー ☆5 攻撃力2300

 

「ドッペル・ウォリアーがシンクロ素材となったことで、僕の場にドッペル・トークン二体を特殊召喚するよ!」

 

ドッペル・トークン ☆1 攻撃力400

 

「ジャンク・ウォリアーの効果! 僕の場のレベル2以下のモンスターの攻撃力分、自らの攻撃力を上げる!」

 

『皆、力を貸してもらいますぞ!』

 

ジャンク・ウォリアー 攻撃力2300→3100

 

「攻撃力、3100!」

 

「まだだよ! リバースカード発動! 速攻魔法、スクラップ・フィスト! ジャンク・ウォリアーに五つの効果を適用する! ダメージ二倍もあるよ!」

 

「ダメージ二倍でござるかッ!?」

 

『力が漲ってきましたぞ!』

 

 それじゃあ、行くよ?

 

「ジャンク・ウォリアーで、インセクト女王に攻撃!」

 

「だが、まだ拙者のライフは残っ」

 

「手札からラッシュ・ウォリアーを墓地に送ることで、ジャンク・ウォリアーの攻撃力は二倍になる!」

 

「攻撃力も二倍でござるかッ!?」

 

ジャンク・ウォリアー 攻撃力3100→6200

 

「全てを砕け! スクラップ・フィスト!」

 

『ハアァァァア!』

 

「ござるぅぅぅ!?」

 

服部サスケ

LP6500→0




今回、ブレイドJさんの『遊戯王Trumpfkarte』から、結束 遊騎さんと冬城 闇さんをお借りしました。(許可は貰ってます)

ブレイドJさん、ありがとうございました!

蛾虫寺はこの作品のオリジナルキャラです。ブレイドJさんの作品には(多分)出てこないです。


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???の思惑

デュエルなしです。


Side遊羽

 

 テスト開始から、今日でちょうど一週間。

 

「レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンでダイレクトアタック」

 

「うわぁぁあ!」

 

LP1500→0

 

 テストで少しでもいい成績を残したいのか、デュエルを挑んでくる奴が三割増しで多い。正直、しつこい。

 

『そう言うな、遊羽。彼らも必死なのだろう』

 

「でもなぁ」

 

 焦ってデュエルしても、いいデュエルはできない。そんなデュエルを何度やっても、つまらねぇだけだ。血走った目もキモいしな。

 

「なるほど、戦が図書室に逃げるのも納得だ」

 

 こんなデュエル、いくらやっても意味がないな。

 

ーーーーーーーーーー

 

「トーナメントに出る生徒の発表です」

 

 帰りのホームルーム。異次元の女戦士っぽい担任の女教師から、トーナメントに出る生徒が発表されるらしい。ようやく、無駄なデュエルが終わる。

 

「このクラスからは、如月くん、真宮さん、遊民くん、四谷くんが出場します。断ることもできますが、それ相応の理由が必要です」

 

 教室内が軽くどよめく。

 

「何で皆驚いてんだ?」

 

 わからないことは虹花大先生まで。虹ペディアとも言う。

 

「トーナメントの出場生徒数が八名だからです。このクラスから半分が出た訳ですから、驚いても仕方ないです」

 

 あー、そゆこと。おーけー完全に理解したわ。

 

「えと、僕も出場していいのかな?」

 

 自信なさげな戦。

 

「もっと自分に自信を持てよ。『弱くない』ことを証明するんだろ?」

 

 俺の言葉に、若干戦の雰囲気が変わった。まるで、覚悟を決めたような目。

 

「・・・・・・うん、そうだね」

 

 チョロいな。

 

遊羽SideOut

 

ーーーーーーーーーー

 

Side???

 

「お~、遊羽もやっぱトーナメント出るのか。これは楽しみだなぁ♪」

 

 遊羽とデュエルするのって、半年ぶりくらいかな?

 

「会長。こんなトーナメントで本気を出すつもりか?」

 

「え~いいじゃん! 春樹は固いなぁ」

 

『そんなんだと、早く年取るよ~? パートナーみたいにさー』

 

 ほらほら、オレの精霊もこう言ってるし。

 

『あらあら。それは私に対する当てつけかしら? 小娘が』

 

「落ち着け、ディペ。子供の言うことだ、真に受けるな」

 

 うわ~、ディペちゃん怖~い。

 

「会長もディペを挑発するような顔をするな。後でオレが大変だ」

 

『重い女だって~』

 

「こらこら、事実にも言っていい事と悪い事があるでしょ?」

 

『そっか~』

 

 オレが精霊に注意をすると、ディペちゃんの顔が更に怖くなる。

 

『・・・・・・あなたねぇ! 今日という今日は許さないわよ!』

 

『うわ~! 怒った~♪』

 

 ディペが逃げるオレの精霊を追いかける。

 

「まったく。結局いつも通りか」

 

 そ♪ いつも通り、オレの思惑通り♪

 

「それで、遊羽は強くなってた?」

 

「さぁ? ワンキルしたからわからないな」

 

 ぶぅ~。またそうやってはぐらかす~。

 

「亜白龍は渡したんだろ? それに、教室でデュエルを見る機会だってあるでしょ~が」

 

「人の精霊をからかうような輩に、教えることなどないな」

 

 チェッ! わかったよ。

 

『待ちなさい!』

 

『や~だよ♪』

 

「そこらへんにしてあげて?」

 

 オレが言うと、オレの精霊は大人しくディペに捕まった。

 

『捕まえたわよ!』

 

『ぶぅ~! マスターの意地悪~!』

 

 ごめんごめん。後で何かしてあげるから。

 

『約束だよ?』

 

 あら、可愛い。

 

『あなたはこっちでお仕置きよ!』

 

『あ~れ~。助けてマスター~』

 

 引きずられていく彼女を、手を振って見送る。

 

 コホン、と一つ咳払いをして、春樹の説明開始。

 

「如月は新しいデッキを作ったようだ。カオス青眼ドラグニティ、といった感じだったが、まだギミックが隠されているだろう」

 

 ほうほう。

 

「ワンキルデッキっぽかった?」

 

「いや。展開力はあったが、ガンドラXを出す様子も無かった。どちらかと言うと、毎ターンドラゴン族を並べるデッキだろう。ワンキルもできるだろうが、それに特化させた訳では無さそうだ」

 

 へぇ~。遊羽のデッキは相変わらず殺意が高いなぁ~♪

 

「それで、オレに勝てそう?」

 

「実力はほぼ互角、といったところか。まだ会長が一枚上だ」

 

 そう。それは良かった。

 

「前回は引き分けだったからね。今回はオレが勝つよ」

 

 あぁ、早く遊羽とデュエルしたいなぁ♪




初めての主人公以外のキャラ視点です。さぁ、この新キャラは誰でしょう?



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トーナメント開始ィ!

磯野! トーナメント開始の宣言をしろ!


Side遊羽

 

 トーナメント当日。デュエルスクールの体育館には、一年生が全員集まっていた。

 

『さぁ始まります! 高等部一年、中間テストトーナメント! 実況はこのボク、放送部一年永野 遥がお送りします!』

 

 アイツ、放送部員だったのか・・・・・・意外だな。男装してるから、目立ちたくないのかと思ってた。

 

『・・・・・・ん? 遊羽、気付いていたのか?』

 

 何に? あぁ、男装か。普通、気付くだろ? クラスでも気付いてる奴は数人いるぞ? 何か事情があると思って、誰も話題にしないだけで。

 

『・・・・・・本人にはとても言えないな』

 

『まずは第一回戦! 一年一組、如月 遊羽vs! 同じく一組の四谷 春樹だ~!』

 

 キャラ変わりすぎだろ。

 

 俺と春樹が、体育館の特設ステージの上で対峙する。・・・・・・この学校、金持ちだよな。

 

「四谷。リベンジさせてもらうぜ」

 

「上等だ、如月。かかってこい」

 

『それでは! デュエル開始です!』

 

「「デュエル!」」

 

如月遊羽

LP8000

 

四谷春樹

LP8000

 

「先攻はオレだ。オレのターン」

 

 四谷が先攻? ガンドラXか?

 

「オレは手札から、LL-ターコイズ・ワーブラーの効果発動。オレの場にモンスターがいない時、自身を特殊召喚する。効果は使わない」

 

LL-ターコイズ・ワーブラー ☆1 守備力100

 

 LL!? アイツ、精霊に尻に敷かれてるのか?

 

『春樹? そのデッキは、何かしら?』

 

「・・・・・・オレがディペのために作ったデッキだ。最近、ストレスが溜まっているのではないかと思ってな」

 

『あら。うふふ、ありがとう』

 

 おい、誰かブラックコーヒー持ってこい。

 

『普段の遊羽と虹花もあんな感じだと思うが・・・・・・』

 

 そうかぁ?

 

「オレは魔法カード、ワンチャン!? を発動。デッキから金華猫を手札に加える。手札のサファイア・スワローの効果発動。手札のLL-コバルト・スパローと共に特殊召喚」

 

LL-サファイア・スワロー ☆1 守備力0

 

LL-コバルト・スパロー ☆1 守備力100

 

「コバルト・スパローの効果、デッキからコバルト・スパローを手札に加える。オレはターコイズ・ワーブラーをリンクマーカーにセット。サーキットコンバイン。リンク召喚。リンク1 リンクリボー」

 

リンクリボー link1 攻撃力300

 

「オレは金華猫を通常召喚。効果で墓地のターコイズ・ワーブラーを特殊召喚」

 

金華猫 ☆1 スピリット 攻撃力400

 

LL-ターコイズ・ワーブラー ☆1 守備力100

 

「オレは四体のモンスターでオーバーレイ。エクシーズ召喚。LL-アセンブリー・ナイチンゲール」

 

LL-アセンブリー・ナイチンゲール ★1 攻撃力0

 

『この姿も、久しぶりね』

 

 ディペって、アセンブリー・ナイチンゲールにもなれるのか・・・・・・。なら、レヴは?

 

『済まないが、私にそんな能力はないな』

 

 そか。なら別にいい。

 

「アセンブリー・ナイチンゲールの攻撃力は、オーバーレイユニットの数×200アップする」

 

LL-アセンブリー・ナイチンゲール 攻撃力0→800

 

「オレこれでターンエンドだ」

 

四谷春樹

LP8000 手札2

場 エクストラ:リンクリボー メイン:LL-アセンブリー・ナイチンゲール

 

「俺のターンだな。ドロー」

 

『リンクリボーは攻撃力を0にする。アセンブリー・ナイチンゲールは破壊されなくなり、戦闘ダメージも与えられなくなる。伏せカードこそないが、厄介な布陣だな』

 

 解説どうも、レヴ。本職も何か言っているが、生憎集中していてあまり聞こえないな。

 

「なら、今回はコイツだ! 俺は手札からドラゴン・目覚めの旋律を発動して、終焉龍 カオス・エンペラーとオッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴンを手札に加える!」

 

「ッ! ペンデュラム召喚か」

 

「まぁ焦んなよ。今捨てたエクリプスの効果で、デッキからカオス・MAXを除外。更に儀式魔法、オッドアイズ・アドベントを発動! 手札のオッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴンを生け贄にして、ドラゴン族を儀式召喚するぜ! 来い、虚竜魔王アモルファクターP!」

 

虚竜魔王アモルファクターP ☆8 攻撃力2950

 

「儀式モンスターだと!?」

 

「アモルファクターPの効果発動だ。次のお前のメインフェイズ1をスキップする」

 

「何ッ!?」

 

 いやー、恐ろしい効果だな。

 

「さて、お待ちかねのペンデュラム召喚だ! 俺はオッドアイズ・レボリューション・ドラゴンと、終焉龍 カオス・エンペラーをペンデュラムスケールにセッティング!」

 

Pスケール 1ー12

 

「これで、レベル2から11のドラゴン族が同時に召喚可能! 刻め、魂の鼓動! 舞い踊れ、大いなる竜! ペンデュラム召喚! 来い、レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン!」

 

レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン ☆10 攻撃力2800

 

「レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンの効果発動! 墓地のオッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴンを特殊召喚!」

 

オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン ☆8 攻撃力3000

 

「レベル8が二体! ということで、オーバーレイ! 希望の力は竜に宿る! その瞳は銀河を映す! エクシーズ召喚! No.38 希望魁竜タイタニック・ギャラクシー!」

 

No.38 希望魁竜タイタニック・ギャラクシー ★8 攻撃力3000

 

「バトル! レダメでリンクリボーを攻撃!」

 

「チッ! リンクリボーの効果発動。自身をリリースし、攻撃モンスターの攻撃力を0にする」

 

レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン 攻撃力2800→0

 

「なら、タイタニック・ギャラクシーでナイチンゲールに攻撃! タイタニック・スパイラル!」

 

「ナイチンゲールの効果発動。オーバーレイユニットを一つ使う。ナイチンゲールは破壊されず、戦闘ダメージを0にする」

 

LL-アセンブリー・ナイチンゲール オーバーレイユニット 4→3 攻撃力800→600

 

「俺はこれでターンエンドだ」

 

如月遊羽

LP8000 手札0

場 エクストラ:No.38 希望魁竜タイタニック・ギャラクシー メイン:レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン Pスケール:終焉龍 カオス・エンペラー 超天新龍オッドアイズ・レボリューション・ドラゴン

 

「オレのターン、ドロー」

 

「メインフェイズ1はスキップされるぜ」

 

「ならバトルフェイズ。LL-アセンブリー・ナイチンゲールは、オーバーレイユニットの数だけ攻撃でき、ダイレクトアタック可能だ。ダイレクトアタック」

 

「タイタニック・ギャラクシーの隠された効果発動だ。オーバーレイユニットを一つ使えば、攻撃対象を自分に変更できるぜ」

 

No.38 希望魁竜タイタニック・ギャラクシー オーバーレイユニット 2→1

 

 別に隠してはないとは思うが。使っている人が少ないから隠れてるってだけだ。

 

「・・・・・・アセンブリー・ナイチンゲールの効果発動だ。オーバーレイユニットを一つ使い、破壊を免れる。戦闘ダメージも0だ」

 

LL-アセンブリー・ナイチンゲール オーバーレイユニット 3→2 攻撃力600→400

 

『あらあら。春樹らしくもないプレイミスね』

 

「失念していた。タイタニック・ギャラクシーにはそんな効果もあったな」

 

 ワンキルやソリティアのパーツとして見てるからそうなるんだぜ。

 

「もう一度、ナイチンゲールで攻撃だ」

 

「こっちももう一度、タイタニック・ギャラクシーの効果発動だ」

 

No.38 希望魁竜タイタニック・ギャラクシー オーバーレイユニット 1→0

 

「メインフェイズ2。オレは金華猫を召喚。効果で墓地のサファイア・スワローを特殊召喚」

 

金華猫 ☆1 スピリット 攻撃力400

 

LL-サファイア・スワロー ☆1 守備力0

 

「二体のレベル1モンスターでオーバーレイ。エクシーズ召喚。LL-リサライト・スターリング」

 

LL-リサライト・スターリング ★1 攻撃力0

 

「エクシーズ召喚成功時の効果があるが、あまり関係ない。サファイア・スワローの効果で、墓地のターコイズ・ワーブラーをエクシーズ素材にする」

 

LL-リサライト・スターリング オーバーレイユニット 2→3

 

 ん? あまり関係ないって、どういうことだ? 嫌な予感しかしねぇんだけど・・・・・・。

 

「オレは速攻魔法、超融合を発動。コバルト・スパローをコストに、リサライト・スターリングとアセンブリー・ナイチンゲールで融合召喚を行う」

 

『超融合にチェーンはできない。タイタニック・ギャラクシーの効果が使えないな』

 

 解説係になったらどうだ? レヴ。

 

『私が解説では見えない者が困るだろうな』

 

 んな奴ら、どうでもいいだろ。

 

「融合召喚。LL-インディペンデント・ナイチンゲール」

 

LL-インディペンデント・ナイチンゲール ☆1 攻撃力1000→1500

 

「インディペンデント・ナイチンゲールの効果発動。素材にしたモンスターのオーバーレイユニットの数分レベルが上がる」

 

『この効果を使われるのって、かなり久々ね』

 

LL-インディペンデント・ナイチンゲール ☆1→6 攻撃力1500→4000

 

「ディペの効果だ。レベル×500ダメージを食らえ」

 

『今回は3000ダメージね。それっ』

 

 ディペが腕を振るうと、羽が俺目掛けて飛んできた。

 

「痛ててててっ」

 

如月遊羽

LP8000→5000

 

「・・・・・・オレにできるのはここまでだな。ターンエンド」

 

四谷春樹

LP8000 手札0

場 エクストラ:LL-インディペンデント・ナイチンゲール

 

 これで、お互いに手札0。このドローで何か引ければいいんだが。

 

「ドロー」

 

 ・・・・・・。

 

「俺は終焉龍 カオス・エンペラーの効果発動! 1000LPを支払い、自身を破壊することで、除外されているカオス・MAXを手札に加える!」

 

如月遊羽

LP5000→4000

 

「俺は高等儀式術を発動! デッキの青眼の白龍を生け贄に、ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴンを儀式召喚する!」

 

ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン ☆8 攻撃力4000

 

「二度目の儀式召喚だと!?」

 

「更に! 俺はレダメの効果で墓地のファンタズマを特殊召喚する!」

 

オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン ☆8 攻撃力3000

 

「バトルだ! カオス・MAXでナイチンゲールを攻撃! カオスマキシマムバースト!」

 

『どうやら、ここまでのようね』

 

 カオス・MAXのブレスがディペを包み、起きた爆発にカオス・MAX自身も巻き込まれた。

 

「レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンの攻撃!」

 

「クッ! 受けよう」

 

 レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンの翼から刃物のような羽が飛び、春樹を切り裂く。

 

四谷春樹

LP8000→5200

 

「ファンタズマで更に攻撃だ!」

 

 ファンタズマのブレスが春樹を貫く。

 

四谷春樹

LP5200→2200

 

「トドメだ! タイタニック・ギャラクシーで攻撃!」

 

 今日のMVPだな、コイツ。

 

四谷春樹

LP2200→0

 

「フッ。オレの、負けか」

 

『まだ一対一よ。次に勝てばいいわ』

 

 いつの間にか春樹のそばに戻ったディペ。そうだな。まだ一対一だ。

 

「とりあえず、リベンジは成功ってことでいいよな」

 

『そうだな。私の出番は無かったが』

 

 そこは勘弁してくれ。

 

『素晴らしいデュエルでした! お二人に盛大な拍手をお願いしま~す!』

 

 ・・・・・・永野、本当に何で男装してんだ?

 

遊羽SideOut

 

ーーーーーーーーーー

 

Side???

 

「いや~、凄いデュエルだったね! さすがだよ春樹!」

 

 オレはいつになく高揚していた。

 

『早く戦いたいね~、マスター!』

 

 オレの精霊も、オレと心は同じみたい♪ あぁ、今からゾクゾクするなぁ♪

 

「・・・・・・会長、出番だぞ」

 

 控え室に戻ってきた春樹がオレを呼んだ。

 

「ありがと春樹。ナイスデュエルだったよ!」

 

『ディペも凄かったよ~! 見直した♪』

 

 オレ達のほめ言葉に、どこか照れたような二人。

 

「・・・・・・敵討ちは頼んだ」

 

『なに目線か気になるのだけれど・・・・・・。ありがとう。あなた達も頑張ってね』

 

 さ~て、気分も最高だし、行きますか♪

 

『続いては、ワンキル・ソリティア研究会の会長のご登場です! 一年生でもトップクラスの実力者! その名はーーーー




ミスがあったので一旦消して修正して再投稿しました。すいません。

本当はレヴの出番があったんですが、泣く泣くカットに。替わりにカオス・MAXが登場。ダークマターの出番も遠のきました。


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戦vs虹花

今回は珍しく長いデュエルです。


Side戦

 

 中間テストトーナメントの四試合目。僕の出番になった。

 

『主殿の晴れ舞台! 拙者も粉骨砕身の心意気でデュエルしますぞ!』

 

 うん、張り切ってるね。

 

「如月くんも四谷くんも、皆凄いデュエルだったね。僕も頑張らないと」

 

『ガンバラナイトですかな?』

 

 そこで茶々入れないでよ、ジャン。

 

『影武茶ナイトでしたかな?』

 

 もう! ・・・・・・でも、ありがとう。おかげで緊張がちょっとほぐれたよ。

 

『それは良かったですぞ』

 

 さてと、楽しいデュエルの始まり、かな。

 

『それでは、本日最後のデュエルです! 一組の遊民 戦vs、真宮 虹花!』

 

 こういうのって、普通バラけるものじゃないのかな?

 

 特設ステージの上で向き合う僕と真宮さん。

 

「こうしてデュエルするのは初めてですね、遊民くん」

 

「そういえばそうだね」

 

 どんなデッキを使うのか、楽しみだ。

 

『それでは、デュエル開始です!』

 

「「デュエル!」」

 

遊民戦

LP8000

 

真宮虹花

LP8000

 

 最近はテストで余裕がなかったし、その前はいじめられてたから、デュエルを楽しむ機会がなかった。

 それに、あの人はデュエルを思いっきり楽しんでいた。リスペクトするなら、僕も楽しまないとね!

 

『主殿・・・・・・』

 

「先攻は私です。クリバンデットを通常召喚」

 

クリバンデット ☆3 攻撃力1000

 

「カードを二枚伏せて、ターン終了まで。クリバンデットの効果で、自身をリリースして、デッキ上五枚からツインツイスターを手札に加えます」

 

真宮虹花

LP8000 手札3

場 伏せカード:二枚

 

 ・・・・・・心意気を新たにしていたら、真宮さんのターンが終わってた。

 

「えと、僕のターンだね。ドロー」

 

 手札的に、ちょっとしか動けない。

 

「まずは調律を発動するよ。デッキからジャンク・シンクロンを手札に加えて、デッキの一番上を墓地に。そしてジャンク・シンクロンを通常召喚」

 

ジャンク・シンクロン ☆3 チューナー 攻撃力1300

 

「効果で、墓地のチューニング・サポーターを特殊召喚だよ」

 

チューニング・サポーター ☆1 守備力300

 

「魔法カード、機械複製術を発動っと。デッキから、チューニング・サポーターを二体特殊召喚!」

 

チューニング・サポーター ☆1 守備力300

 

「僕はジャンク・シンクロンで、三体のチューニング・サポーターをチューニング!」

 

3+1+1+1=6

 

「シンクロ召喚! おいで、スターダスト・チャージ・ウォリアー!」

 

スターダスト・チャージ・ウォリアー ☆6 攻撃力2000

 

「チューニング・サポーターの効果と、スターダスト・チャージ・ウォリアーの効果で、合計四枚ドロー!」

 

「手札枚数が可笑しなことになってるんですが・・・・・・」

 

 うん、僕もチューニング・サポーターが落ちるとは思わなかった。大量ドローって楽しいよね。

 

「バトル! スターダスト・チャージ・ウォリアーで攻撃!」

 

「リバースカード、くず鉄のかかし発動です。攻撃を無効にします」

 

 僕のモンスターの前にかかしが現れて、行く手を阻む。

 

「このカードは発動後、もう一度伏せられます。私がカードを伏せたことで、墓地のEM五虹の魔術師の効果発動です。このカードをPゾーンに置きます」

 

 自身をPゾーンに置く効果? それが一体、何に・・・・・・?

 

「EM五虹の魔術師のP効果により、伏せカードのないプレイヤーはモンスター効果の発動ができず、攻撃も行えません」

 

 くっ、厄介な効果があったのか! そう来なくっちゃ!

 

「僕はカードを三枚伏せて、ターンエンドだよ」

 

遊民戦

LP8000 手札5

場 エクストラ:スターダスト・チャージ・ウォリアー 伏せカード:三枚

 

「私のターン、ドローです」

 

 さっきの大量ドローで、結構できることが増えた。さぁ、ドンと来い!

 

「私は速攻魔法、ツインツイスターを発動します。手札一枚をコストに、伏せカードを二枚、破壊します!」

 

「させないよ! リバースカード、スターライト・ロード! カードを二枚以上破壊する効果を無効にして破壊!」

 

「ッ! そんなカードを伏せていましたか・・・・・・」

 

 本当なら、スターダスト・ドラゴンを特殊召喚できるんだけどね。

 

 あ、申し訳なさそうにこっちを見ないでよ、スターダスト・チャージ・ウォリアー。

 

「なら、墓地のクリバンデットと幽鬼うさぎを除外して、カオス・ソルジャー -開闢の使者-を特殊召喚です!」

 

カオス・ソルジャー -開闢の使者- ☆8 攻撃力3000

 

「更に、墓地のエフェクト・ヴェーラーとクリボーを除外して、混沌帝龍 -終焉の使者-も特殊召喚します!」

 

混沌帝龍 -終焉の使者- ☆8 攻撃力3000

 

 攻撃力3000が二体!? 凄いなぁ、真宮さん。

 

「バトルです! カオス・ソルジャーで攻撃!」

 

「何もないよ」

 

 カオス・ソルジャーの剣がスターダスト・チャージ・ウォリアーを切り裂く。

 

遊民戦

LP8000→7000

 

「カオス・ソルジャーの効果で、もう一度攻撃できます! ダイレクトアタックです!」

 

「ライフで受ける!」

 

 ちょっと違うか。

 

遊民戦

LP7000→4000

 

「混沌帝龍の攻撃です!」

 

「リバースカード、ガードブロック! 戦闘ダメージを0にして、ガードを一枚ドロー!」

 

 このデッキは何かと手札が必要だから、ドローカードを多めに入れてある。

 

「手札を増やしてしまいましたか・・・・・・。ターンエンドです」

 

真宮虹花

LP8000 手札0

場 メイン:混沌帝龍 -終焉の使者- カオス・ソルジャー -開闢の使者- 伏せカード:二枚 Pゾーン:EM五虹の魔術師

 

「僕のターン、ドロー!」

 

 これで、手札は七枚。

 

「戦士の生還を発動! 墓地のジャンク・シンクロンを手札に戻すよ」

 

 気になるのは、二枚目の伏せカード。あれは多分、こっちの伏せカードを破壊するカード。なら、破壊仕切れない数伏せればいい!

 

「僕はカードを更に三枚セット!」

 

「・・・・・・伏せカードが四枚以上のプレイヤーのモンスターは、攻撃力が二倍になります」

 

 へぇ、そんな効果があったんだ。

 

「ジャンク・シンクロンを通常召喚。効果でまたチューニング・サポーターを特殊召喚!」

 

ジャンク・シンクロン ☆3 チューナー 攻撃力1300→2600

 

チューニング・サポーター ☆1 守備力300(攻撃力100→200)

 

「墓地からモンスターを特殊召喚したことで、ドッペル・ウォリアーを特殊召喚するよ!」

 

ドッペル・ウォリアー ☆2 攻撃力800→1600

 

「僕はジャンク・シンクロンでドッペル・ウォリアーをチューニング!」

 

3+2=5

 

「集いし星が、鋼に打ち勝つ戦士となる! シンクロ召喚! 出番だよ、ジャンク・ウォリアー!」

 

ジャンク・ウォリアー ☆5 攻撃力2300→4600

 

『行きますぞ!』

 

「ドッペル・ウォリアーの効果でドッペル・トークン二体を特殊召喚! ジャンク・ウォリアーの効果! 場のレベル2以下のモンスターの攻撃力分、自身の攻撃力を上げる!」

 

「リバースカード、砂塵の大嵐! 伏せカードを二枚破壊します!」

 

ジャンク・ウォリアー 攻撃力4600→2300

 

チューニング・サポーター 攻撃力200→100

 

 攻撃力を元に戻す。使うならここだと思ってたよ。

 

ドッペル・トークン ☆1 攻撃力400

 

ジャンク・ウォリアー 攻撃力2300→3200

 

 チェーンによる逆順処理が行われた。

 

「バトル! ジャンク・ウォリアーでカオス・ソルジャーに攻撃! スクラップ・フィスト!」

 

「くず鉄のかかしを発動です」

 

 わかってるさ。

 でも、まだだ!

 

「リバースカード、星遺物からの目醒め! 自分フィールドのモンスターでリンク召喚を行う!」

 

「バトルフェイズ中にリンク召喚!?」

 

「現れて! 強きを挫くサーキット!」

 

 僕の前に、八つの矢印の付いた門が現れる。

 

「アローヘッド確認。召喚条件は、モンスター三体! 僕はジャンク・ウォリアーと二体のドッペル・トークンをリンクマーカーにセット! リンク召喚! リンク3、パワーコード・トーカー!」

 

パワーコード・トーカー link3 攻撃力2300

 

 門の中から出てきたのは、赤い鎧を纏った戦士。

 

「パワーコード・トーカーでカオス・ソルジャーに攻撃!」

 

「攻撃力が低いモンスターで攻撃ですか!?」

 

 もちろん、効果があるよ。

 

「パワーコード・トーカーの効果発動! 相手モンスターと戦闘を行う時、リンク先のモンスターをリリースすることで、攻撃力を二倍にする! チューニング・サポーターをリリース!」

 

 チューニング・サポーターが粒子となり、パワーコード・トーカーに吸収される。

 

パワーコード・トーカー 攻撃力2300→4600

 

 混沌の戦士が、赤い鎧を纏った戦士の拳によって砕かれる。

 

真宮虹花

LP8000→6400

 

「僕はターン終了だよ」

 

パワーコード・トーカー 攻撃力4600→2300

 

遊民戦

LP4000 手札2

場 エクストラ:パワーコード・トーカー 伏せカード:一枚

 

「私のターン、ドローです」

 

 なんとか返せたけど、この後が大変だなぁ。

 

「墓地のシャッフル・リボーンの効果です。五虹の魔術師をデッキに戻し、自身を除外することで、デッキからカードを一枚ドローできます」

 

 凄いなぁ。五虹の魔術師のデメリットを回避するカードも入れてあるんだ。

 

『出番かと思って張り切ったら、まさかのリンク素材ですぞ・・・・・・。ショックですぞ・・・・・・』

 

 いつの間にか戻ってきたジャンが嘆いている。

 ごめんごめん。新ルールのせいで、エクストラモンスターゾーンを空ける必要があってさ。

 

「私は死者蘇生を発動です! 墓地からカオス・ソルジャーを特殊召喚します!」

 

カオス・ソルジャー -開闢の使者- ☆8 攻撃力3000

 

 破壊されて一ターンで帰ってきた。お帰りー。

 

「バトルです。カオス・ソルジャーでパワーコード・トーカーに攻撃!」

 

「リバースカード、攻撃の無敵化! バトルフェイズ中には破壊されなくなるよ!」

 

「ですが、ダメージは受けてもらいます」

 

遊民戦

LP4000→3300

 

「混沌帝龍で追撃です!」

 

遊民戦

LP3300→2600

 

「カードを一枚伏せて、ターンエンドです」

 

真宮虹花

LP6400 手札0

場 メイン:混沌帝龍 -終焉の使者- カオス・ソルジャー -開闢の使者- 伏せカード:二枚

 

「僕のターン、ドロー」

 

 こうなってくると、くず鉄のかかしが辛いなぁ。

 

「僕は増援を発動して、デッキからジャンク・シンクロンを手札に加えるよ。そしてそのまま通常召喚!」

 

ジャンク・シンクロン ☆3 チューナー 攻撃力1300

 

 このデュエルで何度見たかわからない、このデッキのメインエンジン。

 

「効果で、墓地のドッペル・ウォリアーを特殊召喚するよ」

 

ドッペル・ウォリアー ☆2 守備力800

 

 やることは、いつも通り。

 

「僕はジャンク・シンクロンでドッペル・ウォリアーをチューニング!」

 

3+2=5

 

「またですか!?」

 

「何度でも僕は呼ぶよ! シンクロ召喚! おいで、ジャンク・ウォリアー!」

 

ジャンク・ウォリアー ☆5 攻撃力2300

 

『今日は出番が多いですな!』

 

 これでリンク素材にしたのはチャラにしてね。

 

「ドッペル・ウォリアーの効果でドッペル・トークン二体を特殊召喚! ジャンク・ウォリアーの効果で、レベル2以下のモンスターの攻撃力を、自身に加算する!」

 

ドッペル・トークン ☆1 攻撃力400

 

ジャンク・ウォリアー 攻撃力2300→3100

 

「バトルだ! ジャンク・ウォリアーで、カオス・ソルジャーに攻撃! スクラップ・フィスト!」

 

「・・・・・・受けます」

 

 ジャンク・ウォリアーの拳が、カオス・ソルジャーを粉砕する。

 

真宮虹花

LP6400→6300

 

「パワーコード・トーカーで攻撃!」

 

「くず鉄のかかしを発動です!」

 

 また防がれた。でも、これでいい。

 

「僕はカードを伏せて、ターンエンド」

 

遊民戦

LP2600 手札1

場 エクストラ:パワーコード・トーカー メイン:ジャンク・ウォリアー ドッペル・トークン ドッペル・トークン 伏せカード:二枚

 

「私のターンですね。ドローします」

 

「僕を墓地から仁王立ちを除外して、効果発動! このターン、パワーコード・トーカーにしか攻撃できないよ」

 

 さてと、攻撃できるかな?

 

『・・・・・・なるほど。パワーコード・トーカーを攻撃しても、攻撃力が倍になる、ということですな』

 

 仮に混沌帝龍の効果を使っても、僕を倒すことはできないし、ライフ1000をコストに発動するから、リスクもある。

 こういう駆け引きって、結構楽しいよね。

 

「・・・・・・私は、混沌帝龍を守備表示に変更」

 

混沌帝龍 -終焉の使者- 攻撃力3000→守備力2500

 

「これで、ターン終了です」

 

真宮虹花

LP6300 手札1

場 メイン:混沌帝龍 -終焉の使者- 伏せカード:二枚

 

「ドロー!」

 

 ・・・・・・来たッ!

 

「速攻魔法、スクラップ・フィストを発動! ジャンク・ウォリアーに五つの効果が適用されるよ!」

 

「ここでそのカードを!?」

 

 デッキが結構圧縮されてたからね。

 

「バトル! ジャンク・ウォリアーで攻撃! スクラップ・フィスト!」

 

「ですが、それでも私を倒すことはできません!」

 

「それはどうかな?」

 

「えっ!?」

 

「手札からラッシュ・ウォリアーを捨てて、効果発動! 攻撃力を二倍にする!」

 

ジャンク・ウォリアー 攻撃力3100→6200

 

「攻撃力、6200!?」

 

 ジャンク・ウォリアーが、主を守ろうと立ちふさがった混沌竜を殴る。

 

「うきゃあ!」

 

真宮虹花

LP6300→0




次回、遊羽のデュエルとなります。


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竜vs龍

Side遊羽

 

 トーナメント二日目。

 

 いつものように家まで迎え来た虹花に挨拶をする。

 

「おはよう、虹花。どした? 浮かない顔して」

 

「おはようございます、遊羽。昨日、遊民くんに負けたことが、意外と悔しくて」

 

 ・・・・・・戦に、負けた?

 

「え、戦の対戦相手って虹花だったのか」

 

「はい。遊羽は先に帰ってしまったので知らなかったんでしょうけど」

 

 ・・・・・・普通、そういうのってバラけるじゃん?

 

「なら、次勝てば戦とのデュエルか」

 

 戦とちゃんとデュエルするのは、あの日以来だな。

 

「そういえば遊羽」

 

「ん? 何だ?」

 

「デュエルしていて、楽しいですか?」

 

 ? 何で?

 

「デュエルは勝つか負けるかだ。楽しむものじゃない」

 

 俺の回答に、虹花少し悲しそうな顔をした。

 

「そうですか」

 

 俺はその顔を見ていられなくて、話題を変えた。

 

「今日の俺の相手って誰なんだ?」

 

「・・・・・・行けばわかります。きっと、驚きますよ」

 

 えぇ・・・・・・。マジで誰だよ・・・・・・。

 

ーーーーーーーーーー

 

 それで、その対戦相手なんだが。

 

「よう、遊羽。久しぶり♪ 楽しんでる?」

 

 まさか、コイツとはな。

 

「久しぶりだな、息吹。全然楽しくねぇよ」

 

 龍塚 息吹。ワンキル・ソリティア研究会の会長にして、手鞠の兄。

 

 そして、俺のライバル。

 

「え~! 久々のデュエルなんだから楽しもうよ♪」

 

『そうだよ~、楽しもうよ~』

 

 そして、アイツの精霊。オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン。・・・・・・の、擬人化状態。

 

「テメー、相変わらずドラゴン擬人化派かよ」

 

 擬人化して美少女になってるのが更に癪だ。

 

「そーゆー遊羽こそ、まだドラゴン擬人化否定派なの? 遅れてるね♪」

 

『時代遅れ~』

 

 よし、ぶっ飛ばそう、コイツら。

 

『さぁ、デュエル開始です!』

 

 永野、本当に何で男装してるんだ? それだけはわからん。

 

「「デュエル!」」

 

龍塚息吹

LP8000

 

如月遊羽

LP8000

 

「先攻はオレがもらうよ♪ オレのターン」

 

 息吹が先攻? アイツのデッキは後攻有利のハズだが。

 

『油断するなよ、遊羽』

 

 おう。わかってるって。

 

「オレは儀式魔法、高等儀式術を発動♪ デッキのオッドアイズ・アークペンデュラム・ドラゴンをリリースして、オッドアイズ・グラビティ・ドラゴンを儀式召喚!」

 

オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン ☆7 攻撃力2800

 

 大地の力を持つ虹彩龍が現れる。

 

「チッ、ソイツかよ」

 

 確か、バーンモンスターだったハズ。

 

『正確には、ライフコストを強要してくるモンスターだ』

 

 解説どうも、レヴ。

 

「オレはこれでターンエンド♪」

 

龍塚息吹

LP8000 手札3

場 メイン:オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン 

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 まずは、あのモンスターをなんとかしねぇと。下手すりゃこのターンでやられる。

 

「俺も高等儀式術を発動だ! デッキの青眼の白龍を墓地へ送り、儀式召喚するぜ。来い、ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン!」

 

ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン ☆8 攻撃力4000

 

「ライフ500払ってね~」

 

「わかってるぜ」

 

如月遊羽

LP8000→7500

 

「バトル! カオス・MAXの攻撃! カオスマキシマムバースト!」

 

 カオス・MAXのブレスによって、グラビティが吹き飛ばされる。

 

龍塚息吹

LP8000→6800

 

「ハハハッ! 早速対処してきたね♪」

 

「俺はカードを伏せてターン終了だ」

 

如月遊羽

LP7500 手札3

場 メイン:ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン 伏せカード:一枚

 

「オレのターン、ドロー♪」

 

 さて、次はどんなモンスターが来る?

 

「オレはオッドアイズ・ペルソナ・ドラゴンとEMオッドアイズ・ユニコーンで、ペンデュラムスケールをセッティング!」

 

ペンデュラムスケール 1ー8

 

「これでレベル2から7のモンスターが同時に召喚可能! 感じろ、龍の息吹! 吹き荒れろ、俺の愛! ペンデュラム召喚! 来い、オッドアイズ・ファントム・ドラゴン! EMオッドアイズ・ライトフェニックス!」

 

オッドアイズ・ファントム・ドラゴン ☆7 攻撃力2500

 

EMオッドアイズ・ライトフェニックス ☆5 攻撃力2000

 

 幻影の力を纏いし虹彩竜と二色の眼を持つ不死鳥が、天空の振り子から現れる。

 

「バトル! ファントムでカオス・MAXを攻撃! 夢幻のスパイラルフレイム!」

 

『おおっと! 龍塚くん、攻撃力の低いモンスターで攻撃したぞ? どういうことだ?』

 

 チッ。永野め、余計なことを。

 

「レディースエ~ンドジェントルメ~ン! おっと、今回はボーイズエンドガールズかな♪ お楽しみの時間だ!」

 

 コイツのエンタメが始まった。

 

「EMオッドアイズ・ユニコーンのP効果発動! オレのオッドアイズモンスターが攻撃した時、オレの場のEM一体の攻撃力分、その攻撃力を上げられるよ♪ ユニコーン・チャーム!」

 

 PゾーンのEMオッドアイズ・ユニコーンの角から光が降り注ぎ、ファントムを包む。・・・・・・おいこらファントム。いくら影のモンスターだからって、露骨に嫌そうな顔をするな。

 

オッドアイズ・ファントム・ドラゴン 攻撃力2500→4500

 

 ファントムのブレスにより、カオス・MAXが粉砕される。

 

如月遊羽

LP7500→7000

 

「更に、ファントムの効果だ♪ 相手に戦闘ダメージを与えた時、オレのPゾーンのオッドアイズの数×1200ダメージを与えるぜ! 幻視の力 アトミック・フォース!」

 

「うおッ!」

 

如月遊羽

LP7000→4600

 

「EMオッドアイズ・ライトフェニックスで追撃!」

 

「クソッ! 受けるぜ」

 

如月遊羽

LP4600→2600

 

「オレはこれでターンエンド!」

 

龍塚息吹

LP6800 手札0

場 メイン:オッドアイズ・ファントム・ドラゴン EMオッドアイズ・ライトフェニックス Pゾーン:オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン EMオッドアイズ・ユニコーン

 

「俺のターン!」

 

 言いながら、デッキのカードを引き抜く。

 

 そっちがペンデュラムなら、俺もだ!

 

「俺はドラゴン・目覚めの旋律を発動! 手札一枚をコストに、デッキからオッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴンと青眼の白龍を手札に加えるぜ」

 

 行くぜ!

 

「俺はオッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴンと、超天新龍オッドアイズ・レボリューション・ドラゴンで、ペンデュラムスケールをセッティング!」

 

ペンデュラムスケール 0ー12

 

「これでレベル1から11のドラゴン族が同時に召喚可能! 刻め、魂の鼓動! 舞い踊れ、大いなる竜! ペンデュラム召喚! 来い、青眼の白龍! レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン!」

 

青眼の白龍 ☆8 攻撃力3000

 

レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン ☆10 攻撃力2800

 

「レダメの効果だ!墓地から青眼の白龍を特殊召喚!」

 

青眼の白龍 ☆8 攻撃力3000

 

「レベル8が二体。エクシーズか♪」

 

「俺は青眼の白龍二体を墓地に送る!」

 

「あれ?」

 

「融合召喚! 青眼の双爆裂龍!」

 

青眼の双爆裂龍 ☆10 攻撃力3000

 

 二体分の首を持った白龍。

 

「へぇ。そんなモンスターまで入れてたんだ♪」

 

「あぁ。この状況にはピッタリだろ?」

 

 だからオルタじゃなくてこっちにしたんだ。・・・・・・そう考えると、あそこまで無理して手に入れる必要もなかったような?

 

「バトル! 双爆裂龍の攻撃! ツインバーストストリーム!」

 

 二つの首の片方が放ったブレスにより、幻影龍が吹き飛ぶ。

 

龍塚息吹

LP6800→6300

 

「もう一度だ! ツインバーストストリーム!」

 

 もう片方がブレスを放つ。かと思いきや、また同じ首がブレスを放った。おい、もう片方サボんな! 楽するな!

 

龍塚息吹

LP6300→5300

 

「あ痛たたたた」

 

「まだだぜ! レダメの攻撃!」

 

 攻撃名は考えてない!

 

龍塚息吹

LP5300→2500

 

「俺のターン終了だ」

 

如月遊羽

LP2600 手札0

場 エクストラ:青眼の双爆裂龍 メイン:レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン 伏せカード:一枚

 

「ライフが並んじゃったな♪ オレのターン!」

 

 お互いに、手札は0。トップデックで勝敗が決まるか、それとも・・・・・・。

 

「お前が融合なら、オレも融合だ! オッドアイズ・フュージョン発動!」

 

 あ。エクストラデッキで融合するとかいうヤベー奴じゃん。

 

「オレの場にモンスターが存在せず、相手の場にモンスターが二体以上いれば、エクストラデッキのモンスターも融合素材にできる!」

 

 エクストラデッキからオッドアイズ・メテオバースト・ドラゴンとEMオッドアイズ・ライトフェニックスが渦に巻き込まれる。

 

「爆炎纏いし虹彩龍よ! 二色の不死鳥と交わり、雷の力を宿せ! 融合召喚! オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン!」

 

オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン ☆7 守備力3000

 

 雷を纏った虹彩龍が、渦から現れる。

 

「ボルテックスが特殊召喚に成功した時、相手のカード一枚を手札に戻す! ストームバニッシュ!」

 

 二首の白龍が虹彩龍の翼から起こった風によって吹き飛ばされる。

 

「守備表示か? ずいぶん弱気だな?」

 

「そう挑発しなさんなって♪ これでオレはターンエンド」

 

龍塚息吹

LP2500 手札0

場 エクストラ:オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン

 

「俺のターン、ドロー!」

 

『気をつけろ遊羽。ボルテックスには効果の発動を無効にして破壊する効果がある』

 

 っと、そうだったな。忘れてた。

 

「俺はレッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンの効果発動!」

 

「ボルテックスの効果発動! ファントムをデッキに戻して、それを無効にして破壊する! ボルテックス・ジャッジメント!」

 

 レッドアイズが咆哮するも、ボルテックスの雷によって黒こげとなる。元々黒いからよくわかんねぇけど。

 

 だが、これで邪魔するものはなくなった!

 

「俺は墓地の青眼の白龍とカオス・MAXを除外! 来い、終焉龍 カオス・エンペラー!」

 

終焉龍 カオス・エンペラー ☆8 攻撃力3000

 

「リバースカード、タイラント・ウィング! カオス・エンペラーに装備!」

 

終焉龍 カオス・エンペラー 攻撃力3000→3400

 

「バトルだ! カオス・エンペラーでボルテックスを攻撃!」

 

 カオス・エンペラーが翼でボルテックスに往復ビンタをする。・・・・・・もう突っ込まねぇぞ。

 

「うおぅ!? まさかの やられ方!」

 

「俺はこれでターンエンド」

 

 タイラント・ウィングが輝きを失い、カオス・エンペラーから崩れ落ちる。・・・・・・驚くな! そういう効果なだけだから! いちいち人の顔を見るな! 子供かッ!?

 

終焉龍 カオス・エンペラー 攻撃力3400→3000

 

如月遊羽

LP2600 手札0

場 メイン:終焉龍 カオス・エンペラー

 

「・・・・・・オレのターン!」

 

 気合いと共にデッキからカードをドローする息吹。そして、俺を見るなりニカッと笑う。

 

「楽しいな、このデュエル♪」

 

 ・・・・・・楽しい?

 

「何の冗談だよ。デュエルは優劣を付けるもので、楽しむものじゃねぇだろ?」

 

「そう? その割には、口角が思いっきり上がってるよ♪」

 

 そう言われ、思わず口元に手をやる。・・・・・・確かに、俺は笑っていた。

 

「・・・・・・へぇ。俺は今、楽しんでんのか。この状況を」

 

「そうみたいだな♪ オレは強欲で貪欲な壺を発動! デッキから十枚除外して、二枚ドローする♪」

 

 ッ! ここでドローカードを!?

 

「来た! 出番だ、オッドアイズ!」

 

『待ちくたびれたよ、マスター!』

 

 まさか、ここで引いたのか!? 精霊のカードを!!

 

「オレはセッティング済みのペンデュラムスケールで、ペンデュラム召喚! 来い、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン!」

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン ☆7 攻撃力2500

 

 二色の眼を持つ虹彩龍が、フィールドを踏みしめる。

 

 観客にはドラゴンに見えているが、精霊のみえる者には美少女に見えているという状態だ。

 

『いっくよー!』

 

「だが、その攻撃力じゃカオス・エンペラーは倒せないぜ」

 

「誰もカオス・エンペラーに攻撃するだなんて言ってないよ♪ 魔法カード、螺旋のストライクバーストを発動だ! カオス・エンペラーを破壊!」

 

 オッドアイズのブレスによって、カオス・エンペラーが破壊される。

 

「バトル! オッドアイズでダイレクトアタック! 螺旋のストライクバースト!」

 

『がお~!』

 

 観客にはオッドアイズがブレスで俺を攻撃しているように見えているだろうが、実際には美少女がブレスで俺を攻撃している。あんまり痛く感じないのはそのせいだろう。

 

如月遊羽

LP2600→100

 

「オレはこれでターンエンドだ♪」

 

 ってヤベェ! ライフがもう100しかねぇ!

 

「・・・・・・俺のターン」

 

 ここで、何か引ければ。アイツを、ドローできれば。

 

「ドロー!」

 

 引いたカードは・・・・・・。

 

「ペンデュラム召喚! 来いッ! ドラグニティアームズ-レヴァテイン!」

 

ドラグニティアームズ-レヴァテイン ☆8 攻撃力2600

 

 俺の相棒。俺の家族。俺が最も信頼するカード。

 

「頼むぜ、レヴ!」

 

『頼まれた!』

 

 俺の出したモンスターに、息吹とオッドアイズが唖然とする。

 

『ここでレヴが来るか~』

 

「・・・・・・もしかしたら、とは思ってたけどね♪ あるんだろ、あのカードが!」

 

 もちろんだ!

 

「レヴの効果発動! 墓地のドラグニティ-ブランディストックを装備! これで二回攻撃が可能!」

 

 レヴの手に、青い槍が現れる。

 

「『・・・・・・行くぜ(ぞ)ッ!!』」

 

「レヴで攻撃! レヴァンティンスラッシュ!」

 

『ハアァァァァ!!』

 

 レヴが青い軌跡を残しながらオッドアイズを斬りつける。

 

『あちゃ~。ごめんね、マスター』

 

「気にするなよ♪」

 

龍塚息吹

LP2500→2400

 

「もう一度だ! レヴで攻撃! レヴァンティンスラッシュ!」

 

『ハアァァッ!!』

 

 レヴが青い槍を大きく振りかぶる。

 

「『これでトドメだ!』」

 

 その槍が、息吹を貫いた。

 

龍塚息吹

LP2400→0

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

デュエルが終わった後

 

「おい、息吹」

 

 俺は息吹の控え室まで来ていた。

 

「どうしたんだ、遊羽?」

 

『どうしたの~?』

 

「どういうことだ」

 

 とぼけるな、と目で伝える。

 

「お前はワンキル・ソリティア研究会の会長だろ。もっと上手いデュエルが出来たハズだ」

 

 俺の言葉に、軽く肩をすくめる息吹。

 

「オレはさ、お前に楽しんで欲しかったんだよ。遊羽」

 

 ・・・・・・俺に?

 

「お前、この学校でずっと一人だっただろ。精霊のことで、周りが全部敵だったハズだからね」

 

『・・・・・・息吹、君は、まさか』

 

「そう。オレはお前に楽しんでもらうために今日デュエルしていたんだ。お前からデュエルを楽しむ気持ちを奪ったのは、他ならぬオレ達だからね」

 

「・・・・・・」

 

「デュエルを楽しんでいたお前から、その気持ちを奪ったから。それを思い出させれば、贖罪になるかなって」

 

「・・・・・・お前は、そんなことで」

 

 俺に、楽しんでもらうために、あんなデュエルを。

 

「まぁ、エンタメデュエルはいつもなんだけど」

 

「だよな」

 

 そう言えばそうだった。危ない危ない。流されるところだった。

 

「・・・・・・今、俺の心を読んだか?」

 

「あ、ヤベッ」

 

 お前、今ヤベェって。

 

「さ、さて。何のことかな~」

 

 嘘つくの下手ッ!? 口笛下手ッ!?

 

「じゃ、じゃあオレはこの辺で! シーユーアゲイン!」

 

『し~ゆ~』

 

「あ、おい待てこらッ!」

 

 って逃げ足速ッ!? 精霊共々速ッ!?

 

「・・・・・・ったく。アイツめ」

 

『良かったな、遊羽』

 

 何がだよ、レヴ?

 

『これで君は、また楽しいデュエルが出来るようになった。恐らく、次のデュエルも』

 

 ・・・・・・そうか。

 

「今から楽しみだ。戦とのデュエル」




次回は戦のデュエルです。

前の遊羽のデュエルで、レヴの出番が消えたので今回は活躍してもらいました。


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奪う者

Side戦

 

 如月くん達のデュエルが終わった。

 

「・・・・・・僕も、頑張らないと」

 

 あんなデュエルを魅せられたら、凄く興奮してきた。

 

『ガンバラナイト・・・・・・む、今回は不要でしたかな』

 

 うん。今はあんまり緊張はしてないよ。

 

『さぁ! 興奮の冷めないうちに、次のデュエルに参りましょう! 一組の脳筋デュエリスト、遊民戦くんvs相手のモンスターを美味しくいただくデュエリスト、花園 彩葉(はなぞの いろは)です!』

 

 花園さん? 聞いたことのない名前だね。

 

『マイナーな実力者ですかな?』

 

 うーん、どうだろう? 強いのは確かだと思うけど。

 

「よろしく、おねがいします」

 

「あ、こちらこそ、よろしく」

 

 特設ステージの向かいから聞こえてきた無機質な声に、僕は反射的に返事をした。

 

 桜色の髪をツインテールにしている。無表情な女の子だ。

 

『さぁ、デュエルを開始してください!』

 

「「デュエル!」」

 

花園彩葉

LP8000

 

遊民戦

LP8000

 

「先攻はもらった。カードをセット、モンスターを伏せて、ターンエンド・・・・・・」

 

花園彩葉

LP8000 手札3

場 伏せモンスター:一枚 伏せカード:一枚

 

 外見と口調の通り、おっとりしたデュエルだね。

 

「僕のターン、ドロー!」

 

 まぁ、そっちの方がいいんだけど。

 

「僕はカードを四枚伏せて、ターンエンド」

 

遊民戦

LP8000 手札2

場 伏せカード:四枚

 

「・・・・・・モンスターを出さない。ちょっと残念」

 

「え?」

 

「トゥーンのもくじを発動。デッキからトゥーンのもくじを手札にくわえるよ。これをあと二回繰り返す。最後はトゥーン・キングダムをサーチ」

 

『トゥーンデッキですかな?』

 

 どうだろうね? 閃刀かもよ?

 

「モンスターをもう一体セット。ターンエンド」

 

花園彩葉

LP8000 手札3

場 伏せモンスター:二枚 伏せカード:一枚

 

 うわ、怖いフィールドだね。何が伏せられてるのやら。

 

「僕のターン、ドロー」

 

 よし、行ける!

 

「僕はおろかな埋葬を発動! デッキからドッペル・ウォリアーを墓地に送って、ジャンク・シンクロンを通常召喚! 効果でドッペル・ウォリアーを特殊召喚」

 

ジャンク・シンクロン ☆3 チューナー 攻撃力1300

 

ドッペル・ウォリアー ☆2 守備力800

 

「ジャンク・シンクロンで、ドッペル・ウォリアーをチューニング!」

 

3+2=5

 

「集いし星が、鋼に打ち勝つ戦士となる! シンクロ召喚! 今回も頼むよ、ジャンク・ウォリアー!」

 

『行きますぞッ!』

 

ジャンク・ウォリアー ☆5 攻撃力2300

 

 やることは、いつもと同じ!

 

「ドッペル・ウォリアーの効果! ドッペル・トークン二体を特殊召喚! ジャンク・ウォリアーの効果! 僕のフィールドのレベル2以下のモンスターの攻撃力分、自身の攻撃力をアップ!」

 

ドッペル・トークン ☆1 攻撃力400

 

ジャンク・ウォリアー 攻撃力2300→3100

 

 安定の攻撃力3100。ブルーアイズも倒せるね。

 

「バトル! ジャンク・ウォリアーで攻撃! スクラップ・フィスト!」

 

「伏せモンスターは、グレイドル・コブラ」

 

グレイドル・コブラ ☆3 守備力1000

 

 水で出来たヘビを殴るジャン。

 

「戦闘破壊された、コブラの効果。この子をジャンク・ウォリアーに装備。コントロールを得る」

 

『なんですと!? あ、主殿~』

 

 殴った水が、そのままジャンに絡みつく。ジャンは花園さんのフィールドに残された。

 

「ターンエンド」

 

遊民戦

LP8000 手札1

場 メイン:ドッペル・トークン ドッペル・トークン 伏せカード:四枚

 

「ん。ドロー」

 

 僕のデッキにコントロールを奪うようなカードは入っていない。つまり、ジャンは倒すことでしか僕の場に戻せない。まいったね。

 

「バトル。ジャンク・ウォリアーでドッペル・トークンを攻撃」

 

『うあわわわわ!? よ、よけてくだされ主殿~』

 

「トラップ発動! ガードブロック! 戦闘ダメージを0にして、カードを一枚ドローするよ」

 

 これで手札二枚。挽回できそうだ。

 

「・・・・・・残念。カードを伏せて、ターンエンド」

 

花園彩葉

LP8000 手札4

場 メイン:ジャンク・ウォリアー 伏せモンスター:一枚 伏せカード:二枚 魔法・罠:グレイドル・コブラ(装備:ジャンク・ウォリアー)

 

「僕のターン、ドロー。調律を発動! デッキからジャンク・シンクロンを手札に加えて、通常召喚」

 

ジャンク・シンクロン ☆3 チューナー 攻撃力1300

 

「効果で墓地のドッペル・ウォリアーを特殊召喚。ワン・フォー・ワンを発動! デッキからチューニング・サポーターを特殊召喚!」

 

ドッペル・ウォリアー 守備力800

 

チューニング・サポーター 守備力300

 

「チューニング・サポーターはシンクロ素材になる時、レベル2としても扱える。僕はジャンク・シンクロンでドッペル・ウォリアーとチューニング・サポーターをチューニング!」

 

3+2+2=7

 

「シンクロ召喚! パワー・ツール・ドラゴン!」

 

パワー・ツール・ドラゴン ☆7 攻撃力2300

 

「ドッペル・ウォリアーの効果で、ドッペル・トークン二体を特殊召喚する。チューニング・サポーターの効果で一枚ドローするよ」

 

ドッペル・トークン ☆1 攻撃力400

 

「パワー・ツール・ドラゴンの効果! デッキから装備魔法三枚を選んで、相手にランダムで選ばせる。選んだカードが手札に加わるよ」

 

 僕が選んだのは・・・・・・。

 

「むう。同じカードが三枚」

 

「そうだね。どの団結の力がいい?」

 

 団結の力三枚。パワー・ツールで同じカード三枚はよくあることだよね。

 

「ということで、僕は団結の力をパワー・ツールに装備!」

 

パワー・ツール・ドラゴン 攻撃力2300→5500

 

「攻撃力、5500・・・・・・」

 

「バトル! パワー・ツール・ドラゴンで、ジャンク・ウォリアーを攻撃! パワー・アーム・クロー!」

 

『うぎゃあ!?』

 

 パワー・ツールがスコップをジャンク・ウォリアーにぶつける。ジャンは会場の端まで吹き飛び、そこで破壊された。

 

花園彩葉

LP8000→5600

 

「っ、痛い・・・・・・」

 

「僕はドッペル・トークン一体を守備表示にして、ターンエンドだよ」

 

ドッペル・トークン 攻撃力400→守備力400

 

遊民戦

LP8000 手札1

場 エクストラ:パワー・ツール・ドラゴン メイン:ドッペル・トークン×3 魔法・罠:団結の力(装備:パワー・ツール・ドラゴン) 伏せカード:三枚

 

「わたしのターン。ドロー」

 

 さっき手札に加えてたトゥーン・キングダム、何に使うんだろう?

 

「魔法カード、洗脳-ブレインコントロール。パワー・ツール、ちょうだい」

 

花園彩葉

LP5600→4800

 

 パワー・ツール・ドラゴン 攻撃力5500→3100

 

 あぁっ! ジャンだけじゃなくパワー・ツールまで!

 

「パワー・ツールの効果。選んで」

 

 差し出されたカードは・・・・・・。

 

「全部同じじゃないか!」

 

 見せられたのは三枚のコミックハンド。このためのトゥーン・キングダムかぁ。

 

「ん。お返し」

 

 くっ、無表情が若干ドヤ顔に見えてきた・・・・・・ッ!

 

「じゃあ、バトル。パワー・ツールでドッペル・トークンに攻撃」

 

遊民戦

LP8000→5700

 

「ターンエンド」

 

 僕の場にパワー・ツールが帰ってくる。

 

パワー・ツール・ドラゴン 攻撃力3100→4700

 

花園彩葉

LP4800 手札5

場 伏せモンスター:一枚 伏せカード:二枚

 

「僕のターン!」

 

 デッキからカードを引く。

 

「戦士の生還を発動! 墓地のジャンク・シンクロンを手札に加わるよ。そのまま通常召喚!」

 

ジャンク・シンクロン ☆3 チューナー 攻撃力1300

 

「効果でドッペル・ウォリアーを特殊召喚!」

 

ドッペル・ウォリアー ☆2 守備力800

 

「ん。またシンクロ?」

 

「いや、その前にこれだ! 現れろ、強きを挫くサーキット!」

 

 僕の前に、矢印が八つついた門が現れる。

 

「アローヘッド確認! 召喚条件は、戦士族モンスター二体。僕はドッペル・トークン二体をリンクマーカーにセット。リンク召喚! おいで、聖騎士の追想 イゾルデ!」

 

聖騎士の追想 イゾルデ link2 攻撃力1600

 

「イゾルデの効果! デッキから戦士族モンスターを手札に加わるよ。僕はアタック・ゲイナーを手札に」

 

 まだまだ行くよ!

 

「イゾルデの更なる効果! デッキから装備魔法を好きな数墓地に送って、そのレベルの戦士族モンスターを特殊召喚するよ。団結の力、神剣-フェニックスブレードを墓地に送って、ラッシュ・ウォリアーを特殊召喚!」

 

ラッシュ・ウォリアー ☆2 守備力1200

 

「ジャンク・シンクロンでドッペル・ウォリアーをチューニング!」

 

3+2=5

 

「シンクロ召喚! 強きを挫く戦士、ジャンク・ウォリアー!」

 

ジャンク・ウォリアー ☆5 攻撃力2300

 

『またまた登場、ですぞッ!』

 

「ジャンク・ウォリアーの効果と、ドッペル・ウォリアーの効果をそれぞれ発動! ドッペル・トークン二体を特殊召喚、ジャンク・ウォリアーの攻撃力がレベル2以下のモンスターの分アップ!」

 

ドッペル・トークン ☆1 攻撃力400

 

ジャンク・ウォリアー 攻撃力2300→3400

 

「結局同じ手? つまらないね」

 

「いや、まだだよ!」

 

「ッ!?」

 

「速攻魔法、スクラップ・フィスト発動! ジャンク・ウォリアーに五つの効果を適用するよ」

 

 これで、ダメージステップ終了まで僕の独壇場だ!

 

「僕はイゾルデとラッシュ・ウォリアーをリンクマーカーにセット!」

 

 召喚条件は、効果モンスター二体以上!

 

「来い、デコード・トーカー!」

 

デコード・トーカー link3 攻撃力2300

 

 パワーコード・トーカーに似た、剣を構えた戦士が現れる。

 

「デコード・トーカーの攻撃力は、リンク先のモンスターの数×500アップする! よって、攻撃力3800だ!」

 

デコード・トーカー 攻撃力2300→3800

 

 伏せモンスターがデコード・トーカーのリンク先にいるから、合計三体だ。

 

「墓地のジャンク・シンクロンとジャンク・ウォリアーを除外して、神剣-フェニックスブレードを手札に戻す。そのままジャンク・ウォリアーに装備!」

 

ジャンク・ウォリアー 攻撃力3400→3700

 

『え、剣ですぞ!? 拙者、剣術はできない・・・・・・』

 

 ごめん、今いいとこだから!

 

「バトル! ジャンク・ウォリアーで伏せモンスターを攻撃! スクラップ・フィスト!」

 

 あれ、スラッシュかな?

 

「・・・・・・伏せモンスターはグレイドル・アリゲーター」

 

グレイドル・アリゲーター ☆3 守備力1500

 

 ジャンク・ウォリアーが剣でワニを斬ろうとして、結局諦めて剣を持っていない方の拳で殴る。

 

「スクラップ・フィストの効果で、守備貫通とダメージ二倍、ダメージステップ終了まで効果の発動ができないよ!」

 

「ッ! 非道い・・・・・・」

 

花園彩葉

LP4800→400

 

「デコード・トーカーで攻撃! デコード・エンド!」

 

「リバースカード、びっくり箱。デコード・トーカーを対象」

 

 今、対象って言ったね?

 

「デコード・トーカーの効果発動! 僕のカードを対象とした効果が発動した時、リンク先のモンスターをリリースすることで、それを無効にして破壊する! ジャンク・ウォリアーをリリース!」

 

『え、ここでですぞ!?』

 

 デコード・トーカーに身代わりにされたジャン。ごめん、つい。

 

「・・・・・・」

 

花園彩葉

LP400→0

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

『主殿、おなご相手によくあんなデュエルができましたな』

 

 ん? 何で?

 

『いや、普通は少し躊躇するものですぞ』

 

「それで負けたら、元も子もないでしょ」

 

 デュエルが終わって、ジャンが墓地から戻ってきた。

 

『それにしても、コントロールを奪われたと思ったらスコップで殴られて、しかも最後には身代わりですぞ・・・・・・あんまりですぞ・・・・・・』

 

「いや、ごめんね?」

 

 次が如月くんとのデュエルだと思うと、熱中しちゃって。

 

『・・・・・・途中から、拙者の扱いで楽しくなってましたな?』

 

「あ、バレてた?」

 

『主殿~!!』

 

 さて、次はとうとう如月くんとのデュエルだ。楽しみだなぁ・・・・・・!!




ブレインコントロールがエラッタ前なのは勘弁してください。
展開的にはエレクトリック・ワームで問題ないので、脳内補正でお願いします。


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遊羽vs戦

中間テストで投稿できませんでした。
結果? 訊かないでください。


Side遊羽

 

 ということで、俺vs戦のデュエルだ。

 

『さぁ、とうとう最後のデュエルです! ドラゴン大好きドラゴン野郎! 相棒はドラグニティアームズ-レヴァテイン! 如月遊羽!』

 

 体育館が歓声に包まれる。

 

 おい待て何だドラゴン野郎って。紹介に悪意があるだろ、永野。

 

『対して、笑顔爽やかイケメンデュエリスト! ただしデッキはジャンク・ウォリアーで殴る超脳筋! 遊民戦!』

 

 再び歓声が起こる。・・・・・・何か、俺よりも多くないか?

 

「如月を倒せー!」「積年の恨み、晴らしてくれ!」「「「戦くん格好いい!」」」

 

『日頃の行いの差だな』

 

 いや、最後のは関係ないだろ。

 

「あはははは。どうも」

 

 軽く戦が手を振ると、その仕草にも歓声が起こる。・・・・・・よしレヴ絶対勝とう絶対。

 

『今まで目立ってなかっただけで、実は隠れイケメンだったのだな』

 

 戦の顔とか歓声とか関係なく勝とうなレヴ。

 

『・・・・・・あえて流したのだが』

 

 無視すんなよ。

 

『デュエル開始です!』

 

「行くぜ、戦!」

 

「行くよ、如月くん!」

 

「「デュエル!」」

 

遊民戦

LP8000

 

如月遊羽

LP8000

 

「僕の先攻。カードを四枚伏せて、命削りの宝札を発動! 手札が三枚になるようにドロー! カードを更に一枚伏せて、モンスターをセット。これでターンエンドだよ」

 

遊民戦

LP8000 手札0

場 伏せモンスター:一枚 伏せカード:五枚

 

 命削りの宝札の効果で、戦の手札は0枚。伏せカード五枚とか、羽根箒欲しいな。グリフォンじゃなくてハーピィの。

 

「俺のターン。ドロー」

 

 まぁ、やれるだけやるか。

 

「ドラゴン・目覚めの旋律だ! 手札一枚をコストに、デッキから青眼の白龍と青眼の亜白龍を手札に加える。亜白龍の効果で特殊召喚!」

 

青眼の亜白龍 ☆8 攻撃力3000

 

「亜白龍の効果! お前の伏せモンスターを破壊だ!」

 

 亜白龍のブレスで裏側のカードが消し飛ぶ。

 

「僕のドッペル・ウォリアーが・・・・・・」

 

 うっわ、ジャンドの起動カードじゃん! まぁ、どちらにせよ破壊してたけど。

 

「トレード・イン発動! 青眼の白龍をコストに、二枚ドロー!」

 

 よし、これで!

 

「オッドアイズ・アドベント発動! 手札のオッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴンを生け贄に、儀式召喚! 来い、虚竜魔王アモルファクターP!」

 

虚竜魔王アモルファクターP ☆8 攻撃力2950

 

 あと攻撃力が50高ければ、目覚めの旋律でサーチできたのにな。それだと強過ぎるのか。

 

「アモルファクターPの効果! 儀式召喚に成功した時、次のお前のメインフェイズ1をスキップする!」

 

「何だって!?」

 

「さらに、コイツがいる限り、融合、シンクロ、エクシーズモンスターは効果が無効になるぜ」

 

「ッ!?」

 

 いやー、春樹とのデュエルでは、この効果のことを忘れてたんだよな。これならナイチンゲールも倒せてたんだけど。

 

「バトル! アモルファクターPで攻撃!」

 

遊民戦

LP8000→5050

 

 おおう、微妙なライフポイント値・・・・・・。

 

「俺はカードを一枚伏せて、ターンエンドだ」

 

如月遊羽

LP8000 手札1

場 メイン:青眼の亜白龍 虚竜魔王アモルファクターP 伏せカード:一枚

 

「僕のターン、ドロー!」

 

 さて、手札一枚で何ができる?

 

『遊羽、それはフラグだ』

 

 わかってるって。その上で、だ。

 このデュエルは、できるだけ楽しみたいからな。

 

「・・・・・・ターンエンドだよ」

 

遊民戦

LP5050 手札1

場 伏せカード:五枚

 

 何にもなしかよ! 俺の期待を返せコラ!!

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 怒り混じりにカードをドローする。

 

「リバースカード、タイラント・ウィング! アモルファクターに装備だ!」

 

虚竜魔王アモルファクターP 攻撃力2950→3350

 

 竜魔王に翼が生え、第二形態となる。

 

『遊羽!? それは・・・・・・』

 

「バトル! アモルファクターでダイレクトアタック!」

 

 俺のプレイングに、戦が軽く笑みを浮かべる。

 

「トラップ発動! ガードブロック! 戦闘ダメージを0にして、カードを一枚ドローするよ」

 

 ・・・・・・しまった、挑発か。

 

「チッ、迂闊だったな」

 

 タイラント・ウィングは攻撃してきた時の反撃用だったのに。まぁ、大差ないか。

 

「亜白龍で攻撃!」

 

「受けるよ」

 

遊民戦

LP5050→2050

 

「ターンエンドだ」

 

如月遊羽

LP8000 手札2

場 メイン:虚竜魔王アモルファクターP 青眼の亜白龍 魔法・罠:タイラント・ウィング(装備:虚竜魔王アモルファクターP)

 

「僕のターン、ドロー!」

 

 俺はノーダメージ、対して戦のライフは風前の灯火。結果は火を見るよりファイアー!

 どうする? 戦。

 

「一時休戦を発動するよ。お互いにデッキから一枚ドローして、次の相手ターン終了時まで、受けるダメージが0になる」

 

『ここでそのカードを引くとは、さすがの運命力だな』

 

 そうだな。アイツのもう一つのデッキを使いこなすには、それぐらいの運命力が必要なんだろう。

 

「ターンエンド」

 

遊民戦

LP2050 手札3

場 伏せカード:四枚

 

「なら俺のターン。二体のモンスターでオーバーレイ、エクシーズ召喚! 来い、銀河眼の光波竜!」

 

銀河眼の光波竜 ★8 攻撃力3000

 

「ダメージを与えられないのに、何を・・・・・・」

 

「さらに、光波竜でオーバーレイ! 銀河を映す瞳は沈み、闇の魂が解放される! ダークエクシーズチェンジ! No.95 ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン!」

 

No.95 ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン ★9 攻撃力4000

 

『グルルルアァァァァァァアア!!』

 

 闇のオーラを纏った竜が現れる。

 

「ダークマターの効果! デッキからドラゴン族を三種墓地に送る! お前はデッキからモンスターを三枚除外しなければならない!」

 

「ッ!! ドッペル・ウォリアーとデブリ・ドラゴン、ジェット・シンクロンを除外するよ」

 

 デッキからモンスターを減らせば、反撃の手段も減る。逆にデッキを圧縮しているかもしれないが、ジャンク・ウォリアーの攻撃力なら問題ない。

 

「墓地に送ったエクリプス・ワイバーンの効果! デッキからブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴンを除外する」

 

「ッ!?」

 

 もちろん、手札には高等儀式術がある。次のターンにカオスモンスターを出せば、カオス・MAXも出てくるってワケだ。

 

「ターンエンドだ」

 

如月遊羽

LP8000 手札3

場 エクストラ:No.95 ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン 

 

「僕の、ターン」

 

 精神統一のためか、目を瞑り、デッキに指をかける。

 

「ドロー!」

 

 引いたカードを確認した戦。

 その口元に、笑みが現れる。

 

「いいカードは引けたか?」

 

 わかっていたが、敢えて訊いた。

 

「もちろん。とびっきりのカードだよ」

 

 アモルファクターがいなくなったことで、ジャンク・ウォリアーが出てくるだろう。

 まぁ、それでも攻撃力3100だし、問題な『ラッシュ・ウォリアーはどうしたのだ?』・・・・・・あ。

 

「調律を発動! ジャンク・シンクロンを手札に加えて通常召喚! 効果でドッペル・ウォリアーを特殊召喚!」

 

ジャンク・シンクロン ☆3 チューナー 攻撃力1300

 

ドッペル・ウォリアー ☆2 守備力800

 

「やることはいつもと同じ!」

 

3+2=5

 

「集いし星が、鋼に打ち勝つ戦士となる! シンクロ召喚! 頼んだよ、ジャンク・ウォリアー!」

 

『頼まれましたぞッ!』

 

 ジャンク・ウォリアー ☆5 攻撃力2300

 

「あー、もうわかってるから、解説なしでいいぞ」

 

「じゃあ詳細は省くよ」

 

ドッペル・トークン ☆1 攻撃力400

 

ジャンク・ウォリアー 攻撃力2300→3100

 

 これ、多分ラッシュあるよな? やらかしたな・・・・・・。

 

「装備魔法、団結の力! ジャンク・ウォリアーに装備するよ」

 

ジャンク・ウォリアー 攻撃力3100→5500

 

 ・・・・・・ラッシュなしで超えられたんだが、俺はどうすればいい?

 

「バトル! ジャンク・ウォリアーで攻撃! スクラップ・フィスト!」

 

「ダークマター、逃ゲルォ!」

 

「手札のラッシュ・ウォリアーの効果発動! 墓地に送って、ジャンの攻撃力を二倍にする!」

 

ジャンク・ウォリアー 攻撃力5500→11000

 

『シャオラァ! ですぞ!』

 

 ジャンが力いっぱいダークマターをぶん殴る。哀れ、ダークマターは砕け散った。

 

如月遊羽

LP8000→1000

 

『デッキのモンスターが減った分、魔法・罠が手札に来やすくなったのか』

 

 そこ、真面目に解説しない。

 

「ターンエンドだよ」

 

遊民戦

LP2050 手札1

場 エクストラ:ジャンク・ウォリアー メイン:ドッペル・トークン ドッペル・トークン 魔法・罠:団結の力(装備:ジャンク・ウォリアー) 伏せカード:四枚

 

 クソ、結構ライフを持っていかれた。キツい。

 だが、俺は止まらねぇぜ!

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 ・・・・・・このカードは・・・・・・。

 

「墓地のエクリプス・ワイバーンとダークマターを除外して、終焉龍 カオス・エンペラーを特殊召喚!」

 

終焉龍 カオス・エンペラー ☆8 攻撃力3000

 

「エクリプス・ワイバーンの効果で、除外されていたカオス・MAXを手札に加えるぜ」

 

 よし、準備は整った。

 

「高等儀式術を発動! デッキから青眼の白龍を墓地に送って、儀式召喚! 来い、ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン!」

 

ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン ☆8 攻撃力4000

 

「死者蘇生を発動! 墓地のレッドアイズ・ダークネスメタル・ドラゴンを特殊召喚!」

 

レッドアイズ・ダークネスメタル・ドラゴン ☆10 攻撃力2800

 

 いつ墓地に送ったのかって? ダークマターの効果でだよ。

 

「ダークネスメタルの効果! 墓地の青眼の亜白龍を特殊召喚!」

 

青眼の亜白龍 ☆8 攻撃力3000

 

「亜白龍の効果! ジャンク・ウォリアーを破壊!」

 

「リバースカード、幻影剣! ジャンク・ウォリアーを対象に発動するよ」

 

 身代わり効果のトラップか。それなら!

 

「俺はカオス・エンペラーと青眼の亜白龍でオーバーレイ! エクシーズ召喚! 来い、No.107 銀河眼の時空竜!」

 

No.107 銀河眼の時空竜 ★8 攻撃力3000

 

「まだだ! フルアーマー・エクシーズチェンジ! ギャラクシーアイズ FA・フォトン・ドラゴン!」

 

ギャラクシーアイズ FA・フォトン・ドラゴン ★8 攻撃力4000

 

「フルアーマーの効果! エクシーズ素材を一つ使って、ジャンク・ウォリアーを破壊だ!」

 

『無念!』

 

 フルアーマーの肩の砲台から弾丸が放たれ、ジャンク・ウォリアーを打ち抜く。

 

「バトルだ!」

 

「トラップ発動! 威嚇する咆哮! このターンは攻撃宣言ができないよ!」

 

 クソ、まだそんなカードが! って、伏せカード残り二枚かよ。まだ結構あるじゃねぇか。

 

「ターンエンドだ」

 

如月遊羽

LP1000 手札1

場 エクストラ:ギャラクシーアイズ FA・フォトン・ドラゴン メイン:ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン レッドアイズ・ダークネスメタル・ドラゴン

 

「僕のターン、ドロー!」

 

 よく考えれば、今って三つの眼が集まってるよな。墓地にはオッドアイズもいるし、四眼揃うかもな。

 

『・・・・・・ガラクターアイズはどうした?』

 

 知らねぇな。そもそもドラゴン族でもねぇし。

 

「戦線復帰を発動! 墓地からジャンク・シンクロンを特殊召喚!」

 

ジャンク・シンクロン ☆3 チューナー 守備力500

 

「墓地からの特殊召喚に成功したことで、ドッペル・ウォリアーを特殊召喚!」

 

ドッペル・ウォリアー ☆2 守備力800

 

 はぁ!? 引いたのか、デッキに一枚しか残ってないのに!?

 

『さすがの運命力だな』

 

 ・・・・・・アイツのもう一つのデッキを使いこなすには、それぐらいの運命力が必要だろうし、当然といえば当然か。

 

「ジャンク・シンクロンでドッペル・ウォリアーをチューニング!」

 

3+2=5

 

「もう一度だ! おいで、ジャンク・ウォリアー!」

 

『カムバックトゥーミー、ですぞ!』

 

ジャンク・ウォリアー ☆5 攻撃力2300

 

 うわぁ。ジャンが英語を使いこなすとか、違和感しかねぇな。

 

「ドッペル・ウォリアーの効果でドッペル・トークンを特殊召喚してジャンク・ウォリアーがパワーアップ!」

 

ジャンク・ウォリアー 攻撃力2300→3900

 

「バトル! ジャンク・ウォリアーでレッドアイズ・ダークネスメタル・ドラゴンを攻撃! スクラップ・フィスト!」

 

「手札のクリボーの効果発動! 戦闘ダメージを0にするぜ!」

 

 ジャンがレダメに殴りかかるも、クリボーが邪魔に入り、破壊するだけに終わる。

 

「それは、真宮さんのカード・・・・・・」

 

「おう。御守りにって、さっきもらった」

 

『控え室にまでわざわざ来てくれたのだったな』

 

 そのうち、お礼をしなきゃだな。

 

「くっ、それでも! リバースカード、星遺物からの目醒め! フリーチェーンでリンク召喚を行えるよ!」

 

「何ッ!?」

 

「現れろ、強きを挫くサーキット!」

 

 戦の前に、八つの矢印のついた門が現れる。

 

「召喚条件は、モンスター三体! 僕はジャンク・ウォリアーとドッペル・トークン二体をリンクマーカーにセット!」

 

『ですぞぉ~!?』

 

 ジャンとその他二人(?)が門に吸い込まれる。

 

「リンク召喚! 頼むよ、パワーコード・トーカー!」

 

パワーコード・トーカー link3 攻撃力2300

 

 門から現れたのは、赤い鎧を纏った戦士。

 

 だが、戦はあんなカードは持っていなかった筈だ。

 

「そのカードは?」

 

「父さんのカードなんだ。詳しくは後で」

 

 ・・・・・・何かあったんだな。

 まぁいいか。今はデュエルだ。

 

「パワーコード・トーカーでフルアーマーに攻撃! パワーコードの効果! リンク先のモンスターをリリースすることで、攻撃力が二倍になる!」

 

パワーコード・トーカー 攻撃力2300→4600

 

 パワーコードが腕のハサミでフルアーマーを挟み、俺に向かって投げてきた。

 

「うおっ!!」

 

如月遊羽

LP1000→400

 

「僕はカードを一枚伏せて、ターンエンド」

 

遊民戦

LP2050 手札0

場 エクストラ:パワーコード・トーカー メイン:ドッペル・トークン 伏せカード:二枚

 

「俺のターン!」

 

 宣言と共にドローをする。

 ・・・・・・。

 

「バトルだ!」

 

「墓地の仁王立ちの効果発動だよ! 除外することで、このターンはパワーコードにしか攻撃できなくなるよ!」

 

 最初の命削りの宝札で捨てていたのか!

 

「ならカオス・MAXで攻撃! カオスマキシマムバースト!」

 

遊民戦

LP2050→350

 

「ターンエンド」

 

如月遊羽

LP400 手札1

場 メイン:ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン

 

「僕のターン、ドロー!」

 

 お互いのライフはほぼ同じ。

 ここからは、引いたカードでの戦いになる。

 

「僕はジャンク・シンクロンを通常召喚!」

 

ジャンク・シンクロン ☆3 チューナー 攻撃力1300

 

 またかよ!? どんだけデッキに愛されてんだよお前!

 

「効果でドッペル・ウォリアーを特殊召喚!」

 

ドッペル・ウォリアー ☆2 守備力800

 

「行くよ! シンクロ召喚!」

 

3+2=5

 

「三度目だけどお願い! ジャンク・ウォリアー!」

 

『主殿のためならば、何度でも現れますぞ!』

 

ジャンク・ウォリアー ☆5 攻撃力2300

 

「ジャンク・ウォリアーの効果と、ドッペル・ウォリアーの効果発動!」

 

ドッペル・トークン ☆1 攻撃力400

 

ジャンク・ウォリアー 攻撃力2300→3500

 

「だが、カオス・MAXには届かないぜ」

 

「いや、届くよ! リバースカード、幻影翼発動! ジャンク・ウォリアーの攻撃力が500ポイント上がり、一度だけ破壊されなくなる!」

 

ジャンク・ウォリアー 攻撃力3500→4000

 

 ジャンク・ウォリアーの背中に幻影の翼が現れた。

 

『おおう! 今なら空も飛べる気がしますぞ!』

 

 いや、普段から浮いてるだろ。精霊なんだし。

 

「バトルだ!」

 

「ならこっちも使わせてもらおうか! 墓地の仁王立ちを発動! カオス・MAX以外には攻撃できないぜ!」

 

 ドヤァ! 目覚めの旋律でコストにしてたんだよ! 戦が使うまで忘れてたけどな。

 

「くっ、ドヤ顔が腹立つ! ジャンでカオス・MAXに攻撃! スクラップ・フィスト!」

 

『スカイダイビングアタック! ですぞ!』

 

 文字通り、空に上がって落下して攻撃するジャン。・・・・・・よほど翼が生えて嬉しいんだな。

 

「ターンエンドだよ」

 

遊民戦

LP350 手札0

場 エクストラ:ジャンク・ウォリアー メイン:ドッペル・トークン×3 伏せカード:一枚

「俺のターン、ドロー」

 

 さて、そろそろ出番だぞ、相棒。

 

『待ちくたびれたぞ、遊羽』

 

 行くぜ!

 

「復活の福音を発動! 来い、レヴ!」

 

『応!』

 

ドラグニティアームズ-レヴァテイン ☆8 攻撃力2600

 

 俺の相棒。やっぱ、最後はコイツだな。

 

「ここでレヴを!?」

 

『くっ、やはりですな』

 

「レヴの効果で、墓地のドラグニティ-ブランディストックを装備!」

 

「それにチェーンして、墓地の仁王立ちを発動! ジャン以外に攻撃できないよ!」

 

 調律でも落ちていたか。まぁ、問題ない。

 

「俺は孤毒の剣をレヴに装備! 攻撃力が二倍になる!」

 

 レヴの手元に新たな剣が現れる。

 

ドラグニティアームズ-レヴァテイン 攻撃力2600→5200

 

 さっきのターンでカオス・MAXに使うってもよかったが、オーバーキルになるからやめといた。使っておけば勝てたわけだけど、その分レヴが活躍できるんだからオールオッケー!

 

「バトルだ! レヴでジャンに攻撃! レヴァンティンスラッシュ!」

 

『ジャン! 勝負だ!』

 

『結果は見えていますが、拙者とて精霊の端くれ! 受けて立ちますぞ!』

 

 フィールドでぶつかり合う二体の精霊。結果が見えている分、楽しめているみたいだな。

 

 しかし、攻撃力的に負けてるジャンが押されるのは当然のことだ。

 

『主殿~! 何かないのですか~!』

 

「ごめん、これライバル・アライバルなんだ」

 

「へぇ。最後の伏せカードはそれか」

 

 とうとう、レヴがジャンをステージに叩きつけた。

 

『グハッ! ここまで、ですかな・・・・・・』

 

『いい戦いだったぞ、ジャン』

 

 最後にそう告げて、レヴはジャンを切り裂いた。

 

遊民戦

LP350→0



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大会のその後

Side戦

 

『決まりましたー!! 中間テストトーナメント、優勝者は、如月遊羽ー!!』

 

 体育館いっぱいに放送が流れる。音量大き過ぎない? 耳が痛いんだけど。

 

「はぁー。負けちゃったな」

 

『何、次勝てば問題ありませんぞ』

 

 ジャンがそう言って僕を励ましてくれる。

 

「そうだぜ、戦。俺に勝つにはまず学年最強にならないとな」

 

 如月くんもいい笑顔で言ってくれる。

 

「その学年最強が君なんだから、矛盾してるでしょ」

 

「何言ってんだ? 俺は学校最強だ」

 

 僕の指摘に真顔で返す如月くん。

 これ、本気で言ってるんだから凄いよね。

 

『その割には危ないデュエルだったぞ、遊羽』

 

「うるせぇ。いいだろ、エンタメってことで」

 

 うん、それは龍塚くんのデュエルだけどね。

 

『それでは! トーナメント優勝者に、豪華景品があります! 皆さん、ステージをご覧ください!』

 

 放送委員の子のアナウンスが入り、如月くんが体育館のステージ(特設じゃなくて普通の)に目を向ける。

 

「そんなのがあったのか」

 

「知らないでデュエルしてたんだ」

 

 その景品目当てで頑張ってる生徒もいたのに。

 

『それではご入場ください! プロデュエリスト、凪 風磨さんです!』

 

 会場がのいたるところから歓声が上がる。

 ステージに現れたのは、白髪にメガネのスラッとした男性。プロとしての衣装なのか、執事服を着ている。

 

「何!? 凪風磨だと!!」

 

 そう、林間学校で如月くんがデュエルした人だ。

 

『久しぶりですね、如月遊羽くん。まさか、私に挑んできたデュエリストと、こんな形で再開するとは、思ってもみませんでしたね』

 

 マイクを通してこちらに話しかけてくる凪プロ。

 

「いや、まさかアンタがプロデュエリストだとは思わなかったぜ。通りで強いわけだ」

 

 恐らく、凪プロはあの林間学校のときに今日の打ち合わせをしていたんだろう。

 

『優勝者は景品として凪プロとのデュエルすることができます! あ、もちろんカードもありますよ? それは後日だそうです!』

 

 カードか~。ドラゴン以外いらない、とか突っぱねそうだけどね。

 

「ドラグニティの新規、用意しとけよ? それはそれとして、凪! リベンジだ!」

 

『いいでしょう。受けて立ちます』

 

 言うなり凪プロはステージから飛び降りて、こちらの特設ステージにやってきた。

 

『主殿。拙者らは観客席へ』

 

「そうだね。移動しようか」

 

 如月くんと凪プロが向かい合い、ディスクを構える。

 

『それでは、デュエル開始です!』

 

「「デュエル!」」

 

 そんな彼の背中に、僕は力いっぱい声をかけた。

 

「頑張ってね、遊羽くん!」

 

「おう! 俺達のデュエルはこれからだ!」




最終回のノリですが、続きます。


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一章 キャラクター

ー主人公ズー

 

如月 遊羽(きさらぎ ゆうは) デュエルスクール高等部一年一組

 

 主人公。デュエルスクールにおいてほぼ負けなしの実力者。『ドラグニティアームズ-レヴァテイン』の精霊、レヴを連れている。ドラゴン大好き人間。

 両親は仕事でほとんど家に帰ってこないので、疑似一人暮らし中。幼なじみの真宮虹花に料理を作ってもらうこともしばしば。

 勝つことを優先したデュエルをするが、それは以前は周りの全てが敵だったため。

 

使用デッキ ドラグニティWWザボルグ 自己流カオスドラゴン

 

 

遊民 戦(ゆうみ いくさ) デュエルスクール高等部一年一組

 

 デュエルスクールでいじめられていた。ひょんなことから遊羽に助けられ、以後行動を共にするようになる。自分が『弱くない』ことに執着のようなものを見せる。デッキのモンスター全てが精霊。

 『ジャンク・ウォリアー』の精霊、ジャンと共に生活中。好物はフライドポテト。

 実は結構イケメン。

 

使用デッキ 機械戦士シンクロ 奇襲型ジャンド

 

 

真宮 虹花(まみや にじか) デュエルスクール高等部一年一組

 

 遊羽の幼なじみ。生徒会長。遊羽の二番目の理解者。昔から遊羽に振り回されてばかりの苦労人。二人の仲は、彼女の親公認。

 EM五虹の魔術師を使いこなす実力者。昔ロックデッキを使っていた。

 

使用デッキ EM五虹の魔術師コントロール

 

 

四谷 春樹(よつや はるき) デュエルスクール高等部一年一組

 

 学級委員。ワンキル・ソリティア研究会副会長。自らの感情をあまり表に出さない。ワンキルやソリティアのためにデッキを複数持っている。

 精霊に『LL-インディペンデント・ナイチンゲール』のディペがいる。最近、LLのデッキを作った。

 

使用デッキ 魔術師ペンデュラムワンキル LL

 

 

永野 遥(ながの はるか) デュエルスクール高等部一年一組

 

 男装女子。色々あって戦に男装がバレる。ボクっ娘。何故か放送委員。

 

使用デッキ EM軸エクゾディア

 

 

龍塚 手鞠(りゅうづか てまり) デュエルスクール中等部二年三組

 

 ドラゴン大好き系女子。ロリ体型だが中学生。図書委員をやっている。

 

使用デッキ 通常ドラゴン

 

 

龍塚 息吹(りゅうづか いぶき) デュエルスクール高等部一年三組

 

 手鞠の兄にしてワンキル・ソリティア研究会の会長。遊羽のライバル。ドラゴン擬人化至上主義者。元キャラはファントム遊矢。

 

使用デッキ オッドアイズ

 

 

花園 彩葉(はなぞの いろは) デュエルスクール高等部一年二組

 

 中間テストトーナメントに出場した生徒。何を考えているのかよくわからない。相手のカードを奪って自分が使うという少し変わったデッキを使う。

 

使用デッキ モンスターちょうだい(これがデッキ名)

 

 

凪 風磨(なぎ ふうま)

 

 遊羽達が林間学校を過ごした宿『凪庵』にやってきたプロデュエリスト。超強い。

 

使用デッキ スキドレバルバ

 

 

ー精霊ー

 

レヴ

 

 ドラグニティアームズ-レヴァテインの精霊。遊羽と共に生活中。遊羽が初めて買ったパックで、運命的な出会いをした。出番が少ないことで悩んでいる。

 

主 如月遊羽

 

 

ジャン

 

 ジャンク・ウォリアーの精霊。謎の『ですぞ』口調で話す。最近意志を持った。

 細かい気遣い等のできる精霊。

 

主 遊民戦

 

 

ディペ

 

 LL-インディペンデント・ナイチンゲールの精霊。出番はあってもフィールドにいる時間が短いのが悩みだったが、春樹がLLのデッキを作ったことで解消された。

 

主 四谷春樹

 

 

オッドアイズ

 

 オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンの精霊。主とよく似てからかうことが好き。擬人化して美少女になっている。

 

主 龍塚息吹

 

 

ーここから脇役ズー

 

男子生徒

 

 遊羽に絡んでワンキルされた。雑魚キャラ。

 

使用デッキ ???

 

 

いじめっ子A

 

 戦をいじめていた。雑魚キャラ。

 

使用デッキ ゴブリンデッキ

 

 

いじめっ子B

 

 戦をいじめていた。雑魚キャラ。

 

使用デッキ ???

 

 

いじめっ子C

 

 戦をいじめていた。雑魚キャラ。

 

使用デッキ マシンナーズ

 

 

男子生徒A

 

 遊羽にドラゴエクィティスでトドメをさされた。割と強キャラ。

 

使用デッキ 機械族

 

 

異次元の女戦士似の女教師

 

 遊羽達の担任。異次元の女戦士に似ている。彼氏は多分ダイ・グレファーに似てる。

 

使用デッキ ???

 

 

不審者

 

 ダークマターに乗っ取られていた哀れな被害者。強キャラ。

 

使用デッキ 銀河眼

 

 

仁藤 実篤(にとう さねあつ)

 

 武士っぽい奴。遊羽にデュエルを挑み、玉砕。ガチ両刀。

 

使用デッキ 二回攻撃戦士族

 

 

服部 サスケ(はっとり さすけ)

 

 忍者っぽい人。戦を追い詰めるも、脳筋パワーに負ける。

 

使用デッキ 変化軸忍者



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二章
プロローグ


デュエルなしです。


 都会と田舎の間のような町『アベシ』。町の名前なんて今まで出て無かっただろとかそういうツッコミは受け付けない。

 

 その町のデュエルスクールで先日行われた、中間テストトーナメントという頭がおかしいとしか思えないイベントが終わってから、数日後。

 

「おはよう、遊羽くん、真宮さん」

 

「よう、戦」

 

「おはようございます、遊民くん」

 

 今日も一緒に登校してきた遊羽と虹花に挨拶をする戦。

 

「あ、遊羽。お弁当を渡すのを忘れていましたね。どうぞ」

 

「いつもありがとな、虹花。昼休みが今から楽しみだ」

 

 席に着くなり自分のカバンから風呂敷包みを取り出した虹花は、そのままそれを遊羽に渡した。

 

「・・・・・・二人って、本当に仲がいいよね。結婚しないの?」

 

 そのやりとりを見た戦が、思ったことをそのまま口に出した。

 それに対し、呆れたような顔をする二人。

 

「何言ってんだ戦。まだあと二年足りないだろ?」

 

「そうですよ。私はもう結婚できますが、遊羽はまだできないんです」

 

「いや、言いたいのはそこじゃないんだけど・・・・・・」

 

 ツッコミ役の筈の虹花までそんなことを言うなんて、といった心境なのだろう。戦の首筋には冷や汗が浮かんでいる。

 

「遊民くんは高等部からここに来たんだったね。中等部の頃から二人はあんなだよ」

 

「・・・・・・うわぁ」

 

 解説をする遥。戦は何を言えばいいのかわからない、といった様子だ。

 

「慣れろ。それが一番だ」

 

 春樹もこの状況には慣れている。どちらかと言うと、これについて考える事をやめた、というのが近いかもしれない。

 

「皆さん、席に着いてください。ホームルームを始めます」

 

 そんな状況に異次元の女戦士に似ている担任の女教師が教室に入ってくる。戦は席につく事でその場をやり過ごした。そんな大層なことでも無かったのだが、動揺していた彼は気付かない。

 

「来週から夏休みとなりますが、羽目を外し過ぎないようにしてください。それと、如月くんは昼休みに校長室まで。先日のトーナメントの景品カードを渡すそうです」

 

 端的に要件だけを言われ、即解散となった。一年一組のホームルームはいつもこんなものだ。

 

「一時間目はエジプトのデュエル史か。確かヒエログラフの宿題があったな」

 

「う~ん。どう考えても。高校生のやることじゃないよね」

 

 去年までは一般高校にいた戦が軽く呟く。デュエルスクールはデュエルが全て、とでも言うようにデュエルについて学ぶ。エジプトが起源とされているデュエルモンスターズだ。そのエジプトについて学んでも、何ら不思議はない。無いったら無いのである。

 

『最近の学生は大変なのですな。拙者、精霊で良かったですぞ』

 

 戦の中でジャンク・ウォリアーの精霊たるジャンがこっそりと言う。

 

「こら、勝手に出てきちゃ駄目でしょ」

 

『呟くくらい、許して欲しいですぞ!』

 

 そう。戦の中で、だ。

 

 先日のトーナメントの最後のバトル。そこでぶつかり合った二人の精霊は力が強くなり、カードから離れて行動することができるようになったのである。

 加えて、精霊の見えない人間にも見えるように出来たり、物や人に触れるようになったりと、精霊としての格が上がったのだ。

 そして今は、レヴもジャンもそれぞれ主の中にいる。

 

『あらあら。精霊として強くなるのって大変なのね。私は遠慮したいわね』

 

「・・・・・・そうか」

 

 ディペがからかうようにジャンに言うと、少しだけ春樹が悲しそうな顔をする。ディペがそのままでいれば、ディペと自分は触れ合えない。そんなこと考えたのだろう。

 

『あ、ごめんなさい、春樹! 別に、春樹をどうでもいいと思っているわけではなくて・・・・・・』

 

「いや、わかっている。気にするな」

 

 春樹の様子からそれを察したディペ。あわててフォローをするが、春樹の雰囲気は変わらない。

 

「オレはディペの意志を優先する。お前は好きなようにしていいんだ」

 

『春樹・・・・・・』

 

 いいムードだが、精霊の見えない人からすれば、独り言を呟いている不審者な春樹であった。

 

ーーーーーーーーーー

 

 午前の授業が終わり、購買で遊戯王チップスとドローパンを買った戦。教室に戻り、自分の席につく。

 

(さて、何が出るかな?)

 

 競争率の高いこの二つだが、今日は運良く授業が早く終わったため、買うことができたのだ。開けるのが楽しみでならない。

 

(・・・・・・スクラップ・フィスト、だね)

 

 遊戯王チップスの方は彼の欲しいカードが出たようだ。スクラップ・フィストは入手が難しく、彼も一枚しか持っていなかったため、これは嬉しいラインナップだった。

 

『ドローパンの方は何が入っているのでしょうな? 早く開けてくだされ』

 

 昼休みの教室には人が少ない。それを良いことに、好き勝手言うジャン。

 以前まではパンの中にカードが入っていたドローパンだが、現在はパンを包む袋にカードが入った親切設計となっている。その袋を開け、戦はカードを取り出す。

 

「えーと、『暴走パック』・・・・・・?」

 

 中から出てきたのは、カード一枚ではなく、珍しい『パック型カードセット』だった。一パック十枚入り。

 

「地獄の暴走召喚に暴走召喚師アレイスター、暴走する魔力が二枚に暴走闘君が三枚、それと暴走魔法陣も三枚・・・・・・。うわぁ」

 

 パックの中身に恐怖すら覚える戦。

 アレイスター関連は使う予定がないが、地獄の暴走召喚と暴走闘君は彼のデッキにぴったりのカードだった。

 

『・・・・・・主殿、デッキの脳筋度合いが上がった気がしますぞ』

 

「うん、僕もそう思う」

 

 実際、戦は自分のデッキが脳筋であることは自覚しているが、それでも使いやすいのだから仕方がない。

 どうしたものかと校庭に視線を向けると

 

「今日こそ白黒はっきりつけようではないか! 我ら青眼クラブと!」

 

「我ら真紅眼クラブ、どちらが優れているのかを!」

 

「「「「「青眼! 青眼! 青眼!」」」」」

 

「「「「「真紅眼! 真紅眼! 真紅眼!」」」」」

 

 と、髪を白く染め、青いコンタクトレンズをした集団(恐らく青眼クラブ)と、髪を黒く染め、赤いコンタクトレンズをした集団(多分真紅眼クラブ)が向き合ってデュエルディスクを構えていた。

 デュエルが開始されれば、ワンキルの嵐が巻き起こるだろう。

 

 頭が痛い、というように眉間を抑える戦だった。




ドローパン 定価350円
遊戯王チップス 定価100円


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シルクハットのトリック

修正が終わったので即投稿です。眠い。


 戦が暴走パックを開けて頭痛に悩んでいたころ。

 

「失礼します」

 

 遊羽は一人、校長室を訪れていた。

 

「よく来たね。これが景品のカードだ。有意義に使ってくれたまえ」

 

 中に入るなり、初老の校長が出迎える。

 差し出されたのは、ガラスの板に挟んで保管してある二十枚のカード。

 

(全部リンクモンスターか。幻影騎士団、SR、ハーピィ、サンダードラゴンにパーシアス・・・・・・ん? これは・・・・・・)

 

 いいカードがあったのか、遊羽は少し目を見開く。

 

「なぁ校長。このカードって、誰かにあげても問題ないよな?」

 

 遊羽の質問に、校長は少し考えるような素振りを見せてから

 

「それはもう君のものだ。売ろうが捨てようが構わない」

 

 遊羽は知らないが、このカード達はまだ市場に出回っていないカードだ。それをKC社がデュエルスクールにサンプルとして送り、デュエルスクールは大会の景品としたのだ。

 

「こんちわーっす。おろ? 遊羽じゃんか」

 

「失礼するッス。カードがもらえるっていうので来たッスよ」

 

 二人の生徒が新たに校長室にやってきた。ネクタイの色を見るに、三年生と二年生だろう。

 

「あ? 日向先輩と響先輩じゃねぇか」

 

「やっぱり一年のトーナメント優勝者はお前かぁ。さすがだな」

 

 三年生の方が水瀬 日向(みなせ ひゅうが)。ちょっとチャラい印象を与えるイケメンだ。

 

「兄さん、校長先生に対して失礼ッスよ。遊羽も敬語ぐらい使うッス」

 

 二年生は水瀬 響(みなせ ひびき)。日向の妹であり、兄とは逆に大人しい印象だ。

 

「君達にもこれを。改めて、トーナメント優勝おめでとう」

 

「ありがとさん。大事にするよ」

 

「ありがとうございますッス」

 

 二人に与えられたのは、遊羽に渡したものと同じカードだ。

 デュエルモンスターズでは同じカードは三枚まで。なのでサンプルとして各カード三枚ずつ送られたのだ。それを三学年で分けた、ということだ。

 

「う~ん、あんまり使うカードがないなぁ。強いて言うならこの幻影騎士団かな?」

 

「自分も使うカードがないッス・・・・・・。何スかこの残念HERO。これならイゾルデで充分ッスよ」

 

 しかし、あまりいい反応ではない。そのことを校長は内心残念に思った。

 

「私は仕事に戻る。君達も学生としての本分を果たしなさい」

 

 そう言って職員室に引っ込んだ校長。

 それを見て、三人は校長室を後にした。

 

ーーーーーーーーーー

 

 校長室の前の廊下。

 風呂敷包みを持った虹花は、遊羽を待っていた。

 

「悪い、待たせたな」

 

「あ、いえ。気にしないでください」

 

 校長室から出てきた遊羽に、虹花は笑顔で返す。

 

「さっきぶり、虹花ちゃん。四人で一緒に昼飯にしない?」

 

「兄さん、せっかく二人っきりのところを邪魔しちゃ悪いッスよ。ちゃんと考えるッス」

 

 二人も校長室に入る時に虹花とは会っている。四人は中等部からの付き合いだ。

 

「それもそうかぁ。じゃ、おれ達は家族水いらずで食べるか」

 

「何でそうなるんスか! ・・・・・・自分は別に、構わないッスけど」

 

 日向の言葉に、少し恥じらいながらも肯定する響。兄妹間の仲は良好のようだ。

 

「ハハ、相変わらずだな、先輩方」

 

「そうですね。懐かしいです」

 

 二人のやりとりを見て、昔を思い出す遊羽と虹花。

 

「なぁ日向先輩。放課後、俺とデュエルしてくれないか? 二人に会ったら、久々にやりたくなった」

 

「おれはオッケーだ。場所は第二デュエル場で」

 

 そう言って水瀬兄妹はその場から立ち去る。

 

「ところで、第二デュエル場ってどこだっけ?」

 

「もう! 締まらないッスね! 放課後、案内するッスよ」

 

 聞こえてくる会話の内容に和む遊羽と虹花。

 

「そうだ。虹花、これ」

 

 遊羽はガラスプレートからカードを一枚を取り出し、虹花に手渡す。

 

「? ・・・・・・えっ、このカードは!?」

 

 驚く虹花に、遊羽は笑いながら語る。

 

「クリボーのお礼だ。俺は使わないし、虹花にぴったりのカードだろ?」

 

「・・・・・・わかりました。ありがたくいただきます」

 

 渡されたのは、カオス・ソルジャーのリンクモンスター。恐らくとても貴重なカードだが、虹花は遊羽の意志を汲んで、受け取ることにした。

 

「じゃ、今日は外で食べようぜ。校長室って玄関から近いし」

 

「そうですね。たまには外もいいでしょう」

 

 そんなことを話しながら、二人は校庭に向けて歩きだした。

 

ーーーーーーーーーー

 

 ということで放課後。

 

「クソ、青眼クラブと真紅眼クラブめ。後で覚えてろよ」

 

 校庭で昼食をとったために、青眼クラブと真紅眼クラブの戦いに巻き込まれた遊羽。虹花に申し訳なく思いながらもデュエルで武力解決をする羽目になったのだ。悪態の一つもつきたくなる。

 

「さて、第二デュエル場だったな」

 

 椅子から立ち上がる遊羽に、隣の虹花が声をかける。

 

「私は生徒会の仕事があるので、終わったら先に帰っていてください」

 

「わかった。まぁ、俺の方が遅いかもな」

 

 軽く冗談を言ってから、遊羽はデュエル場に向かう。

 

『遊羽、私は図書館に寄りたい。今日も行ってきていいだろうか』

 

(おう。手鞠に迷惑かけるなよ)

 

 実体化できるようになってから、レヴは単独行動をすることが多くなった。遊羽はあまり本を読まないが、レヴは読書家だったのだ。今回のように、図書館にでかけることがほとんどだ。

 

(手鞠も喜ぶだろうし、問題ないだろ)

 

 手鞠は遊羽や兄の息吹と同じようにドラゴン好きだ。レヴがいても喜ぶことこそあれど、嫌がることはないだろう。

 

「お、ちわーっす遊羽。早速入ろうぜ」

 

 デュエル場の入り口には、日向と響が揃って待っていた。

 

「悪いな、待たせたか?」

 

「うんにゃ、今来たところ。って恋人のやりとりみたいだなぁ」

 

 何気なく言った日向の一言に、響がジト目で兄の腕をつねる。

 

「痛い痛い! ちょっ、何だよマイリトルシスター!?」

 

「兄さんに恋人とか、認めないッスよ。あとそれも止めて欲しいッス」

 

 懐かしいやりとりに遊羽は口元を緩ませる。

 

「いちゃつくのはそこまでにして、早くデュエルしようぜ」

 

「・・・・・・仕方ないッスね」

 

 本当に仕方がない、といった様子で兄の腕を放す響。日向の腕は、真っ赤に腫れていた。

 

「あー痛い。デュエルディスクつけられないかもなぁ」

 

「知らないッス。早くしないと、遊羽に悪いッスよ」

 

 とことん酷い扱いを受ける日向だった。

 

ーーーーーーーーーー

 

「行くぜ、先輩!」

 

「かかってこい、遊羽! あ、優しめでね?」

 

「知るか!」

 

「「デュエル!」」

 

水瀬日向

LP8000

 

如月遊羽

LP8000

 

「先攻はもらった、おれのターン」

 

(手札はそこそこ。まぁ、このデッキならこんなもんか)

 

 手札を確認する日向。彼のデッキは扱いが難しく、ピーキーなのだ。それを使いこなすから三年最強なのだが。

 

「モンスターをセット、カードを三枚伏せて、ターン終了」

 

水瀬日向

LP8000 手札1

場 メイン:伏せモンスター 伏せカード:三枚

 

「守備表示か。カオス・MAXで吹き飛ばしてやるぜ! 俺のターン!」

 

 久しぶりの日向とのデュエルでテンションが上がっているのか、ややキャラ崩壊している遊羽。そこまでキャラが立っていないのだが。

 

「高等儀式術を発動! デッキの青眼の白龍をコストに、来い、ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン!」

 

ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン ☆8 攻撃力4000

 

「バトル! カオス・MAXで攻撃! カオスマキシマムバースト!」

 

「リバースカード、威嚇する咆哮! このターン、攻撃宣言はできない!」

 

 カオス・MAXに威嚇しても効かなそうだが、仕方ない、といった様子でブレスを止めるカオス・MAX。どちらかというと彼(?)は威嚇する側だろう。

 

「チッ、ターンエンドだ」

 

如月遊羽

LP8000 手札4

場 メイン:ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン

 

「優しめでって言ったじゃん! 殺意もMAXかよ! おれのターン!」

 

 これで日向の手札は二枚。まだデッキのギミックを見せてもいない。

 

「召喚僧 サモンプリーストを召喚。守備表示になる」

 

召喚僧サモンプリースト ☆4 攻撃力800→守備力1600

 

 最近、孫が禁止カードになったらしい、元制限カードのおじいちゃん。いつか孫も許されるかもしれない。

 

「おれはサモンプリーストの効果発動! 手札の魔法カード一枚をコストに、デッキからレベル4のモンスターを特殊召喚する! 来い、幻影騎士団フライジャルアーマー」

 

幻影騎士団フライジャルアーマー ☆4 守備力1800

 

「反転召喚、メタモルポット!」

 

メタモルポット ☆2 攻撃力700

 

「メタモルポットのリバース効果発動! お互いに手札を全て捨てて、デッキから新たに五枚ドローする」

 

「俺は四枚捨てて五枚ドロー」

 

「おれは手札なし、ハンドレス! 五枚ドロー!」

 

 手札から墓地に送るカードがないのは果たしてメリットかデメリットか。それはデュエリストによるが、遊羽はドラゴン族を蘇生するカードがあるので、メリットの方が多いだろう。

 

「おれはサモンプリーストとフライジャルアーマーでオーバーレイ! エクシーズ召喚! No.39 希望皇ホープ!」

 

No.39 希望皇ホープ ★4 攻撃力2500

 

「この状況でホープ、ってことは・・・・・・」

 

「イエス! ホープレイから大正義まで!」

 

CNo.39 希望皇ホープレイ ★4 攻撃力2500

 

SNo.39 希望皇ホープ・ザ・ライトニング ★5 攻撃力2500

 

「バトル! ホープ・ザ・ライトニングで攻撃! ホープ剣大正義スラッシュ!」

 

「迎え撃て、カオスマキシマムバースト!」

 

 正義を背負う剣士と混沌の力を持つ竜が対峙する。

 

「ホープ・ザ・ライトニングの効果! オーバーレイユニットを二つ使い、攻撃力が5000となる!」

 

SNo.39 希望皇ホープ・ザ・ライトニング 攻撃力2500→5000

 

 ライトニングの剣が、混沌竜の首を落とした。

 

如月遊羽

LP8000→7000

 

SNo.39 希望皇ホープ・ザ・ライトニング 攻撃力5000→2500

 

「まだまだ! メタモルポットで攻撃!」

 

「うのわっ!」

 

如月遊羽

LP7000→6300

 

 メタモルポットに攻撃されるという珍しい経験をする遊羽。

 

「ターン終了!」

 

水瀬日向

LP8000 手札5

場 エクストラ:SNo.39 希望皇ホープ・ザ・ライトニング メイン:メタモルポット 伏せカード:二枚

 

「俺のターン、ドロー!」

 

(大正義とか、そっちも殺意高いカードじゃねぇか!)

 

 自分のことを棚に上げ、前方を睨む遊羽。睨まれてビクゥ! っとなる日向。

 

「ドラゴン・目覚めの旋律を発動! 手札一枚をコストに、デッキの青眼の白龍と青眼の亜白龍を手札に加え、亜白龍を特殊召喚!」

 

青眼の亜白龍 ☆8 攻撃力3000

 

「亜白龍の効果! 大正義を破壊!」

 

「うそん!?」

 

 オルタのブレスにより呆気なく破壊される大正義。正義とは脆いものだ。

 

「死者蘇生を発動! 墓地のレッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンを特殊召喚!」

 

レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン ☆10 攻撃力2800

 

「レダメの効果発動! 墓地の銀河眼の光子竜を特殊召喚!」

 

銀河眼の光子竜 ☆8 攻撃力3000

 

「二体のレベル8モンスターでオーバーレイ! エクシーズ召喚! 来い、銀河眼の光波竜!」

 

銀河眼の光波竜 ★8 攻撃力3000

 

「おいおい、どんだけドラゴン出てくるんだよ」

 

「俺のデッキに、ドラゴン以外のモンスターは入っていない!」

 

 キリッとした表情で告げる遊羽。メインデッキはもちろん、エクストラデッキも全てドラゴンだ。もう一つのデッキは家族のために作ったデッキだったが、こちらは自分のため作ったデッキだ。自分の好きなものだけで何が悪い?

 

「光波竜に重ねて、エクシーズ召喚! フルアーマーエクシーズチェンジ! 来い、ギャラクシーアイズ FA・フォトン・ドラゴン!」

 

ギャラクシーアイズ FA・フォトン・ドラゴン ★8 攻撃力4000

 

「フルアーマーの効果! オーバーレイユニットを一つ使い、メタモルポットを破壊!」

 

 フルアーマーの肩の砲台から光の弾丸が放たれ、メタモルポットが木っ端みじんとなる。

 

「まだまだ! フルアーマーを素材に、ランクアップエクシーズチェンジ! 来い、銀河眼の光波刃竜!」

 

銀河眼の光波刃竜 ★9 攻撃力3200

 

「光波刃竜の効果! オーバーレイユニットを一つ使い、お前のカード一枚を破壊する! 右の伏せカードだ!」

 

 光波刃竜の翼から小さな刃が降り注ぎ、伏せカードが破壊される。

 

「ほぼ更地!?」

 

 これで、日向のフィールドには伏せカードが一枚のみ。ドラゴン達の力により、焼け野原となった。

 

「バトル! レダメでダイレクトアタック!」

 

「墓地の幻影騎士団シャドー・ベイルの効果発動! このカードをモンスターとして特殊召喚!」

 

幻影騎士団シャドー・ベイル ☆4 守備力300

 

「ならその亡霊を攻撃だ!」

 

「まぁ待てって。もう少し選択肢をあげよう」

 

 おどけた調子でウインクと共に言う日向。

 

「リバースカード、マジカル・シルクハット! デッキの魔法・罠二枚をモンスターとしてセット!」

 

 どこからかシルクハットが現れ、亡霊を隠し、シャッフルされる。

 

「・・・・・・攻撃中止だ」

 

「おろ? いいの?」

 

「どうせアーティファクトの神智とか伏せてあるだろ! 読めてんだよ!」

 

(あらら、バレてる)

 

 遊羽に策を見透かされ、面白くなさそうな顔をする日向。

 バトルフェイズが終了し、シルクハットが消える。

 

「カードを一枚伏せて、ターンエンドだ」

 

「エンドフェイズ、墓地に送られたヒステリック・サインの効果発動! デッキからハーピィカード三種を手札に加える。羽根箒、ハーピスト、チャネラーの三枚!」

 

 一気に日向の手札が増える。

 

如月遊羽

LP6300 手札3

場 エクストラ:銀河眼の光波刃竜 メイン:レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン 伏せカード:一枚

 

「おれのターン! まずは、ハーピィの羽根箒発動! そして、ハーピィ・チャネラーを召喚!」

 

ハーピィ・チャネラー ☆4 攻撃力1400

 

「チャネラーの効果! 手札のハーピストをコストに、デッキからハーピィズペット竜を特殊召喚! チャネラーは場にドラゴン族がいればレベル7になる」

 

ハーピィズペット竜 ☆7 守備力2500→2800

 

ハーピィ・チャネラー ☆4→7

 

「おれはレベル7モンスター二体でオーバーレイ! エクシーズ召喚! No.11 ビッグ・アイ!」

 

No.11 ビッグ・アイ ★7 守備力2000

 

 巨大なとんがり目玉。これでも魔法使い族。

 

「ビッグ・アイの効果発動! オーバーレイユニットを一つ使い、光波刃竜のコントロールを得る!」

 

「あ゛」

 

 とんがり目玉の怪しい光! 光波刃竜は混乱した!

 

「それでは早速。光波刃竜の効果! レダメには退場願おうか!」

 

 混乱した光波刃竜が光の刃でレダメを切り裂く。これで遊羽のフィールドは完全に焼け野原だ。

 

「ビッグ・アイをコストに、モンスターゲート発動! デッキからモンスターが出るまでカードを墓地に送り、モンスターが出たら特殊召喚する!」

 

 一枚、二枚、三枚、・・・・・・・・・・・・。

 

E・HERO シャドー・ミスト ☆4 守備力1500

 

「シャドー・ミストの効果! デッキからマスク・チェンジ・セカンドを手札に加える。そしてそのまま発動! 変身召喚! M・HERO ダーク・ロウ!」

 

M・HERO ダーク・ロウ ☆6 攻撃力2400

 

 日向のデッキにHEROはシャドー・ミストのみ。そのため、サーチ効果は発動しない。まあ、シャドー・ミストのサーチは一ターンに片方しか使えないので関係ないが。

 

「バトル! ダーク・ロウでダイレクトアタック!」

 

如月遊羽

LP6300→3900

 

「光波刃竜も続け!」

 

如月遊羽

LP3900→700

 

(やべぇ、結構ライフ持っていかれた・・・・・・)

 

 残りライフ700。その事実に、内心焦る遊羽。

 

「カードを二枚伏せて、エンドフェイズにハーピストの効果でチャネラーを手札に加える。ターン終了!」

 

水瀬日向

LP8000 手札3

場 エクストラ:M・HERO ダーク・ロウ メイン:銀河眼の光波刃竜 伏せモンスター:一枚 伏せカード:三枚

 

「俺のターン!」

 

 これで遊羽の手札は四枚。果たして、その中に逆転の可能性はあるのか。

 

「復活の福音を発動! 墓地のオルタを蘇生!」

 

青眼の亜白龍 ☆8 攻撃力3000

 

「オルタの効果発動! ダークロウを破壊だ!」

 

 復活の福音は除外されてしまったが、手札一枚でダークロウを除去した遊羽。デッキに、というよりはドラゴンに愛されているのだろう。

 

「貪欲な壺を発動! 墓地の青眼の白龍、フルアーマー、カオス・MAX、光波竜、レヴィオニアをデッキに戻し、カードを二枚ドロー!」

 

 手札が増えたが、遊羽の狙いはそこではない。

 

「星間竜パーセクは、場にレベル8がいればリリースなしで召喚できる! 来い、パーセク!」

 

星間竜パーセク ☆8 攻撃力800

 

「レベル8二体でオーバーレイ! 来い、光波竜! 続けてフルアーマー!」

 

銀河眼の光波竜 ★8 攻撃力3000

 

ギャラクシーアイズ FA・フォトン・ドラゴン ★8 攻撃力4000

 

「フルアーマーの効果! 光波刃竜を破壊!」

 

 ギャラクシーアイズによって破壊される銀河眼。仲間割れなのか、漢字とカタカナの争いなのかはわからない。

 

「バトル! フルアーマーで攻撃!」

 

「リバースカード、マジカルシルクハット! シャドー・ベイルをデッキの魔法・罠と共にセット!」

 

 またもシルクハットに包まれるシャドー・ベイル。これで日向のモンスターは三体となる。

 

「更にライバル・アライバル発動! バトルフェイズに召喚を行う!」

 

「何ッ!?」

 

 よく見知ったカードの登場に驚く遊羽。

 

「モンスター三体をリリース! アドバンス召喚! 来い、邪神イレイザー!」

 

邪神イレイザー ☆10 攻撃力?

 

「邪神のカードだと!」

 

 現れたのは、邪神。神のカードと対となる存在。

 邪神のカードを始めとする伝説のカードは、オリジナルのカードが世界に一枚ずつ、レプリカが世界に十数枚、というとんでもなく希少なカードだ。三幻神のカードはオリジナルがまだ存在しているかすらわからないほど。

 オリジナルのカードには魔法・罠がほとんど効かないという噂もある。

 

「イレイザーの効果! このカードの攻撃力は、相手の場のカード×1000ポイントとなる!」

 

邪神イレイザー 攻撃力?→2000

 

「それじゃ足りねぇぜ! フルアーマー! 邪神を粉砕しろ!」

 

 フルアーマーのブレスにより、邪神竜が崩れ落ちる。

 

水瀬日向

LP8000→6000

 

「イレイザーの効果! このカードが破壊された時、フィールドのカード全てを破壊する! リバース・エンド!」

 

(マズい! 復活の福音は除外されたから、防ぐ手段がねぇ!)

 

 崩れ落ちたイレイザーから闇が解き放たれ、フィールドを包み込む。

 闇が晴れた時には、何も存在していなかった。

 

「・・・・・・ターンエンド」

 

如月遊羽

LP700 手札3

場 なし

 

「おれのターン、ドロー!」

 

 日向の手札は三枚。どれもこの状況では使えない、腐ったカードばかりだ。

 

「ハーピィ・チャネラーを通常召喚!」

 

ハーピィ・チャネラー ☆4 攻撃力1400

 

 手札の中で唯一腐っていなかったカードを使い、日向はトドメを刺しにかかる。

 

「バトル! チャネラーでダイレクトアタック!」

 

「手札からクリボーを捨てて、ダメージを0にするぜ!」

 

「なっ!?」

 

 遊羽の使ったカードに、日向は二重の意味で驚く。

 彼が手札誘発を使ったことと、ドラゴン以外を使ったことの二つだ。

 

「ドラゴン以外入ってないんじゃなかったのか?」

 

「悪い、コイツは別だ。御守りみたいなものだな」

 

 嫁(確定だが結婚はまだ)のカードで九死に一生を得た遊羽。

 

「なら、カードを一枚伏せて、ターン終了」

 

水瀬日向

LP6000 手札1

場 メイン:ハーピィ・チャネラー 伏せカード:一枚

 

(ブラフのライバル・アライバルだけど、ないよりマシだ)

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 引いたカードを確認し、口元を緩める遊羽。

 

「引いたのは復活の福音! 来い、フェルグラント!」

 

巨神竜フェルグラント ☆8 攻撃力2800

 

「フェルグラントの効果! お前の邪神を除外! 攻撃力がアップするぜ!」

 

巨神竜フェルグラント 攻撃力2800→3800

 

 しかし、トドメには一歩足りない。

 

「竜の霊廟発動! デッキのドラグニティアームズ-レヴァテインを墓地へ! バトル! 巨神竜フェルグラントで攻撃!」

 

「・・・・・・何もないな」

 

水瀬日向

LP6000→3600

 

「フェルグラントが戦闘でモンスターを破壊した時、ドラゴンを蘇生するぜ! 来い、ドラグニティアームズ-レヴァテイン!」

 

ドラグニティアームズ-レヴァテイン ☆8 攻撃力2600

 

 中身が空っぽだが、それでも彼の相棒はこの竜だ。

 

「ドラグニティアームズ-レヴァテインの効果! 墓地のドラグニティ-ブランディストックを装備!」

 

 彼の十八番。二回攻撃。

 

「トドメだ! ドラグニティアームズ-レヴァテインで二回攻撃!」

 

(幻影騎士団で抵抗してもいいけど・・・・・・)

 

 日向はデッキを見やる。

 そこには、カードが一枚しかなかった。

 

(これ、ハーピィズペット竜なんだよなぁ)

 

「・・・・・・ライフで受ける」

 

水瀬日向

LP3600→→1000→0

 

ーーーーーーーーーー

 

「危ねぇ、ギリギリ勝てた・・・・・・」

 

「あーあ。邪神まで使ったっていうのに、このザマかぁ」

 

 デュエルが終わり、二人の口から異なる種類の溜め息が出る。

 

「お疲れ様ッス。いいデュエルだったッスよ」

 

 二人に労いの言葉をかける響。

 

「それにしても、後輩に本気出すとか大人気ねぇな」

 

「いや、そうじゃないとお前が後で文句言うだろ? 本気の相手に勝たないと意味がない、とかさ」

 

 それもそうか、と納得する遊羽。

 

「それじゃ。もう遅いし解散、ってことで」

 

「さよならッス」

 

「おう、またな」

 

 そのまま帰ろうと校門まで歩き、レヴのことを思い出して一度図書館に戻ってから再度校門を出た遊羽だった。



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異変

今回、自分で書いててかなりクサいなと思いました。

デュエルなしです。


(遊羽くんと真宮さんは休みかな? 今日は来てないみたいだけど・・・・・・)

 

 戦がスクラップ・フィストと暴走パックを手に入れた翌日。遊羽と虹花の姿は学校になかった。

 

「おはよう遊民くん。どうしたんだい?」

 

 二人を心配していた戦に、登校してきた男装女子が声をかけた。

 

「おはよう、永野さん。遊羽くんと真宮さんが来てないみたいなんだ。いつもはこれくらいの時間に来るのに」

 

 本当に心配そうに言う戦。遥は二人の登校時間を把握しているらしき戦に若干恐れを抱く。

 

「それで?」

 

「いや、女子同士で何か連絡とかなかったかな、と思って」

 

 サラリと遥が隠していることを会話に出す戦。遥は焦って声を荒げる。

 

「ちょ、遊民くん!? 何でそれを言っちゃうのさ! 他の人にバレたらどうするんだい!?」

 

 突然声を荒げた(戦の主観)遥に、キョトンとする戦。

 

「え、だってクラスの全員が気付いてるよ? それに、皆なら聞こえないフリくらいしてくれるし」

 

「な!?」

 

 本人以外が知らなかった事実を暴露してしまう戦。クラスの面々も『あちゃー、とうとう言っちゃったかー』とは思ったが、顔に出したのは数名だ。何このクラス超優しい。

 しかし、その数名の反応に気付いてしまう遥。デュエリストは洞察力が鋭いのだ。

 

「ふえ!? ふえぇえ!?」

 

「? どうしたの、永野さん」

 

 顔を赤くして思い切り動揺する遥。自分のせいとは欠片も気づかない戦。

 

(何だろう、動揺している永野さんを見てると、凄く興奮する)

 

 いじめられっ子だったため気付かれていないが、彼はかなりのSである。本人が自覚していないからさらにタチが悪い。

 

「あ、ごめんね。まさか、周りが気付いていることに気付いてないとは思わなくて・・・・・・」

 

 無自覚にトドメを刺した戦。

 

「ふえぇぇえ!? ・・・・・・ちょっと、一人にして・・・・・・」

 

 とうとう限界を超えたのか、自分の席に突っ伏する遥。そんな姿にすら快感を覚える戦。

 

 天然ドS少年、遊民戦の誕生だった。

 

ーーーーーーーーーー

 

 昼休みになり、早速購買に走る戦。お目当てはドローパンと遊戯王チップスだ。

 

「ラッキー、二日連続で買えた」

 

 そう言いながら最後のドローパンに手を伸ばす戦。しかし、ドローパンを掴んだのは彼一人ではなかった。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 戦の視線の先には、二年生とおぼしき女子生徒がいた。

 

「・・・・・・何スか? 最近の後輩は譲り合いの精神がないッスね。こういう時は先輩に譲るものッスよ」

 

 戦はただ驚いて固まっていただけだったのだが、女子生徒の態度に少し怒りを覚える。

 

「先輩こそ、可愛い後輩に譲ってくれませんか? ほら、先輩の方が大人でしょう?」

 

 ニコニコと、笑顔で圧力をかける戦。不機嫌そうに彼を睨む女子生徒。

 緊迫した空気を破ったのは、同時に鳴った二人のケータイの着信音だった。

 

「・・・・・・ここは半分にしませんか? カードについては後にして」

 

「・・・・・・そうッスね。このままだと、他の人の迷惑にもなるッスから」

 

 そう言って、どちらともなくドローパンから手を離し、ケータイの確認をする。

 

「「ッ!? 遊羽(くん)から!? ・・・・・・え?」」

 

 再び顔を見合わせる二人。

 どちらも、面白いくらいにポカンとしていた。

 

ーーーーーーーーーー

 

 放課後。

 

「すいませんでした。遊羽くんの知り合いとは知らずに」

 

「いや、こちらこそ申し訳ないッス。自分も大人気なかったッス。カードは君のでいいッスよ」

 

「ありがとうございます」

 

 遊羽のメールに書いてあった場所、学校の図書室。その席の一つで謝罪しあう二人。

 

「へぇ。何か面白いことがあったみたいだね♪ 後で聞かせてよ」

 

『聞かせて聞かせて~』

 

 そこには、彼ら以外の面々もいた。

 

「会長、うるさいんだが」

 

『あらあら。一応上司よ、春樹』

 

『さすがは主殿、何気なく女子の手を握るとは・・・・・・』

 

「何か響が謝るのを見るの、久々だなぁ。精霊もたくさんいるし」

 

 ワンキル・ソリティア研究会の会長、副会長。彼らの精霊。さらに三年生。

 息吹、春樹、オッドアイズ、ディペ、日向である。手鞠は息吹が帰らせた。メールにそう書いてあったからだ。

 

「自己紹介がまだだったッスね。自分は水瀬響ッス」

 

「あ、僕は遊民戦です。よろしくお願いします」

 

 先ほどの険悪ムードがウソのように握手を交わす二人。むしろ、一度ぶつかり合ったからこそ、お互い素直になれたのかもしれない。

 

「お、揃ってるな。ちょと集まってくれ」

 

 図書室のドアが開き、そこから遊羽が現れる。その後ろにはレヴも付いている。

 

「それで? 今日はどうしたんだ、遊羽♪」

 

「それを今から説明する」

 

 かなり真面目な様子の遊羽に、息吹は一瞬目を見開いた後、顔を引き締める。

 

「昨日、虹花が死んだ」

 

「「「「「『『『・・・・・・は!?』』』」」」」」

 

 異口同音に驚きの声を上げる。

 

「・・・・・・それ、本当?」

 

「正確には、人間として死んだ」

 

 いち早く驚きから復活した息吹の質問に、詳しい説明を開始する遊羽。

 

「レヴの羽には、持ち主の居場所を知らせる能力がある。昨日、虹花に持たせていた羽からの反応がなくなった。つまり、虹花は死んだってことになる」

 

「ちょっと待って! その羽を落としたっていう可能性は?」

 

 戦が混乱しながらも問いかける。他の息吹以外の面子は、上手く状況が飲み込めていない様だ。

 

『落としたらそれはそれでわかる。反応がなくなる、というのは持ち主が死ぬ以外にない』

 

『レヴ殿まで、何を言い出すのですかな? それならば、何故そんなに冷静でいられるのですな?』

 

 戦が動揺したことによって、逆に冷静になったジャン。

 

「確かに、もし真宮が死んだのなら、もう少し動揺すると思うのだが?」

 

『何か事情があるのね。説明を続けて』

 

 ジャンに続いて冷静さを取り戻した春樹とディペ。

 

「ああ。羽の反応が消えたのは、家の近所の公園だ。そこに、悪霊の気配があった」

 

「悪霊ッスか?」

 

 聞き慣れない単語に、首を傾げる響。

 

「悪霊っていうのは、精霊が人間の負の感情を受けて闇落ちした状態、ていうのがわかりやすいかな」

 

 解説する息吹。なお、水瀬兄妹は精霊が見える。今更か。

 

『さらに、そこには彼女の死体も無かった。この手口は、アンデットモンスターの仕業だと推測できる。更に、反応が消えた数時間後に反応が戻った』

 

「なるほど。言いたいことはよくわかった。つまり、虹花ちゃんを助けたいっつう話だな?」

 

 レヴの言葉で事態を把握した日向。しかし、まだ理解できていない者もいた。主にオッドアイズ。

 

「つまり、だ。アンデットモンスターの仕業なら、虹花は魂だけの状態か、ゾンビにされてるか、はたまたそれ以外か。まぁ、生きていることは確かだ。一度死んだけどな。なら、悪霊から虹花を取り戻したい」

 

 そういう訳だから、と遊羽はつづける。

 

「お前らの力を貸して欲しい。頼む」

 

 そう言い、頭を下げる遊羽。

 

 そんな彼に、肯定の声が掛けられる。

 

「当たり前でしょ。真宮さんを助けなくちゃ」

 

「ま、遊羽の頼みなら尚更♪」

 

「如月に貸しを作っておいて、損はないだろう」

 

「可愛い後輩のためッスからね。頑張るッスよ!」

 

「遊羽が他人を頼るなんて日が来るとはなぁ」

 

 かなり突飛な展開に、それでも協力すると言う彼ら。

 

『虹花殿も主殿のお仲間。力を貸すのは当然ですぞ!』

 

『あらあら。春樹ったら素直じゃないわね』

 

『よくわかんないけど、マスターのためなら♪』

 

 精霊達も、主に従う。若干一名(?)状況を理解していないが。

 

「・・・・・・ありがとう」

 

『感謝する』

 

 顔を上げ、少し笑う遊羽。

 その直後、力が抜けたように倒れる。

 

『遊羽!』

 

 それを支えるレヴ。よく見れば、遊羽の顔は疲労の色が濃い。

 

『すまない。先程、羽の反応が戻るまで、ずっと町を走り回っていたんだ。その羽も、虹花の手元にはないようだ』

 

 つまり、虹花を殺して攫ったモンスターが、羽に気付いたということだ。

 

「悪い、レヴ。・・・・・・そういうことだ。虹花を探すのを手伝ってくれ」

 

 その言葉に、もう一度頷く彼ら。

 

「じゃあ、早速探しに行こう! 遊羽くんは休んでて。結構疲れてるでしょ?」

 

「そうだな。悪い」

 

 そうして、遊羽は図書室にレヴと共に残った。

 その手には、公園で拾った虹花のデッキが握られていた・・・・・・。

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

(あれ、ここは・・・・・・?)

 

 虹花が目を覚ましたのは、倉庫のような場所だった。

 

(確か、生徒会の仕事が終わって、帰り道に、少年に会って・・・・・・)

 

 その場面を思い出す虹花。

 

『キミ、すごくキレイだね! それにカワイイ! そうだ、キミをボクのお嫁さんにしよう! だから・・・・・・』

 

 そう、思い出してしまった。

 

『だから、死んで?』

 

「ッ!!」

 

 そう、自分は死んだのだ。

 彼の手によって、殺されたのだ。

 

「私、わたしは・・・・・・ッ!!」

 

「あ、目が覚めた!」

 

 突然聞こえた声に、虹花は恐怖する。

 それが、自分を殺した少年のものだったからだ。

 

「やっぱりキレイだね! その服も、とても似合ってるよ!」

 

 そう言いながら無邪気に笑う少年。

 

(ッ、怖い・・・・・・!!)

 

 思わず後ずさる虹花。自分を殺した相手が目の前にいるのだから、恐怖するのは当然だろう。

 

『待て。まだネクロナイズは完了していない』

 

 倉庫の奥から響く声。それはまるで、地の底から響いたように聞こえた。

 

「そうだったね。早くしてよ、王サマ」

 

『そう急かすな。これはそう簡単なものではない』

 

 彼らの会話から、虹花は状況を判断しようとする。

 しかし、抵抗虚しく、次の瞬間には気を失ってしまった。




唐突に死んだ虹花。
アンデットモンスターの王サマ・・・・・・誰でしょうかね?
次回はデュエルする予定です。


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摩天楼のHERO

修正したので再投稿です。


 戦達が虹花の捜索を開始した翌日。

 何も手掛かりを得られなかった彼らだが、それでも悪霊との戦いに備えるべく、お互いにデュエルをすることにした。

 悪霊は基本的に夜に行動するので、昼は特訓、ということになったのだ。

 

「よし、それじゃあ始めるッスよ」

 

「うん。よろしくお願いします」

 

 響と戦が、第二デュエル場で向かい合ってディスクを構える。

 

「「デュエル!」」

 

遊民戦

LP8000

 

水瀬響

LP8000

 

「後輩優先ってことで、先攻はあげるッス」

 

「ありがとうございます。僕のターン」

 

 外野には、遊羽と日向がいる。今日も学校を休んで虹花を探しに行きたいが、自重したようだ。

 

「遊羽。あの戦って子、強いのか?」

 

「見てりゃわかる。それと、トーナメントの二位はアイツだぞ?」

 

 遊羽の言葉に驚いた様子の日向。

 

「あんなひ弱そうな子が二位かー。虹花ちゃんは?」

 

「アイツに負けてる」

 

「なっ!?」

 

 日向の認識では、虹花はかなり強い部類に入る。プロには届かないにしても、三年生相手にも十分渡りあえる、そう思っていた。

 

「あんまり、アイツを見くびらねぇ方がいいぞ?」

 

 少し口角をあげながらそう言うと、遊羽は観戦モードに入った。

 日向も見た方が早いと判断したのか、デュエルに集中する。

 

「ワン・フォー・ワンを発動! 手札一枚をコストに、デッキからチューニング・サポーターを特殊召喚!」

 

チューニング・サポーター ☆1 守備力300

 

「ってことは、シンクロデッキッスね」

 

 誰に言うでもなく呟く響。

 

「機械複製術を発動! デッキからチューニング・サポーターを更に二体特殊召喚!」

 

チューニング・サポーター ☆1 守備力300

 

「調律を発動! デッキからジャンク・シンクロンを手札に加えて、通常召喚!」

 

ジャンク・シンクロン ☆3 チューナー 攻撃力1300

 

 蘇生効果は使わないようだ。

 

「チューニング・サポーターは、シンクロ素材となる時、レベル2として扱える! ジャンク・シンクロンで、チューニング・サポーター三体ををチューニング!」

 

3+1+1+2=7

 

「シンクロ召喚! おいで、パワー・ツール・ドラゴン!」

 

パワー・ツール・ドラゴン ☆7 攻撃力2300

 

「チューニング・サポーター達の効果で三枚ドロー! パワー・ツールの効果で、デッキの装備魔法三枚から、ランダムに一枚手札に加えるよ。アームズ・セレクト!」

 

 提示されたのは、三枚の団結の力。選ぶとかランダムとかの要素は一切ない。パワー・ツールではよくあることだ。

 

「カードを三枚伏せて、ターンエンド」

 

遊民戦

LP8000 手札4

場 エクストラ:パワー・ツール・ドラゴン 伏せカード:三枚

 

「うわ、手札多いッスね・・・・・・。実質手札消費一枚ッスよ。自分のターン、ドローッス」

 

 戦のデッキのぶん回り様に若干引き気味の響。しかし、彼女は二年生最強のデュエリスト。

 

「強欲で貪欲な壺を使って、カードを二枚ドローッス」

 

 除外される十枚。

 

「E・HERO ソリッドマンを召喚ッス。効果で手札からE・HERO シャドー・ミストを特殊召喚ッス」

 

E・HERO ソリッドマン ☆4 攻撃力1300

 

E・HERO シャドー・ミスト ☆4 守備力1500

 

「シャドー・ミストの効果で、デッキからマスク・チェンジ・セカンドを手札に加えるッスよ。そのまま発動ッス!」

 

 シャドー・ミストが仮面を被り、姿を変える。

 何故セカンドかは後でわかる。

 

「変身召喚! M・HERO ダークロウ!」

 

M・HERO ダークロウ ☆6 攻撃力2400

 

 見た目や効果が完全に悪役なヒーロー。怖い。

 

「摩天楼 -スカイスクレイパー-を発動ッス!」

 

 デュエル場にビル群が生え、何故か夜になる。屋内なのに。

 

「兄妹そろってHERO。兄妹デュエリストって、デッキが似るのか?」

 

 龍塚兄妹を思い出し、そんなことを呟く遊羽。

 

「いや、おれはシャドー・ミストとM・HEROだけだね。どうにも、邪神をデッキに入れてからドローできなくなっちゃって」

 

 それを否定する日向。彼のデッキは、シルクハットなどのカードはあったものの、HEROのデッキだった。

 彼らは知らないが、精霊と闇のカードは相性が悪く、彼らのHEROには下位精霊が宿っている。邪神は少ないが闇を宿している。それによって、日向はHERO達が引けなくなったのだ。

 

「ふぅん。それで、モンスターゲートで無理矢理出していると」

 

「そ。まぁ、何故かいつもデッキ枚数が危うくなるんだけど」

 

 それもまた、HERO達の機嫌が悪いせいなのだが。

 

「バトル! ソリッドマンでパワー・ツールに攻撃ッス!」

 

 『え、ウソん!?』という顔で驚くソリッドマン。パワー・ツールと響を交互に見る。

 

「摩天楼 -スカイスクレイパー-の効果で、攻撃力が1000上がるッスよ!」

 

E・HERO ソリッドマン 攻撃力1300→2300

 

 攻撃力が上がり、ホッと一息ついた。が、それでも相打ちであることに気付き、涙目でパワー・ツールに特攻、爆発。

 

「「・・・・・・」」

 

 何とも言えない、と言った表情の外野二人。命がけで戦うのがヒーローだと言われればそれまでだが、流石にあれはないだろうという気持ちもある。

 

「ダークロウでダイレクトアタックするッスよ!」

 

「リバースカード、ガード・ブロック! 戦闘ダメージを0にして、カードを一枚ドローするよ」

 

 ダークロウが某ライダーのようにキックを放つも、現れた壁によって防がれる。あ、そのまま地面に落ちた。足を抱えてる。痛いのか? 床をタップしてギブアップの意思表示。プロレスか。

 

「カードを一枚伏せて、ターンエンドッス」

 

水瀬響

LP8000 手札2

場 エクストラ:M・HERO ダークロウ 伏せカード:一枚 フィールド:摩天楼 -スカイスクレイパー-

 

「僕のターン、ドロー!」

 

 これで戦の手札は六枚。ダメージを受けていないことと伏せカードの枚数から、今日も彼のデッキは絶好調のようだ。

 

「魔法カード、ライトニング・ボルテックス! 手札一枚をコストに、ダークロウを破壊!」

 

「ッ! しまったッス!」

 

 足を抱えてるところに運悪く雷が落ちる。それにより、ダークロウは黒こげとなった。元から黒いのでよくわからないが。

 

「墓地のラッシュ・ウォリアーの効果で、除外して墓地のジャンク・シンクロンを回収。おろかな埋葬発動! デッキのドッペル・ウォリアーを墓地に送るよ」

 

 調律で墓地に送られていたラッシュ。手札にあったら脳筋パンチの後押しをしていただろう。

 

「ジャンク・シンクロンを通常召喚! 効果でドッペル・ウォリアーを特殊召喚!」

 

ジャンク・シンクロン ☆3 チューナー 攻撃力1300

 

ドッペル・ウォリアー ☆2 守備力800

 

「ジャンク・シンクロンでドッペル・ウォリアーをチューニング!」

 

3+2=5

 

「集いし星が、鋼に打ち勝つ戦士となる! シンクロ召喚! おいで、ジャンク・ウォリアー!」

 

『今日も今日とて主殿のため、粉骨砕身の覚悟で臨みますぞ!』

 

ジャンク・ウォリアー ☆5 攻撃力2300

 

「精霊ッスね」

 

 元気にフィールドを飛び回るジャン。虹花が誘拐されていることを忘れそうになるくらい普段通りだ。

 

「ジャンク・ウォリアーの効果をチェーン1、ドッペル・ウォリアーの効果をチェーン2、更にリバースカード、暴走闘君! チェーン3! チェーン4以降だから、奇跡の蘇生を発動できる! 発動!」

 

 チェーンに次ぐチェーンにより、デッキにピン差しの奇跡の蘇生を発動させる戦。蘇生させるのは、ワン・フォー・ワンのコストになったカード。

 

「墓地からザ・カリキュレーターを特殊召喚!」

 

ザ・カリキュレーター ☆2 攻撃力?

 

 現れたのはない最強の電子卓上計算機。

 

「そのカードはっ!?」

 

「ザ・カリキュレーターの攻撃力は、フィールドのモンスターのレベル×300アップする!」

 

ザ・カリキュレーター 攻撃力?→2100

 

「ドッペル・ウォリアーの効果でドッペル・トークンを二体特殊召喚! 暴走闘君の効果で、攻撃力が1000アップ!」

 

ドッペル・トークン ☆1 攻撃力400→1400

 

ザ・カリキュレーター 攻撃力2100→2700

 

「ジャンク・ウォリアーの効果! 攻撃力がレベル2以下のモンスターの攻撃力分アップ!」

 

ジャンク・ウォリアー 攻撃力2300→7800

 

『漲ってきましたぞ~!!』

 

 ラッシュなしでこの攻撃力。電卓強い。

 

「バトル! ジャンク・ウォリアーで攻撃! スクラップ・フィスト!」

 

「リバースカード、威嚇する咆哮ッス! そんなの食らったら、一溜まりもないッスよ!」

 

「・・・・・・いいね」

 

 あまりの脳筋さに軽く悲鳴を上げる響。その悲鳴に無自覚ながらもドS故の快感を覚える戦。ちょっと危ない。

 

「カードを伏せて、ターンエンド」

 

遊民戦

LP8000 手札2

場 エクストラ:ジャンク・ウォリアー メイン:ザ・カリキュレーター ドッペル・トークン ドッペル・トークン 魔法・罠:暴走闘君 伏せカード:二枚

 

(団結の力はまだ握ってるんスかね? 装備しなかったのに、何か意味が・・・・・・?)

 

 実際はライトニング・ボルテックスのコストで除外されている。

 

「自分のターン、ドローッス!」

 

 引いたカードを確認。響の口元に、笑みが現れる。

 

「まずはミラクルフュージョンを発動ッス! 墓地のソリッドマンとシャドー・ミストを除外することで融合を行うッス!」

 

 フィールドに渦が現れ、そこに飛び込むソリッドマンとシャドー・ミスト。

 

「融合召喚! E・HEROエスクリダオ!」

 

E・HERO エスクリダオ ☆8 攻撃力2500

 

 現れた闇のヒーロー。

 

「更に装備魔法、魔界の足枷を発動するッスよ!」

 

「それで、ジャンク・ウォリアーの攻撃力を100にするのか・・・・・・」

 

 困惑しながらも遊羽は響の狙いを予想する。しかし、それは裏切られる結果となった。

 

「対象はエスクリダオッス」

 

「「・・・・・・え??」」

 

E・HERO エスクリダオ 攻撃力2500→100

 

 エスクリダオの足に重い鉄球付きの足枷が取り付けられる。彼が何か悪いことをしただろうか? 登場三秒で足枷を付けられるヒーローとは如何なものか。闇属性なのが悪いのか。

 

 予想を裏切られた遊羽と、彼女のプレイングを理解できない戦。そんな中、日向だけが状況を正確に把握していた。

 

(さて、自慢の妹のコンボだ。刮目しろよ?)

 

「魔法カード、スカイスクレイパー・シュートを発動するッス!」

 

「あ、そのカードは!?」

 

「え、何? 説明を」

 

 事態を察し、度肝を抜かれたような顔をする遊羽。まだ自分の危機を理解していない戦。その顔は、対照的だった。

 

「スカイスクレイパー・シュートは、自分のE・HERO融合モンスターより攻撃力が高い相手モンスター全てを破壊し、攻撃力が一番高いモンスターの元々の攻撃力分のダメージを与えるカードッス」

 

 エスクリダオの攻撃力は現在100。戦のモンスターは全滅することになる。

 

「ナニソレ!?」

 

 エスクリダオが摩天楼のビルの一番高い場所に立ち、重い足枷のせいでバランスを崩して落下。それに巻き込まれたジャン達が破壊される。

 

『納得いきませんぞ~!!』

 

 ジャンの断末魔の叫びも虚しく、爆発。衝撃の余波で戦にダメージが飛ぶ。

 

遊民戦

LP8000→5700

 

「・・・・・・酷いコンボだ。俺のドラゴンデッキに対しても有効だしな」

 

 渋い顔でフィールドを見つめる遊羽。日向はドヤ顔だ。

 

「墓地のシャッフル・リボーンの効果発動ッス! 魔界の足枷をデッキに戻して、一枚ドローッスよ」

 

 マスク・チェンジ・セカンドのコストにしたカードだ。このためにセカンドをサーチしたのだ!

 

E・HERO エスクリダオ 攻撃力100→2500

 

 足枷が外れ、本来の力を取り戻すエスクリダオ。まぁ、主によって封じられた力だが。

 

「バトル! エスクリダオでダイレクトアタック!」

 

 エスクリダオが闇を放ち、戦を穿つ。

 

「あ痛たたた・・・・・・」

 

遊民戦

LP5700→3200

 

「カードを一枚セット。ターンエンドッス」

 

水瀬響

LP8000 手札0

場 エクストラ:E・HERO エスクリダオ 伏せカード:一枚

 

「僕のターン、ドロー!」

 

 ターンが戦に移る。

 

『主殿主殿』

 

「? どうしたの、ジャン」

 

『あの下位精霊にぶつかったおかげで、よくわからない能力を手に入れましたぞ』

 

 その能力とやらの詳細を耳打ちされた戦。ビミョーなその内容に困った顔をする。

 

『頼みましたぞ!』

 

「あー、うん・・・・・・」

 

 どうしたものかと悩む戦。しかし、何か思いついたらしく、ディスクを操作し始める。

 

「リバースカード、戦線復帰。ジャンをもう一度場に特殊召喚!」

 

ジャンク・ウォリアー ☆5 攻撃力2300

 

『ふっかぁつ! ですぞ!』

 

 いつものようにハイテンションなジャン。

 

「魔法カード、融合を発動!」

 

「なっ、融合ッスか!?」

 

 響が驚くのも当然だろう。戦が融合召喚を使うのは初めてなのだから。

 

「手札のユーフォロイドと場のジャンで融合召喚! おいで、ユーフォロイド・ファイター!」

 

ユーフォロイド・ファイター ☆10 攻撃力?

 

 現れたのは、ユーフォロイドに乗るジャン。

 

『ゲットライド、ですぞ!』

 

 それはトラップカードだ。

 

「な、何スかそのカード!?」

 

 ユーフォロイド・ファイター。このカードは融合素材となった戦士族モンスターがユーフォロイドに乗っかっただけのモンスター! ハンバーガーが乗っかったこともあったらしい。

 

「ユーフォロイド・ファイターの攻撃力は、融合素材のモンスターの元々の攻撃力の合計になるよ!」

 

ユーフォロイド・ファイター 攻撃力?→3500

 

 そう、攻撃力までもが乗っかっただけ! 戦士族モンスターがフェイバリットのデュエリストはだいたいやる。

 

「装備魔法、巨大化を発動! ユーフォロイド・ファイターの攻撃力が倍になる!」

 

ユーフォロイド・ファイター 攻撃力3500→7000

 

 ユーフォロイド・ファイターの効果は、自身の元々の攻撃力を変化させる効果。巨大化も適用される。

 

「まだまだ! リバースカードオープン! 速攻魔法、リミッター解除! 攻撃力が更に倍になるよ!」

 

ユーフォロイド・ファイター攻撃力7000→14000

 

「な、何つう攻撃力ッスか!? 脳筋すぎるッスよ!」

 

 その悲鳴に、無自覚ながらも確かな快楽を覚える戦。もうコイツダメかもしれない。

 

「バトル! ユーフォロイド・ファイターでエスクリダオを攻撃! スクラップ・ユーフォアタック!」

 

『ぶっちゃけ機械族にすれば誰でもよかったとか言っちゃダメですぞ!』

 

 そんな叫びと共にエスクリダオにそのなんとかアタックを行うジャン。ただの特攻である。

 

水瀬響

LP8000→0

 

「・・・・・・何か、自分のコンボとか、脳筋の前では無力ッスね」

 

 デュエルに負け、幾分かトーンの下がった声で呟く響。それはまるで、戦と戦ったデュエリストの心全てを代弁しているかのようだった。

 

「ま、しょうがないさ。気にしないほうがいいぞ。ところで遊民くん、次はおれとやらない?」

 

「先輩が気にしてるんじゃねぇか」

 

 コントのようなやりとりと共に両者に声をかける外野達。

 

『ジャン、新能力とは何だったのだ?』

 

『フフーン。なんと、拙者を素材としたモンスターに乗り移ることができるようになりましたぞ!』

 

 そう、単なる移り変わりだ。

 例えばジャンを素材としてパワーコード・トーカーをリンク召喚すれば、パワーコード・トーカーにジャンが入っている状態となる。その場合、マフラーなどの装飾品がモンスターに現れるらしい。

 

『なるほど。それで、デュエルの結果には?』

 

『全くと言っていいほど関係ありませんな』

 

 実際は精霊がいることでドロー力が上がったりするのだが、彼らは無自覚である。

 

「さて、それじゃあ遊民くん。覚悟はいいかな?」

 

「えーと、お手柔らかに?」

 

 妹の敵討ちに燃える日向。脳筋対策について真剣に考え始めた響。

 そんな二人を見て、遊羽はため息をつくのだった。




次回、戦vs日向。

戦くん、脳筋すぎ・・・・・・。リスペクトしながらも根幹は揺らがないようです。


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脳筋vsトリッキー

受験勉強で全然書けない!
その分長いデュエルとなっていますので、それで勘弁を。


「さて、それじゃあ遊民くん。覚悟はいいかな?」

 

 ゴゴゴゴゴゴ・・・・・・ゴゴゴゴーレム・・・・・・と文字が背後に流れそうなほどの圧力。妹の仇を相手にすると、兄は強くなるのです。

 

「えーと、お手柔らかに?」

 

 それに対して、冷や汗と苦笑を浮かべて答える戦。彼は無事にデュエルを終えられるのだろうか。

 

「「デュエル!」」

 

水瀬日向

LP8000

 

遊民戦

LP8000

 

「おれの先攻だ。モンスターをセット、カードを二枚セット」

 

 唐突に、日向は戦を指差し宣言した。

 

「このデュエル、おれはノーダメージで勝利する!」

 

「・・・・・・へぇ」

 

 妹の敵討ちだからか、先輩としての余裕か。

 どちらにせよ、戦の怒りに火を付けたことは確かだ。

 

水瀬日向

LP8000 手札2

場 メイン:伏せモンスター 魔法・罠:伏せカード二枚

 

「僕のターン、ドロー」

 

 彼が嫌うのは、『弱い』と言われること。日向の発言は、それと同義だ。

 故に、彼は最初からフルスロットルで飛ばす。

 

「おろかな埋葬を発動! デッキからチューニング・サポーターを墓地に送るよ。続けて、ジャンク・シンクロンを通常召喚! 効果で墓地のチューニング・サポーターを特殊召喚。機械複製術でチューニング・サポーターを更に二体特殊召喚!」

 

ジャンク・シンクロン ☆3 チューナー 攻撃力1300

 

チューニング・サポーター ☆1 守備力300

 

「ジャンク・シンクロンでチューニング・サポーター三体をチューニング! シンクロ召喚! おいで、スターダスト・チャージ・ウォリアー!」

 

スターダスト・チャージ・ウォリアー ☆6 攻撃力2000

 

「チャージ・ウォリアーの効果と、チューニング・サポーター三体の効果発動! デッキから合計四枚ドロー!」

 

 ここまで、手札消費三枚。それを上回るドロー枚数だ。

 

「バトル! チャージ・ウォリアーで伏せモンスターを攻撃!」

 

「リバースカード、マジカル・シルクハット! デッキから魔法・罠二枚をモンスター一体と共にモンスター扱いとしてセットする!」

 

 シルクハットが三つ現れ、伏せモンスターと共にシャッフルされる。イラストは四つなのに。

 

「チャージ・ウォリアーは特殊召喚されたモンスター全てに攻撃できる! まず一つ目! 一番右のシルクハット!」

 

 チャージ・ウォリアーの銃口から、いくつもの光線が放たれ、シルクハットを貫く。

 

「破壊されたのは、アーティファクトの神智! このカードが相手によって破壊された時、相手のカード一枚を破壊する! アーティファクト・トラップ!」

 

「な、しまった!」

 

 シルクハットの中から武器が溢れ、チャージ・ウォリアーに突き刺さる。

 

「・・・・・・(少し焦りすぎたかな)僕はカードを五枚セット。これでターンエンドだよ」

 

遊民戦

LP8000 手札2

場 魔法・罠:伏せカード五枚

 

「(おいおい、あれで手札が残ってるのかよ・・・・・・)おれのターン、ドロー」

 

 内心で軽く驚きながら、カードを引く。

 

「ハーピィの羽根箒を発動! 伏せカードがあったら割ればよい!」

 

 出現した羽根箒で戦側のフィールドを扇ぐ日向。

 しかし、そのカードに対して、戦は軽く笑みを浮かべる。

 

「リバースカード、スターライト・ロード! 僕のカードを二枚以上破壊する効果を無効にして破壊、EXデッキからスターダスト・ドラゴンを特集召喚!」

 

スターダスト・ドラゴン ☆8 攻撃力2500

 

 星屑の輝きと共に現れたのは、白銀の竜。

 

「スターダストか・・・・・・。俺との最初のデュエル以来だな」

 

 遊羽の言うとおり、かなり久しぶりの登場である。ストレス溜まってそうだ。

 

「あれま、やべぇ。・・・・・・しゃーない。カードを二枚伏せて、メタモルポットを反転召喚!」

 

メタモルポット ☆2 攻撃力700

 

「ということで、お互いに手札をリセット」

 

「二枚墓地に送って、五枚ドロー」

 

 入れ替わる手札。デッキの相性的に戦がアドバンテージを得てしまうため、日向はあまり使いたくなかったのだが、こうでもしないと自分が動けないので仕方がない。

 

「今伏せたモンスターゲート発動、メタモルポットをリリースだ」

 

 一枚、二枚、三枚、・・・・・・。

 

「召喚僧サモンプリーストだ。特殊召喚!」

 

召喚僧サモンプリースト ☆4 攻撃力800

 

「う~ん、やれるだけやっちゃうか。手札抹殺! 再び手札交換のお時間です」

 

 またも入れ替わる手札。これも戦が多大なアドバンテージを得ている。

 

「サモンプリーストの効果、手札の魔法カード一枚をコストにデッキからシャドー・ミストを特殊召喚」

 

E・HERO シャドー・ミスト ☆4 守備力1500

 

「シャドー・ミストの効果でデッキからマスク・チェンジ・セカンドを手札に加える。二体のレベル4でオーバーレイ、出でよホープ。そしてホープレイから大正義まで」

 

SNo.39 希望皇ホープ・ザ・ライトニング ★5 攻撃力2500

 

 レベル4が二体出れば大正義。その現状にはため息しかない遊羽だ。

 

(まぁ入手困難だし高いからまだいいか。本の付録が強いカードだと、本の付録がカードなのか、カードの付録が本なのかわからなくなるな)

 

 一冊約500円なので三枚入手に1500円以上。エクストラデッキのカードだからいいものの、メインデッキのカードとなれば破産待ったなしだ。

 

「バトルだ! 大正義でスターダストを攻撃! 効果でオーバーレイユニットを二つ使い、攻撃力を5000に! ホープ剣・大正義・スラッシュ!」

 

SNo.39 希望皇ホープ・ザ・ライトニング ★5 攻撃力2500→5000

 

 ライトニングの剣がスターダストを一刀両断。

 

遊民戦

LP8000→5500

 

「カードを一枚伏せて、ターン終了」

 

水瀬日向

LP8000 手札3

場 エクストラ:SNo.39 希望皇ホープ・ザ・ライトニング 魔法・罠:伏せカード三枚

 

「僕のターン、ドロー。ダークバーストを発動! 墓地のジャンク・シンクロンを手札に戻すよ。そのまま通常召喚! 効果で墓地のドッペル・ウォリアーを特殊召喚!」

 

ジャンク・シンクロン ☆3 チューナー 攻撃力1300

 

ドッペル・ウォリアー ☆2 守備力800

 

「なるほど。シンクロ召喚か」

 

「現れて! 強きを挫くサーキット!」

 

「あれぇ!?」

 

 予想とは異なる展開に、思わず声を上げる日向。

 

「リンク召喚! 来て、聖騎士の追想イゾルデ!」

 

聖騎士の追想イゾルデ link2 攻撃力1600

 

「イゾルデの効果発動! デッキから戦士族モンスター一体を手札に加えるよ。デッキからラッシュ・ウォリアーを手札に」

 

 イゾルデ達が手を合わせ、その間から光が生まれる。その光が戦の手元に移動すると、ラッシュ・ウォリアーのカードになった。

 

「イゾルデの更なる効果! デッキから神剣-フェニックスブレード、巨大化、団結の力、最強の盾を墓地に送って、デッキからタスケナイトを特殊召喚!」

 

タスケナイト ☆4 守備力1000

 

「墓地のジェット・シンクロンの効果発動! 手札一枚をコストに、墓地から特殊召喚!」

 

ジェット・シンクロン ☆1 チューナー 守備力0

 

「ジェット・シンクロンでタスケナイトをチューニング! シンクロ召喚! よろしく、ジェット・ウォリアー!」

 

ジェット・ウォリアー ☆5 攻撃力2100

 

「ジェット・ウォリアーの効果! ライトニングにはエクストラデッキに戻ってもらうよ!」

 

 ライトニングの目前にジェット・ウォリアーが現れ、無言の腹パン。ライトニングは崩れ落ち、エクストラデッキに戻った。

 

「バトル! ジェット・ウォリアーでダイレクトアタック!」

 

「墓地の幻影騎士団シャドーベイルの効果! 墓地からモンスターとして特殊召喚!」

 

幻影騎士団シャドーベイル ☆4 守備力300

 

「ならそのモンスターに攻撃だ!」

 

「リバースカード、マジカル・シルクハット! さぁ、どのシルクハットに攻撃する?」

 

 再び現れるシルクハット。

 

『主殿主殿』

 

(何? ジャン)

 

『サイズ的に、シャドーベイルはシルクハットに入りきらないはずですぞ?』

 

(ちょっと黙ってて!)

 

 ジャンの素朴な疑問は、答えを得ることなく終わった。

 

「今度は真ん中のシルクハットに攻撃!」

 

「当たりだ。シャドーベイルは除外される」

 

 見事シャドーベイルを攻撃したジェット・ウォリアー。しかし、幻影なので殴った気がしない。

 

「続けて、イゾルデで攻撃!」

 

「何ッ!?」

 

 シルクハットの中には何が仕込まれているかわからない。そのため、普通はここで追加攻撃しない。それでも攻撃してきた戦に、日向は驚いたのだ。それと同時に、嫌な予感が彼を襲う。

 

「(まさか、あのカードか?)・・・・・・幻影騎士団ミスト・クロウズ。破壊される」

 

 中身は幻影騎士団愛用の爪装備。墓地で発動する効果を持つ罠カードだ。

 

「リバースカード、オープン! 速攻魔法、ライバル・アライバル! 手札からジャンク・シンクロンを召喚!」

 

「嫌な予感が当たったか!」

 

ジャンク・シンクロン ☆3 チューナー 攻撃力1300

 

 日向もデッキに入れている、奇襲カード。彼は特殊召喚できない邪神を召喚するために使っているが、戦は通常召喚時の効果を発動するために使っている。

 

「効果で墓地のドッペル・ウォリアーを特殊召喚!」

 

ドッペル・ウォリアー ☆2 守備力800

 

「ジャンク・シンクロンで、最後のシルクハットを攻撃!」

 

「シャッフルリボーンだ。破壊される」

 

 これで、日向のフィールドには伏せカードが一枚のみ。

 

「リバースカード、緊急同調! バトルフェイズ中にシンクロ召喚を行う!」

 

「バトルフェイズ中にシンクロ召喚だと!?」

 

 オウム返しに叫ぶ日向。いくら彼でも、この状況は初めてだった。

 

「ジャンク・シンクロンで、ドッペル・ウォリアーをチューニング!」

 

3+2=5

 

「集いし星が、鋼に打ち勝つ戦士となる! シンクロ召喚! おいで、ジャンク・ウォリアー!」

 

ジャンク・ウォリアー ☆5 攻撃力2300

 

『本日二度目の見せ場ですぞ!』

 

「ドッペル・ウォリアーの効果で、ドッペル・トークン二体を特殊召喚! ジャンク・ウォリアーの効果で、自身の攻撃力がアップする!」

 

ドッペル・トークン ☆1 攻撃力400

 

ジャンク・ウォリアー 攻撃力2300→3100

 

「ドッペル・トークンでダイレクトアタック!」

 

「墓地の幻影騎士団ミスト・クロウズの効果発動! 墓地の幻影騎士団フライジャルアーマーと共に特殊召喚!」

 

幻影騎士団ミスト・クロウズ ☆4 守備力0

 

幻影騎士団フライジャルアーマー ☆4 守備力2000

 

「なら、ミスト・クロウズに攻撃!」

 

 ドッペル・トークン二体が無線で会話する。

『こちらアルファ。こちらアルファ。射殺許可を願います』『こちら、墓地のドッペル・ウォリアー。射殺許可を出します』『こちらベータ。こちらベータ。すると、私の相手がいません』『こちら、ドッペル・ウォリアー。諦めろ』『えぇっ!』

 

「・・・・・・自身の効果で特殊召喚したミスト・クロウズは除外される」

 

『こちらアルファ。射殺します』

 ドッペル・トークンαに射殺される幻影の騎士。

 

「ジャンク・ウォリアーでフライジャルアーマーを攻撃! スクラップ・フィスト!」

 

『セイヤァッ!』

 

 ジャンによって、がらんどうの鎧が砕け散る。・・・・・・必然的に中身の幻影は裸となり、あわてて墓地へ引っ込む。

 

「ドッペル・トークンでダイレクトアタック!」

 

「墓地のシャドーベイルを特殊召喚」

 

幻影騎士団シャドーベイル ☆4 守備力300

 

『こちらベータ。こちらベータ。相手が現れました。射殺許可をお願いします』『こちら、ドッペル・ウォリアー。えー、どうしようかな?』『射殺します』『あ、こら勝手に!?』

 ドッペル・トークンβが幻影の騎士を射殺。

 

「よし、これで切り抜けた!」

 

 額の汗を拭いながら気を抜く日向。

 

「甘いな、日向」

 

 そんな彼を見て、遊羽は口角を上げる。

 

「僕のバトルフェイズはまだ終わっていない!」

 

「何ッ!? まさか!!」

 

 彼を更なる嫌な予感が襲う。余りに早いデジャビュだ。

 

「リバースカード、星遺物の目醒め! バトルフェイズ中にリンク召喚を行う!」

 

「今度はリンク召喚か!」

 

 バトルフェイズは自分の独壇場。そう言わんばかりのプレイングだ。

 

「現れて、強きを挫くサーキット! 僕はイゾルデとドッペル・トークン、ジェット・ウォリアーをリンクマーカーにセット! リンク召喚! パワーコード・トーカー!」

 

パワーコード・トーカー link3 攻撃力2300

 

 赤い鎧の戦士。ただしサイバース族。

 

「まだバトルフェイズ中だ! パワーコード・トーカーでダイレクトアタック!」

 

「流石にもう防御札がないなぁ」

 

水瀬日向

LP8000→5700

 

 日向の宣言した、ノーダメージ勝利を打ち砕いた戦。その顔は、まだ憤りを帯びている。

 

「僕はジェット・ウォリアーの効果でドッペル・トークンをリリースして墓地から特殊召喚。ターンエンド」

 

ジェット・ウォリアー ☆5 守備力1200

 

遊民戦

LP5500 手札1

場 エクストラ:パワーコード・トーカー メイン:ジャンク・ウォリアー ジェット・ウォリアー 魔法・罠:伏せカード一枚

 

「・・・・・・いや、すまない。おれは君を見くびっていたらしい」

 

「そうだね。僕は『弱くない』よ」

 

 その言葉を聞いて、苦笑する日向。

 

「謝罪として、おれも『本気』を見せよう。おれのターン、ドロー」

 

 先程までとは異なる空気の日向。その変化に戦は驚く。

 

(本気・・・・・・? 僕は、見くびられていたのか。こんな空気を出せるのに)

 

 日向は戦の響とのデュエルから、ノーダメージで勝利できると考えた。しかし、戦はそのデュエルで本領を発揮しきれていなかった。もし、戦のデッキの本質、奇襲性能について知っていたら、日向もあんな発言はしなかっただろう。

 

 それでも、見くびったのは事実。

 故に、『本気』を出すことでその分を埋める。

 

「おれは幻影騎士団フライジャルアーマーを通常召喚」

 

幻影騎士団フライジャルアーマー ☆4 攻撃力1000

 

 本気と言った割には貧相なモンスターの登場に、戦は怒りを募らせる。

 

「フライジャルアーマーをリリースし、2000LPを払うことで、レジェンド・オブ・ハートを発動! 墓地のティマイオスの眼、クリティウスの牙、ヘルモスの爪を除外し、伝説の騎士を特殊召喚する!」

 

水瀬日向

LP5700→3700

 

「伝説の騎士・・・・・・!!」

 

 伝説の騎士。神のカードや邪神には及ばないながらも、十分に貴重なカード。こちらもオリジナルが世界に一枚、レプリカは世界に数十枚だ。

 

「現れろ、伝説の騎士達!」

 

伝説の騎士 ティマイオス ☆8 攻撃力2800

 

伝説の騎士 クリティウス ☆8 攻撃力2800

 

伝説の騎士 ヘルモス ☆8 攻撃力2800

 

「伝説の騎士達の共通攻撃! 特殊召喚された時、場の魔法・罠を除外する! レジェンダリー・スラッシュ!」

 

 伝説の騎士達が剣を振るうと、伏せカードが除外される。

 

「でも、ジャンク・ウォリアーの攻撃力を超えていないし、パワーコードは攻撃力を倍にする効果もある。僕のライフを削りきることは・・・・・・」

 

「そえはどうかな?」

 

 戦の盛大なフラグは、日向の一言によって回収される。

 

「伝説の騎士達よ! 今こそ、一つになる時!」

 

 ちょっと違うセリフと共に、伝説の騎士達が渦に飛び込む。

 

「融合召喚! 合神竜ティマイオス!」

 

合神竜ティマイオス ☆10 攻撃力?

 

「攻撃力が、決まっていない?」

 

「ティマイオスの攻撃力は、攻撃時にフィールドの一番高い攻撃力と同じになる」

 

「ッ!? それじゃあ・・・・・・」

 

 戦は自らのフィールドに目を向ける。

 パワーコード・トーカーのリンク先にはジャンク・ウォリアー。パワーコード・トーカーの効果の発動には、リンク先のモンスターをリリースする必要がある。ジャンク・ウォリアーを攻撃されたら、ジャンはそのまま破壊されえしまう。

 

(く、ジャンの悲鳴を無意識に期待して、パワーコード・トーカーのコストにする気満々だった・・・・・・)

 

『主殿・・・・・・』

 

 ドS故の無意識の行動によって自らの首を絞めた戦。もうコイツ駄目だ。

 

「バトル! 合神竜ティマイオスでジャンク・ウォリアーに攻撃! インフィニット・スラッシュ!」

 

合神竜ティマイオス 攻撃力?→3100

 

 チェーンの関係上、戦の手札にあるラッシュ・ウォリアーの効果を発動しても相打ちとなる。

 

『さ、流石に伝説の騎士の融合体とか、勝ち目がありませんぞ~!?』

 

 ティマイオスの斬撃にあっけなく破壊されるジャン。大爆発が起こる。

 

「でも、これで合神竜ティマイオスも破壊される・・・・・・!」

 

 そう、ティマイオスの攻撃力はジャンク・ウォリアーと同じ。同じ攻撃力ならば、相打ちになる。

 

「伝説の騎士達がその程度で終わるとでも?」

 

「ですよねー」

 

 爆発による煙が晴れると、そこには・・・・・・

 

伝説の騎士 ティマイオス ☆8 攻撃力2800

 

伝説の騎士 クリティウス ☆8 攻撃力2800

 

伝説の騎士 ヘルモス ☆8 攻撃力2800

 

「合神竜ティマイオスが戦闘破壊された時、伝説の騎士達が舞い戻る!」

 

 登場、合体、攻撃、分離。青眼の白龍で同じことができるが、あちらは融合解除が必要なので、伝説の騎士達の方が一つ上だ。召喚の条件とかは除くが。

 

「伝説の騎士達で攻撃! レジェンダリー・スラッシュ!」

 

遊民戦

LP5500→5000→2200

 

「でも、これでバトルフェイズは終わり・・・・・・」

 

「いや、まだだ! 速攻魔法、ライバル・アライバル!」

 

「!? あなたもそのカードを!」

 

 バトルフェイズ中に召喚を行う速攻魔法。戦のしたプレイングが、そのまま返ってくる。

 

「おれは伝説の騎士達を生け贄に、邪神ドレッド・ルートを召喚!」

 

邪神ドレッド・ルート ☆10 攻撃力4000

 

 彼の二体目の邪神。イレイザーがオシリスならば、こちらはオベリスク。無論レプリカのカードだが、それでも邪神のプレッシャーというのは凄まじい。

 

「邪神・・・・・・ドレッド・ルート・・・・・・」

 

「そ。これがおれの本気。お詫びにはなったかな?」

 

 お詫びでこれとか、イジメか。

 

「ドレッド・ルートでダイレクトアタック! フェーズノックダウン!」

 

(プレミした! 次のターンがあると思ってラッシュ温存してたけど、ジェットに使っていれば墓地のタスケナイトが助けてくれたのに!)

 

 後悔先に立たず。戦は邪神の拳を受ける結果となった。

 

遊民戦

LP2200→0

 

「よし、敵はとったぞ妹よ!」

 

 デュエルが終わり、日向が意気揚々として妹を振り返る。

 

「うわぁ・・・・・・余裕ぶっこいてノーダメージ勝利とか言って、ダメージ受けたら本気出すとか・・・・・・しかも伝説の騎士に邪神とか・・・・・・正直引くッス・・・・・・」

 

 ドン引きだった。まぁ、普通の反応だが。

 

「なっ、そりゃないぜマイリトルシスター!?」

 

「ちょ、近づかないで欲しいッス! こんなのが兄とか、現実を受け止められないッス!」

 

 くい気味に詰め寄る日向、それから逃げる響。

 それを見て、遊羽はまたため息をついた。

 

「どうでもいいが、そろそろ夜だ。悪霊を探しに行くぞ」

 

 その言葉に、じゃれていた二人の動きがピタリと止まる。

 

「さて、それじゃあ虹花ちゃんを殺した悪霊を探しに行きますか」

 

「人の後輩を攫ったんス。覚悟くらいはできてるッスよねぇ・・・・・・」

 

 とたんに空気が変わり、今にも爆発しかねない怒りを放つ。

 デュエルで紛らわせても、怒りは収まらなかったらしい。それどころか、いくらか増したように見える。

 

「おい戦。いつまでボサッとしてんだ。行くぞ」

 

「うん、そうだね」

 

 彼らは悪霊を探すべく、学校を後にした。




次回、悪霊vs遊羽

今更ですが、ミス等ありましたら報告お願いします。(本当に今更)


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遊羽vs悪霊

受験勉強からも現実からも逃げ、ようやく投稿できたと思ったら重大なミス・・・・・・。
直したので再投稿です。


 夜。とある倉庫。

 

「大人しく投降しなさーい! ここは完全に包囲されている!」

 

 メガホンで拡張した日向の声が壁に開いた穴から響く。

 

「つうわけで。テメェら、虹花を返してもらおうか」

 

 穴を開けた張本人、遊羽とその一行は、そこに乗り込んでいた。

 

「クソッ! 何でここがバレたんだ! おい、王サマ!」

 

 狼狽する少年、ゾンビマスター。

 

『馬鹿な・・・・・・精霊を身に纏うなど・・・・・・』

 

 そして、遊羽の姿を見て動揺する王、ドーハスーラ。

 

 その言葉通り、遊羽はレヴを身に纏っていた。《融合》のカードを使って。

 

 黒い軽装を付けたような四肢に、腰と背中から生える橙色の翼。全身の鱗。揺れ動く尻尾。

 その右手には、彼の身長ほどの長さを誇る大剣。

 

「俺の相棒の能力だ。俺と融合できる。簡単に言うと、ゼアルみてぇなもんだな」

 

 ジャンが自身を素材としたモンスターに乗り換えができるように、レヴも《融合》のカードによって、遊羽と融合することができるのだ。ディペのナイチンゲール化、オッドアイズは各形態の衣装など、一定の力を持った精霊には、そういった特殊能力が現れる。

 

「クソ、クソ、クソ! 何だよそれ! インチキじゃないかよ!」

 

「オレからすれば、人間を殺してアンデットにする方がインチキなんだがな・・・・・・」

 

 ため息まじりで春樹が呟く。

 

「こうなったら、デュエルでカタを付けてやる! 勝って、キミ達もアンデッドにしてやるよ!」

 

「そうこなくっちゃな」

 

 ゾンビマスターと遊羽がディスクを構える。

 

(これ、僕らがいる必要なかったんじゃ?)

 

「もしも敵が逃げたときのための保険だよ♪ あぁ見えて、遊羽は慎重なんだ」

 

 戦の心の呟きに何気なく返す息吹。

 

「・・・・・・今、心を読んだよね?」

 

「いやぁ何のことかなぁ!!」

 

 全力で己の失態をなかったことにする息吹。誤魔化されたわけではないが、デュエルが始まるので戦はとりあえず置いておくことにした。

 

「「デュエル!」」

 

ゾンビマスター

LP8000

 

如月遊羽

LP8000

 

「ボクが先攻だ! フィールド魔法、アンデットワールドを発動! これでここはボク達の楽園となる!」

 

 倉庫内が不気味な空気で満たされ、おぞましい死体の世界となる。

 

「続けて、ユニゾンビを召喚!」

 

ユニゾンビ ☆3 チューナー 攻撃力1300

 

 現れたのは、デュエットをするゾンビ二人組。元は2人3脚ゾンビだったが、ドーハスーラの力で強化されている。

 

「ユニゾンビの効果! 自身のレベルを一つ上げることで、デッキから真紅眼の不死竜を墓地へ送る!」

 

ユニゾンビ ☆3→4

 

「ボクはカードを一枚伏せて、ターンエンド!」

 

ゾンビマスター

LP8000 手札2

場 メイン:ユニゾンビ 魔法・罠:伏せカード フィールド:アンデットワールド

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 遊羽の現在のデッキは、以前彼が使っていたWWドラグニティザボルグを更に強化したものだ。

 自分のために作ったドラゴンデッキではなく、自分以外のために作ったこのデッキの方が、今は合っていると考えたためだ。

 そして、彼が全力を出すためでもある。

 

「ザボルグがアドバンス召喚できねぇのはキツいな。つうわけで、ツインツイスター発動! 伏せカードとアンデットワールドを破壊だ!」

 

「リバースカード、リターン・オブ・アンデット! ユニゾンビを除外して、墓地の真紅眼の不死竜を特殊召喚!」

 

真紅眼の不死竜 ☆7 守備力2000

 

 不死の名の通り、墓地から蘇るレッドアイズ。

 

「・・・・・・おい。まさかテメェ、精霊を悪霊化してアンデットに変えたのか!?」

 

「そうだよ。こんな使えない通常モンスターも、今は立派なアンデットだ。全く、感謝してほしいよね」

 

 ゾンビマスターの何気ない言葉に、遊羽の怒りが爆ぜた。

 

「テメェ! ドラゴンを、レッドアイズをアンデット化しただと!! 使えないカードだと!? 虹花の分も合わせて、俺はもう怒りが収まらねぇよ!!」

 

 彼は、なるべく冷静でいようとしていた。心を乱せば、プレイミスに繋がる。もしそれが原因で虹花を助けられなければ、悔やんでも悔やみきれない。

 だが、それすらも考えられない。

 

「ぶっ潰す! 来い、アイス・ベル! グラス・ベル!」

 

WW-アイス・ベル ☆3 チューナー 守備力1000

 

WW-グラス・ベル ☆4 守備力1500

 

 アイス・ベルの効果でデッキのグラス・ベルと共に特殊召喚。遊羽の十八番(おはこ)だ。

 

「グラス・ベルの効果でデッキからスノウ・ベルを手札に加え、アイス・ベルの効果で500ダメージだ!」

 

「うぐっ!」

 

ゾンビマスター

LP8000→7500

 

「スノウ・ベルの効果で自身を特殊召喚! 更にスノウ・ベルとアイス・ベルをリリース! アドバンス召喚! 来い、轟雷帝ザボルグ!」

 

轟雷帝ザボルグ ☆8 攻撃力2800

 

 現れ出でる、雷の化身。彼の怒りに共鳴するかの如く、電撃が標的を穿つ。・・・・・・標的(自分自身)を。

 

「ザボルグの効果で、お互いにエクストラデッキから八枚、墓地へ送る!」

 

 ザボルグが自ら雷を浴び、その光が両者のエクストラデッキのカードを貫いた。

 

「俺は旧神ヌトスの効果発動! コイツが墓地へ送られた時、相手のカードを一枚破壊だ! 墓地で眠ってろ、レッドアイズ!」

 

 怒りながらもドラゴンに対する心は忘れない遊羽。きっちりとレッドアイズに手を合わせる。

 

「俺はカードを一枚伏せ、ターンエンドだ」

 

如月遊羽

LP8000 手札1

場 メイン:WW-グラス・ベル 魔法・罠:伏せカード

 

「クソ、ボクのエクストラデッキをよくも! ボクのターン、ドロー!」

 

 ゾンビマスターのエクストラデッキは残り二枚。恐らくアンデット化したモンスターだろう。

 

「二体のキメラフレシアの効果で、デッキからミラクルシンクロフュージョンを二枚、手札に加えるぜ」

 

「構わない! おろかな埋葬を発動! デッキから屍界のバンシーを墓地へ送る! その効果で、除外してデッキからアンデットワールドを発動する!」

 

 再び倉庫が屍の世界に包まれる。

 

「そのカードは・・・・・・」

 

 虹花だ。そのカードを見た瞬間、遊羽にはわかった。

 

「あ、気づいた? そうそう、これ、ボクのお嫁さん! カワイイでしょ!」

 

 無邪気に笑う少年。しかし、遊羽の怒りは増すばかりだ。

 

「テメェ、勝手に他人(ひと)の女を攫って嫁とか、ふざけてんのか?」

 

「え、知らないよ。そんなの。ボクが気に入ったんだ。ワザワザ王サマに頼んでアンデットにまでしてもらったんだ、あげないよ!」

 

 完全に虹花をモノとして扱う少年。

 

「・・・・・・そうか」

 

 絶対に殺す。

 遊羽の心はそれで一杯になりそうだった。

 

「墓地のリターン・オブ・アンデットの効果発動! 除外されているユニゾンビをデッキに戻して、このカードをセットする! 不知火の隠者を通常召喚!」

 

不知火の隠者 ☆4 攻撃力500

 

「効果で自身をリリース! デッキからユニゾンビを特殊召喚!」

 

ユニゾンビ ☆3 チューナー 守備力0

 

「ユニゾンビの効果発動だ! グラス・ベルのレベルを一つ上げて、デッキからグローアップ・ブルームを墓地へ送る!」

 

WW-グラス・ベル ☆4→5

 

「それは、グローアップ・バルブ? 一体、今までどれだけの精霊を狩ってきたんだ?」

 

 外野から観戦していた息吹が目ざとくカードを見極める。ソリティアで使うカードだから、尚更よくわかるのだろう。

 

「グローアップ・ブルームの効果! 除外することで、デッキからレベル5以上のアンデットを手札に加える! ただし、ボクのフィールドにアンデットワールドがあることで、代わりに特殊召喚できる! 出すのはボク達の王サマ、死霊王 ドーハスーラ!」

 

死霊王 ドーハスーラ ☆8 攻撃力2800

 

『フハハハハハハハ! 精霊を纏いし者よ、貴様もアンデットにしてやろう!』

 

 終わりも始まりもない蛇の王(ウロボロス)。この事件の諸悪の根源といっていい存在だろう。

 

「チッ、面倒なモンスターが出てきたな。悪霊が精霊のカードを使うとか、前代未聞だぜ」

 

「失礼な! ボクは死霊だ! 一度死んで、王サマによって蘇った選ばれし者! そこんじょそこらの悪霊なんかと一緒にするな!」

 

 悪霊ではなく死霊。それを統べるのが死霊王であるのは必然と言える。

 

「ユニゾンビのもう一つの効果! 手札を一枚墓地に送って、グラス・ベルのレベルを一つ上げる!」

 

WW-グラス・ベル ☆5→6

 

 一見無意味に見えるこの行動。だが、ドーハスーラによって意味を持つ。

 

「ドーハスーラの効果発動! アンデット族の効果が発動したことで、場のカード一枚を除外! 消え去れ、グラス・ベル!」

 

 (アイス・ベルの効果で)呼ぶだけ呼んで好き勝手に(効果の対象として)使うだけ使ってやる事やり切ったらまた(竜の渓谷のコストとして)捨てるだけじゃ飽き足りなくてそんな事(除外)まで―――ただでさえ(アドバンス召喚で)踏まれる(リリースされる)のだって辛いのに…酷い!!

 

 なんて声が聞こえてきそうな最後だった。

 

「更に、今コストにした馬頭鬼の効果発動! 墓地から除外して墓地の不知火の隠者を特殊召喚!」

 

不知火の隠者 ☆4 守備力0

 

「チューナーとそれ以外のモンスター・・・・・・まさか!!」

 

「おい何合いの手入れてるんだ戦? フラグを立ててんじゃねぇよ」

 

 ついついやってしまった戦。悪意はない。

 

「ボクはユニゾンビで不知火の隠者をチューニング! シンクロ召喚! 真紅眼の不屍竜!」

 

真紅眼の不屍竜 ☆7 攻撃力2400

 

「テメェ・・・・・・レッドアイズのシンクロモンスターまで・・・・・・」

 

「ネクロドラゴンの効果! お互いのフィールドと墓地のアンデットモンスターの数だけ攻撃力があがる・・・・・・ありがと、ザボルグとか使ってくれて」

 

「な、しまった!」

 

 ザボルグ自身を含め、十七枚も墓地にカードを増やしてしまった。こればかりはデッキの相性もあるが、今回はそれが悪すぎた。

 

 遊羽の墓地にはツインツイスターのコスト含めて十二枚。少年は十一枚。フィールドきは二体のモンスター。合計二十五枚。よって攻撃力は・・・・・・

 

真紅眼の不屍竜 攻撃力2400→4900

 

「バトルだ! 行け、ネクロドラゴン! 奴を焼き尽くせ!」

 

 ネクロドラゴンのブレスが遊羽を襲う。

 

「ぐぁっ!」

 

如月遊羽

LP8000→3100

 

「王サマ! 頼んだよ!」

 

『いいだろう。食らえ、アンデット・レイ!』

 

 ドーハスーラの杖から光が放たれ、竜の身体を貫く。

 

「ぐうぅぅぅ!」

 

如月遊羽

LP3300→300

 

「ボクはこれでターンエンドだ! さぁ、キミのターンだよ?」

 

ゾンビマスター

LP7500 手札0

場 エクストラ:真紅眼の不屍竜 メイン:死霊王 ドーハスーラ 魔法・罠:伏せカード

 

「俺の、ターン!」

 

 ゾンビマスターが悪霊、もとい死霊であるせいで、デュエルのダメージはそのまま遊羽の身体へのダメージとなっている。

 残りライフ300。それがどれだけ危機的状況かは、火を見るよりファイアーだ。

 

「ドロー!」

 

 それでも、遊羽は折れない。

 

 少年は、彼の大切なものに手を出した。それは、遊羽の戦う理由となり、今は彼を支えている。

 

(コイツは、虹花を攫い、殺し、挙げ句モンスターにした。それだけで、十分!!)

 

 十分、殺す理由となる。

 

「貪欲な壺を発動! 墓地のスノウ・ベル、ヌトス、ザボルグ、キメラフレシア二枚をデッキに戻し、カードを二枚ドロー」

 

 ちょっとキモい壺にカードが入り、鼻からカードが飛び出る。

 

「俺はドラグニティ-ドゥクスを召喚! 効果発動!」

 

ドラグニティ-ドゥクス ☆4 攻撃力1500

 

『我が能力により、それを無効とする』

 

 ドーハスーラの能力により、止められる。

 

「なら、俺はドラグニティの神槍を発動! ドゥクスに装備!」

 

ドラグニティ-ドゥクス 攻撃力1500→1900

 

「神槍の効果により、デッキからファランクスを装備し、特殊召喚!」

 

ドラグニティ-ファランクス ☆2 チューナー 守備力1100

 

「俺はファランクスでドゥクスをチューニング!」

 

2+4=6

 

「来い、ドラグニティナイト-ハールーン!」

 

ドラグニティナイト-ハールーン ☆6 チューナー 攻撃力1200

 

「ハールーンの効果発動! 墓地のファランクスを装備する!」

 

『無駄だ! 我が能力により除外する!』

 

 だが、彼には前のターンに加えたカードがある。

 

「ミラクルシンクロフュージョンを発動! 墓地のWW-ウィンター・ベルとアイス・ベルを除外して、融合! 冬の鈴の音、氷の音! 今交わりて、凍てつく結晶となれ! 融合召喚! WW-クリスタル・ベル!」

 

WW-クリスタル・ベル ☆8 攻撃力2800

 

 舞い踊る氷の女王。

 遊羽の奥の手。春樹のスターヴと同じように、モンスターの力をコピーする融合モンスター。

 

「クリスタル・ベルの効果発動! 墓地の混沌幻魔アーミタイルを除外して、その名前と効果を得る! クリスタル・オーダー!」

 

 遊羽は以前、このアーミタイルの悪霊と戦ったことがあった。これは、その時の戦利品だ。もちろんオリジナルではなくレプリカだが、戦力に変わりはない。

 

『ぬぅ、もう我が能力は使えぬ・・・・・・』

 

「ちょ、何やってんのさ王サマ!」

 

 ゾンビマスターがドーハスーラに憤慨する。能力の発動タイミングを任せたのは他ならぬ彼なのだが。

 

「アーミタイルの効果は、俺のターンの間、自身の攻撃力を10000上げる効果だ」

 

「な、攻撃力を10000上げるだって!?」

 

WW-クリスタル・ベル 攻撃力2800→12800

 

 オマケで戦闘破壊されない効果もあるが、今は重要じゃない。

 

「これでトドメだ。クリスタル・ベルでネクロドラゴンを攻撃! 混沌のクリスタル・ブレイク!」

 

 クリスタル・ベルが氷の塊を作り上げ、それをネクロドラゴンに投げつける。

 

「う、うわあぁぁぁぁあ!」

 

『クッ、おのれぇぇぇぇぇえ!』

 

ゾンビマスター

LP7500→0

 

「うおっ!?」

 

 閃光、爆発。

 それが晴れた時には、彼らのデッキが落ちているのみだった。

 

(やった、のか・・・・・・?)

 

 浮かび上がった疑問を無視し、遊羽はそれを拾い上げ、屍界のバンシーのカードを手に取る。

 

「・・・・・・来い、虹花」

 

 彼が精霊の力を注ぎ込むと、カードから光が放たれ、人の形を作る。

 

「・・・・・・遊、羽?」

 

「虹花!」

 

 白くなった髪。冷たい身体。薄い衣服。

 それでも、彼の愛する真宮虹花だった。

 

「よかった・・・・・・無事で、本当によかった・・・・・・」

 

 心底安心したような声を出すと、遊羽はそのまま倒れ込む。

 

「!? 遊羽!」

 

 慌てて虹花が駆け寄ると、遊羽の融合が解け、レヴが代わりに顕現する。

 

『クッ、やはり遊羽への負担が大きかったか・・・・・・』

 

 見ると、ゾンビマスターからのダメージで、遊羽はボロボロだった。

 遠巻きに様子を窺っていた戦達も急いで合流する。

 

「ゆ、遊羽くん!?」

「如月!」

「遊羽!」

 

 三者三様に名前を呼び、容態を確認する。

 

(マズい・・・・・・このままだと死ぬ)

 

 そう判断した息吹は、腰のデッキケースからカードを一枚取り出し、遊羽のディスクにセットする。

 

『息吹殿、それは?』

 

「《超再生能力》だ。これで、死ぬことはないはずだ」

 

 ディアン・ケトでもよかったが、生憎持ち合わせていなかった。

 

「よくわかりませんが・・・・・・とにかく、遊羽はもう大丈夫なんですか?」

 

「一応は、ね」

 

 こうして、遊羽とその一行により、虹花が攫われた事件は解決した。

 

(ただ、このカード、使うと相手がドラゴンになっちゃうんだけど・・・・・・死ぬよりはいいと思ってね)

 

 二人ほど、人間ではなくなったが。




リターン・オブ・アンデットを使わなかったのは理由がちゃんとありますのでそれは次回。


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裏話

筆が進んだので早速投稿。

今回、胸糞注意です。


「クソ・・・・・・クソクソクソ! 何でボクがこんな目に・・・・・・」

 

 ゾンビマスターは逃げていた。デュエルの決着がつく瞬間、倉庫の地下通路に逃げ込んだのだ。

 

『だがこれが最善手だ。セキュリティに包囲されていては、彼らをアンデットにしたところで逃げられるかどうかわからなかったのだからな』

 

 彼らは遊羽にわざと負け、一時撤退をすることを選んだ。

 トドメのタイミングで《リターン・オブ・アンデット》を使えば、デュエルを続けることはできたが、それでは逃亡のための体力が保たないとドーハスーラが判断した。

 

「クソ! 絶対、ゼッタイに許さない! 必ずアンデットにして、一生こき使ってやる!」

 

 天を睨み、固く誓うゾンビマスター。

 

「ネクロナイズは完了してるんだ。ボクのお嫁さんも、いつでも回収できる」

 

 そう言って、《アンデット・ネクロナイズ》のカードを確認する。

 

 彼らの《アンデット・ネクロナイズ》は、精霊としての力により死人をアンデットとして思うがままにできる。やろうと思えば、今すぐ《屍界のバンシー》となった虹花を操ることが可能なのだ。

 

 だが。世の中は、そう上手くいかないのが常だ。

 

「おーおーおっかないこと言うねぇ。なら、尚更見逃すわけにはいかなくなったな」

 

「そうッスね。可愛い後輩を殺された上、操られたとあっては先輩としての顔がないッス」

 

 彼らの行く手を阻む、二つの影。

 

「《満足アンカー》(提供:ワンキル・ソリティア研究会)射出!」

 

 その声と共に、ゾンビマスターのディスクにアンカーが巻きつく。

 

「ここを通り抜けたければ、このおれ水瀬日向を倒してからにしな! ・・・・・・くぅ! 一回言ってみたかったんだよこのセリフ!」

 

「兄さん、今の発言で色々台無しッス」

 

 影の正体は、遊羽達の先輩、水瀬兄妹だ。

 

(おれがあの時、デュエルに誘ってなければ、こんなことは起きなかったかもしれない。ただのタラレバだけど、それでもおれの気が済まないッ!)

 

 日向達も、彼らなりに責任を感じていたのだ。そのため、遊羽達には知らせず、ゾンビマスター達を完全に葬るつもりだった。

 

(だが、もしここでおれが負ければ・・・・・・)

 

 恐らく、彼らの言葉通りにアンデットにされるだろう。だが、それでも。

 

「響。もしおれが負けたら」

 

「デッキなら拾うッスよ。安心してデュエルするッス、兄さん」

 

「そうしてくれ」

 

 せめて、デッキと妹だけは守る。人として、デュエリストとしての最低限のラインだ。

 

「ただ、それは保険ッス。本当に負けたら、承知しないッスよ」

 

 響の言葉を背に、日向は腰のポーチからデッキを取り出し、ディスクにセット。そのデッキは、明らかに分厚い。

 

「クソ! 上等だ、まずはキミからアンデットにしてやるよ!」

 

「「デュエル!」」

 

水瀬日向

LP8000

 

ゾンビマスター

LP8000

 

「おれのターンだ。モンスターとカードをセット。これでターンエンド」

 

水瀬日向

LP8000 手札3

場 メイン:伏せモンスター 魔法・罠:伏せカード

 

「ハッ! 威勢の割にはそれだけか! ボクのターン、ドロー!」

 

『分厚いデッキ故の事故か? 哀れなものだな』

 

 好き勝手に日向を馬鹿にするアンデット共。

 しかし、日向は無表情だ。

 

「チッ! ボクは闇竜の黒騎士を召喚!」

 

闇竜の黒騎士 ☆4 攻撃力1900

 

 現れたのは、白竜の聖騎士によく似たモンスター。ステータスも同じことから、恐らく狩った精霊をアンデット化したのだろう。

 

「バトル! やれ、闇竜の黒騎士!」

 

 自身を殺した主の命を受け、屍は攻撃を行う。

 

「伏せモンスターは、翻弄するエルフの戦士だ」

 

翻弄するエルフの剣士 ☆4 守備力1200

 

 翻弄する、という名前とは裏腹に、がっちりと攻撃を受け止めるエルフの剣士。

 

「(クソ! さっきのデュエルでデッキのカードをいくつか失った!)・・・・・・ボクはカードを一枚伏せてターンエンド」

 

「まぁ待てよ。バトルフェイズ終了前に、マジカル・シルクハットを発動! デッキから二枚の魔法・罠をモンスターとして伏せる。そして、バトルフェイズ終了時に破壊される」

 

 登場三秒で消えるシルクハット。彼の代名詞とも言えるカードだ。

 

「破壊されたZ-ONEの効果発動だ! 墓地から冥界の宝札を手札に加える」

 

「クソ! ボクのターンだぞ! 改めて、ターンエンドだ!」

 

ゾンビマスター

LP8000 手札4

場 メイン:闇竜の黒騎士 魔法・罠:伏せカード

 

「おれのターン、カードドロー」

 

 これで彼の手札は初期値と同じ五枚。トリッキーなカードを使う割には堅実なプレイングだ。

 だが、それもここまで。

 

「冥界の宝札を発動! これでおれはモンスターを二体以上リリースアドバンス召喚するたび、カードを二枚ドローできる!」

 

「何かと思えば、時代遅れなアドバンス召喚か! 大したことないな、キミ!」

 

 ゾンビマスターから無邪気な悪意を受けながら、日向はカードをディスクに置いていく。

 

「ジェスター・コンフィは特殊召喚できる。特殊召喚!」

 

ジェスター・コンフィ ☆1 攻撃力0

 

「おれは二体のモンスターをリリース! アドバンス召喚! 来い、EM スカイ・マジシャン!」

 

EM スカイ・マジシャン ☆7 攻撃力2500

 

 ステータスが主人公の相棒なマジシャン。実際は主人公の父親のエースだ。

 

「冥界の宝札の効果で二枚ドロー! よし、ドラゴノイド・ジェネレーターを発動!」

 

水瀬日向

LP8000→7000

 

「スカイ・マジシャンの効果発動! 1ターンに一度、魔法カードを発動すれば攻撃力が300上がる! Sky・Hi!」

 

EM スカイ・マジシャン 攻撃力2500→2800

 

「ドラゴノイド・ジェネレーターの効果! 1ターンに二度まで、おれの場にドラゴノイド・トークンを特殊召喚する! エンドフェイズに、相手の場に同じ数だけドラゴノイド・トークンを特殊召喚されるが、問題ない! 来い、トークン達!」

 

ドラゴノイド・トークン ☆1 攻撃力300

 

 竜をあしらった置物が二つ、《ドラゴノイド・ジェネレーター》から飛び出す。

 

「更に、二重召喚を発動! おれはもう一度通常召喚を行える! ドラゴノイド・トークン二体をリリースし、アドバンス召喚! 来い、クラッキング・ドラゴン!」

 

クラッキング・ドラゴン ☆8 攻撃力3000

 

 ヒャッハノイやリボルバーやバイト愛用のドラゴン。ただし機械族。

 

「バトル! クラッキング・ドラゴンで闇竜の黒騎士を攻撃! クラックアップ・フィニッシュ!」

 

 ワニを連想するような攻撃名から、クラッキング・ドラゴンがブレスを放つ。

 

「ぐわぁっ! クソ!」

 

ゾンビマスター

LP8000→6900

 

「続けて、スカイ・マジシャンで攻撃! スカイスクレイパー・シュート!」

 

 HEROを使っていたためか、摩天楼を幻視するような攻撃名。

 それに従い、スカイ・マジシャンがスカイダイビング。

 

「どわっ!」

 

ゾンビマスター

LP6900→4100

 

「おれはカードを一枚セット。エンドフェイズ、おまえにドラゴノイド・トークンをプレゼントだ」

 

ドラゴノイド・トークン ☆1 攻撃力300

 

「クラッキング・ドラゴンの効果発動! 相手がモンスターを召喚、特殊召喚したとき、そのレベル×200、攻撃力を下げて、その分のダメージを相手に与える!」

 

ドラゴノイド・トークン 攻撃力300→100

 

ゾンビマスター

LP4100→3900→3700

 

「クソ、こんなヤツらいらないっていうのに!」

 

「おれはこれでターンエンド」

 

水瀬日向

LP7000 手札3

場 メイン:クラッキング・ドラゴン EM スカイ・マジシャン 魔法・罠:冥界の宝札 ドラゴノイド・ジェネレーター 伏せカード

 

『これだけのモンスターを召喚しながら、手札を三枚残すだと・・・・・・』

 

 驚愕と感嘆の入り混じった声を出すドーハスーラ。敵ながらも、やはり精霊としてはプレイングが気になるらしい。

 

「ボクのターン、ドロー! 牛頭鬼を召喚!」

 

「クラッキング・ドラゴンの効果発動だ」

 

牛頭鬼 ☆4 攻撃力1700→900

 

ゾンビマスター

LP3700→2900

 

「クソ、アンデットワールドを発動! ここは、ボクらの楽園となる!」

 

 辺りに腐った肉の匂いが立ち込め、屍の世界だ出来上がる。

 

「牛頭鬼の効果発動! デッキから、グローアップ・ブルームを墓地に送る! そして効果発動! 墓地から除外して、デッキからボクらの王サマ、死霊王 ドーハスーラを特殊召喚!」

 

「させるか! リバースカード、虚無空間! お互いにモンスターを特殊召喚できない!」

 

 便利な汎用カードの一枚。だが、この状況には強く刺さる。

 

『おのれぇ・・・・・・!』

 

「クソ、クソ、クソ! ボクはドラゴノイド・トークン二体を守備表示に変更! ターンエンドだ!」

 

ゾンビマスター

LP2900 手札3

場 メイン:牛頭鬼 ドラゴノイド・トークン ドラゴノイド・トークン フィールド:アンデットワールド

 

 もはや涙目になっている少年。日向は子供を泣かせたことに若干の罪悪感を覚えるが、後輩を殺した相手だと思い出し、それもなくなる。

 

「おれのターン、ドロー。帝王の烈旋を発動! これで、おれはアドバンス召喚するとき、おまえのモンスター一体をリリースできる! 更に、虚無空間も解除される! 更に更に、スカイ・マジシャンの攻撃力も上がる!」

 

EM スカイ・マジシャン 攻撃力2800→3100

 

 虚無空間のデメリットは、自分のフィールドかデッキのカードが墓地に送られること。当然、魔法カードは使った後に墓地へ行く。

 

「ドラゴノイド・ジェネレーターの効果発動! 来い、ドラゴノイド・トークン!」

 

ドラゴノイド・トークン ☆1 攻撃力300

 

 再びカードから置物が二つ飛び出す。よく考えれば、この置物で27回顔面を殴ればデュエルに勝てる。ナニソレ怖い。

 

「魔法カード、サイクロン! アンデットワールドを破壊だ!」

 

 アンデットワールドの隠れた効果、アンデット以外アドバンス召喚できない制約を解除するためだ。

 

「ドラゴノイド・トークン二体と、おまえのドラゴノイド・トークンをリリース! 来い、邪神アバター!」

 

邪神アバター ☆10 攻撃力?

 

『な、邪神のカードだと!? このような子供が何故!?』

 

 驚愕するドーハスーラ。先程特殊召喚を妨害されたことが吹っ飛ぶ程の驚きようだ。

 

 邪神アバター。彼が従える三体目の邪神にして、最強の邪神。オリジナルの力は、オリジナルのラーの翼神竜に匹敵する。

 

「まずは冥界の宝札の効果で二枚ドロー! そしてアバターの効果! このカードの攻撃力と守備力は、フィールドの一番高い攻撃力を100上回った数値となる!」

 

邪神アバター 攻撃力?→3200

 

「クソ! 何だよソレ! 邪神のカードとか聞いてない! 無効だ無効! そんなの無効だ!」

 

 子供のように泣き喚くゾンビマスター。実際に身体は子供だが、それでも相手の心を苛立たせる。

 

「バトルだ。クラッキング・ドラゴンで牛頭鬼を攻撃! クラックアップ・フィニッシュ!」

 

 クラッキング・ドラゴンが牛頭鬼に噛みつき、噛み砕き、吐き捨てる。機械の舌にもアンデットは不味いらしい。

 その吐き捨てた牛頭鬼だったものが、少年に直撃する。

 

「うわぁぁぁあっ!」

 

ゾンビマスター

LP2900→1600

 

「スカイ・マジシャンでドラゴノイド・トークンを攻撃!」

 

 軽く置物を壊す魔術師。フラフープを回しながらで余裕そうだ。

 

「終わりだ。邪神アバターでダイレクトアタック!」

 

 主の命を受け、ゆっくりと少年に近づく邪神アバター。

 

「う、うわぁぁぁあっ! く、来るな、来るなぁっ!」

 

 蠢きながら、近づく暗黒の太陽には、どんなモンスターであれど、本能的な恐怖を覚える。

 

「ーーーー! ーーーっ!」

 

 もはや声にならない叫びを上げ、邪神から逃げようとする少年。だが、走り出したところで腕が引っ張られ、その場で転倒する。

 

「っ!?」

 

 日向が最初に放った《満足アンカー》だった。それにより、逃げることは許されない。

 それでも尚もがき、地面を這う。

 

「ーーーーぁ」

 

 抵抗も虚しく、彼は邪神にあっさりと飲み込まれた。

 

『・・・・・・』

 

 それを見ていた死霊王。しかし、彼は逃げることもしない。

 

 

 

 理解してしまったのだ。『王』では『神』には勝てない、と。

 

 

 

 数秒後、蛇は少年と同じ末路を辿った。




日向はシルクハットを使うデッキを三つ持っています。それぞれに邪神が一体(柱?)。
今回のは芝刈りもない60枚デッキ。彼が使いたい高レベルモンスターを全部つぎ込みました。


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事件の後で

冬休みなので書きたい放題。

デュエルなしです。


 朝の日差しに遊羽が目を覚ますと、そこは愛しのマイホーム。

 

(・・・・・・あれ、俺どうなったんだっけ?)

 

 寝起き故に朦朧とする意識をはっきりさせるべく、身体を起こそうとすると、右半身に冷たく気持ちいい感触がある。

 疑問に思い布団をどけてみれば、そこには髪の白くなった幼なじみ。

 

「・・・・・・何やってんだよ虹花ぁ・・・・・・」

 

 どこぞの団長のように叫びたい衝動を抑え、起こさないようにあくまで小声で呟く。

 

「・・・・・・すぅ、すぅ」

 

 とても癒される寝顔だ。触れたら壊れてしまいそうな程白い肌、透き通るように白い髪、そこから鎖骨までのラインと形の良い胸元・・・・・・。

 胸元?

 

「っ! 服ぐらい着ろよ」

 

 目を逸らさずに注意するが、寝ているため伝わらないだろう。

 

「ったく、寝ている間に俺が襲ったらどうするつもりだよ」

 

 無論、そんなことはしないが。具体的には後二年間。

 

「・・・・・・飯でも作るか」

 

 遊羽は虹花を起こさないようにゆっくりと布団を出ると、そのままダイニングのある一階へ降りた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「おはよう、遊羽」

 

「ああ、おはよう」

 

 聞こえてきた声に反射的に挨拶をする。キッチンで朝食を作っているらしい。

 

(・・・・・・誰が?)

 

 部屋にあるデュエルディスクを拾い、腕に装着。

 

 もし不審者ならば《満足アンカー》で強制的にデュエルをしかけ、お互いのカード効果が全て非表示になる《アンノウンパーツ》で困惑させたところを《電撃ビリビリヘルデュエルセット》で痛めつけ、最後には負けた相手の顔写真を撮って顔芸に変換してカードにする機能で一笑いする予定だ。遊羽は竜ではなく鬼かもしれない。

 

 だが、それをすることはなかった。

 

 

 キッチンでは、ドラグニティアームズーレヴァテインのレヴが、エプロンを着け、自身の好物である魚を焼いていた。因みに鮭。

 

 

「・・・・・・は?」

 

 あまりの光景に、五言でも七言でもなく絶句する遊羽。

 

「む? どうかしたのか?」

 

 棒立ちする遊羽に、レヴが訝しげな視線を向ける。

 

「いや、何してんだ?」

 

「料理だ。いくら待っても起きなかったのでな。朝食くらいならば私も作れる」

 

 レヴは完全に実体化し、右手に(フライパン)を、左手に(へら)を持っていた。

 

「ああ。昨日の出来事で、私の精霊としての力が強まったらしい。完全に実体化出来る様になった」

 

 なんでもなさそうに告げるレヴ。遊羽は自分の中でまだ寝ているものだと思っていたため、驚くばかりだ。

 ちょうどそのタイミングで、起きた虹花が階段を下りてきた。

 

「・・・・・・おはようございます、遊羽。レヴ」

 

「あ、ああ。おはよう虹花」

 

 まだ驚きが収まらないが、なんとか挨拶をする遊羽。

 

「って待て。何で虹花はレヴのことを!?」

 

 精霊の見えない彼女は、レヴの存在を知らないはずだ。何気なく挨拶していたので反応が遅れたが。

 

「昨日の夜、遊羽が寝ている間に説明してもらいました。遊羽が今までデッキを作る度にいなくなっていたのは、悪霊のカードを手に入れるためだったんですね」

 

 ギクリ、と遊羽の身体が強張る。

 

(やべ、怒られる)

 

 しかし、遊羽の予想とは異なり、虹花は遊羽を抱き締めた。

 

「・・・・・・え?」

 

 突然の行動に反応できない遊羽。その胸に、虹花は顔をうずめる。

 

「危ないことばかり、しないでください。遊羽がいなくなる度、心配していたんですよ、私」

 

 遊羽のことだから大丈夫だと思ってはいても、それでも虹花は心配していた。せめて、自分も連れて行って欲しかった。

 

「・・・・・・そか。なら、今度からは連れて行く。それでいいか?」

 

 そんな虹花の心をなんとなく感じた遊羽。それは、二人の付き合いの長さ故だろうか。

 

「ッ! はい!」

 

 虹花は、花が咲いたように笑顔になった。

 その笑顔に釣られ、遊羽も口角を上げる。

 

「・・・・・・朝食ができたぞ。冷めないうちに食べてくれ」

 

「「・・・・・・」」

 

 二人揃って赤面し、朝食が終わるまでは一言も発さなかった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 玄関を出て、二人並んで登校する。

 

 昨日のことを思えば、こうして二人揃って登校できるだけでも、かなり感慨深いものがある。

 

「・・・・・・遊羽。ありがとうございます」

 

「? 何がだ」

 

 唐突にお礼の言葉を述べた虹花に、遊羽は疑問で返す。

 

「こうして今、私が日常生活を送れているのは、遊羽のおかげです。そのことが、とても嬉しくて。つい、お礼を言ってしまいました」

 

 そう言ってはにかみながら笑う虹花に、遊羽は思わず見惚れる。

 

「ま、まぁ、虹花のためだ。他の奴だったら同じようにしていたかはわからない」

 

 遊羽が悪霊や闇のカードと戦うのは、ひとえに自分のためだ。自分の戦力が欲しいときに悪霊を狩って自分のものにし、自分の大切なものが傷つけられればやり返す。悪霊の被害があろうとも、自分に関係がなければ放置する。それが遊羽のスタンスだ。他人のために悪霊と戦うのは、精霊回収者にでも任せればいい。

 

「それに、虹花がアンデットになるのは止められなかった。アイツらの手も借りたし、俺もまだまだだな」

 

 別に、全て一人で解決しようだなんてことは思っていない。それでも、なるべく他人の手は借りないようにしたいというのが彼だ。

 

「・・・・・・そうですか。では、責任を取って結婚していただきます」

 

「おう、勿論だ。そんなの、当たり前のことだろ」

 

 登校中からバカップル丸出しの二人だった。

 

「そう言えば、私って学校に行っても問題ないんでしょうか? アンデットですよ」

 

「大丈夫だ。今は『修行に行く!』とか言って学校に来てないが、精霊で人間の姿になれる奴がいた」

 

 思い出される、《レスキュー・ラビット》の精霊の彼。

 

 息吹と一緒に精霊の姿の彼の両手両足を縛り、木の棒にぶら下げ、火にかけたあの日。

 

 動物の美容院に(無理矢理)連れて行き、バリカンでトラウマを植え付けたあの日。

 

 《ラッキーパンチ》のカードを試す、という名目の下、わざわざベヒーモスの悪霊を探してけしかけたあの日。

 

 とても楽しい思い出だ。本人にとってどうかはさて置く。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 学校につき、夏休み前の長ったらしい校長の言葉を聞き流した後の教室は、夏休みの話で一杯だった。

 

「遊羽くん遊羽くん」

 

「どうした戦」

 

 何やら紙片を握って遊羽に話しかける戦。

 

「実は、プロデュエリストのデュエルのチケットが当たったんだ。ショッピングモールの福引きで」

 

 その福引き券十五枚で一回できる。

 因みに、一等はシークレットレアの《灰流うらら》だったが、それは当たらなかった。

 

「へぇ。それがどうかしたのか?」

 

「チケットなんだけど、団体で六人までなんだ。一緒に行かない? もちろん真宮さんも」

 

 遊羽は基本的に他人のデュエルに興味がない。プロだろうと、それは同じこと。なので、断ろうとしたのだが・・・・・・。

 

「デュエルするのは凪風磨だよ」

「よし、行くぞ」

 

 その名前を聞くなりノータイムで了承する遊羽。

 

 凪風磨。遊羽を二度も破ったプロデュエリストだ。超強い。

 

「対戦相手は誰なんだ?」

 

 凪のこととなって、急に食い気味で話す遊羽。

 

「えーと、『手品師』って呼ばれるプロデュエリストだって。性別、年齢が一切不明の覆面プロデュエリスト」

 

 聞いたことのない名前に首を傾げる遊羽。そもそも、彼はあまりプロデュエリストを知らないのだが。

 

「まぁいいか。後は誰を誘うんだ?」

 

「四谷くんとか、永野さんだね。解説役としては四谷くんの方が適任かな」

 

「息吹は誘わないとして、後は・・・・・・先輩達を誘ってもいいか? 昨日のことでのお礼ってことで」

 

「うん、そうだね。何で龍塚くんを誘わないのかは聞かないでおくよ」

 

「そうしてくれ」

 

 チケットを受け取り、そこに書かれた日時を見ると、来週の日曜日となっている。

 

「じゃ、来週はよろしくな」

 

「うん。よろしく」 




次回はデュエルします。

『手品師』って誰でしょうねー。ちなみに、手品の英語はマジックです。


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執事vs手品師

タグに『他作品ネタ』を加えようか迷ってます。(どうでもいい)


 というわけで、イベント当日。

 

 会場となったデュエルスタジアムは、かなりの熱気に包まれていた。

 

「で、だ。何でお前らがいるんだよ」

 

 戦、遊羽、虹花、その後ろに春樹、響とならんだ席。日向は今日は用事があるらしく、欠席している。

 遊羽の前には、よく見知ったボサボサの黒髪の頭があった。その隣には、黒髪を短くポニーテールにした頭がある。

 龍塚兄妹、息吹と手鞠だ。

 

「いや~偶然だね遊羽♪ 席まで近いだなんて」

 

「本当に凄いのです! どんな確率なのです?」

 

 一方は白々しく、一方は純粋に。

 

「・・・・・・おい春樹。どういうことだ?」

 

「こんな奴だが、一応上司だ。逆らうことはオレのポリシーに反する」

 

 生真面目な春樹だが、若干笑いをかみ殺しているのが見て取れる。

 

「まぁまぁ落ち着いて。もう始まるよー」

 

 外見は男子、中身は今時のJKな遥がその場をとりなす。

 

「・・・・・・後で覚えておけよ」

 

 とりあえずは放置し、スタジアムに目を向ける。

 

 ちょうど、二人が入場したところだった。

 

「はじめまして、『執事』凪風磨。おれは『手品師』だ」

 

「ええ、はじめまして。かの覆面デュエリストと戦えて、私も嬉しいです」

 

 『手品師』はマントとシルクハットと仮面を身に付け、『執事』はその名の通り執事服にモノクル。

 

「長話もなんですし、デュエルとしましょうか」

 

「そうだな。デュエリストはデュエルで語るものだ」

 

 お互いにディスクを構え、火花を散らす。

 

「「デュエル!」」

 

手品師

LP8000

 

凪風磨

LP8000

 

「ではでは、おれのターン! モンスターを一枚伏せ、カードを一枚セット! これでターンエンド」

 

手品師

LP8000 手札3

場 メイン:伏せモンスター 魔法・罠:伏せカード

 

「私のターン、ドロー。カードを二枚伏せ、カードカー・Dを召喚しましょう」

 

カードカー・D ☆2 攻撃力800

 

「効果を発動し、カードを二枚ドロー。エンドフェイズとなり、ターン終了ですね」

 

凪風磨

LP8000 手札5

場 魔法・罠:伏せカード×2

 

「おれのターン、ドロー! 反転召喚、スケープ・ゴースト!」

 

スケープ・ゴースト ☆1 攻撃力0

 

 アンデット化した準制限。

 

「リバース効果発動! おれの場に好きな数だけ黒羊トークンを特殊召喚! おれは四体呼ぶぜ!」

 

黒羊トークン ☆1 守備力0

 

「冥界の宝札を発動! おれは二体以上リリースしてアドバンス召喚するたび、二枚ドローできる! 黒羊トークンを二体リリースし、クラッキング・ドラゴンをアドバンス召喚!」

 

クラッキング・ドラゴン ☆8 攻撃力3000

 

「冥界の宝札の効果で二枚ドロー! よし、二重召喚を発動! おれはこのターン二回通常召喚できる!」

 

 どこかで見たことのあるプレイング。遊羽と虹花は後ろの席の響を見つめる。

 

「・・・・・・ア、アハハ。どうしたんスか、二人とも? デュエルを見なくていいんスか?」

 

 目を逸らす響。

 

「おれは黒羊トークンとスケープ・ゴーストをリリース! 来い、バスター・ブレイダー!」

 

バスター・ブレイダー ☆7 攻撃力2600

 

 二連続の大型モンスターの登場に、会場が湧く。

 

 そして、遊羽達が響を見つめる目が鋭くなる。冷や汗を流す響。

 

「冥界の宝札の効果で二枚ドロー! バトルだ! バスター・ブレイダーでダイレクトアタック!」

 

「手札から速攻のかかしを墓地に送り、バトルフェイズを強制終了しましょう」

 

 かかしがぶつかり、竜破壊の剣士の斬撃は防がれた。

 

「カードを二枚伏せて、ターンエンドだ」

 

手品師

LP8000 手札3

場 メイン:クラッキング・ドラゴン バスター・ブレイダー 黒羊トークン 魔法・罠:冥界の宝札 伏せカード×3

 

 じーっと見つめられ続けた響は、堪えきれなくなったように叫んだ。

 

「あーもう! そうッスよ! あれはウチの兄貴ッスよ! 何か文句あるッスか!?」

 

「いや、文句はねぇよ。言いにくかったんだろうし」

 

「はい。ですが、冷や汗をかいて焦っているのを見てると、とても面白くて、つい・・・・・・」

 

 そう、プロデュエリスト『手品師』は、響の兄、水瀬日向だったのだ!

 

「まぁ、これで何で先輩が邪神とか伝説の騎士なんてレアカードを持ってるのかはわかった。元々、普通の高校生じゃあんなにカードは買えないと思っていたさ。まさかプロとはな・・・・・・」

 

「ちなみに、オレは知ってました♪」

 

 前でドヤ顔をする息吹。遊羽は無性に蹴りたくなった。もう足は上げている。

 

「ほ、ほら! 次は凪プロのターンだ! デュエルを見よう、デュエルを!」

 

 必死に話を逸らす息吹。

 

 尚、この会話は周囲の熱狂で他のお客さんには聞こえていない。

 

「私のターンですね。ドロー。まずはフィールド魔法、ディフェンスゾーンを発動します」

 

 スタジアムが別の競技のための物に変わる。

 

「神獣王バルバロスを妥協召喚します」

 

神獣王バルバロス ☆8 攻撃力3000→1900

 

「クラッキング・ドラゴンの効果で、攻撃力とライフは頂く!」

 

神獣王バルバロス 攻撃力1900→300

 

凪風磨

LP8000→6400

 

「では、バトルと行きましょうか。バルバロスでバスター・ブレイダーを攻撃しましょう」

 

「攻撃力の低いモンスターで攻撃? 何かあるのか」

 

「勿論です。速攻魔法、禁じられた聖典。ダメージステップの間、モンスターの効果を無効にし、元々の攻撃力でダメージ計算を行います」

 

神獣王バルバロス 攻撃力300→3000

 

 一気に十倍の攻撃力に跳ね上がった攻撃力。その勢いのまま、バルバロスの槍が剣士を貫く。

 

手品師

LP8000→7600

 

「この効果の適用後、バルバロスの攻撃力は3000のままとなります」

 

 クラッキング・ドラゴンの効果も、自身の効果も、一度無効になれば解除される。効果の上書きを利用したプレイングだ。

 

「私はカードを一枚伏せ、ターン終了です」

 

凪風磨

LP6400 手札2

場 メイン:神獣王バルバロス 魔法・罠:伏せカード×3 フィールド:ディフェンスゾーン

 

「痛ててて・・・・・・おれのターン、ドロー」

 

 まだ高校生の日向と凪では年期が違う。それでも、確実に負ける訳ではない。

 

「N・グラン・モールを召喚!」

 

N・グラン・モール ☆3 攻撃力900

 

 そのモンスターの登場に、会場の一部の人が失神する。それを尻目に、遊羽が呟く。

 

「おー、懐かしいな。鬼畜モグラ。まだデッキに入ってたのか」

 

 日向のHEROデッキによく入っていたモグラ。シンクロモンスターをバウンスされたのは思い出だ。

 

「バトル! 行け、グラン・モール!」

 

「リバースカード、スキルドレイン! モンスターの効果を全て無効にします」

 

凪風磨

LP6400→5400

 

 以前から使っている風磨のカード。バルバロスの後ろにあるため、破壊するにはバルバロスを倒してからではないといけないという鬼畜ぶりだ。

 

 効果が無効となり、あっけなくバルバロスに蹴られるグラン・モール。

 

手品師

LP7600→5500

 

「くっ、どうするかなぁ・・・・・・」

 

 ここで、彼は一つの選択を迫られる。クラッキング・ドラゴンで攻撃するかどうかだ。

 

 攻撃すればバルバロスを破壊できるが、クラッキング・ドラゴンも破壊されてしまう。

 攻撃しなければ、バルバロスを野放しにしてしまう。

 

「・・・・・・おれはこれでターンエンドだ」

 

 彼は、攻撃しないことを選んだ。

 

手品師

LP5500 手札3

場 メイン:クラッキング・ドラゴン 魔法・罠:冥界の宝札 伏せカード×3

 

「私のターン、ドロー」

 

 いいカードを引いたのか、モノクルがキラリと光る。

 

「アドバンスドローを発動し、デッキから二枚ドローします」

 

「? 何のつもりだ」

 

 切り札を手札に変える。一見、可笑しなプレイングだが、次のカードでその意見は変わる。

 

「墓地のカードカー・Dとバルバロスを除外し、獣神機王バルバロスUrを特殊召喚します!」

 

獣神機王バルバロスUr ☆8 攻撃力3800

 

 バルバロスの進化形態。特殊召喚のコストに、獣戦士族と機械族を除外する。フィールドからもコストにできるため、バルバロスをそのまま除外しても特殊召喚できた。だが、アドバンスドローによって手札に変換し、アドバンテージを取ったのだ。

 

「ここでクラッキング・ドラゴン以上の攻撃力・・・・・・ハハ、キッツいなぁ」

 

 本来は相手を傷付けることもできないモンスターだが、スキルドレインによってそれも無効となっている。

 

「更に、可変機獣 ガンナー・ドラゴンを妥協召喚します。スキルドレインにより、攻撃力は元のままですが」

 

可変機獣 ガンナー・ドラゴン ☆7 攻撃力2700

 

「なら、リバースカード、帝王の連撃を発動しておく」

 

「構いません。バルバロスUrでクラッキング・ドラゴンを攻撃します!」

 

「帝王の連撃の効果発動! 相手メインフェイズかバトルフェイズに、アドバンス召喚を行う!」

 

 日向のフィールドには、クラッキング・ドラゴンと黒羊トークンの二体。上級モンスターを出す準備はできている。

 

「なるほど。それで、その二体をリリースしてどんなモンスターを出すつもりですか?」

 

「いや、おれがリリースするのはなんたのモンスターだ! チェーンして速攻魔法、帝王の烈旋! おれがアドバンス召喚するとき、相手モンスター一体もリリースできる!」

 

「私のモンスターを!?」

 

 本日初めて驚いた声を出す風磨。

 

「おれはバルバロスUrと黒羊トークンをリリース! 来い、V・HERO ウィッチ・レイド!」

 

V・HERO ウィッチ・レイド ☆8 攻撃力2700

 

「まずは冥界の宝札の効果で二枚ドロー! チェーンしてリバースカード、サイクロン! スキルドレインを破壊!」

 

 緑色のメモリがカードから飛び出し、スキドレを破壊する。

 

「・・・・・・ほう。バルバロスUrをリリースすることで、私のディフェンスゾーンをかいくぐるとは。いいプレイングですね」

 

 スキルドレインが発動していたのは、バルバロスの後ろ。ならば、そのモンスターをコストにすれば、ディフェンスゾーン効果の圏外となる。

 

「まだだ! スキルドレインが破壊されたことで、ウィッチ・レイドの効果が復活する! やれ、レイドバスター!」

 

 ウォッチ・レイドが杖を振るうと、風磨の魔法・罠ゾーンが一枚を残して全て消える。

 

「素晴らしい。こんな方法は初めてです。私はターンを終了しましょう」

 

凪風磨

LP5400 手札2

場 メイン:可変機獣 ガンナー・ドラゴン 魔法・罠:伏せカード

 

 風磨の伏せカードは一枚。ガンナー・ドラゴンの後ろにあったために、ウォッチ・レイドの効果から逃れたカードだ。

 

 風磨の伏せカードは二枚。

 

 日向の手札は四枚。スキルドレインを破壊したが、まだ気は抜けない。

 

「おれのターン、ドロー」

 

 引いたカードは《相乗り》。六十枚デッキを回すためのカードだが、風磨のデッキとは相性が悪い。

 

「バトルだ。クラッキング・ドラゴンでガンナー・ドラゴンを攻撃! クラックアップ・フィニッシュ!」

 

 ワニを連想する技名と共に、クラッキング・ドラゴンが共食いをする。

 

凪風磨

LP5400→5100

 

「次だ! ウィッチ・レイドでダイレクトアタック!」

 

「リバースカード、ガード・ブロック! 戦闘ダメージを0にし、カードを一枚ドローします」

 

「なら、おれはモンスターを伏せて、ターンエンド」

 

手品師

LP5500 手札2

場 メイン:クラッキング・ドラゴン V・HERO ウィッチ・レイド 魔法・罠:冥界の宝札 連撃の帝王

 

 拮抗したまま、減らないライフ。観客達は静まり返り、デュエルを見つめる。遊羽達も例外ではなく、誰も、一言も発さない。

 

「私のターン、ドローします」

 

 盤面だけを見れば、日向の有利。風磨のフィールドは更地だ。

 先ほどのガード・ブロックによって、風磨の手札は四枚となったが、日向も同じ枚数ある。

 

 それでも、何故か焦燥感を感じる。日向の仮面の下で、汗が一筋垂れる。

 

「再びフィールド魔法、ディフェンスゾーンを発動します」

 

「? 今発動しても、意味はないはず・・・・・・」

 

 更地のフィールドでは、守るべきカードはない。

 しかし、フィールドがなければならないモンスターにとっては、意味のある行動だ。

 

 

「エクストラデッキのサイバー・エンド・ドラゴンを除外し、Sinサイバー・エンド・ドラゴンを特殊召喚!」

 

Sin サイバー・エンド・ドラゴン ☆10 攻撃力4000

 

 罪にまみれたサイバー・エンド。その登場に、会場がざわめく。

 

 凪風磨と言えば、エクストラデッキを使わないデュエリスト。そんな共通認識が、観客達の中にはあったのだ。

 しかし、それをいい意味で裏切るプレイング。デッキのシナジーも合っている。

 

「魔法カード、愚鈍の斧を装備します。これにより、効果は無効。攻撃力が1000アップします」

 

Sinサイバー・エンド・ドラゴン 攻撃力4000→5000

 

 攻撃力、5000。日向がその攻撃力を超えるには、邪神しかない。

 

(次のターンで引かなきゃ、負ける・・・・・・!)

 

 覚悟を決め、バトルフェイズに備えようとした日向。

 

 だが、それも無意味に終わる。

 

「速攻魔法、リミッター解除。機械族モンスターの攻撃力を倍にします」

 

Sinサイバー・エンド・ドラゴン 攻撃力5000→10000

 

 身体が紅く輝き、出力が三倍になりそうなサイバー・エンド。つまりトランザム。実際には二倍だが、それでも、日向を倒すには十分だ。

 

「バトルフェイズ。これで終わりにしましょう。Sinサイバー・エンド・ドラゴンで攻撃! エンド・オブ・シンズ!」

 

 サイバー・エンドの三つの首からブレスが放たれ、クラッキング・ドラゴンを破壊した。

 

手品師

LP5500→0

 

 静まったままの会場。決着から一泊置いて、割れたように歓声と拍手に包まれる。

 

「いやー、負けた負けた。完敗だ。全部手の平の上だったんだろ?」

 

 負けたばかりにも関わらず、飄々としたようすの日向。風磨に近づき、握手を求める。

 

「いえ、そんなことはありません。私も、奥の手を使わされてしまいました」

 

 風磨は、決して手を抜いたわけではない。プロデュエリストという仕事柄、あまり自分の手の内を見せられないのだ。

 

「逆に、貴方はまだ切り札を温存していましたね。それが、少し残念です」

 

 それは、日向も同じこと。

 

「・・・・・・バレてたのか」

 

 お互いに握手を交わし、更に拍手と歓声をもらう。

 

「次デュエルするときは、おれもこのデッキの全力を出す。約束するよ」

 

「わかりました。楽しみにしています」

 

 今回の執事と手品師のデュエルは、執事に軍配が上がった。




息吹「それでは、リア充をワンキルしよう! のコーナーです♪」

遊羽「おい、どういうことだよこれ」

息吹「いいからいいから。先攻どうぞ」

遊羽「俺のターン、竜の渓谷でドゥクスを手札に、んで通常召喚、さっきコストにしたファランクスを装備、特殊召喚。シンクロ、ガジャルグ。効果でゼピュロスサーチして墓地へ。これでターンエンド」

息吹「オレのターン! フォトン・ドラゴンでトレイン、サンクチュアリでトークン生成、リンクでソルフレア! 効果でフォトン・ドラゴン回収、ギャラクシー・ワームと銀河の修道士をコストに銀河戦士二体、効果で騎士サーチ、エクシーズでノヴァからインフィニティ! 効果でガジャルグを座布団に。手札のフォトン・ドラゴン見せびらかして銀河剣聖、騎士を妥協召喚、効果でフォトン・ドラゴン特殊召喚! 騎士と剣聖でオーバーレイ、プライム!」

遊羽「ソルフレアにインフィニティ、でフォトン・ドラゴンとプライム・・・・・・殺意MAXじゃねぇか!!」

息吹「リア充爆発しろ! 破滅の(逆恨みの)フォトン・ストリィィィィィィーーーーームッ!」

遊羽「う、うわあぁぁぁぁあ!?」


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状況整理

短いだけの説明回です。

後書きにデュエルがあります。


 日向のデュエルから数日後。遊羽の家には、戦、息吹、日向が集められていた。

 

「さぁて。皆さんの事情を洗いざらい吐いていただこうかぁ」

 

 悪魔のような笑みを浮かべながら、遊羽が全員を見つめる。

 

「え~、どうしようかな♪」

 

「でなきゃ、お前のベッドの下にある『沈黙の魔導剣士-サイレント・パラディン~デモンズチェーンに屈しない!!~』『ブラックマジシャンとブラックマジシャンガール~師弟のいけない個人授業~』『堕天使イシュタム~ごめんなさい、堕ちた天使の黙示録~』『巨神乳フェルグラント~ちょっと過激に福音祭~』等を、全て捨てる」

 

「うわぁ待った待った! 話すから!」

 

 並べられた本の題名達に、息吹は慌てて了承する。この場に女子がいたら危なかった。

 

「おれもか?」

 

 嫌そうな顔をする日向。彼が覆面プロデュエリストをしているのだって、理由がある。それを話すというのは、やはり気が進まない。

 

「そうか。ならお前の正体を『月刊・隣の噂は蜜の味』にリークする。俺も心が痛むが、仲間に隠し事をされる方が辛いしなぁ。必要な犠牲っていう奴だ」

 

「まってまって話す、話すから。だからまって!」

 

 ケータイ片手に告げる遊羽を必死で止める日向。もはや脅しだ。

 

「さて、戦。お前もだ」

 

「うん、いいよ」

 

「話さなければお前を、って話すのかよ! 素直だな・・・・・・」

 

 前の二人とは異なる反応に、今度は遊羽が驚く。

 

「僕、両親が死んじゃってるんだよね。心中して」

 

 いきなりの重い話に、場の空気も重くなる。

 

「それで、心中する前の母さんの言葉が、『あなたは弱くないわ。私達はいなくなるけど、許してね』だったんだ。パワーコード・トーカーは父さんの遺産。中学入ってすぐくらいのことでさ。大変だった」

 

 あっけらかんと言うが、遊羽達の顔は暗いままだ。それを見て、戦は少し嫌そうな顔をする。

 

「あのさ、僕はもうその事を乗り越えたんだ。暗い顔をされても、困るんだけど・・・・・・」

 

 言って、本当に困ったような顔をする。自身が乗り越えた過去に悲しまれても、反応に困るだけだ。

 

「そか。なら次は先輩だ。多分、そんなに重くないだろ?」

 

「ひどい!? まぁ、否定できないんだけどさぁ・・・・・・」

 

 軽く悲鳴を上げてみせる日向。それで、場の空気がいくらか和らいだ。

 

「おれは単純に学校生活に支障が出るのが嫌だから、正体を隠してる。これでプロだってばれたら、学校まで記者がやってきそうで」

 

 想像しただけでも恐ろしい、というように身震いする日向。遊羽はそれを冷ややかな目で見つめる。

 

「それだけか?」

 

「後は・・・・・・ほら、覆面デュエリストって、なんかカッコよくない?」

 

「実はそっちが本音だろ、先輩」

 

 本心を暴露した日向。高校生なんて、案外そんなものかもしれない。

 

「あ~、これ流れ的に次オレだよね」

 

「他に誰かいるのか? 俺には見えねぇな」

 

「・・・・・・あ、そこに新種の精霊が」

 

「そうか、よかったな。さぁ話せ」

 

 逃げようとする息吹を、じぃっと見つめる遊羽。

 

「・・・・・・はぁ。わかった、話すよ」

 

 観念したように手を上げ、息吹は話し出す。

 

「オレと手鞠の父親は、精霊なんだ。オッドアイズ・アークペンデュラム・ドラゴンの」

 

「ちょっと待て。人間と精霊の間に、子供ってできるのか!?」

 

 驚愕の声を上げる遊羽。日向と戦も驚いた顔をしている。

 

「その証拠が目の前にいるだろ? まぁ、オレは精霊の方の血が強いらしくてさ。他人の考えてることがある程度わかるんだ」

 

 精霊は、主と心を通わせ、主の心を読むことができる。その主の立場の息吹は、主がいないことで、他人の心が読める、ということだ。

 

「手鞠は精霊としての血が弱い。だから、ほとんど普通の人間と変わらない」

 

 つまり、特別なのは息吹だけ、ということだ。

 

「へぇ。じゃあ、精霊同士で子供ってできるのか?」

 

 ふと思いついた疑問を口に出す日向。遊羽も思ったが、あえて口にしなかった。

 

「わからない、としか言えない。そんなの聞いたことないし。オレはただ、自分についてを父親から聞いただけだよ。その父親も、今は仕事で海外だし」

 

 精霊が仕事してるのかぁ・・・・・・と驚きを通り越して呆れる三人。

 

 結局、その日はそのまま解散となった。




息吹「お待たせしました、リア充をワンキルしよう! のコーナーです」

遊羽「またか。そんなに俺をボコりたいのか、読者」

息吹「リア充は常に妬まれるものだよ♪ 諦めてディスクを構えたら?」

遊羽「まぁ、いいけどよ・・・・・・俺のターン、目覚めで白龍と亜白、効果で亜白特殊召喚。トレインで白龍。死者蘇生で白龍。これでターンエンド」

息吹「それでは、オレのターン♪ まずは、妨げられた壊獣の眠り! 君にはラディアンを、オレはサンダーさんを特殊召喚!」

遊羽「サンダー・ザ・キングな」

息吹「終末の騎士を召喚、効果でデスドルドーを墓地へ。効果でライフ半分払って特殊召喚、リンクでハリファ。効果でゾンビキャリア特殊召喚! ワン・フォー・ワンでアクマグネ、効果でラディアンとシンクロ! スターダスト・ドラゴン! 更に、ゾンビキャリアでサンダーさんとシンクロ、星態龍! ここからはオマケ、おろかな埋葬でデッキからフォトン・ドラゴン、福音! フォトン・ドラゴンを特殊召喚!」

遊羽「・・・・・・マジで壁とやってろよ、お前」

息吹「デュエルは相手がいないとできないよ♪ バトル、シューティング・ソニック! スター・イーター! 破滅のフォトン・ストリーム!」

遊羽「結局ワンキルかよぉ!!」


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夏休みの遊羽と虹花

デュエルしません。日常回です。

次回はデュエルする予定です。


「さて。それじゃ、とっとと課題を終わらせるか」

 

「そうですね。二時間あれば終わりそうです」

 

 遊羽が他の面子を質問(脅迫)して事情を聞き出した翌日。

 遊羽と虹花は、二人で夏休みの課題をやっていた。

 

「相手の攻撃を防ぐ手札誘発を選べ・・・・・・クリボー、バトルフェーダー、速攻のかかし、クリボールっと。結構あるな」

 

「いえ、違いますよ遊羽。クリボーはダメージを0にする効果、フェーダーとかかしはバトルフェイズを終了する効果、クリボールは表示を変更する効果です。正解はゴーストリック・ランタンです」

 

 コンマイ語って難しい!

 

「カオス・フォームで儀式召喚できるモンスター・・・・・・《ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン》、《カオス・ソルジャー》、《マジシャン・オブ・ブラックカオス》、《超戦士カオス・ソルジャー》と《青眼の混沌龍》で全部か?」

 

「遊羽、《マジシャン・オブ・カオス》が抜けていますよ。先日発売した新しいカードです」

 

 遊羽がミスをすれば、その都度虹花がフォローを入れる。彼らにとっては毎年の出来事だ。

 

 そして、約二時間後。

 

「ふぅ。終わったな」

 

「今年は中々厄介な問題が多かった気がします。不動性ソリティア理論の先生でしょうか?」

 

 この教師は課題を作った後、休職届を出している。生徒に八つ当たりして、研究でもしているのだろう。新しいレギュレーションが応えたらしい。他の学校でもそういったことが相次いで起きているとのことだ。

 

「それじゃ、この間借りた映画【〜超融合!時空を越えちゃった絆〜】でも見るか」

 

「そうですね。私、楽しみにしていたんです」

 

 ディスク(DVDの方)を機械にセットし、再生。

 

 内容は皆さんご存知の通り。

 

 途中、Sinモンスターになって悪役チックになった青眼の白龍や真紅眼の黒竜、スターダスト・ドラゴンを見て遊羽が興奮したり、「あ、真紅眼ってミスティル素材にすれば流星竜出せるし、相性いいんじゃ? 渓谷あるからSinも出せるし」とデッキ構築の話になってしまった。

 

 クライマックスでは、時空を越えて集まった歴代主人公3人に対して切り札である《Sin トゥルース・ドラゴン》が破壊されそうになった瞬間、パラドックスの前に3人の仲間が現れ次々と手札からカードを発動させ展開していくのに合わせて「どうやら貴方の敗北への未来には間に合ったようですね」「僕だ!」「希望さえあれば奇跡は必ず起こる!!そしてその希望とは自らの手で掴みとるもの私はそれを証明して見せる」と何か良い台詞を言っていて、虹花がとても楽しそうにしていた。

 

 未来組が助けに来た後も《機皇帝ワイゼル∞》とSinモンスターの効果のせいでお互いに攻撃宣言が出来なくなったり、アンチノミーさんが格好いい口上でシンクロ召喚した瞬間にアポリアさんが「シンクロ召喚は破滅の道だ!!」とか「止めてくれ・・・・・・また私に絶望(全盛期満足トリシューラ)を味わせようとするのか・・・・・・」とかトラウマを顔芸するシーンなどでがあったのだが、そのころには二人ともイチャついていてあまり見ていない。

 

 課題にかけた時間と同じく約二時間の映画だったが、とても面白かった。

 

「しかし、まさかスターダストとネオスでドラゴエクィテスを超融合するとはな・・・・・・戦と日向に頼んで、今度やってもらうか」

 

「この映画を見せれば、ドラゴエクィテスの精霊は喜びそうですね」

 

 金で縁取られた碧のゴシックドレスを着た女の子が一瞬二人の脳裏をよぎったが、あえて深く考えないようにした。

 

 その後も課題が終わったのをいいことにダラダライチャイチャ過ごす二人。

 

 虹花が帰ったのは、夜八時を過ぎてからだった。




少年「・・・・・・ど、どこだココは!?」

息吹「では、読者のリクエストにお応えして、このゾンビマスターさんにはエグゾでやられてもらいます♪」

少年「ふ、ふざけるな! お前もアンデットにしてやる! デュエルだ!」

息吹「初手エグゾ。君の負けだ」

少年「な!? そんなのインチキだ! 無効だ無効!」

息吹「しょうがないな~♪ 今回だけ特別だよ?」

少年「ボクのターン! アンデットワールドを発動して、牛頭鬼を召喚! 効果でデッキからグローアップ・ブルームを墓地に送る! 効果でデッキから王サマを特殊召喚! ターンエンド!」

息吹「オレのターン♪ まずは悪魔の調理師を召喚! 死のマジック・ボックスでドーハスーラを破壊して、コックをプレゼント♪」

少年「な!? ボクらの王サマが!」

息吹「カバーカーニバル発動! カバを三体特殊召喚! 収縮でコックの攻撃力を半分にして、バトル! カバで自爆特攻!」

少年「自分のモンスターを自爆させるとか、お前バカだろ!」

息吹「悪魔の調理師が相手に戦闘ダメージを与えた時、相手、つまりオレは二枚ドローする! 合計六枚ドロー♪」

少年「なんだよそれ!」

息吹「速攻魔法、超カバーカーニバル! 今度は五体のカバだ! 自爆特攻!」

少年「で、でも、お前のライフは残り1600! ライフがなくなればボクの勝ち・・・・・・」

息吹「戦闘ダメージを受けたことで、トラゴエディアを特殊召喚! 手札の数×600の攻撃力だ♪」

少年「攻撃力、9000!?」

息吹「神秘の中華鍋発動♪ トラゴエディアをクッキング! 攻撃力分ライフを回復!」

少年「そんな!?」

息吹「またカバーカーニバルで自爆特攻! 手札断殺でお互い手札交換、リロードで手札を全てデッキに戻して同じ枚数ドロー♪ 揃った、エグゾ!」

少年「うわあぁぁぁぁぁぁあ!!」

息吹「これで成仏できたろ? 二度と出てくるなよ♪」


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ジャンクフード対決

最近遊羽ばっかりなので、戦くんに出番を。

盛大にネタ回です。カードの効果を間違えてなければプレイミスはスルーしてください。


 遊羽達が課題をやったり、映画を見たりしてイチャイチャしていたころ。

 

 戦は『ジャンクフード』にて昼食をとっていた。『ジャンクフード』というのは、栄養価のバランスを著しく欠いた調理済み食品のことではなく、ハンバーガー屋の名前だ。人気メニューは何故かジャンク・ウォリアーの顔の形をしている『ジャンクハングリーバーガー』。戦が今食べているのもそれだ。

 

『拙者の顔をしたハンバーガー・・・・・・何とも微妙な気分ですな・・・・・・』

 

「? お持ち帰りして、家で食べる?」

 

『いや、遠慮しますぞ』

 

 ブンブン首を振って断るジャン。その仕草に、戦は頭の上に疑問符を浮かべる。

 

「そう? 美味しいのに」

 

 そう言って二つ目のバーガーに手を伸ばす。《E・HERO Great TORNADO》をモチーフにした、『トルネードバーガー』だ。ハンバーガーを包む紙が黒くなっており、レタスが多めに入っている。

 

 勢いよく食べる戦に、ジャンはついつい心配してしまう。

 

『主殿、いくらなんでもがっつきすぎですぞ。何か飲み物を・・・・・・』

 

 そう言いながら、開いてあったメニューに目を向ける。

 

 

ブルーアイズマウンテン・アルティメット 9000円 

 

ブルーアイズマウンテン・ツインバースト 6000円

 

ブルーアイズマウンテン 3000円

 

ブルーアイス・ホワイトナイツカフェオレ 3000円

 

 

『・・・・・・ぉおう』

 

 そのラインナップに、声にならない声を上げるジャン。どれもお高い。

 

『高いにも程がありますぞ!? 他にはないのですかな!?』

 

ふぇ()? ふぁふえほ(あるけど)

 

『何を言っているのか皆目見当くらいしかつきませんぞ』

 

 あ、見当はつくんだ・・・・・・と心の中で突っ込む戦だったが、口には出さなかった。出したら一緒にトルネードバーガーが飛び出る。

 

 実際にはジャンの見たメニューはよくあるイチオシの欄で、ちゃんと他のページに通常価格の飲み物もある。

 

「何だよ! (オレ)が何をしたってんだ!」

 

 メインディッシュのフライドポテトに手を伸ばそうとしていた戦の耳に、突然声が響く。

 

「最近、不良が多いっていう噂があってな。お前さんみたいな奴を店に入れる訳にはいかないんだよ」

 

(オレ)(ワル)だ! 不良なんかと一緒にするんじゃねぇ!」

 

 不快感と共に戦が声のした店の入り口方面へ目を向けると、そこでは髪が真っ白な少年と店員と思しき人物が向かい合っていた。

 

「ほら、やっぱり不良じゃないか。ほら、帰った帰った」

 

「うるせぇ! 何で客を帰すんだ! おかしいだろ!」

 

 戦は二人に近づき、声をかけた。

 

「あの、うるさいからやめてくれない?」

 

「あぁ!? 何だよ、オマエも(オレ)を追い出そうってのか!?」

 

 白髪の方に睨まれる戦。だが、彼は首を横にふる。

 

「いいや。店員さんの方がおかしい。問題も起こしてない人を見た目だけで追い出すのは失礼だと思う。どうですか?」

 

 にっこりと笑いながら店員を見やる。うぐっ、と言葉に詰まる店員。

 

「だとしてもだ! こんな奴を店に入れて、万が一問題が起きたら、オレが起こられちまう。だから、店に入れる訳にはいかない!」

 

 腕を組み、意見を変えないことをアピールする店員。戦の言葉によって、むしろ状況が悪化してしまった。

 

「うるさいぞ。何やってるんだ?」

 

「あ、店長!」

 

 どうしたものかと戦が考えていると、店の奥から人が出てきた。コックの服を着た男性だ。

 

「どうした、何かあったのか?」

 

「あのですね、この不良が店に入ろうとしたので、止めていたんです。ほら、店の評判を落とす訳にはいかないでしょう?」

 

 戦達に対する態度から540度態度を変え、ニコニコと手もみしながら弁明する店員。店長は不機嫌そうに戦と少年を見る。

 

「こいつらが何か問題を起こしたのか?」

 

「いえ。ですが、問題は起きる前に止めるべきですよ」

 

 店長の言葉に、ますます不機嫌な顔になる店長。

 

「ならお客様だろ? お客様になんてことしてるんだよ」

 

「いえ、しかし・・・・・・」

 

 ここでようやく己の失態に気付いた店員。額に汗を浮かべながら、必死に思考を巡らせる。

 

「そうそう! コイツ、先日ウチの店で食い逃げしたんですよ! いや、捕まえられて良かった!」

 

 そう言いながら、戦の腕を掴む店員。店長の眉がピクリと動く。

 

「それは本当か?」

 

「いや、僕は」

 

「本当ですよ! ほら、店長もコイツの顔に見覚えがあるでしょう? 前から怪しいと思っていたんですよー」

 

 身に覚えのない罪に戦が声を上げるも、店員によって遮られる。

 

「そうか・・・・・・なら、俺とデュエルしろ、少年」

 

 店長の鋭い目が戦を射抜く。

 

「デュエルは、人の心を表す。コイツが本当に悪人なら、それはデュエルに現れるだろうよ」

 

 突然のことに戦は目を見張るが、そのまま首を縦にふる。

 

「わかりました。ただ、彼は関係ないですよね。放してもらえませんか?」

 

 彼、とはもちろん白髪の少年である。

 

「いいや店長! コイツは食い逃げの仲間かもしれないですよ!」

 

「わかったから、そんなに大声を出すな。ほら、裏に来い。お前もだ」

 

 店長に連れられ、店の裏に回った戦達。ディスクを構え、店長と向き合う。

 

「「デュエル!」」

 

遊民戦

LP8000

 

店長

LP8000

 

 デュエルディスクが先攻に選んだのは戦。

 

「僕のターン。ワン・フォー・ワンを発動して、チューニング・サポーターをデッキから特殊召喚!」

 

チューニング・サポーター ☆1 守備力300

 

 フライパンをかぶったミニロボ。中を見ると呪われるかもしれない。

 

「さらに、ジャンク・シンクロンを通常召喚! 効果で墓地のチューニング・サポーターを効果を無効にして特殊召喚!」

 

ジャンク・シンクロン ☆3 攻撃力1300

 

チューニング・サポーター ☆1 守備力300

 

「チューニング・サポーターはシンクロ素材になるとき、レベル2として扱える! 僕はジャンク・シンクロンで二体のチューニング・サポーターをチューニング!」

 

3+1+2=6

 

「シンクロ召喚! おいで、スターダスト・チャージ・ウォリアー!」

 

スターダスト・チャージ・ウォリアー ☆6 守備力1300

 

 星屑の戦士の便利な方。もう片方もデッキに入ってはいるが、出番は遠い。

 

「チャージ・ウォリアーがシンクロ召喚に成功したとき、カードを一枚ドローできる! さらに、チューニング・サポーターの効果発動! シンクロ素材として墓地に送られたとき、カードを一枚ドローする! 合計三枚ドロー!」

 

 使った分の手札を補充する戦。普段ならばもっとドローできているが、今日は軽く事後ったらしい。

 

「カードを三体伏せて、ターンエンド」

 

遊民戦

LP8000 手札2

場 エクストラ:スターダスト・チャージ・ウォリアー 魔法・罠:伏せカード×3

 

「俺のターン。ドロー」

 

 店長は軽く手札を確認すると、ディスクにカードを置いていく。

 

「モンスターをセット。カードを一枚伏せてターンエンドだ」

 

店長

LP8000 手札3

場 メイン:伏せモンスター 魔法・罠:伏せカード

 

「僕のターン、ドロー!」

 

 戦にターンが回る。心配したのか、ジャンが戦の中からでてくる。

 

『主殿。このデュエル、受ける意味はあったのですかな? あのまま逃げれば良かったのに・・・・・・』

 

(それは出来ないよ。もしそうしたら、このお店にこれなくなっちゃうし)

 

 戦はこのお店のフライドポテトとハンバーガーを気に入っている。ここにこれなくなるのは、精神的にかなり辛い。

 

(それに、試したいカードもあるしね)

 

 先日、遊羽に身の上を語ったとき、ふと思い出して探したカードだ。昨日、ようやく探し当て、戦のエクストラデッキに入っている。

 

「おろかな埋葬を発動! デッキから、シンクロ・フュージョニストを墓地に送るよ。そして戦士の生還を発動! 墓地のジャンク・シンクロンを手札に戻すよ」

 

 シンクロ・フュージョニスト。探し当てたカードを出すために使うカードだ。

 

「チャージ・ウォリアーを攻撃表示に変更! バトル! チャージ・ウォリアーで伏せモンスターを攻撃!」

 

「伏せモンスターはプチトマボー!」

 

プチトマボー ☆2 チューナー 守備力400

 

 二人のプチトマボーが現れ、服の青い方が緑の方を盾にしてチャージ・ウォリアーの攻撃を防ぐ。が、防ぎきれずに自身も破壊される。

 

『今、盾にしましたぞ!? モンスターとして最低のことをしましたぞ!?』

 

 ジャンはご立腹のようだ。

 

「プチトマボーの効果発動! 戦闘破壊されたとき、デッキから「トマボー」と名の付くモンスター二体を特殊召喚する! 来いトマボー! プチトマボー!」

 

トマボー ☆3 守備力800

 

プチトマボー ☆2 チューナー 守備力400

 

「僕はこれでターンエンド」

 

遊民戦

LP8000 手札2

場 エクストラ:スターダスト・チャージ・ウォリアー 魔法・罠:伏せカード×3

 

「俺のターン、ドロー。マンジュ・ゴッドを召喚! 効果でデッキからハンバーガーのレシピを手札に加える!」

 

マンジュ・ゴッド ☆4 攻撃力1400

 

 マンジュ・ゴッドの特性、ものひろい。どこからか儀式モンスターか儀式魔法を拾ってくる。

 

「俺はレベル3、トマボーと、レベル4、マンジュ・ゴッドに、レベル2、プチトマボーをチューニング!」

 

2+3+4=9

 

「シンクロ召喚! 現れよ、氷結界の龍 トリシューラ!」

 

氷結界の龍 トリシューラ ☆9 攻撃力2700

 

 フィールドが冷気に包まれ、冷蔵庫の守護者が現れる。

 

「トリシューラの効果発動! 場のチャージ・ウォリアー、墓地のチューニング・サポーター、右端の手札を除外する!」

 

 手札のシンクロン・キャリアーが『ギャー何で俺が!?』と悲鳴を上げ、氷漬けにされる。

 

『シンクロン・キャリアー殿。そなたのことは忘れませぬぞ・・・・・・』

 

 除外ゾーン(そんなゾーンは存在しないが、デュエルディスクには付いている)に向かって敬礼する。エクストラデッキは安全だ。

 

「バトルだ! トリシューラでダイレクトアタック!」

 

「うわ、冷た!」

 

遊民戦

LP8000→5300

 

「俺はこれでターンエンド」

 

店長

LP8000 手札4

場 エクストラ:氷結界の龍 トリシューラ 魔法・罠:伏せカード×2

 

「僕のターン、ドロー!」

 

(あのデッキは、恐らく伝説のクッキング流!)

 

 クッキング流。調理師デュエリストの誰もが羨むデッキだ。店長もご多分に漏れず、そのデッキを真似ている。

 

「僕はジャンク・シンクロンを召喚! 効果で墓地のシンクロ・フュージョニストを特殊召喚!」

 

ジャンク・シンクロン ☆3 チューナー 攻撃力1300

 

シンクロ・フュージョニスト ☆2 守備力600

 

「なるほど、それでシンクロ召k「バトルだ!」ぅえ?」

 

 店長の予想とは異なり、バトルフェイズの宣言をする戦。

 

「速攻魔法、ライバル・アライバル! 手札からモンスター一体を召喚する! おいで、ものマネ幻想師!」

 

ものマネ幻想師 ☆1 攻撃力0

 

「攻撃力が0? 一体、どんな効果が・・・・・・」

 

 かなり古いカード、ものマネ幻想師。どこぞのアゴも使っていたカードだ。

 

「ものマネ幻想師の効果発動! 相手のモンスター一体と同じ攻撃力と守備力を得る!」

 

ものマネ幻想師 攻撃力0→2700

 

 トリシューラのマネのつもりなのかマントをたなびかせ両手を顔ぐらいにまで上げるが鏡を持って顔を隠しているため上手くいかずに失敗に終わる。

 

「リバースカード、緊急同調! バトルフェイズ中にシンクロ召喚を行う!」

 

「バトルフェイズ中にシンクロ召喚だと!?」

 

 遊戯王名物、驚いたらオウム返しを発動し、目を見開く店長。

 

「僕はジャンク・シンクロンでシンクロ・フュージョニストをチューニング!」

 

3+2=5

 

「集いし星が、鋼に打ち勝つ戦士となる! シンクロ召喚! ジャンク・ウォリアー!」

 

ジャンク・ウォリアー ☆5 攻撃力2300

 

『久々の登場、ですぞ!』

 

 最近活躍していなかったせいで溜まったストレスを発散するべくフィールドを飛び回るジャン。その先でトリシューラにぶつかり身体を凍らせながらもまだ飛び回るが途中で氷がエンジンの中に入り撃沈する。

 

「何やってるんだ? あのモンスター」

 

「おい、うるさいぞ! デュエルの邪魔をしたら、オレが店長に怒られるかもしれねえじゃねえか!」

 

 白髪の少年が呟くと、醜く保身に走る店員。何となく、店長の不機嫌さが増したのを戦は感じた。

 

「シンクロ・フュージョニストの効果で、デッキから超融合を手札に加える」

 

 林間学校へ行くときのバスで手に入れたカード。ようやく伏線の回収ができた。

 

「ジャンク・ウォリアーの効果発動! 僕のフィールドのレベル2以下のモンスターの攻撃力分、攻撃力をアップする!」

 

ジャンク・ウォリアー 攻撃力2300→5000

 

 流石に凍って寒くなったのか、ものマネ幻想師からマントを借りてフィールドの端で氷が溶けるのを待つジャン。ものマネ幻想師が気を効かせて日光を鏡で反射してジャンに当てている。攻撃力が上がったのはそのおかげではないかと一瞬思ったがすぐにデュエルに意識を戻す。

 

「ジャンク・ウォリアーでトリシューラに攻撃! スクラップ・フィスト!」

 

『もう寒くありませんぞ!」

 

 ものマネ幻想師が尽力を尽くしたこともあり、パワーアップして完全復活したジャンが拳でトリシューラを砕く。若干まだ凍っていたが、むしろその分固くなって痛そうだ。

 

店長

LP8000→5700

 

「ものマネ幻想師でダイレクトアタック!」

 

「リバースカード、戦線復帰! 墓地からプチトマボーを特殊召喚!」

 

プチトマボー ☆2 チューナー 守備力400

 

「ならプチトマボーに攻撃!」

 

 ものマネ幻想師が鏡で日光を反射し、プチトマボーを炙る。焼きトマトならぬ炙りトマト。

 ※このトマトはジャンが美味しくいただきました。

 

「プチトマボーの効果で、デッキからトマボーとプチトマボーを特殊召喚!」

 

プチトマボー ☆2 チューナー 守備力400

 

トマボー ☆3 守備力800

 

 プチトマボーの緑色とトマボーがフィールドに現れ、少し後に青色のプチトマボーが緑色を踏みながらフィールドに飛び出てくる。さっきから緑が不憫だ。

 

『倒しても倒しても出てくるトマト・・・・・・食べ放題ですな』

 

 先程の炙りトマトをムシャムシャしながらジャンが呟く。意外に美味しいらしい。

 

「僕はカードを一枚伏せて、ターンエンドだよ」

 

遊民戦

LP5300 手札1

場 エクストラ:ジャンク・ウォリアー メイン:ものマネ幻想師 魔法・罠:伏せカード×3

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 引いたカードを見た瞬間、店長の口元に笑みが浮かぶ。

 

「薔薇の刻印を発動! 墓地のトマボーを除外し、ジャンク・ウォリアーのコントロールを得る!」

 

『む! 生の方が美味しいですな!』

 

 除外されたプチトマボーによってジャンが餌付けされ、店長側につく。

 

「ジャン!?」

 

『あーあー! 効果で! 効果で仕方なくこちら側につきますぞ! 決して美味しいトマトをまた食べたいなーとか思っていませんぞ!』

 

 いかにも仕方なく、といった風を装うジャンだが、口元によだれのようにガソリンが垂れている。ジャンク・ウォリアーのエンジンはガソリンで動いているらしい。

 

「そして、クリッターを召喚!」

 

クリッター ☆3 攻撃力1000

 

 毛むくじゃらの悪魔。そして、この二体が揃ったということは・・・・・・。

 

「俺は儀式魔法、ハンバーガーのレシピを発動! ジャンク・ウォリアーとクリッターでクッキング!」

 

 ジャンとクリッターがフライパンに乗せられ、火にかけられる。

 

『熱ちちちちち! 熱、熱いですぞ!? あ、クリッター殿が諦めている! え、何? 天使の施しの天使と相乗りしたときにもう牢屋暮らしを覚悟していたから今更? 拙者は嫌ですぞー!!』

 

 フライパンの上で泣き叫ぶジャン。店長側についたことに関しては文句を言っていないあたり、よほどトマトを気に入ったらしい。ものマネ幻想師は裏切ったジャンが許せないらしく、フライパンの底に日光を当てて温度を上げている。

 

 ふとそのフライパンに疑問を感じて戦が除外されているチューニング・サポーターを見れば、そこにはマフラーだけで顔を隠しているミニロボが。頭のフライパンを使われているらしい。

 

「調理召喚! ジャンクリッターバーガー!」

 

ハングリーバーガー ☆6 攻撃力2000

 

 ジャンク・ウォリアーの身体にハングリーバーガーの胴体。バーガーの中身はクリッター。そんなカオスなバーガーが誕生した。

 

『ふぅ。まさか調理される日が来るとは思っていませんでしたな』

 

 カードから抜け出し、しれっと戦の後ろに舞い戻ったジャン。戦はしばらく無視することにした。

 

「ハンバーガーの具材となったクリッター効果発動! デッキからマンジュ・ゴッドを手札に加える!」

 

 手札に加わるものひろい。ものひろいが拾われている。

 

「さらに! 俺は死者蘇生を発動! 墓地のトマボーを特殊召喚!」

 

トマボー ☆3 守備力800

 

「俺はレベル3、トマボー二体に、レベル2、プチトマボーをチューニング!」

 

2+3+3=8

 

「シンクロ召喚! 現れろ、レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト!」

 

レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト ☆8 攻撃力3000

 

 250円のコンロの守護者が、長年の使用で傷ついた姿。

 

「バトルだ! スカーライトで、ものマネ幻想師を攻撃!」

 

「うわ、熱い! 今度は熱い!」

 

遊民戦

LP5300→5000

 

「続けて、ジャンクリッターバーガーで攻撃!」

 

 バーガーからクリッターが射出され、戦にぶつかる。

 

遊民戦

LP5000→3000

 

「俺はこれでターンエンド。さぁ、ここからどうする?」

 

店長

LP5700 手札1

場 エクストラ:レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト メイン:ハングリーバーガー

 

「僕のターン、ドロー」

 

 引いたのはドッペル・ウォリアー。手札にはダーク・バーストがある。

 

『さぁ、主殿! 今こそ拙者を出して反撃ですぞ!』

 

「僕はダーク・バーストを発動。墓地からジャンク・シンクロンを手札に加わるよ。そしてそのまま通常召喚!」

 

ジャンク・シンクロン ☆3 チューナー 攻撃力1300

 

『効果で墓地のモンスターを特殊召喚して、手札のドッペル・ウォリアーも特殊召喚! 拙者が大暴れ! ですな!』

 

「効果で墓地のシンクロ・フュージョニストを特殊召喚!」

 

シンクロ・フュージョニスト ☆2 守備力600

 

『よし、拙者の出番「リバースカード、超融合!」あるぇえ!?』

 

 コストで墓地に送られるドッペル・ウォリアー。銃を片手に敬礼する姿をジャンは幻視した。

 

「あなたのハングリーバーガーとシンクロ・フュージョニストで融合する!」

 

「俺のモンスターで融合だと!?」

 

 融合の渦が現れ、本来素材となるモンスターが入るはずが、中からツルが伸び、強引にハングリーバーガーとフュージョニストを取り込む。

 

「闇の花咲く美しき毒竜よ! 全てを飲み込み食らい尽くせ! 融合召喚! スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン!」

 

スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン ☆8 攻撃力2800

 

 禍々しくも美しい毒竜。戦の母親の遺産で、昨日探していたカードだ。

 

『な、何故ェーー!?』

 

 驚愕で赤いモノアイを思い切り開くジャン。

 

 戦は、ニィヤァと笑う。この反応のために、わざわざダメージを負ったのだ。

 

「スターヴ・ヴェノムの効果発動! 融合召喚に成功したことで、スカーライトの攻撃力を得る! ヴェノム・ドレイン!」

 

スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン 攻撃力2800→5800

 

 スターヴ・ヴェノムがツルを伸ばし、スカーライトから養分を吸い取る。若干炎で焦げているが、問題にもならない。

 

「スターヴ・ヴェノムの第二の効果! 相手モンスターの効果と名前を得る! ヴェノム・イート!」

 

 スターヴ・ヴェノムがツルから養分だけではなく存在までもを奪い始める。

 

「得たスカーライトの効果発動! 自身の攻撃力以下の特殊召喚されたモンスター全てを破壊し、その数×500ダメージを与える!」

 

 養分をあらかた吸い尽くしたスターヴ・ヴェノムは、もう用済みだと言わんばかりにスカーライトに炎のブレスを吐く。その炎も、元はスカーライトのものだ。

 

「バトル! スターヴ・ヴェノムでダイレクトアタック! スカーライト・ブレス!」

 

 スカーライトの炎を宿したブレスが放たれ、店長を包み込んだ。

 

店長

LP5700→0

 

 デュエルが終わり、少しの静寂があってから。

 

(ヤバい! ジャンにあまりにイラついてスターヴとか出しちゃったけど、これじゃあ食い逃げだと思われてもおかしくない!)

 

 焦りのあまり、冷や汗が首筋を伝う。だが、店長の反応は予想を裏切るものだった。

 

「いや、素晴らしい。礼儀正しく、残さず俺のモンスターを食べるとは! こんな少年が食い逃げなんてする筈がないな」

 

 デュエリスト対してはあんまりなプレイングだったが、料理人に対してはこちらの方がよかったらしい。

 

「おいお前。明日から来なくていいぞ」

 

「なっ、そんな!?」

 

 デュエルの結果に呆然としていた店員だったが、店長の言葉に我に返った。

 

「あー、(オレ)ももういいか? 流石に腹が減った」

 

「おう。お前らはれっきとしたお客様だ。おいバイト! 最後の日くらいきちんと働けよ!」

 

 そうして店に戻っていく店長。店員は戦達の方を見て盛大に舌打ちした後、店の中に戻った。ただし、店長の入ったカウンター方面ではなく、バックヤードの方だ。

 

 戦もまた、冷めてしまったであろうフライドポテトに思いを馳せながら、店に戻った。




遊羽のデュエルは真面目。戦のデュエルはギャグ。

今回はギャグに力を入れまくったらこうなりました。8500文字とか、初めてです。


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夏休みの龍塚息吹

彼らが夏休みの間は、ほぼネタ回です。


「おい待てオラ! ぶっ飛ばす!!」

 

『へん、誰が待つかよ! これから牢屋行きなんだ、それまでは自由にさせてもらうぜ!』

 

 街の中を、遊羽が走る。その先には、BF-隠れ蓑のスチームの悪霊。

 

「人の女に手を出したんだ、容赦はしねぇ!」

 

 新レギュレーションにて禁止カードとなるスチーム。そうなる前に、自分のやりたいことをやろうとして悪霊化したのだ。

 

 その扇を使っての、女子のスカート捲り百連続を。

 

「虹花の下着を見ていいのは俺と虹花の親御さんだけだ! セクハラキャラはレズだけにしろ!」

 

 それか心を許し合っているなら水属性使い、と口の中で呟く。

 

『うおっ、行き止まりかよ!』

 

 スチームの逃げた先は裏路地の行き止まり。その後方には遊羽。袋のネズミならぬ袋のカラスだ。

 

「虹花のスカートを捲ったのがお前の運のツキだ・・・・・・覚悟しろよ?」

 

 指をバキバキ鳴らしながら、遊羽はスチームの処刑方法を考える。

 

(《満足アンカー》で強制的にデュエルをしかけ、お互いのカード効果が全て非表示になる《アンノウンパーツ》で困惑させたところを《電撃ビリビリヘルデュエルセット》で痛めつけ、最後には負けた相手の顔写真を撮って顔芸に変換してカードにする機能で一笑いするのもいいが、誰もが嫌いなドレッドバスターの注射でもするか? 中身はビタミン剤じゃなくてスターヴの毒で)

 

 情け容赦の一切ない遊羽の思考に、遊羽の中でレヴが溜め息をつく。

 

『くそ、こうなったらヤケだ!』

 

 遊羽に向かって扇を投げ、その隙に逃げようとするスチーム。

 

 だがしかし、その扇はあっさりと遊羽に受け止められる。

 

「ドラゴンになってから、目とか良くなったんだよなぁ。一々レヴと融合する必要がなくて楽だぜ」

 

『な!? くっ!』

 

 それでも尚空に逃げようとするスチームを、遊羽が軽くジャンプして殴る。

 

『ぐえっ!!』

 

 地面と過激にファーストキスをするスチーム。そのまま遊羽に縛りあげられる。

 

 せっかくの虹花との買い物を邪魔された遊羽は、スチームのカードを確保し、不機嫌にデパートへと戻る。

 

(そういえばアイツ、今は何やってるんだろうな・・・・・・)

 

 スチームから関連して、ワンキル・ソリティア研究会の会長を思い出す。

 

 まぁ、どうせワンキルかソリティアだろうが。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 そのころ息吹がいたのは、ワンキル・ソリティア研究会の部室。

 

 夏休みにも関わらず、そこは活気に溢れていた。

 

「リプロドクスでデビル・フランケンをサイキック族にしてヴァイロン・キューブの効果で念動増幅装置を装備してボム・フェネクスとインディペンデント・ナイチンゲール! 効果でバーン、リンクでスカルデット! 更にパープリッシュ・ヘルアーマゲドン二体を特殊召喚して覇王スターヴ! ナイチンゲールをコピーしてバーン! 先攻ワンキル!」

 

「簡易ユーゴじゃねぇ、簡易融合だ! ナイチンゲールを特殊召喚、バーン、リンク、リンクリボー! 天空の虹彩で破壊してオッドアイズ・フュージョンで覇王スターヴ! 効果でナイチンゲールをコピーしてバーン&貫通攻撃! 後攻ワンキル!」

 

「悪魔の調理師を召喚してシエンの間者でプレゼント! カバーカーニバルで自爆特攻! ドロードロードロー! 収縮打って、超カバーカーニバル! 自爆特攻、ダメージを受けたのでドラコエディア! 神秘の中華なべでライフ回復! 更にカバーカーニバル! 自爆特攻! ドロードロードロー! KI☆TAエクゾディア!」

 

「ミラージュネクロデーモンリベンジワンハンガンネクロデーモンリベンジetc……etc……カード五枚セットにモンスターゾーンも埋まってしまいましたね」

 

「やめろー! こんなのデュエルじゃない!」

 

「何を今更」

 

「妨げられた壊獣の眠り、ラディアンをあげるからサンダーさん特殊召喚するね。マスマティからのジェットロン、手札切ってss、リンクでハリファ、効果でオライオン、シンクロで星帯龍。オライオンでトークン、ワンフォでアクマグネからのラディアンとシンクロ、スターダスト。福音でフォトン・ドラゴン。総攻撃で後攻ワンキルだ!」

 

「新レギュレーション前に祭りだ! トーチゴーレムでトークン、アカシックマジシャン、トーチ、ファイアウォール、トーチ、・・・・・・etc、etc・・・・・・先攻エクストラリンク!」

 

「甘い! ラヴァゴ二体プレゼントしてやるよ! 所有者の刻印で返してもらうぜ! エクシーズ、光波からFA、破壊、ダークマター! デッキ圧縮、除外してカオス・ソルジャー、最後に死者蘇生でラヴァゴ! 後攻ワンキルだオラァ!」

 

「嘘だドンドコドーン!」

 

 活気というか、殺気に。

 

「オレのターン、真紅眼融合で流星竜♪ デッキからレダメ送ってバーン、黒炎弾打って左腕をぶった切って黒炎弾サーチ、発動! オレの勝ち♪」

 

 それは会長たる息吹も例外ではなく、部活開始からドラゴンを使ってワンキルだのソリティアだのやりたい放題だった。

 

「さて、次! ケルベロス張って効果で王様の方のジャッカルさんをPゾーンに置いて自爆、ケルベロス特殊召喚♪ 目覚めで青眼と駄白、違う亜白龍サーチ、特殊召喚! トレインで青眼、エクシーズ、タキオン! レギュレーション前だしいいよね、ダークマター! デッキ圧縮、白石で青眼、エクリプスでガンドラX除外、ダークマター除外してレダメ! 効果で白石特殊召喚してリンク、ハリファ、効果でスチーム! ハリファとスチームでアークロード・パラディオン! スチーム効果でトークン、死者蘇生でタキオンからもっかいダークマター! デッキ圧縮、墓地の青眼とエクリプスとケルベロス除外してレヴィオニア! 効果でレダメ蘇生、エクリプス効果でガンドラXを手札に加える! レダメ効果でガンドラX! 全部破壊して先攻ワンキル♪」

 

「せめて除外するカードくらい宣言させろよ・・・・・・」

 

 『手札誘発を握っていない方が悪い』。ワンキル・ソリティア研究会の格言の一つだ。

 

「・・・・・・お前ら、デッキに手札誘発は?」

 

「「「「「「「入れてない。ワンキルとかソリティアの邪魔だから」」」」」」」

 

 全員揃って答える。上手く組めば邪魔にならないように出来ないこともないが、それでも手札に複数枚来たら邪魔になる。ならば、サーチカードのサーチカードのサーチカードくらいをデッキに入れた方がいいというのが全員の意見だ。コイツらの頭はネジがしまってないらしい。

 

 その中でも比較的常識人の春樹が嘆息しながら全員をさとす。

 

「邪魔になったらコストにすればいい。というか、手札誘発も織り交ぜてワンキルやソリティアができるようになれ。それが最善の道だ」

 

「「「「「「「わかりました、副会長!」」」」」」」

 

 前言撤回、コイツもダメだ。

 

「新しく出たゴッドアイズって、後攻ワンキルできるじゃん♪ 名前は微妙だけど」

 

 前日に(あれ、オレってモンスライドできるのかな?)と徹夜で試していた彼は、そのままのハイテンションで無双していた。

 

「ならオレとやるか」

 

「よしきた春樹! オレの先攻、ドロー! って、あら? あらら?」

 

 とうとう脳がオーバーヒートしたのか、そのままぶっ倒れる息吹。

 

「・・・・・・ターンエンドでいいな? 黒蠍盗掘団を召喚してシエンの間者。カバーカーニバルで自爆特攻。ジャックポット7三枚で終わりだ」

 

「容赦ないね、君・・・・・・」

 

 その言葉を最後に眠る息吹。

 

 春樹は彼を放置したまま、他の部員とワンキルやソリティアをしに行った。




次回はちゃんとデュエルします。


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特別編:クリスマス

祝、クリスマス! 皆さん、いかがお過ごしでしょうか。

私? 受験勉強ですよ・・・・・・。


 クリスマス。本来の目的は忘れられ、人々が楽しむイベントの一つとなったものだ。

 

「おはよう、遊羽くん、真宮さん」

 

「おう」

 

「おはようございます、遊民くん」

 

 いつものように挨拶を交わす遊羽達。

 

 本日デュエルスクールは授業なし。クリスマスのイベントの日である。

 

「そう言えば、真宮さんって生徒会長だよね? イベントの運営とかはいいの?」

 

「はい。今日は楽しむようにと、先生方が頑張ってくれています」

 

 デュエルスクールの校門には飾り付けしたもみの木、学校のいたるところにも飾り付け。これら全て、職員の皆様のご活躍の賜物である。

 

「そうじゃねぇと、俺が虹花と一緒にクリスマスを楽しめないだろ? ちょっとお願い(脅迫)したんだ」

 

 いい笑顔で言う遊羽。職員達は泣く泣く休みを削って飾り付けをしたのだ。

 

「さすがと言うかなんと言うか・・・・・・」

 

「身内に甘いだけだろう」

 

 関心半分呆れ半分な戦に、春樹が口を出す。

 

「あ、そうだ。はい、メリークリスマス」

 

 戦は思い出したかのように鞄を開け、遊羽達にプレゼントを渡す。

 

「これは・・・・・・」

 

「プレゼント交換、ですか」

 

 《プレゼント交換》。お互いにデッキのカードを一枚、相手にプレゼントするカードだ。エクスチェンジと合わせれば、擬似的なサーチにならなくもない。

 

「プレゼントがこれっていうのはどうなんだ? まぁ、面白いとは思うが・・・・・・」

 

「いや、ジャンがそれがいいって聞かなくって」

 

『プレゼントにプレゼント交換。とても面白いと思ったのですが、余り受けませんな?』

 

「いえ、面白いとは思いますよ」

 

 ただ、余り使い道もないカードだ。死蔵するようなものを渡しても、喜ばれることは少ないだろう。

 

「俺達からはこれだ」

 

「一緒に作ったんです。味は保証しますよ」

 

 遊羽と虹花が差し出したのは、ジンジャークッキー。

 

「わぁ、ありがとう!」

 

「如月がこれを・・・・・・? 身体に害はないのか?」

 

 プレゼントが食べ物であることを喜ぶ戦。春樹は遊羽がクッキーを作ったことが疑問らしい。

 

「なら食わなくてもいいぜ。勿体ないけどな」

 

 彼も彼なりに頑張って作ったのだ。今までは虹花にしか送らなかったプレゼントだ。何を作るべきか、かなり悩んだのだが、送ればもう相手のもの。どうしようと相手の勝手だ。事実、戦はもう食べている。

 

「・・・・・・あれ、普通においしい」

 

 意外そうに声を上げる戦。内心(ならここは僕が犠牲に!)と思っていたのだが、いい意味で予想を裏切られたらしい。

 

「だろ? アベシ・ジェスターの二つ名を名乗ってもいいはずだ」

 

『だそうよ、春樹。食べてみたらどうかしら?』

 

 いつの間にか春樹のそばに顕現したディペが言う。春樹もディペが言うのならと思い切ってクッキーをかじる。

 

「・・・・・・旨い、だと」

 

 その心底驚いたような表情と声音に、さすがの遊羽も少し傷ついた。

 

「おいおい、俺は何だと思われてるんだ?」

 

「まぁまぁ、意外性があったってことだよ。ということで、ボクにも一つ」

 

 ヌルッと現れた遥がクッキーをせびる。その欲望に対する忠実さに、遊羽は呆れながらもクッキーを手渡す。

 

「うん、確かにおいしいね」

 

「そいつはよかった。これでマズいとか言われたら、立ち直れる気がしねぇからな」

 

 恐らく、彼は二度とクッキーを作らなくなっていただろう。まぁ、もしそうなっても虹花が慰めれば復活しそうだが。

 

「これはオレからだ。受け取ってくれ」

 

 春樹が差し出したのは、戦と同じようにカード。しかし、全員異なるカードだ。

 

「・・・・・・ガンドラX?」

 

「迷い風、ですか」

 

「王者の調和だね」

 

「強欲で金満な壺かー」

 

 どうやら、一人一人に合うカードを見繕ったようだ。ワンキル・ソリティア研究会副会長は伊達じゃないらしい。

 

「おい待て。ガンドラXって、俺はソリティアしないからな? 勧誘も受けねぇぞ?」

 

 ワンキルパーツ、ガンドラX。どうやら、遊羽はそれを勧誘と受け取ったらしい。

 

「いや、そういう積もりでは無かったのだが・・・・・・」

 

『少し深読みしすぎよ』

 

「あ、いや。悪い」

 

 少し微妙な空気になったのを感じて、遥もプレゼントを取り出す。

 

「ボクからはこれだよ!」

 

 彼女のプレゼントもカードだ。遊羽達が普通なのか、デュエリストならばこちらが普通なのか。

 

「ピースの輪? 何、このカード」

 

「・・・・・・ボク達がこのピースの輪みたいに、ずっと一緒にいられればなって、思ってさー」

 

 凄く乙女な理由だった。乙女さん以上に乙女だ。男装女子だったのに。

 

「・・・・・・可愛い」

 

「え?」

 

 少し恥じらう遥の仕草に、思わず呟く戦。それを拾ってしまうのはデュエリストだからか、遥の耳にもバッチリ聞こえている。

 

「・・・・・・そ、それじゃあ、皆のところに回ろうか!」

 

 その場を紛らわすように、遥は話題を変えた。

 

 そんな彼女の行動も可愛らしく思う戦だった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「お、いらっしゃ~い」

 

『いらっしゃいませ~』

 

「メリークリスマス、なのです!」

 

 遊羽達が向かったのは、ワンキル・ソリティア研究会の部室。そこには数人の生徒と、会長たる息吹、その妹の手鞠がいた。

 

「久しぶりだな、手鞠。早速プレゼントだ」

 

 挨拶もそこそこに、遊羽はクッキーをプレゼント。

 

「ありがとうなのです! これも美味しくいただくのです!」

 

 見れば、彼女の制服のいたるところに食べこぼしが。恐らく、沢山お菓子をもらって食べたのだろう。

 

「ったく、食うのはいいが、こぼすなよ。ちょっとじっとしてろ」

 

「え?」

 

 遊羽は軽くかがみ、手鞠の食べこぼしを回収する。その様子は、さながら兄妹だ。

 

「なんだろ、今凄く兄としての危機感が。ちょっと遊羽、デュエルしない?」

 

「これ捨ててからな」

 

 無駄にできる男な遊羽だった。

 

 遊羽が食べこぼしを捨てている間に、戦達もプレゼント交換タイムとなる。

 

「僕からはこれ。プレゼント交換」

 

「プレゼントにプレゼント交換なんだね♪ このゴブリンの子が不憫でならないんだけど」

 

「オレからはこれだ」

 

「春樹が持ってるカードはほぼオレも持ってるけど、だからってモリンフェエンはないと思うんだ♪」

 

「ボクからはこれだよ」

 

「ピースの輪。うん、どうリアクションとればいいの?」

 

 それぞれからプレゼントをもらい、律儀にツッコミを入れる息吹。もしモンスターだったら過労死枠だろうか。

 

「オレからのプレゼントは、と行きたいんだけど、研究会(ウチ)は毎年恒例のクリスマス花火があってさ。準備できてないんだ」

 

『ごめんね、皆』

 

 軽く頭を下げて謝る息吹。オッドアイズもそれにならうが、遥には見えていない。

 

「むしろ、なんで春樹が準備しているのかがわからないんだけど?」

 

「このカードは元々持っていたものだからな。オレが持っていても腐らせるようなカードだ、プレゼントにした方がいいだろう」

 

 ガンドラXだって、誤って四枚買ってしまったものの一枚だ。それならば、一々プレゼントを買いに出かける必要もないのだろう。

 

「なるほど、その手があったか!」

 

『もうてんだった!』

 

 二人(人?)揃って納得したように手を打つ。ワンキル・ソリティア研究会会長の名前は伊達だったらしい。

 

「それで、デュエルか? テーブルデュエルでいいよな、早くしろ。他も回らないといけねぇんだ」

 

「別にそこまでしてデュエルしたい訳じゃないんだけど!? ま、するけどね♪」

 

「なら、オレ達もゆっくりするか」

 

「そうですね。幸い、お茶菓子もありますし」

 

 壁に立てかけてあったテーブルを引っ張り出し、展開。雑談混じりの気楽なデュエルが始まる。他の面子は座ってティータイムだ。

 

「それにしても、今年は色々あったね。ペンデュラム召喚」

 

「そうだな。俺もこんな色々あるとは思わなかったぜ。FAで破壊からダークマター。三枚除外しろ」

 

「Pスケールとデッキが!? うん、オレも虹花ちゃんやお前が人外になるとは思わなかったね。ドロー♪」

 

「あぁ、本当だな。天球の聖刻印の効果でガンドラXを特殊召喚、効果で4000ダメージ。俺の勝ちだな」

 

「・・・・・・うそん」

 

 先ほど春樹がプレゼントしたカードで決着がついた。相手ターンにガンドラXは非道いと思う。

 

「・・・・・・失敗したな。あわよくばワンキルやソリティアをしてくれればと思ったが、奴が強くなっただけか」

 

『ええ、本当に。来年はもう少し考えてからにしましょう』

 

 そう呟き嘆息する春樹とディペ。その様子に、当の遊羽までもが嘆息する。

 

「こっちはせっかく手に入れたダークマターがおじゃんになるんだ。これぐらいは勘弁してくれよ」

 

 そう、本日は12月25日。あと6日でダークマターは禁止カードだ。その分は彼もデッキを強化しないと割に合わない。

 オリジナルのナンバーズで闇のカードだろうと、ルールには従わなければならないのだ。

 

「それに、春樹はルドラの魔導書が準制限になったんだからおあいこだろ」

 

「まぁ、僕は何も無かったんだけど・・・・・・」

 

 がっくりと肩を落とす戦。フェニックスブレードの禁止が応えたらしい。あれはゴブリンを禁止にするだけで十分だと思っていたのだろう。そうはいかないのがデュエルモンスターズなのだが。

 

「ま、大晦日に使い納め大会でもやるよ♪ それでいいかな?」

 

 息吹の提案に一応は全員納得し、その場は解散となった。

 

 尚、大晦日はソリティアが飛び交うこととなった。(確定)

 

ーーーーーーーーーー

 

 その後、他の面子のところにも寄り、プレゼントを交換した。クリスマス特有のどんちゃん騒ぎは続いていたが、そこから抜け出した遊羽と虹花。

 二人は、屋上でワンキル・ソリティア研究会の花火を待っていた。

 

「どうしたんですか? 今年は二人で見ようって」

 

「まぁまぁ、ちょっとだけ待ってくれよ」

 

 遊羽は何でもないように笑い、それに不満そうに虹花は頬を膨らませる。

 

 丁度その時だった。

 

「お、上がったぜ」

 

「ええ。そうですね」

 

 クリスマスに花火というのもおかしな話だが。

 

「なぁ、虹花」

 

 打ち上げられる花火を見ながら、遊羽は口を開いた。顔は外に向けたままだ。

 

「どうかしましたか?」

 

 虹花もまた、花火を見ながら答える。

 

「将来、俺達は結婚するよな?」

 

「はい」

 

 それは、二人の中ではほぼ確定事項だ。

 他者から見れば異常かもしれないが、二人にとってはそれが普通だ。

 

「だからと思って、俺達は特に何もしなかった。恋人になるっていうのも、今更な気がしたしな」

 

「・・・・・・」

 

 少し苦笑しながら語る遊羽。虹花は何も答えない。

 

「でも、周りはそうじゃねぇ」

 

「・・・・・・そうですね」

 

 それも、二人の共通の認識だ。

 周りが異常なのではなく、自分達が異常なのだと。

 

「だから、これを受け取って欲しい」

 

「えっ?」

 

 虹花が驚いて遊羽に向き直ると、彼は小箱を差し出していた。

 

「これは?」

 

「・・・・・・開けて、自分で見てくれ。割と恥ずかしい」

 

 虹花は小箱を受け取り、紐をほどいて中身を確認する。

 

「・・・・・・指輪、ですか?」

 

「ああ。改めて、虹花」

 

 遊羽は虹花に跪き、その瞳を見つめる。

 

「俺の、婚約者になって欲しい」

 

「・・・・・・はい」

 

 頬を赤くしながらも答えた虹花。遊羽はその回答を聞き、指輪を虹花の左手薬指にはめる。

 

「・・・・・・恥ずかしいです・・・・・・」

 

「安心しろ。俺もだ」

 

 お互いの顔を見ることができずに花火を見る二人。

 

 空に打ち上がる季節外れな花火が、二人を照らしていた。




本編より未来の話ですが、この状況になるかどうかはわかりません。
IFのお話として思ってください。


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虹花の新デッキ

後書きで他作品のネタがありますが、作者様から許可をいただきました。


 夏休みに入ってから、ほぼ毎日のようにくつろぐ遊羽と虹花。

 

 虹花がテレビを見ていると、『ニートの実態!! 働かない決闘者達』と音声が流れて来た。

 

「これって、私たちのことですよね・・・・・・」

 

 危機感を覚え、キッチンで料理している遊羽に目を向ける。

 

 彼は器用に片手でフライパンを持ちながら、もう片方の手で電話をしていた。

 

「もしもし? ・・・・・・あぁ何だホッさんか。何か用か? ・・・・・・ヲーがドジリスとオベリスクが使われたのに自分だけって拗ねてる? 知らん、そんなん俺の管轄外だ。魔術師Pデッキでベアトから不死鳥落としてスターヴでコピーして使ってもらえ、割と強いぞ。つうか何で俺に電話してくるんだよ。前もアーミタイルを倒せって無茶ぶり言ってたよな? あれは本当ににキツかったんだぞ。・・・・・・あ? 忙しいからもう切る? じゃぁ電話すんなよ、ってもう切れてるし・・・・・・ったく」

 

 相手が誰だかはわからないが、何やら働いているような雰囲気は感じる。そのことに、虹花の焦りは加速する。

 

「ゆ、遊羽! デュエル、デュエルをしましょう! 私とデュエルをしてください!」

 

「お、おう。わかった、わかったから落ち着け」

 

 名前を呼ばれた遊羽が一度火を止めてリビングに戻ると、その肩を掴みガックンガックン揺らしながら虹花が懇願する。そのときに虹花の小さくはない胸も揺れたが、遊羽はそれどころではなかった。

 

「どうしたんだよ、急に。何かテレビでやってたのか?」

 

 虹花の頭を撫でて落ち着かせながら、遊羽は改めて訊く。

 少し落ち着いた虹花は、ちょっと涙目で叫ぶ。

 

「私! ニートになりそうなんです! 生徒会の仕事はありませんし、遊羽の家でゴロゴロしてばかり!」

 

「それが何か問題か?」

 

 家でゴロゴロしてばかりの駄白龍が頭にうかぶも、そこに問題は感じない。

 

「大問題です! このままでは、ダメ人間になってしまいます!」

 

「虹花と一緒なら俺は構わないぜ」

 

 いい笑顔で言う遊羽。コイツはもう本当にダメかもしれない。

 

「た、確かに遊羽と一緒なら怠惰な生活もいいですが! でも、女として、こう・・・・・・」

 

 上手く言葉が見つからない歯がゆさにモジモジする虹花。そんな彼女を見て、遊羽は付き合いの長さから言わんとすることを察した。

 

「まぁ、なんとなく言いたいことはわかった。レヴ!」

 

『料理は任された。気兼ねなくデュエルしてくれ』

 

 呼ばれた瞬間に遊羽の中から現れ、自分のすべきことを把握したレヴ。付き合いの長さでは、こちらも負けていない。

 

「さすがレヴだな、頼んだぜ。いくぜ、虹花!」

 

「ありがとうございます、レヴ。いきますよ、遊羽!」

 

 リビングであるにも関わらず、お互いにディスクを構え、少し離れて向き合う。

 

「「デュエル!」」

 

真宮虹花

LP8000

 

如月遊羽

LP8000

 

「私が先攻です。まずはクリバンデットを召喚です!」

 

クリバンデット ☆3 攻撃力1000

 

 クリボーの仲間なのにクリボー名称のついていない盗賊コスプレのクリボー。そう思うと、ちょっと不憫だ。

 

「私はカードを一枚伏せて、エンドフェイズにクリバンデットの効果を発動です! このモンスターをリリースして、デッキの上からカードを五枚墓地へ送って、くず鉄のかかしを手札に加えます。これでターンエンドです」

 

真宮虹花

LP8000 手札4

場 魔法・罠:伏せカード

 

「俺のターン! まずはドラゴン・目覚めの旋律発動! 手札の星間竜パーセクをコストに、デッキから青眼の白龍と青眼の亜白龍を手札に加えるぜ! オルタの効果で、自身を特殊召喚だ!」

 

青眼の亜白龍 ☆8 攻撃力3000

 

 またも残念な駄白龍が頭をよぎるが、彼はかぶりを振ってデュエルへと意識を戻す。

 

「今、私以外の女性のことを考えませんでした?」

 

(んなバカな。何故・・・・・・あ、精霊になったからか)

 

 虹花は現在、アンデットモンスター《屍界のバンシー》の精霊だ。精霊にはマスターと心を通わせる能力があるが、主のいない場合は周囲の人間の心を読めると息吹が言っていたのを遊羽思い出す。

 

「・・・・・・すまん、なるべく考えないようにする。竜の渓谷発動! 効果を発動し、手札の青眼の白龍をコストに、デッキから嵐征竜ーテンペストを墓地へ送るぜ」

 

 フィールドが竜達の住まう谷に切り替わり、青眼の白龍とテンペストが谷底に落っこちる。それを見て、遊羽は眉を寄せる。

 

「確かに死んだら墓地に行くが、ドラゴンってそのくらいで死ぬのか? まぁいいか。墓地の青眼の白龍と星間竜パーセクを除外し、テンペストを特殊召喚!」

 

嵐征竜ーテンペスト ☆7 攻撃力2400

 

 谷底から風が吹き荒れ、テンペストが舞い上がる。この演出には遊羽も目を見張り、デュエルディスクに感謝する。

 

「テンペストとオルタをリンクマーカーにセット! 来い天球の聖刻印!」

 

天球の聖刻印 link2 攻撃力0

 

 一瞬遊羽の脳裏に『ドラゴン! ライダーシステム! エボリューション!』と火星人が現れたが無視する。現れたのは奴が天球儀モチーフだからだろうか。

 

「続けて復活の福音を発動! 墓地のオルタを蘇生だ!」

 

青眼の亜白龍 ☆8 攻撃力3000

 

 再び現れる残念ドラゴン。青眼の白龍がテンペストのコストにされたからか、頬を膨らませ遊羽から顔を背けている。

 

「・・・・・・何故か怒っていますけど・・・・・・」

 

「俺は悪くない。文句は弟分にでも言え」

 

 そう言い切る遊羽。デュエリストの世界は非情なのだ。

 

「バトル、オルタでダイレクトアタック!」

 

「そのまま受けます」

 

真宮虹花

LP8000→5000

 

「リンク召喚する必要はなかったか? カードを一枚伏せて、ターンエンドだ」

 

如月遊羽

LP8000 手札1

場 エクストラ:天球の聖刻印 メイン:青眼の亜白龍 魔法・罠:伏せカード フィールド:竜の渓谷

 

「私のターン、ドロー! ドローフェイズにリバースカード、針虫の巣窟を発動です! デッキの上から五枚を墓地へ送ります」

 

 今まで虹花が使ったことのないカードに、遊羽は困惑する。

 

「虹花、そのカードは?」

 

「私なりに考えて、デッキを新しくしました」

 

 そのセリフと、ドローフェイズに発動されたカード。そこから連想される、虹花のデッキ内容。

 

「スタンバイフェイズ、墓地の死霊王 ドーハスーラの効果発動です! フィールド魔法があるとき、このモンスターを特殊召喚します!」

 

死霊王 ドーハスーラ ☆8 守備力2000

 

 狭いリビングの中に現れた、死霊の王。既に精霊としての力はなく、普通のカードだ。

 

「虹花、そのカードは・・・・・・」

 

「確かに、私はこのモンスターにひどい目に合わされました。ですが、それはあの子が命令したからであって、このモンスターに罪はないと思います。例えあったとしても、それは私のデッキで活躍してもらうことで相殺します」

 

 とうとうと、自分の胸の内を語る虹花。彼女なりの決心があったのだろう。そのことを察した遊羽は、黙って虹花のデュエルを見ることにした。

 

「あ、でも絶対に《ゾンビマスター》は使いません。絶対に」

 

 付け加えるように断言する虹花。そこは絶対に譲らないらしい。

 

「あぁ、そうしてくれると助かる。俺もそのモンスターを見たらどうなるかわからない」

 

 そう言いながら頷く遊羽。彼もそのモンスターを使うと言ったら流石に許容できないところだった。

 

「・・・・・・続けますね。墓地の馬頭鬼の効果を発動です。墓地から不知火の隠者を特殊召喚します」

 

不知火の隠者 ☆4 守備力0

 

「隠者の効果を発動します。リリースすることで、デッキからユニゾンビを特殊召喚です」

 

ユニゾンビ ☆3 チューナー 守備力0

 

「ユニゾンビの効果発動です! 手札一枚を墓地へ送って、ドーハスーラのレベルを一つアップします! 更にドーハスーラの効果をチェーンして、オルタさんは除外です!」

 

「天球の聖刻印の効果発動! 自身をリリースすることで、フィールドのカード一枚を手札に戻す! 俺はオルタを手札に戻すぜ!」

 

 ドーハスーラが杖を振るうと光線がオルタに向かって放たれる。が、それを遮るように天球がオルタを包み、手札へと非難させる。

 

死霊王 ドーハスーラ ☆8→9

 

「更に、今コストにした牛頭鬼の効果を発動です! 墓地のピラミッド・タートルを除外して、手札からアンデットモンスターを特殊召喚します! 私は屍界のバンシー()を特殊召喚!」

 

屍界のバンシー ☆4 守備力200

 

 現れる、虹花とそっくりのアンデット。

 

「なら俺も天球の聖刻印の効果発動だ! デッキからレッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンを攻守0で特殊召喚!」

 

レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン ☆10 守備力2400→0

 

「構いません! ユニゾンビで屍界のバンシー()をチューニング!

 

3+4=7

 

「朽ちた屍の竜よ、不死の名の下、今こそ蘇りなさい! シンクロ召喚! 真紅眼の不屍竜!」

 

真紅眼の不屍竜 ☆7 攻撃力2400

 

 朽ちて尚、生かされ続けた竜。そのモンスターの登場に、思わず顔をしかめる遊羽。

 

「・・・・・・すみません、遊羽。やはりレッドアイズを使われるのは嫌ですか?」

 

 そんな遊羽の反応に、虹花は使ってよかったのか心配になる。

 

「あ、いや、すまん。この盤面でそのモンスターはつらいなと思っていただけだ。むしろ、虹花に使われてコイツも嬉しいだろうよ」

 

 遊羽は慌てて否定する。もし嫌だったとしても、虹花が相手ならば妥協しただろう。

 

「・・・・・・ありがとうございます。大切に使います」

 

 顔を綻ばせ、遊羽を見つめる虹花。普段ならお互いに見つめ合うところだが、そのタイミングでいつの間にか遊羽の後ろにいたレヴが咳払いをした。

 

「お楽しみ中にすまないが、料理ができた。冷めない内に食べてもらえないだろうか」

 

 レヴとて主の邪魔をしたい訳ではないが、冷めてマズくなった料理を主が食べるなど言語道断、という思いで仕方なくデュエルを中断させた。

 

「お、おう。ほら虹花。飯にしようぜ」

 

「そ、そうですね! 冷めない内にいただきましょう!」

 

 お互い顔を赤く染めながらダイニングへと移動する二人と一体。

 

 二人は食事中もずっと顔が赤いままだった。




息吹「お便りのコーナーです♪ まずは、『オッドアイズ・レイジング・ドラゴン』さんから! 『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンの精霊をエクシーズ素材にして出してください』だそうです。続いて、『ドーハスーラ』さんからのお便り。『あんのクソガキがあああ! 我の株が減ったらどうしてくれる!』とのこと。というわけで、またもゾンビさんにはボコられてもらいます! それでは、どうぞ♪」

少年「な、またここか!? 盗賊王に便乗して冥界から逃げようとしてたのに!!」

息吹「おぉ怖い。でもまぁ、オレに勝てたら冥界から出してあげるよ♪ さぁ、デュエルだ!」

少年「クソ、またか! ボクのターン、不知火の隠者を召喚、効果でユニゾンビを特殊召喚! 効果で手札の馬頭鬼とデッキのボクを墓地へ! 馬頭鬼を除外してボクを特殊召喚、効果で手札一枚をコストに隠者を特殊召喚! これで守備表示モンスターは三体! テッペキだ!」

息吹「ではオレのターン! 手札のドーハスーラをコストに、ペンデュラム・コール! デッキの相克の魔術師と相生の魔術師を手札に加えて、Pスケールにセット! ペンデュラム召喚! オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン! 真紅眼の黒竜! 真紅眼の黒炎竜!」

オッドアイズ『やっほ~♪」

少年「な、精霊のカード!?」

息吹「それでは、二体のレッドアイズでエクシーズ! フレアメタル! 相克の魔術師の効果で、更にエクシーズ! オッドアイズ・レイジング・ドラゴン!」

オッドアイズ『レイジングの衣装だよ♪ 今のわたしにさわるとヤケドじゃすまないよ~』

息吹「レイジングの効果! 相手のカード全てを破壊し、その数だけ攻撃力がアップする! レイジング・バースト!」

少年「ボクの壁達が!!」

息吹「最後に、生者の書-禁断の呪術-でドーハスーラを復活♪ トドメに一斉攻撃だ!」

少年「うわあああぁぁぁぁぁぁあ!!」

息吹「ふぅ。これでアフターケアもばっちり♪ これで溜飲も下がったでしょ」


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デッキ調整

夏休み中にデュエルって、どう持っていけばいいんだよ!

という訳で、デュエルなしです。


 遊羽から家へ来るよう連絡を受けた戦は、彼の家に向かっていた。

 道を歩いていると、後ろからDホイールの走る音。

 

「おー、遊民くんじゃん。きみも遊羽に呼ばれたの?」

 

 戦の横で止まり、彼に話しかけてきたのは日向だ。後ろに響も乗っている。

 

「そうですよ。僕も、っていうことは水瀬先輩も?」

 

「おう。急にどうしたんだか」

 

 やれやれと肩をすくめる日向。それでも、後輩のために急いで集まっているのだから、彼のお人好しさがわかる。

 

「兄さん、道で止まるのはどうかと思うッスよ」

 

「お、それもそうか。悪り、先行くわ」

 

「いえ、お構いなく」

 

 響からの注意を受け、申し訳なさそうに走り去る日向。

 

『主殿主殿』

 

(どうしたの、ジャン?)

 

 日向が見えなくなった後、ジャンが心の中から戦に話しかける。

 

『日向殿はM・HEROを使っていてバイクに乗っているのですな。HERO達もバイクに乗るのですかな? それとも日向殿も《マスク・チェンジ》を使ってM・HEROになったりは』

 

(それ以上何も言わないでね、ジャン)

 

 無自覚に危ない橋を渡るジャンに、戦は心の中で溜め息をつきたくなった。

 

(それよりも、遅れないように急ごう)

 

『ならば主殿。今度こそ拙者に幻影翼を付けて主殿を抱えて』

 

(やらないからね?)

 

 未だに翼の件を引きずっているジャンに、戦はとうとう溜め息をついた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 遊羽の家の前に着き、インターホンを鳴らす。

 

「開いてるッスよ」

 

 中から響の声が聞こえてくる。戦は遠慮なく扉を開けた。

 

「お邪魔します」

 

『お邪魔しますぞ』

 

 家の中に入り、そのままリビングまで移動する。そこでは、虹花と日向がテーブルデュエルをしていた。

 

「ドラゴノイドトークン二体とマシュマロンをリリース! 邪神アバターをアドバンス召喚!」

 

「それにチェーンして、リターン・オブ・アンデットを発動です! 墓地から死霊王 ドーハスーラを特殊召喚します!」

 

 アバターの強制効果の発動に合わせてドーハスーラの効果が発動し、早速除外される暗黒の太陽。ドーハスーラとしても、自分を食った存在とは同じフィールドに長くいたくはないだろう。

 

「私のターンです! ドーハスーラとネクロドラゴンでダイレクトアタックです!」

 

「うわ~負けた~」

 

 勝ったのは虹花。その結果に、思わず戦は目を見張る。

 

(少なくとも、水瀬先輩は三年生でプロデュエリストのはず。それに勝った真宮さんって・・・・・・)

 

 以前の彼女とは違う。それをデュエリストの勘でなんとなく察した戦。

 

 そして、彼女の使ったカード達。

 

(・・・・・・真宮さんなりに、思うところがあったんだろうね)

 

 それについて、あえて何か訊くつもりはない。それは、戦の優しさだった。

 

「あ、すみません、遊民くん。ほったらかしちゃいましたね」

 

「ううん、気にしないで。ところで、遊羽くんは?」

 

 こちらに気づいた虹花。戦を呼んだ彼の居場所を訊ねると、虹花がダイニングを指差す。

 そこでは、遊羽が電話をしていた。

 

「だーかーら!! 何で俺に電話すんだよホッさん! 何、モリンフェンから仕事回された!? あいつ唯一神なのかよ! あ゛!? ウ●チホープが儀式デッキでいじめる!? e・ローがヲーを使ってくる!? 知らねぇよ!! アンタ出すとか無茶言うな! 《ファントム・オブ・カオス》でのコピーもできねぇし《真実の名》でも特殊召喚できねぇだろ! 相手が有り得ねぇ程度の確率でデッキに入れてたら《天声の服従》でギリギリ出せるくらいだ! つかリリース素材(三幻神)ごと出回ってねぇよ!」

 

 ゼエゼエと肩で息をしながら電話を切った遊羽。そのただならぬ様子に部屋中のメンバー全員から視線を受けることになる。

 

「・・・・・・ふぅ。悪い、大声出しちまった」

 

 何事もなかったかのようにリビングに戻る遊羽。当然のように虹花の隣に座るのを見て、戦もクッションの上に腰掛ける。

 

「虹花が新しくデッキを作ったんだ。で、戦にも相手を頼みたくてな」

 

「あ、やっぱり真宮さん関連なんだ・・・・・・」

 

 彼が収集をかけるとしたら、世界の危機か仲間に関連することくらいだ。後はほとんど自分で解決してしまう。

 

「すみません、まだ上手くデッキを使いこなせてなくて・・・・・・」

 

 そう言いながら、虹花は先ほどテーブルデュエルに使っていた机の上に、自らのデッキを広げる。

 

「え、ちょっと!?」

 

「何でデッキを広げてるんスか!?」

 

 突然の行動に止めようとする水瀬兄妹。デッキとは、デュエリストの魂。そう簡単に見せていいものではない。

 しかし、その二人を遊羽が制する。

 

「まだ完成したわけじゃねぇから構わねぇ。というか、このデッキの完成度を上げるために意見を聞きたい」

 

 そう言われ、一応納得した二人は広げられたカードに目を向ける。

 《死霊王 ドーハスーラ》《屍界のバンシー》《グローアップ・ブルーム》《真紅眼の不死竜》《邪神機-獄炎》《馬頭鬼》《牛頭鬼》《ピラミッド・タートル》などのアンデットモンスター、《アンデット・ネクロナイズ》《アンデット・ストラグル》《アンデットワールド》《リターン・オブ・アンデット》等のアンデットサポート、《クリバンデット》《針虫の巣窟》といった墓地を肥やすカード。

 そして、《EM五虹の魔術師》だった。

 

「やっぱ入ってるんだな、このカード」

 

「そうッスね。まぁ、虹花ちゃんの代名詞みたいなカードッスからね」

 

 懐かしさを覚えながら、三枚ある五虹の魔術師の内二枚をそれぞれ手に取る水瀬兄妹。効果の確認のためだ。

 

「このペンデュラム効果って、スピリットモンスターが手札に戻ることもないのか。あ、じゃあこのカードを入れようぜ」

 

 そう言いながら日向はケータイで出したカードの画像を虹花と遊羽に見せる。

 

 

 

天岩戸

地属性/レベル4/岩石族

スピリット/効果

ATK1900 DEF1200

 

このカードは特殊召喚できない。①:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、お互いにスピリットモンスター以外のモンスターの効果を発動できない。②:このカードが召喚・リバースしたターンのエンドフェイズに発動する。このカードを持ち主の手札に戻す。

 

 

 

「《天岩戸》・・・・・・?」

 

「五虹の魔術師の0枚効果と同じ効果を適用するカードですか・・・・・・」

 

 見覚えのないマイナーカードに眉をひそめた二人。

 

「でも、この効果なら他のスピリットモンスターにした方がいいと思うよ」

 

 その二人の後ろからケータイを覗き込んだ戦が意見を言う。確かに、この効果のためだけにデッキに入れてもシナジーもなければアンデットワールドでアンデットにしてもスピリットであるために蘇生もできない。イマイチ虹花のデッキとは噛み合わない。

 

「使えないッスね、兄さん。虹花ちゃん、これなんかどうッスか?」

 

 日向に冷ややかな目線を向けながらをどかした響は、自らのケータイを差し出す。

 

 

 

王墓の罠

通常罠

 

カードテキスト

①:相手の墓地から自分フィールドにアンデット族モンスターが特殊召喚された時、フィールドのカード2枚を対象として発動できる。そのカードを破壊する。

 

 

 

「お、このカードは良さそうだな」

 

「はい。ネクロドラゴンとのシナジーもありますし、ただ《死者蘇生》を使うだけでも発動できます」

 

「破壊するカードの指定がないから、五虹の魔術師の破壊もできるね」

 

 五虹の魔術師のデメリット効果を破壊することで回避できる。一枚で二枚のカードを破壊できるのも魅力だ。

 

「うわ、兄さん!?」

 

「な、ならこのカードは?」

 

 

 

ユニゾン・チューン

速攻魔法

 

このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。①:自分または相手の墓地のチューナー1体と、フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。対象の墓地のモンスターを除外する。その後、対象のフィールドのモンスターはターン終了時まで、除外したモンスターと同じレベルになり、チューナーとして扱う。

 

 

 

 先輩としての危機を感じた日向が響をどかしながらケータイを突き出す。もはやアンデットにも関係のないカードだが、恐らくアンデットモンスターから関連画像で検索したのだろう。

 

「ワザとやってんのか、先輩?」

 

「・・・・・・このモンスターが移っているので嫌です」

 

 遊羽には睨まれ、虹花からは心底嫌そうな顔を頂戴する結果となった。そもそも、《ゾンビ・マスター》が移っている時点で彼らは嫌悪感しか抱かない。虹花は《リターン・オブ・アンデット》を使うのにも苦労しているのだから。

 

「おい兄。ちょっと向こう行ってろッス」

 

 珍しく怒りの宿った声を出す響。そのガチトーンにビビったのか、日向は大人しく部屋の隅で『の』の字を書くことにした。

 

「僕、フォローしてくるよ」

 

 そう言って、戦は日向のそばへ近寄り、デッキの相談を持ちかける。

 

「僕のデッキを見てもらえますか?」

 

「・・・・・・おれで、いいのか?」

 

 かなりどんよりとした空気を醸し出す日向だが、そんなことはお構いなしと言わんばかりにいつものニコニコ笑顔だ。

 

「はい。お願いします」

 

 暗い空気のまま戦のデッキを見、改善点やお勧めのカードなどを挙げる日向。それをどこからか取り出したメモを片手に書き取る戦。

 そうしていく内に、徐々に日向の雰囲気も明るくなっていった。

 

 一方、虹花のデッキも順調なようで、三人で意見を出し合っている。

 

『平和だな・・・・・・』

 

『平和ですなぁ・・・・・・』

 

 すっかり蚊帳の外な精霊二人は、そんな彼らを見守るのだった。




次回はデュエルします。


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New脳筋vsアンデット五虹

皆さんあけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
年末年始でカード屋を駆け回ってました。
・・・・・・アンチホープが売ってない。(欲しい)


「よし、出来ました!」

 

「これで終わり!」

 

 デッキ作りを始めて2日。

 ほぼ同時にデッキが完成した二人は、驚きながらも顔を見合わせると、どちらともなく出来たばかりのデッキをディスクにセットし、向かい合う。

 

「待て待て。この人数だと狭いから外でにしろ」

 

 が、それを止める遊羽。先日虹花とリビングでデュエルしていたが、それはデュエルする二人しか部屋にいなかったからだ。五人もいる状況でのデュエルはさすがに狭い。

 

「・・・・・・そうですね。移動しましょう」

 

 虹花の言葉をきっかけに移動を開始する

 

 玄関から外に出て、庭の真ん中あたりを中心に少し離れて向き合う戦と虹花。

 

「よっこいせ、と。ほら、座って見ようぜ」

 

 見学者達は遊羽がどこからか持ってきたベンチに腰掛けた。ドラゴンになったことで筋力が上がっているらしく、ベンチくらいは担げるようだ。

 

 それを目の端で確認した戦と虹花は、ディスクを構えた。

 

「「デュエル!」」

 

真宮虹花

LP8000

 

遊民戦

LP8000

 

「私のターンです。まずは、不知火の隠者を召喚します」

 

不知火の隠者 ☆4 攻撃力500

 

「効果発動です。デッキからユニゾンビを特殊召喚します」

 

ユニゾンビ ☆3 チューナー 守備力0

 

「ユニゾンビの効果発動です。デッキからアンデットモンスターを墓地に送ることで、フィールドのモンスターのレベルを一つ上げます」

 

ユニゾンビ ☆3→4

 

「私はカードを一枚伏せて、ターンエンドです」

 

真宮虹花

LP8000 手札3

場 メイン:ユニゾンビ 魔法・罠:伏せカード

 

 アンデットデッキとしては理想的な動きだ。

 

(もう少し欲を言えば、アンデットワールドとドーハスーラが欲しいところです。この手札ではできませんが)

 

「僕のターン、ドロー」

 

「ドローフェイズに、リバースカード針虫の巣窟です」

 

 虹花の墓地が肥える。が、そんなことはお構いなしとでも言うかのように戦はカードを発動する。

 

「手札抹殺を発動だよ。お互いに手札を全て捨てて、同じ数だけドローするよ」

 

 虹花の思いが伝わったのか、それとも偶然か、戦は手札交換のカードを発動する。

 

「私は三枚捨てて三枚ドローします」

 

「僕は手札が五枚のままだから、五枚ドローするね」

 

 入れ替わる手札。虹花は目的のカードを引けたらしく、少し微笑む。

 

「ジャンク・シンクロンを召喚! 効果で墓地からドッペル・ウォリアーを特殊召喚!」

 

ジャンク・シンクロン ☆3 チューナー 攻撃力1300

 

ドッペル・ウォリアー ☆2 守備力800

 

 戦の十八番(おはこ)にしてジャンドの基本的な動き。ただ、彼がここから出すモンスターは決まっている。

 

『勿論拙者の出番、』

 

「現れろ、強きを挫くサーキット!」

 

 決まってねぇぞオイ。

 

 矢印の八つ付いた門が現れ、そこにジャンク・シンクロンとドッペル・ウォリアーが吸い込まれる。

 

「リンク召喚! 聖騎士の追想 イゾルデ!」

 

聖騎士の追想 イゾルデ link2 攻撃力1600

 

「ここでイゾルデ、ですか?」

 

「アンデットデッキにはこっちの方がいいと思って。イゾルデの効果発動! リンク召喚に成功したことで、デッキからADチェンジャーを手札に加えるよ」

 

「っ、そのカードですか・・・・・・」

 

 ADチェンジャー。モンスターの表示形式を変更するカード。戦のデッキに新しく入ったカードだ。

 

「イゾルデの第二の効果発動! デッキから団結の力、最強の盾、ジャンク・アタック、巨大化を墓地に送って、E・HERO シャドー・ミストを特殊召喚!」

 

E・HERO シャドー・ミスト ☆4 攻撃力1000

 

「そのカードは・・・・・・!」

 

「さっき日向先輩に譲ってもらったんだ。制限カードなのに三枚あるからって」

 

 レギュレーションが変われば入れられる枚数は増えるかもしれないが、良くて準制限だろう。三枚入れられるようになるころには再録もしていると考えた日向は、そのカードを戦に譲ることにしたのだ。

 

「シャドー・ミストの効果発動! デッキからマスク・チェンジ・セカンドを手札に加えるよ」

 

 なんでもヒーローにする制限カード。これで君もヒーローだ!

 

「バトル、シャドー・ミストでユニゾンビを攻撃!」

 

「受けます」

 

 イゾルデがイヤイヤながらユニゾンビに攻撃する。ヒーローでも敵をえり好みするようだ。

 

「イゾルデでダイレクトアタック!」

 

「うくっ!」

 

真宮虹花

LP8000→6400

 

「マスク・チェンジ・セカンドを発動! シャドー・ミストを墓地に送って、変身召喚! おいで、M・HERO ダークロウ!」

 

M・HERO ダークロウ ☆6 攻撃力2400

 

 外見も効果もダークヒーローよりの闇のヒーロー。マスクドヒーローがディケイドなら、これは激情態か。

 

「更にダークロウでダイレクトアタック!」

 

「あうっ!」

 

真宮虹花

LP6400→4000

 

 防御札がないのか、ライフをかなり削られる虹花。どうやら、まだデッキを使いこなせていないらしい。

 

「僕はこれでターンエンド」

 

遊民戦

LP8000 手札3

場 エクストラ:聖騎士の追想 イゾルデ メイン:M・HERO ダークロウ

 

 珍しく伏せカードが何もない戦。それはデッキを強化した結果か、それとも手札事故か。

 

「私のターン、ドローです」

 

 虹花はフィールドのダークロウをチラリと見る。何故かピンクのカメラで写真を撮っているが、アンデットデッキのように墓地を活用するデッキにとって天敵と言えるカードだ。

 

「ドローフェイズに、墓地の屍界のバンシー()の効果発動です! 墓地から除外することで、デッキからアンデットワールドを発動します」

 

 フィールドが屍達の世界へと変わる。

 

「このタイミングでの発動っていうことは・・・・・・」

 

「はい。お察しの通りです。スタンバイフェイズ、墓地のドーハスーラの効果発動です! 特殊召喚!」

 

死霊王 ドーハスーラ ☆8 守備力2000

 

 余所ではアドバンスドローのコストにされたり死者蘇生を拒否したりしている蛇の王(ウロボロス)。意外と世間体を気にするらしい。

 

「更に、墓地の馬頭鬼の効果を発動です。このカードを除外して、墓地のユニゾンビを特殊召喚します。この効果にチェーンして、ドーハスーラの効果発動です! ダークロウを除外します!」

 

 早速除去られるダークヒーロー。正義の見方は時に嫌われ役に回ることもあるのだ。

 

ユニゾンビ ☆3 チューナー 守備力0

 

「ユニゾンビの効果発動です。デッキから馬頭鬼を墓地に送ることで、ドーハスーラのレベルを一つ上げます」

 

死霊王 ドーハスーラ ☆8→9

 

「ユニゾンビ自身じゃないってことは」

 

 戦が何かを察したように目を細める。

 

「墓地の馬頭鬼を除外して、墓地から不知火の隠者を特殊召喚です!」

 

不知火の隠者 ☆4 守備力0

 

「ユニゾンビで不知火の隠者をチューニング!」

 

3+4=7

 

「朽ちた屍の竜よ、不死の名の下、今こそ蘇れ! シンクロ召喚! 真紅眼の不屍竜!」

 

真紅眼の不屍竜 ☆7 攻撃力2400

 

 アンデットとしての進化を遂げたレッドアイズ。唯一のシンクロモンスターのレッドアイズだが、アンデットであるために採用されない。後、この世界では彼女しか持っていない。

 

「レッドアイズの効果です。お互いのフィールドと墓地のアンデットモンスターの数だけ攻撃力がアップします。私は墓地に五枚です」

 

「僕の墓地のモンスターは四枚だよ」

 

 そして、フィールドには三体。合計十二体。アンデットワールドによって、全てアンデットモンスター。

 

真紅眼の不屍竜 攻撃力2400→3600

 

「バトルです。レッドアイズで、イゾルデ攻撃します! 屍炎弾(ネクロ・フレイム)!」

 

 レッドアイズが飛翔し、翼でイゾルデを切り裂く。

 

「うぐっ!」

 

遊民戦

LP8000→6000

 

「レッドアイズの効果発動です! アンデット・フォール! 自身以外のアンデットモンスターが戦闘破壊された場合、墓地からアンデットモンスターを特殊召喚できます! 墓地から真紅眼の不死竜を蘇生です!」

 

真紅眼の不死竜 ☆7 攻撃力2400

 

 進化前のレッドアイズ。進化前と進化後が並ぶのは珍しい盤面だ。

 

「二体目のレッドアイズでダイレクトアタックです!」

 

「くっ!」

 

遊民戦

LP6000→3600

 

 戦に残ったのは、更地のフィールドと三枚の手札。ここからどう巻き返すのか。

 

「バトルフェイズは終了でいいの?」

 

「え? はい、そうですが・・・・・・」

 

 突然の質問の意味を虹花が考える暇もなく、盤面はひっくり返された。

 

「手札からトラップ発動! 拮抗勝負! 相手は僕のフィールドのカードと同じ数になるように、フィールドのカードを裏側で除外しなければならない!」

 

「っ!? ・・・・・・私はアンデットワールドを残して、他のカードを除外します」

 

 フィールドだけが残り、そこにいるべきモンスター達は姿を消した。

 

「おいおい、先輩。何だ、あのカード?」

 

 外野で遊羽が思わず声を出す。今までに戦が使ったことのないカードだからだ。

 

「彼が買えなかったカードだよ。売ってなかったらしいから、あげた」

 

 言いながら、日向はとあるプロデュエリストを思い出していた。

 以前、プロとそてデュエルした、絵札の三剣士を使うデュエリストのことを。

 

「あげたって・・・・・・」

 

 そのデュエリストを知らない遊羽は日向の顔を見るが、そんなことよりもデュエルだ、と目で伝えられ、渋々ながらもデュエルに目を戻す。

 

「カードを一枚伏せて、ターンエンドです」

 

真宮虹花

LP4000 手札3

場 魔法・罠:伏せカード フィールド:アンデットワールド

 

 ほぼ墓地からの特殊召喚しかしていないため、手札はまだ残っている。

 

「僕のターン、ドロー!」

 

 残りライフは4000弱。虹花よりも少し少ない。

 

「スタンバイフェイズに、墓地のドーハスーラの効果発動です!」

 

「っ、二枚目・・・・・・!」

 

死霊王 ドーハスーラ ☆8 守備力2000

 

 再び蘇る死霊の王。

 虹花がアンデットワールドを残したときから薄々感づいてはいたが、それでもこの状況には刺さる一枚だ。

 

「僕はカードを二枚セット! そして命削りの宝札を発動! 三枚ドローする!」

 

 一気に戦の手札が増える。

 

「僕はモンスターをセット。これでターンエンド」

 

遊民戦

LP3400 手札0

場 メイン:伏せモンスター 魔法・罠:伏せカード×2

 

 ドーハスーラの効果によって展開できないと判断したのか、戦は防戦一方となる。新たにカードを伏せなかったのは手札事故か、それ以外か。

 

「私のターン、ドローです。まずは不知火の隠者を召喚します」

 

不知火の隠者 ☆4 攻撃力500

 

「効果で、デッキからユニゾンビを特殊召喚します。ドーハスーラの効果で、伏せモンスターを除外させていただきます」

 

ユニゾンビ ☆3 チューナー 守備力0

 

 元二人三脚ゾンビが現れると同時に、伏せてあった《ラッシュ・ウォリアー》が除外される。

 

「・・・・・・」

 

「ユニゾンビの効果で、デッキから牛頭鬼を墓地に送って、ユニゾンビのレベルを一つ上げます」

 

ユニゾンビ ☆3→4

 

「そして、牛頭鬼の効果発動です! 墓地の不知火の隠者を除外して、手札からグローアップ・ブルームを特殊召喚します!」

 

グローアップ・ブルーム ☆1 チューナー 守備力0

 

「行きます。集え、光と闇のサーキット!」

 

「リンク召喚だって!?」

 

 初めて見る彼女のリンク召喚に、戦が驚く。

 

「・・・・・・遊羽? そっちこそどういうことだ? 虹花ちゃんはリンク召喚なんかしなかっただろ」

 

 日向もまた驚き、遊羽に目線を向ける。

 

「何かおかしいか? 虹花も進化してるってことだろ?」

 

「まぁ、元々エクストラデッキをあんまり使わないデュエリストだったッスからね。驚くのも無理はないッス」

 

 虹花はロックデッキを使っていたころから、あまりエクストラデッキを使わないデュエリストだった。今までに使ったのは、やぶ蛇用に《ナチュル・エクストリオ》《花札衛-五光-》《異星の最終戦士》《琰魔竜 レッド・デーモン・アビス 》《サウザンド・アイズ・サクリファイス》くらいだ。殺意が高い。

 

「けど、この状況でわざわざリンク召喚するモンスターって・・・・・・」

 

 日向も持っているカードなのだが、彼は心当たらなかった。

 

「私はドーハスーラとグローアップ・ブルーム、ユニゾンビをリンクマーカーにセットします! 来てください! 光と闇を切り開く戦士! リンク召喚! 混沌の戦士 カオス・ソルジャー!」

 

混沌の戦士 カオス・ソルジャー link3 攻撃力3000

 

「墓地に送られたグローアップ・ブルームの効果発動です! 除外することで、デッキから死霊王 ドーハスーラを特殊召喚します!」

 

死霊王 ドーハスーラ ☆8 攻撃力2800

 

「っ、三枚目!」

 

 一枚は除外されているために問題ないが、次の戦のターンになればもう一体のドーハスーラも特殊召喚される。壁が増えるだけだが、突破は困難になる。

 

「バトルです! カオス・ソルジャーで攻撃します!」

 

「墓地の幻影騎士団シャドー・ベイルの効果発動! 墓地からモンスターとして特殊召喚!」

 

幻影騎士団シャドー・ベイル ☆4 守備力300

 

「でしたら、そのモンスターを攻撃します!」

 

 カオス・ソルジャーの剣により、亡霊が切り裂かれる。

 

「カオス・ソルジャーの効果発動です! 伏せカードを一枚除外します!」

 

「しまった!」

 

 伏せてあった《エンジェル・リフト》が除外される。これで戦の伏せカードは一枚だ。

 

「ドーハスーラでダイレクトアタックです!」

 

「・・・・・・受けるよ」

 

遊民戦

LP3600→800

 

 ドーハスーラの杖から出た光が戦を貫く。ソリッドビジョンじゃなければ即死だった。

 

「私はサイクロンを発動して、伏せカードを破壊します。これでターンエンドです」

 

真宮虹花

LP4000 手札1

場 エクストラ:混沌の戦士 カオス・ソルジャー メイン:死霊王 ドーハスーラ 魔法・罠:伏せカード

 

「僕のターン、ドロー」

 

「スタンバイフェイズに、墓地からドーハスーラを特殊召喚します」

 

死霊王 ドーハスーラ ☆8 守備力2000

 

 蘇った二体目の蛇を見ながら、戦は考える。

 

(さっきのターンで伏せカードの除去を優先したってことは、多分墓地には五虹の魔術師があるはず)

 

 戦の予想は正しく、虹花の墓地には五虹の魔術師が、そしてフリーチェーンで伏せることのできる《リターン・オブ・アンデット》がある。もしモンスター効果の発動や攻撃をすれば、止められるだろう。

 

(それに、モンスター効果を封じられるだけじゃ済まないだろうし)

 

 虹花のフィールドには二体のドーハスーラ。片方を対処しても、もう一方は残る。モンスター効果を発動すれば、除外や無効化をしてくるため、警戒すべきものが絞れない。

 

 ならば、どうするか。

 

「僕は強欲で貪欲な壺を発動! デッキからカードを十枚除外して、二枚ドロー!」

 

 引いたカードを確認し、ニッと笑う戦。

 

 その姿が、デュエルを見ている日向の中でとある人と重なる。

 

(あの姿、まるで・・・・・・)

 

 戦は見えた勝利へのビジョンを元に、カードをディスクに置いていく。

 

「まずは墓地のブレイクスルー・スキル二枚の効果発動! 墓地から除外して、ドーハスーラの効果を無効にする!」

 

「早速対処してきましたか・・・・・・」

 

 これで、ドーハスーラ達に邪魔されることなくモンスター効果を発動できる。

 

「墓地のラッシュ・ウォリアーの効果発動! 除外して、墓地のジャンク・シンクロンを手札に加えるよ」

 

「墓地の効果ならば、仕方ありませんね」

 

 五虹の魔術師が止めるのは、フィールドで発動する効果のみ。墓地で発動する効果は止められない。

 

「ですが、それにチェーンして、墓地のリターン・オブ・アンデットの効果発動です! 除外されている馬頭鬼をデッキに戻して、このカードをセットします! そして、墓地のEM五虹の魔術師の効果発動です! 墓地のこのカードをPゾーンに置きます!」

 

 光の柱が現れ、その中に五虹の魔術師が浮かび上がる。

 

「だったら、墓地の絶対王 バック・ジャックの効果発動! 墓地から除外して、デッキの一番上を確認するよ。それがトラップなら伏せて、それ以外なら墓地に送るよ。ドロー!」

 

 引いたカードは、《緊急同調》。トラップカードだ。

 

「っ!」

 

「これで! ジャンク・シンクロンを召喚!」

 

ジャンク・シンクロン ☆3 チューナー 攻撃力1300

 

 伏せカードがあることにより、ジャンク・シンクロンは効果を発動できる。

 

「ジャンク・シンクロンの効果発動! 墓地からドッペル・ウォリアーを特殊召喚!」

 

ドッペル・ウォリアー ☆2 守備力800

 

「行くよ! ジャンク・シンクロンでドッペル・ウォリアーをチューニング!」

 

3+2=5

 

「集いし星が、鋼に打ち勝つ戦士となる! シンクロ召喚! ジャンク・ウォリアー!」

 

ジャンク・ウォリアー ☆5 攻撃力2300

 

『今度こそ出番ですぞ!』

 

 ジャンが飛び出て、フィールドを軽く一周する。特にその行動に意味はない。

 

「ジャンク・ウォリアーの効果と、ドッペル・ウォリアーの効果を発動!」

 

ドッペル・トークン ☆1 攻撃力400

 

ジャンク・ウォリアー 攻撃力2300→3100

 

「墓地のスキル・サクセサリーの効果発動! 除外して、ジャンの攻撃力を800アップする!」

 

ジャンク・ウォリアー 攻撃力3100→3900

 

(しかし、私の伏せカードはくず鉄のかかし。それでこのターンを凌げば、次のターンでアンデットモンスター達を展開できます)

 

 次のターンでカードを後三枚伏せれば、攻撃力は二倍になる。虹花が勝つのは難しい問題じゃない。

 

 そう考えること自体が、負けフラグだ。

 

「バトルだ! ジャンク・ウォリアーでドーハスーラを攻撃! スクラップ・フィスト!」

 

「リバースカード、くず鉄のかかしです! 攻撃を無効に」

 

「手札からトラップ発動! レッド・リブート! ライフを半分支払うことで、このカードは手札からも発動できる!」

 

遊民戦

LP3400→1700

 

「また手札からトラップカードを!?」

 

「効果で、くず鉄のかかしを無効にしてもう一度伏せるよ! 真宮さんはデッキからトラップカードを伏せられるけど、このターンはトラップカードを発動することができない」

 

「!? ・・・・・・リターン・オブ・アンデットを伏せます」

 

 レッド・リブートにより、かかしが無理やり伏せられる。邪魔するものがなくなったフィールドで、ジャンが拳を握る。

 

『セイヤァァァア! 悪☆霊☆退☆散ですぞ!』

 

 すでに悪霊でも精霊でもなくなっているのだが、それを無視した鉄拳を食らうドーハスーラ。この世は無慈悲だ。

 

「ダメージステップ、手札のラッシュ・ウォリアーの効果発動!」

 

「っ! 脳筋ですね・・・・・・」

 

ジャンク・ウォリアー 攻撃力3900→7800

 

 ジャンの拳が二倍に膨れ上がり、ドーハスーラを砕く。

 

「きゃあっ!」

 

真宮虹花

LP4000→0

 

「・・・・・・負けてしまいました」

 

「お疲れ、虹花。いいデュエルだったぜ」

 

 デュエルが終わると共に労う遊羽。戦のそばには日向がいる。

 

「早速使いこなしたな。いやー、カードをあげたかいがあった」

 

「いえ、まだまだですよ。今回もかなり危なかったですし」

 

 実際、手札全てを使い切っての勝利だ。一枚でも違うカードだったら、どうなっていたかわからない。

 

「そろそろ暗くなってきたッスよ。帰るべきッス」

 

「家で食べていかないか、響先輩」

 

 空を見上げて帰宅を促す響に、遊羽が甘いお誘いをかける。

 

「うっ・・・・・・ちょっと電話してみるッス」

 

 ケータイから家族に電話をかける響。彼女とて、帰りたいわけではないのだ。

 

「もしもし? 自分ッスよ。・・・・・・いや、詐欺じゃないッス。あなたの娘の響ッスよ。実は後輩の家で晩御飯を食べたいんスけど・・・・・・え? いや彼氏じゃないッスよ。兄さんも一緒ッス。・・・・・・いや、兄さんの彼氏でもないッス。ふざけてるんスか? ・・・・・・オッケー出たッス。晩御飯、いただくッスよ」

 

「お、まじか。よろしく、遊羽!」

 

 戦にアドバイスをしていた日向だが、結果だけ耳ざとく聞いていたらしく、遊羽に手刀を切る。

 

 そんな日向を無視した遊羽は、先程聞こえてきた電話内容から響を思いやり、更に優しく接する。

 

「大変そうだな、響先輩。よければ、何かリクエストしてくれよ、先輩方?」

 

「僕フライドポテトで」

 

「お前はいつ先輩になった」

 

 ノータイムでリクエストする戦に、遊羽もまたノータイムで返す。

 

 五人は家に入っていった。




現在、yunnn様の『遊戸 里香の表裏生活』にてコラボ編をやっています。
今出ているのは遊羽と虹花です。是非、見てください。


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夕食

毎日塾に行って勉強して昼飯食べて勉強して・・・・・・やってられるかぁ!

というわけで投稿します。デュエルはしません。


 家に入り、遊羽と虹花が夕食を作る。

 

「さて。カツカレーでも作るか」

 

「そうですね。昨日の残りのカツを使いましょう」

 

 昨日は余る程カツを作ったのか。

 

(カツカレーといえば赤ぶちメガネ・・・・・・)

 

 おい待てやめろ。

 

「じゃ、おれらはできあがるまで遊ぶか」

 

「兄さん、後輩に料理を任せて遊ぶのはどうかと思うッスよ」

 

「日向先輩、僕とデュエルしてください」

 

「おう!」

 

「聞いてないッスね・・・・・・」

 

 リビングで料理が出来るまでテーブルデュエルする二人。

 

 戦が大量ドローし、日向は大型モンスターを並べる。

 

「ふふふ。クラッキング・ドラゴンがいる状況できみのライフは残り1100! 勝った!」

 

「バトルフェイズ終了時、拮抗勝負発動しますね」

 

「ウゾダドンドコドーン」

 

「ジャンク・シンクロン召喚、ドッペル・ウォリアー特殊召喚、シンクロ。ジャンク・ウォリアー。スクラップ・フィストとラッシュ・ウォリアーで」

 

「マジ脳筋ッスね・・・・・・」

 

 一瞬でひっくり返された盤面を見て、響が思わず呟く。

 

「そろそろ出来ますよ」

 

「手伝ってくれ」

 

 遊羽と虹花に呼ばれ、三人はテーブルを片付ける。

 

「あ、おれトイレ借りるわ」

 

 そう言って部屋を出た日向を見送りながら、遊羽は眉を寄せる。

 

「虹花。最近トイレに行った記憶がねぇんだが」

 

「奇遇ですね。私もです」

 

 はて? と首を傾げる二人に、顕現したレヴが言う。

 

『恐らく、精霊に近い存在となったからだろう。精霊は食事や排泄を必要としない』

 

 その説明を聞きながら、遊羽はふと考える。

 

(もし俺達が人間に戻れる機会があったとして、虹花は戻って平気なのか? 一度死んでアンデットになったんだから、人間に戻ったら死ぬのか?)

 

 そこまで考えて、意味のない考察だと忘れる遊羽。

 

 そのタイミングで、日向がトイレから戻ってくる。

 

「わりーわりー。さ、食べようぜ」

 

 皆で席につき、夕食を食べる。

 

「美味しいッス!」

 

「さすが遊羽と虹花ちゃん。夫婦のコンビネーションか?」

 

「日向先輩、結婚はまだ二年先だぜ?」

 

「するってもう決まってるんだ・・・・・・」

 

「当たり前です」

 

 バカップル空間が作り出され、他三名はかなり微妙な雰囲気となる。

 

「で、先輩。あのカードは何なんだ? 戦が欲しがってた、って」

 

「ああ。戦くんがリスペクトしているプロデュエリストと、前にデュエルしたことがあって。使ってるカードはわかるから、あげた」

 

「その人、二年前にプロを追放されてるんだ。だから、DVDとかあんまり出回ってなくて」

 

 戦の尊敬するプロデュエリスト。彼はプロを追われているため、DVDなどももう出回っていない。そのため、リスペクトしようにも出来ない状況だった。

 しかし、日向はプロデュエリスト。彼ともデュエルしたことがある。そのため、戦は彼についての話を聞くことができたのだ。

 

「なるほど。初めて先輩がプロで良かったと思えたな」

 

「ひでぇ!? なんで先輩のおれがこんな扱いを・・・・・・」

 

「いじられキャラってことッス。諦めるッスよ」

 

 響の言葉で、食卓が笑いに包まれた。

 

「ふぅー、くったくった」

 

「ご馳走様ッス」

 

 食事を終えると、そのまま帰り支度を始める水瀬兄妹。

 

「なんだ、もう帰るのか?」

 

「わり、明日プロとしての仕事があってさ。先、かえるわ」

 

「お邪魔したッス」

 

 そう言って玄関先から出る二人。どうやら、本当に急いでいるらしい。

 

「じゃあ、僕もそろそろ帰ろうかな」

 

 戦も荷物を纏め始める。

 

「そか。虹花はどうする? 泊まってくか?」

 

「はい。そうさせていただきます」

 

 虹花はこのまま泊まるらしい。もう同棲したらいいんじゃないかと思う。

 

「それじゃ。またね」

 

「おう、またな」

 

「気をつけて帰ってください」

 

 戦も遊羽の家を後にした。

 

 そうして、二人っきりになり静まり返った家。

 

「・・・・・・やることもねぇし、食器洗ったら寝るか」

 

「そうですね。あ、隣いいですか?」

 

「おう。当たり前だろ」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「まったく、オレ抜きでデッキ作りとか、流石にヒドくない?」

 

『さべつだ~!』

 

 翌日。

 日向からデッキ作りをしたとのチャットをもらった息吹は、精霊であるオッドアイズを連れて、遊羽の家を訪れた。

 

 インターホンを鳴らし、反応を待つも、家からは音一つ聞こえない。

 

『はんのうないね~?』

 

「・・・・・・遊羽?」

 

 怪しんだ息吹はオッドアイズをドラゴンに戻すと、その背にまたがる。

 それを待って、オッドアイズは屋根までジャンプした。

 

「よっと。非常時だ、許してくれよ♪」

 

 屋根からベランダに降りた息吹は、窓から遊羽の部屋を覗く。

 

「・・・・・・いない?」

 

『あれれ~?』

 

 二人揃って首を傾げる。息吹は《罠はずし》のカードを使い、窓の鍵開けると、不法侵入をした。

 

『いいの? マスター』

 

「おかしい。いつもなら、この時間はまだ家にいるはず」

 

 何で把握してるんだ。

 

「いない・・・・・・どこ行ったんだ、二人とも!?」

 

 息吹の問いに、答えてくれる者はいなかった。

 

 誰も、彼らが異世界に行っているとは思わないだろう。




次回の幕間を挟んで、三章に入ります。

すみませんが、次回もデュエルはありません。


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幕間:ラスボス達の一日

別の話を書いていたんですが、筆が進まなかったのでコチラに。

この小説のラスボスが登場しますが、本編登場は最終章です。


 真っ暗で、何もないような空間。

 

「ふむ。やはり乱れておるな」

 

 世界の様子を見ていた彼は、甘栗で作られた棒状のお菓子、リン栗棒をかじりながら呟いた。

 

「この菓子も世界の乱れによるもの。放っておくわけにはいかん。・・・・・・にしても、美味いな」

 

 この栗棒シリーズのお菓子は、最近バリエーションが増えて栗ボールといった商品も出ているが、そのせいで栗棒派と栗ボール派で派閥戦争が起きているらしい。

 

「次はこれを食べてみるか」

 

 彼がどこからか取り出したのはビッグコアラのマーチ。隅々までたっぷりチョコの入った腹黒そうなお菓子だ。派閥戦争の間で頭角を現しているらしい。

 

「ふむ、これも美味いな。・・・・・・やっぱり、世界の乱れを直すの、やめようかな」

 

 意思が弱いラスボスとか今日日聞かねぇぞオイ。

 

「あーでもなー。直さないと多分色んな世界に支障が出るしなー。モリンフェン様とかは黙認してるし、ホルアクティに至っては気付いてすらいないし。俺がやるしかないよなぁ」

 

 気を緩めたのか、以前の言葉使いで呟く彼。

 

「やぁ我が覇王」

 

「うのわっ!? 何だ白か」

 

 突如その空間に現れた白と呼ばれた青年は、その長い白髪を揺らしながら彼に話しかける。

 

「ご注文通り、ジャンクハングリーバーガーを買ってきましたよ。こちらです」

 

 手に持った紙袋をガサゴソさせ、ジャンクハングリーバーガーを取り出す。彼の頼みで、わざわざ『ジャンクフード』まで出向いたらしい。

 

「おー、ありがとう。暫く休んでたら?」

 

「我が覇王。口調が以前のものに戻っていますよ」

 

 白の指摘にう゛、となる彼。ラスボスなのに臣下に弱いらしい。

 

「あ、コホン。うむ。大儀であった。して、他の三人は?」

 

 気を取り直して、といったニュアンスで彼は白に訊く。すると、白は空間の一角に目を向け、少し嫌そうな顔をした。

 

「・・・・・・帰って来たようです」

 

 そう白が告げると同時に、空間に新たな気配が二つ現れる。

 

「いつになったら捕食植物のリンクモンスターは出るんだよ? ヒーローのリンクは残念効果だしよ。つか何だよグランドマンって。グリッドマンのパクりか?」

 

「まぁまぁ落ち着いて。捕食植物はペンデュラムが出たんだしいいでしょ。僕の幻影騎士団にはまだいないよ」

 

「二枚ないとペンデュラム召喚できねぇのに一種類だけな! テメェはリンクが有用すぎるだろうが! ホープダブルも強ェしなぁ!」

 

「五月蝿いですよ。負け犬の遠吠えは止めてください」

 

「アァ!?」

 

「まぁまぁ」

 

 ボサボサの紫色の髪をかきむしりながら白を睨む青年と、それを止める黒髪の少年。

 

「帰ったか、紫。黒。ご苦労だった」

 

「おう。言われた通り、イベントに行ってアーミライルをゲットしてきたぜ」

 

「僕も憑依覚醒を三枚、しっかりと」

 

 何それ羨ましい。

 

「はぁ、コンマイは何を考えているんだろうなぁ。汎用カードをイベント限定にするとか」

 

「王様、口調が戻ってるぜ」

 

 溜息をつく彼に、今度は紫が指摘する。

 

「それにしても、まだ捕食植物について引きずっていたのですか? 醜いですね」

 

「テメェはいいよなぁ! SRで新規リンクとペンデュラムかよ。こっちはスターヴ・ヴェネミーが進化前すっ飛ばしてリーサルドーズだとよ」

 

「それならまだいいでしょ。僕のダーク・アンセリオンなんて、弱体化され過ぎだし・・・・・・」

 

「黒、貴方には幻影騎士団のリンクモンスターがいるでしょう。それに、いざとなったら覇王黒竜がありますし」

 

「あれは嫌だよ白さん。トマトと合体してるし」

 

「んなこと言ったら、全員アイツと合体してるぜ? オレのスターヴも、お前のクリアウィングも」

 

「いえ、あのモンスターはオッドアイズ・シンクロンを使わない限りオッドアイズにチューニングされませんのでノーカンです。貴方のスターヴは融合素材にオッドアイズが指定されていますが」

 

「い、いや、まだ融合呪印物とかあるし? オッドアイズとかいなくても平気だし? ヨユーヨユー」

 

 明らかに動揺している紫。覇王は彼らを放置して世界の様子を見ることにした。

 

「そもそも、ヒーローは規制され過ぎだろ! 何でアライブ制限なんだよ!」

 

「そんな事を言ったら、私もベイゴマックスが規制されていますし、ダンディライオンもスティーラーも死んでいます。ヒーローはサーチが豊富でしょう? 規制されて当然ですよ」

 

「調律、増援でジャンク・シンクロンはサーチできて、スピードリフトでSRもイケるだろうが!」

 

「僕、サーチとか全然ないんだけど」

 

「「テメェ/あなたはドローンとタクティクスでのドローがあるだろうが/でしょうが!!」」

 

「うわぁ、正論」

 

 やいのやいのと口論を続ける彼ら。そこへ、赤と緑のトマトヘッドの少年が参加する。

 

「ヤッホー皆さん、ワタクシの帰還ですよ!」

 

「「「黙れ、振り子メンタル」」」

 

「ひどっ!?」

 

 そして、呆気なく撃沈。確かにメンタルが弱い。

 

「お前はいいよな。20thのボックスで超強化されて」

 

「ブラマジとガイアの融合、おめでとう。新しい儀式モンスターも出て、良かったね」

 

「貴方だけ全ての召喚方法を使えるのですから、当たりがきつくて当然です」

 

「なんという扱い!? 皆も強化されたじゃん! 白はスピーダー、紫はネビュラ、黒はダブルって」

 

「テメェはアドバンスや笑顔のアレとブラマジ関連の二種類も強化されてるよな。オレはヒーローのリンクが残念だよ」

 

「何でこんなのが一番強化されてるんだろうね。僕はオノマトペシリーズのリンクが欲しいよ。せめてNo.関連のリンクが欲しいよ」

 

「後でオッドアイズ・ドラゴンの精霊に会ったら強化おめでとうと言っておいてください。私はコネクターが残念です」

 

「理不尽な!? ワタクシも残念なカードくらい・・・・・・アレ?」

 

「テメェ、今のはワザとだな?」

 

「ルールはマスタールール3の3対1でいいよね。強化されたんだし」

 

「満足アンカー用意、射出。これで逃げられませんね」

 

「HA☆NA☆SE!? ワタクシが何をしたと言うのです!?」

 

 強制的にデュエルモードに移行するデュエルディスク。三人でトマトを囲む形だ。

 

「懺悔は冥界でATMにでもするんだなぁ。オレのターン、ドリルガイからディシジョンガイ、融合でスターヴ。おろまいでネオス墓地に送ってオーバーソウルで蘇生だぁ。来い、ネオス!」

 

「あ、ついでにドン・サウザンドによろしく言っておいてね? 僕のターン、ゴブリンドバーグ召喚してガガガマジシャン特殊召喚。ついでにカゲトカゲも特殊召喚して、エクシーズでホープ! カードを伏せて、発動! 幻影騎士団シェード・ブリガンダイン! エクシーズ! ダーク・リベリオン!」

 

「私のターン、ドロー。手札からベイゴマックス特殊召喚、効果でタケトンボーグを手札に加え、更に特殊召喚。リリースして赤目のダイスを特殊召喚します。ダイスの効果でベイゴマックスをレベル6にして、シンクロ召喚! クリアウィング! さらにソウルチャージでベイゴマックスとダイスを特殊召喚し、ダイスの効果でベイゴマックスをレベル7に。シンクロ召喚、スターダスト!」

 

 マスタールール3にしたのが運のツキ。全員が二体ずつエースモンスターを出した。殺意が高い。

 

「ではワタクシのターン! レディースエーンドジェントルメーン!! これより、このワタクシ二色(フタイロ)が、華麗なる逆転劇をご覧にいれましょう!」

 

「ジャッジ、遅延行為です」

 

「承諾したぜ。お前の負けだ」

 

「デュエルするまでもなかったね」

 

「せめてデュエルさせてくれませんかねぇ!?」

 

「「「却下」」」

 

「ひどっ!?」

 

 トマトヘッドの少年の名前は、二色というらしい。今となってはどうでもいいことかもしれないが。

 

「・・・・・・おい、貴様ら。ここでのデュエルは我の復活が遅くなるから禁止だと、言ってあったはずなのだが?」

 

 四人が振り返れば、そこには緑色のオーラを漂わせる覇王が。

 

「・・・・・・オネスティ・ネオス!」

 

「追走の翼!」

 

「幻影翼!」

 

「あ、逃げた!?」

 

 それぞれ翼を使って飛翔し、空間から逃げ出す三人。翼をもつモンスターを探してワンテンポ遅れた二色も、紙飛行機を実体化させて逃げようとするが、覇王にガッチリ頭を掴まれる。

 

「これで、我の復活がまた一年遅れて、二年後となったな」

 

「マジスイマセンゴメンナサイ許してください何でもはしませんけど」

 

「じゃ、ブルーアイズマウンテン・ツインバースト一年分で」

 

「・・・・・・マジッスか」

 

 最後だけ素に戻った覇王。その注文によって、二色の財布が粉砕玉砕大喝采されたのは、言うまでもない。




ラスボスの正体については、感想欄に書かないでください。バレバレですが、一応。

後、学校が始まってしまったので、更新頻度がだいぶ下がります。下手すれば、三月まで投稿できません。


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三章
兎との再会


皆様、お久しぶりです。

テスト勉強だなんだで全然執筆できませんでした。
他の作品の感想欄で見かけた? バカな。

というわけで、かなりのボリュームとなっています。初めて一万文字を越えました。


 デュエルスクール、アベシ校。

 

 そこの一年三組の教室に入ろうとした龍塚 息吹は、反対側の教室の入り口に見慣れた人物を見つけ、そちらに方向を変えた。

 

「おはよ~星河先輩♪ この教室に何か用事?」

 

 銀 星河(しろがね せいが)。ワンキル・ソリティア研究会に所属している三年生だ。

 

「あぁ。ちょっと転校生の案内をな」

 

 星河が後ろを見やると、そこには息吹にとって懐かしい白髪の少年がいた。

 

「あっれ~、遊兎じゃんか♪ 戻って来てたのか」

 

「げっ、息吹!? お前と同じクラスかよ!?」

 

 彼の名前は月見 遊兎(つきみ ゆうと)。レスキューラビットの精霊の彼だが、とある事情によって人間の姿では精霊を見ることができないという希有な存在だ。

 

「何だ、知り合いか?」

 

『星河の手を煩わせるとは、どういうつもりだ? 何か狙いでも・・・・・・』

 

 星河の精霊の一体、銀河眼の光子竜が呟くが、遊兎には聞こえない。

 

「フォトン、流石にそれは考え過ぎだ」

 

 それを星河が小声で否定すると、フォトンは渋々ながらも星河の中に引っ込む。

 

(・・・・・・この人、何を考えているのか読めないから怖いんだよな~。精霊も沢山いるみたいだし、良い人なんだけど)

 

 息吹が軽く思考の渦に浸かっていると、精霊であるオッドアイズが心配したようき話しかける。

 

『かんがえごと~?』

 

(ま、そんなとこさ♪ オッドアイズは気にしなくていいよ)

 

 彼の答えに安心したのか、オッドアイズもまた息吹の中に入っていった。

 

「で、遊兎? オレと同じクラスだと、何か不満?」

 

 そのやりとりに遊兎が首を傾げたのを見て、改めて息吹は彼に尋ねた。

 

御前(オマエ)と同じクラスである事実が不満だ! (オレ)御前(オマエ)に勝つために、厳しい修行に耐えてきた!」

 

「その結果、転校生扱いされた、と」

 

「う、うるせぇ! 構えろ! 積年の恨み、今ここで晴らしてやるぜ!」

 

 デュエルディスクを展開し、デッキをセット。ディスクを構えて息吹を睨みつける彼だったが、その肩に手が置かれる。

 

「今は朝の登校時間だぞ。もうすぐホームルームも始まる。やるなら昼休みか放課後にしなよ」

 

「・・・・・・あ」

 

 完全に頭から消えていた。星河の指摘にそんな表情を一瞬浮かべ、慌てて周りを見回す彼。

 

「何あの子可愛い~」「転校生かな?」「白髪だし、不良なのか?」「物騒だなぁ」「あれ、月見じゃね? 中等部のころ同じクラスだったから覚えてるわ」「あー、いたなーそんな奴」「『突っ張ることが男の唯一の勲章なんだ!』とか言ってたな」等々、周りにはたくさんの生徒達が。

 

「お、覚えてろよ!!」

 

 顔を真っ赤にしながら、三下のような捨て台詞を吐いて教室に逃げ込む遊兎。

 それを見て、息吹と星河は同時に呟いた。

 

「「そこ、オレ/息吹と同じ教室だけどね/な」」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 遊兎と教室で短い別れを惜しんだ再会を果たした後、昼休みまでの授業の間ずっと睨んでくる遊兎に気づきながらも授業中故に無視せざるを得ないという精神を削る苦行を耐え抜いた息吹は、チャイムと同時に購買に向かうべく席を立った。

 

「あ、おい待て息吹! (オレ)とデュエルし「よっと」っておい!? そこ窓、って飛んだぁあああ!?」

 

 購買への最短ルートは、教室の窓から飛び降りて外廊下を走るルートだ。それをやると先生にいい顔をされないため、普段使う生徒は少ないのだが、彼はその少ない方に分類される。

 

 無傷で着地した息吹は、そのまま秒速10mで購買まで走った。できるのかって? できるさ。だってデュエリストだから。

 

 購買に辿り着くと、彼は一目散に積まれたパンの前まで走る。

 

「最強デュエリストのデュエルは全て必然!

 

ドローカードさえも、デュエリストが創造する!

 

シャイニング・ドロー!」

 

 かっとビングな詠唱と共に、積まれたドローパンから一つドローする息吹。その後、普通にもう一つ手に取って、隣の棚からプリンを一つカゴに入れると、レジに進んだ。

 

「というわけで、お会計お願いしま~す♪」

 

「はい、ドローパン二つとプリンね。700円だよ」

 

「あ、あとファミチキください」

 

「じゃあ合計1000円だね」

 

「釣りはいらねぇ!」

 

 アホなやりとりの後、千円札をレジのおばちゃんに渡す息吹。そりゃあお釣りはいらないだろうよ。

 

「あれ、龍塚くん? そんなに急いでどうしたの?」

 

 遅れながらも購買を訪れた戦が、走って購買から出ようとする息吹に、思わず声をかける。

 

「助けて! 悪い奴に追われてるんだ!」

 

「その悪い奴って強いの? だったら相手(デュエル)するけど」

 

 あながち間違ってない息吹の発言に、笑顔でバトルフリークなコメントを返す戦。

 

「う~ん、どうだろ? 修行してきた~とか言ってたけど、強くなったのかはわかんない」

 

「じゃあいっか。引き止めてごめんね」

 

「別にいいぜ♪ それじゃ」

 

 手刀を切って、そのまま走り去る息吹。

 その後ろ姿を見届けた戦は、ドローパンをドローした後、遊戯王チップスをカゴに入れて会計に進んだ。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「クソ、どこ行った!?」

 

 遊兎はというと、息吹が走っていったのとは反対方向に駆けていた。

 

 つまり、彼は方向音痴なのだ。

 

 しかし、今回ばかりはその方向音痴さが彼に幸いした。

 

「見つけたぞ、息吹!」

 

「げっ、何故!?」

 

 運良く息吹とエンカウントした遊兎。そのまま息吹と併走する。

 

「どこ向かってるんだよ!?」

 

「何で着いてくるのさ!?」

 

(オレ)とデュエルしろ!!」

 

「ご飯食べ終わるまで待って!?」

 

「いいよ!!」

 

「じゃあ逃げる必要なかったじゃん!?」

 

 とまあ、またアホなコントをやった後、走っている内に辿り着いてしまった体育館の裏にあるベンチに腰掛ける。

 

「じゃ、いただきま~す」

 

 そう言ってドローパンをかじる息吹。

 

(オレ)、何も食うもんねぇ・・・・・・」

 

 それを見て、腹から音を出しながら、少し後悔するような顔をする遊兎。その眼前に、ドローパンが一つ、差し出された。

 

「あ、どうもありがとうございます」

 

 何故か敬語でお礼を言って、それを食べる自称(ワル)。律儀にお礼を言うあたり、悪党要素が薄い。

 

「ん? どしたの」

 

「いや、パンありがとうって」

 

「え、誰から?」

 

「え?」

 

 驚いて遊兎が息吹とは逆の自分の隣に顔を向けると、そこには彼の想い人が。

 

「・・・・・・ん。遊兎、久し振り」

 

「っ、彩葉!?」

 

 桜色の髪を短めのツインテールに纏めた、童顔の少女。

 

 花園 彩葉だ。前期中間テストトーナメントにて、戦とデュエルをした少女。久し振りの登場だ。

 

「どっ、どうしてここに!?」

 

「遊兎が、こっちに走っていくのが見えたから・・・・・・嫌、だった?」

 

 無表情に、小首を傾げる彩葉。その仕草に、遊兎の心がズッキューンと打ち抜かれる。

 

「い、嫌じゃねぇに決まってらぁ!」

 

 胸を張り、何故か得意気に言う遊兎。そんな彼を、微笑まし気に見つめる彩葉。

 

「・・・・・・オレ、おジャマ? おジャマトマト? 帰っていい?」

 

 そんな桃色の空気の横で、居心地の悪そうにしている息吹。遊羽達の夫婦のようなやりとりとは違い、どこか初々しい彼らのやりとりに対しては、彼も耐性がないようだ。

 

「うわぁ!? た、食べ終わったのか? よし、デュエルだ!!」

 

 動揺しながらも、デュエルに話を切り替えることでその場を乗り切ろうとする遊兎。息吹も賛成を表すかのようにデュエルディスクを構える。

 

(久々だな~、遊兎とのデュエル。ま、どうせ大して変わってないんだろうけど)

 

 少し面倒くさ気な息吹に対して、遊兎はやる気満々といった様子だ。

 

(彩葉の前だし、負けられねぇ! リベンジだ!)

 

「「デュエル!」」

 

月見遊兎

LP8000

 

龍塚息吹

LP8000

 

(オレ)の先攻! 行くぜ! レスキューラビット(オレ)を召喚!」

 

レスキューラビット ☆4 攻撃力300

 

 ヘルメットを被ったウサギのモンスター。遊兎のデッキのキーとなるカードだ。

 

「効果発動だ! 除外して、デッキからレベル4以下の同名の通常モンスター二体を特殊召喚する! 来てくれ、セイバーザウルス!」

 

セイバーザウルス ☆4 攻撃力1900

 

 ウサギが助けを呼ぶと、デッキから獰猛そうな恐竜が二体飛び出す。お前がレスキューを求めるのか。

 

(オレ)は二体のセイバーザウルスでオーバーレイ! エクシーズ召喚! フレシアの蠱惑魔!」

 

フレシアの蠱惑魔 ★4 守備力2500

 

 蠱惑魔達が一つの花に集まり、一体のモンスターとなる。

 

「・・・・・・ん。覚えておく」

 

 デュエルを見守っていた彩葉から不穏な言葉が発せられたが、デュエルに集中している遊兎には聞こえない。

 

(オレ)はターンエンド! 御前(オマエ)のターンだ!」

 

月見遊兎

LP8000 手札4

場 エクストラ:フレシアの蠱惑魔

 

「オレのターン、ドロー」

 

 引いたカードを手札に加え、フィールドと手札とを交互に見る息吹。

 

(あの蠱惑魔、フリチェで落とし穴打ってくるからな~。狡猾な落とし穴は飛んでくるだろうし、除外される奈落もキツいんだよねぇ)

 

『だいじょうぶ、マスター?』

 

 大丈夫、と答える代わりに、息吹は手札のカードを引き抜いた。

 

「スケール0の、オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴンと、スケール8の、EMオッドアイズ・ユニコーンで、ペンデュラムスケールをセッティング♪」

 

Pスケール 0ー8

 

「感じろ、龍の息吹! 吹き荒れろ、俺の愛! ペンデュラム召喚! 来い、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン! オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン! オッドアイズ・ファントム・ドラゴン!」

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン ☆7 攻撃力2500

 

オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン ☆5 攻撃力1200

 

オッドアイズ・ファントム・ドラゴン ☆7 攻撃力2500

 

『いっくよ~♪』

 

 フィールドに現れた、二体の龍と美少女。尚、遊兎と彩葉には三体のドラゴンに見えている。

 

 フレシアに向けてピースサインを送るオッドアイズを見て気持ちが和んだ息吹は、幾らかリラックスした様子でデュエルを続けた。

 

「フレシアの蠱惑魔の効果発動! オーバーレイユニットを一つ使って、デッキから狡猾な落とし穴を墓地に送る! この効果は、狡猾な落とし穴と同じ効果になる! オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンと、オッドアイズ・ファントム・ドラゴンには退場してもらうぜ!」

 

「それにチェーンして、オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴンの効果発動! 1ターンに一度、エクストラデッキから特殊召喚されたモンスター一体の効果を無効にする♪ 偽りの紋章(ペルソナ・ルーン)!」

 

「なら、手札のエフェクト・ヴェーラーの効果発動! ペルソナの効果を無効だ!」

 

 ペルソナが紋章を描き、それをフレシアの蠱惑魔に飛ばすが、現れた性別不詳モンスターにより邪魔され、ペルソナ以外のオッドアイズが落とし穴に落ちた。

 

『うわ~! なにこれ~!?』

 

 バイバーイ! と手をふる蠱惑魔達。ピースサインのお返しのつもりらしいが、この絵図では馬鹿にしているようにしか見えない。

 

「問題ないね! オレはEMドクロバット・ジョーカーを召喚!」

 

EMドクロバット・ジョーカー ☆4 攻撃力1800

 

 ノリノリでフィールドに現れたのは、ドクロを模したシルクハットを被った、奇抜なピエロ。

 

「ドクロバット・ジョーカーの効果発動だ。オレはデッキから、超天新龍オッドアイズ・レボリューション・ドラゴンを手札に加えるよ♪」

 

 ピエロがどこからかトランプを取り出すと、そのカードの表面を全て遊兎と彩葉に見せる。どれも異なる種類のトランプであることを遊兎達が認識したことを確認すると、おもむろにシャッフルした。その中から無造作に一枚引き抜くと、何とレボリューション・ドラゴンのカードになっている。それを息吹に手渡すドクロバット・ジョーカー。最後に軽くお辞儀した。

 

 ドクロバット・ジョーカーの手品を見て、思わず拍手をする遊兎と彩葉。

 

(妙な所だけ純粋なんだよな~)

 

 ジョーカーの演出に苦笑しながらもカードを受け取った息吹。

 気を取り直して、デュエルを再開する。

 

「バトルだ。オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴンで、フレシアの蠱惑魔を攻撃!」

 

「けど、フレシアの方が守備力は上・・・・・・」

 

「それはどうかな? (一回言ってみたかったんだよね、このセリフ♪)PゾーンのEMオッドアイズ・ユニコーンの効果発動! オッドアイズが攻撃した時、他のEM一体の攻撃力分、その攻撃力をアップする♪ ユニコーン・チャーム!」

 

オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン 攻撃力1200→3000

 

 以前に遊羽とのデュエルでも使ったコンボ。息吹としては一度見せたコンボをもう一度使うのは不本意だったが、彩葉の様子を見るに、覚えていないらしい。

 そのことに安心するべきか、呆れるべきか、彼は少し迷ってから安心する方を選んだ。

 

「やれ、ペルソナ! ヘッドバット!」

 

 一瞬ペルソナが『え?』という顔で息吹を見たが、言われた通りに頭突きをしようとするも、どの蠱惑魔に攻撃するべきかがわからない。なので、地面から見えていたアリジゴクにヘッドバットをする結果となった。トリオンの蠱惑魔が泣きながら、他の蠱惑魔達はそんな彼女(?)を慰めながら破壊された。

 

オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン 攻撃力3000→1200

 

「続けて、ドクロバット・ジョーカーで攻撃! トラップ・トランプ!」

 

 高笑いと共に遊兎にトランプを投げるジョーカー。そのトランプは遊兎に張り付くと、小規模な爆発を起こした。

 

月見遊兎

LP8000→6200

 

「オレはこれでターンエンド♪」

 

龍塚息吹

LP8000 手札1

場 メイン:オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン EMドクロバット・ジョーカー Pゾーン:EMオッドアイズ・ユニコーン オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン

 

(オレ)のターン! ドロー! 手札抹殺を発動! お互いに手札を交換だ。せっかくサーチしたカードも、これで墓地送りだ!」

 

(う~ん、これは意外と困るな~)

 

 ペンデュラムモンスターはエクストラデッキからの特殊召喚はできるが、墓地からの蘇生手段はあまり多くない。レボリューションは元々自身の効果以外では特殊召喚できないが、それよりもサーチができなくなったことの方が辛い。

 

「装備魔法、D・D・Rを発動! 手札を一枚コストに、除外されているモンスター一体を特殊召喚して、このカードを装備する! 戻れ、レスキューラビット(オレ)!」

 

レスキューラビット ☆4 攻撃力300

 

レスキューラビット(オレ)の効果発動だ! 来い、機界騎士アヴラム!」

 

機界騎士アヴラム ☆4 攻撃力2000

 

(攻撃力2000の通常モンスターが二体・・・・・・ん? 攻撃力2000以上の光属性モンスターが二体? え、まさか・・・・・・)

 

 彼の先輩、銀 星河の愛用しているモンスターの一体。そのドラゴンの召喚条件と、ピッタリ合うモンスターだ。

 

「開け、強さを求めるサーキット! (オレ)は二体のアヴラムをリンクマーカーにセット! リンク召喚! 来てくれ、銀河眼の煌星竜!」

 

銀河眼の煌星竜 link2 攻撃力2000

 

 騎士達が八つの矢印の付いた門に吸い込まれると、門から恒星の輝きを纏った竜が現れる。

 

「ソルフレアの効果発動だ! 墓地の銀河眼の光子竜を手札に加える!」

 

「(なるほど、さっきの手札抹殺か♪)通せないな、ペルソナの効果発動! ソルフレアの効果を無効にする! 仮面の紋章(ペルソナ・ルーン)!」

 

 ソルフレアの雄叫びに応え、墓地銀河眼の光子竜が手札に戻ろうとしたが、ペルソナの描いた紋章によって雄叫びごとかき消される。

 

(それにしても・・・・・・)

 

 この二枚を遊兎が使っていたのを息吹は見たことがない。

 

「修行の成果って、これのことか♪」

 

「いや、これは朝に星河先輩がくれた。布教用だとよ」

 

「何やってんの先輩!?」

 

 驚いてから、銀河眼の光子竜をこよなく愛する星河なら布教用にカードを持っていてもおかしくはない、と思い直した息吹。事実、遊兎の《銀河眼の光子竜》はノーマルカード、以前に再録されたものだ。

 

「続けるぜ。貪欲な壺を発動! アヴラム二枚、フレシア、銀河眼の光子竜、エフェクト・ヴェーラーをデッキに戻して、二枚ドロー! (オレ)は墓地の恐竜族モンスター、セイバーザウルス二体を除外することで、究極伝導恐獣を特殊召喚する!」

 

究極伝導恐獣 ☆10 攻撃力3500

 

 突如大地が割れたかと思うと、そこから巨大な恐獣(ティラノ)が現れる。

 

「・・・・・・ん。この子も覚えておく」

 

 またも不穏な言葉を発する彩葉。何を基準にしているのかわからないが、このカード達を覚えようとしているようだ。

 

「バトルだ! 究極伝導恐獣でペルソナを攻撃! 戦わなければ生き残れない(サバイバル・サバイブ)!」

 

 何とも格好いい攻撃名と共に、究極伝導恐獣が火花を撒き散らしながらペルソナを喰らう。

 

()って!」

 

龍塚息吹

LP8000→5700

 

 捕食され、エクストラデッキに行くペルソナ。ちょっとグロテスクだ。

 

『・・・・・・うわ~』

 

 その光景に恐怖を覚えたのか、オッドアイズが息吹の後ろに隠れる。その愛らしさに息吹の頬が緩むが、遊兎と彩葉に彼女は見えていないため、ただ息吹がニヤけただけに見える。

 

「何だよ、急にニヤニヤして。気持ち悪いぞ」

 

「何でもないよ♪ さ、デュエルを続けよう」

 

 真顔に戻り、フィールドに目を戻す息吹。

 

「究極伝導恐獣は、相手モンスター全てに攻撃できる! 今度はジョーカーに攻撃だ! 戦わなければ生き残れない(サバイバル・サバイブ)!」

 

 陽気に逃げ回るジョーカーを踏んで逃げられなくし、究極伝導恐獣がピエロを喰らう。

 

「あ・・・・・・」

 

 その光景に、今度は彩葉が声を小さく上げる。先程の手品を気に入っていたため、破壊されて欲しくなかったのだ。召喚時の効果のため、恐らくこのデュエルではもう見れなかっただろうが。

 

龍塚息吹

LP5700→4000

 

「どうだ! これが(オレ)が修行で手に入れた力の一つだ!」

 

 自慢気に胸を張る遊兎。だが、究極伝導恐獣はそんな彼がお気に召さなかったらしく、軽く彼の頭を咥えた。

 

「う、うわぁっ!? 離せ!! ちょ、うわああぁぁぁぁぁあ!?」

 

 そのまま大きく持ち上げられ、そのままゴックン・・・・・・とはいかず、ゆっくり下ろされる。

 

「び、ビビった・・・・・・寿命が縮んだだろうが!」

 

 抗議の声を上げる遊兎。しかし、究極伝導恐獣が軽く睨むと、小さく悲鳴を漏らして黙った。

 

「キミねぇ・・・・・・自分のモンスターに遊ばれるって、どうなの?」

 

「う、うるせぇ! デュエル続行だぁ! ソルフレアでダイレクトアタック!」

 

 ソルフレアが恒星の輝きを持つブレスを放ち、それが息吹の身体を焼く。

 

「あちちっ!?」

 

龍塚息吹

LP4000→2000

 

「よし! (オレ)はカードを一枚伏せる! これでターンエンドだ!」

 

月見遊兎

LP6200 手札0

場 エクストラ:銀河眼の煌星竜 メイン:究極伝導恐獣 魔法・罠:伏せカード

 

「やるな! 伊達に修行してきたわけじゃないってことか♪」

 

 心底愉快そうに笑いながら、息吹はデッキからカードを引き抜く。

 

「オレのターン! 先ずは、強欲で貪欲な壺を発動! デッキから十枚除外して、二枚ドロー!」

 

 ドローしたカードを確認し、笑みを濃くする息吹。

 

「ペンデュラム・コールを発動! 手札一枚をコストに、デッキから相克の魔術師と、貴竜の魔術師を手札に加える! 更に、Pゾーンのファンタズマの効果発動! 貴竜の魔術師をコストに、エクストラデッキのドラゴン族Pモンスターを手札に戻す♪ 戻れ、オッドアイズ!」

 

 光の柱の中でファンタズマの翼が煌めくと、そこからオッドアイズのカードが舞い落ちる。

 

「ペンデュラム召喚! 来い、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン! 真紅眼の黒竜! エクストラデッキから、オッドアイズ・ファントム・ドラゴン!」

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン ☆7 攻撃力2500

 

真紅眼の黒竜 ☆7 攻撃力2400

 

オッドアイズ・ファントム・ドラゴン ☆7 攻撃力2500

 

 天空に開いた穴から三体の龍がフィールドに登場する。

 

『またまた登場だよ~!』

 

 内一体は美少女だが。

 

「墓地の貴竜の魔術師の効果発動! ファントムのレベルを三つ下げることで、手札から特殊召喚だ♪」

 

貴竜の魔術師 ☆3 チューナー 守備力1400

 

オッドアイズ・ファントム・ドラゴン ☆7→3

 

 先程ファンタズマのコストで墓地に送られたモンスターの早々の帰還だ。

 

「行くぜ♪ レベル4になったファントムに、レベル3の貴竜の魔術師をチューニング!」

 

3+4=7

 

「シンクロ召喚! オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン!」

 

オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン ☆7 攻撃力2500

 

「メテオバーストの効果発動! Pゾーンのファンタズマを特殊召喚だ♪」

 

オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン ☆8 攻撃力3000

 

「何だその効果! インチキ臭ぇ!」

 

 光の柱をぶち壊して現れた龍を見て、遊兎は不満気に叫ぶ。

 

「まだまだ行くぜ! メテオバーストと真紅眼の黒竜で、オーバーレイ!」

 

 フィールドに黒い渦が現れ、その中、二体の龍が吸い込まれる。

 

「エクシーズ召喚! 真紅眼の鋼炎竜!」

 

真紅眼の鋼炎竜 ★7 攻撃力2800

 

 鋼と炎を纏った、真紅眼の龍。

 

「今度はエクシーズ召喚か!」

 

「いや、まだ続くぜ♪ オレは相克の魔術師をPスケールにセット!」

 

 光の柱に新たに魔術師が置かれ、ファンタズマが壊した柱を直そうとしたが、早々に諦めて柱の中に収まった。

 

「そしてP効果発動! このターン、フレアメタルはレベル7としてエクシーズ素材にできる! オレはフレアメタルとオッドアイズで、オーバーレイ!」

 

『いっくよ~!』

 

 再び現れる黒い渦。その中に飛び込むオッドアイズと、仕方ないか、という雰囲気で吸い込まれるフレアメタル。

 

「輝け、二色の眼! 烈火の力を身に纏い、天の焔で全てを焼き尽くせ! エクシーズ召喚! 現れろ、覇王烈竜 オッドアイズ・レイジング・ドラゴン!」

 

覇王烈竜 オッドアイズ・レイジング・ドラゴン ★7 攻撃力3000

 

『じゃ~ん♪ レイジングコスチューム!』

 

 キュピ! と決めポーズをとるオッドアイズ。何度目かわからないが、遊兎と彩葉には見えていない。

 

「またエクシーズか!? 一体どれだけ変化するんだ!」

 

 驚愕と共に叫ぶ遊兎に、息吹が得意気に言う。

 

青き瞳(ブルーアイズ)は勝利を、真紅の瞳(レッドアイズ)は可能性をもたらす。なら、二色の瞳(オッドアイズ)は両方っていうのがオレの持論でね♪ 勝利も可能性も、どっちもいただきだ!」

 

 それぞれ名前にアイズを冠するモンスター達だが、一番召喚方が多いのはオッドアイズだ。

 その分、一番可能性を持ち、勝利へのルートを多く有するとも言える。

 

「レイジングの効果発動だ! オーバーレイユニットを一つ使い、相手の場のカード全てを破壊する! そして、破壊したカード×200の攻撃力を得る! 烈火の天災(レイジング・テンペスト)!」

 

『ぜ~んぶ、おそうじです!』

 

 無邪気に災害を振りかざすオッドアイズ。遊兎と彩葉には災い呼ぶ烈火の龍がフィールドを焼け野原にしているようにしか見えていない。

 

「リバースカード、ダメージ・ダイエット! このターン受けるダメージを、全て半分にする!」

 

 抵抗したものの、オッドアイズによる殺戮に一気に劣勢に立たされる遊兎。しかし、本人(龍?)は破壊を自身の力に変える。

 

覇王烈竜 オッドアイズ・レイジング・ドラゴン 攻撃力3000→3600

 

「バトルだ♪ よろしく、オッドアイズ! ブレイク・オブ・テンペスト!」

 

『えいや~!』

 

 可愛らしい掛け声と共に放たれるブレス。しかし威力はシャレにならない。

 

「あちちち、熱、あっつ!」

 

月見遊兎

LP6200→4400

 

 ソルフレアよりも数割増しで熱い焔が遊兎を焼く。

 

「レイジングは一度のバトルフェイズに二回攻撃できる! もう一度攻撃だ、オッドアイズ!」

 

「な!? これ以上は兎の丸焼きになっちまう!」

 

『おいしそう~!』

 

 レイジングの効果に危機感を覚えて放った言葉だったが、オッドアイズが異様な食いつきを見せた。

 

月見遊兎

LP4400→2600

 

「ファンタズマでダイレクトアタックだ!」

 

 ファンタズマが飛翔し、遊兎に突撃。その翼で切り裂く。

 

「うおっ!?」

 

月見遊兎

LP2600→1100

 

「決め切れなかったか♪ ターンエンドだ」

 

覇王烈竜 オッドアイズ・レイジング・ドラゴン 攻撃力3400→3000

 

龍塚息吹

LP4000 手札0

場 エクストラ:覇王烈竜 オッドアイズ・レイジング・ドラゴン メイン:オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン Pゾーン:相克の魔術師 EMオッドアイズ・ユニコーン

 

「行くぜ、(オレ)のターン! レスキューラビット(オレ)を召喚! そのまま効果発動だ!」

 

レスキューラビット ☆4 攻撃力300

 

 再び現れる、ヘルメットを被ったウサギ。早速助けを呼び、デッキから二体のモンスターが飛び出す。

 

メガロスマッシャーX ☆4 攻撃力2000

 

(オレ)は二体のメガロスマッシャーXでオーバーレイ!」

 

 古代より蘇った恐竜が光となって黒い渦に呑み込まれ、新たな竜に姿を変える。

 

「闇より出でし反逆の牙! 自由を求めし漆黒の翼! エクシーズ召喚! 来てくれ、ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン!」

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ★4 攻撃力2500

 

 黒い身体に、特徴的な牙と翼。その姿からは、言葉に出来ない力を感じる。

 

(何だろう・・・・・・凄く反転世界を打ちたい)

 

 謎の欲求が息吹を襲うが、彼のデッキに反転世界は入っていないため、泣く泣く断念した。

 

「ダーク・リベリオンの効果発動! エクシーズ素材を二つ使って、レイジングの攻撃力を半分にする! そして、その分の攻撃力を、自身の攻撃力に加える! ハーフ・エンハンス!」

 

 ダーク・リベリオンの翼から稲妻が放たれ、オッドアイズに降りかかる。

 

『うぅ~、しびれるよぉ~』

 

覇王烈竜 オッドアイズ・レイジング・ドラゴン 攻撃力3000→1500

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン 攻撃力2500→4000

 

 稲妻によってオッドアイズの攻撃力が下がり、そこから吸収した力によってダーク・リベリオンの攻撃力が上がる。

 

「バトルだ! ダーク・リベリオンでレイジングを攻撃! リベリオン・ファング!」

 

 遊兎の命を受けたダーク・リベリオンがオッドアイズに噛みつく。

 

『きゃあ! わたし、おいしくないよ~!』

 

 オッドアイズがもがいてジタバタするが、抵抗虚しく破壊される。遊兎と彩葉の視点では、レイジングが暴れているように見えていたため、ダーク・リベリオンが破壊されるんじゃないかと内心不安だった。

 

龍塚息吹

LP4000→1500

 

「これで(オレ)はターンエンドだ」

 

月見遊兎

LP1100 手札0

場 エクストラ:ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン

 

「オレのターン、ドロー!」

 

 カードを引いてから、息吹はエクストラデッキを確認する。記憶の通り、表のPモンスターは十分にいる。遊兎は知らなかった様だが、ファンタズマには相手モンスターに攻撃する時にエクストラデッキの表のオッドアイズの数だけ攻撃力を下げる効果がある。

 

「バトルだ♪ オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴンで攻撃! ファンタスティック・フォース!」

 

「けど、攻撃力はこっちの方が上!」

 

「ファンタズマの効果発動! 相手モンスターを攻撃するとき、エクストラデッキの表側のオッドアイズの数だけ、攻撃力を下げる!」

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン 攻撃力4000→0

 

 ファンタズマが羽ばたき、その翼から放たれた光がダーク・リベリオンごと遊兎を貫く。

 

月見遊兎

LP1100→0

 

「だー! くっそ、また負けた! もう一回だ!」

 

「まぁ落ち着きなって♪ 先ずは自分のデッキを使いこなしてから言いなよ」

 

 悔しがり、もう一戦せがむ遊兎に、息吹が窘めるように言う。

 

「あ? どういうことだよ」

 

 息吹の言葉に、怪訝そうに言い返す。

 

「究極伝導恐獣の効果って、相手ターンにも発動できるんだぜ♪ つまり、キミはオレのエクシーズ召喚を止められたってワケさ」

 

「なっ!?」

 

 驚いてカードを確認してみると、確かに『1ターンに1度、自分・相手のメインフェイズに発動できる。』と書いてある。

 

「つまり、キミは初勝利の機会を逃したってこと♪ いや~、惜しいことしたねぇ♪」

 

「うっ!? なら、尚更もう一回だ! 今度はプレイミスしないで勝って、」

 

 そこで鳴り響く予鈴。昼休みが終わるまで、後五分だ。

 

「遊兎、戻ろう?」

 

 少し外から二人のやり取りを見守っていた彩葉が、遊兎の手を取って促す。

 

「(手、繋いで・・・・・・)お、おう」

 

 顔を赤くしながら、二人並んで歩く遊兎と彩葉。

 

(・・・・・・ま、今は邪魔しないであげよう♪)

 

 二人の初々しいやり取りを見ながら、息吹はわざわざ遠回りして教室に戻った。

 

 それで次の授業に遅れることとなったのだが。




今回から三章となります。

息吹と新キャラである遊兎くんが中心の章となる予定です。


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星と星との戦い

息吹と遊兎メインのはずの三章。
今回は、別のメンバーが中心のお話です。

・・・・・・こんなハズじゃなかったんや・・・・・・気がついたらこうなってたんや・・・・・・。


 遊兎と息吹がデュエルをしていたころ。

 

「さーて、今日は何が出るかなー?」

 

 ペリッ《ジャンク・ウォリアー》

 

 ペリッ《スクラップ・フィスト》

 

 ペリッ《スピード・ウォリアー》

 

「ちょっと待て」

 

「? どうしたの?」

 

 遊戯王チップスの付録カードを眺める戦に、遊羽が声をかけた。

 

「何だそのピンポイントな内容は」

 

「何か、僕ってこんなカードしか当たらないんだよね。後はジャンク・シンクロンと融合くらい」

 

 それは運がいいのか悪いのか。あるデュエリストは、融合ばかり出るらしいので、それよりはまだマシだと言えよう。

 

「一袋食べる?」

 

「あ、ああ。もらっとく」

 

 驚きながらも遊戯王チップスを受け取る遊羽。二人してそれを食べる。

 

「そう言えば、真宮さんはどうしたの?」

 

「生徒会の仕事らしい。ま、仕方ねぇな」

 

「大変だね」

 

 会話が途切れる。夏休み中にあった異世界での出来事での疲れが、未だに残っているのだ。

 

「・・・・・・平和だね」

 

「そうだな。まぁ、世界の危機なんて、そうそう起こるものでもねぇし、それに一々遭遇してられねぇよ」

 

 彼らが夏休み中に行った世界は、八ヶ月の間に様々な事件が起きていたらしいが。

 

「そうそう起こるものじゃない、ってことは、この世界でもあったの?」

 

「あったぜ。アーミタイルが闇のカードとして出現して、世界を混沌に陥れようとした」

 

 今すぐにでも遊羽は思い出せる。突然ケータイに謎の連絡があったと思えば、『世界を救ってください!』と言われ、アーミタイルと壮絶な戦いを繰り広げ、身体がボロボロになってしまったので誤魔化すために治るまで失踪して・・・・・・と。

 彼がデッキを作るために失踪するようになったのは、この時に虹花に「デッキを作るのに必要なカードを探しに行ってた」という嘘をついたのが始まりなのだ。

 

「・・・・・・そんなことがあったんだ」

 

「おう。後は虹花がキメラフレシアに襲われて、それを倒したり。日向先輩と出会ったのだって、闇のカードに襲われているのを俺が助けたのがキッカケだったっけな。ったく、あのカード、ドラゴンかと思ったら幻竜族とかいう意味わかんねぇカードだったんだよなぁ」

 

 遠い目をして、しみじみと語る遊羽。そしてそんな彼を何とも言えない目で見る戦。

 

 ふと、戦のケータイがメッセージの着信を告げた。

 

「誰からだ?」

 

「龍塚くんから・・・・・・って、露骨に嫌そうな顔はしないであげてよ」

 

「ドラゴン擬人化至上主義者にかける情けはねぇ」

 

 今日もこの世界は平和だった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 放課後。

 

「それじゃあ遊兎。行くよ♪」

 

「へ? どこにだよ? ・・・・・・っておい!? ちょっと!?」

 

 問答無用で息吹にさらわれた遊兎は、彼に引きずられるまま、ワンキル・ソリティア研究会の部室に来ていた。

 

「何だってんだよ! 急に部室に連れて来て!」

 

「まぁ落ち着きなって♪ 今にわかるよ」

 

 息吹が指を指す先には、デュエルを始めようとしている二人がいた。

 

 片方は遊兎に銀河眼の二枚を渡した青年、銀 星河。

 

 もう片方は、星河と同じく三年生の瑞浪 孝之(みずな たかゆき)だ。

 

「あれ、早いね。先輩方♪」

 

 息吹が声をかけると、彼に気がついた二人が振り返る。

 

「ん? ああ、部長か。授業が早く終わったんでね。星河に相手を頼んだんだ」

 

「今朝の一年生か。デュエルするなら場所を空けるぞ?」

 

「いや、いいよ♪ 代わりに、先輩方のデュエルを見学させて?」

 

 星河の気遣いに感謝しながらも別の注文をする息吹。星河は気にした様子もなく了承した。

 

「で、何でここに連れて来たんだよ?」

 

「遊兎に足りないのは実践経験さ♪ 強いカードを持ってても、使いこなせないと意味がない。だから、先輩方のデュエルから学んでもらおうと思って♪」

 

 息吹の気遣いに気付いた遊兎は、そっぽを向く代わりに星河と孝之に目を向けた。

 

 そして、二人の後ろにはそれぞれ精霊が。

 

『ふむ、彼とのデュエルは久しぶりだな』

 

『そうね。夏休み中は会えなかったし、一ヶ月ちょっとくらい空いているかしら?』

 

『オレサマノ出番ガアルトイイノダガナ』

 

 上から銀河眼の光子竜(フォトン)No.107 銀河眼の時空竜(タキオン)(女)、星態龍。星河の精霊達だ。

 

『頑張ろうね、ご主人様!』

 

『とは言え、主は俺達のことを見えていないのだがな』

 

『それはしょうがないよ。それでも、僕達は主さんを支えるだけだよ』

 

 星杯を戴く巫女(イヴ)星杯に誘われし者(ニンギルス)星杯に選ばれし者(アウラム)。孝之の精霊達だが、彼は精霊を見ることができないため、彼らの存在を知らない。

 

(・・・・・・いつ見ても、不憫だなぁ)

 

 この場で精霊が見えるのは息吹と星河だけ。遊兎はモンスターの姿に戻れば見ることができるが、その事実に息吹は悲しくなる。

 

『そうだったな。大半の精霊は、そうやって主との日々を過ごすのだったな』

 

 哀れむかのように孝之の精霊達に目を向けるフォトン。だがそれに、ニンギルスが怒り混じりに反発する。

 

『俺達はそれを不幸と思ったことはない。貴様の勝手な推測で哀れむな』

 

(そうだぞ、フォトン。それは失礼だ)

 

 星河も同意し、フォトンを叱る。フォトンもまた気まずそうな顔をし、ニンギルス達に詫びる。

 

『・・・・・・すまない。私の勝手な言動を許して欲しい』

 

『いや、気にしないでいいよ。夏休みで暫く会ってなかったんだし、今日は思いっきり闘おうよ!』

 

 アウラムが明るく笑い、彼らの空気が和らぐ。

 

「? どうした、星河。急にニヤけて」

 

「・・・・・・ああ、すまない。デュエルを始めよう」

 

 こうして、精霊の見えないデュエリストと、精霊の見えるデュエリストとのデュエルが始まった。

 

「「デュエル!」」

 

瑞浪孝之

LP8000

 

銀星河

LP8000

 

「先攻はオレだな。先ずは手札からサイバネット・マイニングを発動! 手札の星杯の守護竜をコストに、デッキからドラコネットを手札に加えて、そのまま召喚だ!」

 

ドラコネット ☆3 攻撃力1400

 

「ドラコネットの効果発動! デッキからレベル2以下の通常モンスターを特殊召喚できる! オレは星杯を戴く巫女を特殊召喚するぜ」

 

星杯を戴く巫女 ☆2 守備力2100

 

『先ずは私の出番だね、ご主人様!』

 

 孝之の後ろにいたイヴがフィールドに飛び出す。

 

「現れろサーキット。オレは星杯を戴く巫女をリンクマーカーにセット、リンク召喚! 来い星杯竜イムドゥーク」

 

星杯竜イムドゥーク link1 攻撃力800

 

 イヴが門に吸い込まれると、そこから彼のデッキの過労死枠が現れる。

 

「一応訊いておこう。長いか?」

 

「当たり前じゃん。オレたちゃワンキルやらソリティアやらが大好きなワンキル・ソリティア研究会でっせ? 代わりに手札誘発とかロックデッキとかパーミッションとか嫌いだけど」

 

 そうか、と暫く口を閉じておくことにした星河。肯定したものの、星河は別にワンキルやソリティアが好きという訳ではない。自分の好きなモンスターを並べるのにソリティアが必要なだけで、そして並べた結果ワンキルになってしまうことが多い、というだけだ。

 孝之もまた、自分の好きなモンスター達がソリティア向きだからそうしているのであって、どうしてもしたい、という訳ではないのだが。

 

「イムドゥークの効果で、オレはもう一度星杯モンスターを召喚できる。イムドゥークをリリースして、星遺物ー『星杯』をアドバンス召喚でい!」

 

星遺物ー『星杯』 ☆5 攻撃力0

 

「イムドゥークがフィールドから墓地へ送られたことで、手札から星杯モンスターを特殊召喚できる。来い、星杯に選ばれし者!」

 

星杯に選ばれし者 ☆3 攻撃力1600

 

『次は僕だ!』

 

 イムドゥークがフィールドを去るのと同時に、アウラムが躍り出る。

 

「そして現れろサーキット。星杯に選ばれし者と星遺物ー『星杯』をリンクマーカーにセット。来い星杯剣士アウラム!」

 

星杯剣士アウラム link2 攻撃力2000→2300

 

『じゃーん! パワーアップ!』

 

 ドヤとフォトン達に武器を見せびらかすアウラム。フォトンと星態龍は気にしていないが、タキオンだけは反応した。

 

『べ、別に悔しくなんかないわよ! 私にだってカオス状態あるし! 最悪バリアンにだってなれるもの!』

 

『そうだ。負けず嫌いなだったな、あのドラゴン』

 

 思い出した、という風に手を打つニンギルス。それをジト目でイヴが見る。

 

『お兄ちゃん! もう三年も一緒なんだから覚えなよ!』

 

『正直、主とイヴ以外のことに興味がないな』

 

 (イヴ)から注意を受けるも、それを聞き流すニンギルス。

 

『もう! そんなんだから私が死んじゃってお兄ちゃんが闇堕ちしちゃうんだよ!』

 

『悪かった。それは本当に洒落にならないから止めてくれ』

 

 イヴが死んでニンギルスはヤンデレ化、オルフェゴールを作り出しアウラムと対峙。一方アウラムはイムドゥークと共にパラディオンになって星遺物の力を集め、現段階では勇者化。そしてリースがラスボス化と混沌としてきているのが彼らの物語だ。結末はどうなることやら。

 

「通常召喚した星遺物ー『星杯』が墓地へ送られたことで、デッキから星杯モンスター二体を特殊召喚できるぜ。カモン、星杯の妖精リース、星杯に誘われし者!」

 

星杯の妖精リース ☆2 守備力2000

 

星杯に誘われし者 ☆4 攻撃力1800

 

『出番か』

 

『ニンギルスさん。今の主さんの手札だと、ニンギルスの出番はないです』

 

『何ッ!? ・・・・・・本当だな』

 

 アウラムの言葉に慌てて孝之の手札を確認するニンギルス。自分がリンク召喚されないとわかると、少し肩を落とした。

 

「星杯の妖精リースの効果で、デッキから星杯に誘われし者を手札に加える。そして墓地の星杯の守護竜の効果発動! 除外して、墓地の星杯を戴く巫女を、アウラムのリンク先に特殊召喚!」

 

星杯を戴く巫女 ☆2 守備力2100

 

『わーい! 皆揃ったね!』

 

『多分、皆素材になるけどね』

 

『言うな。多分俺はイヴの素材だ』

 

 両手を挙げて喜ぶイヴに、アウラムが余計な事を言う。そしてそれを認めたくないニンギルス。

 

「三度現れろサーキット。星杯を戴く巫女と星杯の妖精リースをリンクマーカーにセット、リンク召喚。星杯神楽イヴ!」

 

星杯神楽イヴ link2 攻撃力1800

 

『じゃじゃーん! 私もパワーアップだよ!』

 

 ふわふわした衣装に喜ぶイヴ。それを微笑まし気に眺めるニンギルスだったが、直後リンク素材にされる。

 

「四度現れろサーキット。星杯に誘われし者とドラコネットをリンクマーカーにセット、二体目の星杯神楽イヴだ!」

 

星杯神楽イヴ link2 攻撃力1800

 

『よいしょ、よいしょ!』

 

 フィールドに現れる二体目のイヴがだが、彼女が二人になれるはずもなく、新しい方はハリボテだ。

 

『ハリボテも大変だね』

 

『じゃあ手伝ってやったらどうだ?』

 

『いや、僕別のモンスターだし』

 

 手伝いたいのは山々だが、それはしてはいけないのが精霊界のルールだ。面倒な。

 

「最後だ。五度現れろサーキット。星杯剣士アウラムと星杯神楽イヴをリンクマーカーにセット、サーキット・コンバイン!」

 

 ハリボテの方のイヴとアウラムが門に入っていき、ハリボテがアウラムの新たな鎧と武器へと変化する。

 

「星杯に選ばれし剣士よ! 戦いを糧とし、全てを救う救世主となれ! リンク召喚! リンク4、双穹の騎士アストラム!」

 

双穹の騎士アストラム link4 攻撃力3000

 

『うーん、身長が急に伸びて、何か違和感・・・・・・』

 

『しょうがないよ、本当はパラディオンとかジャックナイツとか間にあるんだし』

 

 大きく成長したアウラムが身体に馴染めずにいると、イヴが苦笑した。ニンギルスは一人墓地で拗ねている。

 

『俺の出番は無しか・・・・・・』

 

「星杯剣士アウラムが墓地へ送られたことで、手札から星杯モンスターを特殊召喚できる。来い星杯に誘われし者」

 

星杯に誘われし者 ☆4 攻撃力1800

 

 突然フィールドに駆り出されたニンギルスは、呆然としながら呟く。

 

『・・・・・・俺達が見えていないにも関わらず、これか。素晴らしいな、主は』

 

『良かったですね、ニンギルスさん』

 

『良かったね、お兄ちゃん!』

 

 そんな精霊達のやりとりを、息吹と星河は信じられないものを見る目で見つめる。

 

「・・・・・・孝之」

 

「え、何? 何かプレミした?」

 

「いや、何故先に出したイヴではなく、後から出した方をアストラムのリンク素材にしたんだ?」

 

 キョトンとする孝之に、星河は質問をぶつける。

 

 孝之はうーん、と唸り、

 

「なんとなく!」

 

 あっけらかんと言い放った。

 

「・・・・・・そうか」

 

 星河もそれ以上は何も訊かずに、デュエルに目を向けた。

 

「? まぁいっか。オレはカードを一枚伏せて、ターンエンド」

 

瑞浪孝之

LP8000 手札0

場 メイン:双穹の騎士アストラム 星杯神楽イヴ 星杯に誘われし者 魔法・罠:伏せカード

 

「俺のターン、ドロー」

 

 カードを引き、孝之のフィールドを見つめる星河。

 

 アストラムは自分以外に攻撃させず、特殊召喚したモンスターとの戦闘においてほぼ負けることはない。そして、自身は効果の対象にならない。強引に墓地へ送れば、デッキバウスを飛ばしてくる。

 イヴはリンクしていることで戦闘でも相手の効果でも破壊されず、リンク先のモンスターの身代わりになることができる。

 

(厄介な布陣だな・・・・・・)

 

 溜め息をつきたい気分になりながらも、突破するための手を探す星河。

 そして、それは簡単に見つかった。

 

(あのカードが妨害系のカードなら止まる、か。問題ないな)

 

 手札から緑色のカードを引き抜き、デュエルディスクに差し込む。

 

「妨げられた壊獣の眠りを発動! フィールドのモンスターを全て破壊し、俺のデッキからお互いのフィールドに壊獣を一体ずつ特殊召喚する!」

 

「何でごく自然に制限カード握ってんだよ!? 星杯神楽イヴの効果発動! 墓地へ送ることで、双穹の騎士アストラムの破壊を無効にする!」

 

『チッ、後は頼んだ!』

 

『お願いね、アウラムくん!』

 

 地面に入った亀裂に、ニンギルスとアウラムをかばったイヴが飲み込まれ、代わりに黒い巨人がタップダンスしながら孝之のフィールドに現れる。

 

『・・・・・・』

 

 何とも言えない微妙な表情になったアウラム。目を背けて相手側を見れば、そこには三首の龍がいた。最も、雷族なのだが。

 

多次元壊獣ラディアン ☆7 攻撃力2800

 

雷撃壊獣サンダー・ザ・キング ☆9 攻撃力3300

 

「更に俺は終末の騎士を召喚。効果でデッキから亡龍の戦慄-デストルドーを墓地へ送る」

 

終末の騎士 ☆4 攻撃力1400

 

「ライフ半分を支払い、亡龍の戦慄-デストルドーの効果発動。墓地から特殊召喚」

 

銀星河

LP8000→4000

 

亡龍の戦慄-デストルドー ☆7→3 守備力3000

 

「開け、銀河を震わすサーキット。俺は終末の騎士と亡龍の戦慄-デストルドーをリンクマーカーにセット、リンク召喚。水晶機巧ーハリファイバー」

 

水晶機巧ーハリファイバー link2 攻撃力1500

 

「ハリファイバーの効果発動。デッキより、ギャラクシーサーペントを特殊召喚」

 

ギャラクシーサーペント ☆2 チューナー 守備力0

 

「俺はギャラクシーサーペントでサンダー・ザ・キングをチューニング」

 

2+9=11

 

 銀河の名を持つ龍と雷族の龍とが合わさり、星の輝きを持つ龍へとその身を変える。

 

「我が手に拍動せし大いなる銀河よ、この手を離れて全てを照らせ! シンクロ召喚! さあ、この世界に顕現せよ、星態龍!!!」

 

星態龍 ☆11 攻撃力3200

 

『久シブリノオレサマノ出番ダ。暴レサセテモラウゾ』

 

 巨大な、星と同等の力を持つ龍。

 

『攻撃力が下がった・・・・・・とは言えないね』

 

 その龍を見て、冷や汗を流すアウラム。このモンスターはそれほどの力を持つ。

 

「まだ終わりではない。俺はワン・フォー・ワンを発動。デッキより、SRアクマグネを特殊召喚」

 

SRアクマグネ ☆1 守備力0

 

「アクマグネの効果発動。相手フィールドのモンスターと風属性モンスターをシンクロ召喚する」

 

「お前、運命力どれくらい? ちょっと後で検査しようや」

 

 余りに強い引き運に呆れた孝之。しかし、無慈悲にアクマグネとラディアンは同調する。

 

1+7=8

 

「銀河を流れし星屑よ、大いなる星に導かれ、この世界へ舞い降りよ! シンクロ召喚! スターダスト・ドラゴン!」

 

スターダスト・ドラゴン ☆8 攻撃力2500

 

 星態龍に導かれるように飛翔するスターダスト・ドラゴン。また攻撃力が下がったとか言ってはいけない。

 

「オイオイ、この盤面、まさか・・・・・・」

 

 見慣れた盤面を目の当たりにし、アウラム同様冷や汗を流す孝之。

 

「復活の福音を発動!」

 

「やっぱかよ!」

 

 嫌な予感は的中し、星河のフェイバリットが登場する。

 

「逆巻く銀河よ、我が魂の竜に宿りて、その輝きを解放せよ! 銀河眼の光子竜!」

 

 星河が赤い十字架をフィールドに投擲すると、そこに小規模な銀河が出現し、竜の形を象る。

 

銀河眼の光子竜 ☆8 攻撃力3000

 

『私の出番か。星河の為、尽力を尽くそう』

 

「アストラムをリリースし、粘糸壊獣クモグスを特殊召喚する」

 

粘糸壊獣クモグス ☆7 攻撃力2400

 

 星河のフィールドに並ぶ、三体の龍。

 

 フィールドを離れる切り札(アウラム)

 

「双穹の騎士アストラムの効果で、星態龍をエクストラデッキに戻すくらいは足掻くけども・・・・・・キツいねぇ」

 

 思わず呟いた孝之の一言に、星態龍をエクストラデッキに戻しながらアウラムが言う。

 

『ゴメンね、主さん。僕は壁にもなれないみたいだ』

 

 主が自分の姿をみることができないにも関わらず、健気に尽くすアウラム。墓地でイヴとニンギルスも頷く。

 

「・・・・・・ありがとな」

 

 ふと、孝之が何気なく呟いた。

 

 それは、ただ何となく口に出しただけだったかもしれない。

 

 ただの偶然かもしれない。

 

 それでも、彼の精霊達は。

 

『・・・・・・! どういたしまして!!』

 

『うん、こちらこそ!』

 

『主の為だからな。当然だ』

 

 そして、星河(対戦相手)は。

 

(・・・・・・凄いやりにくい)

 

『マァマァ、少シクライイインジャナイノカ?』

 

『先ほどの彼らへの無礼は、これで相殺しよう』

 

『ぅ、ぅうっ、な、泣いてなんかないんだからねっ!』

 

 渋い顔をする星河と、彼らを見守る精霊達。何だかんだ言って待っている星河も、優しさを隠し切れていない。

 

(・・・・・・うん、いい話なんだけどさ♪ 日常パートでやられると、反応に困るっていうか、何というか)

 

 息吹も感動してはいるのだが、ただのデュエルでこれをやられては困惑するしかない。

 

「えーと、何でデュエルを中断してるんだ? 何か不具合でもあったのか?」

 

 そして、空気を読めないウサギが一匹。

 

「・・・・・・すまない。伏せカードが何かを考えていた。デュエルを再開しよう」

 

 しっかりとフォローし、デュエルを続ける星河。アウラム達も墓地からフィールドに向き直る。

 

「バトルだ。銀河眼の光子竜でクモグスに攻撃。破滅のフォトン・ストリーム!」

 

瑞浪孝之

LP8000→7400

 

 フォトンのブレスを受け、孝之のライフが削られる。

 

「スターダスト・ドラゴンで攻撃!」

 

「受けるわな」

 

瑞浪孝之

LP7400→4900

 

「ハリファイバーで攻撃」

 

「そいつももらおう」

 

瑞浪孝之

LP4900→3400

 

「・・・・・・ターンエンド」

 

銀星河

LP4000 手札0

場 エクストラ:水晶機巧ーハリファイバー メイン:銀河眼の光子竜 スターダスト・ドラゴン

 

「ふいー、何とか生き延びたな。オレのターン」

 

 カードを引き、そのまま発動する孝之。

 

「トップ強いな、何でだろ。貪欲な壺を発動するぜい。墓地の星杯に誘われし者を二枚、星杯に選ばれし者、星杯を戴く巫女、ドラコネットをデッキに戻して、二枚ドロー!」

 

 ドローしたカードを見るなり、驚いた顔をする孝之。しかし、直後に満面の笑みへと変わる。

 

「何か、今調子いいみたいだわ。レスキューラビットを召喚!」

 

レスキューラビット ☆4 攻撃力300

 

 龍が睨みを利かせるフィールドに現れたのは、心ピョンピョンうさぎさん。

 

「・・・・・・(オレ)、まだ使われてたんだな」

 

 喜びの前に驚きを感じたのか、遊兎が呆然としながら呟いた。

 

「んー? そだよー♪ 何々、そんなこと悩んでたの?」

 

「う、うるせぇ!」

 

 そんな彼を息吹はからかい、遊兎はそっぽを向く。

 

(ま、これで悩みが無くなって、デュエルに集中できるなら安いものでしょ♪)

 

 遊兎にからかうような目を向けながら、心の中で息吹は安堵する。

 

「レスキューラビットの効果発動! デッキから、星杯に誘われし者二体を特殊召喚!」

 

星杯に誘われし者 ☆4 攻撃力1800

 

 ニンギルスがフィールドにハリボテを抱えながら現れる。

 

「開けサーキット。オレは星杯に誘われし者をリンクマーカーにセット。リンク・スパイダー、出てこいやぁ!」

 

リンク・スパイダー link1 攻撃力1000

 

 ハリボテが吸収され、掛け声と共に機械のクモが現れる。クモグスを使った星河への当てつけ、という意味ではない。

 

「効果で、手札の星杯に誘われし者を特殊召喚!」

 

星杯に誘われし者 ☆4 攻撃力1800

 

 ハリボテが門に吸いこまえて安堵していたニンギルスだったが、第二のハリボテを設置することになった。

 

「そして、二体の星杯に誘われし者で、オーバーレイ!」

 

『くっ、まだハリボテの用意ができていないというのに・・・・・・』

 

 設置中のハリボテを抱え、黒い渦へと飛び込むニンギルス。せわしない。

 

「禁止になった守護龍よ、今姿を変え、世界(レギュレーション)の壁をぶち壊せ! エクシーズ召喚! ファイアウォール・X・ドラゴン!」

 

ファイアウォール・X・ドラゴン ★4 攻撃力2500

 

 規制という名の()を受けた龍が、姿を変え、召喚法を変え、フィールドに君臨する。

 

「ファイアウォール・X・ドラゴンの効果発動! オーバーレイユニットを二つ使い、墓地のサイバース族リンク4モンスターを、このモンスターとリンク状態となるように特殊召喚する! 蘇れ、双穹の騎士アストラム!」

 

双穹の騎士アストラム link4 攻撃力3000

 

『まさか、復活できるとは思わなかったよ』

 

 ボロボロの鎧と武器を身に纏い、再び主の為に立ち上がるアウラム。

 

「ファイアウォール・X・ドラゴンの攻撃力は、リンクしているリンクモンスターのリンクマーカーの数だけアップする」

 

ファイアウォール・X・ドラゴン 攻撃力2500→5000

 

「バトルだ。ファイアウォール・X・ドラゴンで、スターダスト・ドラゴンに攻撃!」

 

「なら、ハリファイバーの効果発動だ。除外して、フォーミュラ・シンクロンをシンクロ召喚扱いとして特殊召喚」

 

フォーミュラ・シンクロン ☆2 チューナー 守備力1500

 

「効果で一枚ドローする」

 

「問題ない、攻撃続行だ!」

 

 何か引けないかとハリファイバーを使う星河だが、反撃できるようなカードはドローできなかった。

 

「くっ」

 

銀星河

LP4000→1500

 

「これで終わりだ! 双穹の騎士アストラムで、銀河眼の光子竜に攻撃! デュアル・バニッシュ!」

 

 アウラムの剣が光輝き、鋭さを増していく。

 

『僕が特殊召喚されたモンスターと戦闘する時、僕の攻撃力は、そのモンスターの分アップするよ』

 

双穹の騎士アストラム 攻撃力3000→6000

 

 アウラムの剣が、フォトンを斬り裂く。

 

『ふっ、見事だ』

 

銀星河

LP1500→0

 

「だー、疲れた! それにしても、何で急にドロー運が上がったんだろ?」

 

 孝之は自分のデュエルディスクに目を落とす。

 

 最後のターンのドローは、状況を覆し、そのターンで決めきるのには最適なカードだった。

 今までに、こんな風にドローできたことはない。

 

(・・・・・・ま、いっか)

 

 彼は知りようもないことだが、彼が精霊達と無意識に心を通わせたことで、精霊達の力が強まった結果だ。

 

「息吹、次はお前か? ならどくぞ、孝之」

 

 孝之に移動を促してから、星河は最後にドローしたカードを見つめる。

 

(お前か、エクゾディア)

 

『悪い。星河が負けそうだな、と思ったら、つい』

 

 彼の持つ悪霊のカード、エクゾディア。

 尤も、普通の悪霊のカードとは異なり、悪さもしなければ、人に害をなすこともない。

 

 このエクゾディアには、悪霊を元の精霊に戻す能力がある。悪霊に溜まった悪意を、自分の中に封印することで、悪霊を正常な精霊に戻すことができるのだ。その副作用で、自分自身も悪霊になってしまったのだが。

 

『いやー、すまんすまん。次のターンになればドローコンボでオレが揃ったのになぁ』

 

(タラレバを語っても意味はないぞ。俺は負けた、それで終わりだ)

 

 まだ何か言いたげなエクゾディアをデッキに押し戻す星河。

 

 丁度そのタイミングで、ワンキル・ソリティア研究会の部室の扉が開かれた。

 

「ごめん、龍塚くん。授業が長引いちゃって」

 

 入って来たのは、我らが脳筋、遊民 戦。昼休みのメッセージの内容は、放課後にここに来ること。

 

「いいっていいって。じゃ、早速遊兎とデュエルしてくれる?」

 

 そして、遊兎とデュエルすることだ。

 

「・・・・・・あ? 今度は誰だよ、って御前(オマエ)、ハンバーガー屋の!」

 

「え? ・・・・・・誰?」

 

 戦を見て指差す遊兎と、完全に忘れている戦。

 

 彼らの再会は、なんとも締まらない形となった。




デュエル描写が長い。これで3ターン。


オマケ
孝之「今日の最強カードは、これっ!」

ファイアウォール・X・ドラゴン

孝之「ファイアウォール・X・ドラゴン! 何か禁止になったと思ったら、脳筋になって帰ってきました!」
星河「・・・・・・何だこのコーナー」
孝之「いいじゃん、銀河眼の光子竜も出るかもよ?」
星河「いいだろう。付き合ってやる」
孝之「切り替え早っ! まぁ、続くかどうかもわかんないんだけどね」
星河「何っ!?」
孝之「それではまた次回!」
星河「ところで、最後の伏せカードは何だったんだ?」
孝之「ブラフの星遺物に蠢く罠ですぞ」


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その頃の遊羽

私立受かった! 受験終わった! ・・・・・・何? 次は公立受験だって?

デュエルなしです。


 孝之と星河がデュエルしていた頃。

 

 虹花が生徒会の仕事をしている間、図書室で時間を潰していた遊羽は、テーブルの上に自身のデッキを広げて、一人唸っていた。

 

(ドラグニティはよく回るし展開力もあるんだが、相手を妨害するようなカードや攻撃を止めるカードが無いんだよな・・・・・・汎用カードに頼らざるを得ねぇ)

 

 並べたカードの内、ピンク色をしているのは《聖なるバリアーミラーフォースー》や《神の通告》といった汎用カードばかり。ドラグニティにも専用罠の《ドラグニティ・ドライブ》があるが、正直言って使い物にならない。

 

(一応、手札誘発も入れてはいるが・・・・・・)

 

 ドラグニティモンスターの横に並ぶのは、《速攻のかかし》や《エフェクト・ヴェーラー》等の汎用手札誘発。ドラゴン族の手札誘発が欲しいところだが、《鉄騎龍ティアマトン》というピーキーなカードや、戦闘破壊された時にリカバリーとして出てくるようなモンスターばかりだ。

 

(ドラゴン族の手札誘発・・・・・・あ)

 

 ふと頭に《古聖戴サウラヴィス》と《ディサイシブの影霊衣》が思い浮かび、儀式召喚も組み込んだデッキも考えるが、数秒で諦めた。

 

(無理あるな・・・・・・それに、親父と被るし)

 

 彼の父親、如月 青羽(きさらぎ あおば)のデッキを思い出し、遊羽が渋い顔をする。

 

 丁度そこへ、遊羽に声を掛ける生徒がいた。

 

「あれ? 何をしているのです?」

 

 息吹の妹、龍塚 手鞠だ。小さい身体と同じくらい長い黒髪をポニーテールにし、手には数冊の本を抱えている。

 

「いや、デッキをどうしようかと考えて、て・・・・・・」

 

 話しながら、ふと思いついたコンボについての考察を始めてしまう遊羽。彼が一人でデッキを組みたがるのは、こういうクセがあるのも理由の一つだったりする。

 

「? どうかしたのです?」

 

「・・・・・・どうにかして青眼の究極竜を出した後ザボルグをアドバンス召喚して、エクストラデッキ12枚破壊とかできねぇかなーと思ってな」

 

 何気なく青眼の白龍の精霊が聞いたら失神しそうなことを呟く遊羽。それを聞いた手鞠は、顔を白くしながら首を振る。

 

「や、止めた方がいいと思うのです・・・・・・絶対そんなことしてはいけないのです・・・・・・」

 

 自分の青眼の究極竜が破壊されたところを想像したのか、白から青に顔色を変える手鞠に、遊羽は焦りながら否定する。

 

「い、いや! やらねぇって! 俺もドラゴン好きだ、そんな外道なことはしねぇよ」

 

 言いながら、異世界で出会ったドラゴン好き達のことを思い出して、口元が緩む遊羽。あれはいい体験だった。尤も、そのドラゴン好きの一人である二股でヘンタイロリコンストーカーフィギュアフェチな青年が先程のコンボをしていたとは思いもしなかっただろうが。

 

「それなら良かったのです! 私は危うく、大切なお友達を亡くしてしまうところでした!」

 

「おう・・・・・・おう? 何か『なくす』の字がおかしかった気が・・・・・・?」

 

 一瞬手鞠の目にヤンデレオーラが漂ったのを感じ取った遊羽が冷や汗を流しながらも一応肯定する。と同時に、そんなコンボやらなくて良かったと心底安堵した。

 

 と、そこで遊羽のケータイが鳴る。

 遊羽は「悪い」と手鞠に断りをいれてから、その電話に出た。

 

「何だよホッさん。あ? 神のカードが使われてる? 店長のおかげ? いや、知らねぇよ。どこの世界の話だよ、それ。・・・・・・骨董品店? あー、オーケー。それ以上言うな。色々と危ないから。つーか俺達が異世界行ってる間何してたんだよ。さっさと回収してくれりゃあ良かったのによ。・・・・・・」

 

 電話が長くなりそうなことを感じ、本を探しに離れる手鞠。

 

 遊羽の電話は、その後三十分程続いたという。




この後遊兎達のデュエルを入れようと思ったんですが、長くなりそうだったのでここでカットです。

公立受験があるため、二月に入ったら本当に投稿できなくなります。ご了承ください。


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脳筋vs兎

長くなるからと言って前回カットしたのに、短めな今回。

違う、違うんだ。ふと最新段のカードが目に入って、wikiで調べたらいけるってあったから・・・・・・。

デュエル回です。


 昼休みに息吹から放課後にワンキル・ソリティア研究会の部室へ来るよう呼び出しを受けた戦だったが、新レギュレーションによるショックから立ち直ったらしい不動性ソリティア理論の先生の授業が長引いたために遅れてしまった。

 

「ごめん、龍塚くん。授業が長引いちゃって」

 

 部室の扉を開け、謝罪と共に入室する戦。そんな彼を、息吹は笑顔で迎える。

 

「いいっていいって。じゃ、早速遊兎とデュエルしてくれる?」

 

 言いながら、息吹は遊兎に目を向ける。

 

「・・・・・・あ? 今度は誰だよ、って御前(オマエ)、ハンバーガー屋の!」

 

 白髪に学ラン、制服の下のTシャツには『ちっちゃい頃から悪ガキで』とプリントされている。そんな変わった外見に目がいった戦は、とっさに相手のことを思い出せなかった。

 

「え? ・・・・・・誰?」

 

 呆然と呟く戦、彼を指差す遊兎。

 

 この緊迫した状況(笑)で先に動いたのは、我らが脳筋、遊民戦。

 

「ああ! この前ジャンクフードで絡まれてた不良くんか!」

 

「そうそう、ってどんな覚え方だよ! (オレ)には月見遊兎って立派な名前があるんだ! そう呼べ!」

 

 戦にツッコミを入れると同時に自己紹介も済ませる遊兎。戦も「あ、僕は遊民戦です。よろしく」「あ、どうもこちらこそ」と自己紹介をした。

 

「それじゃ、お互い名前もわかったことだし、早速デュエル開始だね♪」

 

 成り行きを傍観して楽しんでいた息吹が二人に声をかける。

 すると、二人に気を使ってか、孝之と星河は扉を開けて部室を出た。

 

「バイト行ってくるわー」

「電波を察知した。ある世界の並行世界に突撃してフルボッコにしてくる」

 

 ああ、死んだなオリジン。

 

『行ってらっしゃ~い♪』

 

 そんな彼らに手を振るオッドアイズ。孝之は見えていないため無反応だが、彼の精霊であるイヴとアウラムは手を振り返した。ニンギルスは特に反応しなかったが。

 

「じゃ、改めてデュエルしようか」

 

 腰のホルダーからデッキを取り出し、デュエルディスクにセットする戦。それを見て、遊兎もまたディスクを構える。

 

「「デュエル!」」

 

遊民戦

LP8000

 

月見遊兎

LP8000

 

「僕のターン、手札抹殺を発動するよ。お互いに手札交換だね」

 

 互いに手札を全て捨て、戦は四枚、遊兎は五枚ドローした。

 

「ジャンク・シンクロンを通常召喚! 効果で墓地のチューニング・サポーターを特殊召喚!」

 

ジャンク・シンクロン ☆3 チューナー 攻撃力1300

 

チューニング・サポーター ☆1 守備力300

 

「チューナーとそれ以外のモンスター。ってことは、」

 

「まだだよ。機械複製術を発動! デッキからもう二体、チューニング・サポーターを特殊召喚する!」

 

チューニング・サポーター ☆1 守備力300

 

「いくよ、ジャンク・シンクロンで、三体のチューニング・サポーターをチューニング!」

 

3+1+1+1=6

 

 ジャンク・シンクロンが光の輪に変わり、三体のミニロボを包む。

 

「シンクロ召喚、スターダスト・チャージ・ウォリアー!」

 

スターダスト・チャージ・ウォリアー ☆6 攻撃力2000

 

「チャージ・ウォリアーの効果と、チューニング・サポーターの効果をそれぞれ発動して、デッキから四枚ドロー!」

 

「四枚ドロー!? い、インチキ臭ぇ!」

 

 戦にとってはいつも通りのプレイングなのだが、遊兎からすれば驚きのドロー数だ。

 

「墓地のジェット・シンクロンの効果を発動するよ。手札一枚をコストに、墓地から特殊召喚!」

 

ジェット・シンクロン ☆1 チューナー 守備力0

 

 墓地から扇風機のようなモンスターが飛び出す。夏に回すと涼しそうだが炎属性だ。

 

「現れろ、強きを挫くサーキット! 僕はスターダスト・チャージ・ウォリアーとジェット・シンクロンをリンクマーカーにセット!」

 

 八つの矢印の付いた門に吸い込まれるモンスター達を見て息吹はハリファイバーかと思ったが、矢印の方向が右と下であることから違うことがわかる。

 

「リンク召喚! 真打ち登場だ、落消しのパズロミノ!」

 

落消しのパズロミノ link2 攻撃力1300

 

 門から出てきたのは、ピエロのような魔法使い族。戦が新しく手に入れたカードだ。

 

「墓地のラッシュ・ウォリアーの効果発動だよ。ジャンク・シンクロンを手札に戻す。カードを四枚伏せて、ターンエンド」

 

遊民戦

LP8000 手札2

場 エクストラ:落消しのパズロミノ 魔法・罠:伏せカード×4

 

「お、(オレ)のターン、ドロー」

 

 四枚の伏せカードに若干ビビりながらもカードをドローする遊兎。頭を振って、恐怖を消した。

 

レスキューラビット(オレ)を召喚! 効果で、デッキからメガロスマッシャーXを二体、特殊召喚!」

 

レスキューラビット ☆4 攻撃力300

 

メガロスマッシャーX ☆4 攻撃力2000

 

 ヘルメットを被ったウサギが、フィールドに現れて早々に助けを求めて退却(除外され)、デッキから光る! 鳴る! メガロスマッシャーX! が販売(特殊召喚)された。

 

「行くぜ! フィールドの攻撃力2000以上のモンスター、メガロスマッシャーXを二体リリースすることで、銀河眼の光子竜を特殊召喚!」

 

銀河眼の光子竜 ☆8 攻撃力3000

 

 メガロスマッシャーXが赤い十字架に吸収され、そこから銀河が誕生する。夏休み中に戦がいた異世界では、アンデットになったりしていた。

 

「更に! 墓地の恐竜族モンスター二体を除外することで、究極伝導恐獣を特殊召喚!」

 

究極伝導恐獣 ☆10 攻撃力3500

 

 フィールドに現れる、太古の恐竜の頂点。だが、寝転がって面倒くさそうにしている。

 

「あ、おい! 真面目にやれって!」

 

 遊兎が叫ぶが、究極伝導恐獣は素知らぬ顔で欠伸している。

 

「あーもう! バトルだ!」

 

「その瞬間、リバースカード、ライバル・アライバル! 手札から、ジャンク・シンクロンを召喚! 効果で、墓地からドッペル・ウォリアーを特殊召喚!」

 

ジャンク・シンクロン ☆3 チューナー 攻撃力1300

 

ドッペル・ウォリアー ☆2 守備力800

 

「更にリバースカード、緊急同調! バトルフェイズ中にシンクロ召喚を行う! ジャンク・シンクロンで、ドッペル・ウォリアーをチューニング!」

 

3+2=5

 

「集いし星が、鋼に打ち勝つ戦士となる! シンクロ召喚! おいで、ジャンク・ウォリアー!」

 

ジャンク・ウォリアー ☆5 攻撃力2300

 

『DE・BA・N! ですぞ!』

 

 意気揚々と肩を回しながらパズロミノの後ろに降り立つジャン。しかし、見たことのないモンスター(パズロミノ)にはて? と首を傾げる。

 

『主殿、この奇っ怪な方の効果は?』

 

「すぐにわかるよ。先ずはジャンク・ウォリアーの効果を発動! それにチェーンして、パズロミノの効果も発動! 更にチェーンして、ドッペル・ウォリアーの効果発動! 最後にチェーンしてリバースカード、旗鼓堂々!」

 

 大量に組まれるチェーン。それでは、逆順処理開始。

 

「まずは旗鼓堂々の効果で、墓地の団結の力をジャンに装備!」

 

ジャンク・ウォリアー 攻撃力2300→3900

 

「続けて、ドッペル・ウォリアーの効果で、ドッペル・トークン二体を特殊召喚!」

 

ドッペル・トークン ☆1 攻撃力400

 

ジャンク・ウォリアー 攻撃力3900→5500

 

「パズロミノの効果! リンク先にモンスターが特殊召喚されたとき、そのモンスターのレベルを1から8まで変更する!」

 

「あ、それヤバいやつ」

 

 デュエルを見ていた息吹が、思わずポツリと呟く。遊兎はジャンク・ウォリアーの効果を知らないためか、首を傾げている。

 

ジャンク・ウォリアー ☆5→1

 

『あ~れ~! 拙者の身体が小さく!?』

 

 レベルが下がったせいか、デフォルメされて小さくなるジャン。まるでオモチャかヌイグルミだ。

 

「そして、ジャンク・ウォリアーの効果! フィールドのレベル2以下のモンスターの攻撃力分、攻撃力をアップする!」

 

ジャンク・ウォリアー 攻撃力5500→11800

 

 小さくなった身体の代わりに倍以上に上がる攻撃力。身体の大きさと攻撃力が反比例している。

 

『身体が小さくて動きにくいけど、一応、攻撃力アップですぞ!』

 

 わーい! わーい! と小柄な身体で跳ねまわるジャン。身長的には、ドッペル・トークンとそう変わらない。攻撃力に天と地程の差はあるが。

 

「攻撃力、11800!? でも、関係ねぇ! 究極伝導恐獣で、パズロミノに攻撃だ! 戦わなければ生き残れない(サバイバル・サバイブ)!」

 

 重い腰を上げ、『止めた方がいいよ?』という目を遊兎に向けながらもパズロミノに突っ込む究極伝導恐獣。しかし、その前にジャンが立ちふさがる。

 

「最後のリバースカード、立ちはだかる強敵! このターン、君のモンスターはジャンに攻撃しなければならない!」

 

「へ? ・・・・・・は!?」

 

 『あーうん、やっぱりねー』と溜め息をつく究極伝導恐獣。遊兎は頭の理解が追いついていない。

 

「ジャンの迎撃! ミニ・スクラップ・フィスト!」

 

『別名、オモチャパンチですぞ!』

 

 小さな拳で究極伝導恐獣をワンパンノックアウトするジャン。シュールだ。

 

月見遊兎

LP8000→0

 

「はあああああ!?」

 

 ようやく事態に付いてこれた遊兎。だが、時既に遅し。デュエルの勝敗は決した。

 

「これは・・・・・・ワンキル、なのか? 言うなら、カウンターワンキルかな♪」

 

 あまり見ないデュエルの結末への動揺のためか、変な発言をする息吹。この発言によって、ワンキル・ソリティア研究会内部から独立してカウンターワンキル研究会ができたとかなんとか。

 

「いや、何だよ今の!? 攻撃したと思ったら反撃されて・・・・・・」

 

 罵詈雑言でも浴びせられるのか、と戦は少し身構える。

 だが、遊兎が発した言葉は、彼の予想を裏切るものだった。

 

「すげーな!! (オレ)にはできねぇ」

 

「え? あ、うん。ありがとう」

 

 感動したように言う遊兎に、戸惑いながらも笑顔で答える戦。

 

 彼らのやり取りを見ながら、冷静になった息吹は思う。

 

(ホント、ぶっ壊れた戦い方だ。まるで、()()()()()()()()()()()()

 

 以前、戦は両親の死を乗り越えたと言っていたが、それは違う。

 ただ、心が壊れただけだ。それも、本人が気づかない内に。

 

 それは、精霊と人間の間に生まれ、他人の心を読める息吹にだけわかったこと。遊羽でさえ、このことには気付いていない。

 

(今のところは問題ないけど・・・・・・)

 

 もし、戦が自分の心と向き合う時が来たら。

 ふとした時に、そう考えてしまう。

 

(ま、今は考えても仕方ないか♪)

 

 答えのない考えを振り払うかのように、息吹は少し笑うと、戦と遊兎が話す間に入っていった。

 

「そろそろ下校の時間だよ♪ 遊兎は花園さんと帰るんでしょ?」

 

「な、何でそれを!?」

 

「え? あ、マジで?」

 

 息吹の反応から冗談だったことに気付いた遊兎は、顔を赤くしながら叫ぶ。

 

御前(オマエ)、図ったなぁ!」

 

「おーおー、オレになんか構ってていいの? 花園さんが待ちくたびれてるかもよ♪」

 

 今にも飛びかかりそうな遊兎に、息吹はからかうように言う。そして、それを少し離れて眺める戦。

 

(僕も帰ろうかな。家に遊戯王チップスのストックがまだあったはずだし)

 

 備蓄か? 備蓄しているのか?(グルコサミンじゃないけど)

 

「じゃ、帰ろうか♪」

 

 そう息吹が言ったのをきっかけに、その日は解散となった。




一応、デフォルメジャンを描いてみました。


【挿絵表示】


・・・・・・うん、下手。(中学生の画力)

多分、この後は三月まで投稿しません。
感想欄で見かけたら、『ああ、受験勉強から逃げ出したんだな』と察してください。


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前期期末テスト

祝! 学☆級☆閉☆鎖!

ということで、早速投稿。

デュエルなしです。


 一般的に、夏休みが終われば、次は期末テストだ。今回のテスト内容は、筆記試験と実技試験である。

 

(わ、わからねぇ・・・・・・何だよ、『時』と『場合』の効果処理の違いって・・・・・・チェーン処理で優先されるもの? プレイヤーが選べるんじゃないのか? 強制効果とか、もうわけわからねぇ!!)

 

 転校生扱いとは言え、遊兎もテストは受けなければならない。

 

 しかし、彼はあまり頭がいい方ではない。もちろん、コンマイ語が難しいのもあるが、それを踏まえても彼は周りの生徒から劣っていた。

 

 

 息吹はといえば。

 

(う~ん、わかんない♪ オッドアイズ、ちょっと三沢くんの答案用紙を見てきて?)

 

『は~い♪』

 

 思いっきりズルである。

 

 

 そして彩葉は。

 

(わからない・・・・・・)

 

 答案用紙をじっと眺めたかと思えば、鉛筆をカラカラ転がし、その鉛筆の先に掘られた言葉をそのまま答案用紙に書き込んでいく。

 

(・・・・・・ペリー)

 

 おい待て、それ社会じゃない。しかもそこ選択問題。

 

 

 一方、一組の遊羽は。

 

(・・・・・・相手の攻撃を無効にする手札誘発モンスター・・・・・・夏休みに虹花とやったとこだな。答えはゴーストリック・ランタン、っと)

 

 余裕である。愛の力は強いのだ。

 

 無論、虹花も同じだ。遊羽の隣で、スラスラと答案用紙に答えを書いていく。

 

(Q:《機甲忍者ブレード・ハート》が、自身の効果で2回攻撃能力を得ています。1回目の攻撃を無効にされた際に《ダブル・アップ・チャンス》を発動しました。この場合、この《機甲忍者ブレード・ハート》はあと何回攻撃できますか? ですか・・・・・・遊羽が《ダブル・アップ・チャンス》を使っていてくれて助かりました。あと一回ですね)

 

 この様に、遊戯王wikiからも問題が出たりと、そこそこ難易度は高いのだが、そこはさすが生徒会長といったところだろうか。

 

 

 さて、我らが脳筋、戦は。

 

(チェーン処理で優先されるのは、強制効果。その後にプレイヤーが効果を発動して、相手はそれにチェーンできる。コストとかで強制効果を発動すると、相手はそこに割り込めなくなるんだったよね)

 

 この脳筋、意外とできる。

 

 元々、戦のデッキはカードを組み合わせてジャンク・ウォリアーの攻撃力を上げて殴るデッキだ。そして、意外と頭を使う。

 

 彼は、プレイングを攻撃力に全振りしてはいるが、そこそこオールマイティーなデュエリストなのである。

 

 

 問題なのは、三年生だ。あと半年で卒業し、その先の進路も決めなくてはならない彼らにとって、このテストは大切なものだ。

 

(《ウェザー・レポート》の効果かー。前にデュエルしたプロで使ってる人がいてよかったー、確かリバース効果で、《光の護封剣》を破壊してバトルフェイズを二回おこなえる、だったような)

 

 プロで得た知識を生かし、難問を解いていく日向。プロの名前は、伊達じゃない!(ガンダム風)

 

 

 その隣では、星河が少し考えながら答案用紙に答えを書いている。

 

(自分の好きなカード、それとその理由について書きなさい、か)

 

 考えたのは一瞬で、星河は《銀河眼の光子竜》と書き込んだ。

 

『・・・・・・』

 

 無言でガッツポーズを作るフォトン、そして悔しがるタキオン、それを見て呆れる星態龍の姿が、そこにはあった。

 

 

 星河とは方向の、日向の隣。そこでは、孝之が頭を抱えながら唸っていた。

 

(《オネスト》の効果、確か光属性モンスターの攻撃力アップと、もう一つ、何だっけ・・・・・・?)

 

 彼の後ろでも、イヴ、アウラム、ニンギルスが主を心配そうに見つめている。しかし、彼がそれに気付くことはなかった。

 

 

 一番テストに集中できなかったのは、二年生の響だ。

 

(兄さんは大丈夫ッスかね・・・・・・遊羽達も、デッキを作るときに勉強を見てあげた方が良かったかもしれないッス・・・・・・)

 

 兄と後輩達が心配で、どうしてもそちらに気がいってしまう。

 

 情けない兄を持つ妹は辛いと、響は心の中でさめざめと泣いた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 筆記試験の後は、実技試験である。

 

「バトル! マシンナーズ・フォートレスでダイレクトアタック! 速攻魔法、リミッター解除!」

 

「う、うわあぁ!」

 

月見遊兎

LP3000→0

 

「クソ、また負けた・・・・・・」

 

 今回の実技試験は、生徒同士でデュエルを数回行い、その結果に応じた詰めデュエルをする、というものだ。

 言うまでもなく、遊兎に不利である。

 

「これでフィニッシュ♪ ガンドラXの効果で、フィールドのモンスターを全破壊!」

 

「お前のフィールドにしかモンスターはいないけどな」

 

「黙らっしゃい! アークロード・パラディオンの攻撃力分のダメージだ♪」

 

 ガンドラXの身体から放たれたレーザーによって、息吹のフィールドは壊滅。にも関わらず、デュエルは息吹の勝利である。

 

 その後、息吹は出題された『黄昏トライワイトゾーン』という副題付きの詰めデュエルをクリア。

 

 彩葉は相手のモンスターをパクって《交血鬼ヴァンパイア・シェリダン》をエクシーズ召喚、効果で相手のモンスターを破壊し更に自身のフィールドに特殊召喚した後、《RUM幻影騎士団ラウンチ》を使って《覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン》にランクアップしてフィールドを焼き払って二回攻撃と、かなりえげつないコンボを繰り出していた。

 

 続く詰めデュエルもクリアし、息吹まではいかないにしても、かなりの好成績を収めた。

 

 そして、遊兎は。

 

 全五デュエル中一勝四敗。しかも勝因は相手の手札事故。詰めデュエルも解けずじまいと、あまり芳しくない結果となった。

 

(ダメだ・・・・・・こんなんじゃダメだ。これじゃあ、彩葉を守れない!)

 

 彼が修行に出た理由。強くなりたい理由。

 それは、ただただ好きな女の子を守りたいというだけだ。

 

 遠巻きに遊兎を眺めていた息吹は、彼の様子から心情を察し、近づいて話しかけた。

 

「何うなだれてんの? まだ次があるでしょ♪」

 

「・・・・・・息吹」

 

 遊兎が息吹に向けたのは、少し妬ましそうな視線。それを笑って受け流した息吹は、遊兎に約束を取り付ける。

 

「強くなりたいなら、実戦あるのみ♪ 今日の昼休みと放課後の部活の時間、またデュエルだ」

 

「・・・・・・わかってる」

 

 遊兎だって、息吹を妬むことがお門違いであると理解しているし、その上で自分のために動いてくれていることもわかってる。

 

 彼はただ、自分の弱さが、堪らなく不甲斐なかった。

 

 まぁそんな彼の心情(シリアス)はさて置き。

 

 息吹が遊兎が強くなるために色々している理由は、ただ一つ。

 

(いやー、今日は何回負けるかなー♪)

 

 ただ、自分が楽しみたいだけだ。

 

(そもそも、花園さんは守ってもらうほど弱くないのにねー♪ 自分よりも強い女の子を、どうやって守るんだか)

 

 彼はウキウキしながら、昼休みのデュエル相手に連絡を入れた。




学級閉鎖で休みになったので、時間ができました。学級閉鎖最高!

冗談はさて置き、皆さんも体調などにはお気をつけください。


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手品に使われる兎

勉強のストレスでまたも書いてしまった・・・・・・。

後悔はしてない。公開はしますが(面白くない)

デュエル回です。


 前期期末テストが終わった、昼休み。

 

 購買での戦争を勝ち抜いた戦は、戦利品に廊下を歩いていた。

 

(ん? あの教室って、使われてなかったような・・・・・・?)

 

 電気の点いている空き教室を見つけ、中を覗く。

 そこには、彼のよく見知った生徒が、彼の見知らぬ格好で椅子に座っていた。

 

「・・・・・・永野さん?」

 

「ひゃ!? ・・・・・・っつう・・・・・・」

 

 驚きから声を上げ、椅子から転げ落ちたその生徒は、休んでいるはずの永野 遥だった。

 

「あ、ごめん! 大丈夫?」

 

 慌てて教室に入り、遥に手を差し伸べる戦。遥はたはーと笑いながらその手をとる。

 

「それで、何で女子制服を?」

 

 遥を座らせ、自分も手近な椅子に腰掛けてから、改めて戦は問いかけた。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 気まずそうに視線を逸らし、決心したように戦に向け、また逸らしと繰り返す遥に、じれた戦は強硬手段を用いる。

 

「早くしないと、さっき見えた下着の色、バラすよ」

 

「へ!? わ、わかった、言うから止めて!」

 

 必死の形相でノーと突っぱねる遥に、嗜虐心を満足させた戦は黙る。因みに白。

 

「・・・・・・実は、ボクが男装をしていたのは、お父さんが男の子が良かった、って言ったからなんだ。それで、男装をしていたんだけど、さすがに色々キツくなって、夏休みの終わり辺りにお父さんと話したんだ」

 

「うん。ところで、何がキツくなったの?」

 

 にっこり笑い、質問をぶつける戦。遥はう゛、と言葉に詰まる。

 

(ぜ、絶対確信犯だよー!)

 

 心の中で悲鳴を上げる遥だが、それを知ってか知らずか、戦は笑みを浮かべたままだ。

 

「・・・・・・その、お風呂、とか・・・・・・胸、とか」

 

「へぇ。ありがとう、続けて」

 

 内心涙目になりながら遥は戦を睨むが、寧ろ戦はその可愛い仕草に御馳走様ですと言いたいほどだった。尤も、顔には一切出ていないが。

 

「・・・・・・そしたら、お父さんが『え、俺そんなこと言ったか?』とか言ってきて・・・・・・」

 

「あー」

 

 何というか、哀れだ。そんな感想を戦は抱いた。

 

「それで、男装を解いたんだ」

 

「うん、そうなんだけど・・・・・・足とかスースーするんだよねー」

 

 そう言いながら、スカートをパタパタはためかせる遥。戦以外の男子生徒であれば、前屈みにならざるを得なかっただろう。 ※除く遊羽

 

(・・・・・・そういえば、あの人達もこんな感じだったな・・・・・・)

 

 異世界で出会ったカップルを思い出し、少しの憧れが生まれる。

 

(まだいいかなって思ってたけど)

 

 急に黙った彼を?を浮かべながら見る遥に、戦は笑顔で言う。

 

「永野さん。僕と付き合ってくれない?」

 

「・・・・・・へ? ・・・・・・ふぇ? ふあっ!?」

 

 戦の言葉が耳を通過し、脳に入り、理解する。そして赤面。その赤さたるや、キラートマトもかくやというほどだったという。

 

「な、何でそんな急に!?」

 

 理解したことによる驚きと戸惑いから、遥が叫ぶ。

 

「林間学校での出来事、覚えてる?」

 

「え、覚えて、~~~~~~~~!!」

 

 思い出し、悶える。

 

「あのこともあって、付き合うなら永野さんかな、と思って」

 

「ち、違うの! あれは、その、」

 

 真っ赤な顔の前で両手を振り、否定を示す遥。そんな彼女に、戦はさも悲しい、という表情を向ける。

 

「そっか、僕とは遊びだったんだ・・・・・・」

 

「ち、違うの! えっと、違わないけど、そうじゃなくてっ!!」

 

 戦の期待通りに動揺する遥。その反応が満更でもなさそうなことを感じ、戦はにっこり微笑む。

 

「なら、いいよね?」

 

「・・・・・・えーっと、」

 

「いいよね?」

 

「・・・・・・ぅん、いいよ」

 

 真っ赤な顔を背けながらも、確かに肯定する遥。戦は笑顔を一層濃くし、遥の手をとる。

 

「ならよろしく、永野さん。早速だけど、遥って呼んでいい?」

 

「だ、ダメッ! まだダメッ!」

 

「そう? じゃあ、気長に待つよ、遥」

 

「うひゃい!? だ、ダメッって言ってるでしょー!」

 

 早速不意打ちで名前を呼ぶ戦。滲み出る無自覚なドS。

 

 こうして、このデュエルスクールに新たなバカップルが生まれた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 戦がバカップルを結成していた昼休みに、息吹によって仁藤 実篤&服部 サスケとデュエルをして敗北した遊兎は、放課後を告げるチャイムが鳴ったと同時に、机の上に身体を投げ出す。

 

「だー、疲れた!」

 

「それじゃ、放課後のデュエルのお時間でーす♪」

 

 そして、息吹にサルベージ&強制連行される。

 

「うおっ! 離せ、引きずるな! 自分で歩くから、ちょ、階段は待っあだだだだだだ!?」

 

 そんなこんなで遊兎が連れてこられたのは、とある教室の前。

 息吹と遊兎がその前に立つと、扉が勢いよく開いた。

 

「な、何なんだ!?」

 

 思わず遊兎が声を上げると同時に、暗かった教室がスポットライトに照らされる。

 

「『な、何なんだ!?』と効かれたら!」

 

「答えてあげるが世の情け」

 

 光が照らし出す、二つの人影。

 

「世界の破壊を防ぐ為」

 

「世界の平和を守る為」

 

 詠唱を始め。

 

「愛と真実の正義を貫く」

 

 少し内容を変え。

 

「クールビューティーな味方役」

 

 ジョジョ立ち(決めポーズ)を決める。

 

「星河!」

 

「孝之!」

 

「日向でーす」

 

 そして、ひょっこり現れるもう一つの人影。

 

「銀河を駆ける研究会の二人には!」

 

 除く先ほどの人影。

 

「ホワイト・ホール、ブラホに打つ日が待ってるぜぃ!」

 

 待っていても、そこにたどり着けるとは限らない、というニュアンスを含んだ言い方。

 

「なーんてな!」

 

 唖然としている遊兎の前に現れたのは、水瀬 日向。元に戻った照明の下では、星河と孝之がポーズをしたままでピクピク震えている。かなり辛い体勢らしい。

 

「・・・・・・な、何だよ、これ」

 

「ん? さっき名乗ったろ? 二人は研究会」

 

 日向がプリキュアのような言い方と共に解説するも、遊兎は立ち尽くしたままだ。

 

「・・・・・・なぁ、この体勢けっこーキツいんだけど。戻っておk?」

 

 上半身を後ろに反らせ、右手人差し指を正面に向けながら孝之が言う。

 

「くっ、もう少し楽なものにしていれば・・・・・・!」

 

 腰を斜めにずらし、左手を顔の前で広げながら呻く星河。

 

「いや、自分たちでそれにしたんでしょーに」

 

 そんな彼らを眺め、苦笑を浮かべる日向。

 

 遊兎は知らないことだが、この研究会の二人と日向は『アベシの三羽烏』や『残念イケメントリオ』などと呼ばれており、生徒達には好かれ、教師達からは呆れられているのである。

 

「まったく・・・・・・それじゃあ、私は部活に行くからね」

 

 その三人に呆れた視線を向けながら、教室を出る女子生徒が一人。

 

「おー、サンキュー望月」

 

 彼女は望月 結希(もちづき ゆき)。ワンキル・ソリティア研究会に所属する三年生で、三人の悪ふざけに巻き込まれることの多い生徒だ。今回も、演出のために照明係にされていた。

 キワモノや癖のある生徒の多い研究会の中では生粋の常識人で、『研究会の良心』と呼ばれていたりする。

 

「というわけで、今日はここ三人とデュエルしてもらいまーす♪」

 

 悪戯っ子のような笑みを浮かべながら、遊兎を教室の中に押し込む息吹。

 

「じゃ、先ずは誰からやる?」

 

 息吹が三人に問いかけると、ジョジョ立ちを解いた孝之と星河が真っ先に手を挙げる。

 

「ここはオレが」

 

「いや、ここは俺が」

 

 最後に、二人に釣られた日向の手が挙がる。

 

「いやいや、ここはおれが」

 

「「どうぞどうぞ」」

 

「っておい!?」

 

 ハメられた、と叫ぶ日向をそっちのけに、孝之と星河は椅子に腰掛け一息つく。

 

「お茶がうめぇなぁ、星河さんや」

 

「そうだな、孝之さんや」

 

 実際にお茶を飲んでいるわけではないが、そこはご愛嬌。

 

「おまえら、あとで覚えとけよ・・・・・・」

 

「聞こえませんなぁ、婆さんや」

 

「ボケてきたのかい、爺さんや。後、誰が婆さんだ」

 

 日向が睨むも、縁側の老夫婦のような反応を見せる二人。

 彼らについて色々諦めた日向は、デュエルディスクにデッキをセットし、遊兎に向き直る。

 

「はじめまして、だったな。おれは水瀬日向。よろしくたのむぜ」

 

「お、おう。(オレ)は月見遊兎、(ワル)だ!」

 

 自己紹介の内容としておかしい名乗りに苦笑しながらも、日向は何も言わなかった。

 

 遊兎がデュエルディスクを構えたのを確認し、孝之が立ち上がる。

 

「部長! デュエル開始の宣言をしろぉ!」

 

「ははー! デュエル開始ィ!」

 

 立場が色々おかしいが、研究会では日常茶飯事だ。

 

「「デュエル!」」

 

水瀬日向

LP8000

 

月見遊兎

LP8000

 

「おれのターン! モンスターをセット、カードを二枚セット! これでターンエンド」

 

水瀬日向

LP8000 手札2

場 メイン:伏せモンスター 魔法・罠:伏せカード×2

 

 動きのないフィールドを見て、どこからか取ってきたらしいお茶を啜る孝之が呟く。

 

「伏せモンスター、ってことは、アドバンス軸のデッキじゃなさそだな」

 

「いや、あのデッキは確かマシュマロンや翻弄するエルフの剣士も入っていた筈だ。決めつけるにはまだ早い」

 

 同じくお茶を啜りながら反論する星河。デッキ内容を把握されていることに、日向は冷や汗をかいた。

 

(オレ)のターン、ドロー!」

 

 ドローしたカードを確認した後、日向のフィールドの伏せカードに目を向ける遊兎。戦とのデュエルがトラウマになっているようだ。

 

(オレ)は成金ゴブリンを発動! デッキから一枚ドローして、先輩のライフを回復する!」

 

水瀬日向

LP8000→9000

 

(んー、なんかちょっとやだな)

 

 普段、プロとしてデュエルしたり、ワンキルやソリティアの相手をしている日向としては、このカードのような条件のないドローカードは警戒すべきものである。

 

(リチュアで先攻ハンデス、デッキ圧縮からの盗賊団からジャックポット、カバ壊獣からのヘルテン、アブソーブにトーチからの連続リンク。そしてエクゾディア。最近だと閃刀姫も。あの60枚構築とか、もうやんなってくるな・・・・・・)

 

 数え切れないトラウマが脳裏をよぎり、日向が顔をしかめる。

 

「さらに、緊急救命レスキューを発動! 自分のライフが相手より少ないとき、デッキから攻撃力300、守備力100の獣族モンスターを三体相手に見せ、相手が選んだものを手札に加える!」

 

「出たよ、三枚選ぶ。どうして三種類じゃないのかねぇ?」

 

「それには俺達もお世話になっているだろう。パワーツールにシンクロキャンセルで大量ドローと装備カードサーチ。おかわりなら注ぐぞ」

 

 思わず呟いた孝之にツッコむ星河。確かにと同意しながら孝之は星河にコップをわたす。

 

(オレ)が選ぶのは、レスキューラビット三枚!」

 

「うん、知ってた」

 

 孝之達の会話は日向にもバッチリ聞こえており、彼も薄々察していた。それでも、実際にされるのは普通に嫌なのだが。

 

「よし、(オレ)はレスキューラビットを召喚! 効果で、デッキからライドロンを特殊召喚!」

 

レスキューラビット ☆4 攻撃力300

 

ライドロン ☆4 攻撃力2000

 

 ヘルメットを被ったウサギがフィールドに現れるなり助けを呼び、二匹のライオン型サイバースが駆けつける。どちらかというと、ライオンはウサギを狩る側だが。

 

 ライドロンがフィールドに飛び出すなり吠え、それに遊兎がビビる。そしてそれを見て息吹が笑い転げる。

 

「くっそ・・・・・・(オレ)はライドロン一体でリンク召喚! リンク1、リンク・スパイダー!」

 

リンク・スパイダー link1 攻撃力1000

 

 ライドロンがサーキットを駆け抜けると、そこには電化蜘蛛が。

 

「リンク・スパイダーの効果発動! 手札の通常モンスター一体を、リンク先に特殊召喚する! 来てくれ、機界剣士アヴラム!」

 

機界剣士アヴラム ☆4 攻撃力2000

 

『んん? ああ、僕か』

 

 フィールドに現れた剣士に、孝之のそばでまったりしていた精霊の内の一体、アウラムが反応する。本当に反応しただけだが。

 

「ライドロンとアヴラムをリリース! 銀河眼の光子竜を特殊召喚!」

 

 ライドロンとアヴラムが赤い十字架に吸収され、そこに銀河が誕生する。

 

銀河眼の光子竜 ☆8 攻撃力3000

 

『む、今度は私か』

 

 星河の中にいたフォトンもまた、自身と同じのカードの出番を察した。

 

「バトルだ!」

 

「ちょっと待った。リバースカード、威嚇する咆哮、チェーンしてマジカルシルクハット!」

 

 フィールドに獣の咆哮が轟くと共に、日向の代名詞とも呼べる帽子達が伏せモンスターを隠す。

 

「・・・・・・バトルフェイズ終了、メインフェイズだ。カードを伏せて、ターンエンド」

 

「エンドフェイズ、墓地に送ったヒステリック・サインの効果で、ハーピィの羽根箒、チャネラー、ハーピストを手札にくわえる」

 

月見遊兎

LP8000 手札2

場 エクストラ:リンク・スパイダー メイン:銀河眼の光子竜 魔法・罠:伏せカード

 

「おれのターン、ドロー! まずは、ハーピィの羽根箒を発動! そして、さっきのチャネラーを召喚!」

 

ハーピィ・チャネラー ☆4 攻撃力1400

 

「効果で、手札のハーピストをコストに、デッキからハーピィズペット竜を特殊召喚! チャネラーのレベルは、ドラゴン族がいることで7になる」

 

ハーピィズペット竜 ☆7 攻撃力2000→2300

 

ハーピィ・チャネラー ☆4→7

 

「レベル7のモンスター二体でオーバーレイ、エクシーズ召喚! こい、No.11 ビッグ・アイ!」

 

No.11 ビッグ・アイ ★7 守備力2000

 

 黒い渦から現れたのは、尖った目玉。これでも魔法使い族。

 

「ビッグ・アイの効果発動! オーバーレイユニットを一つ使い、相手モンスター一体のコントロールを得る! おれがえらぶのは、当然ギャラクシーアイズ!」

 

「お、(オレ)の銀河眼の光子竜が!」

 

 ビッグ・アイのあやしいひかり! 効果は抜群だ!

 

「さらに、反転召喚! メタモルポット!」

 

 伏せられていたカードがひっくり返り、手札を満足させる給油機が目を輝かせる。

 

「リバース効果で、お互いに手札を全て捨てて、五枚ドロー!」

 

(・・・・・・よし、この手札なら!)

 

 いいカードを引いたのか、口角をあげる遊兎。日向はわかりやすいなーと彼を眺めていた。

 

「バトル! ギャラクシーアイズで、リンク・スパイダーを攻撃! 破滅のフォトン・ストリーム!」

 

 意気揚々と攻撃宣言する日向。だが、それに待ったをかける者がいた。

 

「待て。声が足りない。それじゃ、ギャラクシーアイズは応えてくれないぞ」

 

 星河は日向の横に立ち、ティーチングを開始する。

 

 それを眺め、呆然とする遊兎。息吹と孝之はいつものことだと気にしていない。

 

「日向先輩、五分以上経ったら遅延行為で敗北ですよ♪」

 

「え、うそん!?」

 

「まだ足りないぞ。もっと腹から出せ。答えはイエスかはいだ」

 

「スパルタかよ!? あ、すみませんイエスはい」

 

「どちらかだと言っただろう」

 

 星河によるレッスンが終わったのは、丁度四分後だった。

 

「お、おまたせ。ん゛んん! ギャラクシーアイズで攻撃! 破滅のフォトン・ストリィィィィィイイム!!!!」

 

 日向がカイトボイスで放った攻撃宣言により、ギャラクシーアイズがようやく攻撃する。因みに、レッスン内容はひたすら『ハルトォォォォォォォオオ!!!!』と叫ぶ、というものだった。

 

「くっ、うおっ!」

 

月見遊兎

LP8000→6000

 

 これで、遊兎のフィールドは焼け野原。

 

「次! メタモルポットで攻撃!」

 

「いって」

 

月見遊兎

LP6000→5300

 

 日向のデュエルでは何故か多い、メタモルポットによる攻撃。そのため、プロの業界では『手品師の相棒はメタモルポットだ』という噂があるとかないとか。

 

「カードを二枚伏せて、エンドフェイズ、ハーピストの効果でデッキからチャネラーを加える。これでターンエンド」

 

水瀬日向

LP9000 手札4

場 エクストラ:No.11 ビッグ・アイ メイン:銀河眼の光子竜 メタモルポット 魔法・罠:伏せカード×2

 

「くっ、(オレ)のターン! カメンレオンを召喚!」

 

カメンレオン ☆4 攻撃力1600

 

 仮面を被ったカメレオンが『え、何? やるのー?』と怠惰な様子でフィールドに現れる。

 

「カメンレオンの効果発動! 墓地の守備力0のモンスターを特殊召喚する! って、働けよ!」

 

 『めんどーい』とでも言うかのようにゴロゴロするカメンレオンに遊兎が声を荒げると、カメンレオンは『はいはい、わかったわかった』と墓地に舌を伸ばし、ライドロンを釣り上げる。

 

ライドロン ☆4 守備力0

 

(オレ)はカメンレオンとライドロンでオーバーレイ! 闇より出でし反逆の牙! 自由を求めし漆黒の翼! エクシーズ召喚! 来てくれ、ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン!」

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ★4 攻撃力2500

 

 カメンレオンが舌でライドロンを巻いたまま黒い渦に飛び込み、漆黒の竜が闇から降り立つ。

 

「ダーク・リベリオンの効果発動! オーバーレイユニットを二つ使って、相手モンスター一体の攻撃力を半分にし、その分攻撃力をアップする! リベリオン・ファング!」

 

 ダーク・リベリオンがギャラクシーアイズに噛みつき、その攻撃力を奪う。

 

銀河眼の光子竜 攻撃力3000→1500

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン 攻撃力2500→4000

 

「バトルだ! ダーク・リベリオンで、メタモルポットを攻撃!」

 

「トラップ発動、マジカルシルクハット! さーて、今回は何を仕込もうかな」

 

 再びフィールドに帽子が舞い降り、メタモルポットを隠す。

 

「くっ、なら、ギャラクシーアイズに攻撃だ!」

 

水瀬日向

LP9000→6500

 

「あいててて」

 

 ギャラクシーアイズが破壊され、バトルフェイズの終了と共にシルクハットが消える。

 

「カードを二枚伏せて、ターンエンド!」

 

月見遊兎

LP5300 手札3

場 エクストラ:ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン 魔法・罠:伏せカード×2

 

(あーあ、いいのかな? ビッグ・アイがいるから、ダーク・リベリオン、取られちゃうけど♪)

 

 デュエルを見ながら、息吹は考える。これはプレイミスか、それとも作戦か。

 

「・・・・・・おれのターン、ドロー」

 

 日向も考えは同じようで、伏せカードにチラリと目を向ける。が、そこで躊躇ってはプロは務まらない。

 

「まずはハーピィ・チャネラーを召喚!」

 

ハーピィ・チャネラー ☆4 攻撃力1400

 

「カードを二枚伏せて、メタモルポットを反転召喚! さて、もう一度手札交換だ」

 

 メタモルポットが再び反転し、お互いの手札を満足させる。

 

「そして、今伏せたモンスターゲートを発動! メタモルポットをリリースし、デッキからモンスターが出るまでカードをめくる。モンスターが出たら特殊召喚、めくったカードは墓地だ」

 

 捲られ、墓地へ送られていく緑のカードにピンクのカード。青いカードも一瞬見えたが、すぐに墓地へ送られた。

 

「あれま、特殊召喚するのはシャドー・ミストだ」

 

E・HEROシャドー・ミスト ☆4 守備力1500

 

 特殊召喚されたときに効果があるモンスターだが、デッキに対象のカードがないため不発となる。

 

「ビッグ・アイの効果発動!」

 

「手札のエフェクト・ヴェーラーの効果発動だ! それを無効にする!」

 

 性別のことで一悶着あった中性的なモンスターが目玉の周りを飛び回り、無力化する。

 

「問題なし! 速攻魔法、エネミーコントローラー! ビッグ・アイをリリースして、ダーク・リベリオンをいただくぜ」

 

「なっ、しまった!」

 

 右、左、A、Bと入力されたコントローラーがダーク・リベリオンに取り付けられ、コントロールする。

 

「あと必要なのは火力のみ。チャネラーとシャドー・ミストでオーバーレイ、ホープホープレイ大正義!」

 

SNo.39希望皇ホープ・ザ・ライトニング ★5 攻撃力2500

 

「バトル。ライトニングで攻撃!」

 

「リバースカード、ダメージダイエット!」

 

「大正義がバトルするとき、相手はカードの効果を発動できないんだ」

 

「な、うぐあっ!」

 

月見遊兎

LP5300→2800

 

 知識不足による、プレイミス。遊兎には、まだカードの知識が足りていなかった。

 

「ダーク・リベリオンでダイレクトアタック!」

 

「今度こそ、ダメージダイエット!」

 

月見遊兎

LP2800→800

 

「・・・・・・カードを伏せて、ターンエンド」

 

水瀬日向

LP6500 手札3

場 エクストラ:SNo.39希望皇ホープ・ザ・ライトニング 魔法・罠:伏せカード×3

 

(オレ)のターン! 魔法カード、ライトニングボルテックス! 相手のモンスターを全て破壊する!」

 

 雷に焼かれ、破壊されるライトニング。ライトニングがライトニングに破壊されるとはこれいかに。

 

「バトルだ! ダーク・リベリオンで攻撃!」

 

「墓地の幻影騎士団シャドーベイルの効果発動! ダイレクトアタック宣言時、墓地からモンスターとして特殊召喚できる!」

 

幻影騎士団シャドーベイル ☆4 守備力300

 

「なら、そのモンスターに攻撃だ!」

 

「手品の種はまだまだあるぜ! リバースカード、三枚目のマジカルシルクハット! さて、どのシルクハットに攻撃する?」

 

 三度現れ、騎士を隠す帽子達。

 

「なら、一番右のシルクハットだ!」

 

 ダーク・リベリオンがシルクハットに噛みつく。すると、その帽子が爆発し、遊兎にダメージが届く。

 

月見遊兎

LP800→0

 

「・・・・・・へ?」

 

 呆然と、何が起きたのかわからない、という顔の遊兎。

 種明かしをするかのように、日向は解説する。

 

「トラップカード、仕込み爆弾。相手によって破壊されると、1000ポイントのダダメージを与えるカードさ」

 

 いやーデッキに残っててよかったー、と呟く日向。

 

(さて、遊兎はこれからどうするかなー♪)

 

 息吹が遊兎を見ていると、彼は自分の頬を張り、頭を切り替える。

 

「次、頼むぜ」

 

「へぇ・・・・・・♪」

 

 少し前の遊兎であれば、うなだれて終わっていただろう。

 

 ささいな、でも確かな変化に、息吹は驚きと喜びを感じていた。




今回、勢いで書いたので、またミスがあるかもしれません。

見つけたら、報告お願いします。


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遊羽の鍛錬

やってしまった・・・・・・またストレスでry

デュエル回です。


 遊兎と日向がデュエルしている頃。

 

 遊羽は一人、現在使われていない旧校舎で、レヴと相対していた。

 

『いくぞ、遊羽』

 

「実戦じゃ相手は声なんてかけてくれねぇよ。いつでもいいぜ」

 

 レヴの手には大剣が、遊羽の手には武器化したドラグニティ-クーゼが握られている。

 

『シッ!』

 

 先に動いたのは、レヴ。

 手に持つ大剣で、遊羽に切りかかる。

 

 それを、真っ向から受け止める遊羽。そのまま鍔迫り合いに持ち込み、右手一本でクーゼを持つと、何も持っていない左手を大きく振りかぶる。

 

「オラァ!」

 

 そのまま振り下ろした瞬間、左手に武器化したドラグニティ-ブランディストックが出現し、レヴを襲う。

 

『クッ』

 

 バックステップと翼を使ったドリフトで後退するレヴ。その隙を逃さず、遊羽は両手の武器を手放し、レヴとの間合いを詰める。

 

「ハァッ!」

 

 突き出した右手に現れたのは、武器化したドラグニティ-アキュリス。その赤い槍が、レヴの首もとで寸止めされる。

 

『もう、私では相手にならなそうだな』

 

 降参を示すように大剣の実体化を解くレヴ。それを確認し、遊羽もまたドラグニティ達をカードに戻す。

 

「・・・・・・」

 

 遊羽はそのまま壊れた床に寝転がってボサボサの茶髪の後ろで両手を組み、不機嫌そうな顔で天井を睨む。

 

『・・・・・・遊羽』

 

 レヴはそんな彼を気遣い、それ以上声をかけないことにした。

 

 夏休みが明けて、約一週間。遊羽は、放課後をほとんどこうして過ごしていた。

 理由は簡単、夏休み中にリアルファイトで負けたからだ。

 

(このままじゃあ、虹花を守れない)

 

 そう思った遊羽は、レヴを相手に放課後の鍛錬を始めたのだった。

 

(でも、まだ足りない)

 

 恐らく、まだ彼女には勝てないだろう。勝てなくても、せめてもう少し追いつきたい。そんな思いから、彼は槍を振るっている。

 

『ッ、遊羽』

 

「どうした、レヴ」

 

 急に沈黙を破ったレヴに、遊羽が起き上がる。

 レヴが目を向けている旧校舎の入り口を見れば、そこに人影が見えた。

 

「おや? 先客がいましたか」

 

 白い長髪に、高い身長。遊羽の身長は175cmだが、目の前の男は180cmほどはありそうだった。

 

「お前は?」

 

「私は・・・・・・そうですね。ユーザとでも名乗っておきましょうか」

 

 男の少し考える素振りから偽名であることはわかったが、遊羽は特に言及しなかった。

 

「ここは関係者以外立ち入り禁止だぞ。迷ったのなら出口まで案内するぜ?」

 

「あぁいえ問題ありません。それよりも、何か悩んでいる様子でしたが、私で良ければ話を聞きますよ?」

 

 話題を逸らすためにではなく、これが本題であると直感した遊羽は、訝しむように目を細める。

 

「まるで見ていたかのような口振りだな。セキュリティかDGCにでも訴えるか」

 

「待ちましょう話し合いましょう平和的解決をしましょう?」

 

 焦ったように早口になるユーザに、遊羽の彼を見る目が一層細くなる。

 

「まぁいいか。じゃ、さっさと帰ってくれ。俺はここでやることがあるんでな」

 

 しっしっと追いやるように手を動かす遊羽。しかし、ユーザはそれを断る。

 

「お断りします。それより、私とデュエルしませんか?」

 

 試すような、挑発するような口調に、ドラゴンと虹花が絡まなければ比較的大人しい遊羽もピクリとこめかみを動かす。

 

「俺を、舐めてんのか?」

 

「受け取り方は人それぞれでしょう。で、どうしますか? 相手してくださるんですか?」

 

 どこまでも挑発的な態度をとるユーザに、遊羽は鼻で笑う。

 

「ハッ、いいぜ。その挑発、乗ってやる」

 

「ありがとうございます、とでも言っておきましょうか」

 

 お互いにディスクを構え、距離をとって向き合う。

 

「「デュエル!」」

 

如月遊羽

LP8000

 

ユーザ

LP8000

 

「俺の先攻、まずは調和の宝札を発動。手札のドラグニティ-ファランクスをコストに、二枚ドロー。ドラグニティ-ドゥクスを召喚! 効果でファランクスを装備して特殊召喚!」

 

ドラグニティ-ドゥクス ☆4 攻撃力1500→1900

 

ドラグニティ-ファランクス ☆2 チューナー 守備力1100

 

 フィールドに現れる、鳥戦士と小型のドラゴン。遊羽のデッキ(ドラグニティ)の基本的な動きだ。

 

「ファランクスとドゥクスをリンクマーカーにセット、リンク召喚! 来いドラグニティナイト-ロムルス!」

 

ドラグニティナイト-ロムルス link2 攻撃力1200

 

 門から竜騎士がフィールドに姿を現す。中間テストトーナメントの賞品として手に入れ、しばらく出番のなかったカードだ。

 

「ロムルスの効果で、デッキからドラグニティの神槍を手札に加える。ターンエンド」

 

如月遊羽

LP8000 手札5

場 エクストラ:ドラグニティナイト-ロムルス

 

「では私のターンドロー。まずはSRベイゴマックスを特殊召喚し、効果でタケトンボーグを手札に加え、特殊召喚!」

 

SRベイゴマックス ☆3 守備力600

 

SRタケトンボーグ ☆3 守備力1200

 

その二体(独楽と竹蜻蛉)・・・・・・規制前ならインヴォーカー確定だったな。オフリスとダーリングのコンビと同じく)

 

 そんな覇王のモンスター達の闇を感じながら、遊羽は次の展開を予測する。

 

「タケトンボーグの効果。自身をリリースし、デッキよりSR三つ目のダイスを特殊召喚!」

 

SR三つ目のダイス ☆3 チューナー 守備力1500

 

 竹蜻蛉が回転し吹き飛ぶと、デッキから賽子が転がり出る。

 

「開け、古き玩具のサーキット。アローヘッド確認、召喚条件は風属性モンスター二体! 私はベイゴマックスと三つ目のダイスをリンクマーカーにセット、リンク召喚! HSR-GOMガン」

 

HSR-GOMガン link2 攻撃力1000

 

 独楽と賽子が門をくぐると、ゴム銃に組み換わった。

 

「なるほど、そっち(リンク召喚)か!」

 

「ええ。新規が貰えて喜ばしいですね。捕食植物にはなかったようですが。フフッ」

 

 どこか邪悪な笑みを浮かべるユーザ。事情を知らない遊羽は首を傾げるしかない。

 

「GOMガンの効果を発動します。エクストラデッキのHSR-魔剣ダーマを除外し、デッキのSR電々大公とSRベイゴマックスを選択します。さぁ、選んでください?」

 

「同じカード三枚よりはマシだけど、選んだカードによっちゃあ向こうよりも酷いことになるな。右だ」

 

 文句を言いつつも遊羽が選んでしまったのはSRベイゴマックス。遊羽は自身の不運さを嘆いた。

 

「それではGOMガンのもう一つの効果により、手札からSRダブルヨーヨーを召喚します」

 

SRダブルヨーヨー ☆4 攻撃力1400

 

SR三つ目のダイス ☆3 チューナー 守備力1500

 

 ゴム銃のリンク先に二つのヨーヨーが出現すると、それに釣られるように墓地の賽子もフィールドに出た。

 

「チューナーとそれ以外のモンスター、来るぞ遊馬!」

 

「来ませんアストラル、行きます遊星。ダイスでダブルヨーヨーをチューニング!」

 

3+4=7

 

「加速、高速、超高速! 神速の翼、今羽ばたけ! シンクロ召喚! クリアウィング・ファスト・ドラゴン!」

 

クリアウィング・ファスト・ドラゴン ☆7 攻撃力2500

 

 賽子とヨーヨーが加速し、遊羽の持つ竜とは異なるクリアウィングがフィールドを駆ける。

 

「何だそのドラゴン! かっけぇ!」

 

「流石はドラゴン馬鹿、ぶれずにその反応ですか」

 

 見たことのないドラゴンにテンションの上がる遊羽と、それに呆れるユーザ。

 

「ファストの効果です。ロムルスの効果を無効にし、攻撃力を0にします」

 

ドラグニティナイト-ロムルス 攻撃力1200→0

 

 ファストが咆哮すると、ロムルスの騎士の方がビビって転げ落ち、竜単体となる。

 

「「・・・・・・」」

 

 その様子をなんとも言えない表情で見つめる二人。ユーザは気を取り直して、バトルフェイズに入った。

 

「ファストでロムルスを攻撃! ソニックムーヴ!」

 

 ファストが羽ばたくと、それによって破裂音が響き、驚いたロムルス(竜単体)が破壊される。死因はショック死。

 

如月遊羽

LP8000→5500

 

「「・・・・・・」」

 

 再び二人の間に気まずい空気が流れた後、GOMガンが続けて輪ゴムを射撃、遊羽にダメージを与える。どうやらゴム銃よりも輪ゴム鉄砲寄りだったらしい。

 

如月遊羽LP5500→4500

 

「では、カードを一枚伏せ、ターン終了」

 

ユーザ

LP8000 手札4

場 エクストラ:HSR-GOMガン メイン:クリアウィング・ファスト・ドラゴン 魔法・罠:伏せカード

 

「(あの盤面で手札四枚かよ)俺のターン、ドロー。まずはWW-アイス・ベルの効果発動! デッキのグラス・ベルと共に特殊召喚!」

 

WW-アイス・ベル ☆3 守備力1000

 

WW-グラス・ベル ☆4 チューナー 守備力1500

 

 フィールドに舞い降りた魔女達をちらりと確認した後、伏せカードに目を向ける。

 

「気にしても仕方ねぇな。アイス・ベルがチェーン1、グラス・ベルがチェーン2だ。デッキから二枚目のスノウ・ベルを手札に加え、500ダメージを食らってもらうぜ」

 

「地味に痛いですね」

 

ユーザ

LP8000→7500

 

 アイス・ベルがステッキでユーザを殴る。これをあと16回繰り返せば勝利となるほどの微々たるダメージだ。

 

「効果でスノウ・ベルを特殊召喚、アイスとスノウの二体をリリースし、アドバンス召喚! 轟雷帝ザボルグ!」

 

轟雷帝ザボルグ ☆8 攻撃力2800

 

 現れた自害専用モンスターにユーザが呟く。

 

「なるほど、つまり自爆テロですか」

 

「イエースザッツライト。相手と自分のエクストラデッキを巻き込んだテロだな」

 

 テロリストという不名誉な名称を付けられたらザボルグが『ええーい、何時ものことじゃあ!』と半ばヤケになりながら自身を雷で打つ。

 

「墓地に送ったヌトス三枚の効果発動だ。おっと丁度三枚だな、全部破壊だ」

 

 テロに巻き込まれたオバサンが怒り心頭でファスト、GOMガン、伏せカードを破壊し、ついでにザボルグの頭も殴る。ザボルグも『俺は悪くねぇ! 俺は悪くねぇ!』と抗議したが聞いてもらえなかった。

 

「酷い・・・・・・」

 

「その言葉のシチュエーションには少し足りねぇな。まぁ合わせるか、ミラクルシンクロフュージョンを発動! 墓地のスターダスト・チャージ・ウォリアーとドラグニティナイト-トライデントで融合!」

 

 合わせる、という言葉に冷や汗を流しながらも、展開用のカードばかりの手札では止めることができず、どうしようもないユーザ。

 

「蒼き竜騎士よ、星屑の戦士よ。その魂交わりて、新たな鼓動を刻め! 融合召喚! 波動竜騎士 ドラゴエクィテス!」

 

波動竜騎士 ドラゴエクィテス ☆10 攻撃力3200

 

 竜達の住まう渓谷に降り立つ竜人。最近、とあるプロも使っていたらしい。

 

「ドラゴエクィテスの効果発動! 墓地のヴァジュランダを除外し、その名前と効果を得る! そして装備魔法、ドラグニティの神槍!」

 

波動竜騎士 ドラゴエクィテス 攻撃力3200→4200

 

「合わせる、ということは・・・・・・」

 

「お察しの通り。ドラグニティの神槍の効果で、デッキからドラグニティ-ブランディストックを装備!」

 

 元の槍ではなく、ドラグニティの神槍と武器化したドラグニティ-ブランディストックを両手に持ったドラゴエクィテス。中々絵になるその姿に、遊羽は一人満足した。

 

「バトルだ。ドラゴエクィテスでダイレクトアタック!」

 

「墓地の三つ目のダイスの効果発動! 除外し、攻撃を無効とします!」

 

 墓地から三つ目のダイスが転がり、バリアーを張る、かと思いきやドラゴエクィテスに突撃し足止めする。中々アクティブな賽子だ。

 

「ブランディストックを装備しているため、ドラゴエクィテスは二回攻撃できる! 行け、ドラゴエクィテス! ニレンダァ!」

 

ライフで受ける(シーン再現ありがとうございます)!」

 

ユーザ

LP7500→3300

 

 ドラゴエクィテスが槍でユーザを貫いた。ブレスでないことが唯一の反省点か。

 

「これでターンエンドだ」

 

如月遊羽

LP4500 手札3

場 エクストラ:波動竜騎士 ドラゴエクィテス メイン:WW-グラス・ベル

 

「では私のターン、ドロー」

 

 遊羽の手札は中身がドラグニティ-アキュリスとWW-アイス・ベルだと露見しているため、手札誘発を恐れる必要はない。つまり、ユーザは思う存分展開(ソリティア)できる、ということだ。

 

「スタンバイフェイズ、墓地のキメラフレシアの効果で、デッキからミラクルシンクロフュージョンを手札に加えるぜ」

 

「問題ありません。SRベイゴマックスを特殊召喚し、効果でデッキより再びタケトンボーグを手札に加え、特殊召喚します」

 

SRベイゴマックス ☆3 守備力600

 

SRタケトンボーグ ☆3 守備力1200

 

「タケトンボーグの効果により、デッキからSR赤目のダイスを特殊召喚します」

 

SR赤目のダイス ☆1 チューナー 守備力100

 

「なるほど、レベルを合わせてエクシーズか」

 

「何故そうもエクシーズ召喚を推すんですか? 赤目のダイスの効果により、ベイゴマックスのレベルを6とします」

 

SRベイゴマックス ☆3→6

 

「私はレベル1、SR赤目のダイスで、レベル6となったベイゴマックスをチューニング!」

 

1+6=7

 

「その美しくも雄々しき翼翻し、光の速さで敵を討て! シンクロ召喚! 現れろ、レベル7! クリアウィング・シンクロ・ドラゴン!」

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン ☆7 攻撃力2500

 

「やっぱ来たか、クリアウィング」

 

 言いながら、自分のエクストラデッキのクリアウィングを確認する遊羽。そこには、キチンと彼のクリアウィングがいた。

 

「墓地のSR電々大公の効果発動! 墓地から除外し、赤目のダイスを特殊召喚!」

 

SR赤目のダイス ☆1 チューナー 守備力100

 

 墓地の電々大公が自身のでんでん太鼓を鳴らすと、フィールドに賽子が転がった。

 

「つーことは・・・・・・」

 

「お察しの通り、と返すのが適切でしょうか。SR赤目のダイスで、クリアウィング・シンクロ・ドラゴンをチューニング!」

 

1+7=8

 

「神聖なる光蓄えし翼煌めかせ、その輝きで敵を撃て! シンクロ召喚! いでよ! レベル8! クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン!」

 

クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン ☆8 攻撃力3000

 

「ッ、クリスタルウィング・・・・・・」

 

「どうです、このふつくしいドラゴン。属性は異なりますが、青眼の白龍や銀河眼の光子竜に並ぶステータス、そしてそれらを超える効果!」

 

「確かにふつくしい・・・・・・自分で使うのも有りだが、こうして向き合ってみると、改めて気付くこともあるな」

 

 お互いに感動した空気に包まれる。ツッコミどころ満載だが、レヴは遊羽の後ろでデュエルを見守り、遊羽の邪魔はするまいと黙っていた。

 

「っと、デュエルを再開しましょう。クリスタルウィングで攻撃! 烈風のクリスタロス・エッジ!」

 

クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン 攻撃力3000→7400

 

 クリスタルウィングが羽ばたき、その翼でドラゴエクィテスを切り裂く。

 

如月遊羽

LP4500→1500

 

「おや、かなりライフが少なくなりましたね」

 

「0以外なら問題ねぇ」

 

 異世界で出会ったドラゴン好きの言葉だが、遊羽も似たような考えだ。例え残りライフ1になろうと、負けなければ安い。

 

「そうですか。では速攻魔法、アクションマジック-ダブル・バンキングを発動します! クリスタルウィングでもう一度攻撃!」

 

 クリスタルウィングが羽ばたき、グラス・ベルが破壊される。

 

「ターンエンドです」

 

ユーザ

LP3300 手札3

場 エクストラ:クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン

 

「俺のターン、ドロー」

 

 引いたカードを見るなり、口角を上げる遊羽。

 

「ミラクルシンクロフュージョンを発動! 墓地のWW-アイス・ベルとWW-ウィンター・ベルで融合!」

 

「墓地のモンスターで融合ですか」

 

「冬の鈴の音、氷の音! 今交わりて、凍てつく結晶となれ! 融合召喚! WW-クリスタル・ベル!」

 

WW-クリスタル・ベル ☆8 攻撃力2800

 

「クリスタル・ベルの効果発動! 墓地の覇王眷竜スターヴ・ヴェノムを除外し、その効果を得る!」

 

「ッ、クリスタルウィングの効果発動です! その効果を無効とし、破壊します!」

 

クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン 攻撃力3000→5800

 

「アイス・ベルを特殊召喚! 効果でグラス・ベルを特殊召喚!」

 

WW-アイス・ベル ☆3 守備力1000

 

WW-グラス・ベル ☆4 チューナー 守備力1500

 

「効果はわかってるよな? グラス・ベルの効果でスノウ・ベルを手札に加え、アイス・ベルの効果で500ダメージだ」

 

「仕方ありませんね」

 

ユーザ

LP3300→2800

 

「手札に加えたスノウ・ベルの効果発動だ。特殊召喚」

 

WW-スノウ・ベル ☆1 チューナー 守備力500

 

「行くぜ。グラス・ベルでアイス・ベルをチューニング!」

 

4+3=7

 

「重なれ、輝きの翼! 舞え、白き竜! シンクロ召喚! クリアウィング・シンクロ・ドラゴン!」

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン ☆7 攻撃力2500

 

 ユーザが呼んだものと同じドラゴン。しかし、纏う雰囲気が少し異なる。遊羽のクリアウィングの方、主に似てが殺気立っている。

 

「さーて。それじゃ、ミラーマッチと行くか! スノウ・ベルで、クリアウィングをチューニング!」

 

1+7=8

 

「重なり合え、水晶の翼! 舞い踊れ、白銀の竜! シンクロ召喚! クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン!」

 

クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン ☆8 攻撃力3000

 

「バトル! クリスタルウィングで攻撃!」

 

 遊羽のクリスタルウィングが羽ばたき、己と同じ姿の竜に咆哮する。同族嫌悪かもしれない。

 

「「クリスタルウィングの効果発動!」」

 

クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン 攻撃力5800→8800

 

クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン 攻撃力3000→11800

 

 チェーンの優先権は、ターンプレイヤーにある。そのため、ユーザのクリスタルウィングでは、遊羽のクリスタルウィングに勝てない。

 

「これでトドメだ!」

 

ユーザ

LP2800→0

 

「ふう、負けてしまいましたか」

 

 収束していくソリッド・ヴィジョンを眺めながら、ユーザが呟く。

 

「なあ。お前、本気出してなかったろ」

 

 遊羽は確信を持ってユーザに訊く。返ってきたのは、薄い笑みだった。

 

「さぁ? どうでしょうかね」

 

 一応、というようにとぼけておきながら、ユーザは続ける。

 

「人生の先輩からのアドバイスです。自分一人で全てを解決しようとするのは独りよがりです。自分の力を過信するのは、愚か者のすることです」

 

「・・・・・・」

 

 遊羽が何も言わずにいると、ユーザはそれでは、と手を振って旧校舎を去った。

 

『遊羽』

 

 レヴが遊羽に声をかける。

 

「・・・・・・」

 

 彼は、少し遠くを見つめていた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「戻りました、我が覇王」

 

 遊羽とのデュエルを終えたユーザ―――白は、覇王から頼まれていたおつかいを済ませ、暗い空間へと戻った。

 手に持つ袋には大量のお菓子。この世界の乱れを調査するためのものだ。

 

「・・・・・・? ッ! 我が覇王!?」

 

 空間に入った白の目に映ったのは、倒れている覇王。

 

「ど、どうなされたのですか、我が覇王!?」

 

 慌てて白が駆け寄ると、覇王はピクピクと痙攣しながら、腹を押さえていた。

 

「わ、我が覇王?」

 

 様子がおかしいことに気付いた白は、少し怪訝な目で覇王を見る。

 

「プッ、クハハハハハハハハ! ダメだ、我慢できねぇw面白すぎて腹痛いわぁwww」

 

 大爆笑しなが床を転げ回る覇王。よく見れば、紫と黒も近くで痙攣している。

 

「じ、『人生の先輩』ってwww白、お前あいつと身体は同い年だろうがww」

 

「し、白さん、あれはないよw僕らを殺すつもりなの?w」

 

 言いたい放題である。

 

 無論、白自身もクサいことを言った自覚はあるし、振り返れば数十分前の自分を殴りたい衝動に駆られるだろうが、それでも後悔はしていない。

 

「あれだけ自信満々にデュエル挑んで負けるとかwww全力を出せないにしても、もーちょいイケただろうにww」

 

「つーか、負けたのに説教とかw何様だよ、お前www」

 

「あれだけ手札あったのに、一枚も手札誘発じゃないって、どういうことww速攻のかかしとメンコートしか入れてないの?w」

 

 それでも、他者から指摘されるのは恥ずかしいし、後悔したくなるものだ。

 

「~~~! 別にそこまで笑う必要はないでしょう!? というか、二色はどうしたのですか!?」

 

「あ、あいつなら映像を保存してDVDに焼くってw」

 

「フ・タ・イ・ロ~!」

 

 鬼の形相で二色を探しに行く白。笑いから復活した三人は、それぞれ彼の持ち帰ったお菓子に手を伸ばす。

 

「あ、森羅万象チョコで姫宮出た」

 

「良かったじゃねぇか王様。この栗棒ダーもうめぇぞ」

 

「新発売の裂栗棒(サクリボー)、結構おいしいよ」

 

 ラスボス達は、今日も平和だ。




息吹と遊兎メインの章のはずなのに、遊羽がデュエルしてる・・・・・・。


白の買ったお菓子↓

栗棒ダー
ボーダー柄のパッケージに入った栗棒。クリーム味。

クリア栗棒
砂糖によって表面が銀色の栗棒。とっても甘い。

裂栗棒(サクリボー)
某チーズのように裂ける栗棒。意外と美味しいらしい。

栗ボーン
骨の形をした栗棒。犬も食べられるという噂がある。

森羅万象チョコ
森羅の姫宮がパッケージされたチョコという名前のウエハース。森羅のモンスター達の描かれたイラストカード一枚付き。たまにナチュルとかインフェルノイドとかクリフォートとかそれに引きずられたクラッキング・ドラゴンとかオシリスの天空竜などが混ざっているらしい。


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神の力の一端

三連休で時間に余裕ができたので、投稿。

デュエル回です。


「次は俺だ」

 

 日向と遊兎のデュエルが終わったため、星河が出番かと腰を上げる。

 

 だが、それを制する者がいた。

 

「ちょっと待った。いや、かなり待った」

 

 残された三羽烏の一人、孝之だ。

 

「どうした」

 

「どうしたもこうしたもあーしたもそうしたもないぜ。オレが最後とか、マジで勘弁してくれ」

 

 本当に困った顔で言う孝之に、星河は驚く。

 

「お前はそんなことで弱気になるような奴ではないだろう」

 

「いーや、解ってねぇなぁ」

 

 ヤレヤレと首を振り、肩を竦める孝之。星河の額に青筋が浮かぶ。

 

「いいか、星河。こういうので最後になるのは、大体一番強い奴なんだよ」

 

「それで?」

 

 はっきりしない物言いに苛立ちながらも、星河は話を促す。

 

「ここにいる三年生の中で、オレが一番弱い! だから、大鳥はヤダ!」

 

 ドン! と胸を張って言い切る孝之。星河は怒りを通り越して呆れた。

 

「・・・・・・それだけか?」

 

「まぁ待てよ。まだ理由はあるぜ」

 

 孝之は指を立てながら説明する。

 

「まず、日向とお前の実力は五分と五分。対して、オレがお前らに勝ったのなんて、まだ二桁だ。三羽烏だなんだと言われちゃいるが、オレはあくまで一般人。特別なことなんて何一つない。当然、オレと月見くんのデュエルは接戦になる。白熱した戦いになればいいけど、もしそこでオレが負ければ月見くんのオレに対する心象は『弱い先輩』になっちまう。それは避けt「「デュエル!」」ってうおい、待てい!」

 

 そして、孝之を無視してデュエルが始まった。

 

月見遊兎

LP8000

 

銀星河

LP8000

 

(オレ)の先攻! まずはレスキューラビットを召喚!」

 

レスキューラビット ☆4 攻撃力300

 

 いつもの通り、遊兎のフィールドに現れるヘルメットを被ったウサギ。早速助けを求める。

 

「レスキューラビットの効果で、デッキからメガロスマッシャーXを特殊召喚!」

 

メガロスマッシャーX ☆4 攻撃力2000

 

「同じレベルのモンスターが二体・・・・・・来るぞ、遊馬!」

 

 無視されたと泣く孝之を放置し、息吹が茶々を入れる。

 

「馬じゃねぇ、兎だ! (オレ)はメガロスマッシャーX二体でオーバーレイ! エクシーズ召喚! フレシアの蠱惑魔」

 

フレシアの蠱惑魔 ★4 守備力2500

 

 蠱惑魔達が集結し、一つのモンスターとなる。 ※除くセラの蠱惑魔

 

(オレ)はカードを伏せて、ターンエンド!」

 

月見遊兎

LP8000 手札3

場 エクストラ:フレシアの蠱惑魔 魔法・罠:伏せカード

 

「俺のターン、ドロー」

 

 引いたカードは封印されしエクゾディア。

 

『星河、オレを活躍させてくれ』

 

(どうかしたのか?)

 

 突然のエクゾディアの発言に星河が訊くと、彼はいたって真面目な顔で言った。

 

『オレの新カードが出たからだ』

 

「は?」

 

 思わず肉声で返事をしてしまう。遊兎が視線を向けてくるが、星河は目でなんでもないと伝えた。孝之は部屋の隅でいじけている。

 

『新カードが出たんだ。イメージアップしておけば、使われるかもしれない』

 

(・・・・・・まぁ、いいだろう)

 

 意味がわからなかったが、星河は一応了承した。

 

「待たせた。俺は手札抹殺を発動!」

 

『今のオレの話聞いてたか!?』

 

 墓地へ送られ、叫び声を上げるエクゾディア。しかし、これは星河の戦術の内だ。

 

「魔法カード、予想GUY。デッキより、封印されし者の右腕を特殊召喚する」

 

封印されし者の右腕 ☆2 守備力300

 

 フィールドに置かれる、中二心を刺激されるネーミングの腕。腕単体のため、本当にただ置かれるだけだ。

 

「そして、リリース。出でよ、召喚神エクゾディア!」

 

召喚神エクゾディア ☆10 攻撃力?→2000

 

 右腕、右足、左腕、左足、そして本体。全てが合わさり、金色の闇を放つ巨神となる。

 

「な、何だこのモンスター!? 見たことねぇ!」

 

『モンスターではない! 神だ!』

 

 そのオーラに圧倒される遊兎。エクゾディアは得意気に胸を張る。

 

「さらに通常召喚。来い右足」

 

封印されし者の右足 ☆1 守備力300

 

 場に本体がいるのに右足が出るはずもなく、エクゾディアが自らの右足を外してフィールドに置く。脱着自由のようだ。

 

「そして、馬の骨の代価。右足をリリースし、カードを二枚ドロー」

 

召喚神エクゾディア 攻撃力2000→3000

 

 エクゾディアが先程外した右足を取り付ける。シュールだ。

 

(くっそ・・・・・・エクゾディアは攻撃力が低いから落とし穴が使えねぇ)

 

 エクゾディアは召喚した時は攻撃力?、つまり0なので落とし穴関連は使えず、狡猾な落とし穴はモンスターを二体対象に取らなければならない。しかし、エクゾディアは効果を受けないため、右足を出した後でも発動できない。

 

「復活の福音。来いフォトン」

 

銀河眼の光子竜 ☆8 攻撃力3000

 

「フレシアの蠱惑魔の効果発動! オーバーレイユニットを一つ使い、デッキから奈落の落とし穴を墓地に送って、その効果を使うぜ!」

 

「墓地の復活の福音を除外し、フォトンの破壊を防ぐ」

 

 フォトンが出落ちすることなく、フィールドに光臨する。

 

『今回の主役はエクゾディアか。ならば、私はそれを支えよう』

 

『おう、ありがとうよ』

 

 これで、攻撃力3000が二体。

 

「バトルだ。フォトンでフレシアを攻撃! 破滅のフォトン・ストリィィィィィィィイイイム!」

 

 絶叫のような攻撃宣言を受け、フォトンがフレシアを破壊する。

 

「お前もだ、エクゾディア! エグゾースト・ストライク!」

 

『フハハハハハ! 粉砕☆玉砕☆大喝采!』

 

 遊兎に向かって拳を振り下ろすエクゾディア。かなりノリノリだ。ちなみに、エグゾーストの意味は排出、排ガスなのだが、エクゾディアは格好いいので気に入っている。

 

「うああああぁ!」

 

月見遊兎

LP8000→5000

 

「カードを一枚伏せ、ターンエンド。このタイミングで、エクゾディアの効果発動。墓地の封印されしエクゾディアを手札に戻す」

 

召喚神エクゾディア 攻撃力3000→2000

 

銀星河

LP8000 手札2

場 メイン:召喚神エクゾディア 銀河眼の光子竜 魔法・罠:伏せカード

 

「っ、(オレ)のターン! 緊急救命レスキューを発動! デッキのレスキューラビット二枚とレスキューキャットを選択! さぁ、選べ!」

 

 このカードは珍しく、相手にサーチ対象を依存するカードだ。ランダムに選ぶのではなく、完全に相手が選択する。

 

「レスキューラビットだ」

 

「なら、そのまま召喚! 効果で、デッキから機界戦士アヴラムを特殊召喚!」

 

機界戦士アヴラム ☆4 攻撃力2000

 

 今回ウサギの呼びかけに応えたのは、勇者の風格を漂わせる剣士。

 

「アヴラム二体をリンクマーカーにセット! リンク召喚! 来てくれ、銀河眼の煌星竜!」

 

銀河眼の煌星竜 link2 攻撃力2000

 

 剣士達が門を潜ると、恒星の輝きを持つ竜がフィールドに舞い降りる。

 

「ソルフレアの効果発動! 墓地の銀河眼の光子竜を手札に加えるぜ! 更に、思い出のブランコ、そして死者蘇生! アヴラムとメガロスマッシャーXを特殊召喚!」

 

機界戦士アヴラム ☆4 攻撃力2000

 

メガロスマッシャーX ☆4 攻撃力2000

 

「アヴラムとメガロスマッシャーXでオーバーレイ! エクシーズ召喚! 鳥銃士カステル!」

 

鳥銃士カステル ★4 攻撃力2000

 

 剣士とサメが黒い渦に入り、鳥の銃士が銃を構える。

 

「カステルの効果発動! オーバーレイユニットを二つ使って、銀河眼の光子竜をデッキに戻す!」

 

 カステルがスコープをフォトンに向け、『引き金は二度引かねえ! 一発が全てだ!』と打ち抜く。

 

「くっ、許せフォトン」

 

「バトルだ! カステルでエクゾディアを攻撃!」

 

 今度はエクゾディアに銃を向け、二度目の発砲を目論む。言葉と行動が違う。

 

『う、撃たれるぅ!?』

 

 エクゾディアが両腕で頭を抱え込む。

 

「リバースカード発動。永続罠、闇の増産工場。効果により、手札のモンスターを墓地へ送ることで、デッキからカードを一枚引く」

 

召喚神エクゾディア 攻撃力2000→3000

 

『なーんて思ったか? 神による敵討ちだ!』

 

 攻撃力が上回ったことで、破壊されるのはカステル。エクゾディアのパンチがカステルをふっ飛ばす。

 

月見遊兎

LP5000→4000

 

「くっ、(オレ)のターンなのに!」

 

 コンバットトリック。バトル中に攻撃力を変化させ、迎撃を行う戦術だ。

 

(オレ)はカードを伏せて、ターンエンドだ!」

 

月見遊兎

LP4000 手札1

場 エクストラ:銀河眼の煌星竜 魔法・罠:伏せカード×2

 

「俺のターン、ドロー。闇の増産工場の効果を発動し、手札のモンスターを墓地へ送ることで、更に一枚ドロー」

 

 この時点で、星河のコンボは完成している。

 

 召喚神エクゾディアの強制効果によってエンドフェイズに戻ってしまうエクゾディアパーツを闇の増産工場で手札交換のコストとすることで、エクゾディアの攻撃力を維持し、更にハンドアドバンテージを稼ぐというものだ。

 エクゾディアは他のカードの効果を受けない上、高い攻撃力となった。突破は困難だ。

 

「おろかな埋葬を発動。デッキから、封印されし者の左腕を墓地に送る」

 

召喚神エクゾディア 攻撃力3000→4000

 

「バトルだ。エクゾディア! 天界蹂躙拳!」

 

『オラオラオラオラ!』

 

 文字通り、神速で繰り出される拳。蹂躙されるソルフレア。

 

月見遊兎

LP4000→2000

 

『ハハハハハ! 強靭! 無敵! 最強!』

 

 これぞまさしく神。

 

『今ならドラゴネクロに握力で負けないぜ!』

 

 気にしてたのか、それ。

 

「・・・・・・カードを伏せ、ターンエンド」

 

召喚神エクゾディア 攻撃力4000→3000

 

銀星河

LP8000 手札3

場 メイン:召喚神エクゾディア 魔法・罠:闇の増産工場 伏せカード

 

「お、(オレ)のターン、ドロー」

 

 手札と睨めっこし、打開策を探す遊兎。

 

「ドローフェイズ、闇の増産工場の効果で手札交換を行う」

 

召喚神エクゾディア 攻撃力3000→4000

 

「・・・・・・まだだ! モンスターをセット! (オレ)はこれでターンエンド!」

 

月見遊兎

LP2000 手札1

場 メイン:伏せモンスター 魔法・罠:伏せカード×2

 

(これで、後一回は耐えられる。今はどうにか耐えねぇと・・・・・・!)

 

 遊兎に現状を突破できる手段はない。

 だから、耐える。逆転する手段が見つかるまでは。

 

「俺のターン。闇の増産工場の効果により、手札交換だ」

 

召喚神エクゾディア 攻撃力4000→5000

 

『フッ・・・・・・この世界の全てを手に入れた気分だ・・・・・・』

 

 攻撃力が最大となり、満ち足りた様子のエクゾディア。

 

「復活の福音! 蘇れ、フォトン!」

 

銀河眼の光子竜 ☆8 攻撃力3000

 

『星河のためならば、私は何度でも蘇る!』

 

 例えトレード・インのコストにされようと、ソルフレアのコストにされようと、増産工場で交換されようと、目覚めの旋律のコストにされようと・・・・・・。

 

「バトルだ。フォトンで伏せモンスターに攻撃!」

 

ライドロン ☆4 守備力0

 

 フォトンのブレスにより、あっけなく破壊されるライドロン。

 

「終わりだ。エクゾディアで攻撃! 千軍一夜物語(エクゾディアンナイト)!」

 

『千の軍勢も、万の敵も、オレにかかれば一夜で終わる、ってなぁ!』

 

 それは、エクゾディアにまつわる伝説。千の軍を、一夜で壊滅させた守護神。

 

「リバースカード、ダメージダイエット! このターン受けるダメージを、半分にする!」

 

「言ったはずだ、終わりだと! リバースカード、神の宣告! 無効にし、破壊する!」

 

銀星河

LP8000→4000

 

『爆・裂! ゴッドフィンガー!!』

 

 エクゾディアが右腕を腰だめに構え、放つ。

 

月見遊兎

LP2000→0

 

「ふう、こんなものか」

 

『いやー、オレ大活躍。満足したぜ』

 

 ソリッドヴィジョンが収束し、エクゾディアとフォトンもまた、カードに戻る。

 

「よし、次だ!」

 

 負けた遊兎もまた、折れずに孝之を見る。

 

「・・・・・・こんなデュエルの後にオレって・・・・・・プレッシャーがヤバいっす。胃が痛い・・・・・・」

 

 うじうじとデュエルしない雰囲気を出す孝之。ちょうどそこで、部活終了のチャイムが鳴る。

 

「じゃ、先輩はまた明日ってことで♪ かいさーん!」

 

 息吹がそう締めて、この日の遊兎の特訓は終わった。




作中のコンボは、実際にやられると、初めの内は問題ないんですが、攻撃力が3000を上回ったあたりから辛いです。

ミス等ありましたら、報告お願いします。


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小鳥と兎の戯れ

塾に五時間監禁されてました・・・・・・嫌になる。

デュエル回です。


 日向と星河が遊兎とデュエルした翌日。

 

「じゃー行ってくるわー」

 

 五つ上の姉に挨拶をし、孝之は家を出る。

 デュエルスクールに向けて数分歩き、そこでふと立ち止まる。

 

(ん? カード?)

 

 屈んで落ちているカードを拾い、何ともなしに見る。

 

(赤い竜・・・・・・レベルが書いてないな。エラーカードか?)

 

 強力な効果だが、レベルが書いてないことから誰かが作ったオリカだろうと結論づけた孝之は、後でセキュリティにでも届けようと腰のデッキケースに入れる。

 

(あ、やっべ。そろそろ時間だ)

 

 腕時計を確認し、始業時間に遅れないよう全力疾走する孝之。

 

 学校に着く頃には、そのカードのことも忘れていた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 そして、放課後。

 

 授業で当てられる度に間違える遊兎をいつも通りにからかった息吹は、そのまま遊兎を連れてワンキル・ソリティア研究会の部室へ強制連行した。

 

「だから自分で歩くから襟を離sうわ待て階段はあだだだだだだだだ!」

 

 廊下に響く、遊兎の悲鳴。ここ最近の恒例行事となったそれを、遠巻きに眺める生徒達。

 

 何故助けないのかという話だが、ワンキル・ソリティア研究会はキチガイ揃いだというのは周知の事実。彼らの邪魔でもしようものなら、どうなるのかわからない。会長となれば尚更だ。というのが一般的な生徒の心情である。

 

「た~のも~♪」

 

 自らが会長を勤める部室を、何故か道場破りのように蹴り壊しながら入る息吹。どういうことかと言うと、彼の頭がおかしいだけの一言だ。

 

「ちょっ、何で今壊した!?」

 

 カードを並べ、デッキの調整をしていた孝之が声を上げるが、息吹は何でもないかのようにあっけらかんと答える。

 

「何かノリで♪」

 

「ならしょうがない」

 

 これが通じるのがワンキル・ソリティア研究会である。

 

「どうした、会長。月見を連れて」

 

「あ、春樹。お久~♪」

 

 椅子に座り、本を読んでいた男子生徒が顔を上げる。

 

 四谷 春樹。ワンキル・ソリティア研究会の副会長だ。

 何故一年生の息吹や春樹が会長や副会長をしているのかというと、彼らの先輩が『事務仕事とか責任取るのとか部費の計算とか面倒くさい』という理由で押し付けられた、という理由だったりする。

 

「何読んでたのさ?」

 

「『不動性ソリティア理論』だが?」

 

 表紙を掲げ、当然だと言わんばかりの顔をする春樹に、息吹は苦笑するしかない。

 

「で、孝之先輩? 遊兎の相手をお願いしたいんだけど♪」

 

「わりぃ、ちょっと待っててくれ。今調整中なんだ」

 

 後輩に負ける訳にはいかないためか、かなり真剣にカードと睨めっこする孝之に、息吹はヤレヤレと肩をすくめ、丁度視線の先にいた春樹に狙いを定める。

 

「春樹、遊兎の相手をしてくれない? どうせ暇だろ♪」

 

「読書していることと暇が同じだと言われている気がするが、まあいいだろう」

 

 本を机に置き、腰を上げる春樹。階段にやられて部屋の入り口で伸びている遊兎にも会話は聞こえており、痛む身体を起こしてディスクを構えた。

 

(オレ)は月見遊兎! (ワル)だ!」

 

「そうか。オレは四谷春樹だ」

 

 お互いに自己紹介を済ませ、後は戦うのみだ。

 

「「デュエル!」」

 

月見遊兎

LP8000

 

四谷春樹

LP8000

 

(オレ)のターン! 予想GUYを発動だ! デッキから、ライドロンを特殊召喚!」

 

ライドロン ☆4 攻撃力2000

 

(珍しく初手にレスキューラビットが無かったのか?)

 

 デュエルを眺めていた息吹はそんなことを考えるが、そもそも毎回引けている遊兎がおかしいのだと気づき、そんなものかと一人納得する。

 

「そしてセイバーザウルスを通常召喚!」

 

セイバーザウルス ☆4 攻撃力1900

 

 電脳ライオンのとなりに現れる、凶暴そうな恐竜。

 

「二体のモンスターでオーバーレイ! エクシーズ召喚! 来てくれ、フレシアの蠱惑魔!」

 

フレシアの蠱惑魔 ★4 守備力2500

 

 セラの蠱惑魔を除け者にした四人(人じゃないけど)の蠱惑魔が集まり、一体のモンスターと化す。

 

「カードを伏せる! (オレ)はこれでターンエンド!」

 

月見遊兎

LP8000 手札2

場 エクストラ:フレシアの蠱惑魔 魔法・罠:伏せカード

 

「オレのターン、ドロー。まずは手札のLL-ターコイズ・ワーブラーの効果発動。手札のLL-コバルト・スパローと共に特殊召喚」

 

LL-ターコイズ・ワーブラー ☆1 守備力100

 

LL-コバルト・スパロー ☆1 守備力100

 

「コバルト・スパローの効果発動。デッキより、LL-ターコイズ・ワーブラーを手札に加える」

 

「それにチェーンして、フレシアの蠱惑魔の効果発動だ! オーバーレイユニットを一つ使い、デッキから狡猾な落とし穴を墓地に送る! この効果は、狡猾な落とし穴と同じになる!」

 

 登場と同時に落とし穴に落ちる小鳥達。羽があるので本来落ちたりはしないのだが、フレシアが発する甘い香りでフラついていたようだ。

 

「LL-ターコイズ・ワーブラーの効果発動。特殊召喚」

 

LL-ターコイズ・ワーブラー ☆1 守備力100

 

 再び現れる小鳥。まだ甘い香りが抜けきっていないのか、若干フラついている。

 

「続けて、簡易融合を発動。1000ライフポイントを支払い、エクストラデッキよりLL-インディペンデント・ナイチンゲールを特殊召喚。来い、ディペ」

 

LL-インディペンデント・ナイチンゲール ☆1 攻撃力1000→1500

 

『ふふふ、出番ね』

 

 ふわりと舞うようにフィールドに現れたのは、春樹の精霊、ディペ。口元を隠したその佇まいは、淑女のそれだ。

 

『あ、おばさ~ん♪』

 

『誰がおばさんですって!』

 

 その笑みは、オッドアイズの一言で瓦解したが。

 

「ワン・フォー・ワンを発動。手札のドット・スケーパーをコストに、デッキからLL-サファイア・スワローを特殊召喚。コストになったドット・スケーパーの効果発動。特殊召喚」

 

LL-サファイア・スワロー ☆1 守備力0

 

ドット・スケーパー ☆1 守備力2100

 

「金華猫を召喚。効果により、墓地のLL-コバルト・スパローを特殊召喚」

 

金華猫 ☆1 攻撃力400

 

LL-コバルト・スパロー ☆1 守備力100

 

 フィールドに並ぶ、六体のレベル1モンスター。新ルールでも中々見られない光景だ。

 

「ディペの効果発動。相手にレベル×500ポイントダメージ」

 

『安心しなさい、少しチクッとするだけよ』

 

 ディペが腕を振るうと、無数の羽が遊兎に向けて飛ぶ。

 

月見遊兎

LP8000→7500

 

「地味に痛ぇ・・・・・・」

 

「本番はここからだ。オレは六体のレベル1モンスターでオーバーレイ」

 

「な、六体エクシーズ!?」

 

 マスタールール3では、出来なかった芸当。

 

「エクシーズ召喚。LL-アセンブリー・ナイチンゲール」

 

LL-アセンブリー・ナイチンゲール ★1 攻撃力0

 

『どうかしら? 綺麗でしょう』

 

 ディペが自慢気にオッドアイズに身体を向けるが、精神年齢の低いオッドアイズは首を傾げるばかりだ。

 

「六体素材で出したモンスターが、攻撃力0?」

 

 そのステータスに遊兎も首を傾げる。だが、その分何かあるであろうことは、ここ数日で学んでいる。

 

「オーバーレイユニットとなったLL-サファイア・スワローの効果発動。墓地のLL-ターコイズ・ワーブラーをエクシーズ素材に加える」

 

「ッ! エクシーズ素材になった時の効果もあるのか!」

 

 続けて起こる初めてのことに驚愕する遊兎。勉強不足が露呈している。

 

「そして、LL-アセンブリー・ナイチンゲールの効果。オーバーレイユニットの数×200ポイント、攻撃力がアップする」

 

LL-アセンブリー・ナイチンゲール 攻撃力0→1400

 

「そして、その数だけ直接攻撃が可能だ」

 

「ッ!? 手札のエフェクト・ヴェーラーの効果発動! そのアセなんとかの効果を無効にする!」

 

 慌てて手札誘発を使う遊兎。それに対し、春樹は淡々とした声で告げる。

 

「LL-コバルト・スパローをエクシーズ素材としたモンスターは、相手の効果の対象にならない」

 

『ごめんなさいね、効かないの』

 

 飛んできた中性的なモンスターを、ヒラヒラと手を振って追い返すディペ。淑女の余裕、といった様子だ。

 

「バトル。ディペでダイレクトアタック。七連打」

 

『ほらほら、行くわよ?』

 

月見遊兎

LP7500→6100→4700→3300→1900→500→0

 

「うわああぁ!」

 

 連続して飛来する羽を受け、遊兎が悲鳴を上げる。

 

 一方的な展開で終わったデュエルに息吹が嘆息しながら春樹に言う。

 

「芸がないなぁ♪ それ(ナイチンゲールでのワンキル)しかできないの?」

 

「いや、機界戦士をピン挿ししておけばシンクロもできるし、サイキック・リフレクターも入れれば/バスターも狙える。WWも入れられるし、SRも難しいが入らないこともない。デッキ構築の幅があって、かなり楽しいぞ」

 

 本当に楽しそうに言う春樹に、息吹は少々面食らいながらも頷いた。

 

「まぁ、楽しむのはいいことだ♪ さて、そろそろデッキ調整終わった? 先輩」

 

 息吹が目を向けた先にいるのは、既にデッキ調整を終え、デュエルの観戦に徹していた孝之。

 

「バッチグーだぜ。あ、もうこれ古いか? チョベリグ!」

 

「先輩、それも死語だって・・・・・・」

 

 サムズアップしながら言う孝之に呆れた視線を浴びせながら、息吹は遊兎がデュエルするためにスペースを空ける。

 

「昨日から待たせたな。じゃ、始めるか」

 

「よ、よろしくお願いします」

 

 何故か敬語になる遊兎に苦笑を浮かべながら、孝之もデュエルディスクを構えた。

 

「「デュエル!」」

 

瑞浪孝之

LP8000

 

月見遊兎

LP8000




孝之「それでは後書きのコーナー! 今回全然謎じゃない謎のカードを手に入れた孝之です!」
星河「銀河眼倶楽部の活動で本編に出れなかった星河だ」
孝之「では早速。今日の最強カードはこれっ!」

LL-アセンブリー・ナイチンゲール

孝之「いやー、見事なワンキルでしたね! LL、皆さんも組んでみてはいかがですか?」
星河「販促活動をするな。効果の説明をしろ」
孝之「いや、本編で全部言われちゃったじゃん? あ、一応防御用の効果もあるぜよ」
星河「だから解説をしろと・・・・・・」
孝之「てか、本当にできたんだな、銀河眼倶楽部」
星河「ああ。俺が倶楽部長だ」
孝之「・・・・・・マジっすか」
星河「今度青眼倶楽部に殴り込む予定だ」
孝之「青眼使いの人逃げて! 超逃げて!」


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星杯のエンタメ

受験まで後10日・・・・・・知らん、私は投稿する!

デュエル回です。


「オレの先攻。まずはドラコネットを召喚でぃ!」

 

ドラコネット ☆3 攻撃力1400

 

「効果で、デッキから守護竜 ユスティアを特殊召喚!」

 

守護竜 ユスティア ☆2 チューナー 守備力2100

 

 竜を模したプログラムに呼ばれ、水色の竜がふわりと舞う。

 

「開けサーキット。守護竜 ユスティアでリンク召喚。星杯竜イムドゥーク」

 

星杯竜イムドゥーク link1 攻撃力800

 

 ユスティアが門をくぐり、青い竜と入れ代わる。

 

「星杯竜イムドゥークの効果で、オレはもう一度星杯モンスターを召喚できる。カモン星遺物-『星杯』」

 

星遺物-『星杯』 ☆5 攻撃力0

 

「星杯竜イムドゥークの効果で、手札から星杯の妖精リースを特殊召喚」

 

星杯の妖精リース ☆2 守備力2000

 

 星杯の妖精(黒幕)がフィールドに躍り出る。後のイドリース。

 

「星杯の妖精リースの効果でデッキから星杯の守護竜を手札に加える。開けサーキット。星遺物-『星杯』と星杯の妖精リースでサーキットコンバイン。出合え星杯剣士アウラム」

 

星杯剣士アウラム link2 攻撃力2000

 

『よし、まずは僕だね』

 

 アウラムが武装した状態でフィールドに出る。何故かサイバース族。

 

「星遺物-『星杯』の効果で、デッキから星杯を戴く巫女と星遺物-『星杯』を特殊召喚するぜぃ」

 

星杯を戴く巫女 ☆2 守備力2100

 

星遺物-『星杯』 ☆5 守備力0

 

『今度は私だよ!』

 

 イヴが鍵のような祭具を抱え、フィールドに現れる。

 

「次から次へとモンスターを・・・・・・」

 

 連続で展開されるモンスターに遊兎がおののく。が、孝之は展開を止めない。

 

「それじゃ、ここらで少しエンタメ演出でも。星杯を戴く巫女で、ドラコネットをチューニング!」

 

2+3=5

 

「シンクロ召喚! 星杯の神子イヴ!」

 

星杯の神子イヴ ☆5 チューナー 守備力2100

 

 現れた圧倒的イラストアドモンスターに、遊兎が声を荒げる。

 

「ちょっと待て! 星杯を戴く巫女はチューナーじゃねーぞ! 何でシンクロ召喚できるんだよ!」

 

「星杯の神子イヴをシンクロ召喚するとき、星杯通常モンスターをチューナーとして扱えるんだわ」

 

「な、何だそれ!? インチキ臭ぇ!?」

 

 驚きのあまり叫び気味になる遊兎に、イヴがぶーたれる。

 

『インチキじゃないもん。効果だもん』

 

『まあまあ。落ち着いてって』

 

 ネットで第二のボウテンコウだのこれ一枚とデビルズサンクチュアリでエクストラリンクまでいけるだのエロいだの騒がれている彼女は、少々ご立腹らしい。

 

「星杯の神子イヴの効果で、デッキから星遺物の守護竜を手札に加える。では、さらにエンタメ演出をば。星杯の神子イヴで、星遺物-『星杯』をマイナスチューニング!」

 

5-5=0

 

「巨人の内にて眠りし龍よ。時空を跨ぎ、今顕現せよ! マイナスシンクロ! へい、タクシー! アルティマヤ・ツィオルキン」

 

アルティマヤ・ツィオルキン ☆0 守備力0

 

 空間を割って現れたのは、神々しく輝く赤き龍(タイラントの召喚エフェクト)。しかしまだ完全には目覚めていないのか、少し寝ぼけ眼だ。

 

「星杯の神子イヴの効果で、デッキから星杯を戴く巫女を特殊召喚」

 

星杯を戴く巫女 ☆2 守備力2100

 

『そ、そろそろ疲れてきた・・・・・・』

 

 フィールドと手札や墓地やデッキをいったりきたりして体力が限界に近づいてきたイヴが、息を切らしながら言う。

 

「墓地の星杯の妖精リースの効果を発動、手札の星杯の守護竜を切って手札にサルベージ。星遺物の守護竜を発動。効果で墓地の星杯の守護竜を特殊召喚」

 

星杯の守護竜 ☆1 守備力400

 

 イムドゥークの子供のようなモンスターが現れる。実際にはイムドゥークの過去の姿。こんな可愛い竜があんなドラゴンに・・・・・・と孝之は一人嘆いた。

 

「星遺物の守護竜の効果で、アルティマヤ・ツィオルキンを移動させるぞぃ」

 

 星遺物の守護竜のカードから光が放たれ、それを眩しく感じたツィオルキンが逃げるように移動する。

 

 

星□□□□

□巫□ツ守

 ア □

□□□□□

□□□□□

 

星 星遺物の守護竜

巫 星杯を戴く巫女

ツ アルティマヤ・ツィオルキン

守 星杯の守護竜

ア 星杯剣士アウラム

 

「カードを一枚伏せてアルティマヤ・ツィオルキン効果発動!(お仕事の時間です!) エクストラデッキから月華竜ブラック・ローズを特殊召喚」

 

月華竜ブラック・ローズ ☆7 攻撃力2400

 

 ツィオルキンが咆哮(あくび)すると、それに導かれるように薔薇の竜がフィールドに咲く。

 

「開けサーキット。星杯を戴く巫女でリンク召喚。星杯竜イムドゥーク」

 

星杯竜イムドゥーク link1 攻撃力800

 

 イヴが門をくぐり、青い竜とバトンタッチ。同じモンスターが二体という状況だが、精霊ではないカードにとってはどうでもいいことだ。

 

「再び開けサーキット。星杯の守護竜と星杯竜イムドゥークでリンク召喚。星杯神楽イヴ」

 

星杯神楽イヴ link2 攻撃力1800

 

 同じモンスター二体でリンク召喚されたのは、星遺物-『星杯』の加護を受けたイヴ。かなりげっそりしている。

 

「星杯竜イムドゥークの効果で、手札の星杯の妖精リースを特殊召喚」

 

星杯の妖精リース ☆2 守備力2000

 

「墓地の星杯の守護竜の効果発動でっせ。除外して、墓地の守護竜 ユスティアを特殊召喚」

 

守護竜 ユスティア ☆2 チューナー 守備力2100

 

 守護竜に呼ばれ、守護竜がフィールドへ舞う。

 

「星杯の妖精リースと守護竜 ユスティアでリンク召喚。星杯神楽イヴ」

 

星杯神楽イヴ link2 攻撃力1800

 

 二体目のイヴのためハリボテとなる。設置はそこそこ重労働らしく、イヴの疲労度が上がった。

 

「これでようやく終わり! 星杯神楽イヴと星杯剣士アウラムでリンク召喚。双穹の騎士アストラム」

 

双穹の騎士アストラム link4 攻撃力3000

 

『・・・・・・待ちくたびれた』

 

 ハリボテが新たな武器となり、アウラムが進化するが、こちらも少し疲れが見える。

 

『俺は・・・・・・出番すらなし、か』

 

 ニンギルスが一人明後日の方向を向いてしみじみとしているが、疲労状態のアウラムとイヴはそちらに構う余裕はなく、孝之は精霊が見えないため対応できない。

 

「これでオレはターンエンド」

 

瑞浪孝之

LP8000 手札1

 

星□□■□

月アイツ□

 □ □

□□□□□

 

星 星遺物の守護竜

月 月華竜ブラック・ローズ

ア 双穹の騎士アストラム

イ 星杯神楽イヴ

ツ アルティマヤ・ツィオルキン

■ 伏せカード

 

「ふう、一仕事終わったわい」

 

 孝之が額の汗を拭う動作をしながら呟き対戦相手(遊兎)を見れば、そこには息吹と共に何かを覗き込む遊兎が。

 

「な、何だよコレっ!? えっこれ、コスプレか!?」

 

「彼には感謝しないとだね♪ 壊れたカメラを回収できて良かった」

 

 彼らが覗き込んでいるカメラの画面には『巨乳の女神ルイン』と『スポーツブラとホットパンツの美少女』と『すごい形相のルイン』の写真が。息吹の近くに落ちている時の機械-タイム・マシーンのカードから色々な事情を察している春樹は自身の背後にいるディペから発せられるオーラによって見ることはできず『不動性ソリティア理論』の本に目を向けている。

 

「・・・・・・空が、青いな・・・・・・」

 

 自分一人だけ除け者という現実から逃避するべく呟く孝之だが、それは叶わずむしろ己の精霊達から心配されるだけに終わった。

 

「・・・・・・あ、遊兎。ターン回ってきたみたいだよ♪」

 

「あ、おう。(オレ)のターン、って何だこの盤面(フィールド)!?」

 

 並んでいるモンスター達にビビりながらもカードを引き、ディスクに置いていく。

 

「レスキューラビットを召喚! 効果でデッキからメガロスマッシャーXを特殊召喚!」

 

レスキューラビット ☆4 攻撃力300

 

メガロスマッシャーX ☆4 攻撃力2000

 

 場に出るなり相手フィールドに並ぶモンスター達にビビったウサギが助けを呼んで逃げ出し、呼ばれた恐竜達はウサギを探して右往左往する。

 

「メガロスマッシャーX二体をリリースして、銀河眼の光子竜を特殊召喚!」

 

銀河眼の光子竜 ☆8 攻撃力3000

 

 赤い十字架から銀河が生まれ、フィールドに竜が光臨しかけるが召喚エフェクトの途中でブラック・ローズにより手札に戻った。

 

「月華竜ブラック・ローズの効果発動、ってオレ宣言してないんだけど。強制効果だからか?」

 

 初めて使うカードの反応に首を傾げながらもまぁいいかと遊兎のプレイングに目を向ける。今のはプレイミスか、意図的な行動か。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 フィールドを見て絶句する遊兎からプレイミスだと悟った孝之は再び現実逃避に励もうと空を眺める。

 

「つ、次だ! トレード・インで手札交換する! よし、墓地の恐竜族モンスター二体を除外して、究極伝導恐獣を特殊召喚!」

 

究極伝導恐獣 ☆10 攻撃力3500

 

 メガロスマッシャーXが除外ゾーンで逃げたウサギとご対面するのと同時に、やる気なさげな恐竜がフィールドを踏みしめる。

 

「更に装備魔法、D・D・Rを発動! 手札を一枚コストに、除外されているメガロスマッシャーXを特殊召喚! さらに思い出のブランコで今捨てたライドロンを特殊召喚だ!」

 

メガロスマッシャーX ☆4 攻撃力2000

 

ライドロン ☆4 攻撃力2000

 

 せっかくウサギと会ったのにまたはぐれた恐竜とライオンを模したプログラムがフィールドに現れ、捕食する側同士で仲が悪いためにか睨み合う。

 

「・・・・・・ん? 何かすっげーイヤぁな予感」

 

(オレ)は二体のモンスターでオーバーレイ! 来てくれ、ホープ!」

 

No.39 希望皇ホープ ★4 攻撃力2500

 

「更に、シャイニング・エクシーズチェンジ! ホープ・ザ・ライトニングだ!」

 

SNo.39 希望皇ホープ・ザ・ライトニング ★5 攻撃力2500

 

 嫌な予感が的中した孝之が顔をしかめ、天敵の出現にアウラムが後ずさり。

 

「究極伝導恐獣の効果発動だ! 手札のセイバーザウルスを破壊して、相手モンスターを裏側表示にする! 現世と太古の反転(リバース・ワールド)!」

 

 究極伝導恐獣が面倒くさそうに地面を踏みつけ、その振動でツィオルキンとブラック・ローズのカードがひっくり返り、裏向きとなる。守備表示のないリンクモンスター達(アウラムとイヴ)は振動に耐えることに専念した。

 

「バトル! ホープでアスなんとかに攻撃だ!」

 

 冷や汗を流しながら効果発動を忘れてくれないかと思うアウラムだが、『正☆義★執☆行』と無慈悲に切り裂かれた。

 

SNo.39希望皇ホープ・ザ・ライトニング 攻撃力2500→5000

 

瑞浪孝之

LP8000→6000

 

「おのれ大正義ぃ! 苦労して出したモンスターをよくもぉ!」

 

 鳴滝のノリでライトニングに叫ぶ孝之だが、皆の希望皇は素知らぬ顔でフィールドに佇んでいる。

 

「まだだ! 究極伝導恐獣で伏せモンスターに攻撃! 効果で破壊して1000ダメージだ!」

 

 『全速前進DA!』と伏せられていたツィオルキンに突っ込む究極伝導恐獣。起こされた後また眠らされ、さらに起こされたツィオルキンが不満顔で破壊される。攻守共に0なので元々戦闘では無力なのだが。

 

瑞浪孝之

LP6000→5000

 

「まだまだ! 究極伝導恐獣で伏せモンスターに攻撃!」

 

 究極伝導恐獣が『寝ている隙に奇襲!』とブラック・ローズのカードを踏み潰し破壊。

 

瑞浪孝之

LP5000→4000

 

「最後だ! 究極伝導恐獣で星杯神楽イヴに攻撃! 戦わなければ生き残れない(サバイバル・サバイブ)!」

 

『きゃー!』

 

 悲鳴をあげるイヴを面倒くさそうに眺めた究極伝導恐獣は、申し訳程度にデコピンで破壊した。

 

瑞浪孝之

LP4000→2300

 

「何かオレのデュエル、ピンチばっかだなぁ」

 

 七割ほど削られたライフポイントに、孝之が呟く。

 

(オレ)はこれで、ターンエンドだ!」

 

月見遊兎

LP8000 手札1

場 エクストラ:SNo.39希望皇ホープ・ザ・ライトニング メイン:究極伝導恐獣

 

「ではオレのターン、墓地の星遺物-『星杯』の効果発動でぃ。除外して、デッキから星遺物カードをサーチするぜぃ。星遺物の加護をキャッチ&リリース(手札に加えて発動)。星遺物-『星杯』と星杯を戴く巫女をサルベージするわ」

 

 これで孝之の手札は四枚。これだけあれば、展開には充分。

 

「まずは星杯を戴く巫女を召喚して開けサーキット。リンク召喚、星杯竜イムドゥーク」

 

星杯竜イムドゥーク link1 攻撃力800

 

「墓地の星杯の妖精リースの効果で手札切って回収。同じ展開だけど勘弁してな? リリースして星遺物-『星杯』、効果で星杯の妖精リースを特殊召喚」

 

星遺物-『星杯』 ☆5 攻撃力0

 

星杯の妖精リース ☆2 守備力2000

 

「星杯の妖精リースの効果でデッキから星杯に選ばれし者を手札に、そして開けサーキット。リンク召喚、星杯剣士アウラム」

 

星杯剣士アウラム link2 攻撃力2000→2300

 

『・・・・・・・・・・・・』

 

 かなりぐったりとして無言のアウラム。墓地のイヴも同様だ。

 

「星遺物-『星杯』の効果で、デッキから星杯に誘われし者と星杯の守護竜を特殊召喚」

 

星杯に誘われし者 ☆4 攻撃力1800

 

星杯の守護竜 ☆1 守備力400

 

『・・・・・・出番、か』

 

 ようやく回ってきた出番にニンギルスが槍を構える。

 

「開けサーキット。またまたリンク召喚だ。トロイメア・ケルベロス」

 

トロイメア・ケルベロス link2 攻撃力1600

 

 ニンギルスと子竜が門をくぐり、双頭の獣と入れ替わる。

 

「トロイメア・ケルベロスの効果発動でぃ。手札一枚をコストに、相手のメインモンスターゾーンに特殊召喚されたモンスターをデストロイ!」

 

 ケルベロスが吠えると、『あ? やんのかコラ』と究極伝導恐獣が破壊される。

 

「トロイメア・ケルベロスでリンク召喚。トロイメア・マーメイド」

 

トロイメア・マーメイド link1 攻撃力1000

 

「トロイメア・マーメイドの効果発動でっせ。手札一枚をコストにデッキからトロイメアを特殊召喚。お出でませ、オルフェゴール・トロイメア」

 

オルフェゴール・トロイメア ☆7 守備力2000

 

「オルフェゴール・・・・・・?」

 

 先程までとは異なるモンスターに眉をひそめる遊兎。

 

「オルフェゴール・トロイメアはトロイメア・マーメイドでリンク召喚。オルフェゴール・ガラテア」

 

オルフェゴール・ガラテア link2 攻撃力1800

 

 イヴを模した無機質な人形がのっぺりと現れる。

 

「それじゃ、更なるエンタメでもするかな。オルフェゴール・ガラテアでオーバーレイ! クロスアップ・エクシーズチェンジ! 宵星の機神ディンギルス」

 

宵星の機神ディンギルス ★8 攻撃力2600

 

 無機質な人形が(バベル)に呑み込まれ、ヤンデレニーサン最終形態が登場する。

 

『・・・・・・』

 

「なっ、リンクモンスターでエクシーズ召喚だと!? またインチキか!」

 

「しゃらぁっぷ。宵星の機神ディンギルスの効果で、その大正義を破壊ぜよ!」

 

『・・・・・・破壊、する・・・・・・』

 

 ヤンデレオーラをメラりと燃え上がらせたニンギルスが、その気迫だけでライトニングを破壊した。ついでにアウラムもそのオーラに当てられげっそりしている。

 

「バートール、フェー↑イズ! 宵星の機神ディンギルスでダイレクトアタック」

 

『・・・・・・・・・・・・』

 

「怖っ」

 

 無言で槍を突き出すニンギルスに、遊兎が若干の恐怖を覚える。

 

月見遊兎

LP8000→5400

 

「星杯剣士アウラムも攻撃DA!」

 

『おつかれですらっしゅ』

 

 覇気のない剣で遊兎を切り裂くアウラム。しかしダメージは数値通りに入る。

 

月見遊兎

LP5400→2100

 

「ま、こんなところでいいだろ。ターンエンドだ」

 

瑞浪孝之

LP2300 手札0

場 エクストラ:星杯剣士アウラム メイン:宵星の機神ディンギルス 魔法・罠:星遺物の守護竜 伏せカード

 

「・・・・・・(オレ)のターン! ドロー!」

 

 遊兎の手札だが、究極伝導恐獣の効果を使わなかったことから一枚はモンスターではないと孝之は推測している。そして、それは当たっている。

 

「大欲な壺を発動! 除外されているレスキューラビットとメガロスマッシャーX、星遺物-『星杯』をデッキに戻して、一枚ドロー! 緊急救命レスキューを発動!」

 

 先程のターンでは、ライフポイントの関係で使えなかったカード。孝之に提示されたのは、当然ながら三枚のウサギ。

 

「・・・・・・選択肢ないわな、これ。右ので」

 

「よし、レスキューラビットを召喚して効果発動だ! デッキからライドロンを特殊召喚!」

 

レスキューラビット ☆4 攻撃力300

 

ライドロン ☆4 攻撃力2000

 

 何時ものように場に登場するなり助けを求めるウサギ。彼は一体何を恐れているのか。

 

「ライドロン二体でオーバーレイ! 闇より出でし反逆の牙! 自由を求めし漆黒の翼! エクシーズ召喚! 来てくれ、ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン!」

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ★4 攻撃力2500

 

 闇の戸張を引き裂き、漆黒の竜が吠える。

 

「ダーク・リベリオンの効果発動だ!」

 

「ダメです! リバースカード、無限泡影。効果を無効化!」

 

 ダジャレまじりにカードを発動する孝之だが、気付いてはもらえず、言った自分に恥ずかしくなった。

 

「ならバトル! ダーク・リベリオンでアウラムに攻撃だ!」

 

『僕の見せ場、殆どないなぁ』

 

瑞浪孝之

LP2300→2100

 

 奇しくも並んだライフポイントに、軽く苦笑する孝之。遊兎は真剣にフィールドを見ている。

 

「カードを伏せて、ターンエンドだ」

 

月見遊兎

LP2100 手札0

場 エクストラ:ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン 魔法・罠:伏せカード

 

「ではでは、オレのターン。再び墓地の星遺物-『星杯』の効果発動、っと。除外してデッキから星遺物-『星杯』を手札に加えるにょん。更に魔法カード、貪欲な壺を使ってみよう。墓地の星杯竜イムドゥーク三枚と星杯剣士アウラム、星杯神楽イヴをエクストラデッキに戻し、二枚ドロー、更に貪欲な壺! 墓地の双穹の騎士アストラム、星杯神楽イヴ、星杯の神子イヴ、星杯に選ばれし者、星杯に誘われし者をデッキに戻し、二枚ドロー」

 

 みるみる増える手札。これで四枚となった。

 

「芸がないけど二度あることは三度あるってねぇ! 星杯に選ばれし者を召喚、開けサーキット。リンク召喚、星杯竜イムドゥーク」

 

星杯竜イムドゥーク link1 攻撃力800

 

「星杯の妖精リースの効果で手札切って回収、星杯竜イムドゥークの効果で星遺物-『星杯』をアドバンス召喚、星杯竜イムドゥークの効果で星杯の妖精リースを特殊召喚!」

 

星遺物-『星杯』 ☆5 攻撃力0

 

星杯の妖精リース ☆2 守備力2000

 

「星杯のリースの効果でデッキから星杯に誘われし者を手札に加える。あーんど開けサーキット。リンク召喚、星杯剣士アウラム」

 

星杯剣士アウラム link2 攻撃力2000→2300

 

『1ターン休んで復活!』

 

 意気揚々とフィールドに躍り出るアウラム。体力がある程度回復したらしい。

 

「星遺物-『星杯』の効果で、デッキから星杯に選ばれし者と星遺物-『星杯』を特殊召喚」

 

星杯に選ばれし者 ☆3 攻撃力1600

 

星遺物-『星杯』 ☆5 守備力0

 

「星杯剣士アウラムの効果発動といこうかねぇ。リンク先の星杯に選ばれし者をリリースして、墓地の星杯竜イムドゥークを特殊召喚」

 

星杯竜イムドゥーク link1 攻撃力800

 

「星遺物の守護竜の効果で、星杯竜イムドゥークの位置を移動。更に、墓地の星杯の守護竜の効果発動だわい。除外して、墓地の星杯に誘われし者を特殊召喚」

 

星杯に誘われし者 ☆4 攻撃力1800

 

「開けサーキット。星杯に誘われし者でリンク召喚。星杯竜イムドゥーク」

 

星杯竜イムドゥーク link1 攻撃力800

 

「まだまだ! 星杯剣士アウラムと、星杯竜イムドゥーク二体をリリース! 融合召喚、星杯の守護竜アルマドゥーク!」

 

星杯の守護竜アルマドゥーク ☆9 攻撃力3000

 

 イムドゥークが大きく成長し、美しい巨竜となる。

 

「今度は融合を使わずに融合召喚!? インチキ・・・・・・いや、これは結構見かけるな」

 

 一瞬驚愕し、ふと我に返る遊兎。しかし、勢いに乗っている孝之には聞こえない。

 

「これで終わりじゃないぜ! 死者蘇生を発動、墓地の星杯の神子イヴを特殊召喚」

 

星杯の神子イヴ ☆5 チューナー 守備力2100

 

『また出番・・・・・・』

 

 こちらはまだ体力が回復しきってないらしく、かなりやつれた様子だ。

 

「開け、終焉のサーキット! 星杯の守護竜アルマドゥーク、星杯の神子イヴ、星遺物-『星杯』をリンクマーカーにセット! リンク召喚! 全てを滅ぼす破壊兵器! 星神器 デミウルギア!」

 

星神器 デミウルギア link3 攻撃力3500

 

 二つのΩ、特徴的な格子状の意匠、四つの属性。文字通り神の如き威圧感を持つ兵器が、フィールドを制圧する。

 

「星神器 デミウルギアの効果発動。種族と属性の異なるモンスターをリンク素材としている場合、フィールドのこのカード以外のカードを全て破壊する!」

 

 デミウルギアに光が集束し、大爆発を起こす。

 

「リバースカード、ダメージダイエット! このターン受けるダメージを半分にする!」

 

 ダーク・リベリオンを破壊されながらもこのターンを凌ごうと足掻く遊兎。

 

 しかし、爆発による煙が晴れた後に残っているのは、デミウルギアの他に、もう一体。

 

「宵星の機神ディンギルスが破壊されるとき、オーバーレイユニットを一つ取り除くことで、フィールドに残るんだわ」

 

 無慈悲に告げられる敗北の宣告。

 

「バトルだ。星神器 デミウルギアと宵星の機神ディンギルスでダイレクトアタック」

 

月見遊兎

LP2100→350→0

 

「うわあぁああ!」

 

 ニンギルスの槍に貫かれ、ライフが0になる。

 

「お疲れ様ー♪ 中々いいデュエルだったんじゃない?」

 

 壊した扉を時の機械-タイム・マシーンで直し終わった息吹が、率直にデュエルの感想を言う。

 

「そうだな。オレの時よりは善戦できていたぞ、月見」

 

 本を閉じ、春樹も遊兎に賞賛を送る。彼の場合、ワンターンキルだったため善戦も何もなかったのだが。

 

「ふぃー、疲れた。オレも頑張ったしなぁ」

 

 融合、シンクロ、エクシーズ、リンク。

 星杯の召喚方法を全て使うように意識してデュエルしていたため、通常のデュエルよりも疲労が濃い。

 

「それじゃ、今日は解散♪ 遊兎、明日は持ってるカードを全部持って来てね」

 

 息吹がそう締めくくり、それぞれが帰り支度を始めた。




孝之「長かった今回のデュエル! それが更新の遅れた理由だったりします」
息吹「後は作者が受験勉強に時間を取られたりとか・・・・・・」
孝之「一時まで塾に監禁はキツいって」
息吹「それでは、今日の最強カードはコレ♪」

星神器 デミウルギア

星河「今回は使っていなかったが、相手がエクストラデッキからモンスターを特殊召喚した時に、星遺物モンスターを特殊召喚する効果も持っているな」
息吹「それと、自身以外のモンスターの効果を受け付けないという、アポクリフォート・キラーみたいな効果も持っていたりします♪」
孝之「イラストといい、端末世界と関係があるっぽいぜぃ」
息吹「それではまた次回! シーユーアゲイン♪」


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息吹の思い

受験まで、後一週間もない、だと?

デュエルなしです。


 家に着いた息吹は、玄関のドアを開け、そのまま靴を脱ぎ、リビングへ入る。

 

「お兄様? 何か煤けているのです」

 

 部屋へ入るなり先に帰っていた手鞠が息吹の顔を見て言う。

 

「いや~、ちょっとね♪ 手鞠も電撃と列車には気をつけなよ」

 

 おどけてそう言う息吹だが、どこか疲れが見える。

 

「じゃ、晩御飯できたら呼んで♪ オレはやることがあるからさ」

 

 疑問符を浮かべる手鞠を余所に、息吹は自室へ入った。

 

(遊兎のためのカード、いくつかピックアップしておかないとね♪)

 

 ベッドに腰掛け、カードの入ったケースや箱やストレージをそばにある机の上に並べていく。

 

(ソリティア用のカードは・・・・・・やめとこ。遊兎、頭悪いし)

 

 失礼なことを考えながら、カードを手に取る。

 

(通常モンスターはサポート多いな~。ペンデュラムもあるのか♪)

 

 少しでもシナジーのありそうなカードを見つけては集め、並べる。取捨選択をするのは後回しだ。このやり方だと、山になったカードが何かの拍子に崩れて大惨事になることが多いが、オッドアイズが隣で注意しているため可能性は低い。

 

『マスター、それ遊兎のためのだよね? なんでそこまでするの?』

 

 ふと疑問に思ったオッドアイズが訊くと、息吹は苦笑交じりに答える。

 

「中等部の頃、彼で結構遊んでたじゃない? それに少し負い目があってさー♪」

 

 いわゆる、いじめっ子の後悔というやつである。遊兎は気にしている素振りを見せないし実際気にしていないのだが、息吹なりのケジメだ。

 

「魔改造してでも強くなってもらわないと♪ ・・・・・・オレもいつまで持つかわからないし」

 

 後半部分が聞こえなかったオッドアイズが首を傾げるが、息吹は何でもないと笑顔を向けて誤魔化す。

 

(あ、通常モンスターのテーマとか出てたんだ。・・・・・・ていうか、モンスターがコイツだけなのか)

 

 カードを箱で買いはするものの、必要なカードだけ使って後は放置、というのが息吹のスタイルだ。遊羽はどんな相手とデュエルしてもいいようにある程度は覚えるのだが、息吹はそれをしない。そんなことをするならソリティアを優先するのが彼だ。

 

(魔術師にも通常モンスターっていたんだな。あ、レスキューラビットから星刻を出す、っていうの、一時期流行ってた気がする)

 

 9期のインフレの中、ペンデュラムが大暴れした時期の記憶を掘り起こした息吹。

 デュエルスクールでは少し前までプロデュエリストの使っていた『カゲトカゲ』と『エンペラーオーダー』のコンボが流行っていたりしたが、すぐに廃れた。所詮は焼き付け刃ということだ。

 

(レベル4で攻撃力2000のモンスター増えたな。・・・・・・遊兎は守備力0のしか使わないけど、何でだろ? あ、カメンレオンがいるからか)

 

 遊兎の持つ面倒くさがりな爬虫類族を思い出し、そこからさらにシナジーのあるカードを探す。

 

(『キングレムリン』、あと星8シンクロも入る。あ、『千眼の邪神教』と『ソイツ』ってレスキューラビットとカメンレオンとデブリ・ドラゴン、全部に対応してんじゃん)

 

 カードを漁っていると、新たな発見があったりするものだ。そしてそれについて考え出してしまい、気がつけばエラい時間が経っている、までがセット。

 

『ふぁ~、ねむぃ』

 

 段々退屈になってきたオッドアイズが欠伸を一つ。その拍子に、カードの束が一つ落ちる。

 

「『あっ』」

 

 咄嗟に手を伸ばしてしまい、それによって更にカードが散らばる。

 

『・・・・・・ごめんなさい』

 

 散乱したカードを拾いながら、シュンとなって謝るオッドアイズ。それに対し、息吹はカードを集めながら笑顔で答える。

 

「気にすんなって♪ どのカードかは覚えてるから、問題ないよ♪」

 

 幸い、束で落ちていたため大した問題ではない。オッドアイズは少し明るさを取り戻した。

 

「じゃ、続けるかな。オッドアイズ、飲み物でも持って来てくれない?」

 

『は~い♪』

 

 (息吹)に頼られたことで完全に元気になったオッドアイズは、鼻歌を歌いながら部屋を出る。

 

(あんまり落ち込んで欲しくないんだよね・・・・・・どうしたって、最期には悲しませちゃうんだし)

 

 精霊と人間の間に生まれた精人である息吹。

 だが、精霊としての力が強い父親を持ったことで、人間には過ぎた力も得てしまっている。カードの力を使う能力、他人の心を読む能力。過ぎた力は、息吹の身体を確実に蝕んでいる。

 

(成人はできるって言われたけど・・・・・・正直、怪しいなぁ)

 

 ならば、せめて自由に楽しく生きたい。誰かのために能力を使いたい。だから、自分はこんなに遊兎に力を貸しているのかもしれない、と先ほどのオッドアイズへの回答を心の中だけで締めくくる。

 

(オッドアイズと手鞠が双子で良かった。オレみたいなのは、一人で充分)

 

 手鞠とオッドアイズ。二人は息吹達の母から生まれた双子の姉妹だ。幸い、人間と精霊として生まれたため、息吹のような力もなければ、寿命も普通にある。

 

(というわけで、オレは精々楽しく生きるかな♪)

 

 どこからか分解されたカメラを取り出し、口角を上げる。

 

「じゃ~ん。ここに『時の機械-タイム・マシーン』のカードがあります♪」

 

 小型の黒い機械が出現し、その中に分解されたカメラを入れる。

 少し経ってからチーンという電子レンジのような音が鳴ると、中からカメラが飛び出した。

 

「ふんふん、中身は、って何この子可愛い♪ こっちはこの前のコスプレ美少女に、灰流うららと儚無みずき! ドラゴンの擬人化じゃないけど、これはいいものだ」

 

 壺感覚の評価をする息吹。

 

『マスター、なにしてるの?』

 

「うわっ! な、何でもないよ♪」

 

 慌ててカメラを隠し、オッドアイズからお茶の入ったコップを受け取る。

 

『手鞠が、そろそろご飯だって』

 

「ん、オッケ♪ 少ししたら行くよ」

 

 オッドアイズが部屋を出てから、息吹もカードを纏めてリビングに向かう。

 

 結局、遊兎のために選んだカードは百枚を超えていた。




遊兎を魔改造する予定だったんですが、息吹達の設定を出せるのがここしかなかったのでそれは次に。

次回は、多分三月になります。・・・・・・何か、この文章を書いた記憶が三回ほどあるんですが・・・・・・。


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それぞれのデッキ

受験オワタ! ・・・・・・ええ、終わりました。

デュエル回です。


「だーっ! こんだけカードがあると、ワケわかんねぇ!」

 

 翌日の放課後。

 頭を抱えながら机に突っ伏し叫ぶ遊兎に、息吹がニヤニヤしながら言う。

 

「そう焦らずに♪ 花園さんを守れるくらい強くなるんだろ? なら頑張らないと」

 

 ワンキル・ソリティア研究会の部員から『いい加減部室開けてソリティアさせろ! 1日1ソリティアしないと体調悪くなるんだよ!』と末期なお言葉を頂戴した息吹は、一年三組の教室で遊兎のデッキ作りに手を貸していた。

 

「・・・・・・よし! とりあえずこれで完成だ!」

 

「なら今度はデュエル(いじめ)のお時間です♪」

 

 息吹が構えると、遊兎のディスクが強制デュエルモードに移行し、デュエルが始まる。

 

「えっ、ちょっと待っt「デュエル!」」

 

 この後、デュエルしては負け、デッキを組み直し、そしてまたデュエルしては負けを繰り返す。これが、息吹によるスパルタな魔改造だ。息吹が所持しているドラゴンデッキ全部の調整をしたいとかそんな理由はなきにしもあらずだ。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「できたー!」

 

 所変わって、一年一組の教室。

 

 両手を挙げた後脱力したように突っ伏した遥に、そばで見ていた戦は声をかけた。

 

「完成したんだ。永野さんの本来のデッキ」

 

 林間学校では【EMエクゾディア】を使っていた遥だが、本来のデッキは【ファンカスノーレ】だ。何でも、入学早々に先輩とデュエルして先攻で全ハンデスをした結果相手の手札が『ジャックポット7』三枚と『シエンの間者』、『強制転移』だったらしい。それ以来、そのデッキは完成するまで封印し、代わりにその先輩に勧められたエクゾディアを使っていた、という経緯があったりする。

 

「じゃ、早速デュエルしようか」

 

「うん、お願いするねー」

 

 出来立てのデッキをディスクにセットし、構える遥。

 

「「デュエル!」」

 

永野遥

LP8000

 

遊民戦

LP8000

 

「ボクのターン! まずはおろかな埋葬を発動だよー。デッキから天魔神 ノーレラスを墓地に送るね。さらに魔界発現世行きデスガイドを召喚するよー!」

 

魔界発現世行きデスガイド ☆3 攻撃力1000

 

「デスガイドの効果で、デッキから魔サイの戦士を特殊召喚!」

 

魔サイの戦士 ☆3 守備力900

 

「行くよー、二体のモンスターでオーバーレイ! お願いダンテ」

 

彼岸の旅人ダンテ ★3 守備力2500

 

『ふむ、あれが遊戯王界のマツ●ュンですな・・・・・・おっと、伏せ字にされてしまいましたぞ』

 

 黙れ馬鹿。

 

「ダンテの効果発動だよ。オーバーレイユニットを一つ使って、デッキから三枚を墓地に送るねー。それと手札のグラバースニッチをコストに、ダンテでオーバーレイするよ! 来て、ベアトリーチェ!」

 

永遠の淑女ベアトリーチェ ★6 守備力2800

 

『淑女というよりは熟jいや何でもございませぬ』

 

 またも余計なことを言いかけたジャンが戦に睨まれ、おし黙る。

 

「ベアトリーチェの効果で、オーバーレイユニットを一つ使って、デッキからヘルウェイ・パトロールを墓地に送るね。そして効果発動だよ! 手札からファントム・オブ・カオスを特殊召喚!」

 

ファントム・オブ・カオス ☆4 攻撃力0

 

「うーん、もうコンボが決まるね」

 

 完成して初めて回す筈なのに異様な回転力を持つデッキに、戦は苦笑に近い笑みを浮かべる。

 

「ファントム・オブ・カオスの効果で、墓地のノーレラスを除外して効果を得るよー。そして、ノーレラスの効果発動! ライフを1000払って、お互いの場のカードと手札を全部墓地に送るよ。ボクは一枚ドローするけどね」

 

永野遥

LP8000→7000

 

 黒いスライムのような液体が天魔神の姿を取ると、お互いの手札を全て溶かす。

 

「ボクはこれでターンエンドだよー」

 

永野遥

LP7000 手札1

場 なし

 

「じゃあ僕のターン。墓地のラッシュ・ウォリアーの効果で、除外して墓地のジャンク・シンクロンを回収するよ。そして通常召喚! おいで、ジャンク・シンクロン」

 

ジャンク・シンクロン ☆3 チューナー 攻撃力1300

 

「効果で墓地のドッペル・ウォリアーを特殊召喚!」

 

ドッペル・ウォリアー ☆2 守備力800

 

(つまり、ボクがもしファンカスノーネを決めていなかったら、ほぼワンキルされてたってことだよね・・・・・・)

 

 展開されるカードからその未来を想像し、軽く身震いする遥。その姿に、戦は無自覚に笑みを浮かべた。

 

「手札一枚をコストに、墓地のジェット・シンクロンの効果発動! 特殊召喚! 更に墓地のボルト・ヘッジホッグの効果発動! 場にチューナーがいることで、特殊召喚!」

 

ジェット・シンクロン ☆1 チューナー 守備力0

 

ボルト・ヘッジホッグ ☆2 守備力800

 

 戦が手札を墓地に置くと扇風機のような調律機がフィールドを飛び回り、機械のハリネズミを引っ張り出す。

 

「現れろ、強きを挫くサーキット! ジェット・シンクロンとボルト・ヘッジホッグをリンクマーカーにセット、リンク召喚! 落消しのパズロミノ!」

 

落消しのパズロミノ link2 攻撃力1300

 

「? 何そのカード」

 

 パズロミノを知らなかったらしい遥がキョトンとした顔をするが、戦はそれを可愛いなーと見ながらまぁ待ってとジェスチャーする。

 

「ジャンク・シンクロンでドッペル・ウォリアーをチューニング! 集いし星が、鋼に打ち勝つ戦士となる! シンクロ召喚! 来い、ジャンク・ウォリアー!」

 

ジャンク・ウォリアー ☆5 攻撃力2300

 

『いやー、拙者出番が多くて困りますなぁ』

 

 今度ヤリザ殿とニサシ殿に自慢しますかな、と口の中で呟いた後、パズロミノの効果でデフォルメされ近くに現れたドッペル・トークンの力を集め、身体の大きさと反比例した攻撃力を得る。

 

ジャンク・ウォリアー ☆5→1 攻撃力2300→5400

 

ドッペル・トークン ☆1 攻撃力400

 

「えっ、攻撃力5400!?」

 

「そんなに驚くこと? 僕はこの前、攻撃力480000を見たよ」

 

 夏休み中の出来事で感覚が麻痺しているらしい戦。遥はどこからツッコミを入れればいいのかと困り顔だ。

 

「再び現れろ、強きを挫くサーキット! パズロミノとドッペル・トークン二体をリンクマーカーにセット、リンク召喚! パワーコード・トーカー!」

 

パワーコード・トーカー link3 攻撃力2300

 

 パズロミノと小さな兵隊たちが門をくぐると、入れ替わりに赤い電脳戦士が飛び出し、ジャンク・ウォリアーがリンク先にいない(リリースできない)とわかると目に見えて落ち込む。

 

「じゃあ、バトルに入るね」

 

「ちょ、ちょっと待って! まだこのデッキの隠されたギミックを出してない!」

 

 腕をブンブン振り、ついでに胸の二つのアバターを揺らしながら待ったをかける遥に、戦はいい笑顔で(無慈悲に)告げる。

 

「ヤダ」

 

「そんな~」

 

 『すみませぬな、次回以降に頑張ってくだされ』とスクラップ・フィストを放つジャンと『まぁ気を落としなさんな』と肩に右手を置くとそのまま左手で殴るパワーコード・トーカー。

 

永野遥

LP7000→1600→0

 

「うぅ~! せっかく色々考えたのにー! 煌々たる逆転の女神とシラユキのギミックとか、ベアトリーチェ立てるためのヒーローギミックとか!」

 

 泣き崩れる遥。さすがにやり過ぎたと感じたのか、戦は優しい笑みで遥に手を差し出す。

 

「じゃあ、それを全部僕に見せてよ。もう一回、何回でもデュエルしてさ」

 

「・・・・・・ぅん」

 

 その手を顔を赤くしながら取り、もう一度ディスクを構える遥。

 

(さて・・・・・・後何回ワンキルしようかな)

 

 数分後、またもワンキルされた遥の泣き声が、息吹と遊兎の耳に届いた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 同時刻、図書室。

 

「一応完成、だな」

 

 カードを机の上に広げた遊羽は、軽く伸びをしながら呟く。

 

 机の上に並んだカードの中には、『バスター・ブレイダー』や『破壊剣の使い手-バスター・ブレイダー』といった彼らしからぬカードが混じっていた。

 

「お疲れ様です。・・・・・・遊羽、どうしたんですか? そのカード」

 

 隣で本を読んでいた虹花がそのカードたちに気付き、思わずといった様子で訊く。

 

「いや、俺もカードを選んでられないな、と思ってさ」

 

 異世界での一見で、己の無力さを痛感した遊羽は、もう少し他のものに目を向けてみることにした。彼の新しいデッキは、その現れだ。

 このままでは、虹花を守れない。そのことがわかった今、手段(カード)を選んでいる場合ではない。故に、簡易ロックを掛けられ、ドラグニティと相性のいいバスター・ブレイダーをデッキに組み込んだのだ。ドラゴエクィテスのカードを見ていたら思いついた、というのは本人の弁。抜いたWWやザボルグのカードはいつでも入れ替えらえるようにデッキケースの中に入れてある。

 

「そう、ですか・・・・・・」

 

 短い言葉で彼の言いたいことを察した虹花は、少し辛そうな表情をして、遊羽を見る。

 

「遊羽。私のためでも、無理はしないでくださいね」

 

 その言葉に、遊羽は「できるかぎりは」と目で答える。

 

「でも、もう虹花を失いたくないんだ。だから虹花、自分を犠牲に、なんて考えはやめてくれよ」

 

 虹花の目を真っ直ぐ見つめ、言葉を紡ぐ。

 

 一度は失ってしまった、大切な人。もう二度と失いたくない。

 

 そんな想いのこもった言葉に、虹花は顔を赤に染めながらも頷く。

 

「はい、わかってます。でも、遊羽―――」

 

「ああ、だから虹花―――」

 

 

「何かあった時は、虹花は自分を優先してくれ。俺も虹花を優先するから」

「何かあった時は、遊羽は自分を優先してください。私も、遊羽を優先しますから」

 

 

「「・・・・・・え?」」

 

 重なった、二つの言葉。お互いに見つめ合い、真剣な表情になる。

 

「おいおい、冗談キツいぜ虹花? 俺は虹花を優先するから、虹花も自分を優先してくれ」

 

「遊羽こそ、何を言ってるんですか? 遊羽は自分を優先してください。私も、遊羽を優先します」

 

 互いに、譲るつもりはない。そのことをお互いがわかるには、そのやり取りだけで十分だった。

 

「ふざけんな。虹花のいない人生なんざいらねぇ。虹花が死ぬんだったら、俺が死ぬ!」

 

「私だって、遊羽なしの生活なんてお断りです! それに、私はアンデットです。何かあっても、生き残れるはずです!」

 

「万が一があるだろ! それで虹花を失ったとしたら、俺は悔やんでも悔やみきれない!」

 

「それでも、遊羽が死ぬくらいだったら、私が死んだ方がましです!」

 

「虹花の分からず屋!」

 

「遊羽の意地っ張り!」

 

「「フン!」」

 

 互いにそっぽを向き、目を合わせないようにする。

 

 結局、その日はそれ以上会話をしないまま、そしてお互いに顔を合わせないまま、二人で並んでそれぞれの家に帰った。




無事(?)受験が終わったので、これからドンドン投稿していく予定です。よろしくお願いします。


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彼らの馴れ初め

今回、結構シリアス要素が強いです。


 遊羽と虹花がケンカ(?)をした、翌日。

 

「えーっと、遊羽君。何があったのか、訊いた方がいい?」

 

「ああ、そうしてくれると助かる」

 

 朝からまた二人揃って登校したにも関わらず険悪なムードで一言も喋らない二人に耐えかねた戦が、放課後になってようやく遊羽に訊いた。

 

 大体の話を聞いた戦は、何とも言えない表情をする。

 

「なにそれ、夫婦漫才?」

 

「は?」

 

 マジトーンで言う戦に、マジトーンで返す遊羽。

 

「というか、オレたちまで呼ぶほどのことなの?」

 

「惚気にしか聞こえねぇぞ・・・・・・」

 

 戦に呼ばれた息吹と遊兎が、呆れたように言う。

 

「つーか、遊羽は(オレ)に何の反応もなしかよ!?」

 

「スマン、今それどころじゃねぇんだ」

 

「『それ』って何だよ、『それ』って!?」

 

 ショックを受ける遊兎に、面倒くさそうな視線を向ける遊羽。

 

「思えば、今までケンカらしいケンカなんて、したことなかったからな・・・・・・どうすればいいのか、全然わかんねぇ」

 

 遊羽はただ事実を言っているだけなのだが、惚気にしか聞こえない。

 

「というか、二人は何でそんな仲になったのさ?」

 

 息吹の言葉に、戦と遊兎も頷く。息吹と遊兎は中等部から、戦は高等部からデュエルスクールに入ったため、初等部のころの遊羽を知らないのだ。

 

「・・・・・・そうだな。じゃあ、話すとするか」

 

 そう前置きして、遊羽は話し始めた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 初等部に入るよりも前。遊羽と虹花が幼稚園にいたころ。

 

 虹花は、道で拾ったEM五虹の魔術師のカードを気に入り、使っていた。それは、パックを開けた人がハズレ枠だとその場で捨てたカードだったのだが、それを知らない彼女は運命のようなものを感じていた。

 

「返して! 返してよ! わたしのカード!」

 

「うるせぇ! こんなくずカード、ない方がいいだろ!」

 

 しかし、当時弱かった彼女がそのカードを使いこなせるはずもなく、弱いカードを使い続ける彼女に周りの子供は苛立ちを感じていた。

 まだ彼らは幼稚園児。火力が全て、青眼の白龍が最強というのが彼らの間の共通認識だった。そのため、相手を妨害するようなカードや、EM五虹の魔術師のようなコントロール系のカードは、価値を見出されていなかった。むしろ、それがあるから弱いのだと思われていた。

 

「おれがこのカードは捨てておいてやるから、おまえは他のカードを使え! いいな!」

 

 そして、一人の男子が虹花のカードを掛けてデュエルし、勝利。五虹の魔術師を捨てようとした。

 

「うっ、ぐす、ぅああぁぁぁあん!」

 

 まだ彼らは幼稚園児。抵抗できるような力なんて、当然なかった。

 

 ―――彼を除いては。

 

「おい、デュエルしろよ」

 

 虹花が泣いているのを聞いた遊羽は、その男子に突撃、デュエル。その場でワンターンキルをし、五虹の魔術師を奪い返した。

 

「っ、うぅ、ぐす」

 

 何もできずにただ泣いていた虹花の前に、一枚のカードが差し出される。

 

「・・・・・・ぇ?」

 

 彼女が失った、五虹の魔術師のカード。それを持つ、彼女の幼なじみ。

 

「何だよ、泣いてるなら、返さないぞ」

 

 遊羽は、虹花が泣いていることが許せなかった。泣き止んで欲しくて、カードを取り戻した。

 

「ぁ、ありがとう・・・・・・」

 

 お礼を言い、カードを受け取ってまた泣き始めてしまう虹花。

 

「お、おい。泣くなよ、泣かないでくれ」

 

 どうしていいかわからず、慌てふためく遊羽に、虹花が涙を浮かべたままクスリと笑う。

 

「ゆうはは、わたしの・・・・・・王子様だね」

 

「え、王子? 劇の話?」

 

 この出来事の少し前、学芸会で劇をやり、そのときの姫役が虹花、それを助ける王子役が遊羽だったのだ。遊羽の両親は似合わないと苦笑していたが。

 

「ううん、なんでもない」

 

 泣き止み、笑って答える虹花。遊羽も、彼女に笑顔を向けた。

 

 この出来事以来、虹花は遊羽にべったりになった。それは初等部に入ってからも同じで、遊羽と虹花は殆どずっと一緒にいた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「そんなことがあったんだね・・・・・・」

 

「仲良しさんなのです!」

 

 同時刻、図書室。

 虹花もまた、遊羽との馴れ初めを語っていた。

 

「はい。いつ思い出しても、頬が緩んでしまいます」

 

 ニヤついてしまう口元を隠す虹花を暖かい目で見る遥と、興味深々な様子の手鞠、いつも通りぼんやりとしている彩葉。

 

「でも、去年は研究会と全面戦争したりとか、何か怖い話しか聞かないけど・・・・・・」

 

 遥の言葉に、彩葉が続ける。

 

「ん、それは、周りにいた皆のせい。如月が悪いわけじゃない」

 

 遊羽をかばうような発言をする彩葉に、遥が驚いたように目を見開き、そして納得したように頷く。

 

「そっか、花園さんは初等部からいたんだよね。忘れてたよー」

 

 少しシリアスな空気を和めませるためにわざといつもの口調で話す遥。その気遣いに感謝しながらも、話を続けようと虹花が口を開く。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 初等部からデュエルスクールにいる人数というのは少なく、ほとんどは中等部や高等部からデュエルスクールに入る。そのため、当時精霊を持つデュエリストは遊羽のみであり、精霊の存在もそんなに認知されていなかった。

 

「これでトドメだ! ヴァジュランダでマシンナーズ・フォートレスに攻撃!」

 

「うわぁあ!」

 

 精霊の力によってある程度手に入るカードが安定する遊羽が最強になるのは、ほぼ必然的なことだった。

 しかし、それを許せないのが子供心である。

 

「また如月の勝ちかよ! イカサマでもしてんじゃねぇのか!?」

 

「おい、止めろって」

 

 遊羽とデュエルしていた相手の生徒が止めるも、その男子生徒は暴言を吐き続けた。

 

「そもそも、精霊なんているわけがねぇ! 頭イってんじゃねぇのか!?」

 

 その男子は、虹花から五虹の魔術師を奪った子だった。彼としては好きな子のためにしたことが遊羽によって邪魔され、その上自分ではなく遊羽と一緒にいることが許せなかった。

 そのため、彼の地雷を踏んだことに気づかなかった。

 

「お前、今何て言った?」

 

「精霊なんていねぇっつったんだよ妄想野郎!」

 

「テメェ!」

 

 遊羽にとって、レヴは父親のようなものだった。仕事だの旅行だので家にいない両親よりも、そばにいてくれる精霊こそが家族だった。

 家族を否定されて、憤らない者はいない。

 

 たちまち、遊羽はその男子をデュエルで倒した。しかし、それが火種となって、レヴを否定する者、遊羽がイカサマしていると囁く者、彼は頭がおかしいと笑う者が出始めた。

 元々、彼らは遊羽をよく思っていなかったのだ。何度デュエルしても勝てない相手、美少女を侍らせる羨望の対象。遊羽はそれらを気にしていなかったが、虹花の悪口まで言われ始めると激怒し、片っ端からデュエルで黙らせた。

 遊羽にとって、それは不思議な感覚だった。欲しいカードが引ける、相手の狙いが直感でわかる。ただ本能のままにデュエルするだけで、勝利することができた。

 それでも、虹花に対する暴言は止まなかった。むしろ、遊羽が躍起になったことで、それは増していった。

 

「虹花。しばらく、そばにいないでくれ」

 

「・・・・・・わかりました」

 

 遊羽は孤独となり、虹花への暴言は消えた。代わりに、遊羽への当たりが強くなっていった。

 彼らも、ただ意地になっていただけだった。今更引けない、ここで引いたら遊羽からの報復が来る。彼らが戦う理由は、次第に保身のためになっていった。

 

 そして、初等部を卒業する直前。

 

「遊羽。デュエルをしましょう」

 

「・・・・・・ああ、わかった」

 

 遊羽は察した。虹花もそっち側へ行ったのか(敵になったのか)、と。

 

「ドラグニティナイト-ヴァジュランダで攻撃!」

 

「トラップカード、くず鉄かかしです。そして、私の場にカードが伏せられたことで、墓地のEM五虹の魔術師の効果を発動します!」

 

 デュエルは激化し、虹花は『ダーク・シムルグ』、『魔封じの芳香』、『EM五虹の魔術師』のロックを完成させた。

 

「ダーク・シムルグでダイレクトアタックです!」

 

如月遊羽

LP2800→100

 

(これで、遊羽に勝てる!)

 

「バトルは終わりか? 手札からトラップ発動! 拮抗勝負! 一枚残して全部除外しろッ!」

 

「そんな!」

 

 虹花の場に残ったのはEM五虹の魔術師のみ。虹花は涙を流し、言った。

 

「これじゃあ、遊羽に勝てない・・・・・・」

 

(やっぱり、そうか)

 

 遊羽は自分の推測が正しいと感じた。大方、デュエルで遊羽に勝てば、また仲間に入れてやるとでも言われ、それを信じたのだろう。

 

「これじゃあ、遊羽のそばにいられない・・・・・・!」

 

(え?)

 

 遊羽は耳を疑い、そして虹花を疑った。

 

「このカードで、勝たないとなのに、じゃないと、遊羽が、私を、見捨て、」

 

 その場に崩れ落ち泣き叫ぶ虹花に、遊羽は手の平に爪を食い込ませる。

 

(騙されるな、これは演技だ。俺に勝つための、卑怯な!)

 

 そして、遊羽は思い出す。幼稚園の学芸会での劇。虹花は余り上手とは言えなかった。それでも、本人が強く希望したので姫役となったのだ。

 

「嫌、嫌です! 遊羽のそばに、ずっと、いっしょに」

 

 気がつけば、遊羽は虹花の前に屈んでいた。

 

「え・・・・・・?」

 

「悪かった、遠ざけたりして」

 

 虹花の目を真っ直ぐ見つめ、言葉を紡ぐ。

 

「ずっと一緒にいてやるから、泣かないでくれ」

 

 遊羽は、ただ、虹花に泣いて欲しくなかった。だから、あの時もカードを取り返した。ただ、それだけだった。

 

「遊羽!」

 

 涙をこぼしながら、虹花は遊羽に抱きついた。

 

「ずっと、一緒にいてくれますか?」

 

「ああ。もちろんだ」

 

「結婚も、してくれますか?」

 

「ああ。その年になったらな」

 

「見捨てたり、しませんか?」

 

「しねぇな。むしろ俺が見捨てられないか心配なくらいだ」

 

 冗談めかしてそう言うと、虹花は少しだけ笑い、そして泣いた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「うぇっぷ。飲みすぎた」

 

 そう言いながら、息吹は積み上がったブルーアイズ・カオス・MAX・コーヒーの空き缶を数える息吹。「うへぇ全部で4000円分だ」と呟きながら顔をしかめる。

 

「凄い甘い話だったね」

 

 戦も甘さを緩和するために・X・(エクシード)ポテトを口に運びながら言う。・X・(エクシード)ポテトとはその名の通り断面がXの形をしたフライドポテトであり詳しくはWebへ。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 遊兎は甘さに耐えられなかったらしく、机に突っ伏し無言を貫く。

 

「まあ、よくある話だろ。それこそ他のssでも漁れば「ストップ。危ないからやめようぜ♪」」

 

 何か言いかけた遊羽を遮る息吹。謎の電波でもキャッチしたのだろうか。

 

「というか、それまだ小学生のときの話だよね? 最近の恋愛モノでも中々ないよ、そんな激甘な話」

 

「あー、まあ周りからの悪意だ何だで精神が成長する必要があったからな。じゃなきゃ俺の心は今頃マインドクラッシュして廃人にでもなってるだろうよ」

 

 ガリガリと頭を掻きながら答える遊羽に、戦と息吹が少し引く。

 

『その分、遊羽は未だに子供っぽいところがあるからな。ズレがあるのは仕方のないことだ』

 

 途中から顕現し遊羽のそばに立っていたレヴが解説すると、なるほどと一同が頷く。

 

『それにしても、ハードな人生を送っていますな。拙者だったら『ジャンク・ウォリアー。抵抗します。拳で』と学校をスクラップ・フィストしていますぞ』

 

 同じく戦のそばに顕現したジャンが言いながら拳を打ちつけ、力を入れ過ぎたのか痛みに悶絶しながら床を転がり回りレヴにぶつかり嫌な顔をされる。

 

「あ、オレそろそろ帰らないと。AmaZ-ONEで新しくカードを買ったんだった」

 

 今日もどこかを生身で走っているであろうAmaZ-ONEの宅配お爺ちゃんに心の中で敬礼しながら息吹が席を立つ。ちなみに買ったカードは『No.25 重装光学撮影機フォーカス・フォース』だ。教室を出る息吹の後ろでオッドアイズが『ゾンビのおっはな♪ ゾンビのおっはな♪』とスキップしているのは何の関係もないと信じたい。

 

「・・・・・・じゃあ、僕らもそろそろ帰ろうか」

 

「そうだな」

 

 息吹に続いて、戦と遊兎も教室を出る。

 

「あー、悪い。俺はちょっと寄るところがあってな」

 

 遊羽は少し言い難そうに頬を掻きながら言うと、戦は少し微笑み、遊兎は疑問符を浮かべた。

 

(さて・・・・・・俺も腹を括るか)

 

 一人、戦たちとは違う方向に歩き出した遊羽。

 

 図書室は一階にある。遊羽がそこに向かうために三階から二階に下り、一階へ向かうべくさらに階段を下りようとすると、逆に階段を上がってきた人物と鉢合わせる。

 

「虹花」

 

「遊羽・・・・・・」

 

 お互いに名前を呼び合い、見つめ合う。

 

「悪かった」

 

「ごめんなさい」

 

 そして、同時に頭を下げた。

 

 そのことに驚き、再び見つめ合って笑う。

 

「戦たちと昔のことを話してたら、ケンカしてる場合じゃねぇなと思ってさ。悪かった」

 

「奇遇ですね。私も遥ちゃんたちと昔話をしていたんです。そうしたら、仲直りしたくなったんです」

 

 笑みを浮かべながら話す二人。

 

「どっちを優先とかじゃなくて、どっちも優先すればいいだけの話だったな」

 

「そうですね。盲点でした」

 

 そうして、二人は仲直りをした。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 ここからは、完全に余談である。

 

 遊羽と虹花がイチャコラしていた階段の前の部屋では、一つの部活が活動していた。

 

 そう、ワンキル・ソリティア研究会である。

 

「マジシャン・オブ・ブラックカオス・MAX・コーヒー追加でー」

 

「リア充爆発しろ」

 

「副部長! ここに『スフィア・ボム球体時限爆弾』があるのですが、投げてきても!?」

 

「やめろよーwww今ビデオにwww収めてるところwwwだからwww」

 

「ちょwおまwwオレの『超弩級砲塔列車グスタフ・マックス』がww」

 

「うっさい馬鹿、その『ブローバック・ドラゴン』しまえや」

 

「くっ、このままでは『オルフェゴール・ガラテア』の効果で俺の『オルフェゴール・バベル』がウェイクアップしちまうぜ・・・・・・」

 

 と、カオスな状況になっていた。

 

「はぁ・・・・・・何故こうも此処は馬鹿が多いんだ・・・・・・」

 

 溜め息をつきながら額を手で押さえかぶりを振る星河。

 

「カメラは一眼レフだろう。スマホじゃ画像が粗い」

 

「アンタも同じようなもんじゃないのっ!」

 

 研究会の良心、結希がツッコミを入れると、今度は孝之が遊羽たちに対して溜め息をつく。

 

「まったく、オレたちが超重武者マエカガ-meになっちまうじゃねぇか」

 

「ホントどっから仕入れてくんのよ、その知識!」

 

「ネタ元を出していいのか?」

 

「そういう話じゃないわ!」

 

 「誰かハリセン頂戴・・・・・・先端に柚子が付いてるやつ・・・・・・」と痛む頭を押さえる結希に星河が心配そうに声をかける。

 

「頭痛か? 早く寝た方がいいぞ」

 

「寝不足じゃないわよ!」

 

 今度は腹痛が彼女を襲いそうな日々である。




すまない・・・・・・作者はシリアスで終わると死ぬという不治の病にかかっているんだ・・・・・・。

シリアスと同じくらいネタが多い今回でした。


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破壊剣士vs兎

卒業まであと一週間ほどだそうです。

つまり、卒業した後は投稿したい放題・・・・・・高校の課題? ちょっとよくわかんないですね。

デュエル回です。


 遊羽と虹花が仲直りしてから一週間後。

 

「遊羽! 放課後、(オレ)とデュエルしろ!」

 

「おう、いいぜ」

 

 登校するなり教室の前で待ち構えていた遊兎にビシィ!と指差された遊羽はノータイムで答えた。

 

「嫌だってんなら、力ずくでも、っていいのかよ!?」

 

「おう、いいぞ。新しいデッキの相手をして欲しかったところだしな」

 

 虹花相手のテーブルデュエルで使いはしたが、デュエルディスクを使ったデュエルではまだ使っていない。そのため、遊兎とのデュエルはいい機会だと遊羽は考えた。

 

「よっしゃぁ! 絶対だぞ! 忘れんなよ!」

 

 全力でガッツポーズをし再び遊羽を指差してから一年三組の教室に駆け戻る遊兎を尻目に遊羽が教室の扉を開け、一緒に登校してきた虹花と共に入る。

 

「遊羽は、少し変わりましたね」

 

 カバンを机に下ろすなり虹花が言い、それに遊羽が「そうか?」と返すと肯定するように頷く。

 

「優しくなったと言いますか・・・・・・元々あった優しさを、他人にも向けるようになりました」

 

 微笑む虹花を見ながら、遊羽はそうかもしれないと心の中で呟く。自分の中で、何かが変わったという自覚はあったからだ。

 

「まあ、何にせよ、俺は俺だ。それは変わらねぇよ」

 

「そうですね。遊羽は遊羽です」

 

 見つめ微笑み合う二人に、教室内の他の生徒は居づらそうにし一部の男子生徒が超重武者マエカガ-meとなりそれに女子生徒が軽蔑の目を向けその男子生徒の中のさらに一部がその視線に快楽を得る。

 

「ホームルームの時間です。席に着いてください」

 

 そのカオスな空間は、チャイムと同時に入ってきた異次元の女戦士に似た担任の女教師の声で終わりを告げた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 そして特筆すべきこともないまま放課後へ。

 

 第3デュエル場にてデュエルすることになった遊羽と遊兎は、周りに見守られながら向かい合う。

 

「遊羽! 今日こそ(オレ)御前(オマエ)に勝つ! 覚悟はできたか!」

 

 ディスクを構え、遊兎が叫ぶ。それに相対する遊羽は、それに答えずデッキをディスクにセットした。

 

「無視かよ!?」

 

 スルーされた事実に遊兎が声を上げるが、遊羽は気にせずディスクを構える。

 

「準備はできたか、遊兎」

 

「また無視かよ!? ・・・・・・ったく、準備は万端だぜ!」

 

「「デュエル!」」

 

如月遊羽

LP8000

 

月見遊兎

LP8000

 

「俺の先攻。完璧な手札だ、全開でいかせてもらう」

 

 異世界で出会った二股でヘンタイロリコンストーカーフィギュアフェチ(娘含めて三股の可能性有り)の言葉を借り、デュエルを開始する。

 

「調和の宝札を発動。手札の破壊剣士の伴竜をコストに二枚ドローだ。竜の渓谷を発動し、手札のバスター・ブレイダーをコストにドラグニティ-ファランクス墓地へ送るぜ」

 

 二人の周りに竜たちの住まう谷が映し出され、どこからか飛翔してきたバスター・ブレイダーが飛んでいたファランクスを道連れにしながら谷間に落下していった。

 

「えぇ・・・・・・あの竜の渓谷、何かおかしくないかなー?」

 

 見学していた遥が声を漏らすと、隣の戦が「そう?」と首を傾げる。

 

「だいたいあんな感じだと思うけど」

 

 戦はその日の授業でクラスメートとデュエルした際に、『おろかな埋葬』を使ったら墓地へ送る『ドッペル・ウォリアー』がスコップを片手に自ら地面を掘ってトークンたち埋葬されるという演出を見ていたため、大して何も思わなかった。

 

「ドラグニティ-ドゥクスを召喚して、効果でファランクスを装備し特殊召喚だ」

 

ドラグニティ-ドゥクス ☆4 攻撃力1500

 

ドラグニティ-ファランクス ☆2 チューナー 守備力1100

 

「その組み合わせってことは、」

 

「勿論シンクロ召喚だ。来いドラグニティナイト-ヴァジュランダ」

 

ドラグニティナイト-ヴァジュランダ ☆6 攻撃力1900

 

 現れたのは遊羽の愛用する竜騎士。しかし今回はそれすらも通過点といわんばかりに装備されていたファランクスがチューニングリングとなってヴァジュランダを包む。

 

「白き子竜よ、剣士との記憶をその身に刻み、戒めの竜へと昇華せよ! シンクロ召喚! 破戒蛮竜バスター・ドラゴン!」

 

破戒蛮竜バスター・ドラゴン ☆8 守備力2800

 

 現れた白き竜が雄叫びを上げると、まだドラゴンを斬り足りないといわんばかりに谷底からバスター・ブレイダーが這い上がる。

 

バスター・ブレイダー ☆7 攻撃力2600

 

「墓地の破壊剣士の伴竜の効果発動だ。手札の破壊剣-ウィザードバスターブレードを捨てて特殊召喚するぜ」

 

破壊剣士の伴竜 ☆1 チューナー 守備力300

 

 同じく谷底から顔を出した伴竜にバスター・ブレイダーが驚愕しバスター・ドラゴンと伴竜を交互に見ると二体の竜が青い門へと飛び立つ。

 

「バスター・ドラゴンと伴竜でリンク召喚だ。水晶機巧-ハリファイバー」

 

水晶機巧-ハリファイバー link2 攻撃力1500

 

 門からどんなドラゴンが出てくるのかと期待していたバスター・ブレイダーが出てきた人型機械に舌打ちしハリファイバーがショックを受ける。

 

「ハリファイバーの効果だ。デッキからブランディストックを特殊召喚する」

 

ドラグニティ-ブランディストック ☆1 チューナー 守備力400

 

 武器形態以外でフィールドに出たことにブランディストック自身が驚き何をさせられるのかと戦々恐々していると、バスター・ブレイダーが『ドラゴンだ! ドラゴンだろう!? 首、置いてけ! なあ!!』と斬りかかるがブランディストックの身体がチューニングリングへと変わりバスター・ブレイダーを包む。

 

「二回目だから省略するぜ。バスター・ドラゴン」

 

破戒蛮竜バスター・ドラゴン ☆8 守備力2800

 

 『馬鹿な、オレは死んだ(リンク素材になった)はず』とシンクロ召喚されたバスター・ドラゴンが訝しむと、ドラゴンの気配を嗅ぎつけたバスター・ブレイダーが再び谷底から這い上がりフィールドに立つ。

 

バスター・ブレイダー ☆7 攻撃力2600

 

「俺はこれでターンエンドだ」

 

如月遊羽

LP8000 手札1

場 エクストラ:水晶機巧-ハリファイバー メイン:破戒蛮竜バスター・ドラゴン バスター・ブレイダー フィールド:竜の渓谷

 

「あるぇ? 今なんかソリティア嫌いの遊羽がソリティアしてたように見えたんだけど」

 

 遊羽の盤面を見ながら言う息吹に虹花が返す。

 

「控えめなソリティアならできるようになったんです。研究会のように強力な制圧力を持ったりするわけではありませんが、その分安定しています」

 

 そんな馬鹿な、安定しなさそうなのに、と息吹は驚いた表情で見るが、拾ったカードだけで戦うデュエリスト(サティスファクションのメ蟹ック)カードの創造(シャイニング・ドロー)の存在を思い出し気にしないことにした。

 

「長かった・・・・・・(オレ)のターン、ドロー!」

 

 引いたカードを見るなり口角を上げた遊兎。遊羽は警戒するように顔を引き締めた。

 

(オレ)は化石調査を発動だ! デッキからファイヤーオパールヘッドを手札に加える! 更に、召喚師のスキルを発動! デッキからドラコニアの翼竜騎兵を手札に加えるぜ!」

 

 遊兎が手札に加えたカードに遊羽が目を細め、息吹を軽く睨む。

 

「あのカード・・・・・・ペンデュラム召喚ですか」

 

「そ♪ オレが教えたんだぜ」

 

『だぜ~!』

 

 得意げに胸を張る息吹と、それに習って真似をするオッドアイズ。虹花は少し頬を緩めながらオッドアイズの頭を撫で、オッドアイズも気持ち良さそうに頬を染める。

 

 カシャリ♪

 

『? マスター、今何したの~?』

 

「何でもないよ。気にすんな♪」

 

 たった今使ったカメラを隠しながらオッドアイズに笑顔を向ける息吹。後ろで静かに見ていた春樹は後で星河先輩に伝えようと心に決めた。

 

「行くぜ! ファイヤーオパールヘッドとドラコニアの翼竜騎兵でペンデュラムスケールをセッティング!」

 

ペンデュラムスケール 0-7

 

「ペンデュラム召喚! 来い、レスキューラビット! 幻のグリフォン! ライドロン!」

 

レスキューラビット ☆4 攻撃力300

 

幻のグリフォン ☆4 攻撃力2000

 

ライドロン ☆4 攻撃力2000

 

 光の柱に燃える宝石の頭を持つ恐竜とドラコニアという国の兵が並び、獣たちが地面を駆け、バスター・ドラゴンが『お前らドラゴンだから。おk?』とバスター・ブレイダーの殺る気を上げる。

 

バスター・ブレイダー 攻撃力2600→4100

 

「レスキューラビットの効果発動だ! デッキからメガロスマッシャーXを特殊召喚するぜ!」

 

「なら俺は水晶機巧-ハリファイバーの効果発動だ。エクストラデッキからシューティング・ライザー・ドラゴンを特殊召喚するぜ」

 

シューティング・ライザー・ドラゴン ☆7 チューナー 守備力1700

 

メガロスマッシャーX ☆4 攻撃力2000

 

(オレ)のターンなのに!」

 

「知らねぇよ。シューティング・ライザーの効果で、デッキから破壊剣-ドラゴンバスターブレードを墓地に送る。そして、バスター・ドラゴンの効果発動だ。墓地の破壊剣をバスター・ブレイダーに装備する。ドラゴンバスターブレードを装備だ。これによって、お前はエクストラデッキからモンスターを特殊召喚できねぇぜ、遊兎」

 

シューティング・ライザー・ドラゴン ☆7→6

 

 エクストラデッキの使用不可。デュエリストなら誰でも嫌がる効果だが、遊兎は悔しがることすらせずに一枚のカードをディスクに叩きつける。

 

「だったら、月鏡の盾を幻のグリフォンに装備! バトルだ! バスター・ブレイダーに攻撃するぜ!」

 

幻のグリフォン 攻撃力2000→4200

 

 バスター・ブレイダーが幻のグリフォンを剣で切り裂き、『フッ、オレがドラゴンに負けるとでも思っピギャア!』と後ろから引っ掻かれ破壊される。

 

如月遊羽

LP8000→7900

 

「更に、ドラコニアの翼竜騎兵のP効果発動だ! (オレ)の通常モンスターが戦闘ダメージを与えたとき、相手のカードを一枚破壊する!」

 

 光の柱の翼竜騎兵が弓を引き、バスター・ドラゴンを射抜く。

 

「まだだ! ライドロンでシューティング・ライなんとかを攻撃! メガロスマッシャーX二体でダイレクトアタック!」

 

如月遊羽

LP7900→5900→3900

 

「結構ライフ持ってかれたな」

 

 半分を切ったライフをディスクで確認しながら、特に気にした様子もなく遊羽は呟く。

 

「メインフェイズ2だ! メガロスマッシャーX二体でオーバーレイ! 来てくれ、エヴォルカイザー・ラギア!」

 

エヴォルカイザー・ラギア ★4 守備力2000

 

 黒い銀河に魚恐竜が光球となって吸い込まれると、六つの翼を持った恐竜が遊羽を睨み付ける。

 

(オレ)はこれでターンエンドだ!」

 

月見遊兎

LP8000 手札0

場 エクストラ:エヴォルカイザー・ラギア メイン:幻のグリフォン ライドロン 魔法・罠:月鏡の盾(装備:幻のグリフォン) Pゾーン:ファイヤーオパールヘッド ドラコニアの翼竜騎兵

 

「まさか俺が遊兎からダメージを食らうとはな・・・・・・」

 

 微笑みを浮かべ、呟く。それは悔しさなどの負の感情が一切ない、純粋な感動。

 

「俺のターンだ。ドロー! 竜の渓谷の効果を発動するぜ! 手札一枚をコストに、デッキからドラグニティを手札に加える!」

 

 遊羽はそのままドゥクスのカードをディスクに置き、墓地のファランクスが反応する。

 

ドラグニティ-ドゥクス ☆4 攻撃力1500

 

「ラギアの効果だ! 無効にして破壊する!」

 

 竜の渓谷の戦士が竜槍を取り出すと、ラギアが翼を羽ばたかせドゥクスを吹き飛ばす。

 

「今コストにした破壊剣の追憶の効果発動! 墓地から除外し、墓地でバスター・ブレイダーの融合を行う!」

 

「なっ、墓地発動の融合かよ!?」

 

 ニッと笑う遊羽に遊兎が声を上げる。

 

「竜を殺す戦士よ、友の力をその身に受け、新たな世界を切り開け! 融合召喚! 竜破壊の剣士-バスター・ブレイダー!」

 

竜破壊の剣士-バスター・ブレイダー ☆8 攻撃力2800

 

 谷底からバスター・ドラゴンに乗ったバスター・ブレイダーが飛び立ち、混ざり合い、一人の戦士となる。

 

「復活の福音を発動。蘇れ、バスター・ドラゴン!」

 

破戒蛮竜バスター・ドラゴン ☆8 守備力2800

 

 白い鎧となったバスター・ドラゴンのことをバスター・ブレイダーが想っていると、横にひょっこりバスター・ドラゴンが現れ、感動の再会を果たす。

 

「バスター・ドラゴンの効果で、お前のモンスターは全てドラゴン族になる。んで、バスター・ブレイダーの効果。ドラゴン族は全員守備表示となり、効果を発動できねぇ。けどまあ、今はそこじゃねぇ」

 

 バスター・ブレイダーが剣を振るうと、遊兎のモンスターたちが風圧で地面に倒れ伏す。

 

幻のグリフォン 攻撃力2000→守備力0

 

ライドロン 攻撃力2000→守備力0

 

「・・・・・・嫌な予感しかしねぇ」

 

「バスター・ブレイダーの攻撃力は相手の場と墓地のドラゴン族の数だけ上がり、守備貫通効果を持ってる」

 

竜破壊の剣士-バスター・ブレイダー 攻撃力2800→5800

 

「バトルだ。バスター・ブレイダーでライドロンを攻撃! 破壊ノ太刀!」

 

 バスター・ブレイダーが一太刀剣を振るうと、斬撃が飛び、ライドロンを斬り裂いた上で遊兎を襲う。

 

「うおわぁっ!」

 

月見遊兎

LP8000→2200

 

「俺はターンエンドだ」

 

如月遊羽

LP3900 手札0

場 エクストラ:竜破壊の剣士-バスター・ブレイダー メイン:破戒蛮竜バスター・ドラゴン フィールド:竜の渓谷

 

「ッ・・・・・・(オレ)の、ターン!」

 

「ドローフェイズ、バスター・ドラゴンの効果で墓地のドラゴンバスタブレードをバスター・ブレイダーに装備する」

 

 バスター・ブレイダーとバスター・ドラゴンのロックにより、フィールドのモンスターは守備表示になって効果発動もできなくなる。その上、エクストラデッキからリンクモンスターも出せなくなっては反撃のしようがない。

 

 ・・・・・・だが。デッキというのは応えてくれるものだ。

 

「ッ!」

 

 引いたカードを見るなり、遊兎の顔は驚愕に染まった。

 

「それにチェーンして、月の書を発動だ! バスター・ドラゴンを裏側守備表示にする!」

 

 これにより、ロックが崩れる。

 

竜破壊の剣士-バスター・ブレイダー 攻撃力4800→2800

 

(オレ)のモンスター全員を攻撃表示に変える! バトルだ! 幻のグリフォンでバスター・ブレイダーを攻撃!」

 

如月遊羽

LP3900→3800

 

「通常モンスターが戦闘ダメージを与えた、ってことは」

 

「ドラコニアの翼竜騎兵の効果発動だ! 裏側表示になってるバスター・ドラゴンを破壊!」

 

 翼竜騎兵の撃った矢がバスター・ドラゴンを貫き、破壊する。

 

「エヴォルカイザー・ラギアでダイレクトアタック!」

 

如月遊羽

LP3800→1400

 

「ターンエンドだ!」

 

月見遊兎

LP2200 手札0

場 エクストラ:エヴォルカイザー・ラギア メイン:幻のグリフォン 魔法・罠:月鏡の盾(装備:幻のグリフォン) Pゾーン:ファイヤーオパールヘッド ドラコニアの翼竜騎兵

 

「俺のターン」

 

 このタイミングでのドローは何を引いても問題ない。竜の渓谷のコストになる。

 

「竜の渓谷の効果だ。来い、ドゥクス!」

 

 デッキから一枚のカードを引き抜くと、墓地から雷が飛び、月鏡の盾を撃つ。

 

「コストにした魔轟神キャシーの効果だ。月鏡の盾を破壊する」

 

「月鏡の盾の効果で、500ライフを払ってデッキの上に戻す!」

 

月見遊兎

LP2200→1700

 

「ドゥクスを召喚! 効果でファランクスを装備!」

 

ドラグニティ-ドゥクス ☆4 攻撃力1500

 

ドラグニティ-ファランクス ☆2 チューナー 守備力1100

 

「ファランクスでドゥクスをチューニング!」

 

2+4=6

 

「シンクロ召喚! ドラグニティナイト-ヴァジュランダ!」

 

ドラグニティナイト-ヴァジュランダ ☆6 攻撃力1900

 

 再び舞う竜騎士。装備した槍を竜に戻し、チューニングリングとなったファランクスをくぐる。

 

2+6=8

 

「穿て、弾丸! 刻め、弾痕! その一撃は、全てを撃ち貫く! シンクロ召喚! ヴァレルロード・S・ドラゴン!」

 

ヴァレルロード・S・ドラゴン ☆8 攻撃力3000

 

 竜騎士が駆け抜けた光の輪から銃を象った紅の竜が飛翔し、墓地のハリファイバーをその身に宿す。

 

ヴァレルロード・S・ドラゴン 攻撃力3000→3750

 

「ヴァレルロードで幻のグリフォンを攻撃! これでトドメだ!」

 

「うわあぁあ!」

 

月見遊兎

LP1700→0

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「お疲れ様です、遊羽」

 

「も~遊兎、何であそこで攻撃表示にしちゃうかな~!」

 

「いいデュエルだったねー」

 

 虹花、息吹、遥がそれぞれ労いの言葉や説教や感想で二人を出迎え、帰り支度を始める。

 

「そういえば、もうすぐ学園祭シーズンだねー」

 

 何気なく遥が言うと、全員が今聞いて思い出したような顔をする。

 

「えっ、覚えてなかったの!?」

 

 遥が驚愕すると、話を逸らすように遊羽が頭を掻きながら呟く。

 

「虹花との時間が減るから、嫌なんだよな・・・・・・」

 

「準備は仕方ありませんよ。その分、二人で屋台を回りましょう」

 

 連れ立って先を歩く二人に続くように、デュエル場を後にする。

 

「オレたちも出し物しないとな~♪」

 

「何やら、先輩たちが準備しているみたいだぞ」

 

 春樹の報告に上機嫌になった息吹は、下手な鼻歌混じりにスキップし始める。

 

「あ、ボクは放送部で仕事あるんだけど・・・・・・」

 

「ならその分までたっぷり永野さんで遊ばないとだね」

 

「ボク()!?」

 

 にっこりドSスマイルを浮かべる戦に冷や汗をかきながら仕事を早めに切り上げると決心する遥。

 

(彩葉、一緒に回ってくれっかな・・・・・・)

 

 遊兎は一人、そんなことを考えていた。




これでも、遊兎は強くなってます。本当です。信じてください! 何でもはしません!

これで三章は終わりです。幕間を挟んで、四章(学園祭)に入ります。


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キャラクター詳細

三章までのネタバレを多分に含んだキャラクター設定です。


如月 遊羽

 

年齢 15歳

身長 175cm

血液型 A型

好きなもの ドラゴン、カレー

嫌いなもの ドラゴンの擬人化 

 

デッキ WWドラグニティザボルグ、破壊剣士ドラグニティ、全召喚法適応カオスドラゴン

 

ボサボサのオレンジがかった茶髪のデュエルスクール一年生の青年。ドラゴン好きで、デッキは主にドラゴンデッキを使う。

身内や仲間に対して甘く、それ以外には冷たい印象を与えるが、本人は気にしない。

虹花とは幼なじみで、二年後には結婚するような関係。

初めてのパックでドラグニティアームズ-レヴァテインの精霊、レヴと出会い、精霊の存在を知る。

が、当時はそばに精霊の見える人間がいなかったために周囲に否定され、荒れた日々を送っていた。

ゾンビ・マスターの一件で半身がドラゴンとなった。

外見のイメージは茶髪の逆廻十六夜。

 

 

真宮 虹花

 

年齢 16歳

身長 167cm

血液型 O型

好きなもの かわいいもの、パフェ

嫌いなもの ホラー映画、コーヒー

 

デッキ 五虹の魔術師コントロール、アンデット五虹

 

白髪のストレートロングな遊羽の幼なじみ。生徒会長をやっている。

毎日遊羽にお弁当を作ったり、掃除をしたりと家事全般が得意。遊羽もできるが、虹花よりは劣る。

自分のことを想ってくれる遊羽のことは好きだし嬉しいが、そのことで暴走させてしまうことは申し訳ないと思っている。

昔はロックデッキを使っていたが、遊羽に突破されて以来、コントロールデッキに切り替えた。

ゾンビ・マスターの一件でアンデットモンスター『屍界のバンシー』の精霊となった。

外見のイメージはそのまま屍界のバンシー。

 

 

遊民 戦

 

年齢 16歳

身長 170cm

血液型 B型

好きなもの ジャンクフード(特にフライドポテト)

嫌いなもの 弾圧、強さによる強要

 

デッキ 奇襲型ジャンク・ウォリアー

 

黒髪黒目の少年。ジャンク・ウォリアーの攻撃力を上げて戦うデッキを使う、脳筋デュエリスト。

優柔不断な態度と言動だが、相手に負けないという強い信念を持っている。

両親が心中しており、その遺言から「弱い」と言われることを嫌う。

父親の『パワーコード・トーカー』と『デコード・トーカー』、母親の『スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン』を遺品としてデッキに入れている。

天然黒(ピュアブラック)で無自覚なドS。

外見のイメージは旗立颯太。

 

 

永野 遥

 

年齢 16歳

身長 157cm

血液型 A型

好きなもの 手品などの娯楽

嫌いなもの グロテスクなもの

 

デッキ ファンカスノーレ

 

濡れ羽色のショートヘアーの少女。放送部所属。

男装をしていたが、今時のJKらしく空気を読んだり場を和ませたりとコミュニケーション能力が高い。現在戦と交際中。

女性キャラ(精霊除く)の中で一番胸がある。

 

 

月見 遊兎

 

年齢 15歳

身長 160cm

血液型 O型

好きなもの ヒーロー

嫌いなもの ベヒーモス

 

デッキ 通常モンスター軸グッドスタッフ

 

白髪黒目の自称(ワル)。学ランの下のTシャツは『ちっちゃなころからワルガキで』などと不良の歌の名言がプリントされている。「強さ」を求めて(ワル)を自称しているが、容姿以外に一般的な不良らしい行動をとらないため周囲には全く恐がられていない。

中等部に入学した際に彩葉に一目惚れしている。

レスキューラビットの精霊だが、とある事情により精霊が見えない。

外見のイメージは白髪の渡狸卍里。

 

 

花園 彩葉

 

年齢 16歳

身長 155cm

血液型 A型

好きなもの 食べること

嫌いなもの 不味いもの

 

デッキ カードは貰った

 

桜色の髪をツインテールにした童顔の少女。相手のカードのコントロールを奪って戦うという変わったデッキを使う。

常にぼーっとしていて何を考えているのかわからない。

遊兎とは仲が良く、関係は友達以上恋人未満といったところ。

外見のイメージは髏々宮カルタ。

 

 

龍塚 息吹

 

年齢 16歳

身長 169cm

血液型 AB型

好きなもの ドラゴンの擬人化、エンタメ

嫌いなもの 虫

 

デッキ オッドアイズ

 

ワンキル・ソリティア研究会の会長にしてエンタメデュエリスト。

ドラゴン擬人化至上主義者で、遊羽に嫌われている。

ワンキル・ソリティア研究会に属していたが、先輩達が面倒事を嫌ったために会長を押し付けられた。本人は満更でもない。

精霊と人間の間に生まれた精人であり、他人の心を読み取ることができる。それゆえに、自分のことを達観した人間だと思っているが、その実かなりのお人好し。

外見のイメージは黒髪の榊遊矢。

 

 

龍塚 手鞠

 

年齢 13歳

身長 148cm

血液型 AB型

好きなもの ドラゴン(特に通常モンスター)、甘いもの

嫌いなもの 機械、スプラッタ

 

デッキ 通常ドラゴン

 

長い黒髪をポニーテールにした少女。息吹の妹で図書委員。

精霊のオッドアイズとは双子の姉妹だが、こちらは完全に人間。

精神的にも肉体的にもかなりお子様であり、カレーは甘口、わさびは食べられない。

ドラゴン擬人化至上主義者である息吹とは相容れないところがあり、遊羽が兄であればよかったと心の中で思っている。

 

 

四谷 春樹

 

年齢 16歳

身長 172cm

血液型 O型

好きなもの 読書、ソリティア、しょっぱいもの

嫌いなもの 騒がしいこと

 

デッキ LL

 

ワンキル・ソリティア研究会副会長。寡黙で無表情。

しかしその外見とは反対に使うデッキはレベル1を中心としたデッキ。

研究会の中では静かな部類だが、だからといって他の部員を止めることはしないため、同列に扱われている。

外見のイメージは司葉達也。

 

 

水瀬 日向

 

年齢 18歳

身長 177cm

血液型 A型

好きなもの 格好いいもの、HERO

嫌いなもの 大人

 

デッキ アドバンス召喚アバター、戦士族ドレットルート、ハーピィイレイザー

 

アベシの三羽烏の一人にして覆面プロデュエリスト『手品師』。フェイバリットカードは『マジカルシルクハット』。

『真竜輝兵ダースメタトロン』の悪霊に襲われたところを遊羽に助けられ、それをきっかけに関係が続いている。

少し恰好付けたがりな面があり、後輩の前でいいところを見せようとして失敗することもしばしば。妹の響に怒られるまでがワンセット。

 

 

銀 星河

 

年齢 18歳

身長 180cm

血液型 O型

好きなもの 星、面白いこと

嫌いなもの 悪

 

デッキ 混合銀河眼

 

三羽烏の一人でワンキル・ソリティア研究会の一員。

研究会に入った理由は自分の好きなモンスターを並べたいからであり、ワンキルやソリティアが好きなわけではない。

大人びいた雰囲気だが、面白いことには悪ノリする。

複数の精霊を従えており、その実力は底が知れない。

外見のイメージは黒髪にしたFGOのシャルル=アンリ・サンソン。

 

 

瑞浪 孝之

 

年齢 17歳

身長 175cm

血液型 A型

好きなもの ふざけること、面白いこと

嫌いなもの シリアス

 

デッキ 星杯ソリティア

 

三羽烏の一人にしてワンキル・ソリティア研究会所属。

二年生の時に星河と共にワンキル・ソリティア研究会へ加入した。加入理由は好きなモンスターたちを最大限に使うため。

三羽烏の中で唯一の一般(精霊が見えない)人。




外見のイメージを見れば、作者の趣味がよくわかると思います・・・・・・。

次回、幕間。というわけで、彼らの出番です。


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幕間:星河の1日

大変長らくお待たせいたしました。

しばらく投稿できずにスミマセンでした。

デュエル回です。


『・・・・・・はぁ』

 

 部屋の隅で、黒い巨人が体育座りをしながら今日何度目かわからないため息をつく。

 

「どうしたんだ、あれは」

 

 青い髪と不思議な色の瞳を持つ青年が、朝食の準備をしている女性に訊くと、女性は青年と同じ輝きを持つ瞳で答える。

 

「何でも、作者が中古屋の100円ストレージで見つけちゃったらしいのよ、守護神エクゾディアのカード」

 

「・・・・・・そうか」

 

 女性の答えに対し、自分のことも思い出したのか、青年は渋い顔をする。

 

『タキオンはいいよなぁ、ストレージに入ったことなんてないだろう』

 

 その巨人―――エクゾディアは、少しげんなりした表情で告げる。

 

「そうね。この前再録されたけど、むしろそっちの方が高いもの」

 

 黒髪をかきあげながら、女性―――タキオンが告げると、

 

「だが、その分色んな人に使われるということだと私は思う。現に私はノーマルカードになって、様々な人の手に渡っている。」

 

 青年―――フォトンは顎に手を当て、言葉を選ぶように言う。

 

『何だ、慰めてくれんのか?』

 

 少し嬉しそうなエクゾディアに、フォトンは首を左右に振って答える。

 

「いや、星河の言葉を借りただけだ。私もストレージに落ちた時は少ないからずショックを受けたからな」

 

 そこで、タキオンが自分たちの主の不在に違和感を覚え、フォトンに視線を向ける。

 

「星河はどうしたのかしら。冥と魔導院は地下でしょうけど」

 

「そうだな・・・・・・少し様子を見てくる」

 

 フォトンはそう言って、部屋を出て、階段を上がる。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「ねぇ、どいてくれないかしら。掃除ができないのだけれど」

 

 星河の家の、地下。

 

 メイド服を着た黒髪巨乳の少女が告げると、その視線の先で影がもぞりと動く。

 

「もう少し待ってくれませんか? 丁度研究が終わりそうなんです」

 

 パソコンに向き合ってキーボードを打ち込み、プリンターから資料を吐き出すのは、魔導院。以前は悪役だったが、今ではただのニートな研究者だ。

 

「早くしないと、私の朝ご飯がなくなっちゃうんだけど。魔導院の巻き添えを食らうのは嫌だわ」

 

 箒を支えに脱力する少女は、冥。混沌帝龍の精霊であり、なんやかんやあって、魔導院と共に星河の精霊となった。

 

「いいんですか? これは星河の能力をカード化する研究ですよ?」

 

「早く完成させて、魔導院。私も星河のスペックについては気になってるんだから」

 

 あまりに早い変わり身に、魔導院はため息をつきたくなる。

 

(以前は様付きで呼んでくれていたんですがね・・・・・・どこで間違えたのでしょう)

 

 自分の行ってきた数々の悪行(洗脳、殺人、ゾンビ化、少女誘拐未遂)を棚に上げ、魔導院は心の中で肩をすくめる。

 

 そして、エンターキーを叩くと、一枚のカードが画面に表示される。

 

「さて、出来ましたよ。星河のカードが」

 

「え、ちょっと、見せて!」

 

 

星河龍(セイガリュウ) グラン・ギャラクシアス

 

★10 光属性 ドラゴン族 攻撃力4500 守備力4000

エクシーズ・効果

 

レベル10モンスター×5

このカードは自分フィールドのランク8以上の「ギャラクシー」エクシーズモンスターの上に重ねてエクシーズ召喚することもできる。その場合、そのモンスターの「エクシーズ素材にできない」効果は適用しないものとする。

このカードはエクシーズ召喚及びこのカードの効果でしか特殊召喚できない。

このカードはルール上、カード名に「フォトン」「サイファー」「ギャラクシーアイズ・タキオン・ドラゴン」を含むものとする。

「星河龍 グラン・ギャラクシアス」の②、③の効果は1ターンに一度しか発動できない。

①このカードは相手の効果を受けず、相手によってリリースされず、相手はこのカード以外のモンスターを攻撃対象にできない。

②このカードが相手モンスターと戦闘を行うダメージステップ開始時に発動できる。その相手モンスターとこのカードを除外する。この効果に対し、相手は効果を発動することができない。

③このカードが除外された時に発動できる。このカードを特殊召喚する。エクシーズ素材を持ったこのカードが除外されていた場合、その数×500ポイント攻撃力をアップする。

④このカードが破壊された場合に発動できる。墓地のモンスター一体を特殊召喚する。

⑤自分フィールドのモンスターの攻撃力は、自分の墓地の光属性モンスターの数×200アップする。

 

 

「「・・・・・・うわぁ」」

 

 何とも言えない顔になり、画面を呆然と見つめる二人。あえてその心境を語るなら、「アイツ本当に人間か」といったところだろう。

 

「星河って、結構人外だったのね。どうなってるのかしら」

 

「いや、このカードは星河がフォトンとタキオン、星龍態、エクゾディアと合体した状態のステータスです。流石に常にコレはないでしょう」

 

 そんな奴がいてたまるか、と言外に示唆する魔導院。

 

「・・・・・・そういえば、星態龍はどうしたの?」

 

 丁度出た名前に反応し、姿が見えないことを気にする冥。先程リビングでフォトンとタキオン、エクゾディアの姿は確認している。

 

「まだ寝ているのではないですか? 彼はどちらかというと夜型ですから」

 

「そうかもしれないわね。・・・・・・ところで魔導院、そろそろ本当にどいてくれないかしら。いい加減邪魔よ」

 

「・・・・・・はい」

 

 抵抗する材料のなくなった魔導院は、大人しく部屋から出た。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「星河? 入るぞ」

 

 ドアをノックし、星河の部屋に入るフォトン。

 

 そこには、机に突っ伏し、「止まるんじゃねぇぞ・・・・・・」のポーズをした星河がいた。

 

「星河!?」

 

 慌ててフォトンが駆け寄り、肩を揺する。

 

「星河、何があった!? 誰にやられた!?」

 

 取り乱しながらフォトンが問うと、星河はむくりと起き上がり、

 

「おはよう、フォトン」

 

 と、何もなかったかのように言った。

 

「・・・・・・」

 

「新レギュレーションでのワンキルやソリティアについて考えていたら、寝てしまったようだな」

 

 唖然とするフォトンをそっちのけで、星河は軽く伸びをする。

 

「そろそろ朝食の時間だな。下に行こう」

 

 椅子から腰を上げ、部屋を出る。

 

 フォトンは少し額に手を当て、ため息をつく。

 

「全く、星河の悪い癖だな」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 朝食を食べ終えた星河は、黒いロングコートに着替え、白いDホイールに跨がった。

 

『そうか。今日はセキュリティに顔を出す日だったな』

 

 竜の姿に戻ったフォトンが思い出したように呟くと、その隣で小さな赤い龍が声を出して笑った。

 

『ゲギャギャギャ。オマエ、トウトウボケタカ? 最近物忘レガ酷イゾ』

 

 からかうように言うその龍を、フォトンは軽く掴み、冷ややかな目で睥睨する。

 

『私が年寄りだと言いたいのか?』

 

 しかし、その龍はまるで動じずに笑う。

 

『オイオイ、攻撃力ハオレサマノ方ガ上ダゾ? マルデ効カナイナ』

 

 そう、この龍は星態龍。あまりに体が大きいため、普段はデフォルメ状態で過ごしている。

 

「今日は何か連絡があるらしい。直接会う程のことだ、恐らく重要なことだろう」

 

 その言葉を聞き、三体の精霊は気を引き締める。冥と魔導院は留守番、エクゾディアは星河の中だ。

 

「行くぞ」

 

 そう精霊たちに告げると、星河はDホイールを発進させた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 星河が向かったのは、アベシ郊外にあるスタジアムだ。閉鎖され、現在はセキュリティの訓練施設の一つになっている。

 

「来たか、銀。待っていたぞ」

 

「・・・・・・予定の十分前なのですが、何故待たれているのでしょうか。濱野さん」

 

 スタジアムに入った星河を待ち構えていたのは、濱野 秀夫(はまの ひでお)。セキュリティの隊員で、星河の上司だ。

 

「何、お前なら一時間前にでも来そうだったからな。昨日からここに泊まった!」

 

 ガハハと笑う秀夫に、星河は呆れたような視線を向ける。

 

「それで、俺への用事というのは? こちらは休暇中に呼び出しを食らっている身なのですが」

 

 星河はセキュリティだが、現在休暇中だ。そのため、デュエルスクールに通うことができている。

 デュエルスクールに入学する前は、セキュリティの養成学校に通い、力を付けてきた。

 

「お前に上からの指令だ。デュエルスクールを卒業した後、こことは別の支部に行って欲しいという、な」

 

「それは・・・・・・左遷、ということですか」

 

 流石に三年も休暇をとるのはやり過ぎたか、と星河は過去を思い返すが、二年の途中で一度出張があったことを思い出し、自分に非がないことを確認する。

 

「違うぞ。何でも、支部で異変があったらしくてな。セキュリティの中でも五本の指に入るお前が、左遷なんてされる訳がないだろう」

 

 秀夫はもう一度ガハハと笑ってから、本題に入る。

 

「オレはな、銀。お前の腕がなまっていないか心配なんだ」

 

「・・・・・・なるほど。つまり、デュエルですね」

 

 星河がDホイールから取り外しておいたデュエルディスクを腕に装着し、デッキをセットする。

 

「察しがいいな」

 

 秀夫もまた、ディスクを構える。

 

「「デュエル!」」

 

銀星河

LP8000

 

濱野秀夫

LP8000

 

「俺の先攻。敬語は面倒なので省くぞ」

 

「いいぞ。デュエルの時は無礼講、それがセキュリティでの暗黙の了解だからな」

 

 セキュリティにおいて、求められるものは二つ。実力と実績だ。そのため、上司と部下という関係は、形式上のものでしかない。

 

「まずは手札一枚をコストに銀河戦士を特殊召喚。効果でデッキから銀河眼の光子竜を手札に加える」

 

銀河戦士 ☆5 守備力0

 

 星河の手札から白銀の鎧を纏った戦士が飛び出し、星河にフォトンのカードを献上する。

 

「トレード・インを発動。フォトンをコストに、二枚ドロー。更に、おろかな埋葬でジェット・シンクロンを墓地へ送り、手札一枚をコストに、墓地から特殊召喚する」

 

ジェット・シンクロン ☆1 チューナー 守備力0

 

「次だ、銀河騎士の効果発動。妥協召喚し、墓地の銀河眼の光子竜を特殊召喚する」

 

銀河騎士 ☆8 攻撃力1800

 

銀河眼の光子竜 ☆8 守備力2500

 

「なるほどな。つまり、リンク召喚か」

 

「わかっているならば言わなくていい。サーキットコンバイン。来い水晶機巧-ハリファイバー」

 

水晶機巧-ハリファイバー link2 攻撃力1500

 

 銀河騎士とジェット・シンクロンが門の中に入り、水晶の機械戦士へと姿を変える。

 

「ハリファイバーの効果でデッキからジャンク・チェンジャーを特殊召喚」

 

ジャンク・チェンジャー ☆3 チューナー 守備力900

 

「ほう、珍しいカードを入れているな」

 

「通常召喚権が余ることがあるからな。シンクロもエクシーズもできるので、試している」

 

 レベル変動によってスターダスト・ドラゴンやランク4エクシーズに繋げられ、スターダスト・チャージ・ウォリアーにもなれる。星態龍のシンクロ召喚も狙えるなど、星河のデッキとの相性は悪くないと言える。

 

「最後だ。ジャンク・チェンジャーで銀河戦士をチューニング」

 

3+5=8

 

「銀河を流れし星屑よ、大いなる星に導かれ、この世界へ舞い降りよ! シンクロ召喚! スターダスト・ドラゴン!」

 

スターダスト・ドラゴン ☆8 攻撃力2500

 

 舞うようにしてフィールドに現れる白銀の竜。フォトンと並ぶその姿は圧巻の一言に尽きる。

 

「ターンエンドだ」

 

銀星河

LP8000 手札2

場 エクストラ:水晶機巧-ハリファイバー メイン:銀河眼の光子竜 スターダスト・ドラゴン

 

「あれだけ展開して、まだ手札を残しているとはな。ドロー」

 

 秀夫はカードを引き、少し口角を上げると、そのままスタンバイフェイズを経由しメインフェイズに入る。

 

「お前のギャラクシーアイズとスターダストをリリースし、溶岩魔神ラヴァ・ゴーレムを特殊召喚!」

 

溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム ☆8 攻撃力3000

 

「やはり握っていたか」

 

 フォトンとスターダストを溶かしながら自分の場に現れる溶岩魔神に、星河は舌打ちしたくなる。

 

 この溶岩はかなり熱いらしく、ハリファイバーが汗をかいている。

 

「更に、召集の聖刻印を発動! デッキから、聖刻竜-トフェニドラゴンを手札に加える」

 

 その動きを見て、星河は秀夫のフェイバリットがすでに手札にあることを察する。

 

「フィールド魔法、闇黒世界-シャドウ・ディストピア! 効果でお前のラヴァ・ゴーレムと、手札のトフェニをリリースし、DDD覇龍王ペンドラゴンを特殊召喚!」

 

DDD覇龍王ペンドラゴン ☆7 攻撃力2600

 

 闇の世界で溶岩魔神と聖なる竜が生け贄となり、覇龍王が召喚される。

 

「来たか、濱野さんのフェイバリット」

 

「おうよ! リリースされたトフェニの効果発動! デッキのガード・オブ・フレイムベルを特殊召喚」

 

ガード・オブ・フレイムベル ☆1 チューナー 守備力2000

 

「レベル1のチューナー、ということは・・・・・・」

 

「その通り、ガード・オブ・フレイムベルでペンドラゴンをチューニング!」

 

 フレイムベルの眷属が光の輪となり、覇龍王を包む。

 

1+7=8

 

「シンクロ召喚! DDD呪血王サイフリート!」

 

DDD呪血王サイフリート ☆8 攻撃力2800

 

 呪血王は剣を構え、星河と向き合う。

 

「行くぞ、バトルだ」

 

「バトルフェイズ開始時、ハリファイバーの効果発動。来いフォーミュラ・シンクロン」

 

フォーミュラ・シンクロン ☆2 チューナー 守備力1500

 

「効果で一枚ドローする」

 

「構わん、サイフリートで攻撃!」

 

 呪血王が剣を振るい、フォーミュラを撲殺する。血で剣が錆びていたようだ。

 

『撲殺トハナ、中々面白イ』

 

『・・・・・・そうか?』

 

 デフォルメ状態でゲラゲラ笑う星態龍に、フォトンは首を傾げる。

 

「オレはこれでターンエンドだ」

 

シャドウ・トークン ☆3 守備力1000

 

濱野秀夫

LP8000 手札2

場 エクストラ:DDD呪血王サイフリート メイン:シャドウ・トークン×2 フィールド:闇黒世界-シャドウ・ディストピア

 

「俺のターン。復活の福音を発動!」

 

「サイフリート!」

 

 星河の発動したカードはサイフリートの効果によって効果が無効となった。

 

「だが、これは囮だ。妨げられた壊獣の眠り、発動!」

 

「流石にそれは読めなかったな。通そう」

 

 サイフリートと影たちが地面の亀裂に落ち、代わりに三つ首の雷竜と海亀竜がそれぞれのフィールドに君臨する。

 

雷撃壊獣サンダー・ザ・キング ☆9 攻撃力3300

 

海亀壊獣ガメシエル ☆8 攻撃力2200

 

「ギャラクシーサーペントを召喚。そしてサンダー・ザ・キングをチューニング」

 

ギャラクシーサーペント ☆2 チューナー 攻撃力1000

 

2+9=11

 

「我が手に拍動せし大いなる銀河よ、この手を離れて全てを照らせ! シンクロ召喚! さあ、この世界に顕現せよ、星態龍!!!」

 

星態龍 ☆11 攻撃力3200

 

『サテ、暴レルトスルカ!』

 

 デフォルメ状態を解除し、その巨体を現す星態龍。これにはマッチポンプ役(ガメシエル)もビックリだ。

 

「バトルだ。星態龍でガメシエルを攻撃。スター・イーター!」

 

『コレデモ食ラッテナ!』

 

 星態龍が星の輝きを持つブレスを放ち、ガメシエルを消し飛ばす。

 

濱野秀夫

LP8000→7000

 

「ターンエンドだ」

 

銀星河

LP8000 手札1

場 エクストラ:星態龍

 

「どうやら、腕はなまってなさそうだな、銀」

 

「・・・・・・なら、デュエルは終わりか?」

 

 答えをわかっていながらも、星河は敢えて訊いた。

 

「そんな訳はないだろう。さっきのは口実で、オレがお前とデュエルしたかっただけだからな!」

 

「・・・・・・」

 

 否、わかっていなかった。星河の予想以上の答えだった。

 

「行くぞオレのターン。ドロー!」

 

 これで手札は三枚。手札の少ない星河は少し警戒するが、秀夫のデッキならばこのターンにやられる可能性は低いだろうと見積もる。

 

「DD魔導賢者ケプラーを召喚し、効果で地獄門の契約書を手札に加え、発動! 効果でDDラミアを手札に加え、ラミアとお前の星態龍をリリースしペンドラゴンを特殊召喚! 更に、ケプラーでリンクリボーをリンク召喚!」

 

DDD覇龍王ペンドラゴン ☆7 攻撃力2600

 

リンクリボー link1 攻撃力300

 

 目まぐるしいDDムーヴの最中、星態龍が『ドウヤラ、オレサマハココマデノヨウダ・・・・・・』とリリースされ、フォトンとタキオンが敬礼を送る。そして現れたペンドラゴンにビシッと親指を下す。

 

(何をアホなことをしている)

 

 星河が心の中で告げると、二体の竜は少し動揺する。

 

『いや、これはだな・・・・・・』

 

『か、身体が勝手に動いたのよ! 私は悪くないわ!』

 

 二体の言い訳に、星河は軽く溜め息をつき、

 

(やるならとことんやれ。俺も便乗するから)

 

 と、いつも通り悪ノリする気満々だった。

 

「バトルだ。行け、ペンドラゴン!」

 

「チッ、ライフで受ける」

 

 違うカードゲームのセリフを使いながら、ペンドラゴンのブレスを受ける。

 

銀星河

LP8000→5400

 

「続け、リンクリボー!」

 

「同じくライフだ」

 

 リンクリボーの体当たり。効果は抜群だ! などの表示は出ないか一瞬期待する星河だったがそんなことはなかった。

 

銀星河

LP5400→5100

 

「オレはこれでターンエンド。さて、どう出る?」

 

シャドウ・トークン ☆3 守備力1000

 

濱野秀夫

LP7000 手札1

場 エクストラ:リンクリボー メイン:DDD覇龍王ペンドラゴン シャドウ・トークン×2 フィールド:闇黒世界-シャドウ・ディストピア

 

「・・・・・・俺のターン、ドロー」

 

 デッキからカードを引き抜き、確認する。

 

「銀河天翔! 羽ばたけ、フォトン! 銀河剣聖!」

 

銀星河

LP5100→3100

 

銀河眼の光子竜 ☆8 守備力2500

 

銀河剣聖 ☆8 守備力0

 

 星河のライフを糧とし、墓地のフォトンが羽ばたく。そしてそれに追従するように銀河剣聖が剣を掲げる。

 

『さて、私の出番・・・・・・と言いたいところだが、』

 

 フォトンはチラリと星河の後ろにいるタキオンに目を向ける。

 

『星河。タキオンが最近、出番が少ないと騒いでうるさいのだが、どうするべきだろうか?』

 

『なっ!』

 

 突然文句を言われたタキオンが物申そうとすると、その前に星河が告げる。

 

「そうか。なら、活躍させないとな」

 

 星河が腕を正面の向け、黒い渦を出現させる。

 

「フォトンと銀河剣聖でオーバーレイ!」

 

 二体のモンスターは光点となって渦に呑まれる。

 

「渦巻く銀河よ、時を超え空を超え時空を超え、我が僕の瞳に宿れ! エクシーズ召喚! No.107銀河眼の時空竜!」

 

No.107銀河眼の時空竜 ★8 攻撃力

 

『・・・・・・本当に久しぶりの出番ね』

 

 喜びよりも先に驚きを感じたらしいタキオンは、戦場の空気を噛み締めるようにゆっくりと腕を動かす。

 

「バトルだ。タキオンの効果発動! オーバーレイユニットを一つ取り除き、フィールドのモンスターの効果を無効にする!」

 

『跪きなさい!』

 

 タキオンが咆哮すると、リンクリボーとペンドラゴンが地に伏せる。

 

「行くぞ。タキオンでリンクリボーに攻撃! 時空のタキオン・ストリーム!」

 

 タキオンのブレスから逃れようとリンクリボーがもがくが、咆哮による重圧で地面に抑えつけられ、モロに食らう。

 

濱野秀夫

LP7000→4300

 

「これでターンエンド」

 

銀星河

LP3100 手札1

場 エクストラ:No.107銀河眼の時空竜

 

「ふむ、オレのターン」

 

 カードを引き抜き、フィールドを見る。

 

「スタンバイフェイズ、地獄門の契約書の効果でダメージを受ける。だが、それにチェーンして手札のDDD反骨王レオニダスの効果発動! このカードを特殊召喚し、受けたダメージ分のライフを回復する!」

 

濱野秀夫

LP4300→3300→4300

 

DDD反骨王レオニダス ☆7 攻撃力2600

 

 自作自演のダメージコンボを作り出した秀夫はニヤリと笑う。

 

「墓地のDDラミアの効果発動! 地獄門の契約書を墓地へ送り、特殊召喚!」

 

DDラミア ☆1 チューナー 守備力1900

 

 契約書をベシンと叩いてどかしながら、ラミアがフィールドに座る。

 

「チューナーとそれ以外のモンスター・・・・・・来るか」

 

「おうよ! DDラミアでDDD反骨王レオニダスをチューニング! シンクロ召喚、出でよ、覇王眷竜クリアウィング!」

 

覇王眷竜クリアウィング ☆8 攻撃力2500

 

 ラミアがレオニダスを叩いてチューニングし、闇へ堕ちた白銀の竜が飛翔する。

 

「クリアウィングの効果発動! 相手フィールドのモンスター全てを破壊する!」

 

「手札からトラップ発動! タキオン・トランスミグレイション! クリアウィングの効果を無効にし、デッキに戻す!」

 

『吹き飛びなさい!』

 

 タキオンが全身から光の波動を放ち、クリアウィングを吹き飛ばす(エクストラデッキに戻す)

 

「くっ、ならばペンドラゴンの効果発動! 手札を一枚捨て、攻撃力を500アップ! エクスカルペイト・チャージャー!」

 

DDD覇龍王ペンドラゴン 攻撃力2600→3100

 

 ペンドラゴンの周りをオーラが漂い、力を増す。

 

「バトルだ。ペンドラゴンでタキオンドラゴンを攻撃!」

 

 ペンドラゴンの周りを漂うオーラが収束し、ブレスに重なって放出される。

 

銀星河

LP3100→3000

 

 シャドウ・トークンでは反撃された時のダメージが大きいので攻撃しない。

 

「これでターン終了。お前のターンだ」

 

濱野秀夫

LP4300 手札0

場 メイン:DDD覇龍王ペンドラゴン シャドウ・トークン×2 フィールド:闇黒世界-シャドウ・ディストピア

 

 どう巻き返すか、試すように星河を見る秀夫。その視線を感じながらも反応はせず、星河はカードを引く。

 

「俺のターン。貪欲な壺を発動! ジャンク・チェンジャー、銀河戦士、銀河騎士、フォトン、タキオンをデッキに戻し、二枚ドロー!」

 

 引いたカードを見つめ、少し考える星河。

 

「復活の福音、死者蘇生! 蘇れ、スターダスト・ドラゴン! フォーミュラ・シンクロン!」

 

スターダスト・ドラゴン ☆8 守備力2000

 

フォーミュラ・シンクロン ☆2 チューナー 守備力1500

 

「フォーミュラ・シンクロンでスターダスト・ドラゴンをチューニング!」

 

2+8=10

 

「集いし星屑の輝きが、天に流れる流星となる! アクセルシンクロ! シューティング・スター・ドラゴン!」

 

シューティング・スター・ドラゴン ☆10 攻撃力3300

 

「ッ! だが、五枚めくれない限り、オレがこのターン負けることはないッ!」

 

「濱野さん」

 

 チッチッチ、と星河は指を振り、続ける。

 

「それは、フラグだ」

 

 星河がデッキの上からカードを五枚引き抜く。

 

「亡龍の旋律-デストルドー、ジャンク・チェンジャー、ジェット・シンクロン、デブリ・ドラゴン、ギャラクシーサーペント! これにより、シューティング・スター・ドラゴンは五回攻撃が可能ッ!」

 

 流星の輝きを纏い、白銀の決闘竜が飛翔する。

 

「バトルだ! シューティング・スター・ドラゴン、グォレンダァ!」

 

「うのわああぁあ!」

 

濱野秀夫

LP4300→3700→400→0

 

 ふぅ、とやり切った感で額の汗を拭う星河。

 

『ちょっと! 私、フィニッシャーになってないじゃない!』

 

『落ち着け、タキオン。流石に今回は仕方ないだろう』

 

『ゲギャギャギャギャ! オマエノ負ケダナ、タキオン』

 

 星態龍の発した『負け』という言葉に、タキオンはピクリと反応する。

 

『負け・・・・・・? 私の、敗北ですって・・・・・・』

 

(あ、おい星態龍。何地雷を踏み抜いているんだ! 後で大変なんだぞ!?)

 

『(すねたタキオンを慰めるのは結構面倒なんだぞ!? 何てことをしてくれるんだ)』

 

『(ア、マズイ)』

 

 冷や汗を流しながら星河たちがアイコンタクトで会話していると、

 

『う、うわぁぁあん! e・ロえも~ん!』

 

 と何処かへ飛び去ってしまった。恐らくは酒場。

 

『・・・・・・どうするか』

 

『イヤ、ドウスレバイインダコレ。モウオレサマノ手ニハ負エナイ。後ハ頼ンダ、星河』

 

「いや、おい」

 

『クハハハハ! やっぱり星河の中は面白いことだらけだな』

 

(お前が締めるのか、エクゾディア)

 

『いや、何か忘れられてそうでな』

 

 精霊たちとそんなやり取りをしながら、星河はDホイールに跨がった。




―言い訳―

いえ、私も忙しかったんです。高校の入学許可候補者説明会とかデュエルリンクスとか中古屋で買ったWiiの遊戯王ゲームとかアンデットでソリティアしたりとか高校の課題とかpixivで擬人化ドラゴンイラスト漁ったりとか。ん? 何か一部おかしい気が。

二つ目の幕間は半分ほど書けているので、次回までにはそんなに間が空かない予定です。


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In the Yuuha's deck

また更新期間が空いてしまった・・・・・・。

本当は遊兎のデュエル回を入れようと思ったのですが、没になったので別の話。

デュエルなしです。


「ふぁああ、眠ぃ」

 

 背中を岩に預け、青い鎧を身にまとった騎士は欠伸をする。

 

「ドラゴエクィテス。最近出番がないからといって、弛んでいるぞ」

 

 そう告げるのは、この場所の主、レヴだ。

 

 ここは、遊羽のデッキの『竜の渓谷』の中だ。レヴがカードの外に出ることのできない下位精霊のために作った場所で、遊羽のデッキのモンスターたちはデュエルがないときは殆どここにいる。

 

「レヴ様ー、新入りを連れてきたぞー」

 

 どこからか飛んできたのはドラグニティ-ジャベリン。その後ろにいるのは、一人の剣士と一匹の竜だ。

 

「君がバスター・ブレイダーか。伝説のデュエリストの僕と共に戦えること、嬉しく思う」

 

 バスター・ブレイダーにレヴが手を差し出すと、バスター・ブレイダーはその手を握り返す。

 

「あぁ。俺もこんなのどかな場所に来れて嬉しいよ」

 

 デュエル中とは打って変わって穏やかな雰囲気のバスター・ブレイダーに、レヴは首を傾げる。

 

「いえ、すみません。ブレイダーはデュエルになると人が変わってしまうんです」

 

 すると、彼の足元から少年のような声が返ってきた。

 

「君は、破壊剣の伴竜か」

 

「はい。バスター・ブレイダーのお供、後のバスター・ドラゴン。気軽に伴竜とでも呼んでください」

 

 どこかインテリ系の雰囲気を漂わせるその子竜はえっへんと胸を張ると、バスター・ブレイダーの肩に登る。

 

「というわけだ。暫く厄介になる」

 

「ああ、宜しく頼む。早速だが、この渓谷内を案内しよう。付いて来てくれ」

 

「了解だ。俺のことはブレイダーでいい」

 

「わかった。私もレヴで構わない」

 

 そう名乗り合い、レヴは歩き始める。

 

 二人と一匹が去ったのを見届けると、ドラゴエクィテスは一度伸びをした。

 

「くぁああ、もう一眠りするか」

 

「エクィテス、おめーはいつまで寝てる気だ。門番なんだからしっかり働け」

 

 ジャベリンは白い目を向けるが、ドラゴエクィテスは気にせず微睡む。

 

「はー、またか。しゃーない、おれが代わりに見張っとくか。どーせ何もないだろうけどな」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 少し歩くと、岩で出来た一件の建物が見えてくる。

 

「ここはカフェテリアになっている。ウィンドウィッチたちが働いてくれている」

 

「いらっしゃーい! 新入りさんかしら?」

 

 店内から出てきたのはアイス・ベル。早速ブレイダーにトリシューラパフェをご馳走している。

 

「おや、こんな可愛い子も来たんですか。主にしては珍しいですね」

 

 ブレイダーの肩にいる伴竜を撫でながら声を掛けるのはグラス・ベル。

 

「初めまして、破壊剣の伴竜です。伴竜とでも呼んでください」

 

「はぁ、どうも。グラス・ベルです。それで、あっちがスノウ・ベル」

 

 グラス・ベルが手で示した先では、スノウ・ベルが体を揺らして音を奏でていた。

 

「~~♪ ~~~~~♪」

 

 曲が終わると、それを聞いていたドゥクス、プリムスピルスが拍手を送る。

 

「いやー、これで明日も頑張れそうだわ。ありがと」

 

「ま、オレは多分出番ないけどな。デッキにも入ってないし」

 

 ドゥクスがスノウ・ベルに手を振りながら飛び立ち、プリムスピルスが後に続く。

 

「・・・・・・済まないな、ここは鳥獣族やドラゴン族が住むように作ったから、戦士族の君には少し住みづらいかもしれない」

 

 その様子を見ていたブレイダーにレヴが申し訳なさそうに言うと、ブレイダーは手を振って否定する。

 

「大丈夫だよ。崖くらい登れないと、ドラゴンは殺せないし。特訓と思えば丁度いい」

 

 爽やかな笑みと共に聞こえた物騒な言葉に、レヴは苦笑したきりだ。

 

「すみません、多分滅多なことがない限りは大丈夫ですので」

 

 伴竜が一応の弁明をするが、レヴの苦笑は消えないままだ。ただ、その原因は別にあるのだが。

 

「ドラゴン殺しの剣士だって! 私たち魔法使い族で良かったー!」

 

「シッ、聞こえますよ。それと、隣のあの竜、敵をドラゴンに変えるらしいです。気をつけましょう」

 

「うん、そうだね!」

 

「~~♪」

 

 同意するようにスノウ・ベルが音を奏でる。

 

「ああ、気にしないでくれ。慣れてるからな、こういうの」

 

 ブレイダーは言葉通り気にした様子もなくパフェを頬張る。

 

「いや、そこではなくてな。これは彼女たちなりの挨拶なんだ。この程度の毒舌に耐えられなければ、デュエルでも役に立たないだろう、というな」

 

 レヴがそう言うと、ブレイダーはなるほど、と頷いただけでパフェを食べ続ける。

 

「・・・・・・甘党なのか?」

 

「実は、かなり」

 

 そうか、というレヴの応答に反応することもなく、パフェをがっつくブレイダー。伴竜は退屈になったようでグラス・ベルと戯れている。

 

「ごろにゃーん」

 

「おや、猫の竜ですか? 兎の竜は聞いたことがありますが、珍しいですね。記念に撫でておきましょう」

 

「気安く触るとヤケドするよ? なんてね」

 

「そうですか。では一度冷やしてから触りましょうか。-273度くらいまで」

 

「それ絶対零度だよね。冷やすどころか氷付けだよね」

 

「竜の氷像、中々絵になると思いませんか?」

 

「うん。ただそれをボクでやろうとしないでくれない?」

 

 相性はいいようで、仲良くなれそうな雰囲気だ。

 

「おかわりはしてもいいのか?」

 

「・・・・・・そろそろ、他も回りたいのだが」

 

 二杯目に行こうとしたブレイダーの肩をレヴが掴む。

 

「またのご来店、お待ちしてまーす!」

 

「待ってます」

 

「~~♪」

 

 大きく両腕を振るアイス・ベルと、小さく右手を振るグラス・ベル。体を揺らすスノウ・ベル。彼女らに見送られ、レヴは次の場所へ進む。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「ここは、修練所だ。体を動かしたい時などは、ここに来るといい」

 

 次にレヴたちが訪れたのは、大きく地面が穿たれたクレーター。修練所だというそこでは、ガンドラXがレダメとダークマターにボコられていた。

 

「テメーのせいで禁止になっちまったじゃねーかー!」

 

 ブレス。

 

「闇のカードでオリジナルのナンバーズっていう設定どうしてくれるんだ!」

 

 闇の球体による打撃。

 

「つうか守護竜が悪いんだー! 何であんなバカ共を作ったコンマイー!」

 

 翼による斬撃。

 

「あー! ごめんなさい攻撃しないでください! 痛、ちょっ、やめっ…ヤメロォー!!」

 

 最後は確実に八つ当たりだろ、とレヴが心の中で呟いくと、彼の隣でブレイダーが震える。

 

「? ブレイダー?」

 

 ブレイダーはカッと目を見開くと、剣を構え、叫ぶ。

 

「ドラゴンだ!! ドラゴンだろう!? なあ、ドラゴンだろうおまえ首置いてけ!! なあ!!!」

 

 そう言うが早いか突っ込み、三体の竜相手に互角以上の戦いを繰り広げる。

 

 レヴが唖然としていると、足元の伴竜がヤレヤレというように肩をすくめた。

 

「ブレイダー、戦いになるとああなっちゃうんです。気をつけてくださいね」

 

「・・・・・・いや、あれは戦い以前の問題の気がするのだが」

 

 レヴの心境などお構いなしに、戦いは激化する。

 

「首、置いてけ!」

 

「やめてランボーにする気でしょ!! サティスファクションタウン編みたいにサティスファクションタウン編みたいに!!」

 

「やめろー! こんなの戦い(デュエル)じゃない!」

 

「ま、待て! 待ってくれ! オレには家で待っている子供がいるんだ!」

 

「お前それ黒竜の雛か? 別個体だろ」

 

「DA☆MA☆RE! もしかしたら同情とか・・・・・・あ、ないですねーはい」

 

「首落ちて死ね!」

 

 どこからか集まって来た他のドラゴンも混じりながらドッカンバッコンとクレーターの中にクレーターを作り繰り広げられる戦いに、レヴはどう収拾をつけようかと思案するが、数秒で思考を放棄した。

 

「助けて元祖!」

 

「そんな効果に釣らレッドー」

 

「オラオラオラ!」

 

「イイッ↑タイ↓(レッドアイ)ガァァァッ↑」

 

「月島流、富嶽鉄槌割り!」

 

「ぐはぁあ!」

 

「レ、レダメダイーン!」

 

「切腹丸・・・・・・あいつは人の話を聞かなかったからな。まぁ良い奴だったよ」

 

「闇魔法、闇纏い・次元斬!」

 

「待て、ウィザードバスターブレードって魔法使えるのか!?」

 

「言ってる場合か!?」

 

「花風紊れて花神啼き 天風紊れて天魔嗤う『花天狂骨』」

 

「卍解だと!?」

 

「いや、あれ始解じゃね?」

 

「そっちでもいいから逃ゲルォ!」

 

 お茶を飲み出したレヴをそっちのけでブレイダーがドラゴンたちを斬り裂いていく。が、ドラゴンたちも負けじと攻撃を仕掛け、ブレイダーもかなりの傷を負っている。

 

「レヴ様ー、デュエルが始めるみたいですよー」

 

「そうか。ならば、今回は私達で戦おう」

 

 飛んで来たドラグニティ-パルチザンからのメッセージに、レヴは翼を広げる。

 

「あれー、どうしますー?」

 

 パルチザンの目線の先では、ブレイダーvsドラゴンズという戦いが未だに繰り広げられていた。

 

「・・・・・・放っておこう。下手に仲裁に入ると、私達ドラゴン族では返り討ちに合う可能性が高い」

 

「そうですねー」

 

 そして、レヴは飛び立ち、デュエルへと向かった。

 

 遊羽のデッキ内の『竜の渓谷』は、今日も平和だった。

 

 平和だった!




こちら、せっかく描いたのに前回出し忘れたデフォルメ星態龍です。


【挿絵表示】


うーむ、前回よりはマシ・・・・・・かな?

はい、次回からようやく四章です。ええ本当に。

これにもワケがありまして(以下言い訳)

アニメ見て面白そうだと思ったので『境界線上のホライゾン』を四巻くらいまで買って読んで、そうしたら書いている途中だった遊兎の話のアイデアが激流葬されまして。(読み終わるまでにもかなり時間がかかり)

仕方がないのでWiiの遊戯王をやってダークダイブボンバーと王宮の鉄壁、ボルトヘッジホッグ+チューナーというコンボにどっぷりハマり、抜け出すのに時間がかかり。

よし書くぞと一念発起すれば人生初の花粉症というものにかかりまして。何ですかアレ最悪ですね。今まで花粉症で苦しんでいた方々に敬礼を送ります。

そうしてやっていなかった高校の課題に追われ。

ようやく投稿するに至ったというワケです。
あ、ホライゾンでは鈴が好きです。このSSが終わって次回作とか書くことになったら高確率で目隠れキャラが出ます。

以上、見苦しい言い訳でした。

次回はなるべく早めに書きます。遊戯王のSS書いている中で(多分)一番若いので、頑張らなければ。


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四章
学園祭準備


今回はそんなに開けずに投稿。

デュエルなしです。


 十月に入ったデュエルスクールは、早くも学園祭に向けての準備を始めていた。各学年、それまでの年と同じように手際良く準備を進める。

 

「誰かー男子ー、手伝ってー」

 

「やるぜ、何をすればいい?」

 

 ただ、去年までと違うことが一つ。

 

「如月くん。機材が届いたらしいから、職員室まで取りに行ってくれない?」

 

「わかった」

 

 遊羽が、このイベントに参加していることである。

 

「何か、如月ってちょっと変わったよね」

 

「そうだな。角がとれて、以前よりも丸くなったように感じる」

 

 休憩中の春樹が話し掛けてきた女子生徒に答え、作業に戻る。

 

「如月くん、これもお願いしていい?」

 

 今度は別の女子生徒から冊子を受け取り、確認をとる。

 

「おう、資料室でいいか?」

 

「うん、お願いねー」

 

 ヒラヒラと手を振られながら遊羽が教室を後にすると、そのやりとりを見ていた戦に虹花が話しかける。

 

「遊民君、あれは一体・・・・・・」

 

「真宮さんがわからないことを、僕がわかると思う?」

 

 虹花が遊羽のことについて訊こうとすると、先回りして戦が否定する。

 

「何か、丸くなったよねー。周りの子も言ってたけどさー」

 

 遥も聞いていたようで、会話に加わる。

 

「そのことはいいんですが・・・・・・」

 

「「?」」

 

 何かを言いづらそうにする虹花に、二人は疑問符を浮かべる。

 

「・・・・・・遊羽が他の女子と仲良くするのが、こう、何と言いますか、・・・・・・」

 

 そのことが自分でもよくわからないらしく、言葉を探すように額に手を当てる虹花。戦と遥は顔を見合わせ、

 

「「もしかして、独占欲/嫉妬?」」

 

 同時に、似たようで違う言葉を言った。

 

「嫉妬、独占欲・・・・・・そう、かもしれません」

 

 今まで、周囲に積極的に関わることがなかった遊羽。そのため、嫉妬するような要素はなかったのだが・・・・・・。

 

「私、結構重たい女かもしれません・・・・・・」

 

 それこそ、『死んでも側にいる』を実践しているのだ。一般人からすれば重いかもしれない。

 

「確かに、初めて会ったときに遊羽君がウィンドウィッチが欲しいって言ったら怒ってたよね? 独占欲強いと思うけど」

 

「カードにまで嫉妬って・・・・・・」

 

 記憶が蘇り、顔を手で覆ってしゃがみ込む虹花。戦は何か物足りないと遥と話すことにした。

 

「そう言えば、何で永野さんは放送部に入ったの? 男装してたのに」

 

 唐突な戦の質問に戸惑い、内容に恥じらって顔を赤くしながら、遥は話す。

 

「うぇ、えっと・・・・・・その頃、テレビで見た人に影響されて・・・・・・」

 

 少し、顔を逸らす遥。戦はニコニコ笑顔で前に回り込み、続きを促す。

 

「それで?」

 

「・・・・・・それだけです、はい」

 

 今度は俯いてしまった遥に戦はいい笑顔で続ける。

 

「遥って意外とミーハーなんだね」

 

「ぅひゃい!? な、名前は止めて!」

 

「期待してたでしょ?」

 

 うぐ、と一瞬言葉に詰まった遥。笑みが増す戦。

 

(ボク、結構調教されてないかなー!)

 

 戦の彼女になって良かったのかと、今更ながら後悔する。

 

「それで、どんな人だったの?」

 

 改めて、と質問を続ける戦に、遥はジトッとした目を向ける。

 

「・・・・・・またいじめる気だよねー」

 

「永野さんがそんな態度だと、ね」

 

 ノータイムで返された返事に、遥はうぅぅぅ~~~と唸り、

 

「・・・・・・その人、アナウンサーでエンターテイナー(自称)なんだけど」

 

 と、話し始めた。

 

「ゲリラで生放送したりとか、凄い楽しそうにしててさー。憧れたんだよ。他にも、エンタメデュエリストを名乗っていたりするよー」

 

 へぇ、と興味深そうに話を聞く戦に、遥はふと気づく。

 

(遊民君って、聞き上手なんだ)

 

 戦が自分についてを話すことは、少ない。その分、他人の話をよく聞くようになったのだろうか。

 

「ねー、遊民君って・・・・・・」

 

 遥がそのことについて訊こうとしたとき、教室の扉がガラリと開いた。

 

「ふぅ、何か色々頼まれたな。今までヘイト溜めすぎたか?」

 

「遊羽!」

 

 戻ってきた遊羽に、先ほどまでぶつぶつと何か呟いていた虹花が飛びつく。

 

「どうした、虹花?」

 

 ドラゴンとしての筋力で難なく受け止め、虹花に心配する眼差しを向ける。

 

「遊羽、私、重い女なのかもしれません・・・・・・」

 

「そうか」

 

 虹花が言うと、遊羽は何でもないかのように頷く。

 

「・・・・・・引かないんですか?」

 

「本当にどうしたんだ、虹花? 俺は虹花から引いたりしないし、嫌ったりもしねぇぜ」

 

 笑顔でそう告げる遊羽に、虹花は正気を取り戻す。

 

「そうですよね・・・・・・すみません、取り乱しました」

 

「おう、気にするな」

 

 そう言って、遊羽は作業に戻る。

 

「遊民、永野。お前らも働け」

 

 休憩を終了した春樹がそう声を飛ばすと、戦と遥も作業を開始し、虹花は書類関係で生徒会へ向かう。

 

「如月、これも運んでもらえるか? 事務室へ提出するものなんだが」

 

「いいぜ」

 

 追加予算要求などと書かれたレポート用紙を持ちながら、遊羽は関連してあることを思い出す。

 

(あー、後でアレを届けないとな・・・・・・宅配便で届くか?)

 

 因みにアレというのは遊羽が書いたドラグニティアームズ-レヴァテインの魅力について書かれたレポートであり『光と闇の竜』との王道コンボや『おろかな重葬』などで墓地へ送った『シューティング・クェーサー・ドラゴン』を装備し場を離れた場合に『シューティング・スター・ドラゴン』を特殊召喚するコンボや各ドラゴンデッキとの相性、そしてソリッドビジョンを使って撮影した様々なアングルからの写真やドラグニティモンスター装備時の武器の形状、更にはドラゴン族を装備した際のちょっとした変化についてなどが百枚ほどに収められている。後で三部ほどどこかの骨董品店に届ける予定だ。

 

 閑話休題(それはともかく)

 

「それにしても、よくやるよね。『コスプレメイド喫茶』なんて」

 

「うん、皆イベント好きだからねー」

 

 戦の呟きを肯定しながら言う遥だが彼女は本人の預かり知らぬ内に女子たちの間でそのメイド役をすることになっており戦に笑顔で試着させられる未来が待っていたりする。

 

「でも、メニューは焼きそばなんだよねー・・・・・・」

 

 女子は接客、男子は厨房。男子から普通は逆なんじゃないかという声も上がったが、遥のメイド服を見たがった戦によって密かに沈静化されている。

 

「それなんだけど、大丈夫みたいだよ? 遊羽君と四谷君が料理できるらしいから」

 

 戦がそう言うと、遥は驚いたように目を丸くする。

 

「四谷君はなんとなくできそうだけど、如月君もって意外」

 

 あまり知られてはいないが、遊羽は家事全般が一通りできる。休日には虹花と一緒に料理することもあり、その様子はさながら新婚のようだとレヴは語る。

 

「遊羽君の両親って、家にいないことが多いらしいから、そのせいじゃないかな」

 

「なるほどー」

 

 納得、というように頷く遥。しかし周りには『作業に戻れって言ってたろリア充な空気出すなよ後爆発しろ!』というオーラがひしめいているのだが遥気付かず、戦は故意に無視する。

 

 こうして、一年一組の学園祭準備は順調に進むのだった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 時刻は夜7時。

 

「戻ったぞー」

 

 ガラリと教室の扉を開けるのは孝之。

 

 三年生は今年で卒業のため、せめて最後のイベントくらい満喫させてあげようという教師の計らいにより、学校に泊まりで学園祭の準備をすることができる。そのため、三年生はほぼ全員が学校に残って作業である。

 

「おう。何買ってにかんだ?」

 

「安くなってた方界カード。ストレージ落ちてたぜ!」

 

「何カード買ってきてんだよ! 買い出しっつっただろ!?」

 

 クラス委員長が叫ぶと、孝之はいやぁつい、と頭を掻く。

 

「あまりふざけるなよ、孝之」

 

 星河も険しい表情で孝之の両肩に手を置き、詰め寄る。

 

「そうだ、銀、何か言ってやれ!」

 

 星河はああ、と頷いてから口を開く。

 

「何故俺を連れていかなかった!? クーポンがあると言ってあったはずだろう!?」

 

 ずこー、とクラスのほぼ全員がずっこけた。

 

「いやー、悪ぃ悪ぃ。オレも今回は流石に真面目にやろうと思ったんだぜ? そしたらそこのカード屋が今日までのセールやってるじゃんか。これはもう買うしかないと思ったね」

 

「その方界カードはどうするつもりだ?」

 

「んー、サブデッキとして組むかな。メインデッキは変えるつもりはないし」

 

 孝之の背後の精霊を気遣って発した星河の言葉に孝之が答えると、精霊たちも星河も安堵する。

 

「いや、そうじゃねぇよ。買い出しは?」

 

 仕切り直すように言ったクラス委員長のセリフに、孝之はてへぺろっとする。

 

「おい!」

 

「まあ落ち着けって。また行ってくるからさ」

 

「孝之、おれはチューニングガムを頼むわ。何か噛んでないと寝そう」

 

 追加オーダーを飛ばす日向。彼は昨日、プロデュエリストとしての仕事であまり寝ていないからだ。

 

「あ、じゃあ俺新作のあん栗棒!」

 

「私トマ棒でー」

 

「あたしプチトマ棒!」

 

 ならばと相次ぐ注文に、孝之はどこからかメモを取り出し書き込んでいく。

 

「へい、ご注文はうさぎでs違う以上でよろしいでしょうか?」

 

 何かを言いかけながらも店員のように言う孝之に、クラス委員長があ、俺も、と手を上げる。

 

「では、ごゆっくりどうぞー」

 

 それを鮮やかに無視して教室の扉を閉める孝之。

 

「え、ちょ、おい!」

 

「あー、怒らせちゃった」

 

「え、俺のせいなのか?」

 

「うん」

 

 近くの女子に頷かれ、がっくりうなだれる委員長。

 

 「俺は悪くねぇ! 俺は悪くねぇ!」という叫びが、夜空に響いた。

 

 

 

 その後、近所迷惑だと教師から苦情が届き、委員長は更にうなだれていたというオチも付けておく。




・・・・・・デュエルをする流れに持ってたいけない(汗

生徒全員が準備で忙しく働いているのにデュエルをする余裕があるはずない、という自分の認識がおかしいんでしょうか?

次回は頑張ってデュエル回にしようと思います。


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準備の合間に

・・・・・・課題、終わんない。

デュエル回です。


「ふう、少し疲れたな」

 

 校舎の裏にあるベンチに腰掛け、遊羽は一息つく。

 

(慣れない集団行動をとったために、精神的な疲れが来たのだろう。よく休んだ方がいいぞ)

 

 自身の内から聞こえるレヴの声に頷きながら、肩や首を回す。

 

「っ、あー疲れンなぁ」

 

 遊羽が休憩を取り始めると、校舎から人影が現れた。

 

「あ? 何だ如月か。お前も休憩か?」

 

 捲った袖から覗く右腕にある火傷のような跡が特徴的なその青年は、真田 紅(さなだ くれない)。二年生で、響と同じクラスだと遊羽は記憶している。

 

「も、ってことは真田先輩もか」

 

「ああ。筋力あるだろってことで雑用に駆り出されてな。流石のオレでも疲れちまった」

 

 傲岸不遜、という言葉が似合う彼は自動販売機に貨幣を入れ、炭酸系の飲み物を購入する。

 

「・・・・・・っあー、やっぱ炭酸だな」

 

 一口飲んでから、そうだ、と遊羽を見る。

 

「オレとデュエルでもしようぜ、如月。気分転換によ」

 

「・・・・・・そうだな。お願いできるか?」

 

 ああ、という承諾の声を受け、遊羽は距離を取る。

 

「じゃあ行くぜ?」

 

「「デュエル!」」

 

如月遊羽

LP8000

 

真田紅

LP8000

 

「俺のターン。まずは調和の宝札を発動。手札のドラグニティ-ファランクスをコストに、二枚ドロー。そしてドラグニティ-ドゥクスを召喚。ファランクスを装備し、特殊召喚!」

 

ドラグニティ-ドゥクス ☆4 攻撃力1500

 

ドラグニティ-ファランクス ☆2 チューナー 守備力1100

 

「慣れてンなぁ、その動き」

 

「ああ。ずっと使ってるからな」

 

 そう受け答えしながら、後でカオスドラゴンのデッキも使わないとな、と思う遊羽。レダメが禁止になったのが痛い、という理由で最近あまり使っていなかった。

 

「ドゥクスにファランクスをチューニング。シンクロ召喚!」

 

2+4=6

 

「来い、ドラグニティナイト-ヴァジュランダ!」

 

ドラグニティナイト-ヴァジュランダ ☆6 攻撃力1900

 

 ヴァジュランダがフィールドに降り立つと、その手に軍隊が使うような槍が現れる。

 

「ヴァジュランダの効果でファランクスを装備! そして特殊召喚!」

 

 ヴァジュランダが槍を構えると、その槍が竜へと姿を変え、ヴァジュランダは徒手空拳になった自分の手を呆然と見つめる。

 

「ファランクスでヴァジュランダをチューニング」

 

2+6=8

 

「重なり合え、水晶の翼! 舞い踊れ、白銀の竜! シンクロ召喚! クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン!」

 

クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン ☆8 攻撃力3000

 

 ヴァジュランダそっちのけでファランクスがリングへと変わり、光から水晶を身に着けた麗しい竜が舞い踊る。

 

「カードを伏せる。これでターンエンドだ」

 

如月遊羽

LP8000 手札3

場 エクストラ:クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン 魔法・罠:伏せカード

 

「ンじゃあオレのターン。スタンバイフェイズ、月の書! その竜には寝ンねしてもらうぜ!」

 

 紅が叩きつけるようにしてカードをディスクに読み込ませ、一冊の本が白銀の竜を地に伏せる。

 

「チッ、これじゃ効果が使えねぇ」

 

「これで邪魔はなくなったな。オレはV・HEROヴァイオンを召喚!」

 

V・HEROヴァイオン ☆4 攻撃力1000

 

 一つ目のヒーローがその瞳をペカーと輝かせると、投影された(墓地へ送られた)シャドー・ミストの映像からディアボリックガイが手札へと加わり、映像の中のシャドー・ミストが『融合』のカードを投げながら涙を流し消える(除外される)

 

「おいその動き出し・・・・・・」

 

「何、ソリティアはしねぇよ。多分な」

 

 多分て、という遊羽の目線を無視し、紅はヴァイオンと手札のディアボリックガイを融合させる。

 

「来い、D-HEROデッドリーガイ!」

 

D-HEROデッドリーガイ ☆6 守備力2600

 

 黒いマントをはためかせ、ようとして失敗しすっ転ぶデッドリーガイ。その頼りない姿におい大丈夫かと駆け寄る(特殊召喚される)ディアボリックガイ。

 

D-ディアボリックガイ ☆6 守備力800

 

(次はイゾルデにリンク召喚かあるいは・・・・・・)

 

「二体でオーバーレイッ! 来いベアトリーチェ!」

 

永遠の淑女 ベアトリーチェ ★6 守備力2800

 

 美しい聖女が祈るように手を合わせるとデッキから『闇黒の魔王ディアボロス』が『ベア公は敗北者(熟女)じゃけぇ』と言いながら埋葬され、ベアトリーチェが『取り消せよ、今の言葉ァ!』と激昂する。

 

「カードを一枚伏せて、ターンエンドだ」

 

真田紅

LP8000 手札3

場 エクストラ:永遠の淑女 ベアトリーチェ 魔法・罠:伏せカード

 

「クリスタルウィングを除去しなくて良かったのか?」

 

「まあ、何とかなンだろ」

 

 楽観的な態度を取る彼と伏せられたカードに目を向け、カードを引き抜く。

 

(エクストラモンスターゾーンが埋まってる。復活の福音でも引ければロムルスのリンク素材にできるんだが・・・・・・)

 

 仕方がないとクリスタルウィングを反転させ、バトルに以降する。

 

「クリスタルウィングでベアトリーチェを攻撃!」

 

「ベアトリーチェの効果で、デッキから真紅眼の黒炎竜を墓地へ送るぜ」

 

 墓地へ行ったカードから紅のデッキを把握した遊羽は眉をしかめながらカードを伏せる。

 

「ターンエンド」

 

如月遊羽

LP8000 手札4

場 エクストラ:クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン 魔法・罠:伏せカード×2

 

「オレのターン。もっかい月の書だ、眠っとけ!」

 

 再び反転させられたクリスタルウィング。カードの回転によって酔ったのか、裏側で口元を押さえる。

 

「真紅眼融合を発動! デッキの真紅眼の黒竜と魔晶龍ジルドラスを墓地へ送り、融合する! 融合召喚、来い流星竜メテオ・ブラック・ドラゴン!」

 

流星竜メテオ・ブラック・ドラゴン ☆8 攻撃力3500

 

 真紅眼の黒竜とジルドラスがフィールドの中央で雨乞いのような踊りをすると、空から黒い隕石が落ち、竜の姿を取ると、その衝突の余波でデッキから墓地へ送られた真紅眼の黒炎竜分のダメージが遊羽へ飛ぶ。

 

如月遊羽

LP8000→6600

 

「バトルだ、メテオ・ブラックで裏側のクリスタルウィングに攻撃だ!」

 

 メテオ・ブラックが『酔ったのか? ならオレが(宇宙)まで連れてってやるよ!』と裏側になっているクリスタルウィングのカードを掴み、空へ投げると、クリスタルウィングが『待った絶叫マシン系オレ駄目なnオエェェエエ!』とキラキラを撒き散らしながら星となる。

 

「オレはこれでターンエンド」

 

真田紅

LP8000 手札2

場 エクストラ:流星竜メテオ・ブラック・ドラゴン 魔法・罠:伏せカード

 

「よし、エクストラが開いたな。俺のターン、ドロー」

 

 引いたカードに口角を上げながらディスクのフィールド魔法ゾーンを展開する。

 

「竜の渓谷発動だ! 効果で手札のバスター・ブレイダーをコストにドゥクスを手札に加える」

 

 渓谷内から『ドラゴンだ! 早く俺を出せ、首を取る!』という声が上がるが遊羽はそれを気のせいと自分に言い聞かせドゥクスを召喚する。

 

ドラグニティ-ドゥクス ☆4 攻撃力1500

 

 ドゥクスが『スノウ・ベルたん萌えー!』とファランクスを使って舞い、それから逃れるようにファランクスが特殊召喚される。

 

ドラグニティ-ファランクス ☆2 チューナー 守備力1100

 

「ならリバースカード、崩界の守護竜! メテオ・ブラックをリリースし、二体を破壊だ!」

 

 メテオ・ブラックが『命、燃やすぜ!』と爆発、ドゥクスとファランクスがそれに巻き込まれ、煙がフィールドを包む。

 

『そんなリリースに釣られディアー』

 

『そんな効果に釣らレッドー』

 

 煙が晴れると、そこには二体の竜が並び立っていた。

 

真紅眼の黒竜 ☆7 攻撃力2400

 

闇黒の魔王ディアボロス ☆8 攻撃力3000

 

 並んだモンスターに遊羽は顔を顰めしかしターンエンドを宣言しる。

 

如月遊羽

LP6600 手札4

場 魔法・罠:伏せカード×2 フィールド:竜の渓谷

 

「ぃよしオレのターン。サイクロンで伏せカードを破壊だ!」

 

 破壊された『聖なるバリアーミラーフォース』に真紅眼の黒竜とディアボロスが揃って『『ミラフォダイーン!』』と声を上げる。

 

「バトル、二体で攻撃!」

 

今、攻撃と言ったな(誰が一枚しかないと言った)? トラップ発動、ミラーフォース!」

 

 『バカな、ミラフォが成功するなんて!?』『これは夢だ、そうに違いない!』という声を上げながら二体の竜は揃って退場する。

 

「・・・・・・モンスターをセット、カードをセット。これでターンエンドだ」

 

真田紅

LP8000 手札1

場 メイン:伏せモンスター 魔法・罠:伏せカード

 

「俺のターン。竜の渓谷の効果で破壊剣の伴竜をコストにデッキからドゥクスを手札に加え、召喚!」

 

ドラグニティ-ドゥクス ☆4 攻撃力1500

 

 都合三度目の登場に息切れしながらもファランクスを杖になんとか立つドゥクスだが、ファランクスが竜へ戻ると支えを無くし倒れた。

 

ドラグニティ-ファランクス ☆2 チューナー 守備力1100

 

「ファランクスでドゥクスをチューニング。来いヴァジュランダ!」

 

ドラグニティナイト-ヴァジュランダ ☆6 攻撃力1900

 

 こちらも二度目の登場に若干疲弊しながらもファランクスを構えると、竜に戻らないかと警戒する。

 

「ドラグニティの神槍を装備! 効果で、デッキからブランディストックを装備!」

 

ドラグニティナイト-ファランクス 攻撃力1900→2500

 

 突然増えた槍にヴァジュランダが戸惑いながらもお手玉し三本をどうにか持っていると、一本(ファランクス)が急に消え、驚きながらも力が漲る。

 

ドラグニティナイト-ヴァジュランダ 攻撃力2500→5000

 

「バトル、ヴァジュランダで伏せモンスターを攻撃!」

 

V・HEROヴァイオン 守備力1200

 

 ヴァジュランダがヴァイオンを切り裂き、『何か、行ける気がする!』と続けて紅にダイレクトアタック。

 

真田紅

LP8000→3000

 

「ぅおう痛ってぇ」

 

 ようやくダメージを与えられた、と遊羽は少し安堵し、気を引き締める。

 

「カードを伏せて、ターンエンド」

 

如月遊羽

LP6600 手札3

場 エクストラ:ドラグニティナイト-ヴァジュランダ 魔法・罠:ドラグニティの神槍(装備:ドラグニティナイト-ヴァジュランダ) ドラグニティ-ブランディストック(装備:ドラグニティナイト-ヴァジュランダ) 伏せカード

 

「オレのターン。ヴァレット・シンクロンを召喚!」

 

ヴァレット・シンクロン ☆1 チューナー 攻撃力0

 

(あのカード、そして真紅眼・・・・・・作者め、流行に乗ったか!)

 

 遊羽が何かを受信し察するがそんなことには関係なく墓地の真紅眼の黒竜が『過労死しそう、給料日まだ?』と顔を出す。

 

真紅眼の黒竜 ☆7 守備力2000

 

「ヴァレット・シンクロンで真紅眼の黒竜をチューニング!」

 

1+7=8

 

「紅き悪魔よ、その焔をたぎらせ、我が僕の龍に宿れ! シンクロ召喚! 猛々しく吠えろ、レッド・デーモンズ・ドラゴン!」

 

レッド・デーモンズ・ドラゴン ☆8 攻撃力3000

 

 『最近、親戚の出番が多いな・・・・・・』と呟きながら登場するレッド・デーモンズ。まさかの素ドモンに遊羽は驚愕する。

 

「魔法カード、クリムゾン・ヘル・セキュア! 魔法・罠を全て破壊する!」

 

 破壊される『聖なるバリア-ミラーフォース』に「やっぱミラフォは仕事しないか・・・・・・」と遊羽は呟いたがその呟きは破壊音に掻き消された。

 

「バトル! レッド・デーモンズ・ドラゴンで攻撃! ブレイジング・フレア!」

 

 『爆☆熱 ゴッドフィンガー! あ、ブローだっけ?』とドモンがヴァジュランダを殴打し、槍が突然消えたことで動揺していた竜騎士はなすすべなく吹き飛ぶ。

 

如月遊羽

LP6600→5500

 

「こてでターンエンド」

 

真田紅

LP3000 手札0

場 メイン:レッド・デーモンズ・ドラゴン 魔法・罠:伏せカード

 

「俺のターン、ドロー」

 

 既にデッキにドゥクスはないため、遊羽のデッキは初動のカードを失った状態にある。ここから展開し直すのは容易ではないだろう。

 尤も、ならば展開し直さなければいいだけの話なのだが。

 

「復活の福音発動! 蘇れ、クリスタルウィング!」

 

クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン ☆8 攻撃力3000

 

 再び舞い踊る白銀の竜。

 

「バトル、クリスタルウィングでレッド・デーモンズ・ドラゴンを攻撃! 効果発動! レッド・デーモンズの攻撃力を得る!」

 

クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン 攻撃力3000→6000

 

 水晶の輝きが増し、クリスタルウィングの攻撃力が上昇する。

 

「リバースカード、パワー・ウォール! デッキから6枚カードを墓地へ送り、ダメージを0にする!」

 

 紅の前へ現れる壁にドモンが『オレには?』と紅を見るが反応はない。ただの屍か、とドモンは破壊された。

 

「ターンエンド」

 

如月遊羽

LP5500 手札3

場 メイン:クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン

 

「オレのターン、ドロー」

 

 肥えた墓地を確認し、紅は効果を発動する。

 

「手札をデッキトップに戻し、ゾンビキャリアを蘇生」

 

ゾンビキャリア ☆2 チューナー 守備力200

 

「ディアボリックガイを除外し、今戻したディアボリックガイを特殊召喚!」

 

D-HEROディアボリックガイ ☆6 守備力800

 

「ゾンビキャリアでディアボリックガイをチューニング!」

 

2+6=8

 

「悪魔の竜よ、閻魔の力を奪い取り、王の炎を燃やせ! シンクロ召喚! 飽くなき衝動をぶつけろ、琰魔竜 レッド・デーモン!」

 

琰魔竜 レッド・デーモン ☆8 攻撃力3000

 

 『どうも、親戚がお世話になってます』とレッド・デーモンが炎の中から登場し、吠える。

 

「レッド・デーモンの効果発動、他のモンスターを全て破壊する!」

 

「クリスタルウィングの効果発動、無効にして破壊する!」

 

「墓地の復活の福音を除外し、破壊されない!」

 

 チェーン合戦を制したのは紅。遊羽は発動タイミングを見誤ったか、と眉をひそめる。

 

「墓地の置換融合の効果発動、デッドリーガイを戻して一枚ドロー」

 

 引いたそのカードをすぐさま捨て、墓地から扇風機のような調律機が呼び出される。

 

ジェット・シンクロン ☆1 チューナー 守備力0

 

「ジェット・シンクロンでレッド・デーモンをチューニング!」

 

1+8=9

 

「深淵より昇りし炎よ、煉獄を超えて現界せよ! シンクロ召喚! 琰魔竜 レッド・デーモン・アビス!」

 

琰魔竜 レッド・デーモン・アビス ☆9 攻撃力3200

 

 このターン、琰魔竜 レッド・デーモン以外は攻撃できないが、アビスは効果無効の能力を持っている。そのため、相討ちさせるよりもいいと判断したのだろう。

 

「ターンエンドだ」

 

真田紅

LP3000 手札0

場 メイン:琰魔竜 レッド・デーモン アビス

 

「俺のターン。リバースカード、破壊剣士の追憶! 手札の破壊剣-ドラゴンバスターブレードをコストに、デッキからバスター・ブレイダーを特殊召喚!」

 

「アビスの効果、それを無効にする!」

 

 剣に剣士と竜の過ごした時が流れるが、深淵の魔王はそれを砕く。

 

「墓地の追憶の効果。除外して、墓地のバスター・ブレイダーとヴァジュランダで融合!」

 

 砕かれた剣から、その主が姿を現す。

 

「竜を殺す戦士よ、友の力をその身に受け、新たな世界を切り開け! 融合召喚! 竜破壊の剣士-バスター・ブレイダー!」

 

竜破壊の剣士-バスター・ブレイダー ☆8 攻撃力2800

 

 バスター・ブレイダーが剣を構えると、その剣に力が宿る。

 

竜破壊の剣士-バスター・ブレイダー 攻撃力2800→12800

 

 アーミタイルをコピーしたクリスタル・ベルと同じ攻撃力にまでなったバスター・ブレイダー。

 

「バトル、バスター・ブレイダーでアビスを攻撃!」

 

 『首、置いてけ!』とバスター・ブレイダーがアビスを斬り裂く。

 

真田紅

LP3000→0

 

 デュエルが終わり、ソリッドビジョンが収束する。

 

 途中、ダメージを与えた時点でデュエルが終了したために『まだ、まだ俺は首を取ってない!』とバスター・ブレイダーがアビスに斬りかかろうとし、それをクリスタルウィングが羽交い締めにして止め、アビスが『ざまぁ!』と嗤っているのが見えた気がしたが遊羽は気のせいだと思うことにした。

 

「ふう。いい気分転換になったな。ンじゃ、オレは戻るぜ」

 

 紅が軽く肩を回しながら校舎に戻るのに習い、遊羽も教室へ向かった。




どうでもいい小話という名の本編に出せなかった裏設定

スケープ・ゴースト
 日向が使っているこのカード、元の所有者はゾンビのアイツだったりする。とある研究施設をゾンビのアイツが襲撃、スケープ・ゴートの精霊を殺害&アンデット化して生まれた。ゾンビのアイツの一件の後、虹花が所有していたが、お礼ということで日向にプレゼントした。

孝之のエクストラデッキ
 『星杯のエンタメ』にて孝之はエクストラデッキからのカードを十七枚使っているが、これは息吹が遊兎に色んな召喚方法を見せるために孝之のディスクを弄って上限を二十枚にしたから。それ以外では普通に十五枚。感想で言及されるだろうからその時に出そう、と思っていた作者だったが誰も言ってくれずに出すタイミングを失っていた。

遊羽の『竜の渓谷』
 本編の通り、遊羽のデッキのモンスターたちが暮らしている。遊羽はレヴが『竜の渓谷』に手を加えたことまでは知っているが、中の様子は知らない。カオス過ぎる中の様子を見せない方がいいだろうというレヴの配慮。


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準備の一時

ようやく投稿できる・・・・・・。

なのにデュエルなしです。

言い訳は後書きにて。


 これは夢だな。戦はそう察した。

 

 何もない白い空間がそれを物語っていた。

 

 そして、何故か行われているデュエル。

 

「私はギガンテック・ファイターで攻撃ッ!!」

 

 『おのれBKサンドノック!』と叫びながら攻撃力が4600あるジャンに突っ込むギガンテック・ファイター。ジャンはとんだとばっちりだと思いながら拳をいなし、弾く。

 

「リバースカード、レインボーライフゥ! LP回復、これをLP530100になるまで繰り返しぃ、そして速攻魔法ライバル・アライバルを発動!! 3体のモンスターをリリースして手札からラーの翼神竜を召喚する!! LPが100になるように支払いバトルだッ!! ラーの翼神竜でジャンク・ウォリアーを攻撃! 神の一撃を食らえ、ゴッド・ブレイズ・キャノン!!」

 

ラーの翼神竜 攻撃力?→530000

 

 金色の鳳凰が顕現し、『私の戦闘力は53万です』と雄叫びをあげる。

 

「これが神・・・・・・」

 

 その神々しさに呆然と呟く戦。そんな彼に、対戦相手は笑い叫ぶ。

 

「そうだ! 私が、この私こそが神! もうヲーのよく死ぬ竜だのライフちゅっちゅギガントだとは呼ばせない! 火の粉でトドメを刺されたりしない! どうだ、貴様ら弱者では到底敵うまい! ヴェハハハハハハハ!」

 

 しかし、『弱者』という単語に戦の額に青筋がビキリと浮き上がる。

 

「誰が・・・・・・弱者だって?」

 

『ラ、ラー殿! その言葉だけは口にしてはいけないと言ったはずですぞ!?』

 

 慌ててジャンは止めようとするが、時既に遅し。

 

「リバースカード、聖なる鎧-ミラー・メール! ジャンの攻撃力を、ラーの翼神竜と同じにする!」

 

ジャンク・ウォリアー 攻撃力4600→530000

 

 銀色の鎧を身に纏い、『光学誘導(オプティカル・コンダクション)・・・・・・!』と銀の鴉なことを言うジャン。

 

「ヴァカな、神の攻撃力に並ぶなどっ!」

 

「まだ足りない・・・・・・! ラッシュ・ウォリアーの効果発動! ジャンク・ウォリアーの攻撃力を二倍にする!」

 

ジャンク・ウォリアー 攻撃力530000→1060000

 

『フィジカル・フル・バースト! ですぞ!』

 

 神の吐く金色の光線をジャンは腕で受け止め、そして鏡のボディを活かし、反射した上で拳をぶつけた。

 

「ッ!」

 

 ジャンの迎撃によってまばゆい光が溢れ、戦は思わず目を閉じた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 目が覚める。

 

(何、今の夢・・・・・・)

 

 若干身体がだるいことから、決闘力(デュエルエナジー)とか吸われてないよね、と軽く伸びをする戦だが、特に異常はないと判断した。

 

『ふぁぁあ。おはようですぞ、主殿』

 

 戦の身体からジャンが顕現し、欠伸をする。

 

「うん、おはよう。・・・・・・ところでジャン、さっきの『その言葉だけは口にしてはいけないと言ったはず』って、どういう意味かな?」

 

 にっこりと微笑む戦。だが、目は全く笑っていない。

 

『い、いやー、その、ですな・・・・・・』

 

 しどろもどろになりながら全力で目を逸らし泳がせ一周するもモノアイだからよくわからない。

 

「その、何?」

 

『・・・・・・以前お世話になった酒場でなんやかんやありまして・・・・・・断れなかったと言いますか・・・・・・』

 

 抽象的な言葉選びでお茶を濁そうとするジャンだが、戦は微笑んだままだ。

 

『マジすいませんでしたぁっ!』

 

 ジャンがとった行動は最終手段、DO☆GE☆ZAである。それもジャンプし三回転して床に焦げた跡を付けながらの土下座である。

 

「・・・・・・次はないからね?」

 

 『弱者』という言葉がまだ抜けきっていないのか、かなり苛立った様子の戦に、ジャンは戦々恐々するしかない。

 

「じゃあ、朝ご飯でも食べようか」

 

 そう言って、戦は部屋を出る。

 

(・・・・・・これで、主殿も多少はストレス解消ができましたかな)

 

 ジャンは部屋の中で独り思う。

 

 戦の心は壊れている。具体的には、『弱い』と言われなければ怒ることができない。そんな状態だ。そのため、ジャンは定期的にこうしてストレスを発散させているのだ。

 

 ・・・・・・他にも、遥をいじるなどしてストレス解消をすることはできるが。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「こっちに角材持ってきてー!」

 

「そこ、サボるな! あとそっち何でぐるぐる巻きで木からぶら下がって素振りしてんだ馬鹿なのか!?」

 

「息吹! レポート書いてねぇで手伝えよ!」

 

「まあ待てって♪ 彼を擬人化の世界に引き込むためには、これが必要なんだ」

 

「シャケ召喚!」

 

「言いたいだけだろっ!」

 

「ブルーアイズマウンテンが飲みてぇンだけど」

 

「我慢しろ紅! お前らも、ギャラクシーアイズ・ダークマター・チップス食ってねぇで働け!」

 

「テメェらシーツで何やってんの!?」

 

「暇を持て余した」

 

「神の」

 

「「「遊びFoooooooooo!」」」

 

「持て余してねぇよ! かなり忙しいぞ今!」

 

 学園祭までの時間が後3日となったデュエルスクールは、いつも以上の混沌さを醸し出していた。

 

 ある生徒は物を運び、ある生徒は何かを組み立て、ある生徒はイチャイチャし、ある生徒は「爆発しろ!」と叫び、ある生徒はお菓子をかじり、あるおじさんは「ネフェリム返して」と言う。

 

「お疲れ様ー、遊民くん」

 

「うん、お疲れ永野さん」

 

 戦も叫んだり(発狂したり)こそしていないものの、無言で作業をしていた。

 

 お裁縫を。

 

「・・・・・・改めて思うけど、何で僕は力仕事じゃなくて衣装作りなの?」

 

「・・・・・・・・・・・・あ、あははははー」

 

 『遊民くんが怪我したらどうするの!?』というクラスの女子の意見の結果に乾いた笑みを浮かべながら目を逸らし誤魔化す遥。それを見て、戦は少し悲しむ顔を作る。

 

「そっか・・・・・・永野さんは彼氏である僕に隠し事をするんだ・・・・・・悲しいなぁ」

 

 さも悲しい、といった様子で手で顔を覆う戦。そんな彼を見て、遥はどうするべきかとあわあわする。

 

「え、えと、これは、その・・・・・・」

 

 そんな彼女の様子に戦は思わず吹き出してしまった。

 

「遊民くん!?」

 

「ごめんごめん。遥があんまり可愛いからつい」

 

「かわっ!? そ、それに名前!」

 

 顔を真っ赤に染めて抗議の声をあげる遥。だがそんな様子も戦からすればとても可愛らしいものだ。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 そして、彼らのやりとりを聞きながら、一年一組の面々は一種の悟りを開き、黙々と作業をしていたという。




作者の言い訳タイム

高校生活が思ったよりも忙しく、更に課題に追い打ちをかけられ、学校で書こうと思ったらクラスLINEの通知に邪魔され、クラスメイトとデュエルリンクスに興じ、その結果こんなに遅くなってしまいました。

あ、デュエルリンクスは青眼使われたのでサクリファイスとTheアトモスフィアで反撃して無事勝利しました。ドラグニティ使えって? ・・・・・・竜の渓谷が。

予定を早めて、次回から学園祭に入りたいと思います。執筆の時間が全然とれないので・・・・・・。


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開幕の混沌

今回はそんなに時間をおかずに投稿。

デュエルありです。


 本日は学園祭。

 

 デュエルスクールアベシ校は多くの人で賑わっていた。

 

「さて。折角外出したのですし、有用なデータを集めなければ」

 

「研究も程々にね、魔導院」

 

 二人組の少女や、

 

「それじゃあ、青眼倶楽部に突撃よ!」

 

 独り拳を突き上げた後周囲からの視線で正気に戻り赤面して走り去る少女や、

 

「俺の時代には、学園祭なんてなかったなー」

 

「アカデミアにもねぇな」

 

「私はそもそも、学校に行けませんでしたし」

 

「僕はあったけど、こんなに賑やかじゃなかったなぁ」

 

「ワタクシの学校はここと同じ程度の規模でしたね!」

 

「「「トマトには訊いてない」」」

 

「厳しい!?」

 

 白髪に緑のメッシュを入れた少年を筆頭とした五人組や、

 

「じゃま、全力で楽しむとするか!」

 

「まずは屋台全店たべあるきからか?」

 

「いや、購買で限定メニューがあるらしい。そっちもだな」

 

 三羽烏や、

 

「行くか」

 

『そうね。今日くらいは羽目を外していいんじゃないかしら?』

 

『そ~そ~♪』

 

「あ、射的だってさ♪ 賞品全部落としてやろうぜ♪」

 

 研究会の会長と副会長や、

 

「ん。遊兎、一緒に回ろ?」

 

「! お、おう! どこから回る?」

 

 兎と少女や、

 

「メイド服、似合ってるよ。遥」

 

「ちょ、名前! それに何でボクがー!?」

 

 ドS脳筋とその彼女や、

 

「生徒会が終わったら合流しましょう、遊羽」

 

「おう」

 

 もう夫婦でいいんじゃねえかという幼なじみ。

 

 そして、

 

「ほら、早く行こうぜ! 今日1日だけなんだからさ!」

 

「そうだね。折角ホッさんが繋げてくれたんだし」

 

 二人の、少年。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「祭りだ祭りだー! 買い食い祭りだー!」

 

「そのネタ、通じるか微妙じゃないか?」

 

「カードゲームアニメだけで二人ほどいるからな」

 

 どこかメタい話をしながら食べ歩きするのは、皆さんご存知三羽烏。彼らもクラスでの仕事はあるが、午後からであるために今のうちにメニューを制覇しようとしている。

 

「たこ焼きうめぇ、ピザもうめぇ、プリンもうめぇ!」

 

「あ、そっち(バディファイト)の方か」

 

「いや、ピザもあるからバトスピではないと言い切れないな」

 

 遊戯王のネタにしろよ。

 

「・・・・・・そろそろか」

 

 小一時間ほど散財した頃、ベンチで買ったものを食べていた星河は腰をあげる。

 

「ん? 何か用事か?」

 

「ああ」

 

 口の中のものを飲み込んで質問する孝之に、星河は頷く。

 

「ちょっとカチコミに行ってくる」

 

「いてら~」

 

 ヒラヒラと手を振る日向に軽く返しながら、星河は立ち去る。

 

(冥が青眼倶楽部に行くのなら、俺は真紅眼倶楽部に行くべきか? 少し心配だな・・・・・・)

 

『冥ならタキオンが付いていったぞ。問題はないと思うが』

 

 相棒とそんなやりとりをしながら。

 

「・・・・・・よし。じゃあオレは未来ある子供たちをソリティアの世界へ引きずり込むとするか」

 

「ほどほどになー」

 

 孝之もまた席を立ち、一人残された日向もまた、歩き出す。

 

 ゴミ捨て場に。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「皆の衆、青眼せんべいの売れ行きはどうだ!?」

 

「絶好調です部長!」

 

「ただ、青眼が食べられる姿に、我々の心は痛む一方です!」

 

 白髪青目の青年が問うと、同じような髪色目色の部員たちが答える。

 

「狼狽えるな! それも青眼を愛する心があれば乗り切れる! 自分を信じろ! そして青眼を信じろ! 全ては青眼のために!」

 

「「「全ては青眼のために!」」」

 

 もはや一種の宗教と化しているが、お客さんはこれも演出だろうと笑って見ている。

 

「・・・・・・うわぁ」

 

 そして、彼らを見てドン引きする少女が一人。

 

(これ、殴り込んでなんとかなるのかしら? まあ、最悪ドラゴン体になって逃げればいいわよね)

 

 黒髪でメイド服を着こなす少女はもちろん冥。殴り込みに来たものの、あまりのカオスさにどうすればいいのかわからない状況だ。

 

「(まあ、なるようになるわね)たのもー!」

 

 道場破りのようなことを言いながら青眼倶楽部の屋台に乗り込む冥。

 

「な、何だ貴様は!?」

 

「なんだかんだと訊かれたら、って違う!」

 

 ついノってしまった自分にセルフツッコミをし、改めてと仕切り直す。

 

「青眼なんて、ただの強くて観賞用にもなるだけのカードじゃない!」

 

「乗り込んで来て褒めるとかどんなカチコミだ!?」

 

「うっさいわね! そんな青眼よりも、混沌帝龍の方が素晴らしいと教えてあげるわ! デュエルしなさい!」

 

 部長と呼ばれていた青年をビシッと指刺し、決まったとドヤ顔する冥。

 

「よくわからんが・・・・・・いいだろう! デュエルならば受けて立つ!」

 

 青眼倶楽部の部長はカウンターを部員の一人に任せると、冥に付いて来いと合図し、屋台から出る。

 

「ここならば、往来の邪魔にもならず、店の宣伝もできる! 何より、青眼の白龍の勇姿を誰もが拝むことができる! 正にカンペキな場所だ!」

 

 彼らが向き合うのは、屋台の上。冥はスカートの中を気にしながらディスクを構える。

 

「「デュエル!」」

 

LP8000

 

青眼倶楽部部長

LP8000

 

「私のターン、まずはカードガンナーを召喚、そして機械複製術! デッキから更に二体特殊召喚するわ!」

 

カードガンナー ☆3 攻撃力400

 

「カードガンナーの効果を発動! デッキからカードを三枚まで墓地に送って、その数だけ攻撃力を上げる! 三枚送って、これを三回」

 

カードガンナー 攻撃力400→1900

 

 攻撃力が上がり、シュッシュとシャドーボクシングするカードガンナーだが、複製された方は守備表示のためあまり意味はない。

 

「フン、流石は潤滑油だな」

 

「カードガンナー二体でオーバーレイ! 来なさい、彼岸の旅人ダンテ!」

 

彼岸の旅人ダンテ ★3 守備力2500

 

 『お嬢ちゃん、オレの出番かい?』と笑みを向けるダンテをなるべく視界に入れないようにしながら、冥はデュエルを進める。

 

「ダンテの効果で、更に墓地を三枚肥やすわ。カードを伏せて、ターンエンド」

 

LP8000 手札2

場 エクストラ:彼岸の旅人ダンテ メイン:カードガンナー 魔法・罠:伏せカード

 

「ワンターンで墓地を十二枚肥やすとはな・・・・・・だが、オレはその上を行く! 魔法カード、名推理! さあ、レベルを宣言しろ!」

 

「当然8よ」

 

 部長のデッキからカードがめくられていく。

 

「チキンレース、成金ゴブリン、疑似空間、デビルズ・サンクチュアリ、疑似空間、モンスターゲート、青眼の亜白龍、スケープ・ゴート、ワンタイム・パスコード、ブルーアイズ・トゥーン・ドラゴン、閃刀起動エンゲージ、おろかな重葬、青眼の亜白龍、閃刀機ホーネット・ビット、成金ゴブリン、閃刀機関マルチロール、モンスターゲート、アームズ・ホール、手札抹殺、打ち出の小槌、ブルーアイズ・トゥーン・ドラゴン、青眼の白龍! レベル8のため墓地へ送られるが、問題ない。むしろいい」

 

 墓地へ送られたカードの内容からどんなデッキかわかった冥は、失敗したと言うように顔をしかめる。

 

「装備魔法カード、光の導き! 墓地の青眼の白龍を特殊召喚し装備! 青眼の白龍は、墓地のブルーアイズの数だけ攻撃できる! スゴイぞ~! カッコいいぞ~!」

 

青眼の白龍 ☆8 攻撃力3000

 

 興奮のあまりおかしくなっている部長だが、それも仕方のないことと言えよう。

 

「そしておろかな重葬を発動! ライフを半分支払い、エクストラデッキから青眼の究極龍を墓地へ送る!」

 

青眼倶楽部部長

LP8000→4000

 

「バトルだ! 青眼の白龍で攻撃! 滅びのバースト・ストリーム、グォレンダァ!」

 

「うくっ!」

 

LP8000→5000→2000

 

 ブレスの直撃を受け、冥のモンスターは全滅し、ライフがごっそりと減る。

 

「墓地のネクロ・ガードナーの効果! 除外することで、攻撃は無効よ!」

 

 最後の攻撃をギリギリで防ぐ。

 

「仕留め損ねたか。ターンエンド。さあ、貴様のターンだ」

 

青眼倶楽部部長

LP4000 手札3

場 メイン:青眼の白龍 魔法・罠:光の導き(装備:青眼の白龍)

 

「・・・・・・私のターン、ドロー!」

 

 引いたカードを見、伏せた『スキルドレイン』に目を向けるが、使わない方がいいと判断する。

 

「仕方ないわね。カオスの儀式を発動!」

 

「な、儀式魔法!?」

 

 部長が驚いた声をあげるが、それを無視して冥は墓地に触る。

 

「墓地の儀式魔人リリーサー、プレサイダー、デモリッシャーをコストとして除外し、儀式召喚! 混沌の力をモノにせし剣士よ、今その剣ですべてを切り裂け! おいで、私のエース! カオス・ソルジャー!」

 

カオス・ソルジャー ☆8 攻撃力3000

 

 混沌を司る剣士が儀式に応じて現れるなり冥に笑顔を向ける。

 

『やあマイハニー。相変わらず美しいね。その闇夜のように黒い髪、水晶のように透き通った瞳、スレンダーなボディと全てが、存在が美しい!』

 

「う、うっさいわね、デュエルに集中しなさい!」

 

 冥は顔を真っ赤に染め、小声で叫ぶという器用なことをする。

 

『いいじゃねぇか、お嬢ちゃん。こんないい男、そう居ないぜ?』

 

「ダンテも墓地からどうやって、って何で足透けてんのよ!? そんな演出いらないから!」

 

 ホラー系統が苦手なためか、半分悲鳴のような小声をあげる冥。

 

「貴様、一人で何をやっている?」

 

「・・・・・・気にしないで欲しいわ」

 

 怪訝そうな目を向けてくる部長に受け答えしながら、冥は周りから見えないようにカオス・ソルジャーの足をゲシゲシと蹴る。

 

「墓地のオッドアイズ・ドラゴンとダンテを除外して、混沌帝龍-終焉の使者-を特殊召喚!」

 

混沌帝龍-終焉の使者- ☆8 攻撃力3000

 

 ダンテが『お嬢ちゃん、そりゃないぜ・・・・・・』と言いながらかき消えたのと同時に、彼女自身である龍が君臨する。

 

「装備魔法、最強の盾! カオス・ソルジャーの攻撃力を、守備力の分アップする!」

 

カオス・ソルジャー 攻撃力3000→5500

 

 『ハニー、流石に盾二つで戦えというのは・・・・・・』というカオス・ソルジャーの声を無視し、冥は宣言する。

 

「バトルよ! カオス・ソルジャーで青眼の白龍を攻撃!」

 

『フッ、仕方ないね。ハニーのためだ、退場願おうか』

 

 二つとなった盾でカオス・ソルジャーは青眼の白龍を撲殺する。

 

青眼倶楽部部長

LP4000→1500

 

 儀式魔人の効果でドローするが、あまり重要ではない。

 

「クッ、まさか青眼がやられるとは・・・・・・」

 

 悔しそうに歯噛みする部長。勝負を急ぎ、おろかな重葬を使ったのが災いした。

 

「これでフィニッシュ! 混沌帝龍でダイレクトアタック! 終焉のカオス・ストリーム!」

 

「パクリか!? 攻撃名パクリだな!?」

 

 部長のツッコミは、混沌帝龍のブレスで掻き消された。

 

青眼倶楽部部長

LP1500→0

 

「ふぅ。これでわかったかしら。青眼の白龍よりも、混沌帝龍の方が素晴らしいってことが!」

 

 「この素晴らしい混沌帝龍に祝福を!」と両手をあげ勝ち誇った顔をした冥は、一仕事終えたと立ち去ろうとする。

 

 だが、事はそれで済まなかった。

 

「部長の敵ぃ!」

 

「かかれぇ!」

 

 青眼倶楽部の部員たちが、一斉にデュエルを仕掛けてくるかと思いきや、一列に並んで一人ずつデュエルを挑んできたからである。

 

「こ、こんな予定じゃなかったのにぃ!!」

 

 一人ずつのデュエルのため、勝てはするものの時間がかかり、冥は学園祭の殆どをここで過ごすことになった。




次回予告

他の方の遊戯王小説を読んでいると、凄くやる気が出て、一気に筆が進むんですよね。
すると何故かその作品の影響を受けてしまい、ネタを使ってしまうんです。
いつもネタを使わせてもらっている皆様、ありがとうございます。
そして、いつもすみません。

次回、『あとがきで書くことが無くなってきた』 デュエルスタンバイ!


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戦士と竜の戦い

前回の投稿から一週間。なんてこった。

カクリヨノチザクラ、買いに行かなければ。

デュエル回です。


(ヌルフフフフフ、この擬人化混沌帝龍のパンチラ写真、『オネストの翼をひらめかせ、ミニスカで襲撃をかましながらパンチラしている動画』と『ミニスカートの中から零距離黒パンツ』写真・・・・・・どうしてくれようか♪ ・・・・・・というか花血マジで大丈夫だろうか)

 

 そんなことを考えながら暗殺教室な笑みを浮かべて歩く息吹と、彼から離れ、他人のふりをする春樹とディペ。オッドアイズは早々に春樹が手鞠の元へと行かせた。

 

「グフフフ、う~ふ~ふ~ふ~」

 

 前半に気味の悪い笑みを、後半に青タヌキの笑いをしながら、息吹は歩く。周囲はドン引きだ。

 

「おかーさん、あの人キモい顔でキモい笑い方してるよー。きっとキモい人なんだよー」

 

「しっ、世の中には事実でも言っていいことと悪いことがあるのよ!」

 

 という幼い少女と母親の心にクるやりとりでハッとなり、イメージを払拭しようとおもむろにエイサイハラマスコ踊りを始めた。

 

「「「・・・・・・・・・・・・」」」

 

 言わずもがな、周囲はさらに引いた。引きすぎて屋台の中に入るような猛者もいたほどだ。

 

「いや、永野さん。流石に屋台の人に迷惑だよ?」

 

「あ、ごめんなさい」

 

 屋台のオジサンに頭を下げつつも、出てくる様子はない辺り、戦のいじりも無意味ではなかったと言えよう。

 

「えぇい、やってられるかぁ! オレはブレイクダンスの方が得意なんだよ♪」

 

 唐突にエイサイハラマスコイ踊りからブレイクダンスへと切り替え、かと思えば道の真ん中に焚き火を置いて「ゾンビのお兄様及びブルームくんあざっした! 感謝の舞!」とマイムマイムし始め、それにも飽きると精人の力を活かしてシライ3を繰り出し、周りから拍手を貰う。

 

『「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」』

 

 春樹とディペは、終始「何でこんな奴が部長やってる部活の副部長なんかやってるんだろうな・・・・・・」という目で見ていた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 虹花がいないので特にすることのない遊羽は、目的もなく屋台の並んだ通りを歩いていた。

 

 途中、黒髪で精霊を複数連れている男性がぼろ雑巾のようになった擬人化至上主義者を引き摺って歩いているように見えたが、気のせいだろう。ギャグ要員だから死ぬことはあるまい。

 

「あ、遊羽じゃないッスか」

 

「響先輩」

 

 偶然息吹から避難してきた響に遭遇し、声をかけられた。

 

「珍しいッスね、一人ッスか?」

 

「ああ、虹花はちょっと今生徒会でな」

 

 そう答える遊羽に、それなら、と響は提案する。

 

「自分と一緒に回るのはどうッスか? 仕事が午後からなんで、大分ヒマなんスよ」

 

 そう言いながら、響は遊羽に並んで歩く。

 

「そうだな。よろしく頼むぜ、先輩」

 

「こちらこそ、よろしくッスよ!」

 

 響はにっこりと遊羽に笑いかける。

 

 

 買い食いなどをしながら暫く歩くと、二人の目に人だかりが見えてきた。

 

「何スかね? 行ってみるッスか?」

 

「あー、そうだな。行ってみるか」

 

 虹花がいないためか、どこか上の空でオウム返ししながら、人だかりに近づいていく。

 

 そこにいたのは、黒髪にメガネとヘアピンを付けた、中学生ほどの少年だった。

 

「ダイレクトアタック。これでトドメだね」

 

 ニッコリと笑ってトドメを刺すと、周りから歓声があがった。

 

「何とこれで9連勝! 次で十人抜きです!」

 

 見れば『十人抜きチャレンジ! 達成すれば豪華賞品!』と書かれた旗が立っており、彼は挑戦者のようだ。

 

(にしても、あの笑顔、どっかで見た気がするな・・・・・・)

 

 どこか既視感を覚えた遊羽と、少年の目が合う。

 

「あ・・・・・・! ねぇ、次の相手はあの人にお願いしていいかな?」

 

「ん、俺か? まあいいけどな」

 

 突然指名された遊羽は驚きながらも前へ出、ディスクを構える。

 

「俺は如月遊羽。お前は?」

 

「僕は戦騎。名字は気にしないで欲しいな」

 

 ニッコリと笑って告げる彼に何か引っ掛かるものを覚えながらも、デュエルは始まる。

 

「「デュエル!」」

 

戦騎

LP8000

 

如月遊羽

LP8000

 

「僕のターン。まずはヴァイオンを召喚して、効果でディアボリックガイを墓地に送るね。そして除外して、アナザーワンを特殊召喚。二体をリンクマーカーにセット、リンク召喚! 聖騎士の追想イゾルデ」

 

聖騎士の追想 イゾルデ link2 攻撃力1600

 

 ヴァイオンか終末の騎士から始まるこの盤面に、遊羽は少し辟易とする。

 

「イゾルデの効果でデッキからカオス・ソルジャー-開闢の使者-を手札に加えるよ。第二の効果でデッキから最強の盾を墓地に送って、アタック・ゲイナーを特殊召喚」

 

アタック・ゲイナー ☆1 チューナー 守備力0

 

 これでハリファイバーを出す準備は整った。

 

「リンク召喚。水晶機巧-ハリファイバー効果でデッキからアーケイン・ファイロを特殊召喚するよ。それと、墓地のディアボリックガイを除外してラストワンを特殊召喚」

 

水晶機巧-ハリファイバー link2 攻撃力1500

 

アーケイン・ファイロ ☆2 チューナー 守備力400

 

D-HEROディアボリックガイ ☆6 守備力800

 

「チューナーとそれ以外のモンスター・・・・・・来るぞ遊馬!」

 

「あ、やっぱりやるんだ、それ・・・・・・アーケイン・ファイロでディアボリックガイをチューニング!」

 

2+6=8

 

「その拳には執念を、その身体には闘志を。The strongest fist!"Round 1" Rock & Fire! シンクロ召喚! ギガンテック・ファイター!」

 

ギガンテック・ファイター ☆8 攻撃力2800

 

 とあるサンドノックにやられた戦士が、戦騎の前に立つ。

 

「アーケイン・ファイロの効果で、デッキからバスター・モードを手札に加えるよ。カードを二枚伏せて、ターンエンド」

 

戦騎

LP8000 手札4

場 エクストラ:水晶機巧-ハリファイバー メイン:ギガンテック・ファイター 魔法・罠:伏せカード×2

 

「俺のターン、ドロー」

 

「トラップカード、バスター・モード! 熱き拳、強さ。厚き鎧、硬さ。アーマータイム! ギガンテック・ファイター/バスター!」

 

ギガンテック・ファイター/バスター ☆10 攻撃力3300

 

 『バスター・モード』のカードから光が降り注ぎ、ギガンテック・ファイターの鎧となった。

 

「ギガンテック・ファイター/バスターの効果発動。デッキからドローガイとサウザンド・ブレードを墓地へ送るよ」

 

 自分のターンにも関わらず動かれたことに多少の不満感を覚えながらも、遊羽はディスクにカードを置く。

 

「ドラゴン・目覚めの旋律、発動。デッキから青眼の白龍と青眼の亜白龍を手札に加え、オルタを特殊召喚!」

 

青眼の亜白龍 ☆8 攻撃力3000

 

 ギガンテック・ファイターを睨むように立ちはだかるオルタに、戦騎は声を漏らす。

 

「ドラグニティじゃなくてカオスドラゴンの方か・・・・・・でも、ギガンテック・ファイター/バスターの効果で、攻撃力は700下がるよ」

 

青眼の亜白龍 攻撃力3000→2300

 

「問題ねぇな。オルタの効果発動! ギガンテック・ファイターを破壊する!」

 

 オルタのブレスがギガンテック・ファイターを襲う。

 

「くっ。でも、ギガンテック・ファイターはキャストオフされるよ!」

 

ギガンテック・ファイター ☆8 攻撃力2800→3500

 

青眼の亜白龍 攻撃力2300→3000

 

「トレード・インで青眼を切って二枚ドロー、更に調和の宝札で伝説の白石を墓地へ送って二枚ドロー。デッキから青眼の白龍を手札に加えるぜ」

 

 この辺りで、戦騎は「ん?」と違和感を覚えた。

 

(このデッキ、カオスドラゴンじゃない?)

 

 同様に響も怪訝そうに眉を顰めている。

 

「おろかな重葬を発動。エクストラデッキから虹光の宣告者を墓地へ送り、効果で高等儀式術を手札に加える! そして発動! デッキのラビー・ドラゴンを生け贄に、来い、ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン!」

 

「嘘っ!?」

 

ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン ☆8 攻撃力4000

 

如月遊羽

LP8000→4000

 

 鋭利な白龍の隣に、混沌を体現した竜が並ぶ。

 

「遊羽、いつものデッキはどうしたんスか?」

 

「ん? ああ、今日は学園祭だから、普段使ってねぇデッキも使ってみようと思ってな。後、知り合いのドラゴン好きが使ってるの見て使いたくなった」

 

 後半部分を気にしないようにしながら、なるほどと納得し響は観戦モードに戻る。

 

 余談だが、その知り合いたちとのドラゴン談議において、翼についての話では鳥のような羽毛のある翼とコウモリのような翼で意見が対立し、遊羽が「レヴはどっちもあるぜ。つまり優勝だ」と暴論でねじ伏せたりしていた。

 

 閑話休題。

 

「更に、カオス・フォームを発動! 手札の青眼の白龍で儀式召喚! 来い、青眼の混沌龍!」

 

青眼の混沌龍 ☆8 攻撃力3000

 

 更に並んだ殺意溢れる龍たちに、戦騎は冷や汗を流す。

 

(ハリファイバー使うべきかな・・・・・・? いや、守備力80貫通ダメージ二倍あるし死んじゃうって。それに混沌龍いるし・・・・・・あれ? これ結構詰んでない?)

 

 改めて状況を確認すると、かなり追い込まれていることに気付き焦る戦騎。

 

「バトル! 混沌龍でハリファイバーを攻撃! 効果で守備表示&ステータス0になってもらうぜ!」

 

ギガンテック・ファイター 攻撃力3500→守備力0

 

 戦騎は焦って効果を発動すべきか判断できず、そのまま攻撃を食らってしまう。

 

「うぐっ」

 

戦騎

LP8000→6500

 

「続けて、カオス・MAXで攻撃! カオスマキシマムバースト!」

 

 カオス・MAXのブレスにより、ギガンテック・ファイターが吹き飛ぶ。

 

「うわああぁ!」

 

戦騎

LP6500→0

 

 デュエルが終わり、遊羽は戦騎に近づく。

 

「ハリファイバーの効果、何で使わなかったんだ?」

 

 疑問に思った遊羽が訊くと、戦騎はあははと力なく笑い、

 

「どうしても、不測の事態に弱いみたいなんです、僕。父さんにもよく注意されてるんですけど、中々直らなくって」

 

 そう告げる彼の態度は、初対面のそれではなく、まるで知り合いに話しているように遊羽は感じた。

 

「・・・・・・なあ、俺とお前って、前に会ったことあるか?」

 

「へ? あーといや、えーと、な、ないと思います」

 

 急に挙動不審になった戦騎に遊羽は驚くが、そろそろ生徒会の仕事が終わる時間だと気づくと、響の気にしないことにした。

 

 響と共に生徒会室へと向かう遊羽の後ろ姿を見ながら、戦騎はホッと一息ついた。

 

(危ない・・・・・・バレたのかと思った・・・・・・)

 

 そして、自分と共に()()()()へ来た親友を憂う。

 

(大丈夫かな、白羽)

 

 彼の名前は遊民 戦騎。未来からの、来訪者である。




まだ中盤にも差し掛かっていない作品の、続編を考えている作者がいるらしい・・・・・・




私だ。

続かなかった場合はすいません。



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覇王と少年

カクリヨノチザクラが可愛くて、モチベーションが上がったので二つ目・・・・・・と思ったら、日付変わってますね。

デュエル回です。


「あれ? 覇王さんがいないんだけど?」

 

 モグモグとフランクフルトを頬張っていた黒髪の少年がふと周囲を見渡すと、彼らの主たる少年が見当たらない。

 

「っ!? そうでした、我が覇王は現在子供の姿でしたね。はぐれやすいことを忘れていました」

 

 そばにいた白髪の青年もそのことに気がつくと、しまったというように額に手を当てる。

 

「チッ! おいユーザ、お前保護者だろぉが。何見失ってんだよ!」

 

「煩いですね、ユーガ。今はそれどころじゃないでしょう。早く捜さねば」

 

 紫髪の少年は苛立ったように口の中のプランキッズキャンディを噛み砕き、辺りを見回す。

 

「なら、あそこにある青眼の白龍のモニュメントの前に集合だぁ」

 

 そう言うが早いか、校舎の方向に向けて走り出した。

 

「僕たちも行こう、ユーザさん」

 

「そうですね、ユーノ。私はあちらを捜します。あなたは向こうを」

 

「わかったよユーザさん!」

 

 そして、二人を覇王の捜索を開始した。

 

 

 ・・・・・・尚、もう一名行方不明者のトマトがいるが、完全に忘れられている。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 ワンキル・ソリティア研究会。

 デュエルスクールきっての変人集団と呼ばれる彼らだが、出し物は至って普通のものだった。

 

「はーい、こちら、研究会のデッキ体験会でーす」

 

 結希が看板を掲げ、宣伝している通り、彼らの出し物はデッキ体験会。ここだけ見れば、とても普通のイベントだ。

 

「よろしくクマー。とっても楽しくて面白いクマよー」

 

 その横で客引きするのは、星河に指示された仕事、クマの着ぐるみによる宣伝をしている息吹だ。

 

「うわ、何だこのデッキ!? どうやって回すんだよ!?」

 

「こんなデッキを普段から使ってるとか、君たちキチガイか!?」

 

 部屋の中から聞こえるのは悲鳴やら怒声やら。

 そう、彼らは自分たちが作ったソリティアデッキを一般人に体験させているのだ。何て恐ろしいことを。

 

「うーん・・・・・・ミラnsネクロリベssデーモンssガンサーチ発動シンクロワンハンssミラコピ効果ネクロリベssデーモンssネクロサーチry」

 

「すいませんでした!!」

 

 その一角では、白髪に緑のメッシュが入った少年が、調子に乗ってマスタールール3で挑んできた部員を打ちのめしていた。

 

「全く、ここはこんな奴ら(キチガイ)ばっかりなのか? 何か三人ともはぐれちまったし」

 

「あはは、そうですねぇ。まあきっと、彼らなら見つけてくれますって! 気長に待ちましょう!」

 

 そう言って、トマトカラーの髪をした少年は笑った。

 

 二人がそんなやり取りをしていると、部室の扉が音を立てて開いた。

 驚いてそちらを見ると、そこには白髪でヘッドホンを首に掛けた少年がいた。

 

「えーと、研究会ってのはここであってますかね?」

 

「そうクマよー。ここが研究会クマー」

 

 クマニーサン言葉でしゃべりながら息吹が教えると、その少年は驚いてクマを二度見する。

 

「は、え? クマ? でもその声、息吹さん?」

 

「ん? オレを知ってるクマー?」

 

 首を傾げる息吹クマにその少年はあ、いえ、と手を顔の前で振って誤魔化す。

 

(うーん、若い頃の星河さんになら勝てるかなって来たけど、見当たんないなぁ・・・・・・って、え!?)

 

 部室を見回す少年の目に入ったのは白髪緑メッシュ。彼は驚いて声をあげる。

 

「何でここにズァーk「MA☆TTE! ネタバレはよくないからMA☆TTE!」あ、はい」

 

 それを一瞬緑色のオーラを出しながら高速移動し止める白髪緑メッシュ―――覇王。

 

「えーとですね、今はお忍びっていうか、そんな感じでして」

 

 秘密にして欲しいな、と振り子メンタルトマト―――二色は唇に人差し指を当ててささやく。

 

「あー、じゃあどうすっかなぁ。星河さんとデュエルしたくて来たんだけど・・・・・・」

 

 髪を掻きながら呟く少年に、覇王はならばと提案する。

 

「デュエルなら俺がするぜ。俺の正体を知ってるってことは、その実力もわかるだろ?」

 

 覇王はそう言ってディスクを構える。

 

「んー、そうだな。じゃあよろしく頼むよ覇王さん。俺は白羽(しろは)。名字は効かないでくれ」

 

「わかった、じゃあ行くぞ」

 

「「デュエル!」」

 

白羽

LP8000

 

覇王

LP8000

 

「俺のターン! 最初っから飛ばすぜ、来いゾンビ・マスター! 効果で不知火の隠者を特殊召喚、からのユニゾンビ!」

 

ゾンビ・マスター ☆4 攻撃力1800

 

ユニゾンビ ☆3 チューナー 守備力0

 

 フィールドに並ぶアンデットたち。ユニゾンビの効果で馬頭鬼と妖刀-不知火が墓地へ行き、隠者が蘇生される。

 

ユニゾンビ ☆3→4

 

不知火の隠者 ☆4→5 守備力0

 

「レベル4になったユニゾンビでゾンビ・マスターをチューニング、来いPSYフレームロード・Ω!」

 

PSYフレームロード・Ω ☆8 攻撃力2800

 

「これでターンエンドだ! さあ、覇王さんのターンだぜ!」

 

白羽

LP8000 手札2

場 エクストラ:PSYフレームロード・Ω メイン:不知火の隠者

 

「俺のターン、ドロー」

 

「Ωの効果で、馬頭鬼を墓地へ戻す」

 

 厄介な動きだな、と覇王は眉を顰める。

 

「ドラゴノイド・ジェネレーター発動! 効果でドラゴノイド・トークンを二体特殊召喚し、リリース! 来い、轟雷帝ザボルグ!」

 

覇王

LP8000→7000

 

轟雷帝ザボルグ ☆8 攻撃力2800

 

「なっ、ズァーク帝か!? しかも自爆テロマンじゃんか!」

 

 その風評被害に『解せぬ』とザボルグが切腹し、お互いのエクストラデッキを爆破しにかかる。

 

「ならそこでΩだ! 除外するぜ!」

 

 『はーい失礼しまーす』と《カード・アドバンス》のカードを奪い消えるΩ。

 

「そう来るよな。じゃ、ヌトスオバサンの出番だ」

 

 テロによって巻き込まれたヌトスがゾンビ・マスターに八つ当たりし、破壊する。

 

「カードを二枚伏せて、ターン終了だ」

 

ドラゴノイド・トークン ☆3 攻撃力300

 

覇王

LP7000 手札1

場 魔法・罠:ドラゴノイド・ジェネレーター 伏せカード×2

 

「テロのアフロめ、ぜってー許さん! 俺のターン、ドロー!」

 

 小言を一つ言って、白羽はカードを引く。

 

「スタンバイフェイズ、カムバックΩ!」

 

「こっちもキメラフレシアの効果発動だ、ミラクルシンクロフュージョンをサーチ」

 

PSYフレームロード・Ω ☆8 攻撃力2800

 

 奪ったカードをしっかり両手で持って返品した後、Ωがフィールドに戻る。

 

「まずはアンデット・ワールド発動! 次はトークンの掃除だな。二体でリンク召喚、デスポリス! ついでに隠者も入れてデコード・トーカー!」

 

デコード・トーカー link3 攻撃力2300

 

 青い電脳戦士が剣を構えるが、敵も味方もいないためどこに向けていいかわからず視線を右往左往させる。

 

「墓地の馬頭鬼の効果で来いユニゾンビ、効果で更に馬頭鬼おかわりだ! ユニゾンビとデコード・トーカーでリンク召喚! トポロジック・ボマー・ドラゴン!」

 

トポロジック・ボマー・ドラゴン link4 攻撃力3000

 

 名前がドラゴン詐欺な爆弾サイバースが門をくぐって着地する。

 

 白羽は残り三枚となったエクストラに渋面し、しかし気にせず続けた。

 

「攻撃できないけどまあいっか! 墓地の妖刀-不知火の効果! 墓地のゾンビ・マスターと共に除外シンクロ! 来いアンデット・スカル・デーモン!」

 

アンデット・スカル・デーモン ☆6 攻撃力2500

 

 デーモンがトポロジックの後ろに並ぶと、『らめぇぇぇっ体が勝手にフルオーバーラップしちゃうぅぅぅっ』と叫び嫌々と首を振りながらも両翼が円形の光を纏いデーモンを襲うが骨ゆえの軽い身のこなしで全て避ける。Ωは普通に光線を食らっているが自力で耐えている。

 

(あれ、バリアーとかじゃなくて避けてるだけだったのかよ・・・・・・)

 

(流石はデーモンさん、今日もいい動きだぜ)

 

「んじゃまあバトル! トポロジックで攻撃! 荷電粒子砲!」

 

「その攻撃名、大丈夫なのか?」

 

覇王

LP7000→4000

 

白羽

LP8000 手札2

場 エクストラ:トポロジック・ボマー・ドラゴン メイン:アンデット・スカル・デーモン PSYフレームロード・Ω フィールド:アンデット・ワールド

 

「俺のターン! そのデーモンは邪魔だな、お願いカメさん!」

 

「カメエエエエエ!?」

 

海亀壊獣ガメシエル ☆8 攻撃力2200

 

 骨ゆえに軽くもろい体はカメの重量の前に呆気なく壊れた。

 

(けど、さっき戻した馬頭鬼がいるから蘇生はできる・・・・・・あ、このターンのスタンバイな?)

 

 セリフによって入れられなかった描写を補いながら白羽はまだ余裕だと判断する。

 

「ミラクルシンクロフュージョン! 墓地のブレイブアイズ・ペンデュラム・ドラゴン、ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン、クリスタルウィングシンクロ・ドラゴン、グリーディーヴェノム・フュージョン・ドラゴンを除外する! 四天の龍を統べ、第5の次元に君臨する究極龍よ! 今こそこの我と一つとなるのだ! 統合召喚! 出でよ、覇王龍ズァーク!」

 

覇王龍ズァーク ☆12 攻撃力4000

 

 登場したのは彼自身たる龍。しかし、まだ完全ではないためか、かなり小型で背丈も人間ほどである。

 

「どうした覇王さん、ちっさいぜ?」

 

「仕方ないだろ、まだ完全版じゃないんだよ」

 

 そんなやり取りを挟み、改めて効果を使う。

 

ズァーク()が場に出たから、お前のカード全部破壊な」

 

「相変わらず理不尽な効果だよ、ホント」

 

 ズァークの小柄な体躯から溢れ出るオーラによって、トポロジックたちが『い、いやだあああ! おれは、死にたくないいいぃぃ!』とのたまわりながら破壊される。Ωはまた《カード・アドバンス》を道連れに避難した。

 

「バトル! ズァーク()で攻撃! 天上天下唯我独尊砲!」

 

「それ別ゲームですよ!?」

 

 外野の二色からの突っ込みは、ブレスに掻き消され、残念ながら届かなかった。

 

白羽

LP8000→4000

 

「痛ってぇなぁ」

 

 一気に半分になったライフに、白羽は呟く。

 

「ターン終了」

 

覇王

LP4000 手札1

場 エクストラ:覇王龍ズァーク 魔法・罠:伏せカード×2

 

「俺のターン、Ωが帰ってくるぜ。馬頭鬼の効果でユニゾンビ、2枚目で隠者! ユニゾンビの効果でドーハスーラを落としてレベルアップ! シンクロ、サベージ!」

 

ヴァレルロード・S・ドラゴン ☆8 攻撃力3000

 

 アンデットお得意の蘇生によって突破口を開く白羽。サベージにはトポロジックを装備する。

 

ヴァレルロード・S・ドラゴン 攻撃力3000→4500

 

 『大丈夫だよな・・・・・・マーカーこっち向いてるけど、爆発しないよな?』と怖じ気づいているサベージに、装備されたトポロジックは大丈夫だとサムズアップ。

 

「何か普通に打点超えられてるんだけど、俺」

 

「世代交代したからだろ? 通常召喚牛頭鬼からの馬頭鬼落として蘇れデーモンさん」

 

アンデット・スカル・デーモン ☆6 攻撃力2500

 

 『もう少し老骨を労ってくれないか?』と疲れ気味なデーモンに手刀を切り、バトルフェイズを宣言する。

 

「サベージでズァークを攻撃!」

 

「ミラフォ二枚あっても無意味じゃねぇか!?」

 

 ミラフォは役に立たないというフラグをしっかり回収しながらズァークを破壊される覇王。

 

覇王

Lp4000→2500

 

「トドメはよろしくデーモンさん!」

 

 Ωと牛頭鬼が『え? 俺は?』という目で見るが、流石に覇王相手にオーバーキルは失礼だろうということで納得する。

 

覇王

LP2500→0

 

「ダメージピッタリ! ボーナスは?」

 

「ないでーす」

 

 覇王に代わって二色が答えると、白羽は残念がる様子もなく笑った。

 

「あ、ここにいたんだ覇王さん! ・・・・・・と、トマト」

 

「あっれぇワタクシ忘れられてはございませんよね!?」

 

「ごめんユーア、僕は嘘をつくよ」

 

 いつも通りの酷い扱いにその場に崩れる二色。そしてユーアという呼び方に覇王が反応する。

 

「黒、やめておけ」

 

「そうだね。ごめん、覇王さん」

 

 その会話に疑問符を浮かべた白羽だが、まあいいかと気にしないことにした。

 

(戦騎も楽しんでるかな? あ、星河さん探しに行こうっと。後日向さんと孝之さん、それから・・・・・・)

 

 未だに勝利できていない人物たちを脳内にリストアップしながら、白羽は騒がしくなった研究会の部室を後にする。

 この時代の覇王に勝てたのだから、他の人たちにも勝てるかもしれない、と楽しみに思った。

 

 彼の名前は如月 白羽。戦騎と同じく、未来からの来訪者だ。




こちら、ちっこい覇王龍↓


【挿絵表示】


・・・・・・私のイラストって、需要あるんですかね?

次回は一週間以内に投稿できたらいいなーと。


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遊羽vs星河

学校でのストレスから、意味わからないものが出来上がった。

デュエルなしです。


 生徒会の仕事を終えた虹花は、遊羽と合流するべく、屋台の並ぶ道を歩く。

 

「『青眼の白龍のモニュメントの前で待っています』・・・・・・これでいいですね」

 

 メッセージの送信をし、ケータイをセーラー服のポケットへしまう。

 

 周囲から「おい王様、どこ行ってたんだよ?」「心配したんですよ、我が覇王」「悪いな」「ところで、ワタクシの心配は?」「「してない」」というやり取りが聞こえたが、何かあったのだろうか。

 

「ん? グヘヘ、あいつなんかいいんじゃないか?」

 

「そうだな。おい嬢ちゃん、道がわかんなくてよ、案内しちゃあくれねぇか?」

 

 二人組みの男に話しかけられた虹花は、その怪しさから警戒し、眉をひそめる。

 

「すみません、人を待っているので」

 

「そんなこと言わずによぉ、オレたちと一緒に行こうぜ?」

 

「なぁに、何も考えられないくらい気持ちよくさせてやるからよ・・・・・・」

 

 舌なめずりしながら虹花の腕をとろうとした男の腕を、何者かが掴んだ。

 

「テメェ、何虹花に手ェ出してやがんだ?」

 

 そこにいたのは、静かな怒りを燃やす、遊羽だった。

 

「あぁ? なんだ、テメェ?」

 

 邪魔そうに顔を歪める男に対し、遊羽は龍の瞳のように縦長に割れた瞳孔で見返す。

 

「・・・・・・やっぱり、こういう輩はいるんだよな。チッ、似合わないことして損したな」

 

「テメェ、質問に答えやがれ!」

 

 どうでもいいと言うように遊羽は男に対してではなく、独り言のように呟いた。

 

(精霊回収者の真似事でもすれば強くなれるかと思ったが、そうでもないらしいな)

 

 彼は、異世界での敗北から、少しずつではあるが、自分を変えようと思えた。他人を助けることで手に入る強さもあると、そう信じかけていた。

 人は信じるに値するのだと、考えを改めてようとしていた。

 

 だが、そんなことはないらしい。

 

「やっぱ、醜い人間なんざ助けるべきじゃねぇな。それで得られる力があったとしても、俺はいらない」

 

 言いながら、遊羽は男の腕を握り潰す。

 

「あっ、がぁ!? う、腕がぁぁ!!」

 

 折れた腕に苦しむ男と、その横で怒り始めた男を、遊羽は無感情に見つめた。

 

「・・・・・・遊羽?」

 

 今までにない遊羽の姿に、虹花は困惑の声をあげる。

 

「どうした、虹花? コイツらなら、すぐに捨ててくるぜ?」

 

 そう告げる彼の周囲には、黒いもやのようなものが見えた。

 

(悪霊瘴気!? そんな、何で遊羽が!?)

 

 半身が精霊となった遊羽は、当然精霊力を持っている。ならば、マイナスの感情で満たされれば、悪霊にすらなりうる。

 

「さて、テメェら。懺悔の用意はできているか!?」

 

 拳を握り、戦闘準備を整える遊羽。

 

「そうはさせない」

 

 だが、彼を止める者もいる。

 

「・・・・・・星河先輩」

 

「悪いが、止めさせてもらうぞ」

 

 遊羽と男たちの間に入ったのは、輝くオーラを薄く纏った、星河だった。

 

 

「どいてくれねぇか、先輩」

 

「それはできないな」

 

 星河を睨む遊羽だが、彼は怯みもしない。

 

「理由を訊いていいか?」

 

「俺の正義に従った結果だ。悪人ではなく、悪を裁く。それが俺の信じる正義だ」

 

 静かに告げる星河に、遊羽はそうか、とこぼし、

 

「なら、俺の敵ってことでいいんだな?」

 

「・・・・・・場所を変えよう」

 

 答える代わりに星河が指を鳴らすと、二人の姿が消える。

 

 残ったのは、ただ呆然としていることしかできなかった虹花と、逃げ出した男たちだけだった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「ここは?」

 

 星河が指を鳴らした途端に景色が回り、遊羽が目にしたのはクレーターだらけの地面だった。

 

「月とよく似た星だ。酸素はあるから安心しろ」

 

 正面からの声にそちらを向けば、星河がディスクからカードを取り出すところだった。

 

「フォトン、タキオン、星態龍」

 

 星河が呼び掛けると、彼に付き従う精霊たちが星河を中心とした黒い渦に飲まれていく。

 

「っ!」

 

 遊羽の視界を光が覆う。

 

 目を開けた彼の視界に入ってきたのは、光を体現したかのような龍だった。

 

 サイズは人間と同じほど。だが、全身が白く、各部には銀河色の装甲が見える。

 

 胸元には赤い十字架があり、その上から白いXがあしらわれていた。

 

 『星河龍グラン・ギャラクシアス』。星河の、全力の姿だ。

 

「なら、俺も行くぜ」

 

 遊羽もまた、『融合』のカードを取り出し、レヴのみならず全てのドラグニティドラゴンと融合する。

 

 橙色を通り越して赤い身体に巨大な翼。そして右手にレヴの大剣、左手にミスティルの剣を握り、周囲には槍となったドラグニティの小竜たちがファンネルのように旋回している。

 

 だが、その姿が見えたのは一瞬。黒い瘴気により、全身の色が塗りつぶされていき、黒一色となった。

 

「遊羽・・・・・・お前のその姿、真宮が見たらどう思うのか、わかっているのか?」

 

「わかってるつもりだぜ」

 

 遊羽とて、自分が悪霊になりかけているのは把握している。故に、構える。

 

「だからよ、先輩。少し相手してくれよ」

 

 言い終わった瞬間、星河の前に遊羽が現れた。

 

「っ!!」

 

 振るわれた剣を即座に後ろに跳んで回避する。

 

「やってくれたなっ!」

 

 星河は光を収束させると、二丁の拳銃を作り出し、連射する。

 

「当たらなければどうということはねぇ!」

 

 ドラグニティで受ける!と言わんばかりに槍を盾にし、その激突による煙幕を使った攻撃を警戒して更に高く飛ぶ。

 

「だが俺は、その上を行くっ!!」

 

 飛び上がった遊羽の正面で、星河は光の大剣を上段に構える。

 

「ライトセイバーだと!?」

 

「著作権に引っかかるから止めてもらおうか!」

 

 叫びながら剣を振り下ろす星河。

 

「レディアント・パニッシャー!」

 

「さっきの自分の発言どこいった!?」

 

 言いながら、急速に回転し避ける。

 

「なら次だ。荷電粒子砲!」

 

 右腕に光を溜め込み、射出。

 

「こっちはこれだ、超電磁砲(レールガン)!」

 

 ドラグニティファンネルを展開し、回転するそれをパワーゲートとして十円玉を弾き撃ち出す。

 

 衝突、閃光。

 

「シッ!」

 

「オラァ!」

 

 それが晴れるころには、両者は激突し、鍔迫り合いをしていた。

 

「それフォトンセイバー メテオールとフォトンセイバー フィラメントだよな?」

 

「形状が似ているだけの別物だ」

 

 誰がわかるんだというネタを挟みながら、全力をぶつけ合う。

 

「ダーク・シアン・スパイク!」

 

「くっ、闇落ち限定の技を・・・・・・!」

 

 パイルバンカーのように突き出された槍を受け流す。

 

「鬼斬り!」

 

「なっ、三刀流だと!?」

 

 光そのもので出来た三つの剣をかわし、両手の剣でもって迎撃する。

 

「スターバースト・ストリーム!」

 

「技名的に俺が使うべきだろう!?」

 

 驚愕しながらも、「ジ・イクリプス!」と更に反撃。

 

 もはやどこから突っ込めばいいのかわからない闘いは、終わりに近づいていた。

 

「悪霊瘴気、随分と薄くなってきたな!」

 

「そうだな! 先輩が付き合ってくれたからだぜ!」

 

 そう、お互いにこれを狙っていた。

 

 戦闘というものは、良くも悪くも人を高揚させる。

 

 二人は、それを利用して、負の感情を追い出そうとした。

 

「それに、いい運動にもなったからな!」

 

「全力を出せるような相手は、中々いねぇからな!」

 

 高揚しているためか、感嘆符混じりの星河に、遊羽も応答する。

 

 これが何の小説かわからなくなりそうだが、遊戯王ではよくあることである。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 適度に体力を消耗したため、戦闘を終え、お互いに人間体に戻る。

 

「ふぅ・・・・・・あ、今何時だ先輩? 虹花を放置しちまった」

 

「安心しろ。この空間は千倍に加速されて(バースト・リンクして)いる」

 

 グッとサムズアップする星河に、遊羽は苦笑で返した。

 

「なら先輩、ついでに俺とデュエルしてくれねぇか?」

 

「デュエルか? いいだろう」

 

 軽くディスクを見せ付ける遊羽に、星河もディスクを構える。

 

「それだけじゃあつまらねぇし、負けたら勝った方の言うことを一つ聞く、っていうのはどうだ?」

 

 何かを企んでいる顔で遊羽が提案するが、星河は当然だと頷く。

 

「「デュエル!」」




皆さん、言いたいことはわかる。私も言いたい。

どうしてこうなった!?


次回は遊羽対星河のデュエルの予定です。


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ドラグニティvs星々の龍

お待たせしました。いつもより気合いを入れて書きました。

デュエル回です。


「「デュエル!」」

 

如月遊羽

LP8000

 

銀星河

LP8000

 

「俺の先攻、竜の渓谷を発動、効果でデストルドーをコストにデッキからファランクスを墓地へ送る。ドゥクスを召喚、効果でファランクスを装備して特殊召喚! 行くぜシンクロ、ヴァジュランダ! ファランクスを装備し特殊召喚、更にシンクロ、クリスタルウィング!」

 

クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン ☆8 攻撃力3000

 

 呼吸するかのように回されたデッキから繰り出されたクリスタルウィング。進化元の出番はいつになるのだろうか。

 

「カードを一枚伏せて、ターン終了だ」

 

如月遊羽

LP8000 手札2

場 エクストラ:クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン 魔法・罠:伏せカード

 

「俺のターン。妨げられた壊獣の眠り、発動! 沈め、クリスタルウィング!」

 

 地面が割れ、クリスタルウィングは翼があるにも関わらずその亀裂に呑まれる。

 

「リバースカード、幻影翼! 攻撃力、守備力を500上げて、破壊を一度無効にするぜ」

 

クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン 攻撃力3000→3500

 

 亀裂から幻影の翼を羽ばたかせたクリスタルウィングが舞い上がり、それを地面の奥から壊獣たちが羨ましそうに見る。尚、本来の翼は使われていない。

 

「壊獣の特殊召喚を防いだか。ならば手札の銀河眼の光子竜をコストに銀河戦士を特殊召喚。効果でデッキから銀河剣聖を手札に加え、手札のフォトン・バニッシャーを見せることで特殊召喚」

 

銀河戦士 ☆5 守備力0

 

銀河剣聖 ☆8→4 守備力0→2500

 

 現れる銀河の戦士たち。大地を蹴って今日も行く。

 

「開け、銀河を震わすサーキット。銀河戦士と銀河剣聖をリンクマーカーにセット、リンク召喚! 出でよ、銀河眼の煌星竜!」

 

銀河眼の煌星竜 link2 攻撃力2000

 

 戦士と剣聖が輝くサーキットを通過すると、恒星の煌めきを持つ竜へと昇華した。

 

「ソルフレアの効果で墓地のフォトンを回収し、トレード・インのコストへ。場にギャラクシーモンスターがいることで、手札のフォトン・バニッシャーを特殊召喚。効果で銀河眼の光子竜を手札に加え、更にフォトンモンスターがいることでフォトン・アドバンサーを特殊召喚!」

 

フォトン・バニッシャー ☆4 攻撃力2000

 

フォトン・アドバンサー ☆4 攻撃力1000→2000

 

 並ぶ同じレベルのモンスター。

 

「来るぞ遊馬!」

 

「ああ、行くぞアストラル。二体のモンスターでオーバーレイ! 颯爽登場、輝光帝ギャラクシオン!」

 

輝光帝ギャラクシオン ★4 攻撃力2000

 

 二体のモンスターが銀河の渦に飛び込み、光の鎧を纏った皇帝が剣を構える。

 

「ギャラクシオンの効果発動、オーバーレイユニットを二つ使い、デッキより銀河眼の光子竜を特殊召喚する!」

 

 例の赤い十字架を星河が投擲し、そこから銀河が生まれる。

 

「逆巻く銀河よ、我が魂の竜に宿りて、その輝きを解放せよ! 銀河眼の光子竜!」

 

銀河眼の光子竜 ☆8 攻撃力3000

 

『ふう、名前だけで終わるかと思ったぞ』

 

 コストや効果対象にはなったものの、場に出ることはない、という事態はしばしばあるため、それを案じたのだろう。

 

「・・・・・・すまない、囮になってくれ」

 

『構わない。星河の勝利のためならば、な』

 

 申し訳なさそうに星河が告げると、フォトンは気にしていない様子で肯いた。

 

「バトルだ。フォトンでクリスタルウィングを攻撃! 破滅のフォトン・ストリーム!」

 

「だが、クリスタルウィングの効果が発動するぜ。フォトンの攻撃力分、攻撃力がアップする」

 

 フォトンがクリスタルウィングと対面すると、フォトンの輝きを身体の水晶で吸収し力を増すクリスタルウィング。

 

「フォトンの効果、発動! フォトンとクリスタルウィングを除外する!」

 

「クリスタルウィングの効果も発動だ! 無効にして破壊する!」

 

 フォトンがそれに対抗し銀河への穴を開けるが、力を増したクリスタルウィングによって自身ごと破壊されてしまう。

 

「ギャラクシオンでクリスタルウィングに攻撃! その瞬間、オネスト発動!(強くなりたいよぉ!)

 

輝光帝ギャラクシオン 攻撃力2000→5500

 

 穴を破壊したことで力の落ちたクリスタルウィングを、仇討ちだと言わんばかりにギャラクシオンが両断する。

 

如月遊羽

LP8000→6000

 

「くっ、蘇生できねぇ・・・・・・」

 

 フォトン・バニッシャーから得た効果によって除外されるクリスタルウィング。破壊したはずの銀河への穴へと押し込まれた。

 

「まだだ、ソルフレアでダイレクトアタック!」

 

「くっ、ライフで受ける!」

 

如月遊羽

LP6000→4000

 

「ターンエンドだ」

 

銀星河

LP8000 手札2

場 エクストラ:銀河眼の煌星竜 メイン:輝光帝ギャラクシオン

 

「俺のターン、ドロー」

 

 カードを引き、フィールドのソルフレアを見る。

 

(手札に銀河眼の光子竜がいるのはわかってる。つーことはソルフレアの破壊効果が飛んで来るってことだ)

 

 行動を予測しながら、手札のカードをディスクに置いていく。

 

「竜の渓谷の効果発動だ。手札のゼピュロスを墓地へ送り、デッキからドゥクスを手札に加えるぜ。ゼピュロスの効果で竜の渓谷を手札に戻し、特殊召喚!」

 

BF-精鋭のゼピュロス ☆4 守備力1000

 

「ならば使おう。手札の銀河眼の光子竜を捨て、ソルフレアの効果発動! ゼピュロスを破壊する」

 

 フォトンの光を受け、ソルフレアが光線でゼピュロスを焼き鳥にする。

 

「よし、邪魔はなくなったな。竜の渓谷を再度発動、アキュリスを切ってダークヴルムを墓地へ送り、効果で特殊召喚! デッキから覇王門零を手札に加えるぜ」

 

覇王眷竜ダークヴルム ☆4 守備力1200

 

 フィールドにモンスターがいなくなったことで人見知りなダークヴルムが顔を出す。

 

「ライフを半分払いデストルドーを特殊召喚!」

 

亡龍の戦慄-デストルドー ☆7→3 チューナー 守備力3000

 

如月遊羽

LP4000→2000

 

 人見知りヴルムの横にのっそりと骨龍が佇み、そのホラーさに悲鳴があがると同時に調律した。

 

「シンクロ召喚! ブラック・ローズ・ドラゴン!」

 

ブラック・ローズ・ドラゴン ☆7 守備力2000

 

 中空に紅蓮の花が咲き誇り、そこから竜の胴体が生え、美しい竜となる。

 

「ブラックローズだと!?」

 

「さあ、爆ぜろ!」

 

 ブラックローズが『任務、了解。自爆する』と何かのスイッチを押すと爆発し、周りのモンスター全てを破壊する。

 

「ドゥクスを召喚、効果でファランクスを装備し特殊召喚、そしてチューニング!」

 

2+4=6

 

「竜との絆を束ね、全てを貫く神槍とせよ! シンクロ召喚! ドラグニティナイト-ヴァジュランダ!」

 

ドラグニティナイト-ヴァジュランダ ☆6 攻撃力1900

 

 王道の流れに沿って竜騎士は羽ばたき、槍を構える。

 

「ファランクスを装備し、効果発動! ファランクスを墓地へ送り、攻撃力を倍にする!」

 

ドラグニティナイト-ヴァジュランダ 攻撃力1900→3800

 

「バトルだ。ヴァジュランダでダイレクトアタック!」

 

 ヴァジュランダの槍が星河を貫き、ダメージを与える。

 

銀星河

LP8000→4200

 

「カードを伏せて、ターン終了だ」

 

如月遊羽

LP2000 手札1

場 エクストラ:ドラグニティナイト-ヴァジュランダ 魔法・罠:伏せカード

 

「俺のターン、ドロー。強欲で貪欲な壺を発動! 二枚ドロー! デストルドーをコストに、ダーク・グレファーを特殊召喚、効果でこちらもデストルドーを特殊召喚。リンクし、ハリファイバーだ」

 

銀星河

LP4200→2100

 

水晶機巧-ハリファイバー link2 攻撃力1500

 

「ハリファイバーの効果でデッキからギャラクシーサーペントを特殊召喚」

 

ギャラクシーサーペント ☆2 チューナー 守備力0

 

 機械の戦士に導かれ、銀河を象った竜が姿を現すと、それに続くように騎士が並び立った。

 

銀河騎士 ☆8 攻撃力2800→1800

 

「銀河騎士の効果、墓地のフォトンを特殊召喚する!」

 

銀河眼の光子竜 ☆8 守備力2500

 

 銀河騎士に続いてフォトンが蘇生されたことで、レベル8が二体となった。

 

「またUMAか!」

 

「そうだ。銀河騎士と銀河眼の光子竜でオーバーレイッ!」

 

 星河が空中に手をかざすと黒い銀河が出現し、赤い十字架となったフォトンとそれに追従する一つの光点が吸い込まれ、爆発する。

 

「暗き内にて迸る銀河よ、その奔流を持ってして姿を現し、宇宙の全てを輝き照らせ! エクシーズ召喚! No.62銀河眼の光子竜皇!」

 

No.62銀河眼の光子竜皇 ★8 攻撃力4000

 

 最近巷で噂のナンバーズの一枚、プライムフォトン。その美しい身体を輝かせ、遊羽を見据える。

 

「バトルだ。プライムフォトンで攻撃、その瞬間効果が発動する! オーバーレイユニットを一つ使い、攻撃力を場のランク分だけ上昇させる! プライム・アキュミレィト!」

 

No.62銀河眼の光子竜皇 攻撃力4000→5600

 

『これで終わりだ』

 

 フォトンが口に溜めた光粒子を吐き出し、ブレスとして放つ。

 

「まだだ! リバースカード、聖なるバリア-ミラーフォース! 相手モンスターを全て破壊する!」

 

「何、だと・・・・・・」

 

 バリアによって反射された自身の攻撃によって破壊されるプライムフォトンと巻き添えを食ったハリファイバーを見ながら、星河は呆然と呟く。

 

「・・・・・・ターンエンドだ」

 

銀星河

LP2100 手札0

場 メイン:ギャラクシーサーペント

 

 手札もなく、カードもギャラクシーサーペントのみの星河。だが、まだ負けではない。

 

(ヴァジュランダの攻撃力は1900、そして最後の手札は覇王門零。ここでモンスターを引かなければ・・・・・・)

 

 竜の渓谷があれば敗北確定だったが、ブラック・ローズの巻き添えで破壊されているため、まだ可能性はある。

 

「俺のターン、ドロー」

 

 ドローしたカードを見、遊羽は笑みを浮かべる。

 

「貪欲な壺を発動。ドゥクス二枚、ブラック・ローズ、ヴァジュランダ、ゼピュロスを戻し、二枚ドロー! メテオ・ストライクを装備。バトルだ。ヴァジュランダでギャラクシーサーペントに攻撃!」

 

銀星河

LP2100→200

 

 風前の灯火どころか火の粉で飛ぶようなライフとなった星河。

 

「カードを伏せて、ターンエンドだ」

 

如月遊羽

LP2000 手札1

場 エクストラ:ドラグニティナイト-ヴァジュランダ 魔法・罠:メテオ・ストライク 伏せカード

 

「ッ、俺のターン・・・・・・」

 

 カードを引き抜き、直感したがってそのままディスクに読み込ませる。

 

「復活の福音! 蘇れ、フォトン!」

 

銀河眼の光子竜 ☆8 攻撃力3000

 

 再び大地に立つフォトン。次のターンになればプライムフォトンは帰ってくるため、このターンでキルゾーンまで持っていくべきだと判断したらしい。

 

「バトルだ! 破滅のフォトン・ストリーム!」

 

 再びフォトンが放ったブレスによってヴァジュランダが消し飛び、遊羽にもダメージが飛ぶ。

 

如月遊羽

LP2000→900

 

 同じくファイヤー・ボールで吹き飛ぶライフとなり、若干の冷や汗を浮かべる遊羽。だが同時に、掛けに勝ったような笑みも浮かべる。

 

「・・・・・・? ターンエンドだ」

 

銀星河

LP200 手札0

場 メイン:銀河眼の光子竜

 

「俺のターン、ドロー。まずはドゥクスを召喚、そして・・・・・・」

 

ドラグニティ-ドゥクス ☆4 攻撃力1500

 

 召喚されたドゥクスが嫌な予感を感じ『助けてスノウちゃん!』と逃げようとするが、それよりも早く遊羽がカードを発動する。

 

「リバースカード、破壊指輪! ドゥクスをリリースし、お互いに1000ダメージだ!」

 

「なッ!?」

 

 ドゥクスが『ちくしょおおおお!』と叫びながら指輪を付けて空中で爆発し、その余波が二人を襲う。

 

如月遊羽

LP900→0

 

銀星河

LP200→0

 

「・・・・・・最初から、それが狙いだったのか」

 

 デュエルが終わり、星河がポツリと呟く。

 

「いや。あわよくば、って程度だ。星河先輩相手に引き分け狙いでデュエルしても負ける」

 

 星河の言葉を否定し、遊羽は早速自分の望みを言う。

 

「先輩、俺に子供ができたら、ソイツにデュエルを教えてやってくれねぇか?」

 

「・・・・・・何故だ?」

 

 遊羽の言葉に驚き、返答に遅れながらも問を返す。

 

「俺にとって、デュエルは家族(レヴ)を否定させない道具だった。今は少し違うが、それでも、最初はそうだった。そんな俺より、星河先輩みたいな、誰かを守るためのデュエルを、教えてやって欲しい」

 

 とうとうと語る遊羽に、星河は少し考えてから、頷いた。

 

「了解した。君に子供ができたときは、俺がデュエルを教えよう」

 

 ありがとな、と感謝する遊羽に再び頷いてから、星河もまた自分の望みを言う。

 

「俺からは一つだ。・・・・・・今から息吹(バカ)を締めに行く。それに付き合ってくれ」

 

 ほお? と遊羽が口角を上げながら訊き返すと、星河もまた笑みを浮かべながら説明する。

 

「どうやらあのバカ、着ぐるみなのをいいことに女子と写真撮影し、その上でドラゴンの擬人化コスプレもさせているらしい。また、同じ趣味を持つ精霊と写真のやり取りもしているようだ」

 

「よし行くぞ」

 

 遊羽はドラグニティの神槍を空の向こうのとあるゾンビ花に向かって投げ、星態龍の中から出ると真っ先に研究会の部室に突撃した。

 

 

 余談だが、その数分後に、校舎裏で簀巻きにされたクマの着ぐるみが発見された。




中継 息吹の状況

「うぷぷぷぷぷ。シャレでDJやったら大受けクマー。ミッシェルは偉大クマー」

「正☆義★執☆行」

奪命撃(ヴォーパル・ストライク)!」

「クマァァァアアアアア!?」


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兎と脳筋のダブルコンボ

またかなりお待たせしてしまいました。

デュエル回です。


(くそう……どうすりゃいいんだ)

 

 遊兎はとなりを歩く桜髪の童顔少女を見ながら、軽く唇を噛んだ。

 

(折角彩葉と一緒にいるのに、どうしたらいいかわっかんねぇ! やっぱ食いものに行くべきか? でもそれじゃいつも通りだし、学園祭なんだからもっとこう……ああもう、わかんねぇ)

 

 グルグル考えている途中で「ま、待つクマ! 話せばわかるクマ! やめ、やめろぉ!」という乾いた叫びが聞こえた気がしたが、そんなことに構っていられる状態ではない遊兎はビクッと身を震わせるに終わった。

 

 悶々と考えてながら歩く遊兎の横で小首を傾げながら歩く彩葉は、何かを目に留めると、突然立ち止まった。

 

「あ、お化け屋敷だって、永野さん。どう? 入る?」

 

「ふぇ!? え、えーと、今日は遠慮したいなー、なんて・・・・・・」

 

「うん。じゃあ行こう」

 

 いつものようにニコニコと笑みを浮かべている戦と、いつものように彼にいじられている遥だった。

 

「永野さんって悪魔族使うのに、お化けは怖いんだね。可愛い」

 

「かわっ!? や、やめてよー!」

 

 若干涙目になって抗議する遥だが、戦は笑って流す。

 

「もう、今日という今日は怒ったよ! 遊民君、ボクとデュエルしよう!」

 

 プンプンという擬音が出そうな様子で怒る遥だが、戦にとっては可愛いとしか感じられないものである。

 

「ボクが勝ったら、もう皆がいるところでからかうのは止めてもらうよー!」

 

「うん。つまり二人っきりのときはいいんだ」

 

 戦の指摘に顔を赤くしてそっぽを向く遥。だが否定しない。

 

「なら、私も、混ぜて?」

 

 すると、それに便乗してか、彩葉も戦にデュエルを挑んだ。

 

 遊兎が「え? え!?」と彩葉と先程まで彼女がいた場所とを二度見三度見している間に、理由のわからない戦は首を傾げる。

 

「ん。リベンジ」

 

 彩葉が端的に伝えると、戦は前期中間テストトーナメントのことだと気付き、笑顔で了承する。

 

「うん、いいよ。ただ、二対一か・・・・・・」

 

 数的不利な状況で上手く戦えるか、と戦は顎に手を当て考えるが、心配ないとばかりに彩葉は遊兎に目を向ける。

 

「遊兎、やってくれる?」

 

 突然の頼みに、遊兎はどう反応すべきか一瞬迷う。

 

「・・・・・・ダメ?」

 

 その一瞬の隙をついて繰り出された上目遣いでのお願いに、耐性のない遊兎はノックアウトされる。

 

「や、やるに決まってらぁ!」

 

 承諾したものの何をするのかよくわかっていない遊兎に、彩葉はそでを摘み指示する。

 

「遊民と組んで、私たちとデュエル」

 

 「え、」という遊兎の呟きをスルーし、彩葉は彼を引っ張りデュエル場へ向かう。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「「「「デュエル!!」」」」

 

戦、遊兎ペア

LP8000

 

遥、彩葉ペア

LP8000

 

 ルールはタッグフォース基準、順番は戦→遥→遊兎→彩葉→戦だ。

 

「僕の先攻、手札抹殺を発動。 お互いに手札交換を行うよ」

 

 入れ替わる戦と彩葉の手札。遥とはことなり彩葉は墓地発動の効果は少ないので、無表情ながらもどこか悲しそうだ。

 

「ジャンク・シンクロンを召喚して、墓地からチューニング・サポーターを特殊召喚! 墓地からモンスターを特殊召喚したことで、ドッペル・ウォリアーも出るよ! そしてシンクロ召喚! おいで、スターダスト・チャージ・ウォリアー!」

 

スターダスト・チャージ・ウォリアー ☆6 守備力1300

 

 星屑の戦士が守備を固めると、戦がその恩恵によって二枚手札を得る。

 

「カードを二枚伏せて、ターンエンド。さ、遥のターンだよ」

 

戦、遊兎ペア

LP8000 手札2、5

場 エクストラ:スターダスト・チャージ・ウォリアー 魔法・罠:伏せカード×2

 

「また名前ー! ボクのターン、こっちも手札抹殺発動だよー! そして今墓地へ送った魔サイの戦士の効果で、デッキからヘルウェイ・パトロールを墓地に。そして、手札一枚をコストにダーク・オカルティズムを発動だよー。デッキから天魔神ノーレラスを手札にくわえるねー」

 

 未発売のカードを使われた気がしたが、気のせいだと割り切る戦。

 

「更にトレード・イン発動だよー! 手札のノーレラスをコストに二枚ドロー!」

 

 カードを引いてから、遥はこのターンでファンカスノーレを決めるかどうかを考える。

 

(ノーレラスの効果を使っても、次は月見くんのターンだからあんまり意味はないし、墓地効果を使われちゃうよね。でも、あのたくさんの伏せカードも無視できないし・・・・・・)

 

 手札の『リビングデットの呼び声』を見ながらの少しの思考の後、遥は使うと決心する。

 

「墓地のヘルウェイ・パトロールの効果発動! 除外して、手札のファントム・オブ・カオスを特殊召喚! 効果で墓地のノーレラスを除外して、効果を得るよー!」

 

ファントム・オブ・カオス→天魔神ノーレラス ☆4 攻撃力0→2400

 

「そして得たノーレラスの効果発動! 1000ライフを払って、お互いの手札とフィールドを全部墓地に送るよー!」

 

遥、彩葉ペア

LP8000→7000

 

 戦と遥の手札と場がファンカスの闇に飲み込まれる。ジャンは飲まれていくスターダスト・チャージ・ウォリアーに敬礼を送りながら、自分ではなくてよかったと安心する。失礼なヤツである。

 

「ボクはカードを一枚伏せてターン終了だよー」

 

遥、彩葉ペア

LP7000 手札0、5

場 魔法・罠:伏せカード

 

「よし、(オレ)のターン! 化石調査を発動だ! デッキからファイヤーオパールヘッドを手札に加えるぜ! そしてドラコニアの翼竜騎兵とペンデュラムスケールをセッティング!」

 

Pスケール 0-7

 

 光の柱にある国の騎兵部隊とオパールの頭蓋を持つ恐竜が並ぶ。

 

「ペンデュラム召喚! メガロスマッシャーX! 幻のグリフォン!」

 

メガロスマッシャーX ☆4 攻撃力2000

 

幻のグリフォン ☆4 攻撃力2000

 

 並ぶ二体の攻撃力2000。レベル4通常モンスターとしての最高の攻撃力を持つ彼らだが、恐竜は水がないことからかぐったりとし、幻獣は(ハーピィ)がいないためか遣る気なさ気だ。

 

「バトルだ! 二体でダイレクトアタック!」

 

「リバースカード、戦線復帰だよー! 墓地の終末の騎士を特殊召喚して、デッキからネクロ・ガードナーを墓地に送るよ!」

 

終末の騎士 ☆4 守備力1200

 

 終末の騎士が攻撃を受け、続く第二打も『ネクロ・ガードナー』を除外することで防ぐ。

 

「メインフェイズ2だ! 二体のモンスターでオーバーレイ! 来てくれ、No.39希望皇ホープ!」

 

No.39希望皇ホープ ★4 攻撃力2500

 

 最近イラストになったりもした希望の皇の後方に伏せカードが出現し、遊兎のターンが終わる。

 

戦、遊兎ペア

LP8000 手札0、1

場 エクストラ:No.39希望皇ホープ 魔法・罠:伏せカード Pゾーン:ファイヤーオパールヘッド ドラコニアの翼竜騎兵

 

「ん。ドロー」

 

 フィールドの状況を確認し、彩葉は使うべきカードを選ぶ。

 

「魔法カード、おろかな副葬。デッキからシャッフル・リボーンを墓地へ」

 

 今まで彩葉の使っていなかったカードに、戦は気を引き締め、遊兎は驚愕する。

 

「これで墓地に魔法カードが四枚。閃刀機-ウィドウ・アンカーを発動。ホープの効果を無効にして、コントロールを得る」

 

「なっ!?」

 

 防御の要を奪われ、遊兎は焦る。

 

「ならリバースカード、ダメージ・ダイエット! このターン、(オレ)たちが受けるダメージは半分になる!」

 

 戦は手札がない故に何もできない状況に歯噛みしながらも遊兎に感謝する。

 

「ん。ホープをランクアップ。ホープ・ザ・ライトニング」

 

SNo.39希望皇ホープ・ザ・ライトニング ★5 攻撃力2500

 

 本来ウィドウ・アンカーのコントロール奪取はそのターン中なのだが、素材にされては帰ってこない。

 

「死者蘇生を発動。おいで、スターダスト・チャージ・ウォリアー」

 

スターダスト・チャージ・ウォリアー ☆6 攻撃力2000

 

 あっと言う間に二人のモンスターは奪われ、彩葉のフィールドでお茶を飲み交わす。

 

「バトル。ライトニングでダイレクトアタック」

 

 ライトニングが飲んでいたお茶を置き、代わりに肩の剣を抜き、二人に斬撃を飛ばす。

 

戦、遊兎ペア

LP8000→6750

 

「次はスターダスト・チャージ・ウォリアー」

 

 チャージ・ウォリアーはお茶を飲みながら、自身のファンネルを操り射撃する。

 

戦、遊兎ペア

LP6750→5750

 

「メイン2、墓地のシャッフル・リボーンの効果でスターダスト・チャージ・ウォリアーをデッキに返して、一枚ドロー。カードを伏せて、エンドフェイズにシャッフル・リボーンの効果で手札を一枚除外する」

 

遥、彩葉ペア

LP8000 手札0、2

場 エクストラ:SNo.39希望皇ホープ・ザ・ライトニング 魔法・罠:伏せカード

 

「僕のターン、ドロー」

 

 引いた唯一の手札を見ながら、戦は考える。

 

(チャージ・ウォリアーはエクストラに戻ったけど、出すためのカードがない。それに、ライトニングには攻撃力を5000にする効果もある。普通のデュエリストは下手に動けないね)

 

 だが、彼は普通のデュエリストではない。

 

「墓地のラッシュ・ウォリアーの効果発動! 墓地のジャンク・シンクロンを手札に加える! そして通常召喚! 効果で墓地のドッペル・ウォリアーを特殊召喚!」

 

ジャンク・シンクロン ☆3 チューナー 攻撃力1300

 

ドッペル・ウォリアー ☆2 守備力800

 

 ラッシュ・ウォリアーの効果が通ったことから、伏せカードはシャーク・キャノンではないと推測し、ならばウィドウ・アンカーの可能性が高いと戦は躊躇う。

 

「それでも、やるしかないよね。ジャンク・シンクロンでドッペル・ウォリアーをチューニング! 集いし星が、鋼に打ち勝つ戦士となる! シンクロ召喚! ジャンク・ウォリアー!」

 

ジャンク・ウォリアー ☆5 攻撃力2300

 

『毎デュエル出ているはずなのに、久しぶりな気がしますな。書かれるのが久々だからですかな?』

 

 はて? と首を傾げメタ発言を繰り出すジャン。腕を組んだその出で立ちは様になっているが、その動作で台無しである。

 

「ジャンク・ウォリアーの効果がチェーン1、チェーン2でドッペル・ウォリアーの効果発動! 行くよ、皆!」

 

ドッペル・トークン ☆1 攻撃力400

 

ジャンク・ウォリアー 攻撃力2300→3100

 

 戦の十八番のコンボにより、ジャンの攻撃力が青眼の白龍をも凌ぐものとなる。

 

「そして速攻魔法、スクラップ・フィスト! ジャンに五つの効果を付与するよ」

 

『漲ってきましたぞ~!』

 

 『スクラップ・フィスト』の効果を受け、ジャンが淡いオーラを纏う。

 

「そのカードは・・・・・・」

 

「そう、これでライトニングの効果は使えない。バトルに入るよ。ジャンで攻撃! スクラップ・フィスト!」

 

 ジャンが背中のブースターでライトニングに突撃し、剣を抜かせる間もなく殴打、連打、撲殺。

 

遥、彩葉ペア

LP8000→6800

 

「これでターンエンドだよ」

 

戦、遊兎ペア

LP5750 手札0、1

場 エクストラ:ジャンク・ウォリアー メイン:ドッペル・トークン×2

 

「ボクのターン、ドロー!」

 

 遥は伏せカードを確認し、彩葉にアイコンタクトを送る。

 

(これ、使っていいの?)

 

(ん。好きにして)

 

 ならばと遥はカードを使う。

 

「リバースカード、リビングデットの呼び声! 墓地から終末の騎士を特殊召喚!」

 

終末の騎士 ☆4 守備力1200

 

 週末なのに休む間もなく現れる騎士。デッキから『ヘルウェイ・パトロール』を墓地へ送る。

 

「ターンエンドだよ」

 

遥、彩葉ペア

LP6800 手札1、2

場 メイン:週末の騎士 魔法・罠:リビングデットの呼び声

 

「ん? それだけか? (オレ)のターン、魂食いオヴィラプターを召喚、効果でデッキからメガロスマッシャーXを墓地に送る! そして二体のメガロスマッシャーXを除外して、究極伝導恐獣を特殊召喚!」

 

究極伝導恐獣 ☆10 攻撃力3500

 

 墓地の魚竜が逃げ出すと、食べ物を求めて恐獣がフィールドを踏む。

 

「バトルだ! まずはオヴィラプターで終末の騎士に攻撃!」

 

 オヴィラプターが騎士に噛み付こうとすると、騎士の姿が消える。

 

「墓地の妖精伝姫-シラユキの効果発動だよー! 場と墓地からカードを七枚除外して、この子を特殊召喚! 除外するのは終末の騎士にリビングデットの呼び声二枚、ダーク・グレファー、戦線復帰、手札抹殺、ダーク・オカルティズム!」

 

 終末の騎士が消えるのに続き、墓地からもカードが舞い上がる。

 

「それにチェーンして、煌々たる逆転の女神の効果を発動するね! 場にカードがなくて、相手が攻撃したときに使える! 手札から捨てて、相手フィールドのカードを全て破壊するよ!」

 

「「なっ!?」」

 

 男二人が揃って驚愕の声を上げるのと、ジャンと究極伝導恐獣が悲鳴をあげるのは同時だった。

 

「そして、デッキからモンスター一体を特殊召喚するよ! 来て、ダーク・シムルグ! そして妖精伝姫ーシラユキ!」

 

ダーク・シムルグ ☆7 攻撃力2700

 

妖精伝姫ーシラユキ ☆4 攻撃力1850

 

 女神の導きによって闇黒の怪鳥が羽ばたき、その横に嫌そうにおとぎ話の姫が並ぶ。

 

「くっ・・・・・・ターンエンドだ」

 

戦、遊兎ペア

LP5750 手札0、0

場 なし

 

 手札もなく、場にもモンスターのいない最悪な状況。そして、次にターンが回るのは、彩葉だ。

 

(マズいね。次のドローで花園さんの手札は三枚。大型モンスターを出せるようなカードを引かれたら……)

 

 戦がそう考えるのと同時に、彩葉も手札を見ていた。

 

(コミック・ハンド二枚とか、事故……)

 

 もくじもトゥーン・キングダムも引けていないという、致命的すぎる事故だった。

 

「ドロー」

 

 引いたカードはグレイドルのモンスターカード。攻撃表示で出した後で反撃されるリスクを考えると、現状伏せる以外に道がない。

 

「墓地の錬成融合の、効果発動。デッキに戻して、カードを一枚ドロー」

 

 引いたのは今戻したばかりの『錬成融合』。己の運の悪さを呪いながらも、彩葉は表情を変えない。

 

「バトル。ダーク・シムルグとシラユキでダイレクトアタック」

 

 シムルグが起こした風が二人を切り裂き、シラユキが遊兎に跳び蹴りを食らわす。

 

戦、遊兎ペア

LP5750→3050→1200

 

 場にカードが存在しないため、戦たちはやられ法大だ。

 

「・・・・・・モンスターを伏せて、終わり」

 

遥、彩葉ペア

LP6800 手札0、3

場 メイン:ダーク・シムルグ 妖精伝姫ーシラユキ 伏せモンスター

 

「・・・・・・僕のターン、ドロー!」

 

 このターンで何か引かなければ負ける。そう確信し、気合いを入れてカードを引く。

 

「貪欲な壺を発動! 墓地のジャンク・ウォリアー、スターダスト・チャージ・ウォリアー、ジャンク・シンクロン、オヴィラプター、ホープをデッキに戻して、二枚ドロー!」

 

 再び引かれるカード。それを見て、戦は笑みを濃くする。

 

「調律を発動! デッキからジャンク・シンクロンを手札に加えて、デッキトップを墓地へ! そのまま、ジャンク・シンクロンを召喚!」

 

ジャンク・シンクロン ☆3 チューナー 攻撃力1300

 

ソニック・ウォリアー ☆2 守備力0

 

 オレンジ帽子の調律師が召喚されると、その効果で緑のボディの戦士が呼び出される。

 

「手札一枚をコストに、ジェット・シンクロンを特殊召喚! 場にチューナーモンスターがいることで、ボルト・ヘッジホッグを特殊召喚!」

 

ジェット・シンクロン ☆1 チューナー 守備力0

 

ボルト・ヘッジホッグ ☆2 守備力800

 

 現れる扇風機とハリネズミを見て、準備は整ったと戦は手を正面へ向ける。

 

「ソニック・ウォリアーに、ジャンク・シンクロンをチューニング! もう一度集え、星々よ! ジャンク・ウォリアー!」

 

ジャンク・ウォリアー ☆5 攻撃力2300

 

『再び参上ですぞ!』

 

 ジャンが意気揚々と腕を振るうが、途中で嫌な音が鳴り痛そうに肩を抑える。

 

「ジャンの効果がチェーン1、ソニック・ウォリアーの効果がチェーン2だよ。ソニック・ウォリアーの効果で、レベル2以下のモンスターの攻撃力は1000上がる。そしてジャンの攻撃力は場のレベル2以下のモンスターの攻撃力分だけアップする」

 

ジェット・シンクロン 守備力0(攻撃力500→1500)

 

ボルト・ヘッジホッグ 守備力800(攻撃力800→1800)

 

ジャンク・ウォリアー 攻撃力2300→5600

 

『一致団結、この拳止~まれ、ですぞ!』

 

 ノリノリで拳を掲げるジャンだが、扇風機とハリネズミは反応せずに守備表示でダラダラしている。

 

「バトル。ジャンでシムルグに攻撃! スクラップ・フィスト!」

 

 傷心のジャンが怪鳥に八つ当たりし、その巨体を殴り抜く。

 

遥、彩葉ペア

LP6800→3900

 

「・・・・・・ターン終了だよ」

 

戦、遊兎ペア

LP1200 手札0、0

場 エクストラ:ジャンク・ウォリアー メイン:ジェット・シンクロン ボルト・ヘッジホッグ

 

「ボクのターン、ドローするよー」

 

 遥は引いたカードを見、苦笑する。

 

(今これが来てもねー)

 

 引いたのは『煌々たる逆転の女神』。今の状況では使うことは難しい。

 

「シラユキを守備表示にして、ターンエンド」

 

遥、彩葉ペア

LP3900 手札1、3

場 メイン:妖精伝姫ーシラユキ 伏せモンスター

 

(オレ)のターン・・・・・・!」

 

 宣言と同時にカードを引き、しばし動きが止まる。

 

「えーと、月見くん?」

 

 動かない遊兎に戦が声をかけると、ビクゥ! と驚いた遊兎は悪ぃ、と言ってから彩葉を見る。

 

「さっきのターン伏せたのがグレイドル・イーグルじゃなければ。このデュエル、(オレ)の、いや、(オレ)たちの勝ちだ」

 

 そう告げる遊兎に、彩葉は引いたカードに目星を付ける。

 

「あのカードを、蘇生できるカード・・・・・・」

 

「そうだ! 死者蘇生、発動! 来てくれ、究極伝導恐獣!」

 

究極伝導恐獣 ☆10 攻撃力3500

 

 ヤレヤレとでも言うように恐獣は遊兎の前に立ち、並ぶ守備表示モンスター(格好のエサ)に目を向ける。

 

「究極伝導恐獣で伏せモンスターに攻撃! サバイバル・サバイブ(戦わなければ生き残れない)!」

 

 恐獣が裏側のカードを踏み砕くと、伏せられていた『グレイドル・コブラ』が水の体を潰されカエルのような声を出す。

 

「究極伝導恐獣の効果で1000ダメージ! 更に攻撃だ! サバイバル・サバイブ(戦わなければ生き残れない)!」

 

遥、彩葉ペア

LP1200→200

 

 続けて恐獣がおとぎ話の姫に目を向けると、彼女はその場でDO☆GE☆ZAし自らハラキリした。

 

遥、彩葉ペア

LP200→0

 

「ま、また負けたよー!」

 

 デュエルが終わると、力が抜けたらしく、遥はその場に崩れ落ちる。

 

「それじゃ、約束通りお化け屋敷に行こうか」

 

「え? そんな約束してな、ちょ、ちょっと待ってよー!」

 

 ニッコリと黒い笑みを浮かべた戦が遥をどこかへ連れ去って行くのを見て、遊兎は彩葉に声をかける。

 

「・・・・・・(オレ)たちも、行くか」

 

「うん。遊兎となら、どこでも、いいよ?」

 

 穏やかに微笑む彩葉に、遊兎が再びノックアウトされたのは言うまでもない。




最近名前の数字がギリシャになったとある方のSSに感化されてヴェンデットを作ろうと思い、50円で売っていたエクストラパック2018を二箱買いました。

・・・・・・スレイヤー二枚しか出ないしセイヴァーもエグゼクターも出ねぇ!? パーツ足りないって!

後、狙っていたアークペンデュラムも出ず、メガフリートも出ず、竜騎士が二枚・・・・・・これはブラマジを組めということか?


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彼の日の向く方

誰か……ブラックコーヒーをください……。

デュエル回です。


「お、響。どうした、一人で」

 

「兄さんこそ、一人ッスか? お二人と一緒かと思ったんスけど」

 

 校舎内の店を回っていると、日向はばったり響と遭遇した。

 

「孝之は姉に引っ張られてどっかいった。星河はさっき遊羽と走ってたな」

 

 日向が思い出しながら言うと、響にも話すよう目で促し、彼女も口を開く。

 

「自分は、最初から一人ッスよ。真田たちに誘われたッスけど、断ったッス」

 

 日向はそうか、とだけ答え、少し考えるように目を瞑り開ける。

 

「なら、一緒に行くか」

 

 問いとも、強制とも取れない彼の言葉に、響は抵抗なく頷く。

 

「あの・・・・・・兄さん」

 

「ん?」

 

 少し恥じらいながら響が兄を呼び、応答された後躊躇い、決心したように日向の目を見て、やはり顔を逸らす。

 

「手、握っても・・・・・・いいッスか?」

 

「もちろん。・・・・・・じゃ、行くか」

 

 笑顔で響の手を取り、日向は歩き出した。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「・・・・・・なんだか、いけない現場を見た気分ですね」

 

「・・・・・・ああ、そうだな」

 

 日向と響を見かけ、声をかけようとしていた遊羽と虹花だったが、二人の雰囲気に思わず隠れた物陰で声を潜める。

 

「私達も・・・・・・手、繋ぎますか?」

 

 遠慮がちに虹花が訊くが、遊羽は少し迷う。

 

 彼ら二人は、ある約束をしている。それは、十八になるまで夜の営みはしない、キスもしない、というものだ。

 別にキスくらいはいいかもしれないが、キスをしてしまうと、お互いに溜まっているものが抑えられなくなってしまうかもしれない。手を繋ぐことも同じだ。

 

 何をバカなと思うかもしれないが、二人はいたって真面目である。それくらい、お互いに対する欲望が溜まっているのだ。

 

「・・・・・・まあ、学園祭くらい、いいかもな」

 

 遊羽が肯定したことに虹花は安堵し、そして手を繋ぐと同時に襲ってきた感情に冷や汗を流す。それは、遊羽も同じこと。

 

(今日、持つかな、俺の理性)

(耐えられるんでしょうか、私の理性)

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 そして、さらに後ろから、二人を見る影が二つ。

 

「僕らも手、繋ぐ? 遥」

 

 ニコニコスマイルで戦が話し掛けるのは、顔を真っ赤にした遥だ。

 

 先程デュエルで負けたため、名前で呼ぶことを許可させられ、羞恥心が限界に達している彼女に、答える余裕はない。

 

(無言を肯定と受け取って・・・・・・やめとこ。これ以上は暴走しそうだし、今の遥を見ている方が楽しいし)

 

 手を握ろうと浮かせた腕を下ろし、戦はしばらく遥を見つめ続けることにした。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 最後に、屋台の中から遊羽と虹花、戦と遥を見ていた遊兎と彩葉。

 

「・・・・・・手、繋ぐ?」

 

「へっ!? い、いや、(オレ)たちにはまだ、その・・・・・・」

 

 彩葉の問いかけに驚き、しどろもどろになってしまう遊兎。初である。

 

「ん、わかった・・・・・・」

 

 そう言いながら、遊兎の腕に抱き付く彩葉。

 

「なっ、彩葉!?」

 

「手は、繋いでない」

 

 そこで「確かにそうだけど・・・・・・!」となるあたりが、遊兎がデュエルで勝てない理由なのだろう。良くも悪くも素直なのである。(ワル)を名乗っているが。

 

「しばらく・・・・・・こうしてて、いい?」

 

 上目遣いで自身を見上げる彩葉と腕に当たる柔らかい感触により、遊兎は完全にノックアウトされた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 裏でそんなことが起きているとは知らない日向と響は、周囲の視線に顔を赤くしながらも、店を見て回っていた。

 

「お、このネックレス、響に似合うんじゃないか?」

 

 日向が青い宝石に翼を装飾したネックレスを手に取り、響に薦める。

 

「いや、自分はこんなの似合わないッスよ!」

 

 両手をブンブンと顔の前で振る響に、いいからいいからと日向はネックレスを着ける。

 

「ど、どうッスか?」

 

 恐る恐る響が訊くと、日向は笑顔で答える。

 

「似合ってるぜ、響。流石はマイリトルシスターだ」

 

 いつもならばツッコむところなのだが、恥じらいと嬉しさでそれどころじゃない響は顔を真っ赤にしたまま俯いている。

 

 そんな響を見て嬉しくなった日向は、店員を呼ぶ。

 

「すいません。これ、幾らですか?」

 

 返ってきた値段に響が驚いていると、日向は手早く会計を済ませてしまう。

 

「ちょ、兄さん、こんな高いもの・・・・・・」

 

「プロで稼いでるから問題ないって。ほら、次行こう」

 

 笑って響の手を取り、歩き出す日向。

 

 尚、学園祭でこんなアクセサリーが売っているのかと言えば、それはデュエルスクールが特殊なだけである。

 

 しばらく歩くと、休憩スペースらしきベンチがあったため、二人はそこへ座る。

 

「・・・・・・兄さん。あの、自分・・・・・・」

 

 何かを言おうとする響に、日向は黙って続きを待つ。

 

「あ、日向さん! って、あ、」

 

 丁度そこに割り込んできた白髪の少年に、響は顔を真っ赤にしながら睨む。

 

「あ、えーと、すいません!」

 

 冷や汗をダラダラと流しながら謝る彼に、響は暫く睨み付けたままだったが、やがて諦めたかのように溜め息をつき、半眼で口を開く。

 

「で、どなたッスか? 兄さんの名前を知ってるみたいッスけど」

 

 「知り合いッスか?」と響は日向に訊くが、彼はいんやと首を振る。

 

「あ、俺は白羽です。どうぞ宜しく」

 

 名字は訊かないでください、とにこやかに続いた言葉に、日向は何か事情があるのだろうと察する。

 

 しかし、完全に気づいたのが響である。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 例えるならば、「うーわーマジかコイツうーわー」という顔で白羽を見る響。白羽はそのことに気付きながらも全力で視界に入れないようにしている。

 

「んで、おれたちに何か用か?」

 

 鈍感な日向は気にせず白羽に要件を促し、白羽もまた逃げ出したい衝動に駆られながらも退くわけにはいかないと話を続ける。

 

「俺、三羽烏のファンなんです。是非、デュエルして欲しいなと思って」

 

 嘘は言っていない。

 

「じゃあ、さっさとデュエルしようか」

 

 じゃないと響が暴走しそうだ、と黒いオーラが見えるほどにじーっと見つめている彼女を想いながら、ベンチを立つ。

 

「あー、本当にすんません」

 

 再び頭を下げる白羽にヒラヒラと手を振り、ディスクを腕に装着する。

 

「「デュエル!」」

 

水瀬日向

LP8000

 

白羽

LP8000

 

(うわ・・・・・・おれのデッキ、殺る気マックスかよ)

 

 自身の手札を見るなり日向は若干引く。

 

「おれのターン。ドラゴノイド・ジェネレーター、及び冥界の宝札を発動。ドラゴノイド・トークン二体を特殊召喚して、リリースしアドバンス召喚! 来い、クラッキング・ドラゴン!」

 

水瀬日向

LP8000→7000

 

クラッキング・ドラゴン ☆8 攻撃力3000

 

 冥界の宝札により更にカードを引き、それを見た日向はまたも驚く。

 

(マジか・・・・・・これでは完全にmeの勝ちじゃないか!)

 

「カードを二枚伏せる。ターン終了だ」

 

水瀬日向

LP7000 手札2

場 メイン:クラッキング・ドラゴン 魔法・罠:冥界の宝札 ドラゴノイド・ジェネレーター 伏せカード×2

 

 ターン終了の宣言と共に白羽のフィールドにトークンが二体現れ、クラッキング・ドラゴンが吠える。

 

ドラゴノイド・トークン ☆1 攻撃力300→100

 

白羽

LP8000→7800→7600

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 勢いよくカードを引いて手札に加え、別のカードを取り、ディスクに置く。

 

「ユニゾンビを召喚!」

 

「クラッキング・ドラゴンの効果が発動し、チェーンしてリバースカード、連撃の帝王、帝王の烈旋発動!」

 

「ウェ!?」

 

ユニゾンビ ☆3 チューナー 攻撃力1300→700

 

白羽

LP7600→7000

 

 ユニゾンビとクラッキング・ドラゴンが竜巻に飲み込まれ、新たなモンスターが姿を現す。

 

「来い、虚無の統括者」

 

虚無の統括者 ☆8 攻撃力2500

 

 くすくすとマントを握った手で口元を隠し、笑いながら君臨する、虚無の天使。

 

「げ、そのカードは!」

 

「そう、きみの特殊召喚を全て封じるモンスターだ」

 

 冥界の宝札の効果で二枚ドローしながら、日向は答える。

 

(アンデット・ワールド引けなかっただけでこれか!)

 

 アンデット以外をアドバンス召喚できないという隠れた効果を持つアンデット・ワールド。しかし、白羽はそれを引けていなかった。

 

「ドラゴノイド・トークンを守備表示に変更! これでターンエンドだ」

 

白羽

LP7000 手札5

場 メイン:ドラゴノイド・トークン×2

 

 特殊召喚不可能な状態では、白羽は何もできない。

 

「おれのターン、ドロー」

 

 これで日向の手札は五枚。これだけの盤面を作りながらデュエル開始時と変わっていないという事実に、白羽はもう苦笑するしかない。

 

「死者蘇生を発動。来い、クラッキング・ドラゴン! ドラゴノイド・ジェネレーターの効果でトークンを特殊召喚し、アドバンス召喚! 来い、V・HEROウィッチ・レイド!」

 

クラッキング・ドラゴン ☆8 攻撃力3000

 

V・HEROウィッチ・レイド ☆8 攻撃力2700

 

 並ぶ三体のモンスター。ウィッチ・レイドの姿に、白羽は伏せカードがあっても無意味だったと思い知らされる。

 

「バトルだ。虚無の統括者とウィッチ・レイドでトークンを破壊!」

 

 くすくすと嘲笑いながら虚無の統括者がトークンを蹴飛ばし、ウィッチ・レイドが杖で撲殺する。

 

「クラッキング・ドラゴンでダイレクトアタック! クラックアップ・フィニッシュ!」

 

 クラッキング・ドラゴンが白羽に噛みつき、ライフを半分近く貪る。

 

白羽

LP7000→4000

 

「カードを伏せて、ターン終了だ」

 

水瀬日向

LP7000 手札4

場 メイン:虚無の統括者 クラッキング・ドラゴン V・HEROウィッチ・レイド 魔法・罠:冥界の宝札 ドラゴノイド・ジェネレーター 連撃の帝王 伏せカード

 

「くっ、俺のターン!」

 

 半分となったライフに焦りながらカードを引き、そのままディスクに叩きつけるように発動する。

 

「吹き飛べ! サンダー・ボルト!」

 

 ディスクによって投影された緑色のカードからイナズマが走り、日向のモンスターたちを撃ち抜く―――――かに見えた。

 

「悪いな。おれのデッキは、相当勝ちたいらしい」

 

 イナズマによる一瞬の閃光が晴れると、そこには金色の竜が佇んでいた。

 

真竜輝兵ダース・メタトロン ☆8 攻撃力3000

 

「なっ、ウソだろ・・・・・・」

 

 白羽が見る日向のフィールドからはモンスターの他に冥界の宝札と連撃の帝王が消えており。

 

(連撃の帝王の効果で、アドバンス召喚したのか!)

 

 モンスターは一体しかリリースしていないため冥界の宝札によるドローはないが、代わりにダース・メタトロンは完全耐性を持った。

 

「でも、これで俺は特殊召喚ができる! 牛頭鬼を召喚し、効果で馬頭鬼を墓地へ! 馬頭鬼を除外し、ユニゾンビを特殊召喚! 効果でデッキから屍界のバンシーを墓地へ! 除外して発動、アンデットワールド!」

 

 かけられていた制限が解けたことで回り出す白羽のデッキ。しかし、それだけでは足りない。

 

「ユニゾンビと牛頭鬼でリンク召喚! 来いハリファイバー! 効果でグローアップ・ブルームを特殊召喚し、牛頭鬼の効果でユニゾンビを除外しゾンビ・マスター特殊召喚! 更にリンク召喚! デコード・トーカー! ブルームの効果、除外して、来いドーハスーラ!」

 

デコード・トーカー link3 攻撃力2300→3300

 

死霊王ドーハスーラ ☆8 攻撃力2800

 

ゾンビ・マスター ☆4 攻撃力1800

 

「ゾンビ・マスターの効果で手札一枚をコストに墓地から牛頭鬼を特殊召喚! 次だ、オーバーレイ! 希望皇ホープからホープレイ大正義!」

 

SNo.39希望皇ホープ・ザ・ライトニング ★5 攻撃力2500

 

 雷と共に大正義皇が腕を組んで立つと、日向が顔を引きつらせる。

 

(虹花ちゃんと似たデッキかと思ったけど、全然違うなぁ。展開力に全振りしてる感じだ)

 

 そんな日向に構わず、白羽はバトルを宣言する。

 

「ライトニングでダース・メタトロンに攻撃!」

 

SNo.39 希望皇ホープ・ザ・ライトニング 攻撃力2500→5000

 

 ライトニングが剣を振るい、メタトロンを両断する。

 

水瀬日向

LP7000→5000

 

「次だ! ドーハスーラでダイレクトアタック!」

 

「リバースカード、聖なるバリアーミラーフォース! 全員破壊だ」

 

 閃光、反射、爆発。

 

 白羽のモンスターは、これで全滅。

 

「……ターン終了だ」

 

白羽

LP4000 手札2

場 フィールド:アンデット・ワールド

 

「おれのターン。ドローフェイズにサイクロン発動だ。アンデット・ワールドを破壊するぜ」

 

「……マジか」

 

 たった今引いたカードによって屍の世界は崩れ、白羽のフィールドは更地となる。

 

「ジェスター・コンフィを特殊召喚、ドラゴノイド・ジェネレーターの効果でトークンを特殊召喚して、リリース! 来い、ドレッド・ルート!」

 

邪神ドレッド・ルート ☆10 攻撃力4000

 

 顕現したるは、日向が駆る邪神の一体、ドレッド・ルート。本来は裁定の面倒な効果があるのだが、今回はその圧倒的な攻撃力が役に立つ。

 

「ドレッド・ルートでダイレクトアタック! フェーズノックダウン!」

 

白羽

LP4000→0

 

「うあー、やっぱそう簡単には勝てないかぁ」

 

 悔しそうに白羽は呟き、苦笑する。

 

「お邪魔しました。それじゃ、さっきの続きをどうぞ」

 

 そう告げて、白羽はどこかへ去る。

 

 白羽に言われ、デュエル前に言いかけたことを思い出し、赤面する響。日向も思い出したように彼女を見る。

 

「なあ、響。デュエルの前、何を言おうとしたんだ?」

 

「し、知らないッス! 休憩はもう十分ッスよね、次行くッスよ!」

 

「えぇ……おれ今のデュエルでつかれたんだけど」

 

 がっくりと項垂れる日向だがそんなことにはお構いなしに響は日向の手を引く。

 

「ほら、行くッスよ!」

 

「締まらない終わり方だなぁ」

 

 お前が言うんかい、と周囲の生徒は心の中でツッコんだ。




皆様、活動報告へのコメントありがとうございます。
予想以上に今のままがいいというコメントが多くて驚いています。

……というか、何で今までこの題名の作品なかったんでしょう。誰でも思いつきそうなのに。

テストがあるので、暫く投稿できないかもです。


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星河と結希

前回、何故かラブコメに書いた気がしますが、これは遊戯王のSSです。

デュエル回です。


 日向と響がイチャコラしているのと、同時刻。

 

「あ、見つけたわよ星河」

 

 息吹への制裁を終わらせ、「? ・・・・・・なんだ? 倒した奴の気配が・・・・・・まあいいか」などと屋上で座り込みくつろぎながら呟いていた星河に、声がかけられる。

 

「結希か。どうかしたのか?」

 

 声の方向に顔を上げると、そこには腰に手を当てた出で立ちの結希がいた。

 

「どうしたもこうしたもないわよ。探してたのよ」

 

 プンスカという擬音が似合いそうな様子で怒る結希に、星河は疑問符を浮かべる。

 

「俺をか? 何か起きたのか」

 

「違うわよ。私が個人的に探してただけ」

 

 星河の横に腰を下ろし、感慨に耽りながら結希は続ける。

 

「私たちも、そろそろ卒業でしょ? だから、今のうちにデュエルしたかったのよ」

 

 後、まだ私一回もデュエルしてないから、と続いたメタ発言に苦笑しながらも、星河は肯く。

 

「いいだろう。受けて立つ」

 

 立ち上がり、距離を取るべく離れる星河。お互いにディスクを構える。

 

「「デュエル!」」

 

銀星河

LP8000

 

望月結希

LP8000

 

「俺のターン。手札の銀河眼の光子竜をコストにトレード・イン発動。フィールドにモンスターがいないことで、フォトン・スラッシャーを特殊召喚。更に、フィールドにフォトンモンスターがいることで、フォトン・バニッシャーを特殊召喚。効果でデッキから銀河眼の光子竜を手札に加える」

 

フォトン・スラッシャー ☆4 攻撃力2100

 

フォトン・バニッシャー ☆4 攻撃力2000

 

 光子の輝きを身体に持つ戦士たちがフィールドに降り立つ。

 

「更に魔法カード、フォトン・サンクチュアリを発動。フィールドにフォトン・トークンを特殊召喚。そしてその二体をリンクマーカーにセット。リンク召喚。銀河眼の煌星竜。効果で銀河眼の光子竜を回収」

 

銀河眼の煌星竜 link2 攻撃力2000

 

 光子の球体が門に取り込まれ、星の煌めきを持つ竜へと爆発する。

 

「フォトン・バニッシャーとフォトン・スラッシャーでオーバーレイ。輝く銀河よ、光子の奔流によって、光の竜へと昇華せよ! 輝光竜フォトン・ブラスト・ドラゴン!」

 

輝光竜フォトン・ブラスト・ドラゴン ★4 攻撃力1800

 

 二体の戦士が黒い銀河へと流れ込み、銀河は竜へと姿を変える。

 

「フォトン・ブラスト・ドラゴン? 見たことないモンスターね」

 

「今まで使うことが少ないかったからな」

 

 星河はどちらかというとギャラクシオンを使うことが多い。ソルフレアのコストのために、銀河眼の光子竜は手札よりもデッキから特殊召喚したいからだ。

 

「ブラストの効果、手札からフォトンモンスターを特殊召喚する。逆巻く銀河よ、我が魂の竜に宿りて、その輝きを解放せよ! 銀河眼の光子竜!」

 

銀河眼の光子竜 ☆8 攻撃力3000

 

 星河のデッキの過労死枠にして、エース。【青眼エクゾ】でもない限り、青眼の白龍でもここまで働かない。

 

「カードを二枚伏せる。これでターンエンドだ」

 

銀星河

LP8000 手札1

場 エクストラ:銀河眼の煌星竜 メイン:輝光竜フォトン・ブラスト・ドラゴン 銀河眼の光子竜 魔法・罠:伏せカード×2

 

「私のターン、ドロー」

 

 星河の残り一枚の手札は銀河眼の光子竜。ソルフレアで一度破壊されることは確定したようなものだ。

 

「召喚僧サモン・プリーストを召喚」

 

「ソルフレアの効果だ。手札のフォトンをコスト破壊する」

 

 僧侶の格好をしたおじいちゃんがぎっくり腰で守備表示になると、間髪入れずにフォトンの力受けたソルフレアが踏みつける。

 

「あら、容赦ないわね」

 

「通せば魔法カードを墓地に送られ、その上レベル4を二体並べられるとわかっているからな」

 

 そうね、と軽く笑いながら結希は手札のカードをディスクに置く。

 

「おろかな副葬を発動よ。デッキから錬成融合を墓地へ送るわ」

 

「ならそれにチェーンしてブラストの効果発動だ。オーバーレイユニットを一つ取り除くことで、墓地か除外から銀河眼の光子竜を特殊召喚する」

 

銀河眼の光子竜 ☆8 攻撃力3000

 

 フォトンが左右に高速移動すると、影がぶれ、姿が二つへと分かれた。

 

「分身の術かしら? その巨体で器用なものね」

 

『いや、ただの演出なんだが・・・・・・』

 

 申し訳なさそうに告げるフォトンに結希は顔を赤くしながら必死にデュエルへ意識を戻す。

 

「シャッフル・リボーンを発動するわ。墓地のサモン・プリーストを特殊召喚」

 

召喚僧サモン・プリースト ☆4 守備力1600

 

 牢屋の孫に未練でもあったのか蘇るおじいちゃん。

 

「サモン・プリーストの効果で手札のモンスターゲートをコストにデッキから終末の騎士を特殊召喚よ」

 

終末の騎士 ☆4 守備力1000

 

 現れた騎士が無言でデッキからBF-精鋭のゼピュロスを墓地へ叩き込む。

 

「レベル4が二体、来るぞ遊馬!」

 

「焦らないで欲しいわ。まずはリンク召喚よ。来なさい、アーミライル!」

 

星導竜アーミライル link2 攻撃力1400

 

 星河のモンスターたちに導かれるようにして結希のフィールドへ舞い降りた竜に、星河は細めた目を向ける。

 

「だが、場に他のレベル4モンスターは、ッ!」

 

 何かを察したように星河は自分の墓地を確認し、己の失態を呪う。

 

「先程ブラストの効果で取り除いたのは、フォトン・バニッシャー・・・・・・」

 

「あら気付いたのね。閃刀機-シャーク・キャノン発動よ。墓地に魔法カードが三枚あることで、貴方のフォトン・バニッシャーを特殊召喚!」

 

フォトン・バニッシャー ☆4 攻撃力2000

 

「アーミライルの効果で手札からアステル・ドローンを特殊召喚、そしてお待ちかねのエクシーズ召喚よ。お願い、ホープ・ダブル! 一枚ドローよ」

 

No.39希望皇ホープ・ダブル ★4 守備力2500

 

 霊体となって顕現する希望の皇に星河は渋い顔をし、そして少し戸惑う。

 

「・・・・・・フォトン・バニッシャーはフィールドから素材になった時しか効果を発動しない、つまりエクシーズチェンジしても効果は得られないぞ?」

 

「・・・・・・えっ」

 

 自信満々な顔を崩し、慌てて効果を確認する結希。このドジっ子属性はなんなんだ、と星河は額に手を当てる。

 

「し、知ってたわよ! それに、貴方も動揺してたじゃない!」

 

「俺はランク4を出されることに焦っただけだ。決してたった今効果を思い出したなんてことはない」

 

 真顔で断言する星河にどうかしら、と結希は疑いの目を向ける。

 

「まあいいわ。ダブルの効果発動よ。デッキからダブル・アップ・チャンスを手札に加えて、ホープにエクシーズチェンジするわ」

 

 言いながら腕を己の目線の先へと向け、詠唱する。

 

「暗き闇に輝く希望の光よ、その金色の剣で悪を斬り裂け! エクシーズ召喚! 希望皇ホープ!」

 

No.39希望皇ホープ ★4 攻撃力2500→5000

 

 霊体から実体化し、力を増す希望の皇。素で大正義と互角となった。

 

「バトルよ! ホープでブラストに攻撃、そしてホープの効果を発動するわ。攻撃は中止、そして速攻魔法、ダブル・アップ・チャンス発動よ! ホープの攻撃力を二倍にして、もう一度攻撃可能とする!」

 

No.39希望皇ホープ 攻撃力5000→10000

 

 攻撃を止められたことにいじけ、パチンコをしていたホープの目にジャックポット7の柄が三つ映り、攻撃力を倍にするほど喜ぶ。

 

「ホープでもう一度攻撃! ホープ剣・ダブル・スラッシュ!」

 

 星河の手札は0、オネストを警戒する必要がない結希は、勝負を決めるべくブラストを狙う。

 

 しかし、星河の口元には、笑みが浮かんでいた。

 

「最初は完璧に事故ったと思ったが、まさかこうなるとはな! リバースカード、反射光子流、これを二枚!」

 

「・・・・・・え?」

 

輝星竜フォトン・ブラスト・ドラゴン 攻撃力1800→11800→21800

 

 ブラストが二枚のカードの光を受け、一層激しく輝く。

 

「え? え?」

 

 突然のことに思考が追いつかない結希。困惑の声をあげる他ない。

 

「反撃だ、ブラスト。フォトン・ブラスト・ストリィィィィィィィィイイイム!」

 

望月結希

LP8000→0

 

「えええええ!?」

 

 ようやく脳が追い付いた様子の結希。最後に驚愕の叫びをあげる。

 

「ふう。決着だな」

 

「納得できないわよ! 今日こそ勝って告白しようと思っていたのに!」

 

 何で二枚も入れているのか、オネストかせめて光子化にしなさいなどと結希が続けようと詰め寄ると、彼女の顔の前に星河が右手を出し、止める。

 

「何よ」

 

「いや、今・・・・・・告白、と」

 

 あ、と呆然とし、口をポカンと開ける結希。顔の下から徐々に赤くなっていき、最後にはボンと湯気が出た。

 

「ま、待ちなさい! 今のはそうね、言葉の綾というかそれにほら、愛の告白と決まったわけでもないし「結希」・・・・・・」

 

 まくし立てるように言い訳をする結希だが、途中で星河に遮られる。

 

「・・・・・・結希。俺は、君のことが好きだ。付き合って欲しい」

 

「・・・・・・ふぇ?」

 

 再び唖然とし、脳が理解するに連れて更に赤くなっていく結希。羞恥心や嬉しさやその他様々な感情が混ざり合い、どうしていいかわからず思わずその場から逃げ出す。

 

 が、その手を星河は掴む。

 

「せめて、返事くらいはしていけ」

 

 自らも顔を朱に染め、顔を逸らしながら、それでもと結希に答えを催促する星河。

 

「・・・・・・い、イエスよ」

 

 絞り出すように言った結希の答えに、星河は安心して手を離す。

 

「・・・・・・そうか。良かった」

 

 噛み締めるように呟かれた星河の言葉に我に返った結希は、

 

「・・・・・・ぷしゅぅ」

 

「!? おい、結希!?」

 

 気絶した。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 こうして、デュエルスクール『アベシ』校に、また一つカップルが生まれた。

 

 幸か不幸か、例のバカは異世界帰りでバトル中のため写真も撮られておらず、周りに人影もないため、そのことを知っているのは当事者のみである。




あるぇ? 今回もラブコメチックな話に・・・・・・。

本編では星河や結希についてあまり触れていませんが、四章終了後に外伝として三羽烏たちの話を数話書く予定なので、そこで出せればなと思います。

テストまであと一週間なのに、私は何をやっているのだろうか・・・・・・いや、テスト勉強のストレスで(ry


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祭りは終わり、

テスト期間で部活がないので、執筆時間を確保できる・・・・・・。

テスト勉強? しても無駄なんですよ。

デュエルなしです。


「ふー、疲れた疲れた」

 

 そう言いながら、息吹は校門をくぐる。

 

「でも、異世界は楽しかったのです!」

 

 その隣で手鞠が元気いっぱいに言うと、息吹は穏やかな笑みを浮かべながら、内心で別のことを思う。

 

(まあ、知り合い増やして搾られてデュエルしただけで、異世界らしいことはあんまりしてない気がするけどね♪)

 

 彼の思う『異世界らしいこと』とは屍のお姫様のような転生や俺TUEEEEEEEなので、デュエリストとしての認識のズレがある。

 

「あれ? 龍塚くん、この時間クラスの当番だって言ってなかった?」

 

 彼らがデュエルスクールに入ると丁度そこにいた戦が首を傾げる。遥もこの時間にクラスの当番のため、覚えていたのだ。

 

「・・・・・・ヤバ。忘れてた♪」

 

「ちょ、お兄様!? 今すぐ行くのです! 職務怠慢はよくないのです!」

 

 慌てて手鞠が息吹の背中を押して教室に連れていこうとするが、息吹は笑って自分で歩く。

 

 教室に着き、扉を開けると、そこには遊羽がいた。

 

「・・・・・・って遊羽!?」

 

 息吹のクラスの出し物、『月見くん危機一髪』の列の近くに違和感なくいたのは、腕組みをして立つ遊羽だった。

 

「お前に仕込んでおいたレヴの羽の反応が消えてたぜ。さあ、どこで何をしていたのか白状しろ」

 

 無表情で修羅のごときオーラを漂わせる遊羽に、息吹は冷や汗を流す。

 

(ゴメン骸坂くん、オレ約束守れないかもしれない)

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 数分後、なんとか骸坂との約束を守り切った息吹は、脱力した様子で椅子に腰掛けていた。

 

「そうか・・・・・・里香さん、来てたのか。それに記憶喪失って・・・・・・」

 

 出来れば、異世界での一件から成長したことを確認するために一戦交えたかった遊羽だが、また別の厄介事に巻き込まれていると知り、今回は諦めるとする。

 

「それで、今どこにいるんだ?」

 

「狭間の世界、だってさ♪」

 

 それについては訊かないで♪と続ける息吹に、遊羽は不信感を覚えながらも頷く。

 

「それと遊羽、今日は駅の方に行かないことをオススメするよ♪ 特にラーメン屋付近」

 

 指を立てながら言った息吹に疑問符を浮かべた遊羽だが、一応気にとめておくことにした。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

『それでは。学園祭、これにて閉会とします』

 

 壇上の校長が宣言し、学園祭が終わる。

 

「あーあー、これでもう終わりかいな」

 

 どこかの方便を混ぜながら言うのは孝之だ。その隣には日向と星河もおり、学園祭の余韻を噛み締めていた。

 

「そうだなぁ」

 

「ああ。祭りは終わり、そして――――」

 

 一泊の躊躇いの後、星河は告げる。

 

「残るは、卒業だけだ」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「美味しかったですね、ラーメン」

 

「ああ。久し振りだったけど、中々だったな」

 

 夜の駅前を歩くのは、遊羽と虹花。遊羽はラーメン屋に行くつもりはなかったのだが、虹花が食べたいと言い出したため同行したのだ。息吹の忠告よりも、虹花を優先するらしい。

 そして、二人が歩いていると、別の二人組と遭遇する。

 

「あ」

 

「え?」

 

「げっ」

 

「あっ、虹花おねーちゃん!」

 

 異世界で出逢った二人、骸坂とシュカだった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「で、何でお風呂に入っているの、僕ら?」

 

 カポーン、と音が響く。

 

「さあな、俺が訊きたい」

 

 実際には二人に遭遇して虹花とシュカがガールズトークに花を咲かせ、シュカが「また虹花お姉ちゃんとお風呂入りたい!」と言い出したのがことの発端だ。

 

「・・・・・・今回は、僕をフルボッコにしないんだね」

 

 包帯など巻かれていない自分の身体を眺めながら、骸坂は切り出す。

 

「ああ。あの時は虹花と二人っきりのところにお前が出て来たからな」

 

 要は、別に骸坂だからボコボコにしたわけではないということだ。出て来たのが骸坂以外ならば殺気を込めた視線を送る程度だっただろう。

 

「最近、どうだ? 島はちゃんと復興できたか?」

 

 まるで親戚のおじさんのような切り出し方に、骸坂は半笑いで返す。

 

「上手くいってるよ。何で急にそんなことを?」

 

「いや・・・・・・」

 

 少しバツが悪そうな顔をする遊羽を見て、骸坂は察する。

 

(なるほど・・・・・・遊羽君って不器用なのか)

 

 大切な人を守るために、戦う以外の方法を知らないのだ、遊羽は。

 故に外敵に過剰に反応し、排除しようとする。

 

 そうわかれば、あまり怖くはない。

 

「君はどうなの? 虹花ちゃんとは上手くいってるの?」

 

 少しからかうようなニュアンスを含めた口調で彼が問うと、遊羽は真顔で答える。

 

「一切進展させてねぇ。今日も手を繋いだだけで理性が飛びそうになったんだ、進展させられねぇ」

 

「・・・・・・なんかごめん」

 

 気まずい空気が流れる中、先に口を開いたのは遊羽だった。

 

「旅行、楽しんでいけよ」

 

「うん、そうさせてもらうよ」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「やっぱり、お姉ちゃんのお肌スベスベ! どうしたらそんな綺麗な肌になるの?」

 

 純粋な瞳を輝かせながら隣に座るシュカに苦笑を浮かべながら、虹花は答えに窮する。

 

(別段、特別なことはしていないんですが・・・・・・え? まさか、アレですか? 毎晩遊羽を想ってシテいる、アレですか!?)

 

 自分の考えを必死に打ち消し、虹花は答える。

 

「私もよくわからないんですが、適度な運動は身体にいいと聞きますね」

 

「へー、虹花お姉ちゃんって運動してるんだ! 何してるの? スポーツ?」

 

 ぐっ、と虹花は言葉を詰まらせる。どう無難に返すべきか、生徒会長の頭脳をフルに使用し考える。

 

「そうですね・・・・・・簡単なスパーリングを、毎日」

 

「そうなんだ。今度骸坂に頼んでみるね!」

 

 後日大変な思いをするであろう骸坂に虹花は心の中で謝る。

 

「・・・・・・でも、どうして急にお風呂に入りたいなんて言い出したんですか? シュカちゃん」

 

 ふと、疑問に思っていたことを口に出す虹花に、シュカはえへへっと笑い、

 

「シュカ、遊羽お兄ちゃんと骸坂に、仲良くなって欲しいくて」

 

 遊羽と骸坂。どちらも、シュカにとって大切な人だ。

 しかし、骸坂がノットヴァースから人間へと転生あいたとき、遊羽にボコボコにされたのはシュカも知っている。

 

 だから仲良くなって欲しいのだろうと気付いた虹花は、シュカの優しさに思わず小さく笑ってしまう。

 

「虹花お姉ちゃん?」

 

「大丈夫ですよ、シュカちゃん。遊羽は、骸坂くんを許しています。きっと、男湯で仲良くしていると思いますよ」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「それじゃ、またね! 遊羽お兄ちゃん、虹花お姉ちゃん!」

 

「はい、またいつか」

 

「次に会った時は、リベンジデュエルをさせてもらうよ」

 

「ああ。楽しみにしてるぜ」




今回、yunnn様の作品『遊戸 里香の表裏生活』より、骸坂くんとシュカさんをお借りしました。
yunnnさん、キャラをお貸しいただきありがとうございます。口調等おかしな点がございましたら、メッセージをください。

それにしても、200話って凄いですよね。作者がこのSSを書き始めて半年以上経ちますが、未だに80話、平均文字数は4000ちょっと・・・・・・差が大きい。

それと、これにて四章完結です。アンケートも締め切ります。
タイトルは変更しません。皆様、貴重な御意見ありがとうございました。


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外伝 三羽烏の軌跡
星と闇竜と


テスト勉強なんてやってられるか! 私は書くぞ!

今回から数話は過去編となります。

デュエル回です。


 デュエルスクール、アベシ校への道。

 

 一枚のカードを片手に持ちながら歩く男子生徒が一人。

 

(これ、結局何だったんだろうな・・・・・・)

 

 そのカード―――『真竜機兵ダースメタトロン』を眺めながら登校しているのは、水瀬 日向(みなせ ひゅうが)。今年から高等部一年になった生徒だ。

 

「あー、あとでお礼しにいかないとな。響も助けてもらったし」

 

 自分と妹を助けてくれた少年のことを思い出し、何気なく呟く。

 

(しかし、何なんだったんだ、あれ? 何もないところからいきなり衝撃が来て、かと思ったらドラゴンが現れるし・・・・・・)

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 先日、プロデュエリストになった記念に妹とファミレスを訪れた時のことだった。

 

 注文した料理が来るのを待っていた二人の耳を唐突に襲った悲鳴。何事かと声の方向を見れば倒れていく店員や他の客。そして二人に訪れた衝撃。吹き飛ばされた際に痛めた頭を抑えながら、何とか妹を守ろうと抱きしめ、自分たちがいた場所に目を向ければ、金色のドラゴンが暴れていた。

 

(なるほど・・・・・・おれたちはここで死ぬのか)

 

 状況がわからずとも、実感できた。

 己の、死を。

 

(なぁ、神様。本当にいるなら、うまれてはじめて希うよ。せめて妹だけは、助けてくれ)

 

 荒れ狂うドラゴンを見ながら、日向はただただ祈った。己の命ではなく、妹の無事を。

 

 そして、そのドラゴンの爪が彼らを切り裂こうとした瞬間。

 

 ―――――そこに、一迅の風が吹いた。

 

「ドラゴンだ!! ドラゴンだろう!? なあ ドラゴンだろうお前(カード)置いてけ!! なあ!!!」

 

 当時流行り始めていたバスター・ブレイダーが主人公の漫画の決め台詞を叫びながら日向の見慣れたカードを取り出しそばにいた橙色の竜と合体し金色の竜と大乱闘(スマッシュ・ドラゴンズ)を始めたオレンジがかった茶髪の少年に、日向は驚愕する暇もなかった。

 

 数分経って、金色の竜を殺して抜け殻となったカードを見て舌打ちをしたその少年は、自らを見る日向の視線に気がついたらしく、そのカードを投げてきた。

 

「コイツをやるから、俺のことは他の奴に言うんじゃねぇ」

 

 口封じの為に渡されたカード。それが、『真竜機兵ダースメタトロン』だった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

(うん、とてもいい思い出とはいえないような出来事だなぁ)

 

 死にかけたかと思えば、助けに現れたのは正義のヒーローではなく自分よりも年下の少年。

 

 その事実に、日向は少なからずショックを受けた。

 

(そうだな・・・・・・プロになったんだし、一般人じゃ手に入れられないくらい強いカードをゲットしよう。そんで、今度はおれがあいつを助けてやるんだ)

 

 固く決心し、ふと前方を見れば、彼のようにドラゴンを連れた青年が前を歩いていた。

 

(あ、あいつに訊けば、あれが何だったのかわかるかも)

 

 日向は走ってその青年に追いつき、声をかけた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「とまあ、こんな所だな」

 

 精霊についての説明を終えた星河は、反応を伺うように相手を見る。

 

 少しチャラチャラした印象を与える明るい色の髪の毛と装飾品、そして少し着崩した制服。

 

「サンキュー(しろがね)。つうか、精霊なんて実在したんだなぁ・・・・・・」

 

 明るく笑う日向に、星河は疑問を覚える。

 

(先日まで、此奴は精霊が見えなかった筈だ。なのに何故・・・・・・)

 

 その疑問を解消するべく、星河は日向に質問する。

 

「何か事件などに巻き込まれたりしたのか? 精霊からの攻撃がきっかけになって、精霊が見えるようになる者もいるらしいんだが」

 

 その言葉を聞いてポンと手を打つ日向。どうやら、そのようだ。

 

「なるほど。精霊と接触したのか」

 

「ああ。ついこのあいだ、ファミレスで」

 

 ファミレス、と聞き、星河は自身の記憶を探る。

 

(先日、ファミレスで悪霊が発生したとは聞いている。そして、それが民間人によって討伐されたとも)

 

 如月 遊羽。それが、悪霊を狩った者の名前だ。

 

(彼が何者か・・・・・・把握しておかなければなるまい)

 

 セキュリティ特務課、銀 星河は己のやるべきことを一つ増やした。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 幸い、というべきか、目標との邂逅はすぐに起こった。

 

「あ」

 

「あ?」

 

 校門をくぐろうとしたタイミングで、日向が声をあげ、それに一人の少年が反応する。

 

「この前の・・・・・・」

 

「誰だ、お前?」

 

 少年の後ろに佇む橙色の竜に日向が思わずといった様子で声を漏らすのとほぼ同時に、少年は眉を顰める。

 

「・・・・・・ああ、ファミレスにいた人か。何か用か?」

 

 思い出したように遊羽が言うと、日向が頷き肯定する。

 

 その二人から一歩引いた場所からする星河は遊羽を観察する。

 

(殺気立った瞳に、警戒を解かない姿勢。そして、精霊の存在)

 

 この頃の遊羽は、虹花という心の支えこそあったものの、相当荒れていた。そのため、星河の眼には敵意の塊のように映ったのだ。

 

「おれは水瀬 日向。おれと妹を助けてくれたことに、一言お礼をいいたくてな。ありがとう」

 

 日向が頭を下げると、遊羽は若干戸惑うが特に反応しない。彼からすれば、ただ悪霊を狩っただけなのに、お礼を言われる理由がわからないためだ。

 

「用はそれだけか? なら俺は行くぞ」

 

 日向に訝しむような目線をむけたまま遊羽は告げ、踵を返す。

 

「待て」

 

 しかし、星河が彼を呼び止める。

 

「・・・・・・何だよ、まだ何かあるのか?」

 

 不快感を隠そうともせずに振り返った遊羽に、星河は端的に言う。

 

「放課後、俺とデュエルしてくれないか? 悪霊を狩れるほどの君の力を見てみたい」

 

 一切の嘘をつかず、しかし本音を語ることもしない。セキュリティの常套手段である。嫌な組織だ。

 

「・・・・・・嫌だと言ったら?」

 

「何もない。受けるか否かは君の自由だ」

 

 平然と答える星河に、遊羽は疑いを強める。

 

(この余裕そうな態度・・・・・・断っても何もしないっての、嘘だろうな。俺はともかく、虹花が危険な目に合うことを考えれば・・・・・・)

 

 ただの考え過ぎである。

 

「いいぜ。そのデュエル、受けてやる」

 

 しかし、荒れている彼がそのことに気付くはずもなく、遊羽は勘違いしたままデュエルを受けた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 面倒な授業描写などはすっ飛ばし、放課後。

 

 日向と星河が授業中でデュエルをしそのことで一人の生徒がやたら話し掛けてくるようになったこと以外特に変わったことはなく、二人は遊羽とのデュエルをするために第七デュエル場へ向かっていた。

 

「あ。おれたち、どのデュエル場でデュエルするか、彼につたえたっけ?」

 

「問題ない。彼のデュエルディスクへと送っておいた」

 

 そうだったのか、と安心する日向。

 

 鈍い彼は気付いていないが、普通は何故遊羽の連絡先を知っているのか気にするところである。星河はセキュリティの仕事で把握しているだけなのだが、遊羽の不信感を強める結果になっていた。

 

 デュエル場に着くと、既に遊羽はディスクを構えて待っていた。

 

「悪い、またせたか?」

 

「当たり前だろ。高等部と中等部じゃ授業の長さが違ぇ」

 

 日向と星河は揃って「あ」という顔をした。

 

「・・・・・・デュエルだ」

 

「今すげぇさらっと流したけど俺待たされたんだからな?」

 

 遊羽のツッコミも受け流し、星河はディスクを構える。

 

「「デュエル!」」

 

銀星河

LP8000

 

如月遊羽

LP8000

 

「俺のターン。フォトン・スラッシャーを特殊召喚し、更にフォトン・バニッシャーを特殊召喚」

 

フォトン・スラッシャー ☆4 攻撃力2100

 

フォトン・バニッシャー ☆4 攻撃力2000

 

 並ぶ二体の光子戦士に、遊羽は星河のデッキを予測する。

 

(『フォトン』の切り札は基本的に『銀河眼の光子竜』。恐らくギャラクシーとの混合デッキだな。そして奴からは精霊の気配もする。気をつけねぇとな)

 

 フォトン・バニッシャーの効果で星河がデッキから一枚のカードを手札に加え、そのままディスクに叩きつけるように置く。

 

「逆巻く銀河よ、我が魂の竜に宿りて、その輝きを解放せよ! 銀河眼の光子竜!」

 

銀河眼の光子竜 ☆8 攻撃力3000

 

 そのカードから発せられる気配に、遊羽は呟く。

 

「・・・・・・精霊か」

 

『ご名答だ。私は星河の精霊、銀河眼の光子竜。キャラが被っている気がしないでもないが』

 

 後半のセリフを意識の外へ追いやると、遊羽は盤面に目を向ける。

 

「俺はカードを一枚伏せ、ターン終了だ」

 

銀星河

LP8000 手札2

場 メイン:銀河眼の光子竜 魔法・罠:伏せカード

 

「俺のターン、ドロー」

 

 引いたカードを遊羽は感慨もなく眺め、効果を発動する。

 

「サイバー・ダーク・カノンの効果。手札から捨てることで、デッキからサイバー・ダーク・エッジを手札に加える。そして通常召喚」

 

サイバー・ダーク・エッジ ☆4 攻撃力800

 

 遊羽のフィールドに歪んだ機械の竜が現れ、墓地のカノンを装備する。

 

サイバー・ダーク・エッジ 攻撃力800→2400

 

「バトルだ。エッジは攻撃力を半分にすることで直接攻撃ができる。やれ、エッジ」

 

 エッジがフォトンの存在を無視し、彼の主を傷つける。

 

銀星河

LP8000→6800

 

 カノンの効果で遊羽のデッキから『サイバー・ダーク・クロー』が墓地へ送られ、メインフェイズ2となる。

 

「カードを二枚伏せてターンエンドだ」

 

如月遊羽

LP8000 手札4

場 メイン:サイバー・ダーク・エッジ 魔法・罠:サイバー・ダーク・カノン(装備:エッジ) 伏せカード

 

「俺のターン。バトルだ、フォトンの攻撃。破滅の、フォトン・ストリィ「トラップ発動、聖なるバリア-ミラーフォース-だ」・・・・・・」

 

 星河の絶叫を遮り、遊羽は無慈悲にフォトンを破壊する。

 

「・・・・・・ならばメイン2、復活の福音を発動。蘇れ、フォトン!」

 

銀河眼の光子竜 ☆8 攻撃力3000

 

 再び現れた光の竜に、墓地に復活の福音を置くためにフォトンの効果を発動しなかったのだろうと遊羽は推測する。

 それだけではなく、カノンの効果を発動させないようにした、というのもあるのだが。

 

「ターン終了だ」

 

銀星河

LP6800 手札2

場 メイン:銀河眼の光子竜 魔法・罠:伏せカード

 

「俺のターン。カノンをコストにパラレル・ツイスター発動だ。銀河眼の光子竜を破壊する」

 

 早速剥がされる福音に、星河は顔をしかめる。

 

「カノンの効果で一枚ドロー。そしてフィールド魔法、竜の渓谷を発動。手札一枚をコストにデッキからドラグニティ-アキュリスを手札に加えるぜ。調和の宝札を発動して手札交換、そしてサイバー・ダーク・キールを召喚するぜ」

 

サイバー・ダーク・キール ☆4 攻撃力800→1800

 

 場に出るなり墓地のアキュリスを装備するキール。遊羽のデッキの流れが変わったことを、星河は感じ取る。

 

「二枚目のパラレル・ツイスターだ。飛べ、アキュリス」

 

 突如起きた竜巻によってアキュリスがフォトンに突っ込み、爆発。竜巻は伏せられたカードを割る。

 

(反射光子流!? 何でそんなカード入れてんだ? オネストでいいだろ)

 

 破壊したカードに対し驚きを隠せない遊羽だが、かぶりを振ってデュエルへ意識を戻す。

 

「エッジとキールでオーバーレイ。来い銀河影竜」

 

銀河影竜 ★4 攻撃力2000

 

 霞のごとく姿を見せた竜に、星河は驚く。

 

(そのカード・・・・・・名前的に俺が使うべきだろう! 何をしている作者!)

 

「銀河影竜の効果発動。来い、ドラグニティアームズ-レヴァテイン!」

 

ドラグニティアームズ-レヴァテイン ☆8 攻撃力2600

 

 遊羽の背後にいた竜が羽ばたき、フィールドへ舞う。その両腕には、爪が三つずつ付いたクローが装備されていた。

 

「サイバー・ダーク・クロー・・・・・・」

 

「ああ。当然、レヴが装備しても効果は使えるぜ」

 

 遊羽がそう言うと共に、レヴは爪を構える。

 

「バトルだ。レヴでダイレクトアタック」

 

 クローの効果でエクストラデッキから『シューティング・クエーサー・ドラゴン』が墓地へ送られる。

 

「くっ」

 

銀星河

LP6800→4200

 

「ターンエンド」

 

如月遊羽

LP8000 手札1

場 エクストラ:銀河影竜 メイン:ドラグニティアームズ-レヴァテイン 魔法・罠:サイバー・ダーク・クロー(装備:レヴァテイン)

 

「・・・・・・俺のターン。強欲で貪欲な壺を発動。二枚ドロー。手札一枚をコストに銀河戦士を特殊召喚。効果でデッキから銀河騎士を手札に加え、妥協召喚。効果で墓地のフォトンを特殊召喚」

 

銀河戦士 ☆5 守備力0

 

銀河騎士 ☆8 攻撃力2800→1800

 

銀河眼の光子竜 ☆8 守備力2500

 

 一瞬で並んだモンスターたちに、遊羽は警戒を強める。

 

「そしてフォトン・バニッシャーを特殊召喚し、デッキから二枚目の銀河眼の光子竜を手札に加える」

 

フォトン・バニッシャー ☆4 攻撃力2000

 

「開け、銀河を震わすサーキット。俺はフォトン・バニッシャーと銀河戦士をリンクマーカーにセット。リンク召喚! 来い、ハイパースター!」

 

ハイパースター link2 攻撃力1400→1900

 

 門から何とも言えないファッションセンスの星が飛び出し、ダンスを始める。

 

「フォトンと銀河騎士でオーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚! No.62銀河眼の光子竜皇!」

 

No.62銀河眼の光子竜皇 ★8 攻撃力4000→4500

 

『久しぶりだな、この姿になるのは』

 

 感触を確かめるようにフォトンは身体を動かす。

 

「バトルだ。プライムで銀河影竜に攻撃! 効果発動! オーバーレイユニットを一つ使い、攻撃力を場のランク分だけ上昇させる! プライム・アキュミレィト!」

 

No.62銀河眼の光子竜皇 攻撃力4500→6900

 

如月遊羽

LP8000→3100

 

 一撃で半分以上吹き飛んだライフポイントに遊羽は舌打ちし、残ったレヴを見る。

 

(だが、ハイパースターでレヴは・・・・・・待てよ、光属性なら・・・・・・)

 

「ハイパースターでレヴァテインに攻撃、そしてオネスト発動!(強くなりたいよぉ!)

 

ハイパースター 攻撃力1900→4500

 

如月遊羽

LP3100→1200

 

「ターン終了だ」

 

銀星河

LP4200 手札0

場 エクストラ:ハイパースター メイン:No.62銀河眼の光子竜皇

 

「俺のターン。サイバー・ダーク・ホーンを召喚。効果でアキュリスを装備。そしてホーンを除外し、蘇れ! ドラグニティアームズ-レヴァテイン!」

 

ドラグニティアームズ-レヴァテイン ☆8 攻撃力2600

 

 再びレヴの両腕に装備される爪。

 

「更にドラグニティの神槍を発動! レヴに装備だ」

 

 クローが翼のように展開し、神槍がレヴの右手に収まる。

 

ドラグニティアームズ-レヴァテイン 攻撃力2600→3400

 

「神槍の効果でデッキからブランディストックを装備! バトルだ! レヴでハイパースターに攻撃!」

 

『応!』

 

 レヴが羽ばたき、ハイパースターへ両槍を向ける。

 

「クローの効果でエクストラデッキの旧神ヌトスを墓地へ送り、効果でプライムを破壊する!」

 

 レヴの背中でクローが蠢き、ヌトスの杖が発射される。

 

『くっ。しかし、私は・・・・・・』

 

『銀河眼の光子竜を素材としているから復活できる、と言いたいのか? そこまでデュエルが続くとでも?』

 

 現在、レヴの攻撃力は神槍の効果で上昇している。故に、星河のライフを削りきることができる。

 

銀星河

LP4200→2700

 

「これでトドメだ! レヴでダイレクトアタック! レヴェンティンスラッシュ!」

 

「・・・・・・ふっ」

 

銀星河

LP2700→0

 

 デュエルが終了し、ソリッドビジョンが消える。

 

「おー、すげーデュエルだったなぁ。なあ遊羽、次はおれとデュエルしようぜ!」

 

 観戦していた日向が二人へ感想を述べ、遊羽にデュエルを申し込む。

 

「何でだよ。面倒くせぇ」

 

「えー、いーじゃんかよー」

 

 日向を冷たくあしらう遊羽を見ながら、星河は考える。

 

(如月遊羽・・・・・・サイバー・ダークこそ使っているものの、デッキは恐らくドラグニティ。そして、今のデュエル・・・・・・)

 

 相手のカードをとことん破壊し、攻撃を通しに行く戦い方。星河はそこに、真っ直ぐな信念を感じた。

 

『彼は大丈夫だろう。闇に堕ちたとしても、我々が助ければいい』

 

(そうだな。それに、あれほど真っ直ぐなデュエルをするんだ、闇堕ちしたとしても、自分がどうすればいいか判断できるだろう)

 

 こうして、彼らは出会った。烏の残り一人(一羽)が合流するのは、もう少し後となる。




星河のデュエル内容ですが、彼はまだ研究会に入っていないので、そこまでソリティアしていません。舐めプではないです。

時系列的には、これは本編開始から二年ほど前の話です。

それと、Twitterなるものを始めたので、詳しくは作者ページから。


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集結する烏達

今日テストでした。木曜までテストで、金曜は新潟まで遠足です(血反吐吐く)

デュエル回です。


 遊羽と星河がデュエルした翌日。

 

「ドラグニティ-アキュリスは裁定が変わってからあんまり強くなさそうだったけど、パラレル・ツイスターがあったか」

 

「サイバー・ダークでもフィールド魔法(インフェルノ)張っておけば装備してないのを再召喚できるから、入れてる奴はいるな」

 

 星河と日向が教室で遊羽とのデュエルについて考察などを述べていると、一つの影が近づいていく。

 

「グッモーニン! ぐーてんたーく! ボンジュール! ジャンボ! コップンカーップ!」

 

「・・・・・・は?」

 

 にこやかに手をあげながら複数の挨拶をかました青年に、星河は面食らう。

 

「あ、ナイストゥーミーチューか? オレは瑞浪孝之。よろしくな」

 

 孝之と名乗った彼はそのまま二人に近づき、話しかける。

 

「昨日の授業での二人のデュエル、凄かったぜぃ。オレともしようぜ!」

 

 つまり、そういうことらしい。

 

「日向、頼む」

 

「りょーかい。放課後でいいか?」

 

 昨日の遊羽とのデュエルでの疲れか、はたまたそれ以外の理由かはわからないが、星河は日向にデュエルを託した。

 

「おk。じゃあ放課後な」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 かったるい授業描写は飛ばして放課後。

 授業中にあったできごとなど日向が欲しいカードのリストを作っていて先生にバレ廊下に立たされたにも関わらずデッキのアイデアを思い付いたと叫んでいたことくらいだ。

 

 昨日とは異なり、第三デュエル場で相対する日向と孝之。

 

「じゃあ、いくぜ」

 

「「デュエル!」」

 

瑞浪孝之

LP8000

 

水瀬日向

LP8000

 

「オレのターン。魔導契約の扉を発動! 成金ゴブリンを受け取るがいい!」

 

「ははー! 有り難き幸せぇ!」

 

 フハハハハハと社長笑いをしながらカードを投げる孝之。だがアニメのように上手く飛ぶはずもなく落下するに終わり、日向が気を使って拾って跪く。

 

「あ、ごめん。オレはデッキからトーチ・ゴーレムを手札に加えるぜよ」

 

「うぉい、待てぃ」

 

 別に待って欲しいわけではなかったが、色々と性能がおかしいカードに日向は思わず手をTにしタイムを宣言する。

 

「まったなしだろ!! 行くぜェ!! ガルガンチュア-「それは違うカードゲームだ」」

 

 怖い顔でカードを掲げた(漫画版バディファイト一巻参照)孝之に星河がツッコむ。

 

「いいだろ、やってみたかったんだよ。じゃまトークンを精製しトーチ・ゴーレム特殊召喚」

 

トーチ・トークン ☆1 攻撃力0

 

トーチ・ゴーレム ☆8 攻撃力3000

 

 今度はキチンとゆ両手でカードを掴みお辞儀しながら日向に差し出す孝之に、星河は額を押さえる。

 

「トークンでリンク召喚。ああ! それってリンクリボー? そしてツー」

 

リンクリボー link1 攻撃力300

 

 トークンが門をくぐり、球体状の身体をした電子生命体が二体現れる。

 

「リンクリボー? 一体どんな効果が・・・・・・」

 

「このモンスターは二体揃えることで、あるモンスターの素材となることができる! リンク召喚、出でよ、アカシック・マジシャン!」

 

アカシック・マジシャン link2 攻撃力1700

 

 主のアホさ加減に呆れた様子でフィールドにしゃがみ込むアカシック・マジシャン。彼女の苦難は続く。

 

「アカシック・マジシャンの効果。リンク先のモンスター全てを手札に戻す!」

 

「何!? あのモンスターのリンク先には、おれのトーチ・ゴーレムが!」

 

 プロとしての活動によって疲れているのか、それとも見慣れたソリティアを少しでも退屈でなくすためか、ネタを交えながら二人のデュエルは進む。尚まだ1ターン目である。進んでねぇ。

 

「トーチ・ゴーレムの効果発動。ラッキーカードだ。君の元へ行きたがっている」

 

トーチ・ゴーレム ☆8 攻撃力3000

 

トーチ・トークン ☆1 攻撃力0

 

 再び日向のフィールドに現れる鋼鉄の悪魔。悪魔には血も涙もないはずだが、あまりのブラックさにか涙が滲んでいる。

 

「トークン二体でリンク召喚、カモンセキュリティ・ドラゴン」

 

セキュリティ・ドラゴン link2 攻撃力1100

 

 星河は「名前的に俺が使うべきだろう」と思ったが、ただでさえ長いこのターンがさらに長引きそうだったので堪えた。

 

「名前的に星河が使うべきじゃね?」

 

 しかし鈍い彼は言った。

 

「? ?」

 

 そしてバカである孝之は意味がわからなかった。

 結果、星河が危惧した事態は起きなかったものの、どこか釈然としない雰囲気となる。

 

「セキュリティ・ドラゴンの効果発動だ返せぇ! 返してくれよぉぉ!! 俺のトーチ・ゴーレムゥゥゥゥゥ!!!」

 

 ふざけることしか脳のない孝之の言動は無視していい。

 

「そしてリンク召喚。星杯に選ばれし剣士よ! 戦いを糧とし、全てを救う救世主となれ! リンク召喚! リンク4、双穹の騎士アストラム!」

 

双穹の騎士アストラム link4 攻撃力3000

 

 苦笑しながら主の前で剣を構える戦士を見て、星河は目を細める。

 

(あのモンスター・・・・・・精霊か?)

 

 まだ力は弱いが、精霊になりかけのカードだと気づく。何かキッカケがあれば恐らく完全に精霊として確立されるだろう。

 

「ふっ、まあ今日はこの辺で勘弁してやろう。ターンエンドだ」

 

瑞浪孝之

LP8000 手札4

場 エクストラ:双穹の騎士アストラム

 

 何故か偉そうにターンを終了した孝之に日向は苦笑しながらも安心する。

 

(確かに強いみたいだけど、プロほどじゃないなぁ)

 

 プロならば魔導契約の扉で成金ゴブリンなんて渡さない。相手が絶対に使わないようなカードか、相手が使った場合自分もアドバンテージを得られるようなカードを渡す。成金ゴブリンもライフは増えるが、それでは相手のドローと釣り合わない。

 まあ日向もつい先日、光の護封剣を貰ったときには相当驚いたのだが。バトルフェイズ2なんて存在を知ったのはその時だ。

 

「おれのターン。折角だから使わせてもらうか、成金ゴブリン。一枚ドロー」

 

 成金ゴブリン用のメタカードなんてなかったよな、と記憶を掘り返しながらカードを引く。

 

瑞浪孝之

LP8000→9000

 

「ヴァイオンを召喚し効果でディアボリックガイを墓地へ送り除外してアナザーワン。リンク召喚聖騎士の追想イゾルデ。効果でネオスをサーチしデッキからインスタント・ネオスペース、団結の力、アサルト・アーマー、月鏡の盾を墓地へ送って三沢違うエアーマンを特殊召喚、効果でオネスティ・ネオスをサーチ」

 

聖騎士の追想イゾルデ link2 攻撃力1600

 

E・HEROエアーマン ☆4 攻撃力1800

 

 流れるように展開されていくモンスターに目を白黒させる孝之。だが日向は手を止めない。

 

「超融合発動! エアーマンとアストラムで融☆合! 来いシャイニング!」

 

E・HERO The シャイニング ☆8 攻撃力2600

 

「くっ、アストラムが・・・・・・」

 

「バトルだ! シャイニングでダイレクトアタック!」

 

 腕組みをした純白のヒーローが、腕組みをしたまま光を放つ。

 

 しかし、それは鐘の音に遮られる。

 

「バトルフェーダー・・・・・・!」

 

バトル・フェーダー ☆1 守備力0

 

「お察しの通り。バトルフェイズはお仕舞いデス!」

 

 首を曲げ顔を横にしながら言う彼にペテ公かと内心ツッコミながら日向はターン終了を宣言する。

 

水瀬日向

LP8000 手札6

場 エクストラ:聖騎士の追想イゾルデ メイン:E・HERO The シャイニング

 

「おいおい、手札まだ六枚もあんのかよ? まあいいか、まずはトーチ・ゴーレムをプレゼントだ」

 

トーチ・トークン ☆1 攻撃力0

 

トーチ・ゴーレム ☆8 攻撃力3000

 

 三度現れる機械の悪魔。疲れたのか完全に横になりぐうたらしている。

 

「そして死者蘇生! 蘇れ、アストラム!」

 

双穹の騎士アストラム link4 攻撃力3000

 

 傷だらけの身体で戦線復帰するアストラム。恐らく神殿で復活してもらったのだろう。ゴールド払って。

 

「トークン一体でリンク召喚、来いリンク・スパイダー! そしてリンク・スパイダーとトークンでリンク召喚! かもーんイヴ!」

 

星杯神楽イヴ link2 攻撃力1800

 

 アストラムの横に現れた少女を、星河はアストラムと同じく精霊のなりかけだと見極める。

 

「バトル・フェーダーを攻撃表示に変更してバトル! 行けー、バトル・フェーダー! トーチ・ゴーレムを倒せー!」

 

「えっ!?」

 

 一瞬動揺し、次の瞬間何が起こるか日向は悟った。

 

瑞浪孝之

LP9000→6000

 

「全てを壊すんDA! ヘル・テンペスト!」

 

 トーチ・ゴーレムに突っ込み砕け散ったバトル・フェーダーに天が悲しんだのか、降ってくる巨大な隕石の数々。

 

「星降りだー! デスマーチが終わったー!」

 

「それ異世界狂想曲始まってんなぁ!!」

 

 それを聞いた星河はならばと魔力を弾丸にする拳銃を取り出す。無論、取り出しただけではあるが。

 

「これにより、デッキと墓地のモンスターは全☆滅! フハハハハハ・・・・・・は?」

 

E・HERO The シャイニング 攻撃力2600→6800

 

 そこにいたのは、ただ静かに腕組みをして仁王立ちする白銀のAU。しかし、その攻撃力は甚大である。・・・・・・まあ二年後には攻撃力四八万とか百万とか一千万とかゴロゴロ出てくるのだが。

 

「フフフ・・・・・・自らの失態より生まれたこの攻撃力、超えられるかな?」

 

「アストラム、GO!」

 

双穹の騎士アストラム 攻撃力3000→10800

 

「あ、まってそれダメなやつ」

 

 アストラムの剣でエイヤと切り裂かれるシャイニング。彼は融合召喚でしか特殊召喚できないためもう蘇ることはないだろう。

 

水瀬日向

LP8000→5000

 

 一瞬で吹き飛ぶライフにまあこんなものかと日向は特に何も感じない。酷いときはワンショットだってされるのがプロだ。そしてそれはワンショットされる側が悪い。

 

「メイン2! イゾルデをリリースしドゴラン、出て来いやぁ!」

 

怒炎壊獣ドゴラン ☆8 攻撃力3000

 

 イゾルデを踏み潰しながら現れたゴジラっぽい竜に、日向は違和感を覚える。

 

(これでおれの場には攻撃力3000が二体・・・・・・何を・・・・・・あ)

 

 孝之が口角を上げながらディスクにセットしたカードを見て、日向は察した。

 

「所有者の刻印! 戻って来い、トーチ・ゴーレム、ドゴラン! そしてオーバーレイ! ヤンデレニーサン最終形態! 宵星の機神ディンギルス!」

 

宵星の機神ディンギルス ★8 攻撃力2600

 

 三体目の精霊になりかけのカード。これには星河も怪訝な顔をする。

 

「ターン終了! さあ、この布陣を突破できるもんならしてみやがれってんだ!」

 

瑞浪孝之

LP6000 手札0

場 メイン:宵星の機神ディンギルス 双穹の騎士アストラム 星杯神楽イヴ

 

 手札全てを使って孝之が作ったこの布陣。普通なら頑張れば突破できる。そう、普通ならば。

 

 ヘル・テンペストなどという文字通りの天災を振りかざした後でなければ。

 

「おれのターン・・・・・・うん、モンスター来ない!」

 

 いい笑顔で絶望する日向。しかし、それでもサレンダーはしない。

 

「大欲な壺を発動! 除外されているアナザーネオス、レインボー・ドラゴン、ソリッドマンをデッキに戻し、ドロー」

 

 引いたカードを見て、日向は不敵に笑う。

 

「まずはE・HEROアナザーネオスを召喚し・・・・・・ネオス・フュージョン発動! デッキのネオスとレインボー・ドラゴンで融合! 来い、レインボー・ネオス!」

 

レインボー・ネオス ☆10 攻撃力4500

 

 虹色のオーラと共に現れるヒーローに、孝之はピンチを感じ取る。

 

「レインボー・ネオスの効果発動・・・・・・アナザーネオスをリリースし、お前のモンスター全てをデッキ送りだぁ!」

 

 レインボー・ネオスがアナザーネオスを掴み、アストラム達へ投擲。アタフタする二人と直立不動のニーサンの内イヴに当たり、跳ね返ってニーサンに当たり、そして跳ね返ってアストラムの腹部を直撃しユーゴ並みの顔芸を披露させる。

 

「バートールだぁ! レインボー・ネオスでダイレクトアタック!」

 

「けど、次のターンで・・・・・・」

 

 言いかけて、孝之は思い出す。その言葉がフラグであること、そして、

 

強くなりたいよぉ!(オネスティ・ネオスの効果発動!)

 

 手札にヤツがいたことを。

 

レインボー・ネオス 攻撃力4500→7000

 

瑞浪孝之

LP6000→0

 

「だー負けた負けたー。よし、もっかいやるか」

 

「切り替え早っ!?」

 

 デュエルに負け、地面に寝転がって悔しがった孝之は、一秒後に起き上がり立ち直った。

 

「いやー、何時までも引きずっててもしゃーないでござるよ。オレは勝ち負けよりもデュエルを楽しみたいし」

 

 そう言って笑った彼に釣られるようにして、日向と星河も笑顔になる。

 

 

 この日、彼ら三人は出逢った。それが何を呼ぶのかはわからないが・・・・・・少なくとも、先生方の手元に胃薬を呼び込むことはしたようである。




今私はアキュリスの裁定のためだけにタッグフォース5が欲しいです。

補足 日向のデッキ
元々はネオスと融合HERO混合デッキ。しかしそれではプロの世界では通用せず、現在のような邪神だの伝説の騎士だののデッキを使うようになった。それでもHERO達は使っている模様。

ハーピィイレイザー→マスクチェンジセカンドとカミカゼ、ダークロウ
戦士族ドレッドルート→ヴァイオンとディアボ、シャドミス
アドバンス軸アバター→鬼畜モグラ及びネオス


次回は来週以降になりそうです。


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孤独姫と結希

ソロモン(ハーメルン)よ、私は帰ってきた!

デュエル回です。


『・・・・・・さみしい』

 

 ひとり、体育座りで儚げに佇む少女。その金髪から覗く瞳に浮かぶのは、涙だ。

 

『一人ぼっちは、さみしい。一人で戦うのは、くるしい。あの子の為に戦うのは・・・・・・』

 

 そこで言葉を区切り、彼女は俯き己の膝に視線を下げる。

 

『・・・・・・明日が、来なければいいのに』

 

 彼女の呟きを聞く者は、誰もいなかった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 彼らが高等部に入学してから、一月ほど経った。

 

 本日の授業は、第七デュエル場でのデュエルである。

 

「それじゃ皆、デュエルの相手は隣の席の人とだ。各自終わったらデータを送信するように」

 

 担任であるダイ・グレファー似の男教師の声に、各々デュエルを始める。

 

「デュエル!」

 

「・・・・・・デュエッ」

 

決闘(ディアハ)!」

 

 次々と開始されるデュエルに、星河もまたディスクを構え、相手に目を向ける。

 

「よろしくね、銀。まあ、私にあなたの相手が務まるか、わかんないけど」

 

 望月結希。最近席替えで隣の席になった彼女はどこか諦めた様子でディスクを構えると、軽くため息をついた。

 

「? まあいい。行くぞ」

 

「「デュエル!」」

 

 ディスクが示した先攻は結希。しかし、彼女は手札を見るなりまたため息をつき、デッキの上に手を置いた。

 

「サレンダーよ、銀」

 

「・・・・・・!?」

 

 意味がわからず、否、脳が理解せず一瞬固まる星河。

 授業のデュエルでサレンダーを行うということは、授業をエスケープしているのとほぼ同じだ。しかし、結希はどこか言い訳じみた口調でそれを否定する。

 

「手札事故よ。それも相当の」

 

 ほら、と結希が見せた手札は、確かに酷いものだった。

 

 『閃刀術式-ジャミングウェーブ』が二枚、『閃刀術式-アフターバーナー』が二枚、そして『錬成融合』。壊滅的な手札だった。

 

「これは・・・・・・酷いな・・・・・・」

 

 何とも言えない表情で固まる星河に、結希は次にドローするはずだったカードを引いてみせる。

 『閃刀機-イーグルブースター』だった。

 

「ね、事故でしょう? これでもドローソースとか入れてるし、これ全部デッキにこの枚数しか入ってないの」

 

 結希はそう話すと、悲しそうに微笑んだ。

 

「そういうわけだから」

 

 言って、結希はデータを教師に送る。

 

 そしてトボトボ歩き去る背中と、()()()()()()()()()()()()見ながら、星河はこれからすべきことを考えた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 放課後。

 星河が人を探しながら校舎内を歩き回っていると、その人物は丁度職員室に入るところだった。

 

「・・・・・・望月、いっそデッキを変えてみたらどうだ? せめて授業くらいはマトモにデュエルできないと、進学できないぞ」

 

「・・・・・・はい・・・・・・わかってます」

 

 聞こえてくる会話から、星河は話の内容を理解する。

 

「失礼しました。・・・・・・あ」

 

 扉を閉めるなり星河と目が合い、結希はばつが悪そうにそっぽを向く。

 

「聞こえてたかしら?」

 

「ああ」

 

 星河が即答すると、結希は足元に視線を下げ、悔しそうに唇を噛む。

 

「・・・・・・俺で良ければ話くらいは聞こう。多少は楽になるかもしれない」

 

 結希は驚いた顔で星河を見、躊躇って逡巡し、頷いた。

 

「場所を移そう」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 星河の案内に従い、結希は校庭のベンチに腰掛ける。

 

 その横に星河も座り、結希の言葉を待つ。

 

「・・・・・・私、中学までは一般の学校に行ってたのよ」

 

 ポツリと、観念した結希は話し始めた。

 

 結希には親友がいた。共に学び、遊び、毎日デュエルをした。

 そんな二人はデュエルスクールを受験し、見事結希は合格した。

 

 そう、結希だけが。

 

 親友は涙を流しながら、入学祝だと言って、結希に一枚のカードをプレゼントした。

 

「それが、これ」

 

 『閃刀姫-レイ』。星河はそのカードに鋭い視線を向けたが、すぐにそれを引っ込めると、続きを促すように結希を見た。

 

「それから、春休みの時間を使って私は今のデッキを作った。この子が一番活躍できるデッキを、ね」

 

 しかし、ここである問題が起こった。

 

「どうしても事故るのよ、このデッキ」

 

 本当、どうすればいいのかしらね、と結希は続ける。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 星河にはわかる。彼女が何を望んでいるのか、どうすればいいのか。

 

 しかし、それを教えるにはまず精霊の存在を教えなければならない。そして、それは危険なことだ。

 

(精霊の存在を教えずに、この問題を解決しなければならない)

 

 そう結論を出し、星河は俯く彼女に言う。

 

「デッキを作り直そう。【純閃刀姫】でしかそのカードは活躍できないなんてことはないはずだ」

 

 星河の提案に、結希は驚き、躊躇う。

 

 今のデッキも使いこなせないでいるのに、他のデッキを使えるのか。そして、それは親友への裏切りではないのか。

 

 そんな彼女の心情を読み取った星河は、重ねて言う。

 

「そのカードが―――『閃刀姫-レイ』が切り札になるデッキを作る。別のデッキにするのではなく、作り直すんだ」

 

「でもっ」

 

 結希は俯いていた顔を上げ、反論しようとする。

 そして、どこまでも真剣な星河の目に、貫かれる。

 

 結希の中では、星河は孝之や日向たちと共にふざけているだけの人間だった。自分のしたいことだけをするのだと思っていた。

 だが、今は違う。彼は、自分だけのために真剣な目をしてくれている。

 

(・・・・・・ずるい)

 

 何となく、結希はそう思った。しかし、それを声に出すことはせず、代わりに別の言葉を告げる。

 

「わかった。でも、貴方にも手伝って欲しいわ。このカードを生かすデッキなんて、私は思いつかないもの」

 

 彼女の言葉に、星河は首肯し、ケータイを取り出す。

 

「? 誰に連絡するのよ?」

 

「何、俺一人よりも、三人の方がアイデアは出ると思ってな」

 

 悪戯っ子のように笑う星河に、結希は疑問を深くするばかりだった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 翌日、放課後。空き教室。

 学園モノなのに授業描写が殆どないが、学園モノなんてそんなものだろう。遊戯王ではよくあることだ。

 

 それはともかく。

 

「・・・・・・」

 

 結希は言葉を失った。目の前にあるのは、幾つもの詰まれたカードの山。wikiを始めとした大量の資料。そして、三人の男共。

 

「あ、望月。ちわーっす」

 

「聞いたぜ、デッキを作るんだろ? カードとか集めてるから、目、通しといてくれ」

 

 星河だけでなく日向と孝之までもがデッキ作りを手伝うようだ。そのことに、結希はどこか残念に思いながら腹を立てる。

 

「何で、こんな奴らに手伝わせてるのよ! よりにもよってコイツらに!」

 

 ビシィッと指差しながら叫ぶ結希。日向と孝之はよよよと涙を拭う真似をする。

 

「聞きました? 水瀬さん。『こんな奴ら』ですって」

 

「ええ聞きましたよ瑞浪さん。『よりにもよってコイツら』とも言っていましたわ」

 

 オロロンオロロンと泣き真似し早速ふざけ始める二人に目頭を押さえながら、星河は言う。

 

「そこはもうワンオクターブ声を上げた方がそれっぽいぞ。それと口調がまだ曖昧だ、統一するべきだ」

 

 アドバイスを。

 

 絶句する結希に星河は安心しろ、と前置きして、

 

「コイツらは口が固い。・・・・・・信じられないかと思うが、事実だ」

 

 訝しむような目をする結希に星河は弁明する。

 結希も彼らが他人の悪口などを言っているのを聞いたことがないと思い出し、一応大丈夫だと思うことにした。

 

「それで、どんなデッキなの?」

 

 結希が訊くと、三人は「は?」と目を丸くする。

 

「え、何? 何なのよその顔」

 

「何でオレたちが決めるんだよ?」

 

「お前のデッキだろ?」

 

「俺は手伝うとしか言っていないぞ」

 

 三人のセリフから、結希は自分の認識が間違っていたのだと理解する。

 

 彼らがするのはあくまで『手伝い』。どんなデッキにするか、どう戦うのか、それを決めるのは自分自身なのだ。

 

「じゃ、じゃあ、この資料は?」

 

 ならばこの山は何なのか。

 

「『閃刀姫-レイ』と相性のいいカード、デッキのサンプル、カテゴリー研究、イラスト、小説。少しでも関連のあるものを集めたものだ」

 

 星河が何でもない事のように言うが、それは途方もなく大変だったハズだ。それを、彼らは弱音の一つも吐かずに行っている。

 

「・・・・・・でも、なんでイラストや小説まで?」

 

「何か、アイデアが沸くかもしれないだろう。このネオス関連カードっぽい題名の小説にも出ているぞ」

 

「使用者が敵サイドだった気がするのだけど」

 

 敵サイドの方が強かったりするので、むしろ好都合だ。

 

「あ、これは主人公が使ってるな。・・・・・・運命力だけで回してるっぽいから、参考にはならなそうだ」

 

 オッドアイズとサイバースと閃刀姫の混合デッキという内容に、孝之はそれから目を離した。

 

「・・・・・・何で、そこまでしてくれるの? 私、貴方たちにこうまでされるようなこと、した覚えはないわよ」

 

 理由がわからなければ、信用できないのが人間というものだ。

 

「?」

 

 首を傾げ、『困っている奴がいたら、助けるのは当然だろ?』と口にしようとした孝之を、日向が止める。余計疑われるだけだ、と。

 

「・・・・・・なら、これは一つ貸しだ。後でこれと見合うだけ返してもらう」

 

 それでいいか? と星河が目で聞くと、結希は渋々といった様子ながらも頷く。

 

「・・・・・・それで、私はこの山全てに目を通さないといけないのかしら」

 

「嫌だというなら一部でいい。優先順位も付けてある」

 

 よく見れば、『最優先』『優先』『そこそこ?』『まあまあ』『なんじゃこりゃ』『何でこれを資料としたのか、オレにもわからない』『ネタカード』『ネタのセンスが作者レベルにない』などの付箋が資料には貼られている。でも最後のは酷いと思うんだ。

 

「いえ、いいわ。全部に目を通す」

 

 ハイライトが消え、据わった目になった結希は手近にあった資料を手に取り、読み始める。少なくとも後ろ四つの付箋のは読まなくていいのでは? と星河は考えたが、止めておいた。

 

 無粋だと思ったからだ。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「ふぁ〜、ねむ。いやー、はたらいたなぁ」

 

 日向はそう言いながら先ほど星河に差し入れされた『神の恵み、フリッグのりんごジュース100%』を飲む。

 

「お疲れサンデーマンデーチューズデー。まあ、確かに疲れたわな」

 

 『辛い時こそ笑え! スマイル・ポーション』をちびちびと飲みながら、孝之も苦笑する。

 

「うぅ~、頭が痛いわ・・・・・・何でこんなに資料が多いのよ・・・・・・」

 

 『マジシャン・オブ・ブラックカオスMAXコーヒー』の缶を額に当てながら、結希は椅子の上で溶けるように脱力する。商品の名前が長いので略称を考えようという話があるとかないとか。

 

 だが、デッキはできた。いや、駄洒落じゃなく。

 

「試運転は明日にしよう。今日はもう遅いからな」

 

 そう言って、星河は・X・(エクシード)ポテトを食べる。Xの形をしたフライドポテトでありコンビニの人気商品だ。

 

「そうね。暗くなってきたし、もう下校時間になるわ」

 

 窓の外の空と腕時計とを見て結希は言う。

 その言葉をきっかけに、各自荷物をまとめ始める。

 

(さて・・・・・・後は明日どうなるか、だな)

 

 この日は、これで解散となった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 更に翌日、放課後。

 本当に授業の描写がなくて大丈夫かという作者の心配を余所に、彼らは第五デュエル場へと集まっていた。

 

「私、まだ試運転もしてないんだけど・・・・・・」

 

「このデュエルが試運転だ。一人回しよりも、対人戦の方がいいだろう?」

 

 それもそうね、と納得する結希。デッキをセットし、ディスクを構える。

 

「「デュエル!」」

 

望月結希

LP8000

 

銀星河

LP8000

 

「私のターン」

 

 結希は手札を見て、久しぶりに戦えそうだと笑う。

 

「サモン・プリーストを召喚、効果で錬成融合をコストにデッキからアステル・ドローンを特殊召喚よ!」

 

召喚僧サモン・プリースト ☆4 攻撃力800→守備力1600

 

アステル・ドローン ☆4 守備力1000

 

「魔法カード、エクシーズ・チェンジ・タクティクス! そしてサモン・プリーストとアステル・ドローンでオーバーレイ! 来なさい、希望皇ホープ!」

 

No.39希望皇ホープ ★4 攻撃力2500

 

 汎用性もあり専用デッキも組める大正義の下敷きカード。ドローンとタクティクスでそれぞれドローする。

 

望月結希

LP8000→7500

 

(ライトニングまで行けるけど・・・・・・最初からホープ関連を出し過ぎると息切れするわね)

 

 彼女のデッキは純粋な【希望皇ホープ】ではないため、エクストラデッキのホープ関連カードを全て三枚積みにはできなかった。そのため、不用意にランクアップできないのである。

 それと、あまりライフポイントを使うと、簡単に負けてしまうからである。

 

「カードを二枚伏せて、ターン終了よ」

 

望月結希

LP7500 手札2

場 エクストラ:No.39希望皇ホープ 魔法・罠:伏せカード×2 エクシーズ・チェンジ・タクティクス

 

「俺のターン」

 

 宣言と共にカードを引き、結希の盤面に目を向ける。

 

(伏せカードは恐らく閃刀速攻魔法・・・・・・いや、魔法カードを捨てられるからツイン・ツイスターなどもあり得るか)

 

 星河たちは完成した結希のデッキを見ていない。故に、どんなカードが伏せられているかわからないのである。

 

「手札の銀河剣聖をコストに銀河戦士を特殊召喚、銀河眼の光子竜を手札に加えトレード・インを発動。フォトン・バニッシャーを特殊召喚し効果でデッキから銀河眼の光子竜を手札に加え再びトレード・イン」

 

 トレード・インが二枚という手札からデッキを回し始める星河。

 

「銀河戦士とバニッシャーでリンク召喚。リンク2、銀河眼の煌光竜」

 

銀河眼の煌光竜 link2 攻撃力2000

 

 門から煌めく竜が舞うと、墓地の『銀河眼の光子竜』が星河の手札へと戻る。

 

「フォトン・クラッシャーを通常召喚し、フォトン・アドバンサーを特殊召喚。そして二体のモンスターをリリース! 逆巻く銀河よ、我が魂の竜に宿りて、その輝きを解放せよ! 銀河眼の光子竜!」

 

 星河が赤い十字架を投擲すると、十字架は光子の戦士たちを取り込み、竜へと昇華する。

 

銀河眼の光子竜 ☆8 攻撃力3000

 

『ホープとの対面とはな・・・・・・原作再現、と言ったところか』

 

 若干のメタ発言をしながら身体を震わすフォトン。再現のためか、身体の色は黒い。

 

「バトルだ。フォトンでホープに攻撃し、効果発動! 自身とホープを除外する!」

 

『ゲートオープン、界放!』

 

 フォトンが銀河(除外ゾーン)へのゲートを開き、そこにホープを巻き込みながら突入する。

 

「次だ。ソルフレアで攻撃」

 

 ソルフレアが口元に光を溜め込み、ブレスを放とうとする。

 

「リバースカード、シャークキャノン発動よ! 銀、アンタの墓地のフォトン・バニッシャーをもらうわ」

 

フォトン・バニッシャー ☆4 攻撃力2000

 

「・・・・・・ふむ」

 

 現れた光子の銃士を攻撃すれば相打ち。しかし、残せばエクシーズ素材となる。ホープが戻れば閃刀魔法カードは無力化できるので、あえてモンスターを残す必要はない。

 

「ソルフレアの攻撃続行だ。吹き飛ばせ」

 

 ブレスを放つソルフレアに対し、バニッシャーは銃でその口元を撃ち貫く。結果、両者共に爆発した。

 

「バトルフェイズ終了、そしてフォトンが帰ってくる」

 

 再びゲートが開き、ホープが吐き出され、フォトンは彼の持っていたオーバーレイユニットを奪う。奪ったユニットを食らい、フォトンの身体が輝いた。

 

銀河眼の光子竜 攻撃力3000→4000

 

「そう言えばあったわね、そんな効果・・・・・・」

 

 普段は除外までしか使われないため、かなり忘れられている効果だ。

 

「俺はカードを一枚伏せ、ターン終了だ」

 

銀星河

LP8000 手札2

場 メイン:銀河眼の光子竜 魔法・罠:伏せカード

 

(ホープが残った・・・・・・モンスターをどかす手段を増やすべきかしらね)

 

 以前のデッキを基準に組んでしまったため、魔法カードとモンスターカードの比率がよくわからない。

 

「モンスターゲートを発動するわ。ホープをリリース・・・・・・残念。一枚目はサモン・プリーストね。更にトラブル・ダイバーを特殊召喚。二体のモンスターでオーバーレイ、エクシーズ召喚! もう一度現れなさい、希望皇ホープ!」

 

No.39希望皇ホープ ★4 攻撃力2500

 

望月結希

LP7500→7000

 

 これでホープの残機は一体。そう考えて、星河は思い出す。

 

(ホープ・ダブルは元祖ホープ以外にもなれる。ダブル・アップ・チャンスの恩恵が得られなくとも、ライトニングやONEも出せるのか)

 

 直接攻撃はできないのでONEはまだいいが、ライトニングはまずい。素材を使わずに常時攻撃力5000だ。嫌すぎる。

 

「召喚成功時、月の書を発動だ。ホープには裏側になってもらう」

 

「そうはさせないわ。速攻魔法、RUM-クイック・カオス! ホープでオーバーレイネットワークを再構築よ! カオス・エクシーズ・チェンジ! CNo.39希望皇ホープレイV!」

 

CNo.39希望皇ホープレイV ★5 攻撃力2600

 

望月結希

LP7000→6500

 

 どこぞの司書(TGハイパーライブラリアン)のものであろう鈍器()がホープの意識を奪うべく飛来したが、バリアンのチカラによって回避され、代償として闇墜ちした。なんて大きい代償なんだ。

 

「速攻魔法のランクアップマジックか。そんなのをいれていたんだなぁ」

 

「懐かしいねぇ。最近はダブルから出せるから、あんまり使われてる印象はないわな」

 

 外野が煩いが、つまりそういうことだ。

 

「ホープレイVの効果発動よ。オーバーレイユニットを一つ使って、銀河眼の光子竜を破壊し、その攻撃力分のダメージを与えるわ!」

 

 Vの剣によって砕かれる相棒に顔を顰めながら、星河はカードを発動する。

 

「・・・・・・手札のクリフォトンの効果発動だ。ライフを2000支払い、このターン受けるダメージを0にする」

 

銀星河

LP8000→6000

 

 星河としてはあまり切りたくないカードだったが、結希はまだ召喚権を使っていない上、タクティクスで増えた手札がある。下手に展開されるよりは、ここで牽制しておきたかった。

 

(うーん・・・・・・ここで壁を作っても、閃刀カードの邪魔になるだけなのよね。なら、モンスターは出さないでいるべき、か)

 

 星河の思惑通りに結希はそれ以上は展開せず、ターン終了を宣言した。

 

望月結希

LP6500 手札2

場 エクストラ:CNo.39希望皇ホープレイV 魔法・罠:伏せカード エクシーズ・チェンジ・タクティクス

 

「俺のターン。復活の福音を発動だ。蘇れ、フォトン!」

 

銀河眼の光子竜 ☆8 攻撃力3000

 

 福音の音色に墓地から目覚めるフォトン。先ほどは簡単に退場させられたが、今は墓地に福音がある。

 

「さて。泥臭い消耗戦と行こうか」

 

 口角を少し持ち上げながら、星河はバトルフェイズに入る。

 

「フォトンで攻撃! 効果発動だ!」

 

「速攻魔法、閃刀機-イーグルブースター! ホープレイVは効果を受けず、墓地に魔法カードが三枚以上あるから戦闘破壊されないわ!」

 

 フォトンが銀河への穴を開き、Vを押し込もうとするが、Vは背中に装着したブースターで加速し脱出する。どうしてこんなにゴツい身体でブースターを付けられるのかわからないが、ZWを装備できるのだからきっとできるのだろう。

 

「逆順処理により、フォトンのみ除外される。バトルフェイズ終了、戻ってこいフォトン」

 

 姿が掻き消え、数秒後に帰還するフォトン。なんともシュールだ。

 

「ターンエンド。さあ、どうする?」

 

銀星河

LP6000 手札2

場 メイン:銀河眼の光子竜

 

「私のターン」

 

 結希はカードを引き、現状でできることを確認する。

 モンスターを展開することはできる。しかしそうした場合、閃刀魔法カードは発動できない。そして、Vがいるのでエクストラデッキから新たにモンスターを出すことも難しい。先ほどの「どうする?」とは、そのことだろう。

 

「・・・・・・確かに消耗戦ね。ホープレイVの効果、銀河眼の光子竜を破壊するわ!」

 

 Vが漆黒の剣を振るい、フォトンを斬り砕こうとする。

 

「復活の福音の効果発動だ。墓地から除外し、破壊を無効にする」

 

 Vの斬撃は、フォトンの前に出現した竜の石像によって阻まれた。

 

「・・・・・・ホープレイVを守備表示に変更するわ。カードを伏せて、ターンエンドよ」

 

望月結希

LP6500 手札2

場 エクストラ:CNo.39希望皇ホープレイV 魔法・罠:伏せカード エクシーズ・チェンジ・タクティクス

 

 再びカードが伏せられるが、恐らくこのターン引いたカードだろう。結希の残り二枚の手札はモンスターを展開するためのカードだと推測している星河はそう考える。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 引いたカードを確認すると躊躇いなく発動する。

 

「破滅のフォトン・ストリーム発動だ。伏せカードを除外する!」

 

 フォトンの咆哮により吹き飛ぶ伏せカード。発動しないところを見ると、ミラフォなどのトラップかブラフだろう。

 

「銀河騎士を妥協召喚し、効果で墓地の銀河眼の光子竜を特殊召喚。三体のモンスターでオーバーレイッ! 逆巻く銀河よ、今こそ真の姿を現さん。出でよ、超銀河眼の光子龍!」

 

超銀河眼の光子龍 ★8 攻撃力4500

 

 黒い渦に赤い十字架と二つの光点が呑まれ、紅に燃える銀河竜が爆誕する。

 

「超銀河眼の光子龍の効果発動! ホープレイVのオーバーレイユニットを奪い、攻撃力を得る!」

 

超銀河眼の光子龍 攻撃力4500→5000

 

 攻撃力が増し咆哮をあげるフォトンに、星河はアイコンタクトを送る。

 

(頼むぞ、フォトン)

 

『ああ、わかっている』

 

 フォトンが頷いたのを見て、星河はバトルフェイズを宣言する。

 

「超銀河眼の光子龍で攻撃! アルティメット・フォトン・ストリーム!」

 

 フォトンがブレスを放ち、Vを貫く。その紅のブレスの中に一筋だけ青い光があったことに、結希は気づかなかった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 ブレスを介して結希のデッキの世界へと入ったフォトンは、早速探し人を見つけられたことに安堵する。

 

『・・・・・・誰?』

 

 流れるような金髪に、近未来的な衣装。

 閃刀姫-レイ。結希の持つ精霊のカードであり、デッキ事故の原因だ。

 

『私は銀河眼の光子竜。主からはフォトンと呼ばれている』

 

『そう。それで、勝手に人の世界に入ってきて、何の用?』

 

 立ち上がり、どこからか剣を取り出し構えるレイ。それに対し、フォトンは戦闘の意思はないと両手を上げて示す。

 

『私は戦いに来たわけではない。・・・・・・この姿ならば信じて貰えるか?」

 

 フォトンが人間の姿へと変化すると、彼の精霊力が小さくなったことを確認したレイが剣を下ろす。

 

『なら、何故この世界へ来たのですか? ……私のような、捨てられた精霊に用があるとは思えないのですが』

 

 少し自嘲気味な笑むレイに、フォトンは疑問符を浮かべる。

 

「捨てられた? どういうことだ?」

 

『どうもこうもありませんよ。私は、マスターに出逢ったその日に他人の手に渡った、捨てられたのです! それか売られたのでしょう』

 

 フォトンから見て、レイはまだ精霊として幼い。恐らく、結希の親友が初めてのマスターだったのだろう。そして、彼女が結希にレイを渡したことで、捨てられたと思い込んでしまったらしい。

 

「君は捨てられてなどいない。君のマスターは、君を親友へプレゼントしただけだ」

 

『だとしても! ・・・・・・あの子は私を一人で戦わせようとしました。たった一人で、戦えるわけがないのに』

 

 なるほど、とフォトンは頷く。

 

 彼女は、幼いだけだ。幼い故に友人を求め、しかし彼女のテーマがそれを難しいものにした。

 レイが属す閃刀姫は一人で戦うことに特化したテーマであり、彼女を最大限に活かそうとすれば、彼女以外のモンスターは手札誘発以外は入れないだろう。

 そして、結希は手札誘発モンスターすら入れなかった。純閃刀姫を使いこなしてからにしよう、と思っていたのだ。

 

「それで、この世界に引き篭もったのか」

 

『・・・・・・そうです。そうすれば、あの子は私を手放すでしょうから』

 

 引き篭もり、自分や自分を戦いに出そうとするカードを引けないようにした。

 

「・・・・・・はぁ。呆れたよ、君は結希が君のためにしていることを知ろうともしていない!」

 

 かなり怒った様子のフォトンに、レイは身を震わせる。

 

「彼女は、結希は! 君と共に戦おうと、それ以外のデッキを使わず、事故するとわかっていながらもずっとそのデッキを使い続けていたのだぞ! それでも駄目だったから、君のためにデッキを作り直し、そして、今デュエルしている!」

 

 フォトンは結希に干渉し、彼女の見た光景を映し出す。

 

 それは、結希がレイのために資料を読み漁り、頭を捻りながらデッキを組み、そしてデュエルしている場面だった。

 

「君が引き篭もっている間、彼女は苦悩し、苦しんでいた。それを君は知ろうともせずに・・・・・・!」

 

 フォトンは星河に似て正義感が強い。そのため、彼女の我儘な行いに激昂していた。

 

『・・・・・・、あの子は、何でそんなに』

 

「決まっているだろう。君を大切に思い、君と共に戦いたいと望んだからだ」

 

 フォトンの言葉に、レイは驚愕する。

 

「後は君次第だ。彼女と共に戦うか、まだここに引き籠もるか。好きにするといい」

 

 そう言って、フォトンは竜の姿へ戻ると、結希のデッキ世界から出て行った。

 

「・・・・・・私、は」

 

 残されたレイは、ただ呆然と立ち尽くしていた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 星河がターンを終了し、次は結希のターンだ。

 

(やっぱりミラフォは破壊される運命なのね・・・・・・まあ、どうしようもないか)

 

 先程破滅のフォトン・ストリームで除外されたカードに苦笑しながら、結希はデッキに指をかける。

 

「私のターン、ドロー!」

 

 引いたカードを確認し、結希は目を見開く。

 

「・・・・・・最高のタイミングじゃない。さあ、初陣よ! 閃刀姫-レイを召喚!」

 

閃刀姫-レイ ☆4 攻撃力1500

 

『・・・・・・初めまして、マスター。閃刀姫-レイ、出撃します』

 

 登場するなり結希へ頭を下げるレイ。そのことに結希は驚きつつも応える。

 

「! ええ、頼むわよレイ! 術式展開、モードウォーター!」

 

『ウェポンサーキット、コンバイン。閃刀姫-シズク、換装!』

 

閃刀姫-シズク link1 攻撃力1500

 

 レイの頭上から青い門が降り、レイの武装となる。

 

「シズクの効果で、超銀河眼の光子龍の攻撃力はダウンするけど・・・・・・あまり関係ないわね。カードを一枚伏せてターンエンド、終了時にシズクの効果でデッキから閃刀起動-エンゲージを手札に加えるわ」

 

超銀河眼の光子龍 攻撃力4500→4100

 

望月結希

LP6500 手札2

場 エクストラ:閃刀姫-シズク 魔法・罠:伏せカード エクシーズ・チェンジ・タクティクス

 

「・・・・・・上手くいったようだな、フォトン」

 

『ああ、説教臭いことをしてしまった。今思い出すと羞恥心で死ねる』

 

 紅の身体で頬を染めるフォトン。正義感から言った言葉に、今更恥ずかしくなったらしい。

 

「恥ずかしがることじゃない。己の正義に従った結果なら、胸を張るべきだ」

 

『・・・・・・星河、君は本当に私より年下か? 君の父親が君くらいの年齢だった時は、もっと子供らしかったのだが』

 

 それについては星河の出自なども関わってくるため、星河は話を切った。

 

「俺のターン。バトルフェイズに入る」

 

 フォトンで攻撃しようとした星河に、結希は伏せていたカードを発動する。

 

「リバースカード、星遺物の目醒め! リンク召喚を行うわ! 術式展開、モードランド!」

 

『ウェポンサーキット、コンバイン。閃刀姫-カイナ、換装!』

 

閃刀姫-カイナ link1 攻撃力1500

 

 茶色の門がシズクのアーマーを外したレイを足元から包み込み、四本の腕と鎧へと変わる。

 

「相手ターンにリンク召喚か・・・・・・星遺物の目醒めが速攻魔法でなくて良かったと本当に思う」

 

 そうした場合、かなりの壊れカードになっていただろう。並べたモンスターで殴り、ヴァレルソードに変えて追撃、といった具合で。

 

「カイナの効果で、超銀河眼の光子龍はこのターン攻撃できないわ」

 

 カイナがフォトンの四肢を押さえ込み、行動できないようにする。

 

「・・・・・・カードを一枚伏せ、ターンを終了する」

 

銀星河

LP6000 手札1

場 エクストラ:超銀河眼の光子龍 魔法・罠:伏せカード

 

「私のターン。このターンで終わりにするわ、銀!」

 

「やってみろ、望月」

 

 自身を指差し宣言する結希に、星河は笑みを浮かべながら答える。

 

「先ずはエンゲージでホーネットビットを手札に加えて一枚引くわ。発動して、トークンを特殊召喚! モンスターゲート!」

 

 墓地に魔法カードを増やすつもりか、と察した星河。

 

『一枚目でモンスターカードだったら面白いな』

 

(フォトン、折角のレイの晴れ舞台で、なんというフラグを)

 

 案の定、一枚目はモンスターカードだった。

 

「『フォトン・スラッシャー』・・・・・・通常召喚できないカードだから、問題なしね!」

 

「フラグを回収しながらも止まらないだと!?」

 

 これには星河もびっくりだ。

 

「マルチロール、ジャミングウェーブ、おろかな副葬、エリアゼロ、ベクタードブラスト、ウィドウアンカー、ハーキュリーベース、エクシーズ・チェンジ・タクティクス、ダブル・アップ・チャンス、RUMクイック・カオス、アステル・ドローン。アステル・ドローンを特殊召喚するわ」

 

アステル・ドローン ☆4 守備力1000

 

 送られた魔法カードは十枚。レイが出たためか、デッキが結希の味方をしている。

 

「通常召喚よ、召喚僧サモン・プリースト。サモン・プリーストとアステル・ドローンでオーバーレイ、エクシーズ召喚! No.39希望皇ホープ・ダブル!」

 

No.39希望皇ホープ・ダブル ★4 攻撃力2000

 

 カイナのリンク先に霊体のホープが浮遊する。

 

「ホープ・ダブル・・・・・・!」

 

「効果発動よ! オーバーレイユニットを一つ使って、ホープをエクシーズ召喚! デッキからダブル・アップ・チャンスを手札に加えるわ」

 

No.39希望皇ホープ ★4 攻撃力2500→5000

 

 ホープが実体を得、その喜びで攻撃力が倍になる。

 

「次よ! 術式展開、モードフレイム!」

 

『ウェポンサーキット、コンバイン。閃刀姫-カガリ、換装!』

 

閃刀姫-カガリ link1 攻撃力1500

 

 赤い門がレイの左腕から通り、右手まできたところで刀の形を取る。

 

「カガリの攻撃力は、私の墓地の魔法カードの数だけ上がるわ!」

 

閃刀姫-カガリ 攻撃力1500→3200

 

 墓地には十七枚の魔法カード。よって攻撃力は1700上昇する。

 

「バトル! ホープで超銀河眼の光子竜を攻撃!」

 

 ホープが有頂天でフォトンの首に落とす。

 

『くっ、これだから主人公のカードは・・・・・・』

 

 そう悪態をつき、フォトンは破壊される。

 

銀星河

LP6000→5500

 

 小さく、しかし確かに削られる星河のライフ。

 

「カガリで攻撃、ここでホープの効果発動よ! 攻撃を無効にするわ!」

 

『フルチャージにて待機します』

 

 カガリが剣に炎を纏わせ、上段に構えた所で止める。

 

「速攻魔法、ダブル・アップ・チャンス! カガリの攻撃力は倍に、そしてもう一度攻撃できるようになるわ!」

 

閃刀姫-カガリ 攻撃力3200→6400

 

『オーバーチャージ! いつでも行けます、マスター!』

 

「カガリでダイレクトアタック! フレイム・スラッシュストライク!」

 

 大きく膨れ上がった焔を纏った剣が、振り下ろされる。

 

(いいムードだし、この辺りが潮時か)

 

 星河の手札には、二枚目の『クリフォトン』がある。しかし、それを使わず攻撃を受けた。

 

銀星河

LP5500→0

 

 デュエルが終わり、結希はしばし勝利の余韻に浸る。そして、星河の方を向いた。

 

「それじゃ、説明してもらうわよ? この子のこと」

 

 結希は自分のそばで佇むレイを指しながら、見惚れるほどの笑みを浮かべた。




作者のスーパー言い訳タイム

テストが終わったと思ったら直後に遠足、そして一週間後に体育祭。そして図書委員の仕事でリレー小説やビブリオバトル。このハードスケジュールではハーメルンを開くことも難しかったのです。
・・・・・・いえ、本当デスヨ? 決して感想欄に出没してたとか、そんなことはないデスヨ?

……はい、すいませんでした。1万2千字行ったんで許してください。

過去編だから他作品ネタが微妙に使い辛い今日この頃。それでも使うんですが。


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彼らの名

ギャグが書きたかったんです。

デュエルなしです。


 結希とレイが和解してから、二ヶ月ほどが過ぎた休日。

 

 マクロコスモスで使われない、それどころか存在すら忘れられている節がある『太陽神ヘリオス』が怒っているのかもしれない、と孝之は沸騰しそうな脳で考えた。

 

 要は、それほどまでに気温が高い、ということだ。無駄にハイなのである。

 

「あちぃーあちぃー、超あちぃ。スッパカンスッパカン超あちぃ。あちぃーあちぃー、超あt「うっさい」ブベラッ!?」

 

 ジュエルペットというもはや誰が知っているんだというアニメのワンシーンを回想しながら謳う孝之の脳天にかわらわりをしたのは、彼の姉である瑞浪なつきだ。

 

「ねーちゃん、痛いんだけど? ただでさえ勉強できないオレが、もっとバカになったらどーすんのさ」

 

 頭をさすりながらソファーの上の身体を起こす孝之。なつきはアイスを頬張りながら、無視して孝之の隣に腰掛けた。

 

「つーかそのアイスオレが買ってきたやつじゃあ・・・・・・」

 

「そう。ありがとう、とてもおいしいわ」

 

 そういうことじゃない、と孝之は呻くが、いつものことだと諦めた。

 

 黒く染めたツーサイドアップ、同じく黒いスーツ。どこかへ出掛けるらしいことを察した孝之は、それ以上何も言わず、姉のいない休日をゆっくり過ごすことにした。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 翌日。昨日よりも涼しく、快適な空気であることに喜びを感じながら孝之は学校へ向かう。

 

 『セプスロ麻薬』という怪しげなカードセットを売っている店の前を通り、『新商品!『キサラギ印のAMIDA汁、メロン味』!』と書かれた自動販売機の置かれた角を曲がり、学校へたどり着く。

 

 丁度進行方向に見慣れた背中を見つけ、孝之は手を大声で挨拶する。

 

「ぐっもーにん星河!」

 

「孝之か。ああ、おはよう」

 

 声をかけられたことに驚く素振りもなく、星河もまた挨拶を返す。

 

 その際、周囲から奇異の目で見られていたが、彼らは気にせず話を続けた。

 

「今日、理科で実験やるんだってよ。何をするのかね?」

 

「少なくとも、危険な実験ではないだろう」

 

 化身カードやトワイライトの実験についてある程度の情報を持っている星河からすれば、大抵の実験は危ない内に入らないのだが。

 

「日向! 日向じゃないか!? 逃げ出したのか!? 自力で脱出を!?」

 

 視界に入ってきた青年に対し、孝之はオーバーリアクションで挨拶(?)する。

 

「ああ、聞いてくれ・・・・・・朝目が覚めたら、通学路を歩いていたんだ・・・・・・何を言っているかわからねぇとは思うが、おれにもわからねぇ・・・・・・」

 

 つまり、さっきまで寝ぼけていた、ということだろう。習慣とは恐ろしいものである。

 

「おいおい、大丈夫かよ。そんなんで今日の授業受けられんのか?」

 

大丈夫だ、問題ない(エルシャダイ)

 

 どこか不安を覚える返事をしながら、日向は薄く笑う。

 

 彼に続いて、二人も教室に入っていった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 そして、理科の実験の時間。

 

 普段すっ飛ばしている授業の時間を描写しているということはつまり、何か起こるということである。

 

「・・・・・・ということで、エタノールと水の蒸留実験だ。厳密には分留なんだが、エタノールと水の場合は蒸留でいいらしい。何でかは知らん。偉い人に聞け」

 

 面倒くさげな態度の先生だが、これでも評価は高い。同じことを教えるのが面倒、という理由でとてもわかりやすい授業をしてくれるからである。

 

「・・・・・・んが」

 

「おい寝ていただろう今」

 

 船を漕いでいた日向が鼻提灯を破裂させて意識を取り戻すと、間髪入れずに星河が注意する。

 

「いや、すまない・・・・・・昨日夜遅くまで起きていてすまない・・・・・・」

 

 目をこすりながら謝る。プロの仕事で遠出し、帰りが遅くなったのだ。彼は自分の布団でないと寝れない体質のため、移動中の睡眠も難しく、結果がコレである。

 

「ちょっと、大丈夫なの? 失敗してもいいけど、私まで巻き込まれるのは嫌よ」

 

 デッキ作りを手伝ってもらった相手だが、それはそれ、これはこれ。彼女も成績は大事なのだ。

 

 ひとまず半睡眠状態の日向は放っておき、三人で実験を始める。

 

 が、そこで問題が発生した。

 孝之が酔った。

 

「ぅうん? 何か、こう、クラッと・・・・・・」

 

 酒に弱いらしい孝之。甘酒でも酔う彼は気化したエタノールもダメだったようだ。

 

 手がすべり、隣の班が付けていたガスバーナーの火へとエタノールが飛ぶ。

 

 そして、ギャグ的な力でそれは爆発に変わる。

 

「「「「あっ」」」」

 

 爆発音と共に何故か開いていた窓へと突っ込む星河、日向、孝之。

 

 しかし、タダで終わってはデュエリストではない。

 

 助かるべく、近くのものに手を伸ばす。

 

「・・・・・・これ、カーテン・・・・・・」

 

 そのまま破け、一緒に吹き飛ぶ。

 

「うわあぁぁぁああ!」

 

「Zzzzz・・・・・・」

 

「フォトン、頼む」

 

 三者三様の反応、そしてたなびく黒いカーテン。

 

 彼らは、烏になった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 またもギャグ的な力によって運よく木の上に落ちた三人。孝之はビビってずっと震えており、日向は終始寝たままであり、星河は表情を変えず二人が落ちないよう支えていた。木の上に落ちるようフォトンの力を使ったのも彼である。

 

 そして、体育の授業中、偶然彼らの姿を見ていた生徒たちはこう言った。

 

「アイツらの名前、三羽烏ってどう?」

 

 と。




おい、デュエルしろよ。

三羽烏編はこれにて終了ですが、孝之の姉にはまた登場してもらう予定です。

次回は、そんなに間を空けたくないですね・・・・・・。


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五章
新たな始まり


最近、全然執筆ができません・・・・・・。

デュエル回、前編です。


 学園祭が終わって、しばらく経った。

 

 クリスマスで各々イチャコラし、相手のいない息吹と孝之はそのストレスを花火にぶつけた。

 

 その次はお正月。浴衣姿で集まり、参拝した。合掌したときに虹花の左手薬指の指輪がよく映えた、というのは写真を撮っていた息吹談。

 

 節分もした。鬼役をしたのは息吹と孝之。公平なくじの結果ため仕方がないが、余りに運がない二人だった。後遊羽が息吹に豆を投げるときにマジだった。第三宇宙速度出てた。

 

 そして、卒業式。流石の三羽烏も大人しくなり、つつがなく儀式は終わった。・・・・・・かに見えた。

 

 卒業後のパーティーで三人がまたバカをやり、日向は謝り、孝之は笑い、星河は呆れていた。

 

 時は更に流れ、春休みが過ぎ、新学期。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 入学式、始業式の後の、最初の週明け。

 

「それにしても、中々だったな、あの映画」

 

 遊羽が春休みにレンタルして見た映画『我が名は』を思い出しながら言うと、隣を歩く虹花も内容が蘇り、頷いた。

 

「そうですね。特に主人公の片方が名前を思い出して「我が名は!」と叫ぶシーンとか、時を超えて二人が再会するシーンとか、うるっとしちゃいました」

 

 そうこう話している内に、学校へと着く。

 そこには新入生らしき生徒たちの姿がチラホラと見え、先輩になったことを自覚させられる。

 

「おら、邪魔だ! どけ!」

 

 その中を、一人の男子生徒が押し通る。

 

 周りの生徒からは奇異の目で見られているが、そんなことを気にせず、ドカドカと進む。

 遊羽の前に。

 

「テメエが如月遊羽だな?」

 

 睨み付けるように遊羽を見る男子生徒に、遊羽は不快感を覚えるが、それを抑える。

 

 星河と、約束していたのだ。遊羽の子供にデュエルを教える代わりに、遊羽はなるべく問題を起こさずにいるように、と。

 引き分けになったため、無条件で頼みを聞くわけにはいかない、と。

 

「そうだが、何か用か?」

 

「オレ様は久我 修也(くが しゅうや)。一年の主席だ」

 

 彼――修也はまず名乗り、ビシッと遊羽を指差す。

 

「オレ様は最強だからな、この学校最強だっつうテメエに宣戦布告する! 昼休み、屋上に来やがれ! いいな!」

 

 そう一方的にまくし立てると、修也は校舎へと戻っていった。

 

「・・・・・・何だったんだ、アイツ」

 

 面倒事で虹花との時間が減らなきゃいいが、と遊羽は愚痴りながら呟く。

 

「どうするんですか、遊羽? 彼の挑戦を受けますか」

 

 上目遣いで問う虹花に対し、遊羽は笑顔で言う。

 

「受けるわけねぇだろ? 昼休みは虹花といる。何なら、生徒会の仕事も手伝うぜ」

 

 新年になった辺りから、遊羽は生徒会の手伝いをしていた。無論、一秒でも多く虹花と共にいるためではあるが、星河との約束や異世界でのことの影響もある。

 彼自身、元々スペックが高いので、生徒会の仕事の効率は格段に上がった。

 

「はい、お願いします。遊羽がいれば、百人力です」

 

 主に愛の力で。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「おはよう、遊羽くん。さっきは災難だったね」

 

 遊羽と虹花が教室に入ってきたのを確認し、戦は二人に話しかけた。遊羽、虹花、戦、春樹は二年一組で同じクラスになった。

 

「ああ。あんなのが主席なら、今年の一年は大したことねぇな」

 

 それは先入観で偏見だが、そう思われても仕方がないことを、修也という少年はしたのだ。

 

「う~ん、まだわからないよ? 礼儀正しい生徒はいるかもしれないし」

 

 戦はそれを否定しようとしたが、遊羽はそこじゃねぇ、と首を振る。

 

「あんな奴に負けるっていうことは、奴に気押されたってことだ。奴に対して反感や怒りを覚えたなら、何が何でも勝とうとするハズだ。それで負けたら、心が折れる。実際に戦ってない奴もいるだろうが、殆どの奴は諦めてるだろうよ」

 

 あくまで推測の域を出ないが、先程の修也の態度を見る限り、概ね合っているだろう。

 

「・・・・・・ああいう、強さを傘に力を振るう人って、嫌いなんだよね」

 

 遊羽の推察を聞き、戦は忌々し気に零す。

 

「問題は起こすなよ、如月。ああいう輩は、放っておくに限る」

 

 話を聞いていた春樹が言うと、遊羽は当たり前だと頷く。

 

「虹花との時間が減るからな。昼休みは生徒会室に行くぜ」

 

 だったら、と戦は思い付いた考えを告げる。

 

「あの子、僕が相手していい?」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 三羽烏が卒業したことでいくらか静かになった授業の描写はかっ飛ばし、昼休み。

 

 屋上で待ち構えていた修也は、十分待っても遊羽が来ないことに苛立ち、身を震わせていた。

 

「野郎・・・・・・このオレ様の呼び出しを蹴りやがったのか・・・・・・! ふざけんじゃねぇ、ふざけんじゃねぇぞ・・・・・・!」

 

 床を何度も踏み、少しでもイライラを抑えようとする修也。

 丁度その時、屋上の扉が開いた。

 

「来やがったか、如月遊羽! 遅れてくるとはどういう了見だ!」

 

 叫ぶ彼だったが、入って来た人物を見るなり眉を顰める。

 

「あん? 誰だ、テメエ」

 

「僕は遊民戦。遊羽くんなら来ないよ。君なんかの相手をしてる暇はないって」

 

 嘲笑うように言う戦に、修也の苛立ちは更に大きくなる。

 

「ふざけんな! 野郎、探し出して無理やりでもデュエルさせてやる!」

 

 今にも走り出しそうな修也に、戦は落ち着くようジェスチャーし、ディスクを掲げる。

 

「代わりと言っては何だけど、僕が相手するよ。僕に勝てたら、放課後に遊羽くんとデュエルさせてあげる」

 

 あくまで上から目線で話を続ける戦に、少し収まっていた修也の苛立ちが再熱する。

 

「上等じゃねぇか! デュエル!」

 

 まるで相手のことを考えていない態度に辟易としながらも、それを表情に出さず戦もデュエルを開始する。

 

久我修也

LP8000

 

遊民戦

LP8000

 

「先攻はオレ様だ、緊急テレポート発動! デッキからサイキック・リフレクターを特殊召喚! 効果でバスター・ビーストを手札に加え、墓地に送ってデッキからバスター・モードを手札に加える!」

 

サイキック・リフレクター ☆1 チューナー 守備力300

 

 相手がチェーンをする隙間をまるで作らずに展開する修也。その態度に、戦もまた不快感を覚える。

 

「手札のバスター・モードを見せてやることで、サイキック・リフレクターの効果! 墓地のバスター・ビーストを特殊召喚!」

 

バスター・ビースト ☆4→7 守備力1200

 

 白い機械念導士が腕を振るうと、墓地から剣盾の獣戦士が呼び出される。

 

「っていうことは、シンクロ・・・・・・レッドデーモンかな?」

 

 彼の態度を見て推測を立てる戦。

 

「ハッ、勝手に決め付けんじゃねぇよ! 開きやがれサーキット!」

 

 だが、彼の推測を鼻で笑う修也。その前にサーキットが現れ、それを二体のモンスターが通り抜ける。

 

「リンク召喚! 来やがれ、ハリファイバー!」

 

水晶機巧-ハリファイバー link2 攻撃力1500

 

「ハリファイバーの効果でデッキから来やがれオライオン!」

 

幻獣機オライオン ☆2 チューナー 守備力1000

 

 ハリファイバーの後ろに人工衛星のモンスターが降り、浮遊する。

 

「オライオン? サモン・ソーサレスは禁止カードだよ」

 

「わかってるに決まってんだろ!? ナメんじゃねぇよ! リンク召喚、トロイメア・フェニックス、そしてマーメイド!」

 

幻獣機トークン ☆3 守備力0

 

 オライオンが遺した遺産。惜しい奴を亡くした。

 

トロイメア・マーメイド link1 攻撃力1000

 

 マーメイドが門からにゅるりと出ると、修也の手札から『バスター・モード』が墓地へ送られ、代わりにデッキから黒髪の少女が現れる。

 

夢幻崩壊イヴリース ☆2 守備力0

 

「トークン、マーメイド、イヴリースでリンク召喚! 来い、空牙団の大義フォルゴ!」

 

空牙団の大義 フォルゴ link3 攻撃力2400

 

 三体が門に吸い込まれ、刀を持った美しい獣剣士が降り立つ。

 

「!? 空牙団のモンスター!?」

 

 驚く戦のフィールドに、先程の黒髪の少女が漂う。

 

「これは・・・・・・」

 

「イヴリースの効果だ。まあ、破壊するからどうでもいいだろ」

 

 一方的にモンスターを寄越し、一方的に破壊する。どこまでも自分本位な態度だった。

 

「フォルゴの効果で、デッキからリンク素材になった種族以外の空牙団を特殊召喚する。来いビート!」

 

空牙団の剣士 ビート ☆3 守備力500

 

 フォルゴの号令に応じるようにして、彼の後ろに獣剣士が並ぶ。

 

「ビートの効果、手札から空牙団を特殊召喚する! 来い、ドンパ!」

 

空牙団の撃手 ドンパ ☆2 守備力1000

 

 ビートに続き、獣の狙撃手が並ぶ。

 

「ビートの効果発動だ。コイツがいるときに空牙団が特殊召喚された時、デッキから空牙団を手札に加える!」

 

 かなり無茶苦茶な効果だが,十期のカードだから仕方ない。

 

「オレ様はサジータを手札に加え、ドンパの効果で特殊召喚! 来い、サジータ!」

 

空牙団の孤高 サジータ ☆5 守備力2400

 

 ドンパに続き、射撃手も並ぶ。

 

「ドンパの効果とサジータの効果! サジータの効果でフィールドのサジータ以外の空牙団の数だけ、500ダメージを与える! 喰らいやがれ!」

 

 サジータが仲間から力を受け取り、それを弾丸にして撃つ。

 

「うわっ」

 

遊民戦

LP8000→6500

 

 弾丸がイヴリースを掠めながら戦を撃ち抜き、イヴリースが驚いてパニックをお起しあっちこっちへ走りまわる。

 

「ドンパの効果、コイツがいる時に空牙団が特殊召喚されたことで、相手モンスター一体を破壊する!」

 

 『え?』と動きを止め修也を見るイヴリース。ドンパに呆気なく撃ち抜かれて退場となった。

 

(一方的に押し付けておいて・・・・・・)

 

 戦は渋い顔をするが、修也のターンは終わらない。

 

「フォルゴの効果発動! 相手のカードが破壊された時、一枚ドローする! 更に、場に他の空牙団が三種類以上いれば、追加で二枚ドローだ!」

 

「・・・・・・は?」

 

 合計、三枚ドロー。条件付きとはいえ、破格の効果だ。手札が五枚に戻ってしまった。

 

 そして、彼はまだ通常召喚権を使っていない。

 

「シールを通常召喚! 効果で手札から空牙団を特殊召喚するぜ! 来い、ラファール!」

 

空牙団の参謀 シール ☆4 攻撃力1600

 

空牙団の英雄 ラファール ☆8 攻撃力2800

 

 場を埋め尽くすほどに並んだ空牙団。初動とはえらい違いだ。

 

「ラファールの効果で場の他の空牙団の種類分、デッキの上からカードを捲り、空牙団モンスターを手札に加えるぜ。オレ様が手札に加えるのは『空牙団の闘士 ブラーヴォ』!」

 

 これで手札は四枚。そしてラファールは手札の空牙団を捨てることでモンスター効果を無効にできる。

 

「カードを伏せて、ターンエンドだ。オラ、この布陣を突破してみやがれ!」

 

久我修也

LP8000 手札3

場 エクストラ:空牙団の大義 フォルゴ メイン:空牙団の剣士 ビート 空牙団の撃手 ドンパ 空牙団の孤高 サジータ 空牙団の参謀 シール 空牙団の英雄 ラファール 魔法・罠:伏せカード

 

「・・・・・・僕のターン、ドロー」

 

 戦は修也の盤面に冷や汗をかきながらカードを引く。

 

「調律を発動して、デッキからジャンク・シンクロンを手札に加えて、召喚! 効果発動!」

 

ジャンク・シンクロン ☆3 チューナー 攻撃力1300

 

「ラファールの効果! 手札のブラーヴォをコストに無効だ!」

 

 オレンジ帽の調律師が仲間を呼ぼうとすると、ラファールがブラーヴォを呼び出し、ブラーヴォがジャンク・シンクロンを止める。

 

「手札一枚をコストに、ワン・フォー・ワン発動! デッキからチューニング・サポーターを特殊召喚!」

 

チューニング・サポーター ☆1 守備力500

 

 無理矢理押し通し、フライパン(最強の武器)を被ったミニロボを呼び出す。

 

「速攻魔法、地獄の暴走召喚! 僕はチューニング・サポーターを墓地とデッキから特殊召喚するよ」

 

「チッ、オレ様はフィールドが埋まってるから特殊召喚できねぇか」

 

 先攻であれだけ好き放題した罰だろうか。

 

「更に、墓地のボルト・ヘッジホッグの効果! 特殊召喚!」

 

ボルト・ヘッジホッグ ☆2 守備力800

 

 一気に並ぶモンスター。しかしそれを、修也は鼻で笑う。

 

「ハッ、それだけやって並んだのがそんな弱小モンスターかよ」

 

 ――そうして、彼は地雷を踏み抜いた。

 

「『弱小』・・・・・・? 僕が、弱いって言いたいの?」

 

 にこやかに死の宣告を突きつける戦。自覚がない修也は、あっさりとそれを肯定する。

 

「ああ、弱ぇな。こっちの無効効果を強引に抜けてまで出したのがそれかよ」

 

 戦は、静かに決めた。

 

(彼には・・・・・・絶対に勝つ)

 

「ジャンク・シンクロンとボルト・ヘッジホッグでリンク召喚、トラックブラック」

 

トラックブラック link2 攻撃力1200

 

 現れたカラスのようなモンスターを、修也はやはり鼻で笑う。

 

「いくらキレたって出すのがそんな弱小モンスターじゃあ、このオレ様は倒せねぇよ!」

 

 それを聞き流し、戦は手を正面に掲げる。

 

「手札一枚をコストに、ジェット・シンクロンを特殊召喚! そしてチューニング・サポーター三体をチューニング! シンクロ召喚! スターダスト・チャージ・ウォリアー!」

 

スターダスト・チャージ・ウォリアー ☆6 攻撃力2000

 

 白銀の星戦士が戦場に舞う。

 

「チャージ・ウォリアーと、チューニング・サポーター三体の効果。合計四枚ドロー」

 

「んなっ、四枚だと!?」

 

 彼の三枚ドローを一枚上回る数。それに修也は怒りを覚える。

 

「テメエ、挑発のつもりか!?」

 

「まさか。僕はまだドローする予定なんだけどな」

 

 お返しと言わんばかりに戦が鼻で笑うと、修也は益々苛立つ。

 

「トラックブラックの効果発動。リンク先のモンスターが戦闘で相手モンスターを破壊するたび、一枚ドローできる。そしてチャージ・ウォリアーに月鏡の盾を装備」

 

「あ? だからどうした」

 

 状況をわかっていない修也に対し特に反応せず、戦はデュエルを進める。

 

「スターダスト・チャージ・ウォリアーは、特殊召喚された相手モンスター全てに攻撃できる。そして、月鏡の盾は戦闘する相手モンスターの攻守の高い方足す100の攻撃力を、装備モンスターに与える」

 

 修也の顔の血の気が引いていく。

 

「ま、待っ」

 

「スターダスト・チャージ・ウォリアーでシール以外の全モンスターに攻撃! オールバスター・ターミナイト!」

 

 チャージ・ウォリアーがファンネルの銃口を向け、一斉に照射する。

 

久我修也

LP8000→7900→7800

 

 サジータには自身以外の空牙団に攻撃させない効果があったが、それすら関係ない。

 

「じゃあ、僕は合計で五枚ドロー。これで手札は八枚、君の倍以上あるね」

 

 修也の伏せカードは『空牙団の修練』。しかし、発動してもドローされるだけなのでできなかった。

 

「クソッ! 何で、そんな雑魚に、オレの空牙団が!」

 

 叫ぶ修也。しかし、そこにあるのは純粋な悔しさのみで、憎しみや恨みといった感情は読み取れない。

 

 そのことに疑問符を浮かべる戦だったが、それも一瞬だった。

 

「テメエ! テメエだけは許さねぇ。このデュエル、ゼッテェに勝ってやる!」

 

 戦への憎しみと激憤が入り混じった瞳で戦を睨む。

 

「・・・・・・まあ、いっか。カードを四枚伏せて、ターン終了だよ」

 

遊民戦

LP6500 手札4

場 エクストラ:トラックブラック メイン:スターダスト・チャージ・ウォリアー 魔法・罠:月鏡の盾(装備:スターダスト・チャージ・ウォリアー) 伏せカード×4

 

「オレ様のターン、ドロー! 強欲で貪欲な壺! 二枚ドロー!」

 

 修也がカードを引くと、その一枚から大量の黒い()()のようなものが溢れ出る。

 

「エクストラデッキ十一枚を裏側で除外し! 来やがれ百万喰らいのグラットン!」

 

百万喰らいのグラットン ☆1 攻撃力?→2100

 

 それは、万物を喰らう悪食。

 

『主殿! あれは、』

 

「うん、闇のカードみたいだね」

 

 戦の危機にジャンが顕現し、彼の前に立つ。

 

『デュエルの結果など、もはやどうでもいい! 全て喰らえば問題ない!』

 

 意☆味☆不☆明な暴論をかざし、グラットンはルールを無視して戦に襲いかかる。

 

「でも、召喚されるまで出てこなかったってことは、身体はカードに縛られてるってことだよね」

 

 戦は伏せてあるカードの一枚に手を重ね、発動する。

 

「どれだけ強い闇のカードだろうと、これなら関係ないよね・・・・・・超融合、発動」

 

 そのカードから融合の渦が現れ、中から植物のツルのような触手が伸び、グラットンとトラックブラックを絡め捕る。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 ガタッ

 

「? どうしました、遊羽」

 

「いや・・・・・・ドラゴンの気配がしただけだ」

 

「そうですか。見に行きますか?」

 

「いや、いい。それより、虹花といたい」

 

「もう、遊羽ったら」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

『な、何を!?』

 

 触手から逃れようと身をよじるグラットンだが、触手は巻きついて離れない。

 

「無駄だよ。超融合にチェーンはできない。まあ、手札のない君じゃあチェーンすらできないだろうけど」

 

 既にトラックブラックは渦に呑まれ、中にいるモンスターの餌となっている。

 

「諦めた方がいいよ。彼、君よりも悪食だから」

 

『何!? まさか』

 

 抵抗するグラットンに痺れを切らしたのか、渦の中から触手の主顔を出す。

 

 毒々しい紫、植物のような身体。

 

「スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン」

 

 戦がそう呟いたのと、スターヴが咆哮したのが同時だった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 ガタッ

 

「遊羽?」

 

「悪ぃ・・・・・・俺の知らないドラゴンの声が聞こえただけだ」

 

「そうですか。でも、急に立ち上がらないでください。皆さんが驚くので」

 

「そうだな。悪い」

 

「いえ、気にしないでください」

 

「「「いや、こっちは気になるよっ!?」

            なりますよっ!?」

            なりますからねっ!?」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 スターヴはトラックブラックの残骸を吐き出すと、続けてグラットンを食らおうと大口を開ける。

 

『なっ!? よ、よせ! やめろぉぉお!!』

 

 断末魔の叫びも虚しく、悪食は悪食に食われた。

 

 静かになった戦場(いくさば)に、咀嚼音だけが響く。

 

「さて、ここからどうしよう? デュエルを中断して、彼を保健室に運んで――」

 

「いや、その必要はないです」

 

 倒れているであろう彼に目線を向けた戦が見たのは、立ち上がり、闘志を燃やす修也の姿だった。

 

「状況はよくわからねぇし、多分不利な状況だが・・・・・・」

 

 手札、フィールド、墓地、除外をそれぞれ確認し、まだ戦えると判断。

 

「折角の先輩とのデュエルだ、無駄にするなんて勿体ないんですよ!」

 

 正気を取り戻した彼は、デュエルを続行した。




状☆況☆説☆明

春休みの内容とかが思いつかなかったので超カット。クリスマスは特別編の通りです。なので今の虹花の左手には指輪があります。
さて、この空白の五ヶ月間ですが、今のところ内容を考えていません。後から入れて辻褄を合わせます。
つまり、彼らはもうコラボ編の後なのだ・・・・・・辻褄合わせに苦しむ未来の自分が見えますね。

新キャラの修也くんですが、詳しくは次回(多分)明かされます。

卒業したキャラ達も、今後また出番はあります。


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空への牙

デッキを組むのにパーツが足りない。

折角お金が貯まったのにハリファイバーを買いにいく時間がない。

学校からお送りする、デュエル回後編です。


 生徒会。選ばれた生徒のみが入ることを許された神聖なる球団ではなく会である。

 

「はぁ、はぁ、仕事に追い詰められるこの感覚、この快感・・・・・・! 実にイイ!」

 

 ・・・・・・選ばれた生徒のみが入ることを許された神聖な会である。

 

「なー、学校にライディングデュエル用のコースって設置できないかなー?」

 

 ・・・・・・選ばれた生徒のみが・・・・・・

 

「皆、真面目に働こう! まずはお菓子を食べて、ゲームをすることから!」

 

 ・・・・・・選ばれた生徒が残念な会である。

 

「・・・・・・」

 

 彼らを無視しながら、淡々と仕事をこなす虹花。彼女が生徒会長になれたのは、外見の美しさの他に、この仕事力の高さもある。

 

「ほら、真宮くんも! まずはお菓子を・・・・・・」

 

 残念の一人が虹花に『オーバー・ザ・レイン棒』を差し出すが、遊羽が軽く睨むとその手を引っ込めた。

 

「・・・・・・失敗したな。生徒会がこんなところなら、もっと早くから手伝えばよかったぜ」

 

 書類をまとめ、判子を押し、新たに書類を作りながら、遊羽は呟く。

 

「大丈夫ですよ、遊羽。彼らには彼らの仕事がありますから」

 

 パソコンを使って今月の出費額をまとめ終わった虹花は、伸びをしながら答える。

 その際、決して小さくない胸が強調されたが、それに目を向ける者はいなかった。

 

 一人はドM、一人はマイペース、一人はアホだからだ。

 

「会長、もっと仕事ありませんか? なるべく今日中で終わらなそうなモノで」

 

 その内のドM、副会長の五木 葵(いつき あおい)は自身をもっと追い詰めるべく仕事を要求する。それが終われば次の仕事、終わらなければ先生方からの説教、どちらも美味しい結末のため、躊躇はない。

 

「んー、なら自販機の下の方にボタンを付けようよー。背が低い子のためには、それがいいと思うなー」

 

 マイペースそうな雰囲気を醸し出すのは会計の轟 真緒(とどろき まお)。因みにその案は先月も出されており、予算の問題で踏み台を設置することで議決している。

 

「ふーむ、ならばキミにもお菓子をあげよう。『遊戯王ウエハース』というありそうでないお菓子だ! なんでないんだろうな! バトスピやデュエマにはあるのにな!」

 

 その結果がポテチであると気づかないアホが書記の水卜 奈津(みうら なつ)。字は達筆で記憶力もいいが、いかんせんアホの子なので成績もそこそこなアホだ。

 

「なー副会長、コースはいい案だと思うんだよなー。ライディングデュエルの授業もした方がいいって、なー?」

 

 ライディングデュエルのためのD-ホイールに乗るのに専用のライセンスが必要であり、それを手に入れるための研修があり、更にそれにはお金がかかるとまで書けば予算が足らないということに誰でも気付くだろう。そもそも、コースを造るお金もない。

 

「いえ、予算が足りませんし工事のためのスペースもありません。できて夏休みですが今年の夏休みは中等部の方で使うそうなので無理です。それと工事の騒音について配布物や近所への謝罪もしなくては、っはあ、考えただけで涎が・・・・・・実行できないのが残念で仕方ありません」

 

 完全にアウトな顔で答える副会長(ドM)に、会計(マイペース)は「ちぇー」と拗ねながら書記(アホ)のお菓子をつまむ。

 

「んー? 美味い、なにこれ」

 

「ああ! それって裂栗棒(サクリボー)? 某裂いて食べるチーズなお菓子をパクrゲフンゲフン参考にして作ったお菓子だね!」

 

 ちなみにこのアホ、栗棒などを製造している大手お菓子メーカーの社長の息子なのである。

 

「なるほどなー。なー、今度ウチで栗棒フェアやろうと思うんだけど、どう?」

 

 このマイペース、大手ショッピングモール会社の跡継ぎなのである。

 

「ふむ! いいだろう! 商談成立だ!」

 

 ガッシリと握手mを交わす二人。尚、今は昼休みで、ここは学校である。

 

「・・・・・・虹花、何でこんな奴らが生徒会に選ばれたんだ?」

 

「投票前の演説で、それぞれ企業の商品を校内で格安販売すると宣言したんです」

 

 狂っているな、この学校。

 遊羽はそう再認識した。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「なら、デュエル続行だね」

 

 戦がそう言うと、スターヴが融合の渦の中へと沈んでいき、グラットンがソリッドビジョンで映し出される。トラックブラックは食い散らかされたままだ。

 

「? どういう・・・・・・」

 

「グラットンには融合、シンクロ、エクシーズの素材にできないっていう効果があるんだよ。だから、ルール的にはスターヴじゃ食べられない」

 

 先程スターヴが食べたのはあくまで『具現化したグラットン』であって、カードのグラットンではない。

 簡単に言うと、先程のスターヴの行動は、デュエルに何ら関係のないことだった、ということだ。作者のミスによる苦しい言い訳だが、どうか許していただきたい。

 

「・・・・・・なら遠慮なくやらせてもらいます! グラットンでスターダスト・チャージ・ウォリアーに攻撃! 効果発動! 攻撃対象モンスターを除外する!」

 

 『もう十分にドローしたぜ・・・・・・』とグラットンに喰われるチャージ・ウォリアー。しかし途中で喰われることに抵抗が出てきたのかもがき出したが、既に口の中だった。

 

「月鏡の盾の効果で、フィールドを離れたときに500ライフを払ってデッキの上か下に行くよ。デッキボトムへ」

 

遊民戦

LP6500→6000

 

「シールでトラックブラック、の残骸? を攻撃!」

 

遊民戦

LP6000→5600

 

 スターヴに食われて残った彼の一部を、シールは遠慮がちに吹き飛ばした。

 

「メインフェイズ2! 貪欲な壺を発動します! フォルゴ、フェニックス、マーメイド、ハリファイバー、サイキック・リフレクターをデッキに戻して二枚ドロー! シールの効果を発動して、手札からフィロを特殊召喚します。来い、フィロ!」

 

空牙団の伝令 フィロ ☆1 守備力0

 

 シールが文書を作成すると、それを届けるべくフィロが駆け寄る。

 

「シールの効果発動! 墓地のラファールを手札に加えます! そしてフィロの効果でラファールを特殊召喚。来い、ラファール!」

 

空牙団の英雄 ラファール ☆8 攻撃力2800

 

 フィロから伝令を受け取ったラファールが戦線に復帰し、さらに仲間を集めるべく吠える。

 

「ラファールの効果と、フィロの効果を発動! フィロの効果で墓地からビートを特殊召喚! ラファールの効果でデッキの上から四枚を見て、ウィズを手札に加える!」

 

 しかし、これで場は埋まった。ならば、次にすることは決まっている。

 

「シール、フィロ、グラットンをリンクマーカーにセット! その刀で押し通すは、背中に背負った大義! リンク召喚! 空牙団の大義 フォルゴ!」

 

空牙団の大義 フォルゴ link3 攻撃力2400

 

 仲間の呼びかけに応え、大義を掲げる獣戦士が復活する。

 

「フォルゴの効果で、リンク素材になった種族以外の空牙団をデッキから特殊召喚します! 来い、リコン!」

 

空牙団の飛哨 リコン ☆2 守備力500

 

 ドンパの仇を討たんとばかりに、リコンがフォルゴの召集に応じる。

 

「ビートの効果でデッキからヘルマーを手札に加える! そしてビートの効果で特殊召喚。来い、ヘルマー!」

 

空牙団の舵手 ヘルマー ☆3 守備力2000

 

 ビートがデッキから引き籠もり気味の舵手を引っ張り出す。

 

「リコンの効果発動! 相手フィールドに伏せられたカードを破壊する! 一番右のカードです!」

 

 特にチェーンもなく破壊される戦の『立ちはだかる強敵』。

 

「相手カードが破壊されたことで、フォルゴの効果! 三枚ドロー!」

 

 なんというか、回りすぎな気もするが、そこは流石主席ということだろう。

 

「ヘルマーの効果で手札から空牙団を特殊召喚! 来い、ウィズ!」

 

空牙団の叡智 ウィズ ☆7 守備力2800

 

 ヘルマーがコミュ障を発揮し仲間との間に溝ができそうなところで、ウィズが助けに入る。

 

「ウィズの効果! ウィズ以外のフィールドの空牙団の種類だけライフを回復する! 更にヘルマーの効果! 手札を一枚捨てて、一枚ドロー!」

 

久我修也

LP8000→10500

 

「ヘルマーとビートでリンク召喚! トロイメア・フェニックス!」

 

トロイメア・フェニックス link2 攻撃力1900

 

 増えた手札から『サイキック・リフレクター』がコストにされ、戦の伏せカードを割る。

 

「・・・・・・『奇跡の蘇生』?」

 

「そう。このタイミングじゃ使えないね」

 

 疑問を覚えた修也だったが、気にしないことにした。

 

「リコンの効果発動! 手札のダイナを特殊召喚! 来い、ダイナ!」

 

空牙団の豪傑 ダイナ ☆6 攻撃力2500

 

 出番がないことを不満に思ったのか、ダイナがリコンを驚かし、笑いながらフィールドに出る。墓地からブラーヴォの『俺は?』という声が聞こえたかもしれないが気のせいだろう。

 

「ダイナの効果! 場のダイナ以外の空牙団の数、相手の墓地のカードを除外します! オレが選ぶのはチューニング・サポーター三枚とスターダスト・チャージ・ウォリアー」

 

 あの大量ドローがよほどトラウマだったのか、本能的に修也はそれを選んだ。

 

「オレはカードを伏せてターンエンド! お待たせしました、先輩のターンです」

 

久我修也

LP10500 手札5

場 エクストラ:空牙団の大義 フォルゴ メイン:空牙団の英雄 ラファール 空牙団の飛哨 リコン 空牙団の叡智 ウィズ 空牙団の豪傑 ダイナ トロイメア・フェニックス 魔法・罠:伏せカード×2

 

「僕のターン、ドロー」

 

 これで戦の手札は五枚。しかし伏せていたカードの半分は破壊され、墓地のカードも除外されている。

 

(でも良かった。本命が破壊されなくて)

 

 戦はそうほくそ笑む。

 

「異次元をからの埋葬発動。除外されたチューニング・サポーターとジェット・シンクロン、ボルト・ヘッジホッグを墓地に戻すよ。そして大欲な壺を発動。残りのサポーターとチャージ・ウォリアーをデッキに戻して一枚ドロー」

 

 これでは芸がないけれど、と戦は前置きして、一枚のカードを使う。

 

「ダーク・バーストを発動してジャンク・シンクロンを手札に戻して召喚! 効果で墓地からチューニング・サポーターを特殊召喚して、地獄の暴走召喚!」

 

「幽鬼うさぎ!」

 

 毎度過労死する調律師に、うさぎは刀でもって殺さんとす。

 しかし、それは足下から伸びた手によって遮られた。

 

「墓穴の指名者」

 

ジャンク・シンクロン ☆3 チューナー 攻撃力1300

 

チューニング・サポーター ☆1 守備力500

 

 前のターンをなぞるように展開される盤面。

 

「シンクロ召喚。レベル6、スターダスト・チャージ・ウォリアー!」

 

スターダスト・チャージ・ウォリアー ☆6 攻撃力2000

 

 若干ゲッソリとしながら剣を構える星戦士。

 

「効果で四枚ドロー。そしてジェット・シンクロンとボルト・ヘッジホッグを前のターンと同じように特殊召喚」

 

ジェット・シンクロン ☆1 チューナー 守備力0

 

ボルト・ヘッジホッグ ☆2 守備力800

 

 修也の本能がヤバいということと安心感を伝えてきたが、彼にはそれが何故か全くわからなかった。

 

「三体でリンク召喚! リンク3、デコード・トーカー・エクステンド!」

 

デコード・トーカー・エクステンド link3 攻撃力2300

 

 門をくぐってデコード・トーカーが現れ、通り抜けた門が新たな鎧へと変化し金色の電脳戦士が誕生する。

 

「バトルフェイズ、速攻魔法ライバル・アライバルを発動! 手札からモンスターを召喚する! おいで、ジャンク・シンクロン」

 

ジャンク・シンクロン ☆3 チューナー 攻撃力1300

 

チューニング・サポーター ☆1 守備力500

 

 オレンジ帽子の調律師がフライパンロボを墓地から引っ張り出すと、それに便乗して黒ずくめの怪し気な戦士が姿を表した。

 

ドッペル・ウォリアー ☆2 守備力800

 

「リバースカード、緊急同調! バトルフェイズ中にシンクロ召喚を行う!」

 

「な、バトルフェイズ中に召喚してシンクロ召喚!?」

 

 驚愕する修也だが、戦にとってはいつも通りだ。

 

「ジャンク・シンクロンでドッペル・ウォリアーをチューニング! 集いし星が、鋼に打ち勝つ戦士となる! シンクロ召喚! ジャンク・ウォリアー!」

 

ジャンク・ウォリアー ☆5 攻撃力2300

 

『ようやく、よーやく出番ですぞ!』

 

 ぶんぶん腕を回しながらフィールドに踊り出るジャン。しかし、この盤面をどう覆すのか。

 

「ジャンク・ウォリアーの効果、チェーンしてエクステンドの効果、チェーンしてリビングデッドの呼び声、更にチェーンして奇跡の蘇生!」

 

「二枚目!?」

 

 ならば、先程破壊したのはブラフだったのか、と修也は察した。

 

「奇跡の蘇生の効果でナイトエンド・ソーサラーを、リビングデッドの効果でハンディ・ギャロップを特殊召喚!」

 

ナイトエンド・ソーサラー ☆2 チューナー 攻撃力1300

 

ハンディ・ギャロップ ☆1 攻撃力?

 

 墓地からフィールドに降り立つ二体のモンスター。

 

「攻撃力が、決まってない?」

 

「ハンディ・ギャロップの攻撃力は、君と僕のライフポイントの差分だけ上がる。つまり」

 

ハンディ・ギャロップ 攻撃力?→4900

 

 かなりのハンデに燃えるギャロップ。名前の通りだ。

 

「攻撃力、4900!?」

 

 またも驚愕する修也だが、本当に恐ろしいのはこれからだ。

 

「エクステンドの効果で、このターンエクステンドは二回攻撃できる。そして、ジャンク・ウォリアーの効果。僕の場のレベル2以下の攻撃力分、自身の攻撃力を上げる」

 

「!?」

 

ジャンク・ウォリアー 攻撃力2300→8500

 

 新入生は反応が新鮮でいいね、とドS思考に走りながら、戦は処理を進める。

 

「ナイトエンド・ソーサラーの効果で、墓地のグラットンは除外してもらうよ」

 

 スパンッ!と杖に魔力の刃を精製し切り裂くナイトエンド・ソーサラー。

 

(よし、これで純粋にデュエルできる)

 

 まあ、もう終盤なのだが。

 

「速攻魔法、スクラップ・フィスト。ジャンク・ウォリアーに戦闘ダメージ倍、守備貫通、破壊さえない、破壊できなくても倒す、それと相手の効果発動を封じる効果を付与するよ」

 

「ッ!?」

 

 では、伏せてあった『空牙団の修練』も、先程伏せた『聖なるバリア-ミラーフォース-』も意味がなくなってしまう。

 

「それじゃ、楽しいデュエルだったよ」

 

 それが、死刑宣告だった。

 

『スクラップ・フィストォ!』

 

 ジャンが放った拳はフォルゴを襲う。彼も刀で競り合うが、文字通り力の格が違う。

 

 刀は中間ほどでへし折れ、その余波が修也のライフを刈り取った。

 

久我修也

LP10500→0

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 放課後、空き教室。修也は戦に呼ばれていた。

 

「先輩、ご迷惑おかけして、すいませんでした」

 

 そう謝罪し、頭を下げる。

 

「いや、気にしなくていいよ。それより、そのカード(グラットン)について、何か覚えていることってある?」

 

 ヒラヒラと手を振って問題ないと示し、それから闇のカードについて訊く。

 

「それが、何も。何であのカードを持っていたのか、昨日の夜から何をしていたのか、さっぱり覚えてないんです」

 

「やっぱりな」

 

 戦のそばで話を聞いていた遊羽は軽く舌打ちする。

 

「やっぱり、っていうのは?」

 

「いや、何でもねぇ。とにかく、お前はもう何ともないってことだ。良かったな」

 

 もう用は済んだと帰り支度を始める遊羽に、修也は食い下がる。

 

「待ってくださいよ。オレは巻き込まれたんだ、どういうことなのか聞く権利があるはずだ!」

 

「ねぇよ」

 

 バッサリと切り捨てる遊羽に、修也は言葉を詰まらせる。

 

「呼んだのだって、手がかりを探すためだ。お前をこれ以上関わらせるつもりはねぇ」

 

 それだけ言うと、遊羽は空き教室から出て行った。

 

 呆然とする修也に、戦は軽く声をかける。

 

「えっと、久我くん、だっけ?」

 

 名前を呼ばれ、振り返る修也。

 

「君は、精霊が見える?」

 

 戦が何もないところを指し示し、修也は困惑する。

 

「なら、やっぱり関わらない方がいいよ。危ないしね」

 

 意味がわからない修也を置いて、戦もまた教室を後にした。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「何であんなキツい言い方したの、遊羽くん」

 

 虹花のところにでも行くのか、生徒会室の方向へ歩く遊羽に追いついた戦。

 

「戦力は足りてるだろ。それに、主席を危険に曝してみろ、また面倒なことになる」

 

 淡々と言う遊羽だが、戦は彼の真意をなんとなく察した。

 

「彼をこれ以上巻き込まないために、わざと突き放す言い方をしたんでしょ?」

 

 少しからかうようなニュアンスを含んだ戦の物言いに顔をしかめながら、遊羽はそれを肯定する。

 

「ああ。いたとしても、足手まといだからな」

 

 ならば、いない方が、巻き込まない方がいい。

 

「それと、グラットンに乗っ取られていた時の記憶はないんだろ? それを思い出して苦しむかもしれねぇ」

 

 不安要素はなるべく遠ざけたい。遊羽はどこまでも冷たかった。

 

「そうだね。今はただのカードだから、彼が持っていて問題ないけど。それに、結構弱い部類だったし」

 

 カードに縛られ、デュエルの中でしか実体化できない。力はそんなに強くなかったのだろう。

 

「元々あんな奴じゃなかったってことは、今年の一年は期待しても良さそうだな」

 

 彼が朝に述べたようなことは、なかったということだ。

 

「そうだね。じゃ、僕はもう帰るね」

 

「ああ、またな」

 

 そう挨拶して戦と別れると、遊羽は虹花の手伝いをしに生徒会室へ向かった。

 

 あのメンバーに対して不安しかなかったからだ。




空牙団は強い。でも脳筋の方が強い。

さて、皆様は生徒会の彼らを、男女どちらで読みましたか? どっちの性別にもありそうな名前で書きましたが。

男子だと思った方は女子として、女子だと思った方は男子として読んでみてください。面白いですよ、多分。きっと。メイビー。


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交流戦の始まり

こっちを更新せず、番外編を書いた作者がいるらしい・・・・・・

私だ。

というわけで、番外編を書いたので、詳しくは目次か作者ページへ。


 翌日、戦が起きて朝食を食べようとリビングへ向かうと、そこは中々に騒がしくなっていた。

 

『ぬおぅ!? そこで掴み技はキツいであります!』

 

『知ってるの。だからやってるの』

 

 ジャンク・シンクロンのジャンクロンと、ナイトエンド・ソーサラーのサラ。ジャンクロンは春休みの間に上位の精霊となった戦のカード。そしてサラは開けたパックから出てきた精霊だ。

 

『あ、おはようでありますご主じ、って今ハメ技を!?』

 

『おはようなの、マスター』

 

 最近人気の格闘ゲームに興じながら挨拶する二人に、戦もまた「おはよう」と返す。

 

 おい、デュエルしろよ。

 

『ジャンクロン、サラ殿、せめて挨拶くらいはキチンとしてはどうですかな?』

 

 戦の中からヌルッと顕現したジャンが窘めると、二人は急いでゲーム機を閉じた。

 

 ジャンクロンとサラの攻撃力は1300、ジャンは2300。『ユニオン・アタック』や『クロスアタック』を使わないと敵わないため、基本的に彼には従うのだ。

 

 ちなみに、サラは初め戦に反発してしっかり教育(調教)されたりしている。

 

「別にいいんじゃない? ジャン」

 

『いいえですぞ、主殿。日頃からしっかりしていないと、いざと言うときに力が出せないのですぞ』

 

「日頃からだらけてるジャンが言うと説得力ないね」

 

 うぐ、と言葉に詰まったジャンに、ジャンクロンとサラが白い目を向ける。

 

「まあいいや。早くしないと、学校遅れるしね」

 

 朝食支度を始める戦。ジャンも彼の中へ逃げようとしたが、それをジャンクロンが掴み、サラが懐から『ユニオン・アタック』のカードを取り出す。

 

 その後、戦の食事のBGMに悲鳴が加わったのは言うまでもない。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 戦が正門へ到着すると、丁度遊羽と虹花に鉢合わせた。

 

「おはよう、遊羽くん、真宮さん」

 

「よう」

 

「おはようございます」

 

 挨拶を交わし、学校へ入ろうとする彼らに駆け寄る生徒が一人。

 

「おはようございます、先輩方! 昨日はどうもすみませんでした!」

 

 久我修也である。

 

「えっと、急にどうしたの?」

 

「いえ、昨日先輩方に言われたことをオレなりに考えてみたんです。そうしたら、先輩方がすごくオレの安全を考えたことを言ってくれていたんだ、ってわかったんです」

 

 尋ねた戦も引くほど純粋な瞳で語る修也。遊羽は虹花の手を痛くならない程度に全力で握ってその純粋さから逃れようとする。

 

「だから、オレはオレなりに頑張って、先輩方に認めてもらいます! その、『精霊』とかについては力になれないかもしれませんが、オレにできる限りのことはさせていただきますので!」

 

 遊羽が一歩引いた。虹花のいる前で彼が後退したのは、これが初めてだった。

 

(遊羽・・・・・・)

 

 虹花が視線だけで「大丈夫ですか?」と訊くと、遊羽は脂汗を流しながら頷いた。

 

「見ていてください、先輩方! オレもいつか先輩方みたいに強くなってみせますから!」

 

 そう言って教室へと去っていった修也。・・・・・・何というか、一方的であった。

 

「一方的なのって、元からだったのか・・・・・・」

 

 純粋さに当てられ、疲労した遊羽は疲れた声を出す。

 

「お疲れ様です、遊羽。教室に行ったら膝枕しましょうか?」

 

「悪い、頼む」

 

 完全に虹花に依存している遊羽。虹花としてはそんな彼も愛おしくて堪らないのだが。

 

「そんなんじゃあ、今日の交流戦で負けちゃうよ? 遊羽くん」

 

「あ? 交流戦?」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 交流戦。

 新入生と上級生がデュエルを通して交流するこの行事。去年遊羽はサボっていたがめ存在を忘れていたが、生徒会の手伝いで扱った書類にそんなことが書いてあったと思い出した。

 

 で、その組み合わせなのだが。

 

「何で(オレ)の相手があの主席なんだ・・・・・・?」

 

 少し震えた声で戦々兢々している遊兎に、彩葉は背中を押す。

 

「だいじょうぶ。遊兎、強くなるために色んなカードを探して、いろんな人と戦ってた。だから、だいじょうぶ」

 

 遊兎が帰ってきたときに確認していたカードたち。そして、春休みで増えたカードたち。それらを手に入れるために彼がした努力を、彩葉は感じ取っていた。

 

 ゆっくりと微笑む彩葉に、遊兎は気合いを入れ直す。

 

「ああ! 勝てるかどうかわかんねぇけど・・・・・・やれるだけやってやる!」

 

 そして、デュエルリングに立つ。

 

「初めまして、月見先輩。オレは久我修也。よろしくお願いします!」

 

「おう! (オレ)は月見遊兎、夜露死苦!」

 

 決まった、と内心ガッツポーズをする遊兎だが、端から見れば普通に挨拶しただけである。

 

「「デュエル!」」

 

月見遊兎

LP8000

 

久我修也

LP8000

 

 ディスクが先攻を示したのは遊兎。余所では新入生が先攻後攻を選べるらしいが、そんなルールはない。

 

(オレ)のターン! レスキューラビットを召喚! 効果でデッキからメガロスマッシャーX二体を特殊召喚!」

 

レスキューラビット ☆4 攻撃力300

 

メガロスマッシャーX ☆4 攻撃力2000

 

 最早お馴染みとなったウサギと鮫。稲葉の白兎がモチーフかもしれない。

 

「メガロスマッシャーXでオーバーレイ! 来てくれ、エヴォルカイザー・ラギア!」

 

エヴォルカイザー・ラギア ★4 攻撃力2400

 

 現れたモンスターに、観戦していた新入生の一割が卒倒した。

 

「カードを一枚伏せて、ターンエンドだ」

 

月見遊兎

LP8000 手札3

場 エクストラ:エヴォルカイザー・ラギア 魔法・罠:伏せカード

 

「オレのターン、ドロー!」

 

 昨日家に帰って新レギュレーションを見た彼は、既にマーメイドなしのデッキを組んだ。そのため、これは純構築の空牙団である。

 

「強欲で貪欲な壺を発動! デッキから二枚ドロー!」

 

 十枚除外される。

 

「通常召喚! 来い、ビート!」

 

空牙団の剣士 ビート ☆3 攻撃力1200

 

 空牙団の一員として戦うべく剣を構える獣剣士。

 

「なら、ラギアの効果発動だ! オーバーレイユニットを二つ使って、効果を無効にして破壊する!」

 

 獣剣士が仲間を呼ぼうと剣を掲げるが、ラギアがそれを遮り蹴り飛ばす。

 

「っ、なら次です! ワン・フォー・ワンを発動! 手札一枚をコストに、デッキからレベル1モンスターを特殊召喚する! 来い、フィロ!」

 

空牙団の伝令 フィロ レベル1 守備力0

 

 ビートがやられたことを知らせるべく、フィロが伝令に走る。

 

「フィロの効果で手札から空牙団を特殊召喚できます!」

 

「リバースカード、禁じられた聖杯! そのモンスターの効果を無効にする!」

 

 修也の抵抗に対し、遊兎はカードのタイミングを見極め、止める。

 遊兎は、デュエリストとして、確実にレベルアップしていた。

 

「・・・・・・カードを二枚伏せて、ターンエンドです」

 

久我修也

LP8000 手札2

場 メイン:空牙団の伝令 フィロ 魔法・罠:伏せカード×2

 

 止められたのが一回であれば、まだ何とかなった。しかし、二回は辛い。

 

(オレ)のターン! ドロー!」

 

「リバースカード、烈風の空牙団! 墓地から空牙団の撃手 ドンパを特殊召喚します!」

 

空牙団の撃手 ドンパ ☆2 守備力1000

 

 遊兎のターンにも関わらず、ドンパが現れたことにフィロが反応する。

 

「フィロの効果発動! 空牙団が特殊召喚されたことで、墓地から空牙団を特殊召喚します! 来い、ビート!」

 

空牙団の剣士 ビート ☆3 守備力500

 

 ビートが現れたことで、次はドンパが反応する。

 

「ドンパの効果発動! 空牙団が特殊召喚されたことで、相手のカード一枚を破壊する! オレが選ぶのはエヴォルガイザー・ラギア!」

 

 友の仇を討つべくドンパがラギアを撃つ。その横ではビートが『いや、生きてるからね?』と念を押す。

 

「うわっ!? ・・・・・・(オレ)の周りって、相手ターンに色々する(こんな)のばっかりだな」

 

 過去のカウンターワンキルを思い出し苦い顔をする遊兎。しかし、それもまた彼の経験となっている。

 

「力を借りるぜ息吹! ペンデュラム・コールを発動! デッキから竜脈の魔術師と竜穴の魔術師を手札に加える! そしてペンデュラムスケールにセット!」

 

Pスケール 1-8

 

 光の柱に魔術師の師弟が現れ、天空に穴が開く。

 

「ペンデュラム召喚! 来い、レスキューラビット! 魂喰いオヴィラプター!」

 

レスキューラビット ☆4 攻撃力300

 

魂喰いオヴィラプター ☆4 攻撃力1800

 

 穴からヘルメットを被ったウサギと頭にこぶのある恐竜が落下し、背中をしたたかに打ち付ける。

 

「オヴィラプターの効果でデッキから究極伝導恐獣を手札に加える! 墓地のメガロスマッシャーXとラギアを除外して、手札から特殊召喚!」

 

究極伝導恐獣 ☆10 攻撃力3500

 

 墓地の魚竜二体を喰らい、紫電を纏った恐獣が君臨し、遊兎を守るように立つ。

 

「レスキューラビットの効果発動! 除外して、デッキから竜脈の魔術師二体を特殊召喚!」

 

竜脈の魔術師 ☆4 攻撃力1800

 

 ウサギに呼ばれてやってきた弟子と弟子。例によって色違いである。

 

「竜脈の魔術師二体でオーバーレイ! エクシーズ召喚! 来てくれ、星刻の魔術師!」

 

星刻の魔術師 ★4 攻撃力2400

 

 二体の魔術師がフュージョンし、黒い魔術師が現れる。おい、エクシーズしろよ。

 

「星刻の魔術師の効果発動! オーバーレイユニットを一つ使って、デッキから闇魔術師を手札に加える! (オレ)はデッキから究極封印神エクゾディオスを手札に加えるぜ!」

 

「今度は何を・・・・・・」

 

 通常モンスターという緩い縛りによる展開のせいで、次にどんなカードは来るのか読みづらい。

 それは、修也を確実に追い詰めていた。

 

「墓地のモンスター全てをデッキに戻して、究極封印神エクゾディオスを特殊召喚!」

 

究極封印神エクゾディオス ☆10 攻撃力?

 

 とても魔術師とは思えない筋肉隆々の神。

 

「攻撃力が、決まっていない?」

 

「エクゾディオスの攻撃力は、墓地の通常モンスターの数だけアップするぜ。今はいないからゼロだ」

 

 つまり、見掛け倒しである。

 

「バトル! 究極伝導恐獣は、相手モンスター全てに攻撃できる! 戦わなければ生き残れない(サバイバル・サバイブ)!」

 

 まずはフィロにそのAGOを振るう恐獣。しかし、黙ってやられる修也ではない。

 

「リバースカード、デモンズチェーン! 究極伝導恐獣の効果を無効にして、攻撃できなくします!」

 

 恐獣を悪魔の鎖が襲い、縛り付け、動きを制限する。

 

「速攻魔法、滅びの呪文-デス・アルテマ! 場にレベル8以上の闇魔術師がいることで使える! 場のカード一枚を裏側で除外する!」

 

 エクゾディオスが何やら呪文を唱え、途中で諦めデモンズ・チェーンのカードを殴って除外する。

 

「なっ!」

 

「究極伝導恐獣でドンパに攻撃! 究極伝導恐獣が守備モンスターと戦闘する場合、そのモンスターを破壊し相手に1000ダメージを与えることができる!」

 

 恐獣が問答無用でドンパにデコピンし、ドンパが吹き飛ぶ。

 

久我修也

LP8000→7000

 

「ってことは、」

 

「次だ! ビートとフィロを攻撃!」

 

 次々とデコピンでモンスターを破壊する恐獣。シュール極まりない。

 

久我修也

LP7000→6000→5000

 

「星刻の魔術師とオヴィラプターでダイレクトアタック!」

 

 オヴィラプターがおもむろに自身のこぶをむしり取り、修也に投げつけ、星刻は杖を投擲。

 

「うっ」

 

久我修也

LP5000→3200→800

 

 残るは、無力な(攻撃力0の)神のみ。

 

「これでターンは終わり、次のターンで・・・・・・」

 

「エクゾディオスが攻撃する時、デッキからモンスター一体を墓地へ送れる。(オレ)はデッキから竜魔王ベクターPを墓地に送るぜ」

 

究極封印神エクゾディオス 攻撃力0→1000

 

 これでもたかだか攻撃力1000。しかし、修也のライフを削り取るには十分だ。

 

「エクゾディオスでダイレクトアタック!」

 

 4分の1ゴッドハンドクラッシャー。

 

久我修也

LP800→0

 

 何もできずに終わったことに呆然とする修也。遊兎は心配し声をかける。

 

「だ、大丈夫か? 何か(オレ)マズいことしたか!?」

 

 その様子からは、(ワル)さは微塵も感じられないのだが。

 

「・・・・・・如月先輩や遊民先輩の他にも、こんなに強い先輩がいたなんて!」

 

 顔を上げた修也は、とてもいい笑みを浮かべていた。

 

「先輩、昼休みか放課後、お時間ありますか? もう一度デュエルしたいです!」

 

「お、おう。放課後なら・・・・・・」

 

「では是非!」

 

 冷や汗をかく遊兎に気付かず、その瞳に憧れの感情を浮かべる修也。

 

 やはり、一方的なのは元々のようだ。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「向こうは決着がついたみたいだね♪ こっちも始めようか」

 

 余裕綽々、といった雰囲気の青年の前に立つのは、黒髪ショートカットの小柄な少女。

 

「よろしくお願いします」

 

 ビシッ、と返事をしてディスクを構える彼女の名は鴻上 式(こうがみ しき)。

 

 セキュリティより派遣された、星河の後輩である。




「前回、私達について何も言われませんでしたね・・・・・・まさか、放置プレイ!? 放置プレイですか!? イイ! 実にイイですよ!」

「なー、この変態どうすればいい?」

「ふむ、この前大量発注があった世界には、この上がいるらしいのだよ! 是非とも会ってみたいな!」

「虹花、コイツらと生徒会やってて大丈夫か?」

「問題ないですよ。イベント事では戦力になりますし、扱いやすいです」


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弾丸竜と化石召喚

久しぶりに時間があったので連続投稿です。

前話を読んでいない方はそちらからお願いします。


「「デュエル!」」

 

鴻上式

LP8000

 

龍塚息吹

LP8000

 

「自分のターンです。先ずは速攻魔法、クイック・リボルブ発動。デッキからヴァレット・トレーサーを特殊召喚します」

 

ヴァレット・トレーサー ☆4 チューナー 守備力1000

 

 赤い弾丸竜がフィールドに現れると、息吹はひゅうと口笛を吹く。

 

「キミもドラゴンを使うのか♪ いいね、もっとドラゴン使いが増えて欲しい」

 

 そんな彼に「なんだこいつ」という顔をする式。彼女から見てもある息吹は変人にジャンル分けされるらしい。

 

「フィールド魔法、リボルブート・セクターを発動します。効果でヴァレットモンスターの攻守は300アップします」

 

ヴァレット・トレーサー 守備力1000→1300

 

 銃のリボルバー部分と思わしき回転円柱がフィールドに出現。

 

「リボルブート・セクターの第二の効果。手札からヴァレットモンスター二種を特殊召喚します」

 

シルバーヴァレット・ドラゴン ☆4 守備力100→400

 

マグナヴァレット・ドラゴン ☆4 守備力1200→1500

 

 円柱から射出された二種の弾丸竜。それぞれ形が異なるのに、同じリボルバーに何故入れるのだろうか。

 

「ヴァレット・トレーサーの効果。場の表のカード、リボルブート・セクターを破壊して、デッキからヴァレットモンスターを特殊召喚します」

 

メタルヴァレット・ドラゴン ☆4 守備力1400→1700

 

 トレーサーが円柱に突っ込み爆発し、若干焦げたトレーサーが黒ずんでしまった鋼の弾丸竜を連行してくる。

 

「開け、我が道を照らす未来回路」

 

 現れる未来回路(サーキット)

 

「ヴァレット・トレーサーとメタルヴァレットでリンク召喚。リンクツー、ブースター・ドラゴン」

 

ブースター・ドラゴン link2 攻撃力1000

 

 式のデッキが「ヴァレット」を中心にしているとわかっていた息吹だが、これまでの展開で守護竜を混ぜていない純ヴァレットだろうと推測する。というか、あんなの(守護竜ヴァレット)使ったらデュエルにならない。

 

「ブースター・ドラゴンの効果を発動します。場の表のモンスター一体を対象に、攻守を500アップします」

 

 ビシッ、とシルバーヴァレットを指差す式。ブースター・ドラゴンが力を注ぐと、銀の弾丸竜がそれに反応する。

 

「シルバーヴァレットの効果。リンクモンスターの効果の対象となった時、このカードを破壊することで、相手のエクストラデッキを見て一枚を除外します」

 

「言ってること随分ムチャクチャだね!?」

 

 後輩の邪魔はするまいと黙っていた息吹だったが、その効果に思わず声を上げる。

 

「では、エクストラデッキを拝見します」

 

「どーぞー」

 

 息吹の声に反応せず、ディスクを操作し彼のエクストラデッキを確認する。

 

(・・・・・・? 彼はペンデュラム使いだと銀先輩に聞いていましたが、デッキを変えたのでしょうか」

 

 表示された彼のエクストラデッキには『ヘビーメタルフォーゼ・エレクトラム』などはなく、代わりに『天球の聖刻印』などのドラゴン族リンクモンスターが三枚ずつと、『ブラックローズ・ドラゴン』などの汎用ドラゴンが入っているのみだった。

 

「ではNo.38 希望魁竜タイタニック・ギャラクシーを除外します」

 

 シルバーヴァレットが弾丸にメタモルフォーゼし、ブースター・ドラゴンが発射はできないので息吹のエクストラデッキ目掛けて投擲した。

 

「場にヴァレットモンスターがいることで、手札からアブソルーター・ドラゴンを特殊召喚します」

 

アブソルーター・ドラゴン ☆7 守備力2800

 

 弾丸ホイホイ機械竜。

 

「ブースター・ドラゴンとマグナヴァレット、アブソルーターでリンク召喚。リンクフォー、ヴァレルロード・ドラゴン」

 

ヴァレルロード・ドラゴン link4 攻撃力3000

 

 門から顕現したるは弾丸竜の(ロード)。その赤い体からは、王の風格が伺える。

 

「アブソルーターの効果でデッキからメタルヴァレットを手札に加え、エンドフェイズ。シルバーヴァレットの効果でデッキからマグナヴァレットを特殊召喚します。これでターンを終了します」

 

鴻上式

LP8000 手札1

場 エクストラ:ヴァレルロード・ドラゴン メイン:マグナヴァレット・ドラゴン

 

 手札は割れているが、それでも恐ろしい盤面だ。二体の効果を合わせれば、フリーチェーンでモンスターを墓地へ送ることができる。

 

「オレのターン、ドロー♪ じゃあ、バイス・ドラゴンを特殊召喚」

 

バイス・ドラゴン ☆5 守備力2400→1200

 

 懐かしいモンスターだが、式は存在を知らないらしく首を傾げ、ディスクを操作して効果を見る。

 

(なるほど、あまり強くは感じませんね。放置していいでしょう)

 

 式はヴァレルロードの効果を使わずスルーした。

 

「バイス・ドラゴンをリリースして、アドバンス召喚! さあ舞い踊れ! オッドアイズ・アドバンス・ドラゴン!」

 

オッドアイズ・アドバンス・ドラゴン ☆8 攻撃力3000

 

 現れた赤い竜とその召喚方法に、式は驚く。

 

(オッドアイズカテゴリーにあんなカードは無かったはず・・・・・・それに、アドバンス召喚? あんな化石召喚法をいったい何故?)

 

 その疑問を読み取った息吹は、口角を上げながら解説フェイズへ移行する。

 

「アドバンスがアドバンス召喚に成功したとき、相手のモンスター一体を選んで破壊し、その攻撃力分だけダメージを与えるよ♪」

 

「っ!? ヴァレルロードの効果をマグナヴァレットを対象に発動します! マグナヴァレットの効果で、このカードを破壊しそのドラゴンを墓地送りにします」

 

 アドバンスが吠え、ヴァレルロードに噛み付くと、ヴァレルロードはマグナヴァレットを取り込んで弾丸にし、撃ち出す。

 結果は相打ちだった。

 

鴻上式

LP8000→5000

 

 しかし、これで式のフィールドはがら空き。手札もメタルヴァレットだと割れている。

 

「バイス・ドラゴンを除外してワイバースターを特殊召喚、そしてワイバースターでリンク召喚、守護竜エルピィ♪ ワイバースターの効果でコラプサーペントを手札に加えて、特殊召喚♪」

 

守護竜エルピィ link1 攻撃力1000

 

暗黒竜コラプサーペント ☆4 攻撃力1800

 

 流れるような連続召喚。そして締めとばかりに一枚のカードを発動する。

 

「復活の福音発動♪ 蘇れ、アドバンス!」

 

オッドアイズ・アドバンス・ドラゴン ☆8 攻撃力3000

 

 復活するアドバンス。効果は発動しないが、打点としては十分だ。

 

「バトル♪ コラプとエルピィでダイレクトアタック!」

 

鴻上式

LP5000→4000→2200

 

 抵抗できずにドンドンと削られるライフ。先行の展開に全てを費やした結果だ。

 

「アドバンスでトドメだ♪」

 

鴻上式

LP2200→0

 

 うなだれ、言葉を発さない式に、息吹は心配になり声をかける。

 

「え、あの、大丈夫? オレ何かした?」

 

 その狼狽えようはかなりのもので、新入生を泣かせたらマズい、という危機感が滲み出ている。

 

「・・・・・・もう一回、もう一回お願いします」

 

「え?」

 

 泣いていた訳じゃないのか、という安心感と困惑から聞き返す。

 

「もう一回お願いします。今度は自分が後攻で。次は勝ちます」

 

 なるほど、負けず嫌いなのか。

 息吹は完全に理解した。

 

「えーと、今時間ないんだけど・・・・・・」

 

「いえ、お願いします。大丈夫です、五分で終わらせます」

 

 連撃の帝王や天球の聖刻印で相手ターンにもアドバンスを出すからそんなに早くは終わらないと考える息吹だが、デッキ内容がバレるため躊躇していると式が例の『満足アンカー』を射出し息吹のデュエルディスクを強制デュエルモードにする。

 

「え、ちょ、あのっ?」

 

「どうぞ、カードを五枚引いて始めてください」

 

 困惑する息吹の左腕を、誰かが掴んだ。

 

「『満足アンカー』には安全装置が設計されている。だから、やり方さえ知ってれば誰でも外すことができるぜ」

 

 解説と共に『満足アンカー』を息吹のディスクから外したのは、我らが主人公遊羽だ。

 

「遊羽・・・・・・!」

 

「じゃ、さっさとどけ。次のデュエルが詰まってるんだよ」

 

 感涙する息吹を無造作にスタジアムから下ろし、次の相手を案内する。

 

「次、仁藤。一年相手だからって手加減しなくていいぞ」

 

「了解いたした。全力を出させていただこう」

 

 久しぶりの登場、仁藤実篤。二刀流デッキというガガガザムライとチャンバライダーを軸にしたデッキは今も健在だ。

 

「遊羽、オレを助けたのって・・・・・・」

 

「順番が詰まっていたからだ。他にどんな理由があるんだ?」

 

 ですよねー、とため息をつく息吹。二人が仲良くなる日はまだまだ遠い。というか来るかどうかも怪しい。




久しぶりの出番の仁藤くん。服部? ああ、そのうち出るのではないでしょうか、そのうち・・・・・・。

次回は遊羽の春休みまで遡ります。幕間のようなものですね。

二週間以内には投稿したいですね。


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疾風怒濤のエクスペリエンス

暫く更新できず、すいませんでした。やっぱ高校はブラックなんやなって。

久しぶりで上手く書けているかどうかわからないので、誤字脱字報告等、よろしくお願いします。

では、本編へGO!


 それは、春休みの出来事だ。

 

 いつものように部屋でトレーニングをしていた遊羽は、ポツリと呟く。

 

「はぁ。他にデュエルが強ぇ奴はいねぇかな」

 

 最近、強いデュエリストに出会えていない。戦や息吹や遊兎などとデュエルはするが、そろそろ退屈に感じてきたころだ。

 

 確かに彼らとのデュエルは楽しいしトレーニングにもなる。しかし、それでも飽きるものだ。

 

 虹花とのデュエルは飽きないのだが、彼女は出掛けていて不在である。

 

『不満か、遊羽。異世界で出会った彼らのように、強いデュエリストはそうそういないからな』

 

 トレーニング相手をしていたレヴが告げると、遊羽は「そうかもな」と力なく笑う。

 

「異世界で出会ったデュエルも出来てリアルファイトも出来る奴……あー、アイツとかいいかもな」

 

『アイツ?』

 

 遊羽の言葉にレヴが反応するが、無理な願いだから気にするなと言ってトレーニングを再開した。

 

(デュエルへの熱い思いに、精霊と力を合わせて戦う強さ……デュエルでもリアルファイトでも良い練習相手になると思ったんだけどな)

 

 その時、おぞましいなにかが蠢き、遊羽が思い描いた人物を写し出す。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 お昼過ぎ。結局暇になった遊羽は虹花と合流し、『轟モール』というショッピングモール内をブラついていた。

 

「すいません、遊羽。探していたものが中々見つからなくて……」

 

「いや、問題ねぇよ。俺も久々にこんな所に来れたしな」

 

 普段遊羽はカードショップかスーパーにしか行かないので、大きなショッピングモールに来るのは久しぶりだったりする。とても高校生の生活とは思えない。

 

「それで、何を探してたんだ? まだ見つけてないなら俺も手伝うが……」

 

 そこまで言ったところで、彼らの後方から轟音が響いた。

 

「っ!? 何だ!?」

 

 とっさに虹花を抱きしめ、音のした方向に振り返る。

 

【Brraaaaa!!】

 

 そこにいたのは、屍の復讐者。異世界で遊羽と共に戦ったデュエリスト、足軽丈澄。彼は叫びを上げ手近な物を破壊し始める。

 

「!? 何で、足軽くんがここに!?」

 

 遊羽の腕の中から丈澄を見た虹花は、驚きの声を上げる。

 

「チッ、取り敢えず止めるぞ! レヴ!」

 

『応!』

 

 逃げる客の波から外れ、遊羽は『融合』のカードを取り出し、レヴ、そしてドラグニティの少竜たちと融合する。

 

「虹花、少しここにいてくれ。アイツを止めてくる」

 

 虹花を離し、周囲にドラグニティの槍達を出現させる遊羽。虹花は心配そうに彼を見つめ、しかし頷いた。

 

「あ、後息吹に連絡を頼む。アイツなら壊れた物を直せるだろ」

 

 それだけ告げると、遊羽は丈澄へと向かって行った。

 

「……不甲斐ないですね。こういう時、私は何もできないんですから」

 

 悲しそうに呟く虹花だったが、直ぐにケータイを取り出し息吹へ連絡を取り始めた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「オラッ、何してやがる!」

 

【Graaaa!】

 

 遊羽が拘束するべくドラグニティファンネルを飛ばすが、丈澄はその全てを拳で弾き返す。

 

「チッ、なら次だ!」

 

 レヴの大剣とミスティルの剣を構え、丈澄へ斬りかかる。

 

【R、Rraaaaaa!】

 

 それに対し丈澄は両の拳で打ち返す。

 

「クッ、やっぱ強いなサンドノック……」

 

 ヒビの入ったミスティルの剣に一瞬だけ目を向け、険しい顔をする遊羽。丈澄は隙ありといわんばかりに突撃してくる。

 

「う、おっ!?」

 

 両手の剣で拳を受け止めるも、予想以上の力にミスティルの剣が砕ける。

 

「っ、来い!」

 

 鍔迫り合いする状況をピンチと判断し、遊羽はドラグニティファンネルを丈澄ひ向けて放つ。

 

【Ga、AAaaa!?】

 

 痛みからか声を上げる丈澄。遊羽はその隙に彼の胴体を蹴り距離を取る。

 

「遊羽! 龍塚くんがもうすぐ来るそうです! 全力を出しても大丈夫ですよ!」

 

 虹花が遊羽の後方から声をかける。

 

「やっとか・・・・・・遅ぇんだよ」

 

 息吹が来るということは、全力を出した後に倒れても何とかなる、ということだ。レヴは人の目に触れるわけにはいかず、虹花では遊羽を運べないからである。

 

「行くぜ! こっから本気だ!」

 

 レヴの大剣を持っていない方の手にドラグニティファンネルが集まり、一本の槍となる。

 

「お前に何があったか知らねぇが……取り敢えず、気絶くらいは覚悟しろよ!」

 

 ドラグニティの神槍を構え、遊羽は丈澄へと再び斬りかかる。

 

【Huuuu、GaaaaaAAA!?】

 

 それを先程と同じく拳で殴った丈澄だが、今度はその拳が傷付き、悲鳴のような叫びを上げる。

 

【Guuuuu、Graaa!!】

 

 不利と見た丈澄は虹花の方向へと向きを変え、彼女に飛びかかる。

 

「なっ、虹花!?」

 

 遊羽は油断していた。暴れているとはいえ、彼は丈澄。破壊こそしても、人を襲うことはしていなかったことから、根幹はやはり彼だと思っていた。

 だから、虹花を襲うことはないと、心のどこかで考えていた。

 

「っ、きゃああ!」

 

 悲鳴をあげ、頭を庇う虹花。しかし、訪れるはずの痛みを感じることはなかった。

 

「・・・・・・? っ遊羽!!」

 

 彼女を守ったのは、当然遊羽。腹を貫かれながらも、丈澄の拳を止めている。

 

「っ、残念、だったな……俺は傷付けられても、虹花には手を出させねぇよ……」

 

 口元から血を零しながらも、不敵に遊羽は笑う。

 

 しかし、それこそが丈澄……否、ソレの狙いだった。

 

【Ruuaaaa!!】

 

 丈澄のカタチをしたソレは、身体を黒い瘴気へ変えると、遊羽を包み込んだ。

 

「なっ、遊羽!!」

 

「クッ、ガアアアア!」

 

 遊羽の身体は、闇に包まれた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

『クリクリクリィ! クリィ!』

 

「おい、どうしたんだよ相棒! どこ行くんだよ!」

 

 突然どこかへ向かい始めたクリボールを追い、丈澄は走る。

 

『何かあるのかもしれないな。ないとは思うが、置いていかれないようにしろよ?』

 

「おうよダチ公! って早いな相棒!?」

 

 思った以上に早く飛ぶクリボールに、丈澄は驚く。

 

『何やら嫌な予感がするが……まあ、大丈夫だろう。今は夜だから、オレの力を存分に発揮できる』

 

 彼らは走る。暗い夜道を、(クリボール)に導かれて。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 『轟モール』へと到着した息吹が虹花のいる場所へ向かうと、そこには黒い怪物がいた。

 

「真宮、遊羽は!?」

 

 息吹の声に対し、虹花は怪物から距離を取りながら息吹の側へ走り、答える。

 

「遊羽なら、そこにいますよ」

 

「? ・・・・・・!? まさか、あの怪物が遊羽!?」

 

「遊羽を怪物呼ばわりしないでください」

 

 息吹ですら気付かないほどに、遊羽は変わり果てていた。

 

 漆黒に染まった身体に、禍々しく変貌した翼と剣、そして赤黒く輝く瞳。その姿は、遊羽の面影を残しながらも、全く別の存在のように見える。

 

「で、何で真宮はそんな冷静なの?」

 

「冷静ではありませんよ?」

 

 虹花はと言えば、遊羽の姿に怒りを覚えていた。

 恐怖などはない。ただ、愛しい人を奪われ、操られていることに、そしてそれを防げなかった自分に怒っていた。

 

『・・・・・・・・・・・・』

 

 遊羽はその場から動かず、虚ろな瞳で中空を見つめているが、恐らく遊羽が抵抗しているのだろう。しかし、それも長続きするとは思えないが。

 

「龍塚くん、遊羽を本に戻す手立てはありますか?」

 

「あるにはあるけど・・・・・・オレたちには無理だね。星河先輩もいないし、できて時間稼ぎくらい」

 

 星河は現在遠くの町『クスィーゼ』へ出張中で、少なくとも往復3日はかかる距離だ。彼なら空間移動もできそうだが、あちらは治安が悪いらしいので忙しいだろう。

 

 息吹のオッドアイズも現在不在で、戦闘能力のない息吹は役立たずである。

 

「そうですか・・・・・・ですが、私が行っても、」

 

 虹花は最近リアルファイトの訓練を遊羽としているので、戦えなくはない。しかし、ほぼ確実に殺されるだろう。

 遊羽に殺されるなら本望だが、操られた遊羽には殺される訳にはいかない。それに、元に戻った彼を悲しませてしまう。

 

「これ、結構詰んでるなぁ・・・・・・ちょっとシャレにならない」

 

 普段余裕な態度の彼も、かなり切羽詰まっている。今の息吹にできるのはせいぜい魔法・罠カードを使う程度で、肉弾戦は不可能だ。

 

『・・・・・・!』

 

 怪物が、動き出した。

 

『Rurururaaaaaa!!』

 

 雄叫びをあげ、視界に入った獲物(息吹)へと飛びかかる。

 

「オレかい!!」

 

 とっさに『光の護封剣』で遊羽の動きを止めたが、一分程度で破られると息吹は推測し、振り返って走る。

 

「真宮も、早く!」

 

「はい!」

 

 虹花が走り出すと、遊羽が護封剣を砕き、翼を広げた。

 

「もう!? バケモノスペックかよ!?」

 

 息吹が叫ぶが、その体力が勿体ない。

 

「あうっ!」

 

 偽丈澄によって破壊された建物の残骸に足を取られ、虹花が転ぶ。

 

 その隙を、遊羽は見逃さない。

 

『Ruaaaaaa!』

 

 

 

 

 

【RE・BOOOORN!!】

 

 その遊羽の顎を、骨の拳が撃った。

 

『Gyaa!?』

 

 悲鳴をあげて吹き飛ぶ遊羽。虹花はその拳の主を見る。

 

「丈澄くん!?」

 

【よお、虹花さん。これ、どうなってるんだ?】

 

 足軽丈澄。遊羽たちが異世界で出会ったデュエリストの一人でありサンドノックなヴェンデット使い。

 

「誰だか知らないけど、助かった! 精霊の力を纏って強力な攻撃を加えれば、遊羽は元にもどるはずだ」

 

【誰だか知らないけど、わかった! 遊羽、もっぱつ殴られろ!】

 

 お互い初対面故に変な呼び方だが、まあ仕方ないだろう。

 

【行くぜ! 相棒、ダチ公!】

 

『クリクリィ!』

 

『任せろ!』

 

 スレイヤーと一体化した丈澄が力を解放し、一瞬で遊羽との距離を詰めて肉薄する。両方の拳を力強く握りしめ、ラッシュを繰り出そうとするが、ドラグニティファンネルがそうはさせまいと飛んでかかる。

 

『Koooo……!』

 

【チィッ!?】

 

 バク転をして寸前で回避するが、すぐさまレヴァテインの大剣をその手に携えた遊羽が斬り掛かる。それを丈澄は腕の骨刃でなんとか受け止めるが、激突の衝撃に耐えきれずに吹き飛んでしまう。

 

【どわぁ!?】

 

 受け身も取れずに地面に倒れた丈澄に向けて、ドラグニティファンネルが飛ばされる。飛来する剣を骨刃で叩き落とすがいくらか処理出来ずに、皮膚を切り裂かれる。

 

『SYAAaa!!』

 

 弱っていると判断した遊羽が、竜の翼を活用して丈澄目掛けて強襲する。

 

【ぐっ!!】

 

 大剣をなんとか受け止め、反撃に転じようとするがすぐさまその場から離脱されてしまう。

 

【ごちゃごちゃ動いてんじゃねぇ!!】

 

 丈澄は遊羽を指差し、スレイヤーの力を解放する。空から次々とヴェンデット・ストリゲスが現れ、遊羽に攻撃を仕掛け始めた。

 

『AAaaAAAaA!!』

 

 群がるストリゲス達を薙ぎ払う遊羽、その隙に丈澄がストリゲスを足場にして一気に距離を詰める。

 

【喰らえ!】

 

 右腕を振りかぶり、力を込める。

 

『Garrrrrrrr!!』

 

 遊羽が左手を丈澄に向けてかざす。するとドラグニティファンネルが円状に集結し、ひとつの盾へと変化した。それでも丈澄はお構いなしに渾身の一撃を繰り出す。

 

【決別の夜!!】

 

 唸る剛腕と背面の二対の骨が盾とぶつかりせめぎ合う。この激突に勝ったのは丈澄だ。丈澄の一撃はドラグニティファンネルの盾を弾き飛ばした。しかし、そこに遊羽は既にいなかった。

 

【遊羽が・・・・・・いない!?】

 

 驚く丈澄、左右を見渡しても遊羽の影すら掴めない。

 

『クリクリィ!!』

 

【上か!?】

 

 相棒の叫び声に気づいた丈澄は視線を上に向けるよりも先に前方へジャンプした。瞬間、丈澄が先程まで乗っていたストリゲスが真っ二つに切り裂かれた。

 

【そこだ!!】

 

 背中の骨二本を動かし、勘で突く。その勘は見事に的中し、遊羽の両翼を突き刺し穴を開けた。

 

『Ga!?』

 

 驚くと同時に落下する遊羽を追いかけるように丈澄も落下する。

 

【ここで終わらせる!! 相棒、ダチ公!! 新必殺技行くぞ!!】

 

『クリ?』

 

『新必殺技だと?』

 

 丈澄の突然の発言に二人の精霊は怪訝な顔付きをする。

 

【相棒は俺の後ろに待機!!】

 

『クリ!!』

 

 クリボールは言われた通りに丈澄の背後に移動する。

 

【よし、相棒! くらえ!!】

 

 丈澄は空中で器用に体勢を変えてクリボールに全力のヤクザキックを当てようとする。

 

『クリィ!?』

 

 驚くクリボールに対し、丈澄は即座に指示を送る。

 

【俺の攻撃をお前の力で弾き飛ばせ!】

 

『クリ!』

 

 丈澄の思考を理解したのかクリボールは自身の能力でキックを受け止め、勢いよく遊羽に向けて飛ばした。

 弾丸の様に弾け飛んだ丈澄が遊羽に飛来する。

 

【遊羽ァ! 頑丈なテメェにも効くと思うぜ、コレはなぁ!!】

 

 叫びながら丈澄は片足飛び蹴りの体勢になる。

 

運命の夜明け(アルバ・デスティーノ)!!】

 

 その飛び蹴りは真っ直ぐ遊羽の元へと飛来していく。直撃を避ける為、遊羽はレヴァティンの剣を盾にするが、丈澄の蹴りは剣を破壊して遊羽に一撃を入れた。

 

『GWaAAaa!?』

 

 遊羽と丈澄はそのまま地面に激突する。衝撃でフロアの床が割れて砂塵が舞う。

 

「遊羽!!」

 

 虹花が砂塵を払いながら二人の落下地点へ移動すると、そこには倒れている遊羽と合体を解いた丈澄と二人の精霊がいた。

 

「久しぶり虹花さん、ところでなんだけど遊羽(こいつ)どうしたの?」

 

「それが、私にも分からなくて・・・・・・」

 

『精霊だな』

 

 遊羽を見ていたスレイヤーがキッパリと断言する。クリボールもそれに同意するように頷く。

 

「遊羽がこんなことになったのが精霊の仕業だってのか?」

 

『あぁ、こんなものは見たことがないが同じ精霊だから感覚で分かる』

 

「精霊が、こんな感じになるなんてロクな使われ方をされなかったんだろうな・・・・・・」

 

『精霊じゃなくなった存在、悪霊といったところだな』

 

 丈澄は悲しげに遊羽に乗り移った精霊、もとい悪霊達を見つめる。

 

『乗り移っている悪霊はこいつの餌にしよう』

 

 スレイヤーはコアを身体から取り出し、遊羽の胸にあてる。

 

(相当な数の悪霊が体の中にいるな……倒された悪霊の残留思念が集まって、恨みを晴らすためにこいつを乗っ取ったのか)

 

 スレイヤーが思考していると、虹花が心配そうな顔付きで話しかけてきた。

 

「あの、遊羽は無事でしょうか?」

 

『あぁ、命に別状はない。運悪く襲われて大変だったな』

 

「遊羽が生きてくれているなら私はそれで充分です」

 

 心配が解けたのか、虹花は笑顔を見せる。

 

(運悪く……か。もう少しまともな嘘をつければ良かったが)

 

 やがて、コアが全ての悪霊を平らげると遊羽はなにごともなかったかのように起き上がる。

 

「全く、ひどい目に合ったな。もし虹花を傷付けたりしてたら自殺モノだったぜ」

 

 あっけらかんと言うが、今回はかなり危険だった。息吹は『時の機械-タイム・マシーン』で壊れた箇所を修復中である。

 それでも、虹花に心配させないために、彼は何でもないように振る舞う。

 

「もう大丈夫なのか。相変わらず頑丈だな」

 

 驚きに呆れが少し混ざったような声で丈澄が言うと、遊羽はまあなと返す。

 

「それが俺の取り柄だしな。俺に憑いていたヤツは耐えられなかったみたいだが、キックも致命傷じゃねぇし」

 

 若干の強がりも入ってはいるが、それでも殆ど効いていないのは確かだ。腹やら背中やらがジリジリ痛むが、大して効いていないのだ。

 

「丈澄! ってあら? もう解決してるみたいね」

 

「遊子さん!?」

 

 黒い球体から姿を現したのは、帝使いにして二重人格者(?)にして一人SM、桜坂遊子である。

 

「何で遊子さんまでここに・・・・・・」

 

『我の力を使ったのだ』

 

 得意気に言うのは、同じく球体から出てきたのはガイウス。遊子の精霊で、どこでもドア扱いされているが、かなり強力なモンスターである。

 

「知らない間にまた増えてる・・・・・・どこのどなたですかっと♪」

 

 修復を終えて戻ってきた息吹は、遊子とガイウスの姿にげんなりする。

 

「あなた、胡散臭いわね。先に名乗りなさい」

 

「俺は足軽丈澄、そして後ろに控えるが桜坂遊子様だ!」

 

「・・・・・・丈澄?」

 

 丈澄が自己紹介と遊子紹介をすると、遊子が底冷えするような声音で彼の肩を掴む。

 

「その様なお名前でしたか。はじめまして、私は龍塚息吹、デュエリストの端くれでございます」

 

 彼女の様子にただならぬ気配を感じたのか、畏まった口調で跪き(こうべ)を垂れる息吹。完全にふざけている。

 

「・・・・・・まあ、いいでしょう。それで? 問題が解決したなら帰るわよ。もう夜遅いのだし」

 

 不満気ながらも息吹の態度を認めた遊子は、丈澄の首根っこをつかむ。

 

「夜遅く? 今お昼だけど」

 

 一応デュエルディスクの時計機能で確認しながら息吹。だが異世界経験はあるため、直ぐに結論に至った。

 

『時間がズレているのか。ならこっちに暫くいても問題なさそうか?』

 

 スレイヤーも同じ考えに至り、ガイウスに訊く。

 

『む、どうやらその様だ。何とも都合のいい世界だな』

 

 ガイウスが時間の流れが異なることを感じ取る。

 ならば、と遊羽と丈澄は顔を見合わせる。

 

「異世界ではお預け食らったんだ、その分楽しまねぇとな?」

 

「前々からデュエルしたいと思ってたんだ、ようやくだぜ!」

 

 遊羽が距離を取り、お互いディスクを構える。

 

『切り替えが早いな・・・・・・』

 

『クリィ』

 

『それもまた美点だと思うがな。オレ達も行くぞ』

 

 精霊達も二人に続き、デュエルの準備をする。

 

「あんなことがあったのにもうデュエルするなんて、元気ねぇ」

 

 感心よりも呆れの勝った声音の遊子様の隣ですっかり観戦ムードの虹花は遊羽を応援する。

 

「遊羽、頑張ってください。遊羽なら丈澄君にだって勝てます」

 

「あら、それは無理よ。このデュエルに勝つのは丈澄だわ。負けたら私が許さないもの」

 

 それに反応する遊子様。ムッとなり虹花も言い返す。

 

「そうですか? 実戦ならともかく、デュエルの腕前なら遊羽の方が上だと思いますよ」

 

「言うじゃない」

 

「言いました」

 

「フフフ・・・・・・」

 

「うふふ・・・・・・」

 

「「デュエル!!」」

 

 また別の所で戦いの火蓋が切られたりしていたが、それをまだ彼らは知らない。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「「デュエル!」」

 

足軽丈澄

LP8000

 

如月遊羽

LP8000

 

 デュエルディスクが先攻を示したのは丈澄。今更だが、何故異世界のものなのにデュエルできるのだろうか。まあ、デュエルは全世界共通とかそんな理論だろう、きっと。

 

「俺のターン! まずは不知火の隠者を召喚、効果でリリースして、来いユニゾンビ!」

 

ユニゾンビ ☆3 チューナー 守備力0

 

 アンデットではお馴染みの潤滑油が歌いながら登場。デッキから『シノビネクロ』を墓地へ送る。

 

ユニゾンビ☆3→4

 

「ユニゾンビか。やっぱアイツのデッキとは違うな」

 

 遊羽の呟きを拾ったレヴは、彼の背中を見つめながら考える。

 

(そういえば、遊羽はつくづくアンデット使いと縁があるな。まあ、一つはロクでもない縁だったが・・・・・・)

 

 思えばアレ(ゾンマス)の一件が全ての始まりである。もしかしたら、彼が邪神の中から呪いでもしてきたのかもしれない。

 

「まだまだ行くぜ、儀式の下準備を発動! デッキからリヴェンデット・ボーンとリヴェンデット・スレイヤーを手札に加える!」

 

 テキストの穴を利用したサーチ。いつ見てもズルい。

 

「ってことは、来るか」

 

「リヴェンデット・ボーンを発動! 墓地のシノビネクロと不知火の隠者を素材に儀式召喚!」

 

 2つの魂が混ざり、辺りは暗闇と化す。紅に染まる目を滾らせ、闇を切り裂き―――

 

「屍の夜と戦え! 反撃の復讐者!」

 

 ―――ヤツが現れる。

 

「レベル6! 立ち上がれ、リヴェンデット・スレイヤー!!」

 

リヴェンデット・スレイヤー ☆6 攻撃力2400

 

 どこかヴァンガードな口上と共に屍を纏う復讐者が大地に立つ。

 

「出たな、スレイヤー。それに、シノビネクロを除外したか」

 

「そういうことだ! 特殊召喚!」

 

シノビネクロ ☆2 チューナー 守備力0

 

 歌うゾンビに忍者ゾンビ。アンデットはバラエティ豊かだ。

 

「ユニゾンビとリヴェンデット・スレイヤーを素材にリンク召喚! 水晶機巧-ハリファイバー!」

 

水晶機巧-ハリファイバー link2 攻撃力1500

 

 もはや親の顔よりも見たモンスター。遊羽はソリティアの気配を感じ、手札誘発を引けなかったことを悔やむ。

 

「そしてリンク召喚時の効果、デッキからジェット・シンクロンを特殊召喚! そしてリヴェンデット・スレイヤーが墓地に送られた時の効果で、デッキからリヴェンデット・ボーンを加えて、ヴェンデット・ストリゲスを墓地へ送るぜ」

 

 回り始める丈澄のデッキ。クリボールが『クリリ(長くない?)』と言っているが、丈澄としてはどうしようもない。

 

「墓地へ送られたヴェンデット・ストリゲスの効果、手札のリヴェンデット・ボーンを相手に見せることで自身を特殊召喚! ヴェンデット・ストリゲスにジェット・シンクロンをチューニング! レベル3武力の軍奏」

 

武力の軍奏 ☆3 チューナー 守備力2200

 

 扇風機の調律師がチューニングリングへ変わり、骸烏を包み込み、体が楽器で構成されたロボットが出現する。

 

「武力の軍奏のシンクロ召喚時の効果、墓地からユニゾンビを守備表示で特殊召喚! ユニゾンビと武力の軍奏でリンク召喚! 彼岸の黒天使 ケルビーニ! ケルビーニの効果発動、デッキからレベル3モンスターの儀式魔人リリーサーを墓地へ送り、その攻撃力分ケルビーニの攻撃力を上げる。けどまあぶっちゃけ関係ねぇな」

 

「『だろうな」』

 

 遊羽とレヴが声を揃えて頷く。

 

「まあもう少しだから待っててくれ。ケルビーニと水晶機巧-ハリファイバー、シノビネクロを素材にリンク召喚! 現れろ! ヴァレルソード・ドラゴン!」

 

ヴァレルソード・ドラゴン link4 攻撃力3000

 

 研ぎ澄まされたプレイングから登場したのは剣の弾丸竜。遊羽は丈澄がドラゴンを使うとは思わなかったため驚いたが、直ぐに口角とテンションを上げる。

 

「最後だ、儀式魔法リヴェンデット・ボーンを発動! 墓地のリリーサーとユニゾンビを除外して儀式召喚! 屍の夜と戦え、反逆の復讐者! リヴェンデット・スレイヤー!」

 

『RE・BOOOON!』

 

 ヴァレルソードに眉間を撃たれ、そこから炎を出しながら復活するスレイヤー。演出が派手である。

 

「シノビネクロの効果で手札交換する。よし、これでターンエンドだ」

 

足軽丈澄

LP8000 手札3

場 エクストラ:ヴァレルソード・ドラゴン メイン:リヴェンデット・スレイヤー

 

「リリーサーを素材にしてるってことは、特殊召喚できねぇな。俺のターン」

 

 面倒だな、と言いつつカードを引き、顔を顰める。

 

「どうした?」

 

「ポーカーしたくなった」

 

 つまりは事故だ。

 

「まあ、動けるけどな。調和の宝札発動。アキュリスを墓地へ送って二枚ドロー。これをもう一度」

 

 これでうららを撃たれたらキツいのだが、幸いそれは無かった様だ。

 

「竜の渓谷発動だ。手札のアキュリスをコストに、デッキかファランクスを墓地へ送るぜ」

 

 初手にアキュリス三枚と調和の宝札が二枚あったらしい。どんな事故だ。

 

「レギオンを召喚して効果でアキュリスを装備、そしてレギオンの効果でアキュリスを墓地へ送って、相手の表側モンスターを破壊する。アキュリスの効果で、更にカードを一枚破壊する。ボーンごとスレイヤーを破壊だ!」

 

 アキュリスがスレイヤーの腹部に直撃し、それをペンダントの力で耐えた所をレギオンがデンジャラスバックドロップで重ねて破壊。

 

「スレイヤーの効果で、デッキからヴェンデット・コアを墓地へ送って、リヴェンデット・バースを手札に加える!」

 

 墓地のスレイヤーが復讐の準備としてサーチと墓地肥やし。

 

「レギオンをリリースしてミスティルを特殊召喚だ。効果で墓地のファランクスを装備するぜ」

 

ドラグニティアームズーミスティル ☆6 攻撃力2100

 

 黄色の竜騎士がレギオンを退かしながら登場し、墓地のファランクスにゲットライド。

 

「次だ、ファランクスを装備解除して特殊召喚するぜ」

 

ドラグニティーファランクス ☆2 チューナー 守備力1100

 

 投げられてかんに障ったのか、ファランクスがミスティルからはなれる。

 

「チューナーとそれ以外のモンスター、ってことは、」

 

「もちろんリンク召喚。ドラグニティナイトーロムルス!」

 

ドラグニティナイトーロムルス link2 攻撃力1200

 

 飛翔する銀鎧の竜騎士。もちろんとは。

 

「ロムルスの効果でデッキからドラグニティの神槍を手札に加えるぜ」

 

 ロムルスが乗っている竜の口の中に手を突っ込み、神槍のカードを取り出し遊羽へ投げる。

 

『クッ、こちらも対抗せねば・・・・・・以前のかくし芸をここで披露するべきか!?』

 

「いや、それはやめてくれ」

 

 スレイヤーの謎の対抗意識に、丈澄がストップをかける。やはりアンデットは理性が欠けているのかもしれない(失礼)。

 

「カードを一枚伏せて、ターン終了だ」

 

如月遊羽

LP8000 手札3

場 エクストラ:ドラグニティナイトーロムルス 魔法・罠:伏せカード

 

 丈澄の先程の盤面と比べても貧相なフィールドだが、事故ったにしては動けた方だろう。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 勢い良くカードを引く丈澄。デッキのエースが破壊されているが、その程度でめげてはプロデュエリストになどなれない。

 それに、スレイヤーは破壊されても全く問題ない。

 

「リヴェンデット・バース発動! デッキからリヴェンデット・スレイヤーを素材にして、儀式召喚! もう一度立ち上がれ、リヴェンデット・スレイヤー!」

 

リヴェンデット・スレイヤー ☆6 攻撃力2400

 

 三度現れるスレイヤー=サン。アンデットであるためか、疲れは一切見えない。

 

「手札一枚をコストに、ジェット・シンクロンを特殊召喚するぜ! 更に、今コストにした馬頭鬼の効果発動、除外して、墓地からシノビネクロを特殊召喚!」

 

ジェット・シンクロン ☆1 チューナー 守備力0

 

シノビネクロ ☆2 チューナー 守備力0

 

 たちまち並ぶモンスター達。アンデットの展開力に、遊羽は今更ながら溜め息をつきたくなる。

 

「虹花もそうだが・・・・・・手札誘発がないと、本当にキツいな、これ」

 

 しかし、まだ止まらない。

 

「墓地のユニゾンビを除外して、ヴェンデット・コアを特殊召喚! シノビネクロの効果で、カードを一枚引いて、一枚捨てる」

 

ヴェンデット・コア ☆1 攻撃力0

 

 これで、モンスターは五体。この盤面から予想されるカードは幾つかあるが、遊羽としてはサベージが一番キツい。

 

「ヴァレルソードの効果を、コアを対象に発動。コアとシノビネクロでリンク召喚! リンク2、トロイメア・ケルベロス!」

 

トロイメア・ケルベロス link2 攻撃力1600

 

 アンデット達がサーキットを通過し、三つ首の猛犬へと姿を変える。

 

「ケルベロスの効果で、手札を一枚捨ててロムルスを破壊!」

 

「エフェクト・ヴェーラーの効果発動、ケルベロスの効果を無効にするぜ!」

 

 ケルベロスが雄叫びを上げようとするが、エフェクト・ヴェーラーがその口を蹴って黙らせる。ロムルスはショック死を免れた。

 

「スレイヤー、ケルベロス、ジェット・シンクロンでリンク召喚! リンク4、ヴァレルロード・ドラゴン!」

 

ヴァレルロード・ドラゴン link4 攻撃力3000

 

 並ぶ二体のヴァレルモンスター。ヴァレルガードは泣いていい。

 

「おお、またドラゴンか! 流石だぜ丈澄、わかってる」

 

「いや、別にそんなつもりはなかったんだけど・・・・・・」

 

 意図せず遊羽の共感を得てしまい、困惑する丈澄。

 

「まあ、いっか! 墓地に送られたスレイヤーの効果で、デッキからリヴェンデット・ボーンを手札に加えて、ヘルハウンドを墓地へ。仕上げにリヴェンデット・ボーンを発動! リヴェンデット・スレイヤーを素材に、儀式召喚! 何度でも立ち上がれ、リヴェンデット・スレイヤー!」

 

リヴェンデット・スレイヤー ☆6 攻撃力2400

 

 自身を素材に儀式召喚という何ともカニバリズムな方法によって復活するスレイヤー。アンデットにはカニバリズムなど通用しないのかもしれないが。

 

バトルだ、ヴァレルロードでロムルスに攻撃! そして、ヴァレルロードの効果発動だ! ロムルスの攻撃力を500下げる」

 

 ヴァレルロードが咆哮すると、ロムルスの乗り手がビビって落下死。やはり音に弱いらしい。

 

ドラグニティナイト-ロムルス 攻撃力1200→700

 

 フリーチェーンの効果だが、このタイミングでの発動により、攻撃反応系のトラップを発動させないことができるテクニックだ。

 

「チッ、貴重なリンク先が・・・・・・」

 

 ドラグニティはシンクロ召喚を多様するテーマのため、リンク先の確保が少し難しかったりする。守護竜? 知らないな、そんなの。

 

如月遊羽

LP8000→5700

 

「次だ! ヴァレルソードでダイレクトアタック!」

 

「させるか! リバースカード、聖なるバリア-ミラーフォース-! 攻撃表示モンスターを全員破壊だ」

 

 遊羽が好んで使うトラップから溢れた光が、丈澄のモンスターを襲う。

 

「クッ、墓地のリヴェンデット・ボーンの効果で、スレイヤーの破壊を防ぐ!」

 

 ペンダントの加護により生存するスレイヤー。アンデットのため生きてはいないが。

 

『ミラフォが失敗しないだと!? 丈澄、あのミラフォは偽物かもしれない』

 

「何言ってんだダチ公・・・・・・?」

 

 ネタに染まり始めたスレイヤーに、丈澄はどう反応すべきか大いに迷う。

 

「しっかりしてくれよ、攻撃だダチ公! 遊羽にダイレクトアタック! 決別の夜(ノッテ・ダッティオ)!」

 

 スレイヤーの拳と二本の骨とが遊羽に刺さり、ダメージを与える。

 

如月遊羽

LP5700→3300

 

「これでライフ差が半分以上か・・・・・・」

 

 そう呟く遊羽に対し、丈澄は無傷。しかし、それで安心できないのがデュエルだ。

 

「手札のリヴェンデット・ボーンを墓地へ送って、ヘルハウンドを特殊召喚。ターンエンドだ」

 

ヴェンデット・ヘルハウンド ☆3 守備力2100

 

足軽丈澄

LP8000 手札2

場 メイン:リヴェンデット・スレイヤー ヴェンデット・ヘルハウンド

 

 何となく、ではあるが、嫌な予感がした丈澄は守りを固めてターンを終えた。

 

「俺のターン、ドロー! 強欲で貪欲な壺を発動、二枚ドロー!」

 

 先ほどのターンは特殊召喚できず思うように動けなかったが、今は違う。

 

 そして、丁度よく()()()()()()()()()も引けた。

 

「竜の渓谷の効果で、DMZドラゴンをコストに、デッキからドラグニティアームズ-レヴァテインを墓地へ送るぜ」

 

 自身の相棒を出す準備を始める遊羽。丈澄もそれに気付き、身構える。

 

「ドラグニティ-レギオンを召喚して墓地のファランクスを装備。そしてレギオンを除外して、墓地から特殊召喚! 出番だぜ、レヴ!」

 

『応!』

 

ドラグニティアームズ-レヴァテイン ☆8 攻撃力2600

 

 橙色の鱗と翼。手に携えるは一本の大剣。遊羽の相棒にして家族たる竜。

 

「レヴの効果で、墓地のアキュリスを装備。そして――――」

 

 ニィッ、と口角をあげ、手札から一枚のカードを取る。

 

「アキュリスを除外し、特殊召喚! 初陣だ、ゴッドフェニックス・ギア・フリード!」

 

ゴッドフェニックス・ギア・フリード ☆9 攻撃力3000

 

 レヴがアキュリスを天に向かって投擲すると、それに応えるように不死鳥を纏った戦士がレヴの横へ並ぶ。

 

「ゴッドフェニックス、ギア・フリード?」

 

 丈澄も『ギア・フリード』というカード郡は知っている。しかし、このカードは知らない。

 

「効果はその内わかるぜ。装備魔法、ドラグニティの神槍をレヴに装備だ。効果で、デッキからドラグニティ-ブランディストックも装備」

 

ドラグニティアームズ-レヴァテイン 攻撃力2600→3400

 

 レヴが大剣の代わりに二振りの槍を手に持つ。

 

「バトルだ、ゴッドフェニックス・ギア・フリードでスレイヤーに攻撃! この瞬間、ギア・フリードの効果発動! 表側表示モンスター一体を、攻撃力500アップのカードとして装備する! 俺はヘルハウンドを選ぶぜ」

 

ゴッドフェニックス・ギア・フリード 攻撃力3000→3500

 

 ヘルハウンドが不死鳥の業火に焼かれ、炎の勢いが更に強まる。

 

「墓地のリヴェンデット・ボーンの効果で、破壊を防ぐ!」

 

「だがダメージは受けてもらう!」

 

足軽丈澄

LP8000→6900

 

 スレイヤーへと放った炎が丈澄へと飛び火し、ライフを削る。

 

「レヴでダイレクトアタック! レヴァンティン・スラッシュ!」

 

『ハァッ!』

 

 レヴが神槍を振りかぶり、丈澄へと斬りかかる。

 

「頼むぜ、相棒!」

 

『クリリ!』

 

 そこへ、クリボールが割って入る。

 

「悪いな、ゴッドフェニックス・ギア・フリードの効果発動だ。俺の場の装備カード一枚をコストに、モンスターの効果を無効にして破壊する!」

 

 ギア・フリードの炎がクリボールを襲い、慌ててクリボールが避ける。

 

「相棒!?」

 

 そして、クリボールが避けたということは。

 

足軽丈澄

LP6900→3500

 

 レヴの攻撃が当たるということだ。

 

「まだまだ、レヴの二回攻撃! レヴァンティン・スラッシュ!」

 

「うおっ!」

 

足軽丈澄

LP3500→100

 

 鉄壁に入り、もう攻撃は終わりだと丈澄が安心した瞬間、

 

「墓地のDMZドラゴンの効果発動。装備カードを装備したモンスターの攻撃終了時、このカードを除外し、装備されたカード全てを破壊することで、もう一度攻撃できる!」

 

「何っ!?」

 

 全ての装備をパージし身軽になったレヴが、自前の大剣を構える。

 

「これでトドメだ!」

 

 遊羽の声と同時に、レヴが剣を振るう。

 

「次はぜってー勝つからな」

 

「させねぇよ。次も俺が勝つ」

 

足軽丈澄

LP100→0




遊・丈「「今日の最強カードはーこれー」」

遊羽「勿論、フィニッシュを決めたドラグニティアームズ-レヴァテインだ」

丈澄「いや、ここは何度も活躍したリヴェンデット・スレイヤーだろ」

クリボール『クリィ(僕だ)!』

スレイヤー『ネタに染まってるな・・・・・・』

レヴ『次回、「血戦のヒロインズ」 ん? 血・・・・・・?』

丈澄「俺達最高!」

遊羽「俺もそーゆーの(決めゼリフ)欲しいなー」


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血戦のヒロインズ

コラボ第二回。

前回と違って戦闘描写がないので文字数が少ない・・・・・・。


 遊羽と丈澄のデュエルが始まったのと、同時刻。

 

「ふふふ虹花さん、許しを乞うなら今の内よ?」

 

「いえ、お構いなく。そちらこそ、前言撤回しなくていいんですか? デッキの相性的には私が有利ですけど」

 

 バチバチと見えない火花でも散らすように睨み合う二人。《アンデット・ワールド》にはアンデット以外をアドバンス召喚できなくする隠された効果があるため、一見すると遊子が不利である。

 

「さあ、どうかしらね?」

 

 含み笑いをする遊子に、虹花は警戒を強めディスクを構える。

 

「「デュエル!」」

 

「私のターンドロー。私はクリバンデットを召喚します」

 

クリバンデット ☆3 攻撃力1000

 

 毛むくじゃらの盗賊的な悪魔が現れると、虹花がもう一枚のカードを発動し、フィールドが屍界に染まる。

 

「そして手札からフィールド魔法アンデットワールドを発動します。そしてカードを2枚伏せ、EM五虹の魔術師をペンデュラムゾーンにセット。エンドフェイズにクリバンデットをリリースして効果発動・・・・・・魔法・罠があるなら一枚回収出来たのですが、今回はありませんでしたね。私はこれでターンエンド」

 

真宮虹花

LP8000 手札0

場 魔法・罠:伏せカード×2 フィールド:アンデットワールド Pスケール:EM五虹の魔術師

 

「私のターンドロー」

 

「スタンバイフェイズに墓地のドーハスーラの効果を発動します! 墓地から守備表示で特殊召喚です!」

 

死霊王ドーハスーラ ☆8 守備力2000

 

 屍の世界で、死霊の王がとぐろを巻く。しれっと寛いでいる。

 

「それならメインフェイズに私は手札から汎神の帝王を発動。帝王の凍気を捨て、二枚ドロー。墓地に送られた汎神の帝王を除外して効果発動。デッキから三枚選んであなたに選ばせるわ。さぁ、どうぞ」

 

 選択肢に提示されたのは三枚の帝王の深淵。

 

「選択肢ないじゃないですか」

 

「そうね。帝王の深淵発動。手札のアイテールをあなたに見せてデッキから真帝王領域を手札に加えて、そのまま発動」

 

 ムッとした顔で虹花が言うが、気にした様子もなく遊子は続ける。

 

「それなら、伏せていたサイクロンを発動します。これでフィールド魔法はなくなります」

 

「やるじゃない。なら私は手札のランドロープの効果発動。あなたのドーハスーラを対象に取って特殊召喚し、裏側守備表示にするわ」

 

 お返しと言わんばかりに虹花が遊子のフィールド魔法を破壊すると、ドーハスーラをひっくり返される。

 

「ドーハスーラをいとも簡単に・・・・・・」

 

「速攻魔法、帝王の烈旋を発動! 効果により私はあなたのモンスターでアドバンス召喚できるようになったわ」

 

「流石ですね、でも私のペンデュラムゾーンには五虹の魔術師がいます」

 

「ふぅん、厄介な効果持ちなのね。それなら墓地の帝王の凍気と深淵の帝王を除外して凍気の効果発動。あなたの裏側の伏せカードを破壊するわ」

 

「っ、ツインツイスターが・・・・・・」

 

 ドーハスーラの管轄外たる手札からの効果、そして墓地効果による伏せ破壊。

 遊子の戦術は、予想外に刺さっていた。

 

「私はカードをセット。これでその魔術師に邪魔されることはなくなったわね」

 

「ですが、アンデットワールドの効果でアドバンス召喚は出来ませんよ」

 

「確かにアドバンス召喚は出来ないわね。この子以外は」

 

「・・・・・・やはり」

 

 含み笑いをして一枚のカードでそれを隠すようにする遊子に、虹花は眉を顰める。

 

「ドーハスーラとランドロープでアドバンス召喚! 冥帝エレボス!」

 

冥帝エレボス ☆8 攻撃力2800

 

 虹花の予想が的中し、冥界の帝たるエレボスが君臨する。帝王領域がないため腰掛ける場所がなく、立ってて辛そうに見えるのはきっと気のせいだろう。

 

「エレボスはアンデット族。あなたのアンデットワールドの制約を唯一無視できる帝よ。そして、エレボスの効果発動! デッキから汎神の帝王と真源の帝王を墓地へ送りあなたのEM五虹の魔術師をデッキバウンスするわ!」

 

「っ、五虹が・・・・・・」

 

「バトルフェイズ! 冥帝エレボスでダイレクトアタック!」

 

「させません! リバースカード、死魂融合を発動! 墓地の牛頭鬼と不知火の隠者を融合し、エクストラデッキから冥界龍ドラゴネクロを融合召喚します!」

 

冥界龍ドラゴネクロ ☆8 攻撃力3000

 

 墓地の屍が混じり合い、骸の龍へと転化する。

 

 虹花が誰かとデュエルすることは少ないが、毎日遊羽とはデュエルしているのだ。デッキだって日々進化している。

 

「良いカード使うじゃない。私はこのままターンエンドよ」

 

桜坂遊子

LP8000 手札2

場 メイン:冥帝エレボス 魔法・罠:伏せカード

 

「私のターンドロー。スタンバイフェイズにドーハスーラは守備表示で蘇ります」

 

死霊王ドーハスーラ ☆8 守備力2000

 

 復活する死霊の王に、遊子は半ば呆れたような声を出す。

 

「ほんと、アンデット族はタフで厄介ね」

 

「それが強みですから。私は牛頭鬼を召喚して、効果を発動します。デッキからドーハスーラを墓地へ送ります。そして、先程クリバンデットの効果で墓地に送られた馬頭鬼を除外して二体目のドーハスーラを蘇生します。バトルフェイズ、ドラゴネクロで攻撃します!」

 

 ドラゴネクロが右腕をエレボスの胸に突き立てる。

 

「・・・・・・破壊されていない?」

 

桜坂遊子

LP8000→7800

 

 しかし確かに減ったライフポイントに、遊子は虹花へ視線を向け、説明を求める。

 

「ドラゴネクロと戦闘を行うモンスターは破壊されません。その代わりに戦闘を行ったモンスターは攻撃力が0になり、そのレベルと攻撃力を持ったダークソウルトークンを生み出します」

 

「なるほど」

 

冥帝エレボス ☆8 攻撃力2800→0

 

ダークソウルトークン ☆8 攻撃力2800

 

 ドラゴネクロが突き立てた右腕を引き抜くと、その腕には黒いエレボスが掴まれており、力を奪われたエレボスはその場に沈む。

 

「ドラゴネクロの効果が発動したことでドーハスーラの効果発動! エレボスを除外します!」

 

「させないわ。伏せカード、帝王の凍志を発動! これにより、私のエレボスは効果を失う代わりにこのカード以外の効果を受けなくなる」

 

「? そのまま二体のモンスターで攻撃します」

 

遊子

LP7800→5000→2200

 

「一気に減ったわね」

 

「私はこれでターンエンドです」

 

真宮虹花

LP8000 手札0

場 エクストラ:冥界龍ドラゴネクロ メイン:死霊王ドーハスーラ×2 ダークソウルトークン

 

「私のターン、ドロー! 墓地の汎神の帝王を除外して効果発動! デッキからこの三枚を選ぶわ」

 

 今回提示されたのは深淵の帝王二枚と再臨の帝王。

 

「再臨の帝王で」

 

「了解したわ。私は手札から強欲で貪欲な壺を発動! デッキ十枚を除外して二枚ドロー!」

 

「ここに来てドローカード!?」

 

 そのドロー力には驚愕せざるを得ない虹花。引けないカードに用はないと言わんばかりに遊子はカードを除外しドローする。

 

「フッ、来たわね。私は手札からコズミック・サイクロンを発動! 1000ライフポイントを支払ってアンデットワールドを除外するわ」

 

桜坂遊子

LP2200→1200

 

「そして、再臨の帝王を発動! 墓地のエレボスを蘇生して、このカードを装備よ。そして、このカードを装備したモンスターは二体分のリリースに出来る! 私はエレボスをリリース!」

 

 エレボスが闇に飲み込まれ、収縮していく。

 

「闇を飲み込む、暗き深淵の帝。この世の怨念を力に変え、眼前の怨敵を滅ぼせ!」

 

 収縮された闇はやがて小さな球体へと変化した。そして、一瞬の間を置いてからひびが入り、一気に破裂して黒い霧が広がる。

 

「アドバンス召喚! レベル8、怨邪帝ガイウス!!」

 

「なんて禍々しさ・・・・・・!!」

 

怨邪帝ガイウス ☆8 攻撃力2800

 

 現れたのは『黒闇(くらやみ)』を体現したようなモンスター。そのオーラに、虹花は悲鳴に近い声を出す。

 

「怨邪帝ガイウスがアドバンス召喚に成功した時、フィールドのカードを一枚選んで除外し、1000ポイントのダメージを与える! そして、闇属性モンスターを素材にアドバンス召喚した場合、この効果対象は二枚になるわ!」

 

「そんな!?」

 

「くらいなさい、次元覇射(じげんはしゃ)!!」

 

『でやあああああぁぁぁ!!!!』

 

 ガイウスが腕を振るい、ドーハスーラとドラゴネクロ次元の彼方へ飛ばす。

 

「うくっ!」

 

真宮虹花

LP8000→6000

 

「怨邪帝ガイウスの効果で除外したのが闇属性モンスターだった場合、そのコントーローラーの手札・デッキ・エクストラデッキ・墓地から同名カードを除外するわ」

 

「デッキからドーハスーラを除外します・・・・・・」

 

「バトルフェイズ! ドーハスーラに攻撃!」

 

「破壊されます」

 

「私はターンエンドよ」

 

「私のターンドロー! 私は馬頭鬼を召喚します! バトルフェイズ、ダークソウルトークンでガイウスに攻撃!」

 

「通すわ」

 

 相打ちで互いに破壊。

 

「続けて馬頭鬼でダイレクトアタック! これで私の勝ちです!」

 

 馬頭鬼の攻撃力は1700。遊子のライフを削りきるには十分な攻撃力だ。

 

「フラグ建てるのはやめたほうがいいわよ。墓地の真源の帝王の効果発動! 再臨の帝王を除外して守備力2400のモンスターとして守備表示で特殊召喚するわ!」

 

 しかし、それでやられる遊子ではない。クスリと小さく笑い、新たに壁を立てる。

 

「阻まれましたか・・・・・・私はターンエンドです」

 

「私のターン、ドロー! 真源の帝王をリリースして、邪帝ガイウスをアドバンス召喚! 召喚時効果で馬頭鬼を除外するわ」

 

邪帝ガイウス ☆6 攻撃力2400

 

「馬頭鬼の蘇生効果を封じられましたか」

 

「バトルフェイズ! ガイウスでダイレクトアタック!」

 

「くぅッ!?」

 

虹花

LP6000→3600

 

 虹花のライフが半分を下回り、遊子がターン終了を宣言する。

 

桜坂遊子

LP1200 手札2

場 メイン:邪帝ガイウス

 

「私のターンドロー。・・・・・・カードを一枚伏せ、ターンエンドです」

 

真宮虹花

LP3600 手札0

場 魔法・罠:伏せカード

 

 モンスターを引けなかったのか、悔しそうにカードを伏せた虹花。遊子はそれに警戒するように目を向ける。

 

「私のターン! 墓地の真源の帝王の効果、帝王魔法・罠を除外してフィールドにモンスターとして特殊召喚! 真源の帝王をリリースして、アドバンス召喚! 風帝ライザー! 召喚時効果で伏せカードをデッキの上に戻すわ!」

 

風帝ライザー ☆6 攻撃力2400

 

「これでフィールドが空っぽですね」

 

 諦めたように呟く虹花。そのタイミングで、遊羽の声が聞こえた。

 

「向こうも終わったみたいだし、こちらもフィナーレといきましょうか。バトルフェイズ! 二体のモンスターでダイレクトアタック!」

 

真宮虹花

LP3600→1200→0

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 二つのデュエルが終わり、それぞれ感想などを言い合っていると、ガイウスが何かに気づく。

 

『そろそろ戻らねばならんぞ、遊子、丈澄』

 

「え、もう!?」

 

「早かったわね」

 

 二人がそれぞれ反応し、丈澄は名残惜しそうに、遊子は振り返ることなくガイウスの生み出した黒い球体に入っていく。

 

「じゃあな、遊羽。・・・・・・また、どこかで」

 

「ああ。いつになるかわからねぇが・・・・・・またな」

 

 遊羽が拳を突き出すと、一瞬キョトンとした丈澄だったが、察した様に自分の拳をぶつける。

 

「早く行くわよ、丈澄。・・・・・・お仕置きが必要かしら?」

 

「え、ちょ!? またな、遊羽!」

 

 遊子に呼ばれ(脅され)、慌てて丈澄が駆け出す。

 

「いやー、二人ともいいデュエルだったね♪ オレは除け者だったけど!」

 

 二人の姿が見えなくなって、息吹が何ともなしに声をかける。

 

「龍塚くん? いたんですか?」

 

「もう帰ったと思ってたぜ」

 

「ちょ、酷いな! 一人寂しくデュエルを観戦してましたとも!」

 

 そんな息吹の言葉に、遊羽が笑うと、それに釣られたように虹花も笑い出す。

 

「クッ、ハハハハハハ!」

 

「うふふ、ふふふふ」

 

「二人して笑わないでくれない!? 流石のオレも傷付くよ!?」

 

 息吹はこの時傷心で気付かなかったが、遊羽が笑うことは珍しい。

 

 そんな彼の心をここまでほぐした彼らに、息吹は心の中で感謝した。




遊・虹「「今日の最強カードは、コレ!」

虹花「EM五虹の魔術師です」

遊子「いいえ、怨邪帝ガイウスよ。というか、そのカード今回全然活躍してないじゃない」

虹花「そ、それはそちらの作者に責任があります!」

遊子「デュエルシナリオ書いて貰った側が何言ってるのかしら?」

虹花「もう一戦しますか?」

遊子「いいわよ、また私が勝つけど」

遊・虹「「デュエル!」」

ガイウス『女子ってこんなに怖いのだな・・・・・・』

スレイター『離れておくか』

クリボール『クリリ(そうだね)

遊羽「つーわけで、コラボは終わりだ」

レヴ『次回からはいつも通りのストーリーズだ』

丈澄「俺もレギュラーで登場するぜ!」

遊羽「しれっと重大な嘘つくんじゃねぇよ」


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欠けゆく日常

大変長らく、お待たせしました。文化祭、アレは悪い文明・・・・・・。

今回、話がかなり進みます。


『これは・・・・・・』

 

 半透明になった自身の右手を見て、少年は誰にでもなく呟く。

 

『消えるのかな、私達』

 

 その隣で少女が悲しそうに、寂しそうに言うと、側で佇んでいた青年が首を振る。

 

『わからない・・・・・・しかし、彼は気付かないだろうな。悲しいことだが』

 

 諦めた様子の彼に、二人は視線を落とす。

 

『せめて、一度くらい、話しかったなぁ・・・・・・』

 

 やがて、少年も諦めた様に力を抜き、消えていく身体への抵抗をやめる。

 

『そんな! まだ、私達・・・・・・』

 

 少女が悲痛な声を上げるが、それを待たずに少年の姿が光と共に消滅する。

 

『ここまで、か・・・・・・』

 

 青年もまた悔しそうに言葉を漏らすが、足から粒子となって消えていった。

 

『・・・・・・嫌だよ。こんな終わり方、嫌だよ。まだ私、お話もしてないのに・・・・・・』

 

 自身の結末に、少女は涙を抑えきれない。

 しかし、その涙を嘲笑うかのごとく、少女の身体は消えていった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 交流戦を終え、式とのデュエルから逃れ帰路に付いた息吹。家に到着するなり向かうのは自室だ。

 

「手鞠、オッドアイズの調子は!?」

 

 階段を駆け上がるのももどかしく、転がるようにして部屋へと入った息吹に、ベッドの脇に座っていた手鞠は首を横に振る。

 

「目を覚まさないのです・・・・・・」

 

 悲しそうに目を伏せる手鞠に、息吹は苦虫を噛み潰したような顔で血がにじむほど拳を握り締める。

 

 手を開き、腰のデッキケースから取り出すのは《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》のカード。それは、目に見えて分かるほどに色が薄くなっていた――――

 

 

 

 事が起こったのは、春休みもあと残り10日といった頃だ。

 

 また新しくデッキを作ったという遊羽とデュエルをし、惜しいくも負けてしまった所でオッドアイズが倒れた。

 デュエルの影響かと思い精霊専門の医者までDホイールを飛ばし(遊羽の後ろに乗ったので嫌そうにされたが)診てもらったが、原因は不明。身体が強制的に精霊界へ帰還しようとしている、という症状らしい。それにオッドアイズが抵抗しているのではないか、とフルネームのような名字を持った医者は言っていた。

 

 遊羽も何か言おうとしていたが、かけるべき言葉が見当たらなかったらしく舌打ちしながら頭を掻いていた。ただ、虹花やレヴ、他の精霊達への安否確認はしたらしく、悲しみや怒りの入り混じった顔でこう言っていた。

 

 ―――孝之先輩のカードの一部が白紙になったらしい。正確には、枠だけ残って絵柄やテキストが消えたらしいが・・・・・・他にも、カードが白紙になる事件を聞いたって星河先輩が

 

 詳しく聞くと、段々薄くなっていくケースと、一晩で消えたケースとがあるらしい。

 仮定としては、その精霊の強さ、精霊力の量などに比例しているのではないか、と電話越しに星河は言っていた。そのため、延命措置として精霊力を送り込んではいるが―――

 

(昨日よりも薄くなってる・・・・・・クソッ、オレの力が減ってきてるのもあって、そろそろマズい・・・・・・!)

 

 悔しさの余り唇を噛む息吹。そんな兄に手鞠は「お兄様・・・・・・」としか声をかけられない。

 

「・・・・・・ちょっと出掛けてくる。夕飯までには帰るよ♪」

 

 精一杯の笑みを手鞠へ向け、息吹は自宅を後にした。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 どうしようもない、どうにもならない感情を少しでも抑えるべく、あてもなく道を歩く。

 

(オレに残った時間はあと二年もない。その時間を縮めれば、まだオッドアイズの延命はできる。でも、それで・・・・・・)

 

 オッドアイズが喜ぶか、という思考にぶつかる。

 

 彼女は息吹のもう一人の妹だ。双子であるが故に息吹のように短命ではなく、人間と精霊にキチンと分かれている二人よりも、息吹のぼうが必ず早く死ぬ。

 

 ならば、寿命を削ってもいいのではないか。しかし、ただでさえ短い寿命を更に縮めたと知ったら、オッドアイズの悲しみは大きくなるだろう。

 

(クソ、結局悲しませるしかないのか・・・・・・)

 

 俯き音が鳴るほど強く奥歯を噛み締める息吹。しかし、それは何の意味もなさない。

 

「ならば、ワタクシが教えて差し上げましょう、龍塚息吹。君が一体どうすればいいのか。どうすれば、精霊をこの世界に留めることができるのか」

 

 声に反応し、顔を上げる。

 

 そこには、一人の少年が経っていた。

 赤い髪の上に緑の髪というトマトカラー。首に下げているのは片方に星のプリントされたゴーグル。着ているのはTシャツとダボついたズボンに白を基調としたマント。

 

「キミは?」

 

「ワタクシは遊亜(ユーア)。アナタとは、そうですね・・・・・・切っても切れない関係、でございましょうか」

 

 不敵な笑みでおどけて見せる遊亜に、息吹は訝しむ。外見からしてどう見てもトマトだしそのゴーグル見にくくないの? とか往来でマント何か着けて恥ずかしくないの? とか言いたいことは溢れるほどあったが、取りあえずセキュリティに連絡(もしもし牛尾さん?)することにしてケータイを取り出した。

 

「ああ待った待った! ワタクシは怪しい者ではございませんよ! ホラ!」

 

「・・・・・・もしもし星河先輩?」

 

「ちょ、あのバケモノ呼ぶのやめてもらえませんかねぇ!?」

 

 両手を広げ怪しくないアピールをする遊亜と名乗った少年に一瞬ジト目を向けた息吹は構わずそのまま通話をかけたが、彼の余りの必死さに一応今は通報しないことにした。

 

「で、精霊をこの世界に留めることができるって、どういうこと?」

 

 息吹は少年の心が星河と同じように読めないことに気づき、片手でいつでも通報できるようにしながら話を聞く。

 

「精霊を精霊界へ帰還させているのは、他ならぬワタクシ達の王! 止めたければ、あの方を倒す他ありませんよ?」

 

 大仰な身振り手振りと共に解☆説と遊亜は語る。

 

「それは、どういう・・・・・・」

 

「おっと、これ以上は有料です。お代はモチロン・・・・・・」

 

 トントン、と彼は自身のディスクを人差し指で軽く叩いて示した。

 

 彼のディスクは液晶画面が付いており、息吹は違和感を覚える。

 

(まー、この世界のデュエルディスクはGXと5Dsのをミックスしたようなモノ。アークファイブのワタクシのディスクは、まだないのでょうねぇ)

 

 心の中で軽く呟く遊亜だが、息吹にそんなことわかりはしない。

 数秒、悩んむように右手を口元に当て、左手で右肘掴む。

 

「一応訊くけど、ダメージが肉体へも影響するようなデュエル?」

 

「いえいえ、そんなことはございませんとも」

 

 半信半疑、といった息吹の視線を、どこ吹く風で受け流す遊亜。息吹は決心するようにディスクを構える。

 

「わかった、デュエルだ」

 

「賢明な判断ですね。それでは!」

 

「「デュエル!」」

 

遊亜

LP8000

 

龍塚息吹

LP8000

 

「ではでは、ワタクシのターン! まずは召喚師のスキルを発動、デッキからブラック・マジシャンをサーチします!」

 

 大仰な身振りと共に手品のような仕草でカードを手札に加える遊亜。彼は普段通りデュエルしているだけなのだが、息吹にはこちらの集中を削ごうとしているように見える。

 

「続けて、黒牙の魔術師と紫毒の魔術師でペンデュラムスケールをセッティング、ペンデュラム召喚! ブラック・マジシャン&相克の魔術師!」

 

ブラック・マジシャン ☆7 攻撃力2500

 

相克の魔術師 ☆7 攻撃力2500

 

 並ぶ二体の魔術師達。登場するなり黒い渦を出現させ、そこに飛び込む。

 

「エクシーズ召喚! 虚空の黒魔導師!」

 

虚空の黒魔導師 ★7 守備力2800

 

 爆発が起き、光が晴れると、そこにはブラック・マジシャンっぽい魔術師が。イメチェンだろうか。

 

「ワタクシはこれでターンエンドです」

 

遊亜

LP8000 手札1

場 エクストラ:虚空の黒魔導師 Pゾーン:黒牙の魔術師 紫毒の魔術師

 

 遊亜がターンを終えるなり、息吹は無言でカードの剣を抜く。

 

「ドラゴン・目覚めの旋律発動、デッキからオッドアイズ・アドバンス二枚を手札に加える」

 

 相手はオッドアイズ(息吹の妹)が何故あんな状態なのか知っている。そしてその原因は彼らの王。ならば、普段のようにおどけてデュエルする必要はない。

 

「セイファートを召喚、効果発動。手札からエクリプス・ワイバーンを捨てて、コラプサーペントを手札に。エクリプスを除外して特殊召喚」

 

輝光竜セイファート ☆4 攻撃力1800

 

暗黒竜コラプサーペント ☆4 攻撃力1800

 

 一見名前やステータス的に同じカテゴリに見えるドラゴン達だが、別にそんなことはない。

 

 エクリプス・ワイバーンの効果で除外した『終焉龍カオス・エンペラー』を手札に加えた息吹は、更に展開を続ける。

 

「二体でリンク召喚、天球の聖刻印、そして墓地の二体を除外して来いカオス・エンペラー」

 

天球の聖刻印 link2 攻撃力0

 

終焉龍カオス・エンペラー ☆8 攻撃力3000

 

 デッキから『輝白竜ワイバースター』を手札に加えると、未公開の手札二枚の内片方を発動する。

 

「カード・アドバンスでデッキ上五枚を確認、そしてカオス・エンペラーをリリースしてアドバンス召喚、オッドアイズ・アドバンス・ドラゴン!」

 

オッドアイズ・アドバンス・ドラゴン ☆8 攻撃力3000

 

 オッドアイズが寝込んでいる今、彼のエースはこの赤龍。オッドアイズ・アドバンスは雄叫びを上げると、虚空の黒魔導師へ尻尾を振るう。

 

「オッドアイズ・アドバンスの効果発動!」

 

「残念、通しません! 手札からトラップ発動、神の警告でございます! そのヤンチャドラゴンには退場願います」

 

遊亜

LP8000→6000

 

 相手のエースを破壊することは、相手への精神ダメージの他、苛立たせるなどの効果が見込める。故に、初動(セイファート)にではなくここで使う。

 

「・・・・・・なら、カードを伏せてターンエンドだ」

 

龍塚息吹

LP8000 手札2

場 エクストラ:天球の聖刻印 魔法・罠:伏せカード

 

「ワタクシのターン! おっと運がいいですねカップ・オブ・エースを発動! まあ当然正位置()ですとも」

 

 さも当然のようにカードを二枚引く遊亜。しかしエクストラモンスターゾーンは埋まっているので、これ以上の展開はないだろうと見積もる。

 

「お次は強欲で貪欲な壺です。十枚もカードが使えなくなりますが、まあ必要な犠牲ですからね」

 

 無造作にデッキの上十枚を除外すると、手札が三枚にまで増える。

 

「とはいえ、やることがあまりありませんね。虚空の黒魔導師を攻撃力表示に変更していざバトルです」

 

「バトルフェイズ開始時、天球の聖刻印の効果発動、リリースして虚空の黒魔導師をバウンスする!」

 

 天球の聖刻印がその身体でもって宇宙の神秘的なナニカを黒魔導師に伝えると、満足したのか黒魔導師は帰っていった。

 

「天球の聖刻印の効果でデッキから嵐征竜-テンペストを特殊召喚」

 

嵐征竜-テンペスト ☆7 守備力2200→0

 

 環境で暴れまわった文字通り嵐の竜が舞い降りる。残る三体は何を思うだろうか。

 

「ならばメイン2、ペンデュラム召喚! 竜穴の魔術師、そして・・・・・・」

 

 遊亜は一枚のカードを見せつけるように裏返す。

 

「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン」

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン ☆7 攻撃力2500

 

竜穴の魔術師 ☆7 守備力2700

 

 見慣れた赤竜の姿に、息吹は普段とは真逆の感情、怒りを抱く。

 

「っ! お前・・・・・・」

 

「おや、どうされました? 何かチェーンありますか?」

 

 安い挑発だ。しかし、わかっていても、息吹はそれに乗ってしまう。

 

「連撃の帝王発動! テンペストをリリースしてアドバンス召喚、オッドアイズ・アドバンス・ドラゴン!」

 

オッドアイズ・アドバンス・ドラゴン ☆8 攻撃力3000

 

 彼の心情を現すようにオッドアイズ・アドバンスはオッドアイズ・ペンデュラムへブレスを吐く。破壊される際にオッドアイズ・ペンデュラムが発した悲しそうな鳴き声は、息吹の耳には入らない。

 

遊亜

LP6000→3500

 

 ダメージを受けたにも関わらず、クククッと愉快そうに遊亜は嗤う。全ては計画通りだ、と。

 

「それではワタクシはもう何もできませんねぇ。ターン終了です」

 

遊亜

LP8000 手札1

場 メイン:竜穴の魔術師 Pゾーン:黒牙の魔術師 紫毒の魔術師

 

「オレのターン! 墓地のテンペストの効果、天球の聖刻印とオッドアイズ・アドバンスを除外して特殊召喚! バトル!」

 

嵐征竜-テンペスト ☆7 攻撃力2400

 

 再び嵐を体現した竜が現れ、即座に臨戦態勢を取る。

 

「オッドアイズ・アドバンス、テンペスト! 攻撃だ!」

 

遊亜

LP3500→1100

 

 特に何の抵抗もなく攻撃を受ける遊亜。しかし、口元にあるのは変わらぬ笑みだ。

 

「全く、痛いですねぇ。ワタクシ達の計画が成功すれば、アナタは生き長らえるというのに」

 

 歪んだ口から紡がれる、歪んだ言葉。

 

「何・・・・・・?」

 

「アナタが死ぬのは、アナタの中の精霊の力に、人間の部分が耐えられなくなるから。しかし――――」

 

 そこまでで一度区切り、呼気を入れる。

 

「しかし、ワタクシ達の計画が成功すれば、精霊は消え、アナタの身体への負担もなくなる。アナタは晴れて一般人の仲間入り、というワケでございます」

 

 つまり、オッドアイズ()を捨てれば、息吹(自分)は助かる、と。遊亜はそう語る。

 

「その上で、アナタに訊きます」

 

 彼は嗤いを濃くすると、右手を息吹へと差し出す。

 

「ワタクシ達の仲間になりませんか? 龍塚息吹。そうすれば、今直ぐにでも、アナタの身体を直しましょう」

 

 オッドアイズ()を捨てろ、と。遊亜は彼を誘う。

 対して、彼は。

 

「断る」

 

 (自分)を捨てる、と息吹は答える。

 

「そうですか・・・・・・では、仕方ありません。悪役らしく、力づくで、と行きましょうか!」

 

 遊亜がディスクの横にあるボタンを叩くと、デュエルが強制終了し、ソリッドビジョンは全て彼のものになる。

 

「なっ、オッドアイズ!?」

 

 彼のモノとなったモンスター達は、まるでそこに存在するかのように動き、出す。

 

 ――――息吹へ向けて。

 

「・・・・・・っ、あーあ、結局はこうなったか」

 

 諦めたように息吹は脱力した、その時だった。

 

「おい息吹。何勝手に諦めたてんだ」

 

 一陣の、風が吹いた。

 

 衝撃と共にオッドアイズ・アドバンスとテンペストが吹き飛び、息吹の目にはよく見知った背中だけが映る。

 

「諦めてなんかないさ♪ 遊羽がいるってわかってたし、大丈夫だろうなって」

 

「チッ、助けなけりゃよかった」

 

 えええそんなー、という息吹の声を無視し、レヴと融合した状態の遊羽は先程まで遊亜のいた方向へ目を向ける。

 

『いやー、恐ろしいですねぇその怪力。まともに食らったら死んでしまいますねワタクシ』

 

 そこには既に人影はなく、ただ声が響くのみだった。オッドアイズ・アドバンスやテンペストも消えている。

 

「テメェ、どういうつもりだ? 息吹を引く抜くのはいいが、精霊を消す、だと?」

 

 え、いいの? と息吹は遊羽を見るが、シリアスな空気のせいで声には出せない。仕方なく、息吹は諦めた。

 

『言葉通りでございますよ。精霊を消す。それがワタクシ共の目的』

 

 その声に遊羽は眉を寄せ、息吹はおどけた雰囲気を引っ込める。

 

「で、なんでわざわざそれをオレたちに教えるたんだ? 言わなければ、オレたちが知るのはもっと先だっただろうに」

 

 息吹を引き込むにしても、もっとやり方はあったはず。どこかへ閉じ込める、などせずに、往来でデュエルを挑んできた。

 遊羽がここにいるのは、息吹がレヴの羽を使って彼に危機を知らせたから。つまりは、遊羽の手の届かない所であれば、息吹を仲間にするのなんて簡単だっただろう。

 

『察しがいいですねぇ。勿論、わざとに決まっているでしょう』

 

 愉快そうな声は続ける。

 

『アナタ達は少々特殊でしてね。アナタ達の精霊の力は、デュエルでなければ消すことができない。故にワタクシ達と、精霊の力を賭けてデュエルして頂きます』

 

 ククク、と喉を鳴らし、遊亜はそうそう、と付け足す。

 

『遊民戦、月見遊兎も連れて来てくださいね? でなければ、デュエルすることはありません』

 

 遊羽は聞き終えると、意味がわからない、と首を傾げる。

 

「俺達の力は消えないんだろ? ならデュエルしなければ関係ねぇじゃねぇか」

 

『おや? よいのですか?』

 

 その含みのある言いぐさに遊羽は苛立ちを覚えながらも、続く言葉を待つ。

 

『でしたら、真宮虹花はこの世界から消えてよい、と?』

 

「ッ、テメェ!」

 

 虹花は『屍界のバンシー』の精霊となっている。彼らの計画が成功すれば、虹花は消える。

 遊羽は精霊力を持ってはいるが、精霊ではないためにこの世界に残される。

 

「わかった、要は一週間後にここに来て、お前と王とやらを倒せば、精霊が消えることはないんだな?」

 

『ええ。世界は今まで通り、アナタ方は何も失わない、というワケです』

 

 どこまでも胡散臭いが、信じるしかないのだろう。でなければ、虹花やオッドアイズを失うことになるかもしれないのだから。

 

『それでは、どうぞ一週間、存分に足掻いてくださいね?』

 

 その言葉を最後に、声は途絶えた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 同時刻。

 『アベシ』からかなり離れた街『ヴィーウ』では、悪霊の大量発生が起きていた。

 

「これで終わりだ」

 

『グァッ、オノレェ・・・・・・』

 

悪霊

LP3000→0

 

 悪霊のライフを全て削り、エクゾディアの力を使って浄化した星河は、討伐完了の連絡を上司へ伝えようとケータイを取り出す。

 

 その背後から、緑の雷が星河を襲った。

 

「何ッ!?」

 

 咄嗟に回避し、自分の精霊全員を顕現させる星河。周囲を警戒するが、人影どころか人の気配すらしない。

 

『今のは、一体・・・・・・?』

 

 フォトンが警戒を解かずに呟くが、それに答えられる者はいない。

 

「まあ、僕なんだけどね」

 

 何もない場所から声が響き、全員がそちらに顔を向ける。

 

「ッ、ガァッ!?」

 

 全く別の方向から先程の緑雷が星河を襲い、その意識を刈り取る。

 

『星河! どこから・・・・・・』

 

『グッ、コッチカ!?』

 

『いないわよ!? 透明化じゃない、どうやって・・・・・・』

 

 精霊達が倒れた星河を守るように索敵するが、見つけることができない。

 

「それじゃ、自分の世界へお帰りください、っと」

 

 その声を精霊達の耳が捉えるころには、全員が緑雷に包まれていた。

 

「全く、王様も酷いなぁ、僕一人でこのバケモノを倒せとか・・・・・・まあ、できるんだけど」

 

 何もない空間から現れた黒髪の少年は、ブツクサ言いながらおもむろに星河のデッキを拾うと、一部のカードが白紙になっているのを確認し、口角を上げる。

 

「お仕事終わり、早く帰ろー」

 

 ポイっとデッキを星河へ投げ返すと、少年は再び消えた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 何もない、真っ暗な空間。その中に、二人の少年が現れる。

 

「二色。上手くいった?」

 

「ええ、勿論」

 

 黒髪の少年が二色と呼ばれた少年へ訊くと、彼は頷く。

 

「ただ、あまり気分のいいものではありませんね。悪役を演じるというのも」

 

「日頃の行いが悪いから、そんな役割にされたんじゃないの?」

 

 二色(遊亜)は先程の自分の言動を振り返り顔を顰めるが、黒髪の少年はどうでもよさげだ。

 

「ツッコミをする元気は持ち合わせていないのでスルーしますが、黒はどうでしたか?」

 

 半ば諦めた様子の二色に、黒髪の少年――黒は笑って返す。

 

「ここから雷飛ばして力を奪うだけだったし、簡単だったよ。エクゾディアが思ったよりも力を失ってたから、こっちを認識できなかったんだろうね」

 

 そう言って『覇王眷竜ダーク・リベリオン』のカードを取り出すと、そこから緑色の雷を出して見せる。ダーク・リベリオンの効果の通り、この雷には相手の力を奪えるようだ。

 

「いいですねぇ、楽そうで。こっちは相手を煽ったり大変でしたよ」

 

 二色としては、この雷で遊羽達の力を奪った方が楽だと思うが故に、何故こうも面倒なことをするのかと思う。

 

「この雷で奪った力って、精霊界に送られちゃうんだよね。僕らの力にはならない。だから、彼らの力を使うには、デュエルしかない」

 

 面倒だけどね、と黒は苦笑する。

 

 彼らは本来、この世界の人間ではない。それ故に、使う力に制約が掛かってしまう。

 

「なら、デュエルで銀星河の力を奪えばよかったのではございませんか?」

 

「あのバケモノに、デュエルで勝てると思う?」

 

 二色の問に、問で返す黒。彼らの王ならば勝てるだろうが、彼はこの空間から出ることができない。

 

「面倒ですねぇ」

 

「面倒だね」

 

 二人で溜め息混じりに呟く。

 

 決戦まで、残り一週間。




さて、そろそろこの作品唯一の山場へ突入します。
・・・・・・逆に、なんでここまで山場がなかったんでしょうかね?

次回はいつになるのやら・・・・・・


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邂逅する決闘者

皆様お久しぶりです。

部活関係のことでまた遅れてしまいました・・・・・・不覚。

かなり急いで書いたので、少し文章が読みにくい部分やクドい部分があるかもしれません。

それでは本編をどうぞ。


 謎の少年、遊亜と出会った翌日。

 

 放課後となったデュエルスクールで、遊羽は旧校舎での鍛錬に打ち込んでいた。

 

「・・・・・・ッ! ハッ!」

 

 レヴと斬り合う彼の槍術は独特だ。攻撃の瞬間にだけ槍を出現させ、それ以外は顕現させない。

 こうすることで、相手に間合いを悟らせずに攻撃できるし、槍を出現させるまではただ腕を振るっているだけなので力もそんなにいらない。更に、9種類の槍を一々取り替える面倒臭さもなくなった。

 

 しかし、彼が鍛錬をするのには、別の目的もあった。

 

「お久しぶりですね、如月遊羽。以前よりも腕が上がっているようで」

 

 どこからともなく現れた長い白髪(はくはつ)の青年を視界に入れると、遊羽は槍を収納しそちらに身体を向ける。

 

「やっぱり来たか、ユーザ」

 

 ユーザ、と呼ばれた青年はクスリと微笑する。

 

「このタイミングで来たってことは、無関係じゃあないんだろ? 精霊が消えてることに」

 

 問いかける遊羽とその後ろに顕現するレヴを見ながら微笑を苦笑へと変え、ユーザは肩をすくめる。

 

「関係がある、というよりは当事者、でしょうか? 私も遊亜と同じ王に仕える身ですから」

 

 まるで世間話でもするかのように告げられる衝撃の真実。しかし遊羽はその可能性も考えていたようで、大した反応を見せない。

 

「で? 敵さんがワザワザ何をしに来たんだよ。勝負を今日にしようとでも?」

 

「そんなことはしませんよ。それに私、今ディスクも持っていませんしね」

 

 半眼で睨んでくる遊羽に、ユーザはホラホラと白いマントを広げて隠していないことをアピール。それを見て遊羽とレヴは槍と大剣を構える。

 

『ならば』

 

「今がチャンスだな」

 

「いえ待ちましょう暴力はよくないでしょうこれはデュエル小説でしょう!?」

 

 半ば絶叫しながら後ずさるユーザに遊羽は無慈悲に斬りかかる。しかし、槍は何の感触もなくユーザの身体を通り過ぎていった。

 

「・・・・・・幽霊?」

 

 首を傾げながらユーザをまじまじと見る遊羽に、彼はフフフと微笑してから種明かしをする。

 

「残念でしたね。私は今、魂だけの状態。物理攻撃は効きませゴッファア!?」

 

 ドヤ顔をしたユーザだったがその腹に遊羽の拳が刺さった。

 

「魂くらいなら殴れるぜ」

 

 鳩尾に入ったらしく咳き込むユーザに、遊羽はもう一発いっとくかと歩み寄る。

 

「ま、待ちましょう! 今ここで私を倒しても、何もありませんよ!? 7日後いえ今は6日後ですがその日のデュエルのころには復活していますしメリットありませんよ!」

 

 復活するとはいえ痛いものは嫌らしいユーザがまくし立てた訴えに、遊羽は興が削がれたのか拳を下ろす。

 

「で、じゃあ何の用だ? 俺はお前らを倒すデッキを調整したいんだが」

 

「・・・・・・私がここに来たのは、情報を渡すためですよ。如月遊羽」

 

 パンパンと、服に着いたホコリを払いながら立ち上がり、シリアスな空気を醸し出すユーザ。その雰囲気を察し、遊羽も顔を引き締める。

 

「情報、だと?」

 

「はい。私達が何者で、何故この世界から精霊を消そうとしているのか。何故貴方方の精霊力はデュエルでしか消せないのか、等々。私に話せる範囲ならば全て答えましょう」

 

 そう言って、ユーザは語り出した。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 では、私達が何者か、から話しましょうか。

 

 簡潔に言えば、私達はこの世界とは別の世界、貴方方の言う異世界の住人でした。でした、というのも、私達のいた世界は滅んでしまったのですよ。

 

 まあ待ってください。理由を説明しましょう。

 

 私達の世界は、様々な世界と繋がりを持っていました。それはもう色んな世界と。

 

 そもそも、私達の世界は四つの次元に別れていたのですが、他世界と繋がったことで、更にバラバラになって行きました。

 

 しかし、そのことに誰も気づきませんでした。全員、異世界から流れてくる物に疑問を抱かず、順応し、それを当たり前に受け止めて生きていたのです。

 

 我々が気付いた時には、もう手遅れでした。

 

 その世界の王だった我が覇王とその家臣たる我らにできたのは、滅びる世界を閉ざし、他の世界への影響を最小限に抑えることだけ。それでも、三つほどの世界を巻き込んでしまいました。

 

 故に、我らは誓ったのです。もう二度と、こんな悲劇を起こしてはならない、と。

 

 同じような運命(さだめ)にある世界があったなら、必ず救おう、と。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「・・・・・・なるほどな」

 

 話を聞き、遊羽が発した第一声がそれだった。

 

 真実にしろ嘘にしろ、動機としての筋は通っている。しかし、肝心なところがわからない。

 

「で、何で精霊を消すことになるんだよ」

 

「仮に異世界との繋がりを断ったとしても、精霊界との繋がりのある精霊がいては、また繋がりを持ってしまうんですよ。他の巻き込んでしまったのも、精霊界との繋がりがあったせいですから」

 

 そう断言するユーザ。だが、遊羽にも反論はある。

 

「そうか。それで、この世界もお前らの世界みたくなるって、どうしてわかるんだよ」

 

 ユーザ達の世界が滅んだ。だからこの世界も同じように滅ぶ。

 それはおかしい、と遊羽は言う。

 

「この世界は四つの次元に別れてもいなければ王もいない。異世界との繋がりだって、普通の奴は知らない。お前らの世界と同じになるとは限らないだろ」

 

 遊羽は知っている。もっと沢山の世界と繋がった世界を、彼は聞いている。

 

「まあ、そうかもしれないでしょう。しかし、同じようになる可能性はある。それだけで、我々が動く理由になる」

 

 あの悲劇を起こさないために、どんなに小さな可能性であろうとも、それを摘む。それが、彼らの信念。

 

「・・・・・・さて、この辺りが頃合いでしょうか」

 

 そう呟くと、ユーザの姿が薄くなっていく。

 

「・・・・・・? どういう」

 

「気付きませんか? 先程から、お仲間の反応が怪しいことに」

 

 反応、と聞いて一瞬意味を理解できなかったが、遊羽はすぐさま感づきレヴを振り返った。

 

「レヴ、羽根の反応は!?」

 

『・・・・・・誰かが危険な状態だ。これは・・・・・・戦か!』

 

 それを聞くが早いか、遊羽は《融合》のカードを取り出しレヴと融合しながら空へ飛んだ。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 ユーザが遊羽に接触する、少し前。

 

 遥をからかいながら下校し、彼女を家まで送った戦は、自身の家へ向かって歩いていた。

 

(後6日、だったよね。デッキの調整をしないと)

 

 まだ現実感が伴わないながらも、今日遊羽に聞いた内容を思い出し、拳に力を込める。

 

「ジャンやジャンクロン、サラと別れるなんて、嫌だしね」

 

『嬉しいことを言ってくれるでありますなぁ~』

 

『なの!』

 

『そのためにも、拙者達で主殿を支えますぞ!』

 

 ありがと、と心の中で返しながら、歩みを進め、家が見える場所まで辿り着く。

 

 その戦の目に、家の前で佇む人影が映った。

 

「? 誰だ、ろ・・・・・・」

 

 う、と言いかけて、言葉が詰まった。

 

 よく見知った、しかしあり得ないその背中。

 戦が釘付けになっていると、彼のデッキケースを触手のようなものが奪った。

 

「っ!?」

 

「オイオイ、往来で棒立ちたァ、ちと迷惑じゃねェのか?」

 

 声の方向に振り返ると、そこにいたのは紫色の髪の少年。獰猛なその笑顔は、まるで赤い三日月だ。

 

「君は?」

 

「オレか? オレはユーガだ」

 

 ユーガと名乗った少年は手に持ったカードから出る触手を操り、奪ったデッキを人影の方へ投げた。

 

「ほらよ、お望みの品だぜ」

 

「ああ、ありがとう」

 

 その人影は受け取ったデッキの内容を確認し、おやと首を傾げた。

 

「僕の知っているものとは随分と変わっているなぁ。まるで別物だ」

 

 人影はそう呟くと、まあいいかと腰のデッキケースにそれを入れる。

 

「・・・・・・やっぱり、貴方は・・・・・・」

 

「まだ持っているだろう? 僕のあげたカード達を」

 

 呆然とし声を零す戦に対し、手を伸ばしてカードを要求する。

 

()()()・・・・・・何で、どうしてここに!」

 

『な、父親ですと!?』

 

 精霊達が驚愕する中、戦の父親、遊民 戒(かい)は小さく微笑み、ディスクを構える。

 

「久しぶりだね、戦。早速で悪いけど・・・・・・僕のカードを返してもらうよ。全部、キッチリとね」

 

 そう死んだ目で宣告する父に、戦はもう一つのデッキを取り出しディスクにセットする。

 

『マスター、大丈夫なの?』

 

『我が輩、心配であります』

 

 デッキの中から響く声に無言で頷きながら、戦は覚悟を決める。

 

「よォし、順調順調。あ、オレはただの観客だから気にすんなよ」

 

 いつの間にやら触手をしまい、観戦モードに入っているユーガを尻目に、戦は父親の様子を伺う。

 

(ユーガとかいう彼、多分遊羽くん達が言ってた敵、だろうね・・・・・・でも、それよりも)

 

 目の前の父親と戦う。そうしなければいけない。そんな脅迫観念が戦の中にあった。

 

「「デュエル!」」

 

遊民戒

LP8000

 

遊民戦

LP8000

 

 先攻になったのは戒。彼は淡々とカードをディスクに置いていく。

 

「星遺物の醒存。デッキの上からカードを5枚めくって、クローラーか星遺物を手札に加えて残りを墓地へ送る。僕はクローラー・デンドライトを手札に加える。モンスターとカードを伏せて、ターン終了だ」

 

遊民戒

LP8000 手札3

場 メイン:伏せモンスター 魔法・罠:伏せカード

 

「僕のターン、ドロー」

 

 引いたカードを確認しながら、戦は二枚の伏せられたカードについて考える。

 

(伏せモンスターは恐らくクローラー・デンドライト。なら、特に警戒する必要はなさそうだね)

 

 手札の状況からジャンク・ウォリアーを特殊召喚することはむずかしいが、それは次のターンでいいだろうと判断する。

 

「フォトン・スラッシャーを特殊召喚、そしてジェット・シンクロンを通常召喚!」

 

フォトン・スラッシャー ☆4 攻撃力2100

 

ジェット・シンクロン ☆1 チューナー 攻撃力500

 

 現在の戦のデッキは、遊羽達と出会う前に使っていたもの。デッキのモンスター全てが精霊であるという、トンデモデッキだ。

 

「ジェット・シンクロンでフォトン・スラッシャーをチューニング! シンクロ召喚、ジェット・ウォリアー!」

 

ジェット・ウォリアー ☆5 攻撃力2100

 

 かなり久し振りの登場であるメカメカしい戦士。バウンス対象は伏せモンスターだ。

 

「リバースカード、禁じられた聖杯。ジェット・ウォリアーの効果を無効にする」

 

ジェット・ウォリアー 攻撃力2100→2500

 

 聖杯へかけられた願いによって脳筋なった機械戦士。頭のネジが幾つか外れたのだろうか。

 

「ならそのまま伏せモンスターに攻撃!」

 

ライトロードハンター・ライコウ ☆2 守備力100

 

 反転し姿を見せたのは白い狼。機械戦士が殴りかかるが、狼が吠えると弾け飛ぶ。

 

「ライコウの効果。反転した時、相手モンスター一体を破壊できる。そして、デッキから三枚を墓地へ送るよ」

 

 散っていった機械戦士に一瞬だけ目を向けると、戦はカードをディスクにセットする。

 

「カードを二枚伏せて、ターン終了だよ」

 

遊民戦

LP8000 手札2

場 魔法・罠:伏せカード×2

 

「僕のターンだ」

 

 戒はカードを引くと、無感動に手札に加えた。

 

「モンスターをセット、そしてカードを更に伏せる。ターン終了だ」

 

遊民戒

LP8000 手札2

場 ライトロードハンター・ライコウ 伏せモンスター 魔法・罠:伏せカード

 

 三行で終了した戒のターン。戦はその慎重なデュエルに懐かしさを覚えるが、それは直ぐに脅迫観念に潰された。

 

「ジャンク・シンクロンを召喚、効果でジェット・シンクロンを特殊召喚」

 

ジャンク・シンクロン ☆3 チューナー 攻撃力1300

 

ジェット・シンクロン ☆1 チューナー 守備力0

 

 チューナー同士でシンクロ召喚はできないが、それでもリンク召喚はできる。

 

「ジェット・シンクロンをリリースして、ジェット・ウォリアーを特殊召喚!」

 

ジェット・ウォリアー ☆5 守備力1200

 

 文脈をスルーして復活する機械戦士。

 

「ジャンク・シンクロンでジェット・ウォリアーをチューニング、シンクロ召喚! スターダスト・ドラゴン!」

 

スターダスト・ドラゴン ☆8 攻撃力2500

 

 飛翔するのは白銀の星屑竜。その懐かしい姿に、戒は少しだけ目を細める。

 

「でも、それはいけないな。リバースカード、大捕り物。相手モンスター一体のコントロールを得る」

 

「ッ!?」

 

 モンスターを奪われるのは初めてではないが、このタイミングでの奪取は堪える。召喚権も使い、墓地のリソースもほとんどない。

 

「なら、手札一枚をコストにジェット・シンクロンを蘇生! リバースカード、リビングデッドの呼び声! 蘇れ、ジャンク・シンクロン! そしてドッペル・ウォリアーを特殊召喚!」

 

ジェット・シンクロン ☆1 チューナー 守備力0

 

ジャンク・シンクロン ☆3 チューナー 攻撃力1300

 

ドッペル・ウォリアー ☆2 守備力800

 

『おお、いつものでありますな!』

 

 ジャンクロンが、意気揚々と腕を回すと、戦が応えるように手を前に突き出す。

 

「ジャンク・シンクロンでドッペル・ウォリアーをチューニング!」

 

 ジャンクロンが光の(リング)へと変わり、ドッペル・ウォリアーを包む。

 

「集いし星が、鋼に打ち勝つ戦士となる! シンクロ召喚、ジャンク・ウォリアー!」

 

ジャンク・ウォリアー ☆5 攻撃力2300

 

 赤い瞳をビコーンと光らせて登場するジャン。最近見たロボットアニメの影響かもしれない。

 

「ジャンク・ウォリアーの効果発動、それにチェーンしてドッペル・ウォリアーの効果、更にチェーンしてリバースカード、戦線復帰! 墓地からナイトエンド・ソーサラーを特殊召喚! おいで、サラ!」

 

ナイトエンド・ソーサラー ☆2 チューナー 守備力600

 

 呼び出され、杖を鎌の様に構えるサラ。別に鎌と構えるをかけているとかそんなことはある。

 

「そしてドッペル・ウォリアの効果でドッペル・トークンを特殊召喚!」

 

ドッペル・トークン ☆1 攻撃力400

 

 二体の小柄な兵士が並び、最後のチェーンを解決する。

 

「ジャンク・ウォリアーの効果発動!」

 

「自分フィールドのレベル2以下のモンスターの攻撃力分、自身の攻撃力をアップする」

 

 戒が先取りして暗唱すると、戦は若干眉をひそめだがそのまま進めた。

 

ジャンク・ウォリアー 攻撃力2300→5700

 

 倍以上に跳ね上がった攻撃力。更に戦は〆としてカードをディスクに差し込む。

 

「速攻魔法、スクラップ・フィスト! ジャンク・ウォリアーに5つの効果を適用する!」

 

『効果モリモリですぞ!』

 

 その内2つほどは殆ど使われることはないのだが、それは置いておく。

 

「バトルだ、ジャンク・ウォリアーで―――」

 

「待った。リバースカード、強制脱出装置。効果対象はジャンク・ウォリアー」

 

 抑揚のない声で正確に戦の急所を突く戒。

 

「くっ、ジャンが・・・・・・」

 

 バシッとディスクから弾かれた『ジャンク・ウォリアー』のカード。何事かと戦がディスクを見ると視界には植物のツルのような触手があった。

 

「!!??」

 

 そのまま触手に弾かれたカードは戒の手へ渡る。

 

「確かに返してもらったよ。それと、スターダスト・ドラゴンも、ね」

 

「なっ!?」

 

 ルールを無視した盤外戦術。スターダスト・ドラゴンも、ということは、何かしらで場を離れた場合、それは戦のではなく戒の墓地へ行くということだ。

 

「父さん、どうして・・・・・・」

 

「簡単だよ、戦」

 

 悲しみと僅かな憎しみの籠もった眼差しを向けられようと、戒は態度を変えない。

 

「君が戦う必要はない。僕も、そして母さんも、君に戦って欲しくない」

 

 ドクン、と戦の心臓が強く脈動する。

 

 戒のその言葉。戦にとって、その言葉は、自身の在り方に関わるモノだ。

 

「・・・・・・え?」

 

「もう一度言う。僕らは、君に戦って欲しくない。君に強さを求めない。君には弱くあって欲しいとさえ思う」

 

 母の遺言と、全く逆の言葉。戦の在り方を、否定する言葉。

 

「そんな、僕は、なら、何で、」

 

「僕は、君が戦う姿なんて、見たくない」

 

 冷たく拒絶し、感情の籠もっていない(まなこ)で戒は戦に宣告する。

 

「君が戦う必要は、どこにもないんだ」

 

「う、うわあああぁぁぁ!」

 

 耳を塞ぎ、戒の言葉から逃れようともがく戦。彼の精霊達は主の変貌に動揺し、どうするべきかを図りかねる。

 

「デュエルの意志を感じられねェ。これ以上は時間の無駄だな」

 

 ユーガはまた赤い笑みを浮かべ、触手を操って戦のディスクからカードを全て奪う。

 

「そら、これで全部か?」

 

「・・・・・・ああ。問題ない」

 

 デッキに目を通し、自分の手元に全てのカードが集まったことを確認した戒は、そのカード達を握り潰す。

 

『ぐうッ!? 父上殿、何を、』

 

「後始末だよ、精霊。自らの失態の、ね」

 

 精霊のカードとは、精霊界からやって来た精霊をこの世界に繋ぎ止める依代だ。それが壊されれば、精霊は精霊界へ戻され、最悪の場合は死に至る。

 

『痛い、痛いの!』

 

『苦しいであります・・・・・・!』

 

「ジャンクロン、サラ!」

 

 精霊達の苦しみに、戦は彼らを呼ぶことしかできない。

 

『主、殿・・・・・・』

 

「ジャン!」

 

 声は出せても、足に、身体に力が入らない。まるで、全身の筋肉がバカになったかの様だ。

 

「一気に精霊力を失ったんだ、まァそうなるわな」

 

 嘲るように戦を見下すユーガ。戦は彼を憎しみの眼で睨みつけるが、ユーガは口元を更に歪めるだけだ。

 

「折角だ、オレが直々に手を下してやる!」

 

 ユーガは戦を絶望させるべく、手に持つカードの力を解放する。

 

「覇王眷竜スターヴ・ヴェノム!」

 

 その声に合わせて、紫の毒竜が姿を現す。

 

「なるほど。そっちの方が確実みたいだな」

 

 戒はユーガの行動から察し、精霊のカード達を毒竜へ放る。

 

 スターヴ・ヴェノムはそれを口で受け止め、そのまま咀嚼する。

 

「・・・・・・は」

 

 食った。カードを、精霊を、その存在を。

 

「これで、カードを取り戻すっつうので戦うのもねェだろ? カンペキだな」

 

「ああ。これで戦が戦う理由は、もうないはずだ」

 

 哄笑するユーガと、冷淡に毒竜を見つめる戒。

 

 戦に残されたのは、底知れぬ絶望の闇だった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 何もない、真っ暗な空間。

 

「あァ〜疲ッれたァ!」

 

 そこで、紫髪の青年がドカッと腰を下ろす。

 

「・・・・・・紫、何故あそこまでしたのです。戦意を折るにしても、他にやり方はあったでしょう」

 

 少し咎めるようなニュアンスを滲ませるのは白髪の青年。彼の言葉に紫は「ハッ」と鼻で笑う。

 

「それがアイツの要望だったんだよ。全く、面倒ったらありャしねェ」

 

 紫が彼を使ったのは、自身の力が戦と相性が悪かったためだ。彼に協力させれば、紫一人よりも計画の成功率が上がると考えたのだ。

 

「まあ、『相手に感情を植え付ける』とか、彼には微妙でしょうし、妥当なのでしょうか」

 

 感情を植え付ける、と言っても、それは一時的なもので、それを上回る感情には弱い。その上、戦のように心が強い者には効果が薄い。

 故に、心の弱点(ウィークポイント)を突いたのだ。

 

 戦にとって親とは戦う理由である。母親の遺言によって彼は強さを求め、父親のカードで戦ってきた。なら、その両方を失ったらどうなるか。

 

「まァ、心が弱るよなァ」

 

 ククク、と紫は喉を鳴らす。

 

 戦が感じていた強迫観念もまた、紫の植え付けた物だ。元々、強くなる上で戦にとって父親は超えるべきもの。ならば、その心を増幅させればいい。

 

「んで、そっちはどうだったんだよ白? まァ、オレにジャマがが入らなかった時点で結果は知ってるがな」

 

 ええ、と白は頷き、目を細め。

 

「足止めは成功しました。それはご存知の通りでしょう」

 

 彼の役割は足止め。白の力は『相手の力の無力化』。今回はレヴの羽根を無力化し、遊羽が戦の危機に気付けないようにしていた。

 

「だよなァ。後はあちらさんがどう出るか、だな」

 

 頭の後ろで手を組んで寝転がり、脱力する紫。白はそんな彼を邪魔に思いながらその場を去った。

 

 決戦まで、あと六日。




この作品もあと十話で百話のようです。実感が湧きませんが。百話を迎えるのとこの作品が終わるの、どちらが先でしょうかね。

制限改訂でエクリプスが逝ったので、息吹が弱体化しました。辛い。他は殆ど影響なさそうです。


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残された手札

また遅れました。気管支炎なるものによって。・・・・・・どうしてこう私は病弱なんでしょうね?

それでは本編です。


 戦が学校を休んだ。恐らく、出逢ってから初めて。

 どうしたのだろうかと遥は心配するが、しかし何かできるワケでもない。ただ授業中も休み時間もぼんやりと空いている席を眺めてしまう。

 

(大丈夫かなー、戦くん・・・・・・風邪とかかな?)

 

 いつもそばにいてくれた彼がいないだけで、こんなにも寂しいものなのだろうか。

 

(いつも、恥ずかしいから「止めて」って言っちゃうけど・・・・・・)

 

 無性に、名前を呼んで欲しかった。あの優しい、でもどこか壊れたような、落ち着く声。彼を聞き上手に感じるのは、彼の相槌もあるのかもしれない。

 

(・・・・・・よし!)

 

 今日、お見舞いに行こう。遥はそう決めると、フンスと意気込む。

 

 しかし授業中だったので、荒野の女戦士似の担任の女教師に注意を受けることになった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 遊兎の様子がおかしい。彩葉は右前にいるその白髪の彼の背中を見ながら考える。

 

 話しかけると一々ビックリするし、ずっと何か考えているような顔をしている。前者は面白いからいいのだが、後者については少し心配だ。

 

(遊兎が考えるよりも、相談してくれた方が早いのに)

 

 彼に考え事は似合わない。必死に何かをしている遊兎は好きだが、考え込んでその場から動かない遊兎は好きではない。頬杖をついたまま、彩葉はぼんやりとした顔で見つめ続ける。

 

「? どうかしたのか、彩葉?」

 

 視線に気付いたのか、遊兎が振り返る。かれこれ20分ほど見つめてようやくなのだから、彼の鈍感さが伺い知れる。

 

「考え事、してるみたいだったから・・・・・・」

 

 心配している、それを暗に告げながら、彩葉はコテンと小首を傾げる。

 

「あ、ああ・・・・・・大丈夫だ。これは、(オレ)自身の問題だから・・・・・・」

 

「・・・・・・そう」

 

 少し悲しげな顔になった彩葉に申し訳なく思いながら、遊兎は考える。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()で、どう闘うか。

 

『初めまして、僕はユーノ。君と闘う者さ』

 

 昨日の夜に、それともう一言だけ言って去った黒髪の少年。

 

(精霊が消えれば、(オレ)は普通の人間になることができる、か・・・・・・)

 

 遊兎は【レスキューラビット】の精霊である。しかし、姿形は人間。それは、彼の出自が深く関係している。

 

 彼の先祖に、人間がいたのだ。それだけならばいいのだが、その人物は人間の世界ではなく精霊の世界で暮らした。その子供の精人も、そのまた子供も、精霊と交わり、人間の血はどんどん薄くなっていった。

 しかし、遊兎は違った。人間の血を濃く受け継いだ、言わば『先祖帰り』。精人にも極稀に起きることらしいのだが、遊兎は逆だった。『人間の先祖帰り』。それは、精人が忌避されるように、精霊世界で彼は異端だった。それが、なくなると言うのだ。

 だが、彼の心はもう決まっている。

 

(オレ)が精霊か人間かなんてどうだっていい・・・・・・けど、精霊が居なくなって困るっていう人がいるのなら)

 

 チラリと頭をよぎったのは、歪み狂った二人の男女。

 

(ちっぽけな(オレ)の力だけど、それが必要だって言うなら、幾らでも使ってやる・・・・・・!)

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 昼休みの図書室。そこで向かい合って静かに本を読んでいるのは、遊羽と虹花だ。

 

(遊羽、また何か危ないことをしているのでしょうか)

 

 虹花は鈍感ではない。というか、遊羽のことに関しては一般人がドン引くくらいに敏感である。

 

 しかし、何か訊くことはない。盲目的なまでに遊羽を信じる彼女は、自ら行動を起こすことが少ない。図書室に来ているのも、遊羽の希望あってのことだ。

 

(私が、何か力になれればいいのですが・・・・・・)

 

 遊羽が真剣な眼差しで見ているのは過去のドラゴンデッキの資料。【レッドアイズ・ダークネスメタル・ドラゴン】の禁止やリンクモンスターの登場、というかルール変更によって当時のまま再現することは難しい物ばかりだが、参考にはなるらしい。

 

 ふと、『愛するという気持ちは、その人となら不幸になっても構わない、という気持ち』だと言う話を思い出した。だが、それは違うだろうと彼女は思う。

 

(だって、遊羽と一緒にいて不幸だなんて思ったこと、ありません)

 

 虹花の視線に気付いてか、「どうした?」と目で訊いてくる彼に首を振ってなんでもないと伝えて、虹花は手元の本に視線を戻した。

 このやり取りだけでも幸福に感じるのに、不幸になんて、なれるハズがないだろう。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 それぞれの理由で余り聞いていなかった授業が終わり、放課後。遥は戦の家に向かう途中で同じ方向へ歩く遊羽と虹花を発見。

 

「ん? なんだ永野か」

 

 遥に気付き、足を止めて振り返る遊羽。遥は小走りで二人に追い付く。

 

「如月くんも戦くんのお見舞い?」

 

「まあ、そんなところだ」

 

 歯切れの悪い言い方に疑問符を浮かべながら、遥は遊羽の行動を意外に思う。

 彼がお見舞い、というのはイメージに合わなかったからである。それでいいのか主人公。

 

 十分ほど歩き、戦の住むマンションに到着した。遊羽がインターホンを鳴らすが、返事がない。

 

「居ないの? お医者さんとかかな」

 

「いや、二人はここで待っててくれ」

 

 遊羽はそう言い、おもむろにドアノブに手をかける。

 バキメキゴキンと絶対鳴っちゃダメな音を出しながら回転したドアノブ。そして遊羽はそのまま扉を開けて中に入る。遥がアワアワ動揺していたが、虹花は特に表情を変えない。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 部屋の隅、窓際の辺りに、戦はいた。虚ろな瞳で中空を見つめ、微動だにしない。

 

「よう、戦。何ボーっとしてんだよ」

 

 声をかけるが、反応はない。じれったく思った遊羽はグイと戦の胸元を掴んで引っ張り上げる。

 

「いつまでそうしてる気だ? 戦。あと五日しかねぇのによ」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 少しだけ眼球を遊羽に向ける戦だが、その目はハイライトの消えたままだ。

 

「・・・・・・テメェ、戦わないつもりか?」

 

 怒りを顕にしながら彼の放った言葉。その意味はつまり、『虹花を守る』という彼の行動の妨げとなるのか、ということも含んでいる。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 尚も焦点の合わない目を向けてくる戦に、遊羽は「チッ」と舌打ちしてから、掴んだ服ごと戦を壁に叩きつける。

 

「うッ・・・・・・」

 

「何だよ、声出るじゃねぇか。声も 出せないくらい弱ったのかと思ったぜ」

 

 あえて『弱い』という単語を使うと、ピクリと戦の指が動く。

 

「誰が・・・・・・弱いって?」

 

「お前だよ戦。その程度で戦意喪失とはまあ弱くなったなぁ、いじめられても闘う意思を持ってたお前はどこ行ったんだ?」

 

 嘲るように、煽るように。自分に対してだろうと、彼が戦意を取り戻すように。

 

「ッ、うるさいな!」

 

 起き上がりながら遊羽を突き飛ばす戦。半身が竜である彼はその程度では倒れないが、多少よろけはした。

 

「わかってるんだよ、そんなこと! でも、どうしろって言うのさ! だって、」

 

 見開いた目で遊羽を睨みながら叫んだ戦だったが、そこで言葉を止め、

 

「だって、僕にはもう、闘う理由がない」

 

 勢いを失い、弱々しくなった彼を見て、遊羽は失敗したかと頭を掻く。

 しかし、それでも遊羽は言葉をぶつけ続ける。

 

「なら俺と虹花のために闘え。それが理由でいいだろ」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」

 

 ハイライトが戻る前よりも長くフリーズした戦がそれでも意味を読み取れなかったのか、出てきたのは呆けたような一文字のみ。

 

「精霊が消されると、虹花が消えるんだとよ。当然、俺はそれを止めたい。そのためには、お前にも闘ってもらわねぇと困る」

 

 あくまで自分のために。遊羽はそんな人間だ。いや、ドラゴンでもあるのだが、それは置いておく。

 

「・・・・・・プッ、あはははは!」

 

 キョトンとしたかと思えば急に笑い出した戦に、今度は遊羽が唖然とする。

 

「いいよ。うん、理由はもうそれでいいや。それに、」

 

 戦は完全に闘う者のソレとなった瞳と共に獰猛な笑みを浮かべると、戦は続ける。

 

「父さんとあのユーガって人にやられっぱなしとか、気に食わないしね」

 

 仲間をやられたのだ、ならばそのままでいられるはずがない。

 遊羽はそうか、と頷いてから、部屋の中央にあるテーブルの付近に腰掛ける。

 

「なら、まずはデッキを作るところからだな。無くなったんだろ、カード」

 

 いつになく遊羽が協力的なのは、虹花のことが絡んでいるからか、それともこの一年半で少しは信頼関係が築けたのか。

 後者だったらいいな、と思いながら、戦も席につく。

 

「えーと、あのー? そろそろ入っていいかなー?」

 

 玄関から聞こえてきた遥の何とも情けない声に顔を見合わせて笑ってから、遊羽と戦は二人を家に入れた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 かくして、戦は戦意を取り戻し、デッキ構築を開始し、ついでに息吹と遊兎も呼んで六人でやいのやいのと話し合う彼らだったが。

 

「デッキが回らない・・・・・・」

 

「全然勝てねー・・・・・・」

 

 一番手間取っているのは、戦と遊兎である。一番なのに二人いるとか言ってはいけない。

 

「いや、戦はカードがピーキー過ぎるだろ・・・・・・遊兎はプレイングの問題もあるな」

 

 戦があのデッキを回せていたのは、カードの殆どが精霊だったからである。しかし今戦は精霊のカードを全て失った状態であり、以前の調子でデッキを組んでも事故が起きるのは必然的であった。

 そして、遊兎。彼のデッキは『守備力0のレベル4通常モンスター』を軸にしたデッキだが、当然事故率が高い。加えて、【究極電導恐獣】や【銀河眼の光子竜】など、上級モンスターのレベルもバラバラであるため、【トレード・イン】などの手札交換カードも入れ辛い。その上で彼のプレイングによって負けも多くなる。

 

「戦はデッキの基礎を叩き込むだけだからいいとして、問題は遊兎だよな・・・・・・」

 

 プレイングについては何とかなる。というか何とかする。

 しかし、デッキはそうはいかない。通常モンスターデッキだから、と言っても【幻皇龍スパイラル】やら【ローレベル】で闘うワケにも行かない。【幻皇龍】魔法・罠カードは通常モンスターサポートにもなるが、【レスキューラビット】の効果で特殊召喚したモンスターはターン終了時に破壊される。【ローレベル】は【魔の試着部屋】や【トライワイトゾーン】など強力なカードが多いが、【レスキューラビット】を入れられるか、と言われれば微妙である。

 何というか、絶妙なアンチシナジーが生まれていた。

 

「・・・・・・情けねぇ。こんな時だってのに、(オレ)は足引っ張って・・・・・・」

 

 時刻は夜7時になり、虹花と遥は家に帰らせた。『精霊が消えるかもしれない』という事情を話すつもりはないため、居ても邪魔になる可能性があったためである。言葉悪いな。

 

「【大熱波】は【レスキューラビット】を出せなくなるからシナジーが・・・・・・妥当なのはやっぱり【天威】かな?」

 

 うんうん唸る息吹だが、遊兎はそれに従い【ジェット・シンクロン】を【天威龍-アーダラ】へと替える。そして数枚の【天威】カードを手に取り、どれを入れるかと悩む。

 

「やっぱ、【天威】にした方が強えーよな・・・・・・」

 

「んー、別にいいんじゃない? そのままの遊兎のデッキで」

 

 【天威】デッキにした方がいいのだろうか、という意図を読み取った息吹は、その必要はないと否定する。

 

「強いから、っていう理由で嫌いなカードを入れても、そのカードを引けるワケがないし、そんなデッキで勝っても嬉しくないでしょ?」

 

 敵は精霊を消そうと目論んでいる。そして強い。なら、新たに強いデッキを作って戦っても、そんな焼け付き刃で勝てる相手ではない。慣れ親しんだカードで闘うべきである。まあ、戦はそれができないので仕方ないのだが。

 

「クソッ、【破戒蛮龍-バスター・ドラゴン】も白紙になったか! このデッキ案はダメだな。ならこっちで・・・・・・」

 

 遊兎のデッキを息吹が手伝い、戦が新しいデッキを組み上げる横で、遊羽は白紙になったカードをデッキから抜き取り別のカードに入れ替える。

 

 一番白紙のカードが多いのは、意外にも遊羽であった。【ドラグニティ】関連はほぼ全滅、【青眼】の一部や【レッドアイズ・ダークネスメタル・ドラゴン】や【破滅竜ガンドラX】、【No.95ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン】は禁止カードにも関わらず真っ白しろすけである。【WW】や【バスター・ブレイダー】系統も色が薄れ始めているため、決戦当日まで持つか定かではない。

 

「魔法・(トラップ)が消えねぇのが救いだけどよ・・・・・・クッソ!」

 

 苛立ち紛れに床を一つ殴る。若干凹んだが直せる範囲なのでもう戦達は気にしない。

 

 遊羽にとってカードは虹花を守る手段であり、人間よりも信頼できるものである。それ故一枚失うだけでも痛いのだが、その性分のせいで所持しているカードは大半が下級精霊。白紙になってしまうのは、目に見えていた。

 

 今はこの感情をぶつける(すべ)はない。だが、あと五日で。

 

「待ってろよ、ユーザ、覇王・・・・・・絶対(ゼッテー)に許さねぇ」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 何もない、真っ暗な空間。

 

「あ、【E・HEROオネスティ・ネオス】再録だって。よかったね紫」

 

 その中央でコタツに入り、カードを広げているのは黒髪の少年である。

 

「おー嬉しいぜェコナミさん。【捕食植物】リンクも来るし、その前にも強化は来てたし、優遇されてンなァ」

 

 その横で顔を歪めて正面にいる人物を嘲笑うのは紫髪の青年。その笑みには意地汚さしかない。

 

「クッ、何故そうも【捕食植物】ばかり・・・・・・【水晶機巧-ハリファイバー】の再録はまだでしょうかコンマイ!」

 

 紫の顔を忌々しげに睨みながら青筋を浮かべるのは白髪の青年。

 

「まあまあ皆さん落ち着いてくださいって。ほら笑顔ですよスマイルスマイル」

 

 ケンカになっては困るので赤と緑のトマトヘッドの少年が止めに入ると、二人の矛先はそっちを向いた。

 

「ほう? 笑顔? スマイル? 【EMポップアップ】とかいうソリティアのお供を手に入れてよく言えますねそんなこと」

 

「【天空の魔術師】だったかァ? アレほぼ王サマじゃねェかふざけんな。偶像崇拝禁止だコラ」

 

「ハイいつも通りにワタクシが八つ当たり対象でございますね!」

 

 何故こうも当たりが強いのだろうかと嘆くトマトヘッドだが、彼は日頃の行いが悪いために仕方ない。

 

「つーか、あと五日だろ? デッキの見直しとかいいのかよ」

 

 一頻りトマトに八つ当たりをしてから、完全にコタツでくつろぐムードになった全員に紫は言う。

 

「そうでございますね~。その内しますよ」

 

「そうですね。その内その内」

 

「あと五日もあるんだし、いいんじゃない?」

 

 コイツら、夏休みの宿題とか最終日まで溜めるタイプか。紫は驚愕したがかく言う自分もその一人であるために後回しにすることにした。コイツら本当にラスボスか。

 

「・・・・・・そう言えば、我が覇王はどちらへ?」

 

「さあ? 最近色んな世界が見つかってるから、その視察じゃない?」

 

 ふと思い出したように言う白に、黒はメタ発言を交えて返す。

 

「最近っつーか、春休みの時期からっつーか・・・・・・ん? 時間軸がおかしい気が」

 

「深く考えてはいけません、紫。何なら制限改訂とかも二十年ほど後にもう一度食らうでしょうし」

 

 中々メタい空気の中、意味深長な発言をするトマト。はてさて、このフラグの回収はいつになるのか。

 

 

 決戦まで、あと五日。彼らがコタツから出るまでにかかる日数は、あと三日である。




というワケで、遊羽と戦のデッキが新しくなります。遊兎のもちょっと変わります。
・・・・・・戦はともかく、遊羽は何回デッキを変えているんだろうか。

明日からテストらしいので、また暫く投稿できないです。申し訳ありません・・・・・・。


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特別編:初詣

あけましておめでとうございます(真顔)。


 虹花の着付けを終え、着物姿の彼女と共に家を出る遊羽。こちらはいつもの普段着だ。いつもではない普段着とは何だろうか。

 

 連れ立って歩く二人が向かうのは『アベシ神宮』。ネーミングセンス皆無だが、【ABC-ドラゴン・バスター】を象徴とし、【オベリスクの巨神兵】を祀っているそこそこ由緒正しき神社である。

 道行く人は虹花と同じく浴衣を来ていたり、おめかししている女性が多かった。浴衣を着た男性もいたが、そちらは少数だ。

 

 黒いジーパンにオレンジのTシャツといった装いの遊羽はそれらの人々には目もくれず、虹花と彼女の着る浴衣を見ていた。前を見ろ前を。

 赤い下地を白い花が彩り、腰に巻いている帯は朱色で、全体的に派手すぎない色合いだった。白い髪はお団子にしてカンザシで止めてある。

 男性達の視線を集め、ある者は彼女らしき人に叩かれ、ある者は歩みを止め、またある者は電柱にぶつかった。

 しかし、彼らが彼女に声をかけることはない。隣で遊羽が彼女にしか向けない穏やかな笑みを携え、時折人一人殺せそうな視線を周囲に振りまいているからだ。何より、虹花もまた遊羽の方を向いていて、光の加減で輝く左手の薬指の指輪が彼らを諦めさせていた。

 

 鳥居をくぐり、少々人の多い神社の中を真っ直ぐ進む。

 

「危ねぇ」

 

 参拝を終えたらしきカップルが前を見ていなかったため虹花にぶつかりそうになり、遊羽は腕を引いて彼女を抱き留め、それを回避する。

 

「あ、すみません!」

 

 謝罪してきた男性を黙って睨みつけ、何も言わずに虹花の手を引いて進む。

 

「ありがとうございます、遊羽」

 

「いや、気にしないでいい」

 

 彼に握られた腕を見て笑みを浮かべる虹花。その程度の触れ合いでさえ、彼らにとっては喜びであった。

 

 

 

 二度お辞儀して、パンパン、と柏手二つ。もう一度礼をして、ガランガランと濁った音の鈴を鳴らす。

 手を合わせて願い事を済ませると、おみくじを引きに行こうと石階段を下る。

 

「遊羽、何をお願いしたんですか?」

 

「そんなこと、言うまでもないだろ」

 

 指輪のある左手を絡ませてくる虹花に、遊羽は自分を抑えるためにも少しぶっきらぼうに返す。彼女の浴衣姿もあってか、少々頬が赤い。

 

「それでも、聞きたいんですよ」

 

「そうか」

 

 せーので言いましょう? という彼女の提案に頷き、石階段を降りきる。

 

「せーのっ」

 

「「来年も虹花(遊羽)と一緒にいられますように、(です)」」

 

 予定調和のように揃った言葉にお互い微笑み、周囲の目など気にせず歩き出す。『一生』と祈っても良かったのだが、そもそも【オベリスクの巨神兵】は   の神だ。*1願う対象として間違っている。

 

 『アベシ饅頭』を安く小さくした『ミニアベシ焼き』やその影響を受けて他の地域でも考案された『ヴィーウ煎餅』*2『クスィーゼ饅頭』*3などを売っている隣のおみくじの列に並ぼうとすると、声をかけられた。

 

「あれ、遊羽と真宮。やっぱり来てたんだね♪」

 

「あけましておめでとうございます、なのです」

 

 声の方向に顔を向ければ、軽く手を上げながらスマいる*4息吹と水色に【青眼の白龍】が描かれた浴衣姿で『クスィーゼ饅頭』を片手に持った手鞠がいた。

 

「あけましておめでとうございます、二人とも」

 

「今年も一年よろしくな、手鞠」

 

 二人に微笑む虹花と、息吹をスルーし手鞠に挨拶する遊羽。無視された息吹はその場でおいおいと泣き真似をして妹にド突かれた。

 

「全く、これだからお兄様は・・・・・・浴衣に対して何も言ってくれないし・・・・・・」

 

 それは小さい呟きだったが、ドラゴンである遊羽がそれを聞き逃すことはなく。

 

「浴衣、似合ってるぜ」

 

 言いながら、彼女の頭に手を置き、その髪を乱す。

 遊羽は身内に甘い。そして中学生の頃から知っていて、ドラゴン好きという共通点のある手鞠には、かなり甘い。

 

「あ、ありがとう、なのです・・・・・・」

 

 くすぐったそうにしてから、頬を軽く染めてそっぽを向く手鞠。それに遊羽は少しだけ笑みを浮かべて、手を離した。

 

「悪いな、虹花」

 

「いえ、問題ないですよ。さあ、おみくじを買いましょう」

 

 虹花は嫉妬した様子藻なく、ただ微笑んでいた。

 彼女は遊羽を信用しきっている。彼が自分より他人を優先することはないし、自分が彼の一番だとわかっている。それは自惚れでもなければ過信でもなく、ただ二人にとっての『事実』だった。

 

「中吉・・・・・・『探し物が見つかる』ですか」

 

「凶、『大切なものを失う』ねぇ・・・・・・」

 

 引いたおみくじの結果に首を傾げる虹花と、不快そうに眉を寄せる遊羽。だが所詮はおみくじだな、と切り捨てた。

 

「ゲッ、大凶!?」

 

「お兄様は日頃の行いが悪いから当然なのです。もちろん私は大吉なのです!」

 

 そんなバナナ、とガックリうなだれる息吹とふんすと鼻を鳴らす手鞠の声を聞きながら、おみくじを御神体から張ってある紐に縛り付ける。大切なものを失わないように、縛り付ける。

 

「遊羽?」

 

「・・・・・・ああ、悪い。少しボーッとしてた」

 

 おみくじの両端を掴んだままの遊羽に虹花が声をかけると、正気に戻ったようで彼女を振り返った。

 

「・・・・・・じゃ、帰るか」

 

「ええ、そうしましょうか」

 

 並んで歩き出す遊羽と虹花。慣れない下駄の彼女の左手を遊羽は少し乱雑に握った。

 

 大切なものを失わないと、強く決意しながら。

*1
この小説独自の設定。【ラーの翼神竜】は学業成就など成功の神、【オシリスの天空竜】は出会いなど縁結びの神。

*2
【VW-タイガー・カタパルト】のイラストが印字された煎餅。味のバリエーションが豊富。

*3
【XYZ-ドラゴン・キャノン】のイラストが印字された饅頭。粒餡派とこし餡派で日々論争が起きている。

*4
スマイルの動詞系。今考えた。




皆様、あけましておめでとうございます。去年は如何でしたか? 新ルールの発表、制限改訂、『ラッシュデュエル』という謎のデュエルと、色んなことがありましたね。
私個人としては、テストとか課題とか研究発表とか大掃除とか指揮官とか人類最後のマスターとか審神者とかで忙しかったです。後半は気にしないでください。

【スカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴン】、アレいいですよね。【ドラグニティ】でも【地獄の暴走召喚】使えば出せるの素晴らしい。
二月には【マシンナーズ】のストラクが発売されますが、順当に行けば次は【ドラグニティ】。今から楽しみですね。

今年も『遊戯王 デュエリスト・ストーリーズ』を宜しくお願いします。


・・・・・・更新遅れてすいませんでしたッ!


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彼らの現状

お久しぶりです皆様。お待たせしました。

内容覚えている人、いるのだろうか。


 決戦まで、残り4日となったその日。

 

 遊羽の(虹花との愛の巣)でデッキを組み終わった遊兎だが、自分に自信を持てない系男子の彼はこれでいいのだうかとカード達を見直す。【レスキューラビット】という汎用性はあるが中途半端なカード、それを『主軸』にすることは、とても難しい。【天威】を使おうにも特殊召喚した通常モンスターはターン終了時には破壊され、エクシーズ召喚などの素材にすれば【幻皇龍】などの通常モンスター限定サポートは受けられない。それらをどうにかするためのデッキだが、正直上手く回るのか不安でしかない。

 

「・・・・・・遊兎?」

 

 黙ってデッキを見つめる彼に、息吹は心配から声をかける。息吹は【オッドアイズ・アドバンス・ドラゴン】を軸にしたデッキを少し前から使っており、白紙になったカードも少なかった。そのため、ワンキル・ソリティア研究会の人脈を活かしてカードを集めることに尽力していたのだが。

 

「いや、なんでもない」

 

 彼の精霊、【オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン】が伏せっていることを、遊兎は聞いていた。息吹は、彼女を看病したい気持ちを抑えてここにいてくれているのだ。自分も不安がっている場合じゃないと、遊兎は首を振って答えた。

 

「そっか。なあ遊兎、これ、受け取ってくれないか?」

 

 自分の心情を悟らせない、柔らかい笑みで二枚のカードを差し出す息吹。二枚とも全く知らないカードだったが、どういったコンセプトのものかはイラストや効果からわかった。

 

「!? 息吹、これは?」

 

「いいからいいから」

 

 遊兎の質問に答えることなくグイグイとカードを押し付ける息吹。

 

「遊兎に使って欲しいんだよ。オレのデッキには合わないからさ♪」

 

 彼は、あっけらかんと笑って言った。遊兎はその笑顔に押され、カードを受け取る。

 

「なんだ遊兎、デッキ出来たのか? なら俺とデュエルしてくれ、今のデッキがどのくらい戦えるのか試したい」

 

 戦と共に少し休憩していた遊羽が、二人の会話を耳にしたのかディスクを腕に付け出した。じゃ、頑張って♪と言って肩を叩き休憩に入る息吹に戸惑いながらも、遊兎は歩き出した遊羽に続いて部屋を出た。

 

「・・・・・・それで、そっちは大丈夫なの?」

 

 息吹はなるべく普段と変わらない口調を心がけて戦へ振り向く。彼はテーブルの上にデッキを広げていた。

 それは、機械族の脳筋テーマである【サイバー・ドラゴン】。随分と思い切ったなと息吹は思うが、使っていなかっただけで少し前からカードは集めていたらしい。

 

「うん、デッキ作りは順調だよ。【機械族】は元から強いからね。後は細かい調整だけ」

 

 しらを切る戦に息吹は一つ息をついて、そうじゃなくて、と踏み込む。

 

「精神面での話。結構無理してるんじゃない?」

 

 元々、戦は自分の過去から、両親の死から目を背けていた。悲しい心を押さえつけて、「弱い」という単語に過剰反応することでそれを乗り越えたと自分を偽り、痛みを見ない振りしていた。心がある程度読める息吹は、それがよくわかる。

 

(ま、わかっていて放置していたオレも、どうしようもないろくでなしだけどね♪)

 

 その内なんとかなるだろう。そんな甘い見積もりは、彼の父親が姿を見せたことで砕け散った。死者の復活なんて有り得ない話だと思っていたが、虹花は【屍界のバンシー】の精霊であると同時に既に死んだ人(アンデット)でもある。その時点で、何か手を打っておくべきだった。

 

「・・・・・・大丈夫。ほら僕、自分の感情から目を背けるの、得意だしね」

 

 その笑みに無理を感じるのは、息吹だけだろうか。だが、それを考えてもどうしようもない。4日後には彼らと戦わねばならない。

 例えそれが、自分の死を受け入れる行為であっても。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 家の裏にあるデュエル場に移動し、お互い距離をとって睨み合う。

 遊兎は向かいの遊羽の顔をなにともなしに眺めた。虹花と過ごす時間が減っているためか、どこかやつれたような目や頬、しかし闘士の燃える瞳。もし虹花を失えば、彼は更に酷い状態になるのだろう。それは、嫌だった。

 

「・・・・・・いくぜ!」

 

「「デュエル!」」

 

如月遊羽

LP8000

 

月見遊兎

LP8000

 

 先攻となった遊羽は手札を見てわずかに目を細め、そして一枚のカードを手に取る。

 

「手札の【風霊媒師ウィン】の効果! 手札のモンスター一枚ごとコストにすることで、【WW-アイス・ベル】を手札に加えるぜ。そのまま効果でデッキの【WW-グラス・ベル】共々特殊召喚だ」

 

WW-アイス・ベル ☆3 チューナー 守備力1000

 

WW-グラス・ベル ☆4 守備力1500

 

 現れたのは彼に似つかわしくない魔女っ娘達が現れ、それぞれチェーンを組んで効果が発動する。鎖っていいよねとか考えてしまって末期症状がひどい。

 

「アイス・ベルの効果で500ダメージと、グラス・ベルの効果でデッキから【WW-スノウ・ベル】を手札に加えるぜ。そして特殊召喚だ」

 

月見遊兎

LP8000→7500

 

WW-スノウ・ベル ☆1 チューナー 守備力500

 

 アイス・ベルが氷塊を遊兎に投げつけ、グラス・ベルは箒を振るってスノウ・ベルを召喚する。使い魔か。

 

「グラス・ベルでアイス・ベルをチューニング、シンクロ召喚! 来い【クリアウィング・シンクロ・ドラゴン】! 更にスノウ・ベルをチューニング、シンクロ召喚。【クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン】!」

 

クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン ☆8 シンクロ 攻撃力3000

 

 舞い踊る水晶の竜。姿的にもステータス的にもふつくしい。

 

「ターンエンドだ」

 

 

如月遊羽

LP8000 手札3

 

□□□□□

□□□□□

 □ ク

□□□□□

□□□□□

 

月見遊兎

LP8000 手札5

 

ク:クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン

 

 

 遊兎のターン。彼は新たなデッキからカードを引く。

 

「・・・・・・(オレ)は手札から、【ゴブリンドバーグ】を通常召喚! 効果発動にチェーンして、【カゲトカゲ】の効果発動だ!」

 

「(ランク4で【No.39希望皇ホープ】から【SNo.39希望皇ホープ・ザ・ライトニング】はキツいが、攻撃力は上げておくか・・・・・・)クリスタルウィングの効果発動だ。それを無効にし、【カゲトカゲ】の攻撃力分攻撃力を得る」

 

 戦闘機に乗ったゴブリンの影から石竜子(トカゲ)が這い出ると、水晶竜がそれを爪で潰す。

 

クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン 攻撃力3000→

 

「【ゴブリンドバーグ】の効果で手札から【ヴェルズ・ヘリオローブ】を特殊召喚!」

 

ヴェルズ・ヘリオローブ ☆4 攻撃力1950

 

 シンセノキセウホ ダンズロク ルレサダリズキヒ リヨキツデ。ヴェルズ語でお送りします。

 

「【ゴブリンドバーグ】と【ヴェルズ・ヘリオローブ】でオーバーレイ! エクシーズ召喚! 来てくれ、【No.39希望皇ホープ】!」

 

No.39希望皇ホープ ★4 エクシーズ 攻撃力2500

 

 現れた金色の戦士に、やっぱりかと遊羽は眉をしかめる。

 

「ホープ一体でオーバーレイ! シャイニング・エクシーズ・チェンジ! 【SNo.39希望皇ホープ・ザ・ライトニング】!」

 

SNo.39希望皇ホープ・ザ・ライトニング ★5 攻撃力2500

 

 皆大好き大正義。【RUMシャイニング・フォース】のOCG化はまだだろうか。

 

「バトルだ! ライトニングでクリスタルウィングに攻撃! そしてライトニングの効果発動! オーバーレイユニットを二つ使って、攻撃力を5000にする!」

 

 そこはかとなくデジャビュを感じながら、遊羽は袈裟斬りにされるクリスタルウィングを見た。

 

如月遊羽

LP8000→7500

 

「ターンエンドだ!」

 

 

如月遊羽

LP7500 手札3

 

□□□□□

□□□□□

 ホ □

□□□□□

□□□□□

 

月見遊兎

LP8000 手札3

 

ホ:SNo.39希望皇ホープ・ザ・ライトニング

 

 

 お互い手札をあまり消費せず旧ルールに縛られながらのデュエル。ライトニングの下に【CNo.39希望皇ホープレイ】が重なっていないのはエクストラデッキに余裕がないからか。

 

「俺のターン。【竜の渓谷】を発動! 効果で手札一枚をコストにデッキから【ドラグニティ-ファランクス】を手札に加えるぜ。【調和の宝札】でファランクスをコストに二枚ドロー」

 

 流れるように入れ替わる遊羽の手札。【WW】はカード数が少ない分【ドラグニティ】の動きの邪魔になりにくい。

 

「【ドラグニティ-ドゥクス】を通常召喚だ。効果でファランクスを装備し装備解除で特殊召喚。更に風属性が二体以上いることで【WW-スノウ・ベル】を特殊召喚」

 

ドラグニティ-ドゥクス ☆4 攻撃力1500→1700

 

ドラグニティ-ファランクス ☆2 チューナー 守備力1100

 

WW-スノウ・ベル ☆1 チューナー 守備力500

 

 連続して展開される風属性達。【風霊媒師ウィン】の登場によって強化されたこのデッキは、その効果を活かすために風属性しか入っていない。

 

「ファランクスでドゥクスをチューニング、シンクロ召喚。【ドラグニティナイト-ガジャルグ】。ガジャルグの効果でデッキから【ドラグニティアームズ-レヴァテイン】を手札に加え、そのまま墓地へ」

 

「レヴが墓地に・・・・・・!」

 

 警戒した様子の遊兎に少し笑って、遊羽はすぐさま顔を引き締めた。

 

「スノウ・ベルでガジャルグをチューニング、シンクロ召喚。【クリアウィング・ファスト・ドラゴン】!」

 

クリアウィング・ファスト・ドラゴン ☆7 シンクロ ペンデュラム 攻撃力2500

 

 緑混じりの白竜は、ユーザが使っていたので息吹に探してもらったカードだ。使えるものは全て使っておきたい。

 

「ファストの効果発動だ。エクストラデッキから特殊召喚されたモンスター一体の効果を無効にし、攻撃力を0にする」

 

 白竜が雄叫びをあげ、それがライトニングへの重圧となってのしかかる。

 

SNo.39希望皇ホープ・ザ・ライトニング 攻撃力2500→0

 

 戦闘ではほぼ負けなしのライトニングも、メインフェイズでは非力だ。

 

「バトル、ファストでライトニングに攻撃だ」

 

「くっ!」

 

 ファストが飛翔し、その翼でライトニングを切り裂く。

 

月見遊兎

LP8000→5500

 

「もうやれることはねぇな。ターンエンドだ」

 

 

如月遊羽

LP7500 手札1

 

□□□□□

□□□□□竜

 □ フ

□□□□□

□□□□□

 

月見遊兎

LP5500 手札3

 

フ:クリアウィング・ファスト・ドラゴン

竜:竜の渓谷

 

 

 ターンの回った遊兎はカードを引き、そして遊羽を見る。

 

 切羽詰まって、常に気を張って、どこまでも真っ直ぐな彼は、きっとこのままだと折れてしまうだろう。虹花という支えを失ってしまえば、いとも簡単に壊れてしまう。

 

(だから・・・・・・(オレ)は、もっと強くなりたい。遊羽が(オレ)をどう思っていても関係ない、ただあいつがこれ以上無茶しないでいられるようにしたい)

 

 遊羽と息吹は、遊兎が初めて仲良くなれた人間だ。誰よりも人間らしい遊兎が、彼らを失いたくないと思うのは、当然だ。

 

「【レスキューラビット】を召喚、効果発動だ!」

 

ヴェルズ・ヘリオローブ ☆4 攻撃力1950

 

 兎に呼ばれ、遊兎に力を貸すべく現れる二体の戦士達。タシマエカヒ ハゴズルェヴ ハイカンコ。

 

「ヘリオローブ二体でオーバーレイ! 闇より出でし反逆の牙! 自由を求めし漆黒の翼! エクシーズ召喚! 来てくれ、【ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン】!」

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ★4 エクシーズ 攻撃力2500

 

 闇の牙持つ黒竜が、戦場のド真ん中で白竜と相対する。エクストラモンスターゾーンのためお互い横を向いていて大変そうだ。

 

「ダーク・リベリオンの効果発動! オーバーレイユニットを二つ使う。ファストの攻撃力を半分にして、その分攻撃力が上がる!」

 

「ファストの効果発動だ。ダーク・リベリオンの効果を無効にし、攻撃力を0にする」

 

 黒竜の放った霆を錐揉み回転でかわし、空気のブレスで傅かせる。

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン 攻撃力2500→0

 

「ああ、使うと思ったぜ!」

 

「あ? ッ、まさか・・・・・・」

 

 遊羽の脳裏に、一枚のカードが浮かぶ。はたして、それは的中した。

 

「【RUM幻影騎士団・ラウンチ】発動! ダーク・リベリオンをランクアップさせる!

 漆黒の闇より、亡霊達を癒やす永久(とわ)の鎮魂歌! 【ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン】!」

 

ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン ★5 エクシーズ 攻撃力3000

 

 ダーク・リベリオンの翼が七色に割れ、その身体には骨が浮き出る。ステンドグラスの彩りが、闇の中でただ輝いていた。

 

「ダーク・レクイエムの効果発動だ! オーバーレイユニットを一つ使い、ファスト・ドラゴンの効果を無効にし、攻撃力を0にする! そして、その分の攻撃力を得る!」

 

 威力を増した黒霆が、ファストに絡みつきその力を奪う。

 

クリアウィング・ファスト・ドラゴン 攻撃力2500→0

 

ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン 攻撃力3000→5500

 

「バトルだ! ダーク・レクイエムでファスト・ドラゴンに攻撃!」

 

 ステンドグラスの翼を広げ、ダーク・レクイエムは咆哮する。そして身をかがめ、そのアギトで白竜を刺し貫いた。

 

如月遊羽

LP7500→2000

 

 大きく減ったライフに、遊羽は顔を歪ませる。

 

(ファストの効果を使えば、レクイエムの効果で無効化されてエクシーズモンスターを出される、か・・・・・・)

 

 そのままエクストラデッキへ送られる【クリアウィング・ファスト・ドラゴン】。ペンデュラム召喚でなければ特殊召喚できなくなった。

 

「これでターンエンドだ!」

 

 

如月遊羽

LP2000 手札1

 

□□□□□

□□□□□竜

 ダ □

□□□□□

□□□□□

 

月見遊兎

LP5500 手札2

 

ダ:ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン

竜:竜の渓谷

 

 

 遊羽は己の残った手札を確認し、一度目を瞑ってから、ギンッと見開いた。

 

「俺はユーザと覇王とやらをぶっ飛ばさねぇとなんでな。こんなところじゃ負けられねぇ」

 

 そして、デッキに指をかける。使えるカードが減る中、魂を込めて作ったデッキ。ならば、それが応えてくれるのもまた必然。

 

「ドロー!」

 

 引いたカードを見て、遊羽は笑った。

 

「【貪欲な壺】を発動ッ! 【風霊媒師ウィン】【WW-アイス・ベル】【WW-グラス・ベル】【WW-スノウ・ベル】【ドラグニティ-ドゥクス】をデッキに戻し、二枚ドロー!」

 

 そして引いた二枚の内片方をそのままフィールドに出す。

 

「【簡易融合】を発動! エクストラデッキから【召喚獣ライディーン】を融合召喚!」

 

如月遊羽

LP2000→1000

 

召喚獣ライディーン ☆5 融合 守備力2400

 

 『1000』とパッケージに描かれたカップ麺にお湯が注がれ、それを現れたライディーンが正座して割り箸で食べ始める。シュールだ。

 

「ライディーンの効果発動、ダーク・レクイエムを裏側表示にする!」

 

「ッ、ダーク・レクイエムの効果発動! オーバーレイユニットを一つ使って、その効果を無効にして破壊する! そして、墓地から【ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン】を特殊召喚!」

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ★4 エクシーズ 攻撃力2500

 

 カップ麺を啜るライディーンをダーク・レクイエムが蹴り飛ばし、己の過去の姿を蘇生する。

 

「次だ、【竜の渓谷】の効果発動! 手札一枚をコストに、デッキから【ドラグニティ-ドゥクス】を手札に加える! そしてそのまま召喚、効果で【ドラグニティ-ファランクス】を装備!

 そしてドラグニティを装備したモンスター、ドゥクスを除外! 来い【ドラグニティアームズ-レヴァテイン】!」

 

ドラグニティアームズ-レヴァテイン ☆8 攻撃力2600

 

 大剣を構え、レヴがフィールドへ舞い出でる。

 

『私の効果発動だ。【ドラグニティ-ファランクス】を装備する』

 

「そして装備解除! レヴにファランクスをチューニング、シンクロ召喚! 神々打ち砕く大いなる神槍、【ドラグニティナイト-アスカロン】!」

 

ドラグニティナイト-アスカロン ☆10 シンクロ 攻撃力3300

 

 巨大な竜に、乗っているのは【ドラグニティ-ドゥクス】。息吹に探してもらったカードの一枚であり、【ドラグニティ】における切り札。

 

「アスカロンの効果発動! 墓地の【ドラグニティ】を除外し、相手モンスター一体を除外する! この効果にターン1制限はない!」

 

 アスカロンが二体の黒竜に突撃し、諸共吹き飛ばす。

 

「くっ、けど、それじゃ(オレ)のライフは削り切れない!」

 

 あるんだろう。遊兎は確信を持って言う。

 

「ああ、あるぜ! 【ドラグニティの神槍】をアスカロンに装備、その効果でデッキから【ドラグニティ-ブランディストック】をアスカロンに装備する!」

 

ドラグニティナイト-アスカロン 攻撃力3300→4300

 

 アスカロンの上で持つ槍が増えたドゥクスが慌てふためく。下の竜は呆れたように首を振った。

 

「バトルだ、アスカロンで二回攻撃! これでトドメだ!」

 

月見遊兎

LP5500→1200→0

 

「くっそー!」

 

 遊兎は叫び、遊羽はまだ改良が足らないと部屋に戻る。

 

 遊兎は少し余韻に浸ってから、食べ物でも買おうとコンビニに向かった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「報告します。如月遊羽ら四名は、ここ数日自身のデッキを改良することに専念しているようです。

 また、カードの白紙化現象ですが、現在解析中とのことです。わかったのは、白紙化しているのはいずれも精霊のカードで、かなり力の弱い部類だったようです」

 

 デュエルセキュリティの、とある室にて。

 鴻上式は、そのベッドで佇む青年に話した。

 

「・・・・・・例の、黒髪の少年の目撃情報は」

 

「ありません」

 

 そうか、と表情のない顔でベッドの主―――星河は頷いた。

 ベッドの横にある簡素な引き出しの上には彼のデッキが置かれ、一番上のカードは枠のみでイラストも文字もなかった。

 

「引き続き、調査を頼む。彼らに危険が及ばないよう、悪霊祓いの方もな」

 

「了解しました」

 

 セキュリティ最年少に当たる式はそう言って、医務室を出ていった。

 

「・・・・・・何かが、起きているのだろう」

 

 それが何かは、星河にはわからない。知る術も、力も失ってしまった。

 

「今の俺にできるのは、サポートが精々。なら、それに注力するしかないか」

 

 自嘲気味にそう笑って、星河は自身のデッキに触れた。

 

 嫌味なくらい月の輝く、綺麗な夜だった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 同時刻、如月家の屋上。

 

 レヴは一人、夜空を眺めていた。

 

(遊羽は、勝てるだろうか。彼らに)

 

 考えるのは、そのことばかりだ。

 

 自分という、大して強くない上に腐ることもあるようなカードを抱えて、そんなデッキで、勝てるだろうか。勝てたとして、ユーザ達は約束を守るだろうか。

 

(精霊を消すことが目的で、デュエルに負ければあっさり手を引く。そんな虫のいい話があるのだろうか)

 

 罠かもしれない。真の目的は、遊羽達の精霊力を奪うことで、精霊をこの世界から消すことを、続行するかもしれない。

 けれど、それでも。

 

(・・・・・・やるしかない、か)

 

 どの道、デュエルに応じなければ精霊は消されてしまうのだ。自分は消えてもいいが、虹花も巻き添えになって遊羽が悲しむことは避けたい。

 

 決戦まで、あと四日。レヴはその事実を実感すると、遊羽の様子を見るべく部屋へ戻った。




三ヶ月も投稿していない間に、色んなことが起きました。新作始めたり、新しいゲーム始めたり、課題テストで苦しんだり、他の作者のアカウントがロックされたり、コラボしたり。

あ、現在kndm様の「波動竜の少女」にてコラボさせていただいています。

ついでに「遊戯王 スプレッド・ストーリーズ」というどっかで見たことあるキャラクターがいる作品と
「遥か彼方の彼らが見えない」というOCG次元のssも書き始めました。

・・・・・・こっち更新しないで何やってるんだろう私。


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