ストブラの世界に転生したら神綺だった件 (柊雪)
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無人島に転生

がんばります


無人島に名もなき一人の少女がいた。

 その者の名は“神綺”《しんき》。知っている人なら分かると思うが、東方Project の怪綺談に登場している、魔界の神で、魔界の全てを創った(世界、物質と生命)と設定されているキャラだ。

そんな東方のキャラが何故無人島に居るかと言うと・・・・・

 「は?え?なにこれ、俺、確か死んだ筈じゃ・・・」

 俺は周りを見回した。すると視界には、さっきまで見ていた光景ではなく、海が広がっていた。あと、一つ気付いた。死ぬ前より明らかに声が高くなっていることに。

しかも、視界には自分の髪の毛と思われる、銀色の糸が見える。先ず日本人の俺は黒髪だったし、目にかかるほど長くないし、ましてや銀色に染めてもいない。

しかも何かちょっと胸が重い。

 「あれ?俺、女になってる?」

 そこで俺は今一度自分の容姿を、自分で見れる範囲で確認する。先ず男の時には無かった、それなりに豊かな胸。特徴的な赤い色をしたローブ?を着ている。極め付きは、自分の背後にある、3対6枚の黒に赤の模様が入っている、禍々しい羽だ。

 ここまで見て俺は自分が何になったかようやく分かった。

「俺、東方の神綺になってるし・・・」

て言うことは、ここは東方の世界?いや、それはないな。少なくとも東方の世界に、こんな広い海はなかった。

 そう、彼の目の前には青々とした大海原が広がっていた。

 じゃあここは地球か?いいや、少なくともそれも違うのは分かるのだがここは無人島であるため情報がない。

「マジかよ!誰もいないからわからんじゃないか!」 

この神綺の体のスペックが分からない以上、俺はどこかわからん世界で生きて行けるか、とても不安だった。

 まあ、恐らくは創造の能力と魔法は使えるだろう。少なくとも設定ではそうだったし。

 「兎に角、まずは自分の能力を把握しないと。まず創造の能力を試してみるか・・・」

結果から言うと、創造の能力はあった。それは物質の創造と生命の創造。概念的なものを創造することは出来なかった。最も、能力に慣れていないだけかも知れないが。

 次に魔法だが、これは東方の弾幕的なのをイメージしてやってみて、数回やったら出来るようになった。

転生して数時間でここまで出来たのだから、この体は相当なチートらしい。それに今、ここがどの辺りかも分からないし。まあ、暫くはこの島で能力の鍛練と体でも鍛えますか。ああ、それと空を飛ぶ練習でもしますか。

「それにしても、この服動きづらいなあ。そうだ!能力使って服を創ればいいんだ!」

 このあと、動きやすそうな服を何着か創って着替えた。

着替えの時、さすがに自分の体とはいえ、女性の体を見るのを躊躇った。その為、かなり時間がかかった。

それから自分で修行を続けて、多分50年位たった。

 「ふう、今日はこれでお仕舞いだね。」

 今日の修行を終え、“私”は夕食を食べることにした。因みに口調は女口調に変えている。この容姿で男口調は、とても違和感があるので、自分で何とか矯正した。

後、私は一応“神”なので本来的食事を摂る必要はないが、私は自分の趣味で食べている。後、睡眠も不要だ。

さて、修行の成果はと言うと、覇気は取り敢えずマスターした。創造の能力は今では、概念も創造できる。但し、それはこの世界に影響を及ぼす可能性があるので、自分が創った世界でしか試していない。一回試しに、概念を創造したが、想像していたよりは全然身体に負荷はなかった。生命の創造は空想の生き物だろうが、どんな生き物でも創造できた。殆ど食糧になった。

 魔法は自分が思った通りの事ができる。時間を止めるような詠唱をすれば、その通りに時間が止まる。転移等も出来た。まあ要するに、どんな魔法でも使える。

 弾幕のほうも、最初に比べて高密度で放てるようになった。(殺傷性大)危ないのでこちらではあまりやらないが。

そうそう、この50年の間に船が近くに通ることは無かったため私はまだ人に会えていないので空を飛び人がいるところを探すことに決めた。何でかってやはり一人だと寂しいからである。ではこの世界の調査と人に会ってみますか。

私はしばらく飛んでいた。え!飛んでるところ見られたらどうするのかって?考えて無かったに決まってるじゃないか。このときの私は気づいていなかったのだ。船が真下を通り、甲板の上に写真を撮っていた人物がいたことに…

甲板の上にカメラを持った人物が偶々空を見上げたときに人が飛んでいることに気づき写真を撮っていた。

「こんなところに魔族が飛んでるんなんて、それにしても確かあっちの方角には族特区があったような?」そんなことも知らずに神綺

は通過していったのである。

これが後に厄介な事を持ってくるということに…

 

 




これからよろしくね‼️


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聖者の右腕編

絃神島に到着本編まだです


どうも神綺の身体で転生した柊アリスです。え!名前ですか?神綺って名乗るのが辛いので自分で名前着けました。

 

今、私が居るところはなんと人工島の上空にいます。よりにもよってストブラの世界に転生したようです。生きていけるか不安です。ですが、頑張ろうと思います。

 

 

 

 

真夏の森―――

 

 深夜の神社境内を、煌々と燃える篝火かがりびが照らしている。拝殿に差し込んでいるのは淡い月光。季節を忘れるほどに空気が冷たく張りつめているのは、社を包む結界のせいだろう。

 

 騒がしかった虫たちの鳴き声も、今はほとんど聞こえない。

 

 少女は無言で、広い拝殿の中央に座っている。

 

 まだ幼さを残しているが、きれいな顔立ちの娘である。

 

 細身で華奢だが、儚げな印象はない。むしろ鍛えられた刃のような、しなやかな強靭さを感じさせる少女だ。そんなふうに思えるのは、生真面目そうに引き結んだ唇と、彼女の瞳に宿る強い光のせいかもしれないが。

 

 少女が身につけているのは、関東にある市立中学の制服。

 

 神道系の名門校だが、そこが師・子・王・機・関・の下部組織だと知る者は多くない。

 

 拝殿には三人の先客がいる。

 

 御簾みすに遮られて姿は見えない。しかし、彼らの正体は、少女にも事前に知らされている。

 

 ”三聖”とい呼ばれる、師子王機関の長老たちである。

 

 いずれとも最高位の霊能力者、あるいは魔術師でありながら、彼らを取り巻く気配は静謐せいひつで、威圧感がまるでない。このことが逆に恐ろしい。

 

 少女は制服の袖口を、無意識に強く握りしめている。そして―――

 

「名乗りなさい」

 

 御簾の向こう側から声が聞こえた。口調は厳かだが、冷たさは感じない。想像していたよりも若い声だった。どこか笑いを含んだ女の声だ。

 

「姫柊ひめらぎです。姫柊雪菜ゆきな」

 

  一瞬遅れて、少女は答えた。緊張でかすかに声が震えた。だが、御簾の向こうにいる女は、気にしていないようだ。

 

「それでは、まずはこれを」

 

 その言葉とともに、御簾の隙間から何かが現れた。それは二羽の蝶だった。

 

 音もなく羽ばたいて雪菜の近くに着地すると、蝶は二枚の写真へと変わる。

 

 映っていたのは、高校の制服を着た一人の男子高校生。友人たちと談笑している姿を、誰かが隠し撮りしたものらしい。無防備で隙だらけの表情だ。もうひとつの写真は

自分の背後にある、

3対6枚の黒に赤の模様が入っている、禍々しい羽使い空を飛んでる少女。

 

「この写真は?」

 

「暁古城あかつき こじょうというのが彼の名前です。しっていますか?」

 

「いえ」

 

雪菜は正直に首を横に振る。実際、初めて目にする顔だった。その答えを最初から予想していたのだろう。何の感慨もない口調でさらに訊いてくる。

 

 「彼のことを、どう思いますか?」

 

 

「え?」

突然の質問に、雪菜は戸惑う。

 

 「写真だけでは正確なことはわかりませんが、おそらく武術に関しては完全な素人か、初心者の域だと思われます。特に危険な呪物を身に着けている様子もありませんし、撮影者の存在を察知している気配はありません」

 

 「いえ、そういうことではなく、あなたが彼をどう思うかと訊いているのです。つまり、彼はあなたの好みですか?」

 

「は、はい?なにを……?」

 

「たとえば顔の良し悪しだとか、見た目の好き嫌いの話です。どうですか?」

 

「あの……わたしをからかっているのですか?」

 

不機嫌な口調で雪菜は訊き返す。長老たちの真意はわからないが、彼らの場違いな質問には悪意を感じる。床に置いた太刀に思わず手が伸びそうになる。

 

 雪菜のそんな反応に、御簾の向こうの女は落胆の息を吐き、

 

 「では、第四真祖という言葉に聞き覚えは、姫柊雪菜?」

 

さらに唐突な彼女の質問に、雪菜は小さく息を呑んだ。まともな攻魔師ならほとんど誰もが、その名前を聞いただけでしばらく沈黙することになる。

 

「焰光の夜伯カレイドブラッドのことですか?十二の眷獣を従える、四番目の真祖だと―――」

 

「そのとおり。一切の血族同胞を持たない、唯一孤高にして最強の吸血鬼です」

 

冷静な女の声が拝殿に響く。

 

 第四真祖”焰光の夜伯カレイドブラッド”―――

 

 魔族に関わりを持つ者であれば、その名を知らないということはありえない。

 

 なぜならそれは、世・界・最・強・の・吸・血・鬼・の肩書きだからだ。

 

 自らそう名乗っているいるわけではないが、少なくとも世間はそのように認識している。そして敵対している者たちでさえ、あえてそれを否定しようとしない。第四真祖とはそのような存在だ。

 

 「ですが、第四真祖は実在しないと聞いています。ただの都市伝説の類だと」

 

雪菜の言葉に、女は首を横に振る気配があった。

 

 真祖とは、闇の血族を統べる帝王。もっとも古く、もっとも強大な魔力を備えた、”始まりの吸血鬼”だ。彼らは、自らの同胞である数千万もの軍勢を従え、三つの大陸にそれぞれが、自治領である夜の帝国ドミニオンを築いている。

 

 「たしかに、公には存在が認められている真祖は三名だけです。欧州を支配する”忘却の戦王ロストウォ―ロード”、西アジアの盟主”滅びの瞳フォーゲイザー”、そして南北アメリカを統べる”混沌の皇女ケイオスブライド”―――それに対して第四真祖は、自らの血族を持たず、ゆえに領地も持たない」

 

 「然様。だが、それだけでは第四真祖が存在しない、という証明にはならないのである」

 

 女の言葉を引き継いで、男が荒っぽい口調で告げる。続いて、もう一人の長老の声も。

 

 「おぬし、今年の春に、京都で起きた爆発事故のことを覚えておるかえ?」

 

 「……え?」

 

 「四年前のローマの列車事故、それに中国での都市消滅事故も。マンハッタンの海底トンネル爆破事件もあったの。古いところではシドニーの大火災も」

 

 「まさか……それらすべてが第四真祖の仕業だと?」

 

 雪菜は表情を引き攣らせた。長老が何気なく口にしたのは、それぞれ大量の死傷者を出した凶悪な大規模テロ事件だった。いずれも犯人は不明だと報道されている。だが、それが真祖がらみの事件なのだとしたら、その程度の被害で済んだのは、むしろ幸運だったとさえいえる。

 

 「あらゆる状況証拠が四番目の真祖の存在を示しています」

 

 青ざめる雪菜に、最初の女は告げる。

 

「彼らは歴史の転換点に必ず現れ、世界に虐殺と大破壊をもたらしてきました。しかし問題はそれだけではありません。第四真祖の存在は、この世界の秩序と安定を乱します。その理由はわかりますね?」

 

「はい」

 

雪菜はぎこちなくうなずいた。

 

 吸血という種族特性と、高い教養知性を備えた彼ら吸血鬼は、常に人類と敵対する存在とは限らない。彼らの多くは人間社会に溶け込んで暮らすことを好み、人類という種族全体を敵に回すことをこれまで慎重に避けてきた。

 

 さらに各国政府と真祖たちの間には、無差別な吸血を禁止する条約が結ばれ、表向きには平和的な共存が実現しているようにも見える。だがそれは、三つの夜の帝国の力関係が、極めて微妙なバランスの上で成立しているからだ。

 

「真祖たちが聖域条約の締結に応じたのは、ここ十数年もの間、真祖同士がお互いを牽制し合う三すくみの状態が続いていたからです。彼らは常に自分以外の真祖の存在に怯え、人類を敵に回す余裕がなかったのです」

 

「はい」

 

「ですが、もし彼らと同等の力を持つ四番目の真祖が出現したら、その均衡は呆気なく崩れてしまうでしょう。最悪、人類を巻き込んだ大規模な戦争になるかもしれません」

 

 

「第四真祖の居場所はわかっているのですか?」

 

 雪菜が緊張した声音で訊く。なぜか、ひどく嫌な予感がした。

 

 

「ええ。まだ確認はとれていませんが、間違いないでしょう」

 

 

「彼は、どちらに?」

 

 

「東京都絃神市―――人口島ギガフロートの”魔族特区”です」

 

 

「第四真祖が、日本に……!?」

 

 

「それが今日あなたをここに呼んだ理由です。姫柊雪菜。師子王機関”三聖”の名において、あなたに第四真祖の監視役に命じます」

 

 静かだが、有無を言わさぬ口調で女が告げる。

 

 

「わたしが……第四真祖の監視役を?」

 

 

「ええ。そして、もしあなたが監視対象を危険な存在だと判断した場合、全力をもってこれを抹殺してください」

 

 

「抹殺……!?」

 

 雪菜は動揺して言葉を失った。

 

 第四真祖に対する恐怖はある。それほどの大任が、自分に務まるのかという不安もだ。

 

 これまでの修行に手を抜いたことは無いが、所詮雪菜は見習の身。本気で第四真祖を倒せると思うほど自惚れてはいない。なにしろ真祖とは、一国の軍隊に匹敵する戦闘力を持つといわれる正真正銘の怪物なのだから。

 

 だが、誰かがそれをやらなければ、いずれ大勢の人々が災厄に見舞われることになるのだ。

 

 

「受け取りなさい、姫柊雪菜」

 

 巻き上げられた御簾の隙間から、女が何かを差し出した。篝火に照らされ、闇の中に浮かび上がるものは、一振りの銀の槍。雪菜はその名前を知っていた。

 

「これは………」

 

 

「七式突撃降魔機槍”シュネーヴァルツァー”です。銘は”雪霞狼せっかろう”」

 

 知っていますね、という女の問いかけに、雪菜は頼りなくうなずいた。

 

 七式突撃降魔機槍シュネーヴァルツァーは、特殊能力を持つ魔族に対抗するために、師子王機関が開発した武器だった。高度な金属精錬技術で造られたその穂先は、最新鋭の戦闘機にも似た流麗なシルエットをもち、まさしく機槍の呼び名に相応しい。

 

 だが、武器の核としての古代の宝槍を使用しているため量産がきかず、世界に三本しか存在しないともいわれていた。いずれにせよ個人レベルで扱える中では間違いなく最強と言い切れる、師子王機関の秘奧兵器である。

 

 

「これを……わたしに?」

 

 差し出された槍を受け取りながら、雪菜は信じられないという表情で訊いた。

 

 しかし女は、むしろ重苦し気に息を吐く。

 

 

「真祖が相手ならば、もっと強力な装備を与えて送り出したいところですが、現状ではこれが我々に用意できる最強の武神具なのです。受け取ってくれますね」

 

 

「はい、それはもちろん……ですが」

 

 そういって雪菜は困惑の表情を浮かべた。

 

 御簾の向こうから差し出されたものは、槍だけではなかった。ビニールに包まれた、新しい制服が一揃い、きれいに折りたたんで手渡される。白と水色を基調とした、セーラー襟のブラウスとプリーツスカート。どうやら中学校の女子の制服らしい。

 

「あの、これは?」

 

 

「制服です。あなたの身長に合わせたものを用意してもらいました」

 

 

「その………ですから、なぜ制服を?」

 

 

「あなたの監視対象が、その制服の学校の生徒だからです」

 

 

 

「は?」

 

 

 自分が何を言われたのかわからず、雪菜は軽く混乱する。

 

 

「え?監視対象……第四真祖が、学生?え?」

 

 

「市立彩海さいかい学園高等部一年B組、出席番号一番。それが第四真祖、暁古城あかつき こじょうの現状の身分です。ですから師子王機関われわれには、彼と穏便に接触できる人材がいないのです。ただ一人、姫柊雪菜、あなたを除いては」

 

 

「暁古城……この写真の人物が第四真祖……?ええっ!?」

 

 床上に投げ出してあった写真を見下ろし、雪菜は目を丸くした。

 

 御簾越しに”三聖”の苦笑する気配が漏れてくる。その時になって、ようやく雪菜は理解した。なぜこのような重大な任務に、雪菜のような未熟な剣巫が選ばれたのか。

 

 

「あらためて命じます、姫柊雪菜。あなたはこれより全・力・を・も・っ・て・彼・に・接・近・し・、彼・の・行・動・を・監・視・す・る・よ・う・に・。彩海学園への転入手続きは、すでに済ませておきました」

 

 

 一方的にそう告げると、女以外の長老たちは消えていった。

 

 

「それと、あなたにはもう一つ伝えなければならないことがあります」

 

 

「は、はい」

 

 先ほどまでよりも真剣な女に声に呆然となっていた意識を覚醒させる。

 

 

「どうやらあの島にもう一枚の写真の少女が流れ着いているようなのです」

 

 

「写真の方は魔族なのでしょうか?」

 

 ただの魔族とは思えないほど神々しく見えたからだ。

 

 

「その事ですが、不明です。何者かがわらないのですが。その少女も学園にいることしか分かっていないので調べてほしいのです。」

 

 

「は、はい。何者か分からないのですか?」

 

 

 第四真祖とその少女との接点が分からず、雪菜は首をかしげる。

 

 

「我々でも詳しい事は分からないので、気をつけてください。―――以上です」

 

 そうして、女も他の長老同様気配が消えた。

 

 拝殿にたった一人残された雪菜は、呼吸することも忘れたまま、呆然と手の中の槍を凝視し続けた。

 

 第四真祖。転校。接触。監視。抹殺。しかも魔族かもわからない少女までときた。もしかしたら私は、とんでもない災厄に巻き込まれてしまったのではないか。そう思って雪菜は、我知らず小さな溜息を洩らす。

 

 

 占いの類を不得手とする彼女が、やがて、その直感が正しかったことを知るのは、もう少し先の話である―――。

 

 




とりあえず、なんとか本編スタートしました。


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聖者の右腕編2

遅くなり申し訳ございません。仕事が忙しかったのでそれでは本編スタートです。


やあ、アリスだよ。少し過去の話をするよ。私は能力を使い自分の戸籍を作り彩海学園の高等部、暁古城がいるクラスに転入しました。なんとかなったんだけど南宮那月先生には速攻でばれました。監獄結界に閉じ込められそうになりましたが、何でも言うことを聞くという条件で免れました。以上終わり。那月先生怖すぎでしょ❗

 

古城たちクラスメイトとは仲良くやってますよ。

 

ほんのり赤く染まりかけた空が強烈な陽射しを降り注ぐ。

 

 

 

「熱い……焼ける。焦げる。灰になる……」

 

 

 

「ホントに、暑いわね」

 

 

 

午後のファミレス。窓際のテーブル席でぐったりと突っ伏して、暁 古城あかつき こじょうと柊アリスが呟いた。

 

制服姿の高校生。古城の羽織ったパーカーを除けば特徴というべきものは特にないどこにでもいる高校生。パーカーから覗くやや色素の薄い髪の毛が少々目立つくらいだろうか。

 

これといった特徴がないアリスは、銀髪という珍しいのが特長である。

 

八月最後の月曜日。天気は快晴。

 

薄いブラインドから突き刺さる殺人光線を浴びながら、古城は、テーブルに広げられた問題集を気怠く睨みつける。

 

 

アリス宿題が終わったのでのんびりしていた。

 

「今、何時だ?」

 

 

 

「もうすぐ四時よ。あと三分二十二秒」

 

 

 

古城の正面の席の友人が、返す。

 

 

 

「……もうそんな時間なのかよ。明日の追試って何時だっけ」

 

 

 

「……確か朝九時だ」

 

 

 

「今夜一睡もしなけりゃ、まだあと十七時間と三分あるぜ。間に合うか?」

 

 

 

同じテーブルのもう一人が、他人事のような気軽な声で訊いてきた。

 

 

 

「なぁ……こないだから薄々気になってたんだが」

 

 

 

「ん?」

 

 

 

「なんで俺だけこんなに大量に追試を受けなきゃなんねーんだろうな?」

 

 

 

「仕方ないよ。古城」

 

 

 

目の前に置かれる教科書の数々。古城が追試を命じされたのは、英語と数学二科目ずつを含む合計九科目。プラス、体育実技のハーフマラソン。夏休み最後の三日間で処理するというはめにあった。

 

 

 

「──ってか、この追試の出題範囲ってこれ、広すぎんだろ」

 

 

 

「しかも授業でやってない場所まであるしな。これはイジメ以外の何物でもねぇぞ」

 

 

 

一人の悲痛な叫びに友人たちは互いに顔を見合わせて、なにを今さら、と言わんばかりに呆れている。

 

 

 

「いや……そりゃ、あるわな。恨み」

 

 

 

シャーペンをくるくる回しながら答えたのは、短髪のツンツンに逆立てて、ヘッドフォンを首にかけた男子生徒、名を矢瀬基樹という。

 

 

 

「あんだけ毎日毎日、平然と授業をサボられたらねェ。舐められてるって思うわよね、フツー……おまけに夏休み前のテストも無断欠席だしィ?」

 

 

 

爪を手入れなどをする華やかな髪型と、校則ギリギリまで飾り立てた制服の少女、藍羽浅葱が笑顔で言う。

 

 「だよね。」とアリスは浅葱の意見を肯定する。

 

「……だから、あれは不可抗力なんだって。いろいろ事情があったんだよ。だいたい今の俺の体質に朝イチのテストはつらいって、あれほど言ってんのにあの担任は……」

 

 

 

苛ついた口調で古城が言い訳をする。

 

 

 

「体質ってなによ? 古城って花粉症かなんかだっけ?」

 

 

 

浅葱が不思議そうに訊いてくる。古城が唇を歪める。

 

 

 

「古城は、夜型なんだよね。朝起きるのが苦手っていえばいいのかな?」

 

 

 

「それって体質の問題? 吸血鬼でもあるまいし」

 

 

 

「だよな……はは」

 

 

 

古城が引き攣った笑顔で言葉を濁す。

 

この街に吸血鬼は珍しい存在ではない。

 

 

 

“吸血鬼”──民話や伝説などに登場する存在で、生命の根源とも言われる血を吸い、栄養源とする蘇った死人または不死の存在。その存在や力には実態が無いとされる。

 

 

 

はぁー、と内心ため息を洩らすアリス。アリスは、暁古城の正体を知っている。

 

世界の最強にして第四番目の存在しないはずの吸血鬼──“第四真祖”

 

その力を継ぎしものが暁古城。

 

 

 

彼をかばうアリスだが、暁古城は、アリスの真の正体を知っているわけではない。古城が知っているのは、アリスが普通の人間ではないということだけだ。それしか知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“絃神島”──太平洋のど真ん中、東京の南方海上三百三十キロ付近に浮かぶ人工島。ギガフロートと呼ばれる超大型浮体構造物を連結して造られた、完全な人工の都市。総面積は約八十平方キロメートル。総人口は約五十六万人。

 

暖流の影響を受け、気候は穏やかで、冬でも平均二十度を超える。

 

いわゆる常夏の島。

 

学究都市である絃神市は、製薬、精密機械、ハイテク素材産業などの、大企業や有名大学の研究機関がひしめき合っている。

 

この島は、少々特殊なところもある。

 

 

 

魔族特区。

 

それがこの絃神市のもう一つの名。

 

獣人、精霊、半妖半魔、人工生命体、そして吸血鬼……この島にはそれらの人類によって数を減らした魔族たちの存在が公認され、保護されている。

 

 

 

「──にしても、この暑いのだけは勘弁してくんねぇかな、くそっ」

 

 

 

「全くその通りですね。」

 

 

 

パーカーのフードを目深に被って、陽射しを遮る古城。それに対して何も被らないアリスは今にも死にそうな顔をしている。

 

 

 

「アリスもなんか被りゃいいじゃねぇか?」

 

 

 

「私は、要らないよ。吸血鬼じゃないからね。」

 

 

 

ファミレスから古城とアリスの自宅までは、市内を走るモノレールで十五分ほどの距離。だが、少ない金を消費しないために歩くという選択肢を選んだ。じりじりと肌を焦がす夕日を浴びながら、海沿いのショッピングモールを歩いている。

 

そして何気ない仕草で背後を確認。

 

 

 

「尾けられてる.……んだよな?」

 

 

 

「そうみたい。」

 

 

 

二人から十五メートルほど離れた後方を、一人の少女が歩いている。ファミレスから出た時に見かけた、ベースギターのギターケースを背負った少女。

 

彼女の制服は、浅葱のものと似ているが彩海学園の女子の制服。襟元がネクタイではなくリボンになっているという事は、中等部の生徒ということだ。

 

 

 

彼女の目的はわからない。どちらかを尾行しているならば、アリスか古城の正体を知っていることになる。それがどちらもなら最悪の状況になる。

 

 

 

「……凪沙の知り合いか?」

 

 

 

古城の言葉のすぐ後ろに少し早口で言葉を走らせる。

 

 

 

「ごめんね、古城。ちょっと寄りたい場所があるから今日はここで……。またね!」

 

 

 

そして早足で古城に振り向き、その場を後にする。後方から古城の声が聞こえるがそんなこと御構い無しにアリスは駆けた。

 

後方を再び確認する。彼女は少し動揺したような動きを見せるが私は追わず、その場にとどまり古城の尾行している。

 

 

 

かなり離れた位置から古城と彼女が見えるように建物の間に入り込む。

 

そこで彩斗は、右のポケットに入っているスマートフォンを取り出し、電話をかける。

 

ツーコールの後に聞き覚えのある声が聞こえる。

 

 

 

『もしもし。なんだ、アリス?』

 

 

 

「単刀直入に聞くよ。古城を尾けてるあの女は誰ですか?」

 

 

 

電話越しに少しの間が空いたあと、答えが返ってくる。

 

 

 

『獅子王機関の“剣巫”だな。そいつは.....』

 

 

 

「獅子王機関だとって!?」

 

 

 

“獅子王機関”──政府の国家公安委員会に設置された特務機関。魔導災害や魔導テロを阻止するための情報収集、工作を行う機関。

 

 

 

「つまり、古城の正体がバレたってことか」

 

 

 

『まぁ、そうなるな』

 

 

 

「そうか……ありがとう……またね」

 

 

 

切る寸前に向こうから聞こえる声。

 

 

 

『お前も気をつけろよ』

 

 

 

スマートフォンをポケットにしまい込み、再び二人を確認する。

 

 

 

「……獅子王機関の“剣巫”……か」




なんとか書けました。また投稿が遅れるかもしれませんがこれからもよろしくお願いいたします。


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聖者の右腕編3

長い間投稿遅れまして申し訳ございません。これから一ヶ月に一回投稿できればと存じます。これからもよろしくお願いします。

アリス「うぷ主 死ね」
うぷ主「待って やめ あーーーーー。」

アリス「うぷ主はしばいといたわ。 これからもよろしくね。では本編始まります。」


その頃、古城はというと相変わらず少女に付けられていた。

 

「まだ、つけられているか。よしゲーセンに寄って見て様子をみるか。」

 

と呟きつつゲームセンターに入っていく。少女は店前で足を止めて固まったようにオロオロしていた。姿型を見失うのは避けたいが、かといって店内に入ると顔を合わせることに戸惑っているその様子をみて古城は・・・

 

「なんか罪悪感が・・・仕方ないか。覚悟決めるか。」

 

と言いつつ通路に出ようとするが、少女も決意を決めたように動き出しバッタりあってしまった。

 

「だ・・・第四神祖!」

 

彼女は重心を落とし身構え、そう叫んだ。中に何が入っているが分からないが、ギターケースを抱え、いつでも中身を出す準備をしている。

 

「誰だ、お前?」

 

警戒心をあらわに少女をにらむ古城。

 

「私は獅子王機関の剣巫です。獅子王機関三聖の命により、第四真祖であるあなたの監視のために派遣されました。」

 

古城「ああ、わるいな。人違いだからほかを当たってくれるか。

 

少女「え? 人違い?」

 

古城「そ、人違い。俺は第四真祖とか、獅子王機関の剣巫とか全く知らないから、それじゃ」

 

少女「えっ・・・・え?」

 

立ち去ろうとした古城を慌てて呼び止める。

 

「待ってください! ほんとは人違いじゃないですよね!?」

 

古城「いや、監視とか間に合ってるから。じゃあ、俺は用事があるからいくわ。」

 

古城は後ろが気になり振り向く。さっきの少女がチンピラ二人組に絡まれていた。

 

「ねぇねぇ、そこの彼女。逆なん失敗?だったら俺たちと遊ばないか?」

 

「そうそう、俺らいま給料入って金持ってるからさ」

 

距離が離れているため何言ってるか聞こえないが状況からしてなんぱだろう。少女は冷やな態度で男たちを振り払おうとして、少し険悪な雰囲気になった。男の一人が荒っぽい声で怒鳴り、少女が刺々しい表情で言い返した。そして男の一人が処女の腕をつかみもう一人が少女のスカートをめくろとした時・・・

 

「待ってください。何しようとしてるんですか」

 

アリスは男の手をつかんでいた。

 

やっば出てくるつもりなかったのに体か勝手に動いてしまった。

 

「は、だれだてめぇ」

 

「お前もかわいい顔してるじゃねえか。お前も俺たちと遊ばねえか」

と声をかけてきたので思わずグーで殴ってしまった。

 

「ぐはぁ!」

 

単発の男は一瞬にして吹き飛び看板のテーブルに激突していた。

 

「やってしまった。」

 

殴るつもりなかったのにあまりにも不快だったから手が出てしまった。

 

「てめぇ、ただじゃおかねぇぞ。来いシャクティ」

 

しかし、先に我に返った男が恐怒りに任せて魔族の本性をあらわにする。深紅の瞳と牙そして眷獣。

 

「あれは、Ⅾ種  !」

 

少女が顔を険しくうめいていた。色々な吸血鬼の中でも特に欧州に多く目られる。ロストウォーロードを真祖とする者たちを指す。眷獣の魔力を検知した町の警報機が鳴り響く。周りはパニックになり逃げってった。

アリスはあきれて言い放つ。

 

「おいおい、街中で不用意に眷獣を出しちゃいけませんよ。」

 

 

「うるせぇ!いけ灼蹄、やっちまぇ!」

 

 

灼蹄と呼ばれる灼熱の妖魔は一直線にアリスに押し掛ける。

このまま当たればアリスは業火に巻き込まれて焼け死ぬだろう。

だが、妖魔の眷獣はアリスが右手を前に出すと消えてしまった。

 

「なんだと! 俺の眷獣がきえた。・・・!?」

 

アリスは吸血鬼の男に歩みよる。何が起こったかわらず男はおびえたように後ずさる。

 

 

「今回、私に向かって眷獣をぶっ放したことは見逃してあげるから。仲間を連れてさっさと私の前から消えてください。それともう中学生をナンパするのはやめてね。」

 

 

「わ、分かった。」

 

消えるような声で頷き、気絶した仲間を連れて去っていった。

やっちゃった、とアリスが呟いているところを古城に頭をゴスっと殴られた。

 

 

「痛た! なにすんのよ 古城」

 

「お前がなにしてるんだよ。 こんなところで」

 

 

言い合っている二人に少女が呆然と立ち尽くしておりやがて我にかえり、

 

「あ、あの!」

 

少女はアリスに呼び掛ける。

 

「?  どうしたの」

 

 

「あなたは何者ですか。いったいどうやって眷獣を・・・・・・」

 

 

「私は柊アリス。人間だよ。それで、こっちが暁古城。第四真祖だ。」

 

いきなり少女に正体を言われた古城はびっくりする。

 

 

「お、おい」

 

 

「いいでしょ別に。お前の監視のためにこっちに来てるのなら、お前の正体も知られているんでしょ」

 

 

「いや、そうだが・・・」

 

 

「ところで君の名前は?」

 

アリスは少女に質問する。

 

 

「えっ? あ、私の名前は姫柊雪奈といいます。」

 

 

「いったんここを離れますよ。雪奈、古城。あ、雪奈これから下の名前で呼ぶね。

そろそろ特務警備局がきますから。事情聴取とかは御免だからね。あの人にばれたら何されるかわからないから。怒ると怖いんだもん。」

 

 

分かりました。わかった、と同意して三人はその場から離れるのだった。

 

那月先生にばれたらやばいよと心の中でうなるアリスであった。

 

 

 




改めて、お久しぶりです。長らく更新できず申し訳ございませんでした。

所々参考にして書いてるので辻褄が合わないことがあるかもしれませんがこれからもよろしく。

次の更新は12月になるかもですが気長に待ってください。

改めて更新できず申し訳ございません。

介護の仕事でなかなか時間が取れませんがこれからも頑張ります。

よろしくお願い済ます。また次お会いしょう。


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聖者の右腕編4

久し振りの投稿です。おまたせしてゴメンなざい。


アリス、古城、雪菜が訪れた場所は、絃神島南地区にある、大手チェーンのハンバーガーショップだ。

 

一行は、窓際のボックス席に腰を落していた。

 

アリスの向かいに側に座る雪菜は、行儀よく両手でテリヤキバーガーを掴んで、幸せそうにかぶりついていた。

 

 

 

「姫柊もハンバーガーを食べるんだな。 こういう店とは縁がなさそうなイメージだったから」

 

 

 

「高神たかがみの杜もりがある街は都会じゃありませんが、ハンバーガーくらい売ってますよ」

 

 

 

「高神の杜? 姫柊が前にいた場所か?」

 

 

 

「はい。 表向きは神道系の女子校ということになってます」

 

 

 

「表って事は、裏があるのか?」

 

 

 

「……獅子王機関の養成所です。 獅子王機関のことは知っていますよね?」

 

 

 

「いや、知らんが」

 

 

 

古城の言葉に、雪菜は眼を数回瞬いた。

 

どうして知らないの?と言いたげな表情だ。

 

 

 

「いいか、古城。 獅子王機関っていうのは、国家公安委員会に設置されている特務機関ですよ。」

 

 

 

「柊先輩の言う通りです。 獅子王機関は、大規模な魔導災害や魔道テロを阻止する為の、情報収集や謀略工作を行う機関です。 もともとは平安時代に宮中を怨霊や妖から護っていた滝口武者が源流ルーツなので、今の日本政府よりも古い組織なんですけど」

 

 

 

「……要するに、公安警察みたいなものか」

 

 

 

古城も、一応納得したみたいだった。

 

 

 

「養成所から来たってことは、姫柊も獅子王機関の関係者なわけだ」

 

 

 

「はい」

 

 

 

今の説明で、古城は理解したようですね。

 

 

「だったら、姫柊がオレを尾けてたのはどうしてだ? その機関っていうのは、魔導災害テロの対策が仕事なんだろ。 オレは関係なくないか?」

 

 

 

「え? もしかして、暁先輩は、ご存知ないんですか?」

 

 

 

「何をだ?」

 

 

 

アリスが、雪菜が言おうとしている事を口にした。

 

 

 

「真祖は、存在自体が戦争やテロと同じ扱いなんですよ。 一国の軍隊と同格の存在だからですね。」

 

 

 

アリスの言葉を聞き、古城はがっくりと肩を落とした。

 

 

 

「人間扱い、生物扱いしてもらえないのかよ……」

 

 

 

「真祖以外にも適応される存在もいるんです。 この写真の人物ですが、暁先輩はご存知ですか?」

 

 

 

「いや、知らんが」

 

 

 

「……暁先輩は、本当に何も知らなかったんですね。――柊先輩はご存知ですか?」

 

 

 

「知らないわね。」

 

え、この写真どこで撮られてたの?!顔は写ってなかったから良かった~。

 

 

「そうです。この写真の女の人の情報がほしいので、何か分かったら教えてくださいね 。先輩方。」

 

 

「分かったわ。」

ごめんね。雪菜ちゃんそれ、私なの。今は、言えないけどね。

 

 

「お、おう。――他の真祖はともかく、オレはそんな扱いされる覚えはねーぞ。 オレは何もしてないし、支配する帝国なんかどこにもねーし」

 

雪菜は静かに頷き、攻撃的な眼差しを古城に向けた。

 

 

「そうですね。 私もそれを聞きたいと思っていました。 暁先輩は、ここで何をするつもりなんですか?」

 

 

「何をするって……って、なんだ?」

 

 

「正体を隠して魔族特区に潜伏してるのは、何か目的があるからじゃないですか? 例えば、絃神島を陰から支配して、登録魔族たちを自分の軍勢に加えようとしてるとか。 あるいは、自分の快楽の為に彼らを虐殺しようとしてるとか。……なんて恐ろしい!」

 

 

何処か思いつめたような、あるいは妄想しているような口調で雪菜が呟いた。

 

古城は、何でそうなる、と低く唸り。 アリスは雪菜を見て苦笑した。

 

 

「いや、だから待ってくれ。 姫柊は何か誤解してないか?」

 

 

「誤解?」

 

 

「潜伏するもなにも、俺は吸血鬼になる前からこの街に住んでいた訳なんだが」

 

 

「……吸血鬼になる前から……ですか」

 

 

雪菜はアリスに、本当ですか、と眼で聞いてきた。

 

そう。 古城は、生まれついての吸血鬼ではない。

 

約三ヶ月前までは、古城は一般の人間だった。

 

だが、ある事件に巻き込まれ、古城の運命は変わった。

 

古城はそこで第四真祖と名乗る人物に出会い、その能力を奪ったのよね。那月先生から聞かされて知ったのよね。

 

 

「ああ、そうですよ。 古城は、約三ヶ月前までは人間だったの」

 

 

 

アリスの言葉に雪菜は、信じられない、という風に首を左右に振った。

 

 

 

「そ、そんなはずありません。 第四真祖が人間だったなんて」

 

 

 

「え? いや、そんなこと言われても、実際そうなんだし」

 

 

 

「普通の人間が、途中で吸血鬼に変わることなどあり得ません。 例え吸血鬼に血を吸われて感染したとしても、それは単なる“血の従者”――擬似吸血鬼です」

 

 

「いやいや、コイツは正真正銘、第四真祖ですね。」

 

 雪菜は、再び首を左右に振った。

 

「ありえません。 真祖というのは、今は亡き神々に不死の呪いを受けた、もっとも旧き原初の吸血鬼のことですよ。 普通の人間が真祖になる為には、失われた神々の秘呪で自ら不死者になるしかないんです。……ま、まさか、暁先輩は真祖を喰らって、その能力を自らに取り込んだとでも……」

 

 

 

雪菜の表情から柔らかさが消えていた。 その代わり、恐怖の感情が浮かんだ。

 

真祖になる事は不可能でも、真祖の力を手に入れる方法が一つだけあるのだ。

 

それは、真祖を喰らって、その能力と呪いを自らの内部に取り込むことだ。

 

 

 

「いや、古城は真祖を喰らってませんね。 うーん、そうですね。……押しつけられた。の方がしっくりくるかもですね。」

 

 

 

「そうだな。――詳しい事は説明出来ないが、オレはこの厄介な体質を、あの馬鹿に押しつけられたんだ」

 

 

 

「押しつけられた……? 暁先輩は、自分の意思で吸血鬼になったわけではないんですか?」

 

 

 

「誰が好きこのんで、そんなもんになりたがるか」

 

 

 

「あの馬鹿とは、誰ですか?」

 

 

 

「第四真祖だよ。 先代の」

 

 

 

「先代の第四真祖!?」

 

 

 

雪菜は愕然と息を呑む。

 

 

 

「まさか、本物の焔光の夜伯カレイドブラッドのことですか!? 暁先輩は、あの方の能力を受け継いだとでも? どうして第四真祖が暁先輩を後継者に選ぶんですか? そもそも、なぜあの焔光の夜伯カレイドブラッドなんかと遭遇したりしたんです?」

 

 

 

「いや、それは……」

 

 

 

言い掛けた古城の顔が、激しい苦痛に襲われたように歪ませた。

 

 

 

「古城! それ以上は思い出そうとするな!」

 

 

 

予想外の古城の反応に、雪菜がうろたえたような声を出した。

 

 

 

「柊先輩、これは?」

 

 

 

「古城は、その日の記憶が欠落してるんだよ。 思い出そうとすると、今みたいな激しい頭痛に見舞われることになる」

 

 

 

「そう……なんですか? わかりました……それじゃあ、仕方ないですね」

 

 

 

頭痛から解放された古城が、アリスに聞いてきた。

 

 

 

「……アリスは、何でオレが真祖になったかを知ってるのか?」

 

 

 

「―知らない。那月先生から、古城が第四真祖になったとしか言われてない。」

 

 

 

「そうか。」

 

雪奈は柊先輩に聞こうと口を開こうとするが、柊先輩の顔を見て、これ以上知らないと分かる。

 

 

「私、獅子王機関から先輩、暁先輩のことを監視するように命令されたんですけど……それから、もし先輩が危険な存在なら抹殺するようにとも」

 

 

「ま……抹殺!?」

 

 

平然と告げられた言葉を聞き、古城は硬直してしまった。

 

 

「その理由がわかったような気がします。 先輩は少し自覚が足りません。 とても危うい感じがします。 なので、今日から私が先輩を監視しますから、くれぐれも変なことはしないでくださいね。 まだ、先輩を全面的に信用したわけではないですから」

 

 

「監視……ね」

 

 

まあいいか。と古城は肩の力を抜いた。

 

雪菜は悪い人間ではないし、古城は、監視されても困る点はない。

 

 

「そういえば、柊先輩って何者なんですか? 手をかざしただけで眷獣が消えました。 微弱ですが、何かの力を感知しました」

 

 

 

「私は、ちょっと強いだけの人間よ。 まあ、悪い事はしないから、心配しないで」

 

 

 

「……釈然としませんが、今はそれで納得しておきます」

 

 

「おう、それで頼むわ」

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 

アリスの自宅があるのは、アイランド・サウスこと、住宅が多く集まる絃神島南地区、九階建のマンションの七階の七〇三号室だ。

 

アリスは、古城、凪沙が住む七〇四室へ向かった。

 

「ん?」

 

 

七〇五号室の前で、彩海学園の制服を着て、ギターケースを背負った少女を見かけた。

 

その人物とは、悠斗が今日知り合った、姫柊雪菜だった。

 

 

「おう、姫柊。 こんな所で何してんだ?」

 

 

雪菜はゆっくりと振り返った。

 

 

「あ、柊先輩、こんばんは。 えっとですね。 引越しの荷物等が運び終わった所なんです。 暁先輩に手伝ってもらいました」

 

 

 

「なるほど。 古城が私より早く帰ったのは、この為ですか。――ん、待て。 引っ越す部屋って七〇五号室ですか?」

 

 

雪菜はきょとんとし、

 

 

「はい、あってますけど」

 

 

「それは、監視の為?」

 

 

「そうですけど」

 

 

なぜわかりきった事を聞くのか、とでも言いたげな表情であった。

 

どうやら、古城の私生活まで監視する気満々らしい。

 

 

「まあ、なんだ。 頑張りなさいよ。」

 

 

「はい、頑張ります!」

 

 

雪菜は、満面の笑みで頷いた。

 

アリスはこれを見て、

 

 

「……古城、ドンマイ」

 

 

「神代先輩はどこに行くんですか?」

 

 

「ああ、七〇四室だよ」

 

 

「暁先輩のところですか。」

 

 

 

「そうですよ。」

 

 

玄関でアリスを迎えてくれたのは、凪沙だった。

 

 

 

「アリスちゃん。 こんばんは。 今からお鍋開始する所だから。 さっき、外からアリスちゃんの声が聞こえたんだけど、なにかあったの?」

 

 

 

「明日、中等部に転校してくる女のコと少し話をですね。」

 

 

 

「え、え、どこにいるの? その子、ゴハンまだだよね。 凪沙、ちょっと行ってくるね」

 

 

 

凪沙は、玄関でサンダルを履き、外へ出た。

 

 

 

「凪沙は、ホント、行動力があるよな」

 

 

アリスは呟いてから、玄関で靴を脱いで、廊下に上がってからリビングを目指した。

 

テーブルの椅子に腰をかけながら、古城は、ガスコンロの調整をしていた。

 

調整が終わり、試しに火を付けてみた。

 

 

 

「よし、これでOKだ」

 

 

 

「お邪魔してます。 これ買ってきたジュースどうぞ。」

 

 

 

アリスは片手に下げていたビニール袋をテーブルの上へ置いた。

 

 

 

「悪ぃな」

 

 

 

「気にしないで、こんなの当たり前だよ」

 

 

 

古城はぐるりと回りを見渡した。

 

 

 

「凪沙は?」

 

 

 

「雪奈と会ってると思うぞ。 まあ、十中八九、雪菜も一緒に来ると思う」

 

 

 

「姫柊は引っ越した直後だから、飯とかねぇんじゃねぇか。――まあ、凪沙は誰とでも仲良くなれるからな。 それはアリスも例外じゃなかったし」

 

 

 

アリスは古城の隣の椅子に腰を下ろした。

 

 

 

「あれは驚いたわ。」

 

 

私が那月先生から暁の隣に住めと言われて、住み始めたんだよね。隣に挨拶したときにマシンガントークされたときは、硬直してしまったね。それからは一緒ご飯を食べることになったんだよね。

 

 

 

「古城君、雪菜ちゃん連れて来たよー」」

 

 

 

と、凪沙が声が聞こえてきたね。

 

 

 

「古城もありがとね友達になってくれて とにかく、今はご飯食べよっか」

 

 

 

「……おう、わかった」

 

 

 

アリスの向かいに、雪菜が着席した。

 

凪沙は台所から、鍋に入れる材料を持ってきた。

 

白採に椎茸、蒲鉾、しめじ、豚肉など、様々な食材が盛られていた。

 

凪沙も雪菜の隣の椅子に座った。

 

 

 

「じゃあ、いただきます」

 

 

 

「「「いただきます!」」」

 

 

 

凪沙の音頭に、三人が続いた。

 

四人は箸を取り、食材を鍋の中に入れ、火が通った食材に味ポン、ゴマだれをつけて口に運ぶ。

 

 

 

「凪沙ちゃん。 昆布のだしが効いてて美味しいよ」

 

 

 

「お、アリスちゃん、気付いたんだ。 今日は、昆布のだしを使ってみたんだ」

 

 

 

「そ、そうなのか? オレは全然気付かなかったが」

 

 

 

「わ、私もです」

 

 

 

それからは、談笑しながら鍋を減らした。

 

話していたら、雪菜はドジっ子だという事が発覚した。

 

 

 

「さて、オレは勉強の続きをやるわ。 アリスは、ゆっくりしてけよ」

 

 

 

「そ、そういうことなら、私は先輩の勉強を手伝うということでどうでしょうか? 一応、高校二年までの学業は収めていますので」

 

 

 

古城は一瞬迷ったが、ありがたくこの提案を受け入れる事にした。

 

 

 

「ごめんね、雪菜ちゃん。 古城君のこと、よろしくね。 出来の悪いお兄ちゃんですけど」

 

 

 

「古城。 姫柊と二人きりだからって、手を出したらダメですよ」

 

 

 

古城は、声を上げた。

 

 

 

「し、しねーよ。 そんなこと」

 

 

 

「……しないんですか、そうですか。 私に魅力がないということですね」

 

 

 

「いや、姫柊さん。 そういうことじゃなくて……」

 

 

 

雪菜はクスッと笑い、

 

 

 

「冗談ですよ。 行きましょうか」

 

 

 

「お、おう」

 

 

 

そう言って、古城と雪菜は自室に消えていった。アリスと凪沙は、向かい合わせに座りながら話をしていた。

 

 

 

「もう、アリスちゃんはイジワルなんだから、古城君にそんな甲斐性はないよ」

 

 

 

「古城は弄りがいがあるからね。」

 

 

アリスは壁に掛けてある時計を確認した。

 

今の時刻は、午後十時を回ろうとしていた。

 

 

 

「そろそろ御暇しようかな。時間も時間になってきたしな」

 

 

 

「凪沙は、玄関まで送るね」

 

 

 

「おう、頼むね」

 

 

 

アリスと凪沙は立ち上がり、玄関へ向かった。

 

アリスは玄関で靴を履き、

 

 

 

「じゃあ、また明日」

 

 

 

「うん、また明日」

 

 

 

アリスは手を振ってからドアノブを捻り、扉を押し開けた。

 

 

 

「私はどうなるんだろうな。 色々と」

 

 

 

アリスは空を見ながらこう呟いた。

 

その時、強大な魔力の塊を察知した。

 

「原作開始みたいですね。様子を見に行きますか。」

 

アリスは魔力が奔流となる現場へ走り出した。




中々まとまらず書き直したので投稿遅れました。


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