がんばれエリオちゃん日記 (上月 ネ子)
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このSSでのキャラクター設定

場繋ぎみたいなものとしてご覧ください。

ゲームのプロフィールなどに書かれてあるものもこちらには記載しておりますが、一応それも踏まえて独自設定を書き連ねております。


Side academy(ディオール魔法学園編)

 

 

 

エリオ

 

年齢:14

B/W/H:77(推定C)/60/79

身長:148cm

一人称:私

 

ゴ魔乙学園編の主人公。本SSでは学園乙女の一人であり、メインキャラの一人。魔法の才能が周りより飛び抜けて劣っているが、「デコぴた」というおまじないを使って魔力を増幅し、他の乙女と同調する。

エンジェルを目指してひたすら全力疾走する。しかし、あまりにエンジェルに対して盲目な要素があるため、主にカレンやアンゼリカに諫められている。

文学小説などを嗜む趣味があり、実は意外と豆知識を持っている。しかし本人がそれをひけらかす性格ではないので、あまり知られていない。例外としてチコだけが彼女の豆知識を聞いたりしている。

 

 

チコ

 

年齢:14

B/W/H:73(推定B)/55/77

身長:143cm

一人称:わたし、ごくたまに私

 

学園乙女の一人であり、ゴ魔乙学園編のメインキャラの一人。本SSでは5生徒と表記している。水の魔力の適正があり、水泡を生み出し周囲に散らす事が出来る魔法を操る。

数年前に家庭の事情でセイレニウムからオーフェリアに引っ越した事があり、その折でエリオと出会う。自分の魔法の才能に少しコンプレックスがあったが、エリオと出会った事を切欠に自信を持つことが出来た。

以降はセイレニウムにまた戻り、エリオと文通を取るなどして、彼女の中でエリオの存在が大きくなり、エンジェルを目指すために学園の魔法科に通うと言い出したエリオを追い掛ける事を選択した。

 

 

アンゼリカ

 

年齢:14

B/W/H:78(推定C寄りのB)/57/80

身長:153cm

一人称:あたし、戦闘中は拙者

 

学園乙女の一人であり、ゴ魔乙学園編のメインキャラの一人。光の魔力の適正があり、光魔忍者という、閃光魔法を操る一流の忍を目指す少女で、現在はまだまだ見習い魔法乙女兼忍として精進を重ねている。

ゴ魔乙学園編のストーリーとは違い、黒い魔力による魔動機暴走の事件には、最初からエリオとチコと一緒に現場に居合わせている。そして二人と気が合い、ゴシックパーティーでのメンバー決めでもすぐに三人が集まった。

忍としても修行中だが、本人はくノ一としても修行をしなければならないのでは、と考えている。よって、時折女の子らしさを磨くために、知識をあらかじめ蓄えてから実践するのだが、苦手意識が災いし空回り気味。

 

 

カモミール

 

年齢:14

B/W/H:80?(数値通りだと推定C、逆鯖の可能性あり)/57/82

身長:156cm

一人称:私、ごくたまにわたくし

 

学園乙女の一人であり、ゴ魔乙学園編のメインキャラの一人。風の魔力の適正があり、花や植物などの香りを操る魔法の才能を持つ。母親譲りの才能で、世間ではモデルで知られている。

エリオ達と出会うことで、与えられた事を理由もなく享受していた自分を変える事を決めた。しかし、本人にはエリオやアンゼリカの様な夢や明確な目標が無いことが目下の悩みの種である。

お菓子作りを嗜んでいる。香りにも拘っており、先輩のダチュラと香水・アロマ談義をすることも。モデルの仕事のためか、体重や第三者から見た体型に気を遣うが、一番の原因が自分のバストだという自覚が薄い。

 

 

カレン

 

年齢:14

B/W/H:85(推定E)/60/88

身長:158cm

一人称:私

 

学園乙女の一人であり、ゴ魔乙学園編のメインキャラの一人。火の魔力の適正があり、両親から受け継いだ灼熱を操る魔法を使いこなす。剣術の心得も受け継いだが、本人にとってはコンプレックスである。

学園でもトップクラスの才能を持つ。彼女は才能で人を判断したりはしないが、人一倍魔法の才能がないエリオに対して、碌に魔法を使いこなす努力もしていないのに、と衝突し合うことがあった。

自分にも他人にも厳しく、求める理想はいつも高い。しかし、そんな彼女も恋愛の努力は一度もしたことがなく、所謂恋バナの空気を察知すると待避する様に一歩引く態度が時折見受けられる。

 

 

ルベリス

 

年齢:14

B/W/H:83(推定E)/58/82

身長:150cm

一人称:私

 

学園乙女の一人であり、ゴ魔乙学園編のメインキャラの一人。闇の魔力の適正があり、様々な儀式に精通する呪いの魔法を操る。自身が召喚した"ゴーちゃん"という闇の精霊を連れている。

何かにつけて魔法の研究を優先する。いつの間にか所持していた魔導書を解読し、自身の力とするために周りの人や物を最大限利用しようとする。

エリオと出会ってからは、エリオの才能について研究を優先する時があるが、その進捗は芳しくない。彼女としては、エリオとよく似た才能を持つ救いの鍵の少年と接触することが出来れば、と考えているが……。

 

 

ラナン

 

年齢:16

B/W/H:84(推定E)/58/85

身長:154cm

一人称:私

 

魔法乙女の一人であり、ディオール魔法学園に在籍しているエリオ達の先輩。本SSでは5乙女と呼称。ヴォルカニアの火の守護神の力を宿しており、守護神暴走の異変後は魔法学園の特別講師を担っている。

救いの鍵の少年の魔法によく似た力を持つエリオに対して興味と疑問が尽きないが、飽くまで自分は先輩でいようと振る舞っている。

行方を知らない救いの鍵の少年を秘密裏で探している。しかし、ディオール伯爵家に聞いても居場所が特定できなかったらしく、魔法乙女達全員でジルバラード中から情報を集めている。

 

 

ロザリー

 

年齢:15

B/W/H:72(推定AA)/51/80

身長:149cm

一人称:私、ごくたまにわたし

 

魔法乙女の一人であり、ディオール魔法学園に在籍しているエリオ達の先輩。ヘカトニスの闇の守護神の力を宿しており、守護神暴走の異変後は魔法学園の特別講師を担っている。

時々厳しめの言動が見受けられるが、本心を上手く口に出来ない性分のため、そこに悪意はない。自分にあまり自信がなく、本当はかなり内気で内弁慶。

黒い魔力によって暴走した魔動機を差し向けたのはルベリスだと睨んでおり、どうやって黒い魔力を操作したのかを問い質そうとしているが、あまり進展がない。

 

 

スフレ

 

年齢:11

B/W/H:73(推定C)/49/77

身長:137cm

一人称:スー、ごくたまにわたし

 

魔法乙女の一人であり、ディオール魔法学園に在籍しているエリオ達の先輩。ウィンドリアの風の守護神の力を宿しており、守護神暴走の異変後は魔法学園の特別講師を担っている。

年齢も相まって完全に子供にしか見えないが、実は魔法乙女達の中でも最高クラスのパワータイプ。同じくパワータイプのジギタリスとはよく修行相手となっている。

異変後からは成りを潜めがちだったが、本当はとても甘えん坊。救いの鍵の少年はよく甘えの対象になり、全力でじゃれついてくるので甘えられる側は相応の覚悟が必要である。

 

 

ダチュラ

 

年齢:18

B/W/H:90(推定E)/56/86

身長:167cm

一人称:私

 

悪魔乙女の一人であり、ディオール魔法学園に在籍しているエリオ達の先輩。かつては魔界からの刺客の一人だったが、現在では救いの鍵の少年側として異変解決をしている。本SSでは5悪魔と呼称。

闇の魔力を利用して他者の欲望を操作する魔法を使うことが出来、動物とも心を通わせることが出来る。そんな彼女だが、猫だけはどうしても苦手であり、時折どうして苦手なのかを物思いに更けることがある。

救いの鍵の少年の行方不明の経緯にカルミアが深く関わっていることを知っている。しかし何処に行ったのかだけはカルミアも分からないらしく、失踪当時は打たれ弱いところのある彼女でさえもカルミアと喧嘩をした。

 

 

 

Side savior(救いの鍵の少年編)

 

 

 

救いの鍵の少年(真少年)

 

年齢:15

B/W/H:84(推定D)/57/82(女性の姿限定の推定スリーサイズ)

身長:161cm

一人称:僕、女性変装時だけたまに私

 

ゴ魔乙真少年編、悪魔編の主人公。黒い魔力を白い魔力へと浄化し、狂暴性を鎮める魔法を操る。異変解決後、光の魔力の適正があることが分かり、カルミアに魔法を教えてもらうことにした。

カルミアから教わった惑わしの魔法を利用して、自身の姿を女性に変化させることが可能。ラナンの声音、スフレの癖毛、カトレアのスタイル、プルメリアの雰囲気、ロザリーのドレスセンスを真似ている。

異変解決後、あることを切欠に真少年の実積がジルバラード中に露出してしまう。噂が落着するまで世間から行方を眩ませることを発起する。

 

 

カルミア

 

年齢:17

B/W/H:85(推定D)/50/81

身長:162cm

一人称:あたし

 

悪魔乙女の一人であり、ディオール魔法学園に在籍しているエリオ達の先輩。かつては魔界からの刺客の一人だったが、現在では救いの鍵の少年側として異変解決をしている。

真少年に魔法を教えてほしいと頼られ、光の魔力を用いて惑わしの魔法を指南する。しかし、自身としては真少年がたった一人で戦うことは善しとせず、本当に教えていいのか最後まで悩んでいた。

自身にとって、真少年は自分達を受け入れてくれた恩人のため、ダチュラとの共有財産という認識をしている。そのため、失踪直後はダチュラや乙女達への説得に骨を折ることに。

 

 

ルチカ

 

年齢:14

B/W/H:87(推定G)/48/75

身長:152cm

一人称:私、たまにわたし

 

悪魔乙女の一人であり、ディオール魔法学園に在籍しているエリオ達の先輩。かつては魔界からの刺客の一人だったが、現在では救いの鍵の少年側として異変解決をしている。

引っ込み思案で近寄られるのを極端に嫌い、その結果自身の鎌鼬を操る魔法を暴発させてしまう事が稀にある。しかし本人としてはロマンチストな要素があるため、適切な距離を保つ真少年にある淡い心を抱いている。

真少年と自分達の関係を邪推する噂を人一倍気にしていた。真少年が自分達の下を離れると言い出した時にひどく気が動転した。

 

 

サキュラ

 

年齢:15

B/W/H:71(推定AA)/50/72

身長:155cm

一人称:私

 

ヘカトニスの辺境に住んでいる沼地の魔女。現世界の血を引くが、生まれはジルバラードである。そのため、魔女としての力に目覚めても、ロストチルドレンとしての証である翼がない。

ハロウィン異変以降、母親の体調が快復し始めてからは沼地でひっそりと暮らしている。サキュラは魔女としての通り名であり、正しい発音は"サクラ"。

真少年とは異母姉弟であり、彼の母親である魔女アンの謎を探るべく、魔女サキュラの一面を隠しつつ真少年と共にジルバラード中を旅することを決意する。

 

 

プルメリア

 

年齢:19

B/W/H:91(推定F)/63/88

身長:165cm

一人称:私

 

魔法乙女の一人であり、ディオール魔法学園に在籍しているエリオ達の先輩。イシュタリアの光の守護神の力を宿しており、守護神暴走の異変後は魔法学園の特別講師を担っている。

常に一歩引いた立ち位置で、乙女達のお姉さん役に徹している。しかし、真少年の事に関しては我が強くなることがある。軟体動物が苦手。

生前の彼女の友人であるピオニーの伝手を頼って真少年の行方を探ってもらっているが、身のある情報は掴めていない。

 

 

リリー

 

年齢:16

B/W/H:78(推定AA寄りのA)/52/80

身長:165cm

一人称:私

 

悪魔乙女の一人であり、ディオール魔法学園に在籍しているエリオ達の先輩。かつては魔界からの刺客の一人だったが、現在では救いの鍵の少年側として異変解決をしている。

無駄を嫌い、静寂を好む。ゆえに、ジルバラードで度々開催するお祭り行事にはあまり積極的に参加しようとは思わない。例外としてクリスマスだけは彼女も楽しんでいるようだ。

そのためか、ジルバラード中で広まった真少年の噂話に対しても良い顔をせず、ジギタリスと共にもう一度ジルバラードを混乱に陥れようと画策しかけた。

 

 

ジギタリス

 

年齢:13

B/W/H:69(推定AA)/50/78

身長:145cm

一人称:ボク

 

悪魔乙女の一人であり、ディオール魔法学園に在籍しているエリオ達の先輩。かつては魔界からの刺客の一人だったが、現在では救いの鍵の少年側として異変解決をしている。

非常に食いしん坊で、かつ燃費が悪い。基本的に焼いて溶かせば何でも食べられると考えている。彼女の熔岩を操る魔法は同じく火の魔力の適正があるラナンを凌ぐほどだ。

真少年を非常食と考えており、何時でも食べられるように近くにいてほしい、と思っている。だが、真少年がいなくなった切欠である噂話を広めた誰かを強く恨んでいる。

 

 

カトレア

 

年齢:17

B/W/H:89(推定E)/60/87

身長:167cm

一人称:私

 

魔法乙女の一人であり、ディオール魔法学園に在籍しているエリオ達の先輩。セイレニウムの水の守護神の力を宿しており、守護神暴走の異変後は魔法学園の特別講師を担っている。

可愛いものや年下を可愛がりたくなる性格のため、自分に後輩が出来ることを一番喜んでいた。特に、同じく水の魔力の適正があるチコは、後輩の中でも一番のお気に入り。

自分を見つめ直す機会を作ってくれた真少年には一生をかけて恩返しするべきだ、と考えている。そのため、失踪してしまったことで空回りすることがしばしば見受けられる。

 

 

ウィンディア

 

年齢:13

B/W/H:70(推定AA)/50/73

身長:151cm

一人称:私、たまにわたし

 

ディオール伯爵家三女のエンジェル。現世界から流れ着いたロストチルドレンの一人であり、風使いの魔法の力に目覚めた。以降はジルバラードで他のエンジェルと共に魔物退治を専門としている。

甘えん坊でやる時はやるタイプ。しかし、そんな彼女も一時期は劣等感を感じることもあり、他のエンジェルの魔法の才能が強く、自分一人だけ劣っていると思っていた。

ハロウィン異変でサキュラと出会い、同郷出身だということで異変解決後はすぐに仲良くなった。真少年が噂話に悩んでいるときにも、サキュラを頼ってみるよう口添えもしている。

 

 

キャスパー

 

年齢:11

B/W/H:63(推定AA)/48/59

身長:142cm

一人称:アタシ

 

ディオール伯爵家五女のエンジェル。現世界から流れ着いたロストチルドレンの一人であり、死霊使いの魔法の力に目覚めた。以降はジルバラードで他のエンジェルと共に魔物退治を専門としている。

言葉遣いが悪く、悪戯好き。人を小馬鹿にする言動が目立つが、根っこは優しく家族想いである。背伸びしがちな年頃のため、最近は特にローザやフォレット、プルメリアやルチカを見ては恨めしそうにしている。

守護神暴走の異変の最中、真少年とサキュラの関係をある程度見抜いていたが、情報が少なすぎるのとサキュラに失礼であるため、口にするのはあまり憚られた。

 




こう見ると、デススマイルズ勢はみんな細過ぎますね……。
まあゴ魔乙勢がスタイル良すぎるというのもありますが。
バストのカップは全部私の推定です。参考にするにしても、頭の片隅に置いておく程度にしておきましょう。



おまけ(ヤンデレタグが付いてるので折角だから魔法乙女達の病み度を数値化してみた)

ラナン(私はマスターの傍にずっといるんだから、そんな時間が無くなるなんてあり得ないわ):病み度80%
カトレア(私の全てはマスターに捧げるのです、マスターが望むのならどんなことでも……):病み度85%
スフレ(お父さん達と再開したらおにいちゃんを紹介するんだからね、いなくならないでね?):病み度50%
プルメリア(マスターの一番は誰であろうとそれはマスターの選択です。ですが私を選ぶように手は尽くしますわよ?):病み度35%
ロザリー(別に一番でなくても関係ない。私の心からいなくなってしまわなければそれでいいの、それで……):病み度75%

ジギタリス(お前はボクの非常食だっていうのに、勝手な真似は許さないからな):病み度45%
リリー(もしマスターが挫けてしまったときは、私が氷付けにして眠らせてあげますね):病み度65%
ルチカ(ずっと私の王子様でいてくださいね。でないと私、……何するか分からないです):病み度90%
カルミア(早く私に溺れて。そうすればダチュラと一緒に可愛がってあげるから):病み度60%
ダチュラ(何時でもさらけ出して良いのよ、私が全部受け止めてあげるわ):病み度40%

チコ(エリちゃん、ずっと一緒にいて、ずっとわたしを求めて、ずっとわたしを一番にして!):病み度95%
カモミール(こんな私のような、夢を見ない女の子を好きになってくれますか?):病み度25%
カレン(ヴルカオン家の跡継ぎでもなく、学園の優等生でもない、ただの私を見てほしいの):病み度40%
アンゼリカ(あたしみたいな、あんまり女の子らしくない奴より、もっと女の子らしい娘がいるだろうに……):病み度20%
ルベリス(私に、構い続け、たら……、後悔する、かも……。それでも、いいの……?):病み度30%

エリオ(出来れば目の届く所にいて欲しいなぁ、そうじゃないと心配しちゃうよ):病み度75%
真少年(今更皆のいない時間なんて考えられない、でも皆が望むなら僕は……):病み度50%


依存型:ラナン、ロザリー、エリオ、真少年
独占型:スフレ、プルメリア、チコ、ルベリス
執着型:カトレア、ジギタリス、ルチカ、カルミア
退廃型:リリー、ダチュラ、カモミール、カレン、アンゼリカ

イメージとしてはこんな感じ


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~Side academy~ 志すエンジェルの卵日記

皆様お久しぶりです。

筆休め及びリハビリも兼ねて久々に新しく投稿することにしました。

ゴシックは魔法乙女、しばらく離れてたんですがまた復帰しまして。ストーリーに追い付いた記念に書きました。


――ディオール魔法学園。

ジルバラード中からエンジェルを目指す未来のエンジェルの卵を育成する教育機関である。

学校名からディオール伯爵家が理事を勤めており、優秀な成績を残せばエンジェルの称号を手に入れられる。

 

今までにも、エンジェルと呼称される者達は何人もいた。

それは、ディオール伯爵家に招かれ、使い魔を駆って魔法で戦う少女達。

それは、数多の乙女達、悪魔達と契約をしてジルバラードの混乱を静め、邪悪を救済した少年。

 

 

 

もしかすれば、今度は私がそんな人達と名を連ねることが出来るかもしれない。

そう夢見て毎日を努力と研鑽に費やしているつもりだけれど――

 

「うーん……」

 

鏡の前で身だしなみのチェックをしつつ、そんな事を考える。

 

私はエリオ!

憧れのエンジェル目指して駆け抜ける十四歳の女の子!

 

友達やライバル、チームメイトにも恵まれて少しずつ実力もついてきたはずだけれど、他のみんなと比べるとまだまだ実力不足が否めないなぁ……。

こんな時カレンなら、

 

「そう思うなら今以上の研鑽を積みなさい。努力は決して裏切らないわ」

 

って言いそうだなあ。

 

「……はっ! ほっ!」

 

私は意味もなく鏡の前でポーズをとる。次第にそれが楽しくなり、だんだんと凝ったポーズを考え始め、

 

「私は天才エンジェル、エリオ‼ エンジェルの名の下に、お前を成敗してくれよぅ~‼」

 

ついには台詞を入れ始めた。

やっぱりエンジェルは風格も大事だよね。その一挙手一投足には溢れ出るほどのカリスマが――

 

「エリちゃん、何してるの?」

 

「うひゃああぁぁぁぁっ⁉」

 

馴染みのある人の声が突然部屋に響き、ふにゃりとした悲鳴が私の口から放たれた。

今の声は、私の幼馴染みのチコちゃん。愛称はチーちゃん。小さい頃からの長い付き合いで魔法学園への入学したきっかけに疎遠になってしまうかと思ったが、チーちゃんには魔法の才能もあり、同じく入学したの。

 

私は素早くチーちゃんに目を向けて、

 

「チーちゃん、いつからそこに⁉」

「エリちゃんがポーズをとってるところからかな?」

「かなり前からじゃん! もっと早く声かけてよ~‼」

 

うぅ、改めて私は恥ずかしいことを後先考えず堂々とやっていたのではないだろうか。

チーちゃんは私のルールメイトなので、部屋の中でこんなことしてたら当然見られるリスクは高いはずなのに。

 

「って言うかもうこんな時間だー⁉」

「ピコーン! 早く行こ、エリちゃんっ」

 

寮の廊下をかけて、いつもの教室へと急ぐ。

今日も今日とでいつもの毎日が始まる。

 

 

 

「はぁ~~っ、ギリギリセーフ……!」

「うぅ、間に合って、よかったぁ……」

 

私とチーちゃんは肩で息をする。ここ最近毎朝ジョギングで体力がついた方だと思ったんだけれどなぁ。

 

「急いで走ってくるから疲れるんでしょ。これに懲りたらもう少し余裕を持って登校してきなさい」

 

私たちに声を掛けてきたのは、既に授業の準備をしているカレン。黒々とした長い髪を軽く揺らしながら、呆れた声音で話しかける。

 

「窓から見えてたわよ、二人して急いで校舎に向かってくるのが」

「ここ最近は、遅刻ギリギリが減ってきたはずだが今日になってまたなのか?」

 

便乗するように話しかけてきたのはアンゼリカちゃん。

 

「あ、アンちゃん、カレンも、おはよう……」

 

「うむ、おはようエリー、チコ。それで今日は何があって遅刻しかけたんだ?」

「え~っと、それは……」

 

馬鹿正直にあんな馬鹿らしい事を話すわけにもいかなくて、言い訳を考えていると、

 

「エリちゃんがね、鏡の前でポーズとってたりエンジェルがなんとか~っ、って呟いてたから様子を見てたら時間が経っちゃって」

「ちょっとチーちゃん⁉」

 

しまった、口止めしてなかった‼

案の定、カレン達には呆れと懐疑の混じった視線を授業が始まるまで受け止める羽目になった。

 

 

 

「あなたねぇ、普段からそんな下らないこと考えてるんじゃないでしょうね」

 

休み時間になって朝の経緯を聞かれ、観念してみんなに話をするとカレンから予想通りの小言が飛んできた。

 

「別にそんなことないしぃ。ただちょっと、形から入るのも重要ってのを思い出して試してただけだしぃ」

「ふふ、まさにエリオちゃんって感じですね」

 

クスクス、と微笑ましいものを見るような目を向けてくるのはカモミールちゃん。

 

「それ……、形から入る、って言わない……、と思う……」

 

燻った銀髪のルベリスちゃんに駄目出しを受ける。

 

「ルベっちの言うとおり、どちらかと言えばごっこ遊びだな!」

「言うなれば"エンジェルごっこ"でしょうか?」

 

二人とも酷い‼

 

「だったら、皆はどんなエンジェルになりたいの⁉」

 

自棄になった私は、言い訳代わりに問いかける。

 

「ピコーン! どんなエンジェルに?」

「そうそう、エンジェルっていっても魔物退治を専門とするディオール家の人達とか今でも何処かで人助けをしているらしい救いの鍵の少年さんとか!」

「む……、確かにそう聞けばエンジェルと言ってもしていることは一括りではないわね」

 

一考の余地があるのか、顎に手を当ててカレンが考え始める。

 

「では、エリオちゃんはどのようなエンジェルになりたいのですか?」

「私? そうだなぁ……」

 

私は少し思い出して、口に出す。

 

「やっぱり人助けかな?」

「珍しい……。その場しのぎの、問い掛けかと……」

 

ルベちゃん、さすがの私も怒るよ?

 

「昔エンジェルに助けてもらった事があってね。私もあんな風になりたーい、って」

「ふふ、エリちゃんずっと前にもそんな話をしてたよね」

 

確かにチコちゃんには話した気がするかも。

 

昔の話だ。

凶暴化した魔物の暴れた後の残骸が私のところに飛んでくるのを、エンジェルの人が私を抱えて助けてくれた。

ただ、恐怖が限界を超えてすぐに気絶したから、あの日のことは実はうろ覚えである。

だけど、あの時助けてくれたあの人がエンジェルであるというのははっきりと今でも覚えている。

 

「そんな事が……」

「………………」

 

ルベちゃんは首をかしげて、なにか思い当たる節でもあるのか明後日の方を見ている。

 

「とにかく、私もあの時助けてくれたエンジェルみたいになりたいんだ!」

「すごいですエリオちゃん。私も見習わないといけませんわね」

「うむ、どれだけ力を身に付けようと、意志無き刀など取るに足らぬ。そういう意味では、確かにエリーは形から入ってるな」

「えへへ、そうかな」

「ったく、調子いいんだから」

 

思わず鼻が高くなった私に再度呆れた反応を見せたカレン。

 

「だけど、今の話で自分を見つめ直す切欠にはなったわ。でも、それなら尚更努力しないとね、エリオ?」

「うぐ、わかってるよそんな事」

 

こうして、私の奇行はなんとか皆にとって為になる話として落ち着いた。

今日も今日とでいつもの毎日が過ぎていく。

 

 

 

エリちゃんがエンジェルに助けられてから、エンジェルに執着するような素振りをよく見かけるようになった。

突然わたしに魔法を教えてって泣きついて来たときはビックリしたけれど、エリちゃんがわたしを頼ってくれたのがそれ以上に嬉しかった。

魔法学園に入学するって小耳に挟んだときはいてもたってもいられなかった。

エリちゃんの役に立ちたかった。

エリちゃんの夢を叶えるお手伝いがしたかった。

夢に向かって駆け抜けるエリちゃんが、わたしには輝いて見えた。

だから、わたしもエリちゃんと同じくエンジェルを目指す。

そうして、エリちゃんよりすごいエンジェルになってエリちゃんのお手伝いがしたい。

 

そうすれば、もっとエリちゃんはわたしを頼ってくれるよね?




チーちゃんはヤンデレ(というよりは対エリオ限定承認欲求)。異論は認める。

だっておでかけでもエリオに対する発言がどこか危ういんですもの。おでかけ終了の待機中のあの表情もなんか微妙にゾクッとしましたし。


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気を病めるチコちゃん日記

不定期更新だからこそこんなに早く投稿する。

そんな日もありますよね。


「チーちゃん、朝だよ。このままだと寝坊しちゃうよー!」

 

今日の朝はエリちゃんの声で目が覚める。

わたしもエリちゃんも朝に強い方じゃない。けどどちらかというと私の方が重症だ。

 

「ほぁぁっ、……おはよぅ、エリちゃん」

「おはよーチーちゃん! 今日もエンジェル目指して頑張ろー‼」

 

キラキラとした笑顔がわたしの視界一面に広がった気がした。

この笑顔が見られるだけで今日も頑張れる。

 

 

 

今日の午前の授業はゴシックパーティーへと向けた基礎練習と練習試合。

二人一組ペアになって基礎の訓練をしたあと、即席のチームで制限時間内にどこまで稼ぐかを競うという内容だ。

即席で作ったチームで競うなんて無茶だー、って最初はエリちゃんや他の生徒も文句を言っていたけど、

 

「一人前のエンジェルならどのような状況でもチームプレーが出来るものだ。少なくとも、私はそういうエンジェルを一人知っている」

 

というメルセデス先生の言葉が黙らせた。

 

「うーん、不安だなぁ~」

 

二人一組のペアのエリちゃんが目に見えて弱っている。

 

「エリちゃん大丈夫?」

「うぅ、チームを組む人達の足を引っ張らないようにしないと。ただでさえ遅れがちだし……」

 

エリちゃんはあまり表に出さないけれど、自分が周りより人一倍才能が劣っていることを気に病んでいる。

でも、

 

「大丈夫だよエリちゃん! エリちゃんの指示は周りより人一倍上手だよ! エリちゃんにはエリちゃんに出来ることはあるよ‼」

「チーちゃん……。うんっ、そうだよね! 私には私に出来ることをやるんだ!」

 

両手でガッツポーズをして、エリちゃんは基礎練習に集中する。

 

エリちゃんにはエリちゃんにしか出来ないことはもうひとつある。

アンちゃんが「デコぴた」って呼んでいた、あの元気がでるおまじない。ルベちゃんは真少年って人の能力によく似たものだって言っていたあの力。

 

あの力があれば、エリちゃんは他の人に絶対に負けない。魔力を分け与える人が強ければ強いほど。

だから私はエンジェルになってエリちゃんの力になりたい。

あの力を知ってから、わたしはそう決意した。

 

 

だけど今日、わたしにとって最大の誤算が発生した。

 

 

「基礎練習はそこまでだ! 全員地上に降りて、私の所にくじを引きに来い」

 

基礎練習が始まって十数分、メルセデス先生が止めに入る。どうやら、くじを使ってチームを即席で結成するらしい。

練習試合のルールは、四人一組になって先に一定のスコアに達したチームを勝利とする、いたってシンプルな内容だ。

ただ、問題なのはチーム分けの方で――

 

「えっと、わたしは……イルカさん?」

 

引いたくじにはイルカさんの絵が書かれている。入学式の終わりごろにやった、ゴシックパーティーのチーム分けと同じ要領で、四人一組を作るみたい。

そうしてわたしと同じイルカさんの絵を引いた人は――

 

「……あ、チコ……」

「あっルベちゃん!」

 

そのうちの一人はルベちゃん。ひとまず見知った人が同じチームで安心した。

でも、残りの二人は……。

 

「よろしくチコさん、ルベリスさん」

「あっ、よろしくね二人とも」

「う、うん。よろしく、お願いします」

「…………ん」

 

わたしたちにはあまり接点のない人達。確かに、あまり知らないこの二人とチームプレーをするのは個人の技量が求められるのも解るかも。

ただ、わたしにとってはチームにエリちゃんがいないことが一番の不安材料だった。

 

「エリちゃんは――」

 

せめてカモミールちゃんたちの誰かと同じチームならいいんだけど……。

そう言ってわたしはキョロキョロと軽くエリちゃんを探す。そんな仕草が分かりやすかったのか、ルベちゃんも同じくエリちゃんを探してくれる。

すると、

 

「え……、……うわぁ……」

 

何かを見つけたのか、ルベちゃんの視線が留まった。と思ったら急に嫌そうな顔を浮かべた。

 

「ルベちゃん、どうしたの――」

「あ、待ってチコ……!」

 

ルベちゃんの視線を追って、わたしもそっちを見ると、

 

 

 

「貴女って確か時々試合でよく分からない能力を使ってた生徒よね? 他人から魔力を借りているらしいけど、恥ずかしくないの、そんな戦い方?」

「え、え~っと……、とにかく頑張るよ‼」

 

 

 

「…………………………」

 

わたしの目に映ったのは、明らかにエリちゃんを侮辱した人と、やりづらそうに笑顔を作ってるエリちゃん。

他の二人もばつの悪そうな顔をしてるけど、エリちゃんを庇うような素振りをこれっぽっちも見せない。

エリちゃんを侮辱した人は控え室の方へと戻っていって後の二人もそれに続いた。

俯いてたエリちゃんの表情は今にもくしゃくしゃになりそうで。

 

そんなエリちゃんの表情が、わたしの心を深く突き刺した。

 

 

 

「はぁ…………」

 

思うように体が動かなくて、いつもより一層疲労感が溜まった。

 

「ご、ごめんね皆。足を引っ張ってばかりだよね?」

「チコさんが気にしてるのってコウモリチームのエリオさんの事だよね?」

「ピコーン! どうして分かったの?」

 

驚いていると、ルベちゃんに呆れた反応を向けられる。

 

「分かりやすすぎ……。はっきり言って、エリオより……」

「えっと、それってそんなに酷いの?」

 

「エリオは顔に出るタイプ。チコもだけど、今日は特に……」

「…………」

 

確かにエリちゃんが嘘をつくような子じゃないし、そんなことしてもすぐにバレるイメージはある。

だから、あの時のエリちゃんは……。

 

「えっと、チコちゃん。元気だして? さっきエリオちゃんのチームの試合見てたけど、すごい的確な指示だったよ? ああいうのって、チームには必要不可欠な能力なんじゃないかなぁ?」

 

「その分リーダー的存在が面白くなさそうにバッシングしていたけれどな。個々の能力がどれだけ秀でていようと、あれじゃあ話にならないぞ」

 

「アンゼリカ……、試合は……?」

「ついさっき終わったぞ。それより、次はルベっちのチームがやるんじゃないか?」

 

それを聞いて、わたしはハッとする。慌てて立ち上がり、グラウンドに向かおうとして、アンちゃんに肩を掴まれた。

 

「あ、アンちゃん?」

「チコ、あたしはお前がとっても優しいのを知ってる。本当の試合ならともかく、今日みたいな練習試合だとやりづらい事だってあるだろう。見知った相手なら尚更だ」

 

「…………まさか」

 

「次のイルカチームの相手はコウモリチーム――エリーのチームだ」

 

 

 

試合開始数分前、わたしは一体どんな顔をしているんだろう。

違うチームになった以上、こうなる可能性は高かった。でも、あんな酷いこと言われて、あんな酷い思いをして、それでも自分に出来ることを精一杯やっているエリちゃんが輝いて見えて。なのに余計に痛ましく感じた。

 

「さてエリオさん、司令塔を気取るのであれば確実に勝てる指示を期待するわよ」

「う、うん! 全力を尽くすよ‼」

「そんなの当然よ。その上で勝つって言ってるのよ私は」

 

……図々しくエリちゃんに負担を掛けさせようとしているあの人は、悪びれもせずにエリちゃんを侮辱していたあの偉そうな人だった。

他の二人もやりづらそうにしてるけど、相変わらずエリちゃんをフォローするような気配を感じない。

 

「……チコ」

「ルベちゃん、わたし…………」

 

今日のルベちゃん、ずっと私の事気遣ってくれてる。そんなに酷いかな、今日のわたし?

 

「やる気なら、勝ちにいく……。エリオだって、望んでるはず」

「分かってる。わたしだって覚悟は決めてるよ……!」

 

一人前のエンジェルを目指す一人として、これくらいで我が儘なんて言えない。全身に魔力を込めて、もう一度正面を向く。

 

「チーちゃん達、よろしくね! 相手がチーちゃんでも負けないからね‼」

「……! うん‼」

 

エリちゃんだって期待してくれてる。だったら私も頑張らないと!

 

「とりあえず一安心……」

「……何が?」

「こっちの話。……それはともかく、今回の指示は、私に任せて」

「ルベちゃんがやるの⁉」

「相手がエリオだし、ちょっとだけ、本気出す。……チコには、やってもらうこと……、がある」

 

わたしはルベちゃんの作戦を一通り聞いて、試合開始のホイッスルがなった瞬間に、フィールド一面に水泡を放った――。

 

 

 

――結果を先に話すと、わたしたちの逃げきりで勝利した。

まずわたしがフィールドの辺り一面に水泡を放ち、相手の進路を塞ぎつつ、水泡を他の三人が攻撃して破裂させ、魔動機を倒してスコアを稼ぐ。

それを見た相手も真似して水泡を破裂させようとして、チームの一人が氷の魔法を放ち、水泡を氷結させて、もう一人が突風の魔法で凍ったままの水泡を障害物として相手を妨害する。

その間にルベちゃんが広範囲に魔法を放ち早期決着がついた。

 

「凄いね、ルベリスさん。相手を邪魔しつつスコアを稼ぐなんて。実現させるのは結構難しいのに」

「条件と心理さえ、噛み合えば、ざっとこんなもん……。相手がこっちの行動を真似しようとして、エリオの指示を無視するのは、すぐに読めた……」

 

ルベちゃんは普段やる気があまり発揮されていないだけで、ポテンシャルや才能は学園でもトップクラスだ。カレンちゃんにも負けてない、ってエリちゃんが言うだけの事はある。

 

「でも、今回のMVPってチコちゃんだよね! あんなに広範囲の水泡を生み出すなんて凄いよ!」

「確かにそうだよね。カレンさんやアンゼリカさんの影に隠れがち――っていうのは失礼かもだけど、チコさんも中々の才能だよね」

 

えへへ、そんなことないんだけどなぁ。

そういえば、昔もわたしの魔法を見てすごいすごい、ってエリちゃんも誉めてくれたっけ。前よりすごいの、エリちゃんに見せられたかな――、

 

 

 

「貴女、さっきの試合は何してたの‼」

「え~っと、本当にゴメンね! と言っても、ルベちゃんにしてやられちゃったというか……」

「百歩譲って相手の作戦勝ちだとするわ。なのに、貴女自身の手でフォロー出来たことって一体何があったのよ! 他の試合だってそうだわ、後ろから指示を出すだけで、貴女自身の成績は何処にあるのよ‼」

 

 

「貴女みたいな、誰かの力を借りないと何も出来ない人がエンジェルになるだなんて笑わせるわ! とっとと実家に帰ったらどうなの?」

 

 

 

頭が、すぅっと冷えた気がした。

 

周りの人がざわつき始めたけど、特に気にならなかった。

 

「待て、チコ! お前何をしている!」

 

メルセデス先生の声が聞こえた気がしたけど、わたしの目には映ってないから空耳かな?

いまはそれよりも、あの人を何とかしないと……。

 

最初からこうすればよかった。そうすればエリちゃんだって侮辱されずに済んで――。

 

「チーちゃん、駄目ぇーーーーーー‼」

 

パッと、視界が晴れた気がした。

その瞬間、バン、って大きな音がわたしの鼓膜を激しく揺らして、意識を手放してしまった。

 

 

 

頬を照らされたような感覚に、わたしは目を覚ました。眠っていたみたいだけど、ここは?

 

「あっ、チコちゃん。起きましたか?」

 

ガラガラ、と遠慮がちに音を立てて入ってきたのはカモミールちゃん。

どうやらここは保健室だ。

 

「耳はもう大丈夫ですか?」

「耳? どうして?」

「鼓膜が裂けてしまったのでしょう。耳から血を流して倒れたんですわ。エリオちゃんもかなりパニックになって……」

「ぇ……」

 

そこで視界の端でベッドのシーツが引っ張られているのが見えた。

ベッドに突っ伏すように眠っているエリちゃんが、すうすうと寝息を立てていた。

 

「エリオちゃん、休み時間になったらすぐにチコちゃんの所に行って様子を見ていたんですよ」

「休み時間って……」

 

窓を見ると、茜色の陽射しが保健室を薄く照らしていた。もう放課後なんだ。

 

「それはそれとして、もう耳は大丈夫みたいですね」

「鼓膜が破れたって聞いたけど、すぐに治るものだっけ?」

「乙女先輩が来てくださって、治癒の魔法を掛けてくださったんです。処置が早かったから大事には至らなくて一安心ですわ」

「そうだったんだ……」

 

わたしの記憶に、優しくて柔らかい微笑みを向けるあの先輩が浮かんだ。

そう考えてると、うーん、と唸る声がすぐ近くから聞こえてきた。

 

「……では、私は一旦席を外しますね」

 

え、ちょっと⁉

制止も出来ないまま、カモミールちゃんは保健室を後にしてしまった。

その間にエリちゃんがむくりと顔を上げて、わたしと目が合った。

 

「チーちゃぁぁぁぁぁん‼」

 

唐突に飛び付かれた。というか抱き寄せられた。

ふわり、と暖かくて柔らかい感触がわたしの上半身を包み込んだ。

 

「チーちゃんがやっと、やっと目を覚ましたよぉ……っ。ってそうだ、チーちゃん私の声聞こえてる⁉ 聞こえてるよね⁉」

「聞こえてる、聞こえてるから! ……ごめんね、エリちゃん。心配かけちゃったね」

 

ふるふる、とエリちゃんは頭を横に振る。

 

「チーちゃんが無事なら、それでいいよ! ……でも、本当に大丈夫? チーちゃんの魔力が暴走しちゃった時、すごい威力だったけど……」

 

「…………」

 

いつかの時に、カレンちゃんが「エリオは良くも悪くも深く考えない」と言っていた。考えすぎて深みに嵌まらないのは強みだけど、単純過ぎるのも考えものだ、って。

エリちゃんは単純に考えた結果、あの時わたしが魔力を暴走させてしまった、と思ったみたい。

 

でも、エリちゃんはそれでいいんだよ。

 

ずっとキラキラしたエリちゃんでいてね。

 

 

 

一件落着、ですね。

保健室からは二人のお話や笑い声が聞こえてきます。エリオちゃんもようやく元気が戻って、チコちゃんも本調子になったでしょう。

 

あの時――チコちゃんは魔力を暴走させたりしませんでした。明確に、敵意をもってエリオちゃんのチームメイトに狙いをつけていました。

 

理由は言うまでもありません。チコちゃんにとって一番仲がいい彼女を侮辱され続けたのです。ルベリスちゃんの話では、時間の問題だったかもしれなかったそうですし……。

 

不幸中の幸いは、メルセデス先生からお咎めが無かったことです。「場の空気を乱す発言ばかりしていた彼女にも責任の一端はあるだろう」とのことです。反省文は免れないでしょうが……。

 

「………………いいなぁ」

 

輝く太陽と、煌めく水面。

太陽と水面は、とてもとても遠く離れています。太陽がいくら手を伸ばしても水面には届きません。ですが、太陽がなければ、水面はずっと暗い夜を写し出します。

チコちゃんにとってエリオちゃんはなくてはならない存在なのに、エリオちゃんはどれだけ努力してもチコちゃんに追い付けない。

 

一つだけ違うことは。

あの二人がああして触れあっていること。

 

私にも、そんな人が最初からいれば良かったのに。




おまけ1

ルベリス「チコ……、エリオの事、気にしすぎ……。仕方ない……、……」
ゴーちゃん『なんだ、あのピンク髪の子を探してるのか? それならあそこにいるぞ』

ルベリス「え……」
ゴーちゃん『それにしても、あの子もくじ運ないよなぁ。見るからに偉そうなヤツと組まされてよ』

ルベリス「……うわぁ……」

おまけ2

エリオ「いやあぁぁぁッ、チーちゃぁぁぁぁぁん⁉」

カレン(緊急事態なのに……、私も不謹慎ね……)
カモミール(どうしましょう、体が動きません……)
アンゼリカ(ヤバい、生まれて初めて本気で背筋が凍ったかも……)
ルベリス(エリオを実験体にするの、考え直そうかな……)

((((とりあえず、チコ(ちゃん)だけは絶対に怒らせないようにしないと……))))


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夢見るカモミールちゃん日記

スコアタ大会久しぶりにやったけど難しすぎて草も生えない…。

ブランクが流石に如実に出てしまいました。

それはさておき、初っぱなから何かおかしな話から始まっていますが、このSSは「がんばれエリオちゃん日記」で間違いありません。


『さあ、行こう! ボクと君で、空へ飛び立とう』

 

そう言って、彼は私に手を伸ばす。

ゴツゴツとした男の人の手。硬くて、頼もしくて、温かくて大好きな彼の手を、取ろうとして逡巡する。

 

『でも、私恐いの……』

『それは、空を飛ぶことがかい?』

『違うの。私が飛んで、でもすぐに墜ちちゃったら、って思ったら……』

 

我ながら、臆病な自分に腹が立ってくる。飛べない恐怖なんて、墜ちてしまう恐怖なんて彼にもあるはずなのに。

そう思っていると、彼は私の手を彼の手で包み込んだ。

 

『だったらその時はボクも一緒さ』

『え?』

『ボクたちには翼はない。だってボクたちが両の翼なんだから。君が羽ばたけなくなったらボクも一緒に墜ちるだけさ』

『そんな――‼』

 

そんなの、尚更飛べない。だってそれは、未熟な私に貴方を巻き込ませる様なことは絶対に認めるわけにはいかない。

 

『そうじゃないよ。ボクたちはいつだって一緒。あの大空へ飛び立つときも、地面に叩きつけられるときも。君を一人にしない。ボクは一人じゃない』

 

――ミール。

 

『だから、お願いだ。ボクと共に飛んでくれないか? ボクを、ひとりぼっちにしないでくれないか?』

 

――モミールったら!

 

『私、は……っ、私も、貴方と一緒に――』

 

 

 

「ちょっとカモミール‼」

「ひゃあぁぁっ⁉」

 

私の肩が大袈裟なくらいに跳ねる。声の方向に顔を向けると、私のルームメイトのカレンちゃんが苛立ちを表すように眉を吊り上げていました。

 

「さっきから声かけてるのに、もう消灯時間よ」

「えっ、もうそんな時間でしたか⁉」

 

机の上の置時計を見ると、もう十時を短針が越えていました。

 

「随分熱心に読んでたみたいだけれど、教科書や参考書じゃないわよね」

「えっ、ええ。そうですね……」

 

流石にカレンちゃんにこの本の内容を教えるのは憚られてしまいます。

 

本の内容は、簡単に言えば恋愛小説です。二人で一人のエンジェルとしての力を得た主人公の女の子と、彼女が愛して止まない男の子が羽ばたいていき、甘く、苦く、切なく想いを求め合うという、情熱的なお話です。

 

ですが、それらを表現するのに、少々過激な表現が所々に見受けられて――

 

「あぅぅぅぅっ……」

「ちょ、ちょっとカモミール⁉ 顔が赤いわよ、どうしたの?」

 

思い出したら顔に熱が浮かんでしまいます。まさか、主人公が満たされない想いを持て余して彼にあんな、あんな……。

 

「……って、これもしかして小説? でも、学園の図書館にこんな新しそうなのあったかしら……?」

「えっと、友達に勧められて……。あんまり小説を読む機会とかは無かったので、読んでみようかな……って」

「ってことは学外で買ったものね。……とはいえ、伝記ならともかく私も小説を読む時間を設けた覚えはないわね。いい機会だし、カモミールが良ければ読み終わったら貸してくれないかしら」

「ええっ⁉ それは……」

「? 駄目なの?」

 

尚更いけません!

カレンちゃんにこれを読ませたら、数多の小説が誤解を受けてしまいます。

 

「……そ、そうだわ! 私よりエリオちゃんの方がオススメの小説を紹介してくれるかもしれませんわ」

「エリオが?」

「はい、エリオちゃんはよく書店に行っては面白そうな新刊を探しているそうですよ。きっと私より様々なものを読まれているでしょう」

「そうなのね、ちょっと意外だわ……」

 

こうして、カレンちゃんは明日エリオちゃんに貸してもらえそうな小説があるかを聞きに行くことになりました。

エリオちゃんを利用するようで心苦しいですが、事実読書を趣味としているエリオちゃんの方が適任でしょうし……。

 

 

 

翌日、昼休みでの出来事です。

 

「ねえエリオ、オススメの小説とかないかしら?」

「え? 突然どうしたの?」

 

早速カレンちゃんがエリオちゃんに聞きに行っています。エリオちゃんもそうですが、カレンちゃんもかなりフットワークが軽いと言いますか……。

 

「たまには小説を読んで気分転換をしたくなったの。……何かオススメのやつとか無いかしら」

「そうだなぁ……、なにがオススメだろー?」

「エリちゃんエリちゃん、だったらあの小説は?」

 

考え込むエリオちゃんに助け船を出されたのは、エリオちゃんの隣に座っていたチコちゃんです。

 

「たしか、他の生徒の間でも結構有名だったでしょ?」

「ああ、あれかぁ。……だったらカレン、今月出版された『比翼の刻』ってのはどうかな?」

「比翼の刻?」

「………………ッ⁉」

 

……私はどうしてこの事態を予見出来なかったのでしょうか。

比翼の刻は丁度私が友達に勧められてカレンちゃんに咎められるまで読んでいたあの本です。文学を嗜む者達の中では少し有名だったので、当然エリオちゃんも勧めてくるでしょう。

 

「……そんなタイトル、何処かで見たような……」

「エンジェルを題材にしたお話だから、私も早速読んでみたんだよね~」

「というか、エリーの読んでる本ってエンジェル関連のものしかないんじゃないか?」

「アンちゃん、幾らなんでも失礼だよ! これでも国語は得意なんだからね‼」

「国語は読解力と文法を鍛える科目、だから、文学を嗜む事とは、あんまり関係ないと思う……」

 

ワイワイと言い合いが始まり、当初の目的が忘れ去られかけていく頃、

 

「あっ、思い出したわ。それ昨日カモミールが読んでいたやつじゃない?」

 

最悪のタイミングで、私に視線が集まりました。

 

「カモミールちゃんもあれ読んだの? 面白かったよね、あれ!」

「いえ、その、まだ読み終わっていないというか……」

「……そういえば、貸してくれないか、って聞いたら誤魔化されたわね。何か内容に問題とかあるの?」

「え? 特にそういうことは無かったと思うけど……」

 

首を傾げるエリオちゃん。その隣で何かを思い出したのか、あっ、とチコちゃんが声をあげました。

 

「えっと、カレンちゃん。カレンちゃんはどういったものが読みたいの?」

「それは小説のジャンルってこと? 昔から伝記は読んでいたから、それ以外を読みたいのよね。さっきも言ったけれど、気分転換の感覚で読めるものが良いかしら」

「そ、そうだよねー。……」

 

チコちゃんと目が合いました。私は目だけで頷いて、後はチコちゃんに託すことにしました。

 

「カレンちゃん、比翼の刻っていうのは、その、恋愛小説、なんだよね」

「…………えっ」

 

案の定、そういうのに疎そうなカレンちゃんの耳がどんどん赤みを帯びていきます。次第に彼女の頬までそれは侵食していき、

 

「そ、そうなの?」

「…………はぃ」

「あれ、もしかしてカレン、恋バナとか苦手だったりするの?」

「あー、確かにそんな雰囲気はあるな」

 

エリオちゃんとアンジーちゃんも、どうやらカレンちゃんをそういう風評で見ていたようです。

 

「し、失礼ね! そんな事無いわよ?」

「……声、めっちゃ震えてる」

「煩いわねルベリス! 大体、恋愛小説っていっても、最終的には『あなたが好きです』ってよくある感じのやつでしょ?」

「……うぅん。結構、濃厚だったと、思うよ……」

「の、濃厚ぅ⁉」

 

カレンちゃんの顔が真っ赤になりました。

 

「ええええ、エリオ! 貴女まさかそんなふしだらなものを読んでるの⁉」

「えぇ、最近の恋愛小説ってそういうものだと思うけどなぁ。確かに読んでたときは恥ずかしかったけれど、ラストの展開を引き立てるスパイスだと思えば、かなり面白かったけどなー」

「………………………」

 

カレンちゃんが絶句しています。ここまで取り乱した彼女を見るのは初めてです。

こうなってしまった原因を作ってしまった私が何とかしないと、このままではカレンちゃんが居た堪れません。

 

「えっと、エリオちゃん。もっと、日常的なフィクション小説とか、オススメはありませんか」

「日常系? ああ、それなら――」

 

エリオちゃんは、我に戻ったカレンちゃんにオススメの小説を何冊か紹介し、お借りすることになりました。

 

 

その日の夜。

 

「……というか、カモミールも、その、恋愛小説、読んでたのね?」

「え、ええ。私も恋愛は疎い方でしたが、良い機会だと、思ったので……」

「ふ、ふぅん……。ど、どういった話なの?」

「え? ……良いんですか?」

「別に良いわよ、話しても。まだ、そんな自信ないし」

 

カレンちゃんはまだ恋愛小説に手を伸ばす勇気はないそうですね。

 

エリオちゃんやチコちゃんは恋愛小説だと言いましたが、私はそれだけではないと思っています。

 

私は、主人公の女の子が羨ましいと思ってしまいました。

彼女には、大切な人が最初からいて、その人から勇気も翼も貰って、そして与えて。好きな人がいてくれるから、自分にも夢が芽生えて。

私には夢がありません。与えられたものを享受して、ただこなしていました。ですがこの学園に来て、自分に与えられたものだけは、せめて全力で成し遂げようと思えるようになりました。

しかし、夢がないことだけはいまだに悩みの種でした。そんな時に、この本を読んで羨んでしまったのです。

 

私にも夢を与えてくれて、与えてあげられる大切な人が最初からいれば良かったのに、って。

 

「なるほどね。カモミールがあんなに一生懸命に読んでいた理由がやっと判ったわ」

 

最初は顔を真っ赤にしていたカレンちゃんでしたが、次第にその表情が真剣なものに変わっていき、終わったあとに、そう呟きました。

 

「あはは、やっぱりわかっちゃいますか?」

「まあね。それに……エリオとチコの事も、でしょう?」

「! ……はい。あの二人は、爽やかで暖かくてキラキラした香りがするんです。私にはそんな香りは表現できません」

 

それはきっと、あの二人じゃないと出来ないことだから。

 

「きっといつか、見つかるわよ」

「え?」

「貴女にとって、誰よりも大切な人が」

「……そうですね。でも――」

 

 

 

――今の私にとって、カレンちゃん達と一緒にいるのが、一番大切な時間ですから。

 

 

 

 

私には、朝一番に日課の素振り千回を行っている。

私がヴルカオン家から受け継いだものは二つある。一つは、灼熱を操る魔法の才能。もう一つは、剣術。

 

ただ、私はあまりこの剣術は好きになれない。剣とは――刃とは何かを傷つけるもの。もちろん、そういう意味で両親は私に与えたわけではないというのは言わずもがな理解している。

だけど、いつかはそのために振るうことだってある。

 

剣術は、誰かを守るために使え――そう教えられた。だが、誰かを守るためならば、他者を傷つけかねないこの剣を、振るって良いものか、と。私の中でぐるぐると自己矛盾が発生していた。

 

私はエンジェルとして認められてヴルカオン家の魔法がエンジェルに役立てるものだと証明したい。

 

けれど、私はこの剣術で、何を証明したいの?

 

どんな夢があるの?

 

答えは、誰も返してはくれない。




乙女達の恋愛強度(独断と偏見)

ラナン:依存しやすくて弱め
カトレア:天然だから少し強め
スフレ:自分がリードしそうで強め
プルメリア:相手をダメにしそうで強め
ロザリー:内気なところがあるので弱め
ジギタリス:むきになるときがあるので弱め
リリー:自分の価値観を理解して欲しそうだから弱め
ルチカ:引っ込み思案だから弱め
カルミア:いつの間にかリードしてそうだから強め
ダチュラ:打たれ弱いところがあるから弱め
エリオ:好きになったら一直線で強め
チコ:自分を全ての一番にして欲しそうだから弱め
カモミール:自分の強みを知っていそうで強め
カレン:純朴すぎるので弱め
アンゼリカ:ライバルから始まる恋で弱め
ルベリス:実験(ラッキースケベ)から始まる恋で強め

真少年:いつの間にか口説いていて強め


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空回るカレンちゃん日記

「みんな、こんにちは! 今日は私とロザリーが講師を務めることになったわ。よろしくね‼」

「まあ、今日はそんなに難しいことはしないわ。肩肘張る必要はないわよ」

 

教壇に立つ二人の乙女先輩。

背は低いが確かにエンジェルとしての風格がある闇の魔法乙女のロザリー先輩。そして、私も尊敬している炎の魔法乙女のラナン先輩。

アリア先生と一緒に入ってきた彼女達は、今回の授業の特別講師をすることになった。

 

「それではラナンさん、ロザリーさん。今日はよろしくお願いしますね」

「任せて、アリア先生!」

 

アリア先生は二人に任せると、教室を後にした。

 

乙女先輩達はこうして時々特別講師として授業をしてくれるのだが、一時期では色々と有ること無いこと噂をされていたようだ。

 

「ラナン先輩、ロザリー先輩! 今日は何を教えてくれるんですか?」

 

どんな相手でも臆することなくいつもの態度で接することが出来るエリオの性格はまさしく強みの一つだろう。

 

「さっきも言ったけど、今日は大して難しい事を教える訳じゃないわ。今回は魔法を扱うなら誰にでも必要な基本事項を教えるわ」

「基本事項、ですか?」

 

今更基本事項を、と思うところがある。

けれど、意味の無いことを教えるとは到底思えないので、このまま黙っていることにする。

 

「今回教えるのは魔力のコントロールよ。これを上手く応用すれば、実戦でも利用できるのよ!」

「実戦でも、か! であればしかと聞く必要があるな‼」

 

実戦を重要視するアンゼリカが露骨に調子を良くする。

とはいえ、たったそれだけの事が実戦でも役立つということには私としても興味がある。

 

「まあ実際に見て理解するのが早いわよね。ロザリー、いくわよ!」

「わかったわ」

 

二人から魔力を込める流れを感じる。その奔流が少しずつ形をとって一つの武具へと変化する。

ラナン先輩の手に握られた大振りの剣。ロザリー先輩の手に握られた少し腹が太い短剣。それぞれから炎と闇の魔力を感じる。

 

「わぁ、格好いい‼ チーちゃん今の見た⁉」

「うん、見た見た! あんなに素早く魔力を形作るなんて、流石は魔法乙女先輩だよね」

 

チコの言うとおり、その工程は私達からすればあまりにも素早かった。

ラナン先輩はそれを見せつけるように前に突き出して、

 

「という訳で、皆にも同じ事をしてもらうわ!」

「まあ、今のうちに覚えておいて損はないわよ。これを使えば、魔法を繰り出す起点にも出来るしね」

 

そうして、早速自分達も魔力から武具を創造してみるのだが、

 

「う~ん……」

「どうしたカモっち。さっきから唸ってばかりだが?」

 

「あ、アンジーちゃん。いえ、自分が武具を使って戦っているイメージが湧かなくて」

「ピコーン! カモミールちゃんもそうなんだね」

 

「あれ、ルベちゃん? ルベちゃんはやらないの?」

「私にとって、これが武具、みたいなもの……。ゴーちゃんとの、相性も、良いみたいだし……」

「え~、そんなのアリぃ⁉」

 

女三人寄らば姦しい、という言葉を聞いたことがあるが、この子達は一瞬にしてフリーダムな空気を作り出した。

 

「ちょっと貴女達、乙女先輩方が来ているんだからもう少し真面目に――」

「まあまあ、カレン。話し合うのも時には大事だと思うわよ」

「で、ですが一部授業とは関係ない話も……」

「全く関係無いとは思わないけれどね」

 

ラナン先輩は視線をずらし、私もそれに続くと、先程何度も唸っていたカモミールのもとにロザリー先輩が向かっていた。

 

「難航しているみたいね」

「ええ、なかなか武具の創造が出来なくて……」

「別に武具じゃなくても良いんじゃない? 大事なのは、アンタの魔法の起点にしやすいものを創造することよ」

「私の、魔法の……」

 

再び思案し始めるカモミールから一旦離れて、次にルベリスの元に向かう。

 

「ルベリス、いつまでもその本と精霊に頼るのは辞めなさい。いつも傍にいる保証なんて無いわよ」

「むぅ……」

「ほらルベちゃん、私もやるから一緒に頑張ろ!」

 

サボり気味のルベリスをあんな簡単に嗜めるなんて、流石は魔法乙女先輩である。

 

「ほらね? 何だかんだ、ロザリーは面倒見が良いから授業が滞るような事は起きないわよ」

「そう、ですね」

 

実は私は他人を気にしいな性格なのかもしれない。

まあ、そろそろ私も自分の事をやるべきかしら。

 

大事なのは、魔法の起点として最良のものを創造すること。私の魔法は灼熱の炎。それを乗せられる武具と言えば――

 

「…………」

 

想像しかけて、止める。

浮かんだものは、両親から受け継いだ剣術。きっと両親だってその方が都合が良いだろうと考えているはずだ。

だけど、私はどうしても剣を振りかざすことを躊躇ってしまう。

剣と魔法は、全くの別物だから。

 

「どうしたの、カレン?」

 

上手くいかない、と勘違いしたのかラナンは心配そうな目で様子を窺ってくる。

 

「いえ、……やってみます」

 

公私混同してはいけない。

私は魔力を繋ぎ合わせて細く、一振りの奔流とするべく少しずつ創造していく。

私の周りに熱が籠る。掌に少しずつ感触が広がっていくのを感じて、握り締める。

 

「………………っ」

 

酷く脱力感が肩にのし掛かる。

出来上がったのは、私が朝の鍛練に使っている模擬刀より少し刀身の長い剣が出来上がった。

軽く手首で振ってみると、いつもと重心が違うのかどこか違和感を覚える。

 

「うんうん、良くできてるわね。それで、上手く使えそう?」

「……いえ、両親から教えてもらったのは片手でも扱える剣術なので、これではちょっと重いかもしれません……」

 

今の私では、これを創造するのですら一苦労だ。その上、質が悪いと創り直さなければならない。

私としたことが迂闊だった。こんなことならあらかじめノートに設計図を書いてから試してみるんだった。

 

「ちょちょちょ、カレン! 急にペンを持ってどうしたの?」

「いえ、目安を分かりやすくするために一度ノートに書き落としておこうかと」

 

「頭が固いわねぇ。それこそ手間でしょうが」

 

後ろから声を掛けられた。

 

「ロザリー先輩……」

「そりゃあ、魔法の起点として最良のものを創造しろとは言ったけれどね。こういうのは頭で覚えるものじゃないわよ。体で覚えるの」

「で、ですがそれでは使う度に差異が生じます! そのような不確定要素に実戦を左右されたくありません!」

 

「まあ、正論ね。でも、使う度に差異が生まれるなら、質が良くなる可能性だってあるわ。魔法は己の感覚で左右するものよ、それが嫌なら騎士用の剣でも振り回していなさい」

 

「――――ッ‼」

 

頭をハンマーで殴られた様な気がした。

魔法とは理論と才能で質が変わるものだ。生まれ持った才能で、理論をもって生み出すものだ。

しかし剣術は違う。生まれ持った体格と、己の感覚を使って振るものだ。

なのに、ロザリー先輩は魔法は剣術と同じだと――いや、剣術の方がまだ論理的だと言ったのだ。

 

自分が積み上げてきたものが、全て突き崩された気分だった。

 

「あっちゃ~。ロザリー、もっと他に言い方無かったの?」

「……ふん、こういう手合いはハッキリと言った方がいいのよ」

 

 

 

時間が過ぎて、今は放課後。

 

「はあっ、はあっ…………」

 

授業が終わり、魔法武具の生成の鍛練に勤しむ。しかし、何度やっても思うようにいかなくて、同じ工程を何度も繰り返す。

そうしてどんどん魔力と体力を奪われて、汗だくになって蹲ってしまう。

 

工夫は幾らでもしたつもりだ。たとえロザリー先輩にあんなことを言われたとしても、私は設計図を書き落として、実践してみた。

読み通り、理想型とも言える出来になったのだ。……見てくれだけは。

実際に素振りをすると、軽すぎて手から飛んでいきそうになったり、脆すぎて刃こぼれしてしまうのだ。こんなものは実戦ではとても使い物にはならない。

 

「今日の私はダメね……」

 

周りの子達を思い出してみる。

香りを操る魔法を使うカモミールは、範囲を広げるために一対の扇を生成した。……扇のデザインに拘っていた様だが。

チコは水泡を生み出しやすくするために、円形の水筒を生成していた。……一瞬だけ、どうやって使うのだろうと思ってしまった。

自らのスピードを生かして戦うアンゼリカは、閃光魔法を乗せやすい無限クナイを生成していた。……クナイって使い捨てじゃないのかしら?

呪いの魔法を使えるルベリスは、操作性を高めるために指揮棒(タクト)を生成していた。……意外と様になっていた。

エリオだって、自分の少ない魔力を絞り出して、ラナン先輩から貰ったというチャームに似た髪飾りを生成していた。……倒れそうになってチコがパニックを起こしかけていた。

 

一人一人、生み出した武具には拘りと個性を感じた。

けれど私は?

剣術を教えて貰ったから、剣を生成しようとしただけ。そこに私個人の拘りはない。

 

両親から受け継いだこの剣術に拘りがないなんて、一体今まで何のために剣の練習をしていたのだろう?

 

「はぁ……」

「大丈夫カレン? 汗びっしょりだよ。ハンカチ使う?」

「ああ、気にしないでエリオ。…………エリオ⁉」

 

飛び上がって声の主を見遣ると、ハンカチを差し出して様子を窺ってくるエリオが目の前にいた。

 

「どうしてここに? もう放課後よ」

「だったらカレンはどうして放課後のこんな時間まで練習場にいるの?」

「それは……鍛練よ。エリオも付き合う?」

「何言ってるの、もう寮で食事が出る時間だよ。時間にも厳しいカレンらしくないよ」

 

言われて、校舎の時計を見る。

時刻は6時前。夕食の時間までもうすぐだった。

 

「やっぱり変だよ。ロザリー先輩とお話してから、心ここにあらず、って感じだったし」

 

「エリーの言うとおりだな。今日のカレンからは一切風格を感じない」

 

「アンゼリカも……」

 

練習場の観客席の方からアンゼリカが姿を現す。

 

「さっきから見ていたが、無駄に体力を使うだけで実のなる鍛練だったとは御世辞にも言えないな」

「その言い方、もしかして見てたの?」

「勝手ながら、な。あたしから見ても今日のカレンは目に見えて酷かったしな。どこか空回りしてるっていうか」

 

今日の私はそんなに酷かったのだろうか。確かに、魔法武具の生成は何度も失敗してばかりだし、調子が悪いと言われればそうなのかもしれない。

 

「まあ、そうかもね。でも心配は無用よ。明日も鍛練して調子を取り戻すわ」

「そうか。……なら、勝手ながら今からその手助けをしてやろうか、なっ‼」

「……ッ‼」

 

アンゼリカから一瞬、濃密な殺気を感じた。私は思わず武具を創造して飛んできたクナイを切り落とした。

 

「流石はカレン。調子が悪くても今のを切り落とすか」

「そういう貴女は今日は随分とテンションが高いわね。いきなりそんなものを投げてきて。何より――」

 

私はエリオを庇うように一歩前に出て、剣先をアンゼリカに突きつけた。

さっきのクナイの飛んできた軌道はどう考えても――

 

「貴女、今わざとエリオを狙ったわね‼ 私がエリオを庇わなかったらどうなったと思ってるのよ‼」

「さて、な。そんな事になったら、果たしてどうなっていたことやら」

 

アンゼリカは肩を竦めてにやついた顔を浮かべる。それを見て私の腕に力が入る。

周りの気温も多少上がった気がした。

 

「……ふ、ふふっ。消灯時間にはまだ早いわよ、寝惚けてるなら今すぐ叩き起こしてあげるッ‼」

「上等‼」

 

 

 

「ハアハア、ハアハア……」

「い、つつ……っ」

 

長い時間、そうしていた気がした。

アンゼリカが投げてきた無数のクナイを何度も切り落として距離を詰めて。引き離そうとしてまた無数のクナイを投げてきて。何度も繰り返した。

 

「っはは! 剣術の心得があるとはカモっちからも聞いていたが、ここまでとは。剣に乗った灼熱も相まって中々の威力だった」

 

こうなった元凶はまるでいざこざなど無かったみたいにカラカラと笑っている。

 

「アンゼリカ、貴女は私を挑発するためにあんな危険なことをしたの?」

「ん~、40点だな」

「はあ?」

 

「カレン、お前はどうも頭で考えてから行動に移す帰来がある。別にそれが悪いとは言わんが、それではワンテンポ遅いんだよ」

「………………」

「当然、カレンはあたしがエリーに向けてクナイを放つことを見抜いたから切り落としたんだろう。だが、別にその手段は剣でなくても問題あるまい?」

「…………あっ」

 

確かに私なら魔法武具という不確定要素を利用せずとも、もっと安全で確実な方法が取れただろう。

完全に無意識の行動だった。

 

「どうだった、己の無意識に身を任せた戦いは?」

「…………悔しいけれど、普段より良い動きが出来ていたと思うわ」

 

何より、私が今手にしているこの剣こそが証拠だ。

今日創造した物の中でも最良の出来だ。

 

「何時如何なる状況でも、理路整然とした考えをもって戦うことなど出来はしない。さっきのカレンがそうだったように、感情が先に動いてそれがよい結果を残すこともある。……力を振るう理由など、今から決める必要なんてない。幾らでも後付け出来るんだよ」

「それは……」

 

どうやら、完全に見透かされていたようだ。

 

「なるほど、それが本意だったってこと?」

「あー、いや。これだとまだ70点かな?」

「はあ? 残り30点はなによ?」

「はは、それはだな――」

 

「アンちゃん、カレン。お疲れ様! 飲み物持ってきたよ!」

 

「あれ、エリオ?」

 

そういえば、いつの間にかいなくなっていたような……。

てっきり逃げたのかと思ったけれど、何の疑問も持たずに飲み物を受け取ったアンゼリカを見て、更に懐疑的になる。

 

「ど、どういうこと?」

「まあ、一言でいえば荒療治だな。エリーが提案してくれてな」

「えへへ、完全に博打だったけど、上手くいってよかった♪」

 

つまりそれは、あの一連の出来事は全部エリオとアンゼリカが仕組んだ芝居だったってこと?

 

「思い出してみなよ。あたしがエリーに向けてクナイを投げたとき、エリーはどんな反応をした?」

「それは……あっ」

 

なにも反応していなかった。

自分が狙われていたというのに。

全部分かっていたことだったから、エリオ視点では。

 

「もう、何よそれ……」

 

一気に脱力感が押し寄せた。

 

でも、不思議と笑いが込み上げてくる。

 

「――ありがとう、二人とも」

 

 

 

 

「ふむふむ……」

 

消灯時間まで、あたしはベッドに寝転がって本を読む。

その姿が気になったのか、ルームメイトのルベっちが声をかけてくる。

 

「アンゼリカが読書、とか、珍しい……。……何読んでるの?」

「ん、ああ。別に大したものじゃないぞ」

 

あたしはルベっちに本の表紙を見せると、ルベっちに分かりやすく顔をしかめる。

 

「『料理人入門編』……? 何それ?」

「図書室から借りたもんさ。カモっちを見てると何だか羨ましくなってさ」

「ああ……」

 

カモっちは時々良い香りのするクッキーを焼いてきてくれる。以前指南をしてほしいと頭を下げたところ、

 

――えっと、料理とお菓子作りは要領が全く違うので、期待には答えられそうにありませんわ、ごめんなさい。

 

と断られてしまった。

 

「忍者たるもの、どのような材料を使っても簡易的な料理が出来ればと思ってな」

「…………本音は?」

「……えっと、その。恥を掻かない程度には、な」

「案の定……。したことないんだ、料理……?」

「えぇ、その質問ルベっちからは聞きたくなかったなぁ」

「失敬……。したこと、あるから」

「マジで⁉」

「うん……。料理魔法……って言うのが、あって……」

「あーうん、ある意味予想通りだよ」

 

今日も今日とで、夜は更けていく。

 

明日はどんな修行をするか、既に決めてある。




ちょっと長かったかな?
駄文タグに偽り無しとか言われたらどうしよう(笑)

もう少し文章とストーリーを纏める力が欲しいなあ。

練習あるのみかな!


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目が潤むアンゼリカちゃん日記

ここら辺でまた時系列の確認。

エリオ達が入学する前に真少年の失踪(仮)

春、エリオ達が入学。

様々ないざこざを乗り越えて、エリオと5生徒が一枚岩となる。

入学から数ヵ月経ち、現在の季節は夏。←いまここ。


「あっつい……、暑すぎるよ……っ」

「ぁぅぅぅ……、エリちゃんが霞んで見えるよ……。これが蜃気楼……?」

「蜃気楼が地上で見えるわけないでしょ……。それを言うなら陽炎よ」

 

汗をだらだらと流しながら登校する私たち。

もう夏真っ盛り。今年の夏はかなり暑くて学園の皆はヘロヘロ。私たちもその例に漏れない。

 

「皆さん大丈夫ですか? 水分をしっかり摂らないと倒れてしまいますよ」

「カモミールちゃんは平気そうだね……。何か工夫とかしてるの?」

「ああ、いえ。モデルのお仕事をしていると、ライトとかの熱に当てられたりするので、慣れですね」

「そ、そうなんだ……。モデルってやっぱり大変だね……」

 

カモミールちゃんから意外な強みを見つけても、今この瞬間だけは何の意味を持たない。

そんな後ろ向きな考えをするくらいには、私は暑さにやられているんだと思う。

 

「はぁ……、セイレニウムの海水浴場が恋しいよぉ……」

「そういえば、そんなのあるって前に聞いたっけ……」

「ああ、あそこですか。モデルのお仕事で行ったことがありますわ」

「弱音を吐くのは止めなさい、チコ。カモミールの言った通り、これは慣れの問題なのよ……」

「そう言うカレンだって目茶苦茶汗だくじゃん。説得力ないよ……」

 

「わ、私はヴルカオン家の人間よ! この程度の熱は暑いに入らないわ‼」というカレンの強がりをよそに、ようやく校舎に辿り着く。

すると、

 

――ぶわあぁぁぁっ。

 

という熱気が私たちの顔を撫でていった。

 

「「「うっ……」」」

 

「なにこれ、何かここだけ目茶苦茶暑くない?」

「て言うか今の熱不自然よ! 明らかに人為的なものだったわ!」

「焦がした臭いもする……。誰か焚き火でもしてるのかな?」

 

「それなら、あっちの方からしますよ」

 

カモミールちゃんが指差した方向。

調理室のある校棟だ。

 

 

 

「うぁぁぁっ、やっちゃった~‼」

 

眼前のフライパンから立つ火を見て焦る。

慌てて蓋をして火を消す。次に、焦げ臭くなった室内を換気するために窓を開ける。

 

「う~ん、油を入れすぎた? それとも火が強すぎたのか? 原因が全然わからん」

 

溜め息をつきながら、ふたを開けて惨劇を目に焼き付ける。

あたしが作っていたのはハンバーグ。料理の定番の一つだ。だが、何らかの原因が先程の事態を引き起こし、その結果真っ黒になって焦げた臭いを発していた。

 

「ま、まずいぞ……。こんなことが露呈したら、確実にバカにされてしまう!」

 

「何が露呈するのかしら、詳しく教えてくれる?」

 

「ぎゃああああっ⁉ か、カレン⁉」

 

眉をひくつかせるカレンが調理室の出入り口で立っていた。……よく見るとエリー達もいるし。

 

「アンちゃんおはよう。……それで、焦げ臭いけど何してたの?」

「机の上に色々あるね。……これって挽き肉かな?」

「……あぁ」

 

観念して、事情を話すことにした。

 

 

「それは多分、油をひいた後に水を入れたことが原因かと思われます」

 

発火した原因を尋ねたところカモっちから答えが帰ってきた。

 

「聴いたことはありませんか、『水と油』って。この二つの液体は混ざらないから沸騰する温度に達すると確実に跳ねてしまいます。おそらく跳ねた油が火に当たって燃え上がったのでしょう」

「そ、そういうことだったのか……」

「というより、アンジーちゃん。私の記憶が確かなら、ハンバーグを焼くのに油は使いませんよ」

「ええ、そうなのか⁉」

 

馬鹿な、油をひけば良い感じに焼き上がると本でちゃんと読んだのに。

 

「それは多分記憶違いでは? 油を使ってしまったら炒めることになりますわ。そもそもお肉には油が含まれていますから、お肉を使って調理するときはあまり油を必要としません。ですので水を少量容れるのが正解でしたね」

 

くぅ、なんという痛恨の失態。これが実戦であれば確実に命は無かっただろう。

というか、やはり当初の見込み通り、カモっちは料理にも精通していると見た。

 

「やはりカモっちに教えてもらうのが確実だと思うのだが……」

「ええ⁉」

「確かにカモミールちゃん、料理もそつなくこなしてるイメージはあるかな」

「ピコーン! モデルとかのお仕事で、料理風景を撮ってみたりとか、そういうのなかった?」

「そんなのしたことありません! 私は精々自炊程度の出来栄えしか持ち合わせていません。人に教えるとなると、もう少し得意な方の方が……」

「それよりもアンゼリカ、貴女この教室の鍵はどうしたの? 確か学園の教室の鍵はジオーネ先生が管理してる筈だけど」

 

そっちの方が問題だと言わんばかりにカレンが話を替えにきた。

大したことはしていない。昼飯の用意を忘れたから簡単に作りたい、とジオーネ先生に頼んだら二つ返事で貸してくれた。

あの人は生徒の自主性を尊重してくれている。

 

「いやぁ、あの人そんな深いこと考えてない気がするけどなぁ」

「良い先生ではあるんだよね。ただ話の途中で魔法工学の内容に時々脱線するから……」

 

「と、とにかくあたしがこうして調理室を使っているのには正当な理由があるのだ! 説教なら聴かんぞ‼」

「むぅ……」

 

「でもアンジーちゃん、もう少ししたら午前の授業が始まりますよ」

 

おっともうそんな時間か。

食料は無駄にしてはいけない。この失敗作は今日の昼飯のおかずにするとしよう。

 

……うん、ちゃんと責任もって食べないと。

 

 

 

「ぅぇ……、ぅぐぐ……」

 

全く肉の味がしない。炭の味しかしない。食感も最悪だ。

見てくれだけでも失敗作だが、味も失敗作だ。

 

「鬱陶しい……。ご飯くらい、静かに食べ、て……」

「そういうなルベっち。これを食べればあたしの気持ちが嫌でも――」

「いらない」

 

ルベっちには珍しく早口で拒否された。そこまで嫌か。

まあ、嫌だろうな常識的に考えて。

 

「しかし、あたしはどうも料理に対して苦手意識があるみたいだな」

 

実践する前に予備知識は頭に叩き込んだつもりだった。しかし結果はこれだ。

 

「まあ、こればかりは回数をこなすしかないか。これも慣れだろうしな」

「どうして、そこまで……料理に、こだわる? 今まで通り、学食で良いと、思うけど?」

 

そういえばルベっちには料理の練習をする理由は話したっけか。

だが料理の心得を身に付けたい理由は話していなかったな。

 

「まあ、なんだ。こんなこと言うと恥ずかしいんだが……。ルベっちから見て、あたしはどう見える?」

「……………………?」

 

おいおい、訳の分からないものを見るような目をしないでくれ、目が潤みそうだ。

 

「質問の、意味が分からない……」

「だから、その…………、あたしって全然女っぽくないだろ?」

「…………ああ、そういう」

「そこで納得する風を醸し出されても傷つくんだが」

 

ルベっちはゆったりとした動作で溜め息をつきながら首を横に振る。

 

「気にする、必要は、ないでしょ……。それ、言ったら、私だって、そうだし……」

「何を言うか! こんな大きなものを持っておきながら!」

「ちょ……」

 

ルベっちの才能や知識は学園でも上位クラスだ。しかし本人の性格のせいであまり目立たない。

故に、このルベっちの胸の大きさも影に隠れてしまっている。

 

「胸、持ち上げるな……」

「すまん、ちょっと羨ましくて、つい……」

「というか、胸の大きさ、で、女子らしさが、決まるなら……、カレンとかは、極みだとおもうけど……?」

「そういうことじゃないんだよぉ! 例えば、エリーは笑顔が目茶苦茶可愛いし、抱き締めたりすると柔らかいし。チコなら子犬っぽいところが可愛いし、髪の毛の結び方も個性だしさ。要はそういう要素なんだよ!」

「そういうのが、……アンゼリカには、ないと」

「うん。カレンみたいに、純なキャラじゃないし。カモっちみたいにモデルが出来るほどスタイルもよくなければ、ファッションも分からないし」

「気にするほど? 私達は、まだ14……。幾らでも成長の、……余地ある」

 

甘い、甘いぞルベっち。

成長の余地があるというが、その場合あたしは誰と比べられると思う?

同年代の人間? 違うぞ、この場合はな――

 

「あたしの場合、この学園だと同じ光の乙女先輩達と比べられるんだよぉ!」

「…………はぁ」

「他人事みたいに反応するな! ルベっちだってロザリー先輩やダチュラ先輩と比べられても畏れ多いだろう! あたしは師匠とカルミア先輩だぞ! 女としても勝てる要素がない‼」

「だから何」

 

吐き捨てるように、ルベっちは言った。

 

「他人の評価で自分の価値が変わる? 他人と比べられて自分の強みが無くなる? その程度でどうにかなるなら所詮はそこまで。アンゼリカは言った、回数をこなすって。だったらそうすれば良い、嘆くのは後でもできる」

 

初めてこんなに早口で、かつ長々と喋っているところを見た気がした。

ルベっちは一通り言い終わると、肩で息をしながら睨み付けてくる。

 

「はぁ、はぁ、……二度と、私に、長話……、させないで……。疲れる……」

「ああ、うん。ありがとうルベっち。でも意外だったな」

 

ルベっちから励ましの言葉が聴けるとは。エリーの影響か?

 

「それとも、何か思うところがあったのか?」

「………………別に」

 

それ以上、ルベっちは何も語らなかった。

 

 

 

放課後、またしても料理の練習に励むことにする。しかし今回はあたし一人ではない。

 

「どうして、私が……。部屋にもどって、魔法の、研究したい、のに」

「まあまあそう言うな。ここでも本は読めるだろ。少し味見に付き合ってほしいんだ。あたしの味覚だけだと偏りそうだからな」

「むぅ……」

 

分かりやすく不満げな態度をとるルベっちを横目に、早速材料に手をつける。

 

「次は、何作る、の?」

「次はコロッケだ! 材料も少なくてすむし、まだ簡単な方だろうしな!」

「ふぅん、……んん?」

 

さてと、早速潰したジャガイモに混ぜる具を切っていこう。容れるのは、人参と玉葱と……。

 

「ちょ、アンゼリカ――」

「……うひぃ…………っ⁉」

 

目が、目が沁みる‼

馬鹿な、あたしはいつの間に催涙の攻撃を受けた!

……言ってる場合じゃない!

 

「ルベっち助けてぇ! 目が、目がぁ‼」

「……………………はああああぁぁぁっ」

 

この日、料理を会得するのはまだまだ早いと悟るあたしだった。

 

 

 

 

夏か、冬か。どちらが嫌かと聞かれたら、私は多分冬を選ぶだろう。

別段夏が好きというわけじゃない。夏も夏で肌がチリチリと焼けるようなあの感覚を受けることになるのだ。

 

幸い、この学園は夏だからと肌を露出させるデザインの制服ではなかったのは一安心だ。

 

『おいおい、夏だぜ? もっと瑞々しいその肌をどんどん見せつけてこいよぉ‼』

 

……一人煩い精霊(変態)がいるけど。

 

閑話休題。

ディオール魔法学園。ここは私が魔法を研究するのに最適な場所だと設立時から目をつけていた。

いつの間にか(・・・・・・)持っていたこの本を解読するにはまだまだ時間が足りないし、エリオのあの能力を解明するには、やはり救いの鍵の少年と接触したいところだ。

そういう意味でも、この学園にいればいつかは彼に会えると思っていたが、その兆しは一向に表れない。

 

その上――

 

「よし、それでは今から学年集会を行う。今日の内容は二週間後に執り行われる宿泊学習についてだ」

 

学園を一時的に離れるとか、更に目的から遠ざかるような事をされては、私としても困るのだが。




まさかの、アズールレーンとコラボ⁉

まあ、どちらもSTGなので噛み合わない訳じゃないでしょうが……。

少なくとも、どちらもプレイしている私としては完全に俺得というやつです。


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眉を潜めるルベリスちゃん日記

季節外れの水着回(その1)!

5生徒達にも水着使い魔があるみたいだけど、まあ今回は自分のイメージに合う描写でやらせてもらおうかな。



「――それではここまでの内容を纏める。お前達は二週間後にセイレニウムの海水浴場にある宿泊施設で、仕事の手伝いをしつつ、海辺周辺のパトロールをすることになる。場合によっては海に浸かる事もあるので、水着や日焼け止め、虫除け香水や泳げないやつは浮き輪など、各自必要なものを持参することだ。……まあ、浮き輪程度なら海水浴場の管理人が貸してくれるだろうが、恥を掻きたくないなら持参してこい。期間は四泊五日だ。集合場所は午前八時のグラウンド。……以上だ」

 

そう言って、メルセデス先生は体育館を後にする。先生の気配が完全に遠ざかると、生徒達はざわざわと騒ぎ出す。

私達もその内の一組だが。

 

「うぅ、楽しそうな事するなぁ、って思ったんだけどなぁ」

「うん、わたしも実家に顔を出せるかと思ったんだけど、そんな感じじゃなさそう……」

「私も、今から不安になってきてしまいました……」

 

表情に出やすい三人組が、口々に不安を溢す。こういう時に強気に出られるアンゼリカや、カレンでさえも、その顔色には憂慮が浮かんでいる。

 

「……遅かれ早かれの問題よ。私達だっていつかは経験するんだから。でも……」

「ああ、それにしたって唐突な話だ」

 

――海域周辺のパトロール。

字面だけだと大した事をする雰囲気ではないが、その前に語られた内容が最大の問題である。

 

海水浴場周辺で、黒い魔力が感知されたこと。

それも、守護神が暴走した時に確認された濃度と遜色ないほどの、だ。

それが原因かは分からないが、漁師達も魚が捕れず、利用客も減り始めているらしい。

それらの解決を急ぐため、ひいてはディオール魔法学園の本分を達成するためにも、新入生である私達にエンジェルの予行演習をすることになった。

とはいえ、流石に私達だけでは荷が重すぎるので、乙女先輩達が引率として同行することになる。

 

「黒い魔力、か……」

 

それがどれ程の影響力を及ぼすのかを、私はこの目で確認している。

魔力を原動力として起動する魔動機が独りでに暴走したこと。あれは私とゴーちゃんが魔法の研究の一環として試しにやったことだ。

黒い魔力を浄化する力――救いの鍵の少年のみが使えるという、あの魔法は本当に彼しか使えないのか。そして、その活躍をこの目で見たかった、というのもある。

……蓋を開ければ、魔法乙女先輩が魔動機を破壊することで事なきを得たのだが、その時にロザリー先輩や悪魔乙女先輩達に目をつけられる事になった。

 

それ以降は、矛先を向けられる数が増えないように、穏便に活動していた。エリオの解明にも興味があるし。

しかし、それも数ヵ月が経ってなお実りにならない。真少年の出自もそうだが、彼女についても謎が尽きない。

 

まあそれはそれ。

気持ちを切り替える。

 

「私と、しては……、黒い魔力、の出所を、調べたいかな……」

「ははっ、ルベっちは相変わらずだな」

「それは私達の出る幕じゃないでしょう。私達は私達に課せられたものをやり遂げましょ」

「そうだね。……藪をつついて蛇を出す、なんて事になったら大変だし」

 

チコの台詞にアンゼリカが身体を震え上がらせる。……諺でも蛇が無理なのか。

 

「――あーもう、やめやめ! そういうのは現地に着いてから考えよう! 今は今やることを考えるんだよ!」

「……それもそうですね。二週間ありますし、準備はしっかりしないといけませんね」

「そうね。……やっぱり、浮き輪とか持っていった方が良いのかしら?」

「ピコーン! カレンちゃん、海水浴場に着いたらわたしが泳ぎを教えてあげるね!」

「海といえば海鮮料理も楽しみだな! そういえば、ルベっちは魚介類は大丈夫なのか?」

「生きてる、ものが、苦手ってだけで……、食用に加工、されたのは、問題ないから……」

 

考えられることは沢山あるが、今は準備に専念しよう。

私は非力だから出来る限り荷物は少な目にしないと……。

 

『おいおいルベリス、重要なもんを忘れるんじゃねえぞ?』

「……? 重要なもの?」

『水着だよ、み・ず・ぎ‼ 確か持ってなかったろ? 覚えてるうちに、全員で買いに行った方が良いんじゃね?』

「…………そんな事言って、女の子の、水着姿、見たいだけ……」

 

いつものごとく、ゴーちゃんを鞄の中に押し入れる。そうしているうちに、目の前のアンゼリカが私の小声の内容に反応した。

 

「……水着? そういえばあたしも持ってなかったな」

「私も学園に来てからは全くね。小さい頃のは……流石にもう合わないだろうし」

「ですね。覚えてるうちに買いにいきましょうか」

「ピコーン! 賛成! カモミールちゃん、お洒落なものを一緒に見つけよう!」

「そうだね! プロのモデルがここにいるんだし!」

 

一瞬で水着を今から買いにいく流れになった。

面倒なことが起こりそうだと、私は思わず眉を潜めた。

 

 

 

早速商店区のブティックに足を運ぶことになった私達。季節に応じて品揃えが変わるであろうこの店では、夏服用の薄着や水着が沢山取り扱われている。

エリオとチコは先頭に立って水着コーナーに一直線に向かっていく。

 

「エリちゃんエリちゃん、これとかエリちゃんに似合うと思うな!」

「ピンクのワンピースタイプかぁ、まずは試着してみるね!」

 

早速試着コーナーにエリオが入っていった。チコもセパレートタイプの水着を選んで同じく足を運んでいく。

 

「選ぶの早すぎでしょ……」

「別にあれが本命というわけではないですよ? さあカレンちゃん、私達も選びましょう」

「そ、そうね……カモミールのお勧めとかないの?」

「そうですね、カレンちゃんだと……こういう、黒いビキニとか大人っぽくて良いと思います!」

「び、ビキニ⁉ 勘弁してよ、露出度高過ぎじゃない!」

 

カモミールがお勧めしたものを、カレンは真っ赤な顔で拒否する。

ゴーちゃんが鞄の中で騒がしくしていたので、鞄を叩いて大人しくさせた。

 

「何してんだ、ルベっち? あたし達もさっさと選ぼうぜ?」

「…………」

 

正直どれでも良い。

だが、こういう場合アンゼリカに選ぶのを手伝うことも可能だが、着せ替え人形になる可能性が高い。

だったら、適当に選ぼうか――

 

「お客様、水着をお探しですか?」

「…………」

「おっと、店員さんか。丁度いい、あたしとルベっちに似合いそうな水着を探しているのだが」

「ちょ……⁉」

 

早速予感的中。

 

「そうですね、では――畏れながらサイズの方は把握されておりますか?」

「あー……」

 

うろ覚えだったのか、アンゼリカは曖昧な反応を見せる。それと同じタイミングで試着コーナーからチコが出てくる。

 

「エリちゃーん、着替え終わった?」

『……えっと、チーちゃん。私、太っちゃったかも』

「ええ⁉」

『その、このワンピース……、胸の辺りがキツくって』

「………………………」

 

チコの表情から感情が抜け落ちた。

その後、「そういえば、エリちゃんに抱き締められたとき柔らかかったなぁ。エリちゃん、大きくなってたんだ……。わたしなんて、一昨年から全然大きくなってないのに」というような声がぶつぶつと繰り返される。

 

さらに別の場所では、

 

「ちょっと、さっきから露出度が高いのばかり選んでくるじゃない! もっと他のはないの⁉」

「自覚してください! カレンちゃんのバストサイズだとビキニかパレオしか合わないんです‼」

「何よ、カモミールだって私と同じくらいじゃない! なのにカモミールはワンピースタイプも選べるなんて不公平よ!」

「ええ⁉ いえ、それは……!」

 

あの二人はあの二人で仕様もない言い争いをしている。

というか、やはりカモミールはサイズを逆鯖していたのか?

 

ここまでの一連を踏まえて口を開いたアンゼリカは、

 

「その、測定って出来ますか?」

 

眉を垂らしながら店員に頼んだ。

 

 

 

「……上は77、……下は79、ですね」

「うぅ……、お尻も太ってた……」

 

エリオから順にバストとヒップの測定を行うことにした。エリオは腰を恨めしそうに見ながら、着替え終わった後に水着を選び直しに行った。

 

「……上は73、……下は77、ですね」

「はぁ……、やっぱり大きくなってない」

 

「……上は85、……下は88、ですね」

「あ、あら? 私もお尻が……」

 

「あ、あの、私はサイズは最近測ったので大丈夫です」

「あら、そうですか?」

(ゴーちゃんが盗み見してたという話では、上は80、下は82らしいけど……)

 

下はともかく、上は本当にその数値なのか、と前から疑問には思っていたところだ。

モデルは細身の方が良いとは風の噂で聞いている。よって胸の大きさも細い方が良いということなのだろうか?

 

「……上は78、……下は80、ですね」

「……あれ、少しは成長してる?」

 

チコが眉を潜めてアンゼリカを恨めしそうに見ていた。……仲間だと思っていたのか。

アンゼリカはサイズの区分分けされたエリアの案内を受けて、自分に似合いそうな水着を選びに行った。

 

「……では、お客様のサイズも測定させて頂きます。お手数ですが、試着コーナーの中で一度服をお脱ぎになって頂けますか?」

「…………」

 

ここまでされては流石に断る流れではないので、試着コーナーに入って服を脱ぎ始める。

 

『さてさて、ルベリスはちゃんと成長してるか~?』

「うる、さい……。あと、鞄から出て、来たら、許さない」

『…………そりゃねえぜ』

 

服を脱ぎ終わり、店員に合図をすると試着コーナーに入ってきてバストとヒップのサイズを測る。

 

「……上は83、……下は82、ですね。そうですね、お客様ならビキニとかもお似合いかと思いますが」

「……どうも」

 

着替え終わって、適当なサイズのエリアに足を運ぶ。

すると、同じく水着を探していたカレンがまるで仲間を見つけたかの様に近寄ってくる。

 

「る、ルベリス! 貴女だって、露出の多い服は嫌よね、そうよね⁉」

「…………まあ、肌が焼けたり、するのを、いちいち気に、しなきゃ、だし……」

「ルベリスちゃんも水着選びに困っているのですか?」

 

視界の脇からひょこり、とカモミールが顔を出した。両手にはお洒落そうな水着がそれぞれ一着ずつ抱えられている。

 

「カレンちゃん、こういうフリルの付いたものなら、可愛いですし、その分露出度も下がりますよ?」

「そういう問題じゃないの! ……そ、そうだわ! 確か競泳用の水着がある、って聞いたことがあるわ! あれなら露出も少ないし、日焼け止めを塗る時間も削減できるし、何より機能性が高いわ!」

「えっと、カレンちゃん。競泳水着は体にピッチリと引っ付くタイプの水着ですので、端から見れば身体のラインが丸見えになってしまいますわ。……私としては、そちらの方が恥ずかしいというか……」

「ぅぅぅぅぅぅぅ……っ」

 

助けを求めるようにこちらを見ないで欲しい。私だって競泳水着みたいな着づらいものは嫌だ。

 

「ルベリスちゃんはどういったものが良いですか? 良ければ私も選ぶのを手伝いますよ」

「自分で、選ぶから……、いい」

 

自分のサイズにあったものを探していく。上は、水着の機能で胸を持ち上げられるものを探す。

そうすると、上のデザインにあった下の水着が見当たらない。

まあ人に見せつけるわけでもないし、デザインの違い程度なら大して気には――

 

「いけませんルベリスちゃん‼ 同じ女の子としてそのような横着を見逃すわけにはいきませんわ‼」

「……⁉」

 

後ろから肩を掴まれて身体が跳ねる。振り替えると、見たこともない形相をしたカモミールが訴えてくる。

 

「ルベリスちゃん! それだけは、女の子としてやってはいけないことですよ! カレンちゃんもそうですよね⁉」

「え⁉ え、ええ、そうね……?」

 

しまった、カレンを味方につけられた。

この後、「私がルベリスちゃんに似合うものを見つけてみせます」と息を撒いて聞かないカモミールに押しきられ、別の場所で水着を選んでいるエリオ達を巻き込んでコーディネートされることになった。

 

 

 

「なぜ、こんなこと、に……」

 

案の定着せ替え人形になってしまい、結局全員が買い終わった頃には、空が茜色に染まりきっていた。

 

カモミールのコーディネートによって買うことになったのは、胸元を寄せて持ち上げる薄めの青のセパレートだ。

 

――ルベリスちゃんは大きいのがあまり負担にならなく、かつ魅力的に見えるものにしましょう。

 

とはカモミール談。

 

余談だが、カレンは結局ビキニを買うはめになり、「うぅ、せめて目立たなければいいんだけど……」と嘆いていた。……それだけのプロポーションを持っていて目立ちたくない、は我が儘だろう。

エリオは当初のワンピースから、フリルのセパレートを買うことになった。色はもちろんピンク。「エリちゃんはピンク色こそぴったり」とチコが譲らなかった。

アンゼリカはレッグビキニという、下がスパッツのような形状をしたビキニを選んでいた。「多少動いてもズレが気にならない」とアンゼリカは言っていたが、まさかその格好で戦闘をするつもりなのか?

チコは白のワンピースを買っていた。カモミールに勧められたのもあるが、「チーちゃんもワンピースとか似合いそう!」とエリオに言われて即決した。……相変わらずエリオの事になると態度が分かりやすくなる。

 

ちなみにカモミールも新しく買ったそうだが、胸元が隠れるフレアビキニというビキニを購入していた。……そこまでして隠す必要があるのか。

 

全く、ここまでくたびれて、その上セイレニウムでは大したことが起きなかったらどうしてくれようか。

 

その時は、どうにかして学園には憂さ晴らしに付き合ってもらうことにしよう。

 

 

 

ついに、今日から宿泊学習が始まる。予定通りにチーちゃん達と集合場所に行くと、生徒達の集まりの先に乙女先輩達がいた。

 

「乙女先輩!」

「エリオ、おはよう! 今日から宿泊学習だけど、よく眠れた?」

「はい、今日からでもバリバリパトロール出来ますよ‼」

 

半分嘘だ。

正直不安でどうにかなってしまいそうだが、不安なのは他のみんなも同じだと思うので、自分一人だけ喚くような事だけは絶対にしないと決めているからだ。

 

「……………………」

「? ルベちゃんどうしたの?」

「……ん、いないな、って」

「誰が?」

「真少年」

 

私の周りだけ静寂に包まれた気がした。

真少年――救いの鍵の少年は私達が学園に入学する少し前に行方不明となった人。

世間からは新しいエンジェルとして認知されているその人は乙女先輩達と共に守護神暴走の異変を解決した立役者なのだ。

 

「……ルベリス、アイツなら来る筈無いわよ。あれから全然連絡も取ってないんだから」

 

あの薄情者、と小さな声でロザリー先輩が呟いた気がした。

先輩達も彼が何処に行ったのかが分からないらしく、世間は真少年の行方を目下捜索中との事だ。

 

それを聞いたルベちゃんは、つまらなさそうに明後日の方向を向いた。……と思ったら、上に視線を傾けた。

つられて私たちも視線を上げると、空から何か黒いのがどんどん大きく――というか、何かがこのグラウンドに降りてくるのが見えた。

 

「な、何でしょうか、あれ?」

「……聞いたことがあるわ。魔法工学会とディオール伯爵家の総力のもと、魔動飛行挺っていうのが開発されたって。たしか、ジオーネ先生も設計と開発に関わっているとか」

「ピコーン! じゃあ、あれがそうなの?」

 

魔動飛行挺はグラウンドに着陸すると、その側面がばたり、と開いた。

中からメルセデス先生とアリア先生が出て来て、私たちに大声をかける。

 

「全員揃っているな? それでは、これより宿泊学習の開始を宣言する!」

「移動はこの飛行挺を使います。皆さん、早く中に入ってください!」




長すぎィ!

とにかく、一旦学園編はここでストップ。

次回は真少年編を執筆していきます!


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合わせるエリオちゃん日記 前編

正月学園イベント、良イベですね。
カレンもアリア先生も手に入ったしエンジョイ勢としては言うこと無しです。

次はアンゼリカを手に入れたいですね。あの娘だけ星5いないので。


飛行挺の窓から見える空と地上の景色を交互に見ながら私はため息を溢す。

魔動カバンで何度も空を飛んだけれど、ここまで高く飛んだことはない。この高さから見えるもの全てが新鮮に感じる。

それは他の生徒にとっても同じことで皆それぞれ千差万別な反応を示している。乙女先輩達も例外ではない。

 

「一体どんな原理で飛んでるんだろ?」

「少なくとも魔力だけで飛んでるって感じじゃないよね」

「魔力は、あくまで、上昇と推進を、促す、だけ……。浮力は……たぶん、飛行挺の構造……」

 

キョロキョロと飛行挺内を見渡していたルべちゃんが解説してくれる。

 

「ルべちゃん知ってたの?」

「いいや、……でも、この構造は、気球の原理、と……、よく似てる……」

 

気球というのは、人が数人乗れるバスケットをバルーンに繋いで、バルーンに熱気を注ぐことで宙に浮かぶことができる乗り物だ。

本でしか見たことがないため気球には乗ったことがないけれど、気球の原理と似ているということは飛行挺の上部はかなりの熱量を持っているだろう。

 

「それはともかく、今どこら辺だ? こう流れる景色を見ていると、時間と距離の感覚が狂いそうだ」

「向こうの方にウィンドリアの町並みが見えました。セイレニウムとは隣どうしですからもうすぐかもしれません」

 

「ならチコ、見覚えのある景色はここから見える?」

「……んー、多分だけどあれがわたしたちが宿泊する海水浴場の施設かな?」

 

チーちゃんが指差した方向に、白い砂浜が見える。セイレニウムは水に関する施設が多いと聞く。その砂浜は、周辺と比べても一際大きい。

近くを見てみると、また規模の大きい港が見える。そしてその港には、あまり見慣れないものが確認できた。

 

「? なに、あの……アルファベットのHみたいなの」

 

「あれが飛行挺の着陸地点だ。もうすぐ着陸する、荷物をまとめて降りる準備をしろ」

 

後ろからメルセデス先生が指示を出す。周囲の生徒たちは外の景色に後ろ髪を引かれながらも、支度に取りかかる。

 

「私達も準備をしましょ。多分、すぐ施設に直行でしょうから」

 

カレンの一言で、私達も準備を始めることにした。

 

 

 

セイレニウムの港に着陸し、そのままさっき見えていた宿泊施設に直行する。メルセデス先生とアリア先生が施設のオーナーに挨拶をして、すぐに今日の予定に取りかかることになった。

内容としては、ゴシックパーティーのチーム毎に役割分担をすることになる。

まず、いくつかのチームを一纏めにして、海水浴場の海をパトロールするグループと、町中をパトロールするグループを作る。残りのチームは宿泊施設の仕事を手伝うことになる。

ちなみに、私達のチームは町中をパトロールするグループの一組であり、お昼ご飯を食べる後に早速パトロールを行うことになった。

 

とはいえ、私達の中ではチーちゃん以外セイレニウムの地理が身に付いていないので、基本的にチーちゃんに案内を頼むしかない。

 

「皆は何か食べたいものはある?」

「折角セイレニウムに来たんだから、セイレニウムの名物を食べたいわね」

「セイレニウムの名物っていったら魚介類だろうが……、あたしは異存はないけど?」

 

全員が魚介類系の飲食店に向かうことに決定した。

ルべちゃんはちょっと渋ってたけど、「調理、されてるなら、問題ないや……」と条件付きで頷いた。

 

そうして案内された場所は、イーストタウンから取り入れたという、お寿司という飲食店だ。

酢飯の上にお刺身などを乗せて、手を使って食べることが出来るという、ジルバラードではあまり馴染みのない食べ物だ。

 

早速お店の中に入ってみると――

 

「――申し訳ありません、現在空いている席が四人席一つしかないのですが……」

 

お客さんが沢山いて、私達全員が座れるテーブル席がないみたいだった。

 

「四人席ってことはこの内の二人は席が空くまで待機ってことですか?」

「いいえ、カウンター席がいくつか空いていますのでよろしければ、うち二人はご案内いたしますが?」

 

さて、どうしよっか?

あんまり悠長なことをしていると後でメルセデス先生に怒られるかもしれない。

 

「まあ、恨みっこなしでじゃんけんで決めましょ」

 

そして、じゃんけんの結果――

 

 

「え、エリちゃーん……」

「恨みっこなしってカレンが言ったばかりだぞ、チコ」

「どうせなら皆と一緒に食べたかったですが、猶予もありませんし、仕方ありませんね」

「まあ、そうね。……でも、ルべリスったらエリオと二人なのを良いことに、何か変なことしなければいいけど……」

 

 

チーちゃん、アンちゃん、カモミールちゃん、カレンの四人がテーブル席側に決まり、私とルべちゃんがカウンター席に座ることになった。

 

 

「……さてと、何頼もうか? ルべちゃんは何がいい?」

「そう、だな……。……じゃあ、いなり寿司、っていうの……」

「ええ、セイレニウムに来たのにお魚食べないの?」

「いくら、刺身だから、って……、魚はあんまり、好きじゃ、ない……。魚の、臭いも、嫌い……」

「まあまあ、そう言わずにさ……」

 

とりあえず、一人二、三品頼んで、来るのを待っていると、

 

 

「ちょっと、貴方こんなところに来てまでアイス食べたいの?」

「だって暑いし……。メニューにあるってことは、頼んでも問題ないってことだよね?」

 

 

と、隣の席から二人の女の人の声が聞こえてきた。

思わず私とルべちゃんはそちらに視線を向けると、アイスを食べたい、と言っていた栗毛の女の人と目があった。

 

「ご、ごめんなさい。五月蝿かったですか?」

「……え? ああ、そんな事は……」

 

……この人、スッゴク綺麗!

思わず言葉にして口から出そうになったけど、なんというか、天は人に二物を与えた、と言っても過言ではないくらいの印象を受けるような人だ。

 

そんな事を考えていると、栗毛の人は視線を少し下にずらした。

 

「…………その服、ディオール魔法学園の制服だよね。ってことは、君達二人は学園の生徒?」

「わ、分かるんですか⁉」

「………………………」

 

私とルべちゃんは同じ反応をする。……いや、ルべちゃんからは何か含みを感じる視線を彼女に向けているけれど。

 

「私の知り合いも通っていてさ。もしかして、今年度の新入生って君達?」

「はい! 私、エリオっていいます。こっちはルべリスちゃんです」

「…………どうも」

「他にも友達が別の席にいるんですけれど……」

 

私がチーちゃん達がいる席に目を向けようとして、再び質問を受ける。今度は彼女の隣にいる金髪の女の人からだ。

 

「……なんで学園の生徒がセイレニウムに来ているの? 学園の授業はどうしたのかしら?」

「え? ああ、私達今日から三泊四日、この近くの海水浴場で宿泊学習をすることになったんです」

「近くの海水浴場って……」

 

栗毛の人と金髪の人は顔を合わせて、少し表情が険しくなった。すると、頷き合って唐突に席を立ち、店から出ようとする。

そんな二人を引き留めたのは――

 

「待ってください」

「る、ルべちゃん⁉」

 

ルべちゃんだった。今までのダルんとしている雰囲気が一転し、とても真剣な顔つきで栗毛の人に目を向ける。

 

「貴方の、名前は……?」

「…………私? ああ、そういえば名乗ってなかったね。私はメイプル。そしてこっちが……」

「……サクラよ」

 

へえ、メイプルさんに、サクラさん、かぁ。あんまり聞かない名前かも。

そんな暢気な感想とは別に、ルべちゃんの別の質問が飛びかかる。

 

「何をしに、セイレニウムに……?」

「な、何聞いてるの、ルべちゃん?」

「……ええ? 私達は――」

「――旅行よ。最近特に暑いじゃない? 海水浴場で避暑を嗜むためよ、姉妹(・・)水入らずでね」

「………………………ええ?」

 

ルべちゃんのすっ頓狂な声が漏れると同時に、二人は店を後にした。

 

??? ……姉妹? 嘘、には、聞こえ、なかった…………、初耳……。どういう……人違い…………?

「あの二人姉妹だったんだ。言われてみれば、目付きがちょっと似てたかな? ……ってルべちゃん本当にどうしたの?」

 

ルべちゃんの混乱は宿泊施設に戻るまで治らなかった。

 

 

 

 

「……まさか、学園もこっちに来てたなんて。しかも新入生って、メルセデス先生は一体何を考えてるんだ?」

 

エリオとルべリス。他にも学園の生徒らしき人を見かけたけれど、あの娘達だけでは今回の異変は解決できないだろう。

イシュタリアの異変よりも、今回の一件はけた外れに危険だ。きっとラナン達も一緒に来ているとは思うが、苦戦を強いられるだろう。

 

「それよりもカエデ(・・・)、貴方あのルべリスって娘に感付かれていたわよ」

「……え、そうなの⁉ だから急に姉妹とか言い出したんだ」

 

僕に肉親がいるという情報はジルバラードには全く広まっていない。僕のイメージと乖離した情報を示すことで、恐らく疑いの目を無くそうとしてくれたのかもしれない。

 

「……ちなみに、学園の新入生に知り合いはいないのよね?」

「え、うん。僕が把握している限りでは、いないはずだけど」

「ふぅん……?」

 

サクラは何か考えをしているようだ。

 

ともかく、なるべく目立たず、かつ今回の異変を解決するためにも、学園の出番を無くすしかない。

いくらなんでも、エンジェルの卵の初陣で黒い魔力が相手だなんて理不尽にも程がある。

 

忙しい四日間になりそうだ。




今更ですけど、学園の子達の金銭事情はどうなってるんでしょうね?

寮暮らしだから、ご飯は寮で出るか、自分で作るかだろうけど、後者の場合自腹を切るわけで。

ゲームのストーリーだし深く考える必要はないのかもですが。


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合わせるエリオちゃん日記 中編(最新話)

ゴシックは魔法乙女、四周年おめでとうございます‼

そしてまた期間が空き始めましたが、それでもゆっくりと書いていきたいと思います。


宿泊学習一日目が終了し、消灯時間。エリオ達が完全に寝静まったのを確認してから、私は上半身を起き上がらせて、ゴーちゃんを呼ぶ。

 

『ほいほーい、っと。……どうせ昼間の二人組の事だろ?』

「ん……。ゴーちゃん、から見て……、あの二人は、どう、だった……?」

 

ゴーちゃんはホロロッと喉を鳴らしながら、私の質問に答える。

 

『……んー、まあ。大方ルベリスの想定通りだぜ。特にあの栗毛のやつ、一瞬同業者かと思ったくらいだ』

「同業者…………?」

『ありゃただの変装じゃねえ。惑わしの魔法っつう立派な魔界の魔法だ』

 

そんな馬鹿な、と出かかった言葉を飲み込む。

十分あり得る話だ。彼の周りには悪魔乙女もいる。彼女らの誰かから教わった可能性は濃厚だ。

真実男であるはずの彼は、あの時誰がどう見ても美少女にしか見えなかった。

 

『まあ、隣にいた金髪の小娘が施した可能性もあるが……』

「それは、ない……。あの人、……多分、ヘカトニス、で……有名な、沼地の魔女……。守護神暴走の、時に、……見たこと、ある……」

 

彼女は歴とした人間。魔界の魔法に傾倒しているならば、とっくにヘカトニスは彼女の手に堕ちている。魔界の魔法に手を出すような者は、大抵はイカれているものだ。

 

私のように。

 

『……んで、当初の目的はようやく半分達成ってところか? こっからどうする気だよ』

「できれば……、また、接触したい……。でも、……難しい…………」

 

ようやく救いの鍵の少年に出会えたのに、ここに来て新たな問題が浮上する。

あの時、隣にいたエリオは気づかなかった。元々、そういう目的であんな格好をしていたのだろうが、彼とどんな理由で接触すれば良いのか。

彼が真少年だと指摘するのは容易い。が、その場合騒ぎになって私の目的の邪魔になるのは想像に難くない。それを理由にして近づき、秘密裏に接触するのも手ではあるが、

 

――旅行よ。最近特に暑いじゃない? 海水浴場で避暑を嗜むためよ、姉妹(・・)水入らずでね。

 

姉妹。

真少年に肉親がいるなど初耳だ。エリオも言っていたから後で気づいたが、確かに顔つきはそれなりに似ていた。

つまり、二人でセイレニウムに来たということは、あの二人は常に行動を共にすると考えてよいだろう。

その場合、脅迫紛いで彼に近づこうものなら、あの沼地の魔女を敵に回しかねない。それだけは最悪手である。

 

「結局、……次あるか……、わからない、機会を、待つしか……、ないのか……」

『それなんだが、俺にいい考えがある』

「………………………?」

 

一瞬嫌な予感がしたが、とりあえず意見を聞く姿勢を取る。

 

『俺が直接呼びに会いに行ってやるよ!』

「はぁ?」

『おいおい疑うのかよ』

 

何を言っているのかこの精霊(変態)は。

そもそもゴーちゃんは契約者の私以外姿が見えないはずなのに。

 

「彼は、……男……」

『確かに見てくれは中々イケるいい女だが……って違う違う! 何でか知らんが、俺が直接会いに行けばうまくいく気がするんだよ!』

「…………意味、わかんない……」

 

極めて不可解な非論理的主張である。

だが、ゴーちゃんは撤回せず自分が会いに行くと言って聞かないので、諦めて任せることにした。

 

(……大丈夫、かな……)

 

 

 

宿泊学習二日目。

今日の私たちがやることは、昨日と同じくパトロールだ。とはいえ、海水浴場周辺担当と、街担当のチームは一日ごとに交替するため、私たちは海水浴場の海辺に来ている。

早速皆で買いに行った水着に着替え、魔動カバンを背負い、いつでも空を飛ぶ準備をしていると、

 

「おーい、エリオー! みんなー!」

 

乙女先輩達も水着に着替えてやって来た。

流石は魔法乙女と呼ばれる先輩達。水着姿が眩しすぎて直視できないレベルだ。

 

「今日の乙女先輩方はこちらをパトロールするのですか?」

「ええ、といっても全員じゃないけどね」

 

カレンと話すラナン先輩は、後方で準備体操をするスフレ先輩達を一瞥する。

勢い良く動くスフレ先輩、なんだか動きがぎこちないロザリー先輩、それを見てくすくすと笑うダチュラ先輩。

 

「……ロザリー先輩はどうしたんですか?」

「ああ、ちょっとね……。カトレアやプルメリア達がいたらもっと酷いことになってたかも……

「?」

 

途中から何を言っているのか良く聞こえなかった。

そんなことを頭の片隅で考えつつ、早速飛んで海に出る。

とはいえ、黒い魔力が発生する原因はどのようにして見つければ良いのか。

 

そんな疑問を解決するのが、今私の手の中にある特製のチャームだ。黒い魔力を感知すると、宝石部分が黒く光るらしい。

 

実際に、現在も薄目の黒に点滅する。だけど、昨日も街をパトロールしていても同じ反応だったため、もう少し分かりやすい反応でもなければ黒い魔力の発生源を特定することは出来ない。

 

「昨日は海上周辺を調べてたから、今回は海の中に潜るのもありかもしれないわね」

「う、海の中にですか⁉ それは、ちょっと……」

「あらカレン、珍しく消極的ね?」

「カレンは泳げないし、泳げる人に頼むしかないよねー」

「ちょっとエリオ! 何でばらすのよ!」

 

そんな他愛もない話をしながら、潜水するためにシュノーケルを身に付け、魔動カバンを起動させる。

 

……ちなみに、どうしても海に潜るのを渋ったカレンはロザリー先輩と浜辺で異常が起きたときの対策として待機することになった。

 

 

 

「………………………ふぅ」

 

今の私の心情を一言で表すなら、憂鬱だった。

別に何か被害を被った訳ではない。ただ、こればかりは私の感情が許しはしないのだ。

 

「あの、大丈夫ですか?」

「……別に、私たちは私たちでさっさと探しましょう」

 

浜辺に残ったカレンと地上で捜索をする。

そんな目で見ないでほしい。あんたは何も悪くないんだから。

 

「その、ロザリー先輩はどうしてこちらに残ったのですか? 私みたいに泳ぎが苦手というわけでも無さそうですが……」

「別段得意でもないわよ。それこそ、チコとかに比べるとね。でも、そういうのはやり易い人が率先してやるべきよ」

 

まあ、その理屈が正しいなら泳ぎに慣れてなさそうなルベリスが海組に積極的に付いていったのは気になるけれど。

 

まあ、それはさておき、私はさっきからほのかに気になっていたことを口にする。

 

「……ねえ、カレン。ブカブカなパーカー着てるけど、何かあった?」

「ええ⁉ いえ、これは、その……」

「そういえば着替えてる時にカモミールから借りてたわね。どこか怪我したとか?」

「いえ、そうではなく……」

 

モゴモゴと口を動かすカレン。

 

「じれったいわね。まさか水着着てないとか?」

「違いますっ‼ それじゃ私が痴女じゃないですか!」

 

観念したカレンは肩を落としながら喋り出す。

 

「……その、太ってしまって」

「太った? どこが?」

「…………お尻が」

「…………あぁ」

 

他人事には聞こえないなと感じた。

私もお尻が大きい方だ。……体格に対してだが。

ラナンも時々お尻の大きさに悩むところを見たことがある。

どうせならお尻じゃなくて胸が大きくなればいいのに、と恨んだことも一度や二度ではない。

 

「チコやアンゼリカが羨ましいです。バランスのいい肉づきで体が動かしやすいし、服も選び放題でしょうから」

「…………その台詞、絶対に二人の前で言うんじゃないわよ」

 

カトレアみたいな事を言い出したわね、この子。

激昂しなかった私を褒めてほしいくらいだ。

 

 

 

今日のパトロールも何事もなく終了し、宿泊施設に戻ってきた私達。

しかし、成果としては芳しくない状況だった。

 

そんな時、部屋に戻ってすぐに、アンちゃんが口を開く。

 

「……実はダチュラ先輩に今回の一件に心当たりはないのか聞いてみたんだ」

「心当たり、ですか?」

「あれ、いつの間に聞いてたの?」

「まあ、偶然二人だけになったときにな」

 

アンちゃんは一拍置いて、口を開く。

 

「今から二ヶ月くらい前に、現在のセイレニウムと同じような事態がイシュタリアで起きたらしい」

「イシュタリア? でもそんな話一度も……」

「あたしもそうだ。それに事件も師匠達が駆けつけた日に解決したらしいから大事にならなかったのが広まってない理由だろう」

 

だが、問題はそこではないとアンちゃんは首を振る。

 

「悪魔乙女先輩達が言うには、イシュタリア全域から微弱だが濃い黒い魔力の気配がしたらしい」

「……全域⁉ それって!」

「そう、今のセイレニウムもほぼ全域から黒い魔力の気配がする。……そうだろ、エリー?」

 

アンちゃんは私に視線で促す。

私は懐に入れておいた黒い魔力感知チャームを取り出した。昼間と同じく、黒い魔力を感知した証拠である黒い光が点滅している。

 

「し、宿泊施設に居るのに、まだ反応しているのですね……」

「それほど、濃い……、黒い魔力が……、セイレニウムに、根付いている……」

「そんな……。せっかく、セイレニウムも落ち着きを取り戻したのに…………っ」

「チーちゃん……」

 

俯くチーちゃん。

私はそんなチーちゃんを抱き寄せることしか出来なかった。

 

「……皆、わかってない……」

「……? どういうことだ、ルベっち」

 

真剣さを帯びたルベちゃんの言葉に、私達は思わず視線をルベちゃんに集めた。

 

「事態は、……まだ何も、始まってない……。そうでしょ、……アンゼリカ」

「た、確かに。話ではなんの拍子か、黒い魔力が魔物のような集合体になったそうだが……」

「それもあるけど、そうじゃない」

 

これ以上何かあるの?

一斉に首を傾げた私たちに対して、ルベちゃんは、重く、その言葉を呟いた。

 

 

 

「……これは⁉」

「……サクラ?」

 

僕達は現在、夜のセイレニウム上空を飛び回り、黒い魔力の出所を探っている。

そんな中、サクラは羅針盤を持つ手を震わせる。

 

「いったい何が……――⁉」

 

羅針盤を覗き込んだ僕も同様に驚愕を露にする。

羅針盤の針がぐるぐると、まるで狂っているように回っているのだ。

この羅針盤は黒い魔力を感知するとその方向に針が向くようになっている。そして、出所を特定するとピタリと針を止める。

だが、今僕達がいる場所はセイレニウムの丁度中心に位置するその上空にいる。

つまり、セイレニウムの外側から黒い魔力を感知したと羅針盤は示しているのだ。

 

「待ってよ、昨日はこんな反応じゃなかったはずだよ‼」

 

人目を避けるために、暗闇に紛れやすい夜を調査時間としている。

昨日も同じく、羅針盤を用いて出所を探し、事前に異変を解決しようとしていたのだが、羅針盤はセイレニウム全域が出所と言わんばかりに反応を示してくれなかった。

 

「海だわ」

「……え?」

 

唐突に呟いたサクラの言葉に、僕は耳を疑った。

 

 

 

「海から黒い魔力が流れ込んでるのよ!」

 

 

 

「……間違いない。……セイレニウムの、海は、黒い魔力に、汚染された。……海水が、蒸発して、……潮風と一緒に、延々と、街に黒い魔力が、流れ込んで来ている」




おまけ



ロザリー「……はあ、最近の子って発育が良すぎじゃない? これじゃ私が少数派みたいだわ」
チコ「そんなことないですよ。少数派っていうのはわたしみたいなちんちくりんのことを言うんです」

ロザリー「……言ってて虚しくならない?」
チコ「虚しいですよ。……でも解りますか? 一番背が小さくて、一番発育が悪いのに、カレンちゃんもカモミールちゃんもルベちゃんも、エリちゃんでさえも、発育の良さをコンプレックスのように語るのを聞かされた側の気持ちが」
ロザリー「ああ…………。(ラナンとカトレアとルチカがそのタイプね。逆に、プルメリアとカルミアとダチュラはわざと見せつけてくるタイプね)」

ロザリー「苦労するわね、お互い」
チコ「解ってくれるんですか……?」
ロザリー「ええ……」

『はぁ…………』


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~Side saivor~ 里帰りする真少年日記

ハッピーハロウィン!

ゴ魔乙もハロウィンイベントが終わりましたし、何か特別な話を書かせていただきます。


オーフェリアの辺境の地。

寂れた丘にポツンと建っている廃教会は、かつて僕が一人で住んでいた、言わば実家のようなものだ。

彼女達と出会ってからは国中を転々としていたので、ここに戻ってくる余裕など無かったが、ある程度の一段落が着いたためこうして戻ってくることができた。

 

ただ――

 

「ここがマスターがかつて過ごしていた廃教会ね。……こんなところで一人でずっといたなんて大丈夫だったの?」

「そうよねぇ~。マスターくん、一体いつからここにいたの?」

「出店とか何にもないな~。お腹が空いたときマスターどうしてたんだ?」

「ふえぇ、なんだが寂しいです」

「教会として機能していないとは事前に聞いていましたが、老朽化が激しいですね。最早神を崇める場所としての品格を感じません」

 

五者五様、思い思いに口にする彼女達は、一見普通の少女にしか見えないが、その実魔界からジルバラードを混乱に陥れるためにやって来た刺客なのである。

が、紆余曲折あり、彼女達との理解も深まり今ではジルバラードの平和を守るために戦う頼もしい仲間達だ。

 

本来なら全員でここに来たかったけれど、ラナン達は学園に行っているため、一度もここに来たことがないジギタリス達を連れて戻ることにした。

ここに戻ってきた理由はただ一つ。

 

せめてもう一度、僕が住んでいたこの教会を見ておきたい。

 

 

 

「生活感もあまり感じられませんね……」

「中は見ての通り埃だらけね。一度掃除した方がいいかしら」

 

ステンドグラスに淡く照らされた教会の中は埃で汚れきって、どこか白みを感じる。歩けばそれだけ埃が舞い、視界でふわふわとたゆたう。

 

「マスターくんの部屋は何処なの?」

「この教会は裏側から二階に続いてるんだ。案内しようか?」

 

僕の部屋に興味がある、と態度で示してくれたカルミアとルチカ。他の三人は一旦教会を掃除してくれるみたいなので、後で僕達も掃除をすることにした。

 

裏側に入ると、懐かしさを感じる台所が目に入った。棚を開けると、手入れを怠ってくすんでいる鍋や包丁が出てきた。

 

「料理もしてたんですか?」

「簡単なものだけだけれどね。お金もあんまりなくて、近くの林から木の実を取ってきたり、水は町の井戸から貰ってきたり、何もかもが簡素なものだった」

 

台所を後にして、二階へと続く階段に足を伸ばす。ぎいぎい、と悲鳴をあげる階段の音が狭い通路に響く。

 

登り終わってすぐの側面にあるドアを開けると、懐かしい光景が飛び込んだ。

物心ついてから、ここでずっと毎日を過ごしていたんだ。

 

「えぇ……、ちょっと待って。この部屋って、いわゆるこの教会の倉庫なんじゃないの? 個室にしては狭すぎるわ」

「こ、ここが本当にマスターさんのお部屋、なんですか?」

「うん、そうだよ。まあ確かに倉庫かと言われればそうなのかもしれないけれど……」

 

部屋の中に入って、中にあるものを一つずつ確認していく。

薄くなった大きめのクッション。ボロボロの毛布。小さめの机。折れた鉛筆と消しゴム。部屋の脇には指で数えられる程度の数の分厚い本。よれよれのカーテンを開けると、小さな吹き穴から陽射しが差し込む。

ほとんど何も無いけれど間違いなく、ここは僕の家だった。

うっすらと、物心つく前の頃に文字の読み方や包丁の使い方を誰かから教わった気がする。

もしかしたらあの人は――なんて、今更そう思ってしまう位には、今僕は感傷に浸っているらしい。

 

「何か気になるものとかある――って」

 

二人の感想でも聞こうかと思って振り返ると、ルチカが今にも泣きそうな顔で飛び付いてきた。

 

「こんなっ、こんなところで、ずっと一人で……! マスターさんは、寂しいって思わなかったんですか⁉ 私だったら、子供の頃からここでずっと一人でなんて、おかしくなっちゃいますっ‼」

 

いや、ルチカは泣いていた。流石にちょっと予想外だったのでどうしようかとカルミアにも視線を送ったが、カルミアは肩を竦めながら、それでも視線で訴えかけた。

 

「全く寂しくない訳じゃなかったけれど、一人ではなかったよ。町の方から、昔この教会にお祈りしていたお爺さんやお婆さんとお話したりしてたし。……まあ、それも数年前から来なくなっちゃったけれど」

「それは、どうして?」

「数年前から魔物の活発化が相次いで起きてオーフェリアの町の方にも被害が出たんだ。ここの一帯も魔物が徘徊しててしばらく僕も外に出られなかったし」

 

ただこれはほんの切欠に過ぎない。廃教会に人が住んでいると知った同年代の子供達は、魔物が彷徨いていたのに堂々とここにいるなんて不気味だ、お前も魔物の仲間なんだろう、という噂話を作ったのだ。町への被害も相まって、もうここには誰も寄り付かなくなってしまった。

 

「……酷いわね、本当に。どうして人間は、そう噂話が好きなのかしら」

「……カルミア?」

 

カルミアは僕と同じく、他者の心を見ることが出来る。もっとも僕のように生まれつきとは違い、カルミアのは魔法の産物なのだが。

僕の考えていたことを見たのか、そんな事を彼女は呟いた。ただそこにはいつもの彼女の明朗さは鳴りを潜め、どこか冷たく侮蔑を送るような、怒りに似たものを感じた。

声を掛けられたカルミアはハッとして、

 

「……えっ、今のって……? ――ってなあに、マスターくん?」

 

と遅れて反応を示す。

様子が変だったが、彼女もなにがなんだか理解できていないようなので、詮索は止めておくことにした。

 

「でも、でも……! そんなのあんまりです! マスターさんは、何にも悪いことしていないのに‼」

「そう、かもね……。でも、たとえ誰かに仕組まれたものだったとしても、僕は君達に出会えた。結果としてここにずっと一人でいたのは幸運の前触れだったんだよ」

「ふぇ?」

 

我ながら狙いすぎた発言だったかもしれない。でも、これで泣き止んでくれれば――

 

「ふ、ふえぇ……。えっと、私と出会えたこと、幸運だって、思ってくれるんですか……?」

「や~ん、マスターくんったら本当に上手よね~! もしかしたら、あたしより虜にするのが上手いんじゃないのぉ?」

 

何だか想像以上の反応が返ってきた。だが、機嫌が良くなったので一旦これで良しとしよう。何も嘘は言っていないんだし。

 

 

 

「ふふっ、本当に上手よね、マスター」

「非論理的ですが……、どうしてでしょう、顔が熱くなってしまいました」

「ま、まあ? マスターと出会ってから毎日楽しいし、マスターも、そう思ってくれてるなら……」

 

あらあら、この二人も分かりやすいわよね。

それにしても、仕組まれたものだったとしても、か。ロザリーから簡単に彼の生い立ちは聞いたけれど、

 

「私達にとっては運命的でも、誰かの仕組んだものだったなんて。それはそれで腹が立つわよね」

 

私にしては珍しく怒気の混じった声が出た気がした。

とはいえ、過去は過去。今は今。少なくとも、マスターは過去を引きずり続けるような人間じゃないわ。だからこそ前向きに生きられるのでしょうね――

 

 

――グオオォォォォォォオオオオッ‼

 

 

「…………不粋ね」

「今のは……!」

「でっかい魔物の声だ‼」

 

二階でも聞こえていたのか、マスター達が降りてくる。

 

「皆急ごう! 町の方からだ‼」

 

 

 

「浄化の力よ‼ 彼の者を鎮めよ‼」

 

ラナン達と出会ってから生まれた力。黒い魔力を浄化し、凶暴性を鎮める事ができる、おそらく僕にしか出来ない魔法。

その力は、使い魔である乙女達の力を借りることでより強くなる。だからこそ、凶暴化した守護神も鎮める事が出来たのだろう。

 

魔法を受けた魔物はみるみるうちに凶暴性を失い、踵を返して町から離れていった。

 

「ふう、被害が出る前で良かった……」

 

何とか町にやって来る前に撃退することが出来た。

 

《あらあら、これはまた一騒動ありそうね》

「え、どういうこと?」

 

後ろ見て、と言われて振り返ると、地上には沢山の人達が僕達を――僕を見上げていた。

 

「見ろ、あの子! 噂の救いの鍵の少年じゃないか⁉」

「確か、最近現れたエンジェルの⁉」

「あれ、あの子って確か郊外の使われてない教会で住んでいた子じゃない?」

「それって魔物の仲間ってやつのだろ? 魔物の仲間だったら魔物と戦ったりしないだろ」

 

と、思い思いに口にしていた。

 

《マスター、絡まれる前に退散した方が吉だと進言します》

「そ、そうかもしれない……」

 

ざわめく声を背にして僕はそのまま家路へと飛んで着くのだった。

 

 

 

それから数週間が経って、ジルバラード中はあれよあれよとマスターくんの噂で持ちきり!

いわく、暴走した守護神を鎮めた救世主。いわく、ディオール伯爵家に新たに招かれた新しいエンジェルだとか。

せっかくマスターくんや魔法学園の理事が協力してマスターくんの素性を頑張って隠してたのに。人間ってホント噂が好きなのね~。

 

おまけに、プルちゃん達もエンジェルとして認定されているから、普段から彼女達とよく一緒にいたマスターくんも拠点周辺の近隣の人達に沢山目撃されてるから、魔法乙女達との関係性まで邪推される始末だし。

はぁ~、もう少ししたら春になるっていうのに、世間は秋みたいに薄ら寒いわ~。

 

さてここで皆に質問よ! ある日マスターくんに、

 

「……ねえ、カルミア。折居って頼みがあるんだけれどさ、……僕に魔法を教えてくれないかな!」

 

って頼まれちゃいました! 皆ならどうする? あたしなら、どうすると思う?

 

答えは、次回へのお楽しみに‼




カルミアだからこそメタ発言が許されるという風潮。
一理ない。

という訳で、ちょこちょこ真少年篇も書いていきましょう。


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惑わされるカルミアちゃん日記

少し遅いですが、お気に入り登録ありがとうございます‼
これからの励みとして、エタらないように頑張っていきます!


前回のあらすじ!

マスターくんに魔法を教えて、って頼まれちゃった!

 

「ええっと、なんであたしなの、マスターくん?」

 

そもそもどうしてそんな事頼みにきたの?

頼むにしても、もっと適任とかいるんじゃないかしら? 例えば、ロザリーちゃんとか懇切丁寧に教えてくれそうよね、態度と裏腹に。

 

「実は、ついさっきウィンディアがやって来てさ」

「ウィンディアちゃんが?」

 

ディオール伯爵家三女のウィンディアちゃん。

知らない人なんていないレベルの有名人よね。

 

それはさておき、ウィンディアちゃんはただ遊びに来た訳じゃなくて、ディオール伯爵家は今ちょっとしたトラブルに見舞われているみたい。

なんでも、マスターくんが新たなエンジェルとして話題になって、ディオール家との関係性を聞きに新聞記者達が連日押し掛けて来たらしいわ。

ウィンディアちゃん達はノーコメントを続けていたけど、一向に退いてくれる気配がなくて、お爺さんがマスターくんとの関係をどうすべきか聞きに行ってほしい、って頼んだみたい。

でも、

 

「マスターくんは一切無関係である、って伝えてほしい、と。でも、どうして? ディオール伯爵家の後ろ楯があれば、これからはもっと動きやすいと思うんだけどなぁ?」

 

まあ、ウィンディアちゃん達の事だし、そんな打算的な考えは無かったとしても、これからまた異変が起きたときには確実に協力関係が出来るわ。お互いの負担だって軽減出来るのに。

 

「あんまりディオール家には迷惑は掛けられないよ。それを肯定しちゃったら、今度はウィンディア達が僕の噂話に巻き込まれそうだし」

「それは……そうよねえ~」

 

あそこの娘達は皆可愛いし、良い子だしねぇ。……一人ちょっと変わった事情の子がいるけど。

ただでさえプルちゃん達だって噂の的になるのは良い思いをしてないでしょうし。

 

「まあ、その件がどうしても、ね。有ること無いこと嘯かれてるし。特に誰が恋人関係か、だなんて、ラナン達に失礼だよ」

「う~ん、それはラナンちゃん達には望むところなんじゃないかしら?」

 

噂話にされるのはともかくとして。

 

「どういうこと?」

「ふふっ、どういうことかしらねー」

 

流石にこれをあたしの口からいうのはダメよね~。

あたしやダチュラだってそうなんだし。

 

「それで、結局どうしてあたしに魔法を教えてほしいのかしら?」

「ああ、それなんだけどさ」

 

 

「しばらく、ここを出ていこうかなって。……その、一人で」

 

 

数分がたったように錯覚した沈黙。

あたしの口から出たのは、

 

「~~~~~~~~~ッ⁉」

 

言葉になっていない絶叫だった。

 

 

 

「どうしてどうしてどうしてどうしてどうして、ねえどうしてマスターくんどうしてなの⁉」

「ちょっ、カルミア頭揺すらないで!」

 

だってそんなのおかしいわ‼

いくら噂のせいで下手に身動きが出来ないからってここからいなくなるだなんて!

 

「それに、いなくなっちゃったらラナンちゃん達はどうなるの⁉ あたし達はどうなるのよ⁉」

「違うよカルミア! そういう意味じゃない‼ ただ、ほとぼりが覚めるまで世間から行方不明として扱われたいだけなんだ‼」

「それなら尚更ここを出ていく理由なんて無いじゃない‼ あたし達がちゃんと守るわよ!」

「それじゃダメだよ! ディオール家に押し掛けられた以上、次に来るのはここだよ。目的が僕なら、僕はここにいない方が都合が良いはずだ」

「ぅ~~~っ。」

 

理屈としては解るわ。

噂の中心であるマスターくんがいなくなれば、今度はマスターくんの行方を捜索するように噂が展開していくはず。そうすれば噂に巻き込まれたプルちゃん達やディオール家への押し掛けも収まっていくでしょうね。

 

「でも、そんなのマスターくん一人を犠牲にするようなものだわ。それにここを出るっていっても、何処に行くの? その当てはあるの?」

「あるよ、一つだけ。でもそこに何事もなくたどり着くためにも、カルミアの魔法を身に付けたいんだ!」

「あたしの魔法?」

 

結局どうしてあたしの魔法なのかしら?

戦闘に特化した魔法を覚えたいのなら、それこそカトレアちゃんとか、リリーちゃんとか、ルチカちゃんも親身に教えてくれるわね。

 

「ダチュラから聴いたんだ。カルミアの、相手を魅了する魔法――言い換えれば、相手の心を惑わす魔法。惑わしの魔法は幾らでも応用が効くって」

「ダチュラったら……」

「僕の魔法はカルミアやプルメリアの光の魔力と相性がいい。だから光の魔力から惑わしの魔法が使えるカルミアから学んだ方がいいのかなって」

 

完全に退路を塞がれちゃったわね。後でダチュラに何して貰おうかしら?

 

「解ったわ、ならあたしも一生懸命に教えちゃう! ……でもでも、見返りを求めても罰は当たらないわよね?」

「ぅ、まあ、そうだね。それで、何が欲しいの?」

「その話は後で。それじゃ早速やっていくわよ‼」

 

それから数週間にかけてマスターくんの秘密の特訓が始まったわ。

何で秘密って?

すぐにわかるわ~!

 

 

 

「それじゃあマスターくん、そろそろ仕上げといくわよ~!」

「うん、やってみる!」

 

マスターくんは光の魔力を展開し、自分を包み込むようにコントロールする。そうして、あたしの視覚を"惑わす"ように、どんどんマスターくんの姿が変わっていくわ。

外見はカトレアちゃんのようにスタイルがよくて、プルちゃんみたいに柔和な表情で。長く延びた毛先はスーちゃんみたいにふわふわと揺れて、服装だってロザリーちゃんに負けないくらいのセンスで。

 

「どう、カルミア。ちゃんと見た目が変わってる?」

 

そして、ラナンちゃんみたいに元気そうな声音を発するマスターくんは、誰がどう見ても女の子にしか見えなかった。

 

「やーん、マスターくんスッゴく可愛い~~~‼」

「うわっ、ちょっとカルミア!」

 

あー、ヤバイわ。抱き締めたらスッゴく柔らかいわ! 体のつくりも完全に女の子になってるみたい。

それともあたしが魅了されちゃったのかしら?

でもこれくらい可愛くて柔らかい女の子なら惑わされちゃっても悪くないわよね?

 

「おっと、危ない危ない。……さて、それじゃここからが本番ね‼」

 

魔力の奔流を形にして、魔杖を作り出す。

次にすることは、その状態で悪魔であるあたしにどこまで対抗できるか実力を測ること。

マスターくんの魔法――浄化の力だって、弾幕として形を変えることだって出来るはず。元は同じ、光の力なんだから。

 

「いっくわよー、そーれッ‼」

 

魔杖を振って、前方に複数のレーザー弾幕を放つ。マスターくんはそれを飛んで回避する。

 

「逃がさないわよ!」

 

今度は龍のような波形の弾幕を放ち、マスターくんの行動制限を図る。

マスターくんは一旦止まり、急降下する。

 

「そこだっ!」

 

あたしの正面に向けて大型の球状の弾幕を幾つか放ってくる。弾速が速いから、流石に悪魔化して空を飛び、反撃する。

 

「じゃあ、こんなのはどうかしら!」

 

あたしは魔杖を構えて、弧を描きながら飛ぶ。描いた軌跡から、レーザー弾幕が発射する。

 

「これくらいならっ」

 

マスターくんは今度は急上昇して、魔力を貯めて太いレーザーを放つ。

 

「ちょっそれってプルちゃんやリリーちゃんの……っ」

 

完全に予想外だわ。

まさかプルちゃんやリリーちゃんの弾幕を再現するなんて。

でも、ただ再現しただけなら!

 

「撃ち貫け!」

 

レーザーに向けて貫通弾幕を少し強めに放つ。するとレーザーは弾き返され貫通弾幕がマスターくんに向かっていく。

 

「っ……」

 

回避行動にとったマスターくん。その隙は逃さない。

 

「捕まえた!」

 

鞭状のレーザーでマスターくんの足を捉える。ふふっ、こうすればもう身動きが取れないわね。

 

「まだまだ!」

 

マスターくんはニードル状の弾幕を飛ばし、レーザー鞭を切り落とす。そのまま弾幕はマスターくんに戻っていって、あたしに突進してくる。

 

「それロザリーちゃんのぉ‼」

 

回避するしかないあたしは地上に逃げる。当然マスターくんは追ってきて、弾幕を飛ばしてくる。回避に専念するあたしはそのまま近づいてきたマスターくんに魔杖を構える事しか出来なくて、

 

「これで!」

 

球状の大型弾幕を叩き込まれ、地面に不時着する。

 

「いったぁーい! ひ~ん……っ」

「えっと、大丈夫カルミア? 結構本気で撃ち込んだけど」

「わかっててやったの⁉」

 

むむむぅ、これならあたしも手加減なんてするんじゃなかったわ。でも全力でやったらそれこそ周りに目立つだろうし。

 

「何から何までありがとう、カルミア。でも、これで――」

「そうね、ここまで出来るならあんまり心配は要らないかも」

 

でもそれはそれ、これはこれ。

あたし達にマスターくんを心配しない娘なんていないわ。

本当ならこのままマスターくんを一人で行かせるなんて絶対に認められないけれど……。

 

「ねえ、マスターくん。せめて何処に行くのかくらいは教えてくれない?」

「え⁉ 出来ればそれも秘密にしたいんだけど……」

「むぅ……」

 

だったら、ここら辺で見返りを履行させて貰おうかしら?

 

「え⁉」

「マスターくん、今からデートしましょ! もちろん、マスターくんはその格好でね?」

「嘘でしょ⁉」

「大丈夫よ。面影はあるけど、誰もマスターくんだなんて気づかないわ!」

 

さぁ、早速行くわよ! そして今日を今まで以上に楽しむわ‼

 

もしかしたら、本当にしばらく会えなくなるかもしれないんだから。

 

 

 

「ま、待って! 本当に行っちゃうの?」

「そうです、マスター! 幾らなんでも性急すぎます!」

 

マスターくんがここを旅立つ日、案の定ラナンちゃん達は引き留めようとしている。無理もないわ。本当ならあたしもその一人だもの。

 

「だったら、おにいちゃんはいつ帰ってくるの?」

「……ごめん、いつになるかは全然目処が立ってないんだ」

「はぁ⁉ 何よそれ! なのに誰も連れていかないわけ? 何考えてるのよアンタ!」

 

そうよねえ、でも……。

 

「ラナン達はもう少ししたら魔法学園の新学期の準備をしなきゃいけないでしょ? それに、メルセデス先生から特別講師を頼まれたんじゃなかったっけ?」

「それは……でも、マスターの方が優先順位は先ですわ!」

「ダメだよプルメリア。それに、皆にはもう一つ頼みたいことがあるんだ」

「頼みたいこと?」

「学園の皆には、僕は行方が分からないって適当に理由を付けておいて欲しいんだ。そうすれば僕も動きやすいし、これから会いに行く人にも迷惑が掛からないし」

 

あら、それは初耳。

 

「なるほど、やはりマスターは噂を気にしていたのですね」

「でも、誰に会いに行くんですか?」

「貴女なら何か知ってるんじゃないの? 最近の二人っきりで何かしてたみたいだし、ねえカルミア?」

 

あっちゃ~、これはダチュラもちょっと怒ってるかも。

 

「ダチュラ、カルミアを責めないであげて。僕が頼んだことだから」

「…………」

「で、結局マスターは何処行くんだ?」

「悪いけど、それも秘密。何から何まで秘密ばかりだけど、これだけは約束する」

 

「必ず皆のところに戻ってくるから‼」

 

 

「さてと……」

「あの、皆? 顔がスッゴく怖いわー。可愛い顔が台無しよ?」

「あら、そういうカルミアは随分ひきつった顔をしてるわね」

 

ひ~、こんなに怖いって思ったの初めてかも~!

あたしはその日、丸一日かけて皆を説得するのに費やした。

 

これはまた見返りを求めても問題ないわよね?

 

 

 

「ふぅ……」

 

晩御飯の準備が終わり、お母さんを呼びにいく。

 

「お母さん、もう少しで晩御飯よ」

「あら、いつもありがとうね、サクラ」

 

お母さんの体調はウィンディア達やディオール伯爵閣下のお陰でみるみるうちに良くなっている。もう少しすれば外を出歩けるくらいには快復するかもしれない。

とはいえ、この沼地は魔物が沢山いるから、一人では絶対に出歩かせないけれど。

 

――チリンチリン、チリンチリン……。

 

「……え?」

「あら……、誰か来たのかしら?」

 

少なくともこんな時間にやってくる奴を客人としては迎え入れたくはないけれど……。使い魔達が反応しなかったということは、私の知っている相手なのかしら?

 

「ごめんお母さん、ちょっと見てくるわ」

 

お母さんに断りを入れて、念のため箒を構えてドアの前に立つ。

 

「…………誰?」

『えっと、僕です。ここ、サキュラの家だよね? ウィンディアから聴いたんだけど』

「貴方は……!」

 

この声は、救いの鍵の少年と呼ばれた、あの子の声。

思わずドアを開けて、その顔を確認する。

 

「や、やあ半年ぶり位かな? いきなりやって来てごめんね」

「…………いえ、良いわ。入って。良い機会だし、貴方ともしっかりと話し合いたかったから」

 

守護神暴走の異変。

その中心にいた彼と、私には共通の要素が一つだけある。

 

語り合うには、よい夜になりそうね。




まさかのデススマイルズからサキュラ登場!

この二人の関係性を知ったとき、変な声が思わず出ましたよ。

真少年編の次のお話はネタバレだらけなので、注意してくださいね。


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奮い立つサキュラちゃん日記

真少年編(デススマイルズのキャラがメイン)

まあサキュラもゴ魔乙に出てきますが、ウィンディアやキャスパー並に推しているときもあるので、やっぱりゴ魔乙としても重要キャラなんでしょうかねぇ。

真少年との関係性をもっと紐解いてくれると良いんですけれどねぇ……。


中に引き入れたのは私だけれど、何かしらこの雰囲気は。

彼は確認するまでもなく、申し訳なさそうに椅子に座っている。対して私はこれから夕食をとるつもりだったので、お母さんのところに食膳を渡しに行くと、当然お母さんに彼の姿が写るわけで。

 

「あら? サクラ、あの子はどうしたの?」

「えっと、彼がお客さんよ」

「あら、そうなの? ……へえ、サクラも男の子を家に上げる年になったのね」

「違うわよ。彼は……、ウィンディアのお友だちよ。私に用があったみたいで、こうしてここまで訪ねに来てくれたの」

 

嘘は言っていない筈だ。実際、ジルバラードの辺境に一人でやって来るのだ。他の誰にも聞かれたくないような内容を私と話し合いたいのだろう。

私としても、これから話す内容であろう事は、出来ればお母さんには聴かれたくない。

 

「……ふふ、まあゆっくり寛いでいってと伝えておいてね」

「ええ、わかってるわ」

 

お母さんの部屋から出て、未だ台所の椅子に粛々と座っている彼に話しかける。

 

「……ある程度の予測はつくけれど、こんな時間にどんな用事かしら?」

「それについては本当にごめん。……まあ、その、……僕の身の上話について、君が共通しているという可能性が――」

「――ジルバ、でしょ? 聴きたいことって」

「……‼」

 

彼は目を見開いて、顔を上げる。表情には、困惑、驚愕、そして確信。

 

「ウィンディアのツテでここに来た、っていうので大体は察せられるわ。あの異変は伯爵家からおおよそを聞いたし。……その裏でジルバという男が関わっていた。その男の関係者が私だ、……ということよ」

「…………デリケートな話みたいだったから、ウィンディアから聴くのは憚れたんだ。だから……」

「ジルバは私の実の父親よ。そして一人で現世界へ帰っていったわ。……お母さんを残して、ね」

「ちょ……⁉」

 

目に見えて彼は動揺している。私の口から語られた真実に対してか、予想と反してか、あるいは……

 

「そんな急に話をされても……」

「話は早い方が良いわ。まどろっこしいのは止めにしましょう」

「………………………」

 

彼は暫く黙ったあと、重たい口を開く。

 

「サキュラは、アンっていう人は……?」

「知らないわ、どこまでも自分勝手だったお父さんに執着する女の事なんて」

 

魔女アン。

何らかの方法で黒い魔力を守護神に注ぎ、ジルバラード中を混沌に陥れ、挙げ句自分の息子を魔界の境界を開くための"鍵"として利用したどこまでも利己的で魔女らしい女。

 

何よりも……

 

「え、えっと……?」

 

聞けば彼は私と同い年らしい。

言われてみれば、目付きとかどこか私に似ていそうな気が……

 

「…………っ‼」

「ちょ、サキュラ⁉」

 

思わず腹が立って机を叩いてしまった。

 

「ごめんなさい。……話を戻すわ。そもそも私がジルバラードに来た、というよりはジルバラードで生まれて育ったようなものよ。その証拠に、私にはウィンディア達みたいにロストチルドレンの証である翼がないでしょう?」

「確かに……。でも、それが何か?」

「私が生まれて間もなくして、お父さんはいなくなってしまったの。それ以前から、度々家を出ていく事はあったみたいだけれど」

「え……」

 

理由は解っている。

お母さんは私を産んでからどんどん身体を悪くしていった。お父さんだってそれを知っている筈。だから、治す方法を――魔法を探していたのだろう。

 

数回ほど、帰って来た事があった。ずっと昔にみた、あの優しそうな面影。お母さんが持っていたお父さんの写真。その表情は、もう無くなっていた。

どこか諦めを感じて、まるで何かに逃げるように焦りが浮き出ていて。思えば、その頃から現世界に帰る術を探していたのだろう。

 

「きっと、その過程で貴方のお母さんに出会ったのね。……貴方が産まれるくらいに親密な関係になったというのが心底納得いかないけれど」

「それを僕に言われても……」

「まあそれはともかく、私としても聞きたいことはあるわ」

 

彼の生い立ちは、そしてその運命は過酷なもの、という言葉さえ温く聴こえる。思うところは沢山ある筈だ。

 

「実の母親をその手で終わらせ、我関せずといった自分の父親。……貴方としてはここまで聞いてどうしたいの?」

「どうもしないよ」

「え?」

 

「僕はただ、自分を知りたかっただけなんだ。自分はどうして産まれたのか。浄化の力はどこから生まれたのか。……ただそれだけが知りたかった。……まあ、現時点では、生い立ちがある程度解ったくらいかな?」

「お気楽な考えね。私だったら、今そこにお父さんがいたらワームに変える魔法を放つ自信があるわよ」

「わ、ワームって……」

 

流石に言い過ぎだとして、文句の一つや二つ、いいやそれだけじゃ足りない。

お母さんを捨てて、どこの誰とも知らない女と子供を産んで、碌に認知もしないで一人で帰っていったどうしようもない男。

それなのに、どうして恨みの一つや二つ、貴方は浮かばないのか。

 

「そこに意味があったからかな?」

「意味?」

「ラナン達に出会えたことだよ」

 

魔法乙女――本来、守護神暴走の異変の被害者達らしい。

その身に守護神の力を宿し、新しく生を受けて一人の少女として再び歩んでいる少女たち。

彼女達は、彼の使い魔という立ち位置だそうだが……。

 

「あの日、あの瞬間、僕はラナン達に出会えたことで全てが変わった。僕一人しかいなかった僕の世界が、カラフルになった。……それが全てお母さんの予定調和だったとしても、僕は皆に出会えたことが、何よりの幸せなんだよ」

「……認知されなかったとしても?」

「もう、それは問題じゃない。僕はもう独りじゃないから」

 

…………救いの鍵の少年、か。

確かに、彼女達は救われるべくして、そして彼は彼女達を救うべくして出会ったのかしらね。

 

どこまでも優しすぎる。

己の精神を麻痺させる程の、甘美な毒の様に。

さぞ彼女達もヤキモキしているのでしょうね。

 

「でも、その割りには自分の身の上が気になるのね?」

「……まあ、さっきはあんなこと言ったけど。気になるのは気になるし。……教えてくれる人はもういないし」

「それは……」

 

結局はそこに帰結する。

彼が産まれるおおよその過程は想定できても、浄化の力が一体どこから生まれたのかの説明がつかない。

彼は私とは違い、半分ジルバラードの住民の血が混じっている。関係があるとすればやはり……。

 

「魔女アン、か……」

 

ならばやることはただひとつ。

 

「探すわよ」

「ええ?」

「あの女の手がかりを、ジルバラード中を飛び回って、貴方やアンに関わる全てを洗い出すの。それでようやく、貴方の生まれた意味を見つけられる筈よ」

「サキュラ……。でも、どうしてそこまで?」

「私だって他人事じゃないからよ。……一応、私がお姉さんみたいだし?」

「ぁ…………!」

 

一人っ子だったから弟か妹がいれば、と思ったことは何度かあった。……まあウィンディアが妹みたいに見えることは何度かあったが。

しかし、こんな形で弟が出来るのはかなり複雑だ。お母さんに何て言えばいいのやら……。

 

「そうだわ、そういえば貴方の名前を聞いてなかったと思うのだけれど」

「………………………」

「魔法乙女や、ウィンディア達はマスター、って呼んでいたみたいだけれど、それはあくまでも使い魔としての呼び名よね? ウィンディア達の使い魔はちゃんと名前を呼んでたし…………?」

 

何だか彼の表情が暗い。痛いところを突かれた様に、私から目を逸らす。

 

「ちょっと……?」

「……多分、ないと思う」

「……は?」

「思えば、ああして出会ったときも、お母さんは名前を呼んでくれなかったし、お母さんの使い魔だったロロイも、"少年"って呼んでたり、"マスター"って呼んでるときもあったから、多分……」

「呆れたわ……!」

 

そこまで徹底していたとは。これが本来の魔女だというのであれば、私は一生未熟なままだろう。

 

であれば、

 

「………………カエデ」

「へ?」

「カエデ、って。とりあえず名乗っておきなさい。呼び名が無ければこの先不便でしょう」

「…………いいの?」

「良いも悪いも、即席で付けた名前よ。嫌なら自分で考えて」

 

 

「そんな事ない。ありがとう、サキュラ!」

 

 

「……サクラ、よ。正しい発音は」

「サクラ?」

「そう、(サクラ)(カエデ)。姉弟らしい名前の繋がりだと思わない?」

 

 

 

 

こうして、私に弟が出来た。

お母さんには内緒の。

 

とはいえ、これっぽっちも事情を説明しないのは怪しまれるので、私の弟子として通しておくことにした。

 

もちろん、名ばかりの師弟関係ではなく、魔法の指南も簡単にすることにした。

しかし彼は――カエデは魔法の見所はあり、聞けばこちらに来る前に、研鑽を積んだらしい。浄化の力を形に変えることで、実戦でも汎用性の高い戦闘スキルを持っていた。

持っていた、のだが――

 

「……ねえ、カエデ?」

「なに、サクラ?」

「貴方、一々魔法を使用するのにその姿にならないといけないのかしら?」

 

私の目の前にいるこいつは、一転して美少女になった。弟だと思ったら妹だった。

……冗談はさておき。

どうも仲間の悪魔から自分の姿を惑わす魔法を教わったらしく、ここまで来るのにそれを利用して来たらしい。

 

「今では貴方も有名人だし、変装等の心得はあるとは思っていたけれど……」

 

流石に予想の斜め上が過ぎるのだけれど。

しかし、改めて今のカエデの姿を見ていると、こう、何というか。

 

「貴方属性盛りすぎでしょ‼」

「急に何⁉ 僕はラナン達の印象を真似てみれば、魔法が使いこなしやすくなった気がして……」

「ああ、そういう…………?」

 

いや、全然納得いかない。

というか目茶苦茶悔しいんだけれど。変装だからって、弟にプロポーションが負けているとか。

 

女として色々と複雑になってしまった。

 

私の気が治まらないので、腹いせに他所に行くときや、人に会う以外はその変身を禁止することにした。

 

 

 

「微弱な黒い魔力の発生?」

「ええ、イシュタリアの方から確認されたわ」

 

黒い魔力による異変以降、私は魔法道具に様々な改造を施した。例えば、今私が持っている羅針盤は強い魔力を感知して方角を指し示す機能となっているのだが、黒い魔力を感知すると針が黒く変色するようにした。その黒の濃淡によって、黒い魔力の濃度を判断することが出来るのだ。

 

「……前々から疑問だったのよ。どうしてあの異変が収まってもなお、黒い魔力が発生するのか」

「黒い魔力は感情と密接して増幅したり拡大もするんだ。それでも、魔法の才能のない人達から、もっと言えば何もないところから時折黒い魔力が発生する理由まではわからないけれど」

「そう、それよ! まさしくそこにアンの謎があると私は目を着けたわ」

 

何もないところから黒い魔力が発生する。それは最早人災である。

魔女アンの仕業であろうと、全く別の何かであろうと、そこに誰かの思惑が絡んでいることは間違いない。

 

「善は急げよ! 早速イシュタリアに向かうわよ!」

「それは良いけど、何で部屋に部屋に行くの?」

「バカね、私は魔女として恐れられているのよ。こんな格好で行けるわけないでしょう?」

 

私は貴方みたいに魔法で外見の性別を逆転させるほど器用なことは出来ないんだからね?

 

 

 

 

イシュタリアへと向かう最中、微量ながらも少しずつ気配が濃くなっていくのに対し、後ろのルチカさんが声音を強くして呟きました。

 

「ふえぇ、何だかピリピリしてきました。やっぱり最近の黒い魔力は魔界と関係あるんでしょうか?」

「それは……どうなんでしょうか? 私には断定は出来ませんが……」

 

魔力の研究をやっている、リリーさんに目を向けると眼鏡を整えながら私の疑問に答えてくれます。

 

「黒い魔力が魔界の魔力と親和性が高いのは確かですが、魔界の存在は黒い魔力を増幅させる能力はあっても、種を蒔くかのごとく植え付けるのは容易ではありません」

 

つまり、発生の直接的原因は魔界ではない、と言うことでしょうね。

 

しかし、どのようなことがあるにせよ、今の私達にはマスターのサポートがありません。

近々宿泊学習なるものを学園が行うことにあたり、ラナンさん達が計画を話し合いにいく事になり、こちらに捌く人数は私とリリーさん、ルチカさんの三人となりました。

 

イシュタリア出身の私は勿論として、未だ守護神暴走の弊害が解消しきれていない事の措置としてカトレアさんかリリーさんのどちらかを避暑役として畏れながら決めていただき、ルチカさんは同行しても話すことは無いとの事で立候補してくれました。

 

 

……マスター、私のこの願いが叶うのであれば。

 

 

 

――どうか私達に祝福を。




アズールレーンコラボイベント開始しましたね。

まあいつも通りぼちぼちとやっていきましょう。
次回も真少年編を予定しております。

というか、勝手に真少年の名前をつけちゃいましたが、まあ二次創作という事でご容赦を。


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影を差すプルメリアちゃん日記

間が空きすぎましたが、何とか年末までに間に合いました。

今月はかなり修羅場でしたので(コミケとは無関係)。
明日は番外編でも投稿しようかね?


マスターがいなくなり、はや数週間。庭の掃除をしながら物思いに耽っておりました。

マスターが行方を眩ませる切欠となったあの出来事が、嘘のように成りを潜め始め、カルミアさんがお話していたように、マスターの捜索へと噂が切り替わっていきました。

 

ですが……、

 

「マスター、一体どちらへ……」

 

マスターを引き留められなかった。マスターの行方を聞き出せなかった。

それだけの事が、私の心に影を差す。

そんな事ばかりを考えて、頭を振って気持ちを切り替える。

 

「何時でも戻られるように、庭を綺麗にしておかなければ……」

 

マスターは拠点や庭の掃除を率先してしていました。であれば、何時でも羽を休められるように、マスターがしていたことは全て終わらせておきましょう。

 

そんな日が続いてさらに一ヶ月が経とうとしていたある日。

 

「こんにちは、魔法乙女の皆さん。少々お時間を頂けますか?」

 

ディオール魔法学園からアリア先生がいらっしゃいました。彼女は学園で魔法学を教えていらっしゃる方です。

こうしてしばしば私達を特別講師として訪ねて来るのですが、今回はどうやら別の事情でいらっしゃった様で。

 

「宿泊学習?」

「実はセイレニウムで少々問題が発生していまして学園の本分を成すために、皆さんにも協力していただきたいのです」

 

カトレアさんの表情が少し強張り、もう少し詳細を聞こうとしたところ、ここで新たな事態が発生しました。

 

「この気配……!」

「イシュタリアの方角ね。かなり微量だけど……」

 

黒い魔力の察知に鋭い悪魔の皆さんが一斉に視線を変えます。確かに微量ですが、この距離からでもはっきりと感じ取れるので、僅かに違和感を覚えますが。

 

「どうしましょう、完全に間が悪くなってしまいました」

「…………」

 

申し訳なさそうにアリア先生が頭を下げる。

アリア先生が悪いわけではないのですが、今すぐイシュタリアに向かうべきだというのも事実。

どうしましょう……。

 

「プルメリアさん、向かってください。こちらは私達が対応します」

「カトレアさん……!」

「リリーさん、同行してくれますか? イシュタリアはいまだ守護神暴走の影響で気温が高いのです」

「了解しました。お任せください、お姉様!」

 

こうして、イシュタリアに向かう面々は私とリリーさん、ルチカさんの三人となりました。

ちなみにルチカさんは、「私一人いなくても、問題無さそうですし……」とのこと。

ジギタリスさんも一緒に行く予定でしたが、「お腹空いた~」と力が出ず、しばらく待機となりました。

 

 

 

イシュタリアに到着すると、見知ったお二人を見つけました。

 

「ピオニーさん、鈴蘭さん!」

「……プルメリア!」

「貴女がたはスフレの……! ご無沙汰しております」

 

ピオニーさんと鈴蘭さん。

ピオニーさんはイシュタリア出身の貴族で、鈴蘭さんはスフレさんの家庭の家政婦をされていた方です。

まさかお二人と再びお会いできるとは……。

 

早速二人に詳しいお話を聴いてみたのですが、どうやら心当たりがないようで。

 

「……まさか。微量ではありますが、確かに感じます」

「ふええ、スッゴくピリピリします……」

 

「そうは言われましても、特にこれといった異変は起きませんでしたが……」

 

リリーさんとルチカさんは改めて周囲を見渡して、黒い魔力の気配を探ります。

お二人はこちらに来る前に、黒い魔力の出所を探るべきだと言いましたが、その出所が分からないそうなのです。

 

まるで、イシュタリア全体から黒い魔力を感じるみたいな――

 

そんな時、突如としてイシュタリア全体を大きな地響きが襲いました。大地がガタガタと音を立て、それと同時に黒い魔力の気配が町の外れに収束していく気配を感じます。

 

「これは……‼」

「な、何ですか、この大きな気配! こんなの、さっきまで感じませんでした‼」

 

お二人が声を荒げて表情を険しくする程に、微量だった黒い魔力は肥大化し町の中心からでもはっきりと目視できるくらい、それこそ魔怪獣を彷彿とさせる何かへと実体化したのです。

 

「こ、これは……⁉」

「こんなものが、イシュタリアに潜んでいたのですか⁉ なぜ気付けなかったのでしょう……!」

 

鈴蘭さん、ピオニーさんが思わず後ずさる。無理もありません。ですが、このまま立ち止まってもいられない。

 

「ッ!」

「プルメリア、先行するのは危険です‼」

「待ってくださぁい‼」

「……っ、鈴蘭!」

「はい! 作業は一旦中止です‼」

 

私は長弓を展開し、光の魔力を強く込めてそれの脳天目掛けて放つ。

ダメージを受けたかのように見えましたが……。

 

「効いていない……⁉」

 

致命傷どころか、大した決定打にもなっていないようです。

 

「プルメリア、あれは魔物ではありません!」

「どういうことですか?」

「あ、あれからは、黒い魔力の気配しかしないです! 黒い魔力そのものなんです!」

 

黒い魔力そのもの。

魔物や人間に黒い魔力が巣食ったとき、私達の魔力を用いることで浄化が可能ではありました。しかしそれはあくまでマスターの恩恵があっての事。

真の意味で黒い魔力を浄化するには、マスターの力において他はありません。

 

つまり、黒い魔力そのものであるあれは、私達の力だけではどうしようもないということ。

 

「そ、それではどうすれば……」

 

こんなの、マスターがいなければどうしようも……!

 

 

 

――バンッ!

 

 

 

何かが弾けたような音が周囲に響く。同時に黒い魔力は少しずつ縮小しながら、自身を守るように凝固していきます。

 

「これは、どういう……」

「よくわかりませんが、固形化したなら何とかなるのではないですの?」

「……確かに」

 

疑問はもっともですが、今は異変の沈静化を優先するため、念入りに固形化した黒い魔力を破壊していきます。

そうして、黒い魔力の気配が完全に無くなったのですが、

 

「黒い魔力が弱まった……?」

「どうやら、あの瞬間に黒い魔力の影響力が弱まったようなのです。実体化した黒い魔力についても疑問が尽きませんが、おそらく固形化したのは魔力の拒絶反応かと」

 

黒い魔力を拒絶させる程の力。何故か、その力に心当たりがありますが……。

 

「で、でもどうして黒い魔力は実体化したんでしょう? こんなこと、今まで無かったですよね?」

「そうですね……。早く戻ってカトレアお姉様達に報告しましょう」

 

ルチカさんとリリーさんの会話を聞いて、思考が切り替わる。

一番の問題はやはり、今回の黒い魔力について。

アリア先生とはもうお話も終わった頃でしょうし、しっかりと話し合わなければ。

 

 

 

 

「ふぅ……」

 

異変が終わり、当初の作業に戻る。

しかし私は、鈴蘭に軽食の用意をすると一旦席を外し、町角の死角に顔を覗き混ませた。

 

「やっぱり……」

「あ、アハハ……」

「だから言ったじゃない。さっさと帰りましょうって」

 

影に隠れるように、二人の少女(・・)が佇んでいた。

栗毛の少女と金髪の少女。

まあ、片方の少女については検討がついているのだが。

 

「少し見ぬ間に随分可愛らしくなりましたわね、マスター?」

「ええ⁉ 何で気づくの! ……って、あ!」

「鎌をかけられたわね」

 

マスターと金髪の少女は諦めたように肩を竦める。

 

本人は隠しているつもりみたいだが、顔つきからして分かる人は分かる。だからこそプルメリアに顔を見せなかったのだと思っていたが。

 

「鎌をかけずとも、雰囲気からして分かりますわ」

「そ、そんなに分かりやすい? カルミアと町を歩いたときは全然気づかれなかったのに……」

「そういう意味じゃないと思うわよ」

 

「それはともかく――手助けをするくらいなら、プルメリアに顔を見せればよかったでしょう?」

「………………………」

 

黒い魔力の突然変異。

リリーは魔力の拒絶反応だと言っていたが、そんな芸当が出来るのはマスターだけだ。

 

マスターは苦笑を浮かべたあと、

 

「……ちょっとだけ、やらなきゃならないことがあるから」

 

と呟いた。

 

「それはプルメリアよりも優先するべき事なのですの?」

「それを言われたら痛いけど……」

「しかもまた女性をたぶらかして……」

「私の事を言ってるのかしら?」

「またって何⁉」

 

詳しく聞くと、現在は身の上をもう少し紐解く為に彼女――サキュラと同行をしているようだ。

 

「それはいつ終わるんですの?」

「えっと、ちょっと分からないかな。今回の件も想定外だったし」

「ならば私と約束しなさい」

 

 

 

――全て片付いたなら、必ずプルメリア達に会いに行くと。

 

 

 

 

イシュタリアの一件が片付いて二ヶ月近くが経ち、学園は予定通り宿泊学習を行うこととなった。

内容はセイレニウムの宿泊施設で手伝いをしつつ、周囲のパトロールを行うこと。並びに、発生している黒い魔力の原因については私達魔法乙女が調査をすること。

 

イシュタリアの黒い魔力についてはプルメリアさん達からある程度の事は把握している。今回のセイレニウムも同じケースが起こり得るかもしれない。

 

マスターがいない今、同じ事態が発生したときは私達だけで何とかしなければならない。

負担は大きいが、やらなければ……。

 

 

くれぐれも、同じ過ちだけは起こさないようにしなければ。




それでは皆様、良いお年を‼


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~Side apocrypha~ 夜明けを拝むエンジェルの卵日記

新年明けましておめでとうございます‼

一応まだ平成なので、平成最後の元旦となりましたね。
今年の抱負は、とにかく小説家としてのレベルを上げたいですね。

達成できるか怪しいですが。


「よいっしょ!」

「そーれ!」

「よいっしょ!」

「そーれ!」

 

エリちゃんとアンちゃんがほぼ同じテンポで掛け声を出しながら作業をしている風景を、わたしは遠目から見ている。

あれは餅つきという作業で、臼と杵を用いてお餅を作る。エリちゃんが杵を降り下ろし、アンちゃんが臼の中のお餅をこねる。

東の方の国では有名な行事らしいけど……。

 

「アンちゃーん、ちょっと交代しよ? 私疲れちゃった……」

「おいおい、もう音を上げるのか? 餅つきを始めてまだ五分しか経ってないぞ」

「同じ動きを続けてると体が凝っちゃうよぉ。それにこの杵っていうの、結構重いし……」

「仕方ないなぁ。くれぐれも振り下ろしたときに手を出すなよ?」

 

そもそも、どうしてこんなことをやっているのか。

別に学校行事というわけではない。そもそも学校の校庭を借りているけれど、わたしたち以外の生徒は誰も来ていない。

そのきっかけは――

 

「――チコちゃん、おせちの準備は整ってますか?」

「カモミールちゃん! 戻ってきたんだ」

 

カモミールちゃん達が、沢山の着物を抱えて校庭に戻ってきた。

そして、さらにその後ろには――

 

「うわぁ~‼ すごーい、このお刺身って全部チコちゃんが下ろしたの?」

「へぇ、なかなかやるじゃん!」

 

ディオール伯爵家の、ウィンディアさんとキャスパーさんが、並べられたおせちの具を見て私を誉めてくれた。

 

 

 

一時間くらい前に遡る。

今日から新年に入り、エリちゃん達と集まって寮の屋上にやって来た。

 

「おっ、日の出が見えてきたぞ!」

「綺麗ですね……」

「そうね、これを見てやっと新年を迎えた気になるわ」

「うっ……まぶし……っ」

「ルべちゃん我慢我慢。初日の出は今日しか見られないよ?」

「えへへ、皆、明けましておめでとうございます!」

 

前日――去年に皆一緒に初日の出を見ようとエリちゃんが約束して、こうして集まることになった。

その直後の事だ。

 

「わあ、ここからでも日の出が綺麗に見えるね!」

「ふあぁ~。なあ、何もこんな朝早くじゃなくてもいいだろ?」

「ダメよ! 学園は家が理事なんだから、早めにご挨拶した方がいいってお爺ちゃんが言ってたでしょ! 大体キャスパーはローザ姉さまに叩き起こされてたじゃない! 今更一人で戻るつもり?」

「そんな事一言も言ってないわよ! そのメルセデスってやつが来てなかったらどうすんのって言ってんだよ‼」

 

後ろからガヤガヤと喧騒が屋上に響き渡った。振り替えると、わたしたちと同じくらいの年の女の子と、スフレ先輩くらいの年の女の子が、宙に浮いて向き合っていた。

 

「ピコーン! あそこ誰かいるよ! 誰だろう?」

「学園の生徒、ではなさそうですわ」

 

わたしとカモミールちゃんは首を傾げてあの二人に声をかけようと近づくと、

 

「…………~~~~~~~~~ッ⁉」

 

そんな、言葉にならない絶叫がエリちゃんの口から放たれた。

 

「エリちゃん⁉」

「嘘……、あのお二方まさか……‼」

 

エリちゃんみたいに絶叫はせずとも、カレンちゃん達も驚きを露にした表情であの二人を見る。

もう一度誰なのか確認しようと視線を傾けると、既に二人は屋上に降り立っていた。

 

「ちょっと、今の声って誰だよ? こっから聞こえた気がするけど?」

「お忍びで来たつもりだけど、もしかしたら目立ってた?」

 

「ディオール家の、エンジェル‼」

 

 

 

まさか、この学園にいる間に正真正銘のエンジェルに会えるとは思わなかった。

赤髪のエンジェル――ウィンディアさん。黒い服が特徴的なエンジェル――キャスパーさん。

どちらも魔物討伐を専門としたエンジェルだ。エリちゃんがその場でトリップするほど、ジルバラードで一番有名な二人だろう。

そのため、ディオール家から持ってきてくれた着物を傍らに置いた二人を確認したエリちゃんはすごいスピードでこっちに目線を向けるけど、アンちゃんに無理やり視線を戻された。

 

「あのエリオってやつ、元気だよなぁ。この寒空の下で餅つき率先してやろうとしてたし」

「そうね。…………?」

「どした、ウィンディア?」

「う~ん、あの娘と初めて会った気がしないんだ」

「は? どういう意味?」

「何処かで会った気がして……」

 

気になる発言を聞いたけれど、カモミールちゃんが早く着物に着替えましょう、と言い出したため、一旦作業を中断し更衣室で着替えることにした。

着物の着方の心得はカモミールちゃんが全部知っていたので任せることにした。流石はモデルさん!

それぞれ自分の好きな色の着物を着ることにした。

エリちゃんがピンク、アンちゃんが黄色、カモミールちゃんが萌木色、カレンちゃんが紅色、ルべちゃんがブルーグレー、そしてわたしが青色。

出来る限り被らないように、と皆で決めてたけど、皆それぞれ好きな色が被ったりしていないので、着物選びには困らなかった。

 

着替えが終わり、作業を再開しようと校庭に戻ったとき、見知らぬ二人組が作業跡の傍らに立っていた。

 

「あれ、誰かが餅つきしてるのかな?」

「へえ、魔法学園にもこういう風習を取り入れてるのね。……こっちは魚を捌いてるのかしら?手際良いわね」

「あ、あのー」

 

エリちゃんが声をかけると、二人はビクッと跳ねた。

 

「え? ああ、お早うございます」

「……が、学園の生徒かしら?」

「そうじゃないかな? ぼ……私は面識はないけど」

「え、知らないの? 貴方も一時期ここにいたんじゃ――」

 

「あっ、サクラちゃん! 来てくれたんだ‼」

「ウィンディア! 全くもう、ここに呼び出されたときは何かと思ったわ」

 

学園への挨拶から戻ってきたウィンディアさんが金髪の少女に話しかける。お知り合いかな?

 

「えへへ、サクラちゃん学園に来たこと無かったでしょ? 案内してあげようかな、って」

「それは嬉しいけど、部外者がいきなり来て大丈夫だったの?」

「少なくとも、あのメルセデスって女はそんな小さな事を気にするような質じゃ無かったわよ。……ってんん?」

 

キャスパーさんはもう一人の栗毛の少女を見遣ると、首を傾げて顔を近づけた。

 

「……お前、もしかして……」

「――は、初めまして! 私、メイプルって言います! よろしく!」

「メイプルさんですか。綺麗ですね!」

「そ、そうかな? あ、アハハ……」

 

たしかに、メイプルさんはカトレア先輩みたいにスラッとした肉付き、かと思えば胸も大きなスタイル抜群の女性だ。…………正直羨ましい。

 

「……あの二人、一体何者なのかしら?」

「……ふむ、どちらも手練れと見受けるが?」

「どちらも綺麗な方ですね。ですが学園の方ではなさそうですが……」

「あの人、……もしや……」

 

「……? ねえ、君名前は?」

「はい? エリオです」

「じゃあエリオ、その髪飾りってチャームだよね?」

 

エリちゃんのチャームを一瞬で見抜いたメイプルさん。チャームは魔力を集中させるのに有用なアクセサリであるため、魔法に精通していない人にとってはただの装飾品にしか見えない。

なのにこの人は見ただけで理解した。アンちゃんも言ってたけど、もしかしてすごい人?

 

「はい、尊敬する先輩から貰ったものなんです!」

「……そっか」

 

メイプルさんはクスリと笑って、

 

「ねえエリオ」

「はい?」

「それ、大事に使ってね?」

「……え、はい! それはもちろん‼」

 

 

 

この二人の出会いが今年の未来を混沌にする。

この後、ルべちゃんはそう言ってた。

どういう意味かは聞かなかったけど、わたしもあの人から何か、言葉にできない雰囲気を感じた。

 

それは黄昏か、夜明けの光明か、あるいは――




という訳で、明けましておめでとうございます‼

ギリギリアウトでしたが、何とか投稿できました‼

今回は正月の特別編という事で学園乙女達をメインとして書いてみました。
とはいえ雑すぎますが、番外編だし、本編と一切関係ないですし、問題ないと判断させていただきました。

それでは皆様今年もよろしくお願いします‼


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天然魔性なエリオちゃん日記

バレンタインイベントのストーリーを見て思ったこと

・エリオは天然小悪魔だった 異論は認める



あっ、今回はキャラ崩壊要素過多です。


バレンタインで一体エリオが誰にチョコを渡すのか、私たちの中でそれなりに議論が行われた。

 

純粋に気になる者。

何とかして自分も貰えるようアピールする者。

全てわかりきっている風を出していた者。

薬を使おうとした者。

隠し事をされて悲しんだ者。

 

……私は当然、純粋に気になった方だ。

とはいえ、誰に渡すのかはそれこそエリオの自由なので文句は言わないつもりでいた。

 

実際にエリオは私達全員分をそれぞれ手作りで用意していた。正直、かつて塩対応をしていた私は少し根に持たれたり、なんて僅かに思っていたが、

 

『カレンへ

カレンの事は学園で一番尊敬してるよ!

厳しくて、美人で、アイスが好きなんてちょっとかわいいところもあるカレンが大好きだよ‼

エリオ』

 

わざわざこんな手紙まで同梱させたものを渡すとは。

 

「…………ああ、もう!」

 

今更ながらに自分の顔が熱くなる。

こんな顔、他の生徒には――

 

「って、カモミールは……⁉」

 

ルームメイトの存在を忘れかけていた私は、すぐさま彼女のいる方に目を向ける。彼女は自分の机に座って何かをしているようだが……?

 

「………………すーっ、はぁ…………」

「―――――――――」

 

言葉が、出なかった。

この子は、一体何をしているのか。

 

「ちょっとカモミール⁉」

「…………すーっ――はっ‼ な、何ですかカレンちゃん! 私、また何か……?」

「いや、そうじゃなくて。貴女、どうしてチョコの袋を嗅いでるの?」

 

文字にするととてもカモミールがとても危険に見えるので補足すると、彼女はエリオから貰った手作りチョコが入った袋の匂いを嗅いでいる。チョコの匂いではない。恐らくエリオが付けたであろう、袋の装飾やリボンを、だ。

 

「……同じ香りなんです」

「は?」

「このチョコや、袋の香りが! チョコを渡してくれたときのエリオちゃんの香りと同じなんです‼」

 

再び言葉が、出なかった。

前から思っていたが、カモミールは利きアロマ出来るらしく、かなり嗅覚が優れているようだ。

しかし、

 

「…………そ、それって単にエリオにチョコの匂いが染み付いていただけじゃない? ここしばらくチョコ作りに専念していたみたいだし、チョコの匂いがして当たり前でしょ」

「逆ですカレンちゃん! チョコからエリオちゃんの香りがするんです‼」

「は?」

 

私は思わず自分にくれたチョコの袋を手に取り、嗅いでしまった。

 

「………………………チョコの匂いしか、しないわよ」

「……すーっ、はぁ…………エリオちゃん……♪」

「聴いてないし……」

 

果たしてカモミールの嗅覚に頭を悩ませれば良いのか、ここまで彼女をたらし込んだエリオに対して頭を悩ませれば良いのか、さらに頭を悩ませてしまった。

 

「とりあえず、手に持ってばかりだと溶けるわよ……」

 

 

 

「むふー♪ エリーのチョコは絶品だな! 毎日食べられそうだ♪」

 

エリーからチョコを貰ったあと、部屋に戻って早速味わうことにした。

カトレア先輩達が指南したのもあって、丁度良い甘さが口に広がる。……形が少々歪なのもあるので、本当に一から自分の手で作ったのだろう。

 

「これはこれで良いけれどな! ルベっちもそう――えぇ…………」

 

思わずドン引いた。

ルベっちは今本を片手間に、何やら薬品を整理している。……以前エリーに飲ませていたのを見たことがあるが、そのどれとも一致しない物ばかりだ。

 

「る、ルベっち? なんだそれ……」

「……アンゼリカ」

 

ゆっくりと彼女はこちらに首を回し、

 

「アンゼリカは、ホワイトデー…、って、知ってる……?」

「や・め・ろ‼」

 

もう何を考えているのか理解してしまった。

 

「ルベっち! その手の薬は使うなってチコやカレンと約束したばかりだろ‼」

「……それ、は、バレンタインの、話、だ……。ホワイトデーは、バレンタイン、の三倍、で……、お返しする……。私の気持ち、三倍にして……、エリオに、届ける……。……解らせる…………」

「ダメに決まってるだろ‼」

 

この後、あたしはルベっちから薬を取り上げる作業にかかった。……珍しく全力で抵抗された。

エリーはどうやってルベっちの心を鷲掴みにしたというのか。

 

 

 

隠し事なんて初めてしたかもしれなかった。

できる限りサプライズプレゼントにしたかったけど、そのせいで、皆に怪しまれたり、不安にさせたりと完全に失敗だった。

 

「えへへ~、エリちゃーん♪」

「もぉ、チーちゃんったら、部屋に戻ってからずっとくっついてばっかりだよぉ」

「……だめ?」

「ダメじゃないけど……」

 

チーちゃんはこういう、時々甘えん坊になることが時々ある。何か嫌なことがあったとき、不安になるような事があったとき、こうして私にくっついてくる。

 

(いや、一回だけカモミールちゃんにもされたことあったっけ)

 

私の香りが好きだーって一度言われたことがある。その時に、前から抱きつかれて臭いを嗅がれた事があった。流石に恥ずかしかったけど、カモミールちゃんなら別に問題はなかった。

 

「……ねえチーちゃん、私、臭ったりしてない?」

「……? チョコの匂いはちょっとするけど……?」

「……そっか」

 

やっぱりカモミールちゃんが特殊なのかも。

 

それはさておき、チーちゃんにはチョコが好評で一先ず安心した。他の子にも好評だと良いんだけど……。

 

「ねえエリちゃん?」

「なあに?」

「他の子にもチョコを用意してたりするの?」

「……どうしてそう思うの?」

 

答えは一先ずあとにして、どうしてチーちゃんがいきなりそんな事言い出したのか気になった。

 

「……だってエリちゃん、誰にでも優しいから……」

「……そうかな。でも、好きな子はちゃんと選んでるつもりだよ」

「…………本当に?」

「少なくとも私はチーちゃん達を選んでるよ?」

 

チーちゃんも、アンちゃんも、カモミールちゃんも、ルベちゃんも、カレンも。

学園に来て出来た大切な仲間だから。

 

「そっか。ならいいや♪」

 

質問の意図はよく分からなかったけれど、チーちゃんは再び笑顔を浮かべた。

 

「……ちなみに、誰に用意したの?」

「ああ、それなら――今頃届いてるんじゃないかな?」

 

 

 

「カエデ、魔法ポストにこんなのが届いてたけど」

 

魔法書を読んでいた僕の背中にサクラの声がかかる。

魔法ポストとは、指定した座標に届け物を置くと、自動的に魔法が起動し、ポストの中に入るという仕組みになっている。

魔法の特訓として導入したが、巧くいっているようだ。

 

「ありがとうサクラ」

「それは良いんだけど、どこの座標を指定してたの?」

「魔法学園だよ。前にあったときからエリオと文通するようになってね」

「………貴方って」

 

なぜかサクラに呆れられた。

ディオール魔法学園が今何をしてるのか気になったから丁度よかったのだが。

 

「それで、届け物ってなに?」

「紙袋ね。何か甘い匂いがするけど」

「甘いもの? もしかして……」

 

袋を手に取り中身を出すと、チョコが入った小包が。

やっぱりバレンタインデーだからチョコが贈られてきたようだ。

 

「……チョコを貰えるほど仲がよくなったのね」

「はは、まあ光栄かな。それじゃ、早速…………ん?」

 

早速頂こうとして、チョコを取り出したとき、何か白い四角のものが一緒に出てきた。調べてみるとどうやら短めの手紙のようだ。

 

『メイプルさんへ

近々ディオール魔法学園で学園祭を開くそうです!

学外の方は参加自由だそうなので、是非来てください‼

また会いたいです!

エリオ』

 

「……ああ、もうそんな時期か。制服コンテストとかやったっけ。懐かしいなぁ」

「………………………」

 

「どうしたの、サクラ?」

「あのエリオっていう子、こんなにあざとかったかしら?」

「いきなり何言ってるの⁉」

 

失礼にも程がある。

 

「どうしてそう思ったの?」

「わざわざ手紙を付けて、しかもまた会いたいとか、あざといでしょ!」

「穿ち過ぎだと思うよ。大体、狙ってやってるにしても、あの子は僕を女だと思ってるし、僕の他にも一緒にいたクラスメイトにも渡してると思うよ」

「つまりは天然ね」

「サクラはエリオをどうしたいの⁉」

 

こうして、今年のバレンタインデーは幕を閉じた。

そして、僕達の中でエリオは天然魔性の疑惑が生まれた。




やりたかっただけ。
反省はしているが後悔はしていない。

エリオはカルミアより天然な分質が悪いと思いました(小並感)


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