ダンボール戦機 C(シンデレラ) (ぱりぱりィ!)
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ダンボール戦機 C(シンデレラ) 01

ダンボール戦機 C(シンデレラ) 01

 

 

 

智絵里「おつかれさまですー……」

 

―――楽屋―――

 

智絵里「ふぅー、今日もいっぱいしゃべりましたぁ……」 

 

智絵里「ラジオの収録だから、それも当然だよね………」

 

智絵里「あれ?なんだろう、この紙箱。さっきは無かったはず」

 

智絵里「包装紙が巻かれてますけど…これは?」

 

智絵里「…あっ、メッセージカードが……」

 

~緒方智絵里様~

 

いつもアイドルの活動、拝見させてもらっております。

 

先週の土曜9時に放送されていたドラマにも、ご出演なさってらっしゃいましたね。

 

その際の貴女を見て、私は決めました。

 

こちらを、貴女にお送りいたします。

 

貴女なら、きっとこちらの真の力を引き出すことが出来ると、信じております。

 

~K~

 

智絵里「K…って? この人の名前かな……?」

 

智絵里「いや、偽名かも知れないし…それより、この箱?」

 

智絵里「こちらっていうのは、この箱の中身の事なのかな…」

 

智絵里「どう考えても私宛に送られてきたみたいだし……」

 

智絵里「開けてみよう、えいっ」

 

智絵里「こ…これって………」

 

 

<< 第1章 小さなマシンとの出会い >>

 

 

未央「ちえりん、おっはよー!今日は一段と早いですな!」

 

智絵里「あ、未央ちゃん。 おはようございますっ」

 

ウィーン ピピピピッ ガシガシガシン

 

未央「あーっ、ちえりん! それ、もしかしなくてもLBX!?」

 

智絵里「…え? あ、そうみたい。 未央ちゃんも知ってるの?」

 

未央「知ってるよー! もう、大っ好き!!」

 

未央「でも知らない!私知らないよそれー!!」

 

智絵里「はぁ……どっちなんですか………」

 

未央「えぇ?うぅん? むぅー……ん~~~」

 

>>>未央は、智絵里の操作しているLBXをじっくり見つめている。

 

未央「なにこれ? ちえりん、これどこで買ったの?」

 

智絵里「え…? いや、これなんですけど、私が買ったんじゃなくて…」

 

未央「あ、そうなの? 借り物?」

 

未央「それにしても……ん~、見た事無いですなー」

 

智絵里「え?え? でも、LBX知ってるって…」

 

未央「いやぁ、このアーマーフレームの事だよ!」

 

未央「こんな形もカラーリングも、全く見おぼえないっていうかー」

 

未央「もしかしてレア物? 誰から借りたの? 美嘉ねぇ?」

 

智絵里「いえ、じつはこれ……貰ったんです」

 

>>>LBXを手に入れたいきさつを説明した

 

未央「えーっ!楽屋に帰ったら、正体不明のLBXが届いてたって!?」

 

未央「しかもご丁寧にメッセージカード付きとは……ケイ?誰かなー」

 

未央「それにしてもまぁ…なんかお高そうなデザインといいますかー」

 

未央「そうだ、ちえりん。 今日の予定は? 忙しい?」

 

未央「休日だしオフだし、未央ちゃんは今日一日中ヒマなんだけどー」

 

智絵里「んー…と」

 

>>>スケジュール帳と事務所のホワイトボードで予定確認

 

智絵里「やっぱり、今日はオフみたいです、私」

 

智絵里「寮に居てもなんだかつまんなくって…今日も事務所に来ちゃいました」

 

未央「ねぇねぇちえりん! 今から私の部屋来れないかな?」

 

智絵里「未央ちゃんの…寮の、部屋ですか? いいですけど…」

 

未央「ちょっとそのLBX…じっくり調べさせて!お願ーい!」

 

智絵里「は、はい。 貰い物ですし、べつに構いませんけど……」

 

―――未央の部屋―――

 

未央「はーい、あがってあがってー」

 

智絵里「おじゃましますぅ……」

 

智絵里「わぁ、すごい… これ、LBX関係の器具?」

 

未央「そーそー、グリスさしたりアーマーフレーム変えたりする時のー」

 

未央「で! こっちが<Lマガ>。 LBXマガジンっていうんだけど…」

 

>未央、Lマガで確認中… 

 

未央「今週のどのページにも、載ってないんだよねー」

 

未央「その白っぽい、ちえりんのLBX………」

 

未央「貰い物ー…外枠の箱とか、無かった?」

 

智絵里「んーと………あっ、ありましたよ」

 

智絵里「えとえと…えっと、まず包装紙に覆われてて」

 

智絵里「それを剥がすと、プラスチックのクリアケースに入ってました」

 

未央「そこに、この子…このLBXの名前とかさ、書いてなかった?」

 

智絵里「んと…書いてあった、ような………」

 

智絵里「今から部屋に行って、取って来ますっ!」

 

ドタドタッ ガチャッ バタン!

 

未央「そんなに焦らなくても、ていうか私がちえりんの部屋に行けば……」

 

未央「ってもういないじゃん。 ま、いっか」

 

ガチャッ ドタドタドタ

 

智絵里「ありました、箱! これですっ」

 

智絵里「ただ、何語なのかな…ちょっと読めなくって」

 

未央「うーむ、なになに…e、p、s……<epsilon>?」

 

未央「ちょっと待ってねーちえりん、今スマホで検索かけるから…」

 

智絵里「それだったらもう…これを貰った日に調べましたよ、ほら」

 

未央「えっ? <イプシロン>?ギリシア文字? へえー……」

 

智絵里「だから胸の真ん中に<E>のマークがあるんですね」

 

未央「…………むー」

 

智絵里「未央、ちゃん? …もしもーし、未央ちゃん」

 

未央「おかしいよ、ちえりん。 これ、絶対おかしいって」

 

智絵里「えっ? 何が…いったい何の事ですか?」

 

未央「このLBXの事だよ…<イプシロン>っていう、このLBX…」

 

未央「今検索かけてみたけど、こんなLBXは、存在しない!」

 

智絵里「えぇっ? でもEちゃんは、ちゃんとここにいますよ?」

 

未央「いますよ―――って、<イーちゃん>? イーちゃんって?」

 

智絵里「ギリシャ語とか私、分かんなくて……」

 

智絵里「というかそもそも、LBX自体、今まで触った事無かったので……」

 

智絵里「柔らかくはないけど、ぬいぐるみさんとかと同じかなって、思って」

 

智絵里「それで、胸にEってあるのを見つけた時に、名前…付けたんですけど……」

 

未央「ほー、イプシロンのEちゃんかー。 なんかちえりんっぽいね!」

 

未央「うんうん! 名前だけ聞くとかなり可愛いかも!」

 

未央「……ただ、見た目は全然<Eちゃん>してないけどね…」

 

智絵里「そうなんですよね…この子、<ちゃん>って感じじゃないかな、って」

 

智絵里「私、この子がそんな珍しいだなんて、全然知らなくて…」

 

智絵里「だから、この子だけの名前を…付けてあげたいな、って」

 

未央「いいんじゃないかな? ただバトルの時は、ちゃんと本名で呼んであげたら?」

 

未央「いけーEちゃん、って行ってもあんまり締まらないかもだし…」

 

智絵里「バッ、バトルですか!? い、いきなり戦うのは、ちょっと……」

 

未央「あー、もしかしてちえりん。 バトルするの怖いとか?」

 

未央「レギュレーションさえ守れば、LBXが破壊される事はないよ~」

 

未央「試運転がてら、この未央ちゃんとバトル…してみない?」

 

未央「レギュレーションはストリート、フィニッシュは破壊ナシ! どう?」

 

智絵里「わ、わかりました…やってみますっ」

 

智絵里「ただのお人形さんじゃないって事は、私も分かってますから」

 

未央「ちなみにちえりん、バトルの知識はどのくらいあるのカナ?」

 

智絵里「動画サイトとかで試合風景を見た事、ならありますけど…」

 

未央「このLマガのこっちのページに、簡単な基礎知識載ってるから、あげるね」

 

智絵里「あ……ありがとう、です」

 

未央「さっき事務所で走らせてたけど、操作の方は?」

 

智絵里「もうだいたい大丈夫ですっ! それでは―――」

 

未央「待って待って! ちえりん、この子の武器はどこ?」

 

智絵里「…え、武器? この箱に入ってるので全部ですけど……」

 

未央「あ、これだよこれ。 ちっちゃいけど、これが武器だからね」

 

智絵里「へぇ、本当にミニチュアですね……何もかも」

 

未央「ほえー…この子の初期武器これなんだ。 ナックルなんだねー、意外」

 

未央「ほら、ちえりん。 Eちゃんの手にはめてあげて」

 

智絵里「…んしょっ。 これで、大丈夫…かな?」

 

>>>LBXイプシロン に メタルナックル を装備させた

 

未央「よぉーし! じゃあさっそくやってみよーっ!」

 

未央「レッツゴー♪ ウォーリアーM.ver<ミオバージョン>!!」

 

智絵里「あっ、それが未央ちゃんのLBXなんだね。 ウォーリアー……」

 

>>>Lマガをぱらぱらとめくり、ウォーリアーを見つけた

 

智絵里「この子? でも、うーん…なんかちょっと違うような?」

 

未央「良ければまた教えるけど、ペイント…カラーリングは人それぞれだし」

 

未央「でもちえりん! それだけではないのでーす!」

 

未央「じつはこのウォーリアー!普通のウォーリアーと、もっと違うのだー!」

 

未央「美嘉ねぇから教わった裏テクみたいなの? それを駆使してあるのです!」

 

未央「まあ、ちえりんは初陣だし、様子見ながら戦おっかー」

 

智絵里「は、はいっ。 イプシロン、突撃ですっ!」

 

未央(出撃でも出陣でもなくて、突撃しちゃうのか………)

 

未央「Dキューブ、展開! さあ、バトル開始だよー!」

 

<フィールド:地中海遺跡>

 

 

  バ ト ル ス タ ー ト

 

 

未央「さぁちえりん! どっからでも、かかってこーいっ!」

 

智絵里「CCMの操作は一通り覚えました……攻撃、しますっ!」

 

智絵里「て、てぇーいっ!!」

 

>>>ナックルを握り締め、未央のウォーリアー目掛けて拳を振り下ろした、智絵里のイプシロン。

 

>>>しかしその拳の攻撃を、未央のウォーリアーは自身の武器で受け流した!

 

>>>それでも、一発の衝撃は小さくなかったのか、ウォーリアーは大きく後ずさった。

 

智絵里「だ、だめですっ…! 攻撃が、防がれちゃう……!」

 

未央「言ったでしょちえりん! この子は、ただのウォーリアーとは違うよ♪」

 

未央(とは言ったものの…どうなってんの? 嘘でしょこれ…!)

 

…じつは、未央の言葉通り、彼女のウォーリアーには秘密があった。

 

事務所の仲間でもあり、未央と同じくLBXが好きな元モデル・城ヶ崎美嘉。

 

彼女―――美嘉は普段、クノイチやクイーン等、所謂女性型のストライダーフレームを使っている。

 

しかし、未央が彼女と何度も対戦するうちに、ある違和感に気づいた。

 

…美嘉は、様々な武器を使う。 使用する武器の種類を頻繁に変えるのだ。

 

流行に乗っているのだろうか?時には斧やランチャーなども使っていた。

 

しかし、クノイチはその身軽さ・素早さを活かして敵の懐に潜り込むのが基本的。

 

斧を軽々振り回せるようなパワーは無いし、無理に持たせると機動性も下がる。

 

それなのに美嘉は、斧や鎌をいともたやすく扱い、何度も未央に勝利している。

 

そこで未央は彼女に尋ねた。 そのパワーはどこから来るのか、と。

 

未央は、コアパーツに高価なものを使ってると推測していた。

 

しかし答えは違った。 その秘密は、彼女の使うアーマーフレームにあった。

 

美嘉の使っていたその機体は、カラーリングこそ違えどクノイチそのもの。

 

つまり、ストライダーフレームという事になる……が。

 

その認識は間違っていた。 彼女の機体は完全なストライダーではなかったのだ。

 

未央があまりにもその秘密を知りたがるので、美嘉は渋々タネを明かしてくれた。

 

美嘉がAMに装着していたのは、じつはジョーカーAMをスクラッチして、

 

クノイチの腕そっくりに成形し直したものだった。

 

LGに至っては、それなりに重みのあるウォーリアー(ナイトフレーム)のLGを、

 

装甲の厚さと引き換えに、ナイトフレームでありながら極限まで機動性を追求した。

 

こうして美嘉は、打たれ強さと機動力を併せ持ったLBXを作り上げたのだ。

 

彼女は手先が器用だと知っていたが、まさかそこまでの情熱をLBXに注いでいるとは……

 

未央は相当驚き、感動した。 私だって負けてられない! そう思った。

 

 

それから未央は、パーツを削ったり磨いたり…「ニクぬき」や「パテもり」の練習を始めた。

 

そして、最終的に彼女が行きついたのが、今使っている<ウォーリアーM.ver>だ。

 

彼女は元々純正のウォーリアーを愛用していた。

 

だからこそ、ウォーリアーの姿をしたLBXで戦いたかったのだ。

 

…しかしこの機体、蓋を開ければ、純正ウォーリアーのフレームではない……

 

未央が追い求めたのは、高い機動性・俊敏力……ではなかった。

 

それなりのフットワークがあり、尚且つ強い攻撃にも耐え得る装甲。

 

耐久性重視の超攻撃型LBX―――彼女が目指していたのは、そんなLBXだった。

 

両腕にはハカイガーAMを使用…ただし元々の装飾を削り取った後に、ウォーリアーの肩装甲を装着。

 

LGはマッドドックのパテもりで、極限までウォーリアーにそっくりな足に整形。

 

そして今回これを活かす気は無いようだが、BDも実はウォーリアーではない。

 

この魔改造により、未央のウォーリアーもどきは、大剣「破岩刃」(はがんじん)を、

 

軽々と振るうことが出来るのだ。 しかも防御も高い。

 

しかしその装甲を物ともせず、押し進んで来たのが、智絵里のイプシロン……

 

未央(どうなってんの、あのLBXのスペック…!)

 

未央(こっちの腕はブロウラーフレームなんだよ、拳一発に押し負けるなんて…!)

 

智絵里(どうやったら、LBX本体にダメージを……)

 

智絵里(でも今の私はナックルしか装備してないし…)

 

智絵里(…ううん、諦めちゃ駄目。 1発で駄目なんだったら―――)

 

智絵里「何度だって、打ち込む!!」

 

>>>未央のウォーリアーに拳を構え、再度突進して拳を打ち込むイプシロン。

 

>>>未央は慣れた手つきで、その手に持つ大剣「破岩刃」で攻撃を凌ぐ。

 

>>>しかしすべてを完全に防ぐことは難しかったのか、一度大きく体勢を崩した。

 

智絵里「…!! 今ですっ!」

 

>>>拳に弾かれた腕が剣ともども後ろに下がり、がら空きのボディ。

 

>>>ウォーリアーの胸に、イプシロンの拳が炸裂する。

 

未央「くっ……! やるじゃん、ちえりん! 初めてとは思えないよ!」

 

未央「クリーンヒットしたかな…LPが3分の1以上減っちゃった~」

 

智絵里「LP? この、CCMのここに出てる丸いバーですか?」

 

未央「うんうん。 ちえりんはノーダメージだから、まだ全部青でしょ?」

 

未央「私のはほら、コレ。 今のダメージで赤い部分が出来たんだ」

 

>>>一旦バトルを中断し、LPとテンションゲージについて、未央が説明した。

 

未央「さーて、仕切り直し! さぁおいで、ちえりん!」

 

智絵里「は、はいっ。 イプシロン、行きますっ」

 

 

  バ ト ル ス タ ー ト

 

 

智絵里(さっきみたいに、絶え間なくパンチを打ち込めば……!)

 

>>>智絵里のイプシロンの猛攻を、剣で耐えるウォーリアー

 

>>>そんなウォーリアーが少し後ずさった時、イプシロンが、跳んだ。

 

>>>イプシロンは、ウォーリアーが胸の前で構えた大剣の上に飛び乗ったのだ。

 

>>>そこから回転をつけてウォーリアーの後方にジャンプ。

 

>>>背後を取られたウォーリアー。 振り向こうとするが、間に合わない。

 

智絵里「もらいました……ていっ!」

 

>>>ウォーリアーに、イプシロンの放つ無数の拳が降り注ぐ。

 

未央「は、早い…! 信じられない…!」

 

未央(ちえりんは、まだ初心者…LBXの操作自体も、覚束ないはずなのに…!)

 

未央(このイプシロンっていうLBXの、機体反応速度が、尋常じゃない…!)

 

未央(ほんとにマズイ…! このままじゃ、奥の手を使わなくちゃ……)

 

智絵里「はじめてのバトルなんです、私…負けても構いません」

 

智絵里「…だから未央ちゃん、無理に私を勝たせなくていいんですよ?」

 

未央(うぅっ! 純真なこの眼差しが刺さる! 痛い!)

 

未央「違うよちえりん!私だってなにげにかなり必死なんだからねー!」

 

未央「ちえりんの操作覚える速さとセンスもあるだろうけど……」

 

未央「このイプシロンってLBX、物凄く強いよ! この強さ、半端じゃない!!」

 

未央「だから私も、全力で―――――ぶつかる!!」

 

未央「うおおおりゃあ―――――っ!!」

 

>>>大剣・「破岩刃」を振り上げて、真っ直ぐ突進してくるウォーリアーM。

 

>>>片方の拳で剣を抑え、もう片方の拳でパンチ。

 

>>>次の未央の攻撃に備えて、智絵里のイプシロンが身構える。

 

>>>しかし、至近距離まで近づいたウォーリアーMは、思いもよらない行動に出た。

 

智絵里「………えっ!?」

 

未央「ふっふっふ…さすがじゃよ、智絵里。 ワシが奥義を使う事になるとはのう~」

 

>>>ウォーリアーMは、その腕にあった大剣を、地面に叩きつけた。

 

>>>そして、ボディを無防備な状態でイプシロンの目の前に晒したのだ。

 

智絵里(このタイミングで、近距離の殴り合い…ですか?)

 

智絵里(でも相手は素手―――こっちには、メタルナックルがありますっ)

 

智絵里(つまり、どう考えても私が有利な筈なんだけど……)

 

>>>そんな智絵里の一瞬の迷いが、イプシロンの操作を鈍くした。

 

>>>未央はそれを見逃さなかった。

 

未央「食らってもらうよちえりん!必殺ファンクション!」

 

<INFO>アタックファンクション:我王砲

 

智絵里「え……!?」

 

>>>突如、ウォーリアーMのBDから煙が上がった。

 

>>>温度が上がっているのか、胸の部分が赤く発熱し始めた。 そして……

 

未央「―――――ファイア!!」

 

>>>次の瞬間、ウォーリアーMの胸部装甲が、吹き飛んだ。

 

>>>大砲のようなものが、その胸部から放たれ、イプシロンはジオラマの端に叩きつけられる。

 

>>>弾け飛んだウォーリアーBD。その中から姿を現したのは、ハカイガーのBDだった!

 

智絵里「す、すごい威力…! LPが半分くらいに……!」

 

未央「ふっふっふ、コアパーツでアタックは上げてるからね~!」

 

智絵里「な、なんですかぁコアパーツって」

 

未央「その辺りは追々……今は、ごめんちえりん! フィニッシュいくよー!」

 

智絵里(ウォーリアー? 未央ちゃんのLBXのBDパーツが、別の形に……)

 

智絵里(カモフラージュしてたのは、胸からキャノン砲が出せるのを悟られない為…?)

 

智絵里「でも…わたしだって……!」

 

智絵里「こんな所で、負けられないんです……」

 

智絵里「<K>って人が、私を信じて、LBXを託してくれたから!!」

 

智絵里「イプシロン、負けないで……お願い、立って…!!」

 

>>>ウォーリアーMが再び大剣を拾い、イプシロンに斬りかかる

 

ピッピッピピピピッ ウィン

 

>>>しかし、智絵里の操作が、イプシロンを救った。

 

>>>寸での所で大剣の斬撃を回避し、すかさずバックステップで距離を取った。

 

未央「むうー。 操作上手いじゃんちえりん、とても初心者とは思えない…」

 

智絵里「この子と、この子をくれた人の為にも私、負けたくないんです……!」

 

未央「でもさーちえりん、逃げ回ってるだけじゃ…確かに負けないとは思うけど」

 

未央「勝 て な い よ ?」

 

智絵里「どうしたら……! んうー、どうすれば……」

 

智絵里(そうだ、さっきのキャノン砲………)

 

智絵里(至近距離まで近づいたのに、中々撃たなかった…?)

 

智絵里(って事はもしかして、エネルギーのチャージが、必要だったり…?)

 

智絵里(しかもあの時、ウォーリアーは直立不動だったような……)

 

智絵里(あの隙を突けば―――もう一度、キャノン砲を未央ちゃんが使えば…)

 

智絵里(―――――勝てるかも、しれませんっ!)

 

未央「ほらほら、どしたのー? かかっておいでよ~、ちーえりん!」

 

智絵里「うぅっ!」

 

>>>ウォーリアーMの大剣を避けようとするも、全ては回避しきれなかったイプシロン。

 

>>>剣に掠る度、じわじわと、LPが削られてゆく……

 

智絵里「くぅぅぅ……、じゃあ、これならっ!」

 

>>>それでも、イプシロンの俊敏さとジオラマの構造を活かして移動させる智絵里。

 

>>>フィールドの地中海遺跡にある柱に、飛び移っていく。

 

>>>そして腕を大きく振りかぶり、イプシロンは何かを射出した!

 

カンッ! ガシャッ………

 

未央「これ、は………」

 

>>>なんと智絵里が投げたのは、2つあるナックルのうちの1つだった。

 

未央「ちえりん。こんなの効かないよ?また後で教えるけどさー」

 

未央「ナックルは、実際に腕にはめて殴るからこそダメージが出る訳で」

 

未央「べつに投擲武器じゃないんだよー? よいしょっ、と」

 

>>>会話をしながらも、接近を試みるウォーリアーM。

 

>>>しかしそれに気づき、すかさず別の柱に飛び移るイプシロン。

 

未央「あーもう、何かめんどくさいなー! もう1発食らってもらうよ!」

 

ピピピピピピッ アタックファンクション:我王砲

 

未央「必殺ファンクション!」

 

智絵里「きた、キャノン砲……今しかない!」

 

>>>イプシロンがまた、ナックルの片方を空中に投げた。

 

>>>しかし今度は未央目掛けてではなく、自分から見て真上に。

 

>>>そしてイプシロンが柱から飛ぶ。 キャノン砲を回避しなくてはならない。

 

>>>イプシロンが飛び移ったのは―――さっき自分が投げたナックルの一部だった!

 

>>>そこからウォーリアーMの背後に、見事に降り立った。

 

未央「ま、まずい……!」

 

未央(我王砲は攻撃の反動で、ちょっとの間動けなくなるのに……!)

 

>>>イプシロンは、智絵里の想定通りの位置に着地した。 しかし武器が無い。

 

>>>いや、武器ならある。 目の前に居る、未央の持つウォーリアーMの右手に!

 

智絵里「ちょっと借りますっ!!」

 

>>>ウォーリアーMから大剣「破岩刃」を奪い取ったイプシロン。

 

>>>そのまま、大剣から鋭い一閃を放った―――――

 

\ ピコーン! /

 

智絵里「あ、あれ……?」

 

<ウォーリアーM BREAK OVER>

 

未央「あちゃー。ブレイクオーバー、未央ちゃん戦闘不能だよー」

 

未央「…凄いじゃん、ちえりん! そこそこLBXやってる私に勝つなんて!」

 

智絵里「私が、勝てた……未央ちゃんに勝った……!」

 

~貴女なら、きっとこちらの真の力を引き出すことが出来る~

 

智絵里「Kさんのメッセージにもあったように、私が……」

 

智絵里「私が、イプシロンの真の力を引き出さなきゃ…」

 

――――――――――

 

未央「さーて!バトルも終わったし、グリスグリス~♪」

 

智絵里「メンテナンス、っていうんですね」

 

智絵里「未央ちゃん。 私にもメンテナンスのしかた、教えてくださいっ」

 

 

>>>続



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ダンボール戦機 C(シンデレラ) 02

ダンボール戦機 C(シンデレラ) 02

 

 

 

<< 第2章 ナックル使い!前川登場 >>

 

 

 

 

―――???―――

 

 

?「イプシロンBの起動及びアクティヴ状態を確認………」

 

?「…バトルをした、という事だね。緒方智絵里」

 

?「楽しみにしているよ……君の成長を……」

 

 

―――――1週間後―――――

 

未央「おっはよ、ちえりん。 もうLBXの操作には慣れた?」

 

智絵里「あっ未央ちゃん、おはよう」

 

智絵里「はい、だいぶ慣れました…というよりも」

 

ガシガシガシガシガシャンッ ウィィィン

 

智絵里「すごいんです、思い通りに動いてくれるっていうか…」

 

未央「機体反応速度、かなり高そうだねー」

 

未央「それにしても、そのKって人はなんでちえりんにLBXを……」

 

智絵里「真の力…イプシロンに、隠された機能でもあるんでしょうか…」

 

未央「あっ、そうそう!ちえりん、次のオフっていつ?」

 

智絵里「んーと…確か、あさっては空いてたような……」

 

未央「やったーっ!私も空いてるよ、その日!」

 

未央「幾ら貰い物っていっても、それだけの武装じゃこの先厳しいと思うんだ」

 

未央「という訳で! ミソラ商店街のキタジマに、一緒に行こう♪」

 

智絵里「ミソラ…? あぁ、あの河川敷の近くですね」

 

智絵里「よくあそこでも、四葉のクローバー探したりするんですっ」

 

未央「おっと! そろそろ未央ちゃんはレッスン行って来るねー」

 

未央「それじゃ、ちえりん! 二日後に、ミソラ商店街行こうね!」

 

智絵里「はいっ!」

 

?「あれ? 智絵里チャン、それもしかしてLBXにゃ?」

 

智絵里「あっ、みくさん。 おはようございますっ」

 

前川「おっはにゃーん。 で、それ…どこのLBXなのにゃ?」

 

前川「タイニーオービット?サイバーランス?どっちかだと思うんだけどにゃぁ…」

 

智絵里「あ、もしかしてLBXを作ってる会社のこと……ですよね?」

 

前川「そうにゃ。 みくは、どの会社もそこの味が出たデザインで好きにゃー」

 

智絵里「これ…どこの誰が作った物か、よくわからなくって……」

 

前川「え…? もしかして、拾った…とか、にゃ?」

 

智絵里「近いかもしれません…こないだ、楽屋に贈られてたんです」

 

前川「全然近くないにゃ! それ、プレゼントって事にゃあ!?」

 

前川「羨ましいにゃあ~……というかこの子、凄い出来にゃぁ……」

 

智絵里「未央ちゃんにも散々調べてもらったんですけど…手掛かりなしで」

 

前川「うぅー、カッコイイにゃぁ! 名前とかも分からないのにゃ?」

 

智絵里「いえ、贈られてきた箱に、イプシロンって書いてありました」

 

前川「いぷしろん…? やっぱ、聞いた事無い名前にゃー」

 

前川「もしかしたら、LBXの開発に携わってるような人が、智絵里チャンのファンだったり!」

 

前川「それで、智絵里チャンの為だけにこのLBXをハンドメイドしたんだにゃ!」

 

智絵里「えっ、この子…手作りって事ですか?」

 

智絵里「でも、ファンの方じゃないような気が……」

 

~貴女なら、きっとこちらの真の力を引き出すことが出来る~

 

智絵里(ファンだったら、あんなお堅い文面で送って来ないよね……)

 

智絵里(それに私はLBXに興味持ったことなかったし、触った事すら……)

 

智絵里(どうして私が? 私が選ばれた理由って、いったい……)

 

前川「よぉし!営業行くまでまだ時間あるし、みくとバトルにゃ!」

 

前川「みくのクノイチで、そのいぷしろんチャンの秘密を暴くにゃっ!」

 

智絵里(秘密…イプシロンの<真の力>、かぁ……)

 

智絵里「えと、レギュレーションは……?」

 

前川「時間もあんま無いし、制限時間3分のストリート、でどうにゃ?」

 

智絵里「いいですよ。まだ始めたばかりですけど…私で良ければっ」

 

前川(ほんとはイプシロンチャンが気になるんだけど……)

 

前川(さすがに智絵里チャンにそれを言っちゃうと、失礼になっちゃうにゃ)

 

前川「それじゃー行くにゃあ! Dキューブ、展開だにゃぁ~!」

 

<フィールド:草原>

 

 

  バ ト ル ス タ ー ト

 

 

前川「クノイチMC<ミクカスタム>! いくにゃー!」

 

智絵里「お願いっ、イプシロン!」

 

>>>強化ダンボールのジオラマ内に、2体のLBXが投下された

 

>>>1体は、智絵里が初めて手にした謎のLBX―――イプシロン

 

>>>そしてもう1体。前川みくのカスタムが施された、クノイチだ。

 

>>>カラーリングは通常の紫と異なり、赤と白と藍色の丁寧なペイント。

 

>>>2種類の武器を持たせられる装備欄には、なんと両方ナックル(片方クナイ系)。

 

>>>ナックルの攻撃が攻撃がネコパンチに見える…とか見えないとか。

 

>>>クノイチのイメージを壊さず、自分の色をバトルで出していく……

 

>>>真面目な、みくらしいカスタマイズとなっていた。

 

>>>ちなみにパーツ構成だが…LGのみフレイヤ、その他は全てクノイチで構成。

 

>>>みく曰く、クノイチLGだとペイントする面積が少なかった…とか。

 

前川(見た目としては、TOの新作!?みたいなかっこいいデザインしてるけど…)

 

前川(見てくれだけ上等、って可能性もあるにゃ。ここは様子見のクナイ攻撃にゃ!)

 

前川「にゃっ! にゃあぁーっ!!」

 

ピピピッ ピピピピピッ

 

>>>みくの手慣れたCCM裁きで、クノイチが駆ける。

 

>>>フィールドの遮蔽物を利用しながら、確実にイプシロンとの距離を詰めていく―――

 

ガァンッ! キンッ キンッ!

 

前川「―――んにゃあ!?」

 

>>>今さっきまで、みくのクノイチはイプシロンの背後に回っていた。

 

>>>そのうえ、イプシロンから見てクノイチの居た場所は死角。

 

>>>段差によって、見えなくなっていた筈……だった。

 

>>>しかし、みくによる奇襲攻撃は失敗に終わった。

 

>>>動きを読んでいたのか、イプシロンは背後から迫り来るクナイを弾いた。

 

>>>そして、自身のメタルナックルで反撃を、2発ほどクノイチに叩き入れた。

 

前川「うぐぅ…今のは冗談抜きで効いたにゃぁ……」

 

>>>クノイチのLPは今の攻撃で、3分の2程まで減っていた。

 

智絵里(物陰に隠れてファーストアタックを決めるのは、速度重視のストライダーの鉄則…)

 

智絵里(未央ちゃん、ありがとう……アドバイス、さっそく役に立ってますっ!)

 

智絵里(ストライダーは身軽な分、耐久力が低い…はずだからっ)

 

智絵里(あともうひといきで、いけるはずっ!)

 

智絵里「てぇーいっ!!」

 

前川「にゃにゃっ♪ そんな攻撃、当たらにゃいにゃ!」

 

前川「みくは今までずーっと、ナックルを愛用してきたんだよー?」

 

前川「同じナックル使いとして言わせてもらうけど、そんな単調な攻撃に当たりはしないにゃ!」

 

智絵里(うぅ……どうすれば………)

 

智絵里(武装を買い足す為に、今度商店街に行くっていうのに…)

 

智絵里(このままじゃ、負けちゃう…!)

 

智絵里(ううん、始めたばっかりなんだもの。 負けてもいい…)

 

智絵里(負けてもいい、はず…なんだけど……)

 

~貴女なら、きっとこちらの真の力を引き出すことが出来る~

 

智絵里(でもでも…やっぱり、負けたくないですっ)

 

>>>イプシロンが拳を構える―――

 

>>>―――しかし、すかさずクノイチは距離を取る。

 

>>>と思ったら一瞬だけ接近し、イプシロンに的確な攻撃を入れる。

 

>>>反撃しようとする智絵里だったが、彼女はセンスがあるとはいえど初心者。

 

>>>もうその時点では、またクノイチに距離を取られていた。

 

智絵里(これって…未央ちゃんの言ってた、<ヒットアンドアウェイ>…!?)

 

智絵里(結構基本的な戦い方、らしいけど………)

 

智絵里(みくちゃんはそもそも、戦い慣れてる…!)

 

智絵里(攻撃と後退の間に、ほとんど無駄が無い……)

 

智絵里(まずい…! 攻撃を何度も受けたせいで、イプシロンのLPが半分以下に…)

 

智絵里(どうすれば…っ、どうにかして、突破口を―――)

 

前川「智絵里チャンには悪いけど、そろそろフィニッシュにさせてもらうにゃっ!」

 

前川「―――必殺ファンクション、だにゃっ!」

 

<INFO>アタックファンクション:蒼拳乱撃

 

智絵里「あぅぁっ! ファンクショ―――まずいですっ、ガードを…っ」

 

前川(これで墜ちなかったとしても、かなりのダメージを与えられるのは確実にゃ!)

 

ズガガガガガッ ドガガァァン!!

 

智絵里「う、うぅ…終わった? ―――ああっ!」

 

>>>イプシロンの残りLP:16

 

智絵里(まずい…これはまずいですっ! 通常攻撃でもあと1発2発でブレイクオーバー…)

 

智絵里(つまり、私が……負ける………)

 

前川「おぉ~耐え切ったね智絵里チャン!」

 

前川「でも! もうほとんどLP残ってないでしょ!トドメいくにゃ!」

 

智絵里「なにか……何か策を……」

 

前川「にゃーっはっはー!今更逃げ回っても遅いにゃあ!」

 

<INFO>残り時間―00:37

 

前川(…! ま、マズイにゃ! 残り時間が30秒しかないにゃ!?)

 

前川(こっちも向こうも近接…ナックルしか持ってないし、ヤバイにゃあ!)

 

前川「智絵里チャン! 逃げるのはやめるにゃーっ!!」

 

前川(みくはここで、ブレイクオーバー!スッキリ!して営業に行きたいのにゃ!)

 

前川(こうなったら! もう1発必殺ファンクションを―――――)

 

前川(ってCゲージ<チャンスゲージ>が足りないにゃあ! 蒼拳乱撃打てないにゃ!!)

 

<INFO>残り時間―00:21

 

前川(ちょっとショボいけど、これで我慢するにゃぁ!)

 

前川「必殺ファンクショーン!にゃっ★」

 

<INFO>アタックファンクション:旋風(つむじかぜ)

 

智絵里(―――旋風! 旋風なら分かります…これは、<ダッシュ>で横回避ですっ!)

 

前川「にゃああーっ! ウソ!?かわされた!?」

 

<INFO>クノイチC:オーバーヒート

 

前川「ふにゃあああ~!?」

 

智絵里「お返しですっ! ていっ、ていっ、ていっ!!」

 

前川「イタタタタタ、クノイチ耐えて!耐えるにゃあああ!」

 

前川(マズイにゃ…、オバヒのせいで攻撃を上手く避けられにゃい!)

 

前川(でもこのまま耐え凌げれば…みくの勝ちにゃ!)

 

前川(今回はタイムアタック…時間切れになった時点で、LPが高い方が勝ち!)

 

前川(智絵里チャンのイプシロンチャンはもう虫の息……いけるにゃ!)

 

<INFO>残り時間―00:08

 

智絵里「お返しは、まだ終わってませんよ……っ!」

 

智絵里「―――必殺ファンクション、ですっ!」

 

前川「……にゃっ!」

 

前川(何が来るかが問題にゃ…運が良ければ回避できるかもしれにゃい!)

 

<INFO>アタックファンクション:エスペランザモード

 

前川「え…すぺらんざ、もーど?」

 

>>>智絵里が選択した必殺ファンクションは、エスペランザモード。

 

>>>これは相手を直接攻撃する技ではない。

 

>>>しかし、その効果は一定時間攻撃アップ+攻撃でテンションゲージが減らなくなるというもの。

 

>>>―――つまり、制限時間ギリギリまで、ノンストップで殴り抜けられるという事!

 

>>>残り時間―00:06

 

前川「お願いだにゃぁクノイチ!何とか耐えてにゃあーっ!」

 

ドカッ バキッ ボコボコボコボコボコボコボコッ!!!

 

>>>残り時間―00:02

 

\ ピコーン! /

 

前川「に"ゃああああっ!」

 

<INFO>クノイチC:BREAK OVER

 

智絵里「はぁ、はぁ……っ、な、なんとか………」

 

前川「みくのクノイチが、負けたにゃ……」

 

智絵里「なんとか、勝てました……っ!」

 

前川「ふにゃーっ、悔しいにゃぁ! でも楽しかったにゃー!」

 

智絵里「みくさん、強かったですっ」

 

前川「そういう智絵里チャンこそ、久々の強敵だったにゃ!」

 

前川「いやぁ~、とても始めたばかりだなんて思えないにゃぁ……」

 

智絵里「そ、そうですか? えへへ、嬉しいですっ」

 

前川「それじゃ、みくは今から営業行って来るけど―――」

 

前川「わかんにゃい事あったら、いつでも聞いてくれていいからね!」

 

前川「という訳でCCMのアドレス、交換したいにゃー!」

 

智絵里「えっと、その…やり方、よく分からなくって……」

 

智絵里「未央ちゃんにも、お願いしてやってもらったんですけど……」

 

前川「仕方ないにゃー、みくに任せるにゃ!」

 

智絵里「ありがとうございますっ」

 

ピッピッピッピッ…… ティローン♪

 

前川「アドレス交換・完了!だにゃ。 これからもよろしくにゃぁ!」

 

智絵里「は、はいっ。 ありがとうございました」

 

智絵里「営業、お気をつけてっ」

 

前川「はいはーい! 行って来まーす、なのにゃ~♪」

 

―――――帰り道―――――

 

未央「あー、つっかれたぁー。 みくにゃんもおつかれ~」

 

前川「あぁぁぁ暑いにゃぁぁぁ…早く寮のシャワー浴びたいにゃぁ…」

 

智絵里「あっ! おーい、未央ちゃんっ、みくちゃんっ」

 

未央「おーっ、ちえりん! おっつかれぇー!」

 

智絵里「お二人とも、お疲れ様ですっ」

 

智絵里「それとみくさん。今日はありがとうございました、LBXバトル」

 

未央「え! ちえりん…まさか、みくにゃんとバトルしちゃったの?」

 

前川「どういう意味? みくとバトルしちゃ駄目にゃのー?」

 

未央「違う違う、みくにゃんってフツーに強いじゃん?」

 

未央「初心者のちえりんには、まだちょっと早かったんじゃないかなーって」

 

前川「その初心者の智絵里チャンに、見事にみくは負けたのにゃ……」

 

未央「えっ」

 

智絵里「えへへっ、苦戦しましたけど…なんとか勝てちゃいましたっ」

 

未央「おぉ!頑張ったねちえりん!それと、凄いねEちゃん!」

 

智絵里「こんなに思い通りに動いてくれるなんて…LBX、面白いですっ」

 

未央「あっ!そうそう、みくにゃん。 あさって暇?」

 

前川「んーと…その日は学校が終わったら暇になるけど?」

 

未央「じゃあさ、みくにゃんも放課後にミソラ商店街行かない?」

 

前川「未央チャン好きだねー、キタジマ。 確かにあそこの店長さん、優しいけど」

 

未央「それだけじゃないよー。ちえりん連れてくんだから、何かヒイキしてくれるかも!」

 

前川「相変わらずそういうところはゲンキンなのにゃ……」

 

未央「という訳で2日後の放課後! ミソラ商店街へ、GO!!」

 

智絵里「は、はいっ」

 

前川「りょーかいにゃあ!」

 

……

………

 

?「ふふふ……楽しそう、だね…… あの3人………」

 

 

 

>>>続

 

<< オタクロスのオタ知識 >>

 

オタクロス「オタクロスのオタ知識のコーナー、デヨ!」

 

オタクロス「ここでは、物語に関する様々な解説を行なっていくデヨ」

 

オタクロス「今回は、こちらデヨ~!」

 

<ウォーリアー・M(ミオカスタム)>

 

オタクロス「ウォーリアーM、見た目は普通のウォーリアーデヨ」

 

オタクロス「しかしその正体は全くの別パーツ!型破りなスクラッチ技術の賜物デヨ!」

 

オタクロス「特に奥の手・我王砲はウォーリアーの偽装甲をブチ破って放つ大技デヨ!」

 

オタクロス「元気溢れる未央たんらしい、熱いカスタマイズのオンリー1なウォーリアーデヨ~!」

 

オタクロス「では、次回もお楽しみにデヨー!」



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ダンボール戦機 C(シンデレラ) 03

<< 第3章 キタジマでのタッグバトル >>

 

 

 

 

―――ミソラ商店街―――

 

 

未央「いやー、なんだかんだでココも結構久し振りですなー!」

 

智絵里「ミソラ商店街…結構人も行き交ってて、活気ありますね」 

 

みく「さあ、目的のキタジマに直行だにゃーっ!」

 

ウィ―――ン

 

小次郎「いらっしゃい。 おっ!未央にみくかー、久し振りじゃないか」

 

沙希「アイドル、頑張ってるみたいじゃん?応援してるよー!」

 

未央「店長! 沙希さん! おひさでーっす!」

 

みく「おひさしぶりですにゃー」

 

沙希「あれ? 一人見慣れない子がいるけど……」

 

小次郎「未央達の友達か?」

 

未央「トモダチっていうかー、アイドル仲間?」

 

智絵里「はっ、はじめましてっ。 緒方智絵里、です……」

 

小次郎「ひょっとして今日は、この子の為にウチに来たのか?」

 

未央「おー!さっすが店長、察しがいいねー。じつはそうなんだよー」

 

みく「智絵里チャンは、まだLBXを始めたばっかりなのにゃ~」

 

未央「そんなみくにゃんも始めたばかりのちえりんに負けたのでした……」

 

みく「未央チャンだって! 智絵里チャンに負けた事は聞いてるにゃぁ!」

 

小次郎「はいはい、喧嘩するなよ。 ウチの店では仲良く、な?」

 

小次郎「で…智絵里、だったっけ? 何が欲しいんだ?」

 

智絵里「えっと…武器、でしょうか? 未央ちゃん、何が必要かなぁ…?」

 

未央「うーん……必要な物は山ほどあると思うんだけどー」

 

みく「まず、どの武器を使っていくか。 それを決めるにゃ!」

 

智絵里「えと、操作に慣れたのでナックルは外したくないかも……」

 

未央「んー、やっぱり遠距離武器が欲しい所だよね!」

 

智絵里「遠距離武器……銃、とかですか?」

 

小次郎「それなら智絵里、こいつをやろう」

 

>>>オートマチックガンを手に入れた!

 

小次郎「初心者にはうってつけだし、みんなここから始まるんだ」

 

小次郎「お? ……そいつが、智絵里のLBXか?」

 

智絵里「は、はいっ。 そうです、けど……」

 

小次郎「うーん……あんまり見た事無いなぁ」

 

未央「やっぱり店長も知らない?」

 

小次郎(いや、以前バンがチラッと持ってたやつに似てるような……?)

 

小次郎(うーん、気のせいか? 色も違った気がするしなぁ)

 

小次郎「やっぱり見覚えないなぁ。どこで買ったんだ?」

 

智絵里「そ、それが………」

 

>>>イプシロンを手に入れたいきさつを、店長(小次郎)と沙希に話した…

 

小次郎「知らない人からの、贈り物かー!」

 

沙希「すっごいじゃん!アイドルやってると、そういう事もあるんだー」

 

小次郎(<知らない人から貰った>、ねぇ………)

 

小次郎(まるで、あの<AX-00>を手に入れた時のバンみたいだな……)

 

カチャカチャッ…… カチッ!

 

智絵里「よしっ、銃の装備…完了ですっ」

 

未央「おーし、ちえりん!銃GET記念に私とバトルしようよ!」

 

みく「にゃーっ!智絵里チャンとバトルするのは、みくが先にゃぁ!」

 

ウィ―――――ン

 

??「店長、沙希さん、こんにちはー!今日もカワイイボクがやってきましたよー!」

 

沙希「おっ幸子ちゃん、いらっしゃーい」

 

小次郎「オイオイ…今日も来たのかよ。アイドルの仕事、少ないのか?」

 

幸子「そんなんじゃないですよー!」

 

幸子「こないだまで結構ハードだったんで、暫くお休みなだけです!!」

 

未央「お! さっちーじゃん!」

 

みく「幸子チャンも来たにゃー」

 

幸子「店長!オススメの武器はありますか~?」

 

幸子「も、ち、ろ、ん! とびきりカワイイ武器ですよ!」

 

小次郎「カワイイって言われてもなぁ…オレ、イマイチ分からないんだよ…」

 

沙希「クノイチ弐式はカッコいいし、カワイイよー!幸子ちゃん!」

 

幸子「あれは全然ボクの趣味じゃないんですよねー」

 

幸子「はっきり言って、カ ワ イ く な い で す」

 

沙希「グサッ! ちょっと傷ついたかもー………」

 

未央「さっちゃんも来た事だし、2対2のバトルが出来るね!」

 

智絵里「え、えっと……私は、誰と組めば……」

 

未央「とりあえずサポートとして、まずは私と―――」

 

幸子「カワイイこのボクが組んであげてもいいんですよ?」

 

幸子「いいんですよ?」

 

智絵里「え、えっと…それじゃ幸子ちゃん、よろしくですっ」

 

未央&みく(まずい!!)

 

未央(さっちゃんはLBX歴そこそこ長いけど……)

 

みく(バトルは全然駄目にゃ! むしろ智絵里チャンの足引っ張っちゃうにゃ!)

 

智絵里「LBXって、楽しいですよね。 こんなに楽しいって、私知らなかったから…」

 

智絵里「幸子ちゃん、バトルがんばりましょうねっ!」

 

幸子「え"っ……あっ、はい!モチロンですよ!あっはっはははは!」

 

幸子(どどどどうしましょう…じつはバトル苦手なんて今更言えません……!)

 

幸子「フ、フフーン! カワイイボクに、お任せあれですよ!」

 

未央(さっちーの実力はノーコメントとして………)

 

未央(問題はちえりんだよねー。ここ数日で信じられないくらい上手くなってるし…)

 

みく(悪いけど、今回は真っ先に幸子チャンのLBXを落とすにゃ!)

 

みく(未央チャンも智絵里チャンには負けたみたいだし、二人で挑まないと……)

 

未央「店長ー! いつもみたいにココのジオラマ借りるよー!」

 

小次郎「おう。 でも悪い、ちょっと待ってくれ」

 

沙希「ふー、荷物運び終わったよ」

 

小次郎「よし、沙希も一段落付いたな…今日の試合、オレ達もじっくり見させてもらう」

 

沙希「4人ものアイドルのLBXバトル!こりゃプレミアチケットモノだねー!」

 

沙希「さあ4人とも! 思い切りぶつかって、派手に暴れちゃって!」

 

みく「そんにゃあ、沙希さんじゃないんだから……」

 

智絵里「でもやるからには全力で行きます!」

 

未央「おっしゃー、今日こそ負けないよ~!」

 

みく「みくと未央チャンのコンビネーションを見せつける時が来たにゃあ!」

 

未央「いけーっ、ウォーリアーM!」

 

みく「クノイチ、出陣だにゃっ!!」

 

>>>未央・みくのLBXが、強化ダンボールの戦場に投下された。

 

智絵里「お願いっ、イプシロン」

 

幸子「おや…? 見た事無いLBXですね、智絵里さん」

 

智絵里「じつはこれ、貰ったんですっ」

 

幸子「へー、珍しい物なんじゃないですか?よかったですねー!」

 

智絵里「えへへっ、ありがとうございますっ」

 

幸子「…と、いうわけでボクもチューニング終わりましたし―――」

 

幸子「コシミズスペシャル・出撃ですよ!」

 

未央「うわー出た、さっちゃんのいつもの<全部盛り>だ~…」

 

>>>HDパーツ:ロビンH

>>>BDパーツ:オリオン

>>>AMパーツ:ケートス

>>>LGパーツ:ヨウキヒ

 

みく「ふにゃ~…幸子チャンのその<よくばりセット>、いつ見ても可愛くないにゃぁ…」

 

幸子「何言ってるんですか!カワイイボクが使うLBXなんですよ!」

 

幸子「カワイイボクのカスタマイズ! カワイイボクの操作!」

 

幸子「カワイイに決まってるじゃないですか!!!」

 

未央(はぁー…この自信はどっからくるんだろうねー……)

 

みく(このカスタムはさすがにセンス悪すぎだにゃあ~……)

 

未央&みく(しかも超弱いし)

 

幸子「おおっと? このカワイイボクのカワイイLBXに圧倒されちゃいましたかー?」

 

幸子「何なら、今のうちなら、不戦敗にして見逃してあげてもいいんですよ!」

 

智絵里「幸子ちゃん、それは……困りますっ」

 

幸子「…えっ、困る? どうしてですか智絵里さん」

 

智絵里「わたし、イプシロンと一緒に、もっと戦いたいんですっ」

 

智絵里「この子と一緒に経験を積んで…それで、もっと強くなりたいんですっ」

 

小次郎(ほう…あの初心者の智絵里って子、中々いい目をするじゃないか…)

 

智絵里「だから、わたしの為にも…戦わせてください、未央ちゃん、みくちゃん」

 

智絵里「お願いします……っ!」

 

未央「そんなー、頼まれなくてもモチロンだよちえりん!」

 

みく「あったりまえだにゃー!」

 

未央「なんか、相手のLBXに圧倒されたとか思われてるみたいだしー」

 

みく「まずはそのLBXを撃破しよっかにゃ~」

 

幸子「ヒィィッ! 智絵里さん、私の援護を…お願いします!」

 

智絵里「え、えっと…二人で頑張ればいいと思うんだけど…」

 

小次郎「さあ、お喋りはそのくらいにしとけよ。そろそろ行くぞ!」

 

<フィールド:草原>

 

 

  バ ト ル ス タ ー ト

 

 

幸子「は、はははじまりましたぁぁぁ!」

 

未央「みくにゃーん、右側から攻めてねー」

 

みく「オッケーにゃ!そりゃそりゃそりゃあーっ!」

 

>>>特にガードもせずあたふたする幸子のLBXに、みくのクノイチがクナイで先制攻撃。

 

智絵里「あぁっ!幸子ちゃん、的になっちゃ駄目です…もう少し下がって―――」

 

未央「もう遅いよっ、ちえりん!」

 

ガァァァンッ!

 

智絵里「え………!?」

 

>>>幸子の事を気にしすぎるあまり、智絵里は背後からの攻撃に気づくのが遅れた。。

 

>>>未央のウォーリアーMの、大剣「破岩刃」(はがんじん)に弾かれたイプシロン。

 

>>>咄嗟にガードの体勢を取った為、幸いLPはほとんど減らなかった。

 

>>>しかしバランスは完全に崩してしまった為、幸子のフォローには回れなくなってしまった。

 

智絵里「幸子ちゃん逃げてっ!とにかく回避してっ、立て直してくださいっ」

 

幸子「そそそそそんな事言われましても~!」

 

ガンガンッ ドガッ バキッ

 

未央「圧倒されてるのは、どう見てもさっちゃんの方じゃないかなー!」

 

未央「みくにゃん、決めちゃって~★」

 

みく「アイアイニャー!」

 

みく「これでトドメにゃあ! 必殺ファンクショーン!」

 

<INFO>アタックファンクション:気功弾

 

\ ピコーン! /

 

コシミズスペシャル:BREAK OVER

 

幸子「うわああっ! また負けましたぁ……」

 

未央(さっちゃんには悪いけど、本番はここからなんだよねー……)

 

みく(智絵里チャンの未知のLBX…イプシロンの秘密に迫るにゃっ!)

 

智絵里「あぁっ、幸子ちゃん! すみません、フォローできなくて…っ」

 

幸子「イイノデスヨ智絵里さん………後は!頼みました~!」

 

カチャッ タッタッタッタッタッ… ウィ―ン

 

智絵里「あ…バトルの途中なのに、帰っちゃいました……」

 

未央(帰ったというか、あれは完全に、ちえりんに押し付けて逃げたというか…)

 

みく(しかも、ちゃっかり自分のLBXの回収だけはしてから去って行ったにゃ……)

 

智絵里「バトル再開、お願いしますっ!」

 

未央「おーっし!今日こそ本気でぶつかるよ、ちえりん!」

 

みく「もう智絵里チャンのことは初心者とは思ってないにゃあ!」

 

 

  バ ト ル ス タ ー ト

 

 

智絵里(まさか未央ちゃんとみくちゃん、二人を同時に相手しなきゃいけないなんて…)

 

智絵里(でも出来るはず…私には、イプシロンがいるからっ!)

 

未央「うりゃーっ!破岩刃の猛攻を食らえーっ!!」

 

キンッ キンッ ドガッ!

 

智絵里(うぅ…今更気づきましたが、盾とか買っておくべきでした…っ!)

 

智絵里(それと、バトルしているうちに気づきましたが……)

 

智絵里(ナックルは攻撃のコンボが早い代わりに、リーチが…かなり短いですっ)

 

智絵里(近づこうとすると未央ちゃんにカウンターを食らうし……)

 

智絵里(距離を取ろうとしたら、今度はみくちゃんが……!)

 

智絵里(………そうだ!)

 

智絵里「てーいっ!!」

 

>>>イプシロンを加速させ、全速力で未央のウォーリアーMに接近する。

 

>>>未央は、先程までと同じように、破岩刃のパワーで弾き返す。

 

>>>その時だった。 それまではさっきまでと同じ。 そこから先が違った。

 

>>>智絵里は、イプシロンの両方の拳を思い切り、未央の破岩刃にぶつけた。

 

>>>その衝撃は予想以上に大きく、イプシロンは勢いよく吹っ飛んだ。

 

>>>後方待機で、智絵里の隙を狙っていた、みくのクノイチ。

 

>>>イプシロンは、そのクノイチよりも更に後方へ吹っ飛んだのだ。

 

智絵里「―――後ろ、取りました…っ!」

 

みく「にゃっ!? マズイにゃ、未央ちゃんフォロー頼むにゃ!」

 

未央「ご、ごめん……間に合わない……!!」

 

>>>衝撃を受けたのは、智絵里の操作するイプシロンの方だけではなかった。

 

>>>イプシロンを弾き返した、未央のウォーリアーM。

 

>>>ウォーリアーMは衝撃により後方へ後ずさり、片膝を地面に付いてしまっていた。

 

未央「体勢を、立て直せない~っ!」

 

みく「どっちから来るにゃ! 左か右か、拳か銃か……!」

 

智絵里「わたしが今まで受けた攻撃…どのくらいか、みくちゃん把握してます?」

 

みく「……にゃ?」

 

智絵里「攻撃されてもC<チャンス>ゲージは溜まるんです! つまり―――」

 

智絵里「こういう事ですよ!! ―――必殺ファンクションっ!」

 

<INFO>アタックファンクション:炎崩し<ホムラクズシ>

 

みく「うにゃぁ~! 当たっちゃったにゃあああ!」

 

\ ピコーン! /

 

<INFO>クノイチC:BREAK OVER

 

未央「やっと立ち上がれたー…って、みくにゃん!?」

 

みく「未央チャンごめんにゃぁ…みく、負けちゃったにゃあ」

 

小次郎(なんて子だ…あそこから、こんな大逆転をするとは……!)

 

小次郎(しかし面白いのはこれからだ…本気になった未央は強いぞー?)

 

未央「ちえりん…これは、もうホントにマジにならなきゃいけないっぽいね……」

 

智絵里「わたしは、最初からっ、ずっと、本気…ですっ!」

 

未央「おぉ、いいねぇ…そのギラついた目つき…! ホントのホントにマジなんだね…!」

 

未央「まるで噂に聞く、アングラビシダスの覇者みたいじゃん……!」

 

未央「いいよ、燃え尽きるまで……勝負だーっ!!」

 

智絵里「オートマチックガンっ!」

 

ダダダダダダッ キンッ! キンッ!

 

未央「甘いよちえりん!さっき貰ったばっかの銃で私をどうにか出来るとでも?」

 

智絵里「くうっ……」

 

未央「ふっふっふー…容赦は、しないよっ!」

 

智絵里(このまま、あの「破岩刃」で滅多打ちにされたら…わたしに勝ち目はありません…)

 

智絵里(…勝つか負けるかの鍵になって来るのは、やっぱり未央ちゃんの「破岩刃」……)

 

智絵里(よぉし、一か八か………やってみますっ!)

 

智絵里「てぇ―――っ!!」

 

>>>猛スピードで、イプシロンがウォーリアーMに突撃する。

 

>>>待ってましたと言わんばかりに、未央が嬉々とした表情で「破岩刃」を構える。

 

智絵里(よし……今―――――!)

 

>>>なんと、智絵里は至近距離で、武器をナックルから銃に持ち替えた!

 

未央「ふ~ん?間近なら絶対に当たるってスンポーかな~?」

 

未央「でも残念!間近なら、こっちも逆に―――」

 

未央「―――こういうことが出来るんだよ~!ちえりん!」

 

>>>そう言った未央は、「破岩刃」を振りかざして、イプシロンの銃をはじき飛ばそうとした…

 

>>>……しかし、ここまでの未央の行動は、智絵里の予測通りだった!

 

智絵里(それなら……こうですっ)

 

>>>イプシロンは、高々と銃を掲げた。

 

>>>明らかに相手を撃つ姿勢ではない…武器を弾いてくださいと言わんばかりの動き。

 

>>>しかし未央はそれに気づけない。

 

>>>流れるようなモーションで智絵里が銃を掲げた為、そのままそれを目で追ってしまったのだ。

 

>>>つられるような形で、手に持った「破岩刃」の位置が上がってゆく―――――

 

>>>ここで、智絵里がまた、大きく動いた。

 

>>>なんと、掲げていた銃を高く放り投げ、即座に装備をナックルに切り替えたのだ。

 

>>>そして―――イプシロンは、ウォーリアーMの持つ「破岩刃」の柄に、拳を思い切りぶつけた!

 

>>>ウォーリアーMは耐え切れず、その手から「破岩刃」を落としてしまった!

 

>>>一瞬―――勝負を分けたのは、次の一瞬だった。

 

>>>イプシロンは手に持ったナックルまでもを投げ捨てた……

 

>>>そして、ウォーリアーMの手から零れ落ちた「破岩刃」を、奪い取った!

 

>>>そのまま、困惑したウォーリアーMに浴びせた、鋭い一閃。

 

>>>―――勝負が決まった、瞬間だった。 

 

未央「な………!?」

 

\ ピコーン! /

 

ウォーリアーM:BREAK OVER

 

智絵里「あの、えっと…、ありがとう、ございましたっ」

 

未央「え! ちえりん…え!? 今、どうなったの!私、負けたの!?」

 

小次郎「こいつは凄いな……キミ、中々型破りな戦い方をするじゃないか!」

 

みく「というか、どうして未央チャンの武器で攻撃する、って思いついたのにゃ?」

 

智絵里「いえ、だって…未央ちゃんの武器って、剣じゃないですか」

 

未央「うん、そーだよ。私の一番のお気に入り・破岩刃!」

 

智絵里「それと比べて わたしや、みくちゃんの武器って、リーチが短いじゃないですか」

 

智絵里「なので、どうにかしてその武器を借りて、反撃したかったんですっ」

 

小次郎「未央が銃の方に気が行ってるスキを狙って手元を攻撃し………」

 

小次郎「…すかさず武器を奪って攻撃、かー………」

 

小次郎「オレでも相当難しいテクニックだな…キミ、本当に初心者かい?」

 

智絵里「は、はいっ。 まだ分からない事、いっぱいで……」

 

小次郎「そうか……まっ、これからもがんばれよ!」

 

智絵里「はいっ!」

 

未央「よーし、ちえりん! LBXバトルが終わったら~?」

 

智絵里「えーと…メンテナンス! ですよねっ、未央ちゃん、みくちゃん」

 

みく「そうだにゃ! LBXは精密機器。 案外デリケートなのにゃー」

 

未央「諸君、グリスは持ったか!メンテキットを使ってグリスをさそう!」

 

みく&智絵里「おぉー」

 

未央「気合いが足りないぞー!グリスさすぞー?」

 

みく「オー、だにゃ!」

 

智絵里「ぉ…おー、ですっ」

 

未央「よしOK! さてメンテメンテ……」

 

 

……

………

 

?「キタジマに居たんだね……ふふ、楽しそう………」

?「今度ゲームセンターに誘ったら、来てくれる…かな」

 

 

>>>続

 

<< オタクロスのオタ知識 >>

 

オタクロス「オタクロスのオタ知識、デヨ!」

 

オタクロス「今回は、こちらデヨ~!」

 

< クノイチMC<ミクカスタム> >

 

オタクロス「これは、みくにゃんがカスタマイズしたクノイチデヨ!」

 

オタクロス「LGパーツだけがフレイヤで、その他のパーツは全部クノイチデヨ」

 

オタクロス「2種類選べる武器のどちらにもナックルを持たせている為、遠距離攻撃できないデヨ」

 

オタクロス「そのかわり、腕を磨きに磨いた接近戦では輝くデヨ~!」

 

オタクロス「パーツがほぼ純正とはいえ、みくにゃんらしさの出た素晴らしいカスタマイズデヨ!」

 

オタクロス「では、次回もお楽しみにデヨー!」



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ダンボール戦機 C(シンデレラ) 04

ダンボール戦機 C(シンデレラ) 04

 

 

 

<< 第4章 箱の中の魔女 現る! >>

 

 

 

 

―――ミソラタウン駅―――

 

 

みく「それじゃ、また明日にゃ!」

 

未央「うん! …あー、ゴメン私ちょっと戻るね」

 

智絵里「えっ? 未央ちゃん、まだ帰らないんですか?」 

 

未央「ごめーん、キタジマに忘れ物しちゃったみたいでさー」

 

みく「それくらいだったら、みく達待ってるけど?」

 

未央「あー…ちょっと沙希さん達と立ち話もするつもりしてるし、気にしないで!」

 

未央「それじゃっ!」

 

タッタッタッタッタッタッ………

 

みく「行っちゃったにゃ…」

 

智絵里「また寮で会えますし。帰ります…?」

 

みく「それがいいかもにゃ。 電車乗るにゃー」

 

――――――――――

 

ウィ―――ン

 

小次郎「お? なんだ未央、忘れでもしたか?」

 

未央「そうじゃないんだけど…ちょっと、聞きたい事があって」

 

小次郎「じつは、オレもだ。 おおかた、あの智絵里って子のLBXの事だろう?」

 

未央「まぁ、そうなんだけど………」

 

小次郎「ちょうど沙希は今、買い出しに行ってるし……」

 

小次郎「相談があるんだったら、今のうちに聞くぞ?」

 

未央「じゃあお願いします…、じつはね………」

 

――――――――――

 

ウィ―――――ン

 

未央「ふぃー、やっぱり店長も知らないかぁ…イプシロンのこと」

 

未央「でも、気になる事言ってたなぁ………」

 

<小次郎「前にも、知らない人からLBXを貰ったって子が居たんだが……」>

 

<小次郎「その子のLBXはコアスケルトンのまま。カバーパッドしか付いてなかったんだ」>

 

<小次郎「もしかしたらあのイプシロンってLBX、コアスケルトンの方も…」>

 

<小次郎「珍しいものかもしれない」>

 

<小次郎「コアスケルトンの情報が分かればもしかしたら、あのLBXの出どころも分かるかもな」>

 

未央(コアスケルトン、かぁ……考えた事無かったな……)

 

未央(よしっ、帰ったらちえりんと確認しなくっちゃ!)

 

??「こんにちは……ううん、もうそろそろ…こんばんは、かな……?」

 

未央「―――――え?」

 

??「あらためまして、こんばんは…本田未央ちゃん」

 

未央「こんばんは……って、うめちゃん!?」

 

小梅「久し振り…かな? 最近会ってなかったような……」

 

未央「そういえば、そうかも! ひさしぶりー!」

 

小梅「未央ちゃん、今…キタジマから出て来た、よね?」

 

小梅「LBX……好き、なの?」

 

未央「え? ああ、うん! 好きだよー!」

 

小梅「へぇ……そうなんだ。 私も、LBXするんだよ……」

 

未央「そうなんだー! また今度、バトルしようよー!」

 

小梅「明日……」

 

未央「へ?」

 

小梅「明日、この商店街のゲームセンターで……とか、どうかな?」

 

未央「うーん明日かぁ。 学校終わりの後でもいいなら、OKだよ!」

 

小梅「ふふふ、そっかぁ。よかった……じゃあ」

 

小梅「楽しみにしてる、ね………」

 

スタスタスタスタスタ………

 

未央「な、なんだったの今のは…バトルのお誘いされちゃったけど……」

 

未央「……そういえば、うめちゃんってどんなLBX使うんだろ?」

 

 

―――――女子寮・智絵里の部屋―――――

 

智絵里「…え? カバーパッド?コアスケルトン?」

 

未央「そうそう!今のイプシロンは、アーマーフレームっていってねー」

 

未央「装甲を身にまとってる状態なんだよー」

 

智絵里「ということは…コアスケルトンっていうのは、骨組み部分…ですか?」

 

みく「そんな感じにゃー。で、未央チャン」

 

未央「なに?みくにゃん」

 

みく「このイプシロンチャンのコアスケルトンを調べたいってことなのにゃ?」

 

未央「うん、今のままじゃ何の手がかりもなしでしょ?」

 

未央「キタジマ店長が、コアスケルトンから分かる事もあるんじゃないかなーって」

 

みく「でもハンドメイドなんでしょー? そもそもこのアーマー、剥がせるのにゃ?」

 

未央「んー、それは…物は試しっていうでしょ! ほらみくにゃん、コテ貸して!」

 

カチャカチャカチャ……

 

智絵里「だ、だいじょうぶかなぁ……」

 

未央「心配ご無用!ちえりんの大切なLBXだもん、壊そうなんて思ってないからね!」

 

……カチッ!

 

未央「お、取れた。 うわぁ、信じられないくらい綺麗にスクラッチしてる……?」

 

みく「いや、この断面…明らかに手作業でスクラッチしたのとは違うにゃ」

 

未央「やっぱりどっかのメーカーさんが、ちえりんのファンなんじゃない?」

 

みく「このデザインは…むむー、サイバーランス?タイニーオービット?」

 

未央「確かにそういう大手をリスペクトしてるかもしれないけども―――」

 

未央「小さな町工場とかで、ちえりんの為だけにこのLBXは作られた!…とか♪」

 

みく「もしそれが本当なら、あまりに一大プロジェクト過ぎるにゃ……」

 

未央「確かに…。 ちえりんに任せる理由が、わかんないよねー……」

 

未央「それはさておき!アーマーフレームも外したし、コアスケルトンを確認だー!」

 

>>>コアスケルトンには、<YX-00>という記載以外、何も記されていなかった……

 

みく「ワイエックス・ゼロゼロ……?」

 

未央「うーん? こんなコアスケルトン見た事無いなー」

 

みく「ふにゃー…検索しても、何もヒットしないにゃぁ……」

 

未央「結局、謎のLBXってことかー……」

 

智絵里「二人ともすみません、わたしのLBXの為にわざわざ…」

 

未央「いいのいいの!私達が勝手に興味持ってるだけなんだからー」

 

智絵里「ありがとう、ですっ。 でも、あの…そろそろアーマー付けてもいいです、か?」

 

みく「んにゃあ?どうしてにゃ? もうちょっとコアスケルトン調べてみないにゃ?」

 

智絵里「いえ…ロボットっていっても、ずっと裸なのは、何だかかわいそうで……」

 

未央「うぅー!ちえりんはかわいいなー!」

 

みく「みくのクノイチも、ペイントし直そっかにゃ~。更なるドレスアップにゃっ!」

 

智絵里「それじゃ、明日の放課後…一緒にカスタマイズ、しませんか?」

 

未央「あー…ごめん。 私、明日は用事入っちゃって……」

 

智絵里「用事…です、か?」

 

未央「あの後、キタジマから出て帰ろうとしたら、うめちゃんに会ってさー…」

 

みく「小梅チャンかにゃ?」

 

未央「うん…。 明日、あの商店街のゲームセンターで、LBXバトルしよう、って……」

 

みく「こ、小梅チャンと…バトル、するのにゃ……!?」

 

未央「ねぇ、みくにゃん、うめちゃんのLBXについて何か知らない?」

 

みく「噂だけなら、聞いた事はあるにゃ………」

 

みく「小梅チャンのLBXは、変幻自在でトリッキーな動きをするらしいにゃ…」

 

みく「しかも噂が本当なら、めっちゃ強いらしいし……」

 

未央「えぇっ! うめちゃん、そんなに強いの!?」

 

みく「しかもあの子、アンリミテッドレギュレーションでしかバトルしにゃいらしいよ…?」

 

未央「アンリミテッド……!?」

 

智絵里「そ、それって…まさか―――っ!」

 

みく「何でもアリ、モチロン破壊もアリのルール…だにゃ」

 

みく「小梅チャンとのLBXバトルは、まるでイリュージョンみたいって噂にゃ」

 

みく「それで裏では、<箱の中の魔女>とか呼ばれてるらしいけど……」

 

未央「そ、そんな…! だって、バトルの約束は明日なんだよ!?」

 

未央「ホントに勝てるのかな……私の、ウォーリアー………」

 

智絵里「未央ちゃん……」

 

みく「それなら、今から特訓にゃ! 徹夜で猛特訓するにゃぁ!」

 

智絵里「わ、わたしもっ、付き合いますっ!!」

 

未央「うぅ、二人とも……ありがとー!」

 

>>>こうして3人は、疲れ果てて眠ってしまうまで、バトルを続けた……

 

―――――次の日の放課後―――――

 

未央「くぅ…、いよいよだ……!」

 

智絵里「自信持ちましょうよ、未央ちゃんっ」

 

みく「あれだけ特訓したんだにゃっ!未央チャンは絶対、強くなったにゃ!」

 

未央「う、うん…。 だといいんだけど……」

 

未央「とりあえず、ミソラ商店街に行かなきゃ」

 

―――――ミソラ商店街・ゲームセンター―――――

 

小梅「ふふ、ふふふ……待ってた、よ… 未央ちゃん…」

 

未央「うめちゃん、噂によれば相当強いらしいじゃん!」

 

未央「知ってたら、バトル断ってたかもしれないのに―――」

 

小梅「いいよ…?」

 

未央「えっ?」

 

小梅「このバトル、断って…帰っても、いいよ……?」

 

小梅「噂、聞いてるんだったら…たぶん、知ってる、よね…?」

 

小梅「私が、アンリミテッドバトルしか、しない……って」

 

小梅「未央ちゃん、の…大事なLBXさん、壊されたくないっていうんだったら……」

 

小梅「このまま、逃げ帰っても……いい、よ?」

 

みく「!?」

 

智絵里(小梅ちゃん…口調は穏やかだけど、もしかして挑発してる…!?)

 

未央「逃げ帰る~? はっはっはー、笑わせないでよー、うめちゃん」

 

未央「私は逃げも隠れもしないよ! その代わり、うめちゃん―――」

 

未央「うめちゃんも、自分のLBXをズタズタのボロボロにされる覚悟は出来てるんだよね!」

 

小梅「私…? 私は、そんな覚悟…する必要、ないかな…って」

 

小梅「未央ちゃんが、私のLBXに勝つ事なんて…あり得ないから、ね……」

 

未央(ずいぶん強気じゃないの、うめちゃん! でも、負けないよーっ!)

 

小梅「ステージは…ゲームセンターで貸し出してる、この草原のジオラマ、だよ……」

 

小梅「もちろん、勝負はアンリミテッド……ふふ、ふふふ………」

 

小梅「じゃあ、バトル……開始、する…よ?」

 

 

<フィールド:草原>

 

 

未央「いっけぇーっ!私のウォーリアーM!」

 

>>>まず草原のバトルフィールドに降り立ったのは、未央のウォーリアーM。

 

>>>その未央のLBXを見るなり、白坂小梅はクスクスと笑い出した。

 

小梅「ふふ、面白いね……ほとんど、ウォーリアーじゃない、のに…ね」

 

未央「―――えっ!?」

 

小梅「アーマーフレームの持ってる、それぞれの形の癖…で、元のパーツがだいたい分かる、よ…」

 

小梅「うん……HDパーツは、正真正銘のウォーリアー、だね……」

 

小梅「でもBDは…うん、それは、ウォーリアーにしたら、大きすぎる、よね……」

 

小梅「たぶん、ハカイガーのBDを削って…そこにパテを盛って、ウォーリアーの形に整形し直してる…」

 

小梅「ってことはAMもかな?ハカイガーの装飾を取り外した所に、ウォーリアーの肩のアーマーを…」

 

小梅「LGに関しては…パテ盛りとニクぬきを繰り返した跡、あるね………」

 

小梅「これは、ハカイガー…じゃ、ない……」

 

小梅「手軽に手に入るパーツ……んー、マッドドック、とか、かな…?」

 

未央「―――――っ!?」

 

小梅「ふふっ、わかるよ…このくらいは、ね… パーツの事、いつもじっくり見てる、から……」

 

みく(す、スゴイにゃ! 初見で、未央チャンカスタムの、全パーツの正体を言い当てたにゃぁ!)

 

未央「でもパーツが分かったところで、勝敗が決まった訳じゃないよ!」

 

小梅「うん…未央ちゃんの、言う通り、だね……」

 

小梅「じゃあ、私もLBX…出す、ね………おいで、ジョーカー…」

 

>>>小梅の長い袖の中から、鎌を持った細身のLBXが飛び出し、フィールドに着地した。

 

>>>そのLBXには、不気味な笑みを浮かべたHDパーツが付いていた……

 

みく「あれは、ジョーカーにゃ……かなり癖のある機体だから、使いこなすのは至難の業…!」

 

小梅「楽しい、ショータイムの…始まり、だよ……?」

 

 

  バ ト ル ス タ ー ト

 

 

 

未央(相手の武器はハンマー…でもあの形は、サイス系……!)

 

未央(攻撃の軌道が読みにくいうえに、当たったら大ダメージ…!!)

 

小梅「それじゃ、行く、よ……?」

 

スタタタタタタタッ シュンッ!!

 

>>>小梅のジョーカーが、ウォーリアーMに急接近し、鎌で切り裂いた。

 

>>>わずかに狙いが外れたのか、ウォーリアーMのすぐ横の地面から、砂煙が上がった……

 

未央(―――あ、危ない! とっさに左に避けてなかったら、直撃してた…!?)

 

未央「今度はこっちから―――っ! そりゃああっ!!」

 

>>>未央が愛用の大剣・破岩刃を豪快に振るう。

 

>>>しかし破岩刃は小梅に掠りもしない。

 

>>>大きな剣である為、この武器は軌道が読まれやすいのだ。

 

>>>小梅は、自分に当たる直前でその攻撃の向きを見極め、華麗にかわしていた。

 

>>>それに加え、小梅自身は―――――

 

未央(どうしよう…!右に左に、攻撃で揺さぶってるのに……!)

 

未央(―――スキがない…!?)

 

小梅「未央ちゃん……ずっと攻撃してる、けど…スキだらけ、だよ……」

 

>>>そういった小梅はジョーカーを屈ませ、下から鎌を思い切り振りあげた―――!

 

未央「うわあ――っ!!」

 

>>>耐え切れずに、ウォーリアーMが吹っ飛び、フィールドを転がる。

 

小梅「そろそろ、いい…かな? 恐怖のパーティー……始める、ね…?」

 

>>>小梅がそう言った途端、CCMの操作が激しくなった。

 

>>>そしてなんと…小梅のジョーカーが、3体に分身したのだ!

 

未央「え…ウソ、でしょ……?」

 

みく「未央チャン落ち着くのにゃ!きっと残像、本物は1体だけにゃぁ!」

 

未央「そう、だよね……」

 

未央(落ち着け…落ち着けー、本田未央…!)

 

小梅「―――落ち着く暇なんて、与えない…よ?」

 

>>>瞬間、3体のジョーカーが一気にウォーリアーMに向かって行った。

 

>>>四方八方から攻撃を食らい、成す術の無い未央……

 

>>>1体の攻撃を防ごうとするが、その間(かん)に他のジョーカーに攻撃される。

 

>>>未央は今、小梅の仕掛けた悪魔のイリュージョンの術中に、完全に嵌ってしまっていた…

 

未央「ええーい!ちょこまかとっ、うっとうしいなあーっ!!」

 

小梅「攻撃を、避けきれない…その愚痴なら、幾らでも……聞く、よ?」

 

未央「愚痴をぶつけるんじゃなくって―――――」

 

<INFO>アタックファンクション:我王砲

 

未央「―――こいつをぶつけるんだよ! 必殺ファンクション!!」

 

>>>しかし、ウォーリアーMがファンクションの構えを取った瞬間―――――

 

>>>3体のジョーカーは即座に散開し、未央のファンクションが命中する事は…なかった。

 

小梅「そろそろ…フィナーレ、行く…よ?」

 

>>>今度は3体のジョーカーがウォーリアーMを取り囲み、その周りをグルグルと旋回し始めた。

 

未央(ホントにマズイ…、ていうかヤバイ……!)

 

ガンッ! ジャキンッ! ガシュッ! ガァンッ!

 

>>>小梅のジョーカーの総攻撃が、未央のウォーリアーMに降り注ぐ。

 

小梅「とっても、とっても……楽しかった、よ……?」

 

小梅「……必殺ファンクション」

 

<INFO>アタックファンクション:デスサイズハリケーン

 

未央「わああっ!?必殺ファンクション、3体分…!?」

 

未央「こうなったらもうヤケだよ、必殺ファンクション!」

 

アタックファンクション:我王砲

 

未央「一体でもいいから当たれーっ!!」

 

ドゴォォォォン………!

 

>>>一瞬の静寂。 舞い上がる土煙、そして……

 

小梅「ふふ、ふ……今日も…勝てた、ね……」

 

>>>勝ったのは、不気味な笑みを浮かべる白坂小梅。

 

>>>ウォーリアーMは、無残な姿でブレイクオーバーされたのだった…

 

小梅「あーあ、終わっちゃった……楽しいショーは、もうおしまい、だね……」

 

小梅「って言いたいところだけど……まだ、終わらせない、よ…?」

 

ガンッガンッガンッ! ガァンッ!!!

 

>>>何と小梅は、ボロボロになりブレイクオーバーしたウォーリアーMを、更に痛めつけた。

 

>>>そのジョーカーの足で踏みつけ、鎌をウォーリアーに何度も叩きつける……

 

みく「そ、そんにゃぁ…」

 

智絵里「ひどいっ…こんなの、ひどすぎますっ!」

 

みく「小梅チャン、もう決着はついたにゃっ!攻撃をやめるにゃあ!」

 

未央「ウォーリアー…………」

 

小梅「聞いてよ、みんな…、この音…。金属がひしゃげる時の音、それから、飛び散る火花……」

 

小梅「最高、だよね……とっても、気持ち、いいよ…ね……」

 

智絵里「小梅ちゃんが…こんな事、するなんて………」

 

未央「わ、私の…ウォーリアーが……やめて…お願い……」

 

小梅「何か、こういう展開って…ちょっと、スプラッタを連想…するよね?……しない?」

 

小梅「イリュージョンの後は、破壊の…ショー、だよ………」

 

智絵里「そこまでにしてくださいっ、小梅ちゃんっ」

 

小梅「……なに?どうしたの? 智絵里ちゃん…怖い、顔……」

 

智絵里「未央ちゃんのLBXをいじめるのは、そこまでにして、って言ってるんですっ」

 

未央「ちえりん……?」

 

小梅「え…ここからが、楽しい…のに……」

 

小梅「LBXバトルは、やっぱり…こうで、なくっちゃ…ね?」

 

智絵里「そんなに遊びたいんだったら、私が相手になるって、言ってるんですっ」

 

小梅「なに?智絵里ちゃんも、バトル…したくなった、の……?」

 

智絵里「これ以上、未央ちゃんが一方的にやられるのを、見たくないだけですっ」

 

みく「智絵里チャン、気持ちはわかるけどちょっと落ち着くにゃあ!」

 

みく「あの未央ちゃんが手も足も出なかったんだよ? いくら智絵里チャンでも…」

 

智絵里「それでも、嫌なんですっ」

 

智絵里「私、LBXは友達であり、もう一人の自分だって思ってました」

 

智絵里「そしてそれは、今でも変わりません……」

 

智絵里「小梅ちゃん、あなたとは仲良くしてたつもりですけど……」

 

智絵里「この行為……私には、絶対に許せませんっ」

 

小梅「どうして?どうして、そういう考えに、なっちゃう、の…?」

 

小梅「LBXは、オモチャ…なんだよ? どれだけ面白おかしくできるか…それが、大事……」

 

智絵里「違いますっ、LBXは…かけがえのないパートナーなんですっ」

 

智絵里「そんな大切な子を、ここまでいたぶるなんて……!」

 

小梅「智絵里ちゃん、怒ってる…? 怒ってるね…ふふ、だったらバトル…するよね?」

 

小梅「勝負はもちろん、アンリミテッド……それしか、私はやらない、よ…」

 

智絵里「…う、受けて立ちますっ」

 

小梅「えへへ…ショータイムの、再開……だね」

 

<フィールド:草原>

 

 

  バ ト ル ス タ ー ト

 

 

未央「気を付けて、ちえりん!」

 

未央「今さっき私も戦ったけど…どうやって分身したのか、全然分かんなかった…」

 

みく「とにかく慎重に…相手の動きを観察するのにゃぁ!」

 

智絵里「は、はいっ!」

 

小梅「いきなり分身は…しない、よ…? すぐ終わっちゃったら、つまんない、もんね…」

 

未央(完全にちえりんの事を舐めてる…!!)

 

みく(まさか小梅チャンがLBXバトルの時に、こんな豹変するなんて……)

 

智絵里「やっ! はっ! ていっ!」

 

>>>正拳突きを繰り出すイプシロン。

 

>>>しかし、ジョーカーはこれを華麗に、回転しながら回避。

 

>>>今の小梅には、智絵里に勝てるという絶対の自信があるようだった。

 

小梅「こういうのって、タロットで表すと…<愚者(フール)>っていうんだろう、ね……」

 

小梅「単調な、力押し……愚かしさの、極み…だね………」

 

小梅「さっき智絵里ちゃん、LBXはもう一人の自分、って言ってたけど……」

 

小梅「それ、間違いじゃ、ない…かも、ね」

 

小梅「私は…このジョーカーを、自分の手足のように…動かせる、から……ね」

 

智絵里「なら、これで……っ!」

 

>>>智絵里は武器をオートマチックガンに変え、ジョーカー目掛けて発砲する。

 

>>>しかし小梅は、CCMの巧みな手さばきで、全弾を難なくかわしてゆく。

 

>>>そしてイプシロンとの距離を、一気に詰めてきた―――――!

 

智絵里(ま、まずいですっ…! 一旦、距離を―――)

 

>>>慌てて回避を試みた智絵里だったが………

 

小梅「足元……お留守、だよ…?」

 

>>>言葉通り、ジョーカーの鎌に足元をすくわれ、イプシロンは宙に投げ出された。

 

未央「まずいっ!!」

 

みく(必殺ファンクション打たれちゃうにゃぁっ!!)

 

智絵里(そんな! ウソ……やられちゃいますっ……!)

 

>>>智絵里を含む3人が必殺ファンクションを危惧したのだったが―――

 

>>>イプシロンは、そのままドサリと転げ落ちた。

 

>>>その様子を、ジョーカーはまるで嘲笑うかのように眺めているだけだった……

 

小梅「どうして、みんな…不思議そうな顔、してる……の?」

 

小梅「もしかして……アタックファンクション、期待……してたの、かな?」

 

小梅「こんな、所で…打ったりしないよ? だって、つまんない……でしょ?」

 

小梅「ホントの、ショータイム……イリュージョンは、ここから……だよ!」

 

>>>小梅が片手を振るうと、ジョーカーがあっという間に3体に分身した!

 

智絵里(まずい、です…っ! 何も、対抗策が思い浮かばないですっ……)

 

みく「仕組みはよく分かんないけど、2人や3人を相手にしてると思って戦うにゃ!」

 

みく(たぶん高性能な投影機か、高速移動による残像だと思うけど……)

 

みく(今の智絵里チャンなら、この考えで突破できるはずにゃっ!)

 

未央「……っ、ちえりん! これ使って!!」

 

>>>そう言って未央が放り投げたのは、ウォーリアーMの…大剣・破岩刃。

 

未央「大きな武器だから、それで何とか攻撃を防いで!ちえりん!」

 

小梅「バトルの、最中に……武器、投げ入れる…なんて……」

 

未央「なによ! 何でもありのバトルなんでしょ!」

 

小梅「べつに、構わない…けど、ね? そんなことしても、無駄かな……って」

 

>>>3体のジョーカーが、イプシロンの周りを旋回しながら攻撃を仕掛ける。

 

智絵里「武器っ、持ち替えて……っと!」

 

>>>智絵里がオートマチックガンの装備を解除し、破岩刃を拾ってそれに持ち替えた。

 

智絵里「………今、ですっ!」

 

>>>剣を持ったイプシロンにエネルギーを溜め、智絵里が<回転斬り>を発動―――!

 

小梅「…な、に……? 今、の…は………」

 

>>>智絵里の<回転斬り>が3体のジョーカーを連続で斬りつけた。

 

>>>その攻撃によって、バランスを崩したジョーカーだったが……

 

>>>…ここで、みくが気付いた。

 

みく「あーっ!このジョーカーチャン達、挙動が違うにゃ!」

 

未央「どういうこと?みくにゃん……あっ!」

 

智絵里「こ、これ…分身、なんかじゃなくて……っ!」

 

小梅「あぁ……バレちゃった、ね…………」

 

小梅「うん、そうなんだ……このイリュージョンに、タネは……あるの」

 

小梅「ジョーカーは、分身じゃなくって……3体、いるの………」

 

智絵里「どうやって、一度に操作してるんですか……!?」

 

小梅「慣れれば、簡単だよ…? 慣れれば、ね……」

 

小梅「バレちゃったし、どうしよう……」

 

小梅「みくさんも、バトル……参加、する………?」

 

みく「―――にゃ!?」

 

智絵里「いいえ、わたし一人で……戦いますっ」

 

みく「智絵里チャン!?」

 

智絵里「向こうは3体ですけど、操作してるのは、1人ですっ」

 

智絵里「小梅ちゃん一人、私も一人、一対一です」

 

智絵里「だから、わたしが…ひとりで戦って、勝ちますっ」

 

小梅「ふふ、ふ……凄い、自信だ、ね………?」

 

小梅「でも、ね…自信、だけじゃ、どうにも…ならないん、だよ……?」

 

ガンッガンッガンッ キィィィンッ!!

 

>>>3体のジョーカーが、縦横無尽にフィールドを駆け回る。

 

>>>その動きに翻弄され、智絵里のイプシロンにダメージが蓄積していく……

 

智絵里(どうしよう、どうしようどうしよう………!)

 

>>>智絵里があたふたしていたそんな時、異変は起こった。

 

智絵里「このままじゃ―――きゃっ!」

 

>>>突如、イプシロンがまばゆい光を放った。

 

>>>それだけではなかった…智絵里のCCMが拡張され、レーダーのようなものが現れた。

 

<INFO> {V-MODE} Start Up...

 

みく「何にゃ何にゃー!?」

 

未央「これって、CCMが…変化したの?」

 

小梅「なん、なの……? これ………」

 

ビュンッ シュタタタタタタッ

 

>>>イプシロンが駆ける。 智絵里の指示もなしに。

 

みく「ぼ、暴走してるのにゃ!?なんかヤバイにゃぁ!」

 

智絵里「だ、だめ…っ、操作できませんっ!」

 

ギィンッ! ズシャッ! ドォォォン!!

 

>>>イプシロンは破岩刃でジョーカーの1体を切り伏せ……

 

>>>そこから更に、転倒したそのジョーカーを追撃して、破壊した。

 

智絵里「やめてーっ! お願いっ、イプシロンっ!やめてくださいっ」

 

小梅「ジョーカー1体……やられ、ちゃった………」

 

小梅「やられてる姿も…好き、だよ………ふふ、ふふふ」

 

智絵里「小梅ちゃんっ!今私の操作を、イプシロンが受け付けないんですっ」

 

智絵里「暴走しちゃってて、このままじゃジョーカーを全部破壊しちゃいますっ」

 

智絵里「お願いしますっ、降参してくださいっ!」

 

小梅「降参…? しない、よ……?」

 

小梅「壊されちゃったら、それは…しょうがない、事……でしょ?」

 

小梅「別に壊れても…また、直すだけ、だよ……」

 

小梅「だから、降参は……しないよ………」

 

ドォォォンッ!!

 

>>>イプシロンがまた1機、ジョーカーをブレイクオーバーに追い込んだ。

 

>>>残る小梅のジョーカーは……あと、1機。

 

智絵里「イプシロン……止まって、くださいっ」

 

ピッピッピッピッ…ビビッ! ビービービー

 

智絵里「だ、駄目です…こっちのコントロールを、全く受け付けません…っ!」

 

小梅「こっちも……ただでやられる、つもりは……ないけど、ね………」

 

>>>小梅の巧みな手さばきによる、CCMの高速入力。

 

>>>操作する対象が1体になった今、小梅はある意味、全力を注げる状態になった。

 

>>>すかさず、イプシロンに接近して大鎌を振るう。

 

>>>しかしイプシロンは、とんでもない早さでその攻撃を回避し、ファンクションを放つが―――

 

小梅「当てさせないよ………」

 

<INFO>アタックファンクション:パワースラッシュ

 

小梅「……回避、成功だね…よし、と………」

 

>>>智絵里もみくも、先程やられた未央までもが、小梅とイプシロンの攻防に見入っていた。

 

小梅「今度はこっちから、仕掛ける……よ?」

 

<INFO>アタックファンクション:デスサイスハリケーン

 

>>>ジョーカーの挙動を見たイプシロンは、躊躇なくジョーカーを斬りつけ続けた。

 

>>>どうやら、小梅の発動させたファンクションを、力技で止める気らしい。

 

小梅「よし、あともう少し……いける…! いけ、いけ………」

 

ガァンッ!!

 

小梅「う、嘘…………」

 

>>>あともう一息のところだったが、ファンクション発動を阻止されてしまったジョーカー。

 

>>>バランスを立て直せないまま、イプシロンの追撃が襲い掛かる―――

 

ドォォォォン!!

 

みく「す、凄いにゃ……全部、一人で破壊した、にゃぁ………」

 

智絵里「…っ! と、止まった…… コントロール、ようやくできますっ」

 

未央「Vモードとかいうのも、終わったみたいだね……」

 

>>>智絵里のCCMは元の形に戻っていた。

 

小梅「ま、負けちゃった……でも、楽しかった……かも。ふふふ」

 

小梅「また、遊ぼう…ね? それじゃ……」

 

>>>小梅がブレイクオーバーしたジョーカー達を回収し、ゲームセンターを去って行った。

 

智絵里「イプシロン…いったい、どうなっちゃったの?」

 

>>>イプシロンは、ただそこに、何事もなかったかのように、佇んでいるだけだった……

 

 

 

 

>>>続

 

<< オタクロスのオタ知識 >>

 

オタクロス「オタクロスのオタ知識、デヨ!」

 

オタクロス「今回は、こちらデヨ~!」

 

< イプシロン(智絵里専用カラー) >

 

オタクロス「智絵里たんの使ってるLBX…その名も、イプシロン(智絵里たんカラー)、デヨ!」

 

オタクロス「謎の人物・Kから送られてきた、ホントーに謎に包まれすぎてる正体不明のLBX!」

 

オタクロス「メタルナックルという貧相な武器しか同封されていなかった為―――」

 

オタクロス「―――智絵里たんは暫くの間、近接攻撃のみで戦っていたんデヨ…」

 

オタクロス「そして今回、なぜかVモードが発動したんデヨ!これはいったい……!?」

 

オタクロス「そんなイプシロンの秘密を、これからも要チェック・デヨ~!!」

 

オタクロス「では、次回もお楽しみにデヨー!」



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ダンボール戦機 C(シンデレラ) 05

ダンボール戦機 C(シンデレラ) 05

 

 

 

<< 第5章 カスタムマニア!?飛鳥登場 >>

 

 

 

 

―――キタジマ―――

 

 

>>>ゲームセンターで、白坂小梅との激闘を繰り広げた智絵里達。

 

>>>イプシロンの謎がまた一つ増えた。 それは<Vモード>……

 

>>>事のいきさつを子ども達から聞いた店長の小次郎は、意外な答えを返した。

 

未央「えぇっ! 店長、Vモード知ってんの!?」

 

みく「Lマガにも載ってなかったのに…さすが店長にゃ」

 

小次郎「知ってる、というか…話で聞いた事がある、って感じかな」

 

沙希「ブイモード… んー?どっかで聞いた事あるようなー…」

 

みく「にゃにゃっ!? 沙希さんまで知ってるのにゃぁ!?」

 

未央「まさか条件を満たすと発動するLBXの隠しコマンドが……!?」

 

小次郎「いや、通常のLBXにそんな機能は搭載されてないはずなんだが……」

 

小次郎(しかし智絵里のこれは贈られてきたんだったな。いったい……)

 

未央「これ、通常のLBXじゃないでしょ!てんちょー!」

 

みく「たぶんどこかでフルスクラッチされたパーツにゃ。こんなの見た事無いにゃあ」

 

未央「市場に出回ってないって事は! 超レア物って事でしょ!」

 

小次郎「うーむ……」

 

小次郎(見た事無いLBX、そしてそのLBXを貰った経緯、更にはVモードの搭載……)

 

小次郎(これは一旦、バンにそれとなく聞いてみるべきだな)

 

小次郎「ちょっと心当たりがあるんだ。知合いに、その件は聞いておこう」

 

小次郎「それにしても、あの子……小梅と、お前達が戦ったなんてなあ」

 

未央「うめちゃんの事知ってるの?もしかしてここの常連?」

 

小次郎「いや、滅多に顔は出さないんだが………」

 

小次郎「…お前達、聞いた事無いのか?小梅のLBXの噂」

 

みく「それって、もしかして<箱の中の魔女>ってやつにゃ!?」

 

小次郎「いや、そっちじゃない……まあ、似たようなものだけどな」

 

小次郎「……<オンナ仙道>、だ」

 

みく「ふにゃ? オンナセンドー?」

 

未央「仙道って、まさか…あの―――!」

 

智絵里「未央ちゃん、知ってるんですか?」

 

未央「うん!アルテミス出場経験2回、ジョーカーを使わせたら右に出るものはいない…」

 

みく「でも確か2回目の出場時は……あっ」

 

未央「そう、郷田ハンゾウさん! あの人とタッグを組んで出たんだよ!」

 

未央「プロメテウス社の御曹司、ハンゾウさん! 私の憧れのLBXプレイヤー!」

 

小次郎「その郷田と組んでた仙道って子だが………」

 

小次郎「結構残忍なLBXバトルを好む事やつでな」

 

小次郎「その巧みなCCM操作で、多くの強者をブレイクオーバーに追い込んだ実力者だ」

 

小次郎「彼の特徴は、ジョーカー3体を同時に操ってバトルする所なんだが……」

 

小次郎「話を聞いた限り、小梅もそれが出来るらしいな。だからこそ、そのあだ名があるのかもな」

 

みく「オンナセンドー……、おっかないにゃぁ……」

 

小次郎「とにかくVモードの件は、オレの方で確認を取っておく」

 

小次郎「未央、LBXを貸せ。オレが新品同様のメンテナンスをしてやる」

 

未央「店長、それマジ…? やった、ありがとう……!」

 

小次郎「次来る時までにはキッチリ直しておいてやるから、元気出せよ」

 

小次郎「それから、智絵里。 ウォーリアーの仇をよく取ってくれたな」

 

小次郎「初心者なのに、よくやったじゃないか」

 

智絵里「いえ、わたしは……イプシロンが一人で、がんばってくれただけで……」

 

小次郎「それでも、だ。 逃げずに、よく立ち向かった」

 

小次郎「今日は大盤振る舞いだ! 好きな武器、持ってけ!」

 

智絵里「えっ、い…いいんですかっ?」

 

沙希「ええ、モチロン!その代わり、今後もウチをよろしくね!」

 

みく「智絵里チャン、よかったにゃー! 好きな武器を選ぶにゃあ!」

 

智絵里「そう言われても…いっぱいあるので、どれを選べば……」

 

未央「私達が持ってない武器選ぼうよ! ね?」

 

みく「それがいいにゃ。 最悪、智絵里チャンにはみく達のお古を使ってもらえばいいにゃ」

 

智絵里「んー………」

 

未央「まずはジャンルから選ばないとだね。 遠距離、近距離……」

 

みく「智絵里チャンはどんな武器を使いたいのにゃ?」

 

智絵里「え、えーっと……」

 

未央「自分の好きなのを選べばいいんだよ!LBXは、武器のチョイスでも個性が出るからねー」

 

智絵里「わたしが好き…かどうかは、分からないんだけど……」

 

智絵里「<ナックル>は、外したくないな……って、思ってますっ」

 

みく「それだったら、みくの持ってないのを選ぶといいにゃー♪」

 

小次郎「っていってもみくの武器はナックルだらけだろ? うーむ……」

 

小次郎「そうだ。こないだ入荷したアレなんかどうだ? 沙希ー」

 

沙希「あいよー、ちょっと待ってね~」

 

ガサガサ……カチャカチャカチャ……

 

沙希「あったあったー。 あんた、これだよね?」

 

小次郎「まったく…在庫整理くらいきっちりやっといてくれよな」

 

小次郎「ほれ、智絵里。 こんなの、どうだ?」

 

みく「んにゃあ! ソレ、もしかして新製品なのにゃー!?」

 

沙希「こらこら。気持ちはわかるけど、これは智絵里ちゃんへのプレゼントだからさー」

 

智絵里「きれい……。 この武器、とってもきれいですっ」

 

小次郎「お!気に入ってくれたか。それならよかった」

 

未央「てんちょー。ちなみにこれ、名前なんていうのー?」

 

小次郎「えっと…<氷皇(ひょうこう)ブリザードエッジ>って書いてるな」

 

未央「ひえ~、見た目に反して何かおっかない名前だねー」

 

小次郎「俺に言われてもなぁ。文句はメーカーに言ってくれ」

 

智絵里「あの、あのっ……わたし、これっ、これにしますっ」

 

小次郎「よし!じゃあ智絵里には、そのブリザードエッジをプレゼントだ!」

 

智絵里「ほ、ほんとにっ、ほんとにいいんですかっ?」

 

小次郎「もちろんだとも!」

 

沙希「その代わりー……今後ともウチを、ごひいきにねー♪」

 

智絵里「は、はいっ。 これからも、お世話になりますっ」

 

 

―――――キタジマ前―――――

 

みく「ふー、あれから結構いろいろ買っちゃったにゃあ~……」

 

未央「それにしてもよかったね、ちえりん!」

 

智絵里「は、はいっ…!」

 

智絵里「ブリザードエッジ……大事に、しますっ」

 

未央「後は遠距離武器だねー。 未央ちゃんのお古で良ければ、あげるよ~」

 

みく「申し訳にゃいけどみくは近接武器しか無いからにゃぁ……」

 

智絵里「とりあえず、女子寮に帰りましょっ」

 

未央「よし、者共帰宅するのじゃ! 話はそれからだ!」

 

――――――――――

 

??「店長、沙希さん、ひさしぶりー」

 

小次郎「おぉ、バン!」

 

沙希「ホントに久しぶりだねーバン。 何だか忙しいらしいじゃん?」 

 

バン「俺がLBXの技術指導だなんて…今もちょっと照れくさいや」

 

バン「うーん。 もう遅い時間だし、アミやカズ、ヒロやランも居ないよね…」

 

小次郎「とても相手になるとは思えないが、俺でよかったらバトルするか?」

 

バン「いいの!? 久しぶりに思いっきりバトルしたかったんだ!」

 

小次郎「おっと、その前にバン…お前にいくつか聞いておきたい事があってな」

 

バン「聞いておきたい事? 俺に?」

 

小次郎「あぁ。 常連の子の友達が持っていたLBXが、とても珍しい物でな…」

 

バン「珍しい…って? 一点ものとか?」

 

小次郎「バン、<イプシロン>って名前のLBXに覚えはないか?」

 

バン「え…イプシロン?」

 

バン「イノベーターとの最終決戦に父さんが用意してくれた、LBXだけど……」

 

小次郎「そうか…。 つまり山野博士お手製、ってわけだな……」

 

小次郎「それから、Vモードについても聞いておきたいんだが……」

 

バン「Vモード? あれはAX-00に搭載された、試作段階のモードだけど」

 

バン「どういうこと? その人のLBXがイプシロンで、Vモードも搭載されてるっていうの?」

 

小次郎「ううむ………」

 

バン「今はイノベーターもディテクターも居ない」

 

バン「平和になった今、父さんが新たにイプシロンを作るなんて考えられないけど…」

 

バン「父さんに直接、は無理かもしれない……今でも父さん、忙しいから」

 

バン「でも拓也さん達にも聞いてみるよ。 何か分かるかもしれないし」

 

小次郎「そうか、変な事を聞いてすまなかったな。 さて!」

 

小次郎「今日は俺達、夫婦総出で相手するぞ! 沙希、クノイチ弐式は?」

 

沙希「調整バッチリ! いつだって暴れられるわよ!」

 

バン「よぉーし、思いっきり楽しむぞーっ!!」

 

バン(イプシロン…Vモード……もしかして、新たなテロ組織が…!?)

 

 

―――――後日、事務所にて―――――

 

飛鳥「へぇ、これが噂の……」

 

智絵里「飛鳥ちゃんも、LBXやるんですか?」

 

飛鳥「ん?まぁ…ね。 でもソレ、事務所でちょっとした噂になってるよ?」

 

智絵里「噂……です、か?」

 

飛鳥「そう怖がるような顔をする必要は無いさ。 悪い噂じゃないからね」

 

飛鳥「ウチの事務所に、正体不明の激レアLBXを入手した子が居る…っていうものさ」

 

飛鳥「あの未央にその噂の真偽を尋ねたら、あっさり教えてくれたよ」

 

智絵里「そ、そうでしたかっ」

 

飛鳥「話によれば、相当強いそうじゃないか…智絵里」

 

智絵里「わたしじゃなくて、多分この子の性能がいいんですよっ」

 

飛鳥「キミさえ良ければ、真偽の程を……確かめてみたいんだが」

 

智絵里「えっ……バトル、って事ですか?」

 

飛鳥「早い話、そういうことなんだ。 で、返事は…どうかな?」

 

智絵里「えっとっ……レギュレーション、は?」

 

飛鳥「キミの好きな物を選ぶといい」

 

智絵里「え、えと…えっと………」

 

飛鳥「どうしたんだい?」

 

飛鳥「…もしかして、LBXを手にしてからまだ日が浅いのか?」

 

智絵里「うん。 わたし、これまでLBXは触った事も無くてっ」

 

飛鳥「わかったよ。 それじゃあ練習も兼ねて、ストリートレギュレーションで行こう」

 

飛鳥「……待てよ? キミ…未央や、みくに勝ったんじゃ……?」

 

智絵里「え? あ、はい。 二人とも、強かったですっ」

 

飛鳥(どういうことだ…あの二人はそれなりに腕も立つのに………)

 

飛鳥(規格外の強さなのは、智絵里本人か…それとも、このLBXか……)

 

飛鳥(バトルで確かめるしか、他に手は無い……かな)

 

飛鳥「ちなみにボクのLBXは…これさ」

 

智絵里「おぉっ、この子がですかっ」

 

智絵里「…あれ? こんなLBX、Lマガで見た事無いなぁ……」

 

飛鳥「Lマガかあ。 アレ、よく読むのかい?」

 

智絵里「い、いや…未央ちゃんの持ってたバックナンバーを借りて…ちょっとだけ」

 

飛鳥「当然自身のペイントで、ある程度個性は出せるけど―――」

 

飛鳥「―――ボクは、言ってしまえば…<レアパーツ>オタク、ってやつなのさ」

 

智絵里「レア、パーツ……って?」

 

飛鳥「LBXには、何かの記念で数量限定や期間限定で生産されたもの―――」

 

飛鳥「―――その他にも、セレモニーなんかで手に入るパーツなんてのもある…」

 

飛鳥「智絵里には合わないけど、ジャンクパーツを取り扱ってるような店も路地裏にあったりする」

 

飛鳥「そういうのを違和感なく組み合わせて…でもちょっと不自然で、不完全な感じに……」

 

飛鳥「ボクのこのエクステと同じさ。 LBXだって、どこまでもこだわり抜く事が出来る」

 

飛鳥「少し喋り過ぎてしまったかな……さて、バトルを始めようじゃないか」

 

飛鳥のLBXのカスタムネーム:ズィエル

<構成パーツ>

>>>HDパーツ:ジョーカーMk2(黄)

>>>BDパーツ:ソルジャー(黄)

>>>AMパーツ:リュウビホウオウ(黄)

>>>LGパーツ:デクーエース(青)

 

智絵里「よろしくお願いしますっ。 イプシロン、行きますっ」

 

飛鳥「さあ標的が現れたぞ……ズィエル、出撃!」

 

<フィールド:草原>

 

 

  バ ト ル ス タ ー ト

 

 

飛鳥(ナイトフレームか…? 装備は……ナックル―――のダガータイプか)

 

智絵里(見た目だけで強そうです…! でもイプシロンがいればわたし、負けない…っ!)

 

飛鳥(イプシロン、か…。 成る程。 間違いなくアイツは、「レア」だね…)

 

飛鳥(今までボクが聞いた事もないんだから…。 その性能、ボクは知りたい!!)

 

智絵里「い、行くよっ……飛鳥ちゃんっ」

 

飛鳥「あぁ、どこからでもかかっておいでよ……ふふ」

 

飛鳥(まずは様子見……両手銃で、相手の出方を見ようか)

 

<飛鳥操作・ズィエル装備一覧>

装備枠1:ウィングサイスⅡ

装備枠2:メガレーザーキャノン(両手銃<単発>)

 

>>>両手銃で牽制をかける飛鳥。

 

>>>智絵里はジオラマの地形を活かし、飛鳥との距離を縮めようとする。

 

飛鳥「そのダガーで、ボクのズィエルを切り刻もうってのかい?」

 

飛鳥「でもお生憎さま……こっちもただでやられるつもりは、ないさ」

 

智絵里(―――! たぶん、近接武器に切り替えてくる……っ!)

 

>>>飛鳥の行動を予想した智絵里は、イプシロンをバックステップさせて距離を取った。

 

飛鳥「…おっと。 用心深いねぇキミは」

 

飛鳥「でも構わないさ……それなら、こっちから仕掛けるまで―――!」

 

>>>飛鳥は猛ダッシュで智絵里との距離を一気に詰めようとしてきた。

 

智絵里(先制する気ですね、飛鳥ちゃんっ。 だったら…迎え撃ちますっ)

 

>>>飛鳥のズィエルが、智絵里のイプシロン目掛けて一直線に駆けてくる。

 

>>>智絵里は、飛鳥のLBXのもう一つの装備枠に、近接武器をセットしていると推測していた。

 

>>>そして……その推測は、正しかった。

 

>>>飛鳥はイプシロンの至近距離まで近付いたところで、武器を切り替えた…!

 

智絵里(やっぱり…っ! あれは槍―――でも素早さならこっち、ナックルの方が早いですっ)

 

>>>飛鳥が接近したその瞬間、智絵里のイプシロンがダガーで攻撃を試みた。

 

>>>交差する、鎌と短剣。 そして―――

 

飛鳥「おおっと、これは一杯食わされたね」

 

智絵里「え、えっと……ど、どうなったの?」

 

飛鳥「ボクのLBXは今、状態異常中だ」

 

飛鳥「<フリーズ>という表示……キミにも見えるだろう?」

 

飛鳥「後でコアパーツを見てみるといい。 それか、その武器の効果かもしれないけどね」

 

飛鳥「フリーズは、一定時間経過か相手に攻撃される事によって、解除されるんだ」

 

智絵里「な、なるほどっ」

 

飛鳥(どうやらLBXに関して基礎的な知識も、からきしのようだね……)

 

飛鳥(このフリーズもそうだが…彼女は、リアルラックだけで勝って来たのか?)

 

飛鳥「さあ、攻撃してごらんよ? 手を出した瞬間、ボクは動き出すけどね」

 

智絵里「う、うぅ……どうすればっ」

 

<INFO>ズィエル:フリーズ解除

 

飛鳥「―――――はあっ!!!」

 

>>>フリーズが解除されたのと同時に、飛鳥の鎌の一振りがイプシロンに命中した。

 

飛鳥(やはり智絵里は、LBXの操作に関してはズブの素人と見て、間違いなさそうだな……)

 

飛鳥「悪いがこの勝負、勝たせてもらう! 追撃だズィエル!!」

 

>>>バトル慣れした飛鳥の槍裁きに、智絵里の操作がついていけていない……

 

>>>しかし智絵里は持ち前のセンスで、飛鳥に食らいついてゆく。

 

>>>それでも、どうしても経験の差は埋まらない…

 

飛鳥(初心者にしては、なかなかやるね………)

 

飛鳥(それでも、未央達には悪いが―――この程度の相手に負けるとはねぇ)

 

智絵里(この手慣れた感じ……飛鳥ちゃん、相当ベテランって感じがしますっ)

 

飛鳥(手っ取り早いのは、力押し。鎌を使って打ち上げる方法だが………)

 

飛鳥(それでまた凍らされたんじゃたまったものじゃないし―――)

 

飛鳥(ここは、慎重に接近して、着実にダメージを与えていこうか)

 

>>>飛鳥のCCM操作が激しくなり、ズィエルが智絵里に再び接近してくる。

 

>>>しかし、ただ近づいているだけではなかった。

 

>>>ジオラマの地形、遮蔽物の死角などを利用して、動きを読まれにくくしたのだ。

 

智絵里(ま、まずいですっ……どっちから攻撃して来るか、わかんないよぉっ……)

 

智絵里(駄目駄目……冷静でいなくちゃ)

 

―――――キィンッ!!

 

飛鳥「なっ―――――!?」

 

智絵里「あぶなかった………ほっ」

 

飛鳥(な、何なんだ今のは…!?)

 

飛鳥(たしかに確実に、死角から攻撃したのに………)

 

飛鳥(なぜ反応出来た…? 動きを読まれてたのか…?)

 

飛鳥(間違いなく智絵里の後ろを取って、背後から奇襲をかけたのに……どういうことだ)

 

>>>飛鳥が驚くのも無理はない。

 

>>>完全に死角となった背後を取った飛鳥のズィエル。

 

>>>しかし、智絵里は後ろを見もせず、拳だけを後方に突き出した。

 

智絵里(よ、よかったです……賭けが当たりましたっ)

 

>>>蓋を開けると、どうということは無い話だった。

 

>>>LBXのカメラアイの映像は、CCMの画面に映し出される。

 

>>>左右をきょろきょろしていた智絵里だったが、飛鳥のLBXの気配すら感じなかった。

 

>>>そこではっと思い、背後にいるんじゃ…と慌てて拳を突き出したのだ。

 

>>>それが結果としては、飛鳥の攻撃を防ぐ形になった。

 

>>>まさにリアルラック、そのものである。

 

飛鳥(駄目だ…冷静さを失っちゃいけない、立て直さないと……)

 

智絵里(ここで――――― 一気に、畳み掛けますっ!!)

 

ガァンガァンガァンッ!!

 

>>>イプシロンの連続パンチが、ズィエル目掛けて飛ぶ。

 

飛鳥「おっと…冷静さを欠いているのはキミの方だったようだね、智絵里」

 

飛鳥「こちらは鎌なんだよ?ナックルの攻撃を防御する事なんて容易」

 

飛鳥「力業でどうにかしたいなら、斧を持ってくるべきだったね…!」

 

智絵里「違いますよ………」

 

飛鳥「えっ? 何を言ってるんだい智絵里」

 

飛鳥「キミの攻撃は一度も、ボクのズィエルに命中していない!」

 

飛鳥「ボクが鎌で、全て防いでいるからね―――!!」

 

智絵里「違います………」

 

ガァンガァンガァン!

 

>>>イプシロンの猛攻は続くが、攻撃は全て鎌に遮られる。

 

>>>しかし、智絵里の目は自信に満ち溢れていた。

 

>>>その瞳は、勝負を諦めた者のする目では無かった。

 

>>>そして―――――

 

ガァァァァンッ!!!

 

>>>一際大きい音を立てて、イプシロンの拳が―――――

 

>>>―――ズィエルの持つ鎌の、「柄」に命中した!

 

>>>成す術なくバランスを崩し、ズィエルの手から鎌が放り出される。

 

飛鳥(しまった! そうか…智絵里は、これを狙っていたんだ…やられたっ!)

 

>>>飛鳥は、自身のLBXの片腕がビリビリとスパークしているのを確認し、唇を噛む。

 

 

>>>LBXにはあらゆる面で、目には見えない耐久値が存在する。

 

>>>ズィエルが鎌を持ち続けられなかったのには、ちゃんと理由があった。

 

>>>バランスを崩したからではない。 手から外れてバランスを崩したのだ…。

 

>>>智絵里の攻撃は、決して無駄などでは無く、大きな意味を成していた。

 

>>>イプシロンの、ナックルで繰り出す重いパンチの連続。

 

>>>その衝撃は、鎌の柄を伝わって……ズィエルのアーム部分に響いていた。

 

>>>そして一定以上の衝撃が加わり、アームが限界に達し悲鳴を上げた。

 

  

>>>智絵里にそこまでの考えやLBXのメカニズムは知らなかったが―――

 

>>>武器を弾き飛ばして、そこから攻撃を仕掛ける……というイメージだけはあった。

 

飛鳥(こうなったら―――――こちらも、迎え撃つ…!)

 

>>>飛ばされたウィングサイスⅡを諦め、両手銃を即座に構えて発射。

 

>>>至近距離なので、攻撃しようとしていたイプシロンに命中。

 

>>>弾が当たったのはアームLで、イプシロンの左側のナックルが飛ばされる。

 

智絵里「…………!!」

 

>>>しかし智絵里は動じなかった。 集中していたのだ。

 

>>>極限まで研ぎ澄まされた智絵里の感覚が、イプシロンを突き動かす。

 

智絵里「ふ―――――ッ!!!」

 

>>>なんと右手に残ったブリザードエッジを片手剣のように構えた。

 

>>>繰り出される一閃。  そして―――――

 

\ ピコーン! /

 

飛鳥「完全敗北、といったところかな……」

 

>>>飛鳥は静かに、自分のLBX・ズィエルを回収した。

 

飛鳥「じつはね智絵里……ズィエルってのはドイツ語、<Ziel>…標的って意味なんだ」

 

智絵里「標的………ですかっ?」

 

飛鳥「そう、標的。 ターゲットは逃さず、必ず仕留める……って意味を込めて、ね」

 

飛鳥「標的にされてたのは―――どうやらボクの方だったみたいだね」

 

飛鳥「初心者だと、侮ってすまなかった。ああ、言い訳するつもりは無いよ」

 

飛鳥「素晴らしいバトルをありがとう、智絵里…!」

 

智絵里「こ、こちらこそ……ありがとう、ですっ」

 

>>>こうして、智絵里と飛鳥の熾烈なバトルは、智絵里の勝利で終わったのだった……。

 

 

>>>続

 

<< オタクロスのオタ知識 >>

 

オタクロス「オタクロスのオタ知識、デヨ!」

 

オタクロス「今回は、こちらデヨ~!」

 

< ズィエル(飛鳥専用ジョーカーMk-2カスタム) >

 

オタクロス「飛鳥クンの使ってるLBX…その名はズィエル、デヨー」

 

オタクロス「ドイツ語で標的という意味!」

 

オタクロス「狙った獲物は逃さないという飛鳥クンの強い意志が感じられるデヨ!」

 

オタクロス「ちなみに、LGに使われているブルーの<デクーエース>のパーツじゃが……」

 

オタクロス「噂によると、ジャンクパーツの山から何時間もかけて探し出したとか!」

 

オタクロス「そんな飛鳥クンのカスタマイズ・ズィエルから、これから目が離せないデヨ~!」

 

オタクロス「では、次回もお楽しみにデヨー!」



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ダンボール戦機 C(シンデレラ) 06

<< 第6章 皇帝を追い求める者 >>

 

 

 

 

―――――女子寮前―――――

 

未央「おー、凄いね! 今週のLマガ!!」

 

みく「TO社から、また新製品が出てるにゃ…ごくり」

 

スタスタスタ………

 

智絵里「あっ。 ふたりとも、おつかれさまですっ」

 

未央「おっ、ちえりん!おっかえりー!」

 

みく「みく、今日現場で聞いたにゃぁ。アスカチャンに勝ったって本当にゃ?」

 

未央「私達、あすあすとは勝ったり負けたりなんだよー」

 

みく「そんなアスカチャンに初見で勝っちゃうなんて、さすが智絵里チャンにゃあ!」

 

スタスタスタ………

 

比奈「あれ?皆さんお疲れーっス」

 

比奈「そんな廊下でずっと突っ立ってたら体冷えちゃうっスよ~」

 

未央「あっ、比奈先生だ!!」

 

比奈「えっ?? どうかしたんスか?」

 

みく「比奈さん!今日この後、お時間はありますかにゃ!?」

 

比奈「アニメ見たり漫画片付けたりするだけなので、ありまスけど……?」

 

 

―――――比奈の部屋―――――

 

比奈「へぇ…智絵里ちゃんもLBXやり始めたんスかぁ~」

 

未央「もうびっくりするくらい強くて!」

 

みく「初心者とは思えないにゃぁ!」

 

智絵里「ふぇっ、ふたりとも言い過ぎですっ」

 

比奈「思い出深いっスねぇ、LBX……結構頑張ってたんですよ、ちょっと前」

 

未央「お噂はかねがね……で!先生のLBXエピソードが聞きたいですっ!」

 

比奈「いいっスけど……結構地味っスよ?内容は」

 

>>>そう言って比奈は、ケースに飾られた1体のLBXをそっと手に取った。

 

>>>そのLBXにもケースにも、チリ一つ付いておらず、大事にしているのが一目で分かる。

 

比奈「これがアタシの努力の結晶……みたいなモンっス」

 

未央「おぉー……なんか凄い…見た目だけで強そう……!」

 

みく「こんなカスタマイズ見た事ないにゃ………」

 

比奈「カスタムネームは<ルシフェレックス>っス」

 

比奈「……神谷重工の御曹司、知ってます? 凄腕のLBX使いなんでスよ」

 

みく「確か……神谷、コウスケ?とかいう人だった気がするにゃ」

 

未央「何かの雑誌のインタビューで私も見たかもー」

 

未央「確かLBX工学を学びに海外留学してたんだよね、その人」

 

未央「才能は神から与えられる、とか何とか言ってた気がー……」

 

比奈「たぶんアタシも見た雑誌っスね、それ」

 

比奈「それで思ったんスよ。凡才だってやれば出来るんだって見せつけたいって」

 

比奈「あのキザ男の専用LBXはルシファー。雑誌で何度も紹介されてるっス」

 

比奈「どうにか近いものを作りたくって……パーツ掻き集めたんスよ」

 

比奈「カラーリングとかも塗料で変えて…雰囲気、出てまスか?」

 

未央「そう言われてみれば!」

 

みく「すっごい出てるにゃあ!」

 

比奈「特にHDは迷いましたね~……全然違うのを持って来たかったので」

 

未央「―――!! こ、これ…! もしかして!!」

 

みく「未央チャン?どうしたのにゃ?」

 

未央「破壊王G-LEX!郷田さん専用限定カラーのGレックスのHDパーツ!?」

 

未央「私ちょうど仕事で買いに行けなかったんですー……」

 

みく「比奈さん、未央チャンは大の郷田さんファンなんですよ」

 

比奈「あー…そうなんスかぁ。でもこれは、申し訳ありませんけどあげられないっスよ」

 

未央「わかってますって!先生の大事なLBXなんですから!……ですよね?」

 

比奈「えぇ。この子…ルシフェレックスを使って、随分バトルした時期もあったっス…」

 

比奈「さて…! この子で久々に遊びますか、ねぇー」

 

未央「え…!? バトルしてくれるんですか先生!!」

 

比奈「アタシの話を聞いてくれたお礼でスよ。このアタシが相手で良ければ……」

 

みく「どうするにゃ? 誰が比奈さんと組むにゃ?」

 

比奈「ふっふっふ…! 3人まとめてかかっておいで、というヤツっスよ!」

 

智絵里「え、えと…それ、ズルじゃないですか?」

 

比奈「酷いっスねぇ智絵里ちゃん、このアタシを舐めるなんてー」

 

智絵里「……えっ! いえっ、そういうつもりではなくてっ」

 

比奈「じゃあ決まりっス!3対1で行くっスよ!!」

 

未央「という事は、スタンダード?いや、ストリートですか?」

 

比奈「やられたらそこでおしまい……ストリートで行くっスよ!」

 

みく「あのあの、作戦タイムいいですかにゃ~?」

 

比奈「もちろん、好きなだけどうぞっス……ふっふっふ」

 

――――――――――――――――――――

 

みく「どうするにゃ?かなりの強キャラ臭がするのにゃ!」

 

未央「私達二人でタッグ組む時は、みくにゃんが牽制だし―――」

 

智絵里「難しい作戦とかっ、あんまりわかんないんだけどっ」

 

未央「よし!じゃあ私とみくにゃんで引きつけよう!」

 

みく「智絵里チャンは隙を見て、比奈さんに攻撃を仕掛けるにゃ!」

 

智絵里「わ、わかりましたっ!」

 

未央「よし、じゃあそろそろ始め―――――」

 

智絵里「あっ、あの――――っ」

 

みく「んにゃ? 智絵里チャンどうかしたのかにゃ?」

 

智絵里「何でもいいんですけど、片手銃…貸してもらえますか?」

 

智絵里「できれば、機関銃<マシンガン>タイプがいいんですけど……」

 

未央「オッケー★ んじゃ、これでいい?」

 

>>>未央が智絵里に、<キングスハート>を手渡した。

 

>>>キングスハートは、威力180で軽く扱いやすい片手銃(機関銃タイプ)だ。

 

智絵里「未央ちゃん、ありがとうっ」

 

未央「一応色々武器持ち歩いてるけど、それ使わないからあげちゃうよっ!」

 

智絵里「いいのっ? だ、大事にするねっ」

 

――――――――――――――――――――

 

比奈「フフフ……作戦の方針は決まったようでスね!それでは始めるっス!!」

 

比奈「ルシフェレックス、美しきバトルを見せてやるっスよ…!」

 

未央「暴れるぞーっ、ウォーリアーM!!」

 

みく「よしっ、クノイチ出陣だにゃ!」

 

智絵里「お願いっ、イプシロンっ!」

 

 

<フィールド:地中海遺跡>

 

 

  バ ト ル ス タ ー ト

 

比奈(智絵里ちゃんのLBXは、見た事無いっスねぇ……)

 

比奈(サイバーランスかどっかの、ナイトフレームっスかねぇ?)

 

比奈(そういえば未央ちゃんのウォーリアーも、何か違和感が……)

 

<荒木比奈・LBX-ルシフェレックス―――パーツ構成>

HD:破壊王G-LEX

BD:オリオン(黄)

AM:オーディーンJ

LG:ミネルバ改(黄)

 

比奈(これは……ひさびさにエキサイティングなバトルになりそうっスねぇ…!)

 

<比奈操作・ルシフェレックス装備一覧>

装備枠1:ヘブンズエッジ(剣)、天帝ネメシスシールド(盾)

装備枠2:素手

 

>>>さっそく未央が、両手銃でルシフェレックスを狙う。

 

>>>その隙に、みくのクノイチと智絵里のイプシロンが近づくのを試みる。

 

比奈「そんな事する必要ないっスよー?」

 

比奈「真正面からぶつかり合って、熱いバトルにしましょう…!」

 

>>>…と、ここで比奈のCCM操作が激しくなった。

 

>>>武装は剣と盾のみ。

 

>>>しかし比奈は、イプシロン達めがけて、ルシフェレックスをためらいなく突っ込ませた!

 

―――キィィィィンッ!!

 

比奈「おや?」

 

>>>そこに割って入ったのは、遠距離から攻撃していたはずのウォーリアーMだった。

 

未央「遠くからチマチマやってるだけなのは、私の性に合わなくってね!」

 

未央「先生!私もマジで行くからね!!」

 

>>>未央のウォーリアーMは、その大剣「破岩刃」(はがんじん)で、

 

>>>比奈のルシフェレックスの剣をしっかりと受け止めていた!

 

比奈「臨むところっスよー!」

 

比奈(さすがは仲良し3人組……なかなかの連携プレーっスねぇ……)

 

比奈(でもそれだけじゃ、このルシフェレックスの美しさを止める事は出来ないっスよ!)

 

未央「みくにゃん!」

 

みく「任せるにゃぁ!」

 

>>>みくのクノイチがクナイで追撃する。

 

>>>未央の防御から一転、2人の戦い方は攻撃に特化したものに変わった。

 

>>>未央の重い一撃を放つまで、みくが牽制をかけ時間を稼ぐ。

 

>>>2人の息はピッタリで、まさに絶妙なコンビネーションといえた。

 

比奈(フフフ…そろそろっスねぇ~……Cゲージが溜まるまで)

 

<ルシフェレックス・C(チャンス)ゲージ:5到達>

 

比奈「その美しさに跪け、なんて言っちゃったりして!」

 

比奈「必殺ファンクション……デビルソード!!!」

 

<ルシフェレックス・C(チャンス)ゲージ:3消費>

 

みく「ふにゃあ!避けられないにゃ!!」

 

\ ピコーン! /

 

>>>至近距離からの必殺ファンクションを受け、みくのクノイチが戦闘不能に……

 

比奈「まだまだっスよ! チャンスリチャージを3個一気に使用!」

 

<ルシフェレックス・C(チャンス)ゲージ:5到達>

 

未央「っ! まずいっ、ちえりん危ない!!」

 

>>>未央がウォーリアーMで、イプシロンを突き飛ばした。

 

>>>とっさに、イプシロンを庇ったのだ。

 

比奈「必殺ファンクション!!」

 

<INFO:アタックファンクション・セラフィックウィング>

 

未央「ちえりんー、あとはお願いー!!」

 

\ ピコーン! /

 

比奈「ありゃー。随分あっさり勝負がつきそうでスねぇー」

 

未央「そんなことありませんよ先生!」

 

みく「そうだにゃ! みく達は、智絵里チャンを信じるにゃぁ!」

 

智絵里「いきますよ……比奈さん」

 

比奈(さっきから見ていれば智絵里ちゃんは、CCM操作も覚束ない……)

 

比奈(明らかに素人。 他の二人の方が経験は積んでるはず……)

 

比奈(なのにどうして―――――)

 

智絵里「―――――むんっ」

 

>>>突如、智絵里のCCM操作が激しくなった。

 

比奈「必殺ファンクションでも使うつもりでスかぁ?」

 

比奈「そう簡単に、当たってはあげませんよ!」

 

>>>次の瞬間、イプシロンはダガーの片方を放り投げた!

 

比奈「それは投擲武器じゃないっスよー? 悪いっスけど、もっと勉強してから―――」

 

>>>ダガーの1本は、ジオラマの柱に刺さった。

 

>>>続けて智絵里が、イプシロンにもう片方のダガーを投げさせる。

 

>>>こちらもやはり、柱に刺さった。

 

>>>先程刺さった柱よりも上……ジャンプして何とか届くくらいの位置に。

 

>>>そして、その先には―――――

 

>>>ウィングで浮遊する、比奈のルシフェレックスが!

 

ピッ ピッ ピピピピピピピッ!!

 

>>>智絵里のイプシロンが地中海遺跡のジオラマを駆ける。

 

>>>階段を駆け上がり、跳び上がってダガーの1本に足を掛ける。

 

>>>そして勢いよく踏み抜き、その反動で上昇。

 

>>>もう片方のダガーにも足を掛け、思い切り蹴り上げてルシフェレックスに急接近した。

 

>>>そして、機関銃・キングスハートでルシフェレックスの左翼を撃った。

 

比奈「なんでスかぁ、拍子抜けっスよ~」

 

比奈「てっきりもう一方の装備も近接かと思って、身構えたんスよ?」

 

比奈「でもそんな銃撃じゃ、アタシのルシフェレックスは―――」

 

>>>さっき智絵里が思い切り踏んで柱から外れた、ダガーが舞い上がって来ている。

 

ピピピピピピピピピピピピッ!!

 

>>>智絵里のCCM操作が、更に激しさを増す。

 

>>>イプシロンは空中で回転しながらダガーを回収。

 

>>>そのまま、倒れ込むようにして比奈のLBXを全力で斬りつけた!

 

比奈「うわっ、ととと……でも、この程度じゃ」

 

ピピピッ

 

智絵里「―――必殺、ファンクションっ」

 

>>>イプシロンはまたダガーを、今度はルシフェレックス目掛けて投擲した。

 

「自分から近接武器捨てちゃって、どうするって言うんスか―――」

 

>>>軽く打ち払う比奈。 しかし………

 

<INFO:アタックファンクション・ブラッディーレイン>

 

比奈「―――――なっ!?」

 

>>>今度の投擲は、ただの時間稼ぎだったのだ。

 

>>>本命は片手銃の必殺ファンクション……ブラッディーレイン!!

 

ダダダダダダダダダッ!!

 

比奈「ま、まずいっス! LPが―――――」

 

>>>比奈がそう呟いた時だった。

 

\ ピコーン! /

 

比奈「え…………?」

 

>>>智絵里はもう既に、次の行動に移っていた。

 

>>>銃を捨て、素手になったイプシロン。

 

>>>高速で、ダメージを受けた比奈に接近し、即座にダガーを拾い上げ……

 

>>>比奈がLPを確認して慌てた隙に、切り裂いたのだった。

 

智絵里「はぁっ……はぁっ、はぁっ……か、勝てましたっ」

 

比奈(急に…覚醒したみたいに、動きが良くなって……!?)

 

比奈「唖然ってやつ、っスね……智絵里ちゃん、とんでもなくセンスあるっスよ…」

 

未央「ダガー投げた時は、びっくりしたよ~!」

 

みく「でもみくのクノイチ達のかたきを、ちゃんと取ってくれたにゃ!」

 

未央「やっぱりちえりんは強い!未央ちゃんも感動だー!」

 

智絵里「比奈さんっ、ありがとうございましたっ」

 

比奈「お礼を言うのはアタシの方っスよ~」

 

比奈「またバトルしてくださいっス。次は負けませんよ?」

 

智絵里「わ、わたしもっ、負けませんっ」

 

――――――――――――――――――――

 

 

比奈「それじゃ、またー。皆さんおやすみなさいっス」

 

3人「「「おやすみなさい」」」

 

バタン…………

 

比奈「何なんスか……、何なんスか、アレ………」

 

比奈「智絵里ちゃん……何かとんでもないものを秘めてるような気がしたっス……」

 

比奈「恐ろしい…っス」

 

 

 

 

>>>続

 

<< オタクロスのオタ知識 >>

 

オタクロス「オタクロスのオタ知識、デヨ!」

 

オタクロス「今回は、こちらデヨ~!」

 

< ルシフェレックス >

 

オタクロス「比奈たんの使ってるLBX…カスタムネームはルシフェレックス、デヨ!」

 

オタクロス「ルシフェル…つまりルシファーを自力で作ろうと比奈たんが頑張ったのデヨ」

 

オタクロス「まさに努力の結晶デヨ!!」

 

オタクロス「ちなみに未央たんが食いついてたHDパーツは、破壊王G-LEXのヘッド!」

 

オタクロス「なにげに激レアパーツなんデヨ?」

 

オタクロス「そんなこんなで、比奈たんのルシフェレックスから、これからも目が離せないデヨ!」

 

オタクロス「では、次回もお楽しみにデヨー!」



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ダンボール戦機 C(シンデレラ) 07

ダンボール戦機 C(シンデレラ) 07

 

 

 

<< 第7章 過去の英雄の一・来店 >>

 

 

 

 

―――――キタジマ模型店―――――

 

未央「いやぁ、やっぱりちえりんは強いよ!!」

 

みく「どこかの大会に出てみるってのも、手にゃ」

 

智絵里「大会……ですか?」

 

未央「うんうん!てんちょー、何かいい大会とか無いー?」

 

小次郎「うん? 大会か、そうだなぁ………」

 

小次郎「今度、トキオシア大会ってのがあるが……えーっと、これだ」

 

>>>小次郎が1枚のポスターを見せる。

 

未央「えっと、なになに…? <LBXルーキーの登竜門>?」

 

みく「大会初心者向けっぽくて、なんかいい感じにゃ!」

 

小次郎「そうなんだよ、そこなんだよな問題は……」

 

智絵里「問題…? 何か問題があるんですかっ?」

 

小次郎「最近、このトキオシア大会は様変わりしてしまってな……」

 

小次郎「参加者に制限が無いからって、初心者狩りをしに来るやつもいるんだ」

 

未央「なっ………!」

 

みく「最低にゃ……!」

 

智絵里「ゆ、許せませんっ……!」

 

小次郎「……そいつらをコテンパンに打ちのめすガッツがあるなら、出てみるか?」

 

未央「どうする?ちえりん……」

 

みく「みくは智絵里チャンの意志を尊重するにゃ!」

 

>>>そうは言うが二人とも、智絵里が出なければ勝手に出場しそうな勢いだ。

 

智絵里「わかりましたっ、わたしも出ますっ!」

 

小次郎「よし、了解だ。俺の方でエントリーは済ませといてやる」

 

小次郎「この大会は3人で組むタッグバトルだからな、全員一緒に出られるぞ」

 

未央「よぉし!がんばるぞーっ!」

 

みく「店長さん、ジオラマ借りるにゃ!」

 

智絵里「練習バトルですねっ、がんばりますっ」

 

ウィ―――ン

 

小次郎「いらっしゃ―――おっ、久しぶりじゃないか!」

 

未央「常連さんかな?」

 

?「よう、店長! 近くを通ったから顔を見せに来てやったぜ」

 

沙希「あら、カズじゃないの!ひさしぶりー」

 

>>>彼の名前は青島カズヤ。 愛称はカズ。

 

>>>イノベーター事件やミゼル事変の解決に携わった、大物である。

 

>>>しかし、未央達がそんな事を知っているはずも無く……

 

カズ「へぇ。君達、ジオラマでバトルするのか?」

 

未央「うん! トキオシア大会に出るんだ、私達!」

 

カズ「おぉ、そうなのか!」

 

カズ「オレはその大会、用事があって出られねーんだよな」

 

カズ「見たところ3人だけみたいだけど……バトル形式は?」

 

みく「うーん、特に決めて無かったにゃぁ」

 

カズ「ならオレも入れてくれよ!久々にバトルしたいぜ!」

 

小次郎(カズは彼女達がアイドルって知らないみたいだな…まぁ、いいか)

 

みく「じゃあじゃあ、みくは智絵里チャンと組むにゃ!」

 

未央「あーっ、ずっるい!」

 

小次郎「心配すんな未央。カズもすげぇ強いぞ?」

 

カズ「オイオイ店長、ハードル上げんなって」

 

カズ「そういう訳だからよろしくな! オレ、カズ!」

 

未央「私、未央! こっちがみくにゃん、ちえりん!」

 

みく「前川みくですにゃ。 よろしくお願いしますにゃぁ」

 

智絵里「あ、あのっ、緒方智絵里ですっ」

 

カズ「おう、よろしく! ………うん?」

 

>>>カズが首を傾げた。 その目線の先には―――――イプシロンが。

 

カズ(これって……イプシロンか?)

 

カズ「すまん智絵里、こいつ……どこに売ってたんだ?」

 

智絵里「え、えっと……じつは、貰ったんです」

 

カズ(これってレックスとの決戦の際に山野博士が作った……)

 

カズ(いや、カラーリングが違うし、レプリカ……か?)

 

カズ「おっと……わりぃわりぃ、見せてくれてありがとな」

 

カズ「それじゃ、バトルしようぜ!」

 

全員「「「「おーっ!!」」」」

 

――――――――――

 

智絵里「お願いっ、イプシロンっ!」

 

みく「大会に向けて…クノイチ、レッツゴーだにゃ!」

 

 

未央「いっくぞー、ウォーリアーM!!」

 

カズ「アキレス・ディード、出撃だ!」

 

 

<フィールド:草原>

 

 

  バ ト ル ス タ ー ト

 

未央「カズカズ、ちえりんは手強いから注意して!」

 

カズ「おうっ! ……って、カズカズ!?」

 

 

みく「向こうは即席チームワーク……勝てるにゃ!」

 

智絵里「でもみくちゃん、それはこっちも同じようなものじゃ……」

 

みく「行ける行ける!ゴーゴーだにゃ!!」

 

>>>みくが未央に狙いを定めて、高速で接近していく。 しかし―――――

 

カズ「―――――必殺ファンクション!!」

 

みく「んにゃっ!?」

 

カズ「周りをもっと見とけよ!こいつで仕舞いだ!」

 

<INFO:アタックファンクション・ホークアイドライブ>

 

ドシュッ ドシュッ ズドォォンッ!

 

\ ピコーン! /

 

みく「ふにゃあああぁぁぁ~!?」

 

小次郎「だから言ったろ。 カズは強いって」

 

 

未央「このまま押し切れるね!行こうカズカズ!」

 

カズ「油断すんなよな未央、べつに有利になった訳じゃないぜ」

 

未央「そうだった…! 残ってるのはちえりん!!」

 

カズ「アイツ、強いのか?」

 

未央「マジで強いよ!始めたばっかなのに未だに無敗なんだもん!」

 

カズ「へーぇ……俄然やる気が湧いて来たぜ!!」

 

未央「カズカズ。今は両手銃だけど、もう片方は?」

 

カズ「そいつは、出番が来てからのお楽しみだぜ!!」

 

>>>カズが愛用する両手銃・ルミナスシューターで智絵里の狙撃を図る。

 

>>>しかし智絵里は、右に左にイプシロンを操作させ、これを上手くかわす。

 

未央「私が引きつけるよ!任せて、カズカズ!」

 

カズ「おう! 気を付けろよな!」

 

智絵里(やっぱり……未央ちゃんが近づいてきますっ)

 

智絵里(わたしをおびき出すつもり、ですねっ)

 

智絵里(だったら―――――!)

 

>>>智絵里はひとつ深呼吸をする。 CCMの操作が激しくなる。

 

智絵里(今のわたしとイプシロンなら、出来ます―――っ!!)

 

>>>智絵里は、ダガーの1本を投擲した―――――!

 

未央(また何か企んでるなー!? でも私はそんなので動じないぞ!!)

 

カズ(何か型破りっぽい事するヤツだな……嫌な予感がする)

 

カズ「未央、なんかやばいぞ!気を付けろ!!」

 

未央「だいじょーぶだいじょーぶ!見た事ある光景だから―――」

 

>>>…と、未央の目の前の足元に、智絵里のダガーが刺さった!

 

未央「うぎゃっ!? ウソっ!!」

 

>>>そのまま前につんのめって転倒する未央のウォーリアーM。

 

>>>―――その隙を、智絵里は逃さない。

 

智絵里「必殺ファンクションっ」

 

<INFO:アタックファンクション・気功弾>

 

>>>避ける事も出来ずモロに必殺技を食らった未央、そして……

 

\ ピコーン! /

 

未央「あぁー、カズカズごめーん!」

 

カズ「気にすんなって!それに勝負はまだ終わっちゃいないぜ!」

 

カズ(とは言ったものの―――あいつ、飛び抜けて「上手い」な……!)

 

カズ(投げたダガーを、もう回収しやがった……!こうなったら―――)

 

>>>カズのアキレス・ディードが、武器を切り替える。

 

>>>なんとカズがもう片方に装備させていたのは、コンバットナイフだった!

 

<コンバットナイフ:威力300・重さ2>

 

カズ「ウォーリアーとグラディエーターで培った近接の腕前、見せてやるぜ!」

 

智絵里「負けませんっ! ていっ」

 

>>カズは、智絵里が得意とする接近戦に持ち込んだ。

 

カズ「踏み込みが甘いぜ! やっ、はあっ!」

 

>>>しかし、カズも今まで相当戦闘経験を積んでいる。

 

>>>センスだけで今まで戦ってきた智絵里と、センスと経験が求められたカズ。

 

>>>カズは、智絵里に互角以上の戦いを見せた。

 

智絵里(は、早いですっ…!しかも、隙が全然無い…!)

 

カズ(こいつ、やっぱすげーよ…才能の塊なんじゃねーのか?)

 

カズ(オレの攻撃を、ただ防ぐだけじゃなくって―――――)

 

カズ(防御がそのまま攻撃に移ってる! やるじゃねぇか!)

 

カズ(でも…テロ組織に真っ向から挑んだオレの強さは、こんなものじゃねえ!)

 

カズ「必殺ファンクションッ!!」

 

<INFO:アタックファンクション・ストームソード>

 

智絵里「うわっ、きゃああっ!」

 

>>>智絵里が慌ててLPを確認する。

 

>>>なんと、残りLPは1ケタだった!

 

智絵里「う、うりゃーっ」

 

カズ「来るか……せやあーッ!!」

 

ガァン! キィィィン!!

 

カズ「なっ、何!?」

 

>>>イプシロンが、カズのコンバットナイフを弾き飛ばした。

 

カズ(コイツ…マジで上手いぜ!武器を弾く、その効果的な方法を―――)

 

カズ(―――コイツは「直感」で、「知っ」ている……!)

 

カズ(でも、こうなりゃ至近距離からルミナスをブッ放すだけだぜ―――!)

 

>>>アキレスディードが、再びルミナスシューターに武器を切り替えた。

 

>>>その瞬間、智絵里のイプシロンは、高速で後退した。

 

カズ(至近距離からの直撃が嫌なのか? どうして離れた…?)

 

カズ(今のオレのロスを、この智絵里がみすみす逃すはず無いし……)

 

カズ(何なんだ…? 何か違和感が……いや、駄目だ集中しろ!)

 

カズ「食らえェ―――ッ!!」

 

>>>ルミナスシューターが火を噴く。

 

>>>しかしイプシロンはそれをかわし、辺りに砂煙が舞い上がる。

 

カズ「チッ、外したか…!」

 

しかし、その砂煙からイプシロンは自ら出てきた!

 

カズ「視界が良くなんのはこっちも同じなんだぜっ、はっ!!」

 

>>>ルミナスシューターの狙撃。

 

>>>しかし、またもイプシロンに避けられた。

 

>>>それなのに、イプシロンは再び砂煙の中から自分で出てきた。

 

カズ「何考えてやがんだ?智絵里!」

 

智絵里「…………っ」

 

カズ「もう一発、どりゃあっ!―――――あ!」

 

>>>気づけば、智絵里のイプシロンは、カズの至近距離にまで近付いてきていた。

 

>>>少しの間だが、ルミナスシューターの反動で、カズは動けない。

 

カズ(マズった…! 動けねぇ! どこだ!?)

 

智絵里「必殺ファンクション……っ」

 

<INFO:アタックファンクション・地獄乱舞>

 

カズ「真後ろか!駄目だ、避けきれねえっ!!」

 

ドドドドドドドドッ ドォォォンッ!!

 

\ ピコーン! /

 

カズ「ま、負けた…オレが……ウソ、だろ……?」

 

智絵里「か、勝てたっ!? 勝てたよ、わたしっ」

 

みく「智絵里チャン、やっぱすごいにゃあー!」

 

カズ「いや、ホントにすげぇな!お前!!」

 

智絵里「え、えっと……カズさん、でしたっけ」

 

カズ「さすがだぜ。これならあの大会にも出られるんじゃねーのか?」

 

未央「それってトキオシア大会の事だよね、カズカズ?」

 

カズ「いや、違うぜ………!」

 

カズ「アングラビシダスって聞いた事ねーか?」

 

みく「あるにゃ。LBX地下大会の事……だったはずにゃぁ」

 

未央「何年か前の優勝者は、世界大会アルテミスの出場権を貰えたんだよねー」

 

未央「それから暫く、やってなかったような気が………」

 

カズ「そのアングラビシダスが、復活するのさ!!」

 

未央「でもそんな荒くれ者の中にちえりんを放り込むのはイヤー!」

 

カズ(こいつなら、大丈夫だと思うけどな………)

 

カズ「とにかく心配すんな。主催者も変わって、趣向も変わったからな」

 

カズ「優雅で、派手に、エレガントに……だったっけな?」

 

ウィ―――――ン

 

小次郎「いらっしゃ……おっ!」

 

??「<優雅で、華麗に…そして、狂おしいほどに舞え>、だ!」

 

カズ「あっ、お前は新アングラビシダス主催者の―――――」

 

カズ「―――――仙道ダイキ!!」

 

仙道「なんだぁ?こんなガキどもが、オレ主催の大会に出るってのかい?」

 

仙道「おやおやカズ、腕が落ちたか…?」

 

仙道「こんなお嬢さん方に、負けるなんて…ねェ?」

 

>>>仙道はジオラマの状態を見て、ニヤリとほくそ笑む。

 

未央「舐めてるとびっくりするわよ!ちえりんの強さ!」

 

仙道「ちえりん……だと?どいつだ?」

 

智絵里「あ、あの…わた―――――」

 

カズ「それこそ、大会で……お前自身の目で確かめたらどうだ?」

 

カズ「智絵里……彼女のテクニックは、度肝を抜くぜ」

 

仙道「カズがそこまでいうとはねェ………いいだろう」

 

仙道「そこに居る3人だな?出場するのは……」

 

仙道「おい、キタジマの店長。こいつらの名前は?」

 

小次郎「え、えっと………」

 

未央「言ってくれていいよ。私、出るから」

 

みく「みk……私も出るにゃあ!」

 

智絵里「じゃ、じゃあ……わたしもっ!」

 

小次郎「…わかった。本田未央、前川みく、緒方智絵里……だ」

 

仙道「ククク……緒方智絵里、か」

 

仙道「楽しみにしているよ。大会は2週間後だ………」

 

仙道「せいぜい盛り上げてくれよ?期待してるからね」

 

仙道「じゃ、そういうわけで。特に買うものもないし、オレは行く」

 

小次郎「何でもいいから買ってけよー」

 

仙道「うるさい、ハンマー系の武器だけでももっと値下げしたらどうだ?」

 

仙道「じゃあな…………緒方、智絵里!」

 

>>>仙道は3人の中で誰が智絵里なのか、すでに見抜いていたらしい。

 

>>>智絵里の顔を見て、目を見開いて笑みを浮かべた。

 

智絵里「ひっ……!」

 

仙道「クククク……ハハハハハハ!せいぜい頑張るんだなァ!」

 

>>>仙道が店を去った。

 

>>>暫くの間、そこには静寂が流れた……………

 

 

未央「郷田さんファンとして、タッグ組んでたから嫌いにはなれないけど…!」

 

みく「言われっぱなしで悔しかったにゃぁ!」

 

智絵里「大会は、2週間後…………」

 

 

 

 

 

>>>続

 

<< オタクロスのオタ知識 >>

 

オタクロス「オタクロスのオタ知識、デヨ!」

 

オタクロス「今回は、こちらデヨ~!」

 

< アキレスディード >

 

オタクロス「カズが巧みに操る、愛機・アキレスディード、デヨ!」

 

オタクロス「高い射撃性能を有し、その強さは原作でも絶大だったデヨ!」

 

オタクロス「そこにカズの技術も合わさって、とんでもない力を発揮するデヨー!」

 

オタクロス「果たしてこのダンボール戦機Cに、カズの出番はまだあるのじゃろうか…?」

 

オタクロス「では、次回もお楽しみにデヨー!」



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ダンボール戦機 C(シンデレラ) 08

ダンボール戦機 C(シンデレラ) 08

 

 

 

<< 第8章 新アングラビシダスに向けて >>

 

 

 

 

―――――女子寮周辺―――――

 

未央「えぇっ!?それじゃあ、あすあすも大会に出るの!?」

 

飛鳥「あぁ。地下で行われる優雅な大会なんて……ロマンがあるじゃないか」

 

未央「じゃあ、うめちゃんとかも出るのかな……」

 

みく「レギュレーションは全てアンリミテッドって言ってたにゃあ……」

 

飛鳥「いや?小梅は公演で忙しいから、出ないと思うけど?」

 

未央「そっか…でもライバルがいっぱいだー!」

 

みく「未央チャン、飛鳥チャン!もし対決する事になったら、容赦しないにゃ!」

 

飛鳥「それは当然…ボクらは敵同士になるんだから、ね」

 

未央「おやおや~?ちえりんと当たった時にはどうするのかな~みくにゃん?」

 

みく「智絵里チャンには勝てにゃいにゃあ……」

 

飛鳥「確かに智絵里は強い……底知れぬ強さがある」

 

飛鳥「でもボクだって、負けっぱなしでいるつもりはないよ」

 

みく「じゃあ、みく達でバトルするにゃぁ?」

 

飛鳥「いいだろう、受けて立つよ」

 

―――――CDショップ―――――

 

バン「えっ?イプシロンを? カズ、本当に見たの?」

 

カズ「あ、あぁ。カラーリングは違ったが、ありゃ間違いなくイプシロンだった」

 

アミ「どうして、山野博士が開発したワンオフ機を、その女の子が?」

 

バン「店長にも聞かれたんだ。イプシロンと、Vモードの事」

 

バン「多分、その子で間違いないよ」

 

カズ「智絵里って言ってたけど。バン、心当たりは無―――――ああっ!」

 

>>>突然カズが大きな声を上げた。

 

アミ「んもぅ、話の途中でしょ?何なの、カズ!」

 

カズ「この子だ……間違いねえ!」

 

カズは、一点を見つめて驚きの表情のまま、固まっていた。

 

アミ「ここって、アイドルコーナーじゃない?カズ、こういうの興味あったっけ?」

 

カズ「違う…この子だ! こないだ、オレが負けたのは…!」

 

<風色メロディ 緒方智絵里>

 

バン「緒方智絵里……この子が、イプシロンを………」

 

カズ「あの強さ、マジ物だったぜ……ハンパじゃなかった」

 

アミ「カズがそこまで言うんだから、よっぽどだったのね…」

 

カズ「アイドル、だったのかよ………あ!」

 

>>>カズがその棚を見ていくと、未央やみくのジャケットのCDが見つかった。

 

カズ「どんなの歌ってんだ?こいつら……」

 

バン「オレも、会った事は無いけど興味あるなー」

 

バン「特にこの、緒方智絵里って子のが……」

 

>>>結局、カズが未央とみく、バンが智絵里のCDを買う事になった。

 

カズ「たぶん悪い相手をやっつける歌だと思うぜ!」

 

カズ「風のように駆け抜け、メロディに乗せて敵を粉砕だ!」

 

バン「本田未央ちゃん、だっけ?ただの星じゃなくて三ツ星だからなぁ…」

 

バン「アルテミスで鮮やかに勝利を飾る歌とか、かなぁ……」

 

アミ(二人とも、音楽番組見ないのね………)

 

アミ(というか何でLBX関連の歌前提なのよ………)

 

カズ「おい、みくのは何なんだ?」

 

バン「オレ英語苦手だなぁ。何かお願いするんじゃない?」

 

カズ「わかった!世界大会アルテミスの優勝だ!」

 

バン「そうか!きっとそうに違いない!!」

 

アミ「はぁ~………」

 

  

――――――――――――――――――――

 

翌日。未央達は早朝に、キタジマへと集まった。

 

小次郎「おっ、なんだお前達。 さっそく朝バトルだろ?」

 

未央「てんちょー!おはようございまーっす!」

 

みく「アングラビシダスに向けて、特訓に来たにゃ!」

 

小次郎「お前ら…ちゃんとアイドル業は、やってんのか?」

 

未央「当たり前だよーっ!」

 

みく「でも、LBXに懸ける情熱も負けてないって事にゃ!」

 

智絵里「よろしくお願い、しますっ」

 

飛鳥「智絵里は強い。けど基礎をおろそかにしちゃいけない…」

 

飛鳥「今日は、色んな武器を使うのを練習してみないか?智絵里」

 

未央「確かに、ナックルだけっていうのも、厳しいものがあるよねー…」

 

みく「みくも相手が手強かったら、ビビって銃入れる時あるにゃぁ…」

 

智絵里「わかりましたっ、やってみますっ」

 

>>>身構える智絵里に、飛鳥が武器パーツを手渡した。

 

飛鳥「まずは鎌といこうか。さあ、ボクのを1つあげるよ」

 

>>>智絵里は 呪魂ソウルイーターⅡ を手に入れた!

 

<呪魂ソウルイーターⅡ:鎌(威力420)>

 

>>>智絵里が鎌をイプシロンに装備させ、操作してみた。

 

智絵里「おっとと……うわ重っ」

 

未央「ナックルは軽いからね。びっくりするのも無理ないよねー」

 

みく「みくには合わなかったにゃぁ~」

 

飛鳥「大会に出るんだよ?合わなかった、でその武器を捨て去るのは良くない」

 

飛鳥「候補は多い方がいい。少なくともボクはそう考えている」

 

飛鳥「みく、相手をしてやってくれないか?」

 

みく「え?みく、そんなに強くないにゃ」

 

飛鳥「智絵里は斧に慣れずスピードが出せないはず」

 

飛鳥「スピード特化のクノイチなら、いい練習相手になると思ったんだけど」

 

みく「分かったにゃ。そういう事なら、みくが出るにゃ!」

 

 

 

智絵里「お願いっ、イプシロンっ!鎌でも、がんばってっ!」

 

みく「スピードじゃ負けにゃい!クノイチ、出陣するにゃあ!」

 

 

飛鳥「ふむ……見物だな」

 

飛鳥(慣れない鎌で、どこまでのものを見せてくれるのか……!)

 

 

<フィールド:草原>

 

 

  バ ト ル ス タ ー ト

 

未央「ちえりん!重心をしっかり把握して!」

 

智絵里「こ…こう、かなっ?」

 

ブンッ ブンッ ブンッ ドォンッ!

 

>>>操作ミスで、鎌がジオラマに突き刺さった。

 

智絵里「わわっ、どうしようっ。 ごめんなさいっ」

 

飛鳥「何も謝らなくたっていいさ、それより―――――」

 

シュタタタタタタ………

 

>>>クノイチがジオラマのフィールドを駆ける。

 

>>>慣れない鎌に苦戦している智絵里に、狙いを定めて……!

 

智絵里「わっ」

 

智絵里(来てる…みくちゃんが、凄いスピードで近づいて来てるっ)

 

智絵里「うぅーん……うぅぅっ!」

 

智絵里(駄目……さっき刺さった鎌が抜けないっ)

 

智絵里(こうなったら―――――!!)

 

>>>智絵里のイプシロンはジャンプし、両足で突き刺さった鎌を蹴り飛ばした!

 

>>>その衝撃で抜け落ち、地面を滑る鎌。

 

みく(抜けたにゃ…でも一歩遅い、もらったにゃあ!!)

 

みく「必殺ファンク―――――」

 

>>>その鎌の柄に手をかけ、両手で思い切り……智絵里はブン投げた!

 

みく「にぎゃあああーっ!?」

 

\ ピコーン! /

 

>>>鎌はクノイチに突き刺さり、そのまま真っ二つにするくらいの衝撃が走った。

 

未央「な、なんとー………」

 

飛鳥「ふふ……まさかハンマー系ウェポンを、を投擲武器として使うプレイヤーがいるとはね」

 

みく「ふにゃぁぁぁ~………グリスグリス、グリスで応急処置にゃー!」

 

>>>やられてしまったクノイチ。みくは大慌てだ。

 

飛鳥「キミはやっぱり面白いよ、智絵里……」

 

智絵里「わたしは至って真剣にやってるだけなんですっ」

 

飛鳥「興味深いって事さ……キミには天才的なセンスがある」

 

飛鳥「そして、幸か不幸かLBXの基礎を知らない為に、型破りな戦法を思いつく」

 

飛鳥「これは……どこかの大会で本当に優勝してしまうかもね………」

 

未央「そういうあすあすはどうなの? 今度のアングラビシダス!」

 

飛鳥「出場できるだけで、光栄……って感じかな?」

 

飛鳥「優雅で華麗に………そして何よりも、狂おしいほどに舞え…!」

 

飛鳥「素敵な響きじゃないか…ボクも全力で舞ってみせるよ……」

 

未央(あー…確かにあすあす、そういうの好きそうだもんねー)

 

みく「ふにゃあぁぁ、店長さん助けてにゃあ!」

 

小次郎「おう、こりゃまた派手にやられたなぁ」

 

小次郎(見てはいたが…改めて考えると、ブッ飛んだやつだなぁ、智絵里……)

 

小次郎(鎌が抜けない、だから蹴り飛ばした………)

 

小次郎(まだ鎌を上手く振るえない、だから投げ飛ばした………)

 

小次郎(力技にも程があるって気もするが―――――)

 

小次郎(何となく分かる。 あいつ、絶対強くなるぞ……!)

 

小次郎(もっと強くなれよ………智絵里!)

 

みく「店長さん!ボーッとしてないで直してにゃぁ!!」

 

小次郎「おっと、悪い悪い。新品同様のメンテをしてやる、常連さんだから特別だぞ?」

 

みく「わーい、やったにゃ! アングラビシダスまでには………」

 

小次郎「もちろん、間に合わせる。心配すんな!」

 

 

飛鳥「さてと……ボクから言い出した練習方法だったんだが―――」

 

飛鳥「智絵里は、今のままでいいのかもしれない」

 

智絵里「……そう、なのかな?」

 

未央「私も、そう思う!」

 

未央「私達がとやかく言って、ちえりんの良さを消したくないし!」

 

智絵里「で、でもっ、もっと強く――――わたしっ」

 

未央「もちろん強くなってほしいと思うよ」

 

未央「ただ、今のちえりんのまま……強くね!」

 

飛鳥「アングラビシダスは、いかに優雅に勝利するか、という趣旨に変わったが……」

 

飛鳥「元々は破壊の祭典だ。古参の連中が紛れてる可能性もある」

 

飛鳥「そこで、本来反則とされる攻撃にも対抗できるような練習をしよう」

 

飛鳥「まずはこの…スタングレネード」

 

>>>飛鳥はそう言って、アイテムのようなものをイプシロンに投げつけた。

 

>>>途端に、イプシロンの周りに電流が走った。

 

飛鳥「これは状態異常<スタン>を引き起こさせる、厄介なアイテムだ」

 

飛鳥「スタン中は、LBXは全く動く事が出来な………」

 

ウィン ウィーン ガシンガシンガシン

 

飛鳥「…え? スタングレネードが効いてない?外れたか?」

 

智絵里「えっと、その…CCMに、<スタン無効>って書いてるんですけどっ」

 

小次郎「―――なんだって!?」

 

>>>店長の小次郎が慌てて駆け寄って来た。

 

沙希「スタン無効なんて、聞いた事無いなー。ねぇ、あんた」

 

小次郎「あぁ…何なんだこいつは。見た事の無い現象だ」

 

小次郎(スタンが外れたんじゃなくて、スタンを無効化する「機能が備わっている」!)

 

小次郎「ますます怪しくなって来たな………このLBXの設計者が」

 

未央「このままイプシロンを使うのは、マズイって事?」

 

小次郎「いや、そういう事じゃないんだが……うーむ」

 

小次郎「Kとか言ったよな……K……うぅん……」

 

小次郎(研究者の名前とか、オレが知ってるはずないからなぁ……)

 

小次郎「相当大物と見て間違いないだろうな。しかしなぜ智絵里に……」

 

未央「そりゃやっぱり、強いからでしょ!」

 

小次郎「何言ってんだ。イプシロンを貰うまで、智絵里はLBXに触った事も無かったんだろ?」

 

小次郎「そんな子が、強いってどうやったら分かるんだ」

 

飛鳥「おそらく、見る<目>があったんじゃないかな………」

 

飛鳥「この子なら強くなれる……っていう何かを、智絵里から感じられたのかもしれない」

 

小次郎「そうとしか、思えない……か」

 

飛鳥「とにかく皆と方法は違えど、智絵里のLBXはスタン対策が出来てるって事になる」

 

飛鳥「後はストリートレギュレーションを繰り返して、腕を磨こう」

 

未央「ちえりん!私、あすあすと組んでもいい!?」

 

飛鳥「おいおい未央、順番にやればいいだけの話………」

 

智絵里「いいですよっ」

 

智絵里「ふたりを倒せば、いいんですよね?」

 

飛鳥「―――――!!」

 

飛鳥(何なんだこの感じは……標的にされている気分だ………)

 

飛鳥(智絵里、キミにそんな側面があったとはね………)

 

飛鳥(確かにレッスンでも、最近はあまり弱音を吐かないし、結構強気だ…)

 

飛鳥(やはり彼女は―――LBXに、向いている!)

 

飛鳥「ズィエル!狩りの時間だ、行けっ!!」

 

未央「ぶちかませーっ、ウォーリアーM!!」

 

智絵里「イプシロンが居ればわたし、負けませんっ!」

 

 

<フィールド:草原>

 

 

  バ ト ル ス タ ー ト

 

未央「あすあす!上手く連携してちえりんを追い込もう!」

 

飛鳥「連携?そんな事ボクはしないよ……小手先だけの作戦は、彼女に通用しない」

 

未央「じゃあ、どうするの?」

 

飛鳥「お互いの良さを出して全力でぶつかる。これしかない……」

 

未央「えーっと……つまり?」

 

飛鳥「いつも通り、戦えばいいって事さ!」

 

未央「りょーかい!まっかせといてよ!」

 

 

智絵里(相手は二人……未央ちゃんと飛鳥ちゃん)

 

智絵里(先にどちらを落とすか、早めに決めてしまった方がいいのかな…?)

 

>>>そんな事を考えつつ、いつものようにダガーを構えさせる智絵里。

 

智絵里(いいえ……深く考えるのは、やめちゃおうっ)

 

>>>イプシロンは、二人の前に立ちはだかった。

 

飛鳥「遠距離……は、やめて接近戦だ…!」

 

>>>鎌を地面で滑らせ、それに乗って飛鳥が接近してきた。

 

みく「わぁ、凄いにゃ!アスカチャン、まるでサーフィンしてるみたいにゃ!」

 

沙希「型破りな相手には、型破りな方法で対抗って訳ね~♪やるじゃん!」、

 

>>>急接近した飛鳥のズィエルが、滑って来た鎌から飛び降り―――――

 

>>>空中で両手銃に切り替え、発砲してきた!

 

智絵里「わわっ!い、岩陰に隠れないと……っ」

 

>>>岩の裏に避難した智絵里。

 

>>>しかしその先には―――――未央のウォーリアーMが!

 

>>>胸部の砲台が、智絵里のイプシロンに狙いを定めている……!!

 

智絵里(あれは…我王砲<ガオーキャノン>を撃ってくる気ですねっ)

 

智絵里「じゃあ、これなら……っ!」

 

>>>智絵里はイプシロンの武器を、片手銃のキングスハートに切り替えた。

 

>>>そして銃をブーメランのように持ち、ウォーリアーM目掛けて放り投げた!

 

>>>ウォーリアーMはチャージ中の為、動けない!!

 

そんなウォーリアーMの砲台に、片手銃が引っ掛かった!

 

未央「うわあああ!ダメダメ!駄目だって!必殺ファンクション中止―――――」

 

>>>しかしそんな未央の叫びも虚しく、CCMが無慈悲な音声ガイドを告げる。

 

<INFO:アタックファンクション・我王砲(ガオーキャノン)!>

 

キュイイイイイイン……ドゴオォォォォン!!

 

>>>フルパワーの我王砲は、智絵里の引っ掛けた片手銃のせいで上手く放出できず……

 

<状態異常:オーバーヒート>

 

未央「だから駄目だって言ったのにー!!」

 

>>>オーバーヒート中は何も出来ない。もちろん攻撃も……

 

智絵里「ていっ!」

 

>>>智絵里のダガーの一閃で、ウォーリアーMは撃沈。

 

>>>我王砲が詰まって自爆のような事になったのが、一番の敗北の理由だ。

 

未央「あすあすゴメン!!」

 

飛鳥「気にしてないよ……ボクはボクの戦いをする、それだけさ」

 

未央「わかってたけどちょっと冷たくないですかー!?」

 

>>>飛鳥が、今度は両手銃をジオラマの岩に立て掛けた。

 

>>>そしてその上を走り抜け、鎌を振りかざし、空中から強襲をかける!

 

飛鳥「はあぁぁ―――――ッ!!」

 

>>>智絵里はこの攻撃を受け切り、衝撃で大きく後方へ下がった。

 

智絵里「くっ………!」

 

飛鳥「多少は効いたかい?何せ思い切り打ち付けたからね…!」

 

>>>智絵里のイプシロンのLPは、大きく減っていた。

 

智絵里(必殺ファンクションでもなかったのに、LPが3分の2にまで……っ)

 

智絵里(直撃を受けると、こんなにダメージ受けちゃうんだ……っ)

 

飛鳥(さすがに動揺してるな…?畳み掛けるなら、今か―――!?)

 

>>>飛鳥がそう考えていた時、智絵里のCCM操作が今まで無いくらい激しくなった。

 

>>>イプシロンを右にスライドさせ、飛鳥が両手銃を立て掛けた岩場へ。

 

>>>死角になったせいで、飛鳥からは状況が把握できなくなってしまった。

 

飛鳥(マズイな……、今度はいったい何を考えているんだ……!)

 

>>>次の瞬間、スッと智絵里のイプシロンが現れた―――――

 

>>>両手銃を、その手に抱えて。

 

飛鳥「おっと…何かと思えば。扱った事の無い両手銃で、ボクに挑む気かい?」

 

智絵里「いいえ、こうです……ていっ」

 

>>>智絵里は、両手で抱えていた飛鳥の銃を放り投げた。

 

>>>両手銃は放物線を描いて飛鳥の方へ飛んでゆく。

 

>>>その間に、智絵里はダガーに装備変更し、接近を図る。

 

飛鳥(残念だったね智絵里……!ボクの勝ちだ…!!)

 

飛鳥(キミは、ボクが両手銃を受け取るより、自分の拳が届くのが早いと思ってるようだけど…)

 

>>>飛鳥は素早く鎌から素手に装備変更をし、飛んできた両手銃をしっかりと受け止める。

 

飛鳥「―――ロック。 ジ・エンドだよ、智絵里―――――!!」

 

ガギィィィィィン!!!

 

>>>その時だった。 何かが、イプシロンの手から飛んで行き―――――

 

>>>―――――アスカのズィエルの、右の肩口に刺さった!

 

>>>ズィエルのアームが、バチバチとスパークしている……

 

飛鳥「な―――――」

 

飛鳥(しまった! 智絵里には、得意技の<投擲>があったんだった……!)

 

飛鳥(ボクが両手銃を構えるのも、それで智絵里を撃ち抜こうとするのも―――)

 

飛鳥(読まれて、いたのか………!!)

 

>>>動きを封じられたズィエルのすぐそばまでやって来た、智絵里のイプシロン。

 

智絵里「ここでやめても、いいんですけどっ―――――」

 

智絵里「バトルはバトルなので、終わらせますっ」

 

キィン―――――

 

\ ピコーン! /

 

>>>飛鳥が、敗北した。

 

飛鳥(またもや完敗だよ、智絵里………)

 

飛鳥(キミの型破りはやっぱり、キミにしか出来ないみたいだ……!)

 

>>>そう心の中で思った飛鳥の、視線の先に居たのは―――――

 

智絵里「さあ、メンテナンスが終わったら、もう一度バトル…しましょうよっ」

 

>>>すっかりLBXバトルが大好きになり、無邪気に笑う智絵里であった。

 

 

 

>>>続

 

<< オタクロスのオタ知識 >>

 

オタクロス「オタクロスのオタ知識、デヨ!」

 

オタクロス「今回は、こちらデヨ~!」

 

< イプシロン(智絵里専用カラー) >

 

オタクロス「謎の人物・Kから送られてきた、智絵里たんのLBXデヨ!」

 

オタクロス「今回、Vモードだけでなく、<スタン無効>という謎を有している事が分かったデヨ」

 

オタクロス「智絵里たんの無茶で型破りな戦法にもついて来れる、パワフルなマシンデヨ!」

 

オタクロス「そんなイプシロンの活躍から、今後も目が離せないデヨ~!!」

 

オタクロス「では、次回もお楽しみにデヨー!」



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ダンボール戦機 C(シンデレラ) 09

ダンボール戦機 C(シンデレラ) 09

 

 

 

<< 第9章 新アングラビシダス、開幕! >>

 

 

 

 

―――――ミソラ商店街―――――

 

未央「ついに来たね……この日が!」

 

飛鳥「新生アングラビシダス……さて、どんなものかな」

 

みく「負けにゃいにゃあ……!」

 

智絵里「でも、不謹慎かもしれないけど、ちょっとワクワクしますっ」

 

未央「よーし、それじゃあ会場へ行ってみよー!」

 

みく「場所はココ、喫茶店ブルーキャッツの……地下にゃ!」

 

飛鳥「さあ、行こうか―――――」

 

――――――――――――――――――――

 

未央「うわ~、人でいっぱいだねー」

 

智絵里「会場に誰か上がっていきます……」

 

みく「あっ、アレって…仙道ダイキだにゃ!」

 

………

 

仙道「お集りの諸君、ようこそ。新生アングラビシダスへ!」

 

仙道「オレは仙道ダイキ……この大会の主催者だ」

 

仙道「当然理解しているとは思うが、この大会の趣旨を説明しよう!」

 

仙道「それは……優雅で、華麗に、狂おしいほどに舞え、だ!!」

 

仙道「いくら勝ったとしても、優雅さが足りないと判断した場合―――」

 

仙道「このオレが、主催者権限で―――失格にさせる!!」

 

>>>凄いブーイングが起こったが、仙道は顔色一つ変えない。

 

仙道「文句がある者が多いようだが…そういう輩は……」

 

仙道「…即刻、この会場から失せやがれ!」

 

仙道「ブーイングなんて品の無い事をする時点で、本来は全員失格にしたいところだが…」

 

仙道「…まあいい。文句があるなら出て行け、それだけだ」

 

>>>いつしか会場は、静まりかえっていた。

 

仙道「さぁ、優雅に!華麗に!狂おしいほどに舞え!」

 

仙道「レギュレーションはアンリミテッドのみ!」

 

仙道「お前達…優雅に華麗に、壊しまくれッ!!!」

 

ウオオ―――――ッ!!

 

未央「結局、破壊の祭典なワケね………」

 

飛鳥「違う違う、優雅な破壊の祭典だ」

 

みく「何かよくわかんなくなってきたにゃぁ……」

 

智絵里「それじゃあ…トーナメント表を見に行きましょっか」

 

みく「ふにゃあーっ!みく、いきなりアスカチャンと当たるにゃー!」

 

飛鳥「この勝負、もらったよ……みく!」

 

 

>>>こうして、生まれ変わったアングラビシダスが幕を開けた。

 

 

>>>みくは初戦敗退。 未央は2回戦敗退。

 

>>>智絵里は順調に勝ち進み……遂に、準決勝まで上りつめた。

 

仙道(あの智絵里ってガキ…危なげなく勝ち抜いてやがるな……)

 

仙道(それでいて、中々に美しい舞い方だ……気に入ったぞ)

 

仙道(しかし、次の相手は………ククククク)

 

仙道「…隠者(ハーミット)、か。さて、隠し事をしてるのは、どちらかねェ…?」

 

 

―――――タイニーオービット開発室―――――

 

>>>そこにはTO社社長の宇崎拓也と、開発部副主任・結城研介の姿があった。

 

宇崎拓也「この大馬鹿者!!」

 

結城研介「すっ、すみません社長!」

 

拓也「スタンフィールインゴット及び、高速成型機の無断使用………!!」

 

拓也「本来なら、即刻クビにしてもいいくらいの不祥事だが……」

 

拓也「このまま<ソレ>を、野放しにしておくのはマズイな…」

 

拓也「常にモニターしてるんだろう?今、ソレはどこに……?」

 

研介「えっと……えぇっ!?これは―――ブルーキャッツの地下です!」

 

拓也「そうか…!今日は仙道がアングラビシダスを………!」

 

拓也「Vモードの危険性もある!直ちに制御プログラムを持って会場へ向かえ!」

 

研介「はっ、はい社長っ!!」

 

タッタッタッタッタッ……ウィ――ン

 

拓也「まったく……結城のやつめ」

 

拓也「彼の事は信頼していたんだが、な………はぁ」

 

拓也「一応、オレの方からも仙道に連絡を入れてみるか」

 

Prrrrr………

 

――――――――――――――――――――

 

仙道「なんだ、宇崎拓也。このCCMのアドレスが誰のものか分かっているのか?」

 

仙道「新アングラビシダス主催の、仙道ダイキ様のCCMだぞ?」

 

拓也「そんな事は分かっている。仙道、確認してもらいたい事があるんだ」

 

仙道「確認…? またテロ組織がどうのとかいう話か?」

 

拓也「そうじゃないが、とにかく確認してくれ」

 

拓也「イプシロンというLBXを探してほしいんだ」

 

仙道「なんだ?聞き覚えが……いや、無いと思ったがある気もしてきたな」

 

拓也「間違いなく所有者は1人だけだ。今そちらにイプシロンのデータを送る」

 

仙道「……うん? ほう、このマシンは……間違いないな」

 

拓也「なに、もう見つかったのか!?」

 

仙道「今から準決勝だ。そこで対戦するガキが、持っている」

 

仙道「このデータの画像と、色は違うが……間違いないだろう」

 

拓也「なら、試合を始めるのを少し待ってくれ!」

 

仙道「何をする気だ?オレ主催の大会に水を差そうってか?」

 

拓也「そうじゃない、とにかく危険なんだ!」

 

仙道「…断る。 今のところ、ヤツは見事な優雅さで勝ち上がって来ている」

 

仙道「オレは止めない。止めたくないんだ。ヤツのLBXをもっと見ていたい!」

 

拓也(ちっ……これ以上、仙道に何を言っても無駄か……!)

 

拓也「分かった……だが万が一という事もある。俺の部下がそちらに向かっている」

 

仙道「試合の邪魔さえしなければ、問題は無いさ」

 

仙道「じゃ、オレは試合観戦に集中したいからな、あばよ」

 

……Pi!!!

 

拓也「急げよ結城……何かあった後じゃ、許さないからな……!」

 

――――――――――――――――――――

 

仙道「フム。 始まるな、ショータイムが……!」

 

 

智絵里「準決勝の相手って……!」

 

唯「やっほー♪ 唯だよー!」

 

智絵里「唯ちゃんも、アングラビシダスに…出てたんですかっ!?」

 

唯「そうだよーっ!大会っていうのに、前から出たくってさー♪」

 

唯「容赦はしないよっ!いっけー、ゆいちゃんSP<スペシャル>!」

 

>>>唯が、自分のLBXを投下した。

 

智絵里「わたしもっ……! お願いっ、イプシロンっ!」

 

 

<フィールド:岩山>

 

 

  バ ト ル ス タ ー ト

 

 

<<ゆいちゃんSP(クノイチC)パーツ構成>>

HDパーツ:クノイチ(赤)

BDパーツ:シャルナック(赤)

AMパーツ:ZX3参号機(赤)

LGパーツ:ZX3参号機(黄)

 

>>>唯がランス・紫天棍(してんこん)を構えて突進する。

 

>>>しかし、智絵里がとっさにダガーを打ち付け、これを防ぐ。

 

唯「いいね、いいね、楽しいよね!ヒートアップしてきたー♪」

 

>>>唯のLBXが側転しながら距離を取る。

 

>>>心からバトルを楽しんでいる……そんな風に見えた。

 

>>>実際、彼女は全力でバトルを楽しんでいる。

 

智絵里(あのスピード、しかもあの身軽さ……パーツ構成は、ストライダーかな?)

 

智絵里(だったら撃たれ弱いはず…一発大きいのを、こっちが入れられればっ)

 

唯「そりゃあ―――っ!!」

 

>>>唯は武器を切り替え、二丁拳銃で智絵里を付け狙う。

 

<<ゆいちゃんSP・装備詳細>>

装備枠1:紫天棍(してんこん)・コマンドシールド

装備枠2:ビビンバードガン<2丁>

 

智絵里(あわわっ、避けないと……!)

 

唯「隠れたって無駄だぞー♪」

 

>>>唯は素早く武器を切り替え、再び棍棒を振るってきた。

 

>>>これも何とか防ぎ切り、距離を取った智絵里だったが―――

 

>>>距離が離れた途端、唯はまたビビンバードガンで容赦なく智絵里を狙う。

 

 

未央「あのちえりんが……後手に回ってる!?」

 

みく「唯チャン、強いにゃ!」

 

飛鳥「中々白熱するバトルじゃないか…主催者も、いい顔をしているね」

 

>>>会場を一望できる席で、仙道はニヤリと笑う。

 

仙道「優雅さを求めるのもいいけど、やっぱりアングラビシダスはこうでなくっちゃな…!」

 

仙道「あの<大槻唯>ってヤツ…データが全くないから、大会初出場か…」

 

仙道「ジオラマを縦横無尽に駆け回り、相手を翻弄して、倒す……」

 

仙道「……忙(せわ)しないが、程よい狂気を感じられる。 いいぞ、もっと壊しまくれ!」

 

 

>>>しかし、ここで戦局が動いた。

 

>>>唯が接近して振るった棍棒を真正面から受け止めた智絵里。

 

>>>そのままイプシロンが右足を繰り出し、棍棒を唯の手から引き剥がした!

 

唯「やっば、やるじゃん!……なーんて、ね!!」

 

>>>唯は尚も余裕の表情で、冷静に武器を切り替える。

 

>>>残る武器は、ビビンバードガン2丁。

 

>>>しかし智絵里には、これに対する……対抗策があった!

 

>>>それは―――――

 

智絵里「ていっ―――――」

 

>>>「投擲」だ。 ブリザードエッジを2本、唯の両手目掛けて放り投げた。

 

>>>狙いは完璧に成功し、唯の両手から銃が零れ落ちた。しかし―――――

 

唯「はいはーい♪お借りしまーす!」

 

>>>なんと唯は宙に舞った智絵里のダガーを回収して自分に装備し、それを振りかざして突進してきた!

 

智絵里(う…ウソっ!?)

 

>>>慌てて銃<キングスハート>に持ち替え、銃撃とともに後退する智絵里だったが―――

 

唯「隙あり―――――!!」

 

>>>唯が放った無数の斬撃に襲われた、イプシロン。

 

>>>キングスハートは手から離れ、LPも減少。

 

>>>イプシロンは、大きく後ろに飛ばされ、ジオラマの岩に激突した。

 

>>>―――――その時だった。

 

>>>CCMの両脇が開いて拡張され、変形し、レーダーのようなものが現れた!

 

<INFO> {V-MODE} Start Up...

 

智絵里「ま、まずいですっ、またVモードが……!」

 

唯「へっ?何なの何なの!? いきなりどうなっちゃったの?そのCCM!」

 

智絵里「唯ちゃん、逃げて下さいっ! わたしのLBXが、暴走してますっ」

 

唯「暴走?ま、いいじゃん!このまま戦うぞーっ!」

 

智絵里「ええっ!? 唯ちゃんっ」

 

唯「試合中に暴走とかマジでイレギュラーでテンション上がるぅー♪」

 

>>>イプシロンが高速で唯の目の前まで移動し、素手で殴り飛ばした。

 

>>>が、これに臆することなく、唯も智絵里から拝借したダガーを構えて応戦する。

 

>>>しかし、一体どれだけ高性能なのか、唯の攻撃は掠りもしない……

 

唯「強いねー、早いねー!でも、負けないよーっ!!」

 

>>>唯はそれでも諦めず、アッパーや横薙ぎ、様々な攻撃を繰り出し、イプシロンに命中させていく。

 

智絵里「ごめん、わたし何も出来なくてっ」

 

智絵里「イプシロンを、止めてあげて……っ!!」

 

唯「手強いなー…! それなら、これだぁっ!」

 

>>>素早い動きで岩山に登った唯は、棍棒でイプシロンの隙を突こうとする。

 

唯「うりゃーっ! ……あ、あれっ!?」

 

>>>なんとイプシロンが、迫りくる棍棒を両腕でガッシリと受け止めた!

 

>>>そしてそのまま棍棒を奪い取り、唯のLBXの頭上から思い切り叩きつけた。

 

唯「うっぎゃー!こっちも武器取られたしー!最悪~!!」

 

唯「……でも、面白くなってきたじゃん!」

 

唯(とは言ったものの…銃弾かれて棍棒取られて……ちょっとマズイかも~)

 

唯(この武器じゃ、必殺ファンクションは打てないんだよねー……)

 

 

仙道「ほう?あのイプシロンとやらが、暴走状態に入ったか……」

 

仙道「宇崎拓也が危惧していたのは、これか……?」

 

仙道「まあ良い、面白ければ、そして強ければ、何でもありだ…!」

 

仙道「<新生アングラビシダス>何て言ってみたものの……」

 

仙道「蓋を開ければ結局破壊の祭典さ!ククク……ハハハハハハ!」

 

仙道「最高だ!狂おしく舞え! もっとその戦いを…オレに見せつけろ!!」

 

 

智絵里(駄目…っ、イプシロンが頑張ってくれてるし実際に強い、けど……っ)

 

智絵里(何とか暴走を、止めたい……っ!!)

 

…ピロリロン

 

智絵里「なっ、なに?」

 

智絵里「なにこれ、受信…?プログラム? な、なんだろう……」

 

唯「ゆいの棍棒返せーっ!!」

 

ビュンッビュンッ

 

>>>唯のダガー攻撃を、イプシロンは紙一重で躱しながら槍で応戦する。

 

智絵里「何なのっ…? えぇい、わかんないけど……プログラム実行っ」

 

<INFO:デストロイファンクション解除  コントロール可能>

 

ピ、ピ、ピ………ピコーン!!

 

智絵里「や、やった…! コントロールできるっ、できるよっ」

 

唯「ゆいの棍棒返せってばー!!」

 

智絵里「コントロールできれば……わたし負けないっ!」

 

>>>智絵里はバックステップで距離を取り、唯の棍棒を構え直す。

 

智絵里(私の銃は弾き飛ばされ、ダガーは唯ちゃんに取られた……)

 

智絵里(そして唯ちゃんの銃も私が弾いて、棍棒は私が………)

 

智絵里(今の状況だと、わたし達はどっちも必殺ファンクションを打てないはず…)

 

智絵里(それなら―――――!)

 

唯「ゆいの棍棒を、早く返せーっ!!」

 

智絵里(今のイプシロンなら、出来る……!)

 

>>>智絵里は棍棒を回転させながら、唯のLBXの胸部に、めり込ませた!

 

唯「う、うっそぉ………!?」

 

>>>動きが止まり、ブレイクオーバー寸前の唯からダガーを回収。

 

>>>ダメ押しにと、智絵里は必殺ファンクションを放つ!!

 

智絵里「必殺ファンクションっ」

 

<INFO:アタックファンクション・炎(ホムラ)崩し>

 

ドォン! ドォン! ドゴォォォォン!!!

 

仙道「ほう…大槻唯はブレイクオーバーか………」

 

仙道「―――よって、勝者は緒方智絵里!決勝戦進出だ!」

 

 

唯「智絵里ちゃん強かったー!でも、楽しかったー♪」

 

唯「はいコレ、あげる!」

 

<コアパーツ:ライフガーダーⅡ を 受け取った!>

 

唯「ゆいは負けちゃったからねー♪有効活用してちょー★」

 

>>>大槻唯はLBXを回収すると、軽やかな足取りで会場を去っていった。

 

未央「ちえりーん!見てたよ!!」

 

みく「凄かったにゃあ、唯ちゃんとのバトル!!」

 

智絵里「あ…ふたりとも、ありがとうございますっ」

 

智絵里「あれ……?飛鳥ちゃんは?」

 

未央「あすあすも今準決勝!勝てたらちえりんと対決だねっ!」

 

ワーワーワーワーワー

 

みく「何にゃ?なんか騒がしいにゃあ」

 

未央「きっと決着がついたんだよ!」

 

智絵里「あ……!飛鳥ちゃんっ」

 

スタスタスタ………

 

飛鳥「智絵里か……その表情だと、勝てたみたい……だね」

 

智絵里「え……飛鳥ちゃん、は…どうだった、の?」

 

飛鳥「負けた。ボクの敗北だ……」

 

飛鳥「まさかあんな大物が、この大会に出場していたなんて……」

 

未央「あすあす……いったい、誰とバトルしたの?」

 

飛鳥「………佐藤心さん、彼女だよ」

 

3人「え……?」

 

 

 

>>>続

 

<< オタクロスのオタ知識 >>

 

オタクロス「オタクロスのオタ知識、デヨ!」

 

オタクロス「今回は、こちらデヨ~!」

 

< ゆいちゃんSP >

 

オタクロス「唯たんが使うカスタム機、その名もゆいちゃんSPデヨ!」

 

オタクロス「ZX3のパーツをたくさん使ってくれて、ワシも嬉しいデヨ~」

 

オタクロス「智絵里たんとはまた違った方向で型破りな戦い方をするデヨ」

 

オタクロス「ストライダーにもかかわらず強気な攻めで、準決勝まで勝ち上がってきたデヨ!」

 

オタクロス「そんなゆいちゃんSP!今後の活躍が気になるデヨー」

 

オタクロス「では、次回もお楽しみにデヨー!」



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ダンボール戦機 C(シンデレラ) 10

ダンボール戦機 C(シンデレラ) 10

 

 

 

<< 第10章 白熱の決勝戦 >>

 

 

 

 

―――――アングラビシダス会場―――――

 

結城研介「はぁ、はぁっ……よかったぁ~」

 

研介「アドバンスドVモードの制御権……間に合って、本当によかった」

 

研介「でもあの凄まじい戦い……やはり、僕の目に狂いは無かった…!」

 

研介「怒られるだろうけど、拓也さん…社長に知らせないと!」

 

………

……

 

未央「大物って…確かに、さとしんはベテランさんだけどさ……」

 

飛鳥「アジアエリアチャンプ・森上ケイタを知っているか?未央」

 

未央「知ってるよー!テレビとかでもチラッとやってたよねー」

 

飛鳥「あの大会は最大3人のチームを組んで、出場できた」

 

飛鳥「そしてアジア大会の3回戦で、森上ケイタ含む3人と戦ったのが―――」

 

飛鳥「あの、佐藤心さんだよ」

 

飛鳥「3対1だったっていうのに…他の二人を落として、森上ケイタとの一騎打ちに持ち込み―――」

 

飛鳥「相当長引いた試合の末、紙一重の差で負けた……それが彼女」

 

みく「心さんって、そんなに強かったのにゃ………!?」

 

未央「LBXやってる事も、知らなかったよ私……」

 

飛鳥「胸を借りるつもりで、思い切り戦っておいで、智絵里」

 

智絵里「―――はっ、はいっ」

 

 

仙道「役者は揃った……さあ、頂上決戦を始めようじゃないか!」

 

仙道「赤コーナー、無名のダークホース―――緒方智絵里……!」

 

仙道「青コーナー、アジア大会の出場経験有り…佐藤心!!」

 

仙道「さあ、思う存分……潰し合えッ!!!」

 

 

心「えっやだ、智絵里ちゃん!?」

 

智絵里「こ、こんにちは……心さん」

 

心「なんで智絵里ちゃんが、こんな破壊の祭典に?」

 

智絵里「え、えっと……成り行きで………」

 

心「そうなんだー。 でも、今日のはぁとは本気(マジ)モードだから」

 

心「スウィーティー抜きで、いくぞ★ 覚悟しとけ?」

 

心「オリネルザー!出撃ぃっ!!」

 

<佐藤心操作:オリネルザー(オリオンC)パーツ詳細>

HDパーツ:オリオン(青)

BDパーツ:ミネルバ(青)

AMパーツ:アポロカイザー(青)

LGパーツ:ヨウキヒ(青)

 

<武器詳細>

装備枠1:ラグナハート(ハンマー)

装備枠2:???

 

未央「うっそ…あれが、さとしんのLBX…!?」

 

みく(全然、スウィーティーじゃないにゃあああ!!!)

 

飛鳥「さっきボクと戦った時とは、別のLBXだ……」

 

未央「そんなに何体も持ってるの!?」

 

みく「うそやろ……ガチ勢やん………」

 

 

<フィールド:城塞>

 

 

  バ ト ル ス タ ー ト

 

 

心「…………っ」

 

ピピッ ピッ ピピピピッ

 

>>>心が無言でCCMを操作する。

 

>>>BDとLGはストライダーフレーム。機動性も高い。

 

>>>あっという間に智絵里に接近し、ハンマーを打ち付けた。

 

>>>すかさず回避する智絵里のイプシロン。

 

>>>しかし素早いオリネルザーが、更に追撃を仕掛ける。

 

智絵里(心さん……かなり強いですっ………!!)

 

心「…………」

 

ピピピピピッ ピピピッ

 

>>>顔色一つ変えずに、心が智絵里を追い詰めてゆく。

 

智絵里(―――何とか対抗手段を、考えないとっ)

 

智絵里(心さんのマシンは機動力がある………)

 

智絵里(そして、それを活かして高速でハンマーの攻撃……)

 

智絵里(じゃあ、これなら―――――っ)

 

>>>智絵里のイプシロンが、急に大きく飛びのいた。

 

>>>しかし心は動揺せずに、追撃を続ける。

 

>>>その度にイプシロンは、大きなモーションで飛びのく。

 

>>>それを見て、心が一気にハンマーで、イプシロンを打ち上げようとした―――

 

>>>―――が、なんと智絵里は、そのハンマーの先に飛び乗った!

 

>>>そしてオリネルザーの懐に入り、ダガーで切り裂く………

 

>>>そのつもりだった。 しかし、それは失敗に終わった。

 

心「ナックル装備してるから、そう来ると思ってたわよ……!」

 

>>>心は武器を切り替え―――智絵里の攻撃を完全に防いだ!

 

>>>心のもうひとつの装備枠には、槍がセットされていた!

 

<装備枠2:ハードパルチザン(ランス)>

 

智絵里(装備枠二つとも、近接武器……っ!?)

 

>>>心はすかさず、再び武器を切り替え、ハンマーで智絵里を払いのける。

 

智絵里(くっ……ち、近づけませんっ)

 

智絵里(今のが絶好のチャンスだと思ったのに……)

 

智絵里(心さんは、何一つ動じず対抗してきた……っ)

 

智絵里(やっぱり、今のわたしじゃ、勝てないの……?)

 

>>>智絵里は悩みながらも必死でCCMを操作し、心の攻撃を回避し続ける。

 

心「逃げ回るのも、いーけど……いつまで、もつかな★」

 

>>>心は少し余裕が出来たようで、そう一言呟いた。

 

 

未央「どうしようどうしよう…!」

 

みく「智絵里チャン、さっきから大ピンチだにゃぁ……」

 

未央「あすあす、何か対策とか思い付かない!?」

 

飛鳥「ボクは敗者なんだよ?ムチャいわないでくれないかな」

 

飛鳥「でも智絵里は、ふとした時に思いがけない作戦を思い付く、天才肌だ」

 

飛鳥「彼女の直感を信じるしか、ないだろうね……」

 

飛鳥「実績も実力も明らかに、佐藤心さんの方が上なんだから……」

 

飛鳥(しかしおかしいな……なんでこんなに決着がつくのが、遅いんだ?)

 

飛鳥(ボクが戦った時は、20秒足らずでブレイクオーバーだったっていうのに……)

 

飛鳥(もしかして佐藤さん……何かを、試してる……とか?)

 

 

心「……、………」

 

ピピピピピッ ピピピピピピピッ

 

智絵里「んっ………、んっ!」

 

ピッピッピピッ ピピッ ピッ ピッ

 

>>>心の巧みなCCM裁きに、必死に食らいついていく智絵里。

 

>>>ダガーと槍が激しくぶつかり合い、火花を散らす。

 

智絵里(店長さんに貰った、このダガーの切れ味……)

 

智絵里(―――信じてみますっ!)

 

>>>心が少し距離を取った瞬間に、智絵里はダガーを投擲した!

 

>>>しかし、心はこれにも動じる事なく、簡単にハンマーで弾いた。

 

>>>宙に舞う、智絵里のダガー。

 

>>>ダガーを失った智絵里を狙って、心のオリネルザーが駆ける。

 

>>>その槍の一撃をかわし、心のオリネルザーの肩に飛び乗ったイプシロン!

 

>>>強く蹴り、宙に舞ったダガーを回収し、渾身の一撃を放つ。

 

―――――ジャキィィィィンッ!!!

 

>>>広範囲の斬撃と予測した心は、急いでハンマーに持ち替えて、智絵里の攻撃を防ぐ。

 

>>>しかし、クリーンヒットした智絵里の攻撃は―――――

 

>>>―――その岩のようなハンマーにヒビを入れ、粉砕した!!

 

>>>心は顔色一つ変えなかった。 しかし………

 

心(はぁとのラグナハートが砕かれちゃったかぁ★ これで防御面が不安になったわね…)

 

心(でも、智絵里ちゃん……本気、出してないでしょ?)

 

心(分かるわよ…? 長いコトLBXやってるんだからぁ♪)

 

心(さっきの試合のままだとしたら、智絵里ちゃんのもう一方の武器は片手銃……)

 

心(あの銃じゃ、必殺でも打たない限り、オリネルザーを落とすのはまず無理ね…♪)

 

心(はぁとの槍と、智絵里ちゃんのナックル………)

 

心(力技のハンマーを封じられたから、スピード重視の近接戦闘になるわね……)

 

心(やってやるわよ…! この破壊の祭典で、はぁとはトップをもぎ取るの★)

 

>>>心は、密かに闘争心を燃やしていた………

 

智絵里(もう、こうなったらやるしかないっ)

 

智絵里(集中して…でも、周りも見て―――――)

 

智絵里(―――わたしとイプシロンでっ、心さんに、勝つ……っ!)

 

>>>イプシロンの鋭いダガーの斬り込みを、心が槍で打ち払う。

 

>>>そしてすかさず、心のオリネルザーが、槍の連続突き。

 

>>>攻撃を受けつつも、怯まずにダガーで切り裂く智絵里。

 

>>>互いに減っていく、LP………

 

智絵里「んっ、んっ………それっ!」

 

ピピピピッ ピピピッ ピッ ピピピピ…!

 

>>>智絵里のCCM操作が激しくなる。

 

>>>しかし、どうやら必殺ファンクションを発動させる訳ではないようだ。

 

>>>至近距離で戦っていた心から、どんどん遠ざかっていく。

 

心「………逃がさないゾ★」

 

>>>心のオリネルザーが、槍を構えてその後を猛スピードで追う。

 

>>>そして智絵里が、イプシロンの動きを止めた。

 

>>>心が近づいてくる。

 

>>>イプシロンは立ったまま動かない。

 

>>>オリネルザーの槍がイプシロンに迫る。

 

>>>ここで―――――智絵里が、動いた。

 

>>>どういう訳か、両手のダガーを、地面に強く叩きつけたのだ。

 

>>>途端に、異常なほどの土煙が舞い上がった。

 

 

みく「あれ、何にゃ?どうなってるのにゃ?」

 

未央「待ってみくにゃん!もしかして、あの位置……」

 

飛鳥「そうか、そういう事か。なかなかの思い付きだ」

 

 

>>>視界を遮られた、心のオリネルザー。

 

>>>しかし状況は相手も一緒。そう考えていた。

 

>>>―――――次の瞬間までは。

 

智絵里「……必殺、ファンクションっ」

 

<INFO:アタックファンクション・ブラッディーレイン>

 

>>>心に命中する、無数の弾丸。

 

>>>智絵里も狙いを定められないが、この技は「辺り一面を撃ちまくる」、ブラッディ―レイン。

 

>>>LPの減少の蓄積もあって、ついに―――――

 

ドゴォォォォォォォン!!!

 

仙道「ブレイクオーバー、決まったな……!」

 

仙道「今回のアングラビシダス、勝者は緒方智絵里だ!!」

 

仙道「コイツが記念トロフィーだ、受け取りに来い。緒方智絵里」

 

心「あーあ、負けちったぁ……★ 強かったなー、智絵里ちゃん」

 

智絵里「心さん、途中まで手加減……してませんでした?」

 

心「さぁ、どうだろ? とりあえず、トロフィー受け取っておいでよ★」

 

智絵里「は、はいっ」

 

>>>壇上に上がる智絵里

 

仙道「狂気が少し足りない気もしたが…まあ、優雅さは兼ね備えていたな、優勝だ」

 

仙道「最後の、砂煙に包まれた中でブラッディーレインを放ち―――――」

 

仙道「相手を倒し、煙が晴れた時に颯爽とお前のLBXが現れたのには、ゾクッとしたぜ…」

 

仙道「ほらよ、トロフィーだ」

 

>>>トロフィーは、金ピカのLBXナイトメアが鎌を振り上げているデザインだった。

 

智絵里「わあっ…! ありがとう、ございますっ」

 

仙道「おっと、こっちこそ礼を言わなくっちゃあなァ……」

 

仙道「最高にエキサイティングなバトル……見せてくれて、ありがとうよ」

 

仙道「……これにて、第1回新生アングラビシダスは終いだ!!」

 

仙道「お前ら、優勝者の智絵里を讃えてやれ!今回もっとも華麗な勝利を決めたプレイヤーだ!」

 

仙道(相当腕が立つようだな……青島カズヤが負けたのも、今なら少しわかる気がするぜ)

 

ワーワーワー ワーワーワー

 

チーエーリ!! チーエーリ!!

 

智絵里「ひゃあっ、み、皆さん…ありがとう、ございますっ」

 

>>>こうして新生アングラビシダスは、智絵里が勝利を収め、

 

>>>興奮冷めやらぬ荒くれ者たちの智絵里コールで、幕を閉じたのだった………

 

 

 

  

>>>続

 

<< オタクロスのオタ知識 >>

 

オタクロス「オタクロスのオタ知識、デヨ!」

 

オタクロス「今回は、こちらデヨ~!」

 

< オリネルザー >

 

オタクロス「しゅがーはぁとが使うマシンの1機、その名もオリネルザー!」

 

オタクロス「はぁとは、アジアチャンプにあともう一歩というところまで迫った、実力者デヨ」

 

オタクロス「正攻法でありながら、その攻めは智絵里たんを追い詰めるほどデヨ!」

 

オタクロス「マジになったはぁとは強いデヨ~!」

 

オタクロス「そんなはぁとのLBX!今後どうなるか、気になるデヨ!」

 

オタクロス「では、次回もお楽しみにデヨー!」



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ダンボール戦機 C(シンデレラ) 11

ダンボール戦機 C(シンデレラ) 11

 

 

 

<< 第11章 動き出す陰謀 >>

 

 

 

 

―――――ブルーキャッツ前―――――

 

未央「いやー、さすがちえりんですなー!」

 

飛鳥「まさかアジア大会経験者の心さんを打ち破るなんて……」

 

みく「そういえば佐藤さん、どこにゃ?」

 

智絵里「あの後すぐ、探したんですけど……帰っちゃったみたいでっ」

 

タッタッタッタッタッ

 

??「すみませーん!ちょっと待って下さーい」

 

未央「む?誰々? アングラビシダスに参加してた人?」

 

研介「僕の名前は結城研介。はじめまして、緒方智絵里さん」

 

智絵里「ふぇっ、わ、わたし……ですか?」

 

研介「うん。 …<K>って言ったら、伝わるかな?」

 

みく「も、もしかして、あなたが……!」

 

研介「あぁ。君にLBXを送ったのは、僕なんだ」

 

未央「あなたが、ちえりんに………」

 

智絵里「どうして、わたしだったんですか?」

 

研介「その説明も兼ねて、君に来てもらいたい所があるんだ」

 

研介「そこの友達も、よかったらどうぞ」

 

飛鳥「その前に、まずは素性を明かしてもらおうか。信用できる要素が欲しい」

 

研介「はい、名刺。 僕はタイニーオービットの開発部副主任なんだ」

 

全員「「「タイニーオービット!?」」」」

 

飛鳥「へぇ…あの天下のタイニーオービットがねぇ」

 

飛鳥「疑って悪かったね……信用するよ」

 

研介「車に乗ってくれ。話は……社長から直接、あるだろうから」

 

――――――――――――――――――――

 

仙道「……と、いうわけだ。Vモードの発動を、みすみす許しちまった訳だなァ?」

 

CCM越しに楽しそうに語る仙道ダイキ。

 

拓也「その時の……何か、映像とかは無いのか?」

 

仙道「映像か、あるぜ? 全試合記録してあるぞ……」

 

仙道「中でもコレとコレは……最高傑作ともいえるだろう!」

 

仙道から次々に動画ファイルが送られてくる。

 

仙道「それじゃあオレは大会も終わったし客どもを締め出さなきゃならねぇから、切るぞ」

 

拓也「あっ、おい!」

 

―――――Pi!!

 

拓也「仕方ない、ヤツが送り付けてきた動画データを確認するか……」

 

拓也「―――こっ、これは!?」

 

>>>拓也が映像に見入る。

 

画面に映っているのは……イプシロン、だった。

 

拓也「何てテクニックだ……こんな才能がまだ眠っていたとは……」

 

拓也「この少女には悪いが、結城には少し感謝しないとな…」

 

拓也「しかし素材やマシンの無断使用、これは許せん」

 

>>>秘書の、霧野紗枝がくすっと笑う。

 

霧野「社長も大変ですねぇ」

 

拓也「結城がこんな暴挙に出た理由と詳細について、聞かないと……」

 

拓也「っと、そのうち到着するか。出迎えに行こう、霧野君」

 

霧野「はい」

 

霧野「それにしても社長、まさかその子達もをスカウトするなんて……」

 

拓也「仙道から大会のデータを見て、びっくりしたよ」

 

拓也「あの少女…白いイプシロンを使うあの少女は、間違いない……」

 

拓也「天才だ………」

 

―――――車内―――――

 

研介「あ、社長からメールだ………なるほど」

 

研介「君達に、事情を話してもいいそうだ。さて、発進しよう」

 

飛鳥「わざわざTO本社に連れていくんだ…大した用事なんだろうね?」

 

研介「……クリスターイングラム社を、知っているかい?」

 

智絵里「え、えっと、LBXメーカーの1つ…ですよねっ?」

 

みく「一応、ライバル社の一つでしょ? TO社の」

 

未央「色々きな臭いウワサは耳にするけど…?」

 

研介「それはあながち、間違いじゃないんだ……」

 

研介「クリスターイングラム社は、いくつかの派閥があるらしいんだけど……」

 

研介「昔、ウチの会社の役員を、全員解雇した事があってね」

 

未央「全員解雇! なんて思いきった事をー……」

 

研介「当時TO社の役員はスパイだらけだったんだ」

 

研介「テロ組織・イノベーターの、協力者だったんだよ…」

 

飛鳥「…テロ組織、か。 一気に危険な雰囲気になって来たね」

 

研介「その残党みたいなのが、TO社に対抗しようと水面下で動いてるらしくって……」

 

研介「クリスターイングラムで極秘に動いている組織の名前は、通称<メディエイター>」

 

みく「メディエイター……」

 

智絵里「あの、そのっ……どうしてわたしにLBXを?」

 

研介「ああ、それは君がこの間まで出てたドラマがあっただろう?」

 

研介「咄嗟の判断力で事件を解決に導き、時にはアクションもこなす……」

 

研介「あの学生探偵役、すっごくかっこよかったよ!」

 

智絵里「えっと、あの……ありがとう、ございます?」

 

未央「でもー…あれは役だし台本だから、ちえりんの素じゃないですよー?」

 

研介「ああっ、そっか!しまった、すっかり忘れてたよ!」

 

みく(この人、大丈夫かにゃぁ………)

 

研介「でも実際に、君には天才的なLBXの才能があったじゃないか!」

 

研介「け、結果良ければすべてよし―――だよ。 ハハハハハ…!」

 

研介「社長には、勝手な真似をして凄く怒られたけどね……」

 

智絵里「あのっ、Vモードっていうのは……?」

 

研介「AX-00っていうコアスケルトンに搭載されていた、試作型の特殊モードだよ」

 

研介「せっかくだからという事で、君のマシンにも搭載させてもらったんだ」

 

智絵里「途中まで、制御できなかったんですけど………」

 

研介「あぁ、それは…ゴメン。制御権を、認定ユーザーに設定し忘れてたんだ……」

 

みく(マジで大丈夫かにゃ、この人………)

 

飛鳥「まだ分からないなぁ……どうして僕たちにテロ組織の残党の話を?」

 

研介「それはね、君達に…<協力>してもらいたいからなんだ」

 

―――――TO(タイニーオービット) 本社―――――

 

未央「わぁ、ここがタイニーオービット……!」

 

みく「本社に来られるなんて、ちょっと夢みたいにゃ♪」

 

飛鳥「よく舞い上がっていられるね、ふたりとも……」

 

飛鳥「ボクはメディエイターについて気になる。社長に直接、詳細を聞かないと」

 

智絵里「イプシロンの事……まだまだ分からない事だらけですっ」

 

カツ カツ カツ カツ……

 

拓也「ようこそ、TOへ。オレが社長の、宇崎拓也だ」

 

未央「わあぁ、本物だー!」

 

拓也「こちらは秘書の霧野君、君達を連れてきたのが開発部の結城だ」

 

霧野「皆様、はじめまして」

 

拓也「霧野君。オレがこの子達を案内しておくから、彼女達を集めてほしい」

 

霧野「はっ、かしこまりました」

 

拓也「ひとまずみんな、社長室へ来てくれ」

 

みく「TO社の社長室に、潜入だにゃぁ♪」

 

―――――社長室―――――

 

拓也「メディエイターは、その勢力を着実に拡大し続けている…」

 

拓也「ヤツらは自らを調停者と名乗り、LBXでの戦いに決着をつけると謳(うた)っているが……」

 

拓也「その目的は、他社の優良なLBXの技術を盗み、自分たちのものにする事にある」

 

拓也「盗んだ技術をどうするのかは……今はまだ調査中なんだけどな」

 

拓也「彼らの特徴は、使用して来る機体だ……」

 

未央「やっぱり部隊って事は、それなりの性能って事ですか?」 

 

拓也「あぁ。ヤツらは、イノベーター時代のデータを全て、持っている……」

 

拓也「それに加え、アルテミスでのデータも取られている……」

 

拓也「過去のワンオフ機だったものの廉価品は、幾らでも出てくるだろう……」

 

拓也「そこで、だ。 君達に頼みがある」

 

拓也「オレは思っている……君達を、スカウトしたいと」

 

未央「アイドルのスカウト、ってわけじゃないよねー」

 

拓也「ああ、違う…優秀なLBXプレイヤーとして、君達をスカウトしたい」

 

拓也「どうだ…危険は伴うが、メディエイターと戦ってくれないか?」

 

飛鳥「天下のTO社社長に、そこまで言われちゃあね。ボクはオーケーだ」

 

みく「み、みくも協力するにゃぁ」

 

智絵里「LBXは、みんなの友達なんです……っ」

 

智絵里「それを悪い事に使うなんて、許せませんっ!」

 

未央「私もちえりんに賛成!協力するよ、ウザタクさーん♪」

 

拓也「ウザタク…!? ま、まぁオレの事は好きに呼んでくれていいが……」

 

ピピピッ

 

>>>拓也のCCMが鳴った。通信の相手は、先程の秘書・霧野だった。

 

霧野「失礼します、社長。今連絡のつく方々をお呼びいたしました」

 

霧野「シーカー本部でお待ちしておりますので」

 

拓也「わかった、ありがとう霧野君。 すぐに向かおう」

 

Pi………

 

拓也「よしみんな、オレについて来てくれ。シーカー本部に向かう」

 

智絵里「し。シーカー…ですかっ?」

 

拓也「あぁ。オレ達の、そして君達の仲間になる人達を、紹介するよ」

 

―――――シーカー本部―――――

 

ウィィ―――ン

 

拓也「着いたぞ、ここが本部だ」

 

>>>そこには、沢山のモニターや、よく分からない機材が置いてあった。

 

未央「うわーぉ、秘密基地みたーい……」

 

??「まさか、あのままコイツらをスカウトするとはねェ……」

 

みく「にゃにゃ!? その声、まさか―――」

 

飛鳥「……仙道ダイキか。 キミも、<シーカー>の一員だったのか」

 

仙道「オレは言うなれば、テロ組織<イノベーター>と戦った最初期から居る……」

 

仙道「まぁ、古株……というやつだ」

 

仙道「それで、こいつは…お前達もよく知っているだろう?」

 

未央「あっ、うめちゃん!?」

 

小梅「……あ、未央ちゃんだ。こんにちはぁ」

 

仙道「コイツ、オレに付きまとってどうしようもなかったんだ」

 

仙道「だからオレが推薦して、シーカーの戦力として加えてやったんだ」

 

みく「なるほどにゃー……あっ!」

 

>>>みくは、他にも見知った顔を見つけた。

 

>>>そこに居たのは、荒木比奈と大槻唯だった。

 

比奈「いやぁ~、謎のテロ組織なんて何のアニメだよって感じっスけどね~」

 

比奈「アタシとルシフェレックスが役に立てるっていうなら、協力は惜しまないっス」

 

唯「いやー、ゆいもアングラに出るちょっと前にスカウトされちゃってさー」

 

唯「面白そうだから、オッケーしちゃった!」

 

>>>そしてもう一人……奥の方に1人の青年が立っていた。

 

???「なんだい?オレに何か用かい?」

 

飛鳥「キミは……オメガダインの元テストプレイヤー・風摩キリト!?」

 

キリト「へぇ……この僕を知ってる子がいるとはねぇ?」

 

キリト「オメガダインは不祥事を起こしたからな、解体されたさ」

 

キリト「行き場の無くなったオレが今居るのは、このタイニーオービット」

 

キリト「そこの宇崎拓也に、コキ使われる毎日さ」

 

>>>彼―――キリトは、自嘲気味にそう言った。

 

拓也「シーカーはもっとメンバーが居るんだが、今集められるのがこれだけでな」

 

拓也「集めたのには、理由がある。霧野君、資料を……」

 

霧野「はい、こちらです」

 

>>>モニターに映し出されたのは、何かの祭典に関するもののようだった。

 

拓也「来週開催される、サイバーランス社のセレモニーだ」

 

拓也「次世代型の自立稼働システムを搭載したアンドロイドのお披露目だが……」

 

拓也「そのデータを盗もうと、メディエイターに動きがあるらしい」

 

未央「でも、サイバーランスって他社でしょ?ライバル会社なんじゃ……」

 

拓也「オレはシーカーを、タイニーオービットの組織として、動かしたくはない」

 

拓也「メディエイターを止める為、君達にはヤツらの悪事を阻止してもらう」

 

みく「阻止、って……どうやってやるのにゃ?」

 

拓也「ライバル社の社長であるオレから、メディエイターの話をしても、信じてもらえない」

 

拓也「そこで、潜入作戦を決行する事にした!」

 

拓也「連中は、データの持ち出しにLBXを使用する気だ」

 

拓也「そこでこちらもLBXを駆使し、対抗する」

 

>>>次にモニターに映ったのは、セレモニー会場の裏口の地図だった。

 

拓也「当然、警備は決して薄くない。しかし、LBXなら侵入できる………」

 

比奈「でもアタシ達から数百メートル離れたら、CCMの操作圏外に出ちゃわないっスか?」

 

拓也「それについてだが……手段がある」

 

拓也「コントロールポッドという、CCM拡張装置を、君達には使ってもらう」

 

拓也「しかし、数が足りなくてな……現状、3つしか用意できていない」

 

拓也「そこで、我が社が開発した演習プログラムを使って―――」

 

拓也「―――そのプログラムの上位スコア3名に、コントロールポッドへ乗り込んでもらう!」

 

>>>秘書の霧野の案内で、皆は専用ゴーグルを付け、演習プログラムに挑んだ。

 

>>>システムはいたってシンプルで、出てくる敵LBXを時間内にどれだけ倒せるか、というもの。

 

>>>敵1体の強さはそこまでではないが、とにかく大量の敵が現れる。

 

>>>いかに今の状況を把握し、多くの敵を倒せるか…という技術が試される。

 

>>>そして……演習プログラムの、結果が出た。

 

拓也「倒したエネミーの数、だな。 これは………」

 

仙道ダイキ:411

荒木 比奈:237

白坂 小梅:216

大槻  唯:182

本田 未央:175

前川 みく:128

 

二宮 飛鳥:412

緒方智絵里:529

風摩キリト:598

 

唯「あちゃー。ゆい、ちょっと遊び過ぎたかもー……★」

 

未央「それでも私より上なんだけど。どういう事……」

 

みく「ふにゃぁぁ……ダントツの最下位にゃぁ!」

 

 

仙道「それより風摩キリト……お前、ズルでもしたのかなァ?」

 

キリト「悪いけどこのプログラムじゃ、オレが1位を取れなきゃおかしいのさ」

 

キリト「何せコイツは、オレも開発の手伝いをしたんだからねぇ……」

 

キリト「それにしても驚いたよ……緒方、智絵里っていうのかなぁ?」

 

智絵里「はっ、はいっ。よろしくお願いしますっ」

 

キリト「プログラムの癖も知らないで、スコアを500以上叩き出せるなんて……」

 

キリト「……キミ、もしかして天才?」

 

智絵里「えっ、ちが、ちがいますっ…わたし、一生懸命やっただけなのでっ」

 

キリト「そうなのかい?ま、今はいいや………」

 

キリト「来週の作戦で、キミの強さはしっかりと観察させてもらうよ……」

 

拓也「決まりだな。ポッドに乗り込むのは飛鳥、智絵里、そしてキリトだ」

 

拓也「詳しい潜入ルートはこちらで検討中だ。決定次第、君達のCCMに送る」

 

拓也「以上で今日は解散だ。各自、来週の作戦決行に備えてくれ!」

 

 

>>>こうして、智絵里達はあれよあれよという間に―――

 

>>>テロ組織と戦う運命を、背負う事となったのだった………。

 

 

 

  

>>>続

 

<< オタクロスのオタ知識 >>

 

オタクロス「オタクロスのオタ知識、デヨ!」

 

オタクロス「今回は、こちらデヨ~!」

 

< シーカー >

 

オタクロス「元々はテロ組織・イノベーターに対抗すべく、宇崎氏が立ち上げた組織デヨ」

 

オタクロス「タイニーオービットの中にあり、強固なセキュリティに守られているデヨ!」

 

オタクロス「今回、新たな組織メディエイターと戦う為、復活したのデヨ!」

 

オタクロス「シーカーでの智絵里たんたちの活躍、これから目が離せないデヨ~!」

 

オタクロス「では、次回もお楽しみにデヨー!」



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ダンボール戦機 C(シンデレラ) 12

ダンボール戦機 C(シンデレラ) 12

 

 

 

<< 第12章 新生シーカー >>

 

 

 

 

―――――TO(タイニーオービット)社―――――

 

 

飛鳥「ねぇちょっとキミ……聞きたい事があるんだ」

 

研介「えっ、僕?何かな?」

 

飛鳥「智絵里のLBX・イプシロンにスタンが効かなかったんだ」

 

飛鳥「それは、何か特殊加工がされてるから……なのか?」

 

研介「うーん…特にそんな加工はしてないんだけど……」

 

研介「あ!もしかしたら、スタンフィール・インゴットが関係してるのかも」

 

飛鳥「スタンフィール……なんだい、それは?」

 

研介「レアメタルの一種さ。高温にも耐えられて、伸縮性もあって頑丈なんだ」

 

拓也「その貴重なスタンフィール・インゴットを!」

 

拓也「無断で持ち出し、成形機でイプシロンを勝手に作った!」

 

拓也「結城……反省しているんだろうな?」

 

研介「は、はいっ!!」

 

拓也「まったく………」

 

――――――――――――――――――――

 

>>>その頃、TO社の別フロアでは、智絵里がキリトに絡まれていた。

 

キリト「緒方智絵里……君はじつに興味深いねぇ……」

 

智絵里「そっ、そうですかっ?」

 

キリト「知りたい……!君の強さを……!」

 

キリト「オレとバトルしろ……緒方智絵里!」

 

智絵里「えっ、あっ、はいっ。 いい、ですけど……」

 

仙道「オイオイ、待ちなよ風摩キリト」

 

仙道「風摩キリト―――お前は強い…文句なしに強い」

 

キリト「箱の中の魔術師に褒められるなんて、光栄だなぁ」

 

仙道「要は緒方智絵里の戦いを、その目で見られればいいんだろう?」

 

仙道「じゃあ、オレが加勢しても……異論はないよなァ?」

 

キリト「そう来たか…面白いねぇ、いいとも……」

 

キリト「2人まとめて、相手してやるよ」

 

>>>そう言うや否や、キリトがDエッグを展開する。

 

智絵里「仙道さんっ、どうして……」

 

仙道「オレもお前のプレイスタイルには興味がある」

 

仙道「だが風摩キリトは強い。オレがあっちに加勢する訳にはいかない」

 

仙道「だから、協力者として……緒方智絵里、お前を見定める…!」

 

智絵里「ひぃっ……!?」

 

仙道「安心しろ、今は協力者だ。信用してくれて構わない」

 

智絵里「わ、わかりましたっ」

 

>>>Dエッグの展開が完了される。

 

キリト「さぁ、始めようか……出撃だ、デクーOZ!」

 

仙道「ほう…?修理したのか、ソイツ……」

 

キリト「ミゼルに制御権を奪われたオレのLBXは全て、一から作り直して復活させたのさ」

 

キリト「走り書きだったが……設計図も残っていたからねぇ」

 

仙道「さてと……オレも出撃と行くか。 悪夢を見せてやれ、ナイトメア!」

 

キリト「おや?ナイトメアフィアーじゃないのかい?」

 

仙道「やっぱりオレには、こっちの方が合っているんでねェ……」

 

智絵里「お願いっ、イプシロンっ」

 

キリト「へぇ……こいつが君のLBXか………」

 

キリト「でも、カタログスペックが全てじゃない……」

 

キリト「オレは…そのLBXを操る、君が見たいんだ……!」

 

仙道「来るぞ、緒方智絵里っ! 警戒しろ!」

 

智絵里「はっ、はいっ!!」

 

 

<フィールド:王宮城内>

 

 

  バ ト ル ス タ ー ト

 

 

>>>キリトのデクーOZが、愛用の<OZトマホーク>を構えて、急接近する。

 

仙道「即席チームとはいえ、ある程度連携は取ってくれよ、はぁっ!!」

 

智絵里「は、はいっ! やあっ!!」

 

>>>仙道と智絵里が攻撃を仕掛けるも、デクーOZはするりとそれをかわした。

 

智絵里「は、早い……っ!?」

 

仙道「ヤツは、カスタムもチューニングの腕も一流だ」

 

仙道「気を抜くなよ……すぐに機体を<持ってかれる>ぞ!」

 

智絵里「え、えっとっ……も、<持ってかれる>……って?」

 

仙道「…ブレイクオーバー。 そういう事だから、油断するな!!」

 

>>>デクーOZが凄まじい早さでトマホークを振るう。

 

>>>とっさに防御態勢を取る智絵里と仙道。

 

>>>しかし、衝撃を完全に防ぐことは出来ず、ダメージを受けてしまった。

 

キリト「キミの力はそんなものなのかい? そんなわけないよなぁ?」

 

>>>デクーOZがトマホークを掲げてイプシロンに、にじり寄る。

 

智絵里「つ、強い……ですっ」

 

キリト「当り前の事さ……僕はこれでもTOのテストプレイヤーなんだから」

 

仙道「―――せいっ!!」

 

>>>仙道が鎌で鋭い一撃を放つ。

 

>>>しかしキリトがこれに対し、トマホークを打ち付けた。

 

>>>互いの武器がぶつかり合い、火花が散る。

 

>>>そしてここで―――――智絵里が動く。

 

智絵里「仙道さん、失礼しますっ」

 

>>>イプシロンが仙道のナイトメアに飛び乗り、そこから空中へ飛び出した。

 

>>>そして上空から、片手銃<キングスハート>を放つ。

 

キリト「そんな攻撃は予測範囲内なんだ、よっ!!」

 

>>>キリトは力づくでナイトメアを押しのけ、愛用のOZシールドで銃弾を防ぐ。

 

>>>―――しかし、智絵里はもう既に武器を変えて、急降下してきていた!

 

>>>OZシールドに走る、鋭いダガーの一撃。

 

>>>結果、シールドはすっぱりと、真っ二つに割れてしまった。

 

キリト「なっ―――OZシールドが…!」

 

キリト「これだけの強度がある盾でも、難なく切ってしまうとはねぇ……」

 

キリト「面白い……!これなら、マジに戦えそうだな………!」

 

>>>キリトは割れたOZシールドを投げ捨て、トマホークを構え直す。

 

仙道「やるじゃないか、緒方智絵里……」

 

仙道「風摩キリトに、まさかこんなに早く一杯食わせるなんてねェ……」

 

智絵里「仙道さんが、隙を作ってくれたから、ですよっ」

 

仙道「そいつは謙遜が過ぎるんじゃないかなァ…まぁ、いいけどねェ」

 

キリト「さ、バトルを再開しようじゃないか…思う存分楽しもうよ……!」

 

>>>キリトのデクーOZが物凄い勢いでトマホークを振り回す。

 

ブンッ ブンブンッ キィィン!!

 

智絵里「うぐっ、まっ、まずいですっ」

 

仙道「バカ、よけろ!!」

 

>>>仙道の援護で、何とか直撃を避けることが出来た智絵里。 しかし―――――

 

バチバチバチ………

 

>>>智絵里を庇ってトマホークを防いだナイトメアの左アームが、スパークしていた。

 

仙道「ちっ、アームLがイカれたか…!」

 

仙道「緒方智絵里!オレはもう、これ以上庇ってやれないからな!」

 

仙道「自力で何とかしろ!!」

 

>>>ゆっくりと下がって距離を取る、仙道のナイトメア。

 

智絵里(何か作戦を……こっちは二人なんだし……っ)

 

智絵里(そうだ、もう一度っ……今度は―――)

 

智絵里「仙道さんっ。 また上、登らせてくださいっ」

 

仙道「なんだ、また上空から攻撃か?」

 

仙道「だがヤツに同じ手は通用しない……」

 

智絵里「今度はっ……違いますっ」

 

仙道「……はぁ、わかったよ。もう少し手伝ってやる」

 

仙道「ナイトメアの鎌に乗れ。乗った瞬間、打ち上げる」

 

智絵里「お願いしますっ」

 

>>>イプシロンが、ナイトメアの鎌の上に飛び乗った。

 

>>>仙道がそれを見て、右アームの力だけで何とか、智絵里を宙へ放り出した。

 

キリト「また空から銃撃かい?……うん?」

 

>>>イプシロンが構えているのは―――――ダガーだ。

 

キリト(上空から勢いをつけて切り裂くつもりかい、悪くないねぇ……)

 

キリト(でも真っ直ぐ下に落ちてくるって事は、こっちにとってもいい的なんだよ!)

 

キリト(その機体―――トマホークで真っ二つにしてやるぜ…!)

 

>>>ここで、智絵里の代名詞とも呼べるようになって来たものが、炸裂した。

 

>>>投擲―――――だ。

 

>>>しかしダガーを2本投げたものの、キリトは危なげなくその両方を弾いた。

 

キリト(何を考えている?―――なんだ…な、何かやばい!!)

 

>>>ダガーを弾き飛ばした時に、デクーOZのボディはガラ空きになっていた。

 

>>>そこに、智絵里のイプシロンが何かを構えて―――デクーOZに突き立てた。

 

>>>イプシロンの手の中にあったもの。 それは………

 

>>>なんと、片手銃のキングスハート!!

 

>>>智絵里は、片手銃をナイフのように見立てたのだ。

 

>>>そして、力づくでデクーOZの胸部装甲に、銃を突き刺す……!!

 

キリト「銃を剣に見立てるだって…? やっぱり君は、面白いよ……!」

 

\ ピコーン! /

 

キリト「僕の負け、か…。 しかし、興味深い実戦データが取れたよ…」

 

仙道「……満足か?風摩キリト」

 

キリト「あぁ!大いに満足できたとも……!」

 

キリト「智絵里…来週の作戦でも、よろしく頼むよ?フフフ……」

 

そう言って、キリトは静かに去っていった……

 

仙道「チッ……!」

 

智絵里「ひっ……あ、あのっ、足引っ張って、すみません………」

 

仙道「あぁ、今の舌打ちはお前には関係ない。 気にするな」

 

智絵里「そ、そうですか……っ」

 

仙道「宇崎拓也……気に食わないねェ。今回もこんな方法を取るとは」

 

智絵里「社長さんですか? え、えっと、こんな方法って……?」

 

仙道(コイツ、普段はずっとこんななのかよ……)

 

仙道(LBXバトルになった途端に強気になるのは、何なんだ……?)

 

仙道「シーカーに関してだ」

 

仙道「どうせお前達も、ここへ連れて来られるまで、何の説明も無かったんだろう?」

 

仙道「急に集めて、イノベーターと戦え、ミゼルと戦え……」

 

仙道「そして今回は、メディエイターと来た」

 

仙道「ふざけやがって。オレ達はお前の手駒じゃないんだって話だ」

 

智絵里「わたし達だけでは―――――」

 

仙道「あん?」

 

智絵里「わたし達だけでは、テロ組織の存在も知る事が出来ませんでした」

 

智絵里「危険な事に巻き込まれちゃったのは、変わりないですけどっ」

 

智絵里「それでも…LBXで悪さをする人達を、わたしは止めたいんですっ」

 

仙道「へぇ……? 見た目よりも中々、肝が据わってるじゃないか」

 

智絵里「LBXはわたしにとって、大切な友達なんです……っ」

 

智絵里「トモダチを、悪事に使うなんて……正直、許せませんっ」

 

仙道「そいつに関しては、オレも同意見だ」

 

智絵里「仙道さん……っ」

 

仙道「一応、今オレ達は仲間だ」

 

仙道「そのメディエイターとやらの作戦、オレ達でぶっ潰してやろうじゃないか」

 

智絵里「は―――はいっ!」

 

―――――TO社・エントランス―――――

 

未央「いやー、凄い事になっちゃいましたねー」

 

比奈「アタシなんか、アイドルになれただけでもびっくりだったんスけど―――」

 

比奈「まさか自分のLBXが、正義の為に戦う日が来るなんて~……」

 

未央「それより!ゆいゆいもアングラビシダスに出てたなんて」

 

唯「そんなに驚く事かなぁ?ゆい、ずっと大会に出たかったんだよねー♪」

 

唯「結局負けちゃったけどねー。強かったなー、智絵里ちゃん」

 

未央「……あれ?ちえりんは?」

 

みく「智絵里チャンなら、あのキリトって人に話しかけられてたにゃぁ」

 

未央「オメガダインの元テストプレイヤーなんだっけ、あの人」

 

唯「軍事基地がどうとかいうニュース、やってたよねー結構前に」

 

比奈「その時も…あの仙道さんや風摩さんは戦ってたんスかね……」

 

未央「私達も、がんばろっ!」

 

みく「えい、えい、おーっ、だにゃ!!」

 

 

―――――TO社・開発フロア―――――

 

研介「ようこそ。 これが、コントロールポッドさ」

 

小梅「す、すごい……。 乗り物、みたい……だね?」

 

飛鳥「試運転がてらに乗ってもいいかい?」

 

研介「えぇっ!?ちょ、ちょっと待ってくれ……」

 

??「大丈夫よ。私から拓也君に許可を取っておくから」

 

飛鳥「……失礼だが、アナタは?」

 

石森里奈「開発部の石森里奈よ。はじめまして、シーカーの新メンバーさん」

 

飛鳥「ボクは二宮飛鳥、こっちは白坂小梅。知ってるかもしれないけど、よろしく」

 

石森「えぇ、よろしくね」

 

石森「そういう事だから、結城君。コントロールポッドを起動させてもいいわよ」

 

石森「それじゃ、私はこれで」

 

研介「よし。それじゃあ飛鳥ちゃん、実際に乗って試してごらん」

 

飛鳥「行くぞ……!」

 

>>>飛鳥はコントロールポッドに乗り込み、コンソールにCCMをセットした。

 

すると、ポッド内のカメラがCCMを通じてLBXのカメラアイとリンクし―――――

 

飛鳥「これは凄い…!まるでLBXに乗り込んでいるみたいだ……」

 

>>>さながらそれは、LBXの中に船があり、そこに居るような感覚。

 

>>>飛鳥はLBXをコントロールポッドで操作し、設置されたジオラマに飛び降りた。

 

飛鳥「小梅。まだ、そこに居るんだろう?」

 

飛鳥「ボクのコントロールポッド練習に、付き合ってくれないかい?」

 

小梅「いい、よ…? LBX…壊されても、いいなら……ね?」

 

飛鳥「言ってくれるじゃないか……返り討ちにしてあげるよ!」

 

研介「わわわっ!お願いだからアンリミテッドレギュレーションはやめてくれー!」

 

※アンリミテッドレギュレーション:LBX破壊OK、何でもありのルール

 

―――――TO社・社長室―――――

 

拓也「何なんだ……本当に、凄まじい………」

 

>>>拓也はディスプレイで、繰り返し動画を見ていた。

 

>>>そこに映るのは、ジオラマを縦横無尽に駆け回るイプシロンの姿が。

 

拓也「なんて躍動感のある戦闘なんだ…………」

 

拓也「結城が彼女にLBXを送ってから、ひと月経っていたか……?」

 

拓也「しかもさっき比奈達に聞いたが、それまではLBXに触った事もなかったという…」

 

拓也「霧野君……君は、どう思う?」

 

霧野「…信じられないくらいの、天才としか―――思えません」

 

拓也「悔しくもあるが……結城への罰は、この逸材を見つけてくれた事で…チャラだな」

 

霧野(ふふっ。本当は罰なんか与えたくないでしょうに……)

 

霧野(結城さんも、拓也さんにとって大切な仲間…ですからね)

 

――――――――――――――――――――

 

>>>少年少女達は、互いに戦い、己を磨く。

 

>>>……一週間後に迫ったセレモニーで、メディエイターを食い止めるために。

 

 

 

  

>>>続

 

<< オタクロスのオタ知識 >>

 

オタクロス「オタクロスのオタ知識、デヨ!」

 

オタクロス「今回は、こちらデヨ~!」

 

< デクーOZ >

 

オタクロス「風摩キリトの使うカスタム機、名前は<デクーOZ>デヨ!」

 

オタクロス「神谷重工が元々イノベーターの汎用機として作られた、<デクー>」

 

オタクロス「デクーOZは、それとはまったく比べ物にならない程に高性能なのデヨ!」

 

オタクロス「そして、それを操る風摩キリトはカスタマイズのスペシャリストデヨ」

 

オタクロス「今後、彼の活躍も見られるかもしれない………デヨ!」

 

オタクロス「では、次回もお楽しみにデヨー!」



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ダンボール戦機 C(シンデレラ) 13

ダンボール戦機 C(シンデレラ) 13

 

 

 

<< 第13章 その名はメディエイター >>

 

 

 

 

サイバーランス社セレモニー・約1時間前

 

―――セレモニー会場裏口―――

 

仙道「んで、どうやって侵入するっていうんだい?宇崎拓也?」

 

CCM越しにそう問う仙道は、不敵に笑みを浮かべる。

 

拓也「仙道。事前に渡しておいたバッグの中身を確認してくれ」

 

>>>仙道は担いでいた鞄を地面にドサッと置くと、ジッパーを引っ張って開いた。

 

>>>そして皆が、中を覗き込むとーーー

 

唯「何これ?ICカード?」

 

拓也「あぁ。…とはいえ勿論、偽造のモノだがな」

 

拓也「こちらの調べで、サイバーランスのスタッフ通用口を通る為には、そもそも社員固有のパスが無ければ弾かれる仕組みだと判明した。そこで偽造カードを作ってセキュリティの穴を突かせてもらおうという算段だ」

 

仙道「それはいいが…俺はともかく、こいつらみたいなガキどもがスタッフルームをウロチョロしてたら、一目で不審者だとバレちまうと思うんだがねェ?」

 

拓也「そこで仙道、お前の出番だ。バッグの中身はそれだけじゃないだろう?」

 

>>>偽造ICタグの下には、服が入っている。

 

未央「この小洒落たパーカーは?」

 

拓也「今回の式典でスタッフの全員が着用しているパーカーだ。シーカーの技術開発部が作った精巧なレプリカだから、じっくり見られてもバレる事は、まず無い」

 

仙道「なるほどねェ。俺がこいつを着て、本物のスタッフに会ったら、関係者のお守りを押し付けられちまって…だとか言って誤魔化せって事かい?」

 

拓也「察しが良くて助かる。その辺りはお前の事だ、上手く躱せるだろう?」

 

仙道「任せておきな。アンタの望み通り、小芝居してやるよ」

 

 

 

ーーー一方・コントロールポッド内ーーー

 

キリト「ポッドの操作の方は、だいたい問題無さそうだねえ」

 

飛鳥「雑誌でスパークブロード通信の記事は見た事あったけど、ここまで実用可能な物が既に作られていたのは驚いたよ」

 

智絵里「あ、あのっ…私たちは、裏口のスタッフルームから入って行かないんですよね?」

 

キリト「あぁ。それは残りの奴らのルートさ。俺達はこのビルの通気口から地下へ降り、水路を伝ってサイバーランス社セレモニー会場のスタッフエリアへと上がる。通常なら不可能なルートだが…LBXの小ささとコントロールポッドの遠隔操作、この2つの条件が揃っているからこそ出来る芸当さ」

 

Pi Pi Pi......

 

拓也「俺だ。仙道達がスタッフ通用口への侵入に成功した、今のところ問題なく進んでいる。君達もそろそろ突入してくれ」

 

キリト「イエッサー社長様。さて、行くとするかねぇ…ついて来い、緒方智絵里!二宮飛鳥!」

 

飛鳥「オーケイ。ズィエル、GO!」

 

智絵里「イプシロン、発進ですっ」

 

>>>3機のLBXは地下水路へ着くと、目的のポイントへと順調に向かう。

 

キリト「…よしよし、ここだな。この柵の真上に上がれば丁度、セレモニーのスタッフエリアのーーー何?」

 

>>>暗闇で何か光ったのを視認したキリトのデクーOZは、すかさず銃を構えて牽制の射撃をする。

 

飛鳥「何か…いる!? それも、少なくないぞ…!!」

 

キリト「デクーカスタムR(監視型)と、インビットか…元々はイノベーターで使われていたLBXだな」

 

飛鳥「えっ…?神谷重工から販売されているLBXじゃないのかい?」

 

キリト「元々、神谷重工ってのは裏でイノベーターと密接に繋がってたそうでね…兵器開発を行なってイノベーターの戦力としていたらしい」

 

智絵里「奥に…一際大きい感じのLBXが居ますっ」

 

キリト「アレは…<ジェネラル>か。かつてイノベーター黒の部隊長だった八神の使用していた機体…だね。 成る程…デクーRだけならまだ分からなかったが、ジェネラルまで使ってるとなると…向こうがイノベーターのデータを保有している確証が持てる」

 

>>>最奥で待ち構えるジェネラル、そしてデクーカスタムRが智絵里達のLBX3機に迫り来る。

 

飛鳥「ここは単にスタッフエリアの地下であって、スタッフエリアそのものじゃない…それなのに、こんなにもLBXを待機させているって、何だか不自然じゃないか?」

 

キリト「こちらの魂胆はバレバレってことだろうな。シーカーの妨害は奴らにとって想定範囲内、という意味にもなる。でとっとと蹴散らすぞ」

 

>>>トマホークを構え、キリトのデクーOZが勢いよくデクーカスタムRの群れに突っ込む。

 

>>>すると途端に、デクーカスタムR達は散開し、後方へと退避したのだ。

 

キリト「どうなってやがる…?こんなトコに配備されたLBXだ、おそらく手動ではなく自動制御…つまりAIで動いている筈だが…」

 

飛鳥「ーーーライフルで撃ち抜く!」

 

>>>飛鳥が素早く構え弾を放つが……インビットは後退して守りを固め、デクーカスタムRが盾を手に前へ出て防御してみせた。

 

キリト「不自然だ…カタログスペックが全てじゃないのは俺が何より知っているが、攻撃も装甲も低い量産機にこれだけの高度なAIをわざわざ積ませるワケが分からない…。何かカラクリがあるはずだ、様子を見つつ戦えよ」

 

>>> OZトマホークを構え、群がる敵を見据えつつキリトが言う。

 

飛鳥「了解っ…!」

 

智絵里「は、はいっ」

 

>>>キリトのデクーOZ、飛鳥のズィエル、そして智絵里のイプシロン。

 

>>>3機のLBXによる猛攻で敵数は少しずつ削れているものの…そのやけに統制の取れた動きのせいで、思いのほか苦戦を強いられていた。

 

智絵里「…あ、あのっ」

 

>>>静かに戦闘を続けているなか、ふと智絵里が声をあげた。

 

智絵里「あの一番奥の紫色のLBX…他のと違って厚い装甲と強そうなスナイパーライフルを持ってるのに、全然…動きませんよね?」

 

飛鳥「言われてみれば…確かに。あれだけ上等な狙撃銃を構えておきながら、未だに発砲していないな…」

 

キリト「まさか………」

 

キリト(ヤツにだけ格上のAIを積ませ、ここ一帯にいるLBXのホストコンピュータ的な役割を、させているのだとしたら…?)

 

智絵里「私っ、ちょっと試してみますっ」

 

>>>言うやいなや、智絵里のイプシロンは駆け出した。

 

飛鳥「待て智絵里、ここは慎重にーーー」

 

キリト「ーー迂闊に突っ込むな緒方智絵里、気を抜いたらブレイクオーバーされるぞ!」

 

>>>智絵里は2人の制止も聞かずに、既に倒したデクーカスタムRの盾・スクエアガードを持ち上げ…イプシロンの全身を回転させ、盾をブーメランのようして、最奥で待ち構えるジェネラルへと投げ飛ばした。

 

>>>するとインビット1体だけが飛び出て、盾をはたき落とそうと腕を振り下ろす。

 

>>>その瞬間を見逃さず、飛鳥はインビットを狙撃してブレイクオーバー…爆破に成功した。

 

飛鳥「智絵里お得意の投擲がここでも炸裂したね…弾が何とか命中したから良かったもののーーー」

 

キリト「インビットがジェネラルを庇った…?いや、違うーーー」

 

キリト「ーーー<ジェネラルがインビットを盾にして自身を守った>…のか!?」

 

飛鳥「ーーーっ!?」

 

智絵里「えっと…つまり、あの紫色のが1番えらいって事ですか…?」

 

キリト「ご名答、まさにその<言葉通り>だよ緒方智絵里。ここに居るLBXのなかでヤツが一番…<賢い>んだ」

 

智絵里「どういうこと、ですか…わっ!?」

 

>>>イプシロンに向かってインビットの射撃が飛んで来る。

 

>>>直撃するかと思われたが、イプシロンは先ほど盾を持っていたデクーカスタムR本体を丸ごと蹴り飛ばして、インビットの銃撃を防ぎきった。

 

飛鳥「これはまた…智絵里、なんて型破りな……」

 

智絵里「えへへ、向こうの真似っこをしてみましたっ」

 

>>>何とか銃弾をやり過ごした智絵里のイプシロンが、飛鳥やキリトの控える後方へと下がって来る。

 

キリト「おそらく、あのジェネラルがここ一帯に配備されているLBXの司令塔だ。文字通り、将軍サマって訳だな」

 

飛鳥「ヤツが全て指示を出してるから、他のやつらが統率を取れているのか…」

 

キリト「ヤツが動かないのは、他のLBXへの命令で手一杯だからさ。さっきの緒方智絵里のシールドブーメラン攻撃で確信した。手元の銃で盾を弾かず、わざわざLBX1体に弾き落とさせたのは、CPUが命令にほとんどの容量を割いてるから攻撃まで手が回らないんだ」

 

飛鳥「なるほどね…何とか、あのジェネラルを堕とせないものか………」

 

>>>デクーカスタムR、そしてインビット。前に控えているLBXは…まだ何十と居る。

 

>>>その一番奥で命令を行なうジェネラルだけを狙うのは…相当に難しい。

 

>>>加えてジェネラルは他のLBXを犠牲にしてでも自分を守ろうとする。しかし…

 

キリト「まだスタッフエリアにすら到達しちゃいないんだ…! こんな所で足止め食らって堪るかよっ……」

 

>>>苛立つキリトの言葉と共に、見慣れぬ赤い機体がイプシロン達3機の前に飛び出した。

 

智絵里「な、なに…? 増援ですかっ!?」

 

キリト「フフ…、増援には違いないねえ」

 

飛鳥「ジョーカーのヘッドパーツに、全身赤を基調としたリペイント…まさかキリト、キミのーーー!」

 

キリト「あぁ…ジョーカーKC(キリトカスタム)さ。まだ使う気は無かったんだけど、向こうが初手から気合い入れて来るモンだから…ねえ」

 

智絵里「2機同時に操作、できるんですかっ…? しかもこのコントロールポッドで…」

 

キリト「僕を誰だと思ってる?タイニーオービットの、テストプレイヤー……無論ポッドの扱いも慣れてるし、LBXの複数操作なら、仙道ダイキ・オタクロス…それから君達のオトモダチ、白坂小梅。幾らでも居るじゃないか?」

 

>>>デクーOZとジョーカーKCが、前に並び立つ。

 

キリト「時間の猶予があまり無い…!僕が2機を使って敵を撹乱する、だから君達2人は隙を見て何としてもジェネラルを落としてくれよ!」

 

>>>言うと、キリトのLBX2機はすぐさま敵陣へと強襲を掛けようと動き出す。

 

飛鳥「待つんだキリト、時間が無いならボクにひとつ考えがある」

 

キリト「何だい、言ってみな?」

 

飛鳥「確かに敵の統制は厄介だ。だけど…さっきの智絵里の<防御方法>を見て気づいた。敵AIは、<LBXの投擲という戦法を想定できない>…!」

 

キリト「…うん?まあそうだろうさ。 で、何が言いたいっていうのかな?」

 

飛鳥「ボク達は今、戦力としては4機だ。そこで…2機のLBXを用いて、残りの2機を投擲ーーーそして一気にジェネラルの懐へと滑り込ませる…!」

 

キリト「良いねぇ、それ…気に入ったよ。緒方智絵里、二宮飛鳥の鎌に乗りな」

 

>>>キリトもジョーカーKCの武器の上にデクーOZを飛び乗らせた。

 

智絵里「なっ、投げ飛ばされるのは初めてなんですけど…っ」

 

キリト「僕だってやった事ないさ。けどこんな所でいつまでも足止め食らっとく訳にはいかないんでねぇ。腹括りな」

 

飛鳥「掛け声はシンプルに行こう。…キリト、頼むよ」

 

>>>戸惑いながらもイプシロンがズィエルの鎌の上に登った。

 

キリト「よし、絶対外すなよ緒方智絵里。お前は左、俺は右から挟撃だ。それじゃ……」

 

>>>そうして一呼吸置いたあとーーー

 

キリト「いち、に……さん!」

 

>>>ズィエルとジョーカーKCが、それぞれの武器に乗ったイプシロンとデクーOZを投げ飛ばす。

 

>>>凄まじい勢いでジェネラルへと跳躍してゆく、2機のLBX。

 

>>>その最中、突如イプシロンが軌道を変えた。

 

キリト「ーーーあっオイ、緒方智絵里!」

 

キリト(ちっ…どれだけ腕が立っても、やっぱりコントロールポッドを扱い慣れてない初心者には変わりないか…!)

 

>>>デクーOZはそのまま一直線に、ジェネラルへと向かってゆく。

 

キリト(こうなったら僕が確実に仕留めるしか他に手は無いね…確実に決める!)

 

>>>ジェネラルのすぐ傍まで急接近し、愛用のトマホークを構えたデクーOZ。だったがーーー

 

キリト「ーーーなっ!?」

 

>>>急に、デクーOZとジェネラルの間に、インビットが1体割り込んで来たのだ。

 

キリト(しまった…!武器を構えるのが早すぎて、予想以上に早く危険を察知されたか…!)

 

>>>ーーーその時だ。

 

>>>急に軌道を逸れて左端の方へと向かって行ったイプシロンは、壁を強く蹴ってジェネラルの背後へと降り立った。

 

智絵里「てぇーいっ…!!」

 

>>>両手に構えたブリザードエッジが、ジェネラルの胴体に深々と突き刺さる。

 

キリト「ジェネラルが爆発するぞ、距離を取れ…!」

 

>>>激しい爆音と共に、ジェネラルは砕け散った。

 

>>>途端、他のLBXの挙動が完全に止まり、糸の切れた人形のように全機がその場で倒れ込んだ。

 

飛鳥「すごい……、凄い動きだ……」

 

キリト「…ふー、お見事だよ緒方智絵里。しかしどうしてまた、切り込む方向を急遽変えたんだい?」

 

智絵里「どれだけ天然な人でも、真正面から敵が2人も近づいてきたらさすがに…怖くなって何かしら身を守ろうとするような気がして……」

 

キリト「それだけ、かい…?」

 

智絵里「…えっ? は、はい……」

 

キリト(武器を構える瞬間を捉えられないように死角へ回り込んだ訳ではなく、<ただ何となく>そうしたのか…?彼女は)

 

キリト「面白くなって来たねえ…さぁて、先へ進むとしますか。この真上さ、2人ともついて来い!」

 

>>>3機のLBXは水路の上に繋がるスタッフルームへと向かう。

 

 

―――同時刻。

サイバーランス社スタッフエリア―――

 

 

仙道「だからァ言ってるだろ?ここのスタッフのガキ共の相手を任されたって」

 

スタッフA「それにしては数が多すぎないか?」

 

スタッフB「もしかしてお前、まさか侵入者ーーー」

 

???「おい君達、彼らに対して何か文句でもあるのか?」

 

スタッフA「あ、あなたは……!」

 

???「彼らは僕のゲストさ。手を出す事は即ち、この僕に楯突くのと同義だと思いたまえ」

 

スタッフB「は、はぁ…すみません」

 

???「彼らの案内は僕がするから、君達はセレモニーの準備を着実に進めたまえ」

 

スタッフA、B「はい」

 

>>>スタッフ達はその場を後にした。

 

>>>そしてその奥から、一つの人影が現れた。

 

???「ようこそネズミさん。いや…侵入者さんと呼んだ方がいいのかな?」

 

比奈「あいつ…………!」

 

仙道「なーーーお前は…!?」

 

小梅「あの、人…知り合い、なの?」

 

仙道「ーー神谷コウスケ!何故ここに!?」

 

コウスケ「僕は今回のセレモニーの正式なguestさ。エキシビジョンマッチでバトルする事になっているんだよ」

 

仙道「…なぜ俺達をかばった」

 

コウスケ「それは、君達の目的と僕の目的が同じだから…かな?」

 

仙道「俺達と貴様の目的が同じ、だと!?」

 

コウスケ「神谷重工はクリスターイングラムに買収されて、僕は今や神谷ブランドLBXの責任者なのだよ」

 

唯「クリスターイングラムって、メディエイターの居る会社じゃ…あっコレ言っちゃダメなやつだっけ!」

 

コウスケ「問題ないよ。無論僕もそれを知っていて、色々と手を回して公式の手順でセレモニー会場及び関係者エリアに出入り出来るようにしたのだからね」

 

仙道「どういう…こと、だ……? ダメだ、正直さっぱり分からなくなって来やがった」

 

コウスケ「最近、僕の周りを薄汚い連中が嗅ぎ回っていたもんでね。独自に調査したところ…変な組織を作り上げて、世界のルールに逆らおうとしているみたいだ」

 

仙道「その組織ってのが、今俺達が追いかけてるメディエイターだ…って話だな?」

 

コウスケ「お馬鹿なネズミにしては予想以上に理解が早くてこちらも楽だ。キミ達のboss、ミスター宇崎に繋ぎたまえ。そちらの方が更に話が早く進むだろうからね」

 

>>>ダイキは一瞬躊躇ったが、CCMで宇崎拓也に通話を繋いだ。

 

拓也「どうした仙道、何か問題が起きたか…!?」

 

仙道「問題というよりは、イレギュラー…かねェ?」

 

>>>ダイキがCCMをコウスケに向ける。

 

拓也「ーー神谷コウスケ!なぜお前がここに!?」

 

コウスケ「そう騒ぐんじゃないよ侵入者さん。僕には僕の考えがあってここに居る、無論君達とは違い正式に手順を踏まえてここに出入りしてるんだよ」

 

仙道「宇崎拓也。コイツの話を信じるならば…ヤツも、メディエイターを追い掛けているらしい」

 

拓也「ーーメディエイターを知っているのか!?」

>>>画面の向こうで拓也が椅子から立ち上がった。

 

コウスケ「そんなやつらの名前なんて僕には興味が湧かないよ。だが、怪しげな組織を構成して裏で何かやろうとしているのは事実だ」

 

拓也「信用して、良いのだろうか……」

 

仙道「さっきサイバーランス社のスタッフに絡まれた時、俺達はコイツに助けられた。それだけは事実だぜ」

 

>>>拓也は険しい顔で少し悩んだ後、顔を上げてコウスケに向けて言った。

 

拓也「頼む、知っている限りの情報を教えてくれ。シーカーとして正式に君へ協力要請をしたい」

 

コウスケ「構わないとも。だが詳細や明確な事はこの僕もまだ知らない…ただ、今回のこのセレモニーでのスタッフエリアで、怪しい場所の目星はある程度付けている」

 

拓也「ヤツらが居るかも知れない場所が、分かるのか…!」

 

コウスケ「案内してあげるよ、ついておいでネズミさん達。僕が居れば他の者に怪しまれる心配も無いだろう」

 

>>>コウスケは言いながら拓也のCCMアドレスを聞き、そこへ詳しいマップを送る。

 

コウスケ「セレモニー会場に隣接するこの施設は地下がある。だが最深部の地下2Fに関しては何の説明も無く、僕が訊ねてみたところ、完全に空き部屋で使用しないとの事だった。しかし…今から40分ほど前かな?よく分からない機材を何者かがエレベーターで運んで行ったのさ、空き部屋しか無い筈の地下2Fへと」

 

拓也「露骨に怪しいな…よし、別働隊の3人にも伝えるとしよう。地下水路からB2Fへの最短ルートを割り出し送信する」

 

コウスケ「何だ、別行動している人達も居るのかい?」

 

拓也「ああ。緒方智絵里、二宮飛鳥という2人の少女、そしてお前も知る風摩キリトの計3名だ。あちらは遠隔操作でLBXにて、こちらへ来ている」

 

コウスケ「何だって、風摩キリトだと! それを早く言いなよ、まったく…気が変わったよ」

 

>>>コウスケは言うとダイキへと向き直った。

 

コウスケ「仙道ダイキ君。君達は今後スタッフに見つかったら、エキシビジョンマッチのシークレットゲストとして特別に神谷コウスケに招待された…と言いたまえ」

 

仙道「何っ、お前は地下へ行かないのか?」

 

コウスケ「気が変わったのさ。風摩キリト、来ているなら是非ともまた会っておきたい。ミスター宇崎、早く風摩キリト達の位置情報を教えてくれ!」

 

>>>コウスケの言葉に対し、拓也がすかさずPCでキリト達3機のLBXの位置情報をチェックする…が。

 

拓也「予定よりもかなり進行が遅れている。まだ水路を出たばかりなのか……何かトラブルがあったのか?」

 

 

ーーー水路の真上・スタッフエリアーーー

 

キリト「時間を大幅に食ったが、漸く侵入成功だ。さて…」

 

智絵里「風摩さん飛鳥さん、見てくださいっ…!」

 

飛鳥「何かがこちらに猛スピードで向かってくる…!?」

 

キリト「あれはーーーまたLBXか…!!」

 

 

>>>続

 

<< オタクロスのオタ知識 >>

 

オタクロス「オタクロスのオタ知識、デヨ!」

 

オタクロス「今回は、こちらデヨ~!」

 

< ジェネラル >

 

オタクロス「八神英二氏の使っとったLBX、その名も<ジェネラル>デヨ!」

 

オタクロス「今回は新たな敵、メディエイターのホストコンピュータ的役割として機体データを利用されてしまったようじゃのう!」

 

オタクロス「智絵里たんのとっさの機転で何とか撃破に成功したデヨ!」

 

オタクロス「今後もメディエイターの使ってくるLBXには、要チェック!デヨ」

 

オタクロス「では、次回もお楽しみにデヨー!」



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ダンボール戦機 C(シンデレラ) 14

ダンボール戦機 C(シンデレラ) 14

 

 

 

<< 第14章 試作型LBX・AX-02との邂逅 >>

 

 

 

 

ーーーサイバーランス社セレモニー・スタッフエリアーーー

 

 

キリト「あれはーーーまたLBXか…!!」

 

風摩キリト達3名の機体目掛けて、一機のLBXが急速に接近して来ていた。

 

飛鳥「何だい、あの小ざっぱりした姿は…? まるで仮装甲のカバーパッドしか付いてないようだ」

 

智絵里「あっそれ、LBXマガジンに載ってましたっ。でも、羽なんて生えてなかったような気が…」

 

キリト「AX-02……カイザ。イノベーターが実験段階で作った試作機で、AX-03・フェアリー完成前の姿ともいえる機体だ」

 

飛鳥「カイザ、皇帝…それにフェアリー…妖精か。 フェアリーって普通に一般販売されている筈だが…試作機っていうのは一体?」

 

キリト「お喋りは後にしよう。来るぞ…!」

 

>>>怪しく光る紫の翼を身に纏い、同じく紫に発光する剣を手に、3人の所へ突っ込んで来るLBX、カイザ。

 

>>>その剣がイプシロン達に向けて勢いよく振り下ろされようとしていた。

 

飛鳥「ーーっ! 皆、散開だ…!」

 

キリト「くそっ、しょうがない…!」

 

智絵里「わわっ、間に合いません…!」

 

>>>カイザの剣はもうイプシロンの目の前だった。コントロールポッドに映し出される映像が、紫の光で埋め尽くされようとしている。

 

智絵里「お願いっ、動いてイプシロン…!」

 

>>>智絵里の操作に応えるように、イプシロンは屈んだ姿勢で回し蹴りを放ち、その足をカイザの胸部へとぶつけて吹っ飛ばした。

 

キリト「………!!」

 

キリト(今のは……? 嘘だろ……)

 

キリト(こいつは…緒方智絵里は…演習プログラムをやったのをカウントに入れても、たった二度しかコントロールポッドに乗った事が無いんだぞ…?)

 

キリト(CCMならまだしも…こんなに早く自分の手足のようにLBXの操作が出来るなんて…。本当に、奴は何者なんだ…?)

 

智絵里「てえぇぇーーいっ」

 

>>>間髪入れずに今度はイプシロンの方が反撃の拳を打ち込もうとするが、するりとカイザに避けられてしまった。

 

飛鳥「AIで動いているとはいえ、今の機体反応速度…! こいつ、手強いな…」

 

キリト「反応速度………」

 

>>>飛鳥が警戒を強めたのと同時に、キリトは疑問に感じた。 今の回避の仕方、まるであらかじめ軌道が見えていたかのような……

 

キリト「待て二宮飛鳥、狙撃する手を止めろ!」

 

飛鳥「…えっ?」

 

>>>遠距離からカイザを撃ち抜こうとした飛鳥のズィエルの直近に、キリトのOZトマホークが突き刺さる。

 

>>>さすがに面食らった飛鳥が手を止めたのを確認して、トマホークを回収しにデクーOZがやって来る。

 

>>>そこへイプシロンも加わり、3人は防御に徹した状態で会話を再開した。

 

キリト「イノベーターの情報を全部吸い出した時の事を思い出した。あのカイザは当初も、学習機能を備えた人工知能を搭載してあったんだ」

 

智絵里「人工知能…それってAIのこと、ですよね? だったらさっきと同じじゃ……」

 

飛鳥「いや、先程のとはタイプが違う。こちらが悪戯に手を出せば、どんどん攻撃パターンを分析されて太刀打ちできなくなってしまう…そういう事じゃないのかな?キリト」

 

キリト「違いないね。だが…守ってばかりじゃ防御パターンも分析されてたちまち壊滅さ」

 

智絵里「ええっ…?勝ち目無いんじゃないですか…?」

 

飛鳥「いや、手はある筈さ。幾ら何でも、この十数秒でもう智絵里の攻撃をかわせる段階まで来れるのは、幾ら何でも…」

 

キリト「イノベーターなんて何年も過去の話さ。アレにはもっと優秀な人工知能が搭載されているだろうし、イノベーターやディテクターでの戦闘データも先に積ませている可能性だって低くないよ…」

 

智絵里「えぇと、つまり…やっぱり、勝ち目なし…ですか?」

 

キリト「とはいえ所詮は機械。 3人で同時に波状攻撃をし続けて、向こうのブレインをパンクさせてやる位しか、今は思いつかないが…それに賭けるか?」

 

キリト(ジョーカーKCと合わせて4機同時に攻撃…その中の1人はこの緒方智絵里、予測不能の塊みたいな曲者だ。いけると思うが…)

 

飛鳥「ボクは狙撃が良い?それとも皆と同じく近接で行こうか?」

 

智絵里「あ、あの、私のイプシロンもピストルありますっ」

 

キリト「いや、遠距離射撃のデータも取られたくない、3人まとまって近接で攻めようじゃないか」

 

キリト(今こいつピストルって…。<片手銃>って言わない辺り、LBX慣れしていないのは事実なんだろうが…それが疑わしいほどに実力を上げている。つくづく面白いね…)

 

飛鳥「よし、回り込んだ!」

 

智絵里「イプシロンも行けますっ」

 

キリト「デクーOZとジョーカーKCもスタンバイ出来ている。じゃあ4機別方向から同時攻撃を仕掛ける……行くぞ!」

 

飛鳥「当たれ……っ!」

 

キリト「はあぁっ!」

 

智絵里「ていっ」

 

>>>四方向から同時に、カイザへと迫る4機。

 

>>>しかしそれを感知したカイザの…羽が突如、引っ込んだ。

 

キリト「なに……!?」

 

>>>カイザの背中からは勢いよく何かが噴射されーーー真上へと飛び攻撃を難なく回避したカイザは、空中で佇んでいた。

 

飛鳥「ジェット機構持ち…!? キリト、あんなのがあるなら事前に言ってくれないか?」

 

キリト「ーーいや、悪いが僕も初めて見た…あのLBX、姿はカイザだが外も中も相当改造されているみたいだ…!未知のLBXと考えて戦った方が良さそうだ」

 

ガンッ

 

智絵里「…あ。ダガー投げたら普通に当たりましたよっ。射撃なら簡単に届くんじゃないですか?」

 

キリト(どうなってんだよコイツも…)

 

飛鳥「全機、飛行機能は有していないし、ここは射撃に映った方が良いんじゃないかな?」

 

キリト「マズったな…。今日は無理矢理ゴリ押ししてでも進行する気で来たから、デクーOZもジョーカーKCも近接能力特化のカスタムにしてあるんだ。デクーOZのトマホーク投擲には慣れているから、それに頼るしかないね…」

 

智絵里「えぇっ、私のキングスハートも、そんなですよ…?命中を上げる練習はした事もありませんし…」

 

飛鳥「まさに前途多難だね。漸くスタートライン…スタッフエリアの侵入にだけは成功したって所なのに」

 

>>>と言いつつ銃やトマホークを一先ず構える皆の様子を見たカイザが……急降下して、デクーOZに強襲を掛けた。

 

キリト「ーー危ないっ! ちくしょう、うかうかしてたら首を掻っ切られる…おちおち作戦も立てられやしないな」

 

>>>デクーOZは構えたシールドで見事にカイザの剣を防ぎきったが、カイザはすぐに距離を取り空中へと再び退避してゆく。

 

智絵里「すごいっ…あれなら、剣1本でも遠距離の敵も倒しやすそうですねっ」

 

キリト「オイオイ冗談は止してくれ。向こうから見た敵ってのは、僕らのことなんだからさ」

 

智絵里「いえ、あのっ……私たちにも、近い事は出来ないでしょうか?」

 

キリト「…うん?近い事? デクーOZのトマホークは<投擲>だ、アレとはまた違う」

 

飛鳥「そして僕のライフルは<狙撃>…キリト同様その場からは動かない。 ヤツは、カイザは本体ごとこちらに突っ込んで来てる。何しろ向こうの背にはジェットがあるからね」

 

智絵里「い、いえ…そうではなくて」

 

飛鳥・キリト「…??」

 

智絵里「例えば私のイプシロンが空中からダガーで斬りかかる……っていうのは最初考えたんですけど、それだとさっきみたいに簡単に避けられそうな気がするんです」

 

キリト「避けられたら意味が無いじゃないか。第一、どうやって空中にーー」

 

智絵里「なので、あそこの端…LBXなら、上れますよね?」

 

飛鳥「ああ、壁際のあの高台か…確かに。 だけどキリトが言うように、避けられたら意味が無いよ?智絵里」

 

智絵里「そうじゃなくてっ……えーと、順を追って伝えてみますね」

 

キリト「ーーカイザがまた突っ込んでくるぞ…!一旦、全機回避!」

 

>>>キリトの指示でカイザの斬撃をかわしたイプシロン達。

 

キリト「…で?続きを聞かせてもらおうか、緒方智絵里」

 

智絵里「あ、はい。風摩さんのLBXは今接近戦に強いカスタマイズにさっきおっしゃってましたけど…<トマホークによる投擲>は問題なく使えるんです、よね?」

 

キリト「え?ああ…そうだけど?」

 

智絵里「私が壁際の高台からダガーで斬りかかりますけど、それはたぶん当たりません。なのでまずは風摩さんのトマホークでもう一歩、<足場>を作ってもらいたいんです」

 

飛鳥「最初の上からの攻撃はフェイクで、その後にキリトのトマホークを足場にして斬り返すって事かい…?そんな高度なテクニック…」

 

>>>飛鳥が険しい顔をしたが、キリトはもっと難しい表情を浮かべていた。

 

キリト「僕も嫌な予感がしてるんだけどそこじゃない。君はさっき、<まずは>って言ったね?」

 

智絵里「えっ…は、はいっ。もっと良いかもって思ったのは、キリトさんのジョーカー?に私をカイザの近くまで飛ばしてもらってから私が攻撃……外れたらトマホークに乗って2回目の攻撃。だけど、人工知能の頭が凄く良くなってるかもって話してたので…2回目の攻撃が外れたら、飛鳥さんにーー」

 

飛鳥「成る程。高台でスタンバイしておいて狙撃、と」

 

智絵里「……え?いえ。 私が落下するすぐ下にライフルの弾を撃ち込んでもらいたいんですっ」

 

飛鳥「な…なんだって?正気か?」

 

キリト「僕にもちょっと予測出来なかったね、さすがに…」

 

智絵里「私が向こう側…えっと、カイザ? カイザだったら、複数の敵が居る場合、おとり…とかを警戒すると思うんです」

 

キリト「言いたい事は分かる。確かに想定外の所から狙撃されそうになっても、簡単にジェットで回避されそうな気はするさ。だから、君の言いたい事も分かるんだが…」

 

飛鳥「ボク達が目測を誤って…外すだけならいい。何かの間違いでキミのLBXが粉々になる可能性もあるんだよ。それを分かったうえで言ってるのかい…?」

 

>>>飛鳥とキリトの脳裏に、トマホークが突き刺さった状態でライフルに射抜かれるイプシロンの姿が浮かぶ……。

 

>>>しかし智絵里は動揺する事なく答えた。

 

智絵里「AIって…人工知能って、凄く賢いんですよね?だったらそれくらい想像もつかない事しないといけない気がして…。それにーー」

 

>>>智絵里が画面越しに飛鳥を見据えて、続ける。

 

智絵里「わたし…飛鳥ちゃんのことも風摩さんのことも、信じてますからっ」

 

飛鳥「成る程ね。これは……」

 

キリト「そこまで言われちゃやるしかない、か…。 二宮飛鳥、指定の位置で待機、ライフルは構えておいていい。直接当てるわけじゃないからね」

 

飛鳥「了解!」

 

キリト「緒方智絵里はジョーカーKCの武器に乗るんだ。必ずカイザよりも高い位置に吹っ飛ばしてあげるよ」

 

智絵里「ふたりとも…ありがとうございますっ!」

 

飛鳥「お礼は成功してからにしよう。イプシロンが木っ端微塵になっても恨みっこなしだからね」

 

智絵里「そんなことにはなりません。わたしは信じてますからっ」

 

キリト「しょうがないねえ…さて、やってみるかなぁ」

 

飛鳥「キリト、キミは2機同時操作になる訳だけど、問題ないか?」

 

キリト「そちらこそ。間違ってもイプシロンの首を吹き飛ばすんじゃないよ」

 

>>>言うと2人して不敵に笑った。

 

キリト「まずジョーカーKCが武器に乗せたイプシロンを飛ばし、イプシロンは上空から強襲。 それを回避される前提でデクーOZはトマホークをイプシロンの第一着地予測地点へ投擲、イプシロンはこれを足場に再度上昇してカイザへ攻撃。 そしてこれも回避される前提でズィエルはイプシロンの第二着地予測地点を狙撃、足場を作成。 イプシロンは3度目の攻撃、これをカイザへの決定打とする。作戦…開始!行くぞ!」

 

飛鳥「こっちは既に準備完了、いつでもOKだよ…!」

 

智絵里「お願いしますっ」

 

キリト「言われなくとも!…行けぇーっ!」

 

>>>ジョーカーKCは愛用の武器・クレセントムーンを構え、回転をつけてイプシロンを高々と上げる。

 

>>>カイザの頭上から斬りかかるイプシロン。しかしやはり、この程度の奇襲は想定内なのか容易く回避されてしまう。

 

>>>この時点でデクーOZのトマホークは既に持ち主の手から離れ、投擲済みだった。

 

>>>トマホークの位置は誤差の範囲で無事にイプシロンの足場となり、イプシロンは再び飛び上がってカイザに向けてブリザードエッジを振るう。

 

>>>しかしやはりこれも命中する事は無かった。ブリザードエッジは再び空を切る。

 

>>>そしてイプシロンが落下する直前のタイミングでーーーイプシロンの足元には、ズィエルの撃ち込んだライフルの弾が。

 

>>>それを力強く蹴り上げ、もう一度カイザへ接近して攻撃を仕掛けるイプシロン。

 

>>>ーーーだが。

 

飛鳥「ブリザードエッジが…掠っただけ…!?」

 

キリト「どれだけの人工知能積ませてやがんだよメディエイターの連中は! 一旦立て直ーー」

 

智絵里「まだですっ…!」

 

>>>智絵里の目に映るのは……自分が踏んで角度を変えたライフルの弾が当たって上昇してきた、デクーOZのトマホーク!

 

智絵里「わたしは、諦めないっ…!」

 

>>>INFO:アドバンスドVモード

 

智絵里「…必殺ファンクションっ!!」

 

>>>INFO:アタックファンクション・気功弾

 

智絵里「当たってぇーっ!」

 

>>>智絵里は、自分ーーイプシロンより少し遅れて高度を上げて来たOZトマホークに、両腕のエネルギーを思いきりぶつけた。

 

キリト(何っ!トマホークをキャッチして斬るんじゃないのか…!?)

 

>>>カイザへの直接的な攻撃では無かったように見えたものの…Vモードにより急激に跳ね上がった火力は凄まじく、カイザの背後にあったトマホークにぶつけたエネルギーの余波がーーーその背のジェットを、ショートさせる事に成功したようだった。

 

>>>程なくゆっくり墜落してゆくカイザへ、急降下する智絵里のイプシロンが氷皇ブリザードエッジで縦に2回、斬り裂いた。

 

>>>爆発して粉々になるカイザ。念のため周囲を警戒するも人が駆け付ける足音もなく、3人はほっと一息ついたのだった。

 

智絵里「皆さんの思い、繋げてくれた足場を……わたしが無駄にしちゃわなくて済んで、よかったっ……」

 

飛鳥「さすがに3度目の攻撃が決まらなかった時にはボクもひやっとしたけど…さすがだよ智絵里」

 

キリト「僕はてっきりOZトマホークを空中で掴んで、それで斬りつけるものかと思ったんだけど…」

 

智絵里「確かにCCMならそれも出来たかもしれません。でもまだコントロールポッドでそこまでの動きを自在に出来るわけじゃないので…安全牌をと」

 

飛鳥(安全牌って…この綱渡りの連続も所詮、智絵里にとっては安全策なのか!?)

 

キリト(…既に何度も化け物染みた動きをしておいて、よく言うよ)

 

飛鳥「まあ、何はともあれ全員無事だ。これで漸く、更に先へ進めるね」

 

>>>歩き出そうとするズィエルをデクーOZが引き止める。

 

キリト「いや、待つんだ、エリア外の水路でジェネラル…こんなどうでもいい通路で魔改造カイザを出して来る位だ。正直、もう完全に黒だといってもいいだろうね。サイバーランスの警備用LBXというには、幾ら何でも無理があり過ぎる」

 

>>>キリトの言葉に、頷く飛鳥。

 

キリト「とりあえずここまでに遭遇した敵LBXの情報を、信頼なる社長様に送りつけておくとするよ」

 

>>>手早くコンソールからCCMを取り外して拓也へ簡素なメールを送ると、再びコンソールへセットするキリト。

 

キリト「これからはより慎重に進んで…うん?何だ、宇崎拓也がもう返信して来たのか?」

 

>>>キリトのCCMの通知音が鳴る。確認しようと彼がCCMへ手を伸ばそうとした時、物陰から人が現れた。

 

飛鳥「マズイ…! 誰かに見られてたのか!?」

 

智絵里「に、逃げた方がいいですかっ?」

 

キリト「安心してくれ、彼は味方さ」

 

>>>人影はイプシロン達に拍手を送る。その正体はーーー神谷コウスケ…と、荒木比奈だった。

 

 

MAIL:FROM神谷コウスケ

本文:グレイト。素晴らしいLBX捌きだった。どれがキミの動かしているLBXなんだい風摩キリト?

 

コウスケ「久し振りだね風摩キリト。こんな紛い物と一緒に出迎える羽目になって不快なのだが…まあ些細な事だ、再会を喜ぶとするよ」

 

比奈「うっわー想像以上に気に食わないっスねーこのナルシスト」

 

飛鳥「あぁ、そうか…比奈さんの機体はーーなるほど、それで彼は少々不機嫌なのか」

 

智絵里「この人、誰ですか?」

 

飛鳥「神谷重工の御曹司にして、天才的なセンスを持つLBXプレイヤー・神谷コウスケ。LBX工学を学ぶため留学していた事もあったと聞く」

 

智絵里「そんなすごい人なんですかっ…!」

 

飛鳥「暇な時にでもLBXマガジンのバックナンバーを漁ってごらんよ。きっとこの顔を拝める事だろう」

 

智絵里「雑誌に載る……すごいです」

 

飛鳥「いや君もボクも雑誌には何度も載ってるよ?アイドルとしてだけどね」

 

智絵里「あ、そういえばそうでした……」

 

飛鳥(神谷重工の人間が、なぜ他社であるサイバーランスに?いや、クリスターイングラムに吸収されたんだったか…なら尚の事、彼は怪しいんじゃ……)

 

キリト「彼も目的は同じらしい。クリスターイングラム社に怪しい者が居るのは間違いないそうだ」

 

智絵里「それが…メディエイター?」

 

キリト「確たる証拠は、まだ見つけていないってさ。今日は正規の手順を踏まえて、ゲストとしてここに居るらしい」

 

>>>キリトがそこまで言った時、智絵里達3名のコントロールポッドの画面上部にコウスケが表示された。

 

コウスケ「このネズミさんに君達のCCMアドレスを教えてもらったよ。会話が出来なければ連携も取れないだろう?」

 

比奈「はー…こいつとの会話すんごく疲れるんスけどー…」

 

コウスケ「僕と言葉を交えられる幸運を神に感謝するんだよ」

 

比奈「ムカーっ!」

 

飛鳥(は、はは…あっちはあっちで……)

 

智絵里(大変そうです、ね……)

 

コウスケ「イノベーターのLBXをサイバーランスが使って来る訳がない。この僕が案内してあげるから、用心してついて来るんだよ」

 

>>>コウスケの後をイプシロン達がついて行く。しかし、通路の角を曲がった時ーー

 

ドゴンッ

 

キリト「危ない!」

 

コウスケ「爆撃…!?今のはグレネードか?」

 

>>>コウスケがとっさに避けたから良かったものの、LBXがグレネードを投げて来たようだ。

 

飛鳥「LBXだ! まだ待ち構えていたのか…」

 

智絵里「あれはLマガで見たことが……オルテガ?でもなんか色が、違う?」

 

キリト「北米チャンプのジョン・ハワードが使ってるオルテガだ。その横はポール・ゴードンが施したペイントと同じタイタン。 第3回アルテミスのデータも保有している思われるな…メディエイター、腹の立つ奴等だね」

 

コウスケ「ゆけルシファー!その輝きを世界に見せろ!」

 

比奈「ルシフェレックス、遅れを取るなっス!」

 

>>>2機のLBXが、イプシロン達を守るように前へ出た。

 

コウスケ「こちらで注意を引き付ける、その間に風摩キリト達は通路を抜けて奥の部屋を全部調べてくれ!」

 

比奈「さっきナルシスト馬鹿から貰った、ここのエリアMAPを送るっス!」

 

キリト「部屋が幾つもある…既にこれだけ攻撃して来るくらいだ、何かは見つかるだろうね」

 

智絵里「で、でも…この通路を、敵を無視してわたし達だけが抜ける事って…ほんとに出来るんですか?」

 

>>>奥から増援が現れる。デクーエース、デクーカスタムR(監視型)、デクー改、デクーカスタムL(軽量型)……

 

コウスケ「クッ…、こんなにもか…!?」

 

比奈「うわぁぁ、数多すぎっスよ!」

 

キリト「意地でも通したくないらしいね?」

 

飛鳥「こうなったら仕方ない、全機で総攻撃を仕掛けよう。 向こうの部隊を壊滅させてから先へ進む!それしかない!」

 

智絵里「は、はいっ…! ……え?」

 

>>>ふと智絵里が気づくと、妙な顔で彼女を見ているコウスケの姿があった。

 

>>>続

 

<< オタクロスのオタ知識 >>

 

オタクロス「オタクロスのオタ知識、デヨ!」

 

オタクロス「今回は、こちらデヨ~!」

 

< ルシファー >

 

オタクロス「神谷コウスケの使っとるLBX、その名も<ルシファー>デヨ!」

 

オタクロス「凄いのは見た目だけじゃないぞい、必殺ファンクションにはセラフィックウィングとデビルソード」

 

オタクロス「更には特殊モードとしてセラフィックモードを搭載しておるんじゃ」

 

オタクロス「敵に回すと手強いじゃろうが、味方である今なら心強いかもしれんのぅ」

 

 

 

オタクロス「あぁ、余談じゃが…前回の更新が相当に遅れてホントにすまんかったのぅ。訳あってちょっと温泉旅館をやっとったりして色々と手が離せなかったんじゃ、まあそれはさておきーー」

 

 

オタクロス「次回も、お楽しみに!デヨ〜」



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ダンボール戦機 C(シンデレラ) 15

ダンボール戦機 C(シンデレラ) 15

 

 

 

 

<< 第15章 北米チャンプLBXの軍勢、そして >>

 

 

智絵里(なんかすごく見られてる…というか睨んでる?怖いんだけど…)

 

コウスケ(この少女が、この白い機体を? 先ほどの動きといい、とても初心者には思えないものだが…風摩キリトが嘘を言う理由も無いだろう)

 

コウスケ(顔、名前…共に見覚えがない。先日、仙道ダイキの開催したものが初出場の大会だという事も間違いなさそうだ。ミスター宇崎がスカウトするのも少し納得がいく気はするのだが…)

 

コウスケ(果たして……何者だ?)

 

>>>コウスケが考えを巡らせる間にも増援は続いている。

 

比奈「何ぼんやりしてんスかナルシ!敵が来るっスよ!」

 

>>>デクーカスタムL(軽装型)が複数、剣を構えて突っ込んで来る。

 

比奈「…必殺ファンクション!」

 

INFO:アタックファンクション・ストームソード

 

>>>ルシフェレックスの必殺ファンクションが巻き起こす旋風に引き込まれ、デクーカスタムLはたちまちブレイクオーバーしていく。

 

コウスケ「紛い物に負けてはいられないね。ーー必殺ファンクション!」

 

INFO:アタックファンクション・デビルソード

 

>>>今度はコウスケのLBX・ルシファーの剣から強烈なエネルギーが発せられ、次に待ち構えていたデクー、バズーカを構えるデクー改、射撃部隊と突撃部隊に分かれていたデクーカスタムR(監視型)の戦力を一気に削り切った。

 

智絵里「…す、すごい………」

 

飛鳥「なんて凄まじい破壊力の必殺ファンクションだ…」

 

コウスケ「当然の事…なぜなら僕は神に選ばれたから。それが世界のルール」

 

智絵里「これなら行けそうっ…」

 

キリト「油断するなよ、本命のオルテガとタイタンが動き出した!」

 

飛鳥「もうジェットで飛ぼうが変形合体して来ようがボクは驚かないよ」

 

>>>水路のジェネラルとは打って変わって…オルテガもタイタンも、それぞれの武器・ハンマーと武器腕を構えながら一気に距離を詰めるべく接近して来た。

 

>>>その間(かん)にも、デクーエースやデクー改の銃による遠距離攻撃は続いている。

 

飛鳥「このっーー!ダメだ数が多すぎる」

 

>>>ズィエルが随時、狙撃するが…これだけの数の敵陣を無視して突っ切り奥へ進む事は不可能に近い状況になりつつあった。

 

キリト「どうする?緒方智絵里!」

 

智絵里「え、えっ?わたしですか?」

 

キリト「オルテガもタイタンも近接攻撃を仕掛けて来るようだ。今のデクーOZとジョーカーKCは接近戦に強くカスタマイズしてあるから相手取れる」

 

智絵里「え? は、はい…」

 

キリト「多少の被弾は覚悟で、その隙に無理矢理敵の軍勢を抜けて、奥にある部屋を調べに行けないか?君の腕なら可能な気がするんだけど?」

 

智絵里「えっ…! わたし、皆さんを置き去りにするんですかっ?」

 

キリト「忘れているようだから改めていうが、今の僕達の最大の目的はメディエイターの尻尾をつかむ事なんだよ。どれだけここで勝利をおさめようが奴らの手掛かりが掴めないようでは意味が無い」

 

智絵里「なるほどっ……分かりました。ですがわたしにも最初は、あの2体と戦わせてくださいっ」

 

キリト「どちらをお望みかな?」

 

智絵里「あのキャタピラみたいなレッグ、軌道をどう読めばいいのかよくわかんないのでーー」

 

キリト「オーケー、タイタンはこっちで引き受けた。 緒方智絵里、君はオルテガと戦ってくれ」

 

智絵里「お、オルテガ……」

 

>>>ハンマーを手に突っ込んで来るオルテガの顔は、どこか不気味に見えた。

 

智絵里「よ、よぉし…行きますっ!」

 

>>>振り下ろされたオルテガのハンマーを真正面からダガーで受けるイプシロン。

 

>>>衝撃は大きく、ただ攻撃を1発弾いただけでイプシロンは跳ね飛ばされるように後退した。

 

智絵里「すごいパワー…それにスピードも高いですっ。皆さんはーー」

 

>>>増援は止まらないが、コウスケ・比奈・飛鳥が絶え間なく削り続けていた。とてもじゃないが智絵里とキリトに加勢できる余裕など無い。

 

智絵里(わたしが、やるしか無い……っ!)

 

>>>智絵里の眼光が鋭くなると同時に、イプシロンはダガーを構え直す。見据えているのは勿論目の前のオルテガ。

 

キリト「脚部が仇になったなタイタン。ジオラマと違ってコンクリートの床は、踏み潰して押し進む事はできないよ? 緒方智絵里、こちらは早めにケリが付きそうだ。そっちはどうだ?」

 

智絵里「そう、ですね……たぶんカイザほどハチャメチャな相手には思えません、いけますっ」

 

>>>ダガーを構えたイプシロンが走り出す。オルテガもそれを見逃す事なく、イプシロンの攻撃をハンマーで弾こうと振り回す。

 

智絵里「思った通りですっ」

 

>>>吹っ飛ばされたイプシロンがすかさず空中で、片手銃・キングスハートを構え発砲する。

 

>>>銃弾はオルテガの右肩口を重点的に撃ち抜き、オルテガのアームRはたちまちショートを起こした。

 

>>>片手でもハンマーは扱えるものの、AIゆえか軌道が単調になったオルテガの攻撃を鮮やかに避けてイプシロンが一閃……オルテガはブレイクオーバーし、爆発と共に粉々になった。

 

>>>ちょうどそのタイミングでキリトも、デクーOZとジョーカーKCの同時攻撃によりタイタンを撃破。声を掛けていたが、それと別に智絵里の戦闘はきっちりモニターしていた。

 

キリト(結城研介に聞いたが、イプシロンは精密射撃に向いた遠距離タイプのフレームではない…との話。 さっきのあれはヤツ本人の目と、LBXがそれぞれ持つ射撃のブレを自身のセンスで即座に読み取り、撃ち抜いたのか…!?)

 

コウスケ(成る程…風摩キリトが評価する理由が今の戦闘で更に分かった気がするよ。 海外留学中もあそこまでのLBX捌きを見せる人間は限られていた。緒方智絵里…君も神に選ばれた人間か、はたまたただ神に愛されているだけか…少し興味が湧いて来たよ)

 

智絵里(うわっ、神谷さんまた見てるしめっちゃくちゃ悪そうな顔して笑ってるんだけど…怖いなぁ)

 

飛鳥「増援のデクーエース部隊、全機クリア!殲滅完了」

 

比奈「デクー通常タイプ、軽装型、監視型、改、いずれも全機・機能停止を確認したっス。ようやっと先へ進めるっスねぇ」

 

コウスケ「よし……ちっ、残念ながらまだのようだ」

 

>>>一体のLBXが新たに飛び出し、壊滅された残骸を踏みつけた。激しい爆発とともにその機体の姿が露わになる。

 

飛鳥「<皇帝>様のお出ましか…」

 

キリト「ジ・エンペラー……いや、アルテミスの時以降だとしたらエンペラーM2か!」

 

飛鳥「あの死闘はボクも見ていた…今も脳裏に焼き付いているといっても過言じゃない」

 

>>>エンペラー……かつて、<秒殺の皇帝>・海堂ジンの使用していたLBXだ。

 

キリト「ご丁寧にエンペラーランチャー構えているとは…大層手厚い歓迎だ、もう今日はうんざりってぐらいなんだけどねえ」

 

>>>エンペラーはその武器から多連装ミサイルを放ち、イプシロンの目の前に爆発が広がる。

 

キリト「コウスケ、荒木、気をつけろ! 君達は今生身だ、迂闊に突っ込むなよ!」

 

コウスケ「いやーーーアレの狙いは、その<白いLBX>…緒方智絵里だ!」

 

>>>爆発の煙の中から突如現れたエンペラーは、一直線に智絵里のイプシロン目掛けてダッシュして来ていた…!

 

キリト(アルテミスでのエンペラーのAIを流用しているのなら、その目的はアキレスーーー白いLBXの…破壊か!?)

 

キリト「ーーー回避だ!!」

 

>>>智絵里が慌ててコントロールポッドを操作し、エンペラーのハンマーに直撃する事は避けられた。

 

智絵里「掠ったみたい…LP(ライフポイント)がっ」

 

キリト「させるかぁーーっ!」

 

>>>ジョーカーKCが自身の武器でエンペラーのハンマーを絡め取って引き剥がす。そしてエンペラー本体にしがみついて動きを封じた。

 

キリト「二宮飛鳥、狙撃しろっ!」

 

飛鳥「えっ? わ、分かった…!!」

 

>>>僅かな躊躇いのあと、ズィエルの狙撃がジョーカーKC諸共エンペラーを貫き…爆破した。

 

飛鳥「風摩キリト…良かったのか?」

 

キリト「問題ない。僕には、まだデクーOZがある。それに…ジョーカーのカスタム設計図も勿論保管してあるから、またいつでも作れるさ」

 

智絵里「風摩さん…」

 

キリト「今この局面で君という戦力を奪われる訳には行かない、それだけさ。あちらさんには<あの時>みたいにまた自爆なんてされちゃ困るからね」

 

飛鳥「アルテミスファイナルステージ…優勝した山野バンの白いLBX・アキレスに、自爆を仕掛けて爆散させたエンペラーM2ーーーそうかキリト、だから君は…!」

 

智絵里「白いLBX…それって……」

 

キリト「あぁ。君のそのLBX・イプシロンは白い。そして青の差し色も相まってアキレスに似た風貌がある」

 

智絵里「ありがとうございますっ、助けてくださって」

 

キリト「だから問題ないって。君にはジョーカーKCのぶんまで、ここから大活躍してもらう予定なんだから」

 

智絵里「え、えっ!?プレッシャーがすごいんですけどっ…」

 

コウスケ「さて…今度こそ、先へ進もうか。このフロアは怪しい。一部屋ずつ調べて行くとしよう」

 

>>>歩き出したコウスケ達の後ろから、カシャンカシャンという機械音が複数聞こえた。

 

 

コウスケ「まだ居るのかLBX…!まったく、どれだけこの僕を苛立たせるつもりなんだ!」

 

>>>物陰から現れた多数のLBXに警戒する皆だったが、その更に後方から急に飛び出して来たLBXーーーナイトメアの鎌で、途端に何体かのLBXが葬られる。

 

「…心配には及ばないぜ?」

 

>>>現れたのは、ダイキ達だった。別ルートから地下へ降りて来た彼らも、無事合流できたのだ。

 

仙道「ここは俺達に任せな、何せ頭数だけは無駄に多い。コントロールポッドの連中は何としても先に進め!」

 

未央「がんばれちえりん!そしてEちゃん!さあぶっ壊せ、ウォーリアーM.ver!」

 

みく「ーーークノイチも出陣だにゃ!」

 

小梅「ジョーカー…行っておいで」

 

唯「いっけーっ! こいつら敵だし全部ボコボコにしていいんだよねー?」

 

仙道「という訳だから心配無用という訳だ。後は任せろ、行け!」

 

>>>ダイキの呼び掛けにコウスケと比奈は頷き、コントロールポッド組とともに、奥へ向かって駆け出す。

 

コウスケ「まずはこの部屋だ。このカードキーで開く筈なんだがーーー」

 

>>>開いたが、無人だ。LBXも居ない。

 

>>>そうやって順番に部屋を確認していくが、どこも…人もLBXも見当たらない。

 

>>>残すは一部屋…一番奥にある扉の向こうの部屋だけとなった。

 

比奈「警戒するっスよ、みんな!」

 

コウスケ「開けるぞっーー!」

 

>>>コウスケがカードキーをかざし、開いた扉の先はーーー

 

智絵里「ーーだ、誰もいないっ!ここもですか…!?」

 

>>>目を丸くして部屋を見渡す智絵里とは対照的に、キリトとコウスケは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。

 

キリト「してやられた…!」

 

コウスケ「ここを怪しまれる、いや<怪しませる>のもーーー奴らの計算のうちだったとは…!」

 

比奈「まさか…アタシ達、釣られたんスか!?」

 

キリト「水路の時点でおかしいと睨むべきだった…! 必要以上に此処への到着を遅らせ、この場所がブラフでしかない事を中々気づかせないようにしたっていうのか…」

 

コウスケ「こうなっては仕方ない事だが…連中は何処にいる? <野良猫>が何か見つけてないか、念の為に連絡を取ってみよう」

 

>>>コウスケは誰かに電話を掛けたようだ。数コールの後、溌剌とした声が聞こえて来た。

 

「どうした?っていうかお前どこ居るんだ? もしかしてエキシビジョンマッチの前にオレとバトりたくなったかー!」

 

コウスケ「うるさいよ、耳に響く…」

 

>>>コウスケのCCM画面を見たキリトが驚愕の声をあげる。

 

キリト「ーーー古城アスカ!?」

 

智絵里「あすか……」

 

飛鳥「ボクじゃなくて古城アスカ。LBX世界大会アルテミス、第4回の覇者だ」

 

比奈「今はサイバーランス所属のプロLBXプレイヤー…なるほど、だから今日のセレモニーにも呼ばれてるんスね」

 

アスカ「オレの知らねーやつが居るな!そいつとも後でバトるのか?」

 

比奈「えぇぇ!アタシみたいな野良プレイヤーは相手にしなくて大丈夫っスよ〜…」

 

コウスケ「古城アスカ、緊急事態だ。 もし不審な連中が居たらこちらにも共有しろ、それがLBXなら迷わず倒せ!」

 

アスカ「なんだなんだ?どーゆーことだ?」

 

コウスケ「今日披露されるアンドロイド技術を盗もうとしている薄汚いネズミがいるんだ」

 

アスカ「なんだとー!? オイ!知ってんなら何でオレにももっと早く教えねーんだよ!なんか面白そうじゃねーかよー!」

 

コウスケ「そんな低次元な事を言うから嫌だったんだ…君こそ、今どこにいる?」

 

アスカ「え、セレモニー会場だけど?客席が埋まってくのをぼんやり眺めてんだよー」

 

コウスケ「ちっ、こいつと会話しても埒が開かないね。一旦切らせてもらおう」

ーーーPi!!!

 

キリト(地下に僕らを引きつけたって事は、ヤツらは既に地上に居る可能性もある…)

 

キリト「ひとまず、此処を出るぞ。そして仙道ダイキ達と合流して敵LBXを殲滅、いち早く地上へ向かう!」

 

コウスケ「了解だ、ついて来ーーー」

 

ガシャンッ

 

コウスケ「ーーなっ、ロックされた!?」

 

>>>突如、扉がロックされたと同時に…部屋の突き当たりの壁が、せり上がってゆく…。

 

飛鳥「なんだこの部屋、更に奥があるのか…!?」

 

>>>その奥から現れる二つの人影を見てキリトはぎょっとする。

 

キリト「なぜアンタが此処に…!今頃、ムショの中じゃ……」

 

>>>奥の隠し部屋から現れたのはーーーーーA国、元・副大統領の<アルフェルド・ガーダイン>と、その側近であるビショップだった。

 

ガーダイン「フ、フフフ…。 久し振りだな、風摩キリト君?」

 

キリト「どういうことだ…なぜアンタが!」

 

>>>続

 

<< オタクロスのオタ知識 >>

 

オタクロス「オタクロスのオタ知識、デヨ!」

 

オタクロス「今回は、こちらデヨ~!」

 

< エンペラーM2 >

 

オタクロス「海道ジンがかつて使っておったLBX、ジ・エンペラーのバージョンアップ機体じゃ!」

 

オタクロス「アングラビシダス出場時にジンの入力速度について行けなくなったジ・エンペラーが強化されたのが、このエンペラーM2デヨ」

 

オタクロス「アルテミスファイナルステージでは山野バンのLBXアキレスと激闘を繰り広げ、敗れたのじゃが……イノベーターの策略で<デストロイ>という自爆プログラムが埋め込まれておったんデヨ〜。ショボーン…」

 

オタクロス「そのせいでバンのLBXのコアスケルトンであるAX-00は、木っ端微塵にされてしもうたのデヨー!!」

 

オタクロス「今回は風摩キリトの機転で何とか危機を脱したデヨ。」

 

 

オタクロス「それでは、次回もお楽しみに…デヨ〜!」



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ダンボール戦機 C(シンデレラ) 16

ダンボール戦機 C(シンデレラ) 16

 

 

 

 

<< 第16章 メディエイターの幹部 >>

 

 

比奈「あのゴツいおっさんって、A国の副大統領だった男じゃないスか…?」

 

ガーダイン「さすがはジャパンの優秀なLBXプレイヤー。知識も豊富といったところ…かね?」

 

>>>倉庫のような部屋には似つかわしくないほど豪華な椅子に腰掛けて、ガーダインは余裕の笑みを浮かべたのだが…それは誰が見ても<悪人>というであろう表情だった。

 

ビショップ「ふふっ…風摩キリトさん。貴方の先ほどの疑問には、私がお答えいたしましょうか」

 

>>>ガーダインの少し後ろに控えて立っていたビショップが、サッと前に出て不気味に笑う。

 

キリト「どうして脱獄してるのかって疑問に関して、かな?」

 

ビショップ「ご名答。 そうですね…一言でいうならばーー<ミゼル事変>効果、というべきでしょうかね」

 

>>>ビショップは活き活きとした表情、かつ淡々とした口調で更に続ける。

 

飛鳥「かつてセカイに混乱をもたらした者が、次なるセカイの混乱に乗じて脱獄、か…悪党にはお似合いのみっともない手段だね。しかしそんな報道はされていなかったが…」

 

智絵里「あ、あのー…? そんな騒ぎ、ありましたっけ……」

 

キリト(お、おいマジかよ…っ!? こいつ、ニュースとか見ないのか…? 芸能人としてメディアに出てる側の人間じゃないのか?)

 

 

 

ーーー同時刻・通路ーーー

 

 

仙道「ナイトメア2機、追加投入だ!」

 

>>>ダイキの操作で懐に隠していたナイトメアが2体、飛び出した。

 

未央「うわ出たよ、嘘分身!」

 

仙道「ハハハ、残念だったなァ…。本当の悪夢をーー今ッ!見せてやるよ!!」

 

>>>既に居る1機と合わせて、計3機のナイトメアが一斉に駆け出す。

 

>>>ナイトメアは高速移動での残像により、たちまち<それぞれ>が3体に分身した。

 

唯「嘘!9体に増えたんだけど!?」

 

仙道「3体同時にLBXを動かすやつは何人居ても、さすがに3体全部をこうする事が出来るやつは…オレしか居ない! 自動制御のLBX相手に効果あるかは知らねえけどな」

 

みく「こんなんうそやん…もう異次元すぎてついて行けないハイレベル度合いなんやけど…」

 

未央「おわっ、みくにゃん!素が出てるよ!」

 

みく「!! い、いや気のせいだにゃ!」

 

仙道「まだかよ神谷コウスケ達…一体何モタついてやがる……あっ!」

 

>>>ダイキが気づいたのは、奥の方で両手銃を構えるデクー改の姿。

 

仙道「ーーーチッ。ウォーリアーカスタムのやつ、一歩下がれ!」

 

>>>武器・ナイトメアズソウルを投げて、ウォーリアーM目掛けて放たれた弾丸をナイトメアが弾く。

 

未央「あ、危なかった…! ありがとう、ございます……」

 

仙道「お前ら、油断するなよ!向こうのAI、かなり精度が高いようだね…。 この即席チームが崩れるのも時間の問題だ…!」

 

>>>苛立ちを隠す事なく渋い顔を浮かべるダイキが、小梅の方を見た。

 

仙道「おい、そこの魔術師気取りの小娘!」

 

小梅「え…? なぁに…?」

 

仙道「お前のジョーカー3体と俺のナイトメア達で撹乱するぞ、攻撃は考えず陽動だけを意識しろ」

 

唯「ねーねー! ゆいはー?」

 

仙道「お前のは…さっきから好き勝手に暴れまくってる、その赤いクノイチカスタムか。 接近して来た敵だけ、全て撃破しろ! くれぐれも突っ込むなよ、蜂の巣にされたくなかったらなァ」

 

唯「オッケー!任せといてー★」

 

仙道「もう一体のクノイチも同じだ。深入りせずに近接武器での射程距離に入った機体だけを着実に撃墜させろ」

 

みく「わ、わかったにゃ!それなら何とかできるはず……!」

 

>>>危険な戦いをこれまでも幾度となく潜り抜けて来た一日の長がある仙道は、このバトルの中で無意識のうちに司令塔のようなポジションに立っていた。

 

>>>指示を受けて士気を高めつつある一同だったが……1人、未央だけが困惑したまま立ち尽くしていた。

 

仙道「ウォーリアーのやつは何してるんだ! 動いていないとまた、たちまち的にされるぞっ!」

 

未央「ーーすっ、すみませんっ…!」

 

未央(ま、マズイよ…。 私だけ、全然ついて行けてない…みくにゃんも必死そうだけど、それでもちゃんと対応できてる……なのに私だけーーー)

 

>>>そうこうしている間にも、すかさず飛んで来る敵LBXの銃弾を…ウォーリアーMは剣・破岩刃で何とか防ぐ。

 

仙道(もしかしてあのウォーリアーカスタム、整備不良か…?それとも近接特化にカスタマイズしているのか…あまりにも動きがぎこちないな)

 

>>>ダイキも未央ーーーのLBXの不調には気づいていた。 しかし不調の原因がそれを動かしている未央本人の焦りが原因だという事は、さすがに3機のナイトメアを操作しながらの彼には気付けなかった。

 

仙道「おい、魔術師もどき!」

 

小梅「どうした…の?」

 

仙道「敵AIの行動が遅れている…? 今がチャンスか。 ゴリ押しはオレの性に合わないが…いい加減、陽動は終わりにしてそろそろフィナーレと行こうじゃないか。 計6機を一気に突っ込ませ、それぞれ別方向から同時に必殺ファンクションを叩き込むーー!」

 

小梅「い、いいよ…。 恐怖のパーティーの、幕が上がる…ね?」

 

仙道「ああ上げろ上げろ、一気に壊滅しろォ!イッツァ・ショータイム! 必殺ファンクション!!」

 

<INFO>アタックファンクション:デスサイズハリケーン

 

<INFO>アタックファンクション:デスサイズハリケーン

 

<INFO>アタックファンクション:デスサイズハリケーン

 

小梅「敵さんたち、ばいばい。 必殺…ファンクション」

 

<INFO>アタックファンクション:デスサイズハリケーン

 

<INFO>アタックファンクション:デスサイズハリケーン

 

<INFO>アタックファンクション:デスサイズハリケーン

 

>>>六方向から必殺ファンクションを放ったジョーカー達とナイトメア達によって、6発のデスサイズハリケーン。

 

>>>同時に巻き起こる旋風は共鳴し合い、まるで悪魔の呻き声のような音を立てて敵LBXをたちまち飲み込んでゆきーーー相手の遠距離部隊だけでなく近接攻撃要員まで巻き込んで、多数の敵が爆発音と共に粉々に砕け散った。

 

仙道「よし…8割は確実に削り切ったな。オレの紛い物にしては上出来だ」

 

小梅「ふ、ふふ…今の敵LBXさん達の姿…ステキだよね。 火花が散ってひしゃげて…キレイ、だね……」

 

>>>心底幸せそうな笑みを浮かべる小梅ーーーとは対照的に、未央は焦燥の色を隠せなかった。

 

未央(どうしよ…、どうしよう! 活躍しなきゃ…少しでも貢献しなきゃ…!!)

 

未央「…ぅ、う、うあああーーっ!」

 

>>>混乱したままの未央は、落ち着くことも出来ないまま、ウォーリアーMを敵陣に突っ込ませた。

 

>>>剣・破岩刃をがむしゃらに振り回し、強引に銃弾を振り払いながら突き進んで行く。

 

>>>しかし考えなしの特攻で狙撃を全て防ぎきる事など到底できる筈もなく、未央のウォーリアーのライフポイントは敵陣営に近づくにつれて見る見る減ってゆく…。

 

唯「ーーお! 敵、未央ちゃんのウォーリアーの方に気が行ってる!チャ〜ンス★」

 

>>>唯のLBXが未央のすぐ後ろーーーウォーリアーを盾代わりにする形で敵陣へと急接近し、空高く飛び上がってすかさず槍を構えた。

 

唯「ゆいのスペシャルマジイケてる、ひっさ〜つ…ファンクショーン★」

 

<INFO>アタックファンクション:ホーリーランス

 

唯「いけいけーっ! ぜーんぶ貫いて壊せーっ!!」

 

>>>上空から、煌々と光る槍を物凄い勢いで打ち込みーーーウォーリアーMを狙っていた敵LBX群を一気に撃破した。

 

>>>颯爽と地面に舞い降りた唯のLBXが、先ほど打ち降ろした槍を拾い上げる。

 

唯「やったーうまくいったね! 敵の引き付け役、ありがと未央ちゃん★」

 

未央「…え? あーーーうん! どんなもんだい、未央ちゃんは頼れる特攻隊長なのだー!はっはっはー!!」

 

>>>唯に対しておどけて見せた未央だったが………

 

 

 

ーーー地下2F・最奥の隠し部屋ーーー

 

ガーダイン「悪いが今我々にはやる事があって、立て込んでいるのだよ。君達の相手をしてやる暇もないほどに」

 

キリト「ふざけるんじゃねえ…ここで、はいそうですかって逃す訳ないだろう?」

 

飛鳥「右に同じく、さ。 罪人(つみびと)は大人しく、監獄という名の鳥籠に帰るがいい。 特に大罪人のお前達には、こんな地下よりもあちらの方が、よほど相応しいVIPルームだと思うよ?」

 

智絵里「悪いことをした人は、やっぱり…ちゃんと反省しなくちゃいけないって、わたしも思いますっ」

 

>>>皆の言葉を聞いたビショップが、肩をすくめる。

 

ビショップ「おやおや。新しいお仲間の方々も中々、お口が減らないようですね…これは困りました」

 

>>>わざとらしい言い方をしたビショップは直後、壁にあったスイッチを押した。すると途端に奥の隠し部屋の壁が閉じ、一同はガーダイン達と分断されてしまった。

 

飛鳥「尻尾を巻いて逃げるのかい。 戦場という舞台に上がる事すらせず逃亡とは…何とも情けない事このうえないね。 かつてセカイを掌握しようとしていた人間は最早、小悪党に成り下がったと捉えていいのかな?」

 

>>>飛鳥の挑発に、ビショップは動じる事なく壁の向こう側から答える。

 

「あいにく我々には優先すべき事がありましてね、お子様方の相手をする時間も惜しいのですよ。 という訳で…私達はこちらの隠し通路から退散させていただきますゆえ、後は自動制御のLBXと遊んでいてください」

 

>>>ーー直後、無造作に置かれたコンテナの間を、LBXが駆け抜けた。敵だ。

 

智絵里「一瞬でしたけど、あの辺りになにか…いますっ! たぶんLBXっ」

 

キリト「最初から、此処に閉じ込めて足止めさせる算段だったのか…」

 

比奈「…うわぁ、マズイっスね。 仙道君たちのCCMに繋がらない、おそらくこの部屋か付近のどこかからジャミングみたいなのをされてるんじゃないっスかね?」

 

コウスケ「うーん…LBXか問題なく反応するな。 風摩キリト、コントロールポッドの操作では、同じく作動するか?」

 

キリト「イノベーターとの決戦事にシーカーが<サターン>に乗り込んだ際、妨害電波を食らった事があったらしくてね。ジャミング対策は施している筈なんだけど」

 

飛鳥「動きが滑らかではなくなったね…そして操作をしてから反映されるまでの時間ーーータイムラグが発生している。 遠隔制御室(こちら)と戦場(あちら)の間に時空の歪みが生じていると捉えれば、差し障りないだろう」

 

智絵里「まるで重たい荷物を持ちながら歩いてるときみたいな。 イプシロンがちょっとしんどそうな感じがして……なんだかすごく、イヤな感じ………ですね」

 

キリト「…との事だ。精密な動きはあまり出来ないと思ってくれよ。 神谷コウスケと荒木比奈、現地にいる2人主体で戦ってくれ」

 

>>>キリトの方を見て、コウスケは頷いた。

 

コウスケ「やるしかないね。ついて来い、偽りの堕天使!」

 

比奈「言われなくともっス! 脱獄犯をこのまま逃がす訳にはーーいかない!」

 

コウスケ「往けーーールシファー!」

 

比奈「ーー遅れを取るなっス、ルシフェレックス!!」

 

>>>物陰に潜むLBXらしき陰を見据え、二体の堕天使はそれぞれ剣を構える。

 

キリト「オレ達は後方支援、および2機のアシストに努めるぞ」

 

飛鳥「このコンディションじゃ、それがせいぜい限界か…妥当な判断だとボクも思う。賛成だ」

 

智絵里「遠距離にまだまだ慣れてないんですけどっ、威嚇射撃くらいなら…わたしにも出来るかと……と、とにかくやれるだけやってみますっ」

 

>>>イプシロン・デクーOZ・ズィエルも、ルシファー達の後ろで身構えた。

 

飛鳥「ーーー来るぞ…!」

 

智絵里「比奈さん、神谷さん、お願いしますっ」

 

コウスケ「どんな相手であろうとこのボクには、敵わない!」

 

>>>物陰から飛び出して来たLBXはーーー

 

キリト「あれは……」

 

比奈「んー…エジプトっスかね?」

 

飛鳥「或いはアヌビスかもしれない。なにせ、見た事のないカラーリングを施してある。 あの機体は一体、何処の戦いの記録を映し出した姿なんだろう…」

 

キリト「オレが記憶している限りでは…有名な大会で成果を残したプレイヤーが使っていた機体の中に、あんな色のエジプトは居なかったがね…」

 

>>>ルシファーの前に現れたのはーー紫を貴重としたペイントをされた、エジプトもしくはアヌビス。

 

>>>所々にショッキングピンクの差し色があり…その不気味な瞳は、黄色く怪しげに光っていた。

 

飛鳥「ボクの好みとは少し違うが、冥界の死者を彷彿とさせる<良い意味で悪趣味>なカラーをしている。 一先ず、奴の事は紫アヌビスと呼ぼうじゃないか」

 

智絵里「な、なんだか、気味が悪いですっ…」

 

比奈「えーと、構えてる武器はー…パッと見だと、チェーンソーの絶・破岩刃(ぜつ・はがんじん)っぽいっス。 けど、なんか違和感が…やけにゴツいっていうか、厚みがありませんか?」

 

>>>紫アヌビスが右手で持ち、肩に担ぎ上げている武器はーーー見た目も色も、先ほど比奈の言った絶・破岩刃と一致する。

 

>>>しかし、一目見ただけでその大きさが異質である事は容易に分かった。 それは剣とは思えない分厚さで、ハンマーに匹敵するほどだった。

 

キリト「…今、カメラアイで分析した結果が出たよ。あれは確かに絶・破岩刃だ……<元々は>、ね」

 

飛鳥「元々は、か。 端的にいうなれば、改造武器という事かい?」

 

キリト「ああ、ご名答。 アレは絶・破岩刃をあえて削って薄くしたモノーーーそれを、3枚重ねてある剣だ」

 

コウスケ「なんだそれは。美意識の欠片も感じられない醜悪なカスタマイズだ…」

 

比奈「三枚重ねチェーンソーとか…何考えてんスかねメディエイターは。 でもあんな武器を持っているという事は、おそらくでスけどーーー」

 

飛鳥「スピードタイプでは無く…パワー全振りか、機動力の低下と引き換えに攻撃と防御に特化させたカスタマイズ…である可能性が高い」

 

比奈「そうっスそうっス、そう言いたかったんスよ。さすがっスね! けど…後者の場合、もしくは防御面をそこそこ充実させていたらーーーかなりの時間足止めを食う羽目になってしまいそうっスね……」

 

キリト(わざわざここまでのリスクを冒してまで僕らの前に現れたってことは、メディエイターを操っているのは誰なのか知らしめる為かーーーはたまた、僕たちシーカーに対する挑発のつもりか……)

 

キリト(どちらにせよ、僕達は今、ヤツらの思惑通りに此処へ閉じ込められた。 ほぼ間違いなくにヤツらの逃走経路は確保してやがるだろう……)

 

キリト「おそらく…今から僕らがどう足掻こうが、ヤツらに追いついて捕まえる事はかなわないだろう。 だからこそ逆に落ち着いて、目の前に居るあの紫アヌビスを倒そうじゃないか」

 

コウスケ「色が違うだけの、所詮は量産機だ。 僕のルシファーに塵一つ付ける事すら出来ぬまま、朽ち果てるがいい! ーーー必殺ファンクション!」

 

<INFO>アタックファンクション:デビルソード

 

>>>ルシファーの剣から伸びた閃光が、紫アヌビス目掛けて放たれる。

 

智絵里「剣から出てるレーザーが…ゆ、床まで削ってますっ…」

 

>>>紫アヌビスは剣を担いだままバックステップで回避するが、デビルソードの追撃は続いている。

 

飛鳥「壁際に追い詰めた、チェックメイトだね。 あれだけの高出力のレーザーをいとも簡単にコントロールするとは……神谷コウスケ。さすがは天才と言わざるを得ない、か」

 

コウスケ「ーー終わりだよ。跡形もなく消え去るといい!」

 

>>>迫り来るデビルソードの波動を前に紫アヌビスは、その肩に担いだ改造剣をーーー地面に降ろした。

 

比奈「アレを盾代わりに、攻撃をやり過ごすつもりっスかね…!」

 

コウスケ「そんな見せ掛けの盾で防げるほど、ルシファーのデビルソードは甘くないさ!」

 

<INFO>アタックファンクション:インパクトカイザー

 

比奈「ーーーはいぃ!?」

 

キリト「インパクトカイザーだって!?」

 

飛鳥「まさかあの剣は、ハンマー系の必殺ファンクションを…!」

 

智絵里「……え? …えっ?」

 

>>>途端、紫アヌビスからは凄まじいエネルギーが溢れーーーその剣、いや斧から放出された衝撃波が、デビルソードの光線をかき消した。

 

智絵里「ぁ、あのー……どうして皆さん、そんなにびっくりしてるんです…か?」

 

比奈「あぁ、それは……じつはっスね、今さっき紫アヌビスが発動させた必殺ファンクションは、ハンマー・斧系のものなんスよ」

 

智絵里「えぇっ? じゃああれは、ホントは剣じゃなくてハンマーって事なんですかっ」

 

キリト「そうとも言い切れないね…。 おそらく剣系のファンクションも使えると考えていいだろう」

 

飛鳥「LBXが誤認するのを利用して、武器の種別という理(ことわり)を突き破ったか…それであの歪な形状ーーー成る程」

 

コウスケ「世界のルール以前に、バトルのルールすら守れない下劣なLBXか………虫唾が走るよ。 美学も品性も知らないのか?メディエイターって連中は」

 

飛鳥「LBXという夢と希望に溢れたホビー……。 その枠組みの中のセカイにすら叛逆するような無粋な輩は、自ら痛みを以てーーーー」

 

>>>反応速度が著しく低下した状態であるにも関わらず、飛鳥のズィエルはすかさず狙撃銃を構えーーー

 

飛鳥「ーーー朽ち果てろ!」

 

<INFO>アタックファンクション:ホークアイドライブ

 

>>>ズィエルの狙撃銃から3発の弾丸が発射される。 それを見るや否や、紫アヌビスは三連チェーンソーを正面に構えた。

 

<INFO>アタックファンクション:フォースシールド

 

飛鳥「ーーーーえっ!?」

 

比奈「今度は、剣でシールド技っスか…!」

 

智絵里「ずるいです…盾持ってないのに…」

 

>>>飛鳥の必殺ファンクションは、紫アヌビスの剣ーーーもとい盾に防がれてしまった。

 

飛鳥「こちらの必殺ファンクションの属性を瞬時に判別して軽減させて来るとは…。 ヤツのブレインを作った、その本人の頭脳は大したものだね」

 

智絵里「属性……?」

 

キリト「火や水、光などの自然属性もあるがーーーLBXの物理属性は3種類…斬(ざん)・貫(かん)・衝(しょう)だ。 二宮飛鳥が使ったホークアイドライブは貫属性の攻撃で、相手はそれを即座に読み取り、貫属性の威力を軽減させるフォースシールドを使ったってわけ」

 

智絵里「難しいことはよくわかりませんが…処理速度?とかがとっても早かったりするのでしょうか……」

 

比奈「ハイ、ほぼ間違いなく…想像以上に高スペックなCPU積ませてると思うっスよ。 武器の認識切り替えからの必殺ファンクション発動の速さが尋常じゃありませんから…!」

 

>>>智絵里に答えながら、今度は比奈がルシフェレックスで紫アヌビスに、にじり寄る。

 

智絵里「やっぱりわたし、後ろでじっとしてなんていられませんっ。 重たいけど…がんばって、イプシロン…っ!」

 

>>>智絵里のイプシロンも、遂に痺れを切らして前線へと駆け出す。 しかしその足取りに、いつものような目覚ましいキレは無い。

 

キリト「無茶だ、引き返せ緒方智絵里!」

 

飛鳥「コントロールポッドのボクたちには今、ジャミングという名の足枷が付けられている。いつもの感覚で動くと、LBXがついて来られず大ダメージを受ける恐れも高い」

 

智絵里「ここまで突き進んて来たじゃないですかっ…! わたしは、みんなと…何よりイプシロンを信じたいですっ!」

 

>>>飛鳥達の制止も聞かず、イプシロンの足は止まらない。

 

>>>同時に、更に紫アヌビスへと急接近したルシフェレックスは蹴りを繰り出し、相手を上空へと追いやった。

 

比奈「さあ、宙に浮いててバランスを崩した今ーーーお前はどう避けるっスか!?」

 

<INFO>アタックファンクション:パワースラッシュ

 

比奈「ほらほら、今度のパワースラッシュは斬属性っスよ!」

 

<INFO>アタックファンクション:エナジーシールド

 

キリト「今度は斬属性軽減のファンクション!?」

 

智絵里「行っ、けぇぇーーーーっ!!」

 

<INFO:アドバンスドVモード>

 

>>>その時、イプシロンは更に速度を上げて比奈のルシフェレックスを通り過ぎ、空中にいる紫アヌビスをも通り過ぎて高く跳んだ。

 

>>>そして紫アヌビスに弾かれたパワースラッシュのエネルギー波に跳び乗ってーーー紫アヌビスの真後ろに移動!

 

智絵里「必殺、ファンクションっ…!!」

 

<INFO>アタックファンクション:ガトリングバレット

 

>>>紫アヌビスの背後から至近距離で放たれる拳の連撃は、まさに弾丸。 凄まじい勢いで紫アヌビスの装甲を抉って行き、最後の一撃が本体のコアに命中した。

 

<BREAK OVER>

 

>>>激しい爆音と共に紫アヌビスは敗北した。

 

飛鳥「ふふ……お見事、智絵里」

 

>>>アヌビスの爆破と同時にーーー後ろの扉のロックが、外れる音がした。

 

キリト「コントロールポッドへのジャミングによる反応速度の低下とタイムラグを感じさせない動きだったな…。 おい、いったいどうやって操作したんだい?」

 

>>>キリトの声に、智絵里は笑顔で答えた。

 

智絵里「ラグ?があるって事は……動こうと思った瞬間に、もたもたしちゃうってことですよね。 イプシロンでとにかく思いきり走って、その先を目で見て……次の、その次くらいにはどう動けばいいかなって、考えて操作したら、うまく行きましたっ…!」

 

キリト(予知能力の一種…<オーバーロード>と呼ばれる力無しで、それを実行できる人間はーーー限られていると思うんだけどな…)

 

ウィーン

 

未央「ちえりん、みんな、無事!?」

 

唯「わー、みんないるー! やっほー★」

 

仙道「ここで何があった? そちらも戦闘していたようだが…」

 

>>>ダイキが、ボロボロになったアヌビスだったモノを見ながら訊ねた。

 

コウスケ「話は後だ、時間がない。ボクにはやるべき事があるんでね」

 

仙道「メディエイターをとっ捕まえるんだろォ?」

 

コウスケ「…いいや違うね、このセレモニーのエキシビジョンマッチさ。 もちろん、君達にももれなく出てもらおうじゃないか」

 

比奈「ーーなっ! そんなコト言ってる場合っスか〜!?」

 

コウスケ「役目はきっちり果たすものだ。 観衆がボクとルシファーの輝きを心待ちにしている…ボクはそれに応えなければならない、それこそ世界のルール」

 

仙道「まぁ…いいか。セレモニーそのものに参加できれば、ある意味間近で護衛できるようなものだからな」

 

唯「今日お披露目されるアンドロイドのデータが、そいつらの狙いなんだよね?」

 

小梅「これだけの人数が、いれば……たくさんの敵も、倒せる…ね?」

 

コウスケ「そうと決まれば地上へ上がろうしゃないか。さあ、じきにセレモニーの幕開けた…ハハハハハ!!」

 

>>>こうして、智絵里達は成り行き上とはいえ、エキシビジョンマッチ要員としてセレモニーに参加する事となったのだった……。

 

 

>>>続

 

<< オタクロスのオタ知識 >>

 

オタクロス「オタクロスのオタ知識、デヨ!」

 

オタクロス「今回は、こちらデヨ~!」

 

< アヌビス >

 

オタクロス「アルテミスに出場した際に灰原ユウヤと共に出場した黒木・目黒も使っておった、エジプトの強化汎用型LBX、アヌビス!デヨ」

 

オタクロス「エジプトに搭載されていた催眠機能を撤廃しとる代わりに基本性能の向上に成功しておる」

 

オタクロス「とはいえ今回登場したアヌビスは極めて異質なもので、郷田氏がハカイオー絶斗で使っておった剣<絶・破岩刃>を改造して3本合成した武器を使っておったのう」

 

オタクロス「じつはあのアヌビス…必殺ファンクションにはインパクトカイザーの他に、物理属性3種を防ぐシールド系3つ! 計4つの必殺ファンクションが搭載されておったんデヨ?」

 

オタクロス「それでは次回もお楽しみに、デヨ〜!」

 



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閑話休題 その1

閑話休題 その1

 

※ご注意※

 

今回はシナリオ(お話)ではなく執筆しております私からの、今後の展開など諸々に関するお知らせとなります。

 

私に代わって司会進行は、

オタクロスさんとシブネキクゾウでお送り致します。

             

 

          

 

    

オタクロス「こうして挨拶するのは初めてじゃのう。読んでくれとるオマイさんら、いつも感謝しておるぞよ。ワシは、知っての通りオタクロスデヨ!」

 

オタクロス「どうしてこういった、本編とは関係ないメタ空間で喋りたかったのかというとじゃなぁ…。 うーむ、ワシは疲れて来たのでいつものコイツに任せるとしようかのう」

 

ブィィーン

 

キクゾウ「説明しよう! この私はシブネキクゾウ、このアキハバラ伝説の超ハッカー・オタクロスが作成した音声合成装置である!」

 

オタクロス「ワシとオマイ自身の説明は、今は置いといて次に行かんかい!」

 

キクゾウ「再び説明しよう! 現在、ダンボール戦機のSSの筆者、<ぱりぱりィ!>(現ユーザ名)は、楽しく執筆を続けつつも、不本意に感じている事があり、この度こうして改めた場を設けてそれを伝えたかったのだ!」

 

オタクロス「そういうことデヨ。 あ〜、面倒な説明をするにはコイツに限るデヨー」

 

オタクロス「それで…何を不本意に感じているかというとだなーーーキクゾウたん、出番デヨ!」

 

キクゾウ「更に説明しよう! 筆者が不本意に感じている事、それは!<ダンボール戦機の世界観と雰囲気>に寄せすぎてアイドル達が和気あいあいとしている描写が減ってしまっているということ!」

 

オタクロス「しかーし、心配はご無用なのデヨ。 LBXバトル絡みには なると思うのじゃが…まだ登場していない他のアイドルも出番を控えておるデヨ! テロリストとの生きるか死ぬかの戦闘ではなく、れっきとしたホビーとして楽しく遊んでいる描写も既に考案済みなのであしからず、なのデヨ〜!」

 

キクゾウ「あともう少しだけダンボール戦機側の雰囲気が続くが心配ご無用! 再びアイドル達の日常にもスポットを当ててゆく予定なのだ!」

 

オタクロス「ここいらで…チラチラ〜っと、今のところは今度登場予定(変更される可能性あり)のメンバーのネタバラシ的なものも、ちょこーっとだけやっておくかのぅ? よし、キクゾウたん出番デヨ!」

 

キクゾウ「説明、いや情報を少し開示しよう!」

 

オタクロス「まずは1人目じゃ!キクゾウたん、画像はマスクしてワシの指定した情報だけ読み上げるデヨー」

 

キクゾウ「それでは一部説明しよう! この少女は、ある3人組でのユニットを組んでおり、そのユニットで二つの楽曲を歌っているぞ! それから別のユニットでは異例の<ダブルセンター>を務めた事もあるとの事だ!」

 

オタクロス「よぅし、2人目に行くぞい!」

 

キクゾウ「続いて説明しよう! 彼女は元公務員で、お酒が好きだ!これだけで誰か分かった者もいるのではないだろうか!」

 

オタクロス「そうじゃの、それでは3人目と4人目に行くとするぞ。2人の説明は短めにの、キクゾウたんよ!」

 

キクゾウ「承知!では改めて説明しよう! 1人は引っ込み事案で目を合わせるのも苦手、机の下にいると落ち着くらしい! もう1人はお花が大好きな少女で、その特徴的な表情を顔文字で表される事もあるらしいのだ!」

 

オタクロス「うっし、もう一息じゃキクゾウたん!」

 

キクゾウ「最後は2人。共に、本田未央とユニットを組んでいる人物! そのうちの1人は熱血という言葉が似合う少女だ!」

 

 

 

 

オタクロス「ふぃー…っと、今回はこんなモンかのぅ。また何か報告などをしたくなったら、こうして閑話休題パートを挟むつもりなので…」

     

オタクロス・キクゾウ「「次回もお楽しみに!」デヨー!!」



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ダンボール戦機 C(シンデレラ) 17

ダンボール戦機 C(シンデレラ) 17

 

 

 

 

<< 第17章 大熱狂!エキシビジョン >>

 

ーーーセレモニー会場にてーーー

 

スタッフ「さてそれでは名だたるLBXプレイヤーの方々に、素晴らしいパフォーマンスを…バトルで魅せていただきましょう!」

 

ワー  ワーワー

 

コウスケ「皆さん、こんにちは。 ボクは神谷コウスケです。 今回はそこに居る古城アスカとバトルを繰り広げる、予定だったのだが……」

 

>>>コウスケがスッと指差すと、舞台袖から何名かが現れた。それはーーー

 

取材陣A「あれは!<箱の中の魔術師>・仙道ダイキか!?」

 

取材陣B「あらちょっと待って! その後ろって、アイドルの小梅ちゃんじゃない!?」

 

コウスケ「驚きのあまりどよめいているがどうか静粛に。 せっかくの美しい祭典だ、派手な方が君達も好きだろう?」

 

コウスケ「ボクはもともと神谷重工の人間だ、そして今はクリスターイングラム所属。 しかしこんな祭典に他社という無意味な隔たりなど無粋だ。そこでーーー」

 

>>>神谷コウスケはバッと手を広げた。その先の車から降りて来たのはーー

 

キリト「どーも。タイニーオービット所属の風摩キリトだ。 この度は神谷コウスケ直々に声が掛かりましてー…このセレモニーに、おじゃまする運びとなったのさ」

 

智絵里「皆さん、お待たせしてすみませんっ。 わたし、緒方智絵里といいます。 今日は、よろしくお願いしますっ」

 

取材陣C「風摩キリトまで呼んだのか!? 凄い力が入ってるな今回のイベント…!」

 

取材陣D「おー、智絵里ちゃんだ。あの子もLBXしてるのか…」

 

>>>取材陣はスペシャルゲストの面々に気が行っている。その隙にキリト達を乗せて来た車は走り出し、会場から少し離れた広場前で停車した。

 

>>>運転していた結城研介が手を振り、それに気づいた本田未央・前川みく・大槻唯・荒木比奈が車に乗り込んだ。

 

研介「良かったのかい?荒木さん。 神谷コウスケの事は、ライバル視しているらしいと聞いたんだけど…?」

 

比奈「大丈夫っスよ。 あいつとはいつか必ず、サシで勝負するっスから…!」

 

みく「えーっと…みくはちょっと、あのハイレベルすぎるメンツのLBXテクニックには、とてもついてけそうにないから、やめたにゃぁ…」

 

唯「ゆいはねー、んー…さっき思いっきり暴れられてスッキリしたから、今は休憩〜★ このメンツのバトルはじっくり、見ておきたいなーって」

 

飛鳥「同感だ…ボクも腰を落ち着けて一瞬たりとも見逃さぬようにしたい。 今までウチの仲間としては凄まじい猛威を奮って来た智絵里は、サイバーランスのテストプレイヤーや神谷重工の御曹司にどこまで食い下がれるのか……じつに、見応えがあるだろう」

 

>>>未だコントロールポッドの中に居る飛鳥の声が、結城研介の持って来たPC越しに届いた。

 

未央「えっあすあす、まだ遠隔操作してる…? いったい何してるの?」

 

飛鳥「じつは今回の作戦でのまごう事なきMVPである智絵里から指令…もとい、<お願いごと>を仰せつかってね。 今そのお願いの実行真っ最中ってところさ」

 

みく「智絵里チャンのお願い事って、なぁに?」

 

飛鳥「今回ボク達コントロールポッド組を襲って来た連中の中で、見た目を気に入った機体が居たんだと。 さあ、どんな機体だと思う?」

 

唯「そりゃーやっぱ、可愛いやつっしょ! イプシロンはカクカクっとしてるからー…スラッとしたストライダー系じゃない?」

 

飛鳥「おお、さすがだね。<可愛い>というフレーズは合っているよ、ただ彼女は感性が少し独特なのかもしれないね…?」

 

みく「焦らさないで教えてにゃああ!」

 

飛鳥「ーーーデクーの、腕だ」

 

比奈「はいィ?デクーっスか!? 確かに渋いっスけど…か、可愛い……??」

 

飛鳥「本人の解説した通りに伝えるけど………<クマさんみたいに腕がなんかポコポコっとしててかわいかったんですっ!腕だけでもいいので、どうか!もらってく事は出来ませんか…?>ーーー以上」

 

未央「あすあす今、若干悪意ある物真似したよね!?」

 

飛鳥「さて、どうかな? しかし神谷コウスケに指名された以上、彼女は今回舞台に上がらなければならなくなった。 それゆえ手隙のボクが回収作業を承ったという訳さ」

 

>>>飛鳥は会話しながらも、ポッド内のモニタに映るデクーのパーツを念入りにチェックしている。

 

飛鳥「…コイツはダメから胴体に亀裂が入ってる。 こんな使い捨て用の敵機をメンテナンスに出すなんて馬鹿げているから没だね。 さて次のはーー」

 

唯「え? アームだけじゃ駄目なの?」

 

>>>唯の問い掛けに、飛鳥は優しく微笑んだ。

 

飛鳥「今回の彼女の活躍は本当に目覚ましいものだったんだ。 謙虚に腕だけでもと言ってはいたものの、全身一式プレゼントしたらきっと、より喜んでくれるだろう。違うかい?」

 

みく「何だかんだ言ってアスカチャンも優しいトコあるにゃぁ〜ん」

 

飛鳥「呑気な事言ってないで、まったく…1人か2人くらい手伝いに来てほしいというのが本音だよ。 このスクラップと化した大山を解析するには、なにぶん1人だと骨が折れる」

 

みく「わかったにゃ!それじゃあみく、今からタイニーオービットへ向かってアスカチャンを手伝うにゃっ!!」

 

研介「他の皆さえ良ければ、僕の車でTO社まで戻るけど…」

 

唯「今もモニターでセレモニーの様子バッチリ見てるからオッケーオッケー★ みんなで帰ろー!」

 

比奈「アタシも賛成っス。そして出来る事なら無事なデクー探しに協力したいっスね…」

 

未央「あ、あのー……」

 

>>>不意に未央が力無い声を出して、皆が彼女を見た。

 

未央「私、ちょっとやっておきたいこと、あるんだ…! 別行動、させてもらえない…かな?」

 

唯「え? ゆいは構わないけどー」

 

比奈「こっちも問題なしっス。 これだけの頭数が増えれば、デクー探しも朝飯前っスよ!」

 

飛鳥「ボクも構わない、オーケーだよ」

 

未央「それではっ、未央ちゃんはこれにて〜。 みなさん今日はお疲れさまでしたー!」

 

>>>そう言い残し、車を降りた未央はそそくさと立ち去ってしまった。

 

唯「なーんか、元気なかったようなー…」

 

比奈「さっきの戦いで、自分のLBX…破損したのかもしれませんね…」

 

飛鳥「あー…確かに、アンリミテッドバトルで敗北し無惨な姿を晒してしまった、その時はーーー何ともいえない喪失感と、自分は無力だと思い知らされた気がして……つらくは、なるよね…」

 

ーーーセレモニー会場ーーー

 

>>>最初に戦うことになったのは、ダイキと小梅ーーー世代を超えた<魔術師>対決だった。

 

仙道「これが、真のーーー箱の中の魔術師だァ!」

 

>>>ジオラマを駆け巡る3体のナイトメアが分身ーー残像によって9体も居るように見えている!

 

仙道「アイドルと、LBXプレイヤーの実力の差をーーー見せてやるよ!」

 

>>>ダイキのナイトメア全機が残像で分身、かつ高速で飛び回っているのにも関わらず、小梅のジョーカー3機は非常に落ち着いたまま、攻撃を受け流したり回避したりしている。

 

仙道(ちっ…さっきコイツと連携を取ったからか、オレの癖が予想以上に読まれているな。 だが、ここからが箱の中の魔術師の本領発揮だーー!!)

 

>>>ナイトメア3機が同時に鎌を振り下ろしーーーた、が…ジョーカーに避けられた!

 

小梅「楽しかった、けど…ばいばい」

 

>>>小梅のジョーカーが一塊になり、一斉に必殺ファンクションを放つーーー

 

<INFO>アタックファンクション:デスサイズハリケーン

 

仙道「なにっ!?……なんてな。そう来ると思ってたよォ!」

 

>>>ナイトメア一機のうえに別のナイトメアが乗っかり、その上に三機めのナイトメアが飛び乗った。

 

>>>二機を乗せたナイトメアがフルパワーで跳躍する。

 

小梅「でも…これで一機は確実に、逝ったよ…?」

 

仙道「ーーーツメが甘いんだよォ!!」

 

>>>ナイトメア一機は、小梅の三連デスサイズハリケーンをもろに食らってブレイクオーバーさせる事にしたがーーー

 

仙道「どうやら一機ずつ着実に潰していく算段が仇となったなァ、食らえェッ!!」

 

<INFO>アタックファンクション:Ωエクスプロージョン

 

<INFO>アタックファンクション:グランドスタンプ

 

>>>残り2体のナイトメアが繰り出した同時必殺には対応できず、ジョーカー2機があえなくブレイクオーバーした。

 

小梅「やっぱり…強い、ね……?」

 

仙道「この程度で評価されてもねェ? さぁて、フィナーレだ!」

 

<INFO>アタックファンクション:ブレイクゲイザー

 

小梅「こっちも、打つ……!」

 

<INFO>アタックファンクション:グランドウォール

 

仙道「ハハハハハ!一歩遅かったなァ?」

 

ピコーン

 

>>>ダイキの入力速度の方が僅かに早く、小梅のジョーカーは構えを取ったものの必殺ファンクションを打つ前にライフがゼローーーブレイクオーバーされてしまった。

 

司会「勝ったのは仙道ダイキーっ! <箱の中の魔術師>の実力は、未だ健在だァー!!」

 

ワアァァーッ

 

仙道「前座としてはまぁ、充分に盛り上がったかい?神谷コウスケ」

 

コウスケ「ああ、上出来だ。さてと……」

 

司会「さあコウスケ君、次は誰と誰が戦うのでしょうかー!?」

 

コウスケ「それなんだけど…」

 

>>>ここでコウスケがちらりとアスカを見た。

 

アスカ「俺、この智絵里ってやつとバトりたいぜ!」

 

智絵里「え、えっ! わ、わたし……ですかっ…?」

 

アスカ「おう。 キリトとコウスケとはもうバトルした事あるし、お前がどれくらい強いのか実戦で試してみてーぜ!」

 

コウスケ「古城アスカ。残念だがその要求は…飲めない」

 

アスカ「えーっ!? どうしてだよー、ケチ!」

 

コウスケ「なぜならーーー」

 

>>>コウスケはそこで舞台上で一歩前に出てーーー客席に居る取材陣と、一般参加枠のセレモニー参加者へ向け、両手を広げて高らかに言った。

 

コウスケ「ボク、神谷コウスケ。そして風摩キリト。古城アスカ。緒方智絵里。 この4人が…………バトルロワイヤル形式で戦うからだ!!!」

 

ウォォォーーーーー

 

>>>会場が一気に盛り上がる。

 

智絵里「あ、あの…風摩さん。 バトルロワイヤルっていうのは、いったい……」

 

キリト「自分以外は全員敵。 分かりやすくいうなら普段の一対一や三対三とは違いーーー今回は一対一対一対一対、ってコト」

 

アスカ「なるほど、乱戦か!おもしれー!」

 

キリト「バトルロワイヤルという事なら僕も本気で行かせてもらおうじゃないか」

 

司会「ーーーとの事です! 4人のバトルロワイヤル、間もなく開幕いたしまァァーす!」

 

コウスケ「アスカ、アレを使え!」

 

アスカ「合点! よっしゃ行くぜ、Dエッグ、展・開・だあぁぁーーーっ!!」

 

>>>アスカが手に持ったDエッグを高々と放り投げる。 エッグ内の粒子から、ジオラマが形成されてゆき………

 

キリト「ほう…? これは王宮城内のジオラマだね」

 

智絵里「広いですけどっ、階段とか綺麗で…なんか豪華で、すごいですっ。 地中海遺跡のジオラマとは、また全然雰囲気が違う…」

 

司会「プレイヤーはLBXを投下してくださいっ!」

 

アスカ「ヴァンパイアキャーット!」

 

コウスケ「鮮やかに舞え、ルシファー!」

 

キリト「デクーOZ、出撃だ!」

 

智絵里「お願いっ、イプシロンっ!」

 

コウスケ「神谷重工、サイバーランス、タイニーオービット、そしてアイドル界ーーー果たして何処がLBXの頂点を勝ち取るのか、観衆たちよ…刮目するがいいっ!!」

 

  バ ト ル ス タ ー ト

 

アスカ「俺の狙いは勿論ーーー初バトルの智絵里、お前だぜ!」

 

>>>アスカの機体・ヴァンパイアキャットが王宮城内のジオラマを駆け抜ける。

 

>>>しかしその手に持つ槍はーーー死角から現れたキリトがOZトマホークの鋭い一撃で弾き飛ばした。

 

仙道「おぉっと? バトルロワイヤルって事を忘れてる愚者<フール>が居るみたいだなァ?」

 

>>>外野でのんびり眺めているダイキが、面白半分でアスカを挑発する。

 

アスカ「へっ、見くびんなっての! こっちはもうプロのLBXプレイヤー、サイバーランスに雇われてんだ。 そんな安っぽい煽りに乗るかよ〜!」

 

>>>宙へと弾き飛ばされたアスカ愛用の武器・トリプルヘッドスピアーを、ヴァンパイアキャットは空中で3回スピンしながらキャッチ。

 

智絵里「す、すごい技術……っ」

 

>>>すかさずデクーOZの斜め後方へと下がり、後ろから近づいて来たルシファーの剣をスピアーで受け流した。

 

コウスケ「随分と腕を上げたみたいじゃないか? まあ、会社の名を背負ったイベントだ、君だってそう簡単に負けられないだろうし…そうだろう?」

 

アスカ「どーかなぁ。俺は、今この瞬間を誰よりも全力で楽しみてー!それだけだぜ!!」

 

キリト「楽しむだけじゃ、勝利は掴めないがーーーな!」

 

>>>今度はキリトが、智絵里のイプシロンをトマホークを片手に襲い掛かる。

 

智絵里「…わっ! そ、そっか…! 今は風摩さんも敵、ですもんねっ」

 

キリト「風摩じゃなくて、キリトで構わないよ。今は一応、同じくシーカーの一員な訳だし。 それより周囲に気をつけろよ?」

 

>>>慌てて回避するイプシロンの後ろに、今度はルシファーが回り込んで来ていた。

 

智絵里「ーーーっはああぁ!」

 

>>>ルシファーの剣に、イプシロンは両の拳に握ったブリザードエッジを叩きつけ、跳ね飛ばされた反動でーーーアスカの操るヴァンパイアキャットのすぐ横まで移動。

 

>>>至近距離に近づいたのでアスカは近接戦だとスピアーを構えたが智絵里は片手銃・キングスハートでヴァンパイアキャットを撃った。

 

アスカ「うおおっ、危ね!」

 

>>>アスカが警戒して距離を取った隙に、今度はデクーOZへと急接近してダガーでの打ち込みを放つイプシロン。

 

キリト「OZシールドでーーーくっ、少し間に合わず食らったか…! 相変わらず化け物レベルな動きをするね君は……」

 

アスカ「俺のほうも銃撃でLPが減っちまったー!」

 

コウスケ(待てよ…? この戦闘、自然に…緒方智絵里とボク達の、1対3よ構図になっていないか?)

 

キリト「やっぱこのメンツでも、3人まとめて掛からないと、緒方智絵里は手に負えないという事か…」

 

アスカ「おいキリト! この子ってそんなに強いのかよ!?」

 

キリト「うん? あぁ、強いさ。 そして常人では考え得ないような高度なプレイセンスと、それを実行できるだけの操作テクニックを持っている」

 

ーーー車内ーーー

 

研介「もう少しでTO社に到着するよ」

 

唯「智絵里ちゃん食らいついてるねー」

 

比奈「いやぁー見事っスねえ。 バトルロワイヤルなのに気づけば3人全員を相手取ってまスよ…」

 

みく「ふにゃぁぁ、マズイにゃ! 相手も3体で智絵里チャンのイプシロンを狙い始めてるのにゃああー!!」

 

飛鳥「騒がないでくれ、みく。声が響く……」

 

ーーー再び会場にてーーー

 

キリト「僕たち3人がフルパワーをぶつけても、今の彼女に勝てるかどうかは正直なところ分からない…というのが僕の予想だ」

 

アスカ「だったらこっちも、全力ぶつけねーと相手にも失礼ってもんだ!行くぜぇ!」

 

コウスケ「これがルシファのーーー美しき必殺ファンクション!!」

 

<INFO>アタックファンクション:セラフィックウィング

 

キリト「僕も続く、必殺ファンクション!」

 

<INFO>アタックファンクション:Xブレイド

 

アスカ「俺もーーー超火力でいくぜっ!!」

 

<INFO>アタックファンクション:グングニル

 

智絵里「がんばって、イプシロンっ……!」

 

 

ーーー丁度その頃、事務所の女子寮ーーー

 

佐藤「未央ちゃん?はぁとに用事って、どゆこと? なんかあった?」

 

未央「じつはさとしん…いえ、佐藤さんに、お願いがあってーーー来ました!」

 

佐藤「よくわかんなーい★ だから、順を追って、話してみ?」

 

ーーーTO社・遠隔制御室ーーー

 

>>>コントロールポッドでデクー探索していた飛鳥に、唯、みく、比奈も加わり…水路を更にくまなく調べていた。

 

みく「やったにゃぁ、大豊作だにゃ!」

 

比奈「アーマーフレーム及びコアスケルトン、共に比較的状態の良いデクー6機回収。 保険の為のカスタムR・4機、カスタムL・2機も回収完了っス!」

 

飛鳥「よし、総員撤収だ」

 

みく「…んにゃ? 飛鳥チャン、その武器は何にゃあ?」

 

>>>みくが、飛鳥のズィエルの担いでいるハンマーに気づいた。

 

飛鳥「ははは、バレてしまったか。 じつはね、今回敵として現れたエンペラーM2が使って来た<エンペラーランチャー>」を、拝借させてもらったのさ」

 

比奈「うわーっ、多連装ミサイルの付いた、あの秒殺の皇帝のハンマーっスよね!? めちゃくちゃレアじゃないっスか…」

 

飛鳥「ボクは決めた。ズィエルの事は気に入っているけど、彼はいわば成長途中…このままでは力不足だ。 そこで、次に戦場へと赴く際には、新たなカスタマイズで臨むとしようーーーこのエンペラーランチャーとともに、ね」

 

みく「おおーっ、新カスタムもしくは新機体かにゃ? 楽しみにしてるにゃーっ!」

 

飛鳥「さて今度こそ撤収だ。 みんな、回収したLBXを、持って来てくれた荷台に積み込んでくれ。さあ、帰ろう」

 

 

ーーー女子寮ーーー

 

佐藤「ふーむ、なるほど? 詳しくは良くわかんないけど、戦闘について行けなくなって足引っ張っちゃったから、はぁとと特訓して腕を磨きたいって?」

 

未央「うん…! 胸貸して下さい!」

 

佐藤「んー……悪いけど、はぁとはパスさせてもらおっかな★」

 

未央「えぇぇっ! そ、そんなぁ……」

 

佐藤「あぁ、勘違いしないでね? 今の未央ちゃんには、もっと相応しい相談相手が居るんじゃないかなー、って思って?」

 

未央「もっとふさわしい……相談相手?」

 

佐藤「そうだなー、例えばー……気合いですよ情熱ですよ!って励ましてくれる子とかー……」

 

未央「そ、それって…あかねちんーーー」

 

佐藤「後はねー、お茶でも入れましょっか〜なんて言って穏やかな気持ちにさせてくれる、ふわっとした子とかー?」

 

未央「あーちゃん……」

 

さと「あらら、心当たりあった? んじゃ、はぁとはそろそろ部屋戻るわー。 いい加減そろそろ片付けないと〜」

 

未央「あ、あのっーーー! さとしん…ありがとう!私、行って来ます!!」

 

佐藤「うんうん★ さっきよりはちょっとマシな顔になったね?行っておいで」

 

未央「ーーーーはいっ!!!」

 

 

ーーーセレモニー会場ーーー

 

>>>ルシファーのセラフィックウィングーー翼から放たれる無数の光線を駆け抜けながら紙一重で掻い潜るイプシロン。

 

>>>続いてデクーOZのXブレイドに対して、自分のダガーを物凄い勢いでジオラマの地面に突き立てーーー

 

智絵里「アタックファンクションっ」

 

<INFO>アタックファンクション:気功弾

 

>>>そのまま武器を床に突き刺した状態で無理矢理必殺ファンクションを起動させ、その衝撃で地面を隆起させてデクーOZの必殺を防ぐ壁を作った。

 

アスカ「いいプレイ魅せんじゃねーか、けどもうこっちはロックオン済みだ!貫けぇーっ!!」

 

>>>突如として起こった地面隆起にバランスを崩したデクーOZの脇をすり抜け、その愛用の盾・OZシールドをかっさらってーーールシファーが居る位置から真後ろに当たる階段に上り、盾を構えた。

 

アスカ「パワー勝負か?おもしれー!ブッ離せぇぇーーっ!!」

 

>>>そうこうしている間に、ヴァンパイアキャットの撃ち込んだ最大出力のグングニルがイプシロンの構えた盾に激突。

 

>>>あまりの出力の高さにイプシロンは盾を構えたまま後方へとずり下がる形になり、盾・OZシールドも中央を抉られる事となつたがーーー

 

>>>その盾で跳ね返したエネルギー波は、目の前(正確には斜め下)に居たルシファーへと直撃。

 

アスカ「ウッソだろー、そんなのアリかよーっ!? コウスケ、ごめーんっ!」

 

コウスケ「何を謝る必要がある? 彼女がそれだけ難敵であると分かっただけでも……この戦いに価値はあるのだよ」

 

土煙の中から、既に半身がボロボになりながらもーーーまだしっかりと立っている、ルシファーの姿が現れた。

 

コウスケ「発動だ……これが真の力、真の美しさ! ルシファー・セラフィックモード!!」

 

<INFO>セラフィックモード

 

智絵里「うそ…まだ、動けるんだ……。 なんてタフなLBXっ……」

 

コウスケ(クッ…LPが残り10%を切っている……! アスカのグングニルを、キリトの盾を奪って防ぎ、尚且つ跳ね返しボクに当てるだなんてーーー)

 

アスカ「こいつ、やべー! マジつえーぞ智絵里! うっしゃあ!俄然、燃えて来たぜっ!!」

 

キリト「必殺ファンクションで簡単にカタをつけようとするのは良くないのかもしれないね…古城アスカ、同時に近接で一気に攻め立てる!」

 

>>>デクーOZが真っ先に走り出す。そのすぐ後ろをヴァンパイアキャットが追走。

 

アスカ「鬼をも砕くトリプルヘッドスピアーの真髄、見せてやるぜ!うらぁーっ!!」

 

>>>智絵里のイプシロンはダガー・ブリザードエッジの片方を投げ捨てーーー片手にOZシールド、もう片手にダガーを構え、地を蹴って走る。

 

キリト(投擲すらせずにダガーをひとつ捨てた…? なにかーーなにかやばい!)

 

キリト「アスカ下がれっ!」

 

アスカ「お断りだ、プロプレイヤーなめんじゃねえっ!!」

 

>>>アスカの華麗な槍捌きはあっという間にイプシロンのOZシールドを絡め取って弾き飛ばした。

 

アスカ「このトリプルヘッドスピアーにダガー片割れで挑もうなんぞ片腹痛いぜ?勝利いただきだぁぁーっ!!」

 

智絵里「ーーーーーーー今っ」

 

キリト「アスカ離れろ!!」

 

>>>イプシロンが体勢を低くし、ヴァンパイアキャットに足払いのようなものを繰り出した。

 

アスカ「キックなんてヴァンパイアキャットにゃ効かなーーー」

 

ザンッ!!

 

>>>何かが、刺さったような、めり込んだような音がした。

 

キリト「アスカ! LBXの足に…!」

 

アスカ「ーーーなっ!?」

 

>>>ヴァンパイアキャットの踏み出した右足の側面にはーーーさっきイプシロンが捨てたはずのブリザードエッジが一本、刺さっていた。

 

コウスケ(捨てたふりをしてダガーを片足で踏みしめ、それを踏んだまま足をスライドさせてアスカのLBXの脚部突き刺したのか…!)

 

アスカ「はんっ、この程度で俺がひるむわきゃねえだろ! 必殺ファンクション!」

 

<INFO>アタックファンクション:デビルソウル

 

智絵里「遅いですっ、必殺ファンクション」

 

<INFO>アタックファンクション:明鏡止水

 

キリト「剣の必殺ファンクション…!?」

 

>>>ヴァンパイアキャットが強力なエネルギーを撃ち放つその前に、イプシロンはダガーを片手剣に見立ててソード系必殺ファンクション・明鏡止水を発動ーーー急接近して斬り裂き、撃破した。

 

アスカ「うおあああ! 俺が負けたー!?」

 

>>>ライフが無くなりブレイクオーバーして倒れ込んだヴァンパイアキャットに、イプシロンは近づきーーー

 

智絵里「確か、鬼も倒せるなら……これ、お借りしますねっ」

 

>>>ーーーその手に握られていたトリプルヘッドスピアーを取り上げ、OZシールドとともに構えた。

 

キリト(こんな早さでこちらが追い込まれるとは……! アスカは敗北、コウスケもおそらく瀕死か……僕が引き付けるしかないね)

 

智絵里「てゃぁぁーーーっ」

 

>>>イプシロンが急に左へと駆け出す。 警戒しつつも、トマホーク片手に追い掛けるデクーOZ。

 

智絵里「ーーーそこ、ですっ!」

 

<INFO>アタックファンクション:ライトニングランス

 

キリト「残念。こっちのジャンプ力を舐めないでもらいたいなーーー」

 

>>>鋭い槍の閃光を脅威の跳躍で、デクーOZが回避したーーー直後、後ろで爆発音が響いた。

 

コウスケ「くっ……すまない、風摩キリト……」

 

>>>真っ直ぐに放たれたライトニングランス。 見計らって智絵里が放った角度は、一直線上にデクーOZとルシファーが並んだ位置だった。

 

キリト「僕が攻撃をかわすのを見越して、この位置で打ったのか…!?」

 

智絵里「いえ…この角度なら、お二人どっちかには命中するかなって思って……」

 

コウスケ「キリト、ルシファーからネメシスシールドを回収してくれて構わない。 何ならヘブンズエッジも使ってくれ」

 

キリト「ああ分かった、盾を遠慮なく拝借するよ!」

 

司会「おぉっと、これは予想外の展開だ! アイドル緒方智絵里、古城アスカのヴァンパイアキャットと神谷コウスケのルシファーを撃破! 風摩キリトとの一騎打ちにまで持ち込んだァ!」

 

  ワアァァーッ!!

 

 

 

ーーーTO社・遠隔制御室ーーー

 

飛鳥「何事もなく無事帰還、と。 ミッション完了、コントロールポッドとの接続を解除」

 

>>>飛鳥達のLBXは戦利品を手に、タイニーオービット社へと戻って来た。

 

結城研介「みんな、お疲れさま。 いやぁすごいや、LBXの操作は子どもの方が長けている事は周知の事実だけど…まさかコントロールポッドまでここまで上手く扱えるなんて」

 

>>>丁度その時、制御室のドアが開き、石森里奈が現れた。

 

里奈「あら皆んな、お疲れ様。飲み物を持って来たから、これ飲んで休んでね。 ちょうど今、智絵里ちゃんも頑張ってるわよ」

 

みく「智絵里チャンのバトル、今どうなってるのにゃ?」

 

里奈「アスカちゃんとコウスケ君の機体をブレイクオーバーさせて、今はキリト君のデクーOZと戦ってるはずよ」

 

飛鳥「…え? 待ってくれ、今ブレイクオーバー<させて>と言ったような……智絵里が、二機どちらも?」

 

里奈「正確には、相手の攻撃を跳ね返したりしてダメージを与えていたけれど…どちらもトドメをさしたのは智絵里ちゃんだったわ」

 

比奈「あのナルシストがどういうやられ方したのかは、不謹慎ながら気になるっスね」

 

唯「ねー、用事終わったんだしバトル見よ? 見たい見たーい!」

 

里奈「そういうと思って液晶モニタを持って来ているわ、さてーーー」

 

>>>里奈が電源を付けると、セレモニー会場の中継の様子が、映し出されたがーーー

 

飛鳥「何が、起きた…!? 互いの装備が、滅茶苦茶なんだけど……」

 

 

>>>時は、智絵里がキリトとの一対一にまで持ち込んだ辺りまで遡る。

 

 

キリト「OZトマホークの斬れ味を作戦の為に高めておいてよかったよ、トリプルだか何だか知らないがそんな槍も真っ二つだ!」

 

アスカ「オイ!どさくさに紛れて俺の槍と弟の努力をディスんじゃねーっ!」

 

智絵里(トマホークが、この槍の三叉になっていないーーー柄の部分に当たったら多分折られてしまうっ………だったらっ!)

 

>>>智絵里は急接近してくるデクーOZと同じく高速で迫り、その手の槍でーーーーーーデクーOZの持つ盾・ネメシスシールドを貫いた!

 

キリト「なんだ、僕から防御力を削ごうってのかい。 面白いねぇ、これはどちらかの武器がクリーンヒットした方が、即勝ちだ!」

 

>>>イプシロンは盾を突き刺したスピアーを手にしたまま後方へと下がり、それを地面に勢い良く叩き降ろした。

 

キリト「……?」

 

智絵里「キリトさんの防御はわたしが奪って力にしましたっ…攻撃は最大の防御ですっ」

 

キリト(なるほどねえ、アレを振り回してデクーOZの装甲を強引にカチ割ろうってのか……だったらこっちにだって手はあるさ!)

 

キリト「ーーー食らえ!」

 

<INFO>アタックファンクション:パワースラッシュ

 

>>>キリトの判断は早かった。彼は距離を取ったまま打てる技を即座に選択した。 

 

>>>里奈達がモニターで見たのはこの辺りで、智絵里が盾の刺さった槍を構えているのを見て不可解に思ったのだった。

 

智絵里「そうですよね、そんな気がしてましたっ…………必殺ファンクションっ!!」

 

>>>智絵里がCCMに入力した瞬間ーーーイプシロンからは凄まじいエネルギーが発せられた。

 

アスカ「このすげー圧のある必殺ファンクション…まさか!」

 

<INFO>アタックファンクション:インパクトカイザー

 

>>>今日戦った敵がやった<別の武器に見立てる>という行為を、智絵里も荒業ながら実行したのだ。

 

>>>キリトのデクーOZが放ったパワースラッシュのすぐ下を、地響きを起こしながらインパクトカイザーの攻撃がすれ違った。

 

ーーーキィンッ!

 

>>>先に命中したのはデクーOZのパワースラッシュ、イプシロンは堪らず武器から手を離し後ろの城壁へと激突した。

 

>>>そしてパワースラッシュを打ったばかりの無防備な体勢のデクーOZを、インパクトカイザーの獄炎が飲み込んだ。

 

\ ピコーン! /

 

キリト「ブレイクオーバーさせられた、か……だが、一矢報いる事が出来ていたら、引き分けになるんだけどーーー」

 

>>>壁にぶつかり、うずくまった状態のイプシロン。 そのイプシロンがーーー

 

>>>自らの足で、しっかりと立ち上がった!

 

司会「決まったぁー! バトルロワイヤルの勝者は、なんと! アイドル・緒方智絵里だぁぁーーっ!!」

 

   ワアァァーッ!!!

 

 

智絵里「はぁ…はぁ……はあぁぁ〜っ」

 

<イプシロン・残りLP:8>

 

智絵里(ほんとうに僅差だったけど…Eちゃんが、イプシロンが勝てたっーーー!)

 

 

ーーー遠隔制御室ーーー

 

唯「何かすごすぎて言葉見つからないんだけど…」

 

比奈「彼女、アタシとバトルした時とは比較にならない位に上達してたんスね…」

 

みく「なんやこれ……」

 

飛鳥「キミが智絵里にLBXを送ってから、まだ大して時は経っていない筈…だよね?」

 

研介「ああ、それに…プロのLBXプレイヤーでもあそこまでーーー自分の手足のよう、いやそれ以上にあれだけ自在なLBX捌きが出来る者はそう居ないんだけど……」

 

唯「そういえばここのしゃちょーさんは? 帰って来てからまだ会ってないんだけど、唯たち駆り出しといてお疲れさまの一言もナシー?」

 

   ウィーーン

 

拓也「それに関しては、本当に悪かった。 改めてお疲れ様。 取り急ぎ、確認すべき事が出来たのでな……」

 

飛鳥「A国 副大統領アルフェルド・ガーダインの事だね?」

 

拓也「その通りだ、知合いにツテが居てね。 緊急で調査してもらったんだが……ガーダインは今も牢獄の中で、脱走した過去も形跡も一切ない。 無理を言ってDNAも調べさせてもらったらしいが間違いなく、今刑務所に居るのは<本物の>ガーダインだ」

 

比奈「ってことは、あの部屋で会ったのは……偽物、ってことっスか?」

 

拓也「分からない…高性能なホログラムだったのかもしれない、何せその部屋は薄暗かったと聞いている。 ーーだが、かつてガーダインと裏で繋がっていた連中が名前を変え悪の組織を再形成し…何かを起こそうと画策しているのは、今回の件でほぼ間違いなくなった」

 

飛鳥「元々は政府の要人…黒い人間だったという事は、きっと裏であちこち繋がっていただろう。 さすがにその連中全てを見つけ出して排除するのは不可能だ、しかしーーー」

 

拓也「…うん?」

 

飛鳥「社長さん、確かにLBXは大好きだがボク達はそもそもアイドルだ。 …悪いが明日の営業に向けてボクはそろそろお暇させてもらおうか」

 

拓也「おっと、それもそうだな…すまない。 送迎の車を出そうか」

 

飛鳥「いや、有難いが結構だ。気持ちだけ受け取っておこう。 道中、幾つかの用事を済ませてから帰るつもりだからね。 ああ、それとーーーキミ」

 

研介「…えっ?何だい?」

 

飛鳥「さっき回収して来たデクー、最低でも一体は新品同様のメンテナンスを施して智絵里へ贈呈するように。 彼女は今回それだけの目を見張る活躍をした」

 

研介「ああ分かったよ、約束しよう。 我が社でメンテして、必ず彼女に届けるよ」

 

拓也(目を見張る活躍……まさにその通りなのだろうな。 キリトが送って来た今回の戦闘報告書とセレモニーでのLBX捌きだけで、彼女の凄さは既に伝わっている。 現地に居た飛鳥やキリトは、その凄さをより一層自身の肌で感じただろうな)

 

飛鳥「では、失礼ーーーそれから最後に、宇崎拓也。智絵里に目を付けるのは良いが彼女の本業はアイドルだ。 今後、彼女の最も輝ける今の居場所を少しでも蔑ろにするような真似をしたら、幾ら大企業の社長とはいえボクは許さない。 その時はボクのLBXによって貴方の首が飛ぶであろう事を忘れるなよ、物理的な意味で…ね」

 

ウィーーン

 

みく「わざわざあんにゃ物騒な言い方しなぬても…」

 

拓也「…いや、彼女の言った通りだ。 今回のようにこれだけ大規模な作戦へ、現役の芸能人を軽率に駆り出すなんて事はそうそう出来ないだろう」

 

唯「でもゆいはオフなら出撃しちゃうよ? ああ、他のトコでギャラとか貰ったら怒られそうだから、報酬はディナー奢りとかで★」

 

みく(ちょっとみくは戦力になれる自信が無くなったのにゃぁ……)

 

比奈「芸能界っていうかアイドル仲間だけ見ててもやっぱり、LBX好き・マニア・実力者は中々に多いっス。 親睦を深めたりする際にも打ってつけだったりするので、LBXバトル」

 

拓也「確かにバトルを通じて熱量も上がり、打ち解けやすくなったりもするか…」

 

比奈「そこでなんスけど、このメディエイター関連の話……他のアイドル仲間には、どこまで話しても許されるっスか?」

 

拓也「そういう事か、うーん……」

 

>>>拓也は目を閉じて悩み込む。

 

拓也「君達を巻き込んだのは余りにも安直すぎた…先ほどの飛鳥の言葉で、俺も少しは我に返ったよ。 しかし、これ以上の人間を巻き込む訳には……」

 

比奈「じゃあ、自分からひとつ提案があるっス」

 

拓也「ーーー提案?」

 

比奈「はい。 拓也さんは、アタシ達の事を信用してるっスか?」

 

拓也「無論だ。 実際に君達は危険を承知で今回の作戦にも全面的に協力してくれた」

 

比奈「じゃあ、アタシが信頼している人間には当然、話しても良いっスよね? もちろん、他言無用だと伝えるっスから」

 

拓也「……それなら、そうだな。 すまない、そしてありがとう。 まさか君の方から打診してもらう事になるとは…俺もまだまだだな」

 

比奈「いえいえっス。それじゃ自分も仕事が近いので…シーカーの方は、今日はあがりって事で。 では!」

 

みく「それじゃ、みくも帰るにゃ!明日は野外ロケなので呼び出されても行けませーん、おつにゃ!」

 

ウィーーン

 

拓也「おや…君は帰らないのか?」

 

唯「まぁねー。しゃちょーさん。聞いてもいい?」

 

拓也「何だ? 内容にもよるが…」

 

唯「ディテクター事件の時みたいに、えーと…ニックス?には手伝ってもらえないのー?」

 

拓也「NICSか、あぁ。 じつは今回のメディエイターに対しては、意図的にシーカーだけで行動しているんだ」

 

唯「なんでー? 戦力増える方が楽じゃん」

 

拓也「あくまで一企業の内部にある怪しい組織を調査するだけで天下のNICSに協力を要請するのは色々と難しいんだ」

 

唯「副大統領出て来たんでしょ? あ、元・副大統領か!」

 

拓也「本物が刑務所で服役している事実がある限り、こちらも迂闊な発言をするとむしろ不審だと疑われてしまう…」

 

唯「なるほどー…よくわかんないけど、大変なのは伝わったよ! ゆいも、信用できる相手に話すかもしれないけど、相手が嫌がったらさすがに協力はしてもらえないから……そこんとこ、よろ?」

 

拓也「当然だとも。 本人の意志が第一だ」

 

唯「おっけー。んじゃ今日は解散ってコトで、まったねー」

 

ウィーーン

 

拓也「アイドルとはいえ、それ以前に1人の人間。 個性は様々、多種多様という事か…現時点での新メンバーの機嫌をそこなわないようにするのだけでも、骨が折れそうだ」

 

 

 

ーーーセレモニー後・会場近くの公園ーーー

 

 

智絵里「無事にセレモニーが終わって、良かったですよねっ。メディエイターも、逃げてったみたいだし…」

 

アスカ「ジオラマ内であれだけ散々暴れ回って熱い戦いを繰り広げた後の感想がそれかよ!?」

 

キリト「仕方ないよ。彼女達はプロLBXプレイヤーじゃない…芸能人、アイドルだ。 観客全員が無事でライブを終える事が何より大切なんだろうさ」

 

アスカ「わっかんねえなー。 それにしてもまた妙な輩が現れたのかよ、ちぇっ俺にも一枚噛ませろよなー」

 

仙道「現役プロとして、サイバーランスの顔となってるお前に水を差すほど宇崎拓也も無粋じゃなかったという事じゃないかねェ?」

 

小梅「そういえば…あの神谷、って人は…どこ……?」

 

キリト「彼なら帰ったさ。 社内のデータをチェックして、組織と関連のありそうな人物が居ないか早速探すんだと」

 

アスカ「さすがにクリスターイングラムの人間じゃなきゃそこまでは出来ねーなぁ……そうだ、智絵里とかいったよな?CCMのアドレス交換しよーぜ!」

 

智絵里「えっ? い、いいですけど…?」

 

アスカ「いつかタイマンでお前とバトって、今度は………絶対、俺が勝ってやる!」

 

智絵里「は、はい……よろしくお願い、します?」

 

仙道「あまり気にするな。 このアホはただのLBXバトルジャンキーなだけだからな」

 

アスカ「誰がアホだ、誰がー!」

 

智絵里「あのー…CCMアドレスは…」

 

アスカ「おう、するする! ほいっ、と」

 

ーーーPiPiPi!!

 

アスカ「ーー完了っ! そんじゃ俺ももう行くわ!」

 

キリト「コウスケにも言ってあるがお前も、何か分かった事があったら俺か宇崎拓也、もしくはこの仙道ダイキに知らせろ。 こいつらアイドル連中に伝えるかどうか、伝えるタイミングはこちらで判断する」

 

アスカ「りょーかいっ! じゃなーっ」

 

>>>ミゼル事変の頃よりずっと背丈と髪の伸びたアスカだったが、その内面はちっとも変わっていないようだ。 ぶんぶんと手を振ると元気よく駆け出して行き、あっという間に見えなくなった。

 

キリト「今日はこれで解散だ。 今回の作戦のレポートは俺がきっちり提出しておくから、君達は帰りな」

 

仙道「ああ。遠慮なくとっとと帰らせてもらうさ」

 

>>>そう言うとダイキは、キリトの顔すら見ずにスッと立ち上がり、去ってしまった。

 

智絵里「…あのっ」

 

キリト「何だい?あぁーーーもしかして欲しがってたデクーの事かな。 暫く待ってくれ、今頃メンテしてる最中だろうからさ」

 

智絵里「い、いえっ!そうではなくて…」

 

>>>智絵里はじっとキリトの目を見て、言う。

 

智絵里「飛鳥ちゃん…あぁ、二宮の方の飛鳥ちゃんから聞きました。 キリトさんは物凄くLBXに詳しくってカスタマイズも独創的かつ天才的だ、って」

 

キリト「そりゃどーも」

 

智絵里「わたしっ、イプシロンがもっと…なんて言えばいいんでしょうか、過ごしやすい?ーーーいえ、バトルとかもしやすい環境にしてあげたいんですっ」

 

キリト「環境も何も…あの本田と前川ってやつらに教わったらしいし、君のイプシロンは今もまともにメンテナンスしてあるけど?」

 

智絵里「そうではなくてっ…なんだっけ、モーター?とかバッテリー?とか、何が良いのかとか、わたし全然分からなくて」

 

キリト「なるほど…?だが、結城研介が中々良いコアパーツを仕込んでくれてあるようだよ。 LBXの挙動や反応速度で内部に何を積んであるかは、ある程度分かる」

 

智絵里「だったら、今度もらう予定の黄色い子のカスタム、教えてくださいっ」

 

>>>力強く両拳を握り締め、立ち上がって智絵里は言った。

 

智絵里「今のわたしが変わらないと、これから先もーーーわたしは、イプシロンの運動神経に助けられてるままなんです…っ」

 

キリト(性能やスペックと言わないところが、何とも初心者感満載というか……)

 

智絵里「なのでっ! 教えてくださいっ、お願いしますっ…!」

 

>>>瞳をぎゅっと閉じたまま智絵里は、ぺこりと頭を下げた。

 

キリト(今まで、順風満帆ち勝ち抜いている反面、彼女がーーーこいつの性能に頼り続けている自分自身に、歯痒くなったという事か……)

 

キリト「僕は構わないと言いたいところだが、段階を踏まえてほしい」

 

智絵里「段階、っていうのは…えっと?」

 

キリト「雑誌などでコアパーツについて学ぶ、事務所かどこかの周りの人間に色々と聞いて覚える。 いきなり僕のようなプロに教わっても飛躍し過ぎてて、確実に今の君には何も身に付かない。 だから段階を踏まえて、事務所か近所のコアパーツマスターとでも呼ばれるようになったら、その時は改めて僕にお願いしに来るといい」

 

智絵里「わ、わかりましたっ!ありがとうございますっ。 あっそれじゃわたし、失礼しますねっ」

 

>>>小走りで駆けてく智絵里を見て、キリトは呟いた。

 

キリト「LBXの知識面に対して、自ら学ぼうとし始めた…か。 今後の、彼女のLBXプレイヤーとしての成長がますます楽しみになって来たね」

 

 

 

 

 

< 解説‼︎ ダンボール戦機C‼︎ >

(解説ボイス:J)

 

〜 メディエイター 〜

 

自らを調停者と名乗り暗躍し始めた、謎の組織・メディエイター。

 

そのメンバーに、かつて世界を支配しようとしていたアルフェルド・ガーダインと、その側近ビショップが居る事が判明した。

 

しかし、宇崎拓也から頼まれた八神英二らによる調査の結果、ガーダインは今も服役中であり脱獄していない事が確認された。

 

地下で彼女達が見たのは超高性能ホログラムによるものだったのではという予想も挙がったが、現段階での詳細は不明。

 

しかしこの一件により拓也らシーカーは、かつてアルフェルド・ガーダインに関わっていた何者かが組織を形成したのではという推測に辿り着くことが出来たのだった。

 

 

ーーー次回情報も、見逃すな!



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ダンボール戦機 C(シンデレラ) 18

ダンボール戦機 C(シンデレラ) 18

 

 

 

 

<< 第18章 Masque:Rade-K >>

 

>>>サイバーランス社セレモニーのエキシビジョンマッチに緊急参戦してから数日後ーーー智絵里は、北条加蓮と共にミニライブ&トークショーを行なった。

 

>>>今日のイベントをやり遂げ、寮へと帰るため楽屋から出ようとした智絵里に、加蓮が声を掛けた。

 

加蓮「見てたよ〜智絵里、こないだの」

 

智絵里「え?何の話ですか…?」

 

加蓮「なにって…ついこないだのサイバーランスの次世代アンドロイドセレモニーの時に智絵里、LBXバトルに参加してたじゃない! しかも完全勝利っ!!」

 

智絵里「あー、それでしたか…あれはまぁ、成り行きというか、巻き込まれたというか……」

 

加蓮「ふぅん、そうなの? めちゃめちゃ強かったし、中継だと智絵里も本気の目付きだったように見えたけど?」

 

智絵里「それは…本気出しますよっ。 誰だって、負けてもいいなんて思ってLBXをバトルに送り出さないと思いますけど…」

 

加蓮「それもそうだけど、まさか智絵里もLBXやってて、おまけにあんなにも強いだなんて私知らなかったからさー…」

 

智絵里「強いというか、よいしょ……この子は、じつは頂き物で、すごく優秀な子らしいんですっ。 なので、わたしが強いというよりも、ほとんどこの子の力のおかげというか……」

 

加蓮「中継でも見てたけど、そのイプシロンってLBX見た事ないなー。 一点モノ?」

 

智絵里「えーと、元はそうだったらしいんですけど……それとは色とか中身は変わってて、アーマーは複製?されたものらしくて」

 

加蓮「なるほどレプリカかー。だけどキレイだよ、色合いとかデザインとか中々いけてるね」

 

>>>加蓮はイプシロンを見ると鞄を持って立ち上がった。

 

加蓮「急いで帰って、女子寮の私の部屋に来て?  …アタシ、智絵里のイプシロンとバトルしたくなっちゃった!」

 

智絵里「あの…それは良いんですけど、予定だと今日お届け物が届くはずで……」

 

加蓮「ーーあ。じゃあ私が智絵里の部屋におじゃましちゃっていいかな?」

 

智絵里「はいっ、お願いしますっ」

 

加蓮「じゃ帰ろ帰ろ、ほら早くっ」

 

智絵里「わわっ、押さないでくださいよ危ないですって」

 

>>>それから暫くして、女子寮に戻った智絵里。 加蓮も、ラフな服装に素早く着替えて智絵里の部屋へとやって来た、

 

智絵里「わあぁ…届いてるっ」

 

加蓮「って………デクー? しかも6機も?」

 

智絵里「ちょっと色々あって、見た目が可愛いから欲しいっていったら、譲ってもらえたんですっ。 綺麗にお手入れまでしてもらって…全員、今から飾りますっ」

 

加蓮「確かに、新品じゃないかと思うくらいピッカピカの光沢ね……良かったね、智絵里!」

 

智絵里「はいっ! あ、そのうち1人は今後バトルに出てもらう予定なんですけどねっ」

 

ドスッ  ドスッ 

 

>>>部屋の棚の上に、順調にデクー達を並べていく智絵里。

 

加蓮「なんていうか、圧巻……。 6つも一気にデクーが並んでるなんて、ショップや企業ブースか何かみたいだわ…」

 

智絵里「かわいいですよねっ、肩の辺りがぽこぽこしてたり。 どっしりした体型はクマさんみたいですっ」

 

加蓮(かわ、いい…? まあ感じ方は人それぞれだし………)

 

加蓮「まあいいわ智絵里、LBXバトルしましょ。 勿論するよね?」

 

智絵里「あ、はいっ。 …あ、でもまだDキューブーーージオラマ持ってないんですよ、わたし」

 

加蓮「心配ご無用〜、私のを持って来たから。 さ、始めましょーーーDキューブ・展開っ!!」

 

>>>加蓮がてのひらに乗せたDキューブに付いたスイッチを押して床へ転がすと、たちまちジオラマが展開しーーーバトルフィールドがセットされた。

 

智絵里「今回もお願いっ、イプシロンっ」

 

加蓮「久々に、本気で行くわよーーーマスカレードJっ!!」

 

 

<フィールド:闘技場>

 

 

>>>智絵里のイプシロンの前に降り立ったのは、ミントグリーンカラーで彩られた機体だった。

 

智絵里「マスカレードJ……?」

 

加蓮「過去のアルテミスーー世界大会に出場した、謎の仮面の男マスクドJの使っていた、元々はハンドメイド機体よ。 大会でのその活躍で機体は一躍人気になって……彼から技術提供を受けたタイニーオービットが個数限定で売り出したのよ」

 

智絵里「レアLBXなんですねっ」

 

加蓮「まぁね? でも、どうだろなー…そっちのイプシロンに比べたらレアリティは落ちるのかも? ちなみにまゆも持ってるわ、一緒に買いに行ったの」

 

智絵里「なるほどー、あの時のユニットがMasque:Rade(マスカレード)だったから……あ。じゃあ、まゆちゃんもLBXバトルを?」

加蓮「ううん、あの子はバトルせずに飾ってるだけね。 ……その代わり、真っ赤なペイントを物凄く丁寧にしてあって、いつ見掛けても塵一つ付いてないわ」

 

智絵里「まゆちゃんらしいというか、さすがですね……っ!」

 

加蓮「ちなみに本来のマスカレードJのカラーはオレンジ色よ。 私も自分らしさを出そうと思って塗ったのよ」

 

智絵里「綺麗ですっ。 なんだか透き通るような色合いで、神秘的で…加蓮ちゃんにすごく似合ってると思いますっ」

 

加蓮「お褒めに預かり光栄です、なんてね。 さ、どれだけ褒めてもバトルは手抜かないからね!」

 

智絵里「もちろんですっ。 思いっきりやりましょうっ」

 

 

  バ ト ル ス タ ー ト

 

 

>>>智絵里のイプシロンはいつも通り、ダガー・氷皇ブリザードエッジを構える。

 

加蓮(見た目はただのナックル……けど智絵里は、状況次第で剣としても斧としても使いこなしてたーーー油断はできない!)

 

>>>加蓮のマスカレードJはブラッディレイピアを構え、舞い踊るようにイプシロンの周りを回る。

 

智絵里(早い…しかもレイピアしか装備せず盾が無いから、たぶん機動力を更に高めてる……ストライダーかなぁ)

 

加蓮「ーーーはっ!」

 

>>>加蓮のCCM入力速度が加速してゆく。

 

>>>それに合わせてマスカレードJは更に速度を上げ、回転しながら時折レイピアでの突きを放って来た。

 

智絵里「まずい……っ! 早すぎて回避も受け流しも間に合わないっ…!!」

 

加蓮「…あれ? これならアタシ、もしかして古城アスカや神谷コウスケにも勝てるかな?」

 

>>>喋りながらも加蓮のCCM入力は止まらない。むしろ尚加速し続ける一方だ。

 

>>>智絵里も入力速度自体には目を見張るものがあるのは確かだがーーー相手の攻撃のタイミングと軌道が見えないまま回避する事は出来ない。

 

>>>肩や膝、ボディを突かれる度に、イプシロンのライフポイントは減少していく。

 

加蓮「あれあれ?智絵里、手ぇ抜いてなーい? このまま勝っちゃうよ私〜」

 

>>>軽口を叩きつつも、加蓮のマスカレードJはスピンと攻撃の手を緩めない。 それもそのはずーーー

 

加蓮(あれだけのバトルを魅せられる人間の実力がこの程度のワケがない、たぶんどっかで急に爆発して逆転の方法を思い付く…!)

 

智絵里「加蓮ちゃんの、LBX…早い、です………」

 

智絵里(ぁ、あれっ…? なんか、CCMのカメラ映像がーーー薄暗く、なって……来ーーーーー)

 

ドサッ!

 

>>>突然大きな物音がしたので、加蓮はマスカレードJをイプシロンから離して前を見るとーーーー頭を抱えてうずくまる智絵里の姿がそこにはあった。

 

加蓮「ーーー智絵里! ウソ、大丈夫!?」

 

智絵里「す、すみませっーー視界が何だかチカチカして……うぅ」

 

加蓮「バトルやめるよ、いいよね! それから智絵里はすぐ横になって!自分の部屋なんだからほら早く!」

 

智絵里「は、はい……さすが加蓮ちゃん、看病のスペシャリストですねっ……」

 

加蓮「厳密には、される側だったけどね。 熱はー……無いし、やっぱり熱中しすぎてCCMの画面酔いかなぁーーーーうん?」

 

>>>加蓮は自分の手を智絵里の額に当て熱が無い事を確認し、手を離した。 

 

>>>その時、一瞬だけ薄目を開けた智絵里の瞳の中にーーー何か光の筋のようなものが走ったのが見えた…気がした。

 

加蓮(気のせい……かな?)

 

>>>智絵里はすやすやと眠り始めた。そのまま彼女が起きる約1時間くらいの間、加蓮はずっとそばについてあげていた。

 

加蓮(あれだけハードなバトル、しかもメディアに映る場面ーーー絶対に失敗できないバトルをやり切ったばっかだってのに、アタシったら勝手にテンション上がって振り回して……ごめんね智絵里)

 

>>>ふと、棚の上に等間隔に並べられたピカピカのデクー達へと目をやった加蓮。

 

加蓮「この無骨なデクーのこともかわいいって言ってあげられるような子なのに…。 バトルが強い事と、バトルが好きな事は、イコールじゃないよね」

 

>>>加蓮は、そのデクーのひとつをそっと手に取った。

 

加蓮(後でちゃんと戻すから、ちょっと失礼……あれっ?)

 

>>>やけに軽い。 ブロウラーフレームゆえそれなりに重さはあるものの、やはり本来のLBXの重さではない。

 

加蓮「ホントごめーん智絵里、ちょっと使わせてもらいまーす………」

 

>>>小声でそう言うと、手に取ったデクーと加蓮のCCMを同期させてみるとーーー

 

< カスタムエラー >

 

加蓮(そりゃどうりで軽いわー………。 CPUもメモリもバッテリーもモーターも、何も入ってない、お人形状態…か)

 

>>>加蓮は改めて智絵里に申し訳なさそうな顔をしながら見ると、デクーをそっと元あった位置へと戻した。

 

加蓮(智絵里はただ一生懸命にバトルしてただけ……LBXバトルやろうよーってノリの子じゃないもんね、きっと。 確かに芯の強い子だかど、もっと優しい気持ちを持ってるんだ。 そうでないとこんな風にデクーを飾ったりしないでしょ)

 

>>>等間隔に置かれたデクーは、どれも皆違うポーズを取っている。膝を投げ出してぺたりと座っていたり…腰に手を当てて、ふんぞりかえっていたり…同じ見た目のはずのそれらが、別々の表情をしているように見えた。

 

智絵里「………あれ、わたし寝ちゃってましたか? すみません…」

 

加蓮「ああ、気がついた? いいっていいって、大体私が無理言ったんだしーーー」

 

智絵里「あの…………バトルの続きーーー」

 

加蓮「大丈夫大丈夫、気にしてないからゆっくり休んで。 またいつかしよ?」

 

智絵里「い、いえっ…バトルの続きをーーーしたいですっ!」

 

加蓮「………智絵里?」

 

智絵里「加蓮ちゃんは、わたしがセレモニーでバトルしてるのを見てーーわたしとバトルすればきっと楽しいだろうなって、思ってくれたんですよね…?」

 

加蓮「…そ、そうだけど? 智絵里となら、かなり白熱するバトルになりそうだなーって」

 

智絵里「だったら、わたしっ……その期待に全力で応えたいんですっ」

 

加蓮「智絵里………」

 

加蓮(そうだ…智絵里は、この子はーーー何かを途中で、投げ出すような子じゃない………!)

 

加蓮「わかったわ。 だけど、二つーーお願いがあるわ」

 

智絵里「お願い………二つも?」

 

加蓮「ひとつ!もしまた具合悪くなったらすぐに中断すること!」

 

智絵里「は、はいっ」

 

加蓮「そしてもう一つ。 完全仕切り直しとして改めて勝負したいから………イプシロン君のリペアを完了させてからバトルを開始することっ!」

 

智絵里「加蓮ちゃん…! は、はいっ!」

 

加蓮「知っての通り私のLBXは無傷だから。 今のうちにメンテグリスだけ軽く差して動作確認だけしとこっと」

 

智絵里「イプシロン………がんばろうねっ」

 

>>>修復を終えたイプシロンを見つめる智絵里の目は、真剣だった。

 

加蓮「さあ再開しましょ? 行きなさいマスカレードJっ!」

 

智絵里「イプシロンっ!」

 

 

  バ ト ル ス タ ー ト

 

 

智絵里「なんだろ………寝て休んだからかな? なんだか、体力が有り余ってるようなーーー今のわたし、力がみなぎってますっ」

 

加蓮「よーし、相手にとって不足なーし!ってことだよね? 行くよっ!」

 

智絵里「加蓮ちゃんのとんでもない速さは分かりました………始めからフルパワーで行きますっ、Vモード起動!」

 

>>>INFO:ADVANCED V MODE

 

加蓮「へぇー、特殊モード搭載してたんだ…智絵里も」

 

智絵里「ーーーえっ?」

 

加蓮「こういうこと〜♪」

 

Pi!!

 

>>>INFO:STRIKE MODE

 

加蓮「こっちも速度アーップ!」

 

智絵里「コアスケルトンに内蔵?されてないと、Vモードとかは使えないんじゃ……」

 

加蓮「あらら、知らないの? 専用のチップさえ積めば、簡単に使えるようになるんだよー。 これでこっちも更に早くなった、スピードの差はそう簡単に埋めさせないからっ」

 

智絵里(さっき気を失う前ーーー何か、掴めそうな気がした………それを信じて、まっすぐ前を向いて、戦うしかないっ!)

 

智絵里「とりゃぁぁーっ!」

 

>>>Vモードで出力が跳ね上がったイプシロンはダガーを振るうがーーーマスカレードJには擦りもせずに呆気なく避けられ、ガラ空きの背中に回転蹴りを浴びせられて………地を転がり、土煙が上がった。

 

智絵里「は、速…………速すぎですっ!」

 

加蓮「ただでさえバカみたいに速いから、ストライク使うとこっちも一苦労なんだよねー。 ちゃんと目で追って操作できるまで結構練習したんだよ?」

 

智絵里(速さではそもそも勝てないっ………!)

 

加蓮「さぁ、またこっちから行くよっ!」

 

>>>加蓮のマスカレードJが、脚部に付いたホイールで鮮やかに回転しながらイプシロンに近づき、レイピアでの斬撃を開始した。

 

智絵里(さっき気を失う少し前に感じた、あのーーー周りが暗くなる感じ………今度はCCMのカメラじゃなくて、イプシロンを直接肉眼で見て、意識を集中してっ………)

 

加蓮「どうしたの、力みなぎってるんでしょ! そんな棒立ちじゃ、さっきみたいにライフがガンガン減るわよー!」

 

智絵里(ーーー!! 何かが、来た……っ!)

 

>>>瞬間ーー智絵里の目に映るイプシロンは、何かに押さえ付けられでもしているのか足取りが異常に重くなり………まるでスローモーション映像を見ているようだった。

 

>>>対して智絵里から見た加蓮のマスカレードJの動きは、残像のようなーーー言うなればピンボケ動画みたいな状態として移っていた。

 

智絵里(まるで……薄目を開けながら街灯のない夜道を歩いてるみたい………)

 

加蓮「随分モタモタしてるわね? そろそろ決めちゃおっかなーーーえ!?」

 

>>>息巻いた加蓮がちらりと智絵里の顔を見て驚愕した。

 

>>>智絵里の瞳の中で、2本の閃光が波打ちながら駆け巡っていたのだ。

 

加蓮「ーーち、智絵里!大丈夫!?」

 

智絵里「問題ありませんから、続けてくださいっ!」

 

>>>いつもより語気の強めだった智絵里の返答に若干戸惑いながらも、加蓮は攻撃を再開する。

 

加蓮「ーーーそこっ!!」

 

>>>マスカレードJの、レイピアから放たれる鋭い一閃。

 

>>>………その僅かな煌めきが、智絵里の目に映った気がした。

 

智絵里(見えないけど多分、そこに居るっーー!!)

 

>>>イプシロンから見て左前方にほんの少しだけ、ちらついた煌めきを頼りにーーー重い足取りのまま上体を僅かに逸らす。

 

>>>それと同時に、ダガーを握る重い左腕を渾身の力で振り上げ、レイピアがあるであろう何も無い空間に叩き落とす。

 

ーーーキィンッ!!

 

智絵里(何も見えないっ………けど、絶対当たった!)

 

加蓮「えっウソ!?」

 

>>>実際、そこからマスカレードJの持つレイピアの突きは放たれておりーーー智絵里はイプシロンに突如感じた重みに逆らわず、むしろ合わせるようにして最小の動作で、加蓮の攻撃を弾いたのだった。

 

加蓮(智絵里の目玉の中が現在進行形でトンデモ現象を起こしてるけどーーーそれと、この突然の操作精度の覚醒具合って………やっぱ関係してるのかな?)

 

加蓮「気にしてもしょうがない、もう一度ーーーっ!!」

 

智絵里(前方に居るのは分かるけど、掠れた残像みたいなのしか見えなくて位置を特定できない………それならっ!)

 

智絵里「必殺、ファンクションっ!」

 

加蓮(今度は智絵里から、仕掛けて来る!)

 

アタックファンクション:気功弾

 

ドゴォォーーンッ!!

 

加蓮(地面に向けて打った…! 操作ミスーーーいや、目くらましのつもりね?)

 

加蓮「でも残念、アタシのマスカレードJのカメラアイはコア組み替えの繰り返しで見つけた特別カスタムーーー砂煙の中のイプシロンの影くらい、容易に捉えられるのよねっ!!」

 

>>>加蓮のマスカレードJが地を蹴って最高速でイプシロンへと迫る。

 

智絵里(LBXは依然見えないけどーーー砂埃を割いてくるのを感じた……方向は、わかりましたっ!)

 

>>>智絵里は自分の瞳には何も映っていない、イプシロンの目の前の虚空にサマーソルトキックを放った。

 

ーーーペキッ!!

 

智絵里(ブリザードエッジの片方が何かにーーーたぶん加蓮ちゃんのLBXか武器に当たって、折れちゃったっ………!)

 

ーーーガァン!

 

加蓮(マスカレードJのボディが、智絵里の蹴りでヘコんだ!? 状態はーーーマズっ、ボディをこれ以上突かれたらモーターまで届いてブレイクされるっ!)

 

智絵里(だけど、今ので位置はほぼほぼ分かりましたっ)

 

加蓮(次の手はーーー打たせないっ!)

 

智絵里・加蓮「「必殺ファンクション!」」

 

アタックファンクション:ギロチンカッター

 

アタックファンクション:ストームソード

 

加蓮「ーーーきゃっ!?」

 

>>>智絵里は片方だけのダガーをソードに見立て、落下の勢いを利用しつつーーー錐揉み回転しながら、周りを切り刻んでいた加蓮のマスカレードJの起こす風さえ割いて、そのボディに見事斬撃を命中させた。

 

>>>マスカレードJはブレイクオーバー。 戦闘が終わると同時にーーー智絵里の瞳の中の異変も、視界の異常も、治まった。

 

智絵里「勝った、勝てました……けど、さっきまでの現象は、なんだったんだろう………」

 

加蓮「智絵里、瞳の中がさっきまで大変な事になってたわよ?」

 

智絵里「瞳の………中??」

 

加蓮「二つの光の線がヒュンヒュン動いてて、何かーーー覚醒!って感じだった」

 

智絵里「覚醒どころか、途端に加蓮ちゃんのLBXを目で追えなくなって大変だったんですけど………」

 

加蓮「……どういうこと?」

 

智絵里「あ、いえっ! 今日は、ありがとうございました。 加蓮ちゃんとのバトル、何だかすごく元気出ました」

 

加蓮「あら、そう?なら良かった。 またバトルしようね?智絵里」

 

智絵里「ーーーはいっ…!」

 

ーーー女子寮・飛鳥の部屋ーーー

 

飛鳥「…よし、出来たぞ。ボクの新たなLBXーー」

 

>>>彼女の手の中にはーーー全身迷彩風の塗装を施された、少し不気味なLBXが佇んでいた。

 

<飛鳥の新LBX>

HDパーツ:オシリス

BDパーツ:オーディーン

AMパーツ:アーミージェネラル

LGパーツ:ウォーリアー(迷彩色)

 

飛鳥「完成……っと。 名付けて…Dunkelheit(ドンクェレハィト)ーーー<闇>、だ」

 

 

ーーー女子寮・未央の部屋ーーー

 

日野茜「未央ちゃん、気持ちの方はどうですか!?」

 

未央「……うん! 二人のおかげで私、また立ち上がれたよ! ちえりんにもみくにゃんにも負けない、出遅れたりしないっ!」

 

高森藍子「私たち三人で知恵をぎゅーっと絞って、完成したカスタマイズ………未央ちゃんの新機体。 改めて、見せてもらえる?」

 

未央「うんっ!! ーーー行くよ、あーちゃん!あかねちん!」

 

藍子「おーっ」 茜「お願いしますっ!」

 

ガシャンッ

 

>>>未央の部屋のジオラマに降り立ったのはーーーソルジャーカスタムのLBX。

 

未央「名前、決まりました〜、 ソルジャー真虞那(マグナ)でーっす!」

 

茜・藍子「おぉぉーーっ」

 

茜「まさに正統派の聖騎士!みたいな風格ですよねっ! いやぁー素晴らしいです!!」

 

藍子「やっぱり最終的にアームはトリトーンが1番フィットしたんだね」

 

未央「うん! 軽くて、かつパワフルなアームを追い求めてたから。 元々ワンオフ機だったらしいし、アーマーの性能は折り紙付きだよ!」

 

<ソルジャー真虞那(マグナ)>

 

HDパーツ:ソルジャー

BDパーツ:ソルジャー

AMパーツ:トリトーン

LGパーツ:ソルジャー

 

武器:煌剣オーラブレード

盾 :オーラバックラー

 

茜「カッコいい!まさにこの一言に尽きますっ!」

 

藍子「凛々しいですね、ソルジャーマグナ。 元気いっぱいな未央ちゃんそのものって感じ、かな?」

 

未央「チッチッチッ…あーちゃん、それはちょっと違いますねー。 このソルジャー真虞那には、私に加えーーーあかねちん!あーちゃん!ポジティブパッション三人全員の想いが乗った………私達を体現している、というか我々そのものといっても過言ではないくらいの一品なのですぞ!」

 

藍子「わぁ…夢いっぱいの機体なんだね」

 

茜「我ら二人の想いも乗せて! これから頑張ってくださいね、ソルジャー真虞那さん!」

 

>>>自信を相当に失い掛けていた未央が佐藤心の助言で、藍子と茜にそれを吐露しーーー数えきれないほど三人でバトルとカスタマイズを繰り返して辿り着いた答えが形となったもの。 それがまさにこの、ソルジャー真虞那(マグナ)なのだ。

 

茜「これで我々3名でのユニット活動の際も、万全の態勢でLBXバトルが行えますね!!」

 

 

 

ーーー智絵里の部屋ーーー

 

智絵里「うーん…ダメですっ………」

 

>>>智絵里は先ほど自身に起こった不可思議な現象を再現しようと何度か試みたのだが………あれを再度発現させることは、結局叶わなかった。

 

智絵里「あれは…いったい………」

 

>>>突如、イプシロンの周りの視界が暗転したかのようになりーーー相手LBXの挙動をまるで読む事が出来なくなったのだ。

 

>>>まるで自分の機体だけーーーイプシロンだけの速度がスローになり、周りの世界が超高速で動き出した………そんな感覚だった。

 

智絵里「そもそも、さっき勝てたの自体が偶然だし………あれを自由に使えたところで、何の強みになるんだろう」

 

>>>智絵里は、デメリットしかないような訳の分からない能力の発現に、戸惑うばかりだった。

 

智絵里「ーーそうだ!プロのアスカさん……! あの人なら、何か知ってるかもっ」

 

>>>そうと決めると、智絵里はさっそくCCMで古城アスカにメールを送る。 さっき起こった現象を出来るだけ詳細に。

 

智絵里「プロのLBXプレイヤーだったら………プレイ中に起きる身体の異常とかも、知ってるかもっ」

 

>>>その日、智絵里はアスカからの返信を待っていたのだが………何だかバトルが終わってからずっと体が軽くて、軽くランニングを済ませーーー夕食も食べずに眠りについたのだった。

 

>>>続

 

 

 

 

< 解説‼︎ ダンボール戦機C‼︎ >

(解説ボイス:J)

 

〜 緒方智絵里の身に起こった異変 〜

 

北条加蓮とのバトルの最中、緒方智絵里は視界に異常を感じ、一度は気絶してしまった。

 

そして休息の後、再開したバトルの中で先程智絵里に起きた異変は明確な形となって顕れた。

 

目に見えて分かる変化でいうと、瞳の中に♾️(インフィニティ)を表すかのような光が発生。

 

LBXプレイヤーの中には、特異な能力を持つものが、僅かではあるものの存在する。

 

大空ヒロの、未来が見える事のある<ビジョン>。

世界的に見て未だ使用可能者は少数だが、身体的負荷を掛けてLBXの操作能力を飛躍的に上昇させる能力<オーバーロード>。

 

しかし今回の緒方智絵里が発現したものは、それとは全く異なり、自分にデメリットしかない未知なる能力。

 

未だ確認された事のないこの力は、果たして本人にとって活かせるものなのか、それとも………真相は今のところ謎である。

 

ーーー次回情報も、見逃すな!



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