俺の第2の人生は戦車道と言う競技のある世界でした (ふみみん)
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プロローグ~第2の人生の始まりです!~

初投稿です。
はじめまして、ふみみんと申します。
ありふれた転生物です。
数年前劇場版見てずーっと思ってたこと書いてみたくて、
それを書くためだけに初めから書こうと思いました。
願望とか欲望を垂れ流してるようなものになります。
最初から若干キャラが崩壊してるような……。



俺は数日前からこの世界に生まれた。

初めはその状況にパニックに陥り声を荒げようとした。

声は出ずに大きな泣き声だけが響き渡ったわけだけが。

 

それから数日が経ちある言葉が思い浮かんだ。

 

―――転生

 

生まれる前……()()()()の記憶を保持したまま第2の生を受けること。

実際、自分がなるとは思ってなかった。

そもそもこんなことが本当にあり得るのかって話だ。

俺だってマンガとかアニメなんかの設定でしかないと思ってたし。

ただまぁ、時折来る看護師や明らかにサイズが縮んだと思われる自分の体を考えるときっとそうなんだろう。

 

前の人生は……まぁ、なんてことない普通の一般人だったと思う。

アニメとゲームが生きがいだった男だった。

何で死んだかも覚えてなければ、どうやって死んだかも覚えていない。

俺の大好きなキャラみたいに自らの力で国境作って砕け散るような

漢な死に様だったら嬉しい。

 

あ、ない?(無慈悲)

 

 

というより、死んだって実感がまったくない訳で。

気づいたら目はぼやけて、喋れなくて、体の自由がまったく利かなくて。

……まぁ、考えても仕方ない……仕方なくない?

前の人生に戻れるわけじゃないしこれからを考えた方が有意義だと思う。

種火周回の日々から解放されたと考えると天国かもしれないな(ニッコリ

でもあのゲームがないと言うことは地獄かもしれないな。

ガチャ回せないのか(絶望)

 

ちょっと首を動かしてみる。

まだ俺の目では見えないけどベットには俺の名前が書かれている。

呼ばれたこともあるし、父親が半紙に書いたものを俺に見せてくれたこともある。

 

 

 

荒谷 守矢(あらや もりや)

 

 

 

これより第2の人生始めます!

 

 

 

……とは言ったものの現状俺に出来ることなんてない。

寝て、起きて、母乳吸って……母乳なんだよなぁ……。

何がって、この歳で……いや、今は0歳児なんだけど。

もう両親の深夜のプロレスごっこ見たときぐらいの衝撃である。

で、母さんは俺をすっごい触ってくる。

 

ほっぺたを突かれながら時折聞こえてくる声は、

 

「うん、この子は絶対に嫁を取らせんし婿にもやらん」

「将来、この子の初めては私が貰う」

 

不穏である、生まれて数日ながら将来がとっても不穏である。

ただこの母親、どうやら人脈はすごいらしい。

色んな人が来ては祝福の言葉をかけて俺の顔を覗いて帰っていく。

違いがわかるのが声とシルエットくらいだけど。

 

ただ、2人の女性がしょっちゅう来るんだよねぇ。

 

「もーちゃんは二人の子供じゃないんだよ~!」

 

あ、もーちゃんというのは俺のことだ。

そしてこの二人が同時に現れると必ず喧嘩する。

 

「しぽりんはすぐ来れる距離だから良いじゃないの!」

「そう言ってこないだオムツ変えたのはそっちだろちよきち!」

 

今日はどちらが俺を抱っこするかで言い争っている。

ちなみに先日は俺のオムツを変えるかで喧嘩してました。

ぼやけて見えないんだけど明らかにキラキラした目で見てた……と思う。

一人でトイレに行けないって哀しいことなの……。

 

「親友の子供に会うために態々家のヘリで来るなよちよきちぃ!」

「近くの演習場でめんどくさいからって使った戦車そのままぶっ飛ばしてくるしぽりんにだけは

言われたくないかなぁ!」

 

ヘリ?戦車?何この人たち自衛隊か何か?

確かに来る人来る人なんか軍服みたいな格好?してたし?

でも自衛官ってそんなに暇だっけ……。

ヘリならまだしも戦車で来るっておかしい気がするんだけど……。

 

「しぃちゃん、まほちゃんとみほちゃんは?」

「ちゃんと下で常夫さんと一緒に待ってますよ」

「子供が居ない私が言うのもなんだけどそれはないと思うなー」

「えぇい、だまらっしゃい!親友が子供を生んだともなれば先輩として

アドバイスするのが当然でしょう!」

 

散々二人で言い合った後じゃんけんを始めた。

気合が入りすぎて怖ぇ。

 

 

「あれが次期家元達なんだよ?戦車道大丈夫なのかしらね~、もーちゃん」

ベットから俺を抱っこしてほっぺをむにむにしながら話しかけられる。

次期家元ってなんか偉い人なんかなぁ……。

え?そしたらうちの母親も割りとお偉いさんなのか!?

あんなこと子供に言ってるのに!?残念だよ!残念すぎるよ!

そんなこと思ってたら遠目でじゃんけんに勝ったたと思われるしぽりん?さんに抱きかかえられた。

 

いやすげぇ。

 

どこがとは言わないけどすげぇ。

母さんもすげぇと思ってたけどしぽりんさんとんでもねぇ。

 

「これは……まほとみほに負けない魅力がありますね……」

「しーぽーりーんー!はーやーくー!」

 

そう言いながらちよきちさん?が俺を強引に奪っていく。

これもやべぇ、ちよきちやべぇ。

 

「あぁ^~こころがぴょんぴょんするんじゃ^~」

残念だ!俺の周りの大人は残念な人しかいねぇ!!!

「返せちよきち!ジャンケン負けたろ!」

あぁ^~二つの胸部にもみくちゃにされるんじゃ^~。

やわらかくて張りがあってそれでいて弾力もあって……。

あぁ^~しほちよは正義なんじゃ^~。

 

しばらくもみくちゃにされる状況を楽しんだが思考と違って

体はそうもいかないらしくそろそろ疲れてきた。

天国を手放すのは非常に、非常に惜しいが母さんの方に手を振って助けを求める。

マミーヘーッルプ!

 

「ほら、母親の私が一番なんだから!」

いまだにいがみ合う二人から俺を取り上げる。

 

「「あぁー、もうちょっと……」」

 

「それに友達とはいえ立場を考えたほうがいいよ?パパに対応はしてもらってるけど

二人が来るだけで騒ぎになるんだから!」

確かに二人が来た後は父親がげんなりしてるところをよく見るなぁ。

 

「それは違うわよ、西住流・島田流をそれぞれ破った選手の子供よ?話題にもなるわよ」

「昔の話だよ、今はどう足掻いたって勝てないよ~」

「ちよきちが面倒見てる選手を破ったと聞きましたが?」

「殲滅戦なら無理かなぁ……フラッグ戦なら一撃加えればいいだけだもん」

「簡単に言いますね……さすが流星と言ったところでしょうか」

首を横に振る母さん。

「しぃちゃんのとこはトップダウンが強すぎるかなぁ?自分で動くって事が少なく感じるよー」

思うところがあるのかしぽりんさんの表情が暗くなる。

「ちぃちゃんのところは変幻自在すぎて各車の車長と隊長とが連携できてない場面が多いかなぁ」

ちよきちさんも同じく暗くなる

「しぃちゃんとこもちぃちゃんとこも絶対的に不足してたのは経験かなぁ?」

「頭が痛いですね……」

「色々な相手とやってれば嫌でも経験とか対応力は身についてくと思うけどねー」

そういいながら俺のほっぺたをつつく。

「しぃちゃんのところには柔軟な発想を持てる副隊長クラスが、ちよきちのところには

ちぃちゃんちやしぃちゃんクラスの隊長と信頼のおける車長がいたら間違いないかな?」

 

「「簡単に言ってくれるわねぇ……」」

 

「流派が大きすぎるってのも考えものだねぇ、二つがひとつになったらちょうどいいんじゃないかな?」

 

むむむ……難しい話をしているようだ。

まぁ、組織なんて大きくなればなるほど舵取りは難しくなるってそれ一番言われてるから。

下っ端社員だった俺にはスケールがでかすぎて関係ない話だがね。

 

「単機、隠密で侵攻してフラッグ車を狙撃で一撃白旗上げさせて勝つ人間には言われたくないですが……」

「私は砲手だよ?、気づかれなかったのは操縦手の腕がよかったからだし、撃つのだって装填手が

私と呼吸合わせてくれるからだよ。通信手が各車の状況を把握してくれなきゃまともに進めないし

そもそも作戦を立てたのは車長と隊長なんだから私がすごいわけじゃないかなって」

「あらゆる場面で必中させてくる流星の子供ですよマスコミも騒ぎ立てますよ……ただ……」

そういいながらしぽりんさん多分難しい顔をしながら俺を覗き込む。

 

 

「もったいないですね……()()()ですか」

 

 

あれ?男の子じゃまずいの?

「男子で戦車道取る人間なんてまず居ないわよ」

「女子の嗜みとまで言われてるからねぇ」

「やれて中学生くらいまでかしら?公式の大会にはまず出れないわね」

「んー……でもこの子が戦車やりたいっていうなら私はやらせてあげたいかな!」

戦車道?なにそれ?そこまで言われるとちょっと興味が湧いてきたな。

母さんはその関係者っぽいし出来そうなことは色々やりたいからな。

手足を振って意思表示、これが俺にできる精一杯。

「あら、守矢君なんかきゃっきゃし始めたわね」

「戦車道って言葉に反応してるような感じね」

「いいんじゃないかしら、お堅い西住流と違って私はさせてもいいと思うわよ?」

 

あぁ、また売り言葉を……。

「おうおう、喧嘩売るなら買うぞちよきちぃ」

「もりやくーんしぽりんがこわいですよー?」

「よし!表に出ろ!」

 

しかし何故に二人は俺なんかに構うのかねぇ。

親友の子供とはいえ戦車道ができない?男だし。

「もしかしたらもーちゃんをまほちゃんやみほちゃんの婿にとか思ってきてるのかもねぇ」

それはそれでとんでもねぇな。

実質0歳で会ったこともない相手やぞ……。

しかし、なんか次期家元とは思えん会話だな。

しかもライバル同士だろ?

「まぁ、こんなところじゃないと3人で会えないからねぇ」

その一言で合点が言った。

 

3人は本当に仲がいいんだろう。

 

普段は他の眼があるからここまで素になれないんだろう。

2人はお互いライバル同士の流派だし1人は1選手なんだから。

生前の俺にもわからないようなストレスなんかもあるんだろう。

 

「ちょっとはガス抜きさせてあげないと、ね」

そう俺に向けられた表情はとてもやさしげだった。




出来るだけ早く更新できるといいなぁ……。


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1・あれから数年です!

2度目の初投稿です。
一気に時代が飛んだりするし文章になってるかわかんないし……。
1ミクロンでもいいから他の方の文才が欲しい。


「……ここだな」

俺は息をするようにトリガーを引く。

 

轟音と共に砲弾が放たれ吸い込まれるように敵戦車に命中する。

 

「フラッグ車行動不能!Aチームの勝利!」

 

ふーっと一息つき椅子に背を預ける。

ここは戦車の砲手席で俺はこの戦車の砲手。

第2の人生、砲手として謳歌しております。

 

 

 

 

自分の強みがわかりやすく現れたのが小学校に入学してからだ。

体育や昼休みに球技なんかや鬼ごっこなんかをやるんだが、

 

誰がどこにどの程度の速さで移動してるかが少し見ればなんとなくだがわかるのだ。

バスケなんかであればどれくらいの力でどれくらいの角度で放てばいいかもわかってくる。

 

 

自分でも驚くほどの空間認識能力の高さだと思う。

 

 

これについては恐らく生まれてからの生活と母親の遺伝が多分に含まれているのだろう。

戦車道の選手である母さんにくっ付いて行っては

一緒に地図を見ながら実際の演習場を歩いたりした。

「やっぱり実際現場を見ないとね、地図だけじゃわからないこともあるのよ」

とは後輩達に教えていた母さんの言葉だ。

整備担当の父さんにくっ付いて行っては整備を眺めたり手伝ったり。

手伝いといっても軽めの工具を持っていったり、

体が少し大きくなってからは簡単な整備も手伝ったりもした。

「お前本当に整備好きだなぁ……まぁ、男の子だし気持ちはわからんでもない」

えぇ、こういう機械とか大好物ですよ。

 

正直な話、反則だとは思う。

思考は大の大人と変わらないため、自分の意思でその方向を鍛えられる。

それに子供のころの成長期ってのはすごい。

比喩なんかでスポンジが水を吸収するように……

と言う表現があるががまさにそのとおりだと思う。

両親も知ってか知らずかその方向での成長を促してくれるような育て方をしてくれたし。

 

小学生を明らかに逸脱した能力の高さを知って色々な人から誘いを受けた。

球技がやっぱり多かったかな?

ただ、その誘いを全部断った。

体力も筋力も人並みしかないし、やりたいことがあったから。

 

それが戦車道。

 

男の身ではあるが戦車道を始めた。

だって前の人生ではなかったものだもの!

 

初めは母さんに我侭を言って乗せてもらった。

試しに砲撃をさせてもらったが至近弾にはなったが当たらなかった。

母さんや他の人は驚いていたが当てられなかったことが悔しかった。

毎日学校が終わっては母さんのところに行って撃たせてもらった。

次第に的に当たるようになって今度は行進間射撃の練習を始めた。

やっぱり最初は当たらなかったが練習すると当たるようになった。

楽しかった、それに褒められると精神年齢はおっさんに近いが嬉しかった。

調子に乗ってドリフト中の砲撃なんかも練習した。

 

 

その結果がこれだ。

当然非公式にはなるが、11歳の男子小学生だが()()()()()()()()()()()()()()

成長して行くのが楽しすぎてやりすぎたな(確信)

俺自身まさかここまでとは思ってなかった。

 

……母さんの子供じゃなきゃここまでは到達できなかっただろうな。

これについては感謝してもしきれない。

自分の我侭で男なのに戦車道に関わらせてもらってるしな。

聞いたところによるとやっぱり偏見とかすごいらしいし。

 

「やっぱ守矢君がいると撃破率が違うねぇ」

「車両がどんな状況であろうと撃てば必中とかチート過ぎる」

同じ戦車内のおば……お姉さま方から肩を叩かれる。

この人達も俺を蔑んだりせずにちゃんと砲手として扱ってくれる貴重な人達だ。

「行進間射撃と言っても今回は相手が棒立ちでしたから……それならいい的ですよ」

「言い切るねぇ……流石は流星の息子にして……」

 

「はぁ……アーラシュはやめてくださいよ?足元にも及びません」

 

これが俺についた渾名だ。

相手が偉大すぎるにもほどがあるだろ……。

たった一射で国境を作った英雄やぞ?周回でお世話になりまくる英雄やぞ?

いや、キャメ○ットでのあれは痺れた、知らずに涙してたもん。

光栄ですよ?俺みたいなミジンコがそう言ってもらえるのは。

 

だがこの大英雄の名前になった経緯が微妙すぎる。

 

荒谷守矢(あらやもりや)→荒 守(あら もり)→荒 守(あら しゅ)

→あれ?そんな感じの偉人いなかったっけ?→すげぇ!この人の弓すげぇ!

→パパパッと決めて、終わり!

 

やめてくれよ……(絶望)

俺がある試合で取った戦法がそう言わせたってのもあるらしいんだけど。

……うん、我ながらあれはやばかった。

頭にきてたってのもあるんだけどある意味で流星一(ステ)……

みんなもアーラシュさんには感謝しようね!

 

「あ、守矢君。演習終わったらすぐに会いに来いって(てる)さんが言ってたよ」

「母さんが?」

 

 

照と言うのはうちの母親の事だ。

「宿題はちゃんと終わらせてるし何かしたっけ……」

まったく身に覚えがないが……。

「後はこっちでやっとくから先上がってていいよ~」

「了解です、後はよろしくお願いします」

行ってみたらわかるか。

 

 

 

「ねぇ、モリモリってたまーにすっごい歳いってる様に見えない?」

「あぁ~、同い年くらいに感じたことはあるかも」

「やっぱ照さんの躾が厳しかったりするのかなぁ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日も頑張ったね~!あぁもう!ママがハグしたげる!」

はい、絶賛スキンシップを受けてる最中です。

親バカと言うかなんと言うか……母さんからの愛がやばい。

「母さん、何か用事があったんじゃないの?」

一児の母親とは思えないくらい若く見えるのだがそれはそれ。

正直、鬱陶しく感じるときもある。

同じ歳ならしほさんや千代さんの方が断然いいわ。

「もーちゃんが冷たい!」

はぁ……会話が前に進まない。

母親からの愛の抱擁から脱出する。

「母さん、用件言わないなら今日は一人で寝るからな」

「はい!明日熊本へ泊まりに行きます!」

「熊本?しほさんとこにでも行くの?」

「せいかーい、顔見せに来いってさ」

最後に会ったのは……いつだっけ?なんかの交流戦のときだっけ?

「まぁ、それとは別の思惑があるような気もするんだけどね……」

思惑ねぇ……母さんを西住流に引き込むとか?

 

……いや、無理だな。

この母親が西住流の統率された動きに乗っかるとも思えん。

どちらかと言えば島田流に近いけど……これも無理だな。

現状、この母親を制御できる人間がいるとは思えん。

出来るとしたら千代さんのお子さんかねぇ。

確か小学2年生くらいで次元の違う車長らしいね。

なんか、母さんが千代さんと電話してるときに何度も聞かされたらしくて

げんなりしてた覚えがある。

 

 

「じゃあ、明日は朝早くから熊本に移動するからちゃんと起きること!」

「はいはい、特別持っていくものとかは?」

「んー……ママへの特別濃厚に愛する気持t」

「シャワー浴びてきまーす」

「もーちゃんが厳しい!!!」

 

 

けどまぁ……しほさんに久しぶりに会えるのは嬉しい……かな?




母親の名前はウィリアム・テルから


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2・二人の戦車乙女です!

ちゃんと書き上げたので初投稿です。
本編内容確認するために映像を見るんですが、
いつの間にかテレビの前で1日終わってるんですよね。


ガルパンはいいぞ~


車の窓から見えるのは一面緑の田園風景。

窓を開けると心地よい風が頬をなでる。

いやぁ、働いてたころはこんなに心に余裕なんてなかったしなぁ……。

家の付近もこんな風景まず広がってないからなぁ……。

 

「この光景……癒されますねぇ……」

「たまーに小学生らしからぬこと言うわよねぇ」

「見知った人とはいえ女性ばかりですし?それに母さんがこれだと

やっぱ俺がしっかりしないとなって」

戦車道のミーティングなんかは俺が同席してなきゃ話にならん。

自分で立てた作戦自分で忘れるってどうよ?

「同級生からは守矢おいちゃんて言われてるんでしょ?」

若くなってかなりはっちゃけたとはいえ、

根底はやっぱおっさんの思考だし喋り方もたまーに地が出るのよ。

不本意、実に不本意だがしょうがないかとも思う。

 

「整備の連中もお前のことあんまし子供とは見てない節があるぞ?」

「何かあの人たちにしたっけ……」

「宗一郎んとこの子供はほんとに小学生か?

アイツにゃ尻の毛まで抜かれてるって……お前何かやってるか?」

宗一郎は俺の父親の名前だ。

 

荒谷 宗一郎

荒谷 照

荒谷 守矢

 

これが我が荒谷家だ

「……それについては黙秘いたします」

「別に何やったって構わないが人の迷惑なる事と警察に厄介になることだけはやるなよ」

「わかってるよ」

父さんの職場は逆に男ばっかりで気兼ねする必要がないから楽。

精神年齢おっさんだから妙に気が合うんだよね。

それにちょっと麻雀で勝負して勝ったら支援してもらってるだけだから(意味深)

あぁ、飯とかお菓子とかジュースとかだぞ?

お金賭けたらダメってはっきりわかんだね。

 

「パパったら、うちのもーちゃんに限ってそんなことないわよ、ねー」

「いや、母さんに同意を求められると自信なくなってくる……」

「ちょっとー!」

「はぁ……この減らず口は誰に似たんだか……と、着いたぞ」

 

 

でけぇ。

 

なんだこの日本家屋。

まるで武家屋敷じゃねぇか。

流石は西住流本家ってところかねぇ。

 

「しぃちゃーん!きたよー!」

 

入り口から大声で叫ぶ我が母親。

小学生かおのれは!

 

「照、それはないわ」

パパも呆れとったわ!

 

しばらくして不機嫌そうな顔をした美人さんがやってきた。

あいもかわらず綺麗だねぇ、しほさん。

 

「……一応私の立場を考えてくれると嬉しいのですが?」

そーだそーだ!言ってやれ言ってやれ!

「嬉しいくせにぃ!このこのぉ!」

「はぁ……」

頭が痛い……なんかこう軽すぎるんだよ母さんは……。

 

「「家の(母さん)が本当にすまない……すまない……」」

 

俺と父さんが頭を下げる。

「あれ?何が?私何かしたっけ?」

母さん……。

恐らく父さんも心の中で涙を流しているだろう。

 

「頭を上げてください……照さんとの付き合いも長いのでわかってます……」

コホンと咳払いをして仕切りなおすしほさん。

 

「お久しぶりですね、宗一郎さん」

「お久しぶりです、しほさん」

「後で常夫さんに会ってやってください、宗一郎さんが来るのを楽しみにしていたので」

「ありがとうございます……久々にあいつとメンテ談義が出来るなぁ……」

父さんちょっと嬉しそうだな。

 

父さんも常夫さんも技術屋としての腕ってとんでもないらしいもんなぁ。

同じ戦車を整備しても二人の内一人でも関わった車両ってすぐわかるらしいし。

俺は父さんの整備しか知らないからなんとも言えないんだけど……。

 

「守矢君もお久しぶりね」

 

ちゃんと自分と目が合うようにしゃがんで微笑んでくれる。

あぁ^~しほさんは母親の鑑なんじゃ^~。

 

「はい、しほさんもお元気そうで」

「照さんと違って礼儀正しくていい子ですね」

「しぽりん?それどういう意味かなぁ!?」

「母さん、わからないならもう喋らない方がいいと思う」

「もーちゃん!?」

「……そう言う所は宗一郎さんに似てますね」

 

おっ、そうだな。

 

「もう!」

もうじゃないです、仕方ないんです。

「そうだ、しぃちゃん!まほちゃんとみほちゃんは?」

「二人ともいますよ、まほ!みほ!」

しほさんがそう呼ぶと縁側から二人の少女が駆け寄ってきた。

 

「何でしょう、お母様」

「お母さんなにー?」

「以前言っていた今日明日と滞在する私の友人です」

 

二人が前に出てくる。

 

「西住まほです」

「西住みほだよ!」

 

うん、可愛い(本音)

 

「女の子だよ!しぃちゃんのとこの女の子だよパパ!めっちゃ似てるよパパ!」

「わかったから落ち着こうな……僕は宗一郎、こっちが照」

「よろしくね!まほちゃん!みほちゃん!二人とも抱っこしたことあるんだよー!(フンス!」

「んで、こいつが守矢。みほちゃんと同い年だよ」

 

父さんに促されるように前に出る。

 

「守矢です、うちの母さんが残念でごめんね?」

「よろしくね、みほちゃん」

右手を差し出す。

やっぱり挨拶は大事だってはっきりわかんだね。

「よろしくね!守矢君!」

みほちゃんが俺の手を取ってぶんぶん上下に振る。

 

あ、同年代の中で突き抜けて可愛いわ天使か(確信)

 

「……」

一方まほちゃんはこちらをじっと見ている。

「まほちゃんもよろしくね?」

笑顔で握手を求める。

「……っ」

顔をぷいっとそむけてしまった。

 

やっぱ天使か(確定)

 

しかしフレンドリーすぎたか、反省せねば。

「っと、ごめんね?ちょっと馴れ馴れしすぎたね」

「これは……あれ……?」

うわぁ、なんか顔が真っ赤になってる……。

まさか知らないうちに地雷原でタップダンスしちまった感じ?

やっちまったなぁ……。

 

「守矢君、守矢君」

ちょいちょい、とみほちゃんに手招きされる。

「お姉ちゃんね、きょうすっごい楽しみにしてたみたい」

みほちゃんが耳元で小さな声で教えてくれた。

「ほんと?俺にはそう見えないんだけど……」

「逆だよぉ~、お姉ちゃんただ恥ずかしがってるだけだよ~」

「あぁ、男の子に免疫がないとかそういう……」

「違う違う、それはねお姉ちゃんが守矢君のファ……」

 

「みほ?」

「きゃぁぁ!」

 

いつの間にか接近してきたまほちゃん。

気づいたみほちゃんは逃げるがまほちゃんに捕まった。

 

「これか、この口が悪いんだな?」

「おふぇえふぁん!いふぁい!いふぁい!」

 

仲のいい姉妹のじゃれあいだな。

 

「うんうん、仲がいいのはいいことだね」

「もーちゃん、なんでこうなってるか理解できる?」

「えーと……迂闊に女の子に握手を求めたから?」

「もーちゃんはもうちょっと勉強しようねー」

……何を?

 

ため息をつくしほさん。

あんにゅいなしほさんも綺麗ですよ。

「まほ!みほ!お客様の前ですよ!」

 

「「……ごめんなさい」」

しょんぼりする二人。

 

 

「しぃちゃん、子供は元気なくらいがちょうどいいよー」

ほんと真逆だな、母さんとしほさん。

「まほちゃん、みほちゃん」

母さんがみほちゃんとしほちゃんの前にしゃがむ。

「いまからちょーっとしぃちゃんとお話があるんだ。

よかったらうちのもーちゃんと遊んでくれないかな?」

「母さん、なんかあんのか?」

「まぁ、子供には難しい話かなぁ?」

「俺がいなくてそんな話して大丈夫なの?」

「もーちゃん、ママだってやるときはやるんだから!」

「照さん……あなた……」

しほさん、可哀想な目で見ないであげて……。

 

「もーちゃん、頼んでもいい?」

にかっと笑う母さん。

「私に任せてくだs」

「うん!任せて!守矢君いこっ!」

差し出されたみほちゃんの手を取る。

「いぇすまむ、まほちゃんもほらいくどー」

まほちゃんの手を引いていく。

「む、そう引っ張るな」

「気をつけなさいよー!」

ぶんぶんと手を振る母さんと

「暗くならないうちに帰ってきなさい」

少し微笑むしほさん。

しほさん美人すぎ女神か。

 

 

 

みほちゃんに連れられてきた駐車?スペースにはⅡ号戦車が止まっていた。

普通家に戦車?とも思うけど俺の家にもCV33があるから、多少はね?

「よーしⅡ号にのりこめぇー!」

わぁい^^

「みほ、運転は私がする」

まほちゃんに続きⅡ号に乗り込もうとするが、

「守矢君は上でいいよー!」

みほちゃんが先に2号の中に入っていった。

Ⅱ号戦車って3人乗りだっけか……。

俺と密室空間に二人ってのはまほちゃんに悪いしお言葉に甘えよう。

「出発するぞ」

重低音を響かせながら動き出すⅡ号戦車。

 

 

「しゅっぱーつ!」




荒谷家は福岡にありますあります(唐突)
プロローグでしほさんが戦車でぶっ飛ばしてくる書いちゃったから
九州にしよう!どこにするかな……もう住んでるし福岡でいいな!

って、感じです。


この適当さ加減はどうにかしないといけないんだろうね!


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3・大人のお話です!~前編~

夜中に前書きを打っているので初投稿です。
今は絶賛失業中でこのペースで投稿できていますが、
もうそろそろ本気出して就職活動せなあかんと思ってるので
更新はだんだんと遅くなると思います。

働いてる時は働かないのがこんなにつらいものだとは思わなかったゾ。


私はしぃちゃんに自分の書斎へと通された。

「さてさて、しぃちゃんが私を呼び出した理由を聞きましょうかね~」

子供達を遊びに、パパ達はパパ達で整備場に行かせてある。

「理由ですか?久しぶりに友人に会いたかった……それだけではダメですか?」

お茶をすすりながらしぽりんが話をする。

「いや~、流石にそれはありえないかなぁ~?」

そうだったらいいんだけどさ~。

()()()()()()()って時点で今までじゃあり得ないもん」

あり得ない……そう、あり得ないのだ。

 

 

「だって西住流を散々扱き下ろした張本人だよ?」

「……」

 

 

 

 

 

 

話は数十年前……自分達が学生だった時まで遡る。

私としぃちゃんはそれぞれの学校で隊長をしていた。

私は個々があまり強くないこともありみんなで協力して勝利を挙げる戦車道を。

しぃちゃんはやはり西住流の教えに沿った様な形で戦車を動かしていた。

 

撃てば必中 守りは固く 進む姿は乱れ無し 鉄の掟 鋼の心 それが西住流

 

いかなる犠牲を払ってても勝利を掴む勝利至上主義。

当時から西の西住、東の島田と言えば畏怖の対象であり

どの高校も対戦すれば敗北必至と言われていた。

 

 

事が起きたのは戦車道全国高校生大会決勝。

私達は数車両で迂回し側面から砲撃する別働隊として動いていた。

「隊長、本隊発見」

スコープ越しに敵車両を視認する。

「おいおい、プラウダとか聖グロのほうがまだ警戒してたぞこれ」

「これが王者としての戦いってやつ?」

「少なくとも数年前より弱体化してるのは間違いない、OGが言ってたからね」

どう足掻いても勝てなかったと聞いたことがある。

「昔はとんでもない速度で統制された車両が制圧前進、ファランクスがものすごい勢いで

小細工を踏み潰しながら突っ込んでくるようなもんだったって」

「でも今見る限りその様子はないよなぁ……」

足場が悪いとはいえ隊列は乱れフラッグ車の護衛もおざなりだ。

隊長の力量なのかそも部隊の錬度が低いのか。

これ見る限り後者だろうな。

これまでの試合を見ても隊長車だけは次元が違ってたもの。

ただ、今日以前の部隊と比べれば全然マシだな。

準決勝なんて個々はそこそこ強そうだったけど連携がまるでなってなかったし。

 

「隊長車突っついたら面白くなるかなぁ?」

隊長車に標準を合わせる。

でも今日のはなんか余裕なさそうだなぁ、あの隊長……本当に西住流?

「照、楽に終わるならそれにこしたことはないよ……ん?」

味方部隊との連携の最終確認を終え攻撃を加えようとしていた時だった。

しぃちゃんの学校の最後尾の戦車が川に滑り落ちた。

誰のせいでもない、朝から降り続く雨が足場を脆くしてしまっていて

戦車の重量に耐え切れず崩れて滑り落ちてしまった。

川も増水し始めているので戦車の安全性考慮したとしても、

迅速に救助に向かったほうがいいだろう。

何かあってからじゃ遅すぎる。

 

 

 

だが、一度は止まった本隊の戦車は進撃していた。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

「おいおい!何考えてんだあいつら!?」

驚く隊長、それをよそに黒森峰は進軍していった。

「クソッ!完全に置き去りにしやがった!」

 

沈んだ車両が移動してくるなんてことはない。

完全に水没したためエンジンがかからないのだろう。

雨は降り続き今もなお水かさは増している。

この悪天候だ、本部の救助が遅れたら?

もし車両内に水が浸水していたら?

特殊カーボンでコーティングしてあり競技用に改造してある戦車だ、きっと安全なのだろう。

 

だが、絶対などありはしない。

 

「隊長!本部に問い合わせても異常は確認されずとの回答が!」

 

()()()()()()()()

高校戦車道連盟にもかなりの数の西住流が絡んでると聞く。

ここ数年、黒い噂を何度も聞いた。

 

 

 

ふざけるな、何が西住流だ。

何が勝利至上主義だ。

何が王者だ。

 

人命より重いものなどあるものか。

 

もし、救助活動をし始めたのであればこちらは手を出すつもりはなかった。

甘いかもしれない。

しかしそれは私達が最大限出来る相手への敬意であったから。

 

 

「全員聞け、この状況で取れる行動は二つだ」

隊長が全車両に向けて話し始める。

「一つは啄木鳥を発動し試合を終わらせる、一つは別働隊で救出に向かう」

前者はもしかしたら黒森峰相手に大金星を上げて優勝できるかもしれない。

ただし、黒森峰の進撃によって先ほどの状況がまるで変わってしまったため、

陽動のポイント、本隊の位置の調整などかなりの時間がかかる。

後者は簡単だ、即座に救出に向かい最速で選手を助けに行く。

「……ただし、別働隊が居なくなる以上間違いなく我々は負ける」

そう、これは別働隊と本体での連携がなければ成立しない戦略。

どちらかが欠けた時点で敗北は確定的になる。

しかしこの状況、この天候と先ほどの報告からして救助が来るのはまだ遅れる。

 

 

 

 

「……諸君らの意見を聞く」




このままだと完全に原作から乖離するなこれ……。


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4・大人のお話です!~中篇~

何故か書き上げられたので初投稿です。
FGOのイベントやらなきゃ……。
更新遅くなるだろうけど是非もないネ!


「ちょっとすみません」

表彰式も終わり私も自分の学校へ帰ろうとしていた時だった。

 

「アンタが黒森峰の隊長の西住しほさん?」

 

決勝戦の相手、その一人が私に話しかけてきた。

 

また何か言われるのだろうか?

試合の後、そういった連中は結構多い。

私が西住流本家の人間だと知っていて擦り寄ってくる連中。

島田と並び称される名前を利用したいやつらだ。

聖グロやサンダース、プラウダなどの強豪校にはない浅ましい考え。

この生徒も西住に取り入って強くなれると勘違いしているのだろう。

だが、今の西住流に取り入ったとして強くなれるわけがない。

 

 

私は……。

 

私は()()西()()()()()()()()()()

 

 

以前は西住流の戦いに誇りを持っていた。

統制された陣形、圧倒的な火力を用いて短期決戦。

奢らず、貶めず、挑戦するものへの敬意は忘れず。

王者としての威風堂々とした戦い方。

その在り方をもって王者たる西住の名を知らしめる。

そんな西住流が好きだった。

 

 

だが、数年前より家元が変わり内部は激変した。

腐ってしまったと言ってもいい。

勝利至上主義は昔と変わらない。

理念・思想も変わらない。

だが大切な何かを置き忘れ、、

老人達の為の利益の為に狂った様に勝利を求められる。

 

 

近年、本家は武道としての戦車道より西住の名を利用した

戦車道ビジネスの方に熱心だ。

西住流の名を使い金で選手を集め部隊を作る。

逆に金で西住流の名前を買う連中だっている。

 

 

正直こんな部隊でまともな指揮が出来るはずがない。

私とあいつら、戦車道に懸ける熱量が違いすぎるのだから。

 

 

この黒森峰での指揮は苦痛でしかなかった。

 

 

今の西住流の守らんと黒森峰の隊長で指揮する自分。

今の西住流を否定する戦車道の選手としての自分。

 

 

私は西住流が嫌いだ。

そして()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

高校生最後の大会……決勝戦のこの部隊編成だけが私の精一杯の反抗。

この子達は本家の上の人間には黙っていた部隊。

お金でも名前でもなく。

ただの西住しほである私を慕って3年間も着いてきてくれた彼女達。

正直、強豪校でしかも決勝で出れるような技量はない。

けれど、私は……あんな連中と優勝するのであれば、いらない。

 

優勝なんていらない。

 

西住の名前もいらない。

 

 

 

もうどうだっていい。

私はもう西住流を捨てようとさえ思っている。

だったら適当に相手してやればいい。

そんな話を持ちかけてきたとして私が何か出来るわけもない。

こいつもその一人だろうから。

 

 

 

「そうですが、何か……ッ!?」

 

 

私が全てを言い切る前にすごい力で胸倉を掴まれた。

 

「アンタ、何考えてんの?何であの状況で全車進撃させたの?」

「あなた何を……」

いきなりのことで困惑する。

「最後尾の車両が、川に落ちたよね?」

 

……何でこいつはそのことを知っている。

あの場に居たのはこちらの陣営だけのはず。

 

「何で知ってる?って顔してるね。あの、瞬間を見てたから」

更に力が強くなる。

あの瞬間を見てた?どこで?どうやって?

「私達がどう見て様が関係ないし、そもそもいちゃもんつける気はないから、安心していいよ」

優勝旗なんていらないから、と吐き捨てるように言う生徒。

「そっちが進撃した後、落ちた戦車引っ張り上げたんだけどね」

引っ張り上げた?わざわざ助けたって言うのか?

「車内、どうなってたと思う?」

落ちた彼女達の状態だけは直接聞いたわけではないが知っている。

落下した時の衝撃で多少の打撲を……。

 

「破損箇所から浸水してしまってパニックになってたよ」

 

……え?

 

「こっちが白旗揚げて助けてなかったら……考えたくないね」

そんなバカな!連盟の人間に確認した時は……!

「違う!私はそんなこと聞いてない!私は……!」

「あ、これだけは伝えとかなきゃ」

 

私だって……私だって……。

 

 

「欲しかった優勝旗を手に入れられてよかったね、西()()()()()()

 

 

とどめのその一言で私の中の何かが切れた。

 

 

「お前に何がわかる!」

 

 

普段の振る舞いも言葉遣いも忘れ叫ぶ。

「本部に救援を求めた時、異常は確認できないと

救援の必要はないと言われた私の気持ちがわかるか!?」

気付いたら相手の胸倉を掴んで顔を間近に近づけていた。

「わかってる!あぁ!わかってるさ!私が一番、自分の取った

行動があり得ないことも、例え負けても救助すべきだったのも!」

溢れ出した言葉は止まらない。

「だが私達が負けたら、彼女達はどうなる!」

()()()()()()()()()()西()()()の経歴に泥を塗ったとなると何をされるかわからない。

「お前に、即座に進撃し勝利するかわりになにもなくても

ここに救援車両を寄越せと叫んだ私の気持ちがわかるか!?」

溢れ出す涙も止まらない。

「アンタ……」

「試合が終わってすぐに彼女達の所に行こうとした!

連盟の人間に止められた!お前が知る必要はないと、西住としての責務を果たせと!」

本家の会合で見たことのある顔だった。

私に何が出来る……一隊長に過ぎない私に……何が……。

 

「私は無力だ……こんな西住の名前なんて要らない……」

 

私は

 

 

私はただ私と共に居てくれる人達と、私の戦車道がやりたいだけだなんだ。

 

 

 

 

 

「ふーん……」

掴まれていた手が離される。

 

「アンタ、いい隊長じゃない」

「え……」

「部下の為に涙を流せるなんて、今の西住に居ないと思ってたけど」

そう言うと携帯電話を取り出し通話し始めた。

「もしもし隊長?ごめーん、もうちょっとかかりそう。

相手の隊長めっちゃいい人だった」

この人、いったい何を……。

「上がどうしよもないっぽいね、島田んとこのそーちゃんが言ってた通りだったわ。

うん、ちょっと西住に喧嘩売ってこうかなって」

け、喧嘩!?

「だいじょーぶだいじょーぶ、二度と戦車道が出来るわけじゃないし、

大学戦車道は島田の領分でしょ?それに今の西住ならへーきへーき」

不穏な単語が聞こえてくる。

 

「さってと!ごめんね!しぃちゃん!」

「し、しぃちゃん?」

まるで人が変わったようだった。

「いやぁ、思ってた通りの下種野郎だったら、ぶん殴って○○(ピー)しようと思ってたんだけどさ」

そうでなくてよかったよー、と笑う女生徒。

「あぁ、落ちた子達については安心していいよー、うちの学校で運んだし」

下種野郎だったら何するかわからないしごめんね?と謝られる。

「本当か!?怪我は!?全員無事なのか!?」

「かなり浸水はしてたけどねー。あっ、パニック起こしてたってのは嘘だから」

……嘘?

西()()()()()()()()()()必ず助けてくれるってずっと信じてたよ」

まぁ、その前にうちが助けちゃったんだけどねーと笑う。

「打撲程度だしでうちの学校のテントに居るから後で会いにいったらいいよー」

「でも私は……彼女達を……」

私に会う資格なんて……。

「しぃちゃんは実にばかだなぁ、そんなのまず謝ることから始めればいいんだよ」

そんな簡単に……。

「会って話さなきゃなにも進まないんだよ。許されるにせよ許されないにせよ」

腹割って話さなきゃ、と言う女生徒。

「わたしはちょっと本部に用事があるから一人で

いってもらうことになるけどごめんねー」

そういってキョロキョロとしだす。

「本部に用事って……」

 

 

「ん?西住流のクソッタレに一言物申そうかと思って」

 

 

「はぁ!?」

本気で言ってたのか!?何考えてるんだこの人!

「あなた正気!?」

「お、あそこに居るのってそっちの人?」

指を差した先には彼女達の事を聞いた西住の人間が。

「すみませーん!西住流の人ですかー?」

私が何も言っていないのにもかかわらず、ものすごい勢いで走って行ってしまった。

「何だ、君は」

「聞いてもいいですかー?何で西住流はクッソ弱くなったんですかね?」

ド直球!?

「2大流派の一角って言ってる割にはゴミカスって聞いたんですよ!」

「お前、いい加減にしないか!」

激昂するのは当然だろう、もう無茶苦茶言ってる。

「今日あった決勝以外の編成が出てた以前の試合なんて

もうなんていっていいか……控えめに言って……あ、すみません表現浮かびませんでした」

そ、そろそろ止めないと!

「いやぁ、島田流から相手にされてないって本当だったんだなって思いました!」

「貴様……そろそろその口を閉じたほうが懸命だぞ……」

「え?図星ついちゃいました?サーセンwwwwww」

「貴様が戦車道出来なくすることなんて簡単……」

「あ、今年卒業なんで。来年から大学戦車道連盟が管轄になるんでwwww」

「……お前、よく見たら決勝で負けた学校の生徒だな!なんだ、ただの負けた腹いせか!」

痛いところを突いてくる……これは滑稽だ、と笑う男。

「まぁ、負けちゃいましたねぇ。ちょっとしたトラブルがありまして」

頬をかく女生徒。

「トラブル!トラブルか!白旗上げて勝手に自滅してトラブルときたか!」

本当にこの男は情けない。

もしこの彼女達が本気でかかっていれば今頃……。

「西住流……いや、西()()()()()()とリベンジがしたいですねぇ……」

「はん!いくらやったところで同じだろうよ!」

 

 

 

 

「彼女だったら……とびっきりの奥の手……()()を見せて上げられる……」

 

 

 

 

あの男も、そして遠くに居た私にもはっきり伝わった。

それは絶対の自信と圧倒的な威圧感。

それは恐怖として他者に伝染する。

 

「っ!失礼する!」

男は気圧されたのか足早に立ち去ってしまった。

 

「流星……」

私は……私の心は躍った。

私ならば奥の手見せるといった。

私を強者だと認めてくれた……。

私は彼女と本気で戦ってみたい……。

ならば……ならば私は……!

 

 

「なんだよ、耐性ないなぁ。ちょっぴり煽っただけじゃないか」

何故かぷんすこ怒りながら女生徒が戻ってきた。

「そう思わない?しぽりん」

その言葉に完全に毒気を抜かれた。

 

「くくっ……はっはははは!!」

 

それがたまらなく可笑しかった。

「西住流に正面切って喧嘩するなんて……くくくっ」

久しぶりに大笑いした気がする。

「一方的に罵倒浴びせて……くくっ」

あー、スッキリした!

「んあー?何か楽しいことでもあった?」

「そうだな、すごい面白いものが見れた」

「そんなのあったかなぁ……。あ!私、照って言います!」

差し出される手。

「改めて……私は西住しほ、彼女達のこと本当にありがとう」

差し出された手をしっかりと握る。

「いえいえ、当たり前のことをしただけですよー」

本当にこの人は……。

「しぃちゃんは、これからどうするの?」

これから……か。

「あんなとこで戦車道するとかきつくない?私達と一緒にやろうよ。きっと楽しいよ!」

魅力的な誘いだ、きっと照達と戦車道をしていくことは幸せなのだろう。

 

だが私にはやることが出来た。

彼女を見て私がやるべきことが見えた。

 

 

「いや、私は西住に戻る……私はもう逃げない」

 

鉄の掟、鋼の心。

 

「私が西住流を変える、王者としての西住を取り戻す」

「へぇ、上に反抗するんだ」

「今の西住に私以上の選手など上も含めていない、なら私が舵を取るべきだろう?

こんな簡単なことにも気付かなかった自分が馬鹿らしいな」

「言うじゃんしぃちゃん、なんか思うことでもあったんだ」

にやにやと笑う照。

 

「そうだな……西住流として胸を張れるように」

そして。

 

 

「照の流星を正面から叩き潰してやるために」

照に拳を向ける。

そうだ、彼女は私であれば流星を見せるといった。

ならば西住として……王者としてそれを真正面から叩き潰す義務がある。

 

 

驚いたような顔をした照だがすぐに不敵な笑みを浮かべた。

「自信ありげだねぇ」

 

出した拳に照も拳をぶつけてくる。

 

「私の流星は()()()西()()()()()じゃ止められないよ?」

 

ただの西住流……ね。

正直今の私が崩せるものではないと思う。

まだ焦るな、一歩一歩だ。

 

「まずは彼女達に謝って、私の思いを聞いてもらおう」

ここから新しい私の戦車道を始めよう。

 

「あ、じゃあ案内するよー!」

ニコニコと歩き出す照。

 

今に見ていろ流星。

そしていずれ味わってもらう。

 

 

 

 

西()()()()()西()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで、しぃちゃんってのは止めてくれませんか?」

「えぇ~?なんで?可愛いじゃんしぃちゃんって」

「いや、私は出来れば名前d」

「しぃちゃーん、はよいくどー」

「……はぁ」

 




文章として成立してればいいなぁ……。


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5・大人のお話です!~後編~

自由気ままに初投稿です。


「懐かしいね~……あの後、マジで西住流師範になっててびっくりしたよー」

あの出来事から数年後、しぽりんは本当に西住流を変えていった。

ちょくちょく連絡は取っていたのだがそのことに関してはほんとにサプライズだった。

 

「えぇ、あなたを真正面から叩き潰すために頑張りましたよ」

「結局、私の流星止められたんだっけ~?」

「……もういいでしょう?その話は」

 

 

私としぃちゃんは結局相対した。

 

結果はこちらの勝利。

私の流星は止められないのだ!

 

……まぁ、ほんとに僅差だったけど。

どちらが勝利してもおかしくなかった。

勝利の女神がたまたま私に微笑んだだけだ。

西住しほの西住流は恐ろしいほどの強さだった。

 

「で、とうとう家元だもんね~」

「まだ、ですけどね」

「いやいや、あの状況を完全にひっくり返したんだから大したもんだよ~」

現に、ここ数年の西住流は驚異的な強さを誇っていた。

島田流が脅威に思うのも無理はないだろう。

どんな状況でも動じず、統制された部隊での圧倒的火力による蹂躙。

いいね~……ちょっと戦ってみたいかも……。

 

「やっと老害連中を追いやれたので……、

それに照さんに少しお願いがありまして」

「ん~?お願いとな?」

お願い……お願いねぇ……。

 

「あっ!もーちゃんはやらんぞ!しぃちゃんでもそれは無理!」

「違います!」

違う?何だろう……。

「まほちゃんとみほちゃんにもまだもーちゃんはやれん!」

「何で発想がそうなんですか!」

「いや、まほちゃんがもーちゃんを見る目って明らかに何かあるんですがそれは」

「……否定できません」

「やっぱり!何があったのかなぁ?まほちゃんにぃ」

もーちゃんは素敵だからしょうがないけどネ!

「いや、私も知らない間に守矢君が出ていた試合の配信みてたみたいで……」

ほぉほぉ……。

「先日来るって伝えた時は、なんか無言でガッツポーズしてたわ……」

「ラブなのかライクなのか……楽しくなってきたねぇ」

「私は楽しくありませんよ……そうじゃなくて!」

あ、やっぱ違う?

 

「照さんと守矢君でこちらの選手と試合をして頂きたいのです」

「試合?なんでまた、西住流のお膝元なんだから強い選手はいくらでもいるでしょ?」

「えぇ、ですからその子達に教えて欲しいのは技術なんかじゃありません」

技術じゃないの?私に出来ることないんですがそれは。

 

「男で戦車道なんかやってると思ってる連中を叩き伏せて欲しいのです」

「……あ~、やっぱ居るんだ?」

 

戦車道は乙女の嗜みと言われている。

男であってもしてはいけない、と言うことはないが小数だ。

整備班には男性が多いが戦車乗りとなるとそうはいかない。

ここ数年で男性での戦車乗りも理解され始めてはいるが、

 

()()()()()()()()()()()()

 

と言う考えも未だに根深く残っている。

 

もーちゃんが乗り始めたときもやはりいた。

幼く、私の息子であった為理解してくれる人もいたが

やはり少なくはなかった。

 

もーちゃんの場合、日々の練習とその成果を見てくれた人が居て、

それでも言ってくる連中には自らの腕で叩き伏せたこともあったかな?

 

「ふーん……試合の件は別にいいよ」

しぃちゃんのお願いだし。

ちょっと頭にくるし。

「ただ、私達のやり方って西住流を真っ向から否定してるってことはわかるよね?」

「えぇ、構いません。照さんの好きなようにどうぞ」

表向き西住流以外は邪道って言ってるからねぇしぃちゃん。

「照さんのチームの交通費も全額負担するので、チームごと呼んで貰えると助かります」

「わお!しぃちゃん太っ腹!チームも明日は練習日だから召集できると思うよ!」

試合したがってたし交通費出るし喜んで来るでしょ!

 

「それと……出来れば()()を使用してくれると助かります」

え~、奥の手見せるの~?

「しぃちゃんのお願いとはいえ安売りはしたくないんだけどなー」

「見せたところで出来る人間もかわせる人間も居ないと思いますが?」

 

個で劣る私達が戦力差を埋めるために編み出したもの。

煙幕を利用し敵を撹乱させ同士討ちを誘発させる至近距離での乱戦と、

最高速度で敵に突っ込んでの零距離射撃からなる戦術。

 

「まぁ、一朝一夕じゃあれは出来ないし防げないよ」

しぃちゃんにはぎりぎり防がれそうになったけど。

多分、しぃちゃんちぃちゃん辺りなら二度目は通用しないかなぁ?

 

しっかし流星もかぁ……そうだねぇ……。

 

()()だったら別にいいかなぁ……」

「私の?他に誰か使える方が居るのですか?」

「ん?もーちゃんに決まってんじゃん」

「守矢君が?」

「私の愛する息子だよ?叩き込んでるに決まってるじゃん」

まぁ、教えた結果とんでもない方向に進化したんだけど。

「守矢君のが使えない理由があるんですか?」

「いや、使えないわけじゃないんだよ?」

砲撃だけなら私超えてるかもしれないし。

「まさか照さん自身と比べてる訳じゃありませんよね?

それはいくらなんでも可哀想ですよ?」

いや、そうじゃないんだよねぇ……。

 

「あのね、しぃちゃん。厳密には私ともーちゃんの使う流星って違うんだよ」

まぁ、しぃちゃんだし言ってもいっか。

 

「正直に言えば()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「次元が……違う……?」

 

 

「本人は流星一条(ステラ)って言ってたけど、あんなの狂気の沙汰だと思ったよー」

「それって一体……」

「んー……明日、試合が終わって誰にも見せない、口外しないのであれば見せたげる」

まぁ、見せたところでやる人間なんて居ないだろうけど念の為、ね。

「あ、まほちゃんみほちゃんくらいならいいよ」

「えっと……私が言うのもおかしいと思いますが……本当にいいんですか?

みほはともかくまほは間違いなくこの西住流を継ぎますよ?」

「へーきへーき!」

「余裕ですね……」

「将来、もーちゃんが王道を真正面からぶち抜いた方が認められそうじゃん?」

「私達、西住流を踏み台にする……と?」

「そこまでは言ってないよー、でも強い相手が居なきゃ評価なんて出来ないじゃん?」

相手が、弱すぎてももーちゃんのためにならないしねぇ。

「あ、試合に関してはちゃんと私ももーちゃんも出るし流星も使ってあげる!」

わたしはしぃちゃんにVサイン。

「ただ、それが原因で相手が戦車道止めても責任は取らないよ?」

「構いません、そうなってしまったのならそれまでだっただけの事」

「しぃちゃん本気だねぇ……」

しょうがない、親友の為に一肌脱ぎますか!

 

 

 

 

 

 

それにくだらないこと言う子達にはお灸をすえなきゃダメだからねぇ。

 

 

 




多少文章がおかしくてもノリと勢いで見てくれると助かります!

ドゥーチェ!ドゥーチェ!ドゥーチェ!ドゥーチェ!


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6・少女達のお話です!

このお話では一番初めに書いたとおり、
リトルアーミー等はなかったことになっておりますゆえ。
ご理解ご協力をオナシャスセンセンシャル!

この話と辻褄を合わせるため「2・二人の戦車乙女です!」
の内容を一部変更しております。
変えたのはまほちゃんの部分のみになりますが。
言い回しや口調を変えてるだけで大筋は変わってないので
見なくても大丈夫かと思います。
申し訳ナス!





あ、久しぶりにラウンド中ドゥーチェが出て保留内連してたので初投稿です。


「ふんふんふふーん、ふーんふふんふーん♪」

 

私の動かすⅡ号戦車の天井上から鼻歌が聞こえてくる。

 

今日、うちに来た荒谷 守矢君だ。

流星、荒谷 照の一人息子にして砲撃の天才。

妹のみほと同い年と聞いて映像を見た時は驚いた。

同年代でこれほどの実力を持つ選手が居るのかと。

大人に混じって遜色なく戦う彼は私の心を震えさせた。

それと同時に一つの疑問を抱かせた。

 

彼はどうやって他者に認められたのだろう。

 

彼は男だ。

戦車道は乙女の武芸。

例え、母親がその道の一流だったとしても彼自身が、

認められるには色々な事があったはずだ。

誰かに蔑まれたことだってあるはずだ。

 

でも、彼は今も戦車に乗っている。

 

私は彼の試合の映像を片っ端から集めた。

試合が始まる前も、試合の最中も、試合が終わった後も。

そして勝敗に関係なく彼は笑っていた。

 

なんでこんなに楽しそうに笑えるんだろう。

 

 

彼の笑顔はそんな疑問と憧れとほんの少しの憧れではない何かを生んだ。

 

 

 

お母様から守矢君が来ると聞かされたとき思わず喜んでしまった。

彼には聞きたい事がたくさんあった。

 

けど、彼を前にして頭が真っ白になってしまった。

私が緊張……?なぜ?こんな事今までなかったのに。

上手く考えがまとまらなくて、上手く喋れなくて。

恥ずかしくて顔が熱くなって……。

 

 

「お・ね・え・ちゃ~ん」

「ん?どうした?みほ」

 

先ほどまで装填手席に座っていたみほの気配。

 

「さっきはどうしたのかな~って」

振り向いて見なくてもわかる、声が笑ってる。

「さっきとはなんのことだろう?」

「守矢君とのことだよー」

「あぁ、そのことか……我ながら初対面で緊張するとは情けない」

みほが守矢君に耳打ちしてた時もなんであそこまで怒ったのかもわからない。

「まさかあのお姉ちゃんがあんな感じになるなんてびっくりだよ」

「……私自身も驚いた。なんであんなことしたんだろう」

「最近、熱心に何か見てると思ったらそういうことだったんだね」

何故かみほは納得したかのような言い方だ。

「みほはどうしてこうなってるのかわかるのか?」

ため息をつくみほ、何故だ。

 

 

 

「んーとね……お姉ちゃん、守矢君ってそんなにすごいの?」

 

 

 

 

「すごいなんてもんじゃない、私が見てきた中でも射撃の精度に関しては群を抜いている。

停止射撃はもちろん、行進間射撃においてもほぼ必中と言っていいほどの命中率だ。

そのクラスなら上位の選手であれば出来る選手も居るが、戦車が傾いていようが、

ドリフト中であろうがほぼ命中率が変わらないのは彼だけだろう。

それに、あらゆる条件変化に対しての対応力がすばらしい。

天候や地形はもちろん、相手の回避行動を見据えての砲撃。

あれはすごいぞみほ、相手に吸い込まれるように当たるんだ。

訳のわからないうちに撃破されたと思う人間も大勢いると思う。

後はそうだな、守矢君はいつも楽しそうに戦車に乗っている。

車長としてはああいう人間が居てフォローしてくれると

取り乱した時もすぐに冷静になれると思う、あれも才能だろう。

私もあれくらいコミュニケーション能力が部隊運用も違うんだろうが、

私はこんな性分だからな、無いものをねだってもしょうがないg……」

 

 

「お姉ちゃん」

 

 

「ん?」

振り返りみほの顔を見る。

 

すごく()()()()()みほがそこにはいた。

 

「どうした?そんな顔して」

「いっつも人の前じゃ仏頂面してるあのお姉ちゃんが……」

「仏頂面とは失礼だな」

私だって嬉しい事があったら笑うし、悲しければ泣くぞ。

「みんなちょっと心配してるくらいなんだよ?」

でもよかったよ、と続けるみほ。

「お姉ちゃんも女の子なんだなーって」

「どういう意味だ?」

「好きな子の居る友達みたいなんだもん」

 

「……は?」

 

みほは何を言ってるんだ?

「何がどうなったらその結論に至るんだ?」

「何がどうって……どっからどうみてもそうなんだけど……」

「そうなのか?」

「そうだよ!きっとお姉ちゃんは守矢君のことが好きなんだよ!」

「そうか、これが好意というものなのか」

ふむ、嫉妬とも憧れとも違うこの気持ちがそうなのか。

「お、お姉ちゃん……」

苦笑いをするみほ。

同年代の子は何故か私を避けているみたいだからな。

みほが教えてくれて助かった。

 

 

「ん?なんか呼んだ?」

 

 

キューポラから頭だけを出して守矢君が覗き込んでくる。

 

「あ、えっと……もうすぐ駄菓子屋があるから

そこでお菓子買おうかなーって!」

 

先ほどの会話の内容と全然違うじゃないか。

 

「いやな、みほが私が君の事をむぐっ……」

みほが両手で私の口をふさぐ。

 

「も、守矢君はどうする!?」

「お、駄菓子!いいねいいね!買いに行こう!」

「じゃあ、もうちょっと待っててね!」

「いぇすまむ!」

そう言って守矢君は顔を引っ込めた。

 

 

「何をするみほ、いきなり口をふさぐなんて」

「お姉ちゃんはちょっとは場所とかムードとか考えようよ!」

「そんなものなのか?」

「そんなものです!」

「ふむ……恋なんてしたことがないからな」

今まで戦車道一筋だったからな。

「とりあえず、この二日間でちょっとずつ仲良くなって

連絡先を交換するくらいが目標じゃないかな?」

「回りくどいな」

あなた好きなので連絡先教えてください、で済むだろう

「それが普通なの!じゃあ、お姉ちゃんは見ず知らずの男の人にいきなり

好きです!連絡先教えてください!って言われて連絡先渡す?」

「渡すわけがないだろう?」

「だよね?それと一緒!」

「でもそれは見ず知らずだからだろう?私もこう言っては何だが西住家の長女として

顔は知られてるし、守矢君も流星の一人息子として知られている」

「違う、お姉ちゃんそういうことじゃない」

「???」

「何でそこで首を傾げるかなぁ!?」

みほはすごい。

私の知らない事を何でも知ってる。

 

「はぁ……こんなので大丈夫かなぁ」

「みほ、駄菓子屋だ。降りるぞ」

「はぁ……」

 

また溜息をつかれた、何故だ。

 

 

 

 




やっぱりまほちゃんはくーるでぽんこつが一番!


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7・戦車とフリフリです!

Enter Enter MISSION!余裕をもって外して諭吉が飛んでいったので初投稿です。


「よーし!釣るよー!」

 

目的地である川に到着し戦車に固定してあった釣竿を持ち出すみほちゃん。

 

「これが守矢君の分だ」

まほちゃんから釣竿を受け取る。

「あれ?まほちゃんのは?」

「あぁ、私はみほと一緒に使うから大丈夫だ」

うーん、嫌われてる感じは……ないっぽい?

 

餌をつけて釣糸を垂らす。

うん、この何とも言えない独特の時間は嫌いじゃない。

天気もいいし絶好の釣り日和ですなぁ……。

 

 

 

その後も、何度か釣糸を垂らしてみたのだが、

「釣れないねー」

「釣れないな」

「釣れませんなぁ」

いやぁ、ピクリとも動かねぇ。

付ける餌間違えたかなぁ?

俺は、ぼーっとしてる時間も好きなんだけどね。

「駄菓子でも食いながらちょこっと休憩するかなぁ」

時間はまだあるし、気分転換でも……。

 

 

「あなた達!」

 

声の方向に目を向けるとウサギのぬいぐるみを抱いて、

えらくフリフリな服を着た女の子が居た。

「えーと、どちら様でしょう?」

「子供だけで戦車に乗ったらダメなんだから!」

 

ぷんすこぷんすこ怒る女の子。

 

「「どうした(の)?」」

まほちゃんとみほちゃんもこちらにやってきた。

「子供だけで戦車に乗るのは危ないって、先生言ってたんだから!」

「あー、そうね。俺だけならまずいよな」

 

でも、西住姉妹with俺だからなぁ。

二人なら下手な人間より安全じゃないか?

 

「私が居るから問題ない」

「私が居るからって……どこかで見た事ある顔ね」

「私は西住まほ、西住しほの娘と言えばわかりやすいか」

「妹の西住みほだよ」

 

 

「に、西住流!?ファンです!サインください!」

 

この子の手首グルグル過ぎるわ。

 

「わ、私!逸見エリカって言います!11歳です!」

「あ、俺は荒谷 もr」

「聞いてないから」

ものすごい冷めた目で見られた。

会話できなきゃコミュニケーションの取り様がないじゃないか!

 

「と、とりあえず上がってきなよ」

手を差し出す、あの服にぬいぐるみを抱いていては上りづらいだろうし。

 

「男の手は借りないから!」

「お、おう」

悪戦苦闘しながらも上ってくる女の子。

おーおー、うさちゃん汚さないように必死だな。

 

「わ、私も戦車道やってて!この間の試合見ました!」

ほぉ、まほちゃん達ももう実践に出てるのか。

当然と言えば当然か。

「あの試合は反省すべき点が多かったな」

「そうだね、もっと柔軟に行くべきだったかもね」

「エリカはどう思う?」

「私ですか!?私は……」

3人であーだこーだと話にあった試合の感想戦について話し始めた。

 

うーん、この蚊帳の外感。

 

 

車長じゃないからなぁ、俺。

俺に出来ることって言えば狙い撃つくらいだし。

戦術戦法に関してはさっぱりだ。

 

「そういえば守矢君も戦車道やってるんだよ!」

「はぁ?こいつが?」

みほちゃんの言葉に棘のある返答。

 

 

「あなた、男の癖に戦車道やってんの?」

 

 

 

 

―――ダメだ、絶対に表情には出すな。

 

 

 

 

「母さんがやってて面白そうだったからさ」

「あなた変わってるわね、男が戦車乗るなんて」

「よく言われるよ」

「エリカ、守矢君は……」

「まほちゃん、大丈夫」

一言でまほちゃんを制す。

そう思ってるのであればそれで構わない。

無駄な諍いは不要だ。

「まぁ、あなたが戦車に乗っていようがいまいが私には……あれ?あんたの竿引いてない?」

エリカちゃんがみほちゃんの竿を指差す。

何かがかかったのか竿がかなりしなっている。

「引いてる!お姉ちゃん引いてるよ!」

一生懸命竿を引っ張るみほちゃん。

「みほ!大丈夫か!」

「ちょ、ちょっと!大丈夫なの!?」

一緒に引っ張るまほちゃんに、後ろで若干心配そうなエリカちゃん。

この構図……まずくね?

 

「ん~~~!」

 

おいおい、そんな力いっぱい引っ張って針外されたら……。

 

「うわっ!」

みほちゃんが後ろに倒れこんだ

「むっ」

「きゃっ!」

二人を巻き込んだどんがらがっしゃーんだな。

それと同時に先ほどエリカちゃんが抱いていたウサギが宙に舞う。

 

「あっ、私の!」

 

 

下はぬかるんで泥になってんなぁ。

今、俺が飛び込めばウサちゃんはギリギリ無事だなぁ。

 

 

なら女の子が泣くよりも、俺が泥だらけになるほうがマシか。

 

 

 

「残念そこは小坂ゾーンだ」

躊躇なく戦車からダイビング。

ウサちゃんをキャッチして泥がつかないように胸に抱く。

くるっと体を反転させて背中から落ちるように。

 

「いってぇ!」

 

落ちた先が泥だったので多少のクッションにはなったがそれでも痛いものは痛い。

 

 

「ちょっと!大丈夫なの!?」

「任せろ、うさちゃんは無事だ」

 

汚さないように立ち上がりエリカちゃんにぬいぐるみを渡す。

 

「小坂は鉄壁、仕事に仕損じはない」

 

「いや、そうじゃなくて……」

「守矢君、ドロドロだよ~」

「これは一旦帰って着替えたほうがいいな」

 

せやな、ドロッドロですわ。

 

しかしそれより気になる事がある。

「あれだけ引いてたんだ、さぞ大きいのが釣れたんじゃないか?」

「う、うーん……」

なんか煮え切らないなぁ。

「これ……」

差し出したのはびしょびしょになった本。

「マンガか何かだろうか?」

指でつまみくっ付いたページをはがすようにめくるまほちゃん。

「なんだこれは?男女が抱き合ってる?みたいだg」

 

「はいストーップ!!これはポイしましょう!!!」

 

エロ本じゃねーか!!!

誰だよ!こんなところに捨てたやつ!

 

「守矢君はこれが何かわかるのか?」

「逆にまほちゃんはわかんないんですかねぇ!?」

 

見ろよ、みほちゃんとエリカちゃんをよぉ!!

顔真っ赤じゃねぇか!!!

 

「そこまで言われる理由がわからないが守矢君が言うのであれば」

ごそごそと、駄菓子のゴミを入れている袋の中に本を入れる。

 

「すまんな、エリカちゃん。俺らは帰るわ」

「今度はうちに遊びに来てよ!守矢君はいないけど、

私とおねえちゃんは大歓迎だよ!」

「いくぞみほ、このままじゃ守矢君が風邪をひきかねん」

「はーい!」

Ⅱ号戦車に乗り込む西住姉妹。

さて、俺も……。

 

「ま、まって!」

突然エリカちゃんに止められた。

「えっと……その……」

「ん?まだなんかあるか?」

考えられるとすれば……。

「あ、もしかしてぬいぐるみに泥はねてたか?」

やっべぇ、あんなこと言って汚れてるとか洒落になんねぇ。

だがエリカちゃんは首を横に振った。

 

「……さっきは悪かったわね、あんなこと言って」

 

あんなこと……?

 

「あぁ、別に気にしてないしなれてっから大丈夫!」

エリカちゃんに笑ってみせる。

「でも……」

「ほらほら落ち込まない、可愛い顔が台無しですよ?スマイルスマイル!」

「な、なによ!人がせっかく謝ってあげたのに!」

ふんっ、と鼻を鳴らして顔を逸らしてしまった。

「……私が、立派な戦車乗りになったらギタギタにしてやるんだから」

「お、宣戦布告とはたまげたなぁ……エリカちゃんの一番の壁として立ちはだかってやるよ」

それを受けてにやりと笑ってⅡ号に飛び乗る。

「じゃあ、またなー!」

「またね、エリカちゃん!」

みほちゃんと一緒に大きく手を振る。

 

「……」

 

すっごい小さくだけど手を振ってくれた!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もーちゃん、一体どうしたの!?」

まほちゃんの家に帰り着いてから母さんに開口一発言われた。

 

「Ⅱ号から足滑らせてどんがらがっしゃーん」

「大丈夫!?怪我はない!?」

「濡れて肌寒いくらい?」

「しぃちゃーん!お風呂貸してー!!!!」

奥に向かって叫ぶ母さん、人の家だぞ……やめてくれよ……。

「何事ですか一体…………泥だらけですね……」

キッ、とまほちゃんとみほちゃんを睨むしほさん。

これはいかんな、勘違いしてる。

「あー、しほさん。これは俺が勝手にこけちゃったんですよ。二人は関係ないです」

「……そうでしたか」

うーん、この不器用さ。

俺らは客だし、家の名前もある手前こういう対応になるんだろうけど……。

西住流師範ってのが表に出すぎだな。

もうちょっとフランクでもいいのよ?

別に俺らの家ってそんなことでなんか言ったりしないし?

「菊代さん、守矢君にお風呂の案内を」

「かしこまりました、守矢様こちらへ」

「じゃあお風呂お借りしますね」

 

 

 

 

 

 

「なんでまほちゃんがついてくるのかな?」

「私も入るからだが?」

「いや、当然だろう?みたいな顔してるのさ!」

「駄目か?」

「あのね、まほちゃんみたいな可愛い子がそんなことしちゃいけません」

「可愛い?私が?冗談だろう?」

「いや、普通に美少女でしょうに」

「ふむ……」

まほちゃんは何か考え込んでしまった。

「守矢君、今のうちに行ってきたら?」

 

みほちゃんの言う通りだな。

うん、付いてこられても困るしそうしよう!

 

 




構成は思いつくけど文章に出来る力がないってほんとに歯痒い。
これ子供時代で一体何話使わないといけないんだ……?
一気に飛んだほうがええんかなぁ……?


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8・好きなものと難しいお話です!

セガサターン版のお嬢様特急のデータが吹っ飛んだので初投稿です。


「……いや、家じゃこれ着てるけどさ」

お風呂から上がって脱衣所においてあったのは

いつも愛用してる着ぐるみパジャマ。

「人の家に持っていくならもうちょっとなんかあったろ……」

夏は涼しく冬は暖かいとかいう不思議パジャマなんだよねぇ。

 

「うむ……やはりボコはいいな……」

 

 

俺はボコがお気に入りだ。

あのやられてもやられても立ち上がるあの姿。

いつかやってくれると信じてテレビの前でいつも応援してしまう。

疲れた大人への希望の道標だな。

 

俺、今は大人じゃねぇけど。

そしてボコ自体そこまで人気じゃねぇけど。

 

 

「とりあえず、居間に行けば誰か居るかな?」

 

……居間ってどこよ?

菊代さんに案内されるままお風呂に来たのはいいものの

帰り道がわからん、広すぎるだろ西住家。

 

「……やる……って……ボコに……」

 

微かに聞こえるマイフェイバリットソング。

 

「これは……おいらボコだぜ!」

聞こえているのはこの先の一室。

俺以外にもボコメイトがいるとは……是非お近づきになりたい!

 

なんとなく誰が見てるかは想像つくけど。

 

「すみませーん」

 

ドアをノックする。

いきなりドアを開けるのはマナー違反だってはっきりわかんだね。

 

「えっと、守矢君?どうしたn……」

 

やはり部屋にいたのはみほちゃんだったか。

ただ、何故俺の姿を見て固まってしまうんだ。

 

 

 

あ、俺今ボコだわ。

 

 

 

「ボコだぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

部屋に引っ張り込まれて抱きしめられ頬ずりされる。

 

「わぁぁ、すごいよぉぉ、リアルボコだよぉぉぉ!!」

「あ、ちょ、やめて、く、苦しい」

「わわ、ごめん!」

 

解放されるボコ、ちょっと惜しいと思った俺は悪くねぇ。

 

「も、守矢君もボコが好きなの?」

「毎週録画して戦車道の練習がない日は寝るまでエンドレスで見れるくらいには」

「じゃ、じゃあ第96話でボコがやられた必殺技は?」

「特別出演の黒のカリスマベアーがボコに強烈なビンタ、

受けて倒れたボコに対して散々スタンピングした後に立ち上がろうとした

ボコの片膝を踏み台にしてのシャイニングベアーキック」

あれを受けて立ち上がるボコはやっぱすげぇよ……。

 

「す、すごいよ!今まで誰も答えられなかったんだよ!」

「あの芸術とも言える様な完璧なボコの飛び方に何度も繰り返し再生したものだ……」

「私は第45話の特殊エンディングが好き!」

「わ か り み、ラスト殴りかかった瞬間の止めて、引くあの構図。

最初勝ったのか!?と思わせておいてからの曲終わってのやっぱり負けたあの実家の様な安心感」

 

あぁ^~たまらねぇぜ^~。

 

その後、めちゃくちゃみほちゃんとボコ談義した。

 

 

 

 

 

 

「いやぁ~、まさかみほちゃんがボコのファンだったとは」

「私もびっくりしたよ!」

かなりマイノリティだからなぁ、ボコのファンって。

「私ね、ボコの絶対に諦めないところが好きなの」

「わかるわかる、俺も何度も勇気付けられたわ」

何度やられようと諦めないあの心は見習うべき姿勢だ。

「守矢君も落ち込む事ってあるの?」

「もちろんあるよ、なんなら戦車道やってる分、人より多いと思うよ」

しがらみがすごいもんなぁ……。

「私も、戦車道のことが多いかなぁ」

ふむ……名家故の悩みか。

「私、お姉ちゃんと違ってすごくないから失敗が多いんだよね」

ボスッ、とボコのぬいぐるみにパンチ。

「狙われてる車両助けようと援護射撃命じたら怒られるし、

なんでだろ?助けたいってそんなに悪いことかなぁ?」

連打連打、ボコにパンチの嵐。

「あー、そこら辺は難しいかもなぁ」

だって西住流ですし?助ける暇があったら1両でも多く破壊しろって感じですし?

「こればっかりはなー、流派の色が関係してくるからなぁ」

「だったら、今の戦車道は嫌いかも!」

「ぶっちゃけるねぇ」

「だって、みんなで協力して戦って勝ったほうが楽しくない?」

「今のしほさんに聞かせたら卒倒しそうだな」

ボコに対する連打の手が止まる。

「あ!今のなし!お母さんには黙ってて!」

「もちろん、こんなん言えるわけねーよ」

「お姉ちゃんはなんとなくお母さんと同じような戦い方かなぁ?」

「西住本家の長女として頑張ってるのかもね」

「私とお姉ちゃん、どっちの方が合ってるのかなぁ?」

「んー……まぁ、西住流としてであればまほちゃんかなぁ?」

強い西住流としての戦い方な訳だし。

「えー、守矢君お姉ちゃんの味方するのー?」

味方って……。

 

「でもさ、正しいとか正しくないとかでやるもんかな?」

それで言うと俺は排斥されるわけで。

 

「ボコと一緒だよ、自分の信念を貫き通す事が大事だと思う」

「お母さんやお姉ちゃんと喧嘩しても?」

「どこかで話し合う事は大事だと思う、思ってても伝わらないからな」

「そっかー……、難しいね」

ぽーんとボコを放り投げる。

「まぁ、それで喧嘩して家出しようもんなら面倒くらい見てやるよ、

んで、一緒にしほさんまほちゃんと話し合いだ」

この人達に限ってはそれはないと思うけど。

いや、しほさんが不器用発揮したら或いは……?

言っといてなんだがそれだけはやめてくれよ……?

 

「とりあえず、俺はそのままのみほちゃんでいいと思う。

この先、まほちゃんやしほさんのような戦い方になるのか、

今のみほちゃんのような戦い方を突き詰めるかはわかんないけど」

 

大丈夫、とみほちゃんの頭に手を置いてくしゃくしゃと撫でてやる。

 

 

 

「お前は、間違っちゃいない」

 

 

 

それがみほちゃんの戦車道であれば俺はそれを支持しよう。

もちろん、しほさんやまほちゃんを否定するわけではないがね。

 

「……」

ぽーっとしているみほちゃん。

「ん?どうした?」

 

「なんか守矢君、お父さんみたい」

「まだそんな歳じゃないぞ、俺は」

小学生ですし。

精神年齢はおっさんですけど。

 

 

 

 

 

「お嬢様、いらっしゃいますか?」

コンコン、とノックの音と同時に菊代さんの声が。

「はーい、どうしたのー?」

ドアを開けて現れる菊代さん。

「晩御飯の準備が出来ました……あら、守矢様もこちらにいらしたのですか」

「すみません、みほちゃんと一緒にボコ見てました」

「それはそれは、仲がよろしいのは言い事でございますね」

「守矢君もすごいボコメイトなんだから!」

「あらあら、これはまほお嬢様も油断できなくなりましたかね?」

……どういう意味だ?

「さぁさぁ、皆様お待ちですので」

 

「「はーい!」」

 

まぁ、いいや。

とりあえずご飯だご飯ー!




頑張って書くよー!


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9・夜ご飯と夜会話です!

来年の6/15が楽しみすぎるので初投稿です


「あ、もーちゃん。明日戦車道の試合するからね」

「は?なんで?」

今現在、父親を除き西住家と荒谷家で食卓を囲っている。

「すみません、私が頼んだんですよ」

「しほさんが?なんでまた……そもそも俺が出ていい類なんですか?」

「むしろ積極的に動いてもらって構いません。理由は……大人の事情というやつです」

 

……あっ(察し)

 

これは穿り返さないほうがいいと見た。

「詳しい事は聞きませんけど、とりあえず勝てばいいんですね?」

俺に話が回ってくるって事はそういうことだろう。

凹ませろって事だろ、多分。

「照さんと違って守矢君は察しがよくて助かります」

「つーことは、父さんはメンテ?」

「そういうこと、なんか二人して張り切っちゃって」

 

わかるなぁ、多分二人して張り合ってんだろうなぁ。

 

「もーちゃん、明日は流星使うからねぇ」

「マジ?」

「守矢君、流星と照さんの通り名ではないのか?」

あー、ここら辺相対した人間とか当時母さん相手取った人しか知らないのか。

「流星って母さんが昔から使ってる作戦で、それがそのまま通り名になったんだよ」

「なんかかっこいい名前だね!」

「みほちゃんはわかってるね!照さんからお肉を進呈しよう!」

「母さん、本気で使うの?俺が言うのもなんだけどここであれは不味くない?」

「しぃちゃんのリクエストだから大丈夫!」

おいおいマジか、あれを西住本家で使うのか。

「ほんとにいいんですか?」

「無論です」

「ただし、流星しか駄目だよ!」

流星一条(ステラ)は?」

「絶対にNO!」

まぁ、当然か。

「そっちは試合が終わった後にしぃちゃん達に見せてあげて」

「はぁ!?奥の手明かせって言うのか!?」

「一度、他の人に見てもらって意見を聞くべきだよあれは」

「ぐぬぬ……まだ公式戦で一度も使った事がないというのに……」

「使う前に一度見てもらったほうがいいって」

しかし、あれは初見だからより効果があるもんなんだけど……。

「見せるのはしぃちゃんとまほちゃんみほちゃんだけだから」

「それなら……まぁ……当然口外させないんでしょ?」

「あれは出来ないと思うなぁ……特にしいちゃんとこじゃご法度に近い気がするし」

あー……それは納得できるな。

 

「まほ、みほにもそれは徹底させます」

「何が何だかわからないが守矢君の不利になるようなことは言わないぞ」

「ボコメイトは裏切らない!」

いやまぁ、信じてないわけじゃないんだけどね。

「まぁ、俺がみほちゃんやまほちゃんとやりあう事なんて多分ないからいいけどさ」

口にがめ煮を放り込む。

 

しっかし美味いなぁ、西住家の晩御飯。

「これ誰が作ってるんですか?」

「家事の一切は菊代さんに任せてあります」

マジか、やるな菊代さん。

「後でこのがめ煮のコツとか教えてくれませんか?

家で自分で作れるようになりたいっす」

「守矢君、料理できるんですか?」

これにはしほさんもびっくり。

「うちの晩御飯作ってるのほぼもーちゃんだよ、

私より料理上手いんだもん、ちょっと落ち込むよねぇ?」

前世含む自炊暦はかなり長かったからなぁ……。

バイトなんかも飲食が多かったし好きだったからな、料理。

飯くらい美味しくて自分の好きなもの食わせろ!って思ってたし。

「では、後でキッチンに来てくださいますか?」

「教えてくれるんすか!なら皿洗いとかは任せてくださいよ!」

いやぁ~テンション上がるなぁ。これでまたうちの晩御飯が

美味しくなっちゃうぞ~。

 

「なぁ、守矢君は料理が出来る子の方がいいのか?」

じっとこちらを見るまほちゃん。

「そりゃ、出来ないより出来るに越した事はないと思うけど……

苦手な人もいるしそれは人それぞれかなぁ?

得意なら一緒に作ったら楽しいだろうし、苦手なら教えてもいいし」

 

憧れたなぁ、女の子と二人でキッチンに立って一緒に料理作ること……。

 

「「料理かぁ……」」

 

なんだ西住姉妹、二人揃って微妙な表情で。

「二人とも全然料理しないの?」

「うむ、菊代さんにまかせっきりだな……」

「ボ、ボコねるねるねなら……」

「それ駄菓子じゃねぇか!」

「おやおや、二人ともしぃちゃんと一緒だ!」

「ちょ、照さん!?」

「しぃちゃんも全然だもんねぇ、私は未だにあの黒い塊が

オムライスだとは認めてないからね?」

しほさんメシマズなのか……ま、まぁ作る機会ないだろうし多少はね?(震え声)

「うちのもーちゃんは優良物件だよぉ?家事全般出来るし戦車道にも理解あるよぉ?」

ドヤ顔すんなよ恥ずかしい。

「もーちゃんもいずれお嫁を貰うと思うと……」

 

ガタガタッ!

 

「な、何二人して立ち上がって?」

 

「な、なんでもないよ!ね!お姉ちゃん!」

「うむ、ちょっとな」

びっくりするなぁ……。

 

「なになに?二人とも、もーちゃんが欲しいの?」

は?何言ってんだこの人。

「残念!あげません!私のでーす!」

「何が私のでーすだ」

俺は母さんの子供だが母さんのものになった覚えはねぇよ。

「ご馳走様でした。菊代さん、キッチンに案内してもらってもいいですか?」

この味の秘訣を学ばなければ!

 

――――――――数十分後。

 

「ふむ、出汁を取るための比率が俺と全然違ったな……」

色々試したいけど流石に家じゃ出来ないからなぁ……。

いずれ一人暮らしを始めた時には色々とやってみたいものだ。

 

「っと、俺が寝る部屋はここか……明日試合だしなぁ、早めに寝ないとつらいかな」

 

障子を開けるとすでに布団が敷かれていた。

もぞもぞとその布団の中にもぐりこむ。

「ふかふかだ……これならすぐに眠れそう……だ……」

 

俺はあっさりと意識を手放した。

 

 

 

 

 

――――――――数時間後。

 

 

 

 

 

 

「ぐぬぬ……寝れん……」

明日が楽しみすぎて数時間おきに眼を覚ますとか小学生か俺は。

 

 

あ、小学生だったわ(納得)

 

こういう時は一旦布団からでるに限る。

夜風にでも当たろうか。

障子を開けて縁側に腰掛ける。

 

「車の音はしねぇしなにより星がすげぇな」

 

演習場の関係で都会からちょっと離れてる西住本家。

聞こえるのは虫と風の音くらいか。

静かすぎてちょっと落ち着かないんだよな。

 

「明日は久しぶりに知らない人と戦えるなぁ」

基本、俺はチーム内の紅白戦くらいでしか戦えない。

公式戦での男性の参加を認めていないところがまだ多いからな。

 

 

 

「こんな夜中にどうした?」

不意に背後から声がした。

「……まほちゃんこそ」

月明かりに照らされて見えたのはまほちゃんだった。

「なに、ちょっと寝付けなくてな」

「俺もなんだよ、明日が楽しみでテンション上がっちゃってさ」

「そうか……隣、座っても?」

「もちろん」

まほちゃんが俺の横に座る。

「守矢君には聞きたい事があったんだ」

「聞きたい事?答えられる事だったらいいんだけど」

戦術とか言われても俺はちんぷんかんぷんだぞ。

 

 

「君はどうして戦車道を続けられるんだ?」

 

 

「えっと……どうして、とは?」

「今日、エリカに戦車道のことを言われた時、顔色が変わったろう?」

気付かれてたか……。

「元々女性が主体だし、色々言われるくらいなら

無理して続ける必要はないだろう?」

「無理なんかしてないんだけどね」

「それに、他者から認められたから今こうやって戦車道をやれているのだろう?」

なんか難しい話になってきてるな……。

「よかったらでいい、教えてくれないか?」

単純な事なんだけどな。

 

 

「認められると認められないとかは別として俺は戦車道が楽しいから続けてるんだよ」

「楽しいから?」

 

 

本当にシンプルな理由だ。

 

「そう、楽しいから」

「でも、その事が原因で色々と心無い事を言われるのは辛いだろう?」

「男だってちゃんと戦車道はしていいって認められてるんだから悪いことしてるわけでもないし、

誰かに何か言われて辞めるなんてごめんだからね」

俺が戦車道を辞めるのは俺自身が戦車道を辞めたいと思ったときだけだ。

「そもそも、俺は他人から認められるように試合はした事ないよ?」

母さんがどう考えてどう試合をさせているかは知らないがね。

「認められたって結果は後からついてきただけなんだ、俺は好きなように

楽しく戦車道をやっているだけだよ」

 

だから勝っても負けても楽しいんだ。

世間がどう思ってようが知ったこっちゃない。

嫌なら、俺を負かして戦車道辞めさせてみろ。

辞めてあげないけどな!!!!

 

 

「……守矢君は強いんだな」

「俺が?俺なんて母さんがいなかったら何も出来なかったよ。

戦車道が出来たのはただ単純に運がよかっただけなんだから」

「でも、辞めないのだろう?」

「こんなに楽しい事ないし、意地があるんだよ」

男の子には、ね。

 

 

 

しばらく虫の音と風の音だけが響いていた。

 

 

「……私は」

「ん?」

「私は、どうしたらいいんだろうか」

「どうしたら、とは?」

おろ、まほちゃんはまほちゃんで悩みがあるらしい。

「いや、人に話すような事でもないから気にする事は……」

「話してみたら意外とスッキリするかもよ?

溜め込むだけだといつか限界来ちゃうし」

「そう……なのか……?」

「特に、まほちゃんは立ち位置が立ち位置だからね。

しほさんにも、ましてや妹のみほちゃんにも相談できない事はあるでしょ」

「ない……といえば嘘になるか」

「言うだけ言ってみたら?

俺が言えることなんてないだろうけど一緒には考えられるよ?」

愚痴言ってスッキリする事もあるしな。

 

「そうだな……聞いてくれるか?」

まほちゃんはぽつぽつと語りだした。

 

 

「私は、西住流で戦っている。

それは西住に生まれた女としてではなく、西住流の戦いを見てそれに憧れ、

一人の戦車道の選手として西住流として戦えるのが誇りに思い、

いずれお母様のような西住流を扱えるようになるのが目標だからだ」

 

強要されたわけでも、西住に生まれたから仕方なくという訳でもない。

「ふむふむ、それがまほちゃんの戦車道だね」

だったら、みほちゃんとは……。

 

「だが、みほはそれを必ずしも正しい事だとは思っていない節がある」

まほちゃん、みほちゃんの事ちゃんと見てるんだなぁ……。

「まほちゃんはどうしたいの?」

それを聞かないとどう答えていいかわからん。

「私は、みほには自由にやって欲しいと思う。

あの子は私にはない閃きと柔軟性がある」

「でも、しほさんは認めないんじゃないかなぁ?

西住流の次期家元の娘が西住流以外を使うなんて」

「そうだな、きっとお母様はいい顔はしないだろう。

でもそもそも、なぜみほはそう思ってるのだろう」

 

この人は本当に妹の事が心配なんだな。

まぁ、ちょっとずつ解きほぐせばわかってくるかな?

 

 

「まほちゃんはもちろん西住流の戦い方を実践してるんだよね?」

「そうだな、指揮を執りやすいのもあるが、私の目標だからな」

「西住流ってどんなに犠牲を払ってても勝利することだよね?」

「勝利の為に仕方のないことだろう」

「じゃあ、みほちゃんはどんな子かな?」

「みほか?みほは優しいな……。西住流を扱う者としては、

優しすぎるくらいあるな。追い込まれた車両を助けたり撤退の援護をしたり」

「隊長がみほちゃんの時とまほちゃん時、それぞれの戦い方を思い浮かべて比べてみて」

「む……みほと私か……」

 

何かに気付いたようなまほちゃん。

 

「……そうか、みほは結果もだが過程も大事なのか」

晩御飯前にみほちゃんと話した感じでは俺もそう思った。

「まほちゃんは何でそう思ったの?」

 

「さきほど、守矢君に比べてみるよう言われた時に、

以前、私とみほに別れて試合をした時を思い浮かべたんだが、

みほは西住流とはまったく違う戦い方をしてることに気がついたんだ。

お母様は苦い顔をしてたみたいだが」

相対したまほちゃんがそう感じたならばそうなのだろう。

特にしほさんの西住流を色濃く受け継いでるだろうからな。

 

しかし、しほさんが表情に出すくらいなんだ。

みほちゃんの指揮は西住流とはかけ離れてるんだろうな。

どっちかっていうなら、うちの母さんに近いのかな?

 

「俺はね、誰もが自分だけの戦車道を持ってると思ってんだ」

「自分だけの戦車道?」

「流派とかじゃなくて、譲れないものって感じかな?」

みほちゃんにも話したんだけどね。

「俺は流派とか風潮なんかよりこっちの方が大事だと思う」

 

 

 

だから俺は戦う、戦える。

俺は俺の戦車道のために戦い続ける。

 

 

「私であれば、私が憧れたお母様のような西住流で勝ち

西住流の強さを証明する、と言う事だな」

完全に西住流の後継者やねぇ。

「もし、みほちゃんの譲れない部分と相反するなら、

いつかしほさんやまほちゃんと対峙する時も来るかもしれないね」

 

折れないからこそ譲らない、譲れない。

 

「みほと……」

「でもそれはきっと悪い事じゃないと思うんだ」

「それは何故だ?」

「だって、その点で対峙するってことは相手に知ってもらいたい、

相手の事を知りたいからでしょ?」

どうでもいいならそもそも相手なんかしないさ。

「何も言わない、何も聞かないのが一番駄目だと思う。

どんな事でも相手に伝える事が大事だよ」

「相手に伝える事……」

「すれ違いって怖いからね、勝手に物事進んでいっちゃうから」

気付いた時には手遅れとか洒落になんない。

「そうか……勉強になったよ」

「それは何よりだよ、役に立つかはわからないけど」

「まさか、私がこんなことを人に話すとはな」

悩んでばかりじゃ先に進まない時もあるしな。

これが今後まほちゃんのプラスになれば幸いだ。

「相談しやすいお兄さんみたいな雰囲気あるからな、守矢君は」

「まだ小学生だしやれる事、言える事なんてたかが知れてるんですけどね」

 

まほちゃんの頭をぽんぽんと叩く。

「それでも、これだけ聞いたんだし投げっぱなしにはしないさ。

まほちゃんに何かあったら何とかしてちゃんと助けてやっから」

 

まほちゃんがぽかーんとする。

あ、こういうところは姉妹だな、そっくりだわ。

 

 

「……私の方が年上だがやはりまるで兄のようだな」

まほちゃんは目を伏せた。

やべ、気分は完全に子供お悩み相談室だった。

「ご、ごめん!」

これは完全にやらかしですねぇ……。

「む、別にやめなくてもよかったのだが」

「へ?」

「みほと違って上手く感情を出せないだけだ」

感情を表現するのが苦手なわけだ。

「みほ相手だと全然問題ないんだが……。

口調もちょっときつすぎると、みほからも呆れられている」

あー、同年代からするとまほちゃんの言い方って、

少しきつく感じるかもしれないなぁ……。

「同年代の女子からも男子からもちょっと距離を置かれている気がしてな……」

それは、予想でしかないけど理由がわからないでもない気がする。

 

「守矢君もこんな無愛想だとちょっと引いてしまうだろう?」

 

勘違いだと思うんだよなぁ、これに関しては。

 

「いやいや、それ多分引いてるとかじゃないと思う。

俺も最初ちょっとだけ思ってたんだけどね、今は違うけど」

 

一日一緒にいて結構見えてきたものがある。

 

「まほちゃん可愛いじゃん?んで、感情そんなに露にしないじゃん?

高嶺の花って思われてるのが一番大きいと思うんだけど……」

 

そうなんだよ。

俺も最初そう感じたんだよ。

さすが西住家の後継者候補だなと。

みほちゃんがとっつきやすい感じだし、

家が有名な戦車道の流派でその長女ってんだから

なおさらそう思うんだよな。

 

「高嶺の花?私がか?」

「他に誰がいんのさ」

「みほほど可愛くないぞ?」

「いや、比べられないでしょ。みほちゃんにはみほちゃんの、

まほちゃんにはまほちゃんの可愛い部分があるわけだし?」

「あるわけないだろう?」

「俺的には凛としてるまほちゃんとかすっごい魅力的だけど?

それに笑った時のギャップとか多分すごいと思うし」

普段あんまし笑わない人が笑った時って、

それだけでぐっときたりするんだよなぁ……。

「ふむ……」

「自信持っていいと思うよ?少なくとも俺はそういうの好きだし」

「本当か?」

ぐいっと顔を近づけてくるまほちゃん。

……ん?微妙に顔が赤いような?

月明かりしかなくてわかりづらいし気のせいか。

「そうか」

少し表情の緩むまほちゃん。

 

「さて、そろそろ寝ないと明日に差し障るだろう?」

立ち上がるまほちゃん。

「そうだね、お互いそろそろ寝ないとね」

布団に入ればもう寝られるよな……。

「そうだ、私が年上である事を見せなければな」

「ん?見せるって、何を……」

立ち上がって振り向いた瞬間視界が真っ暗になった。

 

 

まほちゃんが俺の頭を包み込むように抱きしめながら頭を撫でていた。

 

「     」

 

「みほにもよくやっている。

こうすると不安がなくなるのだそうだ」

 

いや、ちょっと待って!?

それは、妹だからでしょうに!?

あ、いい匂いがする……。

 

いかんいかん!これは不味いダルルォ!?!?

 

 

「よし、これでいいだろう」

しばらくされるがままに撫でられていた。

 

「じゃあ、私は」

「あ、あぁ……おやすみ」

 

いかん、俺が面食らってる。

 

「あぁ、最後にひとつだけ」

まだ何かあるのか!?

 

 

 

「明日は頑張れ、()()

そう言って微笑んだ。

 

 

「じゃあ、お休み」

 

俺は黙ってその背中を見ている事しか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

「やられた……」

 

即実践とは恐れ入る。

大した破壊力じゃねぇかまほちゃん。

頬が熱くなるのがわかる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……眠れるかなぁ。




今回はちょっと長いっすね!
最終章2話まで長いっすねぇ!(血涙)


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10・試合開始前です!

いつ原作に追いつくかわからないので初投稿です。
投稿遅くなってすんまへぇん、許してくださいなんでもしますから!


「―――きろ」

ん……もう朝か……。

アラームは5時にセットしたはずだけど……。

まだ鳴って……ないよな……。

「起き―――矢」

アラームも携帯のアラーム音でセットしてあるはず。

こんな目覚ましボイスじゃないぞ……。

 

 

……じゃあ俺を起こしてるのは誰?

 

「あいあい、起きますぉ……ぼかぁ、二度寝しませんよぉ……」

 

ゆっくりと目を開ける。

 

 

「守矢、おはよう」

 

 

 

目と鼻の先にまほちゃんの顔があった。

 

 

「おおぉぉぉおおぉぉ!!!???」

 

 

すごい勢いで後ずさる。

 

「び、びっくりしたぁ……」

「そんなに驚く事もないだろう」

「いやいや、目を開けて一発目がまほちゃんだったら驚くでしょ!」

「ふむ、お気に召さなかったか」

「無機質なアラームよりは遥かにいいけど心の準備が出来てないと、ね?」

「そうか、今度する時は事前に通告する事にしよう」

そうしてくれ……役得だけど心臓に悪い。

 

「先に顔を洗うのか?それとも朝ごはんを食べるのか?」

「目を覚ましたいから前者で、案内してくれると助かる」

「わかった、ついてこい」

まほちゃんの後についていき洗面所へ向かった。

 

 

 

 

「お姉ちゃん、守矢君、おはよ~」

起き抜けでちょっと間の抜けた声をさせるのはみほちゃんだ。

「おはよー、みほちゃん」

「みほ、おはよう」

みほちゃんを挟むようにして立ち歯を磨く。

「今日の試合頑張ってね、守矢君」

「ん、なるたけ勝てるように頑張るよ」

「絶対、とは言わないのだな」

「勝負は時の運もあるしね」

俺がいくら頑張ったところで覆せない部分は多々あるし。

逆に俺が出来る事は全力でやらせてもらうけど。

「まぁ、なんだかんだ僕はいつ戻り自分の役割を果たすだけだよ」

砲手としての仕事はきっちりこなすさ。

 

 

~少年少女歯磨き中~

 

 

「ところでお姉ちゃん、今日来るのが遅かったけどどうしたの?」

「ん?守矢を起こしていた、洗面台にも案内しないといけないからな」

「お姉ちゃんずるい!」

「一応みほの部屋にいったぞ?起きなかったのはみほだから私は悪くない」

「むー!」

何故そんなに怒るのかぜんぜんわからん!

「さって、顔も洗ったし飯食って準備しますかね」

「私達は高台で観戦してる」

「ファイト!」

期待には応えたいなー、俺もなー。

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう、守矢」

朝飯食って演習所へ行く途中、父さんに会った。

「おはよう父さん、昨日まったく見かけなかったけどずっと戦車弄ってたの?」

「照としほさんから急に明日試合だって言われたからな。

一旦、福岡に戻って戦車引っ張ってきたさ」

うわぁ……。

「いやぁ、久々の突貫メンテだったなぁ!

もうほんと勘弁してほしいよネ!」

にしてはこの親父、えらくノリノリである。

「いやぁ、常夫もいる手前張り切っちゃって、

いつもより余計にバラしていつもより入念にメンテしたさ!」

あれか、メンテでミックスアップが起こったのか?

「それでもいつもより早く終わったし、今日早朝からやる予定の車両も

昨日の夜終わっちゃってさ、二人で朝飯食いに行くかって」

二人?

「ん、何してんだ宗一郎……と守矢君じゃないか」

後から来たのは西住常夫さん。

しほさんの旦那さんでまほちゃんとみほちゃんのお父さんだ。

「おはようございます常夫さん」

「おはよう守矢君、メンテはばっちりだから今日はしっかり頑張ってくれよ」

「えっと……?」

「あぁ、メンテには常夫の手も借りたんだよ」

まぁ、別にうちのチームに隠すところなんてないし、

メンテナンスをちゃんとしてくれるのであれば誰が弄ってもいいんだけどさ。

「いやぁ、しかし相変わらず君のお父さんはいい腕してるよ、

友人としても同じ戦車道の技術屋としても鼻が高いよ」

「何言ってんだ常夫、いまだに僕はお前の背中追っかけてる立場なんだぞ」

うむうむ、こういう交流は非常に気持ちがいい。

「でもごめんな、うちの問題に首突っ込ませてさ」

「いやいや、西住流とガチンコで出来るなんて滅多にないですしいい経験ですよ」

「そう言ってくれると助かる、じゃあまた試合後に会おう」

「頑張れよ守矢、やるからには勝てよ」

なにを言うんだ父さん、当然じゃん?

 

 

 

演習場の自分のチームの待機場所に向かうと既に全員が集まっていた。

「お、守矢君おはよう」

「今日はやけにゆっくりだねぇ」

「おはようございます、ちょっと親父と常夫さんと話してまして」

「余裕だねぇ、相手西住流だよ?」

「関係ないですよ、相手が誰だろうと……」

 

 

 

「私たちがやる事はたった一つだけ」

 

 

パンツァージャケットを着た母さんが戦車から降りてくる。

いつもの母さんと雰囲気が変わってくるよな。

 

「チーム全員で勝利を目指す」

 

いつも圧倒的不利だからなぁ……うちのチーム。

戦車の数も質も社会人のチームでも最低だし。

「本日は流星を使うからね、事前の準備と試合中の報告を怠らないように!」

完全に試合モードですなぁ、母さん。

 

「もーちゃん、挨拶に行くよー」

「今行くー」

 

さぁて、お相手はどんな方々なんでしょうかね?

 

 

 

 

 

 

 

「すみません、遅れました」

審判団と相手の方は既に集まっていた。

「いえ、時間ぴったりなので問題ありませんよ」

ふむ……審判団は西住流の人間がやるわけね……。

「ん、あなたが守矢君ね!師範から聞いてるわよ、いい選手だとか」

「えーっと……あなたは?」

「あ、私は蝶野亜美!あなたの所とは一度戦いたかったんだけどね」

「機会があれば是非、母さんはそういうの大歓迎なんで」

わざわざ弱小チームとやってくれる人なんていないからねぇ。

こういうところできっかけを作るのは大事だよな。

 

 

「本当に男が乗ってるんですね」

敵さんから声をかけられたが視線が冷たい。

軽蔑とまではいかないまでも見下してんなこれ。

「そうだよー、もーちゃんはうちのエースなんだから!」

「やめて、母さん。空気はちょっとは読もう?」

明らかに挑発されてんだよ?

 

「そうですね、空気を読んでもらえないかしら?

男が戦車に乗るなんて……」

 

oh……敵視されてますよこれは。

 

「いやまぁ、戦車乗るのが好きなんで。楽しくないですか?戦車道」

これぞ、THE大人の対応。

いや、俺子供だけど。

「弱小チームで隊長の息子だからお情けで乗せてもらってるんでしょ?

昔はどうか知らないけどそちらの隊長の実力も知れるわね」

 

へぇ……そこまで言い切る……。

母さんも黙ってるしやる気満々ですなぁ。

 

「やるときは本気でやるって決めてるんで……せいぜい足掻かせてもらいますよ」

「ほらほら、喧嘩しないの!両チーム、礼!」

 

「「よろしくお願いします!」」

 

 

礼が終わったらさっさと言っちまったなぁ、西住流の人達。

「もーちゃん、行くよー」

「ういうい。じゃあ、蝶野さん審判よろしくお願いしますね」

「どちらかに肩入れするなんてことしないから安心して戦いなさい!」

うん、この人はいい人だな。間違いない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかし本当に男の子が乗ってるんですねぇ」

「あら?あなたも男が戦車を乗るのはよくないと思ってるの?」

「私は誰が乗ろうと問題は勝敗だけだと考えてますので。ただ、あの態度はよくないですよねぇ」

あぁ、()()()()()()()()()()()()()()()()

なら話はちゃんとあわせておく必要があるわね。

「実力も計れない上に、相手を見下すなんて西住流の名が泣くわよ、本当」

「蝶野さんわかるんですか?」

「もちろん!あの子からはすごい迫力が感じられたわよ!」

特に、母親の事を言われた時はすごかったわねぇ……。

私ちょっと鳥肌立っちゃったもの。

あれが、流星の後継者にして西住・島田を倒しうる男の子かぁ。

「あと、もうちょっと生まれるのが早ければなぁ……」

「蝶野さん、目が怖いですよ?……また合コン駄目だったんですkいたいたいたいたい!!!」

「何か言ったかしら?」

「気のせい!気のせいですかrいたたたたたたたたた!!!!」

ま、実力はこの目で見てから判断しなきゃね!

 

 

 

 

 

 

 

「お、隊長戻って……」

母さんは黙ってその横を通り過ぎてしまう。

「あー、今母さんに話しかけないほうがいいかも」

「もしかして向こうさんとなんかあった?」

俺はあの場で起こったことを簡単に話した。

「あちゃー……こりゃ今日の戦場は荒れそうだわ……」

「まぁ、母さんの事言われて俺もカチッと来てますしね」

「照さんは……まぁいいや、私たちは照さんの言う通りやる事をきっちりとこなすだけ」

そうでしょ?と促される。

「今日は守矢君はⅣ号の砲手、乗りなれてるから問題ないでしょ?」

近くにあるⅣ号戦車を親指で示す。

「乗りなれてるっていうか、習熟度が一番高いのがこれなんですがそれは」

「作戦に支障きたさないのであればなんでも一緒。さ、準備準備」

みんなそれぞれの車両で準備を始める。

自分の乗るⅣ号戦車でも他の搭乗員が試合のための準備を進めていた。

「お、守矢君、挨拶は終わったのかな?」

「終わりましたよ、今日の指示は荒れそうです」

「西住流はお堅いなぁ……男が戦車乗っても問題ないだろうに」

なんとなく察してくれるチームメイト。

「さて、守矢君に手伝ってもらうような準備はないからいつも通り

砲手席で集中でも高めてなさいな」

「了解っす」

トントンとⅣ号を上っていき上部ハッチから中へと入る。

「ここが俺の特等席ー」

お気に入りのクッションを設置した砲手席へ。

「スコープかくにーん」

うむ、視界良好。

()()()()()()()()()()()背もたれに体を預けて目を閉じる。

 

余計な事は考えない、意識を割くのは自分の弾頭をどう相手に当てるか、

()()()()()()()()()()()()()()()()()()だ。

 

 

 

「守矢君?準備はいいかい?」

しばらくするとそんな声をかけてきながらⅣ号に残りのメンバーが乗ってきた。

ゆっくりと目を開けて一回二回と瞬きをする。

「さぁて、全員しまっていこうか!エンジンスタート!」

エンジンがかかり一気に周囲が騒がしくなる。

「うちの部隊コードはライオン、他の部隊にはドロシー、ブリキマン、スケアクロウ」

「ならさしずめ作戦コードは『WIZARD of OZ』ってところですか?」

「相変わらず照さんは変なところにこだわるなぁ」

「後、隊長からは容赦なく殲滅しろってオーダーが来てます」

「まぁ、さっき見た時すごいドス黒い何かを放ってましたけど……」

「ちなみに隊長はやるき満々です」

「やるきの部分が不穏だぁ……」

挨拶に一緒に行った俺は、なんら不思議じゃないなぁと半ば他人事だ。

やる事は変わらないし。

「さぁ、西の悪い魔女を退治しに行こうか!パンツァーフォー!」

車長が檄と指示を飛ばし指定の位置へと戦車を向かわせる。

動き出し更に騒がしくなる周囲と相対するように自分が拾う周囲の音は最小限に。

聞くべきなのは仲間の声のみ。

確かめるようにレバーを握る。

 

 

「Ⅳ号、お前に魂を吹き込んでやる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お母さん、守矢君勝てるかな?」

みほの疑問はもっともだろう。

相手は曲がりなりにも西住流。

「車両の戦力的に考えれば無理でしょう」

確かにこちらの戦車と比較すると性能差にかなりの開きがある。

「確か社会人のリーグの中でも車両の数や性能で言えば最も低いとか」

「負けてる試合もかなりあるし順位的にも最下位よ」

照さん達は西住流とは違い楽しみ成長を促しながら試合をするチームであり試合の勝敗より、

試合の過程や自分達がどれだけ戦えたかを重視する。

それに、照さん達の人格や格上の車両相手にも物怖じしない戦いは

それだけで人を惹きつけるのだろう、人気や知名度はかなり高い。

「じゃあ守矢君達じゃ勝てないのかな……」

みほが暗い顔をする。

「車両の性能……そこだけを考えればね」

「選手の技量で圧倒してると?」

「個々で劣るのは車両だけ。選手の技量であれば、間違いなく照さんたちが上でしょうね」

お母様がそういう言い方をするのであればおそらく()()()という事だろう。

「ですが、いくら技量が高くても車両性能が悪ければ……」

「……まほ、照さん達がリーグで最下位にも関わらず人気がある理由はわかる?」

「試合の動画を見る限りですが、どの試合に関しても

惨敗という試合はまったくなく良い試合をしているから……でしょうか」

正直に言えば最下位のチーム相手に上位のチームが圧倒的な試合をしようが順当である。

それだけ戦車の性能や数は戦力に直結する。

時の運で上位チームに勝つ事だってある。

相手の行動をきっちりと読めたり、こちらの作戦が上手く運んだり。

だがその偶然は何度も続かない、必ずどこかで破綻する。

もしそれが破綻しないのであれば、

 

 

「そう、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

それは必然と言える。

 

「どの車両の選手もどこかのエースをしていても不思議じゃないくらいの錬度。

車長に関してはうちで隊長を任せてもおかしくない実力。

例えその段階で指揮している人間が落とされようが一切の混乱なく連携して攻めてくるのよ」

 

 

通常、部隊指揮している人間が落とされれば指揮系統に多少なりとも混乱が生じる。

その混乱に乗じれば戦況の優位にも立てるのだが……。

 

「上手い事1台落としたと思ったら、何の淀みなく次のプランに移っていくのよ。

こちらは誰が指揮しているか、誰を基点とした策かわからない上に、

下手すると全員が独立して行動してる可能性も捨てきれない……島田流よりも性質が悪いわね」

 

「すごい……ですね……」

正直そんな言葉しか浮かばなかった。

自分が車長だとしてもそこまで柔軟な対応は出来ない。

 

「ただ、今日はそこまでいい試合は見られないわね」

「どういうことでしょう?」

「今日は流星の使用を頼んだ上に公式戦には出てこない守矢君(エース)もいますからね」

「一人砲手が代わり、作戦が変わるだけでそこまで変わるものでしょうか……」

「結果はすぐにわかるわ……始まるわよ」

 

試合開始を告げる空砲が響く。

 

 

「まほ、みほ、しっかりと見ておきなさい」

 

 

全車両が敵を撃滅せんと駆けて行く。

 

 

 

 

 

「あれが西住・島田を超える日本戦車道最強の部隊よ」




どうしたら再就職できますか(迫真)


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11・これが流星です!

戦闘描写なんて書けないから……(落胆)
もうなんかそこら辺は流し見て、どうぞ。


あ、初投稿です。


《こちらライオン、敵車両射程内》

《スケアクロウ、同じく》

《ブリキマン、いけるよー》

《まずは数を減らす……砲撃開始!》

 

全車両が一斉に砲撃を開始する。

スケアクロウ、ブリキマンの2車両の砲撃は命中するが撃破判定とまではならなかった。

 

しかし、ドロシー、ライオンと呼ばれた戦車から放たれた砲弾は

的確にウィークポイントを打ち抜き白旗を上げさせていた。

 

《うわっ!やらかした!》

《撃破失敗だよー》

《スケアクロウとブリキマンは撃破出来なくてもいいから敵車両への必中を心がけて》

《スケアクロウI copy》

《ブリキマンあいこぴー》

《ライオンは私と一緒にペースを上げるYou copy?》

《I copy》

ファーストヒット貰ったのは上々だな。

 

「車長、()()()()()()()()()()()()()()。優先的な車両があれば言ってください」

こちらは、ドロシーの砲手……つまり母さんとの無線での連絡を報告する。

「あぁ、いくら動いても僕の精度に影響はしないので思いっきり振り回してもらって構いません」

「言うねぇ、ASE(エース)のドライバーにスカウトされてんだよ?アタシは」

「なら、その腕発揮して影響がまったくないような運転してくださいよー」

「いいねぇ、痺れるねぇ!了解した!そのオーダーに応えよう!」

《こちらライオン。ドロシー、敵車両殲滅を開始するYou copy?》

《I copy。それじゃあ天使とダンスよ!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんだこれは、守矢君達はファーストヒットで2台も車両を落としていた。

「すっごいねお姉ちゃん!」

「この距離で……さすが照さんと守矢君だ」

あの距離、行進間射撃、更には対象も動いている状態で

的確にウィークポイントを叩き行動不能にさせる。

娘二人は、純粋に感心している様子ではあるが。

「まさに化け物ね……」

他2両のように当てるだけでもかなりの技量だと言えるが、

当たり前のようにその上を行く。

「む、一発外れたな」

「でもその後の砲撃で倒したよ!」

「フォローが的確だな、すぐさま2発目の砲撃とは」

今のを()()()()()()()()()()()この子達にはまだ経験が足りてないと見える。

あれはあの位置に()()()()()()()

外して逃がした先で必殺の一撃を叩き込む。

射角が足りない時に照さんがよくやる方法だ。

照さんに守矢君……日常的にこういった射撃も訓練しているのだろう。

とは言っても、一朝一夕であれはできまい。

さも当たり前のようにこなす二人が恐ろしい。

 

後の2両もたいした腕だ。

行動不能とまではいかないが確実に車両に当ててくる。

こちらの砲撃が当たらない様にあれだけ車両を振り回しておきながら

無駄打ちはほとんど見られない。

「……お母様、こちらの部隊の動きが何かおかしいです」

ほんの少し部隊の息が揃っていないのをまほは感じ取ったようだ。

「みほはわかるかしら?」

「ほんの少しだけど足並みが揃ってないような気がする……ほんの少しだけど」

「では何故そうなったのかしら?」

「あそこにいるわけじゃないから何とも言えないけど……焦ってる?感じがする」

「後は、各車両の車長がパニックを起こしかけているな」

半人前二人が揃えば一人前……ということかしら?

「まだ遠距離ともいえるこの距離でこちらの部隊は相手にどれだけの損害を与えてるかしら?」

「ほぼ、ゼロです。当たった弾の数を数えたほうが早いかと」

「それに引き換え相手は?」

「着実にこちらの戦力を削いでます」

「それに戦意はそれ以上に削いでるみたい」

戦力はある程度減らされてもこちらの優位は揺るがない。

問題はみほの指摘した戦意の方だ。

「仕様上勝っている戦車で相手と同じように砲撃しているにも関わらず、

相手の放った砲弾だけが確実に標的に着弾している。

何故相手は当てられるのか疑問を抱く、疑問を解決する間も相手は着実に迫る。

考えども考えども疑問が解決しないから疑問は焦りに変わる。

焦りが判断を鈍らせ深みに落ち、更に焦りを生む」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ!何だってんのよあの部隊は!!!」

こちらの戦車のほうが数も質も上だっていうのに!!

《た、隊長!こちらの砲撃当たりません!》

《エレファント行動不能!パンターもやられました!》

何も出来ない!何もさせてくれない!

 

圧倒的に技量は向こうが上!()()()()()()()()()()西()()()()!!

 

 

《このままじゃ当たる!散開して敵をかk……きゃぁぁぁ!!》

無線機の先からは轟音と悲鳴。

「広がろうとして大きく車両の方向を変えたら相手に弱点曝け出すようなものよ!」

《了、了解!》

15両あった車両がもう半分近く……!

「全車隊列を乱さないように通達!近づけばこっちのほうが有利よ!」

もう敵との距離もそう離れていない、近づきさえすればあの程度の台数なんて……。

すれ違いざまに撃破してやる!

《隊長!敵2車両ずつ左右に離れて……》

ここにきて分散?流石にこの陣形のど真ん中を突破しようとは思わないk……。

《敵2車両が先行して煙幕を展開!残り2車両が発見できません!》

「なんですって!!??」

 

 

 

 

 

 

 

 

《こちらスケアクロウ散布完了》

《ブリキマンおなじくー》

《ライオン、準備できてるよ》

《あの隊長車……部隊番号が削られてる……まぁいいや!綺羅星見せるよぉ!》

ドロシー……母さんの乗っている車両が敵を迂回するように大きく動く。

「照さんたちが動いたね、こっちも動くよ!守矢君!一発たりとも外すなよ!」

「あらほらさっさー!」

「ロックンロールだ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「お母様……これは……」

「始まったわね……」

戦場はいまや広範囲に煙幕が張られていて状況がよくわからなくなっている。

わかるのは戦車が2台がその周りを高速で旋回していることぐらいだ。

「あの2台が守矢君と照さんかなぁ?」

ここからどうやって残りの車両を撃破する気だ……?

そう思っているとⅣ号戦車が煙幕の中に砲撃を行い始めた。

「煙幕の中に?一体何を……」

砲撃が放たれるとすぐに砲弾が何かに当たる音がした。

「当てたのか!?あの煙幕の中の車両に!?」

続きざまに別の1台も砲撃、命中させていく。

「いつもと違ってあの中に味方車両がいないのだから

あの二人にとっては造作もないことでしょう。

照さん……自分のチームの車両が少ないから本気を出せてないわね」

「出せてない?お母さん、いつもと違うの?」

「本来ならもっと車両数が多いわ、煙幕の中に牽制と進路妨害用として

味方車両も突っ込ませてるの……それでももうこちらの車両はほとんど残ってないですけど」

「しかし煙幕の中の車両をこうも易々と……」

それも本来であれば味方の車両もいるのだ。

「照さんは一瞬でも見えれば判別して敵なら墜とせるって

豪語してますが、恐らく守矢君も……」

敵と味方の判断もその一瞬で出来るのか……化け物じゃないか。

「私には砲弾が一瞬だけ光を反射して見えるくらいだよ~」

「一瞬見える一本の閃光、それが相手には流星のように見えるの」

なるほど……それが()()か。

「でもお姉ちゃん、なんであの範囲から逃げようとしないのかな?」

「多分、指示が通らないんだ。今あの人たちが感じてるのは

先ほどの焦りが生んだ恐怖だ。その恐怖が思考を止めている」

だが、このままでは何も出来ずにただやられるだけだ。

「あ、動き出したよ!」

「煙幕の効果が薄くなって視界の開けた場所から一気に抜け出すつもりだな」

しかし、何故誰も追従しない?指示を出していない訳ではなかろう?

「何故誰もついていかないか不思議?」

お母様が心を読んだかのように声をかけてきた。

「あの子の車両だけが自分で考えて自分で行動してるからでしょう。

それに今から指示を出したとして他の車両はついていけないわよ。

完全にパニックを起こしてるでしょうから」

 

 

不意にお母様がさした方向はその車両の脱出先。

そしてその場所にすごい勢いで突っ込んでいく車両が一台。

 

「それに……相手がそうなるように心理的に追い込んでるのだから」

 

 

 

 

 

 

 

 

《こちらスケアクロウ狐が巣穴から飛び出すぞ》

《ドロシーはバックアップに入る、ライオン()()()()()()()()

《I copy》

「車長!派手に行っていいっすよ!」

「聞いたね!ド派手に行こうじゃないか!」

出てくる場所がわかっているかのような軌道で戦車を駆る。

本来ならあの中にもうちの戦車を突っ込ませてさらに退路を限定するんだが……。

「この程度の相手なら外から追い立てるだけで余裕か」

そう呟いたのと同時に敵戦車……おそらく隊長格の女性が乗る車両が煙幕を突き抜けてくる。

こちらは出てきた瞬間を狙い側面に突撃する。

大きな衝撃と衝突音。

 

俺の照準()砲身()の先には敵車両。

 

 

 

「Ⅳ号、お前に魂があるのなら……応えろ……ッ!」

 

 

遠慮も慈悲もない(砲弾)が敵に浴びせられる。

 

 

 

そこからはもう簡単だった。

指示を送れる人間が潰れてしまった敵部隊がこちらに対抗できるわけもなく……。

 

 

 

 

「西住側全車行動不能!荒谷側チームの勝利!!!」

 

 

 

その無線を聞いて方の力を抜く。

勝てたか……この勝敗で認めてくれるか逆恨みされるかは……神のみぞ知るってか。

「守矢君、顔が厳しいぞ」

「まぁ、こっからどう転ぶかなぁと思うとそれなりに考えますよ」

「それは追々ついてくるもんだ、今は勝利を喜んどきな」

「……それもそうっすね!」

俺がいくら考えたところでどうしよもないしな!

「それにこの後、あっちのボスと娘さんに流星一条みせるんでしょ?」

「あー、忘れてた……あんまし見せるもんでもない気がするんだけどなぁ」

戦術とも戦略ともいえない一か八かのギャンブルだし。

「とりあえず照さんと挨拶行ってきな」

「うぃーっす」

俺は咽喉マイクを外し戦車から降り母さんのところへ向かった。




かなり時間がかかりましたねぇ……。
それにしては内容が薄いですねぇ……。


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12・ひとまずのお別れです!

さぁて、そろそろ本気の就活みせてやりますかぁ……。
貯金もそこそこ減ってきてるしなぁ……。
でもいつも通りの駄文です。

あ、11話ちょっとだけ文が変わってます。

それと、けもフレ2最終話で心壊れ、
ケムリクサ最終話で浄化されたので初投稿です。


「……」

「……」

こんにちは、荒谷守矢ですがこの場の雰囲気が最悪です。

最後の挨拶も向こうの隊長さんしか来ないし……。

母さんは母さんでなんかじーっと向こうの隊長さん見てるし……。

 

「一同、礼!……って雰囲気じゃないわねぇ」

 

ちょ、蝶野さん!諦めないでくださいよ!

「うーん……どうしたものかしら?」

知りませんよ!

 

「先輩、周りには誰も居ませんか?」

向こうの隊長さんが蝶野さんに不思議な事を聞く。

連れてきてないのはあなたの判断なのでは?

 

「あー、さっき貴方の車両の搭乗員以外は西住師範が全員連れて行ってたわよ」

 

蝶野さんが苦笑い。

どういう意味だ?隊長車は含まれてないのか?

隊長さんだけが除外されて……ってのはわかるんだが。

 

そう聞くと相手の隊長さんは俺に近づいてきて……。

 

 

 

 

「ごめんなさい!本当にうちのバカ共がごめんなさい!」

 

 

 

 

……は?

 

 

うち(西住流)のごたごたで守矢君に不快な思いをさせて本当に申し訳ない!」

「……はぁ、君の戦車見てから何か引っかかると思ってたけど」

母さんが溜息をつく。

「どういうことよ?」

「あの子の乗ってる戦車、しぃちゃんカスタムのティーガーⅠなんだよねぇ」

「あ、やっぱりわかります?」

「側面の部隊番号の一部が削れたようになってるでしょ?あそこに砲弾ぶち込んで

しぃちゃん行動不能にしたのは私だからね」

今だにきちんと塗りなおしてないところを見ると、

しほさん相当悔しいんだな……。

「んで、それとこれがどう関係してくんのよ」

「しぃちゃんはもーちゃん認めてるんだよ?男だからって戦車に乗ってるのを

馬鹿にする人間を自分の乗ってた車両乗せると思う?」

 

思い入れのある車両なら乗せないかなぁ……。

 

「でも、それならなんで初めの挨拶の時はあんな態度を……」

「あー、表向きああでも言わないとあの子達命令絶対聞かないだろうから」

「表向きはってことは……」

「良い戦車乗りに男も女も関係ないと思ってますよ?

現に守矢君にうちの部隊ボコボコにされてますしね」

「でもそれなら、貴方がする隊長をする必要は……」

「ぶっちゃけ、あの子達だけじゃ部隊として機能しないのよね」

「どういうことです?」

「西住流って名前がほしいだけの人達、荒谷隊長なら聞いてますよね?負の遺産ですよ、あれ」

母さんは、あっ(察し)という顔をする。

「まったくとは言いませんが……部隊指揮は無理ですかねぇ……」

名前だけ欲しいってんなら必ずしも優秀な選手である必要はないってことね……。

「そちらの事情は把握しました、僕に実害がないのであれば

何も気にしないので」

「もーちゃんがいいなら、私が言う事はないかな。

歯応えなさ過ぎて不完全燃焼だけど仕方ない」

「ははは……そこまで駄目でしたか……」

「今日審判してた蝶野さんが居てやっと一矢報いれるかな?」

「私をご存知なんですか?」

母さん前から知ってたのか。

「名前とどんな戦いをするかってくらいだよ、前にしぃちゃんに連れられて

自衛隊に視察に行った時にちょっとね」

「へぇ~……んで、どうだったの?」

「感覚と直感で行く遊撃タイプ……昔の西住流には合わない子かな?」

「私、一応西住流の門下生なんですが……」

がっくしと肩を落とす蝶野さん

 

 

「ただまぁ……しぃちゃんの西住流には……目指す先には必要な人材かな?」

母さんの呟きは風に乗ってどこかへ消えた。

 

 

「さぁ、次は西住親子にお披露目の時間だよ。もーちゃんは準備しといてねー」

「はぁ……マジでアレを見せるのか……母さんもやらないよういってたじゃんか」

「もーちゃんのステップアップの為に必要な事なんだから!」

「母さんがいいならいいけどさ」

んなら、ちゃっちゃと準備しますかぁ。

 

 

 

 

 

 

~少年流星一条披露中~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えぇ~!守矢君もう帰るの!?」

流星一条をお披露目した後、荷物をまとめ西住家の玄関で帰り支度をしていた。

母さんはしほさんとなにやら話し込んでいる。

中学戦車道選手強化がどうのこうのと話してるみたいだが詳しくはわからん。

 

 

 

……ん?流星一条の詳細?語られるべき時にきっと語られるでしょう。

誰に言ってるのかは自分でもわからんがそう思う。

 

「みほちゃんもまほちゃんも明日は学校でしょ?俺も当然学校がある」

「ぶーぶー」

「守矢君、次はいつこれるんだ?」

「次って気が早すぎない……?」

「そうでもない」

「んー……一人じゃ流石にこれないしなぁ……」

いつって言われてもなぁ……。

「全然わからん、確実にいつこれるって約束も出来ないかな?」

「そうか……まるで千里眼のようなあの射撃技術、是非とも身につけたいのだ」

表面上、無表情だけどなんとなくがっくりとしたような気がする。

「もうちょっとちゃんと遊びたかったなー」

ぶーぶーと文句を言うみほちゃん。

「身につけたいも何もただの反復練習の成果なんだがな……」

しかし千里眼か……まさかな。

 

「でもまぁ、本当にピンチの時は駆けつけてやるよ」

ちょっと格好付けてみる。

 

「そうか。……流石は私の惚れた男だ

お、ちょっと持ち直した。後半は何言ってたか聞き取れなかった。

「私がピンチの時も来てくれる?」

とみほちゃん。

「もちろん」

ぱあーっと笑顔になるみほちゃん。

「俺の手が届くんであれば絶対に助けてやるさ」

にっ、と笑う。

 

「「……」」

なんで二人とも顔を赤くするんだ?

 

 

 

「照、守矢。そろそろ出るぞー」

父さんから声がかかる。

「あいあい!じゃあしぃちゃん!さっきの事はみんなと相談するねー!」

手を振りながら車に乗り込む母さん。

「じゃあしほさん、お元気で。まほちゃんみほちゃん、またね」

小さく手を振り車に乗り込む。

振返ると試合も楽しかったなぁ。

今度はいつ出来るかなぁ。

 

 

 

 

 

「……」

何か思いついたように車に駆け寄ってきたまほちゃんが窓をコンコンとノックする。

「ん?どうした?」

窓から手を離すようジェスチャーしてから窓を開ける。

 

「お姉ちゃんがまた会える様におまじないをしておこうと思ってな」

「お姉ちゃんって……なんかあるの?」

「そうだな、西住流がどういうものか守矢君は知っているか?」

「えっと、撃てば必中 守りは固く 進む姿は乱れ無し 鉄の掟 鋼の心……だっけ?」

「そうだ、そして私は西住流の娘として逃げると言う道はない。

まぁ、逃げる気等さらさらないのだが」

「……ん?んん??つまり……どういうこと?」

 

 

 

「何、自分の惚れた男は確実に仕留める……と言う事さ」

言うや否やまほちゃんは自分の唇を俺の唇に重ねる。

 

 

 

目を見開く俺。

キラキラした眼差しを辞めない母さん。

若いなぁと何故か頷く父さん。

すごい顔でこちらを見るみほちゃん。

開いた口のふさがらないしほさん。

あらあらまぁまぁと菊代さん。

 

 

 

「断っておくが、私は一途でしつこいぞ?」

と唇に指を当てるまほちゃん。

 

 

 

……へ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ!すごいねぇ!まほちゃん!」

「……」

「子供子供と思ってたけど特大の爆弾放り込んできたねぇ!」

「……」

「どうよもーちゃん!よかった?どんな気持ち?どんな気持ち?」

「えぇいうるさい!」

俺だって不意打ち過ぎて混乱してんだよ!

なんだ?なぜだ?何があった?

前世の事を引きずる気はないがこちとら年齢=彼女いない暦だぞ?

わからん……全然わからん……何がどうなったらこうなるんだ……。

「まぁ、もーちゃん戦車道関係者からすれば超優良物件だからねぇ。

かと言って譲る気は早々ないけどナ!」

「あぁもう!」

全然考えがまとまんねぇ!

 

「あ、そうだ(唐突)」

「今度は何だよ!」

「もーちゃんは今の小学校は好き?」

急にまじめな顔をする母さん。

「なんだよ藪から棒に……まぁ、友達居るから嫌いじゃないよ」

「帰り際、私がしぃちゃんと話してたことは知ってるよね」

「まぁ、横目で見てたよ」

「あれね、中学・高校戦車道ついての話でね」

「んだよ、俺関係ないじゃんよ」

俺まだ小学生だし……男子は履修できると限らないし。

「今後出来るであろうプロリーグや世界大会に向けて、

若年層からの選手強化が必要だってしぃちゃんが言っててね」

「まぁ、いろんなスポーツでそういうのはあるね」

「全国色々な学校で選手を育成してくれないかって……」

「はぁ!?」

「他にも色々な選手が強化目的で学校を巡ってるんだけど

私にもその一員になってくれないかって」

「いや、いきなり言われても……」

「小学校も今居るところから多分転校しなきゃいけないし、

中学校も入学から卒業まで居るってことは出来ないと思う」

「……それは」

ちょっと辛いな……。

「ただ、メリットもあるんだ」

「メリット?」

「行くのは間違いなく戦車道のある学校で私は強化指導員と言う立場になるの」

「そういうお仕事だからね」

「つまり、その場その時においては私が誰を補助に付けようが文句は言わせない」

「暴論に近い気がするけど……まぁわからんでもない」

 

 

「つまりもーちゃんを戦車に載せても誰にも文句は言わせn」

「よっしゃ、その生活乗った」

 

 

 

「つまり他の学校にある色々な戦車に乗れるんだろ?ただの天国じゃん!」

ファイアフライとかIS-2とか……運転できるかわかんないけどCV33運転できるかもじゃん!

やっべぇなぁ!ワクワクするなぁ!

「この子ただの戦車バカだよぉ……」

 

 

「乗った事ない戦車で命中率どれくらい叩き出せるんだろ……、

いつものメンバーじゃない人と組んでどれだけ仕事できるんだろ……」

 

「……でも、もーちゃん。もしそういう事をしたとして、

私のあずかり知らぬ所で何されるかわからないんだよ?

みんながみんなチームメイトやしぃちゃん達みたいな人じゃないんだよ?」

それは俺が戦車に乗る以上避けられない問題だ。

 

……けどさ、

「悪意よりも善意を俺は信じたい、認めてくれる人はきっといるさ」

まぁ、例え認めてくれない人が居たとしても関係ないし。

 

 

「俺は俺が楽しいから戦車に乗ってるんだから」

 

 

「そっか……ならしぃちゃんには受けるって連絡しておくよ」

 

 

 

楽しみだなぁ……。

どんな戦車に会えるかなぁ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、まほちゃんのキスはどんな味だった?」

 

「イイハナシダナーで終わらせておこうよ!!!!」




甘くならないしお話無茶苦茶だし、文才が欲しいのナ!
多分次からグッと原作に近づくと思うんだナ!


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13・問題発生です!

今は緑色のケムリクサを吸いながら頑張って生きてます。
皆様も季節の変わり目、体調にはお気をつけください。



りつ姉さんから迸るバブみの力を貰ったので初投稿です。


小学6年生・及び中学校生活はあっという間だった。

依頼のあった学校へ数ヶ月転入しまた次の学校へと転校する。

これを何度も繰り返した。

幸い、転入した学校では男だからと言う理由で戦車道をする自分に、

偏見や差別を持って迎えてくる事はなかった。

むしろ歓迎されて少し戸惑った部分もある。

後から聞いた話では、しほさんと千代さんが裏から手を回していたらしい。

名門と言われるサンダース・プラウダ・聖グロ・黒森峰なんかにもお世話になった。

アンツィオからの依頼でちょっとした期間、俺らと一緒に学校を回って

母さんの指導を受けてた子も居たかな?

多分、母さんの授業を受けた人たちはみんな軒並みレベルは上がったと思う。

俺もその手伝いは砲撃に関してなら出来たんじゃないかなぁ、とも。

 

 

 

その一方、俺はまほが言ってたことが気になっていた。

別れ際に言われた()()()

俺のこの当て勘というか、射撃の技術に関しての急成長は、

てっきり母さんから受け継いだものとばかり思っていた。

だが、まほから言われてひとつの考えが浮かんだ。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

頑強・千里眼・弓矢作成

 

千里眼は例え視線が通っておらずとも敵の位置を精確に把握でき、

その動向をも認識・把握できる。極めつけは短時間の未来視すら可能というチート。

これに関しては覚えがある。

対象の位置の把握に関しては言わずもがな、

本当に集中してる時は狙う戦車がどう動くか見えるときがある。

 

これはもしかして、と思い今度は体を鍛え始めた。

確かに小さい頃から病気なんかはしなかったが……。

自分でも怖いくらい結果が出ました。

体脂肪率一桁の引き締まった浅黒いまるで彫刻のような肉体。

 

 

 

あのゲームで見たアーラシュ像そのまんまでした。

 

 

 

 

神代の肉体そのままとはいかなかったが、

常人とはかけ離れてしまった気がする。

戦車の砲弾を数十メートルブン投げれる時点で多分おかしいと思う。

しかし弓矢作成のスキルは再現されなかった。

あったとしても使いどころはないよなぁ。

 

 

 

 

で、この俺。

今何をやってるかと言うと……。

 

 

 

 

 

 

「夏休みのところ悪いねぇ、共学になったばかりで男手が少なくってさぁ」

「これくらいなンてことないさ、やることもなくて暇だったしな」

山盛りになるくらい廃棄物を搭載したリアカーを引いていた。

 

 

父さん、母さんが戦車道の国際大会に出場する為、一人暮らしを余儀なくされ

母さんの母校でもある大洗に転校していた。

母さんの時代は女子高だったらしいが、近年は生徒数減少により共学化している。

戦車道がないことには少し残念に思ったが、ないのであれば仕方ない。

まぁ、男子だからと色々言われるよりはない方がマシだとも言える。

ちなみに、中学時代お世話になったサンダース・プラウダ・聖グロ・黒森峰・アンツィオからは

是非!と熱いラブコールを貰ったが考えてみろ、女子高に単独でなんかいけるか。

中学の時は母さんって言う後ろ盾があったからこそだ。

今思うとすげぇことしてるなぁとは思うが。

んで、今は大洗の生徒としてつつがない学生生活を送っている。

 

 

「よくもまぁこんなに溜めたもんだ」

壊れたパイプ椅子やらなんかの部品やら。

「前の会長が色々な処理をそのままにしちゃってたみたいなんだよね、負の遺産?ってやつ?」

隣には干し芋を齧りながら帯同している女子生徒。

2年にして生徒会頂点の座についている角谷会長だ。

「しっかし、角谷の姐さんも2年で生徒会長でやることいっぱいと大変じゃないか」

「いやいや、荒谷ちゃんも毎日毎日生徒のために駆けずり回ってるんでしょ?」

「いや、あれはなんというか、何故か俺に回ってきてるだけなんだが」

「それだけ頼りにされてるってことじゃーん」

「悪い気はしねぇし、なんとかしてやりたいって気持ちはあるが」

「艦底部の子達も荒谷ちゃんには迷惑かけないんでしょ?」

「ちょっとやんちゃなだけじゃねぇか」

何故かあそこらは大洗のヨハネスブルグとか言われてるらしい。

ハバネロクラブあそこにしかねぇし行くのはちーっとめんどくさいが。

意外と話しのわかるやつも多いんだぜ?

「それで済ませる辺り荒谷ちゃんは大物だねぇー……っとここでいいよー」

リアカーを止めホイホイと廃材置き場に投げ込んでいく。

「荒谷ちゃーん、本気で生徒会はいんない?今なら色々おまけ付けるよー?」

「ははっ、ただの力持ちが上に立つなンて有り得ねぇって」

よし、これで終わりっと。

「まぁ、何か手伝える事なら手伝ってやるさ」

ポケットからスマホ取り出してネットを見る。

「んー?何見てんのー?」

「戦車道全国高校生大会の決勝の結果、そろそろ出てねぇかなぁってな」

「珍しいねー、男子で戦車道に興味あるんだ?」

「親が関係者だからな、見てると色々楽しいもンだぜ」

戦車道全国高校生大会の公式ページに飛ぶとそこには意外な事が書いてあった。

 

「おいおい、ちびっこ隊長がみほとまほさんを倒したか」

ちびっこ隊長にはメールでもしとかなきゃノンナの姐さんから砲弾が飛んでくるな。

みほとまほにももちろん送っとかないとな。

 

 

 

確か黒森峰ってこれ勝てば10連覇だっけか。

……嫌な予感がする。

外れて欲しいが千里眼が絡む俺の勘って外れないんだよな……。

 

 

「角谷の姐さん、次の寄港日っていつだっけか?」

「んー?明日だけど?」

「用意しといて杞憂なら御の字、最悪を見越して動かなきゃな」

「何々ー?誰か愛しの人にでも会いに行くとかー?」

ニヤニヤすんなよ会長。

「まぁ、大切な友人ってところだ」

 

決勝戦の試合を動画で確認する。

 

 

 

「こりゃ、ちびっこ隊長が見事だな。

みほ・まほ姉妹を完全に分断するのはいい手だ」

「3人とも知ってるんだー?」

「高校生の戦車道の選手としてはかなり有名人だ」

「へー」

干し芋を齧る会長。

そんな会長を尻目に動画はどんどん進む。

 

「ありゃ、戦車が川に落っこちた。これって大丈夫なもんなの?」

「直ちに影響はない……と言いたいが豪雨にこの流れなら

一刻も早く救助すべきだな」

 

動画では一人の選手がフラッグ車のハッチから飛び出して崖を降り始めた。

 

 

「間違いない、みほだ」

 

 

そのまま崖を降り、川に飛び込み救助活動をし始めた。

その間にプラウダがフラッグ車を撃ち抜き勝敗が決した。

 

 

「こりゃ、しほさん怒るぞ……」

流石にこれはなぁ……。

 

「私には助けたほうが立派だと思うけどねー」

「まぁ、大きな流派を背負うってのはそういうことだしな。

ただ、俺の予想でしかないがポイントはそこじゃない」

 

夢中だったとはいえ大事なとこが欠落してんな。

 

 

……電話しとくか。

アドレス帳から西住みほの電話番号にコールする。

 

 

「……電源切ってるな」

 

1コールもなることなくアナウンスのボイスに変わる。

だったら、まほだ。

 

「……もしもし」

「お、まほはでたな」

角谷の姐さんにスマンとジェスチャーしてから少し距離をとる。

生徒会の事考えといてねーと一言残すと干し芋を齧りながら

角谷の姐さんは立ち去っていった。

 

 

「なんでかけてきたかはわかるだろ?」

「……みほのことだろう」

「ビンゴ、電話かけても電源切ってるのか出なくてな」

「……みほの立場はまずい事になってる」

まほも精神的に参ってるか……。

黒森峰隊長としての感情と家族としての感情の板ばさみか。

「試合見る限りは敗退原因はちびっこ隊長……プラウダの指揮官の策がドンピシャだっただけで、

誰のせいとも言い難いけどな。あそこも黒森峰クラスで強豪だしな」

やりたい事やれたプラウダが勝った、それだけだ。

 

「だが、部隊の人間全員がそうは思っちゃいないって事か」

「……あぁ、あの敗退は隊長である私の責任だと、そう言っても聞く耳を持たない」

まほは軽く神格化されてるからな……。

まほを叩かずみほを叩くやつらしかいないんだろう。

「今や味方はエリカだけだ」

前言撤回、エリカが居るのであればまだ救われてるか。

恐らく、あの行動の何が悪かったかもエリカは把握してるだろ。

 

「ちなみにしほさんは何か言ってンのか?」

「いや、お母様からは何も……」

 

嫌な予感はこれだな。

下手すればすれ違ったまま、みほが失踪しかねん。

明日が大洗、明後日黒森峰に寄港日ってのも運命ってやつか。

 

 

「……なぁ、守矢」

すがるような声。

いつものまほとは雲泥の差だ。

 

 

 

 

 

「……みほを助けてくれないか?」

いとも簡単に壊れてしまいそうなまほの一言。

それに対する返答はたった一つだ。

 

 

 

 

 

 

 

「任せな」

 




こんなんでいいのかなぁ?
ちゃんと読める文章になってます?


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14・黒森峰に突撃です!

お祈りメールを食らったので初投稿です。


「よぉ、ちびっこ隊長!優勝おめでとさん」

連絡船と電車、飛行機を使い熊本に到着して一番に連絡をしたのはちびっこ隊長(カチューシャ)だ。

……昨日、家に帰ってすぐ熊本行きの準備をした為連絡するのを忘れていた。

朝起きたらノンナの姐さんからの怒涛の着信とメールの嵐。

流石に始発近い時間から動き出していたので流石に電話できず、

熊本に到着して丁度お昼くらいになったのでこのタイミングで電話を。

 

 

「モリーシャ!遅いじゃないの!このカチューシャが優勝したのよ!?」

「それに関してはスマン、俺もちょいとヤボ用があってな」

ノンナの姐さんのことは伏せておくか……。

「試合見たが、連携の要の西住姉妹を完全に分断してからの

試合運びは見事だな」

「ふふん!当然だわ!」

元々、才能はプラウダじゃ群を抜いてたからな。

()()()()()()()()()()()()()

 

「それなのにカチューシャの実力じゃないって言うのよ!」

「そりゃまた……何言われたんだ?」

「あそこでフラッグ車から副隊長が降りなければわからなかっただの、

あの状況下でフラッグ車を撃つのは非道だのもうめちゃくちゃよ!」

「まぁ、試合だし攻撃するのは当然なんだが……、

ただ黙って攻撃しただけじゃないんだろ?」

 

「当たり前じゃない!拡声器で降伏を呼びかけたわよ!

戦車道をしてるのよ?戦争じゃないんだから」

 

まぁ、根は優しいやつだしなぁ……カチューシャ。

しかしよく積んでたな、拡声器。

 

大音量で自分の存在を大きく見せるとかだろう。

その姿を想像するとちょっと微笑ましくあるな。

 

 

 

「そうだ、ノンナの姐さんはいるかい?」

「ノンナがどうしたのよ」

「ちょいと電話を代わってくれないか?」

「しょうがないわね……ノンナ!」

 

一応あちらさんにもフォローはしておかないとな。

 

「代わりました」

「お、ノンナの姐さん優勝おめでとさん」

「カチューシャがいるのですから当たり前です」

相変わらずカチューシャを崇めすぎだろ。

「それよりも、なぜカチューシャへの連絡がここまで遅いのですか」

「まぁ、そう怒りなさんな。ちょっと旅支度に手間取ってな。

深夜に連絡するのも悪いと思ってカチューシャの昼寝の前の今かけたって訳だ」

「貴方の旅支度などよりカチューシャの優先させなさい」

「この時間帯にかけなかったらノンナの姐さんにも

個別に連絡しないといけないし二度手間だろ?」

「なんで私にする必要が?」

「頑張ったやつを褒めるのは当たり前だろ?」

 

実際、ノンナの姐さんの砲撃はかなりのレベルだ。

俺もうかうかしてられないな!

……戦車乗れないんだけどさ。

 

「……そうですか」

「ん?どうした?」

「なんでもありません、カチューシャに代わります」

「お、おう」

 

変な間があったな……なんだ?何か言ったか?

 

 

「それでモリーシャは私達を放置して大洗で何をしてるのかしら?」

「ん?あぁ、大洗じゃなくてヤボ用で熊本にいるんだよ」

「熊本って……黒森峰に行くつもり!?」

おっと、受話器越しでもわかるこのプンプン感。

「……あの姉妹に会いに行く気ね」

「色々ごたごたしてるみたいだからなぁ」

「敗戦の責任の押し付け合いでしょ?」

「わかってるじゃないか」

「なら、さっさと行って早くプラウダに来なさい!

来ないと今度会った時にシベリア送りにしてやるんだから!」

「わかったわかった、そんときは美味いメシ期待してるぜ。んじゃな」

 

何か言われる前に通話を切る。

ちびっこは電話が長いんだよ。

 

 

「さってと、まずは港の近くに宿を取って明日連絡船に乗らなきゃな」

なるべく早くみほとも話したいし明日は朝一の連絡船で学園艦に行きますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝早くホテルをチェックアウトし港の連絡船を使い沖合いに停泊する

学園艦に乗り込み黒森峰女学園へと向かった。

大洗の学園艦よりはるかにでかい。

お土産はビールとかソーセージなどがある。

角谷の姐さんには限定の干し芋でも買ってくか。

あるかは知らん。

 

「さぁて、演習場はこっちっていってたよな……」

デカイ、さすが名門校、目的地にたどり着くのも一苦労だ。

最初は校舎のほうに行ってみたが、どうも練習中らしく

演習場の場所を教えてもらった。

 

「しかし……あっさり入れたな……俺」

 

 

これはかなり意外だった。

確認だが一応ここ女子高だよな……。

入り口で来た理由やら身分証やらの提示やらは勿論だが、

男がこんなに簡単に入れていいもんかね……。

 

「なんか守衛さんがノリノリだったしなぁ……」

 

中等部の戦車道絡みで母さんに引っ付いてここに来たって前例はあったが。

それだけで男子学生がここまであっさり入れるもんかね……。

 

「……あっ、まほ辺りが気を利かせてくれたか?」

考えられるな、意外とそこら辺はきっちりしてるし。

それならありがたくその恩恵にあずかろう。

しばらく歩きながら周りをキョロキョロしていると

複数の戦車と戦車道の受講者と思わしき人たちを見つけた。

 

 

「誰か知ってる人がいれば……お、あそこに居るのは……」

俺は見知った後姿を確認すると大きな声で()()を呼んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい!エリカー!久しぶりだなー!」

演習の一区切りで他の選手と反省会をしている最中、

ひどく聞き覚えがあり、ここで聞くはずのない声を聞いた。

「え?あ?はぁ!?」

暢気に手を振り笑う男。

「逸見……知り合いか……?」

先輩の顔が引きつっている。

「誰?」

「なんでここに男がいんの?」

辺りは当然ざわつく。

「えっと……知り合いと言うか……」

なんと説明したら……!そもそもなんでこいつが……!

 

大洗に居るはずの知り合い荒谷守矢。

会うのは黒森峰戦車道の強化と言う名目で中等部に

母親である照さんと一緒に来た時以来だ。

隊長やみほは頻繁にメールだの電話だのしてるらしいけど、

私は……まぁ、隊長たちについて少しメールするくらいかしら……。

でも今は、そんな事はどうでもいいの。 重要なことじゃないわ。

何故守矢が黒森峰(ここ)に来たのか、それが重要よ!

 

「おいおい、無視はひどくねぇか?ハンバーグを食べ損ねたのか?」

「理解が追いついてないのよ!ハンバーグは関係ないわよ!」

「相変わらず元気だなぁ、ちょっと安心したぜ」

カラカラと笑う守矢。

「ちょ、こっちに来なさい!」

私は腕を引っ張りみんなと距離をとる。

「っと、両手で引っ張ったら危ないぞ?」

 

重たっ!?

なにこいつ……ちょっと見ない間に

ものすごく体つきが変わったわね……。

声聞かなかったらわからなかったわよ……じゃなくて!

「守矢!なんでアンタここにいるのよ!」

「用事があったからに決まってるだろ?」

何言ってんだ?と言わんばかりの顔。

腹立つわね……!

「それはわかってるわよ!わざわざ熊本まで何のために来たのよ……!」

「みほの為に決まってンだろ?」

「っ……!」

 

 

私は送るのを、教えるのを躊躇ったが恐らく隊長が話したのだろう。

今の黒森峰……いや、西住みほの現状を。

「アンタに、どうにか出来るって言うの……?」

「さぁ?まほから聞いた感じじゃかなり塞ぎこんでるみたいだな」

「さぁ?って!なんとも思わないの!?」

「まほからみほを助けてくれと頼まれたから快諾はした。

それにみほとまほと小さい頃に約束したからな。だがどうにかできるかどうかは別だろ?」

だが、と守矢は言葉を続ける。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

そうか……相手と理由は違えどコイツも色々な人から

色々言われてきた過去がある。

「……みほを頼むわ……責任の追及かなんかと勘違いして私の話聞いてくれないから」

扉の鍵だけなら良かったのだがU字ロックまでかけられてしまって、

部屋に入れなくなってしまった。

昨日から何度も部屋のドアの前で声をかけているが反応はない。

当然、戦車道の練習にも来ない……今あの子は一人ぼっちなんだ。

「勘違いってことは、エリカも勝敗じゃない部分に文句があるんだな?」

「も、ってことはアンタも?」

私があの子に言いたいのは責任の所在なんかじゃない。

たった一点の大事な事だ。

「勝敗よりもまず大事な事があるからな」

「あの子、たまに周りが見えなくなることがあるから」

こればっかりはちゃんと言って上げないといけないしね……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、結局そちらの男性は?」

エリカとの話に夢中になりすぎたな。

「っと……すまんすまん、俺の名前は荒谷守矢。

一応、高1年だ。黒森峰にちょっとした用事があってな」

「え……これで私の1個下……」

まじまじと体を見られる。

まぁ、いっつも大学生くらいには見られるなぁ……。

そんなに老けてるか、俺?

「男なのに、ここに用事なんて……聞いた事のある名前だし……怪しいわね」

「珍しい男の戦車道受講者だからじゃないか?ほれ免許証」

財布から肌身離さず携帯している免許証を相手に見せる。

「戦車に乗ってるの?珍しいわね、あんまり聞かないわよ?」

「だろうなぁ、俺も免許取りに行った時は視線がすごくてなぁ」

「でしょうね、居るとは言ってもかなり少ないもの」

へぇ、この人は別に俺が戦車乗ってるからって態度を変えないのか。

いい人だな、うん。

「で、その荒谷君の用事は?」

 

 

 

「あぁ、ちょっとまほに会いに来たんだよ」

 

 

 

 

 

周りの空気が固まった。

 

先輩が引きつった表情で逸見を見る。

「……逸見、この人あんたと同学年よね?」

「……はい……同い年のはずです……」

「そうだな、エリカと同じで早生まれの同学年だな」

「……逸見の知り合いでも何でもいいから、

黒森峰で戦車道取ってる人間で()()って名前の子……居る?」

「……一人だけ居ます」

「奇遇ね、私も一人だけしか知らないわ」

なんだ?まほって名前って何人か居るのか?

「あぁ、俺が会いたいのは黒森峰隊長西住まほだぜ」

 

 

「はいアウト!なんであんた隊長の事呼び捨てにしてんのよ!」

 

途端に周りがざわつき始める。

 

「いや、これには訳があってな……エリカにも微妙に関係してるんだが……」

「はぁ!?私が何の関係があんのよ!?」

 

「俺とみほとエリカ同学年だろ?だから呼び捨てにしてるだろ?」

「そこまではまぁわかるわ……名前で呼ばれるのは不本意だけど」

「みほを名前で呼んでたら私もそうしろっていったn……」

「そんなことはどうでもいいのよ!」

「お、おう……」

思いっきり遮られたな。

「聞きたいのはなんでアンタが隊長を呼び捨てしてるかってこと!」

 

「みほとエリカを呼び捨てにしてたら、まほのやつが私もそう呼べってな」

「そんな事あるわけないじゃない!」

「まほさんと呼ぶと反応はするものの言葉を返してくれないし、

西住さんなんて言ってみろ、ガン無視だぞ?ガン無視」

「バッカじゃないの?妄想も大概にしときなさいよ?」

「なら賭けるか?もしまほのこと苗字で呼んでも

何にも反応しなかったらハンバーグ奢れよ?」

「なんでもハンバーグと絡めんじゃないわよ!」

「そうだなぁ……もし反応したら俺が何でも言う事聞いてやるよ」

 

「お、おい……逸見……」

先ほどの先輩と思わしき人が遠慮がちに声をかけてくる。

「その賭け乗ってやろうじゃない!アンタが負けたら

この前見つけたお店で隊長と一緒に奢ってもらおうじゃない!」

 

「逸見……それ以上は……」

ちらちらと遠くを見る先輩(仮)。

そちらをみると、女生徒が一人こちらへ歩いてきていた。

 

 

 

 

「エリカ、何をやっている」

「た、隊長!」

 

 

やって来たのは目的その1の西住まほだった。

 

「よう、西住さん。お邪魔してるぞ」

まほに元気よく声をかけてみる。

 

「……」

 

傍目に見れば何も変わらない様に見えるが俺にはわかる。

めっちゃ不機嫌になったぞ、まほのやつ。

 

「……隊長?」

 

エリカが不安げになる。

 

「まほさん探してエリカにちょいと話をな、なぁエリカ?」

「そ、そうなんですよ!いきなり現れて隊長に会いにきたって……」

エリカのやつ動揺してんなぁ……。

そしてまほもどんどん機嫌が悪くなるなぁ……。

 

「昨日話した事もあるが、純粋にまほに会いたくもあってな。

だから先に黒森峰(こっち)に来たんだよ。

多分、守衛さんにはまほが話してたんだろ?ありがとな」

 

 

「私が呼んだんだからそれくらい当然だろう」

 

はい反応した。

そしてわかりやすく機嫌が良くなったな。

 

「た、隊長……」

「どうしたエリカ?」

「……いえ、何でもありません」

 

 

そしてわかりやすく落ち込んだな、エリカ。

「……隊長、こちらの荒谷さんは一体どういった方なのですか?」

困惑した表情で疑問を口にする先輩(仮)。

 

 

「私の……いや、西住家にとって大事な人だ」

「西住家って……どういう意味ですか?」

いや、俺も気になる。

俺なんかしたか?

……母さんがやらかした可能性も考えられるが。

 

 

「将来、西住の姓を名乗ってくれるんだろう?」

 

 

またもや空気が固まった。

 

 

 

 

「聞いてないぞ?俺は」

当然俺からそんな話をしたこともない。

「何だ守矢、私のことは嫌いか?」

「そんなことはないけどよ……」

「なら問題ない」

「いや、大いにあるだろ……。どうして0か1なんだ?」

「私の気持ちは幼い頃から知っているだろう?」

 

あれだけメールでも電話でも言われれば流石になぁ……。

鈍感系主人公も勘違いしようのないレベルの内容だぞ。

 

「私のことが嫌いなのであれば言ってくれれば私も引き下がるさ」

「嫌いというより、会ったのは小学生の頃と中学生の時の2回だろ?」

「十分だろう?」

「こういうことは普通積み重ねの結果だろ?」

「そういうものなのか?」

誰かこの子に恋愛の仕方とか教えてやれよ……。

 

「た、隊長!正気ですか!?守矢ですよ!?」

「ん?なにかおかしいか?」

「~~~~!!」

言いたい事はたくさんあるのに言えないって感じだな。

「守矢!守矢はどうなのよ!」

「俺か?そりゃ、まほみたいな可愛い子から

好きだって言ってもらえるのは嬉しいがな、

俺とじゃつりあわねぇよ」

 

これは正直な気持ちだ。

「まほは視野を狭くしすぎだ、もっといいやつは居るだろうさ」

「そういう謙虚なところも好きだぞ、守矢」

「聞いちゃいねぇ……」

周りのざわつきも半端じゃなくなってきたし目的を果たしに行こうか。

 

「まほ、今は別に大事な事があるだろう?」

「……あぁ、とりあえず案内する。エリカは先に行っててくれ」

「わかりました」

「エリカ、俺が来てるってことは直前まで伏せててくれ、頼む」

「……先に行ってるわ」

エリカが早足に寮へと向かう。

 

 

「た、隊長?逸見とどちらにいかれるのですか?」

「みほのところだ」

「に、西住の所ですか?」

周りの人間の顔色が色々な表情へと変わる。

困惑するやつ、納得した表情をしているやつ。

 

 

明らかに嫌悪感を隠そうとしないやつ。

 

「やる気がないのならそのままでいいじゃないですか」

多分、みほと同学年であろう生徒が声を上げる。

「それはどういう意「そいつはどうしてだい?」

まほの言葉を遮る様にその生徒に声をかける。

「練習に出てこないのはやる気がないからでしょう?

それに彼女は10連覇を出来なかった原因ですよ?」

「ほぉ、あの敗戦はみほが原因なんだな?」

ここでもやはり色々な反応があるな。

疑問視するやつ、この場の空気に戸惑うやつ、それに頷いてるやつか。

「あの子があの場で戦車を降りなければ……」

「勝っていたと思ってるならもうちょっと考えた方がいいぞ」

正直な意見をそのままストレートに言ってやった。

「……!」

キッとこちらを睨む女生徒。

「そもそも、黒森峰の戦法であの状況に追い込まれる事自体がもう詰みだろ」

黒森峰は西住流の教えを色濃く受け継いでるんだ。

それが強みであり弱みでもある。

「統制された陣形での電撃戦・短期決戦を用いる黒森峰が

暴走して突っ込んできた戦車に面食らって陣形ぐちゃぐちゃだったじゃねぇか」

 

半ば焦ったプラウダ車両の暴走がとんでもない方向に作用した結果だ。

粛清待ったなしからレーニン勲章物の突撃に変貌だからなぁ。

世の中何が起こるかわからない。

プラウダじゃなく知波単生徒なんじゃねぇか?と疑ったほどだ。

 

 

「まぁ、それは仕方ないとしてだ、()()()()()()()()()()()()()()

「一体何を……」

「フラッグ車を逃がす方法か?この状況から相手を追い込む方法か?」

「それは……」

「そうだなぁ……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()って思ったろ?」

びくっと反応する生徒多数。

当たりっぽいぞ。

 

「決して間違いじゃないんだがな……

それが通用するのはある程度のレベルまでだ。

まほとみほが試合中いつも何してるか考えてみた方がいいぞ」

 

西住流が悪いと言う訳ではない、黒森峰が弱い訳ではない。

だが、あらゆる戦術・戦略に絶対はない。

俺と母さんなんて西住流と対極に位置するような戦い方だ。

それにだって良い面悪い面がある訳で。

 

「守矢、あとは私の仕事だ。それくらいにしておけ」

「ん……世にも珍しい男子戦車道選手の戯言とでも思っといてくれや」

車長はただ指示を聞くためだけの存在ではない。

その他の選手だって自分の仕事だけすればいいって訳ではない。

難しいなぁ、戦車道ってのは。

 

 

 

「守矢、みほのところに案内するからついてこい」

「おうよ」

俺はまほの後についていく。

「まぁ、ぼちぼち考えますかね」

天岩戸に引き篭もるお嬢様を引っ張り出す方法をな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんなのよ、あの荒谷って男!」

「男で戦車道!?意味わかんない!」

数人の女子が口々に先ほどの男性に対しての暴言を吐く。

「なんか、わかってるような口ぶりで生意気」

「所詮男の戦車乗りなんて……」

 

私はそうは思わない。

言ってる事は非常に的を射ていた。

……みほさんは常に色々な事態を想定して動いていた。

副隊長という立場上やっていただけかもしれないが、

それでもあらゆる可能性と行動を想定していた。

 

「赤星、大丈夫?」

「うん……私は大丈夫だよ」

私よりも心配なのはみほさんだ。

私はみほさんに比べれば事故にあった被害者という立場のせいで

他の子から何かを言われると言う事は少なかった。

けれどみほさんは違う。

立場がそうさせない。

 

試合終了後の他の生徒からの罵詈雑言。

隊長の言葉で一度沈静化したと思った。

けれど、エリカさんや隊長がいない時に、

何人か部屋の中に居るみほさんに聞こえるように、

彼女を蔑むような事を言っているのもみた。

本当にくだらない。

みほさんを否定して何か変わるのか。

何もしなかった他の人間がみほさんを否定出来るのか。

 

先ほど、隊長とエリカさんと男性の方がみほさんに

会いに行かれたけど……どうにかなるのだろうか。

 

「でも……あの男の人……見たことある気がする……」

何年か前に……遠目から見たと思う。

誰だっけ……みほさん達と関係があって……、

戦車道の関係者で……。

 

「あ……」

思い出した……かも。

 

 

「もしかして……」

「もしかしてって?」

「あの人、荒谷選手の子供かも……」

「荒谷選手って、日本代表のエースアタッカーの?」

「そう、大会撃破率トップの流星・荒谷照」

「赤星の考えすぎじゃない?ただの同姓同名なだけじゃないの?」

いや、と首を横に振る。

「……何年か前に中等部に戦車道履修生強化の目的で黒森峰に

荒谷選手がコーチとして来たの覚えてる?」

「あったわね……1車両に完敗したの覚えてるわよ……」

「あの時の砲手って……」

「……男の子だったわね」

「それに確か隊長と副隊長、エリカさんとも楽しくお話してたし……」

「それならすごい有名人ねー」

「本当にその荒谷守矢さんだったら、だけどね」

 

もしそうであれば。

 

「そうだったら、あの人ならどうにかできるかもしれない」

 

 

 

 

 

だってみほさんが大好きだって言ってた人だもの。

 

 

 

 




うぅむ、お話を書くってのは難しい。
遅くなってすみません。
お話が上手じゃなくてすみません。


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15・腹を割って話します!

まだまだ、就活中なので初投稿です。

かなりのおふざけとどうでしょう成分が含まれております。


 

 

 

 

 

 

間接照明のみが部屋を照らす薄暗い部屋。

クシャクシャになったシーツ。

生気を失ったような瞳。

何かを棒のようなものを咥える影。

じゅるじゅるっと何かを吸う音。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねじねじゼリーは吸うだけじゃ中にちょっと残るなぁ」

「みふぉ、ふぉのうまいんふぁふぉうも食ふぇていいふぁ?」

「お前もう食べてんじゃねぇか」

私にお構いなしにお菓子を頬張る守矢君とお姉ちゃん。

 

「み、みほ……大丈夫……?」

唯一私を心配してくれるエリカさん。

 

「えっと……私は一体……」

「赤星さんだっけか、こっち座ってお菓子でも食べるといい」

「え、えぇ……」

 

 

いきなり呼ばれ困惑する赤星さん。

 

 

 

 

そんな状況を見て、私は今心の内にあるものを吐き出した。

 

 

 

 

 

「黒森峰学園艦の皆さん、じゃあ聞いてください。

今日今ここで何が起こったのかを、です。

私は一昨日はアレなんです、皆さんご存知の戦車道全国高校生大会の決勝戦を

敗北してしまった訳です。 皆さんもうご覧になったのではないでしょうか?

私はあの悪天候の中氾濫した河川に落ちた戦車に搭乗している選手を助けようとして

フラッグ車を放棄、敗北の責任を一挙に受けた副隊長の西住みほです。

副隊長の西住みほなんです」

 

 

「お姉ちゃんが副隊長に推薦したんだ」

「え”……隊長そんなことしてたんですか……」

「エリカを除けばその位置が順当だろ?

身内贔屓と言われるかも知れんがみほ以上のやつは少なくとも居ない」

「そうですね……隊長とアイコンタクトだけでついていけるのってみほさんくらいですし……」

 

 

「あの後に、みんなから色々な事を言われて

私は逃げるように部屋に帰ったんだ……。

そしたらもう全然眠れなくて、何も考えられなくて、

昨日の練習にも行けなくなって、どうしたらいいかわかんなくて、

もう戦車道をしたいって思えなくなって……」

 

 

 

「やっぱり一度お姉ちゃんが粛清した方がいいと思う」

「た、隊長!抑えてください!エリカさんも手伝ってくださいよ!」

「いや、そんなやつら消えたって誰も何も思わないわよ」

「まほ、ここはプラウダじゃねぇんだから座っとけや。

エリカは物騒なこと言うのは辞めとけ」

 

 

 

 

「どうしようって思った時に、お母さんから呼び出しがあったの。

何を言われるのか怖くなって、逃げ出したくて、

頭がごちゃごちゃになって……すると現れたのがこの3人なんですよ」

 

 

 

「しほさん最悪のタイミングじゃねぇか」

「西住師範も何かと忙しいのよ……きっと」

「菊代さんから聞いたところだと朝から月刊戦車道の出版社に行ったと言ってたな」

「そういえばあの雑誌、みほさんの事叩いてたような……」

「なるほど、しほさんも娘には存外甘いなぁ」

「嘘!?冗談でしょ!?何で今の会話でそれが出るのよ!?」

「あの人の内面知ってりゃ容易に想像はつくぞ。

内容は流石に見せられんがしほさんからのメールのほとんどが

みほとまほについてだからな。しかもかなり頻繁に送ってくるんだから。

しかし、言いたい事は直接言ってやれって言ったがここで実践しちゃうかぁ……」

 

 

 

 

「何でここに居るのか知らないけど、いきなり守矢君の声が聞こえて、

驚いて扉の鍵とロックを解除して扉を開けると、小さい頃に見た

ボコより遥かに大きい着ぐるみを装着した守矢君が居て

私は突然のことで頭が真っ白になってるのに、腹を割って話そうと

守矢君は部屋に乱入してきたわけです」

 

 

「アンタ、いきなり部屋に入って見られたくないものが

あったらどうするつもりだったのよ!」

「そん時は全身全霊でそれこそ流星一条(ステラ)撃つぐらいの気持ちで謝るだけだろ」

流星一条(ステラ)は辞めてくれ、私とみほに効く」

流星一条(ステラ)って何でしょう……エリカさん知ってます?」

「いや、私も知らないわよ……」

 

 

「私自身は別に守矢君に何も話すことなんてないですよ、

仲は良いですよ?尊敬もしてる砲撃手です。

でも別に彼と腹を割って話すことなんて何もないですよ。

こっちは結構な頻度で電話とメールで相談してるんですから。

ところが守矢君は私に「腹を割って話そう!」と言って、

何を話したいのか知りませんが、お姉ちゃん達と私の部屋に居座って、

どうか時計見てください。お昼過ぎ12時52分です。もうかれこれ守矢君達は

1時間お菓子を食べながら私の部屋を離れようとしないんですよ」

 

 

 

 

「お、もうそんな時間なのか」

「お昼食べ損なったじゃない!」

「晩飯奢ってやるから許してくれや」

「む、エリカだけずるくないか?なぁ、赤星」

「え?!そ、そうですかね……?」

「ちゃんとまほと赤星さんとみほにもごちそうするさ」

「さすが未来の伴侶だ」

「違うって言ってるだろ?」

 

 

 

 

「それで、私はそれで学園艦の皆さんまだ聞いてください、

私は再三「帰って」って言ってるんです。

もう大好きな人たちですよ、3人共。その人達にさっきから私は、

「関係ないんだから帰って!私なんか放っておいてよ!」と

再三罵声を浴びせかけているにも拘らず、帰ってくれないんです。

そして私は、苦肉の策で、これもまた関係ない人なんだけど、

寮監に、電話をしようとしたわけです。

「3人が 帰らないから連れて帰ってくれ」と言おうとしたら、

守矢君に電話を取られて、エリカさんにどこかに連絡するよう伝えて、

皆さん何て言ったと思います?

「あぁそうか わかったわかった じゃあ当事者も呼ぼう!」と言って、

それで赤星さんまで私の部屋に来てるんですよ!

どうですか!! 学園艦の皆さん、おかしくないですか!? この人達!!

私は、放っておいてくれって言ってるんですよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほら、水でも飲んで落ち着けって」

ぜぇぜぇと息も絶え絶えなみほに水を渡す。

「…………ぷは、そもそもなんで守矢君がここに居るの!」

おぉー、ペットボトル一気飲みとは。

相当喉渇いてたんだな。

 

「携帯の電源切ってるから、まほ経由でちょっとな」

「……お姉ちゃん」

「今のみほを見ていられなくてな……」

「でも、守矢君を呼ぶことはないと思うんだ!?」

「それにエリカだって心配してんだぞ?」

「うん……ずっと声は聞こえてたよ……ごめんね……」

「べ、別に、私が自分の部屋に入りたかっただけだし?」

あー、ここエリカの部屋でもあったっけ。

食い散らかして悪いことしたなぁ……。

「赤星さん、あの後大丈夫だった……?」

「ごめんなさいみほさん!私達のチームが迷惑かけちゃったから……」

「違うよ、あれはただの事故で赤星さん達のせいじゃないよ」

「でもそのせいでみほさんが……」

「あぁ、そこら辺は俺も納得してないな。

ちょいと釘刺したし問題ねぇだろ」

「何したの!?守矢君!みんなに何したの!?」

特に何もしてないがなぁ。

お前達も考えろって言っただけだぜ?

「特別なことは何もしてないさ。

中学の時、母さんと来た時みたいに思った事を言っただけだが」

「赤星さん、みんなの表情どうだった……?」

「えっと……何人かは思い当たった節があるのか下向いてましたけど、

大体の人は荒谷さんを睨んでましたね」

「何で守矢君は敵を作るのかなぁ!?」

「プラウダにも聖グロにもサンダースにも同じように

言ってるんだがなぁ……まぁ、校風ってこともあるだろうが」

 

 

聖グロもだがこんなこと言うと大体反発される。

共通点としては何かしら大きな力が働いてる高校だな。

 

黒森峰なら西住流。

こっちに関しては直接的ではないな。

自分達で校風と流派に縛られにいってるようなもんだからな。

そこらへんをまほ、みほ、エリカ辺りがどうにかしてくれると思ったが。

戦闘中の意識の違いがここまではっきり出るとはなぁ。

潤沢な選択肢があるにも関わらず選ばないしもったいねぇよなぁ。

 

 

 

聖グロならOG会だろう。

あれは手が付けられん。

完全に何か勘違いした連中の集まりだ。

ダージリンが頭抱えるのも無理ねぇわな。

運営や戦略、戦車の種類にまで口出してきやがって。

流石の横暴に母さんもキレたからな……。

最近はダージリンからクロムウェルが入ったって電話はあったな。

母さんの方にもえらくテンションの上がった電話があったって言ってたな。

……当時一番の驚きは電話一本でOGを沈静化させた母さんだが。

 

 

プラウダは思いのほか反発は少なかった。

ちびっこ隊長のカリスマ性は中学の時も健在で、

アイツにあれこれ言ってたから誰も何もいえなかった、

と言うのが真実かもしれんが。

だが、外から見るとちびっこ独裁政権に見えるが、

その実、部下のことはちゃんと把握し有用な意見に関しては

積極的に採用している。

 

 

 

サンダースも同じくだ。

ケイの隊長としての方向性はカチューシャとまったく違うが、

選手や車両の運用方法や部下の士気管理に関しては目を見張るものがある。

各車両の車長の自由度はかなりあり、

試合中でも、隊長のケイに対する反論は許されている。

勿論その反論の理由は言わなければいけないが。

何でも言える隊長って言うのは一歩間違えば舐められてしまうが、

上手くいけば自分に不足してるものをどんどん補ってくれる利点もある。

当然部下からの信頼も厚くなる。

俺本人としてもケイの指揮下で戦った時はやりやすい思った。

ただ「指示は出さないわ!どんどん撃破しちゃって!」

と指示と言えないオーダーが来た時は車長が頭を抱えたが。

遊撃隊の適正のある人間ばかりのチームだったので適当って訳でもないのだ。

それに車長が自分の適性も含めて気づいてなかっただけで。

 

 

 

 

 

「それに、みほの事言われてカチッときてな。

わかろうとしねぇ人間が何言ってるんだ?ってな」

キリッとした顔で決める。

 

 

 

「守矢、すごく決まったような顔してるが大部分がボコだぞ」

「ん?そうか?輝いてねぇか?ボコ」

シュッシュっとシャドーボクシングをする。

「廊下で取り出したときは頭がおかしくなったのかと思ったわよ」

「みほが喜ぶかと思ってな、持ってきたんだよ」

トイレとかないからな、廊下で着替えるしかなかったんだ。

で、着替えてみほの部屋のドアをノックして、

 

「西住ー戦車道しようぜー!」

の一言で一発よ。

 

 

「タイミングが悪すぎるよ……ボコで喜ぶ気分になれないよ……」

「これ肌触りもすごいんだぞ?泣いてる赤ちゃんも爆睡させる勢いだ」

実際高かった、俺のお年玉数年分と小遣いがつぎ込まれている。

「う……ちょっと気になるかも……」

「そうだろそうだろ……てなわけで、ほれ」

俺は両手を広げて受け入れ態勢に入る。

「……え?」

「どーんと飛び込んでこい、ボコの優しさで包んでやる」

ほれ、ばっちこーい。

「いや、いやいやいやいや!おかしくない!?」

「このボコの肌触りは気になるんだろ?」

「ぐぬぬ……抗いがたい衝動が……」

「なるほどなるほど、あれだ、恥ずかしいわけだな」

まほにアイコンタクトを送る。

 

(ちょっとみほには色々吐き出させるわ。初めは勢いでいけるかと思ったが、

これはダメだな、飲み込んで我慢しようとしてる)

 

いつも通りポンコツ発揮しておかしなテンションのまま

全部ぶちまけて自爆してくれればそれが一番楽な方法だったんだが……。

無意識だろうな、全部吐き出そうとはしてないからな。

 

 

(なら二人の方がいいな……同じ黒森峰の関係者より、

部外者の守矢のほうが話しやすいだろう……みほを任せたぞ)

 

アイコンタクト終了。

これくらいは朝飯前よ。

 

 

 

「エリカ、飲み物がなくなったから買いに行くぞ」

「え、隊長!これほっとくんですか!?」

「……あ、私も一緒に行きますよ。結構な数買いますよね?」

「こ、この空間に置いて行かないでくださいよ!」

「みほ、守矢が暴走しないよう見張っててくれ」

「お姉ちゃんがそれを言うかなぁ!?」

「はっはっは、では後ほどだ」

 

まほ、エリカ、赤星さんが部屋を出て行き扉を閉める。

 

 

 

 

「これで問題ないな」

「うぅ……でも……気になるし……」

 

遠慮がちにボコに抱きつくみほ。

俺はそのままみほを抱きしめる。

ふわぁ、と声を出すみほ。

最高級だぜ?このボコの毛並みは。

そんじょそこらのボコとは比べ物になりませんよ。

 

 

 

しばらくみほは黙ってボコを抱きしめていた。

 

「……あったかいね」

ボコに俺の体温も加わってるからな。

「こんな風にボコに抱きしめられたのは初めてだよ」

「俺もこんな風に女の子を抱きしめたのは初めてだな」

「そっか……」

 

 

 

少しの間、静まり返る部屋。

 

 

 

 

「ちっちゃい頃、みほに言ったこと覚えてるか?」

無言のみほ。

 

「自分の信念を貫き通す事が大事だと思うって」

「うん」

「赤星さん達のほうが大事だったから助けに行ったんだろ?」

「うん」

「ただ、他のみんながそうじゃなかったってだけさ」

「そう……だね……」

 

みほはただでさえ溜め込むタイプだからな。

 

「辛かったな」

 

ぽんぽんと背中を叩く。

 

「……うん」

 

溜め込むだけ溜め込んだら飲み込めないくせに

無理して飲み込もうとするからな。

 

 

「今ここには黒森峰とかまったく関係ないボコしか居ない」

 

 

どっかで吐き出さないと潰れちまう。

 

 

「今は思いっきり泣いていいんだ、ボコが受け止めてくれるからさ」

みほの頭を軽く撫でてやる。

「泣いて吐き出してからゆっくり頑張ればいいさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みんなの私を見る目が……」

 

ぽつりと

 

「みんなの言葉が……」

 

ぽつりぽつりと

 

「怖かった……怖かったよ……!」

 

みほの口から少しずつこぼれる言葉。

「私の……私のせいで10連覇できなかったって……、

1年のお前が副隊長なんかしてフラッグ車に乗ったからだって……」

「おう」

 

ボコの胸元が涙で濡れる。

 

「西住流家元の娘なのに自分の流派さえまともに使えない無能だって……」

まほが聞いたらマジで粛清もんじゃねぇか。

「練習に行かなきゃって……でも何か言われるんじゃないかって……

外に出るのも怖くなって……」

「頑張ろうとしたんだな」

自分は間違ってない、間違ったことはしてないって。

「でもやっぱり私が間違ってたのかなって……」

 

やっぱり、って……抱え込みすぎなんだよ、みほは。

 

 

「守矢君……私の戦車道って一体なんだったんだろう」

西住の名前を持つ者として周りが勝手に期待しすぎてるんだな。

 

 

戦車道をやってるただの女の子だって言うのに。

 

 

 

 

「何かを切り捨てるよりもみんなで協力して戦って勝ったほうが楽しいって、

子供の頃言ってたじゃないか、それがみほの戦車道の根幹じゃないのか?」

 

「でも……私は……」

 

「戦車道って正しいとか正しくないとかでやるもんか?」

「それは……」

 

「俺はそのままのみほでいいと思うんだ。

誰かに何か言われようが俺はみほのような

戦車道のあり方があってもいいと思う」

 

 

俺はあの時のように頭に手を置いてくしゃくしゃと撫でてやる。

 

 

 

 

 

「お前は、間違っちゃいない」

 

 

 

 

 

 

 

その一言を聞いてみほが我慢してたものが一気に溢れ出した。

苦しくない程度に抱きしめる力を強くして声を殺してやる。

 

 

 

 

 

とりあえずみほの胸の内も聞けた。

最悪のタイミングではあったが丁度いい機会でもあるし……。

 

 

しほさんとちゃんと話し合ってもらわないとな。




原作1話に追いつくのはまだ時間かかりそうですかねぇ……。
ここまで間延びさせるとやっぱうっとおしいですかねぇ……?


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16・怖さを和らげます!

前回ははっちゃけすぎたと反省はしている。
だが、アーラシュさんもアーラシュフライトするから多少はね?

それと原作ではガラケーが主流でしたが、
この世界線では現代と同じくスマホが主流となっておりますゆえ
ご了承をお願いしますだ。

……こう言っておけば数話前に決勝を
動画で確認してたのも問題なくなるな!

それと後半にある黒森峰云々はオリジナルです。



今度面接なので初投稿です。


しばらく背中をさすっていると、

みほも落ち着きを取り戻してきた。

 

「みっともない姿を見せてごめんね、守矢君」

「気にすンな、誰だってそういう気分になるときがある」

「そっか……そうだね」

 

ボコから離れるみほ。

 

「えっと……久しぶりだね」

「こうやって会うのは久々だな、声はしょっちゅう聞いてたが」

「あはは……なんでも相談できる人ってそんなにいないから……」

「そこら辺黒森峰はお固そうだもんな。俺の行ってる学校なんて、

会長がほぼ学校の全権握って好き勝手やってるぞ」

「好き勝手って……」

「泥んこプロレス大会とか仮装大会とかやるっていってたな」

「……ちょっと楽しそう」

割と楽しいこと優先みたいなところあるからな、角谷の姐さん。

そんな話をしてると、部屋のドアが開きさっきの3人が戻ってきた。

 

「戻ったぞ」

「アイスティーしかなかったけど……みほ大丈夫よね?」

「エリカさん、それ以上はまずいです」

 

手には大量の飲み物とお菓子が。

消費した分ちゃんと買ってきたのか。

後で俺もお金渡しとこう。

 

「お姉ちゃん、エリカさん、赤星さん」

「どうした?みほ」

 

みほが3人に向き直る。

 

「心配かけてごめんなさい、私はもう大丈夫だから」

みほがぺこりと頭を下げる。

「謝るような事をみほはしたか?」

「でも……」

「でも、は無しよ。アンタそういうところは直した方がいいわよ」

「みほさんが立ち直ってくれたなら、嬉しいです」

3人共出来た子達だよなぁ。

 

 

 

 

(上手くやってくれたようだな)

(俺は何もしてないさ、みほが自分の大事なもんに気づいただけだ)

(それでも、だ。ありがとう守矢)

(本当に何もしてないんだけどなぁ……)

まほとのアイコンタクトでの会話が終わる。

 

 

 

 

「しかしだ、まだ問題が残ってるぞ」

「お母様だな?」

「師範は流石に読めないわよ……」

「あまりお見掛けはしませんが西住師範とはどういう方なのでしょう……」

 

赤星さんはあまり接点がないのか。

まぁ、あんまりこっちに顔見せてないんだろうな。

ちゃんと来てりゃ決勝はもっとまともだったろうに。

 

「えっと……いっつも難しい顔してるかな?」

「私達が中学生になってからはあまり笑ったところは見たことはないな」

「無駄に話しかけようものなら睨まれそうな感じかしら?」

「すごく怖いイメージしか沸かないんですが……」

まぁ、そんなもんだよなぁ。

 

()()()

 

二大流派の師範……次期家元としての顔があるしな。

だが、そうではない1面があるのを俺は知っている。

 

俺と……多分菊代さんや母さん、千代さん辺りは知っている。

本当はただの女性だということを。

 

 

 

先ほど内容は流石に見せられんと思ったが……。

あれは撤回させてもらう。

みほの為に、愛する娘の為に飛散しろっ、西住しほ……!

 

 

「では、そんな皆さんにいつもと違う西住しほ師範をお見せしよう」

 

俺は携帯電話のメール画面を表示する。

「これは、まほが中学生に上がりしばらくして送られてきたメールだ」

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

差出人:しほさん

 

件名 :ヾ(・ω・ )オネガーイ!

 

 

ここ最近、上の子が溜息ばっかりついています

学校で好きな子でも出来たのでしょうか?

それとなく聞いて元気付けてもらえませんか?

 

 

(人゚∀゚)タノム!

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

「えぇ……」

「……これ私についてだな」

「あの人のメールの大半はまほかみほだぞ」

「西住師範……顔文字使うんだ……」

「ちょっと意外ですね……」

「そういう機能があるから娘とのメールに使ってみては?

って言ってから割と顔文字使うようになったぞ」

 

初めはひどかったがな。

 

(∵)

 

の連発だぞ?

腹抱えて笑ったぞこっちは。

 

「いや、少なくとも私には用件を簡潔に一言なのだが」

「私に送られてくるのもそうだよ……」

「何で俺にしか送ってないんだ、あの人は。

俺はあくまで練習台だって言ってるのに」

「ち、ちなみに荒谷さんはこれに何と返したんですか?」

「無難に返したよ。内容はまほに関するものだから答えないがな」

 

 

それを聞いてまほが自分の携帯を弄りだした。

「あぁ、これだな。守矢から

【溜息ばっかで元気ないらしいけどなんかあったか?】って

メールが届いたんだ」

 

は?送った俺でさえ当時の内容なんて正確に覚えてないぞ?

 

「ちょっと待て、まさか保存してあるのか?」

「?当然だろう、守矢からのメールは全部保存してあるぞ。

さすがにこの端末に全部は入りきらないから、パソコンに

バックアップを取ってる形だが」

「重い……重いよお姉ちゃん……」

みほが頭を抱える。

「ちなみに私は【同学年の子からしょっちゅう呼び出されて

困っててな、結婚を前提に守矢が付き合ってくるのであれば沈静化するんだが】

と返してるな」

 

「「「……」」」

3人共無言で俺を見るな。

 

 

「あの時は返答に困ったぞ、まほの事嫌いじゃねぇし。

ただ、まほの家に行ったっきり会った事なかったんだぜ?

まぁ、メールと電話はしてたけど」

「こ、困るとかそういう内容じゃないよそれ!」

みほが慌てた様に声を上げる。

「先ほども言ったが、私の気持ちは伝えたはずだろう?」

「出会った初日じゃねぇか」

そうでなくても俺の他にもいい男は居るっての。

「ち、ちなみに守矢君はなんて返信したの?」

「ん?【お友達からで】だ」

「守矢君はまだまともでよかったよ……」

 

俺を何だと思ってるんだ、みほは。

 

 

「荒谷さんは隊長のメールを受けて西住師範にはなんと……」

お、気になるのかい?赤星さん。

そういう好奇心嫌いじゃないぜ。

しほさんにはもうちょっとカリスマブレイクを

していただかないといけないからな。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

送り先:しほさん

 

件名 :まほちゃんの件

 

 

まほちゃんがとても可愛いので同級生の男の子から

しょっちゅう告白を受けているみたいです。

真面目な性格なので断ってもその後に、

その子のことを少し考えちゃうんだと思います。

好きな子に関してはノーコメントで。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

「俺が送ったメールがこれだ」

「なんというか、真面目ね……アンタ」

「相手は年上だぞ?それくらいの良識は小学生でもあるっての」

「今、荒谷さんと話していなければ小学生が打ったメールとは思えませんよね……」

まぁ、ビジネスメールなんぞ腐るほど打った経験があるからな。

「私が可愛いとは嬉しいことを言ってくれる」

真実だからね、仕方ないね。

「で、お母さんからはどんなメールが返ってきたの?」

みほもちょっとわくわくしてんなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

差出人:しほさん

 

件名 :Σd(゚д゚*)

 

 

 

|・ω・`)まほは可愛いので仕方ありませんね。

|ω・`)みほも中学に上がればそうなるのでしょうか。

|・`)二人共そういったことは何も言ってくれませんし。

|`)母親から根掘り葉掘り聞かれるのは二人にとって嫌なことでしょうし。

|)母親としてどうなのでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(´Д⊂)グスン

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

「ダメだ……これを打つ西住師範の姿が浮かんで

内容が全然頭に入ってこない……!」

エリカ、それはひどすぎねぇか?

「いやこれ、普通にママ友に子供のこと相談するお母さんですよ……」

そのご意見はごもっともです。

 

 

 

「お姉ちゃん……私達もっとお母さんに甘えて良かったのかな……」

「……かもしれんな、負担にならないようしてきたつもりだったが」

やっぱりこいつを見たみほとまほは少し考えてしまったか。

 

 

お互い気をつかっちゃってるんだよ。

まほは同年代と比べても精神的な育ちが早い。

家の事情なんかも察する聡い子だ。

そんなまほの後姿を見て一緒にいるみほもそれに合わせる様に

育ったが故の母親と姉妹のすれ違いだ。

俺も何となく察してはいたが簡単に踏み込んでいい場所でもないからな。

二人が何かを言ってくればって思ってたが相談なかったし。

 

だがまだ取り返せないほど時間がないわけじゃない。

まだまだゆっくり関係を改善していけばいいさ。

 

 

 

「しかしこれ……もはや昼の帯番組のお悩み相談室ね……アンタいくつよ……」

「これお母さんが私と同じ年の子に送ってるんだ……」

「照さんならまだ納得いくんだが」

「あれ、荒谷さん。これにも返信してるんですね」

「あ、待て!それは不味い!」

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

送り先:しほさん

 

件名 :(ノ_・。)ノ□ヾ(・ω・ ) ナミダヲオフキ

 

 

 

まほちゃんはかなり同年代に比べればかなり大人ですから。

忙しいお母さんに迷惑をかけたくないと思っているのでしょう。

みほちゃんも可愛いですが、まほちゃんと比べてると

幾分か人懐っこいのでまほちゃんよりもそういう体験が

多くなるかもしれないです。

 

いつかみほちゃんやまほちゃんがしほさんを頼った時、

ちゃんと話を聞いて、理解してあげた上で、

西住家の女としてではなく、母親として話してあげてください。

 

もし、その時に西住家としての立場を取るのであれば、

みほちゃんとまほちゃんの性格上何も言わず受け入れた上で、

無理をすると思います、二人共根が優しすぎるので。

無理しすぎて二人の中で何かが壊れるかもしれません。

そうなる前に僕と……おそらく母さんもですが、

しほさんから二人を離した上で、

しほさんの敵になると思ってもらって結構です。

 

 

僕は二人の味方なので。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

「きゃー!エリカさん!これ!これすごいですよこれ!」

テンション爆上がりだな、赤星さん。

「ある意味尊敬するわよ……よくこんなクサいこと書けるわね」

そう言いながらガン見するの辞めましょうや。

「あの……守矢君……あの……はぅ……」

顔を赤くしてこっちをチラチラ見るんじゃあない!

「守矢、お母様への挨拶が終わり次第お母様への挨拶を済ませよう」

もはや、なにを言ってるのかわからねぇぞ。

……おい、お母様とお義母様ってことか?

話を変えなきゃずっとこの話題で盛り上がりそうだな……。

強引に打ち切るか。

 

 

「盛り上がってるところ悪いが進展は何一つしてないからな」

 

「「「あ……」」」

 

盛り上がるために見せたわけじゃないしな。

 

 

「はい、今のメールを見て君達はどう思いましたか?」

4人をびしっと指差す。

 

 

「お母様も意外と普通の人だったんだな、と」

「うん、何でも出来る完璧超人だと思ってた」

「西住師範って意外とお茶目な部分もあるのね」

「隊長とみほさんのこと、ちゃんと考えられてるんだなと思いました」

 

うんうん、いい傾向だ。

 

「では、それを踏まえて今から西住本家に吶喊して、

しほさんと喧嘩する度胸はありますか!?」

 

「「無理よ(ですよ)」」

と、エリカと赤星さん。

ま、そうなるな(ZIUN師匠)

 

「西住流に撤退の二字は無い」

どこぞの圓明流のような覚悟だな。

 

「私は……私の戦車道をする為に、前に進む為に、

お母さんとちゃんと話すよ」

よし、みほの覚悟が一番大事だからな。

これならいけるだろ。

 

 

「今回は、みほの戦いだ。()()()()のはみほだ。

みほの覚悟さえ固まってれば何の問題もない」

 

 

「みほ、お姉ちゃんは応援しているぞ」

ふんすっ、と両拳を握る。

まほも戦力として使えりゃ完璧だったが……駄目だからなぁ。

 

 

「直接って……アンタ本当に何する気よ?」

「そもそも西住師範に勝てる場面が想像つきませんよ……」

 

甘い、甘いなぁ二人共。

 

 

「あのしほさんだって苦手なものがあるんだよ。

そこを狙って奇襲を仕掛ければまず間違いなく勝てる」

多分余裕で、ぐうの音も出ないくらい完封できる。

 

 

「奇襲ってアンタ……」

「守矢、あんまり無茶なことならば私は止めるぞ」

「みほさん、苦手なこととか見当がつきますか?」

「つかないよぉ……」

 

 

そりゃ弱点だもの、簡単には話さないさ。

しかし俺は違う。俺は知っている。

初め聞いたときはマジか!?と思った。

この勝負、みほなら相手にチャンスを与える事無く勝てる。

 

「大丈夫だ、別にド深夜に夜襲かけたりはしないさ。

正々堂々手段を選ばず真っ向から不意を討ってやるさ」

 

 

 

では、その奇襲の仕込みをはじめましょうかね。

 

 

「まほ、実家に電話してくれないか?」

「家に?」

「あぁ、んで菊代さんが出たら変わってくれ」

「わかったが……何をするんだ?」

 

そう言いながら電話をかけるまほ。

 

 

「もしもし、まほです」

相手は誰かな?

「はい……それなんですがちょっと守矢と変わります。

彼が用事があるとのことなので」

 

お、一発で菊代さんに当たったか。

万が一しほさんに出られたら身構えられちゃうからな。

慎重を重ねないとな。

 

 

「もしもし、荒谷です。菊代さん、お久しぶりです」

『本当にお久しぶりです。今熊本にいらっしゃるんですか?』

「えぇ、まほとみほに会いに熊本に」

『それはそれは、お嬢様たちもお喜びになったでしょう?』

「来た理由が理由なので、みほとは初めは気まずい所では無かったですが」

『あぁ……何やらみほお嬢様がいわれのない中傷を受けているとか』

「菊代さんはみほの件はどう思います?」

『……そうですね、西住家の家政婦としてこちらに

お世話になっていますのでそういった差し出がましいことは……』

「まぁ、そうですよね」

『……これは独り言なのですが、あの戦闘とあの結果で

みほお嬢様に全ての責を負わせるのであれば、今の黒森峰は合わないかと。

このまま無理に嫌々続けるくらいなのであればいっその事戦車道を

辞めた方がよろしいのではないかと思います。

元々みほお嬢様はどちらかといえば照様や守矢様のタイプだと思いますので』

 

見るとこはきっちり見てくれてるし、

言うことはきっちり言ってくれる人だな。

 

 

 

西住家家政婦、井手上菊代さん。

 

 

 

「流石、笑う虎と言った所ですか」

『照様から昔の話を聞いたんですか?少し恥ずかしいですね』

 

 

戦鬼・西住しほの右腕にして唯一彼女が指揮を任せられる選手。

ティーガーⅡを駆る元黒森峰副隊長。

 

 

 

 

当時、他選手から口々に出ていた名がラッフィングティーガー(笑う虎)

 

 

母さんの話だと、どんな事態だろうがキューポラから身を出す菊代さんは

絶対に微笑を崩さなかったらしい。

それが逆に他の選手からは不気味に見えたのだと。

まぁ、追い詰めてる相手が不適に笑ってたらそら不気味だわ。

しかも実力は西住しほの折り紙つき。

菊代さんもそれがわかってるから実践してたんだろうって言ってたな。

 

 

「その副隊長さんから見て今回隊長はどのような感じだったでしょう?」

『私も一緒に試合を観戦させていただきましたが、

怒るというよりは何というか、心配したり呆れたりで忙しそうでしたね』

「呆れていたのは、負けたからですかね?」

『それは違います、そうであれば西()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「それを聞いて安心しました……そこで折り入って菊代さんにお願いがあるんですよ」

『可能なことであればお手伝いいたしますが』

「今から、みほとまほ。後は俺を含めて3人連れて行くんですけど」

『そうなのですか?』

「しほさんからみほに呼び出しの電話があったみたいで」

『あらあら、それでは晩御飯など考えないと』

「それでですねしほさんには内緒で……」

 

俺は菊代さんにどうして欲しいかを伝えた。

 

『えっと……どういうことでしょう?』

「しほさんの事ですから、準備万端で会いに行ったら

心の内に思ってることを言わずにキリッとしながら

無難なことしか言わないと思うんですよ」

『奥様も不器用ですからね……』

「今後の親子関係の為にも、ここは腹を割って話すべきだと思うんです」

『そこはまぁ、私もわかりますが……』

 

「なのでしほさんに対して話の途中で奇襲を仕掛けようかと」

『いや、そこが私にはさっぱりわからないんですが……』

 

「しほさんは思ってる以上にぽんこつですからね。

ちょっと揺さぶれば本音が駄々漏れになると思うんですよ」

『揺さぶるって……あぁ、だからですか』

「察していただけました?」

『みほお嬢様であればそうですね……間違いないかと』

「ちょっとくらい喧嘩腰になっても止めないでくださいよ?

今のこの状態だったらそのくらいが丁度いいと思いますから」

『わかりました、準備についてはこちらでも進めておきます』

「助かります」

『それにしてもよく知っていましたね?奥様のこと』

「メールで相談受けまして……」

『納得いたしました。では準備がありますので』

「はい、宜しくお願いします」

 

俺は通話を切ってスマホをまほに返した。

 

 

 

「これで仕込みは済んだ」

「悪い顔してるわよ、アンタ」

「正直言うと楽しくなってきた」

「荒谷さん、それはちょっと……」

「私どうなるんだろ……」

「みほはまずは思いの丈をしほさんにぶつけるだけさ。

後のことは俺に任せろ。」

「わ、わかった」

「まほは……」

「泊まりになるのだろう?寮監には私が話を通しておく。

お前達は先に寮の玄関に行っててくれ」

ほんとに出来る女だよ……まほは。

 

 

 

 

 

 

「んじゃ、西住流次期家元を奇襲しに行きますか!」




次回はまたおふざけが大量に含まれる予定です。


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17・奇襲開始です!

以前お話したとおり、おふざけ成分があふれ出ています。
今更過ぎますがキャラ崩壊がとんでもないことになっています。
これ誰?となる思われる方もいらっしゃると思います。
でも……とまらなかったんやなって……。



面接の時、確かな手ごたえの無さを感じたので初投稿です。


「戻りました」

「おかえりなさいませ、奥様」

 

外出から帰宅すると菊代が出迎えてくれた。

 

「私が不在の間、何かありましたか?」

玄関でパンプスを脱ぎながら菊代に問いかける。

 

 

 

 

 

『みほ、先日の決勝でのことについて話があります。

一度家に帰ってくるように』

 

 

……今日、みほに連絡を取った時自分の言った言葉だ。

 

 

正直、来るとは思えない。

 

 

今のみほの黒森峰での扱いや状況は知っている。

あの場からみほを離すために連絡を取ったのだが、

我ながらもっと違った言い方は無かったのだろうかと思う。

……明日にでもまほを通じて連れてきてもらいましょう。

 

「あぁ、先ほどお客様が尋ねてこられたので応接間にお通ししておりますよ」

「客?私に?」

 

誰か尋ねてくる予定などあったか。

そもそも私がいつ帰ってくるかわからないのに待っていたのか。

 

「えぇ、帰ってくるまで待たせて欲しいと」

「そう……わかりました、すぐに向かいます」

 

私は上着を菊代に預けると応接間へと向かった。

 

 

 

 

「おかえりなさい、お母様(さん)」

「お、お邪魔しています西住師範」

 

「菊代も人が悪いわね……」

 

 

応接間に居たのは、みほ、まほ、みほと同級生の逸見。

そして……。

「お久しぶりです、しほさん」

我が友人の息子、荒谷守矢君だった。

 

「いやぁ、唐突にまほとみほに会いたくなって、

会いにったら何の偶然か家の方に帰るって聞きまして、ご挨拶にと」

「……何故、このタイミングでみほとまほに会いに行ったのかは聞きません」

聞かなくてもなんとなくわかりますから。

おそらくまほ辺りからみほの事を聞いて会いに来たといったところでしょう。

 

 

それよりも今は大事なことがある。

 

「みほ」

「は、はい」

 

私の声にびくっとする娘。

 

「先日の全国大会の決勝、あれはなんですか」

「……道の崩落で戦車が1両、河川へと落ちて……」

「それで?」

「車両は特殊コーティングもされてるけど、

車両内への浸水ももしかしたらあるかもしれないって、搭乗員の救助を……」

 

やはり、この子は優しすぎる。

 

「西住流がどのような流派か、わからないわけではないでしょう?」

「それは……」

 

「あなたも、西住流の名を継ぐ者なのよ」

あぁ、私はこんなことを言いたいわけではないのに。

 

「西住流はどんなことがあっても前に進む流派」

みほにはできないとわかっているのに。

 

「強き事、勝つことを尊ぶのが伝統……」

「でも、お母さん……」

「犠牲なくして、大きな勝利を得ることは出来ないのです」

口から出るのは西住流師範としての言葉。

 

 

以前、彼にはっきりと伝えられた。

自分はまほとみほの味方だと。

もし、母親としてではなく西住家としての

立場を取るのであれば敵になると。

 

守矢君がこちらを見ている。

じっとこちらを見ている。

 

こういう言い方をすればみほは我慢してしまう。

わかっている、わかっていることなんだ。

だが私の口から出てしまった。

ごめんなさいみほ……ごめんなさい……。

 

 

 

 

 

「私は……私はそんな戦車道は嫌だ……!」

「!!」

 

だが事態は思わぬ方向へと転がった。

初めて、初めてみほが西住流師範としての私を拒絶したのだ。

 

 

驚いた私は、守矢君の口角が上がったのにも気づかなかった。

 

 

「私は!私の戦車道はみんなと戦う戦車道!

誰かを何かの犠牲になんてさせない!みんなで勝つ戦車道なの!」

 

隣に居る逸見は驚き、まほも眼を見開いている。

そんな中、顔色は伺えないが守矢君だけが落ち着いていた。

まるで、みほが西住流を否定するのを知っていたかのように。

 

……なるほど、彼がみほを立ち直らせたと言うことね。

 

 

お節介なところはあなたにそっくりね、照。

守矢君とあなた、姿がダブって見えるもの。

 

 

みほの目もいつもと違う。

何かを伺うようないつもの目じゃない。

何か決意をしている目だ。

 

「あなたは西住流を否定するのですか?」

「否定はしないよ……でも私の戦車道とは違うの!」

 

 

思えば、みほがここまで何かを言ってくることはなかったわね……。

 

 

「私は!私の戦車道がしたいの!」

 

 

 

まほは既に私の手から離れている。

私と同じような道ではあるが彼女は彼女なりの戦車道を進み、

そしてみほも自分の道を進もうとしている。

 

 

「ですが、あなたは黒森峰の生徒……あなたの勝手を許すわけには行きません」

「わかってる……だから……私は黒森峰を離れようと思うの」

 

衝撃的な一言だった。

 

「はぁ!?」

「み、みほ!?」

驚く二人。

この二人も知らなかったのね。

 

「おぉ、そこまで考えてたか。なかなか覚悟決めてんなぁ」

素直に感心する守矢君。

 

 

「あなたは黒森峰の副隊長……そんな勝手が許されると思ってるの?」

「みんなには悪いと思ってる……でも……」

「そう思うのであれば……」

 

だが、言い切る前に守矢君が割って入ってきた。

 

 

 

「自分の信じたい道に気づいたんだ、

その道を進みたいと思うことは別に悪くはないさ」

みほの頭をくしゃくしゃと撫でる守矢君。

 

 

 

「しほさん、このままじゃお互い平行線で結論は出ない。

しほさんは黒森峰から転校させる気はないんだろ?」

 

 

「当然です」

どういう道を歩もうが構わない。

だが、()()()()()()()()()()()のはみほだけなのだ。

 

 

 

「みほは、今後戦車道をやるかどうかは別として、

今の黒森峰に居る気はないんだろ?」

 

 

「そう……だね……もう、黒森峰に私の居場所ってなくなっちゃったし」

 

 

みほもみほで譲る気はないようね。

このままでは戦車道自体辞めると言い出しかねないわね。

守矢君もそれがわかってて戦車道をやるかどうかは別、

と言っているのでしょうし。

 

 

「だよなぁ……なら、もう勝負して白黒付けるしかねぇなぁ」

……ん?妙な方向に話が言ってないかしら……。

 

「さすがに今から戦車乗って勝負だ!とはいかねぇからな。

こちらで今からすぐに出来そうな勝負事を用意しておいた」

 

「ちょ、ちょっと待ちなさい。

守矢君、話の方向性がまったく見えないわ」

おかしい、我が友人(荒谷 照)とダブって見える。

 

 

「それでは……お願いします!!!」

お、お願い……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

みんながぽかんとしている最中、応接間の障子が勢いよく開かれた。

 

バン!バン!

 

そこに居たのは小さいシンバルのようなものを

打ち鳴らす赤星さん。

 

「あ、赤星?」

「何やってるのよアンタ……そして何させてんのよアンタ!」

「も、守矢君……赤星さんの顔真っ赤だよぉ……」

 

教えてなかったからか動揺してるのはしほさんだけじゃなかった。

ちょっと奇をてらいすぎたか……?

まぁいいか、面白い方がいいだろ。

 

しばらくシンバルを鳴らしていた赤星さんは

シンバルを床に置き赤星さんがポケットからメモを取り出した。

 

あれは俺が事前に渡しておいたカンペだ。

 

 

ちらちらとこちらを見る赤星さん。

本当にやっていいのかどうか聞いてきてるな。

 

俺はオッケーと言わんばかりに親指を立てた。

 

 

赤星さんがすーっと息を吸う。

勢いのままにやった方がいいんだぜ、こういうのは。

 

 

 

「やぁー!やぁー!西住ーっ!しほーっ!」

 

 

 

「「「「……」」」」

 

 

 

おー、これは完全に奇襲成功してしまったな。

敵にも味方にも。

 

「本年4月!忘れもぉしない!島田流家元との『お花見飲み比べ対決』!

貴殿のぉ、堂々たる飲みっぷり!情けない泥酔姿!

敵ながらぁ!あっぱれであった!」

 

 

ガタッ!と立ち上がるしほさん。

 

「待ちなさい!何でそのこと知ってるのよ!」

「ひぃ!?わ、私は荒谷さんにメモを渡されてこれを読んでくれって……」

「勝負にはまったく関係ないから大丈夫!」

「それだとただ、私が貶められてるだけじゃない!」

「だって勝負だ!じゃ味気ないだろう?」

 

面白くないしな。

 

「情報源は千代さんなンで、文句なら利用できる情報を流した島田流にどうぞ」

「おのれちよきちぃぃぃ!!!!」

 

情報源は千代さんとは言ったが、この現場に居なかったとは言ってないんだがな。

 

 

実はこの件、後片付けさせられたのは俺なんだよな。

母さんから、二人が倒れたと聞いたときは慌てたさ。

言ってみたらものすごい酒の臭いをさせて

人様に見せるにはちょいと刺激的な格好で、人様には決して見せられない顔をした

島田流家元と西住家師範がそこにはいた。

 

 

ちなみにそのときの姿は写メってありまぁす!

 

 

 

しっかしこの時点で十分動揺誘えてんじゃねぇかな……。

でも面白いし、しほさんのこの姿はみんな普段見れないだろうから放置だな。

 

 

面白いし(2回目)

 

 

「しかーし!みほの母親と言う立場上……これを聞かれようが、

おめおめとみほを黒森峰から転校させるわけにはいかない!」

 

 

「そ、そうよ!勝手なことはさせません!」

 

動揺しすぎィ!

 

「よって!ここに!『晩御飯どっちが美味しく作れるかな』を、この西住家にて!

執り行う事ぉ!ここに!もうしこーむ!!!!」

 

それだけ言うと赤星さんは障子を閉めてしまった。

 

 

「「「「……」」」」

静寂が部屋中を包む応接間。

 

 

「効果は抜群だったな!」

奇襲大成功!と。

「何よこれ!」

「ん?奇襲だろ?」

「違うそうじゃない、そういうことを聞きたいわけじゃない」

「戦車でドカンドカンするよりも、こっちの方が面白いじゃねぇか」

「えぇ……」

 

 

 

若干震えるしほさん。

的確にウィーク狙ったからな。

 

「今のは聞き間違いかしら?」

「なにがです?」

「晩御飯を作るとかどうとか……」

「俺らが行くことを菊代さん知らなかったンでな、

晩御飯の準備してなかったらしい。

じゃあ勝負のついでに作っちまったら早いなってな」

 

 

しほさんが固まった。

 

しばらくした後、俺に鋭い視線が刺さる。

 

 

「……図ったわね?」

「なんのことやら」

「答える気はないと……それはそれでまぁ、構いません。

西住流に撤退の二字はありません。

それに私も日々精進を重ねているのですから。」

 

まほと同じ事言うじゃないか。

流石親子。

しかしこの言い方……少しは任せずやっていたと言ったところか。

が、俺は知っているぞ。

付け焼刃でしかないということを。

 

 

「作る料理はお互いの評価を比べやすいようパスタにしようか」

「パスタかぁ……色々作れるけど……」

「パスタ……まぁ、そばみたいなものでしょう」

 

男でも作れる簡単料理だが、ソースや工夫次第でかなりバリエーションが増える。

俺も一人暮らししてる時にしょっちゅう作ってたな。

ちなみにしほさんから零れた危険な発言は無視する。

俺は何も聞いてない、いいね?

 

 

「今この場に居ない人にも審査の協力してもらうけど、

二人であんまり量作ると食べきれなくなる可能性もあるからな?

適量で頼む、足りなきゃ俺が追加で作るから」

 

 

その発言にエリカが驚いたような顔をする。

「アンタ料理なんか出来るの?」

「エリカ、守矢の料理の腕はすごいぞ」

「中学生の時に作ってもらったけど美味しかったよ」

「なんというか意外ですね」

「うちの台所は俺が仕切ってたからな」

 

母さんできねぇんだよ……料理。

 

 

「だが守矢、これで何を決めるって言うんだ?」

「そうだな、それも発表しておかないとな」

「は、発表?」

 

 

「よろしくお願いします!」

 

再び勢いよく開かれる障子。

 

プワァーと笛の音が響き渡る。

 

 

「やぁー!やぁー!西住ーっ!しほーっ!」

 

「ま、また赤星が犠牲に……」

哀れむような目で赤星さんを見るエリカ。

 

 

「このぉ!対決に勝てばぁ、みほは黒森峰に残ろう!

しかしぃ負ければぁ、みほはぁ黒森峰を去っていく!

もーうわかったであろう、西住しほ!

これよりー行うはぁ!みほのぉ残留を賭けたぁ!

調理対決とぉ!なるのだぁー!!!!」

 

バタンと障子が閉まる。

 

 

「なぁ、守矢。これは必要なことなのか?」

「んー?面白いだろ!」

「これ、赤星が哀れすぎない!?」

「俺がやってもよかったんだけど赤星がどうしてもみほの力になりたいって」

「それでオッケー出すってあの子ちょっとおかしいわよ……」

 

 

俺はしほさんとみほに激励を送る。

 

「しほさん、みほの残留を賭けて頑張ってください」

「ちょっと待ちなさい」

「みほ、自分の戦車道のために頑張れ」

「こ、これはいいのかなぁ……」

 

お互いひかねぇもの、しょうがないだろ。

一番初めにしほさんが引いてくれるようであれば、

俺だって奇襲するつもりは無かったさ。

そうじゃないんだから仕方ないね。

 

「どうした?しほさん」

「どうしたじゃないわ、勝手に決めて

そんなものを私が認めるとでも?」

「ほぉ、やっぱ認めないと?」

「当たり前です、こんなことで娘の人生を左右させられません」

素直になってりゃここまでする必要は無かったんだがな。

「……だったらいいんだな?この事、常夫さんに報告しても」

「あ、あなた何を……」

 

知ってる弱点、()()()()じゃないだぜ?しほさん。

 

「常夫さんにみほの意見をガン無視して

黒森峰で戦車道をさせようとしている、と」

「そ、それがどうしたのよ……」

「常夫さん、怒るだろうなぁ。

日頃からみほとまほに対して母親としての

接し方をするように言われてるんだろ?」

「あ、あなた汚いわよ!?」

 

この人、常夫さん好きすぎるんだよ。

世間体を気にして誰か居る時はキリッとしてるけど

二人きりだと割りと甘えて来るんだと常夫さん言ってたもんなぁ。

 

 

 

「こうなったらやばいよなぁ、

好きだった戦車を嫌いになるみほを見たら

常夫さんも考えるところが出てくるよなぁ……。

当時小学生の俺でさえ思ってたんだから、

大人の常夫さんはみほ連れて家を出る可能性もあるよなぁ……」

 

 

 

これは絶対にない。

そんなことするくらいなら徹底的にしほさんを説得する。

娘も溺愛してるがしほさんに対するものも負けてないし。

 

あの人、しほさん好きすぎるんだよ。

世間体を気にして誰か居る時はキリッとさせてるけど

二人きりなら徹底的に甘やかしたいって言ってたもんなぁ。

 

 

 

やべぇ、砂糖吐きそう。

 

 

 

「ぐぬぬ……」

「この勝負さえきっちり受けてくれるんなら、

常夫さんにも黙っとくんだけどなぁ?」

「い、致し方ありませんね……!」

 

もうこの時点でしほさんは一杯一杯なのがわかる。

俺はさっき()()()()()()()()()()()()()()()()って言ったじゃないか。

 

 

 

常夫さんをその中に含まないとは言ってないよね?(ニッコリ

 

 

 

 

 

「あぁ、そうだ。それともうひとつ言うことがあったんだった」

「ま、まだ何かあるのですか?」

「勝負に当たってこういう条件を付けさせてもらおうかな、と思ってまして」

「じょ、条件?これ以上何かあるっていうの?」

 

「お願いします!」

「ま、また!?」

 

三度勢いよく開かれる障子。

ピーッ!と勢いよく3方向に伸びるぴろぴろ笛。

 

 

「やぁー!やぁー!西住ーっ!しほーっ!」

 

「また赤星が……」

もはややぶれかぶれになってる赤星さんを見て、

ほろりと涙を流すエリカ。

アイツだってみほの為に頑張ってんじゃねぇかよ!泣くなよ!

応援してやれよ、応援してやれって!

 

「この対決に負けたならぁ、しほさんにはぁ!

生き地獄をぉー味わってもらおう!」

 

 

「な、何でそんなものを……」

 

「みほは負けたら居場所の無い黒森峰戦車道に逆戻りで

数人味方は居るとはいえ生き地獄に近いんだ。

それにみほを失って痛手を受けるのはあくまで黒森峰であって、

勝っても負けてもしほさん自身は何も痛むところは無いんだぜ?

ただ娘がちょっと遠いところに転校するだけ何だから。

危険性(リスク)ゼロでみほを手に入れようなんて……、

そりゃあ公平じゃないですよ」

 

 

娘が行きたい学校があるから県外に行きたいって、言ってるだけ何だよな。

何か二人共親子関係がマッハでやべぇみたいに感じてるけど、

俺からすればそれくらいで親子の縁は切れないだろ……と思うんだよなぁ。

親の方が勘当する、娘の方が縁を切るとかしない限りは、だけど。

 

 

 

「なに?みほがちょっと遠くへ行くことより、

苦しい生き地獄がぁ、あるものかって?」

 

 

いや、あるよな?

一生会えないとかならまだしも

ちょっと遠くに転校するくらいであれば

普通に他にも一杯あるよな?

自分でカンペ書いておいて何だがもうちょっと

他の事書けばよかったな。

 

 

「うは!うは!うはは……あるじゃあないか……、

あるじゃあないかぁ、西住しほぉ」

 

「な、何をさせる気よ……」

 

「おまえはぁ、フリフリヒラヒラが大嫌いだ!

露出度の高い服がぁ大嫌いだ!戦車道連盟の広告の一環で

コスプレをしたときはぁ、ずいぶん辛かったそうじゃないかぁ……」

 

「だから何でそんなことまで知ってるのよ!」

「色々と情報源を持っているので」

 

 

これの情報源は母さん。

戦車道連盟は様々な分野とコラボを行っている。

戦車のよく使われる陸自などであれば自衛隊員を。

交通安全週間であれば女性警察官を。

アパレルブランド等ともコラボしておりその際はそのブランドの

衣装を着たりしている。

 

しほさんは贔屓目で見なくても美人だ。

そらもうそういう依頼は殺到する。

クールでバリバリのキャリアウーマンの様な立ち振る舞いから

女性警察官や自衛隊、服であればスーツやパンツなどの

きちっとした衣装を着る依頼が多いのだが、

極稀にとんでもない依頼をぶち込んでくる企業も居ると言う。

 

つい最近、母さんと共にとあるアイドル育成ゲームを

手がけている企業の依頼を受けたという。

30秒程度のCM撮影だ。

 

衣装を着て、そのキャラの様に喋るだけ。

誰でも出来そうな簡単なお仕事。

だがひとつ問題があった、アイドル、すなわち二人の着る衣装だ。

 

その衣装がすげぇフリフリのアイドル衣装と

すげぇ露出度の高いドレスのような衣装。

 

 

身長の低く実年齢より更に若く見え、こういったことにノリノリな

母さんはアイドル衣装に着替えて振り付けまで完璧にこなしたと言う。

ちなみに演じたアイドルの設定は自称永遠の17歳。

発言にところどころぼろの出る自称永遠の17歳。

余談ではあるが、そのキャラクターと違い戦車道で鍛えられた母さんは、

セットリストを休憩無しで完璧にこなしたそうな。

そのゲームやってるんじゃないか?母さん。

 

 

こうなると問題はしほさんだ。

確かにまるでしほさんをベースに作ったようなキャラは存在する。

以前は戦車道で素晴らしい活躍をする寡黙な隊長だったが、

デビューしステージに立ってからは聴く者見る者を魅了する妖艶な女性。

キャラのデザインも長い黒髪で釣り目気味のキャラとまるで本人。

 

 

 

だが、それをしほさんがやるかと言うとそれは否だ。

こんな素肌の見える衣装は絶対に着ないと頑なに拒否。

スタッフや戦車道連盟の方、うちの母さんも説得をしていたが、

本人はそんなの知ったことかと拒否。

撮影が長時間止まってしまい、依頼した側も諦めようとした。

 

 

 

 

しかし、そこは長年の友人である母さん。

必殺の一言をしほさんだけにぎりぎり聞こえる程度で言い放った。

 

 

 

 

 

 

 

『そうかそうか、つまり西住流(きみ)はそういう流派(やつ)だったんだな?』

 

 

 

 

 

 

 

と、非常にわかりやすい煽り。

わかりやすすぎてもはや苦笑いの出るくらいのものである。

 

しかし、その効果は絶大だった。

 

 

『っ!やってやろうじゃないの!』

 

 

 

とやけくそになったしほさん。

奪うかのように衣装を取って更衣室で着替え

無事依頼を完遂したと言う。

 

この件で母さんは、

「しぃちゃんマジチョロイン」

と、不適切な発言を残していた。

 

 

 

ちなみに、その動画の経済効果はとんでもなかったそうな。

 

 

 

 

 

「んん?なんだと?

1着なら大したことないだと?」

 

「言ってない!言ってないわよ!」

まぁ、1着でも絶対に嫌だろうな。

 

「ぬは!ぬは!ぬはは!誰がぁ1着と言った?

ん?じゃ2着かって?」

 

もうノリノリの赤星さん。

いいぞいいぞもっとやれー!

 

「ぬは!ぬは!ぬはは!

着せ替え放題だ!満足するまで!ずっと着せ替えさせてもらうぞぉ!」

 

 

「嫌、それは絶対嫌よ!」

「今後2年間のみほに比べれば満足するまでなんですから

よっぽど楽ですよ、僕()も鬼じゃないんですから」

 

 

「お母様、諦めましょう。これもみほの為です」

しほさんを慰めるまほ。

 

でもなぁまほ……お前は()()()()()()なんだよなぁ。

つまり、お前もどちらかと言えば()()()()なんだぜぇ……。

 

「なぁ、西住まほぉ……」

「どうした?赤星」

「人事じゃないんだぞぉ……お前もぉ一緒に着せ替えられるんだぞぉ。

みんな満足するまで!西住しほと西住まほのぉ!撮影会をぉするんだぁ!」

 

「な、何故私が参加しなければならないんだ」

 

「そら、隊長だもん。戦力の低下は防ぎたいでしょ?

みほも渡したくは無いでしょ?」

「だが……しかし……」

「なぁに、しほさんが勝ってもまほが黒森峰を変えれば、

みほのやりやすい土壌を作ってやればいいだけじゃないか……。

みほも助かる、黒森峰も強くなる、いいことしかないぞぉ?」

 

 

「頑張れ!頑張ってお母様!!!!」

 

よぉし、まほは抱き込んだぞ。

 

「エリカ、身構えてるがお前は別に着せ替えられないからな」

「そ、そうなの……安心したとかじゃないわよ!?

そもそもなによこの展開!絶対おかしいわよ!!」

「だって、どっちも意地があるだろ」

「いや、それはそうだけど……」

 

もう一押しだな。

 

「エリカ考えても見ろ、確かにみほが勝ったら同じ学校で

戦車道は出来なくなるかもしれないが友人関係まで破綻するわけじゃないんだぞ?

それにまほの着せ替えはもう2度と出来るチャンスは無いぞ……。

満足度にはお前の満足度も含まれてるんだからなぁ……」

「ま、マジ?」

「当然だろ?何で副隊長だけが責任負わなきゃならんのだ。

せめて隊長は犠牲になってもらわないとな、主に俺の為に」

 

「みほ!頑張んなさい!応援するわ!」

「エリカ!?」

「隊長、私は黒森峰戦車道履修生の前に、

みほの友人です!みほの意思を尊重します!」

 

 

エリカもオッケーだ。

 

 

 

「あのぉ、これでよかったんでしょうか……」

「お、赤星さん。今回は悪かったな」

「いえ、私がお願いしたことですので……」

「まぁ、後は野となれ山となれって感じだな」

「でも、ちょっとふざけすぎでは……」

「これくらいで丁度いいんだよ、この人達は。

普段がちょっと固すぎるくらいあるんだから」

 

 

 

外じゃそうもいかないだろうけど。

家でくらい、もっと砕けて接するべきだ。

 

 

家族なんだからよ。

 

 

 




王道を征く……迷いからの決意ですよ。
原作はよくこんな簡単に転校できましたなぁ、と思ってました。
僕の知らない媒体で解説があったかもしれないけど。

でもやっぱ決意決める方が……ええんやなって。

なお、その後の奇襲のひどさよ。


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18・ビストロ西住開店です!

ちなみに僕は料理はほとんど出来ません。




ネクストキングのしほさんである
カモミールをクリアしたので初投稿です。


現在、夜の18時。そろそろお腹もすいてきたころ。

 

居間に設けられた特設の審査員席の前には二人の戦士が立っていた。

特設と言っても、人数の関係でいつものテーブルじゃ席が足りなかったので、

別の部屋からテーブルを持ってきてくっつけただけである。

 

『ぼっこぼこにしてやんよ』とでかでかと書かれた

ボコのエプロンを装着する西住みほ。

 

『今夜も電撃戦』と意味深な文字の書かれた

デザインのエプロンを装着する西住しほ。

 

 

「まずはみほにパスタ系の料理を一品作っていただきます」

「が、頑張ります!」

「その後、しほさんにも同じようにパスタ系を一品作ってもらいます」

「守矢君」

 

「なんでしょう?」

「なんで常夫さんまでそこに座ってるのかしら?」

 

審査員席にはしほさんの愛する旦那さん、

西住常夫さんもニコニコしながら座っていた。

 

「守矢君からしほさんが晩御飯作ると聞いてね、すっ飛んで帰ってきたよ」

「くっ……余計なことを……!」

「……母さんや千代さん呼ばなかっただけ有情だと思っていただきたい」

「常夫さん!私頑張るから!」

「うっし、じゃあみほ。早速台所で料理を作ってくれ」

「わ、わかった」

 

台所へと向かうみほ。

 

「後は……まほ、スマホ貸してもらえるか?」

「貸すのは別に構わないが、何をする気だ?」

「一般家庭に中継設備なんかそろえられないからなぁ」

 

審査会場(仮)にあるテレビにケーブルを差し込む。

 

「スマホの画面をテレビに映しても構わないか?」

「問題ない」

 

スマホにもケーブルを刺してテレビの映像出力を切り替えると

まほのスマホの画面を映った。

 

「おぉ、私のスマホがテレビに映ってるぞ」

「壁紙はみほか、お姉ちゃんらしくていいじゃないか」

「隊長の携帯ミラーリングして……あぁ、中継設備ってそういうことね」

「逸見さん、わかるんですか?」

 

エリカのやつは察しが付いてるみたいだな。

 

「設定をリアカメラにしてまほのスマホにビデオ通話すると……」

 

テレビの画面いっぱいに今の会場が映し出される。

 

「これで簡単だが台所の中継が出来るようになるって寸法だ」

 

遅延があるのはしゃあない。

一昔前の衛星放送だと思っていただければ問題はない。

 

 

「んじゃあ、俺は台所に行って中継してくるから」

 

 

俺は、スマホを構えたまま台所へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みほー、ちゃんと料理できてるかー?」

「まぁ、パスタくらいなら普通に……って、何で携帯構えてるの?」

 

冷蔵庫からひき肉を準備しながらこちらに反応するみほ。

 

「ビデオ通話でみほの姿を中継してるんだよ」

「や、やめてよ!恥ずかしいよ!」

わたわたとするみほ。

「見てるのは身内みたいなもんだ、問題ねぇよ」

「大ありだよぉ……」

「気にしたら負けさ」

「もう……」

諦めた様子で料理を再開するみほ。

 

 

「あ、しほさんにもだけど味付けとかそこらへんは手を出さないけど、

何か切るとか冷蔵庫からなんか出すとかアシストはするから言ってくれ」

 

それくらいなら手伝ってもいいだろ。

……じゃないとみほはともかくしほさんは怖ぇ。

 

これは、常夫さんからのお願いでもある。

「いとも簡単に指切りそうだからカバーしてくれ」と。

 

 

「んー、だったら手伝ってもらおうかな」

そう言いながら大量の水を入れた鍋に火をかける。

「玉ねぎとピーマンを切ってくれるかな?

玉ねぎはスライス、ピーマンは種をくりぬいて輪切りでお願いします」

「ん、任された」

スマホを台所が移る位置に固定して綺麗に手を洗う。

「守矢君、前より早くなってない?」

話している間にみほは厚切りのベーコンを短冊状に切っていく。

「ずーっと家で飯作ってるからなぁ」

みほの横に立って玉ねぎをちゃっちゃか切っていく。

「あ、相変わらず照さんって料理ダメなんだ?」

気づけばソーセージを数本斜め切りし終わっていた。

「みほは上手くなってるじゃねぇか」

ピーマンの上下を切り落として中の種を取り除いていく。

「食堂でご飯は出るけど、部屋のキッチンで自炊もしてたから」

みほはトマトピューレに少量のウスターソースを入れ混ぜ、

フライパンにも火をかけ始める。

「ずっとしてると嫌になるがやらなきゃやらないで落ち着かないんだよな」

種を取り除いたピーマンを輪切りにしていく。

「だよねぇ、自分の好きな味でご飯食べたくなっちゃうもん」

沸かしたお湯に塩とオリーブオイル、パスタを加えていく。

「さて……と」

熱したフライパンにオリーブオイルをひき玉ねぎを投入。

「ふむ……しんなりするまで炒めてからソーセージとピーマンか」

ここまでくると何作るかは大体予想が付くよなぁ。

「あ、パスタが茹で上がる時間だから鍋から上げてこれに入れてくれる?」

十分に火が通ったらケチャップを加え塩故障で味を調える。

「あいよ」

みほの指示通りに茹で上がったパスタを具材に放り込む。

「絡めてる間にこっちのフライパンもあっためてと……」

パスタを絡めながら別のフライパンにも火をかける。

「ふむ……ただのナポリタンじゃねぇな」

「ただのナポリタンじゃインパクト薄いから」

ナポリタンをお皿に盛り付け終わると今度は溶き卵を作り始めたみほ。

「あぁ、そういうことか」

「まずオリーブオイルは多めにいれてっと」

別に熱しておいたフライパンにオリーブオイルをたらす。

「ひき肉とベーコンから火を通して、ある程度経ったら今度は溶き卵。

トマトピューレも一緒に入れてトロトロになるまでかき混ぜてー」

出来たスクランブルエッグをナポリタンの上に盛り付ける。

 

 

「はい、守矢君直伝アンツィオ名物鉄板ナポリタンの完成ー」

 

 

通常の鉄板ナポリタンとは違うんだよなぁ。

アンツィオ高校に存在するアレンジされた鉄板ナポリタンがこいつだ。

 

……アンツィオに行った千代美さん頑張ってっかなぁ。

 

 

「ちゃんと美味しく出来てるかな……」

「見てたけど失敗なんて無かったさ、みんなに美味しいって言って貰おうぜ」

 

 

俺は出来上がった料理とスマホを手に取ると特設会場(仮)へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「出来上がったぞー……って、まほはどうした?」

会場に戻ると、ものすごい不機嫌なまほがいた。

 

 

「えっと……何があったの?」

後から来たみほも困惑している。

「みほ」

「な、なに?」

「楽しんでたな?」

「な、なんのことかなぁ?」

この有無を言わさぬ威圧感は試合のものと変わらんな。

 

「守矢!守矢!こっち来なさい!」

さりげなく席を立ったエリカに呼ばれた。

「まほのやつ、どうしたんだよ」

「どうしたじゃないわよ!どうしてくれんのよ!」

「何で俺とみほが責められるのかさっぱりわからん」

いや、わからんというより何故?

「あんだけ二人でいちゃついてればこうなるのもわかるでしょうが!」

「あぁ?いちゃつくって……料理してただけじゃねぇか」

「そんな風に見えなかったのよ!隊長には!」

まほの方を見てみる。

 

 

「なぁ、みほ。新婚さんごっこは楽しかったか?」

「し、新こ……た、楽しかったよ!もちろん!」

何故張り合う、そこは引くべきでしょうに。

「守矢君、さり気なく私が必要なもの渡してくれたりだとか……、

もうなんかわかってるって感じだよね」

何故そっからマウント取りに行くんですかみほさん。

 

 

「さらに戦火広げてるじゃないの!」

「今のに関しては関係ないと俺ははっきり言うぞ」

「どうにかしなさいよ!」

どうにかしろってなぁ……。

まぁ、俺は料理が出来る出来ないは関係ないしな。

 

 

「まほ」

「なんだ守矢、今みほと大事な話を……」

「俺は料理が出来る出来ないじゃなくて

美味しくご飯を食べてくれる人が好きなんだよね」

 

どっちかっていうのなら美味しいものなら美味しいと

ちゃんといってくれる人のほうが好きだからな。

その点まほは美味しいものならどこが美味しいかを。

好みに合わないのならどこが合わないのかを、

ちゃんと言ってくれるから作り手としては非常にありがたい存在だ。

 

「みほ、早く作ったパスタをみんなに配るんだ」

「ぐぬぬ……守矢君はどっちの味方なのかな!」

「はいはい、さっさと配って食べてもらいましょうね」

こういうのはさっさと話を進めてしまうに限る。

「ちょ、ちょっと!守矢君はどっちの……もう!」

納得のいかない面持ちをしているが我慢してもらおう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「んじゃ、みほの鉄板ナポリタンを食べてみてください」

 

みんながそれぞれみほの料理を口にする。

 

「うわ、これ美味しいじゃないの」

「みほさん!これすごく美味しいですよ!」

「うむ、これはいい。卵の甘みとナポリタンの味が非常によく合う」

 

学生さんたちの反応は上場だな。

 

「本当……みほお嬢様に後でレシピを聞いておこうかしら……」

「うん、ボリュームもあるし美味しいよこれ」

 

大人達にも好評みたいだな。

 

「で、しほさんは?」

 

ちゃんと対戦相手の評価も聞いておかないとね。

 

「……美味しいわね」

 

悔しそうで、でもどこか満足げに話すしほさん。

娘の成長が嬉しくないわけないんだよなぁ。

 

「では、次のしほさんの料理を食べた後で、

どっちがよかったか判定してもらいましょう」

 

 

 

 

さて、しほさんの料理はどんなもんかな?

俺はさっき呼ばれたときにビクっと

反応したのを見逃してないからね?

 

 

ちゃんと食べられるものが出るといいなぁ……。

 




自分で作ってみたけど鉄板ナポリタンはマジで美味い。
そんなに難しい工程も無いから作ってみるといいゾ。
料理が苦手な俺でも出来るんだからヘーキヘーキ。


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19・ぴすとる西住吶喊です!

面接で見下されたような目をされ半分切れてしまったので初投稿です。


「えー、こちらキッチンです」

通話中のスマホに向かって俺は喋る。

「みほの時はいろんな作業を任されたので喋りませんでしたが、

今回は喋る余裕があります」

 

だって何もしてないんだもの、この人。

 

 

「しほさん」

「……なに?」

微動だにしないしほさんに声をかける。

「台所まで来たのはいいですけど調理開始しないんですか?」

 

スマホ片手にしほさんに問いかける。

 

「何を作ろうか考えてるのよ」

「考えるほどレシピあるんですか?」

「あ、ありますよ!パスタなんて楽勝です!」

「でもさっきから食材を打ち抜くような目で見てるだけですよ?」

 

これには流石の食材も真っ青である。

 

「えー、特設会場の常夫さん。しほさんの手料理を食べるのはいつぐらいですか?」

「な、何てこと聞くの!?」

「いや、これじゃ間がもたないので」

 

さっさと作ればよかったものを……。

 

 

《そうだね……結婚してからは菊代さんにまかせっきりだったし……、

一度だけ学生の頃にお弁当を持ってきてくれたんだけどその時だけかな?》

 

「その時はどんなものを食べたんですか?」

 

《卵焼きやウィンナーが入ったオーソドックスなお弁当だったよ。

ちょっと見た目はあれだったけど美味しかったなー》

 

「卵焼きが焦げてたとかそんな感じですか」

 

《そうそう、何か半分スクランブルエッグみたいになってたんだ》

 

「鋼の西住しほにも可愛らしいところがある、と言ったところでしょうか」

 

《ごめんなさいって涙目でお弁当渡された時は何だと思ったけどね。

まぁ、そんなところもひっくるめてしほさんのこと好きなんだけど》

 

「もう辞めて……ッ!」

 

この西住流師範、完全に晒し者である。

 

《お母様にそんな一面があるとは……》

《何か意外だね、お姉ちゃん》

《何で私は隊長たちの親御さんの惚気話を聞いてるのかしら……》

《逸見さん!しっかりしてください!目に光がないですよ!》

 

「しほさん、早く調理を開始してください。

このままじゃ夜中になってしまいます」

「わかってます!」

 

《しほさん頑張ってー》

 

「常夫さんも応援しています、頑張りましょう。

微力であれば俺も手伝いますから」

 

「わ、わかったわ……それじゃあブロッコリーを使いましょう」

「無駄にならないで助かった、そちらに下処理の済んだブロッコリーがあります」

「無駄って……水で洗うだけでしょう?」

 

《お母さん……ブロッコリーって意外と手間がかかるんだよ?》

《む?そうなのか?みほ》

《隊長もご存じないんですか?》

《私も洗うだけだと思ってました……》

 

「意外と知らない人が多いんだな」

「え?違うんですか?」

「菊代さん、説明どぞー」

 

《ブロッコリーは蕾が密集しているお野菜なので水をかけただけでは不十分なのです。

あらかじめ50度くらいのお湯に逆さまにして20分ぐらい浸しておくと、

奥の方のゴミまでとれるのです。私はその後念の為振り洗いもいたしますが。》

 

「ちなみに重曹や野菜用の洗剤で洗ってもいいっすよ」

「ただ洗うだけじゃないのね」

 

また一つ賢くなったしほさんである。

 

「他に使うものは何があります?」

「そうねぇ……海老とトマトかしら」

 

そう言いながら先ほどパスタを茹でたなべに再度火をかける。

先ほどとそんなに時間が立っていなかったのですぐにお湯が沸いた。

「麺は細い方がいいわよね、多分」

言うが早いか早々にパスタを鍋に放り込む。

 

「ちょ、しほさん!パスタ早い!」

みほとは違うんだぞ!?まだソースのソの字もないんだぞ!

「大丈夫です、パスタが茹で上がるのに時間があります」

ふんす!とトマトを切り始めるしほさん。

大丈夫なのか確認のためしほさんの入れたパスタの袋を見る。

 

「……ちなみに何分くらい茹でるからその作業に入りました?」

「10分ないくらいでしょう?普通」

 

……ヤバイ。

 

これパスタ細いやつだぞ……1.4mmって書いてるぞ……。

 

 

そんなことを尻目にソースの材料を作るしほさん。

 

「しほさん……早め早めに麺の固さ確かめた方がいいですよ」

「まだソースの下ごしらえの最中ですが……守矢君がそういうのなら

念の為確かめておきましょう」

 

麺を一本菜箸で掴んで食べてみる。

 

「……あら?」

「ど、どうしました?」

「ちょっとこれ食べてみてくれないかしら」

 

そう言ってパスタを一本渡してくる。

 

「……いい感じですね」

「思ったより早く茹で上がったわね……」

そう言ってパンチングボウルにパスタを移す。

 

「何でこんなに早くゆだったのかしら……」

 

パスタの太さが違うからです。

 

慌ててフライパンに火をかけオリーブオイルをそこに垂らす。

 

「守矢君、そのパスタにオリーブオイルを振っときなさい!」

「伸びないように一応は手を打つんですね?」

「黙って手を動かす!」

 

怖ぇ……マジじゃねぇか……。

 

「ジュっとしない……フライパンの加熱が十分じゃないわね……」

先ほどのフライパンに海老を入れているが油の音がほとんどしない。

 

「そうだわ!守矢君にんにくを探して!」

「へあ!?」

「急いで!」

ブロッコリーをフライパンに投入しながら焦ったような表情で指示を出すしほさん。

「俺が台所に来る前に切ってないんですか!?」

慌ててにんにくを探す俺。

「急がないとパスタはもう準備万端なのよ!」

「あ、あった!これどうするんですか!?」

「このソースに使うから切って頂戴!」

「ちょっと待ってください!」

さっさと皮を剥いてにんにくをスライスしていく。

「切ったのはフライパンに入れますよ!」

にんにくをフライパンにそのまま入れていく。

「やっぱりイタリア料理ににんにくのパンチは必要よね」

「さ、先ににんにくじゃないんですかね……こういうのって……」

「切ってなかったから仕方がないわ!いつ入れても一緒よ!」

 

……もう何も言うまい。

 

おそらくパスタがちゃんと自分の時間通りに出来ていたのであれば

ここまで混乱することはなかったんだろう。

もう西住流を料理でも体現してるといっても過言ではないな。

 

「ここに赤ワイン」

炒めている具材に赤ワインをさっと振る。

「塩コショウで味を調え……あ」

「あってなんですか!あって!」

「今回のパスタはちょっと辛いわ」

塩コショウ入れすぎたな!?

 

 

「後は、ここにパスタを入れて絡めるだけね」

パンチングボウルのパスタをフライパンに放り込む。

 

 

 

 

 

その見てくれはまさにドームだった。

 

 

 

 

 

《な、何でそんなに増えちゃったの!?》

《何か焼きそばみたいだな、なぁエリカ?》

《わ、私に振らないで下さいよ!》

《ボウルに移してから大分経っちゃいましたから……》

《奥様……》

《ほんとしほさんは不器用だねぇ》

 

 

「大丈夫、ソースと絡みさえすれば全然挽回できるわ……」

が、増えすぎたパスタは一向にソースと絡まない。

 

「は、早くしないとまだ増えますよこれ!」

麺をかき回しソースと絡めていく。

「たっぷりあるから、みんなお腹一杯食べれるわね」

 

違う、そうじゃない。

そういう話ではないんです。

 

絡めたパスタを

 

お皿に盛り付ける。

 

「出来たわよ、パスタ 海老とブロッコリーのスパゲッティー ティーガー風」

 

「な、何がティーガーなんですか……」

「圧倒的存在感と攻撃力ね」

「存在感はともかく攻撃力ってなんですか、攻撃力って」

 

なんかお見舞いされんのか?

 

 

「まぁ、食べてみれば美味しいわよ。きっと」

「不安だなぁ……」

 

企画しといてなんだけどここまでとは……読み違えたなぁ……。

 

「ほら、行きますよ」

 

しほさんはさっさとお皿を持って会場の方へ戻っていった。

「まぁ、なるようになるか」

 

 

 

 

 

 

 

「では、こちらをご賞味ください」

全員の目の前にはこんもり詰まれたドーム型パスタ。

「少ない方がいいとかお腹一杯とかそんな弱音は聞きません。

みんな平等に食べるんです」

 

想定よりかなり増えてるからな。

ただ、気持ち多めに常夫さんには食べていただこう。

 

 

 

「……なんかもちゃもちゃしてますね」

「パスタがもはやおもちみたいな食感ね……」

 

赤星さんとエリカからは微妙な判定。

 

「お母さん、もうちょっと料理勉強頑張ろう?」

「奥様、私もお手伝いいたしますので」

みほと菊代さんからは応援の声が。

 

「私も料理は勉強した方がいいか……」

まほからは決意表明が。

 

「……」

一人黙々と食べ続ける常夫さん。

これにはしほさんも不安顔、

俺も食ったけど不味くはないんだよなぁ。

致命的なまでにパスタが伸びてるだけで。

まともな時間だったらそれなりのものが作られてるはず。

 

「ふぅ……」

他の人よりも若干多いパスタを完食する常夫さん。

 

 

 

 

「おいしかったよ、しほさん」

 

 

 

 

常夫さんの笑顔がしほさんにとっては何よりの報酬だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、結果は何となく察しては居ますが判定をどうぞ」

お皿を片付け審査員に問う。

 

「師範すみません、みほの方が美味しかったです」

「私も……」

エリカと赤星さんはみほに。

 

「私はお母様に、味は……察してください」

「僕もしほさんだなぁ、みほのも美味しかったけど、

やっぱり愛妻の手料理ってのはそれだけで価値があるもんだよ」

まほと常夫さんがしほさんに。

 

「おっと、これは菊代さんに全てが委ねられた!」

「あらあら、私ですか」

「さぁ、今夜の勝者は……どっち!」

 

 

「じゃあ、私はみほさんに」

 

 

 

「決まったぁぁぁぁぁ!!!」

少し予想外ではあったがみほの勝利に終わった。

「残念でしたなぁ、しほさん」

「くっ……パスタさえ……パスタさえ太ければ……」

確認しない方が悪い。

料理ってのはおおよそ手順どおり分量どおりにすれば美味しく出来上がるんだよ。

慣れないのに変にアレンジ加えたり目分量でやるから失敗するんだよ。

「さて、みほさん。これで黒森峰から転校することも出来るようになりましたがいかがでしょう?」

「えっと……勢いで言ったのはいいけどちょっと考えようかなって……」

まぁ、当たり前だよなぁ?

「当然だな、色々考えて決断すればいい、邪魔するもんはもうねぇよ」

「……うん」

「まほやエリカ、赤星さんはみほが出て行って欲しくなけりゃ

内部を変えろ。いい機会だと思ってやり直したらいいさ」

頭のお堅い連中がどこまでいうこと聞いてくれるかはわからんがね。

 

「しほさんは……」

「わかってます……この件に関して私は口を挟みません」

「いや、違いますよ?」

何言ってんだこの人?

そんな当たり前のこといちいち確認しませんよ。

「はぁ?ではいった……まさか」

「着替えはここにあるので早く着替えてください」

巨大なバッグを差し出す。

「嫌よ!絶対に嫌!」

「いや、長い髪ですしスタイルもいいのでこの衣装は映えると思うんですよ。

あ、安心して下さい。フリフリではないですよ」

俺はカバンから衣装を取り出す。

「何でしょう、この全身紫色のタイツのような……」

「そうですねぇ……あれです、母親の権化みたいなものです」

 

頼光ママは回す方のノッブのママとしても有名だからね。

 

「正直みほとまほは見ないほうがいいと思うんだ」

「ど、どうして?」

「これ、めちゃくちゃ体のラインというか……扇情的な格好?みたいな。

それを親がしてると想像してみ?」

「それは……ちょっとあれだな……」

 

しかもこの世界にはいないキャラクターである。

つまりオリジナルと言う扱いである。

 

「これ、ツブヤイッターでよく上がってるやつじゃない……」

「お、エリカは頼光ママ知ってるのか。

うちの学校のサークルで作られてる本のキャラだぞ、これ」

 

 

何人かのサーヴァントの絵を漫研に書いて見せたら

鬼のような形相でアイディアをよこせと詰め寄られた。

やっぱりあれほど売れたコンテンツはこちらの世界でも通用するようで、

ツブヤイッターでも軒並み好評、今年の夏コミにも参加していたようだ。

 

 

 

「なんですか、この格好……!無理です!絶対に嫌です!」

「そんなに嫌なんですか?」

「当たり前でしょう!」

「うーん……じゃあ、今から言う条件を飲むのであれば勘弁してもいいですよ?」

 

 

俺はしほさんにその条件を伝えた。

 

 

「……本当にそれでいいのですか?」

「そういいますけど出来ないからこうなってるんですからね?」

「そ、それはそうですが……」

「これは二人のためでもあります、俺はこっちをオススメしますがね」

「……わかりました」

「ではこれを」

俺は一枚のメモ用紙を渡す。

 

 

「これは……」

「後で見ておいてくださいね」

 

 

 

さって、俺は他の準備をしないとなぁ。




やばい……どんどん間延びしてるぞ……。
出来れば後数話で原作1話にしたいぞ……!


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