スタンド使いはヒーローになれるのか? (玉砕兵士)
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1話

なんとかして、納得いくものを考え書きました。

色々とツッコミたいところとかあるかと思いますが、頑張って書いていきたいと思います!

前の作品とはちょっと変わっていますが、だいたいおんなじに書いていこうと思います


突然だが、みんなはあの世があると言われて信じるだろうか?

 

 

 

では神がいると言われてその存在を信じられるだろうか?

 

 

 

異世界は?妖精は?

 

 

 

宇宙人は…流石にいるかもしれない。

 

実際にその痕跡を人は火星で発見しているし、地球でもUFOだったり嘘か本当か筆者には分からないが宇宙人と会ったという人もいるぐらいだ。

 

 

 

会えるのも、近い未来かもしれない。

 

 

 

人類が歴史を作り、それを書き留めるようになってから、それは20世紀になってからも未だに解けない謎であり、これから解けるかもしれないかもしれない謎だ。

 

 

 

そういった不可思議なものを信じないと言う人はきっといるだろう。

 

 

 

現実的な思考でこれから生きていく上できっとそれは変わらないし、また変える必要もないだろう。

 

私が思うにそういった人は、きっともう目指すべきものが見えていて自分のなりなたいものがあり、やりたいことがあるんだろう。

 

 

 

素晴らしいことだと思う。

 

 

 

 

 

しかし逆にそういった不可思議なものは絶対にあると信じる人もまたいるだろう。

 

きっとそれは信心深く、世界には無限の可能性と夢があると信じているんだろう。

 

 

 

何物にも変えられない、大切なことだと思う。

 

 

 

色んな人がいる。

 

 

 

人間という生き物はいろんな多種多様な考えをしているし、そこから新しく生まれてくるものだってある。

100年に及ぶかもしれないが、数十年に渡る人間の一生の中ではそれはそれは光り輝いていると思う。

 

 

 

では私は?

 

 

 

どう思っているだろうか?

 

 

 

個々人の自由だと言ってしまうのは簡単に済ますことになると思うので述べさせて頂くと、私は不可思議なことがきっとあると思う、目には見えないが何処かにこの世界の何処かにきっと存在しているだろう。

 

 

 

可能性があるのだから。

 

 

 

その可能性は人間の信じる心かもしれないし、近い将来に人間の科学が今より進歩していけば証明出来る物なのかもしれない。

 

 

 

可能性を信じる心

 

 

 

人間の飽くなき探究心が

 

 

 

きっと有ると言っているのだ。

 

 

 

だから私は信じている。

 

 

 

漫画とかアニメ、小説を見てみると今の自分達には無い超常の現象が起こっているものを題材としたものが多いし、人気な理由の一つでもあるのだろう。

 

もちろん実話を元に描いた作品もリアルな描写と共感できるところを楽しんだりと面白い要素はたくさんある。

 

 

 

時にみなさんの大好きな漫画と言えばなんであろうか?

 

 

 

一つだけじゃなくいっぱいあると思います。

 

 

 

バトル漫画、恋愛漫画、学園青春漫画、戦記物、これもまた多種多様だ。

 

 

 

人の好みによって、沢山だと思います。

 

 

 

 

 

 

 

長々と一通り喋り終わったところで、本題に入ろう。

 

 

 

私が何故神様や、不可思議なものなどの話をしたのかというとそれを私が経験したからだ。

 

 

 

転生というやつである。

 

 

 

私は仕事が忙しくも穏やかな毎日を送っていたが、ある日なんてことない交通事故で死んだ。

 

 

 

別に理不尽にも私を轢いた相手が飲酒したり、居眠りしていたりというわけではない。

 

 

 

私が悪いのだ

 

 

 

私が余所見をしていたばっかりに、赤信号を無視したばっかりに愚かにも車に轢かれてしまったのだ。

 

 

 

さらに当たりどころが悪かったのか、血が大量に出てしまったらしい。

 

 

 

段々と眠ってはいけない、眠ると永遠に眠り続けるような、何か不気味なものを感じながら睡魔が襲ってくる。

 

 

 

そしてさらに運がないことにトドメを刺すように車が、走ってくる。

 

運転の操作を、ブレーキとアクセルを間違えてしまったのか、私を轢いたのとは違う車が地面に倒れている私に目掛けて突っ込んできている。

 

 

 

真っ黒い車のタイヤが迫ってくるのが最後に私の見たものであった。

 

 

 

最悪の最後だ。

 

 

 

まだ見たかった映画もアニメもあった。

 

 

 

読みたい漫画も小説も

 

 

 

変かもしれないが忙しかった仕事は、上手くなりたいと思っていた。だが仕事が上手くなるためにはそれなりの努力が必要であったたわけなのだが、私はそういった努力をしてなかった。

 

 

 

今、死に際に感じたことはもっとまじめにそういった努力をすれば良かったと私は後悔をしていた。

 

 

 

とにかく私にはやり残したことが沢山あった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私が次に目を覚ますのは一体いつなのだろう?

 

 

 

それともずっとこのまま永遠に眠り続けたまま?

 

 

 

朦朧とする意識の中で、私は体が軽くなり宙に浮くような感覚を味わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして気がつくと私は、空を飛んでいた。

 

 

 

下を見れば私が、車の下敷きになった私が流れいく血を地面に広げながら顔は見えないが倒れていた。

 

 

 

そう正確には死にいく私が

 

それを取り囲むように救急隊員や警察官が、そして野次馬が集まっていた。

 

 

 

そしてふと上を見上げると太陽のような、だがそれではない暖かい光が私を、人が呼吸するように私を上へ上へと吸い上げるように段々と登っていく。

 

 

 

私は私自身の最後を見ながら、この光景に似たものを思い出していた。

 

 

 

そうだ思い出した!あれは自分が大好きだった漫画の最後のシーンでもあった。

 

 

 

偶然なのか必然なのか分からないが、大人気漫画ジョジョの奇妙な冒険の4部の吉良吉影の最後に非常に似ていた。

 

 

 

自分の最期の瞬間に何を考えているのか

 

自分でもどうなのだと思ったが、既にあの怪我で生きていられるとは思わなかったし、私は私の思うように考えることにした。

 

 

 

話を戻すが、漫画の主人公達である仗助と激闘を繰り広げ、最後の最後まで追い詰められたその瞬間までどちらが勝つか分からなかったのは読んでいてとてもワクワクした。

 

 

 

私はジョジョの漫画の最後まで分からない展開も面白いが、一人一人のキャラクターが放つカッコイイ名言から思わず笑ってしまうような面白い名言も好きだった。

 

まあ、まだ他にも色々あるのだが長くなるので割愛とさせていただく。

 

 

とにかく、やり残したことがやりたいことがまだあったのだ。

そして唐突に頭に声が響いてくる。

 

 

汝、力を望むか?

 

 

我の声を聞き、力を望むとあらば

 

 

たとえ、それが終わりなき闘争の日々であったとしても

 

 

さあ、答えよ。

 

 

 

 

薄れいく意識の中で私は、誰かなのか分からない問いに私は困惑しながらも、答えた。

 

「望む」

 

やり直せるなら、やり遂げられるのならもう一度やり直したかった。

その問いを最後に私は意識を手放した。

 

 

 

そして私が次に目を覚ましたのが、病院のベット…正確には赤ん坊用のベビーベッドの上であった。

 

どうやら私は赤ん坊としてまたこの世にまた生を受けたらしい。

 

そしてあの問いをかけてきたのは神様だったらしい。

そうでなければ赤ん坊になったにも関わらずまだ私の意識があるわけはないのだと思う。

神はまたもう一度この私にやり直すチャンスを、いや、もしかしたら試しているのかもしれない。

この私を見てきっと私の行いを試しているのだろう。

 

それにしてもまだ引っかかるものはある。

 

あの問いの中の言葉にあった闘争とは一体?

私は戦うのか?

でも一体どうやって?

 

その時、僅かな地震が起きる。

揺れ自体は大したことないもので直ぐにそれは収まる。

 

だが、運の悪いことにベビーベッドの横にある棚からカップが地震の影響で私にめがけ落ちてくるのが見えた。

 

まずい!当たる!!

この赤ん坊の体でも死ぬとは思えないが、痛いのは確実だ。

受け身だけでも取らなければ!

 

私は反射的に目を閉じて、襲いかかる衝撃にグッと堪えるように体に力を入れた。

だが、いつまでたっても予想したような衝撃が来ないことに不思議だと思いながらゆっくりと目を開ける。

そして私は驚愕する。

 

先程までは人が居なかったはずなのに、落ちてきていたカップを片手にこちらを見下ろしている人がいたのだ

 

いや人ではなかった。

姿形は人間のそれであっても人間ではないというのが一目でわかる容姿。

 

全体的な体の特徴は筋肉質で強そうな印象を受けるものがあるもののギリシャ彫刻のように美しさをもそれは兼ね備えてもいる。

そして体色は薄いピンク色で両手と恥部に骸骨のマークの装飾をつけている。

顔は猫のように鋭い大きな目と小さな口があった。

 

私はそれをよく知っていた。

 

この時私は確信した。

これが神の与えた力だと、スタンド能力を授けてくれたのだと!!

 

しかも、それが私のお気に入りでもあるスタンド能力

『キラークイーン』を授けてくれたのだと。

 

そして私のキラークイーンは私の身を守るという行為に反応して出てきて、落ちてくるカップをキャッチしたのだろう。

 

スタンド能力があるということは、ここはジョジョの世界なのか?

 

いやキラークイーンのスタンド能力の発現者は吉良吉影のはず、そうであるとすればまた違った別の世界なのであろうか?

 

私が思考の海に落ちている時

近くにたまたまついていたテレビから流れたニュース内容に私は目が釘付けになった。

 

そのニュースはゴリラのような体型をした男が銀行を襲撃して、それを派手な格好をした体が青色の女性が果敢に戦闘を仕掛けて男を捕まえたという内容の番組であった。

 

それを見た私はまさかスタンド能力が横行しているのかと驚いたものだが、よく考えてみれば今見たゴリラのような体型をした男と青色の女は私の知っているスタンドとは全く違う、それとは別の超常の力であるというのが分かった。

 

私の知らない、私の生まれた世界とは別次元の世界だと私は確信した。

そもそも神様どころか異世界まで存在するとは私はさっきからキラークイーンといい、驚きっぱなしだった。

 

それでも、そうだったとしても私は人生をやり直すチャンスであるのには変わらないと思った。

 

神様は真意はどうであれ私をこの異世界に転生させたのだ。

 

異世界に私という命を運びスタンド能力を与える

 

命を運ぶと書いて、『運命』

フッこのセリフを言う日が来るとは思ってもみなかったが、やっぱりカッコいいなぁ。

 

そして、運命はこの私に味方してくれている!

 

 

急激な感情の高ぶりからかまだ感情表現の少ない赤ん坊の私は大きな声で泣いた、そりゃもう泣いた。

 

そのあと、少しして私の母親が帰ってきた。

近くのスーパーに買い物に行っていたようだが、地震が起きて私を心配して直ぐに帰ってきたようだ。

 

この時私はスタンド能力なら見られないだろうとキラークイーンを引っ込めずにいたのだが、なんと私の母親はキラークイーンが見えていたのだ。

私もこのことには驚いていたが、母親はもっと驚いていた。

 

いきなりのことで錯乱状態に陥った母親はそのまま、バックを振り回しながらキラークイーンに突撃を敢行しようとして、慌ててキラークイーンを私は引っ込めると母親はそのことにも絶叫して驚き、限界点を超えてしまったのかそのまま気絶してしまった。

 

私はこの状況にスタンドは見えないはずなのにと思いつつも、やってしまったと思った。

 

うん?ということはスタンドが見えるということはさては私の母親もスタンド使いなのか?

 

未だに様々な謎が謎を呼ぶ事態に翻弄されつつも、彼の転生一日目が終わろうとしていた。

 

 

 




結構長くなってしまいましたが、いかがだったでしょうか?
次からは短くしていこうかと思います。
名前は多分次あたりで出そうかと思います。
あと多分しばらくは幼少期に何をやったかを元に小説を書いていきたいと思います。


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2話

ネタが浮かんできたので、早く投稿できました。

楽しんで頂ければ幸いです。

ではどうぞ


はぁ、はぁはぁ

 

荒い、息が段々と荒くなっていくのを感じる。

そして高鳴る心臓の鼓動に血液が凄い速さで身体中を駆け巡りやがて体の重要な血液の送水ポンプである心臓へと帰り着き、全身へ再び血液を行き渡らせる。

 

それは決して止まることなく、人が生きている証の命の鼓動を刻ませる。

 

 

 

 

 

変な想像をした方もいるかもしれないがどうか誤解しないで欲しい。

 

 

走っている。

そう今私は走っているのだ。

毎日欠かさずにランニングを行い、体力を作っている。

それは何故か?

キラークイーンを少しでも強くするためである。

 

原作のキラークイーンはパワーは強かったが、それにひきかえスピードは東方仗助のクレイジーダイヤモンドに比べて遅いと言わざるをえなかったため、それを強化するためにでもある。

 

 

ジョセフが言うにはスタンドは生命エネルギーが作り出すヴィジョンとされている。

俺が解釈するにそれはきっと精神力の強さによるものであると思う。

 

突然死んで転生したのでろくにスタンドについて調べる時間もなかったが、やってみる価値はあるはずだ。

 

 

では精神を強くするにはどうする?

 

 

今私に出来ることは限界まで自分の体をいじめて、体を鍛えることで自分の限界を出来るだけ伸ばすことだ。

 

それともう一つある方法がある。

 

それは原作でエンヤ婆の言っていた、できて当然だと思う、自分のできるのは当たり前だという認識によるものなのではと私は思う。

これは興味を引くものがあった。

エンヤ婆の言う通りであれば、吉良吉影が矢によって発現したキラークイーンの奥の手でもある第3の爆弾(バイツァダスト)を矢を必要とせずに私にも発動することが出来るかもしれないからだ。

イメージが出来るからなお良い。

 

 

 

だからこれらの体を鍛える方法はもしかしたら間違いかもしれないしそうじゃないのかもしれない。

だがエンヤ婆の言っていたことは、D IOの時止めの時間を伸ばすための方法であっただけかもしれないしキラークイーンの第3の爆弾(バイツァダスト)を発現させる方法としては間違っているのかもしれない。

スタンドが成長するかはそれぞれの個体差によると思うが。

 

考えれば考えるほどに分からなくなって頭がどうにかなりそうで正解を見つけるには長い時間と情報が必要だと思うが、結局私は今まで考える時間が山ほどあったにもかかわらずそれを見つけ出せずにいた。

 

まあ、まだ人生は長いのだ。

今焦らずともこの世界は平和であるから、焦って危険な冒険をすることはないだろう。

 

 

 

それにしても清々しい、とても清々しい気分だ。

凄い爽やかな気分だ、新しいパンツを履いた気分のまるで正月元旦の朝のように。

 

私が前に生きていた世界ではただ惰性で仕事を行い、家に帰った後は何かを成し遂げるための努力をするわけでもなくただ暇を潰すために漫画を見たりアニメを見たりしてから寝る。

そんなつまらない毎日の繰り返し。

 

前に私が生きていた世界では絶対に味わえないような気分。

 

 

 

愚者は失敗から学び、賢人は歴史から学ぶというが、どうやら私は愚者であったらしい。

 

だが、愚者である私に、死んだ後にどうやって学べというのだ。

こうして俺のように神様に声を掛けられて転生してれば話は別なのだが、いくら慈悲深いとはいえ神様もそこまで多くの人に構ってはいられないだろう。

 

だから愚者である私から言わせてみれば、

歴史から学ぶ賢人というのは、この場合においてのみになるが私のように転生を成し遂げた人間か、悲しいことに自分の最期を見てしまった、いるかもしれない予知能力者だけだ。

というのが俺の主張でもあり意見でもある。

 

 

と、そんなことを考えているうちにどうやら私の特訓ももうすぐ終わりのようだ。

 

私が家に到着すると、体力作りから帰ってきた私に母親から声がかけられる。

 

 

「おかえり、吉影。」

 

 

そう私の名前は吉良吉影。

年齢33歳、自宅は杜王町北東部の別荘地帯にあり結婚はしていない。

 

自己紹介が長いのでここでまた割愛とさせて頂くが、あの吉良吉影である。

キラークイーンの能力を授かった故にか偶然なのかは分からないが両親が私につけた名前はこの名前だった。

ちなみに容姿も川尻浩作になり変わる前の金髪の姿であった。

 

そして紹介しよう。

父親の名前は吉良吉廣(よしひろ)

そして母親は吉良(しのぶ)

 

 

流石に偶然にも程がある。

たが、深く考えるのはキラークイーンの事で頭が一杯の私では今は無理だ。

キラークイーンは私にとって最重要課題だからだ。

 

そして私がこの自分の名前と父親の名前を聞いた時に原作の吉良吉影の女性の手に対する異常な愛着を危惧していたが、今のところはその兆候はないが、まだ油断はできない。

 

ちなみに両親は無個性らしいが、何故キラークイーンが見えたかについては、この個性社会で人間の脳が何らかの進化を遂げているのではないかというのが私の推測だ。

 

あ、個性というのは性格とかそんなんじゃあなくて簡単に説明させて頂くとある日を境に人間に芽生えた超常の力らしい。

この個性を大まかに分けると発動系、変形系、異形系、さらに珍しいものを合わせると複合系と別れるらしい。

ちなみに私は個性届けには発動系と診断された。

生まれてからすぐにキラークイーンを発現したこと、しかも私の親は無個性であったためこの個性の発現自体が珍しいものとされた。

 

しかも、生まれてから何年か経った時にキラークイーンの練習をしようと家の庭で小石を爆弾に変えていたら、帰ってきた親に見つかり厳しく叱られた後にまた病院へと連れて行かれた。

 

その時に追加として、我がキラークイーンの触れたものをなんでも爆弾にするという第1の爆弾が追加の個性として登録された。

 

このままでは第2の爆弾(シアーハートアタック)がバレるのも時間の問題と考えており、まあ家族には正直に話しても問題ないだろうと思い私は話すことにした。

 

別に私の母親が怖かった訳ではない。

 

 

嘘だ、超怖かった。

本当に無個性なのだろうか、個性威圧とか持っているんじゃないだろうか?

もし擬音が私に見えていたらゴゴゴゴゴゴ!!とかが母親の背後に見えていただろうってぐらい怖かった。

スタープラチナかクレイジーダイヤモンドを出すぐらいの勢いであった。

 

正直に話さなかったら、私の父親が止めていなかったらどうなっていたことやら。

 

 

 

だが結果的には話をしていて正解であった。

 

 

何故なら私の為に母が友人の私有地である山に私を連れて行ってくれたからだ。

 

それからはキラークイーンの強化特訓が捗る捗る。

 

流石に爆弾を使っての訓練は親の同伴で火事にならないように気をつけなくっちゃいけないが、今はこれで十分だし爆弾の火力調整の練習もできる。

 

私の精神がすでにもう前の世界から引き継いでいるため精神年齢的にはもう30歳以上になるためにキラークイーンも原作と同じぐらいの強さになっている。

 

だが体はまだまだ10代近いのでまだまだ無茶はできる。

 

そして私がキラークイーンの強化特訓に明け暮れている間にも月日は流れ何度目かの冬を越すと私にも将来を見据えて、通っている学校から進路希望調査が送られてくる。

 

そして、学校側からは私が強個性であるのをいいことに初の雄英高校に入学という功績を出すためにヒーローになることを強く推してきている

 

私は別にヒーローになりたいとか、強い憧れがある訳ではないが神様が私に戦いを望まれているというなら、きっとそれは運命づけられていることで私が戦いをどんなに避けても逃れることはできないんだろう。

 

ならば、戦おうではないか。

激しい闘争よりも、平和な日本に生まれた私は平和をこよなく愛していると自負している。

 

ならば

 

 

私の平和を乱すものとだけは戦わざるを得ない。

 

 

そして彼は、吉良吉影は

 

雄英高校を入学するために試験を受けることになる。

 

 

 

 

 

 




次は遅くなるかと思います。

早くできれば早く投稿します。


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3話

なんとか、3話目投稿できました。

前の作品をもとに書いているので、似通った部分もあるかもしれませんが出来るだけ考えて違和感なく書けましたので投稿いたします。

楽しんで頂ければ幸いです。
ではどうぞ!


桜の花びらがヒラヒラと舞い、暖かい春の日差しが私の体を照らしてはその暖かさは私の体に浸透していく。

 

 

私の周りには名門である雄英高校の入学試験を受けるべく、沢山の人が自信満々な表情で、門をくぐりその大きな校舎の中へと姿を消していく。

 

 

だがその大半が二度とこの校門をくぐることはないだろう。

 

 

名門であるということは、それを目指す者がまた多いということで、ましてや今や誰もがなりたいと渇望するヒーローを目指すための高校であるとするならば誰もが己の夢を、野心を実現するために足を進めるのだ。

 

 

私はそんな人達を見ながら、私の観察した人の大半が自信を持っているだろうが、無駄に終わるんだろうと感じた。

 

悲しいことだ。

 

 

だが、この吉良吉影は同情をしないし助けもしない

 

 

そんなことを言っても無駄だろうし、そんなことをすれば彼等のプライドを傷つけることにもなる。

それにこの試験を受けるとあっては私も彼等も同じ土俵で戦うライバルであるのだ。

 

 

ならば、私も真剣に戦うのが私なりの彼等への思いやりというものだ。

 

 

そう私は吉良吉影、私と戦おうというものとだけは決して油断などしてはならないのだ。

例え私がスタンド、キラークイーンを持っているからといっても、もしかしたらそれに匹敵する個性があるかもしれない、今までテレビや本で見聞きした個性はその個性の使いようによってはスタンド能力に比叡しうる個性があったからだ。

 

そしてここは天下の雄英高校に入学しようとする者達だ。

あっと驚く個性を持った者達がいることも簡単に予想できた。

 

 

ふと隣を見てみると緑髪の少年が(私もだが)足がガクガクになりながらも一歩を踏み出そうとしていた。

どう取り繕っても彼が緊張しているのが客観的に見て取れる。

 

私は今から緊張していては彼はもうダメだなと思い、興味を失いながら名も知らぬ彼の顔だけでも覚えておこうと震えながらもついに決意を固めたのか、校舎への一歩を踏み出そうとした彼の横顔を見る。

 

 

 

「!?」

 

 

 

「大丈夫?」

 

「わっえっ!?」

最初の一歩を踏み出したはいいが勢い余って転んでしまうと思われた彼は、なんと宙に浮いていた!

 

「私の個性、ごめんね勝手に。」

「でも転んじゃったら縁起悪いもんね。」

転びかけた緑髪の少年を助けた少女は少年に気さくにそう語りかける。

少年は何かを言いたげていたが未だに緊張しているのか、なかなか言葉が出てこない。

 

 

「お互い頑張ろう。じゃ!」

反応のない少年にそう言って、一方的に去っていく少女に少年とそれを近くで見ていた私は驚きのあまり呆然としていた。

 

 

少年はともかくとして私が驚いているのは少女の個性にではない。

 

 

少年の、いや彼の目にだ!

あの目は、あの決意めいた目と顔に私は強い意志を感じていた。

あれは、ヒーローの目だ。

何故なってもいないのに、彼にこんな確信めいた思いを抱かざるを得ない私にも驚かざるを得なかった。

だが私には、まだ彼に引っかかるものを感じていた。

 

 

 

 

私は彼の決意めいた目がどこかで見たような既視感を感じつつも、今は気にしてるときではないと思い、改めて気を引き締めると彼等と同じく校舎内へと歩みを進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日は俺のライブにようこそー!エヴィバディセイヘイ!!」

 

ボイスヒーロー『プレゼントマイク』の声が会場内に響くが誰もその返事に返すことはなく、静かに響くだけであった。

 

私はそんなプレゼントマイクにどうしてくれるんだこの空気をと冷ややかな目線を送りつつ、机に置かれている説明用紙に目を向ける。

 

 

ふむ、なるほど演習場にいる仮想敵(かそうヴィラン)をぶっ潰していけばいいのか。

 

ルールは至って簡単で単純かつシンプルにというわけか。

バカでも覚えられるし、これだと戦う以外にはあまり考え事をしなくていいことになる。

そこが少し引っかかるが気にしてもしょうがない。

 

 

「ボイスヒーロー、プレゼントマイクだ!すごい!」

「うるせぇ」

前の席の奴が少しブツブツとうるさいなと思ったら、さっきの緑髪の彼だった。

私の気のせいだったのだろうか?

今の彼からは、先程の強い意志を微塵も感じないしブツブツとうるさいだけが、印象に残る。

そろそろ私が注意をしようと思い始めたが、だがその前に勝手に静かになった。

 

 

良かった、これで注意をしなくて済む。

目立ってしまうからな。

 

 

 

さてこのプレゼントマイクの説明が終われば、これから実技試験になるわけだが、先程真剣に戦うと言った手前、前言撤回することになるかもしれないがキラークイーンは今回、爆弾を使っての戦闘はしない。

 

流石に調整できるとはいえ危ないことには変わらないし、キラークイーンの能力は出来るだけ隠しておきたい。

 

 

能ある鷹は爪を隠すのだ、私という鷹は特に。

 

 

 

もし入学してから模擬戦闘のようなことを行った時にある程度の武勇を今ここで見せれば私のキラークイーンのことを格闘能力の高い個性と見るだけになるだろうし、もしここで爆弾の能力まで見せてしまったらさらに相手を警戒させてしまうかもしれない。

 

今私のキラークイーンの能力を見せるメリットもないし、警戒されて相手の油断を誘えないのもあるが、目立ちすぎるのも吉良吉影としてはなんか間違っているようでしょうがないのだ。

 

 

そして私が今使える。キラークイーン第1の爆弾や第2の爆弾はともかくとして、私の奥の手なんて、それこそ非常事態のみで、これから始まるヒーロー基礎学の授業で使っては大問題だ。

あれは絶望的な状況下でないと作動しないかもしれないし、発現するイメージ練習をしたはいいものの本格的な練習となると相手が必要なことから、この私の秘密を話さなければいけないことになる。

それに下手に使うと死人が出ることになり、流石の私も吉良吉影が好きとはいえ死人まで出すようなことはしたくない。

 

 

ちなみにだが、爆弾については個性届けで一応あの時に提出はしているものその時は爆発も弱く、威力も小さいものであったが今の私が本気を出せば第1の爆弾で、ビル1つを簡単に吹っ飛ばすことができる。

 

 

一度やった時は、今度こそしこたま怒られて私の父も弁護はしてくれなかった。

 

 

話を戻すが、つまり今回の入学の試験では私のキラークイーンの純粋な戦闘能力のみで切り抜けなければならない!

だが、これはいい機会かもしれない。今までの私の特訓の成果を十分に発揮できるのだ。

例えると自分に絶対の自信を持つ教科で試験に臨み。それに万全の状態で挑むようなものだ。

ジョジョ風に言うなら、風の強い時にションベンしたらズボンにかかるってぐらいには合格を確信している

 

「ついでにそこの縮毛の君!」

「先程からボソボソと気が散る!物見遊山のつもりなら即刻ここから去りたまえ!」

私が考え事をしている間に、またブツブツと喋っていたのか。

どうやらこれは彼の性格らしい。

 

 

「そして、その後ろの君」

私か?私なのか?

 

 

「君もさっきから、ぼーっとしているようだが君も物見遊山なら即刻ここから出て行きたまえ!」

別にぼーっとしていた訳ではないのだが、私も指摘されてしまった。

だが、なんとか言い訳を考えなければな。

 

「いやなに、私はただ(ヴィラン)についての対策を考えていただけだよ。誤解させてしまったようですまない。」

 

「そうだったのか、いや此方こそ勘違いしてしまった。すまなかった。」

内心では突然指摘されたことで冷や汗をかく吉影であったが、なんとか飯田からの質問に受け答えをした吉影だった。

 

 

 

 

そしてプレゼントマイクの説明も終盤になりつつあった。

 

「俺からは以上だ!最後にリスナーへ、我が校校訓をプレゼントしよう。かの英雄ナポレオン・ボナパルトは言った!「真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者」と!」

 

Plus Ultra(プルス ウルトラ)

「それではみんな良い受難を!」

 





次は、入学試験になります。

感想など頂ければ嬉しいです。

ではお休みなさい!


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4話

うおおおおおおああ
なんとか書き上げたぞ!ジョジョー!!


というわけで第4話どうぞ!


バスに揺られること20分程だろうか。

 

雄英高校の敷地がまさかバスで移動するほどに広いとは私も想像の範疇にはなかった。

 

そのバスもぎゅうぎゅうに詰められるような、私が想像するような日本の朝の満員電車のすし詰めのように我々学生を物のように詰めることなく、ちゃんと全員が座れるのを確認するようになると出発した。

 

つまりは、今回のあの試験会場に大勢いた学生の数すらも雄英高校にとっては予想の範囲内であったという訳だ。

 

 

さらにまだ、まだまだ私の驚きは続いた。

 

 

試験会場は住む人がいればそう街そのもの、コンクリート製の無機質な道路に天高くはそびえるビルのなんと多いことか。

ここだけ特別などそんな馬鹿げたことはないだろう。

つまり、ここだけにかかわらず全ての会場で同じものを揃えているということになる。

 

今日の日というために整えたコンディションを余計なことで崩される心配はないものの私は雄英のこういったことに驚かされてばかりだ!

 

 

だがこの吉良吉影

もとよりそのつもりであったが、受けたからには必ずこの入学試験を突破しなければならない。

 

 

「君は何だ?妨害目的で受験しているのか?」

さっきの彼、また注意を受けているのか?

よくよく考えてみればブツブツと何か喋ってることから、何か戦力の計算などを考えているのかそれとも個性の分析か、どちらにせよ私には遠すぎて声も聞き取れないから分かることはない。

 

周りは注意を受けている彼の姿を見て、自らのことを幸運だとなんだと勘違いをしているようだが、私は違う。

 

 

 

警戒しなくてはいけない

この吉良吉影の感が用心深く彼を観察しろと言っている。

あの目を見た時から、彼から何か感じるものがある。

ヒーローの目だというのは分かったが、それ以外に内に秘める何かを用心深く観察して見極めなければならない!

 

その何かがなんだと言われれば、残念ながら答えることは出来ない。

今は手を出さず、見極めるその時が来るまでじっと待つのだ。

 

 

 

観察をしていて分かったことといえば今はブツブツと何かを喋ってることぐらいだが、彼の悪癖の一つなのかもしれない、どうやら心で考えていることが無意識に口に出してしまっているらしい。

 

 

 

そうこうして吉良が緑谷出久を観察していたその時。

 

「ハイ、スタート!」

 

突然のプレゼントマイクの掛け声に集まっていた大勢の学生は反応できずに、何事かという反応をしていた。

 

そして吉良もその一人であった。

 

だが、この言葉の意味を大勢の受験生の中で誰よりも素早く理解して反応したのは吉良吉影ただ一人であった!

 

山で鍛えられた私の足腰と筋力は並大抵のものではないぞ。

スタートダッシュに多少は遅れたものの、十分に巻き返すことができる!

 

だが、

 

 

「は、速い!」

突如として吉良の横を瞬足でもって走り抜ける人影を見た。

彼かと思ってみたが、体格からして違う。

それに足に車のマフラーのようなものが出ている。

ではどこにと後ろを振り向いて見るも、吉良が探していた件の彼は見当たらなかった。

 

吉良が2番目に街に到着すると、先に一番手に走った彼を追わずに別の道には入る。

 

今一番に走っていたアイツの後を追ってもポイントは稼げないだろう。

 

ならば別の狩場を探すのみ!

 

 

そして吉良吉影も遅れて別の敵ロボット(ヴィラン)を発見する。

 

 

 

キラークイーン

 

 

私の呼びかけに応えたキラークイーンは目の前の無機質な機械の群れにファイティングポーズをとり戦闘態勢をつくる。

 

「しばっ!」

吉良が出したスタンド。

キラークイーンは薄いピンク色の体と筋骨隆々な体にはギリシャ彫刻のような美しさがあり、顔は小さな口と猫の目の様に鋭いものがある。その強そうな見た目からも分かる通りキラークイーンの拳は硬い岩石すら砕くパワーを持つ。

 

当然、拳でのラッシュ攻撃をモロに食らったロボットは数発でバラバラになり中の細かな部品さえも砕け散っていく。

 

脆い、脆いぞ、想定よりも硬くなく十分にキラークイーンでも破壊できる。

 

「しばばばばばばばばばばっ!」

 

大群で押し寄せるロボット達を次々と破壊していく吉良は、まさに無双状態であった。

 

ふん、こんなものか。使うつもりは最初からなかったが第1の爆弾を使うまでもない。

これじゃあキラークイーンの準備運動ぐらいにしかならないじゃあないか。

 

そんな油断した吉良の隙を伺っていたのかを狙ったのか、3Pロボットがその背後から跳躍して接近するも瞬時に背後に出現したキラークイーンのラッシュによってロボットは粉々になる。

 

その後も、吉良はロボットを木っ端微塵にしていくが、ここで吉良は遅れた受験生がそろそろやってくると感じ、ロボットの攻撃を避けるふりをしつつ、その場から離れていく。

 

余裕のある今、私のキラークイーンを他のものにここで知られてしまうのはあまり面白くない。

それに狩場はまだ他にもあるはずだ。ポイントを移動してもいいだろう。

 

 

 

 

去り際に見た受験生の大半はその顔から、驚きと焦りの表情が伺えた。

 

おおかた、私のキラークイーンの破壊したロボットの残骸を見て焦っているんだろう。

そんなことで動揺していてはたかが知れているな。

だがアイツの姿が見えないのは少し気がかりだ、何処だ何処に隠れている?

 

だが、見つけることは出来なかった。

まあ気にしてもしょうがない、今は戦いに集中するのみ。

 

そして時間が経過していくと同時に吉良の周りに増える機械の残骸も増えていく。

 

 

だいたいこのぐらい潰せば合格もしているだろう。

やはりこの吉良吉影、常に強運で守られているような気がする。

そして今までの訓練で強くなったキラークイーンと一緒であれば結構有名なヒーローになれる気がする。

………ククク。

 

吉良がそんなことを考えているうちに、試験は急展開を迎えようとしている。

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!

 

0Pロボットの出現!

 

ビルとビルの間から現れる超巨大ロボットの出現に慌てて逃げ惑う受験生達と共にその場から離れようとする吉良吉影。

 

流石にあんなロボットをぶっ飛ばしたら目立つどころじゃ済まないからな、ここは大人しく下がらせてもらうとしよう。

 

逃げ惑う彼等に紛れてこのままこの場をやり過ごそうとした吉良についに彼が現れた!

 

なんだと、何をやっているんだ。

彼は!?

まさかアレに挑もうというのか!?

アレは並大抵の個性では太刀打ちできないはずだ。

 

 

だが、そんな吉良の予測を超え、彼は緑谷出久は巨大ロボットを打ち倒した。

 

なんだあのパワー!キラークイーンやスタンドでは及ばないほどの破壊力を持っている!!

だが、様子をよく見てみると腕を犠牲にしてあのパワーを出したようだ。

だがたとえ、代償として腕の一本を犠牲にしたとしても、あのパワーは侮れない。

やはり私の目に狂いはなかった!

 

そして、試験も終わりついに雄英高校からの通知が来る!

 

緑谷出久、合格!

 

その数日後、吉良吉影のもとにも通知は来た!

 

吉良吉影、合格!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




戦闘シーンは疲れますなぁ。


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5話

遅れてしまい申し訳ありません

ですが、頑張って書きます!


 

 

 

美しい街だ、杜王町…ではないが言ってみたかっただけだ。

だが、杜王町ほどではないにせよ綺麗な公園もあるし環境も良い、行ったことはないし、行けるわけないが。

 

さてなんにせよ、入学初日は余裕を持って登校している。

こうして周りの景色を見て、感想を言えるぐらいには余裕を持っている。

 

そしてちょっと歩けば、そこはもう雄英高校が見える。

 

ただしまだ敷地の端っこで校門までは何キロもあるが。

 

デカすぎだろ!

 

一体なんでこんなになるまで、施設を入れたらこんな広い学校が出来上がるんだか。

ヒーロー飽和社会と言われているこの平和な日本にこんなにヒーローを送り出して何をするんだか、戦争でもしようってのか。

 

まあ私もこれからヒーローになるために学校に行くんだから、そんなに文句を言ってもしょうがないことか。

 

だがこの吉良吉影。

ヒーローにはなっても、平穏に平和な生活を送ることを第一に考え行動するということを忘れるわけにはいかない。

 

これから始まる学校生活でも、他人から下に見られない程度には優秀な成績を収め、さらにはキラークイーンの能力を更に強化する。

そしていずれは有名なヒーローにはなるつもりである。

 

 

 

吉良がそうこう考えるうちに、1-Aの教室の前に辿り着く。

そして、ドアを開けると中にはすでに先に到着しているクラスメイトがいた。

新しく入ってきたクラスメイトが気になるのかこちらに視線を向けるもの、もうすでに友達が出来て仲良くなっているのか吉良には構わずに喋っているものなど様々な反応があったが、吉良はそんな視線には構わずに自分の座席表を確認するとすぐに席に着く。

 

ちなみに席は窓側の一番後ろの席である

 

 

 

中々いい席に座れたなぁ、ここならあまり目立たずにいられるし、外の景色を眺めて暇つぶしにもなる。

大事なのはこの美しい景色を眺めることなのだ。

そしてそれをゆっくりと楽しむこと。

これ以上に大切なことがあるだろうか。

とりあえず今日のところは話しかけられることはないだろう。

全く、寂しいものだが、私から言わせてみれば孤独というものは人間が狂わずに生きることにとってとても大切なものだ。

 

決して寂しいとか考えているんじゃあねぇ!

 

 

 

吉良が心の中で必死に言い訳を考えながら外を眺めていると教室のドアのあたりが騒がしくなってくる。

なんとなしに吉良がそちらに目を向けると、緑谷が顔を赤くしながら麗日お茶子と話をしていた。

 

 

 

女子と会話かぁ、この吉良吉影として生まれてこのかた女子と会話したことなんてまともになかった。

吉良としての生き方を優先しようとする己の考えが邪魔をして、チャンスがいくらでもあったのにそれを全部棒に振ってしまったのだ。

なんだかこういう時だけは己の決めた(サガ)が憎くなってきた。

 

そうこう考えているうちに、教室は静まり返り、吉良もそれに気がつき前を見ると一人のくたびれた格好をした男が教壇の上に立っていた。

 

 

「はい静かになるまで8秒かかりました。時間は有限君たちは合理性に欠くね。」

 

寝袋から出てきたが、だとしたら寝袋のままここまできたということになるがどうやって来たんだ?

うーむ謎だ。私としては普通に歩いた方が合理的だと少なくとも俺は思う。

 

「担任の相澤消太だ、よろしくね。」

 

「早速だが、体操服(コレ)着てグラウンドに出ろ」

 

言われるがまま、体操服に着替えてグラウンドに出るがコレは何だ?

 

 

「個性把握テストォ!?」

 

「入学式は!?ガイダンスは!?」

 

「雄英は自由な校風が売り文句。そしてそれは先生側もまた然り。」

 

「爆豪、中学の時ソフトボール投げ何メートルだった?」

 

「67m」

 

「個性を使ってやってみろ円から出なきゃ何してもいい。それと思いっきりな。」

 

個性を使っても良いことに機嫌を良くしたのか薄く笑った爆豪はボールを持ちそして

 

「死ねぇ!!」

爆豪の投げたボールは爆発の勢いに乗りそのまま天高く飛翔していき、肉眼では見えなくなるほど遠くまで飛んでいった。

 

「まず自分の最大限を知る」

「それがヒーローの素地を形成する合理的手段。」

そう言って相澤の手にした機械には、705mという普通では絶対に出せない記録が液晶に表示されていた。

 

個性を思いっきり使えると分かり、他のみんなが騒がしくなり始める。

 

 

 

 

まだ説明が終わってないのにそんなに喜んじゃって、これからが大変なのに可哀想だなぁ

 

 

「なんだこれ!すげー面白そう!!」

 

「705mってマジかよ」

 

「個性思いっきり使えるんだ!流石ヒーロー科!」

 

 

 

「面白そうか」

その言葉に反応した相澤先生は次にとんでもない発言をする。

 

「ヒーローになる為の三年間。そんな腹づもりで過ごす気でいるのか?」

「よしトータル成績最下位の者は見込み無しと判断し、除籍処分としよう。」

 

「はあああ!?」

理不尽だなと吉良は他人事のように感じつつ、テストをクリアできるか思案する。

 

除籍処分か

まあ大丈夫だろう。

個性把握テストぐらいならなら我がスタンドキラークイーンの身体能力であれば難なく最下位は免れることができる。

問題は全力を出して、キラークイーンの素の身体能力を知られてしまうことだ。

だがそれも今更か。

第一の爆弾を使うこともない為、クラスメイトとの模擬戦闘になるまで戦闘方法を知られずに済むし、キラークイーンの身体能力であればこの際出しても構わないし、除籍処分ともなれば出さざるを得ないというものだ。

それに今回の体力テストではキラークイーンの使いどころも限定されている。

この際知られても構わないかもしれない。

 

 

「生徒の如何は先生(オレたち)の自由!」

「ようこそこれが雄英高校ヒーロー科だ!!」

 

 

そして始まる個性把握テスト!

 

 

 

私が狙う種目としては、主に三つ。

 

握力、立ち幅跳び、そしてボール投げ。

この三つでキラークイーンを使い、高得点を叩き出す。

他の種目についても、元から体を鍛えているから問題はないだろう。

 

そんなわけで、まずは握力

 

「次、吉良吉影!」

 

私の番か。

キラークイーン!

 

「おわっなんか出たぞ!」

 

「見たことない個性だぞ。」

 

「強そう!」

 

吉良のスタンドの突然の出現に驚いて見る上鳴や葉隠などのクラスの面々

 

まあ、スタンドというものを初めて見るんだ。

多少は目立つのは仕方がない事だ。

なんせ、初めて見るものなのだから多少目立つことも我慢しよう。

問題は私のスタンドを観察するものだ。

 

そう例えば、クラスメイトの話の中であとから知った彼の名前だが、緑谷出久というらしい。

そして緑谷は様々なヒーローを見ているらしくヒーローオタクなところがあるらしい。

そして我がスタンドキラークイーンを観察している。

 

「初めて見る個性だ。見た感じでは人型で頭に猫の耳っぽいものがついてるから猫人間で猫に関する個性なのかな?それとあのピンク色なのも何か訳があるのかな?もしかすると何かすごいわけがあったりして。それから人型に格闘系統で力が強そうだ。吉良くんも見るからに体を鍛えているから一緒に戦うって感じなのかな?それかもしかすると吉良くんが強くなるほどあの猫人間も強くなるって感じなのかな?だとすると鍛えれば鍛えるほど強くなるなんてすごく強い個性だ。」

 

こちらを見ながらブツブツなにかを言ってるのは私でなくても一種のホラーだ。

声が聞こえてなかったら、怖くて速攻でキラークイーンのラッシュを叩き込み、第1の爆弾でその体を跡形もなく消しとばすところだったからな。

 

命拾いしたな緑谷出久。

 

「ふんっ!」

 

測定結果 720kg

 

「スッゲー!700kg越えかよ!」

 

「すっごーい!!」

 

クソッ!目立つのは予想できたことで仕方ないとはいえやっぱり落ち着かない。

 

 

 

次に立ち幅跳びと続くわけだが、まぁ余裕だな。キラークイーンの脚力を使えばまるで空を飛ぶように大記録が出た。

ちなみにその際に、爆豪の記録を超えたわけで奴から痛いくらいに視線を感じるようになる。

 

そして最後にボール投げ

 

これも余裕だった。

ちなみに記録は850mだった。

また爆豪からの視線が強くなる。

どんな目力してんだアイツは

 

 

 

その後、個性把握テストが終了し担任の相澤先生から除籍処分は合理的虚偽という爆弾発言を受けた、緑谷は声にならない絶叫を出したのはいうまでもない。

 

ちなみに吉良は帰りに質問責めにあうのを嫌い、誰にも有無を言わさず帰ったのもいうまでもなかった




次は、いよいよ戦闘訓練です!


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6話

薄暗い室内で液晶画面に映されたモニターだけがそこに集まった者たちの顔を照らし出す。

 

そしてそこに映されているのはとあるビルの室内の風景を映し出しそこにいる映像に全員が注目をしていた。

 

ただの映像ではない。

 

屋内に潜む(ヴィラン)を想定したオールマイトが監修するヒーロー基礎学の授業だ。

 

今回は(ヴィラン)とヒーローに生徒が別れて屋内での戦闘訓練を行うというものだ。

 

オールマイトいわく、真に賢いヴィランは屋内に潜むという。

 

 

その授業中によそ見をしたり、他の誰かと喋ったりしているといった愚か者は誰一人としていなかった。

 

ただみんなが真面目だったというわけではないし、ここは天下の雄英高校である。

そんな不真面目な生徒はいるはずがないのだ。

 

その映像の戦闘をみんなが食い入るように見ていた。

いや注目せざるを得なかったというべきであろう。

 

なんせ、初戦から激戦である。

攻撃するたびに負傷を負うが、強力な一撃を放つことができる諸刃の剣的な個性を持つ緑谷出久と触れたものを無重力にできる個性を持つ麗日お茶子のヒーローチーム。

 

爆発という派手な個性と強力な攻撃力を合わせ持つ入試トップの成績を残した爆豪勝己と個性エンジンからなる驚異的な脚力からなるスピードで、相手を奔走し、さらには足技を使った戦闘が得意な飯田天哉がチームを組んだヴィランチーム

 

 

当初は緑谷出久のその個性から苦戦を大方のものが予想していたが、その予想を裏切って最初の一撃をヒーローチームの緑谷出久は強敵たる爆豪勝己に当てたのだ。

いや当てたというよりは相手の力を利用した背負い投げだ。

 

 

 

私だ、吉良吉影だ。

 

私も他のみんなとの例に漏れず、モニターからは目が離せない。

 

これはまたとないチャンスだ!

 

全員の個性を見てもし戦いになった場合に対策もできるし、その戦闘スタイルまで学べる。

 

惜しむべきは、今回の訓練で我がスタンドのキラークイーンの能力も晒さなければならなくなったことだ。

万が一の事も考えて、第1の爆弾の力も使わねばならんかもしれない。

 

だがまあ、それは今更でもある。

我がキラークイーンの素の格闘能力だけでも充分に圧倒できるだろう。

格闘能力でキラークイーンの右に出るものは居ないはずだ。

今のところ、私が見た限りでは対抗出来そうなのが担任の相澤先生ぐらいかもしれないが、アレは長年の戦闘経験がものを言うものだろう。

 

そして私が個性を見た中で、危険だと思ったのは今のところ

緑谷出久、爆豪勝己、麗日お茶子この3名とまだ個性は見てないが推薦入試を受けた八百万百と轟焦凍の2人だ。

 

八百万は個性把握テストから見たあのどんな時でも対応できる万能性は私のキラークイーンでも手こずるかもしれない。

 

そして轟は見たところ冷静沈着な感じで、個性はまだ見てないが爆豪と同じく強力なものであることがうかがえる。

 

次に緑谷は純粋なパワーでは認めたくはないが、おそらくはキラークイーン以上のものであるし、今後の成長では超えることはないだろう。

まさに一撃必殺だ。

代償として攻撃するたびに、自らの体が傷つくという代償があるわけだがそれを制御してしまえば充分に強個性と言えるだろう。

 

そして、最後に私が最も恐れる個性を持つものがいる。

 

 

麗日お茶子だ。

 

 

何故と思うだろう。

 

私は以前の個性把握テストの時から触れたものを無重力にさせるという彼女の個性に並々ならぬものを感じていたが、それが今の戦闘訓練を見て確信へと変わった。

 

 

『吉良吉影回想シーン』

 

 

「うおりゃあああああああああぁぁぁぁぁ!」

 

「うぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

何故かイタリア最大の火山の上で戦闘をしており

 

そして戦闘の最中に吉良の一瞬見せた隙にとどめの一撃である無重力の個性を使ったパンチで吉良を天高く浮かび上がらせた

 

「これも計算のうちか!麗日ぁぁぁぁぁぁ!」

 

「当たり前よ!この麗日お茶子は何から何まで計算づくなのよ!」

 

 

 

そして麗日の個性は地球の動きを脱出して、地球の大気圏外まで吉良吉影を吹っ飛ばしていく!

 

どんな個性であっても吉良吉影を殺すことは出来ない!

 

しかし!麗日は吉良吉影を地球圏外にまで追放したのだ!!!

 

 

「ば、バカなぁ!」

 

『吉良吉影の回想シーン終了』

 

 

 

 

まともに相手をすれば恐ろしい事態になってしまう!

 

生物と鉱物の中間の生命体となり、死にたいと思っても死ねないので考えるのをやめるようになってしまう!

 

いやまぁ、その前に死ぬだろうがすごく恐ろしいことだ。

 

 

吉良が内心で麗日に戦々恐々としていた頃、戦いはついに決着がついた。

 

緑谷出久と麗日お茶子ペアの勝利である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




物語はあんまり進んでませんが、今までの中でも最速で書けました!


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7話

 

緑谷出久と麗日お茶子のチームが爆豪と飯田のチームに勝利して、次はどこのチームが戦闘訓練を行うのかとクラスがざわめく中、オールマイトからクラス全員に声がかかる。

 

「やる気十分だな、少年少女達!だが、ここで人数の関係上仕方ないがために特別ルールにする!!」

 

「「「「特別ルール?」」」」

クラス全員が首を傾げて、まるで分からないと言った反応をするがオールマイトはその全員の疑問に答えるべく話を続ける。

 

「そうだ!早速説明するとだね。」

「クラスの中で一番最初に引いたくじでアルファベット表記の周りが赤くペイントされているものがいたはずだ。」

 

 

「俺のことか?」

オールマイトの説明にあった赤くペイントされたくじを周りに見せる轟。

 

「そうだそのくじだ!轟少年!!」

「そして、そのくじを引いた君には一人で訓練に挑んでもらう!」

 

 

 

「一人でなの?」

 

「それは非常に不利だと思います!先生!!」

蛙吸梅雨こと梅雨ちゃんと、多分てか絶対クラスで一番の真面目君こと飯田天哉がオールマイトに控えめの抗議を送る。

 

その抗議の声にオールマイトは心配ないとハーハッハッと笑いながら言う。

 

「大丈夫だ、少年少女達。」

「そのための特別ルールなのだ!簡単に言わせてもらうと、轟少年ことヒーローは最初から核のある場所を知っているという設定だ!」

 

飯田がそれに答えるように言う。

「最初から核の場所を知っているんですか!それなら確かに余計な時間もかけずにその分見つからずに核の場所まで最短距離で行くことができる。」

 

「さらに、これまで仲間同志で連携が出来るように通信機をヒーローチーム、ヴィランチームの両方に与えていたが、今回轟少年の相手をするヴィランチームには通信機を与えない。」

 

「確かにこれなら、轟君も不利じゃないしそれどころか一部有利なところもある。」

 

「その通りだ飯田少年。ヒーローは自分一人という状況下でどうやって動けば自分が有利な状況に持ち込めるかがミソだ。そしてヴィランは上手く作戦を立てていかにして不利な状況から自分たちの有利な状況に持っていき立ち回っていくかがポイントになる。」

「そして、繰り返し言うが他のみんなも自分ならどうするか考えながら見るんだぞ。」

オールマイトはそう締めくくる。

 

 

 

なるほど、最初二人一組という最初の説明からみんなを含め私も気になっていたがこういうことになったか。

 

私だ吉良吉影だ。

 

あの1番目の戦いの後に麗日は軽傷で済んだが、緑谷は重症で保健室へと入学以来二度目の搬送で運ばれていった。

そんな緑谷達ヒーローチームに比べて、ヴィランチームを演じていた爆豪と飯田は無傷で済んでいる。

こんな無茶な戦いで勝利を勝ち取ることは後にも先にも二度とないだろう。

緑谷もこれ以上の負傷は望んでないだろうが、個性の関係上暫くは無理そうだな。

 

あっ言い忘れていたが、私は体を透明に出来る個性を持つ葉隠と同じチームだ、隣で手袋が浮いているからそれが証拠だ。

おっと、そんなことを言っている間にもオールマイトの説明も佳境に入っているらしい。

 

「そして、ヒーローチームの轟少年に対抗するヴィランチームはこの二人だ!」

「吉良少年と葉隠少女!」

 

おっと、早くも私の出番が回って来たようだ。

隣の葉隠を見ると、一緒に頑張ろうね、と顔は分からないが身振り手振りで私に一生懸命私にアピールしている。

羨ましいな、楽しそうで。

相手はあの個性の戦闘力が未知数かつ推薦入学の轟だぞ。

いっときも油断などできはしないのだ。

 

 

そんなわけで私と葉隠は最初のビルが半壊して使えなくなったため、二つ目のビルに移動した。

そして、私と葉隠はヒーローチームの目的である核のある部屋から一階ほど下がった部屋でお互いの個性を改めて紹介していた。

もちろん、今は誰にもキラークイーンの能力を明かすわけにはいかないのでそこは秘密にしている。

 

「吉良君のスーツ。普通のお洒落なスーツっぽいけど、何か隠されたものでもあるの?」

 

「勿論だ葉隠、何も心配しなくていい。」

 

私のヒーロースーツというか原作の吉良のスーツを模したものには防弾装備や物理攻撃を受けた時の衝撃吸収や刃物などの対策の為に切れにくいものを使用した一品で、まだまだ拡張性を残したものとなっている。

そして秘密兵器も二つほど用意してあるのだ。

この訓練で使うわけにはいかないがな、なんとしてもキラークイーンの素の身体能力で乗り切る。

最低でも第1の爆弾で乗り切るのだ。

 

 

「そうなんだ吉良君。あっ!そうだ!!私ちょっと本気出すわ、手袋もブーツも脱ぐわ。」

 

「本気を出すのは構わないが、別行動をとるのはやめてくれよ葉隠。」

「え、なんで?」

手袋もブーツも脱いだため、もうどこにいるか分からないし私の声に反応して振り返っているのかも分からないが、呼びかけに応えてくれるあたり少なくとも私の近くにいるらしい。

 

「戦力の分散は各個撃破される可能性がある。君の隠密を活かすには私が注意を引きつけて敵の…!?」

 

だんだん部屋が寒くなっていくのを感じた私はその時、部屋の床がどんどん凄い勢いで凍りついていくのを見つけた。

 

「葉隠!キラークイーン!!」

 

瞬時に吉良の傍に現れたキラークイーンは透明な葉隠を運良く掴むと凍りついていく床から部屋の宙へと葉隠を凍りつく脅威から逃す。

 

だが

 

「ぐおおお!」

代わりに吉良が犠牲になり、足が凍り付いてしまう。

 

「吉良君!」

葉隠の心配する声が上から聞こえるが、今はそれどころじゃないんだ。

ここは最上階の一歩手前だぞ。まさか、全ての部屋を凍らせたっていうのか!?

まさに規格外だ。それしか言うことがないぐらいに圧倒的な個性だ。

 

 

やがて部屋全体が凍りつき、暫くすると凍りつくパキパキという音も止む。

 

「もう大丈夫だ、足を凍らされただけらしい。」

 

「本当に大丈夫?痛くない?」

尚も心配そうに声をかける葉隠に

「ああ大丈夫だが、私はここから動けない。今動けるのは君だけになってしまった。」

 

ああ負けか。

つい勢いで助けた葉隠は奇襲なら効果を発揮するだろうが、相手が奇襲を警戒しないほど、バカではないだろう。

それにこれなら負けてもまあ仕方ないし、キラークイーンの爆弾を使うこともなければ目立たなくて済むと言うものだ。

そしてつい本音が口から出てしまう。

「どうやら我々は負けてしまったようだ。」

 

「どうして、そんなすぐに諦めちゃうの!まだ訓練は始まったばっかりだよ吉良君!」

私のつい出てしまった本音に反応して反発する葉隠。

 

「とは言っても、相手は奇襲なんて許すほど油断なんてしないだろう。それに、相手はこれをやった個性持ちの奴だ。相当に強いぞ。」

 

「…。」

 

「分かったら、君は無理に立ち向かわずに核のある部屋で一応の抵抗はしているといい。それに君のおかげで私は動けないから、ここで怪我をしないようにしておくとするよ。」

 

「…。」

タッタッタッタッタッタッ。

 

ふん、どうやら素足のまま行ってしまったみたいだな。

まだ勝つことを考えているらしい。

一応授業だ、私も少し抵抗してバレないように相手を上に誘導するとしよう。

 

そして時間が経ち、コツコツと静かだった足音がゆっくりと大きくなっていく。

そして足音の主がついに部屋へとやってきた。

 

部屋へと入って来た轟を睨みつけている私に開口一番に

「動いてもいいけど、足の皮剥がれちゃ満足に戦えねぇぞ。」

 

 

 

クソ!コイツ舐めやがって!!

強力な個性に運良く産まれただけでコイツ自身が強いわけじゃないのに意気がりやがって。

私はこんなスカした態度の奴は私が一番嫌いな野郎だ。

前言撤回だ、奴にだけは負けてなるものか。

やりたくはなかったが、あれをやらざるを得ないか。

 

 

「そうなのか………ところで。」

 

「?」

 

「ちょっとした質問なんだけど。」

「リカバリーガールってどれくらいの怪我の治癒ならできるんだろうね。骨折とか脱臼とかなら簡単かもしれない。でも最悪の場合、腕が千切れたら腕の切断面だけ治癒して腕が生えてくることはないのかもね。だが私の仮説を言わせて貰えば、切れた腕を切断面に押し付けて治癒を発動すればくっつくかもしれない。まあ、それでも血管を付け直したり、筋肉を再生させたりするから凄まじい体力を消耗してそのあとは行動できなくなるかもしれないし、最悪の場合死ぬのかもしれない。」

 

「何の話だ?何が言いたいんだ?」

 

「今の私だよ、絶対絶命のピンチってわけだ。私の凍らされた足に葉隠さんもどこにいったか分からない。」

「今まで私は、負ける必要がある時にだけ負けていたが、自分の得意分野で負けたことは一度も無かったし、悪くて全て引き分けに持ち込んでいる。」

 

 

「さっきも言ったが、意味がわからねえ。」

なんのための話だか、さっぱりわからない轟に吉良は続ける。

 

「なに、私はただこれからこのままなのかなと思ったりしてるだけで、もしそうならこれからみんなの戦いを観戦することができないなと思っただけだよ。」

 

 

「今の状況分かってんのか?もうお前は負けてるんだよ。だけど安心しろ、この訓練が終わった後にちゃんと氷は溶かしてやる。」

 

 

「………君に負ければ、私はこれからこんな無様な負けを覚えてそれを背負って生きることになるだろう。とても許容できるものではないし、今だって屈辱的だ。」

なにを言っても無駄だと思い、吉良を無視して行こうとする轟。

 

 

 

「だが、それも今だけだ。」

先程とは目の色を変えた吉良がその言葉に同調するように、吉良のスタンドのキラークイーンが背後に現れ、吉良の腰をぐっと離れないように掴む

 

 

「キラークイーン!!」

 

 

吉良の鬼気迫る覚悟を決めた言葉にキラークイーンはその呼びかけに応えるべく思いっきり吉良の腰を引っ張り吉良の足はその反動で足の凍らされた部分を境に皮がめくれ、宙に吉良の鮮血が舞う。

 

「お前!?正気か!!?何やってんだ!!!」

なんて奴だあのやろう、まさか本当に足の皮を引き剥がすなんて。

アレは脅しのために言ったのであって、下手に動かして怪我をさせないようにするためである。

それを目の前の男は自分の言ったことを本当に実践してのけたのである。

 

 

「見ての通りだ。足の皮を引き剥がしたんだよ。」

「痛いよ…なんて痛いんだ。血もいっぱい出てるし、涙まで出てきた。」

「だが私にとって勝ち負けは関係ない。私は私の守りたいものを守って生きてみせる。私にとっての平和と平穏のために生き延びて見せる!!」

 

 

轟は負傷している吉良から発せられる同じ高校生とは思えない迫力に一瞬気圧されるも、すぐに部屋に来た時と同様の冷静な表情に戻る

 

「さあ、第二ラウンドだ。」

 

吉良のヒーローとは思えないような冷徹な顔を見て、轟も気を引き締める。

 

 

戦いはまだ始まったばかりなのだ。

 

 

 

 




正直言ってこんなに書くとは思ってもみませんでした。


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8話

 

 

 

寒さで凍えるモニタールーム内で、オールマイト含めてみんなが震えていたが、それは寒さのせいだけではなかった。

 

「うわぁ、痛そう。てか痛いよ絶対。やばいってアレ!」

 

「漢らしいぜ!いややっぱダメだ!見てるこっちがいてぇよ!!」

 

「吉良少年、なんて無茶を。」

 

 

モニタールーム内で様子を見ていた全員が突然の吉良の凶行に驚き、そしてその痛々しさに寒さを忘れて体を震わせていた。

中にはその痛々しさに目を背けるものもいたぐらいだ。

 

 

吉良少年、君は何故そんなにも勝とうとするんだ。

今まで色んなヒーローやヴィランを見てきたが君のような人は初めてだよ。

 

 

なりきっているんだと信じたい。

 

 

今の君の目は我々ヒーローが戦うべきヴィランそのものの目をしているんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

ぐおおお!ちょー痛え!

覚悟はしていたが負けたくないあまりについ勢いでやってしまったが、めちゃくちゃ痛え。

私の人生のベストトップ10に入る勢いだ。

だが、今はとりあえず神経がむき出しになって痛いだけだ。

今はアドレナリンが出ているおかげか私の足の痛みも今は我慢もできるし、見たところ出血量は大したことはない。

これはいよいよをもってあのむかっ腹が立つ野郎にキラークイーンのラッシュを叩っこんで発散させるしかなくなったということだ。

だが問題はどうやってキラークイーンの有効射程にまで近づくかだ。

 

 

吉良は足の痛みから下手には動かずに思考を巡らせて。

 

轟はそんな足の皮を引き剥がすと言う常軌をいした行動を起こした吉良の不気味な様子に注意をしてその場から動かずにその吉良の動きにに注視していた。

 

どちらも動かないという奇妙な静寂が緊張が部屋を支配していた

 

だが

 

 

「しばっ!」

先に沈黙を破り、動いたのは吉良だった。

キラークイーンが轟を拳の間合いに入れるとすかさず拳を叩き込む。

そしてそれをすんでのところで避けて轟は横に転がるように間合いを開ける。

 

ドゴッ!

 

キラークイーンは轟が背にしていた壁をまるで発泡スチロールの板のようにいとも簡単に粉砕する様子を見て轟は冷や汗を流す。

 

 

ヤベェ、あいつの拳にまともに食らったら気絶どころか死んじまう

 

 

「ほう、大した奴だな今のを避けるとはな。大概の奴は今のを食らってすぐにダウンしちまうんだがな、なかなかやるじゃないか。」

「だが、いつまでも逃げていられるほど時間は待ってくれないぞヒーロー。」

 

そうなのである。轟が余裕を持って歩いた分、時間も進み後10分以下。

轟もまさか凍らされた相手が無茶な方法ではあるが氷の呪縛を脱出して、そして吉良の個性がここまでの能力があるとは思わず、ましてや戦闘が行われるとは思ってもいなかった。

 

挑発をされた轟もお返しに本体の吉良に向けて、氷の個性を使うものの瞬時に移動したキラークイーンがその氷の攻撃を文字通り粉砕して吉良自身をガードする。

轟はスピードでダメならば量で攻める作戦に切り替え、轟はがむしゃらに吉良の周りに氷での攻撃を行うものの吉良は痛む足でそれを避けてキラークイーンに氷を粉砕させつつ、時々轟に近づいてはキラークイーンで牽制攻撃を入れるを繰り返していた。

轟は負傷してあまり動けない吉良になかなか自分の個性が通用しないことに焦り自身の望んではいない長期戦へとなりつつあった。

そして吉良もそれが狙いであった。

 

 

上手くいったぞ。アイツ焦っていやがる。時間を稼げばキラークイーンの能力を使うこともないし、足は犠牲になるがこのまま時間いっぱい粘れば勝つことも十分に可能だ。

 

「チッ、あたらねぇ。」

 

「攻めあぐねているようだな。自慢の個性も封じられて、更に時間も無くなってきている。先程の状況を正反対にしたようだね。おっと、一つだけ違うことはあったな。」

 

「それは俺が勝利することか。」

 

「いや違うよ。君は必ず負けるということだよ。」

挑発する吉良の態度に轟が怒るかと思いきや顔は至って冷静そのものであった。

 

おかしい、優位に立っているのはこの私の筈だ。

奴は私の挑発に怒るわけでも焦るわけでもない、この部屋に来た時からずっと冷静な様子のままだ。

 

まさか!?

 

吉良は自分の足が密かに凍らされているのではないかと思い注意してみると確かにあった。

轟の凍らせる個性が今の吉良の弱点でもある足に近づいていたのである。

 

クッ、がむしゃらに攻撃しているだけかと思ったがなかなか妙なところで小細工をしやがって。

 

 

 

吉良は今たしかに轟の策を破ったかもしれない。

だが、轟から目を離した一瞬の隙が吉良にとって命取りになった。

 

 

「その足でよそ見とは余裕だな。」

 

「!?」

吉良がすぐに視線を戻すと、キラークイーンの攻撃を掻い潜った轟がすぐ近くにいた。

 

 

しまった!まさか今のはブラフか!!

だが、キラークイーンを抜けたとしても山で鍛えた私の拳を避けることはできまい。

 

 

飛び込んできた轟に、すかさず拳を当てようとする吉良に轟は紙一重で避けて懐に飛び込んでくると轟も拳を吉良の腹部に叩き込む。

 

「ぐっ!」

 

無防備なボディにモロにくらい、一瞬怯む吉良であるがここで反撃を止めずに負傷した足も使って反撃を開始する。

 

だがその攻撃さえも轟は捌ききり、それどころか吉良の力を利用して背負い投げの要領で吉良を壁に叩きつける。

 

 

 

「ぐっ、つ、強い。」

驚いた。まさか近接格闘戦でもこんなに強いとはな、なるほど推薦入学をしたぐらいではある。氷の個性を使った戦闘だけじゃない、個性の強さだけが全てではないと言うことか。あの動きは明らかに対人戦を意識して動いてやがる。

 

「お前の個性、なかなか鋭いラッシュをしていて、懐に飛び込むのは至難の技だったが、いざお前自身と正面切って戦えばお前は自分に当たるのを嫌って個性での攻撃を仕掛けてこねえし、お前もなかなかいい動きをするがさっきのラッシュほどでもねぇし、足も痛いの我慢してんだろ、動きも鈍いぜ。」

 

轟は、そのまま吉良を掴むと柔術の要領で部屋の反対側へと轟が入ってきた部屋の入り口へと投げ飛ばす。

投げられた吉良は壁に叩きつけられる前にキラークイーンを出現させて、自身の体を受け止めさせる。

 

だが

 

「うぐぅ!」

 

轟は吉良を投げたと同時に自らの個性を使い、吉良の着地地点を狙って個性を既に発動して立ち上がった吉良の体全体を凍りつかせたのだ。

結果、足の痛みに耐えながらも立ち上がった吉良は首から下を凍らされて全く身動きが取れないようにされてしまった。

最も、増してきた足の痛みからこれ以上は動き回るのは限界に近かったが。

 

 

「これ以上、下手な真似をされて動けねえように今度は体全体を凍らした。」

「医学には詳しくないが、今度動いたらお前の言う雄英での平和な生活は送れねぇ。それどころか一生歩けねえ体になっちまうぞ。」

 

 

クソッ、確かに奴の言う通りだ。悔しいがこれ以上動くことはできない。

 

 

睨みつけながらも、動こうとしない吉良に轟はホッとし、安心して背を向けて次の階への扉に足を進めた。そんな轟を見て諦めたのか吉良は顔をうつむかせていた。

 

時間も十分にあることを確認した轟は来た時と同様、堂々と歩いてこの部屋から出て行く。

 

俯いていた吉良の目が部屋から去っていこうとする轟を見ている。

 

吉良の目は絶対に負けたくない相手に負けてしまった時の悔しい目をしてはいなかった。

無機質な、例えるなら蜘蛛のような感情が篭っていないようなその目はなにかを、自身の蜘蛛の巣にエサである蝶がかかるのをジッと待つような虫の捕食者のような目をしていた。

 

そう、その目は死んでいなかった。

 

吉良はまだ諦めてなどいなかった。

 

そして轟が扉を開けるためにドアノブに手をかける

 

ガチャ

 

 

 

 

 

キラークイーンは既にそのドアノブに触っている。

 

 

ドグォォォォォン!!

 

「グアッ!」

轟は思いもしなかった謎の爆発に吹っ飛ばされて、部屋の反対側にまで飛んでいく。

 

吹っ飛んだ!吹っ飛んでいったその先には!

 

轟を待ち構えるようにキラークイーンはファイティングポーズで待ち構え、その姿は今か今かと吉良の命令を待ち望んでいるようであった。

 

「貴様はキラークイーンの射程距離に入った。」

 

ま、不味い!

 

吹っ飛ばされていく先に見たキラークイーンを見て焦った轟が急いで防御しようとする。

しかし轟が個性を使って氷の壁を作るよりも早くキラークイーンはその光速の拳のラッシュを轟に叩き込む。

 

「しばばばばばばばばばばっ!」

防御するよりも早く拳のラッシュを叩き込まれた轟は、そのままキラークイーンの最後の渾身の一撃であるアッパーをくらうと数秒間空中を飛び、そのまま重力に従って床へと落ちると気を失った。

 

 

危なかった。

なんとかこの状況を切り抜けて奴にキラークイーンのラッシュを叩き込めたが、流石に怪我をさせることはしなかったが、これで奴も暫くは動けないだろう。

だが私も動けないことには変わりないし、したがって奴を確保テープで巻くこともできない。

さてどうしたものか。

 

吉良が凍った状態で意識を失うまいと足の激痛に苛まれながら思案していると、ひとりでに轟の体に確保テープが巻きついていき、ぐるぐる巻きの芋虫のような状態にしてしまった。

 

目の前で起きているこんな怪現象が起こせる奴は、私の知っている中では一人しかいない。

 

 

「吉良君。」

 

私が声のした方向に目を向けても誰がいるのかは分からないが、そこにいると私は目ではなく耳で分かった。

 

「足がそんなになるまで戦うなんて、無茶しすぎだよ。でもちょっと吉良君のこと見直しちゃった。カッコよかったよ!」

 

「その代わりに結局はこんな無様な格好だがね。」

 

「ううん、そんなことないよ。私はとってもカッコいいと思うよ。そして…」

 

「?」

私は足の痛みで気を失いそうになりながらも何故だかは分からないが私は葉隠の言葉を聞き逃すまいとしていた。

意識を保とうとするが、だが吉良の限界は近づいていた。

 

 

 

「私は、私は君の命がけの行動に敬意を評するよ。吉良君!!」

 

お、お前なんでそのセリフ知ってん…だ。

 

あんな激しい戦闘をしながらまさかこんなオチになるとは思わずに吉良は心の中で葉隠に突っ込みながら、気を失った。

 




つ、疲れました。
でも書けました。寝ます。


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9話

この作品の投稿者には計り知れないことだろうが、最後に一つ言っておく「時は加速」する。

はい、ごめんなさい。
投稿がスーパー遅れました。
次もいつになるか分からない上に、今回も物語の展開的には全然進んでません。
それでもいいという方は楽しんでいただければ幸いです。


吉良が気を失ったその頃

 

モニタールームにいるオールマイト含む1-Aの生徒のほぼ全員が、その全員の予想を裏切る絶望的な状況下からの吉良の逆転勝利に驚嘆していた。

 

「ま、マジかよ!アイツ勝ちやがった。」

 

「な、なんでドアが爆発したんだ!?いきなり轟が吹っ飛ばされたぞ!」

 

「さっきからビックリしてばっかだよ!吉良君が酷い足の怪我をした時から轟君がやられちゃうところの最後まで全部!」

 

 

モニタールームにいる各々が騒ぎ始める中で冷静にモニター越しに氷漬けにされて気を失っている吉良を見つめている。

いや見極めていると言った方が正しいであろう目でオールマイトは吉良を見ていた。

 

吉良少年

 

たしかにヒーローになる以上の心構えとして、我々ヒーローには命をかけてでも守るべき時がある

そこを考慮すれば、訓練序盤の怪我は百歩譲って致し方ないとしよう。

だがそれは、まだ君が考えることではないんだ。

我々がこれから一人のヒーローとしての役目を、次の世代へ受け継がれるようにしなければならない。それが私が雄英に来た目的の一つでもあるのだ。

今、無茶をして君が危険な事をする必要はないのだ。

不満もあるだろうがそこは教師として注意をさせてもらうよ。

 

吉良少年。

 

だがひとつだけ私には分からないことがあるんだ。

 

君が戦っている時に一瞬だけ見せた目はドス黒く根深い闇のようなものを感じたんだ。だがそれはほんの一瞬だけで私の見間違いかもしれない。

だが、私の直感では君は(ヴィラン)だと、今すぐに捕まえろと私の頭の中で警鐘がなっているんだ。

 

だが確証があるわけではないんだ。

 

まだ分からない。

 

だが今はまだ、君がヒーローを目指すこの学び舎の生徒の一人であるという事を信じよう。

 

これ以上生徒である吉良吉影の疑念を考えてもしょうがないと考えたオールマイトは吉良のその個性に注目した。

 

あれが吉良少年の個性のもう一つの能力。

驚異的な力を持つ亜人のような生物を自由自在に動かし、その亜人が触れた生物以外のモノを爆弾にして任意に起爆することができるという爆豪少年に似た能力を持つ個性。

 

今の個性社会でまだ分かってないことがたくさんあることは私も知っている。

だが君のその個性は専門の学者ではないが、私が無知なだけであればいいのだが特殊すぎやしないか?

 

人間が個性という様々な特殊能力を持つ進化を遂げたが、君のそれは私が考えるに個性とは別の人間の進化ではないのか?

 

思考の海に沈みつつも、今自分の考えていることは所詮憶測に過ぎないと思いオールマイトはそこで吉良吉影への考察を打ち切り、本日二人目の怪我人を保健室に移送させるための担架ロボットを呼んで、次の訓練のための準備に入った。

 

次の訓練場の準備と、未だに吉良と轟の戦いの興奮が冷めないのか騒がしいクラスの中で一人だけ呆然とするものがいたが、その時はまだ誰も気づかずにいた。

 

 

 

そして時間は流れ、オールマイトのヒーロー基礎学の訓練は終わり、日は沈み夕方になりつつあった。

 

その間、保健室に搬送された吉良はリカバリーガールの個性を使い、すぐさま治癒力を利用して足の怪我を見事に回復させていたが怪我による出血と戦闘時の疲労により、治療後しばらくの間は目を覚ますことはなかったが放課後、とっくに大半の生徒は帰る時刻になったときに吉良は目を覚ました。

 

「まさか、この私が入学数日でこんな目に会うとはな。これからの事を考えると周りのクラスメイトから質問責めにあうのは目に見えているし、全く私の求める穏やかで平穏な日々は暫くは訪れそうにないな。」

 

 

それに今回の訓練の件で、爆豪の後に自分で怪我をしたからオールマイト先生からは咎められるかもしれんな。

 

言い訳は…論外か。

 

言えば私の評価が低く見られ、問題視されて注目が集まってしまう。

しかも悪い意味でだ。

幸いにも今回の私の行動は、狂ったヴィラン()を想定しての行動であると捉えられることもできるだろうし、不服ではあるが、ピンチを切り抜けるための自傷行為が問題だと相手は思っているはずだ。

だがこれ以上目立つことは論外だな。だとすれば私に今できる最善の行動はしっかりと反省した態度を見せること。

そうすると今後の行動は慎重にならなくてはいけないということか。

 

ん?今の私はなぜ私はオールマイト先生に対してこんなにも慎重になっているんだ?

 

ふと湧いた疑問に自分の中に何かモヤモヤするような違和感を感じるも、カーテンの開く音で吉良は思考を中断される。

 

 

「おや、やっと起きたのかい。まずはグミをお食べ。」

 

そう言ってカーテンを開けた人物は注射器のような杖をつき白衣を着た妙齢の女性、リカバリーガールが、起き上がった吉良を見て容態は安定しているのが分かり、ホッとしたように話しかける。

だがすぐに顔を険しくするのを見て、吉良は早速来たかと身構える。

 

「ヒーロー基礎学の授業で二人も怪我人を出すアイツ(オールマイト)もそうだけど、アンタもアンタだよ。全く、戦闘訓練で怪我人が出ちまうのは仕方ないことかもしれないけど、話を聞いてみればアンタは自分で怪我をしたそうじゃないかい!いくら負けたくないからって言っても訓練なんだから限度があるでしょう!」

 

「はい、申し訳ありません。」

 

「これに懲りたら反省して無茶をするんじゃないよ。次にまた同じようなことがあったら許さないからね!」

 

「はい。以後、気をつけます。」

そう言って吉良は今回のリカバリーガールに反省しつつ、頭を下げる。

リカバリーガールもそんな吉良の反省した態度を見て、緑谷出久に引き続き吉良吉影と今わかっただけでも二人も怪我人が保健室に運ばれてきたことに、今年は例年以上に怪我人が多くなるかもしれないと内心溜息を吐く。

 

「それじゃあ私からはもう言うことは無いけど、アンタを治癒した時に体力を結構使ってるから今日はまっすぐ帰って必ず休むこと。オールマイト先生もクラスのみんなも心配してたからね。分かったかい!」

 

「はい、今日はすぐに帰ります。はい。」

 

そして吉良はリカバリーガールからの一通りの説教を聞いた後に、更なるリカバリーガールからの追加の説教があるとたまらないと考えた吉良はそそくさと保健室から出て行った。

 

教室に戻る途中、ふと何気なく外の景色を見てみると腕を吊った怪我をしたままの緑谷と爆豪の2人が話しているのを見かけた。

 

あの2人、何を話しているんだ?

ここからでは何を話しているかは全くわからんが、あの爆豪の様子からして何か2人にとっては大切なことでも話しているのかもしれないな。

ま、私には関係のないことだとは思うがな。

それよりも、こんなとこで時間を無駄にしてリカバリーガール先生に見つかったら面倒なことになる。

急いで帰らなくっちゃあな。

 

緑谷と爆豪の2人から、興味をなくした吉良は再び教室へと歩き始めた。

そして、さっさと帰ろうと吉良が教室の扉に手をかけて開くと

 

「あっ!吉良も来たかお疲れ。あと怪我の方は大丈夫だったか?」

と心配しつつも、労いの言葉を教室に入ってきた吉良に声を掛けた切島であったが、声を掛けられた吉良にとってはリカバリーガールの説教の後に続く不幸に内心でうんざりとしていた。

 

「ああ、見ての通り大丈夫だ。」

くっ、放課後だから誰も残ってはいないだろうと思っていたがまだ教室に残っていたのか。

しかも1人だけじゃなく他にも何人かいるようだな。

 

最初に声をかけた切島に反応して教室に残っていた他の面々も吉良に向けて、「怪我は大丈夫?」「訓練すごかったねー。」等の声をかけてくるが何人かの顔は一様に固い、吉良に対してどう声を掛ければいいのか分からずに困惑しているような感じであった。

もちろんこれは吉良の他の人間に対して全く興味がないと言わんばかりの雰囲気もあるが、それよりももっと重要な理由が吉良を困惑の視線で見るクラスメイトにはあった。

 

まだ入学してから日も浅いとはいえクラスの何人かが吉良に緊張してどう接していけばいいのかわからないのは、吉良が戦闘訓練の時に轟の足を凍らせられた時の脱出方法にあった。

凍った足の皮を引き剥がすという普通では考えられないような行動。

 

あの場ではクラス全員がこれから自らも行うヒーローとしての第一歩を踏み出すとあって気が高ぶっていたが、初めてのヒーロー基礎学の授業も終わり、放課後に今日の訓練の反省会ということでほんの少しの自己紹介を踏まえての各々の個性の紹介。

自分の持つ個性の長所を活かす戦いをするか、それとも短所を補えるような戦いをするか。

どうすればもっと自分の個性の力を引き出せるか?話しあいをしていった。

 

そして様々な者の意見が湯水のように出てくる中で、誰が言ったのかは今となっては分からないが遂にパンドラの箱が開かれる。

 

クラスメイトが流石に頭が冷静になってくると吉良の異常な行動に何人かは引いているものがいるのは当然のことであった。

いわゆるドン引きというものである。

クラスメイトがこんなことを吉良に対して思っているのを彼は、吉良本人にはまだ分からないことであった。

 

そんな現時点で孤立気味の本人はそれを面倒な人との関わりを持たなくて済むと喜ぶのか、それとも悪い意味で目立ってしまっていると嘆くのかは分からないが、そんな常軌を逸した行動をとる吉良になんの躊躇もなく声をかける切島という1人の生徒は吉良を困惑の目で見る他のクラスメイトにとっては勇者か、はたまた考えなしに突っ込む愚か者に見えたことだろう。

 

だがこの切島鋭児郎は勇敢な勇者でもなく、愚鈍な愚か者でもなかった。

 

ただの個性を持った人間であり、どこにでもいる普通の平凡なクラスメイトとして、周りの者が容易には近づけないこの男。

 

吉良吉影と友達になりたいと純粋にその一心で声をかけた。

 

ただの何処にでもいるような普通の学校の吉良のクラスメイトであった。

 

 

「いや、凄かったなぁお前!バトル漫画とかでもある最後の最後まで勝負の行方は分からないって言うけど、おめーのはまさにそれだったぜ!」

 

「あ、あぁーそうは言っても、ギリギリのところで勝てたってだけで保健室で起きてさっそく先生に怒られてしまったがな。」

 

「謙遜すんなって、あんな追い詰められて最後に勝つなんて誰でも出来ることじゃねぇぜ。少なくとも俺はお前のことスッゲー漢らしいって思ったぜ!」

 

くっ今日はなんていう日なのだ

午前中の座学は何も問題なく過ごせていたのに、午後の戦闘訓練から私に不運が舞い込んできた。

 

あのスカした男の言動にカッなってしまったときから目立ちすぎている。

教師からは、少なくともリカバリーガールからは悪い評価を与えられているし、他の教師からもどんな目で見られているか分からない。

 

そして、今の周りの好奇な視線

 

しばらくはこの視線に対処せねばならないとは

 

だが、少なくともこの学校にはいないだろうがこの私に対して不埒な行動をしようとする馬鹿は居なくなるわけだ。

その証拠に私の目の前にいる…名前は確か切島と言ったか?

この男の言動からは私に対して侮るような感じは感じ取れなかった。

この点については不幸中の幸いと受け止めても問題はないだろう。

あと、漢らしいって褒めているのか?私にはあまり嬉しくない言葉だな。

 

「あっ忘れてたぜ、俺名前は切島鋭児郎ってんだ。んでよぉ、吉良早速なんだがな今ここに残っているみんなと、今ちょっと外してるんだけど緑谷も一緒に今日やった訓練の反省会と親睦会も兼ねてマ○ク行こうと思うんだけど、吉良も一緒に行かねーか?」

 

まただ、また面倒ごとがやってきた。

全く入学してから数日でこんなことでは、この吉良吉影のこの先が思いやられる。

だが、これ以上面倒ごとには付き合うつもりはない。

 

「いや、悪いがリカバリーガール先生から今日はすぐに家に帰って休むようにと言われているんだ。私もそれを約束してしまって残念だが行くことはできないんだ。」

 

決まった

 

どうだ、これぞまさに最悪の時にチャンスを物にするということなのだ。

最後の最後にこの吉良吉影のピンチを救ってくれるチャンスが転がり込んだということなのだ。

 

「そっか、そういうことなら仕方ないな。じゃあ吉良また明日な。」

切島はそう言って、吉良に話しかける前まで話をしていた友達の所へと戻っていく。

 

そうして大義名分を得た吉良は堂々と荷物をまとめて、自分の家の帰路に着いた。

 

だが、この時の吉良はまだ知らなかった。

 

自分がどんなに平穏に生きようとしても、これからの運命は平穏とは程遠い全く逆の人生を歩むことになる。

 

 

 

 




次はどの辺りまで進められるかなぁ、というかもう一つの作品も進めないと殺される(汗)


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10話

ごめんなさい
まず最初に謝らせて下さい。
遅くなりました!今回も文字数の割には全然物語が進行してません!
後、この小説がひと段落したらもう一つの作品の方も進めないといけませんので今後更に遅れるかもしれません。

それでも見てくれるって方は、気長にお待ちいただけたら幸いです。

それではどうぞ!


自分で言うのもなんだが、私の1日は早い。

 

朝6時には起床し、家を出る時間は必ず起きてから1時間以内。

雄英には最低でも20分前には到着出来るように心掛けている。

この朝の日程をこなすことによって、私は余裕を持って周りに目を向けることができるのだ。

 

そうこの美しい自然を満喫出来るのだ。

朝日に反射する公園の湖の水面に、木の枝に仲の良い2羽の小鳥がさえずり、気持ちの良い風に吹かれて草木は揺れて音を奏でる。

そして上を見上げれば、真っ青な青空のキャンパスに白い雲が描かれ、地球に生まれた全ての生物を暖かく見守る眩しい太陽。

 

気持ちの良い爽やかな朝を私に感じさせる。

 

突然ではあるが植物というものはその環境に適応し、時には他の植物と共生し強く逞しく生きて、種類によっては美しく成長する。

植物の一生は短くとも、その生涯に自分のあらん限りの力を込めて生きていると私は思っている。

世界一臭い花と言われるラフレシアであっても、私はあの大きく美しい模様の花びらは生命の力強さをその強い意思を私に感じさせる。

 

だが、人間は違う。

人間の生きる目的とは、人それぞれ個人差はあるが自らの欲望を叶えようとする願望で動く。

私を例にするなら平穏な日々を愛しそしてその生涯を終えることだが、人には金持ちになりたかったり、歴史に名を残すような名声を得たいという願いもあるだろう。

だが中には、(ヴィラン)のように己の願望のために人を傷つけて、ましてや殺すことも厭わない輩もいる。

それのほとんどは、いっときの感情に身を任せて自身が危機的状況にあったときになりふり構わない危険な行動を取る。

植物に思考はないだろうが人間と植物はそこが違う。

 

人間の一生の中で見つけた目的に進み続ける覚悟とそれを曲げない意志の強さが人間としての価値を決定するものなのではないかと私は思っている。

よく人は支え合って、助け合って生きているというやつがいるが余りに言葉足らずでその言葉だけでは誤解を生んでしまう。

厳しいかもしれんがそんなことを言うからいつまでたっても親離れ出来ないような奴が出てきてしまうのだ。

人生の中でここぞという時には人には頼らず自分1人の力でやらなければならない時が必ず来る。

 

絶対に成し遂げるという意志の強さが自分の人生の成功をチャンスを引き寄せるのだ。

 

だから私は人との積極的な関わりを持ちたいとは思わないし、他人に頼り切る事もやりたくはないのだ。

 

そしてやはり余裕を持って朝登校をしていて良かったと今私は心の底から早寝早起きを心がけていた自分に感謝している所だ。

 

「オールマイトが教師をしていらっしゃいますが、その感想などをお聞かせください!」

 

これだ

 

なんなのだ一体

校門に近づくにつれて人集りが多いとは思っていたが、一体いつから此処に集まってやがるんだ。

数日前から、同じことばかり聞いてきやがって。

だが、こういう奴らは無視していればどうということはない。

だがせっかく気分の良い朝だったのに毎回此処を通らざるおえないから最悪の気分だ。

 

「あの、一言だけでも良いのでお願いします!」

 

無視だ、断固として無視だ。

此処で一言でも真面目に取り合えば、登校時間ギリギリまで鬱陶しく絡んでくるマスコミというのは本当にタチの悪い奴らだ。

それだけじゃなく、私が何かどうでもいい事を言っても本当にタチの悪い奴はそれを元にしてどんどん自分達の都合の良いように話を膨らませていく。

良い事にせよ、悪い事にせよ面白い話題であれば食い付いてくるのが愚かな民衆というもので混乱を防ぐために違うと否定しなくっちゃあいけない。

過程は省くがしまいにはそれを記者会見という形できっちりと言わなくちゃいけなくなる。

そして結局、その場で根掘り葉堀り聞かされていくことになる。

全く報道の自由を自分達の行使できる。いやすべき権力と勘違いしているんじゃないのか?

 

記者達に確実にヘイトを吉良は溜めながら、吉良の横から必死にマイクを伸ばして答えない吉良からそれでも根気よく質問を続ける記者たちの努力も虚しく最後まで吉良は何も言葉を発さずに校門の奥へと去っていった。

 

「なによ!あの子、他の子は声をかければ最悪視線はこっち向けるのに」

 

「俺たちを、道端に落ちている石ころぐらいにしか見てないのかねぇ。」

 

「なに、まだ他の子も登校してくるはずだ。オールマイトの事はその子達から聞き出そう。」

 

その後も登校してくる雄英高校の生徒に片っ端から聞き込みをするものの、彼らにとって望む答えを言ってくる子はついぞ現れる事はなかった。

 

そして時間は流れ、朝のホームルームの時間に吉良の本日最初の試練が訪れる。

 

「昨日の戦闘訓練おつかれ、Vと成績見させて貰った。」

 

担任の相澤先生が、教壇の上に昨日の戦闘の成績の書類の紙束を置きながら席に着いている生徒全員に労いの言葉をかける。

 

 

「爆豪お前もうガキみてえな真似するな、能力あるんだから。」

 

「…分かってる」

 

「で、緑谷はまた腕壊して一件落着か。」

「個性の制御いつまでも『出来ないから仕方ない』じゃ通させねぇぞ。」

「俺は同じこと言うのが嫌いだ。それさえクリアすればやれる事は多い。」

「焦れよ、緑谷。」

 

「っはい!」

 

「それともう1人、吉良。」

「ヒーローになってから、あんな怪我しませんなんて事は言わねぇし、(ヴィラン)に追い詰められて殺されないって事もねぇし、事前に説明されていた状況からしていえば、必死になるのも当然だ。」

「だがあの時は訓練だ。あんな怪我負ってまでやり遂げようとしてんじゃねぇ。」

 

「はい、分かりました。」

 

爆豪に注意をしているあたりから、覚悟はしていたがやはり言ってきたか。

幸い、職員室に呼び出されるという心配も見ている限りなさそうだ。

 

「さてHRの本題だ、急で悪いが今日は君らに…学級委員長を決めてもらう。」

 

「学校っぽいのきたー!!」

 

周りの生徒が、また何か相澤先生から出される退学覚悟の課題をクリアしなくてはいけないという緊張から解放されたからだろうか、みんなの表情が柔らかくなった。

 

対して吉良は嬉しいともなんとも感じてはいなかった。

学級委員長という役職にあまり興味も示してはいないどころか、むしろ面倒事が増えてしまうとさえ感じていた。

 

学級委員長か、前の中学では率先してやろうっていう奴がいなかったもんで先生が言っても誰もやらないし、投票して誰か1人を生贄にしていたのが印象的だったなぁ。

まぁ、このクラスにはそんな必要もなさそうだ。

1人か2人ぐらいはやりたい奴がいるだろうし、自動的にそいつになるだろう。

あのメガネ君は確か…飯田といったけか?

やらせるなら真面目の塊と思われるアイツ辺りならやっても大きな失敗や問題を作ったりはしないだろう。

問題を挙げるとすれば責任を感じ過ぎて途中で役職を放り投げる事だが、そこは天下の雄英高校だ。そんな軟弱な人間であればここには最初から居ないだろう。

 

と吉良がある程度飯田の事を評価していたが、結果的に言えば吉良の予想を超えたクラス全員がなりたいと挙手をしており、逆に手を挙げなければそれはそれで目立つ行為となるため手を上げざるをえなくなってしまう事態となってしまった吉良であった。

 

まさかこんなに沢山いたとはな

おかげで挙げたくも無い手を挙げる羽目になっちまった。

気苦労の割に得られるものなんてほぼ無いに等しい、ボランティア同然の活動にやりたいという人間が居るとは

まぁ、1人は自分の願望を叶える為になりたい人間もいるようだ。

どう考えても、女子からは嫌われそうなスカート膝上30cmという公約を掲げて、ましてやそれを口に出して委員長に立候補するとはな

それにしてもまさかヒーローという奴は皆が皆お節介というわけでは無いだろうに、それに時として過剰な親切心は相手から怒りを買ってしまい、余計なトラブルの元にもなりうる。

初めて会う赤の他人への親切にも気を配らなければならないのだ。

やはりというか他者との接触は私は積極的にやろうとは思えんな、もちろん最低限必要だということは私だって感じている。

 

吉良が手を挙げながら内心ウンザリしているのを顔には一切出さないようにしながらも、多数の委員長への希望者が出て時間が掛かると思われていたその時に、吉良が内心で評価していた飯田が委員長を希望しているクラス全員に待ったをかける。

 

「静かにしたまえ!!」

「多を牽引する責任重大な仕事だぞ!『やりたい者』がやれるものではないだろう!!周囲からの信頼あってこそ務まる聖務、民主主義に則り真のリーダーを…」

まぁ飯田の言うことには一理あるな、もっともな意見だ。

 

ただし

 

「これは投票で決めるべき議案!!」

 

「そびえ立ってんじゃねぇか!なぜ発案した!?」

自分の考えと行動が会っていない点は直すべきだな。

前半は良いこと(自分にとって)を言っていたのに、期待をしない方が良かったかもしれんな。

そんな発言とは真逆の行動をする飯田にすかさずクラスからツッコミが入り、そして飯田の提案に異議が唱えられる。

 

「日も浅いのに、信頼もクソもないわ飯田ちゃん。」

「だからこそ、ここで複数票を獲ったものこそが真にふさわしい人間ということにならないか?」

 

「どうでしょうか、先生」

 

まぁ、周りからの異議にもしっかりと答えてそして必ず議長というか先生に確認をとる。

 

中々しっかりした奴じゃないか。

それに投票であれば可能性は低くなるだけではあるが私が委員長になる可能性は限りなく無くなるだろうし、自分に都合の良い人間に投票も入れられる。

まぁ、今回は飯田。お前に投票するとしよう。

二票もあれば、委員長にはなれずとも最悪副委員長ぐらいにはなれるだろう。

せいぜい、委員長という役職に暫くは酔いしれると良いかもな。

 

「じゃあ委員長、緑谷。副委員長八百万だ。」

 

なぜだ?なぜこうなる?

私は確かに、飯田に投票したはずだ。

いや今はアイツが委員長だろうが無かろうが、そんなことはどうだって良いはずだ。

 

間違って自分に入れたとかではない。

なぜ私に1票が入っているのだ?

 

だが結果的に危なかったとはいえ、私が面倒ごとを抱え込まなくて良いというこの結果は歓迎すべきことだろう。

 

問題なのは、この私に興味を持っている者がこの後に私に積極的に関わりを持とうとしている者が接触してくるということなのだ。

今まで、私はこのクラスの人間に積極的に近づくこともなければ相手から近づくこともなかったのだからな。

候補としては、戦闘訓練の時の葉隠か?それとも訓練の時にブッ飛ばされた事を根に持った轟…の可能性は低いかもしれない。

そういうのは頭も性格も個性も爆発物な爆豪あたりの筈だ。

轟はそれよりかは冷静な手合いの男と見た。

 

そして最後に可能性として残されているのは、訓練後も妙に私に話しかけて来た切島あたりか?

まぁ、心当たりのある人物がいるだけでも心構えは出来る。

轟と爆豪辺りはごめんだが、2人か最低でも3人ぐらいは関わりを持っても問題はないだろう。

 

だが、どうしても興味がある男が1人だけいる。

 

緑谷出久

 

個性把握テスト、そして戦闘訓練の時に見せたあの超パワーは恐るべきものであるが代償にそのパワーに耐えられずに自壊する身体。

戦闘以前に問題ある個性ではあるが、それでもアイツは絶対的な不利を覆して勝利した。

成長すれば確かに侮れない気にならずにはいられない奴ではある。だが、それだけではないのだ。

入学前に見たあの目は決して見間違いなどではない筈だ。

何か、感じるものがある。

出会ってからこちらから何か話しかけたこともないし、話しかけられたこともないが、惹きつけられるとも違うし、何故かは分からんが気づいたら目で追っている妙な感覚。

 

今は考えてももう答えは出なさそうだ。

判断材料が少なすぎて、結果の予想もできやしない。

それより今は私に興味を持っている相手の対処でも考えた方が良いかもしれないな。

相手が私にとって害をなすか、なさないか?この吉良吉影にとって重要なのはそこなのだ。

害をなさないのであればそれはそれで良いとして、なるべく目立たない感じの男を演じるようにしなければ。

 

勿論たとえ気を許してもこの高校生活3年の間だけだ。

私には信頼する仲間だったりとか、パートナーとかは必要ないのだ。

真に私が信頼し自信を持っているのは、この私の能力である『キラークイーン』のみだ。

 

クラスの委員長も決まり、吉良も何者かが接触をしようとしているのを感じ取りつつも時間は過ぎていく。

午前中の授業も終わり、吉良が中庭で1人クックヒーロー『ランチラッシュ』の特製サンドイッチをかじっていた時に、校内に多数のオールマイト目当てのマスコミが侵入している事件が起きていた。

一見なんてことのない迷惑なマスコミが起こした出来事であるが、その時の事を吉良は知らぬ存ぜぬという事で流して、気にも止めていなかったが、雄英高校の教師陣は警察からの詳細な情報が伝わってくるにつれて、事態を重く見始めていた。

誰かのイタズラと考えられるものではなかったからだ。

なんせ厚さ10数ミリの門を破壊して意図的にマスコミを雄英高校内に入れたものがいる。

イタズラなのかそれとも、マスコミを利用した何らかの目的があったのかは今はまだ教師の誰にも分からぬ事ではあったが、ただ一つだけ雄英の教師陣は何者かの悪意を敏感に感じ取っていた。

 

 

事件の序章は吉良の知らぬところで既に始まっていた。

 

 

 




次回もお楽しみに!


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11話

お待たせしました!
やっと投稿出来ました。前よりかは早く書き終わらせましたがあいも変わらず物語的には余り進行していません。
おかしくならないように調整してたらなんか膨らんでました。

どうでもいい事ですが、なんといいますか。
私の書いた小説って、毎回朝から始まっているような気がします。

では、お楽しみいただければ幸いです。

どうぞ!


んー気持ちの良い朝だ。

今日もいつも通りに出勤…いや登校だったか。

前世が下っ端会社員だったもんで朝起きてからの口癖が今日も出勤しなくてはと倦怠感に駆られて無意識に思ってしまうのは今の私だとおかしい事だとは分かってはいるんだが口に出して言うほど根付いてしまっている。まだまだ私は何処かで気が抜けているのだろうか?

 

まぁ今すぐに困る訳でもないが、何処かでボロが出ても面倒だから気をつけなくちゃあな。

それにしても朝起きて学校や会社にせよ余裕を持って行くということが、こんなにも気持ちが良いとはなぁ。それに天気の方も雨が降ってジメジメしているわけでもなければどんよりと曇っているわけでもない。快晴というほどでもなければ、真っ白い綿飴のような雲がポツポツとあるぐらいだ。

確かあの雲は、中学校の理科の授業では積雲というやつだったな。

積雲は大気の状態が不安定になると更に大きくなり、雄大積雲若しくは入道雲と呼ばれ、更に成長すると大雨を降らし場合によっては雷を伴う積乱雲となるならしい。

まぁ、今すぐにあの雲が積乱雲となる訳ではないから雨の心配はしなくても良いことなのだがな。

 

そうして吉良がいつも通りに景色を楽しみながら歩いていき雄英高校の校門に近づくと昨日とは違うある違和感を敏感に感じ取った。

 

昨日までいたマスコミが見あたらんが…収穫がないからここは諦めて別の場所に行ったのか?

そういえばこの前、校内にマスコミが大挙して入ってきて騒ぎになっていたがその事を警告されて近づけないようにされたのか?

フフ、あの邪魔くさい奴らが居ないのは実に良い気分だ。

まさに自業自得って奴だな。いい気味だ。

 

吉良は前のように鬱陶しいマスコミの質問責めにあわないと知ると気分良く校門を過ぎていこうとするも

 

「うん?吉良か早いな、おはよう。」

 

「!…おはようございます。相澤先生。」

 

そう校門前に相澤先生が居たのである。

朝の普通の挨拶をした後に、吉良は校門を通り過ぎてそのまま校内には入ることはせずに距離にして10メートル程ぐらいの所で立ち止まり、さっき過ぎ去った校門とその近くにいる相澤先生を見る。

 

相澤先生…あの合理主義的な思考をする人が、何故校門の近くにいるのだ?

昨日も、いや入学してから日はまだ1ヶ月も経ってはいないがこんな事は見たことも聞いたこともない。

確か門にはマスコミを含めた部外者、(ヴィラン)等の不審者を侵入させる事のないように教職員と入学時に生徒に手渡されたIDカードが無ければすぐに門が閉鎖されるシステムがある筈だ。

わざわざ相澤先生じゃあ無かったとしても先生があそこにいる必要は無い筈だ。

 

なのに相澤先生はあそこで立っている。

 

常識的に考えれば登校してくる生徒達に朝の挨拶をするためと考えられなくもないが、担任の相澤先生はHR(ホームルーム)の時に教壇でクラス全員にもう一度挨拶をする事になる。

それに担任の仕事だって忙しい筈だ。現に私の中学の時では専ら体育教師とか担任では無かった比較的余裕がある人の仕事だった筈だ。

 

あの合理主義的な考えを持つ相澤先生らしくないといえばらしくない行動。

 

ただ定期的に交代でやるべき仕事なら話はそれまでの事にはなる。

 

この前のマスコミの件のことと、関係があるのか?

警報が鳴って数分の内に20いや、30人は既に集まっていたようだが、そんな大人数の人間がいやそもそもIDカードを持っていない筈のマスコミが校内に入ってくる事自体おかしな話だったのだ。

そんな事件のあった後に今回の相澤先生の校門前での行動。

タイミング的には何かあったと考えても全くおかしくは無い。

これは私の感で確証も無ければ証拠もないものだが妙に引っかかるものが、不審な点がある。

調べてみる方が良いかもしれない。

 

そうして吉良は先日起きたマスコミ侵入事件の事を調べ始めた。

2日程かけて、吉良は授業の休み時間を利用して上級生への聞き込みと元々早い時間に登校しているのを利用して校門の辺りが見える窓から何か分からないかと観察をしていたが大した情報は得られず。

せいぜいが校門での朝の挨拶は入学式の後や長期の休み明けには必ず行われており特段この時期には普通にやっており、それとなくヒーロー科以外の先生に聞いてみても門はそのシステムを維持するために定期的に点検をしているという事なので何もおかしなことはないということぐらいしか情報は集まらなかった。

また聞き込みだけに終わらず、校門以外の壁の調査についても特にこれといった違和感はなく傷や汚れはあっても建物の老朽化によるものでとても多くの人が通れるような大きな穴だったり、壁が破壊されたような痕跡は見つからなかったのだ。

 

この時点で吉良は自分の思い違いだったかと半分安心、半分調べて損をしたと後悔をしていた。

 

そして調べ始めてから明日の3日目の朝に吉良は一応それとなく校門周辺の調査を実行することにした。

この感じだと門の方も偶然故障して開いてしまったのではないかと思っていた。

元々、1番怪しいと感じていたこの場所に何もなければそのまま調査は打ち切ろうと吉良は考えていた。

 

そして3日目の朝

 

「一応早く来てみたは良いが、まぁここまで何も特に異常が無いのだから私の考えすぎだったという訳だ。だが、中途半端にしておくのも気がおさまらんし一応軽く見ておいても損は無いはずだ。」

 

調査をするためにいつもの時間より少し早く、学校に来ていた吉良は校門までの壁を見ながら歩いていたが、やはりこれといって変わったことはなかった。

広大な雄英高校を囲う壁は校舎と同様に建築されてから何十年かは経っているがそんな事を感じさせないように築数年ぐらいしか感じさせない程に綺麗であり、所々小さな汚れは少しあるものの傷はそれよりももっと少なかった。

吉良は人が何人も通れるような破壊の跡はもちろんのこと、雄英の門のシステムに細工を施すことが出来るような小さな穴を探していたがついぞ見つけることなく校門にたどり着いた。

 

ここまで調べて吉良は校門に立っているヒーロー科の先生に変な目で見られるのを嫌いそのまま校門をくぐろうとしたが、ある事に気づいて足を止めた。

 

(この校門…ここまで歩いて見てきた壁と比べてやけに傷や汚れが無い。まるで新品のようにペンキの塗りたてだ。)

 

校門の近くに先生がいる事を警戒して疑問を抱きつつも今は調べられないとして諦めて校舎に行こうとするが、たまたまなのか幸運にもまだ先生は来てはおらず誰にも見つかる事なく調べることが出来そうであった。

だが調べることは出来るには出来るが、いつ誰が来るかも分からない状況で調べるのはリスクを伴うことであった。

 

しかし、吉良は調べることにした。

リスクはあるものの調べるのもこれで最後にしようとしていたし、何よりこの好機を見逃したら最悪次は無いと考えていたからである。

それにもし見つかってもスッとぼけて落し物を探していましたと誤魔化そうと考えていたからである。

 

そして数分もしないうちに、予想に反してついに吉良は手掛かりを見つけることが出来た。

 

この壁…上の方によく見ないと気づかないし普段から目を向けるような場所じゃないから分からなかったが、今まで見た傷とかでは無く結構大きめの穴を補修した形跡があるな。

しかも校門の左右両方に、大体同じ場所ぐらいのところにある。

大きさは大体15センチほどぐらいか?拳1個分ぐらいの穴を塞いでペンキを塗って目立たないように、疑うように言えばこの2つの穴を隠しているような意図を感じる。

 

調べるのはこれで最後にしようと思っていたが、この大きさも大体同じで左右の校門の壁にほぼ同じ位置にある穴。

これで終わりにしようと思っていたが、まだもう少し調べた方が良いかもしれない。

 

校門の外壁の異常は分かった。

ならば内側、内壁はなんとも無いのだろうか?それと閉鎖される門の部分も気になる所だ。

 

この時、閉鎖する門を見るために足場の辺りを見ながら歩いてきたことに運良く吉良は救われたのかもしれない。

 

「おぉ朝早いな、おはよう。確か名前は吉良だったな?」

 

「!?。お、おはようございます。マイク先生」

 

「おう!毎日朝早く登校するのは感心することだぜぃYear

 

「えぇ、ありがとうございます。」

チッ、あともう少し調べられると思っていたがどうやら時間切れのようだな。

 

「ところでさっきから見ていたが、校門に落し物でもしたのか?」

 

「!?!?…。はい実はそうなんですが、もしかしたら登校中に別の場所に落としたのかもしれないです。」

カマをかけてきたのか?それともただの先生の立場としての親切心なのか?今は分からんが取り敢えずは無難な受け答えは出来た筈だ。

 

「…。そうか、じゃあちょっと先生も校門からあんまり離れることは出来ねぇがそれっぽいものがあったら相澤先生に渡してやるよ。」

 

「ありがとうございます。では私はもう教室の方に行きます。」

 

いつもなら心の中でうるさいイメージが強いこの先生とあまり関わりたく無いと思っている吉良だが、プレゼントマイク先生の事をそれにプラスしてお人好しと先程の質問から一応警戒はすべき人物として、まだ引き続き調べた方が良さそうだと思う吉良。

可能性は少ないとはいえ偶然というものもある事を考慮してヒーロー科の先生への直接的な質問をするという愚は犯そうとはしない吉良。

得られた情報は少なくなってしまった。だがしかし確信を得る道筋と情報は揃っていた。時間にもまだ余裕はあった吉良はその確信を得るためにある場所へと向かうため、校舎へと入っていく。

 

だがその警戒をした認識を吉良だけでは無く、校舎へと入っていく吉良の背中をジッと、いつもの生徒に向けるような優しい目とは離れた。探るような鋭い目で見つめながらプレゼントマイクもまた先程の吉良に質問をした時の反応を見逃してはいなかったのだ。

 

あの時に何気なく質問をした時の吉良のあの反応。

最初は個性に反して目立たない生徒だと思っていたが、あの反応は確実に校門について調べていた。

質問の内容の特に(校門)に対して吉良は反応していた。

 

プロヒーローのプレゼントマイクは質問をした時の吉良の瞳の瞳孔が僅かに反応したのを決して見逃したりはしなかった。

 

あるかも分からないような落し物はともかくとして、吉良が校門が破壊された件で感づいてると伝えた方が良いかもな、少なくとも担任の相澤には。

 

 

校門のシステム点検と学校のと生徒と教員には知られているが、それはヒーロー活動を担っていない普通科の人員のみに絞った話であり、今は教職をしているものの、いやだからこそ教鞭をとってヒーローの卵を育て上げて未来の(ヴィラン)に対抗して今のオールマイトのみならず先人達が命を懸けて作り上げた平和を守りぬかなければならないと考え、雄英のプロヒーロー達は行動している。

ある意味で以前の(ヴィラン)と戦い、市民の命を助け、また希望になるヒーロー活動以上に重要な仕事といっても過言では無い。

その事を少なくとも、雄英高校の教鞭をとるヒーロー達はここに来る以前からすでに考えていた。

 

強い個性、弱い個性関係なく、人を救う可能性があるという事を知って欲しい。

もちろん(ヴィラン)を倒す力も必要だろう。だが、それだけでは駄目だということも先生たるヒーロー達は痛いほどに承知している者もこの中には少なからずいる。

(ヴィラン)を倒したとしても、守るべき人を守れなかったらその時点でヒーローの敗北なのである。

ここにいる生徒全員が、ヒーローとしての在り方を少しでも感じて、受け継いで欲しいと。

 

私達は守るべき人達が笑顔になるため、明日に希望を持って生きていくことが出来る。この平和がずっと続くように、その人達の未来を守る力を得るためにここにいるのだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「雄英高校の門についてですか?」

 

「あぁそうなんだ。機械とかには詳しくないし、あまりよく分からないんだが、ちょっと興味があってね。」

 

吉良が朝のホームルームまでの残り少ない時間に赴いたのは、ここサポート科の教室ではなく、開発施設であった。

餅は餅屋。という安直な考えではあるものの実際分からない物を自分で調べても時間はかかってしょうがないので、それに詳しいと思われる生徒。特に開発施設にいる者に直接聞いてみようという魂胆であったが早くもそれは瓦解しそうになっていた。

何しろこれで6人目、誰に聞いても分からない、知らないの二言ぐらいしか聞き出せていなかった。

最初にサポート科と経営科で迷っていた吉良だったが、まずはそういった事に詳しそうなサポート科からあたってみたのだが、サポート科でこれなら経営科は望むべくもないと思い始めていた。

これで駄目なら時間もそろそろ無くなってきたので、教室に戻ろうと考えていた吉良であったが遂に望むような答えを知っている者を最後に見つけたのだ。

 

「私もちょっと次のベイビーに何か使えないか、色んな学校にある物を調べていたところなんですよ!」

 

ベイビー?ふざけた専門用語だな、だが今はそれよりも

「門について詳しく知っているのか?例えばどこまで耐久性があるのかとか。」

 

「そりゃあもう、門に使われた合金を利用した………」

吉良に話しかけられた6人目のサポート科の生徒。

発目明は、嬉々として喋り出す。それはもう子供が自分のオモチャを周りに自慢するかのように。

彼女の場合、自慢するだけの子供と違うのは純粋に自分の作品に愛情を込めているからである。

それがたとえ、成功したものだけでなく、失敗作品であろうと、それが壊れたものであろうとも一心に愛情をそそぎんこんでいるのである。

 

余談であるが、そういった作品への愛の深さゆえに彼女は自分が作った物を決して廃棄しようとしたりせずに全て残している。

どんな人でも小さな子供だった時に経験するであろう。古くなったオモチャにありがちの飽きるということがないのだ。

特に周りの子供が自分より更に新しいオモチャを持っていればそれは尚更なのだ。

彼女の作った失敗作品を廃棄しない事。当然これは問題になり、サポート科の先生をやっているパワーローダー先生から作った発目に注意をしていた。最初だからと注意だけの軽めのものであったし開発意欲を失わせないようにする為に指導と、たとえこれから失敗しても気にするなと下手に褒めてしまったのが発目に対してだけは悪手だったのだ。

他人に、それも雄英の先生であり、それもプロヒーローに自分の作品を褒められた事(?)に火がついた発目は注意された事など頭からすっぽ抜けたのか、そもそも本人が余り悪い事とは思っていないのか定かではないが、注意を受けた次のに日には倍近い数の作品(彼女曰くベイビー)が作られ、本来広い筈だったスペースを更に圧迫しつつあった。

 

そして、そんな彼女の暴走を止める事はもはや先生でも止める事は出来なかった。

どんなに注意をしても、大量の作品(ベイビー)をスクラップにしてもその翌日には廃棄した物の改良型と発目による新しい発想による作品が出来上がっているのである。

最近では、発目用の専用スペースを作ろかとも本気で考えているパワーローダー先生であったが教師という仕事に就いた以上、その生徒に重大な問題がない場合は、余り1人の生徒だけにかかりきりになるのは良くない事なのでそんな事は勿論のこと出来ない。

 

本題に戻るが

 

そんな彼女が作った作品に関わる話を持ちかけたというよりも質問した吉良は彼女の話が度々脱線して、中々自分の質問に答えてくれない事に苛立ちつつも根気よく話を聞いていく。

結局時間にしては20分程続いたところ、遅刻10分前ぐらいで漸く彼女から聞き出すことができ苛立ちからも解放された。

 

それは疑惑が確信に変わった瞬間でもあった。

 

あの時の雄英高校への侵入は単なる門のシステムの故障によるマスコミの迷惑な騒ぎではない。何者かの計画的な攻撃であったと知る事になる。

 

そしてこれまた余談になってしまうが、吉良は発目の話を切り上げる直前にまだ何か他に分かることがあるかもしれないことや、これからの事を考えると優秀な技術者との関係は必要だと思い、度々ここにサポートアイテムの事で来てもいいかと尋ねると彼女からは実験の協力をしてくれるのであればと了承をしてくれた。

さらに彼女は早速これから作るアイテムの為に必要という事で吉良の個性の事を聞かれると学校で戦闘訓練の時に使った能力であれば問題無いと判断して彼女に教えた。

 

これが吉良にとっての悪夢の始まりであった。

吉良が優秀な技術者と判断した発目は確かに見立て通りの優秀で決して劣った人間では無かったのだろう。

だがそれは吉良の想像を遥かに超えていた。教えても問題にはならない。ヒーロー科の生徒に見せた能力を教えれば自分が望む物を、もっと欲を言えばそれ以上の物を作ってくれると、その程度のリスクであれば大丈夫だと。

これからの事を考えるとローリスク、ハイリターンと考えていた。

だが彼女の作品を作る行動力が思いのほか高かったのが吉良をこれから苦しめる原因となる。

とにもかくにも、時間はこうしている間にも進んでいく事になる。

雄英の歴史いや、日本の犯罪歴史上に一大事件として記録される事になる雄英USJ襲撃事件の発生まであと少し。

 

 




次の投稿も早くてこんぐらいの期間だと思います。


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12話

お待たせしました(汗)
1ヶ月近くかけて書いた割には、内容の方があまり進展んしていないかもしれないです。

それではどうぞ!


「あっデクくん!おはよう!」

 

「麗日さん、お、おはよう!」

 

緑谷出久が委員長を辞退して、その後任に飯田天哉を推してから早数日。

 

入学初日に彼が見せたいじめられっ子だった時の挙動不審っぷりも麗日お茶子、そして飯田天哉を始めとするクラスの良き友人達との出会いにより少しずつではあるものの改善されつつあった。

そんなクラスの友人達も緑谷の心優しい性格、さらには最初の戦闘訓練で見せた怪我をしてしまうデメリットはあるものの強力な個性に危なかっしい所もあるが、頼りになる奴と認識されつつあった。

 

「今日のヒーロー基礎学は何をやるんだろうね麗日さん。」

 

「うん?うーんウチはまた戦闘訓練とかやるんじゃないのかなぁと思うんだけど…。」

 

「どうしたの麗日さん?」

 

今まで緑谷が接した麗日さんはいつも明るく、そして優しい。

 

そんな麗日さんが自分の振った話題で何か気を落としている。

雄英高校に入学してから、いや入試の時から彼女に助けられ、そして自分の今までの人生で数少ない友人とも言える人が不安そうな表情をしている。

何故相手が落ち込んでいるのか分からない。人間は理解できないものには、恐怖を抱くというが、こんな時ほど小心者の緑谷出久という人物は慌てずにはいられなかった。

 

「ごごご、ごめん!麗日さん僕は別にそんな君を傷つけるつもりで言ったんじゃ!?」

 

「違うよ!デクくん!別にウチ戦闘訓練が怖いとか、嫌だとか感じてる訳じゃなくてね。」

 

これには、落ち着きを取り戻した緑谷も困惑する。

「え、で、でも麗日さん落ち込んだような顔をしてたから。」

 

「ウチ…心配してるんだよデクくんの事。入試の時からいつも酷い怪我ばっかしてるから心配で。」

麗日の脳裏には、入試の時に緊張した面持ちで転びそうになった彼に個性を使って助けてあげた時の彼が、入試の実技で、個性把握テストで、最後にヒーロー基礎学の戦闘訓練で怪我ばかりしていた彼がいた。

 

この麗日の緑谷を思う優しい言葉にハッとなった緑谷。彼の脳裏には相澤先生の言葉が思い起こされていた。

 

(見たとこ、個性を制御出来てないんだろ。また行動不能になって誰かに(たす)けてもらうつもりだったか)

 

この相澤先生の言葉を今緑谷は、改めて理解させられていた。

 

あの相澤先生の言葉は自分が行動不能になり、怪我を負うだけではない。

ヒーローである自分が不利な状況を見せれば、守るべき人達を不安にさせるだけでなく、その自分を助ける為に他のヒーローが危険な目にあってしまう。

誰かを助けるどころではない。自分が無理をして誰かを助けようとすれば誰かを傷つけてしまう。そんなヒーローに今のままではなってしまう。

 

「ありがとう麗日さん、心配してくれて。僕もっと頑張るよ!」

 

「…。うん分かった。でもあんまり頑張りすぎないようにね。」

 

緑谷の言葉に、まだ少し心の中では心配をしながらも麗日も幾分か安心する。

 

その後、緑谷出久は教室に入る前にトイレに行こうと思いたち、途中で麗日と別れる。

だが、まだ入学してから間もないこと。校舎が普通の学校よりも広かったのが災いしたのか、教室からトイレへの最短距離ではなくちょっとだけ回り道をする形でトイレを目指していた。

 

 

あんな所で何やってるんだろう、吉良君。

 

 

そんな回り道をした緑谷出久は、向かう途中で窓の外の何かをジッと見ている吉良を見つけていた。

 

緑谷出久から見て吉良吉影という男は、失礼ではあるが影の薄いイメージのある人物であった。

把握テストの時に見たインパクトのある強個性にしてはあまりにもかけ離れている程に学校では目立っていない。

自分は見ていなかったが、クラスのみんなの話ではヒーロー基礎学の戦闘訓練の時にはかなり凄いことをしていたらしい。

そのせいで、皆んな彼には話しかけづらいらしい。

 

今は着信があったのか携帯(・・)の方を見ているが、いつもだったら教室にいるのに窓の外を見て緑谷は何をしているんだろうと興味が湧いていたものの後で聞いてみようと思い、先にトイレを済ませることにした。

 

 

 

 

 

 

さっきのは緑谷出久だったな。

 

背後に気配を感じた吉良は携帯のカメラ機能で、緑谷に気づかれる事なく背後にいる緑谷を探り当てていたのだ。

いつもであれば話しかけられる事を嫌い、とっととその場を去る吉良であるが相手が気になっている相手だけにすぐにその場を去ることはしなかった。

 

 

教室から1番近いトイレの廊下を避けていたのに、何やってるんだアイツこんな所で?

だがこれは好都合かもしれんな。

緑谷には近いうちに話しかけようと思っていたし、クラスで緑谷の話題について聞き耳をたてていた感じでは相当なヒーローマニアなようだ。

戦闘訓練も見ている限りでは個性は扱いづらい事この上ない筈なのに、奴はそれをカバーできる程の頭を持っていることは中々に侮れない。少なくとも強個性持ちの爆豪を欺ける程度には頭の回る奴のようだ。

もしかしたらアイツなら、質問をすればこの私の求める答えを示してくれるかもしれんな。

 

 

緑谷出久の後を追おうとした吉良は歩き出した時に思い直して、教室に戻ることにした。

 

 

それは個性把握テストで吉良が見た周りを見ずに考察を始めていた緑谷の姿を思い出していたのだ。

あの様子だと何らかの答えも出るには出るだろうが、膨らみ過ぎた考察で周りを巻き込んだ挙句になにが起きるか分からない。最悪教室が混乱するような危うさが、そんな不確定要素が多いと吉良は判断した。

結果そのまま教室に立ち去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

「こういうタイプだったか、くそう!!」

 

「意味なかったなー。」

場所も変わって時間も進み。

午後のUSJでの救助訓練を行う為、雄英のバスでの移動中の車内で、バスの席位置の当てが外れて悔しがる真面目な飯田をからかっているのかとどめを刺す芦戸三奈。

 

それを横目で眺めながら飯田君頑張ってるなぁ、と緑谷は思いながら救助訓練は何をやるんだろうと考え始めていた時に唐突に女の子から質問をされる事になる。それに少し驚いたものの前のような固さは感じられず、ヒーロー科の高校生活で成長しているのか彼にしては柔らかい対応が出来た。

そもそも突然声を掛けられる事に慣れておらず声を掛けられれば固い口調に挙動不審になる緑谷であるが、麗日や飯田という友達が出来て仲良くなれたこと。先日の戦闘訓練でギリギリではあるものの昔からの幼馴染で関係のあった、ある意味では因縁深い爆豪に勝った事が内心でビックリするぐらいには動揺を抑えて緑谷は蛙吹に話しかけられていた。

だがしかし、失礼ではあるもののカエル顔の可愛らしい子に自分に、そして今この場には居ないオールマイトと共有する誰にも知られてはいけない秘密の核心に迫る一言でもって緑谷は大いに焦ることになる。

 

「あなたの個性、オールマイトに似てるわ。」

 

「そそそそ、そうかな!?いや、でもぼくはそのー。」

 

「待てよ、梅雨ちゃん。オールマイトは怪我しねぇぞ得て非なるアレだぜ。しっかし、増強型のシンプルな個性は良いな!派手で出来ることが多い。」

この時、しどろもどろになっていた緑谷の話を遮る形で切島が蛙吹の質問に対しての似ているという点で否定的な事を言っていなければ誤魔化せていたかどうか非常に怪しい所であった。

しかも緑谷の個性にそこまで反応する人は皆無であり、緑谷の慌てように怪しむ人は居なかったのもあった。

ここまで、今は違うが初めて緑谷に声をかけての挙動不審っぷりを見ていた面々、そして吉良もいつもの事と思い特に気にしてはいなかった。

いきなりの核心を突いたような蛙吹の質問に慌てた緑谷であったが何とかなったことに心の内では安心していた。

何せこのことはオールマイトとの秘密にしているにも関わらず少し前に爆豪に喋ってしまったのだ。

 

バスでの話題が良い感じに、緑谷出久の個性から他の人の個性について話題が移っていなかったら

もし、今の質問で秘密がバレる事はないにせよ、勘ぐられる事になってしまったらオールマイトに対して申し訳ない気持ちと惨めさで二度と顔向けが出来ないと考えていた。

 

 

そんなホッとしたような緑谷を吉良は見逃してはいなかった。

 

 

だが、そんな緑谷を鋭く睨んでいたのは一瞬ですぐさま視線を外してバスの向かい側の窓の景色を眺めていた。

しかし、蛙吹の突然の質問の矛先は緑谷から次に吉良へと移っていた。

それはバスの中の話題が誰の個性が派手で尚且つ強いといった具合に移り、轟は名前こそ上がるも雨吸の素直な評価もとい爆豪の弄りで和やかな、緑谷にとっては驚くべき空気が流れていった具合の時であった。

 

「あなたのこと、吉良ちゃんて呼んでも構わないかしら?私の事は梅雨ちゃんって呼んでいいわ。あなたの個性も中々強いと思うのよ。」

僅かにバス内の空気が和やかなものから数段程緊張が走るものの、蛙吹の言う通り、吉良の能力はこの中でも眼を見張るものがあるのも事実。

中々彼自身に以前より話を切り出しにくかった事も相まってクラスの皆もそれなりには耳を傾けている。

 

「確かに吉良の個性も強えよな。あのパンチのラッシュなんて目で追えねえし、訓練の時もビルの壁を簡単に粉々にしちまったしな。」

 

そんな雨吸と切島の言葉を聞いた吉良だったが、内心この中でも自分の能力は強いという自覚というか自負もあったので全員がこちらに注目するのは仕方がないとして、相手が必要以上の事を聞いてくる以外には何も言わないようにしようと思った。

吉良自身、特段何も感じはしなかった。

せいぜい話を早く終わらせたいと思い、話しかけられたから一応顔を雨吸の方に向けはしたが、それがどうしたという感じだった。

 

「えぇ、そうね。切島ちゃんの言う通りパワーの方も強いと思ったけど、吉良ちゃん…あなたの能力は本当にそれだけなの?」

 

尋ねるような雨吸の言葉に彼女が言いたいことを薄々感じつつも吉良はあえてしらばっくれようとしてみる。

 

「言っている意味がよく分からないなぁ。何が言いたいのかな?」

 

「あなたの個性はあの強い人型だけなのって聞いてるのよ?あの時轟ちゃんを吹き飛ばしたのって、あなたの仕業なんじゃない?」

 

「…。」

 

クラスの全員が気になっていた事を雨吸が代弁する事で知り得そうになり、クラスから注目の的になる吉良。

 

その事に若干不機嫌になりながらも、自身の服の上着からポケットティッシュを一枚だけ取り出して、腕だけを出したキラークイーンに触れさせた。

そして、すぐにそれを放すとフワフワと重力に従って下へと落ちていくティッシュを半分困惑しつつも眺めるクラスであった。

しかしカチリという何かのスイッチを押す音ともに軽い炸裂音とティッシュを中心にというか、何の変哲も無かったティッシュ自体が爆発し、ビックリしつつも先程まで落ちていたティッシュが跡形も無くなっている事に気がつき、ほとんどの生徒は驚きのあまり声も出ていなかった。

 

「これが君のいや、君達が気になっていた能力だ。」

静かになったクラスに、なおも続けて言う吉良。

「私のス、個性の亜人は触れたモノ(・・)を爆弾に変えることが出来る。例えティッシュであろうと、それがモノであれば爆弾にすることが出来る。」

 

この時、吉良は本当の事を言ってはいるが本当の事を言ってもいなかった。

嘘とは全部が全部真っ赤なウソであればすぐにバレてしまうものであるが、真実の中に重要な情報を隠すための少量のウソを混ぜると中々相手にはバレにくいものである。

吉良もそれを実践して、誰にも手動での点火の方法を見られることもなければ接触爆弾も、第2の爆弾も、人間等の生物すらも爆弾に出来ることを教えることはなかった。

ティッシュを爆弾にして落としたのも、クラスの視線をそこに集めて触れたものを爆弾にするという印象を相手に強く与えて肝心の起爆方法、加害範囲を教えることは無かった。

戦闘訓練で第1の爆弾自体も見られていることから遅かれ早かれ推測されるであろうということを考えて他の部分をボカそうとのことであった。

 

ちなみに奥の手でもある。第3の爆弾(バイツァ・ダスト)については誰にも知られてはいけない秘密であった。

それこそ知られた場合には十分に脅して喋らせないようにするつもりであったが、最悪その存在をなんらかの手段で知られて喋られる可能性があれば行方不明(殺す)にすることも考えていた。

 

クラス全員が想像していた以上に強い、いや凶悪なキラークイーンの能力に驚いていた。

先程の盛り上がっていた空気から妙な静寂に包まれたバスの車内は痛いほどに静かであったが何人かは気にもとめていなかった豪胆な人もいるにはいた。しかしそれを気にもとめずに運転をしていた相澤先生からもうすぐ着くとの言葉を聞いて、ゆっくりとスピードを落とし始めたバスの車内は幾分か先程の居心地の悪い静寂からは幾分かマシな、真剣に授業に臨もうという空気へと変わっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「スッゲー!USJかよ!!」

 

会場を見渡せる場所にきた瞬間にそのスケールの大きさから、先程のバスの車内での真剣な空気は吹き飛んでしまい、興奮する生徒達。

 

先に会場で待っていたスペースヒーロー13号先生はそのはしゃいでいる様子のヒーロー科の生徒達にたしなめるように、見事なまでの話を披露していた。

また、話の終わりの最後にお辞儀をするあたり彼の世間からの紳士的と言われている由縁が出ているところでもあった。

そんな先生の話を聞いて、先程のはしゃぎっぷりが嘘のように集中して話を聞いていた生徒達の中で、珍しく吉良もまた話を真剣に聞いていた。

 

つまるところ話の内容として大雑把に要約すると、前の授業の戦闘訓練では自分の個性の力を相手に使うのはどれほど危険かを学んだから、今回はそれを人を助けるために使おうというものである。

 

吉良も本人の意欲はともかくとして、ヒーローを目指す生徒の1人である。

今まで、将来は戦闘を主な活動にしたヒーローになるだろうと意識して考えていた吉良にとっては13号先生のお小言もといスピーチは拝聴するに足る最もなものであった。

成功して研鑽を積めば応用出来るものがあるかもしれないという打算もあって今度からは救助の分野でのキラークイーンの使用も真剣に考え始めていた。

 

傷を直したり、物を治すことが出来る能力である東方仗助のクレイジーダイヤモンド。

更にその能力の強さは作られた料理や、アスファルトを原材料にまで戻すことが出来るほどに強力でしかも、物語の終盤では出血して物体になった血を使って自動追尾弾という攻撃的な一面も見せている。

能力からしてヒーラーとしての面が強いにも関わらず、戦闘面でも積極的にその能力を使用することによって数々の強敵を打ち破っていた。

 

能力を最大限に活かした戦法を新たに生み出すには様々な視点が必要と考えていた。

 

今回の救助訓練は吉良にとってそのための第一歩になるであろう。

 

 

 

 

 

 

 

予定通りに授業が進んでいれば。

 

 

「一かたまりになって動くな!13号生徒を守れ!!」

 

 

雄英高校USJ襲撃事件の始まりである。

 

 

 

 

 

 

 

 




次の更新も長くなりそうですが、長い目で見ていただければ幸いです。



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13話

ごめんなさい、なかなか物語が進まない上に次も多分遅くなるかと思います。
ですが面白くなる様に精一杯頑張って書きたいと思います

それではどうぞ!


(ヴィラン)!!馬鹿だろ!?ヒーローの学校に入り込んでくるなんてアホすぎるぞ!」

 

「先生!侵入者用センサーは!」

 

「もちろんありますが…。」

 

突然の事態に驚きながらも、黒いモヤから続々と現れる(ヴィラン)に信じられないといったように反応する切島と、突然の非常事態にも関わらず幾分か冷静に対処をする八百万 百の意見にスペースヒーロー13号はなおも黒いモヤから現れる(ヴィラン)から視線を切ることなく返事をする。

だがその返事を聞いて、他の生徒が安心するよりも早くそれに否定的な意見を口に出す生徒が1人いた。

 

「現れたのはここだけか、学校全体か…なんにせよセンサーが反応しねぇなら向こうにそういうことできる個性(ヤツ)がいるってことだな。校舎と離れた隔離空間、そこに少人数(クラス)が入る時間割。バカだがアホじゃねぇ、何らかの目的があって用意周到に画策された奇襲だ。」

 

冷静に状況を分析し、轟の言ったセンサーが反応しないという事実を理解した面々は深刻すぎる自らの置かれた状況に顔を青くする者もいたが、大半は直ぐに立ち直り、入学して間もない生徒達はまさかの実戦という事態に緊張しながらもヴィランに立ち向かうヒーローの目となっていた。

クラスのほぼ全員が迫り来る脅威から戦う決意をしたのを見て、吉良は平静を装いながらも内心では他の先生が来るまでどこまで持ちこたえられるかを恐れていた。

 

 

 

 

何ということだ。

勇ましいのは実に結構だが、この状況はその場のノリと勢いだけで切り抜けられる程甘くはない筈だ。

だが少なくとも、ヴィランの主目的は我々(クラス)を殺すとかそういったものではない筈だ。

ここまでの人員と、轟の言う通り絶妙に隙を突いたかのような計画が作れるようであれば無防備でひと塊りになってバスに乗っている時を狙う筈だ。

正確には、意識的にも奇襲が出来る降車直前であれば取り囲んで我々を皆殺しにできる筈なのだ。出来なかったとしても圧倒的に優位に立つことが出来る。

私であれば、絶対にそうする。

そもそも、雄英の生徒を殺すのであれば登下校とかでゲリラ的に仕掛けて殺しても十分な筈だ。

大勢の生徒を殺すよりもリターンは無いだろうが、これほどまでの計画をたてておきながら、ただ我々を殺すだけだとはとても思えない。

ゲリラ的に仕掛けてくるのであれば、対応策が図られる前に何人かに対しては成功して、『生徒を守れない無力なヒーローとして』そんな格好のネタを掴んだハイエナの如きマスコミが騒ぎ立てるだろう。

ここまでの計画性からかなり頭がキレる奴の筈なのに、そんな非効率でハイリターンな事をするとは思えない。

ということは何か分からんが大人数での襲撃をするだけの別の目的がある筈なのだ。

 

 

そして私にとって最も重要なのは救援を学校から呼んだとしてもこの窮地を抜け出すことが出来るのかである。

 

 

この状況下で、さしもの吉良もあの不可解であったマスコミ侵入事件以降から自身が感じていた先生側、いや学校の不審な対応と他の生徒や普通科の先生達への情報規制はこれを警戒してのことだったのかということを理解した。

もっとも今更理解したところで喜んではいられるような状況ではなかったし、この危機的な状況が改善される訳でもないのではあるが、何らかの事件が起きると学校側が予測できているのであれば、救援を受けた段階で迅速な対応が可能であると推測していた。

 

それであるならば、一気に決着をつけるような短期決戦での未だに増え続ける何人いるかも分からないような大勢のヴィランの各個撃破を狙うことは危険すぎる。

危ない橋をこちらから渡る必要はないのだ。そんな方法をとればクラスにとって本物の戦闘という最初で最後の授業となってしまう。そして授業料の対価は自らの命で払うことになる。

 

それならば今出来る最善の策は何とかして学校側に応援を呼んで、戦力をあまり消耗しないようにひと塊りになるか、最低でも複数のグループでチームを組み、互いに攻撃されないようにカバーしあうことで、戦いを長引かせて学校からの救援部隊と合流すること。

 

それで奴らが撤退するも良し、向かって来るのであれば全滅させるだけだ。

 

最後の手段としてこれだけは使いたくはないが、自分の命を優先的に考えて行動することも考えなければ。

 

吉良が最後の手段としてではあるが、非情にも仲間を切り捨てる事を考えている間にも時間は進んでいく。

吉良がヴィランの動向から目を離さずにこれからどうすべきかを思案している間にも、相澤先生は無謀にも黒いモヤが現れていた噴水広場に突っ込んで行くのを見て

 

何をやっているんだアイツは!?

 

と内心で驚嘆し、そして怒り狂っていたがそんな吉良の心配は杞憂に終わる

 

「すごい!多対一こそ先生の得意分野だったんだ。」

いくら相手の個性を消すという能力が強くても、流石にあの数では囲まれて終わりだろうと無謀すぎる相澤先生の行動に憤慨していた吉良は、現役ヒーローの先生が早々に負けてしまうということは、戦力的にはこの際ともかくとして吉良以外の他の生徒の心情的に多大な影響を与えると簡単に予想できたが、逆にヴィラン達を圧倒しているのを見て、良い意味で期待を裏切ってくれたと胸を撫で下ろした。

 

「分析している場合じゃない!早く避難を。」

 

切迫した13号の言葉に多数のヴィラン達を圧倒している相澤先生の戦いぶりについ見とれていた生徒達もハッとなって急いで行動するよりも早く狡猾なヴィランは既に動いていた。

一瞬の判断の遅れ。それはあまりにも大きな失敗に繋がった。

 

「させませんよ」

 

 

広場で戦っていた相澤先生のほんの一瞬の隙を掻い潜ってきたそのヴィラン。

 

黒霧は生徒達の退路をその名前に相応しい個性である黒いモヤを広げて唯一の逃げ道を一瞬で塞いでしまった。

 

「初めまして、我々はヴィラン連合。」

 

丁寧な口調からの話始めは13号と同じであるが、その禍々しい個性と目と思われるところから覗かせるその白い目は冷たい敵意の眼差しを今まさに避難をしようとしていた生徒達に向けており、とてもではないが13号先生とは丁寧な口調以外は似ても似つかない存在だ。

 

「せんえつながら、この度ヒーローの巣窟雄英高校に入らせて頂いたのは、平和の象徴オールマイトに生き絶えて頂きたいと思ってのことでして。」

 

誰もがそんな馬鹿な。

と誰もが思ったことだろう。

 

そう思えればどんなに気楽でいられたか、だがしかし現実には今まさに目の前にその脅威が存在するのである。

しかも先程の轟の話していたことが、その脅威を後押しして、生徒達の不安を煽っていた。

 

吉良もまた相手の目的を知り驚いていた。

 

平和の象徴を殺す。

 

たしかにヒーローにもなっていないただの子供を殺すよりも社会的に大きな影響を及ぼすということは簡単に想像できる。

しかしそれが出来るかといえばそれはただの普通の人間が怪獣を倒そうとするぐらいに不可能に近いものであり、普通はまず考えないものだ。

 

それぐらいオールマイトはこの個性社会でも人間離れした平和の象徴(超人)なのだ

 

相手の目的の内容が内容だけに、他の目的を隠す為のブラフだと考えたがそれは違うと自身で否定する。

ここまでの敵の計画性と見計らったかのような襲撃に吉良は相手が本気で今宣言した事を少なくとも致命的な怪我を負わせるだけの計画と力があるのを確信した。

 

「本来ならば、ここにオールマイトがいらっしゃる筈ですが何か変更があったのでしょうか?」

 

そして殺害を目的としたグループが、それを準備してきた奴らが相手が違うとはいえ目の前にいるただの子供を殺すことを躊躇するはずがない。

必要とあらば容赦なく殺す集団だ。

 

ますます下手に動くことが出来ないぞ。唯一の救いは今いるヴィランは統率の取れた集団ではないということだ。

相澤先生に襲いかかったヴィランは、簡単に蹴散らされているところからして、そこらにいるような数合わせの有象無象であるということ。

そして相澤先生とは離れてしまったがまだクラスは集団で固まっているということだ。

 

しかし目の前の奴は、そんな有象無象ではなく計画を進めた主犯か、その仲間である可能性が高い。

 

「まぁそれとは関係なく…私の役目はこれ。」

 

くる!何か、何かをする気だ!!

 

比較的後ろの方にいた吉良は身構えると同時に、攻撃を仕掛けようとする黒霧から一瞬たりとも目を離さなかった。

向けられた敵意に反応するのは人間に関わらず当然動物にも備わっているもの。

むしろ大抵の人は誰かに殺されるといったようなことからは自分は無縁だと変な自信を、いや無関係だと思っている人が多い。

故に、先手必勝とばかりに黒霧に攻撃をしようとしていた切島と爆豪に吉良は気付くのが遅れた。

もしも気付くのが早ければ、吉良は殴ってでも2人を止めようとした。

初手で倒せられるか分からない。なんの能力かわからない相手に短絡的な行動は非常に危険であるからだ。

 

「その前に俺たちにやられる事は」

 

「考えてなかったか!」

切島の鉄よりも硬くなる個性を使った攻撃と爆豪の爆発を至近距離にくらったにも関わらずあの黒モヤのヴィランはこうげきされたところのモヤがちょっと吹き飛ぶだけでまるで何事もなかったかのように動じずにそこに立っていた。

 

「危ない、危ない。そう生徒といえども優秀な金の卵。」

 

「ダメだ、どきなさい2人とも!」

 

ヴィランとの間に攻撃を仕掛けた2人がいるために、13号先生の個性での攻撃をすることが出来ない。

その事を前にいる2人よりも早く察した吉良は前にいる2人に腹を立てながらも、急に悪化し始めた状況に良くないものを感じていた。

そして、吉良が行動を起こすよりも先に黒霧は早く動いた。

 

「散らして、嬲り殺す!」

 

一気に生徒達(1-A)をの両翼を包み込んだ黒霧の個性はそのまま生徒達を押しつぶすように、黒モヤが生徒達を飲み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 




USJ編まではヒロアカの小説を書き続けたいと思っていますが、その後はもう一本の作品を最後まで進めたいと思うので、かなり長い間お待たせする事になるかと思います。


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14話

はい、皆さま大変お久しぶりでございます!

8ヶ月振りの更新でお待たせしてしまい大変申し訳ありません!!
物語の進行的には文字数が今までの3倍近くにもなっているくせに、あまり進んではおりません。
他の投稿している奴を進めるために、時間が掛かってしまいました。
そっちも一年半近く進めてないというドンガメっぷり、構想の都合上2話連続で投稿できるように準備をしていました。(まだ準備中)

もう忘れている方ももちろん多いと思いますので、読み直すのがめんどくさい方は大雑把ではありますが物語を少し解説します


USJへ救助訓練に訪れた吉良と1-Aは死柄木率いるヴィラン連合の襲撃に遭う。
なんと彼らの目的は平和の象徴オールマイトの抹殺であった!!
相澤先生ことイレイザーヘッドは広場で多数のヴィランを迎え撃ち、出入り口では1-Aとスペースヒーロー13号先生に黒霧が襲いかかる。
その戦闘の最中、黒霧の策略により1-Aは散り散りになってしまう。


はいほぼっていうか全部原作通りになります。
とりあえず今回は大人しめに変わってきてます。

ではどうぞ!


〈水難ゾーン〉

 

 

「ありがとう、蛙吹さん。」

 

「梅雨ちゃんと呼んで。しかし大変なことになったわね。」

黒霧の策略により1-Aの生徒達らはUSJ中央広場を中心に様々な災害ゾーンに少数でしかもその災害ゾーンでの地理に特に効果的な個性を持ったヴィラン達がいる場所にワープさせられていた。

この水難ゾーンでは水中での戦いを得意とする個性を持ったヴィラン達が集められ、飛ばされて来た緑谷、蛙吹、峰田の3人を標的として襲い掛からんとしていたが、この水難ゾーンに飛ばされた中で最も機動力の高い蛙吹の機転で緑谷と峰田は辛くも一時的にではあるが危機を脱出して中央の船へと逃れることが出来ていた。

 

「カリキュラムが割れてた。単純に考えれば先日のマスコミ侵入は情報を得るために奴らが仕組んだってことだ。轟君が言ったように虎視眈々と準備を進めてたんだ。」

いつも教室では穏やかな表情を見せていた緑谷からは意外なほどに厳しい表情と口調に自分達の置かれた状況があまりよろしくない事を改めて認識する蛙吹は心中では不安ではあったが決してそれを顔に出すことはなかった。

 

「でもよ!オールマイトを殺すなんて出来っこねえさ!オールマイトが来たらあんな奴らケチョンケチョンだぜ!」

そんな彼女の心中を知る由もない峰田の楽観的な考えは分からなくもないが、現状はそこまで事が簡単に進むとはとても思えなかった。

 

「…。峰田ちゃん。殺せる算段が整ってるから、連中こんな無茶してるんじゃないの?」

彼女が比較的に冷静な判断が出来る人間であったということもあったが、不安を口に出すことはおろか心の中で思ってしまうことでさえもそれが現実に起きてしまいそうで恐ろしかったからだ。

だが、だからといって言わないままにしておくことは出来なかった。してはならなかった。

 

「そこまで出来る連中に私達嬲り殺すって言われたのよ。オールマイトが来るまで持ちこたえられるのかしら?オールマイトが来たとして無事に済むのかしら?」

悲観的になりすぎるのも良くないが、今は最悪もまた想定して動くのが最も最善だと蛙吹もまた不安になりながらも彼女は自身にも言い聞かせることも含めて峰田の主張を否定した。

 

「み、みみ緑谷ぁ!」

 

悲鳴にも近い、峰田の言葉を無視してでも緑谷は思考を途切らせない。

そしてそうこうしている間にも

 

「んのやろぉ!殺してやる!!」

飛ばされてきた生徒達を水中という自らのホームグラウンドで殺すことのできなかったヴィラン達が、一時避難をしていた船の周りに20人近くにも登るヴィランが緑谷達3人を取り囲み始める。

猶予はあまりにも残されていなかった。降参はもってのほかで、戦うにしても奴らに勝つ方法はまだ見いだせていなかった。

 

「奴らにはオールマイトを殺す算段がある多分その通りだ。それ以外考えられない。」

 

なんで殺したいんだ?

1人で平和の象徴と呼ばれる人だから?

(ヴィラン)…悪への抑止力となった人だから?

 

そもそも何で今なんだ?

 

いやちょっと待って。ま、まさか今襲う理由なんて

 

緑谷の記憶にはオールマイトから、その平和の象徴を、オールフォーワンの継承者に選ばれた自分に語られた公には出来ない真実を語ってくれた時のことを思い出していた。

 

かつて戦った巨悪との戦闘により負った重傷が原因で活動時間が3時間しか持たないこと。

世間には知られていない、知られてはいけない。

平和の象徴の大幅な弱体化。今の日本いや世界にとってそれだけ影響がある人なのだ。特にオールマイトという存在はそれ程の人だ。

人を(たす)けるという事は、ヒーロー活動の中で基本的な事であり、最も重要であり、さらに難しいものである。

 

それを当然のようにヒーローとして完璧にやってきたオールマイトはそれ以外にも平和の為に凄まじい活躍をしてきた。

 

その事実があるからこそ、ヴィランは悪は動けない。

 

しかしオールマイトの替わりを務められる人間が、いや超人が彼が引退した場合すぐに現れることも無いであろうということもまた事実であった。

あそこまでの大怪我と少ない活動時間を考えれば、引退もすぐ未来の話の筈だ。

 

こんな事が公になればまず間違いなく、治安は悪化する。

闇の中に息を潜めてジッと機を伺った真の(ヴィラン)がオールマイトの弱体化に付け入り必ず行動を起こす。

オールマイトを狙う者だけでなく平和を破壊しようとする者が必ずいる

 

しかし何処から一体、誰がそんな事を何故、今襲撃しているヴィランはそれをどうやって知ったのだ?

 

考えても埒があかない緑谷は今はそれよりもと考えるのをやめる直前に内通者では?と恐ろしい考えが浮かんだ。

 

考えられる中で最も最悪な仮定。

それならまだ、情報がもれていた方がまだマシであった。

 

すぐさまその考えは無いと否定する筈だった。

 

だが事件直前にあるものを見た緑谷はそれを思い出していた緑谷はそれを完全に否定する事が出来なくなっていた。

偶然見かけたそれは事件の前兆としては余りにも無視できず。余りにも確かめなければいけない真実であり、内通者という存在を完全に否定出来ないものであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝にトイレに行く途中で見かけた窓の外の校門に注意深くジッと目を向ける吉良吉影。彼の姿を思い出していた。

 

 

 

 

緑谷の中に小さくはあるが人生の憧れの人であり、師でもあるオールマイトを守るために戦うという闘志と殺させてたまるものかという意思があわさり吉良への猜疑心を抱かせていた。

疑わしいという結果を持って今はそれで内通者の考えを終わらせて、目の前にいるヴィラン達との戦いに勝つことへと緑谷は思考を切り替えた。

 

「奴らにオールマイトを倒す(すべ)があるんなら」

戦って勝てるのかと内心では恐れている蛙吹と峰田は、緑谷の静かではあるが力強いその言葉に自然と聞き入っていた。

 

「僕らがすべきとことは戦って勝つ(阻止する)こと!」

 

 

 

「何が闘うだよぉぉ!馬鹿かよぉぉ!オールマイトぶっ倒せるかもしれねぇ奴らなんだろ!!矛盾が生じてんぞ緑谷!!雄英ヒーローが助けに来てくれるまで大人しくが決まってらい!!!」

蛙吹が不安を煽ったお陰なのか、緑谷の言葉にすぐさま拒否反応というかヒステリックを示す峰田の主張はあながち間違った答えでは無いが、この追い詰められたこの状況。相手がこちらを殺す気でくるこの状況ではどっちみち迎え撃たねばならないので戦うしか道はない。

 

「峰田君、下の連中明らかに水中戦を想定してるよね。」

 

「ムシかよぉぉぉぉ!」

 

「このUSJの設計を把握した上で人員を集めたってこと?」

尚も絶叫をあげる峰田のかわりに蛙吹が答える。

 

「そう、そこまで情報を仕入れておいて周到に準備してくる連中にしちゃおかしな点がある。この水難ゾーンにあすっ…つっ梅雨ちゃんが移動させられてるって点!」

 

「自分のペースでいいのよ。」

 

「あっそうなの。」

 

「だから、なんなんだよぉぉぉ!」

先程から若干蚊帳の外状態にされていた峰田が緑谷の言いたい事が理解できずに噛み付いてくる。

蛙吹も同意見だったのか、話の続きを聞きたそうに緑谷を見る。

 

「だから、つまり生徒(ぼくら)の個性は分かってないんじゃない?」

 

「「!!」」

ここまで説明がされ、たしかにそのとうりだと2人は特に緑谷が注目した蛙吹は納得した。

 

「蛙のわたしを知ってたら、あっちの火災ゾーンにでも放り込むわね。」

緑谷の主張に補足するように蛙吹が言う。

 

「僕らの個性が分からないこそきっとバラバラにして数で攻め落とすって作戦にしたんだよ。」

「数も経験も劣る。勝利の鍵は一つ!ぼくら(生徒)の個性が相手にとって未知であること。敵は船に上がろうとしてこないこれが仮説を裏付けている。」

だが、緑谷は内心で不用意に上がってこないヴィラン達は確実に自分達の事を子供だからとて侮っていないという事も理解し、自分達にとって本当に有利なのは個性を知られてないということだけであった。

 

「…。」

峰田は不安だった。

緑谷が言った言葉に微かに希望は見えていたが、それが尚更のこと彼の不安そして迷いを生じさせていた。

戦うという緑谷の案が最善である事は分かってはいるが何も積極的に戦うよりも、持久戦を行いヒーローの到着を待った方が良いという考えも捨てきれてはいなかった。

自分の力量を、そして心の中では諸刃の剣的な個性の緑谷の個性が戦闘に不向きである事を知っているが故に積極的に戦おうという選択肢は峰田は下策だと思っていた。

仲間の足を引っ張ってしまうのではないかと恐れていた。

この時、持久戦という似たような考えを導き出していた峰田そして吉良であったが似たような考えの2人の決定的な違いは峰田は吉良のように自分だけでも生き残る方法を考えもせずに自分よりも仲間の事を大切に思っており、逃げようとはせずに少なくとも3人で戦うおうとするあたりは峰田もまたヒーローの器に相応しい勇敢な人間である。

 

そして、各々の個性の詳しい情報を早速各自で話し始めた。

 

緑谷出久は超パワーの個性ではあるものの先程も述べたように、その力の反動で重傷になる諸刃の剣。

反動で怪我をするような個性は戦いとなると限定的というか使い所が難しく、救助活動ではむしろ足を引っ張るようなものである。

2人には勿論のこと話してはいないが、その個性の正体は現平和の象徴であるオールマイトから受け継いだ人から人へと受け継ぐという前代未聞の個性。

その個性を受け継いだはいいものの、それへの習熟が完璧ではなかった。

調整が難しく失敗すれば反動により重傷を負ってしまうというデメリットである。

バットに振り回される野球少年のごとく緑谷は受け継がれたその力を使い切れてはいなかった。

短期決戦ではともかくとして、このような相手が何人いるかもわからない相手では闇雲に使えば圧倒的にピンチになる可能性の方が高いと言えた。

 

蛙吹梅雨は個性(カエル)という、この中で唯一の水中での戦闘が可能であり、その個性名の如く蛙にできる事は大体出来るとのことであった。

例えば胃を丸ごと出して洗ったり、多少ピリッとする程度の粘液の分泌等だが勿論戦闘ではあまり役に立たない。

しかしカエルは生物学上(彼女は人間ではあるが)陸上での活動も可能なため、水中、陸上共に活動ができるという。

この水難ゾーンでは機動力に長けているオールラウンダー的な存在で、唯一この場にいる(ヴィラン)に対抗出来るであった。

 

峰田実は、頭に付いている髪の毛ではない粘着性のある球体状の物を使った能力。

この球体状の物(本人曰くもぎもぎ)はその日の健康状態により粘着性が変わり、それを本人が触ってもくっつかずに跳ねるというものである。だがしかし、このもぎもぎを取りすぎると出血してしまう。

蛙吹とは比べてるまでもないとして、緑谷と比べると峰田の個性はそれよりかはマシといった程度ではあるが、本人はそうは思わなかったのか説明していた時は落ち着いていたのに話終えた後にそれだけ?と言った2人の様子を見て、自分の個性の不甲斐なさに絶叫に近い非難?自虐?をしている。

 

そして、そうこうしている間にも痺れを切らしたヴィラン達は船の上にいる緑谷達を確実になおかつ有利な状況で殺すため、船に穴を開けて彼等を水中に引きずり込もうとしていた。

 

追い込まれていく緑谷達。まさに絶望的な状況であった。

 

だが、

 

「「敵が勝利を確信した時が大きなチャンス」昔、情熱大陸でオールマイトが言ってた。」

 

「勝つには、これしかない。」

 

「な、何を?…!!」

峰田は見ていた、そして分かった。

震えているのを、自分と同じように震えるほどに怖いのだと。

 

 

しかし緑谷は自分とは違ってただ震えてヒーローに助けてもらうのを待つのではなく、それに立ち向かおうとしていた。

ヒーローになりたいと思ったのは下心があるのは自分も自覚しているが、幼い頃からずっと憧れてきたカッコいいと言われるヒーローになりたいと思っているからだ。

だが中学の頃、周りにいた人間の誰よりもヒーローに憧れていた自負はあった。あったからこそ、努力してここに来た!!

 

峰田には緑谷の背中はそんな頼もしいヒーローの背中を、誰かを助ける憧れの人間の背中を見ている気がしていた。

 

体はまだ震えているが、やってやろうと戦って倒してやると峰田は決意した。

さっきまでの心の怯えは吹き飛んで、急に体の底から力が湧いてくるような気がした。

 

緑谷お前だけにいいカッコはさせねぇぞ。おいらだってヒーローになりたいんだ。誰にも負けないおいらだけの個性で強くなりたいんだ!

 

時間にして五分程と言ったところか、戦闘は終わった。

いや戦闘というには、あっけないものでほぼ緑谷の作戦勝ちと言ったところである。

 

緑谷の超パワーで、待ち構えていた敵もろとも水面に穴を開け、その水が周りを取り囲んでいたヴィランを巻き込む形で急速に集まったところにすかさず峰田がもぎもぎを大量に投げ込んでまさしくひと塊りにして拘束した。

 

こんなあっけないほどの勝利が緑谷を緑谷達を錯覚させてしまった。

緑谷には知りもしない事ではあるが、たかだか寄せ集めのゴロツキに勝っただけの事でプロヒーローが戦っている邪悪なヴィランに通用すると思ってしまっていたのだ。

蛙吹も、峰田もそれを惑わされ、緑谷を止めることはできなかった。

 

‘‘やばくなったら逃げればいい’’と逃げられる保証も根拠もないのに、いやその考えすら思いつかなかったという方が正しいのかもしれない。

 

彼らもまたヴィランに通用すると勘違いしたが故にである。

 

 

 

 

 

 

同時刻

 

 

 

 

 

 

 

黒霧は油断していなかった。

 

さしもの黒霧でも最初あの場所に災害救助が専門ではあるがプロヒーローの一角である13号と戦闘経験は皆無ではあるが能力の強さは未知数の生徒達を纏めての戦いに簡単に勝てるとは思ってはおらず、むしろ不確定要素の多い相手で注意を怠ってはいなかった。

 

故に彼等を確固分散しての生徒達の撃破は無理でも足止めをさせるために今日までに集めた社会からのはみ出し者のヴィラン(ゴミ共)や過去にオールマイトやプロヒーローに捕まりヒーローという存在に対して強い恨みを持つ犯罪者(捨て駒)を中心に仲介人を通して集めさせていたのだ。

数だけは大所帯であり連合の名にふさわしい規模ではあったが、内情は所詮、底辺の中の底辺を集めたゴロツキの集団。

 

身内でいつ仲間割れや裏切りが発生するかも分からない不安定なものであった。

 

それ故に最初から仲間同士の連携など望むべくものではなく、集め始めたのが計画実行の1週間前でこれは極力情報の漏洩を防ぐ意味合いもあった。

校舎からは離れているとはいえ、そこは天下の雄英高校であり経験豊富なプロヒーローが集中的にいる場所で、今回の計画の一翼を担った者としては油断をすることもしなければ、ましてや過小評価は愚の骨頂であると思っている。

どこまで計画のための必要数を揃えられるかに計画の成否はかかっていたが、黒霧が心配するほど数は集まらなかったわけではなく寧ろ予想よりも多く集まっていた。

これにより計画成功の為の精鋭(個性にのみ)を集める事が出来ていた。

 

そして計画へ参加するかの否かを聞き参加するならば追って連絡するとし、否と答えれば万が一の情報の漏洩を防ぐために口封じをする。否と答えた者たちで逃げる事が出来た者はいない。

運が良くてもDr.の人体実験の材料になるだけで行き着く先は一つ。

 

この世から消えるだけであった。

 

今回の駒を集める為の仕事を請け負った仲介人は一見信用を失うという損をしている様に見えるが、実は黒霧からも迷惑料として金を貰っておりこうなる事は既に両者の間では織り込み済みであったのだ。

そもそも声を掛けられた彼等は何処にも行き場のないはみ出し者で寧ろ仕事の邪魔になるような輩には綺麗サッパリ消え去ってもらった方が周りの他の組織への好感度アップに繋がるという仲介者にとっては金もかせげる一石二鳥の商売であった。

 

故に今回の作戦はオールマイト(平和の象徴)の暗殺がなされるためならば、捨て駒達の屍がいくら転がろうとも問題ではなかった。

そしてゴロツキの相手をする生徒がついでに死ねば、ラッキーといったものであった。

 

このように黒霧は全く生徒達を過小評価どころか過大評価するぐらいには雄英の生徒達(ヒーローの金の卵)を警戒していた。

 

そのはずなのに

 

「流石、委員長!」

 

「しゃあぁぁぁぁぁぁ!!」

出口に走り去った飯田の背中に声援を送った佐藤と女子というよりも男性にいるような熱血系の勝利の雄叫びを上げる麗日。

 

無重力でフワフワと出口とは反対方向に飛ばされていきながら、黒霧は今までの人生で久方ぶりとなる嫌な予感を感じていた。

 

「…応援を呼ばれる。」

ゲームオーバーだ。

と呟きそうになるのを途中で辞めた。

自分の個性が物理攻撃無効であることを良いことに、油断して痛い目を食らったのはこれまで何度もあった。

 

逆に隙を見せたこの私に襲いかかった連中を罠にはめて殺してやった。

それの方が、自分の企みが成功した方がよほど多かった。

ではなぜ、なぜ逃げられた?

途中まで罠に誘導しているところまでは上手くいっていたはずなのに

 

 

だから、私は相手に背中を見せたとしても警戒は怠っていなかった。

 

だから、あの小娘が出口に向かうメガネを援護するために私に近づいてきたのは分かっていた。

 

だから、私はあの小娘を転ばせてメガネへの援護を許さずにメガネはガキどもの目の前で真っ二つにすることができたはずなのに。

誰も逃げられない絶望を与えることが出来たというのに

 

「くっ!一体誰だ?あの時、私を攻撃したのは?」

 

 

 

数分前   USJ正面出入口

 

 

「ちょこざいな!外には出させない!」

 

「くっ!」

 

走る。

 

走る飯田の10メートル先には出入口がある。

ほんの数秒もあればあの出入口に到着できる短い距離と少ない時間。

だが今の彼にはあの扉までの距離が、そして何よりももっと早く走れない自分が憎くてしょうがなかった。

 

唯一目の前のヴィランに対抗できる個性を持った先生(13号)はやられてしまった。

出口へと向かう最適な隙を伺っていた飯田は、これ以上は隙を伺うということが出来ないと悟った。

走り出した今はなによりも最速で最短であのヴィランよりも早く走らなくてはあの出口の、扉の向こう側に早く行かなければ、みんなを救えないとそう思った。

 

 

だが現実は飯田を今以上に早く走らせてはくれなかった。

 

「生意気だぞ、メガネ!」

あっという間に飯田に迫ってくる黒霧。

この時、黒霧が注目していたのは背を向けて走る飯田ではない。

その援護のためこちらに向かって走る麗日に注目していた。

 

いくらどんなに早くても、たとえ私より早くても出入口の扉を蹴破るにせよ開けるにせよ必ずスピードは落ちる。

その落ちる瞬間を狙えば確実に仕留められると確信していた。

今、脅威なのは無防備に出入口に走る者ではなく援護のために私に攻撃できる確信を持って走ってくるあの小娘。

小娘の攻撃を許せばこちらが、少しでも対処できる時間が無くなればメガネには逃げられて応援を呼ばれる。

 

ゲームオーバー、撤退しかなくなる。

 

故に小娘の進行上にいつでも私の個性を発動できるようにし、私の弱点である部位を晒した。

エサを付けた釣り針を垂らし、あとは魚が食らいつくのを待つのみ。

 

あとは念には念を入れて、疑似餌のように私が気づいてない最後のお芝居をして終わりだ。

 

「消え」

その時、黒霧はこちらに向かって飛んでくる石が見えた。

誰が投げたのかは知らないがあの小娘以外の者の援護のつもりかなんなのかは分からなかったが、勇敢にこちらに走ってくる小娘以上に脅威ではない。そんな事をしても無駄だと思い無視した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それが爆発するまでは

 

ドグォォォォォォォオン

 

 

「ぐっ!?」

この爆発は!さっき飛ばしたあの金髪のガキか?!もう戻って来ていたのか!?

 

この時、黒霧は飛んできた石から興味を無くし視線を切った事から飛んできた石自体が爆発したこの攻撃を爆豪のもの勘違いした。

だが、そうではないことに気づくよりも早く自分の体重が軽くなったような、一気に無くなったような奇妙な感覚が黒霧を思考から引きずり戻した。

 

「理屈は知らへんけど、こんなん着とるなら実体あるって事じゃないかな!」

 

しまった!!

 

「行けぇぇぇぇ飯田君!!」

飯田から引き離される黒霧は無重力という宇宙飛行士以外感じたこともない感覚に襲われ、さらには瀬呂の腕から射出されたテープが、宙でもがく黒霧の唯一実体化しているところを見事に捉えてさらに出口にいる飯田から黒霧を引き離していく。

 

空高く飛ばされた黒霧には、出口を出て行く飯田が見えた。もはやあのメガネには追いつけないと諦めた。この状態では追えない。

無理に追おうとすれば必ずしっぺ返しがくる事を黒霧は経験上知っている。

それと同時に地上にいる生徒達の様子も空高く飛ばされた事からその様子を見てとれた。

そしてその中に金髪の子供こと、爆豪がいない事も確認していた。

 

そして先程の正体不明の謎の攻撃を認識した。黒霧は不気味なものを、危機感を感じていた。

「………ゲームオーバーだと。ゲームオーバーどころではない、早急に撤退しなければ私どころか死柄木弔も捕まったバッドエンドになるかも知れない。」

 

「オールマイトだけでなく、他のヒーローもここにくる可能性がある以上ここに用はない。急いで、死柄木弔と共に撤退せねば。」

 

悪く言えば、諦めやすい。よく言えば引き際を心得ている。

 

いつかのオールマイトが言っていたように真に賢いヴィランとは闇に潜むということ以外にあげるとするならば、感情に左右されない冷静さと、切り替えの早さという点で見ればヒーローにとって黒霧というヴィランはとても厄介な相手と言わざるを得ないだろう。

 

だが、しかしそれはもしかしたら少し遅かったからもしれない。

 

「…?死柄木?」

 

先程まではたしかに広場に死柄木と脳無はいたはずなのに、今はイレイザーヘッド(相澤先生)すらもいない。

広場にいるのは、イレイザーヘッドに無力化されて転がっている(ヴィラン)共だけであった。

 

 

 

 

 

 

 

さらに数分前   USJ中央広場

 

「ぐぅぅ!!」

脳無のその人間離れした握力により捕まった相澤の腕が普通ではありえないぐらいまで細くなっている。

それはまるで濡れ雑巾を絞るがのごとく簡単に、限界まで潰されているその腕からは血管が握力に耐えきれずに中で内出血を起こして、赤黒く変色していた。

その気になれば腕をいつでもその握力でもってちぎるのは容易いはずなのに脳無は、その脳無に命令を与える死柄木弔はあえてその命令は出さずに相澤を苦しめていた。

 

「個性を消せる。素敵だけどなんて事はないね。圧倒的な力の前ではつまりタダの無個性だもの。」

 

歯を食いしばって、痛みに耐える相澤の目は未だに死柄木を睨みつけていた。

常人であればとっくに腕の痛みでいつ気絶してもおかしくないはずなのに相澤の目からは闘うヒーローの炎は消え失せるどころか、さらに強くなり、ヴィランである死柄木を睨みつけていた。

射殺すような相澤の視線に物怖じせずに、死柄木は挑発するように笑って見せた。

 

バギィ!

「グアァァァ!!」

脳無にへし折られた腕とは逆の腕を折られ苦痛の声を上げる相澤を見て、ますます歪んだ笑みを深くする死柄木だが、それもすぐに変わった。

 

なにかが飛んでくるのが分かったからだ。

目ではなく、耳で分かった。その風切り音で。

弾丸ではないが、石かなにかを投げてきているのだ。

脳無を使うどころか振り向くまでもない、そんな物よりも瀕死になってはいるが見ただけで個性を消す。目の前に転がっている相澤の方が厄介だ。

 

死柄木が笑みをやめたのはそんなことではない

 

飛んできた物の軌道上から体をずらしてナニかが当たるのを回避しようとするがほんの一瞬だけ小さくはあるものの、後ろから耳元で死神に囁かれたような不気味な声が聞こえたからだ。

 

コッチヲミロ

 

「!?ッ脳無!!」

 

死柄木の声に、正確には命令にしか反応しない本来人間にあるはずの感情や体の機能を排除され特定の人間の命令にのみ反応する人形の改造人間の脳無はすぐさま死柄木を守りに入る。

 

それが死柄木を救った。

 

ドグォォォォォォォン!!

 

脳無が命令した死柄木を守る為に飛来したソレを弾いたと同時に至近距離で爆発。

爆発の威力を巨体である脳無越しに感じて冷汗を感じつつも死柄木は視線を爆発物の飛来した方向を見やるもその姿は見当たらなかった。

 

なんだ今のは!?爆弾?

 

正体不明の攻撃に先程から汗をかく死柄木は右手首から上を完全に無くした脳無の腕を見て冷汗を流し、古傷だらけの首をさらに掻き毟りながら必死に爆発の犯人を探す。

 

死柄木は自分を襲った下手人を探すために周りを必死に探していたが、犯人は直ぐに現れた。

 

「コッチヲミロッテイッテルンダゼ」

 

「!?」

 

ギャルギャルと無限軌道(キャタピラー)の音を鳴らせながら、ソイツは段々と晴れてくる土煙の中から死柄木の前に姿を現した。

 

大きさは成人男性の拳よりも少し大きい程度であろうか、大きさはそれほどまででもないがその見た目は主に全体を青い装甲で覆われておりシルエットで見れば三角形よりも丸っこいと言われるような形で、下の部分には無限軌道が軽快に勢いよく動き、だが重厚な音を規則的に立てていた。

 

そして何より目立つのはその真ん中にある人間の髑髏の目の部分で紫色の怪しい光は見るもの全てに得体の知れない恐怖感を、カタカタと口からは骨と骨が触れ合う鳥肌が立つような不気味な音を立てていた。

 

「オイ、コッチヲミロ」

 

「っ!!脳無!!!」

 

髑髏(シアーハートアタック)から発せられる。死神のようにおどろおどろしい声に常人であれば怯んでしまうであろう。

無限軌道の轟音を立てつつ真っ直ぐにこちらに向かってやってくるシアーハートアタックに死柄木は再度脳無に指示を飛ばす。

その間に死柄木は激痛の叫びを上げた後に気絶した相澤のトドメを刺すべく振り返るもそこに探していたヒーローの姿は無かった。

 

馬鹿な!あの怪我でまともに動くなど出来るはずがない!!!

 

脳無に勇敢に立ち向かい、もはや死に体だった相澤は何処にもいなかった。

 

だが、体から流れ出た痕跡(血の跡)は点々とUSJのゾーンの一つ倒壊ゾーンへと続いていた。

 

いつのまにそこまで逃げられていたとは、面倒になったと思いながらも顔は面白いと嗤っていた。

 

あんな怪我をして一人で逃げられるはずもない。

誰かが助けた可能性が高い。せっかく楽しい所だったのに邪魔をしてくれたんだ。どうしてくれようか?

だが意味はない、死に損ないを助けようとした愚か者を殺す。

 

ミイラ取りがミイラに、結局は死ぬ時間を引き延ばしたに過ぎない

 

ボーナスポイントを手に入れる為のゲームの始まりだ。

 

情報では倒壊ゾーンは袋小路が多く、出口は広場を抜けての一つのみ。

訓練では要救助者の所までいかに迅速にたどり着き、安全地帯まで運ぶか?他のヒーローにどう効果的に場所だけでなく容態を伝えるか?を学ぶために通路は実戦さながらに複雑になり建物も高いものとなっている。

 

そんな迷路で逃げ惑う狐を追い立てて行こうではないか。

 

 

 

 

 

 

だが、ゲームを楽しむ前にそれは終わった。

もとより怪我人1人を背負っているのだ。血痕も短い間隔で落ちているところからしてスピードも早くはないのだろう。

通路を3つほど曲がったところで簡単に発見できた。

 

 

「見ーっけ。」

 

 

びくりと震えると男はゆっくりと振り返って此方を見るや情けないこえをあげながら怪我人を離して、尻餅をつきながらも後ずさる

 

 

「ひぃぃぃぃぃ、た、頼む!殺さないでくれ!!」

 

コイツヒーローを目指しているわりには見た目は普通のガキだった。大抵のヒーローはその身に宿す個性を効率よく最大限のパワーを発揮出来るようにそれに適した物であるヒーロースーツを着ている。

また補足ではあるがヒーローがここにいるから安心してくれと周りに示す為に、見てすぐに分かるような派手な色や形を使った物が多い。

 

人間は視覚から多くの情報を得ている生き物であるためだ。

 

しかし目の前にいる男はスーツ姿で特にこれといった武装もない。内側に隠している可能性もあるが、個性よりも隠された武器に重点を置いているような相手であると伺えた。

目の前の男は身体こそ鍛えて入るようだが、恐らくは弱い個性を補う為のものなのだろう。

 

そこまで脅威ではない。

 

「私はまだ学生なんです。貴方達を倒そうなんて微塵も思って無いんです!先生が危なかったから助けようとしただけなんです。だから命だけは助けて下さい!」

 

それにコイツ、いざ自分の命が危機に陥った瞬間に仲間を売るような奴と見た。

世の中で起こった災害や事件は自分の人生とは全くの無関係だと思っている奴だ。

案外こんな奴がヒーローになっているなら、自分が壊さずとも勝手にこの世界は自壊してくれそうだが

 

 

 

 

僕は今壊したいんだ。

 

 

 

 

平和ボケして笑っている奴らを恐怖の顔に染め上げて、

 

気に入らないヒーローが守る価値もない民衆を守れずに心が砕けていく様を、

 

安全な場所から喚くしか能のない人間が民衆を守れなかったヒーローを凶弾し、

 

暴徒と化した人間が弱い人間から大切なものを奪い、犯し、自らのエゴによって先人のヒーロー達が築いた平和をズタズタに壊していくのを見たいんだ。

 

その瓦礫の上に立つのは生き残った人間でも、誰かを助けようとするヒーローでもない。

 

この僕だ。

 

今回はオールマイトを殺せなかったが、別に()じゃなくてもいい。今日のところは憂さ晴らしにコイツを殺してから帰るとしよう。

 

瓦礫を積み上げるその第一歩として

 

そう心の中で呟きながら、目の前のガキをどうやって壊そうかと思いながら近づく。

どんな悲鳴をあげてくれるのかとワクワクしながら、狂気をその瞳に宿して。

 

 

 

 

 

 

「な、何をする気だ!?こっ、こっちに来ないでくれぇ!」

 

 

良し、いいぞもっと近づいてこい。

怯えた自身の演技に騙されてゆっくりと近づいてくる死柄木に吉良は心の中で小さな笑みを浮かべる。

キラークイーンの射程距離は2メートルと短いが、射程範囲内であれば必殺の一撃で、いや触れ(爆弾)さえすれば周りに目撃者がいないこの状況であれば確実にコイツを仕留めることができる。

 

 

 

「ひぃぃぃぃぃ、こ、殺さないでくれぇぇ!」

 

吉良の怯えた様子に笑みを浮かべる死柄木はその演技に気づいた様子もなく、ゆっくりと怯えた反応を楽しむように徐々に近づいていく。

 

 

あと三メートル

 

「う、うぅぅぅ。」

 

吉良の誘導に気づかない死柄木は、吉良の悲鳴を上げることも出来ずに怯えた様子を見てさらに笑みを深くしながら、近づいていく。

触れたものを崩壊させる個性を持つ死柄木の死神の手がゆっくりと吉良に触れようと伸びていた。

しかしそれはつまりもう1人の死神の手であるキラークイーンに近づくことでもあった。

言わずもがな、自分自身の手で触れなければ崩壊すると言う能力が発動しない死柄木に対してキラークイーンは本体から少しの距離を自由自在に出現することも可能である事を考えると近づいてはならないのは死柄木の方であった。

 

 

あと一歩!

 

吉良が今まさに内に秘めた本性を現して襲い掛からんとしていたその時、忽然と死柄木は先程までの位置に戻っていた。

勿論これは死柄木が吉良に攻撃されて吹っ飛ばされたものでも、死柄木が演技に気づいて吉良から距離をとったというわけでもない。

吉良どころか、死柄木自身も突然起こった不可解な現象に頭がついていかなかったが、こんな不可解な現象に先に頭が理解して追いついたのは死柄木弔の方であった。

 

 

「おい黒霧。お前僕の邪魔をするのか?もしかして僕に殺されたいのか?」

 

「いえ私はまだこんなところで死ぬつもりもありませんし、今回の失敗は必ず彼らの血で持って償い(殺し)ます。」

 

音もなくそこに現れた黒霧に、怒りを抱いてその感情を隠そうともしない駄々をこねる子供のように怒りの感情をぶつける死柄木。

唯一子供と違うのは単純なふて腐れたような怒りではなく、その年の子供に相応しくない殺意であると言うところではあるが

 

そして吉良もせっかく舞い込んだチャンスが目の前でなかったことにされるどころか敵が増えたこと、それも警戒していた相当な手練れが現れたことに、怒りよりも先に焦り始める。

 

 

「それよりも死柄木弔。何故このようなところに?」

 

「あそこにいるビビリ野郎が、イレイザーヘッドと一緒に逃げようとしてたから追ってきたんだよ。それよりなんでここにお前がいるんだ黒霧?さっき失敗とか言ってたけど、まさかとは思うが13号に夢中になってガキを逃したんじゃねえだろうな??」

 

「申し訳ありません。13号は行動不能に出来ましたが子供に1人逃げられました」

 

首を掻きながら、苛立ちを強くする死柄木に黒霧は申し訳なさそうにしながらも簡潔に突破された事を伝える

 

「…………………………………………………………。」

 

「…………………………………………………………。」

 

 

 

「………はぁぁぁぁぁ。黒霧お前が、お前がワープゲートじゃなかったら粉々にしてたよ。」

 

大きな溜息をついた後に、血走った目で黒霧を睨みつける死柄木。

 

「何十人ものプロが来たら敵わない。今回はゲームオーバーだ、帰ろっか。」

 

 

 

でもその前に平和の象徴としての矜持を少しでもへし折って帰ろう

 

 

 

踵を返して吉良を殺そうと向かったが

 

「待ってください死柄木。その前にこれを見てください。」

 

ズシャン!!

 

黒霧のワープゲートより現れたのは腕辺りの血を滴らせながら何かを押さえつけている脳無であった。

 

「!!?……遅えと思っていたがまだ破壊できていなかったのか!!」

 

脳無はその怪力で握りつぶそうとしているようだが、シアーハートアタックは壊れる様子を見せる事なく爆発を繰り返しながら脳無の手から逃れようともがいていた。

 

「ここに来る途中で見かけたので、すぐに回収することが出来るようにしておいたのです。そして私の予想が正しければ。」

 

そしてシアーハートアタックだけを器用に吉良の近くにワープさせて見せた。

 

 

不味い!!!

 

 

このままでは私自身が爆発に巻き込まれる!

 

 

吉良は咄嗟にシアーハートアタックの攻撃命令を一時解除してしまう。

ギャルギャルと片側の無限軌道の音を立てながら、ひっくり返った体勢からダルマのように反動を利用して起き上がった。

間に合ったことに安堵の息をつく吉良

 

 

それを見て目を細めながら自身の考えが間違っていない事を確信した黒霧は語り始める。

 

 

「やはり、貴様の能力だったか。」

 

 

ぐうの音もない

言葉には出さずともシアーハートアタックが吉良を攻撃せずに活動を停止したこと、安堵の息をついた事でそれの指示者である事を物語ってしまっている。

状況が完全に黒霧の推測通りであるので、吉良は何も言えない。

この推測にそれらしい反論は超一級の詐欺師でもない吉良には出来なかった。

そんな怯えたフリの震えがいつの間にやら治っていた吉良を見て無言で死柄木は先程までの死ぬのを震えて待つような弱者としてではなく、脅威ある敵であるしれない者として吉良を見据える。

 

「さあ死柄木弔、私の後ろへ。まだ奴の能力には分からないところがあるので不用意に奴に近付くことだけは「フフ、残念だがもう既に射程距離内(・・・・・)だ。」」

 

ドドグォォォォォォォン!

 

死柄木がそれに気付いたのは吉良の企みが上手くいったときだった。

 

すぐそばでの炸裂音に反応して体は勝手に動いていた。

 

人体の急所の一つである顔を守るための死柄木の防衛反応は常人のそれよりも過敏に反応して顔を腕で守りながらも周りの視界の確保、爆発した場所そしてそれをしたと思われる敵を、視線から外さないことだけは怠っていなかった。

なまじ戦いの英才教育を先生から受けているが、初めての実戦でここまで冷静に対処できてしまう。これだけでも死柄木自身の能力と才能の高さが窺える。

その死柄木の視界には先程の自分に見せていた怯えた目とはまるで別人のように冷酷な目をしてこちらに不気味な笑顔を見せる吉良。

 

そして視界の端には唯一実体化している人間で言うところの顔の辺りを元の色が黒に限りなく近いためどれほどかは分からないが恐らく黒く焦がしながら、倒れ込む黒霧が見えた。

 

 

「なっ!?」

何をされたのかまるで死柄木には分からなかった

奴は少しも動いて(・・・)などいなかったのだ。ましてや動いたとしても黒霧が気付く筈なのだ。

 

 

予想外の出来事に思わず驚愕の声を上げる死柄木

突然の奇襲になす術なく倒れる黒霧

事がうまくいったとばかりに先ほどとは違った余裕の表情が窺える吉良

 

服に着いたホコリを手ではたきながらゆっくりと立ち上がり一撃で意識を失ったのかピクリとも動かない黒霧を見て不気味だった笑みをさらに深くした吉良を見た死柄木は身体中に虫が這い回るような鳥肌が立つ気持ち悪さを覚えた。

本当に先程の怯えた子供(ガキ)と今目の前にいる男が同一人物だとは今でも信じられない程の衝撃とそれと同時に目の前の男に先生とは違う初めて感じるおぞましさを死柄木は感じていた。

 

 

「頭が吹っ飛ぶかと思ったが、イマイチ威力が出ていなかったところを見ると爆発する瞬間にあの能力を発動して威力を適当な場所に逃していたらしいなぁ。」

残念だとばかりに肩を竦めてはいるが、全く気にしているような仕草ではなかった。

 

「くっ…。」

 

黒霧の戦闘不能

 

それはオールマイトに対抗する作戦の頓挫どころか、ここからの撤退が今すぐに出来ない事を死柄木に認識させていた。

しかも目の前には得体の知れない能力を持つヒーローの卵。

容易には勝てない。少なくともそう判断はするくらいには目の前の吉良という男は狡猾であり強敵だと死柄木は感じていた。

しかも戦いが長引いて、救援に駆けつけたオールマイトまでもが戦いに参戦したらゲームオーバーどころの話ではなくなる。

そんな状況に首を掻き毟る余裕さえ無いぐらいに死柄木は追い詰められていた。

 

「ま、頭にぶち込んでやったんだ。どんなに軽傷だったとしても脳震盪ぐらいは引き起こしているだろうから、暫くは放っておいても大丈夫だろう。」

 

「頭を吹き飛ばすとか言ってるけどよぉ、お前本当にヒーローか?たとえ(ヴィラン)と言えどヒーローは人殺しは駄目なんじゃないのか?」

 

「それを言うなら世間一般的に無実の可哀想な人や、無関係な私(・・・・・)に人殺しを行うヴィランに情けを掛けることも、容赦もするべきではないと、少なくとも私は思っている。そして私はそんなヴィランに対して正当防衛(殺される前に殺す)をしているにすぎないと思うが?」

ヴィランの死柄木にそんなヒーローとして当たり前のことを言われる吉良であるが、言われた本人はあまり気にしてないというよりも興味がなさそうに持論を死柄木に語った。

 

「…ヒーローがそんな理屈言うとは思いもしなかったなぁ。」

 

「確かにあの合理主義の先生(ヒーロー)は私の考えを否定するだろうが、危険な悪の芽を詰むという点で考えれば、人殺しをこうも公然と宣言して実行するような輩には実に適切で合理的な手段(殺害)だとは思わないかな?」

 

目の前のヒーローの卵に、いや敵に身構える死柄木に吉良は思いもよらぬ事を言い出した。

 

 

 

 

「突然だし、信じられないとは思うがこのまま逃げてくれないかな?」

 

 

 

 

「?」

 

 

 

 

一瞬聞き違いかと思ったが、どうやら冗談の類いでも無さそうな吉良の驚くべき提案に呆気に取られる死柄木に構わずに吉良は続けて話をする。

 

 

「正直に言うと、このまま君と戦っても私は勝てるだろうけどそれでは意味がない。君以外の奴を消すことができればそれで良いんだ。時間がかかって他のヒーローが来て拘束されたんじゃあ消せなくなる。

ヒーローである私が殺しを平然と行っているなんて周りに知られるのは良くない事なんだ。他のヒーローにとってもこの私にとってもね。」

 

「…………」

 

「話をしたのは(ヴィラン)の君一人が生き残ったとしても唯の妄言になるからだ。だから君だけが逃げれば私はここにいる奴らを始末できるし、私の不都合になるような事にはならない。」

 

「…」

 

「どうだい?悪くない提あ…」

 

「嘘だな。」

「そして、あんたはヒーローじゃねえ」

 

 

「フフ、そう言ってくれると思ったよ。

もし君が受け入れても消す算段は出来ていたから言ってみただけだよ。形だけとは言えヒーローなんだ。怪我人の事を考えて動くのは当然だろう。そして、」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の名前は吉良吉影。」

 

「???」

 

「年齢十六歳。自宅は雄英高校から30分ほどの距離にあり、彼女はいない。」

 

「は?」

 

「休日はジョギングをしたりして無理のないように体を動かしたり、カフェでコーヒーを飲みながら本を読むのが日課だ。コーラとか炭酸飲料は飲まない。ジャンクフードはもってのほかだ。」

 

「お前、何言ってやがる?」

 

「夜10時には床につき、必ず8時間は睡眠を取るようにしている。」

 

「……………………………………………………。」

 

「寝る前に温かいミルクを飲み。20分ほどのストレッチで体をほぐしてから床に着くとほとんど朝まで熟睡さ。」

 

「…………………………………………………………………………。」

 

「赤ん坊のように、疲労やストレスを残さずに目を覚ませるんだ。健康診断でも異常なしと言われたよ。」

 

「さっきからベラベラと僕を無視して喋りやがって、一体何を言ってやがるんだ?」

 

「私は常に「心の平穏」を願って生きている人間だということを説明しているのだよ。

勝ち負けに拘ったり、頭を抱えるような「トラブル」とか夜も眠れないといった「敵」を作らない。というのが私の社会に対する姿勢であり、それが自分の幸福だということを知っている。」

 

 

 

「ヤレ、脳無!!」

 

 

 

常人では捕らえられないほどの冗談のようなスピードで動く死柄木より命令を受けた脳無の攻撃は一瞬にして脳無と吉良の2人を土煙の中に包み込む。

 

ビシャ!!!

 

流石は先生だと死柄木は先程まで心中で疑っていた命令を待つだけの脳無ではなく、世間には未だ知られていない巨悪に感謝の言葉を言う。

 

 

土煙と共に此方の足元にまで飛んできた血飛沫を見て

 

 

「ぷっ、アハハハハハハハ!!大層な事を言ってる割には、呆気なく死んじまったなぁ。なんだっけ?心の平穏だっけか?良かったなぁ死んじまえば少なくとも静かに生活はできるぜぇ!」

 

アハハハハハハハ、さも愉快だと言わんばかりに笑い転げる死柄木に水を差す出来事は起きた

 

 

 

「人の話は最後まで聞くものだ」

 

「!?!?!?!?」

 

「君のような、自分に酔っている人間は誰かに何を言われても否定しかせずに最後には私のような関係のない人間をも巻き込んで迷惑をかける人間はほとほと関わりたくないものだ。

まぁ、今の大体の人間は1人が右を向けば全員が右を向くような、前を見て歩くことはせずに命令だけを聞いているだけの愚かな羊と無能な羊飼いのようなものだがな。」

 

脳無の攻撃を受けて、余裕すら感じさせる吉良の様子に度肝を抜かされた死柄木は吉良の神経を逆撫でするような言葉も耳には入っていないのか信じられないといったような心持ちで掻いていた手を止めて、治まりつつある土煙の先を見逃せなかった。

 

「話を戻すが、君は私の睡眠を妨げる「トラブル」であり、「敵」というわけさ。」

 

 

「こ、これは!!」

 

 

ドゴォ!!!!

 

 

肉と肉、いやそんなものでは形容できないほどの重い音が鳴ると同時に手首からブシュと血を吹き出させながら吹き飛ばされてきた脳無

 

それをした下手人の姿が現れる

 

 

「キラークイーン」と私はこいつを名付けて呼んでいる」

 

 

ピンク色の美しくギリシャ神話の何者よりも強く逞しい体をした人間ではないそれは、手刀のようにしている手から脳無の血は腕へと流れていく。死柄木はこれこそが吉良の個性だと認識して、これから対峙する相手に冷や汗を流しながらも身構える。

 

 

 

「お前達がここから逃げる前に、再起不能になってもらう。今夜も安心して熟睡できるようにね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ごめんなさい。

交代で投稿していきたいので、次はちょっと遅れると思います。



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