我の相棒がバッドエンドを迎えるわけがない (もよぶ)
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第一話

体育祭を終え後に控えた大きなイベントが修学旅行となったある日の事

彼がベッドに潜り込んだ時それは起きた。

 

「このままですとあなたは死にます」

 

さっき布団に潜り込んだと思ったらいつの間にか何もない空間で椅子に座っており、目の前に同じく椅子に座っている青い長髪の女性に告げられる。

 

「いいこと?死ぬのを回避するにはあなたが心に思っている女性とお付き合いしなくていけません!女性から告白されるかあなたが告白するかどっちでもいいわ、ともかく想いを伝えあってお付き合いすること!」

 

「あ、あのい、いったいなんのことを言っているんです?そ、それにあなたは誰なんですか?それにいったいここはどこですか?た、確か僕は寝ていたはずなんですが?」

 

「ああ、ごめんなさい、私は死んだ人を導く役割、そうね...女神と呼ぶといいわ、ここは死んだ人と面接するするところなんだけど...」

 

「え?ぼ、僕は死んじゃったんですか!?」

 

「ちょっと落ち着きなさい、まだあなたは死んでいないわ、でもこのままいくとあなたは死んじゃうのよ、具体的に言うと自殺ね」

 

「自殺って...いったいなぜ...」

 

「ともかくあなたは自殺するのよ!でもね、あなたは若くして死ぬ人のリストには載って無いの、だから死なれたら困るのよ!しかもあなたが死ぬことによっていろんな人の人生が狂わされるのよ?」

 

「え?ま、まあ、確かに学校ではボッチですし友達も少ないですが、自殺するほどでは...」

 

「それがしちゃうのよ!あなたのその変な性格のせいで!お陰で今まで以上に仲良くなるはずの女の子達と今回の修学旅行であなたがやらかしちゃったせいで微妙な関係になって人間関係がこじれて誰も信じられなくなって、女の子達から告白されるのに変な考え方をして自分を追い詰めて、告白してきた相手を信じられないとか、そもそも自分は告白される価値はないとか、選んじゃうともう片方に悪いとか、自分がいるからこんなことになるとかメンドクサイこと考えて自殺するなんて変なルートになっちゃうのよ!本当は誰もが羨むカップルになれるはずだったのに!」

 

「??修学旅行?修学旅行はまだ先ですが?そ、それに今まで以上といわれてましてもですよ?ぼ、僕の回りにそんな人は居ませんが?二次元になら居ますけども...」

 

「はぁ~?こんなかわいい子達と同じ部活にいてよくそんなことが言えるわね!あなた何様のつもりよ!」

自称女神は履歴書のような資料を見ながら怒鳴る

 

「ちょっちょっともしかして誰かと勘違いしてませんか?僕は部活には入ってませんが...」

 

「は?...総武高校2年で学年中からあまりよく思われなくて常にボッチ、奉仕部というここの書類に書いてある美少女がいる部活に常に要り入り浸っている!そして何よりその腐った目!ちゃーんと事前のリサーチで調べはついてるのよ!比企谷八幡!」

 

「...いえ、僕は材木座義輝って言いますけど...」

 

「...は?冗談も大概にしなさいよ?こっちはちゃんと調べてるのよ?」

 

「...いえ...そ、そのおっしゃることは確かにその通りなのですが...ぼ、僕もみんなにあまりよく思われてなくてボッチですし、奉仕部には自作の小説をよく持っていきますし、目が腐っているのは最近徹夜でゲームをしたり小説を書いたりしてるので恐らくそのせいかと...そもそも八幡とは顔も体型もまるで違うのですが...」

 

その言葉に自称女神はやってしまったという顔をする。

「...あっちゃーなによーおんなじ条件の人もう一人いるじゃないの!、んもー私は悪くないわよ、最近導入された最新のAI搭載のフィルタリング召喚装置とか言うのが悪いんだわ!上司が『この条件に当てはまるのが比企谷八幡だ、こんな変なやつ早々いるもんじゃないからこの程度の条件で大丈夫だろ、さっさと召喚しとけ』なんていっててさぁ~、それに容姿の情報は目が腐ってるしかくれないんだもん!女性の情報だけは写真つきできちっと渡してくるのに、何が異性には詳細データは見せられないよ、コンプライアンスなんて糞くらえだわ」

 

そういうと自称女神は携帯を取りだしどこかへと電話し始める

「あーもしもし?なんか間違った方を連れてきちゃったみたいで...いえそれっ情報をきちんと渡さないそっちの責任ですよね?...ええ...はい...しかしそれでは...」

何やら揉めているようだったが

「...分かりました。とりあえず目の前の彼のデータをこちらに転送してください...今更コンプライアンスとか...こうなったら彼に...ええ、よろしくお願いします。」

そういうと自称女神は今度はタブレットらしき端末をとりだして操作し始める。

「あー君、うーん材木座君?成る程、これなら好都合ね...」

自称女神はタブレットらしきものを操作しながら納得したように頷く

 

「あ、あのさっきの話からすると八幡が自殺しちゃうんですか?一体何がどうして自殺なんて...」

 

「うん!あなたは知らなくて当然ね、ちょっと未来の話ですもの、修学旅行の時に起きる比企谷八幡の取り巻くおかしげな状況が起因してるのよ」

 

「や、奴なら同じ部活の3人で回る予定があるとかリア充じみたこといっていたような気がしますが?」

 

「その修学旅行でね、彼と彼の大事にしている人たちは大いに傷ついてしまうのよ。原因は...うーん...まあみんながみんな比企谷八幡に期待しすぎてその期待に応えようとした結果?みたいな?」

 

「一体何が起きるのです?」

 

「君は聞かないといけない立場にあるからね」

そう言って自称女神は戸部が奉仕部に持ち込んだ依頼から葉山や海老名の思惑、嘘の告白行われるまでを順を追って説明する。

「とまあこんな感じで相反する依頼を受けその解決方法として誰にも相談せず、嘘の告白をしちゃうんだよね。『今は誰とも付き合うつもりがない』って言葉を引き出して聞かせるためにね、おかげで3人ともバラバラよ」

 

「...なんというか八幡らしい解決方法だな、しかしみんな八幡をなんだと思っているんだ?期待しすぎだろう」

 

「まあ、文化祭での一件が大きかったんじゃない?」

「...あれか...」

 

「おかげで彼を知ってるものは彼だったらどんな難しい状況をなんとかしてくれるなんて期待しちゃったんだろうね、まあそれはそれとして、その一件が尾を引いて比企谷八幡は二人から告白されたときに選ぶことができなくなって問題の効率的な解決策として自分を消す、つまり自殺しちゃうのよ!そして比企谷八幡が自殺したことによって彼の関係者達が自分のせいで自殺したんだとか勝手に思ったりあいつが悪いとか始まって、人間関係が急速に悪化したり後追い自殺やらリストカットやら精神壊すやらめちゃくちゃになるのよ!」

 

「...なんかものすごいことになっちゃうんですね、というか二人って奉仕部の?にわかには信じられませんが、なら八幡をここにつれてきて説得すればいいんではないでしょうか?」

 

「うーんそうしてやりたいのは山々だけど...実は生きている人を連れてくるのって結構ギリギリなことなよねぇ...上司が色々ごまかしてこうやってつれてこれたわけ、間違っちゃったけど、だからもう一回とか難しいのよ...」

 

「はぁ」

 

「だからあなたにお願いするのよ、このタブレットに転送されてきたデータによるとあなたは比企谷八幡によく相棒っていってるそうじゃない!相棒のために一肌脱いでよ!」

 

「脱ぐっていったい何をすれば...」

 

自称女神は呆れた顔になり

「話聞いてた?このままだとあなたの相棒比企谷八幡は自殺しちゃうの!それを防ぐには女性とお付き合いするしかないの!ここまではわかる?」

 

「はぁ」

 

「だからあなたはそれサポートをするの!」

 

「はぁ」

 

「ちょっと話聞いてる?わかってるの?」

 

「あの、そのタブレット?で僕のことが分かるみたいなんでわかると思うんですが、僕はそんなことしたこと無いですし大体僕自信も女性とお付き合いしたことも無いですし...それにさっきから聞いていると告白よりもその依頼をどうにかすればよいのでは?」

 

自称女神はハッとなると

「ま、ま、そうね、もちろんそれも考えてたわ!で、でも!さっさと告白してお付き合い始めた方が手っ取り早いでしょ?」

 

「あとあの二人は八幡が本当に好きなんですか?なんか嫌々連れ回してるうにしか見えませんし八幡もあんまり関わりたくなさそうでしたが?」

 

うさんくさそうな目で疑問を呈する材木座にため息混じりで自称女神は答える。

「あなた奉仕部によく顔を出してるそうじゃない、そこで比企谷八幡と女性二人を見てなんも感じなかった?」

 

「いやまぁずいぶんと八幡に対して結構な物言いをしているようでしたが、八幡はそれに対して引けをとらない感じで、由比ヶ浜殿は常にやり込められてましたし、雪ノ下殿には毒舌に屈せず飄々と返してましたがそれがいったい?」

 

「あのね、あの二人は比企谷八幡にしかああいうことを言わないのよ?それに彼や彼女の言っている言葉通りだとして本当にそういう人と一緒に部活したいと思ったり外で一緒に行動したいと思う人がいると思う?あなたも女子に色々言われたことぐらいあるようだけど、その時と比べてどうだった?」

 

「...確かに、自分が女子に言われる時は心底嫌そうな顔で言われてましたね、そもそも会話したくないというか腫れ物に触るような感じで背を向けられることの方が多かったです。八幡が奉仕部で言われてるときとは全く違いますね」

 

「あなた男友達は少なからずいるでしょ?彼らと軽口叩くように、彼女らは彼にある程度心を許してるのよ?そして彼も同じ、自分では気がついていないようだけどね。だからああいう物言いになっちゃうわけ、そしてこのままいけば親密な仲になるはずだったのに、修学旅行の時に比企谷八幡が予想外のことをしてくれちゃって!」

 

「はぁ、そうですか、まぁ僕にとっては奉仕部の女子は僕のラノベを読んでくれる希少な存在ってだけですが、しかしその、百歩譲ってその付き合うサポートをするとして、実のところ八幡はどっちが好きなんです?どっちのサポートすればよいので?」

 

「どっちもよ」

「はぁ?」

「だからどっちも同じぐらい好きなのよ」

 

その言葉に材木座は声を荒げてしまう

「は?なにそれ?あやついつも俺はボッチだとか一人がいいとか抜かしてたくせに!ふざけんな!色を知る年か!だったら今すぐ告白してハーレム王でも宣言すれば良かろう!我は明日にでも八幡に「あの二人はお前のことが大好きだってよリア充爆発しろ」とでも宣言してくるわ!これで万事解決であるな!」

 

鼻息を荒くして若干怒り気味の材木座を自称女神は慌ててなだめる

「ちょっ興奮しないで、なんか口調も変わっちゃうし...あーそれがいつもの口調なのね。OK、OK、んでまあデータ見る限り一応健全にどちらかを考えてるみたいだけど...なんだか不確定要素が多すぎるわね、あの二人も覚悟してるみたいだし、まぁ現状雪ノ下雪乃の方に傾いてるみたいだけどね」

 

「んじゃあ我が八幡にYOU雪ノ下殿にコクっちゃいなよ、とで言えばいいのか?」

 

「だからね、彼らの性格的に簡単にいくと思う?無理無理、だからあなたが色々サポートしてあげるのよ!」

「んな具体的どうすれば...大体そう簡単にうまくいくわけ...」

 

「無論間違ったお詫びと無理を承知でお願いするんだから、特殊な能力をあげるわよ?あなたこういうの好きなんでしょ」

 

「やります!やらせてください!我としては無限の剣製がいい!」

 

「あんたねぇ...その能力を使って現代日本でいったい何をする気なの?それは異世界用よ、それに本人に直接能力を付与できるのは本人が死んでないとダメなのよね、いろんな意味で一回死んどく?」

 

怖い顔で迫る自称女神に土下座で謝る材木座

「...調子こいてすみませんでした!...あれ?でもそうするとどうやって能力を?」

 

「あなたが日常使ってる物に魔力を注入してマジックアイテムにしてあげるから、あとさっきから気になってんだけどあんたなんで私に目を合わせてしゃべらないの?」

 

「い、いや我は女人は苦手でして...」

 

「ハァー、いかにも童貞な台詞ねぇ...女子と話すこともあるかもだし、それは特殊能力じゃないからなんとかできるわね、あなたのコミュニケーションスキルを改善してあげるわ」

そういうと自称女神は材木座の頭の上に手をかざす。

「うーんあなたはコミュニケーションスキルが変な風に育ってるみたいね、お陰で他人との距離感が全くつかめない状態だからうざったいキャラに思われてるみたい、真っ直ぐにすれば大分ましになるわね、元々おしゃべり好きみたいだし」

「マジで!、これで我もリア充になっちゃうの?!」

 

小躍りしてる材木座に自称女神はまたもやため息をつく

「ハーあなた本当に残念な人ね、私はただ女性も含めた人たちと普通に話せるようにしてあげるってだけ、これは皆が持ってる普通のスキルだからまともに使えるようになるだけなのよ、あなたが言ってるリア充ってのはそのコミュニケーションスキルをうまく扱えるって人たちのことね、要は剣を持てるようにはしてあげるけど振り方は自分でってことよ」

 

その発言に材木座は不満げに呟く

「クソ!役に立たん女神だな!」

「...コミュニケーションスキルを改善したとたんに横柄になったわね...ゴッドブローでもかましてあげようかしら?」

 

「スイマセンデシタ」

また土下座をかます材木座

 

「さて、これで終わりね、私は手伝えないから一人でどうにか頑張ってねー、あとタイムリミットはバレンタイン辺りだから忘れないようにねー」

 

自称女神の声が遠のき周囲の景色もぼんやりとして来る。

ああこれは夢か、材木座はそう思うと意識がどんどん薄れていった。

 



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第二話

目覚ましの音が響き目が覚める

「変な夢であった、なんかこの○ばに出てくるダメ神みたいなのがタブレット片手に八幡が死ぬだのなんだのと、天界もハイテクの波に押されてるのか?これもラノベの読みすぎかの?」

 

ベッドから起き上がるとふと手に何かを握っていることに気がつく

「なんだこれ、紙?なんか書いてるな」

寝る前には握ってはいなかった物だ、不思議に思い握られてクシャクシャになった紙を開くと

『貴方の持ち物に魔力を注入してマジックアイテムにしたから、まずいっつも着ているくっさいロングコートは裏返して着て念じると透明になれるようにしたわ、戻るときは脱ぐかまた戻れって念じるともとに戻るわ、あとそのダサいクロブチメガネは対象の体を3秒以上見つめて念じれば相手の思考を読み取る能力を付与しといたわ、どっちもあなたが身に付けないと発動しないから盗まれても大丈夫だけど悪用しないでね。悪用したときはわかってるわね?』

 

「...なにこの酷い書き方、でもそうするとさっきのあれは夢ではなかった?」

材木座は恐る恐るコートを裏返して羽織って鏡を見てみると

「消えてる...メガネは後で家族で試すとして、八幡本当に自殺してしまうのか」

ものすごい不安に刈られる材木座

「ん?裏になにかいてあるな?」

『P.S.今度ダメ神言ったらこ○す』

「...マジであのあれなの?ってかダメ神っていま初めて言ったのになんでここに書かれてるの?まさか監視されてるとか?」

何か急に怖くなりアイテムの悪用とダメ神という言葉は使わないように心に誓う材木座だった。

 

朝食を取り学校へ向かう、結果から言うと眼鏡も使えた、母親に試したところ

『はぁー毎日アニメだのゲームだのって友達も一度もつれてきたことないしこの子は将来大丈夫なのかしら?』

といった心の声が聞こえたからだ。

「まったくうちの母上ときたら余計なことばかり考えおる!ふん!将来ラノベ作家になって見返してやるワイ!」

と一人憤慨しつつ登校する。

 

2-Cの教室につくとすでにクラスの半数は登校しているようだった。

「諸君、おはよう!」

といい教室に入るがざわついていた教室が一気に静になりいつもと違って視線が自分に集中しているのに気がつく、自分の席につき、隣の席の女子の神崎へ話しかける。

「神崎殿、なんで我を皆見てるのだ?我の顔になんかついているのか?」

と聞いたところ神崎はものすごく驚いたようで

「ざ、材木座君っていつも暗い感じでいつのまにか教室に入ってる感じだったし、その、びっくりしたんだと思う...」

 

それを聞いて材木座は合点がいく

「これがコミュニケーションスキルの向上の結果か、ふむ、悪くないがアニメとかの展開だとこのままウザキャラになって余計に引かれるという展開になりがちだな、ちょっとセーブしておくか」

と思い、そのままHRまでおとなしくしていることに決めた。

 

ちなみに授業中は当てられたときメガネを使って先生の頭から答えを引き出し難を逃れたりしたが、暇なときはクラスの連中の思考を読んだりもしてみた、大概が真面目で面白くなかったが、平塚先生の時間になると男子は皆エロいことばかり考え初め、女子は先生のスタイルを誉めたり嫉妬したり百合っぽいことを考え出したり、先生本人はなにかというと結婚したいばかりで吹き出すのをこらえるのが大変だった。

 

HRになり修学旅行の打ち合わせ会が始まる。

だれと組むとか自由時間はどこにいこうかとかで教室は騒々しくなる

「あー、そういえば我、ボッチだったわ、班決めとか死にたくなるな」

そう思いつつ次々と班が決まっていくのを一人ボーッとしていると

班決めも終わった隣の神崎が話しかけてきた

「材木座君は班決めおわったの?」

 

「いやぁその我は余った人たちで組むから最後でいいのだよ」

「ふーん、それってつまらなくない?最終日の自由行動とかどうすんの?」

 

神崎はあきれたように聞いてくる

「まあボッチになったらそれは願ったり叶ったりだな、我は好きに動くのでな、ちょっと遠いけどけいおんのモデルになったとこにもいっていみたいし」

 

けいおんと聞いて女子の態度が変わる

「けいおんってあのアニメの?あの場所って本当にあるの?」

「ん?あるぞ、大概のアニメにはもとネタの場所がある、この千葉を舞台にしたアニメもあるし...」

 

と材木座がうんちくを語ろうとするのをバッサリと切って

「わたし、小学生のころけいおんのアニメ見てあんな高校生活ができたらいいなーなんて思ってたんだ、それで部活も軽音楽部に入ったんだけどあんな風にはいかなくてねー」

と唐突に自分語りを始めた。

「そりゃあれはアニメゆえ当然であろう、ちなみに我はあずにゃん派だ」

と話してると女子と同じ班の人たちが寄ってきた。

 

「神崎さん材木座と盛り上るなんて珍しいじゃないの?」

寄ってきたのは同じく軽音部の成田だった。見た目は葉山ほどではないがいかにもリア充といった感じの風貌、一応このクラスではトップカースト的な位置にいる、神崎もそのグループに属していたのだ、材木座は厄介なのが来たなぁと身構えたが

「え?けいおんの舞台になったとこ本当にあんの?」

とこれまた食いついてきた。

 

そのうちどしたどしたと成田のグループメンバーが集まってきてけいおんやらなにやらのアニメの話が始まる

「まぁけいおんのアニメに出てくるシーンは京都内にもあるがモデルになった学校は滋賀なのでな、ちょっと遠いがいけなくもないのでな」

と材木座が言うと

「俺らもいきたいから材木座一緒にいくべ?つかまだ班決まってないっしょ?俺らの班に入れよ」

「定員オーバーではないか?」

と材木座が言うと

「いいっていいって、どうにかするから、あと材木座ってよくゲームもやってたよな?」

「あ、ああ、まあ趣味のひとつがそれだからな」

「マジで?んじゃあ旅行中一緒にやるべ、他にも色々持ってくるからよ」

「ふむ、格ゲーなら自信あるがな」

「マジか、んじゃ材木座先生に色々教えてもらうかな」

 

もしかして金銭やらなにやらを巻き上げられるのではないかと不安になり、メガネを使い成田の思考を読んでみた

『やべーけいおんの学校とかマジ楽しみ、それに材木座ってあんましゃべらんかったけどこいつ面白そうだな、ってか何でこいつは俺を見つめてるんだ?』

 

つい顔を見て思考を読んでしまったので見つめる形になってしまった

 

「うーん3秒以上という制約は地味にきついな、対戦ゲームでは使えんし、相手を見てるのがばれるとあらぬ誤解を与えてしまうし、やはり姿を消してからのコンボで使うか、遠くから使う方法でやるようにしよう」

 

ともかく 表裏がなくて安堵した材木座はそのままなしくずし的にリア充グループへと組み込まれてしまったのだった。



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第三話

放課後、奉仕部の様子を探りに来る材木座

「これで透明になってと、まるで天狗の隠れ蓑だな、そういや攻殻機動隊にこんなんあったな、2902光学迷彩だったかな?いや3302式の方が新しかったかな?」

 

どうでもいいことを考えつつ奉仕部の前のドアまで来たが、この状態でドアを開けると誰もいないのに開いたことになり幽霊騒ぎになることは想像に難くない為どうやって開けようかと思案していると向こうから戸部たちがやって来た

 

「あの女神が言ってた依頼というやつだな、これを阻止できれば丸く収まるわけだが...」

と戸部たちが扉を開けたとき滑り込むように中へとはいり会話の内容を聞く。

 

「ふむ、確かに告白を失敗しないようにとか言っておるな、ギャルゲーですらきちんとフラグ立てないと玉砕してしまうのにそう簡単にいくわけなかろう」

材木座は透明な状態で部室の隅っこに座り戸部たちが話しているのをボーッと見ていたが

 

「いかんな、依頼を阻止しようにも止め方がわからぬ、まあ各人が何を考えてるか確認してみるか」

メガネを使いまず戸部の思考を読み取って見る

『結衣とあの雪ノ下さんがいるなら楽勝でショー、ヒキタニくんはわからないけど手伝ってくれるみたいだし、隼人もいるしきっと成功するっショー』

 

「うーむずいぶんと短絡的であるな、ラノベや漫画だと告白手伝うのってお互いの気持ちを理解している人が集結してやっているような気もするんだが、さっきから聞いているとこの中にいる人たちは誰も海老名殿の気持ちを知らんみたいなんだが?」

 

次にずいぶんと乗り気の由比ヶ浜を見てみる

『きっと姫菜も嫌な顔しないはず!戸部っちが告白成功したらそのまま流れであたしもヒッキーに告白したいな、でもゆきのんもきっとヒッキーのことが好きだよね...ヒッキーから告白されるんだったら恨みっこなしって思ってるけど、こっちからいかないと難しいし、ゆきのんのこともヒッキーのことも大好きなのにどうすればいいのかな』

 

「なるほど確かに八幡に惚れてるようだが、自分のことと重ねしまって相手が見えていないようだの、しかし由比ヶ浜殿は八幡のことが好きすぎるだろう、八幡のことばかり考えてるではないか」

 

次に雪ノ下を見てみる

『告白のサポートなんてどうすればいいのかしら?されてばかりだからまったくわからないわ、でも由比ヶ浜さんはすごく乗り気だから無下にするのも悪いしなんか良いアイディアを思い付ければいいのだけれど、比企谷くんならどう考えるかしら?』

 

「雪の下殿は真面目だのう、まあ我の小説もきちんと読んでくれるし」

と思って見ていたが

『でもまた自分が傷つくような解決方法を選んだら嫌だわ、いえそんな方法を取らせないようしっかり監視しておく必要があるわね、ずっと比企谷くん側にいて何を発言するにも私の許可をとるようにしたらどうかしら?フフフ、そうして他の女性のことを口に出せないようにするのも悪くないわね、比企谷くんは自分のことを他の誰よりも知っている私とだけ話をすべきだわ』

「...なんか若干ヤンデレ入ってないか?でもまあ雪ノ下殿も似たようなものだな」

 

比企谷を見てみると

『うわぁーめんどくせー、何こいつら?文化祭のことで散々なこと言ってるくせにどの面下げてここに来ているんだ?本当に死ねばいいのに』

「ふ、八幡らしいな」

と思いつつ見ていると

 

『誰かが協力したからと言って告白成功なんてするわけないだろ、それで成功するんだったら俺の黒歴史なんてないし、そもそも葉山の奴自分等で何とかしろよ、っつたく由比ヶ浜がお願いすると雪ノ下はすぐ首を縦に振りやがって、全く仕方ないな。さてどうするか』

「八幡はあの二人に甘いのう」

と思っていると

 

『大体絶対成功する告白方法なんてあったらとっくに由比ヶ浜か雪ノ下に告白しているわ、由比ヶ浜はかわいいしスタイルいいし胸でかいし雪ノ下は胸が貧相だがやっぱかわいいしスタイルいいし二人ともいい臭いがするし下着姿も見ちゃったから毎晩おかずに困らねぇ、妄想の中なら二人は俺の翼とかいえるんだけどな』

 

「...八幡は毎日あんなこと考えておるのか?」

 

最後に葉山の思考を見てみる

『何で諦めないんだよ、姫菜は今のままでいたいから告白自体無くしてと俺にいってきるんだぞ、俺も今のグループ関係が崩れるのは嫌だし、だからといって戸部に事実を伝えてしまうとこじれるし、第三者に諦めるよういってもらえればと思って比企谷にだめ押ししてもらおうかと思ったのに、結衣がこういう話好きだったの忘れてた。優美子もこういう話好きだから黙ってたのに、一応失敗したときはうまくやるからとは言ったが、本当にどうすればいいんだ?比企谷の奴に頼るしかないのか?』

 

「...葉山殿は一体何を考えているんだ?早い段階で本音を八幡達に話しておけば八幡も嘘告白とかせずに済んだのでは無いだろうか?、まあ言ったところでタブルスタンダードっぷり非難されるだろうがそれが嫌なのか?我が代わりに話してもいいがなんで知ってるんだってなるしそもそも我の話をまともに聞いてはくれぬだろうし」

 

その後また全員の思考を読んでいると葉山達は出ていき戸部だけが残されることになる

 

そして何故奉仕部へ相談しにきたのかという話が始まる、葉山はこういうことに苦労してないから恋愛に苦労してそうな比企谷へ相談しにきたのであろうとか言いあっていたがしばらく会話した後戸部は出ていったので、材木座も開けっ放し扉から一緒に出ていくことにした。

「ふむ、おおむね女神から聞いた話の通りだな」

歩きながら先程の会話を思い出し少し違和感を感じた。

 

「んん?なんで『奉仕部』ではなく『八幡』へ相談しにきたという流れになっていたのだ?戸部殿も奉仕部三人にではなく八幡に頭下げてたし、なんか皆の考えてることを覗いたら八幡はどう考えるみたいな感じになっていたし八幡も自分がやらなきゃみたいな感じで考え出してたし」

 

ああなるほどと材木座は一人で納得する

「そうかこれがあの女神が言っていた皆が期待してその期待に応ようとしてって奴か、ここから既に始まっていた訳だな。八幡も抱え込まないで周りに相談すれば良いのにな」

 

ともかく依頼自体を無くせないかと思い。戸部と接触することにしたのだった。

 

材木座は戸部の後ろで距離をとってコートを着直し姿を表して接触する。

 

「戸部殿」

「うわっ、あれ?えーっと誰だっけ?」

「材木座と言う、八幡の友達である」

「えーっとそのザイモクザくん?が俺に何の用?」

「我も奉仕部へ用があったのでな、珍しい人が出てきたので興味が湧いたのだよ、して戸部殿はどのような用件で?八幡の友人である我にも手助けできるやもしれぬ」

 

戸部は話すべきかどうか悩んでいたようだが確かに比企谷と一緒のところをよく目撃していたためすっかり信じこみ依頼内容を材木座へ話した。

「フム、海老名殿とは体育祭の際に一緒に仕事をした仲でな、その時に海老名殿に告白した人がいたらしく海老名殿から付き合う気がないとか何とかでフラれたとか聞いたような気がするが?」

このような事実はないがとりあえず本人に確認されても誤魔化せるような当たり障りの無さそうな嘘を並べて見たが

 

「え?そうなん?うーんでもよ?ザイモクザくんはその告白の現場見てないべ?」

とまるで信じていない上にもしかして自分が本命だからあえて断っていたのかもという超解釈を始めて余計に火をつける結果になってしまった。

 

これでは話にならぬと戸部と別れた材木座は奉仕部の方をどうにかできないかと思い部室の扉を叩く

「たのもう!八幡はおるか」

「いないから帰れ」

「んもうつれないな八幡よ」

 

嫌そうな比企谷を無視して材木座は話を続ける

「なにやらトップカースト陣営が出てきたようなのでまた厄介ごとを押し付けられたのであろう、実は先程そこで戸部殿に出会ってな...」

と依頼の内容を聞いたと話すが

 

「は?おまえ戸部とそんなに仲がよかったか?」

「ざ、財津くん、なにがあったのかしら?変な小説の書きすぎでとうとう頭までおかしく...」

「中二、本当に中二なの?偽物じゃないよね?」

 

一様に失礼なことを言われてしまう。

「ほむん、主らは大分失敬だな!男子三日会わざれば刮目してみよと言うであろう!我も成長しておるのだ!あと雪ノ下殿!我は剣豪将軍材木座義輝であるぞ!その名をしかと心に刻むがよい!」

 

「あ、ああ、ご、ごめんなさい、ケ、ケンゴー?ショーグンさん?」

雪ノ下は以前と違う材木座の態度にたじたじとなり比企谷の影に隠れてしまう

由比ヶ浜も不安な顔をしてやはり比企谷の後ろに隠れようとしている

 

「なにやら告白の手伝いを頼まれたそうではないか、八幡よ、主は告白に失敗したことしかなかろう、前そのようなことを言っておったではないか?」

 

「そういうおまえは告白したことすらないだろ、一体どうしたんだ?」

「あまいな八幡!その点我は古今東西様々なギャルゲーでバッドエンドから性別人種を越えたグッドエンド、全てを手に入れるハーレムエンドまであらゆる告白を成功している落とし神!どうだ八幡!困ったときには助け合うのが相棒の勤め!この我も戸部殿のお手伝いに加えてはもらえぬだろうか?」

依頼自体を無くせないなら近くで監視して嘘告白以外の方法を取らせるか妨害できないかと思う材木座だったが

 

「駆け魂でも集める気かよ...ゲームだったら俺もモテモテだぞ」

「ゲームと現実の区別ぐらいつけなさい、ここはあなたの書いた小説の世界ではないのよ」

飽れ顔の八幡と雪ノ下

 

「中二、手伝ってくれるのは嬉しいけど...」

由比ヶ浜が言いにくそうに比企谷の後ろから顔を出してきたので材木座は由比ヶ浜の思考を読んでみる

『中二が手伝うってことは中二も一緒に行動するってことだよね、ヒッキーとゆきのんとの三人だけの時間がなくなっちゃうよ、ってかめっちゃ見られてる、ヒッキー助けてよ。なんか怖い』

雪ノ下を見てみると

『比企谷くんと由比ヶ浜さんとの時間をこんなのに邪魔されたくないわ、なんとか断らないと、というか何故こっちを見てるのかしら?今まですぐ目をそらしたのに、本当に何かあったのかしら?どのみちあんまり気分いいものではないわね、比企谷くんとだったらいつまでも見つめあってられるのに』

比企谷はというと

『却下だな、ただでさえ厄介ごとを抱えてるのに厄介な人まで面倒見切れんわ、ってかさっきからなんで由比ヶ浜と雪ノ下をじっと見てんだ?今度はこっちを見てるし本当にどうしたんだ?』

「ぐっ、めっちゃ要らない子扱いだな我、でもここで引くわけには...」

そう思う材木座だったが

 

「まぁ分かったわ、でもお前違うクラスだろ、必要なときは連絡するからそれでいいだろ」

と、比企谷に言われてしまう、慌てて比企谷の思考を読んでみると

『俺の黒歴史を参考にした必殺いやー比企谷だけ連絡するのを忘れていた作戦、連絡するよといいつつわざと連絡をしない、これで実質こいつを排除できたな、めでたしめでたし』

 

「くそ、その手があったか」

材木座は悔しがるが後の祭り

「そ、そうだね!中二、必要なときには呼ぶからその時には来てね!」

「そうね、比企谷くんが呼び出すからその時には来てちょうだい」

「ま、そういうことだ、一応なんか決まったら教えるからな」

 

そういわれて材木座は体よく奉仕部を追い出されてしまった。

「くっこれではなにもできんぞ、どうしたものか」

 

次の日、またも材木座は姿を消し奉仕部に行くことにした。

比企谷が来るのを待ち一緒に中へとはいる。

 

「うっす」

「あら、来たのね?恋愛苦労谷くん」

「うっせ、苦労してるレベルでいうとお前もそうだろうが」

「あら?私は常に向こうから告白してくるから葉山くん並みに苦労したことないのよ?」

「実際にお付き合いしたことない人がよく言いますね」

 

そんな軽口の応酬中にメガネを使い雪ノ下の思考を読み取って見る

『彼を見てると悪いと思ってもついつい口が出てしまう、でもこの二人だけの時間は楽しいわ、他の人達と違って黙りこんだり嫌な顔せずに付き合ってくれるんですもの、でも駄目ね、本当はこんな言葉じゃなくてもっと別なことを言いたいのに』

 

次に比企谷を見る

『またいつものか、これが無ければすぐさま告白して玉砕してるんだがな、でも雪ノ下いい笑顔が見れるし悪くない、笑った顔めっちゃかわいいし、うっかり告白してフラれるレベル、この時間ずっと続けばいいのに、おお神はなんと残酷な』

 

「もうこいつら本音をいえよ、うっかり告白しろよ、ここまで想っているんだったらあとはゴールに一直線であろうになんで口に出さないの?本当に我はどうしたらいいのだ」

 

頭を抱えていると由比ヶ浜と戸部が入ってきていかにして告白を成功させるかの相談が始まる。

思考を読み取りつつ相談の内容を聞く材木座

「うーむ、話をしているのを客観的に見るとやっぱり皆八幡個人へ相談しているように見えるな。しかも奴は獄炎の女王には話を伏せるようにとかのたまってる、奴のグループのことだし葉山殿も失敗したときは任せろといってたから任せればいいのに、これではやっぱり非難が奴に集中することになるぞ」

 

不安に思い比企谷の思考を読み取るが

『こんなもんうまくいくはずがない、失敗したとき三浦も関与していたとなると由比ヶ浜と三浦が戸部を海老名さんにけしかけたということになる、特に由比ヶ浜は奉仕部と掛け持ちだ、海老名さんの目には由比ヶ浜が糸を引いていたように見えるかもしれない。それは絶対避けなければ』

 

「...八幡、男だのう、惚れるのもわかる気もする、というか戸部殿は本当になんも考えてないみたいだな。葉山殿が困るのもわかる気がするワイ、して我はいったいどうすればいいのだろうか?」

 

悩んでいてもわからずここまできては止めることも難しい上に時間を浪費するだけなので戸部が出ていった後の開けっぱなしになっているドアから材木座も出ていくことにした。



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第四話

「なあ材木座、お前放課後どこ行ってるんだ?部活無いくせに教室にカバン置きっぱなしだろ?」

HRの時間、修学旅行の行き先を決めているときに成田から聞かれる。

 

「あーまあ奉仕部へちょっとな」

「奉仕部ってあの雪ノ下さんと由比ヶ浜さんがいるとこだろ?いいなー俺もいきたいわ何しにいってんの?」

 

「い、いや我の書いた原稿を見てもらっていてな、あ、あまり他の人に見せたくなくて」

とっさに嘘をついてごまかそうとするが成田の追撃は止まらない

 

「俺らに見せられないのに雪ノ下さん達には見せられるのか?なんだよそれーもう特別な関係なんじゃね?やるわー材木座、すごいわー」

 

「いやいやちがくてな、その、同じ部に比企谷八幡というのがいてそやつに見てもらって...」

とここまで話したところで成田が話を遮る

「はぁ?ヒキガヤ?ヒキガヤってあの文化祭や体育祭を台無しにした奴だろ?あんな奴とお前友達なのか?」

 

ああやっぱりそういう評価か、これは思考を読むまでもないな

材木座は悲しくなる。実際文化祭の件は広まっていたし、体育祭の件も比企谷のことを見ていた人が結構いたため、反則負けになったのは実は比企谷が原因ではないかという話もじわじわと広まっていたからだ、だがその裏で比企谷がどんな思いしていたか、何故あのようなことをしたのか一部を除き誰も知らないのだ。

いつもの材木座ならここで黙り込んでしまうところだが、女神によってコミュニケーションスキルを上げられた今は我慢できなくなっていた。

 

「いかにも我は八幡と友人だ!いや相棒といってもいいであろう!貴殿が八幡にどのような印象を持っているか知らぬが奴は皆が思っているような男ではない!しかしここで我が100の言葉を並べても誰も信じてはくれぬであろうし、奴もおそらくそんなことを望んではおらぬ、ただ我は目の前で相棒が愚弄されるのには我慢できぬ!」

材木座は成田に食って掛かる

 

「成田殿!あんな奴といった言葉を撤回していただこうか!」

その勢いに成田はたじたじとなる

「で、でもヒキガヤがひどいことをしたのはじ、事実だろ...」

「奴が理由もなしにそのようなことをするわけなかろう!もし奴が理由もなしに皆のヒンシュクを買うようなことをしたのであれば何故雪ノ下殿や由比ヶ浜殿は平気な顔をして奴の近くにいる上に奴に好意を持っておるのだ?貴殿は雪ノ下殿や由比ヶ浜殿も侮辱していることに気がつかないのか!」

 

「そ、それもそうだな...悪かった撤回するよ、ってえええ!好意ってなに?」

「し、しまった、つい口が」

教室が一気にざわめく、材木座が教室の適当な人達の思考を読んでみると

『雪ノ下さんや由比ヶ浜さんと一緒にいるあいつはそういう関係だったのか』

『ヒキガヤってだれよ?』

『えー由比ヶ浜さん狙ってたのにー』

『もしかして文化祭や体育祭って雪ノ下さんや由比ヶ浜さん達のためにわざと汚名被ったとか?』

『そういや文化祭始まる直前にレシーバーで夫婦漫才やってたな』

 

「ま、まずいこれでは大騒ぎになってしまう、下手すると八幡達の関係もこじれてしまいかねん」

あせる材木座

「な、なぁ材木座、その好意を持ってるってどっちが持ってるんだ?というか本当なのか?」

成田がまた聞いてくる

「い、いやぁ我がいくといつも普通に3人で会話をしているのでな、好意ってそういう意味だ、好きとか恋人とかそう次元では...」

 

「え、由比ヶ浜さんとあの雪ノ下さんが普通に会話を?誰が行っても10秒もたたずに撃沈されるのに?それってやっぱり...」

愕然とする成田、騒ぎがだんだん大きくなる2-Cの教室

 

「ちょちょっと皆の衆!落ち着かれよ!我もそう見ただけで実際はどうかわからん、なのであまり騒ぎ立てないでいただけないか、もしこれが勘違いで我が言ったと雪ノ下殿の耳に入ったら、我は殺されてしまうかもしれぬ」

その言葉に教室騒ぎはだんだん落ち着いてくる、雪ノ下の美貌とその恐ろしさは学年中に広まっているからだ。

 

「このことはこのクラスだけの秘密にしていただきたい頼む」

材木座は皆の前で頭を下げる

「材木座がこう言ってるんだからみんな黙ってようぜ」

成田が材木座の後押しをしてくれ騒ぎは完全に落ち着いた。

 

「すまぬな成田殿」

「いいってさっきのお詫びだ、それより行き先決めようぜ、やっぱ旧豊郷小学校は三日目にしようか?」

「う、うむ二日目は京都内の聖地巡礼をしつついろいろ回りたいし...」

ふと比企谷の受けた依頼を成田達だったらどう解決するか気になった。

 

「な、なあ成田殿ちょっと聞きたいことがあるのだが」

「んぁ?どした?行き先になんか問題あったか?」

「いや...それと関係なくだな、例えばなのだがあるグループの男女がな...」

と葉山が奉仕部へ持ち込んだ戸部の話をする

「...とまぁグループの人間関係を壊さず告白を無かった事にすることはできるものなのかね?」

「...なんだか大分込み入ってるようだが、なぁそれは誰の話だ?材木座か?」

「いや...」

 

「あのよ、同じグループの奴を好きになるなんて部活じゃ普通にあるしフッたりフラれたりして顔を会わせづらくなるなんてのも普通にある。今の関係維持したいからそういうことは避ける、とかってのもよくある話だ、でもだ、それらを人任せにするってのはどうなんだ?しかもそれをグループの外の人にお願いするだと?普通に『あなたとはずっといいお友だちだから!』って先手打てばいいだけの話だろ、もしくは『今は誰とも付き合うつもりがないからだれか告白してきたら振っちゃうね』とか言えばいいだけだろう。でもよ、うちのグループの女子はコクってきた奴にちゃんと向き合ってくれるぜ?だから材木座、心配せずコクれよ、だれよ?神崎か?大丈夫俺たちが骨を拾ってやるしフォローもしてやるからよ」

成田は材木座の肩を叩きサムズアップをする。

する同じグループの女子から黄色い声が上がる

「えー材木座君って神崎さんが...」

 

「い、いや違う違う!何でそんな話になるのだ!そ、そういうシチュエーションの小説があってだな」

必死で否定する材木座だったが

「材木座君、いいお友だちでいましょうね!」

神崎がにっこり笑いながら言ってくるのを見て

「いやだから違うといっておるだろ、というかなんで告白もしてないのに我振られてるの?」

「材木座、ドンマイ」

成田がまた肩を叩いてくるのを感じつつ

「ハァーリア充グループというのは疲れるのう」

材木座はため息をつくのだった。

 

放課後また姿を消して奉仕部へと潜り込む

「うーむどうすればいいのだろうか?このままだと八幡が嘘告白してしまうぞ、しかし本当に関係が悪化してしまうのだろうか?三人の思考を読んでもとてもそうは見えぬが」

 

三人は旅行のパンフレットを見ながら行き先や戸部の告白ポイントを調べているようだったが、思考は相変わらず由比ヶ浜はヒッキーゆきのんスキスキばっかりだし雪ノ下は比企谷を意識しすぎて弄りたくてしょうがない感じだし、比企谷は雪ノ下や由比ヶ浜が話しかけたり近くによったりする度にいい匂いにうっかり告白してフラれるレベルと思ったり、胸がスカートがとエロいことばかりだった。

 

思考だけなら甘い空間過ぎてうんざりした材木座は次にだれかがドアを開けたらその時にでも帰ろうか思っていた矢先扉を叩く音が聞こえる、入ってきたのは海老名だった。

「ふむ、最後のキーパーソンのご登場か」

材木座は早速思考を読んでみるが

「う、なんだこれ?葉山殿のグループ関係を維持するために八幡を犠牲にする気満々じゃないか、どうやって自分を汚さず解決するかしか考えてない、成田殿が言っていたような方法とかやる気もないぞこの女子は」

 

表向きは腐女子の妄言のようなことをいって去っていった海老名を見て材木座は気分が悪くなった。

「なんだこれ?女神から聞いてはいたが酷すぎるぞ、葉山殿は全部を話さず中途半端、戸部殿は何も考えてないし海老名殿にいたっては腹黒どころか全身真っ黒だぞ、しかも一番色々考えてるのは当事者ではなく八幡達ではないか!」

 

材木座は憤慨しどうにかできないか思案する。

「このままじゃ本当にまずい、なんとか依頼も何も全部無かったことにできないか?いや、やらないと確実にあの女神がいった通りになってしまうぞ、どうしよう...」



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第五話

修学旅行当日、材木座は駅にて比企谷を探す。

 

「はちまーん」

「なんか用か?」

 

「いやぁ、あの戸部殿の依頼の件だがな、何か決まったら教えてくれると言ってたであろう、何か決まったりしたのか?」

 

「何も決まってねぇよ、まぁ考えながらってところだ。3日目自由行動だからやるとしたらその時だな」

「3日目って貴殿は奉仕部で回るとか言っておったのでは?、あの二人も八幡との時間を楽しみたいと言っておったであろう」

 

「ん?俺は確かに奉仕部で回るとは言ったが、雪ノ下と由比ヶ浜が俺との時間を楽しみにしているってどこ情報よ?お前マジでいってんの?」

比企谷はいぶかしげな目線を材木座へ向ける

 

「い、いやほら、あの我も協力したいなーと言いに行ったときみんなで我を拒絶したであろう...だから...」

 

「は?まあ確かに同行は遠慮したいとは思ったが、誰も拒絶なんてしてないし俺と一緒に行くのが楽しみだからなんて言ってないぞ?」

 

しまったと思う材木座に比企谷はさらに質問しようとしたがちょうどその時

「あーいたいた!材木座君!なにやってるのよ!」

神崎が人混みを掻き分けやってくる

「んもーウチのクラスの集合場所はあっちだよ!みんな心配してたんだから!」

 

「え?材木座、この人誰?」

突然のことに驚く比企谷

「フフフ、聞いて驚け八幡よ!我はとうとうリア充の仲間になったのだ!この方は我のグループの一員でな!神崎殿と言うのだ!」

「えーっと、八幡君?あれ、もしかして君が噂の比企谷八幡?」

その台詞にまたかという顔をする比企谷

「あーんじゃぁな材木座、また連絡するわ」

と言って踵を返そうとするが

「君って材木座君の相棒なんでしょ?この間材木座君が君に関する悪い噂は誤解だって力説してたよ!いいなー友情だね!」

 

その台詞に比企谷はピクリと足を止め材木座を睨み付ける

「材木座、おまえ余計なこといってんじゃねぇよ」

「いや、だって皆が八幡のこと悪く言ってるのには我慢できなくて...」

「だってじゃねぇよ、俺がこういうの嫌いだってしってんだろ」

比企谷が材木座へ食って掛かっているところに神崎がさらに

 

「そして雪ノ下さんと由比ヶ浜さんの秘密の想い人!ウチのクラスじゃ常識だよ!あ!でも他のクラスには内緒にしてるから安心してね!すごいね!学校一位二位を争うような美女二人と秘密裏に仲良しになっているなんて!」

と目をキラキラさせる

 

「ちょっちょっと神崎殿、我はそこまで言っておらぬだろう」

「お、おい材木座、いったいなんの話を...?」

妙な話になっているのでうろたえる比企谷

 

「ふふふ、材木座君から聞いたあとウチのクラスのメンバーで情報収集したらなんと三人は何かというと一緒にいるってことがわかったんだ!しかも三人とも仲良しなんて奇跡じゃない!大丈夫!ウチのクラスはみんな比企谷君の味方だから!でも私としては雪ノ下さん派かな?じゃ、材木座君いこう!」

 

唖然としている比企谷を残し神崎は材木座を2-Cの集合場所まで押していく、材木座は一応どこまで知っているのか聞いてみる

「神崎殿はどこまで知っておるのだ?」

「うちの部活にJ組の人がいてね、雪ノ下さんの話聞いたんだけど、比企谷君と文化祭の時レシーバーでみんなが聞いてるのに二人で話をするのに夢中になったり一緒に文化祭を回ってたとかでJ組の女子の間でも噂になっててみんなで問い詰めたんだって!そしたら顔を真っ赤にして『なんであの人の事を言わないといけないのかしらって』いつものクールな感じじゃなくなってものすごく慌てた感じ立ったんだって!なんスッゴクかわいくない?私もめっちゃ応援したくなってさ!」

 

「由比ヶ浜殿のことは?」

「由比ヶ浜さんはちょっと露骨すぎかな?多分あとちょっと押せば比企谷くんも落ちちゃうかも、それに由比ヶ浜さんは友達一杯いるからきっと応援してくれる人も沢山いるでしょ?だから私は雪ノ下さんを応援するんだ」

 

新幹線内では材木座がゲームが得意ということを成田が広めたため、ゲーム大会が行われていた。

「ぬっはっは弱い弱すぎるぞ!これで30人抜きだ!」

「きゃー材木座さんステキー」

「成田殿、男に言われても全く嬉しくないのだが」

成田のグループが材木座のことを宣伝したため他のクラスから腕に覚えがある男達が続々と終結し、材木座のいる車両はさながらゲーム大会の会場のような様相を呈していたのだ、無論女子はあまりのむさ苦しさにいなくなってしまった。

 

「うーんしかしこんなことしていていいのだろうか?」

「ほれ材木座、次の挑戦者だ」

矢継ぎ早に対戦相手が来る上にゲームの種類も数種類あるが次々と撃破していく材木座、そのうち新幹線は京都についてしまった。

 

京都初日はクラス単位で回る、材木座は比企谷達が心配ではあったが、クラス単位で動いているためそのまま観光することにした。

ちなみにゲーム大会とコミュニケーションスキルの向上により今までほとんど話したことがないクラスの男子達と今更ながら打ち解け、材木座と成田を中心にクラスが移動するという比企谷達が見たら見間違えかと思ってしまう状況になっていた。

 

ホテルにつき据え置き機を持ってきた人がいたため、またもやゲーム大会となるが材木座は強すぎるという理由で逆にあまり対戦をさせてもらえなくなっていた。

「むふぅ、我の相手がいなくなってしまったではないか」

「材木座が強すぎるのがいけねぇんだよ」

「ヌッフッフ敗北を知りたいものだ」

 

依頼の件の進展が気になったこともあり

「では八幡のとこに顔を出してくるかのう、我しばらく離脱するなり!」

「いってら~」

ウノを片手に比企谷のところへ行くことにした。

 

「はっちまーん、ウノしようぜ!」

「うわ、お前自分のクラスはいいのかよ」

ごく自然にするりと戸塚と話をしていた比企谷のとなりに座る材木座

「それが聞いてよはちえもーん、新幹線に乗っているときにちょっとゲームで連勝しちゃったらみんな相手にしてくれなくなっちゃったんだよー」

 

「材木座君ってゲーム上手いの?ちょっとってどのくらい?」

戸塚が興味深そうに聞いてくる

「30、いや最終的には40連勝だな、各ゲーパズルゲー対戦できるのは何でもだな!あのままだったら100連勝も容易かったであろう、もっともその頃には京都を通り越して九州についていただろうがな!」

 

「...アホか、いったい何しに新幹線に乗ったんだよ、まあそんなに強くては追い出されるな、勝負する前から勝敗が分かるなんざやる気がでねぇ、だからウノもやめようぜ、どうせお前が勝つんだから」

 

「この手のカードゲームはそうでもないのでな!だからやろうぜ!」

といいながら懐から出したウノをシャッフルし始める。

「罰ゲームは外に買い出しにいくで良いな?」

「おい勝手に決めるな...」

「僕は構わないからやろうよ!」

戸塚が乗り気なので比企谷しぶしぶ同意する。

 

ウノをしつつ依頼の状況を比企谷へ聞いてみる。

どうやら今のところ海老名と戸部をなるべくくっつけるように行動させる程度しかしていない様だった。

思考も読んだが

『あーめんどくせぇ、明日の予定も葉山達と一緒だしな、由比ヶ浜はいつも以上にくっついてくるし朝の材木座のグループの女子が言っていたこともあって意識しちゃって勘違いしちゃいそうで困る。まったく一緒にいるだけで噂になっちまうんだから』

 

「そのまま勘違いすればいいのに」

ついボソッと独り言を言ってしまう。

 

材木座は明日の予定を聞く他に葉山達の依頼をなんとか帳消しに出来ないか働きかけるつもりだった。

比企谷は由比ヶ浜雪ノ下も絡んでいるため簡単に諦めさせることはできないだろうからせめて依頼そのものををなくせないかと思っていたのだ。

 

その為メガネを使って思考を読み勝負をコントロールしばれないように比企谷を負かして、買い出しに行かせることとなる。

 

買い出しにいかせている最中に戸塚に明日の予定について詳しく聞くことにした。結果材木座達も大体同じような所を回るようなのでちょっと変更して後からついていく形にでもしようかと思い、今度は葉山達の方へ

 

「葉山殿、ちょっとよろしいかな?」

「君は...材木座君だったかな?なにか用かい?」

 

「実は...」

告白サポート依頼を自分も手伝うことになっていると言うことを伝える。

「あ、ああそうか君も手伝ってくれるんだね、よろしく頼むよ...」

口では感謝の言葉が出ているが思考を読むと真逆で

『くっ、彼も告白の手伝いか、これ以上増えられると本当に困る、戸部に告白を諦めてほしいのに』

 

「やはり八幡には話しておらぬのか...一体どうするつもりなのだ...」

頭を抱える材木座

 

「ん?材木座君?どうしたんだい?」

「あ、ああ、うむ葉山殿は戸部殿の告白をどうやって成功させるつもりなのだ?」

「...それは比企谷達に色々とお願いしていてね」

 

「なあ葉山殿、お主のグループの問題を何故八幡にやらせてるのだ?お主らで解決するべきだろう?」

「...そうだな...」

「お主が本当はどうしたいかちゃんと八幡に相談したのか?」

その言葉に葉山はギクッとなる

「んー?ザイモクザくんそれどういう意味よ?」

横で聞いていた戸部が割り込んでくる

 

「いやなに、八幡に聞いたが葉山殿とはあまり話をしていないとのことでな」

「そういえばそうだべ!隼人!ヒキタニくんと打ち合わせ必要でしょー」

戸部は相変わらずだ。

 

「葉山殿、この依頼我なりに考えたのだがお主はグループ内の皆とちゃんと話し合うべきなのでは」

「君は一体何を...」

いつものスマイルフェイスではなく睨み付けるような目で材木座を見る葉山

 

材木座は葉山の思考を読もうとしたところ突然部屋の扉が開く、開けたのは成田のグループの河内だった。

「材木座!ここにいたのか!ようやく見つけた!比企谷の所って言ってたからF組の連中に聞き回ったのになんで誰も知らないんだよ!おかしいだろうが!」

「それより一体どうされたのだ?ただならぬことのようだが?」

 

「新幹線のゲーム勝負でボコボコに負かしたB組とD組の連中が他のクラスの奴ら引き連れて殴り込みにやって来やがったんだよ!また勝負しろってよ!今ウチのクラスの腕が立つ奴が相手してるけど、正直持たない、頼む!早く来てくれ!」

 

「いや、我は今...「いいから早く来い!」」

「材木座君ってすごいんだ!」

戸塚からの尊敬の眼差しと

「君のクラスの一大事なんだろ?早くいってあげなよ」

と葉山に言われてしまい無理やり引っ張っていかれることとなる

 

材木座が部屋に戻ると成田達とAからJ組の男子十数名がにらみあっていた。

部屋は定員オーバーで猛烈に暑苦しい状態になっている。

 

「けぷこんけぷこん、皆の衆待たせたな!」

材木座は自分に向けられる視線に臆することなくテレビの前に行きどかっと座り宣言する。

「我は剣豪将軍材木座義輝なるぞ!諸君!小便は済ませたか? 神様にお祈りは?部屋の隅でガタガタ震えて命乞いする心の準備はOK?」

 

「大口叩きやがって、うざってぇやつだな、ぜってぇボロボロにしてやるからな覚悟しろ」

殴り込みに来た一人が言ったが、材木座は冷静に返す。

「よろしい、ならば戦争だ」

 

結果から言うと、材木座の八面六臂の活躍でC組の大勝利を納める。

「く~疲れました。これにて完結です」

ヘトヘトになった材木座はそのまま横になる。

 

真っ先に負けたJ組の男子が買い出し要員として出ていってたので、皆でゴロゴロしながら帰りを待っていた。

因みに修学旅行で皆が密集していることもあり、材木座が学年中の強者を倒したゲームマスターとして噂が一気に広まることになった。

 

しばらくすると買い出し要員が帰ってきたが様子がおかしい

「クソ!雪ノ下さんが男子と一緒に散歩してやがった!何かすげぇ親しそうだった!あいつたしかヒキタニだかヒキガヤとか言う奴だったと思うんだが、なんでよりによってあんな外道みたいな奴となんだ!」

ものすごく悔しそうにしているJ組の男子

 

「あーそれな雪ノ下さんと由比ヶ浜さんは比企谷に惚れてるんだと、あと比企谷は学年に流れてる噂のような奴じゃないとよ、なあ材木座?」

「ちょっちょっと成田殿!それは内緒って言ったであろう!」

 

「由比ヶ浜さんと雪ノ下さんが惚れてるってどういうことよ?」

一気に部屋がざわつく

 

「もういいだろ、見ちゃった奴も出てきたんだしこの際全部ゲロれ、それに今いっとかねぇと永遠におまえの相棒は誤解されっぱなしだぞ、俺も詳しいこと知りたいしよ、早く話せ」

成田から話すように急かされる

 

「んもうC組だけの話って言ったであろう...致し方ないな、では皆の者、本人達には絶対に言わぬように、我が知ってる範囲で...」

材木座は比企谷が由比ヶ浜の犬をかばって事故に遭ったことから自分の稚拙なラノベをちゃんと読んでくれたこと、戸塚の依頼に起きたこと、文化祭、体育祭、柔道部の一件等を話した。

川崎の件は大事になりそうだし、ウェディングドレスを着た雪ノ下、由比ヶ浜と撮影したまで話すと嫉妬に狂った男子達に比企谷がボコボコにされかねないのでそれは黙っておくことにした。

 

「マジかよ由比ヶ浜さんの犬を庇って事故に遭ったのかよ!それは惚れるわ...ダメだ勝てる未来が見えない」

 

「葉山とのテニス対決は俺も見てたけど、それって葉山の方から吹っ掛けてきたってことか?しかも三浦さんってテニスめっちゃ強いのに圧倒的不利な状態で逆転勝利、雪ノ下さんの前で返り討ちにしたってそりゃ惚れるわ」

 

「俺文実だったけど、裏でそんなことがあったんだな、人が少なくなって大変になったんだが、比企谷と雪ノ下さんがそんなに頑張ってたなんて、あいつはひんしゅく買うようなことばかりしてるように見えて計算ずくだったのか?ってか噂と全然違うじゃねぇか、結局相模の奴は最後まで迷惑かけてばかりじゃねぇの」

 

「あの変な騎馬戦っておまえのアイディアだったの?でも先輩の思い出作りのために自軍を勝たせようとするなんて泣けるな、一言俺たちに相談してくれれば失格になんてならなかったのによ」

 

「ってか材木座、中途半端にかいた小説よく読ませる気になったな...大体おまえ書いてるのってあれだろ?おまえがいつも読んでるラノベみたいなのだろ?異世界転生とかなんとかって奴、あんなもん雪ノ下さんに読ませるんじゃねぇよ...」

 

「そ、それがちゃんと読んで一から十まで駄目だしをしてくれてな」

 

「雪ノ下さんっていい人だな...」

 

「材木座、おまえ話盛ってるんじゃねぇの?比企谷色々やりすぎだろ」

「嘘は言っておらぬ、そもそもあやつは表に出ることを嫌うのだ、それあやつは強くて優しいがゆえに漬け込まれることも多い、文化祭の話も相模殿が自分に都合のいいように真実を切り取って噂を流したのであろうが八幡はそれを訂正することをしない。奴にとっては自分を信じてくれる身内だけで十分なのであろう」

 

「とんだダークヒーローだな、そんな奴がほんとにいるんだな...」

 

材木座が色々語ったため、材木座のゲームマスターの噂と同じぐらいの勢いで比企谷の悪い噂は払拭されることになる。

逆に男気があるということで比企谷の株は急上昇することになった。

 

「勝負が終わったらもっかい葉山殿の所にいくつもりだったがこれではもう無理だな」

材木座は比企谷のことやゲームの攻略方法を次々と聞いてくる男子達を前にそう思うのだった。

 



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第六話

修学旅行二日目、グループ行動となる。

材木座のグループは比企谷の後をついていく形になる。

「由比ヶ浜さんやっぱり比企谷にベッタリだな」

成田が残念そうに言う。

 

遠目に見ても由比ヶ浜は常に比企谷の近くにいようとしているのがよくわかる

「手を繋ぐとかなんかすればとおもうのだが人の目もあるしな...」

材木座は由比ヶ浜の思考を読んでみる

『私だけヒッキーのとなりにいるなんてゆきのんに対してフェアじゃないよね、抜け駆けはよくないよね...』

 

「んもう、ガンガンアプローチせぬと八幡は落ちぬぞ」

比企谷の思考を読むと

『なんか朝から見知った顔が後ろついてきてるんだけど、なにあいつそんなに俺のことが好きなの?それとも自分がリア充グループに入ったのを見せつけたいの?』

 

「ウームバレバレのようだのう、しかし相変わらずのひねくれっぷりだな」

材木座が苦笑してると

『そんなことより葉山の奴なんかおかしくないか?なんであんな行動取ってるんだ?まさかあいつ...』

 

「八幡も気がつき始めたようだな」

若干遠いが思考を読める範囲は結構広く、葉山の思考も読み取れた為、読んでみてたがやはり戸部を海老名に近づけないように邪魔するようにしているようだった。

 

海老名の思考を読んでみると

『ヒキタニくんはわかってくれてるのかな?隼人くんはわかってくれてるみたいだけどやっぱり頼りないな、ヒキタニくんは文化祭や体育祭時みたくやってくれるよね?ちゃんと頑張ってほしいんだけど、もちろん私たちと結衣との関係も悪くならないようにしてくれるんだよね』

 

「あの女子は考えが黒すぎる、体育祭の時はオープンな腐女子だなと思ってたが本当に性根が腐っておるようだな」

 

竜安寺にて石庭を見ていると成田が材木座の肩を掴む

「あれ雪ノ下さんじゃね?」

ちょうど雪ノ下と由比ヶ浜、比企谷がそろってなにか話しているようだった。

そのまま三人でどこかに移動する模様

「ついてってみようぜ」

材木座も依頼の件もあるのでついていきつつ雪ノ下の思考を読んでみるが

『こんなところで比企谷くんと出会うなんて運命ね、どうして同じクラスじゃないのかしら?班行動なんて無意味なのだから比企谷くんとずっと一緒にさせてほしいわ、これでは由比ヶ浜さんのほうが有利じゃないの、比企谷くんはどう考えてるのかしら?やっぱり由比ヶ浜さんの方が好きなのかしら?やっぱり比企谷くんも大きい方がいいのかしら...』

 

「...雪ノ下殿は八幡のことで頭一杯みたいだな」

 

『依頼の件はクラスメイトに参考になりそうな場所色々聞いたから活用できるといいのだけれど、それより明日比企谷くんと由比ヶ浜さんと回ることの方が重要ね』

 

「本当に三人一緒にいるな、しかも仲良さそうにしゃべってる」

悔しそうに見ている成田をほっといて

「結局明日に持ち越しか、明日は我らは滋賀までいくからその間に嘘告白されると困るな...」

班行動も一区切りついたので材木座は落ち込んでる成田を引っ張ってホテルに戻ることにした。

 

ホテルに戻るとまたゲーム大会が始まるが

「ちょっと八幡のところにいってくるのでな、後は頼んだ」

材木座は比企谷のところへといく

「はっちまーんお元気?」

「元気じゃない、今日も戸塚と風呂にはいれなかった」

 

「相変わらずだのう、ここの風呂は気持ちがよかったぞ?」

といいつつ比企谷の思考を読む

『クソ!三浦に全部ばれてんじゃねぇか!三浦まで今の関係を崩したくないとか言いやがって、葉山の奴、本当に任せていいんだよな?』

 

「もう後には引けないな、どうしたらよいのだろうか?こうなったら嘘告白するときに力付くで八幡を止めるしかないのか?」

材木座は決意を固める

 

「八幡よ戸部殿の件実行するとしたら明日なのだな?」

「ああ、あとやれるとしたら告白する場所を決めてやるぐらいなんだが、まだどこでやるとか決まってないんだよな。どのみち明日は雪ノ下と由比ヶ浜と回りながら決めるから戸部に告白させるとしたら夕方かなぁ」

 

「んではその時に我も必ず呼んでくれまいか?協力すると言った手前一応我も立ち会うべきであろう、明日の日中は完全に別行動になるわけだし」

 

「おまえも律儀だな、わかったよ。ちゃんと連絡するから、たしかおまえんとこはあれだっけ?けいおんの所にいくんだっけ?」

「そういう言い方だと二次元に旅立つ様に聞こえるのだが、まあよい、何か行きたい人が結構な人数になっててな、頼むぞ八幡、ちゃんとお土産買ってきてやるでな!」

 

「そのけいおんのとこってお土産なんて置いてあるのか?」

「しらぬ、適当に言った」

ニヤニヤしている材木座にムッとした比企谷は飛び付いて殴る真似をする、

「認めたくないものだな、若さゆえの過ちというのを!」

「ふん、当たらなければどうということは...グボ!ちょっと八幡?肘、肘入ってる!」

バタバタと遊んでると戸塚が帰ってくる

 

「なんだか楽しそうだね、僕も混ぜてよ」

「戸塚ならいつでもウェルカムだ!」

「三人揃ったのだからまたウノしようぜ!」

材木座はまた懐からウノを取り出す

「しょうがねぇな、今日は負けないからな」

そうして三人でまたウノを始める。

今日はメガネの力は使わなかったがまた比企谷は負けてしまった。

罰ゲームの買い出しは二日連続なのは可哀想という戸塚の意見でじゃんけんの結果材木座が行くことになってしまった。

「なんだかんだで八幡との時間は楽しい、絶対に嘘告白なぞさせるものか、やはり我が止めて見せる」



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第七話

修学旅行三日目、自由行動になる。

「さて成田殿、早速行くとするかの?結局何人行くことになったのだ?」

「うちのグループと後はゲーム大会の連中も何人か行きたいとか言ってたからな、男女含めて十四、五人はいるかな?」

 

「ずいぶんと大所帯であるな」

ホテルの入り口に皆集結荷物を預けて出発することとなるが、材木座は落ち着かない

 

「どうした材木座、キョロキョロして、何か忘れ物か?」

夕方に実行するとは聞いていたがやはり不安で比企谷を探してしまう

「い、いや八幡はどうしているのかなと思ってな」

 

「比企谷ならさっき由比ヶ浜さんと一緒に出ていったぞ、雪ノ下さんと朝食がどうこう言ってたからな、外で一緒に食うんだろうな、クソ!うらやましい!」

材木座達を待っていた同行メンバーの一人が言う

 

「左様か...んでは我々も行くとするか」

集まったメンバーをぞろぞろ引き付れて行くことになる、そもそも片道2時間ちかくかかるわけなので、それでもいいのかと確認したのだが、そもそも京都は中学の時に行ったとか言う人もいれば神社仏閣にはあまり興味がないという人もおり全然問題ないということだった。

 

道中、材木座は比企谷達のことが気になりだいぶ落ち着かなかった。

目的地の旧豊郷小学校へつく

「諸君!ここがかのけいおんの聖地である!ここは我らのようなファンがよく訪れるのだが残念なことにマナーの悪い輩も多く、ネットニュースで話題になることもあるぐらいだ、貴殿らはそのようなことをせぬと信じておるが、迷惑にならぬようにな」

そう材木座は言って皆と校舎を回ることにする。

 

あらかじめアニメの校舎内のシーンだけを抜き出してスマホへいれていたため

「ここがこのシーンで使われておる」

「おお、ほんとだ、さすが材木座先生」

と周囲の評判も上々、ほかにも部室に設定されている部屋ではギターの真似事をしている人を写真にとったり、集合写真をとったりと引率の先生のようにあちこち気を配る、そうでもしてないと比企谷達のことが心配で落ち着かなかったからということもあったからだ。

 

結局一時間ぐらい堪能したあと京都へ戻ることとなる

「お昼は向こうでとるか?」

と成田が提案してきた、皆もそれには特に反対もしていたかったので

「そうであるな、だいぶ遅い昼になるがこっちは余計によくわからんし」

そういうと皆で京都へ戻ることにする。

京都駅へ戻る電車内、材木座は先程撮った写真をデジカメで見ながらはしゃいでる成田達を見つつ

「なんかあんまり楽しくなかったな」

ぼそりと呟くのだった。

 

京都についた材木座達は嵐山へと向かう、途中遅い昼食を取り、嵐山へとたどり着くが残り少ない時間でどこにいこうかと街をぶらぶらする。

「そういえばあたしいってみたいところがあったんだ!」

神崎が唐突に言い出す。

「もう時間もないぜ?どこよ?」

「ほら、よく写真で見るでしょ?あの竹がドバーっと生えてるとこ、この間テレビで見たんだ!あそこ行きたい!」

 

やれやれといった感じの成田だったがほかにいくところも思い付かなかったので

「んじゃあそこいってみるか」

そういうと皆で天龍寺の方へぞろぞろと向かう

 

向かってる最中メンバーの一人が大声を出す

「あれ雪ノ下さんと由比ヶ浜さんじゃね?」

見ると雪ノ下と由比ヶ浜が向こうから歩いてきている、すると当然比企谷の顔を知らない人もいるので

「あのちかくにいる男子ってまさか?」

こういう疑問が出てくる

「左様、あれが八幡だ...」

材木座が指摘する

「あいつが...」

 

ざわざわとなるメンバー達

材木座は比企谷の姿を確認すると思考を読んでみる

『告白の場所はあの竹林できまりだが...海老名さんは俺にどうしろと?よろしくねって言われてもな...葉山は?任せていいのか?やっぱり俺がやるしかないのか?』

 

「くそ!八幡の奴結局追い詰められてるではないか!」

悔しい思いをする材木座、ついでに雪ノ下と由比ヶ浜の思考も読んでみるが

「夜にいったらとても素晴らしい光景なのでしょうね、比企谷くんに告白されるならああいうところがいいわ」

 

「ヒッキーに告白されるなら断然あそこ!戸部っちが終わったらヒッキー告白してくれないかな?そのまま押し倒されちゃったりしたらもう抵抗できないかも...」

 

「...やはり二人にはなにも言わないのだな...こんなに想われているのに、二人に相談もせず黙って勝手に嘘告白なぞ実行して、二人との関係がおかしくなって、将来的には自殺...ああああダメだ!ダメだ!」

材木座は頭を抱えてしまう。

「材木座どうした?何がダメなんだ?」

考えていただけだったが最後の方は声が出てしまっていたようだ

皆から心配そうに見られているところに比企谷がやってきた。

 

「おい、やっぱり材木座じゃないか?どうしたんだ?奇声を発したりして、おまえもしかしてこいつらになんかされたのか?」

だいぶ近づいた比企谷が材木座に気がつき駆け寄ってくる

 

「あ、いいやそんなんじゃねぇよ、突然材木座が叫んで頭を抱えてな」

成田は否定するが比企谷はその場にいる全員を警戒し見渡す。まるで信用してないようだった。

 

「...おい、材木座一緒に帰るぞ、やっぱりおまえにリア充は無理だって」

比企谷はそういって材木座をつれていこうとするが

 

「ちがう!ちがうのだ!この者共は我の戦友なのだ!」

「戦友?こいつらに何言われているか知らんが、奇声上げるような奴を放置できないだろ!いいからいくぞ!」

比企谷は材木座の手を引っ張るが材木座はその手を振り払う。

 

「違うと言っておるだろう!そんなことより八幡!何故お主は毎度毎度誰にも言わぬのだ!そこの二人に何故なにも言わぬのだ!お主が傷つくことは我だって嫌なんだ!なんでなんだ!」

材木座はまた頭を抱えてうずくまってしまう

 

「一体何のことだ?本当にどうしたんだ?」

比企谷は困惑し心配そうにしている

 

「比企谷すまん、なにか大変に誤解を与えてるようだが俺たちは別に材木座になにかしている訳じゃねぇぞ、むしろ逆にお世話になっているんだ」

成田が比企谷に話しかける

 

「お世話?こいつはむしろお世話しないといけないレベルのはずだが」

 

「あーまあ、こいつのおかげで2-Cのメンツは保たれたっていうか、あと聖地巡礼?って奴にもつれてってもらったし、ここの連中も皆材木座に一目おいてるんだわ」

 

「そうそう、なんかゲームで学年中の強い人を全員倒しちゃったんだって!ちなみにここにいるうちのクラスじゃない人たちがその強い人」

神崎がそういうと数名恥ずかしそうに下を向く

 

「そっか、俺の勘違いだったか、材木座は本当にリア充見たくなってたんだな、不快な思いをさせてすまない」

比企谷は成田達に頭を下げる

 

「頭なんか下げるなよ、それより材木座のことはまかせろ、こいつになんかあったらみんなから袋叩きにされかねないからな、あと比企谷、おまえ色々すごい奴だそうだな、材木座に全部聞いたぜ、文化祭の真実もな、ただそこの二人とのことはちょっと納得できねぇ、もてすぎだろおまえ」

 

比企谷は雪ノ下と由比ヶ浜をパッと見るが二人とも不安そうにこちらを見ているだけだった

「い、いやそんなんじゃねぇよ...」

「またまたご謙遜を、ほら二人とも待っているんだからさっさともどれよ、俺たちも材木座を落ち着かせたら戻るからよ」

 

成田達は比企谷を見送る

「材木座そこで休んでいこうか?神崎、悪いが俺はここにいるからみんなとその竹林ってのに行ってこいよ」

 

「いや、我もいく、ちょっと疲れただけだし、我のせいで皆に迷惑をかけてすまぬ」

「ほんとうに大丈夫?無理してるんじゃないの?」

神崎も心配そうだったが大丈夫だからという材木座をつれて竹林へと向かうことになった。

 

「ほわぁ、すごいのう」

「でしょ!テレビで見たときに行ってみたいと思ってたんだ!」

神崎は若干はしゃぎぎみだ

「神崎殿、ここは夜になるとなんか変わるのかのう?」

「ん?よく知ってますね!材木座くん!実はこの辺に...ほら!」

足元にライトアップ用の灯籠が仕込まれていた

「なるほど確かに夜に来たら綺麗だろうな...」

 

「でしょ?こんなところで告白されたりしたら私断れないかも、でも材木座くんはいいお友だちだからね!」

 

「しっかり予防線張る辺りいい性格してるよなお主、あの女にもこのぐらいの気概があればな...」

 

「あの女ってどした?おまえから女なんて言葉が出るなんて珍しいな」

隣にいた成田が話しかけてくるが

「いや、こっちの話だ、しかしここはホテルから結構近いようだの、夕食の時間も近いしそろそろ戻らぬか?」

 

ホテルに戻り夕食を取り部屋へと戻る

「材木座、今日はありがとうな、神崎もそうだがうちのグループメンバーもみんな喜んでた」

成田がお礼を言ってきたがこれから起きることを考えると浮かない気持ちなる材木座

「いや、我も楽しい修学旅行だったぞ...」

一応返答はするが、みんなの前で比企谷を力ずくでも止めないといけない、その時にどうなるのか全く予想がつかない為不安な気持ちを隠せなくなってしまっていた。

 

「なあ元気がないようだがどうしたんだ?おまえらしくないな...よし、ちょっと待ってろ!」

成田は部屋から出ると人を引き連れて戻ってきた。

 

「ハンディキャップマッチといこうぜ材木座、おまえにはボタンを一つ封印して対戦してもらう、強すぎるからな、将棋で言うところの4枚落ちとかそんなんだ」

 

「いや、我は今そんな気分では...」

「ほう、こいつらおまえにストレート負けしたんだが、そんな奴等にもボタン一つ封印した程度で勝てなくなるのか?おまえの実力そんなもん?」

成田は挑発するように言ってくる。

 

「む!我を甘く見るなよ!よかろう!この剣豪将軍が相手つかまつろうではないか!」

「よし!負けた奴はジュースおごりな」

結局うまい具合に乗せられて対戦を始めることとなった。

 

ハンデキャップマッチはなかなか壮絶な戦いだった、設定でボタンを一つ使えなくしているのだがやはりつい癖で押してしまうので一瞬棒立ちの状態になる、その為すぐ逆転されそうになりさすがの材木座も押されぎみ。

時間を忘れて対戦についのめり込んでしまった。

 

ふと気がつくと結構な時間がたっている

「あれ?八幡から全然連絡が来ないな?もしかして告白中止になったとか?」

材木座は適当に理由をつけて部屋を出て比企谷の部屋に向かう、しかし部屋には戸塚しかいなかった

 

「戸塚殿?八幡は?」

「結構前に葉山くん達と出ていったよ?大事な用があるとかいってたよ、僕は忘れ物を取りに来たんだけど」

 

「し、しまった!」

材木座は焦った、やはり比企谷は連絡してくれなかった模様、慌てて部屋に戻ると携帯を探して比企谷と連絡を取る

「八幡?八幡今どこにおるのだ?」

『あー材木座か、悪いな、今竹林道っていうのか?そこにいる、なんかおまえ疲れてるようだったから連絡しなかったんだわ』

「戸部殿の件はどうなったのだ?」

『...それは、これからだな...さっき由比ヶ浜が海老名さんを迎えに行ったところだ』

 

「よいか八幡!今すぐ我もいくから絶対勝手なことはするな!」

『は?おまえなにいってんだ?意味がわからないのだが』

「貴様がこれからすることだ!絶対動くな!」

材木座はそういって電話を切り出る支度をする

 

「おい材木座どうしたんだ?比企谷に何かあったのか?」

成田は不安そうに聞いてくる

「告白を!あの竹林で!いかねば!」

それだけ言うとばっと部屋を飛び出す

後ろで成田達が騒いでるようだが構ってられない、そのままホテルを飛び出した。



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第八話

ぜぇぜぇいいつつあせびっしょりになりながらようやく竹林の道へと到着する。

遠くに葉山達の後ろ姿が見える

「間に合ったか?」

と思った矢先、海老名の前に比企谷が出てくるのが見える

もう体当たりでいくしかないと思いそのまま走り続ける、思考を読む暇もない、戸部が何かを言おうとしているところへ比企谷が横から入ってくるのが見える

 

「ずっとまえから...「はちまーん」」

ふりむいた比企谷に材木座は突撃し吹き飛ばす

「グハッ何すんだ!」

「ひゃち、ゼーハー、まん、ゼーハー、ダメ、ゼーハー」

材木座は息を切らせて座り込む

「おい材木座、おまえなにしに来たんだ」

比企谷は睨み付けてくる

「ちょっちょっとザイモクザくんどしたのよ?」

戸部も驚いてる、海老名も何があったのかわからないようだ

「すこし、ゼーハー、待たれよ、ゼーハー」

呼吸が乱れているので落ち着くように呼吸を整える材木座だが

「待たれよじゃねぇよ、てめぇはなに邪魔してんだ」

 

比企谷が材木座を睨みつけるが

「ハーヒー八幡、ハーヒー貴殿が今何を言おうとしたのかハーヒー我は知っている」

息も絶え絶えになり比企谷を押さえつける材木座

「ハーヒー貴殿は自分がどう言うことをハーヒーやろうとしたのかハーヒーしかとその目で見るとハーヒーよい」

 

そういうと材木座は呼吸を整え海老名に向かって

「フー、フー、ゴホン、えー体育祭の時から好きになりました。我と付き合ってはくれぬでしょうか?」

その瞬間、材木座はこいつなにいってんだという空気を猛烈に感じとる。

「え?あの...なんで?」

 

海老名は予想外の人から予想外の言葉が来たので戸惑っている

思考を読んでみると

『は?誰だっけ?ざ、ざなんとか?ザザ虫くんだっけ?ってかなに比企谷くんの邪魔してるのこの人?せっかく比企谷くんが全部解決してくれるところだったのに』

 

そう思い通りにはさせるかと材木座は畳み掛ける

「体育祭の時に我と一緒に仕事したであろう、その時に貴女に惚れたのだ。同じオタク趣味が故我らは仲良く出来ると思うだが」

 

「そうじゃなくて...」

海老名は比企谷のほうを向く

「クソ!やはり八幡に拘りおる!あの言葉を言ってくれないと終わらぬではないか」

以前女神に聞いた八幡が海老名から引き出した言葉、これを言ってくれないとこの行動も失敗である、

 

「どうであろうか?海老名殿?返答を待っておるのだが?」

焦った材木座は海老名の手を握る、さっきまで汗ダラダラになりながら走ってきたため指ぬきグローブも汗でぐちゃぐちゃになっていた、当然そんな状態で手を握られた海老名は顔をひきつらせる

 

「ヒッ、嫌!わ、私今は誰とも付き合う気ないから!、告白されても誰とも付き合うきはないの!特にざ、ザザ虫くん?とかってありえないから!」

 

そういうと材木座の手を振り払い走り出してしまった。

そのまま戸部に向き直る

「いやぁー戸部どのフラれてしまったのう」

「ちょっとザイモクザくん、突然出てきて酷くね?」

戸部は若干お怒りぎみだ

 

「酷くはなかろう、海老名殿は言ってたではないか、『今は誰とも付き合う気がない、告白されても誰とも付き合う気がなから』と、間接的に戸部殿もフラれておるのだぞ?直接言われたわけではないが、どのみち戸部殿が直接告白しても同じことを言われるのが関の山だ」

 

「そういわれるとそうかも...」

戸部は下を向いてしまう、葉山の方をちらっと見るとこちらを睨み付けている、これ以上しゃべるなと言っているように見える、思考を読むまでもない、このままぶち壊してやろう。

 

「そうだ、貴殿は我と同じくフラれてしまったのだ。残念だったな」

 

材木座は葉山の方に向き直ると

「海老名殿を追わなくてよいのかのう?一人で駆け出してしまったようだが?」

葉山はいつもの顔からは想像がつかない表情で材木座を睨み付けている

「君はいったい...」

さすがにこの状態で思考を読むのは怖い材木座

「ハテ?我は海老名殿が前から気になっていてのう、戸部殿が告白するときいて、出来れば諦めさせたかったのだが、無理そうだったのでな、一緒に告白してどっちか選んでもらうつもりだったのだが?」

 

葉山が海老名を追うため材木座とすれ違う

「お主らは八幡に無茶ぶりしすぎだ、その結果がこれ、よい勉強になったであろう?」

すれ違い様にボソッと呟く

「君は...!」

葉山は足を止め材木座を睨む

「八幡もそうだが何故お主らは全部自分でしょいこむのだ?回りに助けをなぜ求めぬ?でもお主と八幡の決定的な違いは、そうしてしょいこんだ物を八幡は一人で最後まで持っていくのだ、後ろ指刺されようが何だろうがな、主はどうする?」

やはり葉山の顔を見るのが怖い材木座は明後日の方を見ながら言っていると

 

「おー材木座!告白がどうとか言って飛び出したから何事かと思ったら、おまえ誰かに告白したのか?」

成田達がやってくる

「...ってなんか雰囲気おかしくねぇか?」

「成田殿、以前告白を無かったことにするにはどうすればと聞いたの覚えておるか?」

「あ、ああそういえばそんなこと言ってたな?それが?」

「それがここだ」

「は?意味わかんねぇんだけど? ...もしかして、あ、そっか!材木座が告白した相手って葉山んとこのだったのか!」

 

葉山は顔をひきつらせる

「君はいったいどこまで知っているんだ」

「全てだ、何もかも、初めから終わりまでな、今回のふざけた顛末ちゃんとお主ら全員で話し合うのだぞ」

 

葉山はまだなにか言いたそうだったが、成田達を見て諦めたように言う

「...姫菜のところにいくからこれで失礼するよ」

葉山達はフラれてしまったと放心している戸部を連れて足早にその場を立ち去った。

 

材木座は成田達へと振りかえる

「まぁフラれてしまってな、大丈夫だ!女性に冷たくされるのは慣れているのでな!それより成田殿、皆の衆、暫しお待ちいただけぬか?八幡に話したいことがあるでの」

材木座はそういうと座り込んでる比企谷のところへいく

 

「何もかもぶち壊しやがって...」

「ふん、矛盾した依頼なぞ受けるほうがどうかしてるわ」

「気づいていたのか?でも依頼は依頼だ」

 

「依頼とあらば大事な人が傷ついてもいいのか?貴様がやろうとしたことは、そうだな...貴様の妹が我のことを『お兄ちゃん大好き』というようなものだな、貴様はそれでも平気なのか?我は全然ウェルカムだがな」

 

「どんな状況だよそれ、大体小町がそんなこと言うわけ無いだろ、あり得ない仮定は考えるだけ無駄だ」

 

「ふん、実際にやろうとした貴様が言うのは滑稽だぞ、それに貴様が海老名殿に言おうとした言葉は本来誰に向かって言うべきだったかわからぬ訳ではあるまい」

 

「...なんのことだ...」

「そこで不安そうにこちらを見ているお二人のことに決まっておるだろうが」

 

「比企谷くん、またあなた自分を犠牲にして解決しようとしたのかしら?」

「ヒッキー、そういうのもうやめようよ...」

「雪ノ下、由比ヶ浜...すまん...」

 

「分かっておるではないか、八幡よ、ではお二人に主の心のうちをはっきりと伝えるとよい、雪ノ下殿と由比ヶ浜殿もしかと聞いてられよ」

その言葉に雪ノ下と由比ヶ浜ははっとした表情になる

 

「材木座、なにをいっている?」

「八幡..、この期に及んで...あ!そういえば先日のウノの罰ゲーム結局やっておらぬな」

「は?今さらなんだよ?」

「罰ゲームだ、好きな方に告白しろ」

「は?」

「だからその二人のどちらかに告白しろ」

「ふ、フラれるの分かって告白するなんておまえも葉山のこと言えねぇぞ」

「ダメだ、そのお二人の気持ち、貴様が知らないとは言わせぬぞ、いつも勘違いだとかなんだとかで自分をごまかしおって!」

「い、いったいなんのことを言っているんだ?」

比企谷の目は完全に泳いでいる、思考を読むと

 

『こいつなんで知ってるんだ、雪ノ下と由比ヶ浜に告白だと?したいさ、簡単に好きだって言えたら苦労はしない、でも勘違いに決まってる、中学の時みたいに俺の黒歴史にまた新たな一ページが追加されるだけだ、でも...』

大分思考が揺らいでいる、もう一押しだと畳み掛ける。

 

「いい加減にしろ、八幡よ貴様がそのつもりなら、依頼ということにしようか?貴殿は依頼とあらば自分を省みないようだからのう!依頼だ、奉仕部のメンバーは互いの胸のうちを告白せよ!さあ依頼だぞ、そこにいる成田殿達も我が依頼したのを聞いておる、そうであるな!」

 

「あ、ああ聞いたが、材木座、いったい何が始まるんだ?」

「まあ見てるとよい」

材木座は腕組みをして三人に向かって仁王立ちになる、由比ヶ浜は決心したような表情になっているが雪ノ下は顔を赤らめてそわそわしているようだ

 

「な、なんで私がこんな男に告白しなくてはならないのかしら?確かにここは告白には絶好の場所かもしれないわ、でも...」

言い訳のようにクドクド呟いてる雪ノ下だったが、由比ヶ浜が決心したように言う

 

「ゆきのん...私は素直になるよ...」

「由比ヶ浜さん...わかったわ」

「お前ら...」

 

「三人とも、ここにいる我ら全員が証人だ、さあ思いの丈をぶちまけるがよい!」

 

「比企谷くん、私は...」

「ヒッキー、あたし...」

「俺は...」



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第九話

雪ノ下と由比ヶ浜が比企谷に思いの丈を伝える、その内容は単に惚れた腫れたというものではなく、真剣であり二人がいかに比企谷のことを想っているかが良くわかる内容だった。

しかし比企谷の口から発せられた言葉はそれを覆すものだった

 

「すまん、二人とも、やっぱりどちらかを選ぶなんてできない」

 

その言葉にさすがの材木座もブチ切れた

「貴様いい加減にしろ!二人が勇気を出した告白を無意味なものにする気か!」

比企谷がどんなことを考えていたのか思考を読むべきだったかもしれないが、材木座は冷静さを失い比企谷の方へ向かう。

しかし後ろから迫っていた成田から突き飛ばされる

 

「おい!比企谷!てめぇどういうつもりだ!あんなに真剣に好きだって言ってくれてるんだぞ!答えるのが筋ってもんだろうが!てめぇのことを材木座から色々聞いて尊敬してたんだが幻滅したぞ!」

成田は比企谷の胸ぐらをつかんで怒鳴り散らす。

 

「選べるわけないだろ!俺にとっては三人一緒にいる奉仕部の時間が好きなんだ!俺が片方を選んだ時点でそれは崩れてしまうのはわかるだろ!俺の一言であの時間も雪ノ下と由比ヶ浜の友情も壊れてしまう、俺は二人とも同じぐらい好きなんだ!二人が仲良くしているところも好きなんだ!失いたくないんだ!ボッチで勘違い野郎の俺にこんな時どうすればいいかわかるわけないだろう!」

比企谷は悲痛な叫び声を上げる

 

「てめぇ何様のつもりだ!あの二人がお前に選んでくれと言っているんだ!逃げずに答えるのが男ってもんだろうが!」

成田はさらに激怒する

「じゃあ教えてくれよ!全部失わないやり方を!...といってもこんなこと言った時点でもうおしまいだよな、美少女二人の真剣な告白を無下にした時点でおれは最低なクズ野郎だ...ほら殴れよ、みんなの憧れをおれは振っちまったんだぜ」

比企谷は諦めたような顔をして成田を見つめる

 

「どうしてこうなっちゃうのかな...あたしたちが本当の気持ちを言ったのが良くなかったのかな...」

由比ヶ浜は泣きそうな顔をしており、雪ノ下は悲痛な面持ちで比企谷を見ていた。

 

「クソっ!どうしてこうなってしまうのだ。これでは嘘告白が起きた時と大して変わらんではないか!結末はどうやっても変えられないってシュタインズゲート的な何かかよ!世界線は変えられないのか?」

材木座は頭を抱える、こうなってしまうと思考を読んでどうこうできるレベルではない

「なんとかしないと、なんとか...ううむ、奴はひねくれすぎている、ひねくれた奴にはひねくれた回答を...」

と無茶な解決策を思いつく、だがこれしかない、材木座は雪ノ下へ話しかける

「雪ノ下殿、八幡は大変ひねくれておる」

「こんな時になにかしら?あなたどういうつもり?」

 

いつもよりも強烈な視線で睨みつけられる、大変怖いがここで引くことは出来ない

「だ、だから奴はお主ら二人が好きだと言っておっただろう?お主らの友情も壊したくないと」

「聞いていたわ、だからなに?」

 

「だ、だからであるな、奴の望みをかなえるならば、一般常識からかけ離れたひねくれた回答でないと」

雪ノ下の顔が猛烈に怖いのでうまくしゃべることができない

「お、お主ら良く考えてみよ、明らかにおかしいが解決するやり方があるであろう」

雪ノ下は気が付いたようだ

「でも、それは...」

 

「雪ノ下殿、全てを手に入れるか、すべてを失うか、どうされる?」

 

それを聞いて雪ノ下は決心したように比企谷に向かう

「比企谷くん、あなたの先ほどの言葉に嘘はないのよね?」

「ああ」

「…そう…由比ヶ浜さん耳を貸してもらえるかしら?」

雪ノ下は由比ヶ浜へ何事がささやいている、由比ヶ浜は大変驚いた顔をしているが

 

「えええ!そんな...でも、ゆきのんがそれでいいなら...あたしもいいよ」

由比ヶ浜も決心した顔になり二人で比企谷の前に立つ

ただならぬ雰囲気に成田は比企谷の胸ぐらから手を放し離れる

 

「比企谷くんあなたの気持ちはわかったわ」

 

「なんだよ、もういいだろ、俺は今日からボッチに戻る、邪魔すんな」

 

「比企谷くん」

「ヒッキー」

 

「「よろしくお願いします。」」

 

「は?」

「え?」

「え?」

「え?」

「え?」

「え?」

「え?」

「え?」

 

その場にいた全員の頭に疑問符と疑問が口に出てしまう状態となる。

 

「あなたは私たち二人とも好きだと、選べないと、それは両方を取るということね、さすがひねくれた回答を言わせたら全国一位ね二股谷くん」

 

「いや、俺はそんなつも「さすが八幡、我らにできないことをさらっとやってのけるとはな!そこにシビれる!あこがれるゥ!これで貴様の伝説にさらに拍が付いたのう!」」

比企谷が何か言おうとしたのを無理やり制する

 

「え?何それ?女の方から二股公認宣言ってなんだよそれ?もしかしてさっきまでのは演技かよ、女の方から言わせて全部を手に入れるつもりだったのお前?」

成田がドン引きしたような顔になる

 

「いや、だからちが「さすが八幡であるな!我らもその術中にはまってしまってたのだ!男の方から二股宣言は外道の極みだが女子の方からこういわれては我らも認めるしかあるまい!」」

 

「おいマジかよ、あいつ策士すぎんだろ」

「くそう、どっちか選んだらもう片方に告白するつもりだったのに」

「ありえねぇ、こんなの嘘だろ」

「マテよ、今までの話からいうとあいつだったらあり得るんじゃないか?」

 

成田についてきた男どもは悔しさのあまり泣きそうになっている、中には叫びだすのもいた。

「さぁさぁ我らはホテルに戻ろうではないか、あの三人まだ話したいことがあるようだからのう」

 

「おい、材木座ちょっ「ええ、申し訳ないけど三人だけにしていただけないかしら?」」

比企谷がまたなにか言おうとしているのを雪ノ下が制する

 

「うむ、では皆の衆ホテルにもどろうぞ!」

そういうと材木座は皆を無理やり押していき帰ることにした

「ちょっとま「中二!またねー」」

また何か言おうとしている比企谷を今度は由比ヶ浜が制してぶんぶんと手を振る

 

「八幡!、自分に素直になるのだぞ~!」

材木座はそう比企谷へ向かって叫ぶ、比企谷は猛烈に何かを言いたそうだったが両方の腕を二人に拘束されて竹林の奥へと連れていかれてしまった。

 

ホテルに戻った成田達のおかげで比企谷の話はあっという間に広まってしまい大規模な残念会が開かれることになった

学年内はおろか学校内では知らぬものは無い雪ノ下、由比ヶ浜である、密かに想っていた者は数知れず、比企谷許すまじと殴り込みをかけようかというものもいたし諦めきれないのもいた。

 

「でもよ、二股なんていずれは絶対無理がくるぜ、そんときには俺たちにもチャンスがあるんじゃないのか?」

一人がそう言うとそうだそうだと賛同する者が出る

「付き合っているのを知っていて告白したら今付き合ってる男と別れるからOKもらったなんて話も聞いたことがあるぜ?だから雪ノ下さんや由比ヶ浜さんにもアタックし続ければもしかしたらチャンスがあるかも」

 

若干希望を取り戻した男たちだったが材木座はやれやれといった表情で

「お主ら我が話した文化祭の裏話覚えておるか?」

「なんだ材木座突然、お前に聞いた話って委員長が逃げ出して比企谷が自分を悪者にして連れ戻したって奴だろ?」

 

「そうだ、その時に雪ノ下殿、由比ヶ浜殿達は八幡の時間稼ぎの為にステージに立ったのだ、我も委員長殿の探索を手伝っていたので途中からしか見てはおらぬが皆熱狂しておったな?故にあの時に演奏された曲と歌詞の内容知らぬものはおらんだろう、我のようなものでも知っているぐらいだからな」

 

「材木座、何が言いたいんだ?」

 

「ふん、わからぬようなら教えてやる、あの歌は誰の為に、あの歌詞の内容は誰に伝えたくて歌われたものなのか、ということだ、ここまで言ってわからぬような輩はこの中にはおるまい、まったく我のような者でも嫉妬してしまうぞ、八幡と雪ノ下殿と由比ヶ浜殿は欲しい物を手に入れてしまったのだ、それを踏まえてまだ自分にチャンスはあると思うならそれでよかろう」

 

それを聞いて一同はお通夜状態になってしまった。」

しかしそれでもと諦めきれていない者はもうほとんどいなかった、比企谷の活躍を聞き今まで誤解していたと恥じ入る者が大多数であり皆こうなるのは仕方ないと涙したと言う。

 



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第十話(最終話)

帰りの新幹線の中

 

「はちまーん大富豪やろうぜ!」

「おまえ、自分のクラスは大丈夫なのか?」

「それが聞いてよはちえもーん、どうやっても対戦ゲームで勝てないからって我は追い出されたのだよ!だから大富豪やろうぜ!」

 

材木座は揺れる車内で器用にトランプを切りながら比企谷の前に座る、大丈夫だろうとは思っていたがやっぱり気になったので様子を見に来たのだ。

 

「あら?材木座くん、申し訳ないけど私たち今比企谷くんとお話しするのに忙しいから申し訳ないけどまたの機会にしていただけるかしら?」

「そうだよ中二!今ヒッキーとお話してるんだから!」

比企谷の両隣に座ってる雪ノ下と由比ヶ浜から文句が出る

因みに材木座の隣には戸塚が座っているので材木座が来る前は比企谷ハーレムだった模様

 

結局比企谷達は告白の後三人で話し合い、正式に三人で付き合うことになったようだ。

竹林の奥でどのようなやり取りが行われたかは知るものはいない、しかし三人がより密接な関係になることが起きたのは明白だった。

 

材木座がフラれたことに関しては比企谷の件のインパクトがあまりにも強かった為、誰の話題にも上らずそもそもそんなことがあったことすら誰も覚えていない状態だった。

 

ちなみに葉山グループはというと葉山が正直に今回の一件を三浦に話したところ、三浦はそういうグループ内の人間関係のことを何故グループ外の人に話すのか、何故自分に相談しないんだと怒り全員に説教したそうだ。

あの一件では三浦だけのけ者扱いだったので余計に怒り狂ったとか。

ただやはり同じグループの由比ヶ浜が比企谷に告白、公認の二股なんてことになったため、海老名のことよりむしろそっちの方に話題が移り何もかもが無かったことになったような状態となっていた。

 

「お主らはいくら告白したからと言って変わりすぎだろう、そんなに八幡とくっつきたかったのか?」

 

「...彼と私たちには深い絆があるのよ、それを再確認しているだけ」

「そ、そうだよ中二!絆を確認しているの!」

 

二人ともグッと比企谷の腕を抱きくっつき会う

「どうでもいいがこの状態で奉仕部の部室に戻ったらえらいことになるのではないのか?なあ八幡よ?」

「だ、大丈夫だ、何しろ俺は理性の化け物と言われたぐらいだからな、コイツらも自重するさ、そうだよな、雪ノ下、由比ヶ浜」

 

「そ、そうよ、当然でしょう?比企谷くんと密室にいるからと言って学校なんですもの、そんないかがわしいことやろうなんて露ほどにも思っていないわ」

「そ、そうだよ中二、いかがわしいことなんて部室ではやらない...と思う...」

 

「やれやれ、誰もいかがわしいことなんて言っておらぬだろう...我が訪れてみたら八幡に奉仕している最中とか止めていただきたいものだ」

 

その言葉に三人とも顔を真っ赤にする。

これは思考を読むまでもないな、とやれやれといった顔する材木座だった。

 

「そ、それより大富豪だったよな?」

比企谷は話題を強引に変えるが雪ノ下は不満げだ、甘い空間を邪魔されたのが大層気に入らない模様。

 

「ははぁ、現実の大富豪である雪ノ下殿はゲームとはいえ貧民になるのを恐れていると見えるな、やれやれとんだチキンであるな」

材木座はやれやれとオーバーなリアクションを取り雪ノ下を挑発する

「なんですって?いいわ、その安い挑発受けてたつわ、所詮カードゲーム、子供の遊びよ」

 

勝負の結果

「ファッハッハッハ!雪ノ下殿!大貧民になるとはな!主は正直すぎるから簡単に引っ掻けやすいわ!さあこの大富豪材木座義輝に強いカードをわたしていただこうかのう!」

と交換予定の弱いカードを差し出すが、雪ノ下は猛烈に悔しそうにしながら

 

「な、何故あなたとカードの交換をしないといけないのかしら?確か大富豪はローカルルールが多いと聞いてるから私と由比ヶ浜さんが貧民、大貧民の時は比企谷くんとカードを交換するルールにしましょう。私が大富豪の時はあなたのカードは要らないから渡さなくて結構よ、どうしてもの時は比企谷くんとしなさい」

 

「なにその八幡至上ルール、ちょっと酷いであろう...」

「あら?比企谷くんは私たちの恋人よ、恋人のことを想うのは当然じゃなくて?」

 

「はちえもん!雪ノ下殿がいじめるよー」

「雪ノ下、あんまり材木座をいじめるなよ?一応恩人みたいなもんだろ」

「...そうだったわね、比企谷くんがそういうなら仕方ないわね、材木座くん受け取るのを許可するわ」

「なんでしょう、我が大富豪なのに感じる敗北感」

「中二だからしかたないね、はい!いきなり革命!」

 

「ちょっと由比ヶ浜殿!あーモウダメダ、最強の布陣が完成したと思ったのに!、大富豪はもうこりごりでござるよー」

 

「なんだかとっても楽しいね」

戸塚がニコニコしながら言う

 

「神は天にいまし、すべての世は事も無しと言うからのう、平和なのが一番であるな!」

目の前でイチャイチャしている三人を見ながら

「これで女神の依頼も終了だな」

ボソッと呟くと

「女神ってなんだ?またなんかのアニメか?」

「ヤッホー材木座くん」

「成田殿、神崎殿ではないか」

 

「お前の相棒の噂の二股男を見に来たんでな」

「あー私、雪ノ下さん派だったのに両方とも選んじゃうなんてこの色男!」

 

材木座は成田と神崎を比企谷達に紹介し席を譲り通路を挟んだとなりの席に座る。

今や奉仕部の三人は学年中の公認の仲となっていた。

楽しそうに話している6人を見ながら材木座は思う。

「相棒がバッドエンドを迎えていいわけがないのだよ。やはりハッピーエンドでないとな」

波乱に満ちた修学旅行の思い出を噛みしめ肩の荷が降りた材木座はどっと疲れが出てそのまま眠ろうとしたのだが

 

目の前の椅子にいつのまにか神崎が座っていた

「材木座くんお疲れ様だったね」

「あ?ああ?確かにお疲れなのでな、我は眠りたいのだが」

 

「うーん、私としては雪ノ下さんとくっつくのかなと思ってたけど二人同時とはね、あなたの活躍も大きいけどやはり比企谷八幡の行動は予測がつかないわ」

 

口調や雰囲気がいつもと違う感じがして違和感を感じる材木座

「?どうされた神崎殿?なんか雰囲気がいつもと違うような?」

 

「んー?そうだね、それより能力を悪用せずちゃんと目的の為に使ってくれたみたいで私は安心したよ、授業中に使ったのはお試しってことでノーカンにしておくわ」

「!!!神崎殿?貴女はいったい?」

 

「女神って言えばわかるかな?材木座義輝、あなたがちゃんと働いてくれたようで嬉しいわ、これで最悪のルートに行くことはなくなった、さすが私の見込んだ男ね!」

 

「え?女神?神崎殿は?」

「ふふふ、神崎って人はクラスに初めからいなかったのよ、いたと思わせていた的な?ま、私女神だからその程度の記憶操作や認識操作は朝飯前なのよね」

 

「...なんと、そういえば隣の席って誰だったのかよく覚えていないな、そもそも誰がどこに座っていたかがはっきりと覚えていたはずなのに良くわからぬ」

「まあーねー、誰に聞いてもクラスの人数も席の並びもあやふやなはずよ」

 

「でも女神殿がいたのなら我がやらなくても女神殿があれこれすればよかったのでは?」

 

「だから初めに言ったでしょ?手伝えないって、だから私は天界のルールで直接手出しできないのよ、私がいたのはあなたが能力を悪用しないか見張るだけ、比企谷八幡のことはここの人たちがどうにかしないといけなかったの、ま、竹林つれていったり、比企谷八幡の噂流したりそのぐらいはさせてもらったけどね」

 

「なんかメンドクサイルールですな、あと一応突っ込んでおくが見込んだって間違って召喚したのであろう...」

 

「まぁ怪我の功名とか言うじゃない!」

 

「...それはなんか違うのでは、それよりこれで依頼は達成であるな?わざわざ来たってことは依頼達成のお礼になんかくれるのか?」

「あなたも大概即物的ね...残念だけど今与えてるマジックアイテムで我慢してほしいわね」

 

「そうは言ってもこれって、今回の依頼の為に特別にくれた物なのでは?セオリーだと依頼が終わったと同時に能力が消滅するとかそういう話になるんでは?」

と材木座が疑問を投げかけるが女神は言いにくそうに

「実は比企谷八幡が二人を選んじゃったことによってまた未来が変な方向に歪んじゃってね...」

とこれから比企谷八幡に起きる未曾有のトラブルについて話し始める

 

「はぁ?聞いてないぞ!条件があるなら初めに提示しろ!この駄女神!」

「駄女神いうなー!大体こうなったのもあんたが雪ノ下雪乃を焚き付けて二人同時におつきあいなんてさせるからよ!私は悪くないわ、だって手出ししちゃいけなかったんですもの!」

「くっこいつ本当にあの駄女神みたいに無責任なこと言いおってからに!大体あの場合他にやりようがなかっただろ!」

 

「そんなの知らないわよ!こんなの予想外過ぎるもの!私は絶対悪くないわ!」

 

「こんのー駄女神が!大体女神の癖にけいおんみたいな学生生活に憧れるとかアホか!どうせ何百年も生きておるのだろう!小学生なんていつの話だ!このロリババア!」

 

「ロリババアってなによ!たまたまこっちの世界のテレビ見てたらはまっちゃったのよ!いいじゃない!何に憧れたって!そもそもこっちの人の年齢に合わせると小学生のころって言わないとおかしくなっちゃうでしょ!それに私は永遠の17才なのよ!老け顔のあなたとは違うんですぅー」

 

「はぁ?どっかの声優か?お主は『おいおい』と突っ込みいれてほしいのか!あとその髪型、ホントにどっかのラノベに出てくる駄女神みたいな変な髪型しおって!なにそのわっか?」

 

「これはわたしのチャームポイントなのよ!変って言うな!大体髪のこと言うなら、あんたのその髪染めてんの?デブオタの癖になに色気ついてんのよ!髪染める前にそのくっさいコートとだっさい眼鏡とその出っぱってる腹を何とかしなさいよ!もうこんな髪引っこ抜いてやるわ!」

 

「んだと?我のチャームポイントをバカにするのか!つかやめろ!いででで!抜くな!禿げてしまうではないか!貴様これでも食らえ!」

材木座は報復に女神にアイアンクローを仕掛ける

 

「おとなしく禿げなさい!いたたた!ちょっとあんた!オタクのくせに力強すぎ!」

「直接顔に触らん我の優しさにうち震えるがよいわ!」

 

二人でぎゃーぎゃー掴み合いしていると通路を挟んだ席の成田と比企谷が不安そうにこちらを見る

「おい神崎、材木座どうした?喧嘩なんてやめてくれよ?」

「材木座が喧嘩なんてめずらしいな?ってかさっきから女神がどうたらって神崎さん?も材木座と同類なのか?」

 

「い、いやほら、喧嘩するほど仲が良いと言うではないか!今回の修学旅行で我と神崎殿の仲は進展したのだよ!なぁ神崎殿?」

と我に返った材木座は取り繕う

「仲が進展したってそれって...」

と由比ヶ浜が目をキラキラさせながらこちらを見ているが

 

「え?ええそうよ、材木座くんとはいいお友達だからねー」

と神崎

「中二...あんまり勘違いしない方がいいよ...」

由比ヶ浜が一転憐みを含んだ目で材木座を見る

 

「んもー何でこうなるの?何でまたフラれたみたくなってんの?そういう事じゃなくてだな...」

反論するのも馬鹿らしくなる材木座だったがまるで空気を読まない駄女神こと神崎が叫ぶ。

 

「もうあなたしか頼る人がいないのよ!比企谷八幡に近くて私の駒...ゲフン私の手伝いをしてくれる人が、さぁ私たちの戦いはこれからよ!」

「ちょっと声が大きい...って今駒って言ったであろう、もう勘弁してくれ...」

皆がポカンとして見ている中あまりにも酷い内容に頭を抱える材木座だった。

 

修学旅行を終えた彼らは一路千葉へと向かうがその先で材木座の波乱に満ちた学生生活はまだしばらくは続きそうであった。

 




これで一応おしまいです。
材木座と言えばどたばた感溢れる展開が似合ってると個人的には思います。
彼は立派な三枚目ですね。


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