ご注文は思い出ですか? (雷王)
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order0 〜過ぎ行く景色は過去への足取り〜

皆さんはじめまして。
私の人生初の小説投稿です。
不安もありますが、誤字脱字の指摘、応援や励ましのコメントらをくれると、とても励みになります。

それでは、どうぞ!



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーガタンガタン

ーーーーガタンガタン

 

俺は今、線路の上を走る列車の中にいた。

 

窓から見える外の世界は次々に景色を変え、通り過ぎていく。眺めていた景色が目に焼き付く前に、また新たな景色が現れ、過去の景色は視界から消えていく。まるで、"後ろ"(過去)を顧みず、"前"(未来)ばかりしか見ていなかった"どこの誰かのように……。

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の名は香風(かふう)玲央(れお)。年齢23才。

 

今から"木組みの家と石畳の街"に行くために列車に乗っている。理由は二つ。一つは自分の仕事の関係でその街の編集社の所に行くためである。そしてもう一つ、これが俺があの町に行く最大の目的…いや、前者の理由ができたからこそ、俺はその目的を果たそうと思ったのだが…。しかし、俺は行かなければならない。"自分の犯した罪"にけじめをつけるために"…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遡ること一週間前、俺はある人に電話をかけた。

 

「はい、香風です。」

 

出てきたのは紳士的な男性の声だった。昔のことでうろ覚えだが間違いない。この人は俺の叔父の香風(かふう) タカヒロだ。しかしちょっと自信なさげに尋ねる。

 

「もしもし、えっと…タカヒロさんですか?」

 

「!?君はもしかして‥‥」

 

「はい。甥のレオです。」

 

「おお!レオ君か!久しぶりだね。もう十年にもなるかな?元気そうで何よりだよ。」

 

「はい。叔父さんもお元気そうで……。」

 

俺は思わず途中で言葉を切った。

 

「ん?どうしたんだい?レオ君。」

 

「俺、叔父さんに謝らないといけないことが…」

 

タカヒロ「‥‥君の事情は弟…君の父親から聞いている。君が謝る必要は、どこにもないよ。」

 

「…でも俺は…」

 

「君は君のやるべきことをやっていたんだ。何一つ悪いことをしてないさ。」

 

俺は叔父さんの言葉にただうなだれるしかなかった。

俺はとんでもない罪を犯したというのに、叱責されるどころか逆に慰められてしまった。でもわかっていた、謝らければいけないのは叔父さんではない。本当に謝るべきなのは、叔父さんではないのだから。

 

そして俺は最も問いたかったことを口にした。

 

「あの…叔父さん…"あの子"は…、はどうしていますか?」

 

叔父さんは、しばらく沈黙した後答えた。

 

「大丈夫。"あの子"は元気にやっているよ。」

 

俺は久々に安心という感情を得た。

 

「そうですか!良かっt」

 

「ただ…」

 

「…ただ?」

 

「残念なことに、あの子は君のことをすっかり忘れてしまったようだよ。」

 

「え!…そう…ですか。」

 

俺はショックを受けると同時にどこかほっとしていた。もし"あの子"が俺のことを覚えていたら、どんな顔をして会えばいいかわからない。

 

だが、だからといってこのままなかったことにするわけにはいかない。俺が叔父さんに電話をしたのには訳ある。

 

「実は、今回は叔父さんにお願いがあって電話したんです。」

 

 

「お願い?」

 

 

「はい。実は俺、叔父さんのいる町に仕事で行くことになったんです。」

 

 

「へぇ。そうなのかい。」

 

「そこでその間、叔父さんの喫茶店でお世話になりたいと思っているのですが‥‥。」

 

 

「そうか…。だが一つ問題がある。」

 

 

「…"あの子"ことですよね。」

 

 

「ああ。さっきも言ったように"あの子"は君のことを忘れてしまっている。過去に会ったことがあるらしいが記憶にないとなると"あの子"も君との接し方に頭を悩ませるだろう。仮に思い出したとしたらなおさらだ。私は父親として、"あの子"の苦しむ姿を見たくないんだよ。もうこれ以上ね‥‥。」

 

 

やっぱり叔父さんは心のどこかで俺と"あの子"を引き合わせたくないのだろう。叔父さんの気持ちはよく分かる。でも俺の意志は変わらない。俺は本心を叔父さんにぶつけた。

 

「それも承知の上でお願いします。俺、"あの子" にもう一度会いたいんです。会って俺のことを思い出してもらって、心の底から謝りたいんです。」

 

 

「‥‥‥」

 

「俺、"あの子"とこのまま会わずに全部なかったことにするなんてこと、したくないんです。もうこれ以上後悔をしたくないんです。別に許しを乞いたい訳じゃなくて、ただ…」

 

「レオ君。」

 

「はい?」

 

俺が思いつく限りに言葉を並べていると、叔父さんが急に話しを切り出した。

 

「確かに君の言っていることが正しいよ。それに、これは君だけの問題じゃなくて、"あの子"の問題でもあるんだ。」

 

「叔父さん…。」

 

「そして、君逹が昔の二人に戻って来ることを私は望んでいるし、私の家内もそうなることを望んでいるだろう…。」

 

 

叔父さんは、またしばらくするとこう言ってきた。

 

「…わかった。君を歓迎するよ。」

 

 

「ホントですか?ありがとうございます!」

 

 

 

「それで、いつになったら来るんだい?」

 

「今もう日本について空港近くのホテルに泊まっています。」

 

 

「そうか…では、ここに来るのは、明後日にぐらいになるかな? この辺りはあまり交通整備があまり整っていないが、バスや列車を乗り継げば2日ほどで着けるだろう。」

 

 

「そうなんですね。あ、でも実は‥‥」

 

その後、俺は叔父さんと色々な打ち合わせをして電話を切り、明日の出発に備えてホテルのベッドで眠りに着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして一週間後、現在にいたる。

 

どうして2日しかかからない所を一週間もかかったのかは、後に語るだろう。

 

 

 

 

 

 

そんなことを思い出しているうちに、窓の景色が草木などから、だんだん木製の建物に変わっていた。気付けば列車の速度も徐々に、減速している様だった。さすがに街の中一つ一つ覚えている訳ではないが間違いない。ここは10年前、俺と"あの子"が出会い、短期間一緒に過ごした、"木組みの家と石畳の街"だ。

 

列車が止まり、俺は駅の外に出た。やはり街の中はほとんど変わった様子はなく、とても懐かしい気分になった。

 

「‥‥‥よし。」

 

俺は大きく一と深呼吸して、駅の出口から街の中へ大きな一歩を踏み出した。"あの子"と再会するため、そして、まだ見ぬ出会いや思い出を求め、俺、香風 玲央は今、十年ぶりに"木組みの家と石畳の街"へやって来たのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行こう。"ラビットハウス"に。」

 

 

 

 

〜to be continued〜

 

 

 

 

 

 

 

 




いかがでしたでしょうか?
私としては初めてにしては、いい方だと思いますが、なんか、同じ言葉を使い過ぎた気もします。
作中では、"あの子" "あの子"と遠回しに言っていましたが、さすがに皆さん分かりますよね?
あれは序章ということで今後の話しを見ていく上で必要な回だったので、次回からはもっと面白くなると思いますので、いつ投稿するか分かりませんが、気長に待っていてください。


それではまた!


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order1 〜お客に渡す時より、練習した時の方がコーヒー豆を多く消費するのは喫茶店としてどうだろう。〜

皆さんお久しぶりです。
なんとか前回からおおよそ4日で完成しました。
0話は思っていたより多くの人に見てもらったようでとても嬉しい限りです。本当にありがとうございます。
お気に入りにしてくれた方逹も本当にありがとうございます!
それでは記念すべき(?)第1話です。どうぞ!


 

 

 

 

 

俺の名前は香風 玲央。

俺は現在、"木組みの家と石畳の街"にやって来た。(事情は略。)まずは、"ラビットハウス"と言う喫茶店に向かおうと、俺は意気揚々と駅から歩き出し、三歩ほど歩いた所である重大なことに気付いた‥‥‥

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「‥‥"ラビットハウス"って何処にあるんだっけ?」

 

 

 

 

 

 

‥‥‥無理もない。俺が以前この街に来たのは、十年も前の事だ。街の中も場所もうろ覚えで、ましてやこの中から一つの喫茶店を一人で見つけるなんてほぼ不可能だ。"木組みの街"はそう狭くはない。一週間前に叔父さんから"ラビットハウス"の場所を聞くのをすっかり忘れていた。多分、叔父さんも俺が場所を知っていると思っているのだろうから迎えに来る筈もない。それに叔父さんにだって、喫茶店での仕事がある。

 

この街には他に知り合いもいないため…

 

 

 

 

 

 

「はぁ…どうしよう……。」

 

 

 

 

 

 

 

‥‥俺は空を仰ぎ、そう呟やきながら途方に暮れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは喫茶店"ラビットハウス"。

 

今店内では、保登(ほと) 心愛(ここあ)、香風(かふう) 智乃(ちの)、天々座(ててざ) 理世(りぜ)の三人が働いている。とはいっても店には一人もお客がいなくて暇なので、ココアとチノはリゼの指導の下でラテアート練習をしていた。

 

「できた〜! リゼちゃん見て!見て!」

 

とココアが監督のリゼを呼ぶ。

 

「おっ、どれどれ?‥‥ん?」

 

リゼが見たココアのラテアートは、コーヒーの中にミルクで描かれた白くてモコモコした物体だった。

 

「おいココア、これは何だ?雲か?それとも綿菓子?」

「えっ、違うよ。これはティッピーだよ。」

 

ティッピーとは、この喫茶店の看板兎のアンゴラウサギの事である。実はティッピーは、この喫茶店のマスターであったチノの祖父の魂が乗り移っている。が、その事を知ってるは、チノとその父親のタカヒロだけである。

 

「あーなるほど、確かにこのモコモコした所が…ってどれも違いはないし、これは簡単すぎるじゃないか!」

 

リゼの連続ノリツッコミが炸裂する。

 

「えへへ〜」

 

リゼのツッコミに対してココアは何故か照れ笑いをする。

 

「リゼさん、私も出来ました。」

 

リゼがやれやれと言いながらチノの作品を見てみる。

 

「‥‥‥」

 

チノの作るラテアートもまた、不気味な人の顔をしたラテアートだった。まるで、たくさんの芸術品とその独特な作品で注目を集めた、やたらと名前の長い芸術家の様なラテアートだった。芸術が分かる人ならまだしも、とても一般客が飲みたがる物ではない。

 

(二人共、商品として出すにはほど遠いな。)

そう思いながらリゼは肩をすくめた。

 

(いや…だがしかし、ここで投げ出しては、指導者(教官)の名が廃る…)

 

その瞬間、リゼの中の指導者(教官)魂に火が着いた。ココアとチノの二人は、そんなリゼの様子を察し、身の危険を感じたがもう遅い。

 

「お前逹!徹底的に鍛えてやるから覚悟しろ!」

 

「「サー!イェッサー!」」

 

ココアとチノの二人は反射的に敬礼をして返事をする。

 

「声が小さい!!」

 

「「サー!!イェッサー!!」」

 

ここでリゼ教官による、ココアとチノのラテアートの猛特訓が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(まったく、騒がしいのぉ。こんなので果たして店に客が来るのかのぉ。)

 

今度はカウンターの上で一部始終を見ていたティッピーが途方に暮れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レオside

 

 

 

俺はしばらく考えて、ひとまず、俺がこの街で働く編集会社に行くことにした。幸い、会社の場所は前もって聞いて、メモしておいたため、道順は分かっている。そこであわよくば、"ラビットハウス"の場所を知ってる人に道を尋ねようと思い、俺はメモを便りに会社への道を急いだ。

 

 

 

数十分後…

 

 

 

「今日からしばらくお世話になります、香風玲央です。よろしくお願いいたします。」

 

俺は編集会社の社内に入り、社員逹に挨拶した。その後、会社の説明や、今後の打ち合わせなどを済ませ、今日の出勤は終了した。俺は会社の出口で社員の一人に、"ラビットハウス"の場所について聞こうと思ったその時、

 

「あら?もしかして、レオさんではないですか?」

 

聞き覚えのある女性の声がした。俺はそんな筈はないと、ゆっくり振り向いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ラビットハウスside

 

 

 

 

 

一方その頃、

 

「だから違う!もっとこう…的を狙うイメージ脇をしめるんだ!」

 

厳しく指導するリゼ。

 

「サー♪イェッサー♪」

歌う様に返事をするココア。

そしてチノにも、

 

「チノ!また絵の形がおかしくなってるぞ! もう一度やり直しだ!」

 

「まっまたですか?」

 

リゼのラテアート特訓は熾烈を極めた。チノはもううんざりの様だが、ココアはこの状況を何故か楽しんでいる様だ。

 

一方で、チノの父、香風(かふう) タカヒロは喫茶店の二階の自室の窓付近でそわそわしていた。

 

(そろそろ来てもいい頃なのだが・・・・何かあったのだろうか…)

 

どうやら、レオが"ラビットハウス"にまだ現れないため、心配し始めた様だ。

 

(探しに行きたい所だが、そろそろ、バーの支度をしなければならないし、チノ逹にはまだ内緒にしておきたいから、あの子逹を行かせたくはないし…じゃあ親父を行かせ…いや、駄目だな。どうしたものか…。)

 

そう思いながら、タカヒロもまた途方に暮れた。

 

 

 

 

レオside

 

 

 

 

 

突如、誰かに名前を呼ばれ、振り返って見ると、そこにいたのは、同じ編集社の小説家、青山(あおやま) ブルーマウンテン {本名:青山 翠(みどり)}がそこに立っていた。青山は三年前、俺がこの編集社に入社した少し後に小説家デビューした。俺も少しそれに関わっている。 そのため、青山は俺に色々と話しかけられたりされたのだが‥‥‥

 

「やっぱりレオさんですよね?久しぶりですね〜。二年ぶりでしょうか?いつ帰って来たんですか?」

 

会って二言目でこの質問攻めである。はっきり言って俺は青山が少し苦手だ。なぜかというと…

 

「おう。久しぶりだな、青山。一週間前に日本に帰って来た所だよ。にしても、どうしてここに居るんだ? 三年前は本社の方にいただろ?」

 

と1オクターブ下がった声で返事した。

 

「はい、でも実はこの街が私の地元なんです。ここの方が筆が乗るんですよね〜。では、レオさんもどうしてここに居るんですか?」

 

「あーまぁ色々あって、しばらくここで編集の仕事をするんだよ。」

 

 

すると青山は目を大きく見開いて両手を合わせた。

 

「ではレオさんの旅の事が記事に乗るんですね!それは楽しみですね〜。そうだ、レオさんこれから用事はありませんよね。でしたら旅の事を是非聞かせてください。小説の参考になるかもしれませんし。私、近くに良いお店を知ってるんです。"甘兎庵"っていう所なんですけど、あそこのお茶と和菓子は美味しいんですよ〜。」

 

 

 

 

(不味い。)

 

 

 

 

このまま青山のペースに持って行かれるととても不味い。

 

俺が青山を苦手な理由、それは、青山はマイペースでつかみ所がないため、三年前、俺が旅に出るまでかなり振り回され、それはそれは苦労した。 今後のために親睦を深めようと言ったり、小説の物語を一緒に考えて欲しいと言い、あちこちの店に連れて行かれた。その度に何故か俺が奢る羽目になり、休日もろくに休めなかった。今ここで断らければ、三年前の過ちを繰り返すことになる。

 

「あっいや、そうしたいのは山々だけど、実はこれからまだ用事があって…」

 

俺はなるべく青山ががっかりしないように、丁寧に断った。

 

「あら?そうなのですか?それはとても残念です〜。」

 

 

青山は少しがっかりした様な顔をした。

 

青山には悪いが生憎俺は、何か奢れるほど金を持っていないし、別に嘘はついていない。俺はこれから探さないといけない所が……あっ。

 

「青山。お前、ここが地元だったって言ってたよな?」

 

 

「はい。確かに、この街は私の地元ですけど…。」

 

 

「だったら、"ラビットハウス"っていう喫茶店知らないか?探しているんだけど…。」

 

 

この時、俺は初めて青山の驚いた表情を見た。

 

「えっ!"ラビットハウス"……です……か。……はい、知ってますけど……」

 

「ホントか?良かった。それじゃあ道を教えてくれないか?」

 

「はい、いいですよ。」

 

こうして俺は青山から"ラビットハウス"の道を教えてもらい、会社の出口へ向かった。

 

「ありがとな、青山。後でお礼はするよ。」

 

「いえいえ。お構い無く〜あっでもどこかの

 

お店で旅の話しを聞かせてもらいますからね〜。」

 

「うっ…」

 

どうやら俺は青山の魔の手からは逃れられていなかったらしい。

 

「ああ、考えておくよ。じぁまたな。」

 

「はい、どうかお気よつけて〜。」

 

こうして俺は会社を出て、"ラビットハウス"へと道を急いだ。

(そう言えば、青山と話している時、気になることを言っていたな。)

 

そう、俺は青山が話していた中で、"ある事"が気になっていた。

 

それは‥‥‥

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"甘兎庵"と言う店の事だった。

 

(この街に甘味処みたいな所があったんだなー。 十年前は、"ラビットハウス"しか喫茶店を知らなかったからなー。)

 

そして俺は、いつかその店に行ってみよう思いながら"ラビットハウス"に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「せっかく三年ぶりに会えたんですから、もう少し、お話ししていたかったんですけどね…。」

 

社内に一人取り残された青山は寂しそうに呟いた。それにしても、レオの口から"あのお店"の事を聞くことになるとは思ってもいなかった。

 

「"ラビットハウス"…久しぶりに聞きました…。マスターはお元気にしているでしょうか?」

 

その呟いやきながら、青山は昔の事を思い返すのだった。

 

 

 

 

〜to be continued〜

 




いかがでしたでしょうか?
実は第1話の本当の題名は「やって来ました!ラビットハウス!」にするつもりだったのですが、あまりにも1話の内容を膨らまさせ過ぎたため、そこまでに話しを持ってこれなかったため、あの長ったらしい題名にしました。なので次回はようやくレオがラビットハウスにやって来ます。
さて、今回のお話しですが、いきなり新キャラを4人と一匹を投入して今後の物語で支障をきたすのではないかと内心ビビってます。しかし、話しの構成上、仕方がありませんでしたがなんとか頑張ろうと思います。
では、次回は上記にもあった通り「やって来ました!ラビットハウス!」です。どうぞお楽しみに。
それではまた!


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order2 〜やって来ました!ラビットハウス!〜

どうも皆さん、お久しぶりです。
最近、夢中になっていることがこれしかありません。
その為、これからもバンバン投稿していくかもしれません。(ですが、作者は飽きっぽいです。そこはゆめゆめお忘れなきよう。)
ここで、皆さんに一つ教えておくことがあります。この話しの設定についてです。当物語は、ごちうさの原作の時系列に添って、アニメや原作を元にした物語、オリジナルストーリーを作っていきます。
なので、現時点は、アニメでいう所の三羽の途中、(ココア逹がシャロのバイトのことを知った話しから、皆でお泊まりした時の話しの間)と、いうことになりますので、皆さん、ご理解ください。
では、小説に話しを戻します。今回はついに、レオのいう"あの子"の正体が明らかに!(といっても皆さん、分かっていると思いますが、笑)
それでは、どうぞ!



 

 

 

 

ラビットハウスside

 

 

 

「‥‥‥よし。大分上手くなったな。今日はもうこれくらいで良いだろう。」

 

ラテアート特訓開始からおよそ二時間、二人はようやくリゼ教官から合格サインをもらった。

 

「よ、ようやく終わりましたね…。」

 

チノはとても疲れきった表情をしていた。

 

「でもリゼちゃんのお陰でラテアートがとても上手になったよ。」

 

(そりゃあ、二時間もやっていたら、嫌でも上手くなるじゃろうて。)

 

ココアの言葉にティッピーはそう思いながら嘆息した。

 

「ああ、特にココアはよく頑張っていたな。もう少し練習すれば、お客さんに出しても大丈夫だろう。」

 

((あれだけやらせておいて、まだやる気か(ですか)。))

 

チノとティッピーは心の中でシンクロし、もう勘弁して欲しいと言わんばかりの顔をした。

 

「ううん。私が頑張れたのはリゼちゃんが一生懸命教えてくれたからだよ。私が上手くなったのも本当にリゼちゃんのお陰だよ。本当にありがとね。リゼちゃん!」

ココアのお礼の言葉と素直さに、チノとティッピーは眩しさで目を眩ませた。

 

((なっ、なんて純粋な…))

 

またリゼも、言葉に顔を赤くした。

 

「そ…そんなに煽てても…」

 

リゼの手は無意識にティッピーを掴み…。

 

「私からは何も出ないぞー!!!」

 

照れ隠しにティッピーをココアにおもいっきり投げ飛ばした。ココアはそれをギリギリ横にかわしたが、ティッピーはそのまま喫茶店の出入り口の扉に一直線。

 

「ノオオオオオォォォォォーーーーー」

 

「「あ‥‥」」

 

リゼは我に帰り、ココアも後ろを振り返る。が投げ飛ばされたティッピーは止まる気配が全くない。

 

「ティッピーーーーー!」

 

チノの声が客が誰もいない店内に響いたその時、扉のドアノブが反時計回りにひねられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

レオside

 

 

「‥‥‥‥‥」

 

 

目的地に近づけば近づくほど自分の足取りが重くなっていく様な気がする。青山に教えてもらった道順が正しければ、もうすぐ"ラビットハウス"が見えてくるはずだ。しかし、俺はその距離が一歩一歩縮まって行くごとに、俺の中にある不安が徐々に大きくなっていく様な心境だった。もしかしたら、俺は心の何処かで"あの子"に会うのを恐れているのかもしれない。"あの子"に会ったらまず、何を話せば良いだろうか、どの様に接すれば良いだろうかなどと考えれば考えるほど気が滅入る。だが、今さらくよくよしても仕方ない。俺は自分の"過去"と向き合うために来たのだ。いい加減覚悟を決めなければならない。そうこう考えている内に俺はいつの間にか"Rabbit House"と書かれた垂れ看板の前に立っていて度肝を抜いた。

 

(えっ!ウソ!もう着いたのか?)

 

そして俺は、視点を看板から、それが吊るされてあった建物に変えた途端、目を大きく見開いた。

 

(知ってる‥‥‥。いや、覚えてる。やっぱりこが"ラビットハウス"だ!)

 

俺は、十年前と比べ、その全くの変わりようのなさにまるで過去に戻って来たかの様な心地だった。

 

俺はしばらく、店の周りを見回した。

 

(ホントに外は何も変わってないな…。でもなんか店内が騒がしい感じがするが気のせいか?)

 

俺は不思議に思いながら、店の扉の前に立った。

 

心拍が上がっているのを感じる。もし、扉を開けて、一番最初に"あの子"と鉢合わせたら‥‥と思うと、どうしても足が竦んでしまう。

 

(そういえば、十年前もこうやってなかなか入ろうとしなかったっけ。)

そう思い返しながら、俺は苦笑いをした。それに何故か、今は扉を開けてはいけないと、俺の勘が訴えている。

 

(‥‥いや、それは俺が"あの子"に会うことに緊張しているだけだ。もう覚悟は決めたんだ‥‥‥。)

 

俺はドアノブに手をかけ、大きく息を吸い、吐き出した。

 

(‥‥‥‥よし。)

 

俺はドアノブを時計回りにひねり、扉を開けた突如、

 

「ティッピーーーーー!」

 

と言う女の子の声が聞こえてきて‥‥‥‥

 

 

 

 

 

「えっ?」

 

 

 

 

 

 

 

俺の顔面に何やら白くモコモコした物体が高速で直行して来る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(‥‥‥‥やっぱり、もう少し時間を置いてから入れば良かった‥‥‥‥‥。)

 

 

などと思っているうちに、俺の視界は一瞬にして暗くなって‥‥‥‥

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、物語は交錯する‥‥‥‥。

 

 

 

 

 

 

ドサッ!

 

俺は、その威力に逆らえず、そのまま後ろに倒れてしまった。

 

「いってててててーーー」

 

後ろ向きに倒れたが、幸い背中にリュックを背負っていたため、怪我をするまでには至らなかった。すると、俺の顔に乗っていた白い物体が一人でに離れて、今度は俺の胸の上に飛び乗った。俺はようやくその白い物体の実体を捉えることができた。

 

パッと見、白い毛玉だ。だが、よく見ると上の部分に耳の様なものが生えており、真ん中辺りの左右に目の様なものがついている。間違いなく生き物だ。

 

(と言うか‥‥‥こいつ、どこかで見たことある様な‥‥‥。)

 

そしてティッピーもまた、

 

(はて?こやつ、どこかで見たことがある様な‥‥‥。)

 

人と兎(の中に入った人)が見つめ合っている中、また店内から、二人の女の子が慌てた顔で走って来た。

 

「お、おい、大丈夫か!?」

 

「お兄さん、大丈夫!?」

 

と心配そうな表情で二人の女の子が言ってきた。 俺も心配をかけないようにと言葉を返そうと思ったが……

「あ、ああ。大丈夫だ‥‥‥‥‥よ。」

 

俺は途中で言葉を詰まらせた。その理由は、二人の女の子の後ろから、最初の二人よりも更に幼げな女の子が心配そうな顔でやって来るのが目に入ったからだ。

 

「あ‥‥‥あの、大丈夫ですか?」

 

俺はその質問にも答えず、俺はただその子をずっと見ていた。

 

あの薄い水色の髪に、あの顔、十年前の"あの子"そのものだった。

 

「あの、どうかしましたか?」

 

今度は、不思議そうな顔で俺を見始めた。

 

そして俺は、十年前、この街で一緒に過ごした、"あの子"の名前を口にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チ‥‥‥チノ‥‥‥‥か‥‥‥‥?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「えっ‥‥?」」」」

 

三人と一匹は驚いた表情を浮かばせた。

 

その時、

 

「レオ君? レオ君じゃないか!?」

 

突如、店内から俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。

 

すると、

 

「レオ?レオじゃと!?」

 

別の方向からも俺の名前を呼ぶ老人の声が聞こえた。が、俺の意識は店の奥の男性に向けていたため、大して気にも止めなかった。男性は、驚きと安心の表情を浮かばせていた。俺は、口を開いた。

 

「お、叔父さん?」

 

男性…叔父さんは懐かしそうに答えた。

 

「ああ、そうだよレオ君。本当に大きくなったね。」

 

その言いながら、叔父さんは俺の左肩は軽く数回叩いた。

 

「はい。お久しぶりです。」

 

「いや〜それにしても随分遅かったね。連絡も取れないから心配したよ。」

 

「いや〜すみません。俺も色々ありまして………」

 

そして、俺と叔父さんはその場で語り合い始めた。

 

しかし、1、2分後、状況が全く飲み込めていない三人を見て、話しを一時中断した。

 

「ああ、皆すまない。ココア君とリゼ君は初めて会うね。紹介するよ。彼は香風 玲央。私の弟の息子で、チノの従兄だよ。」

 

という叔父さんの紹介に………

 

「「「えぇーーーーー!!」」」

 

三人はとても驚いた表情で声を張り上げた。。その様子から見て、やはりチノは俺のことを覚えていない様で少し悲しかったが、それをこらえて、俺からも笑顔で自己紹介した。

 

 

 

「初めまして。俺は香風 玲央です。この街には十年前に来て以来で、仕事の都合でまたしばらくこの街で過ごすことになりました。皆、どうかよろしく!」

 

 

〜to be continued〜




いかがでしたでしょうか?
"あの子"の正体はチノちゃんでした。(皆さん分かってましたよね。笑)
この小説を書いていて、つくづく思うことがあります。
「ごちうさほど書きやすい二次創作小説はない!」
ちなみに、次回作の題名は未定です。(すみません。)
では、次回もお楽しみにください。
それでは、また!


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order3 〜友達と妹?と失敗作〜

皆さんお久しぶりです。
今回は投稿が遅くなり大変申し訳ありません。
一時、飽きかけていたのですが、ごちうさの最新刊を読んで、消えかけていた作者魂に再び火がつきまして、やっと完成しました。
では、いよいよレオはラビットハウスのメンバーと関わりはじめます。
それではどうぞ!


その後、叔父さんが詳しく説明したお陰で、三人とも、なんとか理解してくれた(勿論、チノの件は伏せてくれたが…)。

すると突然、桃色の髪と制服を着た女の子が目の前に立って、天真爛漫な笑顔で自己紹介をした。

「初めまして!私は4月からここに下宿してお世話になっています、 保登 心愛です! 高校一年生で、チノちゃんのお義姉ちゃんでs」

「違います。」

 

ココアが完全に言い終わる前にチノはさらりと否定する。俺はただ「あはは…」と苦笑いするしかなかった。

 

すると今度は、紫色のツインテールの女の子が何やら申し訳なさそうに近づいて来た。身長はココアよりも高く、どこか大人びた凛々しさもあった。そして、話しにくそうにこう言った。

 

「私は手々座 理世です‥‥‥。高校二年でこの喫茶店でアルバイトをしています。‥‥‥その‥‥‥ティッピーを投げつけたのは私です‥‥‥。わざとではないとはいえ‥‥‥本当にすみませんでした!」

 

バッ!と、リゼはまぶたを強く閉じて、勢いよくかつ丁寧に腰を曲げて誤ってきた。

 

俺はそれ以前にあの兎を投げつけたのがこんな女の子だということに驚きを感じた。実際、飛んできたティッピーを顔面で受けた衝撃はなかなかの物だった。体が兎毛で被われている毛玉兎だったから良かったが、あれがもし、もう少し硬い物体だったらと思うと‥‥‥思わず身震いしてしまう。

 

(一体この子の何処にそんなパワーがあるのだろう?)

 

俺はそんな疑問を抱えながら目の前のリゼを宥めた。

 

「大丈夫だよ。俺はどこも怪我はしていないし、多分ティッピーも怪我はしていないと思うから。」

 

「い、いえ、でも私が悪いん…です。本当にごめんなさい!」

 

それでは尚、リゼは誤り続ける。これは自分の気が済むまで誤り続けるつもりだろう。これで切りがない。こういう時は、話題を変えて気を反らすのが一番だ。

 

「リゼ‥‥‥で良いかな?さっきから話し難そうな感じだけど、もしかして、人にはあまり敬語は使わないのかな?」

 

突然の話題にリゼは思わず目を丸くした。だが俺の質問にはしっかり答えた。

 

「ええ、まぁ、はい。そうですけど‥‥‥」

 

俺は唇に笑みを作り目を少し細めてこう言った。

 

「じゃあ俺にも敬語で話さなくてもいいよ。リゼの話しやすい話し方で構わないよ。」

 

リゼはますます目を見開いたかと思いきや、すぐ目を思いっきり閉じて顔を左右に何度もふった。

 

「いえいえ!そういうわけにはいかないですよ!だってレオ‥‥さんは私より年上ですし、何より、あんな事をしておいて敬語を使わなくていいだなんて出来ませんよ。」

 

徐々に話しの勢いが落ちていくリゼ、まだ多少引っ張っているみたいだが、なんとか話題を変えることはできた。俺は両膝に手を乗せ、体重を預けリゼとほぼ同じ目線に立った。

「さん付けもいらないよ。俺はリゼと友達になりたいんだ。友達に年の差は関係ないし、こんなことぐらい気軽に許せる関係になりたいんだ。」

 

「と‥‥‥友達。」

 

リゼがそう呟いて少しうつ向いている間に俺は元の体勢に戻して、右の手を彼女の目の前に差し出した。リゼは、はっと俺の方を見た。俺は唇を左右に引き延ばしながら…

 

「これからよろしく、リゼ。」

 

リゼはしばらく呆然とした顔で俺の顔と差し出された右手を交互に見た。やがてリゼの顔にも笑みが浮かび、彼女も同じ手伸ばして俺の手を握った。

 

「‥‥ああ、こちらこそ、よろしくな‥‥‥‥レオ。」

 

そうやってお互い笑みをこぼしていると外野から

「ずるーい!私もお友達になりたーい!」

 

と、怒ってる様で怒ってない様な明るい声が聞こえてきた。声の主は俺の予想どおりココアだった。さっきチノがココアの話しに割り込んできて、その後リゼが話しかけて来たため、俺も挨拶を返せていなかった。

 

「あ…ああ勿論だよ。これからよろしくな、ココア。」

 

と言ってココアに手を差し出すと、ココアは両手で俺の手を握り返し満面の笑みでこう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うん!こちらこそよろしくね!"レオお兄ちゃん"!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥へ?‥‥‥お兄‥‥ちゃん?」

 

店内にしばらく沈黙が流れた。

 

「な…なぁココア。おまえは俺と友達になりたいんだよな?」

 

俺が苦笑いしながら問いかけると、

 

「うん!そうだよ!」

 

ココアは笑顔で返答する。

 

「じゃあ、お兄ちゃんって呼ぶのは少し変じゃないかな?」

 

「だからレオお兄ちゃんは私のお友達でお兄ちゃんだよ。」

 

「いや、わけわからん。」

 

突っ込んだのは俺ではなく、リゼだった。俺はそのリゼの言葉に便乗した。

 

「そうだよココア。俺はココアと出会ったばかりでお兄ちゃんとして振る舞ってないしそれに‥‥‥」

 

俺は誰も聞こえないように小さな声で呟いた。

 

「‥‥‥それに俺は"そう"呼ばれる資格もないから‥‥‥」

 

するとココアはきょとんとして尋ねてきた。

 

「レオお兄ちゃん、今何か言わなかった?」

 

「‥‥‥いや。何でもないよ。」

 

さすがに一番近いココアにはかすかに聞こえていた様で俺は一瞬ドキッとしたが、幸い旅の経験で幸か不幸か感情を隠すのが得意になっていた俺はそれ以上感ずかれることはなかった。

しかし、これ以上拒み続けているとなんでなんでと質問攻めされて埒が明かない気がしたので‥‥‥

 

「‥‥‥‥‥わかった、いいよ。ココアの呼びたいように呼んで。」

 

「わーい!じゃあよろしくね!レオお兄ちゃん!」

 

「ああ、よろしく、ココア。」

 

今日一日で色々と疲れていた俺は渋々苦笑いで了承し、ココアと二回目の挨拶を交わした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしても、このコーヒーの量はなんだ?」

俺は店のテーブルの上に置かれた大量のコーヒーが入ったカップを見て言った。近づいて見ると、コーヒーにはミルクで絵が書かれている。

 

「ああ、ラテアートか。」

 

俺も旅の途中でいろんな喫茶店を見てきたから知っていた。いや、それ以前に十年前に当時のマスターだった俺の祖父が一度俺にやって見せたのを覚えているが、

 

「こ、これは‥‥‥‥」

 

目の前にあるラテアートはどれも芸術的とはいえなかった。

 

「ああそれは、チノとココアが作ったやつだよ。さっきまで練習していたんだ。」

 

とリゼが説明する。その後ろでココアは照れ笑いして、チノは顔を赤くしてうつ向いていた。

 

「あっ、でもねでもね!最後に作ったのはすごく上手に出来たんだよ!」

とココアが言って、自分の傑作を探して俺の前に差し出した。見て見るとコーヒーの中に白い薔薇が咲いていた。細かい部分まで再現されていて、あの大量の失敗作から比べるととても大きな進歩だった。

 

「へぇ、すごいじゃないか。よく出来てるよココア。」

 

と俺が褒めると、ココアは「えへへ〜」と照れていた。そして俺はふとある事を思いついた。

 

「じゃあ俺も一つ作って見ようかな?」

 

「「「えっ!?」」」

 

三人の女の子は同時に声をあげた。

 

「レオ君、ラテアートをした事があるのかい?」

 

という叔父さんの質問に対して、

 

「はい、十年前に祖父から少し教わったぐらいですけど‥‥‥」

 

と俺は答える。

 

「いや、ラテアートはそう簡単にできるものじゃないぞ。」

 

「そうだよ。私も今日ここまで出来るようになるまで二時間はかかったんだからね。」

 

という風にリゼとココアが言ってきた。

 

「でも楽しそうだし、一回作らせてよ。」

と言いながら、近くにあった何も書かれていないブラックコーヒーとラテアート用のピックとミルクの入った入れ物を取り出した。

 

「えっと‥‥‥確か‥‥‥」

 

俺は十年前に祖父がやって見せたのを思い出しながらラテアート作りを開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして数分後‥‥‥

 

「よし、出来た。」

 

と言って完成したラテアートをココア逹に見せた。

 

すると‥‥‥

 

「「「えーーーー!?」」」

 

三人の女の子は驚きの表情を浮かべた。

 

「こ、これは!?」

 

タカヒロの叔父さんも(ついでに叔父さんの頭の上に乗っていたティッピーも)目を丸くしている。

 

コーヒーカップの中には、目を疑うほどに再現されたローマのコロッセオが描かれていた。

 

「レオ…お前本当に初心者なのか?」

 

というリゼの質問に、

 

「おう、初心者だぞ。」

 

と俺は答える。

 

「すごーい!レオお兄ちゃんどうやったの?」

 

というココアの質問には、

 

「いや、昔ラテアートを作ってもらったのを、旅で見てきたコロッセオを思い出しながら作っただけだよ。」

 

と返した。

 

「レオ君は昔から物覚が良くて、手先が器用だったからね。」

 

と叔父さんが思い耽っていると、

 

「多分、そんなレベルじゃないと思います。」

 

とチノが答えた。

 

「ホントにすごいよレオお兄ちゃん!コツ教えて!」

 

ココアが目を輝かせて頼んできたが、

 

「ごめん、俺は少し出来るだけで教えられる訳じゃないから‥‥‥」

 

さすがに教えるのは難しいと思い丁重に断った。

 

「いや、これは少しとは言わないだろ。」

 

リゼが少し呆れ顔で言う。

 

「でもこれは俺の記憶と感覚だけで作ったから、参考にはならないと思うよ。」

 

俺がそう答えると、

 

「逆にすごいよ!」

 

ココアが大声で指摘した。

 

その時、「ごほん」っと叔父さんがわざとらしい咳払いをした。俺逹四人は一斉に叔父さんの方を見た。

 

「皆そろそろいい時間だし店を一旦閉めようか。それと、失敗したやつもちゃんと処理するように。」

 

「「「あっ‥‥‥‥」」」

 

山の様なコーヒーを見て呆然とする三人組。俺は三人が不敏だと思い、

 

「あ‥‥‥俺も手伝うよ。」

 

と言うと即、

 

「「「是非お願いします!」」」

 

と言われ、いよいよ後に引けなくなってしまった。

 

(今夜ちゃんと眠れるかなぁ‥‥‥‥)

 

そう思いながら俺は一つ目のコーヒーカップに手を伸ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに俺の作ったラテアートは、ココアがしっかりケータイのカメラに収めた。

 

 

 

 

 

〜to be continued〜

 

 

 

 

 

 




いかがでしたでしょうか?
今回はココアとリゼがレオとどう関わっていくのか、そしてレオのことについて少々知ることができたかなぁと思います。
ごちうさの最新刊を読んだ時、私の書くこの小説はどこまで書いていこうかと思いました。できれば、最後まで書いていこうと思っています。(それまで私が本当に小説を書くのを飽きていなければの話しですが…)
さて、これからですが、ラビットハウス編はあと二話ぐらいになる予定です。次回はまた、レオの凄さをまた一つ知ることになると思いますので是非お楽しみに。
それではまた!


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order4 〜大いに悩め若人(わこうど)よ〜

皆さんお久しぶりです。
ようやく試験から解放されてまた小説を書くことができました。
ここで皆様に謝罪すべきことがあります。前回の後書きで書いた次回の予告の内容ですが、どうしても今回の話しに持ち込むことができませんでした。次々文を付けたしていく内に、私自身の規定文数に達してしまいました。予告も予定通りにできないことがどれだけ重い罪なのかは重々理解しています。
本当に申し訳ございませんでした。
小説を書きはじめてずっと謝りっぱなしの私ですがこんな私の小説を読んで下さっている皆様にはとても感謝しています。これからもこんな私の小説を応援してくれたらとても幸いです。
では、最後までお楽しみください。


それでは、どうぞ!


〜一時間後〜

 

「や、やっと全部飲み上げたよ〜」

 

ココアはそう言ってぐったりした。

 

「こ、こんなにコーヒーを飲んだのは初めてです。」

 

チノもつらそうな顔で言った。

 

「私も途中でちょっと嫌になってきた。」

 

と言いながら、リゼは苦笑いをする。

 

「まぁ全部同じコーヒーだったからね。無理もないよ。」

 

と俺は言う。(ちなみに、コーヒーも時間が経ってかなりぬるくなっていた。飲めない訳じゃなかったが…)

 

すると、二階に行っていたタカヒロの叔父さんが戻ってきた。ちなみにティッピーも一緒だ。

 

「ようやく片付いたようだね。レオ君もすまないね。手伝ってもらって。」

 

「いえ。いいんですよ。コーヒー美味しかったですし。」

 

叔父さんは申し訳なさそうにしていたが、十年前は、まともに飲めなかったこの店のコーヒーがこうやって美味しく飲めるのは感慨深い。

だが、しばらくブルーマウンテンは飲みたくない。あとこれをペンネームにしている小説家にもあまり会いたくない。

 

「そうかい。では、俺は今からバーの支度をするから、ココア君とリゼ君は使ったカップを洗っておいてくれるかい?」

 

と、叔父さんが頼むと、

 

「「はい!」」

 

と言って二人は席から立ち上がった。俺は二人の素直さに感心していると次に叔父さんは、

 

「チノはレオ君を部屋に案内してくれるかい?今さっき部屋の用意をし終えた所だから、場所は解るね?」

 

という風にチノに指示した。チノは少々困惑した様子を浮かべだが、「は…はい。」と言って渋々了承し、立ち上がった。

俺も今の叔父さんの言葉には驚いたが、同時に叔父さんの考えも読めた。叔父さんは俺とチノのこれからのために、なるべくチノを俺と関わらせようと思っているのだろう。

そんなことを考えながら、俺も立ち上がり、チノの後についていった。その前に俺は叔父さんの前に立って、

 

「あの、今日からまたしばらくお世話になります!」

 

俺はそう言いながら姿勢を正し、お辞儀をした。

すると叔父さんは何も言わず、目を閉じ、ただ笑みを浮かべながら俺に向かって歩きだした。そしてすれ違い際に俺の肩に優しく手を置いて…

 

「こちらこそ、"これからチノを頼んだ"よ。」

 

叔父さんはそれだけ言うと、台所に向かって行った。

声こそは俺と叔父さんにしか聞こえないほどの小さなものだったが、置かれた手は、娘(チノ)に対する思いが俺の肩の上に重くのし掛かり、かけられた声もまた、俺の中で力強く響いた。

"あの頃"の俺逹に戻ることは、叔父さんの望みであり、"あの人"の望みでもあるから‥‥‥

 

「‥‥‥はい。」

 

俺は振り返らずそう答え、階段を登り始めたチノについていった。

その時、突如背後から鋭い視線を感じ、後ろを振り返って見ると、そこには誰もいなかった。

 

(気のせいか?‥‥‥)

 

俺はそう思いながら、また歩きだした。しかし、俺は気づいていなかった。扉の影から殺気だった目で俺を睨み付けていた、ティッピーの姿を‥‥‥

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

(間がもたない…。)

 

お互い無言な中で、部屋まで案内してくれてるチノの後をついていっている中、俺はそう心の中で呟いた。

 

思いば、俺とチノはお互いのことを知ってから一言も言葉を交わしていなかった。ラテアートのコーヒーを飲んでいる時も、ココアとリゼはいろいろと話しかけてくれたり、俺自身も二人に話しかけたりしていたが、チノとは全く会話をしていなかった。

俺の理由としては、解らなかったからだ。チノは俺のことを覚えているのか、覚えていないのか、それとも思い出したのかどうなのか全く解らない。

もし、覚えている、あるいは思い出したのなら、"約束"を思いっきりすっぽかした俺の対応に困っているのか、いや、もしかしたら、そんな俺とは話す価値もないと蔑んでいるのかもしれない。ホントにもしそうだったらどうしよう…。これからちゃんと向き合おうと思っていたのに、序盤からこれじゃあ先が思いやられーーー

 

「あの、どうしたんですか?」

 

「えっ‥‥‥?」

 

ふと顔を上げると、またも心配そうな顔で俺を覗き込んでいるチノがいた。チノが俺のことを知ってから話しかけてくるのは初めてだった。

どうやら俺はずっと考え込んでいて、いつの間にか頭を抱えてうずくまっていたようだ。俺は慌てて立ち上がり、右手で髪をかきながら軽く笑いながら、

 

「いや、何でもないよ。」

 

と、優しい口調で答えた。

 

「本当に大丈夫ですか?」

 

チノは尚心配そうな顔で言ってくる。

 

(まぁ、はたから見たら変な風に見えるよなぁ。)

 

そう考えながら頭の中で苦笑いするも、心配してくれたチノには、言うべきことを言わなければならない。

 

「本当に大丈夫だよ。‥‥‥‥ありがとう。心配してくれて。」

 

("ごめん"ではなく、"ありがとう"と言おう。)

 

これは、俺が旅の中で得た教訓の一つだ。

人は謝ってもらうより、感謝された方が嬉しく思えるのだ。(ただし、謝る時はちゃんと謝ろう。)

すると、チノが突然後ろへ向き直り、「そ、そうですか…」と少し暗めの声で言ってまた歩きだした。

 

(えっ!?俺なんか気に触る様な事言った?)

 

やっとまともに会話ができたと思ったのに、もし何か怒らせることを言ってしまったのならとてつもなく不味い。ここは謝っておくべきか?いや、その前にどうしたのか聞いておくべきかもしれない。旅をしていた時はいろんな人と気軽に話せたが、チノに関しては、その人逹とおんなじ風に扱って良いわけがない。どうしたらーーー

 

(ホントに大丈夫なんでしょうか?)

 

再びうずくまっている俺を見て、チノはそう考えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜食器洗いside〜

 

一方、リゼとココアは使ったカップを洗っていた。リゼが洗剤でカップを洗って、ココアがそれを拭き取っていた。半分ほど片付いた時、

 

「ねぇリゼちゃん。」

 

突然ココアが話しかけて来た。

 

「ん?」

 

リゼは軽く反応した。他愛もない話題だろうと思っていた彼女の予想は次のココアの一言で、裏切られることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「レオお兄ちゃんってカッコいいよね!」

 

「!!!!!///」ビクッ!

 

リゼは思わず持っていたカップを滑らせ、カップは中に舞い、床に落下しそうになった。

 

「あわわわわわわ!」

 

慌てて掴もうとするも手も洗剤の泡まみれでうまく掴めない。4、5回ほど手から滑らせるが、なんとか両手でキャッチしひとまずホッと一息置くが、

 

「いきなり何言い出すんだ!びっくりしただろ!」

 

すぐさまココアを怒鳴る。

 

「えへへ〜♪ごめん、ごめん。」

 

笑いながら謝るココアに、リゼはやれやれとため息をつく。しかし、先ほどのココアの発言が蘇りリゼは再び顔を赤くした。

 

「そ、それで、どうしてそんなことを聞くんだ?///」

 

リゼがココアにそう質問すると、

 

「だってステキな人だと思わない?優しくて、話しも面白くて、なんかすごくて、一緒にいてとっても楽しいもん。リゼちゃんはどう?」

 

「‥‥‥‥‥」

 

リゼは押し黙った。なぜなら自分もレオに対しココアと同じく、何かしら印象を持っていたからだった。だが、リゼの印象はココア以上だった。

 

「俺はリゼと友達になりたいんだ。」

「これからよろしく、リゼ。」

 

彼に笑顔でそう言われ、手を差し出して来た時、自分の中にある"何か"が大きく弾みだし、体がみるみる熱くなっている感覚を覚えた。しかし、これが一体何なのかリゼには解らなかった。しかし、これは決して誰かに晒してはいけないことだけは本能で理解できた。少なくとも、彼だけには絶対にーーー「…ちゃん。」

 

「リゼちゃんってば!!」

 

「うぇっ!!」ビクッ!(二度目)

 

ココアに大きな声で名を呼ばれ、リゼは我に帰った。しかし、今度はカップを滑らせることはなかった。というのも、

 

「どうしたのリゼちゃん?流し台がすごいことになってるよ?」

 

「えっ‥‥‥あっ。」

 

気がつくと、流し台が泡でいっぱいになっていた。どうやら考えるのに夢中になって、無意識にカップを洗っている内に洗剤の泡がとてつもないくらいに立ち込んでしまったようだ。手首から先が泡に飲み込まれて見えなくなっている。

 

「ど、どうにかしないとな。」

 

というリゼの言葉に、

 

「うん。そうだね。」

 

と、ココアは答える。

 

その後、なんとか流し台の泡を片付け、カップ洗いを再開した。

 

 

 

 

 

 

 

「それでリゼちゃんはレオお兄ちゃんのことどう思ってるの?」

 

「結局それを聞くのかよ!!」

 

 

 

 

〜to be continued〜

 

 

 

 

 

 

 




いかがでしたでしょうか?
今回はレオとチノが打ち解けはじめ、リゼがレオのことを気になり出したという回でした。ココアに関しては、彼女はあくまでレオのことを兄としてしたっているため、リゼみたいな"そのいうこと"はまだありません。今後の彼女達の様子をゆっくり眺めることにしましょう。
そして、次回の話しですが、題名は、"クッキングマスターレオ"です。もう先に言っておきます。次回は必ずこの題名に準ずる話しを投稿しますのでよろしくお願いいたします。


それでは、また!


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order5 〜クッキングマスターレオ〜



皆さん超お久しぶりです!お元気でしょうか?
あれからどれくらいたったでしょうか?とにかく、皆様をこんな長い間待たせてしまったことを深くお詫び申し上げます。これからも私のクソつまらない小説を読んで下って、少しでも楽しんでいただけたら幸いです。


それでは、堅苦しい挨拶はこれくらいにしていよいよ本編です。今回は、2019年初投稿ということで、いつもより、長めにいたしました。(べ、別に前回予定した所までに話しがまとまりそうになかったから、やむを得なくって訳じゃないからね!)では、どうぞ最後までお楽しみください。

それでは、どうぞ!



 

 

 

 

レオ&チノside

 

「ここです」

 

と言い、チノは二階の奥の部屋のドアノブに手をかけ、扉を開けた。

 

「どうぞ」

 

チノはそう言って俺に部屋へ入るよう勧める。俺は恐る恐る部屋に入ると、思わず息を呑んだ。

 

「こ、これは…」

 

部屋には、整えられた立派なベッド。仕事をするには十分すぎる机。部屋の中央には段ボールがあり、部屋に入って中を調べると、中身は俺が一週間前に送った仕事で必要な資料(後に詳しく説明する)が入っていた。顔を上げ、再び辺りを見回すと、部屋の隅に高さを変えられる大きな本棚が数個置いてあった。

 

「す、すごい…」

 

全部叔父さんが俺の為にわざわざ用意してくれたのだろう。叔父さんのおもてなしに俺は感激せざる得なかった。すぐに叔父さんにお礼を言わねばと、俺はとりあえずリュックとキャリーバック部屋の中に置き、電気を消して、部屋のドアを閉めた。すると、扉の前でチノが真顔で俺のことを見て立っていた。俺は一瞬驚いたが、まずはこの子から叔父さんについて聞いておこうと思い、

 

「あれ、叔父さん…君のお父さんが全部用意してくれたの?」

 

「はい、そうです」

 

「そっか、なら今すぐ叔父さんの所に行ってお礼を言わないと」

 

そう言って、俺は一階に向けて歩きだし、2、3歩ほど歩いた時背後から、

 

「あ、あの!」

 

突如呼び止めらた。声の主はチノであることは分かったが、何のきっかけもなくチノが俺に話しかけて来たのは初めてだった。

 

「私達、昔会ったことがあるんですよね?」

 

しばらく間を置いて放ったチノの言葉に俺は内心激しく動揺し、足を止めた。

 

「あ、ああ…そうだよ」

 

俺は振り返らずそうなんとか答える。動揺している様子をチノに見られたくないのもあるが、昔を話しをしてきたチノに俺は顔向けできなくなった。もしかしたらチノは十年前のこと思い出したのかもしれない。もし、そうだったとしたら…

 

「あの…昔、あなたのことを…」

 

俺は息を呑んで次のチノの言葉を待った。

 

"チノが過去のことを思い出す"

 

いずれその時が来ると覚悟はしていたが、会って一日も経たずに来るとは思っていなかった。心の準備が完全にできた訳じゃないが、どんな言葉も受け止めるつもりだ。

 

今まさに、チノは昔のことの思い出してーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は"どう"呼んでいたんですか?」

 

 

 

ーーーーーーーいなかったようだ。

 

俺は「えっ」とあっけにとられ、思わずチノの方を振り向いた。チノは、顔を若干赤らめ、どこかもじもじしていた。この言葉を言うのにかなりの勇気を出したのだろう。しばらくするとチノは続けて、

 

 

「私、昔のことをよく覚えていないんです。だから、あなたのことも何て呼んでいたのかも思い出せなくて…」

 

ありがたいことに昔のことを思い出していないことも教えてくれた。

 

(チノが昔俺のことをどう呼んでいたのか、か…)

 

チノの質問に俺はある迷いが生じた。"チノに昔のことを教えるべきか、否か。"彼女に昔の呼び方を教えるということは彼女に過去の一部を教えるということ。俺は、チノが混乱することを恐れて、全てを話すことができない。最悪な結果を避ける為にはチノ自身が思い出すしかない。が、一部を話せば思い出すきっかけにはなるかもしれない。だが、それでも俺は迷った。この俺にチノが昔の呼び方で呼ばれる"資格"はないからだ。しかし、俺とチノはいずれ、互いに過去と向き合わなければならない。どう呼ばれていたのかを教えるのは、そのきっかけになるだろう。でも…

 

 

 

「…チノ」

 

「は、はい」

 

迷いに迷って、俺は緊張しているチノの前に立ち、中腰になり、チノとほぼ同じ目線になって言った。

「別に昔に合わせる必要はないよ」

「えっ…?」

 

予想もしてない答えが帰って来て困惑しているチノに俺は続けて、

 

「昔は昔、今は今だ。無理して昔のことにこだわることはないし、俺に気を使おうとしてるつもりなら、その必要もないよ。チノが呼びたいように呼んでかまわない。でも、どうしても昔の呼び方がいいのなら教えるけれど…どうする?チノが決めなさい」

 

「‥‥‥‥‥‥」

 

チノは黙ってうつむいた。

俺は内心、最低だと思った。結局俺は、自分ではどうするか決められずチノに決めさせてしまった。それに、過去のことに囚われている俺が何を言っているんだ。矛盾しているじゃないか。自分の優柔不断さと情けなに自己嫌悪していると、チノが口を開いた。

 

「…それじゃあ、あの…」

 

頬を赤らめ、困惑したチノを見て、やっぱりチノに決めさせるべきじゃなかったと後悔したが、なんと呼ぶかを決めた様だった。

 

「…"レオさん"…でいいですか?」

 

「‥‥‥‥」

 

(…"レオさん"か…)

 

昔の呼び方とは違うが、俺にはもう"あの呼び方"で呼ばれる資格はないし、チノの好きに呼ぶように言ったのは俺だ。嫌と言う理由はないし、気に入ってない訳ではない。

 

「ああ、それでいいよ。改めてよろしくな、チノ」

 

「こちらこそ、よろしくお願いします。レオさん」

 

俺達は、はじめて互に笑みを向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「叔父さん、ありがとうございます。あんな立派な部屋を用意してくれて」

 

「礼には及ばないよ。むしろ、あんな狭い部屋ですまないないと思ってる。だからせめて、見映えは良くしようと思って色々揃えて見たんだが…」

 

「そんなことありませんよ。とてもいい部屋でした」

 

「ほかにも何か必要なものがあったら言いなさい。遠慮はいらないよ」

 

「今は大丈夫です。ありがとうございます」

 

俺はその後、バーの支度をしていた叔父さんの下へ行き、お礼を述べた。叔父さんは申し訳ないように言っているが、俺にとっては感謝極まりないことだった。一方チノはというと、ココアとリゼがまだ食器洗いを終えていなかったので二人の手伝いに行った。そう言えば、リゼの顔が少し赤かったような気がしたが気のせいだろうか?とにかくお礼も言ったし、俺もココア達の手伝いをしようとキッチンに向かったが、

 

「なんだ、もう終わったのか?」

 

「あっはい、今終わりました」

 

キッチンに入った時には、ココア達はすでに洗いものを終えていて、食器棚には大量のコーヒーカップが置いてあった。

 

「ん〜っ!、それじゃあ今日はこれで終わりだね!お疲れ様!」

 

「ああ、お疲れ様」

 

背伸びしながら言うココアの言葉にリゼが答える。ふと、俺はキッチンにあった時計を見た。時刻は7時半を回っていた。

 

「もうこんな時間か…」

 

俺がそう言うと、ココア達も時計を見出した。

 

「あっ、ホントだ」

 

「もう夜ですね」

 

そう二人が言い合っていたその時、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グゥ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「‥‥‥‥‥‥‥」」」

 

「‥‥‥‥‥」カアアア

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんとも可愛らしい音がキッチンに響いた。俺とココアとチノが沈黙している中、一人顔を赤らめ、さっと腹部を押さえているリゼに俺達は視線を向けた。その視線に気づいくとさらに顔を赤くし、慌てふためいた顔で、

 

「ちっ、違う!私じゃないぞ!!」

 

「俺達まだ何も言ってないぞ」

 

「あっ…うぅ…」カアアア///

 

咄嗟に反論したがそれが仇となり、俺が返した言葉にもう言い訳ができなくなったリゼは、ますます顔の赤色に色が増し、ついにはしゃがみこんでしまった。

 

「まーまーリゼちゃん。そう恥ずかしがることないよ。私だってお腹空いたもん」

 

とリゼの肩を軽く叩きながら慰めるココア。しかし、それはかえってリゼの傷口を広げることとなり、ついに耐えられなくなったのか、バッと立ち上がったかと思うと、

 

「きっ着替えて来る!!」

 

と言って、高速でキッチンを抜け、隣の更衣室へ駆けて行った。

 

「ありゃりゃ」

 

「逃げちゃいました」

 

「まぁ当然だよなぁ」

 

等々言った後チノが、

 

「でも確かに、そろそろ夕食の支度をしないといけませんね。私がしますので、ココアさんも着替えて来て下さい」

 

「えー、私も手伝う!」

 

「制服でしたらココアさん絶対汚しますし、料理も失敗しますので結構です」

 

チノの鋭い反論にココアはめげず、

 

「だいじょ〜ぶ!お姉ちゃんに任せなさ〜い!」

 

と言い、ウインクしながら曲げた右腕は肩まで上げて袖をまくり、左腕でその腕の上腕二頭筋の部分をガッシリ掴むというポーズをとったがチノの表情は変わることはなく、

 

「任せられません」

 

「ヒドイ!!」

 

涙目でショックを受けているココア。俺はやれやれと思いながら、二人にある提案をした。

 

「じゃあ二人とも着替えに行くといいよ。俺が夕食を作るから」

 

「「えっ!?」」

 

と言って、二人ともあっけにとられた顔をした。

 

「何言ってるんですか!レオさんはお客様なんですから、そんなことさせられませんよ」

 

と遠慮するチノに、

 

「いや、俺はお客様じゃなくて、しばらくお世話になる居候者だよ。だから何かしらご奉仕しないといけないと思うからね。料理なら俺もできるし」

 

「でも、今日来たばかりで疲れてない?」

 

というココアの質問に、

 

「全然大丈夫だよこんなの。旅している時に比べたら大したことないよ」

 

「えっ、レオお兄ちゃんって旅をしてたの?」

 

ココアが驚いたように言った。

 

「ああ、言ってなかったね。…まぁそうだよ。外国を取材するために世界中を旅していたんだ」

 

「へぇーすごーい!!ねぇねぇ、レオお兄ちゃんの旅の話し聞かせてよ」

 

ココアの目が輝かせて言った。

 

「ああいいよ。夕食をしながら話そうか。準備をするから、その間にチノと着替えて来るといいよ。良かったらリゼも誘って来てくれ」

 

「うん分かった!行こうチノちゃん!」

 

「えっちょ、ココアさーん!」

 

純粋なのか素直なのか、ココアはチノを引っ張ってキッチンを出ようとした。

 

(まんまと乗せられたな…)

 

なんとか上手いこと言って、俺が料理をする流れに持って行けた。俺自身、何かここで出来ることしなければ、ただ食べて寝るだけなんて無神経なことはできない。

 

チノも最初は抵抗したが、「仕方ないですね…」と言ってそのままココアに連れて行かれた。キッチンを出る際、チノは申し訳なさそうに俺を見て、

 

「…それじゃあよろしくお願いします。材料は好きに使ってかまいませんので」

 

「ああ分かった、楽しみにしててくれ」

 

と言って笑みを見せると、チノも少しは気が軽くなったようで、こちらにも笑みを返し、ココアとキッチンを出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…さて」

 

俺はキッチンを見回して、まず冷蔵庫の中を見た。

 

「大体の材料はあるな」

 

そして、あちこち見てみると"ある物"を見つけた俺は、今晩の献立を決めた。

 

「よし、やるか」

 

 

 

 

 

 

 

数十分後、

 

「うわー!いい匂い!」

 

料理の工程も中盤に差し掛かった時、ココア達三人が私服に着替えてキッチンに入って来た。するとリゼが困惑した顔で、

 

「い、いいのか?私までごちそうになって…」

 

「ああ。皆で食べた方が楽しいだろ?それに音が出るほどお腹を空かせたリゼを放って置けないからね」

 

「うぅ…」///

 

塞ぎかけていた傷口がまた開き始め、今度は羞恥に満ちた表情を浮かべた。

 

「あの…何かできる事があったら言って下さい。手伝いますので」

 

とチノが言ってきた。

 

「ありがとう。じゃあどこで食べようか?」

 

「二階にリビングがありますのでそこで食べましょう」

 

「あれ?そうなの?」

 

俺はさっき二階に上がった時は自分の部屋しか見ていないため、他は全く知らなかった。…いや、"忘れてしまった"と言うべきか…

 

「そっか、分かった。じゃあチノとココアは二階に行って食器とかを並べてもらおうか」

 

「はい、分かりました」

 

「行こっ!チノちゃん!」

 

勇んで駆け出すココア。

 

「ココアさん。走ったら危ないですよ」

 

その言いながらチノはその後をつける。

 

「リゼはここで洗った野菜を切ってくれ」

 

「ああ、任せろ」

 

リゼはそう言って包丁を持ったその時はっとした。

 

(あれ?今私、レオと二人っきり…って何考えているんだ私は!!私は別にレオとそんな関係じゃ…)

 

そこまで考えるとリゼは思わず顔を大きく左右にふる。

 

(ええい!早く切ってしまおう…)

 

とやけになりながら包丁を握りしめ、目の前のレタスを凝視する。

その様子を見ていた俺は、

 

(何かレタスに恨みでもあるのか?)

 

と、思わずにいられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…よし。完成だ」

 

「おお…」

 

そう言いながら、フライパンの中を覗くリゼ。すると、

 

「ねぇねぇ、もう出来た?」

 

ココアが気になってキッチンに入って来た。

 

「ああ、準備できたから、ココアはこのサラダ運んでくれないか?」

 

俺はテーブルに置いておいたサラダのボールをココアに差し出した。

 

「うん!分かった!」

 

ココアはすぐさまサラダを受け取って、またキッチンを出ていった。

 

「さて、後はこのフライパンと鍋なんだけど…」

 

「ああじゃあフライパンは私が持って行くよ」

 

と、リゼは言い出す。

 

「えっ、大丈夫か?火傷するなよ」

「大丈夫だって。親父に色々鍛えられたからな」

 

リゼはそう言って、フライパンを持ち上げ、キッチンを出ていった。俺は最初は不安だったが、リゼの言った通り大丈夫そうだったので俺も鍋を持ち上げて、リゼの後について行った。

 

(そう言えば、リゼの家って一体どんなんなんだ?)

 

その疑問が俺の頭から離れなかった。

 

 

 

 

 

「夕飯だぞ〜」

 

「お待たせ」

 

そう言いながら、リゼに続いて俺も二階のリビングに入り、リビングのキッチンにそれぞれ鍋とフライパンを置いた。

 

「わーい!早く食べようよ!」

 

「焦らなくても、夕飯は逃げないよ」

 

俺は、早く食べたがっているココアを宥めながら、皆で皿に装ったり、おかずを運んだりするなどして、夕食を準備は着々と…

 

「そう言えば、さっきチノちゃんのお腹の音が鳴っていて、可愛いかったんだよ〜」

 

「ココアさん!!それ言わないでって言ったじゃないですか!!」

 

「良かったねリゼちゃん、仲間が出来て」

 

「ココア!頼むからもう掘りかえさないでくれ!」

 

 

 

「‥‥‥」

 

進んでいったと…思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ、いただきま〜す!」

 

「「いただきます」」

 

ココアに続いてチノとリゼが手を合わせて言った。

 

「ああ、召し上がれ」

 

俺がそう答え、この街での最初の夕食が始まった。

 

「美味しそうだね〜」

 

「すごくいい匂いがします」

 

「…食べてできれば感想を聞かせてくれるか?」

 

「ああ、じゃあいただくよ」

 

三人はまず、主食であるスパゲッティをフォークで絡め取り、口に運んだ。

 

「どうだ?悪くはないと思うんだが…」

 

「うん!!すっごく美味しい!!」

 

「本当か?良かった」

 

ココアの言葉に俺はひとまず安心した。

 

「ああ、本当にうまい!こんなうまいスパゲッティは初めて食べた!」

 

「いや、そこまで大袈裟なものじゃないけど…」

 

リゼからの太鼓判に、俺は謙遜した。

 

「そんなことないです。とっても美味しいですよ。」

 

「そ、そうか?なら、良かったよ。」

 

皆から絶賛され、俺も素直に嬉しくなった。

 

「私が今まで食べたスパゲッティとは何か違うな、どうやって作ったんだ?」

 

「正確には、"スパゲッティ・ボロネーゼ"。まぁ別名"ミートソース"って言うんだけど、そっちの方が分かるかな?」

 

リゼの質問に俺はそう答える。材料を見て回った時、俺はスパゲッティの麺を見つけ、今回の献立を決めた。

 

「えっ?でも、私が知っているミートソースとは何か違うような…」

 

ココアがフォークでスパゲッティを持ち上げ首を傾げた。

 

「多分、ココアが言っているのはスパゲッティの上にミートソースをかけたやつの事だろう?これはイタリア流のミートソースで、スパゲッティとミートソースをフライパンで混ぜるんだ」

 

「へぇ〜そうなんだ!」

 

ココアが何かと興味津々に聞いてくる。

 

「あの、この黄色いのって何ですか?」

 

チノがスパゲッティに乗っている黄色い粉状のものを指して言った。

 

「ああそれは、粉チーズだよ。隠し味に入れたんだ」

 

「そうなんですか、とっても美味しいです」

 

「それは良かった、ありがとうチノ」

 

「…っ!」ドキッ

 

俺がお礼を述べた途端、"何故か"チノは顔が赤くし、俺から顔反らした。

 

(どうかしたのかな?)

 

俺がそう疑問に思った時、

 

「このシチューとサラダもすっごく美味しい!」

 

ココアが声を上げてそう言ってきた。するとリゼも、

 

「ホントだな、どれも負けてない」

 

「あはは、褒めすぎだよ」

 

ここまでベタ褒めされるとさすがに照れる。

 

「ねぇレオお兄ちゃんって、どうやってこの料理を覚えたの?」

 

「このスパゲッティは、イタリアに居た時に教えてもらったんだ」

 

「えっ、イタリアで!?」

 

ココアが目を丸くすると、テーブルに手を置き、全体重を乗せてこう言ってきた。

 

「ねぇねぇ、その時の話聞かせてよ!」

 

「私も聞きたいな、その話」

 

「私も聞きたいです」

 

ココアに続いてチノとリゼもそう言ってくる。

 

「分かったよ。旅の話しを聞かせる約束だったしね」

 

俺はあの時を振り返るような表情でイタリアでの思い出を語った。

 

ーーーそう、あれは今から1年と半年前、様々な国渡り歩き、イタリアにたどり着いた俺は‥‥‥

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

行き倒れていた。

 

 

「「「えっ!?」」」

 

 

 

〜to be continued〜




いかがでしたでしょうか?私としては、気が向いた時にしか文字を打っていたにしては、よく出来る方だと思いますが…

今回は、レオとチノが互いに打ち解け初め、レオは料理がとても上手いことが分かりました。そして、レオとチノとの間には、何らかのしがらみがあるようですね。一体何なのでしょうか?そして、自分がイタリアを旅した時の事をココア達に語るレオ、行き倒れてしまった彼の運命やいかに!(まぁ生きてますけど)

それでは、いつになるのか分かりませんが、次回も楽しみにしていてください。

それでは、また!


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