「時代に消された戦士達」 機動戦士Zガンダム外伝 (ずん侍)
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「時代に消された戦士達」1話 機動戦士ガンダム外伝

宇宙世紀0080年1月1日15時00分:月面都市グラナダにて、地球連邦政府とジオン共和国政府の間に終戦協定が締結される。

 

戦争は終わった…そしてジオン公国は終わりを告げジオン共和国と名を変え続いていくが、その実は連邦による傀儡政権に違いなかった。

 

こうして世界は連邦の時代となっていく…

 

薄暗く広い空間、大きなジオンの刺繍の入れられた垂れ幕が掛けられている

 

「ジオン公国はジオン共和国となり名実上は続いている。だがそれは連邦の犬に成り下がった愚物である!今の政権は何が変わったというのだ!独立したと謳ってはいるが現政権は連邦の支配下に置かれ下に見られ続けている。何も悲願は達成されていない!!例え戦争が終わったとしても我々の求めたものは何一つ得られていないのだ!!」

 

「おおお!」

男の訴えに群衆は興奮し叫ぶ

 

 

「ジオンを導いたギレン・ザビは独立という悲願を忘れ支配をより大きな支配によって覆そうとした。だが支配は安定など出来ずまた悲しき戦争を繰り返すだけである!本当の独立とは連邦の手から離れジオンの自立にある!」

 

「おおおお!!」

 

「だがその為には力がいる。その為、ここにレジスタンス軍を設立する!!!」

 

一年戦争に敗北したジオン公国軍は負けを認め捕虜となる者、自殺する者、そして再戦を求めて期を待つもの…その者達は自分達を導く者と居場所を求めていた…

 

0082 ナミス・ガーランド大佐率いるムサイ艦がサイド1付近を航行中、放棄された13バンチコロニーを発見、改修すれば使用出来ることを確認。

 

そしてそこに拠点を置く事を決める

そこから繋がりのある残党軍を誘い着々と人員を集めていった

 

そして宇宙世紀0084 ナミス・ガーランド大佐はジオン公国の名のもとにレジスタンス軍を設立

 

0085 コロニーの改修やMSの製造に使う資源不足からデブリ帯の残骸を集め再利用する計画を立てる

 

そして2ヶ月後 隠密性、作業効率、航続距離、レーダー性能、製造コストをクリアしたオッゴワーカーが開発された

 

 

 

「目標地点到着まで推定5分…」

 

「大規模レーダーのシステム準備を開始」

 

「本艦とのレーダー情報の共有を開始」

 

「…システムの起動を確認、使用出来ます」

 

「共有完了、レーダーマップを正面に投影準備完了。」

 

 

「間もなく目標地点に到達。レドームオープン」

 

機体の両側からレドームが開かれる

 

「大規模レーダー起動…稼働に問題なし」

 

「投影します」

 

正面に3Dモデルが投影される

「これがデブリ帯か…」

 

そこには1面破壊されたコロニーやMS、艦隊の残骸で埋め尽くされている…

 

その中にはコロニーの重力を作り出す装置が半永久的に稼働しているらしくその引力で引き寄せられているそうだ…そしてその中に俺達はいる

 

「今回は状況把握が任務だ。めぼしいものがあれば拾ってくるように言われているがそう多くは持てん、捜索とレーダーマッピングが出来たら帰るぞ」

 

「了解」

 

 

「これは、…」

強力な放射性物質の反応をいくつも検知している…

 

それは熱核融合炉の反応であった。熱核融合炉はMSのコア、エンジンである。

 

「此方ラディ中尉、熱核融合炉と思われる反応を多数検知」

 

「宝の山だな…出来る分は回収してくれ。」

「了解。出来る限り回収だとさ、積めるのは2.3個だな」

 

「ああ、早く帰って飲みに連れてってくださいよ中尉」

 

「しゃあねーな」

アームを動かし目の前にある残骸の中から探し出す。

 

「お、あった」

クレーンゲームのアームのような要領で掴み取りハッチを開き中に入れる。

 

そして次の反応へ向かおうと視界を回転させ…

 

「なんじゃありゃ…」

目の前には巨大な何かの残骸があった

 

「戦艦…ですかね」

「ああ、多分な…」

よくよく見てみるとちょうど前半分が消失した戦艦である事が伺えた

 

「あの奥ですかね」

 

「そうみたいだな…」

 

「3つありますね、どうしますか」

 

「 …」

連邦の熱核融合炉を持ち帰り解析できれば我々の技術の進歩に繋がるやもしれん…それにこんな巨大な戦艦データベースになかったはず。新型戦艦に積まれているのなら…もしかしたら…

 

「行くぞ」

「…はい」

このオッゴには作業用にはレーザーカッターも装備されているため意外にもサクサクと半壊した船の中を進んで行く

 

「道が開けましたね」

 

「ここは…カタパルトへの移動通路か?」

開けたまぁまぁの大きさを持つ通路にでる。直線状である事から移動に使われるものに違い無いだろう。

 

そしてその通路を進むこと数分

「これは、…ハンガールームか」

MSが20機は収容出来るであろう空間だった

 

だが残念ながらMSがぎっしりという訳ではなく2機が補給を受けていたのか機器に接続されたまま半壊している

 

このハンガールームに有るのは2機、…あと一機が見当たらない

 

あと一機が見当たらんな…あの奥か?…

反応のあった方を見ると人ひとり入れる位の扉が見える

 

「俺が行ってくる。中は頼むぞ」

 

「わ、分かりました。お気を付けて」

 

「ああ」

 

拳銃とサブマシンガンを手に外へ出る

 

ナイトスコープのお陰で視界はハッキリしているが1人で宇宙空間に居ることに恐怖を感じない訳では無い

 

何一つ自分以外生きるもののいない世界…

 

腕に取り付けられたマップを見るともう少しで反応があったポイントに着く

 

30,25,20,15,10,

 

目の前に開けた空間が見え、入ると目の前には…作りかけのMS。そしてその頭部は…

 

「ガンダム…」

 

v字のアンテナに2つの眼、恐怖の対象であった白い悪魔

 

「そうか、これを輸送してたのか…」

これは流石に持ち帰れんな、記録を残そうとカメラ機能で写真を撮ろうと拡大表示をすると、

 

ん?…あれは…作業用の大型PCが目に入る

写真だけひとまず撮り終えるとそのPCに近づいて行く

 

何か書いてある…擦って汚れを取ると

 

last message という文字と端末のメモリーがテープで止められていた

 

これで何か連邦の情報が掴めるかもしれない、という気持ちとその一方で個人的な内容に対する興味があった。

 

それを手に取りバックパックに入れる

 

もう帰ろう、酸素残量も半分を切った。

 

帰り道はマップのお陰でスムーズに帰ることが出来た

 

暗証番号を入力しオッゴの中に入る

「中尉お疲れ様です」

 

「ああ、やはりスーツだけで出るのは気が落ち着かんな」

 

「そうですね、中尉が無事で何よりです。」

 

「早く艦に戻って報告がしたい、急ぎでマッピングを終わらせるぞ」

 

「了解です」

 

 




更新ペースは若干早めです。
感想や評価を貰えるとモチベーションに繋がりますのでお気軽にどうぞよろしくお願いします。


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「時代に消された戦士達」第2話 機動戦士ガンダム外伝

ラディ中尉達二人がデブリ帯へ向かう少し前…

 

…拠点コロニー Truth3 (トゥルース・真実の)

 

技術部門 MS開発研究所 通称、開研

 

定例会議、方針審議…

 

「…だいぶん予算が減っていますが、どういう事なんです?」

 

「これはですね…コロニーの住居地区増築の為に資金がいるとの事で…」

冷たい視線に冷や汗が頬をつたる

 

「命令者は」

 

「スターク大臣です…」

 

「またあのお方は、私が一言言ってきて差し上げよう」

 

「まぁまぁダルトン様お座り下さい、スターク様は仕事柄民衆からの支持が厚いので今取り下げるよう指示を出せばダルトン様の信用に傷が付いてしまうやも知れません。」

 

「アミリス、お前が政治をしろと言うのなら私は下がろう。だがどうするのだ?予算も資源も無いのだろう?」

「…案があります。」

 

「ほう、言うてみよ」

 

「デブリを使うのです。先の戦争で宇宙にはMS、艦隊の残骸が大量にあります、金属など溶かしてしまえば同じ、なのでそのデブリを集め再利用し資源を獲得するのです。」

 

「アミリス中佐貴方は我ら誇り高きジオンの戦士達にゴミで出来たMSに乗れとの申すのか」

 

「ルーデンス大佐殿、お考えになってみてください。現在の我らレジスタンス軍は予算も資源も人員も足りておりません、確かに誇りも大切ですがそれだけで生きていけないことは大佐殿ならばお分かりでしょう」

 

「…それは、分かるが…」

ここで分からないと言えるわけがないだろうが、それは我以外の者達もそうだ…

 

暫くの沈黙、痺れを切らしたように声を出す

「皆はアミリスの意見に賛同したと言うことでいいのだな?」

 

「では詳しい計画の取り決めは後に決めるという事で…」

 

 

 

 

「くそぉ!若造が!…はぁはぁ…我に恥をかかせおって!どうしてくれよぅ」

華美な装飾が施された靴で壁を蹴り続ける

 

「ルーデンス様、どうするもアミリス殿にはダルトン卿がついております故…」

 

「くっ…」

あの忌々しい七光りが…

 

「開研なんぞくれてやれば良いのです。ルーデンス様ならばこの国を治められます」

 

「そうか、我ならば…」

 

「そうですよ、」

あー、こいつめんどくせぇ…俺アミリス様の下につきたいな…ダルトン卿もこいつみたいに使えない七光りな訳じゃないし…

 

はぁ…世の中は残酷だ

 

 

 

 

 

「ガーランド艦長、ラディ中尉より通信が入っています」

ナミス・ガーランド、レジスタンス軍を設立した張本人。現在は総帥かつこの艦の艦長を続けている。その戦場にたち続ける姿から支持率は高い

 

「繋たまえ」

 

「此方ラディ中尉。熱核融合炉を4機回収、デブリ帯のマッピングが完了しました。」

 

「承知した、詳しい話は帰艦してから聞くこととしよう。」

 

「了解 これより帰艦します」

 

 

「終わりましたねー」

 

「終わったな…さぁ帰るまでが任務だ。気引き締めろよ」

 

「了解です」

空となった燃料タンクを切り離し母艦に向けてスラスターを吹かせていく

 

 

 

「熱核融合炉4機の回収…あの宙域は本当に宝の山の様ですね 」

 

「ああ、確かこの計画を立てたのは開研だったかな」

 

「ええ、ダルトン卿の右腕と称されているアミリス中佐です」

 

「ああ、彼か、若いながら良い仕事をする …」

 

「どうなさいますか、総帥」

 

「そうだな…大佐に昇格させる事も考えておこう」

「承知致しました」

 

 

品のある良質な内装に包まれた一室に吉報が届く

「本当か、連邦の新型機が鹵獲できるかも知れないというのは」

 

「ああ、本当のようだ、今画像を送る」

 

端末に薄暗い画像が送られてくる

そして良く見てみると…

「が、ガンダムタイプか…」

これは凄いことになるぞ…連邦は総力を掛けて開発した機体をガンダムタイプにする事が多い。という事はこれを分析して技術を盗めれば…あの白い悪魔のような力を手にする事が出来る。

 

「それでこの機体はいつ届くのだ」

 

「もうすぐ本格的な回収部隊が出る筈だから…1週間掛からないと思うぞ」

 

「それなら今すぐ準備を始めさせよう」

 

「ああ、頼んだ」

 

「これは大きな仕事になるぞ」

 

レジスタンス軍の幹部達は今日も会議という名のお茶会を開く…

 

「しかし、どうしますかデラーズ紛争でジオン残党軍は多数の死者が出てパイロット不足は深刻です。我々がMSを作った所で動かす物が居なければ…」

 

「それは我々が考えた所でどうしようもない事でしょう」

 

「ああ、その状況を打開できる性能を出せばいいのだ」

 

「そうですぞ、旧ジオン公国はザクによる圧倒的な力で勝利を掴みかけたではないか」

 

「ギレン・ザビが支配に走り長期戦にならなければ…」

 

「圧倒的な力を持つ機体を作り上げられれば有りうる」

 

「それに資材はこれから安定して得られるそうだ。それならば高性能な機体を量産することも出来る」

 

「そう言えばMS用光学迷彩は進んでいるのかな?」

 

「光学では無くミノフスキー粒子によるものなのだが…研究自体は進んでおるよ。動作テストまで来ておる」

 

「あれが出来れば我らの軍も動けるようになる。総帥も待ち望んでおられる様だ」

 

「あれは本当にすごい物だった。試験を見させてもらったが本当にレーダーにも写らないし目にも見えなかった」

「うむうむ」

 

「正式運用が待ち遠しいわい」

 

 

デラーズ・フリートが紛争を起こし失敗に終わってから2年、各地のジオン残党軍はゲリラ戦を散発的に起こし反抗の意志を見せることしか出来ずにいた…

その中でレジスタンス軍は散らばった残党軍を吸収し着々と成長を遂げていく

 

M開研はミノフスキーステルス技術を開発。ミノフスキー粒子を散布することなくレーダーに映らず何より肉眼で見ることの出来ない超技術であった。開発者いわくIフィールドの応用だとのこと。

 

宇宙世紀0085 6月13日MS開発研究所はステルスフィールドをロールアウト。これにより連邦に拠点がわれることを恐れていたレジスタンス軍がMSによる行動が可能になる。

同年7月1日レジスタンス軍は各地のジオン残党軍と軍事同盟を締結、これにより各残党軍の軍事力が上がり始める。しかし技術の流出を恐れたレジスタンス軍は本命となる技術を使った兵器を提供せず、通常兵器のみの情報と物資を与えた。

 

散発的に聞こえてくる連続した銃声

 

そして一際大きな爆発、今また一人宇宙の藻屑となった

 

「しっかしこれすげぇよな、今までのザクの性能じゃねえぞ」

 

「ああ、ドムと比べても変わらねえ所か上回ってるかもしれねぇな」

「いくら高機動ザク2だとしても…何者なんだレジスタンス軍って」

 

「まぁいいじゃねぇか仲間なんだからよ」

 

「お前ら、また来たぞ」

 

「「了解」」

 

ジム改が6機隊列を組みながら向かってくるのが見える

「接触まで後3分だ、囲まれる前に乱戦へ持ち込むぞ」

 

「了解」

…母艦まであと少しだってのに、しつこいな

 

「GO!」

 

ザクマシンガンと言うより軽機関銃に近いライフルを乱射しながら突撃していき、怯んだ所にシュツルムファウストを撃ち込む

 

「一機撃破!」

 

「よっしゃ!俺らも続くぞ!」

 

機動性を生かし左右に回り込み囲まれないよう1機ずつ撃破していく

その中で一機がビームスプレーガンを乱射しながら突進をしてくる

 

その射角から逃れようと全速力でスライドするも、全弾を躱すことは叶わず左足に被弾する

 

「やらかした!」

 

相手がオーバーヒートしたのか銃を投げ捨てビームサーベルを抜き放つ

 

くそ、左足を失った事でバランスが安定しない

 

「こうするしか…」

右足をパージし機体の安定を図りヒートホークを握りしめ向かい撃つ

 

両手で振り下ろされた剣を片手で持った斧で受け止める

 

「この機体やっぱり伊達じゃねえ!」

 

バルカンを予期し頭部を左手で引きちぎり投げ捨てる

 

そして背中に背負っていたザクマシンガンを手に取り至近距離から腹部に撃ち込む

 

動かなくなったそれを残し離れて行く

 

戦場は一時の静けさに包まれていた

 

「手酷くやられたもんだな」

「いやぁ、敵ながら良い腕をしてたよ。あのコーションマークからしても隊長機かもね」

 

「有り得るな…だとしたらお前は良く殺ったよ」

 

「特別に機体カスタムして貰えたりするかな」

「えーいいなーそれ」

 

未だ戦時中に学徒兵だった青年達は戦火の中で生きている…人間は良くも悪くも環境に適応していくものだ。それが例え戦場だとしても…




旧ジオン公国、現ジオン共和国が有るのがサイド3ジオン共和国をジオンとして認めないレジスタンス軍は自分達の住むコロニーこそがジオンだとして名をサイドTruth3 (トゥルース、真実の)としました。


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「時代に消された戦士達」第3話 機動戦士Zガンダム外伝

宇宙世紀0085年を超えたので機動戦士Zガンダムの世界に入っていきます。


「こ、これが連邦のガンダム!!この手でいじれる日が来るとは!!儂の持てる力を尽くして最強の機体を作ってみせますぞ!!」

 

「おーい爺さん、あんま叫ぶと体に障るぞ」

 

「爺さん扱いするんじゃない!まだまだ心は少年じゃい!」

 

「はいはい…」

ほんとこの人は…腕は確かなんだが、時々大丈夫か心配になる…

 

「あ、あと開発データも回収出来たみたいでファイルが送られてきてるが」

 

「儂の端末に送っといてくれ」

 

「あいよ」

 

このガンダムは技術の吸収材料となると共に着々と改修が施されていくのであった…

 

 

宇宙世紀0085 7月25日

レジスタンス軍 技術部門 艦船開発所 はステルスフィールドを搭載した新型艦をロールアウトした、軍は戦艦の量産化も始め軍事力が飛躍的に上がる事となった。

ただ、MS用のステルスフィールド発生装置は消費電力が大きく、既存のMSの出力では運用が厳しく頭を悩ませていた。

 

その問題を解消する為ある計画が立てられる…それが「新型量産機開発計画」簡潔に言えば新たな量産機を作るという事である。

 

この計画の立案者は昇格し大佐となったアミリスであり、主導はMS開発研究所が本体を一任される事となる。

 

 

「おい!弾薬の補給はまだ終わらないのか!」

 

「今、今終わりますから!」

 

「ティターンズの奴らめ…停戦信号を無視するとはどういう事だ…」

 

断続的な銃声、そして

 

「当たれ当たれ当たれ当たれ!」

 

バズを撃ちまくるが一向に当たらない、だが決してこのパイロットの腕が悪い訳では無い…がどうしても埋められない性能の差があった。

 

「くっそぉ何なんだよあの機体は!」

その機体は朱色に帯びて一見ザクに似ているが性能は段違いに高い

 

弾を撃ち尽くし最後の特攻を仕掛けるが

 

ヒートホークを振りおろすも当たり前の様に避けられ一閃の元に切り捨てられる

 

「ラウルが!ラウルが殺られた!」

 

束になっても分が悪いか …

 

「落ち着け!殿は俺が務める、必ず情報を母艦に持ち帰るんだ」

 

「「了解!」」

 

こちらの意図に気が付いたのかその機体は凄まじい速度で追ってくる

 

「お前の相手は俺だ」

今回の戦闘で4人の部下を失った…この落とし前はその機体の情報と俺の命で付ける他ない!

 

「ここを通らせる訳にはいかん!」

射撃で撃破するのは不可能と考え牽制し距離を詰めるため両肩のシールドラックに取り付けられたミサイルポットを撃ち込む

 

そして不要となったポットをパージさせ軽量化を図り隊長機用に追加されたスラスターを全開にし一騎討ちを仕掛ける

 

それに対し相手は舐めていたのか不意をつかれ少し動揺を見せ反応が遅れる

 

「甘い!!」

煙が晴れると目の前にヒートホークを振り上げた機体が待ち構えていた

 

が、機体の性能が違いすぎる。ヒートホークをビームサーベルで受け止められもう片方のサーベルで左足を切り飛ばされる。

 

「まだまだぁ!」

殴りつけるも装甲を貫けない、その隙をつかれ真横から切り裂かれる。

 

 

その朱色の機体は切り捨てたそれにもう興味が失せたのか機体の向きを逃げていく獲物に定め発進させようとする。

「俺の勝ちだ…」

そう最後の力で呟き、殴り付けた拍子に取り付けたグレネードの起爆スイッチを押す。

朱色の機体は大きな火球に飲み込まれ後に残ったのは金属の残骸だけだった

 

 

隊長……

 

 

この部下達がもたらしたデータはジオン残党軍を震撼させた。この朱色の機体は映像データから

マラサイ 型式番号 RMS-108 と判明した。

 

この情報はレジスタンス軍にも伝えられティターンズの名が広く知られる事となった。

 

そしてこの一件からジオン残党軍はレジスタンス軍政府に対してより高性能な機体の開発と提供を求め始める事となり、軍は現在開発中と発表。それまでの無駄な戦闘行為を自重するようにと伝達。これにより暫くの平和な状況が作られていった。

 

しかしそう平和が続く事など出来ない

 

宇宙世紀0085 7月31日

ティターンズは反地球連邦政府デモの鎮圧を名目にバスク・オム大佐の指揮で、当時使用が禁止されていたG-3ガスをサイド1の30バンチコロニーの内部に注入して、コロニーに住んでいた1500万人の住民を虐殺した。

 

この出来事により反地球連邦を掲げる動きは大きく進んでいく…

 

MS開発研究所、「新型量産機開発計画」技術者会議

 

「いやぁーしかしどうしますかね…上からはジオンの象徴とも言えるザクを思わせる外見にしろと言われてるが」

 

「ならば頭部をザクに似せればいいのではないか?」

 

「まぁそれが妥当だろうな」

 

「頭部はそれでいいとして…フレーム部は今回鹵獲したガンダムタイプを元として設計すると資料に書いてあるが…コストは大丈夫なのかね」

 

「設計自体に差があるだけだ、コスト的にはそう変わらんさ」

 

「ならいいのだが」

 

「あの、このパイルバンカーってこれ入ります?」

 

「資料12番を見てください。ここに最終的な決め手のランキングがありますが、接近戦となるとやはり最終的には格闘戦になるようで最後の一撃はヒートホークが多いですよね。しかしパイロットに聞いてみるとヒートホークを弾き飛ばされ殴りつけて倒したり何とか牽制して取りに行き戦う事も良くあるそうです」

 

「…」

 

「ならば両手が空いた状態でも敵機を撃破できる武装が必要だと思いませんか?そこでパイルバンカーです」

 

「なるほど…」

 

「電磁力なので入れ替えれば使用出来る。それに何より高威力」

 

「確かに必要かもしれん」

 

「ええ、こんなに有能な武器は他にありませんよ」

 

「他に何かありますでしょうか」

 

「このビームアサルトライフルとありますが、何故わざわざアサルトライフルにしたのですか?」

 

「端的に言うとですね、単発も必要だからです。今までのザクマシンガンの命中精度は良いとは言えない物でした。なので今回からは単発も取り入れることで中遠距離での狙撃も可能にしています」

 

「…ありがとうございます」

 

「他に何かありませんか?」

 

「……」

 

「それではこの計画で行くということで…」

計画上機体データ

機体番号 MSTH-06

全高:20.0m

本体重量:21.8t

全備重量:55.2t

主動力:熱核融合炉(ジオン式+連邦式)

ジェネレーター出力:1853kw

 

武装 ビームアサルトライフル

大型ヒートホーク

腕部パイルバンカー×2

胸部バルカン砲




この時Truth3の人口300万人

ザクII 200機 その中でTruth3で製造した物は5分の4

高機動型ザクII 50機 全て製造

リックドム 50機 5分の4

ゲルググM 20機 2分の1

なおTruth3で製造されたMSは一年戦争時にジオンの使っていた関節である流体パルスシステムから連邦の使うフィールドモーターシステムに転換した事で反応速度の上昇と機体の軽量化に成功している。


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「時代に消された戦士達」第4話 「初陣」機動戦士Zガンダム

ステン・ガルス

レジスタンス軍の「新型量産機開発計画」によって開発された次期主力量産機候補とされているMS


Truth3 MS開発研究所 ハンガールーム

 

 

「こりゃぁ…データが届いたが…機体の名前はまだ決まってなかったみたいだな」

 

「まぁ頭部と左上半身しか装甲が無くて殆どフレームですからね」

 

「あ、でも機体番号は判明したぞMSZ-005だな 」

 

「そういえばこの機体のシュミレーター解析で判明したんですが驚く程可動範囲が広いんです。こんなにいるのかってぐらい…後よく分からないカラクリも…ほら見て下さいよ」

 

「…この動き方はまさか、可変機か」

 

「可変機ですか?」

 

「可変機ってのはな大体は飛行形態に変形出来るMSの事を言うんだ。アナハイム社が研究してるって噂はあったが…本当に作ってるとは」

 

「それじゃあ我々もその可変機を作れるようになるのですね!」

 

「それはちと難しいな、我々の可変機の知識は0だ。流石に作ることは難しいだろう…この機体もほぼ装甲は造られてない開発段階だ。可変機能は無くすことになるだろうよ」

 

「なんか勿体ない気もしますね…」

 

「まぁな、だがこのフレームはすごいぞ新設計の関節機構にマグネットコーティング、それに高出力ジェネレーター。可変機能は無くとも量産機では出せない超高スペックだ…この機体は強くなるぞー」

 

「ですね、おやっさんが作ればきっと連邦の計画より強くなりますよ」

 

「へっ、あたりめーだ」

その男は今日も玩具で遊ぶ子供の様に機械を弄るのであった

 

そして月日は緊張状態のまま流れていく

 

宇宙世紀0085 12月25日 クリスマス

 

突然の報せだった

 

「総帥、同盟組織であるカルボナリより救援要請が来ておりますが…」

 

「相手は」

 

「ティターンズと思われます。場所はサイド4、敵機数は不明です」

 

「…」

近いな、そこが突破されれば此方に来るやもしれん…

 

「5機試作機が出来ているはずだな」

 

「左様にございます」

 

「それを出せ、実戦テストだ。パイロットはテスト時の者を乗せよ」

 

「承知致しました」

 

…吉と出るか凶と出るか…さぁどちらか…

 

 

「ラディ中尉、出撃命令です」

 

「は?出撃?何で」

 

「ええ、出撃です。何でってそりゃステン・ガレスに決まってるでは無いですか」

 

「ちょっと待てあれは試験機だよなそれを実戦で…」

 

「まぁまぁ、取り敢えずパイロットスーツに着替えて

、ハンガーまで来てください!総帥から勅命ですからね!」

 

「…了解」

ハンガールームの中は作業のしやすいように無重力の空間になっている

 

オイルや金属の熱せられた臭いが立ち込める中壁を蹴りながら進んでいくと黒色に塗装されたそれが胸部のコックピットを開いて待っていた

 

「中尉ご苦労様です」

 

「ああ、ありがとうアルベルト」

シートに座っていると知人の整備士が顔を出す

差し出されたボトルを受け取りながら機体の状態をチェックする

 

「機体の整備はお前に合わせてバッチリしといたぜ」

 

「そうみたいだな、うわぁこの推力設定リミッター守ってんのか」

 

「ああ、守ってるとも俺は熟練の整備士だぜ。ギリギリまで調整する技術があるのさ」

 

「…ほんとお前ってやつは……褒めてねぇからな」

何故か誇らしげにしている目の前のアフロ毛に呟く

 

「なんか言ったか?」

 

「いいや、何でもないさ」

 

「ならいいんだけどよ」

 

「ステン1、2、3、4、5号機のパイロットに通達。5分後に強襲輸送艦にてサイド1宙域に輸送を開始します。各自準備を行ってください」

 

「武装と補給物資はもうあっちに積んであるからこいつごと連れてくみたいだ」

 

「了解」

 

「生きて帰ってこいよ」

 

「俺を誰だと思ってんだ、じゃあな」

 

「ははっ、分かってるよ」

 

コックピットハッチを閉じる、一瞬の静寂と闇に包まれるが直ぐに機械の作動音が響き目の前のディスプレイにZIONの文字とマークが現れ全体が見渡せるようになる

鹵獲したガンダムタイプから全周囲モニター、所謂リニアシートの技術を取り入れ大急ぎで試作型を開発したのだ。本当に技術者の方々には頭が上がらない。

 

グン、という感覚と共にハンガーから運び出され強襲輸送艦に運び込まれる

 

「予想到着時刻は10:23 30分後です」

30分かいくら強襲輸送艦でも30分でつく所で戦闘が起これば見逃せないわな

 

 

「ステルスフィールド展開準備を始めよ」

 

「ミノフスキー粒子圧縮開始、充填まで30カウント」

 

「展開システム作動開始」

 

「8、7、6、5、4、3、2、1充填完了」

 

「展開!」

 

白く光る粒子の粉が広がっていき球体を形作る

 

そして…輸送艦と共に消えていく

 

いや、詳しくいえば見えなくなっていくの方が正しいだろうか。肉眼でも、レンズ越しでも、レーダー上でも消えていた

 

「中尉、よろしいですか?」

 

「なんだルーデンス少尉」

 

「中尉とてもお強いのになんで中尉なんです?大尉でもおかしくないのに」

 

「おい、ルーデンス…」

 

「いいよ、強いって思ってくれてるんだ。失礼な事なんてないさ。そうだね…あるとすれば生身での任務が多いからかな」

 

「生身の任務…」

 

「余り公言出来ないのが多いかな、銃火器を使う…そっち系の…ね」

 

「なるほど…何か不遇な気もしますね」

 

「まぁ私は歩兵戦も訓練してきたからな」

 

「ああ、だからあんな動きが出来るんですね」

 

「あんな動き?」

 

「なんて言うんですかね…ライフルを持っている時とか、格闘戦でも何かMSというかは生身の人間の様な動きをされているので」

「自分ではわからんが…そうなのだな」

感覚的な物なのだろうか…もし正式に部下を持ったら動きを教えてあげようか…

 

サイド4 周辺宙域

 

ジオンのレリーフの入った機体が朱色の機体に追い詰められていた

 

「あいつ、何て推力なんだ」

 

「各機じゃ無理だ!囲め、囲んで叩くんだ!」

 

「隊長!囲もうにもあいつ速すぎます!」

 

「殺らなきゃ殺られるんだ!何としてでも…」

角の生えた機体が光に貫かれる

 

「隊長!!」

隊長が殺られたってことは次は俺が指揮官か

 

「くそ!持ち堪えろ!後もう少しで救援が来るんだ!」

 

「「了解!」」

 

だが機体性能の差はどうしようもなく残酷である…

次々と轟音と共に機体が爆散していく

「マルバが!マルバが殺られた!」

 

「止まるな!死ぬぞ!」

まるでこれは虐殺じゃないか…

 

 

「おい、あれ…」

 

見ると増援だった、但し敵勢力の…

終わった…これで仲間の元へ帰れるのか…

 

「おい、あいつらまさかあの方向は!」

部下の1人が声を上げる

 

見てみると敵機が向かう方向は自分たちの方ではなく、母艦へ向かっていた

 

「母艦を守れ!」

 

「でも、俺らもこいつらで手一杯なんですよ!」

 

…どうする、どうすれば

 

 

「目標ポイントに到着、ハッチオープン。1~5番機出撃許可」

 

「了解、1番機ラディ・アーデルス出るぞ」

 

スラスターを全開に吹かし一気に加速する

 

間に合えよ、着いたら全滅してるとか目覚めが悪過ぎだ

 

あれは…味方の母艦か、ならあそこで狙ってるのは

 

急ぎライフルを連発から単発に切り替え、時間が無いので感覚で照準を合わせて引き金を引く

 

発射された熱量の矢は敵のライフルを撃ち抜き誘爆させる

 

手元のライフルのエネルギーが暴走を始め腕ごと吹き飛ばす。そして撃ったものを探し出した

 

「MS用の奴は光学迷彩が無いってそういや言ってたな…」

 

モノアイと目が合った

 

「各機散開して各個撃破せよ!」

 

「「了解!」」

 

アサルトライフルを単発から連発に切り替え敵を見定め加速し距離を詰める。

 

よし連発の射程に入った、確か今持ってる弾倉は4つだし…敵の数がわからんから指切り3連射だな

 

戸惑う敵機を前にモノアイごと頭部を撃ち抜く

 

その姿をみた敵パイロットが激昴しバズーカを連射しながら突撃してくるも避けられる物は弾頭の雨をすり抜け危険と思ったものは撃ち抜き向かい打つ

 

まさかこの中を突っ込んで来るとは思いもしなかったのか動揺を見せ、動きが止まる。その瞬間をこの男が逃す訳もなく試し斬りとばかりにわざわざ近付かれ斬り伏せられる

 

やっぱり中々使えるなこのビームサーベル…

 

しかし…パイロットとしての力がないな。完全に機体の性能に任せている。まだ新設の機関だからか…

 

「中尉あっさりとヘッドショットか…それにあの中を突っ切るなんて…」

 

さて、大分片付いてきたか…推進剤には余裕があるし敵の母艦見つけられるかな

 

 

 

「1番機、続いて4番機もロスト…3、2、6番機ロスト…」

 

「艦長、どう致しましょう…」

 

「撤退だ、速やかにこの宙域より撤退せよ!」

 

「「了解」」

 

「艦を180°回頭させよ!」

 

 

流石にここまでこれば見つかる物なんじゃ…今まで戦艦とタイマンを張ったことは無いからな…

 

遠くの方に白色の人工物が回転しているのが見える

 

居た!気分が高まり一気に巡航速度から踏み込む

グンッという反動でシートに押さえ付けられるがそんな事は気にならなかった

 

 

「高熱源体急速接近!速度は我が軍のマラサイと同等かそれ以上!」

 

「そんな機体を残党軍が保有している筈が…」

 

「対空防衛を開け!近付けさせるな!」

 

船体の各所からミサイルやビームが飛来する

 

このIフィールド…副砲ぐらいなら2分は持つ筈

 

躱せるものは躱し、ミサイルは撃ちおとしビームはIフィールドで受け止め砲撃の嵐を掻い潜る。撃ち落としたミサイルの爆風で塗装は剥がれ、消しきれないビームで所々が溶ける

 

だが…俺の勝ちだ

嵐の先には無防備なブリッジが待っていた

 

「抗ってやろうじゃねえか、時代の支配者に」

 

肩にストックを当てグリップとフォアグリップを握りしめ斉射する

 

ガラスが溶け、船体には無数の穴が空き見るも無残な姿となる

 

撃沈はさせないでおこう…改修して使えるかもしれんしな…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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「時代に消された戦士達」第5話「黒い死神」機動戦士Zガンダム

「バスク司令、残党軍掃討作戦に向かっていた一個小隊をロスト致しました…」

 

「ロストだと?」

 

「はい、MS6機と戦艦1隻の反応が消えました」

 

「…」

残党軍にマラサイを超える性能のMSがあるという情報は入ってなかったはず…

 

「何か情報は入ってきていないのか」

 

「めぼしい物は得られておりません…」

 

「…そうか、この事を知っている者はどれ程居るのだ」

 

「この作戦において艦と連絡を取っていた人員数名であります」

 

「今ここにおいてこの情報は他言無用だ。もし話した場合は消えて貰う」

 

「了解であります」

 

「下がれ」

 

重厚な扉の閉まる音が鳴り響き、静寂が辺りを包む

 

おもむろに端末を取り出すと通話をかける

 

「おい、命令を与える」

 

「はっ、何なりと」

 

「この度の残党軍掃討作戦のレーダー監視任務を受けた者を全て消せ」

 

「了解」

 

内心はとても焦っていた、連邦軍の中でさえエゥーゴの動きが活発になりその対応で追われているのにも関わらず残党軍が力を持ち始めているのだ。これは知られてはいけない、もしこの情報が流れでもしたら間違いなく組織が混乱しエゥーゴにつけ込まれる。

 

どう処理したものか…

 

 

Truth3 、総司令室

 

ジオンの国旗が垂らされた舞台の上に男が座っている。その男は隠しきれない軍人としての雰囲気が出ており政治家と言うよりは軍師と言われた方がしっくりと来るような感じであった。

 

横に微動だにせず立っていた男が左耳に付けた通信機から届く情報に耳を傾ける

「総帥、吉報にございます」

 

「何だ」

 

「ラディ・アーデルス中尉等5人が介入した戦闘においてティターンズと思われる敵MS6機を撃墜、戦艦1隻を戦闘不能という戦果を上げたようです」

 

「ほう、中々の戦果ではないか」

 

「更に、その内MS2期と戦艦1隻はラディ中尉の戦果との事であります」

 

「単騎で戦艦を沈めたのか…」

 

「左様にございます」

 

「ラディ中尉のプロフィールを貰おうか」

 

「はい、ラディ・アーデルス 26歳 階級は中尉、サイド3出身であり士官学校に入学後ジオン特務学校へ編入。特務機関のパイロット兼兵士として活躍。一年戦争を生き残り今に至ります」

 

「…特務機関の出か、ならばその力も納得がいく」

 

「して、褒賞はどう致しましょう」

 

「…大尉に昇格させ、専用機を与えよう。彼にはもっと活躍して貰わんとな」

 

「仰せのままに…」

 

ティターンズの残党狩りへの介入により、ステン・ガルスの有用性が証明され量産に向けて舵が切られることとなる。だがやはり従来の量産機と比べコストは掛かる事から大量生産とは成らなかった。

 

 

技術部門 カスタム機開発部

 

「おーい、新たな指令が出たぞ」

 

「あ?内容は何だ」

 

「今回ロールアウトされたステン・ガルスをベースに新たに大尉に昇格したラディ・アーデルス大尉の専用機を製作せよ…だって」

 

「成程な、ラディ大尉ってあれだろ戦艦を単騎で沈めた奴だろ?新たなエースに専用機をってか」

 

「へーそりゃ凄い人じゃん、じゃあ今作ってるって噂のガンダムタイプもその人が乗るのかな」

 

「どーだろーな、そいつの腕次第なんじゃない。今回はたまたまかも知んねぇだろ」

 

「まぁそーだけどね、とにかく本人に要望を聞いてみようよ」

 

「ああ」

 

 

「ラディ大尉、御昇格おめでとうございます」

 

「ありがとう、君らが居てくれたお陰だよ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「そんなに気を使わなくていい、今まで通りでよろしく頼む」

 

「……承知致しました」

 

「……」

まぁ仕方がないか、大尉まで来るとこうなる物なのだろう

 

「ラディ大尉、カスタム機開発部よりお会いして直接話したい事が有るとの事ですが」

 

「分かった、今行こう」

座り心地の良い木製の椅子から立ち上がりコートを手に取る。

 

随分と自分も偉くなったものだ…部屋を見渡し思う。装飾が惜しみなく使われているわけでは無いものの今までと比べれば幾分と品のある部屋になっている。

 

私は立場が変わる事で腐って行った軍人を幾度と無く見て来た。軍人である事を忘れ、金や権力に取り憑かれていく様を…自分はあれにはなりたくないと心の底から思った。ジオンの軍人として、いや…時代の支配者となり支配欲に走る連邦軍に抗う者、レジスタンスとしての誇りを忘れたくない…その誇りがあれば腐ることは無い、総帥の様に気高く生きていける…そう信じている。

その誇りを持ち続ける為に必要な事…それはこの手で人を殺め続ける事…だから私は戦い続ける…

 

「待たせたな、さあ行こうか」

 

 

「お忙しい中お時間を頂きありがとうございます、ラディ・アーデルス大尉殿」

 

繋ぎの様な作業服を着た2人の内の優しげな好青年といった印象の男が慣れた口調で話してくる。実際職業柄慣れているのだろう。

 

「いや、私の専用機を造ってくれるそうではないか。礼を言わなければ成らないのは私の方だ」

 

「恐縮の限りでございます、大尉殿。では此方の方へどうぞ」

 

「ああ」

元学徒兵だろうか、MSなどについて学んでいる学生をヘッドハンティングして軍に徴兵するとは聞いていたが…会うのは初めてだ。

入ると廊下がありこの奥に応接間がある様だ。歩いていると1分も掛からずに着いた。工場には似つかない重厚な扉の先には様々な装飾に包まれた洋室があった。

相当な階級の人に対応出来るようにという事だろうか。

 

「今日の要件を聞こうか」

 

「はい、この度は大尉殿の専用機を製作するという事でご要望をお聞かせ願いたいと思った次第でございます。」

 

「成程な、大まかで大丈夫なのか?」

「ええ、結構です」

 

「なら…まずは推力だな母艦を狙うには時間がかかりすぎる。勘のいい艦長ならば早々と逃げてしまうからな」

 

「成程、推力でございますね」

 

「後はもっと射程と威力のある武装が欲しい。私は狙撃手としても活動していたからな、丁度スナイパーライフル程度の大きさの物がいい」

 

「スナイパーライフルですね…光学スコープも搭載してよろしいでしょうか」

 

「ああ、その点は任せる」

 

「承知致しました…塗装はどうなされましょう」

 

「今の黒の塗装のままで頼む。保護色でないと落ち着かないんだ」

 

「承知致しました…他になにかございますか?」

 

「特には無いな…私が求めるのは全ての距離においての戦闘能力と推力、反応速度。この3点の強化だ」

 

「全力を尽くし製作させて頂きます」

 

「ああ、楽しみにしているよ」

 

 

 

「何だか紳士的で普通にいい人だったね」

 

「ああ、腐った軍人って訳じゃないみたいだな。俺は結構長い間この役職やってんだが」

「なら対応してくれればいいのに…」

 

「俺はそーいうの苦手なんだから仕方ねぇだろ。まぁそれは置いといてだな、色んなエースと会ってきてその人達と同じ雰囲気がした」

 

「へー、どんな?」

 

「具体的には分かんないんだが…才能から滲み出るオーラというか、やっぱそういうのって有るんだよ。あの人からはそれを感じた」

 

「へー、そうなんだ」

 

「お前信じてないだろ」

 

「そんな事ないよー」

 

「全く…上からは出来るだけ早く作れって言われてんだ。7日間で作るぞ」

 

「1週間か…大変になりそうだな…」

 

此処でこの者達で作られたMSが後に黒い死神と呼ばれ恐れられていくことになる…




次回は戦闘シーンもりもりになる予定です!お楽しみに

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