タイトル未定(少年向け・王道バトルもの) (リル★)
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0  世界観を適当に説明しただけ…

まあ世界感を現しただけだから……
つまらないかもしれない。

まあ3000字弱しかないし、適当に呼んでくれれば!


◇祓魔師の存在◇

 

 

「【()】、【(ショウ)】、【()】、【(ロウ)】、【麒麟(コウ)】」

 

 これは僕の()だ !!

 今、悪魔の熊:邪熊と戦闘中。僕の攻撃によって熊は痙攣して動けない。

「【(フウ)】」と僕は熊の腹を突く。

 バタリと熊は倒れた──。この技は霊もしくは邪を取り払うこと(祓魔すること)が出来る。

 

 説明が遅れた。僕は安倍 (あべの) (りょう)()()()って呼んでくれればいい。

 愛知県の小さな過疎地に住む高校生兼祓魔師(エクソシスト)(アルバイト)だ。()()()()()()()()()()()()()()()()。さて、祓魔師とは何だ?と思っただろう。だからこそ、説明しておく。

 

 祓魔師とはこの世に存在する"霊"もしくは"邪"を消滅させるのが仕事だ。霊とは幽霊であり、邪とは悪魔のことである。

 霊や邪はこの世界で、人間共と別空間に存在していた。つい最近までは、()()とされていたのだ。

 

 西暦2030年、迷信だと思われていた幽霊や悪魔がこの世界に姿を現した。今までは別空間にいたそいつらが、その時から僕らの世界と完全に交わったのだ。

 今までもそいつらはいたが、極少数であった。そのために、表舞台に出る前に祓魔師に消滅させられてきた。もしくは、そいつら自身が表舞台に出ないように隠れていた。

 ──ただ、極少数ではなくなり、劣勢とは必ずしも言えないようになってしまった今は表舞台に出るのも怖くない。

 赤信号みんなで渡れば怖くない!って、感じだな。

 

 話が遠回りになった気がするけど、そんな感じのそいつらを消滅させる仕事をしてるのが祓魔師だ。

 そして、僕は日本のトップ祓魔師の血を引く安倍一族である。平安時代の安倍晴明が先祖だ。誇れる部分かもしれない。

 

 西暦2040年──。祓魔師の集う会社の一つで仕事をしている僕は、先ほど悪魔を倒した。

 

 

 

◇四人の戦士◇

 

 

 安倍祓魔師有限会社──。日本の中では大きい方であるが、まだまだ小さな会社である。そもそも危険を冒さないといけないし、霊や邪を信じられない人もいる。さらには、中央組織(国家)の存在により人が集まらない。

 

 社長は僕の父邦治(くにじ)。その下に社員8名が働いている。ただ、遠方の仕事もあるために各地に散らばっている。何ヶ月かに一度本部に集まるぐらいだ。

 つまり、基本、本部には全く人がいない。いるのは、社長──。秘書──。一人の社員──。そして、4人のアルバイトである。

 

4人のアルバイトとは?

 

バイトリーダーの僕と……。

とても強い先輩近藤 (こんどう) (あおい)

現在下火になっているが全国で有名な暴力団に所属している三村(みむら) 紗來(さき)

悪魔の血と人間の血を持つハーフ吉沢(よしざわ) (あい)

 

 

 現18歳で高校生の僕は、校則によって黒髪ショートを維持している。眼鏡も黒だ。見た目には自信が無い。夢は働かなくても自由に遊べる"ニート"になる男だ !!(誇れない)

 現21歳、大学3年の葵は基本バンダナを巻いている。元気で活発だと思わせる気迫を持っている。武器として鉄のパイプを持っている。このパイプの至るところに穴が空いている。

 現20歳高校を中卒し、暴走族の一員であった紗來はちょっと見た目が怖い。右腕には紫色の龍のタトゥーがある。そのタトゥーに邪力(後に説明)を封じ込めており、そこから技を繰り出すことが出来る。

 現14歳、隠し子である愛は一応バイトとして雇われている。事情により長い前髪によって目を見られないようにしている。地味な服が好きで、いつも地味な服装を着ている。

 

 

 この四人に今日のバイトの仕事が与えられた。"二体の霊が取り付いた熊"を退治すること。僕が倒した邪熊の親二人と予測されている。

 現場に行くと……

 対象はそれぞれ違う所にいると分かる。僕らは二手に分かれて、仕事をこなすことにした。

 

 

 

◇綾&葵◇

 

 

 僕は安倍祓魔師有限会社社長の子どもである綾。そのせいか、その会社のバイトリーダーを任されている。

 僕は安倍晴明の血統であるにも関わらず、戦闘は苦手だった。まず運動は苦手だ。殴り合いや物理戦で勝てる気がしない。

 次に僕の使える技は一つだけだ。【技】とは能力を使った攻撃のことである。この世には、自ずの体力から生み出される力を使った技、霊や悪魔の力を使った技がある。

 安倍晴明一族は代々、霊の力を使って霊や悪魔を祓魔してきた。その血統を受け継いている僕も霊の力を使うのだが……

 体力が無い上に技が一つしかないのが難点なのだ。

 

 

「俺が出る!」

 

 

 邪熊の物理攻撃──。そこへ飛び出した葵。邪熊の殴り と 葵の鉄パイプがぶつかり合う。

 葵は一時期、日本の中で三番目に強いとされていた時がある程だった。

 彼は霊や邪の能力を持ってない。自ずの( 能 )力によって技を繰り出すのだ。

 幾度か邪熊の攻撃と彼の攻撃がぶつかり合う。

 そうこうしているうちに、邪熊の動きが止まった!

 

……

………

 

 邪熊はもう動けない。彼の技により、身動きを縛られたのだ。

 

「『糸吐虫(スパイダー) : 無数の鋼糸(ネット)』」

 

 流石、葵だ!それ以外の言葉は思いつかない。

 鉄パイプの所々ある穴から糸が垂れている。その糸を操り邪熊の身動きを取れないようにしたのだ。まさに、プロ技と言うべきだ。

 僕が陰陽師安倍晴明の血筋で社長の子どもという立場が無ければ、彼が確実にバイトリーダーだったはずだ。僕は彼に敵わないと思う。

 

「綾!動けなくしたぜ! 後は任せた!!」

「任せて下さい!」

 

 さて、僕の技を放つ時だ。

 僕の持つ唯一の技──。この攻撃をする直前が隙だらけであり、そこを攻撃されて負ける可能性が高い。

 ──が。敵は動けないので、攻撃はされない。そう、僕が技を撃つ最高のチャンスだ!

 

「【武】」僕は邪熊の下顎に向かって二本指で突く。

───これには、一瞬怯ませる効果がある。

 

「【雀】」次に敵の左足に向かって突く。

───これは、逃げられなくする効果がある。

 

「【虎】」その次に敵の右腕を突く。

───これは、敵の右利きの敵の攻撃を封じる(蹴り等の技を除く)効果がある。

 

「【龍】」そして、左腕を突く。

───これで敵の攻撃は完全に封じられる(蹴り等の技を除く)。

 

「【麒麟】」残る右足を突く。

───敵はもう動けない。

 

「【封】」最後にもう一度下顎を突く。

───こうして、霊や悪魔を祓魔する(取り除く)ことが出来る。

 

 星型になるように突いていくだけの技だが、一撃で倒せるという強力な技である。ただ、発動する時の隙が大きいという問題があるが……。

 

「さあ、任務完了だな!」と葵。

「そうですね」

「一応、向こうの助っ人に行くか?」

「いや、とっくに終わってそうな感じがしますけど……」

 

 そう、紗來と愛なら邪熊など一瞬で負かすことが出来る。

 

 

 

◇紗來&愛◇

 

 うちは愛──。ゴルゴン一族の末裔なの。

 目の前には"邪熊"、所謂悪魔がいる。その悪魔は力を溜めるために振りかぶる。

 そして、殴る!

 

───悪魔の攻撃はうちらには届かない。

 

 なぜなら、紗來がいるから。

「……。」

 紗來の技は『バリア』で、目には見えないバリアを出すことが出来るの!

 うちには見えないんだけど……。バリアの大きさは縦が身長と同じ。横は縦の長さと同じ。紗來の身長が170cmぐらいなので、縦170、横170ぐらい。

 バリアは丸みを帯びているらしいよ。

 バリアはどんな攻撃も防げるて、本当に凄いの!ただ、バリアを出している間は動くことが出来ないし、バリアは垂直にしか出せないのが弱点かも。それと、バリアから手を離すことも出来ないらしい。

 

「それじゃあ、目を瞑っておくわ!」

「ありがとう!」

「ええ」

 

 紗來は目を瞑った。

 なぜなら、もし仲間が目を瞑っていないと、うちの技は仲間まで巻き込む可能性が高いから。

 

「さあ、悪魔さん!うちの目を見て!!」

 

 うちは前髪を上げた。そうすることで、ハッキリとアイコンタクトすることが出来る。

 うちの目を見た悪魔は、すぐさま"石"になった。

──うちの目を見ると石になる。

 うちの能力はうちの目を見た相手を石にすること。いつもはその能力を隠すために前髪で目を隠しているけどね。

 

 うちは前髪を下ろした。

「終わったよ!」

「ふぅ、余裕ね」

 

 その時、後ろから声がする。綾達の声だ!

 

「おーい!」

「とっくに終わったわ」

「まあ、普通か」

 

 今日の仕事は終わった。うちらは本部へと帰るために、1歩踏み出した。

 

 

「さっ!今日も一件落着とっ!!」と背伸びをする綾。

「楽勝だったな!」と綾に肩を回す葵。

「ええ」と紗來。

「そうだね」とうち。

 

 

 綾─。葵─。紗來─。そして、うち。

 うちにとって、かけがいのない仲間なの──。訂正。()()()にとってかけがいのない仲間なの!

 

 

 

そうして、今日も無事に終わりました。

 

 

◇一言◇

 

 

 これは僕、俺、あたし、うち 達の物語───

 

体力なし、戦闘に不向き。そんな綾……

遠距離攻撃されるのは苦手な葵……

バリアしか使うことの出来ない紗來……

目を見られるだけで石にしてしまう愛……

 

 

────さあ物語の幕開けだ。




※キャラ紹介

主人公:安倍 綾

 見た目はよくいる高校生だが、実は陰陽師の血統。
 技は今は一つだが、その後増えるかもしれない!?
激しい近接戦はほぼ無理だと言える。遠距離技に期待しよう!

【身長】173cm
【顔】眼鏡、黒髪、ショート、黒目
【見た目】普通の高校生
【趣味】ゲーム(インターネット)
【夢】働かずに楽に過ごすこと(ニート)
【能力】"霊気"
【バトルスタイル】あまり動かないで戦う
【一人称】僕


※祓魔師の編纂

平安時代より前
→自然現象を含め、神として崇められていた。そのため、祓魔師のような存在はあまり見られなかった。
平安時代
→陰陽師。安倍晴明や蘆屋道満などの登場。ただ、悪魔の存在は確認されていない。
平安時代より後
→ごめんなさい。()()()()
 いつか調べる!
現在
→西洋化により祓魔師へ!。霊に加え、悪魔の退治が加わる。(日本では霊と悪魔は分けているが、普通分けない。)


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1-1 過去の回想(前編)

思ったよりも長くなった…
ただのキャラ紹介!?


◇懐かしき◇

 

 安倍祓魔師有限会社の前に立つ。

 懐かしいな……。初めてここに入社した時のこと。

 

───僕らには波乱の過去があった。

 

 そのせいでここに入ったりそれを乗り越えてここに入ったりと僕らは様々な経験を得て今ここにいる。

 皆、過去に何か事情があるんだ。

 

 

◇綾の過去◇

 

 

───あのキッカケが無ければ、僕は危険に巻き込まれることはなかっただろう。

 

 

 僕が生まれた時──。僕は普通の子として育てられた。陰陽師という方書きを背負うことなどあまり気にしてもいなかった。

 それは、霊も悪魔も極わずかにしかいなかった時。

 安倍晴明の血を引く僕らの一族は、本職として祓魔師をやっていた。強い霊や悪魔はいなかったが、弱い霊や悪魔はお金を稼げる程度にはいた。

 仕事も簡単な割に報酬が高い。良い職だと思っていた。

 僕はそのためか、技の習得を怠った。鍛えることを怠った。

 

 

───西暦2030年。霊や悪魔が一般大衆に知られる。

 この出来事は、僕を祓魔師にさせる。だが、僕自身を根本的に変えることは出来なかった。

「ゲームしよっ!」

 そう──。ゲームを辞められない。僕は鍛えることを全くしなかった。

 "危機感"を感じ、鍛えていいはずだが、、、

 僕はそんな危機感よりもゲームをすることへの欲求が高かったのだ。

 

 今では《後悔》している。だけど、過去に戻ることなど出来ない。

 出来るなりの努力で、成長していけばいいや!と思っている。なぜなら、過去を悔うより未来を見る!ことを大切にしてるからだ。

 

 

 僕は父からアルバイトとして祓魔師を強制され、渋々やることになった。

 祓魔師の会社は日本には一握りしかない。

 そのお陰か、3人のアルバイトが入る。これは僕にとって奇跡の出会いと呼ぶ以外にない。

 例えば──。僕の前に強大な敵が現れようとも……。仲間と力を合わせて倒す!

 

 一人の力では勝てなくても、「皆の力を合わせれば勝てる」かも知れないのだから!

 

 僕は仲間に出会えたことに感謝している。

 

 まだ、祓魔師としては見習いだし、霊や悪魔は増えていく一方だし……。だけど、仲間がいるから、今僕は祓魔師として、頑張れているんだ!

 

 

◇葵の過去◇

 

 

「お前は誰だ?」その一言は俺の非力さ痛感させた。

 

 

──西暦2030年を持って、霊や悪魔が現れるようになる。

 人は特殊な能力を持たない。それは、その年をもって覆された。

 霊や悪魔と仲を深めた者は、能力を手に入れることに成功したんだ。その力を持ってして、霊や悪魔に立ち向かう者も少なくない。

 

 その年から少し立ったある年──。中央組織(国家)は自衛隊を派生させ、国家祓魔師の門を開いた。元からあった民間祓魔師だけ、国家祓魔師以外の存在を許された。

 祓魔師になるには、国の用意する試験に合格しなければならない。(俺、綾、紗來はもちろん合格したが、隠し子の愛は未所得)

 俺は高校生の時に合格したエリートだった。

 

 俺は自身の才能によって霊や悪魔に立ち向かう。霊や悪魔には頼らない。

 エリートだった俺はもちろん国の祓魔師になるつもりだった。民間の祓魔師など眼中になかった。

 

 俺は高校生卒業時、国家祓魔師になるため試験を受けた。──合格倍率は非常に高いが、滑る気はなかった。

 そんな甘い考えは結果によって覆された。この現実は俺にとって辛いものだった。

 今では、滑ってしまって良かったと思っている。最高の仲間達と巡りあえたからだ。

 

 

「流石!日本一だよなグレイマンさんは!」

 灰崎(はいざき) 麻白(ましろ)──。最強の祓魔師。彼の刀捌きと彼の能力である()()()は相性が良く、凄く強い。付けられた仇名はグレイマン。

 俺はこの人に──憧れを抱いていた。

「俺もきっといつかは……。」

 その想いが俺に力をくれた。霊や悪魔に頼らなくても祓魔師の資格があるぐらいに力を得た。

 

 だが──。そんな想いがあるのは俺一人ではない。俺と同期で強い奴が二人いた。彼らも俺と同じ想いを抱いていた。

 

 俺らの代でNo.1と評された服部(はっとり) 槐樹(えんじゅ)。それに継ぐ大山(おおやま) (すい)。俺は彼らと互角に近いぐらい、張り合うことが出来た。

──ただ、彼らと比べると俺は……。

 

 国家祓魔師試験当日。その試験内容に、1VS1(サシ)の軽い手合わせがあった。俺の相手は──槐樹だった。

 

「手加減はなしでいいか?」

「もちろんだ!」

「それじゃあ、いくぜ!」

「こっちも行くぜ!」

「『黒炎(こくえん)』」と槐樹。小さな炎の球を右手から出す。

「『野良黒猫(ブラックキャッツ):影移動攻撃(ブロード)』」俺も負けられない。

 

 俺は素早い動きで槐樹に近づく。そして、俺の鉄パイプと槐樹が右手に持つ炎がぶつかる──。

 幾度かぶつかり合う。

 そして、俺の技が決まる。

「『糸吐虫(スパイダー):無数の鋼糸(ネット)』」地面に打ち付けられた基点の糸と俺のパイプの間にいる槐樹は、複雑に絡み合う糸の中、動けなくなった。

 

「終わりだな!」と槐樹。

「リタイアするのか?」

「何を言ってるんだ?負けるのはそっちだろ!」

 

 俺は心の中で「はあ?」と言う。─が、槐樹は左人差し指を上に向けた。その指の先を見て、気が変わった。

 《前言撤回》だ。

 俺の負けだ。流石はNo.1と言うしかない。

 

 空に浮かぶ大きな炎の球──。槐樹は左手にも「黒炎」を作り出していたのだ。それも、空に──。

 俺は目の前の敵(槐樹)に集中していたために、それに気付かなかった。

 槐樹は左指を下に向けた。

 その炎が落下し、周りを赤に染める。焦げた匂いが周りに漂っていく。

 

「安心してくれ!軽く外しておいた。」

 

 糸が燃え落ち槐樹は自由の身だ。一方、軽くやられた俺は立つことさえ出来なかった。

 俺は槐樹に負けたのだ────

 

 

 俺は控えで吹の試合を見る。

 吹の能力は"コウモリ"だ。空を飛び、相手を翻弄。翻弄された相手は攻撃を当てられない。

 ── ─。

 素早い動きで翻弄された相手の調子は狂い始める。そこを狙うことで、吹は勝った。

 いや、一瞬でケリをつけれたはずだった。

 吹は敢えて、自身の力を見せつけるために行ったナメプであったのだ。

 

 

 俺らは会場を去る。後は結果を待つだけだ。

 その去り際に呼び止められたのだ。そこにいた、俺と槐樹と吹とその他若干名。

 誰に呼び止められたのか?

 

グレイマンだ!

 

「君が槐樹君だね。君の戦いは凄かったよ!君ならば、最高の祓魔師になれると思うよ!!」

「ありがとうございます。」と槐樹。

「それと、君が吹君だね。流石、槐樹と並ぶ程の実力!」

「お言葉、感謝致します」と吹。

 

次は、俺だろ!!

 

 心臓が段々速く動いていく。もう、パンクしてしまいそうだ。

 そのせいか、先走って聞いてしまった。俺への感想を……。

 しかし、それが間違いだったと気付かされた。

 

()()()()()()

 

その一言が返ってきた。

 グレイマンにとって、俺の存在は目にも映らない。いないに等しい存在だったのだ。

 その後、結果も不可──。

 

 

悲しみに暮れる日々。

 

 

 人生のために仕方なく大学に進む。しかし、グレイマンの一言が何度も再生されていく。もう一度、国家祓魔師を受けようという気持ちが削がれていく。

 挑戦するのが怖い──。

 俺は嫌な記憶を抱えながら日々を過ごした。もう大学生活も1年になる。堕落した日々だ。

 

 そんなある日、俺は安倍祓魔師有限会社を見つける。元々、祓魔師になりたかった。長いスパンが俺を後押しさせてくれた。

 もしかしたら、国家ではなく民間だったからかもしれないが……。

 

 そこで出会った仲間達は非常に個性的で面白い。最高の出会いだ。──今、俺に後悔はない。

 何年か協同して霊や悪魔を倒してきた。だからこそ、この事実は揺るぎない。

 

俺は思う── ─最高の仲間!と。

 

 

 

◇紗來の過去◇

 

 

「すまないが……。散ってくれ!」

ねえ、あたしの居場所はどこ?

 

 

 あたしに居場所はなかった。

 父や母から捨てられ親戚の家に預けられた。彼らにとってあたしは余所者──。従兄弟・従姉妹(いとこ)達にも除け者にされ、いじめられたこともあった。

 緻密な暴力により、表にそれが顕になることもない。

 あたしには耐えられなかった。

 

 中学校を卒業。これ以上の同じ苦痛を味わうのは嫌だった。そうあたしは──独立した。

 あたしはそこから闇の世界で生きることで、命を繋いでいった。闇と言っても、霊や悪魔の世界ではなく、社会に潜む闇の世界だ。

 "死"を覚悟した日もあった。

 

 そんなある日、あたしは闇の世界の(つて)から暴力団に入団。新たな居場所を求めて──。

 

 

 あたしは長い間"闇"に生きてきた。その経験はとても役に立った。あたしは組織の中で上位の立ち位置を得た。

 

 あたしの所属した組織とは……。

───"山川組"

 日本政府が危惧し、()()()()()()に指定されている。

 組織の中であたしは三大幹部──。の立ち位置を得る。それに伴いあたしは新たな力を得た。

 

そう、【バリア】の能力を得た。

 

 右腕に龍の刻印を刻むことによって得られた力。悪魔との契約による力らしい。

悪魔の名前は……

 

邪王(ダーク)

 

と言われている。

 

 邪王は悪魔界のトップ。そんな悪魔から力を得ている能力は強いに決まっている。使い勝手は別として、全ての攻撃を防げるのだから、強い以外に何も言えない。

 

 あたしは新たな力を得て、よりボスに誓うようになった。

 

 

あの出来事が起きた。

───日本一の祓魔師:グレイマンが攻めてきたのだ。

 

 あたしらのボス:中村(なかむら) (みどり)はグレイマンと一気打ちをした。

 ボスは邪王と直々に契約を結んでいる。グレイマンに匹敵する程の実力であると言っても良かった。

 

「貴様らを潰しに来た!」

 グレイマンは周りを凍らせながらやって来た。刀から湧き出る冷気が視界を遮る。

「テメェになんか負けるかよ!」とボス。

 

「ボス!ここはあたいらが……」と身を案じたが

「いや、引き下がる理由にはいかんだろ」と突っぱねられた。

 

 こうしてグレイマンとボスがぶつかり合う。

 

 

「ワイの力を舐めらたら痛い目にあうぜ!」

「刀に素手で対抗する時点で普通じゃないからな!」

「ほう、分かるなら!負けを認めな!!」

 

 悪魔を身に纏うボスと冷気を身に纏うグレイマン。素手と刀が幾度もぶつかる。

 

()()()()()()()()()()()」ボスの攻撃は激しさを増す。

「『氷壁』」グレイマンの作る氷の壁。──しかし、壁はすぐに壊された。




キャラ紹介


仲間:近藤 葵

 近接戦も遠距離戦もお任せ。だが、少し遠距離戦は苦手な方。
 相当強い。主人公よりも主人公っぽい(笑)

【身長】182cm
【髪】青のアクセントが入った黒髪、ショート
【能力】元気
【武器】鉄パイプ(所々穴が空いていて、そこから糸を出して戦う)
【趣味】サッカー
【特技】リフティング
【一人称】俺


※3つのタイプ

〇元気
→人間の底力によるもの。主に物理的な攻撃をすることが多い。パワー的な攻撃などを得意として悪魔に強い。が、霊には弱い。
〇霊気
→霊によるもの。人間なら霊と契約を結んだり力を吸収したりすれば、能力を得れる。主に特殊な攻撃をすることが多い。遠距離攻撃などを得意とし普通の人間に強い。が、悪魔には弱い。
〇邪気
→悪魔によるもの。悪魔及び悪魔との契約等により力を得た人間。パワーアップ系が多い。能力上昇を得意とし霊に強い。が、人間の底力には弱い。

元気は霊気に弱く、霊気は邪気に弱く、邪気は元気に弱い。


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1-1 過去の回想(後編)

前回の復習

綾、葵の過去。
紗來の過去……

紗來は指定暴力団員だった。そのボスと日本一とされる祓魔師グレイマンが衝突。


 圧倒されるグレイマン。

 

「やるじゃねぇか!」

「そういうテメェこそ、余裕かましてるじゃねぇか」

「使いたくなかったが……。やるしかないな!」

「!?」ボスは警戒する。

「『絶対霊怒』」グレイマンの一撃はボスの目をかすった。

「痛ってぇな……。」刀が瞼をかすった。

「この攻撃を避けきるとはな」

「ちっ」ボスの片目は瞑ったまま開かない。凍らされたのだ。

「過擦り傷程度じゃ負傷にもならないな」

「まあな、ただ傷跡が出来ちまった!」

「それじゃあ、もう一度……」

「ワイを舐めたら困ること教えないとな!」

 

「『邪王の一撃』!」とボスはグレイマンに殴りを入れる。

 

 グレイマンは遥か遠くへと吹き飛ばされた。この勝負は、ボスの勝利で終わったのだ。

 グレイマンは死んではいないものの、再び襲うことはなかった。いや、襲われる前には暴力団は一時解散となっていたのだった。

 

 

最強の二角による争いはボスの勝利に終わった──。

 

 

 グレイマンは吹き飛ばされた後、救助された。療養のために、一時的に攻められなかった。

 ボスもそれなりの傷を負う。ボスもまた療養のために攻めることはなかった。

 

ボス曰く

「タイプ相性的に負けねぇよ!」とのこと。

 つまり、また攻められても負けることは無い。

 

 あたし達は安心していた。この生活もまだまだ続くと思っていたからだ。

 しかし、まさか──一時解散となるとは誰も予想しなかった。

 

 

「すまないが…。ワイとの契約している邪王の力が弱まった。」

「だからって、解散することなど…」と他の幹部。

「これ以上は守れない。今解散しりゃあ、その後の生活はギリ保証される。が、これ以上は牢屋(じごく)だ!」

「あたいらはあんたに一生…」

「いいんだ。これは一時的な解散。また、ワイの力が戻ればすぐに収集する!」

 

 邪王の力が弱まった。その理由は分からない。

──そのせいで、あたしらは一時解散しざるを得なくなった。

 数日後、ボスは姿を消した。

消息不明──。

 あの組織に戻れない。今は復活を願って醜い世の中を生きていかなければ……。

 

 

 血の気。争い足りない。もっとスリルが欲しい…。

 

……

………

 

 そうだ、祓魔師なら…。許せない、(みにく)いグレイマン─。

 目にを目をだ。

 才能も力もある。あたしは祓魔師の免許を得た。

 

 反社会的勢力にいるあたしは、公務員──もとい、国家にはいられない。だからこそ、民間の方に行くしかない。

 そこで、出会ったのが"安倍祓魔師有限会社"だ。

 

 

あたしは未だにボスの帰還を待っている────

 

 

 

◇愛の過去◇

 

 

 うちは生まれながらにしてゴルゴンの力が備わっていた。人間の悪魔のハーフだからこそ、なし得た能力だ。

 ゴルゴンの力……。それは、うちにとって【呪い】だった。この呪いで大切な人を失っていくのだから。

 

 ゴルゴン一族──。かのメドゥーサと同じような力。見ただけで相手を石にしてしまう。

 強くなれば意図的に睨みつければ石に出来る。

 しかし、うちはと言うと……。

 

うちの目を見た相手を勝手に石にしてしまう。

 

 制御は出来ない。

 石にした相手を元に戻すのも出来ない。実力不足。

 

 

 うちが9歳の頃──

 

悪魔であったお父さんが病気によって死んだ。

 お父さんは悪魔の力によって、石にしてしまう能力を封じてくれていた。また、もし石にしてしまっても元に戻すことも出来た。

 お父さんがいたからこそ──。うちは苦しまなくて済んだのだ。

 

 死因はガン。怨む相手もいない。

 いや、お父さんが死ぬ前に、石にしてしまう力を抑える能力と石にしてしまった相手を元に戻す能力を身につけることが出来なかったうち自身を怨む。

 そして、その日から地獄の日々を過ごす。

 

 

「えっ………」

 うちを見たお母さんは石になって動かない。今までは大丈夫だったのに……。

 ショックのあまり立ち尽くした。長い間立ち尽くした後に、お父さんの加護についてを知った。

 石になったお母さんは戻らない。

 

 

 

 怖くて怖くて家に閉じこもる日々──。けれども、食料も何もかも尽きてきた。

 今やお父さんの加護はない。誰かに会えば、その誰かが()()()()()で死んでしまう。そんなの、──嫌だ。

 

 

「児童保護のため、お邪魔します!」謎の人達が入ってくる。

 そして、うちを見るや否や石となる。

 

 うちはサングラスをかけることにしたのだが、無駄だった。外に出た時、多くの人が石になった。

 

 

 (たちま)ち、うちは悪魔と評され祓魔の対象となる。

 うちだって、望んでやってる訳じゃない。うちは目を瞑りながら歩くことにした。が、慣れていないから無理だった。

 殺されかけながら、うちは逃げた。呪いは最悪のものだけど、逃げる時だけとても役に立つものだった。

 

 

 身を追われ、人混みのない裏路地で生きること数日。うちはやっと【呪い】の対処の一つを身につけた。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()のだった。

 

 前髪が伸びたうちは、人に害を与えにくくなった。

───しかし、うちは追われる身。誰にも会うことは出来ない。

 

 そう思ってたけど……。ある日、一人の男の子と出逢った。そして、うちはその男の子の家に匿われて過ごすことにした。

 逃げるよりも目が見えないように気を付けるのは楽だった。だから、何日も平凡と呼べる日々を過ごせた……。

 

 そして、カレンダーも幾つか捲られた頃──。うちにとって、有頂天になるほど最高の出来事、その後、死にたいと思わせた最悪の出来事が起こる。

 

 

「俺!愛のことが"好き"で堪らない!付き合ってくれ!!」とその男の子が言って来た。

「……。」うちは声を出すことが出来なかった。

 

 突然の出来事だったし、そんなこと言われたこともなかった。それに、そんなこと言われるなんて思ってもいなかった。

 うちは顔を真っ赤にして動揺していた。だから、うちは深呼吸をして、呼吸を整えた。

 

「ありがとう…。そんなこと言われたことなくて、何て返せばいいのかな?」

「返事をしてくれればいいんだよ!彼女になってくれるか?」

「……。うん!」

 

 力強い目でうちの目を覗こうとした。けれど、うちは全力で拒んだ。その時は、「ごめん!それだけは駄目!だから!」と言って(かわ)すことが出来た。

 

 

 うちは13歳になり、付き合ってから約1~2年が立った。【呪い】のことは伝えていたし、彼もその呪いに触れない約束を守ってくれていた。

 だけど、その約束は破られる。悲しきメロディーとともに──。あの悲劇の日に。

 

 その日、外に出てデートをしていた。その時に、祓魔師がうちに向かって攻撃してきた。

 うちは悪魔として祓魔対象となっていた。今まで身を隠せていたが、ついにバレたのだ。

 彼氏はうちの手を引いて逃げる。うちはそれに引っ張られながら、一緒に逃げる。この時は、彼のお陰で安心感と高揚感が感情を占めていた。

 

 祓魔師を撒いた。が、未だに探しているからむやみやたらに動くことは出来ない。そこにはうちと彼の二人だけだった。

 

── ─。

 

誰かが来そうだ。

もし、祓魔師ならもう王手。もう逃げられずに死ぬのを待つだけ。

 

「ごめんね。巻き込んで!今からでも逃げて!!これ以上、巻き込みたくないの!」

「いいや、無理だ!俺は愛となら巻き込まれてもいい!一緒にいる。」

「けど……。」

「けど、じゃねぇよ!俺は愛がいてくれたからな…」

 

 

 

「─── ─。もう破っていいだろ?」

 

 

「えっ?」

 彼はうちの前髪を上に手繰り寄せた。その時は、目を瞑っていたらしく石にはならなかった。

 

 力強く、そして──優しい唇が、うちの唇と重なり合う。

 

 柔らかい───。彼らしく優しい。うちは嬉しかったと同時に……。

 ()()()()()()。あんなに柔らかかった唇が。

 

 その時、彼はうちの呪いによって石になった。今、さっきの感情は嬉しさが8割を占めていたのが、悲しさで10割占めるようになった。

 無性に悲しくなった。全ては呪いのせい──。その呪いの原因は"うち"。全てはうちのせいで!

 

 涙を流した。

 

 そして、うちを祓魔しようとする祓魔師が現れたが、突如現れた謎の人が謎の能力によって、、、

 うちは安倍祓魔師有限会社の前に来ていた。うちはその謎の人に助けられたらしい。

 

 涙を流してから段々と記憶が薄らとなっていった。謎の人に助けられた時には、うちの記憶はなかった。

 目を覚ますまで3日間。その間、ずっと寝ていたのだ。

 

 

 起きると男の人が駆け寄った。

「気分はどうや?あれこれ、3日間も寝てるんやから、凄い心配なんやぞ!」

 その時は、前髪によってその男の人を石にしないで済んだ。

 

 男の人はうちをこの会社に匿うことを約束した。うちは、隠し子としていない存在とするらしい。

 その代わり、うちは非正規雇用の祓魔師になることを約束した。そもそも、いない存在だから免許とかは関係ない。

 

 祓魔師になってから何ヵ月か経った。

 うちはついに石にした人を元に戻す能力を手に入れた。すぐさま大切な人を元に戻そうと思ったが、それは無理だった。

 

「石になるのは毒のせいだ。その毒は1週間経てば、その人間を全て蝕むだろう。もう、助からない。」

 

 そんなことを言われた。また、悲しくなった。

 

「過去を悔やんだからって、何か変わるのか?前を見るんや!そこに仲間達がいるやろ?」

 

 そうだ───

 

~~~~~~~~~~

 

「うちに近付かないで……。」

また大切な人が……。二度と戻らない世界へと。

全ては───うちのせいなの!

もし、うちが……

 

 

「安心しろ!僕らは仲間だろ!?」

 温もりのこもった手が差し伸べられる。いいな、仲間。けど、、、

 もし、うちのせいで、死んじゃったら?

 

 

全ては"この呪い"のせい── ─。この呪いさえなければ。

 

 

 うちは拒否したが、仲間はそれを拒んだ。うちの全てを包容するらしい。彼みたいなことを言ってる。もう一度、かけてみたくなった。

 仲間達と一緒にいたい───。

 

~~~~~~~~~~

 

 ───仲間達がいる。

 

 仲間と一緒にいれるんだと。今度は絶対に失わない。

 

「本当に嬉しかったの!最高の仲間達……と出会えて!」

 

 過去には戻れない。だからこそ、今を生きるしかない。今大切な仲間がいる。

 仲間達のために活躍出来たらと思う──。《隠密》の得意なうちだからこそ、仲間達を支えられるの!

 

 

◇謎の男の人の正体◇

 

 

 安倍邦治──。彼は安倍祓魔師有限会社の社長であり、綾の父親だ。

 謎の男とか男の人とかは全て彼を指す!

 そして、そんな彼から命令が来た。

 

「謎に包まれている暗殺鬼を捕まえて欲しいんや!もし、祓魔対象ならやってもらっても構わない。」

 

 暗殺鬼───。一瞬にして、数多の祓魔師らを致命傷に追い込んだ。

 無名の祓魔師。そいつの強さは非常に強いが、表に現れたのはこれが初めてだ。

 

 

 

 (あか)き瞳が闇夜の世界に迸る。




キャラ紹介

仲間:三村 紗來

【身長】169cm
【髪】カラフルな髪色。ストレート、ロング。
【体】龍のピアス。右腕に龍のタトゥー。
【能力】邪気
【技】バリア
【役職】祓魔師(アルバイト)。指定暴力団隊三大幹部。
【趣味】音楽を聴くこと
【一人称】あたし


仲間:吉沢 愛

【身長】143cm
【髪】ロング。前髪は目にかかっている。
【能力】邪気
【技】石化、毒、毒抜き
【好きな食べ物】フレンチトースト、カルボナーラ、etc
【趣味】昼寝!
【特技】隠密行動。隠れること。
【一人称】うち


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1-2 二人のライバル

とかとか色を使おうかと思ったけど、面倒だからやっぱり使わないことにした。
白黒の方が楽。


◇アルバイトでも行かされる◇

 

 ここは愛知県。不死身の町の外れにある。

 

 殺人鬼と呼ばれる謎の存在は三重で確認された。僕らは電車に乗ってそこへ向かった。

 そして、僕らは三重の中にある深い森の中へと入っていった──。

 

 

「こんな所にいるのかなぁ?」と僕は嘆いた。

 なんせ森が生い茂ったこの中は広い。それに視界も悪い。そもそも、殺人鬼がここにいるのかどうかも分からない。

 みんな一緒になって行動してる。前を歩く僕に、着いてきている葵と紗來と……。あれ?愛がいない。

 

「あれ?愛は?」

「っ?まさかはぐれたのか?」と葵。

「戻りましょう!」と紗來。

 

 そして、来た道を戻っていくのだった──。

 

 

◇謎の少女と愛との対立◇

 

 

 うちは他のみんなよりも歩幅が短い。だからか、すぐに遅れてしまう。特に、こんな森の中じゃまともに歩けない。

 

「……。」

 

 一人の少女がうちを見る。いや、本当にうちを見ているのかは分からない。

「誰…?」と思わず口が出た。

「そちらこそ、誰?」

明里(あかり)……。こっちは、ウサ…」

 

 その少女の名前は明里と言うようだ。彼女は片手に(うさぎ)のぬいぐるみを抱え、もう片方には木刀を持っている。

 

「うちは愛。非公認で祓魔師やってるの!」この言葉を言った瞬間、明里は何か独り言を呟き始めた。

 

「……。分かった。」そう言うと、うちに向かって木刀を振り回す。

 うちは木の陰に回り込みながら、避けることに専念した。何がなんだか分からない。

 思わずうちは呪いの目をおおっぴらにした。─が、何故か明里には効いてない。その時に起きた動揺から動きが一瞬鈍った。

 明里はうちの後ろに周り込み素早い刀捌きを魅せる。圧倒的な強さに手も足も出なかった。

 

 

「ウサ…… 分かった。もう終わりにするね……。」

 

 

◇プライドの高きライバル◇

 

 

……

………

 

「えっ?なにこれ?」

 

 多分速く歩き過ぎたからはぐれたと考えた僕らは、道を引き返した。そして、愛を見つけることは出来たものの……。

 愛は無様にやられていた。その姿が瞼に焼き付く。そして、怒りがこみ上げてくる。

 

「おい?大丈夫か?」と葵。

「……。う…うん、うちのことは気にしないで」と目を瞑りながら愛は言う。

 

───弱々しい声が僕らを余計に怒らせる。

 

 

そこに現れた一人の男。

 上半身裸の厳つい男だった。ただ、年齢的に僕らと変わらないように見える。

「お前ら安倍祓魔師のやつらだろ?俺と勝負しろ!!」

 その男は空を切るように手を振る。そうすると、斬撃となり僕らを襲う。当たりはしなかった。これは、宣戦布告の意味を持っていた。

「俺は芦屋(あしや) (とおる)。芦屋陰陽師会社。芦屋家と安倍家は昔からの因縁がある。」

「何のこと?」と僕は言う。

「知らないのか?やはり、プライドもないのか?まじで癇に障るなぁ!」

 

 僕らも苛立っているが、透も何故か苛立っている。その理由は分からない。何か理不尽な理由な気がするが。

 

「俺は愛をこんな目に合わせた殺人鬼を追う!」と葵。

「どういうことです?」

「あいつは愛をこんな目に合わせた奴ではないんだ!」

「そうなんですか?」

「まあ、アイツは綾に対して個人的に恨みを買ってるらしいし、相手をしてくれないか?」

「ええ?」

 

 そう言うと葵はこの場を離れた。

 そうして、僕と紗來で透を止めることになった。

 

「もう一度喰らわせてやるよ!」先ほどの斬撃をするらしい。

 

「喰らえ『三日月の斬撃』!!」

 僕らは飛ぶ斬撃を避ける。もう腹を括って戦うしかない。その前に一つ言わせて欲しい。"ネーミングセンス無さすぎだ…"。

 

 

◇殺人鬼の正体◇

 

 

 アイツじゃない!愛の受けた傷跡を見るにアイツではない。

 武器は棒のようなものだろう。そういう跡がある。透と名乗るアイツは棒のようなものを持っていない。それに、アイツも祓魔師なら殺人鬼とされないはずだし、しないはずだ。

 

 俺はふと地面にある足跡に気付く。愛をこんな目に合わせた殺人鬼はそっちの方へ逃げたんだ。

 俺は追いかけることにした。ここは、綾に任せた方がいいと思ったんだ。

 

「俺は愛をこんな目に合わせた殺人鬼を追う!」

「どういうことです?」と綾。

「あいつは愛をこんな目に合わせた奴ではないんだ!」

「そうなんですか?」

「まあ、アイツは綾に対して個人的に恨みを買ってるらしいし、相手をしてくれないか?」

 

 俺は殺人鬼の残した足跡を頼りに見つけ出そうと必死になって走った。

 

 

 

 足跡の終着点……。そこにいたのは、一人の少女だった。

 虚ろ気な目。少しだけ赤が混じった茶髪の、長い髪に唐紅の髪飾り。赤いチェックのミニスカート。パーカーつきの白い上着はミニスカートの丈まで伸びてあるぐらいに大きめ。

 そして、片手には兎の小さなぬいぐるみを抱え、もう片手には()()を持っている。

 

 木刀に足跡の終着点にいたこと──。殺人鬼かどうかは別として、愛をあんな目に合わせた犯人に間違いなかった。

 

「お前ぇが……。愛をあんな目に合わせたんだな?」

「……。あの女の仲間…。……なるほど祓魔師…。倒すしかない……」

 

 いきなり襲いかかってきた。俺は鉄パイプによって攻撃を受け止めた。

 

「お前。"殺人鬼"だよな?」

「そう言われているらしい……」

「それじゃあ、手加減はなしでいいな!」

 

 どこを眺めているのか分からない。多分、俺を見てはいないだろう。そんな感じだった。

 俺はそんな殺人鬼に向かって言う。

「俺は祓魔師のバイトをやってる"葵"だ!お前を捕まえる。」

「……明里…。こっちはウサ…。」

 

 俺と殺人鬼である明里との勝負が始まった。

 

 

─俺の鉄パイプと明里の木刀がぶつかり合う─

 

 

 俺は自身の世代の中で3番目に強いとされていた。そして、殺人鬼とまで評された程の実力を持つ明里。お互いに一筋縄ではいかない。

 

 

◇赤と青の衝突◇

 

 俺の方が威力は高い。

 まず俺は鉄パイプで明里は木刀。さらに、俺は両手で振っているのに対して、明里は片手。何より、男と女では力の差がある。

 受け止めることなど出来ない。

 だからか、明里は俺の攻撃を受け止めようとはしなかった。木刀を上手く扱って俺の攻撃をいなしている。

 一発が重い俺の攻撃は隙が出来やすい。明里はその隙を狙って攻撃する。俺の体は木刀に撃たれ傷ついていく。

───ここで倒れる訳にはいかない。

 

 順調に糸は張り巡らせれている。このままいけば、明里を捕らえることが出来る。

「…。糸?」

 俺は明里のその言葉を聞いて動揺してしまった。ついに、糸の存在に気付いてしまったのだ。

 明里は巧みに俺の糸を(かわ)して通り抜ける。

「仕方ないな!次の手を打つしかない!」

 俺の十八番(おはこ)は見破られたが、まだ俺は戦える。俺の技は豊富にある。

 

「見せてやるよ!」

「……。…」

「『憤怒龍(ドラゴン):逆鱗無差別攻撃(ランページ)』」

 

 もう俺の眼中に──明里はいない。地面や木に向かって攻撃するだけ。途中で邪魔が入るのなら吹き飛ばすだけだ。

 吹き飛ばすための攻撃は上手くいなされるが、そんなものどうでもいい。このフィールドに糸を張り巡らせることさえ出来れば──。今や敵に攻撃するという概念などどうでもいいことなんだ。

 

「さあ完成だよ……」

「…糸のフィールド……。…」

「ああ、そうだ。もうここは俺の領域(テリトリー)

 

 

「『生物の楽園(ユートピア):無数の糸の大空(ジャングルジム)』」

 

 

 俺が暴れていたのは全てこの為だった。俺に有利な状況を作ること。

 糸は地面や木によって折り返して、この近くは糸が張り巡らされている。所々にある糸を踏んでいくことによって、空中戦に持っていくことが出来る。

 糸が邪魔になることでむやみやたらに動けなくする。俺は糸の位置を全て覚えている。糸は邪魔にならない。

 敵は動けないのに俺は動ける。これなら、勝てる……。

 

 俺はこのフィールドで自由に動く。明里は動けない…。と思っていたが、何故か糸を上手く利用している。

 明里はこのフィールドで華麗に動く。ただ、完全に網羅している訳ではなく、俺の動きには劣る。俺の攻撃をいなすが、そこに出来る隙を狙った攻撃は出来ていない。

 

「まさか、このフィールドに適応するとは……

 さすが殺人鬼と呼ばれる程だ。まさに、プロだな」

 

 それでも、このフィールドに適応しているのは"さすが"と言わざるを得ない。

 

争いは激化する───。

 

 

◇透の正体◇

 

 今、殴り合いが()()している。

 そう、これはよくある喧嘩と同じだ。

 

 

───

──

 

「どうだ!」と三日月の斬撃(笑)を魅せてキメ顔の透。

 僕と紗來はネーミングセンスのなさに「ださっ!」と声を出してしまった。

「うっ…うるせぇ」慌てふためく透。

「まあ、殺人鬼じゃないなら帰って欲しいかな」とやんわりと帰らせようと持っていった。

「陰陽師の恥さらしめっ!俺はお前が気に食わない。その面を是正してから帰ってやる!」

「まあいいよ。僕はまだアルバイトだしね……」

 

 《アルバイト》という言葉が駄目だったらしい。

 

「祓魔師は非公認じゃ許されないだろうがぁ!!

 全国にある祓魔師会社は俺らの会社を含め5つ!そして、国。なのに、段々増えていく祓魔対象。まさに、人不足。

 アルバイトのような非公認は許されない。が、取り締まれない状況を利用して許されない行為をしてるんだな?だよな!?

 俺は祓魔師の一員として、祓魔師の原点であろう陰陽師の代表する一員として、安倍一族との正式なライバルとして一言言わせてもらう!!」とここまで早口。

 

 僕は全くついていけない。

 

「お前にはプライドがないのか!!?」

「・・・ない。」いや、考えたけど、それしか思いつかなかった。

 僕にプライドなんかないし、そんなこと考えたけことなかった。

 《ない》という一言がさらに透を怒らせた。

 

 ついに、僕を殴ったのだ。眼鏡は割るし、痛いし、頭にきそうだ。

「今日は三日月。そして、昼。満月の夜じゃなくて良かったな!」と上から目線で言われた。

 ムカついた。僕は殴り返した。

 するとどうだ?結構ダメージを食らっている。だから、僕は言い返してやった。

「そっちも同等じゃないか?」

 透は再び殴る。僕も殴る。そして、小競り合いが始まった。

 

──

───

 

 殴られたから殴り返す。そして、始まる小競り合い。後から思い返せば、くだらない喧嘩であった。

 喧嘩は僕の殴りによって、透は戦意喪失となり、僕の勝利で終わった。

「体力テストの結果がEでもやれる時はやるんだよ!」

 そんな言葉で締めくくった。

 

「それ威張るものじゃないし、それと馬鹿のお遊びは終わったの?」紗來は呆れている。

「勝ったよ…僕」

「だから?小学生みたい…」その一言が、僕の心にグサッと来た。

「まあ、先に行った葵を追いかけようよ」と話を転換させた。これ以上は僕の心が持たない。

「愛を運ぶのお願いするわ」

「分かりました」

 

 僕らは葵を追いかけようとした。

「おいっ!まだ終わりじゃねぇぞ」と透の声。

 まだやる気の様子。さっきまでノックダウンしていたのに……。

「負けたんだから引いてくれる?」

「俺はまだ本気を出していない」

「何?」言い訳に聞こえた。

 もう一度、戦おうとするのかなと思ってしまった。無駄にプライドが高いから有り得ない話でもない。

 

 

「俺は狼男なんだよ!」

 

 

 透はそう言うと、何やら毛のようなものが現れていく。

 透は新たな力を解き放とうとしていた。リベンジのために、また戦闘になると腹を決めた。

 

「魅せてやるよ!狼男の力をな!!」透の低い音が響き渡る。

 

 

────to be continued────




キャラ紹介

ライバル:芦屋 透

【身長】183cm
【外見】野性味に溢れた普通の男性
【年齢】19歳。綾と同学年か1、2つ違うかぐらい
【趣味】釣り
【能力】邪気。霊気。元気
【技】狼男化。憑依召喚、憑依操。回転スーパー蹴り。


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1-3 救世主

前回までのあらすじ

綾達は殺人鬼討伐のため三重に行った。
 そこで、葵と殺人鬼の明里が衝突。葵は糸を張り巡らした空間を作り上げるのであった。
 一方で、綾、紗希、愛は謎の男 透と衝突。綾は透を追い込むが……。実は、透は狼男だった?


◇唯一の男◇

 

 透の身体から少しずつ毛が生えていく。段々と狼男…に?

「今日の調子だとこれぐらいだ!どうだ!!」

 中途半端に狼の要素があるため変な感覚を覚える。半獣の透は今とても"ださい"!!

「ダサッ」と思わず声を出してしまった。

「仕方ねぇ。今日は昼で月もそんなにない三日月。力が出ねぇ。」

 今透が攻めてくるのなら、あたしが出るしかない。倒れている愛とそれを背負う綾に戦わせられない。

「それで?あたし達とやるつもり?」と威圧をかけた。

「今度の相手はそっちか…。忠告しておく!女だからって容赦しない!」

「舐められてるわね…」

()()()()()()()()()()()!!」

その言葉、きっちりそのまま返してやろうと思った。

 

 こうして、第2ラウンドのあたしと透の勝負が始まった。

 邪気を纏う狼の一撃を喰らわせようと透が飛びかかってくる。その攻撃をバリアで防いだ。

「やるな…。なら、この攻撃でどうだ?」

 透は素早いフットワークで後ろに回り込む。多分、元気の能力を使っている。相性的に不利な技だ。

 しかし、実力が違う。あたしはバリアを外し、すぐに受けの体制に入った。守りの型を取るため、強いダメージは受けにくい。

 

「どうだっ『回り込みスーパー蹴り』は!!」

 …と言われても、そんなにダメージは喰らっていなかった。まだまだ未熟なのだろう。蹴りが弱い。

 あたしは透に本物の蹴りを魅せてやった。腹を(えぐ)るように直撃する蹴りによって、透は吹き飛び木に打ち付けられた。

 

「ぐはっ。まだだ、『憑依:木の魔人ツリラー』」と苦しそうに叫ぶ透を見ると痛々しい気持ちになっていく。

 透が触れた木は、霊気を帯びた。つまり、霊となった。

 霊となった木のモンスターであるツリラーがあたしを襲う。が、バリアで(ことごと)く守ってやった。

 

「そのバリアを破壊して、俺は勝……」透は何かに気付いたらしい。

 あたしの右手をガン見しているのを見るに、紫色の龍のタトゥーに気付いたのだろう。この印は暴力団山川組の幹部であることを示している。

「勝てないじゃないか……。あの暴力団の幹部が相手って…」

 

 透はおどおどした態度を取り始めた。

 暴力団山川組は日本で一番強い裏の派閥だ。その中で幹部となると、強いに決まっている。

 

「くそっ、だが俺は負けない。俺は選ばれた男なんだ!」

「選ばれた?」と綾が問う。

「ああ、芦屋家は安倍家に負けてきた。だからこそ、強い子孫を残しいつか勝てることを願ってきた。」

「それが…お前なのか?」

「そうだ。俺は生まれながらにして、邪気の力を持ち、霊気の家庭に生まれ、元気の才能がある。俺は前代未聞の《唯一》の男なんだ!」

 

 透はライバルに勝つために幾度も厳しい修行を積んできたらしい。そして、ついにライバルとなる安倍祓魔師有限会社の舐めた姿勢が許せない。

 そして、勝負を仕掛け負けかけている。ここで諦めるわけにはいかない…。負けるわけにはいかない。

 …と透は言っていた。

 

 あたしも負けてあげる気はそうそうない。

 透が突っ込んでくる。あたしは、何発もの蹴りだけで痛みつけた。

「おいおい殺さないでよ…」という綾の嘆きを聴く。

 安心しろ!殺すのではなく、生け捕りにするだけだ。こうでもしないとまた襲いかかってきて面倒だ。

 

 とどめの蹴りが入り、透はその場に倒れた。

()()()()()()()()()()()!」

 あたしは透に向かって言い返してやった。透はその場から動かない。

 

「いや、逃げれないぐらいにボコボコにやられてますよ!」と綾。

 ピクッと痙攣をしかける透を見ると、本当に動けないのだろう。

「まあ、早く葵さんの所へ行きましょう!」

「はい!!」

 

 

◇赤兎VS青鷹◇

 

 張り巡らされた糸──。俺は鷹のように空中を翔ける。身動きが全く出来ない兎は俺の標的。狙ったものは逃がさない。

 

「『青鷹(ホーク):空中攻撃(ピーク)』」

 

 空を翔ける俺は素早い動きで獲物に攻撃する。鉄パイプが明里の頬をかすった。

 まだ、俺の攻撃は終わらない。糸を利用し、トランポリンのようにして跳ね返る。そして、再び明里へ攻撃をする。

 そう、この技は糸の柔軟性を利用し、このフィールドを素早く翔けて鉄パイプの連続攻撃を与えるという血も涙もない脅威さを持つ。

 だが、明里は殺人鬼と呼ばれるほどの実力者。頬に傷をつけることしか出来なかった。逆に俺がダメージを喰らった。

 明里の木刀による突きが俺の調子を狂わした。これ以上の攻撃は俺自身にも危険だ。糸を自由に翔けるなど簡単なことではないからだ。

 

「…。【新馬刀(しんばとう)】……。秘技……」

 

 明里は木刀を振る。空を切るように振られたその刀に俺は一瞬目を奪われた。

 その一瞬が命取りだった──。

 一瞬にして明里は消えた。そして、後ろに気配を感じた。

 不意をつかれた俺は避けることが出来なかった。攻撃をモロに受け、地面に叩き落とされた。

 

「まだだ…。」と俺は再び糸を伝っていく。

 それが間違いだった。俺は自由に糸を翔けていた。標的も自由に糸を伝っていたのだ。

 "戦いながら成長する"と言った所だろうか。明里の可憐な動きは俺を一気に不利な状況へと追い込む。

 

 しかし、俺はまだ負けた訳ではない。一発さえ当てれば致命傷になるはずだ。一撃を狙って俺は獲物を狙う。

「『青鷹(ホーク):頭脳的破壊(ブレイク)』」

 糸の伸縮性を利用し、極限まで押し込むことで俺の突撃速度は速くなる。この素早さなら獲物を捕えられる。

 

 

 俺は明里に向かって突撃した。その速さは目で見ると残像が現れるほど。

 ──それなのに、明里は俺の攻撃は軽々と避けた。さらに、追撃を加えてきた。俺の実力では…かすり傷一つしかつけられないのか…。

 俺は勢い余って糸のフィールドの外へと堕ちた。

 俺はこのまま勝てないのか……。身体中の痛みが俺を襲う。俺は鉄パイプを支えにして立ち上がる。

 

 獲物を狙う野性のような目──。戦いながら、糸のフィールドに慣れていき、俺を実力で捩じ伏せてくる。

 野性味に溢れたその目が俺を狙っている。

 獲物側と狩る側……。俺に有利な状況下で、見た目も格下に見える相手。俺は狩る側だと思っていた……のに。

 

 

 どうやら、それは違ったみたいだ。俺は狩られる獲物であり、兎のような敵こそが狩る側であったのようだ。

 

 

◇殺人鬼の真の姿◇

 

 だからって、俺が負けると決まった訳ではない。知恵さえ使えば狩る側にさえ回れるはずだ。

 俺は真っ向から対立する気はない。なぜなら俺の目的は《倒す》ことではないからだ──。

 

俺の目的は《捕らえる》ことなんだ。

 

 この技で終わらせる。終わらせられなかったら俺はもう勝てない──。やるしかない。

 俺は腹を括った。

 

 

 俺は鉄パイプを少しばかりいじった。そうすると、糸が鉄パイプの中へと逆戻りしていく。

 絡み合って出来た糸のフィールドが中心に集まっていく。真ん中へ真ん中へと絡んでいく糸が明里を捕らえていく──。

 明里は木刀と兎を落とした。絡んでいく糸の中には明里一人だけが取り残された。

 

「『繭吐虫(ワーム):封印結晶(クリスタルシール)』」

 

 明里は糸で作られた繭の中に閉じ込められた。俺の隠し技だ。これを喰らえば中からの脱出は不可能に近い!

 俺は勝ったと思った。まさか、殺人鬼の本当の脅威は他にもあったなんで思いもしなかった。

 

 

 糸がどんどん切られていく。目には見えない速度で糸の繭が切られている──。そして、無傷で脱出する明里。

「なかなかやるじゃないか…」

 兎が刀の先を俺に向けながら発した言葉だ。

 

 実は明里が抱いていた兎は霊だったのだ。

「明里…。こいつは強い!俺も戦う!!」

「……。ウサ 分かった…」

「こいつの記憶を奪わなきゃならねぇから、一気にケリをつけるぞ!明里…」

「うん……」

 

 謎の殺人鬼として、正体が分からなかった理由は"記憶を奪われていた"からだった。ここで負ければ、殺人鬼の存在を一から追うことになる。

 愛の仇がある。負けられない──。が……

 

 俺の後ろに現れるウサと呼ばれる兎。その兎は持っている刀を投げた。

 鉄の刀は当たれば致命的だ。俺は間一髪避けた。

 飛んでいった刀を明里が掴む。そして、刀は木刀へと変わった。ウサは霊力によって木刀を鉄の刀に変えていたのだろう。

 明里は背中を狙って木刀を振った。俺は──負けそうだ……。

 

 明里の攻撃は止まない。意識が飛ぶのも時間の問題だ。俺はここで…負けて…下手したら、死ぬのか?

 

 

◇救世主◇

 

 

 

 思い出が走馬灯のように蘇っていく。俺は──ここで死ぬのか?

 辺りは一面真っ暗だ。今、晴天の昼っていうのに。

 

「私が相手をするわ!殺人鬼さん」

 

 幻聴か?見知らぬ女の人の声が聴こえる。

「【誘引】こっちよ!」

 技を使ったのだろうか?気になる──。

 

 俺は辛うじて目を開けた。そこには、謎の美少女がいる。

 金髪で顔立ちが外国人っぽいが日本人っぽくもある。多分、ハーフだろう。

 

「大丈夫?」と心配してくれた。

 

 だいぶ意識を取り戻した。だけど、まだ眠い。

「ああ、助かった!ありが……」

 そこまで言い残すと俺は眠ってしまった。だが、死んだ訳ではない!短時間の夢の中(ショー)へと入り込んだだけだ。

 

 

◇救世主ローラ◇

 

 

 僕と紗希と愛は葵の元へと向かった。

 葵の姿は無残な姿だった──。そして、それを抱える金髪の女。

 

 僕はこの人のことを知っている。()()()だ。

 安倍祓魔師有限会社に所属する社員の娘だ。元気の素質はなく、霊や悪魔とも契約を結んでいない。あるのは、頭脳のみ──。

 それでも、僕よりも祓魔師としての素質がある。未だに、祓魔師の資格をとれでいないが───。

 

 僕はローラに葵の安否を聞いた。そして、返ってきたのは「ええ」という言葉だった。葵は生きている。

 ローラは逃げるふりをして、隠れたのだろう。予め仕組んでいる足跡によって、敵は逃げていると勘違いし足跡を辿っていく。

 

「早く逃げましょう!戻ってきたら危険よ」

 

 ローラの提案によって、僕らは逃げることにした。

 

 

◇邪竜蛇ヨルムンガルド◇

 

 

 僕らは殺人鬼から逃げて本部へと帰宅する頃。岐阜のとある町で強さが尋常ではない悪魔が現れた。

 

 

「誰だ?こいつ」と町の人々は声を荒らげる。

 フードを被った透明人間──のような存在。

 一枚の布が宙に浮かんでいる。まるで、透明人間かのように……。

 その透明人間のような存在は召喚魔法陣を繰り出した。これは、悪魔や霊を別空間から召喚するための魔法である。

 そこから現れたのがその尋常ではない悪魔だったのだ。

 

────邪竜蛇ヨルムンガルド。

 その悪魔の名前だ。

 

 ヨルムンガルドが現れて数分でその町は崩壊した。辺りは毒と死人と廃材があるのみだった。その悪魔の強さは町を一つ滅ぼすほどだった。

 僕がそんな危険な悪魔と対面することになるとは、今の僕には予想だにしないことだった……。




キャラ紹介

ライバル:ウサ

 明里の持つぬいぐるみ。実は霊がこもったモンスターだった!

 持った木刀を鉄の刀に変えることが出来るが、手から離すとすぐに木刀へと戻ってしまう。
 また、相手の記憶を奪うことが出来る。さらには、脳内に思念伝達でイメージ化したものを送ることが出来る。

相当厄介な相手だぞ!!

【一人称】ウサ
【見た目】白い兎。右耳に赤いリボンがついている。
【能力】霊気


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