牙狼〈GARO〉~インフィニット・ストラトス~ (憲彦)
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第1話

気分転換に書きます。
見切り発射です。
牙狼要素薄いです。
不定期更新です。

それでもよろしい方は先にどうぞ。


様々な場所で、空に穴が開くと言う現象が確認された。しかし、それはある人間にしか視認することはできなかった。その穴は、自身を視認した人間のみを吸い込み、一部の人間以外に気付かれぬまま姿を消した。

 

場所は変わりある研究所の中、そこには4人の男が立っていた。普通なら研究所の関係者を想像するが、ここにいるのは研究員や職員とは考えにくい。何故なら、1人は警察のバッチの様な物を付け、1人は私服姿、1人はスーツ、最後の1人にいたっては旅人の様な服装をしているからだ。

 

「お前らもここに飛ばされたのか?」

 

「と言う事は、貴方たちも?」

 

「見ての通りだ」

 

「あぁ。空に開いた穴に飲み込まれて、気付いたらここだ」

 

そう。全員元々は別の場所で過ごしていた。だが突然開いた穴とやらに吸い込まれ、気付いたらこの場所で会っていたそうだ。

 

「だが妙だな……」

 

「何が」

 

「あの穴からは嫌な気配がした。君たちもそう感じた筈だ。そしてその穴は私たち以外は視認すらしていなかった。大きな力が働いていたのは確かだが、ここにはそんな感じが全く無い」

 

「確かにそうだな。あるのは見慣れたISのパーツとコア、データ入力が途中のパソコン」

 

「しかも置いてある機体……これは白式だ。俺の機体の初期状態と全く同じ姿をしている」

 

「考えにくいですけど、時間を飛び越えてしまったと言うのは?」

 

「俺たちの状態を見ると、越えたのは時間だけとは思えないけどな」

 

「考えるなら、時空と時間の両方を飛び越えたと言うことだろう。元いた世界とは全く違う世界の過去に飛んできた。と言う事かも知れない」

 

「一体何故……」

 

『考えられる原因は1つしかありません』

 

「ウオッ!?それ喋んのかの?!」

 

1人の男が腕に付けていた物から発せられた言葉に、私服姿の男が派手に驚いた。他の2人も声には出していない物の、顔では相当驚いたことが伺える。

 

『驚かせて申し訳ありません。あなた方が話している間に、少しこの世界の私の事を調べてみました』

 

「何か分かったのか?」

 

『はい。まず最初に、この世界の私は既に、ISであってISではない所に達しています』

 

「どう言う事?」

 

『簡単に言いますと、既にISの領域を超えた場所まで進化していると言うことです。この世界の私の開発経緯を調べた所、既存するISを凌駕する存在を作り上げようとしている途中のようです。そしてこのコアは、持っている潜在能力を限界まで引き出された物の様です。まだ完成には程遠い様ですが。それに意思はあるようですが、意識が確認できません』

 

「意識?つまり、覚醒はしていないと言うことか?」

 

『はい。恐らく、コア本来の力を解放した副作用かと。形成される筈の人格が形成されず、意識が無いのはそのせいかと考えられます。ですが、強い意思は常に発せられてる。皆さんがここに飛ばされたのは、間違いなく、このコアに呼び寄せられたと考えます』

 

「目的はなんだ?俺達に何を求めてるんだ?」

 

『そこまでは流石に……ですが、私と同じ白式と言うことは、この先譲渡される人間も予想できます』

 

「成る程。この世界に存在するお前の主人と同じ人間ってことか?」

 

『はい』

 

「なら、コイツが何で俺たちを呼んだのかも理解できますね」

 

「あぁ。こう言うことだろ」

 

私服姿の男は、ポケットから妙な光る球体を取り出した。それは赤い光を放っている物で、見ていると不思議と落ち着く感じがしてくる。それを見ると、他の3人も同じ様に光っている球体を取り出す。警察の方は白い物を、スーツの方は緑色の物を、最後の1人は光と闇、両方が混ざりあっている物を。

 

「穴に吸い込まれた時、同時に体から出てきた物だ」

 

「私もだ」

 

「俺もです」

 

「俺も」

 

「これをこのコアに入れれば良いんだろ?つっても、多分これ俺たちの力の塊だろう?。俺は死んでるから良いとして、お前らはどうなんだ?」

 

「俺は大丈夫てす。頼れる仲間が沢山いるので」

 

「力を少し無くした程度でゲームの管理が出来なくなる訳ではない。この程度で出来なくなるなら、ラスボスと守護者の名を返上しよう」

 

「俺も、頼れる相棒がいる。それに俺の力は今まで託さんの人が受け継いできた。戦う理由は人それぞれでも、誰かに受け継がれるときは同じ思いだった。誰かの為になって欲しい。そう思ってたんだ。なら俺も、誰かの為にこの力を渡したい」

 

「この力は永遠に続くわけじゃないんだぜ?」

 

「この機体を使う人が、自分自身の力を手に入れるまでの繋ぎ。そう言う事ですね」

 

「当然だ。いつまでも私達の力を使い続けさせては意味がないからな」

 

「あくまで俺達は切っ掛け。本当の力を掴み解放する入り口までの道案内」

 

全員、思いは同じなようだ。コアに取り出した球体を入れ込むとコアは黄金の光を放ち、力を入れた4人はその場から消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

薄暗い部屋の中で巨大な何かが動いている。僅かな光を鈍く反射させながら、部屋を縦横無尽に動いている物。斧だ。両側に刃が付いているタイプの巨大な斧が振り子の原理で動いている。しかも1つではなく複数存在しており、囲まれたらただでは済まされない。そんな斧が揺らめく空間の中心に、1人の青年が立っていた。

 

青年は手に持っている剣を鞘から抜くと、僅かな光を頼りにして迫り来る斧を避け、時には蹴り飛ばし、時には剣で受け止め弾き返している。

 

「はッ!ハァァア!!」

 

4つ同時に迫って来ると、剣と腕で受け止めて一気に吹き飛ばした。そして剣に刃毀れが無いのを確認すると、笑みを浮かべて鞘に納めた。

 

「あぁ…一夏様、この牙の鋼は直すのに手間がかかります。もう少~し手加減をしてもらいませんと……」

 

「手加減したら俺が怪我しちゃうよ。で?なにかあった?」

 

「そうでした。そろそろ学園に行くお時間ですので呼びに来ました」

 

「そっか。もうそんな時間か……ありがとうゴンザ。支度したらすぐに行くよ」

 

部屋に入ってきた執事風の男、ゴンザに時間だと言われると、一夏は部屋から出ていき自室に置いてある白いローブの様な物を身に纏うと、机に置いてある指輪を手に取った。

 

「ザルバ、時間になったからそろそろ起きな」

 

『ん?もうそんな時間か?』

 

「あぁ。行くぞ」

 

指輪をはめると、そのまま玄関に向かい歩いていく。

 

「じゃあ。しばらく帰って来れないと思うから、家の事よろしくね?」

 

「畏まりました。お2人がいつでも帰って来れるように、このゴンザ役目を全うさせて頂きます」

 

「そう気張らないで。じゃ、行ってくるよ」

 

「行ってらっしゃいませ」

 

深々とお辞儀をするゴンザに見送られ、一夏は目的地へと足を進めていく。向かう先はIS学園。インフィニット・ストラトスと呼ばれるパワードスーツの操縦者になるための養成機関で、一夏はそこへ通うことになっている。

 

『お前も災難だな。ISを動かしたお陰で学園にまで通わされるんだからよ』

 

「昔から言われてたから大丈夫さ。流石に周りに女子しかいないのは緊張するけど……」

 

『安心しろ。妙な事をしない限りは目立たない』

 

指輪のザルバと会話をしながらバス停に到着。ここから学園前の駅まで向かい、モノレールに乗ったら到着する予定になっている。ゴンザのお陰で余裕を持って学園に到着できるかもしれない。

 

「本当にこの格好でも目立たないんだな」

 

『ナノテクを応用して様々な形に見せることが出来るからな。周りからはお前は学園の制服を着ているようにしか見えない』

 

一夏の現在の格好はだいぶ派手な物になるが、これはある企業が作り上げた一夏専用のスーツ。ナノテクが使われているため機能的には充実している。今の様に見た目を変えることは朝飯前。しかし本人にも周りと同じ様に見えてしまっては自分が何を着ているか分からなくなってしまう為、自分自身は元の形に見える。それの影響か最初は少し混乱してしまう事もあった。

 

『一夏。今更で悪いんだが、忘れ物はしてないよな?』

 

「ん?特にしてないはずだけど」

 

使う教科書や道具、寮生活での着替えやスマホ、パソコンの充電器、予備のバッテリー、弁当は全て鞄に入れている。特に忘れ物らしい忘れ物は見当たらない。

 

『魔導火と牙狼剣はあるな?』

 

「あぁ。ちゃんと持ってる」

 

『なら安心だな。学園が見えてきたぞ』

 

話をしている内に着いたようだ。荷物を持ってモノレールを降りると、駅では学園の迎えが待ってくれていた。

 

「やぁ姉さん。久し振り」

 

「あぁ。久し振りだな一夏。そしてザルバ」

 

『よう千冬。久し振りだな』

 

「表に車が停めてある。それで学園まで送ろう」

 

「助かるよ」

 

「当然の業務だ。それと、向こうに着いたら織斑先生と呼ぶようにしてくれ。普段と同じだと周りに示しが付かんからな」

 

「分かってるよ」

 

車に乗り込むと、千冬の運転で学園まで送り届けられた。車で10分程とそこそこ時間がかかる距離だったが殆ど車が通っていなかったのでスムーズに学園に到着することができた。

 

「着いたぞ。お前のクラスは1年1組だ。私が担当している。既に入学式は終わって今SHRをしている所だ」

 

「あれ?入学式に参加しなくて良かったの?」

 

「あぁ。無用な混乱を招くからな。本来女にしか使えないISを動かした男が、全校生徒の前に現れたら入学式どころの話ではなくなる。一種の対策だ」

 

「成る程」

 

そう言った理由もあり、一夏はまだ自分のクラスメイトが誰だか把握してない。教室の入り口に付くと、千冬に呼ばれるまで待っておくように言われ待機する。数秒後、中からとんでもない悲鳴が聞こえてきたが、自分の姉がどんな人間かをよく知っている為、すぐに納得してしまった。

 

「入ってきてくれ」

 

ようやく合図が来た。扉が開き一夏は中に入っていく。分かりきっている事だが、やはり全員女子。そして全員の視線が突き刺さる。少し居心地が悪く感じるのか、一瞬顔を歪ませた。

 

「混乱を避ける為に、入学式の時はあえて席を外して貰っていた。その辺は理解して欲しい。じゃ、自己紹介を頼む」

 

「はい。織斑一夏です。訳あって数年前にISを動かしてしまって、今年ここに入学することになりました。趣味は色々あるけど、最近は食べ歩きにハマってます。よろしくね」

 

「「「「「キャァァァアアアアア!!」」」」」

 

無難に終わらせた自己紹介。だが最後に軽い爽やかな笑顔を見せたのが間違いだった。それを見た数名の生徒は悲鳴にも近い歓喜の声を上げ、数名は眩しすぎたのか目を押え、また数名は尊いと言う意味を込めてなのか合掌している。

 

「ザルバ、どうすれば良い?」

 

『すまん。この場合の対処法は俺には分からん』

 

余りの状況に、豊富な知識を持つザルバですら対応不能になってしまうが、直後に千冬が一喝するとすぐに静かになった。




はい。気分転換で書きました。書くかは未定とか言っておきながら書いてしまいましたね。今後は分かりませんが、不定期にノロノロと更新しようと思います。

あ、追加の必要なタグがあったら後で言ってください。着けておきますので。

感想やお気に入り登録をして貰えたら更新頻度が上がるかもしれません笑。合わせてよろしくお願いします!


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第2話

うん。2話目ですね。1話では活動報告にまとめてた冒頭部分を入れ忘れると言う失体……なにやってんだか。まぁ第2話をどうぞ。


騒がしい自己紹介が終わると、早速授業へと突入した。本来なら入学式後は授業をやらずに学校の紹介などに入るのだが、この学園は寮生活と言うことで普通の学校よりもある程度時間を取ることが出来る。無理して紹介に回す必要は無いのだ。

 

そして授業の内容だが、殆ど入試の復習みたいなものだった。ISに関する法律、基本的なメカニズム、適性に優劣がある理由等の座学だ。しかし基本の復習と言えどもこれはISに関する最重要事項。この日は午前中の全てを使って復習をすると千冬が言っていた。

 

(うん。問題ないな。殆どザルバが昔教えてくれた通りだ)

 

ザルバには大量のデータが入っている。教えるのは朝飯前なのだ。一区切り付けると副担任の山田先生が全員着いてきてこれているかどうかを確認したが、全く問題は無いようだ。

 

「織斑くんは大丈夫ですか?」

 

「問題ありません」

 

「そうですか。それは良かった。ここは基本ですが、とても重要な所ですので分からないところがあったらいつでも聞いてくださいね!」

 

『なら1つ教えてもらおう』

 

教師としてはりきっていつでも質問するように言うと、真っ先にザルバが声を出した。授業を聞いていて、いくつか気になるところが出てきてしまったのだろう。そう言った物が出ると聞かずにはいられないと言うのがザルバの悪い性格だ。

 

「え、え~っと……」

 

「ザルバ……自己紹介してないんだから驚いてるぞ」

 

『そいつは悪かった。既に知っている事だと思っていたからな。俺は魔導輪ザルバ。コイツと一緒に行動している。よろしく頼む』

 

「よ、よろしくお願いします……」

 

『あぁ。じゃあ質問させてもらう。アンタは今アラスカ条約と言うもので、ISの軍事的運用は禁止されていると言った。しかし、世界ではどの軍隊もISを配備している。どことは言わんが、とある国がとある大国にミサイルで挑発していたとき、大国の首相は軍のIS部隊をチラつかせその国を黙らせた。これは軍事的運用と言っても間違いないだろう。何故これが容認されてるのか、それを教えて貰いたい』

 

「そ、それは……」

 

『まだあるぞ。ISが誕生してからは世界の人間に対する倫理観が損なわれた。非人道的な実験も数多く行われたが、ISのためと言う理由で無罪になったのがいる。これはどう言うことだ?そして、この国では昔あるISが開発された。それが完成すると、性能を知った周りの国も同じことをした。その結果生まれてしまった―』

 

「ザルバ、その辺にしておけ」

 

止まることのなかったザルバの疑問。その全てをぶつけようとしたが、途中で千冬に止められてしまう。

 

「真耶をあまり虐めてやるな。教師としての腕は確かだが、まだ新人だ。答えられない事は当然ある。それと、そこから先はまだ言うべきではないぞ」

 

『そうか。ソイツは失礼した。悪かったな』

 

「い、いえ。お気になさらず」

 

とは言っているが、顔色が少し悪い。IS学園の教師故に、ザルバの言っていたこと全てが事実であることを知っている。千冬に止められた部分まで知っているかは定かではないが、ISの軍事的運用や非人道的な実験、戦争へのIS部隊投下は知らない筈がない。だが無意識にそこを避けてしまっていたのだろう。

 

「ザルバの質問には卒業までにでも答えをまとめておこう。電話帳2冊分程の論文になるが、構わないか?」

 

『暇な時間に読む。別に問題はない』

 

電話帳2冊分程の論文の作成で話がまとまると、止まっていた授業が再開された。しかし、ザルバの質問で結構精神的に抉られてしまったのか、何処と無く真耶の言葉が途切れたりしている。が、そんな精神状態でもこの時間の授業は予定の位置まで終わらせてくれると言う意地を見せてくれた。

 

「一夏、ちょっと良いか?」

 

「ん?あ、箒?」

 

「そうだ。久し振りだな」

 

「あぁ。小学4年の春に引っ越したから、ちょうど6年くらいか?」

 

「そのくらいだ。……うん。昔よりも強くなったな」

「分かるのか?」

 

「私だって剣を習ってるんだ。それくらい分からない筈がない」

 

「成る程。自分じゃ強くなったって言う実感が無いから、すこし安心できたよ」

 

「そうか。どうだ?放課後にでも剣道所にでも行って打ち合わないか?」

 

「良いのか?もう剣道でもなければ篠ノ之流でも無い。俺が使うのは完全な我流だぞ」

 

「構わない。頼めるか?」

 

「分かった。授業が終わったら行こう」

 

積もる話もあるようだが、ザルバと言う喋る指輪の存在のお陰か一夏の周りには人集りができている。それを考えてか、箒は放課後の予定を決めるとその場から立ち去り自分の席へと戻っていった。

 

『知り合いか?』

 

「小学校の頃の幼馴染みだよ」

 

『篠ノ之か。父親は烈か?』

 

「正解」

 

箒とは初対面のザルバは、名字を聞いていて烈と言う男を思い出した。同姓のため気になって聞いてみたのだろう。結果は予想通りだったようだ。

 

「しかし……予想以上に辛いな」

 

『だな』

 

周りは女子だけ。同性はいない。IS学園と言う特殊な環境故に当然の事なのだが、まずそもそも自分以外が全員女性と言う環境に立たされることはない。間違って電車の女性専用車輌に乗ってしまった時位だ。それはすぐに出れば良いだけの話だが、ここではそんな訳には行かない。

 

「ある意味、ザルバの特訓受けてたときよりも辛いんだけど……主に精神的に。いつか気が狂いそうだ」

 

『休みの日にでも出掛けるんだな』

 

別に女性に対して耐性がないと言う訳ではない。女性恐怖症でもない。だが、まともな神経をしている人間にはある意味キツい様だ。

 

「ちょっとよろしくて?」

 

「『ん?』」

 

「ッ!?なんですの?!その口の聞き方は!!わたくしに声をかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度と言うものがあるのでは無いのかしら!?」

 

いかにも。な感じのお嬢様が出てきてしまった。一夏もザルバもこの様な人に対しては良いイメージを持っていない。特にザルバはこんな人が視界に入っただけで気分が悪くなってしまう。一夏もザルバ程では無いにしても気分が悪くなる。

 

「この私自らが態々声をかけて上げたのですよ!なのにその返事は一体―」

 

『あ、お前さんブルーか?』

 

「は?」

 

『久し振りだな。元気にしてたか?まさかイギリスに行ってるとは。驚きだ』

 

「な、何を言っているのですか?」

 

「あぁ。ザルバはISと会話が出来るんだよ。正確にはコアの人格とね。昔どこかで会ってたんじゃないかな」

 

ザルバは豊富な知識を持っている以外にも、この世界で現場ISのコア人格と会話をすることができる唯一の存在。殆どのコアと面識を持っている。

 

『成る程。イギリスで試作機のコアになったのか。どうだ?今の操縦者は?……ほう~。そうか。ハハハ。確かにな。初対面だがそれは思ったよ。俺?今はコイツと一緒にいる。中々に面白いヤツだぞ。この前放送された映画に感動して泣く程ピュアなヤツだ』

 

「おい。なに余計なこと言ってんだ?」

 

会話が弾んでいるのか、お互いの近況を話している。少し弾みすぎて言わなくて良いことまで言ってしまった。一夏にその事を咎められるが、気にすること無いだろと一蹴り。再び話が再開し、次の授業が始まるまで続いてしまった。

 

『いや~。スッキリした』

 

「何でこの前映画見て泣いたの知ってるのさ」

 

『金曜日の夜9時の映画だろ。俺も見てた。お前のあのシリーズの映画だと大体泣くよな』

 

「だから余計なこと言うなって」

 

千冬と真耶が教室に入ってくるまでの間に会話が行われていたが、2人が入ってくると話を止めて授業を受ける体勢を取る。しかし、千冬が切り出した一言で、授業どころでは無くなってしまった。

 

「この時間も入試時の問題の復習に使う予定だったが、クラス代表を選出したいと思う。クラス代表はIS対抗戦や集会等への参加が仕事だ。所謂クラス委員。自薦他薦は問わない」

 

「織斑君を推薦します!」

 

「私も!」

 

「右に同じく!」

 

「拙僧も!」

 

このクラスには坊さんでもいるのだろうか。1人が一夏を指名すると、その後も連鎖的に一夏を指名していく。次第にそれはクラス全体に行き渡り、クラスの大多数が一夏推しになった。

 

「現状は織斑1人だが、織斑は良いのか?拒否権も当然あるから―」

 

「お待ちください!納得行きませんわ!!」

 

一夏に決まりかけたその時、1人の生徒が机を叩きながら声を上げた。一波乱来そうな予感だ。




次回もよろしくお願いします!感想や評価、お気に入り登録もついでにお願いします!!

この前放送された「もののけ姫」面白かったですね~。個人的な考え、と言うか受け取りですけど、アシタカがカヤから貰った玉の小刀をサンに渡したこと、マイナスな感じで解説されてますが、個人的にはカヤの思いがアシタカへ、アシタカの思いがサンへ、サンの思いがその先の誰かへと言う感じに、相手を思う生きていて欲しいと言う願いが人から人へと受け継がれてる。と言う風に受けとりました。なので、個人的には余りの悪い感じには思いませんでしたね。


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第3話

お久しぶりです。しばらくもう1つのオリジナルの方を書いてました。と言うのは建前で、就職したので時間を取れませんでした。申し訳ない。これからは空いた時間でチョコチョコ書いていこうと思います。


「お待ちください!納得行きませんわ!!」

 

クラス代表を選出している時、話題性と言う意味で一夏がクラスの大半から選ばれた。一夏自身、それは重々承知しているし、やる気が無いと言う訳ではない。その為承諾してクラス代表になることを決意したのだが、決まる直前に1人の生徒が異議を唱えた。

 

「納得行きませんわ!!そのような選出は認められません!大体、男がクラス代表だなんて良い恥さらしです!このセシリア・オルコットにそのような屈辱を1年間味わえとおっしゃるのですか!?」

 

敢えて言うが、誰もそんなこと一切言っていない。ただ自分が立候補しなかっただけの話である。

 

「はぁ、オルコット。私は自薦他薦は問わないと言ったのだが、聞こえていなかったのか?」

 

「それは失礼しました。ですが、実力から行けばわたくしがクラス代表になるのは必然!それを、物珍しいからと言う理由で極東の猿にされては困ります!わたくしはこの様な島国でISの技術を学ぶために来たのであって、サーカスをする気は毛頭ございませんわ!」

 

もはや止まることは出来ない。指から放たれた矢が二度と戻ることが無いように、出してしまった言葉もつけてしまった勢いも戻ることは無い。さらに加速し加熱するだけだった。

 

「良いですか!?クラス代表は実力トップがなるべき、そしてそれは、この学年の首席であるわたくしですわ!大体!!文化としても後進的な国で暮らさなくてはいけないこと自体、わたくしにとっては耐え難い苦痛なのです!なのにそれだけでは飽き足らず、男なんかをクラス代表にするとは……どれ程ISを汚せばこの国は気が済むのですか?!」

 

『誰もアンタの実力なんて分かる筈無いだろ』

 

ザルバの発した一言に、マシンガンの如く出続けていたオルコットの言葉が止まった。

 

『入試時の戦闘ログは誰にも見せられていない。そんな中で実力を分れと言う方が無理だ。それにお前さん、自己紹介の時に代表候補生とも専用機持ちとも言っていなかった。それなのに何故ここにいる人間全員が実力を分かってると思ったんだよ』

 

「あら?指輪風情が偉そうにこの私に説教ですか?私の国なら代表候補生の名前くらい誰でも知ってますわよ?それが候補生への礼儀のでは?」

 

『1人しかいない国家代表なら兎も角、たかが候補生程度で威張り散らしてる様なヤツに払う礼儀なんて無い。確かにお前は専用機を与えられている。だがそれはデータを取るための試作機。選ばれた理由は技術面を評価されたのではなく、単にビット兵器と呼ばれる新型兵器に対する適性が高かったからだ』

 

「ッ!?指輪が知ったような口を……!」

 

『知ったような、じゃない。知っているんだよ。俺は一夏のサポートAIとして作り出された。だが、サポートするには知識が必要だ。だから、全て教えられた。開発者から、テレビから、ラジオから、本から、インターネットから、ISから、そして自分自身の目から。だから知ってるんだよ』

 

この言葉に押し黙ってしまう。今の時代、専用機を与えられる理由は様々存在する。その中には当然技術以外の事で与えられることも少なくない。実力、操作技術以上に、ISと言う物には適性が必要不可欠だからだ。どんなに実力が高くても適性が低ければ専用機は与えられず、逆に実力が低くても適性が高ければ専用機が与えられる。

 

勿論、国は両方を兼ね備えている候補生や操縦者に専用機を与えるのだが、そんな人間は正しくダイヤモンドの原石。見つけ出すのが困難だ。しかし技術だけではどうしようもない事が存在する。いくら努力しようとも乗り越えられない壁がある。ならば才能に懸けようとする。それが今の時代と言うものだ。

 

「なら、私の境遇も全て知っていると言いたいのですか?!」

 

『知るか。何で初対面の人間の全てを知らなくちゃならないんだよ。俺が知ってるのはISがどんなものかで、どんな人間に与えられて、何を基準に選考され、人間がどんな生物かって言うことくらいだ』

 

よくアニメや小説、ドラマ、マンガでは追い詰められた人間が相手に対して「お前に私の何が分かる?!」と叫ぶが、それは余りにも身勝手な事だ。分かる筈がない。長くてたった数日の付き合い。知っている方が気持ち悪い。苦し紛れに放ち、少しでも自分の過ちを正当化させる意味しか持たない安い言葉だ。

 

『逆に聞こう。お前に一夏の実力が分かるか?一夏の境遇が分かるか?理解しているのか?』

 

「そ、それは……」

 

『今までお前さんが言っていた事は、これと同じ無条件に自分の全てを無理矢理理解しろといっていたのと同じだ。そして敢えて言おう。コイツの実力は確実にアンタよりも上だ。何故なら』

 

「ザルバ、それ以上はよせ」

 

「構わん。どうせいつかは判明することだ。言っても問題なかろう。正直、お前がクラス代表の候補者になった時、すぐにでも話しておこうと思ってたことだ」

 

ザルバが言おうとしていた事を一夏は止めたが、千冬は話せと言う。隠すことにも意味が無いからだろう。どの道クラス代表になれば対抗戦で判明する。それが少し早まるだけの事だ。

 

『コイツは黄金騎士、牙狼を使うものだ』

 

「黄金騎士?牙狼?ふ、フハハハハハ!アハハハハハハハ!!何を言うかと思えば、牙狼?そんな物が存在して、その男が使用者だと?ハハハハ!指輪と思って今したが、ジョークセンスの塊の様ですね」

 

牙狼の名前を聞いた瞬間、大きな声を上げて笑った。他の生徒も同じ様に笑っている。一部はキョトンとして何の事かは分かってないが、どうやら牙狼はその程度の認識の様だ。

 

「そんな日本の笑い話をここでも聞くとは思いませんでしたよ」

 

「それ本当に言ってる?牙狼なんて存在しない架空の機体だよ?存在する筈無いじゃん」

 

「黄金騎士なんて言われてもね~」

 

「まぁ良いでしょう。仮に牙狼が本当に存在して、その男が黄金騎士と言われる使用者なら、その実力を見せてもらっても問題は無いですよね?織斑先生?」

 

「良いだろう。1週間後に第1アリーナで試合を執り行う。勝者にはクラス代表をやってもらう。それまでは各々を準備を行え」

 

殆どがザルバが話を進めたような物だが、千冬も代表決定戦と言う名目で2人の決闘を認めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えらいことになったな……」

 

「今更気にしても仕方ないだろ」

 

「何でお前はそんなに余裕なんだ?」

 

「今までやれることは全部やって来たからな。死にかける事も含めて……」

 

「ごめん……聞いちゃってごめん……」

 

昼休みになって食堂で昼食を食べていたのだが、会話の中で過去の事を思い出した一夏は少し遠い目をしていた。そして気まずくなったのか、思い出してしまった箒は謝っておいた。

 

「ザルバ。あの人の機体の情報はあるか?」

 

『名前はブルー・ティアーズ。ビット兵器と言われる新兵器を搭載した試験機だ』

 

「試験機?」

 

『あぁ。ビット兵器は操縦者の脳波で操作するんだが、当然新兵器なだけに不明な事や危険な所、不安定な事が多々ある。あの機体は、ビット兵器のデータを取ることを目的に製作された。当然、万が一の事態に備えて性能その物は抑えられてる。とは言っても、機体の構造上、拡張性も高いがな。因みに、操縦者の技術自体は言うほど高くはないようだ。中の上以上上の下未満って所だ。成長の見込みはまだまだあるみたいだがな』

 

それは十分に強い。技術力もある方だろう。しかしそれは代表候補生と言う一部の中と言うのなら、ザルバの言葉は本当と言うことになる。世界は広い。広すぎると言うほどにだ。代表候補生の中での実力は、その先でも通用すると言う道理はない。

 

「いつも通り訓練して、普通に過ごそう」

 

「良いのか?特別な訓練とかしなくて?」

 

『人には慣れたリズムってのがある。戦う相手に合わせて一々特別な訓練を織り混ぜてるようじゃ、かえって実力向上の妨げになる』

 

「な、成る程」

 

『ま、個人差ってのは誰にでもある。必ずしもそのやり方が合ってると言う訳ではない。自分に合ったやり方ってのが1番良いぞ』

 

ザルバの発言はどれも的を射ている。その言葉1つ1つに箒は関心を受けていた。そして自分も取り入れられる物は取り入れようと言う姿勢だ。

 

「ごちそうさま。じゃ、放課後は剣道場に行くよ」

 

「分かった。私は先に行って部長に一部の使用許可を貰っておく」

 

一夏は食器を返却し、一足先に教室へと戻っていった。

 

『今日入学式の筈だが、もう入部してたのか?』

 

「生徒数が多いから混雑を防ぐために入試合格者は入学の説明を受ける時に入部届けを出すらしい。箒も合格後の説明会で出したみたいだ」

 

『成る程』

 

この学園のスタンスをザルバと話ていると、無事に昼休みは終了。午後の授業に突入していった。




次回もよろしくお願いします。感想や評価、お気に入り登録などもお願いします!

オリジナルの「人間やろうと思えばどんな環境でも生きていける」もよろしくお願いします。


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第4話

夜勤はやっぱり疲れますね。ハハハ(・_・)


午後の授業を全てを終えた一夏は、箒との約束のために剣道場へと向かう。この学園の敷地面積はかなりの物だが、要所要所で案内の看板が立てられている。余程の事がない限りは迷わずに済む。その看板に従って進むと、ようやく剣道場へ到着した。中では気合いを入れて竹刀を振るう部員たちがおり、真面目に練習に取り組んでいた。流石にこのタイミングで入るのは忍びない為、この素振りが終わってから入ることにする。

 

『昔は殺しの術だったものが、今じゃお行儀の良いスポーツ格闘技か』

 

「そう言うな。昔ほど誰かを殺したり殺されたり、自分の身を守る必要が無くなった証拠じゃないか」

 

『とは言うものの、時代は逆行してるみたいなものだがな。またいずれ戦う時代が来るだろ』

 

「人間同士の争いからなら、それは仕方ないのかも知れない。でも、もし人間じゃなくてホラーとだとしたら、俺はそれを全力で止める。あんな光景を二度と見たくないからな」

 

『烈の事、まだ振りきれないのか?』

 

「振りきれてない訳じゃない。忘れたくないだけだ。嫌な光景だけど、戦う意思が固まった時で、ホラーから人を守ると約束した時だから」

 

少し昔の事を話ていると、部員たちの素振りが終わったようだ。そして一夏を見つけてくれた箒が声をかけて、そのまま道場へと上がっていく。勿論入り口で一度頭を下げてからだ。

 

「防具は着けるか?」

 

「いや。昼間も言ったけど、俺は剣道はやらないから着けないよ。それにそもそもサイズ無いでしょ?」

 

「それもそうだな。竹刀は好きなのを使ってくれ。後、私は防具を着ける」

 

「分かった」

 

防具を着け終わった箒は一夏と対峙する。正眼に構え、いつでも動けるようにしている。対して一夏は竹刀を持ちながら徒手空拳の様な構えを取り、微動だにせず箒を凝視していた。

 

「ディヤァァア!!」

 

「ッ!はぁ!」

 

声を上げて闘志を高めながら箒の鋭い一撃が一夏を襲うが、一瞬で攻撃の行き先を見極め最小限の動きで回避。箒が自分の横を通過した所を首に一撃入れて倒れさせた。

 

「いてて……まさか避けられるとは……」

 

「大丈夫だった?」

 

「あ、あぁ。動きが全く見えなかったぞ。どうなってるんだ?」

 

『コイツの動きは捉えられないほど速いわけじゃない。単にお前さんが見えてなかっただけだ』

 

ザルバが言うには、箒は戦いの全体を見ているのではなく一点のみを見ているどの事だった。それは相手。それが原因で全体を捉えることができず、空間も範囲もスピードも見失ってしまっていたのだ。

 

『いきなりは無理だが、全体を見た立ち回りをしてみたらどうだ?少なくともコイツに着いていく事はできると思うぞ』

 

「な、成る程……」

 

その後も何度が箒と打ち合い、使用時間終了の合図で2人の練習が終わり、一夏は剣道場を出ていった。そのまま寮に向かっていたのだが、途中で走ってきた山田先生に止められた。

 

「どうしたんですか?」

 

「鍵を渡し忘れてて。すいませんでした」

 

「ありがとうございました。俺って一人部屋ですよね?」

 

「それがその~……私は詳しい事を聞いていないので、織斑先生に聞いてください。恐らく一人部屋だと思うんですけど、今は寮長室にいる筈ですから」

 

「寮長室?」

 

「はい。クラス別で担任が担当しています。クラスごとに場所も決まってますので、1組の寮の最初の部屋が織斑先生の部屋です」

 

山田先生に丁寧に教えられ、言われた通りに千冬のいる寮長室に向かう。この時間はいると言われていたが、マナーとしてノックして中にいるかを確かめる。

 

「入れ」

 

「失礼しまッ!?」

 

「どうした?」

 

「へ、部屋が綺麗だ……と!?」

 

『なに!?一夏!お前近々死ぬんじゃないか?!』

 

「怖いこと言うな!」

 

「ザルバのその言葉を今すぐここで現実にしてやろうか?」

 

才色兼備で完璧な人間と見られる千冬だが、1つだけ壊滅的に無理な事がある。それは家事だ。そこそこ片付いてる部屋を掃除すると、崩落したウォールマリアの様に荒れ果て、料理をすればクトゥルフの支配者が出てきたかと思うようなカオスになり、洗濯をすれば堕落した人間に怒り狂った神が起こしたノアの大洪水の様に家が水浸しになる。そんな千冬の部屋が綺麗になっていることに、一夏もザルバも驚いてしまったのだ。

 

「で、部屋の件なんだが、今回は人数が多いと言うのを建前にして、お前を一人部屋にした」

 

「建前?そんなの必要?男子と女子を一緒の部屋にするわけには行かないって理由なら分かるけど」

 

「昔は国家機密と言う扱いにして、お前の存在を隠してきた。当然委員会にはお前がISを使えるなんて話してなかったし、政府管理下の施設で過ごしてきて貰った。過去の訓練映像はその都度バックアップも含めて即削除。ログを持っているのは開発者の大神博士のみ。しかしこれ以上は不可能だ。IS起動の時期の偽装工作はできたが、ここに入れる以外の保護手段は無かった」

 

政府による保護は限界が来た。と言うことで、一夏はこの学園に入学した。IS学園は特殊な環境下にあり、日本領土内にありながらも様々な国や政府、企業からの干渉を受けない。故に安全だと判断した。だが、それは学園の外の話。学園に通う物に話を通せばいくらでも国や企業の都合を持ち込むことができる。既に、学園には織斑一夏と同室にして欲しいと言う者が沢山来た。しかも目的は駄々漏れ。苦肉の策として、寮付きで生徒の多い学園にありがちな言い訳を理由に全て回避してきたようだ。

 

「成る程。それで漸く部屋を確保できたと」

 

「あぁ。その通りだ」

 

「ならここに呼ばなくても直接話せば良いんじゃないの?」

 

「ここからが注意事項だ。まずは、これを持っていけ」

 

渡されたのは黒いバッグ。しかも入っているものの大きさに比例しない重量をしている。

 

「何これ?」

 

「盗聴器、盗撮カメラ、潜入者を発見してくれる機械だ。部屋の入り口付近にでも置いて帰宅時にスイッチを入れるんだな」

 

「入れたらどうなるの?」

 

「まず、盗聴器と盗撮カメラは破壊される。どこかに送信していたらそれを妨害する優れものだ。侵入者の場合は即教師に通報。これは私に来る。後危険物が部屋に置かれた場合は警報が鳴るぞ」

 

「うわぁ~……便利なのか不便なのか分からない生活に突入しそうだな」

 

「それと、部屋には自分が信用しても良いと思う者以外は入れるな。これはザルバもゴーサインを出した人間限定だ。危険な生徒のリストは纏めたから、部屋に入ったら確認しろ。道具は早速今日から使え」

 

『これ全部だと?この学園には怪しい生徒は何人いるんだ?』

 

「生徒以外にも教師も入っている。数が多くなるのは仕方のないことだ」

 

ページ数にして、200ページはありそうだ。どの学年の何組に所属し、出身国や所属企業、国籍、部活、更には趣味や性格等が細かく記載されている。

 

「これ全部覚えるのか~……」

 

『まぁ頑張れ。俺も覚えてやる』

 

肩を落として部屋に入り、千冬に言われた通りに渡された機械を起動。その後は荷物を片付ける為に持ってきた道具の整理を始めたのだが、何ヵ所かで機械がショートする音が聞こえてきた。

 

『早速かよ……』

 

「危険物が無くて良かった~」

 

初日から危険物が置かれていると言うのもどうかと思うが、置かれていたら置かれていたで、この学園の警備を疑ってしまう。

 

「ザルバ。あのISは白か?黒か?」

 

『安心しろ。あの機体は白で間違いない』

 

「そうか」

 

この短い会話を最後に、2人は休みに入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから1週間経ち、代表決定戦当日を迎えた。ただのクラスの代表決定戦だが、噂の男子生徒が出ると言うことで会場には多くの生徒が集まってきている。

 

「織斑。分かっていると思うが、お前の機体は長時間展開ができない。時間には気を付けろ」

 

「分かってるって。じゃ、行ってくるよ」

 

ISを展開することなく走っていき、そのままピットを飛び出しアリーナに着地する。格好は魔法衣をカモフラージュさせずにそのままにしている状態だ。

 

「来ましたわね。それにしても、なんですか?その格好は。もしかしてコスプレと言うヤツですか?だとしたら笑い物ですね!そんな格好しても実力の差なんか埋まりませんわよ!」

 

「これは俺専用のISスーツだ。気にするな」

 

『両者、規定の位置に進め』

 

千冬の合図で、一夏はアリーナにある規定の位置まで歩いていく。だがオルコットは驚いていた。相手がISを展開していないのに合図がスタートしたからだ。

 

「お待ちください!この男はISを―」

 

『オルコット。私は進めと指示を出した。審判からの命令無視と取られたくなければ指示をきけ』

 

渋々、オルコットも規定の位置まで進み、上空で待機。その直後に千冬から試合開始の合図が言い渡され、試合スタートとなる。

 

「何故、ISを展開しないのですか?」

 

「俺のISは特別製でね。これで良いんだよ」

 

「そうですか。なら……死んでも文句は言えませんわね!!」

 

ライフルを構え一夏に照準を合わせると、すぐに引き金を引いてレーザーを放つ。誰もが目を覆いたくなる状況だが、すぐにそれは変わった。独特な金属音が鳴り響き、本来でるはずの試合終了のブザーが鳴らない。目を瞑っていた生徒もアリーナに目を向け、状況を確認した。

 

『どうだ?レーザーを斬った感想は』

 

「意外と行けるもんだな」

 

えらくドライな感想だ。もう少し待って喜んでも良いような気がする。

 

「なっ!?貴方本当に人間なのですか?!レーザーを斬るなんて……あり得ない!?」

 

またライフルで一夏を狙撃。だが面白いように斬られてしまう。ライフルでの攻撃が意味をなさないと理解すると、オルコットはビット兵器を展開様々な方向から一夏に攻撃を仕掛ける。だが、それも当然の様に全て斬られる。

 

『一夏。あの女はビット展開中に狙撃をすることができない。安心して突っ込め!』

 

「分かった」

 

ザルバの言葉通り、安心してオルコットに向かって走っていく。オルコット自身からの狙撃は全く来ないため、ビットの攻撃を注意してさえいれば自分に当たることは無かった。

 

「ハッ!」

 

地面を蹴りあげ、周りにいる4機のビットを足場にして上空にいるオルコットに飛んでいく。最後のビットから飛んだ所で、待っていた剣を使い空中に円を描き、自分のISを展開した。

 

「ッ!?キャアッ!!?」

 

一夏のISを見て驚いたオルコットは一瞬思考が完全に停止。動けなくなってしまい、そこに一夏が重たい一撃を入れて地面に叩き落とした。

 

「くっ……そ、その鎧は……まさか、本当に?!」

 

「そうだ!これが黄金騎士、牙狼だ!!」




力尽きたので今日はここまで!次回もお楽しみに!感想や評価、お気に入り登録もよろしくお願いします!


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第5話

いや~。全然更新してなかった笑。いったい何してたんでしょうかね?


黄金の狼。それはISと言うよりも鎧だ。それをまとった一夏がアリーナの中心に立っていた。それを見た千冬は管制室でニヤリと笑い、他の人は全員ポカンとしている。

 

「ま、まさか本当に……!?」

 

静まり返ったアリーナで、一夏は独特の金属音を立てながらオルコットへとゆっくりと近付いていく。すぐさまビットを一夏の周りに配置して一斉にレーザーを発射した。しかし、全く効いている様子がない。足を止める様子すら無かった。

 

「クッ!」

 

ならばとスナイパーライフルを使って照準を頭に合わせた。自身に向かって歩いてくる相手の頭を撃つくらい簡単な事。ISをまとっていれば容赦は必要ない。数発連続で発射し、ダメージを与えようとする。だがそれも無駄な様で、至近距離からの狙撃であるにも関わらず、意図も簡単に剣の柄の部分で防がれてしまう。

 

「ハッ!」

 

「ッ!?キャッ!」

 

柄を握り剣を振るうと、鞘が飛んでいきオルコットのライフルにヒット。ライフルが弾き飛ばされたのを見ると、走って一気に接近し真一文字に斬る。たった一撃だった。その一撃で勝負が決まった。

 

『セシリア・オルコット。シールドエネルギー0。勝者、織斑一夏!』

 

アナウンス終了と同時に、一夏が剣を空に向かって突き上げると、そこにスッポリと飛んでいった鞘がはまった。その後鎧を解除し、アリーナをあとにした。

 

「相変わらずの強さだな。一夏」

 

「あ、姉さん。仕事は良いの?」

 

「今日はもう終わりだ」

 

「そう。あのさ、俺1回家に帰りたいんだけど?」

 

「何故だ?」

 

「いや、最近あれ使ってないじゃん?」

 

「あぁ。あの斧か。その事で話があるんだ。ちょっと着いてきてくれ」

 

斧とはあれだ。一夏が家で鍛練に使っていた巨大な斧が付いた振り子の事だ。基本的に一夏はあれで訓練している。一応他にも一般的なトレーニング器具で運動はしているが、今となってはあれでなくては何か物足りない感じがするくらいまで体が鍛えられている。

 

「この前ようやく工事が終わってな。倉持技研の大神博士たちも手伝って、家の訓練所と同じものを作って貰った。ただ、ゴンザがいる訳じゃないから、壊したら自分で直せよ」

 

案内されたのは学園の外に新設された建物。説明では新しい物置小屋と言われていたが、無理がある。結構な大きさの建物だからだ。増築された寮と言われた方が納得できる。

 

「おぉ~!家と全く同じだ」

 

「あぁ。広さも同じにして貰った。ここはカードキーと4桁のパスワードで入ることができる。パスワードを無視できるマスターキーは私と大神博士の2人しか持っていない。危険な場所だから、基本的には誰も入れるな」

 

「分かった。じゃ、今日はここに入ってるよ」

 

「ただし、48時間以上は籠るなよ?昔みたいに不眠不休で鍛練してぶっ倒れられたら助けられる自信がない。あの中から助け出すのはもう無理だ。腕1本で済むかどうか……」

 

遠い昔を見るような光のない目をしながら、一夏に忠告してカードキーを手渡した。早速一夏はパスワードを設定して中に入っていく。

 

「しまった。時間経つと勝手に斧の振り子が止まるの伝えるの忘れた……まぁ良いか」

 

ヤベっと言う顔をしたが、楽観的に考えて伝えずに職員室へと帰っていった。一応教師故、仕事を片付けなくてはならない。

 

「さぁと……オルコットの件を報告するべきか否か。報告したらしたで説明が面倒……しなかったらしなかったでクラスの連中への報告が面倒……クラス代表にして晒すで良いか。うん、そうしよう」

 

自分の中で完結させ、もう考えるのを放置した千冬であった。




ここまでで良いや。それじゃ次回で会いましょう。


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