"美嘉"月・オーガス (折れたサンティの槍)
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"美嘉"月・オーガス

必須タグが『クロスオーバー』だけで良いのか不安。
オリ主モノでは無いですし、神様も転生も憑依も無い性格改変モノですし、なので性転換でもありませんし、続きを書きたいとは思っていますが少なくとも今のところはBLもGLの描写はありませんし。
アンチ・ヘイトは……まぁ、続きの内容にも寄りますが、憑依よりはまだ追加される可能性があるかも。
……『R-15』と『残酷な描写』は、【シンデレラファンタジー】で話を書く事があったら追加されるかもしれません。

城ヶ崎美嘉が三日月・オーガスっぽく書けたのかとか、
他のデレマスキャラも性格や口調を間違えていないかとか、
どこかのコミュに登場しているかもしれない城ヶ崎夫婦がオリキャラになっているとか、
僕の考えたオリキャラの性格がブレていないかとか、
実は既に誰かがどこかで執筆していたりするんじゃないかとか……。
これら以外にも不安があったりしますが、それ以上に楽しく書けて満足したので、ぶち込んでみます。
気になった点などが有りましたら、感想でのご指摘をお願いします。

長い前書きを失礼しました。
どうぞ!

3/18 一部を改変?しました。内容に変更は無いので読むのには問題ありません。

4/20 何となく気になった部分を少し修正。

4/22 いらないと思った部分をバッサリ削減。……実際、ファッション雑誌の細かい説明とかこの小説にはいらないだろうと思いまして。


「ただいま〜!!」

 

金色に染められたツーサイドアップと長髪を揺らしながら、元気良く帰宅してきたその少女の名は《城ヶ崎莉嘉》という。

金髪の他にも、色鮮やかな腕輪やルーズソックスなど、如何にも自分はギャルである、とでも言うかの様な、かなり目立つ容姿をした彼女は、これでも彼女は12歳の中学1年生であり、ついでにカブトムシが好きである。

 

そんな彼女…莉嘉は、外出の疲れなどものともせずに廊下を早歩きで進むと、リビング(というよりはリビング・ダイニング・キッチン)のドアを勢い良く……は怒られそうだな、と直前で思い直し、勢いを抑えてから普通に開けた。

 

「お帰り〜」

「お帰り」

 

まだ父親は帰ってきておらず、莉嘉に挨拶を返したのは2人だけであった。

4人家族なので半分以上は揃っているのだが。

挨拶を返した1人は、キッチンで夕食の準備をしていた母親。

そしてもう1人は……ソファに座りながら、コントローラーでテレビ画面の中の赤い帽子の配管工を操り、横スクロールするステージをノンストップで走らせていた…つまりゲームをしていた。

 

「ママ、お姉ちゃん! 聞いて聞いて?」

「あら、どうしたの?」

「……何かあったの?」

 

城ヶ崎母は料理の手を止める事無く言葉だけを返し、"姉"と呼ばれた人物もゲームの手を止める事無く(・・・・・・・・・・・・)言葉を返しながら莉嘉に振り返った(・・・・・)

結果、画面の中で全力疾走していた赤い帽子の配管工は、二足歩行の亀に正面から激突した後、奈落の底へと落ちていった。

哀れ。

 

「アタシね、さっき街で歩いていたら、なんと『ファッション雑誌のモデルをやりませんか』って声を掛けられたの!」

「あらあら、凄いじゃない!」

 

莉嘉の言葉に驚く城ヶ崎母だが、彼女が驚くのも無理は無いだろう。

とある(・・・)アイドルプロダクションの大成功から始まり、昨今は"アイドル"に多くの注目が集まっている。

それこそ、今現在が【アイドル黄金時代】などと呼ばれる程に。

「ファッション雑誌モデルとして推薦される」というのは、アイドルがありふれた昨今において『城ヶ崎莉嘉は数多く存在する女性アイドルと同レベルの容姿を持っている』と言われた様なモノなのだから。

 

その様な理由から盛り上がった莉嘉と城ヶ崎母だったが、

 

「へぇー」

 

という、「よく分からないけど莉嘉が嬉しそうだし母さんも喜んでるから、それっぽい声を出しておこう」みたいな意思が容易に伝わる……そして何の感情も込められていない、そんな感じの"姉"の声によって、その顔を苦笑に染める事になった。

 

「まぁ、お姉ちゃんには分からないよね……」

「美嘉、オシャレとかファッションに全く興味ないものね」

「…なんかゴメンね」

「や、大丈夫だよ、うん」

 

"美嘉"というのは先程まで"姉"と表記していた人物で、本名は《城ヶ崎美嘉》と言う。

派手派手しい姿の妹・莉嘉と比べると大体正反対と言って良いレベルで違う。

 

オシャレには全く興味がなく、アクセサリー類を着ける事は無い。

化粧をする事も無ければ、香水を付ける事も無い。

服装は大抵地味な色のものを好み、一度も染めた事のない長い茶髪は「邪魔だから」という理由で適当に後ろで結ぶだけ。

そんな格好で莉嘉と並んでも、何故か見劣りしない。

雨が降っている日など、外出の予定が無い日には寝癖は大体放置で、仕方無く莉嘉が櫛を通してあげたりする。

好きなものは家族、庭で野菜を育てるのと身体を動かすのが趣味。

将来の夢で"自分の農場を拓きたい"と言い同級生らを驚かせた。

彼女の隠れファン達(同級生数十人、性別問わず)に「一緒の農場で働きたい……」などと言わせる人物。

それが彼女、城ヶ崎美嘉である。

 

「……ところで、つい盛り上がっちゃったけど、その推薦って受けて大丈夫なものなのかしら……莉嘉、名刺とか貰ってない?」

「あー貰ったよー、ちょっと待っててー…………はいこれ」

 

莉嘉は小さな肩掛けカバンの中から一枚の名刺を取り出し、料理を作り終えた城ヶ崎母に渡した。

 

「えっと何々…346プロダクション・モデル部門……346プロダクション!?」

「何それ」

 

かなり大きな老舗芸能プロダクションの筈なのだが、美嘉にはあまり認識されていなかった。

 

「いろんな歌手さんとか、俳優さんとか、アイドルが所属している芸能プロダクションよ! あなたがよく観てるバラエティ番組に出てくる輿水幸子ちゃんなんかも所属しているわよ」

「あぁ、幸子ちゃん」

「あとあと、高垣楓さんとか!」

「……あぁ、髪がふわふわしてる人」

「何その覚え方……」

 

輿水幸子は、テレビで観ると大抵の場合何かしら頑張っていたり、声や仕草が可愛らしい事もあって、美嘉からの好感度が割と高い。

身近にいるクラスメイトや同級生達の名前はあまり覚えていないにも関わらず、輿水幸子の名前は覚えている、と言えばその好感度の程が分かるだろう。

 

「一応、パパが帰ってきたら一緒に電話で確認してみるわね」

 

キッチンに戻る城ヶ崎母と、無言でゲーム機とテレビの電源を切ってから風に当たりに庭に出る美嘉。

そして放置された、二人のアイドルの覚え方の差に悲しそうに笑う莉嘉。

城ヶ崎家では割と良くあるだった。

 

 

= = = = = = = = = =

 

 

翌日の土曜日。

 

昨日確認してモデル推薦に嘘偽りが無い事が分かり、城ヶ崎両親も認めてくれた事から、早速行く事になった莉嘉。

しかし、城ヶ崎母は美嘉の同級生の保護者達の集まりに行かねばならず、城ヶ崎父は、

 

「疲れたから家でゴロゴロしていたい、あと女性だらけの場所なら美嘉の方が適任だろう。美嘉、付いて行ってくれないか?」

「良いよー」

 

という訳で、美嘉が付いて行く事になった。

 

二人は現在、346プロダクション前である。

 

「わぁー! おっきな建物だねー!」

「おぉー……」

 

姉妹揃って346プロダクションの建物を見上げ、感嘆の声を上げる。

流石の美嘉も、城の様な外見の建物に驚いている様である……莉嘉以外にはそうは見えないだろうが。

 

「行こう、お姉ちゃん!」

「うん」

 

キラキラと瞳を輝かせる莉嘉の姿を見た美嘉は、穏やかに微笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

「中もお城みたいで綺麗ー!」

「危ないよ」

 

くるくると回りながら城(346プロ・本館)を歩く莉嘉を注意する美嘉。

そんな二人に一人の女性が近づいてきた。

 

「ようこそ346プロダクションへ。来てくれてありがとうね、城ヶ崎莉嘉ちゃん」

「あ! 東山さん!」

「知り合い?」

「うん、昨日名刺貰った人!」

「あぁ」

 

美嘉は「礼儀? 何それ」と言わんばかりに、出迎えてくれた女性、東山を無遠慮に見つめ始める。

じー……と身始めてから十秒程経った頃、ようやく美嘉は「とりあえず悪い人ではないかな」と納得した。

それを見計らった様に、女性も自己紹介を始めた。

 

「私は、この346プロダクションでモデル部門に所属している、東山という者です。貴女は?」

「城ヶ崎美嘉………ぁ、です。妹……莉嘉の付き添いです。」

「お姉さんでしたか、よろしくね、美嘉ちゃん。……挨拶も済んだ事だし、早速撮影の為のスタジオに向かいましょうか」

「はーい!」

 

 

 

 

 

東山に撮影スタジオへと案内され、莉嘉は撮影の為のメイクや着替えをする為に一度別れた。

暇になり、何となくキョロキョロとスタジオを見回していた美嘉に、東山が声を掛けた。

 

「美嘉ちゃんはモデルの経験とかあったのかしら?」

「いや、無いけ……ですけど。なんで?」

「あ、私には無理に敬語使わなくてもいいからね? ほら、私もこんなんだし!」

「わかった」

「で、なんで経験があると思ったのか、だけど……なんだか凄く落ち着いているなぁ、って思って」

「別に? 普通でしょ」

「普通……普通は莉嘉ちゃんみたく、こう、わぁー! っとか、すごーい! みたいな感じになると思うんだけど…〜.」

 

東山は「感情があんまり表に出ない娘なのかしら」と呟いた後、美嘉の雰囲気に嫌悪や拒絶が無い事を確認してから質問を続けた。

因みに美嘉的には「暇が潰せるし、嫌な感じもしないから、いっか」という感じである。

 

「美嘉ちゃんって、髪とか凄く綺麗よね。何か意識して手入れとかしているの?」

「いや、普通に洗ってるだけ」

「顔も凄く綺麗ね。お化粧とかはあんまりしていないみたいだけど、何かこう、お化粧の工夫があったりするの?」

「いや、そういうのは面倒だからやってないよ」

「……肌なんかも凄く綺麗だけど……」

「普通に洗ってるだけだよ」

「…………美嘉ちゃんは、スタイルも凄く良いわよね。食べる物に気を使っていたり」

「私はあんまり気にしないけど、母さんがしっかりしてるから」

「……成る程……う、羨ましい……」

「?」

「いや、なんでもないのよ、うん」

 

はぁ……とため息を吐く東山。

それを見た美嘉は、東山が何故唐突に落ち込んだのかはわからなかったが、とりあえず色々褒めて貰ったお礼も兼ねてこんな事を言った。

 

「……なんかよくわかんないけど、あんたも綺麗だと思うよ」

「うぇっ!? そ、そう? ……あ、ありがとね!」

 

言われた東山は、赤くなった顔を隠そうと即座に顔を背け、深呼吸する。

直後、メイクを終えた莉嘉が撮影スタジオに戻ってきた。

 

「お姉ちゃーん! どう? どう? 私綺麗?」

「うん、凄く綺麗だよ」

「わーい! ……どうしたの? 東山さん」

「い、いや、何でもないわよ。それよりも、早速始めちゃいましょうか」

「はーい!」

 

 

= = = = = = = = = =

 

 

撮影は恙無(つつがな)く進行した。

途中、カメラマンの「美嘉さんもモデル、やってみますか?」という質問に対して、美嘉が「化粧とか着替えとか、なんか面倒そうだからいいや」という自己顕示欲(じこけんじよく)皆無な返答をした事で、撮影スタジオにいた人間全員が苦笑する事になったりはしたが、それ以外は特に何事も無く進行し、撮影は終了した。

 

「雑誌の発売日を楽しみにしていて下さい」

「はい! 今日はありがとうございました!」

 

カメラマンの言葉に目を輝かせる莉嘉。

そんな妹の姿を見て、美嘉は穏やかに笑みを浮かべ、東山はそんな美嘉の表情を見て驚くのだった。

 

 

 

 

 

撮影が終わり、着替え終えた莉嘉と美嘉を連れて本館出入口に向かっていた東山は、ふと時間が気になり腕時計を確認した。

 

「……あら? まだお昼時……あっ、そういえば朝から来てくれていたんだった」

「あ、ホントだ!」

「ふーん」

 

東山は、腕時計を見て自分と同じ様に驚く莉嘉と平常運転な美嘉の二人に振り返る。

 

「ここの敷地内にカフェがあるんだけど一緒に行く? お腹が空いてるならで良いんだけど」

「はいっ! アタシ行きたいです!」

「美嘉ちゃんは?」

「私は……中庭を歩きまわってみたいからパスで」

「大丈夫なの? お姉ちゃん」

「大丈夫、莉嘉とは違ってあんまり動いてないから」

「そっか! それじゃ、また後でね!」

 

 

 

 

 

本館を出てから二人と別れた美嘉は、何をする訳でも無く、言葉の通りに適当に歩きまわった。

普通に歩いたり、唐突に立ち止まったり、電線の無い空を見上げたり……。

そんな事をしていると、何処かで見た事のある様な気がする人(美嘉が観ていたテレビ番組に出演していたアイドル)とすれ違ったりするが、美嘉は当然無視である。

 

歩きまわっていた途中、視界を横切って飛んできた蝶々の去っていった方向に振り向くと、そこでは濃いめの赤髪をツインテールにしている少女が、草地の中で四つん這いになって何かを探していた。

 

美嘉は自分がどうするべきかほんの僅かな間だけ迷ったが、とりあえず近付いて声を掛けてみる事にした。

 

「ねぇ」

「ひぅっ」

 

声を掛けられた少女は、ビクゥッ! と肩を揺らした後、恐る恐るといった感じで振り返り、見上げた。

その少女からしてみれば、いきなり不機嫌そうに聞こえる…様な気もする低いトーンで話しかけられ、振り向いた視界に入ってきたのは鋭い目付きで自分を見下ろす見知らぬ女性。

 

「ひっ……」

 

思わず小さな悲鳴が少女の口から漏れ、さぁっ、と少女の顔から血の気が消えていく。

何となくだが自分が怖がられている事を感じ取った美嘉は、気持ち口調を穏やかなものに落ち着かせてみようとする。

 

「あん……君、ここで何やってたの?」

「あ、あの……その……」

 

一応呼び方を気を付けてはみたが、少女の顔は青ざめたままで、今にも泣きそうである。

美嘉は頭の横をガシガシと掻きながらどうするか考え、ふとある事を思い付き、少女に近付いていく。

そんな美嘉の行動に身体を硬直させる少女。

それに構う事無く少女の横へと歩み寄った美嘉は、あぐらを組んで座ると、明後日の方向を向きながらその頭に手を乗せ、そのまま撫で始めた。

……履いてきた服がズボンだったからか、あぐらを組むのに躊躇いは無かった。

 

「っ……え……?」

 

何か嫌な事をされると思ったらしい少女は、その美嘉の行動を始めは理解出来なかった。

しかし、徐々に理解し始め、「怖い人では無いのでは」と強張った身体から少しずつ力を抜いていった。

 

美嘉は自分と莉嘉がまだ幼かった頃、莉嘉が泣いた時や怖がった時に頭を撫でてあげると落ち着かせていた事を思い出し、この少女にもそうしてみようと行動に移したのだ。

……顔を少女に向けないのは、偶に「目付きが怖い」などと言われたりするからである。

 

美嘉は少女を撫でながら再び質問をした。

 

「何か探してたみたいだけど、何か落としたの?」

「……えっ…と……」

 

少女は若干残っていた緊張からか、つっかえながらも美嘉の質問に答えた。

 

「あの……落し物をした訳では、ないんです……その、クローバー……四つ葉のクローバーを、探していて……」

「クローバー……シロツメクサ、だっけ」

 

美嘉は少女の方を向く事無く、地面に視線を移す。

そこには特徴的な三つ葉の植物たちがあった。

 

「……そういえば、莉嘉からいろいろ聞いた時、何となく調べてみた事があったかな」

「……りか?」

「妹」

 

調べた結果分かったのは『三つ葉のものの変異体に相当し、その発生は稀である』とか『見つける事が出来れば幸運が訪れる』とか『キリスト教圏では十字架に見立てられる』とか、ついでに『通常のクローバーの花言葉に割と物騒なものがあった』とか。

そして『四つ葉が発生する条件は様々な説が存在する』ということ。

遺伝的要因、体細胞突然変異、形態形成の異常、『日照条件の悪いものがより多くの太陽光を取り込む為に増やす』などといったものもあった。

調べた感想としては「どんなモノであれ、見つけるのは大変そうだなー」程度のものであったが。

 

「……私も手伝おうか?」

「え?」

「四つ葉のクローバー探すの」

「……いえ、探している時間も好きなので……それに、申し訳ないですし」

「別に私は気にしないけど……ま、いいか」

 

なんとなく、自分も手伝おうかと思った美嘉だったが、少女の言葉を聞いて「好きな時間を邪魔するのは悪いか」と思い直し引き下がった。

 

「んー……」

「あ……」

 

それから少し考えた美嘉は、少女の頭を撫でるのを止め、立ち上がった。

 

「……それじゃ、私はもう行くね。何か困っていた訳でもないらしいし、もう少し見て回りたいから」

「……そう、ですか」

「じゃあね」

「…あのっ」

「ん?」

 

少女に腕を掴まれ振り向いた美嘉の眼を、少女は逸らす事なくしっかりと見て……笑った。

 

「ありがとうございましたっ」

「……うん、元気で」

 

そう言って美嘉は歩き始めた。

その声音と表情は、少女からも嬉しそうに見えた。

 

 

= = = = = = = = = =

 

 

それからは特に何事も無く、美嘉は食事を終えた二人と合流し、本館へと戻った。

 

「今日は来てくれて本当にありがとうね、莉嘉ちゃん、美嘉ちゃん」

「うん。こっちも、莉嘉を見つけてくれてありがとう。莉嘉の喜ぶ姿が見れて、本当に良かった」

「うん! 346プロダクションに来る事ができたり、雑誌のモデルができたり、カフェで美味しいもの食べられたり……すっごく楽しかった!」

 

キラキラと目を輝かせながらそう言う莉嘉の姿を見て、美嘉と東山は微笑む。

 

「そう、それなら良かったわ! それじゃあ解散……の前に」

「?」

「?」

「実は二人に会ってみてほしい人がいるのだけど、この後時間大丈夫?」

「大丈夫だよね? お姉ちゃん」

「うん」

「ありがとう……とは言っても、実は今から連絡するんだけどね」

 

そう言うと東山は二人から少し離れ、取り出した携帯電話を何度かタップした後、耳に当てた。

 

「もしもし? ……実は、ちょっと貴方に会ってみてほしい人がいて…………ええ、きっと貴方のプロジェクトの…………」

 

しばらく話していた東山は、やがて携帯電話を耳から離すと、二人に近寄り言った。

 

「すぐに来てくれるみたいだから、近くで座って待っていて」

「? うん」

「…ん」

 

 

 

そうして待つ事数分。

 

「あ、来た来た」

 

目的の人物が現れたのか、東山は立ち上がり大きく手を振った。

立ち上がりながら東山の視線を追った二人の前に歩いて来た人物は……、

 

「すみません、お待たせしました」

 

厳つい外見の大男だった。

大男と言っても単に"背が高い"というだけで無く、鍛え抜かれたかの様にがっしりとした身体つきをしている。

これだけでもかなりの威圧感があるが、その顔の鋭い三白眼が威圧感を増させている。

 

普通の女性であれば、まず顔を青くさせて萎縮してしまう容姿や雰囲気を持っているのだが、

 

「おおー」

「……」

 

この二人は普通とは少し違った。

そんな二人の反応に、東山と大男は驚く。

 

「……ちょっと以外ね。美嘉ちゃんはともかく莉嘉ちゃんも……言っちゃ悪いけど、彼に驚かないなんて」

 

そんな東山の疑問を口にし、大男は首筋に手を回し、莉嘉は目を逸らし苦笑いしながら答えた。

 

「……お姉ちゃんと一緒にお出掛けしてて、私が知らない男の人にしつこく迫られてた時とかのお姉ちゃんの方がもっと怖い、っていうか凄いから……」

「そ、そう」

「なるほど……」

「あっ、あとお姉ちゃんが動かなかったから、っていうのもあるかなぁ」

「え?」

 

莉嘉は隣に立つ美嘉を見る。

その視線に気付いた美嘉は、莉嘉の目を見つめ返し、コクリと小さく頷いた。

 

「相手がどれだけ優しそうな口調とか表情を作っていても、裏に…敵意? 害意?のある人だったら、お姉ちゃんが前に出て守ってくれるの!」

 

莉嘉の言葉に、東山と大男は大いに驚く。

 

「へぇ、美嘉ちゃんはよくそんな事わかるわね」

「まぁ、勘で」

「勘、ですか」

「うん……あんたからは、危ない感じとか、悪い感じが無かったから」

「……ありがとう、ございます」

「……あ、敬語忘れてた」

「あぁいえ、お気遣い無く」

「そう? わかった」

「こんなに早く彼と仲良く…仲良く?なった人、千川さん以来じゃないかしら……」

 

そんな風に会話する三人の内の東山に、莉嘉は疑問を口にした。

 

「…それで? この人が私たちに会って欲しい人なの? なんで?」

「あぁそうだった! ちょっと彼と話してみて欲しい事があって。……それじゃあ、プロデューサー(・・・・・・・)君」

「はい」

「……?」

「ぷろでゅーさー?」

 

城ヶ崎姉妹が首を傾げる中、大男は名刺を取り出し、美嘉に差し出しながら言った。

 

「私、美城プロダクションで『シンデレラプロジェクト』という企画を担当する、プロデューサーをしている者です」

「ふーん」

「話、というのは……単刀直入に言わせていただきます」

 

 

 

 

 

このお話は、

 

お姫様にも眩しいお城にも、素敵なドレスにも、優しい王子様にも憧れず。

 

もしかすれば、それらを夢に見た事すら無かったかもしれない。

 

そんな、普通の女の子たちとは少しだけ違う少女が。

 

不器用な魔法使いと、仲間(シンデレラ)たちとの運命の出会いを経て。

 

輝く世界で進み続ける。

 

そんな物語。

 

 

 

 

 

「アイドルに、興味はありませんか?」

 

「……は?」




この作品内では『派手な髪色は(例外はあるでしょうけど)ほぼ染色されたもの』としています。
でも髪が傷んだりはしません……アイマス世界ならノーリスクで染髪ぐらいはできるでしょう、きっと……きっと。
…でも(筆者の脳内設定上では)765プロのアイドル方は全員無染髪。
……アイドルの方々って、公式設定で髪染めているとか、地毛であるとかあったりします?(ニワカ並みの疑問)




【〜〜〜のウワサ】という建前のちょっとした裏設定集。

【城ヶ崎美嘉のウワサ】
1.一人称が「私」である事と一応敬語を使おうと努力しているのは、母と妹が頑張った結果らしい。
(中学2年生辺りまでは、「俺」&敬称は付けてもタメ口。一人称が「俺」だった理由は「ワタシよりもオレの方が発声が短かったから」らしい)

2.アクションゲームはかなり得意で、主に近距離戦闘を好むらしい。

3.家族は何よりも大事らしい。



【城ヶ崎莉嘉のウワサ】
1.姉を女の子らしくしようする計画の過程で開いたギャル系ファッション雑誌で、ギャル系ファッションに目覚めたらしい。
(姉を女の子らしくするのはもう諦めたらしい)

2.姉の持つ原作とはまた違ったカリスマ性(?)やクールさにはある種の憧れはあるらしい。



【城ヶ崎父&母のウワサ】
1.父の性格はクール5割、パッション5割ぐらいのイメージ感じらしい。

2.母の性格はキュート7割、パッション3割ぐらいのイメージらしい。



【美嘉の同級生(ファン達含む)のウワサ】
1.恋人関係うんぬんの話抜きで、美嘉の農場で働きたいと思う人(女子含む)も多いらしい。



【東山のウワサ】
1.本人が知らないだけで、社内では割と異性として好きな男性は多いらしい。



【カメラマンのウワサ】
1.後に、美嘉の宣材写真の撮影をしたらしい。



【クローバーの少女のウワサ】
1.後に、近寄り難い性格の美嘉と積極的に接する事で、他のアイドルたちと美嘉が仲を深めるきっかけとなるらしい。



【シンデレラプロジェクト担当のプロデューサーのウワサ】
1.自分を見た時の美嘉の感想は、驚くと同時に少し嬉しかったらしい。





【輿水幸子のウワサ】
1.後に美嘉と出会い応援される事で、更に自信が付くらしい。

2.後に、美嘉のL○NEに初めて友だち登録されたアイドルになるらしい。



【高垣楓のウワサ】
1.後に、自分を見た時の美嘉の反応の薄さに、少し驚くらしい。

2.後にされる事になる、美嘉からの『髪がふわふわしてる人』呼びを少し気にいるらしい。





【その他設定】
1.登場人物や設定などは大体アニメのものになると思いますが、僕がアニメのDVD等を持っていない(見直して確認などができない)事もあって、続いた場合もアニメのストーリーとは余り関係のない内容になるかもしれません。
もしかしたらデレステのコミュの内容に触れる可能性も……。
要するに好き勝手に書いていくと思います。

2.小説タイトルの候補には【すげえよ、美嘉は】とか【何やってんだ美嘉ぁぁぁぁ!!】みたいなものが有りましたが、オルガ・イツカやオルガに似たキャラクター等の登場予定が今後も無い事から、現在のものになりました。
ちなみにこの小説を書こうと思ったきっかけは、ニコ○コ動画の『オルガP』タグの動画だったりします……。



【筆者のコトバ】
1.上記の【〜〜〜のウワサ】は、もしかしたら後で変わるかもしれませんし、追加されるかもしれません。

2.続きに関しては「書きたいなぁ」とは考えていますが、考えている内容は、

・シンデレラプロジェクトと美嘉
・プロジェクトクローネと美嘉
・LiPPSと美嘉
・幸子ちゃん、楓さん等と美嘉
・シンデレラファンタジー(グラブルとのコラボのあれ)

という、なんとも大雑把なもので……。
ゆっくりしっかり考えて、楽しく書いていきたいと思います。


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