幻想野球異変 (紗夜絶狼)
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第1章 集え幻想ナイン
第1話 二人の少女との出会い


八雲紫によって幻想郷に招かれた一人の元プロ野球選手、名前は「涌井三郎」愛称はサブロー。彼は外の世界で一躍時の人となったプロ野球選手だったが、とある理由で若くして引退した。まぁ〜それは本編で語ろうじゃないか、という訳で涌井三郎による幻想郷野球物語スタート


「う〜ん...ふぁ〜俺は寝ていたのか?」

 

サブローはゆっくりと目を開ける。

 

「というかここはどこだ?俺はベットで寝ていたはず...」

 

しかしどうやら俺が眠っていた場所は民家の縁側のだった。しかしここはどこなんだ?俺は辺りを見回す、すると目の前の光景にあ然とした。なんと九本の尻尾が生えた女性に二本の尻尾を生やした女の子が仲良く遊んでいた。サブローは言葉を失った。すると後ろから。

 

「ようやくお目覚めのようね」

 

「やっと起きたわね」

 

俺の耳に二人の女性の声が入ってきた。すぐさま振り向くとそこには導師服?を着た女性に紅白の巫女が立っていた。俺はすぐさま「誰なんだ君たちは!?」と驚きの声をあげた。すると導師服を着た女性が自己紹介を始めた。

 

「あら〜自己紹介が遅れたわね、私は八雲紫、貴方をこの幻想郷に連れてきた張本人よ」

 

八雲紫に続き隣の紅白の巫女も続けた。

 

「私は博麗霊夢。この幻想郷を守っている巫女よ」

 

八雲紫と博麗霊夢による簡単な自己紹介が終わり、次にサブローも自己紹介をした。

 

「俺は涌井三郎。先日引退した元プロ野球選手さ」

 

サブローも簡単に済ませた。すると八雲紫はこう続けた。

 

「涌井三郎、20✕✕年のドラフト会議にて幕張マリーンズにドラフト一位で入団。当時甲子園に四度出場し、高校通算89本を誇る左の大砲として世間の注目を浴びた。プロ野球選手となり一年目には144試合に出場し、3割30本100打点を記録。その年の新人王を獲得して、二年目の活躍を期待されたが、開幕戦にて頭部にデッドボールを受け頭蓋骨骨折の大怪我を負う。その後復帰したものの復活することが出来ずに20××年に事実上の引退をした悲しき大砲よね?」

 

八雲紫は俺の経歴を事細かに説明して見せた。霊夢は

 

「凄そうなのは分かったけど、この涌井三郎?が今回の異変の救世主なの?」

 

すると紫は指を指しながら「そうよ。そして涌井三郎さん貴方は今日から幻想郷で起きた野球異変の救世主なの!」とまるで王様が勇者に試練を与えるみたいに言った。すかさずサブローはこう返した。

 

「だがその野球異変?を解決するには俺の力が必要なのは分かった。だが具体的に何をすればいいんだ?」

 

少し考えて紫は返答した。

 

「簡単に言えば貴方が今日から野球チームのキャプテンとなりこの異変を解決するの!」

 

と声を高らかに上げて言った。

 

「いやいや待て待て、チームのキャプテンは分かったが肝心の他の選手は?監督は誰がするんだよ!?」

 

俺はすぐさま疑問を投げかけた。

 

「野球に必要なメンバー(サブローを覗いて)27人全員は予めこちらで選抜してあるわ。あと監督は私ね、もう少ししたらメンバーが来るはずよ。あと貴方にこれを渡しておくわ」

 

そういって紫はサブローにあるカードを手渡した。

 

「幻想郷ではスペルカードというものがあるのだけど、今回はそれが使えない異変だからそのプロ野球カードを使い解決して欲しいの」

 

紫はこう付け加えた。すると俺はすかさず

 

「いやいやまずスペルカードは何かを教えてくれよ!」

 

紫は簡潔に説明した。

 

「スペルカードは簡単に説明すると、その個人に与えられる必殺技カードみたいなものよ。あとさっきも言ったけど、この異変はスペルカードが使えないの、だからこの選手の魂が宿ったプロ野球カードをスペルカード代わりとしている。あとそのカードに描かれてる選手の能力は全盛期の時の能力だからかなり強いはずよ」

 

サブローは少々無理矢理感が半端ないと思ってはいたが自分を必要としてくれる人がいるのなら協力しようと八雲紫と博麗霊夢に伝えた。すると遠くから別の女性の声が響き渡ってきた。

 

「お〜い紫〜!お前に呼ばれたメンツを連れてきたぞ〜!」

 

サブローは声のした方を振り返るとそこには目を疑うような光景が広がっていた。




如何だったでしょうか?
幻想郷に突如現れた野球異変、八雲紫は外の世界から悲劇の大砲涌井三郎という元プロ野球選手を異変解決の救世主として連れてきました。ちなみに今更ですが主人公は涌井三郎です。
モデルは某ロッテ所属の涌○○章選手にOBのサ○○ー選手です。
ちなみに涌井三郎のポジションは外野手で能力はパワプロ方式で4AACBBCと化け物じみてます。今後どうなるかはお楽しみです。
あと自己紹介が遅れましたね。
私はやくもぜろ式と申します、表向きはコスプレイヤーとして活動してます。
この物語は東方project×野球という私が昔から書いてみたいと思っていたストーリーなんです。
当方初めての小説チャレンジのため至らない部分があるかと思いますが温かい目で見てくれたら嬉しいです。


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第2話 白黒の魔法使い

幻想郷野球物語第二話となります。魔理沙に宿りしプロ野球選手が発覚!?では短いかもですが本編へどぞ。


よく見ると白黒の魔女?のような女の子が、異変解決メンバーを連れてきたらしいが、メンバーが予想以上に個性豊かだった。明らかに鬼のような角が生えている長身の女性に、まるで子供のように小さい女の子に、手に包帯を巻いていたり、尻尾が生えていたりとメンバーが異様である...そんな中先程紫に呼びかけた白黒の女の子が俺に話しかけてきた。

 

「お前が紫の言ってた異変の救世主か?なんだか頼りない顔してるなw」

 

白黒魔女は笑い混じりに言ってきた。そしてその流れで自己紹介をしてきた。

 

「おっとすまない、私の名前を言わなきゃだな、私は霧雨魔理沙。魔法の森に住んでる魔法使いだぜ!よろしくな!」

 

「俺は涌井三郎だ、よろしくな!」

 

俺も名前だけだが挨拶を交わした。そして魔理沙にこう問いただした。

 

「ちなみに魔理沙も異変解決に協力してくれるメンバーの1人なのか?」

 

「そうだぜ?なんたって数々の異変を解決してきたのは霊夢と私なんだぜ?もちろん、この異変も解決するために来たんだ」

 

魔理沙は自慢そうに俺に言ってきた。とりあえず俺は、紫から渡されたプロ野球カードを魔理沙に渡した。すると、渡したカードが突然光輝いた。

 

「うわっ!なんだなんだ!?」

 

「なんだよこれは!」

 

「爆発とかしないよな」

 

俺と魔理沙は驚きのあまり声をあげた、すると紫が補足を説明してくれた。どうやらメンバーにカードを渡すと、なんの選手の能力なのかが分かるらしい。ようやくカードは発光するのを止め、普通のカードに戻った。

 

「さてさて魔理沙に宿ったプロ野球選手は誰かな〜?」

 

俺は内心ドキドキしながらカードを確認した。しかし次の瞬間言葉を失った...なんと魔理沙に宿ったのは名古屋ドラゴンズの松坂泰介投手!しかも埼玉時代の全盛期。驚きを隠せない俺に魔理沙は声をかけた。

 

「このカードに描かれてる選手はそんなに凄いのか?」

 

俺は興奮しながらすぐさま答えた。

 

「あぁ、凄いも何も日本の怪物だよ!全盛期には日本のエースとして世界大会にも出場した選手なんだよ」

 

サブローは続けざまにこう言った。

 

「155㎞越えのストレートに、切れ味抜群のスライダーとカーブなど、まさにエースと呼べる投手だよ」

 

魔理沙はそれを聞いて自慢気に

 

「なるほど、つまりこの魔理沙様に相応しいカードだな!」

 

魔理沙はご機嫌になっていた。とその前に魔理沙の連れてきたメンバーを紹介して貰わなきゃいけないんだった。

 

「魔理沙。その異変解決のために連れてきたメンバーを紹介してくれないか?」

 

その言葉を聞いて、本来の目的を忘れつつあった魔理沙は、すかさず俺に異変解決メンバーを紹介してくれた。




霧雨魔理沙との出会いで第2話は終了としました。こんな感じに仕上げてみましたが、もし感想や意見などがありましたら是非よろしくお願いしますm(_ _)m
次回ようやく異変解決メンバーの紹介に移ります。
涌井三郎に霧雨魔理沙、残りの二十六人は誰なんですかね〜
乞うご期待!!!!!

霧雨魔理沙
カード 松坂泰介(埼玉ライオンズ時代)
156㎞ コントロールD スタミナS
変化球
高速スライダー、カーブ、フォーク、縦カット、サークルチェンジ


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第3話 集結?魔理沙が連れてきた異変解決メンバー 前編

こんにちはやくもぜろ式です。
今回は紫に頼まれて魔理沙が幻想郷中から連れてきた異変解決メンバー(前編)を紹介します。異変解決メンバーは、旧作〜憑依華までのキャラを自分なりに厳選してみました。今回は六人を紹介します。さぁ〜この六人どんな選手の力が宿るんでしょうかね?


魔理沙は俺にメンバーを丁寧に紹介してくれた。

 

「まず一人目は星熊勇儀、地底の旧都に住んでいる鬼の四天王の一人だぜ」

 

サブローは察した。やっぱり最初見た鬼のような角は本物だったんだと...

 

「凄い本物の鬼だ...存在しないと思ってた...」

 

「大丈夫だ、ここにいる奴らはみんな人は襲わない奴らばかりだぜ?だから安心しな!」

 

「まぁ異変解決メンバーなんだから大丈夫だよな?」

 

サブローは安堵の息をついた。そしてサブローは星熊勇儀にカードを手渡した、すると再びカードは光を放ち元に戻る。カードを確認するとこちらも驚愕の選手だった。

 

「これは...元埼玉ライオンズのアレックス・ラブレラ!?」

 

「過去にシーズン55本塁打を記録したカリブの怪物。パワーのみならずアベレージも高い最強助っ人と名高い外国人選手...」

 

「とりあえず私にぴったりだな。私はパワーなら幻想郷トップクラスだからな」

 

サブローは驚きながらも魔理沙に他のメンバーを紹介してもらいつつ、メンバーにカードを渡していく。

 

「次は一気に二人紹介するぜ!紅魔館の門番の紅美鈴と、メイド長の十六夜咲夜だ」

 

「初めまして、紹介されました十六夜咲夜です」

 

「私は紅美鈴です、よろしくお願いしますねサブローさん」

 

サブローは二人にカードを手渡す。二人に宿ったのは、名古屋ドラゴンズの不動の二遊間の荒垣雅博選手と井畑弘和選手だった。咲夜が井畑選手で美鈴が荒垣選手と、紅魔の二遊間が完成した。

 

「二人にピッタリだよ。この2選手は、プロ野球史上最高の二遊間とも呼び声が高いんだ。君たちならきっと最強の二遊間が組めるよ」

 

「美鈴と二遊間?貴方サボらないでよね」

 

「いやいや流石に異変解決の時は寝ませんよ!」

 

「異変解決の時は?」

 

「ごめんなさい、冗談ですよ」

 

「とにかく喧嘩はやめてくれよ、この異変にはチームワークが大事なんだ」

 

サブローの一言で、咲夜と美鈴は落ち着いたみたいだ。

 

「魔理沙、次は誰なんだい?」

 

「私ですよ〜!!!」

 

魔理沙が紹介する前に飛び込んで来たのは黒い羽が生え天狗のような団扇を持った少女だった。

 

「初めましてサブローさん。私は清く正しいをモットーとしてます射命丸文と申します!是非ともサブローさんを取材させてください!」

 

「とりあえず落ち着いて、今は先に君の能力を知りたいからカードを渡すよ、取材なら最後に受けるから」

 

なんとか文の勢いを止め、俺は文にカードを渡す。

 

「これは元関西タイガースの赤い彗星こと紅星憲広選手じゃないか!実働年数は短かったけど、シーズン60盗塁をした程の脚力を持ち、打撃でも3割を打つリーディングヒッターだ」

 

「あやや〜、幻想郷最速の私に相応しいカードですね〜」

 

文は魔理沙同様、自慢そうにしていた。

 

「よし次は誰だい?」

 

「私ですかね?」

 

すると後ろの方から、照れくさそうな表情を浮かべて俺の前に来た。

 

「君の名前は?」

 

「私は寅丸星と言います。一応毘沙門天様の代理を務めています。よろしくお願いします!」

 

「毘沙門天ってあの戦いの神様の!?これは心強い!」

 

サブローは感情を高めつつもカードを手渡す。

 

「これは...現関西タイガースの鳥鷹敬選手だ。100打点を記録したことのある遊撃手だな」

 

「なにやら凄そうな選手ですが頑張ります!」

 

「よろしくな寅丸」

 

するとリズムよく魔理沙が「次は六人目だぜ!」と言ったので、すぐさま紹介に移る。

 

?「なら私の番だな」

 

何やら大人びた言葉が聞こえてきた。するとサブローは言葉を失った。なんと声の主は、俺が目覚めて最初に目にした尻尾が九本生えている女性だった。

 

「初めましてサブロー殿、私はそこに居られる紫様の式神である八雲藍と言う。よろしく頼む」

 

詳しく話を聞くと、どうやら藍は、幻想郷では最強の幼獣であり頭脳系らしい。そして俺は、藍にカードを手渡す。

 

「...!」

 

俺はまた目を疑った。

 

「これは元神宮スワローズの古畑敦也選手!ID野球の申し子と言われ攻守ともに、歴代トップクラスの最強捕手。しかも盗塁阻止率も非常に高い頭脳派捕手でもある」

 

「つまりこの私が、チームの要みたいなことだな」

 

「まぁそんな感じです。ではよろしくお願いします」

 

「あぁ、こちらこそ」

 

これでメンバーはサブローと魔理沙を含め八人が判明した。サブローは思った、この後どんなレジェンド選手が飛び出すのかと震えていた。

 

「驚け〜〜〜〜〜〜!!!」

 

「うわぁ〜!!なんだなんだ!?」

 

いきなり叫ぶような大きな声を出されて俺は腰を抜かした。一体この声の主の正体は何者なんだ?




どもどもチーム紹介を一話で終わらせたかったのですが、あまり長いのもな〜と思い三パートに分けて紹介することにしました。
さぁ〜て今からこの前編で紹介した星熊勇儀、十六夜咲夜、紅美鈴、射命丸文、寅丸星、八雲藍中々の豪華なメンバーですな〜

星熊勇儀
カード(元埼玉ライオンズ所属アレックス・ラブレラ選手)
ポジション 一塁手
能力
弾道4 ミートB パワーA 走力E 肩力S 守備D 耐エラーE

十六夜咲夜
カード(元名古屋ドラゴンズ所属井畑弘和選手)
ポジション 遊撃手 二塁手
能力
弾道2 ミートC パワーD 走力B 肩力B 守備S 耐エラーA

紅美鈴
カード(元名古屋ドラゴンズ所属荒垣雅博選手)
ポジション 二塁手 遊撃手 外野手
能力
弾道3 ミートB パワーD 走力A 肩力C 守備A 耐エラーB

射命丸文
カード(元関西タイガース所属紅星憲広選手)
ポジション 外野手
能力
弾道1 ミートB パワーE 走力S 肩力D 守備S 耐エラーC

寅丸星
カード(関西タイガース所属鳥鷹敬選手)
ポジション 遊撃手 二塁手 三塁手
能力
弾道3 ミートB パワーC 走力B 肩力B 守備B 耐エラーC

八雲藍
カード(元神宮スワローズ所属古畑敦也選手)
ポジション 捕手
能力
弾道3 ミートA パワーB 走力B 肩力S 守備A 耐エラーS

こうみると化け物ですよね(´・ω・`)


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第4話 集結?魔理沙が連れてきた異変解決メンバー 中編

さてさて今回は異変解決メンバー中編です。前回は豪華なメンツでしたが、今回も豪華なプロ野球選手の名前が登場します。今回は八人登場します。では前置きが長くなる前に本編に参りましょうεε=(((((ノ・ω・)ノ


あまりにも突然すぎて、俺は腰を抜かした。一体何が起こったのだろうか...

 

「やった〜驚いてくれた〜!!わちきお腹いっぱい」

 

目の前には、一目と、俺の身長の半分はある垂れてる舌がついてる紫色の番傘を担いだ女の子が立っていた。

 

「びっくりしたな〜、君は誰だ?」

 

「わちきは多々良小傘。立派な付喪神だぞ〜、怖いでしょ?」

 

「とりあえず、君も魔理沙が連れてきたメンバーなんだね?」

 

「そうだよ。急に魔理沙が、わちきをここまで来るようにと伝えられたから来たんだよ」

 

「とりあえず君にもこのカードを渡すね、あと俺は涌井三郎、サブローって呼んでくれよな」

 

「わかった!よろしくねサブローさん」

 

多々良小傘に宿ったカードは、現仙台イーグルスの今川敏晃選手。能力は幕張マリーンズ時代だ。

 

「今川選手か、幕張時代は日本シリーズとかの短期決戦に滅法強くて、意外性が高い選手なんだ」

 

「わちきの何の関係があるかは分からないけど、とにかく頑張るよ!」

 

小傘は満面な笑みに元気いっぱいな返事をした。すると。

 

「ようやく私の出番ね、来なさいうどんげ!」

 

「いやいや今私のって言いましたよね師匠!」

 

「とりあえず来なさい!あとで新薬の実験台にするわよ?」

 

「ひぃ〜!!今行きます〜!」

 

何やら一気に騒がしくなるこの場、魔理沙の後ろから二人の女性が出てきた。

 

「初めましてサブローさん、私は八意永琳という者です。永遠亭にて医者をしています、そして私の隣にいるのが」

 

「初めまして、私は鈴仙・優曇華院・イナバと言います!あと薬売りをしていて、師匠の弟子でもあります!よろしくお願いします!」

 

「医者に薬売り...これなら誰かが怪我をしても大丈夫だな、心強いよ。あと二人にカードも渡しておくよ」

 

八意永琳と鈴仙に宿ったカードも判明した。

 

「まずは八意先生、貴方のカードは、現関東ジャイアンツの阿倍野慎助選手。ある年は、関東ジャイアンツの捕手として活躍し、捕手ながら打率3割に100打点を記録して、その年のリーグ優勝にも貢献したんだ」

 

「なるほどね、藍とは違い攻撃的捕手って訳ね。面白いじゃないの」

 

「そして鈴仙なんだけど、君は現仙台イーグルスの則木昂広選手だ。能力は今まで紹介した中でもまだ若いけど、15勝を挙げていて、しかも奪三振数はリーグトップだった年の能力だ。まさにドクターKだね」

 

「つまり私は投手?というポジションですか。なんとか頑張ります!」

 

「二人でバッテリーも組めるから面白いかもな!」

 

なんとまさかの師弟バッテリーが偶然にも実現してしまった。これはまた期待が膨らむ展開となった。

 

「さてさて次は誰かな〜?なんかワクワクしてきたな〜」

 

「次は私だな」

 

この言葉を聞いたサブローは驚愕した。まだ近づいてもいないのに、威圧感のような感じが身体中を駆け巡る。

 

「どうしたんだいサブローよ、聞いているのか?」

 

ようやく謎の威圧感が消え顔を上げると、そこには緑色の長髪に、槍のような長い武器を持った足のない女性がいた。

 

「貴方は一体?」

 

「あぁ〜すまない、私は魅魔だ。普段は魔界に住んでいる者だよろしく頼む」

 

「魔界だって!?そんな世界ゲームでしか聞いた事ないぞ!?」

 

「まぁ〜話すと長くなるから、また機会があったら聞かせてやる。とりあえず私に宿るその選手とやらは一体誰なんだ?早くカードを渡してくれ」

 

「あっ...すまない」

 

サブローは魅魔にカードを手渡した。魅魔に宿ったのは、元神奈川ベイスターズの笹木主浩選手だ。優勝した年には、神奈川の大魔神として日本一に貢献し、後にメジャーにも挑戦した。

 

「笹木主浩選手か、まさかの大魔神。でもある意味魅魔様にピッタリだね」

 

「大魔神の守護神...なんだかうやむやするが、なんとか使いこなしてみせよう」

 

「絶対的守護神が決まったか、これはデカイな」

 

サブローは拳を握りしめ小さくだが「よし!」と言葉を漏らした

 

「魅魔様が済んだのかい?ならあたいの番だね」

 

そういうと大きな鎌を持った赤髪の死神?がこちらに歩いてきた。

 

「やぁ、あんたが四季様の言ってた涌井三郎だな?あたいは小野塚小町。一応死神だが本業は魂を運ぶ船頭さ」

 

「死神だって!?なんとなく君に宿るカードが分かったよ」

 

そんなサブローの予感は見事に的中した。小野塚小町に宿った選手は、元名古屋ドラゴンズの死神スライダーを操る岩崎仁紀選手だった。

 

「本来は抑えなんだが、守護神には魅魔様がいるからセットアッパーだな」

 

「なるほど死神繋がりだね、面白そうじゃん!よろしくなサブロー」

 

小町が挨拶を言い終わると同時に突然割り込むように。

 

「遅れました〜!」

 

まるで朝寝坊して、急いで教室に来た小学生の如く、慌てたように右腕全体に包帯を巻いた女性が、息を切らしながら俺の前に来た。

 

「すいません。ちょっと道に迷っていた子供を助けていて...」

 

どうやら道中で道に迷っていた子供がいたらしく、その子の道案内をしていたら約束の時間に遅れたらしい。

 

「とりあえずサブローさん初めまして、私は茨木華扇と申します。これでも仙人をしています」

 

「仙人か、ということはその右腕の包帯にも何か意味でもあるのかい?」

 

サブローは華扇の右腕の包帯について疑問を投げかけた。

 

「これは昔修行中に怪我をしてしまって、その時の傷を見られたくなくて巻いてるんです」

 

「なるほど〜仙人様も大変なんですね、とりあえずカードを渡しますね」

 

サブローは華扇にカードを手渡した。

 

「まさかまさかの浅上拓郎選手かよ」

 

浅上拓郎選手は、元名古屋ドラゴンズのセットアッパーである。最速は157㎞を誇り、決め球であるパームボールも魅力である。名古屋の黄金期を支えた選手の一人だ。

 

「これはセットアッパーまでもが豪華になったな」

 

「この選手から並々ならぬオーラを感じます。なんとか習得してみせます」

 

茨木華扇もやる気満々な表情を見せた。

 

「あう〜ん!!!」

 

「ん!?なんだ!」

 

突如聞こえた謎の鳴き声...果たしてその鳴き声の正体は一体!?




第4話を読んでいただきありがとうございました!今回も中々なメンバーでしたね。
先日引退した岩〇仁紀選手に浅尾〇也選手と中継ぎ陣が神ってますね!←忘れた頃に流行語を突っ込む。
今回は多々良小傘、八意永琳、鈴仙、魅魔、小野塚小町、茨木華扇とちょっと意外なメンバーも招集されてます。ではこの六人の能力を書いておきますね。

多々良小傘
カード(前幕張マリーンズ所属今川敏晃選手)
ポジション サード ファースト
能力
弾道3 ミートA パワーC 走力C 肩力C 守備C 耐エラーD

八意永琳
カード(関東ジャイアンツ所属阿倍野慎助選手)
ポジション 捕手 ファースト
能力
弾道4 ミートA パワーB 走力E 肩力B 守備B 耐エラーD

鈴仙・優曇華院・イナバ
カード(仙台イーグルス所属則木昂広選手)
ポジション 投手(先発)
能力
球速157㎞ コントロールC スタミナS
変化球
スライダー 縦スライダー カーブ
フォーク チェンジオブペース

魅魔
カード(元神奈川ベイスターズ所属笹木主浩選手)
ポジション 投手(抑え)
能力
球速161㎞ コントロールA スタミナE
変化球
カーブ フォーク SFF

小野塚小町
カード(元名古屋ドラゴンズ所属岩崎仁紀選手)
ポジション 投手(中継ぎ)
能力
球速151㎞ コントロールA スタミナE
変化球
高速スライダー シュート スクリュー

茨木華扇
カード(元中日ドラゴンズ所属浅上拓郎選手)
ポジション 投手(中継ぎ)
能力
球速156㎞ コントロールA スタミナE
変化球
スライダー パーム フォーク

こうやって書いていくと自分でも豪華過ぎて楽しくなっちゃいます!次の後編では残りのメンバーの能力が明らかになります。
続きを楽しみに待っていただけたら嬉しいです(・ω・)


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第5話 集結?魔理沙が連れてきた異変解決メンバー 後編

どもどもお待たせしました。今回はようやく異変解決メンバー後編つまり残りのメンバーが判明します。
今回も前回にも負けず劣らずの選手が登場しますよ〜
残り二十八人中の十四人は一体だれなのか!?
あと今回はちょっと長いのですがよろしくです。
では本編へ→≡┏( ^o^)┛


いきなり山彦のように響き渡る謎の鳴き声。「あう〜ん」とは何なのか?サブローが考えているといきなり駆け足でこちらに向かって来た二人の人物、一人は緑色の巻き髪に、勇儀とは少し違う角、そして赤いシャツに白い短パン。もう一人は白い髪に犬のような耳、そして剣と盾も持っている。あと尻尾も生えている。

 

「やっと着いた...霊夢さん、いくらなんでも嘘の時間を教えるのは酷いですよ」

 

「本当ですよ、なんで嘘の時間を教えたんですか?」

 

「いや〜勘違いよ、ごめんごめん」

 

「霊夢、この二人は?」

 

「あ〜この二人は緑の方が高麗野あうんで白いのが犬走椛よ」

 

「色で呼ぶなんて失礼ですよ!」

 

二人は息を合わせて霊夢に怒った。

 

「とにかく喧嘩だけは勘弁だ。とりあえず二人のカードだ」

 

あうんと椛にカードを手渡した。

 

「まず椛に宿ったのは辻彦丸選手、そしてあうんには英岡選手か」

 

辻彦丸、現埼玉ライオンズの監督である。だが選手としても輝かしい成績を持ち、80年代の埼玉の黄金期を支えた一人でもある。

 

英岡、現名古屋ドラゴンズの二軍コーチ。選手としては、鉄砲肩に俊足が武器で、幾度となく名古屋のピンチを救った名選手。

 

「これまた凄い...というか驚くのも慣れてしまった」

 

「あと十二人なんだが、この後色々やるみたいだから手短に紹介するぜ」

 

「そうか分かった、また個別に聞いておくよ」

 

「じゃあいくぜ?残りの十二人は、レミリア・スカーレット、今泉影狼、藤原妹紅、フランドール・スカーレット、風見幽香、二ッ岩マミゾウ、聖白蓮、魂魄妖夢、東風谷早苗、依神紫苑、永江衣玖、そして博麗霊夢だぜ!」

 

「凄い...全員見た目に個性が...って霊夢も!?」

 

サブローがこう言うのも無理はない。明らかにコウモリのような羽を話した小さい女の子に、天女のような羽衣やお坊さん?明らかに魂が浮いていて、刀を二本装着しているなど目を疑いたくなる。あと霊夢に驚いたのは、最初に出会った時にサブローに伝えてなかったからである。

 

「あっ言ってなかったっけ?幻想郷ではみんなこれが普通なのよ、あと私もメンバーだからよろしく」

 

「いや確かに良い奴とは聞いていたけど、なんというか...言葉が出ないよ。あとメンバーなら最初会った時に言ってよ!」

 

「とりあえず、今は集まったメンバーにカードを渡す方が先でしょ?」

 

「あぁ、そうだな」

 

サブローはとりあえず落ちつき、魔理沙が紹介した順にカードを渡していった。

 

レミリア・スカーレットにはガルビッシュ優選手

 

ガルビッシュ優、現メジャーリーガーの投手。日本プロ野球時代は、先発投手ながら防御率1割台、切れ味抜群のスライダーだけではなく、キレのあるストレートも魅力の一つでWBCCにて世界一の立役者だ。

 

今泉影狼には元関西タイガースの江典豊選手

江典豊選手、関西タイガースでは不動のサウスポーとして活躍しシーズン401奪三振は世界記録だ。変化球は2種類のカーブとシュートだけだが、ノビのあるストレートで打者を寝し伏せる。後に宮島などを渡り歩き優勝請負人になる。(今回は関西タイガース時代の能力)

 

藤原妹紅には元宮島カープの津山恒美選手

津山恒美選手、赤ヘル軍団の抑えを務め宮島の歴代守護神の中でも1番と言ってもいい投手だ。炎のストッパーと呼ばれストレートは、並みいる強打者を三振に仕留めてきた。残念ながら若くしてガンで亡くなってしまったが、宮島のファンは忘れないだろう。

 

フランドール・スカーレットには元宮島カープの金村友憲選手

金村友憲選手、主に関西のイメージが強いが実は宮島カープなんです。宮島時代には若くしてレギュラーを掴み、トリプルスリーを達成するなど打撃のみならず、走塁に関しても並以上の走力を持つ。後に関西にて2000本安打などを達成した。通称アニキ。(能力は宮島カープ時代)

 

風見幽香には、元神奈川ベイスターズのプルーン選手

プルーン選手、関東色が強いと思うが、実は最初は神奈川ベイスターズなのだ。神奈川時代から抑えとして頭角を現すが、制球力がなく安定に欠けていた。しかし関東に移籍し守護神になると、安定感を身に付け、持ち前のストレートは、当時の日本最速の161㎞をマークし、決め球のフォークで三振を量産した。ただ血気盛んなのが痛いところ。(能力は関東時代)

 

二ッ岩マミゾウには、元宮島カープの山根攻二選手

山根攻二選手、入団から引退まで宮島一筋で愛称は「ミスター赤ヘル」通算本塁打は500本を超え、通算打率も.290しかも広角に打てる高い打撃技術を持っている。とある年のWBCCには監督として日本を率いた監督でもある。

 

聖白蓮には、元札幌ファイターズの小笠村道大選手

小笠村道大選手、現在は名古屋の二軍監督だ。札幌、関東、名古屋を渡り歩いた札幌の侍で愛称「ガッツ」札幌時代には首位打者を獲得するなど札幌の顔となり「札幌の侍」といつしか呼ばれるようになった。トレードマークは髭。他にも誰もが真似したであろう独特な打法。アベレージだけではなく長打も打つ、チャンスに強い、守備も上手いと非の打ち所のない選手だ。(能力は札幌時代)

 

魂魄妖夢には、現幕張マリーンズの福田和也選手

福田和也選手、地元の高校から投手としてドラフト最下位でプロ入り。しかし投手では中々結果が出ず一塁手に転向する。すると打撃能力が開花し、首位打者を獲得し翌年には歴代二位のシーズン51二塁打を記録。その後は二度の日本一を経験。通算2000安打を達成した幕張の安打製造機だ。

 

東風谷早苗には、現博多ホークスの内澤聖一選手

内澤聖一選手、神奈川ベイスターズから博多ホークスに移籍した、日本プロ野球史上最高の右打者と言われた時期もあった。理由は右打者のシーズン打率が.378と、打率の高さ。それだけでもなく右打ちの技術が高く、引っ張りに流しと自在に操る。通算2000安打を達成した。(能力は神奈川ベイスターズ時代)

 

依神紫苑には、元埼玉ライオンズの西村文也選手

西村文也選手、埼玉では切れ味鋭い二種類のスライダーにチェンジアップ、フォークと多彩な変化球で三振を量産し、最多奪三振を獲得したこともあるエースだ。その一方で不運な投手と言われているのである。理由は過去に2度のノーヒットノーランを逃したのだ、しかも残りアウト1つで...。

 

永江衣玖には、元幕張マリーンズの古賀雅英選手

古賀雅英選手、幕張マリーンズ一筋の幕張の防波堤。過去には連続試合セーブの日本記録保持者であり、世界大会でもストッパーとして活躍した。武器は150㎞超えのストレートはもちろん、縦に大きく割れるスライダーに右打者に食い込む高速シュートなどがある。大荒れすることが少なく安定感も抜群である。

 

博麗霊夢には、元関西タイガースの猪狩慶選手

猪狩慶選手、関西、メジャー、なにわ、独立を渡り歩き今なお現役復帰を目指しているサウスポーである。ある年にはリーグトップの20勝を挙げるなど実力も抜群、変化球は主にチェンジアップが主だが、猪狩のチェンジアップは中々打てない魔球のようだと言わしめるほど。最速は148㎞のストレートも魅力である。

 

残りのメンバーの紹介が終わり、俺たちは団結を高めることにした。

 

「これで投手十二人、野手が俺を含め十六人全員だ」「異変とやらを解決するまではみんな頑張っていこう!」

 

「お〜!!!」

 

「んで〜チーム名はどうするのサブローさん?」

 

「チーム名はもう決めてあるんだ。チーム名は...幻想郷ドリームズ」

 

本当はチーム名はすぐに決めたんだが、俺は夢のチームという意味を込めて命名した。

 

「いいんじゃないかな?」

 

「いいチーム名ね、じゃあ明後日から幻想郷ドリームズの始動ってことで」

 

「明後日から?今日からじゃなくて?」

 

すっかりこれから始めるような雰囲気だったじゃないか、何か理由があるのか?

 

「今日はさすがに無理よ、道具の準備もあるし、みんなも用事があるのよ?」

 

確かに俺もグローブも、家に置きっぱなしだし、仕方ないか。

 

「なるほど、分かったよ、あと紫様」

 

「なにかしら?」

 

「明日その幻想郷に現れたという野球場に連れてってください!」

 

やはりどんなグラウンドなのかを確かめたいしな。

 

「あそこね〜確か明日試合があるらしいからいきましょうか」

 

「ありがとうございます!ちなみにチームはどこなんですか?また幻想郷のチームですか?」

 

「いいえ外の世界から来たチームよ」

 

「外の世界から?チーム名は?」

 

俺は次の瞬間耳を疑う言葉を聞くことになる。

 

「確か神戸ブルーウェーブに大阪バファローズってチームらしいわ、あと明日はないけど、北九州ホークスというチームもあるわ」

 

神戸ブルーウェーブに大阪バファローズ、そして北九州ホークス...この三チームに関係しているのは合併の際に消えた三チームだった...でも一体なぜ?

 

「紫様!その三チームは昔合併により消えたチームです!」

 

「らしいわね。多分今の世代のファンに忘れ去られてるから幻想入りしたのかもね」

 

「忘れさられる?」

 

「あら?言ってなかったかしら?ここ幻想郷は、外の世界から忘れ去られたものが入ってくる世界なの」

 

「だからか...」

 

確かに今の世代には、神戸ブルーウェーブに大阪バファローズを知ってるなんて少ないもんな。

 

「とにかく明日神戸スタジアムに行くわよ」

 

「それも合併の年に名前が消えて、今のなにわバファローズも年間数試合しか使っていない球場だ...」

 

「とりあえず明日にしましょう。今日はゆっくり休みなさい」「霊夢、貴方も休みなさい」

 

「分かったわ、じゃあみんな今日はありがとう、解散よ」「じゃあね、紫〜」

 

その一言を聞いた全員はそれぞれの家路に向かい帰っていった。

 

「では明日はよろしくお願いします。」

 

「分かったわ、では明日ね」「あとしばらくはこのマヨヒガに住んでもらうから早く風呂に入って来なさい」

 

「了解しました紫様」

 

「あと私は紫でいいわ」

 

「はい!」

 

その後俺は、八雲家の風呂に入り夕食を食べ床にいた。こうして幻想郷に来て初日の今日が終わった。明日は、何故この幻想郷にいるのか分からない神戸ブルーウェーブと大阪バファローズの試合を見に行く、果たしてどんな出来事が待っているのか...そしてどんな選手がいるのか...




いや〜思いのほか長くなってしまった(~ω~;)))
まさかの4000字超えは想定外...とまぁ〜今回の後編を持って異変解決メンバーが全員集まりました!実はメンバーの選出と宿す選手はめちゃ悩みました。


では残る十四人の異変解決メンバーの能力を貼っておきます

高麗野あうん
カード(元名古屋ドラゴンズ所属英岡選手)
ポジション 外野手
能力
弾道2 ミートE パワーE 走力A 肩力S 守備A 耐エラーA

犬走椛
カード(元埼玉ライオンズ所属辻彦丸選手)
ポジション 二塁手 遊撃手 一塁手
能力
弾道2 ミートA パワーE 走力A 肩力C 守備S 耐エラーS

レミリア・スカーレット
カード(前札幌ファイターズ所属ガルビッシュ優選手)
ポジション 投手(先発)
能力
球速157㎞ コントロールB スタミナS
変化球
ツーシーム 高速スライダー カットボール スローカーブ
スラーブ SFF サークルチェンジ

今泉影狼
カード(元関西タイガース所属江海苔豊選手)
ポジション 投手(先発)
能力
球速155㎞ コントロールB スタミナA
変化球
カーブ スラーブ シュート

藤原妹紅
カード(元宮島カープ所属津山恒美選手)
ポジション 投手(中継ぎ)
能力
球速153㎞ コントロールB スタミナD
変化球
フォーク カーブ

フランドール・スカーレット
カード(元宮島カープ所属金村友憲選手)
ポジション 外野手
能力
弾道3 ミートA パワーA 走力B 肩力C 守備C 耐エラーE

風見幽香
カード(元関東ジャイアンツ所属プルーン選手)
ポジション 投手(中継ぎ)
能力
球速161㎞ コントロールF スタミナE
変化球
フォーク カーブ 高速スライダー

二ッ岩マミゾウ
カード(元宮島カープ所属山根攻二選手)
ポジション 外野手
能力
弾道3 ミートB パワーA 走力C 肩力C 守備B 耐エラーC

聖白蓮
カード(元札幌ファイターズ所属小笠村道大選手)
ポジション 三塁手 一塁手
能力
弾道4 ミートA パワーA 走力B 肩力B 守備C 耐エラーD

魂魄妖夢
カード(現幕張マリーンズ所属福田和也選手)
ポジション 一塁手 外野手
能力
弾道3 ミートA パワーC 走力C 肩力C 守備C 耐エラーA

東風谷早苗
カード(前神奈川ベイスターズ所属内澤聖一選手)
ポジション 外野手 一塁手 二塁手 三塁手 遊撃手
能力
弾道3 ミートS パワーC 走力C 肩力D 守備D 耐エラーC

依神紫苑
カード(元埼玉ライオンズ所属西村文也選手)
ポジション 投手(先発)
能力
球速152㎞ コントロールD スタミナA
変化球
スライダー(変化量7) スライダー(変化量4)
チェンジアップ フォーク

永江衣玖
カード(元幕張マリーンズ所属古賀雅英選手)
ポジション 投手(中継ぎ)
能力
球速154㎞ コントロールA スタミナF
変化球
Vスライダー 高速シュート カットボール

博麗霊夢
カード(元関西タイガース所属猪狩慶選手)
ポジション 投手(先発)
能力
球速148㎞ コントロールB スタミナS
変化球
サークルチェンジ スライダー

※おまけ
涌井三郎(サブロー)
新人王獲得時の能力
弾道3 ミートA パワーA 走力B 肩力A 守備B 耐エラーB

八雲紫(監督だけど一応選手能力はある)
カード(元北九州ホークス所属野上克也)
ポジション 捕手
能力
弾道4 ミートB パワーS 走力E 肩力B 守備C 耐エラーA

長くなりましたがこんな感じの能力です。またこの先の話で背番号を決めたり打順を決めたりする予定です。次回も暇があれば書いていこうと思います!
では次回をお楽しみに待っていてくださいな(・ω・)


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第2章 忘れ去られし球団
第6話 衝撃!?幻想入りしたチームの正体


こんにちはです〜。今回はようやく試合編(幻想郷ドリームズはまだです)が始まります。初めて試合の描写を小説に書くので不安がありますがゆっくり読んでいってくださいな(・ω・)


メンバー発表が終わり一夜明けた今日、何気ない朝。そうだ、今日はようやく紫と共に試合を見に行くんだ。俺は布団から起き上がり、顔を洗い、紫と藍に橙そして俺の四人でちゃぶだいを囲んだ。朝食は藍が作ってくれた焼き魚定食を皆で食べている。幻想郷には海が無いらしく、そのためわざわざ川魚を釣りに、藍が妖怪の山?にある川に行くらしい。俺はあんまり川魚を食べたことは無かったが、この魚は、海にいる魚にも引けをとらない美味しさがある。幻想郷の川は、俺のいた日本とは違う、綺麗な水が流れてるんだろうな。

 

「どうだ?サブロー殿、お口にあったかな?」

 

「いやいや、これほど美味しい魚は産まれて初めて食べたよ!」

 

そりゃそうだ。生臭さもなく、口に入れた瞬間に広がる、香ばしさに塩のしょっぱさ。文句のつけようがない。

 

「それはよかった」

 

「あら〜そうなの?幻想郷では普通に出回ってるわよ?」

 

「私のいた世界ではこんな美味い魚は中々に高くて買えないんですよ...」

 

美味しくて高級な魚は、沢山食してきた。クロマグロに金目鯛、天然ウナギに高級ガニ・・・だけど比べ物にならいぐらいだ。ただの川魚がこんなにも旨いなんて、俺が生まれ育った田舎を思い出すな。

 

「外の世界は何かと大変らしいからね」

 

「橙はどうだ?美味しいか?」

 

「はい!藍しゃまの作ったお魚は美味しいです〜!」

 

「ちぇぇぇぇぇん!!!!!私は嬉しいよ!!!!!」

 

あれ~?藍って見た目は厳しそうな顔つきしてるのに、もしかして、俗に言う親バカの部類なのかな?

 

「紫、藍ってあんなんなのか?」

 

「橙の前ではいつもあんなんよ...ほんと親バカね」

 

「まぁ〜藍らしくていいじゃないですかw」

 

俺はそんな楽しい会話をしている間に、朝食を食べ終え、洗面台に食器を持っていき、試合を見に行くための身支度を済ませる。

 

「確か紫の話では、試合開始は朝の10時か、今の時間はっと」

 

俺は時間を確認すべく、近くにある壁掛け時計を見る。

 

「!?マジかよ!急がないと」

 

時計が指していた時刻は9時20分、確かマヨヒガから球場までは、歩いて一時間はかかると霊夢が言ってたな。と、慌てながら事を考えていると。

 

「準備は出来たかしら?早く出発するわよ」

 

振り向くと、身支度を終えた紫が庭にいた。格好は、昨日見た導師服ではなく、紫のロングスカートに、大きくフリルのついた日傘を持ちながら、こちらを見ていた。

 

「紫、早く球場に行かないと、試合開始時間に間に合わないぞ」

 

「大丈夫よ。私の能力を忘れたの?」

 

「あっ、そっか...」

 

そうこの八雲紫の能力は「境界を操る程度の能力」だから遠い場所でも「スキマ」を使えば簡単に移動できるのだ。

 

「ではサブローさん、私の出したスキマに入りなさい」

 

紫の横から、見るからに異世界に繋がっているにしか見えない、怪しい「スキマ」が出現した。

 

「本当に大丈夫なんだよな?」

 

「あら?信用してないの?」

 

「ただの確認だよ、じゃあお先に失礼」

 

俺は紫の言葉を信じ、足早にスキマに入り、球場に向かった。

 

「じゃあ藍、橙と一緒に留守番と結界の管理を任せたわ、夕方までには戻るからよろしくね」

 

「はい紫様、お任せ下さい」

 

「ゆかり様、行ってらっしゃいませ〜」

 

そう式神達に仕事を言いつけると、紫もスキマに姿を消した。そして俺達は、ここ「神戸スタジアム」に着いた。紫によると俺達の席は、一塁側の内野席のちょうど真ん中らしく、俺達は席に着き、グラウンドで練習をしている選手を眺めた。

 

「いや〜本物だ。偽物かと思ったけど本当に幻想入りしたんだ...」

 

「驚くのはまだ早いわよ?外野席を見てみなさい」

 

そう言われたので外野席に目を映すと、物凄い光景が広がっていた。

 

「昼間のデーゲームなのに、外野席がレフトにライトのどちらも満席だって!?」

 

俺は驚いた。確かあの当時の神戸は、ナイターでも席はガラ空きで、休日すらも観客は疎らと聞いている。なのに何故だ?

 

「あの観客達は特殊なの。試合がある日に限って表れるの、原因は多分だけど」

 

「多分当時のファンも幻想入りしたんでしょうね...」

 

そう紫と喋っていると、この球場のDJ(俗に言うウグイス嬢)のアナウンスが、満員で埋め尽くされたスタジアムに響き渡った。

 

「只今より、先攻の大阪バファローズ対、後攻の神戸ブルーウェーブの試合を行います!試合に先立ちまして、両チームのスターティングラインナップを発表致します」

 

「いよいよか〜、どんな選手がいるのか気になるな」

 

「先攻の大阪バファローズ」

 

アナウンスが終わると、電光掲示板にはこう表示せれていた。

 

「1番センター 大木直之 背番号7」

「2番セカンド 水谷栄二 背番号10」

「3番レフト ルー・ローズ 背番号20」

「4番サード 中村秀紀 背番号5」

「5番ライト 礒川文一 背番号8」

「6番ファースト 吉田夕二 背番号3」

「7番指名打者 川島健史 背番号61」

「8番ショート ショーン・ボルハート 背番号44」

「9番キャッチャー 的井哲也 背番号2」

「先発ピッチャー 岩見尚紀 背番号48」

「監督 梨味昌孝監督 背番号73」

 

大阪バファローズのスターティングメンバ―が発表され、俺は驚愕した。

 

「これは大阪のいてまえ打線!?」

 

いてまえ打線。20××年の大阪バファローズの打線を指す。この年のバファローズは、3番ローズが55本で本塁打王、4番の中村が打点王、5番の磯川が、得点圏打率4割5分と打ちまくる。そして6番吉田と7番川島も2桁本塁打と大暴れ。しかし、惜しくも日本一は逃してしまうが、バファローズ史上最強とも言われた打線だ。

 

「続きまして後攻の神戸ブルーウェーブ!!」

 

ブルーウェーブのスタメンはこうだ。

 

「1番ショート 塩味真 背番号31」

「2番セカンド 尾上公一 背番号52」

「3番センター 谷直樹 背番号10」

「4番レフト サー・ブラウン 背番号23」

「5番サード ホース・オーティズ 背番号8」

「6番ファースト 塩川和彦 背番号6」

「7番指名打者 山田武司 背番号5」

「8番ライト 葛城太郎 背番号3」

「9番キャッチャー 日上剛 背番号47」

「先発ピッチャー 味臺晟 背番号15」

「監督 カー・リー監督 背番号77」

 

大阪に続き、神戸のスターティングメンバーが、発表された。俺はまた驚愕した。

 

「こちらは神戸ブルーウェーブの暗黒期のオーダーじゃないか!?」

 

暗黒期の神戸ブルーウェーブ打線。当時の神戸ブルーウェーブ打線は、あの強打の北九州ホークス打線に、引けをとらない打線であり、チーム打率は3割に近くを記録。3番の谷直樹は打率.350に、4番ブラウン、5番オーティズ、7番山田武司は、2桁ホームランを記録するなど重量打線だ。

 

「どちらも重量打線であり、投手陣の成績が悪い時代の打線。神戸に至っては、チーム防御率が過去最低の5割を記録するなど、投手崩壊が激しかったらしい」

 

「でも研究すれば、相手に不足はないわよね?」

 

「まぁそうだが、試合が乱打戦になりそうだ」

 

「さて試合が始まるわ」

 

「1回の表、大阪バファローズの攻撃は、1番センター 大木直之 背番号7」

 

DJのアナウンスがまた球場に響き渡り、いよいよ注目の試合が始まった。大阪バファローズは、1番猛牛の核弾頭の大木選手。さて、1打席目からどんな攻撃をしてくるのか非常に楽しみである。




めっきり寒くなりましたね、いよいよ寒い寒い秋の始まりです。皆さんはコタツやストーブを出していますかね?
私はまだです、今年もストーブで寒いこの時期を乗りきるつもりです。今回は神戸ブルーウェーブと大阪バファローズの打線が明らかになりました。
そして今回も選手能力を貼っておきます

大阪バファローズ
オーダー順に

大木直之 背番号7
ポジション 外野手
能力
弾道3 ミートC パワーB 走力A 肩力C 守備B 耐エラーC

水谷栄二 背番号10
ポジション 二塁手 遊撃手 一塁手 三塁手
能力
弾道2 ミートC パワーD 走力C 肩力C 守備B 耐エラーB

ルー・ローズ 背番号20
ポジション 外野手
能力
弾道4 ミートB パワーS 走力C 肩力B 守備C 耐エラーE

中村秀紀 背番号5
ポジション 三塁手 一塁手 遊撃手 二塁手
能力
弾道4 ミートA パワーA 走力E 肩力B 守備B 耐エラーC

礒川文一 背番号8
ポジション 外野手 捕手
能力
弾道3 ミートA パワーB 走力C 肩力C 守備C 耐エラーD

吉田夕二 背番号3
ポジション 一塁手 三塁手 外野手
能力
弾道4 ミートD パワーA 走力D 肩力C 守備D 耐エラーE

川島健史 背番号61
ポジション 外野手 一塁手
能力
弾道4 ミートC パワーB 走力F 肩力D 守備E 耐エラーF

ショーン・ボルハ ート 背番号44
ポジション 遊撃手 二塁手 三塁手 一塁手
能力
弾道2 ミートE パワーD 走力D 肩力C 守備D 耐エラーC

的井哲也 背番号2
ポジション 捕手
能力
弾道3 ミートG パワーC 走力E 肩力A 守備D 耐エラーD

岩見尚紀 背番号48
ポジション 投手(先発)
能力
球速146㎞ コントロールB スタミナA
変化球
カーブ フォーク スライダー チェンジアップ
シュート カットボール

神戸ブルーウェーブ
オーダー順に

塩味真 背番号31
ポジション 遊撃手 三塁手 二塁手 一塁手
能力
弾道2 ミートB パワーC 走力C 肩力C 守備D 耐エラーD

尾上公一 背番号52
ポジション 遊撃手 二塁手 三塁手
能力
弾道2 ミートB パワーF 走力A 肩力D 守備B 耐エラーA

谷直樹 背番号10
ポジション 外野手 一塁手
能力
弾道3 ミートS パワーB 走力A 肩力C 守備B 耐エラーC

サー・ブラウン 背番号23
ポジション 外野手
能力
弾道4 ミートC パワーA 走力A 肩力A 守備C 耐エラーG

ホース・オーティズ 背番号8
ポジション 三塁手 一塁手 二塁手 遊撃手 外野手
能力
弾道4 ミートC パワーA 走力E 肩力B 守備E 耐エラーF

塩川和彦 背番号6
ポジション 一塁手 三塁手 外野手 捕手
能力
弾道3 ミートB パワーC 走力E 肩力C 守備E 耐エラーE

山田武司 背番号5
ポジション 一塁手 外野手
能力
弾道4 ミートD パワーA 走力F 肩力D 守備E 耐エラーF

葛城太郎 背番号3
ポジション 外野手 一塁手
能力
弾道3 ミートD パワーB 走力D 肩力C 守備D 耐エラーE

日上剛 背番号47
ポジション 捕手 一塁手
能力
弾道3 ミートD パワーB 走力D 肩力B 守備C 耐エラーD

味臺晟 背番号15
ポジション 投手(先発)
能力
球速152㎞ コントロールC スタミナS
変化球
高速スライダー スローカーブ サークルチェンジ
スクリュー

次回は試合に移ります。投稿はやる気次第で早くなったり遅くなったりになりますが次回もよろしくお願いします。


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第7話 神戸ブルーウェーブVS大阪バファローズ

先にお詫びを、前回の話で試合の描写を書くのを忘れておりました...m(_ _)m
しかし今回こそは大丈夫です!あとダイジェスト風に書いていきます。


DJのアナウンスを受け左の打席に入るのは、いてまえ打線の核弾頭、大木直之選手だ。するとレフトスタンドのファンと応援団から、大村選手に向けて大きな掛け声をする。

 

「かっ飛ばせ〜かっ飛ばせ〜大木!!」

 

「かっ飛ばせ〜かっ飛ばせ〜大木!かっ飛ばせ〜大木!」

 

掛け声が終わると、選手固有の応援歌を、応援団が吹くトランペットによって流れだす。

 

「磨きあげられたその足で〜踏み出せ核弾頭〜駆け抜けろ速く〜勝利への道を〜スピード上げて走り出せ〜ホームベース目指して〜!!」

 

「かっ飛ばせ〜大木!!神戸を倒せ〜お〜!!」

 

「駆け抜けろ速く〜...」

 

と、このような感じで選手を応援していくのが、日本のプロ野球独自の文化なのである。ちなみに、掛け声のかっ飛ばせ〜○○の部分は、球団によって違うのだ。

 

「スタンドからの凄い威圧感だ...投手はたまったもんじゃいよな...」

 

「ふむふむ、なるほどね〜」

 

俺の横にいる紫は、応援団に関心を持ったのか、一人でゆっくりと頷いていた。

 

大木に対するのは左投手の味臺晟。味臺晟が振りかぶって、キャッチャーの構えた所に投げ込む。それにタイミングを合わせ、大村が初球から鋭くバットを振り抜く、すると味臺晟が投げた球は、大木のバットから逃げるように変化し、空振りを取った。

 

「なんだ!?あのキレのある外に逃げるスライダーは...」

 

「確かにあれは凄そうね」

 

空振りをした大木は足場を鳴らし再び構え直す。マウンドの味臺晟も、キャッチャーとのサイン交換を終え、ゆっくりと振りかぶり投げた。すると球場に鈍い音が響く。

 

「バキッ!!!」

 

何か木製の物が折れた音のようだった。ふと大木のバットに視線を移すと、木製のバットが真っ二つに折れて転がっていた。一方の大木はというと、ボテボテのファーストゴロだった。

 

「多分味臺晟投手、クロスファイアーのストレートでねじ伏せたな」

 

「そのクロスファイアーってなんなの?」

 

どうやら紫は聞いたことが無かったみたいだった。クロスファイアーとは、左投手が左打者に向かってインコース、つまり内側に投げ込む投球術のこと。それを捉えようと大木選手が出したバットの根本に、ストレートが食い込みバットに亀裂が入り折れたのだ。

 

「なるほどね、色んな単語があるのね」

 

俺は紫に説明してるうちに、球場DJが次の打者のアナウンスをする。

 

「2番セカンド 水谷栄二 背番号10」

 

「次はいぶし銀の水谷選手だ」

 

その水谷は、2ストライク2ボールからの、5球目放られたストレートに詰まり、ショートゴロに終わる。

 

「さていよいよだぞ、いてまえ打線の怖い打者の登場だ」

 

「3番レフト ルー・ローズ 背番号20」

 

「ついに来たか...ローズ選手」

 

ローズは左打席に入るといつもの様に、約1kgはあるプロの木製バットを、顔よりも高くあげ、まるでボールを誘いこむかのようにバットを振る。その様子はまるで巨人だ。

しかし味臺晟はそれにも動じず強気にインコースを速球で押し込む。

 

「カウントはフルカウント、ここまでローズ選手に対して決め球のスライダーは使っていない、むしろストレートが多い」

 

「多分次に味臺晟が投げるのはスローカーブね」

 

「えっ?何故分かるんですか?」

 

「まぁ見れば分かるわ」

 

紫は配球を読んだかの如く、俺に味臺晟が次に投げる球種を教えた。そしてマウンドの味臺晟は振りかぶり投げた。俺は驚いた...球筋を見るとスローカーブだった。しかしいくらローズでも、あの速球を続けられたあとだ。緩急をつけたスローカーブは打てないだろうと思った、しかし俺は目の前の出来事に驚愕する。

 

「カーーーーーーーン!!!」

 

乾いた打球音が俺の耳に響く。なんとローズは、タイミングを完璧に崩されながらも、自慢のパワーだけでボールを飛ばした。

 

「ワァーーー!!!」

 

打球は大きな弧を描き、ブルーウェーブファンで染まるライトスタンドに飛び込んだ。スタンド中段に飛び込む大アーチだ。

 

「完璧にタイミングはズラされていたのに...ローズ選手はパワーだけでボールを飛ばしたのか」

 

「ね?言ったでしょ、スローカーブが来るって」

 

ローズのホームランもそうだが、紫の配球読みにも驚いた。ただ何故分かったのか?俺はすぐさま紫に問う。

 

「そういえば、なんで次にスローカーブを投げると思ったんだ?あそこは決め球の高速スライダーかと思ってたんだが」

 

「あ〜、あれはただの勘よ」

 

「勘だって!?確かに読み勝負の世界だが素人が読めるなんて...紫すごいよ」

 

「あら?それは褒めてるのかしらね?」

 

紫は軽く微笑んだ。不敵な笑みに見えたのは気のせいかな?

 

「4番サード 中村秀紀 背番号5」

 

注目の中村秀紀は、味臺晟の前に三球三振を喫した。その後中村秀紀にはヒットが無かった。

 

「次はブルーウェーブだな、注目はやはり谷直樹選手かな」

 

「私ちょっとお手洗いに行ってくるわ。だからしばらくは、偵察および研究よろしくね」

 

「ゆっくりでいいぞ、任せといてよ」

 

紫はそう言うと、球場にあるトイレに向かって歩いて行った。そしてブルーウェーブの攻撃が始まったが塩味に尾上と、岩見の前に2者連続三振と切られ、次の打者は谷直樹だ。

 

「谷選手は一体、どんなバッティングを見せてくれるのかな?」

 

マウンドの岩見は、独特の二段モーションから初球を投げた。球種はストレートで、アウトコースギリギリの所に向かっていく。並の打者なら見送るか、詰まらせての凡打だろう。しかしローズは違った。

 

「カーーーーン!!」

 

またも乾いた打球音が響く。

 

「ワァーーーー!!!」

 

なんと谷は、類い稀なるバットコントロールで、アウトコースギリギリの速球を完璧に捉え、ファンで埋まるライトスタンドに放り込んだ。

 

「バットコントロールが良いのは聞いてたけど、まさかこれ程なんて...普通あそこをホームランにするなんて難しいぞ...」

 

谷直樹のバットコントロールは、俺の想像以上だったみたいだ。

 

「4番レフト サー・ブラウン 背番号23」

 

4番のブラウンは、岩見の前に三振に倒れ、お互いに初回の攻撃を終えた。試合はその後、お互い1対1で迎えた8回の裏に、ブルーウェーブの葛城に、タイムリースリーベースが生まれ勝ち越しに成功し、そのまま神戸が逃げ切った。岩見、味臺晟の両投手は、9回を完投し、試合は神戸の勝利に終わった。

 

「ふぅ〜データ集め終了!そういえば紫があれから帰ってこないな、何してるんだろう?」

 

すると紫が、タイミング良く帰ってきた。

 

「ごめんなさいね、藍から急用で呼ばれて、片付けをしてたらこんな時間に」

 

「そうなのか。それは仕方ないよ、あとデータはちゃんと取っておいたよ」

 

「ありがとうサブローさん、じゃ帰りましょうか?」

 

「そうだな、紫、今日はありがとうな」

 

「いいのよ、気にしないで。これも異変解決に必要なことだからね」

 

こうして俺と紫は、神戸対大阪の試合を観戦し、紫のスキマからマヨヒガに帰った。

 

マヨヒガに移動中...

 

「ただいま〜」

 

「ただいま戻りました。いや〜疲れたよ」

 

「お帰りなさいませ、紫様にサブロー殿」

 

「お帰りなさいです。紫様、サブローさん!」

 

マヨヒガに帰ると、藍と橙が迎えてくれた。

 

「早速藍にデータを渡して頂戴」

 

俺は紫に言われて藍に今日のデータを渡す。

 

「確かに受け取ったぞ、明日の朝には出来るから待っていてくれ」

 

「早いな〜藍は仕事が早いよ」

 

「結界の管理に比べたらこんなこと容易いことさ」

 

「あ〜あとサブローさん?明日から練習を開始するわ。場所は人里にある、幻想入りしてきた練習場を使うわ」

 

「なるほど、とにかく今日は休もうかな」

 

今日の試合は9回に終わったが、試合時間が4時間30分と長かったのだ。

 

「とりあえずサブローさんはお風呂へお入りください、既に湯は沸かしてありますので」

 

「済まないな藍、ありがとう」

 

俺は今日の疲れを癒すために、藍が用意してくれた風呂に入る。湯船に浸かりながら、明日のことについて考えた。どのように練習するか、どうやって指示をするか、風呂でも考えることがいっぱいだったが、身体の疲れは抜けたようだ。

 

「さて、明日も早いって言ってたし頑張るか〜!!」

 

「うるさいわよ〜」

 

「あっ...すいません」

 

ついつい脱衣所で叫んでしまった。さてさて、明日からいよいよ幻想郷ドリームズの始動だが、正直不安もあるが、どうにかなるだろうと思ったサブローであった。




ここまで読んで頂きましてありがとうございます・:*+.\(( °ω° ))/.:+
今回は1回のみのダイジェストで書いてみた。そしてようやく次回から幻想郷ドリームズの始動です!
選手能力は強いが...おっとこれ以上はネタバレなんで教えないです(・ω・)
今回は選手固有の応援歌を貼っておきます。
(ブルーウェーブとバファローズスタメン出場選手のみ)

神戸ブルーウェーブ

塩味真

神戸の夢をかけて 青い空をめがけ
そして狙いは一つだ 星を掴め

尾上公一

気合いで決めるぜ 鋭いバッティング
俊足エンジン前回 塁を奪うぜ

谷直樹

1番
強気で進め 気力で勝ち誇れ
無敵の一撃を 勝利に向けて

2番
鍛えた闘志 黒バット託し
熱く燃えるハートで Vへと導け

サー・ブラウン

切れ味はバツグン 鋭いお前の持ち味
その名を広げろ サー・ブラウン

ホース・オーティズ

期待度はデカいぞ そう海を越えここへ
アスレチックスからロッキーズ ドミニカの星だ

塩川和彦

打つぜ塩川 ここで決めろ
球団一の 渋い男

山田武司

グラウンドに入ると 闘志燃やすぜ武司
打てば柵越え 止まらないぜ

葛城太郎

今この時に 決めてみせるぞ
鋭い打球 鮮やかに

日上剛

パワースイングに 気迫込めて
飛ばせ飛ばせ どこまでも

味臺晟

港町神戸に 嵐を巻き起こせ
勝利を呼ぶ一打 ここでドカンと

カー・リー監督

(情報不足のため現役時代の応援歌が分かりません...)

大阪バファローズ

大木直之

前奏 磨きあげられたその足で踏み出せ核弾頭
駆け抜けろ速く 勝利への道を
スピード上げて走り出せ ホームベース目指して

水谷栄二

気合いを入れて打つぞ(Hey!) 我らの栄二(Hey!)
栄二のバットが火を噴くぞ(Hey!) ホームラン

ルー・ローズ

今進め男ローズ この時に全てかけて
豪快なアーチを 勝利を待つスタンドへ

中村秀紀

我らの期待を そのバットに乗せて
ミラクルアーチを 決めろ秀紀

礒川文一

心熱く燃やせ(今だ〜!) 力込めて飛ばせ
敵を(叩け〜!)強打(かませ〜!) 勝利のために

吉田夕二

秘めたるその闘志 震わせて
今こそ今進め 敵を砕け

川島健史

前奏 ほとばしる激しき稲光
ここで決めたれ一打(オリャー!) 健史の一打
夢と希望を胸に秘め(トリャー!) 沸き立つスタンドへ

ショーン・ボルハート

前奏 〜♪歌詞無し
リストを利かせて 放て怒号の一撃を
敵を撃ち抜く お前のパワーを見せてやれ

的井哲也

鍛えし力で スタンドぶち込め
恐怖の男になれ 根性ど根性

岩見尚紀

ここで一発 大阪の星
アーチ描けよ 打つぞ岩見

梨味昌孝監督

コンニャク打法で ホームラン
エイトマン梨味 それホームラン

長くなりましたがここまで読んでいただき本当にありがとうございます(「`・ω・)「


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第3章 結成夢のオールスター
第8話 始動!幻想郷ドリームズ


いよいよ幻想郷ドリームズの始動となりました。今回は人里の外れにある練習場にて全体練習をする前の話となっております。
ではゆっくりしていってね。


俺が幻想郷に来てから3日目の朝がきた。小鳥が「チュンチュン」と鳴き、気持ちのいい朝を迎えた。俺はそんな小鳥の鳴き声を聞いて、ゆっくりと目覚めた。

 

「う〜ん...幻想郷にきて3日目だけど、こんなに気持ちよく寝れたのはいつ以来だろう」

 

「おっ、今日も早いなサブロー殿。気持ちよく寝れたかな?」

 

藍は、俺が寝ている部屋の襖を開けて話しかけてきた。多分俺がまだ寝ていると思い、起こしに来たんだろう。

 

「あぁ、久々だよ、こんなに気持ちの良い朝を迎えたのは」

 

「それはよかった。布団は片付けておくから、サブロー殿は先に朝食を食べてきてくれ、もう紫様と橙がいるはずだ。あと研究データなんだが、もう少し分析したいことがあるから、まだ待ってくれないか?」

 

「分かったよ、ありがとう藍」

 

俺は藍に礼を言って、紫と橙が朝食を食べている茶の間に向かった。

 

「おはようございます、紫に橙」

 

茶の間の襖を開け、朝の挨拶を交わす。

 

「あら〜おはようサブローさん、遅いから先に食べちゃったわよ」

 

「おはようございます、サブローさん」

 

既に紫と橙は、朝食を済ませていた。とりあえず俺も朝食を済ませ、洗面台に行き手を洗い、歯を磨いた。

 

「ふぅ〜、今日の朝食も美味しかったな〜。なんか今日からの練習、頑張れる気がするぞ」

 

すると茶の間から紫の声が聞こえた。

 

「サブローさん、準備が出来たなら出発するわよ」

 

どうやら俺の準備待ちらしい、急がなければ。俺は紫が用意してくれた、野球の練習着に着替えて、紫と藍と共にマヨヒガをあとにして練習場に向かった。

 

〜少女移動中〜

 

「到着したわよ、ここが私達の練習場よ」

 

「いやいや待て待て...ここが俺達が使う練習場!?」

 

俺は驚いた。何故なら、紫が練習場と言って案内したのは、地方球場に室内練習場と、想像以上に豪華すぎる設備だ。

 

「地方球場に室内練習場だって!?俺は総合練習場みたいな、4面ぐらいある広い所かと思ってたよ」

 

「やっぱり球団を持つなら、いい環境でやりたいでしょ?」

 

「それはそうだけど、まさか室内練習場までとは...」

 

「あっ、室内練習場なんだけど、主に投手陣のブルペンになるわ」

 

「なるほどつまり投手陣専用ってことか。でもチームの捕手って、藍と永琳先生だけだろ?バッテリーは組めても2組だけだし、他はどうするんだ?」

 

ブルペン捕手というのは、投手の投げる球をひたすら受け続ける捕手のことで、プロ野球やメジャーリーグでも、ブルペン捕手として活躍してる方は沢山いる。

 

「そのことに関しては考えてあるわ、あと少ししたら、メンバー全員と一緒にここに来るわ」

 

「まぁ策があるなら大丈夫なんだが」

 

俺は、紫には考えがあるんだと少々不安ながら頷いた。そんな話をしていると、向こうからメンバーが来たみたいだ。

 

〜少女集合中〜

 

「皆さんおはようございます。今日から幻想郷ドリームズが始動します、あと練習も今日から開始なので、頑張っていきましょう!」

 

「よろしくお願いします!」

 

俺は全員に、今日から幻想郷ドリームズが始動と宣言するあいさつも済ませた。するとまた向こうから誰かが来たみたいだ、よく見ると、顔を覆ってる被り物には「罪」と書かれている。

 

「まさか紫、あれがか?」

 

「えぇそうよ」

 

「なんか怖いんだが...」

 

「あれは罪袋って言って、人里に住んでいる一般人よ」

 

「はぁ...なるほど」

 

そして罪袋達が到着した、ざっと五十人位はいるみたいだ。すると紫は俺にこう説明した。

 

「この罪袋達には、異変が解決するまではブルペン捕手のみならず、グラウンド整備に打撃投手などの裏方をしてもらいます」

 

「ふむふむ、では罪袋さん。異変解決までよろしくお願いします」

 

「任せなあんちゃん!」

 

「紫様のためだからな!」

 

「やったるで〜!」

 

罪袋達は気合いが入りまくっているみたいで、それぞれが喜びを叫んだ。

 

「でも紫、ブルペン捕手を担当する罪袋は大丈夫なのか?ドリームズ投手陣の平均球速は150km前半だぞ?」

 

「あ〜それなら大丈夫よ、捕手に必要な能力は、それぞれに与えてるから心配は要らないわ」

 

「紫って凄いな...」

 

俺は小声で、改めて紫の凄さを体感した。

 

「そうだ紫、皆ユニフォームがないんだがどうするんだ?」

 

「ユニフォームはあるわよ、藍、みんなに配って頂戴」

 

「はい紫様」

 

紫に言われ、藍は手元にあるユニフォームを、皆に手渡していった。

 

「凄い!サイズがピッタリだし着やすいし動きやすい!」

 

「やっぱりアリスは頼りになるわね〜」

 

「アリス?衣装屋かなんかかい?」

 

「アリス・マーガトロイド。魔法使いで、人形や衣装を製作してるの」

 

「そうなのか...あとこのユニフォームなんだが、デザインも決めてたのか?」

 

「デザインは赤を基調として、黄色や黒があるわ。あとは人数分のヘルメットにバット、スパイク、グローブに大量のボールとかも用意したわ」

 

「...」

 

俺は言葉が出なかった。

 

「あとグローブなんだけど、個人のイメージカラーにしておいたから、単色とは限らないわよ」

 

「俺は黒と白・・・幕張マリーンズカラーだな」

 

「じゃあ今から皆、球場の中にある更衣室でユニフォームに着替えてきて頂戴。あと罪袋達は室内練習場でお願いね」

 

紫の言葉を聞いて、それぞれ更衣室に向かって行った。

 

〜少女&罪袋着替え中〜

 

「皆似合うじゃないか!」

 

「そうかな〜?あと凄く動きやすいのぜ」

 

「とりあえず早く始めましょうか」

 

「そうだな、じゃあ投手陣は俺が投げ方とか色々教えるよ。野手陣は紫に任せるよ」

 

俺と紫は話し合い、初日と二日目の指導担当を決めた。

 

「そして明日は、逆になるのね?」

 

「そういうことだ、じゃあ皆、今日一日頑張っていこう!」

 

俺の開始の合図とともに、投手陣と野手陣は、室内練習場と地方球場に分かれてそれぞれ練習を開始した。




あと少しでPocky&プリッツの日ですね、私はPocky派ですが皆さんはどっち派ですかね?
今回は幻想郷ドリームズの始動の様子を書きました。罪袋が登場しましたが、あくまで裏方なのであまり話には登場はしないと思います。
あと作中に出てきた、アリスが製作し紫がデザインしたユニフォームですが、近々Twitterとかで公表しようかと思います。
私のTwitterですよろしければフォローよろしくお願いしますm(_ _)m
→@tohoyakumo27

実は小学三年から中学三年まで、軟式野球をしていてポジションは外野手、一塁手、三塁手でした。高校時代には、ソフトボール部に所属してまして、全国大会に出場し、三年最後のインターハイでは、準優勝を経験してます。まぁ〜マネージャーでですがね(笑)
ポジションは外野手、一塁手、捕手で、二年まではベンチ入りしてましたが、怪我やベンチ入り出来ない日が続き、三年生になると選手兼マネージャーとして活動してましたw

それもあるのか、この小説を書いていると、昔ガムシャラに練習していた自分を思い出します...

あっ、ちなみに私が応援している球団はオリックス・バファローズで、好きな野手は小笠原道大選手に吉田正尚選手です。投手だと野茂英雄です。

まぁ〜私の生い立ちはさておき、次回ですがようやく練習編に移ります。更新頻度は落ちますが、また読んでいただけたら嬉しいです・:*+.\(( °ω° ))/.:+

あと文章に誤字やおかしな部分があれば教えてください、直ぐに修正致しますm(_ _)m

あっ!もちろん感想もお待ちしてます←実は気になる奴


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第9話 前途多難な投手陣

あけましておめでとうございますm(_ _)m
いや〜遅くなりました...私自身の都合により投稿が遅れてしまい申し訳ないです( ´・ω・` )
ようやく始動した幻想郷ドリームズ、指揮官である八雲紫とサブローが中心となりチームをまとめて行く形となっております。


「とりあえず最初は、ブルペンのある室内練習場に行くか」

 

紫と別れたサブローは、投手陣とブルペン捕手となる罪袋を引き連れ、室内練習場に向かった。

 

「とりあえず最初はストレッチから始めよう、まずは二人一組になってくれ」

 

俺が声をかけると、皆は二人一組を作った。霊夢と魔理沙ペア、影狼と妹紅ペア、幽香と鈴仙ペア、衣玖と華仙ペア、レミリアと魅魔ペア、小町と紫苑ペア。

 

「よーしペアを作ったな、じゃあまずは一人が開脚で座って、もう一人が軽く背中を押してくれ、じゃあはじめ!」

 

「いたたた!ちょっと魔理沙優しくしてよね!痛いんだから!」

 

「なーに言ってるんだ博麗の巫女が、ほらほら〜まだまだいくぜ〜」

 

「だから痛いってば〜!!!!」

 

俺は内心こう思っていた。(こりゃ先が思いやられるな...)グダグダだったが、なんとかストレッチを終え、俺は次の指示を出した。

 

「よし、皆大丈夫みたいだね。じゃあ次は軽く五分間のランニングやるから二列のを作って」

 

「サブローさんや、あたいはパスじゃだめかな?」

 

そう言ったのは、赤髪の死神である小野塚小町。紫によれば、重度のサボり魔らしい。

 

「ダメだ小町、しっかりしないと怪我をするスポーツだから、やらないといけないぞ。

俺も走るから大丈夫だ、走ってれば五分なんてあっという間さ」

 

「仕方ないな、分かったやるよ」

 

小町は渋々納得したみたいだ。サブローの先導のもと皆は、室内練習場で五分間ランニングした、掛け声は止めておいた。

 

「3...2...1...はい終了〜!皆お疲れ、次はキャッチボールだからスパイクに履き替えてくれ、グローブもはめてね」

 

だが皆は疲れていた。すでに息が上がる者もいるが、大丈夫の者もいた。

 

「疲れた〜、姉さんからもらったおにぎりを食べてからやらないと、力が出ない...」

 

紫苑にいたっては、ランニング後におにぎりなんて・・・このあと吐かないかな?

 

「普段は飛んでるから、こんな少し走っただけで息が上がるなんて...今後は少し歩くようにしようっと」

 

「だらしないな〜霊夢、私なんてまだ全然大丈夫だぜ?」

 

メンバーのほとんどは、普段は飛んで移動してるらしいから、あまり走りなれてないのだろう。その後、皆はスパイクを履き、グローブをはめて、キャッチボールの隊形を作った。

 

「あとからピッチングをするから、軽く放る程度で大丈夫だからね」

 

すると隣にいる鈴仙と魅魔が、ある疑問について喋り合っていた。

 

「初めて野球のボールを触りましたが、なんだか滑り易いですね?」

 

「だが紫によれば、こんなボールでも、投げれば力強い球になるのだろう?しかも変化するのだから驚きだ」

 

とまぁそんなこんなで、みんな不慣れではあるがキャッチボールを終えいよいよブルペン入りになる。

 

「一人一人に罪袋さんがつくから、好きな場所についてくれ」

 

ブルペンは十二個。外の世界のプロ野球の施設でも、十二個なんてまずない。紫は、河童である河城にとりに頼んで改造も施してもらったらしいが、これは目を疑うよ。

「あと皆の足元にロジンを置いたから、自由に使ってくれ」

 

すると影狼から質問が飛んできた。

 

「サブローさん、この白くて手のひらサイズの袋がろじん?なんですか?一体なんの効果があるの?」

 

そっか、ロジンと言っても皆初めて見るから分からないよな。よし、一から説明するか、と次の瞬間。

 

「多分触った感じからして滑り止めじゃないですかね?」

 

衣玖さんが答えてくれたが、なんで分かったんだろう?とりあえず進めるか。

 

「そう、衣玖さんの言うとおり、このロジンと言う白い粉がでる袋は、滑り止めなんだ」

 

「いつ使えばいいんだい?」

 

「それは自由だよ。基本的には、雨が降ってボールが濡れて滑りやすくなるからロジンをつける、あとは、コントロールミスが出来ない重要な場面とかで必要になるぐらいかな?」

 

「これ食べれるかな?」

 

「紫苑ダメだよ!それは食べれないからね!」

 

「そうなんだ、忘れないようにしなきゃ」

 

ロジンは何気ないけど結構大事な物なのである。そしてピッチング練習が始まった。皆スペルカードの影響で、フォームは最初から出来るようになってる、あとは変化球の操り方とかかな?いくらスペルカードがあるからと言って、個々の技術が必要になる。

 

「スバーン!!!!!」

 

「ズバーン!!!!!」

 

「ズバーン!!!!!」

 

いきなりブルペンに響き渡る物凄いミットの音、しかも3つも。音の主はレミリア(ガルビッシュ優)魅魔(笹木主浩)幽香(プルーン)どれも球速150後半〜160km前半。

 

「こんな感じかしらね〜」

 

「私のようなカリスマにかかれば、こんなもの造作もないわ」

 

「なるほど...こんな感じなのか」

 

いやいや、いきなり150オーバー投げといて反応薄っ!?次元が違いすぎる・・・

 

「これは負けてられないわね」

 

「ですね、私達も張りきらなくちゃ」

 

なんだか良い刺激剤になったみだいだなこれは...その後、みんな必死になって投げ込みをした。もちろん変化球の投げ方も教えながらね、そして俺はこう切り出した。

 

「そろそろかな...よーし一人ずつ俺が打席に立って球筋を見る。まずは霊夢から」

 

「はいはーい、分かったわよ」

 

霊夢はサブローに言われて、嫌々マウンドに立つ。

 

「とりあえず投げるわよ、しっかり見極めなさいよ」

 

「OK、全力で放ってきな!」




いやはや続きを上げるのが遅くなりましたm(_ _)m
私の住む地域では雪が降り始めまして、息を吐くと白い吐息が見れます。それはさておき、今回はサブローが、ドリームズ投手陣をまとめたり指導したりする話となりました。
次回はサブローが、どうなるのかな?次回もまた遅くなるかもですが暖かくお待ち頂けたら嬉しいです(・ω・)


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第10話 魅せる決め球

特大の室内練習場にあるブルペンにて、サブローは、ドリームズ投手陣の指導を行っている。そんな中サブローは、一人ずつの球筋を確認すると言い出した。最初に霊夢を指名したサブロー、果たしてどうなるのか...


「いくわよ〜夢想封印!」

 

そう宣言すると霊夢は、ゆっくりと右足をあげ、ゆったりとしたフォームから右足を踏み出し、左腕を思いっきり振り抜いた。白いボールは変化しながら、向かってきた。

 

「これはサークルチェンジか」

 

「バシーン!」

 

霊夢から放たれたボールは、ストライクゾーンを通過し、音をたてながらキャッチャーミットにおさまった。

 

(球速は100〜110前半ってところかな、よしあれをしてみるか)

 

「よーし変更だ」

 

「何が変更なの?いきなり」

 

突然のことに驚いた霊夢をしり目に、サブローは近くに置いてあったカバンから、ある物を取り出した。そして唐突な変更の意味を説明した。

 

「悪いな、いきなり変更とか言い出して、これを使って君達を試そうと思ってね」

 

そう言っておもむろに取り出したのは、何の変哲のないバットのグリップ部分だった。

 

「これは、紫がにとりに作ってもらった発明品で、その名もセンサーバットだ」

 

「おいおい、なんだそのせんさーばっとって?」

 

あまりにも不思議すぎて、魔理沙はたまらずサブローに問いかける。

 

「簡単に説明するとだな、このグリップの中心内部にセンサーがあって、これを素振りの要領で振ると、内蔵されてるセンサーがボールに反応して、そこからバットのどの部分に当たったかを分析してくれるんだ」

 

「なるほど〜、つまりお前の狙いは、一打席勝負って訳か?」

 

「その通りだ妹紅。さぁ霊夢、勝負をしようか」

 

「了解、絶対抑えるんだから」

 

俺と霊夢は、再び所定の位置につき、真剣一打席勝負が始まった。霊夢はもう一度振りかぶり、ゆったりしたフォームから、右足を踏み出し投げる。

 

「はぁぁぁぁぁぁ!」

 

勢いのある声とともに放たれたボールは、変化はせず、高めに真っすぐ向かってきた。どうやら霊夢は、初球にストレートを選んだようだ。

 

「コースはインハイか、しかしこれは高い、ボールだ」

 

俺は確信を持って初球を見逃した。ボールはインハイを通過し、キャッチャーミットの中に収まった。

 

「ストライク!」

 

キャッチャーの罪袋は、ストライクコールをした。そんなはずはないと俺は罪袋に確認した。

 

「今のはボールじゃないか?高いし」

 

「いや、今のはコースいっぱいのストライクやであんちゃん」

 

「なんだって!?」

 

嘘だろ・・・選球眼だけは自信があったのに、やっぱり衰えてるのか?

 

「あらら?どうしたのかしら、元プロさん?」

 

目を丸くしてる俺を挑発するような、霊夢の一言が聞こえてきた。多分だが、今ので勝てる自信がついたのだろう。

 

「まだまだ今からさ」

 

左打席に入り、息を整え、再度構えなおす。それから両者接戦で、カウントは2ボール2ストライクになり、サブローは追い込まれていた、そして。

 

「これで勝負ありよ!」

 

その言葉とともに、霊夢は渾身の一球を投げ込む。アウトローに沈み込む、ウイニングショット「夢想封印」だ。だがサブローはこれを待っていた。

 

「来たな、ずっと待ってたんだよ、この球をね!」

 

俺は右足を踏み込み、センサーバットを振り抜く。結果は...空振り。つまりボールに当てることが出来なかった。

 

「やった〜!私の勝ちね」

 

霊夢はマウンドの上で、喜びを爆発させていた。一方のサブローは、(なんだ、あのブレーキの効いたサークルチェンジは...プロの世界でも見たことがないぞ)内心俺は、更に焦った。(これはやばいことになりそうだ)だけど切り替えないと。

 

「次は・・・魔理沙だ」

 

俺はとにかく考えるのを後にして、とりあえず球種を見極めることにした。だが魔理沙は霊夢と違い、遅いストレートで二球連続ストライクをとり、あっという間に2ストライクになった。

 

(魔理沙はまだ変化球を使ってこない...なんかありそうだ)

 

「いくぜ〜!マスタースパーク!」

 

魔理沙の放ったマスタースパークは、俺が振りぬいたセンサーバットにかすらず通過した。(球速は156km!?しかもめちゃくちゃ伸びてきた)

 

「どうだ〜?この魔理沙様のマスタースパークは?打てないだろ?」

 

ニヤニヤしながら、魔理沙は俺を見ながら言ってきた。

 

「完敗だよ魔理沙。それじゃあ次は...」

 

こうして俺は、レミリアや妹紅など残り十名を順に見ていき、その後100球の投げ込みをさせて、今日の練習は終了した。

 

「はーい皆お疲れ様。多分もう少ししたら紫のグループも終わるから、暫く待ってくれ」

 

しばらくして、紫と野手陣が戻ってきた。皆全身泥だらけだった。

 

「皆いるわね、今日はお疲れ様。また明日同じ時間から練習だから、遅刻しちゃダメよ?」

 

「紫の言った事も大事だが、とにかくもう夕方だから、今日はしっかりと休んでくれ」

 

「はーい!」

 

皆疲れた声で返事をした。やはり初日からハード過ぎたかな?だが投手陣は比較的軽めだったはずだが・・・野手陣は一体どんな練習をしてたんだ?

 

「紫、野手陣はどんな練習をしたんだ?投手陣よりも疲れてなかったか?」

 

その原因はすぐに判明した。

 

「簡単なランニングに、バッティングと守備練習。あとは走塁にノック、そして最後に三十分間走よ?」

 

いやいやいや、流石に初日でその練習量はやりすぎる。

 

「紫・・・初日からそれは厳しすぎるよ」

 

「あら?そうかしら?皆妖怪だから壊れはしないわよ」

 

「でもダメだ!明日は投手陣を見るんだから、しっかりしてよね?」

 

「分かったわよ。気をつけるわ」

 

サブローは厳しすぎる野手陣のメニューに対し、紫に一喝を入れ、紫のスキマで藍と共にマヨヒガに帰った。

 

「おかえりなさいませ!ゆかりさま、らんしゃま、サブローさん!」

 

マヨヒガに帰ると橙が笑顔で迎えてくれた。そしてすぐさま藍に飛びついた。

 

「らんしゃま〜!ちぇんはちゃんとおるすばんできましたよ〜」

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!ちぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!一人でお留守番出来たなんて、とても偉いぞ〜!!!!!」

 

「偉いな〜橙は、あと藍の溺愛も相変わらずだなw」

 

「藍?あんまり恥ずかしい姿をサブローさんにみせないでよね?」

 

「大丈夫だよ紫、俺は構いませんしw」

 

俺は半分羨ましさもあったが、とりあえず笑っておいた。先にお風呂を済ませ、居候させてもらってる寝室にいき、今日霊夢達が投げた決め球の特徴を、藍からもらった冊子に、一言一句書き留めた。

 

「よーし、これを明日紫に渡して、投手陣のレベルアップに活かしてもらおう」

 

すると藍が寝室の襖を開け「サブロー殿、夕食の準備が出来たぞ」と、どうやら夕食の準備が出来たことを伝えに来てくれたらしい。

 

「分かったよ藍。今一緒行くよ」

 

俺は冊子を置き、茶の間に行き、四人での夕食を済ませて、庭で藍と一緒に素振した。

 

「ブン、ブン、ブン...」

 

「ブン、ブン、ブン...」

 

静かなマヨヒガの庭に、バットが空を切る音が二つ。そんな音の中、藍と俺は今日を振り返った。

 

「藍、野手陣の練習だけど、大丈夫だったかい?」

 

「大丈夫さ、と言いたいが、流石の私や勇儀でも疲れたよ...」

 

やっぱり案の定ってところだな。

 

「明日は俺が見るけど、今日みたいな厳しくするつもりはないいから安心してくれ」

 

「ははは、分かったよサブロー殿」

 

「じゃあ今日は250回振ったら終わろうか」

 

「うむ、そうするか。あっ、シャワーの準備は橙に頼んであるから、好きな時に入ってくれ、私はあとから浴びるよ」

 

「ありがとう藍」

 

俺は先に素振りを250回終え、藍に先に浴びると伝えシャワーを浴びた。その後軽くストレッチをして、紫が森近霖之助さんから貰ってきた、男性用の寝巻きを着て布団に入った。

 

「さぁ〜て、明日はどうなることやら」

 

そんなことを考えながら、疲れた体を休めるために、今日は早めに眠りについた。




どーも〜、最近成人式が終わりましたね〜、私の周りの方も成人になりましておめでたい気持ちでいっぱいです。私は来年なんですがねw
とまぁ今回は「魅せる決め球」というタイトルなんですが、決め球は各キャラのスペルカードからきてます。
下に十二人の決め球を貼っておきますね〜と。
(スペルカード名については異議があると思いますが申し訳ないですm(_ _)m)

博麗霊夢
決め球 「夢想封印」=サークルチェンジ
手元で想像以上のブレーキがかかるため、緩やかに落ちていく、なおサブロー曰く、手元でいきなり勢いが落ちたらしい。

霧雨魔理沙
決め球 「マスタースパーク」=ストレート
初速から終速まで球速が衰えないストレート、しかもマスタースパークは手元でホップするため、バットがボールの下を振るほど。

レミリア・スカーレット
決め球 「スピア・ザ・グングニル」=スラーブ
途中までストレートと同じ軌道だが、いきなり変化し始める厄介な決め球、ただ曲がり過ぎ注意である。

鈴仙・優曇華院・イナバ
決め球 「マインドストッパー」=フォーク
見た目はただのフォークだが、鈴仙のフォークは手元で鋭く落ちる。いきなりボールが勢いを無くしたかのように。

今泉影狼
決め球 「トライアングルファング」=ストレート
魔理沙程ではないが、ノビのあるストレート、ただ回転数は魔理沙より多いため、ホップ力はチーム1
あと決め球を投げる時になぜか「わお〜ん」と叫びます

依神紫苑
決め球 「超貧乏玉」=スライダー
切れ味抜群のスライダーなのだが、曲がり始めが早いため見破られやすいのと、球が軽いのが弱点。

藤原妹紅
決め球 「正直者の死」=ストレート
まるで、藤○球児のストレート並に伸びてくる+球質も重く当てると手が痺れる。

小野塚小町
決め球 「死者選別の鎌」=高速スライダー
140km後半の球速で曲がり始めてくるため、右バッターからすれば内角に食い込む、まるで刃物の如く切れ味が鋭い。

永江衣玖
決め球 「龍魚ドリル」=縦スライダー
通常の縦スライダーよりもゆったり落ちるため、バッターはタイミングを狂わされる、あと調子がいい時は、ホームベース上でワンバウンドする程。

茨木華扇
決め球 「ドラゴンズグロウル」=パーム
フォークも持っているが、ノビはフォークよりは無く球自体は通常のパームだが、中々手元に来ないため、空振りを取るのに最適だ。

風見幽香
決め球 「幻想郷の開花」=ストレート
チーム1の球の重さを誇り、球速以上の速さを感じる。

魅魔
決め球 「???」=フォーク
落差はチーム1。切れ味も最高で、現役のプロ野球選手でさえも、簡単に当てることは至難の業だ。

こんな感じの能力です。魅魔様は詮索不足で見つからないのか、元々ないのかなので「???」としてます。
次回はまた間が空きますが、お待ち頂けたら嬉しいですm(_ _)m


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第11話 マヨヒガでの騒ぎ

約1ヶ月ぶりの更新となります。今回は練習前のちょっとしたショートストーリーみたいな感じですのであしからずm(_ _)m
こちらの地方では、雪が降ってきましたが新作考えないとね。
ではゆっくり読んでいってね。


「にゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

「うわぁ!なんだなんだ?」

 

まるで断末魔のような叫び声が、朝のマヨヒガに響き渡る。もちろん俺も驚いて目を覚ました。

 

「声の正体は橙か、一体何があったんだ?」

 

俺は首を傾げながらも、足早に声のした台所に向かった。するとそこには割烹着姿の藍と橙、そして何故か床に落ちている焼き魚。

 

「橙、一体どうしたんだ?」

 

「あっ、どうやら起こしてしまったようだな」

 

「まぁ俺は大丈夫なんだが、それより橙は?」

 

「あぁ、橙のことなんだがこの通りなんだ」

 

「ふぇぇぇん...らんしゃまごめんなさい...」

 

「実はこうなったのには訳があるんだ」

 

藍から事情を聞いたところ、朝早くから藍は、朝食の魚を焼いていたらしいのだが、橙が俺のために魚を焼きたいと言い出したため、藍の付き添いのもと魚を焼いていた。そして盛り付ける際に、どうやら菜箸を使わずに直接手でやろうとしたらしく火傷をしたらしい。だから焼き魚が床に落ちてるらしい。

 

「なるほど...んまぁ〜俺は大丈夫だ」

 

「サブローさんごめんなさい...」

 

「大丈夫だよ橙」

 

「すまないなサブロー殿。今すぐ新しいのを作り直すから暫く待っていてくれ、ほら、橙はサブロー殿と一緒に居間に待っていなさい」

 

「はい、らんしゃま...」

 

「泣かなくてもいいよ、さぁいこうか」

 

俺は橙を連れて、茶の間に向かった。そこにはいつ来たのか紫が座っていた。

 

「あら〜?そっちは解決したの?」

 

「こっちはなんとかなったみたいだ」

 

「ゆかりさま...朝から騒いでしまってごめんなさい」

 

橙は座っていた紫に、騒ぎを起こしてしまったことを謝った。

 

「大丈夫よ、さぁとにかく二人とも座りなさい」

 

「ほら橙、紫も許してくれてるから一緒に食べてようか」

 

「はい、サブローさん」

 

すると台所から、藍が焼き魚を持ってやってきた。焼き魚はとても香ばしくて良い匂いだ、瞬く間に居間全体に広まった。

 

「お待たせして悪かったなサブロー殿、すまないが前失礼するぞ」

 

藍は俺の前に焼きたての焼き魚を置いたあとに、割烹着を脱いで自分の位置に座った。

 

「じゃあみんな自分の前に料理はあるわね?じゃあいただきましょうか」

 

「はい!ゆかりさま」

 

「そうしましょうか」

 

「ではみんなで...」

 

「いただきます!」

 

(朝からとんだハプニングがあって焦ったが、なんとか丸く収まって橙も落ち着いたみたいだし、よかったよかった)

 

「そうだサブローさん」

 

「ん?どうした紫?」

 

「異変解決のための試合の件だけど、初戦は大阪バファローズで試合は明後日ね」

 

「はい!?」

 

「いつ決まったんですか紫様!?」

 

紫の一言に、俺と藍は驚いて声をあげた。

 

「今日の朝決まったのよ、急にね」

 

「はへ?」

 

「今日の朝早くに、大阪バファローズの監督さんが霊夢とともにマヨヒガにきて、明後日試合をやりましょうって直で言いに来たのよ」

 

「だけど流石に早すぎるよ、だってまだ全体練習もしてないのに...」

 

「だから明日するのよ」

 

「はぁ...紫様は本当に困った人です」

 

「ははは、まぁでもやってみるし、今日の練習でも皆に話しておくよ」

 

なんと明後日のいきなり試合に驚きを隠せないサブローと藍、果たして明後日までにどうにかできるのだろうか。




はい今回はショートストーリーでした。ちょっとマヨヒガのドタバタを描いてみたくて、11話は日常みたいにしてみました。
次回も頑張りますのでよろしくお願いしますm(_ _)m


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第12話 紅美鈴の苦悩

マヨヒガを出発したサブロー、紫、藍はスキマで練習場に向かった。紫は投手陣、サブローと藍は野手陣と分かれていった。
そんな中、紅美鈴が困った顔をして、相談があると話しかけてきた。
一体美鈴に何があったのだろうか。


マヨヒガでのドタバタを終え、食事も済ませた俺達はスキマで、練習場のあるグラウンドに向かった。

 

「いや〜、まさか朝からドタバタするなんてねw」

 

「本当にすまない、寝ているところを起こしてしまい」

 

「大丈夫だよwもう気にしてないから」

 

藍はよほど気にしていたらしく、とても申し訳ないと頭を下げ続けたが、俺が大丈夫だよと言うと納得したみたいだ。

 

「ほら、そんなことしてる間に着いたわよ」

 

「ありがとうございます紫様」

 

「さぁ藍、急いで着替えて練習しようか!」

 

「そうだなサブロー殿」

 

三人はスキマから出ると紫は室内練習場、俺と藍はグラウンドに向かった。

 

〜男子更衣室〜

 

「ふぅ〜、とりあえず今日はランニングしてから、ストレッチして...」

 

俺は、今日の練習メニューを確認しながら着替えていると急に「バァン!!」と扉が開いた。

 

「なんだ!?」

 

俺はすぐさまドアの方を振り向くと、そこには、紅魔館の門番でチームの二塁手である紅美鈴が、ユニフォーム姿で立っていた。

 

「サブローさん!ちょっと相談にのって貰えませんか?」

 

「あの〜美鈴、俺まだ着替え中なんだよね...だから話はグラウンドでね?」

 

「あ〜!すいません!!ではグラウンドで待ってます!」

 

そう言うと美鈴はドアを閉めた。

「とにかく美鈴が困ってるみたいだし、早く着替えよう」

 

俺はとりあえず何事もなかったかのように着替え始めた。

 

〜少女着替え中〜

 

「とにかく、メニューの確認もしたし、そろそろグラウンドに行くか」

 

〜移動中〜

 

「遅いぞ〜サブロー!」

 

「まったく待たせすぎよ」

 

グラウンドに行くと、みんなが待っていてくれていた。

「いやいやすまない、ちょっとメニューの確認をしてたら遅れてしまってね、あと美鈴が来たからちょっとね」

 

「あやや〜?本当ですかね〜?」

 

「なんだよ文」

 

遅れた理由を話していると、横から文が割って入って来た。

 

「本当はナイスバディな美鈴さんと、その時に何かいやらしいことしてたんじゃないんですか?」

 

「変なこと言うなよ!そんなことないわ!」

 

「そうですよ!現に私は一番乗りでグラウンドに居たじゃないですか!」

 

文のデタラメを否定するため、俺と美鈴は文に向かって反論していた。

 

「天狗〜?練習が終わったら夜雀庵で飲もうな?」

 

「はひ〜!?それだけは勘弁してください勇儀さん〜!」

 

(そういえば天狗は鬼に頭があがらなかったんだったな、ありがとうございます勇儀さん)

 

「んじゃとりあえずまずは軽く足首、膝を屈指体操したら、五分間のランニングから始めようか」

 

「はーい!」 「了解〜!」 「やるか〜!」

 

それぞれが軽めのストレッチを終え、五分間ランニングへと向かったが、俺は美鈴を呼び止めた。

 

「あっ、美鈴」

 

「はいサブローさん」

 

「さっきの話を聞くからベンチで話そうか」

 

「分かりましたけど練習は?」

 

「悩んだ状態でやっても悪影響だろ?だからまずは練習よりも、話をするのが先決さ」

 

「分かりました」

 

「藍〜!しばらくは君がリーダーをやってくれ〜!メニューはベンチにあるからまた取りに来てくれ〜!」

 

「了解だサブロー殿!」

 

藍にしばらくリーダーを任せて、俺は美鈴と共にベンチに向かった。

 

〜移動中〜

 

ベンチに座った俺は隣に座っている美鈴に話かけた。

 

「それで美鈴、俺に相談って言うのは?」

 

「実は...ドリームズには私と同じポジションが一緒な椛さんがいるじゃないですか」

 

「うん、いるな」

 

「椛さんって私と違って選球眼があって、打撃、走塁、守備が上手いじゃないですか...昨日なんか私ミスばっかりしてしまって、だからレギュラーになれるか不安で」

 

実は美鈴昨日の紫の練習で、バッティングではヒット性の当たりはなし、ノックでもエラーが多かったりと散々だったらしい。対する椛は完璧にこなしていたとのこと。

 

「なるぼどな〜でも俺も同じだよ?」

 

「えっ、でもサブローさんはその道のプロなんですよね?」

 

「元だけどね」

 

「でも俺は美鈴がレギュラーになれる可能性があると思うな〜」

 

「なんでそう思うんですか?」

 

「俺は外野手だけど、パワーなら勇儀にひけをとらないフラン、足なら幻想郷最速の文、守備なら外野一のあうん、安定感は抜群のマミゾウ、勝負強さはピカイチの早苗...ある意味レギュラーが危ういのは俺だって一緒さ」

 

「でも...」

 

不安な顔をした美鈴にこう言った。

 

「練習なら今から俺が付きっきりで練習を見てやる」

 

「ありがたいのですが、それでは他の方々は」

 

「あぁ〜、付きっきりと言ってもずっとじゃないから大丈夫だよ」

 

「...分かりましたサブローさん」

 

「よし、分かったのなら軽くランニングしてみんなと合流してこい」

 

「はい!」

 

美鈴は迷いが吹っ切れたみたいで、足早にみんなのところに合流した。

 

「さてと、俺も早めに体を作らないといけないな、よし短ダッシュを二十本しとこう」

 

〜少女アップ中〜

 

「よしみんな集合してくれ!」

 

俺はアップを終えた野手陣を集合させて、次のメニューを伝えた。

 

「次はバッティングをしてもらう。罪袋達が既に二つセットしてくれたから一人三十球、あとその後ろでティーバッティングを五ヶ所で、あとは素振りをしてくれ、それを順番に回していく」

 

※二つセット。これは、プロ野球でバッティング練習に使われるゲージと言われる周りをネットなどで囲ったもの。

ティーバッティング。一人がボールをタイミングよく下から投げて、それをもう一人があらかじめ設置してあるネットに打つ練習である。

 

「サブローよ、順番はどうするんだい?」

 

「そうですよ、誰からやるんですか?」

 

勇儀と永琳がサブローに質問した。

 

「順番か...ならまずは勇儀と聖からバッティングをしてくれ、あとは...」

 

俺はみんなに指示を出して、なんとかみんな持ち場についた。

 

「よしそれじゃあ始め!罪袋さんよろしくお願いします!」

 

「はいよ〜あんちゃん!」

 

罪袋の元気な挨拶がスタートの合図となり、練習が開始された。俺はもちろん美鈴にマンツーマンで教えつつ、勇儀達のバッティングを見守る。すると最初から快音が響く。

 

「カーーーーーーーーーン!」「カーーーーーーーーーン!」

 

物凄い打球は、虹のような放物線を描きスタンドに入った。

 

「やっぱり凄いな〜勇儀のパワーは、聖の広角に打てる打撃も魅力的だ」

 

「そうですよね、やはり勇儀さんに聖さんも私と違ってパワーがあって、それにアピールポイントがあるのも羨ましいな〜...はぁ...」

 

溜め息混じりに美鈴の本音がこぼれた。

 

(そうとう昨日のことを引きづってるみたいだな、なんとかしないと)

 

「よし美鈴、こっちも始めるか!」

 

「はい!お願いします!」

 

「いくぞ、1、2、3!」

 

俺はいち、にの、さんのタイミングで下からボールを放った。

 

「ふん!」

 

「カン!」

 

美鈴はバットの先で捉えたため、小さめの乾いた音が鳴った。

 

「美鈴、これはしっかりとタイミングをとって打てばいいからね、よくボールを見て芯で捉えてみよう」

 

「はい!分かりました!」

 

「それじゃいくぞ、1、2、3...」

 

それから俺は美鈴と共にティーバッティングをしつつ、バッティングフォームの方も指導していった。まったく、四番候補の一人のフランや俊足好打の天狗コンビ、流し打ち中心の妖夢に咲夜と、クセのある打者だらけだから指導には苦労するよ。そしてついに最後の打者、美鈴と小傘だ。

 

「藍は小傘を見て欲しい、俺は美鈴を見るから」

 

「了解したサブロー殿」

 

俺は藍に小傘のバッティング指導をお願いして、付きっきりで美鈴を指導する。

 

「では行きますよ〜?」

 

罪袋は準備が出来たと聞いてきたので。

 

「よろしくお願いします」

 

俺は準備が出来てると答えた。そしてフリーバッティングが始まった。

 

「カーーーン!」

 

「カン!」

 

乾いた音が二つ響いたが明らかに音が違う。打球を見ると、小傘は左中間へのライナーを打っていたが、美鈴はボテボテのショートゴロだった。

 

「よし、小傘その調子だ」

 

「はっはい!」

 

藍に褒められた小傘は嬉しそうだったが、美鈴は少しばかり残念そうだった。彼女からしたらいいスイングをしていたが、打球はまったくだった。

 

「美鈴。ヒットを打つことをイメージするのも大事だけど、まずは芯で捉えることを意識してごらん?ティーのように」

 

「はい!」

 

しかしその後、美鈴からは快音が聞かれずフリーバッティングを終えた。そしてその後ノックのため、俺と美鈴達はそれぞれのポジションについた。

 

「まずは内野からいきまーす!」

 

「おーし!!!」

 

みんなの掛け声のもとノックがスタートした。

 

「カーン!」

 

「パシッ!」

 

「シュッ!」

 

「ナイスキャッチ!」

 

(よしよし、サードの聖と小傘、ショートの咲夜と寅丸も問題ないな)

 

そう思っていた矢先のことだった。

 

「次、紅美鈴お願いします!」

 

「カーン!」

 

(打球はショートバウンド。これは落ち着いて処理してっと...えっ...)

 

美鈴は落ち着いてショートバウンドを処理しようとした時だ。

 

(なっ!バウンドが変わって顔に!)

 

「痛っ!!!」

 

「バタっ...」

 

美鈴は「痛っ!」という言葉を発して、仰向けに倒れてしまった。

 

「美鈴!!」「美鈴さん!?」「中国門番!」

 

一瞬にしてグラウンドが凍りついた。

 

「...永琳先生!急いで美鈴を救護室に!あと担架を!」

 

俺は慌てず担架を要求した。

 

「鈴仙、救護室に担架があるから持ってきて頂戴!」

 

「はい!師匠!」

 

鈴仙はそう言うと駆け足で救護室に担架をとりにいった。永琳先生は美鈴のとこにきて、今の身体状態を調べた。

 

「美鈴?私よ大丈夫?」

 

「はい...なんとか大丈夫みたいです...」

 

「美鈴!動くなよ、今担架で救護室に運ぶからな」

 

すると永琳先生が俺にこう伝えた。

 

「多分だけど、軽い脳震とうだと思うわ」

 

「軽い脳震とうか...」

 

「師匠!持ってきました!」

 

鈴仙が担架を持ってきたので、俺は慌てず、鈴仙と一緒に美鈴を持ち上げて担架に乗せた。

 

「とりあえず美鈴の処置は任せてくれ、みんなは藍の指示のもと、練習を再開してくれ」

 

「お、おう...」

 

「よし、みんなポジションに戻ってくれ、再開するぞ」

 

藍は俺の指示通りノックを再開した。

 

「鈴仙いくぞ」

 

「はい、いきますよ」

 

「1、2の3!」

 

「慎重に運ばないと脳にダメージがいくからな」

 

「それじゃあ救護室に行くわよ」

俺と鈴仙、永琳先生と美鈴は救護室に向かった。




今回は美鈴の苦悩と言う話になります。
美鈴は椛と同じポジションなんですが、前日の練習にて失敗ばかりの美鈴と、淡々とこなす椛との差を感じたのでしょう。
次回その真相が明らかになりますのでお楽しみくださいm(_ _)m

P.S.最近Twitterのリプとかで(U^ω^)←この顔文字を添えることにハマってます


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第13話 交わされた約束

おまたせしました、1ヶ月ぶりの投稿となります。
藍華幻想録との並行で中々ペースが上がりませんが、新作は投稿していきますよ。
前回は、美鈴が救護室に運ばれたとけろで終わりました。果たして美鈴は大丈夫なのか?


「急いで、状況は一刻を争うわ」

 

「永琳先生。美鈴は大丈夫なんですか?」

 

「まだ分からないわ。詳しく見てみないと」

 

慌ただしい足音と言葉が交わされる球場内の通路、それほど美鈴の容態が良くないことを示していた。美鈴自身の意識はあるが、顔は痛みを我慢していたのか、しばし歯を食いしばっていた。

 

「さぁ着いたわよ、うどんげにサブローさん。慎重に美鈴をベッドに寝かせてちょうだい」

 

流石は医者の永琳先生、冷静沈着で適切な指示だ。しかし関心してる場合じゃない、今は美鈴の方が大事だ。

 

「サブローさん、1、2の3で担架からベッドへゆっくり移動させますよ」

 

「よし分かった」

 

「1、2の3!」

 

無事に美鈴をベッドに移したのを見て、すかさず永琳先生は再度美鈴を詳しく診察し始めた。脈拍に血圧測定、血液採取など脳震とうだけでなく、あらゆる可能性を考えている。

 

「顔は少し白い気がする...血圧も妖怪にしては低いし」

 

「師匠、美鈴さんの容態は?」

 

永琳先生の表情は少し曇っていた。やはり重い症状なのか?数秒おいて永琳先生が口を開いた。

 

「美鈴さんは大丈夫よ。血圧こそ低いけど軽い脳震とうよ。ただ右脚が少し痺れてるみたいね、妖怪だから2、3日で完全に回復するけど、これじゃ試合には間に合わないし出場するのは難しいわ」

 

美鈴は一命を取り留めたが、代償として右脚が一時的に麻痺してしまった。なんとかして美鈴を出せないかと永琳に提案したが、永琳は症状を悪くするだけとドクターストップをかけられた。

 

「サブローさんゴメンなさい。また私ヘマしちゃったみたいです、迷惑ばっかりかけちゃって」

 

美鈴は俺に迷惑かけてすいませんと、涙を目に溜め声を震わせながら言った。だが俺はこう答えた。

 

「美鈴、君が迷惑をかけたなんて誰も思ってないよ。なぜならあれは予測の出来ない事故だし、みんな美鈴を心配してるんだ」

 

「そうよ美鈴。私はチームドクターでもあるんだから迷惑なんてないわよ?私の仕事は医者、貴方を治すことは当たり前なのよ、だから迷惑ではないわ」

 

「そうですよ!みんな誰一人美鈴さんのことを迷惑だなんて思ってないですからね」

 

永琳先生と鈴仙も俺に続けて美鈴に声をかけた。やはりみんなの気持ちは同じなようだ。

 

「永琳先生に鈴仙、しばらく美鈴と二人だけにしてくれませんか?」

 

「分かったわサブローさん。じゃ鈴仙、みんなのもとへ合流するわよ」

 

「はい師匠」

 

永琳はサブローの要望を受け入れると、鈴仙と共に藍達がいるグラウンドに向かっていった。そして美鈴と二人きりになると直ぐに美鈴に問いかけた。

 

「美鈴、試合に出たいか?」

 

「私は...もちろん出たいですが、今の右脚じゃ満足にプレーが出来ません。なので...新しくメンバーを探してください」

 

「えっ?」

 

サブローは驚いた。試合に出たいか?と聞いて出れないとは分かったが、なんと新しいメンバーを探してと言われて思わず声が出てしまった。

 

「新しいメンバーだって?」

 

「はい、既に宛はあります。なので私の代わりにその方に出てもらってください、むちゃくちゃなんですがお願いします」

 

「美鈴・・・本当にいいのか?」

 

「はい、これもチームのためです。こればかりは仕方ないんですサブローさん」

 

俺は数十秒考えてから「...分かった、紫と相談してみる」と返した。

 

「あとその代わりのメンバーさんなんですが...」

 

美鈴はサブローにハッキリと情報を伝えた。

 

「なるほど・・・じゃあ俺からもお願いがある、絶対に脚を直して戻ってきてくれ」

 

「サブローさん...分かりましたこの紅美鈴必ずや戻ってきます!」

 

するといきなり救護室のドアが「ガチャ」と開いた。そこには紫がいた。

 

「話は聞かせてもらったわ美鈴。サブローさん、今日の夜その人物のいる場所に行くわよ」

 

「分かったよ紫」

 

「じゃあ練習に戻りましょうか、美鈴は紅魔館に帰りなさい。今小悪魔のこあが向かってるらしいから」

 

「はい紫さん、ありがとうございます」

 

「美鈴、絶対約束を守るからな」

 

美鈴にそう言い残すと、紫と共に救護室をあとにした。だがグラウンドへ向かうサブローの姿はどこか寂しいような雰囲気が漂っていた。

一方救護室では、美鈴が小悪魔の迎えを待っていた。すると救護室のドアがまた「ガチャ」と開き、紫が呼んだ小悪魔のこあが美鈴を迎えに来た。

 

「美鈴さん、紫さんから連絡を受けてきましたが大丈夫ですか?」

 

「こあさん、私は大丈夫です。ただ右脚が麻痺してしまっていて...」

 

「分かりました。では私からパチュリー様に、転送呪文で紅魔館に転送してくださいと伝えますから一緒に帰りますよ」

 

「ありがとうございます」

 

「礼は皆さんに言うべきですよ美鈴さん、ほら準備が出来たみたいなんでいきますよ」

 

「分かりました。こあさん、ちょっと肩を貸してくれませんかね?」

 

こあの肩を借りようやく美鈴は立ち上がる、そして転送されかける直前に小声で「...これでよかったんですよねサブローさん。やはり私は縁の下の力持ちが似合うのですから」と呟いた。

 

「美鈴さん、なにか言いましたか?」

 

こあは気になり、すぐに美鈴に聞くが美鈴は「なんでもないですよ、さぁ帰りましょう紅魔館へ」と言った。

 

(ふふ、美鈴さんやはり、サブローさんのことを想っているんだろうな〜)

 

救護室に現れた転送呪文の魔法陣から放たれる眩い光の中、美鈴とこあは紅魔館へ帰って行った。




いかがでしたでしょうか?
まさかの美鈴が離脱となりました、そして美鈴が言った新しいメンバーとは一体誰なのかご期待ください。
ちなみに実際脳震とうはたいへん危険です、軽くても麻痺する場合があるらしいですので早めに病院に行きましょう。
次回はまた遅くなるかもですがお待ちいただけましたら幸いです。


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第14話 緑の稲妻少女

すっかり冬も終わり、春の訪れを感じますよね。しかもセンバツ野球の開幕に、プロ野球の開幕が近づく球春でもあります。とまぁこんな感じではありますが、本編始まります。


紅美鈴の離脱によりメンバーを一人失ったドリームズ。チーム内には困惑のムードが流れて始めていた。美鈴はチームのムードメーカー的な存在で、誰よりも一生懸命、誰よりも汗を流し、誰よりも努力家。サブローは美鈴の苦悩、そして涙を知っていたため悔しさがこみあげてきた。そんな気持ちの中俺はグラウンドに、紫は室内の方へ向かった。グラウンドでは中断していたノックが終わりかけていた。

 

「ラスト!あうん、ライトバックホームだ」

 

「はい、お願いします!」

 

「カーーーン!!」

 

ノッカーの罪袋がライトのあうんに向けて鋭く早いゴロを打つ。打球はバックホーム送球するのに完璧な打球だ。あうんは上体を低くし素早く打球の正面に入り捕球態勢を作る、鋭い打球はグラブにおさまると同時に、グラブを持ちあげ上体も起こす、そしてキャッチャーである藍のグラブに向けて、矢のような送球をする。低い送球はあっという間に藍のミットに収まる。

 

「よーしノックは終わりだ。各自休息を取ってから次のメニューに移ってくれ」

 

「はーい」

 

藍の一声によりようやくノックが終わり、皆はベンチに引き上げた。そのタイミングで俺は藍に声をかけた。

 

「待たせて悪かったな藍」

 

「あっ、サブロー殿。それで美鈴の具合はどうだったんだ?」

 

俺は美鈴の状態と、今後の試合へは出ずにメンバーから離脱したこと、そして新たなメンバーを追加で招集する事を伝えた。もちろんこれは紫の指示ではなく、美鈴自身の判断ということも。

 

「なるほど・・・美鈴がそんなことを」

 

「今日の夜紫とその人物のところに行くんだが、藍はどうする?」

 

「行きたいのは山々なんだが、私は仕事や家事があるから行けないんだ」

 

(そういえば藍には結界の管理とかがあったんだっけな、なら仕方ない、紫と俺だけで行くしかないか)

 

「そうだったな、すまない。なら紫と一緒に行くわ」

 

「あぁ、そうしてくれるとありがたい。とりあえず今は練習に集中しよう」

 

「よし、やるか」

 

この後俺たちは、実践練習に走塁練習、ランニングなどをこなしていき今日の全体練習を終えた。それぞれ更衣室で着替えてから、紫に投手陣と合流した。

 

「皆さんお疲れ様でした。今日は大切なお知らせがあります、明後日の夜18時より、人里近くにある神戸スタジアムにて、ドリームズ対バファローズの試合を行います。明日は休養日にしますので、各自しっかりと準備をしておくこと」

 

試合前に休養日?美鈴のいない今、チームには一体感が欠けている。そういう時こそ練習が必要だろうなのに何故だ?紫の狙いは何だろうか。

 

「美鈴は大丈夫なのかよ?」

 

やはり勇儀も心配を隠せていないようだった。

 

「美鈴ですが、試合には出れないほどのケガのため、メンバーから外しました。」

 

紫の一言により、「やはり重傷だったのか」「あの頑丈門番が・・・」など、一気に周りがざわつき始めた。

 

「心配だと思うが美鈴は大丈夫だ。とにかく今日は解散だ」

 

サブローの一言により勇儀達はそれぞれ帰っていったが全員やはり顔が険しかった。

 

「では私は仕事のため先に失礼します」

 

「分かったわ、晩御飯までには帰るから、じゃあ行くわよサブローさん、神霊廟」

 

「あぁ、行こうか」

 

俺と紫は新メンバーのいる神霊廟に、藍はマヨヒガへ向かった。というか、神霊廟ってなんだ?いかにもお化けがいそうな場所だな。そんなこんなしていると、あっという間に到着した。

 

「着いたわ、ここが神霊廟よ。私は中にいる人に事情を話してくるから待っててちょうだい」

 

「分かった」

 

(ここが神霊廟か・・・デカいし広いな~)

 

驚くのも無理はない、だってまるで厳島神社ぐらいはあるだろう鳥居に、奥には豪華に装飾が施されてる大きな神殿のような建物、そして両隣には、これまた豪華な長屋があった。一体どんな偉い方が住んでいるんだ。すると後ろから「ちょっとそこのお前」と声がしたため、俺はゆっくりと後ろを振り向いた。振り向くとそこには、目つきが鋭く、黄緑に近いの髪の毛で、緑の服を着た女性がいた。

 

「何の用で来た、ただの人間が気軽に来てもよい場所じゃない。さっさと帰りな」

 

「待ってくれ、俺はとある事情で紫と一緒に来ているんだ」

 

「紫様と?そんな分かりやすい嘘をつくんじゃない!即刻帰らないなら消し炭にしてくれる」

 

すると「バチバチっ」と静電気の音がしたがすぐに状況を理解した。彼女の右手を見ると、なんと無数の緑の稲妻に纏われていた。大きさは俺の顔ぐらいはあるだろう。と次の瞬間。

 

「死ねぇぇぇぇ!!!!」

 

彼女は殺意と稲妻に満ちた右手を、顔めがけて殴りかかってきた。

 

「助けてくれぇぇぇ紫ぃぃぃ!!!」

 

俺は反射的に目をつぶった。そして殺されることを覚悟しながらも、イチかバチかで死ぬ気の大声で紫に助けを求めた。

 

「待ちなさい屠自古」

 

「!?・・・太子様」

 

突如響いた力強い「待ちなさい屠自古」という静止の声。誰か確認したいが、多分俺の目の前には、稲妻を纏った拳があるため怖くて目が開けられない。まだ「バチバチっ」と音がしている。

 

「屠自古、その者はお客さんだ。その拳をどけなさい」

 

「はい、太子様」

 

「バチバチっ」と音が消えた。どうやら俺は助かったみたいだ。そしてゆっくりと目を開けた。そこには拳はなく変わりに、紫がいた。

 

「俺は助かったのか紫?」

 

「えぇ、なんとか間に合ったね」

 

とりあえず生きていることを再確認。と紫の隣にもう一人別の女性がいた。見た目から分かる高貴なオーラ、大きなマントに耳にはヘッドフォン?そして手には「笏」が握られている、もしかして聖徳太子か?

 

「君がサブローさんだね?先ほどは部下である屠自古が失礼したね」

 

「ははっ、私は何とか大丈夫です」

 

「自己紹介が遅れたね、私はこの神霊廟の主である豊聡耳神子だ。君のことは全部紫から聞いているよ、確か屠自古に用があるんだったな」

 

「えっ!?この私に?」

 

屠自古が驚くのも無理はない、なんせさっきまで俺を殺そうとしていたんだからな。とまぁそんなこんな色々あったがとりあえず屠自古にあの話をする。

 

「先程は本当に失礼した。まさか本当に紫様と来ていたなんて・・・」

 

「いやいやもう気にしてないから、とりあえず本題に入るね。率直に言う、異変解決に協力してほしい」

 

「えぇ!!なんでまた急に?」

 

「実は美鈴に頼まれて来たんだ」

 

それから俺は離脱した美鈴の代わりに、屠自古をメンバーに入ってくれと頼んだ。詳しく話をしていると、どうやら美鈴と屠自古は飲み仲間らしく、よく遊んだりと交流を持っていたみたいだ。

 

「美鈴がそんなことを・・・」

 

「屠自古君の力が必要なんだ!美鈴の思いを背負って一緒に戦おう」

 

俺はまるで告白するような口調で屠自古にお願いした。

 

「わ・・・私には神霊廟の家事とかがあるし、急に言われても・・・」

 

屠自古は顔を赤らめ、俺だけに聞こえるぐらいの小声でそういった。

 

「屠自己よ、神霊廟なら大丈夫だ。君は美鈴さんに託されたんだ。なら断るなんて美鈴さんの思いを否定しているのと一緒だ。行きなさい蘇我屠自古、幻想郷を救いなさい」

 

「た、太子様・・・ありがとうございます。サブローさん、私に出来ることがあれば協力させてください」

 

「あぁ歓迎するよ、よろしくな屠自己」

 

こうして一時は殺せれかけたが、神子さんの説得もあり、新メンバーの蘇我屠自古の加入が正式に決まった。紫によれば、明日マヨヒガに屠自古を呼ぶらしい。理由はユニフォーム等の支給に、個人特訓、そして例のスペルカードも渡すとのこと。

 

「では神子さんお邪魔しましたわ、いきなりでごめんなさいね。あと屠自古さん、明日の朝にマヨヒガに来てちょうだいね」

 

「はい、では明日よろしくお願いします」

 

「いえいえ気になさらずに、では屠自古を頼みますよ」

 

「では失礼しますね、じゃあサブローさん」

 

「そうですね、じゃあ今日はありがとうございました」

 

俺と紫はスキマに入り、神霊廟をあとにしようとした。そして無事にマヨヒガについた俺達は夕食を済ませ、お風呂等も済ませて、今日は早めに睡眠を取り、今日という忙しい日を終えた。




どうでしたでしょうか?新メンバーの正体は「蘇我屠自古」でした。勘のいい方ならタイトルを見た時点で察しましたかな。そう「緑の稲妻少女」は緑がイメージカラーの「蘇我屠自古」でした。
さて次回は屠自古の能力が判明します。ポジションは二塁手でヒントは、打てる二塁手です。良ければ次回までに予想してみてくださいね。
次回はまた一か月後になるかもですが、なるべく早く投稿できるように頑張りますので、よろしくお願いします。


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第15話 運命のスターティングメンバ―

翌日。いつものように目が覚め、紫達と朝食を済ませてから特訓の準備をしていると、マヨヒガ上空から一人の女性がマヨヒガに降り立った。蘇我屠自古である。

 

「おはようございますサブローさん、時間的には・・・ピッタリみたいですね」

 

マヨヒガの庭に設置されている器材を見て察したみたいだ。

 

「あぁ、丁度終えたところさ。とりあえず始めようか、あと紫達は用事でいないが、スペルカードは貰ってあるから渡しておくね」

 

「これが昨日言ってた特殊なスペルカードか」

 

スペルカードは光りを放ち屠自古を包み込んだ。数秒してから光は徐々に消え去っていった、どうやら選手が判明したらしいので見てみることに。

 

「ほほぉぅ、これまた意外な選手だ」

 

屠自古に宿ったのは元名古屋ドラゴンズの立川一義

立川一義、攻守に輝きを放った名二塁手。通算二塁打の最多記録を持っているだけではなく、守備でもゴールデングラブ賞を何度も受賞した守備の名手でもある。何やら黒い噂もあるらしいが触れないでおこう。

 

「何やら顔がイカツイおっさんだけど大丈夫なのか?」

 

「大丈夫だよ、とりあえず始めるか」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

その後俺と屠自古は午前中のうちに、走り込みに打ち込みなどの練習をこなした。少々不安が残るが、必要最低限の技術は出来てるみたいだし、大丈夫であろう。そんなことを思っていると、紫達と出かけていたはずの藍が帰ってきた。

 

「サブロー殿、紫様からの伝言を伝えに来た」

 

「紫様から?一体どんな伝言だ」

 

藍によれば紫から「屠自古のことだけど、練習を終えて神霊廟に帰らせてあげて、神子が屠自古に用事があるらしいの」と。つまり屠自古との特訓はこれで終わりと、でもなんか心配になってきた。

 

「ではサブローさん、短い時間でしたがありがとうございました。明日もよろしくです」

 

「頑張ろうな屠自古。あと明日は17時30分に人里にあるデカい球場に来てくれ、みんなも同じ時間にくるから」

 

「分かりました。では失礼します」

 

そう言うと屠自古は空を飛び神霊廟に帰っていった。俺は器材を藍と一緒に片付け紫と橙の帰りを待つことにした。その後紫達が帰ってきていつものように夜を明かした。そして試合当日の朝、俺はいつものように起床し身支度を済ませていた。

 

「あら、試合までは充分に時間があるのよ?」

 

「そうなんだけど、なんだか興奮するんだよ」

 

「やっぱり久々の試合でウキウキしてるのね」

 

「早く来ないか待ちどおしいよ」

 

そんなことをしてるうちにあっという間に時間は過ぎていき、とうとう試合開始30分前の17時30分になった。

 

~少女ベンチ待機中~

 

ファンで埋め尽くされたスタンドに木霊する大量の声援、響き渡る売り子の声、これぞプロ野球の醍醐味のひとつだ。そんな中ドリームズのベンチはというと。

 

「ようやくだなサブロー」

 

「そうだな魔理沙、霊夢たちも気合が入ってるし、屠自古もみんなと馴染めてるし、今日は勝てそうな気がしてきたぞ」

 

勇儀や椛もやる気十分。するとベンチ裏から監督である紫が出てきて、みんなをベンチ前に集めて円陣を組んだ。

 

「今日は大事な初戦よ、絶対に負けられないわよ」

 

「鬼に怖いものはない!」

 

「全力で南無三させにいきます!」

 

「美鈴さんの分までも頑張ります!」

 

最後の締めはキャプテンである俺が渇を入れた。

 

「みんな、絶対に勝つぞ!!!!!」

 

「おぉーーーーーーー!!!!!」

 

それぞれの決意を言葉に出し、渇を入れて、最高の円陣を終えた。そしてその後、スタジアムのDJにより両チームのスターティングラインナップがアナウンスされる。まずは先攻のバファローズだ。

 

「お待たせいたしました。只今より、大阪バファローズVS幻想郷ドリームズの試合を行います。試合に先立ちまして、両チームのスターティングラインナップ」

 

(いよいよだ、向こうはどういうメンバーでくるか)

 

「まずは先攻の大阪バファローズ」

 

アナウンスを聞いて俺は驚いた、何かの間違いではないかと、電光掲示板を凝視した。そこにはこう表示されていた。

 

「1番センター 大木直之 背番号7」

「2番指名打者 益田陸 背番号0」

「3番ライト 磯川文一 背番号8」

「4番レフト ルー・ローズ 背番号20」

「5番ファースト 吉田夕二 背番号3」

「6番ショート 星井修 背番号62」

「7番サード 中村秀紀 背番号5」

「8番キャッチャー 的井哲也 背番号2」

「9番セカンド 水谷栄二 背番号10」

「先発ピッチャー 前渡勝巳 背番号22」

 

なんなんだこのオーダーは・・・主砲の中村が7番もそうだが、優勝メンバーじゃないのか?一体なぜなんだ・・・。

 

「続きまして後攻の幻想郷ドリームズ」

 

(紫はどんなオーダーを組んだのか)

 

「1番センター 射命丸文 背番号51」

「2番キャッチャー 八意永琳 背番号85」

「3番ライト サブロー 背番号1」

「4番ファースト 魂魄妖夢 背番号55」

「5番ショート 十六夜咲夜 背番号6」

「6番セカンド 犬走椛 背番号64」

「7番指名打者 霧雨魔理沙 背番号18」

「8番サード 多々良小傘 背番号8」

「9番レフト フランドール・スカーレット 背番号60」

「先発ピッチャー 依神紫苑 背番号34」

 

1番の射命丸と3番の俺は分かるが、何故調子の良かった勇儀と聖を外しているのか、それに咲夜と椛が中軸、フランが9番に2番に永琳先生、打線の繋がり全く無視じゃないか・・・もうこれは紫マジックでもするつもりなのか?だとしても納得いかない。俺は紫をベンチ裏に連れていき問い詰めた。

 

「紫!このオーダーはどういうことだ、ポイントゲッターの勇儀と聖を下げるなんて」

 

「あら、これは一つの戦術なの、サインは私が出すから貴方はいつものようにプレーすればいいの、分かったわね」

 

「作戦なら仕方ない」

 

紫には勝てる見込みがあってこのオーダーにしたらしい。そんなことをしていたらもう少しでプレイボールだ、みんなは急いで各ポジションに着くと。

 

「1回の表、大阪バファローズの攻撃は、1番センター 大木直之 背番号7」

 

DJにより、相手チームの先頭打者がアナウンスされた。そしてついに始まる幻想郷の未来を懸けた運命の第一戦が、永琳先生の後ろに立つ主審が大きな声で試合開始を告げる。

 

「プレイボール!」




次回からようやく戦いが始まります。どんな感じに区切っていこうかはまだ決めてないので、考えておきます。
(例 1イニングごとに区切って欲しいなど、提案があればお気軽にお申しつけください)


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第16話 容赦のない洗礼

ようやくの試合パートになります。
あと第10話で紹介いたしました、投手陣の決め球(スペルカード)は、今後捕手である永琳や藍が、サインで要求したときのみ発動します。
そしてここからは( )つまりキャラたちの心の声が多くなります、ご了承ください。


ついに試合が開始された。大阪の1番打者大木がバッターボックスに入った。一方の紫苑は緊張からか、マウンドであたふたしているようだ。とにかく紫苑の緊張を解かなければ、「紫苑、焦ることはない。楽しんでいこう」紫苑は振り向き、ぎこちないながらも笑顔を見せ、マウンドで深呼吸をし、女房の永琳先生とのサイン交換に臨んだ。

 

(どうやら落ち着いた様ね。とにかく大事な初球、まずは挨拶代わりの超貧乏玉を内角高めに)

 

永琳からのサインを見た紫苑は頷き、思いっきり振りかぶり初球を投じた。放たれたボールは大きな軌道を描き、コースギリギリのインハイに突き刺さっていく。(よし、まずはストライクいただきね)永琳が確信したその瞬間であった。

 

「カーーーーン!!」

 

なんと大木は初球のインハイのスライダーを振りぬいた。打球はライトへの大きな飛球だ。「ふぅ、焦ったけどただのライトフライね」永琳はアウトの確信をもっていた、しかしライトのサブローはまだ打球を追っている、つまりまだ打球は勢いを失っていないのだ。そして。

 

「うおぉーーーーー!!!」

 

スタンドイン。つまり先頭打者ホームランである。

 

(何故、いくら紫苑の球質が軽いといっても、あのコースのスライダーは狙わない限りホームランに出来ないはず・・・)

 

そんなことを考えてるうちに、大木はすでにダイアモンドを一周していた。そして大木は永琳とすれ違い、ベンチに帰る際にこう言い残していった。「この球だと、初回だけで何点取れるか分かんねぇな」大木のその言葉が、現実となってしまった。

 

その後、2番の益田が四球で出塁すると、3番磯川、4番ローズと連続安打を許し無死満塁となる。そして5番吉田との勝負。初球は低めストレートでストライクを奪いカウントを取りにいき1ストライク。しかしその後3球連続ボールと打者有利のカウントとなったてしまった。

 

(ヤバいわね、流れが止まらない。ここはチェンジアップで詰まらせて、ホームゲッツを狙いましょう)

 

守備陣形は中間守備。内野ゴロを打った場合、本塁での併殺、又は近い塁上にて併殺を狙うのが永琳の考え。そして紫苑は永琳からのサインに頷き、5球目を投じる。すると、永琳の要求通りのチェンジアップにタイミングを惑わされた吉田は、態勢を崩しながらも、力のないショートゴロを放った。それと同時にランナー達はスタートを切った。(ちっ、やっちまった)バッターの吉田は一塁に走り出した。

 

「咲夜、ホームに投げなさい!」

 

永琳からの指示を受けた咲夜は、ゴロに向かって突っ込みながら捕球態勢に入る。咲夜だったら楽々さばくだろう、だが異変が起きた。

 

「なっ、ここでイレギュラー!?」

 

打球は突如イレギュラー、咲夜のグラブをかすりレフト前に向かって転がっていく。不運だった。それを見た二塁ランナーの磯川はすぐさま三塁を蹴りホームに向かう。一方打球はフランによって処理されたが、既に2人が生還し2点追加された。その後も大阪の打線は紫苑には止められず、既に打者一巡し10得点。何とか無死満塁から吉田、星井、中村を三者連続三振に抑え込み、長い初回の守りを終えベンチに帰っていく。

 

「みんな集合、まだまだ初回よ、1点ずつ返していくわよ」

 

紫からの言葉があったが、みんなは意気消沈していた。特に紫苑がヘトヘトだった。無理もない、球数は70球を越えているし、10失点に4本の本塁打を打たれ、精神的にやられている。安定していたはずの守備陣も、咲夜と小傘がともに2エラー、フランは1エラーとボロボロにだった。

 

「レミリア、急いでブルペンで肩を作ってきて頂戴。次の回の頭からロングリリーフよ」

 

「分かったわ、じゃあ行ってくるわ」

 

そんな会話をしている間に、1番の文は左打席に入っていた。(紫さんによると、極度の荒れ球があると聞きましたが、私に打てますかねぇ・・・)自信がない中、前渡からの第1球が放たれる。しかし・・・

 

「うわっ!!」

 

文は驚きと同時に大きくのけぞり、打席内で尻餅をついた。

 

「あっ、危ないじゃないですか!もう少しで頭に当たるところでしたよ?」

 

「あぁ?当たらないようにして投げてるだろ?」

 

そう、前渡はわざとのけぞるボールを投げてきたのだ。プロでもあまりないが、内角を過度に意識させ、長打を防ぐ作戦の一つだ。それをベンチから見ていたサブローは「文、ムキになるな、相手のペースに乗せられるな」と一言声をかけた。文は落ち着いたのか、すぐに打席に入った。

 

「さぁ来なさい、貴方の球、絶対打ってやるわ」

 

前渡は2球目を投じた。大きなカーブが文から逃げるように、外角に曲がっていく。文はカーブに泳がされつつも何とかバットに当て、三塁線に転がした。打球はコロコロと転がるが、それをサードの中村が華麗に捌きファーストに送球する。普通ならばアウトになるこの中村のプレー、しかしドリームズには、物凄いスピードスターがいた・・・そう、幻想郷最速の少女、「射命丸文」がね。

 

「セーフ、セーーーーフ!」

 

「何!?セーフだと」

 

それは中村を含め、大阪ナインが驚くスピードだった。

 

「ふふふ、女だからと言って、舐めないでくださいよね」

 

「くっ、次の打者に集中するぞ」

 

文からの言葉を受け、前渡はイラつきながら次の打者へ気を集中させた。(これは、アレを試せそうですね・・・)

 

「2番 キャッチャー 八意永琳 背番号85」

 

アナウンスとともに打席にに入ろうとする永琳、すると一塁にいる文が「永琳さん、サインを見てください」文はおもむろにサインを自ら出し始めた。それを見た永琳は(アレをやるのね、了解)と何のサインかを理解をしていた。しかしすぐには実行されず、気が付くとカウントは2ストライク3ボールになっていたが、ついにその時が来た。それは前渡が6球目に投じたその時だった。

 

(球種はストレート、もらったわ)

 

なんと永琳はセーフティーバントのをしたのだ。

 

「なっ、スリーバントだと!?」

 

打球はピッチャー前に転がっていった。「前渡、一塁だ、二塁は間に合わない」的井の指示で前渡は慌てて一塁に送球した。だが送球したボールは、吉田の手前でバウンドし、吉田の体に当たり捕球とはならず、その隙に永琳が駆け抜けた。

 

「セーフ!」

 

吉田は慌てることなく、ゆっくりと拾い前渡に返球しようとしたその時「おい吉田、早くサードに投げろ、ランナーが走ってるんだぞ」

 

的井は三塁を指さししながら吉田に伝えた。何事かと思い三塁を見ると、一塁ランナーの文が悠々と三塁を陥れていた。三塁上にいる中村は、文にこう聞いた。

 

「お前まさかあのサインは」

 

「そうです、フルカウントからのバントエンドランです」

 

 

一方のドリームズベンチ

 

「文、いつの間にあんなことを、確率が低いギャンブル戦法なのによく実行したのね」

 

すると横にいたあうんは「なぜあのようなプレーがギャンブルなんですか?」と疑問を投げかけてきた。

 

「フルカウントからのバントエンドランは中々見ない戦法で、とても成功確率が低い。しかもスリーバントでのアウトを恐れず、確実に転がす技術が必要だから、ある意味賭けのようなものなの」

 

球場がざわめく中、ドリームズの次なる打者は・・・

 

「3番 ライト サブロー 背番号1」

 

「ワァーーーーー!!!」「頼むぞーーーー」など、ライトスタンドのドリームズファンの大きな声援を受け、サブローが打席に入る。

 

(相手はまずストライクを取って崩れた流れを落ち着かせたいはず、ならばコースと球種、共に狙いは一つ)

 

イラついている前渡は第1球を投じた。コースは真ん中低めのストレート。(やっぱり、狙い通りだ)サブローは思い切りバットを振りぬく。打球は右中間を物凄い速さで突き破っていく。それを見た文と永琳はスタートを切る。文は楽々のホームイン、そして永琳は足が遅いながらも、三塁に到達。ようやく打球を処理した大木は、中継に送球した。

 

「よぉーし!」

 

現役以来のタイムリーに、俺は嬉しくなって、思わずベンチに向かって右手をの拳を思いっきり掲げた。ベンチからも「サブロー、よくやったぞ!」「ナイスバッティング!」まるで現役時代に戻ったみたいだった。

 

「続け、妖夢!」

 

二塁のサブローから声援を受けた4番の妖夢だったが・・・。積極的に初球から打ちにいった打球は、痛烈なサードライナー。三塁ランナーの永琳はすぐ戻れずダブルプレーとなる。掴みかけた流れは、一瞬にして途切れてしまった。それが影響したのか、続く5番の咲夜はレフトフライに倒れて攻撃終了。

 

「みんな1点取り返したぞ、まだまだこれから、0点でこの守備を終わらせよう」俺は自ら声出しをし、みんなに自信を持たせた。

 

「二回の表、幻想郷ドリームズのピッチャーの交代をお知らせします。ピッチャー寄神紫苑に代わりまして、レミリア、ピッチャーはレミリア・スカーレット、背番号14」

 

アナウンスをされたレミリアは、ゆっくりと永琳のいるマウンドに向かった。

 

「レミリア、相手は中々やるわ。外角中心で攻めていくわよ」

 

「分かった、あなたに任せるわ」

 

お互いの意思を確かめ合い、所定の位置に戻る。波乱の幕開けとなった初回だったが、レミリア、永琳バッテリーはどういてまえ打線を抑えていくのか・・・。




一ヵ月ぶりとなりました。
16話にしてようやく試合になります。ここからは私としてもより力を入れなきゃですので、またしばしお待ちください。


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第17話 華麗なる夜の吸血鬼姉妹

1回10失点で早々にノックアウトされた寄神紫苑。ドリームズもなんとか1点を返したが、まだ流れは掴みきれていない。そこで紫は、本来先発であるレミリアを2回のマウンドに送る。


レミリアはすぐさま投球練習を始めるのかと思いきや「投球練習なんていらないわ、早くしなさい人間」まるで挑発ともとれる言動。それにイラついた的井は、無言でレミリアを睨みつけながら打席に入る。(舐めきっている人間よ、まずはこの球を見るがいいわ)レミリアは滑らかなモーションから力強く腕を振り抜く。放たれたボールはあからさまに150キロを軽く超えていた。

 

(ど真ん中ストレート!ホームランいただきだ)

 

的井は初球からフルスイングした。とても鈍い音を残し。的井はすぐさま打った打球の行方を探した。だがスタンドめがけて打ったはずの球は、永琳のミットに収まっていた。レミリアの豪速球は、的井のバットをへし折ったのだ。

 

「ストラーイク!!」

 

主審の甲高いコールが、慌ただしい雰囲気の球場に響き渡る。身長が小学生並みの少女がいきなり木製バットをへし折ったのだから。そしてバックスクリーンに、レミリアの球速が表示された。ライトの定位置にいる俺は、開いた口が開かなかった。

 

「157キロだと...練習ですら150が限界だったはずなのに」

 

その後レミリアは自慢の豪速球と多彩な変化球を操り、この回を三者連続三振に抑え流れを切った。そしてドリームズの2回の攻撃。先頭は、練習で安定した打撃を見せていた椛。

 

「椛〜、焦らずですよ」

 

先輩である文からの声援を受け打席に入る。椛は持ち前の粘り強さと選球眼で粘り続け、プロ相手に既に20球は粘っている。

 

(やはりその道のプロ、中々の球です。だけど私の超人的な視力を駆使すれば、ストライクとボールの境界。そして球種に軌道、球筋もくっきり分かります)

 

しかし、あまりの長い粘りに耐えられなくなったバッテリーは勝負を諦め、椛を歩かせた。これで無死一塁、続く魔理沙は気合いが空回りしたのか、空振り三振に倒れるが、8番の小傘が左中間を抜ける二塁打を放ち一死二、三塁、打席にはレミリアの妹であるフランドールが投手を威圧していた。9番とはいえパワーは4番打者、ここは期待したいところだ。

 

「お姉様ばっかりいいとこ見せすぎ!私も活躍しちゃうんだから」

 

だがバッテリーはかなり長打を警戒してるようで、ボール球中心に組み立てる。フランは高めの釣り球に空振りするなどして、カウントはフルカウント。バッテリーはフランから1番遠いアウトコースギリギリに、140キロ後半のストレートを決め球にした。ストレートはノビに伸びていく、が次の瞬間。

 

「カーーーーン!」「ガシャーーーン!」

 

2つの音が立て続けに聞こえた。バットに当たった音は分かったが、最後の音はなんだろうか?何か機械が壊されたような音だった。だがその音の答えはすぐに分かった。

 

「あ、あれを見るんだぜ!」

 

ベンチの隅にいた魔理沙は、バックスクリーンを指さして声を荒らげた。俺達は魔理沙が指すバックスクリーンに目をやると...。

 

「なっ...バックスクリーンの電光掲示板の一部が破壊されている!」

 

なんとフランの凄まじい打球は、電光掲示板の一部分を破壊したのだ。球場の観客のみならず、打たれた前渡は開いた口が塞がらないぐらい唖然としていた。結果的にはスリーランだが、恐ろしすぎる一打だ。そしてダイアモンドを一周したフランはベンチに帰るなり「やったー!お姉様より目立ったよ!」姉のレミリアに向かって嬉しさを爆発させる。それを聞いたレミリアは「なら次の回、私は9球で終わらせてあげるわ」と、フランと張り合うみたいに高々と宣言した。

 

「レミリア、死亡フラグにしか聞こえないぞ」

 

「ありゃ次の回炎上するわね」

 

「ダメだこりゃ」

 

俺を含めベンチにいる霊夢達も同じことを考えていた。だがベンチのボルテージが上がったことに間違いはなく、1番の文からの三連打で一死満塁、打席には前の打席で不運な併殺を演出してしまった妖夢。4番としての重圧と、得点圏特有の緊張感が妖夢を襲う。(うっ...また併殺になっちゃったらどうしよう...)ベンチからも見てわかる腰の引けてる構え。そして結果は案の定セカンドへの併殺打。腰の引けたスイングでカーブをひっかけてしまいった。

 

「何してんだよ!」

 

「それでも冥界の剣士なのか!?」

 

「引っ込めよ魂魄妖夢」

 

内野席からのまるで脅しのような罵声にヤジ。ベンチに帰ってきた妖夢の顔は赤くなっていて、大量の涙を流していた。そりゃそうだ、あれだけの罵声は妖夢のような純粋な子にとってはもはや殺害予告みたいなものだ。「妖夢、大丈夫か?」俺は声をかけたが、妖夢は気持ちを切り替えることが出来ずに、この場を去るように早々とベンチ裏に消えていった。心配になった鈴仙が「私、妖夢の後を追いかけます」しかし紫は「行ってはいけない、あの子は自らの弱さに負けたの」と鈴仙に言った。納得のいかない一同をよそに、紫は主審の元へ歩いて行った。数十秒後、アナウンスが聞こえた。

 

「幻想郷ドリームズ、守備の変更をお知らせいたします。ファーストの魂魄妖夢に代わりまして、蘇我屠自古」

 

「えっ!?」ベンチ隅にいた屠自古は、いきなりの交代に焦りを隠しきれなかった。そこに丁度紫が戻ってきた。「屠自古、早く行きなさい。あと貴方達は心配しなくて大丈夫だから」と、一声かけた。

 

「よし、みんな、妖夢の分も頑張っていくぞ!」

 

この一言を聞き、ナインは守備位置に就く。代わったばかりの屠自古は念入りに捕球練習をする。そして3回の表、レミリアは先程とは違い変化球を中心に投げ込む。先頭の磯川をスピア・ザ・グングニルで空振り三振に、4番のローズに対しては、約100キロの緩いスローカーブを詰まらせライトフライと幸先好調であった。

 

一方の大阪ベンチ

 

「あのピッチャー中々やりますね、ストレートも変化球も一級品だぜ」

 

ベンチに戻ってきていた磯川はこう漏らす。指揮官である梨味監督も「これは攻略までに時間がかかりそうだな...」ベンチは勝っているにも関わらずピリピリしていた。するとベンチの出入口からとある女の声が聞こえた「私が彼女の攻略方を教えしましょうか?」すぐさま声のする方に視線を向けると、赤髪の女性が立っていた。「誰だお前は、ここは立ち入り禁止だぞ」近くにいた大木が怒り気味に注意した。しかし女は続けて「私で良ければ力を貸しましょう、必ず貴方方を勝たせてみせましょう」この一言を聞いた梨味監督は「君は選手かなにかかな?」落ち着いて問いただした。

 

「はい、私は...です。ポジションは外野で、左投左打です」

 

「なるほど...よし君を信じてみよう」梨味監督は彼女を受け入れた。「よし、それであのレミリアっていう投手の弱点はなんなんだ?」チームリーダーの中村はすぐさま弱点を聞き出す。

 

「まずレミリアの弱点なんですが...」

 

 

 

ここまで僅か5球と調子が上がってきたレミリアだったが、突如乱れ始めた。吉田に死球を与え歩かせると、続く星野には四球。中村にはレフト前ヒットを打たれ、二死満塁と一転大ピンチに陥っていた。流れを察した永琳はすかさず守備のタイムを取り、マウンド上のレミリアに駆け寄る。

 

「レミリア、もしかしたら貴方の癖が見破られてるかもしれないわ」

 

「私の癖ですって!?」

 

永琳はこの数日で見抜いていた。レミリアはストレートとツーシームを投げる際はグラブ側の脇を締めているのだが、スピア・ザ・グングニルや変化球を含め、無意識に脇が開いているという癖を。

 

「なるほど、私としたことが無意識に敵にヒントを与えていたとはね」

 

「だからこそ私に考えがあるの...」

 

数分の話し合いが終わりポジションに戻る永琳。バッターは先程三振している的井だが、バッテリーには抑える自信があった。そしてサイン交換を始めようとしたその時。

 

「タイム!的井、こっちにこい」

 

タイムをかけたのは梨味監督だった。梨味監督は何やら的井に指示をしているようだ、そして指示を受けた的井は打席に戻る。永琳は考えた(もしかしたら作戦が見破られた?だとしたら)

 

「レミリア!サインは、ルナティックヴァンパイアよ!」

 

打者の的井を含め、ドリームズナインも困惑した。だがレミリアは永琳の言葉を察したのか、不敵な笑みで頷く。そしてレミリアはセットポジションからから第1球を投げ込む。

 

(脇が開いていない、ストレートだ!)

 

前の打席同様初球から振りにいく。「ストラーイク!」投げられたボールはストレートではなくスプリットだった。(おかしい、まさかこちらの作戦が見破られた?ならば次は...)的井は作戦を読んでいると読み、逆手をとるような形で狙い球を絞る。そして2球目(脇は閉じてる、だが変化球だ)だが実際にはストレート。(何故だ、何故なんだ...)

 

(よし迷い始めてるわね、作戦成功。決め球はこれにするわよレミリア)

 

レミリアはサインに頷き、3球目を投げ込む。(脇が開いている、だがどっちなんだ...ストレートか?変化球か?)迷いながらも的井は中途半端にバットを振り抜く。

 

「ストラーーイク!!バッターアウト!!!」

 

最後は156キロのストレートだった。球場は歓喜とため息が同時に入り交じった。なんとか満塁のピンチを抑えた永琳はすぐさまベンチに戻り一休みする。

 

「永琳、少し聞いていい?」

 

話しかけてきたのは霊夢だった。「あんた、あの時言った言葉はなんなの?」やはり気になっていたようだ。

 

「あれは意味がないわ」

 

後ろからレミリアも割って入ってきた。そしてレミリアは続けた。「あれは相手に私の弱点を見抜かれたから、永琳のアドリブで惑わしただけ」それに加える形で永琳も話した。「そして私のサインで、脇が開いてストレートとツーシーム、脇を閉じて変化球と投げ分けを命じていたわけ」かなり難しいが霊夢は理解した。だが不審な点があった。

 

(でもなんで、あんな短い時間で分かったのかしら?なんか引っかかるわね...)

 

霊夢は深く考えていると「霊夢、アレを見てみるんだぜ!」魔理沙は大阪ベンチに何かを発見したみたいで、ベンチの梨味監督の隣を指さす。視線を移したその時、霊夢は言葉を漏らした。

 

「な、なんでアイツがあんな所に...まさか、アイツが?」




いや〜、中々投稿が出来ずに申し訳ないです。中々進まなくて遅くなりました。

今回ですが、レミリアの弱点を見破った謎の赤髪の女性...なにやら霊夢と魔理沙は誰かは知っているみたいですが一体誰なんでしょうか?

次回までに当てられますかな?




(新キャラの能力)

???

カード(不明)

左投左打 ポジション 外野手

能力

弾道4 ミートE パワーS 走力E 肩力C 守備E 耐エラーE

能力はこちらになります、カードが分かってもキャラを当てるのが難しいかな?
ではまた次回までおたのしみに


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第18話 新たなる刺客

突然の守備交代にレミリアの炎上未遂があったものの、何とか無失点に抑えたドリームズ。そして魔理沙と霊夢が見たものとは。


「霊夢、あれはまさか・・・」

 

「えぇ、間違いないわ」

 

霊夢と魔理沙は、何か嫌な予感がするかもしれないと感じた。

 

「3回の裏、ドリームズの攻撃は、5番 ショート 十六夜咲夜」

 

この回もドリームズ打線は繋がっていく。咲夜、椛の連続安打で無死一、二塁とすると、魔理沙がレフトスタンドにホームランを放ちこれで4点目。更に小傘から4者連続安打があり10対5と差を縮め尚も満塁で打席には3番のサブロー。だが流石に乱調過ぎたのか梨味監督がベンチから出てくる。どうやら前渡を諦めるようだ。

 

「大阪バファローズ、ピッチャーの交代をお知らせします。前渡に代わりまして愛強久、背番号22」

 

「右のサイドハンドか、厄介だな」

 

サブローは上手投げの投手には滅法強いが、逆に横手や下手になると弱くなるという弱点がある。そのためあらかじめストレートに狙い絞り、ピッチャーを迎え撃つ作戦にした。マウンド上の愛強は、横手からカーブを中心に投げ込む。緩やかなカーブはサブローを苦しめ、ファールにするのがやっとだった。その後何とか喰らいつくも、キャッチャーへのファールフライに終わる。そして4番に入っている屠自古が打席に向かう。一死ながら満塁のこのチャンスに、球場全体が独特の緊張感に包まれていた。

 

「私が決めないといけないのよね、しっかりしなさい私」

 

そう自分に言い聞かせて自らを鼓舞した。だが急造で作られた屠自古の打撃では歯が立たず、わずか3球で片付けられてしまう。続く咲夜も三振に倒れてしまい3回の裏が終了する。流れを変えるために何とかものにしたかった満塁のチャンスだったが、それを生かせなかったドリームズに再び不穏な流れが傾いてしまった。4回のマウンドにも変わらずレミリアが上がるが、癖を見破られたレミリアには抑えられる力がなく、9番の水谷に安打を許すとそこから四球を2つ重ね満塁に。打席にはチャンスに無類の強さを誇る磯川が入るが、ここでまたも梨味監督が出てくる。すると磯川はベンチに引っ込んで行く。

 

「大阪バファローズ、選手の交代をお知らせします」

 

得点圏に強い磯川への代打に紫は不審がる。「なぜあそこで代打を?梨味監督の意図が読めないわ」何故代打を出したかはすぐさま分かることになる。

 

「3番の磯川に代わりまして、代打岡崎。バッターは岡崎夢美、背番号15」

 

「待ちくたびれたわよ」アナウンスとともに、夢美はベンチからゆっくりと姿を現す。その立ち振る舞いはまさに強打者そのものだ。今までの流れから何かを察した霊夢は「紫、私を出して」と直談判。勿論紫は出したくないのが本音だが、霊夢の強気の発言に鋭い眼差しに紫は根負けし、炎上したレミリアを諦め、ストッパーとして霊夢を登板させることにした。

 

「幻想郷ドリームズ、ピッチャーの交代をお知らせします。レミリアに代わりまして、博麗霊夢。背番号24」

 

球場はおもにドリームズファンにより歓喜に包まれた。当たり前である、霊夢は幻想郷の守護者にして人気者。まるでアイドルの始球式みたいだ。サウスポーの霊夢は入念に投球練習を行う中、打者の夢美は霊夢に声をかけた。「まさかまた貴方と対決出来るなんて嬉しいったらないわ」霊夢は投球練習を終えすぐさま言い返した。「なんでアンタが敵チームに居るかは分からないけど、全力で倒すまでよ」こうして始まった二人の対決。セットポジションから霊夢は、左の夢美から逃げるスライダーを外角低めへ決めストライクを奪い取る。その後ボールを2つ続けてしまうが、内角高めのストレートがストライクとなり追い込んだが、その間夢美はピクリとも動かず見逃している。球場は一層盛り上がりを見せる中。

 

「球審、タイム」

 

押せ押せムードの中、唐突にタイムをかけマウンドの霊夢の元に走る永琳。「何よ、今大事な場面なのよ?次で決めるつもりなんだから早く戻ってよ」集中していたため口調が荒々しくなる。それでも永琳は引くつもりはなく口を開ける。「もしかしてなんだけど、夢美は夢想封印を狙っているかもしれないの。だから夢想封印以外の球種には手を出していないの」この永琳の考えに霊夢は納得はしたものの「永琳、私は真っ向から勝負したいの」と言い、ポジションに戻るように促した。(どうなっても知らないからね)不安があるもののここは信じてみることにしポジションに就く。入念なサイン交換をし、霊夢は夢美に渾身の力を込めた夢想封印を投げ込む。コースは内角、ボールからストライクになる絶妙なコントロール、夢美は狙いすましたようにバットをスイングする。だが急激にブレーキがかかる球に態勢を崩されている。これは抑えたか?と確信に近づいた時。

 

「想像以上な球ね、だけどこれも想定の範囲内、打ち返せるわ」

 

その言葉通り態勢を崩されながらも夢美は真芯で捉えてみせた。打球は地を這うような弾丸ライナーで霊夢の足元を抜け、センターへ向けて伸びていく完全なヒット性。誰もが諦めたその時「バシッ!」何者かのグラブに打球が収まった音がした。一瞬の出来事だったが霊夢は見逃さなかった。その主はショートの十六夜咲夜、咲夜はあらかじめセンター寄りに守っていたため、あの痛烈な当たりを横っ飛びで反応し好捕する、今ので1アウト。これを見たセカンドの椛はすぐさま二塁に入り咲夜は流れるように椛にグラブトス、これで2アウト。捕球した椛は迷いなく三塁の小傘に送球する、三塁ランナーが飛び出しておりまだ塁上に戻れていないのだ。椛からの素早い送球を小傘は落ち着いて捕球し3つ目のアウトを奪い、まさかまさかのトリプルプレーの完成だ。このトリプルプレーに観客達の歓喜やため息が入り混じる中、誰よりも喜んだのはマウンド上の霊夢だった。

 

「咲夜、あんたよくやったわ!本当にありがとう」

 

この言葉に咲夜は「初回のミスを取り返したかったし、これ以上相手に乗らせてはダメでしょ」とてもクールに返してきたが霊夢は知っている、誰よりも喜んでいるのは咲夜自身だと。なんせ小さくガッツポーズもしてたしね。ベンチに帰ると魔理沙や勇儀達の手荒い祝福が霊夢と咲夜を襲う「よくやったよ霊夢」「ナイスプレー咲夜」もうお祭り騒ぎになっていた。

 

「ほーう、まさかあの打球を取るとはなかなかやるわね、紅魔のメイド長さん」

 

一方の打ち取られた夢美は、何かを得たみたいな小言を呟きながらベンチへ帰っていく、そして夢美は磯川が守っていたライトのポジションに就いた。そしてドリームズは勢いそのままに4回の裏に臨む。6番の椛はファーストの内野安打で出塁し、強肩の的井からすぐさま盗塁を決める、7番の魔理沙は豪快な空振り三振に倒れるが、小傘はサード側へ送りバントを決め、迎えるは前の打席でホームランを打ったフランだがバッテリーは勝負を避け歩かせた。打順はトップの文に戻り二死一、三塁のチャンス。

 

「塁審タイム」

 

ライトの夢美は急に塁審にタイムを要求し、マウンド上に内野手を集めて何やら指示を出しているようだ。「前の打席でも見たと思うが、射命丸は幻想郷最速の脚を持っている。だからあらかじめ前進守備をするのよ」その作戦に異議を唱えたのがサードの中村だった。「今は2アウトだ、無理に前進しては更に失点するリスクが高くなるぞ」確かに両ランナーは足も速く、長打になれば走者一掃してしまう。「大丈夫です、私に考えがあります」そう言うと文に向かい「貴方には単打しかありませんから、今から前進守備をさせていただきますね」元々乗せられやすい文だが、顔色一つ変えていない。「あれで大丈夫です、さぁ、早く守備位置に就きましょう皆さん」夢美の言葉が半ば信じられない内野陣だが、従うしかないとマウンドから散っていった。

 

(きぃいいいい、腹が立ちますね。だったら外野の頭越してやりますよ)

 

どうやら顔色は変えなかったが、侮辱されたことに物凄く苛立っていたようで、夢美の作戦が成功していた。まんまと夢美に乗せられた文は、何でもない直球に力んだスイングをしてしまいどでかいフライを打ち上げてしまう。これでは自慢の脚が生かせない、これこそが真の狙いであり、文はあえなくライトの夢美に捕球されこの回は無失点に終わる。大事なチャンスだったこともあり、ドリームズベンチは酷く落胆した。皆重苦しい空気の中5回の守りに就いていく。その後試合は霊夢と近鉄投手陣の投手戦となり、打線も霊夢を援護したいが、毎回残塁に終わり無情にもスコアボードには0が並んでいきついに8回表まで来てしまう。点差は5点、逆転するには厳しすぎる展開。打席には1打席目に先頭打者ホームランを打った大木、ここで紫は動く。捕手の永琳に変え式神の藍を、レフトのフランを下げ、守備固めの瞬足のあうんを起用。好投した霊夢に変えセットアッパーの衣玖を登板。すると藍は早速動き出す。

 

「咲夜、椛、守備位置を右に3歩。外野も同じだ」

 

藍の指示で出来た守備シフトは極端な右寄りのシフト、いわゆる王シフトに似ている。だが打席の大木は、衣玖の外角への龍魚ドリルを華麗にレフトへ流し打ち。レフトのあうんは左中間に守っていたためすぐさま打球を追う、それを見た大木は一塁を蹴るとギアをあげて二塁に向かってスピードを上げていく。

 

「よし、2塁はもらった」

 

余裕と確信したのか、緩やかにスライディングを開始する。一方のあうんは、大木が一塁を蹴ったと同時にレフトのフェンス際で打球を処理する。するとすぐさま小さく素早いテークバックで、二塁上にいる椛に向かって弾丸のような速い送球を投げる。その送球は考えられない速さだが、それを椛が捕球しタッチするとほぼ同時に大木のスライディングが入る。タイミングは微妙、二塁審の判定は「アウト!!」大きな宣告と共に右手が高々とあがる。あうんの超ファインプレーだ。二塁打だと確信していた大木は大きくうなだれながらベンチに帰っていく。

 

(ありえねぇ・・・。足に自信のある俺が、レフトフェンスからの送球で刺されるなんて・・・)

 

あうんのレーザービームを頭に入れた藍の采配により、試合は進んでいく。続く2番の益田をカットボールで三振に仕留め、いよいよ夢美が登場する。

 

「私の計算上、お二人のバッテリーに打ち取られる確率は低いんですが、私を歩かせた方が先決ではないでしょうか?」

 

藍に向かって事実上の敬遠を持ちかけてきた。「ふざけるな、私達は真剣に勝負しお前を打ち取るつもりだ。だからその申し出は断らさせてもらう」藍は強く断りを入れ、早く打席に入るように促す。「その気持ち、嫌いじゃないわ」そして藍と夢美の駆け引きは白熱し、気付けばカウントはフルカウント、この打席だけで既に19球。セットアッパーの衣玖は息が上がっている。藍は決着をつける為に、まだ使っていないカットボールを内角高めに要求する。衣玖は小さく頷き全力で投球、それに対し夢美はフルスイングで応える。バットはカットボールを根っこで捉えた、それと同時に「バキッ」バットが見事に砕け散る、ボールはホームベース付近に転がるが、砕けたバットの先端は、回転しながら物凄い早さでマウンドにいる衣玖に向かって飛んでいく。その間藍は転がっている打球を処理しファーストに送球し3アウトを奪った。

 

「ボフッ!」

 

藍は鈍い音がする方に視線を移すと、欠けたバットが直撃し、マウンド上で倒れこむ衣玖の姿だった。ドリームズナインは一斉にマウンドに駆け寄る。意識はあるが、左胸を押さえたまま動いていない。

 

「永琳先生、鈴仙、すぐさま治療を!!」

 

2人はすぐさま球場に常備してある担架に衣玖を乗せ、紫のスキマで急いで永遠亭に向かった。




あえて後書きは無しで、今後どうなるかは考察や予想してみてください。


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第19話 運命のシナリオ

セットアッパーの衣玖に起きた不慮の事故。心配される中、少女たちは更なる結束を強め挑む。


「衣玖達は急いで永遠亭に向かったわ。貴方達がしてやれることは一つしかない」

 

その言葉を胸にまたも反撃の狼煙を上げる。この回から大阪の投手は5番手の岡林に代わっている。この回先頭の魔理沙に三塁打が飛び出すと、小傘の代打で出た聖が四球。あうんの2点タイムリーツーベースが飛び出し7点目。続く文と藍が凡打に倒れ二死になるもここで3番のサブローに打席が回ってくる。同時に梨味監督も出てくる。ここで6番手の登場のようだ。

 

「大阪バファローズ選手の交代をお知らせします。岡林に代わりまして、北白河ちゆり背番号69」

 

ちゆりはトルネードで投げ始めた。150㎞後半の直球に落差の大きいフォーク、どうやらちゆりのスペルカードはまさしくメジャーで活躍した野茂地だ、しかも全盛期。そんな能力を前にしても喰らいついていく、くさい所にはバットに当て、ボールは見逃す。しかし最後は落差の大きいフォークにバットは空を切り三振に倒れる。そして迎えた9回、ルールでは15回まで延長もあるが、とにかく表の追撃を抑えなければ話にならない。9回のマウンドには、不死なる肉体を持つフェニックスガール「藤原妹紅」が登板する。そして代打の聖はそのまま小傘の居たサードに就く。大阪の先頭は怪力のルー・ローズ、今日2安打のマルチだ、だが妹紅は変化球を使わずにストレートだけで勝負を挑む。ローズもそれに答えるようにフルスイングしてくる。当たれば即ホームラン、そんな恐怖もある中ひたすらストライクゾーンに投げる。そして8球目、ローズは妹紅のストレートに当てるも、ボールの下だったため高いフライがセンターに上がっていく、文はゆっくりと下がりながらフェンス手前で捕球する。5番の吉田は見逃し三振に倒れ早くも2アウトとなる。6番の星井は痛烈なピッチャーライナーを打つ、だが妹紅は軽やかにライナーを捌いて見せ見事三者凡退で切り抜ける。そして迎えた9回裏の攻撃、場合によっては最後かもしれないイニングを前に、再びドリームズは円陣を組み志気を高める。

 

「皆、もう一度見せるぞ、幻想郷の底力を!!!」

 

この言葉が更なる起爆剤となり、少女たちは意地を見せる。4番の屠自古が1ボールからレフト前にヒットを打つと、5番の代打寅丸は1ストライクから一塁線を抜く二塁打でチャンスメイクすると、ライトスタンドのドリームズファンは沸きに沸きまくる。6番の椛は1ストライク3ボールからワンバウンドしたフォークを見逃し四球となり無死満塁となる。次は魔理沙だがここで紫が動く。

 

「幻想郷ドリームズ、選手の交代をお知らせします。バッターの霧雨魔理沙に代わりまして、代打、東風谷早苗。背番号36」

 

(ここで代打の切り札を使ってきたか、だがこの展開どこかで見覚えが?)サブローは見覚えのある雰囲気に「?」を浮かべたが、考えるのを後にした。「ようやく私の出番ですね。ここで決めて見せますよ」練習では頼りなかったが、今だけは物凄く信頼できる。マウンド上のちゆりは乱調状態、対する早苗はチャンスになると強くなるがそこに満塁、サヨナラの状況、早苗にとっては最高の舞台が整っていた。一発出れば逆転サヨナラ、早苗は笑顔を絶やしてはいないが、誰よりも緊張していた。

 

(そうだ、ここで私がホームラン打てばサヨナラなんですね…)

 

内心まるで漫画のような逆転劇を描いていた。だが立ち直りを見せたちゆりの前に徐々に追い込まれていく。2球連続空振りを奪われるものの、3球目の低めの際どいフォークを見逃しバッティングカウント、早苗は一度打席を外し呼吸を整える。同時にちゆりもプレートを外し肩を数回回す。お互いの集中力は極限を越え境地の域まで達していた。

 

(次のスイングで決めて魅せる)

 

(この決め球でねじ伏せる)

 

両者もう一度定位置に就く。そして大歓声の中二人はモーションを始動させる。ちゆりはダイナミックなトルネードから凄まじいボールを投じる、ボールは刃物のように鋭いキレを見せ落ちていく、まるで高所からストレートを投げ下ろされるの如く。対し早苗は下からのアッパースイングでフォークを迎え打つ。

 

「カーーーーーン!!!」

 

早苗はフォークを捉えた、打球は60度ぐらいの高角度でレフトに向かって上がっていく。ランナーの三人はタッチアップに備え塁上に就いている。レフトのローズは打球を見ながらゆっくりと下がっていく、ちゆりは「ローズ!捕ってくれーーーーー!!!」と叫ぶ。早苗は心の中で(入ってください)と祈る。打球はフラフラとレフトスタンド柵際に落ちてくる、ローズはホームランにさせてたまるかと、おもいっきりジャンプしホームランキャッチを試みる。落ちてきた打球は無残にもローズのグラブに収まった。これを見たちゆりは「ナイスキャッチだローズ!」と声を上げる、一方の早苗は大きく頭を落とした、、、がしかし、次の瞬間、時が止まったように静寂に包まれた球場が狂ったような大歓声に包まれる。(しまった、やっぱり私には決められなかった)一人で落胆してると

 

「早苗、早くダイアモンドを一周するんだぜ!」

 

魔理沙の喜びに包まれた声を聞きゆっくりと頭を上げる。マウンドのちゆりは泣き崩れ、ドリームズベンチにいた霊夢達はホームベースを囲っていた。どうやらローズが捕球した際、ボールの入ったグラブが外れ、スタンドに落ちたとのこと。つまり代打逆転サヨナラ満塁ホームランだ。嬉しさのあまり早苗は嬉し涙を流した、そしてゆっくりとダイアモンドを周り始める。一塁、二塁、三塁と涙で前が見づらいのか、若干フラつくも皆が待っているホーム前にたどり着く、そして両足でホームを踏んだ途端、手荒い祝福が早苗に襲い掛かる。一瞬にして揉みくちゃになる少女達と逆に、ちゆりは崩れたまま立てなかった。

 

「打たれちゃった。教授の前でいいとこ魅せれなかった」

 

一人泣き続けていると背後から「ちゆり、貴方はよく頑張った、だから帰ったら思いっきり楽しいことしましょう。貴方は私にとってただ一人の助手ですもの」ちゆりは夢美に抱き着いた「教授、私は一生ついていきます!」二人は仲良くベンチに引き上げていった。

 

「早苗、今日はお祝いだぞ!もちろん守矢神社でな」

 

早くも宴会をしようと盛り上がる勇儀達、だがそんな中で、一人だけが歓喜の輪に居なかった。




これにて幻想郷ドリームズVS大阪バファローズの試合が終わり、見事ドリームズが勝利しました。
去年の10月頃から暇の時に描き続けようやくここまで来ました。ちなみにブルーウェーブ戦の構想はまだ練れてないので、どうなるかはお楽しみにです。
何か感想や文字の訂正などがありましたら、教えて頂けると幸いです。

おまけ

北白河ちゆり
能力 (元メジャーリーガーの野○○雄)
158km コントロール D スタミナS
変化球
フォーク カーブ スライダー


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第20話 青き戦士たちの猛攻

永江の負傷離脱、永琳と鈴仙、妖夢と4人のメンバーを欠いたドリームズ。
相手はこちらも強打の神戸ブルーウェーブ。
大阪戦では、紫マジックを駆使し勝利を手にしたが、今宵も奇想天外のマジックは炸裂するのか!?


大阪との接戦を制したドリームズ。しかしセットアッパーの衣玖は折れたバットの直撃により、左のあばら骨を折る重傷。それに伴い捕手の永琳、そして今日先発予定だった鈴仙は衣玖の看護、さらに妖夢は精神的ショックから立ち直れず欠場のため、次の神戸戦は出場出来ない。

チーム状況的に接戦が予想される、大きな痛手だ。

そして迎えた神戸戦、急遽魔理沙が先発として起用された。

 

「魔理沙、ブルペンにいくぞ」

 

「分かったぜ、絶対に勝つぜ藍!」

 

魔理沙は気合十分、他もやる気に満ち溢れている。すると早速スターティングメンバーが発表された。

 

先攻 神戸ブルーウェーブ

 

「1番ライト 葛城太郎 背番号3」

「2番セカンド 尾上公一 背番号52」

「3番センター 谷直樹 背番号10」

「4番レフト サー・ブラウン 背番号23」

「5番指名打者 塩味真 背番号31」

「6番キャッチャー 三河隆 背番号2」

「7番サード ホース・オーティズ 背番号8」

「8番ショート 後藤七瀬 背番号49」

「9番ファースト 四島雄一 背番号45」

「先発ピッチャー ロック鈴木 背番号29」

 

後攻 幻想郷ドリームズ

 

「1番センター 射命丸文 背番号51」

「2番セカンド 犬走椛 背番号64」

「3番ライト サブロー 背番号1」

「4番ファースト 星熊勇儀 背番号42」

「5番指名打者 二ツ岩マミゾウ 背番号10」

「6番キャッチャー 八雲藍 背番号27」

「7番サード 多々良小傘 背番号8」

「8番ショート 十六夜咲夜 背番号6」

「9番レフト 高麗野あうん 背番号9」

「先発ピッチャー 霧雨魔理沙 背番号18」

 

今日は前回と違い、個々の能力にあった打順になっている。

だが神戸の先発にロックを持ってきたのは少々ラッキーだったのかも知れない、そして午後5時、ドリームズVSブルーウェーブの試合が主審のプレイ宣言により始まる。試合は神戸が優勢で進んでいく。

初回こそ3番谷の安打のみで終えたが、2回にオーティズの2ラン、3回にはブラウンの2点タイムリーと、いずれもマスタースパークを打たれ序盤に4失点。何とか援護したいドリームズだが、先発のロックに3回まで6奪三振、被安打、四死球共に0と完璧に抑え込まれていた。

そして4回のマウンドに魔理沙が上がろうとしたとき、紫が出てくる。

 

「魔理沙、交代よ」

 

この一言に納得のいかない魔理沙は、マウンド上から大きな声で紫に抗議する。だが紫は魔理沙の続投を許さず、ベンチから霊夢が出てくる。魔理沙は霊夢により無理やりベンチに連れていかれた。

入れ替わるようにマウンドに向かうは風見幽香。独特の威光を放つ幽香は、自慢の速球でオーティズを空振り三振、後藤をサードゴロ、四島をライトフライと完璧にシャットアウトし、ゆっくりとベンチに帰り、ゆったりとベンチに座る。

 

「紫、私はいつまで投げればいいの?」

 

幽香は回跨ぎをするかを紫に問う。セットアッパーの幽香は投手陣の中でスタミナは1番少ない、スタミナが尽きれば間違いなく球威も球速も格段に落ちる危険がある。

 

「えぇ、次もあなたに任せるつもりよ。そうね、6回まではいって欲しいかしら」

 

「紫、幽香に3イニングは酷すぎる。せめてあと1イニングだ」

 

たまらず俺は紫と幽香の会話に割り込む。何よりもプロの世界を見てきたんだ、それぐらいの危険性は承知している。一流のセットアッパーやストッパーも、疲れが出れば誰だって捕まる。

だが当の本人は「私も人間風情に舐められたものね」とお構いなしだった。

そしてドリームズの4回裏の攻撃が始まる。1番の文、2番椛が連続三振に倒れ、3番のサブローを迎える。文と椛の話によれば、ツーシームが厄介だが、不意に来る130キロ台の外のカットボールにバットが出てしまうとのこと。そのことを頭に入れ打席に向かう。

 

(さっきは微妙に落ちるツーシームに詰まらされている、ならば狙うは変化球か?)

 

迷いがあったものの、俺はツーシームを捨てる選択をした。

初球からロックは150キロのツーシームをど真ん中に入れてきたが、あえて見送り変化球を待つ、そして2球目に抜けたようなカットボールがインコースに投げ込まれた。「コースは激甘、振りぬける」振りぬいた打球は右中間を破っていく。

サブローは悠々と二塁に到達した。

 

「4番 ファースト 星熊勇儀」

 

前の打席で大ファールを放つも見逃しに倒れた勇儀。だがこのチャンスに誰よりも燃えているのは間違いない。

二塁上から見る鬼の立ち振る舞いはもう恐怖でしかない。

そんな中ロックも顔に焦りが見えており、初球から抜けた球を連発した。だが勇儀はピクリとも動かない。そして5球目に投げた沈むツーシームを完璧に捉え、二遊間を抜けセンターへ、俺は三塁ベース手前でギアを上げ、ホームに突っ込む。

ホームまで残り数メートル、キャッチャーの三河が返球に対する捕球姿勢を取る。俺はトップスピードのままホームベースに向かってヘッドスライディングを試みる、同時に捕球した三河もタッチしに行く、タイミングはほぼ同時で微妙だ。

主審のジャッジは・・・。

 

「アウトーーー!!!」

 

判定はアウト。紫は抗議しに行くが主審曰く「僅かにタッチの方が早かった」と説明された。

迎えた5回表、幽香は先程の回同様にストレートを中心に投げ込む、先頭の葛城をセカンドライナー、続く尾上には四球を与え一死一塁となる。打席には神戸一の好打者の谷、幽香は1球目にフォークを投げるが、一塁ランナーが隙をついて盗塁に成功し得点圏に。

ここで藍は守備のタイムを取りマウンドの幽香の元へ駆け寄る。

 

「事前のデータでは不得意コースがない、ここは歩かせるのを承知で勝負する」

 

「私はデータなんて信じない。だから藍、あなたはただ来た球を取ってなさい。話はそれだけ、早く戻りなさい」

 

その言葉を信じるしかない藍は仕方なくポジションに戻る。一呼吸おいてから投球に入る。

幽香が選択した球はストレート、コースは外角低め、谷のバットはそのコースに逆らわずに流し打ちをして見せた。打球は一二塁間に転がっていく。

 

「てりゃあーー!」

 

抜けそうな当たりをセカンドの椛がダイビングキャッチし、すぐさま一塁に転送。好プレーが光った。このプレーがドリームズに流れを呼び込む。

二死三塁とし4番のブラウンを迎えるが、センターフライに抑えチェンジに。

そして5回の裏ドリームズは早々に1アウトを奪われるが、藍の内野安打と小傘のヒットで一、三塁となる。この場面で8番の咲夜に回ってきたがここで紫が仕掛けた。

 

「なっ!?」

 

「何!?」

 

なんと初球スクイズを決行した。不意を突かれた内野陣は反応に遅れ、咲夜のスクイズは見事に決まりようやく1点が入りなおも二死二塁とし、打席には9番のあうんだが、相手のリー監督が出てきた。ロック鈴木を諦めるようだ。

 

「神戸ブルーウェーブ、ピッチャーのロックに代わりまして、加藤大光 背番号14」

 

2番手としてマウンドに上がるのはこの年のルーキーである加藤。武器は150キロのストレートにナックルカーブ。あうんには厳しすぎる相手、だが紫は代打を送る気配は無く、あくまでもあうんに打たせる方針だ。

だが流石の投球術、ナックルカーブはあうんのタイミングを外しストレートで差し込む。

 

「紫、あうんに打てるのか?あのナックルカーブは俺でも捉えるのが難しい」

 

心配のあまり紫に問いかける。だが紫は冷静だった。

 

「サブローさん、あうんの姿勢を見てみなさい。決して恐れないあの構え、まるで大阪の時の貴方みたいよ。貴方は私たちに諦めない心を教えてくれた」

 

確かにあうんの目は死んでいない。まるで弱者が強者に喰らい付くが如く、だが既に2ストライク2ボール、追い込まれているには変わりない。そして加藤は決め球としてナックルカーブを投げる、キレのある変化球にあうんは迷いなくフルスイングする。だが無情にもバットは空を切り空振り三振に倒れる。

ドリームズは6回から小町を登板させるが、一度傾いた流れを引き戻すことは簡単ではなく、小町の決め球「死者選別の鎌」は全く通用せず、無死満塁と絶賛炎上中である。

 

「幻想郷ドリームズ、ピッチャーの小野塚に代わりまして、魅魔 背番号16」

 

この絶体絶命の場面で守護神の魅魔を登板させる紫、まだ試合は中盤、しかもこれが初登板の魅魔に抑えられるのか?ドリームズの全員がそう思っていた。

だが魅魔は周囲を驚かせるピッチングを披露する。

魅魔からしたら先頭になる8番の後藤を三球三振に仕留めると、9番四島には緩いカーブを緩急に使い見逃し三振。そして1番の葛城に対しては、自己最速を大幅に越える169キロのストレートで空振り三振と、僅か10球で簡単に無死満塁のピンチを脱して見せた。

ドリームズナインがベンチに引き上げてくるが、皆表情は笑顔だった。サブローは全員をベンチ前に集め、もう一度円陣を組み直し、再び結束を強め、6回の攻撃に挑む。

射命丸が凡退するも、椛がスライダーを流し打ちヒット。3番のサブローはナックルカーブに三振し二死一塁、打席には4番の勇儀。だがバッテリーは勇儀を歩かせるが、次のマミゾウとの勝負を避け二死満塁とする。ここで藍が打席に向かう所でブルーウェーブの投手が交代する。ワンポイントリリーフのようだ。

 

「神戸ブルーウェーブ、ピッチャーの加藤に代わりまして、石上修一 背番号26」

 

変わった石上はプロでも数少ない左の変則サイドスロー投手。その変則さはまるで蛇のようで打つのに苦戦しそうだ。球場は更に盛り上がりを見せる中、試合はターニングポイントを迎えている。

 

(見た感じ変化球はスライダーとシュート、ストレートは140に満たないぐらいか)

 

しっかりと相手を観察し、この大チャンスに挑む。

初球は大きく外に外れる、内角へのスライダー、外のシュートをカットするもすぐさま追い込まれる。4球目は釣り球を見送りピッチャー有利のカウントに。だがそこから藍はひたすら粘り続ける。石上も負けじとくさい球を投げ続けるが、その球数は既に20球を越えていた。

 

「はぁ、はぁ、なんてしつこい打者だ・・・」

 

マウンドの石上は息を荒げていたが、全くキレや球威は落ちていない。藍は一度打席を外し深呼吸をする。

 

(次で仕留めて魅せる)

 

外野スタンドからドでかい応援歌や声援がこだまする中、二人は再び戦いに挑む。




前回同様に先制されたドリームズ、神戸の投手陣の前に僅か1点と自慢の重量打線は沈黙。
試合は既に終盤、果たしてどうなるのか?
次回に続く。


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第21話 安打製造機の追撃アーチ

試合は神戸優勢で進み4-1。ドリームズも何とか1点を取り返すも、神戸の投手陣の前に打線は沈黙。打線の核であるサブローと勇儀は調子が上がらない。
急遽ロングリリーフとなった幽香がなんとか試合を作るものの、3番手の小町が大炎上。だが4番手の魅魔が圧巻のピッチングを魅せ危機を脱した。
そして6回に迎えた二死満塁のチャンスに、打席には6番の藍。ドリームズ1の頭脳派巧打者は、期待に応えられるのか・・・。


石上は独特なサイドスローから勝負球を投げる。白い球は外角低めに向かって伸びてくる。

それに対し藍は右足を後ろに引きながらボールに逆らわずにバットを出していく。だが藍は気づいた、ボールは伸びてきたが微妙に外に逃げていく、バットの先に当たり一塁側へのポップフライとなり、打球はファーストの四島が捕球する。

 

「アウト!」

 

そのアウトコールは、満塁のチャンスが一瞬で消えた合図でもあった。球場はため息と歓喜で交じるが、明らかに落胆のため息が大きかった。

凡打に倒れた藍は一塁から駆け足でベンチに戻り、キャッチャー用具を装着しポジションに就く。7回のマウンドにも魅魔が上がっている。

 

「魅魔様、無理はなさらず」

 

藍は魅魔に一言伝え、勝負に臨む。

2番から始まる神戸の攻撃、しかし未知の剛速球と落差のあるフォークの前に尾上は空振り三振を喫する。だがここで3番の谷が出てくる。この試合は完璧に捉えられており、出塁を許してしまう可能性がある。

谷は打席に入るなり、藍に聞こえるぐらいの声で、ボソッと呟いた。

 

「藍さん、私はこの打席でホームランを打ちますよ」

 

この言葉に藍は揺さぶられることなく、魅魔に厳しいコースを要求する。魅魔も藍の配球通りにストレートを投げ続けるが、谷はクサいコースですら、全て真芯で捉え、ファールにして見せる。

カウントはフルカウント、藍は次で仕留めるために、魅魔に最終兵器の「魔球」を要求する。魅魔もそのサインに小さく頷き、モーションを起こす。

 

(まさかこの球を使わせる人間がいるとはな、だがこれは打てまい)

 

放たれた白球は凄まじい速さでキャッチャーミットめがけて伸びていく。それに合わせ谷も始動する。

白球はストレートの軌道だったが、ホームベース手前で急に落差の大きいフォークに変化した。(この勝負もらった)だがその判断が甘かった。

なんと谷はこの変化を読んでいたの如く、魅魔の決め球を真芯で捉えてみせるが、「バキッ!」球威に負けたバットは粉々に折れてしまう。だが白球は高々と夜空に舞い上がり、レフトスタンドをめがけて飛んでいく。マウンド上の魅魔は打球の行方を追わずに下を向く。レフトのあうんは打球を追ってフェンス手前まで行くが、それ以上は何もせずただ打球を見送った。

 

「うおぉーーーー!!!」

 

レフトスタンドへのソロホームラン。それに神戸ファンはお祭り騒ぎ、大歓声の中、谷はゆっくりとダイヤモンドを周りベンチに戻っていく。神戸にとっては勝利を引き寄せる得点、これで5対1、ドリームズとの差は4点になる。

だがこの後魅魔は後続をしっかり抑え、7回表を終えた。ベンチに戻ると魅魔は1人ダグアウトへ消えていった。

そんな中迎えた終盤7回裏、ドリームズは7番の小傘からだ。そして神戸も投手を交代してきた。

 

「神戸ブルーウェーブ、石上に代わりまして、小久保勝士 背番号35」

 

マウンドには勝ちパターンで、新人王獲得経験のあり、フォークが武器の小久保が上がる。だが諦めないドリームズは意地の反撃を開始していく。

小傘はショートゴロに倒れるも、咲夜がフォアボールで出塁し、さらにあうんの打席で盗塁を仕掛け一死二塁とチャンスメイクする。あうんはフォークを引っ張りレフト前ヒットと更に広げ一、三塁に。

ここで紫が動く。

 

「1番射命丸に代わりまして、蘇我屠自古 背番号44」

 

射命丸に代え代打に屠自古を送る。屠自古は追い込まれながらも、小久保のフォークをライト前に弾き返す。これにより咲夜が帰ってようやく2点目。一塁のあうんは俊足を飛ばし三塁に向かう、そうはさせまいとライトの葛城が三塁に送球するが、送球は三塁手のオーティズの頭上を大きく超えていく。あうんはそれを確認しホームに走る、幸いカバーリングが間に合っていなかったため、悠々とホームインし3点目が入る。屠自古もそれを見て二塁に進塁する。

 

「これはまずいな、ここは秘密兵器を出して流れを変えるしかないか。おい、ブルペンにいるあいつに肩を作らせておけ」

 

ここでリー監督が再びベンチから出てきた。またしても投手交代のようだ。

 

「神戸ブルーウェーブ、小久保に代わりまして、山下和巳 背番号18」

 

嫌な流れを察したのか、すぐさま投手を変えてきた。「椛、相手は元日本最速男だ。気を付けろよ」この言葉に椛は小さく頷き、打席に入る。

初球はいきなり158キロのストレートがインコースに決まり1ストライクを取られる。次に外スライダーを見逃しボールとなる。椛は構え直す際に一度深呼吸をする。この行動が落ち着きを保てたのか、その後は持ち前の選球眼で四球を勝ち取り出塁する。続くはキャプテンのサブローだが、一塁が開いているためバッテリーは勝負を避け満塁に。

そして大チャンスに勇儀が打席に入る。が、ここでマウンドの山下は、勇儀に向かって「ストレート宣言」をしてきた。これには球場のファンのみならず、勇儀自身も燃えていた。そして注目の第1球、宣言通りストレートを投げる山下、これにフルスイングで答える。

 

「ストラーイク!」

 

勇儀は空振り、球速表示は155キロ。2球目は力んだのか、ホームベース手前でワンバウンドしてしまうが、それでも球速は156キロ。3球目はインコース低めへ投げる、ノビのあるストレートにバットは見事に空を切る。表示は157キロと徐々に球速が上がってきている。

 

(あたしのバットでも捉えられないストレート・・・。燃えてくるねぇ)

 

緊迫する二人の勝負は、瞬きができない展開。

山下の4球目はボールになる。そして運命の5球目、ストレートはホップしながらまっすぐ向かっていく。勇儀は今までにないぐらいのフルスイングをする、結果は・・・。

 

「ストラーイク、バッターアウト!」

 

山下は1球もかすらせることなく、直球一本で三振に抑え込んだ。勢いに乗ったのか、5番の強打者マミゾウにもかすらせることなく、圧巻なピッチングを魅せつけてこのピンチを締めて魅せた。これにはレフトスタンドは更に湧き上がる。

この回に何とか2点を返したドリームズ、差は2点に縮まり、8回を迎える。ここで神戸は仕掛けていく。

 

「6番三河に代わりまして、代打日上剛 背番号47」

 

神戸は追加点を取りに、1発のある日上を代打に送る。それに対し紫も魅魔を下げ、5番手を登板させる。

 

「ドリームズ、魅魔に代わりまして、今泉影狼 背番号66」

 

ビハインドでの登板だが、影狼は勇猛果敢に攻めまくる。先頭の日上に初球落差のあるカーブを投じストライクを奪う。キレのある緩いカーブに日上のバットはクルリと回る。だが2球目のシュートを捉え、痛烈なピッチャーライナーとなる。だが一瞬サブロー達に蘇るのは、衣玖の負傷。形は違えど強襲打。打球は影狼の顔に向かって飛んでいく。またも負傷交代か・・・、そう思っていた。

 

「危ない!!!」

 

だが次の瞬間、影狼は華麗にライナーを避ける。打球はバウンドしながら二遊間を抜け、センターの文が捕球した。

 

「はぁー。人間って怖いわー」

 

どうやら無事だったみたいだ。状況は変わって無死一塁、対するは7番のオーティズ。その初球に大きなカーブを投げる。だがここで日上が二塁へ盗塁を仕掛けてきた。藍はカーブを捕球するとすぐさま塁上に入る椛に送球するが、僅かな差でセーフになる。

得点圏にランナーが進塁するも、影狼は藍の巧みなリードにより自身の能力をフル活用する。自慢のカーブでオーティズを三振に斬る。8番の後藤にサードへの進塁打を許すもこれで二死三塁。打席には四島の代打である龍太郎が入る。だが龍太郎はカーブに泳がされ、僅か2球で追い込まれてしまう。

 

(ここはカーブをワンバウンドさせて、釣り球にしよう)

 

セオリー通りに釣り球を要求する藍に応えるように、影狼はカーブを低めに投げる。狙い通りにカーブはワンバウンドする。だが龍太郎はそのカーブを捉え、ライト前へ運んで見せた。

これにより日上が生還し、神戸に6点目が入る。

まさかの曲芸打ちに球場のみならず、両軍ベンチがざわめいた。打った龍太郎も一塁上で苦笑いしていた。その龍太郎はすぐさま盗塁するが、これは藍の矢のような送球により失敗しチェンジとなる。

そして迎える8回裏のドリームズの攻撃。一層白熱するスタンドの声を背に、九尾の式神が打席に向かう。




終盤に来ての追加点を許すドリームズ。
奇跡の逆転劇を起こせるのか?


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第22話 青波の最終秘密兵器

6-3で迎えた8回裏。8回表に龍太郎のタイムリーで3点差となり、依然として追う展開の幻想郷ドリームズ。
おせおせと反撃のムードが入り混じる球場は、更なる熱気に包まれる。そんな中、ドリームズが誇る強力下位打線が、神戸投手陣に立ち向かう。


鳴り響く応援歌の中、藍が打席に入り、山下は2イニング目のマウンドに上がる。

 

「差は3点差、この場面はまず出塁が先決。まだ諦めない」

 

山下はモーションを起こし、160キロに迫る速球を投げ込む。これに藍は微動だにせず見送り、小さく頷く素振りを見せた。ゆっくりと足場を均し構え直す、山下は再び速球を投げる。藍は狙いすましたようにバットを始動する。

 

「カーーン!」

 

打球はセンターに向かってライナー性の当たりが伸びていく。センターを守る谷は全速力で打球に向かって走るが、捕球する前にワンバウンドして谷のグラブに収まる。それと同時に藍は一塁到達する。

無死一塁とし続くは小傘。だがここは手堅く送りバントを決め二塁に進める、だが次の咲夜は三振に倒れ2アウトとなる。そしてここで八雲紫が動く。チャンスの場面で9番のあうんに代わり、代打に早苗を起用し勝負をかける。昨日の大阪戦では劇的なアーチを架けた守矢の現人神にこの勝負を託す。

 

「ターイム!」

 

ここで神戸のリー監督が投手の交代を主審に告げる。そして球場に投手交代のアナウンスが響く。

 

「神戸ブルーウェーブ 山下に代わりまして、レティ・ホワイトロック 背番号94」

 

アナウンスと同時に電光掲示板にスペルカードが表示される。神戸のフォーク使いの水田浩二選手だ。

ゆっくりとマウンドに歩いきながら肩を回すレティ、到着するなり投球練習を開始する。よく見ると落差十分のフォークもキレキレだ。

 

「早苗、あのフォーク打てそうか?」

 

「サブローさん・・・。ここは打つしかないでしょう!」

 

「なるほど。心配するまでもないって感じだな、楽しんできな」

 

何気ない会話をし気が楽になったのか、早苗は笑顔で打席に入っていく。そして中断された試合が再開される。

初球は力んだのか高めに外れボールとなるが、次の球はアウトローいっぱいに決まりカウントを整える。そしてレティは3球目に魔球フォークを投じる。

 

(このフォーク、ちゆりさんのに比べれば・・・、捉えられる!)

 

鋭く風を切るバットは、フォークを芯で捉え前に飛ばす。「わあぁぁぁぁ!!!」快音残して打球は歓声を切り裂き高く舞い上がる。打った早苗はゆっくりと確信歩きを始める。「よっしゃー、ホームランだ」ベンチの魔理沙達は大声で叫ぶ、だが霊夢はある異変に気付いた。

 

「待ってよく見て、なんか早苗の打球の様子がおかしいわ」

 

霊夢に言われ夜空に浮かぶアーチを見ると、レフトの頭上辺りで急激に失速している。失速した白球は、フェンス手前でブラウンが捕球しレフトフライとなった。誰もがホームランと確信したアーチは単なるフライに終わり落胆するドリームズベンチ。そして誰よりも落胆する早苗はゆっくりとベンチに戻ってくる。

 

「早苗落胆してる暇はないわよ、そのまま守備に就きなさい。まだ試合は終わってないわ」

 

この紫の一声を聞いた早苗は、グラブをハメてあうんがいたレフトに走っていく。「霊夢、あのフォークのタネ分かったかしら?」紫が問うと霊夢は冷静に答えた。「間違いなくあのフォークには、とてつもない回転と球威が関係してるわね」霊夢の答えに紫は小さく頷いた。(この試合マズいわね・・・。)

時刻も午後10時を回り、試合は神戸が3点有利のまま9回の表に突入する。神戸は1番の葛城からの好打順、対するドリームズは影狼を続投させる。影狼は緩いカーブを軸にピッチングを続けるが、先頭の葛城にライト前に運ばれ出塁を許す。ここで紫はすぐさま影狼を下ろし、ビハインドの場面で茨木華仙をマウンドに送る。

 

「まさかこんな場面で登場ですか。抑えるしかありませんね」

 

華仙はその言葉を胸に魂の投球を魅せる。2番の尾上に送りバントを許し一死二塁となるも、今日ホームランを打ってノリにノッている谷を、決め球のドラゴンズグロウルで三振に抑え込み二死二塁となる。4番のブラウンには、フォークを捉えられるも、ショートフライに打ち取り、9回の表を無失点で終わらせる。そして迎えた9回の裏、ドリームズベンチではサブローを中心に円陣を組んでいた。

 

「皆、まだ終わりじゃない。この回、レティを打ち崩して逆転していこうぜ!」

 

「おぉーー!!!」

 

ドリームズも1番の文から始まる好打順だ。だがここでも紫は動く。核弾頭の文に代えて聖を起用する。その聖は積極的にレティに喰らい付いていき、フォークを真芯で捉えライトへ運ぶも、やはり打球は失速していき、平凡なライトフライに倒れる。1アウトになり2番の椛に回る、持ち前の選球眼と粘り強さを見せたものの、最後はファーストライナーに打ち取られ2アウトに。

 

「3番 ライト サブロー」

 

9回2アウトの場面でキャプテンのサブローがアナウンスされる。屈伸などのルーティーンを済ませ、落ち着いた様子で構える。初球レティは外角高めにカーブを投げる、これに対しサブローは何もせず見送り簡単にストライクを取られる。

 

(この球じゃない、あのフォークを狙うだけ・・・)

 

だがフォークを投げる様子はなく、ストレートとスライダーを中心の投球を続ける。だが自慢のバットコントロールで何とかカットを続け、気付けば両者の戦いは37球目を迎えていた、そしてその37球目に魔球フォークを投じる。高めから真ん中に落ちるキレのいいフォークだ。しかしコースは真ん中、明らかな失投だった。

 

「これは紛れもない失投。頼む、届いてくれ」

 

迷わず振りぬいたバットは真ん中に落ちてくるフォークを捉え、バックスクリーンめがけて飛んでいく・・。

 

「ゲームセット!!!」

 

「皆様ご来場いただきましてありがとうございました。本日の神戸とドリームズ試合は・・・。」




久しぶりの投稿になりました。
これにて、第2戦である幻想郷ドリームズVS神戸ブルーウェーブの戦いが終わりました。
次回はどうなるのやら・・・。


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