自称機械技師の備忘録 (アビャア)
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1.俺の名は

スランプを脱する為に息抜きで書きました。
こんな作品でも楽しんでくれたら光栄ですm(__)m

それでは、どうぞ!










1905年に各地で見つかった高度な文明を残した『遺跡』から発掘された物質『崩壊液(コーラップス)』は、分子構造を崩壊させながら膨大なエネルギーを蓄える危険性があるが、特定の手順を踏んで物質を再構築すれば鉄から金へ、灯油から石油という錬金術に似たような技術が出来る夢のような物質だった。

 

しかし、コイツは核の放射線よりも厄介で2030年、中国・上海沖の北蘭島から全ての悲劇が始まった。

とある中学生達(大戦犯)が封鎖されていた遺跡に侵入し、そこで何があったか分からないがコーラップスが大爆発を起こし遺跡が崩壊。その後コーラップスの粒子は対流圏まで巻き上げられてジェット気流に乗り全世界へと拡散された。

 

その粒子が降り注いだ地域は人間の生存が不可能なレベルにまで汚染され、被爆した生命はE.L.I.D(広域性低放射感染症)を発症しゾンビやミュータントとなって他の生物を襲うという地獄絵図が生まれた。

 

コーラップスによって世界が汚染され大量の人が死んだ最悪の事件『北蘭島事件』から15年間、各国に外交摩擦が頻繁に起こり国際関係が修復不可能の域に到達すると第三次世界大戦が勃発、世界各国は大量の核兵器の使用という過ちを犯した。

 

 

その戦争は2051年の6年間行われ、核兵器が多く使われた事による狭かった生存圏の縮小とEMPの頻発によってコンピューターに依存する空軍戦力と海軍戦力は使えなくなり、白兵戦が主流となり少なくなった人類の数は激減したが人類は滅びなかった。

それは、『北蘭島事件』による人類の激減による労働力不足を補う為に作られた存在『自律人形』の存在があったからだ。

 

人間に近い疑似人格、生体パーツを使用することでほぼ人間と区別がつかない外見を与えられた人形達は、直ぐに人間社会に溶け込み社会に多大な貢献をしていた。

戦争が始まれば軍事目的で転用された戦闘用『戦術人形』が生まれ戦争でも活躍していた。

その中でも強靭で頑丈な『イェーガーシリーズ』を手掛ける『鉄血工造株式会社』と高性能の人形『CSDシリーズ』を手掛ける『I.O.P社』の二社は世界にその名を轟かせ巨大な企業へと躍進していく。

 

 

第三次戦争終了後、国家運営が困難になるレベルまで衰退した国家は重要な都市だけを直轄管理し、その他の都市の運営を入札によって権利を獲得した『民間企業(PMC)』に任せるようになった。

先は真っ暗だが、少しずつ回復していった人類だったが2061年、最悪な事件『蝶事件』が起きてしまった。

 

大企業に成長した鉄血工造にテロリストが押し入り、その際に防衛システムが作動したのだが、発動した瞬間に全鉄血人形のAIが致命的なエラーを起こし人類抹殺を鉄血工造の全従業員の殆どを抹殺し鉄血工造は崩壊し、人類を攻撃を始めたのだ。

今は、ロシア内務省系の退役軍人の『ベレゾヴィッチ・クルーガー』が設立したPMC『G&K社』が対処しているが戦況は一進一退ともいえる状況だ。

 

 

 

 

そんな前門にミュータント共、後門に鉄血人形という希望もないクソッタレな汚染された地で今日も生きている。

 

 

 

 

俺の名前は『丈二・ルキーチ・ニコフ』。こんな名前だがハーフではなく純日本人で、機械修理と傭兵紛いの仕事でどうにかしている灰色に近い黒髪が特徴的な無精髭がチャームポイントの31歳のしがない機械技師だ。

 

今は少しボロい2.5LDKのマンションにある自室でとあるガジェットの製作を終え、今日は、仕事の依頼メールが来ないから中古の電気ホットアイマスクで疲れた目を癒している最中でもある。

 

2030年、コーラップスの汚染で亡国となった日本から亡命した両親の間で俺は産まれたのだが、その一年後にとある街で起きた内紛に巻き込まれ両親は死亡、今は亡き義父でロシア軍人だった『ヨシフ・ルカ・アキム』に保護されロシア軍で育ち、機械や戦術人形の設備兼コンピューター関連の仕事を従事しつつ戦場に出ていた。

 

因みに丈二は俺の両親が付けた名で姓については義父曰く、両親が姓を言おうとしたが力尽いて死んだらしく知らないとのことだ。

 

2050年の20歳の頃に義父がリーダーをしていた特殊部隊に人形や機械担当の兵士として2057年で解散するまで入隊し続けた。

軍を除隊した後は、2061年の蝶事件が起きてから1ヶ月後まで、自分が培った技能を用いてホワイトハッカーとしてコンピューター関連の依頼をこなし、時にはフリーの傭兵としてまたはあるときは機械技師として、時折退職金を削りながら食い扶持を繋いでいた。

 

 

 

 

そんな俺にはある秘密がある。それは、自分が俗にいう『異世界転生者』であることだ。

 

 

ぶっちゃけ頭が可笑しいとか精神病院に行く?と言われるレベルだが、それを証明する要素が二つある。

 

一つは前世の記録があること。今世とは違い遺跡とかコーラップスとか存在せず、第三次世界大戦とは無縁な世界だった。

前世の俺はごく普通に過ごしサブカルに嵌まりながらも機械関連の仕事を従事してそこそこの長い人生を謳歌して独身のまま大往生した。

俺がコンピューターや機械類が得意なのは、前世で機械技師として働いた経験があったから、ロシア軍でも核兵器によるEMP影響で最新のコンピューターが使えず、人材不足もあって古いコンピューターや機械等を使えたり修理出来る人物が少なかったから俺は貴重な人材として扱われてた。

 

 

まぁ扱える人間が少ない事もあってか修復やら何やらで毎日が大変だったし、機械に強くてなまじ義父に鍛えられたせいもあって、義父が所属する特殊部隊に配属されて相手の通信傍受とか戦術兵器の破壊や強奪等の特技兵として激戦区にかなりの頻度で行く羽目になったけどな!!

 

 

ふぅ、思いだしたらきりがないから次に行こう。

 

 

 

二つ目は、異世界転生でお馴染みの神様に出会った事と、その特典を貰ったことだ。

大往生した後、目を開けるとウニユ塩湖のような綺麗な景色が広がっていた。俺は、老体に鞭を入れながら絶景を見つつ辺りを探し回ると、真ん中にある小さな孤島に積み重なった沢山の本棚の上で、灰色に近い銀髪を風で靡かせながら青年が一冊の書物を読んでいた。

 

 

 

俺はその青年に話し掛けると彼は気付き、カヲル臭全開な台詞と動きでソイツは本をたたみ降りると、俺に自己紹介をした。

コイツの名前は『 』。好青年に見えるが意味深な事を言うエヴァ科カヲル系男子で、数多く存在する神様の中で輪廻転生を担当する神が一人らしい。

瑠璃のような赤い眼は、全てを見透かしているかのような感じで終始気味が悪かったが、どうやら話を聞くと俺は神のミスで殺された訳ではなく、ごく稀に奇跡的な確率で転生者として選ばれたとの事だった。

 

それで生き残る上で必要な力を渡すと言ってくれた転生特典は、身体能力と悪運(彼曰くハリウッドアクション級)、それと虚空から、読んでいた本とは別の"時折鼓動している赤い本のような何か"だった。

 

ソイツは俺に『良い旅を。』と笑顔で言うと、その赤い本を心臓部にめり込ませると本は身体に侵入していく。

俺はその際に起きた激痛に耐えきれず気絶、7歳の時に知恵熱で気絶し目が醒めたら前世の記憶が戻っていたという訳だ。

 

そして2061年の現在は、依頼のメールが来ない為、暇潰しにガジェットを製作しながら31歳の誕生日以降、使えるようになった二つ目の機能を使っている訳だ。

 

 

 

その二つ目の能力が、今まで培った情報や知識、人生を『データ』という形で纏める能力『menu(命名:俺)』だ。

本を開くイメージをしながら目を瞑ることでmenuが発動し、俺が今まで生きてきた中で起きた出来事、学び得た知識や情報等を記録し、ゲームみたいなシンプルなメニュー画面に保存、閲覧することが出来る能力だ。

 

しかも、設計図や地図といった情報をメニュー画面を操作することで目を開けた状態でもそれに関する情報が表示されるので結構便利だったりする。

因みに表示されるデータは俺にしか見えていない素敵使用だ。

 

しかし、メニュー画面を開いている時は少しだけだが無防備な状態になる所と、目の前にデータを表示させる時間や複数のデータ表示してしまうと脳に負担が掛かって、頭痛が酷くなり悶絶するという欠点を持っている。

 

 

 

今は、両眼を癒しながらメニュー画面にある『記録』を確認して俺の前世から転生、今世で起きた出来事と、第二の能力『menu』を再確認していた所だ。

 

 

 

おーれはふぁっとまん~♪せんじょうのはこびや~♪

 

 

 

おっと、どうやら依頼のメールが来たな。どれどれ、依頼人はガユマン、本名じゃないなコレ。っで依頼内容は『人形』の修理とフムフムフム。

 

 

それで....依頼成功料と前払いが......くっそ高っ!?

 

えっなにコレ!?この仕事始めて一番の報酬金額なんだけど!?コレ『だまして悪いが仕事なんでな。』って感じで殺されないよな!!5回程あったから凄い怖いよマジで!!

 

ちょっと恐いな、相手には悪いがハッキングして誰が送ったのか確認するか?いや、それがバレても面倒だしなぁ....。

 

 

 

 

 

よしっ!断ろう!!それが絶対に.......

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うわぁ.....迂闊だった。興奮して気配を察知するの忘れてた。

人形察知式レーダー『感知するぞよver5』から三体の戦術人形が玄関ドアでスタンバってるよ。

しかもこのシグナル反応、違法改造仕様じゃないですかやだー。

 

しかも同じ依頼主のメールから『依頼を断ったらどうなるか分かってるね?;-)』って来たよー。

 

もう、コレ受けるしかないな。よし、取り敢えずマカロフをバレないように隠した。隠しナイフもOK、よしっ玄関を開きますか。

 

せめて面倒な事にならないと良いなぁ......。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




オマケ
丈二・ルキーチ・ニコフ 31歳(日本人)
身長:175cm,
体重:59kg
容姿:灰がかった黒髪と無精髭で何か疲れたかのような顔



前世は独身だったが、機械関連の技術者の中でそれなりの功績を残し大往生した転生者。
カヲル系神様『 』にハリウッドアクション張りの身体能力と悪運、能力『menu』を貰いドルフロの世界に転生した。
機械類やコンピューターに強く、転生後はその才能を発揮、古いコンピューターも使えることから義父ヨシフ・ルカ・アキムが所属する特殊部隊で機械関連の特技兵として活躍したが、彼が27歳になった2057年にある事情で解散しそのまま除隊した。

その後は自分の特技に生かしつつフリーの傭兵兼技術屋として働きながらホワイトハッカーとして活動し、稼いだ金と退職金を削りつつ食い扶持を繋いでいた。

趣味はガジェット製作。


転生しても『menu』が31歳になるまで使えなかったり、一歳の時に両親が死んだり特殊部隊に入隊して激戦区に何度も赴いたりとハードな人生を送っている。


能力『menu』
丈二が31歳の時に解放された能力。丈二以外の人物は閲覧不可能である。

彼が今まで培った知識や情報、体験した事を記録して保存する能力。本を開くイメージをしながら目を瞑るとゲームのようなメニュー画面が表示される。
地図や設計図といった情報はメニュー画面を操作することで目を開けた状態でもその情報が表示された状態になる。
欠点は発動している間は集中しているため少しだけ無防備になってしまう。
そして、長時間使用や眼を開いた状態で複数のデータ表示し続けると脳の処理が追い付けなくなり酷い頭痛が起きてしまうこと。

副次的な能力の影響か、七歳の頃から丈二の暗記能力や空間把握能力はかなりのものであった。

基本的に武器や機械及び人形の修理や開発・改造、日誌や設計図として使われている。

イメージとしては、『NieR:Automata』のメニュー画面



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2.修理はきっちり・かっちりと

vectorの編成拡大の為に毎日、vectorが出る建造レシピ回しているのに9とUmp5が出る今日この頃。

9が出るのは嬉しいけど、もうファミパンは勘弁なんじゃ......。







やぁ、皆元気にしている?身体は三十路のおっさん、頭脳は天才(笑)な丈二だよ。

 

 

今は修理対象であった戦術人形『Vector』の大部分の修理を終え自前の軍用ノートパソコン(魔改造済み)でプログラムの不具合の修正、再起動時に直したパーツやプログラムが彼女と上手く噛み合うか等の最終調整をしている所だ。

 

えっ?話が飛びすぎてるって?あぁ、『menu』の能力を間隔を開けながらとはいえ長時間使った反動で脳が若干疲れていたから忘れてた。

 

やはり転生能力を発現しても、異世界転生系で直ぐにチート能力使いこなせてヤッフー!俺TUEEEE!!みたいな展開は現実ではあり得ないみたいだ。

むしろ転生して31年後にこの能力が発現した俺の方が異端なのかもしれないが......。

 

 

.....どうせパソコンを打ち続けるのもあれだし、高カロリーチョコバーとミルクココアで脳に栄養を与えつつ、6時間前まで遡るとするか。

 

 

 

 

 

 

 

俺は、俺が愛銃マカロフを腰に、折り畳みナイフを左手首に隠し玄関を開けると、人形であることを隠す為か少女らしい服装を着た戦術人形達がいた。

 

自分達の名前を言って、右目に傷を残し常に"朗らかな笑み"を浮かべ握手を求めるツインテ少女『UMP45』。

そんな彼女の妹なのだろうか、姉とは逆の左目に傷があるサイドテールの少女『UMP9』は、姉の後ろでやり取りを楽しそうに見ながら俺を観察。

薄水色の前髪パッツン銀髪少女『HK416』は腕組をしながら不機嫌そうに此方を見ていた。

 

UMP45は警戒しなくてもいいよ。と笑っていたが彼女達は俺のようにカバンや身体の何処かに武器を隠し、何かしたら直ぐにお前を殺せるという殺意が隠れていた。

 

 

俺は苦笑いしながら握手を返し軽い自己紹介を済ませると、HK416から早く行く準備をするよう促される。俺はチョコバー5本と工具箱、色々入った『仕事用』のバッグを手に取り三人に連行された。

黒塗りのハイエースにドナドナされハイエースに乗ると、後部座席に『G11』と呼ばれる銀髪少女が抱き枕を抱えながら俺達に適当に挨拶を済ませそのまま眠った。

 

 

 

HK416は運転席に乗りハイエースを運転、俺は目隠しをされ真ん中の席に、姉妹二人が俺を挟む形で両端の席に座り目的地へと向かった。

その道中、修理対象の人形の破損具合を簡単に教えてもらいつつ俺のアレコレについて等の他愛ない会話をする。その会話の中で知ることが出来た彼女達の性格と任務の内容について紹介しておこう。

 

UMP45は、表の顔は朗らかな笑みを常時浮かべてるが実の所、彼女のその笑みは偽りで笑ってない。特殊部隊特有のヤベェ匂いがするし、何を考えているか分からない。

目隠しの影響か彼女が余計怖く感じて表には出さなかったが内心『アイエェェェッ!?』しながら全身の血の気が引いていた。

とてつもない闇を抱えてそう(震え声。)。

 

 

UMP9は姉と違って作り笑いでない本当の笑みを使っていて、明るいからとても癒し、彼女のお陰で正気をたもてた。

雰囲気からして彼女はこの部隊におけるムードメーカー的存在なのだろう。残虐性が見え隠れしてたから、あまり敵にまわしたくない。

 

 

HK416は寡黙で口を開けば毒を吐く冷淡な感じ。

寡黙から漏れだすレベルの自意識過剰で完璧完璧主義者。コイツは出来るウーマンと見せかけて戦闘以外では残念な感じがする。確証は無いが彼女と付き合ったら確実にヤバい。花京院の命を賭けても良い。

 

G11はぁ.....、何だ。あんまり喋らなかったが惰眠を貪る面倒臭がりという印象が強い。それと頬っぺたがもち肌でぷにぷにの伸び伸びだ。UMP9が彼女の頬っぺたを伸ばした時の声と、頬っぺたを触った時の感触は小動物的なものを感じ不覚にもハラショーと呟いてしまった。

 

 

任務は、戦術人形『vector』の修理ただ一点のみ。

俺に彼女を五時間以内に修復して再起動するのが今回の依頼だ。

しかし、何故時間制限付きで尚且つ俺なのか。戦術人形専用の修理機械あるじゃんとか、色々と知りたいが消されるかもしれないから詮索するのは止めた。こういった仕事で下手にしゃしゃり出ると命が危ないからね!

 

 

損傷が激しくほぼ死に体な為、意識をさえ戻してくれたら任務は達成されるとUMP45が言っていたが、修復中の機械や人形を途中で投げ出すなんて機械技師にとって御法度物、其処は技術者として最後までやり遂げようと思った。

そんな時間を過ごすこと二時間、目的地に辿り着き車のドアが開かれ外に出る。目隠しを外すと辺りは木々で囲まれた森。そこに隠されてるようにポツリと海外映画に出て来そうな打ちっぱなしのコンクリートで出来た小さいセーフハウスが建っていた。

 

 

後ろで416がイライラしながら不機嫌そうな声で自分の名前と同じ銃を背中に押し付けられ、UMP姉妹の案内の元セーフハウスに入り案内される。中は質素な作りで幾つかの小部屋があり、その中で一番奥の部屋に案内される。

その部屋に入ると、そこそこ良い修理用の機材等が置かれ、修理対象である戦術人形『vector』が台の上で眠っていた。

 

彼女のことは車の中で大部分の情報は得ていたが実際に破損具合を見るとひどく悪い。

右腕がもげて端子と部品の露出し、服もボロボロ。身体のあらゆる場所に裂傷が多数、腹に大きな刃物で貫かれ空洞が出来、プラチナブロンドのショートカットに隠れる形で額にも大きな切り傷があるという悲惨な状態だった。

 

此処まで破損した戦術人形を直すのはかなり久しぶりだが、俺も機械技師としてのプライドがある。作業着のツナギに着替え工具箱から必要な道具を取り出し、彼女の修復が始まった。

 

 

まず最初に、自前の軍用ノートパソコンで彼女の破損具合がどれだけ酷いか確認すると、身体は見ての通りだが、プログラムの方もかなり破損していて思わず苦笑い。

額にあった切り傷は幅は大きいが傷の方は思ったほど浅く、そのお陰か人形の脳に当たる箇所の損傷は奇跡的に少ないのは不幸中の幸いだった。

この部分ってかなり複雑で、下手に弄るとその人形に大きな支障が出てかねない代物。それ故に人形を修理する上で結構大変な所である。

 

しかし、八割壊れた状態な彼女を見ても狼狽える俺ではない。戦場じゃ何度もこんな状態の人形をドンパチ賑やかな状況で直してきたんだ、嫌でも馴れる。

 

何時ものように、工具箱から倍率スコープ付のゴーグルを額に付け『menu』をフル活用して彼女を修復を始める。

まず最初に、彼女の破損データを転写しメニュー画面を起動、其処から情報や記憶を照り合わし必要な情報を絞り込んでファイルに纏める。

そこから、必要に応じてファイルからその情報を取り出して修復するという方法で進めた。

 

デメリットの都合上使う場面は限られ、クールタイムが必要だが、目を瞑る事で設計図や情報をすぐに取り出せるし、いざとなれば俺の視界に情報を開示出来るから、こういった修理や開発においてかなり助かる。

 

menuについてアレコレ言っているが、以前よりスムーズに修復やガジェットの開発が出来て大助かりなのだ。

こうして、能力と長年の経験を生かし素早く判断し黒いヤブ医者の如く彼女を修理をしていく。

そして、次いでに最適化もする。どんなに高性能でも最善のコンディションじゃないと本領が発揮出来ないからね。

 

こうして、Vectorの身体の修理に二時間、残りの時間をプログラム修復や調整に費やし今に至るというわけだ。

さてと、これをこーしてあーしてと.....どうだぁ?

 

 

....ヨシ!完全修復完了!修理完了までに4時間10分掛かったか。能力を使っても50分短縮、まだまだ改良と練習の余地ありだな。

しかしこの新品同様の出来、俺の腕も鈍る所か成長し続けているのはとても嬉しい。とてもхорошо(最高)な気分だ。

 

見てください!八割壊れたVectorを新品同様きっちり・かっちり修復したこの姿を!我ながら良い出来だな!!

 

 

...額の傷は綺麗に直せたが、腹の傷の方は、傷口があまりにも大きかった事と機材の関係上、お腹辺りに小さな傷跡が残ってしまったが、まぁそこは戦術人形用の修理機械を使えば直ぐにその傷を無くせる用にしておいたから、まぁOKな筈だうん。

プログラムもぬかりなーく修復して最適化したし、それじゃ彼女を目覚めさせるとするか。

えーと、....ここをこうして、......再起動プログラム始動っと。

 

 

.....身体各所異常無し、基本プログラムも異常無し。再起動......よし!起動したな。

 

おっと、まだ何が起きたか混乱して、此方には気か付いていないみたいだな。

 

 

 

おはようVector。ぐっすり眠れたかい?

おっと俺は敵じゃない。そんな睨まなくても良いぜ?

 

俺の名は丈二・ニコフ、フルネームは長いからまた今度な。

あんたを直す依頼を受けて任務を達成した見ての通りただのしがない三十路の機械技士だ。えっ?俺がとても胡散臭い?後ろにいる彼女達といい、結構気にしている所を突いてくるね全く。

 

それに驚くのは分かるが、身体を急に動かすな。

 

ちゃんと直したとはいえ、病み上がりの身体を急に動かしたら駆動パーツに負荷がかかってお身体を障りますぜ?

 

それと、記憶の方は大丈夫か?『過去のデータを思い出すと多少ちょっとしたノイズが走るだけで差し支えないし、私が製造されてから処刑人との戦闘で相討ちという形で意識を失う直前までの記憶はちゃんと覚えているわ。』か。

むぅ、やはり額のダメージのせいでプログラムを修理しても微少のノイズを取り除けなかったか。

 

 

んっ?何で生きていているか不思議かVector。

そりゃ、素人が見ても分かる位の壊れっぷりだからなぁ。あんたを直すのはちと大変だったよ。

ってかあの鉄血人形のハイエンドモデル『処刑人』と戦って勝ったのかよ、凄いなアンタ。

 

おっと、ネガティブ発言をしない。あんたは目覚めてからネガティブ発言が多いが、あんたが眠っている間、身体は壊れてもアンタの『意思(AI)』はまだ生きたいって必死に叫んだお陰で俺はアンタを直せたんだぜ。

 

 

 

 

なぁ、そう思うだろ?隠しカメラで見ている万年引きこもりの悪友、ペルシカさんよ?

 

 

 

 

 

 

 

 



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3.契約










ーーーーーーside.『Vector』ーーーーーー

 

 

私ことvectorは、自分が生きていることにまだ驚いている。

 

当たり前だ、数日前に鉄血人形と交戦し敵リーダーであるハイエンドモデルの『処刑人』によってバックアップ不可能な程に大破していたのだから。

ソイツに私の右腕は切り捨てられるし、腹を太刀で貫かれるわで最悪だった。

 

その代わり、アイツの左目に隠し持っていた炸裂式のナイフで深く抉るように射し込んでやったけど。

あの不敵に笑っていた奴が叫びながら太刀を捨てて苦しむ数秒後に頭が爆発する様は最高だったわ。本当は焼夷手榴弾で焼き殺したかったけど片腕が切り落とされてたから仕方ないわね。

 

基本人形は壊れてもその人形のデータが無事なら、そのデータをバックアップし、新しい身体に意識データをコピーして復活出来る。

けど、私のシステムは処刑人との戦闘で多くのデータが破損しその機能が使えなくなっていた。

 

つまる所、私はあの戦闘で完全に壊れた訳ね。

 

しかし私は『戦士』。それに恐れることはなく『あぁこれが死か。』と意識が朦朧とするなかでそんな事を考えた。

 

痛覚が鈍くなり意識が朦朧とするなかで私は、『平日も戦闘、休日もやることがなくて戦闘訓練ばっかりだったな。』とか、『けど、何者でもない私に戦い方や生きる意味を教えてくれた"アイツ"に悪いことしたな。もしもあの世があるならその時に謝ろう。』とか考えながら、そのまま眠るように眼を瞑り私の人生が終わった。

 

 

しかし、私は生きていた。あの死闘が嘘かと思える程に五体満足でだ。

修復機械を用いても破損してた身体もデータも何事もなく修復していたのだ。

 

夢かと思った。人形は夢を見ないけど。

 

そんな私を夢から醒ましたのは、部屋にあるパソコンを見て溜め息を吐きながらやれやれとわざとらしいポーズを取るつなぎを着てココアを飲む一人の男『丈二・ニコフ』だった。

 

そんな、彼は一言で言うと『胡散臭い』。顎の髭が濃い無精髭とボサボサの灰色混じりの黒髪、整えば男前なのに疲れ顔で台無しという情けない容姿。

基本的にノリの言い男性の性格で明るい感じで話すが、観察眼がとても鋭く、まるで全てを見透かされているな錯覚に陥ってしまう底深いナニかを感じられる男といった所ね。

 

性格は違えど底知れない恐怖という面では"アイツ"にそっくりだわ。

 

そんな彼は私の後ろを向きながら、ニヒルに笑いながら起動してないデクストップ型のパソコンを見つめていた。

 

突然の発言に、最初はコイツの頭可笑しいのかと思っていたけど、彼の発言で電源が誰も触ってないのに勝手に起動しパソコンが動きだすと、パソコンのデクストップ内にモニター現れ一人のピンク髪の女性が現れた。

 

 

『やっぱりか、君の事だから私が隠しカメラで見ているのを気付くのは薄々分かっていたよ。』

 

その女性の名はペルシカ。

G&K社に人形を提供しているI.O.P社の技術開発部門「16Lab」の主席研究員。そして私達『第二世代人形』誕生を促し、代用コアや烙印システムといった私達戦術人形にとって重要なシステムの数々を開発した天才だ。

 

そして映像越でも分かる。彼女、凄く残念美人ね。

 

ちゃんと身だしなみを整えればかなりの美人なのに、目に隈があったり白衣をだらしなく着てたりと服がヨレヨレだったりと、丈二がマシに思える位にズボラで残念臭が漂ってた。

そして、人間に生える筈がないあの獣耳、質感と時々動く感じからして本物よね?凄く気になるのだけど。

 

 

「そりゃ人形を直している時にアンタ特有のねっとり視線をカメラ越で感じたからね。それに、俺を此処に連れてきた連中も高性能だが繊細なI.O.P社製の戦術人形に違法改造されているのに、キチンと不具合なく動いているとくれば、自ずと答えは限られて来るだろ?」

 

 

『変な所で頭の回転が早くてロマンチストな所は相変わらずね丈二。』

 

「アンタこそ凄い天才だが、引きこもりでズボラな所は変わってないな。たまには外の空気を吸って身体を動かしているか?アンタの私生活を知っている身としては、その不健康な生活が祟って早死にするのは勘弁して欲しいのだが。」

 

 

彼等はどうやら旧友らしく、お互い皮肉を言っているが何処か懐かしく楽しそうな感じがするわね。

.....会話に入りづらくて私が空気になっているけど別に良いか。そう思いながらオフィスに良くある回転式の椅子を座り髪を適当に弄ってこのやり取りを観察していた。

 

 

というか丈二、ペルシカに対して娘を心配する母親みたいになってるわよ。もしかして二人ってそういう関係?

 

 

 

『君が心配しなくても平気よ。一週間に一回はちゃんとした料理を食べるし、たまに外に出て缶コーヒーを飲みながら外の空気を吸っているわ。何度か一夜を共にした仲だからと言って彼氏面は止めてくれない?』

 

「違いますー。コミュ症なアンタの数少ない友人として警告しているだけですー。それにちゃんとした料理ってレトルト商品の事だろ。」

 

『......なんのことかなー。』

 

「おいおいおい、図星かよ....。まぁそれは置いといて....だ。ペルシカ、アンタはなんでVectorの修理を俺に任したんだ?アンタの技量なら片手間で修理出来るだろ。彼女を直すなら、こんな手荒な方法をしなくても良かっただろ。」

『簡単なことよ。今、極秘裏で進んでいる『あの計画』を君に任せて良いか確かめていたのよ。』

 

「極秘裏....っておいおい、ヤバい類いなら例えアンタでも容赦しないぞ。」

 

 

この二人の関係が凄く気になるけど、何故こんな荒事みたいな事をしたのかについては確かに私も思った。私を直すならI.O.P社経由で正式な依頼を彼に渡せば良いのに何が目的なのかしら?

 

そんな事を考えると、ペルシカはニヤリと笑いその訳話す。すると、さっきまでの明るい彼とは真逆の冷徹な表情をして睨み付ける丈二に対してペルシカは、動じることはなく彼を見つめる。

部屋の外で幾多かの駆けつける音が聞こえたが、ペルシカが別の通信機で何かを伝えると音が鳴りやみ彼女は話を再開した。

 

....極秘裏で進んでいる計画って私、トンでもないことに巻き込まれたわね。

 

 

『大丈夫よ、上の連中にも話は通しているから。それに、"

戦術人形をほぼ完璧に直せるのは現状、貴方と私しかいないでしょ?"まぁ、結果としては衰える所か以前より急成長してたけどね。』

 

 

 

『貴方も鉄血の勢力がどれだけ脅威なのは知っている筈よ。この計画が成功すれば、鉄血達に対する切り札になるかも知れないの。....だからお願い、私達に力を貸して。』

 

 

「......ハァ、分かったよ。それで、俺は一体何をすれば良いんだ?その代わり、()()()()()()()()()()()()()()。」

 

 

『....ッ!ありがとう。それについては手配しておくわ。それじゃあ、詳しい事は入社してからにして大まかな話をすわね。』

 

 

最初は言葉は出ずとも渋った様子で眉を潜めていた丈二だったけど、彼女の真剣な顔を見ると彼は手を頭で抑え溜め息を吐き渋々ながら条件付きで了承した

そのときの彼女は、心なしか長い主張から帰って来た親に見せる子供ような笑みを浮かべていた。

 

 

しかし、コイツがペルシカと同等の技術力...か。そりゃ私の身体を完璧に直せる訳ね。

ペルシカは平静を装っているが、子供がプレゼント箱を開けるかのようなウキウキ感を見え隠れしたしながら『例の計画』の一部を話し始めた。

 

『まぁ、貴方にはG&K社に技術者として入社して、あるはぐれ人形達を"保護"して仲間にして欲しいの。』

 

「もしかして『はぐれ鉄血人形』のことか?」

 

『ご名答。』

 

 

それってAIの深刻なエラーで暴れ放題のアイツ等を鹵獲しろって事?狂気の沙汰じゃないわね。

というか、敵側にもはぐれ人形がいたのね。鉄血人形の全てがマザーAIの配下だと思ったわ。

 

「必見必殺状態で人間殺戮マシーンと化した奴等を捕まえて味方にするのか?それにアイツ等、マザーAIと繋がっているから情報を盗まれる可能性があるだろ。」

 

確かに、そういえば最近ニュース番組の特集で、敵側の四足歩行型『Dinergate』が可愛いという理由だけでペットロボットとして拾って持ち帰った結果、鉄血が人類側の情報を得て更に勢いを増してしまった問題を取り上げていたわね。

そりゃ、あの四角いフォルムで懸命に走る姿を見たら可愛いと思うけど拾わないとは思わないわね。アイツ等何時も大量で襲ってくるから見飽きたのよねぇ。

 

簡単に壊れるからつまらないし。

 

 

 

『そこは安心して丈二。鉄血側の『はぐれ人形』は他のはぐれ人形とは違う事が最近分かったのよ。それも敵側がソレを恐れて見つけ次第最優先で破壊するレベルでね。』

 

「それは興味深いな、ふむ....それで何時俺は大先輩が経営しているG&K社に入社するんだ?」

 

 

 

ペルシカがその理由を話すと、丈二は顎髭を触りながら研究員特有の目付きになっているけど、鉄血のはぐれ人形は他のはぐれ人形とは違う?

 

....そういえば私と相討ちになった処刑人、最初に出会った時に『今日は運が良い。裏切り者達を殺した帰りにグリフィンの人形共も殺せるなんて、ハンターが知ったらさぞ羨むだろうな。』って言ってたわね。

まぁ、私に炸裂式ナイフを眼球に刺されて頭部が爆発四散したけど。

また、今度出会ったら煽る次いでに復讐もかねて丁寧に燃やしてやろう。

 

 

『明後日から、ちなみに働く場所はS020地区にある支部ね。』

 

「へぇーS020地区かぁ。S020地区........アッ。」

 

 

そんな事を考えるていると、彼は何時私達、戦術人形達が所属するG&K社に就職する日を訊ね、ペルシカはその日にちとその支部があるS020地区を伝えたのだが、働く場所を聞いた途端、彼は固まってしまった。

私が働いている支部に何かあるのだろうか?

 

 

Пожалуйста,снова(もう一度、頼む)。」

 

『何でロシア語になっているのよ。まぁいいわ、S020地区にあるG&K社の支部よ。それと、貴方の荷物は3日後、宿舎の●●号室に届く予定だからそれまでは隣部屋にある貴方の『同志達がいる』部屋で居候ね。ちゃんと彼女達に連絡しておいたから。』

 

「オォウ.....ウージャス(Ужас)、なんてこった。」

 

 

かなり狼狽えているのか、ロシア語で丈二はその場所を確認し再び頭を頭を抱えている。

私の部屋から近いわね...。って、あれ?

 

●●号室って"アイツ"が所属している『白い猟犬』がルームシェアで住んでいなかった?

......もしかして、彼女達がよく話していた『暴れ人形師』って彼のことなの?

 

彼女達を何度も修復,改修し強くさせ、戦地では外骨格式のEXOスーツを着て敵軍の兵器を壊す、若しくは盗んで大暴れ。

その暴れっぷりに敵からは『ロシアのグレムリン』と呼ばれて恐れられてたって言っていたわね。

 

......此は興味が湧いてきたわ。

 

 

『あっそれと言い忘れてた。君が直したVector、今日から君の部下ね。今回の報酬も貴方の銀行口座に振り込んでおいたから、明後日から社会生活頑張ってねー。』

 

 

「ちょっまっっっ!!」

 

 

よし!神様ありがとう!!神様が本当にいるかどうか分からないがありがとう!

心の中でガッツポーズをすると、電源が落ちて画面が暗くなったパソコンに片腕を伸ばして固まっていた丈二が腕をだらりと下げ『あー、マジかー。』『どうすっべこれ。』とか項垂れていた。

 

 

私はそんな事を気にせず立ち上がり、挨拶代わりの握手をするためにそして、これから起こるであろう体験に口元が僅かに歪めて小さく笑いながら私は彼に歩み寄った。

 

 

 

これは暫くの間、退屈しないで済みそうね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「これから宜しく丈二。あんまり私を期待しないでよね。」

 

 

......あー握手をどうもありがとうvector。明日から、色々大変だと思うけどヨロシクな。

先ずは、コミュニケーションを築き上げるために君と色んな話をしたいのは山々だが、取り敢えず扉で臨戦体勢のまま盗み聞きをしている彼女達の警戒を解くのが先だな。

 

「そうね、私も珍しく沢山お喋りがしたい気持ちになっているけど、扉の向こうから若干ピリピリとした雰囲気が感じらるし、ソレを解決してから後でゆっくり話しましょう『暴れ人形師』さん?」

 

.....その渾名を知っているって事はアイツ等の知り合いってことか、全く世界は広いようで狭いな。今はコーラップスと核の汚染で世界は狭いけど。

 

「そのブラックジョーク笑えるわね。」

 

だろぉ?アンタとは気が合いそうだ。それじゃ行きますか。

 

「ええ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

のんびり早めの余生を過ごしていた俺はこの任務以降、はぐれ鉄血人形を鹵獲するために、大先輩が経営しているG&K社に就職、本格的な戦場に舞い戻り鉄血vsグリフィンという大規模な騒動に巻き込まれる事となる。

 

どうやら俺の悪運は今でも健在みたいだ。

 

しかし、取り敢えず今はそんな事はどうでも良い。今は"彼女達"をどうにかするか考えないとな。部隊が解散してからの四年間、連絡していなかったからなぁ。

 

 

取り敢えずフライパンで作れるロシアのチーズケーキ『シルニキ』を作ろう。アイツ等シルニキが好きだったし、それに甘いものは心を安らかにする(謎の持論)。

これなら何とかなる筈だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 





オマケ
炸裂式ナイフ(元ネタ:フルメタル・パニック)
戦術人形や無人兵器の対抗策に第三次大戦の中で生まれた兵器。ボタン式のセーフティが付いており、それを解除して突き刺すことで持ち手に内蔵した起爆装置が起動し、9秒後に持ち手に内蔵した火薬が爆発、それに伴い刀身と持ち手の破片飛び散り内部を徹底的に破壊するダムダム弾の性質を持つ兵器。
しかし、刺してから9秒後に爆発する性質上、使い所が難しく巻き添えを喰らう可能性が高い。
そして、誤爆を防ぐため構造を複雑にした結果、高価になってしまった。

それでも戦術人形や装甲持ちの兵器、ミュータントに対して効果的な為、終戦後もごく少数だが生産が続いている。


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4.再開()

今回はある人形の二体の内、片方がキャラが崩壊?したり、もう片方が少し酷い目に合います。その為、少しだけ心を広くして読んでくれると幸いですm(__)m



















やぁ。

 

旧友ペルシカからある計画を任されて天才ハカー機械技師(笑)から、元ロシア軍人のクルーガー先輩が経営すG&K社の社員にジョブチェンジ、そして部下として依頼で直した戦術人形Vectorが仲間に加わった丈二だよ。

 

いやはや昨晩は、俺を連行した戦術人形達の説得が大変....いや、残りの三人は簡単だったし実質一人か。

 

その一人であるHK416がドアを開けた瞬間にいきなり殺人パンチを放ってきた時は思考が止まり掛けた。

 

 

それをロシアが生み出した武術『システマ』を取り入れたCQCでいなしたら、HK416が舌打ちをして近接技を次々と繰り出した時は、軽口を言いながら全部の攻撃をいなし続け最後にはシステマで彼女を転ばせてそのまま拘束し無力化した。

HK416は、手加減なしの戦術人形のスペックで攻撃してくるからいなす度に凄い腕と拳がジンジンして痛かった。

 

 

UMP9ら俺の手際に子供のようにはしゃぎながら『何それすごーい!他のやつも見せてー!』とせがまれたり、ソファーの上で寝ているG11の所までいつの間にか移動していたVectorが彼女の頬っぺたをプニプニしながらさっきまでのの戦いを見ていた。

 

俺の部下(人形)って何でこう、自由なんだろう。

 

そして、UMP45は何時もの朗らかな笑みを浮かべながらも、俺のシステマを見て脅威だと思ったのか若干警戒しながら改めて自己紹介をした。

 

彼女達4人は『404小隊』と呼ばれ、裏の汚れ仕事を担当。グリフィンとは依頼主的存在らしく、雇い主は秘密事項な神出鬼没の小隊らしい。

 

エラーコードを小隊名にするなんて洒落てるなって話の途中で思った。

 

Vectorも噂で聞いた程度しか知らない程に秘匿されてると聞いた時は、特殊部隊の中で特殊な立ち位置にいたせいか、謎の親近感が沸き今後とも宜しくと握手をした。

ちなみに彼女達を雇う金は結構高い。それでも危険な任務をちゃんとこなすなら安い方....なのか?

 

 

HK416?彼女の攻撃を子供をあやす感じでいなされまくったせいで凄い嫌われた。もうあれだ、猟犬が凄い形相のまま犬歯剥き出しで唸り続ける感じだ。

UMP姉妹が曰く『M4A1』と『M16A1』と呼ばれる戦術人形の次に嫌われているレベル。

 

何でさ。.....あっちから仕掛けてきて迎撃したのに激おことか理不尽じゃね?っと思ったが、Vector含めた他のメンバーから『結構、大人げないレベルだった。』と言われた。

 

解せぬ、『手加減は戦士の恥』なのに。

 

その後はHK416が運転する形でハイエースに再び乗り、彼女達のガールズトークとラジオに流れるジャズの音をBGMにしてG11と同じ席で仮眠をしているとS20区に到着、ちょっとした寄り道をした後にグリフィンの支部に到着し彼女達と別れた。

その際、VectorはUMP45と波長が合うのか、向こうからスカウトされるレベルで仲良くなった。

俺の前で部下の引き抜きするとか彼女、中々に図太いな。

 

 

まぁ、そんなこんなでグリフィンの支部に入ると、玄関にいた受付嬢の一人がVectorに支部長が俺に会いたがっているから支部長室に向かってくれと伝言があったことを伝え、俺達は支部長に会うために支部長室に向かった。

 

 

Vectorの案内の元、支部長室にたどり着き中に入るとそこには、S20支部長である『シュバルツ・レッド』と彼の秘書にして上級代行官である『キャサリン』が俺達を迎えてくれた。

 

俺のある程度の履歴やはぐれ鉄血人形鹵獲計画、通称『ユダ計画』を知っている数少ない人達で俺を歓迎しながら計画云々や仕事内容、他愛ない話等をしたのだがまぁこの二人が濃い。

 

シュバルツ支部長は屈強な体つき、金髪をオールバックにして目付きが鋭い40前半の元ドイツ軍人。

良くも悪くも昔の偉い軍人みたいな誇らしい精神を持っているが、人形や人間関係なく対等に扱う仲間思いな一面があり何処か憎めないのだが...語尾が長く声がうるさい。

 

『ロシアのぉグレェムリンであるルル!君にィ!ついては君が率いていた彼女達から詳しく聞いているゥゥゥ!今後ともその力をォ存分に発揮したまえェェ!!』

 

 

こんな喋り方なのに、むせないのは凄いと思った。それと背後にうっすらとだが、半身機械の男が満面の笑みを浮かべてたのは気のせいだと思う。

 

丈二、貴方疲れているよ(言い聞かせ)。

 

 

キャサリンは眼鏡を掛けたナイスバデェとシルクのような白い肌と金髪のツインドリルが特徴的な女性。会話の中に英語を挟み、アメリカ特有の明るさが特徴的なのだが、その裏では暗部特有の何かがキラリと輝く女狐的存在だ。

そんな怪しい彼女だが支部長に見せる忠誠心は本物だし、敵対しなければ害は無いだろ。.....というか敵に回したくない。

 

 

そんな二人を話しが終わり部屋を出た時の俺は精神的に疲れていた。この支部に所属しているVectorは慣れているのか疲れてない。......あのテンションに二人の慣れるのにだいぶ時間掛かりそうだな。

Vectorは他の用事があるらしく一旦離れ、俺はmenuに記録した支部のマップを確認し探索を始めようとするところだ。

 

 

明日から本格的に忙しくなるが、今はそんな事はどうでも良い。問題なのは俺が率いていた特殊人形小隊『白い猟犬』のメンバーとどの様に再開するかだ。

 

ぶっちゃけると、会いたい気持ちがあるのだが、ちょっとした後ろめたさもあって怖い。それもあってか、俺は現在進行形でバレないように周囲に溶け込む形で隠れているというチキン振りを発揮していた。

まさか、再開した時の反応を恐れて、このような下らない形で戦場で培った隠密技術を使うはめになるとは思わなかった。

 

この後ろめたさには理由がある。

 

特殊部隊が解散となりそのまま引退したあの日、彼女達ペルシカの計らいで16LABに俺『丈二・ルキーチ・ニコフ』は行方不明者として姿を眩ましてからの四年間偽名を使い、半ば世捨て人としてあの依頼が来るまで静かに過ごしていた。

 

彼女達『白い猟犬』と別れてから半年後、ペルシカから暗号化されたメールが届き解読すると彼女達は安全地帯であるS020地区で働いているという内容とその証拠である写真や動画が貼られ、彼女達が元気で過ごしているのを見てホッとした反面、姿を消したという自分に対しての不甲斐なさに1日中ナーバスになったは言うまでもない。

 

何故彼女達を16LABに移籍させたのは俺が去り彼女達が軍に残った場合、俺の事を良く思っていなかった一部の上官達によって彼女達が物理的に滅茶苦茶になる可能性があった。

その為、俺が頼れる人物の中で彼女達を完全に守れる後ろ盾を考え抜いた結果、二世代型の試作機に位置する彼女達に大きく携わり尚且つ主任でもあったペルシカしかいなかったという経緯もある。

 

俺の方は.....地獄のような激務による一生休暇って感じだ。

 

一緒に16LABに就職すれば良かったのだが退社する半年前、軍の基地で事務仕事の最中に突然気絶してしまった事があった。

あまりにも突然の出来事だったから、もしかしたら重病を患ったかも想像したら怖くなり軍医に詳しく検診して貰った。

 

検査した結果、身体に影響は無かった。しかし、戦争やら様々なエゴを見すぎたせいで深いストレスが生じ軽度のPTSDを発症。このままだと精神が危ない状態だと判明された。

PTSDを発症しても気付けなかったのは、度重なる戦場でストレス関連により精神が麻痺し気付けずにいたと結論付けられているが、俺自身が前世の記憶を保持している故に起きる肉体年齢と反比例した精神年齢の早期熟成による弊害も大きく含まれていると思う。

今思うと俺の喋り方はまだ若いが、精神年齢は前世も含めて100歳以上越えている。何らかの障害が発生しても何ら可笑しくもない。

 

 

医者から戦場からそれに関連するものから一時的に離れ長い休養が必要だと言い渡された結果、戦術人形であった彼女達とも別れる羽目になったという訳だ。

そして、軍を退役しホワイトハッカー兼技術者たまに傭兵という闇鍋状態で働き始めるまでの二年半、俺は磨耗した精神を癒すために退職金を削りながらこの荒れ暮れた世界の片隅でゆっくり休養をしていた。

 

プラモ製作やガジェット等、様々な物に触れながら趣味に没頭したお陰か戦闘に出られる程に本来の精神は俺は回復し、一年前に目覚めた第二の転生特典『menu』も相まって技術力はかなり上がった。

その代わり二年半の療養生活により身体が鈍り戦闘技術や隠密等の戦闘面は全盛期より衰えてしまったが。

 

.......それに、彼女達と別れた際に『もう会うことはない、お前ら俺が居なくても元気で生き抜けよ。』なんてかっこ良く捨て台詞を言ってから去ったもんだから余計に会いづらい。しかもその時、ペルシカも居たからね。今そこに穴があるなら直ぐ様入って、そのまま大きな岩で出口を塞ぎたい気持ちだ。

 

 

 

しかし、再開するのも時間の問題。

何の為にHK416に凄い睨まれながらも店に寄って貰いお菓子の材料を買ってきたと思っているんだ俺。

彼女達と再開する為に覚悟を決めた筈だろ勇気を持て俺。取り敢えず『ナガン』→『ペーシャ』→『ティス』→『クアン』 で会うとしよう。

 

ナガンとペーシャの二人はビンタを喰らうと思うが、何とかなる。ティスは秘密好きの記者気質があるから今までの事を根掘り歯掘りじっっくり話せばどうにかなる筈、問題があるとすればクアンだ。

 

俺が診断された後、隠していた精神ボドボド状態にいち早く気付いた戦術人形。彼女と出会った経緯が経緯な為、ファザコン義父ver(対象:俺)な程にlove。

 

一線は越えていないが俺に対して娘のように甘えていた。別れる時なんかは俺の背中に抱き付いて泣きじゃくる程だ。

一人の状態でファザコン気味のクアンと会ったら....死にはしないが、多分ヤバい。それに彼女のことだ。今頃、仕事を手早く済ませ俺の探索をしている筈だ。

 

 

そのリスクを軽減するために、いち早く部隊でお姉さんポジにいるナガンに会わなきゃならない。Vectorと別れる前に教えて貰ったナガンがいそうな場所を重点的に隠密で「見つけましたよ、叔父様。」探すし....か.....。

 

 

...........マジかぁ。俺の後ろにいるから姿は見えないが、この声と気配は間違えなくクアンだ。しかも、両手でホールドしていやがる。

緩そうに見えてちゃんと俺の腕の関節を抱き付きながら自分の腕で極めているせいで抜け出せねぇし、地味にいてぇ......。

 

 

「ふふふ...四年振りですね叔父様。私ですクアンです。まさか、また叔父様と出会えるなんて思ってもいませんでした。」

 

 

あー、そうだな。まさか後ろに回り込まれた上、誰にも気付かれないレベルの隠密をするとは腕が上がったな。嬉しい限りだよ(震え声)。

 

「っ!!スッ...スパシーバ!叔父様と別れてから叔父様と貴方の義父で今は亡きヨシフ大佐。そして、『白い猟犬』の名に恥じぬよう私達は毎日,毎日,毎日,毎日,毎日,毎日,毎日,毎日,毎日,毎日,毎日,毎日,毎日,毎日,毎日,毎日,毎日,毎日,毎日,毎日,毎日,毎日,毎日,毎日,毎日,毎日,毎日,毎日,毎日,毎日,毎日,毎日,毎日,毎日,毎日,毎日,毎日,毎日,毎日,毎日、精進したお陰です。また、貴方に誉められるなんて....グスッ夢のようでず!!」

 

 

あっ嬉しいのは分かるけど、徐々に力を強くしながら抱き締めないで。折れちゃうから、俺の骨がクルミ割り人形のクルミみたいに粉砕しちゃうから。...冗談抜きで折れちゃうから!

 

 

 

「....私はもう、一生っ.....会えないかとっ....。」

 

 

クアン?おーいクアン?...ってかこれヤヴァイ、早くこの拘束から抜け出さないと、だんだんヤバくなってきたぞ。クアン久々に君の顔を見たいからこの拘束をほどいてくれないか?.....クアン?

 

 

 

「あの時、叔父様が....もう限界に近いのを知ってたからっ!....でも、........私に、私に生きる意味を教えてくれた叔父様にまた出逢えて褒めてくれるなんて.....っ!!」

 

 

 

「私...わたしっ!...うぅ....うぅぅぅ....。」

 

 

 

おっおーい、クアン?

 

 

 

 

 

「う"う"ぅ....う"う"ぅっ...お"し"さ"ま"あ"ぁ"ぁぁぁぁぁ!!」

 

 

あっ!ヤバい!骨が!骨が悲鳴上げてるから!!感動するのは後からにしてくれたら嬉しい!!今物理的な意味でヤバいから!!俺の身体が、くるみ割り人形の圧力よってくるみの殻がひび割れ始めた状態だから!

 

 

 

 

「う"わ"わ"わ"わ"わ"あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ん"!!」

 

 

 

 

あっ!ちょっ...やめっ........あっ........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アッーーーー!!

 

 

 

 

 






HK416&9A-91好きの指揮官、本当にすまなかった。orz

HK416の性格上、彼女が殺意を向けるレベルで嫌うあの二人に似た丈二に突っ掛かるだろなと思ったのと、丈二の油断ならない感を出すために考えた結果こうなりました。

9A-91は.....ヤンデレにするのも味気ないので、ある出会いが切っ掛けで丈二を叔父様と呼び犬のように甘えるファザコン(義父)キャラになりました。
ちなみに『白い猟犬』におけるヤバい系主人公でもあります。

次回には白い猟犬に所属している残りのメンバーを出す予定なので楽しみにしていて下さい。



オマケ

シュバルツ・レッド
年齢 40歳前半

元ドイツ軍の軍人。軍の退廃と腐敗に呆れた頃に、クルーガーのカリスマに引かれグリフィン社に入社した。
クルーガーと同じく衰え知らずの屈強な体つき、金髪をオールバックで鋭い目付きが特徴的。
良くも悪くも昔の偉い軍人みたいな誇らしい精神を持つが、人形や人間関係なく対等に扱う仲間思いな一面があり何処か憎めない。
しかし、語尾が長く声がうるさい。

キャサリン 推定20歳前半?

眼鏡を掛けたナイスバデェとシルクのような白い肌と金髪のツインドリルが特徴的な女性。
会話の中に英語を挟み、アメリカ特有の明るさが特徴的なのだが、その裏では暗部特有の何かがキラリと輝く女狐的存在な一面を持つが、シュバルツ支部長に見せる忠誠心は本物である。

経歴、年齢全てが謎で、特殊部隊に所属していた丈二でさえも推し量れない闇深さを持つ。



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5.あぁ、懐かしき人形達よ(白目)

1ヶ月以上も投稿が遅れてすみませんm(__)m

仕事の忙しさで執筆が遅くなりました。

それと今回もキャラ崩壊高めです。それではどうぞ。




数時間振り、丈二だよ。

 

S020区にあるグリフィン支部に就職したら、濃い支部長と秘書に会ったり、昔指揮兼etc.を担当してきた戦術人形小隊『白い猟犬』に所属する戦術人形の一体にして主人公ポジ、9a-91ことクアンにジーグブリーカー(感動のハグ)で三途の川を数秒見た丈二だよ。

 

 

今、俺がどうしているかって?それは.....

 

 

 

 

 

 

「スンスン.....はぁぁぁ。久々の叔父様の匂い....凄く良い。フフッ、いつ嗅いでも叔父様の匂いは落ち着くなぁ......。」

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ、此がおじ様が隠居してからこの戦場に復帰するまでの経緯ですか。まだ隠している秘密がありそうですがミステリアスな所が叔父様らしいので止めておきましょう。なんだって私も秘密兵器なのだから。それで叔父様、何か面白い秘密(ネタ)はありますか?」

 

 

 

 

 

(へっあっっ、あっわわわわ....どっどうしよう、どうしよう。まっまさか丈二隊長と再び会えるとは思わなかったから私思っている以上に緊張し!だっ大丈夫!緊張するなわっわ私!昔は普通に話せたんだし、いっ今やってるクオン達みたいに接すれば!.....あわわ、今度は話す内容が思い付かないよぉぉぉ......。どっどうしよう!」

 

 

 

 

「ハラショー、この光景とても懐かしいわね。隊長の疲れからして、でもそろそろ止めるべきかしら.....いや、このまま眺めるのもいい気がするわね。」

 

 

 

 

「.......。」モグモグ

 

 

 

 

 

こんな状況だ。

 

 

 

 

現在、俺が軍役時代に担当していた特殊人形小隊『白い猟犬』のメンバーがルームシェアしている部屋で俺にジークブレイカー(無自覚)をかましたクアンに薄緑色のジャケットを恍惚の笑みを浮かべながらクンカクンカされ、銀髪の三つ編みのお下げを靡かせる戦術人形『ティス』がメモを取りながら俺に質問攻め。

 

ロシア帽を被った淡い金髪人形の『ペーシャ』は、心の声が漏れる程に限界オタクみたいな状態になり、ロシア風の白い服装をした『ナガン』は赤いソファーに座って足組をやり、昔を懐かしみながら珈琲を飲みコレを止めるべきか否か考えていた。

 

 

どうしてこうなったんだよ?っと思った諸君。こうなった経緯を軽く纏めるとしよう。

 

先ず数時間前、クアンの感動の再会というなのジークブレイカーに俺は気絶一歩手前だった。

そこにVectorが用事を終えた際に偶然に出会い事欠きことをえるが、その隣には白い猟犬のリーダー格『ナガン』がにっこり笑みを浮かべたまま無言状態だった。

 

 

正直言ってめっっちゃ怖かった。彼女の後ろに般若が見えるような錯覚があったもん。誰だってビビるわ。

 

俺はそのまま宿舎の部屋にドナドナされると入社までの経緯を話しそして今に至るってわけだ。

 

ちなみにペーシャは部屋の中にいて俺を見た瞬間、フリーズしさっきまで気絶していた。あいつ仕事と戦闘以外はどういう原理か分からないけど極度に緊張すると赤面して気絶するからなぁ。

 

 

 

ちなみにVectorは、お菓子を頬張って俺の護衛という仕事を放棄してます。

やはりというか、隣にナガンがいたと云うことはそういうことだったんだろう。再会した時心なしかゲッソリしていたし。

 

えっ?白い猟犬やら1.5世代戦術人形について教えろ?

 

おっとそうだったな、すまない。それらについて詳しいことを話すのを忘れてたよ。

それじゃ、それについて話すとしようか。

 

1.5世代型戦術人形は、第二世代を作り出す為に必要な情報を得る為にペルシカがロシア軍協力の元秘密裏に製造されたロシア生まれの銃の名を冠した戦術人形のこと。

 

ペルシカが烙印システム及びコアの試製型を民間人形に取り入れることでAIを向上させ人間と同じ思考ルーチンに近付かせながら戦闘能力の上昇に事に成功した。

それにより、人間との連携が取れやすくなり404小隊みたいに指揮官がいなくてもそれなりの自律行動と状況による対応が可能となった。

 

性能は第二世代に劣るが、人間と同じように学習する特性があるため第二世代が製造されるまで戦争当時の戦術人形の中でも上位に食い込む程の破格のスペックだ。

現に7機製造されたのだが、未だ全機ロスト無しという高性能っぷりを見せている。

 

.....感情の司るAIが向上し過ぎて全機が自分と同じ同型より性格の癖が強くなってしまったけど。

 

そんな彼女達にも弱点がある。

試作型なこともあってか烙印システムが密接に絡み合ってしまい民間人形に戻せない点とペルシカでさえそのコアを作るのが非常に難しくて高コストな点、そして機密情報漏洩防止の為、バックアップが取れず壊れたらその人形の人生は『終わり』という欠点を抱えていた。

 

軍役時代の頃、一体の開発コストがI.O.P製の高級人形3体分掛かる程の高さということをペルシカから聞かされ思わず珈琲を吹き出してしまったのは記憶に新しい。

 

 

そんな高コストで作られる人形を失うのはかなり痛手を負う負担を減らす為、当時ロシア軍の中で自律人形に詳しかった俺に白羽の矢が立ちこのプロジェクトに強制的に参加。

 

さらに、情報収集の安定化をはかる為かペルシカので俺が隊長にして小隊『白い猟犬』が結成。ペルシカ協力の元、1.5世代の修理や不具合の修正と改良。数多の戦場を駆け抜けそこで得た情報を収集して第二世代戦場人形に携わったたわけだ。

残りの三体はペルシカの管轄におかれ活動していたが、クルーガーがG&K社を立ち上げた時に移籍をした以降はこの会社を支えてるらしい。

ティス曰く、この三体もこの支部に所属したらしく今は戦力の足りない地区に遠征するらしく会う日が少ないらしい。

 

そういえば彼奴ら白い猟犬に所属してなくてメンテと修理以外会う日が少なかったけど濃かったなぁ。特に第一号として1.5世代人形になった『アイツ』は一人大好きな自由人のソレだったな。彼奴らと再会したらウォッカで乾杯しとくか。

 

 

おっと、一寸だけ話がそれたな。それじゃ白い猟犬のメンバーについて自己紹介するとしよう。

 

 

先ず最初はクアン。メンバーの中で最初に俺と再会し感動のハグをかました奴な。

その昔、ロシアの消音銃として名高いアサルトカービン『9A-91』の名を冠する戦術人形にして1.5世代戦術人形第6号。

近接戦闘担当で『白い猟犬』において状況を打開する主人公ポジションな彼女は、礼儀正しく仲間想いなのだが、匂いフェチ(俺限定)と重度の叔父(俺)コンを患わせた残念娘。

ちなみに彼女とは義理の親子?みたいなものだ。ここ重要。

 

ちなみに戦術人形『9a-91』の服を着用しているが、過去のトラウマと恥ずかしいという理由で黒いスパッツとボディスーツを着用している。

.....あの服かなり透けてるし防御性皆無だからな。あれを考案した奴はかなりの変態だ。もし見つけたらシバくかもしれん。

 

次にメモ帳片手に質問攻めをしている長い後ろ白髪を三つ編みお下げが『ティス』。

クアンとは民間人形時代からの同期で彼女の妹分で最後に作られた1.5世代人形第七号。諜報と偵察を担当しているダウナーガールちゃん。最近、背の高い義妹が出来たとか何とか。

 

先行開発では兵士の評価が高かったが完成間近で中止となった消音銃『Ots-12』の製造背景が性格に影響したせいなのか、自身を秘密兵器と呼ぶ程に『秘密』が大好き。その為か記者の如く秘密(ネタ)を探すのが趣味な一面を持っている。

ちなみに彼女にも叔父様と呼ばれている。

 

何故俺がこの二人に叔父様と呼ばれている理由かって?彼女達を拾った後、なんやかんやあってこうなった。

経緯を話すと長くなるからまた今度な。

 

 

 

そして、戦術人形第四号でPPSh-41を冠した『ペーシャ』は、気弱な引っ込み思案の清楚で皆のマスコットというか天使。

あんまり増減しない身体なのに体重を気にしたり、身なりを気にしたりと少女らしい性格で人間人形問わず傷の手当てが上手な衛生兵。その健気な性格と優しい笑みで兵士の間では『天使』と呼ばれるレベルで隠れファンクラブが創設されたレベルだった。

 

戦闘時は基本的に可愛い悲鳴を上げてしまうが、一度スイッチが入ると目のハイライトが消えてロシア軍人もニッコリな働きをする天使()に大変身する。

相手の戦術人形血飛沫(オイル)を浴びたままでニッコリしたときはチビりそうになった。

それと護りに特化したシステマを得意とし右に出る奴が少ない。

 

最後は1.5世代戦術人形第二号にして現『白い猟犬』のリーダーで、ソファーで珈琲を飲んでいる『ナガン』だ。

モシン・ナガンをベースにした彼女は鋭い慧眼と冷静な判断力を持ち、相手を励ましたり勇気付けたりするのが上手く、皆を纏めたりとお姉さん的存在なのだが天然系で、油断した所でその天然さを爆発させる系姉さんだ。

 

狙撃と早打ちはかなりの腕前だが、アイアンサイトじゃないと遠くの敵を狙撃出来ない謎の欠点がある。何でも集中し過ぎて一時的な二日酔いの感覚に陥るらしい。

 

それでもスコープ無しで200m先の敵にヘッドショットをしたり、高速で移動する車やヘリの操縦士を撃ち抜いて撃墜したりと頭可笑しいレベルの神業を平然とやるから、兵士の間では『シモ・ヘイヘの再来』と呼ばれ畏れられていた。

 

 

 

此が彼女達『白い猟犬』だ。404小隊とは違う濃さがあって面白いだろ?

コレでも最初の頃は大変だったんだぜ?最初はナガンとペーシャの三人で活動してた頃は、感情のオーバーフローで気絶するペーシャと狙撃スコープを覗いたら二日酔いに陥るナガンに四苦八苦しながら解決策を探すために奔走したり、その一年後には過去のトラウマで人間に対して憎しみと警戒心が強かったティスとクアンの心を解かす為にアレやコレやを試したりと大変だった。

 

それに戦術人形が浸透してなかった頃だったから認められるまで軍の兵士やいけすかない上司にパワハラされたり罠に嵌められたり貶されたりしたがソレを逆に利用して相手をぐうの音すら出さない程に叩きのめしストレス発散をしていた。

 

最低だと思うが、こういう輩は叩きのめさないとまた手出してきて厄介だという事を前世で嫌になるまで教えられたからね。

前世で上司や同僚に俺が造り上げた製品を自分の手柄にされたり、ライバル会社の工作員によって罠を仕組まれたりとか.....あぁ、思い出すだけで胃がキュッとなりそう.....。

 

 

「むっ、おじ様?顔が少し青いですが大丈夫ですか?」

 

 

 

大丈夫だティス。明日からハードな仕事が始まる絶望感が頭を過ってダウナーな気分に陥っているだけさ。

それより、クアンを剥がしてくれないか?今からシルニキ作りに取り掛かりたいのだがこのままだと動き辛いからね。

 

 

「了解しました。ほら姉さん、何時まで嗅いでいるんですか?おじ様がシルニキ作るから離れてください。」

 

「あぁっ!まっまってティス!?あと数秒、あと数秒だけ!!私の身体に叔父ニウムがまだ溜まってない!」

 

「はぁ。何言ってるのですか姉さん。そんなの.....」

 

 

ふぅ、歳の衰えもあってか肩と腰がこるな。ほんと歳は取りたくないものだ。

さぁてとキッチンに向か....

 

 

 

「そんなの、叔父様と一緒に寝て充電すればいいじゃないですか?」

 

「.....っ!У меня была эта рука(その手があったか)!私としたことが叔父様と再会したという喜びのあまり忘れていました。流石、我が妹分にして秘密兵器ですティス。」

 

 

「スパシーバ。あっペーシャも一緒に添い寝しませんか?」

 

「待ってティス今隊長と話す内容を考えて.....えぇ!!/////まっ待って下さい!ティス!////隊長のお腹を枕にして寝るのはいっいけないですよ!!/////」

 

「えっティス、そんな事一言も言ってないわよ。」

 

 

 

「........キュー/////」ボンッ!!

 

 

「「ペッペーシャさん!?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんか今、さらっとトンでもない会話を耳にしたのだが気のせいだ。きっと疲れによる幻聴に違いない(白目)。

さらりとペーシャが妄想のあまり気絶しているが気のせいだ。

よしっ!これからシルニキ作るぞー!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「vector。この姉妹二人と戯れる指揮官と後ろでアワアワするペーシャのスクショ、じつにハラショーだと思わない?」

 

 

 

「.......ナガンさん。鼻血出てます。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




1.5世代戦術人形
ロボット物に有りがちな試作機的存在。
ペルシカがロシア軍の協力の元秘密裏に作り出した戦術人形。試作型の烙印システムとコアや民間人形がベースだったりと第二世代人形のプロトタイプともいえる存在。
AR部隊と404小隊と同じバックアップ無し
全機で七体作られ、そのうち四機が『白い猟犬』。残りはペルシカの管轄で活躍した。


白い猟犬
1.5世代戦術人形四体と丈二で結成された特殊小隊。
戦術人形自体浸透されてなく最初は馬鹿にされたが、急激に成長し軍に貢献した特殊小隊。
丈二が丈二を抜けた後はG&K社に移籍し活動していた。






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6.hard worker








9日振りだけど何か久しぶり丈二だよ。

 

まぁ、アレだ。

グリフィンの支部に入社したら、軍役時代に率いていた特殊戦術人形小隊『白い猟犬』と再会し流れるままにリーダーになるわ、新しい部下の戦術人形の癖が強いわ、長年行方くらませていた反動でもみくちゃにされたり仕事内容とか何故か戦闘テストの強制参加とかで筋肉痛になったりとたった9日でとても濃い日々を過ごしたよ。

 

 

先ずは白い猟犬がルームシェアをしている部屋に泊まった後の後日談を話すとしよう。

わいわいと騒いだ後、俺は寝袋の中に入りリビングで寝たわけだが朝起きたら知らない天井、顔を動かす限りシンプルな女子部屋だった。

俺は夢遊病を患っていないから何が起きたと思ったら腹部に自律人形特有の重み、人指し指が妙に生温かい。

まさかと思い声に出さなかったが『ペルソナ!』と叫ぶような勢いで目をカッと開く感じで開くと胴体にしがみついたすやすやと眠る黒いネグリジェを着たクアンと俺の右の人指し指をおしゃぶりのように咥えて赤子のように眠る『秘密』を縦に赤々と書かれたLサイズのダサTを着たティスがいた。

 

 

....あれぇっおっかしいぞ~?確か俺は寝袋で寝てた筈なのになぁ?何で俺、ベッドの上で寝てるのですかねぇ?ってちょっと困惑した。

 

紳士淑女はこのラノベ野郎と殴り掛かりそうな状況だが目が覚めたら戦術人形達に拘束されて、抜け出そうにもガッシリ拘束されているのだから結構困惑するぞ諸君?これに此を言うのもアレなものだが肉体はまだ頑張れる三十路ボディだが俺の精神年齢はかなりの年配者だ。性欲が無いとは言い切れないが、流石に長年生きてきた身としては曲がりなりにも家族として戦場を駆けてきた彼女達に対して沸かない。

 

特にこの二人に関しては擬似的な祖父と孫達みたいな感じだ。

 

上手いこと彼女達をひっぺがして毛布をかけ後ろを振り向くと白い猟犬の新メンバーとして加わった戦術人形vectorこと『ベック』がじっと見ていた。

 

ナズェミテルンディス!!

 

 

まぁその日以降は、俺の荷物が届いてそれ以降は自室で寝ているのだが2日に一回のペースで目が覚めたらベックとナガンを除く残りのメンバーがランダムで寝ている。鍵を変えようがピッキングして開けてきそうなので諦めている。貞操を奪うつもりではなく一緒に寝たいという子供特有の欲求だから(震え声)。

 

多分きっとメイビー(遠い目)。

 

 

それで仕事の方なのだが、カモフラージュとして表向きは人形と機械の整備関連の事務処理と修理担当の社員。

 

その裏では、グリフィンの試作兵器等の作業員の一人として、はぐれ鉄血人形を保護と言う名の鹵獲をし戦力に加えるユダ計画の鹵獲兼メンテ兼改造担当。

 

そして、臨時の指揮官として戦術人形達及びはぐれ鉄血人形と共に任務で働く現場主義の兵士として戦場を駆け抜けるのが俺の使命だ。

 

.....俺がロシア軍で働いていた頃よりもハードワーク過ぎる。基本的に裏の仕事がメインだから表の仕事の方はだいぶ楽な仕様になっているとはいえまさか戦場に赴くことになるとは思わなかった。

 

しかも糞猫女郎のペルシカめ。まさか俺が軍役時代に着ていた外骨格式特技兵強化スーツ『Isaac Ⅱ-Δ』を裏ルートで入手していやがった。しかも近代化改修をしているオマケ付きだ。このスーツを使うってことは思っている以上のハードな任務をさせる気満々じゃねぇか。

 

そのスーツの性能チェックと俺の勘を取り戻すという意味で戦闘訓練に参加させられた訳だが、リハビリと言う名のルナティック訓練。

VRシミュレーションで第三次世界大戦時に記録されたあらゆる激戦区を再現し、様々なシチュエーションで訓練させられたり、キルハウスの訓練の一つとしてベックが味方側として参加し、『白い猟犬』全員と相手にするというペイント弾を用いた模擬戦をした。

あいつ等、俺の癖を完全に覚えているし容赦ないから俺とベックは身体の六割がカラフル状態になった。

俺もこの訓練で転生特典であるmenuを戦闘に役立てる為に試行錯誤した結果、能力が成長した。

地形、相手の動き癖等をデータとして随時記録更新することで罠の予測配置と見越し射撃の精度が軍役時より上がったのだ

 

体力が若干衰えている身としてはこの技術はかなり重要になる。戦う相手は戦闘特化型の『鉄血人形』、馬鹿正直に真っ向勝負をしたら確実に死ぬ。ハイエンドモデル至っては成す術もなく秒殺だ。それ故に相手の兵装や相手のパーツを破壊して確実に相手の力を削いで倒した方が生き残る確率が上がるものだ。

流石にガンダムに出てくる背面撃ちといった曲芸が出来た時は俺も驚いてしまったが。しかし、鉄血人形に押され気味とはいえこの会社結構ブラックだな。まぁ、人類激減による様々な低下を補う為に自分達が作り上げた自律人形に仕事を奪われてデモを起こすという皮肉過ぎる時世の中で就職出来たから文句は言えないがな。

 

さて、ここからが肝心なのだがユダ計画に参加している身としてキャサリンの案内の元この支部で保護している鉄血人形数体のうち話が出来る三体と面会した。電子的ミラーガラス式牢屋に一体ずつ収容されていたが自律人形に携わっていた身としては中々に興味深かった。

 

最初に会ったのは、鉄血人形においてよく見かける戦術人形『Vespid』。雀蜂の名を冠する彼女は、常時装着しているヘルメットがなく、黒髪のサラサラなショートヘアーに鉄血人形量産型特有の紫色の瞳をしていた。

彼女は落ち着きがあり初対面であるおれに怯えていたものの対応は柔軟なものだった。どうやら白い猟犬が作戦中に偶然見つけて保護したらしく、その際に感じる事がなかった様々な感情に疲弊し怯えていた彼女を救ったのがクアン。それ以降、話し相手として仲良くなり自分を救ってくれた俺についての話をしていたそうだ。自分としてはちょこっと恥ずかしいのだが、クアンについて話す度に頬を赤らめでたのは気のせいだろうか?

次に会ったのは、『Jaeger』。猟兵の名を持った彼女は右腕以外の四肢はi.p.s製の機械義肢をしていて寡黙。最初に面会した彼女と共に行動していた。多くの言葉を話さず「私,●●。」といった単語だけで話す彼女は、半壊し放置されていた自分を応急修理したり、駆動系の故障で動けなかった自分を背負って移動したりとVespidに対して感謝していた。

 

 

 

 

そして最後に会ったのは、鉄血人形のハイエンドモデル『錬金術師(アルケミスト)』。まさかの敵側の上位クラスに値するハイエンドモデルにして性格が残虐尋問拷問大好きなドS人形。自分の事をアルケミストではなく『吸血鬼(ヴァンプ)』と呼んでいる。オリジナルのアルケミストは右眼に眼帯をしているが、ヴァンプは付けてなくその代わりに赤々とした目が大きく開いている。

 

彼女はオリジナルであるアルケミストのスペアボディの一つで蝶事件が起きた時、鉄血人形が占拠したとある兵器工場で自我が芽生えた。初めて感じる感情と心の底から溢れる渇きに苦しんでる最中に巡回していた鉄血人形に見つかり殺されそうになる。しかし、彼女は獣のように相手に襲い掛かり喉元を噛み付いて破壊した。その時に人工血液を啜り心が満たされる錯覚に陥り右眼も黄色から赤に変貌したらしい。

彼女は殺した相手の銃を強奪し応援に駆け付けた増援部隊を殲滅し工場から脱出。それ以降は渇きを潤す為に各地を転々としながらはぐれを除く鉄血人形を襲撃し人工血液を啜っていだがある日、鉄血人形の部隊を殲滅し敢えて半壊させていた鉄血人形の生き血を啜っている最中にペルシカから依頼を受けた404小隊に鹵獲され今に至る。

なんでも最低でも2日に一回、鉄血人形の人工血液を飲まないと気が済まないらしい。ペルシカの野郎、とんだサイコパスを鹵獲しやがって。

 

敵のハイエンドモデルで尚且つ危険を孕んでいる為かコイツだけ拘束具と椅子で固定、爆弾内蔵式首輪という徹底ぶりだ。それでも彼女は気にもせずケラケラと笑う狂気じみているヴァンプに臆することはなく普通に話す俺に彼女は驚くと気に入ったかは不明だが獲物を見つめる目で舌舐めずりをした。.......俺の血は美味しくないからな。そしてキャサリン、眼鏡を光らせて何処か去るの止めて。それ絶対に仕事が増えるヤツやん。流石の俺でもこれ以上厄介事が増えたら倒れるからね。

 

 

これが俺が短い時間に起きた出来事。

現在も上記のはぐれ人形達と面会しているが、話せば話す程に面白くなる。感情機能が無いに等しい量産型がi.p.sの戦術人形と同レベルまでの感情を得たのか、何故自我を得たのか。そして鉄血人形が暴走した蝶事件。果たしてそれは防衛プログラムのエラーが原因だったのか?考えれば考えるほど謎が深まるばかりだ。おっといけない、いけない。まだ事務処理の最中だった。

これを処理しないと........って電話?しかも、キャサリン?ったくこんなときに。

 

 

はい、丈二です。どうしました?.......緊急任務?『白い猟犬』と共に現地に向かえ?ちなみに俺は単独で別行動ぅ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

__________________

 

 

 

「えーと......ここをこうしてあーしてと。よし、ヴァルチャー装着完了。」

 

 

両翼のティトルローラーと後ろに一個のローターが搭載された小型オスプレイ『dragon fly』が高速で空を掛けていた。

アタッチメントメントとして機体の下部に輸送コンテナにあるスーツを着た男、丈二が背中に折り畳まれた機械仕掛けの翼の最終調整を終えていた。

 

 

身体の至るところに特殊合金製の防護プレートが配置されヘルメットもバイザーを隠す形で装着、視界確保の為に確保された縦に3つの横線が引かれたスリット部分から青白い光が漏れる。まるで近未来の設備用の防護服のようだ。

そしてヴァルチャーと呼ばれた男の背中に装着しているユニットは鳥の翼を機械化させたような形状、緑色の装甲に黒と白を基調とした鋭い羽根パーツ。その両翼を支えるメインフレームには一基の推力偏向ノズルが存在していた。

 

丈二が準備を終えるとヘルメットに搭載された空間投影機能が作動し金髪をした眼鏡女性キャサリンが移しだされる。

 

『Haey!丈二。準備は整った?』

 

「準備万端だぜキャサリン。」

 

『Oh.great!!それじゃあ簡単に任務をおさらいするわネ。』

 

『貴方の任務はG&K社の主力部隊AR小隊の救助。任務中に奇襲してきた敵のハイエンドモデルの案山子(スケアクロウ)破壊者(デストロイヤー)の部隊を強襲、敵の猛攻により動けないでいるAR小隊を助けるのが貴方達「白い猟犬」に課せられたmission。』

 

『デストロイヤー部隊の爆撃が厄介なので、丈二はこの支部で作られた空中急襲ユニット「ヴァルチャー」と支給された武器を用いて上空から強襲して戦力を削って下サーイ♪その混乱に乗じて貴方の小隊を送りマース。質問はありませんか?』

 

「ないぜ。」

 

『そうですか‼︎それじゃあ健闘を願ってますネー!see you again♪』

 

「ふぅ、初任務にしては荷が重いぜ。」

 

 

《丈二少尉。そろそろ作戦エリアに潜入します。出撃準備お願いします。》

 

 

「了解。」

 

キャサリンとの通信を終えると溜め息をつく。今回救助するAR小隊は会社にとっての稼ぎ頭にして重要な立ち位置にいる小隊。あのペルシカが大変気に入っている事からとても重要な何かを握っているのだろう。特にリーダーであるM4A1に至っては指揮官がいなくても他の戦術人形に指揮が出来る辺りとてつもない闇がありそうだから無闇に調べられないが。

そんなことを考えるとこの機体を操るパイロットから通信が入ると同時にコンテナの後部ハッチが開かれ、丈二は肩を回しながら配置に着く。

 

 

「それじゃあ、丈二・ルキーチ・シリニコフ。出撃する!ypaaaaaa!!」

 

ロシアの叫び声を上げると走りながら飛び降り両翼を展開。ジェットエンジンを点火させ羽ばたくように空を掛けた。

 

 

 

 

 








おまけ
Isaac Ⅱ-Δ
工具製作を専門とした複合企業『石村屋』が手掛ける外骨格式スーツ「Isaac」シリーズの魔改造品。
ベースとなった『Isaac』は元々過酷な現場での作業を想定した堅牢な構造をしている。その使い安さと頑丈さが人気となり警備用や救助用等の派生スーツが生まれた。
このスーツは軍用だったものを丈二が魔改造した結果ピーキーな仕様になったが性能の向上と小型ブースター内蔵による機動性、作業と戦闘を両立した代物が出来上がった。
丈二が引退後はペルシカがそのスーツを引き取り近代改修をしながら保管、再び丈二の手に渡った。
元ネタ Dead Space2
見た目:パッケージ絵に描かれているイケメンスーツ「advanced suits」→[ ¥]


dragon fly
両翼のティトルローラーと後ろに一個のローターが搭載された偵察用の小型オスプレイ。
旋回速度と移動速度が高くより高度な三次元移動が出来るが武装が前方のチェーンガン2つしかなく装甲が薄い為、戦闘時の撃墜率が高い。ついたあだ名はカトンボ。
アタッチメントにより輸送用コンテナや機動兵器を運べるが、積載量によっては若干遅くなる。
元ネタ及び姿 ロストプラネット2 vsと呼ばれる兵器の一つ『オスプレイ』


ヴァルチャー
S20区が作り出した強襲用空中ユニット。鳥の翼を再現している。その両翼を支えるメインフレームには一基の推力偏向ノズルにより急降下やスムーズな方向展開といった動きが可能。
しかし、翼が大きすぎる事による被弾率、加速によるGの負荷という欠点を抱えている。
元ネタ Marvel's Spider Manに登場するヴィラン「ヴァルチャー」の飛行ユニット



ヴァンプ(吸血鬼)
ハイエンドモデル錬金術師のスペアボディが自我を持ったはぐれ鉄血人形。
性格は錬金術師と同じだが武装と眼帯がなく、大きく見開いた赤い瞳が特徴。自律人形の人工血液を飲まないと心の渇きに飢えて不機嫌になる。一番の好みは鉄血人形の生き血で絶賛拘束中。







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