ハイスクールD×D Be The One (ユウジン)
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第一章 旧校舎のディアボロス
桐生 戦兎


「良いか戦兎。科学と言うのは誰かを幸せにしたい。誰かの役に立てたい。そんな思いから発展していったものだ。しかしそれとは裏腹に時には人の命も奪う。だがそれは科学が悪なんじゃない。それを使う人の心が問題なんだ」

 

小さい頃……父がそう言ったのを覚えている。どんなに危険な兵器もそれを使う人次第なんだと……だが人間は弱い生き物だ。強い力を手にした時、本人も知らず知らずのうちに傲慢になり、驕っていく。もしかしたら人間には科学を使いこなすことなんて出来ないのかもなと……だから約束したんだ。

 

自分が証明して見せるって。

 

科学を正しいことに使って見せるって。いつも父が言っていたように強い力は……科学は愛と平和のために使うものだって証明するって。

 

そう言った父は少し驚いたような顔をしたが優しく頭をなでてくれて……そして、

 

「お前がそんな素敵なヒーローになれることを楽しみにしてるよ」

 

そう言ってくれたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい戦兎!起きろよ!」

「ん?」

 

懐かしい夢を見ていた時、突然の声に戦兎と呼ばれた少年は目を覚ました。

 

寝ぼけた頭で周りを見渡すといつも通う学校の教室だ。そう言えば昼の後の5限目から眠くて寝てたんだった……

 

「ったく……いつまで寝てんだよ。もう放課後だぞ?」

「なんだ龍誠か……」

 

なんだってなんだよ……そう龍誠と呼ばれた少年は呟くと、戦兎を行こうぜと促す。

 

「今日はどこか寄っていくか?」

「やっぱゲーセンだろ。今日こそは勝たせてもらうぜ」

「お前みたいな攻撃ばっかで回避も防御もしないバカなんぞ百回やっても負けねぇよ」

 

そう返しながら戦兎は席から立ち上がる。そして、

 

「誰がバカだ!バカの前に筋肉をつけろ筋肉を!」

「突っ込むとこそこかよ……」

 

と、戦兎は大きなため息を吐いたのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し自己紹介をさせてもらおう。彼は自称未来の天才物理学者、桐生戦兎。

 

理数に若干片寄っているが天才的な頭脳と恵まれた容姿、更に身体能力を持った17才の高校生。少しばかりナルシストで口が悪いのを除けば一見普通の高校生だ。

 

現在は、駒王学園に小学校の頃からの幼馴染で、今現在向かいの筐体で格ゲーのキャラを動かしている万丈 龍誠と一緒に通っている。

 

しかし今日も無事快勝出来そうだ。龍誠は基本的に攻撃しかしてこないので、防御して攻撃の合間合間に反撃というのを繰り返せば楽に勝てる。

 

まぁ毎日こんなことの繰り返しだ。だがそれで良い。毎日が平和なのは良いことだと思う。

 

変わり映えしなくたって、龍誠と遊んで家に帰ったら妹と一緒に母さんの手料理を食べて寝て起きたら学校に……それはきっととても大切なことだ。

 

だがこの時の戦兎達は知らなかった。それを壊す異常がすぐそばに来ていることを……

 

「はい勝ち!」

「くそぉおおおお!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「また敗けかよぉ……」

「ま、お前のサル並の知能にしては頑張ってたと思うけどな」

「あんだと!?」

 

ガルル!と威嚇する龍誠に思わず笑いを漏らしながら戦兎は口を開く。

 

「今日もうちで食べてくんだろ?」

「おう!んで今日はおばさん何にするって?」

 

とあっという間に機嫌を治した。いやはや単純なやつである。等と思いつつ戦兎は、

 

「母さん今日は給料日だからな。龍誠も連れていくって行ったら豪勢にやろうって言ってたよ」

「と言うことは……」

 

龍誠はシリアスな口調で言い、戦兎はあぁ……間違いなくと言いながらニヤリと笑う。

 

『夜は焼き肉っしょー!』

 

ヤッホー!とテンションを上げながら、打ち合わせしたわけでもないのに見事にハモり合いながらスキップしかねない勢いで、日が暮れ始めてすっかり人通りもなくなった道を二人は足を早める。すると、

 

「た、助けてください!」

『ん?』

 

二人の元に路地から一人の男性が飛び出してきた。腕から血を流し、肩で息をしながら龍誠の足の抱きついた男性はそのままズルズルと脱力していき倒れてしまう。怪我もしてるしまさかと慌てて二人は確認すると、どうやら気絶しているようだ。

 

「誰だこの人」

「さぁ?」

 

と二人が話しているところに……

 

「へいへーい。そこの坊っちゃんたち。その男こちらにプリーズ」

『は?』

 

男性が出てきた路地から現れたのは、白髪が特徴の神父?みたいな服の男だ。

 

だが、戦兎と龍誠は心臓が早鐘を打つのを自覚していた。なぜならその男が手にしているもの……それは何かライトセイバーみたいな感じの物はともかく、もう片方の手ににあるものが問題で、あれは拳銃だ。素人でも分かる。エアガンじゃない。あれは本物だと本能が告げている。

 

「悪いけど怪しい人の言う事は聞くなって教えられてきたんでね……」

 

すると、戦兎は突然おちゃらけたような演技をしながら龍誠にそっと目配せをして……

 

「この!」

 

戦兎は素早く胸ポケットに入れていたシャーペンをダーツの要領で神父風の男に投げつける。

 

「うぉっと!」

 

だがそれを男は首を傾けて避けた。中々反射神経と冷静な動きだがその隙で十分だ。

 

「走れ龍誠!」

「おうよ!」

 

戦兎の言葉に待ってましたと言わんばかりに、龍誠は気絶した男性を片手で担ぎ上げると背を向けて全力疾走し、戦兎もそれを追いかける。

 

「てめ!」

 

それを神父風の男は拳銃を迷わず向けて発砲!

 

パシュパシュ音をたてながらこちらに飛んでくるが狙いは甘い。全弾外れだ。

 

「アイツこの住宅のど真ん中で撃ってきたぞ!?」

「安心しろ!拳銃なんて十メートルも離れたらまず当たらない!余程運が悪くなければな!ってなんかの本で書いてあった!」

「本の受け売りかよ!」

 

何てやり取りをしながら二人は走る。が、

 

「逃がすな!」

『おう!』

 

と、どこに潜んでたんだよと突っ込みたくなる位発砲してきた奴と同じ神父の服装をしたやつらが、神父風の男と同じような武器を手に、ゾロゾロと逃げ道を塞ぎに来た。

 

「やべ!」

「こっちだ!」

 

それを見た戦兎は慌てて龍誠の手を引っ張り路地に入っていく。

 

「いやいやなんだよアイツら!数は多いし何か銃声静かだし!」

「そりゃ最近は消音器(サイレンサー)内蔵した銃もあるしな」

「成程な~って!冷静に分析してる場合じゃないだろ!」

「うるさいな!今必死にルート考えてるとこなんだから静かにしなさいよバカ!」

「誰がバカだ!筋肉をつけろ!」

 

と顔を寄せてきた龍誠の目の前を銃弾が通りすぎ、二人は慌ててちゃんと前を見て走り直す。

 

「っていうか、それでも結構騒がしいはずなのになんで周りの家の人は出ても来ないんだ!?」

「俺が聞きたいくらいだよ!」

 

と、路地におかれてたゴミを後ろに飛ばしながら戦兎は龍誠の問いに答える。そして、

 

「よし、龍誠こっちだ!」

 

ルートを決めた戦兎は龍誠に指示を出して道を曲がる。

 

「お、おいこっちだとあるのは……あぁ!そう言うことか!」

「流石にお前の頭でも理解できたみたいだな。偉いぞ!」

「バカにされてる気しかしねぇ……」

「バカにしてんだよ」

「なに!?」

 

と驚愕する龍誠を連れて戦兎は更に加速したのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……追い詰めたぜ……」

 

戦兎達を追いかけ、神父達が入ったのは既に誰も使ってない閉鎖された工場だった。結構最近まで稼働していたのでまだ中は綺麗だが、持ち主だった人が借金で夜逃げしたとかで機械なんかも全部差し押さえで無くなってしまい、中は広く感じる。

 

「手間取らせやがってよぉ……てめぇらもぶっ殺したらぁ!」

「それはどうかな?」

 

クルッと背を向けていた戦兎は振り替えると、神父風の男達の方を見る。

 

すると、その手にはレバーのようなものがついた黒と赤と金で塗られた変な機械が握られていた。

 

「あ?なんだそりゃ」

「そしてこれをこう」

 

戦兎はその機械を腹に当てると、その機械から腰に巻き付くようにベルトが出て戦兎の腰に装着される。その間に龍誠は気絶した男をそっと壁に寄り掛からせて寝かせておき、 それを確認してから戦兎は、更にポケットから二つほどウサギの模様が入った赤いボトルと戦車の模様が入った青いボトルを取り出すと……

 

「さぁ、実験を始めようか」

 

突然それをシャカシャカ振り始める。するとどうだろ。突然空中に数式がいくつも浮かび上がり流れていく。それを見た神父風の男は、

 

「うげぇ、なんだよこれ……こういうの見ると気持ち悪くなんだよぉ」

 

と、思わぬダメージを与えられたが、戦兎はそのまま赤のボトルをベルトのバックル部分の機械に戦兎から見て右に、青のボトルを左に挿す。

 

《ラビット!タンク!ベストマッチ!!!》

 

そんな音声が流れた後、戦兎は更にバックルの横についてるレバーをグルグルと回し、それと共に戦兎を囲むようにフレームが形成され、前後でアーマーが半分ずつ作られた。そして!

 

《Are you ready?》

「変身!」

 

戦兎の言葉と共にアーマーが前後から装着され、ベルトが更に音声を流す。

 

《鋼のムーンサルト!ラビット!タンク!イェーイ!!!》

 

それが終わると同時に現れたのは戦兎の姿ではなく、赤と青で作られたアーマーを着た何かだ。

 

「な、なんだてめぇは……」

 

神父風の男はそう呟くと、戦兎はアーマーの赤い部分の眼を擦り手でウサギの形を作る。

 

「俺は仮面ライダービルド。造る、形成するって意味でビルドだ。以後、お見知りおきを」

「そして俺がその相棒の「バカ」丈 龍誠!っておい!俺の名乗りに被せんな。あとバカの前に筋肉を着けろって言ってんだろ!」

 

そう言って龍誠は戦兎をビシビシ叩くが、気にせず戦兎は神父風の男達を見る。

 

「どうする?やる?」

「当たり前だ!」

 

そう叫んで飛びかかってきた男達を見て、戦兎は少しため息を吐き、

 

「んじゃ、行きますか!」

 

と飛び掛かったのだった。



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仮面ライダービルド

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦「駒王学園に通うこの未来のてぇんさい物理学者。桐生 戦兎は幼馴染で遺憾なことに親友な万丈 龍誠とゲーセンからの帰り道、怪しげな男達に襲われる」
龍「なんで遺憾なことに何だよ!と言うかアイツら誰だよ!銃とか撃ってくるしテロリストかなんかかよ!?」
戦「そんなもん俺が聞きたいよ。まぁ2話見ればわかるでしょって言うことで変身した俺の華麗な活躍も見れる第2話スタート!」


「はぁ!」

 

ベルトとボトルで仮面ライダービルドとなった戦兎は左足に力を込める。すると脛にあるバネのような部分が収縮し、勢いをつけて伸びた。

 

「なにっ!?」

 

その伸縮を利用して一瞬の間に白髪の神父に近づいた戦兎は、右足の戦車のキャタピラのようになった部分で蹴りを放つ。

 

「ちぃっ!」

 

それを神父はライトセイバーみたいなやつで受けると、キャタピラの部分が回転し火花とカン高い音を発しながら神父を強引に後ろに吹っ飛ばした。

 

「て、てめぇ……神器(セイクリットギア)持ちか!」

神器(セイクリットギア)ってのがなにかは知らないけど……これは俺の力だよ」

 

戦兎はそういうと、ベルトから変身する際に現れたフレームのようなものが現れ、それが剣先がドリルのようになっている武器へと変わりそれを握ると、

 

「な、なんじゃそりゃあ!?」

「ドリルクラッシャー、俺の発明品さ」

 

そう言って戦兎は相手との間合いを詰めながらドリルクラッシャーを振り上げる。

 

「うぉ!」

 

それを男は止め、素早くもう一方の手で銃を撃つ……が、

 

「で!」

 

キン!と火花を散らして少し戦兎に少し悲鳴をあげさせるに留まる。すると、

 

「少し防御あげるか……」

 

そう言って、戦兎は今度はダイヤモンドの模様が入ったボトルを取り出すとそれをタンクのボトルと入れ換えた。するとベルトが新たな音声を流す。

 

《ラビット!ダイヤモンド!》

「まぁベストマッチじゃないよなぁ……」

 

そう戦兎は呟きながらレバーを回し、それに合わせてベルトから音声が流れた。

 

《Are you ready?》

「ビルドアップ!」

 

戦兎がそう叫ぶと、赤と青の姿だったのが今度は赤と水色に変わる。

 

「はぁ!?」

 

戦兎の姿がまた変わった事に男は驚くが、それでも素早く銃を向けて撃ちはじめた。

 

「よ!っと」

 

だが、戦兎は素早く水色に変わった方の左手を前に出すと、巨大なダイヤモンドが形成され銃弾を弾いていく。

 

「なっ!?」

 

更に銃弾を弾いた戦兎は素早く飛び上がって距離を詰めると、ドリルクラッシャーを振り下ろし相手を狙った。

 

それを男はライトセイバーみたいな剣で止めるが、その瞬間空いてる水色の腕で殴る。

 

「ぐぇ!この!」

 

後ずさった男はまた銃を向けるが、またダイヤモンドを形成して銃弾を弾くと同時に相手からこちらを見えないようにして距離を詰めつつ、今度はウサギの模様が入ったボトルを狼の模様が入ったボトルに変えた。

 

《ウルフ!ダイヤモンド!》

「ベストマッチじゃなぁああああい!」

 

と戦兎は叫びながらレバーを回し……

 

《Are you ready?》

「ビルドアップ!」

 

そうして今度は右手部分だった赤い部分が白に代わり、更に手に見るからに鋭そうな鉤爪が付く。

 

「はぁあ!」

 

それから戦兎は間合いを詰めたのを確認すると、ダイヤモンドを一度解除すると右手に現れた爪を伸ばし振り回しながら襲いかかった。

 

「ちぃ!」

 

それをバックステップで避けられるが、一度狙いを着けた獲物は逃さぬ狼のように連続で攻撃を放っていく。

 

その間に銃や剣での反撃もあるが、それはダイヤモンドを形成して防ぐため戦兎にはダメージはない。そして、

 

「はぁああ!」

 

爪を更に伸ばしながら戦兎が腕を振るうと、ついに爪が男の銃を切り裂いた。

 

「げっ!これ高いんだぞ!?」

「知らねぇよ!」

《ウルフ!タンク!》

 

男の言葉に律儀に突っ込みつつ、戦兎は戦車の模様が入ったボトルを先程入れ換えたダイヤモンドの模様が入ったボトルを抜き取ってから入れ換えレバーを回す。

 

《Are you ready?》

「ビルドアップ!」

 

そうして戦兎はまた姿を変えると、ドリルクラッシャーを握り鍔本にあるソケットにウサギの模様が入ったボトルを挿入しスイッチを押す。すると、

 

《Ready Go!》

 

と音声が鳴り、それに合わせて戦兎は走り出す。

 

《ボルテックブレイク!》

 

それと同時に更に音声が鳴りドリルの部分が赤いオーラを纏って高速回転し、それを男に振り下ろした。だがただでやられる相手ではない。それをライトセイバーで止め、火花と甲高い音が辺りに響き渡るが、戦兎は強引に相手の剣を弾き飛ばすとそのまま横一文字で相手の男を吹っ飛ばし壁に叩きつける。そしてそのままズルズルと地面に落ちるのを見ながら戦兎は、

 

「峰打ちだ。安心しな」

「いやそれドリルだから峰もなにもねぇじゃねぇか!」

 

いや手首の返しがポイントで……と言いながら戦兎が振り替えると、そこにいた龍誠はパンパンと手に着いた埃を叩いて落としながら、足元に転がった戦兎が吹っ飛ばした男に追従していた神父姿の男達を見る。

 

「んでぇ?こいつらなにもんだぁ?」

「取り敢えず警察に連絡して俺達はトンズラかな……」

 

警察に事情説明するとビルドのことまでバレかねない。だって普通に考えて武装した複数人の男を高校生二人が素手で倒したとは思わないだろうし……いやまぁ龍誠みたいな場合もあるけどさ。ホントこいつ腕っぷしは化け物だよ。あるアイテム使ってるとはいえ一人でこの人数ノックアウトだもんなぁ。

 

「じゃあ取り敢えず連絡を……」

 

と思い戦兎が携帯を取ろうとした次の瞬間、ドカン!という派手な音と共に壁が壊され二人はその方向を見ると……

 

「ミノタウロス?」

「ケンタウルスだよ。ミノタウロスは上が動物下が人間だからな」

 

そう。二人の目の前に現れたのは巨大なケンタウルス風の化け物が立っていた。

 

「そういう違いがあるのか?」

「一応な」

 

あっはっは。と二人が笑った瞬間ケンタウルスこちらに突っ込んで来る!

 

「龍誠、あぶねぇ!」

 

それを咄嗟に戦兎は龍誠を突き飛ばすと自らを盾にした。

 

「がっ!」

 

ケンタウルスの一撃は変身していなかったら全身がバラバラになりそうな程の衝撃生み出し、戦兎は後方に吹き飛ばされるが強引に空中で体勢を戻して着地する。

 

「大丈夫か!?戦兎!」

「大丈夫だ……ったく、ほんっと今日は最悪だ」

 

そう言いながら、戦兎は白いウルフのボトルを取ると赤いウサギの模様が入ったボトルを挿入しなおす。

 

《ラビット!タンク!ベストマッチ!》

「ビルドアップ!」

 

そうして最初に変身した姿に変わると立ち上がる。

 

《鋼のムーンサルト!ラビット!タンク!イェーイ!》

 

「龍誠!さっき助けた人を頼む!」

「おうよ!」

 

戦兎がそう叫ぶと、龍誠は急いで壁に寝かせた人を背負って離れた。それを確認した戦兎はケンタウルスの方を向き直る。

 

「これでよし……んじゃ、誰だか知らないけど攻撃してきたってことは敵だろ?もうすっかり日も暮れたし晩飯が待ってるんだ!さっさと終わらさせて貰うぜ!」

 

そう言った戦兎はレバーを握ると勢いよく回す。それと共にベルトが発光しエネルギーが満ちていくのを感じながら戦兎は手を頭上に掲げ、

 

「勝利の法則は決まった!」

 

と言いきると後ろに向かってダッシュして、ある程度離れたところでジャンプ、そのまま地面に潜っていってしまう。

 

「っ!」

 

それを見たケンタウルスが追おうとするが、それを突如出現したグラフが両方から重なりあいX軸の部分で相手を挟み動きを止めた。そして、

 

「うぉおおお!」

 

穴から出現した戦兎は大きく飛び上がり、その線グラフのM軸を滑るように相手に向かって飛び蹴りを放つ。

 

《ボルテックフィニッシュ!》

「はぁああ!」

 

エネルギーを蓄えた右足はキャタピラの部分も高速回転し、相手にぶち当たるとガリガリ削りながら後方に吹っ飛ばす。

 

そしてそのまま、また壁をぶち破って外まで吹っ飛んだケンタウルスが動かなくなったのを確認した戦兎は今度こそ一息を吐き、

 

「お疲れ」

「あぁ」

 

もう戦い飽きたぜと戦兎は言いながら周りを見渡すと……あれ?

 

「神父みたいな服装のやつらは?」

「あ?そんなもんここら辺の転がって……あれ?」

 

そう、改めて見回すとさっき倒したやつらがいない。戦兎が吹っ飛ばした方も含めいないのだ。一人も。

 

「お前ちゃんと気絶させてなかっただろ!」

「させたはずだよ!と言うかお前の相手だっていねぇじゃねぇか!」

 

なんだぉ!と二人で顔を合わせて睨み合う。バチバチ火花を散らしているとそんな中、

 

「貴方達……何してるのかしら?」

『え?』

 

戦兎と龍誠は声のした方を見ると、先程のケンタウルスを吹き飛ばした穴から四人の男女が立っている。それを見た戦兎は思わず……

 

「もう良いだろ!」

『っ!』

 

と叫び、龍誠だけじゃなくて今やって来た四人まで驚いている。だが戦兎の叫びは止まらない。

 

「幾らなんでも次々来すぎだろ!バーゲンセールやってんじゃねぇんだよ!」

「いや戦兎?あの人達が神父共やケンタウルスの関係者だとは……」

 

と戦兎に耳打ちする龍誠に戦兎は首を振った。

 

「さっきキックした時に気付いたんだけど、あのケンタウルス傷だらけだった。多分ここには誰かから逃げてきたんだと思う。それにあそこからならケンタウルスが見えるはずなのに動揺してる様子がない。つまり……」

「あいつらがケンタウルスが逃げてた相手かそうでなくても怪しさ満点か」

 

そう言うことだ。と戦兎は言うとスマホとライオンの模様が入ったボトルを取り出しそれに挿して放り投げる。

 

《ビルドチェンジ!》

 

するとそれは変形、巨大化するとバイクの姿となり、更にそれから素早くライトの模様が入ったボトルをタンクのボトルと入れ換える。

 

「え?ちょ、ちょっと待ちなさい!」

「待たない!」

《ラビット!ライト!》

「ビルドアップ!」

 

そう叫ぶと、今度は左肩に巨大な電球が付いた黄色ベースの半身に代わり、それが強烈な光を放ち相手の視界を眩ませる。

 

『きゃぁ!』

「くっ!」

 

突然の発光に完全に不意打ちを喰らったのか相手が怯み、その間に戦兎は前に、龍誠は助けた人を背中に乗せたまま後ろに乗るとエンジンを吹かして走り出す。

 

「口閉じてろよ!舌噛むぞ!」

「おう!」

 

と戦兎の指示に龍誠はギュッと口を結び、戦兎は更にスピードを上げそのまま入り口をバイクでぶち破りながら突破しそのまま走り去る。

 

「いっちゃいましたわね……」

 

そこに残された四人のうち一人がそういうと別の誰かが口を開く。

 

「追いましょうか?」

「大丈夫よ」

 

その問いに恐らくリーダー格の少女は首を横に振り答えた。

 

「あのもう一人の男の子の服装……そこまで焦らなくてもすぐに見つかるわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、

 

「しかしお前いつの間にこんな発明品作ったんだよ」

「昨日の夜完成させたんだ。何度か試運転したんだけどやっぱり凄いでしょ?最高でしょ?天才でしょ!?」

「分かったから前見て運転しろよ!」

 

無事追いかけられていないのを確認しつつ、人心地ついた戦兎と龍誠はそんなやり取りをしていた。すると龍誠は、

 

「あれ?でもお前バイクの免許なんか持ってたっけ?」

「おいおい。俺は未来の天才(てぇんさい)物理学者だぜ?バイクくらい試運転の時に動かせば免許なんかなくたって完璧さ」

「なるほどな~……ってそれようは無免許ってことじゃねぇか!」

「わっ!バカ揺らすなあぶねぇ!つうかそれいったら実質三人乗り状態の時点でもアウトだよ!」

 

と戦兎がいうと龍誠は確かに……と少し納得してしまう。そうして揺らされるのを止めてもらった戦兎は変身を解除して、

 

「取り敢えずこの人を病院に放り込んで後はトンズラしよう」

「せっかく助けたのになぁ……なんかお礼くらいしてもらっても良いんじゃね?」

「どう説明すんだよ。神父服姿のやつらに襲われましたって言っても信じちゃもらえねぇぞ」

 

う……と龍誠は言葉に詰まり戦兎は更に続ける。

 

「それにこれ以上遅れると母さんや美空に殺される」

「それはもっとヤバイな……」

 

ブルブルっと体を震わせた二人は病院に放り込んだらすぐさま帰ることを誓う。すると龍誠は更になにか思い出したようだ。

 

「そういや俺がっつり顔見られたんだけど大丈夫かな?」

「大丈夫だろ。駒王町だって狭くないんだ。そんなホイホイスレ違わねぇだろうさ。ま、暫く外出は控えた方がいいかもだけどな」

 

だよなぁ、と戦兎の言葉に龍誠は頷き二人で笑う。だがそんな次の日の学校で、

 

「万丈 龍誠君っているかな?」

『……』

 

何故か昨日いた四人組のうち二人ほどうちのクラスにやって来たのだが、どういうことか説明を求む。



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突然の来客

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦「突如謎の集団に教われた未来のてぇんさい物理学者のこの俺桐生戦兎は仮面ライダービルドに変身し無事解決……かと思えば何と学校でその時であった第三の集団に呼び出されるはめに!」
龍「俺も戦ったんだぞ!」
戦「あーはいはい。雑魚処理専門業者の龍誠も頑張ってましたよっと」
龍「適当すぎんだろ!」
戦「つうわけで何かまだまだゆっくりできそうもない第3話スタート!」


「万丈 龍誠君はいるかな?」

 

放課後、本日の授業が終わり皆が解放感に浸る中そいつらはやって来た。

 

「あぁ、万丈ならあそこに……」

 

と、なにも知るよしもないクラスメイトは素直にこちらに指を指しながら教え、戦兎と龍誠は顔を引きつらせる。

 

「ありがとう」

 

とこっちにやって来た優男は龍誠に声を掛けた。

 

「初めまして万丈 龍誠君。僕は2年の木場 祐斗。こっちは一年の塔城 小猫ちゃん。気づいてると思うけど昨日の事で話があってね。一緒に来てもらっていいかな?」

「お、おい戦兎やべぇぞ!昨日の事だってよ!」

「バカ!」

 

そこで俺に助けを求めたら俺も居たってバレるじゃねぇか!と思わず叫ぶと龍誠は俺を見捨てるのかと叫ぶ。いやそういういう訳じゃないんだけどなぁ……と戦兎が口ごもると、

 

「あ、もしかしてあの変な格好してたの君?」

「変じゃねぇよ!さいっこうにイカした格好だよ!」

 

その直後、あ……と全部言い終わってから戦兎はしまったぁ、と頭を抱える。これでは白状したも同然だ。だが今更やってしまったと後悔してももう遅い。木場からはじゃあ君も一緒に何て言われてしまうしこうなったら仕方ない。

 

と戦兎は筒のようなものを制服の胸ポケットから取り出すと、

 

「逃げるぞ龍誠!」

 

という掛け声と共に床にそれを叩きつけ、同時にボフン!と煙が起こり周りが思わず咳き込む。

 

「おい!戦兎がまた変な発明品を使ったぞ!」

「くそ煙てぇ!目もいてぇし咳もでるゲッホゲッホ!」

 

とクラスの皆が咳き込みながら口々に叫ぶ所から見るによくある事態なのだろう。だがそんなことは目もくれず戦兎と龍誠は荷物を手に教室を飛びだし階段を数段飛ばしながら駆け降りていく。

 

「お前すっげぇな!いつの間に作ったんだよ!」

「昨日あんなことあったからな。前にイタズラで作ったやつを掘り出したんだよ」

 

どんなイタズラだと突っ込まれそうだが戦兎がそう言うやつなのを知っている龍誠は追求せず別のことを聞く。

 

「で?どうすんだよこれから」

「とにかく逃げよう。それから考えれば良い」

 

じゃあ正門に行こう。と龍誠が言うと戦兎は首を横に振った。

 

「ここは相手の裏をかこう。向こうは門から出ると思ってる筈だ。だから旧校舎の方から出よう。そこから塀を乗り越えた方が多分バレない」

「よし!」

 

と二人は正門ではなく旧校舎に向けてそのまま雑木林にはいる。

 

今更だがこの学校、普段戦兎たちが通っている本校舎だけではなく旧校舎もある。こっちは雑木林を抜けた先にありほとんど誰も利用していない。殆どっていうのはオカルト研究部っていう部活が確か使っていた記憶があるからだ。

 

だがそんなのは今はどうでも良い。とにかく逃げよう。と走っていると、

 

「いやぁ、二人とも速いんだね」

『は?』

 

戦兎と龍誠は足を止めポカンと口を開く。それはそうだろう。何せ目の前には裏をかいた筈の木場 祐斗と、塔城 小猫がすでに待ち構えていたのだから。

 

「おい戦兎裏をかいたんじゃねぇのか?」

「俺もそのつもりだったんだけど……」

 

と二人がいうと木場 祐斗は苦笑いを浮かべながら、こっちも色々あるからね。と言いながらこっちにくる。

 

「逃げても無駄なのは分かって貰えたかな?という訳で一緒にきてもらうよ。危害を加えたい訳じゃないんだ。ただこれ以上強情にされるとこっちも少し本腰入れなきゃ入れなくなる」

 

その言葉に戦兎と龍誠は顔を見合わせると、ニヤッと笑いながら口を開く。

 

「やれるもんなら……」

「やってみやがれ!」

 

と、二人は走り出すと木場 祐斗に向かって拳を握って振るった。

 

「っ!」

 

それを素早い動きで回避した木場 祐斗は塔城 小猫に目配せすると、それを受けた彼女も走りだし戦兎の腕を掴む。

 

「二人がかりはズルいと思います」

「いでででででで!」

 

彼女にギュッと握られると戦兎の前腕がミキミキとあり得ない音を発し始め、戦兎の顔が苦痛に歪んでいく。

 

「戦兎!」

「君は僕とだ!」

 

と、龍誠が戦兎に助け船を出そうとしたがそこに木場 祐斗が割って入り、それを見た龍誠は拳を振るうが、それを片手で受け止められ、腕を掴まれそのまま背負い投げの要領で別方向にぶん投げられた。

 

「ちぃ!」

 

それを龍誠は受け身を取りながら立ち上がり木場 祐斗を見る。意外と線は細いが見た目以上にフィジカルが高いらしい。

 

「この!」

一方戦兎の方はこのままだと腕をへし折られそうだったので制服の上着を脱ぐようにして強引に脱出し塔城 小猫から距離をとる。しかしマジで痛かった……骨が軋む音なんてそうそう体験出来ることじゃない。

 

「逃がしません……」

 

と塔城 小猫は言うと、こっちにきて拳を振るう。それを戦兎は横に避けたが、

 

「へ?」

 

戦兎はあんぐり口を開けて目の前の光景を見る。戦兎の背後にあったのは木だ。そして彼女は背後にあった木に勢い余ってそのままぶん殴ってしまった。そこまでは良い。問題はそのあとだ。

 

なんと木には彼女の拳の形に凹み、彼女はボコッと言う音と共に拳を引き抜く。

 

「手加減失敗……」

「あっぶねぇな!完全に殺る気じゃねぇか!」

「次は加減します」

 

冗談じゃねぇ!と戦兎はポケットから昨日使った赤いウサギの模様が入ったボトルを取り出し振る。

 

「こっちも行くぜ!」

 

と龍誠もポケットに手を突っ込むとそっちは青いドラゴンの模様が入ったボトルを取り出し勢いよく振る。

 

「行くぞ!」

 

先に飛び出したのは龍誠で、ボトルを振るのをやめ、しっかりと握り締めると木場 祐斗に向けて拳を叩きつける。

 

「がっ!」

 

最初はガードするつもりだった。だが想像以上に早かったため咄嗟に防御したのだがそれがイケなかった。なんと龍誠の一撃は彼のガードごとぶち破って腹部に拳を叩き込む。

 

「いま……のは?」

 

木場 祐斗が驚く中龍誠はまたボトルを振って拳をボトルごと握り直す。

 

「おぉ!」

 

その頃戦兎もボトルを握り直すと走り出す。

 

「え?」

 

今度は塔城小猫の方が驚く番だ。なにせ突然高速移動したかと思えば戦兎が目の前に現れたのだから。

 

「よっと!」

「っ!」

 

すると戦兎はさっきのお返しと言わんばかりに小猫の腕を掴むと投げて地面に転がすとそのまま関節を極める。

 

「くっ!」

「さてこれからどうするか……え?」

 

完全に地面に転がし関節を極めた。なのにだ。塔城 小猫は極められていない方の手を地面に置くと力を込め、何と戦兎ごと片手で逆立ちし、そのまま前転の要領で戦兎を地面にぶつけようとした。

 

「く!」

 

それを戦兎は咄嗟に関節を極めるのを止めて側転で回避する。

 

「いやほんとその小さい体のどこにそんな力があるんだよ」

「小さい……」

 

小猫はそう呟くと自分の体を見る。確かに彼女は非常に小柄で、色々小さい。それは彼女の気にするところでもあったようで、

 

「小さくありません。まだ成長期が来てないだけです」

「ようはまだ小さいってことじゃねぇか」

 

と戦兎が要らんことを言うと、ぶちぃ!という効果音が付きそうな空気が塔城 小猫から漏れ、近くに合った木を掴むと彼女はそれをあっさり引き抜きこちらに向かってぶん投げてきた!しかも次々引き抜いてはぶん投げてくる……自然破壊反対なんだが。

 

「マジかよ!」

 

それを戦兎は跳んだり横に転がったり伏せたりと避けながら、

 

「加減もなにもあったもんじゃねぇ。やっぱり殺す気じゃねぇか!」

 

と戦兎が嘆くと龍誠が割って入り飛んで来た木を思いっきりぶん殴って粉砕してしまった。

 

「どうよ!俺の上腕!二頭!筋!」

「もしかして木をぶん投げたり殴って粉砕する事ってそんな珍しいことじゃないのか……」

「いや普通じゃないから安心して良いよ?」

 

と龍誠をジト眼で見ながら戦兎が言うと木場 祐斗が訂正を入れてくれる。そうだよね。普通じゃないよね。

 

「んでどうすんだよ戦兎!」

「だなぁ……」

 

こうなったら変身してボトルの力で逃げるか?と戦兎は思い内ポケットに隠し持っておいたベルトに手を伸ばそうとした次の瞬間!

 

『あびゃびゃびゃびゃびゃびゃびゃびゃびゃびゃびゃびゃびゃびゃびゃびゃびゃ!!!!!』

 

突然の光と共に落雷。戦兎と龍誠は電流が全身に走り悲鳴を上げた。そしてそれが止まると、

 

『けほっ!』

 

黒い煙を二人は吐き出しそのまま後ろにバタンと倒れそのまま意識を失う。

 

「二人とも大丈夫でしたか?」

「朱乃さん。すいません」

 

と木場 祐斗は木の影から顔を出した黒髪の女性にお礼を言うと目を回して倒れる戦兎と龍誠を見た。

 

「二人とも想像以上に強敵でした。本当に人間なんでしょうか?」

「見たところ普通の人間ですが……」

 

言いながら小猫が戦兎と龍誠を持ち上げ、

 

「とにかくこのまま部室に運んじゃいましょう」

「そうだね」

 

そんな三人はやり取りを終えるとそのままどこかに姿を消したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んん……」

 

瞼が重い。と言うか体がまだ痺れるような気がする。と言うか俺何してたんだっけ?と戦兎は微睡みの中で頭を再起動させる。

 

確か放課後に同学年の木場 祐斗と一年の塔城 小猫から逃げて喧嘩になって……そしたら急に体が痺れてそのあと記憶がない。

 

(そうだ……そもそもここどこだ?)

 

そう思った戦兎顔を上げて目も開ける。するとそこには、

 

「あら、起きたみたいね」

 

そこには紅の髪を揺らし、足を組む絶世の美女と言っても過言じゃない少女がそこにはいた。って!

 

「それ俺の!」

 

と戦兎は立ち上がるとするが体が動かない。何だと見てみれば、体が鎖で縛られている。

 

「なんで縛られて」

「だって意識戻ったらまた暴れそうだったら……」

 

悪いわね。と言いながら紅髪の少女はテーブルの上に並べていた戦兎から没収したものらしきボトルを一つ手に取る。

 

「これに掘られてるのは……タコかしら?」

「こちらはカメですわね」

「ライオン……」

「こっちなんか狼みたいですね」

 

と紅髪の少女が言うと他にも黒髪の少女に木場 祐斗や塔城 小猫までいる。やはりグルか。と言うかあの紅髪少女や黒髪少女も昨日見覚えがあった。

 

「かと思えばこれはピラミッド?時計?まぁそんなボトルが59本。そして隣の万丈 龍誠君の持ってたドラゴンのボトルで合わせて60本。更にこんな物まで……」

 

と紅髪少女が見せたのはベルトだ。戦兎は心の中で当然だと思いつつも取られていたことに舌打ちする。

 

「確か昨日はこれを腰に着けていたわよね」

「部長。危ないですわ」

 

と、腰に試しに着けてみようとしてた紅髪少女を黒髪少女は嗜める。まあそれは確かに特定の条件をクリアしてないとボトルを挿しても使えないのだが止めてもらえて助かる。死にはしないけど危ないことは危ないからね。

 

「ふわぁ……」

 

とそこに丁度龍誠も起きたようだ。コイツも少し眠そうに目を開けて周りを確認。そして、

 

「あぁ!」

 

と龍誠が突然大声をだし戦兎は目を細めながら龍誠を見る。

 

「なに叫んでんだよ」

「リアス・グレモリー先輩だ」

 

はぁ?と戦兎が何言ってんだコイツという眼で見ると龍誠が更に口を開く。

 

「隣にいるの姫島 朱乃先輩だろ?ほら、うちのクラスに松田と元浜っているだろ?」

「あぁ、あのいつも女子更衣室覗いてシバかれてる二人だろ?たしかお前の隣と斜め後ろの席の」

 

戦兎が記憶の糸を引っ張りながらそう答えると龍誠は頷いて、

 

「その二人が話してたんだよ。うちの学校の美少女ランキングとかで」

「あぁ、そういやなんか写真とかも出回ってる人がいるって……」

「そうそう。俺何回かあの二人が持ってるのを横目でみたことあってさ。それで多分間違いない」

 

と龍誠が言うと紅髪少女は口を開く。

 

「えぇ、私がリアス・グレモリーよ」

「そして私が姫島 朱乃ですわ」

 

そう言われ、龍誠がやっぱりそうだと頷く。

 

「なんか勉強出来るし運動神経も抜群で見た目も完璧って言ってた」

「しかしお前にしてはよく覚えてるな」

 

そう戦兎がいうと龍誠は若干げんなりした顔で、

 

「そりゃ毎日隣の席で聞き流してるとはいえ聞かされりゃ名前くらいはな」

 

と言われてそんなもんかと戦兎は頷く。戦兎は正直現在色事には余り関心がないためその手の話題には疎い。すると、

 

「って俺はなんで鎖で縛られてんだ!?」

「今更かよ!」

 

余りにも今更過ぎる疑問に戦兎はずっこけそうになりながら(こっちも縛られてるのであくまでに気分的にはだが)龍誠に突っ込んでるとリアス・グレモリー先輩はジト眼でこっちをみてきた。

 

「貴方達結構余裕ね」

「いやそう言うわけでは……」

 

正直現在の時点でどうやって逃げ出すかの算段立てるの必死だし。

 

ボトルは置いていけない。いや、作り直すことは可能なのだがこのボトル単体でも結構危ないのでここに放置できない。

 

ベルトなら単体では使い道はないし複製できるので命とどっちかと言われたらまだ置いていけるが……と思っていると、

 

「ま、そこまで警戒しなくて良いわ。貴方達は限り無く白だと思ってるから」

『はい?』

 

何をいってるんだ?と思っているとリアス・グレモリー先輩は更に続ける。

 

「私の名前を聞いても変な反応を示さなかったというのはこっちの事情を知らない者。ならあのはぐれの味方でもないでしょうし教会関係でもないでしょうね」

「あの……どういうことですか?」

 

と戦兎は問うと、リアス・グレモリー先輩は首をかしげ、

 

「そもそも貴方達はなんで呼び出されたと思ってるの?」

「わかりませんがどうみても怪しかったです」

「以下同文です」

 

まぁあの場に限ればあながち否定できない部分もあるけど……とリアス・グレモリー先輩は言うと姫島 朱乃先輩や木場 祐斗も困ったような表情を浮かべた。

 

「私は貴方達がぶっ飛ばした怪物を追ってきたの」

「えぇ、それは何となく想像つきました」

 

戦兎が答えるとリアス・グレモリー先輩も頷く。

 

「でも貴方達に何かしようという気はないわ」

「ホントですか?なんかこう見たやつは逃さない的なやつじゃないんですか?」

 

ここで素直に受け取るほど戦兎もバカじゃない。龍誠も疑いの眼差しだ。それに対してリアス・グレモリー先輩は流しながら答える。

 

「だってアレくらいなら何もなかったのと同じくらいに綺麗に証拠隠滅出来るしそんな状況で貴方達がいくら騒いだって問題はないわ。それにその気になれば貴方達に気づかれないように記憶消せるもの」

 

とサラッと怖いことを言われて戦兎と龍誠は背筋が冷える感覚を感じるが、表情には出さない。それを見ながらリアス・グレモリー先輩は言葉を続けた。

 

「ただそれが普通の人間ならね。ただ貴方達はあの怪物を倒した。見たところ普通の人間……いや、桐生 戦兎君。貴方は神器(セイクリットギア)を持ってるようだけどそれでもアレを倒して平然としてるというのは普通じゃないわ。貴方達は何者?なぜあそこにいたの?」

 

普通の高校生のつもりなんだけどなぁ……と戦兎と龍誠は顔を見合せながら思うがそう言って納得してもらえる空気じゃない。ただ何故いたのかは素直に答えても良いだろう。

 

「まずあそこに何故いたのかですか追われてましてね。何か変な神父風の服装の男達に怪我させられてた男の人を保護しまして」

「神父ですって!?」

「あいや……言動とか行動みるにどう考えても神父じゃないと思いますよ?銃とかライトセイバーみたいな武器使ってたので」

 

いやこれ信じてもらえねぇよな……と思いつついると教会の関係者が?とリアス・グレモリー先輩以外の三人も顔を見合わせていた。

 

「んで住宅街でやりあうわけにいかないんで使われなくなった廃工場に誘い込んで返り討ちにしたんですけどあの怪物の相手してる間にどこかいっちゃって……」

 

言えば言うほど苦しい嘘に聞こえるなと戦兎は思うがリアス・グレモリー先輩達には何か思うところがあったのか何か普通に受け入れてくれる感じだ。どういうこと?

 

「聞いても良いかしら?」

「え?はい」

 

リアス・グレモリー先輩の言葉に戦兎は頷くと、

 

「何人位いたの?」

「十人くらいですかね」

「まぁほとんど俺が倒しましたがね」

「でもリーダー格倒したのは俺でしょうが!」

「でも数は俺の方が上じゃねぇかよ!」

 

はいはい喧嘩は良いからとリアス・グレモリー先輩に宥められ、フン!と鼻を鳴らしながら二人は顔を逸らすと戦兎は相手を見た。

 

「昨日の私が見ただけの状況をみるにこれを使ったのよね」

「えぇ」

 

ベルトとボトルを持ち上げた彼女に戦兎は頷いていると、

 

「これ自体が神器(セイクリットギア)ではないみたいね……でもボトルの方からは不思議な力を感じる」

 

どうやって使うの?と聞いてきたが、それは自分にしか使えないと返す。すると、

 

「貴方結局どんな神器(セイクリットギア)を持ってるの?」

「そもそも神器(セイクリットギア)ってなんですか?」

 

昨日も何か言われたが、そもそも神器(セイクリットギア)とはなんだ?というのが戦兎の気持ちだった。全く心当たりがないのだ。

 

「自覚がないの?でもじゃあこれは……」

「なぁ戦兎。あの腕輪じゃね?」

 

戦兎の返しに悩み出してしまった彼女を横目に龍誠が口を開き、戦兎はこれ?と左腕に意識を集中させると一瞬小さく発光し現れたのは金色のバングル。それを来たリアス・グレモリー先輩は目を丸くした。

 

瓶詰め(ボトルチャージ)……確か能力はボトルを作り出して生物無生物問わず物体を封じ込めるだったはず」

「ですが先日のような力はないはずですよね?」

 

とリアス・グレモリー先輩の言葉に木場 祐斗が続くと彼女は頷く。

 

「そもそも戦闘向きの能力じゃないわ。いつから使えたの?」

「物心がついたときくらいですかね。気づいたら腕輪を出せました。そのあと色々研究して作ったのがそのボトルとそれを最大限活かすためのベルトです」

 

と戦兎がいうとリアス・グレモリー先輩はそう言うことかと目を細めた。

 

「人間の科学力もすごいわね。それでこれを使って昨日の怪物も倒したと」

「えぇ」

 

成程ね。嘘は吐いてないみたいだし良いでしょう。とリアス・グレモリー先輩は言い、そんなあっさり良いんですか?と戦兎は思わず聞いてしまう。すると彼女は笑って、

 

「だって隣の万丈 龍誠君が嘘は吐いてないって顔をしてるんだもの。彼、嘘が吐けないタイプでしょ?」

「あぁ」

 

今度はこっちが成程ねという番だ。確かに龍誠は嘘がすぐ顔に出る。そういう意味ではコイツは信用できる。だがそれをこの短いやり取りで気付くとは結構人をみる目はあるらしいなこの人。

 

「じゃあ取り敢えず尋問はここまでよ。ごめんなさいね。手荒な真似になって。でもこっちの話を少し位聞いてくれれば良かったのだけどね」

「怪しい人にはついていくなって小学生でも知ってますよ」

 

と戦兎がいっていると隣でブチッというかバキッみたいな音がして見てみると龍誠が鎖を自力で引きちぎって外していた。

 

「いやぁ、何時でも外せたんですけどど一応様子みてたんですよ」

 

と笑いながら龍誠は戦兎の鎖も腕力で引きちぎる。

 

それを見ていたリアス・グレモリー先輩達は思わず、

 

『人間?』

「一応学問の上では人間に分類されてるはずです」

 

戦兎も立ち上がりながら若干ビックリしているのだが、龍誠は鍛えてますから……とか決め顔してるし最近同じ種族かどうか怪しく思えてきたのは本音だ。

 

「あとそれ返してもらって良いですか」

「え?あぁ、良いわよ」

 

とリアス・グレモリー先輩にベルトを返して貰いボトルを取りながら木場 祐斗と塔城 小猫の方を見て、

 

「悪かったな。手間取らせて」

「ううん。こっちも怪しかったのは認めるところだからね」

「はい」

 

と戦兎の謝罪を受け入れてくれた二人に感謝しつついると、

 

「そう言えばそれって結局どうやって使うの?」

 

と若干好奇心に満ちた瞳で聞いてくるのはリアス・グレモリー先輩だ。それを見た戦兎はまぁ少し位なら良いかとベルトを腰に装着しウサギとタンクの模様が入ったボトルを取り出す。

 

「この赤いウサギの模様が入ったボトルがラビットフルボトル。こっちの青い戦車の模様が入ったボトルをタンクフルボトルって言います。そしてそれを挿して」

《ラビット!タンク!ベストマッチ!》

 

そして戦兎はレバーを回してポーズを取り、

 

「変身!」

《鋼のムーンサルト!ラビット!タンク!イェーイ!》

 

先日も変身した赤と青の姿に変わるとリアス・グレモリー先輩達から「おぉ」という声が漏れる。

 

「他にもボトルを入れ換えれば……」

《ラビット!掃除機!》

「ビルドアップ!」

 

そして今度は赤と 青緑の姿の上に青緑の方の腕には掃除機がついた姿に変わる。

 

するとそれに対して姫島 朱乃先輩が首をかしげた。

 

「今度はベストマッチって言いませんわね」

「あれは特定の相性の良いボトル同士でしか鳴りませんからね。まぁいくつかは見つけてるんですけど今日は良いでしょう」

 

そう言って戦兎は今度はドリルクラッシャーを出し、

 

「そしてこれがこのビルドの専用武器。ドリルクラッシャー。今はブレードモードですが……」

 

そう言って戦兎はドリルクラッシャーの刃先を掴んで取り外すとひっくり返して今度は刃先の方がこっちを向くように連結する。

 

「こうすればガンモードに!遠近どっちも使えるんですよ!」

 

と、戦兎はノリノリになってきたかと思うと次の瞬間!

 

『きゃあ!』

『うわぁ!』

 

何と突然それをぶっぱなしたのである。見た目以上に壁は何故か頑丈だったのが更なる不運を呼び銃弾は跳弾して全員が大慌てで伏せる。そんな中でも仮面越しにでも分かるほど戦兎はニコニコしながら、

 

「凄いですよね?ヤバいですよね?天才ですよいてぇ!」

 

ゴン!っと戦兎は後ろから龍誠にぶん殴られた。

 

「何すんだよ!」

「何すんだはこっちの台詞だ!当たったらあぶねぇだろうが!」

 

という龍誠の言葉にリアス・グレモリー先輩達もウンウンと頷き戦兎はやっちまったかなぁ……と思いながら変身を解除する。

 

「でも凄いわね。神器(セイクリットギア)を利用してるとはいえ組み合わせ方によっては応用力が高いじゃない。えぇと……何て言ったかしら?さっきの姿」

「ビルドです。造る、形成するって意味でビルド」

 

そうそう。とリアス・グレモリー先輩は言いながらいると塔城 小猫がこっちにきて、

 

「さっき変身って言ってましたよね?もしかして……」

「あ、うん。あれは仮面ライダーからね。と言うか俺的には一応仮面ライダーをモデルにしてるから正式名称は仮面ライダービルドって呼んでる」

 

というやり取りをしていると木場 祐斗がきて、

 

「仮面ライダーってあの都市伝説の?」

「あぁ、今は余り聞かなくなりなしたが、未だに正体が謎のヒーロー。やっぱこういう力が何で俺にあるのか分からないけどどうせ使えるならああいう風に使えた方がかっこいいじゃん?」

 

と戦兎は言いながらベルトを内ポケットにしまう。そんな戦兎の言葉に木場 祐斗は成程と答えた。

 

そんなときふと戦兎はある疑問を思い出す。それは、

 

「そう言えば何でリアス・グレモリー先輩達はあの怪物を追っていたんですか?」

「え?そうね……まぁ貴方達にも知る権利があるわね」

 

とリアス・グレモリー先輩は言いながらこっちを見た。

 

「あれははぐれ悪魔。まぁずいぶん好き勝手やっててね。詳しくは言わないでおくけど色々やったあげく討伐命令が出ていたの。それで追っていたの」

「何で先輩達が?」

 

と聞いたのは龍誠。まあその問いは戦兎も気になっていた内容である。すると、リアス・グレモリー先輩達は並び、

 

「だって私たちも悪魔だもの」

『え?』

 

バサッと戦兎達が呆然とする目の前で突如リアス・グレモリー先輩達の背中からコウモリのようなちょっと違うような羽根が生える。明らかに自らの意思をもって動かしている様子に二人はポカンとしている。

 

「それで二人に良い話があるのだけど」

 

そんな二人の様子をほっといたままリアス・グレモリー先輩は赤いチェスの駒のようなものを取り出した。

 

「なんですかこれ?」

悪魔の駒(イーヴィル・ピース)。悪魔っていうのは出生率が低くてね。人口の減少が問題になってる。それでどうしたと思う?」

 

と言う問いに龍誠は大きな声で、

 

「外から連れてくる!」

「んなアホな」

「いえ大体合ってるわ」

 

合ってるのかよ!戦兎は突っ込むのを我慢して続きを促す。

 

「それでこの駒。これは人間を悪魔に転生させることが出来るの。勿論誰にもでこの駒を配られる訳じゃないわ。私のような上級悪魔という階級に分類される悪魔だけよ?そしてこの駒を配られた悪魔は駒を使って転生悪魔を産み出して自分の眷属を作っていくの。一度使っちゃうと取り返しつかないから慎重にはであるけどね」

 

へぇ、悪魔にも階級あるんだ。何て思ったのは余談としてつまりはだ。

 

「勧誘ですか?自分の眷属にならないかっていう」

「まぁそういうことね。ちなみに悪魔になるとこんな特典がつくわ」

 

と彼女はどこからともなく書類を見せると二人はそれをみる。

 

「い、意外と福利厚生がしっかりしてますね」

「今の時代そこもしっかりしておかないとね」

 

成程。悪魔としての通常業務やこのレーティングゲームという競技への参加等色々あるが寿命の増加や身体能力に悪魔の業務次第では給料も相当……あとは危険な仕事もあるからという旨もある。良いことばっかじゃないか。って!

 

「龍誠!なに寝てんだ!」

「俺こういう字ばっかの奴みると眠くなるんだ……知ってるだろ」

 

知ってるがダメだ起きろと戦兎は龍誠をたたき起こし改めて見る。

 

「どうかしら?二人のあの変身能力は魅力的なんだけど……」

「え?俺は変身できませんよ?」

「え?じゃあどうやって九人の相手を倒したの?」

 

そう。龍誠は変身できない。リアス・グレモリー先輩は出来ると思っていたようだがコイツはできない。ボトルは持たせてるけどな。

 

「俺の鍛えぬいた肉体です!」

「脳ミソまで筋肉に浸食させちゃってますからねぇ」

「そんな誉めんなって」

 

誉めてねぇよ!と戦兎は返しながらテーブルに置く。

 

「それで答えは出たかしら?」

 

えぇ、と戦兎は答えながらリアス・グレモリー先輩の顔をみて、

 

「お断りします」

 

そう。とリアス・グレモリー先輩は何となくそう来るだろうなぁという顔で答えた。

 

「いや条件は良いんですけど俺は人間としての生活を普通に楽しめてるのでこれ以上は余り望んでないんですよ。この力を誰かのために使いたいとは思いますがそれは別に悪魔にならなくても良いわけですしね」

「俺も人間やめるのはちょっと……」

 

と二人が言うとリアス・グレモリー先輩は優しげな笑みを浮かべて、それじゃ仕方無いわねと駒をしまう。それを見た龍誠は、

 

「結構あっさり引いてくれるんですね」

「無理矢理転生させる悪魔もいるけど私はしないわ。そもそもそんなことすれば不満をもった眷属から謀反起こされることもあるしね。なら今回のお詫びもかねてこれをあげるわ」

 

と言って渡してくれたのは魔方陣が描かれた一枚の紙だった。

 

「さっきの書類にあったとおもうけど私達の業務として召喚に応じて対価を貰う代わりに願いを叶えるってあるんだけどその簡易魔方陣を使えば一つだけ。願いを叶えて上げる。今回限りは対価無しでね。あ、でも余り無茶な要求はダメよ?」

 

じゃあその内願いが決まったら使いますねと戦兎は笑いながら自身のポケットに放り込む。

 

「おい戦兎。俺にも決めさせろよ」

「分かってるよ」

 

と言いつつ二人は立ち上がりドアに手をかけながら、

 

『それじゃあ失礼します』

「えぇ、またね」

 

そんなやり取りをして二人は部屋をあとにしたのだった。



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シスターと堕天使

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦「無事誤解も解きつつ悪魔という今までにない種族がいることを知ったこの俺桐生 戦兎は自宅にて新たな発明品に着手していた」
龍「とまあそんなつまらねぇもん見せてもしかたねぇから今回は俺が主役回だぜ!」
戦「こんな奴で大丈夫なのかねぇ……」
龍「アホか!俺だって主人公くらいやれるわ!」
戦「じゃあせめてズボンのチャック位は閉めてから行けよ」
龍「のわ!いつからだよ!」
戦「放課後に木場 祐斗達が来たときに気づいた」
龍「嘘だろ!?おれじゃあリアス先輩と話してるときも全開だったのか!?言ってくれよ!」
戦「あの状況で何時言うんだよ。自分で気づきなさいよ全く。と言うわけでこんなバカが主役の第4話スタート」
龍「バカの前に筋肉をつけろぉ!」


「えぇとこれで買ってこなきゃいけないのは全部かな」

 

リアス・グレモリー先輩達との出会いがあった日の夕方。龍誠は一人で買い物に来ていた。

 

今日も戦兎の家にいた龍誠だったのだが、夕食の材料で足りないのがあったためお使いに来ている。

 

因みに戦兎はバイクと同時進行で作っていた発明品を完成させるっていって研究室に籠ってしまった(戦兎の自宅には地下に研究施設がある)ので龍誠が買い物籠片手に商店街を歩いていた。すると、

 

「ん?」

 

いきなり後ろから袖を引かれ、振り返るとそこには金髪の長い髪をキラキラと輝かせるシスター風の服装の外国人の美少女が自分の袖を引っ張っている。どうも今日はこういう女の子と出会うなと思いつつ、

 

「どうした?」

「っ!っ!っ!」

 

龍誠が聞くと少女は突如変な躍りを踊り出す。何かと思いつつ見ていると身ぶり手振りで何かを伝えようとしていることがわかった。

 

彼女は首からぶら下げた十字架をこちらに見せつつ必死に何か祈る動作をしたりするが、

 

「???」

 

と、龍誠は首をかしげるばかり。だが別に何も考えていない訳じゃない。この動きから推察されること……何かをお願いしているのはわかる。十字架を持ってるし服装的にはシスターっぽい……後デカいバックもある。

 

「そういうことか!」

 

そこでやっと龍誠は理解した。この子が言おうとしていることに。なので、

 

「こっちだ!」

 

そう龍誠が言うと通じたことが分かったのか彼女も笑顔を見せながらついてくる。

 

まさに今、人種と言語の壁を越えて意思の疎通を測れたと言うことだ。ただまぁ……正しく意思が通じあったかは別の話なので、

 

「あら、それでここに連れてきたの?龍誠君」

「はい!」

「???」

 

目を点にしながら金髪の少女は連れてこられた家の畳の上で冷や汗を垂らしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つまりお前はこの子が今夜の宿を探していたと思ったのか?」

「おう!」

 

と自信満々に語る龍誠に戦兎は頭を抱えた。

 

「まずな龍誠。お前が女だったとして……」

「俺は生まれてからずっと男だぞ?」

「んなこたぁ知ってるよ。仮定の話だ。見知らぬ男に宿を提供してもらえないか聞くか?そんな不用心なこと」

 

暫く龍誠は考え込みむ。そして、

 

「しねぇな」

「だろ?まずそこでおかしいと思えよな」

 

と戦兎は外国語の辞書を引きながら金髪の少女と会話していた。

 

「んで、取り敢えずわかったのは彼女が探してたのは宿じゃなくて教会だ。後名前はアーシア・アルジェント。元々はイタリアに住んでたみたいだな」

 

パタンと辞書を閉じて戦兎がいうと龍誠は成程な~と頷く。何が成程なじゃこのバカ。まぁ確かのアーシアも少々不用心ではあると思うが……何て思っていると、

 

「あ、いたいた」

 

と部屋に入ってきたのは戦兎の妹、桐生 美空である。現在中学生の彼女はその容姿を活かしてアイドル活動も行っっていてファンも多い。まぁその実体はかなりの暴君なのだが……

 

「お母さんがアーシアさんお風呂にいれてあげなさいって言ってたからつれてくよ」

「あぁ、気を付けろよ」

 

と戦兎は言い、さて発明の続きすっかなと立ち上がると龍誠もそれに着いていこうとする。すると美空が、

 

「覗いたら怒るからね?」

『あっはっはっは!中学生の裸なんかに興味ねぇよ』

 

と二人がゲラゲラ笑った次の瞬間二人の顔の横をハサミが飛んでいった。そして美空がにっこり笑うと、

 

「刻むよ?」

『すいませんでしたぁ!』

 

勿論土下座で許しを請うたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱ教会っていうと町外れのあれかな?」

「だろうなぁ」

「……」

 

と言うわけでジャパニーズ土下座を披露する羽目になった次の日、戦兎と龍誠はアーシアを連れて近くの公園にいた。

 

昨晩は流石に夜も遅いと言うことで泊まらせたが彼女の本来の目的は教会だ。なので学校が終わると同時に全速力で帰宅し(美空は撮影、母はパートだった)縁側で行儀よく座っていた彼女を教会まで送る事にしたのだが町外れなのでのんびり向かっている。

 

公園にいるのだってその道中でアイス食べようという話になりじゃあまずは場所を確保してからというだけだ。そして……

 

『ジャンケンポイ!』

 

と戦兎と龍誠はじゃんけん。流石にアーシアには行かせられないし。

 

そして勝者はこういう時に妙に運が良い龍誠で、戦兎は仕方なく近くのコンビニまで走っていく。それを見送りながら龍誠とアーシアは二人で待つのだが、意外ときついことに気づいた。言葉が通じないのだから無言。これが意外ときついのだ。だがここで黙り込まないのが龍誠であった。龍誠はスマホを取り出しイタリア語を調べる。そしてアーシアを見ると、

 

「アーシア、かぺっり、べっら!」

 

と、龍誠はアーシアに言った。因みに日本語に直訳すると「アーシア、髪、綺麗」である。

 

前に美空が女子との会話に困ったときは綺麗なとこを誉めろと言っていたのを覚えていた龍誠は取り敢えず髪を誉めた。ただこれはお世辞や冗談ではなく本当に綺麗だと思っていた。それくらいアーシアのブロンドヘアは見事なのだ。

 

するとアーシアは突然そんなことを言われたので一瞬ポカンとしたが徐々に単語で龍誠の言おうとしていることを理解すると照れと恥ずかしさが混ざりあったような表情してちょっと困ったような態度をとる。

 

話題選択ミスったかなぁ……と龍誠はそんな様子のアーシアに頬を掻いていると、

 

「そんなところにいたのね?アーシア」

『っ!』

 

突然聞こえた腹の底まで冷える声音に龍誠は咄嗟に警戒体勢を取った。誰かに言われたことじゃないが、本能的に防衛本能が働いたのだ。そんな彼の前にバサリと一人の少女が空から降りてきた。

 

黒髪に黒いボンテージ風の服装。そして背中から黒いカラスのような羽根が生えている。明らかに人間じゃない。昨日リアス・グレモリー先輩達のを見てなかったら動揺してたかもしれない。

 

「全く……何時までたっても来ないから心配して来てみれば」

「なにもんだテメェ」

 

心配?コイツのどこにもそんな気配を感じない。ただ必要な道具がないから探していた程度の口調だ。

 

つうかアーシアが明らかに動揺した顔してる。これはただ事じゃねぇな。

 

「私はレイナーレ。コレの持ち主よ。さっさと返してもらえるかしら?」

「なんだと?」

 

今アーシアをコレと言ったのか?物扱いしてないか?と龍誠の中で怒りのマグマがグツグツと沸きだっていく。

 

「テメェも悪魔って奴か……」

「なんでこの美しい羽根をみて悪魔だと思えるわけ?私は【堕天使】よ!世界で一番崇高で気高き種族!」

 

そうレイナーレは叫ぶのを聞きながら龍誠はボトルを持ち構えをとる。

 

「はぁ?なにしてんの?」

「俺の第六感がビンビンにいってんだよ。お前にアーシア渡しちゃなんねぇってな!」

 

と龍誠が言うとアーシアが昨日のように袖を引くと首を横にフルフルと振る。それをみた龍誠は笑みを浮かべてそっと手を外す。

 

「大丈夫だって。鍛えてるからな」

 

と龍誠は言うとボトルを振りながらレイナーレに飛びかかる。

 

「おらぁ!」

「っ!」

 

想像以上の力と速さで振るわれる拳にレイナーレは咄嗟に横に飛んで避けた。

 

(こいつ……人間?)

「まだまだぁ!」

 

だがそれを逃す龍誠じゃない。そのままもう一回距離を詰め直し拳を振るう。

 

「がはっ!」

 

ミキッとレイナーレは自らの腹部に叩き込まれた拳の破壊力に目を見張る。どう考えても人間が出すパワーではない。一体これはなんだと彼女は動揺しながら後ろに吹っ飛ぶ。

 

「おぉぉ……」

 

龍誠は吹っ飛ばしたレイナーレを追いかけて行こうとしたがその前に地面に転ぶ。見てみれば腹に光で出来たような槍が深々と刺さっていた。

 

「なんだこれ……」

 

龍誠はそれ強引に引き抜き噴出する血を手で抑えていると、アーシアが来た。

 

「え?」

 

するとアーシアが傷口に両手を当てると同時に光が漏れだし龍誠の傷口が塞がっていく。

 

「もしかして……神器(セイクリットギア)?」

「悪魔のことといい意外と知ってるようね。そうよ、それは神器(セイクリットギア)の一つ、聖母の微笑み(トワイライト・ヒーリング)。その大怪我も治せるほどと言うのは想像以上ね」

 

傷口が塞がったのを確認した龍誠はアーシアに礼をいいながら立ち上がり再度構える。それを見たレイナーレはめんどくさそうな表情を浮かべた。

 

「あとねぇ人間?何を勘違いしてるか知らないけどソレは望んで私達のところに来ようとしているのよ?」

「なに?」

 

龍誠はどういうことだと言うとレイナーレは口を開く。

 

「元々彼女はその回復能力を買われて聖女と呼ばれてたのよ。でもある時彼女は異端者となった。理由はその回復能力は何と人間だけじゃなくて悪魔にも有効だった。ある時道端に倒れていた悪魔を彼女は治しちゃったのよねぇ。んで教会と敵対してる悪魔を治せる力なんか使える彼女は教会を追い出されて一人ぼっち。それを私が拾って有効活用してやろうって話だったのよ」

「有効活用?」

「えぇ、彼女の神器(セイクリットギア)を戴いて私が使うの。そしたらきっともっと活躍していつか幹部だって目じゃないわ」

 

神器(セイクリットギア)頂いたらアーシアはどうなるんだ?と龍誠は聞く。それを聞いたレイナーレは心底どうでも良さそうに、

 

「死ぬけど良いじゃない。どうせこのまま生きてたってソレには何もいいことはないでしょうし最後に少し位良いことして死ねば良いじゃない。それだってそれを了承した上で日本に来たのよ?ちょっと手違いはあったみたいだけど」

 

レイナーレのめんどくさいからさっさとこっちにアーシアを渡せという雰囲気に龍誠の怒りのマグマが噴火する。

 

「ふざけんな」

「ふざけてないわよ。あんただって気持ち悪いでしょ?誰振り構わず治しちゃう能力なんてさ」

 

レイナーレの言葉にアーシアは肩を震わせる。今思ったんだけどもしかしてアーシアってレイナーレの言葉通じてない?なんでかは分からないけど……まぁいいか。それよりだ。

 

「全然?最高に優しい能力じゃねぇか。俺は好きだぜ?そう底無しのお人好しみたいな能力」

 

そう言ってアーシアを守るように立ち上がりボトルを握り締め構えをとる。

 

「つうかあんたソレのなんだっていうの?あぁ、惚れた?まぁ顔はいいからねぇ!」

「そんなんじゃねぇよ。ただアーシアとは長い付き合いだからだ」

 

昨日からのな。と付け加えた龍誠はレイナーレに向けて走り出した。次の瞬間!

 

「ゴフッ」

 

ズシャッと龍誠はまた地面に倒れる。なんだ?と龍誠は背中を見ると背中にはレイナーレと同じ光で出来たような槍が三本も刺さっていた。

 

「おっそいすよ~。んでなにしてたんすか?後その人間ぶっ殺して良いんすよね?」

 

そういう黒い翼生やしたゴスロリ風の少女以外にもレイナーレと同じ羽根のが二人……

 

(仲間がいたのか)

「全くせっかく命くらいは見逃してやろうと思ってたのにバカな男ね」

 

クスクス笑うレイナーレを見た龍誠のハートにまた火が灯る。

 

「まだまだぁ!……がっ!」

 

と龍誠はせっかく立ち上がったが足に激痛が走りまた倒れてしまう。これは……銃弾か?

 

「おおっと。アンタはこっちだぜぇ?」

 

そう言ってアーシアを羽交い締めしてるのは先日会った白髪の神父だ。コイツもグルだったのかと龍誠は力が段々入らなくなっていく体に力を込め直す。

 

「まだこいつ動こうとしてるわ気持ち悪い……」

 

と言ってレイナーレは光の槍を作り出すと龍誠の前に立つ。

 

「ホントとっとと死になさいよね。人間ごときが」

 

そう言ってレイナーレは迷いなく龍誠の心臓に光の槍を突き刺すと背を向ける。

 

「ごふっ」

 

びちゃっと血の塊が龍誠の口から溢れ、力が完全に入らなくなっていく。

 

(まだ……)

 

それでも龍誠は立とうと頭では考えていた。

 

(今度こそ、守るんだ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ったく。なんだって今日に限ってレジで店から溢れそうなほど客が並ぶかなぁ」

 

と戦兎は両手にアイスを抱えながら龍誠達が待っている場所に向かっていた。

 

「俺はこのチョコ、アーシアには基本のバニラ、龍誠にはこのシュールストレミング味でいいか」

 

寧ろどこで売っていたのか聞きたいような味のアイスだが戦兎は気にした様子もなく歩いていく。だが、

 

「え?」

 

ボトっと持っていたアイスを地面に落とすが気にならない。戦兎は目の前の光景に脳が処理出来ていない。なんで……

 

「龍誠!!!」

 

目の前には体に光の槍を何本も刺された上に銃弾で撃たれたような傷跡まである龍誠が転がっていた。

 

「龍誠!大丈夫か!?」

 

大丈夫なわけがない。だがそれでも戦兎は龍誠を揺すって起こそうとする。

 

「くそ!くそ!くそ!」

 

だが反応はない。完全に冷たくなって動かなくなった龍誠の姿に頭をガシガシ掻きながら戦兎は考える。どうする?誰がやった?何か手は?そんなものあるわけがない。戦兎のボトルにも死んだやつを生き返らすような奴はない。それでも諦められない。なのに頭の中がどんどんグチャグチャしてきて息ができず、視界がグニャリと歪んでくる。

 

(頼むから神様……神様が見てないなら他の何でもなんでもいい!コイツを、俺の親友を助けてくれ!!!!)

 

戦兎が泣きながらそう祈った瞬間。戦兎のポケットが中から強い光を発し彼の横に魔方陣を作り出しそこから現れたのは、

 

「リアス・グレモリー先輩……?」

「願いは決まったのかしら?ってこれは」

 

リアス・グレモリー先輩は倒れている龍誠をみて顔色を変えた。

 

「これは堕天使や天使が使う光」

「そんなことはどうでもいい!なぁ、どんな願いでも叶えるんだろ!?なら龍誠を助けてくれ!」

 

戦兎はリアス・グレモリー先輩に掴み掛かる勢いで言葉を捲し立てる。

 

「頼むから、こいつが助かるならなんでもするから、だから……お願いします」

「……」

 

先日見たふざけているようで冷静さを持った人間とは思えない程の姿に彼女は少し驚いていた。そして彼にとって万丈 龍誠と言うのがどういう存在か少しだけわかった気がした。そして、

 

「方法はあるわ。まだ死んで時間が経ってないから出来る裏技みたいなものだけど」

「え?」

 

そう言ってリアス・グレモリー先輩がだしたのは先日も見た悪魔の駒(イーヴィル・ピース)だ。

 

「悪魔に転生すればその際に傷も治せるし失った命も取り戻せるわ。でも昨日いってたように人間じゃなくなるし一度転生したら勿論もう人間には戻れなくなるわよ」

「そんなのいってる場合じゃない!後で納得させますから!」

 

そうね。とリアス・グレモリー先輩は悪魔の駒(イーヴィル・ピース)を手にして立ち上がる。

 

(使う駒は……ルーク、ナイト、ビジョップ、ポーン。昨日の身体能力を考えればルークが適してるわね)

 

とリアス・グレモリー先輩はチェスの駒のルークの形をした駒を手にして龍誠に触るが……

 

(使えない!?どういうこと!?)

 

この転生。彼女は説明していなかったが勿論何の制約もない訳じゃない。それは転生させる相手の才能や強さ、種族の格によって左右される。例えば普通の人間であればポーンの駒一つだが、魔獣とかみたいなやつであればポーンの駒4~5個みたいなのも聞かない話じゃない。あとは神器(セイクリットギア)持ちなどもそうだ。

 

そしてポーンの駒を基準とした場合ルークの駒はポーンの駒5個分に相当する。つまり龍誠はポーンの駒6個以上使わねば転生できないということだ。

 

(ならポーンを複数使うしかないわね)

 

使う個数が分からないためリアス・グレモリー先輩はポーンの駒八個全て並べると呪文を口にする。

 

「我 リアス・グレモリーの名において命ず 汝 万丈 龍誠 よ。我の下僕となるため今再びこの地へ魂を帰還させ悪魔と成れ。汝 我がポーンとして新たな生に歓喜せよ!」

 

その呪文と共に彼女の足元に巨大な魔方陣が出現しポーンの駒が浮かび上がった。だが、

 

(どういうこと!?ポーンの駒が4つしか反応してない!?ルークの駒で反応しなかったのに!?いや違う、あれは!!)

 

彼女が驚愕する中、龍誠に反応を示した4つの駒はバチバチと発光しその形状を変化させると、そのまま龍誠の体の中に入っていく。そして、

 

「ぷはぁ!」

 

ガバッと龍誠は体を起こすとペタペタ自分の体を触り、首をかしげている。

 

「あれ?俺は確か……ってあれ?戦兎とリアス・グレモリー先輩?つうか戦兎。なに泣いてんだ?」

「な、泣いてねぇよバカ」

「誰がバカだ!筋肉をつけろ筋肉を!ってそうだアーシア!」

 

龍誠は大急ぎで立ち上がると駆け出そうとし、戦兎とリアス・グレモリー先輩が後ろ首をつかんで止める。

 

「ぐぇ!」

「落ち着きなさい。まずあなたに何があったの?それとアーシアって誰?」

 

彼女に聞かれ、龍誠は自分に何があったのか、そしてアーシアとは何者なのかは戦兎も一緒に説明した。

 

「成程。追放されたシスターが堕天使に……」

「とにかくアーシアを助けに行かないと!」

 

龍誠が言うと、ダメよ。とリアス・グレモリー先輩は言う。

 

「向こうにどれだけの人員がいるのかもわかってない上に相手は堕天使よ?貴方は知らないだろうけど悪魔と堕天使は組織単位で敵対しててギリギリで戦争にならないようにバランスを保ってるの。貴方が一人で突っ込んで暴れたとこでそのバランスを崩しかねないわ」

「じゃあ見捨てろっていうんですか!?」

 

と興奮する龍誠の肩を掴んだのは戦兎だ。そのまま戦兎は少し落ち着けと言いながら、

 

「龍誠一人でダメって事は他になら何かあるんですか?」

「えぇ、さっき言ってたわよね?町外れの教会を目指してたって。もしあそこが隠れ家なら私の管理してる範囲内よ。そこで何かやっているならこちらとしてもきちんと確認及び被害が出そうなら相応に対応するわ」

 

と彼女は笑うと、龍誠を見る。

 

「良い?貴方が一人で突っ込めば先日会った悪魔みたくはぐれ扱いとして処罰されかねないわ。でも私と一緒ならこちらの管理下に土足で踏み込んできた奴らにルールに則った上で戦うことができる。どちらが良いかなんて聞くまでもないでしょ?」

「そ、そうですね」

 

と龍誠が言うとリアス・グレモリー先輩はにっこり笑う。

 

「ならこっちにいらっしゃい」

 

そう言うとリアス・グレモリー先輩は足元に魔方陣を作り出すと手招きする。

 

「いちいち走ってたりしてられないわ。これで学園にテレポートして教会を目指すわよ」

『はい!』

 

と、龍誠と()()は魔方陣に入り、

 

「って桐生 戦兎君?あなたも来るの?」

「ダメなんですか?」

 

いや危険だとか色々言いたいことはあるけど……とリアス・グレモリー先輩はいうと、

 

「これ悪魔用だから人間の貴方は使えないのよ」

「え゛?」

 

と言われてしまったので街中をバイクで走る戦兎の姿があったのは余談である。

 

因みに、

 

「あれ?悪魔用だったら俺も使えませんよね?」

「貴方は悪魔に転生させたから平気よ」

「え!?いつの間に!?」

 

しまったその辺りの説明してなかった……とコメカミを抑えるリアス・グレモリー先輩の姿があったのも余談だろう。

 



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新たな発明品

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

龍「アーシアを連れて教会に向かう最中、突如謎の堕天使に襲われ命を落とした俺だが何と悪魔に!もうただでさえ最強無敵の俺が悪魔になんかなったらマジ半端ないんじゃね!?」
戦「なぁにが最強無敵だよ。負けたから死んだんじゃねぇか」
龍「まぁまぁ。俺のために泣いてくれたことを俺は知ってるんだぜ?やっぱ戦兎は俺の親友だ」
戦「はぁ!?ななななな泣いてなんかねぇし!たまたま持ち歩いてたわさびの粉末目に入っただけだし!」
龍「どういう理由だよ!とまあそんなわけで今回も大活躍の俺が見れる第5話スタート!」
戦「それ俺の台詞!」


「確かに教会の人間がいるみたいね」

 

現在すっかり日も暮れ、闇が支配する時間帯の中リアス先輩を筆頭に先日出会った面子と龍誠達は教会を影からこっそり覗いていた。そこには見張りと思わしき奴等が三人ほどいる。

 

「よぉし!いくぜ!いってぇ!」

 

一人で突貫しようとする龍誠を慌ててリアス先輩達が止めて、力付くで龍誠は物影に引っ張り戻された。

 

「待ちなさい!いきなり飛び出したって危ないだけよ!」

「そのアーシアさんって言う子を助けたいのは分かりますが落ち着きなさい」

「君が怪我したら元も子もないんだからね?」

「落ち着きがない……」

 

上から順にリアス先輩、朱乃先輩、祐斗、小猫に龍誠が突っ込まれいると、

 

「早速怒られてんな~」

 

その声に全員が振り替えり、そこにはヘルメットを外す戦兎が立っていた。

 

戦兎はそのままリアス達の元に行くと彼女の眼を見る。

 

「まさかホントに来るなんて……」

「来ないと思ってたんですか?」

 

そういう戦兎に彼女はこれは貴方に関係ないはずよ?と言うと戦兎は首を横に振る。

 

「俺だってアーシアとは知らない仲じゃありません。それを見捨てておくのはヒーローらしくない。つうか人としてどうよって感じじゃないですか。それに……」

「それに?」

 

戦兎は一旦言葉を区切ってから、言葉を続ける。

 

「龍誠が何かする時に付き合うのも俺の仕事なので」

「さっすが戦兎!やっぱ俺達は【一年大将】だな!」

『?』

 

肩を組みながらいう龍誠の言葉にリアス先輩達は首を傾げ、戦兎はため息を吐きながら、

 

「言いたいのは【一蓮托生】か?」

「それだ!」

 

龍誠がビシッと指を指してくる中、戦兎はまた大きくため息を吐いてしまう。このバカに効く薬はないのか……

 

すると、

 

「おやおや、悪魔風情がこんなところで何をしているのかな?」

 

突然聞こえたその声に全員が空を見ると、そこには三人の堕天使がいた。バレちまったらしい……何故だ?

 

「あぁ!お前ら俺を後ろから不意打ちでぶっ刺してきた奴等じゃねぇか!」

「貴様……何故生きている」

 

確実に始末したはずの人間が生きていることに三人はかなり驚いているようだ。

 

「悪魔にジョブチェンジしたのさ!」

 

だが龍誠ら堂々としたもので、殺された相手に対して余り気負った様子はない。案外落ち着いたものだ。

 

「それで?貴方達こんな教会の近くで何をしているのかしら?まさか堕天使がお祈りするわけでもないでしょうし」

「さぁ、どうっすかねぇ?」

 

そう言いながら堕天使トリオは光の槍を作り出し戦闘体勢に入る。それを見たリアス先輩は、

 

「朱乃!援護をお願い!他はこのまま教会に入りなさい!」

『了解!』

 

彼女の指示に皆が素早く驚く中、戦兎と龍誠がオロオロしていると小猫が二人をヒョイっと持ち上げて走り出す。

 

「だ、大丈夫なのか!?置いてきちゃって!」

「大丈夫!部長は【紅髪の滅殺姫(ルインプリンセス)】って呼ばれてるからね!」

(物騒過ぎる……)

 

その木場 祐斗の言葉を聞きながら戦兎は冷や汗を垂らし、龍誠は英文の意味を理解してないのか疑問符を浮かべている。

 

そんな中、突っ込んでいく4人に、見張りで教会の前に立っていた三人の内一人は何処からともなく剣を取り出した祐斗に気絶させられ、もう一人は途中で戦兎と龍誠を落とし小猫が突っ込む。

 

「と、止まれ!」

 

そう言った相手の腹部に拳を叩き込むと、尋常じゃないパワーで空中に吹っ飛ばしそのまま地面に落下させた。

 

「よぉし今度こそ俺も!」

 

そう言って龍誠はドラゴンフルボトルを取り出すと、シャカシャカ振って最後の一人に飛び掛かる。

 

「あ、待って!今までの感覚でやると……」

 

ベキメキボキャ……と変な音が響きながら、龍誠にぶん殴られた相手は後方に吹っ飛んでいき、そのまま入り口の扉を破壊しながら消えていった。

 

『……へ?』

 

龍誠だけじゃない。戦兎すら目を点にして見ている。それを見た祐斗は、

 

「悪魔に転生すると身体能力も上がるんだ。ただでさえ人間離れした君が手加減間違えたら人間なんて簡単にはミンチだよ?」

 

やっべぇえええええ……と龍誠は改めて加減を覚えようと固く誓いながら、とりあえず奥に進むことにする。

 

「それにしても本当に桐生君も来るのかい?」

「あぁ、別に自分の身は自分で守るから心配すんな」

 

そう戦兎がいうと、祐斗もホント気を付けてねと言いつつ龍誠を見る。

 

「万丈君ってまだ駒の特性って知らないよね?」

「こまのとくせい?」

 

龍誠が首を傾げると祐斗は口を開く。

 

悪魔の駒(イーヴィル・ピース)にはそれぞれ特性がある。例えば僕のナイトの駒は速度。小猫ちゃんはルークでパワーや頑丈さ。ここには居ないけどビジョップは魔力でクイーンは全て。んでポーンは基本的にはないんだけど……」

「ないの!?」

 

基本的にはだから落ち着いて、と祐斗に抑えられ龍誠は一先ず聞きの体勢に入ったのを確認して話を続ける。

 

「ポーンは敵地でキング、つまり部長の許可があれば昇格(プロモーション)出来る。それにより好きな駒の特性を使うことが出来るんだ。ナイトでもルークでもビジョップでもクイーンでもね」

「おぉ!マジ最強じゃん!」

 

勿論体に負担掛けるから気を付けてね?と祐斗が言ってるが聞いちゃいないな。こりゃ……

 

と思って進むと、開けた場所に出た。そこには、

 

「あれぇ?こいつはあの時のへんな神器(セイクリットギア)使い迄いるじゃありませんかぁ!?」

「白髪の神父にその他大勢ってとこか……」

 

戦兎がそう言うと前に祐斗と小猫が出る。

 

「ここは僕達が……」

「俺もやるよ」

 

そう言って戦兎もいれて三人が前に並ぶ。

 

「桐生くん。君は人間なんだ。ここは……」

「いいや、俺はあの白髪の神父に言っておかなきゃならんことがある」

 

はい?と彼が困惑する中、戦兎は白髪の神父と視線を交わす。

 

「お前、名前は?」

「は?」

「いちいち白髪の神父っていう方も書く方もめんどいんだよ」

「書く方って何の話だよ」

 

白髪の神父は思わずジト目で見てくるが、それでもフリード・セルゼンだと名乗る。

 

「よしフリード・セルゼン。てめぇには大きな借りができたからな。俺が直々に倒してやる」

「借り?」

「あぁ、てめぇ龍誠撃っただろ?」

 

ホントはさっきの堕天使三人にも言っておきたかったが仕方ない。

 

「良いか?龍誠は俺の玩具……もとい、親友だ。こいつがいないと俺の発明品の生け贄……じゃない、感想を言ってくれるやつが居なくなんだよ!なのに殺すだぁ……?ふざけんな!」

「お前がふざけんな!俺を何だと思ってやがんだ!」

 

後ろで龍誠が叫んでるがまぁ無視しつつ、

 

「という訳でだ。お前には俺の新しい発明品の第一被検体になってもらうぜ」

 

そう言った戦兎はベルトを装着すると、二つのボトルを取り出した。

 

「あぁ、あれはこの間俺が第六感で見つけたベストマッチ!」

「あぁ!序でに専用武器も作ったんだぜ!」

 

シャカシャカボトルを振りながら戦兎は言い、ボトルをベルトに挿す。

 

《忍者!コミック!ベストマッチ》

 

レバーを回し、フレームが出てくると戦兎はポーズを決めて叫んだ!

 

《Are you ready?》

「変身!」

《忍びのエンターテイナー!ニンニンコミック!イエーイ!》

「さぁ、実験を始めようか」

 

そうして戦兎が変身したのは紫と黄色の姿。紫の方は忍者をイメージし、黄色の方は胸に四コマ漫画があるなど漫画?をイメージした姿らしい。

 

「おぉぉぉ……」

 

眼を何時もの無表情から考えられない程輝かせて小猫

がいるが今はフリードだと戦兎はベルトから新装備を取り出す。

 

それは四コマ漫画のような装飾はある剣先がペンで出来ている剣だ。

 

「なんだそりゃ……」

「名付けて【四コマ忍法刀】!四つも技を持った武器だ。凄いでしょ?ヤバいでしょ?天才でしょおおおおおおお!」

 

テンションが上がりまくりの戦兎にフリードは躊躇いなく銃を発砲した。

 

「いっでぇえええ!」

 

ガン!と大きく火花を散らして戦兎は大きく後ずさる。それを見たフリードは、

 

「防御力はそこまででもねぇってことか!お前らもやっちまえ!」

 

フリードの号令で他の神父風の男達も武器を片手に襲いかかってきた。

 

「小猫ちゃん!」

「はい!」

 

それに祐斗や小猫も応戦するが数が多く、何人か戦兎に襲い掛かる。だが、

 

「ったく……人が喋ってる時に攻撃すんなっての」

 

そうブツブツ言いながら、戦兎は四コマ忍法刀の柄にあるスイッチを一回押した。

 

《分身の術!》

「なにぃ!?」

 

すると、突如戦兎はフリードが驚愕するほどの数に分身する。

 

『いくぜぇ!』

 

分身した戦兎は次々と襲い掛かってきた神父風の男達に襲い掛かり、本物はフリードに飛び掛かった。

 

それを彼は咄嗟にライトセイバーで止めながら、

 

「そ、そんなもんこの間使って……」

「あぁ、昨日完成させたばかりなもんでね」

 

そういう戦兎にチィ!とフリードは剣を弾いて銃を向ける。だが戦兎は素早くボタンを四回押して、

 

《隠れ身の術!ドロン!》

 

煙を出してフリードの目の前から姿を消してしまい、フリードは何処にいったと探し、

 

「こっちだよおバカさん」

「なにっ!?」

 

フリードが声の方に振り返ると奥にあった扉の前に龍誠を脇に抱えた戦兎が立っていた。そして龍誠を降ろしながら戦兎は言う。

 

「俺があいつを倒す。アーシア助けんのと連れ去ったレイナーレだったか?そいつを頼むぞ」

「任せろ!」

 

そう言いながら龍誠が地下に降りていき、戦兎は四コマ忍法刀を逆手に持ちながらフリードを見る。フリードの方も銃を向けながらタイミングを計り……

 

(今だ!)

 

戦兎は疾走。それに合わせてフリードも発砲した。だが、

 

「はぁああああ!」

 

それを四コマ忍法刀の刀身に当てて弾きながらフリードと間合いを詰めていく。

 

「はぁ!」

「舐めんな!」

 

間合いを詰めきると戦兎は四コマ忍法刀を振るい、フリードはライトセイバーで受ける。何度も火花と轟音を鳴らしながら受け手と攻め手を入れ換えながら次々剣撃を交わしていくが徐々にフリードが押されていく。

 

「てめ!なにもんだ!こっちはエクソシストの訓練も積んでんだぞ!」

「この間も言っただろ?仮面ライダービルド。造る、形成するって意味でビルドだって」

 

そう言いながら戦兎は一気にフリードを押し飛ばすと、四コマ忍法刀のボタンを三回押す。

 

《風遁の術!竜巻斬り!》

 

次の瞬間戦兎は高速でフリードの周りを回って連続で斬っていき、その途中でボタンを二回押した。

 

《火遁の術!火炎斬り!》

「勝利の法則は決まった!」

 

そのまま戦兎は飛び上がると四コマ忍法刀に炎を纏わせフリードを一刀両断する。

 

「あぢぃいいいいいいい!」

 

服が燃え上がり傷口も斬撃と火傷を同時に味わったフリードは床を転がるとそのまま炎が消えるのと共に意識を失う。

 

「凄いね」

 

と、いつの間にか他の全員を倒していた祐斗や小猫がやって来た。

 

「別にそうでもねぇよ。こいつの戦闘スタイルは戦ったばかりだから直ぐに分かったしな。それより龍誠の方にいこう」

「じゃあ僕と小猫ちゃんで縛り上げておくから行ってあげて」

良いのか?と言うと祐斗は頷いた。

 

「大丈夫なのは論より証拠で示してもらったからね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少しだけ時間を戻し、

 

「おっらぁ!」

 

扉を蹴り飛ばす勢いで開けながら中に侵入した龍誠は、また開けた場所に出るとそこにはアーシアとレイナーレがこっちを見ながら呆然としていた。

 

「龍誠……さん?」

「ようアーシア!ってあれ?言葉が分かる?」

 

何故じゃ?悪魔になると外国語が分かるのか?と思いつつ龍誠はレイナーレを見る。

 

「ギリギリセーフだったな」

「あんた……まさか!」

 

あぁ、悪魔になってお前を倒しに来たぜ!とビシッと決めて見せるが残念ながら反応がない。寂しいな……これ。

 

「ホントなんなのよ……あんた悪魔になってそれでもコイツを助けようっていうの!?」

「当然!男は一度言ったことを曲げないもんだ!」

 

そう言いながら龍誠はドラゴンフルボトルを取り出してシャカシャカ振っていると、

 

「なんで……」

「ん?」

 

すると、アーシアがこちらになにかを呟き、龍誠は首を傾げる。

 

「なんでそこまでしてレイナーレ様と戦うんですか?」

 

そっかなんでかってさっき言ったけどその時は言葉が通じなかったから……と思い龍誠は言う。

 

「昨日からの長い付き合いだからな!助けるの普通だろ?それにさっき言わなかったけどさ……もう誰か知ってる人間でも失うのは嫌なんだよ。だから今度こそ守ってみせる。お前が異端だろうがなんだろうが関係ない。アイツが俺の立場だって同じように助けるはずだ。アイツは良い歳してヒーローに憧れてるような奴だからな!だから俺もアイツの親友としてカッコつけさせてもらうぜ!」

 

そう言って龍誠は走り出す。レイナーレはそれに合わせて光の槍を作り出し龍誠に投げた。

 

光は悪魔にとっての弱点である。それは龍誠は知らないが直感で喰らうのは不味いと判断する。なら試してみよう!

 

昇格(プロモーション)!ルーク!」

 

確かパワーと頑丈さならルークだと試してみると明らかに力が漲ってきた。ならば行ける!

 

「うらぁああああああ!」

 

ドラゴンフルボトルを更に強く握った龍誠は思いっきり光の槍をぶん殴り、その槍はそのまま飛んできた方向に向かって投げられた速さより速く戻っていき、レイナーレの顔の真横を飛び去っていきそのまま背後の壁に突き刺さった。

 

「へ?」

「やっぱ行けたな」

 

と言いながら龍誠はレイナーレとの距離を詰める。

 

「ま、まって!分かったわ!私が悪かったから!」

 

と言って後ずさるが龍誠は歩みを止めず、拳の範囲まで来る。

 

「悪いが俺はお前を許さない。アーシアを物扱いして、俺を殺して戦兎を泣かせる要因を作ったお前をな」

「ひっ!」

 

と龍誠が言った次の瞬間、レイナーレの顎に龍誠のアッパーが入り、空中に吹っ飛び天井にぶつかると重力に従って落下してきた。そしてその間に龍誠はボトルを更にシャカシャカ振ると腰を捻って歯を食い縛ってボトルを握り……

 

「らぁ!!!」

 

ルークのパワー+悪魔の身体能力+人間時代からの積み上げた力+ボトルの力……ここまでの力が集約しレイナーレに纏めて叩き付けられ、彼女の体から文字では書き表せない破壊音が響き渡り、そのまま壁に叩き付けられた。

 

壁にめり込んでそのままになってるその姿は、奇しくもキリストの十字架に掛けられてるのに似ていたが、龍誠は気にせずアーシアの元に行き、彼女を縛っていたロープを解いていると、

 

「いっつ……」

「龍誠さん!」

 

自身を縛っていたロープが解かれるとアーシアは龍誠の手を見る。龍誠の手から光の槍を殴った反動か焼け爛れた上に血が出ており、指も本来曲がらない方に曲がっているし骨も露出しかかっている。

 

「何て無茶を……」

「あははは」

 

と龍誠が笑っていると、アーシアは手から緑色の光を出して龍誠の手の傷を治してくれる。実はものすごい痛かったのだがこの光のお陰か痛みが引いていき傷も塞がっていく。

 

そんな中、アーシアは今までの事を話してくれた。レイナーレが言っていた事と被るところもあったが、元々はイタリアの教会で慎ましく暮らしてたことや神器(セイクリットギア)が判明して聖女に祭り上げられたこと、悪魔を治療して異端者にされて追放されたこと、その後一人で生きてみようとしたが物心がついてから教会で暮らしてきた彼女が出来るはずもなく食べるものもなくなって死にかけたところを堕天使に拾われてここに来たことを。

 

「もう誰も助けてくれないと思ってました。教会を追放されてからずっとひとりぼっちで……だからもう全部どうでもよくなって」

 

とアーシアが言うと龍誠は黙って聞いていたが口を開き、

 

「俺も生まれてすぐ捨てられてさ。ずっと孤児院で育てられてた。孤児院の人達は好い人なんだけど何処か孤独でさ。そんなときだったけかなぁ。あいつに会ったの。小学校で教室の隅っこで静かにしてたらなにしてんだって言ってきてよ。皆揃って俺を可哀想な奴扱いだから誰も俺と話そうともしないでいたら一人だけいたんだよなぁ。ある意味空気読まない奴がさ。それが俺の今の親友。だから決めてんだよ。今度は俺が誰かのために手を出す番だってな」

 

そう言いながら龍誠はアーシアに向けて綺麗に治った手を差し出した。

 

「だからアーシア。俺が一緒にいるよ。もう孤独になんかさせない」

「っ!」

 

龍誠のまっすぐな言葉はアーシアの胸を打ち、ゆっくりと浸透していく。そして、

 

「はい」

 

とアーシアはその伸ばされた手を取ったのだった。

 

因みに、

 

(そろそろ出ても良いかな……)

 

戦兎が扉の向こう側で様子をうかがっていたのは余談である。



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一蓮托生

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

龍「フリードやレイナーレを倒し無事にアーシアを救いだした俺達。さすがに今回は戦闘はないよな?」
戦「無いけどそれでも色々語りたいこともあるんだよ」
龍「そんじゃあその辺も語られる第……」
戦「6話スタァアアアトォオオオオ!!」
龍「ドンだけ言いてぇんだよ!」


「おはようございまーす!」

 

アーシア救出作戦から次の日、龍誠は旧校舎の教室に来ていた。ここでリアス・グレモリー先輩……いや、部長達はオカルト研究部として活動しており眷属となった自分もこれからここの部員なのだ。

 

「ってだれもいないな……」

 

なんて龍誠が思っていると扉が開かれた。振り返りながら確認すると、そこに立っていたのは戦兎だ。

 

「よっ」

「よって言ってもさっきまで教室一緒だったけどな」

 

自分に挨拶した龍誠に流れるように突っ込みつつ戦兎は部室に入る。

 

「しっかしおまえもすげぇ頼みをリア

ス・グレモリー先輩にするよな」

「ん?なにが?」

 

なにがってお前な……と戦兎は言いつつ、

 

「アーシアを悪魔にしてくださいって奴だよ」

「あぁ、だって孤独になんかさせないって約束しちまったからな」

 

二人がいうようにアーシアは昨晩リアスの手によって悪魔に転生した。シスターが悪魔に転生と言うのは前例がないらしいが無事転生を終えて、今日から彼女はこの駒王学園の二年としても活動している。

 

初めての環境に四苦八苦しているようだったがニコニコ笑っていたし幸せそうで何よりだ。すると龍誠は、

 

「しかし俺悪魔としての活動もしなきゃ行けなくなっちまったなぁ。お前と遊ぶ時間も無くなるのかぁ……それが難点だよな。そうだ!お前も今から成ろうぜ!最初は断ったけどさ!今からでも転生させてもらおうぜ!?」

「いいよ別に」

 

戦兎は素っ気なく断る。その姿に龍誠は何だよ何だよと膨れてそっぽ向くが戦兎は笑って、

 

「だってもう()()()()()()()()

「……は?」

 

一瞬龍誠は戦兎は何を言っているのか分からず戦兎の方を向き直ると、そこには背中から悪魔の羽根を出現させた戦兎が立っていた。

 

「い、いつの間に!?」

「今朝だよ。少しリアス・グレモリー先輩……いや、もう部長って呼んだ方がいいのか。まぁ部長に時間作ってもらってさ。ちゃちゃっとね」

 

軽~く言ってしまう戦兎に龍誠は冷や汗を垂らしつつ何故かと聞く。

 

「いやお前も転生しろっていったじゃん」

「それにしたって早すぎだろ」

 

そう言う龍誠に戦兎は顎に手を添えると、

 

「お前と俺は一蓮托生だろ?お前のいるとこが俺のいるとこだ。お前が地獄に落ちるなら俺も落ちてやるしお前が悪魔に生まれ変わったなら俺も悪魔になる。ま、仕方ないわな」

「戦兎……」

 

等と言うやり取りをしていると、ふとあることに龍誠は思い至る。

 

「そう言えばお前何の悪魔の駒(イーヴィル・ピース)使ったんだ?」

「お前と同じポーン。しかも数まで同じ四つだってよ!いやぁ~。やっぱり未来のてぇんさい物理学者だもんなぁ~。一個二個じゃ転生できるわけがねぇ!そう考えるとなんでバカのお前もなんで四個なのかが謎だけどな」

「誰がバカだ!筋肉を……って俺は四個じゃねぇぞ?」

 

龍誠の言葉に戦兎は、は?となる。それに対して龍誠は、

 

「俺の駒って変異の駒(ミューテーションピース)っていう奴らしくて一種のバグらしいんだけどその駒一個で複数個分の駒を使ったのと同じ効果らしいんだ。しかも俺四つとも全部だぜ?」

「つまり……」

「俺は実質ポーンの駒四つ以上で転生でーす。あれれ~?おかしいなぁ~。となると俺は未来のてぇんさい物理学者以上の素質があるってことかなぁ~?」

 

そう言ってニヤニヤしながら迫ってくる龍誠に戦兎はプルプル震えながら睨み返す。

 

「俺は認めねぇぞ!いいさ!駒が何だろうと俺にはこのビルドがあんだからな!」

「なにおう!」

 

バチバチ火花を散らしあった二人は次の瞬間取っ組み合って叩くは引っ掻くはチョークを極めるはと大乱闘をおっ始め、

 

「この二人は仲が良いのか悪いのか……」

「喧嘩するほど仲が良いという言葉もありますわ」

「ですねぇ」

「えぇと、止めた方が……」

「その内疲れてやめますよ」

 

と、いつの間にかやって来ていた部長達に呆れられたのだがそれはまた別の話だ。



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第ニ章 戦闘校舎のフェニックス
私を抱いて


前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦「悪魔へ華麗にジョブチェンジしたこの未来のてぇんさい物理学者である桐生戦兎は、順調に悪魔としての生活も楽しんでいた」
龍「って待てよ!今回も俺が主役だからな!」
戦「て言うかさ、一応俺が主役だよね?なのになんかお前の活躍多くない?」
龍「こりゃもう主役交代かなぁ~」
戦「そんなわけ無いでしょって言うわけで第七話スタート!」


「龍誠!お願い!私を抱いて!」

「……はい?」

 

ある日の夜。私万丈 龍誠は半裸の部長にベットの上で迫られてるんですがいったい何故でしょう?まずは今日の早朝からの記憶を掘り起こしてみるが確か……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

龍誠の朝は早い。日が明けるか明けないかの頃にジャージに着替えて戦兎の自宅を出ると走る。ひたすら走る。息が切れても全く体が動かなくなるまで走って近所の大きな公園に着くとそこで腕立て腹筋スクワット……悪魔になってから更に身体能力が上がった影響か数を増やしたが全然問題はない。

 

そしてその後戦兎の家に戻るとご飯が用意されてるのでシャワーを浴びてから食べていると寝坊助の戦兎が起きてくる。

 

彼は夜型なのもあるが新しい発明品作ってたりベストマッチを探してたとかでいつも遅い。

 

そして朝御飯を食べた後、学校に向かって授業で寝て、放課後部活。基本的に(一人にすると何を危ないとか言われて)戦兎とコンビで悪魔の仕事をしてるのだが最近贔屓のミルたんと言うちょっと人間かなって思う人の遊びに付き合った後一度荷物置き位にしか使ってない学園の寮に戻ってきてさて戦兎の家に向かうかって所で魔方陣が出て部長が現れてベットに押し倒されて……

うん。こうやって考えても意味わからん。

 

とにかくだ。まず話をしよう。

 

「えぇと、なんで急に……」

「ごめんなさい。事情があるのよ」

 

そう言って明らかに急いでいる様子の部長に龍誠は比較的冷静な態度で接する。

 

いや内心は全然冷静じゃないんだけどね!?でも驚きすぎてるお陰で声音だけは冷静だけど!

 

「ああああのですね!?こう言うのはやはりちゃんと恋仲同士でやるべきと言うかほ、ほら!祐斗とか戦兎でも!」

「祐斗ダメよ。生粋のナイトだから断るわ。戦兎は機械にしか興味なさそうだし……」

 

いやあいつああ見えて結構ムッツリ……って違う違う!ていうかじゃあ、

 

「何故それで俺を?」

「消去法に近いのは否めないわね。でも貴方を気に入っているのは本当よ。大切な眷属だからね?それに経験も豊富そうだし……」

 

何故経験豊富だと?と龍誠は首をかしげてしまう。すると彼女は、

 

「だって貴方も結構モテるでしょ?三年でも有名よ?ちょっとおバカだけどって注釈はつくけど」

「そ、そうだったんですか……」

 

そう。結構龍誠は顔は良いのでモテるのだ。まぁ本人が全くその辺を意識してないのだが……しかし、はっきりいってそう言った事への経験はない。それにだ。

 

「すいません。俺も無理です」

「え?」

 

と言って龍誠は部長の肩を押して顔を見る。

 

「俺、好きな人が居るんで」

「そ、そう。それは知らなかったわ」

 

部長は驚いた表情を浮かべていた。まぁ当然だろう。そう言う話しはしてこなかったんだし……と言うか居ると言うか居たという方が正しいんだが今はそんな話は良い、お陰で冷静になれた。

 

序でに嫌な記憶も思い出しちまったがまぁ良い。いや良くないんだけど。

 

そう思っているとまたもや魔方陣が現れて、その中からあらわれたのは銀髪の……メイドさん?

 

「お嬢様。まさかこのような形で破談になさるおつもりですか?」

「グレイフィア。随分速いのね」

 

仕事ですから。と言ったグレイフィアと呼ばれたメイドさんは立ち上がった部長に上着を着せながら此方を見る。

 

「初めまして。グレモリー家でメイドをしております。グレイフィアと申します。貴方が新しいお嬢様のポーンですね?」

「は、はい!万丈 龍誠と申します!」

 

やべぇ、俺の第六感がビンビンに危険信号を発してる!と龍誠は思わず正座しながら答えた。この人マジでやばい。ヤバさで言ったらこの前のレイナーレが赤ちゃん処か胎児レベルに感じるほどだ。だがそんな様子の龍誠にグレイフィアは恭しく頭を下げると、

 

「敵意はございません。寧ろ冷静な判断をしていただいた様子で感謝を申し上げたいくらいです。どうもお嬢様は昔から何かを決めると後先を考えない所がありますので」

「嫌みかしら?グレイフィア」

 

グレイフィアの言葉にリアスは頬をひくつかせるが、涼しい顔でそれでは参りましょうかと魔方陣を作り出す。すると、

 

「ごめんなさいね。龍誠」

 

ギュッとリアスに体を抱き締められ、龍誠は思わず良い匂いやら柔らかさやらで耳まで真っ赤になる。そして、

 

「じゃあまた明日」

 

そう言って彼女はグレイフィアと共に消えていく。その姿を見送りながら龍誠は大きく息を吐いた。

 

もう自分の中では決着をつけたつもりだったがまだ全然ってところだったな。

 

「香澄……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結局昨日はどうしたんだよ。結局来ねぇし」

「悪かったよ」

 

昨晩のリアスの来訪後、龍誠は結局そのまま寝落ちしてしまったため放課後、戦兎には文句を言われていた。

「つうかそう言えば昨日部長から龍誠はいるかって電話来たんだけどなんか合ったのか?」

「まぁ……色々」

 

等と口ごもりながらいると、後ろをチョコチョコ着いてきていたアーシアが口を開く。

 

「あの、龍誠さんと戦兎さんって仲が良いんですね……」

『ん?』

 

アーシアの言葉に二人は振り返りながら、まぁ付き合い長いしと言うと、

 

「やはりあの噂は……」

 

噂?と龍誠がアーシアに聞く。一体なんだそれは?と対して身構えずに居た。だが、

 

「お、お二人は恋仲だと!」

『ぜってぇねぇよ!!!』

 

アーシアが放った爆弾に思わずずっこけそうになりながらも全力で二人は否定する。

 

「なんだってこんな猿と付きあわにゃならんのだ!」

「俺だってお前みたいな機械フェチなんぞと付き合うか!」

「誰が機械フェチだ俺だって普通に女の子が好きだわ!ボケ!」

「誰がボケだ!そう言ってるけどお前今まで彼女無しじゃねぇか!」

「彼女ができねぇんじゃねぇんだよ!作らねぇだけだ!」

「じゃあ龍誠さんは彼女はいらっしゃらないんですか!?」

『え?』

 

二人揃って喧嘩をおっ始める中、ズイッと顔を近づけて聞いてくるアーシアに龍誠は顔を背けながら、

 

「ま、まぁな……」

 

そう答えると、アーシアはパァッと顔を明るくしてなら良いですと言って部室にスキップでもしそうな勢いで行ってしまう。

 

「どうしたんだよアーシアの奴」

「白々しい嘘いってんじゃねぇよ。ガキじゃあるめぇし気づいてんだろ?」

 

戦兎がジト眼で言うと龍誠は表情を曇らせて、

 

「さぁな。知らねぇよ」

 

と足早に歩き出してしまう。その背中を見ながら戦兎は肩を竦め、歩き出す。そんなことをしながらも歩いては居たのですぐに部室には着いたのだが、

 

「リアス。やはり式は派手にやった方がいいよなぁ?」

「何度も言わせないでちょうだい!しないといってるでしょう!?」

 

誰かが居た。金髪のイケメンなのだが着崩したスーツの姿からどこかホスト風に見える男が馴れ馴れしくリアスの肩を抱いている。明らかに彼女の方は嫌がっているが……

 

「おい!あんたなにしてんだ!」

「ちょ、ちょっと待って龍誠くん!」

 

思わず飛び掛かりそうになった龍誠を止めたのは祐斗で、なんで止めるんだよ!と叫ぶと相手の男はフフンと笑う。

 

「お前達がリアスの新しい眷属か」

「誰だお前は!と言うか部長に馴れ馴れしいんだよ!」

 

手足をジタバタと暴れながら龍誠が叫ぶと、

 

「この方はライザー・フェニックス様です」

『っ!』

 

突然の背後からのグレイフィアの声に、驚いたのは龍誠だけではなく戦兎やアーシアに龍誠を抑えていた祐斗まで吃驚眼になっていた。だが、彼女が続けた更なる言葉に驚愕することになる。

 

「更に言えば、リアスお嬢様の()()()でございます」

『……えぇええええええええ!?』

 

余りにも突然の言葉に、龍誠達は驚愕の叫びをあげたのだが、それは始まりだったことはまだ知らなかった。



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婚約者

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

龍「突然部長に押し倒されたが紳士的に対応して事なきを得た俺。だがなんと部長には婚約者が居た!?」
戦「しっかしお前役得な立ち位置だなぁ。つうか機械にしか興味なさそうってなんだよ……」
龍「ま、確かにお前女っ毛無いもんなぁ」
戦「喧しいわ!つうわけでそんな感じの第8話スタート!」


『部長(さん)結婚するんですか!?』

「しないわよ!親が勝手に決めただけ!」

 

龍誠、戦兎、アーシアの驚きの声に対してリアスは冷静に返すが、

 

「だがリアス。これは悪魔の未来にとって重要なことだぞ?先の大戦の影響もあって72柱は次々潰えている。最近は転生悪魔が幅を利かせてきてるし、上位の純潔悪魔同士の新生児が重要なことくらいわかるはずだろう?」

「私は家を潰す気はないわ。でも相手くらい自分で決める!そもそも貴方の家にも私の家にももう純潔の子供が居るのに……」

 

最後の辺りをブツブツ言いながら言うがライザーは余裕の表情だ。それを見ながら戦兎は祐斗に耳打ちする。

 

「なぁ木場、72柱ってなんだ?」

「昔居た力のある悪魔達のことだよ。ただ昔あった大きな戦争で殆ど消滅したりその後のゴタゴタで断絶しちゃってるんだ。部長の家であるグレモリーやあの人の家のフェニックスはその中でも数少ない生き残りってことだね」

 

成程ね。と戦兎が頷きつついると、グレイフィアは二人の間に入った。

 

「そこまでです。これ以上の話し合いは平行線でしょう。ですのでこうなることを予見しておられたサーゼクス様からの提案があります」

「提案?」

 

その言葉にリアスは疑問符を浮かべると、

 

「レーティングゲームによる決着というのはいかがでしょうか?」

「れーてぃんぐげーむ?」

 

聞きなれない名前に首を傾げたのは龍誠だ。だが声には出さないだけで戦兎もなんだそれはという状態で、それに関しては祐斗が説明してくれる。

 

「レーティングゲームっていうのは成人した悪魔同士が眷属をチェスの駒に見立てて戦うゲームだよ。細かいルールとかは沢山あるんだけどそのゲームの強さが悪魔社会での上下に関係してくる」

「じゃあまだ成人してない部長じゃダメじゃん」

 

と龍誠が言うが、それに関してはグレイフィアが説明してくれた。

 

「確かにそうですが、非公式と言うことであれば問題はありません。それでお嬢様。どうされますか?ゲームも辞退されますか?」

「勿論やるに決まってるじゃない。こうなったらとことんやってやるわ」

 

そう彼女が息巻くと、ライザーやれやれと肩を竦める。

 

「良いのか?リアス。俺はもう既に何度かレーティングゲームをしているし何より君のところの眷属は正直俺のところとまともにやれそうなのはクイーン位じゃないか?新しい奴だって優男に戦闘に不向きそうな少女に……」

「何だよ」

 

ライザーはジッと龍誠を見るとプッと笑いを漏らした。

 

「いやお前みたいな猿なんぞを眷属にするとはリアスもセンスがないな」

「なんだとぉ!」

 

ウキー!と叫ぶ龍誠を祐斗は再度羽交い締めにして止める。だがそれでも龍誠は、

 

「そう言うお前はどうなんだよ!眷属選びのセンスってやつはよ!」

「ふん。ならば見るが良い!」

 

そう言ったライザーがパチンと指をならすと同時に魔方陣が現れそこから出てきたのは、

 

「全員……女?」

 

ポカーンとしながら戦兎が呟くとライザー笑いながら口を開く。

 

「そうだ!これぞ俺の考えた最高の眷属達だ!どうだ?羨ましいか?」

 

普通に大変そうだなぁ……とこれが意味するところを何となく理解した戦兎は思うだけなのだが龍誠は、

 

「成程、確かに沢山の女を相手取るのは気が引けるしやりにくいな……」

 

と言う龍誠の言葉にズコッとこっち側だけではなくライザーやその眷属達ですらずっこけそうになった。変わらないのはグレイフィアくらいなものである。

 

「そこではないだろう!もっと言うべき所は!」

「え?」

 

思わずライザーは突っ込み、龍誠は首を傾げてしまう。それを見た戦兎は、

 

「龍誠。多分アイツそんな高尚な策略のために女で固めてないぞ」

「じゃあ何でだよ」

 

ただの助平根性だよ。と戦兎は言うと、龍誠は一瞬理解できずに固まったがすぐに意味を理解し……

 

「え!?そう言う関係!?なのにまだ部長欲しいの!?」

「なにか問題でも?英雄色を好むというだろう?」

「何が英雄だ種蒔き鳥野郎!!」

『ぷふっ!』

 

と龍誠の言葉にリアスと眷属サイドは思わず笑ってしまいそうになったが頑張って耐える。

 

「誰が種蒔き鳥だ!俺は風と炎を司る火の鳥・フェニックスだ!」

「火の鳥ぃ?ようは焼き鳥か!?」

「そんな飲み屋のつまみと一緒にするな下級悪魔風情が!」

 

ウキー!コケー!と叫びながらバチバチ火花を散らし始める龍誠とライザーに、段々どうやって収拾するんだという空気になってきた。すると、

 

「上等だゲームなんか関係ねぇ!ここでぶっ倒してやる」

「あ!」

 

そう言って龍誠は祐斗の拘束を振りほどくとライザーに掴み掛かろうとする。

 

「龍誠!辞めなさい!」

 

と言うリアスの制止も頭に血が昇った龍誠には届かず、手を伸ばそうとした瞬間、

 

「サンダーボルト!」

「アブラバァアアアアアアアアア!!!!」

 

なんと戦兎はポケットからスタンガンを取り出すと、迷うことなく龍誠の首に押し付けスイッチを入れた。すると思わず眼を細めるほど龍誠が発光し、それが消えると泡を吹いてそのまま後ろに倒れる。

 

「これでよし」

 

えぇええええええええ!?っと驚愕したのはこちらサイドだけではなく、向こうもだ。

 

「ちょ、ちょっと戦兎!一体何をしたの!?」

「最近完成させたんですけどね?6時間の充電で10秒程しか使えないし電圧の威力が高すぎて普通の人間だと殺しかねないんでどうしたもんかなぁと思ってたんですよ」

 

そんなものを貴方は幼馴染に使ったわけ?とリアスに睨まれ戦兎はピュ~♪と口笛を吹いて誤魔化しながらライザーを見る。

 

「いやぁすいません。うちのバカがお騒がせして」

「ふん。余計なことを」

「そりゃあこっちだってレーティングゲームとか言う奴の前に手の内晒したくなかったんで」

 

と戦兎が肩を竦めるとライザーは鼻を鳴らし背を向けると、

 

「リアス。10日後だ。10日後に決着をつけよう」

「ハンデのつもり?」

 

今のままじゃ勝負にもならないからな。とライザーは魔方陣を作り出すと眷属と共に姿を消したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!」

 

ガバッと龍誠が体を起こすと、既にライザー達やグレイフィアの姿はなく、リアスや眷属達の姿があった。

 

「お?起きたか」

「てめ戦兎!なんちゅうもんを俺に当てやがった!意識が完全に吹っ飛んだぞ!」

「そりゃそうだろうな」

 

と涼しい顔で戦兎はベルトを巻かない状態で机の上に置き、ボトルを刺していた。

 

《海賊!ロケット!》

「これもベストマッチじゃねぇか。なんで海賊とコミックがベストマッチじゃねぇんだろうな……」

 

そう言いながら戦兎が唸ると祐斗は、

 

「それってなにか法則はあるの?」

「生物と無生物でしか組合わさらないって事くらいかな」

 

生物同士じゃダメなの?と祐斗は聞く。すると戦兎は、

 

「生物同士とか無機物同士は反発しあって爆発するんだ。一度それで酷い目に遭ってな」

「何で同じ奴同士だとダメなんだろう」

 

更なる祐斗の問いに戦兎は腕を組み答えた。

 

「元々ビルドは父さんの発明品でな。俺はあくまでそのデータとかを使って完成させただけなんだ。んで父さんもボトルを特定の組み合わせをすると高いエネルギーを発することに気づいていた。これがベストマッチのことなんだけどその存在を見つけると同時になぜ同じもの同士が組合わさらないかは仮説は立ててた」

 

それは?と聞かれ、戦兎は口を開く。

 

「人間同士が争いをやめないのと同じ何じゃないかって。言語と言う文化を共有している筈の人類争いをやめられないのに言語が違う生物が組合わさらないのは当然何じゃないかってね」

 

戦兎はそう言いながら肩を竦めた。それを聞きながらリアスが、

 

「へぇ、戦兎のお父さんがビルドを作ったの?」

「えぇ、まぁ父さんが作ったドライバーはベストマッチを判別する機能はないし武器は俺が作ったんで持ってなかったしたまにボトルの成分が抜けてしまうバグもありましたからね。桐生 忍って言えば結構有名なんですが……」

 

リアスに戦兎がそう答えると、朱乃がそう言えばと口を開く。

 

「確か物理学の権威でしたよね?でも確か……」

「えぇ、7年前に失踪してしまいましてね。まぁ便りが無いのは元気な証拠とも言いますし」

 

となんともないかのように戦兎は話すが何となくその場に重い空気が流れる。するとそれをリアスが切り替えるように、

 

「そ、そう言えば龍誠の親御さんってどんな人なのかしら?」

「あ、それは……」

 

それに慌てたのはアーシアだ。だが龍誠は気にせず、

 

「俺物心がつく前に木の下に捨てられたから親の記憶って言うと孤児院の職員さんなんですよねぇ。まぁ捨て子するくらいだから多分録な人たちじゃないかと……」

 

ズゥン。と聞いてはならなかった話題を選択した空気が更に濃くなってしまった。

 

「と、取りあえずまずは10日後のレーティングゲームに向けて特訓といきましょう」

 

そう言ってリアスはまた無理矢理話題を変えて話し出す。

 

「場所はグレモリーが管理している山があるからそこで良いでしょう。皆も良いわね」

『はい!』

 

と皆と返事をしながら龍誠はおもむろに立ち上がり、戦兎が唸っていた所に机の上にあった電車フルボトルを持ちながら来ると、

 

「後多分これだぜ?」

《海賊!電車!ベストマッチ!》

「うそーん……」

 

自称第六感であっさりベストマッチを龍誠が見つけたため膝をつく戦兎の姿があったが、まぁそれはどうでも良いことだ。



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特訓

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦「部長の婚約を破棄させるため、レーティングゲームに望むことになった俺達は特訓に励むことに」
龍「みてろよぉ……あの焼鳥野郎後悔させたる!」
戦「まあ残念ながら今回はそれできないんだけどねってことで気になる第9話スタート!」


「おぉおおおおお!」

「はぁあああああ!」

 

龍誠の拳と、祐斗の木刀が交差する。

 

さて、現在龍誠達はグレモリー家が所有する山にて特訓を行っていた。

 

特訓と言っても個人個人で行われることは違い、龍誠は毎日筋トレや魔力の使い方、後は毎日祐斗や小猫と組手を行っていた。

 

しかしこれが意外ときつい。もう5日経つが戦って改めて知ったが祐斗も小猫も出鱈目に強い。

 

祐斗は普通に飛びかかっても速さに追い付けないし、小猫は正面からにつかみ合いになると負けそうになる。まぁこっちも昇格(プロモーション)で対抗はできるんだけど、それでも特性の使い方に関しては一日の長があるから結構キツイ。

 

「って言うけど君も大概だからね?」

「あ?」

 

ゼィゼィ言いながら荒く息を吐いていた龍誠に、汗を掻きながら言ってきたのは祐斗だ。

 

「正直まともに喰らったら命に関わりそうだから逃げながらチョイチョイ攻撃していくしかないよ。何の闘技やってたの?」

「システマって言う奴を少しな」

 

息を整え龍誠は立ち上がると、アーシアが水を持ってきてくれた。すると、

 

「あ、いたいた」

「戦兎?」

 

バイクから降りながらヘルメットを外したのは戦兎だ。彼は今まで少し別行動をしており、今合流となったのだ。

 

理由は単純。前回龍誠にベストマッチを見つけられた戦兎は、こうにゃら新装備じゃぁあああああああ!っと言って研究所に籠ってしまったのだ。

 

部長も、まぁ戦兎の場合はビルドの強化が戦闘力に直結するからねと言って別行動し今合流したという話だったんだけど、確かにでかいバックを背負って居るし恐らくあの中か?

 

「完成したの?」

「はい!」

 

そう言って戦兎が背中に背負っていたバックから取り出したのは弓型の武器で、水色の装飾がされている。

 

「名付けてカイゾクハッシャー!遠距離用の武器で攻撃方法は四つ。ひとつは各駅電車!」

「きゃ!」

「続いて急行電車!」

「あらあら」

「快速電車!」

「うわっ!」

「海賊電車!」

「危ないです……」

 

と、テンションが上がりまくった挙げ句、ブンブン振り回し始めた戦兎のカイゾクハッシャーをリアス達が避けるのを見ながら龍誠はため息を吐く。だが、

 

「さて、完成したもは良いけどまだ試してないんだよな」

「……」

 

嫌な予感。そう思いながら龍誠はソッとその場を後にしようとしたのだが、

 

「おいおい龍誠。どこに行くんだよ」

「戦兎?お前こそなんでベルトつけて海賊フルボトルと電車フルボトルだしてんだ?」

 

そりゃ当然。と言いながら戦兎はにっこり笑う。

 

「試し撃ちじゃぁああああああ!」

「ですよねぇええええええええ!」

 

こうして、龍誠は祐斗と戦ってボロボロの体で元気一杯の戦兎から逃げると言う無理ゲーを敢行することになった。

 

「止めなくて良いんですか?」

「二人とも良い走り込みになりそうだし良いんじゃないかしら?」

 

そう言って助ける気がなさそうなリアスに龍誠も思わず叫ぶ。

 

「部長の鬼!悪魔ぁあああああああ!」

「鬼ではないけど確かに悪魔ではあるわね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いつつ、戦兎の野郎遠慮なくやりやがって……いつかギャフンと言わせてやる」

 

戦兎と地獄の鬼ごっこやった日の夜。龍誠は全身に湿布を貼った体でグレモリー家が所有する山にあるロッジの廊下を歩いていた。しかしこのロッジ広すぎて迷いそうなんだが。

 

「あら龍誠。夜遅くにどうしたの?」

「いやちょっと寝れなくて……部長こそどうされたんですか?」

 

ちょっとレーティングゲームの戦術について勉強をね。と彼女は言いながら部屋に招き入れてくれる。

 

「紅茶で良いかしら?」

「あ、ご丁寧にどうも」

 

龍誠はリアスの手からカップを受け取りながら彼女に視線を向けた。

 

「レーティングゲームの戦術でしたっけ?」

「えぇ、でもライザーを相手にするには気休め程度にしかならないでしょうね」

 

そうなんですか?と龍誠が聞くとリアスが頷く。

 

「フェニックスは不死身よ。どれ程の傷を与えても炎と共に復活する。事実上ライザーは公式戦でのレーティングゲームでは家の都合でわざと負けたのを除けば無敗よ」

「いやそれ反則じゃないですか!」

 

そうね……とリアスは言う。だがそれに続けて倒す方法もあるわと言った。

 

「フェニックスの再生にも限界はある。だから魔王クラスの一撃で吹き飛ばすか、心が折れるまで倒し続けるか。この二つよ」

 

どっちにしろ大変そうだなぁ。と龍誠はため息を吐く。それには同感ねとリアスは頷きながら、

 

「でもごめんなさいね。私の我が儘に付き合わせちゃって」

「我が儘?」

「ほら、私が結婚したくないからこうなったわけだし」

 

あぁ、と龍誠は納得する。そう言うことか、

 

「良いんですけど。何で嫌なんですか?いやまぁアイツチャラいし他の女にも手を出しまくっててロクな奴じゃなさそうですけど……」

 

龍誠のそんな言葉にリアスはクスリと笑いながら少し遠くをみるような眼をすると、

 

「私はね。ただのリアスとして愛してくれる人と結婚したいの。でもライザーは私をグレモリーのリアスとしてみるわ。勿論いずれ私はグレモリーの家を継ぐし相応に自由はなくなる。別にそれをいやとは思わない。でも結婚だけは本当の私を愛してくれる人としたいのよ」

 

そう言うリアスに龍誠は成程と頷く。こうやって聞くと結構彼女は普通の女の子っぽい感性も持ち合わせているようだ。いや普通のことか。なにせ悪魔とは言え自分と年齢は然程変わりはしないのだから。

 

「そう言えば龍誠って好きな子が居るって言ってたわよね?どんな子なの?告白とかしないの?」

「……」

 

彼女に悪気はない。と言うか知らないのだからこういう風に聞いてきても何も不思議はない。とはいえ誤魔化せる状況じゃないしな。

 

「もうできないんですよ」

 

まぁ部長になら良いかと思いながら言うとリアスは首を傾げる。そんな彼女の顔を見ながら、

 

「その子はもう死んでしまいましたから」

「っ!」

 

龍誠の言葉にリアスは表情を凍りつかせた。だが龍誠は落ち着いた顔で言葉を進める。

 

「小倉 香澄って言う子でしてね。出会ったのは中学の時。クラスが同じになったのは2年の時で席が近くて班分けの時によく一緒になりまして。まぁ初恋って奴です。んでまぁ必死に話し掛けましたよ。そして何となく良い雰囲気になってそろそろ告白するかって思いながら一緒に帰ってました。あ、戦兎は空気読んで別行動でしたがね?そんでよし言おう!ってちょっと人通りの少ない路地に入ったら人とすれ違いまして。そしたら……」

 

ズブッて言う音がしましてね。そう言う龍誠にリアスは何を言っているのか分からなかった。一体なんの話なのだ?と言う状態だ。

 

「そいつ俺らを狙った通り魔だったんですよ。理由は後で手紙みたいなのが出てきて知ったんですが【幸せそうなのが気に入らなかった】らしいです。俺達ほぼ毎日同じルートで帰ってましたから。んで家から包丁持ち出して香澄をぶっ刺したんだそうです。そのあと俺の方にも包丁向けてきたんですけどそのあと辺りから記憶が曖昧になってきて気が付いたら顔がグチャグチャに変形した犯人と近所で騒ぎを聞いた人からの警察に犯人から引き離された俺がいたって訳です。後で聞いたら馬乗りになって一心不乱に殴り付けてたそうです」

 

そのあともあんまり覚えてないんですよね。警察に事情聞かれて俺が未成年だし相手は刃物持ってたんで罪には問われませんでしたがその時に香澄は……と龍誠は一度切る。

 

「香澄の父親に言われました。何ですぐに警察を呼ばなかったと。犯人を殴る前に呼べばよかったと。そもそも何でお前が生きてるんだ。どうせ死んだって悲しむ家族もいないくせにってね」

「龍誠……」

 

聞いた話では内臓まで達してた上に傷口から包丁を引き抜かれてたので出血多量もあり恐らくすぐ救急車を呼んだとしても助からなかったらしいが、それでもきっと娘を失った父親はifを願うだろう。

 

俺だって何で俺じゃなくて香澄から刺したんだって思う。

 

「戦兎とバカやってるときふと思うんです。俺ってこんな楽しい思いして良いのかなって」

「龍誠」

「アーシア助けようとしたときだって色々言いましたけどほんとはまた何もできないままなのが嫌だっただけなんです。全然かっこいい理由なんかじゃない。俺のためだったんです」

「龍誠!」

「今でも夢に見る、刺さる景色。俺は何もできなくてただ見てるだけのカカシで」

「龍誠!!!」

 

パン!っと両頬を挟むようなビンタでリアスは強引に龍誠を自分の方を見させると龍誠は少し黙るが、最後に力の無い笑みを浮かべ、

 

「俺はだからもう誰かを好きになったりできないんです。また誰かを好きになって辛い思いをしたくない。何より俺はもうそんな資格なんてありません」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、いっちょやりますか!」

 

一方その頃。戦兎は外で一人変身をすると、息を吐き……

 

昇格(プロモーション)。クイーン!」

 

そう叫んだ次の瞬間、戦兎の全身に電流が走り変身が強制解除されてしまう。

 

「ダメか……」

 

地面に転がりながら、戦兎は大きなため息を吐いていると、

 

「お疲れ様です」

「塔城?」

 

慌てて戦兎は起き上がりながら声の方を見ると、そこには小猫が立っていた。

 

「なにしてるんですか?」

「あぁ、ちょっとした実験をな」

 

そう言いながら戦兎は立ち上がると埃を払う。

 

「どうも変身状態で昇格(プロモーション)が行え無いんだよ。なんでか拒絶反応が出ちゃってさ。全部試してみてたんだけどダメ」

 

どうしたもんかなぁと戦兎は腕を組ながら考えていると、小猫が首を傾げる。

 

「そもそもなぜ拒絶反応が起きるのでしょう?」

「多分昇格(プロモーション)を行った際に急激な変化が起きるからかな。待てよ、ならビルドの方をそれに対応させれば……ビジョップ、ナイト、ルークなら変化は限定的だから」

 

ブツブツ言いながら考え込むと戦兎の髪の毛がピョコン!と逆立つ。

 

「良いぞ良いぞ!良いアイディアが浮かんできた!」

「アイディアですか?」

「そう!ビルドの強化アイテム!俺の変化にビルドが耐えられないなら耐えられるビルドにすれば良い!簡単なことだったんだよ!ありがとな塔城!」

 

流石にライザー戦には間に合いそうにないが、レーティングゲームが終わったら早速研究しようと決めて座ると、ドライバーを置いてフルボトルを出す。

 

「今度はどうしたんですか?」

昇格(プロモーション)はいいからライザー戦までに他にもいくつかベストマッチを見つけようかと思ってさ。やっぱりベストマッチが俺の強さの肝だからな」

《タートル!ロボ!》

「あぁもう!なんだって俺はこういう運がねぇかなぁ……」

 

個数は決まってるしベストマッチになったやつは他のボトルとベストマッチになることはないので、しらみつぶしでやっていけばその内見つかるとはいえ数が如何せん多いので結構面倒なのだ。

 

すると小猫はフルボトルを一つとって、

 

「そう言えば何でビルドってボトルを二本使うんですか?」

「初期の構想段階では一本だったらしい。そのあと二本の方が汎用性が高いって言うこととベストマッチが判明して二本になったらしい。父さんの研究データによればな」

 

と言うか最初は有機物系のボトルしかなかったし。と言うと小猫はどういうことですか?と聞いてくるので答える。

 

「元々俺の神器(セイクリットギア)である瓶詰め(ボトルチャージ)は空のボトルを作ってそれに何でもかんでも吸い込んで閉じ込めたり出したりする能力らしいんだけど小さい頃それやってたんだよ。んで自慢げに父さんに見せて驚かれて科学に応用できないかって言うことで研究を重ねた結果、俺のイメージからボトルを作り出すことに成功した。それがこの有機物系のボトルだ」

「イメージから?」

「そう。特別な機械にこのバングルとか繋げて有機物をイメージするとあら不思議。その生き物に因んだ力を持ったボトルが完成するって訳だ。だから厳密に言うと瓶詰め(ボトルチャージ)の正しい使い方によって作られたボトルじゃない。あくまでも俺のイメージから作られた生き物の力が入ったボトルなんだ。と言うかウサギとか亀ならともかくフェニックスだのって普通に生活してた俺には縁のない生き物だしな。閉じ込めたり出来るわけがねぇ」

 

じゃあこの戦車とかも同じように作ったんですか?と小猫は更に尋ねてくる。

 

「ああ。でも違う所もあってこれは父さんが俺の神器(セイクリットギア)を介してイメージして作ったんだ。父さんはビルドを誰かのために使う道具にしたかった。でも誰かのために使うときって言うのは戦わなくてはならないときもある。だから相手を倒す兵器の力も使えるように父さんが30本ボトルを作った。あ、俺が作ったのは29本しかなかったんだけどね。まぁそれでも父さんも途中で思い付かなくなったのか消しゴムだのコミックだのと変なのもあるけどさ」

 

それでその後さっき言ったように二本同時なら汎用性も広がるしって言うんで、有機物同士は無理でも有機物と無機物なら組み合わせられ、しかも特定の組み合わせで通常よりも高い力を発揮するベストマッチも見つかりビルドはどんどん進化していった。それがビルド誕生までの道って言う奴だ。

 

「因みに有機物最後の30本目のボトルは龍誠のイメージから作ったドラゴンフルボトルな」

「30本1セットが2つで合計60本がフルボトルの全てなんですね」

 

そう言うこと。と言いながら戦兎はラビットフルボトルを持ちながら笑みを浮かべる。それを見ながら小猫が、

 

「戦兎先輩はビルドの話をするときすごく楽しそうですね」

「まぁ……父さんとの絆みたいなものだからね」

 

自分のイメージで作ったボトルと父のイメージで作ったボトルで変身する。勝手かもしれないけどそれは何処かへ居なくなってしまった父と繋がる唯一の方法な感じがしてしまう。

 

「お父さんが大好きなんですね」

「大好きって言うか憧れって感じかな。

いつも科学を人のために使えることを考えてた。理想はいつもLOVE&PEACEだって言ってな」

 

愛と平和のために。それが科学の基礎だって耳にタコが出来るほど言われた。今ならただかっこいいだけじゃなくてあまっちょろい言い分なのは分かってるけど。それでも父はいつも真剣な眼差しだったのを覚えている。

 

「だから正義の味方に憧れてるんですね」

「ぶっ!」

 

突然の小猫からの不意打ちに戦兎は吹きながらどこでそれを!?と聞いた。

 

「龍誠先輩が戦兎先輩は今でも正義の味方ってやつに憧れてる可愛い奴なんだって」

「あの野郎……」

 

明日もっと痛めつけたろかと思いつつ不貞腐れると珍しく小猫が笑う。

 

「ん?」

「いえ、こうしてみると確かに戦兎先輩は残念だなと」

 

残念?と戦兎は首を傾げた。すると小猫が、

 

「戦兎先輩は一年でも有名ですから。イケメンで運動神経抜群で頭脳明晰で」

「ふふーん」

「二年生で一番の変人だと」

「なんだと!?」

 

最初はよかったのに最後で突き落とされた気分だ。それに対して小猫は更に続ける。

 

「教室で謎の発明品を起動させて爆発させること数十回で龍誠先輩相手に実験して騒ぎにしたりナルシストで口が悪くて残念すぎる先輩だって、私のクラスでも有名ですよ?」

「さいっあくだぁ!」

 

戦兎の叫びは夜の山にどこまでも響いていったのだが、それを知るものは居ない。



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レーティングゲーム

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦「ライザーとのレーティングゲームに備えて特訓を終え、遂に当日がやって来た」
龍「あんの焼鳥野郎この試合でケチョンケチョンにしてくれる……」
戦「と言うわけで龍誠の熱もMAXな第十話スタート」


「準備は良いわね?」

『はい!』

 

リアスの合図でメンバーは一斉に気を引き締める。遂にライザーとの戦いの日になり全員やる気に満ち溢れてる。

 

「それじゃいくわよ!」

 

リアスは背を向け魔方陣に入り、それに皆も続き転移すると、

 

「あれ?」

 

転移によって光に包まれ、それが晴れるとそこに広がっていた景色は……

 

「部室?」

「これはこちらで用意しましたステージです。作りは駒王学園と全く同じとなっております」

なら作戦を建てる上ではこっちが有利か。と戦兎が思っていると、グレイフィアさんのアナウンスが流れてきた。

 

《本日の審判を任されておりますグレイフィアです。簡単なルールの説明をします。敗北条件はキングの敗北です。両者が眷属を出し合い、最終的にキングを倒された方の負けとなります。更にこの戦いは魔王・サーゼクス様もご覧になられますので皆様。恥ずかしくない戦いを心掛けください》

「お兄様まで!?」

 

そう驚くリアスを見て龍誠と戦兎は首をかしげる。

 

『お兄様?』

「魔王サーゼクス・ルシファー様はリアスのお兄様なのですよ」

 

そんな二人に朱乃が説明してくれた。だが二人はリアスの兄ならグレモリーじゃないのかとますます首をかしげてしまう。すると祐斗が説明を引き継ぐ。

 

「昔大きな戦いがあってね。その時に魔王は亡くなったんだ。でも魔王なくして悪魔はなり得ないから四人の悪魔に魔王を継がせたんだ。そして現在は四人の魔王がいる。今言ったルシファー、他にもベルゼブブ、レヴィアタン、アスモデウス。この四人最上級悪魔が冥界のトップって訳さ」

 

うぅむ……とブスブスと頭から湯気が出そうになってる龍誠に戦兎は俺が覚えておくから安心して忘れてろと言っておく。そこにまたアナウンスが流れてきた。

 

《それではこれより試合開始の時刻となりましたので開始とさせていただきます。皆様、ご健闘をお祈りしております》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、早速いくか」

 

戦兎がそう言うと、龍誠と小猫は静かに頷く。さて無事始まったライザーとのレーティングゲームだが。とりあえずはまずキングであるライザーを行きなり攻めるわけにはいかないので(戦略としてそう言うのも無いわけではないが)まずはライザーが陣取っている本校舎の屋上への道中にある建物をまずこちら側で占拠しようと言うわけで戦兎、龍誠、小猫は体育館に来ていた。

 

裏口からこそこそ入って壇上に上がる。するとそこには既に四人ほどライザーの眷属が立っていた。

 

「ようやくきたわね。待っていたわよ!」

 

とチャイナ服の子が言うと、小猫がグローブを着ける。

 

「恐らくあの子はルークです。なので私が」

「じゃあ俺はあの棍使いの子にするかな」

 

小猫と龍誠はすぐに自分の相手を決めるとすぐに別れてしまう。

 

「じゃあお前ら二人ってことか」

 

そう言って相手を見ると小猫と余り変わらない小柄な双子の女の子を見た。まぁ、見た感じそこまで危険そうではなさそうだ。と思ったら、

 

「それじゃあ……」

「解体しまーす!」

「え゛?」

 

突如双子の女の子が出したのはチェーンソー。二人揃ってチェーンソーのエンジンをかけ、バーラバラ!と二人仲良く叫びながら走ってきた。こわっ!

 

「うぉお!」

 

慌てて戦兎は双子から距離を取りながらベルトを付けて新たなベストマッチである海賊フルボトルと電車フルボトルを取り出して振る。そして、

 

《海賊!電車!ベストマッチ!》

「さぁ!実験!を!始め!ようか!」

 

ブンブン振り回してくるチェーンソーを避けながら逃げる足は止めずにフルボトルを挿してレバー回し、

 

《Are you ready?》

「変身!」

《定刻の反逆者!海賊レッシャー!イエーイ!》

 

マリンブルーと黄緑色のビルドに変身を完了した戦兎は序でに海賊ハッシャーを取り出すとこのベストマッチの持ち味である速さを利用して一気に距離を取ると素早く海賊ハッシャーの弓矢で言う弓の部分を引く。

 

《各駅電車!》

「いっけぇ!」

『きゃあ!』

 

引いた手を離すと、電車が矢のように飛んで行き双子を撃つ。とは言え流石にチェーンソーで防いだか、ならば!

 

《各駅電車!急行電車!》

 

もう一度引いて各駅電車の音声がなっても引き続けてチャージすると新たな音声がなりそれから手を離して発射。先程より強力且つ本数が増えた電車が双子を襲う!

 

「な、なにこれ!」

「ちょっと!遠くから攻撃ばっかりしてないで正々堂々戦いなさいよ!」

 

そうブーブー文句言われるがこちらとしてはチェーンソーと正面から戦いたかないし何より、

 

「お前ら二人掛かりの時点で正々堂々じゃねぇだろ」

『あ……』

 

中々素直な双子だ。うちの美空にも見習って欲しいものだねと思いつつ海賊ハッシャーを再度引く。

 

《各駅電車!急行電車!快速電車!》

「はぁ!」

『きゃあああ!』

 

チェーンソーで受け止めてもそれごと吹き飛ばして尻餅をつかせた。そして、

 

「あらよ!っと」

『え!?』

 

戦兎は双子に詰め寄るとマリンブルーの方のボディについたマントを振り、それが巨大な投網となり双子を拘束し、切り離す。

 

「ちょ!離しなさいよ!」

「そうよ!」

「そうもいかないもんでね」

 

そう言いながら戦兎が見回すと既に龍誠や小猫も自分の相手を倒した所だ。

 

「終わったか?」

 

相手の棍を折りながら龍誠言ってくるのに戦兎は頷くと小猫に合図を送って三人は素早く体育館から脱出する。

 

「え?なんで……」

 

そうチャイナの少女が言った瞬間、体育館に落雷が降った。それは明らかに自然に起きたものではない。と言うかこのステージには天気がないようなのありえないだろう。つまり誰かが意図したものと言うわけだ。

 

「しかし姫島先輩の雷ってすげぇな」

 

戦兎は空中から魔力から雷を作り出し体育館に降らせた朱乃に嘆息した。そんな戦兎に小猫は口を開く。

 

「戦兎先輩。まだ戦いは終わってません。先を急ぎましょう」

「そうだな」

 

小猫に諭され、戦兎は頷きながら次の合流ポイントに向けて走り出した。次の瞬間!

 

「なっ!?」

 

ドン!っと突如爆発が起き、戦兎と龍誠は爆風によって吹き飛ばされ地面を転がる。だが、

 

「塔城!」

 

変身していたためダメージは殆ど無いが、爆心地にいた小猫は地面に倒れ伏していた。

 

「大丈夫か!?」

「せんと……せんぱい……すいません。わたしをきにせずいってください」

 

そんなこと言ってないで拠点に戻って部長と一緒に待機しているアーシアに治して貰えばと彼女を抱き上げようとしたが、一瞬微かに発光すると同時に小猫は消えてしまう。

 

ゲーム中に一定以上のダメージを受けた場合に強制的にリタイアさせられると聞いていたがこういう風になるのか……だが一体どこから爆発を?と思い空を見上げるとそこには既に恐らく先程の爆発を起こしたであろう少女と言うか女性と朱乃が対峙していた。

 

「龍誠君、戦兎君。彼女は私が倒しますわ。すぐに合流を」

 

バチバチと放電させながら言う朱乃を見て戦兎と龍誠は頷き合うと、任せます!とだけいって今度こそ走り出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ!」

 

一方その頃、祐斗は本校舎が目の前に見える校庭で多数のライザーの眷属を相手に大立ち回りを繰り広げていた。元々は向こう側の騎士と一騎討ちしていたのだがその間に他のポーンやルークまでやって来て祐斗に襲いかかったのだ。

 

「おい!やはり私は一対一でやりたいぞ!」

「諦めろ!ライザー様からの命令だ」

 

そう言う仮面の少女は騎士風の少女に叫ぶとその少女は舌打ちをして祐斗の剣を打ち合う。

 

(数が多いな)

 

そう思いながら祐斗は空いてる方の手にもう一本剣を出す。

 

「先程から剣を一体何本出すんだ?」

「何本でも出せるよ」

 

祐斗も神器(セイクリットギア)の持ち主である。名は魔剣創造(ソード・バース)。あらゆる魔剣を作れるというかなり強力な神器(セイクリットギア)なのだがこういう多人数を相手にするには余り向かない。

 

だがとにかく時間稼ぎだ。時間を稼げば……

 

《各駅電車!急行電車!快速電車!》

「木場!横に跳べ!」

 

ほらね。と言わんばかりに祐斗は笑みを浮かべて横に跳躍するとその後ろから何本もの電車型の矢が祐斗と剣を交えあっていた騎士風の少女に炸裂する。

 

「あが……」

 

もろにそれを喰らって後ろに吹っ飛んだ少女を仮面の少女が止める。

 

「増援か」

「そう言うことだ」

 

と戦兎が海賊ハッシャーを肩で担ぐと龍誠が祐斗に駆け寄った。

 

「大丈夫か?」

「待ちくたびれたよ」

 

そんなやり取りをしながら三人は並び相手をみる。相手はこちらより多い。だが三人は落ち着いてそれぞれの獲物を構える。

 

「俺に一網打尽にする策がある」

「じゃあそれでいこう」

 

内容聞かなくて良いのかよと戦兎はあっさり了承した祐斗に聞くと彼は肩を竦める。

 

「今のまま普通にやっても数で押されちゃうからね。なら賭けてみるよ」

「んじゃ、まず二人は極力アイツらを引き付けてくれ。その時に余りアイツらをバラけさせないでくれ」

 

了解。と祐斗と龍誠は走り出すと向こうも臨戦態勢を取った。

 

「おぉ!」

 

先に前に出たのは龍誠だ。龍誠はドラゴンフルボトルを振ると拳を握り前に出てきた仮面の少女を狙う。

 

「ぐっ!」

 

彼女はそれを止めたが破壊力の余り体を後ろに後退りしそうになったがなんとか踏ん張る。

 

「お前はポーンだと聞いていたんだがな」

「あぁ、そうだけど?」

 

と言いながら連打を叩き込んでいくが、それを上手く捌き横から別の二人組が連携を入れてくれる。

 

「あっぶね!」

 

それを龍誠は慌てて下がって避ける。その頭上を祐斗が飛び越えると魔剣を交差させて龍誠に横から攻撃を仕掛けてきた二人に剣を振る。

 

『ちっ!』

 

それを避けてライザー陣営は一旦距離を取って相手を見る。流石に一筋縄ではいかないか。だが、

 

「全員で一気に攻める。こちらの方が数が多い。数で一気に押しきるぞ」

 

仮面の少女がそう言うと他の眷属たちも頷いて武器を構えて飛び上がる。だがその時!

 

「二人とも伏せろ!」

『っ!』

 

戦兎の指示に二人がとっさに伏せると頭上をワイヤーが飛んでいき飛びかかってきたライザー眷属を纏めてグルグル巻きにしてしまう。

 

「な、なんだこれは!」

「は、外れない!?」

 

そりゃ普通のワイヤーじゃないからな、と戦兎はビルドのマリンブルーの方から射出したワイヤーが外れなくなっているのを確認してから海賊ハッシャーを構える。

 

《各駅電車!急行電車!快速電車!》

「これで終わりだ!」

《海賊電車!》

 

限界までチャージされた一撃は今までとは比べ物になら無いエネルギーを内包した電車型の矢を何本も一度に射出しワイヤーで一纏めにしたライザー眷属に当たると大爆発した。

 

『きゃあああ!』

 

その強力無比な一撃はライザー眷属を纏めて消し飛ばし退場に追い込み、その場所には爆発が起きたためクレーターができている。すると、戦兎は膝を付いた。

 

「大丈夫?戦兎君」

「あぁ……ここまでの長時間の変身は初めてだったからちょっと疲れただけだ」

 

いつもここまで長時間はない。だがいずれレーティングゲームに参加することを考えれば早めに慣れておいた方がいいかと思いつついた瞬間。

 

「これで終わりね」

 

そんな呟きと共に突如三人がいたところが爆発し、地面にもう一つクレーターを作り出した。

 

「これで後はキングとビジョップのみね」

 

そう言って地面に降り立ったのは先程朱乃と対峙していた筈の女性。長い髪を揺らして周りを見回すが、

 

《各駅電車!》

「っ!」

 

全く関係ない方から飛んできた一撃に彼女は咄嗟に魔力で壁を作って防いだ。

 

「なぜ無事なの……?」

「何度も同じ手に引っ掛かるかよ」

 

そう言って海賊ハッシャーを向ける戦兎の後ろには祐斗と龍誠が立っている。爆発する直前に二人をマントで被って跳んだが何とかなった。

 

しかし、

 

「お前こそなんで傷一つないんだよ。姫島先輩と戦ってノーダメはないとおもうんだが?」

「えぇ、なのでこれを使ったわ」

 

彼女が取り出したのは小さな小瓶。それを見た祐斗は成程と言う。

 

「フェニックスの涙か」

「なんだそれ?」

 

首を傾げる龍誠に祐斗は顔を向け、

 

「使えばあらゆる怪我を治す事が出来るアイテムだよ」

 

んなもんズリィだろ!と地団駄を踏む龍誠に相手は鼻で笑った。

 

「ルールでも二つまではアイテムの使用が許されてるわ。なにも問題はないわよ」

「ぐぬぬぬぬ」

 

ギリギリ歯を噛み締めながら龍誠が怒っているその時!

 

『なんだ!?』

 

ドン!っと今度は明らかに爆発ではない破壊音が目の前にある本校舎の屋上から聞こえてきた。

 

「今ライザー様とそちらのキングが一騎討ちをしている頃よ。まぁ、勝敗なんて目に見えてるけどね」

 

マジかよ、と龍誠がいうと戦兎が、

 

「二人とも。屋上に行け」

「戦兎君は?」

 

俺は塔城の敵討ちをしてから行くよ、と戦兎は海賊ハッシャーを構えながら相手に突っ込んでいく。

 

「あら、ライザー様の邪魔はさせないわよ!」

 

そう言って彼女は空へと飛び上がり連続で爆発を起こしまくってきた。

 

「あっぶねぇ!」

 

と龍誠は転がりながら避け、祐斗も自慢の足で逃げるが相手も絶対に校舎にはいれるつもりがないらしい。すると、

 

「お前ら!受け身は自力でな!」

『え?』

 

戦兎は素早くワイヤーを伸ばすと祐斗と龍誠を一纏めにして、

 

「どぉおおおおりゃああああ!」

『うわぁあああああああああ!』

 

強引にそのままぶん投げて校舎に放り込んだ。正確に言うと勢いつけすぎて校舎の二階の窓からダイナミック入室したのだが……

 

「乱暴な男ね」

「いやいや、俺ほど優しい男はいないぜ!」

《各駅電車!》

 

戦兎は再度海賊ハッシャーを構えて発射したが軽く防がれた。他の奴とは違う感じがする。

 

「それで終わり?ならこちらからいくわよ!」

 

そう宣言した彼女は連続で爆発を起こし戦兎を追い詰める。戦兎の方も必死に逃げながら狙いを定めるが、

 

(だめだ、これじゃ各駅電車までしか溜められない)

 

海賊ハッシャーの弱点として威力は高いがそれを活かすためMAXまでチャージすると隙が大きいのだ。恐らく相手もそれを見抜いて爆発を間を開けずに撃ってるのだろう。証拠に爆発自体は今までのと比べれば大きくない。まあ比べればであって充分危険だけど。

 

とは言えずっと走って逃げるのも疲れてきた。という訳で、

 

「さぁ、実験を始めようか」

 

戦兎は走りながら今度は橙色の鷹の模様が入ったタカフルボトルと、灰色のガトリングの模様が入ったガトリングフルボトルを取り出し振りながら走りベルトのボトルを交換する。

 

《タカ!ガトリング!ベストマッチ!》

 

レバーを回し、相手を見ながら足は止めず。

 

《Are you ready?》

「ビルドアップ!」

《天空の暴れん坊!ホークガトリング!イエーイ!》

 

姿を変えた戦兎は走るのをやめて飛び上がると背中から出した鷹の翼を模した羽根を出すと空へと飛び上がり相手と同じ高さまでいく。

 

「勝利の法則は決まった!」

 

更に戦兎はそこから機関銃型の銃【ホークガトリンガー】を取り出しマガジン部分を回転させる。

 

《10!20!30!40!50!60!70!80!90!100!フルバレット!》

 

そんな音声と共に戦兎と相手を囲むように球場のフィールドが形成された。ホントはもっと大きいフィールドも出来るが今回はかなり小さくだ。

 

「くっ!これは!」

「流石にこんな狭い場所じゃあ爆破は出来ないよな?」

 

そう言いながら戦兎はホークガトリンガーを向け、

 

「アバヨ」

「っ!」

 

全弾一気に撃ちまくる。狙いもなにもないがこの距離だし下手な鉄砲数撃ちゃ当たる作戦で充分。そして撃ち尽くしたあとには既に相手は強制退場となったらしく、消えていた。

 

「前に見つけたときに装備も作っといて正解だったな」

 

つうかこれも龍誠が見つけたんだよな……と呟きつつ戦兎は屋上を見る。ここは片付いた。すぐに向かった方がいいと翼を広げて高度を上げていく。ビルドの飛ぶ速度をもってすれば一秒も掛からず屋上に到着する。だがそこにあった光景は……

 

「っ!」

 

戦兎が屋上に到着した瞬間ライザーに祐斗の剣が決まる。だが瞬時にその傷は再生し祐斗を大火力の炎で焼き一撃で退場に追い込んだところだった。

 

「てめぇ!」

「っ!!」

 

戦兎はホークガトリンガーを撃つが、ライザーは意に返した様子がない。何発撃っても瞬時に回復してしまう。

 

だがそれでも撃ちながら戦兎はリアスやアーシアと彼女に治療されていた龍誠の元にいった。

 

「大丈夫ですか?」

「えぇ」

 

龍誠はかなりボロボロだが何とか平気そうだな。と戦兎は結論付け、ライザーを見る。

 

「おいリアス。いい加減に諦めろ!今治療中のポーンも俺の相手にはならなかった。今来たポーンも既に肩が上がってるじゃないか」

 

ライザーの言葉は正確だった。戦兎は明らかに疲労の色が出ているし龍誠も自慢の拳はライザーには通じなかった。すると龍誠が、

 

「戦兎……これ使え」

 

とだけいって差し出したのはドラゴンフルボトルだ。それを見て戦兎は何を考えているのかを理解する。

 

「成程な」

 

そう呟いて戦兎は龍誠からドラゴンフルボトルを受け取ると新たに金色の南京錠の模様が入ったロックフルボトルを取り出して振ってからベルトのボトルを入れ換える。

 

《ドラゴン!ロック!ベストマッチ!》

「ぐっ!」

 

一瞬バチバチと放電し戦兎は苦悶の声を漏らしたが、戦兎は無理矢理レバーを回して構えた。

 

《Are you ready?》

「ビルド……アップ!」

《封印のファンタジスタ!キードラゴン!イエーイ!》

 

紺と金色のビルド姿を変えた戦兎だが、体にまた電流が走る。それを強引に振り払うと戦兎はライザーに飛びかかった。

 

「うぉお!」

「っ!」

 

戦兎は紺色のドラゴンフルボトルで作られた右腕に青い炎を纏わせてライザーをぶん殴る。それを受けたライザーの腕が吹っ飛び、明らかに先程にはなかった動揺が見て取れた。

 

「あれはいったい……」

「ドラゴンフルボトルは他のボトルと比べるとなんでか強い力があるらしいんですが、ただ強すぎてベストマッチ以外のボトルじゃ扱えないらしいんです。しかもそれですら短時間だけで今戦兎が、疲労状態にあるのも考えれば……」

 

だから余計に急いでるのねとリアスが言う中戦兎は再度右腕に蒼炎を纏わせてライザーを殴る。

 

(バカな。ここまでの力を持っているとは……)

 

傷自体はすぐに再生できる。だが一撃一撃の重さと言うか圧が凄まじい。これは()()()()()()()()()キツいと判断した。

 

だが戦兎自身も変身の限界時間が近づいていることに気づいている。そのため戦兎はレバーを回す。

(とにかく決めるしかねぇ!)

《Ready Go!》

「はぁ!」

 

レバーを回して高まったエネルギーを感じながら戦兎は左腕の鎖を伸ばしてライザーを捕らえた。

 

「なに!?」

《ボルテックフィニッシュ!》

「おぉ!」

 

そして右腕に蒼炎を溜め巨大な火の玉を作り出すとそれをライザーに……

 

「がっ!」

 

ぶつける前にビリビリと戦兎の全身に電流が走り突如変身が解除されてしまう。

 

「そこか!」

「っ!」

 

そして変身が解除され、隙ができたのを見逃すライザーではなく、素早く炎を作り出すと戦兎にぶつけて吹き飛ばした。

 

「戦兎!」

 

強制解除によって生身でまともに喰らった戦兎は後方に大きく吹っ飛んでいきそのまま消滅する。

 

「ふん。まさかあんな隠して球があったとはな。長期戦でこられてたら危なかったぞ」

「てめぇ……」

 

龍誠は立ち上がりながら拳を構えた。ドラゴンフルボトルは戦兎が持ったまま消滅してしまったため完全に素手だ。

 

「なんだ?またお前が来るのか?」

「当然だ!」

 

そう言いながら走り出すために足に力を込め、

 

「龍誠……」

「行くぞ焼鳥野郎!」

 

リアスの声を背中に受け、龍誠は叫びながら走り出す。だが、ドラゴンフルボトルを持たない龍誠では勝負にならずすぐに退場に追い込まれ、アーシアとリアスだけで結局ほぼ万全の状態のライザーに勝てるわけもなくリアスのリタイアの宣言をもって、こちらの敗北となったのだった。



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WAKE UP

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

龍「ライザーに戦いを挑むも敗北してしまった俺たち」
戦「しかも負けたら負けたでぴーぴー泣いてさぁ」
龍「泣いてねぇわアホ!」
戦「事実でしょうが!そんな感じの11話スタート!」


「う……」

 

龍誠は体に走った痛みに目を開けると、ベットに寝かされていた。ここがどこだか一瞬分からず顔を動かすと自分の寮の部屋であることに気づき、そこに戦兎が入ってきた。

 

「よう」

「おれ……負けたんだな」

 

一番重症を負ってな。と戦兎が言いながら着替えを渡すともう二日も寝ていたことやリアスがリタイアして敗北となったこと、アーシアがずっと治療してくれたことを教えてくれる。

 

「部長は今夜式を挙げるってさ。どうする?」

「どうするって?」

 

戦兎の言葉に龍誠は首を傾げた。

 

「助けにいかねぇのか?」

「俺が?結局俺じゃ勝てなかった。お前が行けよ。キードラゴンなら勝ち目もあるだろ」

 

いや、キードラゴンじゃライザーを倒しきれないから俺でも無理だろうな。と戦兎が言うと龍誠は皮肉った笑みを浮かべた。

 

「お前は正義の味方じゃねぇのかよ」

「正義の味方であると同時に科学者志望なんでね。勝てる方法を探してからいくのさ」

 

戦兎の言葉に龍誠がそんなのあるのかよと言う。すると戦兎はドラゴンフルボトルを差し出した。

 

「これはライザー相手でも効果的だった。だがこれは俺では使いこなせない。だが龍誠。お前なら使いこなせるはずだ」

「お前まさか……」

 

そう龍誠が呟くと戦兎は頷き、

 

「お前が変身しろ。龍誠」

「アホか」

 

龍誠は首を横に振る。俺じゃ無理だと……それを聞いた戦兎は龍誠の胸ぐらを掴みあげた。

 

「じゃあ見捨てていいのかよ龍誠!悔しいけどな。今の俺じゃライザーには勝てねぇ。確かにキードラゴンならいい線はいく。でもそこまでなんだよ!戦ったときに分かった。アイツは強い。フェニックス家の才児だって言われる理由がよくわかった!でもドラゴンの力を100%以上使いこなせるなら話は別だ。勝ち目が見えてくる。お前がやるしかないんだよ!」

「ふざけんな!無理だよ俺には!結局俺はあのときからなにも変わっちゃいない。必死に忘れようと思ってお前とかとバカやってたけどダメだ。カッコつけてたけど限界だ。今じゃ無力感ばかり強くってまたライザーと戦う気力が全然沸いてこねぇ……こんな状態じゃ勝てるもんも勝てるわけがねぇだろ!」

「じゃあ逃げんのかよ!あのときみたくまたグダグダと一人落ち込んで自分を責めてなんとなく折り合いつけて誤魔化し誤魔化し生きていくのかよ!しってんだぞ!今だに香澄ちゃんの墓参り毎月毎月甲斐甲斐しく行ってるのもツーショット写真待ち受けにしてんのもたまに名前呼んで泣いてんのもな!」

「俺の勝手だろうが!お前になにわかんだよ!」

 

そう叫んだ龍誠は戦兎を突き飛ばすと扉を乱暴に開け閉めしてどこかにいってしまう。その直後にアーシアが飛び込んできた。

 

「あ、あれ?龍誠さんは?」

「ん?ほっとけよ。すぐに戻ってくる」

 

そう言いながら戦兎が立ち上がると、

 

「お怪我はありませんか?」

「うぉ!」

「きゃ!」

 

今度は部屋の隅にいつの間にか立っていた、グレイフィアが声を発し戦兎とアーシアはギョッとしながら身構えてしまう。

 

「い、居たんですか?」

「えぇ、いつもニコニコあなたの背後におります」

 

いやめっちゃ無表情じゃんと突っ込みつつ戦兎はグレイフィアになにしに来たのか聞く。

 

「これを渡しに来たのです」

 

そう言ってグレイフィアが出してきたのは魔方陣が描かれた一枚の紙だった。

 

「今夜の結婚式にはグレモリー眷属の皆様も参加されるとの事ですので皆様もいらっしゃられるのかと」

「んまぁ……龍誠が戻ってきたら俺と二人でお邪魔させてもらいますよ」

 

え?私は?とアーシアが見てくるが彼女にはお留守番してもらおう。どうせ祝いになんかいく気ないし。

 

それに対してグレイフィアも戦兎が何を言おうとしてるのかを理解して、

 

「成程。それでは魔王・サーゼクス様からの伝言です。もしリアスを助けるつもりならば乗り込んできなさい。そうすればライザー殿にもう一度戦うチャンスをこちらで用意すると」

「それはありがたいですね」

 

戦兎がそう言うと、グレイフィアはですがと続けた。

 

「龍誠様もこられるのでしょうか?今の状態では正直……」

 

大丈夫ですよ。とグレイフィアの言葉を戦兎は否定する。

 

「信じてますから。アイツを俺は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ!」

 

道端に転がった石を蹴り飛ばした龍誠はイライラした様子で歩いていた。

 

分かってる。分かっているのだ。この結果に納得いってないのは自分だって同じだ。

 

ライザーにドラゴンフルボトル無しで戦いを挑んだ最後の時、意識を失う直前に見た最後の光景。それはリアスが泣いていたと言うことだ。

 

負けを確信した悔しさで?違う。彼女は駆け寄りながら最後に自分に掛けた言葉は、

 

《ごめんなさい》

 

だった。自分の我が儘に巻き込んだことは特訓の時も謝られた。だがその時とは違う。彼女は自分がボロボロになって結局戦兎の言うとおりなら一番の重症を負わせたことに彼女は後悔をしたんだ。

 

自分の願いを叶えるための行動で眷属を傷つける。それが眷属思いな彼女にとってどれだけの苦しみだったか想像に難くない。

 

だが好きな人を作りその人と結婚したい。そう思うのが変か?その願いも悪魔の事情でねじ曲げられるのか?

 

そこまで考えて龍誠は首を横に振った。だがどうしようもないことだ。自分は弱い。結局今まで頑張ってみたがダメだった。戦兎には変身すれば勝ち目があると言われたが、正直もう一度頑張ってダメだったときどうすればいい?次こそ本当に立ち上がれなくなってしまう。

 

それが怖い。だったら動かずおとなしくしてる方が楽だと思いながら歩を進めているといつの間にか墓地が見えていた。ここの墓地には香澄の墓がある。

 

戦兎が毎月といっていたが、悪魔になってから来るのは初めてだな。確か悪魔って神社や寺にも入れないんだよな……まぁここは墓地だけだし多分入れるだろと足を踏み入れると案の定入れた。マジで神社や寺は消滅する可能性があるので口を酸っぱくして言われたが、ここは大丈夫そうで助かったと思いつつ慣れた足取りで進んでいくと香澄の墓が見えて来る。

 

墓の前にいくと龍誠は手を合わせ、来れなかった分の出来事を話していく。悪魔になったこと、アーシアやリアス達との出会い。そしてライザーとの戦いと敗北を……そして全て話し終え、龍誠は大きく息を吐いた。その時、

 

《だから今日は落ち込んでたんだね》

「え?」

 

龍誠はどこかで聞き馴染みのある声にポカンとしながら頭を上げ、そこにいたのは……

 

「香澄?」

《久し振り》

 

墓石の上に腰を掛けた彼女は最後に着ていた中学時代の制服を纏った彼女がいた。

 

「なんで……」

《何時も居たよ?ただ龍誠が見えてなかっただけで》

 

悪魔になると霊感が上がるのか?だが龍誠にとってはどうでもいいことだ。

 

「香澄……俺」

 

そう言って龍誠が手を伸ばそうとするとそれを香澄は拒絶した。なぜか分からず彼が困惑していると、

 

《ダメだよ。私の相手をしている時間なんかないでしょ?》

「そんなことは!」

 

あるよ、と香澄は龍誠にいった。

 

《私はもう死んじゃったの。でも龍誠は生きてるんだから前を見ないと》

「ダメだよ香澄……俺は」

 

龍誠は何かを言いかけるが、それを香澄は止める。

 

《なんで私がいるか分かる?私ね、龍誠が心配なの。それが未練でずっとこの世にいるの。だからさ、そろそろ私の事を忘れて新しい人を好きになって?》

 

出来るかそんなもん!と龍誠は叫ぶが香澄は笑みを浮かべる。

 

《出来るかじゃなくて、やるの。じゃないと私いつまでも成仏できないよ。お願いだから私の大好きだった龍誠に戻って?じゃないと私……悪霊になっちゃう》

「っ!」

 

龍誠は俯き眼を逸らしながらも言葉を発した。

 

「でも俺はお前を……なのに幸せになっていいのかよ。お前を守れなかったが俺がまた誰かを好きになる資格なんてあるのかよ!」

《あるに決まってるじゃない。と言うかならないと許さない。私の分まで長生きして、幸せになって?お願いだから何時も前向きで、色んな人から愛された龍誠に戻って、そのリアスって人を助けてあげて》

 

龍誠はうつむいたまま暫く喋らず、それから口を開くと、

 

「お前を忘れるかもしれない」

《うん。私の墓参りなんかふと思い出したときで充分だよ》

 

その言葉に龍誠は少し深呼吸して、

 

「分かったよ。お前がそういうなら、俺は行くよ」

 

背を向け歩き出す。くそ、涙が止まらない。分かるんだ。もう香澄に会えるのはこの一回切りだって。

 

《それでいいんだよ》

 

その後ろ姿を見送りながら香澄は自分の体が消えていくのを確認する。漸く未練はなくなった。これでちゃんと逝ける。

 

《頑張れ。龍誠》

 

その最後の言葉が龍誠に届いたのかは……分からない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しっかしでっけぇなぁ。しかも似たような建物が幾つもあるし」

 

地面に出現した魔方陣から姿を現した龍誠の呟きに戦兎は頷きを返す。

 

さて、先程突然帰ってきた龍誠に有無を言わさず戦兎は魔方陣でリアスの結婚式会場に連れてこられた。とは言え、会場と言ってもたくさんある上にとんでもなくデカイ屋敷のどれかひとつで行われるのであろう。

 

まずそれから探すのか……

 

「取り敢えず入れば分かんじゃね?」

「だなぁ。行くぞ龍誠」

 

そう言って取り敢えず目の前にあった一つに入ると、まず大きなエントランス。つうかこのエントランスの大きさだけでも充分な大きさがある。シャトルランでもできそうだ。

 

「あら、貴殿方は」

『ん?』

 

二人が奥に進もうと足を進めたところに縦ロールの髪型をした少女が降りてきた。なんかどこかで見た雰囲気があるがどうでも良い。確かこいつは、

 

「お前は確かライザーの眷属だよな?」

「えぇ」

 

戦兎の言葉に縦ロールの少女は頷き、龍誠はこんなのいたっけ?みたいな反応をしている。

 

「俺戦った覚えないんだよな」

「そういや部室で見た記憶はあるけどレーティングゲームでは見てないな。別のところでやられてたのか?」

 

その言葉に彼女は首を横に振り、私は特別でしたから別の場所で待機してましたわと言った。その特別とは?と戦兎と龍誠は首を傾げていると、

 

「私の名前はレイヴェル・フェニックス。貴殿方が戦ったライザーは私の兄ですわ。だから私は戦いには参加せず……ってなんで二人揃って距離を開けるんですの?」

『妹がハーレムに……』

 

あの女好きの極みとも言えるあのライザー眷属なのだがそれに妹?それ意味するものと言えば、

 

『引くわぁ……』

「かんっぜんにあらぬ誤解をしておりますわね!私はお兄様とはなにもありませんわ!ただあの人が妹萌えとかワケわからんことをいって眷属にされただけですわ!」

「ああ言ってるけど、あの手のタイプはお兄様には私がいないとダメですわねとかいって面倒見てる口だぜ?」

 

うっ!と戦兎の言葉にレイヴェルは言葉を詰まらせる。自分でもこうダメなやつほど面倒を見てやらねばと思ってしまうタイプなのは自覚があるのだ。それは内心では認める。だがそれを口に出して認めるかは別で、

 

「と言うか今更何をしておりますの!?もう式は始まりましたわよ!?」

「あぁ、その結婚式を滅茶苦茶にいで!」

 

強引に話を代えたレイヴェルに馬鹿正直に答えようとする龍誠をぶっ叩いて止めた戦兎は、ちょっと色々あって遅れたんだけど会場どこだっけ?と聞く。

 

「ここをずっと行って建物を三つほど通り抜けると結婚式会場に建物まるごと抑えてありますから、そこまでいけば係りの者がいますから、連れて行って貰えば宜しいですわ」

「なんでそんな遠くなのにお前はいるんだ?」

「散歩してただけですわ」

 

と聞いてきた龍誠に答えると戦兎と龍誠はありがとなと言って行ってしまう。そこでレイヴェルはふと、

 

「って今式を滅茶苦茶にっていいましたわよ……ね?」

 

レイヴェルが振り替えると既に全力疾走中の二人が見えた。そして、

 

「待ちなさい!」

「おい!なんかレイヴェルってやつ空飛びながら追い掛けてきたぞ!?」

「まじかよ!?ここ室内だぞ!」

「走るよりこっちの方が速いからですわ!」

 

戦兎と龍誠はギョッとしながら走るが、レイヴェルは何と火球まで放ってくる。

 

『あぢぢぢぢぢ!』

 

顔の真横や足元に炎が来て跳び跳ねながら二人は走る。

 

「てめぇ!室内で炎とか正気か!?」

「特殊な結界があるから魔王クラスが力を放ったならともかく、私程度であれば貴殿方を燃やすなら出来ますが、ここの物は被害が出ませんわ!」

 

なんてこったい!と戦兎は叫びながらベルトを出すと装着し、ラビットフルボトルとタンクフルボトルを振って挿す。

 

《ラビット!タンク!ベストマッチ!Are you ready?》

「急いで変身!」

《鋼のムーンサルト!ラビット!タンク!イエーイ!》

 

変身を急いで完了した戦兎は、更にライオンフルボトルとスマホを出して、

 

《ビルドチェンジ!》

「行くぞ龍誠!」

 

ライオンフルボトルを挿したスマホを空中に放り、バイクに変形したところを戦兎は龍誠を抱えて乗り、地面に着地すると同時に龍誠を後ろに乗せて走り出す。

 

「室内をバイクでとかなに考えてますの!?」

『室内で空飛んで火球撃ってくる奴に言われたくねぇよ!』

 

レイヴェルに二人は仲良く突っ込むと、戦兎は道を逸れて階段を上がる。

 

「おい戦兎!なんで階段を上ってんだよ!建物を突っ切っていけば良いんじゃねぇのかよ!」

「こっちの方がショートカットできるからだ!あと黙ってろ舌噛むぞ!」

 

そう戦兎が叫ぶと、最上階のテラスに着いた。そして、

 

「行くぞ!」

「え?」

 

戦兎はエンジンを吹かして、なんとテラスから飛び出してしまう。

 

「えぇえええええええ!」

「だから舌噛むっつうの!」

 

戦兎は叫びながらバイクのタイヤが壁に触れたのを感じると、アクセルを更に吹かして強引に進む。

 

「か、壁を走ってるぅうううう!」

「未来のてぇんさい物理学者に掛かれば壁を走るバイクくらい余裕なのさ!」

 

そう言いながら戦兎は壁から隣の建物の壁に飛び移りどんどん進んでいく。するとすぐに、

 

「見えたぞ龍誠!あれだ!」

「マジか!」

 

窓から見えたリアスとライザーの姿に戦兎は叫び、龍誠も見ると見えた。あの深紅の髪が。

 

そして戦兎はバイクの向きを調節して、

 

「彼処の窓が空いてる。そこから突っ込むぞ!」

「なぁ、別にそんなアクション映画みたいなことしなくって彼処から入るだけなら空飛べば良くね」

「バカ。ブレーキ掛けたらバイクが落っこちるでしょうが。これ結構重いんだからな!」

 

バイク大事かよ!と龍誠が突っ込む中戦兎は更にスピードを上げて、

 

「いっけぇえ!」

「だったら空飛べるバイク作れよぉおおおおおお!」

 

一方その頃。

 

「結局三人は来ませんでしたね」

「そうですね」

 

祐斗と朱乃はドリンクを片手に浮かない顔で立っていた。今回のレーティングゲームでの結果に思うところがある。だがそれを口にするには力が足りない。ライザーから力付くで奪うには……すると近くにいた小猫がキョロキョロし、朱乃がどうしたのかと聞くと、

 

「今戦兎先輩と龍誠先輩の声が……」

 

声?と朱乃が呟いた瞬間、

 

『おぉおおおお!』

『え?』

 

思わず会場にいた人々がポカンとする中、窓から飛び込んできた戦兎と龍誠はバイクごと何と会場の真ん中に設置されていたウェディングケーキに衝突しケーキを見事に爆発四散させた。

 

『えぇええええ!?』

 

突然に出来事に驚愕の悲鳴にも似た声が出る中、砕け散ったケーキの残骸から龍誠が頭を出す。

 

「ぷはぁ!死ぬかと思った」

「お兄様!ここに向かって乱入者が……」

 

龍誠が体に付いた生クリームを食べながらケーキから這い出てると、レイヴェルもやってくる。そんな光景を見ながらライザーは肩を震わせつつ龍誠に詰め寄る。

 

「貴様!いきなり窓から飛び込んできたかと思えばケーキに突っ込んで爆発四散だと!?これは冥界の一流のパティシエが作ったものだぞ!」

「めっちゃ美味いぞ」

 

誰も味の感想は聞いてない!とライザーは突っ込みつつリアスを見る。

 

「リアス。君も眷属にどういう教育をしてるんだ!全く、結婚した暁にはその辺もしっかりと……」

「させねぇよ」

 

何?とライザーは龍誠の言葉に眉を寄せる。

 

「結婚式は中止だ。部長は俺が連れて帰る」

「何をいってるんだ?負け犬の分際で」

 

そう言い合って睨み会う中、まあ待ちたまえと何者かが出てくる。

 

「サーゼクス様?」

 

ライザーの言葉に龍誠は、サーゼクスと言うことは魔王か?しかも部長のお兄さん?と首を傾げる。確かによく似ているな。

 

「私が呼んだのだ。今日の余興としてね」

 

どういう事ですか?とライザーが聞くと、

 

「いやはや前回のレーティングゲームは実に面白かった。特に終盤のこちらの龍誠君の何度も立ち上がり戦う姿も、そこでバイク入り込んだ生クリームをせっせと取ってる戦兎君が一時的に追い詰めようとした瞬間も良かった。だがフェニックス家の才児と呼ばれるライザー君と戦うにはリアスでは少々分が悪すぎた。そこでもう一度戦ってみないかと思ってね。あの時の熱き戦いの再現。中々良い余興だと思わないかい?勿論ライザー君。君が嫌であれば無理にとは言わないが」

 

ニコニコしながら言うサーゼクスに、ライザーは少し嘆息しながらも、

 

「いえ、サーゼクス様にそこまで言われて断れません。引き受けましょう。それでどちらと戦うのですか?」

「俺とだよ」

 

龍誠はヤル気満々といった風情で居り、それを見たサーゼクスは龍誠に問う。

 

「では龍誠君。私の我が儘に付き合わせるのだしこの戦いに勝てば何か願いを叶えて上げよう。何かあるかい?」

「部長を返してもらいます!」

「龍誠……」

 

全く迷いなしで寧ろ食い気味に龍誠は言い、リアスが困惑の表情を浮かべる中サーゼクスは頷きを返し、

 

「では場所は私が用意する」

 

そう言ってサーゼクスが指をパチンと鳴らすと周りが光に包まれ、気付くと龍誠とライザーの二人を中心に広い闘技場へと転移させられた。

 

「ふん。まぁいい。今度こそその精神を叩き折ってくれる!」

 

そう言って炎の翼を出すライザーに、龍誠はドラゴンフルボトルを持って構える。

 

「やってみろ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『戦兎(君)(先輩)!!!』

「うわ!全員でいきなり詰め寄ってこないでくださいよ。びっくりするなぁ……」

 

もうバイクは一度帰ってから洗浄するしかないなと諦めた戦兎は変身を解除して龍誠とライザーの戦いを見ていたのだが、そこにリアスを筆頭に他の眷属達まで詰め寄ってきたのだ。

 

「貴方達なに考えてるのよ!」

「なにって……ライザーをぶっ倒しに?」

 

と言って首を傾げる戦兎に祐斗が口を開く。

 

「倒すって言っても君もあのライザー氏の強さは知ってるよね?」

「あぁ、だから勿論策がある」

 

戦兎の言葉に策?と皆が首を傾げる中、戦兎は更に言葉を続ける。

 

「ビルドドライバーを使うには条件があります。それはハザードレベルが3.0以上であること。あ、ハザードレベルって言うのはフルボトルの成分にどれだけ耐性があるか、そしてその力を如何に使いこなせるかを現したレベルで、それが高ければ高いほど変身したときの力が増します。因みに俺は今は3.1あります。そして龍誠は今2.9……このレベルを上げるには現時点ではボトルの使用に慣れるしかなくて変身やボトルを使っての戦闘をこなすしかない。そして変身できない龍誠はボトルを使って上げるしかない」

「まさか貴方……今この土壇場でそのハザードレベルと言うやつを上げさせて変身させる気なの!?」

 

ご名答です。と戦兎は言い、

 

「俺では無理でしたがアイツならドラゴンフルボトルを使いこなせるはずです。あれならライザーとやりあえる」

「ハザードレベルというのはそんなに簡単に上げられるものなんですか?」

 

と聞いてくる朱乃に戦兎は首を横に振る。

 

「俺は今思えば瓶詰め(ボトルチャージ)の影響かフルボトルに触れてる時間が長かったからか元々ハザードレベルが高くてですね。それでもやっと3.0になったのが中学の3年の頃。それから何度も変身して最近やっと3.1になりました。正直0.1上げるのだってかなり大変です。ぶっちゃけこの土壇場で3.0にするなんて無茶も良いとこですね」

「じゃあなんでそんなことさせたの!親友なんじゃないの!?」

 

そう言って詰め寄ってくるリアスに戦兎は声を低くし、

 

「親友だからそんな無茶も出来るって信じてんですよ。アイツはアンタを取り返す為にここに来た!アイツは誰でもない。あんたの為にもう一回立ち上がってライザーに戦いを挑んだんだ!だからアンタは信じてろよ!アイツはアンタの兵士(ポーン)だぞ!」

 

そう言って戦兎は龍誠を見る。現在明らかに不利だ。だが戦兎は龍誠の目に光が点っているのを見て確信する。絶対に行けると。

 

その頃、龍誠もライザーの炎を避けながらドラゴンフルボトルを強く握る。やはり強い。不死身と言うのを差し引いても強い。だが不思議と足は止まらなかった。

 

心が軽い。何処までも行けそうな位身も軽い。今なら何でも出来そうで、力がみなぎってくる。

 

もうなにも後ろめたいことはない。なにも思い悩むことはない。

 

ライザーはこの場で戦兎以外で唯一龍誠の変化に気づいていた。前回は何処か強迫観念の元に戦ってる感じがあった。だが今の龍誠は良い意味で肩の力が抜けている所為か当てられない。そして一撃一撃が鋭く、そして重い。しかも回数を増すごとにその鋭さと重さも増していっていた。明らかに不味いとライザーは早々に勝負を終わらせることを選択し一度距離を取ると巨大な火の球を作り出す。

 

「これで終わりだ!」

 

そう言って放たれたライザーの火の球を龍誠は見据えると、ドラゴンフルボトルを握った拳を握り直した。いつまでも逃げてても仕方ない。逃げてても勝てない。ならどうするか?戦うしかない。戦って……ライザーをぶっ倒すしかない。

 

「俺はもう……逃げねぇって決めたんだぁあああ!」

 

その時、龍誠の体を蒼い炎のようなオーラが覆った。特にドラゴンフルボトルを握った右手には力が集まっているのかそれが強く、そのエネルギーをぶつけるようにライザーの炎をぶん殴ると、

 

「なに……?」

 

ライザーが眼を見張る。何故なら前回では手も足も出なかったはずの自分の火球。それを龍誠は何とパンチで消し飛ばすと言う荒業をやってのけたのだ。

 

「俺は、お前に負けねぇ」

 

一方その頃、龍誠の戦いを見ていた戦兎のポケットから何かが飛び出してきた。

 

「これは……」

 

祐斗が驚きながら見ると、それは蒼いドラゴンのような機械だ。それを見た戦兎も少しビックリしながらも、

 

「行けるんだな?」

 

その問いに答えるようにドラゴンは一鳴きすると戦兎はビルドドライバーを出して渡す。

 

「龍誠を頼んだぞ」

 

ビルドドライバーを受け取ったドラゴンはまた鳴きながら龍誠めがけて突進。それを見送りながらリアスは戦兎にあれはなにかと聞いた。

 

「あれはクローズドラゴン。龍誠専用の変身アイテムです。龍誠のハザードレベルが3.0を越えたら起動するようにしておいたんですよ」

 

つまりあれが動き出したと言うことはと言いながら戦兎は改めて龍誠を見る。

 

「さぁ、ぶっ倒しちまえ」

 

戦兎がそう呟くと龍誠も何かが此方に飛んでくるのを確認し、それが投げてきたものをキャッチする。

 

「これはビルドドライバー?」

 

龍誠が驚く中、クローズドラゴンも動くのを止め、龍誠の手に降りてくる。それを見た龍誠は意味を理解し、

 

「使えってことだな!」

 

そう言うと同時に龍誠はビルドドライバーを装着しドラゴンフルボトルを振る。

 

それからクローズドラゴンに挿すと、

 

《ウェイクアップ!》

 

その音声が流れると更にクローズドラゴンごとビルドドライバーに挿した。

 

《クローズドラゴン!》

 

そして龍誠はレバーを回し、フレームが出現すると同時に右手で拳を作って左手を軽く殴ってからポーズを決める。だがそれをいつまでも見ているライザーではない。

 

「何をする気か知らんが二度目はない!今度は拳で消せない炎を喰らわせてやる!」

 

そう言ったライザーは先程より巨大な炎を作り出すと龍誠に向かって放つ。観客席にすら届くほどの熱を持ったそれは龍誠に襲いかかる。だが龍誠は動かない。それを見たままあの言葉を言う。

 

何時も戦兎が言う正義の味方になる為の合言葉。勿論それは、

 

「変身!」

 

それと同時に炎は着弾し、ライザーは勝利を確信した。観客達もそう思った。だが一部が見逃していない。あの爆炎の中から立ち上る一匹の蒼き龍の姿を!

 

《Wake up burning! Get CROSS-Z DRAGON!Yeah!》

「なに!?」

 

ライザーは眼を見開きそれを見た。自分の渾身の炎を吹き飛ばし、中から現れたドラゴンを彷彿とさせる姿へと変身した者。まさかあの転生悪魔か?と驚く中、変身を完了した龍誠はライザーを見る。

 

「今の俺は……負ける気がしねぇ!」



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猛よドラゴン

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

龍「強敵ライザーと戦うため、遂に変身したこの俺万丈龍誠!っていうか何て名前なんだ?」
戦「仮面ライダー筋肉バカ」
龍「酷すぎんだろ!」
戦「冗談だよって言うことで名前は本編でな。つうわけで12話スタート!」


「クローズ」

「え?」

 

戦兎の呟きに祐斗は反応した。

 

「仮面ライダークローズ。それがアレの名前だよ」

「成程。終わらせる(クローズ)か……造る、形成するって言う意味の謂わば始まりを意味するビルドとは正反対となってるね」

 

祐斗の言葉に戦兎が肩を竦める中、龍誠はライザーに飛び掛かる。

 

「おぉら!」

「っ!」

 

蒼炎を腕に纏わせてライザーをぶん殴った。咄嗟にライザーはガードしたが、何と腕が文字通り千切れて吹き飛んだ。

 

「くっ!」

 

だがライザーは冷静だった。冷静に腕を生やして反撃を……

 

「オラオラオラァ!」

 

するよりも速く龍誠は更に連続で攻撃を叩き込む。それによりライザーの体は瞬時にボロ雑巾のように変わった。

 

ライザーはどんどん再生していくがそれより速く龍誠が攻撃を叩き込む。戦兎と戦ったときには比べ物にならないほどの圧を感じ、ライザーは下がって炎を撃つ。

 

「ちぃ!逃げんな!」

 

龍誠は追い掛けるがライザーは今度は一定の距離を保って炎を撃ってきた。全部素手で消し飛ばしてるが流石にこのままでは……と思っていたところに戦兎が、

 

「龍誠!ビートクローザーを使え!」

「ビートクローザー?」

 

龍誠は戦兎の言葉に首を傾げるが、龍誠の言葉に反応するようにベルトから両刃の剣が現れ、慌ててキャッチすると、

 

「柄尻のクリップエンドを引け!最大三回までだ!」

「柄尻ってどこだ?」

 

そこからかよ!と戦兎が突っ込む中ライザーは炎を撃つ。すると、

 

「ここか?」

《ヒッパレー!スマッシュヒット!》

 

正解だったらしい。音声が鳴ったため咄嗟にビートクローザーを振ると刀身が蒼炎を纏いライザーの炎を吹き飛ばす。素手でやるよりずっと楽だ。

 

「よぉし!」

 

おぉおお!と叫びながら龍誠はライザーに突っ込む。飛んでくる火球はビートクローザーで切り裂きながら間合いを一気に詰めると、

 

《ヒッパレー!ヒッパレー!ミリオンヒット!》

「ぐぁ!」

 

刀身から延びたエネルギーを衝撃波にしてライザーに当てると連続でライザーにダメージを与えた。

 

「ぐ……」

 

全身がズタズタに引き裂かれるような感覚にライザーは胃から競り上がってくる血の塊を吐き出しながら後退り再生を……

 

(再生速度が落ちてるだと!?)

 

明らかに再生速度が落ちてる。いや、それどころかダメージが完治しない。

 

「まだまだいくぞぉ!」

 

しかし龍誠は止まらない。どんどん距離を詰めてビートクローザーを振ったり蹴ったり殴ったりと好き放題にライザーを攻め立てる。

 

「ぐっ!くそ!」

 

再生が間に合わず、傷が増えていく。龍誠の攻撃が激しすぎて、ライザーは距離を開ける隙はないがそれでもうまく回避しながら、至近距離で炎を撃ち込む。

 

「あっつ!こうなったら……昇格(プロモーション)!ルーク!」

「あのバカ!」

 

アレほど変身してるときは昇格(プロモーション)するなといったのに!と戦兎は思わず叫んだ。しかし、

 

「ド根じょおおおおおお!」

 

体がバチバチ放電する中龍誠は無理矢理ライザーを殴る。すると、いつの間にか放電は収まりルークのまま変身していた。

 

「何か普通に昇格(プロモーション)してますね」

「最悪だ……」

 

小猫の言葉に戦兎がガックシ肩を落とす中、龍誠はルークのパワーを上乗せしてガンガン殴っていく。

 

「が……はぁ」

 

ライザーも流石にルークのパワーまで上乗せされれば捌ききれない。ならばとライザーは炎の翼の火力を上げて自分を中心に大爆発を起こした。それに龍誠も巻き込まれたが、

 

「あぢぢぢぢぢぢぢ!」

 

地面を転がって炎から龍誠は脱出する。今の爆発はダメージを与えると言うより龍誠を怯ませるためのものだったようだ。 龍誠も埃を払うと空を飛んでいるライザーを見る。

 

「降りてこいてめぇ!」

 

ドラゴンがモチーフの癖に俺のは翼ついてねぇんだぞ!と怒るがライザーは無視して火球を放った。

 

「ちぃ!」

 

それをビートクローザーで切り裂くが、ライザーはどんどん撃ってくる。

 

「おい戦兎!俺のには遠距離武器や空飛ぶやつねぇのかよ!」

「アホか!お前のは近距離特化型なの!つうかお前が寝てた二日の間に寝ずに作ったんだぞ!機能を幾つも付けられるか!というかビートクローザーに渡しておいたロックフルボトルを挿してみろ!」

 

これを?と言いながら龍誠はロックフルボトルを取り出すとビートクローザーの鍔にロックフルボトルを挿す。

 

《スペシャルチューン!》

「お?」

《ヒッパレー!ヒッパレー!ミリオンスラッシュ!》

 

いっけぇ! と龍誠がビートクローザーをぶん回すとエネルギーで出来た鎖がライザーに向かって延びていく。

 

「なに!?」

 

ライザーは慌てて避けるが鎖は追尾してライザーを捕らえた。そして、

 

「フェニックスの……一本釣りじゃぁああああああああ!」

 

ブォン!っと振り回しライザーを強制的に地面に引きずり下ろす。

 

「うぉおおおおお!」

 

遠心力を体で感じながらライザーは地面に叩きつけられた。

 

「ごほっ!がはっ!」

 

噎せかえりながら顔を上げるライザー……だが、既にそこには、

 

「まだ……終わってないぞ」

「っ!」

 

龍誠はライザーを立たせると腹にパンチを入れ、怯んだところに蒼炎を纏わせた右腕でライザーの顔面を殴る。

 

「ラァ!ラァ!ラァアア!」

 

一発、二発、三発と続けてジャブ、ジャブ、ストレートと叩き込みライザーは最早膝がガクガク笑った状態になりながら後退り、立っているのもやっと状態だ。

 

「これで終わりだ!」

 

そう叫んだ龍誠はレバーを回し始め、エネルギーが高まっていくのを感じる。するとライザーは、

 

「ま、待て!この結婚は悪魔の未来が掛かってる重要な事なんだぞ!お前のような何も知らない転生悪魔風情がどうこうして良い問題じゃないんだ!」

「あぁそうだな。俺は悪魔の今の状況なんて知らない。純血の悪魔がどれだけ大切なのか分からない。でもな!」

《Ready Go!》

 

レバーから手を離し、腰を落とした龍誠の周りを蒼い龍が飛び回り、龍誠の背後に止まった。

 

「部長がこの結婚を望んでないことだけはわかる!俺がてめぇを倒す理由は……それだけで十分だぁああああ!」

《ドラゴニックフィニッシュ!》

 

そう叫んだ龍誠はライザーに向かって飛び上がると先程の蒼い龍が龍誠の蹴りと同時にライザーに向かって突撃し、龍誠の飛び蹴りと共に彼を飲み込んでいく。

 

「ぐぁあああああ!」

 

地面を抉り、ライザーは遥か後方まで吹っ飛ばされると、壁に激突しその勢いが強すぎたのかこっちまで跳ね返って戻ってきた。それを見た龍誠はライザーの元に歩き出すと、

 

「待ってください!」

「ん?」

 

龍誠の目の前に降り立ったのはレイヴェルだ。彼女は顔色を悪くしながらも懸命に言葉を発した。

 

「こ、この勝負は兄の敗けです。貴方の自由にして構いません。ですが、どうか兄の命だけはお助けください……お願いします」

「え?え?」

 

龍誠は参ったなと頭を掻く。単純に相手が気絶したか確認したかっただけなんだがまぁ確かに見方によっては止めを刺しにいってるようにも見えるかと納得する。

 

まぁこれ以上はやりすぎだろう。見れば足が震えている。兄をボコボコにした相手に直談判と言うのは勇気がいることだろう。それに対しては報いるのが礼儀だと言うのはアホの龍誠でも理解できた。なので変身を解除して、

 

「焼き鳥が起きたら言っとけ。今回の結果が納得いかなかったらまた相手になってやるから何時でも来いってな」

 

ニッと笑いながら言うと、レイヴェルはホッとした気持ちが半分とちょっと照れてるような表情を浮かべたが、今はそっちは重要じゃない。と背中から悪魔の翼を出して観客席まで戻る。しかし変身してると悪魔の翼が出せないって不便だよなぁ……

 

「龍誠」

 

観客席まで戻るとリアスが来る。それを見た龍誠は笑みを浮かべながら言った。

 

「お迎えに上がりました。部長」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く、何て無茶を……」

「あはは」

 

リアスの言葉に龍誠は苦笑いを浮かべる。

 

さてあの後だが、ライザーを倒したご褒美にリアスを受け取った龍誠は、オマケにと言って用意されたグリフォンに乗ってリアスと一緒に空を飛んでいた。

 

因みに戦兎は、白馬の王子と姫様の邪魔はしたくないから他の皆と帰ると言っていた為二人きりだ。

 

「もう、今回は破談に出来たかもしれないけどまた来たら……ライザーより強い悪魔もいるのに」

「まぁその時はその時で何とかなるでしょう。誰が相手だろうと倒して見せますよ」

 

何でそこまでとリアスは問う。それに対して龍誠は、

 

「まぁ俺が眷属だからか……今度はちゃんと助けたいからかまぁ色々ありますけど俺が助けたいからですよ。俺が貴女を助けたいと思ったからです」

 

龍誠はリアスを真っ直ぐ見ながら言葉を続ける。

 

「後はほっとけなかったんでしょうね。泣いてる女の子のことを」

 

そう言ってにっこり笑って言う龍誠に、リアスは見てたのねと照れ臭そうに頬を染めた。そして、

「ありがとう。貴方を眷属にして良かったわ」

「いやぁ、それほどでも」

 

龍誠はそう言うと胸を張って、えへんと言う。それを見たリアスは少し笑い、

 

「ねぇ龍誠。香澄さんのことなんだけど……」

「あ、あぁ……もう大丈夫です!ちょっと色々あったんですけど俺なりに決着つけましたので!」

 

と龍誠が慌てて言うと、じゃあ大丈夫ねとリアスが言い、どう言うことかと龍誠が首を傾げると、

 

「え?」

 

突然リアスに頬を両手で包まれ、そのまま互いの唇の距離がゼロになる。所謂キスと言うやつだ。

 

「え?え?」

「本当はかっこ良かったし嬉しかったわ。助けに来てくれた時やライザーに啖呵を切った時ね……流石に戦いになったときは心配になったけど」

 

でもライザーに勝ったとき、ホッとするのと同時に龍誠がカッコよく見えたのは本当だ。

 

「ありがとう。龍誠」

「はひ……」

 

ギュっとリアスに抱き締められた龍誠は口をパクパクさせて顔を赤くしてしまった。

 

結局その後、学校に戻るまでずっと抱きつかれたままだったのだが、まぁこれが役得と言うことにしておこう。うん。これぐらいのだったらバチも当たるまい。



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馬に蹴られるのはごめんだね

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

龍「部長さんをライザーから取り戻したこの俺仮面ライダークローズこと万丈龍誠は帰宅して疲れきって寝てしまったのだが……」
戦「つうかほんとなんでか主人公の俺よりお前の方がいい目に遭ってるんだよなぁ……」
龍「まぁ仕方ないんじゃね?お前動かしにくそうだし」
戦「んなわけあるか!つうわけでそんな感じの13話スタート!」


「んむぅ……」

 

ライダーとの戦いから次の日の朝。初変身に加えて強引な昇格(プロモーション)も行い暴れまくった影響か寝坊してしまった。明らかにいつもより寝た感覚がある。だが今日も学校はあるため今何時か確認を……

 

「あん……」

「ん?」

 

枕元に置いてある時計を探して眼を瞑ったまま手を動かしたら、何か柔らかい物を掴んだ。

 

(なんだこれ?)

「ん、あ、んん!」

 

モミモミ揉みながら龍誠はゆっくり眼を開けると……

 

「朝から積極的ね。龍誠」

「なんだ部長か……って部長!?」

 

龍誠はまた眠りに落ちそうになったがガバッと体を起こして隣を見る。そこにいたのは一糸纏わぬ生まれたままのリアスの姿があった。その裸体は美しいとか綺麗とかそんな生易しいものじゃない。まさに芸術。これはヴィーナスですら地味に見えるであろう。それくらい美しいものだった。

 

ツツゥ……と鼻から生暖かい血まで出てくる。慌てて鼻を抑えるとリアスは胸元にタオルケットを抱き寄せながら龍誠に体を寄せ、

 

「おはよう龍誠」

「お、おはようございます。あの何故俺の部屋と言うかここ戦兎の家なんですが」

「こっそり忍び込んじゃった」

 

語尾にハートマークがつきそうな感じに言いながら舌をチロリとだす彼女に龍誠は不覚にもときめいてしまう。嫌だった?何て聞かれるが嫌なわけがない。ただ昨日キスしてそれで今日なのもあって結構照れ臭い。

 

そんな龍誠の内心を知ってか知らずかリアスは龍誠に顔を近づける。

 

「またキス……しない?」

 

俺で良いなら喜んで!と龍誠は思わず姿勢を正して……そして、

 

「おい龍誠。いつまで寝てんだ起き……」

 

ドアを開け、入ってきたのは珍しく早起きした戦兎。そして眼前に繰り広げられている光景に一瞬固まり、

 

「し、失礼しました……」

「ちょま!戦兎!」

 

扉を閉めて足早に去る。桐生 戦兎クールに去るぜと言わんばかりに去りつつ歩いていると美空とかち合った。

 

「あれ?龍誠は?ちゃんと起こしてって言ったじゃん!」

「いやちょっと今は……」

「全くもう!私が起こしに行くから!」

 

ちょっと待てぇ!と戦兎は慌てて美空を止めつつ龍誠を恨む。これは後で購買で奢って貰うしかないな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つうかな!人が入ったときに顔見知り同士が事後みたいな格好でいたらどういう心境でいろってんだ!」

「いやそう言うことは別になにも……」

 

そう言う意味じゃねぇよ!別にしたかどうかなんて良いんだよ!と戦兎は龍誠に怒っていた。そんな光景を見てリアスは笑っているが……

 

「と言うか部長もいるならいると言ってくださいよ。ビックリするんで」

「ごめんなさいね」

 

さて、あの後龍誠とリアスは一緒に降りてきて普通にご飯を囲っていた。いや急に現れた美女に美空は驚いていたが、ちょっとお客様と言ったら、父が失踪しても何処かで生きててその内ひょっこり帰ってくるわよ、とのんびりしているある意味我が家一の豪傑である母が、じゃあご飯は一緒ねと普通に受け入れてしまい、戦兎は美空への説明を行った為朝飯を食べた気がしない。

 

龍誠の彼女なの?と年頃の女の子らしく美空は眼をキラキラさせてたが、そう言うことで良いのだろうか?と言うか彼女だったとしても、親友の家で寝泊まりってどういう状況だと突っ込みたくなるが……

 

つうか勝手に盛り上がった挙げ句、お兄ちゃんも早く彼女作りなよから始まり、母からもほんと女っ気ないからねぇと喧しいことこの上ない食卓になってしまってしまったのも食べた気がしなかった理由だろう。こっちだって年相応に彼女が欲しくない訳じゃないが、そもそも現時点ではそこまで恋と言うものに興味がない。彼女が欲しい=恋と言う法則は成り立たない。

 

今は発明品作ってる方が楽しいのが本音だし、龍誠が他の異性に眼を向け始めているのを見てやっと肩の荷が降りた気分なのだ。今はのんびりしたい。ビルドの強化アイテムも結局まだ手を付けれてないしな。つうか一年から残念な先輩呼ばわりされてるようだし、彼女とか夢のまた夢過ぎない?俺。

 

「あ、戦兎さん!龍誠さん!……と部長さん?」

 

そこにパタパタと駆けてきたのはアーシアだ。彼女とは大体学校に行く途中のこの辺りで鉢合わせる。と言うか、彼女が何時もこの辺で待ってたり先に此方が着けば待ってたりするのだが。

 

「なんで部長さんが……」

「何でって今日は龍誠と同じ布団で寝て起きたからよ?」

 

リアスの言葉を聞いた瞬間、アーシアは一瞬固まった後、ムンクの叫びのような表情を浮かべる。

 

「アーシア?」

「そんな、龍誠さんが、うそ」

 

膝と両手を着いて項垂れてしまったアーシアに龍誠は、おーいと言いながら肩を叩く。すると、アーシアはその手をガシッと掴み、

 

「ま、負けませんから!」

 

と宣言。それに対してリアスも龍誠の腕を取ると自分に抱き寄せる。

 

「あら、こっちだって負けるつもりはないわよ?」

 

バチバチ両者が火花を散らす中、龍誠はオロオロしつつ戦兎に助けを求めるような眼を向けたが、

 

「背中刺されないようにしろよ?」

 

にっこり笑って退散である。薄情者!って声は聞こえたけど無視である。昔の人はよく言ったものだ。人の恋路邪魔する奴は馬に蹴られて何とやらとな。まぁ悪魔は重婚OKらしいし応援はしてやるよ。と戦兎はさっさと学校に向かったのだった。



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第三章 月光校庭のエクスカリバー
もう一人の上級悪魔


前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦「ライザーとの戦いから暫く、俺達は束の間の平穏を味わっていた」
龍「しかぁし!問題はすぐそこまで来てたのだ!例えばこのいで!」
戦「バカ!ここで喋ったらダメに決まってるでしょうが!と言うわけで新たな事件が起こる第14話スタート」


あの時とは違う。俺は変わったんだ。もうあの時の俺じゃない。なのに何故誰も認めない。何故誰も俺を関わらせない。何故俺を除け者にする。

 

許せない……許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない。

 

ならもういい。俺を認めないなら全てを力付くで御して見せよう。全てを呑み込み俺の物にしよう。

 

魔王も天使も堕天使も全て従わせる。それが俺が──になれる方法なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ~。これが小さい頃の龍誠と戦兎ねぇ」

 

可愛いですと明らかに龍誠しか視界に入ってない眼で写真を見つめているのはリアスとアーシアである。

 

さて、本日は部室というか部室がある旧校舎が清掃のため立ち入りができず、オカ研のメンバーは戦兎の家に集まっていた。そしたら何時も友達と言うと龍誠しか連れて来なかった戦兎の母が感激しすぎて、こうやって昔の写真まで引っ張り出してきたのだ。因みに美空は、

 

「はい。これでいいですか?」

「ありがとうございます」

 

と小猫にサインを書いてあげていた。何でもファンだったらしい。結構美空は根強いファンが多いと言うのは知っていたが、それが後輩にもいたと言うことに戦兎は驚いていた。

 

「羨ましいです。戦兎先輩はあのみーたんと生活ができるなんて……」

「全然いいもんじゃないよ?何せとんでもない暴くいでででで!」

 

アッハッハと笑いながら言う戦兎だったが、いきなり美空に耳を引っ張られ物影に連れて行かれる。

 

死んだな……と龍誠が思っていると、

 

「ねぇ龍誠君」

「ん?」

 

戦兎の安らかな眠りを祈る……と悪魔は頭が痛くなるのでしないで御愁傷様とだけ思っていると、祐斗が話しかけてきた。

 

「これなんだけど……」

「ん~?あぁ、これか!懐かしいなぁ。昔遊んだ友達の写真だ」

 

祐斗に見せられた写真には、小学生時代の龍誠と戦兎と更にもう一人の子供が写っている。

 

「昔ヒーローごっこしたときの写真か……こいつ何処かに越していったからもう長いこと会ってないんだけどこれがどうしたんだ?」

「この剣だよ」

 

何故いきなりこの写真を出してきたのか分からず龍誠が首を傾げていると、写真の三人の背後に飾られていた西洋風の剣を指差した。

 

「これはね。聖剣だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ~」

「なに唸ってんだよ」

 

そんなことがあった次の日、教室で飯を食べていたが唸りだした戦兎に目の前で食べていた龍誠が声をかけた。

 

「ビルドの強化アイテムがどうしても完成しないんだ。ボトル作って魔力を込めてイメージするんだけど、どうしても爆発しちまうんだ」

 

魔力とその辺の下りはこそこそ話しつつ言うと、龍誠はふぅんと言いながらパンを口に放り込む。

 

「やはり一からじゃなくて今ある奴と組み合わせる感じで行くか……」

 

頭を掻きながら戦兎は最後の一口を放り込み弁当を片付けると、龍誠と立ち上がりながらアーシアの元に行く。

 

「アーシア。行こうぜ」

 

昼休みは生徒の憩いの時間であるが、近々部活対抗の球技大会があるのだ。なので昼休みを使ってその辺の打ち合わせをする予定で各自昼食を取ったら集まるようにと指示があり、食べ終えた二人がアーシアに声を掛けると、

 

「おやおや。彼氏の到着かな」

「ぴっ!」

 

アーシアと一緒に食べていた眼鏡をかけた三つ編み少女が言うと、アーシアは椅子から転げ落ちそうになる。

 

「ちちちち違いましゅ!龍誠さんとはそう言うわけでは!」

「おやおやぁ?私は彼氏としか言ってないのに戦兎と万丈のうち態々万丈個人を名指しするんだぁ?」

 

ぶわ!と耳まで真っ赤にしたアーシアはワタワタしながら鞄に荷物をしまう。

 

「藍華。あまりアーシアを苛めるなよ」

「ついねぇ~」

 

戦兎の言葉に藍華と呼ばれた少女は舌を出す。そのやり取りを見てアーシアは首を傾げた。

 

「あの……お二人は知り合いなんですか?」

『従兄妹な(んだよ)(のよ)』

 

えぇ!?とアーシアが驚き、龍誠は知らなかったのか?とアーシアを見る。

 

「こんな発明バカと親戚って言うのは遺憾だけどね~」

「俺こそおめぇみたいなド変態女となんてごめんだよ」

 

まあこんな風に言い合っているが別に仲が悪い訳じゃない。ただお互いそれぞれの交遊関係があるので、学校ではそんなに絡まないだけなのだがアーシアは驚きだったようだ。しかし、

 

「でも、お二人が親戚と言うのは言われてみればちょっと似てるので分かる気がします」

『なんで(だよ)(よ)アーシア』

 

根っこは良く似てるのだから、アーシアの反応もしょうがない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺と藍華のどこが似てんだよ」

 

何となく持ってるオーラとふとしたときの言動がなのだが、部室に向かう途中でも戦兎はずっとブツブツ言っている。それを聞いた龍誠は苦笑いを浮かべるが口には出さない。

 

言うと怒るからなと思いつつ部室のドアに手をかける。そして中に入ると、

 

「あれ?」

 

中には眼鏡をかけたスレンダーな知的な美少女と背丈の高いそこそこイケメンな男がいた。

 

「あら龍誠とアーシアに戦兎。丁度良かったわ。紹介するわね。彼女は私の幼馴染でこの学園では支取 蒼那と名乗ってるけど本名はソーナ・シトリー。上級悪魔の一人よ」

「え!?部長以外にも上級悪魔いるんすか!?」

 

と龍誠は驚くが、戦兎は余り驚いておらず、

 

「確かこの間の結婚式にいましたよね?」

「えぇ、覚えていたんですね」

「そりゃ自分の学園の生徒会長がいれば覚えますよ」

 

そう。戦兎が言うように彼女は生徒会長として学園集会の場で良く見る。なので人の顔を余り覚えない戦兎ですら珍しく覚えていた。

 

寧ろその辺は龍誠の方が曖昧で、

 

「へぇ~。俺生徒会長の顔全然覚えてなかったわ」

「そりゃあ貴方は集会が始まった途端に寝てますからね」

 

お茶を飲みながら言うソーナに龍誠は視線を逸らす。戦兎もこいつが集会で起きてたのを見たことがないなと思いつつ、近くにいた男も見る。

 

「やっぱりあんたも……」

「おうよ!俺は匙 元士郎。お前のことは知ってるぜぇ桐生戦兎ォ……」

 

余り良い記憶じゃなさそうだなこの表情は……と戦兎は視線を逸らすが、匙はこっちまで態々来てこっちの頭を掴んで向かせてくる。

 

「丁度良いや。お前には一度言っておきたかったんだよ。謎の実験やって学校の備品を何度壊したんだ?ん?」

「き、記憶にございませんな」

 

実際証拠は残してない。だが何度か実験やって学校の備品をちょこっと壊したのは事実だ。なのですっとぼけるが匙の中では犯人は戦兎で確定してるらしい。間違ってないのだが……

 

「大変だな戦兎」

「お前こそトイレの鍵だの壁だのと壊してるだろうが万丈」

「忘れちまったな」

 

悪魔になる前から腕力の加減ミスって良く壊してたので龍誠もすっとぼけるが、匙はプンプン怒っている。それを見たソーナは、

 

「その辺の追求は後日で良いでしょう。今日はこの書類を受け取りに来ただけなのですから」

 

どうにかして逃げよう、と戦兎と龍誠は決心しつつソーナを見る。リアスと二人で話している姿を見たことはないが幼馴染だったというのは驚きだ。するとソーナもこちらを見て、

 

「桐生 戦兎君。先日のレーティングゲームは見させてもらいましたが素晴らしいものでした。多くの眷属撃破に貢献し、ライザー眷属のクイーンを単独で撃破。更にライザーを追い詰めていました。ビルド?と言いましたか。あれはまだ全てを見せてはいないのでしょう?」

 

まぁはい。と戦兎は返した。ベストマッチは全部見つけていないが見つけているのだって前回のレーティングゲームで出していないのもある。ベストマッチじゃないトライアルフォームと呼んでるのだけでも引き出しの多さは結構自信がある。

 

「そして万丈 龍誠君。まさか貴方がライザーを倒すとは思いませんでしたよ。流石に変異の駒(ミューテーションピース)4つで転生しただけはあります」

「え!?万丈があのライザー倒したんすか!?つうか変異の駒(ミューテーションピース)4つ!?そんなのあるんですか!?」

 

ソーナの言葉に匙が驚いた。その匙にソーナは頷きを返して、

 

「少々、いえかなり猪突猛進ではありましたが、あそこまで迷いのない攻めは闘うとなれば驚異でしょうね。搦め手を考えないと……」

 

ブツブツ言いながらソーナは顎に手をやり思考に老ける。それを見てから匙は龍誠を見て、

 

「お前……マジで変異の駒(ミューテーションピース)4つで転生したの?」

「おう!お前は?」

 

龍誠の問いに匙は、ポーンの駒4つ。とだけ言って肩を落としてしまう。

 

「あれぇ?ポーンの駒四つって言ったら価値だけならナイトやビジョップ以上でルークに次ぐはずなんだけど全然対したことないなぁ……」

「いやいや駒4つって戦兎と同じじゃん」

 

え?お前も4つなの!?と匙は戦兎を見る。それに対して戦兎は頷きを返して、匙は益々落ち込んだ。

 

「俺って井の中の蛙だったんだな……」

「ですが匙さんも凄いと思いますよ?」

 

え?と匙が顔を上げるとそこにはアーシアがおり、優しげな笑みを浮かべながら、

 

「何時も学校中を駆け回りながら花壇の整理や校庭の土を均したり沢山の書類を運んでいる人がいらっしゃるなと思っていたんですけど匙さんだったんですね。顔は知っていたんですけど名前を知らなくて。でも毎日すごい頑張ってるなぁって思っててそう言う風に頑張れるって言うのは駒の数は関係なく凄いと思いますよ?」

 

アーシアの言葉に、匙はタパーと眼から涙を流したかと思えば、

 

「女神や」

「はい?」

「俺は初めて神ってのはいるって確信したぜ……いで!」

 

何か意味わかんないこと言い出したかと思えば、お祈りしだして勝手にダメージを受けている匙に戦兎と龍誠は、こいつ大丈夫か?みたいな眼で見る。

 

「ありがとアーシアさん。俺明日からも頑張れるよ」

「そうか。頑張れよ」

 

とちゃっかり匙はアーシアの手を握りだそうとした。しかしそれを見逃さず龍誠が間にサッと割って入って代わりに自分の手を握らせた。

 

「てめ!邪魔すんじゃねぇよ!」

「お前こそなにちゃっかりアーシアに触ろうとしとんじゃタコ!」

 

なんだとぉ!んだよぉ!と、にらみ合いに発展する二人。すると、

 

「いい加減にしなさい。匙」

「っ!」

 

空気が凍りつき、匙だけではなく龍誠まで後退る。たった一言ソーナが発した言葉がここまで恐ろしいとは……

 

「ではリアス。失礼します」

「ええ。またね」

 

お茶を飲み干したソーナは立ち上がると、匙に声を掛けて部室を立ち去っていく。

 

「こぇえ……」

「真面目なのよ」

 

龍誠の呟きにリアスは笑いながらそう答えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しっかし駒王学園にまだ悪魔がいたとはな」

「つうか駒王学園自体悪魔に限らず、ああいった人外何かの受け入れも行っているらしいけどな」

 

ソーナの一件の後、戦兎と龍誠は帰路についていた。こうやって二人だけと言うのも随分久し振りな気がする。前はこれが普通だったのに今じゃ二人だけの方が珍しいとは想像できなかった事だ。

 

「それにしても今日は何かな?」

「今日はアジの開きって言ってた」

 

お前の好きなやつじゃんと龍誠が言い、戦兎は笑みを返した。だが家の玄関の前についた瞬間、

 

『っ!』

 

ゾク!っと二人の背中に悪寒が走る。頭も少し痛むしなんだこれはと眼を合わせる。だがなんか嫌な予感がした。龍誠のような第六感がない戦兎ですら訳のわからない不安に襲われ、慌てて家に入る。そして足早にリビングに行くと、

 

「母さん!」

「あら戦兎に龍誠君。お帰りなさい」

 

そう普通に返してくる母がいて戦兎は一息、だがリビングのテーブルには見知らぬ二人の少女がいた。

 

「戦兎君に龍誠君!お帰りなさい。変わらないね」

『は?』

 

その二人の少女のうち片方の栗色の髪の人懐っこそうな表情の少女が椅子から立ち上がってこっちに来る。

 

「久し振り!」

 

誰?と戦兎と龍誠は首を傾げてしまい、彼女もあれ?と不安そうな顔になった。すると母が、紫藤 イリナちゃんでしょ?と言い、二人の脳内で何かの回路が繋がっていく。

 

そう、脳裏によぎるのは昔一緒にヒーローごっこして遊んだ子供……そうか懐かしいなぁっていうか!

 

『お前女だったの!?』

「二人には男だと思われてたの!?」



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祐斗の過去

「二人とも酷いわ!ずっと男だと思ってたのね!まあ確かにやんちゃだったけど」

 

そう言ってプリプリ怒る彼女に戦兎と龍誠は苦笑いしながら話を聞く。だが先程から悪寒が止まらない。恐らくイリナとは別のもう一人の少女が椅子に立て掛けてる奴だ。理由はないけどそんな感じがする。

 

「でも二人とも変わらないねぇ。まぁ、随分変わった所もあるけど」

『っ!』

 

そう言う彼女の胸元から十字架が覗き、戦兎達は眼を見開きながら相手の顔を見た。

 

「あぁ安心して。別に今日は挨拶しに来ただけだから」

 

そう言って荷物を持つと、もう一人の方も荷物を持つ。

 

「あら、ご飯くらい食べていって良いのに」

「今日は挨拶に来ただけですから」

 

そう言ってイリナは戦兎とすれ違う時、

 

「あんまり悪魔と仲良くって言うのも怒られちゃうしね」

(やはり気づいてたか)

 

こりゃ教会の関係者になっていたかと戦兎は思っている間に二人は行ってしまい、戦兎と龍誠は顔を見合わせる。

 

「なんつうか……昔みたく仲良くはできなさそうだな」

「そりゃそうだろ」

 

龍誠の呟きに戦兎は肩を竦める。まぁ向こうは悪魔と敵対してる教会の関係者っぽいしなぁ。とは言えどうせもう会うことはないだろう。そう思っていたのだが、

 

「何でここにいるんだよ……」

 

次の日、何故かイリナともう一人の少女が部室にいるし、祐斗が初めて見るほど殺気を放っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「成程。聖剣の回収ね」

 

リアスの言葉にイリナではない方の少女。青い髪が眼を引くショートヘアーの少女。名前はゼノヴィアと言うらしいのだが、彼女曰く教会から聖剣・エクスカリバーが6本の内、3本が奪われたらしい。

 

それを奪い返すのが今回の彼女達の仕事で、その為に彼女達もエクスカリバーを一本ずつ携えてやって来たらしい。

 

因みに何で本とかでも有名なエクスカリバーが何本もあるのかと言うと別にエクスカリバーのパチもんのエクスカリパーがあるとかではなく、全部本物。本来のエクスカリバーは昔の戦いで折れてしまい、その破片を使ってエクスカリバーを7本作ったらしい。まあその内一本は昔に紛失しているらしいのだが……

 

そしてエクスカリバー、7本それぞれに特性があるらしく(と言うか全部元々は折れる前のエクスカリバーの能力だったらしい)ゼノヴィアが持っているのは破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)、イリナが持っているのは擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)と言うらしい。

 

さて、そんな彼女達が何故ここまでやって来たのかと言えば、

 

「そしてその際私達は関わるな……と」

 

こちらの陣地で好き勝手する上に要求も勝手ね。とリアスの言うように今回の彼女達がこちらに来た理由は戦意がこちらにはない事を伝えるだけではないどころか、こっちより自分達の要求である不干渉でいて貰うが重要だったっぽい。するとゼノヴィアは、

 

「聖剣がない方が良いのは君達悪魔も同じだろうからね。いや、弱点な以上彼等より鬱陶しいんじゃないかな?」

「彼等?」

「今回の聖剣強奪事件を起こしたのは堕天使組織・神の子を見張る者(グリゴリ)の幹部、コカビエルだ。いがみ合っていても共通の利害があれば別だろう?」

 

遠回しに堕天使と組んでると言いたいわけ?とリアスは不機嫌さを隠そうともせずに言うと、ゼノヴィアは肩を竦める。

 

「本部はその可能性も考えている」

「冗談じゃないわ!グレモリーの名にかけてそんなことはしない!」

 

だと良いがな。とゼノヴィアは言いながら席を立つと用件は以上だと言った。

 

そしてイリナと退出しようとしたその時、

 

「まさか……【魔女】アーシア・アルジェントか?」

 

ビクッとアーシアはゼノヴィアの言葉に体を強張らせる。 それを見ていたイリナも、

 

「え!?あの噂になってた元聖女様!?追放されたのは聞いてたけど悪魔になってたのね」

「あ、あの……」

 

突然の事態に、アーシアは明らかに狼狽する。そんな彼女を見ながらゼノヴィアは更に口を開いた。

 

「堕ちるとこまで堕ちたものだな。まだ我らが神を信じてるのか?」

「待ってよゼノヴィア。彼女は悪魔になったのよ?未だに信仰してるわけ……」

 

そう言うイリナだが、ゼノヴィアはアーシアに詰め寄りながら言葉を続ける。

 

「背信行為を行う者にも信仰心が忘れられず罪悪感を感じるものがいる。それと同じ気配がするんだが?」

「捨てられないだけです。ずっと信じていたので……」

 

そう言って視線を逸らすアーシア。確かに彼女は今でも良く何かにつけて祈ってはダメージ受けてるのを見る。長年の癖と言うのはそう簡単に抜けるものじゃない。するとゼノヴィアは手に持っていた剣であるエクスカリバーを向ける。

 

「ならばここで私に斬られるが良い。今ここに断罪してやる。慈悲深き我らが神ならばお前の罪を許してくださるはずだ」

『っ!』

 

その場のグレモリー眷属全員が身構えた中、龍誠がアーシアとゼノヴィアの間に割って入る。

 

「いい加減にしろよテメェ。アーシアが大変だった時になにもしなかったクソみてぇな神の名の元に断罪だぁ?させると思ってんのかよ」

 

龍誠の言葉にゼノヴィアとイリナが眉を寄せた。

 

「私達の前で神を愚弄するか?」

「俺は物心ついた頃から世の中神も仏もねぇってのだけは身に染みてるんでね」

 

そう言って龍誠とゼノヴィアが睨み合う。

 

「成程。交戦の意思として受け取ってやる。表に出ろ」

 

上等だ。そう言おうとする龍誠の肩を別の誰かが掴む。誰かと思い振り替えると、そこに立っていたのは祐斗だ。

 

「僕がやる」

「祐斗?」

 

聖剣とは因縁があってね。そう言う祐斗は魔剣を作りながら ゼノヴィアに近づく。彼女も龍誠から祐斗に意識を移したその時!

 

「いやするなよ」

『え?』

 

突如祐斗の背後から戦兎が声を掛けると、そのまま何かを取り出し、

 

「サンダーボルトV2!」

「ぎゃあああああああああああああ!」

『えぇええええええ!?』

 

スタンガンをそのまま祐斗の首に押し付けてそのまま気絶させた。

 

「そんな眼を血走らせてやり合ったら殺し合いになるぞ……」

 

やれやれと言いつついる戦兎に、龍誠が顔色を青くしながら掴み掛かってきた。

 

「おま!なにしてんだよ!つうかこれ前に俺にやったやつか!?マジでヤベェ威力じゃねぇか!」

「いや、これは前の特製スタンガンを改造してライトフルボトルを挿すことにより持続性と威力をアップさせた改良版だ」

 

それもっとヤベェじゃねぇか!つうか改造したのかよ!と唸る龍誠に戦兎は溜め息を吐くと、

 

「良いだろ。このまま教会の人間と喧嘩おっ始めるよりマシさ」

「でもあいつらアーシアを!」

 

そう言う龍誠に戦兎は落ち着けと言う。

 

「良いか龍誠。こいつらはこれから聖剣を奪い返すらしい。きっと厳しいものになるだろう。なのにここで叩きのめして簀巻きにして放り出した所為で負けましたなんてなってみろ。こっちに責任来るに決まってるでしょうが」

「おい」

 

ピキッと頬をひきつらせたゼノヴィアは戦兎を睨む。

 

「まるでやれば勝てるが面倒だから見逃してやれとでも言いたそうだな」

「いやいや。俺アーシアの件があって個人的に教会ってそんなに信用してないからね。後で難癖付けられるようなことはするなってことさ。そっちだって態々ここで体力使いたくないだろ?まぁ、どうしてもアーシア殺るってなら……俺も相手するけどな」

 

シッシと戦兎は言いながら、そっとビルドドライバーに手を伸ばしておく。

 

「悪魔として生きることが彼女の苦痛になってもか?」

「それはお前が決めることじゃない。あとでアーシアに聞いとくよ」

 

戦兎はそう言って肩を竦めると、ゼノヴィアは息を吐いて剣を引いた。

 

「まあ良い。私達の目的は聖剣だ」

「あ、ちょっと待ってよ」

 

ゼノヴィアはさっさと部室を出ていくとイリナをそれを追い掛け、足音が遠くなると戦兎はプハッと息を吐いて膝に手を置く。

 

「大丈夫?戦兎」

「いやめっちゃビビりました」

 

駆け寄ってきたリアスに、戦兎は今頃になって出てきた冷や汗を拭った。

 

「確かにめっちゃびびってたよな」

「そりゃ根性で聖剣も耐えそうなバカと違って、こっちは切っ先で引っ掻かれただけで消滅しそうな剣を目の前にしてたら怖いんだよ」

 

龍誠にそんな言葉を返しながら、戦兎は言うとリアス曰く、エクスカリバークラスの聖剣だと笑えないジョークらしい。すると、

 

「龍誠さん、戦兎さん」

『ん?』

 

アーシアがこちらに来た。それを見た戦兎は、

 

「なあアーシア……正直斬られた方が良かったか?」

 

そう正直に言うとアーシアは首を横にブンブン振り、

 

「確かに忘れられないのが本音です。でもだからと言って、戻りたい訳じゃないんです。今のオカルト研究部の皆さんとの生活は大切ですから」

「龍誠もいるしな」

 

ククッと喉を鳴らすように戦兎が続けるとアーシアは顔どころか耳まで真っ赤にしてしまう。

 

「せ、戦兎!」

 

と、龍誠まで真っ赤になり、その場に笑いが漏れた。ちょっと庇ったのは良いけどこれで実は嫌だったらどうしようかと思ったが大丈夫そうだ。

 

「う……」

 

そう思っていると、祐斗が起きる。それを見た戦兎は、

 

「よう。ワリイないきなりスタンガンぶち当ててよ」

 

俺の時と随分扱いが違うじゃねぇか。と龍誠はブウブウ言うが気にせず祐斗に近づいた瞬間!

 

「あべしっ!」

『戦兎(君)(さん)(先輩)!?』

 

いきなり立ち上がった祐斗にぶん殴られたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いつつ。木場のやつ思いっきりぶん殴りやがった」

 

口を切ったし頬は腫れて、戦兎は顔をしかめながらアーシアの治療を受けている。

 

先程突如祐斗にぶん殴られ、しかも完全に不意打ちだった為、もろ喰らってしまった上にそのまま馬乗りになられて殴られた。

 

その際何故邪魔をしたとか言われたが、そんなの知らないしと必死に抵抗したが、完全にマウントをとられた状態ではどうしようもなく、龍誠と小猫が慌てて引き剥がしてくれなかったらもっと酷いことになっていただろう。

 

その後、祐斗はリアスに何をしてるんだと怒られ、飛び出してしまった。いったい何を考えてるんだ?そう戦兎が思っているとリアスがこちらに来た。

 

「ごめんなさい戦兎。祐斗は聖剣の事になると少し……いえ、かなり冷静さを欠くのよ」

 

何故ですか?と戦兎が聞くと、リアスは口を開く。

 

「祐斗は昔教会の施設にいたの」

 

彼女が言う祐斗の過去は、余り胸糞の良い話ではなかった。

 

祐斗は元々教会で行われていた、人工的に聖剣使いを作ると言う計画の中で作られた人間だったらしい。

 

他にも祐斗のような子供がおり、それらと一緒に聖剣使いになるべく厳しい訓練を積んだりしつつ暮らしていたらしい。

 

だがそれは、ある日突然壊された。人工的に聖剣使いを作るのは不可能と判断され、全て処分。その全てには勿論育成されていた子供達も含まれており、祐斗は他の子供達に逃がされる形で唯一生き残ったらしい。

 

とは言えそれでも死にかけていたところ、偶然リアスに出会い、彼女の手によって転生した。それが祐斗の過去らしい。

 

「後で祐斗が魔剣創造(ソード・バース)の所有者だと知った時はあの子喜んでいたわ。聖剣を破壊するのにこれ以上の神器(セイクリットギア)はないってね」

 

聖剣があったからあんな事件が起きた。そう思っている祐斗にとって聖剣は存在が悪であり、すぐにでも消してしまいたいものなのだろう。

 

「大分最近は落ち着いてたんだけどね」

「だから、あの時……」

 

龍誠は思い出す。この間祐斗が小さい頃の写真を見た時の顔を……そりゃ結果的に聖剣を破壊できるかもしれなかったのに戦兎に邪魔された形なのだから逆ギレもするか。

 

「でも、今回は戦兎が止めてくれて助かった面もあるわ。ここで教会の使いと喧嘩なんて出来ないしね……まあ、アーシアをバカにしたのは許さないけど」

 

コメカミをピクピクしながら言うリアスに皆は笑みを浮かべる。アーシアはこの部室における癒しなのだから、それをバカにするやつは許せないのがここでは皆で一致している考えである。

 

しかし……

 

(木場はどうしたもんかねぇ)

 

戦兎は漸く痛みと腫れが引いてきた頬擦りながら思うのだった。



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チーム結成

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦「再開した幼馴染であるイリナに何故ここへ来たのかを聞いた俺たちだったが……」
龍「しかし時が経つのって嫌だよなぁ…昔は仲良く遊んでても今じゃなぁ……」
戦「まあ仕方ないだろ。いつまでも子供の頃のようにとはいかないだろうさ」
龍「でも俺もうちょっとイリナが理解あるやつだと思ったんだけどなぁ」
戦「いや昔から結構思い込みが激しいやつだったよと言うわけで物語は加速する16話スタート!」


「で?何で俺はここに呼ばれたんだ?」

 

祐斗が飛び出してから次の日、結局あの後祐斗は行方不明になった。

 

そして目の前には匙がいる。突如学校近くの公園に呼び出され困惑しながらもノコノコ……もとい、素直に来る辺り彼の優しさと言うかお人好しさが分かる。

 

「ああ。これは極秘事項だ。特にグレモリー眷属の皆には秘密にしてほしい」

「うんうん」

 

そう言う戦兎に続く龍誠。それを見た匙は眉を寄せて、

 

「なんか嫌な予感がするんだが?」

「なぁに、ちょっと手伝ってもらいたいだけだよ」

 

手伝い?と匙は更に眉を寄せるが、戦兎はそれを見ながら、

 

「聖剣をぶっ壊すの協力してくれ」

「さぁて、今日は会長からの仕事が……」

「龍誠逃がすな!」

 

戦兎の指示に龍誠は素早く立ち上がって走り出す。やめろおぉおおお!離せぇええええ!と叫ぶ匙がいるが龍誠の馬鹿力に勝てるわけもなく強制連行されてきた。

 

「バカだなぁ。この話を聞いた時点でお前に与えられた選択肢はハイかイエスかウィなんだぜ?」

「全部肯定の返事じゃねぇか!勝手に話しといて拒否権なしって悪魔か!」

「お前も知っての通り悪魔だよ」

 

戦兎は返しつつスマホを開く。これで匙からも快く了承して貰えたし後は祐斗だ。そう思いメールを打つ。内容は、聖剣について話があるからうちに来いとでも言えば来るだろう。

 

普通に考えたらぶん殴った相手の家に訪ねるなんて酷なことだけど今の祐斗なら聖剣についてなんて言われたら従うしかない。例え真実かわからない眉唾な話でもな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と言うわけで所変わって我が家に」

「なに言ってんだお前」

 

戦兎の言葉に龍誠が突っ込むが目の前の祐斗の表情は暗いままだ。

 

「それで?聖剣についての話ってなにかな?」

「なぁに、聖剣の破壊を手伝ってやるって話だよ」

 

祐斗に何を言っているんだ?みたいな目で見られる中、そう言いながら戦兎がスマホの画面を見せると、それにはマップが写っており、良く見ると赤く点滅している部分がある。

 

「これは?」

「この間イリナとゼノヴィア?ってやつがうちに来たことあってよ。その時イリナのローブに発信着付けといた。まあ3、4日位しか持たないんだけど教会の関係者がいきなり来たんだしなんかの役に立つかなって思ってな。そんであいつらは今聖剣を探してるんだろ?だったらこれであいつら追いかけて尾行すれば見つかるだろ?」

 

それ犯罪じゃね?と頬をヒクヒクさせる匙をスルーして、戦兎は言うと祐斗が、

 

「君に利があるとは思えないんだけど?」

「はぁ?」

 

君をぶん殴った相手に何故こんなこと?しかも下手すれば教会の領分に入ることになって君達にも責任が及ぶんだよ?そう言う祐斗に戦兎は腕を組み、

 

「仲間助けるのに理由いるのか?」

「……は?」

 

は?と言うのは今度は祐斗の番だ。そんな彼の反応に戦兎も首をかしげる。

 

「何か可笑しいか?」

「いや、戦兎君って基本的にそう言うキャラだったかなって」

 

祐斗の言葉に戦兎は眉を寄せながら、

 

「いや俺も結構オカルト研究部での毎日は気に入ってるんだぜ?姫島先輩のお茶は上手いし塔城のお菓子横からかっさらってみたり……」

 

それをやってこの間塔城に旧校舎中を追いかけ回されたのは良い思い出?だ。

 

「そんな日常を結構楽しんでるんでね。お前にも無事部活に復帰してもらわないと俺が困るんだよ」

「要約すると、戦兎はなんだかんだでお人好しだからお前の事をほっとけな「サンダーボルトV2!」ほぎゃあああああああああああ!」

 

余計なことを言おうとするバカを黙らせ、戦兎は祐斗を見る。生きてるよな?と龍誠をつつく匙を尻目に、

 

「俺はまあ過去を忘れて復讐なんて辞めろっては言えない。前までだったら言ったかもしれないけど」

 

そう言いながら戦兎の脳裏を過るのは龍誠が死んだときの光景だ。復讐がなにも生まないとかそれは他人だから言えること。そう思うと強く言えない。勿論人を恨みのままに手に掛けるとするなら考えるが見た所剣を壊すことが目的だ。なら使用者にはそこまで興味はないだろう。

 

ならそれくらい手伝ってやてもバチは当たるまい。教会側が困ろうと知ったこっちゃねぇし。

 

「よし、つうわけで白昼堂々聖剣を取り返しにはいかないだろうから決行は今夜な。皆ゆっくりしててくれ。コーヒーくらいだすから」

 

そう言って戦兎が立ち上がると、

 

「ちょっと待てぇ!」

 

ん?と声の主を見るとそれは匙。どうしたんだ?と戦兎が首をかしげると、

 

「そもそもなんで木場は聖剣を壊したいんだ?」

「あぁ……」

 

理由を戦兎は言おうかと思ったがそれを祐斗が止める。自分で言うから戦兎君はお茶持ってきてくれる?と言う言葉をありがたく受け取り地下室に置いてある冷蔵庫からアイスコーヒーをだして持ってくると、

 

「木場ぁ!お前も大変だったんだなぁ!」

 

そう言ってオイオイ泣く匙に祐斗も困った表情だ。

 

「俺お前はいつも女子にチヤホヤされてる嫌みなやつ程度にしか思ってなかったけど違うんだな!」

「そう言う風に見えてたんだ……」

 

思わぬ自分の評価にショックを受けてる祐斗を横に匙は燃える。

 

「こうなりゃ教会の人間だろうが天使だろうが堕天使だろうが何でも来やがれ!俺が相手になってやるぜ!」

 

シュシュシュ!とシャドーボクシングまでやりだした匙に、戦兎は苦笑いを浮かべてしまった。これは想像以上に単純……もとい、素直なやつだ。

 

まあいい、夜まで時間があるしその間に研究を進めて、そう戦兎が思ったその時、

 

「成程。そう言うわけでしたか」

『え?』

 

突然声が聞こえ、地下の研究室と一階を繋ぐ階段を見るとそこにいたのは何と、

 

「と、塔城!?」

「どうも戦兎先輩。そして皆さん」

 

何でここに!?と戦兎が言うと小猫は、

 

「いえ、何か戦兎先輩がたくらんでる顔をしてたので家まで来てみたら丁度祐斗先輩も来てて、戦兎先輩の家に入っていくので少し時間をおいてから普通に玄関から入りました」

「因みにどこから聞いてたんだ?」

「なぁに、聖剣の破壊を手伝ってやるよ、ってところからですね」

 

ほぼ最初からじゃねぇか!戦兎はそう叫び、まあお前まで巻き込むわけにはいかないから帰りなよ、と言うが小猫は、

 

「分かりました。ではこのまま部室に戻って部長に……」

「OK塔城!美味しいお茶菓子があるんだが食べるか!?」

 

バビュン!と土煙をあげて、これまた研究室に常備してあるお菓子を小猫に渡す戦兎。それを見た匙は、

 

「仲良いというか尻に敷かれてるような……」

「割りとあの二人絡み多いよな」

「兎と猫だからかな?」

 

龍誠と祐斗も若干苦笑いが入った顔を浮かべて目の前の光景をみていた。

 

するとそれに気づいたのか二人は三人を見て、

 

「どうした?」

「いや、何か奥さんに頭上がらない旦那みたいだなって」

 

匙の言葉に戦兎と小猫はナイナイと手を振りながら先に戦兎が、

 

「俺もっと大人っぽい女が好みぐぇ!」

「小さくて悪かったですね」

 

余計な言葉を付けてレバーブロウを喰らった戦兎は膝をつき、それを見下ろしながら小猫が、

 

「私ももっと優しくて気遣いの出来る人が良いですし少なくともこの科学バカ……失礼、科学オタクは嫌ですね」

 

誰が科学バカじゃと戦兎は立ち上がりながら小猫を睨み、小猫も負けじと睨み返す。二人の背後には巨大な兎と猫が火花を散らす映像が見えるがきっとこれは幻想だと思われる。

 

「上等だ!だったらお前に彼氏ができた暁には片手逆立ちしながらミレニアム懸賞問題解いてやるよ!」

「私だって戦兎先輩に彼女ができたら一週間断食してやりますよ!」

 

ぐぎぎぎと火花を散らし合う二人、それを見つめる三人はコーヒーを啜って、

 

「喧嘩始めたぞ」

「喧嘩するほど仲が良いって言うしさ」

 

そう言って談笑する匙と祐斗だったが龍誠は、

 

「何か妬けるな」

『は?』



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聖剣破壊作戦

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦「聖剣を破壊するため、快く引き受けてくれた匙を迎えることになった俺たちだが……」
匙「いやまて!俺は快くじゃなくて半ば恐喝だったぞ!」
戦「なあにいってんの。俺の華麗な話術によってでしょうが」
匙「くそぉ……」
龍「という訳でそんな感じの17話スタート~」
戦「だからそれ俺の台詞でしょうが!」
龍「ここくらいしか俺が出るスペースがないんだよ!」


「ひもじいな……」

「そうね……」

 

グゥとお腹を鳴らしながらゼノヴィアとイリナが夜道を歩く。

 

ふらふらと覚束無い足取りで歩く二人だが、日本に来てから戦兎宅で飲んだお茶と公園の水以外口にしていない。

 

理由は路銀がないのだ。いや勿論それなりのお金は持たされたのだが、それを何とイリナが道端で売ってたペドロだかパウロだかの謎の絵を買ってしまったのだ。しか高額だったため路銀を全てつぎ込んで……

 

流石のゼノヴィアも切れて返却しに行ったが既に売っていた人は居らず、イリナの背中にはまだ謎の絵が背負われている。

 

「はぁ、久し振りに本場で日本食食べたかったなぁ」

「そうだな。どこぞの誰かがバカ高いへんてこな絵を買わなければな」

 

へんてことは何よ!とイリナが言うがすぐに腹が鳴り黙ってしまった。 騒ぐ元気も残っていない。

 

「とにかく聖剣をさっさと奪取するぞ。そうでなくては帰れもしない」

「でもあても無いわよぉ」

 

聖剣を持った私たちが歩いていれば向こうからやって来るはずだ。とゼノヴィアはズカズカ歩いている。元気なんだからとため息を吐きつつイリナもそれを追うと、

 

「聖剣みーつけたっと!」

『っ!』

 

突如頭上から跳んで来た影にゼノヴィアとイリナは横に跳んで回避する。

 

「あれは天閃の聖剣(エクスカリバー・ラビッドリィ)か!」

 

距離を取りながら自分のエクスカリバーをゼノヴィアは構えた。

 

「そしてお前は……顔を前に書類で見たことがあるぞ。フリード・セルゼン!」

「おやおや、自己紹介する手間が省けて何よりだぜぇ!」

 

そう言ってフリードはエクスカリバーを振り下ろすが、それをイリナもエクスカリバーを抜いて対抗する。しかし、

 

「あん?」

 

グゥとまた腹が鳴った。こんなときにと思うが空腹なので力がでない。

 

フリードも若干困惑した表情を浮かべるがそのまま押し込んでくる。

 

「イリナ!」

 

そこにゼノヴィアがエクスカリバーを振り下ろすがフリードは素早く距離を取る。

 

「厄介な能力だな……」

 

そう言いつつゼノヴィアはエクスカリバーを構えるがグゥと言うお腹からの音にエクスカリバーの切っ先を下ろしてしまう。

 

「く、空腹でなければ……」

「良くわかんねぇが……チャンスって事だな!」

 

フリードはエクスカリバーを構え直すとゼノヴィアに襲いかかった。次の瞬間!

 

「んなっ!」

 

突然の銃撃にフリードはギリギリ回避したが床に転がる。

 

「お前らは!」

 

ゼノヴィアが驚く視線の先には、戦兎がドリルクラッシャーをガンモードにして構えていた。更に、

 

「あれ?フリードじゃね?」

「知り合いか?」

「前にちょっとね」

「確か捕まったはずなのに……」

 

龍誠、匙、祐斗、小猫も登場しフリードは眉を寄せる。

 

「オイオイ。何時から教会は悪魔と手を組むことにしたんだよ」

『手なんか組んでない!』

 

フリードの言葉にゼノヴィアとイリナが叫ぶ中、祐斗は前に出る。

 

「安心して良い。僕たちはただ聖剣を壊しに来ただけだからね」

 

祐斗は魔剣を作り出しながら言うと、一気にフリードとの間合いを詰めて斬撃を繰り出した。

 

「おい。祐斗のやつ一人でいったぞ」

「俺たちもいくぞ!」

 

戦兎は龍誠に言いながら、ビルドドライバーを出すと装着する。すると、

 

「あぁ、忘れてた」

 

そう言って戦兎がもう一個ビルドドライバーを取り出し龍誠に渡した。

 

「お前の分だ。壊すなよ」

「お!サンキュー戦兎!」

 

龍誠も礼を言いながらビルドドライバーを装着し、二人はそれぞれフルボトルを出して振る。

 

それと同時に数式が空中に浮かび、匙やゼノヴィア達はなんだこれはと見てる中、

 

「さぁ、実験を始めようか」

「来い!クローズドラゴン!」

《ラビット!タンク!ベストマッチ!》

《ウェイクアップ!クローズドラゴン!》

 

戦兎はベルトにフルボトルを挿し、龍誠はクローズドラゴンにドラゴンフルボトルを挿してからベルトに挿した。

 

そしてレバーを回して周りにフレームが形成されると構えて、

 

『変身!』

《鋼のムーンサルト!ラビット!タンク!イエーイ!》

《Wake up burning! Get CROSS-Z DRAGON!Yeah!》

「なんじゃありゃあ!?」

 

背後で匙が 驚いているが今は祐斗の援護が先だと無視して戦兎はドリルクラッシャーを、龍誠はビートクローザーを手に走り出す。

 

「うっそお!?」

神器(セイクリットギア)か!?」

 

驚くイリナとゼノヴィアも通りすぎて戦兎と龍誠は一旦フリードと距離を取った祐斗の後ろから飛び出すとフリードに飛び掛かる。だが、

 

「速い!?」

 

一瞬で背後に回られた。戦兎は驚愕するが同時に防御が間に合わず切られる。

 

「ぐあ……」

「戦兎!」

 

前によろめきながら振り返ったときにはもういない。何て言う速さだと龍誠に駆け寄られながら戦兎は呟く。

 

純粋な速さならナイトの祐斗に匹敵する。だがアイツは普通の人間だったはずだ。これがエクスカリバーの力と言うやつなのだろうか……

 

「しっかしかてえなぁ……普通の悪魔なら聖剣で一発チョンパなのにそのアーマー。火花散らすだけで切り傷がつかねぇ」

「科学なめんなファンタジー」

 

そう言いながら戦兎は作動するかと思案する。だがフリードは、

 

「まあ良い。ドンドン行くぜぇ!」

 

すると今度はフリードは姿が突然見えなくなり、戦兎達に襲い掛かる。

 

「なんだ!?」

「姿を消す力か!」

 

祐斗はそう叫びながら咄嗟に魔剣で背後の殺気に反応しガードした。だがすぐにその殺気は遠ざかり、戦兎や龍誠に襲い掛かる。

 

「ぐぁ!」

「いで!」

 

二人は武器を振り回すが出鱈目に振って当たるわけがない。

 

「二人とも!殺気を探るんだ!」

『そんなの分かるか!』

 

祐斗の助言も役に立ちそうにない。等と思っていたところに今度は小猫が飛び出し二人から見たら虚空を殴ると激しい音と共に姿が見えるようになったフリードが吹っ飛んだ。

 

「あっぶね!エクスカリバーでガードしてなかったら死んでるっつうの!」

 

そうギャーギャー騒ぐフリードを尻目に戦兎は小猫に話しかける。

 

「何でわかったんだ?」

「匂いです」

 

こいつそんなに鼻良いのかよと戦兎は溜め息を吐く。そこに匙が来て、

 

「あいつの足を鈍らせることが出来るんだけど」

「マジか!?」

 

ああ、と龍誠に匙は頷く。だがそれには相手の姿が見えることと一瞬で良いから相手が止まってくれないと厳しいらしい。

 

一見厳しい条件だが、戦兎には妙案がある。と言ってボトルを出すとベルトのと交換する。

 

《オクトパス!ライト!ベストマッチ!》

『あ!ベストマッチ!』

「へ?」

 

匙を除き驚く中、戦兎は仮面の下で笑みを浮かべた。

 

「新ベストマッチきたー!」

 

ヒャッホイ!と戦兎はレバーを回して、

 

《Are you ready?》

「ビルドアップ!」

《稲妻テクニシャン!オクトパス!ライト!イエーイ!》

 

桃色のタコをイメージさせる半身と、薄黄色の電球をイメージさせる姿に変わった戦兎は小猫に指示を出す。

 

「塔城!来たら教えてくれ!」

「はい!」

 

小猫が返事をすると同時にフリードが走りだし、また姿を見えなくしてきた。

 

「確かにそのチビさんの鼻は厄介だなぁ!だがこれに速さを加えれば!」

 

そう言って姿が見えないので音で判別するしかないが、確かに速度もあげてきたらしい。しかし小猫は、冷静に呼吸を整える。チビと言われたのは腹が立ったが今は自分の嗅覚だけが便りなのだ。

 

自分の仕事をきっちりこなす。その信念を忘れず小猫は、敢えて眼を閉じて意識を嗅覚に集中させる。音も無視する。この速さでは音による判別も枷になりかねない。

 

そうして全神経を嗅覚に集中させ、小猫はカッと眼を開いた!

 

「右です!」

「全員眼を瞑れ!」

 

小猫の声に戦兎は新たな指示を出しつつライトフルボトルによる半身の肩にある電球を発光させる。

 

「ぐぁ!眼がぁ!」

 

突然の強い発光はフリードを怯ませ、動きを止めた。更に、

 

「あらよっと!」

「ぶべっ!なんじゃこりぁあ!」

 

戦兎は今度はタコの方の腕から墨を撒き散らす。すると墨を掛けられフリードはペッぺと口に入った墨を吐き出す。

 

「ほら匙。今だ」

「成程な!」

 

眼を眩ましたとはいえ、フリードはまだ透明のままの筈だ。だが匙は相手に左手を向けると、

 

黒い龍脈(アブソーブション・ライン)!」

 

それと同時に手甲のようなものが現れ、そこから一本の紐が射出されるとフリードの足に巻き付いた。

 

「な、何で俺の場所が……」

「自分の体を見てみろよ」

 

俺の体?とフリードは自分の体を見ると驚愕する。それはそうだろう。なにせ自分の体には墨がベットリ着いており透明化してるのにしっかり自分の姿は分かってしまうのだ。

 

「はぁ!」

 

そこに祐斗が斬りかかる。それをフリードは弾きつつ匙の黒い龍脈(アブソーブション・ライン)を斬ろうとするが斬れない上に段々力が抜けていく。これは恐らく神器(セイクリットギア)の力だろう。

 

「くそっ!厄介だな!」

 

とにかく離れねえと、とフリードは逃げようとするが匙がラインを引っ張って足止めをする。

 

「いくぞおらぁ!」

《Ready Go!》

 

動きが止まった今が好機と龍誠はレバーを回し、エネルギーを右手に集めながら走り出した。そして!

 

「おらぁ!」

《ドラゴニックフィニッシュ!》

「ぐぁああああ!」

 

龍誠の渾身の蒼炎を纏った右ストレートはフリードを吹き飛ばし壁に叩きつける。

 

「どうだ!」

 

龍誠は吹っ飛ばしたフリードを見ながら言う。すると、

 

「この……くそ悪魔風情がぁ!」

 

殺気を撒き散らし、龍誠のアレを咄嗟に聖剣で受けていたが喰らっても立ち上がる姿は本当に人間か疑いたくなるが人間なんだろう。多分。

 

「上等だ!くそがくそがくそがぁ!」

 

エクスカリバーをガンガン地面に叩き付けながらこちらに来るフリードに皆は構える。

 

だが突然、そこに初めて聞く男の声が響いた。

 

「フリード。随分苦戦しているじゃないか」

『っ!』

 

突然の声に全員がその方を見る。そこにいたのは初老の男性だ。服装的に教会の人間か?

 

「誰だ!」

「私か?私はバルパー・ガリレイと言う者だが」

 

その名を聞いた瞬間。祐斗はカッと眼を見開き殺気を溢れさせる。

 

「そうかお前が……聖剣計画の責任者だった男か!」

「ふむ。懐かしい名前を出してきたがお前何者だ?」

「僕は聖剣計画の生き残りだ!」

 

バルパーはキョトンとした後祐斗の顔を見て突然笑いだした。

 

「はははははは!そうか!お前はあの時逃した小僧か!まさか生きていたとはなぁ!」

「何がおかしい!」

 

そう言って祐斗は魔剣を構え直すが、バルパーは涼しい顔で、

 

「ふむ。残念だがまだ死ぬわけにはいかんな。帰るぞフリード」

「帰るぞって言われてもこの紐が邪魔なんだけどオッサン!」

「聖剣の因子の力を込めてみろ。それで斬れる筈だ」

 

え?そうなの?とフリードは何か力を込める動作をすると聖剣を振り下ろした。

 

するとさっきまで斬れなかったラインをあっさり切ってしまった。

 

「うっそだろ……」

 

斬られた匙も驚く中、フリードは懐から缶を取り出すと、

 

「ほんじゃまバイビー!」

『待て!』

 

全員で取り押さえようと動くが、その前にフリードは缶を頬り投げるとそれが光を発して今度はこっちが眼を眩まされてしまった。

 

「くそ!」

「あ!待て木場!」

 

眩んだ眼が戻ると同時に祐斗は走り出して行ってしまう。既にフリード達の姿はないが、それでもこのまま と言うわけにはいかなかったのだろう。

 

「そしていつの間にかイリナ達も居ないと」

 

変身を解除しながら戦兎が言うように既にイリナ達はいない。混乱の間に逃げたか……いや、彼女達のことだ。フリード達を追ったのだろう。死なれると目覚めが悪いので死ななきゃ良いが……

 

「さてこれからどうしようかねぇ」

「ホントどうしてくれようかしらねぇ」

『……え?』

 

龍誠の何気ない呟きに返される言葉。だがその声は知っているがこの場にはいない筈の声で……

 

『げぇっ!部長!?』

「と会長!?」

 

嫌な予感をビンビンに感じながら振り替えるとそこにはにっこり笑いながら怒りオーラを微塵も隠すつもりがないリアスとソーナが仁王立ちしていた。

 

「貴方達。何で私が怒ってるか何て言うまでもないわね?」

「匙。尻叩き千回です」

 

サァーと匙の顔色がミルミル悪くなっていく。だが匙は逃げることはせず大人しく背を向けた。既に戦意を削がれている。

 

「そうね。説教は後にしてこっちも同じにいきましょうか」

「全員逃げろ!」

 

戦兎の言葉に龍誠と小猫も走り出す。三人の心はまだ折れていない。まだ走れる!と思ったのだが、

 

黒い龍脈(アブソーブション・ライン)!」

「うわ!」

「うぉ!」

「きゃ!」

 

匙は黒い龍脈(アブソーブション・ライン)からラインを出すと龍誠の足に引っ掻ける。見事に転んだ龍誠は戦兎の足を掴み、同じく戦兎は今度は小猫の胴体に抱きつくように転び小猫も巻き込まれた。

 

「何すんだ匙!」

「お前らだけ逃がすかぁ!地獄に落ちるなら道連れじゃい!」

 

ふっざけんな!と龍誠が叫ぶ隣で戦兎と小猫も叫ぶ。

 

「戦兎先輩!どこ触ってんですか!」

「アホか!スリーサイズ全部一緒のボン!キュ!ボン!ならぬキュ!キュ!キュ!ボディじゃ触る物もねぇだろうがいでぇ!」

「ありますから!ちゃんとありますから!」

「何ym(ヨクトメートル)だよ!」

 

ギャイギャイ騒ぐ3人にリアスはコメカミをビクンビクン躍動させながら目の前に立つ。

 

「余裕そうね。これなら一人二千回にしとこうかしら」

『いぃ!』

 

手に魔力を集め、振りかぶるリアスの姿が最後の記憶だ。正直、この後のことは思い出したくない。いい歳して美少女に尻叩かれるとか自己嫌悪物だし、思い出すと尻が痛くなるから……

 

因みに匙も千から二千に増やされたのは、まぁどうでも良い余談だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く。無茶するんだから」

『ごめんなさい』

 

尻叩き地獄から解放された後、匙はソーナに連行されていったので、戦兎の地下研究室には匙の代わりにリアスを加えた四人に、龍誠を探して戦兎宅に来ていたアーシアを入れた総勢五人でいた。

 

「私も声を掛けていただければ……」

「わ、悪かったって」

 

頬を膨らませるアーシアにしどろもどろしながら言い訳する龍誠を尻目に、戦兎ははんだ付けを行う。

 

「それで戦兎は何してるの?」

「ビルドの強化アイテム作りです。もう大体の基礎はできてて後は組み立てるだけなんですけどね」

 

そう言いながらリアスに新しい強化アイテムの簡単な完成図を見せた。

 

「かなり大きいわね。ボトルって言うより缶って感じじゃない」

「えぇ、最初はこれ単体で作ろうとしたんですけど、どうしても上手くいかなくて次にベストマッチ成分を組み合わせてみたらラビットタンクなら拒絶反応がありませんでした」

 

見つけたの俺だけどな?という龍誠は無視して、

 

「しかもラビットタンクの成分と魔力を組み合わせていたら成分が活性化しましてね。この活性化した成分を用いて今までにないビルドを作ることができるはずです。このビルドなら今まで出来なかった変身中に昇格(プロモーション)も出来る可能性がありますし」

「え?変身中に昇格(プロモーション)出来ないの?龍誠がしてるから普通だと思ってたんだけど……」

「アレが可笑しいんですよ」

 

あんだと!?と龍誠が怒っているがまた無視だ無視。

 

「ただ魔力で成分を活性化させる都合上変身中もある程度高い魔力を維持しなきゃいけないんでこれ使うときは実質ビジョップ一択何ですけどね」

 

そう言いながら試験管の中でパチパチと炭酸のように弾けていた成分に管を差し込みもう一方を組み立てた缶に繋ぐと、

 

「これで完了。後は成分の抽出さえ終われば……っ!」

『っ!』

 

ガタッ!と五人は勢い良く立ち上がり、上を見た。

 

「この悪寒は聖剣の?」

「とにかく外に出ましょう!」

 

リアスの言葉に全員が頷き大急ぎで外に出る。するとそこに立っていたのは、

 

「フリード!」

「さっきぶり~」

 

てめぇ性懲りもなく!と龍誠と戦兎はベルトを出すが、それ以上の何かを感じて空を見る。

 

皆の直感は正しかった。そこには一人の男がいた。漆黒の翼は堕天使の証。だが翼の数が多い。レイナーレは左右一本ずつだったのだがこいつは三本ずつだ。だが聞いたことがある。これは悪魔や天使にも見られるらしいのだが、上位になると翼の数が増えるらしい。つまりあれはレイナーレ以上の存在だということか。

 

「ふふ。まずはこれを返そう」

「なっ!」

 

そう言って男が放り投げてきたのを龍誠がキャッチすると、それはイリナだ。かなり手酷くやられたらしく、息も荒いためアーシアに託して治療させる。

 

それから空中の男を見て、

 

「てめぇ!なにもんだ!あと他の二人はどうした!」

「そう言えば名乗ってなかったか。俺の名前はコカビエル。そいつの他にも確かに二人いたが逃げられてな。まぁ良い。俺の計画には差し支えないからな」

 

計画ですって?と龍誠に続いてリアスが問う。

 

「何が目的なの?」

「なぁに。簡単な目的だよ。俺はまた闘争を起こしたいのさ!」

 

闘争を?どういうことだ?と戦兎達は首をかしげる。その反応にコカビエルは言葉を続ける。

 

「お前達も先の大戦は知っているだろう?あの頃はよかったよ。毎日のように戦いが起こり、血が舞う素晴らしい日々だった。だが戦いは終わり、退屈な日々に変わった。それでもいつかまたあの楽しい日々が戻ってくると信じていたがアザゼルの奴はもう戦いはないといった上に神器(セイクリットギア)の研究に没頭し始めた!下らない!もう一度やれば堕天使の勝利は確実だというのに!」

 

まさかこいつはまた戦いたいからという理由で大戦を起こしたいのか?だとしたら迷惑すぎることこの上ない。だがリアスはあくまでも冷静に言葉を発した。

 

「なら何故この地で暗躍しているのかしら?」

「なに、魔王・サーゼクスの妹である貴様を殺せば腰の重いアイツも俺に激情を向けるだろう?」

『っ!』

 

コカビエルの言葉に、考えるより先に戦兎達は体が動きが盾になるように前に立つ。それを見たコカビエルは笑みを浮かべる。

 

「良い眷属だ。だが安心しろ。ここでやっても面白くない。ゲームをしよう。会場はお前達が守っている駒王学園でな」

「ゲームですって?」

 

そうだ。とコカビエルはリアスに返した。

 

「ルールは簡単。俺は駒王学園に細工をする。あそこは地脈の中心でな。彼処に手を加えるとこの街一帯を消し飛ばせる。お前達はそれを阻止するだけだ。簡単だろう?」

「なっ!待ちなさい!」

 

では待ってるぞ。コカビエルはそういうと、こちらを見ることはなく飛び去ってしまう。その間にフリードも立ち去っており、この場にはリアス達しか居ない。

 

「すぐに全員を集めるわ!」

『っ!』

 

リアスの言葉に全員が頷く。何がなんでもコカビエルを止めなくてはならない。それは誰もが思った決定事項だ。だが、

 

「部長」

「どうしたの戦兎」

 

俺ちょっと遅れて合流して良いですか?と戦兎が言うとリアスはすぐに、強化アイテムの完成に思い至った。

 

「間に合いそうなの?」

「間に合わせて見せます」

 

分かったわ。そうリアスは言って戦兎以外に指示を出す。

 

「他のメンバーを駒王学園前に集合させ、コカビエルと戦う。後ソーナにも連絡を取っておきましょう」

 

その言葉に全員が頷く。今までとは比べ物にならない戦いが目の前に迫っていた。



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禁手

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

龍「聖剣を破壊するため暗躍する俺たちだったが、残念なことに失敗。しかもコ、コ……えぇと台本どこだっけ?」
戦「コカビエルでしょうが。バカ!」
龍「バカっつうな!筋肉付けろ筋肉を!つうかコカビエルって言いにくいんだよ!」
戦「まあ確かにコカビエルって言いにくい上に若干打ってるときも誤字り易いんだよな。と言うかゼノヴィアも結構打ち間違えやすいし」
龍「なんつうかオールカタカナでしかも五文字以上って間違えやすいよな」
戦「しかもゼノヴィアってさ、普通にゼノビアって打っても出てこないからなぁ~と言うわけで何時までもメタってしょうがないので18話スタート!」


「来たか」

 

コカビエルは、退屈そうに欠伸をしていたが自分の眼前にやって来た面々を見て頬尻を上げる。

 

「さて、まさかお前達だけではあるまい。大方魔王に連絡を取り貴様らは時間稼ぎといったところか。まあいいさ。余興くらいにはなる」

 

そう言ってコカビエルがパチンと指を鳴らすと、現れたのは三つの首を持つ巨大な犬。

 

「ケルベロス!?」

 

リアスが驚愕する中、ケルベロスはこちらに疾走。それを朱乃が魔力を雷に変えて撃ち出して怯ませる。更に、

 

「変身!」

《Wake up burning! Get CROSS-Z DRAGON!Yeah!》

 

クローズに変身を終えた龍誠が飛び上がるとレバーを回して、

 

《Ready Go!ドラゴニックフィニッシュ!》

「おらぁああああ!」

 

蒼炎を纏った強烈なボレーシュートを叩き込まれたケルベロスは頭が吹っ飛ぶが、別の頭が龍誠を襲う。

 

「やべ!」

 

大技を決めた隙を狙われた。それを理解した龍誠は咄嗟に防御態勢を取ったが、

 

「ふん!」

「なに!?」

 

別方向から来た何者かがケルベロスを消し飛ばす。それは……

 

「お前はゼノヴィア!?」

「さっきぶりだな」

 

そう言ってエクスカリバーを構えるゼノヴィアだが、さっきまでと違い力強さを感じる。

 

「お前腹空かせてたのに大丈夫なのかよ」

「フッフッフ。日本は良いところだ。ここに来る前にコンビニと言うところを寄ったんだが裏に弁当を捨てていてね。こっそり貰ってきた。全く。全然腐ってもいないのに何故捨ているのかは理解できなかったがお陰で腹を満たせた。これで戦える!」

 

そう言ってエクスカリバーを担ぎながら高笑いするゼノヴィアに龍誠は、

 

「お前もしかしなくてもバカだろ」

「なんだと!?」

 

ジロッと睨まれるが龍誠は無視してコカビエルを見る。

 

それをコカビエルは鼻で笑って流すと再度指を鳴らしてケルベロスを出した。

 

「おいおい。追加があるのかよ」

 

思わず龍誠が溜め息を吐くと、ケルベロスが走ってくる。

 

それに皆が身構えた瞬間!

 

魔剣創造(ソード・バース)!」

「ギャン!」

 

ケルベロスの足元に魔剣が生え、ケルベロスは足に刺さった魔剣に怯む。

 

「待たせたね!」

「祐斗!遅いんだよ!」

 

そう叫びながら龍誠はビートクローザーを手に走り出すとケルベロスの口の中に飛び込む。

 

「龍誠!?」

 

リアスがそれを見て驚愕する中、

 

《ヒッパレー!ヒッパレー!ヒッパレー!メガヒット!》

「オラァアアアア!」

 

ケルベロスは苦しそうに暴れだし、地面を転がる中、腹の中から龍誠は飛び出した。

 

「ぶへ!くっせぇ!」

「無茶するわねぇ……」

 

ペッぺとマスクをしてるので口に入るわけがないのだが気分でしているのだろう。

 

龍誠が這い出てくるのをリアスは苦笑いしながら見つつ、まだケルベロスはいるのかしらとコカビエルに言った。

 

「ふむ。これは予想以上だ。もう少しケルベロスに苦戦するかと思ったんだがな。ならば、フリード!」

「はいはい」

 

そして今度はフリードが出てくる。だが手に持っている聖剣の形状が違うような……と龍誠が首を傾げると、

 

「へっへっへ。驚いてるな?これは俺っちが集めたエクスカリバーを融合させたサイキョーのエクスカリバーですよぉ!」

 

フリードはそう叫びながらゼノヴィアに飛び掛かる。

 

「どうせだからそのエクスカリバーもいただくぜぇ!」

「させるか!」

 

火花と轟音を撒き散らし、聖剣同士がぶつかり合う。するとそこに、

 

「はぁ!」

 

祐斗が割り込み魔剣を振るうが、フリードの聖剣にアッサリと刃が砕かれた。

 

「ざんねーん!そんなチャチな魔剣じゃ相手にもなりませんなぁ!」

「くっ!」

 

祐斗は距離を取り魔剣を作り直す。そこに、別の人間の笑い声が聞こえる。

 

「止めておけ。お前の魔剣では相手にもならんよ」

「バルパー……」

 

ギリッと歯を噛み締めた。それを見ながらバルパーは笑みを浮かべる。

 

「しかしまさかあの時の生き残りが悪魔になっているとはな。お前一人分でも貴重な因子を持っているというのに」

「なに?」

 

バルパーの言葉に祐斗は違和感を覚えた。 自分一人分の因子?どういうことかと。

 

それを聞いたバルパーは口を開き、

 

「私はね。聖剣に憧れていたんだよ。物語に出てきて英雄が使う武器にね。だが私には才能がなかった。だから聖剣の研究に没頭し、君のような子供達を集めた。とは言え中々進まなくてね。そんな時気づいたんだよ。聖剣を扱うには因子がいる。そして集めた子供達にはその因子があったが弱かった。ならばそれだけを抽出できないかとね」

「まさかあの時全員皆殺しにしたのは!」

 

祐斗は自分の中でピースが繋がったような感覚に襲われた。だがバルパーは言葉を続け、

 

「そうさ。全て因子を抽出して用済みになったから捨てた。それだけの話さ」

「そうか。聖剣使いになる時に祝福を受けるのは……」

 

ゼノヴィアも何か心当たりがあったらしい。それを聞いたバルパーは、やはり研究を受け継いだ者がいたかと歯を噛み締める。

 

「己ミカエルめ……私を異端者として追放しておきながら」

 

そう言いながらバルパーは、懐から結晶を一つ取り出した。

 

「これがその因子の結晶だ。フリードにも使っている。まあ他にも二人ほどいたんだが適合できずに死んでな。とは言えフリードさえいれば良い。これはお前にやろう。どうせもう使わん。お前の仲間達の成れの果てだ」

 

バルパーは吐き捨てると、それをゴミを放り投げるように捨て、それを祐斗は覚束無い足取りで拾った。

 

「皆……」

 

両手で優しく包み込むように優しく手に取った祐斗は、眼から涙を溢れさせながら口から謝罪の言葉を紡ぐ。

 

「ごめん」

 

ずっと後悔していた。自分だけが生き残った事に。自分より夢を持っていた者がいた。自分より才能があった者もいた。

 

それらを差し置いて生き残った自分は何がなんでも復讐を遂げなければならないと。そうしなければならないと。

 

なのに何故自分は弱いのだ。この魔剣はエクスカリバーに遠く及ばない。自分が皆の無念を晴らさなければいけないのに。

 

そう思った時、突如結晶が強い光を発して辺りを照らす。

 

「これは!?」

 

祐斗は気付くと、真っ白な空間に立っていた。だが一人じゃない。周りに現れたのは、忘れもしない。あの時助けられなかった皆がいた。

 

きっと自分を責め立てるだろう。そう思っていたのだが、一人の女の子が祐斗を抱き締め、

 

《ごめんね》

「え?」

 

一瞬何を言ったのか分からなかった。だが、周りの皆も口々に自分に謝罪してきた。

 

君一人に背負わせてしまって申し訳ないと、でももう良いから自分の人生を生きて欲しいと。

 

一人じゃない。ずっと自分達は一緒だと。

 

そう言って皆は祐斗に溶け込むように集まり言う。

 

さぁ立つ時間だと。今の君の仲間が待っているのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだ!?」

 

突如起きた結晶の発光。それにバルパーは驚く中、祐斗は立ち上がる。

 

そしてゆっくりと結晶は砕け、祐斗の中に取り込まれていき、

 

「僕はずっと間違っていると思っていた。過去ばかり見て、それに囚われていた。だがそれは間違いだ。僕が見るべきなのは今だ!そしてそれに続く未来だ!その為に僕は戦う!主、リアス・グレモリーの為に。そして仲間達の為に!」

 

そう宣言した祐斗の手に現れた白と黒で作られた両刃の剣。それを祐斗は構えた。

 

「なんだそれは……」

双覇の聖魔剣(ソード・オブ・ビトレイヤー)魔剣創造(ソード・バース)禁手(バランスブレイカー)だ!」

 

禁手(バランスブレイカー)?と龍誠は聞きなれない言葉に首をかしげると、リアスが教えてくれる。

 

神器(セイクリットギア)の究極形とでも言えば良いのかしらね。元々神器(セイクリットギア)は持ち主の思いに答えて成長していくわ。でもそれとは別の領域にあって、劇的な転じ方をすることがある。神器(セイクリットギア)を作った神のミスによって生まれたバグだとか色んな説があるけどそれは今は良いわ。とにかくそれを禁手(バランスブレイカー)と呼ぶのよ」

 

そうリアスが解説する間に祐斗はフリードに飛び掛かった。

 

「剣が変わったくらいでなんだよぉ!」

 

フリードは叫びながらエクスカリバーで祐斗の剣を受ける。すると、

 

「え?」

 

フリードはエクスカリバーの刀身に入ったヒビを見て、ポカンと眼を丸くした。

 

「聖と魔が融合した僕の剣。聖魔剣が折れた聖剣を融合させただけの物に負けるとでも?」

「ちぃ!」

 

フリードは距離を取り、エクスカリバーの刀身を伸ばして狙う。しかし祐斗はそれを全て避けきり、聖魔剣を構え直す。すると、

 

「おい、リアス・グレモリーのナイト」

「……なにかな?」

 

話し掛けてきたゼノヴィアに祐斗は思うところはありつつも返事をした。

 

「私は聖剣の究極の話、核さえ回収できれば良い。お前は聖剣を破壊したい。それで良いな?」

「あぁ。それがなに?」

「なら私が隙を作ってやる。お前が止めをさせ」

 

ゼノヴィアの言葉に、祐斗は眉を寄せる。どういうことかと。それに対してゼノヴィアは、

 

「私の任務は聖剣を取り戻す事。結果的に核だけになろうがそこさえ守れれば良い。そして隙を突くならお前の速さの方が適任だと判断したまでだ」

「成程ね」

 

じゃあ任せるよと祐斗が言うと、ゼノヴィアは走りながらエクスカリバーを右手から左手に持ち替え、

 

「ペトロ!バシレイオス!ディオニュシオス!そして聖母マリアよ。我が声に耳を傾けてくれ。この刃に宿りしセイントの御名において、我は開放する!聖剣・デュランダル!!」

 

ゼノヴィアの言葉と共に空間に歪みが生じ、そこから出てきた柄を掴むと素早く引き抜く。

 

「あれはデュランダル!?何故だ!私の研究ではデュランダル使いは作れぬはず!」

「私はイリナ達とは違って天然物でね!」

 

そう言って驚愕するバルパーを尻目にデュランダルを地面に叩き付けると、凄まじい衝撃波と光がフリードを襲った。

 

「嘘だろぉ!?」

 

フリードは慌てて射線上から逸れるが、ゼノヴィアは手を止めず攻め続ける。

 

「おぉ!」

「なっ!」

 

フリードは一瞬祐斗から完全に意識を逸らしてしまった。そしてその一瞬を見逃す祐斗ではなく、死角からナイトの速さを使ってフリードに襲いかかると、

 

「っ!」

 

一瞬の交差の後に、祐斗は聖魔剣を振って付いた血を払う。

 

「ばか……なぁ」

 

バキン!とエクスカリバーは粉々に割れ、肩からバッサリ切られたフリードは血を吐いて倒れる。それを見たバルパーが、

 

「バカな……聖魔剣だと?聖と魔は相反し混ざり合うわけが……そうか!まさか!っ!?」

『なっ!』

 

バルパーは何かを思い付いた様だったが、その瞬間コカビエルは突如光の槍を投げてバルパーを刺し殺した。

 

「ごほっ!なぜ……?」

「良い余興だったよバルパー。だがお前にはもう用はない。だからここで死んでいけ」

 

冷たくそういったコカビエルは、ゆっくりとこちらにやって来る。

 

「さて、余興はここまで。次の相手は俺だ。全員まとめてかかってこい」

 

一見すれば舐められてるような言い方だが、この場の誰もがそれは違うと確信していた。

 

ただ歩いてくるだけなのに凄まじい圧を感じる。思わず全員が体を強張らせる中、

 

「上等だ」

 

全員の先頭に立ち、ビートクローザーを龍誠は構えた。その姿に、リアス達も頷き、戦闘態勢を取り、

 

「それで良い。俺を楽しませろぉ!」

 

ニタリと笑ったコカビエルは、両手に光の槍を作り走り出す。

 

「来るわよ!」

 

リアスはそう言いながら滅びの魔力の塊を作り出し、コカビエルに向かって撃ち出す。

 

「ふん!」

 

だが、コカビエルはそれを片手で弾き飛ばし、更に疾走。そこに空中から朱乃が雷撃を落とした。だが、

 

「そうか。さっき見たときどこかで見たと思ったが貴様バラキエルの娘か!」

「っ!私をあの者と一緒にするな!」

 

バラキエルの娘?どう言うことかわからないが、朱乃は怒りを滲ませ雷の電圧を上げるがコカビエルは腕を払って雷を打ち消す。

 

「はぁ!」

 

だがその隙を狙い祐斗は走り出すと、聖魔剣をコカビエルに振り下ろした。

 

「おぉ!」

「いきます!」

 

更に、ゼノヴィアもそれに合わせてデュランダルとエクスカリバーを同時に振り抜き小猫が正面から殴りかかる。しかし、

 

「甘いわ!」

 

光の槍で平然と剣を受け止め、小猫を先に蹴り飛ばし、それから剣を弾き飛ばし祐斗とゼノヴィアを吹き飛ばした。

 

『がはっ!』

 

背後に吹き飛んだ三人と入れ替わり、龍誠はビートクローザーを振り回しながらコカビエルに襲いかかる。

 

「ぬん!」

「おらぁ!」

 

ビートクローザー光の槍がぶつかり火花を散らし、何度も互いの武器をぶつけた。

 

「成程。やはり先程見た時も思ったがお前は強いな!」

「誉めていただき何よりだよ!」

 

そう言いながら龍誠は一度下がるとビートクローザーを手放しレバーを回す。

 

《Ready Go!》

「いくぞぉおおおお!」

《ドラゴニックフィニッシュ!》

 

龍誠は青いドラゴンを作り、それと共に蒼炎を右足に纏わせ飛び上がるとコカビエルに飛び蹴りを放った。

 

「面白い……来い!」

 

コカビエルはそれに対して逃げず正面から受け止め、辺り一体に衝撃波を撒き散らす。そして!

 

「おぉ!」

「んなっ!?」

 

バァン!と龍誠のドラゴニックフィニッシュを何と正面から弾き飛ばしたのだ。

 

「おいおい嘘だろ……ライザーだって倒した技だぞ」

「ふむ。確かそいつはフェニックスの才児と呼ばれていたやつだな。確かに今の一撃ならば並みの上級悪魔なら良いだろう。だが俺にはまだ足りぬな」

 

ちっ!と龍誠はビートクローザーを拾い直し、コカビエルを睨み付ける。それを見たコカビエルは嬉しそうに笑みを浮かべ、

 

「良いぞ。そうでなくてはな」

 

そんなコカビエルを睨み付けるのは龍誠だけじゃない。祐斗やゼノヴィアも立ち上がり、リアスや朱乃、小猫も構える。

 

それを見たコカビエルはフッと笑い、

 

「しかしエクソシストの女。お前もよく戦うよ。神は死んだと言うのにな」

「……なに?」

 

コカビエルの言葉に、ゼノヴィアは一体何をいっているんだ?と言う顔になる。それを見たコカビエルは笑いだすと、

 

「そうか。やはり末端には知らされてないか。なら教えてやろう。先の大戦で死んだのは魔王だけじゃない。聖書に記された神もなんだよ。今でもミカエルたちが神の残したシステム稼働させているため悪魔払いや一部の祝福は受けられるがそれも減ったがな」

「そんな……」

 

ゼノヴィアは膝を付き、後ろにいたアーシアにいたっては気絶してしまう。咄嗟にリアスが受け止めてくれたが。

 

「お陰で今じゃ大戦が起きることはなくなってしかった。こんなつまらん世の中に生きてるだけで苦痛なんだよ」

「下らねぇ」

 

なに?とコカビエルは、龍誠を見る。

 

「下らねぇんだよ。何が戦いだ。何が大戦だ。んな下らねぇことに巻き込まれるこっちの身にもなれよ。俺はな、そんなつまらねぇ世界ってやつが大好きなんだよ!」

 

龍誠はそう叫ぶとビートクローザーをコカビエルに振り下ろす。しかしそれは簡単に受け止められ、

 

「なら何故お前は力を持つ?このつまらん世界にはもっとも不要なモノだろう?」

「決まってんだろ。それはな!「龍誠退けろ!」え?」

 

ブゥン!と背後からのエンジン音に龍誠は振り替えると、バイクがウイリーしながらこっちに走ってくる光景だった。

 

「あっぶね!」

 

龍誠は咄嗟に横に跳んで回避すると、バイクはそのままコカビエルを吹っ飛ばす。

 

「ぐぉ!」

 

後方に吹っ飛びながら体勢を戻したコカビエルの前にバイクから降りながらヘルメットを外したその下の顔は、

 

「戦兎!俺まで轢く気か!あぶねぇだろ!」

「だから声かけたでしょうが」

 

そういう問題じゃねぇ!と龍誠はギャーギャー言うが戦兎は耳をホジッて聞く気はないようだ。

 

「貴様はそう言えばさっきも……てっきり怖じ気づいて逃げたと思っていたが」

「アホか。ちょっと用事があったんだよ」

 

そう言いながら戦兎はビルドドライバーを装着する。それをコカビエルは見ると、

 

「ほぅ、お前もそれを使うのか。そしてそこの男のように平和が良いと言いながら力を使うのか?」

 

アッハッハと笑うコカビエルを見て、戦兎は頭を掻く。

 

「まあそいつのベルトに付けてる盗聴機兼発信器で大体話は聞いてたけどさ」

「まて、今聞き捨てならない単語が出たぞ」

 

うるせーな。と戦兎は龍誠に返しつつコカビエルに話し掛ける。

 

「俺も確かに平和が好きさ。でも巻き込まれちまうし、それなりに力もあっちまった。だったらせめて目の前にあるもん位は守りたい。全部守れるなんて傲慢だと思うけど、手が届く範囲ならイケると思う。力ってのは……ただ暴れる為に使うもんじゃない。それじゃただの暴力だ」

 

そう言って戦兎が出したのは、ラビットタンクのビルドの顔が付いた大きな缶だ。

 

それをシャカシャカ振り、缶ジュースのフタを開けるようにプルタブを引っ張ると、カシュッと音が出る。

 

「だから俺はこの力を……愛と平和の為に、俺の信じた正義の為に、そして俺の親友と仲間達の為に使う!」

《ラビットタンクスパークリング!》

 

ビルドドライバーにそれを挿すと音声が鳴り、戦兎はレバーを回した。

 

それと同時に何時もとは形状の違うフレームが形成される。それはまるで、いつぞや戦兎が見せてくれたビルドを表す模様のようで……

 

「変身!」

 

レバーから手を離し、ポーズを決めて叫ぶ。それと同時に前後のフレームと、前後で別れたビルドの模様が戦兎を挟み込むと、まるで炭酸のような泡が周りに飛び散り戦兎は新たなビルドの姿に変身する。

 

《シュワッと弾ける! ラビットタンクスパークリング!イエイ! イエーイ!》

 

その姿は何時ものラビットタンクに似ていたが、所々白いカラーリングが追加され、全身に鋭角な棘が生えていた。

 

そして戦兎は右手を頭に持っていき、あの台詞を言う。

 

「さぁ、実験を始めようか!」



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スパークリング

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦「戦いの快楽に溺れるコカビエルを倒すため、皆のヒーロー桐生戦兎は新たなビルドに変身して戦闘を開始する」
龍「しかしお前絶妙なタイミングでやって来たよなぁ……実は近くで待機してたりしてな」
戦「……さぁと言うわけでやっていきましょう19話!」
龍「今の間はなんだよ!」


「せぇ……の!」

 

戦兎は腰を落とすと、足に炭酸のような泡を発生させ、それ破裂させるとその反動を利用してコカビエルとの距離を一瞬で詰める。

 

「速い!?」

「まだまだこんなもんじゃないぜ?」

 

後ろからの祐斗の声に律儀に反応しながら、腕から伸びる棘を用いてコカビエルを斬り、突き刺し、そして殴る蹴る!その際に泡のようなエフェクトが起きた。

 

「ぐっ!」

 

コカビエルは急所は剃らしつつ下がり、

 

「面白い……俺を楽しませろよぉ!」

 

そう叫びながらコカビエルは光の槍を両手に作ると戦兎に襲い掛かる。それを見た戦兎は素早くドリルクラッシャーと四コマ忍法刀を取り出し光の槍を弾く。

 

「おいおい。忍者フルボトル使ってないのに四コマ忍法刀使えるのか!?」

 

この姿ならビルドの装備全部使えるよと龍誠に言いながら、戦兎は四コマ忍法刀のスイッチを四回押す。

 

《隠れ身の術!ドロン!》

「むっ!」

 

突然の煙幕にコカビエルが一瞬怯むが、腕を払って煙幕を払った。だが、

 

《10!20!30!40!50!60!70!80!90!100!フルバレット!》

《Ready Go!ボルテックブレイク!》

 

ドリルクラッシャーをガンモードに変えてハリネズミフルボトルを挿してからホークガトリンガーを構えて発射!無数の弾丸とハリネズミの針のような弾丸をそれぞれ炭酸の泡を纏わせて飛ばしまくる。

 

「しゃらくさい!」

 

それをコカビエルは後ろに跳びながら光の槍を何十本以上作り出し、当てて防ぐ。

 

《各駅電車!急行電車!快速電車!海賊電車!》

「はぁ!」

 

しかし、戦兎はその攻撃のぶつかり合いで出た土煙の中でもコカビエルを見失わずカイゾクハッシャーを構えてチャージし、先程と同じように炭酸の泡と共に発射。土煙と共にコカビエルを吹き飛ばした。

 

「がは……いいぞ。そうだ!やはり戦いはこうでなくてはな!」

 

コカビエルはケタケタ笑いながら戦兎に突進し光の槍で狙う。それを戦兎は両腕の棘で止めて弾くと泡のエフェクトを出しながらコカビエルにパンチを叩き込み、足の泡を破裂させて高速移動。

 

素早く後ろに回り込んでパンチとキック!コカビエルが振り替えると、再度高速移動して上から一撃を叩き込みながら後ろに回ってキックと、コカビエルを翻弄していく。

 

「ぐぉ!」

「おらおらぁ!」

 

コカビエルが怯むが戦兎は手を緩めない。コカビエルはさっきから攻撃を入れているのに止まる気配がない。まあ言動や行動を考えて全うな神経のやつではない。

 

動けなくするまで油断はできないだろう。

 

「ぐっ!」

 

流石にキツくなったのか、コカビエルは強引に空を飛んで距離を取った。しかし、

 

「逃がすかよ!」

《Ready Go!》

 

戦兎はバラの模様が入ったローズフルボトルをドリルクラッシャーに挿して、ガンモードの銃口をコカビエルに向けると発射。

 

バラの黒い茨のようなものが銃口から伸び、コカビエルに巻き付く。

 

「ぐぁああ!」

 

勿論それには鋭い棘が体に喰い込み、コカビエルは苦悶の表情を浮かべながら地面に引きずり下ろされた。

 

そして戦兎はドリルクラッシャーを捨てると、

 

「勝利の法則は決まった!」

 

決め台詞共にレバーを回し、エネルギーを高める。それと同時にベルトに挿した缶に描かれてるビルドの顔の眼の部分が発光し、戦兎は大きく飛び上がった。

 

《Ready Go!》

 

そして、空中に飛び上がると右足に無数の泡を纏わせて一気に急降下する。

 

《スパークリングフィニッシュ!》

「上等だぁ!」

 

しかしコカビエルは光の槍を今までのものとは比べ物にならない大きさにして作り出すと、急降下してきた戦兎に放つ。

 

だが戦兎は避けないどころか、寧ろ更に勢いを着けて光の槍を迎え撃った。

 

「おぉおおお!」

 

バチバチ火花を散らし、拮抗する。しかし戦兎は更に泡の量を増やし、光の槍を弾くとそのままコカビエルに向かって蹴りを放つ。

 

「ぐぁああああああ!」

 

まず大量の泡がコカビエルを襲い、それが破裂しコカビエルの体を痛め付け、そこに本命の蹴りが刺さると、

 

「これで終わりだぁあああああ!」

「ああああああああ!」

 

戦兎の必殺の一撃は、コカビエルを後方の体育館の壁まで吹き飛ばし、そのまま壁を突き破り、反対側の壁に激突して漸く止まり、コカビエルは意識を失ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いっちょあがりっと」

「お前めっちゃすげェな!」

 

戦兎は手をパンパン叩いて埃を払うと、龍誠がやってくる。

 

「だろ?マジでヤバいでしょ?凄いでしょ?最高でしょ!?」

 

イエーイ!とハイタッチを一つして、他のメンバーとも合流した。

 

「折角禁手(バランスブレイカー)に至ったのに、これじゃ良いとこは戦兎君に持ってかれちゃったかな」

「いやいや、話を聞いてただけだけど皆凄かったよ」

「あぁ!そうだよ戦兎!いつの間に俺のベルトに細工を!」

 

祐斗の苦笑いに戦兎が答えて龍誠が騒ぐ。それを戦兎は、なにも聞こえませんね~っと聞く耳を持たない。

 

そんな様子に皆は笑い、

 

「ほら、コカビエルを捕縛して帰りましょう。取り敢えず落ち着ける場所でアーシアを起こした方がいいでしょう」

 

そう言い、背中にアーシアを背負いながらリアスはゼノヴィアを見る。

 

「貴女はどうするの?」

「取り敢えず聖剣を回収する……」

 

ゼノヴィアはフラフラしながら砕けたエクスカリバーを回収し、じゃあこっちはコカビエルを……と皆で体育館に向かおうとした瞬間!

 

「まさかコカビエルを倒すとはな。予想外だったよ」

『っ!?』

 

突然目の前にシュタっと着地した存在に、皆は身構える。

 

白と言うか銀髪の髪にスラリとした長身のイケメン。だがこの場に平然としているだけでも、ただ者じゃないことが分かった。

 

「誰だ、お前……」

 

戦兎は拳を構えるが、相手は待て待てとストップを掛ける。

 

「俺はお前らと事を構える訳じゃない。俺はコカビエルを回収しに来ただけだ」

「ヴァーリ……」

 

事情を説明する中、コカビエルが出てくると相手の男をヴァーリと呼ぶ。それを聞いたヴァーリはタフな奴だ、と呆れたような声をした。

 

「アザゼルからか……」

「分かってるなら話しは早い。俺に叩きのめされてから戻されるか、自分の意思で帰るか選べ」

「舐めるな!」

 

コカビエルはヴァーリに向けて突進。だがヴァーリは表情を変えずに、袖から何と、フルボトルを取り出して素早く振るとコカビエルを殴り飛ばす!

 

「あれはフルボトル!?」

「何であいつが持ってるんだよ!?」

 

戦兎と龍誠が驚愕の声を漏らす。だが驚いたのは他の皆も同じだ。それに、

 

「あれはロボットフルボトルか?でも……」

 

戦兎の手元にもロボットフルボトルはある。つまり落としたとか盗まれたわけではない。だが驚くのはそれだけではなく。

 

「力ずくがお好みのようだな」

 

ヴァーリはそういうと懐から、水色を基調とし、レンチのようなレバーが付いた物を出す。

 

「なんだあれ?」

 

龍誠が首を傾げる中、ヴァーリはそれを腰に着けるとバンドが伸び腰に装着され、更にヴァーリは、栄養補給ゼリーを小さくしたような物を出した。あれに描かれてるのはロボットか?

 

《ロボットゼリー!》

「変身」

 

ヴァーリはそれを放り投げ、逆の手でキャッチするとベルトに挿し、音声が流れるとレンチ型のレバーを下ろす。

 

それと共に巨大なビーカーが現れ、ヴァーリを薬品のような液体が満たし、

 

《潰れる! 流れる! 溢れ出る!》

 

更に音声と共にビーカーが消えると同時に頭からゲル状の潤滑油が吹き出しヴァーリの体に纏わり着くと、金と黒で彩られた見たことのない仮面ライダーが生まれた。

 

《ロボットイングリス!ブラァ!》

「仮面ライダーグリス……お前に見せるのは初めてだったな。コカビエル」

「そんな隠し球を!」

 

コカビエルはそう言いながら光の槍を作るが、

 

《ツインブレイカー!アタックモード!》

「ふん!」

 

飛んできた光の槍を左手に出現したパイルバンカーのような物が付いた武器で弾くと、素早く変形させる。

 

《ビームモード!》

「はぁ!」

 

変形させ、砲身のような物を作り出したツインブレイカーでコカビエルを撃つ。

 

「ぐぁ!」

「さっさと終わらせるぞ。こっちは用事が控えてるんだからな」

 

そう言ったヴァーリはロボットフルボトルを出すとツインブレイカーに挿す。

 

《シングル!》

 

それからツインブレイカーの横にあるスイッチを押し、

 

《シングルフィニッシュ!》

「はぁああああ!」

 

ヴァーリは一度腰を落としエネルギーを溜めるような動きをした後、ツインブレイカーの砲身から黄色いエネルギーの塊を発射した。

 

「がぁああああ!」

 

それはコカビエルの全身を打ちのめし、後ろにゆっくり倒れながら、今度こそ動かなくなる。

 

「おい」

「あ?」

 

すると突然ヴァーリはこちらに話しかけてきた。なにかと思えば、

 

「今何時だ?」

「は?」

「今何時だ!」

 

7時45分だけど……と余りに鬼気迫る聞き方に龍誠が答えると、ヴァーリは舌打ちして、ギリギリだな……と慌てた様子でコカビエルを持ち上げる。それに慌ててこっちが待てというと、

 

「こっちは用事があるし放っておきたいところだったんだがな。そうもいかん。悪いが連れていかせて貰うぞ」

 

そう言うとヴァーリは一瞬足に力を込め疾走。気づけば皆の背後に転がっているフリードまで持ち上げ、

 

「じゃあな。まあ遠くないうちに会うことになるだろう」

「あれは消しゴムフルボトル!?」

《ディスチャージボトル!》

 

ヴァーリは戦兎が驚く中、ベルトに挿していた物を消しゴムフルボトルと交換しレバーを下ろす。

 

《ツブレナーイ!ディスチャージクラッシュ!》

 

そんな音声と共にヴァーリが腕を上げると、何とまるで消しゴムで消したかのように彼らの姿が消えてしまった。

 

「ちょ!待て!」

 

龍誠が捕まえようとするが既にヴァーリ達の姿はなく、龍誠のタックルは空を切り地面にスッ転ぶようになってしまう。

 

「あいつはいったい……」

「そもそも彼も仮面ライダーを名乗ってましたし……戦兎君はご存知?」

 

いえ、と戦兎は朱乃の問いに首を横に振る。あれはフルボトルを持っていたがあんな仮面ライダーは知らない。

 

仮面ライダーグリス……フルボトルを持った未知のライダーか。そう思いながら戦兎は変身を解除する。

 

(少し父さんの研究データを洗ってみるか)

 

何てしていると同じく変身を解いた龍誠も戻ってきた。

 

「何か納得いかねぇな……」

「確かに。折角ビルドの強化アイテムで華麗にコカビエルを倒したのに、あいつの所為で俺の主人公感が減ったしな」

 

そこじゃねぇだろ。と龍誠は呆れるが、それ以上は言わない。戦兎もわざとおどけているのを知っているからだ。その時、

 

「あ!」

『ん?』

 

突然のリアスの叫びに皆は首を傾げるが、リアスはアーシアを龍誠に預けると、

 

「忘れて帰るところだったわ。祐斗、お仕置きよ」

『あ……』

 

リアスの言葉に、祐斗は思わず後ずさった。だが、

 

「まあ待てよ」

「逃げちゃダメです」

そう言って祐斗を拘束したのは戦兎と小猫。その二人に祐斗はある意味、先程の騒動より絶望した表情を浮かべていたが気にせず、

 

「さぁ部長!」

「お願いします……」

「えぇ、行くわよ祐斗!」

 

ま、まだ心の準備が!と祐斗の言葉も虚しく祐斗へのお仕置き(尻叩き)が開始される。

 

こうして、聖剣騒動は幕を閉じた。だが新たなライダー。そしてボトル。未知の敵も現れたし結局面倒事はまだ終わりそうにない。

だが今はいい。今は無事皆で乗りきれたことを祝いたい。

 

尻を叩かれて悶絶する祐斗を見て笑いながら、戦兎はそんな風に思ったのだった。



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新たな眷属

「スクラッシュドライバー、スクラッシュゼリー、ツインブレイカー……か」

 

コカビエルとの戦いから数日。プスプス頭から煙を出しながら、戦兎が家のパソコンから探しだした父の研究データをプリントアウトした紙を龍誠は見つめていた。

 

「あぁ、ボトルの成分をゲル化して成分を高めて使えるようにしたスクラッシュゼリー。そしてそれを使うためのベルトであるスクラッシュドライバー。そして専用武器であるツインブレイカー。でも、どれもまだ研究段階でとても現物を作り出せる程進んでない。理論だって殆ど出来上がってないしな」

「やはり成分を高めてって事は強いんでしょうか」

 

頭を掻きながら言う戦兎に、アーシアが問うと、

 

「あぁ、更にこのスクラッシュドライバーは使用者のアドレナリンを過剰に分泌させることで興奮状態にしたり、変身すればするほどハザードレベルを強引に引き上げることができるらしい」

「すげぇじゃねぇか!こっちも作ろうぜ!」

「バカ!これでは理論すら完成できてねぇんだよ!それにアドレナリンを過剰に分泌ってのは体への負担も大きいし、何より問題はこれは使えば使うほど人格を変化させ、好戦的な性格に変えていく。そして使い続ければ根っからに戦闘兵器に変えてしまう」

 

戦兎にそう言われ、龍誠はそうかと項垂れてしまう。

 

「多分、父さんが途中で理論すら完成させずに開発を止めたのは、その辺が関係してると思うんだ」

 

だが気になるのは、なら何故スクラッシュドライバーシリーズが完成したのかだ。それに何故あいつはフルボトルを持っていた?フルボトルは戦兎の瓶詰め(ボトルチャージ)があって初めて作れる物のはず。そんなホイホイ複製はできないはずなのに……

 

等と考えながら戦兎が部室のドアを開けて中に入ろうと……

 

「やぁ。来たようだね」

『……』

 

バタン。とドアを閉めた。可笑しいな。何か見てはいけない人物が中にいたような……そう思いながら三人はもう一度中を見る。

 

「さっきから何をしているんだ?君達は?」

『……』

 

普通にいた。駒王学園の女子生徒用の制服を着て、普通に椅子に座ってお茶を飲んでる女。それは間違いなく、

 

『ゼノヴィア(さん)!?』

「やあ」

 

何でココに!?と三人でゼノヴィアに詰め寄ると、

 

「うむ。聖剣を取り戻し教会に返還したのは良いんだが、その時に神の不在問いただしたら異端認定されてね。そして破れかぶれで悪魔に転生した」

 

色々突っ込ませろ……と龍誠と戦兎が思う中、リアスが朱乃を連れてやってきた。

 

「あら、丁度良かったわ。三人も知ってると思うけど彼女はゼノヴィア。駒はナイトよ」

「いやいやいや!部長!?良いんですか!?貴重な駒を使って」

 

良いのよ、デュランダル使いは貴重だもの。とリアス的には問題はないらしい。

 

そんな中、ゼノヴィアは立ち上がるとアーシアの元に来て、

 

「すまなかった」

 

そう言って頭を下げた。突然の彼女の行動にアーシアは戸惑う中、

 

「私は君に失礼なことを言った。幾ら謝罪してもしきれないと思う。望むなら私を殴っても構わない」

 

そんな彼女の言葉に、アーシアは慌てて首をブンブン横に振ってから、

 

「確かに教会に異端認定され、追放された時は悲しかったです。でも今は教会にいた頃は見ることも聞くこともなかった大変をできますし、大切な人達と出会えました。お陰で今は毎日が幸せです」

 

ですからゼノヴィアさんも気にしないでください。とアーシアが言うとゼノヴィアは優しげな笑みを浮かべた。

 

「ありがとう。そう言ってもらえると助かる」

 

そんなやり取りを見ながら龍誠が、

 

「そう言えばイリナは?」

「彼女は私のエクスカリバーも含めた全てを持って帰っていったよ。彼女は運が良かった。真実を知っていたら宗教心が強いからね。心を崩したかもしれない」

 

そうか……と龍誠は少し安心したような顔をした。色々あってもやはり昔馴染みではあるのだし無事そうならいい。

 

そんな風にしんみりしていると、

 

「しかしそれで今度は悪魔か。見事な転落人生だな」

「がはぁ!」

 

戦兎が要らんことを言ってゼノヴィアは吐血した。それを見た龍誠はスパン!と戦兎を叩きながら、

 

「お前にはデリカシーってもんがねぇのか!」

「そうですよ戦兎さん!」

 

龍誠だけじゃない。アーシアにまで言われるが戦兎は知らん顔。そんな皆の様子を見てリアスは小さく笑う。

 

「ここも賑やかになったわね」

「えぇ。そうですわね」

 

リアスの言葉に、朱乃も笑みを浮かべて同意した。

 

「朱乃がいて、祐斗、小猫、龍誠、戦兎、アーシア、そしてゼノヴィア。後はあの子も居れればいいのだけど」

「きっといつか居れるようになれますわ」

 

朱乃がそう言うと、リアスもそうねと頷く。

 

漸く戦いも一段落したのだし、平和な時間を過ごしたい。リアスはそう思いながら騒がしい後輩たちを見ていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいヴァーリ……もうテレビ権を俺に譲れよ」

「ダメだ」

 

テレビの前に陣取ったヴァーリだが、既に何週目か分からないほど同じテレビ番組を見ていた。

 

最近は人間の世界のバラエティ番組と言う奴もこっちでは人気が高い。勿論ヴァーリに文句を言う男も見たい奴があるのだがヴァーリが絶対にテレビの前を譲らない。

 

理由はただ一つ。この番組に出ている……

 

「みぃいいいいいたぁああああああああん!!!!」

 

みーたん。それは最近一気に有名になってきたアイドル。ヴァーリは彼女が全国的に有名になる前からのファンであり、全ての関連グッズを【保存用】【使用用】【観賞用】の三つ揃えているほど。更に彼女が出る番組は全て録画&永久保存版としており、間違ってでも消そう物なら命に関わるくらいだ。

 

今見てる番組だってコカビエルの捕縛に向かわせる際に、嫌だの時間的に無理だのと駄々をこね始めて行かせるのに苦労した。お陰で代償に暫くの間テレビ権を譲渡する羽目になるし……

 

しかし見た目はそこそこ良いのに、録画したテレビに向かって光る棒やらうちわを振ってる姿と言うのは、正直言ってアレである。

 

そんな中、

 

「そう言えばなヴァーリ。リアス・グレモリー達を調べていた時なんだが……」

「静かにしろ。今良いとこなんだよ!」

 

いや桐生 戦兎を調べた時にみーたんらしき女の子が……と男が言った瞬間、ヴァーリはバビュン!と男の元に走り、手元の写真引ったくった。そしてその写真を見ると、

 

「これは……みぃいいいたんだぁあああああ!」

 

図らずも推しのアイドルが写った、しかも見た感じ明らかにプライベート。余りにレアすぎる写真に、ヴァーリはウヒョヒョヒョと気持ち悪い声を漏らす。だが次の瞬間、

 

「おい。なぜ桐生 戦兎が隣にいる。アレか?嫌がらせか?みーたんだけを写せばいいんだよ!それとも編集でくっつけたのか!?」

「違う違う!これは桐生 戦兎の周りを調べてる時に二人で出掛けてるの見つけて部下が撮ったんだよ」

 

二人で出掛けてる……?と言いながら、そこそこの長い付き合いになると言うのに、今まで見たことのない絶望に染まりきった表情をヴァーリは浮かべて、

 

「なんで……二人は一緒なんだ?」

「あ~、付き合ってるとか?」

 

んなわけあるかぁあああああああああ!とヴァーリはぶちギレながら、男の胸ぐらを掴んで締め上げる。

 

「良いか!?みーたんは皆のアイドルなんだ!なのにここここっここここ!恋人だとぉ!?そんなわけあるかぁ!」

「だ、だが一緒に歩いてたし結構仲良さげだったって……あとお前マジで苦しい」

 

男を離し、ヴァーリは全身をプルプル震わせながら体からメラメラと炎を燃え上がらせ叫んだ。

 

「きりゅうううううういせんとぉおおおおおおお!」

 

一方その頃、

 

「っ!」

「どうしたの?」

 

部室にて祐斗とチェスに興じていた戦兎はビクッと体を震わせながら立ち上がり、

 

「いやなんか悪寒が……」

 

そう呟いたのは、まぁ余談である。



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第四章 停止教室のヴァンパイア
巫女と堕天使


前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦「コカビエルとの激闘、更にぜのヴィアの加入から早くも数日。だが俺達には新たな戦いの火蓋が切って落とされようとしていた!」
龍「もう良いよぉ……のんびりしてぇよぉ……」
戦「まぁ俺らにはそんな平穏はないんだよと言うわけでまだまだ休めない21話スタート!」


「ふわぁああああ」

 

龍誠は暖かな陽気の中、のんびりと歩いていた。

 

今日は休日なので部活はなく、戦兎の家に行っても良かったのだが、たまにはちょっと散歩でもと思い、いつもは通らない道を歩いている。

 

そんな中、

 

「あら?龍誠君」

「え?」

 

キョロキョロよそ見しながら歩いていると、後ろから声を掛けられ振り返った。するとそこ居たのは、

 

「朱乃さん?」

「えぇ、こんにちわ」

 

我らがオカ研副部長。朱乃だ。彼女は両手に買い物袋を持ち、制服姿しか見たことがなかったが今は私服だ。

 

なんと言うか人妻感が凄い。何せ朱乃は色っぽいし穏やかと言うか落ち着いてるし一個上とは思えないと常々思っていた。

 

まあ流石に本人には言わないが……

 

「あ、持ちますよ」

「え?そんないいですわ」

 

朱乃はそう言って断るが、龍誠は半ば強引に朱乃の手から買い物袋を取って、お家何処ですか?と聞いてくる。それを見た朱乃は、

 

「なんで龍誠君がモテるか分かりますわね」

「はい?」

 

何て龍誠は何をいってるんだ?と首をかしげる中、朱乃はこっちですわと先導してくれるので、それに付いていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ」

 

朱乃が住む自宅に荷物を運びいれた龍誠は、現在お茶をごちそうになっていた。

 

やはり彼女が淹れるお茶は旨い。そう思いながら目の前に座る朱乃を見る。同じくお茶を上品に飲む姿はこっちの方が照れ臭くなる。

 

しかしまさか朱乃の自宅が神社だったのは驚いた。しかも悪魔でも入れる特別な儀式を行っているという。確かにまあ巫女服がよく似合いそうではあるが。

 

とまあ余談はここまでにして、前から気になっていたことを聞くなら今かと龍誠は、

 

「あの、朱乃さん?」

「はい?」

 

コカビエルとの戦いの時に……と龍誠が聞くと、朱乃はなにを聞きたいのか理解したらしく、

 

「バラキエルの娘……ですわね?」

「まぁ、はい」

 

確か前に悪魔になった頃、三大勢力の幹部について教わったのだが、その時にバラキエルという名前を聞いた気がする。すると朱乃は立ち上がり、背中から翼を出した。

 

彼女の翼を見るのはまだ二度目。一度目は、初めて悪魔と言うのを知った時。だがその時にはなかった特徴がある。それは左右一対の翼だが、片方は悪魔の翼。だがもう一方が忘れもしない、レイナーレやコカビエルと同じ黒い翼。

 

「昔、傷つき行き倒れた堕天使が居ました。それを偶然見つけたとある女性はその者を助け、後に子を産んだ。でも堕天使との婚姻をよく思わない者もいて……その女性は殺されました」

 

鈍い龍誠でも、それがバラキエルであり、母であり、朱乃自身なのはすぐに理解できた。そして、

 

「私はこの血が……そしてこの黒い翼が嫌いだった。だから悪魔になったの。まぁ結局魔力で無理矢理見た目を変化させなければこんな中途半端な見た目になってしまうおぞましい存在になってしまいましたが」

 

そんな風に自虐的に朱乃は言いながら、龍誠を見る。

 

「きっと龍誠君は堕天使が嫌いよね。戦兎君も、アーシアちゃんもきっと」

「朱乃さん……」

 

そんなことない。そう言うが朱乃は横に顔を振って否定しながら涙を浮かべた。

 

「ごめんなさい。ずっと黙ってて……嫌われたくなくて、堕天使とは関係ないって思いたかった。龍誠君を殺して、アーシアちゃんも殺そうとした。この間の一件だって皆に危害を加えようとして……堕天使に良い感情なんて持てるはずがない」

 

下を俯いて言葉を吐き出す朱乃に、龍誠は立ち上がると朱乃の隣に行き、肩を掴むと自分の方を向かせ、

 

「あのですね?俺はまだ実質堕天使には二人にしか会ってません。レイナーレとコカビエルです。いやまあレイナーレの時に他にも居ましたけど全然顔も覚えてないんで割愛させてもらいますけど……正直それしか知らないんですよ。それで堕天使嫌ってたら俺今頃人間嫌いですよ」

「え?」

 

昔から親がいなかったので、嫌がらせも受けた。だがそれ以上に会う人たちからの同情が一番辛かった。辛いというか惨めになったという方が正しいか。色んな人達がいたが、基本的に皆は自分を可哀想な奴と言う目で見てくる。哀れで可哀想で……それが一番堪えた。戦兎くらいなものだ。なんの遠慮も無かったのは。だからこそ付き合いやすかったんだと思うが。

 

だからきっと戦兎がいなかったら自分はどこかで道を踏み外した。俺をそんな憐れんだ目で見るなってな。それに、

 

「それに俺、朱乃さんは好きですよ?いつもニコニコ笑って部長を補佐したり美味しいお茶を淹れてくれる人だ。あんたが何者だろうと関係ない。堕天使の血を引いてようが俺には関係ないです。勿論、戦兎やアーシアだって同じですよ?」

「でも……」

 

そう言って朱乃はまた顔を逸らそうとするが、龍誠はグッと肩を掴む力を込めて、低い声を出した。

 

「俺の言うことが、信じられませんか?」

「い、いえ……」

 

なら自分を卑下するのはやめてください。そう龍誠が言うと、朱乃は頷く。そうまでして龍誠は我に帰った。

 

(やっべ!先輩で、しかも女性に俺は何やってんだ!)

 

微妙な空気が流れる中、龍誠はアワアワ慌てるが、朱乃は顔を上げると笑みを浮かべて、

 

「ありがとう。龍誠君」

「あ、はい……」

 

とりあえず怒ってない?大丈夫?と龍誠はホッとする。そんな様子を見た朱乃は、

 

「リアスの時も思いましたけど龍誠君は良い男ですわね」

「そ、そうですかね?」

「えぇ、リアスが羨ましかった。だって困ったときに助けてくれる人が現れたから……」

 

朱乃の言葉に、若干引っ掛かるものの龍誠はニッコリ笑みを浮かべ、

 

「じゃあ俺は朱乃さんのピンチにも駆けつけますよ」

「本当に?」

 

そりゃもう地球の裏側にいても行きます!と胸を叩きながら、龍誠は言う。戦兎がいたら、こういう事するから大変な目に遭うんでしょうが、といわれそうな台詞を言いながら、

 

「なので安心してください」

 

そう龍誠は締め括ると、丁度壁にあった時計からポーンと金が鳴る。時間的にはそろそろ戦兎の家に向かわないとご飯を食べ損ねそうだ。

 

「じゃ、じゃあそろそろ俺お暇しますね」

「え?あ、えぇ。じゃあまた部活で会いましょう」

 

龍誠が立ち上がると、朱乃も立ち上がりそのまま玄関で見送ってくれる。

 

「それでは失礼します」

「はい」

 

そう言い残し龍誠が外に出ると、朱乃はソッと自分の頬に触れる。

 

熱い。熱を纏い、胸が力強く早鐘を打っていた。

 

まさか?と自分に問いかける。男性には興味がない。それどころか、男は苦手だと友人であり主であるリアスに言ったことがある。

 

確かに同じオカルト研究部の仲間ということで敷居は低かった。それに優しく、それでいてちょっと強引な言い聞かせは今まで出会った男には無かったものだ。

 

勿論。これが恋だとまだ断定はしない。ただそれでも、万丈 龍誠が特別な男の子に変わったのは、間違いなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やべやべ!もう暗くなってきた」

 

朱乃宅から龍誠は走り続けていた。流石に長居しすぎたな、そう思いながら走り続ける。 その時、

 

「なんだ女を待たせてるのか?」

「ん?」

 

突然ベンチに座った、ちょいワル風のダンディな男に話し掛けられ、龍誠は首を傾げて足を止めた。

 

「いやまあ、友達を待たせてはいますが」

「お前の友達って言うとビルド……いや桐生 戦兎か。なぁ万丈 龍誠。いや、クローズと呼んだ方がいいか?」

「っ!」

 

突然の言葉に龍誠は後退り、咄嗟にビルドドライバーを出して着ける。

 

「お前なにもんだ」

「おいおい。別に喧嘩しに来た訳じゃねぇ。確かにお前らを直接見てみたかったが、この辺りを彷徨いてたのはちょっと個人的な用事だ」

 

そう言って男は、ニヤリと笑いつつ両手を上げて、降参降参と合図した。

 

「俺はアザゼル。堕天使の総督をやってるもんだ。宜しくな」



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魔王・サーゼクス

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦「姫島先輩を口説き落とし、帰る龍誠の元に現れたのはアザゼルと名乗る男!」
龍「誰が口説き落としただ!普通に会話しただけだ!」
戦「普通の会話が既に口説いてると言うのに気付かないんですかねぇ?そんな感じの22話スタート!」
龍「だから口説いてねぇええええええ!」


『アザゼルに会ったぁ!?』

 

朱乃さんとの話し合いから次の日、先日のアザゼルとの出会いを話すとオカ研メンバーが驚愕した。

 

「だけどなにもされなかったんだろ?」

「あぁ、こっちも身構えたんだけど向こうは様子見だからなにもしないっていって、どっかに消えちまったんだ」

 

そう、昨日突然現れたアザゼルは特になにもしてこず、そのまま帰ってしまったのだ。

 

戦兎の問いに答えながらも龍誠は、ホントに何しに来たんだと、頭を抱えてしまう。すると、

 

「あ!でも何かクローズの事に関して聞かれた」

「それで?」

 

いや、どういう理由で動いてるのかチンプンカンプンなのでわからないって答えました。と龍誠が言うと聞いたリアスも含めてずっこけた。まぁ確かに、前に一度どういう理論で動いてるか説明したのだが、途中で船を漕ぎ始めたので、諦めた記憶があったのを戦兎は思い出した。

 

アザゼルも、聞くやつを間違えたな。

 

「戦兎君の方には来てないの?」

「いや、少なくとも話し掛けられてはいないな」

 

正直気配を消されたらどうしようもないけど。と祐斗に答えつつ戦兎は頭を掻く。そんな時、

 

「それだったら、やっぱり私の家に泊まらせるべきだったかしら」

『っ!』

 

ビキィ!と朱乃の一言に部室の空気が凍りついた気がした。

 

「どういう事かしら朱乃?」

「別に変な意味ではありませんわ。ただちょっと二人だけで内緒の話をしただけで……ね?龍誠君」

「は、はい」

 

空気がピリピリする。特にリアスと朱乃の間が。

 

「ど、どういう事ですか龍誠さん」

「あ、えぇと……」

 

龍誠はダラダラと汗を掻きながら、悲しそうな表情で聞いてくるアーシアに答える。

 

何だろう。浮気を問いただされる男の気分だ。そう思いながら戦兎に助けを求めるが、知らん知らんとスマホいじりに行かれてしまった。

 

何て薄情な奴だと、龍誠が呟いたその時。

 

「皆仲良くやっているみたいで何よりだ」

『え?』

 

突然の声に全員が声の方を見た。そこにいたのは、リアスと同じ紅の長髪を揺らし、メイド服に身を包んだグレイフィアを連れた男性。

 

「お兄様!?」

『魔王様!?』

 

リアスは驚きながら兄であり、現魔王のサーゼクスに駆け寄る。それを見ながら他の皆は頭を下げようとするが、サーゼクスはそのままで構わないと言って制止した。

 

「グレイフィアを連れて突然どうされたんですか?」

「いや、来週授業参観があるだろう?自慢の妹の勉学に励む姿を見せてもらおうと思ってね」

 

そう言って取り出したのは授業参観案内プリントだ。それを見てリアスはワナワナ震えながら、

 

「で、ですがお兄様には魔王の仕事があるでしょう!?」

「ハハハ。妹の為なら仕事を前倒しして、帰った後に多少徹夜になってでも時間を作るさ」

 

そんな二人のやり取りに、ゼノヴィアは目を細める。

 

「あれが現魔王の一人、サーゼクス・ルシファーか」

「知ってるのか?」

 

龍誠は、その呟きに反応して聞いた。龍誠としてはリアスの結婚騒動の時に少し話したくらいだが、結構気さくな人だと言う印象を持っているが、

 

「あぁ、教会でもその強さに関しては有名だった。恐らく世界のあらゆる神話体系を含めた強さのランキングでもかなり上位にくい込むと言われていた。クリムゾンサタンと言えば有名だぞ?」

「そんな凄い人だったのか」

 

超越者の一人とも言われているしね。と祐斗が会話に入ってくる。聞き慣れない言葉に、龍誠が首を傾げると、

 

「強さランクをつけた場合、悪魔なら僕達が分類される下級悪魔、中級悪魔、部長やライザー氏が分類される上級悪魔、そして最上級悪魔と分類されてる。因みに天使達なら悪魔の部分を天使に入れ換えれば良いし、堕天使も同様に分類されてる。大体はこれが強さの基準になるんだけど、悪魔にはその上がある」

 

それが超越者だよ。と祐斗は言いながら更に言葉を続ける。

 

「極々稀に悪魔にカテゴリーして良いのかすら怪しいほどの強さを持った悪魔がいる。現在は今いるサーゼクス様。後は現ベルゼブブである、アジュカ様。後もう一人いるらしいんだけどそっちは公表されてないんだ。一般的にはこの三人が分類されてるね」

 

部長のお兄さんってそんなに凄かったのか……と龍誠が感心してしまう。そんな姿に朱乃は苦笑いを浮かべながら、

 

「言っておきますが、龍誠君や祐斗君に戦兎君も若手の下級悪魔としては充分に逸脱した存在ですわよ?」

「そ、そうなんですか?」

 

朱乃の言葉に、龍誠はまたもや首を傾げてしまう。だが通常ならあり得ない存在のはずの聖魔剣や、上級悪魔を倒した龍誠、更に上級堕天使相当であったはずのコカビエルを倒した戦兎等、充分過ぎるほどあり得ない存在ではあるのだ。

 

そんな眷属達のやり取りを背にしてリアスは、まだサーゼクスに抗議している。

 

「ですがお兄様は魔王です!妹とは言え一悪魔にこのような事をしては示しが!」

「いや、これは同時に仕事でもあるんだよ」

 

え?と疑問符を浮かべたのはリアスだけではなく、他の皆もだ。それに対してサーゼクスは、

 

「前回のコカビエルの一件は記憶に新しいと思うが、それに関して堕天使側は謝罪と、三大勢力による会談を申し込んできた」

『っ!』

 

基本的に、三大勢力は仲が良いとは言えない。寧ろ不仲である。先の大戦からそれなりに時が経ち、取り敢えず戦争は休戦状態だが、基本的に不干渉を貫いている。それ故に今回態々会談を開くと言うのは凄いことなのだ。しかも、

 

「会場はここ、駒王学園だ」

『えええええ!?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、突然すいません」

「いえいえ~」

 

さて、サーゼクスとグレイフィアの突然の訪問があった日の夜。戦兎の家に二人は居た。

 

何故かと言うと、今回の訪問はギリギリに決まったのもあり、宿泊施設がなかったのだ。なので戦兎が家も広いので来ないかと提案し、こうなった次第だ。

 

今日は美空は今度やる映画の撮影だかで居ないので、母は突然な客にもニコニコしながら迎えてくれた。

 

「しかし魔王様って言う割には結構フレンドリーだよな。あの人」

「確かにな」

 

お茶を啜りながらそんな光景を眺める龍誠と戦兎。その後も母の手料理に舌鼓を打つ姿や、失踪した父の古着を化して貰う姿に、本当に凄い人なのかと言う気持ちが若干湧き掛けた夜。

 

「いやぁ、ここは良いねぇ」

 

そう言ってサーゼクスは、地下の研究施設に隣接したスペースに布団を敷き、寝る準備をして居た。因みにグレイフィアは母と同じ部屋。

 

彼曰く、こういう秘密基地じみたものは今でも心踊るらしい。ホントにフレンドリーな人である。

 

「それにしてもライザー君を倒したりコカビエルを倒したりと凄いね。君達は」

「コカビエルはともかくライザーを倒したのは予想外だったんですか?」

 

そう戦兎が問うと、サーゼクスは少し悩んでから、

 

「正直に言えばね。僕的にはいざとなったら君達眷属とリアスを別の場所に跳ばして逃げてもらおうと思ってたから」

 

絶対に大問題じゃないか、と苦笑いしつつ戦兎はサーゼクスを見る。

 

リアスと同じ紅の髪に、横顔は確かに似ている気がする。その視線に気づいたのかサーゼクスはこっちに笑みを向けながら、

 

「どうかしたのかい?」

「あ、いや……そう言えば魔王ってどんな感じなんですか?」

 

いきなりの事に動揺し、戦兎がそんな事を思わず聞くと、龍誠も俺も聞いてみたいと言ってきた。

 

サーゼクスは、ふむと一言言うと、

 

「退屈なものさ。中々悪魔と言うのは昔からの伝統に拘る種族でね。勿論伝統が悪いとは言わないが色々あるからね」

 

アハハ……と力なさげに笑う表情は若々しい見た目には似合わない。それほど魔王と言うのは大変なのかと二人が推察すると、

 

「でもやりがいは大きいよ。そうだね……二人も魔王になってみたら分かると思うが?」

『いやいや』

 

絶対無理だろ。と戦兎と龍誠は首を横に振るが、サーゼクスはニコニコしたまま、

 

「本気だよ?と言うか魔王は誰でもなれる。いや、勿論強さや冥界の悪魔たちからの信頼等色々必要だけどね。いずれは転生悪魔だろうが純血だろうが関係なく魔王になれるようになったら良いと僕は思ってるし、しようと思ってるよ」

 

それに……とサーゼクスは更に続けて、

 

「僕は個人的にもこれからの若者にはそれにふさわしいくらいの悪魔になってほしいと思っている。伝統に囚われているだけでは冥界に未来はない」

 

そう言いきる姿に、戦兎と龍誠の二人は息を飲む。その体から発せられるオーラは、さっきまで見ていた気さくな男ではなく、魔王としての顔なのだろう。これがそうなのかと、二人が思う中、サーゼクスはニコリと笑って、

 

「そうだ、君達に魔王の心構えとはなんなのかを教えてあげようか?」

『心構え?』

 

魔王になる気はないのだが、個人的には気になる。そう二人は言うと、サーゼクスは口を開き、

 

「それはね……」

 

ゴクリと二人の喉が鳴り、そして!

 

「ひ・み・つ、だよ」

『……はぁ!?』

 

ここに来てどういう事!?と二人がサーゼクスを見ると、サーゼクスは楽しそうに笑ってから少し真面目な視線を向け、

 

「昇ってくると良い。様々な事を体験して、良いことも悪いことも見て自分の糧にして来なさい。君達がもっと強く、そしていずれは冥界を支える悪魔の一人になったと判断した時に教えてあげるよ」

 

一体何時になるんですか……と龍誠がそれを聞いてぼやくと、サーゼクスは笑う。

 

「なぁに。千年掛かったって良いさ。悪魔は長生きだ。それに余り若いうちから権力を手にすると苦労が多いし、まだ暫くは魔王の座は譲らないよ」

 

そうサーゼクスが笑うと、戦兎と龍誠は肩を落とす。きっとこの人には一生勝てない気がする。

 

そんな気がして、ならなかったのだった。



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夏のプール

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦「サーゼクス様の来訪から暫く。俺達はまた平穏を満喫していた」
龍「しかしこっちではまた暑くなってきたな」
戦「現実では冬だけどなぁ。悪魔でも暑い寒いは辛い」
龍「だよなぁ……」
戦「とまあそんな感じの23話スタート!」


蝉が鳴き、太陽が照りつける。

 

最早夏は目の前。と言うか最早夏だ。暑すぎる。こういう日はエアコンの効いた部屋でゆっくりしたい。悪魔になっても暑いものは暑いのだ。

 

だが今日は良いだろう。何せ今日は……

 

「さぁ!プール貸し切りよ!」

『イェーイ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、何故駒王学園のプール貸し切りなのかと言うと、本来は来週からプールの授業なのだが、その前に掃除しなければならない。冬を越したプールの汚れはヤバイからな。

 

なのでオカルト研究部が良ければ掃除を代償にプールの貸し切りを生徒会が許してくれたのだ。

 

因みに、

 

「流石にビルドの能力に掃除が出来るのは無いわよねぇ……」

「ありますよ?」

『あるの!?』

 

と言うやり取りが行われ掃除機フルボトルを用いたお陰で三十分も掛からず終わったのはまあ余談。

 

さてプールと言ったら水着である。野郎の水着なんかは別に海パンで良いのだ。問題は女子である。しかもスタイルも美貌も学園でトップクラスのリアスと朱乃、それに次ぐゼノヴィア。そして美貌なら負けていないアーシアと小猫がうちの部活にはいるのだ。それだけでも楽しみと言うもの。そう思いながらいると、

 

「お待たせ」

 

そう言って既に着替えて待っていた男性陣の元にリアスたちがやって来た。

 

リアスと朱乃は露出の激し目なビキニスタイル。アーシアと小猫はご丁寧に平仮名で胸に名前を書いてあるスク水だ。ゼノヴィアがいないが……まあすぐに来るだろう。

 

しかしこうしてみてても壮観だ。動く度にバルンバルン揺れる胸も凄い。戦兎も少し恥ずかしそうにそっぽ向いているが、バレバレである。

 

そんな風に龍誠が見ていると戦兎に脇腹に肘を入れられた。酷い友人である。

 

そんな中始まったオカルト研究部の貸し切りプール開きであるが、そこで判明したことがある。それはアーシアと小猫はカナヅチであると言うことだ。

 

アーシアが泳げないのは驚かないが、小猫が泳げないのは意外だ。運動神経は良さそうだし。そう思いながら龍誠はアーシアに泳ぎを教え、小猫はプールサイドで座っていた。龍誠は、小猫ちゃんにもと言ってくれたが、そんな野暮なことはしない。

 

空気は読めるのでお断りしたのだが、プール入れないのは自分だけなので少し手持ち無沙汰だ。リアスからも少し位入ってみたらと言われたが、やはり怖い。そこに水中から顔を出したのは戦兎だ。

 

「しかしお前がカナヅチだったとはな」

「嫌味言いに来たんですか?」

 

ムッとした表情で戦兎に聞く小猫。腹が立つ事にこの男は泳げる。クロール、背泳ぎ、平泳ぎ、バタフライ、古式泳法とホントに性格を除けば完璧超人である。

 

「別に難しいもんじゃないぜ?そもそも泳ぐって言う行為は物理学の応用さ。姿勢や動きなんか全部計算し、効率的にやれば良い。それに基本的に人間の体は水には浮くように出来てるしな。余程変な動きしなきゃ平気だよ。まぁ……」

 

部長や姫島先輩よりは浮きにくそうだけど。要らんことまで言った戦兎に小猫はパンチを飛ばすが、スィ~っとプールの中央の方に流れていかれてしまい、小猫は歯軋りをするしかない。

 

そんな光景に、戦兎はケラケラ笑いながら、

 

「ほら、来いよ」

「はい?」

 

手を伸ばしながらこっちに戻ってきたので、小猫はポカンと見ている。それに対して戦兎は、

 

「この俺独自の理論でお前を泳げるようにしてやるよ。そうだな……お前の身体能力を持ってすればすぐに泳げるようになるさ」

 

フフン、と偉そうに言う戦兎だが、取り敢えず気を使ってくれたのは間違いないらしい。ならば、

「ではお言葉に甘えて……」

 

と小猫は言って戦兎の手を取る。すると、

 

「ですが人を貧乳呼ばわりしたのは許しません」

「誰も言ってねぇイデデデデデデデ!」

 

ギュウウウウウ!っと小猫は黙ってルークの握力で戦兎の手を握り、戦兎の手は悲鳴を上げた。

 

その際、悲鳴をあげた拍子に小猫をプールに引きずり込んでしまった戦兎は、心の準備もなくプールに入れられてパニックになった小猫に、更に手を強く握られて手が出してはいけない音を出して、小猫の特訓の前にアーシアに手を治して貰う羽目になったのだが、自業自得と言うやつである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ、偉い目に遭ったぜ」

「戦兎先輩が余計なことを言うからです。でもまぁ……ありがとうございました」

 

結論から言うと、戦兎の指導は成功だった。最初は水に慣れるところから始めて、徐々に浮かびながらプールの中を動く感じで行われた特訓により小猫は泳げるようになった。流石にまだぎこちないが、ゆっくりと20m位は泳げるようになった。さっきまで全く泳げなかった小猫にとって大きな進歩だ。

 

後は慣れれば25m泳ぎ切れるようになるだろう。なので戦兎に文句を言いながらも小猫は感謝を伝えた。

 

「いやいや、塔城も呑み込みが早かったからな」

 

そう言いながら戦兎はさっきからずっと泳ぎ続けている祐斗を見る。そこから視線を外すと、同じくプールサイドで休憩中の龍誠とアーシアが見える。いや、アーシアは寝ているようだ。

 

「でも結構戦兎先輩は面倒見は良いですよね」

「あ?俺ほど優しい男もいねぇだろ?」

 

いやそれはないですね。と小猫は返してしまう。まぁ確かに、クラスで聞いていた様に変人ではあるらしい。だがそれでも、基本的に面倒見は良いし、正義の味方に憧れてるだけあってこっちが困ってるときは、手を貸してくれる。

 

こうして見ても顔立ちは整ってるし性格さえ直せばモテそうなのだが……と思ってしまう。本当に残念な先輩だ。

 

「どうかした?」

「いえ、ホントに残念な人だと」

 

どういう意味じゃい!と戦兎が叫ぶ中、龍誠はアーシアにタオルを掛けてやる。幾ら暑いとは言え日陰になにも無しじゃあれだ。そう思っていると、キーキー鳴きながら小さなコウモリがこちらに飛んできた。

 

悪魔は基本的に使い魔を持つ。そして様々な雑用をさせるらしいのだが、戦兎や龍誠、アーシアにゼノヴィアにはいない。まぁ最近加入したゼノヴィアはともかく、他の三人に居ないのは何故かと思われそうだが、それは単純。ここ最近事件に巻き込まれ過ぎて暇がないのだ。事件を解決してもその反動でのんびりしすぎしまい、すっかりズレ込んでしまっている。

 

まあそんなことは良い。その彼女の使い魔は、足で掴んでいた瓶を龍誠に渡してきた。

 

何だ?と思いつつリアスを見ると、手招きをしており、それに従って龍誠はリアスの元に行く。

 

「どうしたんですか?」

「悪魔も日光は天敵なの。だから日焼け止めクリーム塗って欲しくて」

「っ!」

 

ガツン!と龍誠はカナヅチで殴られたような衝撃が走った。

 

男の自分が女性に日焼け止めクリームを塗る。これは様々な本、ゲームなどでイベントCG付きで起こるご褒美イベントでよく見られるあれなのだろうか?

 

良いのだろうか?勿論リアスの肌は柔らかそうで真っ白だ。この肌を守るために日焼け止めクリームは必須だろう。だがそれを自分が塗って良いのか?触って良いのか?

 

そう龍誠が思っている間に、リアスはビキニのトップスを外してしまうと、ブルンと豊満な胸を揺らして、そのままうつ伏せになる。

 

「じゃあ背中からお願いね」

「あ、はい……」

 

もうやることは決定なのねと思いつつ、龍誠はオイルを手に取り馴染ませると、ゆっくりとリアスの背中に塗っていった。

 

「んん!」

「っ!」

 

不味い。色んな物が崩れていきそうだ。だがそれでも龍誠は耐える。必死に崩れそうな理性を抑え、息を整えていく。とにかく今は落ち着かないとダメだ。別に背中にオイルを塗るだけなのだから、なにもやましくなんてないんだから。

 

そうして背中に塗り終えると、リアスはうつ伏せのままこちらを見る。

 

「ふふ、何か龍誠に征服されちゃった気分だわ」

「いっ!?」

 

なんとも官能的な言い方に、龍誠は鼻から鮮血が出そうな気分だ。

 

悪魔稼業にも、所謂サキュバス的なのを専門とするものもいるらしい。勿論リアス達は違うが、龍誠を混乱させるには十分だった。

 

だがそれだけでは終わらない。リアスは体を起こし、胸を見せつけながら龍誠に、

 

「胸にも……塗る?」

「ふぁ!?」

 

胸ですと!?と龍誠は口をパクパクさせながら聞き直す。聞き間違えとかじゃない?

 

そう思いつつリアスを見るが、冗談ではないらしい。しかも、

 

「確かにここじゃ恥ずかしいわね。なら……二人っきりに慣れる場所で」

「二人きり」

 

ゴクリと、龍誠は思わず唾を飲む。二人きりで胸にオイルを塗る。正直それをやられたら我慢できる気がしない。確実に襲い掛かる。アレ的な意味で。

 

そんな時、

 

「あら、リアスのが終わったなら次は私にして貰おうかしら」

「いっ!?」

 

背中に感じる突然の圧倒的なボリュームの柔らかさ。更に背中に感じる柔らかな突起。待て待てこれって!?と龍誠が振り替えると、そこには悪戯っぽそうな笑みを浮かべた朱乃がいた。

 

「あ、朱乃さん!?」

「さん付けなんて寂しいわ。朱乃って呼んでいいのよ」

「うひぃ!」

 

朱乃はSっ気のある笑みを浮かべながら、龍誠の耳を舐める。ゾクゾクと震える中、龍誠の顔の真横を、

 

「ひぇ!」

 

滅びの魔力で形成された球体が高速で通り抜け、背後で爆発した。

 

「あらあら。怖いお姉さまがいたわね」

「朱乃?どういうつもりかしら?」

 

こういうつもりよ?と朱乃は更に龍誠を抱き締め、リアスはコメカミがビクンビクンと躍動させる。

 

「朱乃?貴女、私が主だと言う事を忘れてないかしら?」

「あらあら。男の子の取り合いに主であることを持ち出すなんて少々大人げないわねリアス」

 

朱乃はそう言いながらもバチバチと放電させ、リアスと対峙した。そして!

 

「大体貴女は男が嫌いだったはずでしょ!」

「貴女だって男は皆同じに見えるっていっていたわよ!」

 

次の瞬間雷と滅びの魔力がぶつかり合い爆発。咄嗟に龍誠は転がりながらプールから逃げ出す。

 

「なんなんだよもぉおおおおお!」

 

最近こんなんばっかだ。そう思いながら龍誠は、プールから出てすぐの物置に飛び込んだ。遠くでドッカンバッタン聞こえるが、聞こえない聞こえないと言い聞かせて現実逃避に入る。そこへ、

 

「む?万丈 龍誠か?」

「いぃ!?って何だ。ゼノヴィアかよ」

 

まさか二人が追っかけてきたのかと、龍誠は体を強張らせたが違ったようで、水着を着たゼノヴィアが立っていた。そう言えばさっきからゼノヴィアの姿がなかったなと思いつつ、

 

「つうか随分遅かったな。どうしたんだ?」

「あぁ、水着と言うのは初めて着たのでね。着るのに手間取ってしまった。似合うかな?」

 

そう言ってゼノヴィアはクルリとその場を回って見せるが、リアスや朱乃ほどはないがスタイルも良いし、鍛えているらしいのでウェストも引き締まり、キュッと上がった良い尻をしている。

 

よく似合ってるぞ。と言ってやりつつ龍誠は苦笑いを浮かべ、

 

「ただ今はプールに行かない方がいい。部長と朱乃さんが喧嘩始めちまったからさ」

 

ドォン。と音が響く中そう言うと、ゼノヴィアはならば今がチャンスか、と言った。

 

「チャンス?」

「あぁ、万丈 龍誠。君に頼みがあってね」

 

別に龍誠で良いぞ、そう龍誠が伝える。色々あったが今は仲間な訳だし。そう言われたゼノヴィアは、なら龍誠と言い直し、次の瞬間耳を疑う言葉を発っする。

 

「私と子作りしよう」

「……は?」

 

実際は十秒くらい固まった。何をいっとるんだこいつはと。その反応にゼノヴィアは首をかしげ、聞こえなかったのかと思いもう一度、

 

「私と子供を作ろう。龍誠」

「……はぁ!?」

 

何がどうなってそうなった!?と流石の龍誠も困惑する。それを見て、そう言えば何も説明してなかったなとゼノヴィアは思い直し、説明してくれた。

 

「教会にいたころの私はただ神に仕えられればそれで良いと思っていた。だが今は悪魔だ。そして思ったんだよ。神が居なくなった今、私には何もやることがないとね」

「そ、そうなのか?」

 

色々探せばあると思うぞ?と龍誠が言うとゼノヴィアは、

 

「あぁ、ただ教会に居た頃は何も望まなかった。その性か全く目標が思い付かないんだ。そう考えると私は腕っぷし以外何も持っていなかったからね」

「じゃ、じゃあその腕で部長に貢献とか……」

 

それでは教会の時と変わらない。そうゼノヴィアは言う。

 

「それに悪魔は長生きだ。目的や目標は沢山あった方がいい。後実を言うと女性としての幸せと言うものに憧れがあるんだ」

 

子供を産み育てる。それもまた女性としての幸せだろう?と言うゼノヴィアに龍誠は思わず言葉を詰まらせる。

 

暴論に聞こえるが、一つの真理のようにも感じてしまう。ある種の才能なのかもしれないが、

 

「じゃあなんで俺と何だ?うちの部活には男が後二人いるじゃねぇか」

「うむ。やはり子供には強く、元気であってほしい。その点君なら元気で強い子供を孕ませてくれそうだ」

 

言い方があるだろ……と龍誠はジトーと言う眼で見るが、ゼノヴィアは気にせず、

 

「それに君が一番経験豊富そうで性欲もありそうだ。木場はその辺が淡白そうだし桐生は……うん」

「いや俺も経験ねぇけどな?」

 

龍誠の言葉にゼノヴィアは眼を見開く。何故驚くんだと聞くと、

 

「いや……アレほどの美女達に言い寄られてなにもしていないとは……まさかお前もそこまでなのか?」

「いや正直ギリギリだけど……ってなに言わせんだ!」

 

なら仕方ない。龍誠が怒るのを他所に、ゼノヴィアは言った。

 

「ここまで言ってしまったならお互い初めてでも良しとしよう」

「なに言ってんだって言うか脱ぐなバカ!」

 

元々来ている量が少ない水着だ。あっという間に裸になってしまうとゼノヴィアは龍誠に詰め寄る。

 

「日本には据え膳食わねば男の恥と言う言葉もある!これでも鍛えてるし体には自信があるんだ!覚悟を決めろ龍誠!」

「ちぃ!」

 

飛びかかってきたゼノヴィアを龍誠は押し止めた。

 

「落ち着け!戦兎はああ見えてムッツリだからそれでも……」

 

あいつもいい加減春が来たって良い筈だ。そう思いながら言うと、ゼノヴィアは少し悩んでから、

 

「……なんだ」

「え?」

「桐生は苦手なんだ!お前に言ったのはお前が一番話しやすかったのもあるんだ!」

 

確かにこいつら今まで部室でも話してる姿を見たことがない。出会いといい、その後も決して良好とは言えなかったし仕方無いのだろうが……

 

「悪魔は出生率が低いらしいがお互い転生悪魔だしそこまでじゃないだろう」

「待て待て待て!俺はまだ父親になる覚悟なんてないぞ!」

「大丈夫だ!私が基本的に育てる。だが父親の愛情を欲したときには遊んであげてほしい」

 

そこまで考えてるのかよ、と龍誠は背筋に冷たい汗が流れる。取り敢えずここから逃げねば……

 

「何してるのかしら?」

「え?」

 

背中から掛けられた声に龍誠は全身を強張らせ、ゼノヴィアはポカンとしながら、

 

「ああ、部長か」

「部長!?」

 

龍誠が振り替えると、正確にはリアスだけではなく、朱乃やアーシアまで立っていた。

 

「もう一度聞くわね?何してるのかしら?」

「いやそのぉ……」

 

龍誠は思わず口ごもる。いったいどう説明すれば良いんだ?するとゼノヴィアは、

 

「心配しないでくれ部長。ただ私と龍誠は子作りしようとしてただけだ」

『……はい?』

 

リアス、朱乃、アーシアの三人は呆然とした表情を浮かべ、龍誠を見る。

 

「そう。そういうこと」

「ち、違うんです誤解なんです!」

 

そう言って龍誠は思わず後ずさる。なにせリアスがおっかない。だがどちらかと言えば龍誠は襲われていたのだが、何を言っても言い訳にしかならなさそうだ。自分でもそう思う。

 

「まあ良いわ。少しお話ししましょう」

「お、おたすけぇええええ!」

 

パン!と龍誠は咄嗟に逃げ出そうとするが、リアスに捕まりズリズリと引っ張られてしまう。

 

「あらあら」

「私だって……龍誠さんが望むなら」

 

朱乃笑ってるけど眼が笑ってないし、アーシアは悲しそうな顔をしていた。

 

「ふむ、これは中々ライバルも多そうだね」

 

なに言ってんだお前!と龍誠は叫ぶが、リアスに睨まれて大人しくする。もうダメだ、おしまいだと思いながら外に出たとき、

 

「なんだ。随分賑やかだな」

『っ!?』

 

外に出たとき、空からシュタっと着地した姿と声に、プールサイドでのんびりしていた戦兎や小猫、泳ぐのを終えて上がってきていた祐斗も含め、注目していた。

 

「てめぇはヴァーリ!」

 

戦兎は咄嗟にプールサイドに置いてあった鞄からドライバーとフルボトルを取り出す。

 

「待て、俺は戦いに来たんじゃない。だが桐生 戦兎!お前に聞かなければならないことがある!」

 

突如襲来したヴァーリは、戦兎に向かって叫び、なにをだ?と戦兎は首を傾げた。そして、

 

「おまえ……みーたんとはどういう関係だ!」

『っ!』

 

ズコッと見ていた全員がずっこける。な、何故その話を?となっていると、

 

「ま、まさかカカカカカカカカ彼氏何て言う訳じゃないだろうな!」

「あぁ~」

 

妹だ……と言うのは簡単だ。だが、アレはガチのファンだ。アレに対して身内バレは危険なのだ。身内バレからの身内がストーカー被害、そして本人の住所がバレるという一連の流れは良く聞く話だ。なので、

 

「何でみーたんの話を?」

「お前と一緒に歩いてる写真を見つけた!」

 

何時のだろう?結構何だかんだで一緒に買い物に出てるからなと思いつつ、

 

「多分それはうちの妹で、他人の空似だ。良く間違われる。俺もツナ義ーズの佐藤 太郎に間違われるしな」

 

そう戦兎が言うと、ヴァーリは本当か?と聞いてくる。なので、本当だと言ってやると、ヴァーリは心底安心した表情をした。

 

「そうか、安心した。ならばもう用はない」

「いや俺にはあるぞ」

 

戦兎は立ち上がり、ヴァーリを見据える。

 

「スクラッシュドライバーをどこで手にいれた?」

「なに?」

 

戦兎の言葉にヴァーリは片眉を上げ、戦兎を見た。

 

「それはまだ研究段階だった。とても完成させられない!なのに何故お前が持っている!」

「さぁな。俺はただ受け取っただけだ。力が手に入ると言われてな。だが誰だかは知らない。見たこともないし、どういうわけだか思い出そうとしても顔に靄が掛かったようになってしまってな」

 

成程。そいつがスクラッシュドライバーを完成させたやつだと考えて良さそうだ。なら次は、

 

「じゃあスクラッシュドライバーを渡せ、それは危険な代物だ。お前が何者であっても使って良いもんじゃない」

「無理だな。俺にはこの力が必要なんだ。それと危険なのは百も承知している」

 

そう言いながらヴァーリはスクラッシュドライバーを出すと腰に装着する。

 

「まあ、力付くで奪うというなら相手になってやるが?」

「上等だ」

 

戦兎はヴァーリの挑発に乗る形で、ビルドドライバーを装着した。それを見た龍誠もリアスの手から離れ、プールサイドに置いてあったビルドドライバーを付ける。

 

「戦兎。手を貸すぜ!」

 

コカビエルとの僅かな戦いでも、こいつの強さは底が知れなかった。それに対してヴァーリは不満を言うどころか、

 

「良いじゃないか。最高の祭りになりそうだ」

 

ヴァーリは笑みを浮かべ、ロボットスクラッシュゼリーを出し、戦兎はラビットフルボトルと、タンクフルボトルを。龍誠はドラゴンフルボトルとクローズドラゴンを持つ。

 

「皆は水着だから下がって」

 

戦兎がそういうのを合図に三人はベルトにそれぞれアイテムを挿した。

 

《ラビット!タンク!ベストマッチ!》

《ウェイクアップ!クローズドラゴン!》

《ロボットゼリー!》

 

三人はそれぞれレバーを操作し、ポーズを構える。そして!

 

『変身!』

《鋼のムーンサルト!ラビット!タンク!イエーイ!》

《Wake up burning! Get CROSS-Z DRAGON!Yeah!》

《潰れる!流れる!溢れ出る!ロボットイングリス!ブラァ!》

 

それぞれ変身を終えると、まず戦兎が走り出した。

 

「おぉ!」

「っ!」

 

ヴァーリは戦兎の拳を、片手で受け止めると、ツインブレイカーのアタックモードで殴る。

 

「ぐぁ!」

「おらおらどうしたぁ!」

 

何度も何度も殴り、戦兎が後ろに後ずさった所に蹴りをかまして吹き飛ばした。そこに、

 

「おぉおおおおお!」

 

龍誠が割って入り、ヴァーリの顔面を殴り飛ばす。

 

「くっ!」

「まだまだ!」

 

怯んだヴァーリに、龍誠は追撃を掛けるが、ヴァーリは素早く体勢を戻すとツインブレイカーを、ビームモードに変えながら龍誠の拳を避けて、銃口を腹部に押し付けて撃つ。

 

「がはっ!」

「まだ終わりじゃねぇぞ!」

《シングル!シングルフィニッシュ!》

 

ツインブレイカーにロボットフルボトルを挿したヴァーリは、銃口を龍誠に向けて黄色いエネルギー弾を連続で発射。それにより龍誠は後方に吹っ飛び、そのまま地面に転がる。

 

「くそ!」

《Ready Go!》

 

戦兎は起き上がると、素早くレバーを回して空中にジャンプ。そこに、

 

《Ready Go!》

「おぉおおおお!」

 

負けじと龍誠も起き上がり、レバーを回して飛び上がると、

 

《ボルテックフィニッシュ!》

《ドラゴニックフィニッシュ!》

 

二人が同時に放った必殺の蹴りは、ヴァーリに向けて真っ直ぐ飛んで行く。しかし、

 

「ならこっちもだ」

《スクラップフィニッシュ!》

 

ヴァーリはベルトのレバーを下ろすと同時に、右足にエネルギーが集中する。そこからヴァーリも飛び上がり、肩や背中からゼリー上の物体を撒き散らして推進力を得ながら、二人の蹴りとぶつけ合わせると、凄まじい衝撃波と爆音が辺りに飛んで行く。

 

そしてそれが収まると、

 

「がはっ!」

「げほっ!」

 

ザボン!とプールの中に落下した二人は、変身も強制解除させられてしまっている。

 

「二人とも!」

 

プールから顔を出すのも一苦労な状態になっていた二人を、祐斗が助けている中、ヴァーリは消しゴムフルボトルを出す。

 

「良いことを教えてやる。この世界にはもっと強いやつがいる。おまえ達は今のままでは……まあコカビエルと渡り合ったり倒したのを考えれば千桁は余裕で切れる筈だ。だがこれからも戦い続けると言うのなら、もっと強くなることだな」

《ディスチャージボトル!ツブレナーイ!ディスチャージクラッシュ!》

 

ヴァーリはそう言い残し、姿を消してしまった。

 

「なんつう強さだよ」

「あれがスクラッシュドライバーの強さか……」

 

プールから引き上げてもらい、アーシアから治療を受けながら、龍誠と戦兎は呟く。

 

龍誠には昇格(プロモーション)があるし、戦兎にまだスパークリングもある。

 

だが結局今の状態でも、ヴァーリは全く本気を出していなかった。

 

世界は広い。コカビエルを倒せて安心していたが、まだまだ落ち着けなさそうだ。

 

そう思いながら、戦兎は頭をガシガシと掻くのだった。



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魔王少女と引きこもり

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦「突如襲来したヴァーリに敗北した俺たちだが、それだけに囚われているわけにもいかない。なにせ学校生活は続くんだからな!」
龍「と言いつつ結構悔しがってる戦兎でしたっと」
戦「うるさいわ!と言う感じの24話スタート!」


ガヤガヤと、スーツ等の正装を身に付けた大人が校舎の中を歩く。いつもは学校を見る機会がない為か、興味深そうに見て回っていた。

 

そんな大人達の間を通り抜けるのは、戦兎と龍誠にアーシアの三人だ。

 

先程まで行われていた授業参観は、何故か英語の時間に紙粘土と言うものが起きたものの無事終了し、現在戦兎の母は、担任の教師と話しているので三人はリアス達と待ち合わせている校舎の外にあるベンチに向けて歩いていた。すると、

 

「何か騒がしくね?」

「そうだな」

 

勿論今日みたいな日は騒がしい。それは当然だ。だが、それにしたって歓声や、指笛と言うのは可笑しい。そう思いその方向に向かうと、

 

「アレってまさか……」

「魔法少女ミルキースパイラル7オルタナティブのコスプレか?」

 

目の前にあった光景に龍誠は呟き、戦兎は答える。アーシアはポカーンとしたまま固まっていた。

 

それはそうだろう。なにせ今日みたいな日に何故か見た事のない女性(多分誰かの家族だ)が、魔法少女ミルキースパイラル7オルタナティブと言う作品に登場する、魔法少女のコスプレをして躍り、それをうちの男子生徒が見に集まって騒ぐと言う絵図は、余り宜しい姿じゃない。

 

因みに何故戦兎が、魔法少女ミルキーを知ってるのかと言うと、この間それが実写化したのだが、その際の魔法少女ミルキー役をやったのが美空だったからだ。なので何となく知っていたのだが、何故あの女性はその格好を?

 

と固まっていたところに、

 

「一体これはなんの騒ぎかしら?」

「部長?」

 

戦兎が振り替えると、肩を竦めながらリアスが朱乃を連れてやって来た。今来たばかりの彼女は、この状況が飲み込めず困惑しているようだ。なので戦兎が事情を説明していると今度は、

 

「おうおう!何してやがんだお前ら!こんな日に騒ぎなんか起こすんじゃねぇ!」

 

シッシと集まっていた連中を追い払うのは、何故か全身に包帯を巻き、絆創膏まであっちこっちに張り付けた匙だ。

 

「あいつどうしたんだ?」

「さぁ?」

 

あいつも悪魔だし色々巻き込まれているんだろうか?何て思ってるうちに匙に集まっていた連中を追い払い、今度はその騒動の中心となっていた女性を見た。

 

「あのですね?服装は自由とはいえもう少しTPOを考えていただかないと」

「えぇ~?これが私の正装だもん」

 

いやどんな正装だと、戦兎と龍誠が突っ込みをいれる中、リアスが突然あぁ!と声をあげる。

 

どうしたのかと顔を見ると、またまた今度はソーナがやって来た。

 

「何を騒いでいるのですか?匙。こう言った自体にはすぐに対処しなさいと……」

「ソーたんみーっけ!」

『え?』

 

ゴゴゴと怒りの炎を上がらせるソーナだったが、その彼女にコスプレ少女は抱きつき、頬擦りまでし始めた。

 

なんだこの人……戦兎と龍誠が、ポカーンとしているとリアスが、

 

「セラフォルー様よ」

「セラフォルー?」

 

龍誠が何処かで聞いたようなと首を捻ると、戦兎は思い出した。

 

「確か四大魔王の……」

「えぇ、レヴィアタンの名を継いだお方よ」

 

じゃああの人も魔王なんですか!?と龍誠が驚くと、その声にセラフォルーは気付き、こちらを見るとにこやかに笑いながら手を振る。

 

「リアスちゃんヤッホー!」

「知り合いなんですか?」

 

まあ兄も魔王なのだから顔見知りで可笑しくはないが、随分親しげだ。そう思いながら戦兎が聞くと、

 

「お兄様とは昔から交流があって、その関係で私とソーナも付き合いがあったのよ」

「更にサーゼクスちゃんのお母様と私のお母様も古くからのお友達なの」

 

つまり一族代々の付き合いらしい。確かにそれならこの親しげな感じも当然かと思いつつ、セラフォルーを戦兎は見てみる。

 

こうして見ても、余り似てない。サーゼクスとリアスは何処となく持ってる雰囲気が似てるのだが、こっちは全然だ。

 

そう思っていると、朱乃はクスクス笑いつつ、

 

「魔王様と言うのは皆さんプライベートでは凄く自由な方達なんですよ。そしてそのご兄弟達は皆さんしっかりものと言われてますわ」

 

そりゃサーゼクス様を見ててもそうなるわな。そう戦兎と龍誠はリアスに若干同情めいた目を向け、彼女は遠い目をした。

 

そんな時、

 

「おや?リアス達にセラフォルーまで何してるんだい?」

「お兄様!?それにお父様まで!?」

 

突如現れたサーゼクスと、彼やリアスと同じ深紅の髪の男性。リアスが父と呼ぶことを考えると、やはりそう言うことなのだろう。という訳で龍誠はソッと戦兎の背後に隠れた。

 

何せ娘の結婚式をぶっ壊した張本人だ。会えば何を言われるか……そう思っていたのだが、リアスの父は龍誠を見てもにこやかな笑みを浮かべて来る。

 

余り怒ってない?そう思っていると、

 

「もうこんな辱しめ耐えられません!」

「あ!待ってソーたん!」

「あ!会長!?」

 

ソーナは走り出し、セラフォルーはその後を追う。ずっとポカーンと見ていた匙も、慌てて追い掛けていった。途中で、いでっ!っと傷が痛んだのか飛び上がりつつ……

 

「なんと言うか、色々と理解が追い付かないんだが」

「俺もだ」

 

戦兎と龍誠はソッとソーナにを送ると、サーゼクスがリアスに話し掛けてきた。

 

「そうだリアス。丁度君に話しておきたいことがあったんだ」

「話ですか?」

 

ここではなんだし少し場所を移そうか。そう言われてリアスは朱乃と共にサーゼクスについていくことになり、

 

「俺達も行くか」

「だな」

 

戦兎も龍誠とアーシアを連れて別の場所に向かって歩き出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と言うことがあった次の日である。戦兎は龍誠とアーシアと共に部室に行くとリアスから、

 

「これからもう一人のビジョップのところに行くわよ」

 

と言われ、どう言うことかと聞く。すると彼女曰く、グレモリー眷属には、アーシアの他にもう一人ビジョップの眷属がいたらしい。だが余りにも力が強すぎた為、暴走の危険性を孕んでおり、今まで封印されていた。と言っても別に動けなくされてたとかではなく、一室に入れられていただけで、夜には外に出ることもできたらしい。封印と言うよりは、他者に危険を及ぼさないように、生徒達に会わせないようにしていた、と言う感じだろう。

 

しかし、最近のリアス達の活躍を加味して、今の彼女達なら万が一暴走しても対処出来るだろうと判断され、この度そのビジョップの子を解放することになったらしいのだが、何故かリアスや前からのグレモリー眷属の皆は苦い顔をしていた。どうしたのかと戦兎は首を傾げながら言うと祐斗が、

 

「その子は引きこもりでね。出ても良いと言われて素直に出てくれるかが……」

「ヘタレですので」

 

ヘタレねぇ……しかも引きこもりか。いやまあ引きこもりの方が、昼間は封印されてても困らないかと戦兎は思う。

 

これでアグレッシブなやつだったら悲惨だったに違いない。そんなことを思いながら、リアスに連れられてきたのは、部室がある旧校舎の一角。テープで厳重に閉ざされている一室があったのは知っていたが、ここにいたようだ。

 

そしてリアスは、テープを掴んで引っ張るとテープは霧散。そのまま彼女は扉を開けると、

 

「だ、誰ですかぁあああああああ!」

 

空気が震えるほどの大声に、皆は思わず耳を塞ぐ。

 

「すげぇ声だな」

「耳いてぇ」

 

戦兎と龍誠は口々に言いながら部屋を覗き込むと、そこにいたのは小柄な金髪ブロンドの少女が、腰を抜かしていた。

 

「また随分可愛い子が出たぞ……」

「確かに」

 

戦兎にしては珍しく相手の容姿を褒め、それに対して龍誠は頷く。そんな時、

 

「まあ男の子なんだけどね」

『……はい?』

 

リアスが発した言葉に、戦兎と龍誠だけじゃない、アーシアとゼノヴィアまで固まり、

 

「この子はギャスパー・ウラディ。駒王学園の男子生徒よ?」

『えぇえええええええ!?』

「ひぃいいいい!ごめんなさあああああい!」

 

戦兎と龍誠の絶叫に、ギャスパーは涙目で謝罪。だが戦兎はガックシと膝をつき、

 

「俺帰ったらタイムマシンの研究して、完成したら可愛いと言おうとする自分を殴って止める」

 

なんて意味不明な事まで言い出して、前からいるグレモリー眷属の皆は苦笑いを浮かべた。

 

「つうか何で女装してんだよ……」

「だってこっちの方が可愛いんだもん」

 

だもんだとかいうなぁ……と戦兎は更に落ち込む。いつもは見られない光景に他の皆が首を傾げていると龍誠がソッと、

 

「過去にも数える回数だけですが女子の容姿を褒めることがあったんですよ。んで大体皆ギャスパーの容姿に近いんです」

 

成程、ギャスパーの容姿は戦兎的には、結構好みの容姿だったらしい。それが男と言われれば落ち込むのも無理はないか。何て空気が流れている中、小猫は戦兎の肩をポンっと叩くと、

 

「人の夢と書いて、儚いです」

「ぐはぁ!」

 

普段の小猫を弄って遊んでいる戦兎に、天誅が加えられたところで、リアスがギャスパーにもうここから出て良いと言う旨を伝えた。だが、

 

「ぼ、僕はここが好きなので別に出なくて良いです。と言うかお外怖いですし……」

 

何て言い出し、皆がため息を吐く。成程中々重症だと見える。なので龍誠は、

 

「とにかく文句は外出てからだ。行くぞ」

 

と腕を取り、強引に連れ出そうとした次の瞬間、

 

「あれ?」

 

スカッと龍誠の手は空を切り、目の前にいたはずのギャスパーは、何故か部屋の隅っこに頭を隠して尻隠さずの状態でガクブルと震えていた。

 

「え?え?え?」

 

今のは早いとかどうとかの領域ではない。音もなく、そして動いた気配もなく突如全く違うところに現れたギャスパーに、

 

「どう言うことだよ……」

 

龍誠は思わずそう呟くのだった。



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ギャスパーの受難

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦「新年あけましておめでとうございまーす!」
龍「前回までのは!?」
戦「そんなことより新年一発目の投稿なんだから挨拶でしょ!という訳でお気に入り登録が100を越え、総合評価も200を越えました。誠にありがとうございます」
龍「これからもドンドン更新していきますので、よかったら楽しみにお待ちください」
戦「という訳で新年一発目の25話スタート!」


停止世界の邪眼(フォービドウン・バロール・ビュー)?」

「えぇ、それがギャスパーの神器(セイクリットギア)よ。能力は視界に入った有機物無機物を問わずに、時間を止めること」

 

前回引っ張り出そうとしたが、部屋の中をちょこまか逃げ回るギャスパーをどうにか捕まえたものの、結局部室で段ボールに閉じ籠ってしまい、その間に彼についての説明をしてくれた。しかし聞いただけでも凄い能力である。

 

「彼は吸血鬼と人間のハーフでね。だから本来人間にしか宿らない神器(セイクリットギア)を持ち、しかも吸血鬼の力も使える。更にデイウォーカーと呼ばれるタイプで太陽も平気なのよ。恐らくポテンシャルだけならうちの陣営でトップクラス。そのせいか神器(セイクリットギア)の力も勝手に上がっていくみたいなの。そのためか駒のビジョップも何と変異の駒(ミューテーションピース)。ただ優しすぎるのよね」

 

ようはヘタレなんですよね。と戦兎と龍誠は思ったが、わざわざ角の立たない言い方したリアスに突っ込むほど野暮じゃない。なので大人しく頷き、

 

「それでこれからどうするんですか?」

「取り敢えず神器(セイクリットギア)の制御よね。でも今のままではまたいつ暴走するかわからないし」

 

目下の課題は、神器(セイクリットギア)の扱いかと皆は頷く。まあギャスパーは未だに段ボールの中で震えてるが。

 

「でも確か部長この後サーゼクス様達と会談の準備のために祐斗や朱乃さん達と出ますよね?」

「えぇ、そうなのよ」

 

折角ギャスパーに出てもらっても、自分に時間がない。リアスがそう言うと龍誠は、

 

「なら俺が何とかしますよ!」

「え?」

 

リアスが驚く中、龍誠は胸を叩きながらギャスパーを鍛えますと言いだす。それに対してゼノヴィアまで、

 

「ふむ。なら私も手伝おう。これでも吸血鬼の相手は教会時代から慣れてる!」

 

正直に言おう……不安しかない。この二人、加減と遠慮がない。何せ筋肉バカと勢いバカの二人である。なので、

 

「戦兎。いざというときは頼むわね」

「はい」

 

リアスに頼まれ、戦兎はすぐに頷いたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ!走らないとこのデュランダルの錆びになるぞ!」

「ひぃいいいい!」

 

ギャスパーに与えられた特訓は、まずは走り込み。次に、

 

「死んでる暇はないぞ!次は腕立て伏せ!腹筋!背筋!疲れたときこそ筋トレだ!」

「うぇえええええ!」

 

休む暇なく筋トレさせられ、合間の水分補給では、

 

「な、なんですかこれは……」

「プロテインを水で溶いた奴だ!プロテインは良いぞ!何にでも合うから何にでも合わせて食べるんだ!」

 

山ほどのプロテイン水を飲まされギャスパーは既に涙目。だがこれに対して不平不満を言う元気がないのか、はたまたヘタレなのか両方か……

 

なので、

 

「サンダーボルトV3!」

『アバババババババババ!』

 

戦兎は、更なる改良を施した新型のスタンガンで、ゼノヴィアと龍誠を眠らせた。

 

「アーシア。治療だけしてやれ」

「あ、はい」

 

突然の事の一瞬呆然としていたアーシアだったが、戦兎の言葉で慌ててゼノヴィアと龍誠の治療を開始する。

 

その間に、

 

「あのバカども。ギャスパーに新たなトラウマを作らせる気かよ」

「それにしてもさっきのは?」

 

ため息を吐いていた戦兎に、小猫は聞く。なぜなら、前に見たはずのスタンガンは一般的にイメージする形状だった。だが今回は、そう言うのがない。と言うか素手でやったようにも見え、小猫が首をかしげると、

 

「これだよ」

 

戦兎はそう言って手首をクイッと捻ると、袖からシャキンとスタンガンが飛び出し、 バチバチと電流が流れて音をたてた。

 

「前作までは威力を重視した。だが今度は小型化と携行性に重点をおいたんだ。服の下に仕込めて一見分からないし、威力は変わらず。いやぁ、こんなものを作っちゃう自分の才能が恐ろしい!」

 

とまあ自画自賛しつつ、戦兎はギャスパーの近づく。

 

「さて、あのバカどもの特訓はここまでにしてだ。とにかく能力に慣れれば良いんだろ?だったら体鍛える必要はない。能力は慣れる事が一番重要なんだからな」

 

人見知りは自分で直してくれ、と言うスタンスで戦兎はボールを取り出した。

 

「俺がこれを投げる。そしてボールだけを止めるんだ。これで練習だ」

「は、はい!」

 

デュランダルもって追いかけ回されたり、筋トレ&プロテイン水地獄よりずっとマシだと判断したのか、ギャスパーは素直に戦兎の特訓を受けることを受け入れた。そう意味ではある意味バカどもの特訓も無駄じゃなかったのじゃも知れない。だが、

 

「うぉ!」

「あ……」

 

戦兎はボールを投げようと振りかぶった。だが、何とボールだけではなく戦兎の腕までとなってしまい、戦兎は驚愕の表情を浮かべながら、投げるモーションの途中で動かなくなった腕を見る。

 

「す、すみませんすみませんすみません!」

 

それを見たギャスパーは土下座でもしそうな勢いで謝ってくるが、戦兎は気にせずもう一回だと言う。

 

しかし、現実は甘くない。今度は足を止めたり、腕をまた止めたりして来たかと思えば、首から下を全部止められた時もあった。下手すると全身完全にと言うパターンもある。

 

一応何度かボールだけを止めたこともあったが、片手で数えられる程度だ。

 

だがそれでも、ボールだけを止めたときはギャスパーも嬉しいのか、にこやかな笑みを浮かべている。

 

とは言え何度やっても確率は上がる気配がない。まあ焦っても仕方ない。実験は根気が大事なんだ。

 

そう思いながら何度かやると、ギャスパーに疲れが見え始め、一旦休憩に入った。

 

ギャスパーは座り込み、そこに小猫が水を渡す。その時には龍誠とゼノヴィアも復活して、アーシアとギャスパーに謝っている。そこに、

 

「お?あれが解放された眷属か」

「匙?」

 

声がしたので振り替えると、先日同様治療中の匙が、何故かシャベルを片手に立っていた。

 

「しかも金髪ブロンドか……めっちゃ可愛いじゃん」

「男だけどな」

 

匙が鼻の下を伸ばす中、戦兎が現実を突きつけると、匙はマジで!?と眼をひんむいて見てきたので、

 

「女装が趣味だってよ」

「詐欺だろ」

 

ガックシと肩を落とす匙に、共感しつつ戦兎は、その怪我はどうしたんだと聞く。その質問に匙は、

 

「まぁ、色々あってさ。ちょっと今新しい力の特訓中と言うか、扱いきれずに反動がヤバイと言うかだな……」

「おいおい。それやめた方が良いんじゃねぇか?」

「大丈夫だって、一昨日位にようやく扱えるようになったんだ。使った後は滅茶苦茶疲れるけどな」

 

無茶してんな……戦兎はそういうと匙は苦笑いを浮かべ、

 

「仕方ねぇさ。俺だって強くならなくちゃいけない。じゃないと会長の足手まといになっちまうからよ」

 

大切な人なんだな。と戦兎は軽口のつもりで言うと、匙はボフッと顔を真っ赤にして、

 

「ととと当然だろ!?主だぜ!?お前と違って主には忠誠心を持ってるんだよ!」

 

この反応……ようはそういうことなんだろう。まあ確かにソーナも美人だ。恋心を持ってもおかしくはない。と言うか、

 

「俺結構忠誠心は高いぞ?」

『いやいやいや』

 

戦兎の言葉に匙だけじゃない。向こうにいた、グレモリー眷属の面々にまで否定された。解せない。

 

等とアホな事をしていたその時!

 

「なぁに遊んでんだ?悪魔どもはよ」

『っ!』

 

気配もなく聞こえてきた声に、皆は一斉に振り替える。そこにいた男の姿に、龍誠だけは呟く。

 

「アザゼル!?」

『なっ!?』

 

龍誠の言葉に、全員が臨戦態勢を整える。だがそんな姿に、

 

「おいおい。今日は弱いものいじめをしに来た訳じゃねぇぜ。言っておくが……俺はコカビエルより強い。所詮あいつは堕天使の幹部の中でも最弱」

「四天王の中でも的なノリで言うんじゃねぇよ」

 

戦兎の突っ込みに肩を竦めながらアザゼルは、

 

「そう言えば聖魔剣使いの奴はいねぇのか?」

「そいつなら今部長達とサーゼクス様の所に今度の会談の準備のための話し合いのために行ったよ」

 

マジかよ、つまんねえな。とアザゼルは頭を掻く。目的は祐斗だったらしいのだが、今回は居なくて良かった。

 

等と戦兎が考えているとアザゼルは、

 

「なら帰っても良いが……ちょうど良いや。おいそこのヴァンパイア。お前の神器(セイクリットギア)停止世界の邪眼(フォービドウン・バロール・ビュー)だろ?」

「な、何で見ただけで……」

 

アザゼルの言葉に、ギャスパーは全身を携帯のバイブレーション並みに震わせながら、木の影に隠れてしまう。

 

「見りゃわかんだろ。これでも神器(セイクリットギア)の研究してるんでな。それは邪神バロールに由来する神器(セイクリットギア)だ。んで、そこの悪魔は黒い龍脈(アブソーブション・ライン)か……五大竜王ヴリトラを封じて作られた神器(セイクリットギア)の一つ。これくらい常識だぜ?」

 

常識じゃねぇだろ……と皆で思ったが、そこはなにも言わない。と言うか、驚きが強いようで、匙は自分の神器(セイクリットギア)の生い立ちを知り、アザゼルと知った際に咄嗟に出した黒い龍脈(アブソーブション・ライン)を見ている。

 

「全く、自分の神器(セイクリットギア)の事を何も知らねぇのかよ。まあ悪魔は神器(セイクリットギア)の研究進んでねぇみたいだしなぁ。とは言え、普通とは全然違う使い方をしてる奴もいるみてぇだがな」

「……」

 

戦兎に眼を向けながらアザゼルは言い、戦兎はソッと胸元にしまってあるビルドドライバーに手を伸ばした。

 

「そこら辺については話したいところだが、今は良い。まずはヴァンパイアだ。まずな、停止世界の邪眼(フォービドウン・バロール・ビュー)のような五感に直結しているタイプのは、持ち主のキャパシティを上回ると暴走しやすい。だからお前の黒い龍脈(アブソーブション・ライン)神器(セイクリットギア)の力を散らしてやれ。そうすればさっきみたくボールだけを止めるなんて事もしやすくなるさ」

 

アザゼルはそう言うと、手を振りながら背を向けて帰ってしまう。

 

驚くほどあっさりと帰ってしまい、皆は肩透かしを食らった顔になり、皆で顔を見合わせるが、

 

「じゃあ……匙の神器(セイクリットギア)使ってやってみるか」

 

頼んで良いか?そう戦兎が言うと、匙は快く引き受けてくれた。本当にコイツは良い奴なのだが、良い奴過ぎてきっと後々面倒に巻き込まれるだろうな……戦兎はそう確信していたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はひぃ……」

 

日が暮れてきたので、ギャスパーは部屋に戻ってきた。

 

「今日はありがとうございました……」

「ん?あぁ」

 

一緒に戻ってきた戦兎に、ギャスパーは頭を下げる。基本的に人見知りだが、礼儀自体は結構しっかりした奴だ。

 

さて、何故戦兎が一緒なのかと言うと、折角なのだから今日はギャスパーの歓迎会をやろうとなり、龍誠とアーシアにゼノヴィアは買い出しに、小猫はボールを返して、序でに鍵を返しに行った。

 

なので、ギャスパーと一緒に戻ってきたのだ。

 

匙?匙は生徒会の仕事らしい。

 

そして修行の結果だが、匙の協力の後はよく進んだ。何度か失敗したものの、それでも最初の頃と比べれば雲泥の差。いや、比べなくても体感で分かるほどだ。

 

「は、初めてでした。あんな風にちゃんと力をセーブできたのは……」

「そうなのか?」

 

ギャスパーの言葉に、戦兎が首をかしげるとギャスパーは頷き、

 

「下手すると自分以外全部止めちゃうこともあるんです。自分以外が動かなくなって、感情がなくて……一人ぼっちになっちゃったような感覚になって、まるで皆がマネキンみたいな光景はもう見たくないです」

 

自分には分からない。と言うのが正直な感覚だ。何せ自分には時を止める何て言う能力は流石にない。

 

だがギャスパーが外に出たがらないのはきっとその辺が関係してるのだろう。そんな光景を見るくらいなら人と関わらず、近寄らずに自分の殻に閉じ籠っていたい。

 

更にギャスパーの過去についてリアスから聞いていたのだが、元々ギャスパーは吸血鬼としては名家の家柄だったらしい。だが妾でしかも人間だった母を持つギャスパーは迫害の対象でしかなく、なまじ力が強かったことがそれを加速させた。

 

そしてある日そこから逃げ出したギャスパーは、ヴァンパイアハンターに殺されかけたところをリアスに救われたらしい。

 

だがビジョップの駒はギャスパーの才能を開花させ、力を制御できないものにしてしまい封印処置になった。と言話だ。

 

力が無くてもハーフヴァンパイアと言うだけで迫害の対象だっただろう。それくらいヴァンパイアと言うのは、純血と言うのに拘るらしい。だが自分で制御できないほどの力があって、将来的には純血を越えるのは確実な才能を感じさせる姿は、純血のヴァンパイア達にとっては許されざる存在だろう。

 

ある意味、力に生まれたときから振り回され、人生を歪められたといっても過言じゃない。

 

それを聞きながら戦兎は、

 

「自分の力が嫌いか?」

「正直に言えば余り……今までこの力が役に立った事がありませんでしたから。皆に迷惑をかけ続けているだけのこんな力……僕は要りませんでした」

 

そんな言葉を聞きながら、戦地は少し笑みを浮かべてギャスパーを見た。

 

「俺もな。力で失敗したことがある」

「え?」

 

戦兎の言葉に、ギャスパーはポカンとしながら顔を見る。彼が短いながらも見ていた戦兎の姿は、いつも自信たっぷりで余裕があって、聞いた限りではリアスの眷属になってからも高い実力で活躍していたと聞いた。

 

そして戦兎は更に言葉を続ける。

 

「俺の力であるビルドには封印した強化アイテムがあるんだけど、ビルドをやっと使えるようになって来た時に研究室漁ってたらそれの設計図見つけてさ。危険性とかについても書いてあったんだけどそれ読まないで作った。科学は役に立つけど危険も伴う。だから何度も実験するし、その実験も最大限の注意を払うべきだって言われてたのに……軽々しく使って龍誠を殺しかけたことがあってよ。龍誠がギリギリ解除してくれたから助かったけど、それ以来その力は使ってない。ただもっとヤバイ奴とか現れるなら……覚悟しなきゃいけないのかもしれないって最近は思っててさ」

 

恐くないんですか?ギャスパーはそう聞いてくる。それに対して戦兎は頬を掻きながら、

 

「今の龍誠も変身できるし……他にも仲間達がいる。いやまあだから絶対大丈夫っては言えないけど、これでも信用してるしな。それに今なら少し位なら制御できる気がする。最近またハザードレベルも上がったしな」

 

ハザードレベル?とギャスパーはまた首をかしげるので、戦兎はビルドの事や、ハザードレベルの説明を始める。

 

それを聞いたギャスパーは、

 

「す、凄いです!戦兎先輩そんな風に神器(セイクリットギア)を使えるなんて!」

「あぁ……うん」

 

眼をキラキラさせながら、顔を近づけるギャスパーに戦兎はどもってしまう。

 

睫毛長いし良い匂いまでする。こいつホントに男かと思い、心臓が……

 

(ってなにドキドキしとんじゃ俺はぁああああああああ!)

「せ、先輩!?」

 

突然ガンガン壁に頭を打ち付け始めた戦兎に、ギャスパーは眼を見開きながら驚愕する。

 

「なにしてんだ?」

「さぁ?」

 

謎の戦兎の奇行に、丁度部屋に入ってきた龍誠とアーシアは首を傾げたのは……まあ余談だろう。



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守るために

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦「ギャスパーとの出会い、そして特訓が始まった俺たちだが……」
龍「しかし筋トレも大事だと思うんだけどなぁ……」
戦「人には向き不向きってのがあるでしょうが。皆が皆お前みたく筋肉バカにはならないんだよ」
龍「そんな誉めるなって」
戦「誉めてねぇよ!という訳でそんな感じの26話スタート!」


ギャスパーの特訓開始から数日。この数日も連日修行は行われた。そのお陰か、ギャスパーはグレモリー眷属の新顔にもある程度は慣れたらしく、何とか日常会話をこなせる程度には成長。特に戦兎にはなついており、まだ教室には行けないので戦兎が部室にやって来ると、何と自分の方からやって来て話をしている。流石にこれにはリアスも驚いていた。

 

戦兎も何だかんだ言いつつも面倒を見ており、一緒にゲームをやったりしている。たまにハッとなってブルブルと首を横に振って正気に戻ったみたいな顔をしているが……

 

因みに龍誠曰く、

 

「戦兎は基本的にお兄ちゃんだから、保護欲が駆られる系の容姿や性格に弱いんだよ」

 

とカップラーメン(プロテイン入り)を啜りながら祐斗に話していた。

 

確かにそういう意味ではギャスパーは、守ってあげたくなる感じだ。アーシアもそれに該当しそうだが、龍誠がブレーキなのだろう。ただ戦兎が数少ない名前呼びなのは龍誠を除くと、アーシアとギャスパーだけだし、戦兎はたまにアーシアに適当なホラ話をして、素直に信じる彼女をからかってることがある。

 

そう考えればアーシアの事も気に入ってはいるらしい。

 

さて、いつまでもこの話をしているわけにもいかないので進めよう。

 

遂に悪魔、天使に堕天使の三つの種族の長が集まって行われる会談の日になった。

 

その会談の議題には、コカビエルの一件もあるためか、リアスを筆頭としたグレモリー眷属に、ソーナも同席することになっているのだが、

 

「み、皆さん気を付けてください」

 

ギャスパーは暴走の危険性も考えてお留守番だ。そんなギャスパーに戦兎は、

 

「ほらギャスパー。お菓子とゲームは置いとくから好きに飲み食いしながら遊んでろ」

 

そう言って大量のお菓子と、ギャスパーの好みのゲームを数種類見繕ってやり、渡してやるとギャスパーは嬉しそうに顔を綻ばせる。そんな様子を見ていた面々は、

 

「最近戦兎君ってばギャスパー君に際限なく甘くなってるよね」

「いやあいつなんだかんだ言いつつ美空の我が儘もできる範囲ならなんでも叶えてるし、元から子供とかできたら甘やかして奥さんに怒られるタイプだぞ?」

 

やれやれと祐斗と龍誠は肩を竦めながら話し、他の皆も成程と苦笑いをした。そこに戦兎が帰ってくると、

 

「どうかしましたか?」

「ううん。なんでもないわ。取り敢えずいきましょうか」

 

リアスは慌てて何でもないと答えつつ、出口に向かって歩き出す。

 

ここから先はシリアスモードだ。間違いなく歴史に残るであろう三大勢力の会談。

 

その場にいると言うことの意味を分からない皆ではない。そう思いながら、リアス達は気を引き締めつつ会談の為に用意した部屋に向かって歩き出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「失礼します」

 

リアスが先導して部屋に入ると、既に中にはサーゼクスとグレイフィア、セラフォルーにソーナ、この間会ったアザゼルとヴァーリがいて、光る輪に白い羽根と言う特徴から、恐らく天使だろう。

 

こうして見ても錚々たるメンバーだ。

 

それにヴァーリはアザゼルと一緒にいるってところを見るとアイツも堕天使だったのだろうか?と言うか、普通にいたから他のメンバーもこの張りつめた空気の中、声こそ出さなかったが、驚愕していた。

 

とまあそんな一幕があったものの、リアス達の到着と同時に話し合いが開始される。因みにさっき言った天使の人は、ミカエルと言う人らしい。

 

まず、この場にいるのは全員が神の不在を知っているもの達と言うが前提として進められる。と言う確認の後、それぞれの勢力の長達が話を進め、それが終わると今度はリアス達に、コカビエルの件について質問が来た。

 

それに対してまずはリアスが、そしてソーナがしていくと、ミカエルはアザゼルを見る。

 

「今の説明に異論はありますか?」

「ねえよ。うちのコカビエルがここを襲った……そこは事実だ。だが、今やアイツはうちのヴァーリが連れてきて地獄の最下層(コキュートス)の永久冷凍の刑に処してもう出てくることはねぇ。それで勘弁してくれや」

 

成程。ヴァーリが強引に連れて帰ったのはそういう意図があったらしい。ようは自分のケツは自分で拭いたのでもう良いでしょっと言う為の準備だったと言うわけだ。

 

(用意周到と言うかなんと言うか)

頭を掻きつつ、戦兎が思うとミカエルは更に突っ込む。

 

「成程。ではコカビエルが貴方はもはや戦争に興味がないといっていたと言うのも?」

「当然。俺は今神器(セイクリットギア)にしか興味がないんだ。戦争なんてやってられるかよ」

 

アザゼルはやれやれとでも言いたげな感じで言うと、今度はサーゼクスが、

 

 

「ならばアザゼル。何故ここ数十年神器(セイクリットギア)所有者を集めていると言う噂は?」

「研究の為だよ。気になるなら研究データ渡そうか?何度でも言うが、別にそれで戦争吹っ掛ける気なんかねぇよ。信用ねぇな」

 

当たり前だ。とその場の誰もが思ったが、それは口にしない。そんな時、アザゼルも疑問を口にする。

 

「逆に聞くが。お前らこそ神器(セイクリットギア)……特に神滅具(ロンギヌス)とか隠してねぇよな」

『っ!』

 

アザゼルの言葉にその場が静まり、戦兎や龍誠は首を傾げた。

 

神滅具(ロンギヌス)ってなに?」

神滅具(ロンギヌス)って言うのは神器(セイクリットギア)の中でも特に強力で、極めれば神すら倒すと言われる13の神器(セイクリットギア)のことだよ。ただ最近突然その存在が確認されなくなったって言うのは聞いていたけど……」

 

戦兎が祐斗に説明を求めると、快く答えてくれ、戦兎は納得する。神器(セイクリットギア)にも色々あるらしいが、そんなものもあったとは驚きだ。

 

そしてアザゼルの問いに他の長達は、

 

 

「分かりません。こちらとしても調べてはいますが……」

「こちらも同様だ。十数年前に突如姿を消して以来確認していない」

 

やはりどこも似たようなもんか……アザゼルはそう言うと、立ち上がる。

 

「ま、実際そこまでお前らを疑っちゃいないさ。あれは強力な代物だ。完全に隠し切れるもんじゃねぇ。それにもし上手く隠したとしても、13の神滅具(ロンギヌス)全てが確認されなくなるってのは可笑しすぎる。まあ、心当たりがない訳じゃないだろうが」

 

アザゼルの言葉に、サーゼクス達は無言で同意した。それが意味するもの……それは自分達の預かりしならない勢力が何かしらの形で秘匿していると言うことだ。

 

自分達に見つからず、神滅具(ロンギヌス)の所有者を一部でも独占していたら驚異だ。神滅具(ロンギヌス)と言うのはそれだけ強力なのである。過去にはその神滅具(ロンギヌス)が暴走して島の形が変わったとか、国がいくつか滅んだとか、そういった逸話に事欠かない。

 

「そこでだ。俺達が何時までもいがみ合っていても仕方ねぇ。だから……和平といこうじゃねぇか」

『……』

 

アザゼルの言葉に、サーゼクス達は押し黙り、戦兎達は息を呑む。

 

長い間争い続けてきた三大勢力の和平の申し開き。それがこの会談が開かれたと言う事実以上の価値があるのは言うまでもない。

 

しかもアザゼルの言葉に対して、

 

「我ら悪魔はまた大戦が起きれば滅亡は免れない。和平なら歓迎だ」

「それは天界もです。神が居らずとも我らは生き残る道を選ばねばなりません。和平を受け入れます」

 

あっさりと和平を受け入れてしまう。いや、それは良いことだ。だが恐らくアザゼルが言わずとも、誰かが和平の話を持ち出しただろう。先程サーゼクスが言ったが、次に大戦が起きれば滅亡するのはミカエルを筆頭とした天使や、アザゼル達堕天使も同じなのだ。

 

そしてアザゼルは座ると、すぐに書類を出した。彼曰く今回の和平に関する事項や、決め事などを書いてありそれに同意するならサインを書くらしい。ホント用意が良すぎる。

 

全部こうなることを予想していたレベルだ。ここまで一連のことがアザゼルと言う男の掌の上だったんじゃないだろうか?

 

だからといって態々この場に水を指すようなことはしないが……

 

「これで良いでしょう」

 

最後に書類にサインしたミカエルがペンを置くと、他の長も頷く。

 

取り敢えずは今回話すべき内容は終わりらしい。空気が緩み、重苦しい雰囲気はなくなった。

 

そんな中、サーゼクスがこちらに向き直り、

 

「お疲れ様。大変だっただろう?」

「いえ、それより聞いて良いですか?」

 

戦兎の問いに、サーゼクスが頷く。なので、戦兎はそのまま聞いた。

 

「その……神滅具(ロンギヌス)って奴を独り占めしてる可能性があるところってどこですか?」

「ふむ。勿論三大勢力の他にも多数の神話体型はあるが……そこではない。いや、ある意味その神話体型も関わってはいるだろうがね」

 

意味深な言葉から始まったサーゼクスの言葉だが、彼はそのまま続ける。

 

「私達悪魔もまだ一部しか知らせていないとある組織がある。それは……っ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!」

 

ビクッ!と体を震わせ、戦兎はふらつきながら姿勢を立て直す。

 

「なんだ!?」

 

見てみると、目の前にはサーゼクスは結界のようなものを作り出していた。

 

「これは……」

 

サーゼクスが結界を解除する中、戦兎が周りを見回すと、龍誠やリアスもサーゼクスが作った結界におり、ゼノヴィアと祐斗はゼノヴィアのデュランダルでガード。だが、他の皆はそれぞれの勢力の長を除き、完全に動かなくなっていた。

 

動かなくなっていたと言っても、死んだとかではなく時が止まったような姿だ。まるでこれは……

 

「ギャスパーの停止世界の邪眼(フォービドウン・バロール・ビュー)?」

 

リアスの呟きに戦兎も同意する。戦兎も何となくそう思っていた。まるで時が止められたようだと……

 

「しかしよくゼノヴィアもガードできたな」

「勘でね。危険を感じるとデュランダルでガードするのは癖なんだ」

 

そんな龍誠とゼノヴィアのやり取りを聞きつつ、戦兎はサーゼクスを見る。

 

「ありがとうございます」

「いや、気にしなくて良い。私も咄嗟だった為、君やリアスに龍誠君へ結界を張るのが限界だった」

 

危険を察知してからの一瞬でそこまでいけば充分凄いと思うのだが、サーゼクスとしては納得いかないものらしい。そうしていると、

 

「今度はなんだぁ!?」

 

突如外からの爆発に龍誠は、驚く。その横でアザゼルが、

 

「外から攻撃してきてんだよ。まあ結界を張ってるから心配すんな」

 

そう言われ、皆で外を見ると如何にもな姿の魔術師のような格好の連中が魔方陣を作り出し攻撃してきていた。

 

だがよほど結界が強固なのか、取り敢えずは平気だ。だがこのままと言うわけにもいかない。そう思い戦兎はサーゼクスに聞く。

 

「これどういう状況なんですか?」

「今君達も感じたように時が止められた。恐らく部室に残したギャスパー君の身柄を奪って力を高めさせて強引に力を暴走させたんだろう。私達のような高位の悪魔やそれに並ぶ者に、デュランダルによるガードや私の結界があれば防げる程度の出力だったがようだけどね」

 

範囲を広げて威力が落ちたと言うことだろうが、それでもグレモリー眷属や、ソーナまで止まっていることを考えると相当強力だ。

 

「ギャスパーを……よくも」

 

ギリッと歯を噛むのはリアスだ。眷属への情が深い彼女にとって、敵に自分の眷属が利用されていると言う状況は好ましいものじゃない。その中でアザゼルが、

 

「アイツらは禍の団(カオス・ブリゲード)。最近名前が出てきたテロ組織だ。さっき言った神滅具(ロンギヌス)を持っている可能性がある連中がいるところさ」

禍の団(カオス・ブリゲード)……」

 

戦兎が復唱する中、今度はミカエルが言葉を発する。

 

「とにかくこれからどうするかを考えるべきでしょう」

「やはりまずはギャスパー君の救出か」

 

サーゼクスが続けたその時、それに対してリアスは手を上げた。

 

「ならば私が」

「だが旧校舎までの道が危険すぎる」

 

キャスリングを使います。サーゼクスの心配を他所にリアスは聞きなれない単語を発する。

 

確かキャスリングはルークとキングの位置を入れ換えることが出来る技だ。リアスは予めルークの駒を部室に置いてある為、それを用いて行えば外を経由せずにギャスパーがいるはずの旧校舎に向かえる。

 

それを聞いたサーゼクスは、

 

「確かにそれなら虚をつける。だが一人でいかせるのは無謀だな……グレイフィア。私の魔力を使って複数人飛ばせないか?」

「お嬢様ともう一人くらいならば」

「なら俺が!」

 

それに最初に反応したのは龍誠だ。手を上げ、意思表示するが……

 

「いや、俺が行く」

「なんでだよ!」

 

戦兎がストップをかけ、代わりに自分が行くと宣言した。勿論龍誠がブーブー文句を言うが、

 

「知能が猿以下のお前が行ったら事態を悪化はさせても改善はさせねぇだろうからな」

「なんだとぉおおお!」

 

ガルルル!と龍誠が唸るが、こう言うのは性格的に戦兎の方が向いているのは事実だ。何より、なんだかんだで可愛がっていたギャスパーを利用されて、これでも戦兎は怒り心頭だったりする。

 

それに気づいた龍誠は、怒るのを辞めて……

 

「気を付けろよ」

「あぁ」

 

龍誠に戦兎が頷いている間に、グレイフィアがリアスに術式を施し、準備は万端。

 

「では行きましょうか。戦兎」

「うっす!」

 

リアスが戦兎に声をかけ、戦兎はそれに頷く。するとそこに、アザゼルが来て戦兎に腕輪を渡してきた。

 

「これは?」

神器(セイクリットギア)制御の補助道具だ。ハーフヴァンパイアにつけてやりな」

 

成程。とこれを分解して研究してみたい衝動を我慢しつつ、戦兎はそれをポケットにしまう。その間にリアスはサーゼクスに、

 

「お兄様達はこのままですか?」

「あぁ、結界を維持しなくてはならないし、このままこちらに動かずにいれば向こうの首謀者もしびれを切らせて出てくるかもしれないしね」

 

分かりました。リアスはそう言って魔方陣を作り出す。戦兎はそこに入り、二人でワープをしようとしたその時!

 

「魔方陣!?」

 

リアスのではない。と言うかこの場の誰のでもない魔方陣が現れる。リアスは咄嗟にこちらのワープを止めようとするが、

 

「リアス!気にせず行け!」

「っ!はい!」

 

サーゼクスの今までにない気迫の籠った言葉に、リアスは殆んど条件反射で答えてそのままワープ。それを見送ったのと同時に魔方陣を作った主が現れた。

 

「ごきげんよう。現魔王に天界、堕天使の皆様方」

 

そう言って現れたのは、眼鏡をかけたキツめの美女だ。それを見たサーゼクスとセラフォルーは表情を曇らせる。

 

「カテレア・レヴィアタン」

「レヴィアタンって……まさか旧魔王ですか!?」

 

祐斗がそう言うと、カテレアはギリッと歯を噛み締めた。

 

「旧ではない!私こそ真のレヴィアタンよ!そこにいる私からレヴィアタンを奪った紛い物とは違う!」

 

セラフォルーを指差し、カテレアは叫ぶ。先の大戦時、旧魔王の一族は疲弊し、滅亡しかねなくなった状況でも最後まで戦いを望んだと聞くが……

 

「全く。んでテロリストかよ。アホらしい」

 

そう言って笑うのはアザゼルだ。そんな彼の様子にカテレアは殺気をぶつけるが、アザゼルは気にせずカテレアの前に立つ。

 

「丁度良い。禍の団(カオス・ブリゲード)の首領の事とか色々まだ分かってねぇことも多い。聞かせて貰うぜ」

 

お前らは手を出すなよ。アザゼルはそう言って光の槍を作り出す。

 

「良いでしょう。まずは手始めにあなたです!」

 

そんな二人のやり取りの後、アザゼルとカテレアが戦い始めた。その一方、

 

「ハァ!」

 

ニンニンコミックになった戦兎は、扉を四コマ忍法刀で斬ると、リアスと共に部屋に突入する。

 

「な!?何故ここに!?」

 

突然の部屋への乱入に、中にいた魔女風の女性達が驚く中、戦兎とリアスはギャスパーを見つけた。

 

「ギャスパー!大丈夫!?」

「部長……」

 

二人の登場に驚いたギャスパーだったが、ポロポロと涙を流し、

 

「部長。ごめんなさい。僕がしっかりしていれば……いつも迷惑ばかりかけて」

「何言ってるのよ。迷惑なんて思ってないわ。大切な眷属だもの」

 

だがそんなやり取りに魔女風の女の一人が水を指す。

 

「ふふ、やはりグレモリーは眷属思いが過ぎると言うのは本当らしいわね。全く、こんなの洗脳して道具として使えば幾らでも利用価値があるでしょうに」

「そんなことをせずともうちの眷属は優秀なの。今のままで充分にすごいわ。まぁ、貴方達程度の器では扱いきるのは無理でしょうけどね」

 

なんですって?とリアスを睨むが、彼女は涼しい顔だ。

 

「覚悟しなさい。この後私の眷属に手を出したらどうなるかきっちり教えて上げるわ」

「はぁ?これが眼に入らないわけ?いいこと?一歩でも動いたり魔力を使う素振りを見せたらこいつを……あれ?」

 

スカッと、ギャスパーの髪を掴もうとした手は空を切り、意味が分からず振り替えると、そこには地面に倒れ伏した仲間や、捕らえたギャスパーを椅子ごと離した戦兎が四コマ忍法刀を肩に担いで立っていた。

 

「え?え?」

 

何故二人に?そう彼女が驚く後ろでリアスと共に入ってきた方の戦兎はドロンと消える。まあようはこの部屋に入る前に分身して、一人は突入役。本体の方は忍者フルボトルの能力のステルス機能でこっそり後ろから回り込んだのだ。

 

リアスの名演技もあったが、中々上手く引っ掛かってくれたものだ。

 

等と思いながら戦兎は四コマ忍法刀の腹で殴って気絶させてから、ギャスパーを縛っていたロープを切ろうとするが、

 

「なんだこれ?硬いな」

「多分何かしらの術式ね……」

 

と二人は言い合いながらロープを解こうとしていた。それを見ていたギャスパーは、

 

「その、ごめんなさい……」

「良いんだよ。後輩助けるのも先輩の仕事だ。後、こういう時はごめんなさいじゃなくて、ありがとうだろ?」

 

ありがとうございます……ギャスパーはボソボソとだが、はっきり言う。それを聞いて二人が笑っていると、

 

「舐めるなよ……」

「っ!」

 

ギャスパーが気づく。後ろで戦兎に四コマ忍法刀で殴られた女が魔方陣を作り出そうとしていることに。戦兎とリアスは気づいていない。今から伝える?無理だ。間に合わない。自分がどうにかするしかない。だが出来るのか?今まで成功したのは偶々か、匙の制御があったからだ。それを無しで成功させる。それが自分に出来るのか?

 

だがギャスパーは意識を眼に集中させ、相手を見る。今やらなければリアスや戦兎が危険だ。それは嫌だ。引きこもれていたのは、気が向けばリアスたちの存在を感じれたからだ。本当のひとりぼっちは嫌だ。

 

外に出れたのは、戦兎が引っ張ってくれたからだ。口では色々言いつつも優しくしてくれる彼がいたからだ。

 

だから今。ここで助けに来てくれた恩を返さなければならない。守られてばかりじゃダメだ!

 

「なにっ!?」

『っ!?』

 

ギャスパーが突然力を発動させ、何事かと視線の先を追ったリアスと戦兎だが、そこにいたのは魔方陣だけを止められ、魔法を封じられた相手がいた。更に、

 

「先輩に……手を出すなぁ!」

 

次の瞬間、ギャスパーの体が突如無数のコウモリに変わり、ロープをすり抜けるとそのまま相手に襲いかかる。

 

「ちょ!やめ!」

 

無数のコウモリに対して相手は腕を振って抵抗するが、徐々に動きが鈍くなり……そのまま意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やれば出来るじゃねぇか。ギャスパー!」

「は、はいぃ……」

 

初めて己の意思で力を制御したギャスパーは、戦兎にアザゼルから貰った腕輪をつけて貰ってから本校舎に向けて走っていた。

 

先程の魔女軍団は、しっかりと拘束しておいたし逃げられることはないだろう。それにしても……

 

「あの魔方陣……」

「俺達が転移する直前に見たやつですか?」

 

えぇ、とリアスは頷く。記憶が正しければあれは旧魔王の一族のレヴィアタンの物だ。それが今回の首謀者なのか……?

 

いやここで悩んでも仕方ないわね。とリアスは頭を振ると、三人は外に出る。

 

外は既に戦いの後といった感じになっており、倒された魔女達や、

 

「ふぅ」

 

黄金の鎧を来た誰かが降りてきて構えると、それが解除され、中から現れたのはアザゼルだ。

 

「その能力は……」

「ん?あぁ、俺が作った人工神器(セイクリットギア)の擬似禁手(バランスブレイカー)でな。まぁ一回使うと修理しなきゃならんのだが今は充分さ」

 

と、片腕を失ったアザゼルは、リアスの言葉に肩を竦める。そして戦兎が腕について聞くと、

 

「ん?あぁ、俺を巻き込んで自爆しようとして来たから腕切って逃げたのさ。まさかオーフィスがバックにいたとはな」

「オーフィス?」

 

戦兎が聞きなれない名前に首を傾げると、アザゼルはそんなのも知らねぇのかよ。と言いつつも教えてくれた。

 

「無限の龍と言われる世界最強の生き物さ。そいつがどうも禍の団(カオス・ブリゲード)についてるみたいでな。そいつの力を僅かだが取り込んできたのさ。僅かでも取り込めば十分すぎるほどの力を得られるからな」

 

そんな相手にでも勝つってこの人も大概化け物だな……戦兎はそう思いつつ周りを見回す。

 

最初はどうなるかと思ったがなんだかんだでこちらが勝ったと言う感じだろう。そう安心したその時!

 

「っ!」

 

アザゼルは振り替えると光の槍を作り出し、突然の攻撃を弾いていく。そして煙が晴れると、

 

「流石に避けられるか」

「おいおい。お前までそっちかよ」

 

アザゼルが呆れながら見た先には、ヴァーリが立っている。

 

「そっち側ってもしかして……」

 

戦兎がそう言うとヴァーリは頷き、

 

「今日からは禍の団(カオス・ブリゲード)の世話になることにした。世話になったな。アザゼル」

「一応。理由を聞いて良いか?」

 

聞かずとも分かるだろ?とヴァーリが言うと、アザゼルはまあなと返す。するとヴァーリは戦兎を見て、

 

「そう言えば聞いたんだが、お前が戦う理由は、ラブ&ピースの為だとか誰かの為だとか聞いたんだが……本当か?」

「あぁ、それがどうした」

 

戦兎がそう答えるとヴァーリは、

 

「いや、下らないと思っただけだ」

「なに?」

 

ヴァーリの言葉に、戦兎は眉を寄せる。だがヴァーリは気にせず続け、

 

「下らないと言ったんだ。そんなもの。何の役にもたちはしない」

「好き勝手言いやがって」

 

戦兎はピキピキとコメカミが痙攣するのを感じる。何の役にもたたないだと?

 

「何度でも言ってやるさ。誰かの為だとか、ラブ&ピースの為だとか……戦いには役立ちはしない。証明してやろうか?そうだな……今お前の後ろにいる主であるリアス・グレモリーを襲うから守って見せろ」

《ロボットゼリー!》

「上等だ!」

《ラビット!タンク!ベストマッチ!Are you ready?》

 

ヴァーリはベルトをつけるとスクラッシュゼリーを刺し、戦兎もベルトにフルボトルを刺す。

 

「大丈夫かぁ?お前確か負けたんだろ?」

「今度は負けねぇよ!変身!」

《潰れる! 流れる! 溢れ出る!ロボットイングリス!ブラァ!》

《鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イエーイ!》

 

変身を終えた戦兎はヴァーリに向かって走り出す。そして素早く拳を握ると、グリスに変身を終えたヴァーリを殴る。だが、ヴァーリはそれを片手で止めると、そのままツインブレイカーで殴る。

 

「ぐぁ!」

 

その衝撃に戦兎は後ずさるが、戦兎は素早くボトルを交換した。

 

《ローズ!ガトリング!Are you ready?》

「ビルドアップ!」

 

ローズフルボトルと、ガトリングフルボトルで姿を変えた戦兎は、腕からイバラを伸ばしてツインブレイカーのついている方の腕を絡めとると引っ張ってヴァーリの体勢を崩し、

 

「オォ!」

「ぐっ!」

 

ホークガトリンガーをヴァーリに向けて発射。体勢を崩されたところにこれでは、流石のヴァーリも怯む。

 

そこに戦兎は、追い討ちをかけるようにボトルを交換し、

 

《ゴリラ!ガトリング!Are you ready?》

「オォオオオオ!」

 

一気に間合いを詰め、ゴリラフルボトルの力で巨大化した腕を振りかぶって、思いっきり殴り付ける。

 

「かはっ!」

威力重視のゴリラフルボトルの力は流石にヴァーリは大きく吹っ飛ばされた。

 

「どうだ!」

 

吹っ飛ばされ、地面を転がったヴァーリを見て戦兎はガッツポーズを決める。しかし、

 

「それで終わりか?」

「っ!」

 

ゾクッと戦兎は悪寒が走る。ゆっくりと立ち上がるヴァーリの体から溢れだす魔力が、戦兎の体を貫いている。

 

「教えてやる」

「っ!」

 

ドン!と地面を踏み抜きながら、ヴァーリは間合いを詰めて戦兎をツインブレイカーで殴りまくる。

 

「暴力!虐殺!破壊!それが戦いだ!守る為だの誰かの為だの!そんな下らねぇ甘い気持ちで!俺の前に!立つんじゃ!ねぇ!」

「ぐはっ!」

 

今度は戦兎が広報に吹っ飛び、地面を転がる。それを見たリアスが、

 

「なんなのあの魔力……最上級悪魔クラスじゃない。と言うか彼堕天使じゃなかったの?」

「いや?あいつは悪魔だぜ?正確には半分だけどな」

 

そう言ってアザゼルは戦兎とヴァーリの戦いを見る。

 

「アイツの本当の名前は、ヴァーリ・ルシファー。人間の母と、名前の通り旧魔王の一人であるルシファーの末裔の悪魔の父を持って生まれたハーフさ。生まれつき高い魔力を持っていた。何せ物心がつく前から時が経てば魔王……下手すりゃ超越者になるかもしれない片鱗をみせるほどにな。だがそれをアイツの父親は気に食わなかったらしい。気づけば虐待を始めていた。それを庇っていたのはアイツの母親でな。だが人間と悪魔だ。意図したものだったのか、手違いだったのか分からないが……殺されたらしい」

「っ!」

 

アザゼルの言葉に、リアスは息を呑む。

 

「皮肉なことにそれがヴァーリの力を目覚めさせちまったみたいでな。その時に半ば暴走状態になって父親を殺して、ヴァーリは逃げ出したらしい。その後俺と出会って面倒を見てやってたんだが……」

 

アザゼルは言う。だからこそ戦兎をヴァーリは認められないのだと。母を守りたかった。だがそれは叶わなかった。誰かの為に戦うのが正しいのなら、何故自分は母を守れなかったのか?ヴァーリは今も自分を責め続けているのだと……

 

「これでどうだぁ!」

 

ヴァーリがツインブレイカーを構え、戦兎に向かって振るう。だが、

 

「なにっ!?」

 

今度は戦兎の方が、ヴァーリの一撃を止めた。

 

「くっ!」

「それがお前の過去か。確かに同情はするよ。けどな……」

 

変身した状態だと聴覚が上がるため、アザゼル達の会話も聞こえていた戦兎は、力付くで掴んだまま押し返す。

 

「ちぃ!」

 

ヴァーリは空いてる方の腕で、戦兎に反撃しようとするが、

 

「あぶねぇ!」

「っ!」

 

それを止めたのは、クローズに変身した龍誠だ。おせぇよと戦兎が言うと、

 

「こっちだってな!アザゼルが旧魔王の……カステラってやつと戦い始めて相手の気が逸れたところを襲って倒してたんだよ!ようやく終わったかと思えばまた爆発音がすると思って来たら、お前とヴァーリが戦ってるしで驚いたぜ」

 

確かに後ろの様子をうかがうと、他の皆も集まってきている。ならそろそろ気張るか!

 

『オッラァ!』

「ぐっ!」

 

力付くで押し返し、後方に後ずらせると、戦兎はラビットタンクスパークリングを出すと、振ってプルタブを引く。

 

「ヴァーリ。確かにお前の言うことは正しいよ。俺の言ってることは甘い。夢だよ。でも、それが美しいと感じたんだ。綺麗だと思ったんだ……憧れたんだ!それが間違ってるなんて思わない。例えお前がなんと言おうと……俺はラブ&ピースの為に戦う!いくぞ龍誠!」

「良くわかんねぇが……了解だ戦兎!昇格(プロモーション)!」

《ラビットタンクスパークリング!》

 

戦兎はベルトに刺してレバーを回し、龍誠は集中する。そして、

 

「ビルドアップ!」

「クイーン!」

《シュワッと弾ける! ラビットタンクスパークリング!イエイ! イエーイ!》

『さぁ!実験を始めようか!』

 

今の全力となった二人は、共にポーズを決めて、走り出したのだった……



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ベストマッチな二人

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦「遂にヴァーリとのリベンジマッチが始まった俺だが!やはりヴァーリの強さに押されてしまう!」
龍「だがそこに駆けつけるのはやっぱり俺!万丈龍誠だ!」
戦「さぁ、今こそ逆襲のときだ!そんな感じの27話スタートだ!」


『はぁ!』

「ぐっ!」

 

戦兎と龍誠が同時に放った蹴りは、ヴァーリを後ずらせる。そこに、

 

「いっけぇ!」

《各駅電車!急行電車!快速電車!海賊電車!》

「更にもういっちょ!」

 

戦兎はカイゾクハッシャーをMAXまでチャージし、それに合わせて龍誠が蒼炎の龍、クローズドラゴン・ブレイズを作り出すと、二人は発射。だがヴァーリも、

 

《シングル!ツイン!》

「オラァ!」

《ツインフィニッシュ!》

 

素早くロボットフルボトルと、消しゴムフルボトルをツインブレイカーに刺してスイッチを押す。

 

ツインブレイカーから発射された光弾は、戦兎と龍誠の一撃とぶつかり合い爆発。煙が辺りを包むが、その中をヴァーリは走り抜け、ツインブレイカーで戦兎を狙う。しかし、

 

「させるか!」

 

それをビートクローザーで龍誠が止める。更にその後ろから戦兎が炭酸の泡を発生させ、高速移動して一気にヴァーリのところまで回り込むと腕のトゲでヴァーリを斬る。

 

「ぐっ!」

「まだまだ!」

《ヒッパレー!ヒッパレー!ヒッパレー!メガヒット!》

 

更に蒼炎を纏った刀身を、龍誠は振るいヴァーリを吹っ飛ばした。

 

(なんだこいつら……前戦った時と違う!?)

『オラオラオラァ!』

 

そんな二人が攻める様子を、アザゼルは興味深そうに見ている。

 

「へぇ、こいつは良い意味で予想外だ」

「どういうこと?」

 

アザゼルの言葉に、リアスが首を傾げると、やって来たサーゼクスが答えてくれた。

 

「稀に一人の時より二人の方が高い力を発揮するという場合がある。勿論数が多いと言うのはあるが、それだけでは説明がつかない。例えばあれだって明らかに個人の実力も上がっている。これを【共鳴】なんて呼ぶんだ」

「ま、あいつのベルト風に言うなら……ベストマッチなやつらってことさ」

 

そういうアザゼルの視線の先には、戦兎と龍誠がヴァーリに、更にダメージを与えていく。

 

だがヴァーリも負けてはいない。二人の攻撃を止め、

 

「どこからここまでの力を……」

「簡単だよ。理由は二つ!まずはビルドドライバーにあって、スクラッシュドライバーにはない能力がある!」

 

ツインブレイカーと、スパークリングの腕の棘をギリギリと押し合わせる。

 

「なに?」

「スクラッシュドライバーは変身者の脳に作用してアドレナリン等の脳内麻薬を過剰分泌させる!その結果戦闘意欲を向上させて、ハザードレベルを急上昇させる!だがビルドドライバーは違う!ビルドドライバーは変身者の覚悟や思いによってその機能を上げることが出来、変身すればするほど思いに答え、ハザードレベルを上げてくれる!」

「つまり!愛と平和のために戦う俺達は……スクラッシュドライバーにも負けはしねぇ!」

 

ガン!っと二人はヴァーリを押し返すと、戦兎はドリルクラッシャーをガンモードにし、ホークガトリンガーも取り出す。龍誠もビートクローザーを構え、

 

《10!20!30!40!50!60!70!80!90!ワンハンドレット!フルバレット!》

 

戦兎はホークガトリンガーのシリンダー部分を回すと、ドリルクラッシャーにタンクフルボトルを、龍誠もビートクローザーにロックフルボトルを挿す。

 

《スペシャルチューン!ヒッパレー!ヒッパレー!ヒッパレー!》

《Ready Go!》

『ハァアアアアアアアアア……』

 

二人は武器を相手に向けると、同時に全てを発射する。

 

《メガスラッシュ!》

《ボルテックブレイク!》

『ハァ!』

 

まず龍誠がビートクローザーを振るい、錠の形をしたエネルギーの塊を出した。更にそこに、戦兎はホークガトリンガーを乱射しながらドリルクラッシャーの引き金を引くと、戦車の砲身のようなものが現れ、龍誠の錠ごと砲弾を撃ち、そのままヴァーリにぶつけた。

 

「がはっ!」

 

咄嗟に腕を交差させてガードしたが、後ろに吹っ飛ばされたヴァーリは、倒れつつも気迫で立ち上がる。しかし、戦兎は今度はドリルクラッシャーをブレードモードにし、四コマ忍法刀を取り出す。そしてドリルクラッシャーにラビットフルボトルを、龍誠もクローズドラゴンからドラゴンフルボトルを抜くと、ビートクローザーにロックフルボトルと入れ換えるように挿す。

 

《スペシャルチューン!ヒッパレー!ヒッパレー!ヒッパレー!メガスラッシュ!!!》

《火遁の術!火炎斬り!!!》

《Ready Go!ボルテックブレイク!!!》

『勝利の法則は……決まった!!!』

 

そう言って二人は走り出すと、まずは戦兎は前に出て、炭酸の泡を足から放出し、破裂させてヴァーリに接近し、すれ違い様に斬る。

 

「がっ!」

「おらぁああああ!」

 

少し遅れて龍誠が蒼炎を纏わせた刀身で斬りまくる。戦兎もすれ違ってヴァーリの後ろを取った後振り返り、武器を何度も振るう。

 

「がぁあああ!!!」

『ハァ!』

 

最後に、二人は互いに位置を入れ換えるようにヴァーリの前後を移動し、更に斬って背中を向けたまま武器を捨てるとレバーを回し、

 

『そして二つ目!俺と龍誠(戦兎)はな!』

《Ready Go!》

 

二人は同時に飛び上がると、右足にエネルギーを集め、振り返りながら飛び回し蹴りの要領で蹴りを放つ。

 

「最強で!」

《ドラゴニック!》

「さいっこうの!」

《スパークリング!》

 

こいつとならどこまでも行ける。どこまでもやれる。何故ならこいつは最強で最高の……

 

『コンビなんだよ!!!』

《フィニッシュ!!!》

 

二人の蹴りに挟まれたヴァーリを中心に凄まじいエネルギーの爆発が起こる。それは離れて見ていた他の皆も踏ん張らなければ後ろに吹っ飛びそうなほどだ。

 

「ぐぁああああああ!」

 

だがヴァーリは違う。それをまともに喰らっているのだ。そのダメージは計り知れず、しかも両側から挟まれるように蹴られたことで、蹴りの衝撃を逃がすこともできなかった。そして爆発の衝撃で自分達まで吹っ飛んだ戦兎と龍誠が転がる中、ヴァーリは変身も強制解除されて崩れ落ちる。

 

『はぁ、はぁ……ぜぃ』

 

だが戦兎と龍誠も息が覚束無い。それを見たアザゼルが、

 

「あの状態は戦ってる間は良いんだよ。ただそれが終わるともうダメだ。テンションを上げまくって、後先考えずに全力疾走し続けるようなものだからな。疲労が凄いことになる」

 

だがそれでも戦兎は立ち上がると、ヴァーリの元に向かう。とにかくまずはスクラッシュドライバーの回収を……そう思ったとき、

 

「なんだっ!?」

 

ヴァーリの元に音もなく着地した人影に戦兎は構える。見てみれば中華風の服に身を包み、一本の赤い棒を持った男だ。

 

「おいおいヴァーリ。随分ボロボロじゃねぇか」

「美猴……か」

 

ヴァーリの知り合いらしい男に、ヴァーリは答えながら立ち上がり、前に出ようとして止められる。

 

「おい、それ以上は無茶だ。止めろヴァーリ」

「離せ……」

 

そう呟いたヴァーリの体からボロボロとは思えないほどの魔力が漏れ出していく。その魔力の圧は地面にヒビを入れ、離れていた戦兎や龍誠は本能的に危機を感じ取った。

 

「まさか……魔力だけなら魔王クラスに匹敵するというのか?」

 

サーゼクスが呟くように、今ヴァーリの体から再現なく溢れだす魔力は、常軌を逸した量なのは魔力が少ない戦兎や龍誠も分かる。だが、

 

「終わりだな」

 

アザゼルが静かに呟いた。次の瞬間、

 

「ガハッ!」

 

ビチャ!っと、ヴァーリは血の塊を吐き出し倒れてしまう。それを見た美猴も、言わんこっちゃないと肩を竦めている。

 

どう言うことだ?戦兎達が困惑していると、

 

「アイツはな。本気を出せないんだ」

 

出さないじゃない。出せないんだというアザゼルは、更に言葉を続けた。

 

「アイツは悪魔の血を引き継いでる。だが、半分は人間だ。そこが問題なのさ。なにせあのルシファーの魔力だ。それが突然変異のレベルでアイツの体には眠ってる。だがそれに耐える器が無いのさ。半分人間だからな。だからアイツは加減しながら魔力を放出しなければならん。それをボロボロの体で魔王クラスに匹敵しかねんほどの量を出したらああなるさ」

 

そう言うこった、と言いながら美猴はヴァーリを担ぎ上げる。

 

「つうかてめぇ!一体なにもんだよ!孫悟空みたいな格好しやがって!」

「みたいっつうか一応末裔何だけどねぇ~」

 

え?そうなの?と言う顔で龍誠は戦兎を見る。正直こちらを見られても知らんのだが……

 

「ま、取り敢えずこの場の全員に襲われたら勝てねぇし、さっさと退散させて貰うぜっと」

「逃がすかよ!」

 

戦兎は慌ててドリルクラッシャーをぶん投げて止めようとするが、美猴はそれを棒で弾くと飛び上がって消えてしまう。

 

「くそっ!」

 

戦兎は悪態をつきながら、変身を解除する。それに続くように龍誠も変身を解除すると、

 

「疲れたぁ!」

「そうだな……」

 

二人はその場に座り込むと、皆もそこにやって来た。

 

「二人とも大丈夫?」

 

大丈夫……と力無い感じに答える二人に、聞いた祐斗は苦笑いを浮かべる。

 

「それにしても禍の団(カオス・ブリゲード)……想像以上の戦力を持っているようだな」

「でしょうね。今回襲ってきた魔女達は三大勢力には属していない。恐らく三大勢力以外のでしょうね」

 

サーゼクスの言葉に、ミカエルは同意して答える。それを聞いていたアザゼルは、

 

「ならこっちのレベルアップも必要だろ。特にあの二人……ありゃ鍛えればすげえ悪魔になんぞ」

 

と、邪悪な笑みを浮かべている。これは良くないことを考えているな、と分かるがミカエルも、

 

「ですね。あれはこれからの戦いにきっと必要になる」

「当然だ。妹が選んだ自慢の男と、その親友なのだからな」

 

フフっとサーゼクスは笑い、龍誠と戦兎を見る。

 

「こちらとしても精一杯のフォローはするさ。魔王という立場もあるがな」

「ならこんな話はどうだ?」

 

なんて三大勢力のトップが話す中、

 

「しかし疲れたぁ……」

「もう動きたくねぇ~」

 

そんな風に疲れきった戦兎と龍誠を見たアーシアは、

 

「でもお二人が無事でよかったです。主よ、感謝しあいた!」

『ぐっ!』

 

ピキーン!と戦兎達の頭に痛みが走る。アーシア……悪魔になってそこそこ経つのだが、未だに良いことがあると主に感謝をやってしまうのだ。因みにゼノヴィアもだが。

 

まあ幼少時からの癖というのは、早々抜けるものじゃない。しかし、龍誠は思っていた。どうにならないものかと。何せいつもこうやってダメージを喰らっている姿というのはあまり楽しい光景じゃない。その時、眼に入ったのはミカエルの姿だ。

 

そこでピンと来たので、

 

「あのミカエルさん。お願いがあるんですけど」

「なんでしょうか?私で出来ることならなんでも」

 

じゃあアーシアとゼノヴィアが祈ってもダメージ入らないようにしてください。龍誠は突然そんなことを言い出し戦兎達はズルッとずっこけそうになった。

 

「おい龍誠!突然何を言い出すのかと思えばなに言ってんだよ」

「いやぁ、前から思ってたんだよ。あいつら祈る度にダメージ入ってるじゃん?だからせめてそれくらい無くなればなと」

 

無理に決まってるだろ……と戦兎が頭を掻いていると、

 

「良いですよ」

「だってさ。諦めて……え!?良いんですか!?」

 

驚愕したのは戦兎だけじゃない。他の面々もだ。それに対してニコニコしながらミカエルは、

 

「えぇ、せっかくの歴史的な和平です。二人くらい神に祈りを捧げる悪魔というのも悪くないでしょう。それに……」

 

ミカエルはそう言ってアーシアとゼノヴィアを見る。

 

「現在神のシステムは我らセラフが管理していますがやはり難しいのが現状です。そのため神の加護等を筆頭としたものが弱まっています。そのため神への信仰に影響を与えるものを話す必要がありました。悪魔をも癒す聖母の微笑み(トワイライト・ヒーリング)や神の不在を知るものには……」

 

それがアーシアやゼノヴィアを異端認定した理由と言ったところだろう。そう戦兎が思っていると、ミカエルは続ける。

 

「これで許されるとは思っていませんが……せめてもの謝罪の一つとして受け取っていただけますか?」

「そんな、私はそもそも恨んでいませんし……」

 

私もだ。とアーシアの言葉にゼノヴィアは続ける。

 

「異端として認定されたときはもう終わったと思いましたが、今は今まで見たことや感じたことのなかった事を知ることができた。嫌みとかではなく、寧ろ感謝してるんです」

 

そう締め括ったゼノヴィアにアーシアも、頷いて同意した。それに対してミカエルは礼を良い、

 

「帰還次第すぐに調整しましょう。終わり次第連絡差し上げます」

『はい!』

 

そんな光景を見ながら、言ってみるもんだなと戦兎は龍誠に言い、空を見る。

 

ヴァーリには勝った。だが今回のは運も味方してくれた感じがある。やはりもっと強くならなければならないだろう。

 

ベストマッチを見つけ……後はルークやナイト、クイーンを用いたビルドの強化アイテム。とは言え強化アイテムは正直全然進んでないのだが……まあこれからなんとかなるだろう。

 

(取り敢えず飯食って寝てぇ……)

 

戦兎はそんなことを思いながら、大きなあくびをするのだった。



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第五章 冥界合宿のヘルキャット
夏休みの予定


前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦「ヴァーリや禍の団(カオス・ブリゲード)を撃退した俺たちだったが、残念ながら問題は終わらない!」
龍「まさか夏休みにもがもが!」
戦「バカ!それはまだ未来の話でしょうが!という訳でこれからもまだまだ気になる28話スタート!」


「ねぇねぇギャスパー君。学校はもう慣れた?」

「は、はひぃ。お陰様でぇ……」

 

会談から数週間。ギャスパーは一年のクラスに転入し、引きこもり時代にはなかった他人との交流に眼が回りそうだった。

 

当初こそ、ギャスパーの人見知りや性別の事で困惑はあったものの、同じクラスの小猫が面倒を見たりしてくれたお陰で、現在は上手くやっているらしい。寧ろ、ギャスパー君を守るわ同盟が女子の間で組まれたり、一部の男子生徒から熱が籠った視線を向けられてたり(ギャスパーは気づいていないが)している。

 

だが当のギャスパーはまだ慣れてないらしい。これでも学校に来て何とか会話するだけ大きな成長とも言えるが、それでも四苦八苦している。そんな彼(彼女?)の元に、

 

「おいギャスパー。行くぞ」

「あ、戦兎先輩!」

 

教室の入り口からヒョコっと顔を出した戦兎を見て、ギャスパーは顔をパアッと輝かせて荷物を取るとクラスメイトに声を掛けてからトテトテと駆けていく。

 

「あれ?塔城は?」

「小猫ちゃんは先生のところに提出物出しに行きました」

 

じゃあ俺達だけで行くかと戦兎はギャスパーを連れて歩き出す。元々はギャスパーが上手くやれてるのかを見に来るのが目的で放課後迎えに来ていたのだが、すっかり習慣になってしまった。まあギャスパーも嬉しそうだし良いだろう。

 

だが、そんな二人を見ていた一部の一年生達は集まり話す。

 

「や、やっぱりそう言う事なのかな!?」

「分からないわ!だって桐生先輩には万丈先輩が!」

「でも最近万丈先輩は女の子といる事も多いし木場先輩とも……」

「つまり寂しさを埋める為に!?」

「そうよ!傷ついた心を癒す為ギャスパー君を……」

 

キャー!っと黄色い声が上がる中、廊下を歩いていた戦兎とギャスパーは振り返る。

 

「なんかお前のクラス騒がしくねぇか?」

「ですよね……?」

 

噂されている方は、案外平和なのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーっすお前ら。今日も勉学に励んできたか?」

『……』

 

途中で小猫と合流した戦兎とギャスパーが部室に入ると、そこには既に龍誠達や、アザゼルがいた。大事なのでもう一度言うが、アザゼルがいた。

 

なぜ堕天使の総督がいるのか?それは禍の団(カオス・ブリゲード)対策に、グレモリー眷属の強化が必要だろうとなったのだ。なにせここ最近の事件遭遇率は異常だ。それに、グレモリー眷属はダイヤの原石の集団(アザゼル談)なので、今から英才教育してやるよ(これもアザゼル談)とのことらしい。

 

アザゼルが鍛えると言う事に関しては、異論はない。なにせアザゼルは純粋な強さこそ三大勢力の中では劣るが(それでも十分化け物)、戦略に関してはずば抜けているらしい。だからこそ数も強さも劣る堕天使が今まで生き残ってこれたとのこと。早速先日来た時からこちらの戦闘スタイルや強さについて調べているらしく、既にこれからどうしていくのかと言った基本的な教育方針は決まっているようだ。

 

しかし、

 

「明日から夏休みかぁ……」

 

戦兎はそう呟きながらソファーに腰掛ける。

 

明日から夏休み。勿論普通の学生であれば長期休業の計画を建てるのだろうが、残念ながらグレモリー眷属は明日からリアスの実家に向かい、若手悪魔の交流会等々に出席した後、修行の日々が待っている。

 

まあどうせそう言うのがなくても結局は龍誠と遊ぶ位しかしてない為、結構楽しみだったりする。そんな事を考えていると、

 

「皆集まったみたいね」

 

と言ってリアスが朱乃を連れてやってきた。そして彼女は、

 

「それじゃあ皆いるみたいだし、明日からの簡単な予定について話すわね」

 

そう言ってリアスは自作感溢れる旅のしおりを皆に配り話始める。それにしても、

 

(このリアス先輩の実家に行く時って龍誠大変だろうなぁ……)

 

戦兎は、リアスが話している間に朱乃が配ってくれたお茶を飲みながらそう思うと、丁度目の前に座っていた小猫が視界に入る。

 

どうも彼女は最近元気がない。気にはなるが、聞いても答えてくれない為どうするか考えてはいた。

 

(まぁ……コイツもコイツなりに色々あるだろうしなぁ)

 

戦兎はそう思いながらまたお茶を飲む。結局その日は、明日も早いと言う事で解散になったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「明日からは楽しみですね」

「あぁ、そうだな」

 

現在夕方、戦兎・龍誠・リアス・アーシア・朱乃・ゼノヴィアの面々はそれぞれ荷物を持って帰路についていた。

 

なぜこの面々なのかって?確かに何時もは一緒なのは途中までだ。だがいる。因みに戦兎と龍誠は頭痛いとアーシアとゼノヴィアの会話を聞いていた。そして何故一緒なのかと言うと、

 

「見てえてきたな」

「あぁ」

 

戦兎と龍誠は見えてきた一件の家を……いや、家と言うか屋敷を見る。

 

その隣には戦兎の家があり、

 

「やっぱり夢じゃねぇよな」

「当たり前だろ」

 

このバカデカイ屋敷が、今日から龍誠の住む家なのである。

 

いや冗談とかではない。確かに昨日の夜までは普通の一軒家があった。だが今朝事件が起きた。

 

朝、新聞を取りに郵便受けがついている門まで出た戦兎だったが、突然隣から聞こえてきた龍誠の「なんじゃこりゃああああああ!」という言葉に驚きながら道路に出た。龍誠は昨日は久し振りに学生寮に戻っていたはずなのだがと思いつつ出ると、隣の家の方に龍誠が立っており、何事かと見に行くと、

 

「なんじゃこりゃああああああ!」

 

戦兎まで叫んだ。そりゃそうだろう。昨晩まであった家が消え、屋敷が建築されれば驚くしかない。しかもバカデカイ屋敷だ。正確には隣の家だけじゃなくて向こう数件なくなっている。

 

あんぐりと口を二人が開ける中、

 

「あら戦兎。おはよう」

 

リアスが普通に出てきたのは……逆に異様な光景だったのは言うまでもないが、彼女から事情を聴くと龍誠との時間を増やしたかった。

 

戦兎の家では戦兎やその家族がいるし、学生寮では手狭すぎる。しかも最近はアーシアや朱乃にゼノヴィアまで来ていよいよ学生寮では入りきらなくなり、皆で戦兎の家には行くわけにはいかないし(最近朝駆けしてないと思ったら皆でやらないようにという約束をしていたらしい)でじゃあ家を作っちゃおうとなったとの事。

 

どう考えてもぶっとんだ話なのだが、この屋敷はそれだけじゃない。三階建てのこの屋敷には超豪華な風呂が各階につき、オーディオルームやシアタールームに普通の(と言っても壁に嵌め込んである薄型テレビや天外ベッドと豪華な)部屋が多数。例えハルマゲドンが起きても平気な作りで、他にも色々あるがとにかく豪華だ。龍誠との為に用意するには余りにも過剰すぎる気がしなくもないが、彼女の実家が進めてきたとリアスから聞いて戦兎は納得していた。用はこれは二人のこれからの為にという意味もあるんだろう。二人が意識しあっているのは見てて分かる。リアスははっきりだが、龍誠も満更じゃない。だがいまいち進展していない。なら一つ屋根の下にしてしまおうと言う事か。進展してからもこれだけ立派なら使えるだろうし、この間見たリアスの父親の様子を見ても、祝福されているようだ。と言うかそうなって欲しいと切望している節があった。

 

そして時間を現在に戻すが、今日は新築祝いという事で住人の一人である朱乃が手料理を振る舞うという事で戦兎も今日はこっちでご飯を相伴しにきている。

 

因みに、朱乃達が住むのはリアス的には不満だったらしく、アーシアならまだしもと暫くブツブツ言っていた。

 

それでも部屋は用意してあるし(これは眷属同士で交流が図れるようにという気遣いらしい)、戦兎もこっちにも自室が用意されている。余談だが、戦兎の部屋には入り口の他にもドアがありそのドアを通ると、この屋敷から戦兎の自宅の地下研究室に直通できる。と言うか人が知らない間に、自宅と屋敷の行き来専用のどこでもドアを作るのは止めて欲しかったのだが、まあこれはこれで便利だし良いだろう。ただ美空とかに見つからないように、荷物とかであっちのドアは隠しておく必要があるが。

 

そんなことを思いつつ戦兎は、明日からの予定について考えていた。

 

アザゼルにはビルドについて説明してある。多分だが自分や龍誠の目的はハザードレベルの上昇。あと自分は残りのベストマッチの発見だろう。

 

個人でも探しているが、どうも運がないのか余り進んでいない。まあ一応少しずつは暇を見つけては探しているが……

 

「どうした戦兎?」

 

ムグムグと口に食べ物を放り込んでいた龍誠を見て、戦兎は一息吐きながら、

 

「いや明日から楽しみだなって」

「俺もだよ」

 

そう言い合って笑う二人を、女性陣は見つめる。そして、

 

「最大のライバルは戦兎よね」

『うんうん』

 

リアスの呟きに、他の女子は頷く。そうして、夜は更けていったのだった。



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グレモリー家

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦「夏休みが始まり、俺たちは授業を始めるために冥界に向かうことに!」
龍「しかしお前ホントギャスパー好きだよな」
戦「あん?別に普通の後輩だよ」
ギャスパー?「僕とは遊びだったんですか?」
戦「おいこらアザゼル。下手くそな声真似してんじゃねぇよ」
ア「お前こそ先生つけろ先生を!とまあそんな感じの29話スタートだぜ」
戦「だからそれ俺の台詞!」


「しかし冥界って列車で行けるんだなぁ」

「それな」

 

ガタンゴトンと、戦兎と龍誠は揺られながらそう呟く。

 

さて、現在リアスとグレモリー眷属にアザゼルは冥界のグレモリー領行きの列車に乗っていた。乗り方は普通に駅に行って隠し通路みたいな所から専用のプラットホームに来ただけなのだが、意外と簡単に行けるものだ。てっきり転移で行くと思っていたし……

 

そう言っていると朱乃が席を立ってこちらに来た。

 

「その方法でも良いのですけど一度はこういったルートで入り、登録する必要があるのですわ。そうじゃないと違反で捕まりますから」

(俺と龍誠はサーゼクス様のお陰で転移して冥界の結婚式場に乗り込んじゃったけど平気だよな……)

 

ダラダラと変な汗を掻きそうになるが、戦兎は頭を降って目の前に座っていたアーシアに一声掛けて(ゼノヴィアもいるのだが、未だに二人の間には微妙な空気がある)から、

 

「姫島先輩どうぞ」

 

と、席を譲って立ち上がる。

 

「え゛!?」

 

龍誠の顔がひきつる中、朱乃は良いんですの?と聞いてくるが、どうぞどうぞと譲った。

 

「どうぞごゆっくり~」

 

そう言って戦兎は後ろで叫ぶ龍誠を無視してギャスパーの所までいく。

 

「隣良いか?」

「あ、はいどうぞ!」

 

戦兎が来てギャスパーは慌てて席に置いていた荷物をどけて、座席をポンポン叩きながらニコッと笑みを浮かべた。

 

「んで?ゲームか?」

「はい」

 

ギャスパーが見せてくれるので覗いてみると、名前を忘れたが確か一時期流行った横スクロールアクションゲームだ。

 

ピンク色の一頭身キャラがコミカルなのだが、これまたとんでもない鬼畜ゲー。5年の歳月をかけてと言う触れ込みだったが、余りの難しさに誰もクリアできず、結局今もクリアした人はいないはずだ。

 

案の定ギャスパー直ぐにやられて 涙目になってしまっている。

 

なので戦兎が借りてやってみるが出鱈目に難しかった。これクリアさせる気あんのかってレベルで、余りの難易度にゲーム機を叩きつけたくなるがそれは我慢だ。 これギャスパーのだからな。

 

「ダメだ……」

 

結局三回ほどやり直したところで戦兎はギブアップ。ギャスパーにゲーム機を返して、前の座席に座っていた小猫を見る。

 

何時も暇があれば何か食べている彼女だが、今日はずっと心ここに在らずの状態で外を見ていた。

 

「塔城。最近どうしたんだ?お前」

「なにもありません」

 

小猫は短くそう答えると、そのまま外に意識を向けてしまう。

 

元々何考えてるのか分からないし、愛想が良いやつではなかったが、最近本当に輪に掛けて愛想が無い。

 

(ホントこいつ大丈夫かよ……)

 

戦兎はギャスパーのゲーム画面に視線を移しながら、そんなことを思ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっそだろ……」

「でかすぎね?」

 

ポカーンと口を開けて見上げる戦兎と龍誠の視線の先には、超巨大な屋敷が建っていた。

 

列車で揺られること二時間。冥界入りして知ったのだが、冥界にも昼夜があること、そしてリアスと言うかグレモリー家は日本の本州くらいの領地を持ち、眷属はそこから好きな場所を貰える(上級悪魔になれば更に自分固有の領地を貰えるらしい)と言うこと、そしてこの屋敷……龍誠達の新居がチビっちゃく見えるほどだ。屋敷って言うかほぼ城だ。そりゃこれだけデカイのが普通なら、龍誠達に与えた屋敷もでかくなるわけだ。あれでも恐らく抑えたつもりなんだろう。

 

そう思いつつ、使用人らしき人に荷物を預け室内入ると、

 

「リアスお姉様!」

「ミリキャス!」

 

リアスの胸に飛び込んだのは、彼女やサーゼクスと同じ紅の髪を持つ少年で、リアスとは顔見知りのようだ。

 

誰だろう?そう思いながらいると、祐斗が教えてくれた。

 

「彼はミリキャス・グレモリー。サーゼクス様のご子息で、部長にとっては甥に当たる人だよ」

『え!?サーゼクス様って結婚してたの!?』

 

何となく勝手だが、サーゼクスは独身だと思っていた戦兎と龍誠が驚愕すると、

 

「ミリキャス様。リアスお嬢様の眷属の方々へのあいさつが忘れてますよ」

 

後ろからやって来たのは、グレイフィアだ。彼女にそう言われ、ミリキャスは慌ててこちらにやって来ると、

 

「こんにちわ。初めての方もいらっしゃいますね。ミリキャス・グレモリーです」

『あ、こちらこそご丁寧に……』

 

思わずこっちまでへりくだってしまうが、ミリキャスはニコニコ笑い、

 

「お二人の話はよくリアス御姉様の手紙に書いてあるので知ってましたが、優しそうで嬉しいです」

 

いやぁ、それほどでもと二人が頭を掻くと、今度は別の女性が姿を現した。

 

「あらリアス。帰ってきたのね」

「お母様。ただいま帰りました」

 

リアスの視線の先を見ると、そこに立っていたのはリアスとそっくりな女性だった。唯一の違いは髪色くらいだろう。て言うか……

 

『お母さん!?お姉さんじゃなくて!?』

 

戦兎と龍誠は二度目の驚愕である。何せどこからどう見ても母親の見た目じゃない。精々姉が限度である。そう思うとリアスはクスクス笑い、

 

「悪魔は一定の年齢を越えると自分の見た目を変えられるのよ。それでお母様は普段は大体私くらいの姿で過ごされてるの」

「そう言うことです。私はヴェネラナ。ヴェネラナ・グレモリーと申します。まあ前に一度お会いしましたが」

 

前に会ってる?どう言うことだと龍誠は首を傾げるとリアスの母親は、

 

「娘の結婚式には私も出てましたのよ?」

 

ビキィ!と龍誠は体が固まる。ヤバイ、やはり忘れてない。と言うか忘れられるわけがない。いったいどんな文句が来るんだダラダラと脂汗のようなものが出てきて止まらない。だが彼女は優しげな笑みを浮かべ、

 

「さぁ、皆さんのお部屋は用意してあります。それと今夜の夕食は楽しみにしててくださいね?」

 

余りにも普通な対応に、あれ?怒ってない?と龍誠は困惑してしまうのだが、それは余談だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

龍誠は生まれて初めての感覚を味わっていた。

 

そりゃそうだろう。何せ後ろにはメイドさんが控え、静かにナイフとフォークでご飯を食べる。しかもこの場にはいつもの仲間達だけじゃなくて、リアスのご両親もいるのだ。間違っても下手なことはできない。

 

取り敢えず外側から並んでる順番に食器は使っていくんだと、隣の戦兎がソッと教えてくれたので、周りの皆の動きを見ながら食べるが、食べてる気がしない。味が全然分からず、どうしたものかと思う。その時、

 

「万丈君。いや、龍誠君と呼んで良いかな?」

「は、はいどうぞ!」

 

突然リアスの父に声をかけられ、龍誠は体を固くして返事する

 

「家は気に入ってくれたかな?」

「は、はいそれはもう!」

 

そうかそうかと龍誠の状態とは違ってリアスの父はご機嫌で、

 

「本当はもっと30階建て位の巨大な建物にしようかと思ったんだがね?流石にやめたよ」

 

やめてくれていただいて有難うございますとは言えない。だが龍誠は喉元まで出そうだった。だがリアスの父いわく、

 

「最近は法律も厳しくてね。あと何より桐生君の家の隣にと考えると余り高すぎると彼の家に日光が当たらなくなってしまう。まあ建物自体はある種の異次元空間になってるから見た目よりずっと大きいから大丈夫だろう」

 

正直これ以上大きくなっても管理しきれませんと、また龍誠は思うが黙っていると、

 

「私も龍誠さんでよろしいかしら?」

 

ヴェネラナさんが話しかけてきて、龍誠は首をブンブン縦に振りながら答える。それを見た彼女は、

 

「では龍誠さん。貴方には修行と平行してグレモリー家の歴史やテーブルマナーについても覚えていただきます」

「うぇ!?」

 

突然のヴェネラナの言葉に、龍誠は驚愕しながら困惑する。それに反論したのはリアスだ。

 

「お、お母様!突然何を!」

「リアス。私は驚きましたよ。見たところなにも進んでいないじゃありませんか」

 

うっ!とリアスは詰まる。それに畳み掛けるようにヴェネラナは言葉を続け、

 

「貴女には貴女のペースがあるでしょう。ですかそれでも今から教育を行ってもなにも問題はありません。少しずつでも覚えていただかなくてはいざというとき困るのは貴女と龍誠さんです」

「うぅ……」

 

リアスは二の句を告げなくなり、立ち上がりかけていた席に座り直す。それからヴェネラナは龍誠を見て、

 

「良いですね?龍誠さん」

「は、はい……」

 

龍誠の胃がキリキリ痛む。今の会話や周りの雰囲気で、自分に望まれていることはなにか分かる。分かるが凄まじいプレッシャーだ。

 

外堀がどんどん埋められていっている感覚……嫌なわけじゃない。ただ結局、自分は未だにリアスとの関係をハッキリできていない。

 

リアスだけじゃない。アーシアや朱乃やゼノヴィア……ゼノヴィアはちょっと特殊だけど他の皆からの好意に気づかないほど鈍くはない。龍誠はバカであっても愚かではないのだ。

 

だからこそ答えが出せない。誰かに応えれば誰かを傷つける。悪魔が重婚OKでも皆は良いのか?自分だけを見て欲しいと思うんじゃないだろうか?自分がその立場だったらそうだ。

 

しかも自分が複数の女の子を幸せにできるのか?全くそんな自信はない。

 

(どうすりゃいいんだよぉおおおお!)

 

そう頭を抱える龍誠に、

 

(また少ない脳みそで難しく考えてパニック起こしてんな……)

 

横目で見ながら、戦兎はそんなことを思うのだった。



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若手悪魔の会合

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「遂に冥界の入り、グレモリー家にて束の間のへいおんを味わう俺たちだったが……」
龍誠「待て待て!束の間の平和じゃねぇだろ!俺が胃を痛くしてたわ!」
戦兎「別にお前は良いだろ」
龍誠「良くねぇ!あぁ~。なんか少しずつ外堀を埋められていってる感が……」
戦兎「少しずつじゃなくてガンガン埋められてってるけどな。と言うわけでそんな感じの30話です!」


「ぐへぇ……」

 

ブスブスと龍誠は頭から湯気が出そうだった。悪魔文字や、冥界の歴史から始まり、その辺りまではアーシア等の新人転生悪魔の面々もいたが、特別授業がありますとか言われてグレモリー家の成り立ちや土地についてから始まり、他の上級悪魔の家や社交界について、その他諸々の事まで勉強させられた。

 

そして現在、これで終了と言われたものの魂が抜けた龍誠と、残っているのは龍誠の付き添いで戦兎。後は一緒に勉強していたミリキャスくらいである。そこに、

 

「頑張られたようですね」

「おばあさま!」

 

ミリキャスが笑みを浮かべながら駆け寄る姿を見て戦兎と龍誠は、

 

(見えねぇけど祖母に当たるんだよな……)

 

と、入ってきたヴェネラナを見て、内心呟く。そんな二人に笑みを向けながら彼女は、

 

「どうですか?」

「いやぁ、覚えることが多すぎて大変です」

 

頭を掻きながら、龍誠が答えるがヴェネラナは、

 

「ですが授業態度は大変真面目だったと聞きましたよ」

「全然覚えれないんですけどね……まあ根性で覚えます!」

 

いつも難しいこと等は全部戦兎に任せていたのだが、これに関してはそう言うわけにいかない。これはいつもテストの時に用いている戦兎お手製の強制勉強装置を使うしかあるまい……

 

そう固く決心した龍誠だが、そんな龍誠を見て、ヴェネラナはクスクスと笑い、龍誠は首を傾げる。

 

「結婚式の時も思いましたが、真っ直ぐな方ですね」

「バカなんで前しか見えないだけですよ」

 

何を!とヴェネラナから離れたミリキャスの相手をしていた戦兎の言葉に龍誠が怒るが、ヴェネラナは笑みを崩さず、

 

「まさかあの時は、悪魔になったばかりのリアスの眷属がライザー殿を倒すとは思いませんでしたが……」

「あはは~」

 

その件に関して龍誠は、ただ笑うしかない。だがそんな龍誠を見て、ヴェネラナは更に口を開く。

 

「あの子がライザー殿との結婚を嫌がった気持ちを分からない訳ではありませんでした」

「え?」

 

ヴェネラナの言葉に、龍誠はポカンとし、戦兎はそれとなくミリキャスを部屋から連れ出した。

 

それからヴェネラナは言葉を続け、

 

「ただライザー殿が将来有望な悪魔でしたし、結婚してから芽生える愛というのもあります。」

「す、すみません……」

 

龍誠が遠い目をしながら謝ると、ヴェネラナは責めてるわけじゃありませんと応えた。

 

「もちろん最初はどんな人かと思いました。でもリアスが手紙を書く時は勿論皆さんのことを書くのですが、長いのは必ず貴方のことを書いてありました。貴方が何をしたとか貴方と何をしたとか。毎日が楽しそうで、見ているこっちまで楽しくなりましたよ」

 

そういったヴェネラナは、龍誠をまっすぐ見ると、

 

「龍誠さん。リアスどうかよろしくお願いします」

「……はい」

 

龍誠は唾を飲み込んでから、しっかり頷く。だがヴェネラナはこっそりそっぽを向くと、

 

「まあ二人のペース任せてたら万年経っても進展しなさそうなのでこれからも後押ししますが……」

「なんか言いました?」

 

いいえ?とそしらぬ顔で返事したヴェネラナと龍誠は話が終わると、戦兎とミリキャスは?となり外に出た。すると、

 

「変身!」

『え?』

《鋼のムーンサルト!ラビット!タンク!イエーイ!》

 

なんだ?と二人が見てみると、ビルドに変身した戦兎が、ミリキャスの前でポーズを決めているところだ。

 

「なにしてんだ?お前」

「ん?あぁ、ミリキャス様にせがまれてな」

 

龍誠が声を掛けると、戦兎とミリキャスが気づき、振り替える。

 

「どうですか?」

「凄くかっこいいです!」

 

振り返った後、戦兎が聞くとミリキャスは眼をキラキラさせながら答える。すると、

 

「ぼ、僕も使えないんでしょうか!?」

『え!?』

 

突然のミリキャスの問いに、戦兎と龍誠が眼を見開いて驚く。まあ確かに好奇心をくすぐるだろうが多分無理だろう。そう伝えると、ミリキャスは素直に、

 

「そうですか……」

 

そう言って落ち込んでしまった。いや仕方ないとはいえ結構罪悪感がある。するとヴェネラナが、

 

「あの、それは危険なものなんですか?」

「いえ、変身出来なくても電流が流れるだけなので怪我もしないとは思いますが……」

 

精々電流が流れた時に驚いて転んで擦りむいたりする程度だろう。そう伝えると、ヴェネラナは申し訳なさそうに、

 

「それなら少しだけやらせてやって下さいませんか?あのくらいの子供は一回経験させないと諦められませんので……」

「い、良いんですか?」

 

戦兎は改めて確認を取ると、ヴェネラナは頷き、

 

「痛い目に遭うのも経験ですから」

 

意外とスパルタである。まあ怪我しないのを確認しているし、問題ないかと、戦兎はビルドドライバーを外して、

 

「ミリキャス様。一回やってみます?」

「良いんですか!?」

 

パアッと眼を輝かせてミリキャスは、戦兎からビルドドライバーを受けとると、腰に装着して一緒に受け取ったラビットフルボトルとタンクフルボトルを振って、

 

《ラビット!タンク!ベストマッチ!Are you ready?》

「へん……しん!」

《はが、ねの!ムー!ンサル!ト!ラビビビビビビ!》

『あ……』

「うわぁ!」

 

バチィ!とベルトから電流が走り、ミリキャスは途中までは変身できていたのだが、解除されてしまった。

 

「だ、大丈夫ですか!?」

「だ、だいじょうぶでぇす……」

 

ピヨピヨと頭に鳥が飛びそうな感じで眼を回すミリキャスに駆け寄りながら龍誠は、

 

「流石に無理だよなぁ」

「まあそもそもハザードレベルに適正があるか分からないし、レベル上げるには長い期間フルボトルに触れておく必要があるからな」

 

龍誠に戦兎はそう返しつつ、ミリキャスを見る。

 

変身はできなかったが、途中までは出来ていた。ハザードレベルに適正が無い場合、ボトルを挿して回し始めた時点で解除されてたはず。だが、フレームが出る所までは出来ていた。それはつまり……

 

(まさかな)

 

戦兎は頭を振るう。魔王の息子でハザードレベルに適正があるとかとんでもないじゃないか。これでは自分の影が薄くなってしまうと、戦兎はとっとと忘れることにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後すぐに復活したミリキャスに、クローズも見せてやっていたところ、リアス達と共に戦兎と龍誠は冥界の都市の一つ、ルシファードというところに来ていた。

 

ここでは、これから若手悪魔の顔合わせがある為やって来たのだが、リアスは緊張した様子だ。そこに、

 

「リアス。お前も来たのか」

『ん?』

 

目の前からやって来た三人組に、戦兎と龍誠が首を傾げると、

 

「サイラオーグじゃない。久し振りね。フウとライも元気そうじゃない」

「お久し振りです、リアス様」

「ちぃっす。いっで!」

 

サイラオーグと呼ばれた男の左右にいた二人の男が挨拶を返し、軽いノリで返事した男がもう一人の男に拳骨された。

 

「何すんだよ兄貴!」

「何もあるか!なんだその挨拶は!お前はいい加減礼儀を覚えろ!」

「良いんだよ。そう言うの苦手だし兄貴に任せる。俺は肉体労働担当さ」

 

そういう問題ではない!と兄貴と呼ばれた男は怒鳴る。それを見ていたサイラオーグは、

 

「全く。喧嘩をするな」

『……はい』

 

決して怒った言い方ではない。普通の口調でいい、それの二人は従う。それからリアスは、

 

「彼はサイラオーグ・バアル。私の母方の従兄弟よ」

「え?確かバアルって大王家の……」

 

と戦兎が言う。大王家とは冥界の格付けで言うと、魔王に並ぶ立ち位置の家柄だ。しかも母方のということはヴェネラナはバアル家の人だったということか。

 

「そして後ろの二人はフウとライ。悪魔としては珍しい双子の悪魔でね。サイラオーグのポーンとして活躍してるわ」

「あれ?でもライザーのところにもいませんでしたっけ?」

「あの子達は転生前は別の種族だもの。でも二人は純血よ」

 

そうリアスが紹介すると、純血の悪魔も眷属悪魔になれるんだと感心していた戦兎と龍誠の前に、まずは緑色のスカーフを首に巻いた男が前に出る。

 

「私はフウ。サイラオーグ様のポーンです。駒の数は二つです。噂は聞いてますよ」

 

そう言って握手を求められ、戦兎と龍誠は握手に応じる。それから次は白いスカーフを巻いた方が来て、

 

「俺はライだ。よろしくな」

 

と同じく握手。すると、

 

「っ!」

 

最初に握手に応じた戦兎が苦悶の表情を浮かべる。何故か?それはこのライがバカみたいな握力で手を握ってきたのだ。なので慌てて離して手を振る。

 

そして今度は龍誠だが、

 

『っ!』

 

ミキィ!と今度は互いの手が軋む。表情は変えていないが、手が赤くなるほど力を込め、歯を噛み締める。暫くそうして、どちらともなく手を離すと互いに手を振る。

 

「結構握力には自信があったんだがな」

「これでも鍛えてんだよ」

 

苦笑いを浮かべるライと、ふふーんと鼻をならす龍誠という構図だが、二人は意気投合したらしく仲良く談笑しだした。そんな二人の様子を見ていた戦兎のところに、フウが来る。

 

「申し訳ない。アイツは悪い奴ではないんですが少々考え無しな所があるというか……」

「お互い苦労するな」

 

とこっちの二人まで意気投合したらしい。そんな様子を見たリアスはサイラオーグを見て、

 

「それにしてもなんで貴方がココに?まだ会場に入ってなかったの?」

「下らん喧嘩を見たくないだけだ」

 

ため息を吐きつつ、そう吐き捨てたサイラオーグに、リアスが首を傾げた次の瞬間。

 

『っ!』

 

サイラオーグの後方のドアが突然爆発し、吹き飛んだ。

 

「なに!?」

「ゼファードルとシーグヴァイラが言い合いになってな。全く。だからこんな場は不要だと進言したんだ」

 

そう言いながらサイラオーグ達と共に吹っ飛ばされたドアから入ると、

 

「ゼファードル。余程死にたいようね。上に咎められないなら私が殺してあげるのだけれど」

「はっ!そんなんだから処女やってんだろうが。俺が開通式してやろうか?」

 

なんだあの下品な奴は……と戦兎が呟くとフウが、

 

「彼方の男性はゼファードル・グラシャラボラス。現アスモデウス様の出であるグラシャラボラス家の次期当主様でございます。元々は次期当主とされていなかったのですがその方が急遽亡くなられた為、その座についたそうです。そして彼方の女性はシーグヴァイラ・アガレス様ですね」

 

それと……とフウは別方向を見たので、戦兎はその方を見ると二人のやり取りを遠くで笑みを浮かべながら見ていた糸目の男がいた。

 

「あの方は現ベルゼブブ様の出であるアスタロト家の次期当主様の方です」

「詳しいな」

 

それほどでもとフウが返す中、サイラオーグが喧嘩している二人に近づく。

 

「そこまでだ二人とも。それ以上やるなら俺が相手になる」

「あ?」

 

サイラオーグの言葉に反応したのはゼファードルと呼ばれた男だ。

 

まさか本気でやる気かと戦兎が思った時、リアスが口を開く。

 

「戦兎。見ておきなさい。若手No.1悪魔の力をね」

「若手No.1悪魔?」

 

戦兎がポカンとしながら、サイラオーグを見ていると、

 

「なんだぁ?このバアル家のでき損なごげぇ!」

「忠告はしたぞ」

 

サイラオーグに向かって拳を握り殴りかかったゼファードルだったが、後から反撃したはずのサイラオーグの拳が先に刺さり、ゼファードルはそのまま後方に吹っ飛ばされ、壁に叩きつけられた。

 

たった一発。だがその一発でも重く、そして速い。変身しない状態で喰らったら無事で済む自信がない。と言うか変身してても喰らいたくない。

 

そう思わせるほどの破壊力が、今の拳にはあった。

 

「早速一悶着あったようですね」

 

そんな時、最後にやって来たのは匙達を引き連れたソーナが入ってくる。

 

「全く。こう言う場でくらい静かにできないのかしら」

「まあ仕方ないわよ」

 

ソーナのため息とリアスの苦笑いが交わされる中、奥から別の人が出てきて、

 

「それでは皆さん。全員集まられたようですのでこちらにどうぞ」

 

そう言われそれぞれの主が奥の部屋に通され、眷属達は元々待たされていた部屋に残される。

 

「取り敢えずお茶でも飲んでるか」

「そうだな」

 

一応この部屋にもお茶位は用意してあるので、戦兎と龍誠はお茶を飲みながら待つことにした。

 

その頃奥の部屋では、リアス達が一列に並ぶ。

 

目の前には、サーゼクスやセラフォルーに、年老いた悪魔達が座っていた。

 

「よく集まってくれた」

 

そう口を開いたのは、魔王モードのサーゼクスだ。

 

「今冥界には危機が迫っている。君達も禍の団(カオス・ブリゲード)については知っているだろう。そして君達は冥界のこれからを担う若手悪魔だ。君達の重要性は日に日に高まる。そこでデビュー前ではあるが、今から互いに力を高めて貰う」

 

サーゼクスの言葉に、リアス達若手悪魔は顔を少し見合わせ、

 

「それはレーティングゲームを行うと言う事でしょうか?」

「あぁ、若手悪魔同士でエキシビションと言う形で行う。その際は天界や堕天使界の識者を呼び、レーティングゲームの有用性を示すが、君達は気にせず全力を尽くして欲しい」

 

シーグヴァイラの問いに、サーゼクスは答える。そして言葉を続け、

 

「さて、次は君達の今後の目的について聞かせて欲しい」

 

それに最初に名乗りを挙げたのは、サイラオーグだ。

 

「俺の目標は魔王になる事です」

「ほぅ?」

 

老いた悪魔の誰かが息を漏らす。大王家から魔王になった者はいない。もしなれたなら前例の無い事である。だがサイラオーグは、

 

「冥界の民が俺が魔王になるしかないと感じれば自然となれるでしょう」

(凄い自信だわ)

 

リアスは息を飲み、続いて名乗りを挙げた。

 

「私は各種レーティングゲームの大会で優勝することが近い将来の目標です」

 

リアスの言葉に、サーゼクス達は頷く。そして二人が言うと、他の若手悪魔達も少し緊張が抜けたのか目標を口にして行き、最後はソーナに回ってきた。だが、

 

「私は冥界にレーティングゲームの学校を建てることです」

「既に冥界にはいくつかある筈だが?」

「あれは上級悪魔や一部の悪魔にしか通うことが許されていません。ですが私は下級悪魔なども上も下も関係なくどんな身分の悪魔でも通える学校を作りたいのです」

 

ソーナの目は真剣そのもので、本気でそう思っている。だがそれを聞いた老いた悪魔達は、

 

「はっはっは!面白い冗談を言われる」

「全くですな。ソーナ・シトリー殿?貴女も知っての通り下級悪魔は上級悪魔に見出だされて初めて価値を得るのです。転生悪魔が幅を利かせ始めている中、そのような有象無象の存在に人手も時間も割けない。と言うか下級悪魔に授業をする教員などおりませんよ」

 

そう言って腹を抱えて笑うものもいる中、ソーナは涼しい顔だ。いや、付き合いの長いリアスは分かる。今ソーナは滅茶苦茶機嫌が悪い。必死にあれは怒りを我慢している顔だと。

 

だが我慢できないのもおり、

 

「通してください!真羅副会長!あの爺ども一回文句いってやる!」

「やめなさい!」

 

主を待つ部屋にてブチキレているのは匙だ。そしてそれを止めるのは、生徒会副会長にして、ソーナのクイーンである真羅 椿姫である。そこに、

 

「おい匙。落ち着け!」

 

と、戦兎の指示で龍誠が後ろから羽交い締めにして止めた。

 

「ここでお前が行っても事態が悪化しても好転することはねぇよ」

「っ!」

 

最後に戦兎から言われ、匙は悔しそうに噛み締める。すると、

 

「ま、ああいう手合いには何言っても無駄だろ」

「ライ?」

 

少し離れていたライがやって来るとそう言い、戦兎が首を傾げる。

 

「あの手はこちらが何を言っても堪えません。スルーするのが得策ですよ」

 

フウもライに同調し、それを聞いた面々は顔を見合わせ、

 

「なんか説得力あるな」

 

そう戦兎は言った。それにたいしてフウが、

 

「一応皆様とは違い生まれた時から悪魔でしたので色々」

 

フウはいう。純血とは言え両親が下級悪魔で、流行り病で死別。貧しい家柄だった為親戚がおらず、長いこと二人だけで生きていたらしい。その後、サイラオーグに拾われポーンになったとのこと。

 

つまりサイラオーグは二人にとっては恩人ということらしい。

 

「サーゼクス様を筆頭とした現魔王様方のお陰で私達のような悪魔は今や極少数です。ですがゼロじゃない。どんなに手を尽くしても、あのような年配の悪魔の方々はケチをつけ足を引っ張る。と言うかそもそもあの方々にとって悪魔は自分や上級悪魔のことを差すのでしょうし、私達のような下級の更に下のような悪魔は道に転がってる石ころのようなもの。それを救済しようと言うサーゼクス様達や、ソーナ様のような考えとは永遠に相容れないものなのでしょう」

「じゃあ好きに言われて黙ってろって言うのかよ……」

 

匙が呟くと、フウは頷く。

 

「えぇ、先程言ったようにスルーするのが一番です。ああいうのは言わせておけば良い。私達は兵士(ポーン)なのですから。信じるのはそれぞれの主で十分。他が何を言おうとも、我らが従うのは主だけなのですからね。一々横からのヤジに反応してたら主の願いを叶えられませんよ。まあ盲目過ぎるのもは如何なものかと思いますが」

 

そう締めくくったフウを見て、匙はそうかと力を抜く。

 

戦兎や龍誠も、まあそれしかねぇわなと肩竦めた。あの爺共が何を思おうと関係ないのだ。

 

戦兎と龍誠にはリアスが、フウとライにはサイラオーグが、そして匙にはソーナがいる。なら自分達下僕がやらなきゃならないのは主の夢を叶えることなんだから。それに、

 

「それに、今バカにされたってそれをバネに頑張ってあの爺共を見返せば良いじゃねぇか」

 

というのはライだ。そして更に言葉を続け、

 

「悪魔は実力でのし上がることだって出来る。俺達がのし上がってそれを従えてる主はすげぇって思わせれば向こうの態度だって変わるぜ?俺たちの活躍は引いては主の活躍なんだからな」

「お前意外と頭良いな!」

 

ライに向かってサラッと失礼なのは龍誠だ。だがライは気にした様子はなく胸を張ってるくらいだ。ある意味大物なのかもしれない。

 

すると、そんなやり取りをしていたところに、

 

「あら、すっかり仲良くなったみたいね」

『部長?』

 

奥の部屋から退室してきた主達が

それぞれの眷属の元に戻ってくる。

 

「それではなリアス」

「えぇ、貴方もね」

 

次に戻ってきたサイラオーグはフウとライを連れて行く。

 

「では失礼します」

「じゃあな~」

 

一礼するフウと、手を降って去っていくライという対称的な後ろ姿を見ながら、

 

「ではいきますよ匙」

「あ、はい!」

 

匙も戻ってきたソーナと共に行き、途中でソーナは足を止めた。

 

「リアス。負けませんからね」

「こっちもよ」

 

ソーナの呟きにリアスは返すと、ソーナは去ってしまう。

 

「負けないって何かあったんですか?」

「若手悪魔同士でレーティングゲームを行うって事になったんだけどね。最初の相手はソーナになったのよ」

 

初っ端から強敵ね。とぼやくリアスに、戦兎は苦笑いを浮かべながら、

 

「大丈夫ですよ。誰が相手だろうと俺達は負けませんから」

「そうね」

 

戦兎の言葉に、リアスは頷く。そして、

 

「さぁ、帰ったら早速修行が始まるわ。まずはソーナ戦に向けて励みましょう」

『はい!』

 

リアスの檄に、戦兎と龍誠は返事をし歩き出す。だがまさか修行があんなだとは……この時の二人は思いもしなかったのだった。




今作では珍しいオリキャラのフウとライですが……名前でなんとなくモデルは分かるかな……


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修行編 前編

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「若手悪魔の会合も終わり、俺達はソーナ会長たちとの戦いに望むため、修行を開始することに」
龍誠「しかし俺たちの修行は……」
戦兎「おおっとまだ言わせない。というわけで衝撃の展開もある第31話スタートだ!」


「と言うわけで特訓内容を発表する。まずはリアス」

 

若手悪魔の会合から次の日、アザゼルはリアス達を集め、手元の資料を見ながら、まずはリアスを見る。

 

「えぇ」

「まあお前はほっといたって後数年もすれば最上級悪魔候補になれるだろうが……今強くなりたいんだろ?つうわけでお前の特訓メニューはこれだな」

 

そういったアザゼルは、リアスにメニュー表を渡す。それを見たリアスは目を細めた。

 

「余り特別な感じはしないわね」

「言ったろ?お前はほっといても強くなるし、そもそも今の時点だって十分強い。全てに置いて高水準のオールラウンダータイプなのさ。周りが異常なだけでな。だからお前は過去のレーティングゲームの記録を見てキングとしての実力をつけろ」

 

成程、とリアスが頷くのを見ると、アザゼルは今度は朱乃を見る。

 

「朱乃。お前は自分の血を受け入れろ。ライザー戦の映像を見たがなんだあれは。お前の本来の力を使えばクイーンに負けることはなかったはずだ」

「私はあんな力を使わずとも!」

「アホかお前は。これからライザー戦とは比べ物になら無い戦いも待っている。本気にならないで勝てると思うな。このままじゃお前は足手まといにしかならないぞ」

 

アザゼルに言い切られ、朱乃は口をつぐむ。だがアザゼルはそれを無視して、

 

「木場とゼノヴィアはそれぞれ剣の特訓だな。木場は禁手(バランスブレイカー)の維持の時間と剣術は師匠に鍛え直して貰うんだろ?」

「はい」

「そして私はデュランダルだな!」

 

頷く祐斗の横で、ゼノヴィアが気合いを入れる中アザゼルは、

 

「お前のデュランダルは強力だし、聖剣という特性上悪魔には無条件で優位に立てる。だが今のお前はデュランダルを扱いきれていない。もっと特性を引き出せるようになれ」

 

とアザゼルは言うと、ギャスパーを見る。

 

「そしてギャスパー。お前はまず人見知りを直せ。お前のポテンシャルはこの面子の中でトップクラスだ。それを活かせないのはお前の性格によるところが大きい」

「は、はひぃ!」

 

今から既にビビりまくっているギャスパーだが、逃げ出そうとはしない。そこは誉めるべきだろう。そして今度はアーシアだ。

 

「アーシアの聖母の微笑み(トワイライト・ヒーリング)は既に回復力を考えれば完成の域にある。だが近づいて手をかざさなければ回復できないのは痛い。となるとやらなければならないのは回復範囲の拡大だが、広範囲を一気に回復しようとすると、恐らくアーシアは敵味方区別なく治すだろう。これはどうしようもない。アーシアは人が良すぎる」

 

アザゼルは肩を竦める。アーシアの優しさがというのはなんとも皮肉だ。しかしアザゼルは既に対抗策を考えているらしく、

 

「つうわけでアーシア。お前には癒しの力だけを飛ばす訓練をして貰う。これなら離れた味方だけを回復できるだろう。まあ回復力は劣るだろうが、有ると無いとでは大違いだ。そもそも素の回復力が高いから多少下がっても問題ない」

「が、がんばります!」

 

アーシアも気合い十分か。と戦兎が見ると、アザゼルは小猫を見て、

 

「小猫。お前も朱乃と同じだ。自分の力を受け入れろ」

「っ!」

 

力を受け入れる?どう言うことだ?戦兎はそう思うが、アザゼルは今度はこっちに来て、

 

「お前と龍誠はペアでやる。まずは戦兎と話したが、まず変身しながら戦闘だ。これでハザードレベルを上げる。あと戦兎はベストマッチを発見だな。序でに二人でやることで共鳴を起こせるってのもある。あのヴァーリをぶっ倒すほどだ。使いこなせればとんでもねぇ武器になる」

「だがどうやって戦うんだ?俺と龍誠同士で戦っても意味がないだろ?」

 

戦兎がそう言うと、アザゼルは上を見る。

 

「ああ。だから特別教師だ。来たぞ」

『え?』

 

ドォン!と次の瞬間戦兎と龍誠の背後に大質量の物体が降り立ち、地面が揺れる。そして背後を振り替えるとそこにいたのは……

 

「その昔六大龍王と呼ばれるとんでもなく強いドラゴンが六体いた。そのうち一人が悪魔に転生してな。それで今は五大龍王に変わったんだが、その悪魔に転生したドラゴン。現最上級悪魔の一角にして【魔龍聖】(ブレイズ・ミーティア・ドラゴン) と呼ばれしタンニーンだ」

「全く。サーゼクス殿の要請でなければ。貴様の頼みなど聞かんのだがな、アザゼル」

 

えぇえええええええ!と戦兎と龍誠は大口を開けて驚愕し、アザゼルの方に振り替える。

 

「まさかこの人と戦えと?」

「おう」

「滅茶苦茶強そうだぞ?」

「こいつのブレスは巨大隕石に匹敵すると言われている」

 

 

戦兎と龍誠は順番に文句を言うが、アザゼルはにっこり笑って見逃してくれない。

 

「安心しろ。タンニーンも加減は知ってるさ。多分な」

『今最後多分って言わなかったか!?』

 

ギョっと目を見開く戦兎と龍誠だったが、いきなりつまみ上げられ、

 

「お前達がルシファーの末裔を倒し、サーゼクス殿も期待を寄せる転生悪魔か。これからこの特訓期間ドラゴン式の特訓でビシバシ鍛えてやるから覚悟しろよ」

「あの……ドラゴン式の特訓とは?」

 

戦兎が恐る恐る聞くとタンニーンは口を開く。

 

「実戦方式でひたすら戦い続けるだ。安心しろ。死ぬ暇もないほどしごいてやる」

『い、いやだぁああああああ!』

 

命の危機を感じ、戦兎と龍誠はジタバタ暴れる。冥界で死ぬとか縁起でもない。だが幾ら暴れてもタンニーンの力は強く、離れられない。

 

「さて、リアス嬢。あそこの山を特訓に使いたいのだが良いか?」

「えぇ、構わないわ。戦兎と龍誠!頑張りなさい!」

『頑張る前に死にますぅうううう!』

 

戦兎と龍誠は割りとガチの悲鳴を上げるが、タンニーンは無視してそのまま飛び立つ。

 

「時間が惜しい。着き次第すぐに始める。それと昼夜を問わずに行うから気を緩めるなよ。敵は昼間だけ来てくれるとは限らんからな」

『助けてぇえええええええ!』

 

勿論二人に助けはなく、山に着いた時から地獄なんて生ぬるい特訓が始められたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ!はぁ!」

《フェニックス!掃除機!》

「これもベストマッチじゃねぇ!」

 

特訓開始から二日後、戦兎はフルボトルを入れ換えながらベストマッチを探しつつ走っていた。そこに後ろから龍誠も追い付く。

 

「戦兎来るぞ!」

「マジかよ!」

 

二人が振り替えると、背後から巨大な火球が飛んでくる。だが、

 

「こうなったらこれで良い!」

《Are you ready?》

「ビルドアップ!」

 

トライアルフォームである、フェニックスフルボトルと掃除機フルボトルで姿を変えた戦兎は後ろからの火球を、腕についた掃除機型の装備で吸い込み、もう一歩の腕でフェニックスフルボトルの力で逆に火球を作り出し発射する。

 

その火球は戦兎が吸い込んだ火球を放った本人であるタンニーンに向かって飛んでいくが、

 

「ふっ!」

 

と、息を吹き掛けただけで消された。

 

「そんな炎で俺を倒せると思っているのか!」

「ならこいつで!」

《ローズ!掃除機!》

 

これもベストマッチじゃねぇのかよ!と戦兎はやけっぱちでレバーを回して姿を変え、

 

「ビルドアップ!」

 

走り出した戦兎は、薔薇の茨のようなムチを腕から伸ばすと、タンニーンに叩きつける。しかし、ドラゴンの硬い鱗には傷はつけられず、

 

「効かん!」

 

とタンニーンの拳が飛んでくる。

 

「あぶねぇ!」

《Ready Go!ドラゴニックフィニッシュ!》

 

 

しかしその拳は、レバーを回して放たれた龍誠の渾身の蹴りを横から入れることでどうにか逸らし、戦兎はその間に離れる。

 

「出鱈目過ぎんだろ!」

「オッサンどんだけ強いんだよ!」

 

戦兎と龍誠がブーブー文句言うとタンニーンは頬を掻き、

 

「まぁ、パワーだけなら魔王級と言われるな」

「さいっあくだ……」

 

戦兎は肩を落とし、フルボトルを入れ換える。すると、

《ローズ!ヘリコプター!ベストマッチ!》

「ベストマッチ来たぁ!」

 

戦兎は下がったばかりのテンションをあげ、レバーを回す。

 

《Are you ready?》

「ビルドアップ!」

《情熱の扇風機! ローズコプター!イェーイ!》

「お前はどれだけ赤と緑が好きなのだ?」

 

新ベストマッチに、タンニーンが突っ込むが、戦兎は気にせず背中のヘリコプターのプロペラ状の武器を左手で抜くと、それが高速で回転し戦兎を空に飛ばす。そのままヘリコプターのように空を飛ぶと、そのまま右腕の茨状の部分から、先程のように伸ばすのではなく、薔薇の棘を飛ばしてタンニーンを攻撃する。

 

「む!」

 

するとタンニーンはそれを腕を払って弾き、火球を撃ってくる。だが戦兎の狙いはそこだった。火球をギリギリで避けた戦兎は素早くタンニーンの足元に着地し、レバーを回す。

 

《Ready Go!》

「勝利の法則は決まった!」

《ボルテックフィニッシュ!》

 

戦兎は、左手に着けていたプロペラ状の武器を右腕から伸ばした茨状のムチで絡め取ってそのまま高速回転させながらタンニーンの顎に突撃する。

 

「ぬぅ!」

「おぉおおおお!」

 

ガガガガガガ!と凄い音がし、火花が散る。金属ではなく、生き物の体の筈なのだが、とてもそうは思えない。そして、

 

「良い機転と攻撃だったが甘い!」

「がはっ!」

 

戦兎のボルテックフィニッシュに耐えきったタンニーンは、直後で硬直していた戦兎を叩き落とし、戦兎は地面に転がるとそのまま変身解除となってしまう。

 

「戦兎!」

「いっつぅ……」

 

戦兎は痛む体を何とか起こす。それを見たタンニーンは、

 

「良し、一旦休憩だ」

 

と言い、戦兎と龍誠は心から安堵したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いってぇ……」

「大袈裟な。骨も折れていないし大丈夫だろう」

 

断じてそういう問題じゃない。戦兎はそう言うが、タンニーンに何か言ったかと聞かれると、何でもないと言う。

 

さて、タンニーンは確かに昼夜を問わずに襲ってくるが、休憩がない訳じゃない。勿論タンニーンの良しがでない限りは続けられるので全く気が緩められないのだが……

 

因みに龍誠は、近くの川原に水を汲みに行った。一応戦兎と比べれば軽傷である。まあそれでもダメージはしっかりあるのだが。

 

「しかしビルドか。人間は面白い物を作るのだな」

 

戦兎をマジマジと見ながらタンニーンは言う。この二日で分かったことだが、意外とタンニーンは見た目と違って気さくだ。いや意外とって言うのは失礼かもしれないけど。

 

「戦って分かったが、対策が建てにくい力だ。能力が尋常じゃない。しかもベストマッチじゃなくてボトル同士の組み合わせによってまた戦い方が変わる。完全に対策を建てるのは恐らく不可能だろうな。レーティングゲームの特性上かなり有利だ」

 

とは言えまだ見つかってない組み合わせはある。さっき見つけたローズコプター も含め幾つか見つけたがまだ全部じゃない。それでも色んなボトルを試すと言うのも、意外と良いようだ。色んな能力を見れるしな。

 

そう戦兎が思った時だ。前方から誰かが来る。それを見た時、

 

「龍誠?」

 

戦兎が呟く。だがすぐに違うと気づいた。服装が違う?そうじゃない。違うけどそこじゃなかった。持っているオーラが違う。あとは長い付き合いだからこその勘だろう。タンニーンも、すぐに似ているが違うと気づいたようだ。そしてその龍誠?は止まると。

 

「初めまして桐生 戦兎。後タンニーン。俺は一誠。兵藤 一誠だ。宜しく」

 

そう言った龍誠?改め一誠は、ニヤリと邪悪な笑みを、戦兎とタンニーンに向けるのだった。



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兵藤 一誠

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「タンニーンとの修行の中、突如現れたなぞの男。兵藤 一誠に戸惑う俺とタンニーン」
龍誠「いやぁ、一体こいつは何者なんだ?」
戦兎「なに白々しい!お前一誠だろ!」
一誠「あれ?おっかしいなぁ。俺と龍誠って完全に同じ顔なんだけどなぁ」
戦兎「んなもん見れば分かるんだよ!と言うわけで32話スタート!」
一誠「チャオ!」


「顔だけじゃなくて名前まで似てんのかよ……」

「まあ俺も驚いたよ」

 

戦兎の呟きに、一誠は笑う。だが今の言葉でわかった。こいつは龍誠も知っていると。

 

「それで?一体なんのようだ?そもそもお前はなにもんだ?」

「ん?そうだな……君を見に来たんだよ。桐生 戦兎。全く、原作には居ないキャラとかホントは要らないんだけどさ」

 

原作?何をいっているんだ?と戦兎は困惑する。だが戦兎とは別の意味で、タンニーンは困惑していた。

 

「貴様……何者だ」

「何者って……人間?」

 

ありえんとタンニーンは呟く。どう言うことかと戦兎が尋ねると、

 

「この男のオーラ。間違いなくドライグとアルビオンのもの。何故貴様一人の体からそのオーラが漏れだしているのだ!」

「うぅん。一応抑えてるんだけど流石にこの距離じゃバレちゃうか。んじゃ、禁手化(バランスブレイク)っと」

《WelshDoragon!BalanceBreaker!》

 

一誠がまるでちょっとトイレみたいな勢いで言うと、次の瞬間彼の左手から赤い籠手のようなものが現れ、そこから全身に赤い鎧が装着される。

 

赤龍帝の鎧(ブーステット・ギア・スケイルメイル)っていってな。序でにこっちも」

 

そう言った鎧を纏った一誠の背中から、今度は白く輝く翼が生える。

 

赤龍帝の籠手(ブーステット・ギア)だけではなく白龍皇の光翼(ディバインディバイディング)だと!?」

「序でに禁手化(バランスブレイク)!」

《VanishingDragon!BalanceBreaker!》

 

それと共に真っ赤だった鎧は白いカラーリングが追加される。

 

「さぁて、何しに来たかどうかだっけ?さっき言ったように君を見に来た。どれくらい強くなったのかを見るためにね。というわけでちょっと戦おうか」

 

そう言って一誠がこちらに向かって走り出す。

 

「ちっ!」

《ラビット!タンク!ベストマッチ!Are you ready?》

「変身!」

 

戦兎は咄嗟に変身し、防御しようとするが、

 

「触るな!避けろ!」

「っ!」

 

タンニーンの怒号に、戦兎は咄嗟に避けた。そしてその言葉の意味を知る。何故なら、先程まであった木々。しかし、戦兎が避けた後その木々達は跡形もなく吹き飛んだのだ。

 

「良い判断だな。タンニーン」

 

一誠はそういうが、タンニーンは戦兎の横に立ち構える。

 

「気を付けろ戦兎。パワーも凄まじいが本気じゃない」

「え?」

赤龍帝の籠手(ブーステット・ギア)の能力は十秒毎に力を倍加させること。だが禁手(バランスブレイカー)に至っていれば十秒毎にという制限はない。そして白龍皇の光翼(ディバインディバイディング)は触れた相手の力を十秒毎に半減させる」

 

どうせその制約も禁手(バランスブレイカー)状態ではないんだろと戦兎はため息を吐く。聞いただけでも厄介な能力だ。だが一誠は笑い声を漏らす。

 

「ふむ。折角見に来たのに逃げ回られてもつまらないな。ちょっと足止めするか」

 

そう言って一誠が手を上げると、突如そこに落雷が落ちる。

 

「なんだっ!?」

「くっ!」

 

二人がそれを避けるが、

 

「今度はこれだ!」

 

一誠は腕を振るうと同時に、黒く蠢く化け物が生まれ、襲い掛かってくる。

 

「まさか今度は煌天雷獄(ゼニス・テンペスト)魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)か!?」

 

襲い掛かる魔獣を薙ぎ払い、降ってくる落雷を避けながらタンニーンが叫ぶと、

 

「正解!流石だなホントに」

 

そう言いながら一誠は戦兎に近寄る。

 

「この!」

 

それを迎撃すべく飛び上がって魔獣から距離を取った戦兎はドリルクラッシャーをガンモードにして向けた。だが次の瞬間!

 

「嘘だろ!?」

 

突如ドリルクラッシャーは動作不良を起こし、煙を吹いた。メンテナンスは欠かしてないし、今までこんなことはなかった。なのに壊れたのだ。

 

究極の羯磨(テロス・カルマ)っていう奴の力でね!」

《Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!》

 

走りながら、一誠の右腕から音声が鳴り……

 

「オラァ!」

「がはぁ!」

 

バキィ!と一誠の拳により戦兎のビルドのアーマーにヒビが入り、後方に大きく吹っ飛ぶ。

 

「ふむ。ハザードレベル3.9か……まだまだだなぁ」

「俺のハザードレベルを?」

 

戦兎はふらつきながら立ち上がるが、一誠の言葉に再度困惑する。

 

「俺の固有の能力の一つでね。見ただけで相手の強さがおおよそ分かる。ただ細かい数値的なのは触れないと流石にわからないけどな。おっと!」

 

余裕をかましていた一誠に向け、タンニーンは火球を吐く。だがそれを一誠は飛んで避けると、

 

「んじゃ次はこれやってみようかな」

 

一誠はそういうと空中で体勢を変え、手をかざす。

 

魔剣創造(ソード・バース)聖剣創造(ブレード・ブラック・スミス)を作って混ぜて禁手化(バランスブレイク)すれば……出来た。双覇の聖魔剣(ソード・オブ・ビトレイヤー)!」

「は?」

 

戦兎は一誠が何を言っているのか理解できなかった。だが空を飛んでいた一誠の手に握られているのは……

 

「聖魔剣?」

「そう、聖魔剣だ。聖剣と魔剣の特性を持ってて、原作でも木場は後々聖剣創造(ブレード・ブラック・スミス)使えるようになるからな。だから魔剣創造(ソード・バース)聖剣創造(ブレード・ブラック・スミス)作って禁手化(バランスブレイク)させれば行けるかと思ってやってみたんだけど行けるな。それと言っとくけど木場祐斗のより切れるぜ?あ、序でにドラゴンスレイヤーの力も付与しとこう」

 

そう言って力を込めた一誠は、聖魔剣を空中に無数に作り出し、

 

「ほらタンニーン。聖剣の特性とドラゴンスレイヤーの力だ。喰らったらただじゃすまないぞ」

「舐めるな!」

 

タンニーンは飛んでくる聖魔剣を腕を振った風圧や炎で迎撃するが、

 

「ぐぅ!」

 

何振りか当たる。だが一発でも十分危険な聖魔剣を、数発とは言え当たれば命に関わる。だが下手に自分が割って入っても意味はない。そう判断した戦兎は、

 

《Ready Go!》

「ん?」

《ボルテックフィニッシュ!》

 

レバーを回した戦兎は、グラフを出さずに飛び上がると、右足にエネルギーを集めて蹴りを放つ。

 

「うぉ!」

 

咄嗟に一誠は片腕で抑えるが、戦兎は更に蹴りを押し込むべく力を込める。しかし、

 

《Divide!》

「なんだっ!?」

 

突如戦兎の体から力が抜け、キックの力が弱まる。それを一誠は強引に弾き返した。

 

「ぐっ!」

 

地面を転がり、戦兎は立ち上がろうとするが、力が入らない。

 

「ふむ。まあまだ弱いけど良い調子で成長してるか」

「貴様……本当に何者なんだ」

 

一誠がそう呟くが、タンニーンは虫の息で問う。すると一誠は、

 

「そうだな。俺は13の神滅具(ロンギヌス)と、個人的な能力の一つである、名前と能力を知っていれば神滅具(ロンギヌス)以外ならどんな神器(セイクリットギア)でも複製出来る神器創造(セイクリットクリエイター)。そして無限の才能を持つ人間、兵藤一誠さ」

 

そう言いながら、一誠の体を霧のようなものが包んでいく。

 

「桐生 戦兎、それにここには居ないけど万丈 龍誠には強くなってもらわなくちゃいけなくてね。なにせ……」

 

俺の計画に必要な大切な駒だ。そう言った一誠はこちらに手をかざす同時に、薄緑色の光が発せられ、こちらのダメージが治っていきタンニーンは立ち上がれるほどまで回復した。

 

「それじゃ。チャオ」

 

最後にそう言った一誠は、そのまま姿を消し、何処かへ行ってしまう。それを見送るしかできなかった戦兎は、変身を解除し座り込んでしまう。

 

「大丈夫なのか?」

「うむ……怪我だけではない。スタミナまでか」

 

今のは恐らくアーシアの聖母の微笑み(トワイライト・ヒーリング)か?だがスタミナまでは回復しなかったはずだ。

 

「と言うかあいつの言葉を信じるなら神滅具(ロンギヌス)神器(セイクリットギア)を多数持ってる奴ってことか?」

 

持っていると言うか、名前と能力さえ分かれば作れると言う意味が分からん能力の恩恵だろうが。

 

「少なくとも神滅具(ロンギヌス)を複数持っていたというには事実だ。神滅具(ロンギヌス)の存在が確認されなくなっていたがまさかあいつが……」

 

そういうタンニーンに、戦兎が頷くと、

 

「おぉい!」

『っ!』

 

背後から聞こえてきた声に、戦兎とタンニーンは体を強張らせながら振り替える。そこにいたのは、

 

「聞いてくれよ戦兎!オッサン!今水汲みにいってたらなんか急に霧が出て来て道に迷ってさぁ!大変だったぞ!」

『……』

 

なんだ龍誠かと戦兎とタンニーンは額を拭く。見れば分かるが、突然声を掛けられるとビビる。

 

「ん?どうしたんだ二人とも?」

「あぁ……」

 

戦兎は龍誠に説明しながら、まず神滅具(ロンギヌス)等の神器(セイクリットギア)は一人一つが原則なのに、複数持ってる理由。何より龍誠と同じ顔なのも偶然ではないだろう。

 

(あいつは一体何者なんだ……)

 

等と、そんなことを考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ。結構最後のキックは痛かったかな?」

 

腕をプラプラしながら、一誠は道を歩く。

 

だがまだあれでは足りない。戦兎にも龍誠にももっと強くなってもらわなくてはならない。

 

全ては自分の夢のために。

 

「期待してるぞ。二人とも」

 

背筋が冷たくなるような声音を発しながら、一誠は懐からあるものを取り出す。

 

「既に種は巻き終わってる。他の連中も芽吹いた。後はぶつかり合うだけ。まあ原作通りに進めば問題はない。そうして……」

 

せめて次はこれを使いたくなる程度には強くなってくれよ?とチュッと一誠は手に持ったビルドドライバー……いや、戦兎達が使うものとは違い、赤と青と黄色と言う派手な色で彩られたビルドドライバーに似た物にキスして、楽しそうに笑うのだった。




今回明かされた兵藤一誠の能力。

13の神滅具(ロンギヌス)を所有し使える。
見た相手の強さが分かる(触れば数値として理解できる)
名前と能力さえ分かればどんな神器(セイクリットギア)でも作れる。
無限の才能(これのお陰で神器(セイクリットギア)でもを作った場合に瞬時に禁手(バランスブレイカー)に至れる)
ビルドドライバーに似た物を持っている(多分なにかわかっちゃうよね)


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兎と猫

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「突然の一誠と名乗る男の襲撃から暫し、俺達はタンニーンとの修行に精を出していた」
龍誠「しかしホントに何者なんだろうな」
戦兎「……今度は本物っぽいな」
龍誠「そんなに似てんのか……?」
戦兎「まあそっくりだな。と言うわけで一誠も気になるけど他にも問題山積みな33話スタート!」


神滅具(ロンギヌス)独占してるかもしれないやつと戦っただぁ!?」

「序でにそいつは名前と能力分かっていれば神滅具(ロンギヌス)以外の神器(セイクリットギア)作れるらしいぞ」

「更に全部禁手(バランスブレイカー)に至っている」

 

いやあり得ねぇだろ……とアザゼルは戦兎とタンニーンの言葉に頭を抱える。そこに龍誠が口を開く。

 

神器(セイクリットギア)を作る神器(セイクリットギア)持ってるんじゃね?」

「そんな神器(セイクリットギア)はねぇよ。それに神滅具(ロンギヌス)を複数持ってる理由にならない。あれは複製できるようなもんじゃねぇ」

 

アザゼルがそう返すと、戦兎が見てくる。

 

「で?どうするんだ?」

「そうだな。この件はサーゼクスに話す。だがお前ら。これは絶対他の連中に言うなよ?神滅具(ロンギヌス)独占しててしかも神器(セイクリットギア)も多数持ってるなんざバレたら大混乱も良いとこだぞ」

 

ですよねぇ……と戦兎は言い、タンニーンも頷く。まあ一番心配なのは、

 

「なんで俺を見るんだよ」

「お前の口が一番軽そうだからだよ」

「何いってんだ!俺の口の固さはダイヤモンド級だぞ!」

 

龍誠はフフンと鼻をならして威張るが、

 

「言っとくけどダイヤモンドって結構簡単に壊れるからな」

「え!?そうなの!?」

「鉱石としてはそこまで固くねぇんだよ」

 

マジか!?と驚愕する龍誠を見て、教えたのは失敗だったと後悔するが、今更だろう。それにだ。

 

「そう言えば何しに来たんだ?アザゼル先生」

 

そう。先程までまたタンニーンにしごかれていた戦兎と龍誠だが、突如やって来たアザゼルによって修行は一時中断。その際に先日の一件を相談していたのだが、

 

「うむ。龍誠がリアスの母親から呼ばれてな。そんで来たんだよ」

「え?俺は!?」

 

アザゼルの言葉に戦兎はギョッとする。それは下手すると一人でタンニーンと修行と言うことになるのでは……と汗を垂らすと、

 

「ま、頑張れ」

「いぃっ!?」

 

するとアザゼルは冗談だよと笑う。それから真面目な顔になって、

 

「お前は少し小猫に会ってこい」

「塔城に?」

 

戦兎は眉を寄せ、アザゼルの言葉に首をかしげる。

 

「何だって俺が塔城に……」

「あいつぶっ倒れたんだよ」

 

なに?と戦兎はアザゼルをみて確認する。それからアザゼルは更に続け、

 

「オーバーワークだよ。あいつ俺が立てた計画表より過剰なくらい多く取り組みやがってな。ダメージはアーシアが治したが、あのままじゃまたやる。つうわけで結構話したりしてて仲が良いお前の出番だ」

 

部長も向こうにいるはずだけど?と戦兎は言うが、

 

「リアスは甘いところがあるからな。少し厳しく言って嫌われ役やってこい」

「自分がやると言う選択肢はねぇのか?」

「俺は何時だって好かれていたい」

 

こいつ……戦兎がプルプルするが、殴りかかっても勝てないので大人しくする。そんな姿を見ながらアザゼルは、

 

(俺じゃダメなのさ)

 

何故なら自分は小猫と喧嘩できない。勝ち負けじゃない。小猫は、無口で愛想はないが、ああ見えて結構謙虚で遠慮がちだ。

 

言ってしまえば自分を極力圧し殺す。だが、戦兎とは相性の問題か結構喧嘩している。普段の彼女からは想像がつかないほど意地になってる姿を見ていた。

 

だが、今自分の中との葛藤を抱えている彼女には、そういう相手が必要なのだ。本音を言える相手が。

 

他の皆は優しい。優しいから甘く接するか、そっと一人にするだろう。それは大事だ。だが、その前に本音を引き出さなくてはいけない。本音を引き出すというのは、別に知りたいからじゃない。口に出す、態度に打すというのは、本人に自分の思いを再確認させると言う意味もあるのだ。

 

確認できないままでは、時間を無駄に過ごす。だから唯一喧嘩している戦兎が必要で、これに関しては戦兎には申し訳ないと思っている。だが、

 

(お前なら小猫と喧嘩してでも本心を引き出せるって信じてるのさ)

 

そうアザゼルは小さく笑うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「次に左足!右!そしてターン!」

「あ、え、おぉ?」

 

グレモリー邸の一室にて、ヴェネラナ龍誠は踊っていた。何時かはリアスと共に社交界ゴニョゴニョと言われて半ば強制的にやらされているのだが、体を動かしながら出来るダンスは、座って座学よりずっと良い。更に言えば巨大なドラゴンに追いかけ回されるよりもずっと良い。と言うわけでぎこちないながらも結構龍誠は上手くやっていた。

 

「少しは慣れてきたようですね」

「体動かすのは得意なんで」

 

結構ダンスとはバカに出来ない。こうしてやってみると、慣れない動きでも結構汗を掻く。

 

そう思いながら、置いてあったタオルで顔を拭き、龍誠は戦兎はどうしてるのかと思う。

 

ここに来てそのまま戦兎は小猫がいる部屋に行った。帰りの道中では小猫の過去を聞かされ、色々思うところがあったものの、アザゼルからは戦兎に任せろとだけ言われてしまったので、大人しくダンス特訓をしているが、やはり気になってしまう。その時、

 

「どうしましたか?」

「あ……小猫ちゃん大丈夫かなと思いまして」

 

あいつ、たまに遠慮ないですし……そう龍誠がヴェネラナに答えるより少し前、

 

「こっちか」

 

戦兎は広いグレモリー邸を歩きながら小猫の部屋を目指す。

 

広いので時間が掛かるが、聞いた小猫の過去を反芻するには良いかもしれない。

 

それは昔、二匹の猫又の姉妹がいたらしい。身寄りがなく、決して楽とは言えない生活。だがそれでも、姉妹で協力して生き延びていたらしい。だがその時、転機が訪れる。それはその猫又の姉が、とある上級悪魔に見出だされ、悪魔になった。元々猫又の中でも、猫魈と言われる高位の存在だったのもあり、すぐに頭角を現した。

 

だがそれが問題だった。才能がありすぎた姉は暴走し、主を殺して姿を眩ます。残された妹見たいする処遇は、かなり厳しい意見が集まり、妹もいずれ暴走する危険があるから殺そうと言われていた。

 

それをサーゼクスが強引に引き取り、リアスに預けてルークの駒と、新たな名前を与えたらしい。それが小猫とのこと。

 

とは言え自分にどうしろと……と戦兎は悩む。アザゼル曰く、思った通りにしろとのことだが、正直悩み所だ。どう接すれば良いか未だに決まってない。

 

そんなことを思っているうちに、小猫が休まされている部屋の前にたどり着く。もうここまで来たら悩んでも仕方ない。ノリと勢いだと、ドアをノックすると、

 

「……はい?」

「戦兎だけど」

 

名乗るとしばらく沈黙。なので、

 

「入るぞ」

 

そう言って入ると小猫がいた。だがその姿に、戦兎は息を呑む。何故なら彼女の頭には猫耳が生え、尻尾まで出ている。初めて見たが、 猫又と言うのは本当らしい。

 

「何しに来たんですか?」

「ん?龍誠がヴェネラナさんにダンス教わるらしいからな。序でに俺は倒れたって聞いたからちょっと見舞いに」

 

そう言って部屋に置いてある椅子に腰掛けながら、戦兎は部屋を見る。今は自分と小猫以外誰もいない。まあその方は話安いけど。

 

「つうかお前もぶっ倒れるほどやるとかアホだな。まあ巨大なドラゴンと追いかけっこしている俺が言っても説得力ないけど」

 

戦兎はそう言うが、小猫から反応はない。いつもなら何かしらの反応があるのだが、これだと寂しいを通り越して、虚しくなってくる。

 

「つうかなんであんな無茶したんだよ。お前だって分かってる筈だろ?バカな無茶すれば結果的に修行の日程がずれる。そしたらソーナ会長達とのレーティングゲームにも影響するぞ」

「言われなくても分かってます」

 

じゃあなんで……戦兎がそう問うと、小猫は、暫し口をつぐみ、それからまた言葉を発した。

 

「強くなるためです。アザゼル先生の特訓だけではダメだと判断しました」

「ダメなのか?」

 

戦兎は首をかしげる。アザゼルは一見無茶苦茶だが、特訓内容はまともだ。

 

戦兎たちのも無茶苦茶だに見えるが、やってて分かったが、まず自分と龍誠が乗ったとき……つまり共鳴した時に、タンニーン相手なら一方的に押せないが、逆に押されることはない。まあタンニーンが手加減しているのが分かるのだが、その絶妙に攻防戦を延々と続けられるようにしてくれる。

 

更に圧倒的に強いからこっちがやり過ぎなくらい本気になっても安心だ。お陰で色んなベストマッチ以外の組み合わせも試せる。

 

そして危機的な状況は、こちらが奮い立つことでビルドドライバーの稼働力を引き出し続けてくれるしで、アザゼルの質問に答えただけで、ここまでビルドの力を上げる修行方法を思い付くのは凄いと思う。勿論死にかけるが。

 

だから小猫の言葉がどうもおかしいと思ってしまう。だが、

 

「だって私には部長のような滅びの魔力はない。朱乃さんみたく魔力に秀でていないし、アーシア先輩のような回復能力も、祐斗先輩やゼノヴィア先輩のような剣の腕も、そして戦兎先輩や龍誠先輩のような武器も……」

 

言ってしまえば、自分にあるのは馬鹿力と頑丈さだけ。だが他の皆の力と比べれば、余りにも微々たる力だ。

 

「ですが本当の力は嫌です。この力で姉様は狂った。こんな力ならいらない。もっと別の力があればこんな力……」

 

小猫の呟きに、戦兎は口を挟まなかった。だが喋るのが一段落した後、一言口を開く。

 

「今のお前じゃ無理だよ」

「え?」

 

戦兎の言葉に、小猫はポカンとしながら顔を見てくるので、戦兎は続けた。

 

「例えお前が別の力に出会っても無理だよ。だってお前、自分の力から逃げる言い訳したいだけじゃん。姉がどうとか言ってるけど、結局のところお前、自分の力と向き合う勇気がないだろ?最初っから諦めてる。でもな、今のままじゃ別の力にあったって使えねぇよ」

「っ!」

 

小猫は、ベットから飛び起きると戦兎の胸ぐらを掴んでそのまま押し倒す。

 

「違う!私は……」

「良いか塔城……どんな力だって使うのに相応の覚悟がいるんだよ。少なくとも自分の力とすらちゃんと向き合えねぇような半端な覚悟で使えるわけがねぇ。使えてもどこかで必ず破綻する。そうすればお前は誰かを傷つけるぞ!」

 

戦兎の言葉に小猫は一瞬怯むが、すぐに力を込め直し、

 

「だから誰かを傷つけないように使わないんじゃないですか!」

「違うね!傷つけないためとか言ってるがそんなの言い訳だ!ただ単に自分に自信がねぇんだろ!?自分だったら絶対この力を間違った使い方をしないって胸も張らねぇ!試しもしねぇ!頑張りもしねぇ!挙げ句の果てバカやって迷惑かけてお前なにしたいんだよ!」

「っ!何も知らないくせに!」

 

小猫の手に力が籠り、戦兎の首が少し絞まる。

 

「何も知らない癖に!好き勝手言わないでください!!」

「あぁ知らねぇよ!お前何も言わないもんな!無口で無愛想で手が早いと言うトリプルコンボだもんな!分かるわけねぇだろ!分かって欲しいならちゃんと口にしろよ!何も言わねぇで分かってもらえると思ってんじゃねぇ!」

 

何か段々言ってる内にムカムカしてきた戦兎は、

 

「お前の過去は話でしか聞いてねぇ!同情出来ることもある!だけどな、お前が本来の力から逃げる理由にはならない!姉がダメだったならお前が使いこなして見せろよ!力が暴走した結果がどうなったかお前は知ってるんだろうが!ならお前は正しくやってみせろよ!最初から諦めてんじゃねぇよ!やってみる前から諦めて違う力探すんじゃねぇ!そんな中途半端な覚悟で部長の眷属やってんのか!」

「っ!……うるさぁああああああい!」

 

小猫は、感情をむき出しにして戦兎に叫ぶ。

 

「あなたとは違うんですよ!ビルドって言う恵まれた力持ってて!いつも前だけ見れて!悩みなんか無いでしょうね!この力で私は孤独になったんです!この力は最悪の結果しか作り出さないものです!」

「違う!力が罪なんじゃない。力ってのはな。使い方で善にも悪にもなる。科学だってそうだ。使い方で人を救うし傷つけることもある!使い手次第なんだよ!」

 

戦兎もやられっぱなしじゃない。小猫の胸ぐらを掴んで自分の顔に寄せる。

 

「俺だってな。力の使い方間違ったことがある。それでも俺はビルド(この力)から逃げない。何がなんでも俺は使いこなして見せる。もはやビルドは俺の一部だからだ!逃げてもついて回る!お前のなんて俺以上について回るだろ!どんなに目を背けたってな。お前だって逃げられないんだよ!だったら自分の力と戦う前から逃げんじゃねぇよ!」

「ちょっとなに騒いでるの!」

 

そこに部屋のドアが勢い良く開けられ、入ってきたのはリアスだ。そんな彼女は、部屋の中での様子を見て慌てて戦兎と小猫を引き剥がし、

 

「なにやってるの二人は!」

『……』

 

ムスッと二人は互いに目も合わせず立ち上がると、

 

「疲れたので寝ます」

「龍誠も終わったと思うので行きます」

 

と、勝手にそれぞれ行動を開始。リアスはポカンとしながらも、

 

「ちょっと待ちなさい戦兎!」

 

そう言って慌てて廊下に出ると、

 

「派手にやりあったなぁ」

「貴方の差し金ね?」

 

廊下の壁にもたれ掛かっていたアザゼルにリアスはジト眼で言うと、クククとアザゼルは笑みを浮かべる。

 

「ま、少し強引な手だったがな」

「何がしたいわけ?」

 

リアスは大きなため息を吐きながら言う。それにたいしてアザゼルは、

 

「生徒のためになることをしたいのさ」

 

と、信用0といっても過言じゃない笑みを浮かべながら言うのだった。




うぅん。今回分かりずらいかなぁ……戦兎と小猫の会話は。まあかなりこの辺は勢いで書いてます。いや読み直したりして訂正したりしましたがね?まあ後々の展開知ってると違和感がある場所もありますが、戦兎も小猫も知らないので。

あとまあ小猫の性格がね。


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本心

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「小猫との喧嘩から暫く。俺たちは毎日修行にいそしんでいた」
龍誠「それにしてもなーんか大事なことを忘れてんだよなぁ」
戦兎「なにを?」
龍誠「いやさ。何か悪魔関係以外で忘れてることがあるような……」
戦兎「おいおい。さっさと思い出しとけよってことで見逃せない34話スタート!」


『……』

 

人間……というか悪魔は疲労が限界を突破すると泣き言もでない。というか喋れない。ただひたすら息をするだけの物体に変わる。

 

さて、本日をもってタンニーンとの修行は終わり、戦兎と龍誠は解放感からピクピクと体を痙攣させながら息継ぎしていた。

 

「ふむ。この修行期間。よくぞ耐え抜いた。正直ここまで根性があるとは思わなかったぞ」

 

そうタンニーンは褒めてくれるが、正直反応する体力がない。そんな二人の様子にタンニーンは苦笑いし、

 

「そろそろグレモリー邸に戻る頃合いだろう。さて、送ってやるからいくぞ」

 

と、両手で一人ずつ二人をつまみ上げると、飛び上がる。因みにその間、されるがままの二人で、二人が想像以上にやるためちょっとやり過ぎたか ……タンニーンがちょっと反省したのは、まぁ余談である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「生きてるって素晴らしいな……」

「全くだ……」

 

タンニーンに送ってもらい、少し正気に戻った戦兎と龍誠は、リアス達が集まっているグレモリー邸のサロンに着替えて来た。

 

すると、

 

『あ……』

 

戦兎と小猫の目が合い、互いにムスッと表情を変えると、そのまま顔を背けてしまう。

 

「どうしたの?二人とも」

 

戦兎と小猫の間に流れる不穏な空気に、先にいた祐斗やゼノヴィアにアーシアとギャスパーまで眉を寄せて龍誠に聞く。

 

とは言え龍誠も、

 

「聞くなって言われちゃってさ」

 

そう言って苦笑いするしかない。まあ確かにちょくちょく喧嘩してるやつらだが、 余り後まで引くのはしていない。唯一尾を引いたのは、精々小猫が楽しみに部室の冷蔵庫に保管してあったお菓子を、小腹を透かせた戦兎が勝手に食べた時くらいだろう。あの時は流石に小猫がぶちギレて、暫く口を利かなくなり、慌てた戦兎がお菓子を大量に献上して謝っていた。

 

まあ今回はそんな笑い話じゃなさそうだが……

 

何て思っていると、リアスと朱乃に、アザゼルも入ってきた。

 

「つうわけでだ。修行お疲れさん。各自成果はあっただろう。だがこれで終わりじゃねぇ。今回の修行はあくまでもこれからやらなきゃならん事を見つける為にもあった。それぞれ課題も見つかっただろう。油断すんなよ」

 

そうアザゼルが締めたところで、龍誠は口を開く。

 

「なあアザゼル先生。一つ聞いて良いか?」

「あ?どうした?」

「何かさ。祐斗やゼノヴィアも邸から出て別の場所で修行してたけど二人はちゃんとコテージがあって俺らみたく野宿も水や食料の現地調達じゃなかって……」

 

そう。二人は龍誠や戦兎と同じく邸から離れて修行だった。だが、余りにもこちらと扱いが違うと文句を言うと、

 

「いやぁ、そのうち逃げ帰って来るかなって」

『……』

 

良く漫画やアニメで、キレた時にブチン!と言う擬音が入るが、あれは本当らしい。

 

少なくとも戦兎と龍誠の堪忍袋の尾がキレた時その音は響いた。

 

『今こそ修行の成果見せたらぁ!』

「お?」

 

次の瞬間戦兎と龍誠はアザゼルに飛びかかる。まぁ……流石に堕天使の総督の力は伊達ではなく、結局返り討ちに遭うのだがそれは余計な話だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひぃいいいい!怖いですぅうううう!」

 

アザゼルに逆に叩きのめされたのち、戦兎達は若手悪魔達のレーティングゲームの前のパーティーに参加していた。

 

勿論そこには多数の悪魔が居り、リアスは家の事もあるのかそちらの対応に行き、朱乃はそれについていく。

 

そして他の皆もそれぞれで楽しむ中、ビビりまくっているギャスパーを宥めながら、戦兎は会場を見た。

 

明日から若手悪魔同士のレーティングゲームが始まる。初戦はソーナが率いるシトリーチームか。と思っていると、

 

「よっ!お前らもついたんだな」

「匙か」

「よふぉ。ふぁふぃ」

 

噂をすればなんとやらか。と言う感じで匙が現れた。 戦兎は立ち上がり、龍誠はモグモグと片っ端から口に入れていた珍しい料理を飲み込む。

 

「そっちはどうだったんだ?」

「元龍王に朝から晩まで追い掛け回されてたよ」

 

は、ハードだな。と自然と修行の話になったので、匙に戦兎が話すと匙は頬をひくつかせた。

 

だが匙はそれでも、

 

「まあ俺だって。頑張ったぜ。少なくとも次のレーティングゲームに勝てる程度にはな」

「それは何よりだ」

 

戦兎は肩を竦めて返事をする。匙は決してこちらを嘗めてはいない。だが負けるわけにはいかない。匙達の夢を叶える為には結果を残し続けるのが前提だ。だが、

 

「でもこっちだって負けやしないさ。悪いが駒王町には泣きながら帰って貰うよ」

「そっくりそのまま返すぜ」

 

そう二人が言い合っていると、龍誠も来て、

 

「すげぇ自信だけど何かあるのか?」

「それを言ったら意味がねぇからな。試合のお楽しみだ。ただ……お前らの度肝を抜けるぜ?」

 

対した自信だ。余程自信があるらしいな。これはもう少し探りをいれるべきか?と戦兎が思ったその時、

 

「ちょ、ちょっと!」

『ん?』

 

背後からかけられた声に、戦兎達が振り替えると、そこには綺麗な金髪を縦ロールヘアにした少女が立っていた。確かこの子は……

 

「ひ、久し振りですわね。クローズ」

「……」

 

龍誠を見てそういう少女は明らかに緊張している。しかし龍誠をクローズと呼ぶとは……いやまあ変身してる時の姿だから強ち間違いでもないが。

 

しかしとうの本人は、

 

「誰だ?」

 

ズコッと戦兎と匙だけではなく目の前の少女までコケた。だが素早く復活すると、

 

「レイヴェル!レイヴェル・フェニックスですわ!兄のライザーとの戦いの時に少し話したでしょう!」

「あぁ、そう言えばいたな」

 

完全に忘れてたらしい。まああの時はライザーのインパクトが強かっただろうし、話したのも少しだ。それでも完全に忘れるのはどうかと思うが。しかし、

 

「全く、折角会えたのに忘れられてるとは……」

「わりぃわりぃ。でもお前がいるってことはライザーも……」

 

龍誠はキョロキョロ見回した。だがライザーが居ない。それにレイヴェルは、

 

「兄は現在貴方に負けた所為で引き籠ってしまいましたわ。しかもドラゴンの名前やモチーフにしたものを見るだけで叫び出して怯えるほどのトラウマになってしまいまして……」

「そ、そんなに?」

 

まあ才能に胡座を掻いていた部分がるので少しは良い薬ですがとレイヴェルは案外厳しく言う。それに戦兎が一応眷属でもあるのに良いのかと聞くと、

 

「今はトレードによってお母様のビジョップになりましたから良いですわ」

「とれーど?」

 

ライザーから母親のビジョップになったとはどう言うことだ?と龍誠は首を傾げると、

 

「説明しよう。実は眷属は同じ種類と数の駒で交換できるんだぜ?例えば俺ならポーンの駒4つか、それと同じ数になるように眷属を揃えればな」

「そう言うことです」

 

そう説明してくれた匙に、龍誠は頷く。それで今はライザーの眷属じゃないと言ったのかと、それにしても……

 

「何しに来たんだ?」

「べ、別に見知った顔を見たら話し掛けるものでしょう!」

 

そうかもしれないが、少なくとも兄をぶっとばした奴に会いたいかと言うと、個人的にはどうなのか微妙だ。でも向こうは良いお灸になったと言うし、気にする事はないのか?

 

「まあ良いけどさ。ライザーが引き籠っててお前は大丈夫なのか?」

「私は寧ろ大人しくしていただいた方が静かで良いくらいですわ。あら?」

 

すると、そんな話をしていた二人の元に、別の女性がやって来た。スラリと背が高いが、抜群のプロモーションの女性に、戦兎は見覚えがあった。確かライザーとのレーティングゲームの際に、校庭で戦った仮面をつけた眷属だ。まとめてリタイアさせたし、仮面を着けていたから一瞬分からなかったが間違いない。

 

「どうしましたの?イザベラ」

「お父上の知り合いが挨拶に来ている。行った方がいい」

 

そう、とレイヴェルは名残惜しそうに龍誠を見る。それを見た龍誠は、

 

「行った方がいいんじゃねぇか?別に俺となんて今じゃなくたっていいんだし」

「じゃ、じゃあ改めてお会いしてもいいのですか!?」

 

レイヴェルの圧の籠った問い掛けに、龍誠は、

 

「い、良いんじゃねぇか?」

 

と返す。こいつこういうタイプだったのか?と困惑しながら、レイヴェルが咳払いするのを見た。

 

「そ、それではクローズ……いえ、龍誠様とお呼びしてよろしいかしら?」

「別に呼び捨てでも構わんのだが」

 

多分そんなに年は変わらないだろう。そう思って言ったのだが、

 

「そんな失礼なことできませんわ!龍誠様と呼ばせてもらいます!」

 

と言って挨拶に行ってしまった。その後ろ姿に唖然としているとイザベラと呼ばれた女性がクスクス笑う。

 

「すまない。レイヴェルにとって憧れの存在だからな。お前は」

「そうなの?」

 

イザベラの言葉に龍誠は首をかしげると、

 

「なんだかんだ言ってレイヴェルは少女趣味だからな。女一人の為にあんなに大暴れして勝って、しかも文句があるなら何時でも来いとまで言われればな」

 

そう言うもんなのか……と龍誠は頭を掻く。そんな姿を、匙と戦兎は見ていると、

 

「なあ桐生。あのレイヴェルって子って龍誠に……」

「多分そうだな」

 

戦兎の返答に、匙はガックシと肩を落とす。

 

「くそぉ。俺は会長と全然進展がねぇのに何であいつあんな可愛い子とフラグを……」

「序でに教えとくと、部長とキスしたり、夜はそこに姫島先輩やアーシアにゼノヴィアの四人と毎晩一緒のベットで寝てるぞ」

 

きっと漫画やアニメだったら匙は今、目や口から歯が入れ歯のように飛び出してるか、顎が地面にくっついているだろう。それくらい驚愕していた。

 

「可笑しい。眷属になったのは似たような時期で寧ろ俺の方が若干早いのに……」

「あいつ昔からモテるからなぁ」

 

モグモグと食べ物を食べながら戦兎は言う。そんな戦兎に匙は肩を掴み、

 

「俺の味方はお前だけだよ桐生」

「いや俺だってその気になれば女の一人や二人……」

 

戦兎はひきつった顔をしながら答える。だが匙は、

 

「でもお前女子の彼氏にしたくない男子生徒ランキングトップ5入りしてんぞ?」

「マジか!?」

 

匙が言うには、皆顔は良いけど……と言う前置きと共に言うらしい。因みに情報ソースは同じ生徒会の女子らしい。

 

前にも小猫に言われたように、実験をところ構わずやったり、ナルシストな言動が随所にあって、そう言う位置付けらしい。

 

「ま、まあいいじゃねぇか。因みに不動の一位は同率で松田と元浜らしいぜ?」

「あの覗き魔野郎共に勝っても嬉しくねぇよ!」

 

そんなにか?そんなに俺は変人だったのか……と今度は戦兎がガックシと肩を落とす番だ。すると、

 

「ぼ、僕は戦兎先輩のこと大好きですよ!」

「ギャスパー……」

 

お前ホントいい後輩だよ……と戦兎がホロリと泣きたくなったその時、

 

「ん?」

 

戦兎の視線の先には、血相を変えた小猫が走っていく姿がある。足早というか、殆ど駆け足で会場を飛び出す姿に戦兎は違和感を覚え、

 

「悪い。少し席を外すわ」

「え?あ、おい桐生」

 

匙の制止も聞かずに戦兎は人混みを避けながら小猫を追う。その隣には、

 

「どうした戦兎?」

 

と龍誠も当然の如くいる。それに戦兎は、

 

「いや、塔城が慌てて飛び出していったからな。何か嫌な予感がする」

 

そんな二人の背中を見送りながら、匙は隣のギャスパーを見て、

 

「なあギャスパー。一つ聞いて良いか?」

「は、はい!?」

 

戦兎がいなくなった途端さっき以上にガチガチになっている。だが匙はそれに触れずに、

 

「何でお前女性物のドレス着てるんだ?」

「い、一度着てみたくて……」

 

そんな二人のやり取りにイザベラは首をかしげ、

 

「何故そんなことを?」

「だってこいつ男だし」

 

次の瞬間、会場に響くほどの声量でイザベラが驚愕するのだが……まぁこれは別の話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どこ行った?」

「わかんねぇ!」

 

慌てて外に出た戦兎と龍誠だったが、既にそこには小猫がいない。とにかく探さなくては……そう思っていると、

 

「小猫はこっちよ」

『部長?』

 

背後からの声に二人が振り替えると、そこにはリアスが使い魔の蝙蝠になにか聞いていた。

 

「どうしてここに?」

「私も小猫が血相変えて出ていくのが見えたのよ。さ、とにかく行くわよ」

 

二人はリアスの指示に頷き、三人で走り出す。暫く走っていると、何かの話し声が聞こえてきた。

 

「静かに」

 

リアスは短くそう伝えると、体勢を低くして隠れる。影からこっそり覗くと、小猫と……誰かがいる。

 

「久し振りね、白音。使い魔に気づいてきてくれるなんて感動にゃ」

 

胸元まではだけさせた着物と黒い長い髪と猫耳に二股に別れた尻尾の女性。しかし白音?と戦兎が首をかしげていると、

 

「白音は小猫の本当の名前よ。私がお兄様から預かってからは塔城 小猫と言う名前を与えて名乗らせていたけど……」

 

まさか黒歌がと、リアスは表情を暗くする。恐らく黒歌とはあの小猫と話している少女だろう。そんな二人の関係について戦兎が聞こうとすると、

 

「何故ここにいるんですか?黒歌姉様」

「大事な妹に会うのに理由なんているのかにゃ?」

 

二人の会話で合点がいく。姉妹と言うわけかと、戦兎は納得する。余り似てないので分からなかった。顔もだが雰囲気も。

 

「ふざけないでください」

「ふざけてないわ。まあ確かに会いに来ただけじゃない」

 

そう言って黒歌が小猫に手を伸ばす。

 

「一緒に禍の団(カオス・ブリゲード)に入るにゃ。遅くなったけど迎えに来たの。また一緒に……昔みたいに仲良く暮らすにゃ」

「おいおい。勝手に連れていったらヴァーリとかに言われるぞ?」

 

黒歌に反論する声。それは頭上から現れ、黒歌の背後から声をかける。その姿は戦兎も見覚えがあった。あれはヴァーリと戦ったときに現れた美猴とか言うやつだ。

 

そんな美猴の言葉に、黒歌は舌を出しながら、

 

「平気平気。白音は私の妹だから私と同じく仙術を使う才能を持っている。今は使えずとも秘めてる才能は充分凄いし、認められるわよ。だから白音。一緒にいくわよ」

「わ、私は……」

 

小猫は何度も唾を飲む。口が乾き、喉がカラカラだ。だが、

 

「それとも……まずは後ろに隠れてるやつを倒せば言うことを聞くかにゃ?」

「え?」

 

小猫は振り替える。すると影から、隠れてるのバレてんじゃ意味ないかと、戦兎たちは出てくる。

 

「良くわかったわね」

「仙術の心得がある相手に普通に隠れてる程度じゃ意味ないにゃ。気で分かるのよ」

 

そう言ってリアスの言葉に黒歌は答える。そして小猫は、

 

「何で……」

「貴方が血相変えて出ていったから着いてきたのよ」

 

そう言ってリアスは小猫の前にたつ。それに合わせて戦兎達も前に出た。

 

「悪いけどこの子は連れていかせないわ」

「お前には聞いてないにゃリアス・グレモリー。ねぇ白音?お前はどうするのがいいと思う?今のまま一番よわっちい役立たずの貴女に居場所があるの?」

 

ズキン!と小猫の胸が締め付けられる。黒歌の言うとおりだ。自分は一番弱い。結局自分は自分に向き合えてない。このままでは役立たずだ。そうの烙印を押されれば……自分はまた、

 

「下らない問いね」

「部長?」

 

その時、小猫の思考を断ち切るようにリアスの凛とした声が響く。そして、

 

「居場所ならあるわ。幾らでもつくって見せる。自分と向き合えるようになるまで私は待つわ。甘いと言われても……」

 

自分の眷属を貶めたり、捨てるような真似はしない。リアスはハッキリと言った。

 

それを聞いた黒歌は少し苛立ったような顔をして、

 

「鬱陶しいやつね」

 

といった瞬間、戦兎達の周りに突然煙が立ち込めた。

 

「悪魔や妖怪に良く効く猛毒にゃ」

「おめぇやることがえげつねぇな」

 

美猴の嫌みも何のそのといわんばかりに黒歌だったが、

 

「ん?」

 

少し煙の流れが可笑しい。いや何がかと言うと、煙が一点に集まりだしているのだ。

 

「すぅううううう!」

 

徐々に煙は晴れ、その煙が集まっていた場所に立っていたのは龍誠。そして龍誠は胸一杯に煙を吸い込むと、

 

「けほっ!」

 

少し咳き込んで煙を吐き出したが、概ね健康そうだ。

 

「なんだ?全然効かねぇぞ?」

「何でよ……」

 

龍誠は少し肩を回すが、ピンピンしている。本当に効いていないらしい。その光景に黒歌は唖然としたが、それでも目の前の光景に頬尻をあげる。

 

「でもお仲間は効いたみたいね」

「え?」

 

そう。龍誠の隣に立っていた戦兎や、リアスに小猫は膝をついて苦しそうな表情を浮かべる。

 

「だ、大丈夫か!?」

「げほっ!かなりやべぇ……」

 

戦兎はそう呟く。それを見ながら黒歌は龍誠を見る。

 

「さぁて、お友達がいないんじゃ一人で相手する?」

「当然!」

 

と龍誠は言うが、小猫がダメだと言う。

 

「小猫ちゃん?」

「だ、ダメです……黒歌姉様は普通の悪魔としても充分に強いですが仙術を極めていて、純粋な戦闘能力なら最上級悪魔に匹敵します。黒歌姉様だけならともかくあの美猴と言う男も……」

 

あいつも戦うの?と龍誠は言うと、美猴は、

 

「使えんなら別に連れてっても良いしな。それにヴァーリ倒した二人のうち片割れと戦うってのも面白そうだ」

 

めっちゃノリノリであった。寧ろ黒歌と戦って消耗する前にやらせろと言わんばかりである。つまり一人であの二人を相手しろと言うのは……龍誠でも厳しい。せめて戦兎が動ければ一対一なのだが、きっちり毒が効いてるらしい。すると、

 

「それじゃ取引といきましょ?白音ちょうだい。そしたら解毒してあげる。すぐに返答してね?白音の解毒早くしたいから」

『っ!』

 

戦兎たちは歯を噛み締める。とんでもない交換条件だ。そんなの飲めるわけがない。

 

だが、

「小猫、何処に行くの」

「私がいけば……皆を助けられる」

 

小猫は重い体を上げ、一歩ずつ歩き出す。ゆっくり息を吐き、目眩を必死に耐えて姉の元に行く。

 

「そうそう。それで良いにゃ」

「ダメよ小猫」

 

小猫はリアスの言葉を無視して更に一歩進める。これで良い。自分の身一つでリアスたちが助かるなら良い。比べるまでもない。

 

「おい小猫ちゃん!」

「離してください!」

 

龍誠は小猫の腕を掴むが、小猫はそれを振り払う。

 

「これが正しいんです!部長や戦兎先輩を助けるにはこれしかないんです!これで、やっと役に立てるなら……」

 

小猫はそう言ってまた歩き出そうとしたとき、

 

「それが本心かよ。塔城」

「……えぇ」

 

背後からの戦兎の言葉に、小猫は頷く。だが、

 

「だったら……何でそんな泣きそうな顔してんだ!」

ごほっ!と戦兎は咳き込みながら立ち上がり、小猫の肩を掴む。

 

「本気で姉ちゃん所に行きてぇなら俺は止めねぇよ。だがな……てめぇの本心は本当にそうなのかよ!」

「じゃあどうしろって言うんですか!このままじゃどうしようもない!龍誠先輩だけで戦わせろって言うんですか!」

 

小猫は振り替えって戦兎に吠える。その眼は赤く、涙を堪えている。それに戦兎は真っ直ぐ見て、

 

「ちったぁ先輩を信じてみろよ」

「え?」

 

ニッと力なく笑った戦兎はフラフラと歩き黒歌を見ると、

 

「それは……」

 

懐から取り出した物に、黒歌は首を傾げる。

 

「名付けて……エンプティボトル。俺がアザゼルから出されていた修行はベストマッチを見つけるだけじゃない。これは、俺の瓶詰め(ボトルチャージ)本来の使い方だ」

 

そう言って戦兎はエンプティボトルを自分に刺す。

 

「うっ!」

 

ズズズ!と体内から何かが抜けていく。そしてそのままエンプティボトルは紫色に染まり、代わりに戦兎の顔色が戻っていた。

 

「実験成功だな」

 

戦兎はそう言って紫色になったエンプティボトルをポンポン投げる。

 

瓶詰め(ボトルチャージ)は本来はこうやって毒や、病気を吸いだしたりも出来る。昔の使い手の中にはこういう風に使って名医と言われた奴もいたらしいぜ?」

 

そう言いながら戦兎は龍誠にエンプティボトルを投げて渡して、リアスに使うように促す。

 

「よ、よし」

 

毒を吸いだせと思いながら使えばOKだと伝えながら、戦兎は今度は小猫を見る。

 

「それでどうする?これで頭数なら逆転したけど?」

 

そう言ってエンプティボトルをまた出して小猫に使った。それから更に、

 

「なあ塔城。この前言えなかったけどさ、お前はいっつも黙っててなに考えてるのか分からねぇ。でも一つだけわかることがある。それはお前は部長やオカルト研究部のことが大好きだってことだ。だからそんなに苦しいんだろ?力になれないことが。でもお前の本当の力を使えば、それを壊すかもしれない」

「……」

 

小猫は俯いてしまう。だが戦兎は続けて、

 

「でも別にそれで暴れちまっても少しくらいなら良いと思うぜ?」

「い、良いわけないですよ!」

 

突然の戦兎の言葉に小猫は驚くが、戦兎は良いんだよ、と言う。

 

「お前が道踏み外しそうになったら俺が止める」

「え?」

 

小猫は俯いていた顔をあげて戦兎を見る。幾らでも好きなだけ向き合えば良い。間違えそうになったらその都度止めれば良いだけだ。そんな風に戦兎の顔は優しげな笑みだった。

 

「もしお前が逃げずに向き合うなら。俺はお前に付き合うよ。先輩だからな。間違えそうになったら幾らでもぶん殴って止めてやる。お前が本心から願うなら、俺はそれを叶えたいと思う。だからお前はどうしたいんだ?向き合いたいか?それとも逃げたいか?」

 

戦兎は優しく問う。その言葉はゆっくりと小猫の胸に染み込み、ポタポタと目から溢れた涙は地面に落ちた。

 

「私は……」

「あぁ」

「私は……これからもオカルト研究部にいたいです。リアス部長たち皆と一緒に居たいです。この力だって……ちゃんと向き合いたいです。この力は皆の役に立てる筈だから……だから」

 

小猫は涙を流しながら戦兎を真っ直ぐ見て、心の底からの言葉を発する。

 

「助けて……戦兎先輩」

「あぁ、任せろ」

 

戦兎はソッと小猫の涙を手で拭い取ってやり、黒歌を見る。

 

「そう言うわけだ。悪いな」

「なら力付くで行くだけよ」

 

それも無理だ。と戦兎は言うとビルドドライバーを装着する。

 

「よし、小猫ちゃんは部長と下がってな」

 

そう言ってリアスの毒抜きを済ませた龍誠もビルドドライバーを装着した。

 

「戦兎。お前今燃えてんな」

「かもな」

 

そう言って二人はそれぞれボトルを出して振る。

 

《ラビット!タンク!ベストマッチ!》

《ウェイクアップ!クローズドラゴン!》

 

それからそれぞれビルドドライバーにボトルを挿し、戦兎と龍誠はレバーを回す。

 

「あーあ。折角命は助けてあげようと思ったのに」

「俺的にはこういう方が嬉しいけどな」

 

それを見た黒歌と美猴は戦闘体勢を取る。それを見ながら戦兎は、

 

「安心しろよ塔城!俺はな……」

 

後輩に助け求められて負けるようなダサい先輩じゃないぜ?と言って構えて、

 

『変身!』

《鋼のムーンサルト!ラビット!タンク!イェーイ!》

《Wake up burning! Get CROSS-Z DRAGON!Yeah!》

 

変身を終えた二人は、相手を見る。龍誠は美猴を、そして戦兎は黒歌を。

 

「それがビルド……か」

「あぁ、造る、形成するって意味でビルドだ。以後お見知りおきを」

 

戦兎はそう言うと黒歌に向かって走り出す為に腰を落とす。それを見た龍誠は黒歌を見て、

 

「気を付けろよ黒歌!こういう時の戦兎はな、マジ最強だぜ?」

 

龍誠はニッと仮面の下で笑みを浮かべ、それを合図とばかりに戦兎は走り出したのだった。



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ビルドの真価

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「修行を終え、レーティングゲーム前のパーティーに参加していた俺たちあったが、そこに現れたのはなんと塔城のお姉さん!」
龍誠「そして俺達は更に美猴も入れて2対2の戦いになる!」
戦兎「しかし黒歌って塔城と全然違うよな」
???「例えば?」
戦兎「だってスタイル良いし大人っぽいし対極的って……ん?」
小猫「悪かったですね。色々小さくて」
戦兎「あいやぁ……そのぉ……」
龍誠「と言うわけで35話始まります」


「おおおおお!」

先に走り出したのは龍誠だ。それを迎え撃つのは美猴。

 

まずは龍誠はビートクローザーを、美猴は棒を構え、まずは美猴が先に出た。

 

「伸びろ棒よ!」

「あっぶね!」

 

殆どノーモーションで延びた棒の先は、龍誠の顔面に迫るが、それをギリギリで避けて間合いを詰める。

 

「喰らえ!」

「喰らうかぁ!」

 

ビートクローザーを龍誠は振り下ろすが、それを美猴は元の長さに戻した棒で受け止めた。

 

「鬱陶しい棒だな!」

「如意棒っていうんだ。便利だろ?」

 

ぐぎぎ!と押し合う。確かに伸び縮みする棒は厄介だが、ここまで至近距離になれば伸び縮みの意味はない。ので、

 

「おらぁ!」

「がっ!」

 

ガスッ!と美猴の頭と龍誠の頭がぶつかり合う。龍誠の頭突きをまともに喰らった美猴が、視界がチカチカするような感覚がしたが、龍誠は構わず頭突きを放つ。

 

「っ!」

 

流石に連続で喰らうのは嫌なのか横に跳んだが龍誠はそのまま追う。しかし、

 

「おらっ!」

「ごぇ!」

 

走り出したタイミングに合わせて美猴の蹴りが龍誠の胸に炸裂した。

 

「舐めんな!」

「この!」

 

美猴は更に追撃をかけようとして拳を握る。だが龍誠も拳を握ると、

 

『おらぁ!』

 

ミシィ!と互いの顔面にそれぞれの拳が刺さり、その衝撃でよろける。

 

「やるじゃねぇか」

「てめぇもな!」

 

龍誠は気合いを入れ直すように拳で掌を叩くと、全身から蒼炎を滾らせて身体能力を上げるブレイズアップモードになると右拳に炎を集め、美猴を狙う。

 

しかし美猴もやられるだけではない。龍誠と違い炎ではなく、気を集めることでまるで太陽のように輝かせると、

 

『もういっちょ!』

 

何度も何度も殴り合う。それを尻目に戦兎と黒歌は睨み合っていた。

 

「嫌ねぇ。ああいう野蛮なのって」

「そうかい!」

 

戦兎は修理したドリルクラッシャーをガンモードにし、黒歌を撃つ。それを黒歌は避けるどころか、腕を広げてわざと喰らうが、

 

「なに?」

 

ドリルクラッシャーの銃撃を受けて、黒歌の胸に大穴が空き、地面に落ちる。しかし黒歌はケラケラ笑いながら体がドロドロと溶け、地面に染み込むと、何体もの分身を作り出し、戦兎を取り囲む。

 

「ちっ!」

《忍者!コミック!ベストマッチ!Are you ready?》

「ビルドアップ!」

《忍びのエンターティナー!ニンニンコミック!イェーイ!》

 

戦兎は素早くボトルを入れ換えると、ニンニンコミックに姿を変え、

 

《分身の術!》

「はぁ!」

 

分身し、数を増やした戦兎は、同じく分身した黒歌を迎え撃つ。

 

「へぇ、そう言うのも出来るのね。でも!」

 

分身した戦兎達が四コマ忍法刀を手に黒歌に斬りかかった。その時!

 

『嘘だろっ!?』

 

一人は突然地面が沼に変わり腰まで沈み、別のものは地面から生えた枝が巻き付き動けなくされ、また別のは黒歌を斬った時に、黒歌の体がスライムのようになり、四コマ忍法刀から戦兎の体に巻き付く。

 

そして、

 

「ざぁんねん」

「っ!?」

 

分身が動けなくされる中、一人だけ自由だった戦兎は、黒歌の声を聞いて上を見る。するとそこには、既に魔力を溜め、巨大なエネルギーを作った黒歌がいた。

 

「ま、雑魚が何人いたって同じよね」

 

黒歌はそう吐き捨てると、それを地面に向けて発射。それと同時に爆発が起きる。

 

「先輩!」

 

小猫が声を上げた。しかし、

 

《不死身の兵器!フェニックスロボ!イェーイ!》

「え?」

 

空から様子を見ていた黒歌が、声を漏らすと同時に、地面を包んでいた煙が炎によって吹き飛ぶ。その中心に居たのは、赤と黒のボディに姿を変えた戦兎だ。

 

「その程度か?」

「っ!」

 

空中にいた黒歌は、戦兎の言葉に苛立ちを覚え、地面に降りるとどす黒いオーラを出しながら、

 

「嘗めるんじゃないわよ!」

 

そう言って地面に手を置くと、同時に木の枝が生え、戦兎に襲いかかる。

 

「はぁ!」

 

だがそれをフェニックスの力で産み出した炎で消し去ると、レバーを回す。

 

《Ready Go!ボルテックフィニッシュ!》

「おぉおおおおお!」

 

体を炎が包み込み、炎で作られた羽で空を飛ぶと、戦兎はそのまま黒歌に向けて突進。しかし黒歌も、

 

「させるかぁ!」

 

黒歌が力を込めると、地面が隆起し壁を造る。だが戦兎はそのままロボットのアームのようになっている方の腕を高速回転し、まるで削岩木のように黒歌の壁を削っていく。

 

「嘘でしょ!」

「はぁあああああ!」

 

そのまま壁を突き破った戦兎だったが、黒歌はギリギリで回避する。戦兎はそれを目で追いながら、新たにボトルを入れ換えた。

 

《ウルフ!スマホ!ベストマッチ!Are you ready?》

「ビルドアップ!」

《繋がる一匹狼!スマホウルフ!イェーイ!》

 

今度のベストマッチはスマホウルフ。鉤爪とスマホ型の盾を装備した姿で、そのまま戦兎が腕をかざすと、スマホのアプリのアイコンようなものが空中に浮かび上がり、黒歌を取り囲むと、

 

「行くぞ!」

 

戦兎は外からそのアイコンに飛び込むと、姿を消してしまう。

 

「成程。アイコンに入ることで姿を隠せるのね。ただ忘れてないかしら?仙術を使える者は……」

 

そう言いながら黒歌は背後を振り返る。するとそこには、戦兎が飛び出す瞬間で、

 

「気配に敏感なのよ!」

 

そう言って気弾を黒歌は放つ。だが戦兎と黒歌の間に、

 

「なっ!」

 

別のスマホアプリのアイコンが現れ、戦兎はそのまま飛び込み回避し、流れるように黒歌の背後に別のアイコンを出現させ爪の一撃を放つ。

 

「ちぃ!」

 

それをギリギリで避けた黒歌は、一気に飛び上がってアイコンの囲いから抜け出すと、またもや分身して今度は逆に戦兎を囲うと、そのまま先程のより強力な気弾を発射。だがその直前に、

《タートル!ウォッチ!ベストマッチ!Are you ready?》

「ビルドアップ!」

《時を駆ける甲冑!タートルウォッチ!イェーイ!》

 

新たに選択したのはタートルフルボトルと、ウォッチフルボトル。高い防御と、ウォッチフルボトルによる体感時間を伸ばすことが出来る。

 

その力により、戦兎の時間がゆっくりと動き始める。ゆっくりと迫る気弾。その中を戦兎もゆっくりと動く。周りの時間を遅くして自分はいつもと同じ速度で動けるなら良いのだが、流石にそこまで甘くはない。

 

だが戦兎は、慌てることはなく肩についている亀の甲羅型の防具を外して手に着けると、気弾に当てて逸らしていく。

 

全方位からの気弾とは言え、全く同じタイミングで発射された訳じゃない。微妙にずれがある。

 

そして先程のより強力なのを加味すれば幾ら防御寄りの力でも受けるのは得策じゃない。

 

だがこの防具を利用して、気弾を逸らすなら可能だ。なら順番に、一番速く近づいてきてるのから逸らしていけば、

 

『きゃあ!』

 

序でに逸らした気弾を黒歌の分身に当てて攻撃。本体の黒歌だけは避けたようだが、忌々しげに顔を歪めて、

 

「ならこれはならどう!」

 

そう言った黒歌の周りに石が集まり、先を尖らせて戦兎に向けて発射!

 

《ゴリラ!ダイヤモンド!ベストマッチ!Are you ready?》

「ビルドアップ!」

《輝きのデストロイヤー!ゴリラモンド!イェーイ!》

 

黒歌に合わせてと茶色と水色のビルドに姿を変えた戦兎は、素早くレバーを回し、

 

《Ready Go!ボルテックフィニッシュ!》

 

戦兎が手をかざすと、巨大なダイヤモンドが形成され、もう一方の巨大なゴリラのような腕を構え、それをぶん殴るとダイヤモンドは砕けながら黒歌の石礫とぶつかり合う。

 

「くそ!くそ!」

 

黒歌は悪態をつきながら次の手を考える。何をしても次々手を変え品を変えて攻略してくる。

 

いったいどれだけ能力を持っている?どれだけ手数を増やせばこいつを上回れる?何をしても意味がない戦兎に、黒歌は今までにない焦りを感じていた。

 

(あれがビルド本来の戦い方……)

 

それを見ながらリアスも息を飲む。龍誠と戦兎……純粋なパワーなら、昇格(プロモーション)せずとも変身状態で既にルークに匹敵する龍誠に、あれほどの手数を見せてもボトルの数を考えればまだまだ余裕がある戦兎。

 

(既に上級悪魔……いや、自分の得意分野でならその上に届きかねないほど)

 

自分の眷属の規格外さに、改めて戦慄する中、戦兎は更に動く。

 

《スパイダー!冷蔵庫!ベストマッチ!Are you ready?》

「ビルドアップ!」

《冷却のトラップマスター!スパイダークーラー!イェーイ!Ready Go!》

 

戦兎は姿を変え、そのままレバーを回してから、蜘蛛の糸を射出。

 

「くっ!」

 

その糸で黒歌を捉えると、自分の方に引き寄せ、そこに冷気を噴出して黒歌を凍りつかせて動きを封じる。

 

「う、動けない……」

 

必死に逃げようと黒歌は動こうとするが、蜘蛛の糸で絡めとられてる上に、凍らされてるのだ。動けるはずもない。まるでそれは、クモの巣に捉えられた蝶のようで、

 

《ボルテックフィニッシュ!》

 

そして戦兎の背中から蜘蛛の足のようなものが生え、一斉に黒歌に襲い掛かる。

 

「きゃああああああ!」

 

蜘蛛の糸は千切れ、氷は砕けるが黒歌も吹っ飛んで地面を転がった。

 

「く……がはっ!」

「もう諦めろ黒歌。分かっただろ。お前じゃ俺には勝てない」

 

戦兎はそう言う。だが実際今の時点でも戦兎に勝とうと思えば、戦兎以上の手数を持つか、戦兎がどんな手でも関係ないパワーが必要だ。

 

だが前者は殆ど不可能だろう。そして後者だが、パワータイプにこそああいった手数の多さが有効なことも多い。中途半端なパワータイプでは突破できないだろう。

 

(ボトルの力を熟知するだけであそこまでになるなんて……)

 

リアスは改めて息を呑む。そしてその間に黒歌は立ち上がり、

 

「舐めんじゃないわよ……まだまだ元気だっつうの!」

 

あながち空元気ではなさそうだ。その証拠に黒歌の体から溢れるオーラは減るどころか寧ろ増えてる。

 

「ぶっとべぇ!」

 

そのオーラを一点に収束させ、黒歌は全力全開の気弾を放つ。それはまさに乾坤一擲の一撃だ。だがそれを戦兎は上に飛んで回避しつつ、

 

《ラビットタンクスパークリング!Are you ready?》

「ビルドアップ!」

《シュワッと弾ける! ラビットタンクスパークリング!イエイ! イエーイ!》

 

ラビットタンクスパークリングに姿を変えた戦兎は、黒歌を見据えると静かにレバーを回す。

 

「勝利の法則は決まった!」

《Ready Go!》

 

そしてそのまま蹴りの体勢に入ると、そのまま一気に黒歌に向けて蹴りを放った。

 

《スパークリングフィニッシュ!》

(不味い!避けきれない!)

 

戦兎の蹴りを見ながら、黒歌は避けられないことを悟り咄嗟に防御体勢に入る。その時、

 

《スクラップフィニッシュ!》

「ぐぁ!」

 

戦兎は、突然の横からの衝撃に蹴りを中断させられ、地面を転がった。

 

「お前は……」

「ヴァーリ!」

 

戦兎と黒歌が声を漏らすが、離れて戦っていた龍誠や美猴、更にリアスや小猫も驚く中、

 

「なにやってんだお前らは」

「何しに来たのよ」

 

黒歌がヴァーリに詰め寄るとそこに、

 

「全く。勝手な判断は止めていただきたいものですね」

「あんたまで来たわけ……」

 

黒歌がため息を吐きながら見た先にいたのは、金髪の眼鏡を掛けたハンサムな男だ。腰に一本と手に一本。合わせて二本の剣を持っているが、突然戦兎達を激しい悪寒と頭痛が襲う。

 

「なんだ?」

「まさか聖剣?」

 

リアスが呟くと、眼鏡の男は腰の剣に手を掛け、

 

「気になりますか?こちらは支配の聖剣(エクスカリバー・ルーラー)。そしてこれはコールブランドと言います」

「コールブランドって……聖王剣・コールブランド!?史上最強の聖剣なの!?」

 

リアスが驚く中、戦兎は周りを見回し作戦を建てる。

 

この場でヴァーリとあの眼鏡も増えれば今の戦況をひっくり返される可能性がある。

 

そう思っていると、

 

「まぁいい。とっとと引き上げるぞ」

「え!?何でよ!」

 

ヴァーリの撤退指示に、黒歌は怒るが、

 

「気を探ってみろ。頭に血が昇ってて気が着いていないようだが、来てるぞ」

「あ……」

 

黒歌は一旦冷静になり、何かを探るような仕草をし、

 

「まさか」

 

と呟いてからリアスを見た。

 

「恐らく戦ってる隙を見て援軍を呼んだんだろう。このままだと囲まれるぞ」

 

リアスもただ見ていた訳じゃない。隙を見て、使い魔を通じて会場にいる者達に援軍を頼んだのだ。

 

「つうわけだ。とっとと逃げるぞ」

《ディスチャージボトル!》

 

ヴァーリはそう言って消しゴムフルボトルをスクラッシュドライバーに挿入し、それに合わせて相手達はヴァーリの元に集まる。

 

「あ!逃げんのかよ!」

「うるせ!こっちだってそんな数の相手できっか!」

 

キーキー!と騒ぐ龍誠と美猴を尻目に、黒歌は小猫を見た。

 

「本当にそっちにいるつもり?」

「……はい」

 

小猫ははっきりと意志を示し、黒歌は肩を竦める。

 

「行くぞ」

《ツブレナーイ!ディスチャージクラッシュ!》

 

ヴァーリがレバーを下ろすと、そのまま全員姿を消してしまう。それを見届けてから戦兎と龍誠は変身を解除し、

 

「二人とも。お疲れ様」

「いやいやこの程度何てことないんですよ」

 

リアスの言葉に、龍誠が返すと小猫が、

 

「あの、戦兎先輩」

「ん?」

 

静かにやって来た小猫は、戦兎に話しかけると、

 

「その……ありがとうございました」

 

そう言って頭を下げる小猫に戦兎は、

 

「気にすんなよ」

 

戦兎はそう言って笑みを浮かべた。何時ものような、自信満々だったりカッコつけたような笑みではなく、自然に出た優しい笑みだ。

 

「っ!」

 

その笑みに、小猫の頬がカアッと熱くなる。いつもとは違う戦兎の顔。そして今回は喧嘩したばかりなのに助けてくれた。

 

言っておくが、戦兎は元々顔立ちは良い。加えて一番モテない原因なのは、常識よりも研究や、自分の欲求を優先しすぎる面があったのが理由で、そこさえなければ面倒見はよく、困ってるやつは見捨てないお人好しだ。

 

「どうした塔城?」

「い、いえ……」

 

まさか、そんな馬鹿なと小猫は自問自答する。もしかして自分って結構ちょろかった?だってあの戦兎だ。

 

性格悪いし口も悪いしすぐ人のことチビ扱いするし。

 

「嘘だ……」

「何が嘘だって?」

 

遠くからやって来る援軍の音を聴きながら、小猫はガックシと肩を落とす。

 

それを見ながら、戦兎はずっと首を傾げているのだった。



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2度目のレーティングゲーム

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「黒歌との激戦から数日。俺達は遂にレーティングゲームの日を迎えていた」
龍誠「しかしそれにしてもここ最近の事件遭遇率異常じゃね?」
戦兎「確かにな……まるでそうなることが決定していたレベルだ」
匙「ってちょっとまて!それより俺の秘策も遂に明かせれるぞ!って紹介だろ!?台本にはそう書いてあるぞ!」
戦兎「いやこのあらすじ紹介基本的に自由にやってて台本なんてあってないようなもんだからさ」
匙「マジかよ!?じゃあせめてこれだけは言わせてもらう!36話始まります」
戦兎「それ俺の台詞!」


「失態ですね」

 

リアス達の帰還後、三大勢力の幹部達が集まり、シェムハザの小言が始まった。だがアザゼルは自分の部下の言葉を右から入れて左に流しつつ、

 

(想像以上に強くなってたな。あいつら……)

 

黒歌や美猴はSSクラスの相手だ。それを相手にして無事どころか戦兎は圧勝、龍誠も互角だったらしい。互角と言っても、向こうはボコボコで、龍誠は殆どダメージを喰らってないのだから、勝ったと言って良いだろう。

 

そう思っていると、

 

「何じゃ。若造どもは老体の出迎えも出来んのか?」

「あん?オーディンの爺じゃねぇか」

 

ドアが開かれ、入ってきた老人にアザゼルが呟く。

 

彼はオーディン。三大勢力とは別の、北欧の神話体系の主神で、今回の若手悪魔同士のレーティングゲームの観戦に来てほしいと、サーゼクス直々に要請したのだ。

 

勿論。ただ見てもらいに来た訳じゃない。禍の団(カオス・ブリゲード)の驚異は今や三大勢力の範囲だけじゃない。北欧神話の領域にも被害が出ている。

 

その為、北欧神話とも協力体勢をと言う事になったのだが、アザゼルはオーディンと言うのが苦手だ。いや悪い奴じゃないし、北欧の中では話が通じる奴だ。だが反面この口の減らなさと、自分がまだ堕転する前からの知り合いのなので、未だにこちらを子供扱いしてくる。

 

ようは苦手と言うよりは、頭が上がらないに近いのだ。そこに、

 

「お久し振りです。オーディン殿」

「おぉ、サーゼクスか。お主も大変じゃのう。本来のルシファーの子孫は今ではテロリスト。悪魔も前途多難じゃのう」

 

そう嫌みを言ったオーディンは、今度はセラフォルーを見る。

 

「しかしセラフォルーよ。お主のその服装はどうしたのじゃ?」

「最近の流行りの服ですわ」

 

そう言ってオーディンが見るセラフォルーの服装は、彼女お気に入りの魔女コスだ。

 

まあ公式的な場ではないので、何を着ても問題はないのだが、些か派手ではある。そう言う事を、オーディンは言うのかと思いきや、

 

「ふむ。これは悪くないのう」

 

思いっきり鼻の下を伸ばして、セラフォルーを見ていた。確かに今の彼女の格好は、スカートの丈は短めで、動くとチラホラと……

 

「オーディン様!卑猥な事は止めてください!」

 

そこに飛び込んできたのは、鎧に身を包んだ女性だ。その声を聞いたオーディンはやれやれと肩を竦めると、

 

「相変わらず堅いのう。ロスヴァイセよ。そんなんじゃから勇者の一人も出来んのだぞ?」

「そ、それは今関係ないことでしょう!」

 

オーディンの言葉に、ロスヴァイセと呼ばれた女性は吠えるが、私だって彼氏欲しいと、その後すっかり落ち込んでしまった。

 

それを尻目にオーディンは、

 

「しかし今回のレーティングゲームの対戦はサーゼクスとセラフォルーの妹か……これは面白いことになりそうじゃの。してお主達の予想はどっちが勝つんじゃ?」

 

どう答えるのか分かった上で、オーディンは意地の悪い質問をした。それに対してサーゼクスとセラフォルーは、

 

『うちの妹が勝つに決まってます(よ)(わ)』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな上役達の話し合いから数日。遂にその日はやって来た。既に黒歌戦での疲れはない。

 

そう思いながら、戦兎達は待合室になっている部屋で思い思いに時間を潰していた。

 

そこに試合時間になった事を知らせるチャイムが鳴ると、

 

「さぁ、行くわよ皆!」

 

幼馴染みで親友のソーナとの戦いに、気合いを込めるリアス。それに応じるように戦兎達眷属も、気合いを込め直して、会場に行く為の、転移用の魔方陣に飛び込む。

 

そして着いたのは、

 

「あれ?」

 

皆は転移先の光景に首を傾げる。何故ならここは、戦兎達もよく利用する駒王学園の近くにあるデパートだ。

 

そしてそこに放送が入り、今回のステージはやはり近くのデパートを模していること、更に作戦タイムが三十分用意され、特別ルールとしてデパートの過度な破壊の禁止や、ギャスパーの停止世界の邪眼(フォービドウン・バロール・ビュー)の使用禁止などが伝えられた。

 

後者のギャスパーのは分かる。まだ制御が上手くいっていないようで、下手に使うと暴走の危険があるからだ。だが、デパートの過度な破壊と言うのはきつい。何せグレモリーチームはパワー特化過ぎる。振った衝撃波すら致命傷になりかねないゼノヴィアのデュランダルを筆頭に、リアスも朱乃も攻撃範囲が大きい。龍誠も格闘技メインとは言え、すぐ熱くなる悪癖がある。勢い余って余計なもんをぶっ壊してしまう……って言うのが冗談にならない。

 

精々周りに被害を出さずに戦えるのは祐斗か、ボトルによるが戦兎と小猫位である。まあ神器(セイクリットギア)無しならギャスパーも行けるだろう。

 

しかもこのデパート。ちゃんと商品の陳列なども再現されてる所為で視界が悪く、隠れやすい。これは罠の設置も容易だ。

 

正直、こちら側に相当不利な状況である。

 

とは言え、文句を言っても仕方ない。取り敢えず試合開始まで、相手チームのエリアにはいけない為、まずは自チームのエリアのどこに行くか作戦会議だ。

 

因みにエリアは、このデパートは二階建てで、一階がシトリーチーム。二階がグレモリーチームのエリアで、転送された場所が本陣。

 

自陣のキングが倒されるか、自陣を占拠されると敗けで、その逆をすれば勝てると言うわけだ。

 

「まず向こうがどう攻めて来るかよね……」

 

リアスがそう言うと、皆であーでもないこうでもないと話し合う。

 

ソーナ達は基本的に搦め手を得意とするテクニックタイプと言うこちらとは正反対のチームだ。

 

その為正面からは来ない……と思いたいが、それが狙いかもしれないと、考えれば考えるほど堂々巡りである。

 

それでも、取り敢えずはまずギャスパーに蝙蝠になってもらい索敵し、その後はと大まかな作戦を決め、試合開始までの時間それぞれで時間を潰す事になった。

 

このデパートは、先程も言ったように内装は本物とほぼ同じだ。

 

なのでフードコートにて簡単な食事も出来る。なのでリアスやアーシアとゼノヴィアはお茶をし、龍誠はゲームショップに来ている。

 

「ふむ……」

 

やはり今月は新作が多い。しかも中々面白そうだ。これ本物ならこっそりもらっていったら怒られるかなぁ、等と思っていると、

 

「面白そうなものはありましたか?」

「朱乃さん?」

 

背後から声を掛けられ、振り替えるとそこには朱乃がいた。

 

「えぇまあ……色々」

 

そう言って、龍誠は手に取っていたゲームを棚に戻すと、朱乃が突然抱きついて来て、龍誠は体を硬直させる。

 

「あ、あのどうしました?」

「勇気を……貰ってるんです」

 

その言葉に、龍誠は首を傾げた。それを見た朱乃は、

 

「この戦い。私は堕天使の力を使おうと思う。だから龍誠君。私が光を使うのを見てほしい。そしたら私は乗り越えられる気がするの」

 

そう願う朱乃の姿は弱々しく、儚げだ。そんな朱乃の姿に、龍誠はそっと抱き締め返しながら、

 

「分かりました。俺で勇気が出るなら見届けます」

 

そう言うと朱乃は、顔を綻ばせて龍誠を見て、

 

「嬉しい、私龍誠となら……何でも出来る気がする」

 

そう言って朱乃は目を瞑ったかと思うと、そのまま顔を近づけ、チュッと龍誠と唇を重ね合わせた。

 

「むぐっ!?」

「ん……」

 

朱乃の唇は、リアスのものとは全然違う。リアスの唇は温かく、包み込むような優しい感じだ。だが朱乃は、まるでマグマだ。脳をドロドロに溶かしてくるような……そんな感じだ。

 

「ふふ、少しだけ勇気の前借りしちゃった」

「っ!」

 

悪戯っぽい笑みを浮かべた朱乃に、龍誠は耳まで赤くして、口をパクパクさせている。

 

そんな光景を、

 

「ふむ……」

 

戦兎は暇だったため龍誠と話しでもするかとやってきたのだが、どうも取り込み中だったようだ。邪魔するわけにもいかないと、そこを離れて戦兎は本屋にやって来る。

 

本まで再現されているため、少し読んでみたかった本でも……何て歩いていると、

 

「あ……」

「ん?」

 

そこにいたのは小猫だ。なにやら一生懸命に本を読んでいたのだが、何を読んでいるのだろう?そう思って覗き込むと、

 

「気になるあの人に振り向いて貰える10の方法?」

「べ、別に良いじゃないですか……」

 

悪いとは言ってないぞと、戦兎は返しながら、

 

「しかし塔城も気になる相手がいるってことか。良いねぇ、皆恋してて」

 

戦兎がそう呟くと、小猫は本を戻してからこちらを見てきて、

 

「先輩」

「ん?」

 

少し瞳を潤ませ、下から覗き込むように見る。小柄で少しロリっけのある小猫がやるそれは、非常に保護欲にダイレクトアタックしてくる光景なのだが、

 

「どうした?」

「……いえなんでも」

 

戦兎には余り効果はないらしい。と小猫は思っているのだが実際は、

 

(あぶねぇ……頭撫でそうになった)

 

結構効いていたりする。元々面倒見が良いお兄ちゃん気質の戦兎は、こういう守ってあげたくなる系に弱い。ただだからといって、幾ら仲の良い後輩とは言え撫でたりするのはセクハラだろう。そういうのが許されるのはギャルゲーの主人公だけだ。

 

「それにしても向こうはどうくるだろうな」

「そうですね……一部の眷属は能力が分かっているのも居ますが分からないのも居ます。その反面こちらはほぼ全てバレてますし」

 

バレてて問題ないのは戦兎のビルドくらいだ。そのため恐らく向こうは、戦兎に対してはかなり注意を払ってくるだろう、と言うのはリアスの言葉。

 

実際まだ御披露目してないボトルもある。だがそれならそれで手を打つ方法はあるだろうし、油断はできない。それに、

 

「匙のやつが何か奥の手あるって言ってたしな……それも気を付けておかねぇと」

 

レーティングゲームはまだ二度目。大まかなルールはライザーの時と似ている。だが、前回よりも制約が多い。だがそれでも勝つしかない。

 

そう戦兎が言うと、

 

「戦兎先輩ってこういう時やっぱり頼りになりますね」

「それ普段は頼りねぇってことか?」

 

頼りない訳じゃないですけど、結構子供っぽいですね。小猫に言われて、戦兎はガックシ肩を落とす。すると戦兎はなにかに気づき、

 

「塔城。お前なんか顔赤くねぇか?」

「キノセイデス」

 

いや赤いだろ。と戦兎が顔を覗き込むと、更に赤くなる。

 

「お前体調悪いなら今からでも……」

「ダイジョーブデス」

 

困った、と小猫は内心呟く。ここ数日ずっとこうだ。戦兎のちょっとした動きや言動が、異様にカッコよく見える。

 

こうやって心配されるのも嬉しいし、心臓が早鐘を打つ。だが落ち着けと自分に言い聞かせる。これから戦いだ。冷静に落ち着いて、そして勝つ。

 

色ボケしてさっさとリタイアなんて情けなさ過ぎる。そう言い聞かせていると、

 

《それよりこれから試合開始となります。なお、今試合は3時間の制限時間付きとなっておりますのでお気をつけください》

「始まったか……行くぞ」

「はい!」

 

放送と共に、戦兎と小猫は指示されたポイントに向かう。途中で龍誠とも合流だ。

 

まず今回の作戦は、祐斗とゼノヴィアの機動力コンビは、屋上から遠回りして相手本陣へ、そして戦兎と龍誠に小猫のトリオは店内を通って本陣に向かう。勿論ポーンである戦兎と龍誠は昇格(プロモーション)を目的にだ。

 

機動力コンビには先に本陣に向かって貰い、昇格(プロモーション)を終えた戦兎体が更に押す。そして自陣を守りながら後方で様子を見て控えるリアスや朱乃が終盤でだめ押し、と言うのが流れ。その間邪魔が入るだろうが、極力戦闘を避けつつまっすぐ本陣にむかうべしだ。勿論その間ギャスパーが蝙蝠になって索敵は続けて異変を見つけたら教えてくれる。

 

かなり力押しにも見えるが、正直パワー特化しすぎなうちのチームは、邪魔に入ってきた奴等との戦闘にも注意を払わなくてはならないのだ。

 

注意を払いながらの戦闘は体力だけではなく精神力も削られるのだ。そもそも短期決戦だし、のんびりしていられないのもある。

 

しかし戦兎たちはゆっくり静かに店内を進む。幾ら短期決戦とはいえ、急ぎすぎれば敵の罠に嵌まる可能性がある。急ぎつつ速く、を心情に動いていると、

 

「待ってください」

「どうした?塔城」

 

小猫に止められ、戦兎と龍誠は足を止めると、

 

「誰か来ます」

 

小猫は耳が良い。そのためホンの僅かな物音にも気づく。

 

だがいっこうに現れない。小猫も可笑しいと眉を寄せる。音はすぐ近くなのに、と……だが小猫はハッと上を見た。

 

「上です!」

『っ!』

 

上からの突然の襲撃者に、三人は咄嗟に転がって避ける。

 

「流石に避けられるか」

「匙……」

 

成程。黒い龍脈(アブソーブション・ライン)でターザンしながら来たと言うことかと戦兎は納得する。これなら塔城が異音に気づいても反応が遅れるだろう。なにせ歩いてくる音を警戒してたんだからな。

 

その中、匙は背中に背負っていた同じチームの女の子を降ろしつつ、こちらを見据える。

 

それにしても何か匙の神器(セイクリットギア)の形状が変わったような……と戦兎が分析し始めたその時、

 

《リアス・グレモリー様のビジョップが一名リタイアです》

『っ!』

 

三人が突然の放送に驚くと、匙が笑みを浮かべた。

 

「多分やられたのはギャスパー君だな。こっちにも神器(セイクリットギア)が使用禁止なのは知らされてたからな。なら使ってくるのはヴァンパイア。しかも恐らく蝙蝠で索敵だろうって会長は読んでてな。だから少しうちの仲間がおかしい動きしたら釣れたんだろ。後は一階の食品エリアにつれてってニンニクぶつけるってのが作戦でな」

 

あいつニンニクにやられたのか……まあ半分とは言え、吸血鬼だもんな。と戦兎は肩を落とす。しかしここで気を落とす暇はない。しっかり仇は取らせて貰うよと戦兎は気を引き締める。

 

それは龍誠や小猫も同じようだ。だが匙は、

 

「悪いがお前らは俺がぶっ倒す」

 

そう言って匙が構えると、匙から下ろされた女の子が小猫を見ながら横に移動し、小猫もそれに応えて移動。

 

それから戦兎と龍誠はビルドドライバーを出し、

 

《ラビット!タンク!ベストマッチ!Are you ready?》

《ウェイクアップ!クローズドラゴン!》

『変身!』

《鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イェーイ!》

《Wake up burning! Get CROSS-Z DRAGON!Yeah!》

 

ビルトとクローズに変身した戦兎と龍誠。だがそれを見た匙は笑った。

 

「どうした?」

「いやさ、俺お前らが羨ましかったんだ。だって同じ時期に悪魔になって……戦闘的にだったら桐生より俺の方が神器(セイクリットギア)は戦闘向きだ。でも色んな事件に巻き込まれても、お前らはいつだって活躍してた。どんな時も、お前らはいつも輝いてた。ずっと俺は……お前らの背中見せられてた。でも漸く、俺はお前らに追い付いたんだ!」

 

そう言って匙も懐からなにかを出す。それを見た戦兎は驚愕した。

 

「スクラッシュドライバー!?」

 

匙は戦兎が驚くのを余所にスクラッシュドライバーを腰に装着し、ヴァーリも使っていたスクラッシュゼリーを出してスクラッシュドライバーに挿す。だがゼリーの形状は似ているが、色や模様が違う。

 

《ドラゴンゼリー!》

「ぐぁ!」

 

そしてヴァーリの時と決定的に違うのは、ゼリーを挿した瞬間匙の体を電流が走り、苦悶の表情を浮かべていることだ。

 

「やめろ匙!」

「やめねぇ。俺は……負けられないんだ!」

 

匙はそう叫び、スクラッシュドライバーのレバーを下ろす。

 

「へん……しん!」

《潰れる!流れる!溢れ出る!ドラゴンインクローズチャージ!ブラァ!》

 

匙の周りにビーカーが形成され、蒼い液体が満たされると、匙の姿が変わり、ビーカーが消えると共に頭上からゼリーが吹き出て仮面やアーマーとなった。そして左腕にツインブレイカーが付けられ、

 

「会長と俺達の夢の為に……俺はお前らを倒す!」

 

匙はそう宣言すると、戦兎と龍誠に向けて走り出したのだった。



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勝つためならば

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「レーティングゲームも始まり、匙と出会った俺たちだったが、なんと匙も仮面ライダーに!」
龍誠「いやぁ、まさか匙が変身するとはね~」
匙「しかしコメントでは死亡フラグだの負け癖だのとしっけいな……」
戦兎「まあ強ち外れちゃいないしな」
匙「えぇ!?」
戦兎「と言うわけで始まりますのは37話!」


「おらぁあああ!」

 

ツインブレイカーをアタックモードにした匙は、まずは龍誠に飛びかかる。

 

「ちぃ!」

 

それを龍誠はビートクローザーで止めるが、

 

「オラオラオラァ!」

 

匙は構わず何度も殴る。出力と言う点ではスクラッシュドライバーは、ビルドドライバーより上だ。その力で強引に押しきろうとし、龍誠も押される。しかし、

 

「はぁ!」

「ぐっ!」

 

横から戦兎は匙を蹴り飛ばし、よろめかせたところに、ドリルクラッシャーで斬る。

 

「はぁ!」

 

その隙に龍誠も体勢を立て直し、ビートクローザーの刀身を匙に当て、斬撃を加えながら、

 

《ヒッパレー!ヒッパレー!ミリオンヒット!!!》

「がぁあ!」

 

火花を散らし、地面を転がる匙。だが匙は素早く立ち上がると、今度は黒い龍脈(アブソブーション・ライン)を出して、戦兎達を捕まえようとする。

 

「あぶね!」

 

戦兎は避けながらドリルクラッシャーをガンモードにして匙を撃つ。

 

「ぐぅ!」

 

弾丸を喰らって後ずさりながらも、匙はまだ狙う。

 

「ライダーシステムと神器(セイクリットギア)を同時に使えんのかよ!」

「面倒だな!」

 

匙の黒い龍脈(アブソブーション・ライン)を避けながら、龍誠と戦兎は叫び、戦兎がハリネズミフルボトルをドリルクラッシャーに挿した。

 

《Ready Go!ボルテックブレイク!》

「喰らえ!」

 

ハリネズミの針のような弾丸が匙を襲う。

 

「がはぁ!」

 

また匙は吹っ飛ぶ。だがそれでも匙は立ち上がる。しかし、

 

「げほっ!がはっ!」

 

体に電流が走り、匙は更に苦しそうに顔を歪めた。

 

「やめろ匙!それ以上戦えばスクラッシュドライバーの反動でどうなるか分かんねぇぞ!」

 

戦兎がそう叫ぶが、匙は変身を解除しない。その代わりに、

 

「構わねぇよ。この体くらい賭けてやる」

「なに?」

 

匙の言葉に、戦兎は疑問符を浮かべる。

 

「お前みたいに俺は天才じゃない。普通にやってたら俺はお前らに永遠に追い付けない。今だってお前らの方が強いってのにな。だがそれでも勝つ為だったら……俺はこの体も、そして命だって賭ける!」

 

そう言って匙はツインブレイカーで戦兎に襲いかかった。

 

「俺達がどんな気持ちでこのレーティングゲームに望んでるか分かるか!?俺達はな……命賭けてんだ!何がなんでも勝って、勝って勝って勝ちまくって!俺達は証明しなきゃならねぇんだよ!フウの言うとおりさ。俺達は俺達の出来る方法で自分を証明する!そして会長の夢を叶えるんだ!」

「くぅ!」

 

凄まじいパワーに、戦兎は直接受ける事はせず回避しながら、ボトルを入れ換える。

 

《忍者!タンク!Are you ready?》

「ビルドアップ!」

「オラァ!」

 

姿を変え、戦兎は四コマ忍法刀とドリルクラッシャーの二刀流で匙を迎え撃つ。

 

「くぅ!」

 

二本の武器で匙の一撃を防ぐが、圧倒的パワーに体勢を保つのがやっとだ。

 

(とにかく距離を……)

 

そう思い、戦兎は後ろに跳ぼうとするが、

 

「逃がさねぇ!」

「なにっ!?」

 

突然引っ張られる感覚に、戦兎は驚愕する。だがすぐに何に引かれたのか理解した。匙の黒い龍脈(アブソブーション・ライン)だ。

 

「ドラァ!」

 

自分の方に引くのを利用しながら腰を捻った匙は、そのままツインブレイカーで戦兎をぶん殴る。

 

「ごはっ!」

 

後方に吹っ飛んだ戦兎だが、匙は

強引に黒い龍脈(アブソブーション・ライン)で引っ張って戻すと、再度ツインブレイカーで殴る。ツインブレイカーの付いている手と、黒い龍脈(アブソブーション・ライン)の手は同じ方だ。左右が違ったら引っ張った際に殴るまでのラグがあるが、同じ方だと引っ張る際に殴る準備もできる。厄介な組み合わせだ。

 

「止めろ!」

 

それを止めたのは龍誠。龍誠はビートクローザーで黒い龍脈(アブソブーション・ライン)を切ろうとするが、びくともせず、その隙に匙はスクラッシュドライバーのレバーを下ろすと、

 

《スクラップブレイク!》

 

飛び上がらず、その場で回し蹴りを放ち、龍誠を蹴り飛ばす。

 

「がっ!」

「捉えたぜ!」

 

吹っ飛んで空中にいた龍誠は避けられず、そのまま匙の黒い龍脈(アブソブーション・ライン)と繋がってしまった。

 

(ラインの数は一本だけじゃねぇのか)

 

戦兎はラインを引っ張ってみるが外れない。どうにかしなければ……そう思っている間に匙が突っ込んで来る。だが、

 

「あがっ!」

 

匙の体を、また電流が痛め付け、それにより足を止めてしまう。その隙を見逃す戦兎ではなく、

 

《火遁の術!火炎斬り!》

《Ready Go!ボルテックブレイク!》

 

戦兎は咄嗟にユニコーンフルボトルをドリルクラッシャーに挿して、四コマ忍法刀と共に匙を斬る。更にそこへ、

 

《Ready Go!ドラゴニックフィニッシュ!》

「はぁあああ!」

 

龍誠の渾身の蹴りが、匙を更に吹き飛ばす。周りに被害がでないように抑えてあるが、それでもこれだけ喰らえば、もう立ち上がれないだろう……

 

「っと思っていた時もありましたってか」

 

戦兎がぼやく中、匙はまだ立ち上がる。

 

「おい匙!もうホントに止めろ!幾ら死ぬ前に自動でリタイアさせられるっていってもホントに死ぬぞ!」

「何度も言わせんなよ桐生。俺達は死んでも良いって思って戦ってんだよ!」

 

そう言って匙が、ツインブレイカーをこちらに振るう。

 

「俺達の夢はそんなにおかしいかよ……ただ誰もが平等にチャンスを得られる機会を持たせたいのが変なのかよ!」

「くっ!」

 

戦兎はツインブレイカーを凌ぎながら叫ぶ。

 

「俺は良い夢だと思う!叶えてほしいと思う。だけどな……俺達だって負けられねぇ!」

「そうだ!俺達だって部長の夢を叶えたいって言うのは同じだ!」

 

戦兎と共に龍誠も言うと、ビートクローザーのクリップエンドに手を掛け

 

《Ready Go!ボルテックブレイク!》

《ヒッパレー!ヒッパレー!ヒッパレー!メガヒット!》

 

戦兎は四コマ忍法刀を投げ、ラビットフルボトルをドリルクラッシャーに挿し、龍誠と共に走り出すと匙に渾身の一撃を放つ。

 

赤と蒼の刀身は、匙の体から火花を撒き散らし、二人が匙の隣を駆け抜けながら斬った後、匙はゆっくり倒れる。

 

「今度こそやったか?」

《ソーナ・シトリー様のポーン一名リタイアです》

 

戦兎が振り返りながら確認すると、放送と共に匙はそのままリタイアとなり消えていく。

 

やっと終わったか。そう思い戦兎はラビットタンクに姿を戻しながら、

 

「取り敢えず次はこっちだな」

 

戦兎はそう言ってエンプティボトルを出すと、匙がリタイアしても消えない黒い龍脈(アブソブーション・ライン)のラインに近づけて吸いとる。引っ張ってもなにしても取れなかったが、無事取れたようだ。そして龍誠にも同じようにしてやり、

 

「今度は塔城の援護か」

「だな」

 

と視線の先で戦い続ける小猫を見ながら行こうとした時、

 

「成程。流石に強いですね」

『っ!』

 

突如現れた声の主を見て、戦兎と龍誠は驚愕する。その視線の先にいたのは、ソーナだ。キングである彼女がここにいる理由は良い。態々現れてくれたのだからここで速攻で倒せば……そう思い二人は行こうとすると気づく。彼女の隣にいる女の子が何故か輸血袋を二つ手に持っている事に。

 

『っ!』

 

そう疑問が浮かんだ瞬間。二人の視界が突然明暗し始めた。

 

「なんだ……これ?」

「残念ですが治りませんよ。例えフェニックスの涙を使ってもね」

「いったい何を……」

 

戦兎がソーナに問うと、彼女は隣にいた少女の輸血袋を指差す。

 

「これは貴方達の血です」

「俺達の?」

 

まさか匙の黒い龍脈(アブソブーション・ライン)か!?と戦兎は目を見開く。おかしいと思っていた。力を散らす筈の黒い龍脈(アブソブーション・ライン)。なのに力は減った気がしなかった。最初はこちらの動きに制限を掛けているのかと思ったが、狙いはこれか。

 

「えぇ、お二人を纏めて相手にして勝つのは難しい。なら分断?いえ、一人でも十分驚異です。ですが二人の方が一つ利点がありました。それは共鳴に入ると興奮状態になる事。強い興奮は多少の不快感には鈍感になってしまう。そこで今回の作戦を思い付きました。二人が一緒なら、匙が神器(セイクリットギア)で二人纏めてラインを繋げやすく、そして少しずつでも血を失えば体に現れるであろう不調も気づかない」

 

成程。というか黒い龍脈(アブソブーション・ライン)って血を抜けるし、悪魔にも失血の概念があった事に驚くと、黒い龍脈(アブソブーション・ライン)で血を抜くのは匙が修行で相当頑張ったらしく、失血は元が人間の転生悪魔だからこそ効果的だったらしい。

 

「そして皆さんも知っているように、レーティングゲームでは過度のダメージや、身体に関わると判断されると医務室に転送されます」

「つまり俺達はこのままリタイアってことね」

 

失血は見た目的には分からないが十分重症だ。医務室行きになってもおかしくはない。だが、

 

「このままってのは面白くないな!」

 

そう言って戦兎がドリルクラッシャーを撃つと、ソーナをすり抜けてしまう。

 

「幻影かよ……」

「それでは」

 

ソーナと輸血袋を持った少女は消え、二人が取り残される。

 

「先輩!」

「行かせません!」

 

小猫がこちらに来ようとするが、それを阻まれた。

 

「おい戦兎。どうにかならないのか?」

「俺だけが助かる方法ならあるが?」

 

んじゃ、それでいこう。龍誠はそう言い、戦兎は良いのかと問う。

 

「構わねぇよ。つうかこのまま会長の掌の上ってのは納得いかねぇ」

「分かったよ」

 

戦兎はそう言うと、またエンプティボトルを出すと、それを龍誠に挿す。すると、ボトルの中身が真っ赤に染まり、

 

「さいっこうの勝利報告届けてやっからよ」

「おう」

《リアス・グレモリー様のポーン一名リタイアです》

 

そう言い残して放送と共に龍誠は消えていき、戦兎は龍誠に挿していたボトルを今度は自分に挿す。

 

龍誠から取ったのは血だ。そして龍誠の血液型はO型。現代では行われないが、O型の血液は全ての血液型に輸血する事が出来る。受けるのは無理なのだが。

 

なので戦兎は、エンプティボトルを使った強引な輸血で失った血を補う。これでなんとかリタイアせず動けるだろう。失血が理由なのだから。まあまだクラクラするけど。

 

「大丈夫か塔城!」

 

とにかく塔城を助けよう。そう思い歩き出そうとした戦兎は、背後の物音に振り返った。そこにいたのは、シトリー眷属の皆様が一、二、三……

 

「いや多すぎじゃね?」

「いやいや、これで妥当でしょ?ま、そんなこと言っても相手してもらうわよ。ギャスパー君嵌めてから急いでこっち来たんだから」

 

そう言って拳を構えるのは、ゼノヴィアの背を高くしたような女の子。確かルークだ。更に、刀を構える子や魔力を集める子がいた。

 

(忍者フルボトル戻したのは失敗だったな)

 

そう思い戦兎がもう一度忍者フルボトルを使おうと手を伸ばした次の瞬間!

 

「させない!」

「っ!」

刀を持った子はナイトか!?と戦兎は驚愕しながら、一瞬で間合いを詰めてきた相手の刀をドリルクラッシャーで受け止める。だがそこにルークの女の子の拳で横から吹っ飛ばされた。

 

「くっ!」

 

転がりながら、戦兎はボトルを交換しようとする。だがそこに魔力を溜めていた子が、それを用いて遠距離から攻撃してくる為、交換する暇がない。

 

「これが狙いか!」

「そういうこと!会長はね!あんたが万が一失血を逃れた場合の対抗策も用意してあったのよ!あんたの能力は厄介。なにせ状況に応じてボトルを交換できるからね。でもボトル交換が厄介ならさせなきゃ良い。単純でしょ?後三人なのはね?あんたは絶対終わったら兎と戦車に戻す。いざって時の防御と、防御しきれない時に使える機動力。だから私達って訳。ルークのあたしならあんたの防御を気にせず戦えるし、速度ならナイトで対処可能。そして隙間にビジョップの魔力で攻撃。これじゃ流石にボトル交換できない!」

 

ガン!と殴られた戦兎はふらつきながら後ずさる。

 

不味い。流石に不味い。ただでさえ匙と戦った後でスタミナ不足だし、血を補給したといってもまだ全快してない。多分それも策だろうが……

 

「おい!お前らギャスパー嵌めた後なんでこっち来たんだ?上手く避けながらこっちの本陣にいくことも出来るだろ?」

「まあね。たださ、あんたも知っての通りこっちの夢叶えるには勝ち続けなきゃいけない。ただ勝ってもダメ。そりゃ相手によっては避けて戦う事も必要だけどさ。初戦からこそこそ戦い避けてさっさと本陣制圧して勝ちましたなんてつまんない戦いするわけにいかない。こっちが狙うのはね、完膚なきまで叩きのめしての勝利なのよ!」

 

それを聞いて戦兎は納得した。自慢する訳じゃないが、自分達は多数の事件に巻き込まれて生き残っていて、名前が売れている。そして、特にコカビエルを倒した自分と、転生したばかりで上級悪魔を倒した龍誠。倒したとなれば相当なネームバリューとなるだろう。

 

こいつらはただ勝ちに来たんじゃない。こちらの名声を踏み台にするつもりなんだ。

 

「お前ら流石に欲しいもん多すぎじゃね!?」

「一戦一戦貰えるもの全部貰ってかないとね!」

 

必死に防ぎ、弾く戦兎だが如何せん相手が多い。それでも、

 

「今なら!」

《Ready Go!ボルテックブレイク!》

 

ドリルクラッシャーになんとか強引にフェニックスフルボトルを挿し込み、銃口から火炎放射機のように火を放つ。だが、

 

反転(リバース)!」

「なに!?」

 

突如、戦兎の放った火は水に変わる。

 

反転(リバース)って言ってね。本来なら光を闇に変えたりとかそういう使い方をするんだけど!」

「ぐぁ!」

 

こういう風に使えば火を水にしたりも出来る。とルークの蹴りで戦兎は更に吹っ飛ばされた。

 

(失敗した……)

 

もし属性を変えるのならば火炎放射ではなく火炎弾を発射できるようなものにするべきだった。そうすればせめて威力のある水弾をぶつけられたのだ。あれでは少々威力のある水鉄砲である。

 

「くっ!通してください!」

「行かせません!」

 

そんな光景を見ながら、小猫は相手を睨む。何故彼女はずっと直接戦わず、時間稼ぎのような事をするのか……それは確実に戦兎と龍誠を倒す為だ。

 

急がなければ戦兎まで脱落してしまう。ならどうする?速攻で相手を倒すしかない。だがずっと相手は直接戦わず、防御を固めている。

 

方法はある。仙術だ……仙術なら多分倒せる。でも使うのか?暴走したら?そう考えると二の足を踏んでしまう。だがその時、戦兎が再度攻撃される光景が目に写った時、小猫の中で何かがキレた。

 

(これ以上……見たくない!)

 

戦兎が傷つく所が……苦しむ姿がそこにある!

 

「アアアアアアアア!」

 

小猫の咆哮。次の瞬間、小猫の体を暖かなオーラが包み込み、猫耳と二股の尻尾が生える。どうなろうが知った事かと。これ以上戦兎が傷付かなくて済むなら、制御してみせると小猫は力を解放する。

 

「な、なに!?」

 

突然の変化に相手が驚くが、小猫は気にせず 走り出し拳を振るう。

 

「くっ!」

 

それを防いだ。防ぐと言ってもルークのパワーを正面から受ければ腕を持っていかれる。受け流すように……ずっとそうやって来たのだから。だが、

 

「え?」

 

受け流した瞬間。相手の女の子は腕を下ろし、膝をついた。全身に力が入らない。自身の体なのに全く意思通りに動かない!?

 

「ハァアアアアア!」

「っ!」

 

ドゴゥ!っと抉り込むような小猫の強烈なストレート。それは相手を吹き飛ばし、

 

「え?」

「きゃあ!」

 

戦兎を攻めていたルークとナイトの女の子を巻き込んだ。

 

「ぐぇ!おげぇ!」

「だ、大丈夫!?」

 

だが殴られた方はそれだけじゃない。殴られた所為?違う。そんなもんじゃない。まるで全身の内臓が全部グチャグチャにされたような感覚だ。

 

そしてビジョップの女の子が心配しつつ、気配に振り替えると小猫が来る。

 

「くっ!」

 

それを迎撃する為に魔力を集めて放った。だが、

 

「消えた!?」

「違う!上!」

 

ビジョップの子が上を向くと、一瞬で飛び上がって天井に両足をつけた小猫は、足に力を込めて勢い良く落下。ビジョップの子の顔面を遠慮なくぶん殴ると、そのままビジョップの子も膝をついて動けなくなってしまう。

 

「はぁ!」

 

そして小猫は更に加速して、二人に飛びかかった。

 

「とにかく触れられたらダメ……って!」

《ローズ!タンク!Are you ready?》

 

一瞬の隙を突いて、戦兎はボトルを交換し、残っていたルークの子とナイトの子をローズフルボトルの、茨の鞭で捕らえた。そしてそこに小猫の拳が襲い、

 

『ガハッ!』

 

二人は後ろに吹っ飛ぶが、戦兎がハンマー投げの要領でグルンと振り回すと、そのまま最初に小猫に吹っ飛ばされた子のところのもう一度戻す。更に、

 

《クジラ!消防車!Are you ready?》

「ビルドアップ!」

 

戦兎はボトルを入れ換え、小猫を見る。

 

「塔城!そこのビジョップをこっちに投げろ!」

「はい!」

 

小猫は走り出すと、ビジョップの子を掴みそのままぶん投げて全員を一ヶ所に集めた。そして戦兎はボトルの力で倒れているシトリー眷属達に放水。

 

「しょっぱ!これって塩水!?」

 

体は動かないが、味覚などはある。ルークの子は顔をしかめるが、戦兎はドリルクラッシャーを構える。

 

「さて、ここで科学の問題だ。良く勘違いされるが、実は水は電気を通しにくい。正確には真水だな。不純物が混じる事で電気が通る。その代表格が塩水だ」

 

そう言って戦兎はドリルクラッシャーにライトフルボトルを挿す。

 

《Ready Go!ボルテックブレイク!》

 

ドリルクラッシャーの刀身から、発光と共に電流が流れ、バチバチ音を立てると、シトリー眷属達の顔色が悪くなり、

 

「勝利の法則は決まった」

 

そう言って戦兎が、ドリルクラッシャーの切っ先を床を濡らしている水につけると電流が流れ、その電流はシトリー眷属を痛め付けた。そして、

 

《ソーナ・シトリー様のルーク、ナイト、ビジョップ、ポーン。一名ずつリタイアです》

 

放送と相手の消滅を見て、戦兎はそのまま膝をつく。

 

「先輩!」

「大丈夫だ。流石に疲れただけだよ」

 

肩で息をしながら、戦兎は周りを伺う。また敵が来たらたまったものじゃない。そう思いながらいると、

 

「この周りには敵はいません」

「そうなのか?」

「仙術使いは相手の気配に敏感です。先輩も知っての通りですが」

 

そう言えばそうかと、戦兎は変身を解いて床に座る。正直立ってるのも限界に近いのだ。

 

すると小猫がやって来て、手を握ってきた。

 

「塔城?」

「少しおとなしくしててください」

 

そう言って小猫は、意識を集中させるとジンワリ手が暖かくなり、少し体が暖かくなってきた。

 

「仙術はこのように他者に気を流し込み、肉体を活性化させることができます、アーシア先輩のような劇的な回復はありませんが、私みたいに未熟な仙術使いの気でも無いよりはマシなはずです」

 

確かに少し体が軽い気がする。そう思っていると小猫が、

 

「そう言えば何でスパークリングを使わなかったんですか?」

「あれは昇格(プロモーション)使ってビジョップにならないと使えないからな。外ならともかくレーティングゲーム中は相手の本陣に行かないと」

 

そう言えばそうだった。と小猫は納得し、

 

「まだ終わり……ではないですよね?」

「確か後向こうの眷属はクイーンとビジョップとポーンが一人ずつ残ってるはずだ。一人はソーナ会長といたから……」

 

残る二人は恐らく屋上から敵本陣に向かう祐斗達とかち合ったか……そう思っていた時、

 

《リアス・グレモリー様のナイト。一名リタイアです。更にソーナ・シトリー様のクイーン。リタイアです》

 

「グットタイミングだな。多分向こうも来るだろうからこっちも敵本陣に向かうぞ」

「はい」

 

そう言って二人は立ち上がると足を進める。

 

こうしてレーティングゲームは、ついに終盤戦を迎えた。

 

ちなみに道中、

 

《ソーナ・シトリー様のビジョップ一名リタイアです》

 

という放送も流れたのだが、その辺何があったのかは、また次回のお楽しみである。



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結末

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「シトリー眷属を退け、ついにレーティングゲームはクライマックスへ!」
龍誠「戦いの結末は?そして勝つのはいったい!」
匙「なーんか俺折角変身したのに影薄くね!?」
戦兎「気のせいじゃね?と言うわけでクライマックスな38話スタート!」


《リアス・グレモリー様のポーン。一名リタイアです》

そんな放送を聞きながら、祐斗はシトリー眷属のクイーンである椿姫の長刀を聖魔剣で弾く。

 

「ちぃ!この反転(リバース)というやつは厄介だな!」

 

そう悪態をつくのは、ビジョップの子と戦うゼノヴィアだ。

 

ゼノヴィアの武器であるデュランダルだが、破壊力も勿論凄いが一番の武器は、悪魔に問答無用で効果を発揮する聖なる力だ。だがそれを相手の使う反転(リバース)は、魔の力に変えてしまう。こうなるとただの破壊力のある剣だ。いやデュランダルクラスの破壊力は十分すぎるほどなのだが、それでもこの建物を傷付けないように手加減している状態ではあまり威力を出せない。その為ゼノヴィアも攻めあぐねいていた。

 

「ゼノヴィア!チェンジだ!」

 

そう言って祐斗は椿姫から離れると、ゼノヴィアと場所を入れ換え、ビジョップに斬りかかる。

 

聖魔剣は、聖と魔が混在する剣だ。故に反転(リバース)の効果を無効化出来る筈だと判断した。その判断は正しく、

 

反転(リバース)!」

「無駄だ!」

 

祐斗はそのまま一気に間合いを詰めるが、ビジョップの子は上手く回避する。その間に、

 

反転(リバース)は厄介だがそっちは使えないようだな。ならばデュランダルの餌食にしてくれる!」

 

と、余程デュランダルが無効化されまくったのにフラストレーションが溜まっていたらしく、ゼノヴィアはデュランダルをブンブン振り回しながら椿姫を見据えると、デュランダルを掲げて、

 

「ちょっとゼノヴィア!?建物壊さないようにね!?」

「流石にそこまでバカじゃない!」

 

そう思いたいけどね!?と祐斗が内心叫ぶ中、ゼノヴィアは一応加減してデュランダルを振り下ろした。勿論聖なる力を纏わせた一撃は、衝撃波を生み出してそのまま真っ直ぐ椿姫を狙うが、

 

「確かに反転(リバース)は使えませんが、これは使えます!追憶の鏡(ミラー・アリス)!」

「なにっ!?」

 

彼女は冷静に手を翳すと、鏡を作り出した。それは当然デュランダルの生み出した衝撃波によって砕け散るが、

 

「ガハッ!」

 

それと同時に衝撃波が跳ね返り、ゼノヴィアを吹き飛ばした。

 

神器(セイクリットギア)か!?」

「えぇ、相手の攻撃を鏡が割れると衝撃波にして返すというものでしてね。相手の攻撃をそのまま跳ね返すわけではないので、聖なる力を返せるわけではないのですが、デュランダル程の聖剣となれば衝撃波も相当なものでしょう」

 

椿姫の言うとおり、ゼノヴィアはリタイアしていないものの、たった一発で致命傷だ。

 

「これでゼノヴィアさんは動けず、放っておいてもそのままリタイアでしょう。実質これで2対1ですね」

「成程ね」

 

祐斗は二人に意識を向けながら、厄介なのは椿姫だと判断する。ビジョップの子も厄介だが、反転(リバース)は自分には効かない。なら近距離もできて、自分にも効果があるであろう追憶の鏡(ミラー・アリス)と言う神器(セイクリットギア)を持っている椿姫が厄介だ。こっちは属性ではなく、衝撃波だけ返すと言う都合上、自分の聖魔剣の一撃も返せてしまう。

 

そう思っていると、椿姫が長刀を祐斗に振り下ろしてきた。それを弾き、距離を取るが、ビジョップの魔力が祐斗を襲い、

 

「くっ!」

 

祐斗は更に弾く。その隙を突いて椿姫の長刀が来るが、弾く余裕はなくそれを押し止めるのが精一杯だ。

 

「流石の貴方でも二人がかりでは厳しいようですね」

「ですね」

 

祐斗は決して非力ではない。悪魔であり男と言う点で常人離れしている。だが、椿姫はクイーンだ。全ての駒の特性を持つと言うことはルークの特性もある。純粋な力比べになった場合、どうしても祐斗の方が不利なのだ。

 

「今頃は恐らく生き残った桐生戦兎さんもやられるはずです」

「戦兎君が生き残った?」

 

祐斗が何故分かるのかと思うと、

 

「こちらの策で二人をリタイア寸前に追い込めた筈です。そして万が一瓶詰め(ボトルチャージ)でそれを逃れようとした場合、残すのは万丈さんではなく桐生さんです。レーティングゲームのルール上有利なのはね。まさかそこで親友だからと優先するような愚かな人ではないと信じてますので」

「大した信頼ですね」

 

勝つ為ですから。そう言った椿姫は、更に押し込んでくる。だが、

 

「出来ればこれは使いたくなかったんだけどな」

「え?」

 

祐斗はそう呟くと、ポイっと懐から取り出したものを自分と椿姫の丁度真ん中位に放り投げ、

 

「フルボトル?」

「エンプティボトルって言うらしいですよ?」

 

祐斗がそう言った次の瞬間、紫色のエンプティボトルの口から煙が噴出し、二人を包み込んだ。

 

「げほっ!これは……毒!?」

「えぇ、何でもとある猫又が作った悪魔や妖怪に良く効く毒でしてね。戦兎君が体内に入った毒を吸い出したあと、他にも取り込んだ人達から吸い出したエンプティボトルを貰って、一本に凝縮させたんです。一回切りでしたが、中々強力でしょう?」

《ソーナ・シトリー様のルーク、ナイト、ビジョップ、ポーン。一名ずつリタイアです》

 

祐斗は青い顔色のままだが、放送に思わず戦兎君やったんだね……と呟きながら、聖魔剣を握り直す。

 

「自分ごと巻き込むとは……」

「こっちも負けてられないのは一緒なんですよ」

 

そう言って祐斗は聖魔剣を振るう!

 

「くっ!」

 

それを椿姫は止める。互いに毒に蝕まれた身では、ろくな押し合いにならない。必死に押し合うものの、体に力は入らず、苦悶の表情を浮かべるだけだ。そこに、

 

反転(リバース)!」

 

ビジョップの反転(リバース)が発動し、毒が消えていく。ただし、体に侵入した毒は消えない。毒の煙が晴れただけ。それ以上毒を吸わないようにするだけだ。だが、それが一方のミスであり、もう一方にとっての幸運だった。

 

「え?」

 

椿姫は呆然としながら後ろを振り替える。その視線の先にいたのはゼノヴィアだ。

 

「放っておいてもリタイアだ。でも私はまだいる。確かに止めを誘うとすればその分木場に隙を見せる事になる。だがそれでも……私を生かしたままだったのは失策だったな!」

 

ゼノヴィアはふらつく足でそう言うと、椿姫に向けて斬撃を飛ばす為の振り下ろしたデュランダルを持ち上げる。

 

聖なる力をたっぷり込めたその一撃は、毒に蝕まれてなかったとしても悪魔にとって一撃必殺の破壊力があった。

 

だが、

 

「がはっ!」

 

祐斗は口から血を吐く。戦兎、小猫、リアスの体内から取り出した猛毒を凝縮して一本のフルボトルに込めたものということは、彼らが喰らったものより遥かに濃度が濃い毒だ。そんなものを思いっきり吸い込めば何もなくとも命に関わる。

 

「木場!」

「ごめんゼノヴィア……思ったよりきつかったよ」

 

祐斗は申し訳なさそうな笑みを浮かべると、ゆっくりと体を倒していき、

 

《リアス・グレモリー様のナイト。一名リタイアです。更にソーナ・シトリー様のクイーン。リタイアです》

 

その放送と共に消滅した。その場に残るのは、ゼノヴィアとビジョップの子だ。だが既にゼノヴィアは満身創痍。対してビジョップの子は無傷だ。スタミナすら切れていない。

 

「今のあなたに攻撃するのは躊躇われるけど……いくわよ!」

「くっ!」

 

デュランダルが重い。そう思わず思ってしまうほどこっちは満身創痍なんだが!?と言いたくなるが、ゼノヴィアは咄嗟にその大きさを使ってガード使用としたその時、

 

「はぁ!」

 

そこに飛来した別の魔力の弾丸が、ビジョップの子の魔力を消した。

 

「え!?」

「ゼノヴィアさん!」

 

ゼノヴィアがポカンとしていると、そこに駆け寄ってきたのはアーシアで、その後ろにはリアスと朱乃がいた。

 

「何でここに?」

「本陣で張っていても誰も来なくてね。それで思ったの。ソーナが狙っているのはただ勝つ事なんじゃないんじゃないかってね。ただ勝っても意味がない。となれば狙うとしたらコカビエルを倒した戦兎や、転生したばかりで上級悪魔を倒した龍誠。なら私達が後ろに控えていても仕方ないから恐らく人数の割合が少ないであろう祐斗達の方から行こうと思ったのよ。多分さっきまで戦ってた、戦兎か龍誠と小猫には悪かったけどね。囮にしちゃったみたいで」

 

まあその前にさっさと終わっちゃったみたいだけどね。とリアスが言うとゼノヴィアは、

 

「多分残ったのは戦兎らしい」

 

アーシアに、反転(リバース)の事がある為一旦回復は待って欲しいと、ゼノヴィアは伝えながらリアスに言ったその時、

 

「あらあら」

『っ!』

 

珍しくもない。いつもの朱乃なら良く聴く言葉だ。だがその場の全員が、満場一致で感じた事。それは、恐怖である。

 

「折角、勇気を出そうと思ったのに。折角、前に進む為に彼に見てもらおうと思ったのに……」

 

ユラリ、と体から立ち上る魔力は尋常じゃない濃度だ。

 

「彼女。倒しても良いかしら?」

『ど、どうぞ……』

 

思わずリアスまで敬語になってしまう。それを聞いた朱乃はそれはもう楽しそうに笑みを浮かべ、背中から悪魔と、あれほど忌み嫌っていた堕天使の羽を出した。

 

「行きますわよ」

 

バチチチチ!と強烈な閃光が、朱乃の手に集まり、

 

「はぁ!」

 

それが放たれる。だがビジョップの子にはまだ反転(リバース)がある。彼女もそう思って、

 

反転(リバース)!……え?」

 

ビジョップの子は、確かに発動したと感じた。そして彼女の思うように、反転(リバース)により反転していた。雷はであるが。

 

なにせ朱乃が放ったのは雷と、堕天使も操る光の力。謂わば今のは【雷光】である。

 

そして雷は反転させたものの、光の力はそのまま喰らい、ビジョップの子は呆然としたまま消滅した。

 

「うふふ……うふふふふふふふ」

 

ゼノヴィアとアーシアは手を取り合い、ガタガタ震えている。それくらい朱乃の後ろ姿だけでも恐怖だった。

 

そしてリアスは、

 

「後はソーナとポーンが一人か……」

 

と現実逃避兼、今後の算段を立てていた。とはいえここまで来たら小細工はいらないだろう。 実質後は。キング同士対決だ

 

「行きましょう朱乃。アーシアはゼノヴィアの治療をしてあげて」

「わかりました」

 

そう言ってアーシアは、ゼノヴィアに光を当て始め、

 

「行きましょうか」

「えぇ」

 

すっかり何時もの調子に戻った朱乃を連れて、リアスは足を進めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「来ましたか。リアス」

「えぇ」

 

リアスは、本陣にて待っていたソーナを見つけ、言葉を返す。その彼女の後ろには朱乃だけじゃない。途中で合流した戦兎や小猫も居り、それを見てソーナは息を吐いた。

 

「ここまで上手く行かないと悔しいというより、いっそ清々しいですね」

「そう」

 

ソーナの言葉に、リアスは短く返す。するとソーナは、

 

「私は貴女が羨ましかった」

「え?」

 

リアスは、突然のソーナの言葉に驚くがソーナは続け、

 

「だって才能があったから。貴女はあと数年で最上級悪魔クラスに至るでしょう。残念ですが私にはそこまでの力はない。昔からそう、才能も容姿もカリスマも、貴女は私の先を行っていた」

 

リアスは何も言わない。 何も言わずに、言葉を聞いた。

 

「それでも努力したわ。直接勝てないなら頭脳を磨き、貴女にも劣らない眷属を集めた。でも現実は甘いわね。ビルドと言ったかしら?その力の攻略がこのゲームの勝敗を分けると考えた。だから桐生君を集中的に狙ったのだけど、賭けには負けた」

 

結局、グレモリーチーム側で脱落したのはギャスパー・龍誠・祐斗の3人のみだ。その反面シトリーチームはキングとポーン以外全滅。

 

下馬評通りどころか、下馬評以上に差をつけられる結果となっている。

 

「とは言え、このままやられると言うのも癪ね」

「まあそうよね」

 

そう言い合った二人の手にそれぞれ滅びと水の魔力が集まる。

 

「手出し無用よ」

 

リアスはそう言いソーナと距離をゆっくり詰めた。その途中、

 

「そうそうソーナ。言い忘れてたけど私も貴女が羨ましかったわ。頭が良くて冷静沈着で……後貴女にも婚約者がいたでしょ?チェスでボコボコにして解消したけど。憧れたわ。私もああいう風に出来ればってね」

 

その代わり王子様が現れたでしょう?とソーナに言われ、そうねとリアスは言う。そして、

 

「決着つけましょう!」

「えぇ!」

 

両者の魔力がぶつかり合い、そして最後には、

 

《ソーナ・シトリー様。リタイアです。更に、キングのリタイアによりソーナ・シトリー様のチームは敗北。よって勝者はリアス・グレモリー様のチームとなります!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ」

 

勝敗が決定した後、アザゼルは椅子にもたれかかる。

 

リアスが勝った。80点位はあげてもいいレベルで勝った。だが中々ソーナもやるじゃないかと思う。

 

戦兎のビルドに対して交換させないと言うのは、言えば簡単だが実際やるとなると大変だ。余程眷属同士の息があってないと、あぁはならない。それに匙、あの二人と戦いながらあの作戦を成功させると言うのは、十分彼も化け物だ。ただ気になるのは、スクラッシュドライバーを持っていた事だ。ヴァーリのやつも、知らんやつから貰ったとか言って使っていたが……いやこれは後で本人に聞こう。

 

しかし結果はソーナ側にとっては散々なもの。

 

「ふぉっふぉっふぉ。すごい3人じゃったのう」

「戦兎達の事か?」

 

うむ。とオーディンは頷く。

 

「ボトルを交換するだけで能力を変えられ、しかもあの連戦を戦い抜いた桐生戦兎、リタイアしたとはいえ桐生戦兎との息をの合いようが素晴らしかった万丈龍誠、そしてその二人と戦って何度倒されてもなお立ち上がり続けた匙元士郎……どれも劣らぬ素晴らしい戦士じゃった。じゃがのう……」

 

オーディンは残念そうに顔をしかめ、

 

「結末が結末だけに世間に写る姿は別になるじゃろうな」

 

彼の言葉にアザゼルは同意する。そう、誰の性でもない。だが世間からは、ソーナが散々な結果で負けたと言う部分が強く印象に残る。

 

しかもソーナは、敢えて手の空いていた眷属を自陣に集めて戦力をまとめるわけでも、リアス達のところに送って勝負に出るわけでもなく、戦兎を狙った。勝てればネームバリューもある。だが結果返り討ち。いや実際は小猫がいなければ負けていたが、世間は返り討ちのところを強く印象に残す。

 

(明日からソーナ達(アイツら)も大変だな)

 

アザゼルは、そんな風に思わず同情せずにはいられなかったのだった。




なんと総合評価が300突破していました。ありがとうございます!更にいつもコメントくださる方、評価くださった方、ありがとうございます!そしてこれからもよろしくお願いします!


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勝者と敗者

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「レーティングゲームを勝利で終えた俺たちだったが……と行きたいところだけど今回はちょっと別の話」
龍誠「なんとこの小説の総合評価300突破いたしました!ありがとうございまーす!」
匙「あれ!?俺たちについては!?」
戦兎「それはほら、本編を見てねってことで」
匙「ちくしょぉおおおおお!」
戦兎「と言うわけでこれからもよろしくって言う感じの39話スタート!」


《今回のリアス・グレモリー様とソーナ・シトリー様のレーティングゲーム。勝者はリアス・グレモリー様となりましたがいかが思いますか?》

《まあソーナ・シトリーチームもよかったと思いますよ?最初はね。ただ結局最後ひっくり返されちゃってるし、途中で桐生選手を複数人で襲ったときも結局負けてますし、ゲーム運びは良くても個々の能力が少々低いかと……》

《やはりあそこで無理に桐生選手を狙うべきでは……》

《いや単純に相性が……》

 

ゲームの次の日、先日の試合についてニュースや新聞では大きく取り上げられた。

 

色んな言われ方がある。だが結局のところ言われているのは、余り誉められた内容ではなかったと言うことだ。

 

もっとああすれば……こうすればとソーナの中でも葛藤が生まれる。

 

あの時、戦兎を狙うのではなくおとなしく本陣を狙えば結果は少し違った。狙うべきは戦兎ではなく、本陣でありリアスだった。そんなのはわかってた。だがそれでもコカビエルを倒した戦兎を倒すと言うネームバリューを狙い、返り討ちにあった。その事実は変えられない。

 

そうテレビから流れてくるコメントを聞きながら、ソーナ思う。そして、

 

《まあ彼女はレーティングゲームの学校を建てたいらしいのですが……あのようなゲームをする人が建てた学校っても……ねぇ?私は子供がいませんけど行かせるんだったらやはりちゃんとした所にいかせたいと思いますよ》

「う……ぐぅ……」

 

歯を噛み締め、涙を流す。自分は負けた。無惨に負けた。それは変えようもない事実で、敗者はただ泣くことしかできなかったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふざけんな!」

 

ガン!とソーナとは別の部屋に入院していた匙は壁を殴る。それを見た、見舞いに来ていた他のシトリー眷属の皆は慌てて彼を止めた。

 

「なにがちゃんとしたところだ!俺たちが建てたいのは、お前みたいなやつらしか学校がいけないから、そういうやつらじゃなくても行ける学校を建てたいんだよ!」

「元ちゃん!落ち着いて!傷にさわるから!」

 

暴れる匙を、他の眷属たちが押し止め、匙はその場に膝をつく。

 

「くそぉ!俺がもっと強ければ!戦兎か龍誠を普通に倒せれば……くそぉ!くそぉぉおおおお!」

 

床を何度も殴り、慟哭する匙に他の皆はかける言葉がない。皆同じだからだ。もっと強ければ、もっと機転が利けば……そういう思いが今もずっとある。

 

それに、匙がスクラッシュドライバーを使うために、どれだけ必死だったか眷属の皆は見てきた。コカビエルとの一件が終わった直後位に、何か顔は覚えてないんだけど、誰かから貰ったとかいって持ってきて、余りにも怪しすぎると皆で止めたが、これで強くなれるならと使い始めた。だが最初は何度使っても、体に電流が流れて弾かれるばかりで使い物にならなからず、そんな様子を見かねたソーナも、もうやめるように匙に何度も言ったが、匙はそれでも止まらなかった。毎日毎日何回も何回もやって、ある日突然変身できた。そしてあの強さは圧倒的だった。なにせ自分達複数人と模擬戦したときに手も足もでなかった。

 

勿論使えるようになったからって油断してない。夏休みに入ってからも、神器(セイクリットギア)の扱いと共に、何度も変身し、力に慣れながら高めてきた。だが結果は……

 

分かっていた。見られるのは内容じゃない。世間が見るのは結果だ。分かっていた。けど……悔しい。

 

覚悟をもって必死に戦った。それを殆ど省みられない。それがこんなに悔しいなんて。

 

そんな中の様子を、廊下で聞いたのは戦兎だ。本当はスクラッシュドライバーについて聞きたかったのと、可能ならベルトの回収もしたかったのだが……

 

「行くか」

 

静かにその場を後にする。今は自分が入る資格はない。そう判断し進むと、

 

「やぁ、ここにいるって聞いてきたんだけど会えて良かったよ」

『サーゼクス様?』

 

目の前に現れたのはサーゼクスだった。突然の訪問に驚きつつも戦兎は、

 

「どうしたんですか?」

「少しこっちの用事でね。戦兎君を探していたんだ。それより元気がないようだけど?」

 

サーゼクスの問いに、戦兎は少し考えてから、口を開く。

 

「なんか、戦いの直後は満足感があったんですけど……今は何か納得いかないって言うか」

「ふむ。シトリーチームは決して簡単ではなかったのに、世間の扱いがってところかな?」

 

そうです、と戦兎が頷くと、サーゼクスは少し表情を引き締めてから、

 

「それが勝者と敗者に分けられると言うことだよ」

「え?」

「レーティングゲームが冥界で数少ない娯楽だ。だから色んな者が注目するし、テレビや新聞でも取り上げられる。勿論その中には敗者を擁護する者もいれば、過激すぎる言い方で非難して、敢えて反感を買うやり方をする者もいる。だがそれだけ色んな者に見られているんだ。レーティングゲームはね。そしてその結果が悪魔社会の地位や名誉、または発言権に影響する。ソーナ君の夢を叶える上で、勝つことは絶対条件だった。その上で華々しくね。だが同時に負ければこうなるのも分かっていたはずだ。それでも彼女たちは自分の夢のために選択したんだ。それを勝者である君が中途半端な同情を向けるのはお門違いだよ?」

「っ!」

 

中途半端な同情だと言われ、戦兎はビクリと背中を震わせる。サーゼクスの言葉に、何も言い返せない。

 

言われてみて、案外的を射ていると思った。スクラッシュドライバーのこととか言っても……結局自分は負かした相手に罪悪感を覚え、それを一方的な自己満足のために、会って話したいと思ったのかもしれないと。

 

「レーティングゲームは家同士の付き合い等である程度勝敗が決まった状態で行われることもない訳じゃない。だが大多数は自分の夢や誇り、プライド、意地をかけて戦う。そして勝ったものは相手のそんな思いを踏みにじって前に進む。それは当然だ。こちらもそれをもって望むのだからね。互いの思いと思い。それらをぶつけ合って相手の思いを壊して……」

 

それがレーティングゲームの一つの側面だ。サーゼクスは淡々と、それを言う。そして戦兎に、

 

「君はなんのためにレーティングゲームを戦う?君が普段戦うのは誰かのために、ラブ&ピースにためにだったかな?だがレーティングゲームにそれはない。互いの欲望を叶えるための戦いだ」

 

その問いに、戦兎は息を吸う。それから、

 

「まぁ、俺にもありますよ。ちゃんと俺個人の戦う理由。まぁ……匙たちみたいに立派なもんでもないですけど」

 

その戦兎の言葉に、サーゼクスは笑みを浮かべてから、勲章を取り出した。

 

「これは?」

「今回の戦いで目覚ましい活躍をした者に送られるものでね。まあ景品のようなものさ。貰う者によってはね」

 

そう言ってサーゼクスは戦兎の手に握らせる。

 

「重い……すげぇ重いです」

 

勲章を手にしたとき、戦兎は思わずそんな言葉が漏れた。その言葉を聞いてサーゼクスは頷き、

 

「ならばその重さを忘れないことだ。それが勝者の礼儀だよ」

「……はい」

 

 

戦兎は勲章をギュッと握る。それを見たサーゼクスは、

 

「それでは私は行くね。ぶちギレたセラフォルーを止めなくては」

「想像つきますね」

 

戦兎がそう返すと、サーゼクスは肩を竦めて行ってしまう。それを見送ったあと、

 

(勝者の礼儀か……)

 

戦兎は自分の手を見て思う。化学や力は誰かのために使う……それが正しいと思ってきたし、今だって変わらない。でも、これからレーティングゲームで戦っていくと言うことは、それとが違うことになる。でも、サーゼクスにも言ったように戦兎なりの戦う理由はちゃんとある。だから、

 

「俺は迷わねぇ……」

 

戦兎はそう呟くと、新たな覚悟を胸に、病院を後にしたのだった。



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夏の終わりのプロポーズ

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「覚悟も新たに修行の全てを終えて帰還する日になった俺たち……」
龍誠「だがそこには新たな騒動が待っていた!」
匙「それにしても前回と被るけど評価関係がグングン伸びてるよな」
戦兎「確かに登録数も伸びててありがたい限りですよ」
龍誠「やっぱこういう風に延びるとどんどん作ってこうって言うやる気になるもんな」
戦兎「つうわけでガンガンいくぜ40話!」


「それでは龍誠君。また会える日を楽しみにしているよ」

「ありがとうございます」

 

夏休み最終日、リアスの父と龍誠は握手を交わし、それを見ながら、戦兎もミリキャスと挨拶を交わす。

 

「戦兎さんもまた遊びに来てくださいね」

「えぇ、また来ますよ」

 

レーティングゲームを終えて更に数日。すっかり体力も回復し、ここ数日は冥界で遊びまくりだ。

 

グレモリー家が所有する温泉に浸かったり、ミリキャスを後ろに乗せてバイクで爆走したり、ピクニックに行ったりと、夏休みに出来なかったことをやりまくった。

 

グレイフィアお手製のお弁当は絶品で、その後皆で遊び、戦いと修行と続きの心を癒すことができたと思う。

 

因みにその時発覚したのだが、ミリキャスの母。つまりサーゼクスの妻はグレイフィアらしい。

 

何故発覚したかと言うと、ミリキャスが普通に母と呼んだからで、後でリアスに聞くと、普段のグレイフィアはあくまでグレモリー家の一メイドという立場で接し、オフの時は母と言う感じでいるらしい。因みにサーゼクスとは大恋愛の末の結婚で、今でも劇になるほど有名とのこと。

 

確かにこうやって並んでいるのを見ると確かに母と子に見えてくるから不思議だ。すると、ミリキャスは龍誠にも挨拶をと言ってそっちに行ってしまう。

 

「ありがとうございました」

「え?」

 

少しミリキャスが行ってしまったことを寂しく思いつつ、戦兎がいるとミリキャスと並んでいたグレイフィアにお礼を言われた。

 

「あの子は魔王サーゼクス・ルシファーの息子です。本人が望もうと望まざるとも期待されますし、あの子は聡明です。周りが望むミリキャス・グレモリーを無意識に演じています。ですが戦兎さんや龍誠さんと一緒の時は年相応の子供の顔をしてくれてましたから」

「単純に龍誠の場合は精神年齢が同じだっただけじゃないかと……」

 

一緒になって遊んでリアスとグレイフィアに膝詰め説教されていた二人の姿は記憶に新しい。

 

「それでも良いのです。だから今だけでは母としてお礼を言わせてください」

 

そう言って頭を下げる姿は、間違いなく一人の母の姿だった。そんな姿に戦兎は頭を掻きつついると、

 

「戦兎。そろそろ行くわよ」

「あ、はい!」

 

リアスに声をかけられ、列車に乗り込む皆を追う。その時!

 

「あぁ!」

 

列車に乗り込む直前で龍誠が大声を出し、皆が振り替える。すると、

 

「何か忘れてると思ったら思い出した!俺夏休みの宿題やってねぇ!」

 

えぇ!?と皆で驚愕する中、龍誠も他の皆を見る。

 

「え!?つうか皆はやったのか!?」

 

龍誠も驚愕する中、それぞれ修行の合間に終わらせたらしい。因みに戦兎は貰ったその日に終わらせておくタイプだ。そして龍誠は最終日までとっておくタイプ。なので、

 

「まあいいや。戦兎に写させてもらおう」

「だろうな」

 

毎年このパターンだ。いい加減戦兎も慣れたもので、車内に入りながら龍誠にも宿題を渡す。その様子を見ながら、

 

「あれは修行がなくてもやってないですよね」

「というか戦兎は龍誠に甘すぎるわ……」

 

そんな祐斗の呟きにリアスが頷くが思わずその場の全員が、

 

(貴女も大概ですけどね……)

 

と突っ込んだのは別の話だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やはりこれですかね?」

「かなぁ……」

 

ギャスパーと戦兎は一緒にゲーム機の画面を覗き込んでいた。

 

さて、列車も発車して一時間ほど。皆はそれぞれ時間を潰していた。龍誠は勿論戦兎の宿題を丸写し……しようとしてリアスに、少しは自分でやらないとダメだと言われて没収。祐斗や朱乃に教わりながらヒィコラ言いながら宿題をやっている。

 

因みに今ギャスパーがやっているのは、タドってメグって伝説の剣で世界を救えというキャッチコピーで売り出されたRPGゲームで、白と水色の鎧を来た主人公が魔王を倒すと言う王道のストーリーなのだが、進めていくと魔王と融合したりだとか、それを乗り越え聖騎士になったりだとか色々あるのだが、来るときにやってたアクションゲームと違ってやり易い。

 

そう思っていると、小猫がやって来た。

 

「進んでますか?」

「まあな」

 

そう言って戦兎が答えると、思い出したような顔をして、

 

「そう言えばギャスパー。塔城って好きなやつがいるらしいぞ」

「え!?小猫ちゃんいたの!?」

 

おかしいの?と小猫がジト目でギャスパーを見ると、彼はブンブン首を横に振った。

 

「良いよなぁ。あっちもこっちも恋愛しててさ」

「戦兎先輩はいないんですか?」

 

そうギャスパーが聞き返す中、さらっと自分サイドにギャスパーを入れてると小猫は内心突っ込む。

 

「俺はねぇなぁ。つうか彼氏にしたくない男子生徒ランキングトップ5だってよ?俺……」

 

意外と匙から教えられた事実は戦兎の中ではダメージがあったらしい。だがそんなことより、と戦兎は小猫を見て、

 

「塔城は告白しないのか?」

「さぁ?どこぞの誰かさんが言うように私はチビですしね。ねぇ?戦兎先輩」

 

そう嫌みっぽく小猫は言うが、戦兎は首をかしげて、

 

「まあ確かに塔城のことは、チビだしロリっぽいし、きっと塔城を好きになるやつはロリコンだろうなとは思うけどさ」

「今聞き捨てならない言葉が聞こえたんですが?」

 

小猫はコメカミをピクピク躍動させ、睨み付けてきたが戦兎は、

 

「でも俺ブスだと思ったことはないぞ?寧ろ容姿レベルは高いだろ?」

 

実際小猫は人気が高い。と言うかオカルト研究部は、入部するのに容姿審査がいるんじゃないかという都市伝説が出るほどだ。

 

そんな戦兎の言葉に、思わず照れてしまい、我ながら単純すぎると自己嫌悪に陥った小猫だったが、

 

「戦兎先輩も、まあ口が悪いと言うかデリカシー皆無ですが……結構良いところもありますし、素敵な男性だと思いますよ?」

『っ!』

 

ピキィ!と車内の時が止まる。言っておくが、ギャスパーの停止世界の邪眼(フォービドウン・バロール・ビュー)が暴走した訳じゃない。そしてリアスはお茶を飲んでいたカップを落としそうになり、龍誠に勉強を教えていた朱乃と祐斗はビックリ眼でその姿を振り替えって見て、アーシアとゼノヴィアは口にお菓子を運ぼうとしていた手を途中で止め、ギャスパーもポカーンとその光景を見ていた。

 

変わってないのは龍誠くらいである。そして皆の心の声は一致していた。それは、

 

(え?小猫(ちゃん)って戦兎が好きなの!?)

 

であった。戦兎が良いやつなのは皆も知っている。だがこうして、好意を全面的に向けている光景というのは、初めての光景だった。何せ周りの同級生からの評価も、顔は良いんだけど……という前置きがおかれた後に、割りと散々な言われ方をする戦兎だ。

 

だからか結構新鮮な光景である。だが戦兎はというと、

 

「塔城……お前なに考えてるのかわかんねぇやつだけど基本良いやつだよな」

 

ズコッ!と周りの面子はずっこけそうになった。更に、そうじゃないと突っ込みたくなった。今の小猫の言葉の意味を全く理解していないのだ。

 

そんな二人のやり取りに、周りが小猫は苦労しそうだと思わず同情してしまう中、龍誠は少し顔をあげると、

 

「アイツってホント大臣役者だな」

「え?何かいった?」

 

祐斗が振り替えるが、龍誠は大丈夫だと答え、また勉強に戻った。因みに龍誠が言いたかったのは、【大根役者】である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今夜は徹夜だなぁ……」

 

列車を降りながら、ため息を吐く龍誠に皆は苦笑いを浮かべた。すると、駅のホームに、既に誰かがいた。

 

「待っていたよ。アーシア・アルジェント」

「え?」

 

そう言って近づいてきた優男に、リアスは見覚えがあるようで、

 

「ディオドラ・アスタロト?」

「会合以来だね。リアス・グレモリー」

 

そう言いながらも、ディオドラはアーシアを見て、

 

「この再会。悪魔と言えど運命ってやつを信じてしまうよ」

「あ、あの……失礼かもしれませんが以前どこかで?」

 

アーシアは彼に見覚えがないらしい。するとディオドラは、服の胸元を開く。そこには大きな古傷があり、

 

「あの時は顔を見せてなかったからね。でも僕は君を忘れたことはなかったよ。教会の近くで倒れていた悪魔の僕を助けてくれた恩人なんだからね」

『っ!』

 

ディオドラの言葉に、その場の全員が目を見開き驚愕する。アーシアが教会から追放された理由……それは悪魔を治療したからだ。それは皆知っている。その悪魔が……こいつだというのか?そう皆が思っていると、ディオドラは更に驚愕の言葉を発した。

 

「会合の時に挨拶ができなくてすまない。でも言わせて欲しいんだ。アーシア・アルジェント。僕の眷属悪魔になって、僕と結婚して妻になってほしい」

『……はいぃ!?』

 

夏も終わり、秋の気配がしてくるようになった天気の下、ディオドラ・アスタロトは、アーシアに告白どころか、プロポーズまでしたのだった。




今夜くらいにキャラ説明もあげます。


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キャラ説
キャラ説


戦兎と龍誠の簡単なキャラ説等です。ただこれは五章までのネタバレが含まれますので、五章まで読んでから見るか、そこを留意した上でご覧下さい。


桐生(きりゅう) 戦兎(せんと)

 

17才。

 

性別・男

 

種族・人間→転生悪魔

 

ハザードレベル・4.1(現時点)

 

神器(セイクリットギア)瓶詰め(ボトルチャージ)の持ち主。

 

戦闘スタイル・テクニック

 

自称未来の天才物理学者。7年に失踪した父の背中を追っており、17才とは思えない程の知識を持つ。更に顔も芸能人並のイケメン。あと運動神経も抜群。

 

とここまでなら凄いのだがかなりナルシストな上口が悪い。というデリカシーがない。特に幼馴染の龍誠の扱いはかなり雑で日夜色々な発明品を作っては龍誠で実験を行っている。

 

IQも高いがそれは理数系にカンスト気味。ただ他の教科もトップに普通に入るほど。

 

だが、だからと言って冷酷では断じてなく、幼馴染の龍誠に危害を加えようとしたり、一般人に危害を加えるなら怒る事のできるタイプの人間。

 

ごく普通の人間だったが、父が設計&開発したビルドドライバーやフルボトルを使う事で戦いに参戦し、後に転生悪魔になった。

 

神器(セイクリットギア)である瓶詰め(ボトルチャージ)とは、ブレスレット型の神器(セイクリットギア)で、特殊なボトルを精製し、それに生物、無生物問わず閉じ込める事のできると言う能力。但し戦兎達が持っているボトルは戦兎のイメージを抽出して作られており、本来はできないらしいのだが科学の力と合わせる事で可能としている。

 

正義の味方、ヒーローと言うものに憧れている。

 

恋愛関係に関しては余り興味もなく、今が楽しいらしいから十分らしい。それでも、リアス達を美人だと思ったり、彼女達が露出の激し目な格好をすると、顔を赤くして視線を逸らす。

 

《仮面ライダービルド》

 

二本のボトルをベルトに挿して使う戦兎専用装備。合わせて60本ボトルはあり、それぞれが異なる固有の能力を持つ。特定の組み合わせでボトルの力を完全に引き出す事ができ、リアス曰く使い方では現時点でも、上級悪魔にも引けを取らない引き出しの多さを持つが、今まで状況が逼迫してなかった為、原作ほどベストマッチを調べていなかった。だが話が進むごとにベストマッチも見つけている模様だったが、五章の修行にて、全てのベストマッチを発見した。

 

転生悪魔になってからはスペックも上昇しているらしいが、ただ戦兎もまだ使いきれていない部分があり、これからに期待される。

 

《ラビットタンクフォーム》

 

ビルドの基本形態。戦兎が最も使いやすく、体に馴染むフォームらしい。基本的にはこれで相手を見て、相手に応じたボトルに交換して戦う。専用武器はドリルクラッシャー。

 

強さ的には(初登場時は)下級寄りの中級悪魔相当(但し、ハザードレベルによるスペックの上昇や、適切なボトルへのチェンジを用いればそれ以上になる可能性が高い)。

 

必殺技は、レバーを回して右足にエネルギーを溜めて放つボルテックフィニッシュと、ドリルクラッシャーにボトルを挿して放つボルテックブレイク。

 

【ラビットタンクスパークリング】

 

ビルドの強化フォーム。炭酸の泡を爆発させた反動を用いた高速移動や、腕に付いた棘を用いた戦闘。更にビルドの装備全てを使うなど、今までにはない力を持つ。

 

これは、戦兎が持つ魔力によりボトルの成分を活性化させる事で変身する為、常にビジョップに昇格(プロモーション)している。ただしその都合上レーティングゲームでは敵陣地以外では使えない。

 

強さ的には(初登場時は)上級悪魔相当(ハザードレベルによるスペックの上昇あり)。

 

必殺技は、エネルギーを溜めた蹴りと共に炭酸の泡の爆発を食らわせるスパークリングフィニッシュ。

 

《対人関係》

 

【万丈 龍誠】

 

小学校の頃からの親友で、ぞんざいに扱う事もあるが何だかんだで大切に思っている。

 

基本的に向こう見ずな龍誠のブレーキ役に見えるが、それに乗っかる事も多い為、実はそこまでブレーキ役じゃなかったりする。

 

なんだかんだ言いつつも、龍誠に依存している節があり、龍誠がいるから……と言って行動を起こす事もある。

 

俺がいないと龍誠はと言うが、龍誠が居ないと耐えられないのは戦兎の方だったりするので、ある意味戦兎は龍誠のヒロイン。

 

【リアス・グレモリー】

 

悪魔としては主で、戦兎の発明品には割りと興味津々な為か、その辺の話しで盛り上がる事もある。

 

戦兎の長くてめんどくさい話でもしっかり聞いてくれるので関係性は良好。

 

ただ、龍誠を誘惑するのは自分が見てない所でやってほしいなとは思っている。でも龍誠との仲は応援している。

 

これでも忠誠心は高いと言うのは本人談。

 

【姫島 朱乃】

 

同じ部活の先輩として、そして悪魔としても先輩として、そこそこ上手くやっている模様。

 

ただ、向こうが男性に対して一定の距離を保っていることに気づいている為、余り深くは踏み込んで話しはしない。

 

それでも仲間として大切には思っている。

 

【木場 祐斗】

 

女子の比率が高い為、貴重な男性部員として、更に実力も高いので戦闘面でも頼りにしている。

 

聖剣騒動の一件から恩義を感じられており、関係はかなり良好。

 

【アーシア・アルジェント】

 

関係は恐らく龍誠に次ぐくらいには良好。

 

ただ、基本的に疑う事を知らない素直な子の為、戦兎が言った適当な嘘を信じて周りを唖然とさせる事もある。

 

【塔城 小猫】

 

戦兎とは、なにかにつけて(主に戦兎が要らんことを言って)喧嘩するが、何だかんだで名(迷?)コンビ。

 

戦兎の事を残念な先輩だとは思っているが、面倒見の良さもあって関係は良好。

 

五章での一件を経て好意を持たれるが……

 

【ゼノヴィア】

 

出会いが出会いだった為か、苦手意識を持たれており、戦兎も気づいている為、交流は殆どない。

 

【ギャスパー・ウラディ】

 

部活の後輩として、なんだかんだ言いつつも面倒を見ている。

 

と言う風情を出しているが、周りから見ると明らかに甘い。

 

ギャスパー自身も戦兎に非常に懐いており、周りからあらぬ誤解を持たれている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

万丈(ばんじょう) 龍誠(りゅうせい)

 

17才

 

種族・人間→転生悪魔

 

ハザードレベル・4,2

 

性別・男

 

神器・無し

 

戦闘スタイル・パワー

 

原作でいう兵藤 一誠に当たる人物なのだが、今作では名前も立場も変わっている。だが原作同様無自覚で女ったらし。

 

システマと言う格闘技の使い手で、純粋な戦闘能力に限れば戦兎より上。

 

戦兎とは小学生時代からの幼馴染で互いのことは誰よりも分かり合っていると自負している。

 

実は捨て子で、高校に進学するまでは施設にいたが現在は駒王学園の寮と戦兎の家(正確には家の地下にある秘密基地)のどちらかに住み着いていたが、現在は戦兎の自宅の隣にリアスの実家が建てた豪邸に住んでいる。

 

今作では赤龍帝の籠手(ブーステット・ギア)は持っておらず、代わりにドラゴンフルボトルと常に彼の傍にいるクローズドラゴンを持つ。

 

因みに今作では原作ほどスケベではなく筋肉バカとなっている。ただ相応には興味がある模様。

 

恋愛関係は原作ほど奥手ではなく、皆からの好意には気づいている。だが多数からの好意にどう答えるべきなのか分からず関係を進めれていない。

 

《仮面ライダークローズ》

 

ライザー戦から変身できるようになった、龍誠が変身する仮面ライダー。

 

龍誠の戦闘スタイルを反映して、近接戦闘に重きを置いており、戦兎のビルドのような多様性はないが、近接戦ではスパークリングには一歩劣るものの、通常のビルドを上回る。専用武器は、ビートクローザー。

 

強さ的には(初登場時は)中級悪魔寄りの上級悪魔相当(ハザードレベルによるスペックの上昇や、昇格(プロモーション)も用いる事でそれ以上になる事もある)

 

必殺技は、蒼いドラゴンを作り出し、それを纏って放つキック、ドラゴニックフィニッシュとビートクローザーにボトルを挿して放つメガスラッシュ。

 

《対人関係》

 

【桐生 戦兎】

 

小学校からの付き合いからか最も仲が良い。仲が良すぎて女性陣から妬かれるほど。

 

親がいないことで変な同情を持たれていた時、唯一普通に接してくれた為、戦兎には恩義のようなものも感じている。

 

【リアス・グレモリー】

 

悪魔としては主で、好意を向けられている女子の一人。かなり積極的にスキンシップを取ってくる為、困惑しつつも満更でもない。

 

【姫島 朱乃】

 

悪魔としても学校上でも先輩。だが、二人きりの時は同世代のように甘えてきて、さんづけではなく呼び捨てで呼んでいる。

 

【木場 祐斗】

 

同世代の同姓の友人として、更に聖剣の一件もあるので戦兎と同様に好感を持たれている。

 

【アーシア・アルジェント】

 

命の恩人であり、助けられて以降はずっと好意を抱かれている。好きな期間だけで言えばオカルト研究部メンバー最長の為か、リアスからはアーシアは別格と言われている。

 

【塔城 小猫】

 

同じ前衛組であり、格闘戦を得意とするもの同士相性は良い。更に、戦兎と仲良くして貰っている為、龍誠個人としても好感が高い。

 

【ゼノヴィア】

 

毎日性的な意味で迫られ、悪いやつじゃないんだけど……と思っている。ただ嫌ってはいない。

 

【ギャスパー・ウラディ】

 

戦兎ほどではないが、懐かれており、龍誠も貴重な後輩として可愛がっている。

 

 

 

 

 

【ハザードレベルとは?】

 

戦兎達が使うライダーシステムを使う為に必要なもので、3.0以上でビルドドライバーの使用が可能。ボトルの成分への耐久値らしく、更にレベルが高ければ高いほど、ライダーシステムのスペックが上がる。

 

 

 

【この世界における仮面ライダーとは】

 

この世界では都市伝説として語られ、基本的には居ない扱い。因みに言われているのは、赤い目の緑色の戦士だったということだけ。ようはこの世界では1号と、後は精々2号しか確認されていない。なのでこの世界のどこかには本郷と一文字がいるかもしれない。

ざっくり言うと、1号以降のライダーが生まれなかった世界とも言える。



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第六章 体育館裏のホーリー
天使がやってきた


前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「突然のディオドラからのアーシアへの告白から次の日」
龍誠「だが俺達のところには新たな仲間が!」
戦兎「久々にあのキャラが再登場の41話スタート!」
匙「しかし何だって桐生と万丈って美人と縁があるんだ?」


「はぁぁぁぁ……」

 

机に突っ伏し、青い顔をしている龍誠に、戦兎は自販機で買ってきたジュースを渡す。

 

龍誠は結局昨日から今日の学校に遅刻する直前まで寝ずに宿題を終わらせた。オカルト研究部総メンバーで教えたとは言え、よくもまあ一晩で終わらせたものだ。

 

何て思っていると、

 

「夏休み明け早々垢抜ける処か死んでるわねぇ」

「藍華?」

 

やって来た藍華に視線を向けると、ニヤニヤ笑っている。

 

「ほっとけよ。こっちは夏休みの間死にかけてたんだからな」

「初日から行方眩ますし、いったい何してたわけ?」

 

まさかドラゴンと追いかけっこしてたとは言えず、適当に言葉を濁す。すると、

 

「全く。夏休みの間に大人の階段上った奴もいるってのにね」

「はぁ?」

 

お前が?と戦兎が聞くと、んなわけないでしょ、と藍華は返す。

 

「彼処にいるでしょ?あの男子が先輩の女子とって話でね」

「平和だねぇ」

 

更に藍華が言うには、同じクラスの松田と元浜も海に行ってナンパしてきたらしいのだが、まぁ結果がご想像にお任せしよう。

 

「つうかどうした?珍しいじゃないか」

「あぁ、ちょっとアーシアのことでね」

 

アーシア?と、戦兎が首を傾げると藍華曰く、どこか魂が抜けたような感じらしく、アーシアらしくないとの事。

 

恐らくそれは、先日のディオドラのプロポーズ騒動だろう。皆で気にする事はないと言いつつも、色々思う事はあるんだろう。そう戦兎が思っていると、藍華は龍誠を見て、

 

「ちょっと。龍誠もアーシアについて知らないの?」

「んー……」

 

知っていてもなぁ……まさか話せない。龍誠もそう思い返答に困っていると、担任が入ってきて、

 

「お前ら一回座れ。この時期だが転校生を紹介する」

 

担任の言葉に、クラスの皆は色めき立つ。男か女か?クラスがそうざわめく中、入ってきたのは……

 

『イリナ!?』

「あ!やっほー!戦兎君!龍誠君!」

 

そう、聖剣騒動の時に会ってそれっきりだった、幼馴染のイリナだったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と言うわけで今日から駒王学園並びにオカルト研究部にお世話になる紫藤イリナです。改めてよろしくお願いします」

 

放課後、旧校舎にイリナはやって来ると改めて頭を下げる。

 

何でも話に聞くと、ここには悪魔と堕天使はいるのに、天界関係者が居ないのは、余りにもバランスが悪いと言う話になったらしく、その結果この町に縁があって、グレモリー眷属とも顔見知りのイリナが選ばれたらしい。

 

そして、勿論ここに派遣されると言う事は神の不在とか知ってのことらしいのだが、

 

「神の不在を知らされた時は七日七晩寝込んだわ……」

 

とはイリナ談。気持ちは分かるとゼノヴィアとアーシアが慰め、イリナがアーシアに魔女と言った事を謝るという光景を見ながら、

 

「つうかイリナ。お前エクスカリバーはどうしたんだ?見たところ丸腰だけど?」

 

そう戦兎が聞くと、イリナはフッフッフ……と笑ったかと思うと、

 

「大丈夫。私天使になったから!」

『……』

 

バーン!と胸を張りながら言うイリナに、部室は静まり返る。そして戦兎はソッとイリナの肩に手を置くと、

 

「お前、神の不在がそんなに精神を病ませてたんだな……」

「違うから!だからそのガチの優しい目やめて戦兎君!」

 

イリナは驚愕しつつ、慌てて少し下がると祈りのポーズを取った。すると、突如イリナの背中から天使の翼が生え、頭上には光の輪が現れる。

 

「ほぉ?天使化か。天界の技術もそこまで来てたんだな」

 

そう言って感心してるのは、椅子に深く座っているアザゼルだ。

 

「知ってるんですか?」

「前々から話しはされてたのさ。悪魔の悪魔の駒(イーヴィル・ピース)と似た理屈で人間を天使に転生させるってのはな」

 

そういうアザゼルにイリナは、こっちはチェスの駒ではなくトランプが元になってるけどねと続けた。

 

イリナ曰くトランプの種類や、特定の種類同士や決まった種類で組み合わせると高い力を発揮したりできるらしい。

 

因みにイリナはミカエルのAとのこと。その所為か今はミカエルを信仰し、どうにか持ち直したらしい。

 

(まあなんにせよ元気なのは良い事だ)

 

そう思いながら戦兎がいると、

 

「彼女が天界サイドの使者ですか」

 

そう言って入ってきたのはソーナだった。そんな彼女を見たリアスは、

 

「えぇ、転生天使の紫藤 イリナさんよ」

 

そう言ってリアスが紹介すると、ソーナはイリナと握手を交わす。

 

しかし、意外と二人の間に変な雰囲気はない。案外レーティングゲームはレーティングゲームと割りきれる程度には大人なのだろうか。

 

何て思っているうちに、イリナの歓迎会が始まったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「元気そうね」

「えぇ、お陰様で」

 

オカルト研究部と生徒会を交えたイリナの歓迎会の最中、ジュースを片手にリアスとソーナは話していた。最初はお互いぎこちなかったが、何だかんだでジュースのんでお菓子を食べてるうちに、和解できたらしく今はそれぞれ話している。

 

まあ正直言うと、これは天界からのお客様であるイリナの歓迎会というのも勿論だが、レーティングゲームのお疲れ様も込みで、リアスとソーナが企画したものだ。

 

「泣いたわ。もう人生で一番泣いて……涙も枯れたかも」

「そう」

 

リアスは頷くと、ジュースを一口。

 

「まあ次を頑張るわ」

「それで良いんじゃない」

 

勝った私が言うのもなんだけどと、リアスが言うとソーナは笑う。

 

「落ち込んでる暇はない。私の夢は一回躓いた位で終われないもの」

二人がそんなやり取りをする中戦兎は、

 

「よう、匙」

「ん?おぉ、桐生か」

 

匙に話し掛けた戦兎は、

 

「少し聞きたい事があってさ」

「あぁ、俺に答えられる事なら何でも良いぜ」

 

そう言って快く引き受けてくれたが、戦兎の脳裏には病院での一件が思い出される。すると、

 

「そう言えば病院に来たんだってな。後で看護師の人から聞いてな。その……すまん」

「何でお前が謝るんだよ」

 

いや折角来てくれたのにあれじゃな……と申し訳なさそうだ。そうされるとこっちが申し訳なく感じる。

 

「てっきり恨まれてるかと……」

「お前ら逆恨みするほどバカじゃねぇよ」

 

そりゃあの評論家連中はムカつくし、今でも思い出すと怒りが再燃するけどな、と匙は言う。だが、

 

「今度はもっと強くなる。強くなって誰にも負けなくなってみせる。絶対にだ。俺達には逆恨みとかしてる暇もない。それだけだ」

 

目標が大きいと大変だな。そう言う戦兎に、匙は苦笑いを浮かべる。それから、

 

「どうせ聞きたいのはスクラッシュドライバーについてだろ?」

「あぁ、何処で手に入れたんだ?」

 

戦兎がそう問うと、匙は頬を掻きながら、

 

「実は分からねぇ。力を得られるって言われてこのスクラッシュドライバーとゼリー。あとこのフルボトルをな」

 

そう言って見せられたのはタカフルボトルとロックフルボトルだ。それを見ながらヴァーリと同じか、と戦兎は息を吐く。だが、

 

「でも誰かに似てたって思った気がしたんだよな」

「誰かって?」

 

分からねぇよ、と匙は肩を竦めた。まあそうだよなと思いつつ戦兎はもう一つの本題を切り出す。

 

「じゃあ匙。スクラッシュドライバーを渡せ、それは使って良いもんじゃない」

「それはできない」

 

匙ははっきりと、言葉を口にした。更に、

 

「使ってみたから分かるさ。これは危険なものだって位はな。だがこれがあればもっと強くなれる。会長の夢の為にも……俺はこれを捨てるわけにいかない」

 

まっすぐそう口にする。それを聞いた戦兎は、

 

「あのな……それは使えば使うほど使用者を戦闘マシーンに変えていくんだぞ」

「それでもだ。俺がスクラッシュドライバー(こんなもん)に負けなきゃ良いだけだ」

 

匙の言葉に、戦兎は大きくため息を吐きつつ、

 

「未だに変身してる時スクラッシュドライバーの反動に苦しんでる癖によく言うぜ」

「うっ!」

 

匙は冷や汗を垂らしながらそっぽを向く。そんな光景を見て戦兎は、

 

「じゃあせめてスクラッシュドライバーのメンテナンスしてやるから、定期的に俺に貸せ。どうせろくに見てないんだろ?」

「メンテナンスっているのか?」

 

当然だろ……と戦兎は頭を抱える。別に意味で渡すのが心配だ。すると、戦兎は気づいた。

 

「匙、お前左腕どうした?包帯なんか巻いて」

「え?あぁ」

 

戦兎が言うように、匙は左腕に包帯をグルグル巻きにしている。すると匙は、

 

「それがこうでさ」

 

そう言って匙が包帯を取ると、腕にウネウネと黒い蛇のような模様が走っている。

 

「なんじゃこりゃ」

「わかんねぇ。ただやっぱり俺の神器(セイクリットギア)かなぁ」

 

邪龍と言われた、龍王ヴリトラの体をバラして作られたらしい匙の黒い龍脈(アブソブーション・ライン)だが、余り良い噂の聞かない龍王らしい。

 

「そもそもなんでそんなになったんだよ」

「知るかよ。お前こそ分からないのか?未来の天才物理学者何だろ?」

物理学の範疇外だ、と戦兎は言う。何が理由かなんて分かるわけがない。すると、

 

「なーに話してんのさ!」

「いっで!」

 

バシーン!と突然背中を叩かれ、戦兎が悲鳴をあげながら振り替えると、そこにいたのはレーティングゲームで戦ったルークの、

 

「えぇと……」

「由良よ。戦ったんだし名前くらいは覚えてほしかったかな」

 

そういう彼女に戦兎は頭を掻いて、

 

「俺が知ってるのは匙と真羅副会長とソーナ会長位だぜ?」

「えぇ……」

 

と由良はジト眼でこっちを見てくる。

 

「思ってたより凄いやつじゃんって見直したところだったんだけどね」

「思ってたよりってなんだよ」

 

そう戦兎が言うと由良は、

 

「だって変な発明品爆発させたり、いつも万丈とイチャイチャしてるし、なんか暗闇の中で毎晩蛙解剖してそうだし」

「最初の爆発以外全く心当たりがないんだが?」

 

戦兎はコメカミをピクピクさせながら由良に文句を言う。それを見た由良がケラケラ笑っていると、

 

「……」

「塔城?」

 

いきなり由良と戦兎の間に、小猫が割り込んでくる。モキュモキュとお菓子食べてるので、表情は分からないが……不機嫌オーラが出ている。

 

「へぇ~」

 

その光景を見た由良が今度はニヤニヤ。何だよと戦兎がぼやいていると、

 

「そうそう。今日は私から差し入れも持ってきたの」

 

そう言ってソーナは一度部屋を出て、戻ってくるとその手にはケーキが……

 

「久々に腕を振るったわ」

「へぇ、会長お菓子作るんだ……って匙と由良、すげぇ顔色悪いけどどうした?」

 

見てみると二人だけじゃない。生徒会組やリアスも顔色が悪く、冷や汗をダラダラ流している。その間にもケーキは切り分けられて全員に配られると、

 

「へぇ、すげぇ美味そうじゃん」

 

匂いも見た目も変なところはない。 何を心配してるのか分からないが、

 

「いただきます」

 

そう言って戦兎は口に運んだ。

 

さて、その後の記憶は正直曖昧だ。ケーキを口に運び、その後の記憶が薄い。因みに正気に戻った後に匙に聞いたのだが、ソーナはお菓子作りが趣味で美味しそうな見た目に作るのにかけては天才。ただし味が壊滅的だそうな。

 

普段は匙が食べているそうで、アレを本気で美味しいと思ってるのは姉のセラフォルー位なものらしい。

 

後、匙曰くオカルト研究部の皆は死んだ魚みたいな眼で旨い旨いと連呼しながら食べてた為ソーナはご満悦とのこと。

 

記憶が無いが、それほどのケーキを普段から食べて間食している匙に、戦兎は初めて尊敬の気持ちを抱いたのは……まぁ余談。



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次の対戦相手

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「イリナがやって来てから暫く、アーシアのプロポーズ騒動も最近はようやく落ち着き、のんびりとした日々を送っていた」
龍誠「しかしさ戦兎……アーシアプロポーズ受けんのかな」
戦兎「知らねぇよ、自分で聞きなさいよ」
龍誠「いやなんかそれはちょっと」
戦兎「めんどくせぇなぁ……つうわけでそんな感じの43話スタート!」


「はいはーい!私借り物競争出まーす!」

 

イリナがやって来て一週間。イリナはすっかりこのクラスに馴染んでいた。まあ確かに可愛くて明るい性格。これは人気が出るのも当然だろう。

 

さて、夏休みも終わったかと思えば駒王学園は行事が目白押し。今度は体育祭があるのだ。

 

なので実行委員である藍華が前に立ち、競技に参加するメンバーを決めている。とは言え、

 

「OK。じゃあ後龍誠はそうね……アーシアと二人三脚ね」

「あ、おい!勝手に決めんなよ!」

 

とまあこんな風に藍華は結構自由に決めていき、流石に龍誠が怒るが逆に、アーシアとじゃ嫌なわけ?と返され龍誠は黙る。イエスともノーとも言えない質問だ。まあ藍華曰く、

 

「ホントは戦兎とコンビで出せればダントツ一位狙えるんだけどね……ルール上出来ないし」

 

と言うように、うちの学校の競技はは男女混合か、女子のみでというのが基本。理由は単純で、駒王学園は最近共学になったばかりのためか、女性率が高い。だが悪魔でもなければ、普通は男子の方が身体能力が高いので、こういう制限を設けないと、男子生徒が多数の競技に出させられて、酷使されてしまうと判断されたのだ。他にも多人数で出るのは男子何人女子何人と決まってたり、一度出た男子生徒は何競技か休憩を挟まなくてはならないとか、結構色々ある。そう言うところは生徒会が頑張っているのを知っているので、中々感慨深いものがある。

 

「つうわけで戦兎。あんたどこに出るの?」

「あ?」

 

何て思っていたら、藍華に聞かれ戦兎は、

 

「何処でも良いよ」

「じゃあこのコスプレ徒競走にでもでなさい」

 

あ?待て!というがもう遅い。藍華にそのまま紙に書かれてしまう。諦めず文句を言っても、藍華は知らん顔だ。

 

「さいっあくだ……」

「コスプレくらい我慢しろよ」

 

アーシアと二人三脚の方がいいだろ。と、机に突っ伏して暗いオーラを出す戦兎と龍誠ががいたのは、まあ関係ない話だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コスプレくらい良いじゃない。面白そうで」

「去年まではありませんでしたものね」

 

放課後、部室でもブツブツ文句を言っている戦兎に、リアスと朱乃は笑いながら言う。それをジトーっと見ながら、

 

「つうかなんであんなのが……」

「あれはどんな競技がやりたいかのアンケートで生徒が投票してな。とある教員が面白そうだから猛プッシュして実現したのさ」

 

そう言ってプルプル肩を震わせながら言うアザゼルに、戦兎は気づいた。

 

「まさかそのとある教員ってのは……」

「まぁ、俺なんだがな」

 

ふざけんなー!と戦兎が憤慨するが、アザゼルはケラケラ笑って二枚のDVDを見せてくる。

 

「まあそんなこと良いんだよ。つうわけで今日はこれを見ようぜ」

「そんなことってなんだ!それはあんたを問い詰めるより大事なものなのか!?」

 

当然だ。そう言ってアザゼルは背を伸ばしながら、

 

「さっき連絡があってな。次のレーティングゲームの対戦相手が決まった。ディオドラ・アスタロトだ」

『っ!』

 

アザゼルの言葉に、部室の空気が固まった。未だに記憶に新しい相手の顔が思い浮かぶ。更に続けて、

 

「つうわけで一枚はディオドラのレーティングゲーム映像だ」

 

そう言ってアザゼルは再生機にDVDをいれると、部室にあるでかいテレビに映像が写った。

 

ただ戦いは……正直そこまで突出したものじゃない。ゲーム運びもディオドラの強さも並だ。これならシトリー眷属たちの方がと言うのはこちらの見解である。

 

だが、変化はゲーム終盤に起きた。突然ディオドラ側の眷属が後ろに下がり、代わりにディオドラが前に出たかと思うと、その体から大量の魔力を吹き出させて相手を蹂躙。そのまま勝ってしまったのだ。

 

「ディオドラがここまでの魔力を?」

 

リアスの呟きに、皆も頷く。明らかに前半と後半で強さが違う。隠してたと考えるのが妥当だと思うが、まさかここまでとは思わなかった。

 

何故ならこの若手悪魔同士のレーティングゲームが始まる前、それぞれの(眷属を含めた)キングの強さのランキングが出ており、そのランキングではディオドラは最下位だったか一応最下位じゃなかったか位の評価だったはずだ。因みに一位はサイラオーグで、我らが主のリアスは二位である。

 

しかし、この魔力量……下手するとリアスに肩を並べそうな勢いだ。一体どこまで実力を……と思っている間に戦いは終わり、アザゼルはDVDを取り出すと、

 

「つうわけで二枚目だ。こっちはサイラオーグの試合なんだがな、これがまたとんでもねぇんだわ」

「とんでもない?」

 

戦兎がどう言うことかと聞くが、アザゼルはまあ見てなといって再生する。対戦相手はあの若手悪魔同士の会合の時にサイラオーグにぶん殴られた、ゼファードルだ。

 

まずは眷属達の戦い。先程のディオドラの眷属達と違い、全てが高水準だ。対戦相手であるゼファードルの眷属達に対して圧倒的な実力差で圧倒していく。だが驚くのはその後で、

 

「フウとライ?」

 

龍誠が呟く中、前に出たフウとライはそれぞれ一丁ずつ紫色の銃を出すと、

 

「これは!?」

 

祐斗が驚くのも無理はない。フウとライはポケットから取り出したのはフルボトル……にしてはなんかゴツい上に装飾が派手だが、形状は確かにフルボトルだ。そう思いながら戦兎は見ていると、フウとライは自分が取り出した紫の銃にフルボトルを挿す。

 

《ギアエンジン!》

《ギアリモコン!》

《ファンキー!》

『潤動!』

 

フルボトルを挿した二人は、そのまま引き金を引くと銃口から煙が噴出。その煙は二人を包むと、煙の中からそれぞれ白と緑を基調に、歯車のようなものが全身についた姿に変わる。

 

《Engine running gear》

《Remote control gear》

 

姿を変えた二人は、そのまま相手眷属たちに突っ込む。その実力は元々圧倒的だった戦局を更に圧倒していく。

 

この時点で、既に勝負アリだ。眷属達は倒され、残ったのはゼファードルのみ。対してサイラオーグの眷属は全員無事だ。だが、ゼファードルは敗けを認めずサイラオーグに一騎討ちを申し込む。

 

確かにルール上キングを倒せればゼファードルの逆転勝ちだ。それを分かった上で、サイラオーグは了承して前に出る。すると、

 

「こっちを見た?」

 

戦兎が呟くようにサイラオーグはこっちと言うか、正確には試合を録画するために試合会場にあるカメラを見て、

 

『あれは!?』

 

戦兎だけじゃない。他の皆が驚愕する中、サイラオーグが懐から取り出したのは、なんとスクラッシュドライバーだ。そのスクラッシュドライバーをサイラオーグは腰に着けると、紫色のフルボトルより一回り大きなフルボトルを取り出して蓋を捻る。

 

《デンジャー!》

 

音声が鳴ったボトルを、サイラオーグはスクラッシュドライバーに挿した。

 

《クロコダイル!》

「変身」

 

更なる音声の後に、サイラオーグはレバーを下ろす。それと共にビーカーがサイラオーグを中心に出現し、薬液が満たされると、

 

《割れる!食われる!砕け散る!クロコダイルインローグ!オラァ!》

 

突如地面からまるでワニの顎のようなものが出現し、薬液に満たされたビーカーを噛み砕く。

 

するとサイラオーグは全身が紫色で、ひび割れているような模様が入った姿に変わり、最後に女性の悲鳴に似た音声と共に、仮面が割れて眼が現れた。

 

《キャー!》

「なんだありゃ……」

 

ヴァーリや匙と同じスクラッシュドライバー……だが、その二つとは違う。容姿や変身の流れが別物だ。

 

だが戦兎が呟く間にも戦いは始まり、サイラオーグに向けてゼファードルが魔力の弾丸を撃つ。しかし、サイラオーグは喰らっても気にも止めず、そのままゆっくり歩を進め、

 

「ふん!」

「がはぁ!」

 

拳を一発叩き込む。その一発で大きく後ろに吹っ飛んだゼファードルは、ゲロを吐きながら転がり、慌てて立ち上がろうとする。だが膝に力が入らないのか、生まれたての小鹿のように膝を震わせながら立ち上がる。そこに、サイラオーグは静かにベルトのレバーを下ろすと、サイラオーグは飛び上がる。

 

《クラックアップフィニッシュ!》

 

するとサイラオーグの両足からオーラが集まり、それぞれの足のオーラが鰐の上顎と下顎のようになった。

 

「なっ!」

 

そのまま両足を大きく広げたサイラオーグは、ゼファードルを挟み込むように両足を閉じる。

 

「ぐぁあああああ!」

 

それはまるで、鰐が獲物を捕らえたときのデスロールのごとく、両足で挟み込むとオーラの鰐は何度も噛みつき、そのままネジ切るように捻った。

 

それと同時に爆発し、ゼファードルは光の粒子となり消えていき、そのままリタイアとなり試合はサイラオーグチームの勝ちとなる。しかし、

 

「眷属のレベルからして高いわね……」

 

変身したことも驚きだが、それだけに目を奪われているわけにはいかない。実際普通に戦っていた前半の時点で、既にゼファードル側では勝負になってないのだ。それに対してアザゼルは、

 

「サイラオーグは自身も含め強くなるために尋常じゃない修練を積んでいるチームだ。それだけじゃねぇ。あのスクラッシュドライバーやボトル……というか戦兎」

「ん?」

 

突然問いかけられた戦兎は顔を上げると、

 

「スクラッシュドライバーってのは簡単に作れるのか?」

「そうだな……匙のスクラッシュドライバーをメンテナンスした時に作りも見たけど、設計図とそれを読みといて作れる腕さえあれば余程のポンコツ技術者じゃない限り作ること事態は可能だと思う。ただ結局スクラッシュドライバーは理論すら完成してなかった物。つまり最初に完成させたやつがいるはずなんだけど……」

 

それが誰なのか分からない、そう戦兎は言う。そんな中龍誠は、

 

「しかしライダーシステム持ってて鍛えててしかも部長と同じ滅びの魔力持ってるんですよね?これ相当ヤバイんじゃ……」

「滅びの魔力は無いわ」

 

え?とリアスの言葉に、龍誠がポカンとすると、

 

「サイラオーグは滅びの魔力だけじゃない。普通の魔力も殆ど無いわ」

「え?そんなことあり得るんですか?」

 

偶然だろうけどね……とリアスが言うには、サイラオーグの弟は滅びの魔力を持っているらしい。だがバアル家は悪魔の序列で一位の家。そこの次期当主が家の魔力はおろか普通の魔力すら殆どない。そんなことが許されるはずはなく、かなり辛い幼少期を過ごしたらしい。

 

「当時のサイラオーグは次期当主権利を奪われ、自身の母と一緒にバアル家の端にある小さな家で暮らしていたらしいわ」

 

その際にはグレモリー家でサイラオーグ共に引き取ると申し出たらしい。だが返答はノー。バアル家にとっては外に出すことも許したくない。存在そのものが恥らしかった。それに、

 

「どうもバアル家には私やお兄様が嫌われててね」

 

それはそうだろう。そう答えたのはアザゼルで、

 

「サイラオーグの弟もこれが中々のヘッポコらしくてな。滅びの魔力が使えはしてもそこまで強力なものじゃないらしい。だがサーゼクスやリアスはどうだ?片や魔王に、片や最上級悪魔に至ると言われるほど才児。まさか他家の方が才能に恵まれるなんざバアル家のプライドが許さねぇよ」

 

成程ねぇ……と頷きつつ戦兎は、

 

「でも今は次期当主でしたよね?」

「ある時からサイラオーグは己を鍛えたのよ。魔力がないなくても肉体があるってね。その末に弟を倒して、次期当主の権利を取り戻した」

 

リアスはそう答えながら言葉を続ける。

 

「サイラオーグは強敵よ。若手悪魔No.1とかそういうのを抜きにしてもね」

 

それにアザゼルは頷き、

 

「つうわけでこれからの特訓メニューも考えておくからよ。お前ら、気を抜くんじゃねぇぞ」

 

そう言って立ち上がると首をポキポキ鳴らす。

 

「これからなにかあるんですか?」

「職員会議だよ。ったく、めんどくせぇなぁ」

 

祐斗の問いにアザゼルはため息を吐く。とは言うものの、アザゼルは駒王学園の化学の教科を担当している教師で、これが案外評判が良い。

 

何気に面倒見が良い上に、教え方はうまく、更にイケメンなので女子に人気がある。だが男子に嫌われているかと言うと、ノリが良いので男子からも人気が高い。そのためか化学の成績が上がった生徒が多かったりする。

 

もしかしたら案外堕天使の総督よりも、教師の方が天職なのかもしれない。なんて笑うと、本人も満更ではなかったりする。

 

「さぁて、行くとするかぁ」

 

そう言ってアザゼルが部室を出ていくと、皆はそれぞれくつろぎ始めた。

 

朱乃にお茶を貰い、ゲームをしたりお菓子を食べたり寝たり本読んだり……そんな風に思い思いに過ごそうとしていると、

 

「ん?」

 

戦兎が折角ギャスパーとゲームに興じようとしていた時、突然床に現れた魔方陣に目をやる。すると、それを見た祐斗は呟き、

 

「アスタロト家の家紋?」

 

それと同時に魔方陣から現れたのは……アーシアにプロポーズをしたディオドラ・アスタロトだった。



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ディオドラ襲来

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「イリナの転入から暫く経ち、束の間の平穏を味わっていた俺たち」
龍誠「しかぁし!そんな俺たちの元に突然の来訪者。しかもそいつはディオドラ・アスタロト!?」
匙「それにしてもホントモテんなぁ万丈は」
龍誠「いやこれが結構大変なんだぞ?」
匙「あぁん?未だに会長と上手くいかない俺への当て付けですかこのヤロー!」
龍誠「いやそう言うわけじゃ……」
戦兎「とまあそんな感じの44話スタートだ!」


「やぁ、アーシア・アルジェント。会いに来たよ」

「え、えぇと……」

 

突然やって来たディオドラは、こっちに目もくれずアーシアの元に近づくと、手を握ろうとしてくる。すると、

 

「おいやめろ!」

 

咄嗟に龍誠は割って入り、それを止める。それをされたディオドラは、糸目を少し開き、

 

「何故かな?折角の再会を祝いたいんだけど?」

「何いってんだ!どこをどう見たってアーシアが困ってるじゃねぇか!」

 

ガルル!と怒る龍誠に、ディオドラはやれやれと肩を竦める。

 

「それで?いきなりやって来てここの主に挨拶もしないのかしら?ディオドラ」

「あぁ、すまないリアス・グレモリー。ちょっと興奮してしまってね」

 

そう言ったディオドラは、笑みを崩さずにそのままリアスの元に向かうと、

 

「早速で悪いけど、ビジョップのトレードをお願いしたい」

『っ!』

 

トレード……確か同じ駒もしくはそれを使った眷属を交換できるシステムで、この場合のビジョップと言えば……

 

「僕……?」

「ないない」

 

ギャスパーの呟きに戦兎は思わず突っ込みつつ、ディオドラを見た。この流れ的にアーシアだろう。だが仮にもプロポーズをした相手を手にいれるためにトレードとは……余り褒められたやり方とは思えない。それはリアスも同じだったようで、

 

「希望はアーシアかしら?でも悪いわね。トレードには応じれないわ」

「何故かな?」

 

ディオドラはそう言いながら、手にカタログを取り出す。

 

「確かに回復能力という点でも彼女は貴重だ。だが僕のビジョップも中々……」

「ダメね」

 

ディオドラがペラペラと話す中、リアスは少し語気を強めて言葉を発し、ディオドラは喋るのを止めた。

 

「アーシアはね、能力が良いだとかそう言うので計れる存在じゃないのよ。例え貴方がどんな眷属を用意しても、どんな高価なものを持ってきても、アーシアのトレードには応じない。私はね、眷属(家族)を誰かに渡すつもりはないのだから」

「部長さん……」

 

アーシアは見つめる中、ユラリ……とリアスの体から滅びの魔力が溢れる。それは彼女の意思だった。例えどんな条件をつけたとしてもトレードに応じるつもりはないという強い意思だ。

 

それは周りにいるこっちですら背筋が冷たくなるもの……なのだが、ディオドラは顔色を変えることはなく、

 

「ふむ、それは仕方ない。今回は諦めるよ」

そう言ってディオドラは背を向けると、アーシアを見た。

 

「アーシア、今日は帰るよ。でも大丈夫。僕達は運命で結ばれているからね。きっと君をものにして見せる」

 

するとディオドラはアーシアの手を取り、そのまま口を近づけてキスを……としたところで、

 

「やめろよ」

 

ガシッとディオドラの胸ぐらをつかんで止めたのは龍誠だ。龍誠はそのまま強引にディオドラを引き剥がすと、ディオドラは、

 

「邪魔しないで貰えるかな?これは僕とアーシアの問題なんだ。それとも君はアーシアとは特別な関係なのかい?」

「そ、それはぁ……」

 

さっきまでの威勢はどこへやら……龍誠は途端に弱腰になった。アーシアの気持ちには気づいてる。だが、リアスや朱乃の気持ちだって知ってるし、現時点で誰か一人を選べる状況じゃない。だからアーシアの好意も、とぼけ続けてきた。なので特別な関係じゃない。でもじゃあただの仲間かというと……それは違う。

 

なにせ毎朝起こされたり、夜寝るときは腕にしっかり抱きついてくる(リアスたちに対抗してるらしい)のだ。これを特別と言わなかったら何というのだろうか?しかし、

 

「い、妹みたいなもんだ!」

(にげ《たな》《たわね》《ましたわね》《たね》《ましたね》)

 

周りがジト目で龍誠を見るが、龍誠は遠い目をして逃げる。だがそれを見たディオドラは、初めて糸目を少し大きく開き、

 

「成程、ならばこうしよう。次のレーティングゲームで僕と戦おうじゃないか。そして勝った方がアーシアを貰う」

「上等だ!」

 

指と鼻を鳴らして、意気込む龍誠とは対照的に、ディオドラは笑みを浮かべたままアーシアを見て、

 

「じゃあアーシア。また今度会いに来るよ」

 

そう言い残し、ディオドラはまた魔方陣に消えていく。それを見送りながら、

 

「なあ龍誠」

「なんだよ」

 

戦兎はため息を吐きつつ、龍誠に口を開くと、

 

「お前らアーシアの意思ガン無視かよ」

「あ……」

 

しまったぁ!忘れてたぁ!と、龍誠は膝をつき、アホだろお前と戦兎に散々弄られるのは……まあ余談だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、ディオドラがやって来た次の日、龍誠とアーシアは校庭で二人三脚の練習をしていた。

 

『イッチ、ニッ!』

 

龍誠は言うまでもないが、アーシアも基本的にはサポートタイプとは言え、悪魔なので身体能力は高い。とはいえ二人三脚は正直二人の身体能力よりも、どれだけ息を合わせられるかが大事だ。そのため練習しているのだが、これが中々照れもあって上手くいかない。

 

この調子で体育祭は大丈夫なのか……そう思っていると、そろそろ時間らしい。これ以上はスタートとゴール代わりに使ってたカラーコーンを倉庫に片付けないと、部活に遅れそうだ。

 

そう思い龍誠はカラーコーンやらその他諸々を持つ。それに従うようにアーシアも軽いものを持つと、倉庫に向かった。

 

とは言え駒王学園の倉庫は色々しまってある。一応どれも体育関係なのだが、これに限らず駒王学園はものや施設が大きい傾向があった。その時、

 

「龍誠さん……」

「ん?」

 

アーシアに声をかけられ振り替えると、不安げな表情でこちらを見るアーシアがいた。すると、

 

「昨日はすいませんでした!」

「はい?」

 

突然頭を下げられ、龍誠は度肝を抜かれる。それを尻目に、

 

「私のせいで龍誠さんがディオドラさんと戦うことになるなんて……」

「いやそれは気にしなくて良いって」

 

龍誠は頭を掻きながらそう言う。自分が勝手に受けただけなのだし、アーシアは気にしなくても良いと思う。まあそれで納得する彼女ではないのだが。

 

「私のせいで龍誠さんが怪我なんてしたら……」

「その時はアーシアが治してくれるんだろ?」

 

アーシアの回復能力が強大だ。だからもし怪我してもアーシアがいるし大丈夫だと言う。それを聞いたアーシアはブンブン首を縦に振り、

 

「だ、大丈夫です!どんな怪我でも治してみせます!で、でも出来るなら怪我をせずに……」

「分かってるよ」

 

龍誠だって態々自分から怪我したい訳じゃない。しないならしない方がいいい決まっている。そう言って笑うと、アーシアも笑った。互いに笑って、ふと正気に戻ると、何となく気まずい。

 

「そ、そろそろ戻るか!」

 

龍誠は急いで倉庫を出ようとした。だが、アーシアは咄嗟に龍誠の腕を掴む。突然の行動に、龍誠が驚いて振り替えると、耳まで真っ赤にしたアーシアがいた。

 

「りゅ、龍誠さんは言いました。妹みたいなものだって」

「え?あ、うん」

 

ディオドラに言った苦し紛れの言い訳のことだろう。いきなり言われたので驚いてしまった。するとアーシアは更に言葉を続けて、

 

「わ、私は妹は嫌です!」

「う……」

 

アーシアのまっすぐとした視線に、龍誠は思わず後ずさる。彼女のまっすぐとした視線は今の龍誠の罪悪感をガンガン突いてくる。

 

アーシアの気持ちをスルーしていることに何も感じていない訳じゃない。こっちだって悪いと思っているのだ。

 

でも誰を選んでも修羅場になる予感しかしない。じゃあ全員?いや相手だって皆一緒より自分だけの方がいいだろう。自身に置き換えてみた場合、やはり複数の一人よりは自分一人の方がいいと思った。

 

だからアーシアの気持ちは嬉しいけど、じゃあ応えられるかと言うと二の足を踏んでしまう。

 

どうすれば……そう思っていると、

 

「ふむ、アーシアも積極的になったじゃないか」

 

ひょこっと突然倉庫の跳び箱から顔を出したのはゼノヴィアで、突然の登場に龍誠とアーシアの二人は慌てて離れた。

 

「お前なんつうとこに隠れてんだよ!」

「細かいところは気にするな龍誠」

 

細かくねぇだろ!と龍誠が突っ込む中ゼノヴィアは、よっこいせと跳び箱から出ると、アーシアの元に寄り、

 

「と言う訳でアーシア。せっかくだしこのままもう少し積極的に行こうか」

「何かお前エロビデオのカメラマンみたいだぞ」

 

ジト目で龍誠が言うが、ゼノヴィアは聞こえないと言わんばかりに話を進め、

 

「藍華から聞いたんだがな、何でも年頃の男女は乳繰りあうものらしいぞ」

「ちちくり?」

 

龍誠は……凄く嫌な予感がした。それはもうビンビンに感じている。と言うか、藍華が関わるとろくな目に遭わないのだ。そう思って、こっそり脱出しようと後ろを向いたが、

 

「まあ待て龍誠」

 

ガシッと、背中に眼でもあるのかゼノヴィアは龍誠の肩を掴むと、

 

「うぉ!」

 

そのまま龍誠を転ばした。普通の力比べなら、龍誠の方が上だ。だがゼノヴィアは、変なところで器用さを発揮するので、何と合気道の要領で龍誠を転がした。そしてそのまま龍誠に馬乗りになると、

 

「たしかこうやって……」

 

とゼノヴィアは何と、恥ずかしげもなく上半身に来ていた服を脱ぎ捨て、ブルンと大きさではリアスや朱乃に劣るものの、形の良い美乳を晒した。しかもそれだけに飽きたらず、龍誠の手を取ると、自分の胸に触れさせてくる。

 

「これでよしと」

「いやこれはおかしいだろ!」

 

乳繰り合うってこう言うものではない。絶対にだ。だが、

 

「こ、これが……」

 

とアーシアはジッと見た後、少し迷ってから服の裾を掴むと、そのまま脱ぎ捨てる。

 

「あ、アーシア!?」

 

勿論龍誠は仰天した。しかしアーシアは出会った当初こそ細かった体も、最近はすっかり質素だった教会での食事から変わったためか、出るところは出ているタイプになった。それどころか胸は現在成長中……ってそんなことを考えている場合ではなく、アーシアまで反対側の手を取ると、そのまま自分の胸に押し付けたのだ。

 

「あわ!あわわわわわ!」

 

流石の龍誠も、何かが崩れ去っていくのを感じた。正直いってもう理性とか色々限界である。

 

「何だろうね、続々してきた」

 

ペロリと蠱惑的な目を向けてくるゼノヴィアに、

 

「りゅ、龍誠さん……」

 

照れと羞恥で真っ赤になりながらも、懸命に自分の胸に当てるアーシア。余りにも真逆の二人だが、だからこそ逆に興奮する。

 

(もう……無理)

 

もうあとがどうなっても良い……そう思い龍誠は欲望に忠実になろうとしたその時!

 

「何してるのあなたたち!」

『え?』

 

そこに乱入してきたのは何とイリナ。全身を真っ赤にして乱入してきた彼女は、こちらに向かって不潔よ!っと叫びそうだ。なんて思ってたら、

 

「ここは埃っぽいわ!不潔よ!」

 

何かちょっと違うような……と、三人は思ったのだった。因みに戦兎はと言うと、

 

「おい桐生!今倉庫の方から紫藤さん声が聞こえたし、何か万丈たちの声もするぞ!?なに隠してやがる!」

「なにも隠してねぇけどちょっと待てって!」

 

匙と倉庫から少しだけ離れた場所で押し問答をやってたそうな。




最近更新が遅れてすみません。理由としては、嫁ちゃんが風邪をひいてはその看病に追われ、治ったかと思えば今度は俺が嫁ちゃんの風邪を移されてダウンしてました。取り敢えず完治したのでボチボチ書いていきます。


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インタビュー

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「ディオドラと一騎討ちを勝手に決めてしまった龍誠。いや全く勝手に決めてたら相手と変わらねぇじゃねぇか」
龍誠「何もいえねぇ……」
匙「しかしお前なんだかんだ言いつつも良い思いしてるよなぁ……」
戦兎「まあお前の場合ソーナ会長の方が鈍いからなぁ……」
匙「何で詳しいんだよ……」
戦兎「ん?この間のレーティングゲーム以降由良と良くメールし合うようになったからさ」
龍誠&匙「マジで!?」
戦兎「とまあそんな感じの45話スタートです」


「なんか最近まで居たばかりだから懐かしい感じが全然ねぇ」

「確かにな」

 

そんな戦兎の呟きに龍誠は答える。さて、リアスを筆頭にしたグレモリーチームは、現在冥界のテレビ局に来ていた。

 

理由は簡単。元々魔王の妹であり、将来有望で容姿端麗のリアスは、結構雑誌の取材を受けていたらしい。それが今度は眷属も含めてテレビ出演……と言う話が来たのがつい昨日のこと。

 

なので皆で来たのだが、

 

「あ、サイラオーグさんじゃん」

 

龍誠の呟きに視線を向けると、確かに前からサイラオーグと、その眷属がやって来ていた。

 

「お、前回ご活躍だった皆々様じゃねぇか」

 

と、ニヤニヤと楽しげにからかってくるライだが、嫌な感じはしない。だがフウはゴツンとライに拳骨を落としつつ、

 

「先日のレーティングゲームはお疲れさまでした」

「いえ、そっちも凄かったじゃない。特にサイラオーグにフウとライは……ね」

 

戦兎が聞きたいことであろう事を、リアスが先に聞いてくれた。まあ彼女も気になったのだろうが……

 

「ふむ。このベルトのことだな」

 

そう言ってサイラオーグは、スクラッシュドライバーを見せてくれる。それに続いてフウとライもボトルと銃を見せてくれた。

 

「大方顔がわからない誰かでしょうけど……覚えてない?」

「いや?俺の支援者から受け取ったのだが?」

 

ズコッと戦兎たちはずっこける。ヴァーリと匙は顔が思い出せない謎のやつだったが、サイラオーグは違うらしい。

 

「お前たちに会った直後くらいに受け取ってな。最初はこんなものは要らないと思ったんだが、それでもただで貰ったものだ。使えて困ることはあるまいと思ってな。何とかゼファードルとの戦いまでに間に合って助かった」

 

聞く限り、サイラオーグが貰ったのはヴァーリや匙とは少し違うらしい。少なくとも二人は夏休み前受け取って使っていたのに対して、サイラオーグは始まってからのようだ。やはり少しボトルの形状が違うところが関係してるのか……

 

だが、そう考えると他の二人よりかなり短い期間で、サイラオーグや、フウとライは変身できるようになったと言うことらしい。

 

自分達の変身できるまでの期間を考えても、かなり速い。

 

「まあ、余り安全でもなければ結局出所が謎なのは変わらんが……」

 

サイラオーグは静かに戦兎を見据えてきた。それを見て、背筋が冷たくなる。

 

「滅びの魔力がない俺はこの体が武器だ。だが、魔力を使わず鍛えた体を十分以上に活かせるこれは俺の夢のために使える」

 

そう言うサイラオーグに、戦兎はヴァーリや匙の時のように使用をやめろとは言えなくなった。この手のタイプには言って聞かない。それは匙の時に学んだのだ。

 

それに、これから戦う相手に力を使うなと言うのも、おかしい気がする。だが危険なのに変わりはないのだし……と思っている間に、

 

「ではリアス達も取材頑張れよ」

「失礼します」

「じゃーなー」

 

と言ってサイラオーグ達は行ってしまう。すっかりタイミングを逃してしまった戦兎が落ち込むと、リアスが苦笑いを浮かべ、

 

「きっとスクラッシュドライバーの危険性を言ってもやめないわよ。サイラオーグは結構頑固だからね」

 

そういった彼女に戦兎は、流石部長の従兄弟ですね、と言って小突かれたのは余談として、皆は気を取り直してリアス・グレモリー様御一行と言う紙が貼ってある扉を開けて入ると、すぐにスタッフが来て、

 

「えぇと、木場 祐斗さんと姫島 朱乃さんはいらっしゃいますか?」

『はい』

 

まず呼ばれたのはこの二人だった。

 

この二人はそれぞれ男女人気が高い。その為取材の際に質問が多いだろうと言われる。

 

と言うか、グレモリー眷属は実力もだが、見た目も良い。その為それぞれにファンクラブがあるとかないとか。なんて思っていると、

 

「えぇと、桐生 戦兎さんと万丈 龍誠さんは……」

「あ、俺です」

「なんすか?」

 

戦兎と龍誠が立ち上がる。するとスタッフは頭を下げながら、

 

「す、すいません。姿が変わってるときのイメージが強くてですね」

 

と言われ、確かに前回のレーティングゲームでは寧ろ変身を解除している時の方が少なかった。それなら変身時のイメージが強くても当然だろう。

 

そんな中、スタッフは書類を捲りながら、

 

「お二人は別のスタジオで収録となります」

「別?」

 

スタッフの言葉に戦兎は首をかしげる。普通に考えれば皆と同じ筈だ。だがスタッフに取り敢えずこちらに引っ張られて、とある部屋に向かうと、

 

『へ?』

 

二人がポカンとするのも無理はない。何せこの部屋……先客がいたのだが、それが何とそれがサーゼクス・セラフォルー・アザゼル・ミカエルと言うか三大勢力のトップ。なぜここにこんな大物が?と固まるのが普通だろう。

 

だが向こうはニコニコしながら(アザゼルはニヤニヤと言う感じだ)こちらに座るように促す。

 

「さて、久し振りだね二人とも」

 

はぁ……と未だに状況が呑み込めてない戦兎と龍誠に、サーゼクスは少し表情を引き締めて、

 

「早速だが……二人も知ってると思うが冥界には娯楽が少ない」

 

それに関しては二人もわかった。確かに、冥界は娯楽が少ない。これはこの前来たときも感じたことだ。テレビをつけても、ニュースみたいなのはやってるが、バラエティや、アニメ等が全くないのだ。それだけじゃない。街中に出ても、人間界ほど遊ぶ場所がない。まあその分自然豊かなので(土地によるらしいが)逆に戦兎達からすれば新鮮だが、冥界に住んでる者達にとっては退屈かもしれない。

 

その為サーゼクスを筆頭にした魔王は、冥界の娯楽を増やすと言うのも、必須だと考えていた。そこで、

 

「君たちが主人公のテレビ番組を作ってみないか?」

『はぁ?』

 

娯楽もわかるし、それは大切だと思うが、それが何故自分達に関係があるのかわからない。するとサーゼクスは、

 

「君達はね、前回のレーティングゲーム以降子供たちに人気があるんだ。いやぁ、やはりビルドやクローズみたいな鎧は童心をくすぐるからね。だから君たちを主人公にしたヒーロー物の番組を作ろう!」

 

何と言うか……凄いサーゼクスがノリノリなのだけは分かった。ただまあ確かに悪くない企画だと思う。思うが、

 

「上手くいきますかね?」

「そこは問題ない。何せ他がやってない試みだ。今やれば市場を独占できる」

 

そう言って胸を張るサーゼクスに、まあそれならと戦兎と龍誠が言うと、

 

「ではまずはPV映像の撮影だ」

『え?』

 

そういわれスタッフに二人が台本を受けとると、そこにあったのは歌の歌詞。更にそこには……

 

「作詞・アザゼル?」

「作曲・サーゼクス?」

 

戦兎と龍誠がポカンとしながら相手の顔を見ると、

 

「因みにダンスの振り付けは私ね?」

「衣装は我等セラフが夜なべして作りました」

 

と言うのはセラフォルーとミカエル……そしてアザゼルが、

 

「俺は序でに映像関係の総指揮もやるぜ?」

 

いやなんなんだこの超豪華製作陣!?と二人が驚愕する中、サーゼクスはニコニコしながら、

 

「いやぁ、私は魔王にならなかったら作曲家になりたくってね?今回でその夢が叶ったよ」

 

そう言いながら戦兎と龍誠を引きずり、スタジオを目指す。

 

「さぁ時間は有限だ!じゃんじゃん行こう!」

『おー!』

 

こうして、滅茶苦茶ノリノリな三大勢力のお偉いさんによって、新番組の撮影は滞りなく行われた。

 

因みにこの番組が、後に冥界でこの先数百年経っても大人気の大ヒットご長寿番組となるのだが……それはまだ未来の話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

撮影で振り回された日の夜、転移で龍誠達が住んでいる屋敷に戻ってきた。そして屋敷に住んでいる面々は良いのだが、住んでいない奴は寮に戻らなくてはいけない。と言うわけなので何故か戦兎は、バイクで小猫と2ケツしながら道路を走っていた。

 

「そう言えば戦兎先輩って免許持ってたんですか?」

「この間部長に貰った」

 

先日、なんてことない会話で免許を持っていないことを知ったリアスに、それはもうクラクラするほど怒られた戦兎だが、その後彼女がどういうルートだか知らないが、免許証を持ってきてくれたのだ。

 

自分の眷属を警察の厄介にさせるわけにはいかないと言う理由らしいのだが、そもそもどう言ったルートで作ったのかが気になる。まあとにかく戦兎は、晴れて免許を貰った。しかし、

 

(何で俺が塔城を寮に送らなきゃならんのだ……)

 

そう。何故戦兎が小猫と2ケツしてるのか……それは帰って来ると、夜ももう更けていた。なので、何故か自分が小猫を送れと言われたのである。

 

戦兎は最初困惑した。寮に帰るのは祐斗やギャスパーもだ。なので自分が送る必要はないだろうと言ったのだが、そう言うことじゃないだろうと小猫と一緒に追い出されてしまった。

 

因みに祐斗とギャスパーは用事があるとかで別方向の帰ってしまうし、仕方ないので送ってあげてるのだが、正直自分がいなくても小猫は安全だとも思うのだが、それを言っても怒られるだけだったが。

 

しかしだ。こうして女の子から後ろから抱き締められながらバイクを駆ると言うのは、何とも言えない恥ずかしさが……

 

(ねぇな)

 

フッと戦兎は鼻で笑った。それどころか、

 

(塔城に女を感じたら負けじゃねぇじゃ)

 

と物凄く失礼なことを考えた。その結果、

 

「いでででででで!バカ塔城!転けるっつうの!」

「……」

 

無言で鯖折りをされ、肋骨が軋む中慌てて戦兎はバイクのバランスを保っていたが、

 

「なっ!」

 

突然目の前に降りてきた人影に、戦兎は慌ててブレーキを掛けて止まる。そこにいたのは、

 

「ヴァーリ!?」

 

突然現れた人物に、戦兎と小猫は驚愕しながらバイクを降りると、臨戦態勢に入る。

 

「おうおう、黒歌の妹もいるとはな」

「美猴か……」

 

戦兎はビルドドライバーを出し、小猫も拳を握って構えた。だがヴァーリはそれを待てと言うと、

 

「今日は戦いに来たんじゃない。忠告しに来たんだ」

「なに?」

 

突然のヴァーリの言葉に、戦兎が疑問符を浮かべていると、

 

「ディオドラ・アスタロトとの戦いは気を付けろ」

「はぁ?」

 

いきなりなに?と戦兎がクエスチョンマークを浮かべると、ヴァーリはそれだけだと言って行こうとし、足を止めると、

 

「アザゼルは元気にやってるか?」

「あ、あぁ……まぁ結構教師生活楽しんでるけど?」

 

そうか、それなら良い。ヴァーリはそう言い残して、今度こそ美猴と一緒に、何処かへ消えてしまった。それを二人は見送りながら、

 

「何だったんだ?」

「さぁ?」

 

と、首をかしげてしまったそうな。



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ディオドラとのレーティングゲーム

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「色々あったものの、遂にディオドラとのレーティングゲームが始まる!」
龍誠「しっかしディオドラのやつなに考えてやがんだぁ?」
ディオドラ「さぁ?なに考えてるんだろうねぇ?ふっふっふ」
龍誠「うぉ!?お前なに普通にこっちにもでてんだよ!」
ディオドラ「良いじゃないか。どうも僕ゲスだの外道だのっていうイメージが付きすぎてるからちょっとイメージアップしたいんだよ」
戦兎「既に手遅れだと思うけどなぁ……と言う感じの46話スタート!」


「それじゃ行きましょうか」

『はい!』

 

リアスに言われ、皆は返事をしながら気合いを込める。

 

さてさて、遂にディオドラとのレーティングゲームの日となった。

 

全員の表情は少し固いが、許容範囲内だろう。しかし、

 

(アザゼルのやつ本当に大丈夫何だろうな……)

 

先日のヴァーリの忠告については、戦兎はアザゼルに話していた。それに関してアザゼルは分かった、任せておけとだけ……少し心配だ。そう思いながら、魔方陣に入って転移すると、

 

「ん?」

 

出たのは平原で、全体的に隠れる場所がなく、少し離れたところにデカい城があるくらいだ。

 

前回のシトリーチーム戦と比べると、かなりシンプル。そう思っていたが、

 

「なんだ!?」

 

突然空に無数の魔方陣が現れる。一瞬ディオドラ達かと思ったが、それなら自分達と同じように、魔方陣ひとつで良い筈だ。

 

そう戦兎が思っている間に姿を見せたのは、見たことはないが羽を見る限り悪魔だ。そしてそれを見たリアスは、

 

「あの魔方陣は……禍の団(カオス・ブリゲード)の」

「え?」

 

リアスが言うには、今あの悪魔達が現れた際に出ていた魔方陣は、三大勢力の会談時に襲ってきた魔術師達が使っていたものと同じだった。それはつまり……

 

「まさかあいつら全員禍の団(カオス・ブリゲード)なんですか!?」

 

龍誠が驚愕する間に、悪魔達は魔力をこちらに向け、

 

「偽りの魔王の妹とその眷属たちよ……死ねぇ!」

『っ!』

 

それと共に放たれる魔力の雨霰。咄嗟に朱乃が結界を張ってくれたが、正直数が違いすぎて追い付かない。しかも、

 

「きゃあ!」

『っ!?』

 

背後から聞こえた悲鳴に全員が振り替えると、そこにいたのはディオドラだった。

 

そしてディオドラはアーシアを強引に引っ張って魔力の雨をすり抜けていく。

 

「アーシア!」

「龍誠さん!」

 

龍誠は咄嗟に飛び出そうとする。だがそれを慌てて戦兎が止めた。

 

「ばか!この中飛び出したら死ぬぞ!」

「離せ戦兎!アーシアが!」

 

今にも飛び出そうとする龍誠を、戦兎は必死に止める。正直それを見て慌てて小猫や祐斗も手伝ってくれなかったら危ないところだ。

 

「あはははは!まさかこんなに簡単に上手くいくとはね!」

「ディオドラ!まさかあなた禍の団(カオス・ブリゲード)と通じてたの!?」

 

ずっと欲しかった玩具を手にいれた子供のように、ケラケラ笑うディオドラに、リアスが叫ぶと、

 

「あぁそうだよ?なにせこっちの方が僕の好きにできそうだからね。と言うわけで悪いけど僕はあそこの城に帰らせてもらうよ。折角だから楽しみたいんでね」

「待て!」

 

ブチギレた龍誠だが、咄嗟に戦兎達が抑える。

 

「とにかくここをどうにかして抜け出さないと……」

「ですが余り長続きしそうにありません!」

 

圧倒的物量で押してくる相手に、朱乃の結界も長く持ちそうにない。数により間断なく放たれる魔力の雨は、朱乃の結界を少しずつ削っていった。その時、

 

「ふぉっふぉっふぉ。良く頑張ったのぉ」

『え?』

 

カン……と何かが地面を突くと、朱乃の結界よりも一回り大きな結界が出現し、相手の魔力を防いだ。のだが、

 

「きゃあ!」

「若くてプリプリじゃのぉ」

 

戦兎たちの元に突如出現した老人は、朱乃のお尻を一撫でする。

 

「だ、誰だあんた!?」

 

戦兎が驚愕していると、その老人はこちらを見て、

 

「儂はオーディン。お主らの味方じゃよ。まず端的に今の状況を説明すると、禍の団(カオス・ブリゲード)にこのゲームは乗っ取られた」

「なんですって!?」

 

オーディンの言葉に、リアスが驚く中、彼は全員に通信機器を配る。

 

「詳しい話はアザゼルに聞くがよい」

《お前ら!無事か!?》

 

通信機器を着けた途端、聞こえてきたのはアザゼルの声だ。

 

「無事とは言えないわ。とにかくアザゼル先生。どういうこと?」

《……》

 

リアスの声音は低い。それを聞いたアザゼルは、少し溜めると、

 

《前々から決定的な証拠はなかったが、ディオドラが禍の団(カオス・ブリゲード)との繋がりがあったことには気づいていた。前回のレーティングゲームでの急激なパワーアップもあったしな。そして今回は、四大魔王のルシファーであるサーゼクスの妹ととのレーティングゲームだ。それを利用しようとしてた情報を掴み、あえて相手の策略に嵌まる形で今日を迎えさせて貰った》

「つまりあなたは私達を囮にしたのね?」

 

そうだな……とアザゼルはあっさりと認めた。そして、

 

《言い訳に聞こえるだろうが……お前らなら大丈夫だろうと信じてたからだ。ただまぁ……お前らを騙したのは本当だからな。すまなかった》

「……とにかく今は良いわ。私達はディオドラを追う」

 

リアスがそう言って立ち上がると、他の皆も立ち上がる。

 

《はぁ?何言ってんだお前ら。すぐに迎えを寄越すからそこにいろ!》

「アーシアがディオドラに誘拐されたの!すぐにでも向かわないと……」

 

なに?とアザゼルの声が通信機越しに聞こえた。それから、

 

《ちっ、分かったよ》

 

許可されなくても行くつもりだったが、貰えて悪いことはないだろう。そう思いながらいるとオーディンが、

 

「行くのかの?」

「えぇ、取り敢えずあの城に行かないと……」

 

リアスの呟きに、なら送ってやろうと言い出した。

 

「出来るの?」

「ふむ、禍の団(カオス・ブリゲード)に乗っ取られた際に普通の転移は使えなくされてしまったが、こう言ったものには昔色々合って慣れてるからの」

 

そう言ってオーディンが腕を振ると、皆の足元に魔方陣が出現し、

 

「気を付けるんじゃよ」

 

当然、と返事を返して全員が転移を終えたのを確認。それからオーディンは、

 

「さてさて、ちゃちゃっと片付けるかのぅ」

 

手に持っていた杖をクルリと回し、空を覆い尽くす敵を見据えて、一言いった。

 

「グングニル」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだぁ!?」

 

突然の轟音と閃光と爆発に、城の門の前に転移してきた戦兎達が、振り替えるが、余り後ろを向いていられないと中に突入した。あの爺さんはしぶとそうだし……

 

そう思っていると、中に入ってすぐの広間に、ディオドラの眷属達がいた。すると、

 

《へぇ、来ちゃったんだ。まあ良いや、折角だしゲームしようか》

「はぁ!?」

 

龍誠は突然聞こえてきたディオドラの声に苛立ちを露にした。だがディオドラは気にせず、

 

《ルールは簡単。お互いに眷属を出し合うんだ。勿論だした眷属は僕のところに来るまで使えないよ?あ、そこにいるのは僕のポーンもいるんだけど全員クイーンに昇格してるからね?まあグレモリー眷属は強いことで有名だし良いよね?後は自由で良いや、じゃあねぇ~》

 

ディオドラの声をそれから聞こえなくなり、敵を見据える。記憶が正しければポーンは8人全員と、ルーク2人にビジョップが1人か。そう思いながらいると、

 

「じゃあこっちは戦兎、小猫、ゼノヴィア、ギャスパーで行きましょうか」

 

取り敢えずディオドラの思惑に乗っておかないと、アーシアの身が危ない。そうリアスは言う。

 

「了解っと」

 

リアスの指示で、戦兎達は前に出た。すると龍誠が、

 

「気を付けろよ!」

「おう」

 

声援に答えながら戦兎はビルドドライバーを装着し、ラビットフルボトルと、タンクフルボトルを出す。

 

「さぁ、実験を始めようか」

《ラビット!タンク!ベストマッチ!》

 

戦兎は変身している間に、ゼノヴィアはデュランダルを、小猫は猫耳と尻尾を出し、ギャスパーも目を発動出来るように意識を集中させて、

 

《Are you ready?》

「変身!」

《鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イェーイ!》

 

戦兎もビルドに変身し、ドリルクラッシャーを構える。そして、

 

「いくぞ!」

『おぉ!』

 

と全員で飛びかかる。だが、相手は実質クイーンを8人相手にしているようなものだ。しかも、戦兎とゼノヴィアを中心に狙い、小猫とギャスパーには近づかず、遠距離で牽制してきた。

 

「ギャスパー!お前の目も知ってる筈だ!まだ使うな!」

「は、はぃ!」

 

相手の攻撃をコウモリになったりして避けながらギャスパーは返事する。小猫も上手く避けているが、とにかくこっちだ。こっちはクイーンを複数人相手にしているのだ。

 

ゼノヴィアもデュランダルの破壊力を考えれば、余りバカみたいに大きく振り回せない。

 

そう思いながら戦兎はドリルクラッシャーで相手の攻撃を払いながらラビットフルボトルを抜いて、忍者フルボトルを差し替える。

 

《忍者!タンク!Are you ready?》

「ビルドアップ!」

 

姿を変え、四コマ忍法刀とドリルクラッシャーの二刀流で構えると、再度相手を迎え撃つ。

 

(成程、やはり強い……けどシトリー眷属ほどじゃない)

 

レベルは高い。だが、シトリー眷属との戦いに比べれば、そこまで強くない。正直クイーンに昇格(プロモーション)してこれなら、そこまで驚異じゃない。ただ如何せん数が多い。そう思いながら下がったとき、ゼノヴィアと背中合わせになる。そして、

 

「おいゼノヴィア」

「なんだ?桐生」

 

戦兎の問い掛けに、ゼノヴィアは振り返らず声だけで返事をした。

 

「正直出会いが出会いだったし、今だってお前の考えてること良くわかんねぇ。だけど……俺はアーシア助けてぇし、それはお前も同じだ。違うか?」

「そうだな。私も出会いがアレだったからかお前のことは苦手だ。だがアーシアは助けたい……」

 

なら……と戦兎は飛び掛かってくるディオドラの眷属に背を向け、ゼノヴィアも同様に振り替えると、互いの立ち位置を入れ換えながら、

 

『(俺)(私)に合わせろ!』

 

突如立ち位置を入れ換えられ、戦う相手が変わったディオドラの眷属は動揺し、その隙を狙うように戦兎とゼノヴィアは武器を振るって弾き返す。

 

そのまま戦兎は走り出しながら、ドリルクラッシャーをガンモードにし、四コマ忍法刀を後ろに放り投げた。

 

「おぉ!」

 

それをゼノヴィアはキャッチし、デュランダルをブン回して相手が怯んだ瞬間に、四コマ忍法刀のスイッチを2回押す。

 

《火遁の術!火炎切り!》

 

刀身に炎を纏わせ、何人か纏めて切り裂いた。そして、

 

《パンダ!ロケット!ベストマッチ!Are you ready?》

「ビルドアップ!」

《ぶっ飛びモノトーン!ロケットパンダ!イェーイ!》

 

再度姿を変えた戦兎は、左手のロケットから炎を出して飛び上がると、上から急降下して相手を吹き飛ばす。煙がモウモウと立ち上がり、相手の視界が塞がれたとき、

 

《風遁の術!竜巻切り!》

 

突如風が巻き起こると、ディオドラの眷属たちを巻き込み竜巻が起こり、動きを封じる。そして、

 

「はぁ!」

 

ゼノヴィアは四コマ忍法刀を床に突き刺し、デュランダルを掲げると巨大な光の刀身を作り出し、そのまま凪ぎ払った。発生した竜巻ごと叩き斬り、空間が歪む。

 

「な、なによあれ!アレってビルドじゃなくても使えるの!?」

「寧ろ使えないといった覚えはないんだけどな」

《トラ!UFO!ベストマッチ!Are you ready?》

 

別方向にいたディオドラの眷属達が驚愕する中、戦兎は更にボトルを入れ換え、

 

「ビルドアップ!」

《未確認ジャングルハンター!トラユーフォー!イェーイ!Ready Go!》

 

姿が変わると、更にレバーを回す。それによりエネルギーが爆発的に高まる中、戦兎はそのまま現れたUFOに飛び乗るとそのまま突撃し、

 

「勝利の法則は決まった!」

《ボルテックフィニッシュ!》

「きゃああああああ!」

 

ディオドラの眷属を吹き飛ばし、そのまま小猫を牽制していた相手にミニUFOを飛ばす。

 

「な、なにこれ!?」

 

突然襲来してきたミニUFOのビームは一撃一撃は強くない。だがその分数で来るので、防御力が高いルークでも無視できない。そこに、

 

「隙ありです」

「あ……」

 

二人のルークとの距離を詰めた小猫は、仙術を用いた拳を相手の腹部にそれぞれ叩き込む。相手を襲うのは不快感だ。まるで内臓をグチャグチャにされたような……そんな感じだった。しかも体に全く力が入らず、そのまま倒れてしまう。

 

「何とか上手くいきましたね……」

 

そう小猫が言っている間に、ゼノヴィアは四コマ忍法刀とデュランダルを手にギャスパーの援護に向かう。残るはポーンとビジョップ一人ずつといっただ。なので、

 

「どぉおおおりゃああああああ!」

『え?』

 

おもいっきり相手に向かって四コマ忍法刀をぶん投げた。

 

「アホォオオオオオオオ!」

 

と思わず戦兎が叫ぶ中、飛んできた四コマ忍法刀を咄嗟に避けた二人だったが、

 

『きゃあ!』

 

突然何かに躓き、体勢を崩す。見てみれば、ギャスパーの影が伸び、自分の足に巻き付いていたのだ。

 

「僕は眼だけじゃない!」

「ナイスだギャスパー!」

《Ready Go!》

 

そこに戦兎が、ドリルクラッシャーをソードモードにしてラビットフルボトルを挿して、ゼノヴィアと共に一気に間合いを詰めた。そして、

 

《ボルテックブレイク!》

『はぁああああ!』

 

互いが交差するようにドリルクラッシャーを振った二人が通り抜けると、二人の眷属も地面の倒れる。そして戦兎が変身を解くと、

 

「桐生」

「ん?」

 

声をかけてきたゼノヴィアは手を掲げ、それを見た戦兎も意味を理解した。そして、

 

「ナイス」

「お前もな」

 

パァン!とハイタッチ。こうして一回戦目は、こちらの勝利となり、他の皆もこっちに来る。そして、

 

「取り敢えずディオドラの眷属は縛り上げておきましょうか」

「ですわね」

 

しかし数が多いなぁ……と皆でちょっと思いながら、全員で捕縛作業に入ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかしこの城ドンだけ広いんだよ」

 

走りながら言った龍誠の言葉に、思わず他の皆も同意する。実際走り出してそこまで経ってないのだが、それでもアーシアのこともあり少し焦りもあった。その為ついつい焦りぎみになってしまうのだが、

 

「あれは……」

 

また開けた場所に出ると、そこにいたのは確かディオドラの眷属でさっきいなかったもう一人のビジョップと、クイーンだ。

 

「ふむ、クイーンでしたら私がいきましょう」

 

そう言って前に出たのは朱乃で、手から雷光をバチバチ発光させながら、相手を見据える。

 

そこに、

 

「私も出るわ。これで2対2でしょ?」

 

と言って出たのはリアス。二人とも気合い十分。試合を見る限りそこまで強敵ではないが……

 

「よし、二人がやる気になる魔法の言葉を使うか」

「なんだそりゃ」

 

戦兎がゴホンと咳を一つ。それを見た龍誠が、首をかしげていると、

 

「姫島先ぱーい!」

「はい?」

 

呼ばれて振り返った朱乃に、戦兎は更に続けて衝撃の言葉を発した。

 

「龍誠がこの戦い終わったらデートしようだそうでーす!」

「はぁ!?」

 

突然の爆弾発言に、龍誠は大口を開けながら、無言で戦兎に抗議をする。

 

(おい!何でだよ!)

(別にデートくらい良いだろ!)

(良くねぇよ!)

(あーほら、バナナ今度おごってやるから)

(ウッキー!やったー!バナナだ~!ってなるか!俺は猿じゃねぇんだよ!)

(プロテインも付けてやるから!)

(……)

 

終始無言で、しかも全て身ぶり手振りで意思の疎通を完了し、龍誠は少し悩んだ後……

 

「朱乃さん!今度デートしましょう!」

 

にっこり笑顔でそう言った。いやはやチョロ過ぎであった。だが、

 

「ふふ……うふふふふふふ!」

 

それはもう朱乃の声は歓喜に満ちていた。まあ当然なのだが、隣のリアスは嫉妬で燃え上がっている。

 

「わ、私と言うものがありながら龍誠ったら!」

「あら負け犬の遠吠えが聞こえるわね」

 

ギロッと二人がにらみ会う。それを見ていた龍誠は……

 

「俺後でやばくね?」

「今更ですね」

 

小猫から冷ややかな目を向けられつつ、龍誠が呟いてる間に、リアスと朱乃は口論まで始める。

 

「大体朱乃!いつか言おうと思ってたけど龍誠に変なことするのは止めてちょうだい!」

「良いじゃない。別に龍誠は貴女のものじゃないでしょう?」

「なに呼び捨てしてんのよ!あと龍誠は私の眷属なんだから独占権は私にあるわ!」

 

良かったじゃねぇか。あんだけ愛してもらえて、なんて戦兎が龍誠をからかうと、それを見たディオドラのクイーンが、

 

「ちょっとあなたたち!この場でなに男の取り合いを……」

『うるさい!』

 

リアスと朱乃からそれぞれ滅びの魔力と雷光が放たれる。そして、

 

『……』

 

壁に大きな穴が開き、ブスブスと煙がでる中、クイーンとビジョップはピクピク痙攣しながら倒れていた。

 

そんな中、

 

「朱乃はいつも……!」

「リアスこそ……!」

 

と喧嘩する二人。それを見た祐斗は一言。

 

「酷い物を見た気がする」

『うんうん』

 

見ていた皆で思わず頷いたのは……まあ余談。




先日私が結婚してると言うことに驚かれた方がいて少し驚いてる作者です。まあ結婚してると言ってもまだ一年も経ってない新婚なのですが、不思議な縁があったものです。

折角だしこう言うのは多分ないと思うので、もう一つ情報を。私の友人がゲーム実況やっててその傍ら東方MMDもやってるのですが、その脚本書いてるのは俺です。


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荒れ狂う龍

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「続けてディオドラ眷属達に快勝し続けていた俺たち」
龍誠「しかし俺達の戦いはまだまだおわらない!何と奥にはまだまだ敵が!」
戦兎「つうかお前この戦い終わっても多分部長と朱乃さんに挟まれて地獄じゃね?」
龍誠「誰のせいだと思ってんだよ!」
戦兎「お前の女性関係のだらしなさ?」
龍誠「なんだとぉ!?」
戦兎「まあそんな感じで遂に六章も佳境の47話スタート!」


さて、中々に酷い絵面でクイーンとビジョップも片付けて更に奥に進む。

 

しかし残るディオドラの眷属はナイトだが、こちらの残る眷属である祐斗と龍誠どちらか一人だけでも充分だろう。それくらいパッとしないやつだった。

 

正直ディオドラは、ゲーム運びと言うか、眷属を出す順番が余り上手いとは思えない。そう思いながら進んでいると、

 

「あれれぇ?もうここまで来ちゃったんですかぁ?流石グレモリー眷属の皆様ですねぇ~」

「お前は!?」

 

廊下のど真ん中に立っていた人影に皆が止まると、そこにいたのはディオドラの眷属ではなく、

 

「フリード!?お前生きてたのか!?」

「イエスイエス。桐生戦兎君。ボクちんしぶとさもウリなんだよねぇ~」

 

そう言ってニヤニヤするフリードだが、なぜこいつがここに?ディオドラのナイトなら分かるのだが……なんて思っていると、

 

「もしかしてディオドラのナイト探しちゃってる?残念いませぇん。何せ……()()()()()()()()()()()()

 

そう言ったフリードの体は、ビキビキと音を立て、様々な生き物の特徴が混ざりあったような、化け物に姿を変えた。

 

「ヴァーリに回収されたあとなぁ……アザゼルから解雇宣告されちまってよぉ。そのあと禍の団(カオス・ブリゲード)に雇われて今度は合成獣(キメラ)だとよ。全くひでぇやつらだよなぁ!」

そう言ってずっしりとした足取りでこちらを見る。

 

「それにしてもよぉ。ディオドラのやつも良い趣味してるよなぁ?あれ?知らなかったっけ?」

 

突然なんの話だ?と 皆は首をかしげた。それを見たフリードは、

 

「ヒャハハハハハ!知らないなら教えてやるよ!ディオドラはな、教会に通じた女が好みなんだよ。例えばシスターとかな?何せ屋敷とかで囲ってる女も元シスターとか元聖女そんなんばかりの筋金入りだぜ?いやぁすげぇよなぁ、言葉巧みに誘惑して落として手込めにしちまうんだからよ。まさに悪魔の囁きだよなぁ」

「何が言いたいんだよ……」

 

龍誠を苛立ち混じりの声音でしゃべる。龍誠の第六感が言っていた。録な内容じゃないことを。だがディオドラは、

 

「そんなある日の事、ディオドラは最高にキュートで堕落させたら楽しそうな聖女を見つけちゃったのです。ただちょいと警備が厳しくてね。だからある作戦を思い付いたのです。なにせ知り合いから彼女の神器(セイクリットギア)は悪魔でも有効なのを知っていたので、自分が怪我して彼女に見られれば優しい彼女はきっと治療してくれる。そしてそれを誰かに見られればきっと問題になるぞってねぇ!」

 

皆の血が一瞬冷えたような……そんな気がした。アーシアが教会を追い出され、どれだけ苦労したか皆知っている。

 

だがそれがディオドラの計画だったと?

 

「ギャハハハハ!最高ですよねぇ?信じていた教会に裏切られ、絶望した女の子の身も心も堕とす。それがディオドラの楽しみなんですよぉ!」

 

ゲラゲラ笑うフリードの声が、イライラを増幅させる。もう……こいつにしゃべらせたくない。そんな思いが生まれ、前に出ようとした龍誠を、祐斗が止めた。

 

「彼はボクがやる。君の怒りはディオドラにとっておくべきだ」

「祐斗……」

 

祐斗の声音はゾッとするほど冷たく、龍誠はそのまま道を譲る。そして祐斗は静かに聖魔剣を作り出すと、

 

「久し振りだねぇ。だけど今の俺はひと味違うぜぇ?なにせナイトの眷属を二人食っちまったからなぁ。少なくともその二人分の力と俺の力が合わさってるからよぉ。お前とは駒の数の時点で勝てね……んだよ?」

 

フリードは喋りながら瞬きした。そしてその次の瞬間に祐斗は消え、何故か自分の視界が急に低くなった。そしてそのままゴロンと回り、そして気づいた。自分の体が跡形もなくなるほど切り刻まれ、自分の残った体は頭だけになったのだと言うことに。

 

「な、なんだよそれ……」

 

あまりにもあっさりとやられ、フリードは呆然としていたが、ヒヒヒと笑い出す。

 

「まあ良いさ。どうせお前らはアイツには勝てやしねぇ……あれは誰も勝てねぇよ。ああいうのを反則じみてるって言うんだけどな」

「そうかい」

 

ザスッ!と祐斗が投げた聖魔剣がフリードの脳天に刺さり、

 

「続きは地獄の死神に言うと良い」

 

最後の最後までかっこ良く締めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『せぇ……の!』

 

フリードを秒殺した後、皆は道を今まで以上に焦って走り抜けた。とにかく急いでアーシアの元に行きたい。そうしてる内に今までとは作りの違う大きな扉があり、戦兎と龍誠が二人掛かりで開けた。そしてそこにいたのは、

 

「アーシア!」

 

龍誠の視線の先にいたのは、目を真っ赤にして、明らかに泣いた後だと分かるアーシアと、楽しそうに笑みを浮かべるディオドラだ。

 

「ディオドラ……まさかお前話したのか!」

「あぁ、話したよ。全部ね」

 

戦兎が問うと、ディオドラはあっさりと認めて、

 

「ふふ、何時だって絶望したときの女の顔は良いよね。やっとだよ……やっとアーシアをじっくり堕とせる。何せ本当ならレイナーレから救うのもボクがやるはずだったんだ。なのに君たちが邪魔してくれたお陰で遅れてしまったよ。でもまぁ……ここで君達を殺せばアーシアを更に強く絶望させられるから良いとするよ!」

 

そう言ったディオドラの体から魔力が溢れ出す。

 

「そう言えば万丈 龍誠?アーシアの体の具合はどうかな?やっぱりこれだけ可愛いと彼処の具合も良いものかな?それとも知らない?いやぁ、処女も良いものだけど折角だし君から寝取るって言うのも良いと思うんだよね」

 

ブツリ……と龍誠の中で何かがキレた。

 

「手を貸すか?」

「良い。俺だけでやる」

《ウェイクアップ!クローズドラゴン!》

 

戦兎の問いに、龍誠は答えながらビルドドライバーを装着し、クローズドラゴンにドラゴンフルボトルを挿して、ベルトに一緒に挿す。そして、

 

「変身!」

《Wake up burning! Get CROSS-Z DRAGON!Yeah!》

 

そうしてクローズに変身した龍誠に向け、ディオドラは魔力を放つ。

 

「残念だけど今のボクなら最上級悪魔にも匹敵する力さ!幾らその力が強くても所詮は転生悪魔の力ボクにはかてっこ……」

「っ!」

 

ブン!と龍誠は腕に蒼炎を纏わせて、ディオドラの魔力弾を殴り飛ばす。それにより、飛んできた方向に戻って飛んでいったソレは、ディオドラの顔を真横スレスレを通りすぎ、

 

「へ?」

 

ディオドラは呆然とした。だがそんな中、龍誠はゆっくりと歩を進める。

 

「い、今のは手加減しただけだ!調子に乗るなよ!」

 

そう言ってディオドラは、何発も魔力弾を撃つ。一発一発本来なら必殺の一撃となる魔力を込められている。

 

だが龍誠はその全てを叩き潰し、弾き返していく。それを見たディオドラの顔が恐怖に歪む中、龍誠はディオドラとの間合いを詰めると、

 

「オラァ!」

「ぐげぇ!」

 

腹に渾身の一発を叩き込んでやると、ディオドラは目を見開きながらゲロを吐き散らし地面に転がった。

 

「がはっ!げほぉ!」

「何が最上級悪魔にも匹敵だ。タンニーンのおっさんの方が強かったぞ」

 

龍誠はそう言いながら、胸ぐらを掴んでディオドラを立たせると、

 

「ラァ!」

 

バキィ!と一発。ディオドラは後方に大きく吹っ飛びながら、また地面を転がる。

 

「どうしたよ!その程度かよ!」

「く、くそ!」

 

ディオドラは腕を突き出し、魔力を溜めた。だが、

 

「ギャアアアアアア!」

 

次の瞬間またひっくり返り、地面を転がる。そして次の瞬間には、地面にゴトリと、地面に落とした音がして、見てみればそれはディオドラの腕だ。

 

一瞬でビートクローザーを抜いた龍誠は、そのまま振り抜いてディオドラの腕を切り落としたのだろう。

 

「う、うでがぁ!」

 

地面を転がりながら悲鳴を上げるディオドラを踏みつけ、龍誠は見下ろす。

 

「ぐぁあああ!クソがぁ!」

 

そう叫ぶディオドラに、龍誠は蒼炎を纏わせた拳を顔面に叩き込んだ。

 

「はぁ……はぁ……」

 

体が熱い……龍誠は不自然に体が熱を持ったことに気づく。ソレだけじゃない。ディオドラが憎くてたまらない。そして殴れば殴るほど、言い様のない感覚が龍誠を包み込む。

 

もっと殴りたい……もっとこいつを痛め付けたい。いや、()()()()()()()()。その時、

 

「しねぇ!」

 

一瞬、龍誠の動きが止まったとき、ディオドラが魔力弾を放った。だが、

 

「っ!」

 

ヒョイっとそれを回避しながら、龍誠は再度顔面に拳を叩き込む。

 

「ぷぎぃ……」

 

変な声をディオドラは漏らしたが、構わず2・3・4と連続して殴った。

 

殴る度に地面にヒビが入り、ディオドラの頭部が床にめり込む。

 

そしてもう一発……と拳を振り上げたところで、龍誠は動きを止め、

 

「……アーシア」

 

と背を向けアーシアの元に駆け寄る。危なかった。正直このままディオドラを殺そうと思った。だが、それを思い止まれたのはアーシアが生きていたからだ。あくまで自分はアーシアを助けに来たのだから。

 

「取り敢えず踏み止まったね」

 

そう祐斗は言いながら緊張を解いた。あれ以上やるなら止める。そう思っていたが、杞憂だったらしい。

 

「だな……」

 

と言うのは戦兎。祐斗と戦兎だけじゃない。皆あれ以上やるなら止めにはいる予定だった。ディオドラを助けるためじゃない。ただ怒りに任せて殺せば、アレでも一応アスタロト家も現魔王の一人を輩出した家なので、問題になる可能性があったからだ。

 

そう思いながら龍誠の方を見ると、アーシアを縛っていたロープをビートクローザーで切って解放すると、

 

「龍誠さん!」

「おっと!」

 

アーシアに抱きつかれ、慌ててバランスをとる龍誠。そんな姿を見ながら戦兎が、

 

「妬かないんですか?」

「あそこで水を差すほどヤボじゃないわよ」

 

と、リアスは肩を竦めた。そうしている間に、二人が戻ってきて、

 

「皆さん……ありがとうございました!」

 

頭を下げるアーシアに、皆が頬を掻いたり笑みを浮かべたりする。アーシアがいるだけで空気が和む。

 

とは言え、何時までも和んでいる場合ではない。取り敢えずディオドラを捕縛しなくては……

 

そう思い、皆はディオドラの元に移動する。その中から少しだけ遅れて歩き、アーシアは皆の背中を見る。

 

ディオドラから真相を聞いてから、心が引き裂かれるような感覚襲われていた。でも皆が来て、龍誠に抱きついたときから、その苦しみがスゥーっと消えていき、教会に追放されたことで皆に出会えたのならば、意味があったのではないだろうか……なんて思ってしまう。

 

「アーシア!何してんだ?」

 

振り替えって聞いてくる龍誠に、アーシアは今いきますと歩みを早める。でももう少しだけ我が儘を言わせてもらえるならば、今度はあの人に結婚を申し込まれたい。そんなことを思い、歩き出した次の瞬間、

 

『え?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く、役立たずが」

『……』

 

何が起きたのか理解できなかった。何故ならアーシアを呼んだ次の瞬間、突然アーシアを光が包み、そしてそのまま消失したのだ。そしてそこに響く声……その方を見ると、そこには一人の男がいた。それを見た戦兎は、

 

「何もんだ……」

「俺はシャルバ・ベルゼブブ。真の魔王の血筋である。突然で悪いが、お前たちには死んで貰う。理由はただ一つ、主が偽りの魔王の血筋であるからだ」

 

そう言って悠々と地面に降り立ったシャルバは、体から魔力を滲ませる。ディオドラとは比べ物にならない力だが、

 

「アーシアをどこやった」

 

ゼノヴィアは肩を震わせながらシャルバに問う。すると、

 

「あぁ、あの女ならもう死んだだろう。次元の狭間に送ってやったからな。だが安心しろ、お前たちもすぐ送ってやる」

「ふざけるな!」

 

シャルバに向けて、ゼノヴィアは飛び出す。更に、

 

《シュワッと弾ける! ラビットタンクスパークリング!イエイ! イエーイ!》

 

戦兎も飛び出し、スパークリングに変身すると、ゼノヴィアにあわせて飛び上がると、

 

《Ready Go!スパークリングフィニッシュ!》

 

デュランダルの一撃と、スパークリングフィニッシュが同時にシャルバに襲いかかる。しかし、

 

「ふん!」

 

シャルバの片腕から放たれた魔力の波動。それだけで二人を簡単に弾き飛ばしたのだ。

 

『がはっ!』

「二人とも!」

 

吹っ飛ばされて転がる二人に皆が駆け寄る。

 

「残念だが、この程度では俺には敵わんよ。俺は真の魔王なのだからな」

「……」

 

そう言って笑うシャルバを、龍誠は静かに見つめていた。

 

「龍誠?」

 

戦兎が龍誠の名前を呼ぶと、

 

「……す」

『え?』

 

龍誠が何かを呟いた。だが聞こえず、思わず疑問符を浮かべると、

 

「殺す殺す殺す殺す殺す殺す」

「何故お前たちは邪魔をする」

「いつだってそうだ。いつだってお前達は拒絶する」

「ただ静かに暮らしたいのに」

「ただ普通に居たかったのに」

「無理矢理戦わせる」

「嫌でも巻き込ませる」

「普通でよかったのに」

「平凡が大切だったのに」

「お前達はどんなときでも……」

 

龍誠の口から紡がれるのは、怨嗟の声だ。正直、他に例えようがない。老若男女の声音で紡がれる絶望に染まった声。それは最後に、

 

『滅びを選択するんだな』

 

バキバキ!と言う音と共に、龍誠のクローズのアーマーの左半分が砕け、その下から現れたのは真っ赤で有機的なフォルムのプレートアーマー。そんな突然の変化に、

 

「なんだ?お前は人間からの転生悪魔では……」

 

そうシャルバが呟いた次の瞬間、

 

「アァアアアアアアアアアア!」

 

大気が震えるほどの龍誠の咆哮に、皆が思わず咄嗟に耳を塞いだとき、龍誠は一瞬でシャルバと間合いを詰め、拳を叩きつけていた。

 

「ごばぁ!」

 

シャルバは壁を突き破り、そのまま外まで吹き飛ばされる。そのまま外まで飛んで来ると、

 

「な、なんだ今のは……神器(セイクリットギア)すら持たない転生悪魔風情が……何故あんな変化を。あれもクローズとか言う力の一つなのか?」

「ゴガァアアアアア!」

 

シャルバがふらつきながら考察する中、龍誠はまた間合いを詰め、なんとそのままシャルバの肩に噛みついた。

 

「ぐぁあああああああ!」

「なんだよあれ……」

 

バキバキとシャルバの肉と骨が噛み千切られる中、戦兎たちも外に出た。だが、あんな力は勿論戦兎も知らない。

 

「くそ!化け物め!」

 

そう言ってシャルバは魔力弾を放つが、全て効いていない。弾くのではない。喰らって尚、効いていないのだ。先程とは明らかに違う。更に、

 

「なっ!」

 

口から灼熱の炎を吐き出し、それがシャルバを包む。

 

「ぐぉ!なんだこれは!?」

 

体を払っても、魔力で水を作って被っても消えない。そんな炎だ。地面に転がり、自然に消滅した頃には、シャルバは既に全身大火傷。体の一部は炭化している。

 

「く、くそ……こんな化け物の相手をしていられるか」

 

シャルバはそう呟き、魔方陣を作り出す。そしてそのまま消えようとするが、

 

「っ!」

 

龍誠の突進は魔方陣による転移の起動より早く、シャルバを強烈なアッパーで吹き飛ばす。そしてそのまま、蒼い龍を作り出し、それをシャルバに放つと、何時もより巨大なそれは、シャルバを余裕で呑み込み、

 

「終わった……?」

 

リアスの呟き。余りにもあっさりと終わった。だが、

W

「アアアアアアア!」

 

龍誠はまた一回鳴くと、地面を殴り火を吹き、暴れだす。

 

「まさか暴走してるのか?」

「そのようだな」

 

戦兎の呟きに、誰かが返事をした。その声に聞き覚えがあったため、皆が咄嗟に振り替えると、そこにいたのは、

 

「ヴァーリ!?ソレに美猴と聖剣使い!」

「お久し振りです。桐生戦兎さんでしたね。名乗り遅れました。私はアーサーともうします」

 

あ、これはご丁寧に……と戦兎が思わず頭を下げる中、アーサーは手に持つ物を見せる。

 

「こちらの女性はそちらの方でしょう?」

『っ!』

 

アーサーが見せた女性に皆が一瞬我が眼を疑った。だが間違いない。それは先程シャルバが死んだといった、

 

「アーシア!」

 

最初に飛び出したのはゼノヴィア。アーサーから受け取り、地面に下ろすが、目立った外傷は無さそうだ。

 

「良かった。無事そうね」

 

リアスの言葉に皆は同意し、

 

「後はあのバカをどうするか……か」

 

シャルバとは一瞬しか戦ってない。だが、スパークリングフィニッシュとデュランダルを纏めて弾き飛ばしたあの力は、本物だったはずだ。だが、それをあんなにあっさり倒した龍誠……

 

「あのシャルバを倒すほどだ。桐生戦兎。お前一人ではまあ無理だろうな」

 

ヴァーリの言葉に、戦兎は確かにと素直に認めた。正直、あのパワーは見ただけでも驚異だ。

 

そう良いながら、戦兎は懐からあるものを取り出す。それは赤を基調とし、スイッチがついたアイテムだ。それを見たリアスは、

 

「戦兎……それは?」

「ハザードトリガー。ビルドの強化アイテムですよ。スペックの上昇量だけならスパークリングより上なんです……ただこれは暴走の危険があって、龍誠と一緒になって暴れなきゃ良いんですけどね」

 

そう言って戦兎はハザードトリガーを撫でると、

 

「なあヴァーリ」

「ん?」

 

いきなり話しかけられ、ヴァーリは怪訝な眼をしながら返事をした。すると戦兎は、

 

「俺がもし暴走したときは……頼むわ。このハザードトリガー外すか、ある程度ダメージ与えて変身を強制解除させれば良いからさ」

「……は?」

 

ヴァーリは戦兎の言葉が理解できず、ポカンとした。そして、

 

「何故俺がお前を止めなければならんのだ」

「いや、だってお前って多分結構お人好しだろうからさ」

 

なに?とヴァーリは戦兎の言葉に眉を寄せ、

 

「ふざけるな。俺はそんなんじゃない。お前のように誰かのために戦わん。俺は俺のためだけに戦うんだ。時には他者を利用するだろう。だが使えなければ捨てる」

「じゃあ何でお前は黒歌を助けたんだ?あの時多数の悪魔が向かってた。使えなきゃ捨てるってなら態々助けになんて来るか?」

 

戦兎の言葉に、ヴァーリは言葉を詰まらせる。

 

「それだけじゃない。お前は態々俺たちに忠告してきた。アーシアも助けてくれた」

「それはお前()ためじゃない!」

 

つまりここにはいない俺たち以外の誰かのためだったんだろ?戦兎がニヤッとしながらそういうと、ヴァーリは視線をそらした。

 

そんな姿に戦兎は笑いながら、ヴァーリの肩を叩き、

 

「頼りにしてるぞ」

 

そう言い残し、戦兎はビルドドライバーを装着しながら龍誠に向けて歩を進める。

 

「龍誠……今助けてやるからな!」

《ハザードオン!》

 

ハザードトリガーのスイッチを押し、ビルドドライバーの上部に挿す。そして戦兎はラビットフルボトルと、タンクフルボトルを出して振り、ベルトに挿す。

 

「さぁ、実験を始めようか」

《ラビット!タンク!スーパーベストマッチ!ガタガタゴットン!ズッタンズタン!ガタガタゴットン!ズッタンズタン!》

 

戦兎はレバーを回すと、何時もの変身シークエンスには見られない、黒いプレス機が現れ、

 

《Are you ready?》

「変身!」

《アンコントロールスイッチ!ブラックハザード!ヤベーイ!》

 

プレス機は閉じ、チーンと音が鳴ると、中から現れたのは眼の色だけがラビットタンクの特徴を残した、真っ黒なビルドが立っていたのだった。



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暴走VS暴走

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「ディオドラをぶっ倒し、アーシアを救い出したかと思ったのもつかの間。そこに、現れたのはシャルバ・ベルゼブブ!そして突然の龍誠の暴走まで!……って今回俺一人しかいねぇし!あーもう!俺一人じゃ話すの限度が……そうだ!お気に入り登録が300突破しました!有難うございます!これからも頑張りますのでよろしくです!って感じの48話スタートだ!」


「おぉおおおお!」

 

全身が黒いビルドに変身した戦兎は、ドリルクラッシャーを手に走る。

 

「ガァ!」

 

それを目視した龍誠は、腕を振るう。だが、

 

「くっ!」

 

戦兎はそれを飛び越え、ドリルクラッシャーで切る。まともにそれを喰らった龍誠は怯むが戦兎も、

 

「うぐっ!」

 

バチッと脳裏に火花が散るような感覚。何かが頭を侵食していくような、嫌な感覚だ。

 

「まだ……だ!」

 

戦兎は必死にそれを振り払うように頭を振るい、別のフルボトルと交換する。

 

《海賊!電車!スーパーベストマッチ!ガタガタゴットン!ズッタンズタン!ガタガタゴットン!ズッタンズタン!Are you ready?》

「ビルド……アップ!」

《アンコントロールスイッチ!ブラックハザード!ヤベーイ!》

 

今度は眼の色が薄緑と水色で、全身が真っ黒のビルドに姿を変えた戦兎は、カイゾクハッシャーを構える。

 

「うぉおおお!」

 

何度もエネルギー弾を放ちながら、戦兎は間合いを詰めてカイゾクハッシャーで切る。

 

「グォオオオオ!」

 

だが龍誠はそれを喰らいながらも、強引に殴り返して戦兎を吹き飛ばす。

 

「がはっ!」

 

だが戦兎は地面を転がりながらも、その反動で立ち上がった。その時!

 

「ぐぅ!」

 

バチバチとまた脳裏に火花が散るような感覚。

 

(ダメだ、まだ……)

 

意識が遠退く。自我が消えていく。必死に遠ざかっていく物をつかもうとする。だが、

 

「……」

 

ガクン!と戦兎は両手を下ろし、静かに龍誠を見ながら、ボトルを入れ換えた。

 

《ラビット!タンク!スーパーベストマッチ!ガタガタゴットン!ズッタンズタン!ガタガタゴットン!ズッタンズタン!Are you ready?アンコントロールスイッチ!ブラックハザード!ヤベーイ!》

 

再度さっきの姿に戻った戦兎は、ハザードトリガーのスイッチをもう一度押す。

 

《マックスハザードオン!ガタガタゴットン!ズッタンズタン!ガタガタゴットン!ズッタンズタン!》

 

レバーを回しながら戦兎は、龍誠との間合いを詰め、それにたいして龍誠は腕を振るって迎撃する。だが、

 

《オーバーフロー!》

「……」

 

それを紙一重で避けると、その動きを利用して喉に拳を叩き込む。

 

「グォ!」

 

流石にそこを殴られ、苦しげな声を漏らした龍誠に戦兎は、何度も攻撃を叩き込んでいきながら、渾身の一撃で叩き込む。

 

「ゴォオオオオ!」

 

龍誠は咆哮しながら転がり、立ち上がろうとするが、腕に力が入らないらしく、地面に突っ伏してしまう。そしてそこに戦兎は近づくと、無言で何度も踏みつける。

 

「つよい……」

 

それを見ていた祐斗が呟く。だが小猫は、

 

「違う」

「小猫?」

 

突然の呟きに、リアスが小猫を見た。

 

「戦兎先輩はあんな戦い方をしません。あんな急所を意図的に攻撃したり、倒れてる相手に必要以上の攻撃を加えたりしません」

「確かに幾らなんでもやりすぎですわ……」

 

朱乃も小猫に同意する。確かにいつも戦兎には見られない光景だ。まだ龍誠の暴走状態が続く中、油断できないだけと言う感じもしない。

 

「まさかアレ……暴走してるんじゃないか!?」

「えぇ!?」

 

ゼノヴィアの言葉に、ギャスパーは驚愕する。暴走とは、もっと派手に暴れまくる状態じゃないのかと。

 

「成程。あれがハザードトリガーの暴走か。感情を無くし、どれだけ効率よく相手を倒すかを重要視する戦闘マシーンに変える……確かに桐生戦兎が使いたがらないわけだ。あれはアイツが大切にしているラブ&ピースとは程遠い物だからな」

 

ヴァーリは、どこか皮肉った言い方をする。そんな中、戦兎はレバーを回して、

 

《ガタガタゴットン!ズッタンズタン!ガタガタゴットン!ズッタンズタン!Ready Go!》

 

戦兎は倒れている龍誠の肩を掴むと強引に立たせ、エネルギーを右足に溜めると、

 

《ハザードフィニッシュ!》

 

そのまま蹴りを叩き込み、龍誠を吹き飛ばした。大きく後方に吹き飛ばされた龍誠は、地面に落ちると土煙を上げる。すると、

 

「ごほっ!」

 

変身が解除され、先程まであった赤い鎧も解除された龍誠がいた。だが龍誠は今の戦兎を見ると、

 

「せんと?なんでハザードトリガーを?」

「……」

 

戦兎は龍誠の問いには答えずゆっくりと歩を進めていく。まるでトドメを刺そうとしているように。

 

「やめなさい!戦兎!」

「……」

 

それを見たリアスが咄嗟に叫ぶと、戦兎はこちらを向く。それを見たギャスパーは、

 

「僕今すごく嫌な予感がしますぅ」

「おいヴァーリ……俺ら逃げた方がよくね?」

 

ギャスパーが震える横で、美猴も口を開く。だがヴァーリは動じず。

 

「来るぞ」

 

その言葉と共に戦兎は標的を変更しリアスたちに向かって走り出す。

 

「くっ!」

 

それを止めるべく祐斗が前に出るが、戦兎への遠慮もあってどうしても踏み込みが浅くなる。だが戦兎は容赦なく祐斗の首を掴むと、そのまま地面に叩きつけた。

 

「木場!」

「……」

 

次に飛び掛かったのはゼノヴィアだ。彼女も戦兎への遠慮があるが、祐斗ほど加減できる性格じゃないのもあって割りと遠慮なくデュランダルを振り下ろそうとした……が、

 

「なっ!」

 

何と戦兎は、祐斗をそのまま持ち上げてゼノヴィアに向かって投げつける。流石にソレには怯んで気を緩めた間に、戦兎は走り出す。

 

「しまった!」

「ゼノヴィア!」

 

戦兎の突進に、ゼノヴィアは避けられないと覚悟し、リアスもそう思った。だが、

 

《ロボットイングリス!ブラァ!》

『え?』

 

走っていた戦兎に横から飛び蹴りを叩き込んだのは、何とヴァーリだ。

 

「ヴァーリ?なんで……」

「俺はとっとと帰ってみーたんのライブ映像を見たいんでな。ただ偶々その帰り道のど真ん中に邪魔をするやつがいるなら……心火を燃やしてぶっ潰す!」

 

そう言ってヴァーリは戦兎を押し返すと、ツインブレイカーをアタックモードにして、戦兎をぶん殴る。

 

(軽い!?)

 

だが、ヴァーリは気づいた。余りにも殴った際軽すぎたことに。恐らく殴られる瞬間自分から後ろに飛んだのだろう。暴走している癖にこういった判断能力があると言うのは厄介だ。すると、

 

「伸びろ棒よ!」

「……」

 

横から美猴の如意棒が戦兎を狙う。だがそれを戦兎はキャッチし、止めた。そこを狙い、

 

「はっ!」

「……」

 

アーサーがコールブランドを抜き、戦兎に容赦なく振り下ろす。しかし、

 

「む?」

 

如意棒を離し、バックステップでそれを避けた。

 

「何してるんだお前らは」

「そっちこそ俺達がいねぇとなぁ」

 

等と軽口を叩き合うヴァーリと美猴。それにしても、想像以上に厄介だ。なにも考えず暴れるだけならまだ良いのだが、高度な判断能力を保持したままとは。そうヴぁーりが思っていると、

 

「ヴァーリ!」

「ん?」

 

龍誠の声にヴァーリが反応すると、龍誠はクローズドラゴンをヴァーリに投げ渡す。

 

「そいつはこの間戦兎がツインブレイカーとも互換性を持たせたっていってた!使え!」

「成程」

 

そいつは好都合だ。とヴァーリはクローズドラゴンをツインブレイカーにセット。

 

《Ready Go!》

 

そして更にヴァーリはベルトのレバーを下ろし、素早くツインブレイカーのボタンを押す。

 

《レッツブレイク!》

《スクラップフィニッシュ!》

「おぉおおおおらぁああああ!」

 

ヴァーリは咆哮と共に、蒼い龍型のエネルギー波を放ち、戦兎を狙う。それを戦兎は避けようと動こうとした。その時、

 

「隙!」

「ありです!」

 

美猴とアーサーの二人が飛びかかり、ベルトに手を伸ばす。だが戦兎はその腕をつかみ、捻り上げた。

 

「いででででで!」

「くっ!」

 

すると、

 

「はぁ!」

「……っ!」

 

戦兎のベルトにと言うか、ピンポイントでハザードトリガーを撃ち抜き、ビルドドライバーから外させた。その人物は、

 

「リアス・グレモリーか」

「ふぅ……」

 

リアスも魔力の細かい操作が若干苦手なので、ハザードトリガーのみを撃ち抜くと言うのは、かなり神経をすり減らしたが、うまくいったようだ。

 

「……あれ?俺はたしか」

 

そんな中、変身が解除された戦兎は、強い疲労感に襲われて、そのままその場にヘタリこみながら周りを見回す。そんな様子を見ながら、ヴァーリはやれやれと変身を解除する。

 

「お前、暴走してたぞ」

「マジか……」

 

初めて使ったときよりは耐えれたが、結局時間はそこまで伸びてないようだ。そこに、

 

「せんと~」

「ん?」

 

地面に倒れている龍誠が呼んでくる。そこには既に皆も集まり始めているようで、

 

「きいてくれせんと……あーしあが……」

「知ってるから落ち着け」

 

精も根も尽き果てたらしく、呂律も回ってない龍誠に戦兎は答えながら、ヴァーリを見る。

 

「ありがとな……他の皆を傷つけずにすんだ」

「お前のためじゃない。帰るときに邪魔だっただけだ」

 

なんて返されて、戦兎はビキビキと言う効果音が付き添うな気分の体で、頑張って立ち上がりながら思わず苦笑いを浮かべ、これで戦いは終わりだろう。そう皆が思った。だがその時、

 

「おっかしいなぁ。万丈 龍誠が目覚めたみたいだから来たんだけど戻ってるなぁ……」

『っ!』

 

突然の上空からの声に、その場の全員が顔を上げる。そしてそこにいたのは……

 

「龍誠?」

 

リアスの言葉通り、そこにいたのは、龍誠?だ。だが、戦兎だけは知っていた。

 

「おいおい、ヴァーリ達までそんな顔するなよ。まあ実際顔合わせたのは初めてだけどさ。それでもお前たちが今いる組織の長だぜ?」

 

そう言って笑う男。戦兎はその男の名前を呼んだ。

 

「兵藤 一誠……」



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仮面ライダーエボル

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「龍誠の暴走を止めたのも束の間。突如現れたのは何と兵藤一誠!」
ディオドラ「というか僕は!?出番もう無し!?」
龍誠「お疲れ様でした」
ディオドラ「い、いや!最近はスピンオフで再登場とか流行ってるからまた僕だってスポットがあるかもしれない!そして僕だって仮面ライダーに!」
龍誠「ないない」
戦兎「そんな感じに滅茶苦茶な49話スタート」


少し時間を巻き戻し、戦兎達と通信を終えたアザゼルは、一誠たちの戦いの場所とは遠く離れた場にて、人工神器(セイクリットギア)についている宝玉の反応を頼りに、ある場所を目指していた。

 

その場所はすぐに着き、そこに探していたものはいた。随分可愛らしい幼女の姿をしているが、探していた奴だ。なので息を整え、アザゼルは何時でも行動できるように覚悟を決めて、声を掛ける。

 

「オーフィス」

「アザゼル……久しい」

 

オーフィス。無限を司るウロボロス・ドラゴン。世界最強の存在を上げろと言えば、間違いなくこいつが上げられるだろう。いや、一応もう一人いたが、それは今は良い。その少女が今自分の前にいた。とは言えオーフィスは自分の姿を自由に変えられるのでこの幼い少女の姿はあくまで仮の姿だ。昔は老人だったこともあるし、美女だったりむさ苦しいおっさんだったりと、姿に統一性がない。

 

「んで?今度は何しにここに来たんだ?」

 

それにしても禍の団(カオス・ブリゲード)にはオーフィスが付いていると言うのは、前に学園で襲撃されたときに聞いていたが、正直半信半疑だった。なにせこいつは、どこかの組織の後ろ楯に付くとか、そういうことをするタイプじゃない。どこまでも自由で気ままな存在だ。だからこそ余計に厄介でもあるのだが……

 

なにせこいつがその気になって本気で暴れれば、この世界は数日で消滅する。そういう存在なのだ。

 

「別にない。暇潰しに見学」

「暇潰しにか。禍の団(カオス・ブリゲード)で重要なポストにあるであろうお前が、こんなところにひょっこり現れるとはな。お前を倒せば世界は平和になるか?」

 

と、冗談混じりで言うとオーフィスにはそれをバッサリ否定される。

 

「無理、アザゼルは我に勝てない」

 

それはそうだ。とアザゼルは肩を竦める。さっきも言ったように、こいつ

本気はヤバい。いや、本気じゃなくてもヤバいのだが、あの聖書の神ですら相対しなかったしできなかった、最強のドラゴン。こいつとまとも戦えるのなんてそれこそもう一体のムゲンの龍くらいなものだろう。少なくともこいつの化け物度合いは世界トップだ。

 

「だがお前を何が動かさせる?お前は世界に興味を示さなかった筈だ。なのに何故禍の団(カオス・ブリゲード)に力を貸す?まさかとは思うが、暇潰しなんてやめてくれよ?お前のお陰で被害が各地に出てるんだからな」

 

アザゼルはそう聞くと、オーフィスは口を開く。

 

「静寂な世界」

「…………はぁ?」

「故郷である次元の狭間に帰り静寂を得たい」

「そういうことか」

 

次元の狭間とは虚無の世界。人間界と天界、冥界を繋ぐ壁のようなものだ。それにしてもそれが目的。確かにオーフィスは元々その次元の狭間に住んでいたのだが、色々あって今はこっちに居る。それを戻してやると言うのを条件に禍の団(カオス・ブリゲード)に力を与えたようだ。いや、実際戻すだけなら問題はない。アザゼルにだってできる。だがその次元の狭間に今いるのは……先程言ったもう一体のムゲン。

 

夢幻の赤龍神帝・グレートレッド。それがいる。もしオーフィスと出会えば、間違いなく戦いになる。そうなれば次元の狭間での出来事でも、世界に影響が出るし、恐らく両者無事ですまない。それをオーフィスは嫌っているのだろう。

 

となると禍の団(カオス・ブリゲード)に協力する条件と考えられるのは、そのグレートレッドをどうにかするも含まれている。倒すのは難しくても、オーフィス込みでなら次元の狭間から追い出すのは難しくない筈だ。

 

しかし全く面倒なことになってる。ホームシックになったのかと笑えたらどれだけ楽なことか。

 

なんて考えているとそこに、魔方陣が展開される。そこに現れたのは、一人の悪魔で、

 

「お前は……」

「お初にお目にかかる、堕天使の総督アザゼル。俺は真のアスモデウスの血を引く者、クルゼレイ・アスモデウス。禍の団(カオス・ブリゲード)の真なる魔王派として、貴殿に決闘を申し込む!」

 

突然現れて、いきなり決闘を申し込まれたアザゼルは、ポリポリと頭を掻きながらクルゼレイを見る。

 

「ったく、今度は旧魔王のアスモデウスが出てきたのか……」

 

そう言うと、ドン!っとクルゼレイのオーラがどす黒く、そして比べ物にならないほど強くなった。

 

「旧ではない!我らこそが真なのだ!それを証明してやろう、そしてカテレア・レヴィアタンの仇を討たせてもらう!」

 

あぁ、とアザゼルは納得する。もしかせずとも前に学園が襲撃されたさいに自分が殺したカテレアとは恋仲だったようだ。だが、そこにまた別の魔方陣。その中から出てきたのは、今度は知った顔でサーゼクスだ。

 

「よぅ。お前も出てきてたのか」

「あぁ」

 

サーゼクスを見ると、みるみるクルゼレイの顔が憤怒の歪む。

 

「サーゼクス。偽りの魔王!貴様さえいなければ我々は!」

 

かなり濃密な魔力。流石魔王の血筋だ。いやまぁ恐らくオーフィスの力を取り込んでいるのだろうが。

 

だがサーゼクスは顔色ひとつ変わらない。

 

「クルゼレイ。矛を納めてくれないか?今なら話し合いの道も用意できる。私は今でも前魔王の血筋を表舞台から下げ、辺境に移さしたことを他にも道はあったのではないかと思う。それに君には、今のアスモデウスであるファルビウムと話してほしいとも思っている」

 

サーゼクスの言葉は真摯だった。嘘偽りはなくそれ故に相手の神経を逆撫でする。

 

「ふざけるな!我に偽りの魔王と話せだと!?やはり貴様のような堕天使はおろか天使にすら媚を売るような男に魔王を名乗る資格はない!」

「良く言うぜ。お前ら禍の団(カオス・ブリゲード)だって色んなところの反乱分子が仲良く集まってるじゃねぇか」

 

クルゼレイの言葉に、アザゼルは突っ込みをいれた。だが、

 

「仲良く?それは違う!我らは利用しあっているのだ!忌まわしき天使も堕天使も我ら悪魔が利用する存在でしかない!悪魔が……いや我ら魔王こそが全ての頂点に立つべきなのだ!」

 

アザゼルは思わず嘆息する。ダメだこりゃ……と。悪魔はすでに種の存続の危機にあるのに、未だに悪魔だけでどうにかなると思っている。サーゼクス達も苦労するな、と思わず同情している間に、

 

「クルゼレイ。私は悪魔と言う種を守りたいだけだ。民を守らねば種は繁栄しない。甘いと言われようが構わない。私は未来ある子供達を導く。今の冥界に必要なのは戦争ではない」

「稚拙な理由だなサーゼクス。悪魔の本懐は人間を堕落させ地獄へ誘い、天使と神を滅ぼすことのみ!何よりルシファーとは……魔王とは全てを滅する存在であり、そうでなければならない!そして貴様にはそれを程の滅びの力があっても隣の堕天使に振るう様子もない!やはり貴様は魔王を名乗る資格はない!真なる魔王である私が滅ぼしてくれる!」

 

それを聞いてサーゼクスは一度目をつぶる。分かってはいた……今更対話で止まってくれる輩ではないことくらい百も承知。だがそれでも賭けたかった。どうしても聞きたかった。だが交渉は決裂……ならば仕方ない。

 

例え偽りと呼ばれようと今は魔王である。ならば今の冥界に仇なすこのものを滅ぼそう。

 

「クルゼレイ。私は魔王として貴殿を排除しよう」

 

そう言ったサーゼクスの手から、小さな滅びの魔力の球体が現れた。それを見ると、

 

「貴様が魔王を語るな!」

 

そう言ってクルゼレイが魔力の弾丸を噴射する。だが、

 

「え?」

 

次の瞬間サーゼクスの小さな滅びの魔力の球体が、彼の周りを高速で回ると魔力弾を全て消し去った。まるで意思を持つかのように縦横無尽に動き回ったそれは、今度はクルゼレイの口内に入る。そして次の瞬間今度はクルゼレイの魔力が消えていった。

 

滅殺の魔弾(ルイン・ザ・エクステインスト)……貴様の体内にあったオーフィスの蛇を消し去った。もう強化は使えまい」

「っ!」

 

それを聞いてクルゼレイは明らかに狼狽した表情を浮かべた。

 

だがこの精密機械のような魔力コントロール。それでいて圧倒的なまでの消滅。それをあんな小さな球体で行うのだ。しかもこれはまだ本気のサーゼクスではない。圧倒的な力と才覚、それを持った現魔王・ルシファー。〈超越者〉サーゼクス・ルシファーを前にクルゼレイは歯を噛みしめる。

 

「何故だ……何故貴様といい、ヴァーリといい、ルシファーはその力を!その恵まれた力を滅びに向けないのだ!」

 

クルゼレイは毒づきながら魔力を溜めた。しかし、

 

「ごぶ……」

 

クルゼレイの腹に穴が開く。腹部に侵入したサーゼクスの滅びの魔力が内側から突き抜けてきたのだ。

 

「なぜ……にせものに……ほんものが……負けねばならない……」

 

苦悶の表情を浮かべながらクルゼレイ呟く。

 

「……」

 

それをサーゼクスは少し悲しげな目で見ながら、腕を横になぐとクルゼレイは完全に肉片ひとつ残さず消え去った。

 

「さて、残りはお前だ」

 

と、アザゼルがいうとサーゼクスもオーフィスを見る。だがそこに感じる凄まじく、それでいて邪悪なオーラ。

 

なんだこのオーラは……とアザゼルはその方角を見る。明らかに普通ではない。するとオーフィスは、

 

「ドライグ?」

『っ!』

 

オーフィスの呟きに、アザゼルとサーゼクスは顔を見合わせ、オーラの発せられる方向を改めて見直す。

 

ドライグとは赤龍帝。つまり赤龍帝の籠手(ブーステット・ギア)のことだ。それをオーフィスは感じた。つまりそれの所有者のオーラと言うことか?

 

そして同時に思い出すのは、戦兎たちが言っていた、神滅具(ロンギヌス)を全て所有している存在。名前は……

 

「兵藤 一誠?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、時間を戻して一誠が現れた直後、

 

「ほんとに俺そっくりなんだな……」

 

と、龍誠は思わず呟く。だが戦兎は、ふらつく足に活を入れて立ち上がる。

 

「なにしに来やがった」

「いやなに、ちょっとこっちの用事でね。しっかし感動するねぇ~。やっと原作の主要キャラに会えたんだ」

 

原作?主要キャラ?と戦兎は困惑した。こいつは何をいっているんだ? だがそんな中ゼノヴィアは、

 

「成程、お前が禍の団(カオス・ブリゲード)のリーダーか。ならばここでお前を倒せば良いんだな!」

「やめろゼノヴィア!」

 

デュランダルを手に走り出すゼノヴィアに、戦兎は叫ぶがナイトの速度で瞬時に一誠との間合いを詰め、

 

「はぁ!」

 

ザン!と、デュランダルが一誠のうでを斬り飛ばす。

 

「ひゅ~。流石にいってぇな~」

「なに!?」

 

斬り飛ばされた腕をキャッチしながら、一誠は一瞬でゼノヴィアから距離を取り、腕をくっつける。

 

「腕をくっつけただと?」

「これくらいは当然」

 

と一誠は笑いながら、

 

「さて、神器(セイクリットギア)ってのは面白い能力のもある。例えば、こういう風に……」

 

そう言って手に現れたのは、デュランダル。それを見たゼノヴィアだけではなく、皆が驚愕した。

 

「デュランダルを!?」

「こいつが少し特殊でね。ダメージを与えてきた相手の武器をコピーするっていう神器(セイクリットギア)だ。ひでぇよな。普通の人間だったら喰らったら死ぬぜ?でも俺は……この程度じゃ死なない」

 

一誠はデュランダルを掲げ、

 

「上手く避けろよ?」

『っ!』

 

振り下ろすと同時に、衝撃波が降り注ぐ。それはゼノヴィアが放つものとは比べ物にならないもので、

 

「ちぃ!」

 

ヴァーリが咄嗟に戦兎を引っ張り、他の皆も龍誠を引っ張ったりゼノヴィアを救出したりしながら避けなければ、危なかった程だ。

 

「やべぇやべぇ、間違って万丈 龍誠や桐生 戦兎まで巻き込んだら危なかったぜ。あ、まあ他と同じく幽世の聖杯(セフィロト・グラール)で生き返らせれば良いか」

 

よく分からない事をブツブツ言っている一誠に、荒く息を吐きながら戦兎たちはいた。

 

あと一瞬遅かったら死んでいただろう。それくらいヤバい一撃だ。

 

「バカな……デュランダルをコピーした上に使えるだと!?コピーとは言え、デュランダルだ!誰でも使える代物じゃない!」

「あぁ、俺って無限の才能があるからね」

 

と一誠はいい、デュランダルを消す。

 

「さてさて、せっかく来たんだ。少し遊んでいくか。この時点でのグレモリーチームの強さを見ておくのも悪くないしな」

『っ!』

 

全員が身構える。正直、底が知れない強さを、皆は感じていた。だがここで逃げるには隙がない。すると、

 

「お前が兵藤 一誠か」

「あん?おぉ!お前は!!」

 

一誠は、後ろからの声に振り替えると、そこにいたのはアザゼルとサーゼクス。その二人が一誠を睨み付けていた。

 

「アザゼルにサーゼクス!いやぁ、今日はたくさんキャラに会えるなぁ」

「なに言ってやがんだ?」

 

アザゼルは怪訝な顔をしながら居るとサーゼクスが、

 

「先ほど凶悪なオーラを感じた。それはすぐに収まったが、異常事態だと判断して、オーフィスを無視して来てみたが正解だったみたいだね」

 

そう言い、サーゼクスは一誠に向けて殺気を放つ。

 

「ふむ、折角だ。原作最強クラスの実力を見ておくのも悪くない」

 

と、一誠は今度は槍を取り出し、サーゼクスに向けて、

 

黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)か……」

「そう、聖遺物にして、最強の神滅具(ロンギヌス)。とは言え、これ一つじゃあんたら相手にはちょっとおっかない。つうわけで」

 

一誠は言いながら、更に黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)と呼ばれた槍の周りに、十字架状の紫色の炎が現れ、黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)の切っ先に纏わせる。

 

「今度は紫炎祭主の磔台(インシネレート・アンセム)か……神滅具(ロンギヌス)のバーゲンセールかよ」

 

そう言いながら、アザゼルは光の槍を作り、サーゼクスを見る。

 

「気を付けろよ。戦兎やタンニーンの情報が正しければ神滅具(ロンギヌス)だけじゃねぇ。神器(セイクリットギア)も多数もってんぞ」

「分かっている」

 

軽く情報を擦り合わせ、アザゼルとサーゼクスは同時に一誠に攻撃を放つ。

 

それを一誠はヒラリと空に飛び上がって回避しながら、避けていく。出してる翼は確か白龍皇の光翼(ディバインディバイディング)とか言う奴だった筈だ。

 

「戦兎……彼を知ってるの?」

 

そんな中、リアスたちが来て説明を求められた戦兎は、

 

「冥界で修行してた時に一度だけ現れましてね。俺とタンニーンのオッサン二人掛かりでも勝負にすらなりませんでしたよ……」

「タンニーンもいて?」

 

リアスは信じられないといった表情になる。正直戦兎自身も、あれは夢だったと思いたいくらいだ。

 

「あいつの言葉が正しいなら、13の神滅具(ロンギヌス)と、名前と能力が分かっていればどんな神器(セイクリットギア)でも作れるらしいです」

「なんかの冗談……って訳じゃないよね?」

 

祐斗は表情をひきつらせるが、冗談ではない。つうか冗談ならどれだけ良いことか……

 

「ですがアザゼル先生とサーゼクス様の二人を一人で相手にしていると言うのに全く引いてないなんて……」

 

そう言う朱乃の言うとおりで、先程から空中では戦兎たちでは既に、眼にも写らぬ領域で戦いを繰り広げていた。

 

「お前……人間だよな?」

 

アザゼルはそう聞くアザゼルに、一誠は当たり前だと笑って答える。

 

確かに、人間の中にも英雄と呼ばれて伝説に残る者もおり、その子孫は悪魔に匹敵する身体能力を持っていることは珍しくない。

 

だが、こいつはそう言う感じではない。と思っていると、

 

「ただまぁ……自分の移動速度を上昇する系統の神器(セイクリットギア)や、腕力アップ、後は頑丈さを上げるって言うのは神器(セイクリットギア)としては珍しくないだろ?そう言う系統の神器(セイクリットギア)を100位作って置けば悪魔とか人外連中とほとんど変わらない肉体に出来るんだぜ?後は幽世の聖杯(セフィロト・グラール)の力の応用で年も取らないしな」

「なんでもありかよ……」

 

とアザゼルはため息くを吐くと、持っていた人工神器(セイクリットギア)禁手(バランスブレイカー)を発動し黄金の鎧を纏うと、

 

「っ!」

 

瞬時に一誠との間合いを詰め、胸を貫く。

 

「ごほっ!」

「幾ら力が強くても、すぐそうやって気を抜くんじゃ意味がねぇぜ」

 

とアザゼルは胸から槍を引き抜き蹴り飛ばす。だが、

 

「いてて、やべぇやべぇ。サーゼクスの滅びの魔力ばっか警戒してもやっぱダメだよなぁ」

 

そう言って一誠の胸はグチュグチュ音をたてながら治っていき、あっという間に元通りだ。

 

「成程……一撃で消し飛ばさなければならぬようだ」

 

そう言ってサーゼクスは滅びの魔力を溜める。それを見た一誠は、

 

「出来るかな?確かにあんたの滅びの魔力は強力だ。しかも細かい出力の調整もできる。ただ俺を消し飛ばすにはどれ程溜める?そして……周りに被害を出さずにできるかな?」

 

サーゼクスは答えない。だが沈黙は肯定だった。先程のクルゼレイと同じようにやることはできる。だがそれではあいつを倒しきれないだろう。この男の回復力はかなり早い。自分が滅ぼしきるほうが若干だろうが、心臓を貫かれても平気な男がその隙を大人しくしているとは思えない。だが余りに強力な一撃を放てば……

 

と視線の先にいるのは妹のリアスと眷属達。魔王として、身内を犠牲にしてでもテロリストの首領を討つのは責務かもしれない。だが同時に妹としてではなく、未来有望な悪魔を犠牲にするのは憚られた。

 

すると、

 

「とはいえだ。流石ラスボス系教師と原作最強クラス。ちぃっとこのままでは骨が折れる。と言うわけで……」

 

そう言って一誠は懐から色や装飾は所々違うものの、

 

「ビルドドライバー!?」

 

そう、ビルドドライバーだ。戦兎が驚愕するほどそっくりなそれを腰に装着。アザゼルやサーゼクスも驚く中、一誠は今度は赤い……だが戦兎のラビットボトルのよりも暗い赤色の、ヘビの顔が掘られて、口の部分が動くボトルと、真っ黒なボトルを取り出す。そしてそれをベルトに挿した。

 

《コブラ!ライダーシステム!エボリューション!》

 

次に一誠はレバーを回し、両腕を前に突き出すようなポーズを取ると、

 

《Are you ready?》

「変身」

《コブラ!コブラ!エボルコブラ!フッハッハッハッハッハッハ!》

 

変身を完了した一誠は、星空そのような模様が散りばめられた、赤と青と金色の姿に変わった。

 

「無限に進化し、無限の強さを持つ。故にエボル。仮面ライダーエボルだ」

 

そう言って一誠は軽くグーパーして確認。

 

「しかしこの世界にも仮面ライダーって概念があるとはな。まあ俺が知ってるのはゴーストまでだったけど、まぁなんか次は変なずんぐりむっくりした変な格好の弱っちそうなライダーだったか」

 

まあ見れなかったけど、と言いながら一誠は、

 

「さて、軽く準備運動と行くか」

 

そう言った一誠は、瞬時に姿を消すと次の瞬間にはアザゼルの前に現れ、

 

「なにっ!?」

「ふん!」

 

ドス!とアザゼルの胸を殴る。その一撃が重く、アザゼルの鎧にヒビが入るほどだ。

 

「ごは!」

「アザゼル!」

 

強烈な拳に後ろに吹っ飛ばされたアザゼルを見て、サーゼクスは威力抑えつつ滅びの魔力を放つ。だが、

 

《Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Transfer!》

 

左手に赤龍帝の籠手(ブーステット・ギア)を出した一誠は、黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)に力を移して、オーラを増幅させると、なんとサーゼクスの滅びの魔力を叩き切ったのだ。

 

「すげぇだろ?変身すれば赤龍帝の籠手(ブーステット・ギア)の倍加を十秒待たなくても良い。実質禁手(バランスブレイカー)状態に持っていけるんだ。まぁ別に禁手(バランスブレイカー)して更に力を上乗せってのをしても良いんだけどな」

 

等と言って、笑う一誠にサーゼクスは眉を寄せる。今まで色んな者と戦ってきた。だが正直、ここまで読めない力は初めてだった。なんと言うか……直感的になのだが、中身がないのだ。強い。底無しに強い。だがサーゼクスの本能は、この力に中身がないことを見抜いた。まるで、おもちゃを与えられた子供なのだと。

 

「ほらほら今度はこっちからいくぞ!」

 

一誠は黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)に紫色の炎を纏わせ、突きを放った。それをサーゼクスは回避し、滅びの魔力を撃つが、どれも弾かれてしまう。そこに、

 

「おらぁ!」

「っ!」

 

吹っ飛ばされたアザゼルが、特大の光の槍をぶん投げ、それを一誠が避けた。しかし、

 

「隙ありだぜ!」

「なに!?」

 

いつの間にか光の槍を先回りしたアザゼルは、一誠に蹴りを叩き込み吹っ飛ばす。

 

「サーゼクス!」

「分かっている」

 

アザゼルは蹴っ飛ばした際に、きちんと戦兎達が居ない反対側に蹴っ飛ばしていた。それを見たサーゼクスは既に魔力を溜め、全力……には程遠いが、それでも並の悪魔が何百人集まろうが届かない魔力の一撃を放った。だが、

 

《Ready Go!》

 

一誠はレバーを回し、体勢を整えると右足を振り上げた。

 

《エボルテックフィニッシュ!》

「はぁ!」

 

その一撃は、そのままサーゼクスの滅びの魔力と激突。そして、その一撃によりなんと滅びの魔力は消し飛んでしまったのだ。とはいえ、

 

「いっつぅ……」

 

消し飛ばしたのは良いものの、足を痛そうに一誠は抑える。

 

「まぁ、流石にこれ以上はじり貧か」

 

一誠がそう言うと、周りに霧が出現し、

 

「つうわけで、また会おうぜ。チャオ」

 

それをサーゼクス達は敢えて素直に見送る。これ以上は本気になることを覚悟しなければいけない。それを悟っていた。

 

そして一誠は消える。

 

その場を静寂が支配し、今度こそ戦いが終わったことを認識した。

 

こうして、短くも濃厚な戦いは終わりを告げる。だが戦兎達も実感していた。まだ一誠との戦いは……始まったばかりなのだと、



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戦いの後

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「ディオドラ達との戦いを終え、束の間の平和を味わっていた俺たち」
龍誠「しかしそれにしてもほんと最近の事件遭遇率やばすぎじゃね?」
ディオドラ「ほんと大変だね」
戦兎「お前も犯人の一人だけどな!?とまあそんな感じで第50話スタート」


「まぁ色々話したいことはあるけども……今日は何の遠慮も要らないわ!倒れるまで食べて食べて食べまくって!アザゼル先生を破産させるわよ!!!」

『おぉおおおおおお!』

「おぉおおおおおお!じゃねぇよ!?」

 

さて、ディオドラの一件から一週間。無事に皆帰還し、今日は体育祭も終えた。

 

アーシアと龍誠の二人三脚コンビは、ぶっちぎりで一位になったり、リアスと朱乃の徒競走が思いの外盛り上がったりと、楽しい行事になった。だが、

 

「はぁ……」

 

戦兎は一人どんよりと重たい空気を纏う。それはそうだろう。今日戦兎が参加したコスプレリレー。服は特に気にしていなかったのだが、それが失敗だった。なにせあの悪のりの化身みたいな藍華である。彼女が普通のコスプレなどさせる訳もなく、

 

「いやぁ、戦兎ちゃんはウケたな」

「やめろ」

「えぇ~。戦兎ちゃん凄い似合ってたよ?」

「その口縫い合わせるぞ」

 

龍誠とイリナがニヤニヤしながら言ってくるのを、戦兎はギロッと睨みながら牽制する。

 

そう、戦兎が今日着せられた衣装は何と、魔法少女ミルキースパイラル7オルタナティブのコスプレであった。

 

競技直前になって渡された衣装に、勿論抗議したが、今さら変更はできないと言われて着て出場。それはもう好評で、まぁ顔立ちは綺麗な戦兎の女装が似合わないわけがなく、男女ともに大歓声。その分戦兎は大ダメージであった。しかも決め台詞まで言わされて……

 

「もう学校いきたくない……」

「まぁまぁ、頑張りましょ?」

 

と小猫に慰められつつ、オカルト研究部の皆で、お祝いとご苦労様を兼ねて皆でアザゼルの奢りで焼き肉である。

 

まあ囮にされたお返しと言うことで、飯くらいは奢れと皆で詰め寄ったのだ。それをアザゼルは快諾……したのをちょっと後悔した。

 

「お前らなぁ……幾ら奢りだからって高級焼き肉店を遠慮なく予約するかぁ?」

 

何てぶつぶつ言う。所謂ここは食べ放題メニューがない、お高い店と言う奴だ。

 

まあ皆知らん顔で好き勝手頼んでいる。男性陣と一部の女子はとにかく肉派だが、女性陣はサイドメニューや、意外と高い店と言うのにデザートメニューも豊富な為かそっちに目がいっている。

 

なのでそれぞれ今日はスポンサーもいるし、何の心配もなく注文していた。そんな様子を見ながらアザゼルは、

 

「はぁ……せめて店くらいこっちで予約するべきだった」

 

何てため息を一つ。正直、今回のは仕方なかったなんて言い訳を、こいつらにするつもりはない。テロリストに対する対応として、自分は堕天使の総督と言う立場上当然の決断だった。そう思っている。

 

だがこいつらが無事に帰ってきたとき、心の底からホッとしたのも事実だ。自分で危険な目に遭わせといて、それでも安心した。我ながら勝手だが、こいつら無事で本当によかった。

 

それと皆には話したが、兵藤一誠と言う人間について、堕天使の情報網で調べたのだが、駒王町どころか日本には兵藤一誠という男がいないことが判明した。生まれたとかそう言った痕跡もない。まぁあれほど神滅具(ロンギヌス)神器(セイクリットギア)を持つ男だ。痕跡を消すくらい簡単だろう。記憶を操作したりする神器(セイクリットギア)はそんなに珍しくない。

 

まあ精々兵藤と言う中年の夫婦はいたが、何てことはない普通の夫婦だった。まあ奥さんが子供ができにくい体質だったらしく、子供はいないが睦まじく幸せそうな夫婦だ。きっと子供がいたら大切に育てるだろう。間違いなく幸せな子供だ。

 

何て思っていると、ふとアザゼルは外から気配を感じ、一声かけて外に出る。そこに、

 

「よう、ヴァーリ」

「元気そうで何よりだ。アザゼル」

 

立っていたのはヴァーリだ。暗闇の中、静かに立っていた。そしてアザゼルは、

 

「ありがとなヴァーリ」

「何の話だ?」

 

惚けてみせるヴァーリに、アザゼルは笑って答える。

 

「俺のためだろう?態々戦兎に警告したり、アーシアを助けてくれたのは」

「……」

 

アーシアになにかがあれば、あいつらは自分を絶対に許さない。いや、誰かが欠けても許さなかっただろう。それだけじゃない。他の勢力から相当突き上げられた筈だ。そう言うとヴァーリは、

 

「あいつらが許してもお前が自分を許さないだろう?昔からそうだ。背負わなくても良い他人のことまで背負い込んで勝手にヒィヒィ言っているのはな」

「お節介焼きめ」

 

アザゼルが茶化すように言うと、ヴァーリも苦笑いしながら肩を竦め、

 

「そんなことはない。ただまぁ……育ての父(お前)に似たのかもな」

 

そんなことを言うヴァーリに、アザゼルは少し眼を細め、

 

「まだあの男を追うのか?」

「……」

 

そんな言葉に、ヴァーリは少し表情を曇らせながらも、

 

「当然だ。あの男がいる限り……俺の戦いは終わらない」

「見つけて殺して……そしたらどうすんだ?」

 

さてね、とヴァーリは少し遠くを見て、

 

「みーたんのライブを追い掛けるか……まぁあの男はしぶといからな。倒すにも骨が折れそうだし、死んでるかもな」

 

そう言いながら背を向ける。それに対して思わずアザゼルは、

 

「まだお前は引き返せる。禍の団(カオス・ブリゲード)に所属っていっても実際起こした問題っていったら駒王学園の襲撃の時に俺をぶっとばしたくらいだ!俺も一緒に頭下げてやる!アイツは……お前の祖父は禍の団(カオス・ブリゲード)に関わってなかった。あそこの黒幕は兵藤一誠だ!ならあそこにこだわる必要なんてない!お前だってわかってるだろヴァーリ!復讐に生きれば、待ってるのは身の破滅だ!残るのは無なんだよ!」

「……それも良いかもな」

 

無くなれば良い。何もかも……母を殺した父も、それを背後から唆してその姿を笑っていた祖父も、それから守れなかった弱い自分も……全て虚無になれば良い。そう言い残し、ヴァーリは消える。それを見送る事しか出来なかったアザゼルは、思わず壁をぶん殴る。

 

堕天使と言う種族は人間より遥かに力がある。そのため壁が拳の形に陥没するが、アザゼルは手に爪が刺さり血が出るほど強く握る。

 

「クソッタレ……」

 

結局、自分はなにもできてやしない。ヴァーリの復讐心は何処かで収まったんじゃないか、そう思う自分がいた。だが結局何も変えられてない。天才と言われようと、堕天使の総督だろうと、救いたいと思ったものを救えず、いかに自分が無力か思い知る。

 

今回だって戦兎達を囮に使わなければならなかった上に、犠牲にしないと思いながらもヴァーリがいなければアーシアは犠牲になっただろう。もしかしたら暴走した戦兎に他の誰かが犠牲になったかもしれない。結局、自分の見通しの甘さが招いた事だ。

 

昔からそうだ。何かして、それが裏目に出て被害が出る。今回は良い方だ。なにせ取り返しの付かない事態になったことだってあるのだから……

 

だが、これからもっと沢山の事態が起きるだろう。特にあの兵藤一誠……あれは何者なのかわからないがこちらの状況をよくわかっているらしい。今回の一件だってドタバタに乗じて姿を消した三大勢力のやつらが結構いる。恐らく内々に禍の団(カオス・ブリゲード)にスカウトされてたんだろう。

 

どうにかしなければ……まずはアイツらの強化だろう。今も十分強い。だがこれからのことを考えれば強すぎると言うことはない。それにしても……とアザゼルは思い出す。

 

龍誠の変化。直接見た訳じゃないが、変な変化をしたらしい。戦兎いわく、兵藤一誠の赤龍帝の籠手(ブーステット・ギア)禁手(バランスブレイカー)に似ている姿になったそうだ。

 

龍誠はただの人間だったはずだ。勿論何かしらの神器(セイクリットギア)はない。だが、その変化は話に聞いても普通じゃない。

 

(とにかく血液検査の結果を待つか)

 

そう思い、アザゼルは店に戻る。とにかく色々考えなければならないことが多いが、取りあえずはアイツらとの飯を楽しもう。それから警備案と禍の団(カオス・ブリゲード)への対策。龍誠の検査……あと今回捕らえたディオドラから色々聞けるはず。さてさてやることが多すぎだ。だが弱音を吐く暇はない。

 

今度こそ間違えない。間違えるわけにいかない。そう覚悟を決めて席に戻ると、

 

「え?」

 

アザゼルがあんぐり口を開ける。そこにいたのは、

 

「あらアザゼル先生。お疲れ様です」

 

そう言ったのはソーナ。と言うかソーナだけではなく、匙以外のシトリー眷属も、普通にいた。何故?と首をかしげていると、

 

「私が呼んだのよ」

「呼ばれました」

 

と言うのはリアスとソーナ。匙君は?、家の用事で……とそのまま別の話題にシフトする二人を見ながら、アザゼルは周りを見回す。

 

グレモリーチームとシトリーチームが入り乱れ、次々注文する。それから皆でこっちを見て、

 

『ごちになりまーす!』

「……も、もう勝手にしろー!好きなだけ頼みやがれー!」

 

最早やけくそ。アザゼルが叫ぶと皆も遠慮なく(最初から無かったが)注文を再度再開。因みにその後、堕天使の本部に経費から払えないかと無心したが、副総督であり先日悪魔の女性と結婚したシェムハザにダメだと言われてしまうアザゼルの姿があったらしい。まあそれが本当かは謎である。




コメントで前々から貰ってたのですが、戦兎のヒロインは小猫だけの予定でした。ただ結構他のヒロインはいないのかって聞かれるので、皆さん的にはどっちが良いんですかね?ヒロイン追加するとしたら多分黒歌が一番書きやすいかなっては思いますが、アンケート機能で募集しますので、どうなのかお聞かせ願いたい。まあ本音を言うとついでにアンケート機能を使ってみたかったのですじゃ。期限はそうだね……明後日くらいまで様子見ながらって感じですかな。


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第七章 放課後のラグナロク
約束


前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「ディオドラとの一戦や体育祭も終わり、ごく普通の生活を取り戻していた俺たち」
龍誠「しかしホント平和だなぁ……こんな生活がずっと続けば良いのにな」
戦兎「人はそれをフラグと言う……ってな感じの51話スタートです!」


「ふははははは!その程度か!仮面ライダー!」

『くっ!』

 

テレビの画面の中には、戦兎に似た男と龍誠に似た男の二人が、黒い仮面をつけた男と対峙していた。

 

仮面の男に苦悶の表情を浮かべるが、二人は膝に力を込めて立ち上がる。

 

「まだだ、俺たちはまだ諦めない!」

「その通りだ!俺達は皆の明日の為に負けるわけにはいかねぇんだよ!」

 

そう言って二人はビルドドライバーを装着すると、

 

『変身!』

 

ビルドとクローズに変身した二人は、相手に走り出す。先程とは違い追い詰めていく二人に仮面の男は、

 

「くっ!なんだこの強さは!」

「言った筈だ!俺たちは皆の明日を守る!」

「ラブ&ピースを胸にな!」

 

そう言って二人はレバーを回し、腰を落とすと、

 

『勝利の法則は決まった!』

 

何て言うテレビを、戦兎達は龍誠達が住む豪邸にて見ていた。

 

「しかしそっくりな人をよく探したもんだなぁ……」

 

戦兎が呟くと、龍誠も頷く。この冥界でまだ始まったばかりだと言うのに、既に視聴率が50%オーバーの、大人から子供まで大人気の番組となった、【冥界ヒーロー・仮面ライダービルド】は戦兎達がモデルとなっており、その為ビルドやクローズに変身しているには本人ではない。いやまあこの間発表された際のPVは戦兎達が本人でやっているが。だが龍誠は少し不満があるようで、

 

「でもよう、何か戦兎って言うかビルド目立ってねぇか?俺だって最初から登場だぜ?」

「そりゃお前、クローズ関連よりビルド関連の方がアイテム多いだろう?」

 

そうだな、と龍誠はアザゼルに頷く。なにせクローズ単体のアイテムと言うと、クローズドラゴンとビートクローザー位なものだ。一応ドラゴンフルボトルとロックフルボトルも龍誠が持っているが、まぁあれは戦兎も使えるので除外。それに引き換え、

 

「フルボトルとドリルクラッシャーとホークガトリンガーと四コマ忍法刀とカイゾクハッシャーとスパークリング……こんだけビルドはあるんだ。関連グッズだけで売り上げがもう差が出るだろ?」

「大人の事情かよ!」

 

戦兎!俺にも強化アイテム作ってくれ!と泣きつく龍誠に戦兎は、

 

「お前が目立つと俺の主人公感が無くなるからやだ」

 

と一言言って画面を見る。既にエンディング曲が流れており、皆リラックス体勢。因みにこのエンディングやオープニングを歌ってるのは戦兎だったりする。

 

「それにしても意外な才能だったわね。戦兎が歌上手いなんて」

「そうっすかね?」

 

因みに戦兎はギターも上手い。まぁ何気に人気があるのは、オープニングでリアス達をモデルにしたキャラとジャンプしたりするシーンなのだが……

 

「せっかくだから龍誠君も歌えばよかったのにね」

「勘弁してくれ、歌うのは苦手なんだよ……」

 

と、自称音痴の龍誠は祐斗に答える。とは言え結構上手いのだが、人前で歌のには抵抗があるらしい。

 

その為戦兎一人で歌ってるのだが、結構こっちも好評だ。少ししたらCD化も予定されている。

 

そんな中、

 

「でも、まさか昔三人で見てたヒーロー物に戦兎君達が出るなんて感慨深いわね」

 

そう言ってきたのはイリナだ。それに戦兎は、

 

「そう言うけど、一番楽しんでたのはお前だった記憶があるぞ?」

「もう!そういうのは覚えてるんだから!」

 

と言ってペシペシ叩いてくるイリナに戦兎が笑うと龍誠も笑いながら、

 

「そうそう、あの頃イリナは男だと思ってたしな」

「ほんとひどい!」

 

するとそんなイリナに龍誠が、

 

「でもまあ、それが今じゃこんな美少女だってんだから世の中どうなるかわかんねぇよなぁ」

「……」

 

何て言うもんだからイリナの顔は耳まで真っ赤。そんな様子に龍誠は首を傾げる。

 

ホントそう言うところだぞ……と戦兎は、ため息一つ。空気だって一気にピリピリし始めた。

 

すると、

 

「イリナちゃんばっかりズルいですわ」

「うぇ!?」

 

突然背後から抱き締められた龍誠は変な声を出しながら振り替えると、そこにいたのは朱乃だ。

 

「朱乃さん?何か用ですか?」

「えぇ、ねぇ龍誠君。約束は何時になったら果たしてくれるんですの?」

 

約束?と龍誠は疑問符を浮かべる。それを見た朱乃はプゥッと可愛らしく頬を膨らませると、

 

「で・え・と。ですわ」

「でぇと?」

 

次の瞬間、龍誠の脳裏にディオドラの時の一件がフラッシュバックし、

 

「あぁ!あのときの!?いやでもあれは……」

「嘘なの?」

 

あれは戦兎がと言おうとした龍誠だが、朱乃の問いかけに言葉を詰まらす。あれは戦兎が勝手に言ったことだ。だが、この悲しそうな顔は不味い。非常に不味い。全くもって逆らえない。といった感じで、

 

「じゃ、じゃあ次の土曜日に……」

「やったぁ!」

 

朱乃はそう言って龍誠を抱き締める。そして部屋の空気は氷点下に……

 

「はわわ」

「ほれギャスパー。俺達は違う部屋でゲームでもするか」

 

顔を青くしてガタガタ震えるギャスパーを、戦兎は連れ出しそれに小猫がついていく。

 

最早恒例となった流れであった。そんな光景を見ながらアザゼルは、

 

(最近禍の団(カオス・ブリゲード)の動きが静かすぎる)

 

と、思考を張り巡らせた。

 

前回のレーティングゲーム襲撃以降、何故かパタリと世界各国で起きていた禍の団(カオス・ブリゲード)のテロ行為は無くなった。

 

考えられるのは、あれは禍の団(カオス・ブリゲード)の構成員に対して決起を促す合図だったこと。だがそう考えると、無くなった理由がわからない。自分が禍の団(カオス・ブリゲード)を率いていたら、小さくてもテロ行為の手は止めない。

 

手を止めればそれだけ相手に準備をさせる暇を作るからだ。だがそれがない。となれば考えられるのは、

 

(でけぇ一発に向けて準備をしている……か)

 

となれば今のうちにこちらも準備を済ませたい。出来る限りの……と言う注釈は付くが、とにかく禍の団(カオス・ブリゲード)の……いや、兵藤一誠の驚異はデカイ。今の戦兎達では、変身していない状態でも勝負にならないし、変身すれば自分でも恐らく一対一では危険だ。相手の動きや戦略を研究するのは得意だが、それを簡単に吹き飛ばす圧倒的パワー……自分とアイツでは人間で言うと巨像と蟻ぐらいスペックに差が出てしまう。

 

それだけの差を埋める策略はかなり厳しい。となれば質も量も兼ね揃えた軍勢を作るしかない。

 

「となればまずは北欧だな」

 

そんな風にアザゼルが呟く一方では、

 

『はぁ……はぁ……』

 

多数の人間達が肩で息をする。それを見据えているのは一誠だ。一誠は自分の目の前に来た男の胸に手を当て、

 

赤龍帝からの贈り物(ブーステッド・ギア・ギフト)

《Transfer!》

「ぐぁああああああ!」

 

力を流し込み男は地面を転がる。だがその男は、突如全身を黒い影が被い、鎧のように変わる。

 

「お疲れ様。お前も禁手(バランスブレイカー)に至ったな。まぁ、今んとこ全員至れてるけどさ」

 

そう言いながら少し一誠は伸びをする。この場に転がる者達は人間だ。人間といっても全員神器(セイクリットギア)を持つ者。神器(セイクリットギア)を持ってしまったゆえに歪んでしまった者達だ。それを一誠は集め、無限の才能と神器創造(セイクリットクリエイター)、そして赤龍帝の籠手(ブーステット・ギア)を合わせて使うことで強引に、だが安全に禁手(バランスブレイカー)に至らせていた。

 

「さてさて、これだけ禁手(バランスブレイカー)に至らせておけば良いだろう。あとは各自で禁手(バランスブレイカー)に慣れておけ」

『はい!』

 

そんな面子を見ながら一誠はその場を後にする。

 

(時期的に考えればあそこの辺りか……なら禍の団(カオス・ブリゲード)が関わる必要はないな。原作では禁手(バランスブレイカー)に無理矢理至らせるために戦わせてたがその必要はないし)

 

そう思いながら一誠は顎を撫でた。

 

(目指すは京都……かな?)




先日のアンケート……想像以上に反響があり、しかも想像を上回る差が付きましたね……驚きつつここまで差が出るなら書くしかないですね~。


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お義父さん

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「冥界にて仮面ライダービルドのほうそうが始まり、束の間の平穏の中楽しんでいた俺達。だが俺と同時に龍誠は姫島先輩とデートをする!」
龍誠「なぁ戦兎。取り敢えずいつも通りスカジャンとジーンズで良いよな?」
戦兎「アホか!お前デートなんだからもう少し小綺麗にしていきなさいよ!どうせあの青い龍の模様が入った趣味の悪いド派手なやつだろ!?」
龍誠「趣味が悪いってなんだよ!それいったらお前なんていつも同じTシャツにコートとジーンズじゃねぇか!」
戦兎「俺のは合理的な判断の元そうしてるだけだ!」
匙「つうわけで収拾がつかなさそうなので52話スタート!」
戦兎「俺の台詞がぁ!」


「ふむ……」

 

龍誠はスマホを弄りながら、朱乃と待ち合わせをしている、彼女の実家の神社の前にいた。

 

色々思うところはあるが、元々は戦兎の口からの出任せであっても、あれだけ自分とのデートを望んでくれるのなら答えたい、と割りと変なところで真面目な龍誠は思っていた。

 

しかし少し早く着きすぎてしまったかもしれない。アザゼル曰く、デートの約束に遅刻するような男は空き缶ほどの価値もない。とのことなので、それにならって早めに来たが、少し焦りすぎたか?とそこに、

 

「お待たせ、龍誠」

「あぁ、朱乃さ……ん?」

 

龍誠は声の方を振り向き、思わず声が止まった。それはそうだろう。朱乃の服装はいつも少し大人びた格好が多い。それが似合うのが朱乃なのだが、それが今回は年相応、いや……少し落とした位の服装だ。それが今までにはないギャップを生み、 思わず息を飲む。綺麗と言うよりは可愛いだ。

 

「へ、変かな?」

「い、いや凄く似合ってます」

 

何か口調も少し何時もと違うし、このままだと心臓が持ちそうにない。すると朱乃はスッと龍誠の腕に抱き付くと、

 

「行こっか」

「は、はひ……」

 

ムニュムニュと腕に当たる柔らかい物……それがなんなのかは想像にお任せするとして、こうしてデートは始まったのだった。因みに、

 

「あ、朱乃ったらあんなにくっついて!」

「ズルいです……」

「成程……ああいうのでいくのもありか」

 

と上から順にリアス・アーシア・ゼノヴィアを筆頭に、こんな感じでいつもグレモリー眷属も遠くから監視もとい、ストーキング……でもなく見守っているのはまあ余談。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まあデートとは言え特別なものじゃない。一緒にご飯を食べたり、服を見て「これ似合う?」なんて言われたり、ゲーセンでプリクラ撮ったり、おやつにクレープを食べさせあったりと極々ありふれたものだと思う。

 

正直周りの嫉妬が混じった視線は、感じの良いものではないが、それでも朱乃とのデートは順調で楽しいものだっった。

 

まぁ、背後で覗き見してるオカルト研究部の皆には少し気になるが……すると、

 

「ねえ龍誠」

「ん?」

 

ギュっと朱乃は龍誠の腕に抱きつく腕の力を少し強めながら、

 

「逃げちゃおっか」

「え?うぉ!」

 

グイッと朱乃は龍誠の腕を引き走り出す。腕力だけなら龍誠の方が上だが、突然のことにそのまま引きずられる。それを後ろでは、

 

「に、逃げたわ追うわよ!」

 

とまあ後ろからガヤガヤ聞こえたが、二人でしばらく走る。龍誠は元より悪魔である朱乃も、身体能力は非常に高い。とは言え後ろの面々も高いが、こっちは更に先に走りだし、スタートダッシュも決めている。加えて路地裏をグルグル回れば、案外あっさり振り切れる。

 

(こりゃ後で怒られそうだなぁ……)

 

少し息を整えながら、龍誠は頬を掻きつつ周りを見て思わず、

 

「げっ!」

 

と声を漏らす。それはそうだろう。なにせ目の前にあったいかにもな看板。所謂これはラブホ街と言われる場所で、流石に男女でいる場所ではない。そう判断し、

 

「あ、朱乃さん!すぐここを離れましょう!」

 

気まず過ぎる!そう思いながら朱乃の手を引く龍誠……だったが、朱乃が動かない。どうしたのかと朱乃を見ると、

 

「……良いよ」

「へ?」

 

朱乃は覚悟を決めたような表情で龍誠に言い、一瞬何が良いのかわからず龍誠は首を傾げると、

 

「龍誠が嫌じゃないなら……ここでも良いよ」

「っ!」

 

この場における、ここと言うのはラブホの事だと思う。そこまで鈍くない……正直勘違いじゃなければとは思うが、それでもこの雰囲気。良いのだろうか?そう思うと、思わずゴクリと生唾を飲んでしまう。

 

このまま遂に童貞を卒業するのだろうか?確かに学校でも、夏休み以降そう言った経験を済ませた男子が増えた。いや別に対抗心を燃やしてはいないが、朱乃からの誘いだ。とびっきりの美少女である朱乃からの据え膳……食わないのは男が廃る処か男失格なんじゃないか?なんて思ってしまう。

 

「じゃ……」

 

じゃあ、と口を開きかけたその時、

 

「なんじゃ、こんな真っ昼間からお盛んじゃのう。クローズ……いや、万丈 龍誠じゃったかの?」

『っ!』

 

突然掛けられた背後からの声に、龍誠と朱乃は慌てて見ると、

 

「あぁ!確かディオドラの時の変な爺さん!」

「こら!この方は一応これでも北欧の主神・オーディン様です!」

 

お前今一応これでもって言いよったな?とオーディンはジト眼で、隣に立っていた龍誠達とそこまで歳は変わらないと思われる、真面目そうなスーツを着た女性に言う。

 

だが朱乃はそっちではなく、もう一方の筋骨隆々とした、ガタイの良い男性を見て表情を強ばらせていた。

 

向こうの男性も、少し呆然としていたがすぐに正気に戻り、

 

「朱乃……何故お前がこんなところに!」

 

と言うやいなや朱乃の腕を取り、

 

「こんなところにいてはいけない!こっちに来なさい!」

「ちょ!離して!」

 

引っ張っていこうとする男性。だが同じく正気に戻った朱乃は慌てて抵抗する。

 

「やめて!」

「おい!嫌がってんだろ!」

 

そう言って龍誠は男の腕を掴み、ギリッと握って朱乃から引き剥がす。

 

「どけ!貴様には関係ない!」

「あんたこそ朱乃さんがどこにいようと関係ねぇだろ!」

 

いやまあ強ち無関係ではないがのう……とオーディンが呟き、龍誠は首を傾げる。そして、

 

「こやつの名前はバラキエル……と言えば分かるかの?」

 

最初龍誠は分からなかった。だがどこかで聞いたような……と普段の記憶力からは考えられないほど脳ミソを働かせ、記憶の底から引っ張り出した。そう、バラキエルは……

 

「もしかして朱乃さんのお父さん!?」

「貴様にお義父さん等と呼ばれる筋合いはないわぁあああああああ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほっほっほ。中々豪華な屋敷じゃのう」

「ありがとうございます」

 

そう言ってリアスは突然やって来たオーディンにお茶を出しながら、頭を下げる。何時もならお茶は朱乃の仕事だが、バラキエルとの出会い以降何時もの笑顔すら消え失せている。

 

「それで?何故北欧の主神であるオーディン殿が来てるのかしら?アザゼル先生」

「ん?おぉ、お前らにはまだいってなかったが、この度俺達三大勢力は北欧とも手を組むことになった。理由は言うまでもないと思うが、禍の団(カオス・ブリゲード)に対抗するためだ。お前らも知っての通り、禍の団(カオス・ブリゲード)は今や世界のあらゆる神話体系にとっての驚異だからな」

 

神滅具(ロンギヌス)を一人で独占してる人間など、どの神話体系にとっても危険な上にテロリストじゃからのう。とオーディンは言いながら、

 

「と言うわけでの、その辺の話し合いのためにこのロスヴァイセときたのじゃよ」

「よろしくお願いします」

 

そう言って礼儀正しく頭を下げるロスヴァイセを尻目にオーディンは、

 

「してアザゼルよ。アレの準備はできてるのかの?」

「おう、バッチリだぜ?」

 

アレ?と二人の会話を聞いて皆は首を傾げる。するとオーディンはニッコリ笑って、

 

「一度やってみたかったんじゃよ。芸者遊び」

「良いねぇ良いねぇ。他にも良い女がいる店知ってっからよ」

 

そいつは楽しみじゃのう!とアザゼルとオーディンは仲良く肩を組んで部屋を出ていき、

 

「ちょっとオーディン様!」

 

とロスヴァイセは追いかける。それを呆然と皆は見送り、

 

「取り敢えず、解散しましょうか」

 

はい……とリアスの言葉を皮切りに、その場は解散となったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ん?)

「朱乃、少し話しがしたいのだが」

 

解散の後、龍誠は部屋に戻るべく階段に足を掛けた。すると階段の曲がり角の方から、バラキエルの声が聞こえた。

 

「気安く名前を呼ばないで」

 

話し相手は朱乃らしい。だが朱乃の声は今まで聞いたことがないほど低く、冷たい声だ。

 

「と、とにかくだ。その……お前と万丈 龍誠は付き合っているのか?」

「っ!」

 

確かにラブホ街に二人でいたらそう言う関係に見えるかもしれない。いやまあ全く意識してないわけではないが……だが朱乃は、

 

「貴方に関係ないでしょう?」

「だ、だがな?私は心配なんだよ。あれくらいの年の男なんて猿もビックリなものだ。お前が変なことをされてたりなんてしたら……む?何者だ!」

 

随分な言われようだな、なんて思っていたらギシっと階段が鳴り、バラキエルは目敏く気付く。と言っても別に疚しい事はないので、

 

「ど、どうも……」

「貴様、こそこそ覗き見とは良い度胸だ!やはり貴様に朱乃はやれん!」

 

そう言って、バチバチと朱乃の数十倍、いや下手すれば数百倍強力そうな雷光を発しながら憤慨するバラキエル。思わず身の危険を感じて後ずさる龍誠だが、そんなバラキエルの頬を朱乃が思いっきりひっぱたいた。

 

「やめて!彼は優しい人よ!それにどういう関係でも貴方には関係ないっていってるじゃない!」

「い、いや私は父親としてだな……」

 

朱乃の怒りに、バラキエルから今さっきの怒りは消え、明らかに狼狽している。まるでそれは娘に嫌われることを恐れる普通の父親のようだ。だが朱乃は、

 

「貴方の事なんか父親だなんて思ってない!お母様を見殺しにした貴方なんて父親じゃない!」

「っ!」

 

朱乃の言葉に、バラキエルは体を強張らせ、

 

「すまん……」

 

一言そう言い残し、その場を後にする。

 

「朱乃さ……」

「なにも言わないで」

 

朱乃に声をかけようと、龍誠が口を開くがそれを朱乃は抱きつきながら制した。

 

「お願い……なにも言わないで」

 

余りにもそんな弱々しい言葉に、龍誠はなにも言えず静かに抱き締めるのだった。




分かる人には分かると思いますが、序盤のデートに遅刻云々は、あの人の台詞です。はい。


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悪神とドルオタ

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「まあ特になにも話すことはないかな」
龍誠「おい!幾らお前が出番無かったからってそれはねぇだろ!」
戦兎「うるせぇ!まさか感想でもネタにされるとかこっちも予想外だったわ!」
龍誠「仕方ねぇだろ!とにかくとっととあらすじやれよ!」
戦兎「しゃあねぇな……えぇと、龍誠と姫島先輩がデートしてそしたらバラキエルさんと会って父娘の確執を見た。さてさてどうなるのかーって感じの53話スタート」
龍誠「やる気ねぇな!?」


「ほっほっほ!日本は楽しいのう!」

『そですか……』

 

さて、オーディンが来てから一週間。その間彼は遊園地行ったりキャバクラ行ったり、あっちこっち遊び回ってその護衛に引っ張り回され、オカルト研究部の面々は疲労していた。そりゃもうアレだけチヤホヤしてVIP待遇してもらえれば楽しいだろうさ。

 

現在もスレイブニルとか言うデカイ馬が引くこれまたデカイ馬車に乗っている。まあ今日は日本の神との会談に赴くためのなので、大分楽なのだが、

 

「すぅ……すぅ」

 

その為か皆かなりだらけてる。ギャスパー何て、さっきまでうつらうつらと船を漕いでいたかと思うと、いつの間にか戦兎の太腿を枕に寝ている。要は膝枕だ。

 

「ギャー君よく寝てますね」

「まあ最近引っ張り回されまくってるしなぁ……」

 

戦兎は、ギャスパーの頭をソッと撫でながら小猫と話す。のだが、

 

「なぁ、お前どこ見てんだ?」

「え?」

 

そう、さっきから小猫は自分の太腿を凝視しながら話してくる。割りと小猫は話すときはちゃんと相手の眼を見て、と言うのをするタイプなので、どうも気になった。すると小猫は、

 

「いえなんでも……」

 

ゴニョゴニョ言いながら、そっぽ向いてしまう。何か不満げと言うか、少し機嫌が悪い気がする。そう言えば小猫も引っ張り回されてるし、空いた時間に仙術の修行もしている。多分疲れてもいるだろう。そう思いながら戦兎は、

 

「塔城。まだ着くまで時間が掛かるだろうし、お前も寝たらどうだ?起こしてやるからさ」

「……そうですね」

 

と言って小猫はポフッと戦兎の空いてる方の太腿を枕にして、あっという間にスヤスヤと寝息を立て始めた。

 

(そういう意味ではなかったんだが……)

 

普通に寝ろと言う意味だったんだが、まさかこいつまでとは……まぁ自分の膝枕で寝てリラックス出来るなら良いのだが。

 

そう思いながら戦兎は小猫の寝顔を見る。

 

まぁ何時もチビチビ言っているが、こうして見ると睫毛は長いし、整った綺麗な顔立ちだ。性格だって無口で口も手も出るが、悪いやつじゃない。

 

(ったく、自分で言ってて悲しいけどこいつだってその気になれば男に不自由はしないだろうになんだってなぁ)

 

ポリポリ頭を掻きながら、我ながらキャラじゃないことを自覚する。そこに、

 

「両手に花だね」

「イリナ……塔城はともかくギャスパーは花ではないだろ」

 

そう言って戦兎は肩を竦めつつ、

 

「それに塔城に女を感じるほど餓えちゃいねいでででで!」

 

戦兎は突然飛び上がり、寝ていた塔城を睨み、

 

「お前起きてんだろ!内太腿つねりやがって!滅茶苦茶いてぇんだぞ!」

「スヤスヤ……」

 

わざとらしく寝息を立てる小猫に怒る戦兎。それを見ながらイリナはゼノヴィアの元に行き、

 

「あの二人って付き合ってる訳じゃないんだよね?」

「あぁ、だが結構仲は良いし小猫は確実に戦兎が好きだな」

 

後は戦兎君の気持ちよねぇ……とボソボソ言うのはイリナ。そしてボソボソ言いながら頷きながらゼノヴィアは、

 

「まあ戦兎も小猫の事は嫌いではないと思うんだ。だがいまいちアイツに小猫への好意を感じないし、気づいている様子もない」

「そうよね、普段の戦兎君の言動考えたら、後輩の女の子を惑わしてしまうとは罪作りな俺……とか言いそうだしね」

 

そう言い合う女子二人を見てから、龍誠は朱乃を見る。彼女はここ最近心ここにあらずといった感じで、リアス共々心配していた。

 

とは言えおいそれと踏み込むのも……と思っていたとき、

 

『っ!?』

 

ドン!と突如馬車が爆発音と共に揺れ、全員が大慌てで立ち上がる。

 

「外か!?」

「ふにゃ……」

 

と寝ぼけ眼のギャスパーを起こしつつ、戦兎は馬車から飛び出しながら悪魔の翼で空を飛ぶ。正直未だにこっちでは慣れないのだが、様子見が一番なので、変身せず馬車の上に飛び上がる。馬車は人間の世界に影響を与えないように空を飛んで降り、馬車の大きさもあってさながら空中に浮かぶ足場だ。お陰で悪魔の羽で飛ぶのが苦手な戦兎や、龍誠は助かっているが……

 

そうして上に昇ると、そこには既にアザゼルがおり、その視線の先には悪そうな顔立ちをしたイケメンがいた。

 

「おいおい、おめぇ何しに来やがった?」

「ふん、知れたことを」

 

アザゼルは相手を知っているらしいが、戦兎は龍誠と誰だあいつ……と顔を見合わせる。するとそこに、

 

「全く、騒がしいと思ったらお主か。ロキよ」

「ろき?」

 

誰だそれ?と龍誠がますます首を傾げる中、リアスは表情を曇らせる。

 

「悪神・ロキ……北欧の神よ」

 

あいつも神なんですか!?とリアスの言葉に龍誠が驚く中、戦兎はオーディンを見て、

 

「なんであのロキって神様がここに来てるんですか?」

「大方今回の北欧と三大勢力の同盟が気に入らんのじゃろう」

 

そう言うオーディンに、ロキは頷きを返すと、

 

「なあ主神・オーディンよ。本当に三大勢力と同盟を結ぶ気か?」

「うむ、ロキよ。何度も言ったじゃろう?最早どこの神話がどうこう言っていられる時代じゃないんじゃよ。どこの宗教も今や信仰心が薄れ、信心が減っている。神は強大な力を持つ反面、信心がなければ生きていけぬ。互いが潰しあって力を減らしあっても無意味じゃよ」

 

その言葉には重みがあった。今まで見てきた好好爺でスケベ爺な姿はない。だがロキは突然笑い出すと、

 

「全く、自分が嫌になるよ。貴方のような弱腰の爺を主神と仰がなければならないのだから」

 

そう言ってロキはわざとらしく天を仰ぐ。そして手をこちらに向けると、

 

「なら仕方がない。ここで神々の黄昏(ラグナロク)を始めよう」

 

そう言ったロキの手から雷が降り注ぎ、戦兎達を襲う。

 

《タカ!ガトリング!ベストマッチ!Are you ready?》

《ウェイクアップ!クローズドラゴン!》

『変身!』

《天空の暴れん坊!ホークガトリング!イェーイ》

《Wake up burning!Get CROSS-Z DRAGON!Yeah!》

 

だがそれを転がって避けつつ二人は変身を完了すると、

 

「喰らえ!」

 

戦兎は飛び上がり、ホークガトリンガーでロキを撃つ。だがロキは、それを不可視の壁を作り出して止め、逆に跳ね返してきた。

 

「ぐっ!」

 

予想外の反撃に戦兎は、何発か当たりつつも何とか体を捻って避ける。その間に、

 

「俺も羽くらいあればぁ……」

 

とぼやいた龍誠は、レバーを回して腰を落とす。

 

《Ready Go!ドラゴニックフィニッシュ!》

「おらぁあああああ!」

 

右の拳に溜めた蒼炎を、龍誠はロキに放つ。しかしそれも片手で弾くと、雷を落としてくる。

 

「ちぃ!」

 

するとそこに、

 

「これ以上はさせません!」

「む?」

 

スーツ姿から鎧姿に変わったロスヴァイセは無数の魔方陣を作り出すと、一斉に光弾を放つ。更にそれに合わせるようにリアスや朱乃も魔力を撃ち援護。同じく護衛のアザゼルやバラキエルも加わって、耳イカれそうな程の轟音と、思わず目をつぶるほどの閃光。だがロキはと言うと、

 

「ふむ、少し痛かったかな」

 

と余り効いた様子がない。それを見た戦兎は、

 

「アザゼル先生!こう言う時にはいざってときの救援ってなかったっけ?」

「さっきから連絡いれてんだが通じねぇんだよ!妨害されてる感じじゃなさそうだが……」

 

と言うアザゼルに、ロキは肩を震わせながら笑うと、

 

「くく、まさかアザゼル総督。俺が一人で事を起こしたと思っているのか?」

「……テメェまさか」

 

アザゼルが睨むとロキは頷き、

 

「私の理想を理解してくれる神は多いと言うことだよ。神は神らしく、そして何者よりも自由でなければならない。ましてや他の神話体系に媚を売るなど考えられんのだよ。真の誇りがある神はな」

「へっ……やってんのは結局禍の団(カオス・ブリゲード)の連中変わんねぇじゃねぇか」

 

ロキの言葉に、戦兎は思わず突っ込むが、ロキは余り気にした様子はなく、

 

「あれはただのテロ行為だ。だが私達のは違う。私達のは文字通り神の意思だ。私達がしたい=絶対にして唯一無二の何者にも犯されてはならない正義なのだよ」

「……」

 

余りにも自信満々答えるロキに、戦兎は開いた口が塞がらなくなってしまう。神様ってこう言うやつらばっかなのか?いや、オーディンを見ててもこう言う感じはしないので、多分一部なんだろう。

 

だが随分とまぁ好き勝手いってくれるものだ。神だからって何でもやって良い筈がない。

 

そう戦兎が思っていると、

 

「とは言え気をつけておけば良いのはオーディン殿だけとは言え、流石にこの数だ。どれ、少しこちらも頭数を増やすか」

 

そう言ってロキはパチンと指を鳴らすと、突如空間が歪み中から一匹の狼が現れる。

 

「まさかあれは!お前ら気を付けろあれはただの狼じゃねぇぞ!」

「そうだアザゼル総督。これは神喰狼(フェンリル)。爪は神の身を切り裂き、牙は神の命を噛み砕く。これくらいは用意しておかなければな」

 

そう言ったロキは、フェンリルを一撫でし、

 

「さぁ私の可愛いフェンリル。蹂躙の時間だ」

「ガゥ!」

 

ロキからのGOサインを貰ったフェンリルは、戦兎達目掛けて走り出す。それを戦兎はホークガトリンガーで迎え撃つが、

 

「なに!?」

 

目にも止まらぬ高速移動で、一瞬で横に回避して避けたフェンリルは戦兎目掛けて爪を掲げた。そこに、

 

「デュランダル!」

「いっけぇ!」

 

聖剣の剣圧と光の力を纏めてぶち当てたのはゼノヴィアとイリナ。流石にそれを喰らって少し怯んだ隙に、戦兎は距離を取る。

 

「サンキュー二人とも」

「いや、気にするな」

 

そう言ってデュランダルを構え直すゼノヴィアと、そうそうと頷いて光の輪を作るイリナ。だがフェンリルもすぐさま体勢を建て直すと、牙を剥いて此方を威嚇した。

 

「さっきの早さはやべぇな……」

 

戦兎はそう言ってどのボトルを使うか思案する。だが正直いって、あのフェンリルの速度と、この空中で足場がないと言う状況。更にゼノヴィアとイリナの二人の攻撃を喰らっても無傷で済む防御力……この全てをクリアできる組み合わせとなるとかなり難しい。だが、

 

「がぅ!」

「来るぞ!」

 

フェンリルは待ってくれない。当然のようにこちらに突っ込んできた。それを見たゼノヴィアが叫び、戦兎達は横に跳んで避け、

 

「ならこれだ!」

《フェニックス!ロケット!Are you ready?》

「ビルドアップ!」

 

戦兎はボトルを変え、姿を変えた戦兎は、更にレバーを回すと、

 

《Ready Go!ボルテックアタック!》

「はぁああああ!」

 

炎を身に纏った戦兎は、ロケットの勢いでフェンリルに突進し、そのまま鼻っ面をぶん殴って仰け反らせる。

 

鼻と言うのは、神経が集中している部位だ。そこにダメージが入れば幾ら一般的な動物ではないとは言え、少し堪えるかと思ったが、案外予想通りだ。と思ったのだが、

 

「がふっ!」

 

そのままベシャっと落下し、

 

「がはっ!げほっ!」

 

全身を襲う痛みに、戦兎は悶絶する。

 

「戦兎!」

 

龍誠は叫ぶ。見てみれば、胸の部分のビルドのアーマーが切り裂かれ、戦兎の血だろうが、真っ赤に染まっていた。

 

「てんめぇえええええ!」

「龍誠!」

 

リアスの制止を振り切った龍誠は、一気にフェンリルと間合いを詰めてそのまま顎に向けてアッパー!そのままでは足場がないところに出ていたのだが、

 

「おぉおおおお!」

 

バキバキとクローズのアーマーの背中の部分が砕け、背中から翼が生える。

 

「ブッとべぇ!」

「っ!」

 

バキィ!とフェンリルの横っ面に叩き込まれた龍誠の拳に、フェンリルは先程は見せなかった苦悶の表情を浮かべながら後方に吹っ飛ばされる。

 

『先輩!』

「うぅ……」

 

その光景を見ながら、駆け寄ってきた小猫とギャスパーの方を見る戦兎。それと同時にアーシアも前線は危険なため、後方から回復の光を飛ばしてくれた。少し軽くなった体に安堵しつつ、戦兎は立ち上がる。すると龍誠は、

 

「何じゃこりゃあ!は、羽!?でもこれ悪魔の羽とは違うよな……ってかクローズのアーマーの背中の部分がぶっ壊れてる!?」

 

とまあ大騒ぎだ。だが確かにあれはディオドラの時に暴走したときに見せた、赤い鎧についていた羽に見えた。しかし戦兎は、

 

「龍誠!そんなことよりロキだ!」

「む?うぉ!」

 

戦兎の指示に我に返った龍誠の所に、ロキの雷が降り注ぐ。それを避けて距離を取ると、

 

「おい悪魔、なんだそれは。純粋な力だけに限定すれば神にも匹敵、いや下手すればそれ以上だぞ?」

「何かよくわかんねぇけど……負ける気がしねぇ!」

 

龍誠は拳をパン!と掌で合わせると、そのままロキに殴りかかる。

 

「まぁその程度の早さでは当たりはしな……」

《シングルフィニッシュ!》

 

そう言って余裕の表情で構えていたロキの背中に光弾が放たれた。

 

「なにっ!?」

 

勿論リアス達に注意を払っていなかった訳じゃない。この場の誰が龍誠を援護したとしても対応できた。だがロキは完全に失念していたのだ。他の神も味方につけ、同時に襲撃を掛けることでオーディン達に援軍を出す余裕を無くした。それ故に、第三者の横槍を計算し忘れていたのだ。そしてその一瞬の隙は、

 

「おらぁああああああああああ!」

「ぐぼぁ!」

 

腹にメリメリと音を立ててめり込むほど強烈なボディブローに、ロキは血反吐を吐きながら後方に吹っ飛ばされた。

 

「ごほっ!貴様は……」

「初めまして悪神・ロキ殿。俺はヴァーリ。ヴァーリ・ルシファーだ」

 

そう言って立っていたのはヴァーリだけじゃない。アーサーに美猴に黒歌……つまりヴァーリチーム勢揃いだ。

 

「あははは。仙術で気配消したら全然気づいてないし」

「ま、おいら達の登場は予想外だろうしなぁ」

 

ケラケラ笑う黒歌と美猴。それを見ながらロキは苛立ちの空気を纏う。だが、

 

「ちっ、時間切れか」

 

魔方陣越しに通信が入ったらしいロキは、フェンリルを異空間に戻すと、そのまま自分も魔方陣に入っていく。

 

「取り敢えずはここまでのようだが、またいずれ……次は真の神の裁きをお見せしよう」

 

そう言い残し姿を消していくロキを見送り、龍誠が足場に戻るとそのまま羽が消えてそれと同時に、変身も解除された。

 

「ぷはぁ……なんだ?すげぇ疲れた」

 

力が全身に入らない感覚に苛まれる中、アザゼルはヴァーリの元に行く。

 

「どういうつもりだ?」

「なに、少しアイツに用があってね。どうだアザゼル?随分とそっちも忙しそうだし、手を貸してやろうか?」

 

とヴァーリは何て事ないように、そんなことを言うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで彼らがここにいると?」

「えぇ……まぁ」

 

ソーナの言葉に、リアスはひきつった表情で答える。

 

「分かっているのですか?リアス。彼らは禍の団(カオス・ブリゲード)の一員。テロリストなのですよ?」

「そうだけど文句はアザゼル先生に言ってちょうだい」

 

さて、ロキの襲撃によりオーディンと日本の神同士による会談は急遽中止され、更に連絡によれば何でもロキの襲撃に合わせ、他の地域でも北欧の神やそれの連なる者達の襲撃があったらしく、オーディンは重要な客ではあるが正直に言うとオーディンだけに防衛を回すことができないと言うのが、三大勢力と北欧の見解だった。

 

とは言えホントになにもしないわけにいかないので、お鉢が回ったのが結局リアスを筆頭にしたグレモリーチームと、アザゼル……だけでは足りないので、シトリーチームも召集された連合チーム。確かにいざというときの連携や、行動を起こす際、この二チームが動きやすいし、他にも回せれば人員を回してもらえるらしい。ただ正直に言えば北欧の神達はこちらとは魔術体系も異なるため、かなり苦戦させられていると言うのが現状らしく、あまり期待しない方がいいとの事。

 

そして、取り敢えず龍誠達が住む豪邸に召集されたソーナはその場にいたヴァーリ達に対する不信感を隠そうとしない。まあ当然であり、シトリー眷属の皆もかなり警戒している。リアス達は先日のディオドラの一件があるためマシだが、ソーナ達の反応には反論しきれなかった。

 

ヴァーリもヴァーリで、肩を竦めて皮肉ったような笑みを浮かべるだけなので、それが益々警戒心をあげさせている。だがそんな所にアザゼルが、

 

「とにかくだ!お前ら思うところはあるだろうが今は押さえとけ。一番の問題はロキだ。これの正否はお前らに掛かってる。勿論俺も全力を出すが、互いの不信感はゴミ箱に捨てておけ」

 

そんなアザゼルの言葉に、ソーナは仕方なく同意するように顔を逸らす。

 

まあ正直言ってそんな簡単に仲良くは無理だろう。だがそれでもやらなくてはならない。なにせ相手のロキは今回戦ってわかったが強い。リアスとソーナ達では厳しいだろう。だがヴァーリ達がどんな目的であれ力を貸してくれるなら勝機はある。すると戦兎が来て、

 

「それで?これからどうするんですか?」

「ん、そうだな。まずはロキにどう対抗するかだが……」

 

等とアザゼルが口を開いた瞬間、ドタドタと扉の向こう側から足音が聞こえたかと思うと扉が開け放たれ、

 

「お兄ちゃん!」

「げっ!美空!?」

 

そう、ズカズカと部屋に入ってきたのは美空で、彼女は戦兎に詰めよりながら、

 

「言ったじゃん!ちゃんとご飯を今日は龍誠達と食べるのか、それともちゃんと家で食べるか連絡してって!さっきからメール送っても返信来ないしこっち来てみたら案の定いるし!」

「わ、悪かったって……」

 

正直言うと、フェンリルにやられたダメージが少し残っているため、さっきまで寝ていたのだが、美空は知らないことだ。何も言えない。なので、戦兎は謝るしかないのだが、だがそんな中、一人別の反応をしている奴がおり、

 

「まさか……」

「ん?」

 

バビュン!と瞬時に美空の元に移動したのはヴァーリで、彼はウィィィイイン!と言うブリキのロボットみたいな動きで美空を見る。

 

「な、なに?」

「……」

 

ウィィィイイン!と姿勢を戻し、ヴァーリは少し息を吸うと、

 

「デュフ!」

「は?」

 

思わず歓喜のあまり、仰け反りながら変な声が漏れたヴァーリに、美空は疑問符を浮かべているが、ヴァーリはそんなことは気にせず寧ろテンションが上昇し、

 

「みーたんだ!」

「は?」

「うへへ」

「はぁ?」

 

頬をだらしなく緩めて、ヴァーリが笑みを浮かべる中、美空は何?と首をかしげた。だがヴァーリは、

 

「んん!ヴァーリ・ルシファー。17歳彼女無し。テレビで初めて貴方と出会ったときから、心火を燃やしてフォーリンラブでした!」

 

あ、握手して貰って良いですか?と手を伸ばすヴァーリ。だがその間に割って入ったアザゼルは、ヴァーリを連れて少し離れると、

 

「あのなヴァーリ。お前整理券を忘れちゃいねぇか?こう言うときの必須アイテムだぜ」

 

つうわけで五万な?と手を出すアザゼルに龍誠と戦兎が、

 

「お前が金取るのかよ」

「しかもぼったくりだし」

 

何て突っ込むが、ヴァーリはと言うと、

 

「五万か……安いな。あ!十万出せばツーショットとか……」

「おいこらヴァーリ!それ俺たちの生活費だろうが!」

「落ち着きなさい!そもそもアザゼル殿がお金を回収するのが可笑しいでしょう!?」

 

離せぇ!とヴァーリは暴れるが、美猴とアーサーは二人掛かりでヴァーリを引き剥がす。

 

「ほんとバカにゃ……」

 

そんな姿を冷たい目で見る黒歌。そして、

 

「あれは一体……」

「ヴァーリはね、みーたんと言うか戦兎の妹の美空ちゃんの大ファンらしいのよ」

 

そう言うソーナとリアス。そして、

 

「ったく」

 

アザゼルはケラケラ笑いながら、手に持った端末を操作する。そこには一通のメールが来ており、それは副総督のシェムハザからで用件は、

 

《万丈 龍誠の検査結果》

 

と書かれていたのだった。




悲報・前回出番がなかった戦兎、今回活躍するかと思えば結局龍誠とヴァーリに活躍を奪われる。


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龍誠の秘密

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「ロキの突然の襲撃も無事退け、ヴァーリ達と共同戦線を張ることになった俺たちだが……」
ヴァーリ「戦兎ぉおおお!何がそっくりだぁあああ本人じゃねぇええかぁあああああ!」
戦兎「ほら、美空のセーラー服姿の写真だ」
ヴァーリ「ふぉぉおおおおおお!ありがとうございます義兄さん!」
戦兎「誰が義兄さんだ!さらっととんでもないこと言ってんじゃないよ!」
龍誠「そんなわけで54話始まるよ~」


「つうわけで……だ。今のうちにお前らには話しておく事がある」

 

ヴァーリの暴走が止まり、取り敢えず龍誠に美空を家へ送って行き、そのついでに飲み物などを買ってこい、と言って何故か追い出したアザゼルは、端末から画面を開いて壁にプロジェクターのように画面を写すとそこには、

 

「龍誠の検査結果?」

「あぁ、ロキの時だけじゃない。お前らが見たディオドラの時の暴走もだ。それがなんなのか取り敢えず検査を行ったんだ。その結果が漸く届いたんでな。取り敢えずお前らにも知っておいてもらいたくてよ」

 

そう言ってアザゼルは端末を操作しながら言う。それは、

 

「結論から言う。龍誠は人間じゃない。いや悪魔に転生したからだとかじゃなく、恐らく元から人間じゃない」

『っ!』

 

その場の全員が驚き息を呑む中、アザゼルは更に続け、

 

「厳密には八割程度は人間だった。だが残り二割……これはドラゴンの体組織だ。謂わばあいつは限りなく人間に近い、人間ベースの人型ドラゴンってところだな。そして更に驚きなのが……」

 

そう言ってアザゼルが見せたのは、兵藤一誠の写真で、

 

「こいつの心臓を俺がぶち抜いた時に取っておいた血液から検査したらだ……龍誠とほぼ100%同一人物だと検査結果が出た」

「龍誠と同じ?」

 

あぁ、とアザゼルはリアスに頷く。

 

「基本的に似てる相手でも同じってのはあり得ない。一卵性の双子でもねぇ限りはな」

「じゃあ、あの兵藤一誠は龍誠君の兄弟なんですか?」

 

いや、そう簡単でもねぇかもしれない。そうアザゼルは言う。

 

「ただ似てるにしてはなにかが変だ。何か違和感がぬぐえない」

 

そう言いながらアザゼルは、更に言葉を続け、

 

「だが、恐らく龍誠がポーンの駒四つでしかも変異の駒(ミューテーションピース)だったのはそれが原因だろう。恐らくアイツがどんなドラゴンにせよ、尋常じゃないだろうな」

 

それにとアザゼルは匙を見て、

 

「匙、お前の左腕のも夏休みのレーティングゲームで龍誠と戦兎の血を奪っただろ?恐らくその時に龍誠のドラゴンの力に触れた……ってところだ」

 

そうしてアザゼルは端末を閉じると、

 

「なぜ龍誠がドラゴンの力を持っているのか、それは分からないがロキに有効打を与えたって言うのは今回の戦いにおいては有利だ。まあそれを自在に扱えていない感じだがな」

 

と言っているところに、

 

「たっだいま~!」

 

ガチャガチャとお菓子やら何やらを買い込んだ龍誠が戻ってきた。思わず皆でドタバタと、それぞれの立ち位置に戻ってにっこり笑顔。

 

「どうした?皆揃って笑ったりなんかして」

 

龍誠は首を傾げながら、荷物をテーブルの上に置いている間に、

 

「お前ら良いか?いきなりお前人間じゃなかったぞ何て言ったらショック受けるかもしれないからな。オブラートに包みつつだな」

 

とアザゼルが皆に言い、それに皆が頷く中一人だけ、

 

「おい龍誠」

「ん?あぁ戦兎、お前もラーメン食う?」

 

戦兎は、カップラーメンにお湯を淹れている龍誠の下に行くと、

 

「お前が悪魔に転生する前から人間じゃなかったんだってよ」

「……は?」

 

おまえぇえええええ!と戦兎は全員からフルボッコ。リアスからは、

 

「戦兎!貴方にはデリカシーがないわけ!?」

「だってどうせ後でバラすんだからさっさと言った方が早いじゃないですか」

 

それでもタイミングってものがあるでしょ!とリアスは怒る。だがそれより龍誠は、

 

「人間じゃないってどういうことですか?」

 

その問いにアザゼルは少し息をついてから、

 

「つまりだな」

 

そう切り出して説明していく。包み隠さず、全て説明し終えると、

 

「俺って人間じゃなかったのか……」

 

と龍誠は少なからず動揺している。だが戦兎は、

 

「お前そもそも自分を人間だと思ってたのか?」

『……は?』

 

龍誠どころか、他の面々もポカンと戦兎を見る。その中、

 

「お前な、どこの世界に素手で鎖を引きちぎるわ、力加減ミスってドアノブ引っこ抜くわ、車に引かれて五メートル位吹っ飛んでもビクともしない人間がいるんだよ。寧ろ人間じゃなくて普通でしょうが」

「う……」

 

龍誠は思わず視線を逸らす。だが戦兎は少し息をついてから続けて、

 

「お前がなにもんだろうと関係ない。お前は俺の親友で、部長の眷属で仮面ライダークローズこと万丈 龍誠だ。それが確定してれば充分でしょうが」

 

つうか馬鹿がムダにしんみりしてたら余計に空気重たくなるわ、と戦兎が締め、なにを!と龍誠はいつもの調子で怒る。そして、

 

「んじゃ、俺はヴァーリと匙のスクラッシュドライバーのメンテナンスするんで、一回家に戻りますわ」

 

そう言い残し、戦兎は部屋を出ていったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

自宅地下の研究室にてカチカチとパソコンを弄り、戦兎は解体したスクラッシュドライバーに異常がないかを確認する。少し部品の噛み合わせが甘くなっていたが、大きく損傷はしていないようだ。これはヴァーリのものなので、匙と違って定期的にメンテナンスができない分、こう言うときにしておかないと、ロキとの戦いの時にぶっ壊れるというシャレにならない事態になってしまいかねない。何て思っていると、

 

「優しいのね」

「っ!」

 

突然背後から声をかけられ、戦兎が慌てて振り替えるとそこには、

 

「黒歌!?」

 

胸元をはだけさせた黒い着物の猫耳少女こと、黒歌が立っている。戦兎は咄嗟にビルドドライバーを手に取ろうとするが、

 

「待ってよ。戦いにきたわけじゃないわ」

「なに?」

 

と制されてしまい、戦兎は警戒しながらも取り敢えず戦いの準備は止める。

 

「アンタって意外とお人好しよね。この間も思ったけど」

「何か問題あるのかよ?」

 

戦兎がそう言うと黒歌は笑って、

 

「別に?ただ私は基本的に科学者とか研究者ってタイプの人間は信用してなかったのよ。ただアンタは違ったからね」

「……」

 

少し昔を思い出したような顔の黒歌に、戦兎は眉を寄せる。とは言え、ほんとにこれだけを言いにきたのか?

 

「なにか用事あるんじゃねぇのかよ」

「そうねぇ……あ、そうだ。白音とはどこまでヤったの?」

 

はぁ!?と突然の黒歌の問い掛けに戦兎は仰天して目を見開く。そんな戦兎の様子に黒歌はケラケラ笑いながら、

 

「もうキスくらいはしたでしょ?となるとやっぱり……挿入した?」

 

と黒歌は片方の手で丸を作って、もう一方の指で出し入れするジェスチャーをしてくる。女がなんつう事をしてるんだと戦兎はため息を吐きつつ、

 

「アホか。俺と塔城はそんなんじゃねぇよ。アイツに女を感じるほど節操無しじゃない。俺はもっと大人びた女が好きなんだ」

「えぇ~。でもでも白音って大きくなったら絶対美人よ?」

 

なんでそんなこと言えんだよ……と戦兎がまたため息を吐くと黒歌は、

 

「だって私の妹にゃん」

「……」

 

グイッと胸元を押し上げるようにしてくる黒歌に、ソッと視線を逸らす戦兎。そんな戦兎に、

 

「ほらほらみてよ、こう見えてもスタイルには自信あるの」

 

そりゃそうだろう。と戦兎は内心呟く。スタイルだけなら黒歌はリアス達にも劣らない。顔もまあ良いし?

 

そして露出もまぁ中々アレな服装なので、正直下手に意識すると目のやり場に困る。

 

そんな戦兎の様子に黒歌は、

 

「アンタそんだけ整った顔してて女性経験皆無なのね」

「は、はぁ!?そんなことねぇし!もう女からモテモテで毎日アホほど告白をすいません見栄張りました……」

 

言ってて虚しくなった。そして悲しくなった。

 

寧ろ女子から避けられてるわ。そう戦兎が言うと、

 

「まあ確かに残念さがにじみ出てるイケメンだしね」

「おい」

 

滅茶苦茶失礼な物言いの黒歌に、思わず突っ込みを入れる。すると、

 

「なに……してるんですか?」

『ん?』

 

またもや声をかけられ、振り替えるとそこにいたのは、随分と不機嫌そうな表情をした小猫がいた。

 

さて今の光景だが、黒歌は未だに自分の胸元を持ち上げ戦兎に見せつけるような体勢だ。これは……余り宜しい光景ではない。

 

だが黒歌はそれはもう楽しそうにニンマリ笑うと、

 

「やぁん、白音ったら。今私達お・と・な・の男女の会話を楽しんでたのよ?」

「なにいってむぐぅ!」

 

突然とんでもない事を言い出した黒歌に、戦兎は抗議しようとする。だがそれよりも早く黒歌は戦兎の顔を自分の胸元に抱き寄せてしまい、

 

「ふふん」

 

と余裕の笑み。戦兎も必死で抵抗するが、意外と力が強いのか振りほどけない。と言うかクラクラするほど女性特有の良い匂いがする……

 

そんな光景に、小猫の中で何かがキレて、

 

「今すぐ、戦兎先輩から離れてください」

「えぇ~。やだ」

 

と黒歌が言った瞬間、小猫は黒歌に向けて手を伸ばす。手を伸ばすと言うか殆ど張り手か掌底みたいな勢いで放たれたそれを、

 

「ひらり」

「うごっ!」

 

あ……と小猫が声を漏らす。なにせ小猫の一撃は、黒歌が華麗に回避したせいで、戦兎の腹と言うか鳩尾に決まってそのまま戦兎が膝をつく。そして黒歌はと言うと、

 

「アデュー」

 

そう言い残してそのまま逃げ出し、小猫は慌てて戦兎に駆け寄った。

 

「す、すいません!大丈夫ですか!?」

「いや、大丈夫……」

 

少し苦しそうな声を漏らしつつも、大丈夫だと立ち上がる。だが小猫はしょんぼりしながら俯いてしまう。そんな彼女に戦兎は、

 

「ったく、気にすんなよ。事故だろ」

 

と言って気にしていないと言う。すると小猫は、

 

「それで……何の話だったんですか?」

「は?」

「姉さまと何の話をしてたんですか?」

 

別に大したもんは話してないぞ?と戦兎は言う。勿論どこまでヤったの?って辺りは言えるわけがないので、適当に誤魔化すが、

 

「言えない内容なんですか?」

「そう言う訳じゃないんだけど……」

 

容赦なく問い詰めてくる小猫に、戦兎はタジタジになってしまう。そんな中、小猫はフンフンと戦兎の体に顔を近づけて鼻を動かすと、

 

「姉さまの匂い……」

「そ、そりゃまあ」

 

そんなすぐ匂いなんて付くものなのか?と思いつつも答えると、

 

「と、塔城?」

 

戦兎が戸惑うのも無理はない。小猫は突然戦兎に抱きつくと、グリグリと顔を擦り合わせてきたのだ。

 

いつの間にか猫耳と尻尾まで出て、ひとしきり頬ずりすると、満足げな顔をした。

 

因みに猫には自分の所有物や飼い主に対して愛情表現や、自分のものだと分かるように匂いをつける。更にこういった行為をするのは猫に限らないのだが、共通して自分のものと思っているものに他の匂いが付くのを嫌がる。

 

まあ要は小猫は黒歌の匂いがついているのが嫌で、嫉妬しているだけなのだが、戦兎は未来の天才物理学者であって、生物学者ではないので行動の意味がわからず、ずっと困惑していたのだが、まあそれは別の話。




何とかギリギリ新元号初日に投稿完了……新元号になっても変わらず頑張りますよ~。


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確執

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「龍誠の今更な正体も少し明かされ、と着々とロキとの戦いに向けて準備を進めていく俺たち」
龍誠「だがその合間にもこれまた面倒なことが結構あるんだな」
戦兎「つうかそれにしても俺が今回も目立たねぇ……」
匙「コメントでもネタにされるくらいだもんなぁ」
戦兎「いや、逆に考えるんだ。ネタにされるだけされればいいさ……と」
ヴァーリ「まあそんなわけで戦兎が目立たない55話スタートだぜ」


「ほらヴァーリ、匙。スクラッシュドライバーの整備が終わったぞ」

 

戦兎が二人のスクラッシュドライバーを手に豪邸へ戻ると、空き部屋の一角でアザゼルが何やら床に魔方陣を書き、それを皆で補佐している所だった。

 

「何してるんですか?」

「ロキ対策を知っている奴に会いに行くためだよ」

 

戦兎がアザゼルに聞くと、そう答えられる。そんな奴がいるのかと戦兎が驚く中、

 

終末の大龍(スリーピング・ドラゴン)・ミドガルズオルムと言うドラゴンがいてな。こいつは元々ロキが作り出したんだが、余りにも怠け者北欧の海深くにて、世界の終わりになったら働けと言われてそのまま寝させられているんだ。義兄さん」

「成程ね。後、義兄さん言うんじゃねぇ」

 

スクラッシュドライバーを顔面に叩きつけたい衝動を我慢しつつ、戦兎はヴァーリに返却し、

 

「じゃあこれで北欧の海まで行くんですか?」

「無理だよ。深海過ぎるし、北欧へ転移するのは今の情勢では出来ない。だから意識だけこっちに呼び寄せるのさ。俺の人工神器(セイクリットギア)と、匙に今タンニーンも呼んでる。まあ普通なら龍王三体でも呼べるかはギリギリってところだが、龍誠もいるしな」

 

俺?と龍誠は首を傾げる。それを見てアザゼルは、

 

「あぁ、何せお前も二割はドラゴンだからな。ミドガルズオルムを呼ぶ切っ掛け作りには少し位は役に立つ。後はまぁ運次第だなぁ。もっと強いドラゴンがたくさんいれば良いんだが正直最低でも龍王クラスで協力してくれるドラゴンって言うのが殆どいねぇ」

 

そもそもドラゴンって言う種族自体が自由気ままな性分の奴が殆どだし、とタンニーンを見ているとそんなもんなのか、と思ってしまう事を言うアザゼル。そうこうしている間に、魔方陣は書き終わった。それと同時に、

 

「邪魔するぞ……む?」

「あ、おっさん!」

 

部屋に入ってきたのは、恐らく魔力でサイズダウンしたタンニーンだ。そんな彼の姿を見た龍誠は近づきつつ、

 

「あれ?小さくなった?」

「当たり前だ。元のサイズではこの屋敷にはいれん」

 

そう言いつつタンニーンはアザゼルの元に行き、

 

「おいアザゼル。どう言うことだ?」

「龍誠のことか?」

 

そっと耳打ちしながらタンニーンはアザゼルと話す。

 

「あぁ……いや、今はこの話はよそう。後で詳しくな」

「分かった」

 

そんな風に会話を終えると、

 

「んじゃあ全員集まった所で匙はそこに、タンニーンはそこで龍誠はここだ」

 

とアザゼルはテキパキと指示を出し、自分も所定の位置に着く。すると魔方陣にボンヤリと光を持つ中、匙が思い付いたような顔をして、

 

「そういえば先生。これってもしミドガルズオルムが来なかったらどうするんですか?」

「ん?そうだなぁ、異次元空間に取り残されて長い悪魔人生を異次元空間で過ごすことに……」

『はぁ!?』

 

冗談だちゃんと帰ってこれるって、とアザゼルは笑い、

 

「多分な」

『多分!?』

 

何てやり取りをしている間に、魔方陣に乗っていた面々はそのまま消えてしまったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「成功だな」

「え?」

 

ポンッと空中に投げ出されつつも無事着地したが、アザゼルは呟きに龍誠は首を傾げる。

 

成功と言うことは、ミドガルズオルムがいると言うのだろうか?だがそんなものはどこにも……と思っているとタンニーンが指差し、

 

「目の前にいるだろう?」

「へ?」

 

龍誠はポカンとしながら、前をゆっくり見る。そして見てると気づいた。これは最初、なんかの壁かと思ったのだが違う。これは一匹のドラゴンだ。タンニーンもでかいが、その何倍も巨大なドラゴンで、見上げても顔が見えない。すると、

 

「グォオオオオオ……」

「寝てる?」

 

大気がビリビリ震えるほどの寝息に匙が呟くと、

 

「全く。こいつの怠け癖は敵わん」

 

そうタンニーンが呟きながら息を吸い、

 

「起きろぉおおおおお!」

『っ!』

 

こちらも大気がビリビリ震えるほどの大声だ。思わず見ていた龍誠達が耳を塞ぐほど。だがミドガルズオルムはと言うと、

 

「んん……」

「む?起きたか?」

「グゥ……」

 

タンニーンが少し喜んだのも束の間、また聞こえてきた寝息に、全員でずっこけた。

 

そして、

 

「起きんかぁああああああ!」

 

遂にぶちギレたタンニーンのブレスがミドガルズオルムに直撃する。そんな光景に思わず龍誠と匙は、

 

『えぇえええええ!?ミドガルズオルム大丈夫なの!?』

「安心しろ。加減したしこの程度で死ぬような奴じゃない」

 

そう言うタンニーンのブレスによる煙が晴れるとそこには、

 

「ふわぁあああ……なんだい?遂に世界の終末が来たのかい?ってあれ?タンニーンじゃないか、それにヴリトラの気配も少しするな。あとファヴニールに、んん?この気配って……」

「良いから目を覚ませ、馬鹿者が」

 

タンニーンは言葉を遮るようにミドガルズオルムに話しかけ、

 

「お前に聞きたいことがあってここに来た」

「ん~?なにを聞きたいんだい?」

 

ミドガルズオルムは眠そうな声を出しながらも、しっかりと答えてはくれるらしい。そんな中タンニーンは聞いていく。

 

「ロキとフェンリルの相手をすることになった。何か良い方法はないか?」

「うぅん。ダディとワンワンか~。まあワンワンの方が厄介だしドワーフが作ったグレイプニルなら動きを封じれるんじゃないかな?」

 

ミドガルズオルムは割りとあっさり教えてくれた。そして更に、

 

「後ダディはねぇ~。ミョルニルでぶっ叩けば良いんじゃないかな?」

「だがあれは神の武器だ。雷神・トールが貸すとは……」

 

そうアザゼルが渋い顔をする。そんな様子を見たミドガルズオルムが、

 

「ならダークエルフの長老に頼んでみなよ~。オーディンに頼まれてミョルニルのレプリカを預かってるはずだよ~。レプリカでも充分すぎるほど強力だしダディ相手でもイケるよ~」

 

オマケに地図あげるね~と、ミドガルズオルムが念じると、アザゼルの持っていた宝玉が光り、地図が浮かび上がった。

 

「助かる。しかし良いのか?仮にもロキは父親だし、フェンリルは兄弟だろう?」

「うぅん、正直余り家族って感じがないからね~。僕はこうやって寝てられれば幸せだし~」

 

そう言ってもう既に微睡みの世界に片足を突っ込みつつあるミドガルズオルムに、皆は苦笑いを浮かべてしまう。それに取り敢えず聞きたいことはこれで全部だ。アザゼルはそう言って帰還の準備を始めた。それを見ながらタンニーンは、

 

「それではな。ミドガルズオルム」

「うん。次会うときは世界の終末かなぁ~」

 

なんて縁起でもない事を言い出すミドガルズオルムに、タンニーンはなら二度と会うことはないな。と軽くあしらい、魔方陣に入る。それの続くように龍誠と匙も入り、龍誠はミドガルズオルムを見た。

 

自分が見たことがあるドラゴンはタンニーンだけだ。いや厳密に言えばドラゴン系神器(セイクリットギア)落ち匙や、人工神器(セイクリットギア)をアザゼルに、兵藤一誠もいる。だが、意思をもった一個体のドラゴンはこれで二人目で、タンニーンとは全く違うドラゴンだ。

 

(色んなドラゴンがいるんだな……)

 

そんな事を思いながら、龍誠は魔方陣の光に包まれていったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んじゃあまずはグレイプニルとミョルニルは、オーディンの爺にも協力して貰うとして、匙」

「はい?」

 

元の空き部屋に戻った四人は、ほかの皆が一息ついていたリビングに戻り、アザゼルは匙に声をかけた。

 

「お前はちょっと俺と来い」

「え?」

 

突然の誘いに匙が疑問符を浮かべると、アザゼルは説明してくれる。

 

「お前の左腕の異変。さっき言ったように龍誠の血が影響している。恐らくだが、それは元々龍王・ヴリトラをバラバラにして作られた四つある神器(セイクリットギア)のうちの一つ。強力なドラゴンの血に触れたことで、ヴリトラが目覚めかけてるのかもしれん」

「えぇ!?ドラゴン系神器(セイクリットギア)ってそんなことあるんですか!?」

 

普通はねぇよ、と匙の驚きにアザゼルは返しつつも、

 

「だがヴリトラは特殊でな。力そのものは龍王クラスでは最弱だが、呪いが強力なことで有名だ。なにせ殺したあともヴリトラの黒炎が100年単位で残ったとか、呪いを喰らった奴は死んだとか言われてる。それくらいしつこいドラゴン何だよ。となれば少し試したいことがあってな」

 

ニヤァ、とアザゼルは新しい玩具を見つけたような表情をしながら匙を見る。それに匙は本能的に恐怖を覚えるが、アザゼルは逃がさんとばかりに匙の腕を掴むと、

 

「安心しな。俺が考案した特殊なトレーニングとかいぞ……げふんげふん!」

「今改造って言おうとしませんでした!?」

 

匙がそう言ってもアザゼルは無視して匙を引っ張り、

 

「つうわけでソーナ。お前の眷属借りてくぞ」

「わかりました。匙、先生に失礼をしてはなりませんよ?」

 

嘘でしょおおおおおお!そう匙は叫び、戦兎たちを見た。

 

「桐生!万丈!助けてくれぇ!」

「大丈夫だって。アザゼル先生の修行は死なないから。いっそ殺せって思うだけで」

 

そう言う戦兎と、うんうんとその戦兎の言葉に頷く龍誠。そして匙はガーン!と白目を剥きながら、そのままアザゼルにドナドナされたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて匙がドナドナされた次の日、龍誠はリアスの元を訪れていた。

 

「あ、部長。ちょっと良いですか?」

「ん?どうしたの龍誠」

 

本を読んでいたらしい彼女に話し掛けると、リアスも本を閉じてこちらを向いてくれる。なので、

 

「朱乃さんとバラキエルさんの事についてなんですけど」

「……」

 

ここ最近バラキエルをずっと見てきた。そこで思ったのは、そんなに悪い人じゃないんじゃないかと言うことだ。

 

ずっと端から見ていても分かるくらい朱乃を大事にしてる。大事にしすぎてこっちが睨まれることもあるが……

 

だからこそ、朱乃があそこまで嫌う理由がわからないのだ。

 

「そうね、龍誠には話しておいた方がいいわね」

 

リアスはそう言いながら少し考え、

 

「あれは悲しい事故なのよ」

「事故?」

 

えぇ、とリアスは頷きつつ天井を見上げた。

 

「バラキエルはある日敵対する勢力との戦いで傷を負い、ある神社に流れ着いた。その神社には一人の巫女がいてね。彼の傷の手当てをし、二人は愛し合うようになった。そして生まれたのが……」

 

朱乃さんですか?龍誠がそう問うと、リアスはそうよと肯定する。

 

「三人は仲睦まじく暮らしていたそうよ。ただね、それは長く続かなかった」

 

朱乃の家と言うか姫島という家は、実はある筋としては有名な家柄らしく、その家の娘である朱乃の母がまさか堕天使と恋仲になった上に、しかも子供まで作ったというのは衝撃的だったらしく、堕天使に拐かされた娘を救うためと言うことで相当数の刺客を送り込んだ。だが歴戦の戦士であるバラキエルの敵ではなく全員返り討ち。とここまでなら良いのだが、負けたことを逆恨みした刺客の何人かが、自分達では勝てないならと何と堕天使と敵対している勢力にバラキエルの情報を流した。

 

「そして朱乃達の住む家を敵勢力は襲った。でもね、その時ちょうどバラキエルさんは仕事で家を離れていて……朱乃のお母さんは朱乃を守って命を落とした。バラキエルさんが駆け付けたのはその直後……そして刺客はバラキエルが着く前に朱乃に言ったの。朱乃の母は……朱璃が死んだのはバラキエルと結婚したからだ。そして朱乃(お前)がいたからだ……ってね」

 

リアスはそう言って龍誠の目を見る。

 

「その後の朱乃はバラキエルさんを憎んだ。憎まなければ朱乃は自分の心を保てなかった。自分のせいで母が死んだ……そんなことを認めれば心が壊れる。だから全て父のせいにした。母を殺され、父を憎んであの子は堕天使の血を引いてるからというだけで親戚から追放されて私に会うまでずっと一人ぼっちだった。その孤独も父を憎むことで自我を保った。幼かった当初なら分からないけど、今なら父も自分も悪くないことなんて朱乃だって分かってるわ。でもね龍誠、ずっと憎み続ける事で生きてきたあの子が、じゃあやっぱり悪くなかったから許しますなんて出来るほど器用じゃないし、強くないのよ」

 

そう言い、表情をリアスは曇らせた。その言葉に龍誠は頭を悩ませる。朱乃の過去は想像以上だ。

 

そして正直に言うと、解決の糸口が見えない。どこかで、どうにか出来ると思っていた自分がいた。だが実際はなにも思い付かない。そう考えて当然だと自嘲する。

 

自分には親がいない。家族との確執なんて経験がなく、どう対応すればいいのか検討もつかない。

 

助けたい、そう思ったのは本当だ。ただ正直今回の一件に関しては自分はなにも言えないんじゃないか……

 

そう思いながらリアスと別れ、自室に戻った龍誠を待っていたのは、

 

「お願い龍誠。私を抱いて」

「はい?」

 

そう言って自分をベットに押し倒す朱乃だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んでタンニーン。さっき言ってた龍誠のことだが」

「あぁ、あの気配は間違いない。弱々しく微かに感じる程度だが、あれはドライグ……赤龍帝・ドライグの気配だ」



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逃げずに戦うこと

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「様々な思惑がある中、遂にロキとの戦いが幕を開ける!」
龍誠「いやその前に朱乃さんな!?」
戦兎「でも俺出番無いしなぁ……どうせお前がうまくやるんだろ?」
龍誠「見も蓋もないこと言ってんじゃねぇよ……」
ヴァーリ「ん?可笑しいな。龍誠(バカ)の癖に難しい言葉を使ったぞ?」
匙「まさか偽物……?」
龍誠「んな訳あるか!」
戦兎「とまあそんな感じの55話スタートです」


「お願い龍誠。私を抱いて」

「はい?」

 

突然のことだった。部屋に戻った龍誠は、突如ベットに押し倒され、何事かと思いながら改めて見ると、龍誠を押し倒して上に乗っかっているのは朱乃だ。

 

そして彼女は、スルスルと着ていた白装束を脱ぎ捨て、

 

「私を滅茶苦茶にして」

「……」

 

思わずクラクラしてそのまま理性なんてポイしたくなるほどの魅力的な提案だった。だが龍誠は気づく。

 

今の朱乃は虚ろで、自暴自棄になっているような、そんな目をしていた。

 

「え?」

 

だからか、そんな朱乃に龍誠はソッと白装束を掛け直す。そんな龍誠の行動に朱乃は、

 

「私じゃ、魅力がない?」

「まさか……これでも結構ギリギリです。でもね朱乃さん、流石にそんな泣きそうな状態じゃ俺は出来ない」

 

え?そう言う朱乃に、龍誠は言葉を続ける。

 

「朱乃さんはいつも俺に抱きついてくるとき楽しそうでした。でも、今はなんか悲しそうで、辛そうで……」

「えぇそうよ、私は忘れたいの。母もあの人の事も……貴方に全部委ねて全部貴方で埋め尽くしてしまいたいの。それがイケないの?」

 

朱乃は半ば懇願するように言う。すると龍誠は、

 

「忘れて良いわけないじゃないですか。貴方にはちゃんと居た。いや、今も居るんですから。愛してくれて、自分を思ってくれる……そんな素敵な家族が」

「あっ……」

 

それは親を知らず、親の愛情を知らず、家族を知らない。それは龍誠の朱乃への嫉妬があったのかもしれない。

 

誰も悪くないことが分かってるんだろ?なら逃げたらダメだろ。そんな龍誠の無言の言葉だった。

 

「だから俺は貴女を抱かない。でも……」

 

そう言って龍誠は朱乃を優しく抱き締める。それから、

 

「ちゃんとまたいつもみたく笑えるようになるまでこうして抱き締めますから。だからちゃんと、また何時もの朱乃さんに戻ってください」

「龍誠」

 

ギュッと少しだけ力を込めて朱乃を抱き締める龍誠。そんな龍誠に負けないように朱乃も龍誠を抱き締めかえす。

 

自分の判断が正しいのかわからない。でも、また朱乃が何時ものように笑えるようになれば、父と向き合う勇気が生まれるんじゃないか……なら向き合ってほしい。母親は死んだのかもしれない。でも父親はいる。家族がいて、家族の記憶があって……それって凄く幸せなことのはずなんだ。

 

龍誠はそんなことを思いながら、朱乃をずっと抱き締める。

 

『……』

 

一方、そんな様子を廊下で窺っていたのはリアスと戦兎で、

 

「そろそろ行きましょうか」

「ですね」

 

リアスの言葉に戦兎は頷き、二人はその場を離れる。

 

「姫島先輩も中々な過去がありますね」

「貴方の父親が失踪していないって言うのも大概だけどね」

 

そう考えるとグレモリーチームで両親健在なのは自分くらいなものだ。なんてリアス自身で思いながら、

 

「ま、今夜は朱乃に龍誠は貸してあげましょう。戦兎、ちょっとお茶に付き合いなさい」

「はいはい畏まりましたよ、マイマスター」

 

そんな軽口を言い合う。

 

ロキとの決戦も遠くない中、それぞれの夜はフケていったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朱乃と龍誠の一件から一週間。オーディンは日本にてこれからの同盟について話すべく、夜も遅いと言うのにとある建物の一角で会談に臨んでいる。アザゼルはそれに付き合い、この場にはいない。

 

そんな建物の屋上には、グレモリーチームとソーナチーム、更にヴァーリチームにバラキエルとロスヴァイセが既に戦闘体勢だ。因みに、地上から見えない位の高度にはタンニーンが控えている。

 

「おい匙、体の調子はどうなんだ?」

「ん?あぁ~。何ともないんだよな……」

 

そう言って匙はグルグル腕を回した。先日まで堕天使の拠点にて改造……もとい、特訓を行っていた匙だが、現在アザゼルの指示により四つあるヴリトラ系神器(セイクリットギア)の全てを体に埋め込まれている。だが、これと言って大きな変化はないらしい。

 

少し体に馴染むような感覚はあるらしいのだが、アザゼルが期待するほど大きな変化はなかったとのこと。それどころか、黒い龍脈(アブソブーション・ライン)以外のヴリトラ系神器(セイクリットギア)は、発動すらしなくなったと言う改造され損っぷりを見せていた。

 

その為か、プライドが大いに傷ついたアザゼルにより、この戦いが終わったあとは今までにない匙専用トレーニングメニューを組まれているとかいないとか……

 

しかし戦いが終わったあと、それはつまりアザゼルは無事こちらが勝つことを信じてくれてると言うことだ。それは普通の嬉しい。その期待には絶対応えねばなるまい。

 

それにしても今までロキからはなにもアクションがなかった。もしやこのまま何もないのでは?何て甘い考えが過る中、

 

「来たようだぞ」

 

ヴァーリが呟きながら空を見ると、空間がバチバチと火花を出して歪み始めた。

 

「いきます!」

 

その空間の歪みからロキが出てくるのを確認したソーナを筆頭に、匙以外のソーナチームが魔力を流し、魔方陣を展開。

 

何故ならこんなところでロキと戦えるわけがない。なので、ロキと自分達をこの場から離れた場所に転移させて、戦う方がいい。

 

そう指示を受けていたソーナチームは、自分達以外を転移させる。

 

そして匙以外のソーナチームを除き、皆は古い採石場である開けた場所に出た。ここが決戦の場だ。それにしても……

 

「逃げないんだな」

「逃げる必要はない。お前達を殺してから向かっても然程変わらないのだからな」

 

戦兎の問いに、姿を現したロキは言う。随分自信満々じゃないか。ならこっちだって色々準備はしてたんだ。と戦兎はビルドドライバーを着け、それに合わせて龍誠やヴァーリに匙もベルトを装着。そして、

 

《ラビット!タンク!ベストマッチ!》

《ウェイクアップ!クローズドラゴン!》

《ロボットゼリー!》

《ドラゴンゼリー!》

《Are you ready?》

 

四人はそれぞれのアイテムをベルトに挿し、意識を集中。そして!

 

『変身!』

《鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イェーイ!》

《Wake up burning! Get CROSS-Z DRAGON!Yeah!》

《潰れる!流れる!溢れ出る!ロボットイングリス!ブラァ!》

《潰れる!流れる!溢れ出る!ドラゴンインクローズチャージ!ブラァ!》

 

それぞれが変身を終え、ロキをを見た。だがロキは特別気負うことなく、指を鳴らし、フェンリルを呼び出す。

 

「ふふん。成程これは強そうだ。だが、こいつには勝てまい!」

 

そう言ってロキが出したGOサインと共にフェンリルが疾走。

 

「くっ!」

 

バチィ!と体に走り電流に、思わず歯を噛み締める匙だったが、強引に黒い龍脈(アブソブーション・ライン)からラインを放ち、フェンリルを狙う。しかし、

 

「ふははは!その程度ではフェンリルの動きは捉えられんぞ!」

 

ロキはそう笑いながら叫ぶ。だが、

 

「にゃん!」

「む?」

 

そこに気配を潜めていた黒歌が、魔方陣の中から巨大な鎖を出して、フェンリルの動きを封じた。

 

「グレイプニルか!?」

 

ロキが驚く中、フェンリルは動きを封じられてしまう。

 

「いよっしゃ!後はロキだけだぜ!」

 

龍誠はそう言い、ロキに狙いを定める。所がロキは意外と余裕そうで、

 

「ククク。成程、グレイプニルか。まぁ確かにフェンリルを相手にするにはそれしかないな。だが……」

 

それは想定内だ。ロキはそう呟くと同時に、フェンリルは鎖を引き千切り突進。

 

『っ!』

 

咄嗟に戦兎達は横に跳んで避けたが、唯一ラインを出していた匙だけが反応に遅れてしまい、

 

「匙!」

「がはっ!」

 

フェンリルの爪をモロに喰らって、血を吹き出しながら後方に吹っ飛ばされてしまう。

 

「ちぃ!」

 

それを見たタンニーンがブレスでフェンリルを狙うが、フェンリルは軽々と避けた。

 

「アーシア!すぐに治療を!」

「は、はい!」

 

一方、地面を何度も跳ねながら転がった匙の元に、リアスの指示の元、アーシアは駆け寄る。

 

「その男の神器(セイクリットギア)を囮に、グレイプニルか……中々の連携だ。普通ならフェンリルを使い物にならなくされてたよ。だが、この程度は想定内だ。全く、そんな浅知恵に引っ掛かる私だと思われていたのであれば、心外だな」

 

早々に、こちらの対フェンリル対策を封じられ、戦兎達は互いに顔を見合わせた。そこにロキは、

 

「どれ折角だ。少しスペックは劣るが、少し追加してやろう」

 

そう言って空間から現れたのは、フェンリルよりは一回り以上小さな狼。更に何匹ものミドガルズオルムのサイズダウンverドラゴンが……

 

「スコルとハティ。ヤルンヴィドに住む巨人族の女を狼に変えてフェンリルと交わらせて生ませた子供だ。フェンリル程ではないが、今のお前達には十分すぎる相手だろう。それの加えてミドガルズオルムの量産型もお披露目しよう。さぁ、存分に楽しんでくれたまえ」

 

ロキはそう言い終えると、スコルとハティと呼ばれた狼と量産型ミドガルズオルムもこちらにフェンリルと共に走ってくる。

 

「来るわよ!」

 

リアスの言葉と共に迎撃体勢に入る皆。

 

「はぁ!」

「あらよっと!」

 

アーサーと美猴がそれぞれの獲物を振るい、量産型ミドガルズオルムを倒す。どうやら量産型だけあって強さは大したことはないらしい。しかし如何せん数が多い。息を合わせてはいないが、タンニーンのブレスも撃ってきてくれている。それでも数が一向に減る気配がないのだがスコルとハティよりはマシかもしれない。

 

「くっ!」

 

祐斗は聖魔剣を振るうが、スコルとハティはそれを軽々と避けてしまう。フェンリル程ではないが、スコルとハティの速さも十分驚異だ。しかも攻撃を一発でも喰らえば戦闘不能になる牙の一撃。

 

「はぁ!」

「えい!」

 

そんな速さの相手にゼノヴィアのデュランダルや、小猫の攻撃が当たるわけもない。

 

「クソ!速すぎる!」

「追い付けません」

「しかも当たったら危ないしね!」

 

と、背中合わせに言うイリナに、ゼノヴィアと小猫は同意する。

 

《分身の術!》

「おぉおおおおお!」

 

そんな中戦兎も姿を変え、ニンニンコミックになると分身してフェンリルを追うが、フェンリルにはものともせず蹴散らされる。

 

「どおおりゃあああああああ!」

《ヒッパレー!ヒッパレー!ヒッパレー!メガヒット!》

 

だがその隙を突いて、龍誠はビートクローザーを振り下ろす。それをフェンリルは、

 

「がぅ!」

「嘘だろ!?」

 

なんと首だけ動かして噛んで止めてしまう。そしてそのまま首を振ってぶん投げると、

 

「がはっ!」

 

地面に叩きつけられる。しかしそれだけではなく、フェンリルはそのまま龍誠を踏み潰そうとした。そこに、

 

『させない!』

 

まずギャスパーの停止世界の邪眼(フォービドウン・バロール・ビュー)がフェンリルを止め、リアスと朱乃の滅びの魔力と雷光がバリバリとフェンリルの横っ面を襲う。ダメージはあまり無さそうだが、それでも戦兎が咄嗟に龍誠を連れてその場から走り去るには十分だ。

 

「おぉ!」

 

そして更に気をとられたフェンリルの顔面に向け、

 

《ツインフィニッシュ!》

「らぁああ!」

 

ヴァーリのツインブレイカーの一撃が入る。流石にそれには少し苦しそうな顔をしたものの、これでも決定打にはなりそうにない。

 

すると、

 

「ぬん!」

 

朱乃を更に上回る強烈な雷光がフェンリルの体を痛め付け、

 

「フル……バーストォ!」

 

ロスヴァイセの何重にも重ねた魔方陣から発射された光線がフェンリルの体勢を崩した。オーディンの御付きに任命される位なのだから、優秀だとは思っていたが想像以上に頼もしい。

 

そんな様子を匙は薄ボンヤリとした意識の中見て思う。

 

(俺って……いっつも肝心な時に役に立たねぇな)

 

何で皆強いんだ。同じ時期悪魔になったのに、何で戦兎と龍誠まで戦えてるんだ?そう匙は何度も考えた。

 

何が違う?同じく変身できるようになった。主の格だって変わらない。仲間だって変わらないくらい強い。じゃあ何が足りない?

 

匙は自問自答する。努力量だって負けてない。神器(セイクリットギア)の特性ならこっちの方が戦闘向きな位のはずだ。なのに勝てない。レーティングゲームの時だってそう。何で勝てないのか……どうすれば勝てる?どうすれ

越えられる?そして、どうすればもう()()()が泣かないで済む? どうしたらアイツらみたくなれる?

 

「はは……」

 

すると匙は突然笑う。危ない危ない、大事な事を忘れる所だったと。

 

「そうだった。全く、すーぐ俺ってば悪い方に考えちまうからな」

「あ!まだ怪我は」

 

アーシアに大丈夫だと言いつつ、匙は真っ直ぐ前を見る。

 

「会長と約束したんだ。俺は俺として強くなるって。俺は桐生戦兎でもなく、万丈龍誠でもない!俺は……匙 元士郎だぁああああ!」

 

バチバチ体に電流が走る。だが匙は両手を合わせると、

 

「うっとぉしいんだよぉおおおおお!」

 

ドン!と胸を殴った。すると体に走っていた電流は消え去り、それと同時に全身に黒いラインが刻印され、仮面についている青いゼリー状の物が黒ずむ。

 

「体が軽い?」

 

それだけじゃない。今までに感じたことの無い力を、匙は自分の体から感じていた。

 

「これならイケる!」

 

オォオオ!と言う咆哮と共に、匙は走り出す。

 

「え?おい!匙!」

 

戦兎は咄嗟に呼び止めるが、それを無視して匙はフェンリルに飛び掛かる。

 

「がぅ!」

「おぉ!」

 

牙を剥き、匙を迎え撃つフェンリル。だが、匙は突然右手から黒炎を出すと、そのままフェンリルの口に叩き込んだ。

 

「ぎゃん!」

 

すると、フェンリルも流石に口の中に黒炎を叩き込まれたのが嫌だったのか、苦しみながらひっくり返る。だがそれだけじゃない。先程まで口の中にあった筈の火は、口から燃え広がりそのままフェンリルの体自体を焼き出した。

 

しかしフェンリルはその炎もだが、それ以上に左手に黒炎を纏わせた匙がゆっくり近づいてくる事の方が危険だと判断する。

 

《シングル!》

 

まずタカフルボトルをツインブレイカーに挿し、また一歩進む。

 

「キャイン!」

 

フェンリルが感じたのは恐怖だった。ロキに作られ、生まれてこの方恐怖を知らずに生きてきた。なにせ殆どの生物が自分の一噛みで殺せるor戦闘不能に出来た。だが、こいつはなにかが違う。ヤバい逃げろと人生(と言うか狼生?)で初めて父の行けと言う命令を無視して逃げ出そうとした。だが、その前にフェンリルの周囲を黒い檻が出現し、取り囲む。

 

《ツイン!》

 

その間にロックフルボトルも挿して、更に左手の黒炎でツインブレイカーを覆って準備完了とばかりにフェンリルを見る。

 

「さっきやられた分。こいつで返させて貰うぜ!」

《ツインブレイク!》

 

檻を解除し、匙は飛び上がるとそのままフェンリルの眉間に渾身の一撃を叩き込む。

 

「ぎゃん!」

 

そのまま今度はフェンリルの方が後方に吹っ飛び地面を転がると、そのまま岩壁にめり込んで動かなくなってしまった。ピクピクしているので、死んではいなさそうだが……

 

「へぇ、やるじゃねぇか」

 

そんな姿を見たヴァーリが、そう誉めると匙は、

 

「アンタが不甲斐ないお陰でな」

「あぁ?」

 

何て言うもんだからヴァーリはプッツン。そんなヴァーリにスコルとハティが両サイドから爪で襲い掛かるが、それをなんとヴァーリは片手で一体ずつ掴んで止めた。

 

「誰が不甲斐ないだゴラ!俺がとっとと倒したら折角の他のやつらの出番がなくなっちまうから遠慮してやってただけだ!」

 

そう言ったヴァーリはそのまま力付くでスコルとハティを弾き返すと、

 

「取っておき見せてやるよ!」

《スクラップフィニッシュ!》

 

レバーを下ろしたヴァーリは、素早くロボットゼリーを抜き取ると、そのままツインブレイカーに挿す。

 

《シングル!》

 

更にロボットフルボトも挿して、

 

《ツイン!ツインフィニッシュ!》

 

ヴァーリはそのまま、まずはスコルに向かってジャンプ。すると、足元からゼリーが噴出し、波乗りの要領でスコルを追う。それからツインブレイカーのビームでスコルを攻撃して牽制し、そのままハティの方にも向かって同じく牽制。

 

そして二匹は気づく。いつの間にか、互いが一ヶ所に集められていることに……そして、

 

「覚悟決めろやごらぁあああああ!」

 

大きく飛び上がったヴァーリの渾身の蹴りが、スコルとハティを二匹纏めて吹き飛ばす。そして、

 

「ふん!ざっとこんなもんだ」

 

と、大きなクレーターを作りながら、二匹纏めて戦闘不能にしたヴァーリは一息。

 

「おいおい、これじゃ俺らの出番ねぇじゃん」

「んなこといってる場合か!」

 

そんな匙とヴァーリの活躍に戦兎が呟き、龍誠は突っ込む。こっちはこっちで今度は量産型ミドガルズオルムの相手に移っているので、全然暇はない。だが、

 

《ラビットタンクスパークリング!》

「何いってんの。アイツらばっかりに良いとこ持ってかれるわけにいかないだろ?主役は俺だ!最近出番無かったけどな!」

「お前って本当にそう言うとこ尊敬するよ……ったく、プロモーション!」

 

二人は意識を集中し、気合いを込めて、

 

「ビルドアップ!」

「クイーン!」

《シュワッと弾ける! ラビットタンクスパークリング!イエイ! イエーイ!》

 

姿と駒をそれぞれ変えて、戦兎と龍誠は更にレバーを回す。

 

《Ready Go!》

 

二人は腰を落とし、空を覆い尽くす気かと言うほどの数がいる量産型ミドガルズオルムを見据えた。

 

「皆!伏せてろ!」

『え?』

 

戦兎の言葉に皆が、はい?と首を傾げる中、

 

《スパークリングフィニッシュ!》

《ドラゴニックフィニッシュ!》

『いっけぇ!』

 

同時に二人の放った蹴りは、それぞれが膨大なエネルギーを秘めた衝撃波を産み出し、その二つが組合わさることで更に強大なエネルギーの衝撃波を引き起こす。

 

その衝撃波は次々と量産型ミドガルズオルムを蹴散らしていき、

 

「計算通り」

「計算通りじゃないわよ」

 

ペシン!と決めポーズをした戦兎にリアスが背後からひっぱたく。危なく巻き込まれるところだった、他の面々もリアスの言葉にうんうんと頷いた。だが、

 

「これで残るのはアンタ一人だな」

「……くく」

 

戦兎がそう言うと、ロキは少しうつむいたかと思うと、

 

「クハハハハハハハ。これはすごい。まさかフェンリルだけではなくスコルやハティに量産型ミドガルズオルムまでやられるとはな。これは予想外だった。非礼を詫びよう。お前達を我が手を煩わせずとも倒せると思っていた私の見通しの甘さをな!」

『っ!』

 

ズンッ!と突然戦兎達は自分達の体が重くなったような気がした。いやあくまで気分なだけだ。

 

ただ、それだけロキの体から発せられるプレッシャーが大きくなっただけ……

 

するとロキは地面まで降りてきて、

 

「空中よりもこっちの方が得意だろう?」

「舐めやがって!」

 

匙は右手に黒炎を集めながら、ロキに殴りかかる。だが、

 

「ふん!」

「なにっ!?」

 

匙の拳を片手で止めたロキは、黒炎を睨み付けただけで消してしまう。

 

「この程度なら造作もない。私は神だからな!」

「ちぃ!」

 

そこのヴァーリもツインブレイカーで襲いかかる。だがそれももう一方の手で止め、

 

「さっきとは逆になったな」

「っ!」

 

ロキはそうヴァーリに嫌みを言ってから、二人を掌から衝撃波を発して吹き飛ばす。だがそこに入れ替わるように、

 

「そこです!」

「おらぁ!」

「にゃにゃん!」

 

アーサー、美猴、黒歌の三人が同時攻撃。しかし、

 

「甘い!」

 

片手で雷を放ち、三人纏めて撃破。

 

「やぁああああ!」

『はぁああああ!』

 

イリナにゼノヴィアと祐斗と小猫の四人で背後から襲いかかるが、ロキは不可視の壁を作り出し同時攻撃を弾き返した。

 

「いい一撃だ。だが神である私にはまだ届かない」

「ならこれならどうかしら!」

《Ready Go!》

 

そうリアスが言うと、彼女とロスヴァイセに戦兎と空中からはタンニーンがそれぞれ構えて、

 

《ボルテックブレイク!》

 

タンクフルボトルを入れたドリルクラッシャー・ガンモードのボルテックブレイクと、リアスとロスヴァイセの魔力の砲撃にタンニーンのブレスが組合わさりロキに襲い掛かる。

 

「それがどうした!」

 

それを、再度不可視の壁作り出して防ぐロキだが、

 

「まだまだだぜぇ!」

《メガスラッシュ!》

「なにっ!?」

 

ロックフルボトルを挿してクリップエンドを三回引いておいた龍誠は疾走。そのまま金色のオーラを纏ったビートクローザーを掲げると、

 

「加えてこれですわ!」

 

バリバリ音を立て、朱乃の雷光がビートクローザーに降り、そのまま雷光を纏わせた一撃を不可視の壁に叩き込む。

 

「ぬう!」

 

ピキ!と亀裂が入る音。不可視の壁のため見えないが、間違いなく聞こえた。これなら行ける……だがまだ壁を破るには足りないのか?そう思ったとき、

 

「はぁ!」

 

朱乃以上の雷光がビートクローザーに更に纏わりつく。見なくても龍誠はわかった。これはバラキエルの雷光だと。

 

朱乃は苦い顔をしているが、今はそんなときでないことは彼女だってわかっている。なのでなにも言わずにロキの方を見た。それと同時に、

 

「オラァ!」

 

龍誠のビートクローザーが遂にロキの不可視の壁を破壊し、ロキの体を深々と斬り裂く。

 

「ぐぅ!」

 

大きく後退りし、龍誠を睨み付けるロキ。その眼光を受けても龍誠は怯まずロキを見返す。

 

「どうだ!全員で力を合わせればお前にだって負けねぇ!」

 

だがロキは龍誠の言葉を聞くと、

 

「成程成程……お前達は実に面白いな。全く、こちらの予想を大きく上回ってくれる。実に面白い」

 

そう言いながらロキは、血がベットリと付いた服を脱ぎ捨て力を込める。すると胸の傷が塞がり、

 

「もっとギアをあげねばならんな」

『っ!』

 

ドン!と地面を蹴ったロキは、そのまま姿を消し、気がつくと龍誠の前にいた。

 

「なっ!?」

「ふん!」

 

ロキは龍誠の体を大きく後方に吹き飛ばし、次の瞬間には戦兎達の前に現れると、1・2・3と連続で拳を叩き込み、今度は祐斗達を蹴りで沈め、ギャスパーを裏拳で吹っ飛ばし、最後にヴァーリと匙を片手で投げて地面に叩きつけると、

 

「お前達の雷光は中々痛かったぞ」

 

と言いながらロキはまずバラキエルと比べて弱そうな朱乃の前に現れる。そして指をパキっと鳴らし、

 

「取り敢えず一人ずつ殺してやる」

 

そう言って貫手の要領で朱乃の胸に手を突き出した。だが、

 

「朱乃!」

「え?」

 

ビシャリと、朱乃の顔に赤い鮮血が飛び掛かる。一瞬何が起きたのかわからなかった。戦兎たちも、気付いたら吹き飛ばされており、事態を把握するのに戸惑っている間に起きた。

 

「ほほぅ?感動的じゃないか」

 

ズルッと腕を引き抜いたロキは、一瞬で最初に走り出したスタート位置に戻る。

 

「ふははははは!これは感動的だ!まさか最初に弱そうな方から狙ったら態々喰らってくれるとはな。愉快だ愉快!」

「ごふっ!」

 

胸に大穴が空いたバラキエルは、そのまま地面に倒れる。その様子を、朱乃は焦点の会わない目で見ていた。

 

「……」

「おいおい小娘。お前を守るために犠牲になったのだぞ?ありがとうくらい言ったらどうだ?」

 

ロキは楽しそうに笑いながら、朱乃に話しかける。そんな状況でも朱乃はブツブツ何かを言っている。

 

「わたしのせい……?ちがう……ちがう……」

 

朱乃の脳裏に浮かび上がったのは、幼き日に見た母が殺される瞬間の光景。自分を庇い母死んだ。そして今度は父が……

 

「そうだな!刺した私が言うのもなんだが……お前がいなければもっと別の結末だったかもな。全く、可愛そうな男だ」

「っ!」

 

ビキィ!と朱乃の中で何かがひび割れていく感覚。そうだ、あの時もそうだった。母も父も自分さえ……そう思った瞬間!

 

「やめなさい……朱乃」

「え?」

 

ゴフっと血を吐き、急いで飛ばしたアーシアの回復の光を受けながらも未だ重症のバラキエルが、ゆっくりと立ち上がる。

 

「いいか朱乃。どこぞの馬の骨とも知れん男とデートするのはまだいい。私を心底嫌い、恨んでも良い。だがな……」

 

バチバチ体から放電させ、バラキエルは朱乃に対して初めて怒りを見せる。

 

「間違っても……自分がいたのが間違いだと思ったり、ましてや口にするのだけは絶対に許さん!!!」

「っ!」

 

バラキエルの一喝は心底恐ろしくも、どこか暖かいそんな不思議な声音だった。

 

「悪神・ロキよ……貴公も神とはいえ知らぬことがあるようだ」

「なに?」

 

ロキは眉を寄せる。それを見ながらバラキエルは、ロキを見据えた。

 

「私を可愛そうだと言ったな。だが一つ言っておこう。私は可愛そうではない。何故だか分かるか?それはな、親にとって子供の命ほど重く、尊いものなど無い。もし、私の命で朱乃が助かるのなら、私は喜んでこの命を捧げよう。そして朱乃が生きてくれるなら……私がどれ程嫌われようと良い、生きてくれるなら……それ以上何も望まん」

 

バラキエルは再度咳き込み、だがそれでも眼光は消えることなく、

 

「貴公は知らない。神であろうとも……親の想いは貴様程度の男には一生理解できまい」

「ふふ、だがそれほどの傷を負って幾ら吠えたところで無意味だ。違うか?」

 

そう言ってロキは、ゆっくりとバラキエルに掌を向ける。

 

「ダメ!」

 

それを見た朱乃は無意識に前に飛び出し、バラキエルを庇う。

 

「朱乃!」

 

バラキエルもまた、咄嗟に朱乃を庇うべく体を前に出した。その時、

 

「なにっ!?」

 

二人の前に、巨大なドラゴンの翼が広がり、ロキの光弾を防ぐ。

 

「やらせねぇ……」

 

そう言ってドラゴンの力を解放した龍誠は、ロキに殴りかかる。

 

「ちぃ!」

 

だがロキも龍誠の拳の威力は知っている。なので先程の高速駆動を使って逃げるが、

 

「逃がすかぁ!」

 

匙の黒い龍脈(アブソブーション・ライン)がロキを追う。ただ追うのではない。普通であれば、黒い龍脈(アブソブーション・ライン)は真っ直ぐにしか伸びないだが、匙のは今までのとは違い、最初に延びた数本から枝分かれするように何本も生え、更に枝分かれした先で、更に枝分かれしてロキを追い続ける。

 

そのためか段々逃げ場を塞がれていくのに焦りが出てきたのか、

 

「なら本体だ!」

 

と、ロキは匙に向けて飛ぶ。そこに、

 

《シングル!シングルフィニッシュ!》

 

ヴァーリの一撃がロキの脇腹に炸裂。ホンの一瞬、ロキはそれに気をとられた。それがロキの運命を分けた!

 

「捕らえた!」

「っ!」

 

何本にも枝分かれした黒い龍脈(アブソブーション・ライン)が、一斉にロキに巻き付く。更に、

 

「うぉおおりゃああああ!」

 

ドラゴンの翼で飛んだ龍誠は、そのままロキの顔面をぶん殴る。メキメキと音を立て、そのまま地面に叩きつけられるロキ。血を吐き、指一本動かせなくなっている状況に戦兎は、

 

「やっと、完全にもうどうしようもない程の隙を見せたな。ロキ!」

「しまっ!」

 

地面に叩きつけられたロキは、戦兎がドリルクラッシャーをソードモードにしてこちらに来るのを見て何かを感じ取ったらしい。だがもう遅い。

 

「お前はずっと警戒していた!なにせ自分を完全に倒すとしたらミョルニルしかないってことに気づいてたんだ!だからずっと気を抜かなかった、ずっと探してたんだろ?ミョルニルは誰が持ってるのかって!魔力に秀でたやつが異空間に隠してあるのか、それとも別の方法かって。だから中々隙が出来なくて困ったぜ……だがやっと、勝利の法則が決まった!」

 

戦兎はそう叫びながら金色のハンマーの模様が彫られた今まで見たこと無いボトルを取り出すと、それをドリルクラッシャーに挿す。そして、

 

《Ready Go!》

「ミョルニルってすげぇ重たくてよ。誰も持てねぇからどうすっかってなった。そして考えたのがこいつさ!ミョルニル自体がダメなら、ミョルニルの力だけを引き出せば良いってな!」

《ボルテックブレイク!》

 

ドリルクラッシャーの先に現れた、巨大な雷のオーラで形成されたハンマー。そう、このボトルに入っていたのはミョルニルだ。戦兎はミョルニルをなんとエンプティボトルに入れてフルボトル擬きにすることで使えるようにしたのだ。それがロキに振り下ろされる。だが、ロキはそれを受け止めて押し返すべく力を込めた。

 

「成程……確かにそれなら重くはないようだ。だが残念ながらミョルニルの力を100%引き出すのは無理なようだな。精々六割弱と言ったところか!」

「あぁそうだな。だがロキ……龍誠がいったはずだぜ?全員で力を合わせればお前にだって負けねぇってなぁ!」

 

そう戦兎がいった次の瞬間、ドリルクラッシャーのハンマーの部分に、魔力や仙術、更にはドラゴンのブレスや光が降り注ぎ更に押し込む。

 

見なくてもわかった。それはリアス達の援護だと。

 

「ぬぅ」

 

それを見たバラキエルは、自分も少しでも力になるべく力を集めるが、胸の傷が残った状態では難しそうだ。そうしていると、

 

「なっ」

 

そこに朱乃がソッと寄り添い、自分も堕天使の翼を広げてロキを見る。

 

「力を……貸してもらえますか?」

 

朱乃の絞り出すような声……それに対してバラキエルは優しく頷き、

 

「当然だ」

 

そう言って、親子二人の雷光は二倍……いや、累乗しても足りぬほど共鳴しあって高まると、それが一つとなりハンマーの部分に落ちる。

 

そうして更に押し込めるが、まだ足りない。ならばと今度は近接武器を持つ面子が、一気に自身の武器を手にハンマーの部分を叩く。

 

『はぁ!』

「くぅ!」

 

火花と爆音を散らし、どんどん押し込む。だがロキも負けじと押し返そうとしている。

 

《スクラップフィニッシュ!》

《スクラップブレイク!》

《ドラゴニックフィニッシュ!》

『オラァアアアアアア!』

 

そこにダメ押しとばかりにヴァーリ・匙・龍誠のトリプルキックが更にハンマーを押し込む。あと一歩だ。あと一歩押し込めれば勝てる。そう皆は確信した。

 

だが、その一歩が押しきれない。それはロキも気づいていた。なんだかんだ言いつつ全員疲労の色がある。このまま耐えしのげば必ず押し返す隙が出来る筈だ。

 

しかし、それを見逃す戦兎ではない。

 

「やっぱり最後は主役が締めねぇとな」

《ハザードオン!》

 

戦兎はそう言いながら、ハザードトリガーを起動する。そしてドリルクラッシャーから手を離し、ボトルを入れ換えながらジャンプ。

 

《ラビット!タンク!スーパーベストマッチ!ガタガタゴットン!ズッタンズタン!ガタガタゴットン!ズッタンズタン!Are you ready?》

「ビルドアップ!」

《アンコントロールスイッチ!ブラックハザード!ヤベーイ!》

 

瞬時にハザードフォームに姿を変えた戦兎は、そのままレバーをまた回す。

 

《ガタガタゴットン!ズッタンズタン!ガタガタゴットン!ズッタンズタン!Ready Go!》

「これで終わりだ!ロキ!」

《ハザードアタック!》

 

高所から一気に落下し、渾身の蹴りをハンマーに叩き込む。その衝撃は、今までの均衡を崩すのには十分で、ロキは遂に耐えきれなくなり徐々にハンマーに押し潰されていく。

 

「ぐぁああああ!」

 

体が崩壊していく。指先から全身に走る雷と共に崩れ去っていく。

 

「ばか……なぁ……」

「お前は強かったぜ?ただまぁ、俺たち全員を相手にしたのがそもそも失敗だったな!」

 

戦兎はそう言い更に力を込め、最後の力を絞り出す。

 

「ハァアアアアアアアアア!」

 

爆発と閃光……そして稲光。それはロキを消し飛ばすほどの破壊力となり、

 

『プハァ!』

 

全員でその場に座り込む。だがそれでも、

 

「勝ち……だな」

 

と戦兎の言葉に皆は心の底から安堵しつつ頷くのだった。




朗報・戦兎。数話振りに出番があった上にロキにトドメを指すと言う快挙をあげる。

そう言えばVシネのグリスの情報も来てますね。今から楽しみですわ


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修復

戦兎「ロキとの戦いが終わり、また平穏を味わっていた俺達……まぁ今回はエンドロールってやつですよ」
龍誠「メタいな!」
匙「しかしなんだか最近お前ら平和の合間に事件って言うより事件の合間に平和を少し味わうって感じだな」
戦兎「それ俺も最近少し気にしてるんだけど……」
ヴァーリ「つうわけでそんなつかの間の平穏な57話スタートです」
戦兎「俺の台詞を!」



ロキとの決着から数日後。戦兎達は暫く戦いの興奮が続いたままだったものの、ようやくのんびりとした生活に戻れつつあった。

 

今回の戦いはそれくらいヤバイ戦いだった。今振り返っても、背筋が冷たくなる。

 

それでも全員無事と言うのは出来すぎなくらい出来た結果だ。しかも、匙は遂にスクラッシュドライバーを克服。更には謎の強化と言うオマケ付きだ。まあこの強化は、アザゼル曰くヴリトラのが関係してるだろうとのこと。

 

ただ問題もあった。一つは戦いの決着の直後、ヴァーリチームの皆が姿を消した。いや正確にはヴァーリチームと、フェンリルの姿がなかった。これもアザゼルの言葉だが、恐らくヴァーリ達はこのフェンリルを手にいれるのが目的だったと思われるらしい。何か良い感じに使われた気もしなくもないが……

 

因みにスコルとハティは、現在何重にも封印処置が施された後、一時的に冥界が預かり、その後北欧に送り返されるとのこと。

 

そしてもう一つ。それは戦いのすぐ後にバラキエルが倒れ、生死の境をさ迷う事態に発展。すぐさまアーシアの回復と小猫の仙術治療が行われ、そのまま冥界側が裏で管理する、悪魔や妖怪などの人外専用の病院に緊急搬送。

 

その甲斐あってか、何とか無事生還して意識が戻ってからは、味は良いが病院食は量が少ないとぼやいていた。

 

とは言えそんなことがあったものの、現在は暫く戦闘行為は禁止だが普通に歩けるし、元気一杯といった感じだ。

 

そして今日。バラキエルは堕天使の本拠地に帰る。幹部であり、今回の戦いに参加した彼には山のような書類が待っている。

 

「ふぅ……」

 

思わずため息が漏れた。やっと怪我も良くなったのに、これでは別の意味で倒れそうだ。

 

とは言え文句をいっていられる場合でもない。何せ堕天使の陣営はそもそも変人が多く、ちゃんと書類仕事ができるやつが少ない。バラキエルは基本的に真面目な性格なので、数少ないちゃんと書類仕事が出来る。つまりこんな病み上がりの奴でも、居ない日が続くと組織が回らないのだ。

 

なので、気は重いがとっとと行こう。そう思いバラキエルは先日まで入院していた病院を出る。すると、

 

「あ、朱乃?」

 

そう。バラキエルが言うように、病院から出るとそこには朱乃がいた。手に荷物を持ち、視線を逸らしているが確かに朱乃だった。

 

元々彼女が病院に足を運んでいたのは聞いていた。だが結局最後まで病室に来ることはなく、心のどこかであり得ないと思いつつも見舞いに来てくれるのでは?と期待してなかったと言ったら嘘になる。

 

そんな彼女が目の前にいる。それに対してバラキエルは喜びよりも驚きや困惑の色が強かった。そんな彼に朱乃は、

 

「これ」

「む?」

 

短くそう言ってバラキエルの胸に巾着袋を押し付ける。

 

「それじゃ」

「え?あ、朱乃!」

 

何ですか?と朱乃は振り替える。呼び止めたのは良いものの、バラキエルも何を言うのか悩む。悩んだ結果、

 

「い、いや……風邪に気を付けるんだぞ?」

「はい」

 

朱乃はそう言い、そのまま去ってしまう。バラキエルは一息吐き、近くのベンチの座ると巾着袋を開けてみる。そこにあったのは弁当箱と、一枚の手紙だった。それを見てみると、

 

《拝啓・バラキエル殿。この手紙を貴方が見ていると言うことは、無事私が作ったお弁当を渡せたと言うことでしょうか?それは何よりです。アザゼル先生に聞きました。怪我が快方に向かったばかりだと言うのに、もう仕事に戻らなくてはならないとか。せっかくとりとめた命だと言うのに、それではまた倒れてしまいます。なのでせめて栄養を着けて欲しいと思い、お弁当を同封させていただきます。これを食べて、職務にお励みください。追伸・弁当箱はきちんと洗ってから返しに来てくださいね……》

 

お父様。と締められた手紙だ。その手紙を見ながら、バラキエルはボロボロ泣いていた。何年ぶりだろう。父と呼ばれるのは……こんなにも嬉しいものだったのか。

 

すっかり忘れかけていた感情だ。それに弁当箱を返しにと言うことはまた会いに行っても良いのだろうか?

 

自惚れではないよな?とバラキエルは思いながら朱乃のお弁当をいただきますと言ってから早速食べる。

 

妻の……朱璃と同じだ。彼女の味は、きっちり娘に受け継がれていたらしい。

 

「御馳走様でした」

 

食べ終えたバラキエルは手を合わせ、それから立ち上がる。すっかり元気が出た。今なら幾らでも書類を片付けられそうな気分で、バラキエルは帰路に向かう。

 

一方その頃、大仕事を終えたような表情で朱乃はすっかり今ではもう一つの自宅になった龍誠達と住んでいる屋敷に帰ってくると、

 

「うぇえええええん!あのくそじじいいいいいいいいい!」

 

と、リビングで大泣きする声が聞こえる。泣いているのはロスヴァイセで、何でもあの戦いの事後処理やらなんやらでバタバタと彼女が働いている間に、なんとオーディンは一人で帰ってしまったらしい。と言うか、多分と言うかほぼ間違いなく忘れられたとのこと。あれだけ口喧しく言われていた彼女を忘れるというのは、無意識に記憶の彼方に追いやったんじゃなかろうか……

 

「今さら帰っても先輩達にオーディンだけ帰して何今になって帰ってきたんだって言われる……折角やっと安定した職につけたと思ったら部署が縮小されて窓際部署になってるし給料は少ないしサービス残業当たり前だし社保何て当然無いしなのに仕事だけはキツいしお局多いし出会い皆無だから彼氏も出来ないしいいいいいいい!」

 

と、ギャンギャン泣きながらロスヴァイセは大騒ぎ。最初は笑う余裕もあったロスヴァイセの不運劇場だが、最早周りで見ていた戦兎達も同情してきた。と言うかヴァルキリーってブラック企業なんだと思うと、色々夢や希望がなくなってくる。

 

だが何時だったかオーディンが言っていたが、元々ヴァルキリーは勇者を見出だし、それを導く者。だが昨今勇者はすっかりいなくなり、その過程で子を為していくヴァルキリーは必然的に出会いは激減し、仕事も雑用や書類仕事が主になってしまったらしい。

 

そんな不運な彼女の元に、リアスはスススっと近づくと、

 

「なら貴女にいい話があるのだけど?」

「ふぁい?」

 

鼻水と涙で美人が台無しな彼女(多分彼氏が出来ないのは出会いがないだけじゃくてこう言う色々残念な所も理由だと思われる) が顔を上げると、リアスは多数の書類を見せる。

 

それはリアスが戦兎と龍誠に初めて会って、見せてくれた待遇などが書かれた書類で、

 

「えぇ!こ、こんなに待遇が!?それに保険も!?」

 

戦兎たちにとっては普通だが、ブラック企業で働くロスヴァイセにとってはかなり驚きの待遇らしい。これではどっちが悪魔かわからないなと思っている間に、リアスは持ち前のセールストークでどんどんロスヴァイセを口説き始めた。

 

「更にここはこうで……」

「えぇ!そんなことも!?」

 

成程これが悪魔の誘いって奴かと戦兎は感心する。まぁ何れ自分も上級悪魔になれば、眷属を集めなければならないので参考になるが。

 

「と言うわけで、どうかしら?うちの眷属になれば将来の安定も約束するわよ?」

「なります!ならせていただきます!」

 

そして十分もしないうちに、見てて気持ちがいいほどあっさりロスヴァイセは陥落した。

 

いやまぁ、うちのチームは若干近接よりが多いので、ロキ戦でも見たあの魔術による遠距離攻撃は心強い。

 

何て思っている間に、ルークの駒でロスヴァイセは転生。さっきまでの低い天使ジョンはどこへ行ったのかと思うほどのハイテンションである。

 

「あ、朱乃さんおかえりなさい」

 

そこに龍誠が朱乃の帰宅に気付き駆け寄ってきた。

 

「渡せましたか?」

「えぇ」

 

バラキエルお弁当を私に行くと龍誠には伝えていたので、朱乃は頷きながら笑みを浮かべる。

 

「お腹はすいた?」

「えぇ、もうペコペコですよ」

 

じゃあすぐに作るわね。と朱乃は準備に取りかかる……前に、

 

「龍誠」

「はい?」

 

朱乃に声を掛けられ、龍誠は振り替えると、

 

「ちゅっ……」

『あぁ!』

 

いきなりのキスに龍誠は固まり、周りの女性陣が悲鳴をあげる。

「待っててね。腕に寄りをかけて作るから」

 

と朱乃が言うが、正直その前に部屋の凍りついた空気と、リアスとアーシアとゼノヴィアが怖い。なので龍誠はソッと戦兎を見るものの、

 

「面倒見きれるか」

 

そう言って戦兎はギャスパーを連れて部屋を出ていってしまい、小猫もその後ろを着いていく。

 

そして祐斗は優雅にお茶を飲みながら、困惑しているロスヴァイセを見て、

 

「何時ものことですから大丈夫ですよ」

 

といった次の瞬間女性陣達の龍誠の取り合いが勃発。あっちこっちに引っ張られ揉みくちゃにされ、龍誠は思う。

 

(ハーレムは男の夢って言うけど全然そんなことねぇ……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし……と。これでフェンリルは言うことを聞く筈ですよ。ヴァーリ」

「そうか」

 

某所にて、アーサーの所持するエクスカリバーの力である支配の力により、従順になったフェンリルをヴァーリは見る。

 

「だけど良いのかぁ?その犬っころあの匙とか言うやつに負けてたじゃねぇか」

「なに、あれはアイツの能力とフェンリルの相性は悪かったのもあるし、なにより一発で逆転が狙える牙と爪があるなら十分すぎる」

 

この牙ならあの男にも……そんなヴァーリの呟きに美猴は、

 

「なぁヴァーリ。そろそろ禍の団(カオス・ブリゲード)抜けちまってもいいんじゃね?お前の探してる男は居ないみたいだぜ?」

「そうだな」

 

そう頷きながらヴァーリは立ち上がる。未だ見つけられない……影すら見つからない。だが必ず見つけてみせる。そう心に新たに誓い。ヴァーリは仲間達と共に闇に消えていく。

 

一方その頃駒王町には、

 

「……」

 

大型のバイクを駆り、一度止まると大柄の男が地図を広げる。それから、

 

「ここが駒王町……」

 

渋い声音の老年と思われる男は、地図を畳みながらバイクをまた走らせる。そして静かに……だが確固たる意思を持って声を発した。

 

「ショッカー最後の負の遺産……必ず見つけて処分しなくては」

 

彼を誰も知らない。一人で戦い続け、歴史に記されることなく生きた英雄の名前を。

 

だが彼を都市伝説で呼ぶ者はいた。悪を許さず、人々の平和のために戦う正義のヒーロー。

 

【仮面ライダー】……そう呼ばれる存在を。




次回は第8章……本来原作で言うと短編集なのですが、これでは特別編を書きます。今回の最後で分かった方もいるかもしれませんが、下記にPVっぽい次回予告的なのもあるので、楽しんでいただければ……

でも実はその前に7.5章と銘打って蘇らない不死鳥編書きますけどね?

【次回予告】

ロキとの戦いを終え、近々くる修学旅行に胸を踊らせる戦兎達。だがそこに突然謎の怪物達が現れる。そしてそこに現れたのは、伝説の仮面ライダー!?

戦兎「ショッカー?」
???「そうだ。昔暗躍した悪の秘密結社。その最後にして最悪の遺産がこの地に眠っている」

男から語られるショッカーと言う名。そして現れる最凶にして最悪の敵を前に、仮面ライダービルドこと桐生 戦兎と、原点にして最強の仮面ライダーが手を組む!

第8章・始まりのファースト編、その内更新。


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幕間
蘇らない不死鳥


前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「と言うわけで今回は本編に関係ない特別編!」
龍誠「しかしふざけたなぁ……」
戦兎「ほんとなぁ、色々ふざけすぎたなぁ……」
龍誠「まぁ取り敢えず始めていくか」
戦兎「んだな。通話毛で特別編スタート!楽しんでくれよな!」


「ライザーに喝を入れて欲しい?」

 

久々に平穏な日々を満喫していた戦兎達の元に、突然来客がやって来た。

 

名はレイヴェル・フェニックス。もう大分前になるが、忘れることはないレーティングゲームの対戦相手である、ライザー・フェニックスの妹だ。

 

冥界のパーティーでも少し会ったが、突然の訪問に皆は顔を見合わせた。そんな中彼女が最初にいったのが、龍誠に兄へ喝を入れて欲しいと言うことだった。

 

何でもライザーは、前にも言っていたが先日の龍誠との決闘の後、引きこもりになってしまったらしい。

 

上級悪魔として才能に恵まれ、敗北を知らずにいた彼にとっての初めての敗北。しかもつい最近悪魔になった年下の下級悪魔にだ。

 

ゴシップ紙にも好き勝手書かれ、変な噂も流れているらしいが、本人はたまにチェスの上手い領民を呼び寄せチェスで遊んだり、1日レーティングゲームの映像を見てたり……

 

レイヴェル曰く、余りにも情け無さすぎる。奮起するならともかくいつまでもグチグチと落ち込んでて見てられない。

 

だがそれでも見捨てられない辺り兄妹の情と言うか、レイヴェルのお人好しさが出ているのだが……

 

だがなぜそれで龍誠に頼みに来たのかと聞く。するとレイヴェルは、

 

「はい、あのような一件がありましたし、頼むのも気が引けたのですが、やはりあのヘタレお兄様にはなんと言いますか……ガツン!とショック療法を与えればいいと思うのですよ。そこで龍誠様であれば、ドラゴンをモチーフにした姿を持ち、更に心を折った張本人なので二重の意味でお兄様にショックを与えられると思います。そして序でにこの際ですから力付くで引っ張り出してしごいてやってほしいのです。そうすれば多少龍誠様のように負けても立ち上がれる根性を学んでいただけると思いますし」

 

確かライザーはクローズにやられた影響からかドラゴンや、それをモチーフにした物がダメになっているらしい。と言うか、先日龍誠は人間ベースの人型ドラゴンだと言うことが判明したので、三重の意味で天敵となっている。

 

しかし割りと容赦がない……だがまぁ兄が好き勝手噂されると言うのは彼女的に嫌なのだろう。なにせ兄の眷属を態々するくらいだ。兄想いではあるんだろう。

 

ただまあ一歩間違えば更に傷を抉りそうな気もしなくもないが、レイヴェルが良いと言うなら大丈夫だろう。多分。

 

と言うわけでやって来たのはライザーが現在引きこもっているフェニックス邸。メンバーはレイヴェルを除けば龍誠とリアスと戦兎で来ている。

 

「つうかなんか色々カットされた気がする」

「そりゃ今回は長々書きたくないって言う奴がいたからな」

 

そんな風に答えながら言う龍誠に、戦兎は誰だよ……と言う。

 

「本日はこんな感じで緩めにお送りするわよ」

「部長?誰に向かっていってるんですか?」

 

ほら、私あらすじ紹介に出れないから一回やってみたかったのよとリアスは答えながらレイヴェルに着いていった。それを見ながら、

 

「あらすじ紹介……?」

 

と首をかしげる戦兎がいたのは、まあ余談。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、フェニックス邸に無事入った戦兎達だが、グレモリー邸より下手すると大きい屋敷のためか、いつまで歩き続けてもライザーの部屋につかない。

 

なにせ廊下の端が見えないのだ。しかも壁にはこれまた高そうな絵やら花瓶やら……間違っても傷つけようものならとんでもない金額を要求されそうなので、戦兎と龍誠はソロソロと歩く。いつも通り歩けるのはレイヴェルとリアス位なものだ。

 

するとレイヴェルは扉の前に止まり、

 

「ここが兄の部屋ですわ」

 

と言って扉をノックする。

 

「お兄様。お客様ですわ」

 

扉の向こうで誰かが動く気配がする。

 

「レイヴェルか?悪いが今は誰とも会いたくない。嫌な夢を見たんだ……一人にしてくれ」

 

声音は確かにライザーの声だ。だが前にあったときとは比べ物にならないほど弱々しい。

 

それを聞いて一同は思わずため息。そしてリアスは、

 

「ライザー!私よ!」

「っ!?」

 

ガタッ!と椅子を倒した音が聞こえる。

 

「リアス!?君がなぜここに!?」

「少し話しをしに来たのよ。ここを開けてもらえるかしら?」

 

だがそんなリアスの言葉に、ライザーは吠える。

 

「振った俺に話だと?はん!万丈龍誠とののろけ話でもしに来たのか?」

 

中々元気に吠える事は出来るようだ。これだけ言えれば余り心配はないんじゃないか?そう思うが、そう言っていられない。と、リアスは努めて優しくライザーに声を掛ける。

 

「そんなこと言わないで、一回話しましょう?」

 

するとドタバタ足音を発て、ガチャリとライザーは扉を開けた。

 

「良いかリアス!俺は君と話すことなんてなにも……」

「あ、どうも」

 

最初は威勢の良かったライザーだが、あっという間に声音が消えていき……

 

「おーい」

 

カチンと固まったライザーに手を降る龍誠。そして次の瞬間、

 

「ひぃいいいいいいいい!」

 

とライザーは転がるように部屋の奥に走ると、そのままベットに飛び乗りフトンヲ頭から被って隠れてしまった。

 

「も、もうかんべんしてくれぇえええええええええ!」

 

勘弁も何も、龍誠はライザーに対して何もまだしてないのだが、余程前回の戦いが堪えたらしい。なにせプライドの高い彼だ。衆人環視の前でボコボコにされたと言うだけでも死にたくなるほどだろう。とは言えここで終わりにしたら、ライザーを脅かしに来ただけである。なのでしっかり頼まれたことは遂行しよう。

 

「ほらライザー。外に行くぞ」

「は、離せぇ!誰か助けろぉ!」

 

そうライザーが叫ぶと、そこにゾロゾロとまぁやって来たのは彼の眷属たち。それを見てライザーは目を輝かせると、

 

「よしお前ら!万丈 龍誠達を摘まみ出せ!」

 

だが現実は甘くない。ライザー眷属の皆もそれぞれライザーの着替えやら荷物などを纏めたり、暴れるライザーを抑えに掛かる。そしてにっこり笑って、

 

『ライザー様。ファイトです!』

「バカナァアアアアアアアアアア!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな感じでライザーの慟哭が響いてから一時間後、

 

「離せぇー!死にたくなーい!」

 

と情けない声でジタバタ暴れるライザーと、それをつまみ上げてバサバサ翼を羽ばたかせて飛ぶタンニーン。そしてその背中には戦兎と龍誠とレイヴェルがいた。

 

「いい加減諦めろライザー・フェニックス。全く、中々将来有望だと思っていたがここまで脆かったとはな。その根性も含めてきっちり鍛え直してやるからな」

 

そう意気込むタンニーン。今回ライザーを鍛えるに辺り、正直どう鍛えるかで悩んだ。なので自分達を参考にして、自分達が一番成長出来たと思っている修行方法をとった。それがタンニーンとの地獄の追いかけっこ。その呼び掛けにタンニーンは快く応じてくれた上に、なら自分の領土に来てやろうと言い出し、現在のメンバーで(ライザー以外)喜んで着いてきた。

 

なんでもタンニーンの領土は、沢山のドラゴンがおりライザーや、序でに戦兎や龍誠のトレーニング相手に事欠かないとのこと。

 

因みにその話の時に知ったのだが、タンニーンが悪魔になったのは、ドラゴンアップルと言う果実があり、ドラゴンの中にはそれしか食べれないものもいる。だが現在自然界でそれが生っている量が減っており、冥界の一部地域ぐらいにしか残っていないらしい。だがドラゴン相手にそれを売ってくれる悪魔は今ならともかく、昔は居なかったため、タンニーンがとある悪魔の眷属になって上級悪魔になり、領地を得てそこを貰ったらしい。

 

上級悪魔になれば眷属だけじゃない。冥界で領地も貰える。それを利用したのだ。本当にドラゴンと言うのが自由気ままが多い種族だとは思えない。

 

そんな風に思いながらいるとタンニーンの領地に到着した。だが、

 

「ぎぇええええええええ!」

 

ホントにドラゴンだらけ秘境どころか、ドラゴンしかいない場所だったためライザーが泡を吹いて気絶し、起こすのにちょっと手間取ったのは余談。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぎょええええええええ!」

 

さてライザー叩き起こして修行を開始すること数日。ライザーはドラゴンに追っかけ回されていた。

 

一匹一匹はタンニーンには及ばないが、ライザーより上。しかも数で追い詰めていく。なのでライザーは逃げる、全力で逃げる。

 

そしてそれを遠目で見ているのは戦兎と龍誠とレイヴェルの三人だ。

 

「しかし普通こんな吹雪の中お茶飲むかぁ?」

「分かってませんわね。淑女たるものティータイムは欠かせませんのよ」

 

と戦兎の呟きにレイヴェルは答える。それを横目に龍誠はモガモガと、口一杯にケーキを食べていた。

 

なんでもこのケーキは、レイヴェルお手製の逸品らしく、確かに旨い。この猛吹雪の山の中じゃなければだが……

 

そう思いながら、戦兎は二人を見る。

 

「そ、その龍誠様?美味しいでしょうか?」

「ん?おぉ、すげぇ旨い」

 

龍誠の答えに、レイヴェルは表情を綻ばせる。

 

(何時かほんと刺されそうだな)

 

そんな様子を見ながら戦兎がいるとレイヴェルが、

 

「そう言えば今夜リアス様と朱乃様が隣の山にいらっしゃるらしいですわよ?」

「そうなの?」

 

その山には美肌に効く天然温泉がありますから……何て言うレイヴェルを見るが、自分には関係無い話だな。そう思っていた。だがその日の夜。

 

「ライザーが逃げ出した!?」

「あぁ、何時も寝袋じゃ寝れないとか言ってた癖に静かに寝てるから可笑しいなと思いながらいたんだけどよく見たらこれタオルで作った身代わりだ!」

 

突然龍誠が、あぁ!と声をあげ戦兎が跳ね起きると、確かにライザーがいない。まさか余りの修行に逃げ出したのか?と二人が顔を見合わせる。

 

「とにかく連れ戻すか?」

「そうなるだろうな」

 

そう言って戦兎はビルドドライバーを着けると、

 

《パンダ!ロケット!ベストマッチ!Are you ready?》

「変身!」

《ぶっ飛びモノトーン!ロケットパンダ!イェーイ!》

「取り敢えず全速力で追っ掛けて捕まえるぞ!」

 

よっしゃ!と龍誠は戦兎の背中に張り付き、戦兎は腕に付いたロケットで虎を飛びライザーを追いかけようとし……

 

「ってライザーどっちいった?」

「うぅん……こっちだ!俺の第六感がいってる!」

 

と空で言い合って、宛てになるのかよと言いつつも戦兎は龍誠の言う方向に飛ぶ。

 

「あばばばばばばばばば!」

 

まぁロケットを使って結構な速度で飛んでるため、物凄いGが掛かり龍誠が死にかけたのは別の話し。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と言うわけで龍誠も変身を終え、全速力で飛ぶ。するとすぐに炎の翼が見えてくる。

 

あれは間違いない、ライザーだ。

 

「おいこらライザー!」

「ん?ちっ!気づいたか!」

 

龍誠の叫びにライザーは振り替える。

 

「おいライザー!いくら修行が厳しくたって逃げ出すのは許さねぇぞ!」

「バカが!そんなんじゃない!」

 

はぁ?と二人は顔を見合わせ、じゃあなんで抜け出したんだと戦兎が問う。するとライザーは、

 

「今夜リアスたちが来てるだろ?」

「あぁ、でもこっちの雪山には来ないぞ?尋常じゃないくらい寒いしな。温泉に入ってそのまま帰る筈だぞ?」

 

だからだ!とライザーは叫ぶ。正直、こいつが何をしたいのかがわからない戦兎と龍誠。するとライザーは、

 

「今夜じゃなければ覗けないだろうが!」

『っ!』

 

ズコッ!と戦兎と龍誠はずっこけそうになる。

 

「おまっ!覗きのために抜け出したのか!?」

「当たり前だ!リアスの生乳を拝めるなら俺はなんだってしてやる!」

 

そこにいたのは昼間のドラゴンに悲鳴を上げながら逃げていた男ではない。だが、ようはただの助平根性である。その根性を別の方面に使えと思う。

 

「って!お前部長のヌードを見に行く気か!」

「なにか問題あるか!」

 

問題しかねぇ!と龍誠は怒る。なんだかんだ言いつつも他の男に見られるのは嫌だと思う程度には独占欲があるらしい。

 

「ケチケチするな!お前はどうせ見るだけじゃなくて触れるだろうが!今夜くらい見せろ!しかもクイーンもいるんだぞ!あの女もリアスに負けず劣らずだ!」

「ダメだダメだ!お前にそんな権利はねぇ!」

 

俺は元婚約者だ!とライザーは血涙を流しそうな勢いで目を見開く。

 

「お前にわかるか!あれほどの美貌の女だぞ!俺がどれだけ初夜を楽しみにしてたと……」

「あんだけ女囲っといてか?」

 

それとこれとは話は別だ!とライザーは戦兎に吠える。それを聞きながら龍誠は戦兎を叩き、

 

「おい戦兎!こいつを倒すぞ!このままじゃ部長がヤバイ!」

「だな」

 

と戦兎は構えながらライザーを見据える。それを見たライザーも炎の翼を更に巨大化させ、

 

「行くぞ!」

 

そう戦兎は叫びライザーに突貫。それをライザーは避けると、

 

「無駄ァ!」

『うぉ!』

 

素早いカウンターに戦兎は慌てて避ける。

 

「くそぉ……俺も飛べればなぁ」

 

そんな背中に張り付きながら呟く龍誠の声を聞き流しながら、

 

「今の俺を舐めるなよぉ。覗きのためなら俺は幾らでも限界を超えてみせるわぁ!」

 

そう言いながらライザーは炎を両手に纏わせて、

 

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!」

「言いそびれてたけどそれやめろ!別の方面から怒られるわ!」

 

と、ラッシュを叩き込んでくるライザーの攻撃を防ぎ、戦兎は慌てて距離をとる、

 

「お前間違ってもWRYYYYYYYとか言うんじゃねぇぞ!?お前の声でやると別の作品だからな!?」

 

何だか色々な方面を敵に回しそうなので戦兎が突っ込んでおくと、

 

「なぁ戦兎!俺もオラオラで対抗するべきかな!?」

「お前の声のオラオラは最終的に無駄無駄に負けるからやめろ!」

 

なんか混沌と化してきたなぁ……と思いつつ戦兎はライザーを見直し、

 

「来ないからこっちから行くぞ!」

「ちっ!」

 

ライザーはこちらに突っ込んでくる。

 

「行くぞ!龍誠!」

「よっしゃ!」

 

そう二人が意気込む中一方では、

 

「なんか騒がしくない?」

「そう言えばそうですわね」

「えぇ」

 

温泉の端の岩に腰掛けたリアスと朱乃。更に丁度良いからと言う理由で呼ばれたレイヴェルの三人は空を見る。すると、

 

『ん?』

『あぁあああああああ!』

 

空からなにかが降ってきて、そのままその影は温泉にドボンと着水。そして、

 

『ぷはぁ!』

 

そのままゴボゴボと言った後、ゲホゲホ言いながら立ち上がる影。それは戦兎と龍誠で、気絶したライザーの襟を引っ張りながら、落っこちた拍子に変身が解除されたため濡れた服を絞りながら、

 

「ったく、ヒデェ目に遭ったぜ」

「だなぁ」

 

と言いながら何気なく周りを見た次の瞬間、

 

『……』

 

あらあらなんて朱乃は笑っているが、空気が凍りつく。いやまあ戦兎は慌てて顔を背けてるが、レイヴェルは顔を真っ赤にして、

 

「キャアアアアアアアアアア!」

 

あぁ、普通こう言う状況になったら悲鳴をあげて叫ぶよな、とグレモリーチームの女性陣の色々と堂々とした姿をちょっと思い出しながらも戦兎は、

 

「こう言うのは龍誠の役目でしょうがぁあああああああああ!」

 

と言う叫びと言うか断末魔を上げながら、龍誠と気絶したライザーと共にレイヴェルの放った炎に飲み込まれ、吹っ飛ばされたのだった。

 

因みに、

 

「それで見たんですか?」

「見てない」

「そう言いつつちょっと見ましたよね?」

「見てない」

「少し位」

「見てない」

 

こんな感じに、小猫に暫く背中をグリグリされながら詰問される戦兎がいたらしいが、それはまぁどうでもいいことだ。

 

更に、ライザーはあの後無事外には出れるようになり、ドラゴン恐怖症を克服したらしい。だが何故かライザーに気に入られてしまったらしく、ちょくちょく連絡が来るようになったのも、まぁ余談である。



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第八章 始まりのファースト
本郷猛


前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「ロキを倒し、ライザーに活を入れてから暫くたったある日、俺たちの前にとんでもない敵が現れる……ってあれ?おーい……俺一人だけ?マジで!?てなわけでそんな感じの58話スタート!」


「ふふふ~ん」

「ご機嫌ですね」

 

ある日の夜。まあなと言いつつ、戦兎は小猫と一緒にコンビニからの帰り道にいた。最近のコンビニスイーツはバカに出来ない位旨い。しかも今日はその中でも特に戦兎のお気に入りが買えたのだ。機嫌がよくないわけがない。

 

さて、何故龍誠がいないのかと言うと、今日の昼間に突然グレイフィアが来たかと思えば、なにやら試練があるだかで龍誠とリアスを連れて何処かに行ってしまったのだ。帰りは明日になるらしく、グレイフィアの来訪と聞いて何事かと集まったグレモリーチームの皆は、折角だしと言うわけでそのまま豪邸で遊び、そのまま泊まる運びになったのだが、戦兎がデザートを食べたくなりコンビニにいくと行ったら小猫が着いてきたのだ。

 

そしてそのまま二人でスイーツを買い、序でに買った肉まんをそれぞれ食べながら歩いている。

 

「しかしこの新発売の肉まんも旨いな」

「あぁ、確か何とか豚の角煮まんとか言う奴ですよね」

 

と、安定の普通の肉まんを食べる小猫は言う。すると、

 

「食ってみるか?」

「え?」

 

と戦兎は肉まんを差し出す。それを見た小猫は少し迷ったあとオズオズと齧った。

 

とは言え正直に言って余り味がわからない。だが戦兎は気にせずバクバク食べきって手に付いた油を舐めとって、ティッシュで拭く。

 

そこに、

 

『ん?』

 

ザッと二人の前に複数人の男が立ちふさがる。それだけならまだいい……事はないのだが、全身タイツの上に胸に骸骨のペイントがされており、目と鼻と口だけ素肌が見えている。

 

『イーッ!』

 

と言う掛け声の元、二人を取り囲む謎の男達に、戦兎と小猫は背中合わせになって身構える。

 

「イーッ!」

「ちっ!」

 

飛びかかってきた男を、戦兎はラビットフルボトルを振りながら避けてカウンター。小猫もそれの続いてどんどん敵を蹴散らしていく。

 

「コイツら一人一人は大したこと無いけど!」

「数が多いですね!」

 

そう言いながらも手際よく排除していく二人。だがその時、突如横から戦兎の体を蜘蛛の糸のようなものが絡めとりそのまま壁に引っ張って叩きつけた。

 

「がはっ!」

「先輩!」

 

小猫は黒タイツの男を蹴散らしながら戦兎を見る。そして戦兎の前に立ったのは機械的な材質の体だが、見た目は恐らく蜘蛛がモデルの怪物だ。

 

「よく分からねぇけど、仲良くしたい訳じゃなさそうだな」

 

そう言って戦兎は、ビルドドライバーを装着してフルボトルを振る。そして、

 

「さぁ、実験を始めようか」

《ラビット!タンク!ベストマッチ!Are you ready?》

「変身!」

《鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イェーイ!》

 

戦兎は変身を終えると、蜘蛛の怪物を殴る。だが、

 

「いっでぇ!」

 

ガツッ!と言う音の後、戦兎が悲鳴をあげた。

 

「どういう固さしてんだ!」

「なら私が!」

 

次に来たのは小猫。彼女は猫耳と尻尾を解放し、仙術の応用で動きを封じるべく殴る。だが、

 

「これは!?」

「塔城あぶねぇ!」

 

だが気にせず反撃に出た蜘蛛の怪物に、戦兎はラビット側の足に付いたバネで高速移動し、小猫を救出する。

 

「大丈夫か?」

「えぇ、でもアレは変です……」

 

小猫はそう言いながら立ち上がり、

 

「何て言うか氣がおかしいんです。人間のような、全く別の生き物みたいな、そんな色んな氣が複雑に絡まりあってて、姉様くらい仙術に精通していれば氣を乱せると思いますが私では一瞬の間にあそこまで複雑な氣を乱すのは……」

「そうか」

 

そう言いながら戦兎はさてあいつに効きそうなボトルはと考える。すると、

 

『ん?』

 

そこに聞こえてきたのはバイクのエンジン音。戦兎と小猫はその方向を見ると、大型のバイクに乗った大柄の男が降りてヘルメットを取った。

 

「やはり居たかショッカー」

 

そう言って男はジャケットを脱ぐと、腰にはベルトが巻かれている。そして構えると

 

「ライダー……変!身!」

 

とぅ!と男が飛び上がると、腰に書いていたベルトのバックルが開き、その中に入っていた風車のような物が回転。それと共に男の体を風が包み、筋骨粒々のバッタのような怪物に変わる。

 

「フン!」

 

ドゴン!っと言う音と共に風を纏わせた拳が蜘蛛の怪物を吹っ飛ばす。蜘蛛の怪物は慌てて立ち上がると、蜘蛛の糸を飛ばす。だが、

 

「ライダー……チョップ!」

 

一見すればただの手刀だ。だがそれは、まるで洗練された名刀のように、蜘蛛の怪物の糸を正面から切り裂き、それどころかその際に鎌鼬が生じて、蜘蛛の怪物の糸を発射している腕を切断した。

 

「フジャア!」

 

血を撒き散らし、苦しみの声を漏らす。その中男はゆっくりと力を溜めるとジャンプ!

 

「ライダー……」

 

拳を握り、風のエネルギーを纏わせた一撃を蜘蛛の怪物に叩き込む。

 

「パンチ!!!」

 

その一撃は蜘蛛の怪物の胸を貫く当時に、怪物を爆発四散させた。その炎の中からゆっくりと人間の姿に戻った男が歩いてきて、

 

「怪我はないか?」

「は、はい」

 

戦兎はそう返事をしながら、小猫と立ち上がり、

 

「えぇと、貴方は?」

「あぁ、そうだな。俺は……」

 

男は戦兎の問いに答えようとする。そこに、

 

「やはり現れたか。本郷猛」

『っ!』

 

突然かけられた声に、本郷猛と呼ばれたと思われる男は振り替える。

 

戦兎たちも見ると、そこにいたのはローブを身につけた若い男。

 

「今の怪人はお前の差し金か?」

「そう、素晴らしいだろう?苦労したんだ。お前に我らショッカーが壊滅させられ、数少ない生き残りすら倒されていき気付けば私一人になっていた。ずっと考え続けていたよ。貴様をどうすれば殺せるか……いや、ただ殺すだけでは生ぬるい。徹底的に敗北を教え込み、絶望させながら殺すにはどうすればいいかをな」

 

そういう男に、本郷猛は眉を寄せる。

 

「ショッカー壊滅の時からいたのか?それにしてはずいぶん若いな」

「あぁ、これはもう三代目の肉体だ」

 

なに?と本郷猛は言うと、

 

「クローン技術で自分の肉体を作り、記憶をコピーした。クク、先程は驚いたぞ?随分醜くなって化け物じみたじゃないか。大方使い物にならなくなった部分を継ぎ接ぎしたと言ったところか?だが俺のは違う。完全に新しい肉体だ。デメリットはほとんどない。精々十年しかもたないためその都度作らなくてはならないがな」

「そこまでして私を殺したかったと言うわけか」

 

当然だ!と男は叫ぶ。

 

「我が恩師、死神博士の無念を晴らさずには死ねない……そう思いずっと生きてきた。そんなときだ。博士が立案したものの、結局様々な要因があって実行できなかった最後の計画を知ったのはな。随分時間がかかった。だが、ようやく見つけたかと思えば長い時間ほっておかれた影響で起動にも時間が掛かってな。しかもそんなときに貴様もとは……全く。嫌になる」

「当然だろう。ショッカーが存在し、世界に悪影響を与える限り私は止まる気はない」

 

そう言って本郷猛は前に出ようとした。だが、

 

「ぐっ!」

 

突然胸を抑え、苦しそうに膝をつく。それを見た相手の男は笑いながら、

 

「当然だな。貴様は既に限界を超えている。精々ゆっくり余生を送れ……と言いたいところだがそんなものは許さん。少し休んでおけ、すぐに貴様を殺しにいってやる」

 

そう言い残し、男は去ろうとする。

 

「待て!」

「追うな!」

 

戦兎が呼び止めようとすると、本郷猛はそれを止めた。

 

「危険だ、行っては……」

 

そう言いながら本郷猛はそのまま地面に倒れてしまう。

 

「だ、大丈夫ですか!」

 

戦兎と小猫の二人は駆け寄り、見てみると取り敢えず息はあるようだ。となると意識がないだけ……ならばと戦兎は本郷猛を担ぎ上げる。

 

少し周りが騒がしくなってきた。恐らくさっきの戦闘音で近所の人たちが起きたらしい。

 

「とにかく運ぶぞ」

「はい!」

 

とバイクを持った小猫をつれて、 戦兎は走り出したのだった。




この中に出てくる1号は、ゴーストと一緒に出てたネオ1号の方です。


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キメラ

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「突如現れた謎の怪人に苦戦する俺と塔城。だがそこに助けに来てくれたのは本郷猛と名乗る男だった」
龍誠「いいなぁ~。俺がサタンレッドと戦ってるときに……」
戦兎「サタンレッド?」
龍誠「まぁ……色々あってな」
戦兎「お前も大変そうだな……ってそういう感じの59話スタート!」


「うん……?」

 

目を覚ますとそこは見たことのない部屋の天井だった。

 

「ここは……」

「目を覚ましましたか?」

 

君は?と本郷が見ると、そこには朱乃がちょうど部屋に入ってきたところだった。

 

「私は姫島 朱乃と申します。そしてここは私達が住んでいる家の一角。それと体を少し見ましたが随分無理をされているようですね。損傷を溜め込んでいたみたいですよ?」

「うむ……」

 

そう言いながら本郷は少し肩を回す。治療が適切だったためか、体が軽い。そう想いながらいると、朱乃が服を渡してくれる。

 

「ここにある服では明らかにサイズが合わないので近くの店で適当に買ったものですが……」

「いや、何から何まですまない」

 

朱乃が渡してきた服を受け取りながら本郷は、自分の体を確認する。

 

特に体が少し楽になったこと以外は怪しいところはない。それでも彼女には申し訳ないが、警戒は続けようと決めていた。

 

得たいの知れない自分をこうやって家に上げ、治療すると言うのは少々話が上手すぎるとも言えなくない。

 

勿論目を見て、悪者でないとは思うが、それでも怪しいのは変わらない。

 

そう思いつつ朱乃が渡してきた部屋を出ると同時にベットを降りて服を着替える。

 

(それにさっきのは……)

 

本郷が思い出すのは先程見た赤と青の不思議な姿をした人物。声音的に男だと思うのだが、何者だったのだろうか。

 

そう思いながら部屋を出ると、ドアの前に朱乃が待っていて、

 

「此方です」

 

と言って案内してくれた。そんな中、本郷は困惑していた。この家はかなり広い。彼女の家なのだろうか?いや、それは考えにくい。明らかに若すぎる。となれば相当な家柄のお嬢様と言った所だろうか?確かに若いが上品さを感じた。そんなことを考えつつ本郷はついていくと、朱乃が扉を開ける。

 

そこはリビングになっており、本郷が入るとそこには既に戦兎や小猫に加え現在不在のリアスと龍誠以外のグレモリーチームがいた。

 

アザゼル先生?連絡いれたのだが、連絡がつかなかった。大方可愛い姉ちゃんのいる店にいって呑んだくれてるのだろう。いざってときに役に立たない男である。

 

「大丈夫ですか?」

 

戦兎はそう言いながら立ち上がり声を掛けると、本郷は先程の赤と青の姿になっていた人物だと言うことに気づいた。

 

「君はさっきの赤と青の子か。声で何となく若そうだとは思っていたが」

 

そう言いながら本郷は周りを見る。皆若い。精々高校生か?と思いながら小猫を見て、

 

(小学生?いや、中学生か?)

「む……」

小猫はムッとする。それに気づかず本郷は、いったいこれはどういう集まりなのかと悩んでいた。

 

だがそれよりも、

 

「俺はどれくらい寝ていた?」

「4時間ってところです」

 

そうか、と本郷は言いながら朱乃にジャケットとバイクはどこか聞く。

 

「ジャケットはそこに干してありますしバイクは玄関まで運んでありますが……」

「そうかすまない。全部片付けたら改めて礼に来る」

 

そう言って出ていこうとする本郷を、戦兎と祐斗が慌てて止めた。

 

「ま、待ってください。まだ倒れてからやっと目を覚まして直ぐですよ?まだ休んでおかないと」

「いや、余り時間がない。アイツを止めねば……ショッカーの遺産を動かさせるわけにいかない」

 

戦兎は止めつつ本郷に問う。そもそもショッカーとは何なのかと。それを聞かれて本郷は止まり、

 

「そうか、そうだな。君は知る権利があるか……」

 

本郷はそう言いながら戦兎を見る。

「ショッカーは元々第二次世界大戦時、当時のドイツ……いや、ナチスが秘密裏に人体を改造し、人間とは別の生物の遺伝子を組み合わせることで常人を遥かに越えた改造人間を作り出す研究を受け継ぎ、そこから離反した者達が改造人間を作り出し、それらを従えて世界征服を企んでいた。改造人間は基本的に一般人を拐って作られていてね。私も元々は拐われたが、脳を改造されてショッカーに忠誠を誓わされる前にある人物のお陰で逃げ出せた」

 

それからずっと戦い続けてきたらしい。ショッカーを壊滅させ、その後も生き残りの野望も打ち砕き続けてきた。だがその中、先日ショッカーの古い研究所を見つけた際に、この駒王町にショッカーの研究所があり、そこにはショッカーが万が一に備え作った切り札があるらしい。

 

「何としても止めなければならん」

「ですが倒れるほど消耗してると言うのに無茶なんてしたら……」

 

そう割って入ってきたのは、この場における最年長者であるロスヴァイセだ。そんな彼女に本郷は、

 

「あぁ、無茶も良いところだ。だがここで止まったら私は一生後悔する。それにショッカーは最早避けられない因縁なんだ。ショッカーがいる限り、戦いをやめるわけにいかない」

 

そう言って壁に掛けられたジャケットを本郷は取ると、

 

「すまない。心配を無下にしてしまって……だがもう何十年もこうして生きてきてしまったせいでな。もう他の道は考えられないんだ」

 

そう言い残し、本郷は部屋を出ていったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここか」

 

本郷がバイクを山の麓で降りて、山を登りはじめてから暫く経った。人の手入れがされた様子はなく、森の中と言うよりは樹海に近い位木が生い茂っている。

 

だがそれでも本郷は迷わず進んでいく。前に見た書類が示していたのはこの辺りだ。それに研ぎ澄まされた本郷の直感がこの先に何かあると告げていて、その感覚を信じ本郷は草木を掻き分けながら進んで行く。

 

そこに、

 

「むっ!」

「イーッ!」

 

そこに飛びかかってきたのは黒い全身タイツの男達。その不意打ちを本郷は避けながらカウンターを叩き込み、一度距離を取るとそのままジャケットの前を開き、ベルトを露出させる。

 

「ライダー……」

 

腰を落とし、気合いを込めて本郷は叫んだ。

 

「変!身!」

 

風が体を覆い本郷の姿が変わる。そして手に風を纏わせ、次々と敵を蹴散らしていく。

 

「フン!」

 

そして拳を相手に叩きつけて吹き飛ばし岩壁に叩きつける。すると一部が崩れ、

 

「これは……」

 

と本郷が見てみると、そこは地下に向かって延びる通路があった。

 

「成程、岩壁を模した扉で隠していたのか」

 

一目では気づかないほど精巧だったが、こうなっては意味がない。と言うわけで本郷は少し早足で歩いていく。

 

そうして暫く歩くと、今度は開けた場所に出た。そこは研究室か何からしく、謎の薬品に漬け込まれた動植物が棚にギッシリ置いてある。

 

すると、

 

「っ!」

 

突如背中から何者かに吹っ飛ばされ、本郷は壁を破壊しながら隣の部屋に転がり込む。

 

「誰だ!」

 

本郷は素早く立ち上がると周りを見る。だがどこにもいない。と思ったとき、

 

「ぐっ!」

 

横から殴られ、本郷はふらつく。

 

「見えない敵か……」

 

拳を握って構えるが、音もなく忍びよって攻撃してくる相手に、本郷は苦戦を強いられる。

 

「どうした本郷 猛。随分苦戦しているじゃないか。これではせっかくの切り札を切る必要がないな」

「やはりお前もいたか……」

 

奥の部屋から出てきたのは、死神博士を恩師と呼ぶ男だ。

 

それを見た本郷は、とにかくまずは見えない敵だと身構える。だがその時、

 

「ぐっ!」

 

胸に走る激痛に本郷の動きが止まる。それを見て男は、

 

「くく、やはりお前はもう戦える体じゃないようだな。まぁ当然か、何年も戦い続け、使えなくなった部分を再改造して強引に戦っている。だがそれにも限界があった。技の本郷と呼ばれて恐れられた貴様がそのようにブクブクと肥大化した姿になっているのは良い証拠だ。今の貴様は昔のような技で戦えない。単純なパワーに頼らなくては戦うことも出来ないのだろう?」

 

そう男が言う間にも、見えない相手は本郷に攻撃を加えていく。

 

「がはっ!」

 

地面を転がり咳き込む本郷。そこに音も気配もなく来る相手に、

 

「あそこです!」

「よし!」

 

突然の銃声と共に多数の魔力弾が炸裂した。

 

「君達は……」

「大丈夫ですか?本郷さん!」

 

そう言って駆け寄ってきたのはアザゼルと連絡がついた時用に、留守番役

を受けた朱乃以外の戦兎達で、突然の登場に男も眉を寄せる。

 

「その声は……確かさっき蜘蛛の怪人に苦戦していたやつか?」

「正解。流石に放っておくわけにもいかないからな」

 

何人こようが変わらん。と言う男に戦兎は、ビルドドライバーを装着しながらそれはどうかなと言いつつボトルを振る。そして、

 

「さぁ、実験を始めようか」

《サメ!バイク!ベストマッチ!Are you ready?》

「変身!」

《独走ハンター!サメバイク!イェーイ!》

「ちっ、相手してやれ!」

『イーッ!』

 

黒タイツの男たちの相手を祐斗達がする中、サメバイクフォームに変身した戦兎は、まず見えない相手を探す。

 

サメにはロレンチーニ器官と言われるものがある。これは微弱な電流を関知できる器官で、これを利用すれば姿を消している相手にも、

 

「そこだ!」

 

ブオン!っと何もない場所に向けて戦兎が駆け出すと蹴りを放つ。

 

ガツッ!と派手な音をたてると同時に、戦兎に蹴られた衝撃で透明化が解けたらしい。ついに姿を現した敵は、爬虫類系……カメレオン?と思われる。

 

だが戦兎の攻撃が然程効いてはいないのは前回の蜘蛛と同じだ。首をコキコキ回し、戦兎を見る。しかし、

 

「成程爬虫類ね。なら攻略法が見えたぜ」

 

と言いながら戦兎はドリルクラッシャーをガンモードにし、冷蔵庫フルボトルを挿す。そして、

 

「勝利の法則は決まった!」

《Ready Go!ボルテックブレイク!》

 

ドリルクラッシャーの銃口から、冷気を放出。それに晒された相手は、全身がカチカチに凍った。

 

「爬虫類は寒さに弱い。っていうか寒いと活動を停止してしまう。生物学は専門外の俺でも知ってることだぜ?」

《ゴリラ!ダイヤモンド!ベストマッチ!Are you ready?》

「ビルドアップ!」

《輝きのデストロイヤー!ゴリラモンド!イェーイ!》

 

素早く姿を変えた戦兎は、レバーを回し、

 

《Ready Go!》

 

ゴリラの腕を掲げるとダイヤモンドでコーティングし、氷付けの敵に向かって走り出す。すると、

 

「くっ……」

「あ!まだ!」

 

と光を当てていたアーシアが叫ぶが、本郷も走りだし拳に風を風を纏わせて、

 

「ライダー!」

「おぉおおおお!」

 

戦兎と本郷は並び、同時に飛び上がる。そして最後に、

 

「パンチ!」

「はぁ!」

《ボルテックフィニッシュ!》

 

ガギィン!と火花と共に二人が同時に放ったパンチが相手を吹き飛ばし、バラバラに砕け散る。

 

「ぐぅ……」

「本郷さん!」

 

だがそのまま膝を本郷は付きながら苦悶の声を漏らす本郷に、戦兎は駆け寄り、

 

「大丈夫ですか!」

「あぁ……だがなぜここに?」

 

さっきもいったように放っておけませんからね。と言う戦兎に、本郷は首を振る。

 

「帰りなさい。ここは危険すぎる。君達が来るべきところじゃない」

「そんな戦いの最中に動けなくなるような人が来るような所でもないですよね?」

 

む……と戦兎の返しに本郷は詰まる。そんな中祐斗が、

 

「あれ?さっきまでいた男がいない?」

『え?』

 

そう言われて周りを見ると確かにさっきまでいた男がいない。それを確認した本郷は立ち上がり、

 

「すまない。私はもう行く。君達はここで帰るんだぞ」

 

と言って奥に向かう。それを見ながら戦兎たちは顔を見合わせ、

 

「帰るわけにもいかんよな?」

 

戦兎の言葉に、皆もここまで来たらと同意するように頷く。それを見て、

 

「んじゃいきますか」

 

と走り出す。一方奥では、

 

「はぁ……はぁ……」

 

本郷は荒く息を吐き、奥にまた更に広がる研究室に突入していた。

 

「ようやく来たか。本郷猛」

「貴様……」

 

奥でパソコンのキーボードを叩き終えた男は本郷を見る。

 

「いやはや、もしやさっきの改造人間で倒せてしまっては折角の準備が台無しになるかと心配したが、その心配はいらないようだな。先程の少年たちはどうした?」

「帰らせた……」

 

と本郷がいっている間に、後ろから走ってくる音が聞こえてきた。

 

「ふふ、随分優しい子供達じゃないか」

「くっ」

 

なぜ来たんだ……そう本郷は思わず呟くがそれよりも、

 

「その機械はなんだ?」

 

本郷が言うように、目の前には多数のケーブルに繋がれたカプセルのようなものが鎮座している。その中には、どこか自分の変身時の姿に似ている顔が見えた。

 

「昔な、お前と同じバッタの改造人間を作り出した。お前を殺すためにな。覚えていないか?ショッカーの本拠地に乗り込んで助けようとした男が居ただろう?寸でのところで助けられなかったようだがな。だが博士は考えたのだよ、どうにか改造用の人間を持って逃げ出せたが、お前の想像以上の成長を見て、このまま殺すために同じので良いのかと。確かにバッタの改造人間は想像以上の戦果を出した。お前自身でな。だがそれはダメだ。何故ならお前は自らの意思をもって戦うためか戦闘経験と言うものを蓄積していく。同じでは無理だ。だがお前に勝る改造のモデルも見つからない。そこで考え出されたんだ。一つでダメなら複数はどうなのかと」

「なっ!まさかそれは!」

 

そう、これは複数のモデルを組み込んだ改造人間だ。そう男は言う。だが、

 

「しかし、ここで新たな問題が起きた。一人の人間に複数の遺伝子を組み込むと、耐えられず体が崩壊してしまうのだ。博士は考えた。本郷が助け損ねたこの男の強靭な肉体ならどうかとな」

 

男の言葉と共に、カプセルが開かれ中から男が出てくる。顔は本郷の変身時と瓜二つ。だがその体は数々の生き物の特徴をごちゃ混ぜにしたような、そんな醜悪な見た目だった。だがそれ以上にその場に駆けつけた戦兎たちの目を見張るものがある。

 

「強靭な肉体。お前もだが肉体強度だけでいえばこの男の方が上だろう。とは言えだ。これでもまだ足りない。予想通り強靭な肉体で崩壊はしなかったものの今度は多数の遺伝子を組み込んだことで、力の制御できなくなってな。さてどうしたものかと博士が思案していたところに、ある種族と出会った」

 

強大な力を持つ化け物……そういい男が目覚めさせた怪人を見る。本郷をそれを見て一番最初に気になったのは、

 

(あの背中の羽は……)

 

だった。羽を持つ改造人間は居た。だが、その背中から生えている羽はどの種族にも似ていない。だが戦兎たちは知っていた。そう、あの羽は間違いなく。

 

「悪魔の羽?」

 

正解だ、男はそういう。

 

「悪魔。正直半信半疑だったが、死神博士はそれと接触し、遺伝子を取った。そしてこいつに取り込ませるか……ってところで貴様に倒され、この研究所は隠されたまま放置されていたのだ。だがここにはこの改造人間と悪魔の遺伝子がきちんと残って冷凍保存されていた。正直に数十年前の技術での保存状態だからな。綺麗かどうかは謎だったが、保存当時とほとんど変化はなかった。なので当時の研究データを漁り、ようやく完成させたのだ。そうだな、名付けるならば……様々な生き物の遺伝子を組み込んで悪魔の遺伝子で安定させた改造人間。キメラとでも呼ぼうかな?」

 

男はそう言いながらキメラ!と声をかけた。

 

「さぁキメラよ!本郷猛を倒せ!おっと殺すなよ?この男には自分の弱さを味わってもらう。そうだな、手足を折った後に後ろの小僧どもを殺せ!そして外に出て暴れてくるが良い。必死に守ってきた世界を一瞬にして阿鼻叫喚の世界にしてやべ!」

『え?』

 

 

男は楽しそうに叫んでいた。だが次の瞬間、キメラは男の首を手刀で撥ね飛ばしたのだ。

 

「俺に命令するな」

 

そう言いながら、キメラは本郷を見る。

 

「ようやく自由だ。ずぅっと眠らされててな、やっと解放されたよ」

 

キメラはゆっくりとした足取りで歩み、

 

「さて、久々のシャバの空気を味会わせてもらうか」

「待て」

 

勝手に行こうとするキメラを、本郷は止める。

 

「何処に行く気だ」

「どこでも良いだろう?やっと自由になったんだ。好き勝手にする。そうだな、手始めにこの力を全力で使ってみるってのはどうだ?」

 

させると思うか?と本郷の手に力が籠る。だが、

 

「お前に許可は求めていない」

「がっ!」

 

軽くキメラは本郷を突き飛ばした……ように見えた。だがそれは凄まじい衝撃となり、本郷を壁に叩きつけた。

 

「本郷さん!」

 

戦兎はそれを見て走り出しながら、ラビットタンクスパークリング缶を出して振ってから、ビルドドライバーに挿す。

 

《ラビットタンクスパーク!Are you ready?》

「ビルドアップ!」

《シュワッと弾ける!ラビットタンクスパークリング!イエイ!イエーイ!》

 

泡を放出しながらキメラとの間合いを詰めて腕の棘で突く。だがバキィ!と火花を散らすだけで、微動だにしない。

 

「なっ!?」

「邪魔だ」

 

ブン!と腕を振るキメラの一撃を、戦兎は咄嗟に下がって避けるが、その風圧で吹っ飛びながら地面を転がる。それと入れ替わるように、ゼノヴィアと祐斗が走り込み剣を振る。だがキメラは両腕から一本ずつカマキリの鎌のようなブレードを出すと、二人の剣を止めてしまう。

 

「何て力だ……」

「くぅ!」

 

二人は必死に押すが、ビクともしない。そこに、

 

「はぁ!」

 

と子猫が横っ腹を殴ったが、

 

「つぅ……」

 

そう言って後退りながら拳を抑える。

 

「止まれぇ!」

 

今度はギャスパーだ。流石にギャスパーの停止世界の邪眼(フォービドウン・バロール・ビュー)は効いたらしく、動きが封じられてキメラは少し驚く。そこに祐斗とゼノヴィアは離れてたタイミングを見計らって、

 

「フルバースト!」

 

ロスヴァイセの魔方陣をこれでもかと展開しまくって一気に放出。爆発と閃光で皆が目を塞ぐが、その中をキメラは避けることもなく進んできた。

 

「これで全部か?」

「そんな……」

 

ロスヴァイセが唖然とする中、キメラはまた一歩、歩を進めようとしたその時、

 

《オクトパス!ロケット!Are you ready?》

「ビルドアップ!」

 

キメラの周りを突然墨の煙が包み、視界を塞ぐ。

 

「皆一旦逃げるぞ!」

 

と言う戦兎は墨を放出するのを一回止めて、ロケットの腕で飛び上がるとそのまま天井をぶち抜いて脱出する。

 

それを皆は追うように悪魔の羽を出して飛び上がり、祐斗とゼノヴィアは本郷を抱えて飛んでいく。

 

「ふん!」

 

そんな中、キメラが腕を払って墨煙を吹き飛ばすが、既に戦兎たちは脱出済みだ。誰もいない。それを見て、

 

「逃げたか、まぁ良い。行く……」

 

行くか、そう言い掛けてキメラは足を止める。視界がボヤけ、足が進まない。

 

「眠いな……仕方ない。休憩してから行くか」

 

そう言ってその場に大の字になると十秒も経たずに寝てしまう。

 

一方その頃、

 

「追ってきては居ないな」

 

戦兎はそう言いながら、携帯を見る。先程脱出するときただ逃げた訳じゃない。逃げる直前にキメラに発信器を着けておいたのだ。これで再戦するとき探しやすくなる。

 

「うぅ……」

 

その中、本郷は一人呻き声を洩らす。その意識に浮かぶのは、一つの記憶だった。

 

(そうだ、思い出した)

 

あのとき救えなかった男。あとで知ったその男の名前は、

 

(一文字……隼人)



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決戦開始

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは、

戦兎「本郷さんを助け、どうにかキメラから逃げ出した俺たちは、キメラとの対抗策を考える事に」
小猫「それにしてもなんか今回と良い前回と良い戦兎先輩テンション高めですよね?」
戦兎「まぁほら、伝説の男とあったらねぇ?とまあそんな感じの60話スタートです!」


「……」

 

本郷がベランダから外を見ていた。結局戦兎達に運ばれて後に意識は取り戻した。だが、

 

「想像以上に弱くなっていたか」

 

自分の手を見て呟く。目覚めてから震えが取れない。それをグッと手を握って気にしないことにする。

 

一方階下では、

 

「もう!帰ってきたら皆ボロボロだからビックリしたわ」

 

と言うのは、近所の教会のイベントだかなにかで泊まり掛けで行っていたのを、連絡により大急ぎで帰ってきたイリナだ。

 

「しかしショッカーね。面倒なことしてくれるぜ」

「全くですね」

 

そうさっきまで可愛い女の子がいる店で飲んでいたが、朱乃が見つけ出して強制連行されたアザゼルに、さっき緊急収集を掛けられ慌てて眷属と一緒に駆け付けたソーナである。

 

そして、

 

「そんなヤベェのか?」

「まぁな」

 

と匙と戦兎は話す。正直今のままでキメラに勝つ自信はない。ハザードトリガーを使っても、弱ったといわれる本郷にすら勝つ自信がない。なのにそれ以上のあいつをか。となると何か策がいる。

 

とは言えだ。ショッカーの改造人間に詳しいのなんて一人しかいない。そう思い戦兎は足を踏み出す。そして上の階のベランダまで来ると、

 

「本郷さん」

「あぁ、君か」

 

戦兎は後ろから本郷に声を掛けると、相手は振り替えった。

 

「どうしたんだ?」

「キメラについてなんですが……」

 

戦兎の言葉に、本郷は顔を伏せる。

 

「あぁ、どうかしたのか?」

「アイツに勝つ方法なんですけど……」

 

そう切りされた話題に、本郷は難しい顔をした。

 

「強かった。今まで戦った改造人間で一番だ。正直勝つ自信がないな」

「そうなんですけど、なんか改造人間に弱点って無いんですか?」

 

戦兎の問いに、本郷は腕を組んで考える。そこに戦兎は更に、

 

「本郷さんも弱点がないわけではないでしょう?」

「私の弱点か……」

 

そんな戦兎の言葉に、本郷はふと何かに思い至る。

 

「待てよ、アイツも私と元が同じ改造ならば」

「何か思い付いたんですか?」

 

本郷が何か思い付いたのを察した戦兎は、本郷に問うと頷きを返された。そして、

 

「まずはな」

 

と説明を受ける。スラスラと説明を続け、最後に本郷は、

 

「だがこれは私一人では無理だ。だから……」

「俺も勿論手伝いますよ」

 

戦兎はそう言って当然のように頷く。だが本郷はそれを見て少し渋い顔をしつつ、

 

「正直に言えばな。私は君のような若者を巻き込みたくはない」

「えぇ、でも本郷さんがもしやられたら結局俺たちだって危ないんですから。それに今さら止めろって言われても気になってる止めれませんよ」

 

そう言って少し笑みを浮かべる戦兎に、本郷は渋い顔から笑みに変わり、

 

「そうだな。放っとけないからと言う理由でこんな怪しい男を追っ掛けてくるんだ。今時の若者の感性としては変わっているな」

 

本郷はそう言いながら戦兎を見る。

 

「そう言えばだ。さっき来たとき変身っと言っていたが……」

「え?あぁ~はい。と言うかそのぉ、本郷さんってもしかして都市伝説の……」

 

あぁ、仮面ライダー何て呼ばれているな。と本郷が返すと戦兎はやっぱりと納得した。そして、

 

「初めて見たときから思ってたんですよ。都市伝説の情報とちょっと姿が違ってはいましたけど……」

 

有名な都市伝説のためか仮面ライダーの姿と言うのは、実は結構ネット上に載せられている。載せられているといっても、本物の写真とかではなく有志の人の想像図が多い。だがそれでも、スリムな体型に赤いマント……と言うのはなぜか共通していた。

 

「俺も何て言うか仮面ライダーって言うかヒーローに憧れてるって言うか……だから勝手に使わせてもらってまして」

「気にするな。別に私の専売特許と言う訳じゃない」

 

そう言いながら、本郷はどこか遠くを見据える。

 

「仮面ライダーか……まさか自分以外はいないと思っていたがな」

「そうなんですか?」

 

あぁ、と本郷は戦兎の問いに返し、

 

「今までショッカー以外の組織とも戦ってきた。だがその間も私以外の仮面ライダーと出会うことはなかったよ。しかし仮面ライダーが二人か。これでは呼び分けがしにくいかもな」

「あ、一応俺仮面ライダーだけじゃなくて、仮面ライダービルドって名乗ってるんです。造る、形成するって意味でビルドなんですけど」

 

仮面ライダービルド……と本郷は呟くと少し笑って、

 

「良い名前だ。格好いいじゃないか」

 

そうですかね……?と戦兎は頬を掻く。すると、

 

「なに話してるんですか?」

 

そういってやってきたのは小猫だ。そんな彼女に戦兎は、

 

「少し世間話とキメラへの対抗策をな」

「あるんですか?」

 

その時のお楽しみにな。等と二人で話していると、

 

「ふむ、随分と年下の彼女なんだな。最近の若者は随分進んでいる」

 

何て言う本郷の呟きに、戦兎と小猫は、

 

「はい?」

「にゃ!?」

 

とそれぞれ反応。その反応に本郷は首をかしげながら、

 

「二人はアベックじゃないのか?」

「いやただの先輩と後輩ですよ。それと随分年下っていってますけど、塔城幾つだと思ってるですか?」

 

そんな戦兎の問いに本郷は、

 

「中学生……と思ったが最近の若者は早熟と聞くから小学生の可能性も、ってどうした?」

 

本郷の真面目な考察に戦兎はゲラゲラ笑ってしまい、小猫の肘鉄が脇腹にめり込んだ。

 

「ごふぅ……」

「私はこれでも高校一年生です!」

 

え?と固まった本郷を尻目にプリプリ怒った小猫はそのまま室内に戻ってしまう。それから戦兎はいててと立ち上がると、

 

「思いっきり肘いれやがったな……」

「悪いことをいってしまったな」

 

アイツが特殊例何で平気ですよ。何て戦兎が笑いながら言うと、今度は部屋から分厚い辞書が飛んできて角が戦兎の側頭部に当たった。

 

「いってぇ!」

「ふん!」

 

と小猫は鼻を鳴らして今度こそ去る。それを見ていた本郷は、

 

「成程、そう言うことか」

「何がですか?」

 

いやなんでも、と今度は本郷が笑いながら答える。戦兎はそんな様子に首をかしげながらいると、

 

「戦兎君。もし君が仮面ライダーを名乗るなら、覚えていてほしい事がある」

「え?」

 

本郷は少し表情を引き締め、戦兎に言う。

 

「友を……そして仲間を手放すな。そしてな、恋も遊びも沢山しろ。馬鹿みたいに青春を謳歌しろ。今しかない時間を全力で味わえ!」

 

絶対自分のようになるな……本郷はそう言った。それは愛する人も恩人も友人も全てショッカーの魔の手が及ばぬように遠くへ追いやり、戦いに明け暮れた男の後輩への忠告。

 

「一人ぼっちの正義のヒーロー何てな。寂しいだけだぞ?」

 

そう呟いた本郷の顔は、どこか悲しげで……寂しさの混じったような、そんな感じの表情だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやいや、幾らなんでも多すぎだろ」

 

そう明け方、後少しで朝日が上るであろう時間帯の呟いたのは、アザゼルだ。それもその筈。何せ眼前にはアホみたいに沢山のショッカーの戦闘員達がひしめき合いながら歩いている。

 

その背後にはキメラがいるのだが、まさかこいつらまで引き連れてと言うのは驚きだ。と言うか黒タイツ達はキメラの言うこと聞くのか……しかしこれでは空を飛んでいく方がいいか?何て思っていると、戦兎と本郷が前に出る。

 

現在ショッカーの秘密基地の周辺をソーナチームや堕天使に天使達が結界を張っている。これならキメラ達が外に出ることはない。そしてこの決戦の場には戦兎を筆頭にしたグレモリー眷属とイリナと匙とアザゼルがおり、こちらがキメラを直接叩くのが仕事だ。

 

「おいおい、まさか突っ込むなんて言わないよな?」

 

と、言うのは唯一ソーナチームで此方に越させられた匙だ。

 

「それが最短だろ?」

 

そう言って戦兎と本郷はベルトをそれぞれ出すと、

 

「ライダー……」

《ラビット!タンク!ベストマッチ!Are you ready?》

 

二人はゆっくりと腰を落とし、構えて目の前の相手を見定めると、

 

『変身!』

《鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イェーイ!》

 

それぞれ変身した二人は、それぞれバイクに跨がり、エンジンを吹かす。それを見たアザゼルが、

 

「よぉしお前ら!二人がキメラのところに辿り着けるように道を切り開く!行くぞ!!!」

 

そう言うアザゼルに他の皆が頷き共に飛び出す。

 

「ったく、いつもなんで命がけな目に遭うんだよ!」

《ドラゴンゼリー!》

 

そう匙は文句を言いつつ、スクラッシュドライバーにドラゴンスクラッシュゼリーを挿し、レバーを下ろす。

 

「変身!」

《潰れる!流れる!溢れ出る!ドラゴンインクローズチャージ!ブラァ!》

 

そうして変身した匙は走り出すと、黒炎を出して相手を燃やす。それに合わせて他の皆も一斉攻撃。凄まじい爆音と閃光が起き、そしてその中を、

 

『はぁ!』

 

ブオン!とバイクのエンジンを吹かして、敵陣を戦兎と本郷は走り抜ける。

 

「うぉおおおお!」

 

ドリルクラッシャーをガンモードにして、発砲しながら直進。更にブレーキを掛けて後輪を上げると敵をそれの勢いで攻撃し、今度はウィリーで跳ね上げた前輪で相手を弾き飛ばすと、再度走り出す。

 

「おぉおおおお!」

 

本郷はバイクごと全身に風を纏わせ、ショッカーの戦闘員達を蹴散らしていき、それを見た戦闘員が横から本郷に飛び付き引きずり落とそうとした。だが、

 

「ふん!」

 

それを本郷は慌てることなく蹴りや、片手で弾き飛ばして振り落としいく。そして、

 

『はぁ!』

「ん?」

 

バイクから戦兎と本郷は飛び上がると、そのまま飛び蹴りを叩き込むが、キメラはそれを腕で押さえて 押し返す。そのままクルリと回って地面に降りると、

 

「さて、戦兎君。準備は良いかな?」

「えぇ、実験を始めましょう!」

《フェニックス!ロボ!ベストマッチ!Are you ready?》

「ビルドアップ!」

《不死身の兵器!フェニックスロボ!イェーイ!》

 

姿を変え本郷と戦兎は走り出す。こうして、最後の戦いの幕が上がったのだった。



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不屈の仮面ライダー

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「キメラに対する作戦を決め、遂に相対する俺と本郷さん。圧倒的な力を持つキメラを倒す作戦とは……そんな感じの61話スタート!って俺一人だとみじけぇ!」


『うぉおおおおお!』

 

戦兎と本郷は同時に駆け出すと、まず戦兎が前に出て炎を出しながらキメラとぶつかる。

 

「ふん!」

 

その瞬間後ろから本郷が飛び上がると拳を握り、

 

「ライダー!パンチ!」

「む?」

 

渾身のパンチを放つ。だがキメラはそれを片手でキャッチすると、そのまま本郷を放り投げた。

 

更に体をぶつけてくる戦兎のボディに膝を叩き込み、怯ませてから顔面を殴り付けて吹き飛ばす。

 

「ぐっ!」

 

戦兎は地面を転がりながら、その反動で立ち上がると炎をキメラに向けて放つ。だが、

 

「はぁ!」

 

その炎をキメラは腕を振り、その衝撃で掻き消したのだ。それでも戦兎は諦めずキメラに襲いかかる。

 

「諦めろ。お前では俺には勝てない。勿論本郷でもだがな」

「うるせぇ!」

 

キメラは片手で戦兎に応戦しながら言うが、戦兎は手を止めない。そこに、

 

「おぉおおお!」

 

本郷が加わり二人掛かりで攻める。流石にキメラも両手を使うが、ダメージがある訳じゃない。

 

「何故そこまでして戦う?誰に頼まれた?幾ら積まれたんだ?」

「……金じゃねぇ!」

 

戦兎は全身から炎を噴出させ、キメラを追い込む。

 

「誰からも頼まれちゃ居ないしお前を倒したって金もでねぇよ!」

「あぁ、誰から礼を言われるわけでもない。言ってしまえばただのボランティアだな!」

 

分からないな、と言いながらキメラは戦兎と本郷を押し返すとそのまま回り蹴りを放ち、その衝撃で二人は吹っ飛ばされた。

 

『がはっ!』

「なら何故俺の邪魔をする?それだけ力があればもっとあるじゃないか?誰からも頼まれちゃいないなら、その力を使って俺の邪魔をするんだ?もっと自由に好き勝手生きて良いじゃないんか」

 

地面を転がった二人は、キメラを睨み付けながら立ち上がる。だが、

 

「ぐぅ……!」

 

本郷は胸を抑え、再びうずくまる。

 

「もう限界なんだろう?もう諦めろ」

「諦めんさ。今更生き方は変えられないんでね……」

 

そう言いながら本郷は戦兎の肩を借りながら立ち上がる。

 

「それにな。私はこれでも自由に生きてるんだよ」

「なんだと?」

 

キメラが首をかしげる中、本郷は戦兎から肩を借りるのをやめ、キメラをゆっくり見据える。

 

「戦うことを決めたのは私自身だ。例えこの身が怪物になっても、心だけは人間でいようと!」

「だから誰にも感謝されずとも戦うのか?」

 

そうだ、本郷はキメラに言葉にそう答える。

 

「たまに人は救う価値があったのかと思うこともあった。未だに戦争は終わらず、醜い争いも下らない諍いも絶えない。だがそれでも、私は戦うんだ!」

 

そう言いながら本郷はキメラに殴りかかる。だがそれをキメラは片手で抑え、空いた手で殴り返そうとする。

 

しかしそれを戦兎が止めた。

 

「ちっ、お前もしつこいやつだな」

「こう見えても諦めが悪い性分でね!」

 

そう言いながら戦兎はロボアームを回転させてキメラの腹部を殴ってガリガリと火花を散らせる。

 

「お前ら二人揃って可笑しいぜ。無意味な事をして、勝てない戦いをする。イカれてるよ」

 

キメラはそう言いながら頭突きで本郷を怯ませると、そのまま蹴り飛ばしてから戦兎を殴り飛ばす。

 

「がっ!」

 

火花を散らし、そのまま地面に倒れる戦兎。キメラはそれを見ながらゆっくりとした足取りでトドメを刺しに行こうとし、

 

「なんだ……?」

 

突如キメラの視界が明暗し、意識が遠くなりそうになるのを必死に堪える。それを見た戦兎は笑いながら立ち上がり、

 

「実験成功……かな?」

「何をした……?」

 

そう言うキメラに、戦兎がロボアームを掲げて見せたのは、

 

「なんだそれは?」

「お前のベルトの部品だよ」

 

と言うと、キメラの腰についていたベルトがガラガラと音を立てて、部品単位で崩れていく。

 

「お前は元々本郷さんと同じタイプの改造人間だ。だからそこを突いたんだよ」

「私のベルトのタイフーンは、風を受けることで回転し、エネルギーを産み出して変身する。何故こんなことをするか知ってるか?それはな、改造人間は超人的な力を発揮するため、その反動か非常に持続力がそのままではない。だから別にエネルギーの供給源が必要で、私が改造された時はこの外部に別のエネルギー発生装置を着けるタイプが作られ始めたばかりだった。勿論すぐに外部にエネルギー発生装置を別につけるのは強度的にも不便だと言われ、廃止になった技術だがお前にはそれが使われていたようだな。そしてだ」

 

本郷はキメラを見据えながら、ゆっくりと立ち上がる。

 

「改造人間は、交わらない異なる遺伝子同士を組み合わせることで生まれる存在だ。故に本来かなりデリケートな存在でな。定期的なメンテナンスは欠かせないし、していても私もそうなように長期間変身すれば体に異常をきたすこともある。それくらい本来は負担が大きいんだ。それをお前は複数の遺伝子を強引に詰め込んである。パワーもあるだろうが、それと同時に負担も今までの改造人間の比じゃないんだろう。そこにもしエネルギーを産み出すはずのベルトが失われれば……一瞬でエネルギー不足になってしまうわけだ」

 

本来、新たな試みと言うものは試作と実戦を繰り返し、そして順次修正していくものだ。しかしこいつはそれがない。何せ目覚めさせたばかりの上に他の試作がない。コイツが唯一だ。あらゆる点で未知数の存在なのだ。

 

「それにだ。ベルトを破壊した途端エネルギー不足になるってことは、恐らくベルトだけじゃお前のエネルギーは不足してしまうみたいだな」

「なっ……」

 

本郷に続いて言った戦兎の言葉に、キメラは最初に本郷たちと戦ったあと、意識が保てなくなるほど眠たくなったことを思い出す。

 

「だから俺と本郷さんはずっとお前のベルトを狙ってた。俺のロボフルボトルは、機械の組み立てが得意だしな。組み立てが出来るなら、その逆の分解もお手の物なのを利用して」

 

そう戦兎が言うと、本郷は前に出る。

 

「さぁキメラ。ここで終わりにしよう!」

 

そう言いながら本郷は走りだし、キメラは身構える。それを見た戦兎は、

 

「さて、こっちも新しい試みってやつを試してみようかね」

《ハザードオン!》

 

戦兎はそう言いながらハザードトリガーをセット、そしてフルボトルを抜いて、新たに取り出したのは何と、ラビットタンクスパークリング缶だ。

 

「まだこの組み合わせは試してなかったからな」

《ラビットタンクスパークリング!ガタガタゴットン!ズッタンズタン!ガタガタゴットン!ズッタンズタン!Are you ready?》

「ビルドアップ!」

《アンコントロールスイッチ!ブラックハザード!》

《シュワッと弾ける! ラビットタンクスパークリング!》

《イエイ!イエーイ!ヤベーイ!》

 

ハザードトリガーとラビットタンクスパークリング缶により、戦兎は全身が真っ黒だが、白いラインが入ったスパークリングの姿になる。すると、

 

「なんだこれ……」

 

体が軽い。いつもと違って頭もクリアな感じがする。

 

「これなら!」

《マックスハザードオン!ガタガタゴットン!ズッタンズタン!ガタガタゴットン!ズッタンズタン!Are you ready?オーバーフロー!ヤベーイ!》

 

全身から煙を噴出させ、戦兎は前に歩き出す。だがそれは暴走ではなく、

 

「オォオオオ!」

 

しっかりとした意識の中、本郷と共に戦兎はキメラを殴る。

 

「ぐっ!」

 

キメラは後退り、少し苦しそうな声を漏らした。

 

「体が……重いだと」

『どりゃあ!』

 

更に二人はキメラを追撃。ガツン!と火花を散らしながらも、キメラは更に後方に吹き飛んだ。だが、

 

「なに?」

 

戦兎のビルドドライバーも火花を発する。突然の現象に戦兎は驚くが、

 

(ハザードトリガーとスパークリングの併用のせいか?となると余り時間かけては戦えそうにないな!)

 

そう結論付けて戦兎はキメラを殴って蹴り、伏せるとその後ろから本郷が更に殴り飛ばす。

 

そして後ろに回った戦兎は本郷を追い越してキメラにチョップ、からの回し蹴り。そこにも本郷が横からパンチとキック。

 

「くそ……体が言うことをきかねぇ」

「おらぁ!」

 

フラフラと立ち上がるキメラの顔面に刺さり、後ずさったキメラの腹部に本郷の蹴りがめり込む。

 

「お前ら、一体何なんだよ……」

 

キメラの呟きを聞きながら、戦兎はレバーを回し、本郷は腰を落として構えた。そして、

 

「人々の自由のために!」

「愛と平和のために!」

『力を使う者……仮面ライダーだ!』

《Ready Go!》

 

二人はそう言って飛び上がる。

 

《ハザード!》

「ライダー!」

《スパークリング!》

「キック!!!」

《フィニッシュ!》

 

黒い泡を纏わせた戦兎と、風を纏わせた本郷の急降下キックが、キメラに刺さるとそのままガリガリと地面を削りながら押し込んでいく。

 

『オォオオオオオオ!』

「グァアアアアアア!」

 

キメラは必死に耐えようとするが、既に立つエネルギーすらなく地面に倒れると、そのまま二人の蹴りが地面にめり込ませ、更に地面をえぐりながらトドメの押し込みをすると、二人は後方に飛んで離れる。そして二人はキメラに背を向けながらゆっくりと歩き出す。

 

最後に背後で大爆発が起きたのを感じながら、二人はどちらともなく拳を掲げると、ガツッとぶつけ合ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一日くらいゆっくりしていけば……」

 

いや、と本郷は言いながらバイクに乗る。

 

さてキメラを倒した日の朝、本郷はもう出ると言って準備をはじめてしまい、皆も慌てて見送りに出たのだ。とは言え戦兎以外は玄関までで、戦兎だけ外まで来ている。これは少し本郷が話したいことがあったらしい。

 

「今回は助かった。君だけじゃない。君の仲間たちのお陰だ」

「いえ……俺も一緒に戦えて光栄でした」

 

そう言い合って握手を交わすと、本郷は少し屋敷を見る。

 

「塔城 小猫ちゃんと言ったかな?良い娘そうじゃないか」

「いきなりなんですか?」

 

戦兎は頭を掻きながら、そう返すと本郷は、

 

「気づいているんだろう?彼女の気持ちを」

「……」

 

戦兎は表情を曇らせ、少し視線を逸らすと、

 

「さぁ?女心に方程式がありませんから」

 

とだけ言って完全に目を逸らしてしまう。そんな戦兎に本郷は、

 

「年寄りからのアドバイスだが……余り他人からの好意を無視するもんじゃない。それは彼女にも失礼だぞ?」

「……」

 

それだけ言うと本郷は、バンっと戦兎の肩を叩き、

 

「まぁ頑張れ、若き仮面ライダー」

 

最後にそう言って、本郷はヘルメットを被ってバイクを走らせ、そのままどこかへ旅立っていく。そんな後ろ姿を見ながら戦兎は、

 

「そんなこと……分かってますよ」

 

と呟いたとき、

 

「あれ?何してんだ戦兎」

「いぃ!」

 

突然背後から声を掛けられ、戦兎は飛び上がりながら振り替えると、そこにはリアスと龍誠が首を傾げながら立っていた。

 

「それに今誰か行ったみたいだけど誰か来てたの?」

「あぁ~。まぁちょっと色々ありましてね。取り敢えず入ります?」

 

色々あったんですよ。と言いながら扉を指差すとリアスと龍誠は頷いて入る。

 

「俺も色々あったんだぜ?何せサタンレッドと戦ったし……」

「なんだよそれ」

 

等と言い合いながら家に入り、戦兎は本郷の行った方角を見ると、

 

(また……どこかで)

 

そう心の中で言い、戦兎は扉を閉めたのだった。




グランドジオウヤバイくらい強いですね。

因みにそれを見た友人がジオウの最終回はきっとクウガからビルドまでテレビで登場した全フォーム(亜種も含む)が登場して大名行列の如く突進してリンチにしたあとグランドジオウのライダーキックでトドメかな何て言ってましたね。予算がガタガタキリバ所じゃねぇけど。


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第九章 修学旅行はパンデモニウム
新たな試み


前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「キメラを撃破し、普通の日常に戻りつつあった俺達だが……」
龍誠「よっしゃ!久々に俺も登場だぜ!」
戦兎「うるせぇ奴が帰ってきたなぁ……」
龍誠「何だと!」
戦兎「ま、こんな感じで賑やかな62話スタートです」


「らっしゃいらっしゃい如何かね~。桐生戦兎印のオリジナルガジェット~。こちらはスタンガン。一回充電すれば五時間持つよ~」

 

と、某公園にて戦兎は風呂敷を広げて何やら様々な機械を売っていた。

 

ここでは毎週のようにフリーマーケットのようなものが開催されており、戦兎の売り物は他にはないためかそこそこ売れている。そんな中、

 

「今日も儲かってるみたいですね。戦兎先輩」

「ん?あぁ塔城か」

 

と、最近話題のスイーツショップに朝一で並んで狙っていたものをゲットしてホクホク顔だった塔城と、商品とお金を交換していた戦兎は出会ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日も完売して良かったですね」

「まぁな。一応うちも父さんの特許料や母さんのパートでそこまでお金に困ってる訳じゃないけど、それでも自分の小遣いくらいは稼がないとな。それに来週から修学旅行だし」

 

そう戦兎は言いながら、すっかり空になった風呂敷をポケットに押し込み、小猫からお菓子の入った袋を代わりに持っている。

 

悪魔になる前から、こうやって自分の小遣いくらいは稼いでいた。他にも最近話題のフリマアプリなどに出品していたりもして稼いでいたし、実は結構自分の使うお金に関して戦兎は余り苦労はしていない。更に最近が悪魔家業の収入もあるので、結構安定しているのだ。まぁそれでも売るのをやめないのは、既に習慣になっているのと、急に辞めれば母や美空が怪訝に思うだろうから。

 

そんな戦兎と小猫はここ最近の日課になりつつある、日曜日に戦兎はガジェットを売りに出掛け、小猫はお菓子を買って完売しそうな頃に合わせて出向き、一緒に帰ってお菓子を食べて談笑したりゲームしたりする。と言うのを行うため戦兎の家に向かう。まぁ地下の実験室は龍誠の屋敷に繋がっているのもあり、ちょくちょく他の仲間達が来たり、普通に玄関からギャスパーが訪問してきたりして混ざることが多いのだが。

 

「今日もですか?」

「あぁ」

 

そんな日々の中最近戦兎が打ち込んでいるものがあり……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふ~んふふ~ん」

 

コトコト鍋が軽く沸騰し、落し蓋が震える。甘くも爽やかな匂いがキッチンに充満していた。

 

現在朱乃はキッチンにて料理中。今日は煮魚だ。リビングではリアスが次のレーティングゲームに向けて戦術を練ったり、アーシアがゼノヴィアとイリナと一緒にファッション誌を見たり、龍誠がダンベルをガチャガチャと持ち上げている。ロスヴァイセは近所の100円均一の店に買い物に出掛けた。

 

「ふふ……」

 

なんとも穏やか時間だと朱乃は微笑んだ。次の瞬間!

 

『っ!』

 

ドン!と地響きが起き、皆が身構える。すると廊下から、

 

「げほ!げほ!」

「けほ!」

 

と咳き込む声が聞こえてきたため皆で廊下に出ると、

 

「ゲッホゲッホ!こいつはひでぇ!」

「先輩大丈夫ですか?」

 

フラフラしながら戦兎の家の地下室に繋がっている扉から這い出てきたのは、真っ黒になった戦兎と小猫だ。

 

「何してるのよ」

「ちょっと実験してまして……」

 

そう戦兎が立ち上がりながらリアスの質問に答える。

 

「実験?」

「えぇ、この前スパークリングとハザードトリガーの併用なら暴走しないことがわかりましたからね。だけどその分ビルドドライバーへの負担が大きい。なのでそれを改善しようと色々やってたんですよ」

 

そう言うと戦兎は、顔のついた煤を袖でぬぐう。

 

「ただスパークリングは元々魔力によりボトルの成分を活性化してビルドの力を高めて使うのにたいして、ハザードトリガーはハザードレベルをあげることで使用者の力をあげるのが本来の用途です。つまり……」

「ビジョップでは相性が悪いと?」

 

はい、とリアスに戦兎は頷く。使用者のスペックアップが目的ならば、魔力アップのビジョップよりナイトやルークの方がいい。だが、

 

「でもビジョップ以外ではスパークリングは使えなくなるわよね?」

 

そうなのだ。ビジョップによる魔力上昇が前提のスパークリングは、ビジョップ以外では使えない。すると、

 

「いえ、本当はスパークリングじゃなくてもいいんです」

「どういうこと?」

 

戦兎はリアスに改めて答える。

 

「スパークリングとなら暴走しない……って言うのは恐らくなんですけどハザードトリガーの暴走はプロモーションで抑えられるんだと思うんです」

「何でプロモーションだと抑えられるんだ?」

 

そう口を挟んできたのは、ハテナマークを頭上に浮かべていた龍誠。それに戦兎は、

 

「多分、通常時のポーンの状態だと悪魔ではあるけど、俺は元が人間だから人間に肉体が近いんだと思うんだ。だから悪魔になって身体能力が高くなってるとは言え、ハザードトリガーの暴走を抑えられない。でもプロモーションを行うと力が上がったり足が速くなったりする。魔力が上がるってのも人間にはない要素だ。恐らくプロモーションを行うとこう言ったのに対応した肉体の変化が起きる。龍誠も感じるだろ?プロモーションを行うと体が変化するような感覚」

「確かにプロモーションすると何て言うか体が変わるような感覚がするかも……」

 

だろ?と戦兎は言いながら、

 

「まぁあくまでもまだ仮説だけど、それでもプロモーションがハザードトリガーを使いこなす鍵なら、ナイトやルークのプロモーションにハザードトリガーを組み合わせた新しいビルドを作れるんじゃないかと思いましてね」

「そうね、元々スパークリングもビルドとプロモーションを組み合わせるためって作ったものだし」

 

そう言いながらリアスは頷き、

 

「でもなんで爆発を?」

「それがですね……色々とハザードトリガーとプロモーションとの相性が良いフルボトルの組み合わせを探してて、どれも良い反応が起きないんで、結局ラビットタンクが一番かなぁとか思いながら、ナイトにプロモーションして実験用の機械にハザードトリガーとラビットフルボトルとタンクフルボトルを組み合わせたらですよ?火花散ったかと思ったら大爆発しましてですね……」

「他のボトルでは起きなかったんですけど」

 

と言うのは今まで黙ってた小猫だ。すっかり可愛らしい顔も煤だらけである。

 

「でも結局ラビットタンクでも上手くいかないし、もう手詰まりなんですよ。もうどういう組み合わせなら上手くいくのかなって……」

 

はぁ、とため息を吐く戦兎に、朱乃は笑みを浮かべると、

 

「取り敢えず二人とも着替えた方がいいですわ。煤だらけで大変よ?」

『あ……』

 

そう言われて戦兎と小猫は自分の服装の状態を見て、確かに今の自分の服装は中々な状態なことに気づく。

 

「そうね、来週からは修学旅行だし一度ゆっくりしたら?」

 

余り焦っても仕方無いでしょ?とリアスに言われ、戦兎は頷く。

 

「じゃあ俺が自宅の方に戻りますわ」

「私はこっちのお風呂借りますね」

 

そう言って戦兎と小猫は別れ、お互い着替えるためにいく。そんな二人を見ながら皆は、

 

(そう言えばこの二人最近いつも一緒にいる気がする……)

 

なんて思ったのだが、それを皆は口に出さなかったのは余談である。



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若手最強の力

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「新たなビルドの強化フォームを模索するも、道筋が見つけられずに悩む天才である俺……いやもうホントどうするかなぁ~」
龍誠「ならこう言うのはな、こうして力付くで……」
戦兎「うわばか!力付くでやるんじゃない!」
龍誠「あ、やべ……爆発しそう」
戦兎「……えぇと、皆さん。63話始まる前に一緒にせーの!」
戦兎&龍誠『爆発オチサイテー!(チュドーン!)』


「あぁ、肩こった」

 

修学旅行を目前に控えたある日、戦兎達はリアスの実家に眷属が全員揃った事を報告しにやって来ていた。

 

とは言え、報告会と言うよりはお茶会じみたもので、皆で歓談しながら行えたものの、龍誠はああいった空気が苦手なので、肩が凝ったらしい。まぁレストランより定食屋が似合う男なので、それも仕方ないのだが……等と思いつつグレモリー眷属一同で帰る為グレモリー邸を歩いていると、

 

「む、リアスじゃないか」

「サイラオーグ?」

 

そこには両手に果実が入った袋を抱えたサイラオーグと出会った。どうしたのかと聞くと、バアル領特産の果物が採れたのでそれのお裾分けに来たらしい。

 

「今日は一人なのね」

「まぁな」

 

そんな世間話をしていると、サイラオーグは少し真面目な顔になり、

 

「次のゲーム日程は聞いたな?」

「えぇ、貴方とのレーティングゲームでしょう?聞いたわ」

 

そう、つい先日なのだが次のレーティングゲームの日程が決まった。相手はサイラオーグが率いるバアルチーム。

 

すると彼は、

 

「あぁ、そこで提案なのだが、先程上層部に少し掛け合ってきてな。フィールドのルールはともかく、戦いに関しては一切複雑なルールを無くしたいと言う話をしてきた。あとはお前がどうするかなんだが……」

『っ!』

 

サイラオーグの提案に皆は驚く。それが意味するのはつまり……

 

「不確定事項も含めた全てを受け入れると言うこと?」

「あぁ、時を止めようが聖剣だろうが聖魔剣だろうが雷光だろうが……そして仮面ライダーだろうが俺は全てを受け入れる。お前達の全力を受けきれない男がバアル家の次期当主は名乗れない」

 

そう言い切るサイラオーグに、リアスは息を呑む。この男がその地位を手に入れるまでの道筋を、リアスは人伝てからだが知っている。そしてその地位に至ってもなお慢心はなく、向上し続けている所を見ている。

 

サイラオーグは強い。そしてサイラオーグは眷属も含めて悪魔の中では珍しく訓練を詰む。サイラオーグがこちらの全てを受け入れると言うことは、こちらも全てを受け入れる覚悟がいる。

 

それは生半可なものでは……そう思ったとき、

 

「つまり全力で暴れて良いってことですか?」

「そう言うことだ」

 

龍誠の問いに、サイラオーグは答える。すると、

 

「じゃあ良いんじゃないですか?下手に変なルール出されると俺分かんなくなりますし」

 

それはそれでどうなんだと思うが、龍誠のあっけらかんとした答えに、リアスは少し笑うと、

 

「それで良いわ。どちらにとっても不利にはならないでしょうから」

「そうか。ありがたい」

 

とサイラオーグは言うと、今度は戦兎と龍誠を見た。

 

「ふむ、前に見たときより腕をあげたみたいだな」

「そうですか?」

 

オーラを見れば分かる。サイラオーグはそう言いながらこちらに来ると、

 

「どうだ?少し戦ってみないか?」

『はい?』

 

突然の提案に、言われた戦兎達だけではなく、リアス達まで驚くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃいきますからね?」

「あぁ、来い!」

 

突然のサイラオーグの提案に驚いたものの若手最強と言われる相手と戦うのは悪いことではない。そう思い戦兎と龍誠どちらでいくか話すと、サイラオーグからは二人で来いと言われてしまった。そこまで言われてしまっては二人も大した自信だとは思う。思う反面、ゼファードル戦のこの人の強さは少し見ただけでも分かるほど異常だ。二人で良いと言うのなら、それは助かるの本音だ。

 

《ラビット!タンク!ベストマッチ!》

《ウェイクアップ!クローズドラゴン!》

《Are you ready?》

『変身!』

《鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イェーイ!》

《Wake up burning! Get CROSS-Z DRAGON!Yeah!》

 

そうして変身を完了した二人は、サイラオーグに向かって走り出す。

 

『はぁ!』

「ふん!」

 

 

助走を加え、殴りかかってきた二人の拳をサイラオーグは掴んで止めると、そのまま力付くでブン回す。

 

「うぉ!」

「やべ!」

 

そのまま武器か何かのように自在に振り回したサイラオーグは、二人を地面に叩きつけ……

 

「おらぁ!」

 

る前に龍誠の蒼炎で作ったドラゴンがサイラオーグに噛みつき爆発。土煙が巻き上がるが、その中からボロボロになった上着を脱ぎ捨て、サイラオーグが飛び出して来る。

 

「おぉおおお!」

 

それを龍誠は追い、殴り掛かるがそれをサイラオーグはあしらい、逆にカウンターを決める。

 

「いっで!」

「こっちだ!」

 

そこに戦兎はラビットフルボトルの力で飛び上がってキックを放つ。それをサイラオーグは回り蹴りで迎撃。そのままぶつかり合うが、力負けした戦兎が地面に落ちた。

 

「くっ!」

《ラビットタンクスパークリング!》

 

このままではスペックからして負けると判断した戦兎は、ラビットタンクスパークリングをビルドドライバーに挿し、

 

「ビルドアップ!」

《シュワッと弾ける! ラビットタンクスパークリング!イエイ! イエーイ!》

 

ラビットタンクスパークリングへと変身した戦兎は素早く立ち上がり、サイラオーグに腕の棘で襲いかかる。

 

「くっ!」

 

攻撃の中、炭酸の泡も組み合わせてサイラオーグに襲いかかり、サイラオーグも僅かに後退した。そこに、

 

「プロモーション!クイーン!」

 

クイーンにプロモーションした龍誠が走り込み、サイラオーグの腹部に蒼炎を纏わせた拳を叩き込む。

 

「ごほっ!」

 

サイラオーグは咳き込みながら後ずさった。それを見て戦兎と龍誠は行けるかと気を引き絞めながらも思うと、

 

「流石にこのままではキツいか……」

 

そう言ったサイラオーグが取り出したのは、スクラッシュドライバーだ。それを見て戦兎は、

 

「遠慮なく使うんですね」

「隠し球をこそこそ持ち歩いていざってときになってから使うのは性に合わなくてな。使えるものは全て見せた上で相手に勝ちたいんだ」

 

サイラオーグはそう言いながらスクラッシュドライバーを腰に装着。そして紫色のフルボトルより一回りほど大きなボトルを取り出すと蓋を捻り、

 

《デンジャー!》

 

それからスクラッシュドライバーに挿す。

 

《クロコダイル!》

 

それから意識を集中させ、サイラオーグは静かに言葉を発した。

 

「変身」

《割れる!食われる!砕け散る!》

 

ビーカーが生成され、中にサイラオーグが入ったまま紫色の液体が満たされる。

 

そして両サイドから鰐の顎が地面から生えてそのままビーカーを噛み割ると、中からゼファードル戦でも見た姿に変わった。

 

「さぁ、いくぞ!」

『くっ!』

 

そう言って走ってきたサイラオーグの攻撃を避けて戦兎と龍誠は殴る。だがサイラオーグは微動だにせず、そのまま殴り返してきた。

 

「なんだ!?全然効いてねぇぞ!」

「ならこっちだ!」

 

戦兎はドリルクラッシャーにラビットフルボトルを挿しながら四コマ忍法刀を出す。

 

それを見た龍誠もビートクローザーにドライブフルボトルを挿しながらクリップエンドを引っ張った。

 

《ヒッパレーヒッパレーヒッパレー!》

《火遁の術!》

《Ready Go!》

『おぉおおおお!』

 

サイラオーグに二人は走りより、武器を振る。

 

《火炎斬り!》

《メガスラッシュ!》

《ボルテックブレイク!》

 

だが、サイラオーグは避けもせずそれを正面から喰らう。そして、

 

「無傷だと……?」

 

戦兎が驚愕するようにサイラオーグはその場に平然と立っており、ゆっくりとレバーを下ろす。そして、

 

《クラックアップフィニッシュ!》

「はぁあああああ!」

 

鰐の顎のようなオーラがサイラオーグの両足に集まり、その場で飛び上がると両足で挟み込むように閉じる。それと共に鰐の顎のオーラが戦兎と龍誠の噛みつくどころか、そのまま噛み砕いてくる。

 

『がはっ!』

 

二人は吹っ飛ばされ、地面を転がりながら変身が強制解除に追い込まれる。

 

「これが若手最強かよ……」

 

今まで戦ってきた悪魔は、基本的に変身さえすればそこそこ有利に立ち回れてきた。だがサイラオーグにはそれがない。それどころか素の状態でも通常の変身では負けてる。そしてスパークリングも相手も変身すれば……

 

「これはマジで強化アイテム考えないと勝てねぇな」

 

変身解除しているサイラオーグを見ながら、戦兎は一人そんなことを呟いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて下準備はこれでよし」

 

暗闇が支配する深夜の京都には、一人の男が静かに楔のようなものを地面に刺していた。

 

「兵藤一誠。準備はできたか?」

「あぁ」

 

楔を刺していた男。兵藤一誠は立ち上がりながら暗闇から掛けられた声に返事をする。

 

「そろそろ原作9巻の辺りだろうし、楽しみだなぁ……」

 

一誠はそう言い、ニンマリと笑い、

 

「さぁて、お祭りの時間だ」




先日コメントで、プロモーションってキングの敵認定がないと使えないんじゃなかっけ?て聞かれ、そう言えば作中で触れてませんでしたね。この作品の中では、プロモーションはレーティングゲーム以外であれば、ポーンの自由になることができます。

勿論レーティングゲーム中は敵陣地に入るルールは適用されていますがね。


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そうだ、京都へ行こう

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「サイラオーグさんに敗北し、改めて強化アイテム開発を決めた俺だったがその前に修学旅行!」
龍誠「俺駒王町から出るの初めてだから結構楽しみだったんだよなぁ~」
匙「頼むからお前ら……面倒ごとに巻き込まれるなよ?」
戦兎&龍誠『え?』
匙「え?」
戦兎「……そんわけで64話始まるよ~」
龍誠「いぇええええい!」
匙「待て待て待て!なんだ今の不穏な、え?はぁあああああ!」


京都……それは今でもどこか古風な空気を残し、歴史的にも重要な建物が多数ある。なにせ、今でもなにか建造物を建てる際は、高さの制限があるほどだ。

 

それくらい歴史があり、その歴史を大事にしていると言えるその場所に、戦兎達は降り立っていた。

 

「やっとついた~!」

「騒いではぐれんなよ」

 

興奮して降りる龍誠を諫めながら、戦兎も新幹線から降りる。

 

さてさて修学旅行初日。駒王町から新幹線に乗ってやって来た戦兎達は、空気を肺一杯に吸い込む。だが正直違いが分からない。

 

「それで?これからはどこにいくの?」

 

と聞いてくるのは、今回の修学旅行で一緒に回るメンバーの一人である藍華。

 

因みに一緒に回るメンバーは、戦兎・龍誠・アーシア・藍華・ゼノヴィアにイリナと言う女性率が異様に高いメンバーだ。

 

まぁ基本的にオカルト研究部メンバーで固まってると言う感じだろう。藍華はオマケというか、普段アーシア達と仲が良いからだ。

 

「ちょっと戦兎。今失礼なこと考えてなかった?」

「まさか、気のせいだろ」

 

微妙に鋭い従姉妹の尋問から逃げつつ、戦兎はメモを開く。

 

「取り敢えずホテルに荷物置いて伏見稲荷からか……そして明日から清水寺行って、そのあと金閣寺に銀閣寺だろ?結構強行軍だな」

「んで三日目に天龍寺で最終日にお土産か……アンタどれくらい買うの?」

 

そんな藍華の問いに戦兎は、

 

「家と部活にかな」

「特定の誰かってのは居ないわけ?」

 

藍華のからかいにも、居ねぇよと戦兎は返しつつ、

 

「ほらそこの三人娘。そろそろ移動しないと伏見稲荷に行く時間がなくなるぞ」

 

手を叩き、周りの景色や店に目を輝かせて興奮しているアーシア・ゼノヴィア・イリナの三人に声をかけ、戦兎が先導しながら皆を連れて歩き出す。そんな姿を見ながら藍華は、

 

「こういう時は意外とリーダーシップあるやつなのよねぇ……」

 

ホントにこの残念すぎる従兄弟はどうにかならないものか……そんなことを思いながら、藍華は付いて行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「納得いかねぇ」

「俺もだよ」

 

伏見稲荷でお祈りを済ませ、龍誠のぼやきに戦兎は同意する。

 

先程戦兎と龍誠達は、京都サーゼクスホテル(勿論悪魔関係のホテルだ)に到着した。部屋は殆どが広く、普通のホテルならスウィートクラスの部屋ばかり。だが、戦兎と龍誠が案内されたのは八畳ほどの小さな畳の部屋。明らかに他の部屋との扱いの差に愕然としたものの、どうにもこれは緊急事態用に、戦兎と龍誠がここに置かれたらしい。

 

だがせっかくの旅行を一組だけこんな貧乏臭い部屋に……と思ってしまうのも仕方ない事だ。

 

等と二人でため息を吐きつつも、

 

「なぁ、気付いてるか?」

「見られてるんだろ?」

 

そう言いながら、龍誠の問いに戦兎が答える。悪魔になった頃は、気配だとか殺気だとか分からなかったが、最近は少し分かるようになってきている。

 

因みにゼノヴィア達も勘づいており、アーシアと藍華を囲うように立っていた。

 

「どうする?」

「一旦ゼノヴィア達から離れよう。そうすれば姿見せるかもしれない」

 

大丈夫か?ヤバイ奴かもしれないぜ?と龍誠が言うが、

 

「ホントにヤバイ奴らなら拙い俺達の気配察知に引っ掛かるわけねぇだろ。まぁわざとなら分からねぇけどな」

「それもそうか」

 

戦兎の言葉に龍誠は頷きつつ、二人は他の観光客が居ない所まで移動した。すると、

 

「京の者ではないな?」

『ん?』

 

人気のないところに着くと、突然声を掛けられる。それに戦兎達がキョロキョロしていると、目の前に和服を着た金髪の小学生が現れ、それに続くように鴉のような羽と長い鼻の天狗まで出てくる。

 

しかも最初に出てきた少女……狐耳にフカフカの狐尻尾まである。

 

「余所者めよくも……掛かれ!」

「え?ちょ!」

 

突然少女の命令により、天狗達が襲い掛かってきた。

 

「待て待て!いきなりなんなんだよ!」

 

そう言いながら、戦兎はビルドドライバーを装着し、

 

「人数いるしこれで行くか」

《忍者!コミック!ベストマッチ!Are you ready?》

「変身!」

《忍びのエンターティナー!ニンニンコミック!イェーイ!》

 

素早く変身した戦兎は、四コマ忍法刀のスイッチを押して分身しながら、天狗を蹴散らす。

 

《Wake up burning! Get CROSS-Z DRAGON!Yeah!》

「おらぁあああ!」

 

龍誠も変身を終え、殺さないように加減しながら倒していく。

 

「母上を返して貰う!」

「母上?なんの話だ!?」

 

すると、少女が青白い炎を作り出して戦兎に放った。

 

「ちぃ!」

 

それを四コマ忍法刀で斬って消しながら、戦兎は更に声を出す。

 

「おい!何言ってんだ!」

「惚けるな!その姿……暗闇の中だったとは言え見間違える筈がない!」

 

そう言いながら少女に合わせて天狗達も襲い掛かってくるが、戦兎はヒラリヒラリと回避し距離を取る。そこに、

 

「おらぁ!」

っと龍誠がビートクローザーを振り回しながら相手を牽制。

 

「おい龍誠!間違って壊すなよ!部長に怒られるぞ!」

「分かってるよ」

 

そんなやり取りをしながらいると、相手の方が更に少し距離を取り少女が、

 

「今の戦力では無理か……じゃが覚悟しておれ!必ず母上は取り戻す!」

 

そう言い残し相手はそのまま撤退していく。

 

「追うか?」

「いや、深入りしない方がいい。多分あいつらはこの辺り一帯の奴らだ。それならアザゼル先生に報告しよう。何か誤解が生じてるみたいだけど俺達じゃそれを解くコネもルートもない」

 

その点じゃアザゼルは顔が利くし、いざとなったら彼が独断である程度決める権限がある。

 

そう戦兎が言うと、龍誠は同意して二人は変身を解除した。

 

「しかし俺を見た……か」

 

先程京都に入ったばかりの自分を見る筈がない。だがあの少女の表情は嘘やからかいはない。

 

「何かまた、面倒な事態になったっぽいな」

 

戦兎はそう言いながら、大きなため息を吐いたのは、まぁ仕方のない事である。



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謝罪

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「遂に俺達は待ちに待った修学旅行にやって来た」
龍誠「しかし!何故か俺達は謎の集団に襲われる羽目に!」
匙「なぁ、お前らなんでそう秒で問題に巻き込まれんだよ」
戦兎「そりゃ巻き込まれないと話が進まないからな」
匙「メタいな!?」
戦兎「つうわけでそんな感じの66話始まるよ」


『申し訳ございませんでした!』

 

突然の襲撃を受けた次の日、様々な場所をそれぞれ見て回っていた戦兎・龍誠・祐斗・アーシア・ゼノヴィア・イリナに匙を含めた生徒会(2年のみ)メンバーは、アザゼルとロスヴァイセからの突然の連絡を受け、そのまま連れられて京都の妖怪が住む世界に連れてこられ、戦兎達を襲撃してきたときに見た金髪狐耳少女を筆頭に土下座されてしまった。

 

「ま、取り敢えず誤解は解いておいたぞ」

 

と言って、用意されていた酒や小料理に舌鼓を打とうとしてロスヴァイセに止められたアザゼルを見ていると、

 

「その……本当にすまなかった!」

 

そう少女は戦兎と龍誠に謝る。正直見た目10才程の女の子にここまでされて、どうこうするほど心が狭くない。なので気にしてないと二人は彼女を許しながら、

 

「そんなに俺の変身してるときの姿が似てたのか?」

「う、うむ……暗闇で不意打ちじゃった上に一瞬の出来事じゃったが、確かにお主のびるど?と言う姿と瓜二つじゃった。のう、お主じゃないと言うのなら、お主以外にびるどを使えるやつはおらんのかの?」

 

そんなやつは居ない。戦兎はそうはっきり伝えた。だが同時に、何か嫌な考えが過りそうになる。

 

ビルドを作れるのは自分だけだ。そう、その筈なんだ。でも……

 

(何考えてんだ俺は!)

 

グッと手に爪がくい込みそうになるほど強く握り、戦兎は彼女から顔を逸らした。

 

そんなわけない、そんなわけないのだ。そう言い聞かせていると、

 

「そもそもなんで俺達は狙われたんだ?母上がどうこうっては言ってたけど……」

 

と龍誠が素朴な疑問を上げた。そう、結局今の今まで詳しい理由は明かされていない。そこに、

 

「それは私が説明するわ!」

『ん?』

 

バァン!と襖が開け放たれ、皆が振り替えると、そこにいたのはいつもの魔法少女服ではない、礼服を着たセラフォルーだ。

 

なぜ彼女がここにいるのかと思いきや、何でも彼女は外交も担当しており、今回は京都の妖怪達と禍の団(カオス・ブリゲード)の対抗するための同盟を組むためやって来たらしい。だが、予定されていたこの辺り一帯を仕切る妖怪との会談(この妖怪が先程謝ってきた少女の母親らしい)の予定が、なぜか待ち合わせの時間を過ぎても来なく、更に一方住み処の入り口まで母を少女が見送りに出て行ってらっしゃいをするはずが、目の前でビルドそっくりの奴に襲撃され、戦兎も使っていた刀(多分四コマ忍法刀のことだ)から煙のようなものを出した次の瞬間には母ごと消えていたらしい。

 

「だが襲撃があった日はお前は修学旅行の準備で仲間といたって話をしてな。まぁそれでも中々信用してもらえず苦労したぜ」

 

それはそうだろう。違うと言っても、ビルド?の姿を見ているのだ。嘘じゃないのか、身内で庇っているのでは?等と言われても仕方ない。

 

だがアザゼルが言うには、これから禍の団(カオス・ブリゲード)と戦うために同盟を結びたいのに、その長を誘拐するメリットがないこと、そして何より今の戦兎ではその長を瞬時に誘拐する程の強さはないと伝えられた。

 

最後のは少し気になったが、実際この辺り一帯を仕切ると言うことは、弱いわけがない。だが不意討ちもあったかもしれないが、それを含めても一瞬で誘拐していくと言うのは、確かに並の実力ではないはずだ。

 

とまぁお陰で一先ずは誤解は解いてくれたらしい。まぁ幸か不幸かセラフォルーからも、戦兎がそういうことをするやつじゃないと口添えしてくれたのが大きいようだが。

 

しかし、

 

「じゃあ結局何者なんだ。さらっていった奴は……」

「さぁな、ただこんな時期にしかも禍の団(カオス・ブリゲード)に対抗するための同盟を組むための話し合いに水を……と言うのを考えれば大体予想がつくがな」

 

戦兎はそう言い、アザゼルが返す中皆の脳裏に浮かび上がったのは、兵藤一誠だった。それは彼と出会ったことある者達は皆おなじなようである。

 

しかしそれを皆は顔には出さず、

 

「それで俺達は何をすればいいんですか?」

 

とアザゼルに聞いたのは龍誠。しかし、

 

「うんにゃ、なにもしなくていいぜ?」

『え?』

 

ポカンと皆がする中アザゼルは、

 

「捜索は冥界側や堕天使側から人員をある程度は集められたからそっちで対処する。だがいざってときにはお前らの力を借りることもあるからな。それまではお前らは普通に修学旅行を楽しんでおきな」

 

せっかく貴重な経験なんだしよ、と言うアザゼルに皆は思わず、

 

『先生が先生してる……』

「どういうことだおいこら!」

 

さらっと酷いことを言われたせいか、アザゼルがプンプン怒っている中、

 

「すまぬ、勘違いで襲っておきながら助けて貰う等……」

 

と言う少女に龍誠が、

 

「気にすんなって。良く言うだろ?旅先の間違いは捨てておけってな」

『?』

 

なんじゃそりゃ、と皆が首をかしげる中、

 

「お前が言いたいのは多分旅の恥はかき捨てだと思うが使い方盛大の間違ってるからな?」

「マジで!?」

 

龍誠が顎が外れそうなほど大口を開けて驚愕する中、それを見た他の皆から少しだけ笑いが零れる。そして、

 

「取り敢えず酒だ酒!まずは呑むぞいて!」

「まだ昼間ですしこのあとも仕事です!」

 

と言ってアザゼルにチョップを落としたロスヴァイセと、それに悲鳴をあげるアザゼルを見て、戦兎達は自分達は修学旅行も普通に出来ないのかと思いながら、やれやれと肩を竦めたのはまぁ余談である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んで?何があったのよ」

「はぁ?」

 

先程の話し合いが終わり、急いで藍華達と合流し、金閣寺にてアーシア達教会三人娘が感激して金閣寺に負けないくらい目をキラキラと輝かせて龍誠が三人の写真を撮ってあげたりしている中、藍華は少し離れて見ていた戦兎にそう切り出した。

 

「何がだよ」

「あんたさっきから心ここに非ずじゃない」

 

そうか?と返しつつも戦兎自身自覚はあった。自分と同じ姿のビルド?それが何者なのか。それが気になる。

 

兵藤一誠?だがアイツはビルドの姿になれるのか……いやアイツなら何でもやれそうではあるが。

 

「ん~。まぁ次の発明品どうしようかなぁとか思ったりしてるだけだよ」

「こういう時くらいそう言うの考えるのやめなさいよ」

 

冗談だよ、と言いながら戦兎は頭を掻く。すると藍華は顔を覗き込んできて、

 

「そういうことばっかしてると彼女できないわよ?」

「ホっとけ。こちとら残念なイケメン扱いなんだよ。とっくに諦めとるわ」

 

ケッと言いながら戦兎は藍華の横を抜けていこうとすると、

 

「へぇ、アンタ彼女欲しかったんだ」

「は?」

 

藍華の呟きに、戦兎は首をかしげた。そんな戦兎を見て藍華は、

 

「だってアンタ、今まで自分がモテないのはおかしいって嘆きはしても彼女欲しがったりはしなかったしさ」

「別に彼女が欲しいとは言ってねぇだろ」

「彼女できないわよ?って言う問いに対して諦めてるって言うのはホントは欲しいって事でしょ?」

 

戦兎は思わず口をつぐんだ。全くこの従姉妹は相変わらず口八丁である。

 

「別にそういう意味じゃねぇ」

「まぁまぁ、それでどうなのよ?美人揃いのオカルト研究部に入ってるんだしそっちではなんかないの?ほらギャスパー君とか」

 

男だぞアイツは……あきれる戦兎に藍華は、

 

「ほら、男の娘は実質女の子って言うし?」

「やめろ」

 

戦兎は頬をヒクヒクさせながら藍華を制止する。なんと言うか色々アウトだ。

 

「つうかそれ言ったらお前の方はどうなんだよ」

「私?私は今恋は良いかなって。案外今を楽しんでるしね」

 

そいつは何よりだよ、と戦兎は返しながらいると、

 

「おおい!戦兎!藍華!あっちに抹茶あるらしいぜ!」

 

と龍誠が騒ぐのを聞き、

 

「さて行くか」

「そうね」

 

と二人は他の皆の元に向かうのだった。




ふぅ、なんとかペース落とさずあげれてます。しかし最近友達が知ってる人いないと思いますけど加奈~いもうと~と言うシリーズを実況動画でだしたら滅茶苦茶嵌まってそれのアフターストーリーがみたいとか駄々をこねはじめてその小説を書き書きしながら、こっちも書いてます。全く、友達じゃなかったら絶対書かない。

まぁ今度焼き肉奢ってくれるって言うし勘弁してやるわぁ


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京都観光

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「何とか誤解は解け、無事修学旅行に戻った俺たち。それにしても結局九重が見たビルドのそっくりって何者なんだろ?」
龍誠「実はお前が寝ぼけてたんじゃね?」
戦兎「寝ぼけて人様襲うわけないでしょうが!」
龍誠「でもお前寝相悪くて一緒に寝てたとき何度か殴られたぜ?」
戦兎「それいったらお前だって俺をベットから蹴落としたりしてるからな!」
匙「えぇと……そう言うわけで謎がまだまだ多い65話スタート」


「きゃー!何この子可愛いんだけどー!」

「はーなーすーのーじゃー!」

 

修学旅行三日目、予定通り天龍寺についた戦兎達は、そこで金髪巫女服の少女(名前は九重と言うらしい)に出会った。

 

と言うか、三日目に天龍寺に行った後は土産物を買うついでにブラブラすると、先日あったときに伝えたところ、先日の謝罪も込めて京都の案内をすると言ってくれたのだ。

 

なのでありがたくその申し出を受け、案内をお願いしたのだが、九重を見た藍華がきゃーきゃー言いながら九重を抱き締めて遊び始めた。

 

九重は嫌がって身を捩るが、藍華は気にせず頬擦りする。それを暫く見ていたが適当な所で藍華を止め、

 

「それじゃ九重。案内を頼むぞ」

「う、うむ……」

 

戦兎と九重との間に微妙場空気が流れた。誤解は解けたものの、やはりビルドが母を誘拐したと言うのを見ているためかどこか緊張されてしまう。

 

戦兎は頭を掻きながらも、特にそれに関しては指摘せず九重を促した。それを見た藍華は、

 

「ねぇ、アイツあの子に何かしたの?」

「いやアイツはなにもしてないんだけど……」

 

冷や汗をかきながら、龍誠はモゴモゴと口を動かしたのは、まぁ余談である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなわけで天龍寺を回り、その後も誰かに教えてもらったと思われる知識を存分に発揮しながら、九重は天龍寺以外にも様々な場所に案内してくれた。

 

それにしても京都はなんとか遺産が多い。そして遺産になってなくても歴史的に重要だったりするのが多く、中には写真撮影が禁止なのもあった。

 

まぁそれはそれとして、現在戦兎達は九重の案内で某湯豆腐屋に来ている。

 

「和の味……これはたまらないな」

「ホント美味しいです」

「豆腐の味からして違うわね!」

 

とキャイキャイ言い合う教会トリオを見ながら戦兎と龍誠が九重から湯豆腐を分けて貰っていると、

 

「楽しんでるみたいだね」

「木場か」

 

後ろから声をかけられ振り替えるとそこには祐斗が居た。

 

「どこ回ってたの?」

「天龍寺とかその周辺だな。午後は嵐山方面に向かう。そっちは?」

 

こっちは午後が天龍寺方面だよ、と戦兎と祐斗は話し合う。九重の母の誘拐何てものがあったためか、お互いの居場所はある程度は把握しておきたい。いざって言うときがあるし。

 

そんな時、

 

「わらしらってねぇ!あんなもうろくジジイのあいてなんぞよりかっこいいかれしみつけていちゃいちゃしたかったんれすよぉ!」

『ん?』

 

またもやどこかで聞いた声だ。なんだ?とそっちの方を見ればアザゼルがロスヴァイセに徳利を取られてそれを急ピッチで飲まれていた。そしてアザゼルはこっちの視線に気づいたらしく、ヘルプの視線を送ってくる。だが、

 

『いやぁ、湯豆腐うまいなぁ』

「おいぃ!」

 

スッと視線を逸らして食事に戻った。酒乱らしいロスヴァイセの相手はアザゼルに任せよう。どうせ昼間っから飲んでて説教喰らいそうだから無理矢理飲ませたんだろう。

 

(それにしても平和だ)

 

のんびりとした時間。平和な時間ってホント素晴らしい……そう思ったとき、ヌルリとした空気が戦兎たちを包み……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだ!?」

 

突然周りの景色が変わった事に戦兎達は驚愕する。それだけじゃない。周りにいた藍華や、他の客も姿を消していた。その場にいるのはグレモリー眷属の皆や、アザゼルに九重だけだ。

 

「お前ら!武装して外に出るぞ!」

 

そう叫んだのはアザゼル。それにより皆は正気に帰り、気を引き締めて外に出る。

 

一応攻撃を警戒はしていたが、特に問題はなさそうだ。と少し安心しながら外に出ると、

 

「ん?よう、久し振りだな」

「てめぇは……」

 

戦兎たちを出迎えたのは、見覚えのある顔。この見覚えは二重の意味だ。

 

「りゅうせい?」

 

九重は声を漏らす。だが戦兎達は知っていた。こいつは違うと、

 

「兵藤 一誠…」

「久し振りだなぁ。修学旅行は楽しんでるか?」

 

そう言いながら一誠はこちらに歩み寄ってくる。すると、

 

「あ、そこの狐ちゃん。お母さんは元気だから心配するなよ?」

「なっ!まさか貴様が母様を!」

 

うん、そうだけど?何か戦兎たちを疑ってたみたいだけど……と言いながら一誠は笑い、

 

「それにしても本当はここでは英雄派が出てくるとこなんだけどなぁ……本来のメンバーのうち神滅具(ロンギヌス)保有者はごくごく普通の人間になってる処か曹操に至っては死んでるし……他の主要メンバーも行方不明だったり誘っても乗ってくれないし。やっぱ曹操みたくカリスマ性だったり人材発掘の才能がねぇからなぁ。まぁ、洗脳系の神器(セイクリットギア)使ったり、力付くで言うこと聞かせても全然良いんだけど、別にまだそこまで必要なわけじゃないからな。当面は俺と……」

 

そう一誠がブツブツ言う中、更に一人姿を現す。

 

「初めまして悪魔一行。俺の名前はジークフリート……って言えば分かる人はいるかな?結構これでも有名人なんだけど?」

「ジークフリート……まさか魔帝(カオスエッジ)・ジークか!?」

 

ゼノヴィアが驚愕の声を漏らし、イリナもあの!?と言っている。

 

「知ってるのか?」

「あぁ、元々教会の人間だ。確か五本の魔剣を持つ剣士でその実力は教会でも上位クラス。だがある日突然姿を消したと聞いていたが……」

 

と戦兎の問いにゼノヴィアは答えつつジークフリートを見る。

 

「まさかテロリストに荷担していたのか?」

「あぁ、そこの兵藤一誠に誘われてね。強いやつと会えるって聞いたから乗ったんだ。中々色んなやつと出会えるから楽しいぞ?」

 

何処となくフリードを思い出す表情をしながら、ジークフリートは腰の剣を一本抜く。

 

「と言うわけで兵藤 一誠。少し暴れて良いんだよな?」

「あぁ、好きにしな」

 

よぉし、と言いながらジークフリートは剣を構えた。だがその剣から溢れる邪悪なオーラに、戦兎たちの体が震える。

 

「聖剣……ではねぇよな。何か禍々しいし」

「あれは聖剣じゃねぇよ」

 

そう言いながらアザゼルはジークフリートを見て、

 

「ヴァーリの所にアーサーってやつがいただろ?そいつが持ってるのが聖王剣・コールブランド。あれが最強の聖剣とするなら、あれは最凶の魔剣。魔帝剣・グラムだ」

「流石アザゼル総督。博識だな」

 

そう言いながら、ジークフリートは走りだし、アザゼルが素早く人工神器(セイクリットギア)禁手化(バランスブレイク)を発動。金色の鎧をまとった瞬間、

 

「おっと、あんたは俺が相手をするよ」

《WelshDoragon!BalanceBreaker!》

「なっ!」

 

横からの赤い鎧を纏った一誠がアザゼルを蹴り飛ばし、吹っ飛ばした方に自分も飛んでいく。

 

「先生!」

「俺はいい!お前らも前を見ろ!」

 

体勢を建て直しながら、アザゼルは一誠を睨み付けた。

 

「てめぇ邪魔しないんじゃねぇのかと」

「ジークフリートに暴れていいとは言ったが、俺が戦わないとはいってない。それにだ、戦兎と龍誠が頑張ってくれないと俺が困るんだよ」

 

どう言うことだ?とアザゼルが疑問符を浮かべるが、一誠はヘラヘラと笑いながらベルトを着ける。

 

「さてさて、中々あんたも油断できないからな。少し本気でいくぜ」

《コブラ!ライダーシステム!エボリューション!Are you ready?》

「変身」

《コブラ!コブラ!エボルコブラ!フッハッハッハッハッハッハ!》

 

変身を完了し、一誠は首をコキリと鳴らすと、

 

「行くぜ?」

 

と言い襲いかかる。一方、

 

『変身!』

《シュワッと弾ける! ラビットタンクスパークリング!イエイ! イエーイ!》

《Wake up burning! Get CROSS-Z DRAGON!Yeah!》

 

戦兎と龍誠も変身し、ジークフリートに襲いかかる。だが、

 

「はぁ!」

 

ジークフリートはグラムだけで戦兎と龍誠の連携を捌く。更にそこに、

 

「はぁあああああ!」

「それが噂の聖魔剣か……だけど!」

 

ガギン!とグラムと聖魔剣がぶつかると、聖魔剣は簡単に砕け散ってしまう。

 

「くっ!」

「木場!チェンジだ!」

 

そう言って割り込んできたのはゼノヴィア。彼女のデュランダルはグラムとぶつかっても砕けることはない。だがそのパワーを相手にしてもジークフリートは、ヒラリヒラリと軽く避けてしまい、カウンター気味に振り抜いたグラムをゼノヴィアが危なげに避けながら距離を取る。

 

「く……当たれば倒せると思うのだがまず当たらないな」

「そりゃそうだろうな。これでも俺は人間だ。そっちの攻撃を一発でもまともに喰らえばKOだろう」

 

そっちの兵藤 一誠は心臓ぶち抜かれようが死なないけどな。と言うジークフリートに、戦兎はそう言えばディオドラとの一件の時に心臓をぶち抜かれてたが死んでいなかった。

 

神器(セイクリットギア)神滅具(ロンギヌス)かは分からないが、心臓ぶち抜かれても死なないって言うのは厄介すぎるよな……と思いながら戦兎はカイゾクハッシャーを構え、

 

《各駅停車!急行電車!快速電車!海賊電車!》

「いっけぇ!」

 

マックスまでチャージして放出。それをジークフリートはグラムでそれを切り裂く。すると、

 

「ん?」

 

戦兎が間合いを詰めてきている。だがそれ以外の面々がいない。ジークフリートの目にはドリルクラッシャーを手に突っ込んでくる戦兎と、更に後ろの方で九重と一緒にいるアーシアだけ。

 

『はぁあああああ!』

「ん?」

 

それもそのはず、戦兎の攻撃で一瞬意識をそっちに奪われた隙に、他の皆はジークフリートの死角に回り込んだのだ。

 

龍誠はビートクローザーを、祐斗は聖魔剣にゼノヴィアはデュランダル。そしてイリナが光の輪を作り出しジークフリートに襲いかかる。

 

幾らジークフリートが強くても一人だ。複数人で同時に襲い掛かれば対処にも限界が出る筈だ。そう思ったのだが、

 

「よっと!」

『なっ!』

 

戦兎たちの同時攻撃を、ジークフリートは受け止める。ただ受け止めたんじゃない。グラムは戦兎のドリルクラッシャーを止めるのに使ったが、何とジークフリートの背中から四本の腕が生え、腰の剣を引き抜くと死角からの一撃をそれで抑える。

 

「それぞれバルムンク・ノートゥング・ディルヴィング・ダインスレイブって言う魔剣でね。グラムには劣るがどれも一級品だ。そしてこの手は俺の神器(セイクリットギア)龍の手(トゥワイス・クリティカル)の亜種禁手(バランスブレイカー)である阿修羅と魔龍の宴(カオスエッジ・アスラ・レヴィッジ)。元々身体能力を2倍にするって言う特に珍しくもない神器(セイクリットギア)何だが、文字通り手数を増やせるから重宝している」

 

そう言ってジークフリートは押し返すと、持っている魔剣を全て地面に叩きつける。それにより爆発と衝撃波が生じ、全員が吹っ飛ばされた。

 

「がは……」

 

地面を転がる龍誠……そこに、

 

「随分ボロボロだな」

「てめぇ……」

 

顔を覗き込んでくるのは一誠だ。見てみれば背後の方で鎧がボロボロになったアザゼルが、膝を付いている。

 

「クソ!」

 

と龍誠は立ち上がり拳を握ると、一誠を殴る。が、

 

「ふむ、ハザードレベル4.2か。まだまだだな」

「ぐぁ……」

 

パシッと龍誠の拳をキャッチし、そのままグっと力を込める。それにより龍誠は膝を付き、苦悶の声を漏らしながら強制的に正座をさせられたような体勢になった。そこに、

 

「おぉおお!」

《Ready Go!スパークリングフィニッシュ!》

 

戦兎が炭酸の泡と共に、一誠に蹴りを放つ。だが、

 

「はぁ!」

 

一誠が腕を振ると、それと同時に爆発が起き戦兎は地面に落下。

 

「くぅ!」

 

だが戦兎は転がって衝撃を逃がしながら一誠と間合いを詰める。それを見た一誠は龍誠から手を離した。

 

「はぁ!」

 

ガリィ!と戦兎の腕の棘で一誠を切る。何度も何度も切る。だが一誠は微動だにせずゆっくり拳を握ると、

 

《Penetrate!》

「っ!」

 

ヤバイとなにか予感めいたものを感じた戦兎は咄嗟に防御体勢を取る。その瞬間一誠の拳が炸裂。だが戦兎は防御したし、咄嗟に全身を泡で被って防御力を上げた。なのに、

 

「がはっ!」

 

火花と小さな爆発。それと共に戦兎の変身は解除され、地面に倒れながら血をベチャっと吐く。

 

「戦兎さん!」

「なんだ……今のは。まるで衝撃がそのまま来たみたいだ」

 

ヒューヒュー音をたてながら呼吸をする戦兎に、一誠はフフっと鼻を鳴らしながら口を開く。

 

「ご名答。今のは攻撃をそのまま透過させて衝撃をそのまま叩き込んだのさ」

 

と一誠は肩を竦めながら、

 

「こいつは中々使えてな。これを使うと相手のどんな魔法的な防御でも物理的な防御力でも関係なく相手に直接叩き込める。赤龍帝の籠手(ブーステット・ギア)の能力さ」

赤龍帝の籠手(ブーステット・ギア)の能力は倍加と譲渡じゃないのか?」

 

あぁ、普通はな?と一誠は戦兎に答え、

 

「だが赤龍帝の籠手(ブーステット・ギア)白龍皇の光翼(ディバインディバイディング)はそれぞれ特定の生物を封じて作ってあるからそいつが生前使っていた力を引き出すことも可能なんだよ。それが今のPenetrate(透過)だ。因みに白龍皇の光翼(ディバインディバイディング)のはまた別の機会にな」

 

そう言いながら一誠は戦兎を見て、

 

「しかしお前はハザードレベル4.3か。少し上がったみたいだがまだまだ足りないな。お前も龍誠ももっと強くなってもらわないと困るんだが……」

 

と言っていると、

 

「舐めんなよ……」

「ん?」

 

背後からの声に一誠が振り替えると、

 

《ハザードオン!》

「へぇ?」

 

立ち上がっていた龍誠の手には何とハザードトリガーが握られていた。恐らくさっきぶっとばされたときに、戦兎が持っていたものが落ちて飛んだんだろう。

 

それを龍誠が拾い使おうとしているのだ。

 

「やめろ!龍誠!」

 

戦兎もそれを見て声を上げる。この場で暴走なんてされたら手のつけようがないからだ。だが龍誠は、

 

「これ以上こいつの好きにさせてたまるか!」

 

そう言ってハザードトリガーをベルトにつけ、レバーを回す。だが、

 

《ガタガタゴット……》

「あがっ!」

 

バチバチと突然龍誠の体が放電。そのまま龍誠は後退り、レバーから手を離すと同時にベルトからハザードトリガーが弾けて外れる。

 

「な、なんで……」

「当然だ。お前と戦兎は違う。戦兎はハザードトリガーやスパークリングなどの強化アイテムを使った外的要因によるハザードレベルの上昇を得意とするタイプだ。それに対してお前は感情をトリガーとした謂わば内的要因によるハザードレベルの上昇を得意とする。つまりお前じゃハザードトリガーを起動する事すらできないのさ。まぁこれからハザードレベルが上がれば分からないがな?だがそうだな……せっかくだし少しお前に真実を教えてやるか」

 

なに?と龍誠が一誠を見る。それから一誠は、

 

「俺はな。お前を昔から見ていた。どうやったらお前をもっと強く出来るか……感情の強い爆発を起こさなければならない。だが生半可なものではダメだ。しかし戦兎を使うわけにはいかない。何せ戦兎も利用価値はあるからな。そんな時だ。お前が特定の異性と親しくするようになったのはな」

「っ!」

 

ドクン!と龍誠の心臓が跳ね、冷たい汗が頬を伝う。嫌な予感がする。やめろ、やめてくれと言いたいが口が乾いてうまく動かない。そんな中一誠が続ける。

 

「確か名前は……そうそう、小倉 香澄だ。凄いだろ?記憶力は良いんだ」

「なんでお前がその名前を」

 

くくく、と一誠は笑う。仮面の下で分からないが、その顔は歪んだ笑みを浮かべていることは容易に想像できた。

 

「ある日の事さ。幼少の頃から親に勉強を強要され、小学校から有名私立に通い、中学高校とエレベーター。そして有名な大学に進学した。だがそこは天才の巣窟でな。今まで努力してきたがその程度はその大学では余りにもチンケなものだった。そうして現実に打ちのめされ、勉強しかしてこなかったそいつが引きこもりに堕ちるのにそこまで時間は掛からなかった。そんなある日のことだ。自分の家の前を何気なく見た時に仲良さげな男女の姿が目に入ったのはな」

 

その姿を見ると不思議とイライラしたらしい。と一誠は続け、

 

「何故勉強を頑張った自分がこうなり、なにも考えてなさそうなあの二人は幸せそうなんだと……まぁ逆恨みさ。だからそれを見た俺が少し背中を押してやったのさ」

「っ!」

 

カァッと龍誠の腹の中が熱くなるような感覚。それを見ながら一誠は笑い、

 

「おっと言っておくが俺は洗脳系の神器(セイクリットギア)で背中を押しただけだぜ?あいつがお前と彼女を妬んでいたのは本当さ。妬んで恨んでいたから俺がちょっと背中を押してやったんだ」

「やめろ……」

 

龍誠は呟く。だが一誠は、

 

「別にいいだろ?モブキャラ……いや、物語に登場してないからそれ未満のキャラクターだぜ?」

「っ!」

 

グツグツと、腹の中がの煮えたぎるような感覚。ビキビキとコメカミが痙攣する。ギリィっと歯が軋むほど噛み締め、変身していなかったら爪が掌にくい込んで血が出ていただろう。

 

「あ、そうそう。彼女の父親にお前責められただろ?あれもな、お前をもっと追い詰めてハザードレベル上げようと思って父親のお前への心に秘めていた感情を増幅してやったんだ。そしたらお前のハザードレベル上がるどころか腑抜けちなったなぁ。流石にやり過ぎたと焦ったよ。それからは少し放置していく方針に変えたんだ」

「お前だけは……」

 

バキバキと腕や背中のアーマーが砕け、有機的なフォルムのアーマーが飛び出し、低く声を出す龍誠は腰を落として、一気に飛び出した。

 

「俺がぶっ殺す!」

 

ガズッ!っと龍誠の拳が一誠の顔面に刺さる。

 

「ハザードレベル4.4……良いぞそれでいい」

「黙りやがれぇえええええ!」

 

龍誠の殴る衝撃で地面にヒビが入る中、一誠は気にせずレバーを回し、

 

「まぁ、その調子で強くなってくれよ」

《Ready Go!》

「はぁ!」

《エボルテックフィニッシュ!》

 

エネルギーを込めた回し蹴りで龍誠の横っ面を蹴り飛ばし、

 

「ぐぁ!」

《チャオ!》

 

ガァン!と吹っ飛ばされた龍誠は地面を転がり、そのまま変身が解除された。

 

「アーシア。龍誠の治療を!」

「は、はい!」

 

粗方治療が済んだ戦兎がアーシアに指示を出すと、

 

「そうそう。俺達は今夜二条城にて実験を行う予定でな。折角だ遊びに来ないか?まぁ、そこの九重の母親を見捨ててもいいって言うなら良いけどな」

『っ!』

 

全員が息を呑みながら驚く。ようはコイツは助けに来いと言っているのだ。そして、

 

「それじゃ、チャオ~」

 

そう言い残し、一誠はジークフリートと共に霧の中に消えて行き、

 

「お前ら!結界が消える!武装解除しろ!」

と言うアザゼルの声で慌てて皆は武装を解除し、ギリギリで何とか解除を完了し、

 

「……」

「龍誠さん?」

 

思ったほど傷も深くなかった龍誠はアーシアの治療も程々に膝を付くと、

 

「っ!」

『龍誠(さん)(くん)!?』

 

ガツゥ!と突然地面に額を叩きつけ、ポタポタと血が滴る。そして、

 

「悪い、頭に血が上った」

「だからって物理的に血を抜くんじゃねぇよ……」

 

と言う戦兎の突っ込みに龍誠は苦笑いし、

 

「もう大丈夫だ、次はちゃんと戦える」

 

本当にか?そう戦兎が改めて聞くと、

 

「俺が仮面ライダーだからな。アイツは許せねぇしぶっ倒す。でもさっきみたいなどす黒い感情のまま戦ったらダメだ」

 

これでもちゃんと自分なりに決着をつけたしな。そう言う龍誠に戦兎はそうかと言いながら、

 

(ロキ相手にも優位に戦えた龍誠のあの状態でもダメージを与えられなかった……)

 

これは相当不味い状況だ。そう戦兎が思いながら足を少し動かすと何かに当たった。

 

「ん?」

 

何かと思い、足元を見るとそこには一本の赤いフルボトルが落ちており、

 

(これは!)

 

咄嗟に戦兎は素早く拾い上げると、それはラビットフルボトルだ。だがなぜこれが?と首をかしげる。一瞬自分の落とし物か?と自分のポケット漁ったがちゃんとあった。

 

これでラビットフルボトルが二本。何故ここにそれが落ちているのか?と戦兎は思いながら、一誠の顔を思い浮かべる。

 

しかし、アイツが使ってたボトルは少し形状が違った。なら何故ここに?

 

いや、今は良いだろう。と戦兎は思い、ラビットフルボトルをしまう。

 

(まだ分からないこともある……ってことか)

 

そうして修学旅行も平和には終われないな、と戦兎はため息を吐く中、

 

「いやぁ、まだまだアイツらも伸び代があってよかったよ」

「そうだな」

 

一誠にジークフリートは同意していると、帰ってきた基地から別の誰かが出てきて、

 

「丁度良いところに帰ってきたな。兵藤 一誠。早速で悪いんだが、ラビットフルボトルを作って貰いたい」

「別にいいけど。なに?無くしたのか?」

 

そう言いながら、一誠は手からラビットフルボトルを作り出し、基地から出てきた男に投げ渡す。渡された男はそんなところだ、と言いつつ背を向けて歩き出す。

 

その姿は……ニンニンコミックの姿となったビルドと瓜二つだった。



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目指せ二条城

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「折角の修学旅行の中、突如兵藤 一誠に襲われた俺たち」
龍誠「更に衝撃的な事実が明かされる中、どうにか退けるものの……」
匙「つうかさ、お前彼女いたの?」
龍誠「まだ彼女じゃなかったんだけど……」
匙「くそぉ!なんだって龍誠ばっかり良い思いすんだよ!」
龍誠「お前未だに意識されてないもんな……」
匙「可愛そうな目で見んな!」
戦兎「とまぁそんな感じの67話スタートです。」


『……』

 

重い空気が部屋を支配している。

 

と言うわけで兵藤 一誠達の襲撃があった日の夜。二条城に突入する算段は決定しているのだが、その前にアザゼルや気持ち悪くなって青い顔をしているロスヴァイセは先生としての仕事があるためそっちが終わってかららしい。後生徒会メンバーもその補佐に行っている。なのでオカルト研究部メンバーは皆が集まるまで待機なのだが、さっきから戦兎はアーシア・ゼノヴィア・イリナの3人がチラチラとこっちを見てくるのを気付かない振りをしつつスマホのアプリゲームに興じていた。

 

このパズルゲームは対戦が出来るため、ギャスパーや小猫とよくやるのだが意外と最近腕前を上げてきているので油断ならない……と言うのが建前で正直言うとこの3人が聞きたいことはわかる。だが自分の口からベラベラ言うのはどうなのかと思う。なのでジャンケンに負けて全員のジュースを祐斗と買いに行った龍誠の帰還を待ちわびているのだ。

 

(これならめんどくさがらず俺も行くべきだったな……)

 

そう戦兎が内心苦笑いしていると、そこにアーシア達がやって来て、

 

「戦兎さん」

「お、おぉ?」

 

なんぞ討ち入り前の侍みたいな顔でやって来た三人に、戦兎が少し後ずさると、

 

「香澄さんって……誰ですか?」

「あぁ~。そうだな」

 

頭を掻きながらも戦兎は考えてから、

 

「そうだな。俺から言えることはない。本人に聞いてくれ」

「そ、そうですよね……」

 

まぁアーシア達も聞いてみただけと言う感じが強いようだ。そこに、

 

「ただいま」

「おう」

 

と言って龍誠と祐斗が入ってきた。それを見てアーシア達が聞くべきかどうかで困惑する。すると、

 

「皆にはさ、話さなくちゃいけないことがある」

 

そう龍誠の方から切り出した。

 

「皆多分困惑しただろ?香澄って誰だって、まぁいきなり知らないやつの名前出されて俺がキレたら驚くよな。だからちゃんと話しておきたくてさ」

 

龍誠はそれから話し出す。自分と香澄の関係。そしてその結末を。

 

「……と言うわけでさ。アイツが全ての黒幕だって知ったら我慢できなかったんだ」

 

そう龍誠が終わらせるとアーシアは、

 

「あの、龍誠さんはまだ香澄さんのことを……」

「え?いやもう昔のことだからって決着つけてるよ。香澄のことは思い出としては大切だけどな」

 

その反応に、アーシア達はホッと胸を撫で下ろす。まぁその意味は言わずもがなだ。そこに、

 

「ようお前ら。全員集まったか」

 

と言いながら入ってくるアザゼルに、

 

「うげ……」

「大丈夫っすか?」

 

青い顔をしたロスヴァイセと心配する匙に生徒会メンバー。そしてセラフォルーに九重まで来ている。

 

「つうわけでだ。兵藤 一誠の言うとおりなら、二条城で何か企んでるらしい。そこで俺達はこのまま乗り込む事になった」

「僕たちだけですか?」

 

祐斗の問いにアザゼルは首を横に振り、

 

「援軍は来る。だが現在世界各地で禍の団(カオス・ブリゲード)の襲撃が起きてるからな。それの対応でかなり人員を割かれてるらしいから今ここにって訳にはいかないらしい。だがその代わり強力な助っ人は来てくれる。そして俺たちの仕事は兵藤一誠の撃破じゃない。と言うか正直今の面子でアイツを倒せると俺は思えん」

『……』

 

その言葉に、誰も言い返せなかった。確かに一誠の力は出鱈目何て言葉じゃ足りない。

 

「一人に付き一つの筈の神器(セイクリットギア)が複数あって神滅具(ロンギヌス)も独占……現状この場の戦力じゃ無理。となれば九重の母親の八坂の姫を直接救ってトンズラ……って言うのが理想だがそういかねぇ場合は援軍が来るまで持ちこたえろ」

「援軍が来れば勝てるんですか?」

 

いや……とアザゼルは言うと、

 

「ただまあ逃げれはするだろうよ」

 

結局そこに落ち着くのね……と皆はため息。現時点で一誠に勝つのは厳しいらしい。それこそ四大魔王様辺りが勢揃いで襲い掛かれば勝機があるかもらしいが、世界的に禍の団(カオス・ブリゲード)の襲撃が起きてる中、早々簡単に動くわけにはいかないようだ。

 

「と言うわけで今回の作戦だが、まずこのホテルに匙以外のシトリー眷属はセラフォルーの指示したがって残ってまずないと思うがホテルに襲撃があった場合の防衛役兼、俺達の帰還用の転移魔方陣をいつでも起動できるようにしてくれ」

『はい!』

 

え?俺は同行するんすか?と匙がポカンとすると、当たり前だろうがとアザゼルの突っ込みが入り、

 

「よしお前ら。これより八坂の姫救出作戦を始める。あと九重。お前はちゃんとここにいるんだぞ」

「……」

 

そんなアザゼルの言葉に九重は明らかに不満げな顔をした。どう言うことかと戦兎が聞くと、

 

「こいつさっきから救出作戦に着いてくっていって聞かねぇんだよ」

 

あぶねぇからここにいろって言ってんだけどな、とアザゼルはぼやく。それにセラフォルーが、

 

「さぁ九重ちゃん。お姉ちゃんと一緒にお留守番しましょうね」

「……」

 

全身から嫌々ながらと言うオーラを出しながら九重は連れていかれ、

 

「そんじゃいくぞ!」

 

アザゼルの号令に、皆は頷いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と言うわけでホテルから冬服の制服(戦闘用の特別製)に着替えてから外に出る。これからバス停でバスに乗ってそこから二条城に向かう。

 

「そう言えば部長達と連絡とらなかったんですか?」

 

と言うのは祐斗。それのアザゼルは、

 

「今グレモリー領でも事件が起きてるらしくてな。そっちにいってる」

 

そうか。となると部長達の助けは難しい。何て言い合っているのだが、

 

「おい、着いてきてるぞ」

セラフォルー(あのバカ)……ちゃんと見とけっつったろうが」

 

大方ホテル回りの結界の製作に動いているはずなので、その辺の隙を着いて逃げ出し戦兎達を尾行する気なのだろう。まぁ戦兎ですら気づくほど拙い尾行なのだが……

 

「これはガツンといわんとダメだな」

 

アザゼルはそう言うと、

 

「九重!いるのはわかってんだ!出てこい!」

「……」

 

ビク!と物陰から狐の尻尾を出したままだった九重は、恐る恐るこちらを覗いてくる。

 

「お前ここにいろって言っただろ!」

「じゃ、じゃが!」

 

じゃがもじゃがいももねぇ!とアザゼルが声を荒げる。これは本気で怒っている訳じゃない。九重が着いてこないように敢えて厳しめに言っているのだ。それを皆は分かっているが、九重は明らかにビビっている。これなら大丈夫か?と思った次の瞬間!

 

『っ!』

 

突如辺りを包み込む霧。これを戦兎達は知っている。これは先程一誠が自分達に使ったものと同じだ。

 

「九重!」

「え?」

 

咄嗟に戦兎は走りだし、九重に手を伸ばす。届いたか届かなかったか……それが曖昧になるほど微妙なタイミングで、戦兎達は姿を消していたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いつつ……」

「だ、大丈夫かの!?」

 

突如地面が無くなったような浮遊感に襲われた戦兎だったが、ドスン!と地面に落ちて意識が覚醒。と同時に腰にジンワリと痛みが広がり顔をしかめたところに、戦兎の上に乗っていた九重が顔を覗き込んできた。

 

「あぁ、何とかな……」

 

と戦兎は九重に降りて貰ってから立ち上がり、腰を擦って周りを見る。見てみれば京都の街中と言ったところだ。だが人の気配がしない。幾ら夜とは言え人の気配が全くしないと言うのはおかしい。するとそこに、

 

「ん?」

 

戦兎はアラームが鳴ったスマホを取り出して電話に出る。相手は祐斗だ。

 

「やぁ戦兎君。無事かい?」

「あぁ、そっちは?」

 

今アザゼル先生と一緒だけど……と言ったところで電話を取られたようで、アザゼルに電話相手が変わった。

 

「無事そうで何よりだ。って九重はそっちか?」

「あぁ、一緒にいるよ」

 

不味いな……とアザゼルは呟き、

 

「仕方ねぇ。恐らくこれは絶霧(ディメンションロスト)の能力だろう。取り敢えずお前は九重を守りつつ二条城を目指してくれ。場所は分かるか?」

「あぁ、大丈夫だと思うけど……」

 

戦兎はアザゼルに答えながら、ゆっくりと前を見る。そして、

 

「悪いアザゼル先生。また後に掛け直す」

「あ?お、おい!」

 

電話を切り、戦兎はスマホをしまうとソッと九重を体で庇うように立ちふさがる。そしてその視線の先には、

 

禍の団(カオス・ブリゲード)……か?」

「あぁ」

 

戦兎の言葉に男が答える。だがいるのは一人じゃない。ざっと数えて4・50人程いた。

 

「通してもらうって言って聞かねぇよな?」

「当然だ。一誠様のためにお前を殺す!」

 

そう言うと男達は構え、

 

禁手化(バランスブレイク)!』

 

その声と共に輝き、全員それぞれ様々な武器や炎に水、氷と持ったり纏わせたり浮かび上がらせたりと自由にさせた。

 

「えぇと……まさかとは思うけどこの人数全員禁手(バランスブレイカー)に至ってるの?」

「当然だ!」

 

男の叫びと同時に全員が一斉に発射。爆発と閃光が戦兎に襲いかかる。

 

「ちっ!」

 

戦兎は咄嗟に九重を庇うように抱き締め、

 

「変身!」

《鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イェーイ!》

 

素早く変身を終えてラビットフルボトルの力で大ジャンプ。爆発と閃光を逃れながら九重を抱えて近くのビルの窓を割りながら飛び込んで回避。だが、

 

「つぅ……」

「ど、どうしたのじゃ!?」

 

ジュウ……と腕が焼ける感覚。火とは違う。これは光だ。前にアーシアがいる時にどんなもんなのかとイリナに頼んで指先を光で引っ掻いて貰ったが、あの時も凄い痛かった。恐らくそういう神器(セイクリットギア)があったのだろう。そして変身が完了する前にカスったようだ。だがこれならまだ動けない訳じゃない。

 

そう戦兎は結論付けて立ち上がる。すると九重はなにやら顔を下に向けている。

 

「どうした?」

「妾のせいじゃ」

 

自分がちゃんとおとなしくしていれば……そう九重は言う。だが戦兎は、

 

「俺はお前の気持ちがわかるよ」

「え?」

 

俺も父親が急に居なくなっててさ。戦兎はそう言い、

 

「だからお前の気持ちが少し理解できる。お前の行動を俺は全否定できないんだ。それに今さら言っても仕方ない。まずはここを切り抜けようぜ!」

 

と戦兎は九重を抱き抱え直すと窓から離れて部屋を飛び出す。それと同時に爆風が起きるが、戦兎は気にせず走り出した。だが次々と爆発は起き、九重は目を閉じて必死に祈る。

 

しかし、

 

「ちっ!」

 

戦兎が舌打ちすると、その先には既に何十人も禍の団(カオス・ブリゲード)の連中が待ち構えていた。思った以上に唐突は取れているようだ。そう思いながら戦兎は九重を片手で抱き抱え直すと、

 

「少し荒っぽくいくぞ」

「う、うむ」

 

それを合図に戦兎は走り出す。ドリルクラッシャーを空いてる方の手で持ち、前の相手を斬る。そこに横から剣を持って襲い掛かって来たが、

 

「くっ!」

 

タンクの方の腕でガード。からの蹴りで押し返し切る。そして、

 

「九重、少し投げるぞ」

「え?ひゃあ!」

 

九重を空中に放り投げた戦兎は、流れるようにボトルを交換。

 

《キリン!扇風機!ベストマッチ!Are you ready?》

「ビルドアップ!」

《嵐を呼ぶ巨塔!キリンサイクロン!イェーイ!》

 

そうして姿を変えた戦兎は、九重をキャッチしながら片手についた扇風機で強風を起こして相手を壁に叩きつけていく。

 

「たかが風だ!ふんばれぇ!」

「なら今度はこっちだ!」

 

そう言って戦兎は今度はもう片方の腕についているキリンの頭を模した槍を伸ばして踏ん張っていた連中を攻撃。それから今度は壁を見て、

 

「はぁ!」

 

と壁を破壊。そのまま部屋に飛び込み、相手は慌ててそれを追うが、

 

《フェニックス!扇風機!Are you ready》

「ビルドアップ!」

 

穴に集まったところにフェニックスの炎を放って爆撃。勿論全部じゃないが、大分減らせたはずだ。そう戦兎は思いながらボトルを交換。

 

《サイ!ドライヤー!ベストマッチ!Are you ready?》

「ビルドアップ!」

《超熱大陸!サイドライヤー!イェーイ!》

 

交換を終え、一度下ろしていた九重を抱えて再度走り出して壁を破壊した戦兎は、廊下に出るとそのまま残っていたやつらを突進で蹴散らしていく。

 

一方その頃。

 

「しかし随分大盤振る舞いだな」

 

と呟いたのはジークフリート。それを聞いて一誠は口を開いた。

 

「仕方ないさ。龍誠はハザードレベルを上げれたが戦兎はまだ上げれてない。本当ならもっとハザードトリガーをバンバン使ってくれれば良いんだが中々使ってくれないからな。なら多数のボトルを使い分け続けなければならない状況に置くしかない」

 

鬼だなぁ~。ジークフリートはそう笑い、

 

「はぁ!」

 

とまた戦兎の方に視点を戻すと、最後の一人を突進で吹っ飛ばした所だ。

 

「はぁ、はぁ……」

「だ、大丈夫かの?」

 

あぁ、と呼吸を整えて戦兎は答える。正直死ぬかと思った。何せ外に待機していた連中も中の騒音に気づいてやって来るのだから 何回もおかわり入ります状態……途中から数えるのを止めた。

 

そんな中、

 

「まさか全員倒すとはな」

「あぁ?」

 

と言ってやってきたのは戦兎と同じ年程の少年で、

 

「まだ……居んのかよ」

「安心しろ、俺で最後だ」

 

そう言うと少年の体が黒い影のようなもので覆われる。

 

「九重、ここにいろ」

 

と、戦兎はなにか嫌な予感がしたため九重を下ろして相手の走り出すと、

 

「はぁ!」

 

と拳の一発。だが、

 

「それがどうした?」

「なにっ!?」

 

思いっきり殴ったのに衝撃がない。ないと言うか、普通にすり抜けてしまったのだ。

 

「くそ!」

 

戦兎は今度はドリルクラッシャーをガンモードにして撃つ。しかし、

 

「いで!」

 

と撃った銃弾が一度体を覆う影が呑み込むとそのままかえって戦兎を襲う。

 

「面倒だな」

 

そう戦兎はスパークリングに手を伸ばそうとするが、

 

(いや、あの能力とスパークリングは相性が悪いか……)

 

どうにか他のボトルで……と考えていると、

 

「ボーッとしている暇はないぞ!」

「ちっ!」

 

襲い掛かってきた少年の攻撃を寸でのところで避けて一度距離を取る。そこに、

 

「はぁ!」

「ん?」

 

ボッ!と少年を青白い炎が襲う。これは狐火と言うやつで、九重が放ったものだ。だが、

 

「この程度の熱では効かないな」

「っ!」

 

そう言って余裕綽々といった感じの様子だが戦兎は成程と言い、

 

「勝利の法則は決まった」

「は?」

《フェニックス!消防車!》

 

戦兎はボトルを交換し、レバーを回す。そして、

 

「ビルドアップ!」

 

姿を変え、戦兎は更にレバーを回し、

 

《Ready Go!ボルテックアタック!》

 

「はぁ!」

「なっ!」

 

フェニックスと消防車の炎の両方を一気に放ち、相手を焼く。すると、

 

「ぐぁああああああああ!」

 

九重の狐火を喰らったとき、衝撃や驚きではなくその熱さでは効かないと言った。それはつまり熱を感じることはできるということ。ならばこの炎は効く筈だ。

 

その戦兎の考えは当たっていたようで、少年は暫く悶えたあと体を包んでいた影が剥がれていき、そのまま地面の倒れる。

 

「はぁ、はぁ」

「戦兎!」

 

だが戦兎も変身が強制解除され、地面に倒れてしまった。

 

「こ、これは……」

 

九重が見てみれば、戦兎の服にはベットリと血がついている。そう言えば最初に攻撃がカスったといっていた筈だ。それなのに九重を庇いながら戦っていたため、流石に戦兎も体力が切れ掛けている。

 

「と、とにかく二条城まで運ぶしかあるまい」

 

そう言って九重は戦兎をズリズリと引きずって運び出すのだった。




ジオウの映画公開初日に見てきました。
ジオウらしいカオスさがあり、色んな人の予想を裏切る展開だったと思います。と言うかあれ見ると仮面ライダージオウの物語の核心ってまさか……って感じになってヤバイですよね!あれ多分ジオウの最終回見る前と後では全然違って見えると思います。


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決戦

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「八坂の姫を救うため、二条城に乗り込んだ俺たちだったが……」
龍誠「しかしお前も何だかんだでフラグたててんのな」
戦兎「フラグじゃねぇよ!九重にフラグとか俺犯罪じゃねぇか!」
匙「まぁ光源氏だって子供に手を出してるしなぁ……」
戦兎「あれと一緒にすな!」
龍誠「でも一部からロリコン説とかケモ耳好きみたいなこと言われてるしなぁ……」
戦兎「最悪だ……」
匙「そんなわけで68話スタートです」


「んん……?」

「あ、目を覚ましました」

 

アーシア?と戦兎は重い瞼を開けて見ると、既に周りにははぐれていた仲間達が何人かいる。

 

「俺は確か禍の団(カオス・ブリゲード)の連中に襲われて……」

「うん。全員倒したのは良いけど意識を失ってたみたいだね。それで九重さんが引きずってここまで来たんだ。最初驚いたよ」

 

だろうな、と戦兎は祐斗に返しながら見ると、腰に九重が戦兎にくっつくようにして寝ていた。

 

あそこからここまでどれくらいの距離なのかは分からないが、それでも近所と言うことはないだろう。その中自分を引き摺ってここまで来ると言うのは並大抵の苦労ではない筈だ。

 

それをやるとは中々根性があるじゃないか。と戦兎は思いつつ、

 

「俺でどれくらい寝てた?」

「ここに来てからでもそんなには寝てない。精々14、5分ってところだ。まだ全員と合流できてないし、少し一息ついた方がいいぞ?いざってときに動けないんじゃ笑い話にもならない」

 

ゼノヴィアの言葉に、戦兎はありがたく休みモードに入る。アーシアの回復は傷は治ってもスタミナまでは回復しないのだ。

 

そうして更に10分後に、龍誠と匙にアザゼルとロスヴァイセとイリナが合流し、元々いた祐斗やアーシアにゼノヴィアと合わせて無事全員が揃った。

 

「取り敢えずは無事みてぇだな」

「酷い目にはあったけどな」

 

そうアザゼルに戦兎が返していると、

 

「んにゅ……」

「お?起きたな」

 

九重は瞼を少し重そうにしながら顔をあげ、ンニャンニャと顔を擦って戦兎を見る。すると、

 

「目が覚めたのか!?」

「あぁ、ここまで運んでくれたんだってな。ありがとよ」

 

そう言いながら戦兎は九重をどかして立ち上がる。体調は全快……には程遠いが、取り敢えず立って歩く程度なら大丈夫そうだ。そう思ったのだが、

 

「だ、大丈夫なのかの?」

「大丈夫だよ。それにお前の母さんいつまでも放って置くわけにいかないだろ」

 

と、戦兎が言うと他の皆もそれぞれ覚悟を決める。二条城はもう目と鼻の先だ。

 

何がなんでも九重の母を救い、全員生きて帰る。そう決めて皆は決戦の地に足を踏み入れたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「母上!」

「……」

 

門を潜り、二条城の敷地に入るとすぐに相手は見つかった。城の天辺にどっかりと座っている男。兵藤 一誠とその隣には全身を鎖でグルグル巻きにされた女性……九重と少し似た雰囲気を持つ女性は九重の言葉通りなら母親とは彼女なのだろう。

 

だがグッタリとしていて意識はなく、九重の呼び掛けにも答えない。

 

「おい兵藤 一誠!いったいお前さんは八坂の姫をさらって何をしようって言うんだ?」

「そうだな……」

 

そう一誠は言いながら赤龍帝の籠手(ブーステット・ギア)を出すとそれを八坂の姫に当てると、

 

赤龍帝からの贈り物(ブーステッド・ギア・ギフト)

《Transfer!》

『っ!』

 

一誠の譲渡により八坂の姫は目をカッと開ける。だが、

 

「アァアアアアアアアア!」

「この地には多数の霊脈が集中していてな。原作じゃそれを利用してグレートレッドを呼び出そうとしたんだが、俺はしない。呼び出しても今じゃまだどうしようもないしな。だがそれだけのエネルギー……折角だから利用しない手はないだろう?」

 

何をいってるんだ?と戦兎は口を開こうとした瞬間地面が揺れだすと、地割れが発生し、そこからエネルギーの奔流起きた。

 

「お前ら集まれ!」

 

アザゼルがそういうと皆は集まりアザゼルが、

 

「ロスヴァイセ!いつまでも青い顔し

てないで結界だ!」

「分かってますよ!」

 

その叫びにロスヴァイセは結界を張り、その間に戦兎は聞く。

 

「アイツはなにしたんだ!?」

「八坂の姫はこの辺り一体の地脈の管理も行っている。恐らく彼女を暴走させてその管理を滅茶苦茶にして溢れさせたんだ。これだけのエネルギーだぞ!?京都の町だけじゃねぇ……日本の3分の1が吹っ飛びかねねぇ!」

『なっ!』

 

すると皆が驚愕する中、一誠は笑みを浮かべて、

 

「そんなことするわけないだろう?」

 

そう言いながら一誠は懐から何かを取り出す。それを見た戦兎は、

 

「ハザードトリガー?」

 

そう。一誠が手に持っていたのはハザードトリガーに良く似た機械。そして一誠はそのスイッチを押す。すると起きていたエネルギーの奔流が一誠のハザードトリガー?に吸い込まれていく。

 

そしてそのままエネルギーの奔流が落ち着き、一誠はハザードトリガー?のスイッチを何度かカチカチする。

 

「やっぱりまだダメか……」

「何をしたんだ?」

 

戦兎の呟きに一誠は、

 

「こいつを起動するには莫大なエネルギーが必要でね。だから俺は世界中のあっちこっちの霊脈から集めてたんだ。だがここも終わると後はめぼしい所は無いからな……やっぱりこれだけじゃなくて俺自身も力を得なければならないみたいだ」

「まだ強くなる気かよ……」

 

一誠に思わずアザゼルが突っ込むと、当然だと言いながら一誠は、

 

「さて、集まって貰ったのはこれを見てもらうためじゃない。ここにいる八坂を助けたいだろ?なら俺と戦おうじゃねぇか」

「上等だ」

 

戦兎はそう言いながらビルドドライバーをつける。龍誠や匙もだ。そして皆もそれぞれ武器を構える。だが皆は怒っているが八坂の姫を救うと言うのが最優先なのはわかっていた。故に、

 

『変身!』

《鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イェーイ!》

《Wake up burning! Get CROSS-Z DRAGON!Yeah!》

《潰れる!流れる!溢れ出る!ドラゴンインクローズチャージ!ブラァ!》

 

まず戦兎と龍誠と匙が変身して走り出す。

 

『はぁ!』

 

三人は飛び上がると三人同時に飛び蹴りを放つ。

 

「ふん!」

 

だが一誠はそれを腕を振っただけで弾き、ベルトをつけてボトルを挿す。

 

「変身」

《コブラ!コブラ!エボルコブラ!フッハッハッハッハッハッハ!》

 

変身を完了し、地面を転がった三人に追い討ちを掛けようと近づく。そこに、

 

「ん?」

 

光の槍が降り注ぐ。それをヒョイヒョイっと避け、腕を薙ぐとその衝撃でアザゼルを吹き飛ばす。

 

「ちぃ!」

 

空中で体勢を整えるが、アザゼルは苦虫を噛んだような顔になった。

 

「ふむ……」

 

そんな中一誠は一つ息をして、

 

「折角だ。こそこそせずに戦えよ」

『っ!』

 

一瞬で戦兎達が囮になり、その間に八坂の救出のために動いていた祐斗達の所に移動。皆が驚愕する中一誠は祐斗を裏拳で殴り飛ばす。

 

「木場!?くそ!」

 

ゼノヴィアはデュランダルを構えて一誠に斬りかかった。だがそれを一誠は同じくデュランダルを作り出して防御。

 

「はぁ!」

 

そこに押し合いになったところを見計らってイリナが光の輪を投げて攻撃。

 

「おっと!」

《Half Dimension!》

 

だが一誠に届く頃には霧散してしまい、そのままゼノヴィアに蹴りを入れて離す。

 

「どうしたどうした?もう終わりか?」

「ならこれで!」

 

一歩前に出ようとした一誠の前に結界が張られ、そのまま一誠を取り囲む。

 

「ロスヴァイセか?」

「更にこれでどうだ!」

 

一誠が首を傾げる中、ロスヴァイセが腕を振ると結界が発光し爆発。続けて、

 

「おらぁ!」

 

極大の光の槍が天から真っ直ぐ一誠の頭上から地面に突き刺さる。

 

「戦兎!八坂の姫を救い出せ!」

「っ!わかった!」

《タカ!ガトリング!ベストマッチ!》

 

アザゼルからの指示で戦兎は走り出し、ボトルを入れ換えて飛び上がる。

 

《Are you ready?》

「ビルドアップ!」

《天空の暴れん坊!ホークガトリング!イェーイ!》

 

そのまま一気に城の天辺まで飛んでいき、八坂の姫と思われる女性に近づく。

 

「九重のお母さんですよね?助けにきましが!」

「……げて」

 

すると突然八坂の姫は戦兎の首を締め上げ、そのままゆっくり立ち上がる。そして戦兎は見た。その瞳が黒く、そして汚れていることに。

 

「おねがいだから、九重を連れて、逃げて……!」

 

ブン!と戦兎を投げ捨てた八坂の姫の体がビキビキと黒く変質していく。

 

「母……上。」

「グゴォオオオオオオオオ!」

 

全身が黒く染まり、触手のようなものも生えてくる。狐にも似ているが、それには程遠いようにも見える。

 

「ククク」

 

その中、ゆっくりと煙から一誠は歩いて出てきた。

 

「お前あの人に何をした!」

「あぁ、彼女か?彼女は俺の魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)を使って彼女の身体を魔獣で侵食させたんだ。お陰で今じゃすっかり俺に従順だ」

 

何てこと無いように言う一誠に、戦兎はギリッと歯を噛み締めると、

 

「何でだよ……何でお前はそんなことができんだ!お前には良心ってもんがねぇのかよ!」

 

その叫びに一誠は肩を竦め、

 

「仕方ないだろ?こんな世界じゃ」

「はぁ?」

 

何をいってるんだ?そう戦兎が問うと、

 

「俺を仲間外れにしたからだ」

「……は?」

 

意味が理解できなかった。だが一誠は真面目な声で、

 

「主人公を仲間外れにしようとする世界。それはとても良くないことだ。これはハイスクールD×Dなんだ。兵藤一誠がいないといけないんだよ。なのに俺を蚊帳の外にしようとする。そんな世界はだめなんだ。だからやり直さないと……」

「なに言ってやがんだ!」

 

そこに龍誠が拳を握って一誠を殴る。

 

「てめぇがどんな想いだろうがな……やっちゃいけないことってもんがあるだろうが!」

「万丈の言うとおりだ!」

 

すると後ろから匙の飛び蹴り、だがそれでも一誠は二人ががりの攻撃を軽く捌いていく。

 

「グォオオオ!」

『っ!』

 

そんな中、一誠との間に八坂の姫が割って入り龍誠と匙を吹き飛ばし、

 

『ぐぁ!』

《イエイ!イエーイ!ヤベーイ!》

 

それと入れ替わるように戦兎が入り、スパークリングとハザードの組み合わせで八坂の姫を止める。

 

「目を覚ませ!九重があんたを待ってるんだぞ!」

「グゥウウウウガァアアアア!」

 

戦兎が呼び掛ける。だが八坂の姫は意に返さず戦兎を押し返すとそのまま殴り飛ばした。

 

「がはっ!」

「戦兎!」

 

そう叫び、九重は戦兎と自身の母の間に飛び込んでくる。

 

「やめるのじゃ母上!」

「グルゥウウウウ!」

「九重!」

 

だが既に九重を認識できていない八坂の姫は九重に拳を振り下ろし、戦兎は慌てて割って入って止めた。

 

「ぐっ!」

「妾のことが分からぬのか?母上……」

 

ポタッ、と地面に滴が落ちる。

 

「母上!目を覚ましてくだされ!良い子にするから!もうつまみ食いもせぬしいたずらもしない!だから何時もの優しい母上に戻ってくれ!」

「ガァアアアアア!」

 

泣きながら必死に叫び続ける九重。だが八坂の姫の暴走は収まらず抑える戦兎に何度も襲いかかる。

 

「くそ、なんつうパワーだ」

《マックスハザードオン!ガタガタゴットン!ズッタンズタン!ガタガタゴットン!ズッタンズタン!オーバーフロー!ヤベーイ!》

 

黒い蒸気を噴出させ、戦兎は八坂の姫を押し返す。その隙に、

 

『はぁ!』

《Ready Go!ドラゴニックフィニッシュ!》

《スクラップブレイク!》

 

龍誠と匙の飛び蹴りが八坂の姫に向かう。だが、

 

《Ready Go!エボルテックフィニッシュ!》

「おらぁ!」

『っ!』

 

同時に爆発と閃光。咄嗟に戦兎が九重の前に立って庇うが、皆がそれにより吹き飛ばされた上に、変身が強制解除させられてしまった。

 

「くそ……どっちか一人でも厄介すぎんのに二人もいんのかよ」

 

ジャリッと口の奥に入った砂を噛みながら戦兎は一誠を見る。

 

「さて、もう終わりかな?」

 

他の皆も一誠を見るが、有効な攻撃方法が思い付かず二の足を踏んでいた。

 

「なら俺からいこう。そうだな……戦兎や龍誠以外はいらないしここで殺してしまっても良いか」

「なっ!」

 

戦兎は声を漏らして驚愕する。

 

「や、やめろ……」

「悪いがこれもお前達を強くするための犠牲だ。ほら、コラテラルダメージって言うだろ?」

 

仲間なんていたら頼って強くなれないからなと言いながら一誠は他の仲間達の方へ向かおうとした所に、

 

「そこまでじゃ」

「っ!」

 

バキィ!と一誠の横っ面に一撃が入り、そのまま吹っ飛んでいく。だがすぐに体勢を建て直し、立ち上がる。そこに立っていたのは、棒を一本持った不思議な雰囲気の男。

 

「遂に来たか。闘戦勝仏さんよ」

 

そう言って、一誠はデュランダルを出すと闘戦勝仏と呼んだ相手に向かって一気に飛び出し振り下ろす。だが、

 

「ん?」

 

斬った感触はあった。だが斬った筈の闘戦勝仏はそのまま泥人形ののようになって崩れると消えてしまう。しかも、

 

「全員いない?」

 

そう、さっきまでいた戦兎達処か八坂の姫まで姿を消していた。

 

「成程、逃げたか……」

 

どういう仕掛けかわからないが絶霧(ディメンションロスト)の結界を出入りする辺り流石闘戦勝仏と言ったところだろう。まぁ正直そこまできっちり結界を作った訳じゃないので、ある程度結界に知識があって力もあれば出入りするのは難しくない。ただあれだけの人数と暴走している八坂の姫を連れてと言うのは大変だろうが……

 

「まぁ、今回はこれのエネルギーをゲットできたと言う点で満足するか」

 

一誠はそう言いながら、ハザードトリガー?を手にそう呟くのだった。




ジオウも残すところ後一話……早いものですねぇ……最初はどんな感じになるのかと思いましたが映画も合わせて複雑にいろんな伏線があったりとすごい壮大な物語に……これは次回の最終回も見逃せません!

そしてこのシリーズですが漸く少しずつ色んなことが判明していきます。まぁまだまだわからないことが多いですけどね。と言うか我ながら一誠倒せるのかな……

あ、そうそう。何かコメント欄では一誠のことをエボル一誠て呼ばれててフフってなってますw俺の記憶では俺が言い出してないはずなので誰が最初なんだろう……


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戦いの後

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「強敵兵藤一誠を前にどうにか八坂の姫の救出は成功させた俺たちだったが……」
匙「通過あいつ出鱈目すぎない!?話に聞いてたけど強すぎだろ!」
龍誠「つうか結局あいつ何者だったんだ?」
戦兎「さてな。しかしコメントの方では色々といい感じにヘイトが集まってて素晴らしいですね~。まぁアイツの正体とか諸々はまたいずれね。と言う感じの69話スタートだ!」


「そう……大変だったわね」

 

修学旅行から帰ってきた次の日、最近すっかり涼しくなったのもあり、皆で鍋を囲みながら京都であったことを戦兎から聞いていたリアスが頷く。

 

「それで八坂の姫はどうなったの?」

「現在は厳重に封印処置が施されています。ですが彼女を救う手だてが……」

 

アザゼル曰く、八坂の姫の身体を細胞レベルで複雑に侵食しており、現時点では八坂の姫を救う方法がないらしい。

 

しかも封印している現時点ですら魔獣の侵食は完全には止まらず、今のペースだと一年もすれば全身を侵食され尽くしてしまうとのこと。

 

「九重のは見てられませんでしたよ……」

戦兎はそう言って泣いて母を呼びながら従者達に連れてかれていった少女の姿を思い出す。

 

「くそ……俺にもっと力があれば」

 

と、拳を握る龍誠。皆それに関しては同じだ。全員手も足もでなかった。だがなにより問題なのは、皆が一誠に勝つことが出来るのかと。全く勝利のビジョンが描けないのだ。

 

神滅具(ロンギヌス)一つでも厄介なのにそれを13個も持ってるし仮面ライダーの力もある。このままじゃ……そう皆が沈んでいると、

 

「とにかく一旦この話は終了よ。兵藤 一誠もだけどレーティングゲームも控えてるのよ。元気だしなさい」

 

とリアスが活を入れた。だが彼女の言うとおりだ。自分達はサイラオーグとのレーティングゲームが控えている。アザゼル曰く、キナ臭いのが続く今の現状ではレーティングゲームは民衆の貴重な娯楽なのだそうだ。

 

だからこそ下手な戦いをするわけにはいかない。とは言えまだビルドの強化アイテム草案すらないんだよな……と戦兎が鍋の肉を口に放り込んでいると、

 

「そろそろお鍋のスープが少なくなってきたようね」

そう言って朱乃が鍋にスープを足す。それを見たアーシアが、

 

「朱乃さん。何でスープを?」

「お鍋を食べてるとどうしてもスープか途中で足りなくなってしまうの。特に大人数だとね。だから最初にスープを多く作って別にとっておいてから足りなくなったら足していく。水やお湯をそのままだとせっかく入れてたお野菜とかから出た出汁を薄めちゃうし、その点スープなら元々同じだから味を殺し会うことはないもの」

 

朱乃がそう言ってアーシアに説明すると、

 

「そうか!」

『え?』

 

ガタン!と戦兎は立ち上がり、皆が驚いてると、

 

「鍋のスープの継ぎ足しだ」

『はい?』

 

戦兎は眼を輝かせ、髪がピョコっと跳ね上がる。

 

「先輩?」

 

と小猫が表情を伺ってくるがそれどころじゃない。

 

「まだ試してない組み合わせがあった」

「ビルドのですか?」

 

そうだと小猫に戦兎が返しつつ、戦兎はテーブルの上にビルドドライバーを出すと、ラビットフルボトルを二本出した。

 

一本は元々持っていたものを、そしてもう一本は京都で拾ったものだ。

 

「あれ?何で二本もラビットフルボトルが?」

「京都で拾いました」

 

リアスにそう答えながら戦兎はラビットフルボトルを二本挿す。

 

《ラビット!ラビット!》

「光ったぁ!」

 

龍誠が声をあげる。ビルドドライバーがベストマッチと同じ光を発する中、戦兎は更に、

 

《ハザードオン!》

 

ハザードトリガーを挿す。そしてレバーを回していくと、

 

《ガタガタゴットン!ズッタンズタン!ガタガタゴットン!ズッタンズタン!》

『ん?』

 

発光は更に強くなり、それと同時に火花が散る。そして、

 

『うわっ!』

 

爆発。けほっ!と皆が咳き込む中、戦兎はビルドドライバーを見てみるとラビットフルボトルが破損していた。

 

「そうか、通常のフルボトルだと耐えられないほどの力……だが今までにない反応だ。これを利用した力を組み合わせたそれに耐えられるボトルなら。よぉし!ビルドの強化アイテムの案ができた!」

「それはよかったわね」

 

ん?と戦兎が声の方を見てみると、そこには鍋の具材の大根を頭に張り付けた黒焦げのリアスがムスッ立っている。そして、

 

「但し!これからは食卓の上じゃないところでね!」

「すいませんでしたー!」

 

最早土下座しかない。と戦兎は土下座して叫ぶ。

 

「まぁ、僕たちも予想して待避しておくべきだったよね」

「ですね」

 

と、同じく黒焦げの祐斗と小猫が呟いたのは……まぁ余談である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「彼女の容態はどうだ?」

「何とか初代孫悟空の爺さんの封印もあるからな取り敢えずは小康状態だ」

 

だが長くは……とサーゼクスとアザゼルは全身管や様々な封印が施された八坂の姫を見る。

 

「今は封印で意識もないが元が八坂の姫だ。暴れだしたら手がつけられんぞ」

「だろうな」

 

サーゼクスはそう言うと、

 

「兵藤一誠の目的は地脈か……」

「それとハイスクールD×Dがどうとか言ってたぞ?」

 

ハイスクールD×D?とアザゼルにサーゼクスは首を傾げた。

 

「まぁ正直あいつの言ってることは理解できないことも多いしな」

 

気にしても仕方ない。そう言ってアザゼルは頭を掻く。

 

「とりあえず詳しい報告は後日書類を送る」

「頼む」

 

とサーゼクスは返して窓から外を見た。

 

「何か最近嫌な予感がするんだ。そう……私自身も含めてな」

「おいおい、お前に何かあったら冥界はガタガタだぜ?」

 

そうだな……サーゼクスはそう言って頷く。

 

この嫌な予感に負けるわけにはいかない。自分は魔王だ。そう簡単には負けられない……そうサーゼクスは新たに決意を固めるのだった。




先日総合評価500を突破していました。色んな方に評価していただいたり自分でもこんな風に延びるのは少し驚きでしたがこれからも頑張っていきますのでよろしくお願いします。

あ、次回は本編ではなく一話だけ使って実はこんな仮面ライダー×ハイスクールD×Dも思い描いてましたよ的な奴だします。


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番外編
こんな感じの仮面ライダー×ハイスクールD×Dも考えてはいたって言う話


あとがきに設定もあります。


「うん?」

 

フッと眼を開けた戦兎は、何故か荒野に立っていた。

 

「あれ?確か俺はビルドの強化アイテムの製作に勤しんでた筈なんだけど……」

 

なんか頭がぼんやりするな、そう思いながら周りを見渡すと、

 

「これは!」

 

突如自分の周りに魔獣が現れ、取り囲まれた。そして戦兎は咄嗟にビルドドライバーを取り出そうとするが、

 

「あ、あれ?ビルドドライバーがない!?なんでだ!?」

 

正確にはフルボトルもないのだがともかく、ビルドにこのままでは変身できないと言うことだ。

 

勿論その間も魔獣はこちらに詰め寄ってくる。そこに、

 

「よっと!」

「え?」

 

そこに誰かが後ろから跳んで着地してきた。その存在に戦兎は見覚えがある。

 

「龍誠?」

「りゅうせい?誰だそれ。俺は兵藤 一誠だぜ?」

 

兵藤 一誠!?と戦兎は驚愕しながら身構える。だが同時に、何時もあいつとは少し雰囲気が違う気がした。すると兵藤 一誠と名乗った少年は前を向き、

 

「まぁ、取り敢えずあいつらを片付けますか!」

 

そう言い、兵藤 一誠?は懐からバックル?のようなものを取り出して腰に着けると、ベルトが延びて彼の腰に固定された。

《ジクウドライバー!》

 

すると更に彼はアナログのストップウォッチに似た物を取り出して表面にあるリングを回転させてからスイッチを押す。

 

《ジオウ!》

 

それから兵藤 一誠?から見て右側に装着。そしてベルトのバックルにあるスイッチを押して構えると、

 

「変身!」

《ライダータイム!仮面ライダージオウ!》

 

ベルトのバックルを回転。それと共に姿が変わり、銀と黒を基調とした姿となり、オデコにカメンと言う文字と目の辺りにライダーの文字が入る。そして、

 

「さぁて……いきますか!」

 

兵藤 一誠?は疾走。魔獣を次々と殴って蹴って吹っ飛ばしながら剣を取り出した。

 

《ジカンギレード!ケン!》

「はぁ!」

 

飛び掛かってくる魔獣を斬りながら、兵藤 一誠は頭を掻く。

 

「流石にこのままじゃ不利かな」

 

そう言った兵藤 一誠?は別のウォッチを出してリングを回す。すると戦兎はそのウォッチに描かれている顔を見て、

 

「ん?部長?」

 

と呟くがそんな戦兎を尻目にスイッチを押し、

 

《リアス!》

 

それからさっきのウォッチとは反対側に着けてバックル上のスイッチ押してバックルを回転。

 

《アーマータイム!リーアースー!》

 

すると兵藤 一誠?の前にリアスを模した深紅の機械の鎧が現れ、兵藤 一誠?がそれを押すと分解。分解したパーツはそれぞれ彼の体に装着され、先程の銀と黒を基調とした姿から深紅を基調とした姿になる。

 

「さぁて、こいつはどうかな!」

 

そう言った兵藤 一誠?は、何と滅びの魔力を拳や足に纏わせながら敵を殲滅しながら走り抜け、飛び上がると滅びの魔力の球体を作ってそれを地面に落として爆発。その間に着地する間に兵藤 一誠?は別のウォッチを出してスイッチを押した。

 

《ゼノヴィア!》

 

そしてさっきリアスの顔が描かれていたウォッチをゼノヴィアのウォッチを入れ換えてバックルを回転。

 

《アーマータイム!ゼ!ノ!ヴィ!アァ!》

 

そうして今度は蒼と黒を基調とした鎧を身に纏い、その手にデュランダルに似た大剣を持つと、地面に着地すると同時に大剣で凪ぎ払って吹き飛ばすと、ウォッチのスイッチを押し、

 

《フィニッシュタイム!ゼノヴィア!》

 

バックルを回転。それと共にデュランダル型の大剣が光り輝き、巨大な刀身へと変貌した。

 

《デュランダルタイムブレーク!》

「真っ二つにしてやるぜぇ!」

 

ドン!とそのまま振り下ろし、最後に残っていた魔獣を全て消し飛ばしたが、

 

「真っ二つって言うか押し潰したって感じじゃねぇか……」

 

と戦兎は突っ込みながら兵藤 一誠?に駆け寄り、

 

「おい、お前何者なんだ?」

「俺?俺は何者かぁ……」

 

そうだなぁと兵藤 一誠は呟きつつ、

 

「俺は兵藤 一誠。またの名を仮面ライダージオウ。昔三大勢力やそれ以外のあらゆる神話体型が手を組んでどうにか瀕死なりながら倒した最低最悪の王様の生まれ変わりだってさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んぁ!?」

 

ガバッ!と身を起こした戦兎は、周りをキョロキョロ見渡すと、

 

「おはようございます」

「あ、あぁ……」

 

そこには既に勝手知ったる様子で戦兎の研究室にある冷蔵庫からジュースとお菓子を取って休んでいた小猫がいた。

 

見てみれば肩に布団が被せてある。

 

「ぐっすり寝てましたが徹夜でもしてたんですか?」

「んまぁ……ちょっとな」

 

と言いながら戦兎が設計図の紙を拡げると、

 

「これがビルドの強化アイテムですか?」

「あぁ」

 

すると小猫は、もう一つの設計図に気づいた。

 

「こっちは……剣ですか?」

「ん?こっちか?こっちはビルドの強化アイテムを活かせる武器だよ。どっちもサイラオーグさんとのレーティングゲームまでに完成させないとさ……」

 

そういう戦兎に小猫は、

 

「そう言って気絶するみたいに寝るまでやるのはどうかと思いますけど?」

「う……」

 

戦兎はそっと視線を逸らす。悪魔だからこそ多少の無茶が効いてしまう。それが不味いのは戦兎も分かっているのだが、ついやってしまうのだ。だが小猫は戦兎の頭を両手で包むように掴んで振り向かせると、

 

「ちゃんと寝ましょう。良いですね?」

「あ、はい」

 

なんか最近こいつに頭が上がらなくなってきた気がする……何て戦兎は思ったのは、まぁ秘密である。




兵藤 一誠(17才)

今作のと言うかハイスクールD×Dの主人公。

原作と違いエロさ人並み。

将来の夢はなく、毎日平穏に生きていければ良いと口では言うものの、困ってる人を見過ごせず走り出してしまうタイプ。

何故か悪魔の駒(イーヴィル・ピース)が使えない。

本来赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を持っているはずなのだが持っていない。だがレイナーレから妹を守る際に、ある力に目覚める。

《ジクウドライバー》

昔、一度だけ三大勢力だけではなくその他数多くの神話体型が手を組んだときがあった。

それはある高名な錬金術師が作り、それを使い自らをあらゆる次元・時空・事象を凌駕する王を名乗った男、オーマジオウを倒すため。

自分の国を滅ぼし、世界にも手を出した男の強さに全ての勢力が多大な被害を被りつつもオーマジオウは撃破され消滅した。因みに三大勢力は長い戦いの末に戦争を続けられなくなるほど勢力が減ったために戦争を中断したと伝えられているが、オーマジオウとの戦いが実は大きな原因(実際疲弊していたのも本当)

だが何故か一誠はそのジオウがつけていたベルトを所持(理由は後述)しており、レイナーレとの戦いでそれを出現させた。

因みにオーマジオウの力を味わっている勢力の面子からは勝手に警戒されてしまう。

《ジオウ》

前述の通り世界中を敵に回した王の力。なのだが、アザゼル曰く明らかに弱いしちょっと姿が違うらしい。

必殺技は【タイムブレーク】

並の人外程度なら歯牙にもかけない強さを持つが、上級クラスだと厳しい。だが後述の力を使うと……

《ジカンギレード》

ジオウの姿の時のメイン武器。剣と銃の二つの側面を持つ。

《オーマジオウ》

世界中の勢力により滅ぼされたジオウ。しかし現在はその魂は一誠に生まれ変わっており、ジクウドライバー等もそれが影響している。

時折一誠の夢に現れては助言したり、力を与える描写が見られる。

《ライドウォッチ》

特定の人物の力を宿したアイテム。ジクウドライバーにこれをつけることで一誠はその人物所縁の力を使ったり、ジオウに変身する。

他者の力を持ったライドウォッチは、その人物と絆を深めることで生成可能(その気になれば力が宿ってないウォッチを使って強引に力を宿すことも可能だが一誠は極力やらない)なのだが、先代は力付くでライドウォッチを生成していた上に、生成されると元となった人物は力を使えなくなっていたらしい(一誠にはそう言う描写がない)

因みに一部のウォッチは起動させるだけである程度能力を使うことも出来る。

《ジオウライドウォッチ》

一誠がジオウの変身するために使うもので、ジクウドライバーにつけて使う。

《アーマータイム》

ジクウドライバーにジオウライドウォッチと別のライドウォッチを合わせてつけて使う状態。ジオウの力に他者の力を上乗せして使うことが出来る。因みに他者のライドウォッチは、その力の元となった人物がパワーアップすると合わせて強くなる。

《リアスライドウォッチ》

リアス・グレモリーの力を宿したライドウォッチ。使用することで滅びの魔力を用いた戦い方は遠近両方で便利で、一誠が良く使う。

必殺技は【ルインタイムブレーク】

2章のライザー戦で手に入れたが、少し変わった形状とのこと。

《アケノライドウォッチ》

姫島 朱乃の力を宿したライドウォッチ。雷光を使った中距離戦が得意な力で、強力な反面一誠はやたらめったら撃つため周りの被害が大きい。

必殺技は【ライコウタイムブレーク】

《コネコライドウォッチ》

塔城 小猫の力を宿したライドウォッチ。パワーと頑丈さが売りの近距離仕様。単純なためかリアスライドウォッチに並んで良く使う。

必殺技は【シロネコタイムブレーク】

《ユウトライドウォッチ》

木場 祐斗の力を宿したライドウォッチ。多数の剣を作り出して戦うスピードタイプ。

必殺技は【セイマケンタイムブレーク】

《ゼノヴィアライドウォッチ》

ゼノヴィアの力を宿したライドウォッチ。木場よりも威力重視な姿で、朱乃の力同様周りへの被害が大きい。

デュランダルを模した武器で戦う。

必殺技は【デュランダルタイムブレーク】

《アーシアライドウォッチ》

アーシア・アルジェントの力を宿したライドウォッチ。戦闘能力は皆無だが、回復能力を持つ。

必殺技は【トワイライトタイムブレーク】

《ギャスパーライドウォッチ》

ギャスパー・ウラディの力を宿したライドウォッチ。相手の時を止めたりコウモリを使ったりと強力な反面、テクニカルな戦いが求められるため扱いが難しいらしい。

必殺技は【バロールタイムブレーク】

《ロスヴァイセライドウォッチ》

ロスヴァイセの力を宿したライドウォッチ。遠距離特化型で北欧魔術を用いた砲撃は強力。アケノライドウォッチ、ゼノヴィアライドウォッチのならんで周りへの被害がでかい。

必殺技は【ワルキューレタイムブレーク】

《イリナライドウォッチ》

紫藤 イリナの力を宿したライドウォッチ。光の力を使えるため悪魔に対して有利に戦える。

必殺技は【エンジェルタイムブレーク】

《クロカライドウォッチ》

クロこと黒歌の力を宿したライドウォッチ。小猫のアーマータイムとは違い、仙術や妖術を用いたトリッキーな戦いを得意とする。

必殺技は【クロネコタイムブレーク】

因みにジオウライドウォッチを除けば一番最初に手に入れたライドウォッチなためちょいちょい使われる。

《ヴァーリライドウォッチ》

ヴァーリ・ルシファーの力を宿したライドウォッチ。白龍皇の半減なども使え、ヴァーリ由来の魔力もある。

必殺技は【ルシファータイムブレーク】

《サジライドウォッチ》

匙 元士郎の力を宿したライドウォッチ。ヴリトラの力を使った呪いを得意とし、破壊力より相手を弱らせて叩き潰す戦法を取る。

必殺技は【ジャリュウタイムブレーク】

《サイラオーグライドウォッチ》

神滅具(ロンギヌス)である獅子王の戦斧(レグルス・ネメア)の力を持っており、遠距離攻撃を無効化しつつ近接攻撃を叩き込む。

必殺技は【レグルスタイムブレーク】

《ソウソウライドウォッチ》

曹操の力を宿したライドウォッチ。黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)を模した槍を使ったテクニカルな戦いを得意とする。神など様々な相手に対して特効を持つが、防御力は紙らしい。

必殺技は【ロンギヌスタイムブレーク】

《レイヴェルライドウォッチ》

レイヴェルフェニックスの力を宿したライドウォッチ。炎を操り、アーマーのダメージや損傷を自動で直す。

必殺技は【フェニックスタイムブレーク】

《デュリオライドウォッチ》

デュリオ・ジェズアルドの力を宿したライドウォッチ。天候を操り、イリナと同様に光も操れる。

必殺技は【ジョーカータイムブレーク】

《アザゼルライドウォッチ》

アザゼルが最後に一誠に託した彼の力を宿したライドウォッチ。圧倒的な力を宿しているだけではなく、アザゼルの機転や計算能力を持つため非常に頼りになる。

必殺技は【ダウンフォールタイムブレーク】

《ミナライドウォッチ》

兵藤 実奈(後述)の力を宿したライドウォッチ。彼女自身のと言うよりは、メインは彼女に宿っている赤龍帝の力を使う。

必殺技は【ブーステッドタイムブレーク】

《オーフィスライドウォッチ》

無限の龍神・オーフィスの力を宿したライドウォッチ。絶大なパワーを持つものの、強すぎて出力の調整が難しい上に体への負担が大きく、余程のことがない限り使わないと一誠は発言している。

必殺技は【インフィニティタイムブレーク】

《ジオウライドウォッチⅡ》

6章にて、このままではこれから現れるであろう敵に勝てないと判断したオーマジオウが、一誠の夢の中に現れて渡した銀のジオウライドウォッチと、オーマジオウの存在を受け入れながらも同じ道には進まないと決意した一誠が生み出した金のジオウライドウォッチの二つで変身する。

一部のアーマータイムにはスペック的に劣る面があるものの、時間逆行や未来視を用いた戦いを行える上に、一誠曰く一番体に馴染むらしい。

必殺技は【トゥワイズタイムブレーク】

《ジオウトリニティライドウォッチ》

ミナライドウォッチとリアスライドウォッチにジオウⅡライドウォッチが共鳴して生まれたライドウォッチ。

変身するとミナとリアスの姿が変わり一誠と融合するため、三人の息をある程度合わせる必要がある。

滅びの魔力と倍加が同時に使え、単純な強さなら後述のグランドジオウとオーフィスライドウォッチを除けば最強を誇る。

変身音は【トリニティタイム!三つの力~仮面ライダージオウ!リアス!ミナ!トーリーニーティー!トリニティ!!】 

必殺技は【トリニティタイムルインブーステッドブレーク】

《グランドジオウライドウォッチ》

オーフィスライドウォッチにより全てのライドウォッチが活性化し誕生したライドウォッチ。全てのアーマータイムの能力をノーモーションで使える上に、通常のアーマータイム以上にそれを使うことができる。

単純なスペックも今までの力を遥かに凌駕しているものの、その真価はライドウォッチの力の元となった仲間達を召喚したり、その仲間達の武器を召喚して使うことができる。因みに本人達とは無関係なため、分身を召喚するに近いらしい。

変身音は【グランドタイム!リアス・アケノ・アーシア・ユウト・コネコ・ゼノヴィア・ギャスパー・イリナ・ロスヴァイセ・クロカ・サジ・ヴァーリ・サイラオーグ・ミナ・ソウソウ・レイヴェル・デュリオ・アザゼル・オー・フィ・ス~祝え!仮面ライダー!グ・ラ・ン・ド!ジオーウ!】

必殺技は【オールトゥエンティタイムブレーク】




【兵藤 実奈】

兵藤 一誠の妹であり、今代の赤龍帝。本来であれば存在しないキャラなのだが、その正体は転生者。

元々はただのハイスクールD×Dオタクの女性。本人曰くパーッと通ったトラックが私を引きずって泣き叫んだ結果らしい。

その際に神様に転生させて貰ったのだが、一誠をそばで見たい的なことをいったら妹に転生させられてしまった挙げ句、オマケと言われて赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)まで付けられてしまった。

基本的に原作の流れは忠実にタイプで、理由としては好き勝手改編するとこの時点ではヤバイ連中が早々に出てくるかもしれないと言うのが理由の一つ。あともう一つは一誠とその仲間達のイチャイチャや活躍が見たいのであって、自分が無双する気はないから。

と言うかそもそも痛いのとか苦しいは嫌いだし、赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を付与された一般人なためか才能も皆無。才能がないと言う点では原作一誠もだが、ビビリで助平根性もないため救いがない。唯一の長所は逃げ足の速さ。

だが物語が進んでいく中で、自分も皆の力になりたいと思うようになっていく……

ドライグとは転生者の影響か物心ついた時から会話が可能。だが赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を出す事ができず(と言うかその気がなく)ずっと話し相手になってただけ。ある意味兄以上に長い付き合いのためか、最早夫婦漫才の域。因みにドライグは実奈の正体を知っている。

一誠が新しいアーマータイムを使うごとに祝いの口上を述べるのはお約束。実奈曰く、赤龍帝じゃない分せめて新しい力では豪華にしたいから。と言いつつ本人はノリノリ。


【黒歌】

原作でも登場する小猫の姉。主の元から逃げ出したあと、リアスの元に身を寄せていると言う情報をつかんだ黒歌が、様子を見に行った際に追っ手に見つかって重症を負い、 逃げ延びたところに一誠がそれを見つけて家に連れて帰ったのが出会い。普段は黒猫に化けているため一誠の両親はただの猫だと思っているが、一誠と実奈の前では本来の姿になっている。

現在は上下ジャージでゲーマーニート状態になっており、小猫が幸せそうだったので彼女に関わらず一誠達との生活を満喫していたのだが……




とまぁこんな感じでした。これを最初に考えたときはまだディケイドアーマーも出てなかった頃だった気がします。ですが今回書き起こすに当たって少し設定を煮詰めてみました。まぁ書く予定は全くないんですけどねwこんなのも考えてたんだぁって言う感じでいてくだされば良いです。

それにしてもジオウは明日が最終回……気になりますなぁ……明日はリアタイで見れるので明日は早起きして見なければ!


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第十章 学園祭のライオンハート
ヒーローショー


前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「兵藤 一誠に敗北し、修学旅行から帰ってきた俺達はサイラオーグさんとのレーティングゲームに向けて動き始めていた」
ヴァーリ「と言うか最近俺の出番なくねぇか!?」
龍誠「修学旅行でも出番なかったしなぁ……」
匙「肝心なときに居なくて役に立たないやっちゃなぁ」
ヴァーリ「なんだとぉ!」
戦兎「まぁそんなわけでヴァーリはまだ役に立ちそうにない70話更新です」
ヴァーリ「おいこら!」


「やはり来たか!仮面ライダー!」

「当然だ。俺達は愛と平和を乱すものを許さない!」

「そうだ!俺達は愛と平和を守る仮面ライダー何だからな!」

 

修学旅行からしばらく経ったある日、戦兎達は冥界に来ていた。

 

学園祭も身近に迫り、忙しい毎日を過ごしていたのだが、そんな中サーゼクスから今度冥界でビルドのヒーローショーをやるのだが、それに出演できないかと言う依頼だ。まぁ学園祭も差し迫る中、そっちに集中したい気持ちもあるが、現在も禍の団(カオス・ブリゲード)で不安定な情勢が続く中、冥界に明るい娯楽が必要なのは言うまでもないので、戦兎達は冥界のショーステージの上で演技をしていた。

 

勿論ビルドは戦兎、クローズは龍誠で子供達の応援する声で空気が震えるほど。そして相対するのは祐斗が演じる悪の幹部役なのだが、祐斗の顔のよさと意外な演技力の高さに主婦層から人気が出てこれまた歓声。

 

と言うかリアスやグレモリー眷属の皆で、それぞれ色んな役があってそれぞれの層にファンが付いてるので、想像以上にと言うか超満員御礼だったりする。

 

そんな中二人は普段は代役で専用コスチュームな所を、今日は特別に本物のベルトで変身し、

 

「勝利の法則は!」

 

決まったぁ!と戦兎が音頭に合わせて言う観客(主に子供達)の声と共に戦兎と龍誠は祐斗の扮する役に向かって走り出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぁぁ……」

 

さてショーも終わって舞台裏では戦兎が大きな欠伸をしていた。現在ステージ上では大きなお友だちに大人気な小猫がクイズショーをやっている。そして龍誠は控え室にいったら他の女の子達(朱乃、アーシア、ゼノヴィアにイリナだ)に押し倒されて揉みくちゃにされてたのでほっておいた。どうも、最近女性陣の押しが強いと言うのは龍誠談。まぁ何時までも態度がはっきりしないのでガンガンいこうぜになりつつあるのだろう。

 

そう思いながらいると、

 

「嫌だぁあああ!ビルドに会うんだぁあああ!」

「ん?」

 

何やら子供の泣き声?に戦兎がこっそり顔を出すと、

 

「すいません。もう整理券の配布は終わってまして……」

 

恐らく会話から察するに、整理券の配布に間に合わなかったのだろう。

 

それを聞いて母親らしき女性が慰めるが、子供は嫌だと更に泣く。まぁあれくらいの子供に理解させるのは難しいか……と思うと同時にそれだけ会いたがってくれるのは素直に嬉しい。

 

仕方ないか、と戦兎は呟きラビットタンクに変身してから、

 

「どうしたんですか?」

「あ、桐生戦兎さん。実は彼が……」

 

そう言ってスタッフさんが説明するよりも早く、

 

「ビルドだ!」

 

と、男の子が駆け寄ってきた。

 

「俺に会いたかったのか?それともクローズの方かな?だとしたら悪いが今いなくてな」

「ううん!僕ビルドの方が好きだから!」

 

それは良いセンスしてるなと戦兎はスタッフになにか書くものはありますか?と聞くとマジックを渡され、

 

「この帽子に書いても良いかな?君、名前は?」

「リレンクス!」

 

その答えを聞いてから戦兎はラビットタンクを模した帽子に悪魔の言語で名前を書く。こう言うとき覚えておいてよかったと思いつつ、

 

「これでよし、良いかリレンクス。あんまりお母さんを困らせちゃダメだぞ?誰かが困ってるとき真っ先に前に出て俺が相手だーって言えるようなやつにならないとな」

 

そう言いながら帽子を被せてやると、リレンクスは大きく頷く。

 

そうしてその親子を見送ると、

 

「あの桐生さん。今後はこういったことは控えてください。全ての人に対応するのは無理なので特例を作ってしまうと」

「す、すいません……」

 

とまぁスタッフからお小言をいただいたが仕方ない。スタッフの言うことは正しいのだ。こう言うのはどこかで多少厳しくても区切らないといけない。

 

それはまぁ分かってはいるのだが……

 

そう思いつつ舞台裏に戻ろうとすると、

 

「戦兎って子供には甘いわよね」

「部長……」

 

こっそり聞いていたらしいリアスが立っていて、戦兎は少し驚きつつも声を返す。

 

「まぁ不味いのはわかってたんですけどね」

「でもあの子の夢は守ったわ。まぁ次からはだめだけど今回くらいはね」

 

と言ってくれて、少しだけ照れ臭くなった。ほんとうちの主は最高だね。

 

「ってそういえば龍誠と一緒じゃないのね?」

「俺達だって何時も一緒なわけじゃないですよ?まぁ単純に他の女子達と乳繰りあってたので置いてきただけですが」

 

は?とリアスの割りとガチトーンの反応に戦兎はニヤリとしながら控え室でしたかね、と言う。それに反応してリアスがズカズカと控え室に向かうと、

 

「あらリアス」

「お母様!?」

「え?」

 

と何故かリアスの母であるヴェネラナがいて、

 

「リアス?どう言うことかしら?全然進行がないのですが?」

「え、えぇと……」

 

しどろもどろで反応するリアスを見ながら、戦兎はゼノヴィアに、

 

「なぁ、どうしたんだ?」

「いや、未だに龍誠が部長を部長と呼んでいることを言っているんだろう」

 

成程ね……と戦兎は呟きながら、からかった手前放置もあれかと思い近づくと、

 

「それで部長のお母様はなにかご用で?」

「あ、そうでした。すっかり忘れるところでしたわ」

 

とヴェネラナは言うと少し表情を直して、

 

「リアス。今度駒王学園に転入生を入れて欲しいのですが」

「転入ですか?」

 

ヴェネラナが言いに来ると言うことは、悪魔関係だろう。そう思いリアスが聞くと、

 

「後日正式に話は来ると思いますが……一応私からも話しておきます。相手は……」

 

そうヴェネラナは切り出してから少し息を吸って、

 

「レイヴェル・フェニックスさんです」

『……えぇ!?』




前回のジオウ×ハイスクールD×Dネタはいかがでしたでしょうか?続きが気になるなどのコメントをいただいたりして嬉しい限りです。あ、そう言えば前回書き忘れてたのですがあの作品ではオーマフォームも出ます。詳しく書くと映画のネタバレも入りそうなので書かなかったんですけどねw

そしてこちらではジオウも最終回。いやぁ、良い最終回でしたね。成程多分ここがこうなって……とか色々考察ができそうな最終回。まぁ白倉プロデューサー曰く、まだなぞが三つくらい残ってるらしいですね。まぁ後日談とかで回収すれば良いやとか言ってますが(それはそれでどうなんだ)まぁ普通に良いお話でした。そしてゲイツのVシネお楽しみですね。ゼロワンは言わずもがな。

こっちも頑張って更新しよう。


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ある意味最強

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「ヒーローショーを終えまたもや学園生活に戻る俺たち」
龍誠「だがサイラオーグさんとのレーティングゲームに学園祭もと忙しい毎日が過ぎていく」
匙「いやお前らまだ良いぜ?俺だって学園祭の準備を生徒会としてしないといけないしレーティングゲームもあるしでさ~」
戦兎「大変だなぁお前も……とまあそんな感じで71話スタートだ!」


『……』

 

現在昼休み。戦兎・龍誠・リアスの三人は一年生のクラスを覗き見していた。

 

その視線の先には、

 

「フェニックスさん教科書持ってる?」

「フェニックスって珍しい名字だよね?」

「ギャー君に続いて外国からの転校生なんてこのクラスでよかったわ~」

 

と質問攻めにする女子生徒と、

 

「あの……その……」

 

こんな感じでゴニョゴニョ話すレイヴェルがいた。すると向こうはこちらに気づき、

 

「し、失礼します!」

 

小走りでこっちにやって来る。

 

「おいおい大丈夫なのか?」

「て、転校が初めてですのでどう話せば良いのか……」

 

龍誠が心配して聞くと、レイヴェルからはそんな返事が帰ってきた。

 

「でも話したくない訳じゃないんでしょう?」

「そんなそれはもう!貴族以外の人との交流を通して私も成長したいと考えています!」

 

リアスの問いかけにレイヴェルは答える。その辺はライザーとは違う感じだ。

 

とは言え今のままでは確実に会話が儘ならない。そう戦兎は考えて、

 

「塔城かギャスパー辺りにでも頼むか……」

「呼びましたか?」

「っ!」

 

そんな戦兎の呟きに後ろから音もなく立っていた小猫が返事をし、戦兎は驚いて変な声をだしそうになった。まぁそれは何とか堪えて、

 

「いや、レイヴェルが会話の掴みに悩んでるからさ。お前からもうまく取り成してやってくれないか?」

「俺からも頼むよ」

 

そう戦兎と龍誠の二人からの頼みに小猫は、

 

「まぁ……良いですけど」

 

と了承。だがレイヴェルを見て、

 

「ヘタレ焼き鳥」

「なん……ですって?」

 

と冷たい言葉。それにレイヴェルのこめかみがピクンと躍動する。

 

「ヘタレ」

「ふぇ、フェニックス家の息女である私に何て口を……」

 

ワナワナ震えて怒りのオーラを発するレイヴェルに、フンと小猫は鼻を鳴らすと、

 

「そんな物言いだからいざってときにヘタれるんでしょ?もっと覚悟持ってきたのかと思えば先輩達の手を煩わせて。しかも戦兎先輩から名前呼び……」

「ん?」

 

しかもの後から小さすぎて全く聞こえなかったため戦兎が首をかしげる中、

 

「こ、この猫又は……」

「焼き鳥」

 

と二人の背中から巨大な猫と火の鳥がバチバチと火花を散らす絵が見える。

 

「大丈夫……かな?」

「な、なるようになるさ」

 

アハハと力なく笑う戦兎と龍誠。因みにその後レイヴェルと小猫は喧嘩しながらもギャスパーの尽力もあってうまくやってるらしい。あとクラスでも人気者になったとか。

 

これぞ雨降って地固まるというやつだろう。まぁギャスパーの胃がキリキリ言ってるらしいのだが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで開発の方はどうなの?」

「まぁボチボチって感じだな。取り敢えず設計図は完成したし形にはレーティングゲーム本番までにはできるさ。そっちは?新技出来そうなんだろ?」

 

こっちも同じ感じだよ。と戦兎と祐斗は話す。現在戦兎達はグレモリー領にある高級ホテルの一室にいた。

 

何故いるのかというと、今日はレーティングゲーム前にサイラオーグチームの面々とこちらの面々による記者会見が行われることに。

 

内容はまぁゲームへの意気込みがメインで両キングが答えるだろうから眷属である戦兎達は実際置物状態になるだろうとのこと。

 

まぁ精々写真を撮るとき眷属個人の写真を撮ることもあるそうだが、

 

「しかし……」

 

と、アーシアやロスヴァイセがあーでもないこーでもないと化粧に勤しむ中、薄化粧で済ませたゼノヴィアはデュランダルを握っている。とは言えこれは見た目を似せたレプリカ。写真を撮る際にデュランダルをもった状態を……というのが前もって来ていたのだが、なんとゼノヴィア。今デュランダルが手元にないらしい。

 

何でもちょっと野暮用で……とか言って教えてくれない。本人曰く、本番でのお楽しみだそう。

 

そんな中、

 

「さ、そろそろ時間よ。行きましょうか」

『はい!』

 

リアスの指示で全員が立ち上がり、会場に向かう。

 

会場まではすぐだが、その道中、

 

「そう言えば匙達もレーティングゲーム同じ日何ですね」

「えぇ、相手はシーグヴァイラが率いるチームね。向こうも戦術家タイプだから玄人好みのゲームになりそうだし後で見なくちゃ」

 

と戦兎の問いにリアスは答えると、会場のドアが見えてきた。

 

「それじゃあなた達。気を引き締めていきましょう」

 

リアスはそう言って会場のドアを開ける。すると一斉にフラッシュが炊かれ、ギャスパーがヒィッと小さく悲鳴をあげた。確かにこれは目に優しくないな。

 

と思いつつも戦兎達は席の座る。既にサイラオーグ達は座っている。既にサイラオーグは臨戦態勢といった感じだ。もう戦いは始まっているのかもしれない。

 

「それではまず両キングによるゲームへの意気込みをお聞かせください。まずはサイラオーグ様から」

「はい」

 

とサイラオーグとリアスの順に意気込みを話していく。すると、

 

「それでは万丈龍誠さんにお聞きします」

「えひゃい!」

『……』

 

基本的にキングにしか話がいかないとは言っても例外はある。のだが完全に龍誠は記者会見なんかしたことないので緊張して固くなってるところに実際不意打ち状態に近く、変な声で返事をした。

 

「え、えぇとそれでは万丈 龍誠さん。あなたが変身されるクローズですが桐生 戦兎さんのビルドと違い変化がありません。これはいざというときのかくし球があるということでしょうか?」

「あ、あいや、その……おい戦兎、どう答えれば良いんだよ!」

「ば、バカ!マイクの電源くらい切れ!」

 

あ……と戦兎と龍誠が呟いてももう遅い。ガッツリマイクに拾われて会場中に響いた二人の声に、サイラオーグ眷属のライがうつ向いてプルプル震えながら笑えるのを堪えている。

 

「お、おい戦兎!会場に響いちまったぞ!」

「わかったからまずはマイクの電源を切れ!」

「どうやって切るんだよ!」

「そんなもんここにスイッチがあるでしょうが!」

 

因みにこの会話もガッツリ拾われているのだこの際どうでもよいとばかりに二人は言い合いまでおっ始じめた。

 

「大体お前が俺に強化アイテム作っておいてくれればこんなことにならなかったじゃねぇか!」

「アホか!取り敢えずまぁ試合でのお楽しみに~位言っておきなさいよ!」

「記者会見で嘘を言うと後で炎上するだろ!」

「謝罪会見じゃあるまいし炎上するか!寧ろ匂わせて相手揺さぶっとけ!」

 

ムギギギと顔を突き合わせて喧嘩をする二人に、会場に張り付けていたさっきまでの緊張感は霧散していた。そして、

 

「貴方達いい加減にしなさい!」

『すいませんでしたぁ!』

 

リアスがぶちギレて怒声を上げると戦兎と龍誠は殆ど条件反射で土下座した。

 

その後記者会見そっちのけで説教が始まり、リアスが正気に戻った時には既に手遅れ、更に次の日には……

 

「主は強かった。グレモリーチームで一番恐ろしいのはリアス・グレモリー。仮面ライダー二人も頭上がらず……か」

 

と言う冥界の新聞の見出しを読んで祐斗はアハハと乾いた笑いを浮かべている。

 

「あらあら。私可愛く撮れてますわね」

「私もだ」

 

そう言って朱乃とゼノヴィアは自画自賛。そして、

 

「部長!言っていたお菓子買ってきました!」

「部長!お茶いれました!」

「えぇ」

「あ!部長!なにか本持ってきますか!?」

「部長!肩お揉みします!」

「お願いするわ」

 

今回の新聞記事ですっかりご立腹のリアスとご機嫌を取る戦兎と龍誠がいたとかなんとか……

 

因みに、

 

「俺の発言が取り上げられてないな……」

「まああんだけ面白いことやったらそっちが主役にイッデ!」

「お前は少し黙ってろ」

 

フウに拳骨を落とされ、ライがいててと涙目になる中、サイラオーグは遠くを見つめ、

 

「頑張って返答の原稿考えて覚えたのだがな」

「……ある意味先手は取られたって感じか?」

「ある意味ではな。サイラオーグ様は繊細な方だし」

 

と、ライに答えながらフウはため息を吐くのだった。




ゲーム実況をやってる友人がオーマジオウのベルトの予約2月分のをしたらしい……買った暁には俺も遊ばせてもらおうと今から画策中です。


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想い

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「サイラオーグさんとのレーティングゲームを前に記者会見に臨むが……」
龍誠「いやぁ、暫く部長の機嫌が悪くて大変だったぜ」
匙「寧ろそれで済むだけで御の字じゃねぇか。うちだったらヤベェ何てもんじゃなかったぞ……」
龍誠「ソーナ会長厳しいらしいしなぁ~」
戦兎「とまあそんな感じでやっていく72話スタートです」


「ふぅ……」

 

現在夜。龍誠は自宅の地下にある巨大風呂に備え付けてあるサウナで汗を流していた。

 

サイラオーグとのレーティングゲームもあるし学園祭の準備も佳境だ。

 

今回のオカルト研究部としての出し物は、占いとかお祓いを組み合わせたカフェ的なものをということになっている。

 

因みに何気に準備では戦兎が一番活躍してたりする。ニンニンコミックに変身すると、分身して力仕事やコミックフルボトルの力でポスターや飾り付けの絵を描いている。あれ何気に肩揉み機能とか着いてるらしい。

 

そう言う遊び的な機能があるのは戦兎故だろう。それにしても、

 

(大丈夫なのか……)

 

龍誠は拳を握る。記者会見の時も言われたが、自分にはクローズしかない。ビルドみたいな多彩さはなく、強化と言ったら昇格(プロモーション)しかない。

 

あのあと真面目に頼んだのだが戦兎曰く、クローズはある意味あれで完成しているらしい。

 

ビルドは多様性による場面に合わせた戦闘が目的の装備。だから様々なフォームチェンジや強化アイテムによる拡張が必要だが、クローズは自分専用にドラゴンフルボトルの力を加えた近接特化。龍誠の実力が如実に反映される都合上、実を言うと大きな強化アイテムと言うものが必要ないらしい。

 

単純にハザードレベルを上げるか身体能力を鍛えた方がクローズは速いとのこと……

 

まぁあとビルドの強化アイテムは元々昇格(プロモーション)とライダーシステムを組み合わせるのが目的だったのに対して、龍誠は元々変身してても昇格(プロモーション)出来るというのも理由らしい。つまり今のままでは強化アイテムの方針が決まらないらしいのだ。

 

「そう考えると地道に筋トレの方が良いよなぁ」

 

そう思ったらじっとして居られないと龍誠はシャドーボクシング。すると、

 

「何してるの貴方は……」

「っ!」

 

サウナに入ってきたのはリアスである。突然の彼女の登場に龍誠は腰にタオルを巻いてあって良かったと思いつつ、

 

「す、すいませんすぐ出ます!」

 

先に入ってたのは龍誠だ。だがこういう場合そんな論戦をする余裕はないので、龍誠は慌てて出ようとするが、

 

「良いじゃない。少し話しましょ」

 

そう言ってリアスは龍誠の腕を取ると、そのまま座らせて自分は隣に座った。

 

ゴクリと龍誠は唾を飲む。サウナの中のリアスは既にシットリと汗ばみ始めているようだ。だからか妙に色っぽい。

 

「緊張してる?」

「え、えぇまあ……敵はサイラオーグさんだけじゃないですしね。戦兎が強化アイテム作ってるとはいえ、あいつがそれを披露する前にやられちまったら元も子もないですし、俺も情けないこと出来ませんから」

 

そうね……と言いつつリアスは体を寄せてくる。

 

「大丈夫よ。貴方も戦兎も頼りにしてるわ」

「は、はい」

 

だが龍誠はそれどころじゃない。リアスの柔肌が……少し濡れた体が自分に密着している。

 

クラクラするほど興奮して鼻血が出そうだ。しかしリアスは更に密着してきて、

 

「こうやって触ると龍誠って鍛え込んだ良い体ね」

「そ、そっすか……」

 

心臓がドキドキと喧しく鼓動する。そんなリアスは龍誠の胸に耳を当て、

 

「ドキドキしてる……」

「そ、そりゃあこれだけくっつかれてたら」

 

顔を逸らしながら龍誠がそう言うとリアスは、

 

「ねぇ龍誠、私達ってどういう関係なのかしらね?」

「そ、そりゃあ主と眷属……」

 

と言う距離じゃない。と言うかリアスの気持ちだって分かってるつもりだ。

 

だからリアスの質問の意味もその期待している答えも……

 

バカなりに考えて来たつもりだ。ちゃんと戦兎に頼らず、自分で感じた事を自分で解釈して考えて……

 

(みましたけど未だに答え出てないんだよなぁ!)

 

タパーと涙を流しながら龍誠は思う。だって皆良い子だし可愛いし……でもじゃあ皆一緒にってそれはそれでどうよと思う。

 

「そう、ね」

 

明らかにリアスは悲しそうな顔になった。これ以上引き伸ばせばリアスを悲しませてしまう。龍誠はそう感じた。

 

すると、

 

「え?」

 

ギュッと龍誠はリアスの手を取り、顔を覗き込む。

 

「だって皆大事なんです。部長の想いもわかってるつもりです。でも皆の想いだって分かってる。俺バカだけど皆を傷つけたくないって思いはあるんです。だからって悪魔は重婚OKだからじゃあ皆とっていうのはどうかと思って……」

「貴方そんなこと気にしてたの?」

 

へ?と龍誠がポカンとしながら聞き返すと、リアスはクスクス笑って、

 

「あのねぇ、私も皆もお互い貴方への想いは分かってる。その上で貴方を想ってる。皆覚悟してる。だって皆から好かれる貴方が好きになったんだもの。だから貴方が良いなら別に一緒ってなっても良いのよ?でも……」

 

リアスは、ソッと龍誠の耳元に顔を寄せて囁く。

 

「その中でも一番にはなるけどね」

「っ!」

 

ゾクッと背筋に興奮が走る。気づけば龍誠はリアスを抱き締め、体が離れないようにしていた。

 

「ねぇ龍誠。私の事好き?」

「そ、それは勿論」

 

私もよ……と耳元で囁かれ、龍誠の中で何かがガラガラ崩れていくのを感じる。そしてリアスはトドメとばかりに、

 

「リアスって呼んで、そしたら……私を好きにして良いから」

「……り、リアス!」

 

龍誠の中で完全に何かが壊れた。

 

まぁその後何があったのかは秘密として、

 

「サウナでのぼせるとかお前バカだろ」

「うー」

 

パタパタと団扇で戦兎に扇がれる龍誠の姿と、

 

「あらリアス。随分肌の調子が良いんじゃない?」

「え、えぇちょっとね」

 

と妙にツヤツヤしたリアスが居たらしいのだが、何があったのかは謎である。謎と言ったら謎である。




二人の間で何があったんでしょうね?(すっとぼけ)

と言うわけで最近ちょっと筆がノってます。次回からはレーティングゲーム戦なのでガンガン書いていきたいですね。


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開幕

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「遂にサイラオーグさんとのレーティングゲームを控える中、一線を越える龍誠と部長……っておい!お前なにしてんだよ!」
龍誠「いやぁ……あっはっは!色々あって……」
匙「俺なんて未だに会長と……」
龍誠「で、でもさ!俺は気づくと終わってたぜ?」
匙「文章的にはな?詳しく書くと色々アウトだからな!?」
戦兎「えぇ~。そんな感じ匙が荒れてる73話スタートです。」


「くか~……すぴ~」

「よく寝てるなぁ~」

 

サイラオーグとのレーティングゲーム当日。試合会場がある空中都市・アグレアスに向けて動くゴンドラの中で戦兎は寝ていた。時間にして凡そ20~30分程だが、ここ2・3日寝ずに強化アイテムの製作に励み、どうにか今朝方専用の武器まで完成はしたらしいのだが、実際試してないのでちゃんと動くかは分からないらしいが……

 

まぁ戦兎曰く、ぶっつけでもなんとかなるだろうとの事だが。

 

「それとだ。お前らに言っておくことがある」

 

そんな中アザゼルは口を開くと、

 

「今回のレーティングゲームは政治的な意味合いが絡んでる」

「え?」

 

その発言に龍誠が首を傾げると、

 

「元々今回の試合会場も揉めに揉めてな。最初は現魔王派がグレモリー領か魔王領での開催に決めていたのを家柄を重んじる派閥がバアル領での開催を主張してな。結構な泥仕合だったみたいだ。ま、結局アガレス家が仲裁に入ってこのアガレス領が試合会場になっったってわけだ」

「なんだってそんなことに……」

 

龍誠は意味が分からず頭から湯気を出しそうになっていると、

 

「リアスはサーゼクス……いや、魔王・ルシファーの妹だからな。対してサイラオーグは悪魔社会における家柄では一位のバアル。しかもリアスはバアルの家の魔力である滅びを受け継ぎサイラオーグにはない。色んな意味で対照的だ。だからこそ上役にとって現魔王ルシファー対大王バアルの代理戦争と見る奴もいる。表向きは話題の仮面ライダーを従えるリアスと、若手最強にして新たな仮面ライダーであるサイラオーグの戦いと謳ってはいるがな」

 

やれやれと肩を竦め、アザゼルは言葉を続ける。

 

「だがなお前ら。別になにか気負う事がない。お前らはお前らしく全力をぶつけてこい、良いな?」

『はい!』

 

皆が頷き、アザゼルは満足そうに笑ってから、

 

「おら戦兎!起きろ!」

「起きてるっつうの……」

 

途中から起きて話は聞いていたらしい戦兎は頭を掻きながら体を伸ばす。

 

見てみればもう、降り口が見えてきていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっらい豪華だなぁ~」

 

そう言って龍誠が上を見上げる。

 

その眼前にあるのは今日試合があるアグレアスドーム。豪華絢爛であり巨大なそれは既に観客がチケットを求めて並んでいる真っ最中。それを横目に控え室にもなっている、隣の高級ホテルに戦兎達は入ると、

 

「これはこれは紅髪のグレモリー殿に堕天使の総督殿ではないか」

「ほお?こいつは冥府に住まう神・ハーデス殿じゃないか。死神を沢山連れて上まで出てきたのか?悪魔と堕天使が嫌いなあんたが?」

 

最近話題らしいからの、と言いながら頭から足先まで被うローブを被りながらも、隙間から見える姿から骸骨と思われる男は、

 

「それじゃあの。今日は別に魂を狩りに来たわけではない。精々死なぬ程度にな」

 

そう言い残し、どこかへ消えていくハーデスを見送り、皆は大きく息を吐く。なんと言うか生きた心地がしなかった。魂を鷲掴みにされるような感覚だ。

 

「お前ら絶対ハーデスとだけは敵対すんじゃねぇぞ、あいつ自身もヤベェがあいつを囲む死神どもも不気味な連中だからな」

 

言われずとも……そう皆が思っていると、

 

『あ……』

 

丁度やって来た人物に皆が声を漏らす。それは見間違う筈もない。オーディンだ。向こうもヤベ!見たいな顔をして走り出す。だが、

 

「ここであったが百年目!待てくそじじいいいいいいいい!」

 

と置いてかれた恨みは深いのか、ロスヴァイセがオーディンを追い駆け出した。

 

因みにその後、龍誠と祐斗の二人がかりで止めたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「レディースエーンドジェントルメーン!観客の皆々様長らくお待たせしました!遂に始まります!」

 

聞こえてくる放送に、リアスは静かに息を呑んでいた。そこに、

 

「リアス」

『え?』

 

入場口で待機していたリアスに掛けられた声に、皆は振り返るとそこにいたのは、

 

「ライザーとレイヴェルじゃない。レイヴェルが来るのは知ってたけど貴方も来たのね」

「当たり前だ。この一戦はプロも注目してる。どちらも今プロに行っても十分活躍できるチームだからな。これだけ好カードを見ないほどバカじゃない。しかし随分固い表情じゃないかリアス」

 

ライザーの指摘にリアスは少し表情を曇らせると、

 

「そうね、私はソーナほどゲーム運びは上手くないしサイラオーグ程のパワーはない。でも眷属には恵まれた。だからこそきちんと導けるかが不安になるわ」

「まぁ……確かにその二人は別格だ。しかしリアス、戦術やパワーは経験や俺の嫌いな特訓で幾らでも補える。だが良い眷属と出会うこと……言うなれば巡り合わせの良さはどうにもならない。仮面ライダーだけじゃない。他の誰もが探したって見つけられない唯一無二の才能を持ってる。それを集めたのはお前だ。それはソーナ・シトリーやサイラオーグに勝ることはあっても劣ることはない才能だ。自信をもて」

 

ライザーはそう言い残すと背中を向け、

 

「おっと万丈 龍誠」

「ん?」

 

突然声を掛けられた龍誠はライザーを見ると、

 

「その……あれだ。レイヴェルは少し我が強いと言うか我が儘な所があるが一途な女だ。泣かせたら燃やすぞ」

「余計なお世話ですわ!」

 

ペシン!とレイヴェルからライザーは叩かれるが気にせず、

 

「それとお前には大きな借りがあるからな。早くプロの世界に来い。プロの洗礼ってやつを味わわせてやるよ」

「あぁ、楽しみにしてる」

 

そう言って二人は握手を交わすと、ライザーは今度こそレイヴェルと共に観客席の方に向かう。

 

「それでは入場してもらいましょう!まずはリアス・グレモリー様が率いるグレモリー眷属の皆様です!」

「よし貴方達!行くわよ!」

 

リアスが先陣を切って前にいくと皆が進む。入場口から入るとそこには……

 

『オォオオオオオオオオオオ!』

『っ!』

 

凄まじいまでの歓声だった。空気がビリビリ震えるほどの歓声に皆は不思議な高揚感を感じる。思えばここまでの観客に見られているのを感じながらのゲームは始めてだ。

 

「す、凄い歓声ですぅ!」

 

と震えながら言うのはギャスパー。だが逃げなくなっただけ大した進歩だ。

 

「続いて登場するのはサイラオーグ・バアル様率いるバアル眷属です!」

『オォオオオオオオオオオオ!』

 

その中、反対側の入り口から出てくるのはサイラオーグ率いる、バアル眷属。そして両者はそれぞれ螺旋階段を昇り、浮いている岩石の上に出る。

 

そこには台と椅子が用意されていた。

 

「これは……」

 

とリアスは台を見ている。見てみればここからサイラオーグ側が見えるのだが、作りは同じなようだ。

 

「それでは皆さん!自己紹介が遅れましたが今日の試合の実況は私元72柱ガミジン家のナウド・ガミジンがお送りいたします。更に今日の審判はリュディガー・ローゼンクロイツ氏が担当します。どうぞよろしくお願いします」

「リュディガー・ローゼンクロイツ……レーティングゲームでは現在7位の元人間の転生悪魔の方ですね」

 

小猫の呟きに戦兎は成程と呟く。すると、

 

「そして今夜は特別ゲストの方がいらっしゃいます。まずはこの方!堕天使の総督!アザゼル様です!」

『はいぃ!?』

 

思わぬ顔見知りの紹介に戦兎達がモニターを見ると、どうもどうもと笑みを浮かべるアザゼル。すると続いて、

 

「そしてもう一人はなんとこの方!現レーティングゲームチャンピオン!ディハウザー・べリアル様です!」

 

歓声が上がる。名前は知っていた。と言うか知らないわけがない。現在のチャンピオン。レーティングゲームのタイトル総ナメを目標とするリアスにとってはいずれ越えなければならない壁だ。

 

そうしている間に今回のフェニックスの涙はそれぞれの陣営に一つずつ配られることが説明され、

 

「それでは今回のルールを説明します。まず今回は広いステージを走り回るタイプではなく、短期試合(ブリッツ)を目的としております。そして両陣営に設置されている台にはダイス。そう!今回の試合はダイス・フィギュアです!」

「ダイス・フィギュアか……レーティングゲームではメジャーなルールだね」

 

祐斗の言葉にそうなのか?と龍誠が聞くと祐斗は頷く。

 

「とは言え分からない方もいるでしょうし、最初にルール説明をしておきましょう。まずは両陣営のキングが試合毎にダイスを振ります。ダイスはそれぞれ1~6までの数字があるのですが、出た目の合計がその試合の数字。その数字の数だけステージに選手が出場出来ます。数字の数だけと言ってもその数字は出場人数ではありません。それは駒の価値なのです。この試合ではそれぞれの駒に価値があり、その価値の範囲で場に出る人を選ばなくてはなりなせん」

 

そう言うとモニターに悪魔の駒(イーヴィル・ピース)が表示され、その横に数字が書かれている。

 

ポーンの駒1個を1とした場合、ナイトとビジョップが3、ルークが5でクイーンが9らしい。因みにポーンの駒複数で転生した奴はその駒の数が価値になるとのこと。つまり戦兎や龍誠はダイスの合計数が4以上で出ることが出来ると言うわけだ。因みにこの場合変異の駒(ミューテーションピース)悪魔の駒(イーヴィル・ピース)と同じ扱い。

 

そうして何度もダイスを振って、最終的に全員倒すかキングを倒すまでやると言うのがこのゲームの全体的な流れ。因みに残りの眷属によっては数が合わない事もある。例えば2が出るとグレモリー眷属には2以下の眷属がいないため、その時は振り直しらしい。

 

逆に大きい数字で8とか出たら戦兎と龍誠を同時に出したり、他の眷属と組み合わせて出すことも出来る。ただし同じやつが連続で出るのはダメとのこと。

 

そう考えると結構出すやつを選びながら出す感じになりそうだ。あんまりケチってもあれだし景気よく出すと次の試合で出せるやつがいなくなる。

 

それに……

 

「キングの駒の価値が書いてないですね」

「キングは事前に委員会が決定してる筈ですわ」

 

そう戦兎に答えたのは朱乃で、

 

「キングの実力や実績、眷属の評価等を加味して決められるはずです」

「と言うわけで皆さん!キングはじゃあ駒何個分ってなりますよね?そこは事前に決めております。と言うわけでどうぞ!」

 

と実況のナウド・ガミジンが言うと、リアスとサイラオーグの顔写真がモニターに写され、そこに書いてあったのは、

 

「部長が8、サイラオーグさんが12か……」

 

龍誠はそう呟きながらリアスを見る。だがリアスは案外冷静で、

 

「成程、つまりサイラオーグはダイスが6と6合計12以外では出ないと言うことね……となればサイラオーグは後半か」

「でも序盤に出る可能性もありますよ?」

 

戦兎の言葉に、リアスは首を横に振って、

 

「それはないわね。恐らく向こうの最強はサイラオーグだけど、ワンマンチームは結果的に評価が下がる。眷属も使いこなせないキングはどれだけ強くて認められないのよ」

「成程、じゃあ敢えてナイトとビジョップを全員投入してって言う可能性もあるんですね」

 

そうよとリアスは答えつついると、

 

「それではこれより、リアス・グレモリーチームとサイラオーグ・バアルチームのレーティングゲームを開始します!」

 

ナウド・ガミジンはそう宣言し、モニターにそれぞれの台を映す。それから、

 

「両キングはダイスを手に取ってください」

 

と言われ、リアスとサイラオーグはそれぞれ台の前に立ってダイスを手に取ると、

 

『シュート!』

 

審判の合図と共にリアスとサイラオーグはダイスを振る。その数字は、

 

「1と2……合計3か」

「そうなると出れるのは私か木場かアーシアかギャスパーだが……」

 

五分の作戦タイムを告げられ、観客からも相手からも見えなくされてから皆で話す。アーシアは戦闘に関しては論外だしギャスパーはサポートタイプ。となれば祐斗がゼノヴィアだが……

 

「僕がいきます」

 

そう祐斗が言うと、皆は適任だなと思う。ゼノヴィアはノリと勢いに任せるところがある。つまりこいつにスタミナ配分と言う言葉は存在しない。

 

その点祐斗は融通が効く。それにはリアスも賛成で、

 

「それじゃあ一戦目は祐斗に頼むわね」

「任せてください」

 

そう言って祐斗は立ち上がると、転移用の魔方陣に入り、

 

「初戦から負けんなよ祐斗」

「勿論」

 

祐斗は龍誠に笑みを返して転移する。すると出たのは、広大な緑の平原。

 

そしてサイラオーグ側から転移してきたのは、馬に乗った甲冑を身に纏う男。前回のゼファードルとのレーティングゲームでも見た姿だ。確か名前は……

 

「ベルーガ・フールカス。確か馬を操る家の悪魔ね」

 

そうそうベルーガ・フールカスだと戦兎が頷くと今度はアザゼルが、

 

「乗っている馬は青ざめた馬(ベイル・ホース)か。地獄の最下層・コキュートスに生息する狂暴な馬。気に入らなければ主も蹴り殺すらしい」

 

意外とノリノリで実況していた。教師と良い案外堕天使の総督より向いてるのが多い人である。

 

何て言う間に試合は開始。すると同時に二人が消えた。

 

正確には消えたのではなく眼にも止まらぬ早さで動いているため追いきれないだけなのだが。

 

「私とアルトブラウについてくるか!」

「そっちこそ凄まじいコンビネーションですね!」

 

時折火花と金属がぶつかる音がしていたが、一旦二人は距離を取り息を整える。

 

祐斗の聖魔剣は聖なる属性も有している。これは悪魔が切られればそれだけで大ダメージだ。だからこそ回避が絶対条件だが、祐斗のあの速さを相手に一撃も当たらないと言うのはそれだけでも厳しい条件である。

 

だがそれでも未だに決着がつかないと言うのは、相手の実力も相当だと言うことだ。

 

何せ祐斗が動いた、敵は倒れた。みたいなことを普通にやるやつだし。

 

「全く、初戦からこれとは。覚悟はしてたけどやはり厄介ですね」

「こちらもだ。貴公の速さもその剣の腕も覚悟していたが予想以上だ」

 

そう言ってベルーガはランスを更に強く握って前傾姿勢を取る。

 

「だが私とアルトブラウに対応できない範囲ではない」

「確かにそうですね。これ以上はイタズラにスタミナを使う羽目になってしまう」

 

祐斗はそう言うと構えを緩め、意識を集中させた。そして、

 

禁手化(バランスブレイク)

「なにっ!?」

 

突如祐斗の周りに甲冑が形成され、彼に従うように横一列に並ぶ。そしてそれぞれが武器の剣を構えた。

 

聖輝の騎士団(ブレード・ナイトマス)。僕は前に聖剣使いの因子を取り込みましてね。その時に実は聖剣創造(ブレード・ブラック・スミス)……魔剣ではなく聖剣を作り出す神器(セイクリットギア)にも目覚めていたんです。それで今回のゲームのために特訓しましてね。お陰で目覚めました」

「いったい何をしたの言うのだ……」

 

禁手(バランスブレイカー)に目覚める特訓等……とベルーガが言うと、

 

「先日京都に行った際に絶望的な力というのを味合わされましてね。それが大きなきっかけです。それ以降は淀みみたいなものを体に感じててそれを形にしました」

 

祐斗はそう言いながら聖剣を作り出して構える。今の状態だと聖剣しか作れないらしい。代わりに甲冑の騎士達には祐斗の速度を付加できる。

 

本人曰く、最終的には聖魔剣を持たせたり、速度だけじゃなくて技量も付加で出来れば良いと言っているが、速度だけでもこれだけいれば十分驚異だ。

 

「いきます!」

「っ!」

 

祐斗はそう言って走り出すと、それに騎士団も続く。

 

ベルーガもそれを迎撃するべく構えるが、同時に襲い掛かる騎士団に防戦一方。となった瞬間!

 

「隙ありです」

「しまっ!」

 

ザン!っと祐斗の聖剣はベルーガの鎧を易々と切り裂いた。そして、

 

「見事……」

 

と、言い残しベルーガはリタイアの光に包まれて消える。

 

「サイラオーグ・バアル選手のナイト一名リタイアです!」

 

こうして、レーティングゲーム第一戦は祐斗の勝利となったのだった。




先日ゲーム実況やってる友達がグランドジオウの変身音が頭にこびりついたと言うので、じゃあ言ってみてと言ったら、

「ギュイイイン!グォオオオン!アドベント!……」
「あ、そこからやるの!?」

となりました。てっきり俺はクウガアギト……の辺りからかと思ったんですが……


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第2戦

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「えぇと前回は……ねっむ」
龍誠「いやテンション低いな!」
戦兎「もう寝ずに強化アイテム作ってたからなぁ……寝不足も良いところなんだよ」
龍誠「お前こういうときくらいシャキッとしろよシャキッと!」
戦兎「お前みたいな筋肉バカじゃないんだよ」
龍誠「誰がバカだ!筋肉をつけろ筋肉……ってもうついてるか」
戦兎「そんな感じでやっていく74話スタート」
匙「わりぃ!遅れた!」
ヴァーリ「あれ?もしかして終わった?」
戦兎&龍誠『うん』
匙「しまったぁ!俺たちここでしかしばらく出番無いのに!」
ヴァーリ「ちくしょおおおお!」


『シュート!』

 

祐斗とベルーガの試合は祐斗の勝ちで幕を閉じたが、レーティングゲームはまだ終わりじゃない。と言うわけでリアスとサイラオーグがダイスを振ると、

 

「今度は10か。一気にでかい数字が出たな」

「でも10なら祐斗以外皆出れるな」

 

戦兎と龍誠が言うとリアスは、

 

「そうね、ここは堅実にいきましょう。次は小猫とロスヴァイセよ」

『はい!』

 

そして彼女の指示で小猫とロスヴァイセが立ち上がる。

 

「折角木場が景気よく勝ったんだ。頑張ってこいよ」

「はい」

 

そう軽く戦兎と小猫は言葉を交わしてから、転移の魔方陣に乗っていき、

 

「アレが今度のステージか」

 

戦兎の視線の先にあるモニターに写し出されるのは古い神殿のような場所だ。そこに降り立った小猫とロスヴァイセの前に、サイラオーグの眷属も降り立つ。

 

一人はライトアーマーを着た金髪の優男。そしてもう一人は巨人だ。

 

「金髪の方はナイトのリーバン・クロセル。断絶したクロセル家の末裔ね。もう一人はルークのガンドマ・バラム。元々力自慢の家の悪魔よ」

 

そうリアスが説明している中、試合は開始。小猫は最初から猫耳と尻尾を出した仙術モードレベル2(命名小猫)となる。仙術により闘気を全身に纏わすことで身体能力を大きく底上げする技である。

 

「行きます!」

 

と言って小猫がガンドマとの距離を一気に詰めてパンチ。だがその破壊力は巨人であるガンドマが大きく体勢を崩すほどだ。その間に、

 

「援護を!」

「させるか!」

 

ロスヴァイセが魔方陣を出して援護しようとしたところに、突如重力が掛かる。

 

「貴方ですか」

「俺を忘れてもらっちゃ困るな」

 

そう言ったリーバンは剣を抜くとロスヴァイセに襲い掛かる。だが、

 

「この!」

 

強烈な閃光が放たれ、辺りを光が包んだ。

 

「貴方は人間と悪魔の混血。そしてこの重力は神器(セイクリットギア)の能力なのは知られてますからね。視界に写した場所の重力を増加させると言うね」

「だがそれくらいの対処はあるぜ!」

 

そう言ったリーバンは鏡を出現させて閃光を防ぐ。だが、

 

「なっ!?」

 

リーバンは驚いて目を見開いた。何せ目の前にいたのはさっきまではロスヴァイセだったはずなのに、ガンドマが何故かいたのだ。

 

「自分と相手を入れ換える魔法か!」

「そう言うことです!」

 

とロスヴァイセは特大の魔方陣を出現し、

 

「小猫さん!大丈夫ですか?」

「はい、相手のルークの氣を乱してありますので魔術的にも物理的にも防御力はありません!」

 

了解です!とロスヴァイセは特大の魔方陣に魔力を流し込み、

 

「フルバースト!」

 

爆発と振動がモニター越しにも感じるほどで、様々な属性の魔術がリーバンとガンドマに降り注ぐ。そしてそれが晴れると、

 

「ん?」

 

戦兎が疑問符を浮かべた。何せ地面に倒れているのはリーバンのみで……

 

「隙を見せたな」

『っ!』

 

リーバンはそう言って頭だけを動かすと小猫とロスヴァイセを視界に修めて重力を発生。そこに、

 

「オォオオオオオオオオオオ!」

 

ガンドマが現れ、その巨大な拳を小猫に振り下ろした。

 

「小猫さん!」

 

その後リーバンとガンドマはリタイアとなって消え、ロスヴァイセは小猫に駆け寄る。

 

「ごほっ!良かった……ロスヴァイセさんが残ってくれればまだグレモリー眷属は戦えます」

「ごめんなさい……小猫さん」

 

謝らないでください。二人も倒せたんですから……小猫はそう言いながらリタイアの光に包まれて消えた。

 

「サイラオーグ・バアル選手のナイトとルーク各一名、リアス・グレモリー選手のルーク一名リタイアです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

「せ、戦兎?落ち着けよ?」

「なに言ってんだ。別に死ぬわけじゃないんだ。落ち着いてるよ」

 

とても落ち着いているやつのオーラじゃねぇぞ……と龍誠は思うが、余り突っ込むのもアレなので黙っておく。そこにリアスがダイスを振りに行き、

 

『シュート!』

 

とダイスを振る。数は四と三の合計七だ。

 

「また微妙な数字ですわね」

 

というのは朱乃。この数字は確かに全体的に消費駒が多いこちらとしては、かなり組み合わせが限定される。単機で出すのも不可能ではないが、それはまだこの序盤でやるべきじゃない。そう思っていると、

 

「じゃあお……」

 

じゃあ俺が出ます。と戦兎が言おうとすると、

 

「ハイハイハイ!俺が出ます!」

 

と意思表示したのは龍誠だ。それを見てリアスは、

 

「そうね、龍誠と祐斗でいきましょう。その間に戦兎は少し落ち着きなさいね」

 

落ち着いてますけど……と言うものの戦兎は大人しく従い、龍誠と祐斗は転移魔方陣に乗る。

 

「ドッカーンと勝ってくるぜ!」

 

と言って二人は転移。転移先は広い広野だ。そしてそこに来たのは……

 

「あぁ!フウとライ!」

「あともう一人はビジョップの人だね」

 

オーッスと言いながらライは登場。しかし……

 

「向こうは三人か。少し大変かもね」

「なに弱気になってんだよ。ここで勝てば三人も削れるってことじゃねぇか」

 

そう言って龍誠はビルドドライバーを装着し、クローズドラゴンとドラゴンフルボトルを持つ。すると、

 

「安心しな。お前らが相手するのは二人だぜ?」

「え?」

 

祐斗が驚く中、フウとライは紫の銃をそれぞれ持ち、フルボトルを挿す。

 

《ギアエンジン!》

《ギアリモコン!》

 

それから二人は銃を交差させ、ゆっくりとこちらを見る。

 

《ファンキーマッチ!》

『潤動!』

《フィーバー!パーフェクト!》

 

二人は銃口から出る煙に包まれ、白と緑の歯車が特徴的な姿に変わる。形状自体はゼファードルとのレーティングゲームでも見たが、

 

「ヘルブロス……」

「参上!ってな」

 

そう、一人になってる上にフウとライの声がその一人から聞こえる。それが意味するものと言えば、

 

「うそーん」

「合体しちゃったよ……」

 

と、とにかく行くぞ!と龍誠は慌てて変身し、祐斗も聖魔剣を構える。

 

《Wake up burning!Get CROSS-Z DRAGON!Yeah!》

 

龍誠はビートクローザーを構え、

 

「祐斗。俺がフウとライの……デブブロス?と闘うからビジョップを任せたぜ」

「わかった。気を付けてね。あとヘルブロスだと思ったよ?」

 

そうとも言うな!と龍誠は走り出してヘルブロスとなったフウとライにビートクローザーを振り下ろす。だが、

 

「いっで!」

 

フウとライはそれをギリギリで避けつつ銃口を龍誠に押し当てて発砲。

 

『はぁ!』

「っ!」

 

そしてフウとライは腕の歯車を高速回転させて龍誠に電動ノコギリのようにぶつけて吹き飛ばす。

 

「おらまだ終わらねぇぜ!」

 

そうライが言うと、紫の銃を二挺持ちで構えて連射。

 

「あっぶね!」

 

慌てて龍誠は転がって避けるが、向こうは的確に狙ってくるため何発か貰ってしまう。

 

「くそ!思ったより厄介だな」

 

龍誠はビートクローザーにロックフルボトルを挿しながら呟き、

 

《スペシャルチューン!ヒッパレーヒッパレーヒッパレー!メガスラッシュ!》

 

と金色の錠を野球のスイングの如くビートクローザーを振って打ち出す。しかし、

 

『はっ!』

《ギアエンジン!》

《ギアリモコン!》

 

フウとライはそれぞれの紫の銃に装填したフルボトルを一度抜いて挿し直すと、

 

《ファンキードライブ!》

「っ!」

 

巨大な白と緑の歯車が銃口からそれぞれ発射され、龍誠の錠とぶつかり合う。それは最初は拮抗していたものの、徐々に龍誠の錠が押し返されてしまい、そのまま纏めて龍誠に帰って来た。

 

「がはっ!」

「龍誠くん!」

 

祐斗が爆発と共に地面を転がり、咳き込む龍誠を心配するがビジョップは祐斗を足止めし、フウとライは追い討ちを掛ける。

 

「くっ!」

 

飛んで来る銃弾をビートクローザーで弾き、間合いを詰めた龍誠は蒼炎を拳に纏わせてパンチ。

 

「ぐっ!」

 

だが逆にカウンターを入れられ、更に銃口を龍誠の額に当てて発砲。痛みと衝撃に後ろに転がった龍誠。しかし、

 

「まだだ……」

 

と龍誠は立ち上がる。ただ強いというのは理解できた。ゼファードルとの試合でもわかってはいたが、この二人は出鱈目に強い。

 

二人に分かれていてもコンビネーションは抜群だったが、合体すると1+1=2所じゃなく、龍誠はどうやって倒すかと思案していると、

 

「よぉし、アレいくか!」

『アレ?』

 

龍誠の呟きにフウとライが首を傾げる中、

 

「行くぞ!ドラゴンモード!」

 

ビシィ!と何やら決めポーズを決める龍誠だが、何も起こらない。

 

「あれ?ドラゴンモード!ドゥラグォンモォド!ドラゴーンモード!」

 

なにやら気合いを入れているが、なにかが起きる様子はなく、ピューっと風が吹いているだけだ。

 

「ダメか。兵藤 一誠と戦ったときみたいにドラゴンの腕とか翼出せないかと思ったのに……」

 

そこで龍誠は無い頭で考える。だが龍誠の頭では良い案は思い付きそうになかった。

 

「良く分からねぇけど」

「行くぞ!」

 

そこにフウとライが銃を二丁構えて発砲しながら走ってくる。

 

「ちっ!昇格(プロモーション)!ルーク!」

 

それに対してルークに昇格(プロモーション)した龍誠は、銃弾を受けながらも強引に突破。そのままフウとライを殴り付けようとした。

 

「くそ!昇格(プロモーション)かよ!」

「こっちは変身してると出来ないからな……」

 

と言ってフウとライは言い合いながら回避。すると、

 

昇格(プロモーション)!ナイト!」

『っ!』

 

ギュン!と一気に最大速度まで加速した龍誠は、一瞬で2人の死角に入り込むとビートクローザーで一閃。

 

「ぐっ!」

「いっで!」

 

よっしゃ!と龍誠は言いながらよろけたフウとライの肩を掴むと、

 

昇格(プロモーション)!ルーク!」

『ちっ!』

 

フウとライは咄嗟に腕の歯車を回し、龍誠を殴りながらガリガリ削る。

 

「いででででで!くそ!舐めんな!」

 

だが龍誠はルークの頑丈さで強引に耐えながら、ベルトのレバーを回した。

 

《Ready Go!ドラゴニックフィニッシュ!》

「おぉおおおおお!らぁあああああああ!」

 

右腕に蒼炎を集め、ルークのバカ力で思いっきり相手の顔面をぶん殴る。

 

『ぐぼぉ!』

「どうだぁ!」

 

龍誠の渾身の一発により、フウとライは大きく後ろに吹っ飛んだ。

 

「さっすが!」

「きゃあ!」

 

その間に祐斗はビジョップの相手をしながら言う。こっちはかなり余裕なようだが、

 

「くそ!思いっきり貰っちまった」

「頭がグラグラするな……」

 

と、フウとライは立ち上がる。しかし、

 

「よぉし、コツは掴んできたぜ!」

 

そう言って龍誠はナイトに昇格(プロモーション)すると、死角に滑り込みビートクローザーで切る。

 

『ぐっ!』

「ずっとルークかクイーンばっか使ってたけどよ、単純に走るだけなら純粋にナイトの方がいいな!」

 

と龍誠は続けて何度も走り抜けながらビートクローザーで切る。だが、

 

「舐めんな!」

 

と言ってライが銃口を向けると偏差撃ちで龍誠を撃ち抜いた。更に続けて、

 

「はぁ!」

「っ!」

 

フウが腕の歯車を回して倒れた龍誠を追撃。それを咄嗟にビートクローザーで防ぐが、凄まじい音と火花に顔をしかめる。

 

「このまま押し込んでやる!」

「ちっ!昇格(プロモーション)!ルーク!」

 

ビートクローザーを押し返しながら、再度昇格(プロモーション)によりルークにチェンジ。だが上に乗られた体勢で体重を掛けながら押し込んでくるため、中々押し返しきれない。

 

「成程、確かにこれは厄介だな」

「なに?」

 

フウの呟きに龍誠は首を傾げる。それから、

 

「いや、こっちの話だ!」

「っ!」

 

更にグッと押し込む。ガリガリと火花を更に散らす中、龍誠は敢えてビートクローザーに込めていた力を抜くと、

 

『うぉ!』

 

龍誠は顔を横に逸らし、勢い余って前のめりに体勢を崩したフウのライの拳を避けた。それにより、地面に思いっきり拳がめり込んだ2人の隙を突き、

 

「おらぁ!」

 

と横っ面をぶん殴り、今度は龍誠が上に乗ると、

 

「はぁ!」

 

そのまま下にした2人を殴る。1発2発3発と。すると2人は龍誠の拳を掴んでキャッチすると、

 

「流石に強いな」

「あぁ……」

 

何だ?離せよ!と龍誠は引っ張るが、その間にフウとライの全身の歯車が高速回転を始め、赤く発光して煙が出てきた。

 

「な、なんだぁ!?」

 

慌てて龍誠は離れようとするが、フウとライは決して手を離さない。

 

「戦ってわかったよ。お前は厄介な相手だ。だからこそここで潰させてもらう!」

「まぁ、そう言うわけだ」

 

とフウとライは言い、更に歯車は加速する。

 

「お、おい離せ!」

「離すか!」

 

ライはそう言うと更に龍誠の腕を引き、体を近付けると、

 

「これで終わりだ」

「っ!」

 

フウの一言と共に爆発。近くにいた祐斗たちも爆風で吹っ飛ぶほどで、

 

「がはっ……」

 

変身が強制解除された龍誠は地面に膝を付いていた。

 

「これで……良しかな」

「あぁ」

 

ライとフウも変身が強制解除され、地面に倒れている。

 

「これが狙いか?」

「まぁどんな手を使ってもお前を倒すのが目的だった。この試合はお前か戦兎が出てくる可能性が高かったからな。お前ら二人揃うと厄介なんだろ?だからどっちか倒したかった」

 

そう言うライに龍誠は笑う。

 

「なに笑ってんだ?」

「いや、お前ら運がねぇなって思ってよ」

 

何?と二人が言う中龍誠は、

 

「あいつがいれば大丈夫だ。あいつがいれば……このゲームに勝てる」

 

龍誠はそう言いながら、親指を立ててサムズアップをした。それは見ていた戦兎に向けられたものだ。

 

「戦兎。任せたぜ」

 

と言い残し、龍誠やフウとライはリタイアの光に消える。

 

「龍誠くん……」

 

祐斗は瓦礫の中から這い出ながら歯を噛み締め、刃に付いた血を振って取る。

 

足元にはサイラオーグのビジョップが倒れている。先程の爆発で吹っ飛んだ際に、向こうも体勢を崩したので吹っ飛ぶ方向をずらしてすれ違い様に斬ったのだが、

 

「順当に減らされたか……」

 

元々サイラオーグチームの方が人数が多い。しかも戦力的に重要な龍誠をだ。それに対して祐斗は悔しそうに拳を握る。そして、

 

「サイラオーグ・バアル選手のポーン二名及びビジョップが一名。リアス・グレモリー選手のポーン一名リタイアです!」

 

そう審判が告げるのだった。




ゼロワン取り敢えずまだ一話目ですが面白いですね!しかし初変身時に戦闘チュートリアルがあるとは新しい……ゼロワンドライバー買おうかなぁ……でもお金がなぁ……


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中盤戦

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「さてさて龍誠が脱落し、サイラオーグさんとのレーティングゲームもいよいよ中盤戦。見逃せない展開が続くぞ!」
龍誠「くそぅ!せっかくの見せ場かと思いきや俺負けるのかよぉ!」
戦兎「まぁまぁ、やっぱりサブキャラには荷が重かったって事だ」
龍誠「なにをぉ!」
ヴァーリ「とまぁそんなわけで……」
匙「75話始まるよ~」
戦兎「それ俺の台詞!」
ヴァーリ&匙『ここ逃すと出番無いんだよ!』


「……」

 

龍誠がリタイアし、祐斗が戻ってくる中、戦兎は手に爪が食い込むほど強く拳を握っていた。

 

「次は8ね」

 

その間にダイスは振られ、リアスは戻ってくる。そこの戦兎が、

 

「今度こそ俺が……」

「いや、私がいこう」

 

ズコッと出足を挫かれながら、戦兎が見るとゼノヴィアが立っている。

 

「戦兎は終盤まで休んでた方がいい。寝不足なんだろう?」

「別に平気だって」

 

良いからゆっくりしておけ、とゼノヴィアは布にくるまれたデュランダルを手に立ち上がる。

 

「そうね、ゼノヴィアとあともう一人……」

 

とリアスはロスヴァイセを見る。実際には駒の数ならそれこそ戦兎を出してもいいのだが、戦兎は個人も援護もこなせるタイプだ。出来れば終盤に出したい。と思っていると、

 

「僕がいきます!」

 

そう声をあげたのはギャスパー。それに少しリアスは驚いていた。ギャスパーはこういう時、余り前に出ない。そんな彼?が自分から出たいというのは意外だ。

 

「おいギャスパー。大丈夫かよ」

「大丈夫です!ぼくだってグレモリー眷属ですから……小猫ちゃんや龍誠先輩の仇を取ってきます!」

 

そう戦兎に言いながらギャスパーはゼノヴィアと共に魔方陣の上に立つ。そして、

 

「二人とも、気を付けてね!」

『はい!』

 

リアスに二人は頷き転移する。そして二人が出たのは、岩だらけの荒れ地だ。

 

隠れ易いが少し動きにくい。パワータイプのナイトであるゼノヴィアはまだ良いが、祐斗だったら脚に影響が出たかもしれない。

 

そこに、サイラオーグ側の眷属も転移してきた。

 

ひょろ長い男と美少年の二人で名前は、

 

「確かルークのラードラ・ブネにビジョップのミスティータ・サブノックだったか?」

「どちらも断絶した家の方ですね」

 

そもそもサイラオーグは断絶した家の者を多く眷属にしているが、これは有能であればどんどん登用していくと言う、サイラオーグの思いがあるのだろう。

 

だが断絶した家は人間と子孫を為して生き延びた家も多く、一部の純血主義意識が強い悪魔の上役からは嫌われていると聞いた事があった。

 

「まぁとにかく勝つだけだ」

 

と、ゼノヴィアは布を外すとその中から現れたのは、彼女の代名詞になりつつある聖剣・デュランダル。だが今までのものとは少し変わっており、

 

「ゼノヴィア先輩それは?」

「教会の錬金術師がしてくれてな。教会に保管されているエクスカリバー六本をデュランダルと融合させた一振り。名付けてエクスデュランダルだ!」

 

ブン!と振り心地を改めて確かめつつ、ゼノヴィアはエクスデュランダルを構える。

 

ギャスパーもそれを見て準備を整えていると、試合開始の合図がされた。

 

「まずはぼくが!」

 

とギャスパーは無数のコウモリになって分かれると、

 

「はぁ!」

 

とゼノヴィアがエクスデュランダルを振り下ろす。だが、

 

『へ?』

 

聖剣の波動を纏わせたその一撃は、地面を切っ先から遥か先まで一直線に切り裂き、途中にあった岩をバターのように真っ二つにしてしまった。

 

「しまった……力加減を間違えた」

「今ぼくにも当たりそうになってましたからね!?」

 

す、すまない。と思っていたより威力があって驚いているゼノヴィアが謝ると、

 

「ラードラ。やはり当初の計画通りまずはあの剣士だ!」

「了解!」

 

そう言ってビジョップのミスティータは下がり、ラードラは前に出ると服を脱ぎ捨て上半身裸になると、

 

「グォオオオオオオ!」

 

体が肥大化し、一匹のドラゴンに変貌した。

 

「おいおい、ドラゴンに変身出来るなんて聞いてないぞ!?」

「言ってないからな!」

 

ゴォ!っと飛んでくる火球をゼノヴィアとギャスパーは避け、

 

「はぁ!」

 

エクスデュランダルを振り下ろして斬撃を飛ばした。だが、

 

「ちぃ!流石に腰の入ってない斬撃飛ばしじゃドラゴンの鱗は斬れないか」

 

と言ってゼノヴィアはギャスパーを見ると、

 

「ギャスパー!少し時間を稼いでくれ!こうなったら全開パワーで吹っ飛ばす!」

「分かりました!」

 

ゼノヴィアは下がり、エクスデュランダルを掲げて力を溜めた。だが、

 

「そこだ!聖剣よ!力を閉じろ!」

『っ!』

 

突如輝いていたエクスデュランダルは光を失い、ウンともスンとも言わなくなってしまった。

 

「な、なんだこれは!?」

「ざんねん……だったな」

 

と言うのは、明らかに消耗した様子のミスティータがいる。

 

「僕は人間と悪魔のハーフでね。そのお陰で神器(セイクリットギア)も持っている。その能力でね、相手の能力を封じることが出来る」

 

そう言ってミスティータは荒く息を吐く中、ラードラは更に火炎を放った。

 

「ゼノヴィア先輩!こっちです!」

「っ!」

 

ギャスパーに促され、慌ててゼノヴィアは岩影に隠れて火炎から逃れ、

 

「一度離れましょう。まずはゼノヴィア先輩の力を取り戻さないと」

「出来るのか?」

 

詳しく調べないとなりませんが……とギャスパーは言いながら走りだし、ゼノヴィアは後を追う。

 

そうしてしばらく走り、取り敢えず敵からある程度距離を稼いだところでギャスパーは岩影にゼノヴィアを立たせて、彼女を中心に魔方陣を描いていき、

 

「よし、後は魔方陣を起動させれば……」

 

とそこにズシン!と地面が揺れる。

 

「くっ!ラードラが近いのか」

「このままじゃ間に合わない……」

 

魔方陣を起動させながらギャスパーは呟く。無事解除はできそうだが、この見つかるまで時間の問題と言う中で解除は間に合わない。そうギャスパーは判断し、

 

「ゼノヴィア先輩。ここから動かないで下さいね」

「お、おいどこにいく気だ!?」

 

背中を向けるギャスパーにゼノヴィアが問うと、

 

「ゼノヴィア先輩ならあの二人を倒せます。ならぼくの仕事はゼノヴィア先輩が戦えるようになるまでの時間を稼ぐことです。だから僕が気を引きます。だからバレないようにここで息を潜めていてください」

「ま、待てギャスパー!」

 

ゼノヴィアの制止を振り切って、ギャスパーは走り出す。そして、

 

「僕はここだ!」

「ほう?一人か?と言うことは何処かで解除を試みているな?だがミスティータのはすぐにはできない。となれば時間稼ぎか?」

 

それがどうした!とギャスパーはコウモリに分裂してラードラに飛びかかる。だがそれをラードラは腕を振っただけで蹴散らし、ギャスパーは地面に落ちる。そしてそれをラードラは拾い上げると、

 

「言え!あの剣士がどこだ!」

「っ!」

 

ギュッとラードラに握り絞められ、体が軋みを上げた。それによりギャスパーは声にならない悲鳴をあげるが、

 

「いう……もんか」

「む?」

 

ギャスパーはラードラを睨み付けながら、体をコウモリに分裂させて脱出し少し離れた所に降りると、魔力で炎を作ってラードラに当てる。だがそれはラードラの肌の表面で弾けるだけでダメージはない。

 

「っ!」

 

ゼノヴィアは咄嗟に飛び出しそうになるが、それを必死に踏み留まって自分の手で自身の口を塞ぐ。

 

こうでもしてないと声を出しそうだった。だがここで自分の場所を知られれば、ギャスパーの覚悟を無に返してしまう。それは出来ない。それはだけは許されないと必死に抑える。

 

「オォ!」

「くっ!」

 

ラードラの拳をギャスパーは転がって避けた。だが地面に拳が叩きつけられた衝撃だけでもギャスパーの体勢を崩し、ラードラの巨体がギャスパーを踏みつける。

 

「ひぎっ!」

 

メリィ!と音を立てて地面にめり込むギャスパー。そしてラードラは周りを見渡す。ゼノヴィアの聖剣は危険だ。だからこそいつまでもギャスパーに手間取っているわけにいかない。ゼノヴィアが解除を終わらせる前に片付けなければ……と見たその時、

 

「ギャスパー、礼を言う」

 

ラードラの視線の先にはゼノヴィアが立っている。ゆっくりとデュランダルを掲げ、その刀身の切っ先は天高く延び、見えなくなった。

 

「させるか!もう一度封じて……」

 

とミスティータは能力を発動させようとするが、彼の動きが完全に止まる。

 

「ミスティータ!?」

 

ラードラが慌てて見ると、リタイアの光に包まれて消えかけているギャスパーが、ミスティータを停止世界の邪眼(フォービドウン・バロール・ビュー)の能力で止めていた。

 

「ハァアアアアアア!」

 

その間にデュランダルの溜めを終えたゼノヴィアは、ラードラに目掛けて巨大な光の刃と化したデュランダルを振り下ろす。

 

「これで終わりだぁああああああ!」

 

振り下ろすと同時に地面が爆発し、閃光が辺りを包む。そして衝撃波で地面がえぐれ、辺り一帯には巨大なクレーターができていた。

 

「サイラオーグ・バアル選手のルークとビジョップ各一名。リアス・グレモリー選手のビジョップ一名リタイアです!」

「……」

 

その放送をゼノヴィアはぼんやりと聞いている。残るサイラオーグ側はクイーンとサイラオーグのみとなったが、サイラオーグは言わずもがなで、クイーンも相当な実力者だ。

 

気を引き締めなければ……そうゼノヴィアは決意し、自分のチームの控えへ戻ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「向こうはもうクイーンしかいないわ」

 

ダイスが何度か振り直され、9の数字が決定したとき、リアスはそういった。

 

サイラオーグは駒12の価値を持つ。となればこの9の時点でクイーンが登場するのは明白だ。

 

「そうなると誰を出すか……」

 

出すだけなら祐斗とロスヴァイセでも良いし、そろそろ戦兎を出しても良い。と思っていると朱乃が、

 

「私が出ますわ」

「朱乃?」

 

そう言って立ち上がる。そして、

 

「クイーンとの戦いの次はサイラオーグさんが控えています。ここで祐斗君達を使うより、クイーン同士戦った方がいいですわ。その方が次に人数も割けますから」

「いや姫島先輩。そろそろ俺が……」

 

そう言う戦兎の言葉に朱乃は、

 

「いいえ、さっきも言ったように戦兎君はせっかく新しいアイテムを持ってきてるんですからサイラオーグさんとの決戦まで出ない方がいいですわ。新しいのは早く見れば見るほど、そして回数を重ねれば重ねるほど対策を建てやすいのですから」

 

と言って朱乃は魔方陣に乗り、そのまま転移する。そして出たのは石造りの塔が立ち並ぶステージで、その塔の天辺に朱乃と、別の天辺にはサイラオーグのクイーンであるクィーシャ・アバドンが立っていた。

 

「やはり貴女でしたね。雷光の巫女」

「えぇ」

 

返事しながら朱乃はクィーシャを見る。アバドン家の特性は(ホール)。それを作り出しあらゆるものを取り込み消し去ることが出来る。これを使って、ゼファードルとのレーティングゲームでも優位に立ち回っているのを見ていた朱乃は、

 

「最初から全力ですわ!」

 

と言って全力全開の雷光をクィーシャに放つ。バリバリ音を立て、飛んでいく雷光。だがクィーシャは手を翳すと(ホール)が出現し、雷光は全て吸い込まれていく。

 

「なっ!」

「私の(ホール)は全てを吸い込む。貴女の雷光でもね。そして!」

 

クィーシャはそう言って別の(ホール)を作り出すとそこから光が溢れ、朱乃を痛め付けた。

 

「このように光のみを抽出して返すこともね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「嘘だろ……」

 

戦兎は思わずそう呟いていた。今まで何だかんだ言ってもこちらが有利な試合展開だった。だが今のは相性が悪かったのもあるが余りにもあっさりと……

 

「うちとは相性が悪いね」

 

祐斗の呟きに戦兎は頷く。朱乃もだがこちらは強力な一撃を貯めて撃つって言うのが多いので、ああいうカウンターに弱いのだ。

 

とは言え、それを差し引いても厄介な強さではある。しかし、

 

「次はサイラオーグさんだな」

 

そう言いつつ戦兎は準備運動を始めた。だが、

 

「……」

「部長?」

 

戦兎はリアスを見て首を傾げる。

 

「そうね、戦兎を出すのが良いかもしれない。でもサイラオーグはまだフェニックスの涙を持っているわ。となると実質サイラオーグを二回倒さなくちゃならない」

「……」

 

リアスに言われ、戦兎は腕を組む。正直、確かにサイラオーグを二度倒せと言われると怖い。いや多分新兵器ならば行けると思うのだが、安全とは言えない。とそこに、

 

「なら僕たちがいきますよ」

「え?」

 

立候補したのは祐斗。更にゼノヴィアとロスヴァイセもいた。

 

「僕たちが何とかしてサイラオーグさんを削ります」

「待て木場。俺の新兵器ならサイラオーグさんを二回倒すくらい出来るって」

 

まさか本気で言ってる?と祐斗に言われ、戦兎は口ごもる。

 

「このゲームは負けられない。なら確実性を取るべきだ」

「だがあの人相手に……」

 

そう心配する戦兎にゼノヴィアは、

 

「おいおい、私達だってグレモリー眷属なんだぞ。お前や龍誠ばかり注目されるがな」

「えぇ、ちゃんと戦兎君に繋ぎますから」

 

ロスヴァイセもゼノヴィアに同意し、3人は魔方陣に乗ると、

 

『行ってきます』

 

と言って3人は転移する。そしてその先には広い平原が広がっており、サイラオーグが一人立っていた。

 

「成程、桐生 戦兎ではなくお前たちか。良い判断だな」

「ありがとうございます」

 

祐斗はサイラオーグにそう返しながら、聖魔剣を構える。それに合わせてゼノヴィアもエクスデュランダルを構え、ロスヴァイセも魔方陣を展開する。

 

対するサイラオーグは自然体。変身する様子はない。それを不審に思っていると、

 

「おっと変身しないのはお前達を侮っているわけじゃない。ただ今勢いのあるグレモリー眷属の聖魔剣やデュランダルに北欧魔術の使い手が同時に来ているんだ。生身で味わってみなければな勿体ないだろう!」

 

とサイラオーグは獰猛な肉食獣のような笑みを浮かべて、走り出したのだった。




ゼロワン良いですよね~。ただ割りとえげつない展開でしたなwそして不破さんやっぱりいい人だよねw

あとVシネグリスを見てきました。あれはやばい。カズミンかっこよすぎる。そして幻さんの髭が失われた衝撃の事実は……おっと、読みすぎた。これ以上はネタバレになりますね。


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最高の勝利を皆へ

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「遂にサイラオーグさんとのレーティングゲームも終盤戦、だがそれを前にサイラオーグさんが遂に登場!」
龍誠「そんなサイラオーグさんを相手に祐斗・ゼノヴィア・ロスヴァイセさんの三人が勝負を挑む!」
匙「俺たちは負けない。必ず勝つ!」
ヴァーリ「そんなわけでユウジンの次回作にご期待ください」
戦兎「打ち切りじゃねぇか!ってそんな感じの76話スタート!」


「来るぞ!」

 

とサイラオーグが駆けてくる中、ゼノヴィアは叫び、エクスデュランダルを振り抜いて衝撃波を放つ。だが、

 

「甘い!」

『っ!』

 

サイラオーグはそれを前に走りながら横にズレて避けると、そのままゼノヴィアとの間合いを詰める。

 

「くっ!」

 

ゼノヴィアは、サイラオーグの拳をエクスデュランダルで受ける。しかしそれでも体が浮き上がるほどだ。

 

「フン!」

 

そこにサイラオーグは追撃の回し蹴り。だが、

 

「させません!」

 

と、ロスヴァイセの声と共に、サイラオーグの体が横に吹っ飛んだ。とは言え、サイラオーグはしっかりと防御しており、

 

「無傷……」

 

そうロスヴァイセは絶句する。精々服が少し破れているくらいで、サイラオーグに目立ったダメージはない。

 

「いや、少し痛かったぞ?」

 

サイラオーグは言いながら、身体に力を込めて再度走り出す。

 

「ハァ!」

 

そこに飛び込んできたのは祐斗。祐斗はそのまま聖魔剣を振り下ろしたが、

 

「なっ!」

 

それを人差し指と中指で挟んで受け止めると、祐斗を掴んでそのまま地面に叩きつけるように投げる。

 

「がはっ!」

「オォ!」

 

それを助けるようにゼノヴィアがエクスデュランダルを横凪ぎに振るが、サイラオーグは飛び上がって、何とエクスデュランダルの刀身に乗って更にジャンプ。

 

そこから拳を握って落下と共にゼノヴィアに襲いかかった。

 

「ぐっ!」

 

咄嗟に刀身を盾にしたゼノヴィアだが、重力も味方にしたサイラオーグの拳の重さに思わず膝をつく。

 

「はっ!」

「っ!」

 

そこに祐斗が立ち上がり、聖魔剣を振るう。サイラオーグはそれを飛んで避けた所に、

 

「フルバースト!」

 

爆発と爆音に閃光が辺りを包み込む。幾らサイラオーグでも、この中を動くことは出来ないようだ。そして、

 

『ハァアアアアアア!』

「っ!」

 

一瞬攻撃が止んだ次の瞬間。祐斗とゼノヴィアが上から飛んできてエクスデュランダルがサイラオーグの腕を捉える。

 

「硬い!?」

「鍛えてるんでな!」

 

どういう鍛え方をしたらエクスデュランダルの斬撃に耐えられるんだ!とゼノヴィアが言うと、祐斗が更に聖魔剣でエクスデュランダルの刀身を叩いてを押し込む。そこに、

 

「いっけぇ!」

 

とロスヴァイセが更に魔術で剣を押し、

 

『はぁっ!』

「ぐっ!」

 

ザン!っとサイラオーグの腕が切り飛んだ。

 

「よし!」

 

ゼノヴィアがガッツポーズを取る中、サイラオーグは切れた腕を拾いつつ距離を取る。そして、

 

「成程、これは想像以上だな。お前達を侮っていたわけじゃないが、予想を大きく上回っていた」

 

と言いながら、サイラオーグはフェニックスの涙を取り出して腕をくっつけながら降りかけて繋げる。

 

直ぐに切れた腕は繋がり、掌をグーパーして治ったことを確認。

 

「これは自分の楽しみを優先している場合じゃないな」

『っ!』

 

そう言ったサイラオーグが出したのはスクラッシュドライバー。祐斗達は忘れていない。戦兎たちがそれに負けたことを。

 

《デンジャー!クロコダイル!》

 

スクラッシュドライバーを腰につけたサイラオーグは、ボトルを挿して構えるとレバーに手を掛けて、

 

「変身」

《割れる!食われる!砕け散る!クロコダイルインローグ!オラァ!キャー!》

 

変身を完了する。それからゆっくりと祐斗達を見据えると、

 

「行くぞ!」

「くっ!」

 

最初に前に出たのは祐斗だ。聖魔剣を握り締め、サイラオーグに振り下ろす。だが、

 

「っ!」

 

キィン!とアーマーに弾かれ、傷ひとつ入らない。しかも、

 

「フン!」

「がはっ!」

 

弾かれたところにサイラオーグの拳が祐斗の腹にめり込む。それにより祐斗は血を吐きながら後方に吹っ飛ばされた。

 

「こうなったら……ロスヴァイセ。時間を稼いでくれ」

「何か策が?」

 

ロスヴァイセがそうゼノヴィアに聞くと、

 

「ラードラを倒したエクスデュランダルの全力を叩き込む。あれならダメージを与えられるかもしれない」

「分かりました。やりましょう!」

 

とロスヴァイセは言ってサイラオーグに魔法を連射する。しかしサイラオーグは最初に挿したボトルとは別のボトルを取り出し、振ってからスクラッシュドライバーに挿す。

 

《ディスチャージボトル!ツブレナーイ!》

「あれは確かダイヤモンドフルボトル!?」

《ディスチャージクラッシュ!》

 

ロスヴァイセが驚愕する中、サイラオーグは片手からダイヤモンドを生み出し、ダイヤモンドの壁を作るとロスヴァイセの魔法をそれで防ぎながら、そのまま突っ込む。

 

そして空いてる方の拳でロスヴァイセを殴り飛ばし、

 

「オォ!」

 

そこに祐斗が戻ってきたのか口元から血を流しながらも、聖魔剣で突きを放つが、サイラオーグはそれを払って回し蹴りでロスヴァイセの所に吹っ飛ばす。そしてゼノヴィアを見ると、

 

「さて……確かそれはラードラを倒した奴だな。良いだろう。来い、待っててやる」

「後悔するなよ……」

 

ゼノヴィアは足元に転がってきたロスヴァイセと祐斗を見ながらも、意識はエクスデュランダルから外さない。

 

刀身を輝かせ、光の刀身を作り出し巨大化させていく。大気が震え、目が眩まんでしまう程。デカさと輝きなら先程のラードラ達に向けて放った時より強い力を感じる。

 

「いくぞぉおおおおおおお!」

「っ!」

 

巨大な光の刀身と化したデュランダルを、ゼノヴィアはサイラオーグに振り下ろす。

 

だがサイラオーグは静かにスクラッシュドライバーのレバーを下ろすと、

 

《クラックアップフィニッシュ!》

「ハァ!」

 

飛び上がり、両足を開いて鰐の上顎と下顎をオーラで片足ずつ作り出し、デュランダルの光の刀身を挟んで止めた。更に、

 

「オォオオオオオオ!」

 

火花と共に軋みを上げ、デュランダルの光の刀身にヒビが入る。

 

「なっ!?」

「オォオオオオオオラァアアアアアア!」

 

バキィ!と言う音が響き、デュランダルの光の刀身がくだけ散る。砕け散ったのは、あくまでもデュランダルのオーラで形成された刀身の部分なので、デュランダルその物が破壊されたわけではないが、サイラオーグには関係なく、そのまま破壊したデュランダルの破片の中でも、最も巨大な破片を両足で挟み込んで掴むと、体を捻ってその破片をゼノヴィア達のいる場所に向けて投げつけた。

 

そして同時に起こる爆発。地面にクレーターができ、

 

「リアス・グレモリー様のナイト二名及びルーク一名リタイアです!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……』

 

試合の様子を、戦兎達は静かに見ていた。そしてリアスは、

 

「次はクイーンね」

 

次は二つの手がある。一つは戦兎を出し、無事に勝って貰って次のサイラオーグとの一戦をアーシアに出て貰って、すぐさまリタイアして戦兎に繋ぐ方法。次にこの試合をアーシアが出て即リタイアし、サイラオーグと戦兎がそのまま戦う道。

 

確実性で言えば、新兵器をサイラオーグとの戦いの前に出さずに済む可能性が高い後者だが、

 

「部長。次のクイーンとの戦いは俺出ます」

「戦兎……」

 

分かってます、と戦兎は言う。

 

「でもここでクイーン避けてサイラオーグさん倒しても面白味がないじゃないですか。なのでここは一つクイーンもサイラオーグさんもどっちも倒して完全勝利して皆の所に行きたいんですよ」

 

あとちょっと暴れておかないとサイラオーグさんとの時に冷静に戦えそうにないので。と言う戦兎にリアスは少し溜め息を吐いて、

 

「分かったわ。でも一つ約束して」

「はい?」

 

戦兎は首を傾げつつリアスを見ると、

 

「必ず勝って」

「……了解」

 

と言い残し、戦兎は魔方陣に乗って転移。そして眼前には荒野が広がっており、既にサイラオーグのクイーンであるクィーシャが立っていた。

 

「成程。貴方が出ましたか」

「あぁ、精々華々しく勝たせてもらうぜ」

《ラビットタンクスパークリング!》

 

戦兎はそう言いながら、ビルドドライバーにラビットタンクスパークリング缶をセットし、

 

「変身!」

《シュワッと弾ける! ラビットタンクスパークリング!イエイ! イエーイ!》

 

そして変身を完了した戦兎は、クィーシャに向けては泡を発射。だが、

 

「甘い!」

 

(ホール)を作り出し、クィーシャは泡を防御。更に別の(ホール)を作り出し、戦兎に返した。

 

「くっ!」

 

戦兎はそれを転がって避け、ドリルクラッシャーのガンモードで撃ちながら距離を詰める。

 

飛んでくる弾丸は全て(ホール)で止められる中、戦兎はドリルクラッシャーを捨てるとレバーを回し、

 

《Ready Go!スパークリングフィニッシュ!》

「ハァアアアア!」

 

泡と共に飛び蹴りを放つ戦兎だったが、クィーシャは(ホール)を2つ作ると、一方の(ホール)に戦兎の蹴り足が入った瞬間、別の(ホール)から足が飛び出してきて、その蹴りは戦兎の顔面に直撃した。

 

「がはっ!」

 

地面に転がった戦兎を、クィーシャは見下ろす。

 

「くそ……やっぱつぇえな。流石にそう簡単には勝てねぇか」

「当然です。我が主の大望のためにも

負けるわけにはいかないのですから」

 

そうクィーシャはハッキリと言いながら構える。その顔はサイラオーグへの忠誠に……

 

(そういうことか)

 

中々隅に置けない人(と言うか悪魔)だと戦兎は少し笑い、

 

「成程確かに負けられない理由はありそうだな」

「えぇ、貴方にはないのですか?」

 

そう言われ戦兎は立ち上がると、

 

「あるさ。俺にだって負けられない理由がある」

 

と言いながら、戦兎はハザードトリガーを出しスイッチを押す。

 

《マックスハザードオン!》

「だから俺は今の俺が出せる全力であんたを倒す。そして皆の所に行くんだ!」

 

戦兎はビルドドライバーにハザードトリガーを挿し、細長い筒状のボトルを出した。

 

「それは?」

「ビルドの新アイテム、フルフルラビットタンクボトルだ。せっかくだしあんたで試させてもらうよ」

 

そうして戦兎はフルフルラビットタンクボトルの蓋を回すと側面に赤いウサギの模様がでる。

 

《ラビット!》

 

更にそれを半分に折り、ビルドドライバーにセット。

 

《ラビット&ラビット!》

 

セットを終えると、何時ものようにレバーを回し、

 

《ガタガタゴットン!ズッタンズタン!ガタガタゴットン!ズッタンズタン!Are you ready?》

「ビルドアップ!」

《オーバーフロー!》

 

すると戦兎の姿は普段ハザードトリガーを使ったときのように黒くなるが、背後から何処からともなく赤いウサギが走ってきて、戦兎の足元で止まるとそれがバラバラに分かれ、

 

「はぁ!」

 

戦兎が飛び上がると、そのバラバラに分かれたウサギの部品が戦兎にアーマーのように装着され、

 

《紅のスピーディージャンパー!ラビットラビット!》

 

そして地面に降り立つと、そこには真っ赤な装甲に身を包んだ、今まで見たことのないビルドが立っていた。

 

《ヤベーイ!ハエーイ!》

「さぁ、実験を始めようか」




漸く……漸くラビットラビット登場です。いやぁ、長かったですね。大分初期の頃から出るんですか?いつ出るんですか?と聞かれ続けてずっと濁し続けてきたラビットラビット……と言うわけで次回はラビットラビットが暴れまわります


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理由

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

ヴァーリ「レーティングゲームもついに終盤戦そして戦兎は新兵器でギュインギュインのズドドドドな大活躍繰り広げる!」
戦兎「おいこら!なにさらっと始めてんだ!」
龍誠「て言うかなんだよそのギュインギュインのズドドドドって!」
ヴァーリ「いやなんか一回は言っておかないといけない気がして……」
匙「いやぁ、もうちょっとだな。この章が終わって11章になれば出番があるしなぁ~」
戦兎&龍誠『……』
匙「え?なにその反応……」
戦兎「さ、と言うわけで77話スタート!」
匙「え!?おい!?」
龍誠「確か11章は台本だと番外編だったような……」


「新しいビルドと言うわけですか」

 

クィーシャは少し驚きつつも、臨戦態勢を整える。それを見た戦兎は、

 

「あぁ、名付けて仮面ライダービルド、ラビットラビットフォームってところかな!」

 

と言った次の瞬間。クィーシャの目の前に戦兎が拳を握った状態で立っていた。

 

「なっ!?」

「オォ!」

 

戦兎の拳が、クィーシャに刺さる。そのまま彼女は後方に吹っ飛ばされ、

 

「はぁ!」

「っ!」

 

クィーシャの吹っ飛ばされた方向に先回りした戦兎が、彼女に回し蹴りを放ち、別方向に吹っ飛ばし、

 

「ハァアアアア!」

 

戦兎はそれを2度3度と繰り返すと、最後に地面に叩きつける。

 

「がはっ!は、速すぎる……」

「それは当然だ。元々ラビットフルボトルは、反射神経や移動速度に跳躍力の強化の能力を持ったフルボトルだ。それを増幅して更に濃縮し作ったのがこのボトル。そしてボトルの強化によりプロモーションに耐えられるようになり、ハザードトリガーの使用も可能になった。因みにこの姿で使う駒は速度の制御と上乗せの両方を同時に行えるナイトだ」

 

オマケに、と言いながら戦兎は手を前に出すと、

 

「フルボトルバスター!」

 

声に合わせ、ビルドドライバーから大剣が出現。それを両手で持つと、

 

「はぁ!」

「くっ!」

 

戦兎がそれを振り下ろしてクィーシャを狙うが、それをなんとか避けつつ魔力で火炎を生み出し戦兎に投げつけた。だが戦兎は、フルボトルバスターの手元に力を入れると、なんと鍔本の辺りが折れ、剣の中には空洞があることが分かる。するとそこにラビットフルボトルを入れて、

 

《ラビット!》

 

フルボトルバスターを元に戻し、大剣状態にして赤いオーラの斬撃を飛ばす。

 

《フルボトルブレイク!》

「くっ!」

 

飛んできた火炎を赤い斬撃で掻き消しながら、クィーシャを襲ったが(ホール)で防いだ。しかし、

 

《ラビット!パンダ!ジャストマッチデース!》

 

今度は戦兎はラビットフルボトルとパンダフルボトルをフルボトルバスターに入れ、大剣に戻さず折ったまま剣先をクィーシャに向けた。そして、

 

「ハァ!」

 

戦兎は走り出し、クィーシャの視界から外れる。クィーシャから見て突然消えたようにも見え、慌てて探す中背後から、

 

《ジャストマッチブレイク!》

「っ!」

 

音声と共に赤と白が混ざった光弾を剣先の銃口から発射され、クィーシャは(ホール)を作り出す暇はなく、転がってギリギリで避けるが、腕をカスったらしく腕を抑える。

 

そこに、

 

《ラビット!パンダ!タカ!ミラクルマッチデース!ミラクルマッチブレイク!》

 

続けて3つフルボトルをフルボトルバスターに装填。それを大剣状態に戻して、クィーシャに突進。赤と白とオレンジのオーラを纏わせた斬撃でクィーシャを斬り、

 

「か……はぁ」

 

クィーシャはそのまま地面に倒れるとリタイアも光に包まれて消えると、

 

「サイラオーグ・バアル様のクイーン。リタイアです!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お疲れ様。戦兎」

「お疲れ様です」

 

リアスとアーシアに迎えられ、戦兎は控え室に戻ってきた。

 

残るはサイラオーグのみ。次はアーシアが出て直ぐにリタイアする事に……そう思っていると、

 

「運営に問いたい。もういいのではないか?このままでも先は誰でも読める。恐らく次にビジョップを出して直ぐにリタイアさせ、そして桐生 戦兎を出すのだろう?ならばもう俺は直ぐにでも戦いたい。そこで次の試合はリアス側と俺の全員で舞台に上がって戦うことを提案する」

『っ!?』

 

サイラオーグの突然の提案に、戦兎達だけではなく観客も驚愕する。だが確かに展開が読め今の状態をそのままやるなら、一気に進めると言うのも手だろう。

 

それは運営サイドも同じだったようで、直ぐに了承。勿論リアス側が認めればと言う前置きもあったが、それを拒む理由はない。とリアスは了承し、次の試合が実質最終決戦となるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「嘗めていた訳じゃない。だがそれでも想像以上に強敵だった」

 

そう転移してきた戦兎達に、サイラオーグは言う。

 

「俺たちだってそうです。想像以上に厄介でしたよ」

「そうか」

 

と戦兎とサイラオーグの二人は言葉を交わし、ベルトを装着した。

 

「戦兎」

「はい?」

 

頼んだわよ。リアスに改めて言われ、戦兎は頷きを返してハザードトリガーを起動しながら、サイラオーグの前に立つ。

 

《マックスハザードオン!》

「悪いけどあんたには勝たせてもらう」

《デンジャー!》

「そうはいかない。俺も負けられない理由がある」

 

そう言って二人はベルトにそれぞれボトルを挿入し、戦兎はレバーを回して、

 

《ラビット&ラビット!ガタガタゴットン!ズッタンズタン!ガタガタゴットン!ズッタンズタン!》

《クロコダイル!》

 

レバーから手を離すと同時に、サイラオーグはレバーを下ろした。

 

《Are you ready?》

『変身!』

《紅のスピーディージャンパー!ラビットラビット!ヤベーイ!ハエーイ!》

《割れる!食われる!砕け散る!クロコダイルインローグ!オラァ!キャー!》

 

二人は変身を完了して拳を握ると、

 

『ハァ!』

 

ドン!と空気が振動し、それと同時にサイラオーグが後方に吹っ飛ぶ。同時に殴り掛かった二人だが、速さと言う点では戦兎に分があったらしい。

 

そしてそのまま戦兎は走り出すと、サイラオーグと間合いを詰めて蹴りを放つ。

 

「ぐっ!」

 

サイラオーグは苦悶の声を漏らしながら後退り、戦兎は背後に回り込んでパンチ、正面に行ってキックと連続で叩き込んでいく。

 

「オォ!」

 

そして横から拳を叩き込もうと、戦兎が振りかぶったその時、

 

「なっ!?」

 

パシッと戦兎の拳をキャッチし、サイラオーグはゆっくりと顔だけをそっちに向けた。

 

「クィーシャのお陰だ。初見だったら対応できなかった」

「なに?」

 

戦兎はサイラオーグの言葉に首を傾げると、

 

「お前のその姿には欠点がある。それは確かに速い。だが動きが単調で、走り出すと殆ど一直線にしか動けないことだ。曲がるときも態々一度減速してから直角に曲がっている。これは恐らくお前がこの力を使い慣れてないからだろう。大方完成して日が浅い新兵器と言ったところか?これならそっちのナイトの2人の方が厄介だったぞ。」

「っ!」

戦兎はサイラオーグの言葉に驚愕し、その間にサイラオーグはゆっくりと空いた方の手でベルトのレバーに手を掛けた。

 

《クラックアップフィニッシュ!》

「ハァ!」

「ぐぁあああああああ!」

 

拳にオーラを集めたサイラオーグは、戦兎を渾身の一撃で殴り飛ばし、戦兎!とリアスはサイラオーグのクラックアップフィニッシュによって吹っ飛んだ戦兎に駆け寄る。

 

「う……ぐ」

「す、直ぐに治療を!」

 

だ、大丈夫だ。と戦兎は立ち上がり、

 

「流石に厄介だな」

「いや、そっちこそ当たる直前に体を捻って軸をずらして威力を半減させるとはな」

 

そう言い合いながら、戦兎はフルボトルバスターを構えてサイラオーグに突進。それを横に避けて脇腹に一発。

 

「ぐっ!」

 

よろめいたところに、サイラオーグの追い討ちを掛け、連続で拳を叩き込む。

 

「がはっ!」

「オォ!」

 

ガスッ!と回し蹴りで戦兎を転ばし、踏みつけて追撃。だがそれを転がって避け、戦兎は腕の力で飛び上がると、空中で体勢を戻して立ち上がった。

 

「その速さにも更に慣れてきたな」

 

手をグーパーしながら、サイラオーグはそう呟く。それを見ながら戦兎は、

 

「はぁ、流石にこれ以上は無理か」

 

と言いながらボトルを外した。

 

「何だ?まさか諦めたわけではないだろうな?」

「そんなわけないでしょう?そんな簡単に諦められるんなら苦労しませんよ」

 

戦兎は半分に折ったボトルを戻しながらそう答える。

 

「俺には負けられない理由がありますから」

「ほぅ?どんな理由なんだ?」

 

そう言うあんたこそ理由はあるんじゃないですか?と戦兎が問うと、

 

「約束だ。ある大切な人と誓ったな。誰よりも強く、そしてこの冥界を引っ張っていける男になれと。俺はその為に魔王になる。魔王になって、誰もが未来を見て歩ける冥界を作って見せる。俺のような才能がないやつもやればできるんだと見せつけてやる。その為にも……お前達には我が大義の為に犠牲になってもらう」

 

サイラオーグはハッキリとそう答えた。それに対して戦兎は、

 

「対したものですね。ホント俺の理由なんて酷く個人的なもんですよ」

「個人的?」

 

えぇ、と戦兎は言い、

 

「俺はですね。基本的に力は愛と平和の為に使うもんだと思ってます。でもレーティングゲームでだけは違う理由です」

「そうだろうな」

 

サイラオーグもレーティングゲームでの戦いに愛と平和はないと理解している。すると戦兎は、

 

「だからレーティングゲームで俺が戦う理由はただ一つ。うちの主である、リアス・グレモリー様の為ですよ」

「リアスの為?」

 

はい、と戦兎は笑いながら続けた。

 

「俺はこう見えても忠誠心高めでしてね?何せ部長は俺の親友の命の恩人だ。あの人が居なかったら俺は親友を失ってた。それに部長は俺の科学の話を真面目に聞いてくれる。龍誠はすぐ寝ちまいますからね。それに……」

 

学校生活が楽しくなった。戦兎はそう言いながら頭を掻いて、

 

「俺ずっと友達って言うと龍誠だけでした。いやまぁ親戚の女は居ましたけど友達って言う感じじゃないし。でも部長に会って、悪魔になってオカルト研究部に入って、そしたら学校生活がもっと楽しくなったし、愛と平和の為にとか、損得とかそんなの抜きにして力になりたいって思える仲間にも出会えた。全部部長のお陰なんです。だから俺も部長に恩返しがしたい。部長がレーティングゲームの覇者になりたいなら俺はその為に命を賭けて良い。だからここで負けられない。寧ろ勝って、若手ナンバー1を部長に名乗って貰いますよ」

 

戦兎……とリアスが呟く中、戦兎はさっき抜いたボトルを再度振り、蓋を捻ると、今度は側面に青い戦車の模様が現れた。

 

《タンク!》

 

それをまた真ん中で折って、ビルドドライバーに装填した。

 

《タンク&タンク!》

 

そしてレバーを回し、

 

《ガタガタゴットン!ズッタンズタン!ガタガタゴットン!ズッタンズタン!Are you ready?》

「ビルドアップ!」

《オーバーフロー!》

 

すると赤い装甲が弾け飛び、後方から青い戦車が走ってきた。

 

「なにっ!?」

 

サイラオーグ驚く中、その戦車はサイラオーグに砲身を向けて砲撃。

 

ドォン!と言う音と共に発射された砲弾に、サイラオーグは怯んで後ずさる。

 

「ハァ!」

 

そこに戦兎が飛び上がると、青い戦車がバラバラに分解し、戦兎に装着され、

 

《鋼鉄のブルーウォーリア!タンクタンク!ヤベーイ!ツエーイ!》

 

そうして地面に着地した戦兎は、今度は青い装甲に身を包んだビルドに変わり、

 

「行くぞ!」

 

とサイラオーグに突進。

 

「ハァ!」

 

まずは一発。だがそれをサイラオーグはガードした。だが、

 

「ぐぅっ!」

 

余りの衝撃にガード上から殴られ、よろけてしまう。そこに戦兎は更に蹴りで追撃。

 

「ぐほっ!」

 

だがサイラオーグは素早く体勢を戻して反撃。だが、

 

「か、固い……」

 

逆に殴った方がダメージを受けた。

 

「当然でしょう?これはタンクフルボトルの力で頑丈さを上げ、ルークの力で頑丈さに磨きを掛け、パワーも上げてます。なのでこのアーマーの見た目のわりには身軽に動けるでしょう?」

 

と言いながら、フルボトルバスターを構えてサイラオーグを斬ろうとし、

 

「ぐっ!」

 

それを避けようとサイラオーグは横に動く。だが、戦兎は片手でサイラオーグの肩を掴むと、力付くで上から押さえ付けて、もう一方の手で持ったフルボトルバスターでサイラオーグを斬る。

 

「ぐぁ!」

 

そしてよろめいたサイラオーグに、フルボトルバスターの剣先を向けつつ、鍔本を折ると、

 

《タンク!ロケット!ガトリング!コミック!アルティメットマッチデース!》

 

ボトルを装填し、様々な色の混じったエネルギー弾が形成。そしてそれをサイラオーグに発射。

 

《アルティメットマッチブレイク!》

「ハッ!」

 

それはサイラオーグを吹き飛ばし、地面をゴロゴロ転がらせた。

 

《ラビット!ローズ!フェニックス!消防車!アルティメットマッチデース!アルティメットマッチブレイク!》

「オォ!」

 

だが戦兎はそこでは手を止めず、再度ボトルを装填してサイラオーグを狙い撃つ。

 

「ぐぅ!」

 

サイラオーグは腕を交差させ防御するも、ダメージは明らかだった。

 

「これでどうだ!」

《タンク!海賊!ウルフ!サメ!アルティメットマッチデース!アルティメットマッチブレイク!》

 

トドメとばかりに強烈な一撃を撃ち、サイラオーグは爆発の炎の中に消える。すると、

 

「ん?」

「まだ……終われない!」

 

サイラオーグは爆炎の中からそう言って駆け出して飛び出すと、戦兎に掴み掛かる。

 

「くっ!」

 

その鬼気迫る動きに戦兎は反応が一瞬遅れ、サイラオーグの手が戦兎の顔を掴み、

 

「負けて……たまるかぁああああああああああ!」

「俺だって同じだぁああああああああああああ!」

 

戦兎はそう言ってフルボトルバスターを大剣に戻し、サイラオーグの体に刃を押し付けて斬る。その際フルボトルバスターの刃が電動ノコギリのように動き、サイラオーグの体をガリガリと削った。しかしサイラオーグは気にせずもう一方の手で戦兎の体を殴る。

 

だが戦兎に効果は無く、

 

「ハァ!」

 

そのまま圧し斬り、サイラオーグは堪らず後ずさった。そしてそこに戦兎は剣先をサイラオーグの体に当て、鍔本を折ると、今度はベルトからボトルを引き抜いて、半分に折ってあったボトルを戻すとフルボトルバスターに装填。

 

《フルフルマッチデース!》

 

するとフルボトルバスターに、青いエネルギーがチャージされ、

 

《フルフルマッチブレイク!》

「ハァアアアア!!」

 

青い極太ビーム砲が発射。飲み込まれたサイラオーグは呑み込まれ、それが収まると、

 

「サイラオーグ・バアル選手リタイア!そしてキングが撃破されたことにより、勝者はリアス・グレモリーチームに決定しましたぁあああああ!」




今回の戦兎の理由はこの話を考え始めた頃からずっと言わせたかった言葉でした。

戦兎はリアスには感謝してるんですよ。龍誠が生きてるのも何だかんだで楽しい部活を出来るのも全部リアスのお陰なのですからね。4章でギャスパーを鍛えてるときにいってた、忠誠心高めって言うのは、あれはマジな話なんです。

なので戦兎は何だかんだ言ってリアス大好き野郎です(異性的なのは皆無)

まぁ戦兎は龍誠が居なきゃボッチ野郎ですし、オカルト研究部関係の知り合いや仲間との時間も結構満喫してるんですよね。だからその為だったら頑張っちゃうんです。

いやぁ、でもこの物語もやっと折り返し地点。総合評価が600越えましたが、まだまだ書きたいことはありますが取り敢えず中間です。と言うわけでこれからも末永くお付き合いくだされば幸いです。


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祭りの後

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「サイラオーグさんとのレーティングゲームを終え俺達は日常に帰って来た!よっしゃ勝ち!」
ヴァーリ「ちくしょー!」
龍誠「なにしてんだよ」
戦兎「ヴァーリのやつにまた開幕に挨拶を奪われちゃ堪んねぇからな。一気に早口で始めてやったぜ……」
ヴァーリ「お前は良いだろ!?本編で活躍するんだから!」
匙「そうだそうだ!」
戦兎「それとこれでは話は別だ!と言うわけで78話スタート!」


「いらっしゃいませ~」

 

本日は晴天なり……ってなわけで、サイラオーグとのレーティングゲームから数日。今日は駒王学園の文化祭の日である。

 

オカルト研究部は喫茶店を出しており、その中では朱乃の占いや小猫によるお祓い何かもやっている。因みに店員との記念撮影も随時募集だ。

 

そんなわけで、見た目が良い面子が揃ってるオカルト研究部の店は滅茶苦茶繁盛をしていた。

 

その中、戦兎は先程アザゼルに聞いた言葉を思い出す。

 

それはサイラオーグを支援していた上層部が、それから撤退したとの事。まぁアイツならまた這い上がってくるだろうよ、とアザゼルは言っていたが、思うところがないわけでもない。だが間違ったとも思わない。

 

「戦兎ー!ボーッとしてないで手伝えよー!」

「あ、わりぃ!」

 

するとそこに龍誠の叫び声が聞こえて、戦兎は我に変えると慌てて仕事に戻る。

 

結局その日は、最後まで息吐く暇もないほど忙しい日だったのだが、そんな日の夜。

 

「……」

 

リアスは一人オカルト研究部の部室にて、窓の外を眺めていた。そこに、

 

「部長?」

「あら、龍誠」

 

どうしたんですか?と龍誠が近付くと、

 

「今年で最後だから見納めておきたくて」

「そうですか」

 

この後本校舎の校庭で、キャンプファイアーしながらチークダンスをすると言うイベントもあるのだが、取り敢えず後回しにして見ておきたかった。

 

「あっという間の3年間だった。長い悪魔の人生で考えたら余りにも短すぎる。でも忘れられない事が沢山起きた」

 

言うとリアスは、コテンっと龍誠の肩に頭を乗せ、

 

「龍誠と同じ学校にいられるのもあと少しなのね。寂しいわ」

「俺だって同じだ。リアス」

 

視線を交わし、二人は眼を閉じて顔を近づけていく。どちらが何かを言わずとも問題ない。そして二人っきりの部室で邪魔する者は……

 

『ジーッ』

「うぉ!」

「きゃあ!」

 

居た。部室の扉を少し開けて此方を覗き込むオカルト研究部女子部員達の影が。

 

「い、いつから居たんだ!?」

「あっという間の3年間だった。からかな」

 

龍誠の問いに、ゼノヴィアが答えると、

 

「うふふ、それで二人は随分良い雰囲気でしたわねぇ。しかも二人きりなのを確認してから龍誠君が部長をリアスと名前呼びしてましたし」

「いやぁ……そのぉ」

 

朱乃に詰め寄られ、龍誠はタジタジになる中、アーシアは眼に涙を浮かべ、

 

「龍誠さん……隠してたんですか?」

「ち、ちがう!言うタイミングを逃してたっていうかだな」

 

と・に・か・く!と朱乃は言って仕切り直し、

 

「全部説明して貰えますわよね?」

「ア、ハイ」

 

と、正座で洗いざらい説明する龍誠が居たそうな。因みに、

 

「膝詰めですねぇ」

「龍誠君も大変だわ」

「で、出遅れましたわ……」

 

上から順にロスヴァイセとイリナにレイヴェルが、先程朱乃たちが見ていた扉から見ていたのは、まぁ余談である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぅん……」

 

その頃戦兎は本校舎の屋上に降り立ち、そこからキャンプファイアーの点火する様子を眺めていた。

 

去年の文化祭は帰宅部だったため、クラスの出し物の手伝いをしていたが、正直余り記憶にない。そう考えると、結構今年は濃密だったのだと思い知らされる。

 

(これも部長のお陰ってか?)

 

そう思って少し笑う。すると、

 

「こんなところで何してるんですか?」

「ん?あぁ、塔城か」

 

声に振り返ると、そこには悪魔の羽を出した小猫が立っている。

 

今更だが、本校舎は今どこも施錠されて入れないので、こうやって空を飛ばないと屋上にはこれない。

 

「少し哀愁にな」

「そうですか」

 

と言いながら、小猫は戦兎に両手に持ってた缶コーヒーを一本渡す。

 

「あ、わりぃ。今払う」

「別に良いですよ」

 

後輩に奢られるのは先輩のプライドが許さん。と遠慮する小猫に缶コーヒー二本分の代金を渡し、二人で缶コーヒーを飲む。

 

「つうかこれ俺の好きなメーカーのじゃん」

「いつも飲んでるので多分そうなんだろうなって思って買いました」

 

よく見てるなぁ。そう戦兎が言うと、小猫はそれはまぁと口ごもる。そうこうしている間に、キャンプファイアーが点火され、その周りでは男女のペアで踊り出す。この時の為にそれぞれ予め誘ってたペアで、ここ数日成功したとか失敗したとか言う会話がされていた。オカルト研究部の女子たちにも、結構お誘いは来てたようだが……

 

「お?龍誠たちが来たぞ」

 

龍誠がリアスと朱乃にアーシアとゼノヴィアの四人に引っ張られて やって来た。どうも遠目に見る限り誰が先に龍誠と踊るか揉めてるらしい。

 

「大方抜け駆けした部長は最後だとか言ってるかな」

「抜け駆け?」

 

あの二人正式にそう言う関係になったらしいからな。と戦兎が首を傾げる小猫に言うと、彼女は少し驚いた顔をして、

 

「いつの間に……」

「俺も聞いたのはサイラオーグさんとのレーティングゲーム後だしな」

 

と言うやり取りをしながらコーヒーを飲んでいると、朱乃がじゃんけんで勝ったらしく、龍誠とキャンプファイアーの周りで踊り出した。

 

「良いですね。楽しそうです」

「なら誰か誘ってきたらどうだ?」

 

ジトーと小猫に睨まれる。話題の返事を盛大にミスったようだ。そう思いながら戦兎は頭を掻き、

 

「何で睨むんだよ」

「別に……って戦兎先輩は踊らないんですか?」

「俺はああいう風に大勢が居る中でやるのは苦手なんだよ。照れ臭いと言うか恥ずかしい」

 

と、戦兎は言いながら缶コーヒーを飲みきると、屋上の真ん中辺りに空き缶を置き、

 

「まぁ……月明かりの下でって言うのはどうだ?」

「?」

 

戦兎の言葉が理解できず、小猫は疑問符を飛ばす。それを見た戦兎は、

 

「つまりだな……Shall we dance?お嬢様」

「成程」

 

手を差し出しダンスのお誘いらしい。小猫は少し笑って、戦兎の手を握った。

 

それから二人で空き缶の周りをくるくる回り、

 

「それにしてもここで空き缶って辺りが戦兎先輩のセンスの無さが出ますね」

「悪かったな」

 

そんないつも通りの軽口を叩き合うのも慣れてきた。すると小猫は戦兎を見て、

 

「そう言えばこの前のレーティングゲームの時に言ってましたけど……」

「なにが?」

 

ギクッと戦兎は、顔を強ばらせるが小猫は、

 

「何だかんだ言っても部活の皆の事大好きなんだなって」

「うぅ……」

 

それはゲームが終わった後に、ニヨニヨした皆に突っつかれたのだ。そう言えば小猫は何も言っ来なかったな。と思いつつ居ると、

 

「私と会えたのも、良かったんですか?」

「……」

 

ダンスの足を止め、不安そうに顔を覗き込んでくる小猫に、

 

「当たり前だ」

 

ソッと頬に手を添え、戦兎はゆっくり優しく言う。

 

「勿論お前と出会えたのも良かったよ」

「先輩……」

 

トロンとした眼で小猫は、ギュッと戦兎の腰に腕を回し、彼の胸に顔を埋めると、戦兎も小猫の背中に腕を回す。

 

「……ん」

 

すると徐ろに小猫は爪先で立つと、唇を少し突き出し戦兎に顔を近づける。戦兎もそれに合わせて少し屈みながら顔を近づける。だが、

 

「……先輩?」

 

あと少しで距離がゼロに……と言うところで戦兎は止まり、そのまま顔と体を離してしまった。

 

「……何かまだ暑いな」

「そう、ですね」

 

微妙な空気が流れる中、戦兎は屋上の端に戻ってキャンプファイアーを見る。小猫も同じく移動して見る。

 

『……』

 

そうして二人は、その後一言も喋る事がないまま、キャンプファイアーが終わるまで過ごしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待て!」

「っ!」

 

一方その頃。ある場所で逃走劇が繰り広げられていた。しかし、

 

「しつこいわね」

「余計なお世話だ」

 

そう言って一人の女性がため息を吐き、それに男……と言うか声音的にまだ少年といった感じだ。

 

女性の方は金属製の鎧に身を包んだ美しい容姿をしている。逆に少年は全身赤い有機的な、炎を模した飾りが着いたスーツに顔まで覆われていて、こちらの顔は分からない。そこに、

 

「大丈夫!?」

「あぁ」

 

と赤い少年の元に、黄・青・緑・白・黒の素体は色違いで、それぞれ違った装飾がされたスーツを着ている、声音的に全員若い女性が集まって来た。

 

「ならば、ここで決着と行きますわよ!」

 

そう言って黒いスーツの女性は、巨大なハンマーを構える。

 

「あぁ、行くぞ!」

 

最初に出たのは赤いスーツの男。炎を纏わせた西洋風の両刃の剣を手に、斬りかかった。だが、

 

「残念だけどまだやられるわけにはいかないのよ」

「なに!?」

 

女性は懐からスイッチを取り出すとそれを押す。すると空間が歪み、

 

「な、なんだぁああああ!?」

 

後ろの仲間たちが此方を呼ぶのを見ながら、赤い少年は空間の歪みに呑み込まれていく。そして、

 

「いっで!」

 

ドスン!と地面に落下し、腰を擦りながら少年は立ち上がると、スーツが消えてそこには17歳程の顔立ちの制服に身を包んだ少年が立っていた。

 

「ここは……どこだ?」

 

と言いながら、電柱に張り付けてあった住所を見ると、

 

「駒王町?」

 

どこだよそれ……少年はそう言いながら、天を仰ぐのだった。




と言うわけで10章終了です。戦兎と小猫のイチャイチャ?回でもありましたが……まぁね。あれですわ。戦兎ェ……ですね。まぁ理由は後々……

そして次章は番外編です。内容としては本編とは関係はありません。いやまったくってこともないですが後の展開のために書かなくてはならない話です。なので原作11巻に相当するのは12章になりますね。

しかし最後に登場したあの色彩豊かな者たちは一体……(すっとぼけ)


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第十一章 聖魔交差のエレメンジャー
シャドウ


前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「学園祭を経て、様々な変化を迎えた俺たちだったが……」
龍誠「結局お前小猫ちゃんとどうなったんだ?」
戦兎「別になにもねぇよ」
龍誠「つまんねぇ」
戦兎「お前を楽しませるのは目的じゃねぇからな。て言うわけで79話スタート」
ヴァーリ「しまった遅れた!」
匙「ちくしょー!」


「失踪事件?」

「えぇ」

 

学園祭から暫く経ったある日、リアスは突然そんな話をし、戦兎は聞き返していた。

 

「そう言えば今朝のニュースでやってたような気がしますけど……確か漫画家の人ですよね?」

「そうなのよ。その人は私の御贔屓さんでね。締め切りが近くなると私の使い魔をアシスタントに貸し出したりしてたわ」

 

そろそろ依頼が来る時期なのに来ないからおかしいとは思っていたんだけど、とリアスは言いながら、

 

「でもとても創作作業に情熱的な人でね。連載を複数持ってたし、その中突然失踪するような人じゃなかったのに……」

「そんな凄い人なんですか?」

 

と戦兎が聞くと、突然袖を引かれて、

 

「塔城?」

「良ければ貸します」

 

フンスッ!と鼻息を少し荒くしながら小猫は聞いてくる。意外と多趣味な彼女は、漫画も網羅しているようだ。

 

「じゃあ借りようかな」

「では明日持ってきますね」

 

グッ!と小猫は小さくガッツポーズし、その様子を見て戦兎は少し笑うと、

 

「最近また一段と仲良くなったんじゃない?」

「なにが?」

 

何でも?と言う祐斗に、戦兎は訝しげな視線を向けていると、

 

「あら、もう紅茶が切れてましたわ」

 

そう、紅茶の茶葉が入っている缶を開けながら言うのは朱乃だ。それを聞いて戦兎は立ち上がると、

 

「じゃあバイクかっ飛ばして買ってきますよ」

 

朱乃のお茶はオカルト研究部の癒しだ。それが無いなど考えられない。まぁ転移もあるのだが、白昼堂々するわけにもいかないので、こういうときは戦兎がバイクを跳ばした方が早いのだ。

 

「じゃあお願いしようかしら。後序でにお茶菓子も良い?」

「構いませんよ」

 

と戦兎は朱乃に代金を受け取ると、

 

「ん?どうした塔城」

「出るのでしたら序でに寮に寄ればさっき言ってた漫画を貸せますので」

 

成程。明日と言わず今日かと思いながら、早いに越したことはないだろう。何だかんだで小猫オススメの漫画は面白いので、結構楽しみだ。

 

「じゃあ行ってきます」

 

と戦兎と小猫は二人で並んで出ていったのを皆で見送り、

 

「あの二人……少しは進展したのかしら?」

「距離が縮まったとは思いますけどね」

 

リアスと祐斗はこそこそ話。そして、

 

「くそぉ!負けた!」

「やったぁ!大富豪ー!」

「く……後一歩で上がれたのに」

「ふぇええ……また大貧民ですぅ」

 

と、トランプで盛り上がる龍誠・イリナ・ゼノヴィア・アーシアが居たそうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「後は大丈夫か?」

「はい」

 

バイクを走らせ、ニケツで戦兎と小猫は買った物の確認をしていた。

 

紅茶も小猫オススメのお茶菓子もある。更に漫画も取って来たので、後は帰るだけだ。そう思っていると、

 

「だ、誰か!」

『っ!』

 

バイクを急ブレーキで止め、戦兎と小猫は声が聞こえた方を見る。

 

「今のは気のせいじゃなさそうだな」

「はい!」

 

二人は慌てて降りて、バイクをスマホに戻してから路地裏に入った。確かに今女性の悲鳴が聞こえた。すると、

 

「た、助けて……」

「グルゥウウウウ!」

 

路地裏には尻餅を付いて後ずさる女性と、なにやらペン先?や紙みたいな飾りを着けたカラフルな化け物が立っている。見た事のない相手に、戦兎と小猫は少し驚くものの、

 

「塔城!あの女性を頼む!」

「分かりました!」

 

戦兎は小猫に指示を出しながらビルドドライバーを装着し、ラビットフルボトルとタンクフルボトルを挿した。

 

《ラビット!タンク!ベストマッチ!Are you ready?》

「変身!」

《鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イェーイ!》

 

変身を終えた戦兎は、化け物を後ろから掴むと女性から引き剥がし、

 

「失礼します」

「え?」

 

小猫が駆け寄り女性の意識を仙術で奪う。申し訳ないが、素性がバレぬように後で記憶も奪わなければならない。

 

その間に戦兎は、回し蹴りで化け物吹き飛ばすと、

 

「オオオオオ!」

「なんだ!?」

 

化け物は腰から巨大なGペン?を抜くと、空中に絵を描く。それは燃え盛る炎で、それを幾つも書き終えると戦兎に向けて撃ち出した。

 

「嘘だろ!?」

 

戦兎は、それを飛びながら避けて、タンクフルボトルを消防車フルボトルと入れ換えた。

 

《ラビット!消防車!Are you ready?》

「ビルドアップ!」

 

チェンジを終えた戦兎は、飛んで来る炎に向けて放水。全て消火し終えたものの、今度は化け物は巨大なスポンジを書き、こちらに突進。戦兎は放水で対抗するが、何と水が全部吸収されてしまう。

 

「この!」

 

戦兎は咄嗟に蹴りを放つが、ズブズブと包み込んで衝撃をスポンジは吸収してしまい、戦兎の蹴りを無効化してしまう。

 

「ウォオオオオオ!」

「何でもありかこのスポンジ!!」

 

戦兎が叫ぶ中、今度は化け物は巨大なGペンで戦兎を殴打してきた。

 

「ぐっ!」

 

咄嗟に腕で防ぐが、気にせず何度も殴り、

 

「がはぁ!」

 

おもいっきりぶん殴られ、戦兎は後退りながら壁に背中をぶつけた。

 

「先輩!」

 

小猫は拳を握ると化け物に殴り掛かろうとする。だが、

 

「はぁ!」

『え?』

 

そこに突然別の少年が横から飛び蹴りを放ち、化け物をスッ転ばせた。

 

「ったく、ホントにシャドウが出やがったか……」

 

少年はそう言いながら、小猫を見ると、

 

「大丈夫か?」

「は、はい」

 

そう問われ小猫は答えると、

 

「さて、いきますか!」

 

と少年は袖を少し捲ると、手首に巻いてあるブレスレットを出し、蓋を開けると、ポケットから赤い宝石を出した。

 

それを今度はブレスレットの台座に嵌め、蓋を閉じてブレスレットをつけている左腕を前に付き出す。するとブレスレットから炎が噴出し、

 

「精霊チェンジ!」

 

はぁ!と突き出した腕を引きながら、ブレスレットの横にあるリングを、反対の腕で擦って回す。

 

《サラマンダー!》

 

すると噴出していた炎が少年の体に纏わり付き、真っ赤なアーマーが装着され、全身に炎を模した装飾が現れた。そして最後に頭部が覆われると、

 

「燃え上がれ!聖なる炎よ!」

 

熱風が辺りを襲う中、少年は構えながら相手を見て、

 

「エレメンレッ……」

『……』

 

ビシィ!と決めポーズ。だが、

 

「しまった。いつもの癖でやっちまったけど一人だと締まらねぇんだよな」

 

と言いながら、少年は頭を掻いてから剣を取り出す。

 

「ま、取り敢えずシャドウ退治といきますか!」

 

そう少年は突進。炎を撒き散らしながら剣をぶん回し、化け物を切り裂く。

 

「ギャア!」

「オラオラオラァ!」

 

何度も剣を叩き付けるように相手に当て、怯んだところにもう一方の手で相手の首を掴み、掴んでいる掌から炎を噴射。

 

「グァアアアアアアアア!」

 

ゴウゴウと燃え上がり、 相手は苦しみの叫びをあげる中、少年が手を離すと化け物は地面に倒れ、少年はそれに追い討ちを掛けるように何度も炎を纏わせた足で踏みつける。

 

「グ、グゥウウ!」

「おら立ちやがれ!」

 

少年は肩を掴んで立ち上がらせると、ぶん殴って吹き飛ばす。すると化け物は巨大なGペンを振って矢を幾つも空中に描こうとする……だが、

 

「させるか!」

 

少年は炎を剣に纏わせてから振ると、炎の斬撃が飛んで空中に途中まで描かれた矢がボロボロに変わって、崩れていった。

 

「さぁて、そろそろ終わらせてしまうか」

 

と少年は言うと、ブレスレットのリングを二回擦って回し、

 

《フィニッシャー!》

 

剣を両手に持ち意識を集中しながら、ゆっくり円を描くように剣を頭上に掲げるように持っていく。

そして、

 

「バーニングエレメンタルフィニッシャー!」

 

剣から今までとは比べ物にならないほどの炎が精製されると、紅蓮の業火によって作られた巨大な刀身が真っ赤な斬撃を作り出し、それが化け物に炸裂し、なんと化け物はその場に倒れると、普通の人間の男性になってしまった。

 

『え?』

「いっちょ上がりっと」

 

戦兎と小猫が驚き固まる中、少年は背を向けて戦兎を見ると、

 

「うぉ!」

「え!?」

 

突然少年は戦兎に切りかかり、戦兎は咄嗟にドリルクラッシャーを出して防ぐ。流石に戦兎と小猫は更に驚きつついると、

 

「お前ハイシャドウか?初めて見たがまぁ良い。ポイメデはどこだ!?」

「ポイメデって誰だよ!」

 

と戦兎は押し返して蹴り飛ばすと、

 

《マックスハザードオン!タンク&タンク!ガタガタゴットン!ズッタンズタン!ガタガタゴットン!ズッタンズタン!Are you ready?》

「ビルドアップ!」

《鋼鉄のブルーウォーリア!タンクタンク!ヤベーイ!ツエーイ!》

 

バラバラになった戦車達と次々に合体した戦兎は、タンクタンクフォームに変身し、少年に向かって走る。すると少年は手を向け、火炎放射の如く戦兎に火を放つ。

 

「くっ!」

 

それに戦兎は怯みそうになるが、戦兎は足を戦車のキャタピラに変形させ、強引に前に出ると少年に体当たりをぶちかます。

 

「げほっ!」

 

その衝撃に少年は堪らず息を吐きながら地面を転がった。そしてそのまま戦兎は少し走り抜けると、フルボトルバスターをバスターモードにして構えて撃つ。

 

「ちっ!」

 

それを剣で弾き、炎を剣に纏わせて炎の斬撃を飛ばす。だが、

 

《サメ!クジラ!消防車!潜水艦!アルティメットマッチデース!アルティメットマッチブレイク!》

「ぐぁああああ!」

 

炎をかき消した上に、そのまま少年を吹き飛ばすほどの水流弾を撃った戦兎は、再度キャタピラを唸らせ走り出すと、そのまま少年に体当たりし、壁に叩きつけてから殴る。

 

「くっ!この!」

 

反撃に少年も殴り返してくるが、腰が入ってない上に防御力が高いタンクタンクフォームだ。効果は余りない。すると、

 

「あらあら、随分派手にやりあっているわね」

『っ!』

 

路地奥の角から聞こえてきた声に、戦兎と少年は殴り合いをやめ、そっちの方を見た。そしてそこから出てきたのは、金属でできた鎧に身を包んだ女性。それを見た少年は、

 

「ポイメデ……」

「あいつが?」

 

いやお前は知らないのかよ。と少年に返され、知らんという戦兎。

 

「お前ハイシャドウじゃないのか?」

「だからそのハイシャドウってなんだよ!」

 

聞いたことないぞ!と怒る戦兎に、少年は頭を掻くと、

 

「彼はビルド。こっちの世界では仮面ライダーと呼ばれているらしいわ」

「こっちの世界では?」

 

言い方に少し引っ掛かった戦兎が聞き返す。それに対し、

 

「始めまして仮面ライダービルド。それとも桐生 戦兎と呼べば良いかしら?私はポイメデ。我が主、シャドウキング様の命により世界を正しき姿に変えるために動いていたのですが、そこにいるエレメンジャーによって邪魔をされていたのです。そこで私が発明した緊急用のワープ装置で逃げようとしたのですが、如何せんまだ試作品でしてね。更にそこの男が突っ込んできたためワープ先が狂って次元を越えてしまったらしいのです」

「なぜ俺の名前を……」

 

兵藤 一誠と言ったかしら?というポイメデの言葉に、戦兎と小猫は目を見開き、

 

「この世界に落ちたときに彼に接触されましてね。この世界について色々教わりました。少なくともここが私のいた世界じゃないこともね。なのでワープ装置の修理が終わるまで、向こうに戻ったとき使えるシャドウを作ろうとしたのですが、邪魔が入りましたね」

「作ろうとした?」

 

戦兎は首を傾げると、

 

「アイツはシャドウ……今戦った化け物に人間を変えることができるんだ」

「化け物とは失礼ね。私は解放してあげてるのよ。人間の真の姿をね」

 

そう言ったポイメデは両腕からそれぞれ異なる液体を滲ませ、両手を擦り合わせる。

 

「なにするか分からねぇがさせるかよ!」

「あ、待て!」

 

少年の静止を無視し、戦兎は走り出すとフルボトルバスターを振り下ろす。だがポイメデはそれを横に体を捻るようにして避けると、右手で戦兎の胸に手を当てた。すると、

 

「あがっ!」

 

突然戦兎は苦しみだし地面に倒れると、そのまま変身が解除される。

 

「私は毒の使い手。この右手はあらゆる毒を産み出すことができる。残念だったわね」

「あ……が」

 

そう言って戦兎を見下ろしながら、左手の液体と混ぜた液体をさっきまでシャドウだった男の体に垂らす。

 

「ふふ、まだ貴方の仕事は終わってないわ。元気にしてあげるから頑張りなさい」

「う、うぅ……」

 

すると今まで倒れていた男が突然立ち上がり、メキメキ音を立てて先程のシャドウの姿に戻ると、そのまま巨大化してしまったのだ。

 

「それじゃ、頑張ってね」

 

ポイメデはチュッと戦兎達に投げキッスをして立ち去る。

 

「先輩!」

 

その間に小猫は急いで転がって苦しむ戦兎を引っ張り、巨大化するシャドウに踏まれないように離すと、遂にシャドウは首が痛くなるほど見上げなければ見えないほど巨大化。それを見た人々の悲鳴が聞こえてきた。

 

「ったく。こんな狭い路地で巨大化させるなっつうの」

 

と少年は言うと、ブレスレットのリングを三回擦って回し、それを天に向けると、

 

「精霊召喚!」

《サモン!》

 

ブレスレットから光の柱が現れると、その光から巨大な赤いトカゲが飛び出した。

 

「よっし!行くぞ炎磨!」

「あぁ!頼むぞサラマンダー!」

 

炎磨と呼ばれた少年は、サラマンダーと呼んだ巨大トカゲに向かって言うと、光に包まれて消えてしまう。

 

「うぐ……」

「先輩、大丈夫ですか?」

 

エンプティボトルを……と戦兎が言うと、小猫も思い出して戦兎の懐から取り出して射す。それにより毒が抜き取られ、体が楽になっていくのを感じた。

 

一方炎磨は、

 

「よし」

 

そう言いながら立っているのは、どこまでも空間が広がっている不思議な場所だ。そこで炎磨は胸の前に腕を持ってきて交差すると、

 

「精霊変形!」

 

と言う声と共に、地上に立っていたサラマンダーと呼ばれた巨大トカゲが後ろ足だけで仁王立ちになると、体が次々と変型し、最後にトカゲの口が開くと人の顔のような物が飛び出し、

 

「完成!セイレイジン!」

 

不思議な空間にいる炎磨の動きに合わせ、人型に変型したサラマンダーも同じ動きをする。

 

「行くぞ!」

 

炎磨がそう言うと、セイレイジンは走りだし巨大化したシャドウに掴み掛かった。それにシャドウは体を振って抵抗するが、セイレイジンはそのままシャドウを殴り飛ばし、蹴りを放つ。更に炎を噴射して怯ませると、

 

「はぁ!」

 

体当たりで更に追い討ち。すると今度は空間を歪ませ、肉厚の剣を取り出す。

 

「セイレイブレード!」

 

それを振って何度も切りまくり、シャドウは堪らず後ずさる。するとシャドウは空中にミサイルの絵を描くと、セイレイジンに向かって飛んでいく。

 

「甘いんだよ!」

 

それをセイレイブレードで切り落としながら、間合いを詰めていきシャドウの持っていたGペンを真っ二つにし、刃を返しながら切り返す。

 

そして、

 

「これで終わりだ!」

 

と炎磨は不思議な空間の中で意識を集中し構えると、セイレイジンも同じ動きをし、

 

「悪しき力に呑まれし者よ!今聖なる力に選ばれし我が救済しよう!」

 

それと同時にセイレイブレードが光り輝き、

 

「セイレイジンインパクト!」

 

刀身を振ると同時に、そこからサラマンダーが飛び出し、シャドウに飛びかかると燃やしながら貫いた。

 

それと共にシャドウは爆発しながら倒れ消滅すると、

 

「これにて終了っと」

 

そう言いながら、セイレイジンは消えていく。それを戦兎と小猫は見ながら、

 

「なんなんだあれ……」

「どちらにせよ阿鼻叫喚ですよ」

 

小猫が言うように、辺りは建物はボロボロだわさっきまで怪獣大戦争だわで大騒ぎな上に、シャドウに変えられていた男が元に戻って倒れているため救急車騒ぎまで起きている。

 

「それにさっきの男も……」

「俺を覚えているのか?」

 

突然声をかけられ、戦兎と小猫が振り向くと炎磨は不思議そうな目をしていた。

 

「可笑しいな……精霊チェンジした時の姿を見られてたのに覚えているのか?つうか何で生きてんだ?ポイメデの毒を喰らってたよな?」

「毒だけ抜く方法はあるんだよ。それともなにか?助けてくれたのか?」

「いや、御愁傷様だなぁと思ってただけ」

 

ズコッとずっこけそうになりながら、結構薄情なやつだなと戦兎は思いつつ、

 

「そもそもお前何者なんだ?」

「俺?俺は火乃 炎磨。精霊戦隊エレメンジャーのエレメンレッドだ」

 

戦兎の問いに、炎磨はそう答えるのだった。




はい。コメントでも言われてましたが今章で関わってくるのはスーパー戦隊です。ただ私オリジナルのスーパー戦隊となります。名前は最後に出ましたがこのエレメンジャー。これを考えた当初は今やってるリュウソウジャーにしようかとも考えたのですが、偶然前に考えて設定集や大まかな全体のストーリープロットをパソコンにあったのを見つけて、このままにしとくのもアレだし折角だからゲストで出すかと言うことで登場しました。

しかし我ながら性格の悪い主人公ですな。戦兎のこと全然心配してないし倒れてるところを何度も攻撃するわと中々あれなレッドですが、まぁ一応理由はあるのです(それが明かされることは多分ない)

と言うわけで次回もよろしくお願いします。


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相違

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「突如現れた謎の敵、シャドウに襲われた俺と塔城。だがそこにまた新たな味方?エレメンレッドが現れた」
龍誠「しかしなんか嫌なやつだなぁ……」
戦兎「まぁ色々あったと言う設定らしいからなぁ……まぁそんなわけで80話スタート」
龍誠「遂に完全に匙とヴァーリが消えたな」


「火乃 炎磨君……ね」

「はい」

 

シャドウを倒し、戦兎と小猫は炎磨を連れてオカルト研究部の部室に戻り、事情説明を聞いていた。

 

「取り敢えずはサーゼクスと連絡がついた。今夜にでも冥界やうちからの来て記憶操作も行うそうだ。とは言えテレビでも放送されてるしSNSにも上がってるからこりゃ大変だぞ……」

 

そう言って戻ってきたアザゼルに戦兎はそんなことできるのかと聞くと、

 

「まぁ一応な。とは言え完全になかったことにはできない。精々大きな災害があったと言う風に記憶を持っていくのが限界だろうな。如何せん範囲が広すぎる。魔力を電波に乗せて広範囲に一気に広げるって言う方法でやれば一気に洗脳できるはずだ。それでもしばらく混乱は免れないが」

「そっちは一応隠すんですね」

 

炎磨はアザゼルにそう言うとアザゼルは、

 

「お前のところは隠さねぇのか?」

「シャドウやエレメンジャーの存在は普通に知られてますね。それにこのブレスレットを着けてると機械に写らなくなりますし、直接変身を見られても記憶に霞が掛かったみたいになって分からなくなりますから。これでプライバシー対策バッチリですよ」

 

何気にハイテクだな……とアザゼルは言うと、

 

「それでそもそもエレメンジャーとは何なんですか?あとシャドウについても」

 

そう聞いたのは、自らの眷属を連れたソーナだ。それに、

 

「説明しよう!」

『っ!』

 

そう言ったのは、炎磨の懐から飛び出した宝石で、その宝石からプロジェクションマッピングのように、光でできた先ほど見たサラマンダーの可愛らしくデフォルメされた姿が現れた。

 

「俺はサラマンダー。こいつと契約してエレメンジャーに変身させている者だ」

 

とサラマンダーは何処からともなく眼鏡を出してスチャっと装着してから説明を開始。

 

「まずこっちの世界では普通の人間には知覚できないが様々な精霊が存在する。俺もそうだ。俺は分類的には火の精霊。因みに火の精霊は俺だけじゃねぇ。他にもたくさんいる。ただ俺ほど強い火の精霊は居ないがね?」

「良いから続きをしゃべれよ」

 

炎磨は宝石を指先で軽く突くと、サラマンダーは悪い悪いと言い、

 

「だが精霊も皆良いやつとは限らない。中には人間に仇なすやつもいる。その精霊は悪しき人間と契約することで、ハイシャドウに変えるのさ」

「じゃあさっきのポイメデも……」

 

あぁ、元々はただの人間だ。と戦兎のに、サラマンダーは答えつつ、

 

「そしてあのポイメデは毒の精霊と契約している。その力は直接的な力は弱いものの毒の生成や、配下となるシャドウの作成及び巨大化。んでもって俺達は悪の精霊とは、遥か昔からお互い契約者を変えつつ幾度となく戦ってきた」

「幾度となく?今まで撃破できなかったのですか?」

 

ソーナはそう問う。それにサラマンダーは、

 

「倒したよ。だが俺達精霊は概念のような存在だ。契約者が完全に倒されれば一時的に眠りに着くが、死ぬことはない。いずれ復活し、また人間に仇なすために誰かと契約するんだ」

「つまりその悪の精霊が選んだ人間とお前ら……まぁ分かりやすく言うなら善の精霊が選んだ人間同士を戦わせてるって所か」

 

ざっくり言えばそうだな。とサラマンダーはアザゼルに頷き、

 

「そしてエレメンジャーって言うのはその善の精霊に選ばれたやつらのこと。人数や属性はその世代で変わるが、今は炎磨を入れて6人になってる。それぞれ異なった属性の精霊と契約しててな。俺の火以外だと雷・水・木・風・大地だ」

「ねぇ、契約者って何を基準に決めているの?」

 

リアスの問いに、他の皆も確かにと思うと、

 

「俺は精霊と融合率が高い男を探して選ぶが、他はそれぞれが精霊との融合率の高い女を探して契約するな。因みに理由は、火は他の属性と比べて一番戦闘向きだ。だがその分体に掛かる負担が一番大きいからな。それに男で精霊との融合率が高いやつって少ないんだよ。女はまだいるんだけどな。だから戦闘向きの火を男にして他を女で固めてる」

「別に他も男入れれば良いんじゃないのか?少ないっていってもゼロじゃないだろ?流石に」

 

龍誠の素朴な疑問。それにサラマンダーは、

 

「いやエレメンジャーに変身出来るほど精霊と融合率高いやつ自体がいつの時代も珍しいんだよ。だから後世にもその力が受け継がれるように、適正の高いやつの血筋は後世に沢山残す必要がある」

 

その言葉で、皆は大体予想がついたらしく、あぁと言い、

 

「つまりだ。炎磨には頑張って他のやつらと子供をこさえて貰うんだよ」

「めんどくせ……」

 

面倒とはなんだ!あんな可愛い仲間たちなのに!と怒るサラマンダーに、そっぽ向いて頭を掻いてる炎磨。すると、

 

「じゃあシャドウとは何なんですか?」

 

と小猫が問う。それに対してサラマンダーは、

 

「さっき言ったようにポイメデはシャドウを作れる。だがある程度強力なシャドウを作るときは人間を使うんだ」

「そう言えばさっきも男の人が……」

 

小猫が頷くとサラマンダーは更に続けて、

 

「ポイメデの作る特殊な液体は人間をシャドウに変えるんだ。そしてシャドウに変えられた人間は攻撃性が増し、他者を攻撃するようになる。あ、ハイシャドウには従順だけどな。因みに能力はその変えられた人物の特技なんかが反映される。多分さっきのシャドウは画家か漫画家じゃないかな?」

 

サラマンダーの説明に皆は頷くと戦兎が、

 

「ならポイメデが言ってたが、シャドウキングってなんだ?」

「ハイシャドウの親玉。謂わば悪の精霊たちが選んだこっちで言う炎磨の立ち位置って所だな。顔は分からないが、余程闇の精霊と相性が良いらしい。一度だけ変身状態のあいつと戦ったがレベルが違いすぎる。契約した時期も多分向こうの方が早いと言うのもあるっちゃあるだろうけど化け物みたいな強さだ。正直なんであいつが前線に出ないのか聞きたいよ」

 

出てきたら一発で闇側が勝てるのによ。と言うサラマンダーに、炎磨の実力が低いわけではないのは知ってるので、戦兎は少し驚かされた。そこに炎磨が、

 

「それで?今度はこっちが聞きたいんだけど仮面ライダーってなんなんだよ」

「それはな!」

 

炎磨の問いに龍誠が答える。

 

「人々の愛と平和のために戦う正義のヒーローだ!」

「ぶふっ!」

 

そんな龍誠の言葉に、炎磨は吹き出すと笑いだした。

 

「アハハ!なんだよそれ。面白い冗談だな」

「なんだと!?」

 

龍誠は思わず炎磨に掴み掛かりそうになるが、それを匙が慌てて落ち着けと戦う。それを見た炎磨は笑うのをやめ、少し驚いた顔をしながら、

 

「え?まさかマジで?」

「マジだが。なにか問題あるのか?」

「別に問題はねぇけど愛と平和とか無理だっていうか、正義のヒーローねぇ」

 

戦兎に炎磨はヘッと言いながらにやっと笑い、

 

「高校生にもなって真面目に言うことじゃないだろ」

「何をー!」

 

龍誠はプピーっと怒りながらジタバタ。それを戦兎は見ながら、

 

「じゃあお前はなんでシャドウと戦ってるんだ?」

「ん?暇潰し」

 

炎磨は何の気なしにそう答えつつ、

 

「人々のためにって言えばよかったか?だが悪いけど俺とシャドウ側が唯一共通している点があってな。それは人間って言うやつは基本どうしようもないクソみたいな生き物で、滅んだ方がいいと思ってる所だ。皆がそうじゃないと思うか?まぁそうかもな。でもそれだけを選別して助けるなんて面倒だしどうせ赤の他人だ。死んだところで心は痛まねぇよ。まぁ、知り合いや友達だったら嫌だからそいつらくらいは助けるがね」

 

それが変か?そう言う炎磨に、

 

「別に。知り合いと他人を比べて知り合いを優先しようが他人がどうなっても気にしないことは人の勝手だよ。だけど俺が個人的にお前の考えに共感できねぇだけだ」

「なんだよ。お前アレか?他人百人と知り合い一人のどっちかしか助けられないってなったとき百人選ぶタイプか?俺だったら信じらんねぇな」

 

肩を竦め、戦兎に答える炎磨に戦兎は違うと言うと、

 

「俺はどっちも選ぶ。百人も一人もどっちも救う方法を探すんだよ」

「こりゃ想像以上だな。だったら一つ忠告しておいてやるよ。二兎を追う者は一兎も得ずだ。全部なんて救えない。最初はうまくいっても最終的に自分の周りにいるやつも救った人にも裏切られるか不幸にして滅茶苦茶になって終わるだけだよ」

 

まるで実体験だな。戦兎がそう言うと、炎磨はヘラっと笑い、

 

「どうだかね」

 

とだけ言う。そんな二人のやり取りを見ながらリアスは、

 

「取り敢えずここまでにしましょう」

 

そう言ってパンパンと手を叩くと空気を入れ換える。それから立ち上がると、

 

「ソーナ、アザゼル先生。少し良いかしら」

「えぇ、良いですよ」

「おう」

 

リアスはソーナを誘って廊下に出た。そして、

 

「どう思う?」

「彼に嘘はないわね。ただシャドウと呼ばれる存在がいる世界ですか……パラレルワールドと言うやつかしら?」

 

リアスはそう聞くと、ソーナが答える。それにアザゼルは頷き、

 

「しかしパラレルワールドか。普通そう簡単には越えられないんだがな……つうかひょいひょい越えるとお互いの世界に影響を与えかねない」

「そうなの?」

 

アザゼルにリアスが問うと、

 

「あぁ、本来ない概念や存在なんかが混ざってしまうこともあるしな。だからパラレルワールド越えは本来ならやらない方がいい。良い影響でも悪い影響でも違う世界のものを与えるのは世界を歪めるからな」

 

とアザゼルが頭を掻いたその時、

 

「そう言うなよ。原作にない流れって言うのも悪くないぜ?」

『っ!』

 

突然の声に、リアス達が振り替えるとそこにいたのは、

 

「兵藤 一誠!?」

 

結界が張ってあるはずの駒王学園の更に警戒体制が強いてある旧校舎の中に、一誠は当然のように立っていた。

 

「てめぇなにしにきやがった……」

「少し遊びにな」

 

一誠はそう言い、

 

「行くぞ?」

 

と走りだしアザゼルに飛び蹴り。そこに、

 

「さていきましょう」

『っ!』

「リアス!ソーナ!後ろだ!」

 

リアスとソーナが振り替えるとそこにいたのは、彼女達は知らないが戦兎達がポイメデと呼んでいた女で、

 

「くっ!」

 

ソーナは後ろに飛び、リアスは咄嗟に滅びの魔力を手に集め、ポイメデにゼロ距離で放つ。だが、

 

「遅いわね」

「むぐっ!」

 

ポイメデは避けながら懐に入り込むと、リアスの口に手を当て、

 

「んぐっ!」

 

何かを飲み込まされ、リアスは後退りながら困惑する。

 

「なんの騒ぎだ!」

 

そこに飛び出してきたのは戦兎達で、

 

「お前はポイメデ!?」

 

先程見た彼女に、戦兎は驚きつつももう一人を見て、

「兵藤 一誠もいるのかよ……」

 

ヤッホーと手を振りながらアザゼルの攻撃を捌く彼を見て、とにかくやるしかないと戦兎と龍誠と匙はベルトを出す。だが、

 

「部長?」

 

ユラリとリアスはこちらを振り返り、戦兎達を見る。その眼に光はなく、不気味な雰囲気だ。

 

「まさか!?」

 

そんな中、ソーナは驚愕する。そしてソーナを尻目に、

 

「アァアアアアアアアアア!」

 

リアスの全身を滅びの魔力が包み、それが小さく破裂して消えると、そこに立っていたのは禍々しい見た目の化け物……と言うかシャドウだ。

 

「成程。これは中々強力ね」

「嘘だろ……」

 

ポイメデが感心する中、皆が絶句し戦兎だけ思わず呟く。

 

「はは!こいつはすげぇや!」

「くそっ!」

 

アザゼルは一誠の相手で手一杯。そんなとき、リアスはこちらに手を向けると、

 

『っ!』

 

無言で滅びの魔力を打ち出す。その破壊力はいつもの比じゃない。それを、

 

「はぁ!」

 

ゼノヴィアがデュランダルで止める、しかし、ガリガリとデュランダルを押し、ゼノヴィアは一歩二歩後ずさりつつも、

 

「ぬぅん!」

 

と年頃の女子が出すような声を出しつつ滅びの魔力を逸らした、だが逸らした先の壁が見事に滅びの魔力の形に消えており、

 

「ひぇええあんなのが直撃したら痛いじゃすみません!」

「痛いと感じる間もなく消滅だろうな」

 

ガクガク震えるギャスパーに戦兎は答え、ベルトを装着。それに龍誠と匙も続き、

 

《ラビット!タンク!ベストマッチ!》

《ウェイクアップ!クローズドラゴン!》

《ドラゴンゼリー!》

《Are you ready?》

『変身!』

《鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イェーイ!》

《Wake up burning! Get CROSS-Z DRAGON!Yeah!》

《潰れる!流れる!溢れ出る!ドラゴンインクローズチャージ!ブラァ!》

 

変身を3人は終え、リアスに向けて走りだそうとした。だが、

 

『キール!』

「なんだぁ!?」

 

そこに全身がひび割れている謎の生物が何人も飛び出し、行く手を阻んできた。

 

「新手か!?」

「あれはフェイクシャドウ。数は多いけど一体一体は大したことはない」

 

祐斗が驚く中、炎磨はそう言ってブレスレットに宝石をセットすると、

 

「精霊チェンジ!」

《サラマンダー!》

 

リングを回して変身。剣を手に走り出すとフェイクシャドウを斬り倒していく。

 

「僕達も行こう!」

「そうだな!」

 

それを見ていた祐斗の指示で、グレモリー眷属やシトリー眷属の皆がそれぞれの獲物を手にフェイクシャドウを倒していく。そして、

 

「はぁ!」

 

リアスシャドウに向かって戦兎は飛び上がり、蹴りを放つ。だがそれを片手で止めると、壁に投げて叩きつけた。

 

「くそっ!周りのフェイクシャドウは鬱陶しいし、部長シャドウは滅茶苦茶強いじゃねぇか!」

「オォ!」

 

戦兎が文句を言う中、龍誠は走り出してリアスシャドウを殴る。だがそれを止め、反対の手で滅びの魔力を直接撃ち込むと、龍誠は後ろに吹っ飛ばされる。それと入れ替わるように匙が走り込み、ツインブレイカーをアタックモードにして振るう。

 

「くっ!」

 

しかしそれを掴んで止めて捻ると、蹴っ飛ばして距離を取らせた。そこに、

 

「はぁ!」

「っ!」

 

炎を纏わせた剣で襲い掛かったのは炎磨。だがリアスシャドウは両腕に滅びの魔力を纏わせて受け止めると、そのまま押し返した。

 

「普段のシャドウとは違うってことか……」

「えぇ。これならシャドウキング様の力となってくれそうだわ」

 

させるかよ!と炎磨が間合いを詰めるが、リアスシャドウは後ろに跳んで避けると、ポイメデと共に窓から飛び出していってしまった。

 

「悪いけど私とこのシャドウは元の世界に帰らせて貰うわね」

「待て!」

 

そのまま手に持った装置を起動させようとするが、

 

「はぁ!」

「くっ!」

 

炎磨が炎の斬撃を飛ばして迎撃。

 

「流石にここだと危ないわね。行くわよシャドウ!」

「……」

 

ポイメデはリアスシャドウにそう言うと、空を飛んで行ってしまう。

 

「戦兎君!行って!」

「あぁ!」

《タカ!タンク!Are you ready?》

「ビルドアップ!」

 

素早く姿を変え、戦兎は飛び出そうとすると、

 

「戦兎俺も連れてけ!」

「うぉ!」

 

いきなり龍誠に足を捕まれ、危なく墜落しかけつつ体勢を戻し、そのまま危ねぇだろ!と文句を言いつつ飛んでいく。

 

「匙!貴方も二人の手伝いを!」

「はい!」

《チャージボトル!ツブレナーイ!チャージクラッシュ!》

 

匙もソーナの指示でタカフルボトルをスクラッシュドライバーに挿し、レバーを下ろして窓から飛び出すと、

 

「ついでに俺も頼むわ」

「え?」

 

ドン!と上に乗ってきたのは炎磨で、

 

「お、重い!」

「文句言わずキリキリ行ってくれ」

 

お、お前なぁ!と、こっちはこっちで文句を言い合いながら飛んでいくのだった。




今回で出ましたが戦兎と炎磨は基本的に馬は合いません。あとまぁ炎磨の性格ですがこれでも少しマイルドにした方なんですよ。ホント俺疲れてたのかな?何て思うくらいの性格です。何を思ってこんな性格にしたのか……


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特別な存在

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「謎の敵、シャドウとエレメンジャーを名乗る火乃 炎磨との出会い……ってこう見ると結構色々あったな」
龍誠「だよなぁ……くそぉ……あいつやっぱり俺苦手だぁ!」
炎磨「悪かったな」
龍誠「うぉ!お前いたのか!?」
炎磨「まぁ特別編だからな。特別ゲストってことで」
龍誠「何かお前少し雰囲気違うくね?」
炎磨「いや外と中の人が同じ性格な訳じゃない……おっと失敬」
戦兎「まぁそんなわけで81話スタートだ」
匙「あれ!?俺の出番は!?」
戦兎「本編にはあるでしょうが」
匙「いやあらすじには!?」
ヴァーリ「俺なんか本編にもないけどな……」


「しつこいわね」

「待ちやがれ!」

 

空を飛んで逃げるポイメデとシャドウリアスに、戦兎に運んで貰っていた龍誠はある程度近づくとシャドウリアスに飛び付き、そのまま地面に落下する。

 

それを追いかけ戦兎たちも降りると、

 

「工事現場か……多少派手に暴れても問題無さそうだな」

「だな」

 

戦兎と匙がそう言い合うと、横から炎磨がシャドウリアスに炎を剣に纏わせながら斬りかかる。だがシャドウリアスが滅びの魔力を放ち、咄嗟に剣を盾にするが、その衝撃で大きく後退る。

 

「ちっ!相変わらずなんだこれ……」

「気を付けろ!部長の滅びの魔力はまともに喰らうと一発でKOだぞ!」

 

それ先に言えよ……と炎磨は呟きながら距離を取ると、ブレスレットのリングを二回回転し、

 

《フィニッシャー》

「なら一気に片を付けてやるよ!」

 

そう言って炎磨は剣に巨大な炎を纏わせ、

 

「バーニングエレメンタルフィニッシャー!」

「っ!」

 

炎磨の放った極大の炎を、シャドウリアスは滅びの魔力で再度打ち消す。

 

「クソ……なんつう強さだよ」

「なら俺が!」

 

戦兎はそう言ってシャドウリアスと間合いを詰めてドリルクラッシャーを振るう。だが、

 

「くっ!効いてねぇな!」

 

戦兎は距離を取り、ドリルクラッシャーをガンモードにして、ライオンフルボトルを挿す。

 

「俺もいくぜ!」

《Ready Go!》

《スペシャルチューン!ヒッパレー!ヒッパレー!ヒッパレー!》

 

龍誠もロックフルボトルを挿してクリップエンドを三回引き、戦兎と龍誠は互いの獲物を構え、

 

『ハァ!』

《ボルテックブレイク!》

《メガスラッシュ!》

 

龍誠のビートクローザーで作った巨大な錠を、戦兎の銃口からライオンを撃ち出した。そしてそのライオンは錠を咥えてシャドウリアスに走り出す。

 

それと同時に爆発が起き、シャドウリアスを閃光と爆炎が包んだ。しかし、

 

「これでも無傷かよ」

 

炎の中から悠然と歩いてくるシャドウリアスに、戦兎はため息を吐く。

 

「桐生!」

「なっ!」

 

そこに匙が走り込み、咄嗟に腕を交差させながら身を盾にすると、次の瞬間に匙の体から火花が散る。

 

「ちっ!余計な真似をしてくれたわね」

「匙!大丈夫か!?」

 

あぁ、と匙は腕を抑えながら、遠距離攻撃をしてきたポイメデを睨み付ける。

 

「あんたのことを忘れるところだったぜ」

「意外と視野が広いのね」

 

気配を消してこっそり攻撃するはずが、それを防がれたためポイメデは匙のことを少し誉め、

 

「取り敢えず俺がポイメデの気を引く。他はグレモリー先輩に行け!」

 

匙はそう言いながらツインブレイカーをビームモードにし、ポイメデに乱射しながら間合いを詰めていく。それに合わせ戦兎達もシャドウリアスに襲いかかるが、シャドウリアスは腕に滅びの魔力を集めると、それを横凪ぎ一閃。滅びの魔力は戦兎達の元に飛び、地面で大爆発を起こした、

 

『がはっ!』

「皆!」

 

匙が叫ぶ中、戦兎・龍誠・炎磨が爆発で吹き飛ばされ、変身を解除されてしまう。

 

「よそ見している場合じゃないわよ?」

「しまっ!」

 

そんな匙の一瞬の隙を突き、ポイメデが匙の体に毒を流し込んだ。

 

「あがっ!」

「さ、さじ……」

 

戦兎はふらつく足で、後退りながら地面に転がった匙に近づくと、彼の体にエンプティボトルを慌てて挿す。

 

「少し手こずったけど何とかなったわね」

 

ポイメデはそう言うと、シャドウリアスの元に行き、ワープ装置を手に持つ。だが、

 

「オォ!」

「あら?」

 

横から炎磨が跳び、ポイメデの腕を掴もうとするが、それをシャドウリアスが止め、腹に膝蹴りを叩き込む。

 

「ごほっ……」

「残念だったわね」

 

ポイメデが笑い、シャドウリアスが炎磨の顔に裏拳を叩き込み、炎磨が地面を転がる。それでも立ち上がり、

 

「待て!無茶すんな!死ぬ気か!一人で突っ走んな!」

「……んだよ」

 

戦兎が慌てて立ち上がって肩を掴んで止めると、炎磨がなにかを呟きながら振り払う。え?と戦兎だけじゃなく他の二人も言うと、

 

「うるせぇんだよ!俺はな、元の世界に帰れないなら死んだっていい。平和だの愛だの興味もねぇ。こっちが必死になって戦ってんのにやれダイヤが乱れただのビルが壊れただのと批判ばっかする連中も、駆け付けても遅いだの文句いってくる連中も、話し合いなんか出来る筈もねぇのに暴力による解決しかできない暴力集団扱いする上に、突撃取材とかいって戦ってる真っ最中に割り込んでくるメディアや、挙げ句の果てシャドウにも人権があるとか言い出して戦いの邪魔をして来る団体も、自分達じゃどうも出来ない処か逃げ出しておいて、俺たちが来るとこっちが何もできないのを良いことに、仕事やってるポーズのために俺達を逮捕しようとする警察も……全部どうでもいいんだよ!でもなぁ……」

 

あいつらだけは特別だ。アイツらがいるから俺は生きていたいんだ。だから、と炎磨は走り出す。

 

「なにがなんでも帰るために装置だけは渡して貰う」

「ホント、相変わらず後先考えない異常者ね!」

 

とポイメデはシャドウリアスに手出し無用と合図して毒を右手に精製して構えた。その時!

 

「え?」

「ハァ!」

 

突然ポイメデは左腕を引っ張られ、大きく体勢を崩す。そのポイメデの顔面に炎磨の拳がめり込み、後ろに大きく吹っ飛ばす。更に、

 

『オラァ!』

「っ!」

 

戦兎と龍誠が飛び蹴りでシャドウリアスを後ろに吹っ飛ばした。

 

「な、なにを……」

「???」

 

ポイメデが驚きながら立ち上がり、炎磨もなにが起きたのか分かっていない。だがそこに匙が来て、

 

「俺はこう言う騙し討ち系も得意でね」

 

匙はそう言って黒い龍脈(アブソブーション・ライン)を見せた。そしてさっきまで見えなかったそれからでている糸が見えてきて、それを追っていくと、それはポイメデの腕についている。

 

「ラインを限界まで細くすることで視認しにくくした。力を散らせなくなるが、こう言う風に不意を突くのにはもってこいだろ?」

 

せめてこう言う事をしてから突貫しろよな。と匙は炎磨に言う。

 

「あんた……意外と影薄いけど凄いんだな」

「影薄いとな!?」

 

ガビーン!と匙は驚愕し、思わず戦兎と龍誠も笑ってしまった。

 

そうしながら戦兎はポイメデが殴られたときに落としたワープ装置を地面から拾い、

 

「ほらっ!」

「なっ」

 

炎磨に投げ、それを少し驚きながらキャッチ。

 

「帰りたいんだろ?それ使って帰れよ。こっちはこっちで何とかするからよ」

「……」

 

炎磨は戦兎の言葉を黙って聞き、装置を起動。空に歪みが生じ、それを見た炎磨は、

 

「聞こえるか」

「え?」

 

ブレスレットに話し掛ける。すると、

 

「その声は炎磨!?いまどこにいるんだ!?」

「そうよ!急に消えたかと思ったら今度は空が歪むし!」

「説明はあとだ。とにかくシャドウが暴れてる。その歪みに入ればこっちに来れる筈だ。手伝ってくれ」

『……』

 

ブレスレットから聞こえる息づかいから複数人いるようだ。そして、

 

『分か(った!)(ったわ!)(りました!)(りましたわ!)』

 

返事と同時に、空の歪みから今度が女の子達が飛び降りてきた。全員制服に身を包んだ女子達は、炎磨を見ると駆け寄ってきて、

 

「おい炎磨!お前心配させんなっつうの!」

「いって!雷華(らいか)!お前背中バンバン叩くなっつうの!」

 

咳き込みながら、自分より遥かに背が高い、雷華と呼ぶ女子に文句を炎磨は言いつつ、

 

「まぁいい、とにかくさっさとまずはシャドウを倒そう」

「えぇと……そこにいる人達は?」

 

戦兎達を見ながら、また別の女子が炎磨に聞く。

 

「ん?あぁ、まぁ変わり者だけど案外頼りにはなる人たちいっで!」

「本人たち目の前にそんな失礼な言い方しない!」

 

ゴチン!と雷華に拳骨を落とされ、悶える炎磨と、さっきまで炎磨に聞いていた女の子が戦兎の方に来て、

 

「初めまして。私は水嶋(みずしま) 流那(りゅうな)と言います。炎磨とは昔からの付き合いなんですが、きっと失礼なこと沢山したと思いますけど改めてこっちでキツくしつけておきますからどうか勘弁して頂けると……」

「あぁいやこちらこそ御丁寧に……」

 

とお互いペコペコ。雷華と比べると背は低いが、出るところは出てて、可愛い系だ。

 

「炎磨はその少し……いや滅茶苦茶根性が色々あって歪んでるので悪意はないんですけどホント性格が悪くて……」

「お前も大概じゃねぇか」

 

炎磨がボソッと呟くが、流那にジロッと睨まれ慌てて視線をそらす。

 

「と言うか炎磨!貴方またなにをしたの!」

「なにもしてねぇよ。少し笑っただけだ。愛と平和のために戦うって言うから胡散臭くっていっで!」

 

ゴチン!と雷華の鉄拳が再度炎磨の脳天に直撃。

 

「お前またそう言うことを言うのか!そんなことばっかり言うから敵作るんだぞ!」

「そうよ!いい加減オブラートに包むとか言わなくて良いことを言う癖どうにかしなさい!」

 

へーへーと炎磨は生返事し、また雷華に殴られる。その横では、

 

「し、しし知らない人がこんなにも……」

「たった三人です……」

「そうですわよ風琥。落ち着いて人って言う字を手に三回書いて飲み込みなさい」

 

ひとひとひと、と呟きながら風琥と呼ばれた全体的に少しムッチリとしたスタイルだけならこの面子一の根暗そうな女子は掌に書いているが、

 

「風琥先輩。それは人じゃなくて入です」

「え、えぇと琴葉ちゃん!早地ちゃん!人ってどう書くんだっけ!?」

 

そう細身の均整の取れたスタイルの琴葉と呼ばれる少女と細身と言うか一部が絶壁の早地と呼ばれる少女にパニックになりながら聞く風琥。そんな状況を見ながら戦兎は、

 

「なんか……凄いな」

「だな」

「あぁ」

 

と呟くと、龍誠と匙も頷く。そこに、

 

「ちょっとこら!私を忘れてるんじゃないの!?」

『あ……』

 

ポイメデが叫び、皆が慌てて臨戦体勢を取ると、

 

「いつものシャドウとは桁違いに強いからな。みんな気を付けろよ」

『えぇ!』

『はい!』

 

炎磨の号令で、皆はそれぞれ色違いの宝石を出す。

 

《マックスハザードオン!》

《ウェイクアップ!》

 

そこに戦兎はハザードトリガーを、龍誠は改めてクローズドラゴンにドラゴンフルボトルをビルドドライバーに挿し、

 

《ラビット!ラビット&ラビット!》

《クローズドラゴン!》

《ドラゴンゼリー!》

《ガタガタゴットン!ズッタンズタン!ガタガタゴットン!ズッタンズタン!》

 

戦兎と龍誠はビルドドライバーのレバーを回し、匙はスクラッシュドライバーのレバーを下ろす。

 

『変身!』

《紅のスピーディージャンパー!ラビットラビット!ヤベーイ!ハエーイ!》

「さぁ、実験を始めようか!」

《Wake up burning! Get CROSS-Z DRAGON!Yeah!》

「今の俺は……負ける気がしねぇ!」

《潰れる!流れる!溢れ出る!ドラゴンインクローズチャージ!ブラァ!》

「俺達の夢のため、アンタを倒す!」

 

それと共に炎磨達もブレスレットにそれぞれの宝石をセットし、6人の周りの火・雷・水・木の葉が包み、風が吹き荒れ土が隆起していき、

 

『精霊チェンジ!』

《サラマンダー!》

《サンダーバード!》

《ウンディーネ!》

《ドリアード!》

《シルフ!》

《ノーム!》

 

はぁ!気合いを入れながらブレスレットのリングを6人は回すと、炎磨は赤く炎を模した装飾品を身に纏い、雷華は黄色で雷を、流那は青で水を、琴葉は緑で木の葉、風琥は白で風、最後に早地は黒で土を模した装飾品をそれぞれ身につけ、全員ポーズを取る。

 

「燃え上がれ!聖なる炎よ!」

 

炎磨は拳を振り上げ、炎を撒き散らしながら叫ぶ。

 

「エレメンレッド!」

「轟け!聖なる雷よ!」

 

続けて雷華が降り注ぐ雷の中ポーズを決め、

 

「エレメンイエロー!」

「湧き出せ!聖なる水よ!」

 

更に流那も流れる水の中でポーズを取り、

 

「エレメンブルー!」

「生い茂れ!聖なる木々よ!」

 

琴葉はクルリと回り、木の葉が舞い散る中ポーズを決め、

 

「エレメングリーン!」

「吹き荒れろ!聖なる風よ!」

 

風琥を中心に竜巻が起き、その中から飛び出しながら決めポーズ。

 

「エレメンホワイト!」

「讃えよ!聖なる大地よ!」

 

最後に地面を踏み締め、ドン!っとポーズを早地は取る。

 

「エレメンブラック!」

 

そして6人は集まり、シャドウリアスを見据えると、

 

『我ら聖なる精霊に選ばれし聖戦士!』

「精霊戦隊!」

 

6人は動きを合わせて、またポーズを取りつつ炎磨が叫ぶと、

 

『エレメンジャー!』

『うぉわ!爆発した!?』

 

全員で決めポーズをしながら言うと、ドォン!後ろが爆発し、戦兎達は軽く悲鳴を上げる。

 

「普通爆発位するだろ」

「普通するか!」

 

炎磨が首を傾げながら言うと、戦兎は思わず突っ込んだ。

 

「ちっ!まぁ良いわ!シャドウ!フェイクシャドウ!全員まとめて始末しなさい!」

「っ!」

『キール!』

 

ポイメデの指示で、シャドウリアスが走りだし、それに続くようにどこからか現れたフェイクシャドウが戦兎達に襲い掛かる。

 

「はぁ!」

 

襲い掛かるフェイクシャドウを、フルボトルバスターで切り飛ばし、龍誠の蹴り、匙のツインブレイカーの銃撃が倒していく。

 

「やぁ!」

 

今度は雷華が両手から雷を迸らせながら突っ込むと、次々痺れさせつつ左右一本ずつのナイフを出す。

 

「喰らいな!」

 

電撃を纏わせ、フェイクシャドウを片っ端から倒していき、

 

「はっ!」

 

その上を飛んだ流那はロッドを手にフェイクシャドウを倒していき、水を撒き散らして転ばせると、

 

「雷華さん!」

「あいよ!」

 

雷華が雷を出してフェイクシャドウをまとめて痺らせる。

 

一方琴葉は木のツルのような鞭を手にし、

 

「はぁあああああ!」

 

的確に鞭でフェイクシャドウを打ち倒す。だがその後ろからコッソリと忍び寄ろうとするやつが一人いたが、

 

「えぃ!」

 

風で作られた矢が琴葉の横を通り抜け、フェイクシャドウを撃ち抜いた、

 

「ありがとうございます風琥先輩!」

「い、いいえ~ってこっち来たぁ!」

 

弓を手に一目散にフェイクシャドウから逃げ出す風琥と、それをキャッキャと追いかけるフェイクシャドウ。だがその前に土壁が現れ、

 

「キール?」

「怖がる淑女を追い回すなど言語道断ですわ……よ!」

 

悠然と歩いてきた早地が、巨大ハンマーをぶん回し、まとめてフェイクシャドウをぶっ飛ばした。

 

「オラァ!」

 

その隣では炎磨がシャドウリアスに炎をぶつけて怯ませ、蹴りを放つ。だがシャドウリアスはそれを受け止めると、逆に蹴り返してきて炎磨は後ろに下がる。それと入れ替わるように、

 

「ハァ!」

 

戦兎がシャドウリアスにフルボトルバスターの斬撃をお見舞いし、シャドウリアスの方が今度は後退る。

 

「随分圧されてるんじゃないか?」

「態々嫌み言いに来たのかよ」

 

戦兎に炎磨はため息を吐きつつ、二人は並んで立つ。

 

「うまく合わせろよ」

「そっちが俺にうまく合わせろよ」

 

と、二人は言って同時に走り出す。まず戦兎が高速移動で間合いを詰め、すれ違い様に フルボトルバスターで一閃。それを何度も様々な方向から行い撹乱しつつ、その隙に炎磨が剣に炎を纏わせてシャドウリアスを渾身の力で斬る。だが表面で剣が止まってしまうものの、炎を噴出させ更に押し込んでいる所に、

 

「はぁ!」

 

戦兎がフルボトルバスターで炎磨の剣を叩き、強引に斬撃を押し込んだ。それには流石にシャドウリアスが苦しそうな声を漏らし、そこに、

 

『ヤァ!』

 

雷華と流那と琴葉の3人による飛び蹴りがシャドウリアスを吹き飛ばし、その先で待ち構えていた早地が、ハンマーを振りかぶり、

 

「ヨイショ!」

 

カキーンとホームラン。更にそれに狙いを定め、風琥が弓を構えて風で矢を作ると、力を溜めて放ち撃ち落とす。そこに龍誠と匙が上に飛び上がり、それぞれビートクローザーとツインブレイカーアタックモードを振りかぶり、空中から地面に叩きつけるように攻撃し、シャドウリアスは地面に叩きつけられた。

 

(ちっ!)

 

ポイメデは心の中で舌打ちする。本来ならこっちも動きたいのだが、全員がポイメデの動きに戦いながらも意識を向けている。ポイメデ自身は然程身体能力に優れている訳じゃない。奇襲等の不意討ちが主だ。一撃でも入れれば相手を戦闘不能にする自信はあるが、これでは動くに動けない。そしてその間にも戦兎や炎磨達は達は並ぶとそれぞれの獲物を手に構えつつ、

 

《フルフルマッチデース!》

《スペシャルチューン!ヒッパレー!ヒッパレー!ヒッパレー!》

《スクラップブレイク!シングル!ツイン!》

《フィニッシャー!》

 

戦兎はフルボトルバスターにフルフルラビットタンクボトルをセットし、龍誠はドラゴンフルボトルをビートクローザーにセット。更に匙はレバーを下ろしてからドラゴンスクラッシュゼリーとタカフルボトルをツインブレイカーにセットして炎磨達はブレスレットのリングを二回回すと、

 

《フルフルマッチブレイク!》

《メガスラッシュ!》

《ツインフィニッシュ!》

『ハァアアアアア!』

『セクステットエレメンタルフィニッシャー!』

 

全員の最大火力による一撃は一点に集まり、巨大なエネルギーの塊となると、シャドウリアスに飛んで行き、大爆発を起こした。

 

そして、

 

「よっし!リアスが戻った!」

 

龍誠はそう言ってガッツポーズ。だが、ポイメデは駆け寄ろうとし、

 

「させるか!」

 

と戦兎は咄嗟にポイメデを撃って牽制。

 

「おとなしく巨大化なんてさせるかよ」

「おいおい。お約束破りはダメだろ?」

 

そこに突然地面に火花が散り、咄嗟に戦兎達が防御姿勢を取ると、

 

「兵藤一誠!?アザゼル先生と戦ってたんじゃ!?」

「ん?適当に切り上げてから来たんだよ。ほらポイメデ!さっさとやれよ」

 

一誠に言われ、ポイメデは命令するんじゃないわよと言いつつ倒れているリアスに液体を垂らし、

 

「う、うぅ……」

「さて、後はご自由に。チャオ」

 

体がシャドウに戻りながら、巨大化していくリアスを尻目に、霧を出しながら一誠はポイメデと一緒に消えていく。

 

「え?ちょっと!?」

「安心しなって。ちゃんとあんたを帰してやるからさ」

 

そうして一誠達が消えた頃には、完全に巨大化したシャドウリアスがこちらを踏み潰そうとしてきた。

 

「あぶねぇ!」

 

全員転がり、それを避けていると、

 

「皆!大丈夫!?」

「木場!?それに皆も!」

 

空を飛んできた皆と合流。

 

「う、うひぃ。また知らない人がきたぁ。うぷ!吐きそう……」

「お、落ち着きなさい風琥」

 

フラッと後ろに倒れそうな風琥を、早地は慌てて支えている。すると炎磨が、

 

「ほら行くぞ!」

 

リングを3回回しながら言い、他の皆も3回回す。そして、

 

『精霊召喚!』

《サモン!》

 

ブレスレットがついている左手を掲げ、そこから光の柱が立つと、そこから赤いトカゲサラマンダー以外にも、黄色い全体的にトゲトゲした鳥、体が水のような素材で、金属の鎧をつけた青い魚、木の葉を落としながら多数の根っこでシャカシャカ走る緑の大木、布と風を纏った巨大な白蛇。そして最後に全身黒い金属の鎧で重々しく歩く精霊達が降り立ち、炎磨たちも姿を消す。それを見送りながら、

 

「そういえばアザゼル先生は?」

「なんでも用事があるとかで……」

 

ふと気づいて聞く龍誠と、それに答えるアーシアがいたのは余談として、

 

「雷華!行くぞ!」

「了解!」

 

サラマンダーと雷華の契約した精霊であるサンダーバードは並んで立つと、

 

『精霊合体!』

 

炎磨と雷華が叫ぶと、まずはセイレイジンに変形し、サンダーバードは分解すると翼の部分がセイレイジンの背中に合体し、爪の部分が両足に装着。そして頭の部分が外れて変形し、更に空から突如王冠が現れ、赤と黄色の宝石が填められると、セイレイジンの頭に装着し、

 

『完成!セイレイオウ!』

 

炎磨と雷華は中にある操縦用の異次元広場に立つと、そう叫びながら、セイレイオウの翼を広げ、空を飛びながら蹴りを入れていく。

 

『ハァ!』

 

空を飛び、上空から一気に襲い掛かり、シャドウリアスは堪らず後退る。そこに流那が契約した精霊であるウンディーネの中から炎磨に呼び掛ける。

 

「炎磨!」

「あぁ!」

 

ウンディーネの体がグネグネと変形し、鎧が意思をもった風に動き出すと手甲のような形に変形。

 

『精霊合体!』

 

手甲のような形になったウンディーネは、セイレイオウ両腕に装着され、肘の辺りまで覆う。更にグネグネと形を変えた体が二つに別れ、カッターブレードになると、前腕部分に合体して王冠に青い宝石が装着されると、

 

『完成!セイレイダイオウ』

 

今度は流那も加え、セイレイダイオウは流れる水のように滑らかにシャドウリアスの懐に入り込むと素早く拳を連続で叩き込み、蹴りで更に吹っ飛ばす。そこに琴葉はドリアードに操って来ると、

 

「炎磨先輩!」

「あぁ行くぞ!」

『精霊合体!』

 

そしてドリアードはバラバラに崩れると、セイレイダイオウの拳や足にくっつき刺になりながら、一部が両肩にアーマーのような形になって装着。更に王冠にも緑色の宝石が追加。

 

『完成!セイレイテイオウ!』

 

刺付きになって更に威力が上がったパンチやキックを叩き込み、怯んだところに空を飛び上がりながら落下。落下速度も上乗せしたキックをお見舞いし、横から風琥のシルフが放った風でシャドウリアスが吹っ飛ぶ。

 

「わわ!私もいきまじゅ!」

 

ガチィ!と痛々しい音が通信越しに聞こえ、

 

「大丈夫ですか?」

「ひ、ひはかみまみた(舌噛みました)……」

 

と炎磨に風琥は答えながら、セイレイテイオウとシルフは並び、

 

『精霊合体!』

 

その叫びとともにシルフの本体と布が分離し、布が広がって2枚に分かれると、一枚はセイレイテイオウの腰に巻き付き、腰布のように巻かれると硬質化し、もう一枚はマフラーのようになると、口元ごと覆って同じく硬質化。更に蛇の胴体と首が別れ、腰に着いて尻尾のようになり、首の部分がお腹の部分に合体。最後に王冠に白の宝石が装着。

 

『完成!セイレイハオウ!』

 

クルリと回転して尻尾で攻撃し、お腹の顔から烈風を放って追い討ち。更に2、3と殴って蹴る。

 

「と言うことでそろそろトリの出番ですわね!」

「そうなりますかね」

 

金属の鎧であるノームを操ってガシャガシャとやって来た早地に炎磨は答え、

 

『精霊合体!』

 

バァン!と鎧がバラバラに別れ、胸や脛に太腿や上腕部分に鎧を装着。更に王冠が一度外れて頭に兜を被ると、その上に王冠を装着し直し、黒い宝石が嵌まる。

 

『完成!セイレイメイオウ!』

 

重厚感を増したセイレイメイオウは、そのままタックルを決めてシャドウリアスを下がらせ、セイレイブレードを出すと雷を纏わせて斬り、続けざまに地面から木を生やしてシャドウリアス

足に絡ませて転ばせると、地面を隆起させて山を2つ作ると、サンドイッチにしてしまう。

 

しかし、

 

『なっ!』

 

サンドイッチの中から滅びの魔力が火山の噴火のように噴出し、中からシャドウリアスが飛び出してきた。だがそれだけじゃない。全身に滅びの魔力のオーラのようなものを纏わせており、

 

「ちっ!暴走しやがった!」

 

炎磨が驚愕している間に、シャドウリアスはセイレイメイオウに接近すると、ゼロ距離で滅びの魔力を噴射。

 

『きゃああああ!』

「くっ!」

 

火花と煙を出しながらセイレイメイオウが後退り、その後も蹴りと殴りをいれつつセイレイメイオウを押し始める。

 

「おいおい!何か苦戦し始めてないか!?」

「あぁ、そのようだな。部長の雰囲気が変わったし……」

 

龍誠に戦兎は答えつつ、怪獣大決戦の様相を呈してきた戦いを見る。

 

「あれだけ大きいと私達が援護しても効果は薄そうですしね」

「ですがこのままじゃ……」

 

ソーナと匙もそう話す中。突如地面がまた揺れ、

 

「ハーハッハッハッハッハ!こんなこともあろうかと作っておいて正解だったぜぇ!」

『ん?』

 

ピョーン!と戦兎達の頭上を跳び越える赤いウサギと、ジェット噴射で飛んでいく青いドラゴンのロボ達が過ぎていき、シャドウリアスに体当たりをするとぶっ飛ばした。

 

「フハハハハハハ!」

「なにやってんだあの人……」

 

トォ!とロボの上に立っていたアザゼルは飛び降りると、

 

「いやぁ、こんなこともあろうかと合体変形ロボウサギ&ドラゴンver前々から作ってはいたんだけど」

「どんな状況を想定してんだよ」

 

アザゼルが笑いながら言うと戦兎が突っ込む。それにめげずアザゼルは、

 

「まぁとにかくだ。大急ぎで戦兎と龍誠用にセッティングしてきたからあれで戦いに行ってこい」

『はぁ?』

 

苦戦してるみたいだしな!そうアザゼルは言いながら戦兎と龍誠を蹴って送り出すと、戦兎と龍誠はそのままそれぞれロボに乗る。

 

「先生……俺には?」

「ねぇよ。まだ試作段階だからな。2機しか作ってねぇし1人乗り用なんだよ」

 

マジかよ……とガックシ肩を落とす匙。そんな匙を横目に朱乃は、

 

「でも何であんなものを?」

「そんなの決まってんだろ。合体したり変形する巨大ロボは永遠の少年の夢なんだよ!」

 

あなたもう少年なんて年じゃないでしょう……ソーナはそう突っ込み、他の女性陣もうんうんと頷くが、

 

「ちょっと分かるかな」

 

割りと男性陣は好意的だった。そんな中、ウサギロボの蹴りと、ドラゴンロボの体当たりでシャドウリアスを怯ませる。

 

「意外と動かせるもんだな」

「まぁディスプレイに手を置いて念じるだけだからな」

 

だがシャドウリアスは体勢を整えると、滅びの魔力を発射した。

 

『うぉ!』

 

咄嗟に跳んで避けたものの、決め手に欠けてると言うのが本音だ。するとそこにアザゼルが、

 

「よーし!お前ら!合体しろ!」

『はぁ!?』

 

出来るの!?と戦兎と龍誠が聞くと、当然!とアザゼルも叫ぶ。

 

「成程合体か……」

 

それを聞いて、雷華が顎に手をやりつつ、

 

「よぉし!その手でいこう!」

「なんだお前急に」

 

炎磨が雷華が急に叫ぶため怪訝な目を向けると、

 

「あれと合体するんだよ!」

「あれって……あの辺なウサギと龍のロボットか?出来るのかよ」

 

そのやり取りに、サラマンダーが口を挟む。

 

「俺嫌だぜ?ああいうロボットと合体なんてよ。痛そうじゃねぇか」

 

それにそーだそーだと他の精霊たちも口々に言うが、

 

「うるさーい!このままじゃ埒が明かないんだから仕方ないだろ!」

「いやそもそも俺たちも合体できるか分からないんだが?」

 

こう言うのはノリと勢いとフィーリングでやるんだよ!と雷華はサラマンダーに言って戦兎と龍誠に声をかける。

 

「おぉい!えぇと……あの人たち何て言うんだっけ?」

「あの赤いナルシストっぽい方が桐生 戦兎で青いアホそうな方が万丈 龍誠だったかな」

『おいこら!』

 

待て!と戦兎と龍誠は突っ込みをいれてると、

 

「こんのバカ!」

 

いで!と雷華の拳骨で炎磨が悲鳴を上げた。

 

「という訳ですいません桐生さん。万丈さん。力をお借りしていいですか?」

 

その間に流那が会話を引き継ぎ、聞いてくるので、

 

「構わねぇけど行けるのか?」

「おいおいお前ら!俺が言ってるのはウサギとドラゴンのロボット同士の合体だぞ!そっちとの合体は想定外だ!」

 

アザゼルはそう言って待ったを掛けるものの、

 

「なら合体システム事態はあるんだしいけるっしょ」

 

割りと楽観的な雷華はそう言い、他のメンバーもうやれやれと肩を竦める。

 

「ここまで来たらやってみましょう」

「が、がんばります……ヒッヒッヒッフー!」

「それはラマーズ法よ……風琥」

 

琴葉が小さくガッツポーズし、風琥は軽く過呼吸のなりそうな勢いで息しているため、早地が落ち着かせて、

 

「それじゃ精霊がっ……って精霊じゃおかしいか」

「別に何でもよくね?」

「よくない!こう言うのはノリと勢いとフィーリングが大事なんだ!」

 

ならこれでいいだろ? と怒る雷華に炎磨はため息を吐きつつ案を出すと、

 

「あ、それいいじゃん!オーイ桐生さん!万丈さん!一緒にお願いしまーす」

「え?俺らも言うのか!?」

 

ギョッと龍誠は言いながら驚愕し、とーぜん!と雷華は言う。

 

「まぁ、ここまで来たらノッてあげますか」

「戦兎。お前意外とノリノリだろ?」

 

そんなことはないって。と戦兎は返しつつ、炎磨達と声を会わせた。

 

『聖魔合体!』

 

それと共にウサギとドラゴンのロボがバラバラに分解され、脚部を覆うようにウサギのパーツが張り付き、脛の部分にバネのような模様が形成され、ドラゴンのパーツは胸の中央にドラゴンの顔のような形に合体し、変形したパーツ達が付き、肘の部分にドラゴンのパーツで出来たジェット噴射が可能なスラスターが融合。最後にウサギの耳と、ドラゴンの尻尾で出来たパーツがそれぞれ変形し、セイレイメイオウの目の部分に合体。

 

「うぉ!」

「な、なんだここは!」

 

すると、普段炎磨達が操縦している空間に戦兎と龍誠がワープする。

 

「そっちもこっちきたのかよ……」

「悪かったな」

 

炎磨と戦兎は一瞥しあってまた前を見る。

 

「んで?これなんて言うんだ?」

「あ?別に何でもいいだろ」

 

龍誠はさっきからそれぞれ合体すると名前があったことには気づいていたため、炎磨に聞くとそっけない返事。だが、

 

「えぇー!それじゃつまんないじゃん!ならそうだなぁ……スーパーウルトラハイパーセイレイメイオウとか!」

「ネーミングセンスが今時小学生ですらやらないセンスね」

 

なにぃ!?と雷華は流那の突っ込みにガーンとショックを受けていると、

 

「ならこれでどうだ?」

 

炎磨は仕方ないと言いつつ名前を言うと、皆はそれいいじゃんと同意。そそて皆はせーのと息を合わせ、

 

『完成!セイレイマオウ!』

「何か楽しくなってきた」

「まぁ否定はしない」

 

と、最後に龍誠と戦兎が呟いたのは、余談である。




いやぁ、今回何が一番大変だったった合体シークエンスですね。えぇ……ホントこれは大変でした。

と言うかある程度覚悟してましたが炎磨へのヘイトが凄い凄いwおぉおぉ嫌われてるなぁなんて思いながら感想読んでましたwまぁ個人的に見ても炎磨は人受けするキャラじゃないですからね。書いてるこっちとしては結構炎磨のキャラは楽しいんですけどね。基本戦兎たちって良い子って言うか最初からヒーローでしたし……その点炎磨は最終回までやって少しヒーローらしくなるって感じのキャラですから。まぁなんでああいう性格なのかはこっちの中やキャラ説みたいなのつくって説明しようとは思ってますけどね。


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善と悪

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「巨大化した部長(シャドウver)に苦戦を強いられる炎磨達。だがそこに巨大合体ロボをこっそり製作していたロボと炎磨達のセイレイメイオウが合体し、セイレイマオウになる!」
龍誠「物語もクライマックスだぜぇ!」
匙「俺も合体したかったなぁ……」
戦兎「ま、まぁそのうちチャンスあるって」
ヴァーリ「お前は良いじゃねぇか……俺なんか影も形もねぇぞ」
龍誠「ほらああいう奴もいるしな」
炎磨「そのてん俺は美味しかったな」
匙「ゲストの癖にぃいいいいいいい!」
戦兎「ってな感じでやっていく84話スタート」


『完成!セイレイマオウ!』

「合体しちまったよ……」

 

ポカーンとしながらアザゼル達が驚愕してしまう。

 

「意外とできるものなんですね」

「俺も予想外だったよ」

 

ソーナにアザゼルが答えている間に、セイレイマオウはシャドウリアスに向かって高速で走り出し、飛び上がると雷を纏わせてシャドウリアスを蹴る。

 

更に素早く拳を青い炎で覆うと殴って怯ませ、離れたシャドウリアスに木の棘を撃って追い討ち。

 

『はぁ!』

 

そこに突風が吹き、シャドウリアスを風で持ち上げると、土が隆起し巨大な拳が形成され、その拳がシャドウリアスをぶん殴る。

 

「まだまだ!」

 

戦兎の声と共にセイレイマオウが疾走。吹っ飛んだシャドウリアスを先回りし、蒼い炎をまとわせた拳で殴って止め、今度は真っ赤な爆炎を脚に纏わせて回し蹴り。

 

それにシャドウリアスは後ろに後退りながら滅びの魔力を撃って反撃に出るが、高速移動で横に跳んで避けると、そのまま間合いを詰めて右手に風を、左手に土を纏わせて殴り、首に巻いたマフラーをムチのようにしならせて追撃。そこにまた走り込むとショルダータックルで吹っ飛ばし、

 

「今度はこれだ!」

「行くぜぇ!」

 

戦兎と龍誠の掛け声と共に、セイレイマオウの腕に巨大なドリルが現れ、青い炎を纏わせて回転させながらシャドウリアスに当てて攻撃。

 

「今度はこっちだ!」

 

と炎磨はセイレイジンの時にも出した剣を掛け声と共に出して空いてる方の手で持って、炎・雷・水・木の刺・風・土と次々纏わせる物を変えて切り裂く。

 

「そろそろ決めるか」

「あぁ」

 

炎磨と戦兎は少し前に出て並ぶと、

 

「折角だ。合体はそっちに合わせたんだし決め台詞はこっちに合わせてくれよ」

「なに?」

 

戦兎の突然の提案に炎磨は眉を寄せるが、

 

「まずはこうやってな……」

 

と戦兎は気にせず教えて、周りもそれを見た。そして戦兎がせーのと音頭を取り、

 

『勝利の法則は決まった!』

 

それと共にセイレイマオウは飛び上がり、周りにオーラで出来たサラマンダー達や、ウサギにドラゴンが現れ、クルリと回って急降下しながら次々とオーラは両足に取り込んでいく。名前は教えるついでに決めていて、

 

『セイレイマオウインパクト!』

 

そのドロップキックは、シャドウリアスに炸裂すると同時に後ろにガリガリと押していき、大爆発を起こしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『かんぱーい!』

 

シャドウ騒動の日の夜。旧校舎にて簡単なリアス救出成功祝い兼、まぁ炎磨達の歓迎祝い的なパーティーが行われた。とは言え、炎磨達は明日の朝には装置を使って帰るのだが。

 

「初めまして。麻比 雷華です。あ、高校2年で炎磨やこっちの流那とは同級生です」

「水嶋 流那です。先程はお世話になりました」

「木ノ本 琴葉……です。1年です」

「ふ、ふふふ吹上ぃ、風琥ぉ、ですぅ……さ、3年です」

「土田 早地。以後お見知りおきを。風琥と同じく3年ですわ」

 

とまぁそんな感じで向こうの自己紹介から始まり、こっちもして簡単な料理と飲み物でパーティーが始まる。

 

そんな中、

 

「よっ」

「……」

 

隅で一人飲み食いしていた炎磨の元に、戦兎がやって来た。それを見て炎磨はヘラっと笑うと、

 

「ようヒーロー。今日は大活躍だったな」

「そっちこそ態々仲間呼んでまで助けてくれただろ」

 

そんなんじゃねぇよ。と炎磨は首を横に振り、

 

「装置奪ってくれたし、最初会ったとき間違って襲っちまったからな」

「そういやそうだったな。てっきり忘れてると思ってたぜ」

「お前とあの塔城とかいうやつがシャドウってなんだとかお前は何者だとか言って質問攻めにされてタイミング逃さなきゃ謝る気ぐらいあったわ。お陰様で謝れない奴認定喰らったし!」

 

と、どこか虚空を見ながら炎磨が言うので、誰に言ってるんだ?と戦兎は突っ込みつついると炎磨は我に帰って、

 

「んで?何の用なんだ?」

「あぁいや、今回は助かった。礼を言うよ。お陰でうちの主も無事帰ってきたしな」

 

こっちも良い暇潰しにはなったよ。炎磨はそう言ってお菓子を口に放り込む。

 

「暇潰しね」

「あぁ、言っただろ?基本的に俺が戦うの暇潰しのためだぜ?まぁ、仲間のために位は命を賭けるけどな」

 

その仲間が彼女達ってことか?そう戦兎が問うと炎磨は頷き、

 

「この糞みたいな世界で信用できる唯一の存在だ。世界かアイツらかを並べられたら迷うことなくアイツらを選べる。寧ろ俺が世界を滅ぼしても良いくらいさ」

 

ヘラヘラと笑いながら、炎磨は言うので、戦兎はため息を吐くと、

 

「ホント、お前とは全く意見が合いそうにないよ」

「俺もアンタとは友達にはなれそうにないな」

 

そう言いながら炎磨は人差し指を立てて戦兎の胸に当てると縦に真っ直ぐ下ろしていく。

 

「ただアンタの本性は気になるね。愛と平和のために戦うんだっけ?仮面ライダーってさ。でも人間……って悪魔か?まぁ良いや。とにかくどんな綺麗事を言っても生き物てのはいざってときは自分にとって利益がある方に走るものだからなぁ。あんたはどんな掌返しを見せるのかな?それとも最後までそれ貫いて早死にかな?」

「悪いな。俺は子孫に囲まれて畳の上で大往生と決めてるんだ」

 

戦兎は炎磨の顔を覗き込みながら言う。

 

「俺はまだ未練があるんでね」

「未練があるならそっち優先した方がいいぜ?ヒーローなんてやめちまえよ」

 

炎磨はそう言って両手を広げて見せる。

 

「この範囲だ。俺もあんたも手を伸ばしたところでこの範囲しか届かない。走ればもう少し遠くまでいくかもだけどたかが知れてる。だったら最初から世界なんてだだっ広いのを守るのなんて無理だよ。だからせめて近くに仲間集めといてそこにいる方が効率的だし確実だろ?ヒーローなんてしてたらあっちこっち行かなきゃならんし一番大切なものが危ないとき側にいてやれないぜ?」

「そのための力だろ?俺もお前も力がある。頑張れば遠くにいる奴だって助けられる」

「見ず知らずの赤の他人のためにそんな無茶をするのか?理解できないよ俺には。信用もできない奴にさ」

 

信用できる奴かどうかは助けてから考えれば良いだろ?戦兎はそう言い返す。だが炎磨は、

 

「じゃあ信用できないと助けたあとにわかったら?そうだなぁ……そいつはどうしようもないクズ野郎でそいつを助けて生きてたがゆえにその後善良な人間が殺されでもしたら?あんたはそいつが起こす事件全て止めるのか?それとも助けた後に話し合いか?もしくは助けた後に殺すか?」

「正直わからない。まだそういう事態になったことがないからな。でも俺はそれでも助けると思う。それでも……変わってくれることを信じたいからな。危ない目に遭えば考えを変えてくれるって。生まれながらの悪人はいない。色んな事情があって変わって悪になるならまた悪から善に反転できるかもしれない。それでもダメなら……俺が責任をもって倒すよ」

 

性善説だねぇ。ケラケラと炎磨は笑い、

 

「俺は信じられないからなぁ。人間なんて生まれながら糞みたいな存在だと思ってるしだからそんなだから善人の仮面を被りたいから法を定めてると思ってる。そんなやつらのために命賭けるなんて馬鹿げてる。だから誰を助けるかは俺が自分で選ぶ。信用できて死んでほしくない奴。それ以外は知ったこっちゃない。わかりやすいだろ?」

「さながら性悪説だな。疲れないか?そんなに疑ってばかりいてよ」

「全然。寧ろ気楽だよ。それに特定のやつらは信じてるんだからな」

 

炎磨はまた口にお菓子を放り込みながらヘラヘラ笑い、

 

「だから俺はこれからも変わらない。信じたい奴だけ信じて、それ以外は捨てて暇潰しに戦う。あんた達の言う愛と平和なんていう胡散臭い理由何かじゃ断じてない。こんな正義もない世界でヒーローなんてバカなことやるくらいなら、自分の思うように戦うんだ」

 

そう言って炎磨は背を向けて別の隅に移動しようとするので、

 

「最後に一つ良いか?」

「うん?」

 

顔だけ戦兎に向け、炎磨は少し振り替えると、

 

「お前、口じゃ赤の他人なんてどうでも良いしどうなろうが知ったことじゃないと言うよな?」

「口じゃ?」

 

炎磨は戦兎の言い方に少し眉を寄せた。そしてそれを見ながら戦兎は、

 

「だけどよ、じゃあなんでお前は最初に会った時に塔城に会ったときに大丈夫か?って聞いたんだ?本当にどうでも良いなら、そんなこと聞かないはずだし、そもそも助けにも入らないはずだ。それとも帰る手がかりだったから?いや、あそこで助けにはいる必要性はない。お前が俺をハイシャドウ勘違いしてたなら、様子見を決め込むはずだ。そして、それだけ大事な仲間なら何で戦う?そんだけ大事なら暇潰しに巻き込むのか?」

「……」

 

ゾクリと戦兎の背中に冷たいものが走る。さっきまでヘラヘラと笑っていた炎磨の眼から笑みは消え、空虚でどこまでも深い闇が垣間見えた気がした。

 

「まぁまず戦う理由か?そうだな。どうせ俺が行かなくてもアイツらはお人好しだから行くんだよ。俺が何を言ってもな。だったら最初から俺も暇潰しついでに一緒に戦う方がいい。何事も楽しんだ方がいいからな。そして塔城?って子に言ったことだが……そんなこと言った覚えはない。聞き間違いじゃないか?後割り込んだ理由は単純に直接聞いた方が早いと思ったからだ」

 

と言い残し、炎磨は別の隅に移動してしまった。するとそれと入れ替わるように、

 

「あの……」

「ん?あぁ、確か水嶋だっけ?」

 

はい、と良いながら流那はやってくると、

 

「今回はありがとうございました」

「いや、こっちも助かったからお相子だよ」

 

どうも流那は腰が低いため、戦兎としてはかなり相手がしにくい。こっちまでヘコヘコしてしまう。

 

「それにしても炎磨また失礼なこと言いませんでした?」

「いや、俺の方から行ったし特に気にすることはなかったよ」

 

そうですか、と流那は少し安心したような表情を浮かべ、

 

「すいません。アイツホントに根性がネジ曲がってるので……」

「大変そうだな」

 

戦兎が同情してそう言うと、

 

「昔は炎磨もああじゃなかったんですよ。ぶっきらぼうなのは変わらないけどお母さんに似て優しいところもあって……」

「そうか。そいつは炎磨のお母さんって人は素敵な人だったんだな」

 

懐かしむように言う流那に、戦兎は頷くと、

 

「えぇ、でも今のアイツも全部悪気がある訳じゃないんです。特にその……愛と平和のために戦うって言うのをバカにしたのも」

「え?」

 

少し流那は迷いながら口を開き、

 

「炎磨のお母さんはお医者さんで海外で戦地の医療支援のリーダーをやってた人なんです。綺麗で優しい人で……当時は現代のナイチンゲールなんて呼ばれてたんですよ?今も言ってたのを覚えてます。そこに困ってる人がいるのなら手を伸ばすんだって。すぐには無理でも、いつか争いのない愛と平和が……ラブ&ピースが当たり前の世界になってほしいって。このラブ&ピースって炎磨のお母さんが活動していたチームの理念でもありましたから。そんなお母さんを炎磨や炎磨のお兄さんは大好きでした」

「凄いな」

 

まさか別の世界でもラブ&ピースを胸に活動している人達が居たことに、戦兎は少し驚いていた。

 

(つうかあいつ兄貴いたのか……って待てよ?)

 

だがふと気づく。さっきから流那の言い方が、何処か過ぎた過去の話をしていたことに。すると、

 

「でも炎磨と私が小6の時、炎磨のお母さんはある国の激戦地の支援にいってたんです。と言っても中心地じゃなくて離れてる場所ではあったんですが、戦争が激化する中炎磨のお母さん達がいたところに攻撃が来て、炎磨のお母さん達は……」

「そうだったのか」

 

流那の言葉で、どう言った結末なのかは想像できた。しかしまだ話は続き、

 

「そしたら世間の反応は一変しました。今まであれだけ持ち上げてたのに世間はあっという間に炎磨のお母さんを批判し始めて、避難せずに患者も団体のメンバーも全員死なせた役立たずって言い始めましてね。テレビなんか連日酷かったんですよ?現代のナイチンゲールの隠された素顔とか裏の顔とか銘打って、それはもうワイドショーで報道されたり、週刊紙で好き勝手書かれたり、SNSも大炎上。極めつけに報道関係者の連日突貫取材と来ましたからね」

「そっちの世界の人間ってのはロクなのいねぇな」

 

思わず戦兎が苦笑いを浮かべると、流那はそうですねと言い、

 

「まぁ炎磨のお父さんの家ってお金持ち何でメディアとかが食い付きやすかったって言うのもあるんですけどね」

「アイツボンボンだったのか……」

 

見た感じそう言う風には見えなかったが、意外な一面ではある。

 

「それからですね。炎磨が人に対して冷たくなったのは。きっと愛と平和なんてって言うのも、あの時あれだけ母親を持ち上げて、流行語になるほどだったのに、掌を返して嘲笑に変えた人達を思い出しちゃうからだと思います。アイツにとって愛と平和は……ラブ&ピースは、お母さんの代名詞でもあり、あの人を嘲笑する言葉の象徴なんです」

「……」

「まぁ、アイツの根性の悪さは事実なのでこれからも矯正してく予定ですけどね」

「優しいんだな」

 

そんなんじゃありません。と流那は言う。

 

「罪悪感、もしくは贖罪ですよ。私はアイツが辛かった時に一緒にいてあげれなかった。アイツに助けられたのに逃げて……結局掌を返した人達と同じことをしただけです。だから今度は絶対逃げたくない。それだけなんですよ」

 

力なく笑う流那に、戦兎はどう言うことか問おうとしたその時、

 

「さぁ皆さん!デザートですよ」

『げっ!』

 

ソーナがそれはもう巨大なケーキを持って部屋に入って来て、思わず戦兎達は悲鳴をあげてしまった。その反応にソーナは首をかしげ、皆は慌てて何でもないと答えつつも、

 

「どうすんだよ戦兎!俺たちならまだしもあっちは……」

「あぁ」

 

匙と戦兎が見る先にいるのは炎磨達。真っ先にケーキを貰ってフォークを手にケーキを口に運び、

 

『っ!』

 

ピキィ!と空気が固まった。と言うか空気だけじゃなくて表情まで固まり、炎磨は口を開くと、

 

「なんだこれ!不味「おっと炎磨!そんなにお気に召したのかなぁ!」むぐぉ!」

 

不味いと言おうとした炎磨の口に、雷華が素早く大きめに自分のケーキをフォークでカットし、炎磨の口に押し込んだ。まさにその早業は雷の如くである。

 

「あ、そんなに気に入ったなら私のもあげるね」

「先輩どうぞ……」

「あ、えと……あ、あげます!」

「まぁ仕方ないですわね」

 

と流那、琴葉に風琥と早地も矢継ぎ早に炎磨の口に押し込み、

 

「アイツ死んだんじゃねぇか?」

「あぁ……」

 

思わず合掌したくなるが、それをやるとダメージがあるため止めておく。だが、

 

「そんなにお気に召したんですか?それでしたらまだたっぷりありますからどうぞ!」

 

と追加をソーナが持ってきて、

 

『……』

 

多分雷華達の絶望に染まった顔は、この先も忘れられそうにない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……』

 

ブゥン!と道路をバイクが駆ける。それには前に戦兎、後ろには小猫が乗っていた。

 

さて炎磨達が装置によって自分の世界に帰ってから二日。先日借りた漫画を読み終えたので、また小猫の部屋に行って漫画の続きを持ってきている最中だった。すると、

 

「ん?」

 

道路の脇を歩く見覚えのあるシルエットに、戦兎はバイクを止めると、

 

「シェムハザさん?」

「む?」

 

間違いなかった。片手で数えるほどしか会ってないが、何度がアザゼルに会いに来ているのを見ていたため、多少は知っている。

 

現在はアザゼルがこっちに掛かりきりなため、実質堕天使を取り仕切っているシェムハザだ。

 

「あぁ、桐生 戦兎に塔城 小猫ですか。丁度いい、アザゼルのバカは知りませんか?」

「アザゼル先生?あの人なら傷心旅行にいくとか行って旅立っちゃいましたよ?」

 

戦兎が言うように、先日の巨大ロボ戦の後、強引な合体のせいかアザゼルが作ったウサギとドラゴンのロボは大破し、アザゼルは絶望した!とかいって何処かへ傷心旅行に行ってしまったのだが、シェムハザは静かに何やら書類を見せると、その紙に書かれた数字に戦兎と小猫は眼を見開く。

 

「こ、この金額は?」

「アザゼルがうち名義に請求書を送ってきましてね。何やら知らない間に巨大ロボを製作してたようですが、少しお話ししようかと」

 

フフフとシェムハザはコメカミをビクンビクンと躍動させながら不気味に笑い、そのまま何処かへ消えていく。

 

「こりゃ暫くアザゼル先生帰ってこれねぇな」

「ですね」

 

そんなやり取りをして、戦兎は改めてエンジンを吹かしつつバイクを走らせた。すると、

 

「そういえば先輩」

「ん?」

「火乃 炎磨さんとは意見は合わないにせよ、余り反発はしませんでしたよね?てっきりもっとラブ&ピースの事を笑われたときは怒るかと思いましたよ」

 

そう言えばそうかもな。と戦兎は言いながらバイクを走らせる。

 

「まぁ、なんだかんだ言おうとお前を助けてくれたしな。そいつを無下にはできないだろ」

「なんですか?それ」

 

そう言いながら小猫は戦兎の腰に回した腕に少しだけ力を込める。少し冷えてきて、バイクでの移動が少し大変になってきたものの、火照った頬には丁度いい。

 

「さ、飛ばすぞ!」

「はい!」

 

戦兎がそう言うと小猫は答え、バイクは速度を上げる。一方その頃、

 

「ふわぁ……」

 

先日に無事装置で元の世界に帰って来た炎磨は、大きな欠伸をした。帰ってきてから二日経ったが、どうも疲れが取れない。

 

【じゃあなんでお前は最初に会った時に塔城に会ったときに大丈夫か?って聞いたんだ?】

「……」

 

苛々する。口から思わずでた大丈夫かも、最初に桐生 戦兎をハイシャドウと勘違いしたときに感じた、ハイシャドウとシャドウが何故か戦ってて、そこに一般人(小猫と気絶した女性)がいて危ないと思ってしまい、何か話していたのも聞こえず突っ込む小猫が間合いを詰めきる前に思わず間に入ったのも、全部自分らしくない。

 

特にあの目だ。桐生 戦兎のあの目。記憶の奥に追いやった母と同じ目。そしてそれと共に一緒に思い起こされる裏切りの記憶。これだったら最初に桐生 戦兎が死んだと思ったとき、手ぐらい合わせるかと思い戻るべきじゃなかったかもしれない。嫌だがそうすると帰ってこれなかったし……

 

(気にくわねぇな)

 

そんな胸にどろどろとした感覚が渦巻いていると、

 

「なーに暗い顔してんだよ!」

「いっで!」

 

バチコーン!と背中を叩かれ、炎磨は悲鳴を上げ、後ろを振り替えると、

 

「よ、帰ろうぜ」

「雷華……皆」

 

私もいるわよ、と流那も含めた他の面子も居た。

 

「はぁ、それで?今日はどこ寄っていくんだ?」

『じゃあ!』

 

炎磨の提案に、皆はそれぞれ好き勝手に行きたいところを言っていく。女は三人寄れば姦しいので、それが五人も居れば簡単に決まるわけもなく、

 

「じゃあ炎磨!お前はどこが良いんだ!?」

 

と結局最後の決定権を委ねられるのだ。そしていつも決まってこう答える。

 

「何処でも良い」

『それが一番困(るんだよ)(るのよ)(ります)(りますわ)!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪いわね」

 

ある場所で、一誠に装置を受け取り、ポイメデは装置を起動させ、そのまま姿が消えてしまう。そこにジークフリートが来て、

 

「しかし何でアイツに手を貸したんだ?」

「あぁ、これだよ」

 

一誠は装置を見せ、

 

「これで面白そうな事を考えてな」

 

そう言って、一誠はニヤリと邪悪な笑みを浮かべるのだった。




多分皆さん閻魔のその後の言動や行動に目が行って気づいてないなぁ~と思いながら見ていたのですが、炎磨って他人の事をあれこれ言うわりに、最初の時にちゃんと小猫の事を心配してるんですよね。ホントにそう思ってたら、多分なにも言わないはずなんですよ。態々最初の巨大化戦後も戻ってきてましたしね。それにこれは少し分かりにくかったかもなのですが、最初の出会いの場面って炎磨視点で見ると、ハイシャドウとシャドウが喧嘩して、一見一般人の小猫と女性という場面にも見えるんですよね。先輩と呼ぶ場面を見ないで駆け付けたときにその場面だけ見て、炎磨は割って入ってるんですよね。本当なら様子見しても良かった筈なのにです。

まぁ炎磨は作中でも言われてるように根性が歪んでるので、一概にやっぱりいい人とも言えませんが、それでも心のどこかにはまだヒーローの心の種火が燻ってる奴ではあるんですよね。炎磨自身も自分の変化に戸惑いつつこれからその種火が大きくなっていく……と言うのがエレメンジャーの大まかなストーリーではあります。

まぁその辺は次回にキャラ説的なのを出して少し掘り下げて説明した後に漸く本編に戻ります。本編は原作11巻の辺りになりますので、よろしくお願いします。


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エレメンジャーのキャラ説

ゼノヴィア「ふむ。何と言うか変わったやつばかりだな」
戦兎&龍誠『……』
ゼノヴィア「おいなんだそのお前が言うなみたいな目は!」


エレメンジャー・精霊の加護を受けた戦士たちで、其々が特殊な力を有しており、闇の精霊ことシャドウと戦う運命にある。シャドウとは何代にも渡って変身者を変えながら戦い、その都度勝ってきた。そのため街では正体が謎な英雄として語り継がれており、数十年前に確認されて以降姿を消していた。

変身者は適正が高い者から精霊が決めるためその時代で違い、先祖がエレメンジャーだった者から全くそう言うものに縁も所縁もないものまで幅広くいる。通常男性より女性の方が適正が高い事が多く、男性一人に対してもその他が女性という編成が基本。

 

守護精霊・エレメンジャーにそれぞれが加護を与え、エレメンジャーになる力を与える存在。精霊の中でも特に強い力を持ち、火の精霊以外は代ごとに違う精霊が現れる。

 

エレメンチェンジャー・エレメンジャーに変身するためのブレスレット型のアイテム。これを通して守護精霊と話したり、エレメンジャー同士通信したりできる。

 

火乃(ひの) 炎磨(えんま)

 

年齢17歳。

 

身長・170㎝ 体重・65キロ

 

属性・火

 

守護精霊・ サラマンダー

 

容姿・平均的な身長と体格。顔立ちは良く見ればそこそこイケメンとも言えなくもない程度。

 

性格・母を早くに亡くし、後述の理由で他者と距離を取る。エレメンジャーになったのも暇潰しが理由。正義やヒーローと言うものに嫌悪感を感じるが、物語が進むうちにその感情に変化が起き、仲間を思う気持ちに戦う訳、そして自分自身と向き合うことになる。

 

学生生活・私立《玄且》高校の二年生。友人はいなかったが、エレメンジャーになった後は特に女性関係には恵まれるようになっている。後述の幼馴染みである水嶋 流那がいるが、初期はは疎遠気味。

 

家族構成・【父】【実母(故人)】【義母】【義姉】【兄(行方不明)】

 

他者を拒絶する理由・実母を亡くしており、元々は扮装地帯にて救援活動や治療活動を行う団体のリーダーをしており、現代のナイチンゲールと言われるほどの人気があったものの、戦争の流れ弾による爆撃により死亡し、団体と患者たちを全員死なせた無能としてメディア等に避難を受け、あれほど持ち上げていた人たちの掌返しが炎磨の他人への興味のなさや正義やヒーローと言うものへの嫌悪感に繋がっている。

 

エレメンジャー・エレメンジャーの一員であり、火を司るサラマンダーの加護により《エレメンレッド》として戦う。

 

火は最も戦闘向きな力であり、彼もその例に漏れず高い戦闘能力をもち、拳や武器などに炎を纏わせて戦う。

 

専用武器は《バーニングセイバー》と呼ばれる剣。

 

エレメンレッドリバース・中盤にて炎磨の母が死んだ当時のニュースの製作指揮をとっていた男を気付かずに救い、その後判明。炎磨が思わず詰め寄るが、反省は一切なく寧ろ視聴率を稼がせてもらってありがとうと言い出し、炎磨が完全に絶望。その際に発覚するのだが、元々炎磨はエレメンジャーの適正が高いものの、本来の適正は闇で、契約していたサラマンダーも呑み込み暴走。エレメンレッド時とは比べ物にならないほどの力を持ち、最初は仲間を蹴散らして逃走し怒りのままに街を破壊しようとするものの、ある一件(後述)により覚悟を決めた仲間達と再度激突し、最初は優勢だったが、最後に火の属性に唯一有利な流那の水の属性に反撃を喰らい、続けざまに他の皆の総攻撃を入れられ、闇に囚われていた心の中の炎磨を引き戻すことに成功。そして解除された。

 

 

アルティメットエレメンレッド・エレメンレッドリバースから仲間の思いにより戻った炎磨が手に入れた進化したエレメンレッド。歴代には居ない新しい姿らしく、スペック的にも比べ物にならない。元々の火の力に加え、仲間の総攻撃を喰らった影響で他の属性も使えるようになり、闇の力を上乗せすることで身体能力や、技の威力を上げることができ、ハイシャドウにも優位に戦えるようになった。だがポイメデ曰く、シャドウキングに良く似た姿らしい。

 

 

ゴットエレメンレッド・最終決戦時になった究極の姿。シャドウキングを一方的に追い詰めるほどの強さを持ち、本来完全に葬れないはずの闇の精霊を消滅させる事が出来る。これは本来の性質が闇でありながら、善の本質を生み出した炎磨だからこそ至った姿らしく、後にも先にも炎磨だけの姿となるらしい。

 

 

火乃 炎丞(えんじょう)

 

年齢45歳

 

身長・185㎝ 体重・90キロ

 

炎磨の父で、火乃グループの社長。経営に関しては天才で、火乃グループが世界的な企業になったのは彼の力に寄るところが大きい。だが炎磨の母とは愛は無く、元々彼女の名を利用するため近づいた。死後も特に愛情はなかったらしく、顔と体の具合は良かったが性格は合わなかったと口にするほど。炎磨に対しても然程愛情はなく、優秀だった兄である炎詩(えんし)の方が大事だった模様。その為彼が行方不明になってからは、炎磨にはなにもせず静かに生きていろとしか言わない。

 

火乃(旧姓・月谷(つきや)詩磨(しま)

 

年齢38歳(享年)

 

身長・167㎝ 体重・59キロ

 

炎磨の実母。医師としての腕前だけではなく、助けを求める人々へ手を差し伸べる人格者でもあり、現代のナイチンゲールと呼ばれた程。炎磨と彼の兄である炎詩にとって大切な母親で、様々な影響を与えた存在。

 

戦地の救助支援等を行う団体のリーダーをしており、炎丞とは元々支援者と支援される関係で、支援継続の為の結婚だった。とは言え詩磨は炎丞の事を愛していた模様。

 

火乃(旧姓・山城(やましろ)(ふみ)

 

年齢40歳。

 

身長・168㎝ 体重・64キロ

 

炎丞の再婚相手。元々は炎丞の秘書をしていた女性で、火乃グループを如何にこの後も残すかが重要らしく、流那が炎磨と疎遠になったのは元々この人のせい。

 

と言うのも、炎磨自身がと言うより詩磨に対して敵対心があり、自身の娘に火乃グループを継がせることで勝ったと思いたいらしい。その為炎磨周囲の人間関係を時には金を掴ませたり、火乃グループの力で親の仕事に圧力を掛ける形で壊していた。(流那も炎磨と共に居れば父親の職場が突然無くなるかもと文に言われ、シングルファザーだった父を思って炎磨と距離を取ることにした)因みにこうした理由は、炎磨が昔から親しい他者の為ならどんな無茶を平然とするタイプで、娘を跡継ぎにするには兄の炎詩が行方不明の今炎磨が有力候補のため、炎磨には孤独で無能であって欲しかったから。そのため昔から炎磨の全てを否定し続け、奪い続けてきた(元々母親の一件で無気力になっていたのもある)

 

だが炎磨がエレメンジャーの関係で新たな交遊関係が出来たことを知り(特に過去に離れさせたはずの流那の存在は特に苛立っていた模様)密かに離れさせるべく動き出したが、最終的に早地の存在でご破算になってしまい、現在は一応大人しくしている模様。

 

 

火乃 炎詩

 

年齢18歳(行方不明当時)。

 

身長・189㎝ 体重・77キロ

 

炎磨の兄。炎磨とは違い品行方正で文武両道の完璧超人。スポーツをやらせれば三日で超一流、高校の時点で海外の大学を飛び級で卒業しつつ、自身の研究で賞を幾つも受賞しており、性格も穏やかで優しい人だったらしい。ただ炎磨曰く、やろうと思えば何でもできるので出来ないものを探す方が難しい。でも本気で好きでやってる人からすれば、片手間に上達してしまうので、敵も多い人だったとのこと。炎磨との勝負は勉強でも喧嘩でも負け無し。

 

 

火乃(旧姓・山城) 文火(あやか)

 

年齢19歳。

 

身長・168㎝ 体重・63キロ

 

炎磨の義理の姉。文の連れ子で、文からの厳しい英才教育と本人の努力で炎詩程ではないものの、かなり多才。

 

炎磨に対しては無関心でいるように見せているが、それとなくフォローしたりするなど、炎磨と上手くやりたい気持ちはあるのだが、文の手前堂々と出来ないのをもどかしく感じている。

 

因みにこのそれとないフォローや炎磨への気遣いが、炎磨が完全な闇に落ちなかった要因の一つで、これがなかったら炎磨はエレメンジャーになる前から闇落ちしていた可能性がある。そのため結果的に後に世界を救う手助けをしたとも言える。

 

一応炎磨とは世間的には血の繋がりは無いと言うことになっているが、実は炎丞と文の間に生まれた娘のため、半分は血が繋がっている。そして炎磨との年齢差を考えれば生まれた時期は……

 

 

麻比(まひ) 雷華(らいか)

 

年齢17歳。

 

身長・175㎝ 体重・66キロ

 

属性・雷

 

守護精霊・ サンダーバード

 

家族構成・【父】【母】

 

容姿・女性としては背が高く(現在進行形で成長中)、スレンダーな体型に加え中性的な顔立ちで女子からの人気が高い。

 

性格・男勝りで、一人称は俺。気に入った相手にほどわがままを言う性格だが、良いやつとのこと。但し、背の高さと他の皆のスタイルの良さを気にしているなど、結構乙女な所もある。

 

学生生活・この間まで父親の仕事の都合で海外にいたが日本に戻ってきた帰国子女。そのため見た目も合間って人の目を引く存在。

 

炎磨との関係・炎磨とは同じクラスで、一番最初にエレメンジャーの仲間になったためか仲が良く、悪友に近い関係。要らん事を言う炎磨の突っ込み役でもあり、拳骨を怒号を喰らわせることも。だが何だかんだで女扱いしてくれたり、気兼ねなく一緒にいれる炎磨に惹かれていくことに。

 

エレメンジャー・雷のエレメントを司る《エレメンイエロー》に変身して戦う。

 

雷の如くの速さと鋭い一撃を得意とし、ヒット&アウェイを主に得意とし、手足や武器などに雷を纏わせて戦う。

 

専用武器は《サンダーナイフ》と言う二本一対のナイフ。切れ味がよく、雷を纏わせることで更に切れ味が増す。

 

 

水嶋(みずしま) 流那(りゅうな)

 

年齢17歳。

 

身長・153㎝ 体重・46キロ

 

属性・水

 

守護精霊・ ウンディーネ

 

家族構成・【父】【母(故人)】

 

容姿・雷華とは対称的に小柄だが、出るところはしっかり出ている。

 

性格・しっかり者であり、炎磨とは疎遠になりつつも密かに気に掛けている。

 

学生生活・普段はアイドル活動もありあまり通えていない。だが極力参加しようとしていて、行事なども積極的に参加している。

 

炎磨との関係・炎磨とは幼い頃からの付き合いで、常に一緒にいたのだが、ある時文から炎磨と距離を取って欲しいと言われ、勿論断ったものの、今度は父親の会社に圧力を掛けると言われ困惑。元々流那の母親は彼女を生んで直ぐに亡くなっており、父親一人で育ててくれていたため、炎磨と父のどちらを選ぶかで板挟みになり、最終的に父を選んで炎磨と距離を取った。

 

その後も炎磨のことは気にしており、遠くから炎磨が少しずつ変質していくのを見ていることしかできず(その間も炎磨は何度か流那にSOSを出していた)、逃げるようにアイドルのスカウトを受けたのを機に炎磨との距離を更に取るようになった。

 

今でもそれが罪の意識として残っており、炎磨と一緒にいることを罪滅ぼし、贖罪と表現している。だが作中で唯一登場した時から、炎磨への好意はあるものの、過去の一件で炎磨を好きになる資格はないと思っている。

 

エレメンジャー・水のエレメントを司る《エレメンブルー》となり、戦う。

 

体を水に変化させ相手の打撃を空かしたり、空気中の水を使って大量の水を作り出して操るなど炎磨や雷華に比べるとトリッキーな戦い方が目立つ。

 

専用武器は《ウォーターロッド》と言う棒で戦うが、余り近接戦は得意ではない。

 

実はもっとも戦闘には向かない属性らしく、実際戦闘能力は皆の中では一番低い。だが唯一戦闘に一番向いている火の属性に強く、火とならんで水の属性はエレメンジャーの中に高確率でいて、いざというときのストッパー役を担うらしい。

 

 

木ノ本(きのもと) 琴葉(ことは)

 

年齢・16歳。

 

身長・165㎝ 体重・55キロ

 

属性・木

 

守護精霊・ドリアード

 

家族構成・【父】【母】【兄】

 

容姿・体操部の為綺麗な体つきをしており、流那には劣るものの出るとこは出ている。足が綺麗。

 

性格・感情を余り出すことがなく、いつも無表情。だが決して無感情と言うわけではなく、結構フレンドリーでどちらかというと口下手。

 

学生生活・一年生ながら体操部のレギュラーに選ばれるほどで、身体能力は他のメンバーの中でも随一。先輩達にも可愛がられる存在とのこと。

 

炎磨との関係・元々は偶然エレメンジャーに選ばれ知り合った程度だったが、口下手な自分の会話と根気よく付き合ってくれる炎磨を気に入っていく。

 

エレメンジャー・木のエレメントを司る《エレメングリーン》として戦う。

 

地面から木を生やし、それで攻撃をしたり防御するなど攻守共に活躍でき、素の身体能力も高いため近接戦闘もこなせる。

 

専用武器は《ウッドウィップ》と言う鞭。

 

 

吹上(ふきがみ) 風琥(ふうこ)

 

年齢・18歳。

 

身長・162㎝ 体重・60キロ

 

属性・風

 

守護精霊・シルフ

 

家族構成・【父】【母】【妹】

 

容姿・長い黒髪で、眼鏡と前髪で目元を隠しているが相当な美少女、更にメンバーの中でもトップの巨乳で、全体的にムッチリしているため本人が気づかないところで色んな意味で男子から注目されている。

 

性格・極度の人見知りで小心者。知らない人と会うと呼吸すらままならず、何時も本を一人で読んでいる。エレメンジャーに戦いへの恐怖から最初はなりたがらなかったが、炎磨達に助けられ覚悟を決めた。

 

学生生活・表立つことはせずに平穏に毎日を本と共に過ごしている。

 

炎磨との関係・琴葉同様元々は炎磨と関わっていなかったが、エレメンジャーになった後は緊張せずに付き合える異性として惹かれていくことになる。元々他者と関わるのを怖がる性格のためか、一度信用すると依存する傾向にあり、割りとチョロい。

 

エレメンジャー・風のエレメントを司る《エレメンホワイト》として戦う。

 

風を操り戦い、火に次ぐ戦闘向きの属性らしい。

 

専用武器は《ウィンドボウ》という名の弓。矢は風で作り出す。

 

 

土田(つちだ) 早地(さち)

 

年齢・18歳。

 

身長・169㎝ 体重・57キロ

 

属性・大地

 

守護精霊・ノーム

 

家族構成・【父】【母】【弟】

 

容姿・雷華程ではないがそこそこの高身長と、全員の中でトップクラスの絶壁をほこる。

 

性格・良くも悪くも頑固で融通が利かないが、他者への思いやりは強く意外と熱くなりやすい性格。

 

学生生活・実家が有名な企業であり、親譲りのリーダーシップで生徒会長しているため生徒達からは慕われる存在であり、知らないものはいない。

 

炎磨との関係・炎磨の母親が戦地の一般人の保護などの活動をしていたのを知っていたため炎磨のこと知っていたが特別話すわけでもなかった。エレメンジャーに加入してからはサブリーダー的な立ち位置に収まり若干頼りない所もある炎磨に世話を焼く内に自分がいなくてはと思うようになり惹かれるようになっていた。

 

その後文の妨害を皆と共に受けかけるが、実家の土田グループの名前を出し、自分や仲間達に危害を加えれば企業同士でぶつかることになると反撃。勝っても負けても被害が大きすぎるため、文も諦めざるを得なかった。

 

エレメンジャー・大地を司る《エレメンブラック》として戦う。

 

もっとも頑丈で力持ちなのだが反面変身すると体が異常に重くなるため速さが全くない。

 

専用武器は《アースハンマー》という名の金槌。

 

 

ポイメデ

 

年齢?歳。

 

身長・?㎝ 体重・?キロ

 

属性・毒&薬

 

敵側の幹部であるハイシャドウの一人。

 

美しい妙齢の女性だが、素性は知られていない。

 

力は弱いものの、毒を用いたカウンター。更にシャドウの作成や巨大化を担当している。

 

シャドウキングに対する忠誠心は高い。

 

 

シャドウキング

 

年齢・?歳。

 

身長・?㎝ 体重・?キロ

 

属性・金属

 

シャドウの頂点に立ち、世界を滅ぼすために暗躍している。序盤から登場し、炎磨の前に現れては定期的に勧誘してくる。

 

炎磨の事を一番の理解者と呼び、いずれ自分の横に並び立つ存在と認識しており、成長を楽しみにしている。

 

アルティメットエレメンレッドですら手も足も出ないほどの力を持っている。

 

序盤から登場するもののその正体は謎に包まれていたが、終盤で正体が炎磨の兄、炎詩であることが判明。

 

母の扱いを見て、炎磨同様人間と言うものに失望した炎詩は、闇の精霊と出会い契約。

 

元々精霊に対する適正は炎磨の比でなく、更には本来の本質は善のため、エレメンレッド担っていてもおかしくない存在(サラマンダーも、ちょっとしたことで運命が違っていたらこいつを選んでいたと発言している)だが、それが失望と怒りにより、本質である善が反転。それが進化を促し、今までにない形のシャドウキングとなった。

 

この事で判明するのだが、強い激情により本質が反転すると、今までにない進化を生み出すことが出来る。なのでアルティメットエレメンレッドも、元々の本質が闇であっても、何処かに善の本質があった炎磨が絶望し暴走。それから皆のお陰でまた善の本質が生まれて若干反転したことで生まれているので、生まれからは対称的でも、似た経緯で生まれている。

 

その行動原理は、人類の作り直しであり、愚かで下らない存在である人類は、一部の選ばれた者によって支配されることで纏まると考えており、全てを支配すれば二度と戦争も、間違った考え(炎詩から見た場合)も起こさせない世界に変えるため。炎磨を散々勧誘したのも、同じくあの優しい母を戦争とその後の扱いにより二度殺された者同士で分かり会えるはずだったから。

 

そして最終決戦時には、何と認識阻害を封じ、人前で変身できなくさせてくるものの、炎磨達は隠れて変身し次々襲いかかるフェイクシャドウ達を撃破していく中、シャドウキングがエレメンジャーを捕らえて差し出せば捕らえた奴の命は助ける。ただし三日以内に出来なければ全員残さず殺すと提案。それにより守っていたはずの一般市民がエレメンジャーに襲いかかるようになり、フェイクシャドウと一般人の両方から終われて炎磨達は撤退。

 

その間にこれからどうするかを話し合い、炎磨は決断し仲間も了承。そして期限の三日目に、シャドウキングは約束を守るつもりはなかったと発言し、最初から全員殺すつもりだったと言う。元々これは人間の汚さを炎磨に再確認させるためで、そこに現れた炎磨を筆頭にしたエレメンジャー。素顔を出したまま現れ、流那のファンや琴葉の事を知るもの達がいる中シャドウキングは問う。これが人間だと、こんなやつらのためにお前は戦うのか?こいつらが母さんを二度も殺したようなものなんだぞ!と、それに対し炎磨は答える。

 

「その通りだ。俺も含めて人間ってのは自分勝手なもんだよ。でもさ、俺そこにいる俺に肉切り包丁をぶん回してきた肉屋のオッチャンのところにメンチカツを仲間の皆と食べるのが好きなんだ。そこにいる駄菓子屋のオバチャン何かはたきを手に雷華に襲いかかったらしいぜ?皆で良く買い物にいくのによ。そこの流那に襲いかかったCDショップのオーナーの経営する店にも行ったし、包丁を手に琴葉に襲いかかった夫婦の喫茶店なんて週4、5位のペースで通ってた。そこの本屋の店主は風琥先輩に襲いかかって、車屋の店主は早地先輩を引き殺そうとしてきた。本当自分勝手なやつらばかりで嫌になる。でも考えた。じゃあこの人達全員消そうかって。でもそれは不味い。だってそしたら皆で楽しむ場所がなくなっちまう。俺はこれからも皆と一緒にいたいんだ。皆で一緒に歩いて、そして笑ってたまに喧嘩して。そうして行くにはこんな自分勝手な連中が作る世界じゃないとダメなんだよ。兄さん。だから俺はこんな自分勝手なやつでも守る。正義のヒーローなんて今でも真っ平ごめんだけど、自分の幸せのために他の連中を死なせるわけにはいかないんだ!」

 

と言いながら全員が変身し、炎詩を否定する炎磨。

 

炎詩も、炎磨を引き入れるのは無理だと判断し、遂に善から闇に反転し、他のハイシャドウも使い勝手の良い駒としか見ずに孤独に一人で強さを得た炎詩と、元々は闇でありながら、少しだけ善に反転しつつも仲間達の大切さ、更にその仲間達と楽しく暮らすには、他の人間達も必要だと思い至り、全部を守るために戦う戦う炎磨と仲間達の最終決戦が開幕。

 

仲間達にハイシャドウを任せ、炎磨は炎詩と激突。覚悟を決めた炎磨は炎詩と互角の勝負を繰り広げる中、炎詩に母のことはどうでも良くなったのかと問われ、良くなんかなってないと反論。だがそれでも俺が全力で愛したいと思ってるのはもう母じゃないこと。そして母ならそれを許してくれるはずだと猛攻を加えるが、炎詩が遂に本気をだし、逆に追い詰められてしまう。するとそこに聞こえてきたのは、他の仲間達(この時点でハイシャドウをギリギリ倒している)の声や、あれだけの事をしながらあっさり炎磨を応援する人々の声を聞き、炎磨は笑いながら立ち上がり、勝手な連中でもこう言われたら勝つしかねぇよなと気合いをいれると、炎磨に新たな進化が生まれ、ゴットエレメンレッドへと変化。そうして炎詩を圧倒し、最終的に撃破。

 

強引に炎詩は精霊召喚で巨大化戦を仕掛けるが、ゴットエレメンレッドになることで進化したサラマンダーを中心に全員で合体したセイレイシンオウの力には及ばず、完全に倒された。

 

 

因みにその後、シャドウ側は精霊と共に完全に消滅。更に炎磨達は行方を眩まし失踪(たまに家族に顔を見せている模様)

 

後火乃グループは炎詩がシャドウのボスだったこともあり、取材が殺到し、社員が次々やめていき業界からも追放状態になり、あっという間に倒産。今まで積み上げてきたものが崩れ去り、業界やその関連に今までやって来たことや、炎詩の事が知れ渡ってしまい、最早どうあがいても再起不能になってしまったためか、炎丞と文は完全に脱け殻状態になってしまったものの、文火は割りと伸び伸び暮らせるようになったため、ちょくちょく炎磨と会っては、今まで出来なかった姉弟らしいことをしている。因みに将来は炎磨達の活躍を本にしたいとかなんとか……という感じでキーボードを叩く文火で締める。




いやぁ、これにて完全にエレメンジャー編は終了です。今思えば何かこう泥々してると言うかめんどくさい感じの設定とストーリーでしたね。この当時の俺は何を思っていたのか……余程疲れてたのかと思いたくなるほどです。何か荒れるようなことあったかなぁ……何て思いながら書いてました。設定はもうざっくりととは言え、結構大変でしたねw

と追うわけで次回は12章。と言っても原作で言う11巻に突入。暫く番外編出来ないかな?と思いつつも今まで謎だった部分がどんどん明かされていきます。是非ついてきてくれると、嬉しいです。


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第十二章 進級試験とウロボロス
変化


前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「炎磨達との一件も終わり、俺達は平穏を味わっていた」
龍誠「しかしあのときはやばかったよなぁ……」
匙「良いよなぁ。俺もロボ動かしたかったぜ……」
ヴァーリ「俺も出たかった……」
サイラオーグ「折角俺も新衣装用意していたんだがな……」
戦兎「サイラオーグさんの新衣装とか嫌な予感しかしないな……ってな感じの85話スタート!」


炎磨達との一件から暫く経ったある日リアスは見た。

 

「桐生くん!あ、あの!今彼女がいないなら私と付き合ってください!」

「ごめん。今そういうのを考えれないんだ」

 

別の場所で朱乃は見た。

 

「ねぇ桐生くんさ、映画とか興味ない?知り合いからチケット貰ったんだけど一緒にどうかな?」

「あぁごめん。その日は用事があって」

 

調理実習終わりにアーシア・ゼノヴィア・イリナは聞いた。

 

「ねぇねぇ、折角調理実習でクッキー作ったんだし誰かにあげようよ」

「私は木場きゅんかなぁ」

「私は万丈」

「生徒会の匙くんもいいよね」

「私は……桐生くんにしようかな」

「良いじゃん!今桐生彼女居ないらしいし攻めちゃいなよ」

 

廊下で佑斗は貰った。

 

「あの木場くん。これを桐生くんに渡して欲しいんだけど……き、昨日頑張って書いたんだけど中は読まないでね!」

 

教室でギャスパーは聞かれた。

 

「ねぇギャスパーくんって桐生先輩と仲良いよね?じゃあさ、あの人の好みとか知らない?」

 

そして皆は部室に集まった。

 

(あれ?最近なんか戦兎(くん)(さん)モテてない?)

 

と、誰も口にしてないのに心は一致している。

 

戦兎が良い奴なのも知っている。だが同級生の女子からは距離をおかれる存在だった筈。それが皆の認識だ。

 

だがどうだろう。最近戦兎は女性人気が高い。

 

理由は単純。戦兎が最近落ち着いたからだ。そもそも戦兎が避けられてたのは場所を考えない実験を行い、龍誠とばかりつるんで周りとの交流が少なかったのが大きい。

 

だがリアス達と出会い、そう言った面が鳴りを潜め、更にギャスパーや小猫の面倒を見てたり、生徒会の由良に引っ張られて手伝わされているうちに、彼本来の面倒見の良さとお人好しさが表に出た上に、ギャスパーの勉強を見ていた序でに、その同級生達にも教えてあげていたところ、そこから噂が広がったらしい。戦兎は、結構良いやつなんだと。そして勉強を教えるのがうまい。まぁこれは龍誠を、何気に偏差値が高い駒王学園に合格させた手腕が生きている。

 

それに元々イケメンなので、そうなれば急にモテても仕方ないのかもしれない。そんな中戦兎は部室にやって来て、

 

「ムグムグ……」

「あれ?先輩それどうしたんですか?」

 

入ってきた戦兎は、手にクッキーの入った袋を持っていて、ギャスパーが聞くと、

 

「あぁ、さっきクラスメイトに貰った。何でも今日の調理実習で作ったんだと」

『ングッ!』

 

それを聞いたゼノヴィアとアーシアとイリナ達は、飲んでいたお茶を吹きそうになりつつ耐え、

 

「あ、戦兎くん」

「んー?」

 

これなんだけど……と佑斗に手紙を渡され、

 

「なんだこれ」

「うちのクラスの女の子から」

 

そうかと言ってもラブレター?を貰いながら、戦兎が椅子に座ると隣にいた小猫が、こちらを覗き込んでくる。

 

「どうするんですか?」

「何が?」

 

それです、とラブレター?を指差し、小猫は言うが、

 

「さてね」

 

とだけ戦兎は言って、クッキーの入った袋を差し出す。すると、

 

「っ!」

「あっ!」

 

グィッと袋を小猫は奪い取り、そのままザラザラと全部口に流し込み、全部食ってしまった。

 

「俺まだ3枚しか……ってかお前どんだけ口に放り込んだんだよ。猫又なのにリスみたくなってるぞ」

「……」

 

モゴモゴと小猫は咀嚼して嚥下し、ケフッとしながらお茶を飲む。

 

「おいなに怒ってんだよ」

「別に」

 

小猫は目を背け、素っ気なく答えた。だが戦兎は少し首を傾げると、

 

「おい、お前なんか顔赤くないか?」

「ぴっ!」

 

ぴ?と戦兎が思った瞬間、小猫は突然振り返り、そのまま振り回した手が戦兎の腹部にめり込み、

 

「ふごっ!」

『あ……』

 

見事に鳩尾に決まった戦兎は、そのまま椅子から吹っ飛ばされ、壁にめり込んだ。

 

「な、なんで?」

「せ、先輩すいません!」

 

小猫が慌てつつも、何処か覚束ない足取りで戦兎に近づき、壁から引き剥がす。

 

「ん?なんだ戦兎。お前また小猫ちゃんに余計なこと言ったのか?」

「いや今回はマジで謎……」

 

と、入ってきた龍誠とやり取りをしつつ、小猫に手伝ってもらって壁から脱出し、

 

「お前マジで大丈夫か?幾らなんでもいきなり壁にめり込ますのはお前らしくなさすぎだろ」

「すいません……」

 

流石に今回の件に関しては小猫に非があるので、素直に謝罪。

 

「つうかお前ホントに顔赤いけど大丈夫か?」

「だ、大丈夫ですから」

 

小猫は手を振って大丈夫だと言う。そこに改めて、

 

「オッスお前達元気にしてっか~」

 

と先日逃亡したものの、見事に堕天使幹部で構成された捜索隊に捕縛され、全身包帯グルグル巻きの上にギプスを着けて、松葉杖と一緒に帰って来たアザゼルが入ってきた。

 

「なんだ戦兎。お前も随分ボロボロだけどまた小猫に余計なこと言ったのか?」

「なぁ、なんで俺が悪い前提なんだよ」

 

普段の行いだろ。と戦兎に返しながらアザゼルはリアスを見て、

 

「ロスヴァイセからはどうだ?」

「結構苦戦してるみたいよ」

 

そんな話しをしていた。

 

現在ロスヴァイセは駒王学園にいない。と言っても別に何かあった訳じゃなく、サイラオーグとのレーティングゲームで余り活躍できなかったと感じたらしく、北欧にもどって何やらやっているらしい。リアスも最近色々自主練しているようだし、朱乃も最近父親と連絡を取って何やらやっているし、前回の戦いは各人に思うところが出来たようだ。

 

「ってそうだそうだ。忘れる所だった。おい戦兎・龍誠・木場・朱乃。お前らに重要な話がある」

『はい?』

 

突然のアザゼルの言葉に四人が顔を見ると、少し真面目な顔をしながら、

 

「お前ら四人にな。中級悪魔への昇格の話が来た」

『……はい!?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冥界の昇格試験は、主に実技と筆記らしい。

 

特に筆記は、冥界や悪魔に関することへのテストと、更にレポートらしい。

 

だがそれが結構大変だ。何せテストは来週。しかも中間テストも控えているため、連日龍誠達が住む豪邸で勉強会である。その中、

 

「ぎぎゃあああああああ!」

「龍誠!?」

 

全身が発光するほどの電流を喰らって、朱乃がギョっとする。

 

「あぁ!大丈夫?龍誠?」

「ら、らいひょうふ……」

 

朱乃が心配して覗き込んでくるが、龍誠は大丈夫だといって勉強を再開。そんな様子を見ていたリアスは、

 

「壮絶ね……」

 

と心配しながら呟いた。

 

現在龍誠は頭にヘッドギアと両手足にも機械をつけて勉強中。これは戦兎が作った機械で、名前は【合格君】と言う。

 

常に手と足のツボを刺激し、眠気を起こさせないようにする。だがそれでも寝ようとしたり、他の事に気を取られたりすると、手足の滅茶苦茶痛いツボの刺激に加え、頭のヘッドギアから電流が流れて強引に叩き起こすと言うとんでもアイテム。因みにヘッドギアからは常に暗記しなければならない単語を常に流し続けている。

 

余談だが、この電撃機能をカットしたヴァージョンのは、戦兎が内職で売ってて結構人気があったり。

 

「カクカクシカジカ……」

 

ぶつぶつ言いながら龍誠がやっていると佑斗が、

 

「龍誠君大変だね」

「いやこれでもレイヴェルのお陰でスケジュール調整できてるから大分楽だよ」

 

悪魔とは言え不眠不休は堪える。なので最近は彼女からマネージャーのようなことをしてもらっており、勉強のスケジュール管理をお願いしている。

 

最初は断ろうとしたが、レイヴェルにとっては案外楽しいらしく、先日改めて昇格試験の話をしに来たサーゼクスからもお願いされていた。

 

「つうか普段からコツコツやっておかねぇからこうなるんだよ。まぁ昇格の話が突然ではあったが、普段からやっておけば慌てて中間テストの勉強も合わせてやることもないし……」

「わかった!説教は全部終わったら聞くから!」

 

龍誠は、戦兎からの説教を聞こえない聞こえないと言いつつ、黙々と勉強を進めていると、

 

「龍誠様。一度休憩をいれましょう」

「あ、そうだな」

 

そんな中、レイヴェルがケーキとお茶を持ってきてくれる。 彼女はこうして適度に息抜きも入れてくれる。だが、

 

「ぎゃああああああああ!」

「やっべ!スイッチ切るの忘れてた」

『あ……』

 

ケーキに気を取られ、痛いツボ押し&電撃を喰らった龍誠の絶叫が響き、

 

「あれ?そう言えば塔城は……」

「何か具合が悪いらしくてね。さっきまではいたんだけどこの屋敷の部屋に戻っていったわ」

 

電源を落とし、【合格君】を龍誠から外した戦兎は、ふと周りを見回して言うと、リアスが教えてくれた。

 

「そう言えば最近様子おかしかったですしね」

「えぇ、あとで少し様子を見に行ってあげましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最近体がおかしい。

 

常に熱を持ち、動悸が収まらない。息が荒くなり、下腹部が疼く。

 

体をうつ伏せにし、猫耳と尻尾が出っぱなしなのも気にせず、ベットに体を預けながらモゾモゾと動く。

 

「せんと……せんぱい」

 

戦兎の顔を思い出すだけで切なくなる。

 

戦兎が女子に告白されてる姿を見たとき、胸が張り裂けそうな気持ちになった。映画に誘われてるのを見て苛々し、クッキーを貰っててそれを結構美味しそうに食べててそれくらい自分でもって思い、ラブレターを貰ってたときは思わず破りたくなったし、戦兎の事を聞かれても絶対教えたくなかった。戦兎の事は自分だけがわかってれば良い。

 

「せんとせんぱい……せんとせんぱい」

 

戦兎が恋しくてたまらない。抱き締めて抱き締められて、匂いを嗅いで舐めて、そして……

 

「呼んだか?」

「っ!」

 

小猫はビクゥ!と体を強張らせ、掛けていた布団を慌てて頭から被った。

 

「おいおい、そんなお化け見たみたいな反応はなんだよ。つうかどうした?耳と尻尾出たままだぞ?」

「……」

 

布団の中から覗いてくる小猫に、戦兎は文句を言いつつ、

 

「大丈夫か?最近調子が悪そうだけど」

「平気ですよ」

 

小猫は素っ気なく答える。非常に不味い。近くにいるだけで冷静じゃ無くなっていく。

 

「少し捲るぞ」

 

と言って布団を戦兎は捲ると、額に手を当てる。

 

「少し熱っぽいかな?」

「あっ……」

 

小猫の漏らした艶っぽい声に、戦兎は驚きながら手を離した。

 

「お、おいホントに大丈夫か?」

 

戦兎も流石に心配しだすが、小猫はぼんやりと戦兎を見て、

 

「せんぱい……」

「え?うぉ!」

 

小猫はニュッと手を伸ばし、戦兎の襟を掴むとそのまま引っ張って引き倒すと、そのまま上に乗った。

 

「ハァ、せんぱい……」

「と、塔城さん?」

 

ハァハァと息を荒くした小猫は、完全に何かが崩れていく。

そして思わず戦兎は小猫に対して敬語になってしまう。何と言うか……肉食動物に追い詰められた草食動物の気分だった。

 

「せんぱい……せつないです」

「お、おい塔城!?バカ!何処触ってんだ!脱がそうとすんな!」

 

服を剥かれそうになり、戦兎は慌てて袖からスタンガンを出し、

 

「サンダーボルいでででででで!」

「邪魔です」

 

腕を掴んで止めた小猫は、腕を握りしめながら押さえ込むと、そのまま戦兎の服を剥いていって、あっという間に上半身を裸にする。

 

「せんぱい……ペロォ」

「うひぃ!」

 

胸や首を猫特有のざらついた舌で舐められ、戦兎は変な悲鳴を上げた。

 

「ちゅ、ぺろ、しぇんぱい」

「おいとうじょ……う!や、やめろ!」

 

必死に抵抗するが、ルークのパワーに勝てるわけもなく、小猫は何と上の服を脱いで、小猫の柔肌が露わになる。

 

そのまま小猫は体を重ねると、小さくとも柔らかな胸の弾力を感じて、戦兎も自分の何かが壊れていくのを感じたが、

 

「は、離れろ!一回落ち着け!なぁ!?」

「落ち着いてますよ?せんぱいこそ、興奮してます?」

 

何時も子供とかチビとか言うくせに、と小猫は艶やかな笑みを浮かべる。ゾクゾクするほど綺麗な笑みだ。

 

「ねぇせんぱい……わたしもう限界です。もう切なくて、恋しくて」

 

そう言って小猫は、グリグリと腰を戦兎の上で擦り付け、スカートの裾を持ち上げると、

 

「ぶっ!」

 

戦兎は驚愕した。何せ小猫はスカートの下に何も履いてない。つまりまぁ、見事にもろ見えしたわけで……因みにその時気付いたが、さっきまでスカートの下に履いてたと思われる布地は暴れて布団を吹っ飛ばした際にベットの上に落っこちていた。いつの間に脱いだんだろうか?

 

「わたし、せんぱいとならできますから、だから……」

「ば、ばか落ち着け塔城。そう言うのはちゃんと好き合った者同士でするもんだ。なによりお前目が逝ってるぞ!?」

 

ジタバタ暴れ、抵抗するが小猫には効果なく、小猫は顔をゆっくりと戦兎に近づけながら、

 

「先輩が悪いんです。私の気持ちに気づかないから……」

「塔城?」

 

鼻先同士がくっつきそうなほど近づけ、小猫は戦兎の目を覗き込み、

 

「大丈夫です。初めてですけど優しくしますから」

「それは女が言う台詞じゃねぇ」

「言えば止まりますから」

「もう既に止まってねぇ」

「天井のシミを数えててください」

「それも女が言う台詞じゃねぇんだよ」

 

そんな中、ガチャリと扉が開かれ、戦兎はギョッとしながらその方を見る。そこに立っていたのはリアスで、彼女も少し目を丸くしながら、

 

「邪魔したわね」

 

パタンと扉を閉めてしまう。

 

「違う!部長!ヘールプ!俺の貞操のピンチです!」

 

その光景を見て、戦兎は割りとガチの助けを求めると、すぐにまた扉は開かれ、

 

「冗談よ」

 

と言って部屋に入ってくると、小猫の額や胸にお腹にも手を当て、

 

「んにゃ……」

「わかったんですか?」

 

成程とため息を吐くリアスに、戦兎が聞くと、

 

「取り敢えず一旦戦兎は服を着なさい」

「あ、はい」

 

言われるがままに服を着て、

 

「それから医者に連絡よ。転生悪魔の診察を専門にする人がいるからね」

「え?塔城病気なんですか?」

 

厳密には違うわ。そうリアスは言いつつも、

 

「でもある意味病気以上に厄介かもね」




多分このシリーズで一番えっちぃ描写した気がする……しかし小猫はうつ伏せでモジモジしたりパンツはいてなかったりどうしたんだろうね!僕子供だから分かんないや!分かるのはその辺を掘り下げると怒られるって事くらいだからね!


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無限の龍神

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「炎磨達との一件も終わり、平穏な日々を過ごしていた俺たちだったが、突如中級悪魔への昇格試験を受けることに!」
龍誠「試験かぁ……俺自信ねぇなぁ」
匙「でもお前の活躍考えたら何時までも下級悪魔のわけにもいかねぇだろ。あーあ、俺も早く昇格してぇなぁ」
ヴァーリ「まぁお前影薄いからなぁ……」
匙「やかましいわ!」
サイラオーグ「さぁて、そろそろ服の準備をしておくか」
戦兎「ってな感じで今回も86話スタート」


『発情期?』

「えぇ」

 

皆はリアスにリビングに集められ、小猫の状況の説明を受けていた。

 

「悪魔って発情期あるですか?」

「悪魔にはないわよ。でも猫又にはあるのよ……」

 

聞いてきた龍誠に返しつつ、嫌な予感が当たったわね。そうリアスが言いつつ、皆が小猫の方を見ると、

 

「せんぱい……」

「暑いから離れてくれないか?」

 

戦兎にベッタリくっつき、戦兎の首に腕を回した彼女はガッチリロックして、スンスンと匂いを嗅いでいた。

 

「何時もの面影が全くないな」

「でも塔城さん幸せそうよ?」

 

そんな様子を見てゼノヴィアとイリナが話し、そこに皆は一ヶ所に集まってボソボソ声で会議。しかし、

 

「でも問題があるのよ」

「と言うと?」

 

リアスに佑斗が問うと、

 

「本来猫又の発情期って肉体的にも精神的にも成熟してなければ起こらないはずなの。でもそれが起きてる……」

「それに問題が?」

 

と言うアーシアにリアスは頷き、

 

「小猫はね、まだ小さいのよ」

『……』

 

言っとくけど見た目的な意味じゃないわよ?そうリアスが言って、皆はそれは勿論と慌てて頷くと、

 

「小猫の肉体はまた未成熟。その状態で発情期赴くままに妊娠なんてしたら母体も子供ももたない。確実に死ぬらしいわ。それに薬で抑える手もあるけどそうすると、将来的に発情期が来なくなる可能性もある。だから戦兎には間違っても手をさないように言ったの」

「戦兎の事だ。大方、へ!塔城に女を感じるほど飢えちゃいませんよ。とか言ってそうだが」

 

と、微妙にクオリティの高いゼノヴィアによる戦兎の物真似に、皆は頷くが、

 

「それが戦兎も小猫に困惑してるしてるみたいでそう言うデリカシーのない物言いは無いのよね」

「戦兎君にしては珍しいですね」

『うんうん』

 

朱乃に続いて皆揃って散々な言い方である。そんな皆を尻目に、

 

「せんぱい、ぎゅってしてください」

「あ、あのな塔城……」

 

マジで一回離れようぜ?と提案するが寧ろくっつく力を上げてくる。

 

「嫌です。離れません」

「でも発情期と言うだけで彼処までになるものなのか?」

 

そう言うゼノヴィアに、リアスは普通はないらしいわと言いつつ、

 

「ただ医者曰く、今まで抑えてたのが一気に吹き出してる状態みたいよ」

『成程……』

 

皆はそれは大分溜まっていただろうと言う。何せずっと小猫は戦兎に対して好意を持っていたが、本人が無口と言うか、初めての恋の所為かどうも進展が無く、周りまで悶々とさせる日々だった。だがそれは恐らく小猫もだ。自分の好意に気づかない戦兎に、小猫も色々溜め込んでいたのだとしたら、それは恐ろしいことになるだろう。

 

しかし人格が変わるほどと言うのは、どれだけ溜め込んでいたのやらだ。

 

「お、仲良くやってんじゃん」

「うるせぇぞ龍誠」

 

そこに入ってきたのは龍誠で、笑ってくる為戦兎は目を細めて文句を言う。

 

「こういうのはお前の役割だろうが」

「そう言うなって。良いじゃん。好かれてて」

「アホか。発情期って言う特殊な状態だぞ。ったく、なんで俺なんだよ」

 

ぶつぶつ言う戦兎にリアスは遠くから静かに、

 

「言っておくけど、発情期だからって誰でも良い訳じゃなくて、好意を持った相手じゃないとダメなのよね」

「もう戦兎君もどうにかした方がいいですよ……」

 

佑斗はため息をつき、皆もウンウンと頷く。その時、

 

「ん?」

 

戦兎の携帯が鳴り、画面を見てみれば……

 

「もしもし美空?どうしたんだ?」

「あ、お兄ちゃん?お客さんが来てるから急いで帰ってきてね」

 

は?誰?と聞き返す前にガチャンと切られる。

 

「何なんだよあいつ」

 

そう言って戦兎は小猫を見ると、

 

「少し美空に呼ばれたから離れてくれないか?」

「……分かりました」

 

少し語彙を強めて言うと、小猫は素直に聞いてくれた。その小猫に戦兎は優しく頭を撫でてやり、

 

「んにゃあ……」

「じゃあちょっと席を外します」

 

と言って自宅に戻っていった。そんな光景を見ていた皆は、

 

「何か今のも戦兎らしくないわね」

『確かに……』

「?」

 

集まってボソボソ。それを見た龍誠は一人首を傾げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま」

 

戦兎は龍誠達が住む屋敷の隣にある自宅に入ると、声を掛けた。すると奥から、

 

「おうお帰り」

「なっ!?」

 

奥から覗かせた顔に戦兎は驚愕し、

 

「ヴァーリ!?」

 

なんでお前が!と詰め寄ると、

 

「あ、ヴァーリ!お茶持ってきて!」

「はいみーたん!今すぐに!」

 

バビュン!とヴァーリは高速移動し、慣れた手つきでお茶を淹れると、リビングに見たことのない幼女を抱っこした美空にお茶を出す。

 

「おいヴァーリ。なにしに来たんだよ」

「少し静かにしろ桐生戦兎。茶ってのはな。蒸らしが重要なんだ」

 

そう言ってヴァーリはこっちも見ずに湯飲みにお茶を注ぎ、

 

「みーたん。どうぞ」

「ありがと」

「何で馴染んでんだよ!」

 

思わず戦兎が全力で突っ込み。それに美空は、

 

「だってヴァーリはたまに来てたよ?友達連れてきたのは初めてだけど」

「友達?」

 

そう美空に言われて見てみれば、

 

『お邪魔してまーす』

 

と、戦兎の母から貰った煎餅を食べる美猴と黒歌に、ミルクを貰って飲んでいるフェンリル。更にお茶を啜るアーサーと……知らない子もいた。じゃなくて!

 

「たまに来てた!?初耳だぞ!?」

「あぁ、そう言えばヴァーリに口止めされてたから言ってなかったんだっけ?ヴァーリにはたまに海外のお菓子とか買ってきて貰ってたって」

 

それただのパシリじゃねぇかと思いつつ、戦兎はヴァーリを引っ張っていき、

 

「お前バカじゃねぇのか!つうかテロリストがなにしに来てんだよ!」

「いやぁ、最初はちょっとした出来心で家の前まで来たんだけどさ。偶然みーたんと会って、あれ?これ運命じゃね?とか思いつつ会えたら良いなぁとか思って買っておいたSNSで欲しがってた限定スイーツをあげたら超喜んでさ!それ以来みーたんが欲しがったものを求めて世界各地を渡り歩いてるのだよ。因みに今じゃお義母さんとも顔見知りさ」

「誰がお義母さんだ。あの人は俺と美空の母親であってお前の母親じゃねぇ」

「その内なる」

「一生なるか!」

 

戦兎はゼィゼィと息を荒くしながら突っ込み、

 

「つうかじゃあ何で俺を呼んだんだ?お前だろ?俺を呼んでた奴ってさ」

「まぁ俺でもあるんだが厳密には違うと言うか……」

 

はぁ?と要領を得ないヴァーリに、戦兎は首を傾げていると、

 

「我が頼んだ」

「ん?」

 

さっきまで美空に抱っこされていた黒髪の、無表情の女の子がトテテとこちらにやって来て、

 

「えぇと……なんだヴァーリ。知り合いか?」

「そうだな。禍の団(カオス・ブリゲード)ではよく話していた」

 

こいつもテロリストなのか……?戦兎はそう思いつつ幼女と目線を合わせるようにしゃがむと、

 

「えぇと、君のお名前は?」

「オーフィス」

「……」

 

耳が遠くなったのか、今とんでもない名前が聞かされた気がした。だがヴァーリは、

 

「こいつはオーフィス。無限の龍(ウロボロス・ドラゴン)と言われるオーフィスだ」

「は?」

「つうわけでちょっとこいつに頼まれてここに連れて来たら禍の団(カオス・ブリゲード)から追われる羽目になったのと少し話があるからアザゼルに取り次いでくれ」

「は?」

「いやぁ、直接アザゼルでもよかったんだけどみーたん会う口実も作れるしこっちが良いかなって」

「は?」

「お前さっきから、は?しか言ってないけど話し聞いてるか?まぁ取り敢えず宜しく」

「はぁあああああああああああ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……』

 

龍誠の屋敷は静寂が包んでいた。現在この場にはリアスを筆頭にした、グレモリーチーム。更にイリナにアザゼルとヴァーリ(ヴァーリチームの他の面々は戦兎宅で待機している)がいて、

 

「んで?ヴァーリ。態々オーフィスを連れてきたのには理由があんだろうな?」

 

アザゼルがそう切り出すと、ヴァーリは肩を竦めつつ、

 

「オーフィスが万丈龍誠と話したいそうでね。だから連れてきた」

「俺?」

 

龍誠は首を傾げ、オーフィスを見ると彼女(厳密には性別という概念は無いらしい)がやって来て、

 

「お前何者?」

「お、俺は万丈 龍誠だけど……」

 

龍誠の返事に、オーフィスはコテンと首を傾げ、

 

「お前の中から感じる。弱いけど、確かにある。ドライグの力を」

「ど、どらいぐ?」

 

なんのこっちゃと龍誠が疑問符を飛ばすと、

 

「ドライグってのはあのドライグか?」

「そう」

 

アザゼルが聞いてオーフィスが答えた。

 

「ドライグってのはな、赤龍帝・ドライグのことだ。今は赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)って言った方がいいか?」

「あれ?でも確かそれって兵藤 一誠が持ってるやつ……」

 

アザゼルの説明に、龍誠が思い出しながら言うと、オーフィスは頷き、

 

「だから変。一誠が持ってるのに、お前がなんでドライグの力を持っている?」

「いや俺が聞きたいくらいっていうか……そもそも本当なのか?」

 

疑う龍誠にオーフィスは頷き、

 

「近くだからよりはっきり分かる。お前の中には、確かにドライグの力がある。前にも感じたけど、その時よりも確かに感じてる。だからもう一度問う。お前は何者?」

 

うぅん……と龍誠は頭を悩ませる。正直言って、自分が何者かなんてこっちが聞きたいくらいだ。

 

「しかし龍誠にドライグの力か……」

 

いよいよお前の存在が気になるなとアザゼルは言う。そこに戦兎が、

 

「だけどそのために態々来たのか?」

「そう。だって気になる。赤龍帝は同時に二人存在しない。ドライグは一人しか存在しないから。だけどドライグの力を宿す者が実際に二人いる。それも本当。なら本人に聞くのが確実」

 

ある意味理にかなって入るのか……そう思っているとまたオーフィスは、

 

「だけどわからないなら良い。こっちが分かるまでここにいて見てる」

『……はい!?』

 

突然のオーフィスの言葉に、リアス達処か連れてきたヴァーリまでビックリ眼になるが、

 

「良いんじゃねぇか?好きなだけ居ろよ」

「アザゼル先生!?」

 

リアス達はアザゼルを引っ張り隅に連れてくると、声を小さくしながら、

 

「どういうつもり!?」

「どうもこうもねぇよ。良いかリアス。兵藤 一誠に目が行くが、禍の団(カオス・ブリゲード)でやべぇのはあのオーフィスもだ。と言うか、禍の団(カオス・ブリゲード)の奴等はオーフィスに吊られて集まったやつも多い。それにオーフィスによる力の増加とかもある。だがオーフィスは基本的に禍の団(カオス・ブリゲード)に思い入れはない。自分の望みを叶え易いと判断しただけだ。なら話し合いで幾らでもどうとでもなる。うまくいけば禍の団(カオス・ブリゲード)からこっちに付かせることも可能だ」

「でもそんなことをしたら他の勢力から何を言われるか……特に貴方は和平を提案した堕天使の総督よ!?それなのに禍の団(カオス・ブリゲード)の重要人物と仲良くなんて……」

 

リアスの言葉に皆も頷く。しかしアザゼルは、

 

「安心しろよ。俺は別にどうともしねぇさ。これからも今まで通り好きにやる。お前らにも迷惑はかけねぇよ。絶対にな。だから頼む。これはチャンスでもあるんだ。禍の団(カオス・ブリゲード)の弱体化のな。ただでさえ兵藤 一誠何て言う厄介なやつもいるのにオーフィスもなんて相手しきれないからな」

『……』

 

そう言うアザゼルに皆は確かにと悩む。オーフィスの強さは、正直聞いた部分が多いため実感はない。だが兵藤一誠は戦ったことがあるから分かる。あれと同じくらいかそれ以上に厄介なら、確かに有効ではある。

 

「つうわけで戦兎。頼んだぞ」

「何で俺に言うんだよ」

「いやロリはお前が担当かなって」

 

ハッ倒すぞ、とアザゼルに戦兎は返しつつ、

 

「良いぞオーフィス。暫くゆっくりしていけよ」

「うむ」

 

するとそこにヴァーリが来て、

 

「なぁ桐生戦兎。序でにひとつ聞いて良いか?」

「なんだ?」

 

戦兎はやって来たヴァーリに振り替えって返事をすると、

 

「お前の背中にコアラ張りに入りついてる黒歌の妹については突っ込み待ちか?」

「ノー突っ込みで頼む」

 

なんてやり取りの後、

 

「しかしもう少し人手が欲しい所ではあるな……」

 

そうアザゼルが呟いていると、

 

「おーい万丈。借りてた漫画返しに来たぞ~。あと鍵開けっぱなし……ってヴァーリ!?」

 

匙が漫画を手に入ってきた。どうやら戦兎がヴァーリとオーフィスを連れて戻ってきたときに鍵を掛けずに来てしまったらしい。

 

そしてこの騒ぎで誰もチャイムに気付かず居たところ、匙は入ってきたらしいのだが、皆揃って良い反応速度を発揮し、ギリギリで匙からオーフィスを隠すことには成功。いやまぁ冷静に考えたら、オーフィスの顔を匙は知らないので、隠す意味は余り無かったかもしれないが。

 

「なんだ皆?その不気味なにっこり笑いは」

「いやいやなんでもないぞ?ほら漫画だろ?そこにおいて帰れよ」

 

と戦兎が言うが、匙はジィーっとこっちを見て、

 

「皆何隠してんだ?」

『な、何も?』

 

見事にハモって怪しさ満点。

 

「そうかそうか。何も隠してないか。万丈の顔からナイアガラの滝ばりに汗が出ててギャスパー君が携帯のマナーモードみたくなってて凄いことになってるが何もないのか?」

「なななななななななななななななななななにもももももももねぇじぇ?」

 

噛みすぎだろ!と龍誠に皆が突っ込む中、匙はふぅん?と一息。それから、

 

「そう言えば万丈。お前嘘吐くとき鼻の穴が拡がるって言う癖があるの知ってるか?」

「え!?うそ!?」

 

あ、ばか!と戦兎が突っ込むのも遅く、匙の誘導に見事引っ掛かった龍誠に、匙はニヤッと笑い。

 

「やっぱり何か隠してんな!今度は何に巻き込まれてんだ!答えろ!」

「い、いやそれはぁ……」

 

詰め寄ってくる匙に、戦兎は首を横に振って答えると、

 

「ごめんね匙君。この件は貴方を巻き込めないのよ。貴方を巻き込むと、ソーナにも被害が被る可能性が高いわ」

「なら殊更無視できません!しかもヴァーリがいるってことは絶対ロクな事件じゃないですよね!?そんなのを知ってて無視できるほど俺は冷酷にはなれません!ここで逃げた方が後で会長に怒られます!」

 

匙の言葉に、皆は顔を見合わせる。するとアザゼルが、

 

「ま、仕方ねぇか。どうせこのまま返してもお前からソーナに伝わる可能性もあるわけだし、ガッツリ巻き込んだ方がいい」

「はぁ、後悔しても知らねぇぞ?」

 

戦兎も思わずため息。そして事情を説明すると、

 

「なんだってそっちはそう次々面倒ごとがやって来るんだよ」

 

そう言って匙までため息。

 

「俺達が聞きたいくらいだよ」

 

それに戦兎がため息をつくと、

 

「あとお前の背中にコアラ張りに入りついてる塔城さんについては突っ込んでも……」

「ノー突っ込みで」

 

匙の問いに戦兎は頼むから聞くなと言っておく。

 

「まあ良いや。宜しくなオーフィス……ちゃん?君?さん?」

「?」

 

匙が握手を求めるように手を出す。オーフィスは首を傾げ、あぁと手を叩き、

 

「ん」

「うぇわ!?」

 

オーフィスが手からウネウネと真っ黒なドジョウと言うか、蛇?を出現させると、匙が飛び上がって後ずさる。

 

「違う?」

「いやなんだそれ!」

 

オーフィスは不思議そうな顔をしながら、

 

「お前はヴリトラを宿してる。普通でも力は上がるけど、ドラゴンを宿す者なら更なる強化が出来る。それを知ってて聞いたんじゃないのか?」

「違う違う!ただ握手しようとしただけだ!」

 

握手?とオーフィスは聞き返し、

 

「相手の手を握って仲良くしましょうってすることだ」

「ふむ」

 

戦兎がそう説明し、オーフィスは成程と納得。そして、

 

「握手」

 

と、オーフィスが匙の手を握る。ただこの場合。単純な強さなら世界最強で、無限の龍神と言われるオーフィスのパワーで割りとしっかり握られた。その結果、

 

「ギャアアアアアアアアア!」

「匙いいいいいいいいい!?」

 

メリメキャゴキゴシャと、とても人間(悪魔だけど)の手が出して良い音ではない音が部屋に響き渡り、

 

「うぉおおお!匙の手が何か海外とかにあるよく分からないグネグネした、変な銅像みたくなってる!?」

「いでぇえええええええ!」

 

アーシア治療!とリアスの指示の元、アーシアが慌てて匙の手に光を当ててると、

 

「失敗」

「失敗して人の手を握り潰すなぁ!」

 

匙の叫びに、オーフィスは無表情でいる。それを見ながら戦兎は、

 

「しかし力の強化が出来るのは知ってたが、ドラゴンを宿すものには効果が高まるか……待てよ」

「ん?どうした戦兎」

 

ぶつぶつ何かを言っている戦兎に、龍誠が聞くと、

 

「まだ確定じゃないが龍誠。もしかしたら出来るかもしれない」

「何が?」

 

はてなマークを浮かべる龍誠に戦兎は、

 

「お前の強化アイテム」

「……マジで?」

 

あぁ、と返事をして頭を掻く。

 

「オーフィスの力を組み込んだライダーシステムか。ドラゴンの力との相乗効果……これを合わせれば今までにないライダーシステムを生み出せるかもしれない。元々オーフィスの力の上乗せ自体強力だしな」

 

何せそこまででもなかったディオドラですら龍誠が相手だった為劣ったが、相当力を上げていた。今の龍誠ならもっと強くなれるはずだ。

 

「とは言えオーフィスの協力がいるけどな」

「まぁ頼んでみるか」

 

なんて戦兎と龍誠がそう言い合っていると、

 

「取り敢えずこんなもんかしらね。まずはオーフィスを他にバレないようにして……」

「ふっふっふっふ」

 

ん?と喋っていたリアスだけではなく、他の皆も突如響き渡った笑い声に、キョロキョロと周りを見渡すと、さっき匙が入ってきた扉がバァン!と開かれ、謎のBGMと共に入ってきたのは、

 

「フウとライに、サイラオーグ……さん?」

 

皆がピキッと固まるのも無理はない。何故ならフウとライはいい。問題はサイラオーグだ。サイラオーグの格好なのだ。

 

サイラオーグの格好は、上下がジーンズ生地の半袖半ズボン。更に頭にはよく分からない帽子に、珍妙なサンダル。そしてTシャツに書かれている文字は……

 

【威風堂々】

 

である。

 

「久し振りだな」

『……』

 

ズザザザ!と皆は壁に寄って集まる。表情が変わらないのは戦兎に抱き抱えられたオーフィス位だ。

 

「し、私服姿初めて見たけど……」

「想像の斜め上をいく破壊力だ」

「最早何処から突っ込めば良いのか分からねぇ」

「と言うかどこで買ったんだろう」

 

戦兎とヴァーリ、龍誠に匙が口々に呟く中、

 

「そう言えば言ってなかったわね。そのね?サイラオーグは……あれなのよ。服のセンスが少し独特なのよ」

「取り敢えず部長が言葉を最大限選んでるのだけは分かります」

 

ギャスパーがリアスにフォローを入れつついると、リアスはありがとと返し、

 

「え、えぇサイラオーグ。今日もその……凄く個性的な服ね」

「あぁ、オーダーメイドの逸品でな。最近知り合ったんだが俺のセンスを100%理解してくれる上に、安く作ってくれる。だが問題はなぜかそこの服屋は売れてないんだ。全く謎だ」

 

貴方のセンスを理解してしまうからじゃない、とリアスは言い掛けて口を塞ぎ、

 

「それにしてもどうしたの?」

「いやなに。うちの領地で良いリンゴが採れてな。せっかくだからお裾分けに来たら、チャイムを鳴らしても返事がないし、鍵は空いてるしで何かあったのかと入ってきたら、丁度そこのソーナの所のポーンが叫んでいたから様子見していた」

 

次から鍵はちゃんと閉めよう。あとチャイムはちゃんと聞こう。そう戦兎は心に誓った。そしてサイラオーグはこちらに来ると、

 

「成程この者が無限の龍神とも言われるオーフィスか。一見すればただの少女だが……ってどうした桐生戦兎?」

 

サイラオーグは顔がひきつったままの戦兎を見て首を傾げていると、

 

「その格好のままじゃ普通に会話できる自信がないんで……一旦休憩!」




サイラオーグ「そう言えばお前の背中にコアラ張りに張り付いている塔城小猫についてはry」
戦兎「ノー突っ込みで!」

しかしアサルトウルフかっこよすぎですね。ああいうの好きですよ俺。そして次回はアサルトシャイニングホッパー。いやはや目が離せませんな。


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眼中にありませんか?

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

ヴァーリ「さぁようやく俺も参戦!もうこれからは俺とみーたんのラブコメとか拐われたみーたんを救い出す冒険活劇とかが満載の【魔王の末裔、ドルオタになって推しと付き合うってよ】が始まっちゃうやつかなぁ!」
戦兎「安心しろ。そんなアホみたいな話は一生始まらねぇからよ」
ヴァーリ「え?」
匙「そうだそうだ!それだったら主従の関係を越えた俺と会長のラブロマンスの方が先だろ!」
戦兎「ごめん。主従のラブロマンスは龍誠と部長で消化済みなのでお前の枠ないわ」
匙「なにぃ!?」
龍誠「とまぁこんな感じで今日もやっていく87話スタート」


「ん?」

 

オーフィスの来訪から次の日。戦兎は、学校か帰ると早速新たな龍誠の強化アイテム作りに勤しんでいた。

 

オーフィスには聞くと割りとあっさり協力を了承してくれて、お陰で研究自体はさくさく進んでいる。勉強と平行してやっているので、割りと寝る時間がない。まぁ悪魔になってからは多少の睡眠不足程度では何とも無いので適度に仮眠を取りつつやっている。

 

しかし最近ドッと疲れる。それは小猫のことだ。学校内では自重してくれる(と言うか学校では会わないようにしている)が、それ以外では常にベッタリ。

 

別に嫌ではない。だが疲れる。特に周りの生暖かい目が。

 

なので今日も勉強と龍誠の強化アイテム制作があるからと言って、小猫から逃げて来たのだが、少し龍誠にも来て貰わなくてはならなくなったので、龍誠の屋敷に来たのだが、部屋の中から声がした。

 

その部屋は小猫の部屋で、発情期もあり一人にしておくのは危険と判断されて、現在はこの屋敷に一時的に住んでいるのだが、その中から小猫以外に聞き覚えのある声が……

 

「おい黒歌!何してやがる!」

「んにゃ?」

 

バン!と扉を開け、戦兎は中に入ると、そこには黒歌と小猫が居た。

 

「お前言っただろ!こっちの家には入るなって!」

 

主に小猫の今の状態的に、黒歌は色んな意味で悪い影響しかなさそうだ。と言う判断で、基本的黒歌は(と言うかヴァーリチームは)戦兎の自宅に住んでいる。お陰で黒歌には冷蔵庫のスイーツを食われるわ、オカズを横からかっさらわれるわで、そりゃも大変なのだ。

 

まぁ悪いことだけじゃなく、初めてあった女の子で、名前はルフェイと言うのだが、彼女は冥界でやっているビルドのファンらしく、サインをねだられたりした。快く応じたが……

 

その中黒歌はニタニタ笑い、

 

「だってぇ、ヴァーリから白音が妙な様子だったって言うからどう言うことか聞いてみたのよ。それで多分そうかなって思ったら案の定発情期来てるし?折角だからアドバイスでもしてあげよっかなって」

「アドバイスじゃなくてからかいの間違いじゃないのか?」

 

戦兎はそう言って黒歌を小猫から離す。

 

「黒歌、言ったはずだぞ?今は塔城に余計なちょっかいを出すなって」

「にゃはは。何いってんのよ。私は白音の事を思ってるわよ?」

 

黒歌がそう言うと共に、戦兎の背中に衝撃が走り、

 

「せんぱい……」

 

姉さまとばかり話さないでください。と小猫は戦兎に抱きつく。

 

「お、おい塔城!?何いってんだ?」

「姉さまは名前で呼ぶのに私は名字だし、先輩は私を見てくれない。私は先輩になら何されても良いのに……先輩が望むなら何でもしますから」

 

艶っぽい息づかいと濡れた瞳。蒸気した赤い頬に、戦兎は思わず生唾を飲んだ。

 

「お、落ち着け塔城。今のお前は普通じゃない。だ、だからな?一旦まずは離れようぜ?」

「嫌です。もうこうなったら……」

 

突如グン!っと引っ張られ、戦兎はそのまま床に押し倒される。

 

「既成事実しかありません」

「待て待て待て!ホントマジで止まれ塔城!これ以上は洒落にならない!」

 

いつだって私は本気です。でも冗談だって思われてたなら……行動で示すしかないですね、と塔城は服を脱ぎ捨てて、戦兎に体を擦り寄せてくる。

 

「にゃあ……先輩の匂い。興奮します」

「うっ!」

 

カミっと首を甘噛みし、そのまま軽く吸い上げて来た。

 

「これで私のもの」

 

マーキングのつもりだろうか?良く分からんが、小猫はそのまま戦兎のベルトを外し始める。

 

「って何してんだおい!ば、ばか!ズボン脱がせようとするな!」

「脱がせないとできませんから」

 

何をする気だ!と戦兎は暴れるが、ガッチリとロックされ、戦兎は身動きが取れない。

 

「私初めてですけど、ちっちゃくても戦兎先輩のを受け入れて見せますから」

「くそ、ホントに……やめろ!」

 

戦兎は割りと本気で拒絶する。だが小猫は、

 

「私が……嫌いですか?」

「え?」

 

ポロリと小猫の眼から涙がこぼれる。

 

「私は先輩の事を思うとこんなに胸が痛いのに……苦しくて悲しくて、辛いのに。先輩は私を少しも見てくれない。私は、そんなに眼中にありませんか?」

「それは……」

 

戦兎は思わず口ごもる。どう答えるべきか……何を答えれば良いのだろうか。

 

そう思った瞬間、

 

「はい、そこまで」

「え?」

 

トンっと黒歌が小猫の首を撫でると、そのまま小猫はカクンと力を失い、そのまま気を失ってしまった。

 

お前何かしたのか?と戦兎が問うと、命の心配はないから安心しなさいなと黒歌は言いつつ、

 

「んじゃ、また後でね~」

「あ、おい!」

 

黒歌は戦兎の制止を無視して、そのまま部屋を出ていく。すると、

 

「うぅ……」

「ん?起きたか」

 

ムクリと体を起こし、ぼんやりと戦兎を見た。その様子に、

 

「私……発情期で」

「ん?」

(様子が元に戻ってる?)

 

戦兎が少し疑問符を浮かべてる中、寝ぼけた頭に活を入れ、小猫は少しずつ思い出していく。その結果、

 

「っ!」

 

ボフン!と、小猫は顔から水蒸気の噴火でも起きそうな勢いで赤面した。

 

「あ、あの……その」

「もしかしてお前……発情期収まった?」

 

コクリと、小猫は頷き戦兎は苦笑いを浮かべると、

 

「あぁ~。あれだ。普通の状態じゃなかったんだ。俺も犬に噛まれたと思って気にしないでおくから」

「それはそれで嫌ですけど……」

 

ボソッと何か言うので、戦兎は首をかしげつつ、

 

「あとまぁ……塔城。せめて服くらいはちゃんと着てくれ」

「え?」

 

目をパチクリと瞬きさせ、小猫はゆっくりと自分の格好を確認。そして今のあられもない格好を自覚し、

 

「っ!」

 

バッと両腕で隠す。正直今さら隠しても、全部丸見えしたあとなので、意味など無いのだが。

 

「取り敢えず出るから退いてくれないか?」

「は、はい」

 

小猫は戦兎の上から降りると、戦兎も体を伸ばしながら立ち上がる。

 

「ま、取り敢えずお互い取り返しのつかない自体になるのは避けられたんだし良いんじゃね?」

「はい……」

 

いっそなっていた方がよかったかもしれない。小猫にそんな思いがよぎるものの、戦兎は笑って、

 

「んじゃ、また明日な」

 

と、言って今度こそ部屋から出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ……」

 

カチャカチャとパソコンのキーボードを叩き、ガラガラと椅子に座ったまま滑って、機械を組み立ててエンプティ

ボトルを挿す。そこに、

 

「ヤッホー」

「……」

 

さっきまで小猫のところにいた黒歌が、アイスを片手に入ってきた。

 

「さっきまで万丈 龍誠?もいたけど帰ったの?」

「あぁ、アイツには少し来て貰うだけで十分だったからな」

 

戦兎はそう言って組み立てを続ける。だが、

 

「もう何怒ってんのよ」

「っ!」

 

黒歌にいきなり背中に抱き付かれ、戦兎はドライバーを落とす。

 

「お前どういうつもりだ?」

「んー?お礼?」

 

なに?と戦兎が聞くと、

 

「ほら、白音が迫っても手を出さなかったじゃない?それとも白音に魅力感じなかった?だとしたら一発殴らせなさいよ」

「アホか。発情期何て言う特殊な状態の相手に変なことするかよ。そもそも下手に手を出せば相手の命に関わるってのにな」

 

戦兎はため息を吐いてから言い、黒歌はピュ~っと口笛を吹いて、

 

「あんたって結構良いやつよね」

「俺は最初から良いやつだよ」

どうだかね~。と黒歌は言いながらアイスを舐める。ねっとりと舌を這わせ、扇情的な食べ方だ。黒歌がやるとこれまた様になり、戦兎は思わず横目でそれを見ていた。

 

「へぇ?結構ちゃんと男なのね」

「うっ」

 

黒歌は少し前屈み気味の戦兎を抱きついたまま見て笑い、戦兎はバツが悪そうな顔をする。

 

「ま、別に良いんだけどね。じゃあほら、私とヤっちゃおうか」

「……は?」

 

黒歌の突然の提案に、戦兎はポカンと返す。すると、

 

「言ったでしょ?お礼に来たって。白音に迫られて色々溜まったでしょ?だから私で発散させてあげる。私だったら白音と違ってヤっても大丈夫だし色々サービスできるわよ?」

 

ムニュっと当ててくる胸の柔らかさに、戦兎は思わず生唾を呑むものの、

 

「やめとく。お前相手だと何企んでんのか分かったもんじゃねぇからな」

「何も企んでないわよ?ただ単に白音から寝取るってのも、興奮するじゃない?それにあんた童貞だし?」

「まず俺と塔城は寝取る寝取られるどうこうの間柄じゃない。そして童貞なのは余計なお世話だ。最近コクられる事も出てきたけど、元々俺はモテなかったんだからな。何時だってモテるのは龍誠の方だったよ」

 

顔は良いのにねぇ。と黒歌は戦兎の顔を覗き込む。

 

(コイツ睫毛なげぇな)

 

そう戦兎は思いながら組み立てを続けるが、

 

「うん。あんたの方が私は好みだわ」

「なにが?」

 

顔と黒歌は言いながら耳元で囁く。

 

「あんたは結構妖怪受けする顔立ちしてるしね」

「どんな顔だよ」

 

ちょっとムッツリそうなとことか?黒歌はそう言いながら首に腕を回してくる。

 

「まぁ変身ありきとは言え腕っぷしも強いし?性格も良くて顔も良し。うん、いけるわね」

「俺の意思を尊重しろ」

 

嫌なの?そう黒歌は言いながら、胸を更に押し付けてくる。だが、

 

「いや……とは言わんがそれでもやめとくよ。そう言うのはやっぱり好き合ってるもの同士がやる行為だからな」

「これまお堅いこと」

 

ほっとけ、と戦兎は少しやさぐれたような言い方をしつつ、

 

「というか黒歌」

「なぁに?」

 

ありがとな。そう戦兎が言うと、黒歌は目をパチクリとさせ、いきなり何?と首を傾げた。

 

「お前さっき塔城の発情期止めてくれただろ?お陰で楽そうになってた」

「あぁそれ?だって仕方ないでしょ?まだ白音は自分で発情期をコントロール出来ないからね。まだ暫く自然に収まるまで掛かりそうだったし、面白いのも見れたからあれ以上はね。ただでさえ猫魈は絶滅危惧種なんだから大事にしていかないと」

 

て言うかああなったのはあんたの責任でもあんだからね~。そう黒歌が言って戦兎はなんのこっちゃと返す。

 

すると、

 

『ん?』

 

ビー!とパソコンがアラートを鳴らして、それと同時に、

 

「うわ!」

「きゃ!」

 

ボン!とパソコンやあっちっこっちの機械が爆発し、最終的に戦兎が弄っていた機械とエンプティフルボトルにエネルギーが集中すると、それも大爆発。

 

二人はそれにより後方に吹き飛ばされた。

 

「ちょっと……」

「すまん」

 

二人仲良く黒こげになり、黒歌に睨まれて戦兎は視線をそらす。すると机の上の物体に気づき、

 

「これは……」

 

と言って近づくと、机の上には岩石の塊に、フルボトルが挿さったような物が置ちていて、

 

「オーフィスの力が一気に入り込んだことで暴発したのか。あっつ!」

 

手にとったが余りの熱さに戦兎は悲鳴を上げながら落として呟く。

 

「とにかく、第一段階は完成……かな?」




シャイニングアサルトホッパー……カッコいい。


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発覚

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「オーフィスもやって来て塔城の発情期も終わったりとまぁ大騒ぎ」
龍誠「しかしサイラオーグさんの服なぁ……」
サイラオーグ「なんだ万丈 龍誠。欲しいのか?」
龍誠「絶対いらない」
ヴァーリ「つうかそんなくそだせぇ服何処でかってんだよ」
サイラオーグ「何がださいだ!お前のセンス悪いんじゃないか?」
ヴァーリ「お前よか普通だよ!」
匙「喧嘩すんなって二人とも……」
戦兎「ってな訳で今回も89話やっていくぞ」


「やべぇ緊張してきた」

「落ち着けよ」

 

龍誠が汗をダラダラ流すのを見ながら、戦兎はアクビをする。

 

さて小猫の発情期が収まり早くも一週間。今日は中級悪魔への昇格試験のひである。なので会場がある冥界のグラシャラボラス領に転移(元々はアスタロト領でやるらしいのだが、先日のディオドラの件で変更になったらしい)してきたのだが、どうも周りが騒がしい。おそらくこちらは色々と有名なので噂しているのだろう。とは言え数はかなり少ない。これでは席もガラガラだろう。聞いてはいたが、昇格試験と言うのは狭き門らしい。

 

「やるだけやったし、後は天に祈るのみ……って言っても僕たち悪魔だから天より地獄かな?」

「そうですわ。龍誠は頑張ってましたもの。ちゃんと受かりますわ」

 

そう言って龍誠を落ち着けるのは、佑斗と朱乃である。

 

そんな様子を見ながら、戦兎は会場内を見た。

 

中は何となく高校の入学試験を思い出させてきて、少し懐かしい気持ちになる。

 

そして研究もあと一息。そしたら眠ろう。いや中間テストもあるんだよなぁ……そう思いながら受験票に書いてある数字の番号が書かれた机に座った。他の皆とは大分離れた場所に座っている。

 

(皆頑張れよ)

 

戦兎は心の中で応援しながら、配られたテストの用紙を裏にして置いておく。そして、

 

「それではテストを始めてください」

「っ!」

 

他の皆と合わせて戦兎は紙を表にして第一問を見る。そこにあったのは、

 

【レヴィアたんの第一クールの敵幹部の名前を答えよ】

『っ!?』

 

試験を受けてた全員が、思わずずっこけそうになったのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやあそこで普通レヴィアたんの話し出すか!?」

 

試験終了後、戦兎は思っていたことを皆と集まった際に吐き出す。

 

それには皆だけじゃなく周りにいた他の受験者も思わず頷き、

 

「まぁある意味冥界に関することって言う意味ではあながち間違ってないしね。それ以外は真面目な設問だったし」

 

そう、初っぱなでネタを突っ込まれたものの、基本的に問題は真面目だった。まぁ勉強の甲斐もあって取り敢えず問題はないだろう。

 

「あーうーあー」

 

まぁ約一名ほど言語中枢が壊れたやつがいるが……

 

「龍誠様。大丈夫ですか?」

 

そう言って心配そうに顔を覗き込んでいるのは、唯一試験を受けるやつ以外で、最近マネージャー職が板に着いてきたレイヴェルである。

 

「だけど次は実技だ。もう頭使う必要ないぞ?」

「そーだなー」

 

プルプルと全身を痙攣させ、龍誠は顔をあげた。

 

試合の順番は既に決まっており、後は順番を待つだけ。すると、

 

「次は戦兎君の番みたいだよ」

「ん?そうか」

 

戦兎は祐斗に言われ、慌てて立ち上がるとベルトを手に会場入りする。観客は息を飲んで見守り、相手は脂汗をダラダラ垂らしていた。

 

(なにそんなに緊張してんだ?)

 

そう思いながら戦兎はベルトを装着し、

 

「落ちるわけにいかねぇし一気に行くか」

《マックスハザードオン!》

「変身!」

 

戦兎は素早く変身を行い、

 

《紅のスピーディージャンパー!ラビットラビット!ヤベーイ!ハエーイ!》

 

そして試合開始。と同時に相手は魔力を掲げた両手に集めて、炎を形成……する前に間合いに入った戦兎の拳が腹部に刺さり、そのまま後方に吹っ飛ぶ。

 

そして吹っ飛んだ先に回り込むとそのまま蹴りあげ、空中に飛び上がりながらレバーを回した。

 

《Ready Go!ハザードフィニッシュ!》

 

そのまま先回りし、戦兎は足を伸ばして、それを縮める勢いで蹴りを放つ。

 

《ラビットラビットフィニッシュ!》

「あれ?」

 

それにより相手は地面に叩きつけられ、ピクピクと気絶していた。戦兎は首を傾げ、気絶している相手を指先でつつく。

 

「おーい……」

 

因みに後でアザゼルに聞いたのだが、既に戦兎達は今回の試験を受ける奴らでは相手にならないほど強くなっており、寧ろ滅茶苦茶加減しないと死人が出るレベルだったらしい。

 

そう言えば実技は適当に流しとけとか言われてたっけ……何て戦兎は後になって思うのだった。

 

あ他の面々も余裕で実技を抜けたのは、言うまでもないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁて、今日も終わったなぁ」

 

中級悪魔の昇格試験から暫く。本日漸く中間テストも終わり、ゼノヴィアとアーシア、イリナの三人は集まって部室に行こうとしていた。だが、

 

「残念よねぇ」

『え?』

 

イリナの呟きにゼノヴィアとアーシアは首を傾げると、

 

「いやね、何か折角急接近するかなって思ってたんだけど、結局戦兎君と塔城さんの関係って変わらなかったじゃない?」

「確かに……戦兎もあの一件以降変わった感じがないしな……」

「そうですねぇ」

 

うーむ。と三人は悩む。と言うのも、あの二人のやり取りは見ているこっちの方がもどかしい。と言うのがオカルト研究部全員の意見であった。

 

だが戦兎は小猫を嫌っている訳じゃなく、と言うか寧ろ気に入っている節があるものの、特に今までと対応が変わるわけではなく、小猫の方が意識している状態だ。

 

なので、どうにか戦兎を意識させる方法は……と言うかせめて小猫の気持ちを少しでも分かってくれれば、と皆は思ってしまう。そこに、

 

「三人とも集まって何してるの?」

「む?藍華か」

 

ゼノヴィアが顔を上げると、そこには眼鏡をクイッと直しながら藍華が立っていた。それを見た三人は、そう言えば藍華は戦兎の従兄弟なのを思いだし、

 

「なぁ藍華。一つ聞きたいことがあるんだが……」

「なぁに?」

 

ゼノヴィアから切り出したが、そこでふと立ち止まる。どう説明すれば良いのかと。素直に小猫の思いを戦兎に気づかせるにはどうすれば良いか……何て聞いて良いものなのだろうか?いやそれは違う。なので、

 

「た、例えばなんだが……これは別に実在する訳じゃないんだ。ただもし相手の好意に鈍い奴にそれとなく好意を気づかせる方法はあるのだろうか?」

「そ、そうね!別にこれは私の知ってる人じゃないんだけどね?ちょーっと鈍くて?」

「そうなんです。どうやったら戦兎さんにモゴモゴ」

 

ゼノヴィアとイリナがしどろもどろしながら聞く中、嘘が下手くそなアーシアが口を滑らせ二人に口を抑えられる。すると、

 

「え?戦兎?なにアイツ最近モテて来たなって思ってたけど……」

「い、いや戦兎じゃないんだ!ホントだ!」

 

いやゼノヴィアっち嘘下手すぎない?と藍華はため息。そして、

 

「まぁ私は戦兎とその好意を持ってる子のやり取りを直接見てた訳じゃないからなんとも言えない部分はあるけど、多分戦兎は相手の好意に気づいてると思うわよ?」

『……はい?』

 

三人の間を木枯らしが吹き抜け、ポカンとハニワみたいな表情で藍華を見る。

 

「いやアイツ結構そう言うのには聡いからね。気付かないわけないわよ。薄々は……まぁある程度期間が長いなら確信してるんじゃない?と言うか……」

 

龍誠の方が詳しいか。と言いつつ藍華は、教科書をロッカーに置き勉していた、龍誠の方を見て、

 

「ねぇ龍誠」

「ん?なに?」

 

戦兎、ある女の子に好かれてるらしいんだけどその好意に気付いてるでしょ?と藍華が問うと、

 

「あぁ、小猫ちゃんのか?あいつダイナマイト役者だからな。見てればわかるぜ」

「ほらね。あ、今のは大根役者って言いたかったみたいで……って三人とも?」

 

龍誠に聞いた藍華が首を傾げると、ゼノヴィア達三人の間を、木枯らしどころか氷河期が訪れた。そして、

 

『龍誠(くん)(さん)!なんでそれをいわない(んだ)(んですか)(のよ)!?』

「いやぁ、アイツが気付かない振りするくらいだから何かあるのかなぁって。だからアイツには突っ込まなかったんだけど……って言うか皆知らなかったの?」

 

龍誠が驚いていると、ゼノヴィアは龍誠の肩を掴み、

 

「こうしちゃいられない!」

「はい!」

「行くわよ!リアス先輩のところへ!」

「あ、おい!」

 

龍誠を引っ張り、ゼノヴィア達は教室を飛び出していく。それを見送りながら藍華は、

 

「アイツも結構めんどいからねぇ。塔城さん苦労しそうだわぁ……」

 

と、静かに同情してたには余談である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「や、やった……」

 

一方戦兎はと言うと、テストが終わるなり研究所に戻ってきて、仕上げを行っていた。

 

そして遂に完成していた。龍誠の強化アイテムが……

 

「ん?」

 

ドンドンと扉を叩かれる。それは龍誠達の屋敷と繋がっている扉で、普段戦兎くらいしか使わないのだが、

 

「はーい」

 

と言いながら戦兎が扉を開けると、そこにはリアスを筆頭にしたグレモリーチームが立っていて、

 

「すまん戦兎」

 

そう龍誠が謝る中、

 

「ねぇ戦兎。貴方隠してることあるんじゃない?」

「え?」

 

何の話し……と思う中、

 

「あ!もしかしてこの間冷蔵庫に入ってた限定プリンを食べてから部長のだと気づいて黙ってたことですか?」

「あれ戦兎だったの!?折角楽しみにしてたのに!」

 

リアス落ち着いて、と朱乃に言われて、リアスは咳払いを一つ。

 

「小猫のことについてよ」

「塔城?別に塔城に関して隠し事なんて……」

「貴方小猫の気持ちに気付いてるでしょ」

 

ビキィ!と戦兎の時が止まる。すると、

 

「あ、龍誠。いってた強化アイテムな。名付けてオーフィスの力とお前の遺伝子を取り込んで作り出したフルボトルを精製して作ったドラゴンマグマフルボトル。そのフルボトルと共に出来上がった岩の塊がフルボトルと共鳴すると言う特性を見つけたからそれを組み込んで作ったクローズマグマナックル。後で試運転を兼ねて使ってみてくれ」

 

戦兎は矢継ぎ早に言うと、

 

「んじゃ、そう言うことで」

 

パタン。ガチャリ……と扉と鍵を閉め、

 

「あ!凄い自然にやられたから流しちゃったけどあの子ったら鍵まで閉めたわ!」

 

そんな声は聞こえない振りをし、戦兎は研究室の奥に向かう。

 

「マジかよ……」

 

龍誠か?いや今さらしゃべるとは思えない。となると別口か?そう思いながら戦兎は頭を掻く。すると、

 

「なに騒いでるの?」

「どうかしました?」

「黒歌にルフェイか……」

 

戦兎が騒いでるのを聞き付け、黒歌とアーサーの妹であるルフェイが降りてきたらしい。

 

「ちょ、ちょっとな」

 

この二人に相談するわけにもいかない。暫く姿を消すか?いやオーフィスの騒ぎがある中で、自分だけ離脱するわけにもいかない。だがどうする?

 

そう戦兎が思っていると、またドタバタと上から聞こえてきて、

 

「戦兎!」

「げっ!?部長に皆!?」

 

上から普通に皆降りてきた。何で!?と戦兎が驚いていると、

 

「普通に貴方のお母さんから入れて貰ったのよ!」

 

ですよね!と戦兎は先程鍵を閉めた扉に向かって走り、鍵を開けてそのまま向こうに走り出す。だが、

 

「戦兎君って元から結構足は速いけど、流石に普通に走ってもナイトの僕とゼノヴィアからは逃げられないよね」

「うむ」

「……」

 

ものの数秒で祐斗とゼノヴィアに追い付かれ、ゼノヴィアにはデュランダルの腹の部分でぶん殴られて戦兎は気絶。そのままズルズルと連行されたのは、言うまでもないだろう。




イズゥウウウウウウ!


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真実

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「試験勉強等々と戦いながら日々を過ごす俺たち……だがそんな中」
匙「ってなに普通に始めようとしてんだ!お前なんで塔城さんの気持ちスルーしてたんだよ!」
戦兎「……えぇとどこまで話したっけかな」
ヴァーリ「無視すんな!口を割らせるぞ!」
サイラオーグ「おう!」
戦兎「やーめーてー!」
龍誠「そんな感じで90話始まるよー」


「お邪魔します~ってあれ?皆集まってどうしたんだ?」

 

ガチャリと匙がドアを開けて部屋に入ると、何故かリアスと戦兎がおらず、葬式みたいな雰囲気になっていた。

 

「なんだ?全員揃って神妙な顔しやがって」

「ふむ、何かあったのか?」

 

と言って続いて入ってきたのは、ヴァーリとサイラオーグ、更にフウとライである。

 

ここ最近は匙とヴァーリ、そしてサイラオーグはよくトレーニングに3人で繰り出している。と言うのも、3人が使うスクラッシュドライバーは戦えば戦うほど、ハザードレベルが上がると言う仕様上3人で戦うのは都合が良いのだ。そんな中、

 

『え?』

 

ん?とサイラオーグが自分に集まった視線に首を傾げると、

 

「サイラオーグさん。その服どうしたんですか?」

「これか?」

 

そう言って見せてくるサイラオーグの服装は、革ジャンにジーンズである。ここ数日見ていたが、ビニール生地の変なピンク色の服装だったり、どこぞの民族衣装みたいな服だったりと、本当にどこで売ってるのかと聞きたかった。因みにライに聞いたところ、

 

「俺達だって思うところはある。でもサイラオーグ様は基本的に質素倹約に勤めている。だがたまに自分の服を馴染みの店で格安でオーダーメイドと言うのが数少ないサイラオーグ様の趣味なんだ。それを言えると思うのか!?」

 

とのこと。フウも含めた他の眷属もそうらしい。だが何故か今日は割りと普通だ。どう言うことだ?と思っていると、

 

「クィーシャがな。何時もの服も良いがそれではいざというとき動きにくいでしょうって言い出してな。オーフィスの事は話していないが、それでも今少し事件に巻き込まれていることは伝えている。その心配を無下にはできないだろう。まぁ余り俺の趣味ではないんだが……」

「そ、そうですか~」

 

龍誠は頷き、皆も苦笑いを浮かべる。

 

「そっちのクイーン大変だな」

「まぁクィーシャの姉御はなぁ」

 

匙がボソボソ話し、ライは苦笑いを浮かべる。それから、

 

「それで結局戦兎はどうしたんだ?」

 

と、最近美空にフルネームで呼ぶのは変じゃないかと言われて名前呼びに直したヴァーリが聞くと、

 

「それが……」

 

祐斗が今来た三人に話すと、

 

『はぁ?』

「はい?」

 

聞いた皆はポカーンとしながらそう呟き、

 

「んで今リアス先輩と面談って訳か?」

「まあね」

 

匙に祐斗は返しつついるとサイラオーグは、

 

「だが桐生戦兎はそう言った事に対して無視をするようなやつには思えないんだが……」

「えぇ、そこは僕たちもちょっと気になってたんですよ。だから一回部長とだけって話になりました」

 

そんなやり取りを見ていた黒歌は龍誠を見て、

 

「てゆーかさー。あんたは理由知らないわけ?」

「お、俺?いや俺も理由までは……」

 

流石に分からない。そう龍誠は言う。そこに、

 

「皆さん集まってどうしたんですか?」

『っ!』

 

入ってきた小猫に、皆は飛び上がりそうになりながらも、

 

『な、何にも?』

「?」

 

首を横に振ってにっこり笑顔。そんな光景に小猫は訝しげな表情を浮かべる中、

 

「それで戦兎。いつまで黙ってるつもりかしら?」

「黙秘権」

 

戦兎はそう短く言うとリアスは、

 

「貴方に黙秘権はないわ。序でに人権と尊厳もないわ」

「人権と尊厳まで!?日本の法律で認められてますよね!?」

「悪魔に人間の法律は関係ないもの」

 

というのは冗談だけどね?そう言いながらリアスは戦兎を見て、

 

「私だけじゃない。皆も今回の戦兎の件には驚いてる。だって皆分かってるもの。戦兎が意味もなくこう言うことはしないって。だからもし話したくない。話せないって言うならそう言って欲しいの。それなら私の方からも上手く誤魔化すわ。でもそうじゃないなら教えて欲しいの。何で小猫の気持ちに気づかない振りをしてたのかをね」

「別に言えないと言う訳じゃないですけど……」

 

バリバリと戦兎は頭を掻いてから、

 

「はぁ。これ、龍誠にだけは言わないでくださいよ」

「え?えぇ」

 

戦兎に突然言われ、リアスは少し驚きながら頷く。そして、

 

「俺……」

 

始めた次の瞬間。戦兎達はヌルリとした空気に包まれ気がつくと、

 

『え?』

 

戦兎達は知らない建物のロビーに集められていた。そこに、

 

「アーシア!イリナ!」

 

龍誠が叫ぶ中、2人に飛んでいったのは火炎弾。それを弾いたのは、

 

「オーフィス?」

 

龍誠の視線の先には、最近今の二人とトランプやお茶をしている(と言うかイリナが引っ張って行く)オーフィスが弾いたところで、

 

「ふむ。流石に効かないか」

 

そう言って笑っているのは一誠。つまりこの状況もこいつが原因と言う所だろう。

 

「てめぇ、なにしに来やがった!」

「ん?あぁ、オーフィスがここにいるのは分かってたからな。だから皆をご招待したんだよ。とは言え、本来居ないやつがいたり居るやつがいなかったりしてるが……」

 

と一誠はロビーに降り立ちながら、

 

「さて、一応話し合いと行こう。オーフィスを渡してもらおうか」

『断る!』

 

そう宣言し、戦兎達はベルトを装着。

 

《マックスハザードオン!ラビット!ラビット&ラビット!ガタガタゴットン!ズッタンズタン!ガタガタゴットン!ズッタンズタン!》

《ウェイクアップ!クローズドラゴン!》

《ロボットゼリー!》

《ドラゴンゼリー!》

《デンジャー!クロコダイル!》

《ギアエンジン!ギアリモコン!ファンキーマッチ!》

『変身!』

『潤動!』

《紅のスピーディージャンパー!ラビットラビット!ヤベーイ!ハエーイ!》

《Wake up burning! Get CROSS-Z DRAGON!Yeah!》

《潰れる!流れる!溢れ出る!ロボットイングリス!ブラァ!》

《潰れる!流れる!溢れ出る!ドラゴンインクローズチャージ!ブラァ!》

《割れる!食われる!砕け散る!クロコダイルインローグ!オラァ!キャー!》

《フィーバー!パーフェクト!》

 

全員変身を終え、一誠を見る。その視線を浴びながら一誠もベルトを装着し、

 

「ま、そうなるか。いいさ、それも望むところだ」

《コブラ!ライダーシステム!エボリューション!Are you ready?》

「変身!」

《コブラ!コブラ!エボルコブラ!フッハッハッハッハッハッハ!》

 

一誠も変身を終え、ゆっくりと片手を上げる。すると彼の周りに魔獣が現れる。

 

「行け!」

「来るぞ!」

 

一誠の号令で一気に襲いかかってくる魔獣に皆はすぐさま反撃に出る。

 

「ちっ!一体一体は大したことはないが数が多いな」

「匙!これ使え!」

 

文句を言う匙に、戦兎は忍者フルボトルを投げ渡す。

 

「成程ね」

《チャージボトル!ツブレナーイ!》

 

スクラッシュドライバーにボトルを挿し、レバーを下ろすと、

 

《チャージクラッシュ!》

 

匙は分身し、黒い龍脈(アブソブーション・ライン)をそれぞれ発射すると魔獣を纏めて捉え、

 

「ヴァーリ!」

「おう!」

 

とヴァーリに戦兎はキリンフルボトルを投げ渡して、

 

《シングル!シングルフィニッシュ!》

《ライオン!トラ!キリン!クマ!アルティメットマッチデース!アルティメットマッチブレイク!》

 

ヴァーリと戦兎は同時に二人で黄色いオーラの弾丸を発射し、匙が捉えた魔獣達を蹴散らす。

 

「俺達も!」

『あぁ!』

 

龍誠とフウとライは武器を構え、龍誠はクリップエンドを引き、フウとライは巨大な歯車を形成。そして、

 

《ヒッパレー!ヒッパレー!ヒッパレー!メガヒット!》

『はぁ!』

 

二人と一人の攻撃が残る魔獣を撃破。

 

「成程。もうこの程度の魔獣じゃ勝負にもならないか……ん?」

「おぉ!」

 

ローグへと変身したサイラオーグの拳が一誠に炸裂……だがそれをキャッチして止めると、一誠は蹴りを放って反撃。

 

「ぐっ!」

 

防御力が自慢のサイラオーグのローグをもってしても、一誠の仮面ライダーエボルの一撃は脅威で、簡単に後ずさってしまう。だがそこに入れ替わるように、

 

「やぁ!」

「はぁ!」

 

祐斗とゼノヴィアが剣を振り上げて襲い掛かる。だが、

 

「ふん!」

『っ!』

 

一誠はデュランダルを作り出し、そのまま横凪ぎ。その際の生じた光の衝撃波は、ゼノヴィアが咄嗟に同じく光の衝撃波を撃って打ち消しあったが、その際に生じた衝撃だけでも二人を壁に叩きつけ、

 

「この!」

「いきます!」

 

黒歌とルフェイの仙術と魔術の連携には、

 

「んじゃ半減っと」

《Half Dimension!Divide!Divide!Divide!Divide!Divide!Divide!Divide!Divide!》

 

一誠の元に届く頃には米粒みたいな攻撃に変えられた上に、

 

「半減して取り込んだ力を倍加」

《Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!》

 

肩に赤い砲身みたいなものを出し、光線を発射。

 

(やば!)

 

黒歌は咄嗟にルフェイを引っ張って横に飛ぶと、さっきまで居たところが爆発し、二人は地面を転がる。

 

『はぁあああああ!』

「やぁ!」

 

しかし、その隙をついてリアスと朱乃レイヴェルのそれぞれが放った、滅びの魔力と雷に炎がバリバリと一誠を襲い、

 

「いきます!」

 

猫耳と尻尾を出して、仙術をフルに使えるようになった小猫は、一誠の横っ面一発叩き込み、距離を取った。だが、

 

「いてて、流石にモロに喰らうと結構痛いな」

「嘘……今仙術で氣を乱した筈なのに」

 

小猫が驚愕する中、一誠は首をコキコキと回し、

 

「俺は仙術も使えるぜ?例えお前は俺の氣を乱そうとしても余裕で無効化できるくらいにはな」

 

そう言って間合いを詰めようとする一誠に、

 

「させるか!」

《ヤベーイ!ツエーイ!》

 

と戦兎がタンクタンクフォームになりながら、フルボトルバスターを一誠に叩きつける。

 

「オラオラァ!」

「む!?」

 

一誠は少し驚きながら押し込んでくる戦兎を誉める。

 

「成程、これは驚いた。もうフェーズ1だけでは俺に迫るか」

「迫るだけじゃねぇ!」

「くっ!」

 

戦兎はそう言いながら肩の砲身を前に向け、一誠に向かって発射。それをモロに喰らって一誠は後ろに吹っ飛び、

 

《フルフルマッチデース!フルフルマッチブレイク!》

「いっけぇ!」

 

追撃を入れて爆発。どうだ?と皆が見守る中、

 

「くくく……アッハッハッハ!こいつは驚きだ。まさかバグキャラ風情がここまでやるとはな」

「なに?」

 

バグキャラ?と戦兎達は首を傾げると、

 

「そうかそうか。まだ話してなかったもんなぁ。良いだろう。話してやるよ。俺が何者なのかも含めてな」

 

一誠はそう言って煙の中から無傷の姿で現れると、

 

「この世界はな、小説の世界なんだよ」

『は?』

 

突然の一誠の言葉に、皆はポカンとしてしまう。

 

「名前は【ハイスクールD×D】。主人公は赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を宿したおっぱいが大好きなこと以外普通の高校生。兵藤 一誠が悪魔になってリアス・グレモリーを主として様々な出来事を乗り越えていきながら女の子にモテモテになってハーレムを作るって言う内容でな。俺はこれが好きだったんだよ。そしてそんなある日さ。居眠り運転したトラックが俺に突っ込んでよぉ。お陰で即死。でもそしたら神様を名乗るやつが好きな世界に生まれ変わらせてくれるっていってくれてな?だからこの世界に転生してきた。序でに色々特典も付けて貰ったんだよ。無限の才能とか神器創造(セイクリットクリエイター)とか諸々。神滅具(ロンギヌス)独り占めもそうさ。ホントなら神滅具(ロンギヌス)はそれぞれ持ち主が違う。白龍皇の光翼(ディバインディバイディング)はヴァーリが持ってたし、獅子王の戦斧(レグルス・ネメア)はサイラオーグが持っていたが、まぁそれは良い。そして俺は兵藤 一誠になった……はずだった」

 

ビリっと戦兎達の体を包むのは、一誠の体から漏れだす殺気だ。それに思わず身構えていると、

 

「俺は特典の一つで兵藤 一誠に転生した。主人公の親から生まれ、俺は一誠と名付けられた。だが可笑しな事が起きてな。何故か弟が生まれた。本来兵藤 一誠に弟はいない。そんなキャラクターはいない。そんなのはダメだ。俺はちゃんとストーリーをやりたかった。だから俺はそいつを消した。オリキャラだの要らないからな。親や医者達からも関係者全員の記憶も書類も、全部抹消した。とは言え当時俺も子供でな。特典あったとは言え中々大変だったよ。でもこれで万全を期して俺はストーリーに参加できるはずだったんだよ。でも可笑しいことに気付いた。例えば小学校に進学してもイリナに会わない。それだけじゃない。他のキャラクターが住んでいる場所に行こうとしても何故か迷う。もしくは会えない。どうしてかと思ったら、ある日俺を転生させた神様が来てよ、何でも能力を付けると何かしらの反動があるらしい。最初に説明されてたんだが、特に大きなもんじゃねぇだろうとたかを括ってたら、何と俺の反動はストーリーに関われないだってよ。いやマジふざけんなって思ったね。何でもこんだけてんこ盛りにしちまうとストーリーに関わらせられない。厳密に言うと主人公サイドに関われない。唯一最初から関われるのは、バグキャラの戦兎と、あとはまぁ龍誠くらいだ」

「何で俺は良いんだよ!」

 

そう問う龍誠に一誠は、

 

「お前は俺と同じだからさ」

「同じ?」

 

そうだと一誠は頷き、

 

「お前は俺なんだよ龍誠。いや、こう呼ぶべきかな?本当なら兵藤 一誠になるはずだった何か君?つまりな、俺は兵藤一誠を構成する物……遺伝子構造や指紋。後は顔なんかだ。だがこの世界はあえて名付けるならそうだな……このハイスクールD×Dは、兵藤 一誠の物語じゃなく、赤龍帝でもなんでもない、兵藤 一誠の立ち位置になるはずだった男の物語なんだよ。それはダメだろ?だってこれはハイスクールD×Dなんだから。バグキャラだの立場を奪われた何かが活躍しちゃダメなんだから」

「成程……そう言うことか」

 

戦兎が静かに呟くと、皆は戦兎を見て、

 

「何故お前のDNA構造が龍誠と同じなのか……そして何より俺をバグキャラと呼んだのか理解できた。つまりお前の言う通り、この世界がハイスクールD×Dと言う小説だとするなら、恐らく俺がいないんだろ?」

『え?』

「簡単な推理だ。龍誠に赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を筆頭に皆には神滅具(ロンギヌス)がある。と言う話しはしたが、お前は仮面ライダーについて話していない。つまり恐らく皆は仮面ライダーじゃない。そして俺をバグキャラと呼ぶ。それなら簡単だ。俺は本来ハイスクールD×Dと言う物語には存在しない。違うか?」

 

戦兎はそう言うと、一誠はパチパチと手を叩きながら笑う。

 

「流石未来の天才物理学者。良い読みだ。その通り、本来ハイスクールD×Dに桐生 戦兎は存在しない。そもそも仮面ライダーがいない。まぁ俺の生きてた方の現実世界ではあったけど、ビルドなんて仮面ライダーはいなかったしな。確か最後に見たのは……あのずんぐりむっくりしたのをチラッとだし、それもビルドじゃない。確か……エグゼクティブ?とか言ってたような気がするがまぁいい」

「だが貴様は俺達に……いや、物語に関われないんだろう?ならば何故ここにいる。それともこれはハイスクールD×Dの物語にはない流れなのか?」

 

サイラオーグの問いに、一誠は首を横に振りながら答えた。

 

「さっき言っただろ?俺は厳密に言えば主人公サイドに関われないんだって。だったら簡単だ。敵サイドにいれば良い。だから俺は禍の団(カオス・ブリゲード)に入ったんだ。それに実を言うと、物語が進めばその分少しずつルールの縛りも緩まっていく。物語もかなり進んだからな。お陰で俺も大分積極的に出てこれる。と言ってもある程度原作にあった流れを利用しないといけないんだけどな。例えば今回だって原作にある流れだぜ?オーフィスをヴァーリが連れ出して、それを禍の団(カオス・ブリゲード)の奴が奪い返しに来て戦いになるって言うのはな」

「そうか、通りでオーフィスを連れ出すとき妙にすんなりいったと思ったが……利用しやがったな?俺達を」

 

ヴァーリが憎々しげな声で一誠を見る中、

 

「でも何でだ!こんなことしたところでお前が別にハイスクールD×Dと言う物語の主人公になれるわけじゃない筈だ!」

「あぁ、ならやり直せば良い。おっと世界を作り直すとかじゃないぞnめんどくさいからな。だから全員屈服させて支配して、原作の流れを改めて再現する。配役もちゃーんと原作通りで台詞も決めてる。死んだやつは俺の幽世の聖杯(セフィロト・グラール)で作り直せばいい。勿論その時はオリキャラなんていない、正しい世界だ。主人公は勿論、兵藤 一誠。つまり俺。その為にも俺は今より隔絶した強さが必要なのさ。この世界はヤバイ強さを持っているやつもいるんでね。今の俺なら勝てるだろうがそれじゃダメだ。圧倒的かつ、もう反抗する気を失うほどの強さだ。あ、間違って殺しても幽世の聖杯(セフィロト・グラール)で作り直してやるからな」

「なんだよそれ……」

 

戦兎はギリッと歯を噛み締め、フルボトルバスターを握りしめる。

 

「ふざけんなよ。それってようはお前、ハイスクールD×Dごっこを世界レベルでやるためにやってたってのか!?」

「ごっことは失礼だな。仕方無いだろ?俺が主人公になる……いや、戻るっていった方が正しいか?」

 

ブツッと戦兎の中で何かがキレた。

 

「ふざけんな……」

 

戦兎はそう呟いて走り出す。

 

「戦兎!」

 

リアスの制止を振り切り、

 

「ふざけんな!そんなことのために九重を泣かせ、八坂さんを苦しめてるのか!それだけじゃない。テロでどれだけの人が涙を流したと思ってやがる!」

「別に良いじゃないか。どうせこの世界は物語。いっちまえば妄想さ。ならどうしようが問題ない。法律でだって決まってるぜ?どんな残酷なことでも考えるだけなら問題ない。実際それを起こさなければな?表現の自由だよ」

 

そんなわけあるか!戦兎はそう叫びながらフルボトルバスターを振り回す。それを一誠は受け止めながら、

 

「無駄よ。確かに今のお前は仮面ライダーの力だけなら俺に迫る。だが俺には神滅具(ロンギヌス)神器(セイクリットギア)もある。それが合わされば簡単にお前じゃ追い付けない領域になれるんだよ!」

「がはっ!」

 

フルボトルバスターを弾かれ、素早く蹴りを入れられた戦兎は後方に吹っ飛ばされるが、素早く立ち上がりまた突進。

 

「はっきりしたよ。お前はいちゃならない存在だ。お前はこの世界にいたら取り返しのつかないことになる!」

「それをお前が言うのか?」

 

なに?と戦兎は一誠の言葉に目を見張る。

 

「俺は確かに転生者だが、今はこの世界の人間だ。だがお前はどうだ?お前はこの世界の存在じゃない。バグキャラだ。そんなお前がいたらどうなると思う?本当なら起こらないイベントが起きるぜ?いや、もう既に何度か起きている。エレメンジャーだってその一つだ。それがどんな事態を引き起こすと思う?本来なら死なないキャラが死ぬ事もあるだろう。一応いっておくが本来グレモリー眷属は皆死ぬことはない。困難は待ってるがな?だけどお前がいたらどうなるかわからない。それこそ取り返しのつかない事態を引き起こすだろうな。俺はその点物語を正しくしたいだけだ。分かるか?お前と言う存在事態が皆を危険に晒している。正義のヒーロー?愛と平和?お前が一番それを乱すんだよ!お前は本当なら居ない方が良いんだよぉ!」

「っ!だまれぇええええええ!」

 

戦兎は叫びながら一誠を切りつけるが、効果はない。そして一誠は戦兎の耳元で囁く。

 

「お前は誰も……そして何も救えやしない」

「っ!」

 

戦兎は一度一誠から離れ、にらみ合いに入ると、

 

「何言ってんのかわからねぇが、とにかくテメェがムカつくことだけははっきりしたぜ!」

 

そう叫びながら龍誠は戦兎の前に立ち、クローズマグマナックルとドラゴンマグマフルボトルを取り出し、

 

「強化アイテムお披露目だぜ!」

 

と言いながら、龍誠はクローズマグマナックルにドラゴンマグマフルボトルを挿す。それと同時に龍誠の体を電流が走り、強い衝撃と共に吹っ飛ばされた。

 

「ぐぁ!」

 

なんだこれ、そう龍誠は驚きながら体を起こすが、変身が強制解除されてしまう。

 

「おい戦兎!これ使えないぞ!」

「そんな……調整は完璧な筈なのに」

 

戦兎も困惑する中、一誠は頭を掻きながらゆっくり歩を進めた。

 

「何をしようとしたのか知らないが、まぁいいさ。さぁ戦兎。行くぞ?」

「っ!」

 

戦兎が身構えた次の瞬間。

 

「させない」

「オーフィス!?」

 

一誠に横から殴りかかったのは、オーフィスだ。グォン!と唸りを上げその強力過ぎる一撃は一誠に向かう。だが、

 

『なっ!』

 

突如オーフィスの周りに黒い壁が現れ、そのまま彼女を囲って隠してしまった。

 

「まぁこんな壁オーフィスならコンマ一瞬しか足止めできやしない。でもその一瞬で十分さ」

 

そう一誠が呟くと地面が揺れ、戦兎の体に悪寒が走る。それは龍誠と匙も同じらしい。

 

「あれは!」

 

祐斗がロビーの上の方にあるシャンデリアの上にたっていた影に気づき、声を出した。

 

「ふふ、さぁて行きますか」

 

黒いローブと大鎌を手にした骸骨が声を発しながら腕を振ると、

 

地面から真っ黒……と言うかどす黒い色の蛇?が出てきた。だがその体は何重にも拘束具が巻かれており、顔に拘束がされていた。

 

「な、なんだよあれ……」

 

その姿を見た瞬間全身の震えが止まらない龍誠に、同じく悪寒が止まらない戦兎と匙も頷く。

 

「まさか龍 喰 者(ドラゴン・イーター)か!?くそ!ハーデスの奴!」

 

ヴァーリは何かに気付いたらしく、何やら叫ぶと一誠は頷く。

 

「博識だな。流石アザゼルに育てられただけはある。こいつは神の悪意。もしくは神の毒。蛇に化けてアダムとイブに知恵の実を食べさせて聖書の神の怒りに触れた為呪いを受けた影響で最強の龍殺し(ドラゴンスレイヤー)の力を手に入れた。とは言え強力過ぎて、ドラゴンを絶滅させちまうって理由でコキュートスに封印されていてな。まぁハーデスの奴は同盟に北欧の神とかが参加したのがムカついたらしくてね、そこの最上級死神のプルートが使うのを条件に借りたのさ。一応他にも色々条件はあるが」

「ハーデス……サイラオーグとのレーティングゲーム前に見掛けた時も不気味だと思ったけど……まさかテロリストと繋がっていたなんて」

 

ヴァーリ達と仲良くしているお前達とどっこいどっこいだろう?一誠がそう言うと、

 

「ほらプルート。さっさと済ませてくれ」

「えぇ、さぁサマエル。喰らいなさい!」

 

プルートがサマエルに指示をし、サマエルはオーフィスを閉じ込める黒い箱ごと飲み込んだ。

 

「ちっ!あのサマエルを止めるぞ!」

《フルフルマッチデース!フルフルマッチブレイク!》

 

戦兎は嫌な予感がすると言ってフルボトルバスターを構えると、

 

《シングル!ツイン!ツインフィニッシュ!》

《クロコダイル!ファンキーブレイク!》

 

サイラオーグはフウとライに銃を一丁借りてクロコダイルクラックフルボトルを挿し、それぞれ武器を構える。

 

『はぁ!』

 

フウとライは巨大な歯車を作り出し、他の仲間達もそれぞれ一斉射撃。凄まじい爆発と閃光が起こるが、

 

「無傷かよ……」

 

戦兎が思わず呟くほど、全くサマエルは堪えない。ならばと、

 

「サマエルを操っている術者を狙うわよ!」

「おやおや」

 

皆は攻撃対象を、リアスの指示でサマエルからプルートに向けるが、プルートは気にも止めず、

 

「一誠殿。頼みますよ」

「はいはい」

 

それだけ言って、一誠も皆の前に立つ。

 

「邪魔はさせないぜ?」

「くそ!」

 

戦兎は一誠との間合いを詰めて、フルボトルバスターを振るが、それを避けられ、

 

「はぁ!」

「ん?」

 

そこに小猫が襲い掛かった。だが、

 

「甘いな」

 

一誠は小猫の腕を掴んで止め、壁に向かって投げて、叩きつけると、

 

「終わりにしてやる」

《Ready Go!》

 

一誠はレバーを回し、小猫に向かって飛び上がると、

 

《エボルテックフィニッシュ!チャオ!》

「小猫!」

 

皆が驚愕の悲鳴をあげた次の瞬間!

 

「白音!」

「え?」

 

黒歌は咄嗟に小猫を抱き締めて自分の体を盾にするようにしてかばう。

 

「はは!流石妹想いだなぁ!良いぜ?姉妹仲良く吹き飛ばしてやるよ、なぁに、ちゃんと今度作り直してやるから安心しな!」

「そんなことさせるかよ!」

 

だがその小猫と黒歌の2人の間に戦兎は飛び込むと、一誠のエボルテックフィニッシュを正面から受け止めつつ、レバーを回す。

 

《Ready Go!ハザードフィニッシュ!》

「成程……これは良い方法を思い付いたぜぇ!」

《タンクタンクフィニッシュ!》

《Venom!》

 

そこには爆発が起き、戦兎は地面を転がりながら吹っ飛ばされる。しかし、

 

「あ、が……」

「先輩!?」

「戦兎!」

 

戦兎は変身が強制解除され、それどころか体が少しずつ崩壊し始めていた。

 

「白龍皇の猛毒だ。無機物以外の血・肉・骨・臓器・魂を少しずつ減少させていくって言うものでな」

「なら!」

 

小猫は戦兎の懐からエンプティボトルをだして挿すが、何も変化は起こらない。

 

「な、なんで……」

「当然だ。それは毒と言っても厳密には呪いみたいなもの。それを解除するには、まぁ俺を倒す以外にはない」

 

そんな、と小猫が呆然とする中、

 

「一誠殿。終わりましたよ」

 

そう言うと同時にサマエルは消え、オーフィスだけが残される。

 

「オーフィスの力の4分の3と言ったところですかね」

「充分だろう」

 

一誠はプルートから容器みたいなものを受け取り、

 

「さて、ゲームを始めよう」

「ゲームだと?」

 

苦しむ戦兎の元に集まり、アーシアが回復の光を当て続ける中、一誠の言葉に龍誠が聞き返す。

 

「あぁ、このまま戦兎を見捨てるようなことはしないだろう?なら俺はこの建物の最上階の屋上で待つ。そこのこの空間の出口も用意しよう。皆はそこに赴き、俺を倒す。もしくは返り討ちにあってバットエンド。簡単だろう?」

「ふざけやがって……」

 

ミシッと拳が軋み、血が出るほど強く握った龍誠は一誠を睨み付ける。

 

「それじゃまた後で。あぁ、戦兎はそのままほっておけば半日持たないから気を付けろよ?それじゃ……チャオ」

「それでは失礼します」

一誠とプルートは相違って姿を消すが、

 

「うぐ……!あがっ」

「戦兎!」

 

リアスが戦兎に声を掛けるが、戦兎の様子は明らかに危険だ。すると、

 

「どいて!」

 

黒歌がリアスを押し退け、戦兎の体に手を当てると、

 

「白音!手伝って!」

「は、はい!」

 

黒歌の剣幕に、小猫は素直の頷いて隣に座ると、

 

「あんたはそのまま回復当て続けて」

「ま、任せてください!」

 

アーシアは黒歌の指示に、力強く頷きながら回復し続け、

 

(毒と言うより呪いに近い……か)

 

そう内心呟きながら、黒歌は氣を練り上げると、戦兎に流し込む。

 

「白音。貴女も氣を練ったらそのまま私に流し込んで。今の貴女じゃ緻密に氣をコントロールして少しずつ戦兎の体に流し込むなんて芸当は出来ないでしょ」

「……はい」

 

悔しいが、黒歌の言うとおりだった。未だに自分は、黒歌のように緻密なコントロールはできない。そう思っていると、

 

「今度教えて上げるわ。だから今は氣を練ることに集中して。雑念が入ると濁るわよ」

「っ!」

 

小猫は頭を振って意識を集中。氣を練り上げ、黒歌に流す。それを黒歌は自分の氣と同調させ、戦兎の体に負担をかけないように少しずつ流していく。

 

「凄いわね……」

 

リアスは思わず呟いた。仙術の専門家ではない彼女だが、黒歌のやっていることが高等技術なことは用意に分かり、実際相当な技術がいる。例えるなら、複雑な別の絵を左右の手でそれぞれ同時に且つ、完璧書き上げている状態なのだ。

 

「っ!」

 

ガン!とそこに音が響き、治療に集中している黒歌や小猫以外がその方を見ると、

 

「俺が強化アイテムを使えてれば……」

 

と呟く龍誠がいた。

 

「龍誠様」

 

レイヴェルがソッと龍誠の手を取り、

 

「落ち着いてください。今苛立ってもなにもなりませんわ」

「こんな時に落ち着いていられるかよ!」

 

思わず出た強い口調に、龍誠はハッとなってレイヴェルに謝る。すると、

 

「あぐっ!うぅ……」

「不味いわね」

 

黒歌は冷や汗を足らしながら明らかに苦しみが強くなった戦兎を見て、

 

「こうなったらやるしかないか」

「え?」

 

小猫が唖然とする中、黒歌は戦兎に顔を近づけると、

 

「ん……」

『……』

 

皆は呆然とするが黒歌は気にも止めず、何と戦兎にキスをしていた。そして、

 

「ぷはっ!」

 

黒歌は唇を戦兎から離すと、

 

「ごほっ!」

 

そう咳き込みながら明らかに顔色が悪くなっていた。

 

「おい黒歌!お前何をした!?」

「何ってちょっとだけ呪いを私に移したのよ。呪いが強すぎてね。このままじゃ抑え込めなかったから少しだけ私に移してそれぞれ別に抑えるようにした方が効率的だっただけよ」

 

ヴァーリに黒歌はそう答えつつ、戦兎に改めて何か施し、

 

「これでよし……でも飽くまでその場しのぎだから。まぁ流石白龍皇の力だわ。この抑えも持って1日半ってところね。私のはもうちょっと長いけどそれでも長くはないわ」

「お姉様……」

 

小猫はなぜそこまでと言う目で見るが、

 

「助けられちゃったからね。借りはさっさと返しとくものよ?」

 

そう苦しみを歯を噛んで紛らわしながら、黒歌はそう言うのだった。




一誠「キリュウセントォ!《アイガッタビリー》なぜ君が主人公なのにたまに出番がなかったのか!《ヤメロー》なぜ君の影が微妙の薄いのか!それは……きみはこの世界の人間ではなく!それどころか世界の存在してはならないバグキャラだったからだぁ!」


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俺の憧れたヒーロー

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「兵藤 一誠の襲撃により、閉じ込められた俺達。しかも俺は兵藤 一誠により白龍皇の毒を受けてしまう」
龍誠「つうかあいつなんでもありすぎだろ!勝てんのかよ!」
匙「作者曰く、めっちゃてんこ盛りにしてるけど自分なりにちゃんと着地させられる予定らしいぞ」
ヴァーリ「まぁ予定は未定……って言うけどな」
サイラオーグ「そもそも作者って誰だ?」
戦兎「えぇと……ほら、メタ的な?」
匙「まぁそもそもこの前書きも何でもありだからなぁ……」
ヴァーリ「とまぁそういうわけで91話始まるぞ」
戦兎「それ俺のやるやつな!?」


「良かったのですか?オーフィスを残して」

「良いさ。アイツは残りカスみたいなもの。まぁ使い道もあるがそれよりこっちの方が重要さ」

 

一誠はそう言いながら、ハザードトリガーのような装置を出してスイッチを押すと、オーフィスの力が吸い込まれていく。

 

「さて、私は部下の配置をしてきます」

 

プルートはそう言って姿を消すと、それと入れ替わるようにやって来たのは、

 

「ジークフリート。どうした?」

「……」

 

ジークフリートはゆっくりとグラムを抜き、

 

「あぁ成程。やっぱりそういうことか」

「それを起動させて吸い込んでいるときは動けない……だろ?」

 

そうジークフリートは言いながら、一誠に向かって突進。そしてそのままグラムの刀身で一誠を貫いた。

 

「兵藤 一誠……アンタは危険過ぎる」

「それで俺を襲いに来たってことか」

 

何!?とジークフリートは驚愕し、グラムを引き抜こうとするが、びくともしない。

 

「くっ!」

 

ジークフリートは他の腕も生やし、他の剣も抜いて一誠に刺す。それでも一誠は笑い。

 

「言い忘れてたな。俺の転生特典は神滅具(ロンギヌス)神器創造(セイクリットクリエイター)。無限の才能の他にも【全耐性】ってのもあってな。これのお陰でドラゴン系神器(セイクリットギア)を宿してても龍殺し(ドラゴンスレイヤー)が効かない。まぁ普通なら刺されては死ぬが、この程度なら再生できるしな。しかし折角なぁ……これがあれば悪魔になっても光が効かなくなるし良いと思ったんだけど中々うまくいかないもんだよな」

 

そう言いながら一誠は、ハザードトリガー?の吸収が終わったのを確認し、ジークフリートに反撃しようとした次の瞬間。

 

「ん?」

 

銃声と共にジークフリートは地面に倒れる。するとジークフリートの後ろには、ドリルクラッシャー・ガンモードを構えたラビットタンク姿のビルドがいた。

 

「なんだあんたか。別に平気だったんだがな」

「……」

 

静かにビルド?は背を向けると、そのまま姿を消す。それを見送り、

 

「残念だったなぁ。ジークフリート。たった一人でお前の頑張りは誰にも知られることはなく死んでいくんだ」

 

一誠は笑いながら言うと、ジークフリートの遺体に手を翳し、遺体が消滅していく。

 

「さぁて、ショータイムだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ」

 

戦兎の処置を終え、黒歌は息を吐く。思っていた以上に白龍皇の毒はキツイ。そこに、

 

「お姉さま」

「あら、なぁに?白音」

 

黒歌は何時ものように笑みを浮かべながら答える。すると小猫は、

 

「なぜあのとき私を庇ったんですか?」

「……」

 

その問いに、黒歌は肩を竦めるだけだ。

 

「答えてください。貴女にとって私は都合の良い道具じゃなかったんですか?冥界でも私を強引に連れていこうとしましたし」

「別にぃ?気まぐれよ」

 

黒歌はそう答えるが、

 

「話しても良いんじゃないのか?」

『っ!』

 

そう言って入ってきたのは、ヴァーリだ。思わぬ登場に黒歌は顔をしかめるが、

 

「話す?」

「あぁ、こいつが話さねぇなら俺が話すぞ?」

 

ヴァーリは黒歌にそう問いかけると、

 

「勝手にすれば?」

 

それだけ言って横になると寝てしまう。そしてヴァーリは小猫を見ると、

 

「アイツの元主はな。猫魈に興味を持ちすぎたんだ。眷属に無茶な強化だけじゃない。お前に目をつけた」

「私に?」

 

小猫の呟きにヴァーリは頷くと、

 

「眷属だけならまだしも、その身内にまでそれが及ぶなら……しかも力を使わせれば間違いなく暴走するだろう妹にいくなら、黒歌も看過できなかった。元々自分達の身の安全を保証すると言うのが黒歌がそいつの眷属になる条件だったしな。そして結局相手が強引な手に出て、黒歌がそいつを殺した」

「……」

 

小猫は呆然とその言葉を聞いていた。ヴァーリの目には偽りは感じない。真っ直ぐと小猫を見て、

 

「黒歌は本当はお前を連れていきたかった。だが追っ手もあり、お前を置いていくしかなく、そんな中お前がリアス・グレモリーの眷属になったのを知ってな、もしや無茶な強化をされては居ないかと危惧して、冥界でお前に接触したんだ」

「そんなの……一言も」

 

それはそうだろう。ヴァーリは首を振りながら言い、

 

「事情があったにせよ、お前を置いていった。こいつにとってはそれは今でも拭いされない後悔なのさ」

 

ヴァーリの話を聞き、小猫は黒歌を見る。

 

「いきなり聞いても受け入れられないだろう。少し休んで頭を冷やした方がいい。あと一時間もすればここを出て兵藤 一誠との戦いに臨まなければならないんだ。そうしないと戦兎も黒歌も助けられん」

「……はい」

 

小猫は、ヴァーリの言葉に素直に頷いて部屋を出る。

 

「ベラベラ喋るんだから……」

「悪かったな」

 

ヴァーリは頭を掻きながら、バツが悪そうに部屋を出ていき、

 

「聞こえてたでしょ?」

「あぁ」

 

黒歌が毒を受けてくれたお陰で、意識が少し戻っていた戦兎は、黒歌の問いかけに答える。しかし黒歌より毒の比重が多いためか体は異常に重い。と言っても、黒歌の仙術治療のお陰で痛覚と毒の侵食を抑えていなければ、今でも地獄の苦しみを味わっている筈だ。

 

「意外と良い奴だったんだな」

「今まで私を何だと思ってたわけ?」

 

人のお菓子を勝手に盗んでいく奴。と戦兎は言うと黒歌が笑う。

 

「私はあんたが分からないけどね」

「なにが?」

 

良いやつなのかろくでもない奴なのか……と言われ、戦兎は首を傾げていると、

 

「白音の好意を……どうして知らないふりをしたの?」

「……」

 

戦兎は少し黒歌から視線を逸らしながら、暫し考えてから、

 

「まぁ、別に龍誠にバレなきゃ良いし、お前別に龍誠と特別話さないだろ?」

「まぁ、会えば挨拶するくらいだけど」

 

黒歌は戦兎に頷くと、戦兎は少し呼吸を整えてから、

 

「アイツは良いやつだ。バカだけど今時珍しいくらい素直で優しい男だよ」

「?」

 

突然なんの話だろう?と黒歌は思うものの、戦兎の言葉を黙って聞く。

 

「だから昔からアイツモテんだ。本人が思ってる以上にな。だからみんな龍誠を好きになる」

「え?」

 

戦兎は力なく笑うと、

 

「俺もな。一応これでも何回か人を好きになったことがあった。好きって言っても憧れとかちょっと特別な子とかそんな感じだけど……な」

 

戦兎は息が続かないため、一度呼吸を整え、

 

「まぁ皆見事に龍誠を好きになるんだなこれが。あと何気にキツかったのは優しくしてくれてちょっと気になったら実は龍誠に近づくためだったのが判明したときかな……うん」

 

遠い目をしながら戦兎は言う。そして、

 

「そんなことが続くとやっぱり龍誠を逆恨みしそうになるし、好意を向けられると……困る。どう返せば良いのか分からないんだよ。それだけじゃない。心のどこかで俺の勘違いか?とかもしかしたらその内心変わりするんじゃ……とか色々考えちまって余計にな。塔城がそんな奴じゃないってのは分かってるんだけどな」

 

そんな戦兎の言葉に、黒歌はクスッと笑い出す。

 

「お前な。人が真面目な話をして居るときに……」

「いや、アンタ万丈 龍誠大好きすぎでしょ」

 

そんなんだからリアス・グレモリー達にある意味一番のライバルだなんて言われるのよ。と黒歌に言われ、

 

「でも優しいわね」

「なに?」

 

黒歌は笑みを浮かべながら、

 

「アンタは万丈 龍誠のせいにも女の子のせいにもしなかった。そこはカッコいいと思うけどね」

 

そりゃどうも。と戦兎は言い、すると黒歌はだけどねと続けて、

 

「その点あの子は心配ないわよ。あの子は一途な飼い猫よ。私みたいな野良猫とは違う。まぁあんたが白音をどう思ってるかは別だけどね?」

 

そうだよな……戦兎がそう呟いた次の瞬間。

 

「うぐ……」

 

突然の眩暈と吐き気に、戦兎は思わず苦悶の表情を浮かべる。それを見た黒歌は体を起こし、

 

「ちょっと待ちなさい」

 

戦兎の体に触れ、表情を曇らせる。

 

「抑えてるのにそれでも毒の侵食が早い……いや、毒自体よりも氣が弱まってるのね。なら」

 

と黒歌は呟き、少し深呼吸すると、

 

「おい黒歌……お前何ムグ!」

 

戦兎の言葉は途中で切れた。それもその筈。何せ喋ろうにも黒歌の唇で塞がれたからだ。

 

「ん……ちゅう」

「むぐ」

 

ぷはっ……と二人は顔を離し、

 

「な、なにしやがる」

「仕方無いでしょ。こっちも毒でふらつくんだから……手で氣を送れる調子じゃないのよ。となると粘膜接触で直接送るしかない。まぁ一番は房中術が手っ取り早いけどそこまでやる体力ないし」

 

い、いやもう大丈夫だから……と戦兎は言うものの、

 

「何言ってんのよ。あんたが身を捩るから必要量の半分も氣が送れてないわ」

「いやなんか……悪い」

「今更遠慮するんじゃないわよ。これは医療処置。人工呼吸みたいな物。それにもう毒を吸い出すときにしてるんだから」

 

そう言って黒歌は戦兎の唇にまた自分の唇を重ね、ゆっくりと呼吸を送り込むと、戦兎の体が熱を帯びていく。

 

「はむ……チュ」

 

舌が絡まって、頭がボーッとしてきて、どれだけの時間唇を重ねたのか分からなくなってくる。

 

「これでよし、ね」

「……」

 

唇が離れ、ツゥっと互いの唇が糸を引くと、黒歌はペロッと唇を舐めてニコッと笑う。

 

「何固まってんのよ」

「いや……色々衝撃的すぎて」

 

と言うか謎の罪悪感が……と戦兎は内心呟いていると、

 

「あ、もしかしてファーストキスだった?ごめんねぇ?私もだからお相子ってことにしてよ」

「医療行為ならノーカンなんだろ?」

 

戦兎は黒歌にそう言って、また眠り出すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかし静かだな」

 

休憩を挟み、リアス達は建物の最上階を目指して歩を進める。そんな中、ヴァーリは呟いた。実際皆も思っていたことで、何かしらの襲撃を考えていたが、そう言ったものはなく、平和なものだ。

 

ヴァーリは視線を落とし、

 

「つうかお前はなぜ戦兎を助けたんだ?」

「……」

 

ヴァーリの視線の先にいるのはオーフィス。一誠に力の殆どを奪われたものの、彼女は異次元空間に自分の力を予め別にしておいて、後々回収することである程度力を取り戻して(無限の龍神である彼女にとっては、大幅処ではない弱体化だが)いる。そんな彼女はヴァーリを見ると、

 

「美空言っていた」

「みーたんが?」

 

そう、とオーフィスは言いながら、

 

「一緒にお風呂入ったとき言ってた。最近戦兎が何かこそこそしていて危なくないか心配だと、だから我は聞いた。戦兎がいなくなったら悲しいかと。そしたら肯定したので、守らなければならないと判断した」

「そうか」

 

ヴァーリはそうオーフィスに返しながらも、

 

(ちくしょー!みーたんとお風呂とか羨ましすぎかぁあああああ!つうかオーフィス良いよなぁ!みーたんにいつも抱きつかれてるし可愛がってもらってる。俺だってみーたんにちやほやされたーい!撫で撫でしてもらったりぃ、膝枕も良いなぁ。あ!ご飯のアーンもお約束だ。あとみーたんって俺は呼ぶんだから俺もアダ名で呼んでもらうか。そうだなぁ……ヴァーリだしヴァー君?いやこれはダメだ。うん。絶対だめだ。聞くだけで嫌な思い出が甦る……となるとヴァーリきゅん?ヴァーたんも良いかなぁ……あ!ダーリンとか最高じゃね!?ダーリン!ハニー!って呼び会いたいなぁ!あぁやっべ、興奮してきた!もう胸のドキドキが止まりませんなぁ!みーたんのダーリン呼びとか全国1億2000万人居るみーたんファンの夢と希望!それが今俺の元にぃいいいいい!)

「うるせぇよ!」

 

スパーン!と匙はヴァーリの頭をひっぱたいた。

 

「なぜ俺の心の声が……」

「全部声に出てたからな」

「まじで?」

 

全員がドン引く中、ヴァーリが驚愕していると、

 

「バカが……」

 

龍誠に背負ってもらい、上を目指していた戦兎は呟く。

 

「戦兎。目を覚ましたのか?」

「あぁ……」

 

龍誠にそう答え、戦兎が視線を動かすと、

 

「戦兎先輩。大丈夫ですか?」

「あ、あぁ……取り敢えずな」

 

ものっすごい後ろめたい。とにかく後ろめたい。なんでこんな後ろめたさを味会わないといけないのかって言う気分だ。

 

そんな中、

 

「だが問題は兵藤一誠を倒すかだな」

 

そう粒いたのは、ゼノヴィアだ。それには皆同感で、あの出鱈目さは何度戦っても勝てる気がしない。

 

「それでもやるしかねぇ」

 

龍誠は低く静かに言った。その声音はゾッとするほどの怒りを秘めている。すると、

 

『ん?』

 

上を目指し歩く途中。ローブを被り大鎌を手に持つ骸骨の集団が廊下にたむろしていた。

 

「成程。死神(グリム・リッパー)か。簡単にはたどり着かせてくれないか」

 

サイラオーグはため息を吐きながら、スクラッシュドライバーを装着し、他の皆もベルトを着け、

 

「戦兎を頼む」

「は、はい」

 

龍誠も戦兎をアーシアに預け、

 

『変身!』

『潤動!』

《Wake up burning! Get CROSS-Z DRAGON!Yeah!》

《潰れる!流れる!溢れ出る!ロボットイングリス!ブラァ!》

《潰れる!流れる!溢れ出る!ドラゴンインクローズチャージ!ブラァ!》

《割れる!食われる!砕け散る!クロコダイルインローグ!オラァ!キャー!》

《フィーバー!パーフェクト!》

 

変身を完了し、皆はグリム・リッパーに向かって走り出す。

 

「くそ!廊下だと狭いから戦いにくいな!」

 

ヴァーリはそう言いながら、扉を開けて部屋に飛び込むと、追ってきたグリム・リッパーを次々と倒していく。

 

「しかも数も多いしな!」

 

と匙もツインブレイカーをアタックモードにして応戦。だが数に圧倒されそうだ。

 

《クラックアップフィニッシュ!》

『はぁ!』

 

まずフウとライが巨大な歯車を形成。それをサイラオーグが殴って発射して吹き飛ばす。

 

「あっぶね!」

 

それを龍誠は、その場でバク転するようにジャンプしながらスレスレで避けると、

 

「オマケだ!」

《Ready Go!ドラゴニックフィニッシュ!》

 

クルリと体勢を戻しながら、足を振って蒼いドラゴンを放つと、それが歯車に噛みつき一緒にグリム・リッパーを消し飛ばした。

 

「けほっ!けほっ!」

 

煙を吸い込んでリアスは思わず咳き込み、

 

「今吹き飛ばします」

 

と言ってルフェイが杖を振ると、土煙が晴れ、

 

「フシュルルルルルル」

『……』

 

廊下をギリギリ通れるサイズの蛇みたいな見た目のドラゴンが顔を出していた。

 

「ドラゴンか!?」

「だがなぜここにドラゴンが……」

 

ヴァーリが驚き、匙が困惑していると、

 

神滅具(ロンギヌス)には望んだ魔獣を作り出すという能力があるだろう?」

魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)ね!?」

 

サイラオーグが答え、リアスは叫びながら咄嗟に滅びの魔力を撃つが、ドラゴンには効果はなく、こちらに向かって飛びかかってきた。その瞬間、

 

『なっ!』

 

天井に穴が開き、上から降ってきたのは、

 

「グラム!?」

 

そう、見間違えるはずもない。ジークフリートが使っていた魔帝剣・グラムだ。他にもジークフリートが使っていた剣が全て地面に刺さっていて、

 

「っ!」

「祐斗!?」

 

リアスが驚愕する中、祐斗は飛び出してグラムを掴む。

 

(やっぱり!)

 

グラムを見たとき、何かが共鳴した気がした。それに導かれるままに飛び出してしまったが、握って分かる。この剣は自分に使えと言っているのだと、

 

「ハァ!」

 

そして祐斗は剣を降ると、

 

『へ?』

 

何の抵抗もなく斬った所か、建物ごと横一文字に叩ききってしまい、祐斗は唖然としつついると、全身に強い疲労感が襲い、膝をついてしまう。

 

「ぷはっ!」

「祐斗大丈夫!?」

 

皆が祐斗に駆け寄る。祐斗は青い顔をしながらも大丈夫だと言い、

 

(たった一振りで寿命がかなり削られた……とんでもない魔剣だ。ちゃんと使いこなさないと命に関わる)

 

等と思っていると朱乃は、

 

「ですがなぜグラムがここに?」

 

確かに……と皆は頷く。するとヴァーリが、

 

「ジークフリートに何かがあった……と言ったところだろうな。とにかく上にいくしかないだろう。ちょうど屋上までの直通ルートが出来たところだ」

 

そう言って天井を指差すと、確かに空が見える。暗雲が立ち込めているが……

 

「じゃあ行くか」

 

龍誠は戦兎を背負い直して言うと、皆はそれに頷いて飛び上がった。そして屋上に出ると、そこには変身した一誠がいた。

 

「グラムがそっちに飛んでいったのは予想外だったが、それでも切り抜けたか、流石原作キャラ達だ」

「ふざけやがって……」

 

龍誠はそう言いながら戦兎を座らせ、一誠を見据えながらドラゴンの羽根と腕を出現させる。

 

「すいません。黒歌様もお願いします」

「分かりました」

 

アーシアに黒歌を任せ、ルフェイも準備万端。他の皆も一誠を見据えて構える中、

 

「おい、ジークフリートに何があった?」

「なんだ気になるのか?ヴァーリ。なぁに。俺を裏切って襲い掛かってきやがってな。殺しちまった。俺は悪くないぜ?正当防衛ってやつだ。まあまた作り直せば良い」

 

そうか、とヴァーリは言いながら臨戦態勢。そして!

 

「はぁ!」

 

龍誠は一誠に飛びかかり、顔面に拳を叩き込もうとするが、

 

「遅いな」

「っ!」

 

ギリギリで避けてカウンター。そこに匙とヴァーリとサイラオーグがトリプルキックを放つが、

 

「あらよっと!」

《Boost!》

 

強化した力の拳を振った余波で3人を吹き飛ばす。そこに、

 

「おぉ!」

 

祐斗がグラムを振り下ろすが、

 

「ぐっ!」

 

ガクン!と体から何かが抜けていく感覚に耐えるが、

 

「へぇ、やっぱりどんな形であれグラムはお前の元に行くのか」

「何を言ってるのか分からないけど……」

 

祐斗は一度離れると、そこに入れ違うように、

 

『ハァアアアアア!』

 

フウとライが二丁拳銃を乱射。それに合わせて他の皆も一斉射撃するが、

 

「よっと」

 

皆の攻撃が180度反転して帰ってくる。

 

『きゃああああ!』

「ぐぁああああ!」

「相手の攻撃のベクトルを反転させるって言う神器(セイクリットギア)もあるからな」

 

皆が後方に吹き飛ばされ、床を転がる中、龍誠は再度一誠に襲いかかる。

 

「はは!そうでなくっちゃなあ!そうじゃないと戦兎は助けられないぞぉ!」

「っ!……うぉおおおおお!」

 

龍誠は叫びながら一誠を何度も殴る。

 

「ふむ……ハザードレベル4.4か。こんなじゃダメだな。ならば」

 

と一誠は言って下がると、

 

《Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!》

赤龍帝からの贈り物(ブーステッド・ギア・ギフト)!」

《Transfer!》

 

一誠の手から光の球体が現れ、それが真っ直ぐ飛び、

 

「くっ!」

《Penetrate!》

 

龍誠は咄嗟に防御したが、それは体をすり抜け、 それは動けない戦兎に向かうと、

 

「戦兎!」

「っ!」

 

その球体は戦兎の体に吸い込まれ、

 

「あがっ!」

『っ!』

 

戦兎は突然痙攣しだし、口から血の泡を吹き出すと血を吐きながら床を転がる。

 

「先輩!」

 

小猫が戦兎に駆け寄るが、戦兎の様子は明らかに普通じゃない。

 

「戦兎に何しやがった!」

「譲渡の力を飛ばしたのさ。そして他のやつには透過の力ですり抜けさせ、戦兎に力を譲渡した。いや厳密には戦兎自身じゃなくて、白龍皇の毒にだけどな。どうやらうまく処置してたみたいだが……まぁ無駄な足掻きだったと言うわけだ。残念無念また来年ってな」

 

龍誠はそんな一誠に黙って襲い掛かると、

 

「お前なんなんだよ……俺達がお前に何をした!何でこんなことができんだよ!」

「何でだと?それは簡単さ。お前が……兵藤 一誠だったお前や戦兎みたいなバグがいるからさ!お前たちがいなければ俺はこんなことしなかったさ。だがお前たちがいるから俺はこんなことをしちまってる。ぜぇんぶお前たちが結果的に引き起こしてんだよ!お前たちと言う存在が生まれてきたからなんだよぉ!」

 

龍誠を押し返し、一誠はレバーを回す。

 

《Ready Go!エボルテックフィニッシュ!》

「はぁ!」

《チャオ!》

 

一誠の回し蹴りは、龍誠を吹き飛ばし、そのまま変身を解除させる。

 

「龍誠!」

 

リアスは駆け寄ろうとするが、龍誠はその前に、来るな!と叫ぶ。すると、

 

「……なぁ兵藤 一誠。もう一つ聞いて良いか?」

「なんだ?」

 

龍誠は立ち上がりながら、一誠を見る。

 

「俺の両親って……どんな人だったんだ?」

「はぁ?急に急になにか知らんがつまんない普通の人間だよ。口うるさいしめんどいから今は記憶を消して最初から子供の生まれない夫婦って言う風に変えた。お前みたいな兵藤一誠だった別物が生まれたときもバカみたいに騒いでたよ。この世界にいるはずのないやつなのにさぁ!」

 

一誠の言葉に、龍誠は優しい口調で答えた。

 

「そうか……良かったよ」

「なに?」

 

龍誠の返答が予想外だったのか、一誠はポカンとしている。

 

「ずっと俺は引っ掛かってた。俺は要らない子供だったんじゃないか……子供を捨てる位だから俺と言う存在は必要とされてなかったんじゃないかって。案外……俺は生まれてこなければ確かにお前がこんなことしなかったのかもしれない。でもそうじゃないんだな。俺は祝福されてたんだな。そんな普通の家庭で口うるさく言われたりする……そんな暖かい家の子供だったんだな」

 

龍誠はそう言いながらクローズマグマナックルを取り出し、

 

「分かってスッキリした。そして兵藤 一誠。一つ言っておくが、俺は兵藤 一誠だったものじゃねぇ」

「じゃあなんだっていうんだ?まさか俺こそ兵藤 一誠だなんて宣言するのか?」

 

笑う一誠に、龍誠は首を横に振って答える。

 

「俺は兵藤 一誠じゃない。俺は愛と平和の為……ラブ&ピースのためと顔も知らないけどそんな最高の両親が生きるこの世界を守るために戦う正義のヒーロー、仮面ライダークローズこと、万丈 龍誠だ!お前は言ったな、お前は俺だと。だがそれは違う。俺はお前と違ってこの力を誰かのために使う。俺が憧れた……桐生 戦兎(俺の最高のヒーロー)みたいな、誰かの明日を作るために使うんだ!」

 

龍誠がそう叫ぶと、ドラゴンマグマフルボトルが懐から飛び出し、表面にヒビが入って発光する。それはまるで地面の下でマグマが蠢いているようだ。

 

「……」

 

それに龍誠は確信をもって、クローズマグマナックルにドラゴンマグマフルボトルを挿す。

 

《ボトルバーン!》

 

それからクローズマグマナックルを変形させ、ビルドドライバーにセット。

 

《クローズマグマ!》

 

龍誠はレバーを回し、それと共に地面からナックル型の溶鉱炉が現れ、

 

「変身!」

《極熱筋肉!クローズマグマ!アーチャチャチャチャチャ チャチャチャチャ》

 

それがひっくり返るとマグマが龍誠に降り掛かり、その中から8体の龍が出ながら固まる。そしてナックル型の溶鉱炉が冷えて固まったそれを殴って破壊すると、その中から、今までとは比べ物にならないオーラを纏ったクローズが立っていた。

 

《アチャー!》

「力が漲る……!」

 

ドンッ!と地面を踏み締めながら、メタリックブラックとマグマを模したオレンジ色のクローズに変身した龍誠は低く喋る。

 

「魂が燃える……!」

 

拳を握り、高まる力と興奮を1度抑え、一誠に向かって全てを解放して吠えた。

 

「俺のマグマが迸る!もう誰にも止められねぇええええええ!」




という訳でクローズマグマ遂に登場。前々から感想などでいつ登場するんですか?と言われ続けてましたが何とか出せましたね。まぁ活躍は次回にと言うことになりますが……


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迸れドラゴン

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

龍誠「毒に蝕まれ、苦しむ戦兎に俺の怒りが爆発!そして遂に俺の強化フォォオオオオオム!」
戦兎「おいこら!出だし取るんじゃないよ!」
匙「しかし強化フォームって言っても昨今のは活躍少なかったりするしなぁ」
ヴァーリ「そうそう。どっかの仏像フォームなんか登場した次の回から結構散々だったしな」
サイラオーグ「確かにな」
龍誠「おっとぉ?強化フォームの予定がないやつらがなにか言ってるなぁ」
匙&ヴァーリ&サイラオーグ『あぁん!?』
戦兎「という訳でクローズマグマは無事活躍できるのか。そんな感じの92話スタート。」


「おやおや、これは凄まじいオーラだ」

「プルートか。丁度良い。折角だし戦ってみたらどうだ?」

 

新たなクローズ、クローズマグマへ変身した龍誠を前に、一誠は言うと降りてきたプルートは少し驚きながら、

 

「よろしいのですか?」

「あぁ、アンタも部下をやられて御立腹だろう?」

 

ではお言葉に甘えて……とプルートは言いながら、大鎌を構えると龍誠に襲い掛かる。だが、

 

「ごふっ!」

 

先に大鎌を振り下ろし始めた筈のプルートの胸に、龍誠の拳がベキベキと音を立てながらめり込む。

 

「ほごぅ!」

 

胸を抑えて後ずさるプルートを追い、龍誠は炎を纏わせて右フック。

 

「はごぶ!」

 

続けざまに左フックを叩き込み、吹き飛ばしながら、龍誠はクローズマグマナックルをベルトから外して、右手に装着。それを見てプルートは大鎌を振り抜くが、龍誠はクローズマグマナックルを握っている手で迎撃し、二つがぶつかり合う。すると、

 

「なっ!」

 

プルートの大鎌が砕け、そのまま龍誠の一撃は真っ直ぐプルートの顎を撃ち抜いた。

 

「あ、がご!」

 

ふらついてプルートは飛んで離れようとするが、

 

「ハァアアアアア!」

 

自身を中心に溶岩を精製し、その溶岩が一匹のドラゴンに変わると、プルートを飲み込み、地面に激突するとそのまま崩れる。

 

「あぎぁああああ!」

 

ジュウジュウとプルートは体から煙と音を発しながら、ドラゴンの体を掻き分けて脱出……しようとしたが、表面が固まると、そのままプルートを拘束。因みにマグマは表面が冷えても、中はすぐには冷えないため、中は今だ高温だ。

 

そして龍誠はクローズマグマナックルから、ドラゴンマグマフルボトルを一度外して挿し直すと、炎が集まり力が高まった。そして!

 

《ボルケニックナックル!アチャー!》

「どりゃああああああああ!」

 

渾身の右ストレートがプルートに炸裂し、マグマの塊ごとプルートを粉々に砕く。それから一誠を見て、

 

「あとはお前だけだ!」

 

と龍誠は突進。一誠の顔を殴ると、後退りながら顔を手の甲で拭う。

 

「ハザードレベル4.6か……良いぞ一気に上がったなぁ!」

「うるせぇ!」

 

続けざまに2・3発と叩き込み、一誠は大きく後ずさった。

 

「凄い……圧倒的じゃない」

 

と言うリアスにヴァーリは当たり前だと言いながら、

 

「アイツはオーフィスの力も取り込んだ状態だぞ。元々パワーなら上級……下手すれば最上級クラスだ。そんなあいつなら……魔王クラスに片足は突っ込んでるだろう」

 

そんなやり取りの中、龍誠は更に一誠を殴り付け、

 

「ハハハ!ハザードレベル4.8!どんどん上がるなぁ!」

「何を楽しんでやがる!」

 

龍誠はクローズマグマナックルで一誠を殴り、それを一誠はキャッチして止めるが、炎を纏わせた蹴りで追撃。

 

「ハザードレベル……4.9」

「これで終わりだぁ!」

 

そう龍誠は叫び、ビルドドライバーのレバーを一回回して、

 

《Ready Go!》

 

そのまま龍誠は飛び上がると八匹のドラゴンがそれを追い、そのドラゴンが龍誠と融合してそれと共に蹴りを放ち、

 

《ボルケニックアタック!》

「ハァアアアアア!」

 

爆炎を纏わせた飛び蹴りは、一誠に炸裂しせめぎ合う。そして、

 

「ハザードレベル!5.0だぁあああああああああああああ!」

 

爆発と共に爆風が襲い、皆は目を細め、

 

「っ!」

 

次の瞬間戦兎がガバッと体を起こした。

 

「先輩!」

 

小猫が駆け寄る中、戦兎は手をグーパーしたりして確認し、

 

「毒が……消えた?」

「そのようね」

 

そこに黒歌も復活したらしく、グルグルと肩を回している。

 

「と言うことは……兵藤一誠を倒せたってこと!?」

 

リアスはそう言いながら炎の方を見ると、その中心に龍誠が立っていた。

 

「りゅうせ……」

「くく、くはは!」

 

リアスが龍誠に声をかけようとした瞬間、龍誠は彼らしくない笑いをし、

 

「違う」

 

戦兎が呟く。同じ顔だ。服だって同じだ。だが戦兎には分かる。オーラが違う。そしてそのオーラは……

 

「兵藤 一誠……」

『え?』

 

皆はポカンと戦兎を見た。だって一誠は倒したはずだと。だが龍誠?は……

 

「流石戦兎。すぐに分かったようだな。そうだよ俺だよ。兵藤一誠だよぉ!」

『っ!』

 

嘘よ……と朱乃は震えながら呟いた。龍誠は勝った。勝っていた筈だと。

 

「そもそもなんで俺が龍誠のハザードレベルを気にしてたのか……それはコイツの赤龍帝の力の欠片が欲しかったからさ」

「欠片だと?」

 

戦兎の言葉に、一誠は頷き、

 

「コイツの中には赤龍帝の力の欠片があった。欠片と言っても分かりやすく言えばミクロン単位の小さな欠片。だがそれが意外と大切でな。例えるなら幾つも連結して稼動する歯車が一個だけ欠けてる状態で、なーんで龍誠にそんなのが残ってたかずっと謎だ。他の本来の所有者には見られない現象だしな。一応やはり原作主人公だからかもだが、とは言えお陰でどうも力が噛み合わずちゃんと出ない。だから回収することにした。あぁ、これは相手の体を乗っ取る事が出来る神器(セイクリットギア)を使ってな?だが欠片が小さすぎて普通に回収もできない。そしたらな、ハザードレベルと神器(セイクリットギア)は密接に関係していることが分かった。ほら、匙だって変身時の姿が変わっただろ?あれもハザードレベルが上がって神器(セイクリットギア)に影響を与えたからさ。なのでコイツを精神的に追い詰めることで上げようと思った。まぁそれは無理となって敢えてある程度ストーリーを進ませることにしたけどな。そうすれば成長するし、それに合わせてハザードレベルも上がるはずだと思ってよ。お陰でハザードレベルも予定値に達して、俺は晴れてコイツの体ごと欠片をいただいたのさ。これで俺は更なる高みに至れる」

 

一誠はそう言いながらビルドドライバーやクローズマグマナックル等のアイテムを捨て、代わりにエボルドライバーを装着し、手をかざすとそこにオーラが集まり、青いドラゴンを模した造形のフルボトルが現れた。

 

「さて、俺の新たな……いや、完全となった力を見せてやるよ」

《ドラゴン!ライダーシステム!エボリューション!》

 

一誠はレバーを回し、笑みを浮かべながら構えて、

 

《Are you ready?》

「変身!」

《ドラゴン!ドラゴン!エボルドラゴン!フッハッハッハッハッハッハ!》

 

変身を完了した一誠は、顔が少しクローズに似て、それ以外は今までのをエボルに似た姿に変わり、

 

「仮面ライダーエボル。フェーズ2……完了だ」

「そんな……」

 

アーシアはいやいやと首を横に振る中、

 

「させるかよ!」

 

戦兎はビルドドライバーを着けてハザードトリガーを起動。

 

《マックスハザードオン!》

「変身!」

《鋼鉄のブルーウォーリア!タンクタンク!ヤベーイ!ツエーイ!》

「戦兎待ちなさい!」

 

リアスが制止するのも聞かずに戦兎は突進し、一誠を殴る。だが、

 

「なっ!?」

 

一誠はそれを軽々とキャッチして止めてしまう。

 

「くそっ!」

 

戦兎は両手で押そうとするが、一誠はびくともしない所か、片手で軽々と押し返してくる。

 

「バカな……あれはルークの力も上乗せされてるんだぞ!?」

「サイラオーグ・バアル!そんなこと言ってる場合じゃねぇ!俺達もいくぞ!」

 

ヴァーリの声に、唯一この場でまともにタンクタンクフォームの力を味わっていたサイラオーグは、慌てて続いて走り出す。

 

『ハァ!』

 

ヴァーリとサイラオーグが同時に殴りかかるが、

 

「ふん!」

 

一誠は戦兎を突き飛ばし、2人の拳をキャッチして止め、蹴りを放って反撃したが、

 

黒い龍脈(アブソブーション・ライン)!」

「ん?」

 

匙の黒い龍脈(アブソブーション・ライン)が一誠の体を絡めとる。だが、

 

《Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!》

赤龍帝からの贈り物(ブーステッド・ギア・ギフト)!」

《Transfer!》

「がはっ!」

 

増幅された力を一気に流し込まれ、匙は黒い龍脈(アブソブーション・ライン)と変身を解除されてしまい、そのまま血を吐きながら倒れた。

 

「えぃ」

「ん?」

 

そこに飛びかかったのはオーフィス。しかしオーフィスの拳を一誠は軽々と避けてカウンター。

 

「ごほっ」

 

オーフィスは後ろに吹っ飛び、口から血を吐きながら首をかしげていた。

 

「痛みを味わうのは初めてかな?」

『今よ!』

 

するとリアスが滅びの魔力を放ち、それの続いて皆も合わせて攻撃。更に、

 

《フルフルマッチデース!フルフルマッチブレイク!》

《シングル!ツイン!ツインフィニッシュ!》

 

戦兎と匙にヴァーリがそれらに合わせる。だが、

 

《Ready Go!エボルテックフィニッシュ!》

 

一誠はレバーを回し、 龍誠のより巨大な蒼いドラゴンを作り出すと、皆の総攻撃を呑み込み戦兎たちに襲い掛かった!

 

《チャオ!》

『きゃあああ!』

『ぐぁあああ!』

 

爆発と共に皆は吹き飛び、戦兎達は変身が解除されて地面を転がる。

 

「ふぅ、凄いな。今までとは比べ物にならないが……」

 

一誠はそう言いながらハザードトリガー?を起動しようとするが、

 

「ダメか」

 

カチカチとスイッチを押しても、ウンともスンとも言わない。

 

「まだエネルギーが足りないのか。オーフィスの力もチャージしたんだぞ全く……。まぁこの力があれば相手には事欠かないから良いとするか」

「う、ぐ……待て」

 

ブツブツ言っている一誠を前に、戦兎は腕に力を込めるが、体が上がる気配はない。それを見ながら一誠は、

 

「という訳でだ。この龍誠の体は俺が有効活用してやるよ。なぁに、すぐにまた会えるさ戦兎。精々強くなっててくれよ?お前ならもっともっと強くなれる。そしたら俺が使ってやるからな。お前みたいなバグキャラを使ってやるんだ。感謝しろよ?無駄なあがきはしなくて良いからな?どうせ全部俺の手のひらの上さ」

 

そう言って指をパチンと鳴らすと、戦兎たちを霧が包む。

 

「それじゃ、チャオ」

 

遠退く意識の中、背を向け去っていく一誠に、戦兎は手を握ることしか出来ず、悔しげに歯を噛み締めながら意識を手放し、どこか遠くにアザゼルの呼び掛けが聞こえたような気がしたが、戦兎達は誰も答える事が出来なかったのだった。




えぇというわけでクローズマグマ。プルートを倒し一誠を追い詰めるも逆に吸収されました。負けもしてないけど勝てもしていない。まぁ一誠には余裕があるので本気のぶつかり合いになってたらどうなってたかは分かりませんが……

ってなわけで12章はここまで。次回からは13章。原作で言うと12巻の部分に当たります。と言いたいのですが、ちょっと番外編と言うか、前にジオウ×ハイスクールD×Dのも考えたと言うのを投稿しましたが、感想を見たりよくよく考えたら、このままだとあの世界でのオーマジオウがただの悪いやつで終わってしまう上に書く予定ないから誤解を解くこともできないと思い至りならば大まかなお話のあらすじ的なのを出そうと考えたので、一章ではどんな話だったか~とかから始まり最終話までのあらすじを出させてもらいます。続きが気になる人はごめんなさい。出来るだけさっさと出して続き書きますので。


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ジオウ×ハイスクールD×Dあらすじ
ジオウ×ハイスクールD×Dはこんな話だった。前編


本当にざっくりとしたあらすじです。細かい所はね……無理です。


《第一章》

 

実奈「本来であれば普通の高校生兵藤 一誠は赤き龍の帝王にして乳の無限の可能性を切り開くおっぱいドラゴンになる未来が待っていた……筈でした。ですが残念なことにそれは少し変わってしまいます。これはそんな少しばかり変わってしまった物語。その変化がどんな結末を迎えるのか……っと、少し先まで話してしまいましたね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レイナーレ「好きです付き合ってください!」

 

とレイナーレの告白から始まり、告白された一誠と一緒に帰っていた皆驚愕。

 

と言うのも、赤龍帝の力は転生者である実奈が持っているため、レイナーレの告白イベントはないはずのため。

 

更に原作とは違ってスケベじゃなくなっている一誠はその告白をまだ君を知らないからといって断り、なら友達からと食い下がられ承諾。だがレイナーレの正体を知っている実奈は警戒心MAXに。

 

基本的に原作通りになって欲しいものの、一誠が死ぬのは助かるのが分かっていても嫌な皆を連れて帰ると、すっかり廃人ゲーマーとなった黒歌がいて、三人で駄弁っていると母帰宅。慌てて黒歌は黒猫に化けて部屋に来たやり過ごし、次の日から連日レイナーレがやって来て実奈は胃を痛める日々に。

 

その間実奈がこっそりドライグと会話する中、レイナーレは一誠ではなく実奈を見ていると言われ、やはり狙いは自分かと気づく。

 

そしてある日、実奈は一人でお使いに出た際、レイナーレに襲撃を受ける。狙いはやはり自分で、神器(セイクリットギア)を持っていたため。だが実奈は才能がないため神器(セイクリットギア)というか赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を使えないため、持ち前の逃げ足で逃亡。その早さにレイナーレは驚愕しつつも、徐々に追い詰めるが、そこに一誠が割って入りギリギリ救出。と言うのも、レイナーレが怪しいことに一誠は気づいていた上に、実奈が襲われる夢(ジオウの力の一端)を見て嫌な予感が拭えず追ってきたらしい。

 

だがこの世界ではただの人間である一誠が来たところで猶予が出来ただけにすぎず、また絶体絶命に追い詰められ、レイナーレの光の槍が飛んできた瞬間、一誠の体が光り槍を弾くと、その手にはジオウライドウォッチが現れ、見たことのない力に嫌な予感を覚えたレイナーレは一度撤退。

 

二人は何があったのか分からず困惑するが(ドライグは薄々勘づいた模様)、取り敢えず仲良く帰宅。

 

明くる日、学校が休みのため外を一誠が実奈と歩いていると、困ったことがあったらこれに願ってください。助けます。と言う魔方陣付きのチラシを貰い、実奈があれ?このチラシって貰うのこのタイミングだっけ?となっている中、アーシアと出会い道に迷っているらしいアーシアの一誠が話しかけるものの、言語が理解できず困惑。実奈も名前はアーシアっていってるっぽいけどと言いつつ、確かこれレイナーレの所に行くイベントだよね?ストーリーに矛盾起こさないためなら行かせるべき何だろうけど……と困っていると、ドライグが気づき実奈に指示を出して二人を突き飛ばし自分も避けると、そこに光の槍が突き刺さり、空を見るとそこにはレイナーレと行動を共にしていた三人の堕天使がおり、アーシアを奪おうと一誠たちに襲いかかる。

 

三人掛かりの猛攻に一誠達はアーシアを庇いながら逃げるが、逃げられない一撃を喰らい欠けた瞬間、ジオウライドウォッチが再度光って光の槍を弾くと、一誠は一人荒野に立っており、目の前には金と黒の派手な装飾をされた姿の男?が座っており(オーマジオウのこと)。

 

オーマジオウ「我が名はオーマジオウ。最高にして最善の王なり。私よ、時は満ちた。持っていくが良い。王のベルトをな。使い方は手取り足取り教えずとも分かるだろう?」

 

そう言ってオーマジオウは手を翳すと、一誠の手にジクウドライバーが現れ、困惑する一誠はまた気づくと堕天使たちの前に立っており、何かに導かれるようにジクウドライバーを装着し、ジオウライドウォッチを使って変身。その場の皆が突然の変化に驚く中、ドライグが唯一やはりそうかと納得し、実奈がこっそり聞くと、あの姿は過去にいや王の力だと言い、なぜ持っているのか分からないがあの姿は少し違うが間違いないと言い、凄い王さまだったのかと聞く実奈に、最低最悪と言われてたとは言えずに、まぁ全ての時空・事象・次元を支配出来る力を持った最強の王だったとドライグが答え、じゃあ祝おう!実奈が提案。と言うのも、王さまなら口上が必要じゃん?というのが持論で、そもそも赤龍帝の力を自分が持ってしまっているのだからせめて派手に行こうと言い、実奈はドライグが止めるのも聞かずに一誠の前に立つと、

 

実奈「祝え!全ての時空・事象・次元を支配する最高の王者。その名も仮面ライダージオウ!ここに、王の物語が新たに紡がれ始めた瞬間である!」

一誠「お前……急にどうした?」

実奈「いやぁ、やっておきたくてね。つうわけでお兄ちゃんあとよろしく」

 

そう言って戦闘能力皆無の実奈は後ろに下がり、一誠は堕天使に飛び掛かる。

 

最初は慣れない戦闘に苦戦を強いられるものの、直ぐに順応して三人を相手にしても引かなくなるどころか逆に押し返し始め、ジカンギレードを取り出し応戦。ギリギリ斬りとジオウスレスレ撃ちで二人倒し、最後にタイムブレークで三人を撃破したが、そこにレイナーレが不意討ちし、アーシアを奪取。その際に実奈も攻撃を喰らって大怪我を負い(ドライグも一誠に気を取られていて気づかなかった)、そのまま逃亡。一誠は慌てて変身を解除して実奈に近寄るが、致命傷なのは明白でどうしようもなかった所に、先程貰った魔方陣が点灯。そこにリアスが現れ、彼女に驚かれながらも見て貰うと、何故かポーン駒が8個も必要なのに気づき、一誠に人間じゃなくなっても良いかと許可を貰ってから悪魔に転生。

 

その後傷がなくなって無事なのを確認してから、リアスに暫くは目を覚まさない実奈を任せて、一度帰宅すると黒歌に人探すから手伝えと言い、ソシャゲの課金を条件に黒歌は了承。一誠に付着していたアーシアの匂いで追う最中、黒歌にクロカライドウォッチを渡される。

 

何故持っていたのかは分からず、気づいたら手に持っていたと言われて首を傾げつつも、分からないけどこれは一誠が持っているべき物の気がすると言う彼女に渡されたクロカライドウォッチを手に更に追うと、古びた廃教会にたどり着き、乗り込むとそこには敵が大勢おり、襲い掛かられるが素早く一誠は変身し応戦。

 

黒歌に下がってろと言うものの、心配ご無用と黒歌も応戦。そこにフリードが襲いかかる(この時点では名前分からず)が、一誠と黒歌の連携に押し返され、クロカスレスレシューティングで吹っ飛ばされ、その先に地下への道が見つかり、意識は失っているものの無事なアーシアと、何やら怪しげなレイナーレがおり、間一髪で間に合った一誠はレイナーレに切りかかるが避けられてしまう。

 

何しに来たんだと叫ぶレイナーレに対し、アーシアを助けに来たと言う一誠。それにレイナーレは、会ったばかりの素性の知らない小娘を助けるなんて正気じゃないと言い、一誠はそうかもなと言いつつクロカライドウォッチを手に、

 

一誠「確かに俺はこいつの名前も知らない。でもな、それでもテメェらと一緒にいるべき存在じゃないのはわかる」

レイナーレ「何を根拠に……」

一誠「何となくかな。でも実際俺たちを行きなり襲ってくるやつには任せられないだろ?と言うか結局まだアーシアの行きたい先も分かってないしな。だから力付くでも渡してもらう。理屈や通りじゃない。俺がそう決めたんだ」

《クロカ!》

一誠「変身!」

《アーマータイム!クーロカー!》

 

とクロカライドウォッチを使ってアーマータイムした一誠はレイナーレの前に行くと、

 

実奈「うぉおおおお!何か急がなくてはいけない気がする!」

 

そこに駆け込んできたのは実奈で、

 

一誠「何でお前がここに……」

実奈「いやぁ、お兄ちゃんがジャージ着た女の子と何処かに向かっているのをリアス先輩の使い魔?が追っかけてたらしくてさ。それで連れられてここに向かってたらなんか私の第六感が囁いて全速力でやって来たの。何か道中神父服を着た奴等に襲われて死ぬかと思ったけどリアス先輩達に助けてもらってここに着たの。でもなんで黒歌まで居るの?」

黒歌「ちょっとね。て言うか上の奴等め……折角死なない程度に痛め付けてやったと言うのに」

実奈「まあ良いか。と言うかお兄ちゃん何かまた姿変わってない?」

一誠「なんか黒歌の力が使えるようになった感じかな?」

実奈「成程成程……それじゃ改めましてゲフンゲフン。祝え!全ての時空・事象・次元を支配する最高の王者。その名も仮面ライダージオウ・クロカアーマー!まずは一つ。仙術を用いし黒猫の力を手に入れた瞬間である!」

一誠「それ必要か?」

実奈「何か楽しくない?」

 

まぁ良いかと実奈みたく納得した一誠はレイナーレに突進。レイナーレは光の槍で応戦するが、最上級悪魔に匹敵する黒歌の力(実際には一誠達と出会ってからずっと引きこもりしていたため大分黒歌自身は勘が鈍っている)では相手にならず、仙術による幻や氣を乱されて動きを取れなくされたところに必殺の、

 

《フィニッシュタイム!クロカ!クロネコタイムブレーク!》

一誠「喰らえネコパーンチ!」

 

オーラで猫の手を作ってフルスイングでぶっ叩くクロカタイムブレークでレイナーレを撃破し、

 

一誠「一丁上がり」

黒歌「猫パンチって言うよりただの右フックよね」

 

そんな突っ込みを入れつつ、黒歌は鼻をフンフン動かすと、

 

黒歌「やば!」

 

と言って一誠の着けていたクロカライドウォッチを勝手に外しながら、一誠に絶対にこれはこれから来るやつらに見せちゃいけないと言って、自分は地下に置いてあった布を適当に裂いて顔に巻いて顔を隠す。それを二人が見ているとリアスたちが入って来て、勝手にものすごい速度で実奈が行ったため驚いたと言いつつ、ジオウに変身している一誠を見て、誰だとなりながら一誠が変身を解除するとリアスは誰なのか気づき、 そう言えばもう一人一緒に入っていったはずと見回すと、そこには布で顔を隠した黒歌が居て、何者かと問われると、

 

黒歌「私?私は謎のお助けキャラ黒猫仮面よ!」

一誠「いや黒kいっで!足踏むな!」

実奈(そっか……いま小猫ちゃんもいるし特に正体を隠したいのか)

 

そんなやり取りに皆は怪しみ(特に小猫は何処か懐かしい匂いのため)ながら居たところにアーシアが目覚め、一体何事かと慌てる中、実奈がアーシアに説明し(と言っても、強ち間違っては居ないとは言え一誠が以下に頑張ったか、一誠が以下に凄かったかを語りまくって、いつの間にか凄い恩人にしたて上げていた)、その間にリアスも一誠の自身の説明や、悪魔についての説明等々を行い、一誠や黒歌を勧誘するが黒歌は断り、一誠は実奈がいるしと了承。しかし何故か一誠は転生できず、皆で困惑する中じゃあ彼女は以下がです?と実奈がアーシアをオススメし、堕天使たちがあれだけ必要としてたのできっと何かありますと言って後押し(実際は原作知識)してアーシアにリアスは良いか聞くと、堕天使達に着いてきたものの、行く先がなかったのが大きいため、特に拒否する理由はないとのことでアーシアが転生。

 

その後エンドロール的なものを挟みつつ、本来物語に関わらずに第三者視点でいたかった実奈がなんてこったと落ち込むのを背景に一章終了。

 

《第二章》

 

実奈「本来であれば普通の高校生兵藤 一誠は赤き龍の帝王にして乳の無限の可能性を切り開くおっぱいドラゴンになる未来が待っていた……筈でした。しかし、それは成されず全く違う流れに。とは言え大まかな流れに変わりはないようです。そしてもちろん第二章はあの人物も登場。この物語の鍵は滅びの力……っと、少し先まで話してしまいましたね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一誠「実奈、何はなしてんだ?」

実奈「え!?あ、ううん!なんでないよ!」

 

レイナーレとの一件から暫し経ち、実奈も原作には大きく関わらずに、第三者視点で居たかったのにと言う悩みも一誠がオカルト研究部に実奈の付き添いで顔を出すようになったので、まぁ良いかと納得していた日。

 

事件の次の日に、アーシアが渡してきたアーシアライドウォッチを(寝て起きたら合ったらしく、見たときからこれは一誠に渡すべきものだと思ったらしい)ポケットで遊ばせながら、オカルト研究部に行くと、どうもリアスの様子がおかしいことに気づき、どうしたのかと問いただすが何も答えず、そうこうしている間に突如魔方陣が出現。原作知識がある実奈は混乱し、

 

実奈(嘘!何でライザーが来るの!?まだその時じゃない!だってその前にお兄ちゃんを誘惑して……ってそうか!お兄ちゃんこっちだと眷属じゃないからか!確かにちょっと遠慮って言うか壁あるもんなぁ……これリアス部長に限らず他のメンバーともだけど!)

 

そう実奈が自問自答している間にライザーがグレイフィアと共に出現し、そこでリアスの婚約について発覚。

 

更にリアスにベタベタしようとするが、呆気なく避けられてしまう上に結婚はしないと言われ、悪魔の現状を引き合いにリアスと口論になりかけたとき、

 

一誠「あ、リアス部長。今日お菓子持ってきたんですよ」

リアス「え?」

 

そう言いながら一誠はリアスにお菓子を渡していると、

 

ライザー「何だ?お前人間か?何故人間がこんなところにいるんだ?と言うか今大事な話をしてるんだ。失せろ!」

一誠「妹が悪魔になっちゃったんでね。その関係ですよ。更に妹の命の恩人でもある。そう言う人への嫌がらせは止めて貰いたいですね」

 

そう言って割って入った一誠とライザーはにらみ合いになり、

 

ライザー「人間風情が粋がるな。お前程度その気になれば簡単に消し炭に出来るんだぞ?」

一誠「やってみろよ。焼き鳥野郎」

 

そう言うが早いかライザーが足元から炎を出し、一誠は離れるとジクウドライバーを装着。

 

《ジオウ!》

グレイフィア(あれは……まさか!?)

一誠「変身!」

《ライダータイム!仮面ライダージオウ!》

ライザー「何だ?神器(セイクリットギア)……か?」

 

少し驚くライザーを前に、折角だし新しいライドウォッチを使ってみよう(黒歌に自分のライドウォッチは絶対リアスたちの前で使うなと言われている)と、アーシアライドウォッチを出して、

 

《アーシア!アーマータイム!アーシアー!》

実奈「わぁ!これは祝わなくちゃ!」

 

新たなライドウォッチでアーマータイムした一誠を見た実奈は一誠の前に立つと、

 

実奈「祝え!全ての時空・事象・次元を支配する最高の王者。その名も仮面ライダージオウ・アーシアアーマー!また一つ、全てを癒すシスターの力を手に入れた瞬間である!」

ライザー「……は?」

実奈「ささ!お兄ちゃんファイト!」

 

と実奈に押されて戦い始める一誠だが、ライザーを殴ってもびくともせず、困惑する中ライザーの炎が一誠に直撃。吹っ飛ばされ、一誠は何でだと驚きながらも立ち上がり、

 

一誠「なら喰らえ!キラキラビーム!」

ライザー「何だ?気持ちいいじゃないか」

 

再度攻撃するも効かず、驚いていると実奈がアーシアの力は基本的に癒しの力だから戦闘能力がないことに気づき、一誠は慌ててアーマータイムを解除。素の状態で戦おうとしたところに、グレイフィアが割って入って二人を止め、

 

グレイフィア「ここでお止めください。これ以上は危険です」

 

突然止められ、一誠とライザーは不完全燃焼状態で不貞腐れつついると、グレイフィアはこうなった場合レーティングゲームで決着を着けさせると言われていたのをリアスに伝えると、リアスもそれに了承。するとライザーは一誠を見て、これは非公式のレーティングゲームなのだから、人間のこいつが出ても良い筈。だから出ろと言ってくるものの、グレイフィアはそれを拒否し、

 

グレイフィア「更にライザー様。この方についてはこちらからフェニックス家に連絡を取るまでは、一切の口外を禁止させていただきます」

ライザー「なに!?」

 

どう言うことだと詰め寄るライザーに、グレイフィアは一誠に視線を向けながら、

 

グレイフィア「申し訳ありませんがリアスお嬢様には後で少しばかりお話を伺うことにかもしれないと思いますが、その際はよろしくお願いします」

 

とだけ言ってライザーを連れて魔方陣で帰ろうとするグレイフィアをリアスは止め、どうしたのかと問うと、

 

グレイフィア「申し訳ございませんが、今はまだ話すわけにはいきません」

 

とだけ言って消えてしまったグレイフィアを見送り、皆で顔を見合わせると、場面が変わってグレイフィアとサーゼクスとの会話のシーンに変わり、

 

サーゼクス「オーマジオウが甦った!?」

グレイフィア「いえ……見たところリアスお嬢様に対して好意的な対応をしていましたし、敵意はありませんでした。それに姿も少し違ってましたし、ライザー様に遅れを取っていました」

サーゼクス「ふむ、確かにライザー君は才能豊かではあるが、オーマジオウに勝てるかと言われると……」

グレイフィア「はい。あの者の強さは尋常ではありませんでした。あれは……どのような言葉を使っても現せない強さを持っていたかと」

 

二人はやり取りをする中で、サーゼクスは一誠とオーマジオウは同一人物なのか?という考えに至り、

 

サーゼクス「もしかしたら力は持っていてもオーマジオウ本人ではないのかもしれない」

グレイフィア「ですがまたあのような事件が起これば……」

サーゼクス「あぁ、だが意識するあまり彼を遠ざければ第二のオーマジオウを生みかねない。遠ざけるより、親しくする方がいいだろう」

 

そう言いながらサーゼクスは、一誠が良いのならレーティングゲームにも参加させようと言い、流石にグレイフィアは慌てるが、

 

サーゼクス「どちらにせよ彼を見定めたい。勿論何かある前に、危険があると判断すれば私が止める。ライザー君に遅れを取る程度ならば、私でも十分対処できるだろう」

 

というやり取りの果てに、一誠のレーティングゲーム参加まで決定し、皆で特訓に行くというため実奈の願いもあって付き添いとして一誠も同行することに。

 

実奈「ぐぇ……おぅ……」

一誠「大丈夫か?」

 

レーティングゲームに向けて修行を行うものの、才能が全くない実奈はついていけずにグロッキー状態。皆は思わず苦笑いを浮かべるも、リアスは何故ポーンの駒8個も使ったのかが分からず首をかしげてしまう。

 

そんなこんなで特訓が進み、一誠はリアスに眷属でもないのにレーティングゲームに巻き込んでしまったことを謝ったり、思いを聞いて一誠がフラグを建て、遂にレーティングゲーム本番。

 

実奈の唯一?の武器である逃げ足でライザーの眷属を連れて逃げ、朱乃で纏めて倒したり、祐斗と相手のナイトの戦いがあったり、お互いに倒し倒されを繰り返しながら、ライザーのクイーンを一誠のジオウギリギリスラッシュで倒し、唯一生き残った一誠と実奈がライザーと戦うリアスの赴く中、レイヴェルとやり取りがあったりしつつ到着。

 

押されていたリアスを下がらせて一緒にいたアーシアに回復を任せ、一誠がライザーと戦うが、ライザーの不死性に苦戦。ジオウスレスレシューティングも効かず、

 

ライザー「諦めろ!お前では俺には勝てやしない」

一誠「悪いけど……俺は諦めが悪いんでね!」

 

そんなやり取りをしながらぶつかり合う二人。

 

ライザー「しつこい!お前が何度立ち上がろうとも俺には勝てやしない!リアスを守れやしないんだよ!」

一誠「しつこくて結構!それに俺はな、今結構怒ってるんだよ!」

ライザー「なに?」

一誠「自分の意思も関係なく、願いも聞き届けられない。何が純血。何が上級悪魔だ。聞いてるだけで息が詰まりそうだ。そんな風習……俺が否定して、俺が部長を自由にする!好きな人と結婚できるように、自分の本当にしたいことをして、未来を作れるように!自分の道ってのはな、自分で決めるもんなんだよ!」

 

すると一誠の言葉に息を呑んだリアスの手にオーラが集まり、それがリアスライドウォッチへと形を変え、リアスは咄嗟にそれを投げ渡すと、一誠は他のライドウォッチと形状が違うのを不思議に思いながらそれを使い、

 

《リアス!アーマータイム!リーアースー!》

 

新たなライドウォッチで変身した一誠を見て、実奈もテンションMAXになると、

 

実奈「祝え!全ての時空・事象・次元を支配する最高の王者。その名も仮面ライダージオウ・リアスアーマー!また一つ、万物を消滅させる悪魔の力を手に入れた瞬間である!」

一誠「それまだやるのか?」

 

そう言いながらも一誠はライザーと戦い、先程とは違って一転優勢に。

 

リアスアーマーの滅びの魔力を一誠は振るい、ライザーを圧倒。再生が追い付かないほどの怒涛の攻撃でライザーを追い詰めると、

 

《フィニッシュタイム!リアス!ルインタイムブレーク!》

 

必殺のルインタイムブレークを発動し、巨大な滅びの魔力の壁を二つ作り、それでライザーを挟みながら一誠は、

 

一誠「サンドイッチ完成」

リアス「レーティングゲームじゃなかったら具が消滅するわよ……」

 

と同時にレーティングゲームは終了し、リアス達が勝利に湧く中、実奈はここで勝ってしまったことに驚きつつも、まぁ良いかと言うところで締める。

 

《第三章》

 

実奈「本来であれば普通の高校生兵藤 一誠は赤き龍の帝王にして乳の無限の可能性を切り開くおっぱいドラゴンになる未来が待っていた……筈でした。しかし、それは成されず全く違う流れに。とは言え大まかな流れに変わりはないようです。そして第三章から新キャラも多数登場。そうですね。この物語の鍵は聖剣……っと、少し先まで話してしまいましたね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ライザーとのレーティングゲームから暫くして、何故かリアスが一誠の自宅に越してくるなど色々あったものの、平穏な日々を過ごしつつ匙とであったりとイベントを消化。

 

その中イリナ&ゼノヴィアと出会い、一誠は人間だったが、実奈が悪魔になっていることに気付かれつつ、部室での教会組とのやり取りや、アーシアがここで聖女と呼ばれていたということが発覚し、なぜシスターが堕天使といたのかも判明。ここで殺そうかというゼノヴィアに一誠は止めに入ると、祐斗も加わって戦うことに。

 

一誠はイリナと戦うのに乗り気じゃないものの、まぁしょうがないかと言いながら変身し、リアスアーマーを使用しながら圧倒。慌てるイリナに対して一誠は何の迷いもなくルインタイムブレークまで叩き込み戦闘不能に追い込むと、ゼノヴィアの方は祐斗に勝利。それを見て一誠は変身を解除すると、イリナを連れてってくれと言ってゼノヴィアはイリナを連れて行き、リアスには幼馴染に容赦ないわね(この辺りで、一誠は例え幼馴染であっても敵対するやつには容赦を全くしないという表現にする)と言われる。

 

因みにこの辺は色々やってゼノヴィア達と戦わず、祐斗を止めて祐斗と戦いボコす案もある。

 

そして聖剣の話を聞いたり、ゼノヴィア達と匙を巻き込みながら協力しあって(一誠が人間なので割りとスムーズにいく)物語を進め、大体原作通りに行きつつ(但しジオウを見たコカビエルは警戒を通り越して恐怖していた)、コカビエルとの戦いに入り、ケルベロスを一誠はリアスアーマーになって倒していくと、祐斗の聖魔剣覚醒イベントと共にフリードを撃破。そしてコカビエルとの決戦では、リアスアーマーの力ではコカビエルの速さに追い付けず、苦戦を強いられる中祐斗の思いから、ユウトライドウォッチを作り出し、一誠に渡されると一誠は早速それを使用し、

 

《ユウト!アーマータイム!ユーウトー!》

実奈「祝え!全ての時空・事象・次元を支配する最高の王者。その名も仮面ライダージオウ・ユウトアーマー!また一つ。最速の剣士の力を手に入れた瞬間である!」

 

そうして一撃ではリアスの力に及ばないものの手数と速さでコカビエルを追い詰め、

 

《フィニッシュタイム!ユウト!セイマケンタイムブレーク!》

一誠「みじん切りにしてやる!」

 

そう言いながら高速で走りだすと、聖魔剣型の武器を交差させ、×印にコカビエルを斬って決着。

 

祐斗「それみじん切りじゃなくて交差斬りだよね?」

 

その後、ヴァーリが登場しコカビエルとフリードを連れていく中、実奈を見て実奈にドライグがいることを察して退却。それに実奈も薄々気づき、三章終了。

 

 

《第四章》

 

実奈「本来であれば普通の高校生兵藤 一誠は赤き龍の帝王にして乳の無限の可能性を切り開くおっぱいドラゴンになる未来が待っていた……筈でした。しかし、それは成されず全く違う流れに。とは言え大まかな流れに変わりはないようです。そしてもちろん第四章は様々な人物も登場し、赤龍帝のライバルも登場。ですがこの世界の赤龍帝は私ですからねぇ。正直あれは困るんですよねぇ。そんなこの物語の鍵は勿論ドラゴン……っと、少し先まで話してしまいましたね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コカビエルとの戦いから暫くたちほぼ原作通りに進めつついくと、アザゼルが現れ一誠に接触。コカビエルから聞いた(その前に内々にサーゼクスからミカエルと共に聞かされてはいた)らしく一誠を最初からジオウだと知っており、一誠にオーマジオウとはなんなのかと聞かれ、三大勢力やその他の神話体型全てを敵に回した最低最悪の王の名前と、ジオウの力はそいつの力だと教え、気を付けろと言って去る。

 

更に実奈にはアスカロンを譲渡されたり(但し実奈は赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を出せないため、実奈にはダメージがないように特別な調整がされたものを実奈の意思で出し入れが出来る特別な異空間に入れている)、ミカエルから警戒されたりしつつ朱乃のフラグを建てて、水着回ではリアスと朱乃に迫られながら、朱乃からアケノライドウォッチを受け取りつつ二人が喧嘩し出すと逃げ、その先で眷属入りしたゼノヴィアに会うと、彼女にまでゼノヴィアライドウォッチを受け取り、迫られるはめに。

 

その後はドタバタして実奈と一緒に校門にいくと、そこでヴァーリと出会い、ヴァーリから実奈には赤龍帝・ドライグの力があること、だが実奈では弱すぎるため、実奈を殺せば次の人間に所有者が移るのでは?と言い、一誠がぶちきれてヴァーリと戦闘に。

 

禁手化(バランスブレイク)したヴァーリと一誠は昼間の人目があるかもしれないのに気にせず戦い、一誠はアケノライドウォッチを使用。

 

《アケノ!アーマータイム!アーケーノー!》

実奈「あぁ誰も見てませんように!祝え!全ての時空・事象・次元を支配する最高の王者。その名も仮面ライダージオウ・アケノアーマー!また一つ。雷鳴を轟かせる巫女の力を手に入れた瞬間である!」

ヴァーリ「何だ?あいつは」

 

ヴァーリが思わず実奈の口上に気を取られた瞬間、一誠は雷をヴァーリに浴びせ、動きを鈍らせたところに出力を上げて雷を更に浴びせるが、ヴァーリは振り払って一誠を襲撃。それに吹っ飛ばされ、更に半減まで喰らうが、一誠はヴァーリに密着すると、

 

《フィニッシュタイム!アケノ!ライコウタイムブレーク!》

「雷落としてやる!」

 

そう言って一誠は全身から雷を出してヴァーリを抱き抱えるとそのままジャンプ。そのまま放電したままひっくり返ると、脳天を叩きつけるようにヴァーリと一誠は地面に落ちる。

 

実奈「落ちたのどちらかって言うと雷じゃなくてお兄ちゃんだよね!?」

 

だがヴァーリは咄嗟に魔力で体を覆って防御しており、無傷ではないが致命傷ではなかった。更にその間にも半減の力があるためじり貧だと悟ると、

 

《ゼノヴィア!アーマータイム。ゼ!ノ!ヴィ!ア!》

実奈「またまた祝え!全ての時空・事象・次元を支配する最高の王者。その名も仮面ライダージオウ・ゼノヴィアアーマー!また一つ。聖剣の力を手に入れた瞬間である!」

 

一誠は残った体力を全てつぎ込むと言ってそのまま、

 

《フィニッシュタイム!ゼノヴィア!デュランダルタイムブレーク!》

 

ヴァーリも受けて立つと言って魔力をためる。だがそこにアザゼルが乱入し、ヴァーリをぶん殴って止めると、ここまでにしろと言って勝負を終わらせ、元々オーマジオウについて知っていたヴァーリは、コカビエルの時に実奈だけではなく一誠についても気づいており、戦ってみたくなったというのが主な原因で、そこにリアスたちも駆けつけるとアザゼルは謝罪。

 

そして一誠がぶっ倒れたりしつつ、新キャラのギャスパーも登場し、ギャスパーとの交流を行い、三大勢力の会談に。

 

大体原作通りに進むと、ミカエルから一誠に話が振られ、何が目的かと問われるが、一誠は平穏に毎日を過ごせれば良いと答える。

 

別に世界をどうこうする気もないし皆と一緒ならそれで良いと言い、ミカエルからはオーマジオウとは違うのかと問われ、俺はそんな最低最悪の王何かとは違うと全力で否定。そこに禍の団(カオス・ブリゲード)の襲撃が起き、ジオウの力の影響か一部の面々と同様に時間が止まらず、禍の団(カオス・ブリゲード)の名前を聞きながら、ギャスパーが利用されたことに気づいたリアス(一誠の近くにいた影響で無事)と、一誠と実奈(赤龍帝の力のお陰で無事)が共に着いていき、救出作戦を決行。

 

何かが乗り込んでくるのを見ながら一誠たちはギャスパーの救出に向かい、リアスと一誠に勇気付けられたギャスパーが覚醒。禍の団(カオス・ブリゲード)の構成員を惑わし、その間に生まれたギャスパーライドウォッチを一誠に投げ渡す。そして、

 

《ギャスパー!アーマータイム!ギャースーパー!》

実奈「祝え!全ての時空・事象・次元を支配する最高の王者。その名も仮面ライダージオウ・ギャスパーアーマー!また一つ。心優しきハーフヴァンパイアの力を手に入れた瞬間である!」

ギャスパー「はひぃ!?」

 

新たなギャスパーアーマーの力で禍の団(カオス・ブリゲード)の構成員達を倒しつつ、

 

《フィニッシュタイム!ギャスパー!バロールタイムブレーク!》

一誠「コウモリキィック!!」

 

一誠のバロールタイムブレークにより多数のコウモリを召喚し、一斉に襲い掛からせて倒す。

 

ギャスパー「キック要素は何処に……」

リアス「気にしたら負けよ」

 

それから四人は外に出ると、カトレアを倒したアザゼルに、ヴァーリは襲いかかり吹っ飛ばしたところで、

 

ヴァーリは一誠にこの間の決着をつけようと言われ、一誠は後ろの三人に被害が及ばないようにするため変身して応戦。

 

だが前回と違って油断がないヴァーリに、一誠はアーマータイムを変えながら応戦するが、威力重視では速度が追い付かず、速度重視だと今度は威力不足という状態で、半減と魔王の血筋から来る魔力の高さで徐々に追い込まれていく。

 

ヴァーリ「助かったよ。今代の赤龍帝はあんなに弱いからね。退屈するんじゃないかと思ったが、こんな強いやつがいたとは思わなかった」

一誠「ちっ!バトルジャンキーが!」

 

そんなやり取りを見ていた実奈は、一誠を助けることができない自分に情けなさを感じていた。原作を第三者視点でみれれば良い。そう思いながらいた彼女だが、皆と交流する中で小説の世界どうこうではなく、この世界を生きている仲間として、そして家族として共に居たいと思うように変わっていた。

 

ドライグもその思いを感じ、

 

ドライグ「相棒。お前の才能では禁手(バランスブレイカー)に至るのすら不可能かもしれない。それどころか俺を表に出すことすら至難だろう。それはお前が戦いを望まなかったからじゃない。お前の才能ではそれが限界だ」

実奈「うん」

ドライグ「だが俺とお前が共に望めば、お前の兄に力を貸すくらいなら出来るはずだ」

実奈「分かった。力を貸して。ドライグ」

ドライグ「あぁ、任せろ」

実奈「でも意外とお人好しだよね」

ドライグ「お前が泣いてると調子が狂うからな。お前のことは気に入ってるんだ。俺を持ち、俺の存在を知りながらも俺を使わず、俺との会話を大事にしてくれるやつだからな。変なやつだが」

実奈「ほっといてよ」

 

そう二人が精神世界でやり取りし、ドライグと実奈が二人の意識を同調させ、ミナライドウォッチを産み出すと、一誠にそれを投げて渡す。

 

リアス同様形状が違うことに驚きつつ(同じ形状ではない)も、それを使うと、

 

《ミナ!アーマータイム!ブースト!ミナ!ミナ!ミーナー!》

実奈「やったぁ!よぉし、祝え!全ての時空・事象・次元を支配する最高の王者。その名も仮面ライダージオウ・ミナアーマー!また一つ。赤き龍帝の力を手に入れた瞬間である!」

 

新たなミナライドウォッチを使って変身した一誠は、ヴァーリに突進して戦うが、実奈のと言うかドライグの倍加の力で半減を無効化(と言うか、一誠の意思に関係なく力が倍増していく)し、ヴァーリを追い詰めるが力が勝手に再現なく倍増していく都合上、変身し続ければ体への負担が大きすぎると判断(今はヴァーリの半減のお陰で大分楽ではある)し、どうするか考えると、実奈のライドウォッチにはもう一つライドウォッチを付けれることに気づき、

 

一誠「ならこれで!」

《リアス!ブーストタイム!リリリリアス!》

実奈「更に祝え!全ての時空・事象・次元を支配する最高の王者。その名も仮面ライダージオウ・ミナアーマー・リアスフォーム!ここに、万物を消滅させる悪魔の力が新たな次元に到達した瞬間である!」

 

実奈の口上を聞いてから、一誠は滅びの魔力をヴァーリに放ち、ヴァーリはそれを避けるが、

 

《リリリリアス!ブーストタイムブレーク!》

一誠「はぁあああああ!」

 

滅びの魔力を纏わせたライダーキックを放ち、ヴァーリを吹き飛ばすが、ヴァーリも咄嗟に魔力の砲撃で反撃し、

 

ヴァーリ「成程……厄介な力だな」

一誠「あぁ、因みにこんなことも出来るぜ?」

 

一誠はゆっくり手に持ったライドウォッチを見せると、そこに描かれている人物はヴァーリ。

 

流石に何故ヴァーリが自分のライドウォッチを持っていたのに驚いていると、

 

一誠「何か行けそうな気がしたんだ。触ればね。ただあんまいい気分じゃないな。うん。人の力を無理矢理奪って使うわけだからな。胸くそ悪いやり方だ。もうこんな手は使わねぇ」

《ヴァーリ!ブーストタイム!ヴァヴァヴァヴァーリ!》

 

一誠が無理矢理ヴァーリから作り出したヴァーリライドウォッチのブーストタイムで変身。

 

実奈「祝え!全ての時空・事象・次元を支配する最高の王者。その名も仮面ライダージオウ・ミナアーマー・ヴァーリフォーム!赤と白。敵対してきた二つの龍の力が今!一つになった瞬間である!」

 

全身に走る痛みに耐え、一誠はヴァーリと間合いを詰めて戦い、ヴァーリの力である半減と実奈の倍加を同時に行使する事で強引にヴァーリを上回り、

 

《ヴァヴァヴァヴァーリ!ブーストタイムブレーク!》

 

最後の力を振り絞って必殺の一撃を叩き込み、ヴァーリを撃破。

 

その後は美猴に連れられてヴァーリは撤退し、精根使い果たした一誠がぶっ倒れて4章終了。

 

 

《第五章》

 

実奈「本来であれば普通の高校生兵藤 一誠は赤き龍の帝王にして乳の無限の可能性を切り開くおっぱいドラゴンになる未来が待っていた……筈でした。しかし、それは成されず全く違う流れに。とは言え大まかな流れに変わりはないようです。と言いたいところですが、少し変わってきているようです。そしてこの物語の鍵は猫魈……っと、少し先まで話してしまいましたね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アザゼルが教師になったりしつつ、原作通りに進む中、夏休みになりグレモリー眷属の修行を行うことに。

 

しかし一誠は人間であるため行かない予定だったが、前回の戦いでジオウの復活が広まっており、オーマジオウ存在を恐れる者は今も多く、今一誠を一人にするとどんな刺客が送られるか分からないと言うことで、冥界も絶対安全とは言えないが、少なくとも俺が眼に届く範囲でなら守れるという理由で、一誠も冥界に行くことに。

 

その中小猫が悩むのを見て、一誠が実奈に同じ女で同級生なんだから何か分からないかと聞き、実奈もどうすべきか考えた結果、黒歌にそれとなく同級生の小猫が悩んでてさと相談(分かった上で)すると、黒歌も後ろめたさがあり黒猫仮面の格好で着いていくと言い出し、冥界への待ち合わせ場所に出向き、リアス達に怪しまれながらも同行。香水で匂いを誤魔化して小猫の不信そうな視線から逃げ(アザゼルは薄々正体には感づいてる模様)、冥界に着くとリアスの屋敷へ。ミリキャスと出会ったり、周りに警戒されつつも両親との食事会を済ませ、案内されていた部屋に戻る途中リアスの父に呼び止められ、共にお茶を飲むことになり、 様々な話をしつつ何故自分がオーマジオウの力を使えるのかよくわかっていないこと等を話しながらもリアス達に敵対する意思はないと伝えると、リアスの父はそれを信じる。

 

そして修行に移り、実奈はタンニーンに連れていかれ、それぞれ修行に。一誠は城に籠りながらアザゼルにオーマジオウについて聞いたりしていると、黒猫仮面と小猫が言い合いをしているのを聞き、入ると小猫が出ていき、一誠が聞くと黒歌から小猫との本当の関係を聞き、一誠がちょっと話してくると言うと、正体を明かさないで欲しいと黒歌に言われて了承。

 

それから一誠は小猫を追い、小猫に追い付くと会話。本当の力を恐れる小猫に、一誠は黒歌のことを隠しつつも一誠は自分も、アザゼルから恐らく自分はオーマジオウの生まれ変わりなんだろうと言われており、それでもオーマジオウとは違うこと。自分は自分として戦うことを決意していること等を伝え、小猫ともフラグを立てつつ更に時は進み、冥界のパーティー編へ。一誠は黒歌と会場近くで待機していると、美猴とアーサーが登場し、ヴァーリを倒した一誠と戦ってみたくてこっそり見ていたと言う二人に、一誠と黒歌も二人で戦い一誠はアーサーと、黒歌は美猴と戦うことに。

 

《ブーストタイム!ユユユユウト!》

 

一誠はユウトアーマーで応戦し、善戦するものの、黒歌は勘が鈍った分だけ美猴に押され気味に。それを見た一誠は黒歌の援護もしようとするが、アーサーの攻撃を前に行くことが出来ない。そこに、

 

小猫「先輩!」

一誠「小猫ちゃん!?」

 

横から小猫が飛び込みアーサーを殴って吹っ飛ばし、 その隙をついて実奈が黒歌を引っ張って備考から距離を取らせるとリアスの滅びの魔力が美猴を襲う。

 

一誠「何で……」

小猫「実奈ちゃんが祝わなきゃいけない予感がするって言って走り出したので部長と追いかけてきたんです」

実奈「と言うわけで祝え!全ての時空・事象・次元を支配する最高の王者。その名も仮面ライダージオウ・ミナアーマー・ユウトフォーム!最速の魔剣士の力が新たな次元に到達した瞬間である!」

 

これで数はこっちが上だな。と一誠は美猴達に言うが、美猴達は慌てずアーサーが剣の力を解放。それによりアーサーの剣が聖王剣・コールブランドということに気づき、リアス達は回避行動に出るが、小猫が避け損ねる。それを咄嗟に黒歌が自分自身を盾にすることで防ぎ、致命傷を負ってしまう。その際に仮面が取れ、小猫達にも黒猫仮面の正体がバレ、小猫は混乱。何故ここにいるのか、それに何故今まで隠してたのか、今更なんでと。だが黒歌は小猫に、

 

黒歌「白音……言えなかったことがあるけど……力の暴走ね、恐れることなんてないわ。あんたなら大丈夫だから……絶対に」

小猫「っ!」

 

そこに更なる追撃をアーサーが入れようとするが、それを一誠が妨害。その戦いに美猴が割り込もうとしたところに、 美猴を小猫が殴り飛ばす。但し猫耳と尻尾を出した仙術使用状態となって。更に小猫の手には新たなライドウォッチが握られており、

 

小猫「先輩!これを!」

一誠「よっしゃ!」

 

一誠は受け取り新たなライドウォッチである、コネコライドウォッチを起動。

 

《コネコ!アーマータイム!コーネーコー!》

実奈「祝え!全ての時空・事象・次元を支配する最高の王者。その名も仮面ライダージオウ・コネコアーマー!また一つ。怪力無双の白猫の力を手に入れた瞬間である!」

 

新たな力でアーサーを吹き飛ばし、美猴が攻撃をいれるがノーダメージの一誠は、美猴を振り払うと、

 

《ブーストタイム!ククククロカ!》

実奈「更に祝え!全ての時空・事象・次元を支配する最高の王者。その名も仮面ライダージオウ・ミナアーマー・クロカフォーム!仙術を極めし黒猫の力が新たな次元に到達した瞬間である!」

 

仙術を発動させ、地面を隆起させたりして二人を相手取り、

 

《ブーストタイム!ココココネコ!》

実奈「もういっちょ祝え!全ての時空・事象・次元を支配する最高の王者。その名も仮面ライダージオウ・ミナアーマー・コネコフォーム!怪力無双の白猫の力が新たな次元に到達した瞬間である!」

 

更に新たな力も混ぜて追い込んでいく一誠に、二人は徐々に劣性に追い込まれ、一誠はクロカライドウォッチをジカンギレードに装填。

 

《フィニッシュタイム!クロカギリギリスラッシュ!》

《ココココネコ!ブーストタイムブレーク!》

 

同時に必殺技を発動し、遂に二人を倒すことに成功。しかしヴァーリの横やりで二人とも回収され、黒歌の致命傷もあり黒歌は冥界側に拘束されてしまう。

 

だがサーゼクスの取り計らいもあり(黒歌の元主の悪行はある程度は発覚しており、秘密裏に捜査中だったが、確定はしてなかったため小猫達には話してなかったという設定)、意識が戻ってから話を聞くという形で一旦解放されることに。

 

そして未だに小猫が真相を受け入れるのに苦労する中、リアスとソーナのレーティングゲームが決まり、何と冥界の上層部から一誠ことオーマジオウもリアス眷属として参加するようにと言う指示が来る。訳がわからないと困惑する中、一方匙のところに冥界の上層部が接触し、一誠にはレーティングゲーム中の致命傷による自動リタイアが起こらないようにしておくため、それに乗じて殺せという命令を下す。勿論それを匙は断るが、暗に拒否すればソーナとの夢を妨害すると言われ、思い悩んでしまう。だがそれを偶然通りかかり、こっそり聞いていた一誠は突然のレーティングゲームの参加要請に、サーゼクスは嫌な予感を感じていたが、一誠は了承してレーティングゲームに参加。

 

そしてレーティングゲーム戦では序盤から匙と出会い戦うが、迷う匙に一誠は徹底的に叩きのめして追い詰め、他のシトリー眷属が止めに入るも、それすら蹴散らして匙と接敵するも、匙は今だ悩んでおり、それに対して一誠は、お前を倒してソーナ会長もぶっ殺すと匙を挑発。それにこれた匙は立ち上がり、一誠と密着状態からの殴り合いに発展。そのまま、

 

《ブーストタイム!アアアアケノ!》

実奈「うわわ! 祝え!全ての時空・事象・次元を支配する最高の王者。その名も仮面ライダージオウ・ミナアーマー・アケノフォーム!雷鳴轟かす巫女の力が新たな次元に到達した瞬間である!」

 

実奈の祝いの最中も殴り合い、匙の黒い龍脈(アブソブーション・ライン)に腕を捕まれ力を奪われ掛けるも、ミナライドウォッチの力である譲渡を使って、一気に力を送り込むことで匙に逆にダメージを与えつつアケノライドウォッチの電撃を流してダメージを与えていく。そして、

 

《アアアアケノ!ブーストタイムブレーク!》

一誠「はぁあああああ!」

 

電撃を爆発させ、周囲を巻き込みながら行ったそれは、ステージを崩壊させ、シトリー眷属とグレモリー眷属が瓦礫の下から這い出る中、一誠は変身が解除されて地面に倒れ、匙もへたり込んでいた。その時放送が流れ、ステージの崩壊によりグレモリーチームの反則負けになったこと、更に一誠の生命反応が検知できず、リタイア機能がきちんと動かないためそちらで確認してほしいと言われ、両チームが急いで駆け寄り、祐斗が脈を確認すると一誠の脈が止まっており、皆が困惑した瞬間アケノライドウォッチが起動し、一誠に電流が流れると、一誠の脈が戻って復活。

 

一誠「あっぶねぇ……一回死んだわ」

他の皆『えぇええええ!?』

 

と言うのも、敢えてレーティングゲームを滅茶苦茶にして更に一時的に死ぬことで向こうを混乱させちまおうと殴り合いをしている間に一誠が匙に提案し、それに匙も乗ってレーティングゲームを滅茶苦茶に。

 

そのまま皆で集まって作戦会議し、帰還すると匙が一人の時に上層部の悪魔が来て、良くやったと言いながら来ると、

 

匙「いやぁ、それがですね」

 

匙が申し訳なさそうに言うと、後ろから皆が登場し、勿論生きていた一誠も登場し明らかに狼狽する上層部の悪魔に、背後から声を掛けられ振り替えると、そこに立っていたのはサーゼクスで、最初に一誠はサーゼクスにも相談しており、上層部の悪魔はサーゼクスに強制連行され、ソーナ達に不当な扱いは絶対させないと誓い、その場を後にすると、ソーナに匙は激怒され、一誠もリアス達に心配させるなと怒られる羽目に。

 

そしてその後、匙に改めて一誠は謝罪と感謝をされると、匙の手にライドウォッチが生まれ、これだけじゃ謝罪にならないかもしれないけどと言いつつサジライドウォッチを一誠に渡す。

 

それから数日経ち、人間界に戻る日になると見送られながら冥界にやって来たときの列車に揺られていると、小猫から甘えられたりした後、ちゃっかり黒歌も搭乗しており、一誠達の元にいることを条件に一時的に釈放され、戻ってきたとのこと。そのまま皆で人間界に帰る中、サーゼクスは上層部の悪魔と共に一誠の抹殺を試みた悪魔達と話し、何やら秘密があるような事を仄めかす。

 

一方その頃ディオドラの告白イベントも進行し、五章は終了。

 

《第六章》

 

実奈「本来であれば普通の高校生兵藤 一誠は赤き龍の帝王にして乳の無限の可能性を切り開くおっぱいドラゴンになる未来が待っていた……筈でした。しかし、それは成されず全く違う流れに。その変化は徐々に大きくなってきています。そしてもちろん第六章はあの人物も登場。この物語の鍵は、王の進化は止まらない……っと、少し先まで話してしまいましたね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冥界から帰還し、夏休み明けの学校に通う一誠達。家は魔改造され、眷属の大勢が越して来たりする中、アーシアはディオドラからの告白に浮かぬ顔。と言うのも、

 

アーシア「一誠さん。私どうしたら良いでしょう……?」

一誠「それはアーシアが決めることだからなぁ……告白の返事なんてさ」

 

というやり取りがあったのも大きく、アーシア自身気づいていないが、一誠への思いは確実に大きくなっていた。だが一誠はそれに気づかず、周りもモヤモヤする毎日。しかもその中ディオドラがまたやって来たり、アーシアを強引に誘おうとする始末(流石に一誠はそれを止めた)。

 

だがそんな中、一誠は荒野の中に意識だけ飛ばされ、オーマジオウを再会。

 

一誠「随分嫌われてるみたいだな。お陰で苦労させられるぜ」

オーマジオウ「仕方ないだろう。大望を叶える道には敵も多い。とは言え着実に力を手にいれてるとは言え、このままでは敵わぬ相手が現れるだろう。そこでだ」

 

そうオーマジオウが指をパチンと鳴らすと、一誠の手に銀色のジオウライドウォッチが現れ、

 

オーマジオウ「我が力を少しだけ使えるようにしよう。それを使えば、私に近づける」

一誠「要らねぇよ!俺はな、お前とは違う!お前の力なんて無くたって皆の力だけで十分だ!」

オーマジオウ「ふふ、その若さ故の現実を知らぬこともまた良し。良いから持っていくが良い。何れ必要になる」

 

それだけ言うと、一誠は目を覚まし新しいライドウォッチが握られていたが、無視してポケットに突っ込むとそのまま登校。

 

その後ディオドラとのレーティングゲームが近づく中、実奈は一人悩む。

 

ディオドラのレーティングゲームで起きることを知っているものの、余り変えれば自分達では対処しきれない事態になる可能性もある。

 

しかし今回のレーティングゲームでは、そもそもまず一誠が参加する流れになっておらず、その時点で変化しているものの、その代わり実奈が出るためそこで差し引きゼロなのだとしたら……というかそもそも今の状態じゃシャルバの前にディオドラ倒せるのか?と実奈は悩むが、結局はっきりとした答えは出せないまま当日を迎えてしまうが、取り敢えずアーシアから目を離さず居ようと決意。そんな中、皆が転移魔方陣に乗り、一誠と黒歌が見送ると、突如魔方陣が暴走し、一誠と黒歌以外転移。転移した皆はステージではない開けた場所に出てしまい、どう言うことかと困惑しているが、実奈だけは咄嗟にアーシアの方をみて、背後から襲い掛かるディオドラに気づき、無我夢中でアスカロンを出してディオドラに反撃。それが偶然ディオドラの顔を斜めに深々と斬って、ディオドラは悲鳴をあげながら下がる。

 

ドライグ「良かったのか?」

実奈(もう原作なんて言ってる場合じゃないもん!)

ディオドラ「きさまぁ……僕の顔に良くもぉ!」

 

ディオドラはそう叫んで合図すると、眷属達だけではなく、禍の団(カオス・ブリゲード)の連中まで出てきてリアス達を襲撃。

 

一方その頃一誠と黒歌も何かしらの異常事態には気づいており、アザゼルから事情を聴く。それを聞いた一誠はどうにか入る方法はないのか聞くが、禍の団(カオス・ブリゲード)を閉じ込めておくため、最低限しか開かないようになっており、その最低限の入り口も三大勢力や北欧の人員を投入するためのため、一誠達をいれることは出来ないと言われ(オーマジオウ関係もある)、一誠は頭を抱えるが、ふと脳裏にオーマジオウから貰ったライドウォッチを思いだし、取り出すが起動せず、

 

一誠「ふざけんなよ……なんで使えないんだよ!」

アザゼル「お前……まさかそのライドウォッチは」

 

アザゼルが一誠に聞こうとするが、それを無視して一誠は叫ぶ。

 

一誠「今力がいるんだよ……皆を守るための力がいるんだよ!その為なら俺最低最悪でも最高最善でもなんでもなってやる!オーマジオウだろうがなんだろうが全部使って守りたいんだぁ!」

 

そう叫ぶ一誠の想いに応えるように、銀色のジオウライドウォッチから黄金の輝きが溢れだし、銀色のジオウライドウォッチの後ろに金色のジオウライドウォッチが出現。それと同時にアザゼルや黒歌ごとリアス達のいるステージへ強引に侵入。

 

禍の団(カオス・ブリゲード)「アイツはオーマジオウとアザゼルだ!殺せ!」

 

ただ戦場のど真ん中に出てしまい禍の団(カオス・ブリゲード)構成員達が一斉に攻撃を開始しようとし、アザゼルと黒歌は身構えるが、一誠は黙って新たなジオウライドウォッチを起動。すると次の瞬間、禍の団(カオス・ブリゲード)の構成員達は一誠達に意識を向ける前の状態になっており、敵味方問わず困惑。その中一誠は、

 

一誠「悪いが、それはもう俺が見た未来だ」

《ジオウⅡ!》

一誠「変身!」

《ライダータイム!仮面ライダー!ライダー!ジオウ・ジオウ・ジオウ! Ⅱ!》

 

新たなジオウライドウォッチこと、ジオウⅡライドウォッチにて変身した一誠は眼前の敵を見る。

 

実奈「王の凱旋である!祝え!全ての時空・事象・次元を支配する最善の王者。その名も仮面ライダージオウⅡ。ここに、新たな物語の幕が開きし瞬間である」

一誠「ありがとな、実奈。あとお兄ちゃんに任せな」

 

そう言って一誠はゆっくりと歩き出すと、禍の団(カオス・ブリゲード)から攻撃が開始される。しかし、一誠はその全てを読み、避けながら突進。掠りもせずに飛び上がると、禍の団(カオス・ブリゲード)の構成員達を次々倒していく。

 

それをリアス達は見ながら、

 

リアス「なんなのあれ……強い」

オーディン「ふむ、実際見てみるまで信じられんかったがまさかオーマジオウが本当に復活してるとわの。儂の知るオーマジオウの姿ではないが」

アザゼル「いや、あれはオーマジオウだよ」

 

アザゼルのそんな意味深な言い回しにリアス達が違和感を覚えていると、

 

《ライダー!》

一誠「はぁ!」

《ライダー斬り!》

 

サイキョーギレードを振り抜き、更に撃破。そこにディオドラの眷属達が襲い掛かるが、

 

《ジオウサイキョー!覇王斬り!》

 

纏めて撃破。だがその隙をついて隠れていたフリードが強襲を掛けてくる。しかし既にその未来を見ていた一誠はジカンギレードで防ぎ、押し返すとサイキョーギレードとジカンギレードを合体し、サイキョージカンギレードにすると、

 

《ジオウサイキョーフィニッシュタイム!キングギリギリスラッシュ!》

 

であっさりフリードだけではなく、その余波で回りにいた禍の団(カオス・ブリゲード)の構成員たちまで纏めて消し飛ばし、ディオドラにゆっくりと歩みを進める。

 

ディオドラ「ま、待ってくれ!どうか命だけは!」

 

そうディオドラは懇願しながら、一誠の背後に魔方陣をだし、不意打ちをしようとする。それを見たリアスが叫ぼうとするがアザゼルは心配ないと言い、

 

ディオドラ「しね……え?」

 

魔方陣からの不意打ちを一誠は首を傾けるだけで避け、ディオドラは呆然。そんなディオドラに、

 

一誠「俺は未来を見ている。お前が何をしようとしているのかも手に取るようにわかる。そう、次にお前は……」

ディオドラ「ひぃいいい!」

 

逃げ出すんだよな。一誠はそう言いながらベルトを回し、

 

《ライダーフィニッシュタイム!トゥワイズタイムブレーク!》

 

必殺技を逃げるディオドラに容赦なく叩き込み、戦いを終わらせる。

 

アザゼル「お前らあれはオーマジオウの力の一端だ」

 

アザゼルの言葉に、皆は驚愕する。あれほどの力ですら、まだ一端でしかないのだと。

 

アザゼル「だがお前ら。アイツはお前達を助けるために来た。それだけは忘れないでやってくれ」

 

影を見せながらそう言うアザゼルに、皆はなにも言わないが、一誠と改めて共にいることを決め、6章は終了。

 

因みにそう言えばシャルバは?と実奈はなったりしている。

 

《第七章》

 

実奈「本来であれば普通の高校生兵藤 一誠は赤き龍の帝王にして乳の無限の可能性を切り開くおっぱいドラゴンになる未来が待っていた……筈でした。しかし、それは成されず全く違う流れに。その変化は徐々に大きくなってきています。そしてもちろん第七章はあの人物も登場。この物語の鍵は神……っと、少し先まで話してしまいましたね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ディオドラの騒動から暫く経ち、一誠達は平穏を味わっていたが、ジオウⅡの一件で皆(特に女性陣)がより積極的になったりはしたものの、のんびり過ごしていると、イリナが転向してきて、皆に天使になった紹介やアーシアへの謝罪に、一誠へライドウォッチの受け渡し等が行われていると、朱乃が一誠をデートに誘う。と言うのも、互いを牽制し合うのに気をとられて誰もその辺を考えるのを忘れており、完全に不意打ちを喰らいつつも、一誠は押し切られる形で了承し、禍の団(カオス・ブリゲード)の英雄派の構成員達との戦いを挟みつつデート回。

 

原作通りに朱乃とデートし、バラキエル達と鉢合わせ。

 

そのあとロスヴァイセやオーディンと出会い、朱乃と娘が一誠にたぶらかされてるのでは心配なバラキエル(敢えてオーマジオウへの警戒は描かない)の言い合いもありつつストーリーは進み、オーディンの護衛に着くことに。

 

その際ロキの襲撃を受けつつも、ジオウⅡの能力もあり善戦。しかしフェンリルまで登場し、流石に苦戦を強いられそうになるが、ヴァーリの援護もあってロキを退かせ、ヴァーリからの共闘の提案を受けて、それを受け入れることに。その後は原作通りにミドガルズオルムからミョルニルを使えという教えを受けたりしつつ進み、ヴァーリと実奈が二人で話すタイミングがあったため、アルビオンが声だけ出してドライグに話し掛けてくる。

 

アルビオン「随分丸くなったようだな」

ドライグ「ふん。今の相棒は少々今までにないタイプでな。貧弱で弱いが話してて面白い。たまには戦いをせず話すだけの日々というのも悪くない」

実奈「ちょっとドライグさん?私をバカにしてない?」

ドライグ「まさか。これでもお前のことは大事にしてるぞ?」

実奈「うっそだぁ!」

 

ワキャワキャと話し合う二人のアルビオンは不思議な感覚を覚えつつ、朱乃の夜這いイベントがあり、ロキとの決戦。

 

バラキエルの大怪我や朱乃の本心などが明かされつつ、匙の龍王化やヴァーリの覇龍などがあり、更にジオウⅡでロキを押し、他の皆との連携でロキを苦しめていき、

 

《ジオウサイキョー!覇王斬り!》

 

でロキに傷を負わせるが、ロキが最後の意地で突進。すると実奈が実は受け取っていたミョルニルの一撃を見舞い、更に一誠がキングギリギリスラッシュでだめ押し。ロキを撃破に成功。

 

そうしてオーディンに置いていかれたロスヴァイセが悪魔になったり、一誠達と行動を共にすることで一誠を信頼した彼女からロスヴァイセライドウォッチを受け取りながら、七章終了。

 

《第八章》

 

実奈「本来であれば普通の高校生兵藤 一誠は赤き龍の帝王にして乳の無限の可能性を切り開くおっぱいドラゴンになる未来が待っていた……筈でした。しかし、それは成されず全く違う流れに。その変化は徐々に大きくなってきています。そしてもちろん第八章はあの人物も登場。この物語の鍵は英雄……っと、少し先まで話してしまいましたね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ついに修学旅行が近づき、実奈はまたもや悩んでいた。原作通りで行くのなら、禍の団(カオス・ブリゲード)の英雄派が襲ってくるはずなのだから。しかし、同時に今の一誠にはジオウⅡがあり、曹操が幾ら厄介な存在とは言え原作のようなパワー重視じゃないし大丈夫なんでは?と。しかし油断できない相手でもあるしなぁ。だが実奈が着いていくわけにもいかず(行っても力になれる訳じゃないが)一誠に油断だけはするなと言い含めることと、黒歌にこっそり動向してもらうことしかできない。

 

そして修学旅行編。

 

初めての京都を堪能しつつ、一誠達は居たのだが、突如襲撃を受けることに。それを一誠達はなんなく撤退させ、その日の夜に京都の妖怪だったことが判明。そしてそこに住む九重に母親が誘拐されたことを伝えられ、共同戦線を張ることに。しかし取り敢えずは修学旅行を楽しめと言うアザゼルの言葉で、九重に案内を頼みつつ満喫するが、曹操が遂に襲撃。魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)絶霧(ディメンションロスト)などを持つやつらも現れ、戦闘になるものの一誠のジオウの力や他の皆の善戦により膠着状態に。そんな中曹操はオーマジオウの生まれ変わりの強さを測りたいと言って、一誠に襲い掛かる。最初通常のアーマータイムで戦うが押され、ジオウⅡに変身して戦う。曹操の動きを未来予知で見て対処しようとするが、何と未来予知にはない動きでモロに攻撃を受けてしまう。

 

今までにない出来事に一誠は驚きつつ、再度未来予知し曹操の動きを先読みするが、再度予知にはない動きで攻撃を受けてしまい、何故だと一誠は悩むが、曹操は構わず攻撃……しかしそれをアザゼルが弾き、アザゼルがトリックを説明。

 

と言うのも、曹操は一誠の予知を読んで行動しているとのこと。

 

詳しく説明すると、

 

《曹操が動き出す》

《一誠が未来を読んで防御なりカウンターへの行動開始》

《曹操はその予備動作を見て一誠がどこまで自分の行動を読んだのかを推理(未来予知と行動同時に行う事は出来ないため)》

《逆に予測した動きをフェイクに一誠を攻撃》

 

と言うのが流れ。しかしそんな一瞬のやり取りで、それだけの事を瞬時の行う曹操に一誠は背筋を凍らせつついると、曹操は大体分かったと言って一度撤退。その際に九重の母で八坂を使った実験を行うと教えられ、何としても阻止すると言うことに。

 

そうして一誠達はその日の夜に実験が行われる二条城に向かい、道中禍の団(カオス・ブリゲード)の英雄派の構成員たちの妨害を受けつつも一誠達は進み、遂に曹操達と決戦。

 

暴走する八坂を匙が龍王化して止め、一誠達は曹操と戦うが、やはりジオウⅡでも曹操には勝てず、苦戦を強いられる事に。

 

その中、他の仲間達も禍の団(カオス・ブリゲード)の幹部達に倒れていき、一誠はピンチに陥る。だが一誠もこうなったらと土壇場で新たな戦法で、ジオウⅡに変身する際に使う金と銀のライドウォッチのうち、金のライドウォッチを外してその代わりに黒歌のライドウォッチを着けて再変身。

 

ジオウⅡのままアーマータイムすることで、今まで以上のパワーで戦うことができ、その状態で曹操に突進。想定はしていたのだが、彼の予想を超えるスペックを叩き出した一誠の攻撃が曹操に遂に届く。

 

更にただの人間である曹操にとってその一撃は致命的で、大きく体力を奪われた曹操は一誠の未来予知を予測する戦法に支障をきたし、他の英雄派の幹部も一誠に飛び掛かるが、次々相手との相性が良いライドウォッチに切り替えながら倒していき、その間に横流しのフェニックスの涙で復活した曹操と最終決戦に入り、

 

曹操「それだけの力があるなら自分がどこまで行けるのか試したくはないのかい!?」

一誠「考えたこともねぇな!この力は俺一人じゃ手に出来なかった力だ!だから俺のためじゃなくて皆のために使うんだ!」

 

と言って一誠はジオウⅡのままリアスライドウォッチを使用し、リアスアーマーを装着。そのまま曹操と激突。最終的に一誠のキングギリギリスラッシュと曹操の黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)の聖なる光がぶつかり合い、お互いが吹っ飛ばされるとそれに乗じて曹操達は撤退。その中曹操は一誠に、君はまだ真実を知らない。とだけ言い残すが、八坂の暴走は止まらず、どうすれば良いかと悩んでいると、初代孫悟空が来て、八坂の洗脳を解いて一件落着。

 

八坂がオーマジオウに助けられたことに驚かれたり、孫悟空から本当にオーマジオウかと言われつつ駒王町に帰ると、実奈が祝えなかったと嘆きながら、九章は終了。

 

《第十章》

 

実奈「本来であれば普通の高校生兵藤 一誠は赤き龍の帝王にして乳の無限の可能性を切り開くおっぱいドラゴンになる未来が待っていた……筈でした。しかし、それは成されず全く違う流れに。その変化は徐々に大きくなってきています。そしてもちろん第十章ではあの人物も登場。この物語の鍵は獅子……っと、少し先まで話してしまいましたね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

修学旅行も終わり、学園祭が近づくと同時にレイヴェルが転校してくる。と言うのも、ライザーがあのレーティングゲーム以降引きこもりになったのを、一誠が立ち直らせて以降気がある模様。

 

更にリアス達はサイラオーグとのレーティングゲームが決まり、バタバタと忙しい日が続くが、その中でもリアスと一誠は仲を深めたり、他の仲間も追随しつついると、ある日サーゼクスに呼ばれ、何と次のレーティングゲームに一誠も出てほしいとサイラオーグから要請。

 

理由を問うと、サイラオーグの支援者からそれに乗じて一誠を殺せと言うのが来たからとあっさり白状しつつも、サイラオーグ自身オーマジオウについてある程度は聞いており、生まれ変わりである一誠が信用するべきか、冥界にとって危険な存在になる前に殺すべき何じゃないかと。

 

それにリアスは反論するが、サイラオーグは自身で見なければ信じることはできないと言い、一誠もそこまで言うならとレーティングゲームへの参戦を了承。

 

サイラオーグとのレーティングゲームに向けて準備を進めつつ、学園祭の準備を行う中、曹操の言い残した自分の知らない真実とはなんなのか思いを馳せつつ過ごし、サイラオーグとのレーティングゲームの日に。

 

ハーデスとすれ違ったりしつつ、サイラオーグとのレーティングゲームが始まり、基本的に原作通りに進み一誠はまずクイーンとの戦いに。(ホール)の能力は厄介ながらも、一誠のジオウⅡには敵わず、そのまま勝利、そのままリアス・実奈・アーシア・一誠の面々以外が参加したサイラオーグ戦ではサイラオーグが勝ち、残りの全員がサイラオーグと彼が連れている謎のポーンとの決戦に。

 

一誠はジオウⅡにてサイラオーグと戦うが、一誠の攻撃はなんとサイラオーグのオーラで、傷ひとつ負わせられず大苦戦。追い詰められた一誠は、ジオウⅡのままアーマータイムを発動。

 

実奈「王の凱旋である!祝え!全ての時空・事象・次元を支配する最善の王者。その名も仮面ライダージオウⅡ・ゼノヴィアアーマー!聖剣と共に、新たな物語の幕が開きし瞬間である」

 

そしてデュランダル型の剣とサイキョーギレードの二刀流でサイラオーグへ反撃するが、サイラオーグは奥の手の獅子王の戦斧(レグルス・ネメア)禁手化(バランスブレイク)を発動。再度劣勢に追いやられ、一誠は追い詰められていく中、サイラオーグにお前の目的は何だと問われる。そしてそれに一誠は、ただ仲間と一緒にいたいこと、そしてそれを邪魔するなら誰であろうと滅ぼしてやると言いながら、ミナライドウォッチとリアスライドウォッチを起動させ、ジオウⅡのままブーストタイム。

 

実奈「王の凱旋である!祝え!全ての時空・事象・次元を支配する最善の王者。その名も仮面ライダージオウⅡ・ミナアーマー・リアスフォーム!紅と赤の二人と共に、新たな物語の幕が開きし瞬間である」

 

新たな姿はサイラオーグと互角の戦いを繰り広げ、両者傷つきつつも少しずつ一誠が押していき、とどめにキングギリギリスラッシュとブーストタイムブレークを同時に発動。滅びの魔力を纏わせた刀身を倍加させた渾身のキングギリギリスラッシュを叩き込み、サイラオーグは閃光の中、黒と金で彩られ、両肩と胸に仮面を着けた戦士の像を見ながら敗北。そのままリアス側の勝利に終わり、その後はサイラオーグに今までの非礼を謝罪され、更に一誠は過去の最低最悪の王・オーマジオウとは違うと信じてくれるようになり、オマケにサイラオーグは自身のサイラオーグライドウォッチを一誠に託す。

 

その後サイラオーグはリアスと二人だけで話し、冥界は何かを恐れていると。オーマジオウの力ではなく、別の何かを恐れている。そう言いながら、十章終了。




取り敢えずは十章まで。次回の後編で最終回まで書きます。このストーリーは全二十章構成なのでね。この後から色々分かってきます。あと前かいてたキャラ説的なやつでは描いてなかったのですが(忘れてたとも言う)実奈のライドウォッチはディケイドライドウォッチ的な扱いです。

さてさて、オーマジオウとはなんなのか、更にアザゼルの不振な態度。オマケに冥界が恐れるオーマジオウの力じゃない何かとは……それは次回に!


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ジオウ×ハイスクールD×Dはこんな話だった。後編

《第11章》

 

実奈「本来であれば普通の高校生兵藤 一誠は赤き龍の帝王にして乳の無限の可能性を切り開くおっぱいドラゴンになる未来が待っていた……筈でした。しかし、それは成されず違う流れに。その変化は徐々に大きくなってきています。そしてもちろん第11章はあの人物も登場。この物語の鍵は無限……っと、少し先まで話してしまいましたね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サイラオーグとの戦いから暫くたった頃。祐斗達に昇格の話が来る中、悪魔じゃないので関係ない一誠は、同じく昇格の話が来なかった実奈と共に平穏を満喫したり、黒歌とゲームしたりしていたが、そこにヴァーリとオーフィスが来襲。

 

と言うのも、ヴァーリは最近禍の団(カオス・ブリゲード)の動きがキナ臭いのがあり、仲良くなっていたオーフィスを連れ出して来たため。

 

オーフィスとしても、次元の狭間に帰るため、より強い相手を求めており、それが一誠(と言うかオーマジオウ)の方が適していると判断。そしてオーフィスは、一誠に現在次元の狭間に住むグレードレッドを倒すように言うが、突然そんなことを言われても困る上に、幾らなんでも不可能だとアザゼルからも言われる。するとオーフィスは、一誠に力の宿ってないライドウォッチを渡すように言い、言われるままに渡すと、オーフィスは蛇を作り出し、それをライドウォッチと融合させるとオーフィスライドウォッチを作り出し、意気揚々とグレードレッドを倒しに行こうとするが、オーフィスとグレードレッドがぶつかり合い、そこにオーフィスの力を使う一誠が参戦すれば、世界にどんな影響を与えるか分からないから待て、とアザゼルが止めると、なら暫く待つとオーフィスは一誠の家の住み着くことに。更に他のヴァーリチームの面々も住み着き、騒がしくなっていく中、祐斗達は昇格試験を迎え、一誠達も会場近くまで同行。試験を受けるメンバーを見送り、雑談しつつ時間を潰す中、一誠はふと曹操の言い残した、自分の知らない真実とはなんなのかをまた思いだし、アザゼルに何か知らないか聞こうとした瞬間、霧に包まれ転移。試験を受けにいったメンバーも、試験を終えて帰ってくる途中だったらしく、そのメンバーも同じ場所に転移しており、そこには曹操を筆頭にした英雄派のメンバーが集まっていた。

 

そして曹操はオーフィスを渡すように言うが、皆は勿論拒否。そのまま戦いになるのだが、プルートの乱入に加え、曹操は禁手(バランスブレイカー)を発動。その力は凄まじく、一誠のジオウⅡ・ミナアーマー・リアスフォームでも歯が立たず、変身解除に追い込まれた上に、他の皆も敗北。そのままオーフィスの力を奪われた上に、黒歌とヴァーリは原作通り小猫を庇って重症に。

 

そして原作同様に建物からの脱出を目指し、激戦を繰り広げつつ曹操と再戦。その中、曹操は一誠に告げる。何故君は冥界のために戦うのかと。

 

その言葉に一誠はどう言うことか問うと、何故オーマジオウは三大勢力に戦いを挑んだのかと。圧倒的な力を持ちながら、何故破れたのかと。

 

そして曹操は語る。オーマジオウは元々ある古代民族の一族の長だったこと。その長は代々時に関係する力を持ち、オーマジオウはその一族でも最高傑作と言えるほどの才能を秘めていた。更にはその一族の錬金によって作られるジクウドライバーによる力は、圧倒的であったが、それ以上に優しき王で、民を愛しそして民に愛される最高最善の王。だがある日悲劇は起こった。それは何者かの襲撃を受け、オーマジオウは怪我を負い、最愛の妻がその何者かに殺されたこと。

 

オーマジオウは嘆き、そして悲しみ、妻の命を奪われた怒りからジクウドライバーが変質し、(設定的にこの直前まではジオウⅡまで、この後からオーマジオウに変身できるようになる)この世界そのものを憎み滅ぼそうとするように。そして三大勢力の戦いに介入。更に他の神話体型まで襲いだし、三大勢力や他の神話体型が遂に手を組み打倒オーマジオウを目指すように。しかしオーマジオウの力は圧倒的で、中には力を奪われて使えなくなってしまう者達も現れる中、ある日オーマジオウは倒された。

 

そしてその倒した奴こそが、オーマジオウとは唯一無二の親友であり、最大の理解者であった筈の男。アザゼルだと言うことに。

 

その言葉にアザゼル以外の面々は驚愕する中、曹操は続けて言う。何故オーマジオウが最低最悪の王と言われるのか、事の始まりが伝わってないのか。それは簡単だと。当時の三大勢力の長が決めたことで、オーマジオウの妻が殺された日、彼の国には悪魔・堕天使・天使のそれぞれの姿が目撃されたと言う話が残っており、それがもし他の神話体型に漏れれば、非難されることは間違いなく、犯人探しをするしかない。だがもし万が一自分の陣営から犯人が出れば、犯人を処断すれば終わりでは済まされないほど世界的な被害を受けており、未だにダメージが残る自分の陣営がその避難にさらされた場合、互いに隙を見せられない三大勢力の間において、致命的な隙になりかねない。そう皆が思ったときアザゼルが提案したこと。それが真実を捏造し、オーマジオウは、自らの力に溺れて自分の国すら滅ぼし、世界を敵に回した最低最悪の王に仕立てあげると言うこと。

 

他の神話体型も含め、オーマジオウと親しくしていたのはアザゼルだけだったのもあり、アザゼルが先頭に立ってその噂を流布。そうしていくことで、神話体型のみならず、オーマジオウの襲撃からしか見てない三大勢力の者達も、オーマジオウ=最低最悪の王と言う意識になり、真実を知るのは一部の者達だけに。その際に曹操はサーゼクス達四代魔王は真実は知らないこと等を伝えつつも、何故今まで冥界の上層部は一誠を殺そうとしたのか。それはオーマジオウの記憶が戻り、その真実が他の神話体型に伝わることを恐れたため。

 

曹操「結局冥界は変わってないんだよ。いや、冥界だけじゃない。あのオーマジオウの一件から何も変わってない。真実を嘘で塗り固め、自分達が良ければ良い連中の集まりなのさ。兵藤 一誠。君はそんな連中を守るのかい?僕たちの邪魔をすると言うのはそう言うことだぞ?」

 

その言葉に呆然とする一誠だが、実奈が慌ててどちらにせよ曹操を倒さないと皆危ないよ!と言い、一誠は我に帰ると、そのままジオウに変身し、オーフィスライドウォッチを起動して使用。全身を襲う激痛に耐えながら、一誠はそのままオーフィスアーマーへ変身。

 

実奈「祝え!全ての時空・事象・次元を支配する最高の王者。その名も仮面ライダージオウ・オーフィスアーマー!また一つ。無限の龍神の力を手に入れた瞬間である!」

 

オーフィスの力は絶大で、ジオウⅡですら手も足も出なかった曹操相手に善戦処か圧倒。そのまま曹操を倒そうとするが、直前に一誠の肉体が悲鳴をあげて動けなくなる。と言うのも、普通の人間である一誠ではオーフィスライドウォッチを使いこなせないから。

 

するとそこに英雄派のレオナルドと、皆の知らない顔の男が現れ、唯一ヴァーリと実奈だけが気付き、シャルバだと発覚。そしてシャルバがレオナルドの魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)を暴走させ、巨大な魔獣を作り出し、空間を崩壊させていく中オーフィスを誘拐。咄嗟に一誠は助けようとするが、オーフィスライドウォッチの反動で体が動かず、曹操達も脱出。その中アザゼルが空間の崩壊を利用して全員を転移させるが、気づくと実奈が居ないことが発覚し、皆が驚愕する一方。実奈はシャルバと対峙していた。

 

なぜそこにいるのか。それはオーフィスが連れ去られる瞬間、偶然オーフィスと目が合ってしまい、思わず手を伸ばしてしまったから。だが実奈の実力では、原作と違いオーフィスの蛇を失っていないシャルバには手も足も出ず、良いようにやられるだけ。だがそんな中実奈は願う。

 

実奈「お願いドライグ。私の全部あげるから……体でも命でも何でもあげるからさ。アイツを倒したいんだ」

ドライグ「ダメだ。そんなことをすればお前が死んでしまう。体の一部くらいにしておけば……」

実奈「そんなんじゃ足りないのくらい分かるでしょ!私は弱い。原作の一誠と違ってスケベさも根性も足りてない。ホント、主人公ってのは力じゃない。あの心もあって初めて強いんだって分かる。でも私には力しかない。そしてその力すら使いこなせない!だったら何がなんでも使うしかないんだよ!」

 

実奈の言葉にドライグは押し黙り、そして了承。

 

赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)が出現すると、それは実奈の体を侵食して肥大化。

 

シャルバが驚愕する中、彼の目の前に現れたのは実奈ではなく、赤龍帝・ドライグ本人。実奈の体を喰い尽くし、更に魂を飲み干すことで、完全に肉体を取り戻して復活した(これは実奈が転生者の為、特殊且つ通常では考えられないほど巨大で、上質な魂を持っていたため出来た事で、普通はできない)ドライグは、一筋の涙を流し、慟哭しながらシャルバに突進。咄嗟に張った防御魔方陣を素で破壊し、シャルバ本体には倍加させた一撃を放つ。たった一撃で体の多くを欠損したシャルバは、オーフィスに助けを求めるが、もう蛇を作れないと言われ、ならば逃げようとするが、ドライグは逃がさぬと言わんばかりに炎を作り出し妨害。

 

そしてシャルバを、わざと死なない程度に痛め付け、シャルバは怯えて今度は走って逃げようとするが、足をドライグは踏み潰され不可能に。

 

最後にドライグに空中に投げられ、ブレスで消し飛ばされると、ドライグはオーフィスの拘束を解除して、

 

ドライグ「相棒。まだ生きてるか?」

実奈「うん……何とかね」

 

ドライグに喰い尽くされた実奈だが、ドライグの中で辛うじては生きており、ドライグに弱々しく返事をする。

 

とは言えもう長くはなく、ゆっくりと死んでいっている状態で、

 

実奈「あれ?ドライグ泣いてるの?」

ドライグ「あぁ……」

 

実奈はそんな様子に思わず笑いながらも、

 

実奈「私さ。ドライグの知っての通り元々の世界じゃオタクで引きこもりで親の脛にかじりついてネトゲとSNSの毎日。友達なんていなくて恋人だっていない。そんな女だった。挙げ句気まぐれに外に出たら居眠り運転した車に轢かれて人生終了。そんなだからラノベの世界って憧れたなぁ。皆キラキラしてて、こんな風になりたいって。特にハイスクールD×Dは好きで、一誠みたいに皆から好かれるようになりたいって。そんなことを思ってたから力だけは貰ったのかな?だからさ、割りと私としてはこの2度目の人生自体は満足なんだよね」

ドライグ「やめろ相棒。まだ死んでないだろう。この後は復活できるはずだ」

実奈「あはは、あれはああいう流れだけどね?私は一誠じゃないし、微妙に流れが変わってきてる。そうなると運よく……ってのはないかな。それに言ったでしょ?私は結構満足してるんだって」

 

実奈はそう言いながら、でもお父さんやお母さん心配するかな?とかお兄ちゃんも泣くかな?と言いつつ、

 

実奈「あとねドライグ。私さ、モテるタイプじゃなかったから恋人出来なかったし、作るつもりもなかったの。だってほら、私は本来存在しない奴だからここで血を途絶えさせとかないとって思ってたから……でもやっぱりさ、最後くらい良いかなって」

ドライグ「あぁ……」

実奈「私ね。ドライグが好き。そしてありがとう。私みたいな偽物を相棒って言ってくれ……て」

 

そう言い残し、完全に実奈は沈黙。

 

オーフィス「ドライグ。泣いているのか?」

ドライグ「あぁ、止まらないんだ」

 

今まで様々な所有者の死に立ち会ってきたドライグ。だがその今までの死にはない程の深い悲しみを感じ、これまでの実奈との思い出が次々蘇ってきていた。

 

戦いはなく、だが毎日が平穏で実奈は暇があれば自分との会話を楽しんでくれていて、そんな実奈との会話を自分も楽しんでいたこと。

 

ドライグ「偽物なんかじゃない。アイツは……」

 

俺にとって かけがいのない大切で、いとおしくて、愛する女だった事をドライグは認める。

 

その一方。リアス達は実奈の召喚を試みており、そこに現れたのはポーンの駒のみ。それに皆が困惑していると、一誠は何かの予感に突き動かされるようにミナライドウォッチを取り出し、彼女のライドウォッチがひび割れ、起動しなくなっていることに気付き、実奈の身に何が起きたのか気づいてしまう。他の皆も徐々に理解する中、一誠はアザゼルに掴み掛かり、

 

一誠「曹操が言っていたことは本当なのか?」

アザゼル「……あぁ、全部本当さ」

 

それを聞いた一誠は激昂し、実奈の事へのやり場のない怒りごとアザゼルにぶつけ、馬乗りになってアザゼルを殴る。それを周りが止め、

 

一誠「ふざけんなよ。裏切って、全部人に押し付けて、それなの顔色変えずに俺に近づいて戦いに巻き込んでたのか!」

アザゼル「そうだな。その通りだよ。俺はお前を利用してた。それがどうかしたか?」

 

一誠は何か問題があるか?と言わんばかりのアザゼルに拳を握りしめるが、そのまま背を向けて歩き出す。

 

リアスが呼び止めるが、一誠は睨み付けて拒絶すると、

 

一誠「何が仲間だ……なにが絆だ!」

 

一誠はそう言って仲間達の静止を振り切って走り去ってしまう。それを皆は止めようとするが、突如全身から力が抜けて入らなくなり、倒れて意識を失ってしまうのをバックに、11章終了。

 

《第12章》

 

実奈「本来であれば普通の高校生兵藤 一誠は赤き龍の帝王にして乳の無限の可能性を切り開くおっぱいドラゴンになる未来が待っていた……筈でした。しかし、それは成されず全く違う流れに。その変化は徐々に大きくなってきています。そしてもちろん第12章はあの人物も登場。この物語の鍵は三つの絆……っと、少し先まで話してしまいましたね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

禍の団(カオス・ブリゲード)の襲撃から数日後。意識を失っていた面々は目を覚ましたが、突如自分達の力が失われたことに気づいていた。

 

アザゼルにはそれが見覚えがあり、それはオーマジオウが戦った相手から力を奪った時に酷似ている事を伝える。

 

するとリアスはアザゼルに、オーマジオウとは何か事情があったのでは?と聞く。と言うのも、リアス達はアザゼルの性格から考えて、その行動は可笑しいと。

 

しかしアザゼルは何もないと言って病室を後にしようとしていると、突如爆発音が響き地面が揺れ、シャルバがレオナルドの魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)を暴走させて作った巨大な化け物が冥界の街を襲いだし、戦えるもの達は集まり迎撃に。しかしリアス達は戦えなくなってしまったため、病室で大人しくしているようにとアザゼルは言い残し、彼も迎撃に。

 

一方その頃、一誠は冥界の街を一人歩いており、襲撃から逃げ惑う人々を呆然と見ていた。すると気づくとまた荒野に立っており、久々のオーマジオウと対面。

 

一誠を見たオーマジオウは静かに笑い、

 

オーマジオウ「随分と荒んでいるようだな」

一誠「あんたか……話は聞いたよ」

 

すると一誠の言葉に、オーマジオウは更に笑い、

 

オーマジオウ「あのような小僧の、書物を読み齧って得たような知識の一面だけの真実を聞いて何を知ったと言うのだ?」

一誠「なに?」

 

どう言うことだと聞く一誠にオーマジオウは、少し考えてから仕方ないと言い、

 

オーマジオウ「本来なら私がここで教えるのは反則ではあるがな。今はあまり時間がない。お前()ならば権利もあると言うものだ」

 

そう言ってオーマジオウはあのときの真実を話し始める。

 

妻を奪われ、様々な感情が渦巻いていたオーマジオウだったが、その中考えた。何故こんなことが起きたのかと。三大勢力は争い続け、妻が奪われる。もう2度とこんなことが自分以外にも起きてはならない。そう考えたオーマジオウは、どうすればもう争い等が起きなくなるか考え、そして思い付いた。力が問題なのだと。

 

力を持つもの同士がぶつかり、戦いを起こす。ならば力が無くなれば良いと。強者は自分だけになれば良いのだと。そう思い至ったオーマジオウは、民達と決起し三大勢力の戦いに乱入。それだけではなく、北欧や他の強者達の力も奪い続け、連日戦い続けた。幸か不幸か妻を奪われた絶望で手に入れた新たな力の前には誰も敵わず、その力にオーマジオウも自信をつけていた。だがある日ふと振り返ったときに気づく。最初は自分に着いてきていた民達は、連日の戦いに少しずつ死んでいき、いつの間にか自分以外全てが死に絶えていた。

 

そうして漸くオーマジオウは気づく。この行為は【最強の個】を作り出すことはできるかもしれない。だがそれは王の目指すものではないことに。

 

オーマジオウ「王とは国があり、そして民があって初めて意味をなす。民を失い、戦いの果てに国すら滅んでしまった時の私に、意味などなかったのだ」

 

それに気づいたオーマジオウは、ならばとアザゼルに接触。

 

オーマジオウ「アザゼルとは偶然出会ってな。色々バカをやったものだ。アイツといるときだけは王ではなく、私個人として居られた」

 

オーマジオウに呼び出されたアザゼルは約束通り一人で会い、オーマジオウを説得しようとする。だがオーマジオウは話を聞かずにアザゼルに襲い掛かり、仕方なく応戦。その戦いの中、アザゼルが放った一撃をオーマジオウは敢えて喰らい、それが致命傷になる。

 

オーマジオウの強さを知っているアザゼルが、自分の気の入ってない一撃で倒されるはずがない事を言うが、オーマジオウはこれで良いと言い、アザゼルと約束する。

 

この戦いの始まりを秘匿すること。自分を最低最悪の王とし、三大勢力の長だけの秘密とする事を。そうすることで三大勢力間で秘密を共有することで牽制しあい、更に三大勢力がそれぞれ弱っている今なら、それを利用して一時的な休戦状態に持っていけると。

 

オーマジオウ「私は負けた。民を失い、国を滅ぼした。ならばせめて勝者の礎になるのがせめてもの礼儀」

 

そう言うオーマジオウに、アザゼルは俺に親友を貶めろと言うのかと言い、オーマジオウはすまないと謝る。だがアザゼルは首を横に振り了承。

 

そうすることで、曹操の言っていた話に繋がり、

 

オーマジオウ「これが真実だ。アザゼルは私との誓いを守っていたにすぎない」

一誠「何で今まで言わなかったんだよ!」

 

一誠はそう問うと、

 

オーマジオウ「お前に何の先入観も無く今の世界を見て欲しかったからだ。私が真実を話した状態で見れば、お前は平等には見れなくなる。私も余り平等に話す自信もなかったがな。それでどうだ?お前が見たこの世界は。いや、この世界で出会ったもの達は。お前はこんなものといった繋がり。絆……それは本当に意味のない物だったか?」

一誠「それは……」

オーマジオウ「そもそもライドウォッチとは何なのか。お前は理解してるのか?」

 

一誠は改めて言われると、何気なく受け入れていたライドウォッチの意味を知らないことに気付き、

 

オーマジオウ「ライドウォッチとはそもそも二つ作り方がある。お前がヴァーリにやった強制的に作る方法。そしてもう一つが力の所有者が作る方法。だがどの方法でも私のものとは違う。それはなんだか分かるだろう?」

一誠「ライドウォッチの元になった力の元々の所有者力を失うか否か?」

オーマジオウ「そうだ。では何故違いが生まれるのか。それは私のライドウォッチは所詮は同意なく、力づくで根こそぎ奪ったもの。だがお前のものは違う。不安定で、私のライドウォッチと比べて出力も大きく劣る。更に生死や互いの信頼が揺らげば使えなくなるか、私のように力を根こそぎ奪ってしまう。謂わばどっち付かずの中途半端なライドウォッチだ。だが逆に言えば、私にはない進化の可能性を秘めたライドウォッチとも言えるがな。そして何故生まれるのか、それはお前と接することで繋がり、その繋がりをジクウドライバーが通して想いや絆を結晶化させ、持ち主の手に出現させる。その結晶がライドウォッチ。出会い、お前の力になりたい。もしくは信頼がおけると思われる事で作られる。だがそれだけでは足りない。同時にお前自身も相手を思わなければならない。その互いを思いあった時、ライドウォッチは完成する。だが今のお前は他者を信じる事を忘れ、ライドウォッチは相手の力を奪い尽くしている」

 

オーマジオウの言葉に、一誠はうつむき顔を逸らす。

 

オーマジオウ「妹を……実奈を守れなかった絶望があるだろう。だがお前が見てきたあの仲間達は、お前の事を心配しているぞ?」

 

オーマジオウはそう言いながら地面を指差し、

 

オーマジオウ「【最強の個】の行き着く先はこれだ。一人ぼっちの荒野。お前にはせめて同じ思いはしないことを願う」

 

そう言い残し、オーマジオウは消え、気づくと一誠は現実に戻り、意を決して走り出す。

 

その頃リアス達は、力を失いながらも人々の避難を手伝っていた。そこには同じく力を失った匙やサイラオーグ、更にソーナ達にバアル眷属達もいたが、禍の団(カオス・ブリゲード)の英雄派が襲撃。力を失っていない面々や、肉体が武器のサイラオーグが戦うが、周りの被害も考慮せねばならず劣勢気味に。するとそこに、

 

一誠「変身!」

《仮面ライダー!ジオウ!》

 

ジオウに変身した一誠が割り込み、力を失った面々にライドウォッチを投げ渡す。それを皆は起動させると、ライドウォッチがブランクに戻り、それぞれの力を取り戻す。それから一誠は改めて、

 

一誠「皆!俺は一人じゃ何もできない。弱くてちっぽけな人間だ!だから頼む。俺に力を貸してくれ!」

 

その言葉に皆は頷きを返すと、ブランクライドウォッチが強く輝き、ライドウォッチが復活。それを次々受け取りながら、連続でアーマータイムしていき、英雄派を次々と撃破。曹操と向き合うと、今までのアーマータイムより強くなっていることを指摘されつつ、二人が再戦使用としたところに、突如時空が裂けてそこから飛び出してきた赤い物体で皆が足を止めると、その赤い物体は一誠の方に向かって、

 

???「お兄ちゃーん!」

一誠「え?」

 

よく見ればそれは赤いドラゴンで、それが突っ込んでくるため思わず一誠は回避。顔面から地面に突っ込んだソレは、文句を言いながら立ち上がり、小さくなって人型に変わると一誠だけではなく他の皆も仰天し、

 

皆『実奈《ちゃん》!?』

実奈「はーい!ただいま帰還でーす!」

 

な、何でと駆け寄る一誠に、実奈が言うには、何でも一度死んだのだが、ドライグとオーフィスが頑張って生き返ったとのこと。意味がわからず困惑していると、急に実奈の雰囲気が代わり、声音も変化。自らをドライグと名乗り、今までは実奈にドライグが着いている状態だったのを、オーフィスの力も借りて調整することで、実奈のドライグが取り込んだ魂の一部から復活させ、ドライグに実奈が宿っている状態にしたらしく、ソレにより復活。なので厳密には主人格はドライグだが、ドライグ曰く常に自分の姿だと燃費が悪いため、普段は実奈の姿になって省エネモードで行くらしい。ただ、何時でも人格や肉体を実奈から自分に変えれるため、そうすれば今まで戦えなかった実奈が戦うことも可能とのこと。

 

するとそこにプルートが現れ、絞りカスでも利用価値はあると言って、オーフィスを奪おうとするが、ヴァーリがそこに乱入。だがヴァーリも力を失っていたため、一誠はヴァーリライドウォッチを渡してヴァーリは力を取り戻す。だがヴァーリも改めてライドウォッチに力を与えて一誠に渡し、プルートと戦う。そこに巨大魔獣も現れ、それは実奈がドライグと人格を入れ換え、肉体もドライグに変えて突撃。

 

魔獣二人がかりを相手にしてもドライグは圧倒(調整時にオーフィスの力も少し貰っているため、生前より燃費が悪くなった代わりに、若干パワーアップしてる)し、その間一誠もジオウⅡに変身して、曹操と戦いを繰り広げる。

 

だが禁手(バランスブレイカー)を解放した曹操に苦戦を強いられ、吹き飛ばされるが、魔獣を倒したドライグが、一誠にライドウォッチを渡せと言い、一誠は壊れていたミナライドウォッチを渡す。それにドライグは力を譲渡し、ミナライドウォッチが今までよりもパワーアップして復活。

 

それを一誠に返すと、突如ジオウⅡライドウォッチとリアスライドウォッチ、ミナライドウォッチが共鳴し、新たなライドウォッチが誕生。

 

見たことのないライドウォッチに、一誠は驚きつつも、このままでは曹操に勝てないと判断し、ジオウⅡライドウォッチを外してジオウライドウォッチと、新たなライドウォッチを手にする。

 

《ジオウ!ジオウトリニティ!》

リアス「あれ?何か私光ってる?」

実奈「え?なんで私ドライグから戻ってるの!?」

一誠「変身!」

 

新たなライドウォッチを使用すると、リアスと実奈はそれぞれのライドウォッチで出てくる、アーマータイムのアーマーが全身を包み、発光するとアーマーの顔以外が腕時計のバンドになった姿になり、一誠の両肩にそれぞれ融合。

 

一誠「うぉおおお!?なんだなんだ!?」

リアス「いたたたたたた!今全身の骨がゴキゴキ言ったわ!」

実奈「か、体が勝手にぃいい!」

《トリニティタイム!三つの力、仮面ライダージオウ!リアス!ミナ!トーリーニーティー!トリニティ!》

 

新たな姿、ジオウトリニティに変身した一誠は、精神空間でリアスと実奈に出会いながら、今の姿に驚く。

 

目は赤く(左から順にリアス・一誠・実奈の順の配色になっており、深紅・ピンク・赤)全身の配色がオーマジオウに近づいていたが、実奈はソレよりと言い、

 

実奈「とにかく……祝わないと!」

一誠&リアス『え?』

実奈「祝え!どうやら3人の力が結集し、多分!未来を創出する最大の王者。その名も仮面ライダージオウトリニティ!きっと、新たな物語が創成された瞬間である」

一誠「実奈……それ本当に祝ってる?」

 

そんなやり取りをしながらも、とにかくいこう!と一誠が言うと、実奈とリアスは頷き、三人は息を合わせて曹操と戦い、滅びの魔力を纏わせた一撃や、それを何倍にも倍加できる赤龍帝の力に加え、曹操の推理すらも見通すほどまでに向上した未来予知を前に、曹操はすこしずつテクニックでは補いきれないほどのスペックの差で押されていく中、曹操は一度距離を取って黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)の最大火力を放つ。だが一誠も、サイキョージカンギレードを構え、キングギリギリスラッシュを発動。更にその刀身に滅びの魔力を纏わせ、それごと倍加と譲渡で強化。

 

何か凄くなったキングギリギリスラッシュ(命名・一誠)で曹操の黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)の一撃を破ると、一誠はサイキョージカンギレードを地面に射し、必殺技を発動。

 

《フィニッシュタイム!トリニティ!》

一誠「二人とも……行くぞ!」

リアス「えぇ!」

実奈「うん!」

《トリニティ!タイムルインブーステッドブレーク!》

 

一誠は飛び上がると、オーラで浮かび上がった、アーマータイムの鎧姿の二人と共に、ライダーキックを曹操に放ち、曹操をついに撃破。壁に叩きつけられ、血を吐く曹操に一誠は近づき、

 

曹操「全く……君は凄いな。何処までも強くなる。それがオーマジオウの力か」

 

そういう曹操に、一誠は首を横に降り、

 

一誠「これはオーマジオウ(俺一人)じゃなれない力だ。部長がいて、実奈がいる。だからなれるんだ。皆がいるから俺は強くなれる。悪魔とか天使とか堕天使とか関係ない。皆が俺の力になる。皆がいるから強くなれる。それが俺の目指す強さ。最高の全だ。人間だけの力で行けるところまで行くだっけ?ちいせぇちいせぇ、俺の前じゃ小さすぎるぜ」

 

そう言う一誠に、曹操は苦笑いを浮かべながら、

 

曹操「敗けたよ……完敗だ。これ以上にないほどの敗けだ」

 

曹操は笑いながらそう言うと、曹操の手にライドウォッチが精製され、曹操は思わず、ここまで心が折れたのか、と自嘲気味な声音で言い、一誠にライドウォッチを投げる。一誠は咄嗟にそれをキャッチし、意識がそっちの方に取られた瞬間。曹操が仲間の絶霧(ディメンションロスト)で逃亡し、逃してしまう。

 

皆が思わず地団駄を踏む中、一誠はソウソウライドウォッチを手に空を見上げ、曹操達が帝釈天に罰を与えられ、アザゼルが遅れてやってくると、そこにいた一誠におもわず目を逸らしそうになったが、一誠からもういい。気にしないで良いよとそれとなく真実を知っている風に言い、アザゼルからそうかと言われながら、12章終了。因みにこの際、実奈は死ぬ直前の記憶がなく、ドライグへの告白をすっかり忘れていることが判明。

 

《第13章》

 

実奈「本来であれば普通の高校生兵藤 一誠は赤き龍の帝王にして乳の無限の可能性を切り開くおっぱいドラゴンになる未来が待っていた……筈でした。しかし、それは成されず違う流れに。その変化は徐々に大きくなってきています。そしてもちろん第13章はあの人物も登場。この物語の鍵は不死鳥……っと、少し先まで話してしまいましたね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冥界での曹操達との戦いからしばらくたったある日、リアス達の(厳密にはギャスパーの)元に、吸血鬼のエルメンヒルデを筆頭にした面々が接触し、ギャスパーの身柄を要求。

 

一旦は保留と言う形にし、吸血鬼領にリアスや祐斗とアザゼルが向かうのを決めたりしつつ、他の悪魔メンバーは魔法使いの契約に動き、一誠はそんな様子をレイヴェルから淹れて貰ったお茶を飲んで眺めつつすごしていたそんなある日、禍の団(カオス・ブリゲード)と合流したはぐれ魔法使い達が学園を襲撃。

 

一誠はジオウⅡに変身し、実奈もドライグと人格を入れ換えて戦い、撃退するが、レイヴェルが誘拐されてしまい、奪い返すため一時的にソーナをリーダーとして奪還戦に望むことに。

 

魔法使いの拠点に乗り込み、皆で蹴散らしながら進む中、匙が魔法使いに激怒しつつ、奥に進むと謎のローブの男がおり、そいつはあっさりレイヴェルを解放。

 

何故レイヴェルを誘拐したのかと言うと、フェニックスの涙を量産するため、フェニックスのクローンを作っていたため。だが中々上手くいかず、レイヴェルを誘拐したとのこと。

 

そのようなふざけた事に一誠が黙っているわけもなくぶちギレながら、ローブの男に襲いかかろうとするが、そこに出現した空間の裂け目からなんとグレンデルが出現。アーシアが密かに契約していた、ファーブニルも巻き込んで戦いになるが、この狭い場所ではドライグも本来のパワーでは戦えず(本気のドライグとグレンデルに加えてファーブニルが戦ったら駒王町を中心にした周辺が消し飛ぶ)、苦戦を強いられるものの一誠はジオウトリニティに変身。吸血鬼領にいたリアスも強制的に呼び出し、リアスが困惑する中、そのまま変身は続行。

 

リアス「いたたたたた!骨が鳴らしてはいけない音を……ってここどこ!?」

 

そしてジオウトリニティに変身した一誠は、そのまま行こうとするが、その前に待ったと実奈が止め、肉体の主導権を一度実奈に移すと、

 

実奈「ひれ伏せ!我が名はジオウトリニティ!王の兵藤 一誠!悪魔のリアス・グレモリー!赤龍帝の兵藤 実奈!三位一体となって物語を創出する最大の王者である!」

ドライグ「相棒。それはいるのか?」

 

いる!とドライグの突っ込みに答えながら実奈は叫ぶが、一誠とリアスはやれやれと肩を竦めながら、グレンデルとの戦いに。

 

強大な力を持つグレンデルだが、ファーブニルにの援護もあるジオウトリニティに押されていく。しかしグレンデルの執念も凄まじく、段々テンションを上げて突っ込んでくるため、決め手に欠けていくことに。

 

しかしある程度まで戦うと、ローブの男がグレンデルに撤退を指示。グレンデルはごねるものの、ヴァーリ戦えると言うことで嬉々として撤退し始め、次は殺すと言いながら撤退。するとローブの男はローブを外し、自らをユーグリット・ルキフグス……つまりグレイフィアの弟だと名乗り、姉に宜しくと言いながら撤退。

 

こうして、無事レイヴェルを救出することに成功しながらも、新たな敵の出現に一誠達の心は沈むが、レイヴェルは実験を見て寧ろ燃えており、あんなことはもう二度とさせないと誓う。

 

それを見た一誠も、レイヴェルに力を貸すと約束し、彼女からレイヴェルライドウォッチを受け取りながら、13章終了。

 

《第14章》

 

実奈「本来であれば普通の高校生兵藤 一誠は赤き龍の帝王にして乳の無限の可能性を切り開くおっぱいドラゴンになる未来が待っていた……筈でした。しかし、それは成されず違う流れに。その変化は更に大きくなっていき、そして第14章では、遂に最強の王に覚醒します。この物語の鍵は堕天使……っと、興奮しすぎて少し先まで話してしまいましたね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔法使い達との戦いの後、一誠達は自宅でのんびりしていた。その中、ある人物が訪ねてくる。それはデュリオ。天界のジョーカーにして切り札で、最低最悪の王様の生まれ変わりに暇ができたから会いに来たとのこと。

 

そのため一誠が応対すると、子供達の面倒を見ていたお兄ちゃんであるデュリオと一誠は、お兄ちゃん同士で意気投合し、すっかり仲良しに。帰り際、デュリオはあっさりと自身のライドウォッチを渡し、周りの方がビックリ。本人曰く、さっき帰る準備の際に産まれたらしく、一誠は優しそうだからあげると言う、余りにもそれでいいのかと言う理由で渡しており、

 

一誠「い、良いのか?借りにも天界の切り札の力なんだろ?」

デュリオ「良いの良いの。イッセーどんいい人みたいだし、うちのAもお世話になってるしねぇ。急に押し掛けた慰謝料と思ってくれれば嬉しいな」

 

一誠も困惑しつつ、デュリオライドウォッチを受け取って暫く経ったある日、吸血鬼領にてクーデターが発生し、リアスや同行した祐斗と連絡がつかなくなってしまい、グレモリー眷属と一誠はアザゼルの力でルーマニアに転移し、吸血鬼領に侵入。

 

その後、オーマジオウは吸血鬼からも怨みを買っていたのを知りつつ、吸血鬼の城に向かうと、リアス達と再会し、更にギャスパーの恩人であるヴァレリーが反乱側のリーダーであり、現吸血鬼のトップ。更に幽世の聖杯(セフィロト・グラール)と言う神滅具(ロンギヌス)の所有者であることも判明。

 

幽世の聖杯(セフィロト・グラール)にかなり呑まれているのを知りつつ、一旦それぞれが与えられた部屋に行くことに。すると、その場に現れたのは初老の悪魔と、リリスと呼ぶオーフィスそっくりの少女。何でもオーフィスから奪った力で作り出したクローンらしく、その中アザゼルは憎々しげに相手を見ると、リゼヴィムと呼び、呼ばれた方も楽しそうに笑う。

 

その名を聞いたリアス達も驚愕し、彼がヴァーリの祖父であり、ルシファーの血脈と言うことを知らされると、

 

リゼヴィム「あれぇ?もしかして君がオーマジオウ生まれ変わりとか言う人間かなぁ?」

一誠「それがどうしたんだ?」

 

べぇっつにぃ?と言いながらリゼヴィムは消えていき、アザゼルはあれが今の禍の団(カオス・ブリゲード)の首領だろうと言う。そしてあいつが関わる以上、何かろくでもない事になる。と言った後、リリスと交流しつつも、その後ギャスパーが相手からヴァレリーを解放すると言う約束をするものの、それはヴァレリーから神器(セイクリットギア)を抜き取ることが前提のため、それは彼女の死を意味することをエルメンヒルデが伝えに来て、その前に彼女を奪ってこの国を脱出することに。

 

そしてヴァレリーを奪還するため動き出すと、吸血鬼側の妨害を受けるが、ゼノヴィアアーマーにアーマータイムした一誠の聖なる一撃や、他の皆の猛攻。更にドライグの人格にチェンジした実奈や、大人モードの小猫相手に敵は一掃されて行くが、道中グレンデルが登場。流石にこのままではと一誠はリアスと実奈に声を掛け、ジオウトリニティに変身。

 

リアス「あだだだ!ほんとこの関節を無理矢理組み替えられるような感覚だけはどうにかならないのかしら!」

実奈「ほんじゃま皆さん行きますよぉ!ひれ伏せ!我が名はジオウトリニティ!王の兵藤 一誠!悪魔のリアス・グレモリー!赤龍帝の兵藤 実奈!三位一体となって物語を創出する最大の……」

一誠「えぇい!実奈!今そんなことやってる場合じゃないぞ!」

 

そう言ってグレンデルに襲い掛かるが、相変わらずの強さと堅さに苦戦を強いられる。しかしアザゼルの援護もあって、少しずつグレンデルを押していき、滅びの魔力を倍加させて刀身に纏わせたキングギリギリスラッシュをグレンデルに突き刺して、引き抜くとそのまま、トリニティタイムルインブーステッドブレークを、他の仲間達の総攻撃と共に、その傷口に叩き込む。

 

だがそれでもグレンデルは生きており、まだ戦おうとするが、そこに邪龍のクロウ・クルワッハが乱入。グレンデルを逃がし、そのまま一誠達を足止めしようとするが、ヴァーリが突入して来ると、先に行けと言う。だがクロウ・クルワッハは幾らヴァーリでも一人では危険と言って、ジオウトリニティを解除して実奈は離れると、ドライグの姿になって、ヴァーリと共にクロウ・クルワッハと戦闘に。

 

その間に他の面々はヴァレリーの元に急ぎ、奥に来るとヴァレリーから既に幽世の聖杯(セフィロト・グラール)が抜き取られた後で、遅かったことが判明。だがそれを見たギャスパーが真の力を解放し、その場にいた吸血鬼を闇で呑み込み、ヴァレリーを奪還。その際に、幽世の聖杯(セフィロト・グラール)を抜き取られているのにヴァレリーは死んでおらず、昏睡状態なこと。そして幽世の聖杯(セフィロト・グラール)は一つじゃないことにアザゼルは気づき、正解だとリゼヴィムが言いながら登場。

 

そこにヴァーリやドライグも合流し、ヴァーリが憎々しげにリゼヴィムを見る中、ユーグリットやリリスも現れて、極めつけに吸血鬼達も化け物に変貌して襲い掛かってくる。更にリゼヴィムも幽世の聖杯(セフィロト・グラール)を持っていることが発覚し、ヴァレリーのためだけではなく、能力的にも奪い返す必要があるとアザゼルが言い、皆でリゼヴィムを襲うが、ユーグリットやオーフィスの力の殆どを奪っていって作られたリリスと元吸血鬼達の妨害により中々近づけず、その中祐斗が聖魔剣での一撃を入れられたものの、何故か効かずその際にリゼヴィムは祐斗に反撃。アーシアの治療で治療を受けながら、アザゼルからリゼヴィムは神器(セイクリットギア)関係の力を無効化できることを教えられ、ならばと一誠はジオウトリニティに変身。だがやはり実奈の力を組み込むとリゼヴィムには効かず、実質一誠とリアスの力のみしか通らないものの、リリスが邪魔をするため劣勢に。

 

その中、リリスが抑えていた力を解放し、辺り一帯を消し飛ばしと言う暴挙を働き、皆で吹き飛ばされ一誠が変身を解除されてしまった瞬間、リゼヴィムが一誠を攻撃。変身していなければただの人間である一誠にとって、致命的一撃になる……筈だったのだが、それを咄嗟にアザゼルが体を張って守り、逆にアザゼルが致命傷を負ってしまい、アーシアが今度はアザゼルを治療するがダメージが大きすぎたため間に合わず、一誠が時間を戻すが、何故かアザゼルはダメージを負ったまま。理由としてリゼヴィム曰く、幽世の聖杯(セフィロト・グラール)を使った一撃は、肉体はもちろん魂に損傷を与える。そのため、時間を戻したとしても魂の損傷はその者が存在する以上戻すのは出来ない。そんなことが出来るとすれば、精々オーマジオウくらいなものだと。

 

更にリゼヴィムは言う。お前は生まれ変わっても何も俺から守れないんだなと。その言い方に引っ掛かった一誠はどう言うことかと聞くと、オーマジオウの妻を殺したのはリゼヴィムであり、悪魔・堕天使・天使の存在を仄めかす品を置いたのも彼。やった理由は、何時も穏やかなこの男が怒るとどうなるのか見てみたかったから。だたそれだけで、

 

リゼヴィム「いやぁ、思った以上にヤバイ事態になっちまってよ、慌てて俺は自分の領地に戻ったね。ありゃダメだ。反則だって。しかも中途半端にあっちこっちの勢力に手を出したせいでよ?もし俺がやったなんてバレたらただじゃすまない事になっちまってさ、ちょっとした遊びだったんだぜ?だからこそこそしてたんだよ。そしたら禍の団(カオス・ブリゲード)とかできたかと思えばオーマジオウの生まれ変わりも出てきただろ?流石にもう我慢の限界だったって訳よ。だから年甲斐もなく頑張っちゃった」

 

ふざけんなよ……と一誠はマグマのような怒りをリゼヴィムに向け、襲い掛かろうとするが、それをアザゼルが止め、

 

アザゼル「落ち着け一誠」

一誠「落ち着いてられるか!」

アザゼル「そう言って走り出した結果がどうなったか……お前は分かってる筈だ。アイツと同じ目をしている。おれはそれを止めないわけにはいかない。今度こそ……あのときみたいか事に知るわけにはいかない」

 

そう言いながらアザゼルは血を吐き、それでも一誠を見て、

 

アザゼル「いいか一誠。怒りは悪いことじゃない。だが怒りを自分の思う通りに操れ。怒りに支配されるな。アイツは怒りに支配されていた。そして国と民を滅ぼすまで止まれなかった。だがお前にはまだ仲間がいる。それを忘れるな。そうすればお前は誰よりも……そう、オーマジオウより強くなれる」

 

そう言いながらアザゼルは自身のライドウォッチであるアザゼルライドウォッチを一誠に渡しながら、ずっとオーマジオウの一件で後悔していたこと。だから今度は守れて良かったと。そしてリアス達一人一人に声を掛け、

 

アザゼル「お前らは……俺の自慢の教え子だ。そしてヴァーリ」

ヴァーリ「あぁ」

アザゼル「風邪引くなよ」

 

それだけ言い、アザゼルの体から力が抜け、息を引き取る。その場は悲しみに包まれ、ヴァーリですら堪えられず涙を流す中、一誠は一人立ち上がり、ゆっくりとリゼヴィム達を見る。それを見てリゼヴィムは笑い、そして言う。どうせお前には何も出来やしないと。それに一誠は笑い、

 

一誠「確かに俺はアザゼルを死なせてしまった。俺は結局守れなかった。でもそれで俺が歩みを止める理由にはならない。俺の道は……仲間はまだ生きてる!」

 

すると一誠の思いに応えるように、一誠の持つ全てのライドウォッチが浮かび上がり、一誠の周りを光輝きながら回り出す。

 

一誠「アザゼルは俺を信じてくれた。命を賭けてくれた。なら俺はそれに応える!オーマジオウを越える!【最強の個】じゃない……【最高の全】となって!」

 

一誠の宣言と共に、一誠の手に現れたのは、巨大な黄金のライドウォッチ、グランドジオウライドウォッチで、一誠はそれを使って変身。

 

《ジオウ!グランドジオウ!》

 

一誠がベルトに挿すと、一誠の背後に今までライドウォッチをくれた皆の像が建ち、一誠は静かに変身する。

 

一誠「変身」

《グランドタイム!リアス・アケノ・アーシア・ユウト・コネコ・ゼノヴィア・ギャスパー・ロスヴァイセ・イリナ・クロカ・サジ・ヴァーリ・サイラオーグ・レイヴェル・ミナ・ソウソウ・デュリオ・アザゼル・オー・フィ・ス~祝え!仮面ライダー!グ・ラ・ン・ド!ジオーウ!》

 

全身黄金で、仲間達のエンブレムが貼り付けられたような見た目のグランドジオウとなった一誠は、

 

一誠「実奈……祝ってくれないか?」

実奈「え?」

一誠「何処までも遠くへ……何処にいても伝わるくらにさ!」

実奈「……うん!」

 

言葉の真意に気づいた実奈は涙を拭って立ち上がると、高らかに祝う。そう、アザゼルにも届くように!

 

実奈「祝え!遂に王はこの世界で輝く全ての力を手にいれ、あらゆる時空・事象・次元を支配する最強の王者へと至った。その名も仮面ライダーグランドジオウ!今、物語は最終章へとたどり着いた瞬間である!」

 

一誠はその口上を聞き、それからゆっくりと歩き出す。それを元吸血鬼の化け物が止めようと襲いかかるが、片手を振っただけで消し飛ばしたり、体のエンブレムに触れると飛び出す仲間達の分身に戦わせて自分はリゼヴィムに迫る。それをユーグリットが止めるが、軽々とさばき更にゼノヴィアのデュランダルを取り出して切り飛ばし、そこに来たリリスの一撃を片手で止めると逆に殴り飛ばす。リリスは何が起きたのか理解できず呆然としていたが、リゼヴィムは何なのか分かっていた。それは一誠の力の一つであるオーフィスの力は、オーフィスが弱体化する前に作られたもの。つまり一誠の力は単純計算でも、全盛期のオーフィス+全ての仲間達の力を持っている状態であり、更に能力を組み合わせればそれ以上になることも容易に想像でき、こんな化け物とやってられるかよとリゼヴィムは早々に退散しようとする。だが、一誠はギャスパーを召喚し足止めする(グランドジオウ状態であれば、神器(セイクリットギア)関係の力もリゼヴィムに普通に通る)と、連続で仲間を召喚し、リゼヴィムを滅多うちにすると、

 

一誠「リゼヴィム。お前は哀れな奴だよ」

リゼヴィム「な、なんだとぉ?」

 

一誠は心底哀れむ声音で言い、リゼヴィムは逆に怒りが沸く。だが一誠は静かに、

 

一誠「お前は自分の格を分かってない。俺とお前とでは格が違う。俺に喧嘩を売るべきじゃなかったな」

リゼヴィム「っ!」

 

リゼヴィムのプライドの高さを知った上での挑発に、リゼヴィムはぶちギレ、攻撃をするがグランドジオウの一誠には効かず、一誠はキングギリギリスラッシュを発動。

 

しかし、咄嗟にリゼヴィムはリリスを盾にして一瞬の隙を作ると、そのまま爆発に乗じて魔方陣で逃亡。その間にユーグリットも逃亡し、元吸血鬼の化け物だけが残る中、一誠は仲間を召喚し、ベルトを操作して必殺技を発動。

 

《フィニッシュタイム!グランドジオウ!オールトゥエンティ!タイムブレーク!》

 

召喚した仲間と共に放った必殺技は、化け物達を消し飛ばし、混乱していた領内を一度落ち着かせることに成功。

 

その後、エルメンヒルデはこの一件で混乱している吸血鬼領の統治に戻り、ヴァレリーは一誠達が取り戻した幽世の聖杯(セフィロト・グラール)の一つで意識だけは取り戻す。これはアザゼルライドウォッチの力で、神器(セイクリットギア)関係の知識も受け継いだ一誠のお陰。

 

だが同時にアザゼルを失った傷は残るものの、一誠はアザゼルとの約束を守るため、改めて決意を固めたところで14章は終了。

 

15章~17章は、ほぼ原作16巻から18巻通り。グランドジオウに無双させつつユーグリットをぶちのめし、八重垣さんを救いつつ進める中、何やらリゼヴィムの悪巧みも進行。

 

 

そして18章で何と一誠の両親がリゼヴィムの誘拐事件が勃発。一誠達は救うため動き出したが、その際に両親に実奈が既に一度死んでおり、実奈としての人格は残っているものの、実奈では無くなってしまっているのがばれてしまう。

 

だが両親はそれでも実奈は実奈だと言い、何も変わってないと言う。相も変わらず愛を注ぎ込んだ、大切な娘だと。それに実奈も応え、例え本来ならこの世界にはいないはずの娘だろうと、大切な両親だと立ち上がり、ドライグに姿を変え、一誠もグランドジオウに変身。リゼヴィムを追い詰め、協力していたベリアルも撃破。しかし、リゼヴィムは笑い、

 

リゼヴィム「やっぱよぉ、いざってときの備えってのは必要だなぁ!」

 

そう言ってリゼヴィムが取り出したのは、 黄金のジクウドライバー。見たことのない形に実奈が驚くが、ドライグと一誠は見覚えがあった。それは一誠……いや、オーマジオウがつけていたベルトだ。

 

リゼヴィム「アザゼルはなぁ。オーマジオウを殺した後このベルトがあるのは危険だと考えた。だが破壊することは叶わず、処理に困ってアイツは人間界の海底深くに封印したのさ。敢えて人間の世界に封印することで今まで誰の目にも届くことはなく、俺だって最近分かったくらいだ。だがアザゼルが死に、封印も緩んだことで発見できた。つうわけで変身っと」

 

《祝福の刻!最高!最善!最大!最強王!逢魔時王(オーマジオウ)!》

 

ベルトを装着し、何とオーマジオウへと変身したリゼヴィムは、グランドジオウとなった一誠とドライグを歯牙にもかけず、駆けつけた他の仲間達も軽々と倒していく。

 

リゼヴィム「ははっ!こいつはすげぇ!これはまさに究極の力だぁ!」

 

そう言いながらリゼヴィムは、空中へ飛ぶと、今から一ヶ月後にまた現れ、駒王町を襲い、そして日本、世界と波及させると。

 

リゼヴィム「精々止めてみな。まぁ最強になったアルティメットリゼヴィムの俺には誰も勝てないだろうがなぁ!」

 

そうして、ゲラゲラ笑いながら姿を消したリゼヴィムを見て、悔しさに歯を軋ませる一誠と共に、18章終了。

 

《最終章》

 

実奈「本来であれば普通の高校生兵藤 一誠は赤き龍の帝王にして乳の無限の可能性を切り開くおっぱいドラゴンになる未来が待っていた……筈でした。しかし、それは成されず全く違う流れに。その変化は遂に取り返しのない事態を起こしてしまいました。リゼヴィムの悪意とオーマジオウの力。これを前にもう希望はないのでしょうか?さて、残念ながらもう先はありません。ここから先は、皆さんの眼で直接お確かめください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リゼヴィムがオーマジオウの力を手にして一ヶ月。卒業式も終わり、お祝いムードの中、リゼヴィムに対抗するための協議が進んでいた。だがオーマジオウの力とリゼヴィムの悪意と言う最悪すぎる組み合わせに、どう対抗するか策が見出だせぬまま、時間だけが過ぎていく中、一誠は黒歌も小猫にゲームの周回がー、とか言っていたものの外に引っ張り出され、実奈と久々に二人で過ごしていた。

 

暫くは両親との時間を持っていたが、久し振りの二人きりの空間に、少し気まずさを感じつつ、ポツポツ話していると、

 

実奈「今だから言えるけどさ。私本当はここにいない筈なんだよね」

一誠「知ってたよ」

 

え?と一誠の反応に実奈は驚いていたが、一誠曰くグランドジオウには平行世界を見ることもできるらしく、それでこの世界の成り立ちに気付いていたらしい。

 

一誠「でも良いんだ。確かにお前は本当ならいないのかもしれない。でもここにはいる。ならそれは本物だよ。それでいいじゃないか。それにさ、俺は一人っ子になるはずだったんだろ?それは寂しいしさ。寧ろありがとうって言わなきゃだ。俺の妹になってくれてさ」

実奈「……うん」

 

そうして、遂にリゼヴィムとの最終決戦の日となり、三大勢力を中心とした様々な種族が結集し、オーマジオウに変身し、量産型のグレンデルを引き連れたリゼヴィムを迎え撃つことに。

 

だがオーマジオウ変身したリゼヴィムは圧倒的で、昔のオーマジオウはまだあれでも手加減をしていたのかと、当時を知るものが言うほど。

 

その中一誠もグランドジオウに変身し、仲間を召喚して戦いを挑むものの、

 

《終焉の刻!逢魔時王必殺撃!》

 

リゼヴィムの一撃を喰らい、余波で地面が割れ、その中に落ちていってしまう。

 

そんな中、またオーマジオウと精神世界で対面。だが今回は一誠もそろそろ出てくる頃だと思っていたらしく、久し振りだと言いながら、

 

一誠「いやぁ、アイツやっぱり強いな」

オーマジオウ「あぁ、そうだな。勝つ算段はあるのか?」

 

一誠はそんなオーマジオウに頭を掻きつつ、

 

一誠「今のままじゃ勝てないな。でもまだ試してない方法はある」

 

そう言って一誠はオーマジオウに歩み寄ると、

 

一誠「オーマジオウ。だからあんたの力を貰いに来た」

オーマジオウ「ほう?」

 

オーマジオウはそんな一誠に興味深そうな顔をし、

 

オーマジオウ「私の力……ベルトはリゼヴィムが持っているが?」

一誠「ベルトその物は重要じゃない。俺が欲しいのはオーマジオウ自身なんだ。そしてオーマジオウは俺の中にいる」

 

そう言いながら一誠は更に続けて、

 

一誠「それに言ってただろ?ライドウォッチは想いの結晶だって。なら必要なのはベルトじゃない。あんたの意思だ。最強の個の力。俺に貸してくれないか?」

オーマジオウ「良いのか?最高の全になるんじゃなかったのか?」

一誠「勿論そっちもなるさ。あんたは最強の個に、俺は最高の全に。そして二人合わせれば、なんか行ける気がしないか?」

 

それを聞いたオーマジオウは笑いだし、

 

オーマジオウ「強欲だな」

一誠「あぁ、強欲だ。力は全部欲しい。使えるものは何でも使いたい。そして……皆と一緒にずっといたいんだ」

オーマジオウ「……」

 

オーマジオウは少し目を伏せ、片手を前に出すと一誠の手が輝き出す。

 

オーマジオウ「それで良い。足掻け、自らが欲する夢の為に。そして掴み取れ、未来のために!」

 

自分の想いを全てライドウォッチに託し、オーマジオウは消滅。それと同時に一誠は精神世界か戻ると、奈落の底から飛び出す。

 

それを見た仲間達だけではなく、リゼヴィムも驚愕する中、

 

一誠「もっとだ。もっと力がいる!だから皆ぁ!俺に力を貸してくれぇええええええええ!」

 

その一誠の叫びは世界に木霊し、戦いに参加しているもの達は勿論、戦いには参加できずとも、戦いを見守っていた者達の手にライドウォッチが次々生まれ、皆の手からそれが一誠の元に飛んでいく。そして一誠は自身の周りをライドウォッチが飛ぶ中、新たなライドウォッチを起動。

 

《オーマジオウ!》

一誠「変身!」

《キングタイム!仮面ライダー!ジオウ!オーマ!》

 

背後に巨大なオーマジオウの像が立ち、一誠は仮面ライダージオウ・オーマフォームに変身。

 

一誠「さぁ実奈!いっちょド派手に頼むぜぇ!」

実奈「うん!祝え!今、過去と今が一つとなり、未来を創造する最高にして最善!最大にして最強の王者が誕生した!その名も仮面ライダージオウ・オーマフォーム!ここに、最後の物語が紡がれ始めた瞬間である!」

 

そして最後の戦いが幕を明け、一誠は量産型のグレンデルを蹴散らし、リゼヴィムと戦う。仲間達も一誠の力の影響で強化され(理由はあとがきで)、共に戦う中リゼヴィムはこの力は究極の力だと言って襲い掛かる。しかし簡単に受け止められ、逆に攻撃を喰らい、

 

一誠「お前は分かっていない」

リゼヴィム「なに?」

一誠「究極て言うのは極まっているって言うことだ。つまりもうそれ以上はない。打ち止めって言うことだ。だが俺のは違う。俺のはまだ見ぬ未来のために何処までも成長し続ける力だ。それにお前……オーマジオウの力を使いこなせてないだろ?その証拠にお前はライドウォッチを使ってない。いや、使えないんだ。お前程度の器では、他者の力を背負えないからな」

 

そうして、圧倒的な実力差の前にリゼヴィムは推されていくが、一瞬の隙を突いて必殺技を発動。だが一誠も必殺技を発動し、

 

《キングフィニッシュタイム!キングタイムブレーク!》

 

両者の必殺技がぶつかり合い、空間が裂けて地面が割れる。だがリゼヴィムはゆっくりと押されていき、

 

一誠「言っただろリゼヴィム。俺と……いや、俺達とお前じゃ格が違う」

リゼヴィム「っ!」

 

そうして、リゼヴィムはベルトごと消滅し、戦いは終わり皆の元に帰りながら、最終章終了。

 

《エピローグ》

 

実奈「と言うわけで世界を平和にし、王は最高最善の王と言われるようになったのでした……っと」

一誠「なぁ実奈。今さらだけどさ、俺別にどこかの領地を治めてる訳じゃないんだから王様ってのは可笑しくないか?」

 

最後の戦いから数十年。実奈はグレモリー眷属の一員として忙しく過ごしながら、過去の戦いの記録をして過ごしていた。

 

一誠は冥界を筆頭とした様々な勢力からの依頼を受ける仕事をしており、講演や面倒ごとの処理等多岐にわたり、黒歌やレイヴェルがその補佐を行う。とは言え結構今は平穏なので、暇なときは暇らしい。

 

とは言え時間があえばこうして一緒に会っていた。

 

実奈「そう言えばリアス義姉さん達とはどうなの?」

一誠「ん?まぁボチボチかな」

 

この頃には一誠も他のヒロイン達と結婚し、子供いる。普段は妻達の方が忙しいくらいなので、子供達からなつかれている模様。

 

更に、

 

実奈「それにしてもお兄ちゃんさ、全然年取らないよね……」

一誠「前にもいったろ?ベルトの影響か年取らなくなったって」

 

そういうとおり、一誠は見た目をいじっているわけではないのに、年はとっていない。と言うのも、ベルトの影響で、老化をしなくなったらしい。

 

一誠「まぁ、まだ暫くはこのままでいさせてもらうさ」

実奈「そうだね」

 

そう言いながら二人は笑っていると、外からリアス達の声がする。今日は久々に皆の予定が合うため、集まる予定だったのだ。

 

一誠「んじゃ、いくか」

実奈「うん!」

 

そう言って背を向ける一誠に隠れて、実奈は最後の一文を付け足す。

 

実奈「こうして王の物語は終わりとなりました。ですが、私達の物語はまだ続きます。そうですね……もしかしたらまだ出会えるかもしれません。だって私がここにいて、見て聞いて感じる限り、物語は続くのですから。と言うわけで暫しの別れを。敢えて言わせてもらえるならば、こう言わせていただきたい。また……会いましょう」




《ジオウトリニティ》

一応何故リアスと実奈とでトリニティだったのか一応考えてはありました。理由として、実奈はドライグを持っているから、と考えやすいのですが、じゃあ何故リアスだったのか。それは本来ならメインヒロインと言うのもありますが、リアスは原作でも一誠の強化に関係することが多いと言うのがありました。まぁ方法は色々ひどい(褒め言葉)ですが、それでも一誠の強化や成長に関与するのは何時だってリアスやドライグでした。なのでこの世界においても、この二つの力は重要な立ち位置だったりする……という設定があったりします。

《オーマフォーム》

幾つかの能力があり、まず一つはライドウォッチをくれた全員の強化。と言うか、全員をオーマジオウと同じ存在に変える。なので化け物じみた回復能力や、相手より強くなると言う能力を全員に付加。

そしてオーマフォームの一誠自身には、その全員の強さを全部フィードバックさせます。

なので10人からライドウォッチをもらった状態で変身すればオーマジオウ×10の強さに。20ならばオーマジオウ×20。100ならオーマジオウ×100の強さとなる。

更にオーマジオウ状態のリゼヴィムも、相手より強くなると言う能力はあるのだが、オーマフォームの一誠自身はあくまで複数の力がフィードバックされた存在なので、数あるフィードバックされた力の一つしか越えることが出来ないため、絶対にオーマジオウの力だけでは一誠を越えることはできない。と言うか、リゼヴィムが強くなれば強くなる程、一誠側の全員で力を越えてフィードバックするため、手がつけられない。

その為、オーマフォーム状態の一誠は、他者を信じ戦う限り、絶対に越えることは不可能になっている。

ちょっとリゼヴィムが可愛そうだったかなぁ……(遠い目)

と言うわけで最後までありがとうございました。次回から本編に戻ります。いやぁ、私の我が儘に付き合わせて申し訳ない。細かいところは無視して突貫工事で作りましたが、取り敢えずこんな感じでした。因みにここで考えていた設定や世界観が、少しビルドの本編に引き継がれてたりもします。まぁその辺は後々のお楽しみにと言うことで。

更に総合評価800突破!ありがとうございます。これから変動があるかもですが、それでも嬉しいです。高評価や登録していただいたお陰です。これからも頑張っていきますので、よろしくお願いします!


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十三章 課外授業のヒーローズ
奪還準備


前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「龍誠は新たな力、クローズマグマに覚醒し兵藤一誠を圧倒……したはずだった」
ヴァーリ「しかしあいつやばいだろ。ホントに倒せんのかよ」
戦兎「そりゃまぁ……頑張るしかないだろ」
匙「おっと自称未来の天才物理学者が自信ないのか?」
戦兎「そんなわけあるか!この桐生 戦兎!未来の天才物理学者にして仮面ライダーだ!諦めるかよ!」
サイラオーグ「と言うわけで物語も新章突入し、益々物語が盛り上がっていくぞ」
戦兎「つうわけで93話スタートだ!」


「う……」

「ヴァーリ!目を覚ましたか?」

 

ヴァーリがゆっくりと目を開くと、目の前には心配そうにこちらを覗き込むアザゼルの顔が見えた。それから体を起こし、周りを確認すると、そこは何処かの屋敷の一室だ。

 

「俺は何日寝ていた?」

「二日だ。お前が一番起きるのが遅かったぞ?」

 

アザゼルはそう言って立ち上がると、

 

「ここはグレモリー家の屋敷だ。特にお前は今あっちこっちからお尋ね者。だがリアスを筆頭に他のやつらがお前に助けられたって言ってな。現当主が匿うのを了承してくれた」

「そうか……」

 

あと龍誠の事も聞いた。そうアザゼルは言いながら、ヴァーリを見て、

 

「他のやつらはピリピリしてるよ」

「それはそうだろう。龍誠の体を奪われた上に、正直手も足も出なかった」

 

ヴァーリは拳を握り締め、悔しげな表情を浮かべる。

 

「何も出来なかった。一方的にやられて終わりだった」

「全くだな」

 

ガチャリと扉を開けながら、ヴァーリの言葉に返事したのは匙だ。しかし、

 

「お前なんで尻を抑えながら、へっぴり腰で歩いてんだ?」

「会長のお仕置きで……ってそれはいい。起きれるならお前の仲間も心配してたし少し来ないか?これからについて少し話しもあるみたいだ」

「分かった」

 

ヴァーリは匙の誘いを受け、少しまだふらつく足に気合いを入れて立ち上がると、部屋を出ていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と言うのが、今回の一件の顛末です」

「そうか」

 

リアスは屋敷にやって来たサーゼクスに、今回の一件の説明を行っていた。

 

そこに入ってきたのは、ヴァーリと匙にアザゼル。

 

「ヴァーリ。妹とその眷属達がが世話になったようだね」

「別に礼を言われるような事はないさ」

 

ヴァーリは連れなく答え、サーゼクスは少し笑みを浮かべてからリアス達を見る。

 

「目覚めたばかりのヴァーリは知らないと思うから改めて説明する。現在冥界は全域で禍の団(カオス・ブリゲード)の襲撃を受けている状態だ。構成員も勿論だが、見たことのない魔獣も多数いる。現在は様々な勢力の力も仮ながら撃退しているところだ」

「兵藤 一誠は居ないのですか?」

 

そうサーゼクスに問うのは朱乃だ。少し目が虚ろで、不気味なオーラを放っていた。

 

「残念だが兵藤 一誠は居ない。今は別のところにいるようだ」

「そうですか……」

 

悔しそうな朱乃は席に着き、サーゼクスは改めて皆を見る。

 

「君達はまだ前回のダメージが抜けていない。暫くは療養しなさい」

「ですが!」

 

冥界が襲撃を受けているというのに……そう言うリアスだが、サーゼクスは首を横に振り、

 

「もし兵藤 一誠の言うとおり、この世界が物語で、君達がその中心にいるのだとしたら、彼はいずれまた姿を君たちの前に見せるだろう。そうなったとき、動けないようでは困る。今は体調を整えることを優先にしなさい。幸いまだこの辺りには、禍の団(カオス・ブリゲード)の手は来ていない」

 

サーゼクスは共に来ていたグレイフィアに目配せをし、

 

「アザゼル。すまないがリアス達を頼む」

「あぁ、任せとけ」

 

サーゼクスはそれだけ言って、グレイフィアと一緒に部屋を出ていく。それを見送った後、ヴァーリは部屋を見渡す。リアスを筆頭にグレモリー眷属。ソーナ筆頭にシトリー眷属。サイラオーグを筆頭にバアル眷属。そして自身のチームメイトもいる。

 

「ようヴァーリ。無事で何よりだな」

「まぁな」

 

美猴に背中を叩かれながら、ヴァーリはリアス達を見る。やはり何処か空気が重い。その中、

 

「あれ?戦兎のやつはどうした?」

「彼なら先に一度自宅に戻りましたよ。なんでも、対兵藤 一誠用の新アイテムを作るとか」

 

アーサーのその言葉を聞きながら、ヴァーリはあいつ大丈夫なのか?と頭を掻き、少し息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

カチャカチャと戦兎のラボではキーボードを叩く音が響く。だが、

 

「駄目だ」

 

ガン!っとキーボードを殴り、戦兎は苛立たしげに髪を掻く。

 

「残る駒の力はクイーン……だがそれに耐えうる力がないか」

 

兵藤 一誠と戦える新たなアイテム。これはビルドの集大成ともなりえる物になるだろう。そう思っていたのだが、想像以上に難航していた。龍誠を救うためにも、このアイテムは絶対に作り出さねばならないのに、そう思えば思うほど焦りも入り出す。

 

「ラビットやタンク以外の力……だけどそれじゃ足りない。じゃあどうする?」

 

自問自答。だが答えはでない。外部からの力?そう考えた時、ふとオーフィスの姿が脳裏に浮かぶ。だがオーフィスは力の大半を失っており、不安定な存在になっている。その彼女に頼るのは危険なのではなかろうか。そう考えていた。だが、

 

「戦兎。悩んでる?」

「オー……フィス?」

 

戦兎は思わず困惑。なにせ振り返った所にいたのはオーフィスなのだが、そのオーフィスは何時もの黒いゴスロリ風の物ではなく、白くてふわふわした服を着ている。

 

「それどうした?」

「美空に貰った」

 

どうにも、美空は初めて出来た年下の女の子(実際は違うのだが)オーフィスを、着せ替え人形と言うか今までずっと家の中で最年少だったためか、妹のように扱っている節がある。

 

(知らないって怖いな)

 

戦兎は少し笑い、改めて製作に取りかかろうとすると、

 

「あげる」

「え?」

 

オーフィスはそう言って、手に自身の蛇を作り出して戦兎に差し出す。

 

「お前大丈夫なのか?」

「力を奪われて我は無限じゃなくなった。有限の龍神。だから蛇の出力は不安定だし、作り出せば出すほど弱くなる。でも龍誠が帰ってこないと戦兎は悲しい。戦兎が悲しいと、美空や京香が悲しむ」

 

それは暗に、戦兎なら龍誠を取り戻せると言ってくれてるのだろうか?まぁオーフィスの場合そこまで考えてないかもしれないが、

 

「ありがとう。でも俺はドラゴンじゃないから龍誠ほどの恩恵はないかもしれないけどな」

 

しかも不安定な力らしいし、戦兎がそう言うと、オーフィスは首をかしげて、

 

「戦兎はドラゴンの力を持っている」

「は?」

 

何を言ってるんだ?戦兎は眉を寄せて問うと、

 

「弱いけど、戦兎もドラゴンの力を持っている。多分後天的にドラゴンの力を取り込んだ。どこかでドラゴンの肉を食べた?」

「いやそんな記憶はないけど……」

 

つうかそう言うことあるのか?と戦兎はオーフィスに聞くと、

 

「ドラゴンの力を持たない奴が、ドラゴンの血肉を取り込んで力を得ることがある。だけど肉体がその辺かに耐えられず、肉体の強度が高くないと死ぬことが多い。だからあまり頑丈じゃない戦兎が、ドラゴンの力を取り込んでも平気だったのは不思議。余程そのドラゴンと相性が良かった」

「全く心当たりがねぇな……」

 

戦兎はそう言いながら、改めて新アイテムの製作に取りかかろうとした瞬間、

 

「消えた」

「何が?」

 

急なオーフィスの呟きに、戦兎はまたどうしたと振り替えると、

 

「グレードレッドが消えた」

「は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ」

 

次元の狭間。そこに兵藤一誠が立っていた。そしてその足元に転がる、一匹の赤い龍は、苦しそうに荒く息をする。

 

「流石夢幻の龍神ことグレードレッド。赤龍神帝だけはあった。とは言え流石にドラゴンに特効を持ってる伝説級の魔道具を山ほど複製しまくって、赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)による倍加に、白龍皇の光翼(ディバインディバイディング)で半減。んでもって絶霧(ディメンションロスト)の拘束と黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)覇輝(トゥルース・イデア)で奇跡まで起こしてやっとか」

 

兵藤 一誠はそう言って、ハザードトリガー型のアイテムを起動させると、グレードレッドは消滅してしまった。

 

「これで無限と夢幻の二つを手に入れた。原作でもこの二つは重要だったからな。だが……」

 

まだ足りない。そう言いながら、ハザードトリガー型のアイテムのスイッチを押すが、何も起きる気配はない。

 

「まぁ良いさ、原作通り冥界への襲撃も起こしてる。後は最後のピースを利用すれば行ける筈だ」

 

兵藤 一誠は笑みを浮かべながら、空間に転移用の門を開き、その中に消えていくのだった。




いやぁ、久々に本編更新。お待たせしました。今回から本編に入ります。

つうわけで戦兎は後天的にドラゴンの力を取り込んだと言うのが明かされましたね。さてさて、戦兎はドラゴンを食べたわけじゃありません。じゃあどこでドラゴンの力を取り込んだんでしょうね?実はもうちゃんと本編で取り込んでるんですよね。多分分かるんじゃないかな……あのときですあのとき。


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誘い

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「兵藤 一誠に敗北し、以降の事を決める俺たち……」
ヴァーリ「俺たちって言うけどよ?お前一人だけ研究に没頭してなかったか?」
戦兎「ま、まぁそれは置いておくとしてだ」
ヴァーリ「いや置いとくなよ」
戦兎「そんな感じでやっていく94話スタートだ!」



「おらぁ!」

「おぉ!」

 

グリスに変身したヴァーリと、クローズチャージに変身した匙の拳が交差する。

 

「やってるね」

「ん?木場か」

 

グレモリー邸の庭で二人はやっていたのだが、そこに祐斗がグラムを手にやって来て、

 

「少し僕も混ぜてもらっていいかな?このままだと体が鈍っちゃうからね」

「あぁ、良いぜ」

 

ヴァーリはクイッと、祐斗を手招きし、三人で交換しながら特訓再開。

 

「そっちは皆どうなんだ?」

「全員ピリピリしてるよ!僕だって悔しくてたまらない。出鱈目すぎるんだ。アイツは!」

 

グラムの一撃を避け、ヴァーリはツインブレイカー・アタックモードで祐斗を狙う。それを祐斗は高速移動で距離を取って避けると、グラムを構え直して突進。

 

《シングル!ツイン!》

 

だがヴァーリもフルボトルをツインブレイカーに挿して発動。

 

《ツインブレイク!》

「オラァアアアア!」

 

火花が散り、爆発が起きて二人は吹っ飛ぶ。

 

「はぁ……はぁ」

「しかし、この世界が物語の世界か。未だに信じらんねぇな」

 

するとヴァーリは変身を解除しながら、そんなことを呟きだした。

 

「僕もだよ。妙に事件に巻き込まれるのはその辺も関係してたのかな?」

「割りと兵藤 一誠の差し金もあったけどな」

 

そんな二人のやり取りを見ていた匙は、

 

「ったく、そんなこと気にしてんのかよ」

「なに?」

「別に俺達が物語の登場人物だろうが関係ないだろ?俺達にはやらなきゃならないことがあるんだからな。気にせず自分のやりたいことややらなきゃならないことをやればいいんだよ」

 

ヴァーリと祐斗は目をパチクリとしばたかせ、

 

「お前基本的に良い奴だよな」

「好い人過ぎて恋愛対象にならなさそうだけどね。ソーナ会長とか」

「ぶっ!」

 

何故それを!?と匙はビックリ眼。それを見た祐斗は、

 

「いやぁ、見てたら普通に気づくよね」

「寧ろ隠してるつもりなのか?」

 

二人にそう言われ、ガックシと両手と両膝を着く匙。

 

「まぁ全く芽が出る気配はないがな」

「なぬっ!?」

 

背後から聞こえてきた声に、匙はギロッとしながら振り替えると、そこにいたのはサイラオーグ。

 

「随分派手にやってるじゃないか。俺も混ぜて貰おうか」

 

ボキボキと指を鳴らしながら、サイラオーグは匙の肩を掴む。

 

「あ、あの……手心はあるんですかね?」

「ふ、安心しろ。戦いの前に動けなくなるようなことはしないさ」

 

それ割りとマジでやるやつうううううう!と匙は断末魔をあげながらサイラオーグに引きずられて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「出来た……」

 

タン!と戦兎はキーボードのエンターキーを叩き、席を立つと機械の上に置いてあった真っ黒い箱のようなものを手に取る。

 

これはビルドドライバーに挿して使うことで、強引にハザードレベルを引き上げることができる。理論上は龍誠のハザードレベル5.0を上回り、ハザードレベル6.0に到達できる筈だ。

 

その分体に掛かる負担は今までの比じゃない。だが関係ない。兵藤 一誠を倒すためだ。これを使えばあの男に一矢報いることができるだろう。

 

「何佇んでんのよ」

「別に」

 

また勝手に入ってきた黒歌に、戦兎は特に気にした様子もなく(慣れたと言うか諦めた)、

 

「対兵藤 一誠用の新アイテムの完成さ」

「何か何時ものフルボトルと違うくない?ってかボトルって言うか箱?」

 

そりゃそうさ、未完成なんだからな。そう戦兎が言うと、黒歌は眉を寄せて疑問符を飛ばす。

 

「未完成?完成したんじゃないの?」

「これで良いんだよ。兵藤 一誠を倒すのにはな」

 

戦兎はニヤリと笑いを浮かべながら、その箱?を懐にしまって、何処かに行こうとする。しかし、

 

「ん?」

 

いきなり服の袖を掴まれ、戦兎は少し驚きながら振り替えると、黒歌が不安そうな表情を浮かべてこちらを見ていた。

 

「何だよ」

「あんたこそ、何か隠してない?」

 

どういうことだよ。そう戦兎は笑うと、

 

「何て言うか……何処か遠くに行きそうな、そんな感じがするのよ」

「何いってんだ?アホか」

 

ビシッと黒歌にデコピンをかまし、戦兎はそのままラボを出ていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、戦兎?」

 

その後、戦兎は魔方陣を使って冥界のグレモリー邸に戻ってくると、リアスに出会い他の皆も集まっていたホールに着いて合流。

 

「言ってた新アイテムは完成したの?」

「えぇ、いつかお見せしますよ」

 

戦兎はリアスにそう言いながら、小猫のところに向かう。小猫は現在レイヴェルと一緒にお茶を飲んでいた。と言うか、レイヴェルが沈んでいるので、元気付けていた。

 

「戦兎先輩。お久し振りです」

「あぁ。そう言えば塔城。お前明日暇か?」

 

暇ですが?そう小猫は何の気なしに答えると、

 

「そうか、じゃあ明日何処か遊びにいかないか?」

「……」

「何だ?嫌か?」

「いえ、大丈夫です」

「じゃあ明日な。駅前で良いよな?デート楽しみにしてるよ」

『ぶっ!』

 

その場にいた皆がお茶を吹き、椅子から転げ落ち、ビックリ眼になる中、戦兎はクルリと背中を向けて去ってしまう。

 

「……」

「あの、小猫さん?」

 

レイヴェルは恐る恐る小猫に触れると、そのまま押された方向に倒れていき、そのまま床に倒れてしまった。

 

「ちょ!小猫さん!?」

「不味いわ!脳の処理能力を上回ったせいで気を失ってる!?」

 

と、暫くその場が騒がしくなったのは、まぁ余談であろう。




ランペイジバルカンがかっこよすぎな件について。しかし前回と言い2号ライダーなのに未だにバルカンゼロワンとのダブルライダーキックに恵まれないバルカン……と言うかバルカンって結構ゼロワンとの共闘が恵まれないイメージ(短かったりすぐにどっちか変身解除されたりしてない?気のせい?)がある。まぁバルカンはバルキリーがいるか……

そう言えば結構戦兎がドラゴンの力を持ってることに驚かれてたりして、思わずニヤリとしてました。いつの時期だか分かります?ヒントとしてはドラゴンの力を後天的に得る場合、血肉を食べる方法があるとオーフィスが言ってます。勿論戦兎はドラゴンを食べたわけじゃありません。ですが、ある場面でドラゴンの【血】肉を体内に取り込んだシーンがありました。結構序盤?の頃の出来事ですからね……覚えてるかなぁ。


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初デート

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「兵藤 一誠との戦いに備え、新アイテムの開発に成功した俺は、塔城をデートに誘うことに」
匙「つうかお前らしくねぇなぁ。なに考えてんだ?まさか!お前は戦兎に化けた別人なんじゃ!」
戦兎「んなわけあるか!こっちも色々考えてるんだよ!ってなわけで95話始まるぞ!」
匙「怪しいんだよなぁ……」


「……」

 

駅前にある店のガラスの前に立ち、小猫は反射して写った姿を見て、少し可笑しいかなと髪型を直す。今日は戦兎とデートだ。勝手な思い込みではなく、戦兎がデートしようと明言したのだ。そのせいで先日から全く寝れてない。

 

とは言え昨日気絶から眼が覚めた後、慌ててファッション誌を見て服を選んで今日に挑んだ。

 

しかし急にどうしたのだろうか?ふと小猫は思う。いつもの戦兎らしくない。龍誠を奪われたショックで何か精神に異常を……

 

「おい。何つったんでんだよ」

「っ!」

 

突然後ろから声を掛けられ、小猫は飛び上がって後ずさりながら振り替えると、戦兎が眉を寄せながら立っていた。

 

「遠くにお前が見えたなぁって思ってたら、急に窓の前で髪の毛弄り出すし、こっちにも来ねぇしで驚いたぞ?何してたんだ?」

「いえ別に……」

 

モゴモゴと小猫は口ごもり、目をそらすが、

 

「まぁいいや。ほら、行こうぜ」

「あ……」

 

戦兎は小猫の手を取り、そのまま歩き出す。

 

(顔が熱い……)

 

耳まで真っ赤にし、小猫は戦兎に手を引かれるまま着いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デートは平和なもので、

 

「おいしいですね」

「やっぱこれ蛙のいっで!」

 

最近人気が少し落ち着いた、キャッサバの根茎の粉から作られる黒い粒状の物体を沈めた、某ミルクティーを飲んだり、

 

「む……」

「はっはっは。俺に任せろ。この物理法則に基づいた完璧な計算を持ってすれば……」

 

とクレームゲームをして(結局戦兎も取れず、熱が入りすぎて諭吉を崩そうとして小猫に連行された)遊んだり、

 

「この服なんか良いんじゃないですか?」

「そうか?」

「何時も戦兎先輩同じコートとジーンズですし」

 

何時もの似たような服ばかり着ている戦兎に、小猫が服を選んであげたり、

 

「美味しいですね」

「だな」

 

二人で、一緒に夕飯を食べながら談笑し、一日を過ごした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……』

 

夕飯を済ませた二人は、すっかり暗くなった夜道を手を繋いだまま歩く。今更だが、今日はずっと手を繋いだままだ。と言うか、戦兎が手を繋いでくるからなのだが。

 

店に入る時や、食事中は離れる時もあるのだが、すぐに繋ぎ直してくる。

 

本当にどうしたのだろう。と小猫は少し不安に駆られた。最初は浮かれていたが、一緒にいると戦兎が何処か焦っているような、そんな雰囲気があった。

 

「先輩……?」

「ん?」

 

そろそろ戦兎の家と言うか、龍誠達の屋敷が見えて来そうな場所で、小猫は戦兎に声を掛ける。

 

「あの、兵藤 一誠に勝てるんでしょうか?」

「ん~……」

 

どうしたのか聞こうとした。だが怖くなった。だから小猫は、咄嗟に兵藤 一誠の話題に切り替えると、戦兎は懐から黒い箱のようなものを取り出す。

 

「それは?」

「名前は決めてない。別に無くても良いからな。これはフルボトルにオーフィスの力と、今までの戦闘から採取した様々なフルボトルのデータを組み込んだ最強アイテム。一時的にだけどハザードトリガー以上に、ハザードレベルを限界以上に引き出せる」

 

それは、凄く危険なんじゃないだろうか?小猫はそう訴えようとするが、戦兎は少し考え、黒い箱を懐に戻しながら、ソッと小猫の手から自分の手を離した。

 

「でも急にデートに誘ったから驚いただろ?」

「え?あ、まぁ」

 

突然戦兎からその話題を振られ、小猫は僅かに狼狽すると戦兎は、

 

「今日はさ、確認だったんだ」

「確認?」

 

そうそう、と戦兎が頷き、

 

「お前さ、俺のこと好きじゃん?」

「……え!?」

 

ボフン!と小猫は耳処か全身を一瞬赤くした後、ふと何故戦兎がそれを知っているのか?と言うのに思い至り、

 

「まぁ俺も馬鹿じゃねぇからさ。見てればわかる。最初は思い違いかと思うかもだけど、流石に彼処までされればな」

 

戦兎は頭を掻きながら、小猫に申し訳なさそうな顔をして、

 

「だから確認。改めて塔城の気持ち。そして……」

 

俺の気持ちをな。戦兎がそう言うと、小猫は怪訝な顔をする。

 

「先輩の気持ち?」

「あぁ、今日一日一緒にいて、改めて俺の気持ちを見つめ直してみた。それで分かった事がある。それはな」

 

戦兎は言葉を止め、呼吸を整えた。そして、

 

「やっぱり、俺はお前のことそういう風には見れないわ」

「っ!」

 

ドクン!と小猫は心臓が跳ねたような感覚を覚えた。

 

「お前のことは嫌いじゃないぜ?でもやっぱり後輩として何だよ。だからごめん。お前の気持ちは嬉しいけど、応えられそうにない」

「……」

 

息がしずらく、世界がグニャリと歪む。

 

「そ、そうですか……」

 

絞り出すような声だった。だめだ、これ以上は……小猫は何か色々な物が決壊しそうなのを必死に抑え、

 

「すいません。先に帰ります!」

 

戦兎に背を向けて小猫は走り出す。戦兎はそれを見送り、そのままブロック壁に体を預けるようにしながら、そのまま道端に座り込み、そのまま座り込む。

 

「ヤバイな……これ思った以上にしんどい」

 

一方、戦兎の元から走り出した小猫は屋敷に飛び込むと、

 

「あら小猫。お帰りなさい。デートは楽しかった……ってどうしたの?」

 

丁度リアスが通り掛かり、小猫を出迎えると、小猫の眼からポロポロと涙が溢れてきていた。

 

「全く、今度は戦兎に何をされたの?」

「違うんでず。今回は、先輩悪くなくて、でも、わだじ、ひぐっ!……うぁああああ……」

 

リアスはそっと小猫を抱き締め、背中を擦ると小猫は本格的に泣き出す。それは、そのまま小猫が泣きつかれて眠るまで続くのだが、それは別の話である。




戦兎……お前めんどくさいやつだな。


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奥の手

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「さて、特になにもなかったし今回は話すことないな」
匙「いや合っただろ!色々合っただろ!」
戦兎「別に俺と塔城のゴタゴタなんて振り替える必要なんて無いでしょうが」
匙「振り替えれよ!めっちゃ振り替えれよ!お前コメントでも色々言われてるだろうが!」
戦兎「やかましいわ!と言うわけで96話スタートだ」
匙「まじで無視しやがった」


『……』

 

グレモリー邸は重い空気に包まれていた。

 

と言うか、主に重いのは戦兎と小猫の間に流れる空気だ。数日前のデート以降。二人の間には凄まじく重くて暗い空気が流れていた。

 

「はぁ、戦兎。少し良いかしら?」

「はい」

 

リアスに連れられ、戦兎は廊下に出ると、

 

「で?何があったの?」

「まぁ色々あったと言うか……」

 

小猫を振ったのは聞いたわ。そうリアスは、大きくため息を吐きながらそう言うと、

 

「なにか問題でも?」

「振るかどうかは二人の自由だけどね。もう少しやりようはなかったの?」

「はぁ」

 

少し申し訳なさそうに、戦兎は頭を掻くと、

 

「てぃ!」

「あが!」

 

イキナリ後ろから膝カックンされ、体勢を崩れたところに、コブラツイストを極められた。

 

「ちょっと戦兎!あんた私がちょっといない間、白音に何したのよ!」

「俺が悪いのが前提か!そうだけど!」

 

黒歌のコブラツイストは、戦兎のを確実に苦しませるが、自信に非がある自覚はあるらしい戦兎は割りと大人しくそれを受け入れていた。その時、

 

『っ!』

 

ズゥン!と地面が揺れ、爆発音がこっちまで響いてくる。

 

「おいなんだ今のは!」

 

とヴァーリも部屋を飛び出す中、嫌な予感がした戦兎はリアスと顔を見合わせ、リアスが号令を出す。

 

「行くわよ!皆!」

『はい!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こいつはひでぇ」

 

ヴァーリは思わず、街の中を見て呟く。街のあちこちには日が上がり、魔獣が人々を襲っている。

 

「とにかく住人の避難を優先しながら迎撃するわよ!」

『了解!』

 

リアスの指示で、皆は行動を開始し、

 

「逃げてください!」

「は、はい!」

 

戦兎は女性を逃がしながら、ビルドドライバーを装着。

 

「好き買ってやりやがって……変身!」

《鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イエーイ!》

 

変身を完了すると、ドリルクラッシャーを手に魔獣を倒し、道中で倒れている住民を逃がす。

 

「数は多いが強さは大したことはねぇな!」

「あぁ!」

 

ヴァーリと背中を合わせつつ、戦兎は頷く。すると、

 

『はぁ!』

 

そこにクローズチャージに変身した匙と、ローグに変身したサイラオーグ。ヘルブロスに変身したフウとライの二人が飛び蹴りを放ち、魔獣を吹き飛ばした。

 

「二人とも!大丈夫か!」

「匙!サイラオーグさんたちも!」

 

どうやらグレモリー領が禍の団(カオス・ブリゲード)の襲撃を受けたのは、すぐにソーナやサイラオーグ達に伝わったらしく、魔方陣ですぐに飛んできてくれたらしい。

 

「シトリー眷属や俺達バアル眷属も戦ってる。このまま押しきるぞ!」

 

ライの声に、他の皆も気合いを入れ直し、

 

《マックスハザードオン!》

「ビルドアップ!」

《紅のスピーディージャンパー!ラビット!ラビット!ヤベーイ!ハエーイ!》

 

ラビットラビットフォームに変身し終えた戦兎は、フルボトルバスターを構え、高速移動で次々蹴散らしていく。

 

《ゴリラ!パンダ!クジラ!ミラクルマッチデース!ミラクルマッチブレイク!》

「はぁあああ!」

 

そしてフルボトルバスターに、フルボトルを装填し、回転しながら周りの魔獣を一掃。

 

すると、

 

「いやぁ、また強くなったなぁ。戦兎」

『っ!』

 

突如聞こえてきた上空からの声に、戦兎達は身構える。

 

「兵藤 一誠!」

 

そして姿を捉えた瞬間、戦兎は飛び上がって一誠を襲う。しかし、

 

《ドラゴン!ライダーシステム!エボリューション!Are you ready?》

「変身!」

《ドラゴン!ドラゴン!エボルドラゴン!》

 

一誠は、それを片手で受け止め、戦兎を地面に投げ飛ばす。

 

「戦兎!」

「ちい!」

 

ヴァーリと匙の二人も駆け出し、地面に降りてきた一誠に襲い掛かるが、二人の攻撃を軽々とさばき、それぞれ一撃を入れて倒す。

 

「ならこれでどうだ!」

《チャージボトル!ツブレナーイ!チャージクラッシュ!》

『はぁ!』

 

フェニックスフルボトルをスクラッシュドライバーに挿し、フウとライの銃撃による援護と共に、炎で体を包んで突進。しかし、

 

《Boost!Ready Go!エボルテックフィニッシュ!》

「はぁ!」

《チャオ!》

 

倍加の力で強化されたエボルテックフィニッシュで、サイラオーグを蹴り飛ばし、その余波でフウとライまで吹き飛ばした。

 

「兵藤 一誠!」

「ん?」

 

そこに飛び込んだのは、エクスデュランダルを構えたゼノヴィア。

 

「龍誠を返して貰うぞ!」

 

エクスデュランダルを振り上げ、一誠を襲う。

 

「うぉおおお!」

「おぉ?こいつは思った以上に激しいじゃないか?」

 

一誠もデュランダルを出し、ゼノヴィアと対峙。そのままゼノヴィアは押し合いの持ち込み、

 

「そこだ!」

「行くわ!」

 

佑斗とイリナの連続攻撃を叩き込む。流石に少し後ずさり、三人が追撃しようとした時、

 

「ま、待ってくれ皆!俺だよ!」

『っ!』

 

嘘なのは明らかだった。だが聞こえてきた、何時もの龍誠の声音に、三人は一瞬体を固くしてしまった。勿論一誠はその隙を見逃さす、

 

「はぁ!」

『きゃあ!』

「ぐぁ!」

 

デュランダルの横凪ぎで三人を吹っ飛ばした。

 

「朱乃!ロスヴァイセ!」

「えぇ!」

「はい!」

 

するとそこに滅びの魔力と雷光と、北欧魔術の一斉攻撃。更に、

 

「行くわよ!」

 

黒歌と小猫が仙術の一撃を叩き込み、美猴やアーサーとレイヴェルにルフェイの総攻撃が決まり、一誠はそのまま壁に叩き付けられた。

 

「やった?」

「部長。それフラグです」

 

リアスの呟きに戦兎が突っ込むと、煙の中から一誠はゆっくりと歩みだし、

 

「ふん!」

 

拳を振って衝撃波を放ち、

 

追憶の鏡(ミラー・アリス)!」

「っ!ダメだ!」

 

丁度援護に来たシトリー眷属の真羅が飛び込み、追憶の鏡(ミラー・アリス)を発動。だが、

 

《Penetrate!》

「きゃあ!」

 

追憶の鏡(ミラー・アリス)のカウンターを透過し、真羅に直接衝撃波が叩き込まれた。

 

「椿姫!」

『副会長!』

 

血を吐き倒れる彼女に皆は駆け寄り、アーシアが回復を掛ける。

 

「やっぱりあれだけ叩き込んでも平気なのかよ」

「当然だ」

 

一誠は笑って言うが、戦兎は、静かにタンクタンクフォームに姿を変え、

 

「戦兎?」

「皆はここにいてくれ、策がある」

 

とだけ言って、戦兎は一誠に再度襲いかかる。

 

「戦兎!」

「はぁあああああ!」

 

フルボトルバスターを振り下ろし、戦兎は一誠と戦うが、

 

「ハザードレベル4.5か……この程度じゃ俺には及ばないな!」

「ぐっ!」

 

逆に殴られ、戦兎は後ずさる。だが、

 

「なら……これならどうだ!」

 

戦兎はそう言って黒い箱のようなアイテムを取り出すと、フルフルラビットタンクボトルを外し、ビルドドライバーにそれをセット。

 

「ぐぁ!」

 

バチバチと全身に電流が走り、戦兎が苦しそうな声を漏らすが、それでも構わず一誠に殴り掛かり、

 

「ほぉ、ハザードレベル4.9……いや、5.2?どういう仕掛けか分からないが凄まじい速度でハザードレベルが上がっていくな!」

「おぉおおお!」

 

戦兎は一誠に言葉は返さず、続けざまに殴って後ずらせるが、更に電流が体に走る。

 

「ぐぅ……この!」

 

苦し気な声を出しながら、戦兎はビルドドライバーのレバーを回し、強引にビルドドライバーを更に稼働させる。

 

「ハザードレベル5.5……5.7」

 

一誠は数を数えながら、戦兎の攻撃を捌く。

 

「良いぞ!5.9!これは行くんじゃないか!」

 

だがそんな様子を見ていて、ヴァーリは可笑しいと声を漏らす。

 

「兵藤 一誠の言うことが確かなら、戦兎のハザードレベルの上昇速度が可笑しすぎる。幾らなんでも速すぎだ。1上げるのは楽じゃねぇんだぞ?小数点刻みとはいえなにか嫌な予感がしやがる」

「俺達もいくか!」

 

ヴァーリと匙がめを合わせ、行こうとするが、

 

「おっと邪魔すんなよ!」

『っ!』

 

一誠は戦兎と戦いながらも、他の皆も牽制。しかしその隙をついて、戦兎が渾身の右ストレートを叩き込んだ。しかし、

 

「ハザードレベル……6.0!」

 

一誠は気にせず戦兎を掴むと同時に、一誠の体から龍誠の体が分離し、地面に転がる。

 

『龍誠!』

 

皆が歓声を上げるが、一誠は楽しそうに笑い、

 

「この時を待っていた。待っていたよぉ!」

『っ!』

 

そう言って一誠は、今度は戦兎の体に入っていこうとする。

 

「ハザードレベルを1越える度、ソイツはその体内に凄まじいエネルギーを生成する。ドライバーの起動や、ライダーへの変身はそれを利用しているに過ぎない。だがハザードレベル5.0と6.0は比べ物にならない程だ。だが理論上普通の方法ではそこにたどり着けない。だが、残った欠片とはいえ元主人公であり、ドライグの因子を持っていた龍誠と、バグで生まれたお前は特別だ。お前たちなら通常いけない領域のハザードレベルに辿り着ける。俺はこの時を待っていたんだ」

 

一誠はそう言って戦兎を自分の体に取り込んでいく。

 

「戦兎!」

「来るな!」

 

皆が戦兎を助けようとするが、それを戦兎が止め、

 

「兵藤 一誠。それに俺が気づいてないと思ったか?」

「なに?」

「お前は何をしたいのか分からないが、一つだけ分かってたことがある。それはお前が事あるごとに強大なエネルギーを欲してたってことだ。ならば俺や龍誠のハザードレベルが上がったときの……お前の言う普通なら辿り着けけない領域のハザードレベルに達した時のエネルギーは欲しい筈だ。この時を待っていたのはお前じゃない。俺だ!」

 

戦兎はそう言いながら、ビルドドライバーのレバーを更に回す。電流と激痛が全身に走るが、戦兎は気にせず回し続け、火花とビルドの装甲が壊れ始める。

 

「なっ!?ハザードレベル6.5、6.9、7.4、7.8、8.8、9.4、10.6!?ば、バカ止めろ!そこまであげたらお前死ぬぞ!?」

『っ!?』

 

ここ来て、始めて一誠は慌て始めた。他の皆もそれに驚愕しているが、

 

「あぁそうだな。だが構わない。元々これはオーフィスの力を組み合わせて、ほぼ無制限にハザードレベルを上げて最後には自爆する、言わば欠陥品さ。しかもハザードレベルを上げまくってそのエネルギーごとな。爆発の威力は俺も分からないが、お前を倒すには丁度良い」

「な!や、やめろ!お前死ぬ気か!」

 

一誠は咄嗟に逃げようとするが、戦兎は一誠を掴んで離さない。

 

「くそ!」

《Divide!》

 

半減の能力を使うが、それを上回る速さでハザードレベルが高まっていく。

 

「あぁ、死ぬ気だとも。お前言ってたじゃないか。俺がいるから本来にはない流れが生まれ、皆を危険に晒す。だったら俺は居ない方がいい。この世界には俺はいらないんだろうさ。だがな!お前も道連れだ!」

「や、やめろ!離せ!」

 

電流が更に強くなり、全身からの火花と煙が立ち上がり始め、装甲がどんどん壊れいく。

 

「だめ……」

 

小猫はフラフラと立ち上がり、

 

「小猫!」

「だめぇ!」

 

小猫はリアスの制止を振り切り、小猫は駆け出すが、その間に戦兎は足をキャタピラに変形させ、少しだけ小猫の方を見た。声には出さず、口だけを動かして、小猫だけに見えるように。

 

《ごめんな。小猫》

「っ!」

 

それだけ伝え、戦兎はキャタピラを駆動させて走り出す。

 

その間にもエネルギーは高まり続け、

 

「白音!」

「いや!先輩!」

 

黒歌が小猫を捕まえ、地面に伏せさせると同時に、

 

『っ!』

 

最初に閃光が視界を包み、遅れて爆発音が耳をつんざく。更に遅れて爆風が体を襲い、全員後方に吹っ飛んだ。

 

「ぐっ……」

 

飛んできた瓦礫をどかし、ヴァーリは這い出てくる。他の皆も瓦礫の下から出てきていると、

 

「いってぇ!」

『っ!』

 

ドカッ!と瓦礫を蹴っ飛ばし、下から出てきたのは、龍誠だった。

 

「あれ?俺何して……ってここどこだ!?」

「龍誠!」

 

そう叫びながら、リアスが龍誠に抱きつき、龍誠は困惑しつつも周りを見回し、

 

「あれ?戦兎は?」

『っ!』

 

龍誠の呟きに、皆は思わず視線を逸らし、口ごもってしまう。

 

「ど、どうしたんだ?って小猫ちゃんも何泣いてんだよ?また戦兎に何か言われたのか?つうかこの街の状況……って、あぁ!戦兎!」

『え?』

 

龍誠はキョロキョロしていると、突然叫び皆はその方を見ると、確かに戦兎が歩いてきていた。

 

「せ、んぱい?」

 

小猫は虚ろな眼で歩いてきた戦兎に駆け寄ろうとするが、

 

「待って!」

「え?」

 

黒歌が小猫を止め、

 

「何か雰囲気が違う」

 

そう言われ、小猫もそれに気づき、龍誠は眼を見開きつつも、

 

「お前……もしかして兵藤 一誠なのか?」

『な!』

 

近くで見て気づいた龍誠の呟きに、戦兎?はビルドドライバーやその他のアイテムを地面に捨て、

 

「やってくれたよ戦兎……お陰で計画が狂っちまったぜ……」

 

一誠は明らかにイライラした様子で、全身を震わせていた。

 

「バグキャラの癖に主人公の俺の邪魔しやがってよぉ!」

《エボルドライバー!》

 

そう叫び、エボルドライバーを装着。それと共に右手に赤いフルボトルを精製し、

 

「ちっ……まぁいいか」

《ラビット!ライダーシステム!エボリューション!》

 

ベルトにボトルを挿して、レバーを回す。

 

《Are you ready?》

「変身」

《ラビット!ラビット!エボルラビット!フッハッハッハッハッハッハ!》

「仮面ライダーエボル。フェーズ3完了」




まぁ皆さん予想はしてたけどね。まぁビルド本編でもあった展開に……さてさてどうなるのやら……


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十四章 進路指導ウィザード
フェーズ3


前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

龍誠「戦兎の命を懸けた秘策により、俺は兵藤 一誠から解放されるものの、今度は戦兎が兵藤 一誠取り込まれる事態に!」
ヴァーリ「つうかアイツどんどん新フォーム出やがるな……」
匙「だよな!俺達未だに初期フォームだぜ!?」
龍誠「んまぁお前たちの場合出ても番外編でとかそうなるんじゃね?」
ヴァーリ&匙『ふざけんなー!認めねーぞ!』
龍誠「つうわけでそんな感じの97話スタートだ!」


「仮面ライダーエボル。フェーズ3。完了」

「嘘だろ……」

 

ヴァーリが呟く間に、一誠は新たな姿である、仮面ライダーエボル・ラビットフォームへと変身。しかしサイラオーグが、

 

「とにかくやるしかあるまい」

「ですね!」

 

サイラオーグが走りだし、フウとライが続く。だが、

 

「なっ!?」

 

突如二人の前から姿を消し、一瞬で後ろに回り込むと、二人を吹き飛ばす。

 

「は、速い!?」

 

後ろの方で驚愕したリアスの前に、また一誠は現れると、

 

「部長!」

 

佑斗とゼノヴィアを筆頭に、ソーナの眷属のナイトが一気に飛びかかるが、

 

『なっ!?』

 

一瞬で移動され、全員を瞬き程の瞬間で、全員を返り討ちにした。

 

「はぁ!」

「おらぁ!」

 

そこに匙とヴァーリがツインブレイカーで二人に襲いかかるが、一誠はドリルクラッシャーを取り出し受けると、軽々と押し返してドリルクラッシャーで二人纏めて斬る。

 

「くそっ!」

 

龍誠は拳を叩いて、一誠の元に行こうとするが、

 

「龍誠さん!」

「ん?」

 

アーシアが、龍誠にビルドドライバーとクローズマグマナックルに、クローズマグマフルボトルを投げて渡す。

 

「サンキュー!アーシア!」

 

龍誠はそう言ってビルドドライバーを装着すると、クローズマグマナックルにフルボトルを挿す。だが、

 

「あれ?何にも鳴らねぇぞ?」

 

前に聞いた音声は鳴らず、何度か挿し直したり叩いてみたが、特に変化はない。

 

「おっかしいな……」

 

首を捻りつつも、龍誠はクローズマグマナックルをビルドドライバーに挿し、レバーを回す。

 

「あ、あれ?」

 

だが何度レバーを回しても、変身が出来ず龍誠だけではなく、周りの皆もどう言うことかと困惑する。

 

「当然だ。お前がハザードレベルを得て、仮面ライダーに変身できたのは、赤龍帝・ドライグの因子を持っていたためだ。だがその因子は全て俺に返して貰った。つまり今のお前は、ハザードレベルを持たず、仮面ライダーに変身できないただの悪魔って訳だ」

「だったらこの拳があんだよ!」

 

龍誠はそう言って素手で一誠に襲いかかるが、龍誠の拳をキャッチして腕を捻り上げ、

 

「ばぁか。仮面ライダーに変身できないお前なんぞ、足手まとい以外の何者でもないんだよ!」

「がはっ!」

 

龍誠に回し蹴りを入れて吹き飛ばすと、デュランダルとドリルクラッシャーを出して、一度ドリルクラッシャーを地面に刺してから、空いた方の手でレバーを回す。

 

《Ready Go!エボルテックフィニッシュ!チャオ!》

「はぁ!」

 

そしてドリルクラッシャーを持ち直し、デュランダルとドリルクラッシャーの二刀流になると、高めたエネルギーを刀身に纏わせて撃ち出す。

 

『っ!』

 

辺りを衝撃と爆発が襲い、砂塵が舞い上がり、一誠の視界も塞いだ。次の瞬間!

 

「ん?」

《スクラップブレイク!》

《スクラップフィニッシュ!》

《クラックアップフィニッシュ!》

『はぁあああああああ!』

 

匙とヴァーリ、そしてサイラオーグのトリプルキックが一誠に炸裂。

 

「ぐっ!」

『おぉおおおおおおお!』

 

三人は力を合わせ、少しずつ押し込もうとするものの、片手で三人の攻撃を抑えながらレバーを回し、

 

《Ready Go!エボルテックフィニッシュ!チャオ!》

 

三人を少し押し返して隙を作ると同時に、回し蹴りで纏めて吹き飛ばした。

 

『がはっ!』

 

吹き飛ばされ、変身が解除された三人は地面を転がり、そのまま倒れて意識を失ってしまう。

 

他の皆も地面に倒れ、何人かは意識を保っているようだが、全員立ち上がれ無いほどのダメージを受けていた。

 

「かえせ……」

「ん?」

 

突然足を掴まれ、一誠は足元を見ると、そこには小猫が這ったまま一誠の足を掴んでいる。

 

「せんぱいを……かえせ」

「ふん」

 

一誠は足を振って小猫の拘束から逃れると、強烈な踏みつけで小猫の意識を奪った。

 

「そうだな。折角戦兎が頑張って、俺の邪魔をしてくれたんだ。ここでお前たちを消してもいいが、このままよりアイツの居場所も何もかも全て破壊してやるよ」

 

それじゃチャオ。そう言い残し、一誠は姿を消して行く。

 

「くそ……仮面ライダーに変身さえできれば」

 

それを遠くで見つめながら、龍誠は悔しげに歯を噛み締めるのだった。



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それぞれの思い

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

龍誠「前回兵藤 一誠に手も足も出ずに破れた俺達……」
サイラオーグ「しかも戦兎も奪われてな……」
匙「主人公なのになぁ」
ヴァーリ「今のうちに主人公の座を奪っておくか」
戦兎「おいこら!なにさらっと主人公交代しようとしてんだ!」
戦兎以外の皆『うわっ!出た!』
戦兎「俺はお化けか!」
龍誠「ってなわけでそんな98話スタートだ!」



一誠に戦兎の体が奪われてから数日。龍誠達は人間界に戻り、学園生活に戻っていた。

 

だが空気は重い。戦兎はおらず、龍誠は変身能力を失った。戦力が半減どころの話ではなく、本来であれば、リアスを筆頭に魔法使いとの契約を行わなければならないのだが、紹介用の書類を送られても皆一向に読み進められていない。

 

魔法使いとの契約は上級悪魔とその眷属にとって義務であり、とても大切なのだが、誰もが無気力状態になり始めていた。

 

度重なる敗北。そして一誠との力の差。それは確実に皆の精神力を削って行く。正直勝てるのか?そもそも倒す方法はあるのか?戦兎が命を懸けてもダメだったのに……そう考えれば考えるほど、ダメになっていく気分だ。

 

しかも今まで先頭に立って皆を引っ張っていく役割を担っていた、戦兎と龍誠。この二人が一気に戦線から抜けざるを得なくなり、それもかなり大きな影響を与えていた。

 

そんな中、

 

「フェニックスの涙の偽物?」

「あぁ」

 

最近裏のルートで、どうも偽物のフェニックスの涙が出回っているらしい。それだけでも大問題だ。リアス達も知っているが、フェニックスの涙は傷に掛ければほぼ全快するアイテム。だが現在は禍の団(カオス・ブリゲード)の件もあり、品薄が続いている。そんな中、フェニックスの涙の偽物。

 

回復自体は然程変わらないと言うので驚きだ。そしてそれが流れ始めたのとほぼ同時期に、フェニックスに連なる者達へ接触する者が現れたらしい。

 

「十中八九禍の団(カオス・ブリゲード)の奴等だろうな。現在禍の団(カオス・ブリゲード)の戦力は止まることを知らねぇ。まぁ魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)が向こうにある以上当然なんだが……」

 

本来ならもっと激しくてもおかしくない。そうアザゼルは言いつつ、

 

「兵藤 一誠は恐らく楽しんでる。俺たちを少しずつ痛め付けていくことにな。突然力を手に入れた用な奴は、それを使って他者を虐げることに快感を覚えることが多い」

「そうね……」

 

リアスは静かに頷くと、アザゼルは眉を寄せ、

 

「おいおいどうしたお前ら!何暗くなってんだ!そんなんじゃ勝てるもんにも勝てなくなるぞ!」

『はい……』

 

思った以上に重症だな。そう言ってアザゼルは頭を掻きながら、大きくため息を吐くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ!ふぅ!」

 

バシッ!バシッ!と龍誠達が住む、屋敷の地下にあるトレーニングルームで、サンドバッグを叩く音が響く。

 

「あ……」

「ん?」

 

背後から聞こえた呟きに、龍誠が振り替えると、そこにいたのはレイヴェルだ。

 

「トレーニング中お邪魔します」

「あぁ」

 

龍誠は握り込んでいたドラゴンフルボトルを片手で弄りながら、汗を拭き始める。

 

「それは?」

「ハザードレベルを上げるにはさ、フルボトルを使うとかあるんだけど、全然ダメなんだ。前は変身に必要なハザードレベルが足らなくても、フルボトル持つだけで力が湧いてきたんだけど今は全然。変身できるようになったのなんて、結構最近からなんだけどな」

 

何か胸に穴が開いてる気分だよ。そう言いながら、龍誠は改めてドラゴンフルボトルを手に握り、サンドバッグを叩き出す。

 

「龍誠様」

「ん?」

 

レイヴェルは不安げな声を発しながら、龍誠に声をかけると、

 

「兵藤 一誠に勝てるのでしょうか」

「どう言うことだ?」

 

突然の問い掛けに、龍誠は疑問符を浮かべると、

 

「私にはあの男に勝てる策が思い付きません。いえ、正直に言えばもう戦いたくない。会わずにいたい。そう思ってしまいます」

 

レイヴェルはそう言って、自分を抱き締めるような姿勢を取ると、

 

「俺だってそうだよ」

「え?」

「あんな化けもんと戦いたいやつなんて居ないって。でもアイツを止めないともっと酷いことになる。それに戦兎の体も返してもらわねぇとな」

 

龍誠は言いつつ、拳をサンドバッグに叩きつけ、サンドバッグを吊るす鎖が軋みをあげながら、サンドバッグを揺らす。

 

「ぜってぇ負けねぇ。だから安心しろ」

「は、はい……」

 

龍誠の言葉に、レイヴェルは少し胸がときめいたのを感じながら、頷くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ」

「辛そうね」

 

リアスは自室にて紅茶を飲んでいたのだが、そこにソーナが戻ってくる。今日は、これまで色々あったためソーナが泊まっていくことになっていた。

 

「そう……かもね」

 

リアスはソーナに頷きを返しつついると、ソーナはリアスの向かいの席に座った。

 

「取り敢えず兵藤 一誠の件。お姉様達も方々に手を尽くして探しているようですが、姿を見つけるには至ってないようです」

「そう」

 

リアスはソーナに返しつつ、顔を伏せる。

 

「リアス。兵藤一誠は強敵ですが、貴女まで落ち込んでいては……」

「そうじゃないのよ」

 

ソーナの言葉に、リアスは首を横に振りつつ、顔をあげると、

 

「私は戦兎があそこまでするとは思わなかった。何処かでね、戦兎は何とかするだろうって思ってた。今までだってどうにかしてくれてたからね。でもどうにもならなくて、戦兎は命を懸けて倒そうとした。それに私は気づけなかった。止めるべきだったのに、私は気付けなかった。それが悔しいのよ」

「リアス……」

 

ソーナはそんなリアスに、言葉を掛ける事が出来ず、ただ見ることしか出来なかった。



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駒王学園襲撃

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

龍誠「戦兎の体が奪われ、俺も変身能力を失い意気消沈する俺達だったが……」
サイラオーグ「仕方ない。そんなお前達にはコメントにもあった俺のスペシャルファッションショーをだな」
ヴァーリ「やめろやめろ!何だその誰も喜ばねぇその企画はよ!」
サイラオーグ「喜ぶだろ!少なくともこれを見てくれる人たちは!」
龍誠「勿論そんな地獄みたいなショーはない99話スタート」


「はぁ……」

「ん?」

 

ヴァーリはいつの間にか住み着いている戦兎の家で、美空が大きな息を吐いていた。

 

「だ、大丈夫か?みーたん」

「あ、うん。お兄ちゃんどこ行ったのかなって……」

 

戦兎は現在行方不明扱いで、戦兎の母によって捜索願いを出されている状態だ。まぁ裏で悪魔サイドの手が回ってるので、実際の警察は動いてないのだが、それを知らない美空は不安だろう。

 

「……」

(あぁ悩むみーたんも可愛い!って、今みーたんは兄である戦兎が行方不明で不安なんだぞ!?それなのに興奮してどうする俺!いや、だがそんなときだからこそ、今のみーたんには支えが必要なんじゃないのか!?そう!これはやましい下心じゃない。ただ一人の男としてみーたんを支えようとしてるだけだ!と、取り敢えず……まずは男らしく肩を抱いてトゥルリラトゥルララトルゥルルルルルルルルルルルルルル!)

 

ヴァーリは全身から変な汗を掻きながら、美空の肩に手を伸ばそうとした次の瞬間!

 

「おいヴァーリ・ルシファー!来い!」

『っ!』

(くっ!邪魔が入った!)

 

美空が慌てて立ち上がると、ヴァーリも慌てて美空から離れて、伸ばしてた腕振り始める。

 

「何してたんだ?」

「いやちょっとスタンハンセンの練習を……」

 

今時の子供はわからんだろ。と返しつつ、サイラオーグは美空に聞かれないように、ヴァーリに耳打ちをする。

 

「兵藤一誠が駒王学園に現れた」

「なにっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し時間を戻し、龍誠は体育のためジャージに着替えて外に出ていくと、

 

「龍誠!」

「ん?なんだよ藍華」

 

藍華が走ってきて、龍誠の横に来る。

 

「何かさ……アンタ戦兎の失踪に関してなにか隠してない?」

「べ、べべべべべべべべ別に?」

 

なんの前置きもなく降られた話題に、龍誠の口笛を吹きながら目を逸らして、嘘を吐く。あまりにも下手くそ過ぎる嘘に、藍華はため息を吐きながら、

 

「ゼノヴィアっちもアーシアも紫藤さんも……皆何か隠してるけど、聞いてもはぐらかされるし」

「そ、それはだな……」

 

悪魔の事は言えないし、ましてや戦兎は今、兵藤 一誠に体を奪われた状態だ。それを説明することはできない。

 

だが藍華は聡い所がある。それに加え、何だかんだ言いつつ、藍華は情が深い所がある(この辺は戦兎と同じだ)ので、戦兎が突如行方を眩ましてる状況と言うのは、気が気でないらしい。

 

それは確かに分かる。しかし説明はできない……何て考えたとき、

 

『っ!』

 

突如爆発音が響き、その方を見ると火の手が上がっている。

 

「な、なにあれ……事故?」

「お?あれはクローズじゃねぇか!?」

 

藍華が呆然とする中、ローブを纏った集団が現れ、龍誠は藍華を守るように構える。

 

「なんだお前らは!」

「俺達?俺達は魔法使いさ。協会からは離れちまったけどな。今は、禍の団(カオス・ブリゲード)の構成員さ!」

 

そう言って魔法使い達は杖の先から炎を作り出し龍誠に向けて発射。避ければ藍華に当たるため、龍誠はガードしようとしたが、

 

《スクラップフィニッシュ!》

《クラックアップフィニッシュ!》

『はぁ!』

 

龍誠に向かって飛ぶ炎を掻き消し、ヴァーリとサイラオーグが立ちふさがる。

 

「げっ!マジかよ!他のライダーまで来やがった!折角今ならクローズは変身できねぇから楽勝だったのによ!」

「は!変身できねぇ奴を狙うくらいならよ、俺と遊びやがれ!」

 

ヴァーリは叫びながら、ローブの男達に飛び掛かり、

 

「失礼します」

「え?うっ!」

 

その間に藍華の背後に立ったフウが、藍華の首筋に当て身をいれて意識を奪い、

 

「彼女は運んでおきます」

「あ、悪い」

 

フウとライが藍華を連れて校舎に引っ込むと、

 

「オラァ!」

 

クローズチャージに変身した匙が他の所を襲っていたローブの男達を蹴散らしながら、外に飛び出してきた。

 

「大丈夫か?皆!」

「匙!そっちこそどうなんだ?」

「学校の中にも何人か入ってきてる。ウチの眷属や、グレモリー先輩達も迎撃や避難に動いてるけど、結構不味い。あっちこっちで襲撃されてて手が足りないんだ」

 

匙はそういいながら、レバーを下ろしてエネルギーを両手に集めると、

 

《スクラップブレイク!》

「はぁ!」

 

地面に両手を叩きつけ、エネルギー噴射で周りにいた奴等を吹き飛ばしたその時、

 

「ぐぁっ!」

「匙!」

 

匙を突然の衝撃波が襲い、匙を襲った。

 

「な、なんだ?」

 

ダメージはそんなになかったらしく、素早く立ち上がると、その方を見た。そこには他のやつらと同じくローブを身に付けた男がいたのだが、どこか他の奴等とは雰囲気が違う。

 

「目的は達しました。いきますよ」

「あいよー!」

 

雰囲気の違う男が指示すると、他のやつらも魔方陣を作り出して撤退し始める。

 

「逃がすか!」

「おっと!」

 

サイラオーグが咄嗟に妨害しようとするが、再度雰囲気の違う男が攻撃し、サイラオーグも怯んだ間に撤収を終え、その男も姿を消した。

 

「大丈夫ですか?」

「あぁ」

 

龍誠に答えつつ、サイラオーグは自分の手を見る。

 

「どうしたんですか?」

「うむ。万丈 龍誠。お前は魔法と魔力の違いを知ってるか?」

「え?まぁ確か魔方陣を書いてやるのが魔法で書かないのが魔力ですよね?」

 

えらくざっくりした説明だな……と匙が思わず呟く中、サイラオーグは頷き、

 

「大体それでいい。そしてな、今の力なんだが、魔方陣を使った感じがなかった。それに、受けたときの感覚なんだが、魔法使い達の魔法とはすこし違う。この感覚は……」

 

魔力の感覚だ。サイラオーグの言葉に、皆は唾を飲み込む。

 

魔力は悪魔の力。つまりあのローブの男は悪魔だと、サイラオーグは暗にそう言っていたのだった。



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覚醒

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

龍誠「魔法使い達の襲撃を受け、応戦し何とか撃退に成功する俺達だったが、今回は新たな問題が……」
ヴァーリ「しかし兵藤一誠だけでも厄介なのに面倒なやつらが集まってるなぁ」
匙「しかも学園を壊しやがって……許せねぇ!」
サイラオーグ「落ち着け、ここで怒っても仕方があるまい」
龍誠「と言うわけで記念すべき第100話始まるぞー」
匙「まあ厳密には途中でキャラ説何かも入ってるから100話自体は少し前に言ってたんだけどな」


「レイヴェル達が拐われた!?」

 

事態が一応落ち着き、魔法使い達が撤退した後、皆でオカルト研究部の部室に集まって会議していた。

 

その時知ったのだが、襲撃の最中レイヴェルや近くにいた小猫やギャスパーが拐われたらしい。

 

小猫やギャスパーにレイヴェルも腕はたつ。だが、その場に現れたのは、兵藤 一誠だった。そして手も足も出ずにやぶれ、三人とも連れていかれたらしい。さらに一誠は手紙を残しており、

 

「三人を返して欲しければ指定する場所に来いか……ふざけやがって」

 

龍誠は手紙を握りつぶしながら、そう吐き捨てた。

 

「だけど三人を奪われた以上、乗らない訳にいかないわ」

 

そんな龍誠をリアスは宥め、

 

「冥界等を中心に指定場所の封鎖を行っているわ。あとは私達が向かうだけよ」

 

そう言いつつ、リアスは説明する。

 

「今回はレイヴェル達の救出が第一。でも同時に兵藤 一誠に会える可能性も高い。事実レイヴェル達を拐ったのは彼だしね。そうすれば、戦兎も助けることができるかもしれない。ううん、して見せるわ」

 

リアスの宣言に、皆は頷く。するとソーナが、

 

「今回は私達シトリーチームも参加します。丁度新たな眷属も加入しましたし、初陣といきましょう」

 

ソーナは言いながら、まず隣の大柄な男を見せる。

 

「彼はルー・ガルーさん。駒王学園の大学部に在籍中で、駒はルークです。そしてこちらは……」

 

ソーナはもう一歩の方yに顔を向けると、床からヒュっと姿を表し、

 

「どーも!あっしはベンニーアです!グリムリッパーと人間のハーフで、今はソーナ様のナイトやってやす」

 

今回二人はバックアップに回りますが、と付け加えつつ、

 

「それでどうしますか?もういきますか?」

「封鎖も完了したようだしね。学園の記憶操作も終わってるし、すぐに向かいましょう」

 

今回の一件は、そのまま記憶させておくわけにはいかない。なので、こういった事態に遭遇したときの場合のため、アザゼルが作った記憶改竄措置だ。堕天使は割りとこう言う技術が発達してるらしい。

 

「龍誠君?」

「ん?あぁ、大丈夫。行こう」

 

祐斗はボーッとしていた龍誠に声を掛けると、龍誠は頬を叩き、気合いを入れ直すと、他の皆と共に指定場所に出発するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここか?」

 

すぐに学校出た、リアスを筆頭にしたグレモリーチーム。ソーナを筆頭にしたシトリーチーム(一部は援護に回っている)・ヴァーリを筆頭にしたルシファーチームの混成チームは、指定された場所に到着(サイラオーグの眷属はフウとライを除き、全員が後方支援に向かった)し、見回すがそこは開けた空き地だ。だが、

 

「霧!?」

「皆固まって!絶霧(ディメンションロスト)よ!」

 

リアスがそう叫んだ次の瞬間、皆は霧に包まれ、次の瞬間別の場所に立っていた。そしてそこには、

 

「兵藤 一誠……」

「これで全員集まったかな?」

 

バッと座っていた一誠は立ち上がりながら、笑みを浮かべる。

 

「拐った子達はどこ!」

「あぁ、もう終わったからな。返して欲しければ返してやるよ」

 

一誠はそう言ってパチンと指を鳴らすと、霧が現れそこに小猫やギャスパーにレイヴェルが転がっていた。しかし、

 

「小猫!ギャスパー!」

「うぅ……」

「う……」

 

見るのも辛くなるほど、ぼこぼこにされた二人に、皆は駆け寄るとアーシアが二人の治療に入る。

 

「おいおい睨むなよ。俺は別にボコす気はなかったんだぜ?そっちが戦兎を返せって言ってきてよ」

「ふざけやがって……」

 

ヴァーリは呟きながら、スクラッシュドライバーを装着し、他の皆もベルトを装着。

 

《ロボットゼリー!》

《ドラゴンゼリー!》

《デンジャー!クロコダイル!》

《ギアエンジン!》

《ギアリモコン!》

《ファンキーマッチ!》

『変身!』

『潤動!』

《潰れる!流れる!溢れ出る!ロボットイングリス!ブラァ!》

《潰れる!流れる!溢れ出る!ドラゴンインクローズチャージ!ブラァ!》

《デンジャー!クロコダイル!割れる!食われる!砕け散る!クロコダイルインローグ!オラァ!キャー!》

《フィーバー!パーフェクト!》

 

全員変身を終え、一誠はやれやれと肩を竦めつつ、指をまた鳴らすと同時に、霧が現れ中から魔法使い達が飛び出して来た。

 

「よっしゃあ!暴れてやるぜぇ!」

 

魔法使い達はそう言って次々に魔法を売ってくる中、一誠もエボルドライバーを装着し、

 

《ラビット!ライダーシステム!エボリューション!Are you ready?》

「変身!」

《ラビット!ラビット!エボルラビット!フッハッハッハッハッハッハ!》

 

一誠も変身完了。すると、

 

『オラァ!』

 

魔法使い達をリアス達が対処し、変身した面々が一誠に襲い掛かる。

 

「はぁ!」

 

しかし一誠は軽々と避けると、匙を殴り飛ばし、ヴァーリに蹴りを入れ、サイラオーグとフウとライを作り出したデュランダルで纏めて切る。

 

「ふぅ。しっかし魔法使いの連中め。時間稼ぎにもなってないじゃねぇか」

「オラァ!」

 

一誠はリアス達に蹴散らされていくのを見ながら、呆れているとそこに龍誠が飛び込み、拳を握って殴り掛かってくる。

 

「ん?」

 

パシッとそれをキャッチし、

 

「おいおい、変身できないお前じゃ勝てる分けねぇだろうがよ!」

「がはっ!」

 

一誠に蹴り飛ばされ、地面を転がった龍誠は、蹴られた腹を抑えながら立ち上がる。

 

「勝てるかどうかじゃねぇんだよ。俺はな、変身できなくても仮面ライダーなんだ。愛と平和のために……ラブ&ピースのために戦うんだよ!」

 

龍誠は叫びながら一誠に再度殴りかかる。それを一誠は迎撃しようとするが、

 

「っ!」

 

匙が放った、ツインブレイカーのビームモードの一撃が一誠の腕を弾き、その隙に龍誠のボディブローが炸裂。

 

1・2・3と連続でパンチを叩き込み、最後にアッパーを決めると、一誠は後ずさる。ダメージは殆ど無いようで、少し顎を擦っていると、

 

「へへ、良いもん貰ったぜ」

「ん?」

 

一誠は少し間の抜けた声を出しながら腰を確認すると、ドラゴンのエボルボトルがなくなっており、龍誠の手に握られていた。

 

「おい、それはお前じゃ使えないぜ?返しな」

「そうはいかねぇな。俺の第六感が言うんだ。これは大事だってな」

 

と言っても、本当に第六感だけではない。確かに聞こえたのだ。ボトルからの声が。俺を掴めと言っていた。

 

(おい!掴んだぞ!どうすれば良いんだ!?)

 

龍誠のボトルを振りながら問うが、声が今度は聞こえない。

 

「やぁ!」

 

そこに魔法使い達を潜り抜け、イリナが光の輪を一誠に投げつけるが、

 

《Ready Go!エボルテックフィニッシュ!チャオ!》

 

すると一誠は、なんとデュランダルでエボルテックフィニッシュを放つと、リアス達と戦っていた魔法使いごと蹴散らしに掛かった。

 

『なっ!』

 

咄嗟にロスヴァイセが仲間達を守るために、防御魔方陣を張り他の皆もそれを補強。まともにそれを喰らって瀕死のダメージを魔法使い達は受けていたが、それを気にする余裕はなかった。

 

「仲間ごとやるなんて」

「別にメインキャラじゃないモブどもだからなぁ。気にするなよ」

 

リアスが嫌悪感を示すものの、一誠は特段気にした様子はない。

 

だが結果的に敵は減ったとは言え、今の防御だけでかなり精神的にも肉体的にも一気に消耗した。その瞬間!

 

「っ!」

「はっ!」

 

頭上から黒歌が襲い掛かり、魔力を球体にして、一誠に叩きつける。しかし一誠も拳にエネルギーを集め、それを相殺する処か、黒歌を吹き飛ばす。

 

「残念だったな」

「そうかしらね?」

 

そのまま壁に激突するが、黒歌はニィッと笑みを浮かべると、

 

「オラァ!」

「っ!」

 

ガスッ!と龍誠はドラゴンのエボルボトルを握った手で、一誠をぶん殴る。正直に言えば、対した威力はないと高を括っていた。だが、

 

「がっ!」

 

とてつもない衝撃により、一誠はそのまま後方に吹っ飛び、驚愕しながら立ち上がった。

 

「な、なんだ?」

 

一誠の呟きは、龍誠の思いでもあった。咄嗟に黒歌のフォロー目的で殴ったが、想像以上の破壊力が出ていた。

 

「なっ!」

 

すると次の瞬間、龍誠は見たことのない真っ白な空間に立っていて、目の前には赤いドラゴンや、白いドラゴンに金獅子など様々な生き物が立っていた。

 

「うぉ!何だ!?」

「漸く話せるな」

 

普通に赤いドラゴンは口を開き、首をコキリと鳴らす。

 

「お前には始めまして、と言うべきかな。万丈 龍誠」

「え、えぇと……誰なんだ?俺を知ってるのか?」

「当然だ。ずっと俺は……いや、俺達はお前やお前の仲間達の戦いを見ていた」

 

そう言いながら、赤いドラゴンは翼を広げ、

 

「俺はドライグ。赤龍帝・ドライグだ。とは言え、力も行使権も全て兵藤 一誠に奪われて、ここにあるのは切り離されて追いやられた意識だけだがな。こっちのは白龍皇・アルビオン。こっちは獅子王の戦斧(レグルス・ネメア)だ」

「えぇと……全部神滅具(ロンギヌス)だっけ?俺全然覚えてなくてよ」

「いや、合っているから安心してくれ」

 

ドライグは龍誠を宥めていると、龍誠はふと思いだし、

 

「そう言えばもしかして、俺を呼んでたのはお前か?」

「あぁ、元々俺達は力と切り離され、兵藤 一誠の深層に封印されていた。だが、お前が取り込まれた際に、偶然俺たちも目覚めた。とは言え、普通に意識を戻したところでまた封印されるのがオチ。ならばということで、ボトルが精製された際に、俺たちの意識もこっちに紛れ込ませたんだ。まぁ意識だけを潜り込ませただけで何ができると言うわけじゃないが……」

「それでずっと俺に掴めって言ってたのか」

 

まぁ兵藤 一誠にバレないようにするには大変だったがな。ドライグは少し笑い、

 

「さて、随分苦戦しているようだな」

「そうだ!すぐに戻らないと!変身できなくたって戦わないわけにいかねぇんだ!」

「そうあせるな、お前をもう一度変身できるようにする方法があるんだからな」

 

え?とドライグの言葉に、龍誠は思わずポカンとし、

 

「出来るのか?」

「不可能ではない。俺達が力を合わせれば、お前をもう一度仮面ライダーにするくらいならな」

 

ドライグはそう言いながら、背後を振り替えると、アルビオンと獅子王の戦斧(レグルス・ネメア)は頷きを返す。

 

「で、でもそれお前らは大丈夫なのか」

「いや、無事じゃすまないな。恐らく俺達は今度こそ完全に消滅する。人格だけが切り離された状態だからな。神滅具(ロンギヌス)自体は兵藤 一誠に残ったままだろうし」

 

そ、そんなのダメだろ!そう龍誠は叫ぶが、ドライグは笑って、

 

「良いんだよ。どうせ俺達はこのままでは何もできない。ならせめてアイツに一泡吹かせてやりたい。それがお前にならできるんだ。なら頼む」

 

そう言って三体の神滅具(ロンギヌス)の人格達は頭を下げる。

 

「な、何でお前達が頭を下げるんだよ」

「寧ろ頼みたいんだ。俺達を使ってでも戦ってほしいと。あの男は、俺達を使っても数えきれないほどの悲しみを産み出した。歴代にもいた。俺達の力に飲まれて世界を危険にさらすやつはな。だがそこに至るまで、様々な出来事があり、それが積み重なっていった。しかしあいつはそんなものはなく、自ら望んで世界を滅ぼそうとする。ならアイツの力の一旦になってしまった者として、責任を取らせて欲しい。頼む」

 

頼む、とアルビオンと獅子王の戦斧(レグルス・ネメア)も頭を下げ、それを見た龍誠は、

 

「……分かった。俺も力がいる。誰かを、いや皆を守る力が!だから、力を俺にくれ」

「あぁ、それで良い」

 

そうドライグが呟きながら、笑みを浮かべて龍誠を見つめ、

 

「お前みたいな相棒だったら、楽しかったのかもしれないな」

 

そう言い残しドライグは消え、それは光の粒子となると、龍誠の体に溶け込んでいき、アルビオンや獅子王の戦斧(レグルス・ネメア)も続く。

 

それと共に龍誠の意識は現実に戻され、龍誠はビルドドライバーを腰の装着。

 

「ふん。何をする気だ?お前はもう変身できないぞ?」

 

一誠の嘲笑を龍誠は聞き流し、飛んできたクローズドラゴンをキャッチ。そして手に持っていた、ドラゴンのエボルボトルを見てみると、青から金と赤の配色に変わっていた。

 

「皆……力を借りるぞ」

 

龍誠はそう言って、クローズドラゴンに色の変わった新たなドラゴンエボルボトル……名付けるならばそう、グレートドラゴンエボルボトルを挿す。

 

するとクローズドラゴンも配色が変化し、龍誠は横についているスイッチを押す。

 

《覚醒!》

 

そして龍誠は、ビルドドライバーにそれを挿し、

 

《グレートクローズドラゴン!》

 

龍誠の体に電流が走るが、龍誠は耐えながらレバーを回し、

 

《Are you ready?》

「変身!」

《Wake up CROSS-Z! Get GREAT DRAGON! Yeahhh!》

 

変身シークエンスが始まり、変身した龍誠の姿は、一誠が変身してたエボルドラゴンと、クローズを足して2で割ったような姿で、

 

「今の俺は……負ける気がしねぇ!」




《朗報》兵藤一誠。ドライグ達の意識は必要ないと切り捨ててたらその意識によって龍誠の変身能力は戻る。

しかし100話目が龍誠の復活とは……これ別に計算してたとかそう言うのはないんですよね。


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燃えよドラゴン

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

龍誠「始まった兵藤 一誠との激戦。そして遂に俺はグレートクローズに変身!マジ最強でマジ最高だぜ!」
匙「良いなぁ、俺も強化欲しいぜ」
ヴァーリ「全くだ」
サイラオーグ「いやお前はまだ希望があるし、匙 元士郎は途中でクローズチャージに変化が起きてるじゃないか。俺だけだぞ?まだなんの変化もないのは」
龍誠「サイラオーグさん最近出たもんなぁ……って言う感じの101話スタート!」


「ウォオオオオオオオ!」

 

空気を震わせるほどの龍誠の叫びが、辺りに木霊する。

 

「っ!」

 

それが収まると同時に、龍誠は走りだし一誠と激突。一誠は龍誠の拳を受け止めるが、その瞬間に反対側の拳が一誠の頬に炸裂した。

 

「くっ!ハザードレベル6.2だと?ありえない、お前は自力では6.0の壁を越えられないはずだ!」

「自力じゃねぇ。色んな奴の思いが俺に力をくれたんだ!俺一人じゃできないことでも、色んなやつに頼まれて、それを背負って戦う限り、俺に限界はねぇ!」

 

そう叫ぶ龍誠は、更に拳の連打を一誠に叩き込み、渾身のアッパーを叩き込む。

 

「くっ……舐めるなよ!」

 

一誠は後ずさると、高速移動で視界から消えるが、

 

昇格(プロモーション)!クイーン!」

 

クイーンに昇格(プロモーション)し、龍誠も高速移動で後を追い、一誠の行き先に先回りすると、拳で迎撃。

 

「がはっ!」

 

壁に叩き付けられた一誠は、肺から空気を吐き出すと、龍誠はクローズマグマナックルを持ち、

 

《ボトルバーン!クローズマグマ!》

 

ビルドドライバーにクローズマグマナックルをセットし、レバーを回すと、

 

「変身!」

《極熱筋肉!クローズマグマ!アーチャチャチャチャチャチャチャチャチャアチャー!》

 

クローズマグマに変身。したものの、突如クローズマグマの体の黒い部分にヒビが入り始め、

 

「はぁ!」

 

龍誠が気合いを入れるとひび割れた部分が弾け飛び、中が銀色に輝きだした。

 

「銀色の……クローズマグマ?」

 

ヴァーリの呟きを合図に、龍誠は走り出すと一誠を殴り飛ばす。

 

「は、ハザードレベル7.0だと?バカな!理論上存在するだけで、通常至ることの出来ないんだぞ!?」

「俺は一人じゃねぇ。この力もそうだ。戦兎が俺に道を示してくれた。誰かのために戦うことを、ラブ&ピースのために戦う事を教えてくれたからある!てめぇとは違う。俺はこの皆がくれた力で、俺はこの世界を守る!」

 

一人では、龍誠は何もできないのかもしれない。だが絆が龍誠を輝かせる。皆の思いと言う光が、龍誠を強くする。まるでそう、それだけでは輝けずとも、太陽の光によってその姿を見せる、月のような存在。それが万丈 龍誠だった。

 

「ちぃ!もう原作主人公じゃないくせに……俺の邪魔をするんじゃねぇ!」

「本物も偽物もねぇ!」

 

龍誠はレバーを何回も回しながら叫ぶ。

 

《Ready Go!》

「仮面ライダーであるかぎり、俺はお前を止める!誰かを悲しませない!それに原作は関係ないんだよ!」

《ボルケニックフィニッシュ!》

 

飛び掛かってきた一誠に、カウンターでボディブローを決めると、両腕にマグマを纏わせて連続パンチを叩き込む。

 

「がはっ……」

 

再度吹っ飛ばされ、血を吐いた次の瞬間。突如空間が歪み、空中に無数の悪魔や天使に堕天使。更に妖怪や北欧の戦士達が出現する。

 

「なに?」

「残念だったな兵藤一誠。俺達がいつまでもお前にやられっぱなしだと思うか?」

 

アザゼルはそう言いながら、笑みを浮かべる。

 

「とは言え、流石に絶霧(ディメンションロスト)。一人二人ならまだしもこの人数を突入させるのに苦労したぜ」

 

見てみれば、その空中にいたのはサーゼクス筆頭にした四大魔王や、アザゼル率いる堕天使の幹部。ミカエルが率いる天使等々の見たことのある人達もいる。

 

「ぞろぞろと……」

「当たりめぇだ。お前がどれだけ敵に回したと思ってやがる。その報いを受けやがれ!」

 

アザゼルがそういうと、連合それぞれの力を集め、

 

「私達ももいくわよ!」

『はい!』

 

それに合わせ、リアス達も力を溜め、龍誠達仮面ライダーも必殺技の準備をする。

 

《Ready Go!》

 

龍誠はレバーを一回回し、ヴァーリ達もレバーを下ろす。

 

《ボルケニックアタック!》

《スクラップブレイク!》

《スクラップフィニッシュ!》

《クラックアップフィニッシュ!》

『はぁああああああ!』

 

四人は飛び上がり、同時にキックを放つ。更に、

 

《ギアエンジン!ギアリモコン!ファンキードライブ!》

 

二丁銃を構え、フウとライは巨大な歯車を発射。その歯車は他の皆の力を絡めとり、悪魔も天使も堕天使も関係なく、全てを一つに変えて龍誠達と共に、一誠を狙う。

 

「くっ!」

「これで終わりだ!兵藤 一誠!」

 

全ての力と思いを乗せた、一斉攻撃が一誠に目掛けて飛んでいく中、

 

「そうだ……これだ!」

 

一誠はそう言ってハザードトリガー型のアイテムを取り出すと、総攻撃をそれで受けながら、スイッチを起動。するとそのアイテムの中心のメーターが高速回転し、

 

『はぁ!』

 

爆発と爆炎が上がり、その衝撃は龍誠達を吹き飛ばす。

 

「龍誠!」

 

何時もの色のクローズマグマに戻った龍誠にリアスは駆け寄ると、大丈夫と言いながら龍誠は立ち上がる。

 

「戦兎先輩!」

 

その間に、小猫は走り出すと、地面に倒れていた戦兎に駆け寄り、肩を揺する。すると少し呻き、戦兎はゆっくり目を開けると、

 

「塔城?あれ?俺はたしか……」

「先輩……よかった」

 

ギュウっと小猫は戦兎を抱き締め、戦兎はまだ記憶が混濁してるのか困惑ぎみ。

 

「やったんだな……」

 

そんな光景を見ながら、ヴァーリが呟くと、匙もあぁとうなずく。他の皆も同じような反応をしていたその時!

 

「くくく……ハーハッハッハッハッハッハ!」

『っ!』

 

皆は突如聞こえた声に、頭上を見上げた。連合達より遥か上空には、コブラフォームに戻った一誠が立っていて、

 

「あれを受けて生きていたのか……?」

 

サーゼクスが思わず呟き、

 

「あぁ、流石にもう無理かと思ったよ。だが、お陰で完成した。礼を言うよ」

 

一誠はそう言ってハザードトリガー型のアイテムを見せつけ、

 

「これはロンギヌストリガー。俺の強化アイテムさ、ただ欠点としてバカみたいなエネルギー取り込まないと起動しない」

「だから今まで……」

「そうだよアザゼル。無限と夢幻。更に世界各地の霊脈。そして今の総攻撃。これだけ取り込んで漸く完成した!見せてやるよ、俺の最強の姿をなぁ!」

 

《オーバー・ザ・エボリューション!》

 

ロンギヌストリガーを起動させ、一誠はそれをベルトの上部に合体。そしてレバーを回して構えると、

 

《Are you ready?》

「変身」

《ロンギヌス!ロンギヌス!ロンギヌス!レボリューション!フハハハハハハハハ!》

 

変身シークエンスが起動し、天体に包まれた一誠は一瞬光に包まれて消え、莫大なエネルギーを撒き散らしながら白と黒を基調にしながらも、禍々しいフォルムの姿へと変貌する。

 

「フェーズ4……またの名を、仮面ライダーエボル、ロンギヌスフォームの誕生だぁ!」




ちょっと今回登場したオリジナル形態の紹介。

仮面ライダー シルバークローズマグマ(仮名)

龍誠がハザードレベル7.0に一時的に到達した際に至った姿。
一誠が言うように本来であればハザードレベル7.0はありえない(戦兎のように自爆覚悟の無茶な強化を行えば不可能ではない)が、ドライグ達を取り込んで、更に皆の思いを背負うことで到達した姿。
一誠のエボルラビットを、昇格(プロモーション)込みとは言え圧倒するなど、単純スペックだけでも突出したものを(流石に我が魔王や光るそばマンには劣るが)誇る。只し、あくまでも一時的なもので、何時でもなることはできない。

《スペック》

パンチ力・90t
キック力・85t
ジャンプ力・95m
走力・0.7秒(100m)


仮面ライダーエボル ロンギヌスフォーム

まぁぶっちゃけ今作版ブラックホールフォーム。元々ブラックホールフォームにしようかと思っていたものの、この世界でブラックホールは合わねぇか?そもそもこいつ宇宙から来てないしな、と思い至ったため作られたフォーム。
詳しい説明は次回でもするが、一誠が持つ神滅具(ロンギヌス)をエネルギーに変換し、更にオーフィスやグレートレッド、世界各地から集めたエネルギーや総攻撃のエネルギーを上乗せして変身するため、スペックだけなら原作のエボルより上。ただし弱点として、この姿に変身している間は神滅具(ロンギヌス)が使えない。のだが、似たような能力を持つ神器(セイクリットギア)を作れば良いだけなので、そんなに大きな弱点じゃなかったりする。

《スペック》

パンチ力・120t
キック力・200t
ジャンプ力・230m
走力・0.2秒

パンチ力以外は流石に我が魔王を下回る上に、勝ってるパンチ力もあの人は自分の方が相手より強くなる能力があるからまぁねぇ?

という感じでした。まぁスペックは基本的に飾りみたいなものだからね。余り気にしないでね。つうわけで次回にまた!


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ロンギヌスフォーム

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

龍誠「兵藤一誠の新たな姿。更に俺のシルバークローズマグマと進化祭りだったな!」
戦兎「全く。兵藤一誠を倒しきれないとは……やっぱりサブキャラには荷が重かったか」
龍誠「あぁ!?それ言ったらお前なんて体乗っ取られてたじゃねぇかよ!」
戦兎「それあお前を助けるためでしょうが!」
ヴァーリ「えーそんな感じでやっていく102話スタート」


「フェーズ4……またの名を、仮面ライダーエボル、ロンギヌスフォームの誕生だぁ!」

 

白と黒を基調とした禍々しいフォルムへと変わった一誠は、楽しそうに笑い、地面に降りる。

 

「よく分からねぇがもう一回いくぞ!」

『あぁ!』

《Ready Go!》

 

全員が飛び上がり、同時にキックを放つ。それに合わせて他の皆も攻撃をするが、

 

「ふん!」

 

一誠は腕を横に凪ぐと、その衝撃だけで全ての攻撃を掻き消すどころか、その余った衝撃で龍誠達全員を撃墜。そのまま変身解除させられながら、地面に落下した。

 

「がはっ!」

 

地面を転がった龍誠が血を吐きながら周りを見ると、他の皆や連合達もたった一撃で壊滅的な打撃を受けていた。

 

「くくく、これは凄い!これこそ俺が求めていたものだ!」

 

一誠は楽しげに笑い、

 

「おい!塔城!」

「げほっ」

 

変身していなかった戦兎をかばうように、小猫が盾になったためボロボロになった彼女の体を揺する。

 

「しかしあれだな……これじゃ流石にあっさり過ぎたな」

「く……」

 

戦兎は小猫を横にして立ち上がろうとすると、

 

「せ、先輩」

「どうした?塔城?」

 

小猫に裾を引かれ視線をやると、小猫はビルドドライバーと、ハザードトリガーにフルフルラビットタンクボトルを渡してくる。

 

「む、無茶だけは……」

「あぁ」

 

戦兎はビルドドライバーを装着しながら走り出す。

 

《マックスハザードオン!ラビット&ラビット!》

「変身!」

《紅のスピーディージャンパー!ラビットラビット!ヤベーイ!ハエーイ!》

 

変身した戦兎は一誠に飛び掛かるが、一誠はそれを防御もせずに受けるが、微動だにしない。

 

「なっ!?」

「甘いなぁ戦兎。残念だがもうお前じゃ俺には勝てないんだよぉ!」

 

ガツッ!戦兎の顔面を殴ると、仮面が割れて中身を露出させながら後方に吹っ飛んでいき、

 

「ぐっ!」

「おっと、加減したがまだだめか……もっと加減をできるようにしないとな」

 

一誠はそう言ってゲラゲラ笑い、地面に倒れたまま、腕に力を込めて立ち上がろうとする戦兎。

 

すると次の瞬間、

 

「楽しそうだな。兵藤 一誠」

『……え?』

 

突如響いた声に、誰もがその方を見て、表情を凍りつかせた。そこにいたのは赤と青の……そう、仮面ライダービルドのラビットタンクフォームだ。

 

「何でビルドがもう一人……」

 

龍誠は呟くとヴァーリが、

 

「そう言えば京都で八坂の姫を拐った奴がビルドそっくりだった」

「てことはあいつが?でも誰なんだ……あれ?」

 

匙も頷き、戦兎ではないもう一人のビルドを見る。すると一誠は笑い、

 

「そうかそうか、お前達は分からないか」

「なに?どう言うことだ?」

 

サイラオーグが一誠の言葉に眉を寄せると、

 

「なぁ戦兎?お前は気づいてるんじゃないのか?勘づいているだろう?誰がヴァーリ達のスクラッシュドライバーを作ったのか。渡したのは俺だ。だが俺は作れない。そもそも未完成だったスクラッシュドライバーを完成させるのは、俺じゃ出来ない。ならだれか?スクラッシュドライバーを知り、そして完成させる。更に俺のライダーシステムを作れる存在。そんなのこの世界には一人しかいないよなぁ!?」

「……」

 

戦兎は歯を噛みしめる。そんな筈はない。そんなわけがない。だって……あの人だけは。そう戦兎は首を振り、

 

「そんなわけないよな?()()()

『っ!』

 

皆が息を飲む。特にグレモリー眷属の皆は知っていた。戦兎の父がどんな人なのかを。戦兎にとって、全ての始まりとなった人の事を。

 

だがビルドは一誠の隣を通りすぎ、戦兎の前に立つと、ベルトからフルボトルを外す。そして変身が解除され、その中から出てきたのは、

 

「久し振りだな。戦兎」

「……何でだよ」

 

その男……戦兎に良く似た風貌の、桐生 忍は戦兎を見下ろし、戦兎は何度も何でだよと呟く。

 

「何でだよ……何で!父さんが兵藤 一誠一緒にいるんだよ!」

「決まってるだろう。兵藤 一誠とは共闘している。それだけだ」

「だからだよ!何でこいつと一緒なんだ!科学は誰かのために……ラブ&ピースのために使うんじゃないのかよ!」

「まだそんなことを言ってるのか……いい加減大人になれ戦兎。そんな子供みたいな正義感はな、なんの役にもたたない。いや、それどころか周りを不幸にする」

「~っ!」

 

戦兎は拳を震わせ、一気立ち上がると走り出す。

 

「ふざけんなぁああああああああああ!」

 

その間に忍はベルトにラビットとタンクのフルボトルを挿し、レバーを回す。戦兎のものとは違い、音声は鳴らないようだ。

 

「お前の正義は所詮私の言葉の受け売りでしかない。お前自身の正義ではない」

「それがどうした!俺が正しいと思ったんだ!綺麗だと思ったんだ!それの何が悪い!」

 

フルボトルバスターを振り回し、戦兎は忍を追い詰めるが、忍はそれをドリルクラッシャーを出して受け流す。

 

「ふん、所詮は受け売りでしかない。そんなだからお前はこの世界を守ると言いながら危険に晒してるんだ」

「晒してなんかない!」

 

本当か?忍はドリルクラッシャーで戦兎のフルボトルバスターと押し合いに持ち込むと、

 

「ならなぜ兵藤 一誠は力を得た?」

「なに?」

「兵藤 一誠がロンギヌスフォームに至れたのは、万丈 龍誠やお前の力も必要だった。お前が正義を口にし、万丈 龍誠に仮面ライダーの力を与え、お前自身も強くなっていった。そしてハザードレベルを上げ、そして兵藤 一誠の成長の切っ掛けとなった。結果論だと言うか?そうかもしれないな。だがお前の振りかざした正義が、巡り巡ってこの世界の害となった。それは事実だろう?」

「ち、違う。俺は……」

 

思わず戦兎が動揺した瞬間、忍は戦兎を押し返すとドリルクラッシャーで、戦兎を何度も斬る。

 

「お前の正義は何も救えやしない。お前というバグは、この世界に置けるハザードトリガー(災厄の引き金)そのものだったと言うことだ」

「あ、あぁ……」

 

戦兎は首を振りながら、頭をガシガシ掻く。

 

「その癖は変わらないな。いや、何も変わっていないのか。私も反省している。私の戯れ言をまさか本気にして、ライダーシステムという兵器をここまで成長させ、世界を滅ぼす道に進ませるとはな」

 

忍は完全に棒立ちになった戦兎を見ながら、レバーを回す。

 

「やはりお前は、生まれるべきでは……いや、存在するべきではなかったと言うことだ」

《Ready Go!》

「っ!」

《ボルテックフィニッシュ!》

 

忍のライダーキックは、戦兎に何の抵抗もなく決まり、戦兎は後方に吹き飛ばされながら変身が強制解除される。

 

「くそ……」

 

サイラオーグは悪態を吐きながらも立ち上がった。しかし、

 

「ははは、実の息子相手に良くやるよあの人も。まぁ良いさ。折角だし、最後に強烈なやつを見せてやる」

 

一誠はそう言ってレバーを回すと、ロンギヌストリガーが発光。そして、

 

《Ready Go!》

「終わりにしよう」

 

膨大なエネルギーを込められた、一誠の本気の蹴りは、サイラオーグに向かって飛ぶ。

 

「サイラオーグ!」

 

リアスが思わず叫ぶが、誰も動けない。そう思われたとき、

 

『させるかぁ!』

 

この場において唯一、後方でしかも偶然他のライダー達の影になっている場所に立っていたフウとライは、変身解除まではならず(流石にダメージがあって動くまでには時間を要したが)、身を呈してサイラオーグを庇った。

 

「フウ!ライ!」

『ぐ、ぐぐ……』

 

二人は押し返そうとするが、びくともせず少しずつ押し込まれてくる。

 

「何とか、サイラオーグ様だけでも」

「……いや」

 

フウの呟きに、ライが首を振った次の瞬間。突如フウは弾かれたような衝撃を感じ、気づくとエンジンブロスに戻ってサイラオーグの隣まで吹っ飛ばされており、前にはリモコンブロスに戻ったライが一人で抑えていた。

 

「ライ!」

「兄貴!約束したよな……もしやべぇやつと戦いになって、サイラオーグ様の命が危険だってなったら、どっちかだけでも生き延びて、もう一人の方まで支えるって。それが今だよ」

 

ライはそう言って体の歯車を回転させ、更に押し止める。

 

「俺バカだからさ。生き残るなら絶対兄貴の方がいい」

「何言ってるんだ!ライ!」

 

フウは思わず走り出しそうになるが、

 

「来るな!約束したじゃねぇかよ!」

「っ!」

 

ライの怒声に、フウは足を止め、

 

「サイラオーグ様……アンタには感謝してもしきれない。身寄りのない、ただの落ちぶれ悪魔だった俺や兄貴を、あんたは眷属にしてくれた」

「止めろ……止めろライ!」

 

サイラオーグの制止に、ライは少しだけ振り返り、

 

「お世話になりました。サイラオーグ様」

『っ!』

《ロンギヌスフィニッシュ!》

 

それと同時に爆発が起き、皆は目をつぶる。するとサイラオーグの足元にギアリモコンが転がって来たが、それ以外ライがその場にいたと言う痕跡は消し飛んでいた。

 

《チャオ!》

「ちっ……邪魔しやがって。どうせ僅かな延命行為。ただの無駄死にだよ」

 

黒煙の中から出てきたのは一誠。それを見た瞬間サイラオーグは何かが切れて、

 

「きさまぁあああああああ!」

 

サイラオーグは変身もせずに飛び掛かろうとするが、それをフウが止める。

 

「離せ!フウ!」

「いけません!」

「命令だ!離せ!こうなれば一子報いてやらねば!」

「聞けません!それだけは聞くわけにいきません!」

 

フウは泣いていた。だがそれでもサイラオーグの体を離さなかった。

 

「今ここであなたが死ねば、ライは……弟はそれこそ無駄死にになります!」

「っ!」

「お願いですから……英断を。ライを無駄死ににしないでください!」

 

フウの叫びは、サイラオーグの体を強ばらせ、冷静さを取り戻させる。そして、

 

「……戦線から離脱する。フウ!」

「っ!はい!」

 

フウはそう言って紫の銃から煙を出すと、辺り一帯を包み込み始めた。

 

「逃がすと思うか?」

 

一誠はそう言って手を翳そうとするが、

 

「させると……」

「思ったか!」

「はぁ!」

 

アザゼル、サーゼクス、ミカエルの三人同時攻撃が一誠を襲い、攻撃の出だしを遅らせることに成功。

 

「ちっ!邪魔ばかりしやがって」

 

一誠は腕を払って土煙を消し飛ばすと、既にサイラオーグ達は居らず、連合も全員転移し終えていた。

 

「ふん……まぁいいか。どうせいずれまた会う流れだ」

 

そう言いながら、一誠は変身を解除して忍の元に行く。

 

「ほんじゃいこうか。次の巻の舞台。ルーマニアにさ」

「あぁ、そうだな」

 

そう言うと空間を歪ませ、一誠と忍は、その場から消えていくのだった。



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第十五章 課外授業のデイウォーカー
吸血鬼


前回までのハイスクールD×D Be The Oneは!?

戦兎「超絶進化を遂げる兵藤一誠に敗北する俺たち……」
龍誠「もうアイツ手に終えなくなってきたぞまじで!」
ヴァーリ「ホントに作者あれ倒せるんだよなぁ!?」
匙「つうかコメントでも言われてたけど今のアイツ相手に原作通りジーニアスじゃ無理じゃね?」
サイラオーグ「その辺も一応考えてはいるみたいだが…」
ヴァーリ「まぁそもそもジーニアスってエボルト相手に結構苦戦描写多かったしなぁ……」
戦兎「まぁ取り敢えずなんとかなるでしょうってな感じの103話スタート!」


「戦兎のやつ大丈夫かな……」

 

兵藤一誠との戦いから一週間。戦兎以外のオカルト研究部の皆や、ソーナと真羅、更に匙とアザゼルがオカルト研究部の部室に集まっていた。

 

何故この面子が集まったかと言うと、つい先日ある所から会談の打診があり、アザゼルを筆頭に禍の団(カオス・ブリゲード)関連の事態でもあったためリアス達で対応することに。

 

そしてその相手と言うのは、吸血鬼である。ギャスパーで馴染み深い吸血鬼の連中が、禍の団(カオス・ブリゲード)に関して話すことがあると打診してきたのだ。

 

なので集合しているのだが、龍誠は浮かない顔をしている。

 

「戦兎なら大丈夫よ。お兄様も着いてるし」

「御姉様もいますしね」

 

リアスとソーナは口々に言って励ます。と言うのも、先日の戦いで戦兎の父である忍が、兵藤一誠と共に活動していることが発覚し、戦兎にも一応取り調べをする運びになったらしく、サーゼクス達に連れられていった。

 

「お前ら。取り敢えず戦兎の心配は後にしろ。来るぞ」

『っ!』

 

全員がアザゼルの言葉に気を引き締めると、扉が開かれ朱乃に連れられた男二人と、それに挟まれた少女が一人いる。

 

「ごきげんよう。私はエルメンヒルデ・カルンスタイン。カーミラ派に属する者ですわ」

 

軽く挨拶をし、入ってきた少女達に続き、もう一人ほど入ってきた。ベールを被っシスター風の女性。確か今回は天界サイドの者も来ると聞いている。

 

その女性はベールを脱ぐと、

 

「初めまして。私はグリゼルタ・クァルタ。ガブリエル様のQを任されております」

「むぐっ!?」

 

入ってきた女性を見た瞬間。ゼノヴィアがビクッ!と体を震わせながら、悲鳴を上げそうになったのを、咄嗟に口を押さえて止めた。

 

「どうした?」

「な、何でもない」

 

龍誠の問いに、ゼノヴィアは首を横にブンブン振っており、それを見たイリナは事情を知っているのか苦笑いを浮かべている。

 

「それじゃあ、話を聞きましょうか」

 

リアスはエルメンヒルデに椅子を勧め、彼女はそれに応じて椅子に座った。

 

「それで?話しはなにかしら?」

 

リアスは単刀直入エルメンヒルデに問う。元々吸血鬼と悪魔は、互いに人間を必要とし、時には利用する種族同士だが、基本的に交わることはない。暗黙の了解として、不干渉を貫いてきていた。

 

そんな吸血鬼から突然の交渉案に、リアスは思考を張り巡らせる。

 

「えぇ、実は先日から我らカーミラ派とツェペシュ派の間で大きな戦いがありまして」

 

その言葉に、リアスは眉を寄せた。ツェペシュ派はエルメンヒルデが属するカーミラ派と双璧をなすもう一派。長年2つの派閥が対立していたのは知っていたが、 まさか争いが起きていたとは……

 

だが、

 

「それが今回の話しにどう関係するのかしら?」

 

リアスが知りたいのはそこだ。なぜ今まで三大勢力の和平の際にも、関わってこなかった吸血鬼がここに来て、関わってきたのか。するとエルメンヒルデは、

 

「今回の一件。どうもツェペシュ側に禍の団(カオス・ブリゲード)が絡んでいるらしいのです」

『っ!』

 

禍の団(カオス・ブリゲード)の名を聞いたとき、リアス以外の面々も体が強張る。先日の戦いの記憶はまだ新しい。ライの死も……あの圧倒的な力を持つ新たな姿も。

 

「そこで、ギャスパー・ウラディを貸していただきたいのです」

「何ですって?」

 

そんな中続けざまに言われた言葉に、リアスはポカンとしつつも、

 

「なぜギャスパーを?」

「ギャスパー・ウラディにはまだ秘められた力がある。その力が必要なのですわ。それに……ヴァレリーとは彼の方が良いですし」

 

ヴァレリー。その名を聞いた時、ギャスパーが今までにない反応を見せた。

 

「ヴァレリーが……いるんですか?」

「えぇ、ツェペシュ側の最前線で私達カーミラ派を蹂躙しました。お陰で此方としては何がなんでも殺すべき……と言う声もありますが、貴方が彼女を止めてくれるなら考えてもよろしいですわよ?」

「ヴァレリーにそんな力は……」

「さぁ?ですが禍の団(カオス・ブリゲード)の現リーダーである兵藤一誠は全ての神滅具(ロンギヌス)をもつ男。後天的に力を与えることくらい出来るのでは?まぁあんな化け物になるくらいならごめん被りますが」

 

どう言うことですか?というギャスパーの問いかけには答えず、エルメンヒルデはリアスを見る。

 

「勿論。ただでとは言いませんわ」

 

エルメンヒルデはそう言って、一枚の書面をリアスに渡す。その紙を見たアザゼルは、

 

「カーミラ派の和平交渉か。成程な。言い換えればギャスパーを貸さなきゃ交渉に応じないってことか」

「そうは言いませんわ。ただ吸血鬼の問題を吸血鬼で解決するために、一人ほど御貸し願いたいだけです」

 

確信は述べない。だが暗にそう言っているのだ。しかしリアスは、

 

禍の団(カオス・ブリゲード)との戦いに関しては私達の方が一日の長があると思うから言わせてもらうけど、そんな簡単な相手じゃないわ。ギャスパーに秘められた力がどんななのかわからないけど、そんな危険な場においそれと送り出せないわね」

「そんなに心配であれば貴女も来られれば以下がかしら?」

 

エルメンヒルデの言葉に、リアスはピクンと眉をあげる。

 

「吸血鬼だけで解決をするんじゃないの?」

「別にアドバイザー位であれば如何様にでも。あぁ但し、仮面ライダーの介入はどのような形でも認めませんわ」

「何ですって?」

「当然でしょう?あのような得たいの知れず、しかもビルドは禍の団(カオス・ブリゲード)幹部の息子だというではありませんか。信用出来るとでも?」

 

エルメンヒルデの嘲笑に、皆が奥歯を噛み締めた。そして、一人それに意を唱える男がいる。

 

「ふざけんな!戦兎はそんなやつじゃねぇ!」

「貴方は……確かクローズでしたっけ?貴方は確かビルドの友でしたわね?貴方も同じですわよ?そう言えば最近悪魔側の情報が禍の団(カオス・ブリゲード)に流れているという噂もお聞きしますが、一度仮面ライダー達の事を調べた方がいいのでは?」

 

なんだとぉ!とぶちギレた龍誠を慌てて匙と祐斗が止め、

 

「それでは決まったらまた御連絡を。失礼します」

 

エルメンヒルデはそう捨て台詞を残し、供を連れて部屋から出ていく。

 

「……くそっ!」

 

龍誠が壁を殴り、 怒りに震えるが、それに関しては他の皆はなにも言わない。

 

皆も同じ気持ちだ。戦兎がどれだけ今回の一件で傷ついてるか、そんなの皆が一番わかっていた。

 

「取り敢えず……どうする?ギャスパー」

 

リアスはギャスパーを見て問いかける。するとギャスパーはすぐに、

 

「行きます」

「良いの?」

「はい。ヴァレリーは僕の恩人なんです。ずっと一人だった僕に唯一優しくしてくれた子で、もし何かあるなら、今度は僕が助けます!」

 

はっきりギャスパーはそう答え、リアスが頷きを返す。ギャスパーは変わった。最近は今までの怖がりな部分が大分緩和され、自分の新たな戦い方を模索している。

 

「それにあの人は言ってました。僕の秘められた力って。本当かどうかわからないけど……分かるなら僕は行きたい」

 

サイラオーグ戦でやられ、その後禍の団(カオス・ブリゲード)の戦いでも負け続けていることを、ギャスパーはかなり気に病んでいた。

 

「それなら行くメンバーはそうね。私とギャスパーに……祐斗。お願いするわ」

「あと俺もな」

 

貴方も?とリアスが首をかしげるとアザゼルは、

 

「ま、未だに事を構えてる教会の人間が行くよりは角は立たないだろう。つうわけでミカエルにもそう伝えてくれ、グリゼルタ」

「畏まりました」

 

アザゼルにグリゼルタは頭を下げて答える。その間にリアスは、

 

「ソーナ。暫くは貴女にお願いするわね。うちの眷属も申し訳ないけど一緒に」

「えぇ、任せてちょうだい」

「龍誠も。何かあったら……と言うか禍の団(カオス・ブリゲード)が関わっている以上、一筋縄ではいかないだろうから、タイミングを見てすぐに他の皆も呼ぶわ。そうなっても良いように準備だけは怠らないで」

「了解です!」

 

龍誠が返事をし、他の皆も同意。

 

「それじゃ今日はこのまま解散だな」

 

と、ゼノヴィアは足早に部屋を出ようとして、

 

「待ちなさいゼノヴィア」

「ひっ!」

 

ガシッ!とグリゼルタはゼノヴィアの頭を掴み、無理矢理自分の方を向かせる。

 

「ひ、久し振りだなシスター・グリゼルタ。げ、げげ元気だったかい?」

「えぇ、お陰様で」

 

全身から滝のような汗を掻き、ゼノヴィアは視線だけグリゼルタから外す。

 

「なぁ、ゼノヴィアとあの人は知り合いなのか?」

 

龍誠はソッとイリナに聞くと、

 

「ゼノヴィアが昔いた施設からお世話になってた人で、ゼノヴィアがこの世界で一番頭の上がらない人。クイーン・オブ・ハートの異名を持ってて、この辺り一体の天界スタッフの管理もしているわ」

「成程ねぇ」

 

イリナいわく、ゼノヴィアが悪魔になった際に、一番ショックを受けていたのも彼女で、それもあってこの辺りに来ていたのは知っていたゼノヴィアも、会いに行かなかったらしい(電話もかなり来ていたようだが全部無視していた模様)。

 

「全く。貴方と来たら何時もノリと勢いとその場の流れに身を任せて周りも大変だったでしょう」

「そ、そんなことはない!なぁ皆!?」

『……』

「何かいってくれ!」

 

思わず同意をも止めてきたゼノヴィアに、皆がソッと視線をそらし、祐斗は一人グリゼルタに近付き、

 

「この際もっと言ってやってください」

「木場!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く。皆揃って酷いじゃないか」

 

その後、こってりとグリゼルタ絞られたゼノヴィアは、プリプリ怒りながら家のリビングに入り、他の皆も苦笑いを浮かべながら続く。

 

すると床に魔方陣が出現し、そこに戦兎が転移してきた。

 

「戦兎!大丈夫だったか!?」

「……あぁ」

 

疲れた様子の戦兎に、皆は駆け寄ると、これからの話をする。

 

「分かりました。じゃあ俺もやることやっときます」

「やること?」

 

リアスの問いかけに戦兎は頷き、

 

「対兵藤 一誠用のビルドの最強強化アイテムを作ります」

「ビルドの強化アイテム……?」

 

はい、と戦兎は言いながら、

 

「兵藤 一誠にも父さんにも負けない……ビルドの強化アイテムを作ります。俺がビルドは正義のヒーローだって証明して見せます」

 

なので失礼します。戦兎はそう言って部屋を出ていく。

 

「どうしたの?龍誠」

「いえアイツ……何か思い詰めたみたいな顔してたから」

 

龍誠はそう呟きながら、戦兎が出ていった部屋の扉を、見つめるのだった。




もうゼロワン1ヶ月で終わり……来月からはセイバーですね。何かちょっとスーパー戦隊感がある見た目ですが、どんな物語を紡ぐのか(小説家だけに)。しかしゼロツー出来かたがエモい。或人とイズの二人の愛の結晶ですね。


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捕縛

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「突如行われた吸血鬼との会談。そこで知らされるのは、なんとギャスパーの恩人が暴れていたこと」
龍誠「つうかよ、お前大分暗くね?」
戦兎「そりゃお前よ。父さんとあんなことがあったら落ち込むもんさ」
龍誠「意味提灯した挙げ句今回でもなぁ」
戦兎「言いたいのは意気消沈だと思うけど、まぁそんなことは置いといて、104話スタート!」


「ここが吸血鬼の領土……ね」

 

陰鬱とした空気が漂う中、リアスはアザゼル・ギャスパー・祐斗の三人と共に吸血鬼のカーミラ派が支配する地に降り立っていた。

 

四人は案内人に導かれ、警戒しながら街を見る。つい最近戦いがあったとは思えなくらい静かで平穏だった。不気味なほどに。

 

「ヴァレリー……」

 

その中、ギャスパーは静かに彼方を見る。その方角に、ヴァレリーがいるのを感じているのだろうか。

 

「……」

 

するとアザゼルがポリ、と頬を掻く。そして、

 

「やっぱそういうことかよ」

『っ!』

 

アザゼルがそう呟いた次の瞬間。建物から多数の吸血鬼が襲い掛かる。

 

「ちっ!」

 

それはアザゼルは腕を振り、光の槍で蹴散らした。

 

「嫌な予感ってのは当たるもんだな」

「どういうこと?」

 

背中合わせになりながら、リアスたちはアザゼルに問う。

 

「どうもきな臭く感じただけだ。確信はなかったし、吸血鬼からの和平交渉の種を、手を取り合おうと訴えている俺たち三大勢力の者が蹴ることはできねぇからな。だがやっぱり罠かよ」

「そう言うことだ」

 

パチパチと拍手をし、その方を見るとエルメンヒルデと、

 

「兵藤一誠……」

 

更にもう一人、いやもう一体というべき怪物がいて、

 

「まさかヴァレリー?」

 

ギャスパーの呟きに、他の皆の表情が凍りつく。

 

「そう。ヴァレリーだ。この辺りの顔はまだ取り込まれてないからわかるだろ?」

「お前、まさか八坂の姫と同じ事を……」

「正解!とは言えこっちはもう侵食時期が長いからな。とっくに自我はないただの化け物さ。いやぁ、エルメンヒルデご苦労さん」

 

一誠はエルメンヒルデの肩を叩きながら礼を言う。

 

「エルメンヒルデ。どういうことかしら?」

「貴女方に言っていないことがあります。それはとうにカーミラ派は既にツェペシュ派に降伏していること。そしてもしカーミラ派が生き残りたければ、あなた方を差し出すこと。それが条件でした」

 

そういうが早いか、アザゼルが一誠に向け、光の槍を投げる。それを弾いたのは、一誠ではなくヴァレリー。すでに生身ではなくなった禍々しく醜い怪物の腕で弾き、こちらに突っ込んできた。

 

「木場!」

「はい!」

 

祐斗が素早く地面に手を付き、聖魔剣を地面から出して剣山のようにし、ヴァレリーの足止め。その間にアザゼルは地面に魔方陣を出して転移しようとしたが、

 

「おっと逃がさねぇぞ」

《Penetrate!》

 

次の瞬間アザゼル達の動き……と言うよりは、時が止まり動かなくなる。

 

「ギャスパー・ウラディと同じ停止世界の邪眼(フォービドウン・バロール・ビュー)……?」

「結構使い勝手は良いからな。アザゼルのやつ幾つか術式仕込んで逃走と妨害を行おうとしやがったが……まぁそれを透過して時を止めればこの通りだ」

 

さ、お前らアイツらを運んでくれ。一誠はそう言って吸血鬼達に指示を出して、アザゼル達を運ばせると、ニヤリと笑みを浮かべた。

 

「さぁて、楽しくなってきたぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい戦兎。一回休んだ方がいいんじゃないか?」

「んー」

 

リアスたちが出ていって数日。厳密には出ていく前から、殆ど寝ずに戦兎は作業していた。幾らなんでも無茶が過ぎると龍誠は言うのだが、戦兎は聞く耳を持たない。

 

「おい戦兎!」

「っ!」

 

流石にしびれを切らして、龍誠が無理矢理椅子を引っ張って、自分の方に向かせた。

 

「おい何すんだ!今忙しいんだよ!」

「お前なぁ!幾らなんでも無茶しすぎだ!親父さんのことで焦る気持ちもわかるけど一回冷静になれよ!」

 

龍誠の言葉に、戦兎は一瞬息を飲むが、

 

「……んだ」

「なに?」

「お前に何がわかんだ。親の顔も知らねぇくせに」

「っ!」

 

カァッと龍誠は胸の内が熱くなる感覚がして、次の瞬間には龍誠は渾身の拳を戦兎に叩き込んでいた。

 

「てめぇ。もう一回言ってみろ」

「っ!」

 

すると戦兎は素早く立ち上がり、龍誠を殴り返す。

 

「お前わかるか!父さんはな。俺の全てだ!俺の原点だったんだ!それがあんなことになって……お前にわかってたまるか!」

「っ!」

 

ギリッと龍誠は噛み締め、拳を握ってまた戦兎をぶん殴る。

 

「お前なぁ!」

「おいなに騒いでんだ!」

 

すると上の階から、騒ぎを聞き付けたヴァーリが駆け降りてきた。

 

「ちっ!」

 

そして殴り返そうとした戦兎の腕を掴み、ヴァーリは二人を引き離しながら怒鳴る。

 

「お前らこんなときになにやってんだ!一旦頭冷やせ!」

『……』

 

戦兎と龍誠はにらみ合い、戦兎がヴァーリの腕を払って席に戻って作業を始めたのを合図に、その場に満ちていた緊張は取れ、龍誠は舌打ちして屋敷に通じている扉のノブに手を掛け、

 

「……」

 

何かを言おうとしかけ、それをやめた龍誠はそのまま出ていく。

 

「おい戦兎。何がどうしたんだよ」

「別になにもねぇよ」

 

それだけ言って作業に戻った戦兎にヴァーリはため息をついて、

 

「無茶はすんなよ。お前に何かあるとみーたんが心配すんだ」

 

とだけ言って出ていく。

 

「……っ!」

 

それを見届け、戦兎は机を叩いた。龍誠に八つ当たり何てらしくない。

 

そう思いつつ作業は続ける。

 

(勝つんだ。勝って、父さんの目を覚まさせて……)

 

俺の存在が……やって来たことは間違ってないって証明するんだ。そう決意し、戦兎の作業は続くのだった。



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最強のアイテム

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「部長達が吸血鬼領に向かい、襲撃を受ける中、俺たちの間に亀裂が……」
龍誠「しかし今回もまたなぁ……そろそろ兵藤 一誠をぼこしたいなぁ……」
戦兎「まぁもうちょっと後になりそうだなぁ」
龍誠「だがそろそろ行かねぇと視聴者のフラストレーションがヤバイんじゃねぇか?」
戦兎「確かにそうだけどな……だがもうちょっと付き合ってくれ!ってな感じの105話スタート!」


「完成だ」

 

戦兎がパソコンのエンターキーを叩くと、同時に取り付けていたケースからボンっと煙と光が出て、戦兎がその中から、中に入っていたボトルを取り出す。形状としてはスパークリング缶に近く、白と黄色と青のカラーリングが施されたそれは、先日戦兎が自爆の際に使った黒い箱を未完成状態ではなく、完成させたものだ。

 

仮面ライダービルドの集大成であり、戦兎が父の目を覚まさせるために作ったもの。その名も、

 

「ジーニアスボトル……ってところかな」

 

取り敢えず一応試しておくか。そう戦兎は思いながらビルドドライバーを出そうとした時、

 

「先輩!」

「っ!?塔城?」

 

どうした?と急に部屋日飛び込んできた小猫に、戦兎が問うと、

 

「すぐ来てください!部長達と連絡が取れなくなりました!」

「なに!?」

 

戦兎が慌ててコートをひっ掴み、ジーニアスボトルを見てから懐にしまう。

 

試さずとも大丈夫だろう。何せ今までぶっつけ本番でもなんとかなった。今回だって大丈夫なはずだ。そう自分に言い聞かせ、小猫と共に屋敷に通じる扉を潜るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆集まりましたね」

 

戦兎が到着すると、既にソーナその眷属。更にグレモリー眷属と、ヴァーリを筆頭にヴァーリチーム。それにサイラオーグと眷属の皆が集まっていた。

 

「ヴァーリもこっちにいたのか」

「丁度な」

 

戦兎はヴァーリの隣に座り、向かいの龍誠と目が合うと、

 

『……ふん!』

 

互いにそっぽを向く。そんな光景にヴァーリはやれやれと首を振り、他の皆は少し驚くが、

 

「リアス達からの定期連絡が途絶えました。御姉様にも知らせましたが、すぐには動けないそうです」

「何でですか!?」

 

龍誠が思わず身を乗り出すと、ソーナは落ち着いてくださいと言い、

 

「吸血鬼と悪魔の関係上、無理に突入すれば争いになります」

 

じゃあ俺たちはどうすれば……という龍誠に、

 

「今はまだ動けん……か」

「えぇ」

 

サイラオーグの言葉に、ソーナは同意する。だが嫌な予感が拭えない。どうすれば……そう皆が思ったその時、

 

「お悩みかな?」

『っ!?』

 

声が響き、皆が臨戦体勢を整えると、皆の周りを霧が包み始める。

 

「霧……絶霧(ディメンションロスト)だ!とにかく近くにいる奴らで固まれ!」

 

ヴァーリが叫び、皆はとにかく近くにいるもの同士で固まったが、

 

「え?」

 

ソーナは目を開けると、景色は変わっておらず、周りにも見知ったものたちがいる。しかし、

 

「何人かいない……!?居ない人は誰!?」

 

ソーナが確認すると、居ないのはグレモリー眷属・イリナ・ヴァーリ・サイラオーグ・匙・フウ達だ。

 

「なんてこと……」

 

ソーナが呟いた一方その頃、

 

 

「くっ!」

 

戦兎は地面に着地し、周りを見回すと見知らぬ森の中だった。

 

「ここは……」

「おい戦兎!」

 

声がして振り替えると、そこにいたのは龍誠とフウの二人。

 

「この三人だけか?」

「えぇ、他の人の気配はありません」

 

三人は森を見回しながらどうするか話し合う。

 

「さっきの声は間違いなく兵藤 一誠だ。となればあまりゆっくりしてられない」

 

戦兎はそう言って、取り敢えず上空から見てみようと言って、ビルドドライバーを装着したが、

 

「そんなに焦ることはないだろう。戦兎」

『っ!』

 

声に戦兎達の体は凍りつき、その方向を見ると、そこに立っていたのは、ラビットタンク変身した忍だ。

 

「父さん!」

《マックスハザードオン!ラビット&ラビット!》

「戦兎!」

 

戦兎は素早く変身し、忍に向かって走り出す。

 

「変身!」

《紅のスピーディージャンパー!ラビットラビット!ヤベーイ!ハエーイ!》

 

フルボトルバスターを構え、忍に襲い掛かる戦兎。

 

「父さん!目を覚ませよ!科学は誰かのため、愛と平和のためのものなんだろ!」

「目を覚ますのはお前だ戦兎!何時までも夢見がちな子供の戯れ言を言っても誰も救えやしない!」

 

ドリルクラッシャーで防いだ忍は、戦兎を蹴り飛ばし、ドリルクラッシャーをガンモードにして撃つ。

 

「龍誠さん!」

「あぁ!」

《ギアエンジン!》

《覚醒!グレートクローズドラゴン!》

「潤動!」

「変身!」

《Engine running gear》

《Wake up CROSS-Z! Get GREAT DRAGON! Yeahhh!》

 

エンジンブロスとグレートクローズに変身したフウと龍誠も忍に飛び掛かるが、忍が軽々と二人の攻撃を捌き、一撃ずつ叩き込んで二人を押し戻した。

 

「ただのラビットタンクの筈なのに……強い」

「元々ビルドは私が使うために作ったものだ。つまり、私が変身するのが本来の姿だ」

 

忍はそう言いながら、指をパチンと鳴らすと、何処からともなく何人かが飛んできて、三人の前に立つ。

 

『え?』

 

戦兎たちは思わず相手の顔を見て固まる。そこにたっていたのは、

 

「部長……?」

「祐斗に先生?」

 

連絡が着かなくなっていた面々(ギャスパー以外)がそこに立っていた。しかし、

 

『っ!』

 

無言でその面々は戦兎たちに襲い掛かり、急いで防御行動を取る。

 

「ちょ!部長!一体どうしたんですか!」

 

滅びの魔力の弾をフルボトルバスターで弾き、リアスを取り抑えようとするが、それを受け流してゼロ距離で滅びの魔力を叩き込んで、戦兎を吹き飛ばした。

 

「戦兎!」

 

龍誠は駆け寄ろうとするが、祐斗が聖魔剣を手に襲い掛かり、龍誠を斬り付けて足止め、

 

「くっ!」

 

それをフウが銃を撃って止めようとするが、光の槍が邪魔をしてくる。

 

「アザゼルさん!?」

 

フウが見てみるとアザゼルが槍を手にフウに襲い掛かり、そのまま後方に吹き飛ばされ、アザゼルが手を空に掲げると、上空に無数の槍が作られる。

 

「やべぇ!」

 

龍誠は慌てて逃げようとするが、その前に無数の光の槍が降り注ぎ、三人に襲い掛かる。

 

『ぐぁあああああああ!』

 

三人は吹き飛んで地面を転がると、変身が強制解除されてしまう。

 

「うぐ。どういうことだよ……」

「何かおかしい。なんか何時もの皆にはない違和感がある」

 

龍誠のぼやきに、戦兎は首を振って言うと、

 

「正解だ。これはお前達の知る仲間達じゃない。これは彼女達の細胞を手にいれ、それを兵藤 一誠の幽世の聖杯(セフィロト・グラール)を使って作り出した偽物……いや、正確にはクローンかな」

 

なっ!と三人は呆然とし、改めてリアス?達を見る。

 

「容姿だけじゃない。能力や力も全て本人と同じだ。まぁ、本人達と違って容赦がない分厄介かもしれないがな」

 

忍はそう言って、書類に色々書く。

 

「結果は上々だな。これなら、このまま計画を進めても問題なさそうだ」

「計画だと?」

 

戦兎は忍の言葉に疑問符を浮かべつつも、忍は無視して背を向ける。

 

「ま、待て!」

 

戦兎が立ち上がって、忍を追いかけようとするが、忍はドリルクラッシャー・ガンモードで戦兎の足元を撃って、足止めする。

 

「諦めろ戦兎。お前では……兵藤 一誠は止められない」

 

忍はそれだけを言い残し、リアス達を連れて森の中に消えていったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃。

 

「う……」

 

ギャスパーは目を開ける。見たことのない風景に、自分がどうしてここにいるのかを思い出す。

 

「そうだ……ヴァレリー!」

 

急いでギャスパーは立ち上がろうとしたが、鎖で体の自由が奪われていることに気づき、コウモリに変化して抜けようとするが、変化できない。

 

「やめとけやめとけ。そいつは特別製でな。抜けられないよ」

「っ!貴方は兵藤 一誠……」

 

こうして面と向かっては初めてかな?と言う一誠に、ギャスパーは鎖をガチャガチャ鳴らしながら叫んでいた。

 

「ヴァレリーを……ヴァレリーを何であんな目に!」

「実験だよ」

 

実験?とギャスパーは、まるで言葉が理解できなかった。

 

「そう実験。折角この世界に来て神滅具(ロンギヌス)を手にいれたんだ。原作にはない使い方も試してみたいじゃないか。それにこれなら仲間増やすのに楽だしな」

「そんなの仲間じゃない!」

 

一誠の言葉にギャスパーは、はっきりと口にする。

 

「仲間っていうのはそんなんじゃない!お前はただ自分の力に酔ってるだけだ!人から奪った力で!戦兎先輩の方が何倍も……ううん、比べるのも失礼なくらい力の使い方を知ってる!」

「っ!」

 

がっ!と次の瞬間ギャスパーの首を一誠は締め上げる。

 

「いちいちよく回る口だなぁ?キャラクターの癖に俺をイライラさせる」

 

一誠はそう言って手の力を強めようとするが、何かを思い付いたような顔をする。

 

「そうそう。良いこと思い付いたぜ」

 

笑いながら、一誠は立ち上がると少し離れる。

 

「折角すぐに終わらせてやろうかとも思ったがな。折角だ。何でお前が親戚から疎まれてたか教えてやろう」

「え?」

「お前はハーフヴァンパイアじゃない。いや、ハーフヴァンパイアの範疇を逸脱した存在……というのが正しいかな?お前はな。化け物ですらない。言うなればそうだな、お前は魔神バロールの生まれ変わり……て言うとちょっと違うけどそれに近い存在だ。だからな」

 

一誠は手招きすると、そこにやって来たのは自分と同じ顔……そう、間違いなく自分だ。

 

「僕と同じ?」

「あぁ、同じだ。お前のクローンだからな。ちゃんと停止世界の邪眼(フォービドウン・バロール・ビュー)も、俺がつくって埋め込んである。だがそれだけじゃダメだ。流石の俺でもお前の中にいるバロールは作れない。ならどうするか?移植すればいい」

「っ!」

 

そう言った一誠の後ろから、ズルリ音をたてヴァレリーが現れる。

 

「ヴァレリー!」

 

ヴァレリーは、ゆっくりとギャスパーの元に行く。

 

「僕だよ!ギャスパーだよ!ヴァレリー!」

「無駄だよ。もうとっくに自我なんてない。そうして俺が命令すれば……」

 

一誠は、静かにヴァレリーにしじをだす。

 

「やれ。ヴァレリー」

「っ!」

 

ヴァレリーの腕から伸びた触手が、ギャスパーの心臓を貫き、口から血を吐かせる。

 

「が……はっ!」

「よかったなぁ……ギャスパー。お前を逃がしてくれた大切な恩人が、今度はお前を殺すんだ。ハッハッハ!盛大な皮肉だなぁおい!」

 

一誠は笑いこけながら、ギャスパーを見る。しかしギャスパーは、

 

「ぜったい、おまえだけは、ゆるざない」

 

その瞳に炎を宿し、ギャスパーは一誠を睨み付ける。

 

「しんでも、ぜったいに……!」

「はぁ?死んだらおわりだっつうの」

 

一誠はそう言って手を翳すと、ギャスパーの体から黒く光る球体が出て、ギャスパーの体から力が抜けていく。

 

「ぜったい、に……」

 

ガクン!とギャスパーの体から完全に力が抜け、完全に死んだことを確認。

 

「さぁて、これをこっちのギャスパーに埋め込んでやって」

 

と一誠は黒い球体をクローンのギャスパーに近づけると、それはクローンギャスパーの中に溶けていく。

 

「これで今日からお前がギャスパー・ヴラディだ」

 

一誠はクローンギャスパーに言うと、

 

「終わったか」

「あぁ、取り敢えずな」

 

忍がクローンのリアス達を連れて帰って来た。それを見た一誠は、

 

「あぁ、最高の気分だ。遂に計画最終段階。俺の夢が叶うんだ!」

 

高らかに笑い、天に拳を突き上げる。

 

悪意は……止まることはない。




アークワン……変身者を誰が予想しただろうか……


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加速する絶望

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「兵藤一誠に誘拐され、クローンの部長達との戦いになった俺達」
龍誠「あいつほんと好き勝手やってるよなぁ……どうにかならないのか?」
戦兎「どうにかできるんならとっくにこの物語完結してるでしょうか」
龍誠「だよなぁ……」
戦兎「ま、そのうちこの未来のてぇんさい物理学者がどうにかするから見てなさい」
龍誠「今のお前だと不安しかないんだよなぁ……って感じの106話スタート」


「くそっ!」

 

ガン!とヴァーリが檻の出入口を蹴っ飛ばすが、びくともしない。

 

ヴァーリだけじゃない。この場にはリアスを筆頭にグレモリー眷属やヴァーリチームに、サイラオーグや匙も入れられていた。

 

「やめておけ、俺の力でもビクともしなかったんだ」

「だがこんなとこに何時までもいれねぇだろ。おいアーサーお前のコールブランドで斬れないのか?」

「もう何度も試したでしょう」

 

サイラオーグに言いつつ、アーサーにヴァーリが問いかけるが、答えは見ての通りのものだ。すると、

 

「中々頑張ってるじゃねぇか」

『っ!』

 

リアス達は、声がして身構えると、そこには一誠とヴァレリー……そして、

 

「ギャスパー!」

 

リアスが檻から手を伸ばそうとするが、ギャスパーは身動きひとつしない。

 

「兵藤 一誠!ギャスパーに何をしたの!?」

「作り直しただけさ。正しく動くようにな」

 

一誠は笑うと、背後からリアス達まで現れる。戦兎達と戦ってた者だけではなく、ヴァーリやサイラオーグに匙などの新たな面子もいる。

 

「俺達?」

「俺の幽世の聖杯(セフィロト・グラール)を応用して作ったクローン……って所かな。何でお前達を捕らえたと思う?流石になんもねぇ所から作り出すのは難しいからな。だからお前達の細胞を採らせて貰った」

 

ヴァーリが唖然とする中、一誠はニコニコ笑って教え、

 

「そんなことをしてどうする気なの!」

「決まってるじゃないかリアス。今のうちに実験だよ。お前達を間違って殺したときに作り直せるかをさ。序でにまぁギャスパーは、停止世界の邪眼(フォービドウン・バロール・ビュー)を移植する都合上、今までいた方は殺しちゃったけどさ」

『……え?』

 

リアスだけじゃない。他の面子の表情が凍りつく。そんなはずはない。嘘だといってくれと。

 

「あぁ、勿論遺体は有効活用させて貰ったよ」

 

一誠はそう言って指を鳴らすと、一誠の影から醜悪な化け物が出てくる。だがその顔は、

 

「うそ……うそよ……」

 

リアスが、いやいやと首を振る。他の皆も思わず顔を背けそうになった。だがそこにある顔は、間違いなくギャスパーのものだ。

 

「狂ってる……」

 

匙が侮蔑を込めた目を一誠に向けるが、一誠は気に止めない。

 

「さて、折角だしこいつらの強さを見てみるのも一興だ」

 

パチン、と再度指を鳴らし、皆を絶霧(ディメンションロスト)の霧に包む。

 

瞬き程の一瞬の間に、気づくと投獄されていた城の外の開けた場所に立たされていた。

 

禁手化(バランスブレイク)

《VanishingDragon!BalanceBreaker!》

 

するとクローンヴァーリやサイラオーグ等が禁手化(バランスブレイク)し、白い鎧と黄金の鎧をそれぞれ身につける。

 

「なにっ!?」

「一部は神滅具(ロンギヌス)持っていた奴がいたからな。そいつらには、俺の神器創造(セイクリットクリエイター)で作った神滅具(ロンギヌス)を与えたんだ。さぁ、お前らやれ!」

 

一誠が指示を出すと、クローン達が襲い掛かる。

 

「ちっ!来るぞ!」

「リアス!しっかりして!」

「っ!え、えぇ……」

 

リアスは必死に自分を奮い立たせ、朱乃に礼を言いながら立ち上がると、

 

『変身!』

《潰れる!流れる!溢れ出る!ロボットイングリス!ブラァ!》

《潰れる!流れる!溢れ出る!ドラゴンインクローズチャージ!ブラァ!》

《デンジャー!クロコダイル!割れる!食われる!砕け散る!クロコダイルインローグ!オラァ!キャー!》

 

ヴァーリ達も変身し迎え撃つが、ヴァーリの前にクローンの白い鎧を着たヴァーリが突っ込み、ヴァーリを吹き飛ばす。

 

「ぐう!早い……!」

「くっ!」

 

サイラオーグも、禁手化(バランスブレイク)した、クローンサイラオーグと相対するが、

 

「厄介だな」

 

相手の拳を受け流し、カウンターを狙うがそれを避けられ、逆に一撃を入れられる。

 

他の皆もクローンの自分と戦うが、苦戦しているようだ。

 

「強さは互角。ただスタミナや魔力は無制限だ。時間かけてるとキツいぞ~」

 

一誠が言うように、クローン達はずっと全力攻撃で、本物のリアス達は疲れが出始めていた。しかし、

 

「はぁ!」

《フルフルマッチブレイク!》

 

クローン達の所に、エネルギー弾が降り注ぎ、

 

「おらぁ!」

 

クローズマグマに変身していた龍誠が、リアス達の間に入って、クローズマグマナックルを手に嵌め、拳を突き出すと、マグマで出来たドラゴンが飛んでいきクローン達を追撃。

 

《ファンキードライブ!》

「サイラオーグ様!」

 

トドメにフウのファンキードライブで吹き飛ばし、フウがサイラオーグに駆け寄る。

 

「へぇ、来たのか」

 

一誠が口笛を吹いて称賛する先には、戦兎達が立っている。

 

「皆!無事か!?」

 

龍誠が声を掛けると、皆は頷きを返す。それを見て一誠は、

 

「ふむ、流石に戦兎達まで来ちゃったか。思ったより早かったな」

「兵藤 一誠!」

 

と頭を掻いて見ていた一誠の元に、エルメンヒルデが来た。

 

「ん?どうした?」

「どうしたじゃありませんわ……貴方は何てことを!」

 

エルメンヒルデが叫ぶと同時に、上空からリアス達に何かが襲い掛かる。

 

「なに!?」

 

回避したリアス達だが、そこにいた無数の化け物達。それは見たことなかったが、

 

「約束が違いますわ!リアス・グレモリー達を引っ張ってくれば、私達カーミラ派の吸血鬼の命は救うと!」

「あぁ、だから殺しちゃいない。ちょっと改造しただけさ。ツェペシュ派の奴等も同じだぜ?」

 

ふざけるな!とエルメンヒルデは走り出し、一誠に飛び掛かるが、間にローブを被った男?が割って入り、左手を突きだしてエルメンヒルデを吹き飛ばす。

 

赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)?」

 

戦兎が思わず呟くが、確かにローブを被った奴は、ローブを外す。

 

「きちんと顔を見せるのは初めてですね。初めまして。私はユーグリット。ユーグリット・ルキフグス」

「ルキフグス……?」

 

皆怪訝な目をしたが、リアスは最もその感情を露わにした。

 

「ルキフグスって……グレイフィアの家?」

「えぇ、グレイフィアは私の姉です」

 

なっ!と皆が驚愕。なにせ現魔王の妻にして、戦兎達も幾度となく世話になっている。

 

「何でグレイフィアの弟が兵藤 一誠と!」

「彼とは利害の一致がありましてね。その為に彼とは同盟関係なんですよ。この赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)もその一環でいただきました。更に……」

 

これもね。とユーグリットは懐から取り出したのは、

 

「エボルドライバー!?」

 

戦兎が目を見張る中、ユーグリットはそれを腰に装着。

 

《エボルドライバー!》

「更にこれを」

 

と手に持ったのは、ドラゴンフルボトルとロックフルボトル。

 

《ドラゴン!ロック!エボルマッチ!》

 

ドライバーに挿し、レバーを回す。そして、

 

《Are you ready?》

「変身」

《ドラゴンロック!フッハッハッハッハ!》

 

ユーグリットの変身シークエンスが完了すると、そこに立っていたのは、全身が赤と黒を基調し、禍々しく尖っているクローズが立っていた。

 

「仮面ライダー……ヘルクローズ。でしたっけ?これ」




仮面ライダーヘルクローズ

パンチ力48t
キック力55.6t
ジャンプ力70m(ひと跳び)
走力1.2秒(100m)

本作のオリジナルライダー。

ユーグリット・ルキフグスが、エボルドライバーにドラゴンフルボトルとロックフルボトルを挿して変身する。

主な活躍は次回以降だが、素手だけではなくビートクローザーや、魔力を用いた戦法など、素の状態でも十分強いユーグリットが、赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)とライダーシステムを組み合わせて戦うため、スペック上はクローズマグマより劣るが、実際の力はスペック表より上なため、殆ど差はない。


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希望の光

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「グレイフィアさんの弟を名乗るユーグリット・ルキフグスは、何とエボルドライバーを用いて仮面ライダーヘルクローズに!」
龍誠「何やらマッドローグに変身すると思ってた人も多かったみたいだな」
戦兎「マッドローグはなぁ~。もうちょっと」
龍誠「しかしどんどん兵藤 一誠側が強化されてくけど大丈夫なのかぁ?」
戦兎「一応これって作者は既にエンディングを考えてるからな。寧ろエンディングから逆算して考えて作ってるから、寧ろこっからの方が作者的に執筆しやすいまである」
龍誠「まぁそんなわけだから心配せず見てな」
戦兎「つうわけで107話スタートだ!」


『っ!』

 

ヘルクローズへと変身したユーグリットは、エルメンヒルデに近付くと、首を掴んで持ち上げる。

 

「う……ぐ!」

「無駄ですよ」

 

エルメンヒルデは捕まれたまま、反撃をしようとするものの、ユーグリットは素早く拳をたたきこんで怯ませ、更に追撃の蹴りを入れて吹き飛ばす。

 

「やめろ!」

 

吹き飛ばした場所に、続けて襲い掛かろうとするユーグリットを止めたのは龍誠だ。龍誠は素早くクローズマグマナックルを手に、ユーグリットに殴りかかるが、ユーグリットはそれを避けてカウンター。しかしそこに匙が飛び蹴り……したのだが、

 

「残念ですが、貴方のクローズチャージでは最早スペックからして違いすぎますよ!」

「がはっ!」

 

ユーグリットはエボルドライバーから、ビートクローザーを作り出して、匙を叩き切る。

 

「匙!」

《鋼鉄のブルーウォーリア!タンクタンク!ヤベーイ!ツエーイ!》

 

戦兎がタンクタンクフォームになって、ユーグリットを抑え込もうとするが、

 

「くっ!」

 

びきっ!と戦兎の体の動きが止まり、動けなくなる。

 

「ギャスパーの能力か……?」

 

見てみれば、ギャスパーがこちらの動きを止め、更に、

 

《ボルテックブレイク!》

「っ!」

 

強烈なエネルギー弾が、戦兎を襲い吹き飛ばす。咄嗟に防御したが、それでもダメージはあるらしい。

 

「父さん……!」

 

戦兎は立ち上がり、忍に襲い掛かろうとするが、横からまた別のモンスターが来た。

 

「なんだ!?」

 

戦兎はフルボトルバスターで防ぎながら、そのモンスターを見ると、血が凍りつくような感覚を覚えた。

 

「ギャスパー?」

「ぐるぅうう!」

 

ギャスパーだった者は、ヴァレリーだったもの同時に戦兎に襲い掛かる。

 

「戦兎!」

「させませんよ!」

 

龍誠は戦兎の援護に向かおうとするが、それをユーグリットが通さない。

 

「がはっ!」

 

巨大な腕で吹き飛ばされ、戦兎は地面を転がるが、それをギャスパー達は追撃。しかし、

 

「はぁ!」

 

地面から蔓のようなものが生え、ギャスパー達を拘束。

 

「黒歌!もう少し押さえとけ!」

 

と、ヴァーリと美猴とアーサーが三人同時に飛び上がり、

 

《スクラップフィニッシュ!》

『はぁ!』

 

レバーを操作してキックを放つヴァーリと、それに合わせて攻撃する美猴とアーサー。だが、

 

《Ready Go!ボルテックフィニッシュ!》

「ふん!」

 

横から来た忍のボルテックフィニッシュが、ヴァーリ達三人を弾き、ギャスパーとヴァレリーが蔓を引き千切って、三人を横凪ぎで吹き飛ばした。

 

「皆っ!」

 

戦兎はヴァーリを救出しに行こうとするが、その間に忍がニンニンコミックに姿を変え、四コマ忍法刀を戦兎に向けて足止めする。

 

「諦めろ戦兎。言った筈だ。お前には何も救えないとな」

「まだだ!」

 

戦兎はフルボトルバスターを振り回して忍を狙うが、忍はそれを軽々と避けて、すれ違い様に腹部を斬り、振り返り様に背中を斬ってから蹴り飛ばす。

 

「ぐっ!」

 

戦兎はよろめきながら忍を見て、フルボトルバスターをバスターキャノンモードにして、忍を狙うが、クローンのギャスパーが腕から黒い靄のような物を出して、戦兎のフルボトルバスターを包んで、強引に奪い取ると反対の腕の靄で戦兎を殴り飛ばす。

 

「くそ!何でギャスパーが二人もいるんだよ!」

「気づいているだろう?」

 

忍は戦兎に間合いを詰め、四コマ忍法刀で斬る。

 

「あのギャスパー・ヴラディはクローンだ。じゃあ、あの化け物に変異したのはなんだ?あれは本物だったギャスパー・ヴラディ。というのは気づいてたんだろう?」

「……」

 

四コマ忍法刀を腕のキャタピラで弾きながら、拳と歯を噛み締めた。

 

「ふざけんな……」

 

戦兎は渾身の力で忍を殴り、

 

「ほぉ、怒りでハザードレベルを上げたか」

「ふざけんなよ!」

 

殴られつつも、フワリと回って着地した忍を、戦兎は睨み付ける。

 

「俺が知ってる父さんは……こんなことをする人じゃない!」

「当たり前だ。私はもうお前の知っている桐生 忍じゃない。何時までも子供の夢物語で生きてはいけないんだ」

 

戦兎はギリギリと歯を軋ませ、腰からジーニアスフルボトルを取り出した。

 

「それは……?」

「ジーニアスフルボトル。俺の全てを詰め込んだ、集大成にしてビルドの最強の強化アイテム。あんたを倒して、目を覚まさせるための力だ!」

 

戦兎はそう言って、ジーニアスフルボトルの起動スイッチに手を掛け、

 

「行くぞ!」

 

カチっとスイッチ押した。だが何も起きない。

 

「え?」

 

カチカチと戦兎は困惑しながら、何度もスイッチを押すが、何も起きない。

 

「な、なんで……!調整は完璧なはずなのに!?」

「ふ……失敗作だったか」

 

忍は四コマ忍法刀のスイッチを押し、

 

《火遁の術!火炎切り!》

「はっ!」

 

燃え上がる刀身は、戦兎に向かって襲い掛かり、

 

「がぁ!」

 

戦兎は吹っ飛びながら、変身が解除され、

 

「戦兎!」

 

リアスが戦兎に駆け寄る。

 

「はぁ……くそ!」

 

戦兎は立ち上がると、忍に立ち向かおうとするが、

 

「戦兎!待ちなさい!」

 

無茶をするなとリアスが止めるが、戦兎はそれを振り払う。

 

「くそ!何で動かねぇんだよ!使えさえすれば……」

「戦兎。こっちを見なさい」

 

父さんの目を、と戦兎が口にする戦兎に、リアスが静かに告げた次の瞬間、

 

「放っといてください!これは俺のもんだっ」

「いい加減にしなさい!」

 

スパーンっと戦兎の頬から、聞いてて気持ちいいほど見事な平手打ちが炸裂し、思わずそのまま尻餅をついた。

 

「ぶちょう?」

「何が父さんの目をよ……貴方が戦う理由はそんなことなの!?」

 

そんなことってなんですか!と戦兎が噛みつく。

 

「俺にとって……父さんがどんな存在だったか!」

「そうね、でも貴方はヒーローだったんじゃないの!?なのに父親のことで頭に血を上らせて……それでも仮面ライダービルドなの!?貴方が目指したものはそんなものなの!?」

「そんなものがなんだってんだ!分かってたんだ。俺の思いは結局父さんの受け売りだった。憧れだった父さんがそう言うから、自然とそう思うようになっただけだ。俺の思いは偽物だったんだ!それにどうせこの世界はお話の世界。俺が居なくたって回るし変わらない。俺だけが存在しない世界なんだ!だったらどうしようが勝手だ!」

「っ!」

 

リアスは思わず、戦兎の胸ぐらを掴み上げる。

 

「お話の世界ですって?じゃあ何かしら。私達が出会って、泣いて笑って、時には喧嘩したり仲直りして、大切な眷属を失って悲しい気持ちになったのも、全部物語のシナリオにあったことだからとでも言うの!?違うでしょ!」

「っ!」

「この世界がどんな世界でも、私達が見て、聞いて、感じたことは嘘じゃない。だって私達はここで生きてるのよ?」

 

その通りだぜ戦兎!とユーグリットの相手をしながら、龍誠が叫ぶ。

 

「お前がビルドを否定するなよ!受け売りだって良いじゃねぇかよ!少なくとも俺はな、そんなビルドに救われたんだ!ビルドがいたから、俺も誰かのために戦える仮面ライダーになれたんだ!」

「龍誠先輩の言うとおりです!」

 

龍誠に続き、小猫も叫ぶ。

 

「私だって先輩に助けてもらって……優しくてお人好しの先輩がいたから今ここにいるんです!」

 

小猫の叫びの中、アーシアが戦兎に駆け寄ると、回復に入る。

 

「戦兎さん。自分はいなくても回ると言いました。でもそれは違います。貴方がいたから、龍誠さんがいて、私もここにいるんです。貴方がいたから、私達の物語は始まったんです!」

 

そしてこちらに来る忍に、佑斗とゼノヴィアが割って入る。

 

「戦兎君!君は確かに本来はいないのかもしれない。でもね、僕たちのいるここでは、君はいるんだよ!」

「そうだぞ戦兎!誰がなんと言おうとな、お前は私達の仲間なんだ!ホントにいるとじゃいないとか、そんなの関係ないだろう!」

 

佑斗とゼノヴィアは忍に吹き飛ばされるが、そこに入れ替わるように朱乃にロスヴァイセとイリナが、忍に同時攻撃。

 

「戦兎君!貴方はいつも自信満々でした。愛と平和のために戦うことの厳しさを知りつつも、それでも戦い続けてきた。仮面ライダービルドであろうとしていた!それを選んだのは他でもない貴方よ!」

「初めて会ったとき。変わってる子だと思いました。でもお人好しで意外と義理堅い優しい子です!それが例え誰かの受け売りだったとしても、それを貫いたのは貴方の強さです!」

「戦兎君はさ、昔からヒーローになるんだっていってたよね!化学は誰かを幸せにするためのものだっていってたよね!?真っ直ぐな目をして、いつも楽しそうにいってたじゃん!それも否定するの!?」

 

三人の同時攻撃を、忍は姿を消すと二人の背後に現れ、四コマ忍法刀を振り上げた。

 

《スクラップフィニッシュ!》

《スクラップブレイク!》

《クラックアップフィニッシュ!》

「っ!」

 

そこにヴァーリ・匙・サイラオーグのトリプルキックが炸裂。忍は咄嗟に四コマ忍法刀で防ぐが、流石に三人同時に押し込もうとすると、動きが止まる。だが、

 

《エボルテックフィニッシュ!》

『っ!』

《チャオ!》

 

三人を仮面ライダーエボルに変身した一誠が、エボルテックフィニッシュで吹き飛ばす。

 

「ちぃ!兵藤 一誠まで来やがったか!」

「へっ!それがどうした!いくぞお前ら!」

「あぁ!」

 

匙の文句にヴァーリが笑い、サイラオーグも続いて走り出す。

 

「おいおい、諦めろよ!今更スクラッシュドライバーなんぞで変身してるお前らじゃ、俺には勝てねぇんだよ!所詮はお前達は戦兎と龍誠の壁となり、ハザードレベルを上げるためだけの存在なんだからな!」

「うるせぇ!」

 

ヴァーリはツインブレイカーをアタックモードにすると、一誠を殴る。

 

「勝てるかどうかじゃねぇんだよ!やるしかねぇんだ!例えてめぇより劣ろうとな、ベルトをつけて!変身してるときの俺は仮面ライダーグリスだ!俺の知ってる仮面ライダーはな!どんなときでも勝つために心火を燃やして戦うんだよ!」

「皆の笑顔のため、愛と平和のためにアイツは戦ってた!俺だって仮面ライダーだから負けられねぇ!」

「大義のため、そしてアイツが謳った仮面ライダーの信念のため、俺達は決して折れん!」

 

三人は連携して一誠と戦うが、

 

「鬱陶しいんだよ!」

 

デュランダルを取り出した一誠は横凪ぎで三人を弾き飛ばすと、赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の力で倍増させて纏めて凪ぎ払う。

 

『がはっ!』

『まだまだぁ!!』

 

その余波で他の皆も吹き飛ぶと、一誠の頭上から黒歌・美猴・アーサー・ルフェイのヴァーリチーム四人が飛び掛かった。

 

「何やってんのよ戦兎!私から白音を守ったときのあんたは死ぬほど厄介で怖かったわよ!でもね、誰よりも優しくて頼りになるって思ったから託したんだから!」

「今時ヒーローなんて流行らねぇよって思うけどさ、でもおめぇは何時だってそれを誇りにしてただろうが!父親に言われたからなんだってんだ!お前が歩んで積み重ねたもんがあるんじゃねぇのか!」

「妹に付き合って見させてもらいましたがね。仮面ライダービルド。悪くないと思いますよ。綺麗事でも夢物語でも、それを現実にしたいと願って足掻いて何が悪いんですか。そう簡単に認められないから、足掻いてるんですから」

「私は仮面ライダービルドが大好きです!カッコ良くて誰かの明日を作るために戦う。それの何が悪いんですか!」

 

そこに更に光の槍と歯車が降り注ぎ、その合間を縫ってアザゼルフウが一誠に襲い掛かった。

 

「戦兎!お前はよ!確かに変わりもんだ。でもな、例えお前が本当にここにはいないはずの人間だったとしても、お前は俺の生徒だ!それにな誰が何と言っても、ラブ&ピースのために戦って、皆と一緒に泣いておこって笑ってきたお前をな、もうこの世界の人間じゃねぇなんて言う奴なんかいねぇぞ!」

「例え始まりがどんなであろうと、大切なのはそれで何を為したかです!貴方は仮面ライダーとして戦い、そしてこれだけの仲間に出会った。それが答えなんじゃないんですか!」

「邪魔だぁ!」

《Ready Go!エボルテックフィニッシュ!》

『ぐっ!』

 

アザゼル達を一誠は吹っ飛ばすと、クローン達が一誠の元に集結。そして、

 

「最後は、自分達にやられて消えな!」

 

そう言って皆は力を解放し、一斉掃射。閃光と轟音が戦兎達を包み込む。筈だった。

 

『え?』

 

戦兎達と一誠達との間に、黒い壁が出現し、一誠達の一斉攻撃を防いだのだ。

 

厳密には防いだと言うより、飲み込んだに近いのだが。

 

「なんごぶ!?」

 

なんだ!?と驚いた一誠の横っ面を、何か黒い靄のようなものが叩きつけられ、真横に吹き飛んだ。

 

クローン達が咄嗟に、その犯人に向けて攻撃しようとするが、既にその頃には黒い靄で作られた翼で空に飛んで逃げる。

 

「そうですよ先輩。貴方目指したものは、僕を変えてくれました!先輩が例えどんな形であっても、格好いいヒーローだったから、僕は勇気を出せるようになったんです!」

 

そう叫ぶのはクローンのギャスパー。だが言葉の内容は、まるで今まで一緒にいたギャスパーのようだ。と思っている間に、ギャスパーはこちらに降りてきた。

 

「ギャスパー……なの?」

「はい部長!ギャスパー・ヴラディ。ただいま帰還しました!」

 

何が何やらわからず、リアスだけではなく皆が困惑する。

 

「でも兵藤 一誠に殺されて……」

「あぁ、何と言うかですね。気づいたら目覚めたと言うか……多分僕の停止世界の邪眼(フォービドウン・バロール・ビュー)が関係してるっぽいんですけど、何かよくわかんないし変な黒い靄のようなのが出るようになっちゃったし……」

 

と言ってギャスパーは、右手からまた靄のようなのを出す。

 

「どうなってやがんだ?」

「恐らくだが、ギャスパー・ヴラディの停止世界の邪眼(フォービドウン・バロール・ビュー)に宿っていた魔神・バロールの力ごと移植することで、人格ごと移った…のか?」

 

一誠に仮説を言いながら、忍はギャスパーを見る。

 

「そうか……そういや元々の人格自体が魔神・バロールから変質した物だったか……あーくそ。そんな設定もあったっけ。その辺関係か。イライラすんなぁ」

 

と苛立った様子の一誠を尻目に、戦兎は立ち上がる。

 

「戦兎?」

「さいっあくだ」

 

リアスの問いかけに、戦兎は頭をガシガシ掻きながら、天を仰ぐ。

 

「俺、こんな大事なこと忘れてた」

 

戦兎はそう言い、ビルドドライバーを腰に装着。

 

「部長!皆!ごめん。でも思い出した。俺は駒王学園の2年にしてグレモリー眷属のポーン。愛と平和のため戦うナルシストで自意識過剰な正義のヒーロー。仮面ライダービルドこと、桐生 戦兎だってな!」

 

戦兎が宣言すると、皆は顔を見合わせてから、 笑みを浮かべる。そして、

 

「後は任せてください!」

 

戦兎はそう言って、前に出ると忍を見据えながら、ジーニアスフルボトルを手にする。

 

「父さん。俺は間違ってたよ」

「ほう?」

「俺は確かにあんたへの憧れからヒーローに憧れた。そしてあんたがそれを否定するから俺もそれが間違いだったんじゃないかって……そう思い掛けた。でもその憧れから始まった事が、俺を皆と出会わせてくれた。俺はこの世界にいて良いんだっていってくれた。だから俺は自分がしてきたことを信じる。これからも仮面ライダービルドであり続ける。アンタが正義のヒーローなんて夢だと言うなら、俺が現実にして証明する!そして、俺は父さんを……いや、桐生 忍を越えて見せる!」

 

戦兎は叫びながら、ジーニアスボトルの起動スイッチを押す。

 

《グレート!》

 

戦兎の覚悟に呼応するように、ジーニアスフルボトルは起動し、それをビルドドライバーにセット。

 

《オールイエイ!ジーニアス!》

 

戦兎はレバーを回すと、地面から台座のようなものが競り上がり、背後にベルトコンベアーが出現し、フルボトルが流れていく。

 

《イエイ!》

《イエイ!》

《イエイ!》

《イエイ!》

 

どんどんレバーを回し、戦兎は静かに構えて唱える。いつだって自分を奮い立たせ、正義の味方に変えてくれる魔法の言葉を。

 

《Are you ready?》

「変身」

《完全無欠のボトルヤロー!ビルドジーニアス!》

 

変身シークエンスが起動し、白い素体に変わると、全身にエンプティフルボトルが次々刺さっていく。

 

これは戦兎が考え、作った仮面ライダービルドの集大成。戦兎の積み重ねた全てを詰み込んだ、最高のアイテム。

 

《スゲーイ!モノスゲーイ!》

「さぁ、実験を始めようか」

 

それを見た祐斗は、少し笑う。

 

天才(ジーニアス)か。戦兎君らしいかな」

「そうかもな」

 

それにアザゼルは頷く。

 

「だが知ってるか木場。ジーニアスって言葉にはまだ意味がある」

 

え?と祐斗が疑問符を浮かべると、

 

「ジーニアスって言葉の語源であるラテン語だとな。こういう意味があるんだ」

 

アザゼルはニッと笑いながら、教えてくれる。

 

「守護神。ってな」




ゼロワン次回最終回って嘘やん。


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守護神

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「皆からの声援を受け、遂に俺は最強アイテムであるジーニアスフルボトルを起動し、ジーニアスフォームへと変身!」
龍誠「さぁ兵藤 一誠に反撃開始だ!」
戦兎「まぁコメントでホントにジーニアスで大丈夫なのかぁ?って聞かれまくったけどな」
龍誠「まぁ兵藤 一誠だもんなぁ……」
戦兎「ま、その辺がどうなるかなこの後の108話をお楽しみに!」


「あれが桐生 戦兎の新たな力か……」

 

一誠はそう言って立ち上がろうとするが、それを忍が制する。

 

「私が相手をする」

「そうかい。ならどうぞ」

 

忍は四コマ忍法刀を手に、戦兎に向かって走り出す。それを戦兎は迎え撃つが、次の瞬間忍は消え、背後に現れると、戦兎に切りかかる。

 

「戦兎!」

 

リアスが叫んだ。しかし、

 

「なに!?」

 

戦兎の背後にもう一人ジーニアスフォームの戦兎が現れ、真剣白刃取りで止め、別の戦兎が蹴っ飛ばして忍を吹き飛ばす。

 

「はぁ!」

 

続けて戦兎は手を突きだすと、茨が伸びて忍を掴み、電流が流れる。

 

「がぁああああ!」

 

そしてそのまま自分の元に引っ張り戻し、レバーを一回回した。

 

《ワンサイド!》

 

すると体が暖色系に光り、右腕にエネルギーが集まると、引き戻した忍を殴り飛ばす。

 

《Ready Go!ジーニアスアタック!》

 

そこにクローン達が戦兎に一斉攻撃をするが、

 

「あれは……」

 

自分の回りをダイヤモンドで作った壁を出して防ぎ、クローン達に炎や電流を纏わせた、針を射出して牽制すると、そこから小型のUFOを多数出して、クローン達を襲わせる。更に戦兎はスマホの画面を空中に出して、そこに飛び込むと、更に多数のスマホの画面が出現し、

 

「よっ!」

 

画面から飛び出した戦兎は、すれ違い様にフルボトルバスターで斬り、別の画面に飛び込むのを何度も繰り返していき翻弄。そして、

 

《ワンサイド!逆サイド!Ready Go!》

 

レバーを二回回しながら、画面から飛び出した戦兎は寒色系に光りながら、回し蹴り。

 

《ジーニアスブレイク!》

「はぁ!」

 

その衝撃でクローン達を吹き飛ばし、戦兎は一誠を見る。

 

「どうなってんだ?それ」

「このジーニアスフルボトルには俺の持っている、60本のフルボトルの成分全てが入ってる。それにより今までにない組み合わせ。生物系同士や無機物系同士。後は三つ以上のフルボトルの組み合わせを行うことが出来る」

 

成程ね、と一誠は笑いながら、ロンギヌストリガーをセット。

 

《オーバー・ザ・エボリューション!》

「だが、俺の前じゃ無意味だ」

《ロンギヌス!ロンギヌス!ロンギヌス!レボリューション!フハハハハハハハハ》

 

ロンギヌスフォームに変身した一誠は、戦兎に飛び掛かる。

 

戦兎はそれを姿を歪ませて惑わし、避けると一誠の胸に一発。普通であれば、その程度の一撃で一誠にダメージは与えられない。筈だったが、

 

「あがっ!」

 

一誠は突如苦しみ、体に電流が走る。

 

「な、なんだ!?」

 

その中近づいてくる戦兎に、一誠は手を出して、神器(セイクリットギア)で攻撃をしようとするが、

 

「せ、神器(セイクリットギア)がでない!?」

《ワンサイド!》

「あぁ、だろうな」

《Ready Go!ジーニアスアタック!》

 

戦兎の拳が一誠に刺さり、後方に吹き飛ばす。

 

「じ、ジーニアスの力か!」

《ワンサイド!逆サイド!》

「あぁ、変身して理解した。元々こんな力は無かった筈なんだがな。それこそ神様からの贈り物かもな。まぁ俺は悪魔だけどな!」

《Ready Go!ジーニアスブレイク!》

 

戦兎は更に蹴りで、一誠を蹴り飛ばす。

 

「このジーニアスの能力は、神器(セイクリットギア)だろうが神滅具(ロンギヌス)だろうが、俺に触れられると一時的に使えなくなると言うものだ。そしてロンギヌストリガーによるロンギヌスフォームは、神滅具(ロンギヌス)をエネルギー源としている。だがそれに不調をきたせば……お前のロンギヌスフォームが大幅に弱体化する!」

「ふざけやがってぇ!」

 

一誠は歯軋りしながら戦兎に殴りかかるが、その拳をキャッチして掴むと、体から強烈なエネルギーが迸った。

 

「な、なんだ!?」

「そしてこの力はな。この世界の全てを守るための力だ。だからこの世界に仇をなし、この世界に悪意を持つものと戦う限り、ジーニアスは負けない!」

 

迸るエネルギーが赴くままに一誠を殴り、後ずさった一誠の背後に瞬時に回り込むと背後から一発。炎や電流のみならず、様々な属性の攻撃を単体で、時にはミックスして次々叩き込んでいく。

 

「がはっ!」

 

最後に強烈な顔面右ストレートを叩き込み、一誠は地面を転がると、

 

「これで終わりだ!」

 

戦兎は飛び上がってレバーに手を掛けたが、

 

「ヴァレリー!ギャスパー!俺を守れぇ!」

『っ!』

 

一誠の叫びに呼応し、モンスターへと変貌したヴァレリーとギャスパーは、一誠を庇う。

 

「ヴァレ……!」

 

本物のギャスパーが思わず叫ぼうとした瞬間。

 

「俺を信じろ!」

「っ!はい!」

《ワンサイド!逆サイド!オールサイド!》

 

戦兎はレバーを三回以上回すと、全身を七色に発光させて、線グラフの上に乗るとキックの体勢に入る。

 

《Ready Go!》

「いっけぇええええ!」

《ジーニアスフィニッシュ!》

 

背中から七色の翼も出し、戦兎は線グラフに乗って一気に降下。そしてそれはギャスパーとヴァレリーに炸裂。だが、

 

「なにっ!?」

 

戦兎のジーニアスフィニッシュが当たったヴァレリーは、侵食され変質して部分が崩れていき、その代わり本来の肉体が再構築されていく。ギャスパーも同様で、更に同時に元々の肉体にはダメージを負わせていない。しかし、一誠にはダメージが通っており、

 

「ぐぁああああああああああ!」

 

爆発と同時に、戦兎はヴァレリーとギャスパーを引っ張って爆炎から脱出。

 

「ヴァレリー!」

 

ギャスパーは叫んでヴァレリーの元に駆け寄ると、

 

「うぅ」

「生きてる……?」

 

ギャスパーはホッとすると、自分の体だったものを見て、腕から影を出すと、その体を影で呑み込んでいく。

 

「どうするんだ?」

「まだこの体には変異の駒(ミューテーションピース)が残ってるので、体ごと取り込んじゃおうかなと」

 

そんなことも出来るのか……と皆が思っていると、ガラっと音をたてながら、一誠は瓦礫の下から出てきた。

 

「ふざけんなよ……」

 

ブツブツと、変身が強制解除された一誠は喋りながら、戦兎を淀んだ目で見る。

 

「邪魔すんじゃねぇよ。俺は主人公だぞ……兵藤 一誠だぞぉ!」

 

ビキィ!と一誠の体が軋みを上げると、一瞬赤黒く歪み変質し始めようとしたが、

 

「一旦引くぞ」

 

と忍が四コマ忍法刀を起動し、一誠と共に消える。

 

「一旦ここまでですかね。それでは」

 

ユーグリットも一緒に消えていき、戦兎達だけが残される。そこに、

 

「おい戦兎!気を付けろ!」

「あぁ!」

 

襲い掛かってきたのは、吸血鬼だった者達。しかし、戦兎は慌てずフルボトルバスターを構えると、ベルトのレバーを三回回す。

 

《ワンサイド!逆サイド!オールサイド!Ready Go!ジーニアスフィニッシュ!》

 

すると、全身が輝くほど迸るエネルギーは、フルボトルバスターに取り込まれ、フルボトルの形状に変化する。

 

《ファイナルマッチデース!ファイナルマッチブレイク!》

 

戦兎はその銃口を空に向け発射。虹色の光となったそれは、拡散し地面に降り注ぐ。すると、先程まで一誠の手によって化け物だった者達は、次々と元の姿に戻り地面に倒れる。

 

「そんなこともできんのかよ」

「言っただろ?ジーニアスは対兵藤 一誠用の切り札だってな」

 

思わず感心した龍誠に、戦兎は何時もの自慢げで、でもどこか優しさのこもった笑みを浮かべる。まぁ仮面の下なので、一見分からないが、他の皆はちゃんとわかっている。

 

「取り合えずこれでひとまずは一件落着ね」

「まぁまだ兵藤 一誠の件が片付いた訳じゃねぇけどな」

 

リアスの呟きに、アザゼルは同意しつつもため息をつく。しかし戦兎は、

 

「大丈夫ですよ。例えまた兵藤 一誠が出てきたって構いません。何度だってアイツの野望は打ち砕いて見せます。この仮面ライダービルドがね!」

 

ドン!と胸を叩き、アピールする戦兎に、皆は思わず笑う。そんな光景を見ながら、

 

(そう言えば、こうして皆で笑うのは久しぶりね)

 

とリアスが少し感慨深げだったのは、余談だろう。




仮面ライダービルド ジーニアスフォーム

戦兎が対兵藤 一誠用に開発したビルドの最強フォーム。

単純なスペックは、クイーンの力を上乗せしているのもあり、ビルドのフォームの中ではトップクラス。

全てのフルボトルの力を好きな組み合わせで、更に好きな数組み合わせて使うことが出来る上に、フォームチェンジを用いずに、ノーモーションで行うことが可能。

だがその真価は、触れた相手の神器(セイクリットギア)を一時的に使用不能に出来ること。これは神滅具(ロンギヌス)でも関係なく、その能力自体も無効化できる。

例えば、赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)で倍加した場合。触るだけでそれを解除できる。ただし、倍加した力を魔力弾等に上乗せして撃つ場合、戦兎に触れた瞬間、倍加自体は解除されるが、素のままの魔力弾は残るため、その点はリゼヴィムの神器無効化(セイクリットギア・キャンセラー)には劣る。

ただ、この無効化能力は赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の透過も無効化することが可能。

元々、兵藤 一誠は神器(セイクリットギア)を120%使いこなす才能と、神器(セイクリットギア)自体をガン積みすることで今の強さを得ているため、神器(セイクリットギア)を使用不能にされるとただの人間と同等になる上に、ロンギヌスフォーム時にやられるとエネルギー不足により、更に大幅な弱体化を喰らい、寧ろコブラフォームよりも弱くなってしまうと言うデメリットがあるため、非常に兵藤 一誠と相性が良い。

更に、ジーニアスフルボトルの特性で、悪意を感じるとスペックにブーストが掛かる。つまりこの世界に害をなそうとするものがいて、戦兎がその前にたつヒーローで有る限り、ジーニアスはどこまでも強くなる。

必殺技は、生物系のフルボトルの力を全て解放して放つ《ジーニアスアタック》・無機物系のフルボトルの力を全て解放して放つ《ジーニアスブレイク》・そして60本全てのフルボトルを解放して放つ《ジーニアスフィニッシュ》で、ジーニアスフィニッシュは、一誠の魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)の力によって、肉体を侵食された人物を安全に元に戻すことも出来るなど、攻撃以外でも非常に強力。

そしてフルボトルバスターを持った状態で、ジーニアスフィニッシュを発動すると、ジーニアスフィニッシュのエネルギーが一時的にフルボトルの形状に変化し、フルボトルバスターに装填。そこから発動する《ファイナルマッチブレイク》があり、これは広範囲にジーニアスフィニッシュの治癒能力を撒き散らすことが可能。勿論攻撃も出来る。


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告白

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「新たな力。ジーニアスフォームにより兵藤 一誠を返り討ちにしたが……」
龍誠「つうかジーニアス強すぎじゃね?俺のクローズマグマにもなんかこうないの!?」
戦兎「そりゃ順当にクローズを進化させたクローズマグマと、兵藤 一誠を倒すためだけに作ったジーニアスじゃ、色々違ってくるでしょうが。それに単純スペックならこっちでは、お前のクローズマグマの方が若干上だぞ?」
龍誠「でもなぁ~」
戦兎「ま、頑張ってハザードレベルあげていけよってな感じの109話スタート!」



「よぅ」

「あ、先輩……」

 

吸血鬼領での激戦の次の日の夜。激戦の後は色々な事後処理もせねばならず、その辺りも含めてやって来たため、このリアス達の屋敷に帰ってきたのは、何だかんだでついさっき。

 

そして皆は各々全身の力を抜いて、平穏を享受していた。

 

そんな中、小猫は外の空気が吸いたくて、バルコニーに出ていたのだが、戦兎が出てきたのは正直気まずい。

 

「あの、失礼します」

 

小猫は足早にそこを去ろうとするが、それを戦兎は手を掴んで止める。

 

「ちょ、ちょっと待てって」

「な、何です?」

 

突然手を掴まれ、少し頬が熱くなる。フラれても、それでもやはり自分はこの人が好きなのだと、否が応にも自覚してしまう。

 

「少し話をしないか?」

「話?」

 

そんな戦兎からの誘いに、小猫は首を傾げながら、取り合えず話を聞くことにする。

 

「あぁー。そのだな。あれだ。あれあれ」

「?」

 

と妙に歯切れが悪い。戦兎は基本的に物事をはっきりと言う性格なので、自分から何か話題を切り出す際には、余りこのような切り出し方はしない。まぁ相手から、不意に聞かれたくないことを、突然振られたりすると結構狼狽したりするが。

 

そんな戦兎だが、妙にソワソワとしていた。

 

「もしかして私の取っといたケーキ食べました?チョコレートのやつ」

「え?あれお前のだったの?」

 

二人の間に木枯らしが吹く。

 

「食べたんですね……?」

「い、いやぁ……帰ってきたら腹減ってたもんでごめんなさい!」

 

ゴゴゴゴと小猫の纏うオーラが強まり、戦兎は土下座である。最近土下座をすることに抵抗がなくなったような……等と考えつつも、

 

「あいや、一旦それは横に置いといてだな」

「あれすごい楽しみにしてたんですけど……」

 

こ、今度買うから!と戦兎は小猫を宥め、咳払いしてから会話を再開。

 

「塔城。ちょっと話があるんだ」

「はぁ、何でしょうか?」

 

一体何が話したいのかと思いつつ、小猫は改めて聞く体勢になる。

 

「あぁ~。この前のデートの最後の話なんだけどさ」

「っ!」

 

ビクっと体を震わせ、小猫は視線を逸らしつつも、

 

「どうかしましたか?」

「いやあのさ、あれ嘘なんだよ」

 

は?と小猫は怪訝な目を向けると、戦兎がちょっと待てと言う。

 

「俺さ、兵藤 一誠を倒すため自爆覚悟だったからさ、最後くらいお前とデートして、嫌われ役になろうと思ってた」

 

バルコニーの柵を背もたれにし、戦兎は話を続ける。

 

「でも結局何だかんだで生き延びて、一応俺周りの決着もついたら、改めてお前との関係も決着着けねぇとなって」

「決着?」

 

話の全貌が見えず、小猫は益々困惑する中、戦兎は話を更に続ける。

 

「お前の嘘をついたのは、俺の未練だったからだ。俺を何だかんだ慕ってくれて、俺を好きでいてくれる。そんな大切な後輩だったからさ。だから自爆するときも、お前のことが頭をよぎった」

 

だから……と戦兎はそう言って、小猫の目を見ると、

 

「塔城 小猫さん。俺とお付き合いしてもらえませんか?」

「……」

 

一瞬。戦兎が何を言っているのか分からず、呆然と仕掛けたものの、

 

「え?私の事そういう風には見れないって……」

「それこそ嘘に決まってるだろ」

 

戦兎の言葉を聞いて、小猫の両目からポロポロと涙が零れ落ち、戦兎は目を見開く。

 

「お、おい!泣くなよ」

「だって、私をそういう風には見れないって言われて、悲しくて、でも嘘で、意味がわからなくて……」

 

すると戦兎は、ソッと小猫の目元を指先で拭う。

 

「ごめん。あのときはそれが良いと思ったんだ。でもお前を傷つけた。ごめん」

「……許しません」

 

小猫は戦兎の手を取ると、キッと睨み付ける。

 

「一緒に歩くときは手を繋いで、毎日好きだっていってくれて、キスもしてくれて……あとちゃんと名前で読んでくれるなら、まぁ許してあげないこともないですけど」

 

小猫の言葉に、戦兎は笑みを浮かべて頷くと、

 

「分かったよ。小猫」

「はい。戦兎さん」

 

ギュッと小猫は戦兎に抱きついてくる。それを戦兎も抱き締め返し、

 

「えぇと……取り敢えずじゃあ付き合うってことで良いのか?」

「言わせないでくださいよ。察してください」

 

と小猫は言うので、戦兎は苦笑いしてしまう。そう言うことで良いらしい。すると、

 

「じゃ、じゃあ約束を守ってください」

「約束?」

 

戦兎は意味がわからず首をかしげるが、小猫はゴニョゴニョ言いつつも、

 

「ゆ、許すときの条件です……」

 

耳まで真っ赤にして、小猫は言う。そんな姿が、堪らなく可愛いのだが、今はからかうのはやめておこう。それくらいのムードは読める。

 

「好きだよ。小猫」

「ん……」

 

戦兎は膝を折り(身長差的に立ったままだと目線が同じにならない)、小猫の肩にソッと触れてから、言葉を口にし、そのまま互いの唇を重ね合わせる。

 

触れさせあうだけの、簡単なキスだった。だがお互いの顔が、真っ赤になって熱を持ったのに気づく。

 

「お前顔真っ赤だな」

「戦兎さんこそ……それに私ははじめてなんですから」

「俺だってそうだよ」

「御姉様としてました」

「あれは医療行為だろ」

 

小猫は頬を膨らませ、戦兎は笑いながら小猫の頭を撫でながら、

 

「どうしたら機嫌直してくれる?」

「……キスをもう一回」

 

それくらいでよければ、と戦兎と小猫が顔を近づけあった次の瞬間。

 

「あ、ちょ!」

『ん?』

誰かの悲鳴と共に、ドサドサっと音を立てて何人かが折り重なって倒れた。どうやらこちらを覗き見してたらしい。

 

「お前ら……」

 

戦兎は頭を抱え、相手を見る。それは仲間達だ。

 

「いやぁ、あはは」

 

龍誠は、参ったねこりゃと笑って、

 

「あ、俺達行くから続きどうぞ」

「出来るか!」

 

と戦兎は叫ぶが、

 

「何耳まで赤くしてんのよ」

 

といってきたのは黒歌。だが彼女は次の瞬間、

 

「私とあんだけキスしまくったくせに」

『ぶ!』

 

突然の爆弾発言。それに思わず戦兎は、

 

「あ、あれは医療行為だっ……て?」

「そうですか」

 

ゴゴゴゴと、先程より空気が重くなり、小猫の目が据わっている。

 

「しまくった……ですか」

「ち、違うんだ小猫。誤解なんだ」

「そうですかへぇ……」

 

おい黒歌!どうにかしろ!と戦兎が見た頃には、既に彼女の姿はなく、それどころか他の皆も距離を取って、

 

『それじゃあ後はごゆっくり』

「あ!」

 

パタン。とバルコニーの窓を閉められ、戦兎は、小猫の方をゆっくり見る。

 

「お話。しましょうか」

「あ、はい」

 

今度は戦兎が涙を流しながら、小猫と話し合う。因みにこの件で、二人の上下関係が決まるのだが、まあそれはどうでも良いことだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃。

 

「ふざけんなよぉおおおお!」

 

一誠は大荒れだった。それを見ていた忍とユーグリット。そこに、

 

「荒れてんねぇ。イッセーキュン」

「リゼヴィムか……」

 

一誠は やって来た初老の男に、顔を向ける。

 

「今お前のからかいに冷静でいられないぞ……」

「そう言うなって、面白い異世界を見つけたんだ」

 

リゼヴィムは手に持った装置を押すと、天井に映像写し出す。

 

「なんだあの耳に変な装置を着けてる奴等は……」

「なんでもこの世界は人間とロボットが共存する世界らしい」

 

そしてこのロボットは名前があるらしいぜ?とリゼヴィムは言うと、

 

「確か名前は……そう、ヒューマギアだ」




はい。と言うわけで今回で16章は終了です。如何がでしたか?

この章ではジーニアス登場もありましたが、戦兎の集大成であり、戦兎が今までしてきたことの結果が分かる章でもありました。それはビルドで居続け、そして皆と共に生きてきた戦兎と、それを見てきた皆の戦兎への思いが明かされる章であり、例えこの世界に本来いなくても仲間達に必要とされ、そして認められた戦兎と、兵藤 一誠であり、この世界に居て良いはずの彼が逆に皆から否定される。と言うある意味で対比となっていたりもしました。

そして遂に小猫ともくっつきましたね。えぇ、二人には幸せになってほしいものです。黒歌もね。これから絡ませていきましょう。

ですが次回はオリジナルストーリー。最後に出てきた名前で何なのか分かるかもですが、まあそれはね。次回でね。と言うわけで次章【夢へ飛ぶライジングホッパー編】でお会いしましょう!


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第十六章 夢へ飛ぶライジングホッパー編
01


人とヒューマギアが笑い会える世界を作るために戦った正義のヒーロー。仮面ライダーゼロワンこと飛電或人の最後の戦いから数ヶ月。彼の元に新たな戦いが舞い込む。

一方。それは仮面ライダービルドこと、桐生戦兎の元にも迫っていた!

これは異なる世界の仮面ライダーを巻き込んだ、最大級の戦いの物語!

「愛と平和のために!」
「人間とヒューマギアが笑える世界を作るために!」
『俺たちはこの力を使うんだ!』

戦兎「ってな感じの110話スタート」
龍誠「あ、これ前書きか」


「あー……疲れたぁ」

 

とあるビルの一角にある社長室にて、机に突っ伏す青年が一人。

 

彼の名は飛電 或人。この飛電インテリジェンスの若き社長にして、仮面ライダーである。

 

そんな彼だが、滅亡迅雷と呼ばれるテロリストとの戦い。ZAIAとの会社をかけた戦い。そしてアークとの決戦等々、数々の戦いを乗り越えた、今は歴戦の勇士だ。

 

そんな彼だが、今や平穏な世界では仮面ライダーとしてよりも、飛電インテリジェンスの社長としての業務が中心。

 

飛電インテリジェンスは、人工知能を搭載した人形ロボ、ヒューマギアの製造や販売を行う会社で、業務はそれに関する書類の確認や、判子を押す作業が殆ど。とは言え、現在ヒューマギアの需要は上がるばかり。となればその分社長としてやることも増えていく。

 

それが意味するのは、社長である或人の疲労が増えると言うことだ。

 

そこに、

 

「社長。お客様です」

「よう社長」

 

先に入って或人に話し掛けてきたのは、社長秘書ヒューマギア・イズである。

 

自分が仮面ライダーとして戦い始めた時から、彼女には……いや、前の彼女にはお世話になり続けた。それは仮面ライダーとしてだけじゃない。社長としてもだ。

 

様々な困難を共に乗り越え、歩んできた大切な存在。それがイズだ。

 

そんな彼女だが、今は新しく生まれ変わり、改めてラーニングし直している最中である。

 

そしてその後ろからビニール袋を片手に、イズに連れられてきた男性は、不破 諌。仮面ライダーバルカンとして、或人と共に戦ってきた戦友。現在は変身できなくなっているが、今もたまにこうして顔を出しては、お土産を持ってきてくれる。

 

「今日も大変そうだな」

「そうなんだよ不破さん。最近は平和だけど、その分社長業が忙しくてさ」

 

そうぼやく或人に、不破は苦笑いを浮かべながら、袋を社長机に置く。

 

「この間助けた人から貰ってな。量が多いからお裾分けだ」

 

そう言って渡された袋を見ると、色々なお菓子が詰め込まれている。

 

「お茶を淹れてきますね」

「うん。お願い」

 

それをみたイズが一度社長室を出ると、

 

「まだラーニング中か」

「まあね。でものんびりやっていくよ」

 

不破にそう言って笑い掛けながら、或人が袋の中からお菓子を一つ取り出した時、

 

『っ!』

 

突然の爆発と同時に社長室の壁が壊れ、そこに何かが飛び込んできた。

 

「なんだ!?」

 

或人と不破がその方を見ると、そこに立っていたのは、腕に鋭利な刃が付き、牙と角が生えたまるで爬虫類と言うか、恐竜?のような姿の、化物が立っていた。

 

「ゼロワン……だな」

「なんだお前は」

 

或人と不破は警戒しながら相手を見る。自分達が戦ってきた、マギアと呼ばれる相手とは明らかに違う。

 

かなり生物的なフォルムの相手だ。

 

「我が名はザウス。お前の力を貰う!」

『っ!』

 

突如ザウスと名乗った相手は、そのまま或人達に襲い掛かり、

 

「くそ!」

 

不破が避けた後に殴りかかるが、不破の拳をものともせず、拳を受けながらも胸ぐらを掴み、そのまま壁に投げて叩きつける。

 

「不破さん!」

 

或人は不破に声を掛けつつも、ザウスを見る。

 

「とにかくやるしかないか」

 

そう或人は言うと、上着の内ポケットから黄色と黒を基調にし、赤いラインが入ったドライバーを出す。

 

《ゼロワンドライバー!》

 

そして次に黄色いバッタの絵が入った、プログライズキーと呼ばれるものを取り出すと、それのスイッチを押す。

 

《ジャンプ!》

 

音声が流れると、それをドライバーにかざす。

 

《オーソライズ!》

 

すると、壊されて空いた穴から、黄色い巨大なバッタが無理矢理入り、ザウスを体当たりで吹き飛ばすと、狭い社長室を所狭しと跳ね回り、

 

「変身!」

《プログライズ!》

 

バッタが分解されると、変身していく或人のボディに装着。そのまま変身が完了すると、

 

《飛び上がライズ!ライジングホッパー!A jump to the sky turns to a rider kick.》

 

黄色いボディが輝く仮面ライダー。仮面ライダーゼロワンへと変身した或人は、足に力を込めると一瞬でザウスとの距離を詰め、キックで外に弾き飛ばす。

 

「くっ!」

「行くぜ!」

 

外に降り立った二人は、戦闘を開始。

 

ザウスは腕についた刃で或人を狙うが、或人は身軽さとジャンプ力の高さでそれを避け、蹴りを叩き込む。そこに、

 

「或人社長!アタッシュカリバーです!」

「サンキューイズ!」

 

外に走ってきたイズが、アタッシュケースを投げ渡し、それを或人はキャッチ。すると、アタッシュケースを変形させ、剣のような形にし、ザウスを斬る。

 

「ぐっ!やはり戦い慣れてるか」

「当たり前だろ!」

《チャージライズ!》

 

或人はザウスを蹴り飛ばし、アタッシュカリバーを一度アタッシュケースに戻し、エネルギーをチャージ。

 

《フルチャージ!》

「はぁ!」

 

アタッシュカリバーを、アタッシュケースから剣に戻し、或人はアタッシュカリバーを振るう。

 

《カバンストラッシュ!》

「ぐぁあああ!」

 

斬撃をモロに喰らったザウスは、地面を転がり後ろに吹っ飛ぶ。そして或人はアタッシュカリバーを地面に突き刺し、

 

「これでトドメだ!」

《ライジングインパクト!》

 

ドライバーの横を押し、必殺技を発動。或人は飛び上がると、ザウスに向けてライダーキックを放つが、

 

「今だ!」

 

ザウスは或人に対し、手にもったエンプティフルボトルを二つ向けると、空中で突如或人の変身が解除される。

 

「いってぇ!」

 

地面に落ち、或人が悶える中、ザウスは手にある二つのフルボトルを見る。

 

そこのフルボトルには、一つにはバッタの模様が。もう一個には、ヒューマギアの耳に着いているモジュールのような模様が彫られていた。

 

「これで完成だ」

「くそ!なんで変身が!」

 

と或人はバッタのプログライズキーを押し、

 

《ジャンプ!》

「あ、あれ?」

 

そのプログライズキーをまたゼロワンドライバーにかざすが、ウンともスンとも言わない。

 

「な、なんで!?」

 

訳がわからず、或人は別のプログライズキーも試すが、どれもキー起動までは行けるが、それ移行が出来ない。

 

「ほう?まだキーの起動ができる程度の力は残ったか。流石に戦いを生き抜いただけはある。一応全て吸いきっておくか」

 

とザウスはフルボトルを手に或人に、近づこうとするが、

 

「っ!」

 

突如空から無数の矢が降り注ぎ、それを回避するザウスの炎の塊が突っ込んできた。

 

「くっ!」

 

それを何とか回避し、下がったところに、今度は銃弾が飛んで来る。

 

「滅……迅!それに刃さんまで!」

「大丈夫か?社長」

 

AIMSというバッチを着けた女性は、刃 唯阿。彼女もまた、変身能力を失っているが、仮面ライダーバルキリーとして戦った仲間である。現在は政府直轄のAIMSという組織の隊長だ。

 

その後ろには隊員と思わしき人たちも、銃を構えながらいる。

 

そして前にいる紫色の仮面ライダー。滅と言うヒューマギアが変身する仮面ライダー滅。そして赤い方が仮面ライダー迅。迅と言うヒューマギアが変身するどちらも仲間……というには少々色々あったが、大切仲間である。

 

「大丈夫?ゼロワン」

「あぁ。でもなんで……」

 

迅に心配され、或人は困惑しながら立ち上がると、

 

「突如この辺り一体に巨大なエネルギーを検知した。そしてそれと同時に飛電インテリジェンスの爆発。なにもないと思う方がおかしいだろう」

 

滅はそう言ってから、ザウスに弓型の武器・アタッシュアローを手に襲い掛かる。

 

「はぁ!」

「ちっ!」

 

ザウスはそれを腕の刃で受け止め、弾き返すと、蹴りを放つ。しかしそれを後方に跳んで避けながら、アタッシュアローを構えてチャージ。そして解放すると、矢を発射。

 

「かぁ!」

 

だがそれをザウスは、口から噴射した炎で掻き消しながら、スイッチを取り出す。そこに、

 

「む!?」

《ジャックライズ!》

 

背後から何かを当てられ、何かを吸いとられるような感覚がザウスを襲う。しかし素早く振り替えって腕を凪ぎ払うことでそれを外すが、

 

「ちっ!」

「天津社長!」

「今は社長じゃない。課長だ」

 

後ろに下がった金と黒。そして所々に銀の装飾が入った仮面ライダー。

 

或人と幾度となくぶつかり合い、現在はZAIAという会社の日本支部にある、サウザー課の課長として働く天津垓の変身する、仮面ライダーサウザーはサウザンドジャッカーを構えながら、ザウスを見る。

 

既に多勢に無勢と言ったところ。そう判断したザウスはスイッチを構え直し、

 

「これ以上の戦闘は無意味だ。撤退させて貰う」

 

そう言ってスイッチを押すと、背後の空間が歪む。

 

「逃がすな!」

 

刃の指示で、AIMSの隊員が発砲。しかしそのままザウスは消え、その場には銃痕だけが残る。すると変身を解除した滅が、

 

「飛電或人。なぜ変身して戦わなかった?」

「ち、違うって!俺だって変身してたんだけど、何か途中で解除されちゃったんだよ」

 

ゼロワンドライバーの不調かな?と或人は別のベルトである、ゼロツードライバーを出し、装着して変身しようとするが、変身ができず困惑。

 

「何でだ?」

「見たところプログライズキーに問題はない。となるとドライバーの問題か?」

 

と天津も変身を解除しながら来ると、

 

「一先ずは一度社長室で調べて見ましょう」

 

と、イズが言ってきたため、他の皆も頷き、社長室へ戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「問題はないようですね」

 

社長室へ戻ると、イズは部屋に取り付けられている機械にゼロワンドライバーと、ゼロツードライバーをセットし、検査をしたのだが、特に問題はないとのことだ。

 

「機械に問題はありません。例えるなら……」

「まるで飛電或人自身の変身能力だけがなくなったようだ……か?」

 

 

イズの続いて、滅が言うと、イズが肯定の頷きを返す。

 

「だがそんなことが可能なのか?」

「わからない。だが相手は明らかに私達の常識にはない存在だった」

 

頭に包帯を巻いた不破の言葉に、刃は答えつつ、ザウスを思い返す。あれは明らかに人間ではない。だが今まで自分達が戦ってきた、マギアとか言った部類とはまた違う。するとそれを肯定するように、

 

「唯阿の言うとおりだな」

 

と天津はそう言いながら、手元のタブレットを操作して、社長室のプロジェクターにデータを送ると、ザウスの成分データを映す。

 

「ザウスと名乗るコイツの肉体の成分データだ。だが残念だが、ゼアにも確認してもらったが、世界中どこを探しても、これと同じ成分を持つ生物はいない.強いて言えば、爬虫類に近いがそれでも違う。完全にこの世界には今までにない新種の個体だ」

「いったい何者なんだろう……」

 

天津の説明に、迅は首をかしげると、

 

「ゼアの説明によれば、彼が転移した際に、僅かに空間が歪み、近隣の監視カメラ等の映像を解析し、そこから見える景色等からも計算しました所、この世界のどこにもない風景だったそうです」

「ない?そんなわけないだろう。どっかにワープしたとして、何処かにはいるはずだ」

 

イズがゼアの計算の答えを発表すると、不破が眉を寄せた。そんな不破をイズは見ながら、

 

「はい。ですがゼアの計算によれば、もしかしたらこの者は本当にこの世界の生き物ではないかもしれないとの結果が出ています」

「どういうこと?イズ」

 

そういうと今度はイズが、プロジェクターにデータを送信。

 

「こちらは天津課長がザウスからジャックライズした際に持っていたスイッチから偶然採取できたデータです。こちらは一種の次元に穴を開ける装置のようです」

 

次元に穴?と或人と不破が首を傾げると、

 

「一種の転移装置。しかもただ転移するんじゃない。次元に穴ということは、次元そのものを行き来するための装置か!?」

「はい。ゼアもそう結論を出しています」

 

唯阿にイズは同意しつついると、

 

「でもザウスはその次元を越えてまでなにしに来たんだろう」

「恐らくですが、或人社長が変身できなくなったことに関係があるかと」

 

或人の疑問にもイズが答えた。するとイズは或人とザウスが戦う映像を出し、或人がライジングインパクトで決める瞬間の部分で止める。

 

「ザウスがこの時、何やら謎のアイテムを社長に向け、その直後に変身ができなくなりました」

『成程この……』

 

或人・不破・天津の三人が、ザウスの手にあるアイテムを見て、

 

「何か小さいペットボトル」

「何かの筒」

「フィルムケース」

『みたいな……』

 

三人は顔を見合わせ、或人はソッとイズに問う。

 

「ねぇイズ。フィルムケースってなに?」

「昔のカメラに取り付けるフィルムを入れておくためのケースです。現在は一部の写真愛好家を除き、使われることは殆どありません」

「へぇ~。携帯のカメラ機能しか使ったことないから知らなかったよ」

 

そんな二人のやり取りに、天津は若干遠い目をしつつ、

 

「と、とにかく。その装置自体は複製可能だろう?」

「はい。ゼアに頼めば、すぐにでも複製は可能です」

 

それを聞いた不破は、拳をパシッと叩き、

 

「よし!あいつを今度は捕まえてやる」

「いや、不破はここに残った方がいい」

 

やる気十分。と言った不破だが、それを天津がストップを掛けた。

 

「君は今仮面ライダーに変身が出来ない。着いていっても今回のようにやられるだけだろう」

「なら俺と迅が行こう」

 

名乗りをあげたのは滅。迅も反対するつもりはないようだ。

 

「後はゼロワンの力の事もあるから、飛電或人は行っても良い」

「だが社長も今変身できないぞ?」

 

それも考えてある。と天津は唯阿に言いながら言うと、

 

「失礼します」

 

と社長室へ入ってきたのは、中性的な見た目のヒューマギア。名は亡と言い、彼?彼女?もまた滅たちと同じく滅亡迅雷netのメンバーだったが、現在はAIMSの技術顧問として、その力を振るっている。

 

「亡?どうしたんだ?」

「刃隊長。こちらを飛電或人に届けるために」

 

と言って差し出したのは、

 

「レイドライザー!?」

 

そう。亡が差し出したのは、レイドライザーと言う、プログライズキーを使って、人間をレイダーと言う物に変化させるアイテムだった。

 

「ゼロワンドライバーの不調を疑ったときにね。万が一を考えて持ってきて貰った」

「だが現在レイドライザーは破棄されているはずだ。それがなぜ……」

「刃隊長が持っていたものです」

 

と亡は言うと、唯阿の表情がひきつった。

 

「待て亡……私は確かにレイドライザーを持ったままにしていたが、何故それをお前が持ってきている?」

「時間がなかったため隊長の部屋をハッキングで開けて取ってきました」

 

もう二度とするな……と唯阿はため息を吐きながら、レイドライザーを或人に突き出す。

 

「でも使えるんですかね?」

「ゼロワンに変身できずとも、プログライズキーは動く。となれば仮面ライダーではなく、レイダーにならなれるかもしれない。まぁ実際はやってみないことにはな……」

 

そう或人天津がやり取りをしていると、社長室に隣接している装置が鳴り、イズが行くと中から先程ザウスが使っていた装置と同じものをもって出てくる。

 

「此方です」

「分かった」

 

と或人は装置を受け取り、

 

「よし、ザウスを追い掛けよう!」

 

滅と迅も頷き、或人が装置を押すと、空間が歪み、三人にちゃっかりイズも一緒に、空間の中に飛び込んでいった。

 

「んで?俺たちはこのまま留守番か?」

 

不破は少し釈然とはしないものの、実際自分が今足手まといなのは理解しているため、天津に聞くと、

 

「いや、亡にも来て貰ったのには理由がある」

 

そう言って天津は不破と唯阿を目を見て、

 

「君たちには、もう一度仮面ライダーになって貰う」




ザウス

或人達を襲撃した謎のモンスター。

戦闘能力は高いものの、歴戦の勇士となった或人が変身する、ゼロワンでは初期フォームのライジングホッパーと互角程度。だが、これは元々力を奪うためだったため、実際はかなり手加減していた模様。とは言え流石に他のライダー達に囲まれると厳しいのか、元々の世界に撤退した。


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無人

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「別の世界で仮面ライダーゼロワンこと、飛電或人さんが仮面ライダーの力を奪われると言う事件が発生。しかし一方その頃久々の平穏を味わっていた俺たちは……」
或人「へぇ~。ここってこんな感じなんだ」
戦兎「あ、或人さんお疲れ様です」
或人「よーし。ここは一つこれからこの話を読んでくれる読者の皆のために、俺の爆笑ギャグ100連発を!」
戦兎「あ、111話スタートです」
或人「あれぇ!?」


ある日、駒王学園に激震が走っていた。

 

それはそうだろう。何せ、 あの戦兎と小猫が、二人手を繋いで登校してきたのだから。

 

さて、先日の一件で、完全に戦兎からは人権が剥奪され、小猫の尻の下に敷かれることになったのだが、その際に幾つかの決め事がなされた。

 

まず外では手を繋ぐこと(時と場合によるが、少なくとも登校時には適用されるらしい)、次にちゃんと好きだと言うこと(ほぼ毎日言わされてる)、最近は龍誠達の屋敷に住み着いたため、毎日おはようとおやすみ、あと同じ学校に一緒に向かうのだが、行ってきますとただいまのキスをする事、名字ではなく、名前で呼ぶことetc……

 

もう我ながらバカップルの所業である。正直恥ずかしい。自分はもっとクールなキャラクターだったはずだ。そう、原点を思いだそう。もっと初期の頃のクールでニヒルなキャラを思い出すのだ。

 

「と言いつつ割りとノリノリな戦兎であった……と」

「あん?」

 

そんな日々の中、昼休みなので一緒に弁当を食べていた龍誠に言われ、戦兎は眉を寄せた。

 

「なにのろけてんだか」

「のろけじゃねぇ!」

 

龍誠はアーハイハイソーデスカと聞いている様子がない。

 

「そんなに困ってるなら小猫ちゃん本人にちゃんと言えよ」

「いや別に本気で嫌な訳じゃないし……」

「小猫ちゃんも大概だけどさ、お前も付き合ってハッチャけてからの落差が宇宙と地上くらいないか?」

 

そうかぁ?と卵焼きを口の放り込み、弁当を仕舞って立ち上がる。

 

「じゃあちょっと出てくるわ」

「おー」

 

そう言って出ていく戦兎を見送り、龍誠も弁当箱を仕舞って携帯を出そうとすると、

 

「ねえ龍誠」

「なんだ藍華?」

 

そこに藍華がやって来た。その藍華は龍誠にソッと耳打ちし、

 

「あのさ、ホントに塔城さんと戦兎付き合い始めたの?」

「おぉ、多分今だって小猫ちゃんと待ち合わせしてどっかで駄弁る予定なんだろ」

 

ズズーッと持ってきている龍誠はお茶を飲みながら言うと、

 

「【自主規制】してたりして」

「ブッフォ!!」

 

ここで記すのが憚られる内容の単語をいきなりぶっこんできた藍華に、思わず龍誠はお茶を吹いた。

 

「ば、ばか!いきなり何言ってんだ!ここは学校だぞ!」

「そういうプレイだってあるし、年頃の男女が付き合ってんのよ?あり得なくはないでしょ」

 

そうではあるが、小猫はそういう事をして、妊娠と言う万が一があると、命に関わる。なので戦兎とはそういうことがしてないはずだ。と言うか、親友とその彼女がそう言うことをする想像は余りしたくない。

 

だが、以前自分がリアスや他の面々にくっつかれているとき、色々複雑そうな顔を戦兎もしていたので、今思い返すと今の自分と同じ立場だったのかだろうか。反省である。

 

「でもさ、あの二人の体格差的にできると思う?」

「そんなの知るかぁああああああ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「戦兎さん」

「んー?」

 

ここは屋上。本来であれば立ち入りは出来ず、扉は施錠されているが、戦兎達にとっては余り意味をなさないため、普通に屋上に出ていた。

 

そんな戦兎は現在小猫を膝にのせてくつろいでいる。今は余り暑くもなく寒くもない。実に過ごしやすい気温だ。そんな中、二人でくっついていちゃつける時間は意外と貴重だったりする。放課後は悪魔関係で皆集まることが多く、後は終わったあとに屋敷に集まってるとき(まぁこっそりとしか出来ないので落ち着かないのだが)、後はまだ2回しかしてないが、デートの時くらいだ。

 

「んふふ~。何でもないです」

「そうか」

 

グリグリと後頭部を戦兎の胸に擦り付けてくる。そんな小猫の後ろから抱き締めながら、頭を撫でる。

 

うちの彼女が可愛い。可愛すぎる。色々と堪らなくなる。って落ち着け俺と戦兎は首を少し振る。

 

「戦兎さん?」

「いや、何でもない」

 

と戦兎は笑って抱き締める力を少し強めると、小猫の頬の紅潮が増した。

 

「……」

 

そんな彼女の様子に、戦兎は咄嗟に素数を脳裏に羅列させ、冷静さを取り戻す。

 

年頃の健全(寧ろムッツリby龍誠)の戦兎は、色々と抑えなければならない物もある。小猫の体を考えれば当然。だが理性は色々と危険信号を出してくる。

 

と、悶々としている戦兎の顔を、小猫は覗き込み、

 

「ちゅ」

 

突然のキス。だが戦兎は抵抗せずに、ソッと自分の唇で押し返す。

 

「ん、ちゅう」

「ん……」

 

唇を啄むようなキスから、ゆっくりと舌を絡ませていく。

 

「ぷは……」

 

互いに唇を離し見つめ合う。

 

「もう一回いいか?」

「はい」

 

と確認しあい、ゆっくりとまた顔を近づけようとした次の瞬間。

 

『?』

 

屋上に誰かが降り立ち、戦兎と小猫は咄嗟に離れる。見てみれば、謎の爬虫類に似た何か。

 

「仮面ライダービルドだな?」

「……あぁ」

 

これは絶対アレだ。何かの事件だ。もう慣れっこだ。だが……今じゃなくても良くないか?と戦兎は頭を掻く。

 

「何かようか?」

 

と戦兎は警戒心を全開にし、立ち上がって身構えると、ザウスは手を前に出して押し止める。

 

「戦う意思はない。ただビルドドライバーを渡してもらいたいだけだ」

「ビルドドライバーを?」

 

ビルドドライバーのことを知ってるのか?と少し驚きつつも、

 

「悪いがこれは知らないやつのプレゼントできるような代物じゃないんでね」

 

そう言いながら、戦兎はビルドドライバーを装着しようとする。だが、

 

「ならこうするだけだ」

 

ザウスは手を挙げながら言うと、そこには何かのリモコンがあり、それを押すと突如階下から爆発音と揺れが来た。

 

「なに!?」

「既にこの学園中に爆弾を設置してある。今のは生徒が近寄らない空き教室を少し爆破させた。だが他の火力は段違い。それを複数同時に爆発させたらどうなるかな?言っておくが今度は人が大勢いる場所も対象だぞ?」

 

戦兎と小猫は階下から聞こえてくる悲鳴を聞きながら、視線を交わすと、戦兎がビルドドライバーをザウスに向かって放り投げる。

 

「うむ」

 

ザウスはそれを受けとると、リモコンを戦兎に放り投げる。

 

「うぉ!」

「それでは失礼する」

 

リモコンを戦兎はキャッチすると、ザウスは背を向けて屋上から飛び降りる。

 

「小猫!部長達に連絡を頼む!」

「戦兎さんは!?」

「無理ない範囲で追い掛ける!」

 

とだけ言って、戦兎は悪魔の翼を出して屋上からダイブするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(やはり追ってくるか)

 

ザウスは旧校舎方面の雑木林に入りながら、戦兎の追跡には気づいていた。だが無理に接近はしてこないし、悪魔でも自分の仕事はこのビルドドライバーをある人物に届ける事なので、無視して走る。だが、

 

「っ!」

 

足元に矢が刺さり、足を止めると仮面ライダー滅と、仮面ライダー迅に変身した二人が、ザウスの前に立ちはだかる。

 

「まさか追ってきたのか?」

「そうだ」

 

ザウスに答えつつ、滅はアタッシュアローを展開し、ザウスを襲う。刃になっている部分でザウスを斬るが、ザウスも腕の棘で受け止め、弾き返す。

 

「はぁ!」

「くっ!」

 

そこに迅がベルトのバックル部分である、スラッシュライザーを手にザウスに襲いかかる。

 

二人の息のあったコンビネーションに、ザウスは流石に苦戦するものの、うまく回避する。

 

(成程、単純な戦闘能力よりも、この回避能力の方が厄介だな)

 

滅はアタッシュアローをチャージして発射し、ザウスはギリギリで回避。しかし、

 

「滅!迅!」

「ザウス!」

 

そこに或人と戦兎が別々の場所から飛び出してきた。

 

『ん?』

 

初めて見る顔に、或人と戦兎が互いに顔を見合わせるが、

 

「或人社長。まずはザウスを」

「そ、そうだね。イズ!」

 

或人は頷きながら、レイドライザーを装着。そこにイズがライジングホッパープログライズキーを渡して、

 

《ジャンプ!》

 

プログライズキーをレイドライザーにセット。

 

「へんし……じゃなくてこれ何て言うんだっけ?えぇと……あぁもう!何でもいいや!変身!」

《レイドライズ!ライジングホッパー!》

 

或人がレイドライザー上部にあるスイッチを押すと、或人の全身が黄色を基調にし、バッタをモチーフにした姿に変貌。

 

《A jump to the sky turns to a rider kick.》

「よし!使えた!」

 

と或人は興奮しながら、ザウスに突進。飛び蹴りでザウスを吹き飛ばし、滅と迅が追撃。だが、

 

「かぁ!」

『っ!』

 

ザウスが火炎球を口から発射。或人達は咄嗟に避けるが、それがイズに向かって飛んでいく。

 

「イズ!」

「ちっ!」

 

或人の声が響く中、戦兎は思わずイズを自分の体を縦にして守ろうとした。すると、

 

『はぁっ!』

 

火炎球の間にグレートクローズに変身した龍誠と、クローズチャージに変身した匙が割って入り、火炎球を凪ぎ払って消し飛ばす。

 

「大丈夫か!?戦兎!」

「えぇと……どれが敵だ?」

 

大丈夫だと戦兎は答え、

 

「あの爬虫類っぽいやつが敵だ!俺のビルドドライバーを持ってる!」

「成程、んじゃ返して貰うとするか!」

 

と、龍誠が駆け出そうとすると、

 

「苦戦しているな。ザウス」

『っ!』

 

ザウスの背後に現れた人影に、皆は動きを止める。ボサボサの髪に、痩せこけた頬と虚ろな瞳。

 

無人(むじん)様」

「ビルドドライバーは?」

 

此方です。とザウスは無人と呼ぶ男にビルドドライバーを渡す。

 

「早速だ。使わせて貰おう」

 

と言ってビルドドライバーを装着。

 

「させるか!」

 

龍誠がそれを阻止するために走りだし、他の皆もそれに続こうとする。だが、

 

「おっと、せっかくのお楽しみだ。邪魔するなよ」

「なっ!」

 

その間に入ったのは、ロンギヌスフォームに変身した、一誠だった。

 

「兵藤一誠!」

「おいおい。ジーニアスがないお前達が俺に勝てるのか?」

 

龍誠が殴りかかろうとするが、そういわれて足を止める。確かに戦兎がビルドドライバーを奪われてしまっている今、ジーニアスは使えない。しかし一誠は、

 

「まぁ安心しろ。俺はお前達に何かすることはない。攻撃してこなければな」

 

と言い出し、一誠は背後の無人を見た。そして無人はザウスから二つのフルボトルを受け取り、

 

「なんだあのボトル。見たことがない」

「名付けるならホッパーフルボトルと、AIフルボトルって所かな?こことは別の世界の仮面ライダー。ゼロワンの……いや、飛電或人の全てが詰まったボトルさ」

 

戦兎の呟きに、一誠は笑って答えると、

 

「これより、実験を開始する」

《ホッパー!AI!ベストマッチ!》

 

無人はボトルをビルドドライバーに挿すと、レバーを回し、

 

《Are you ready?》

「変身」

《ゼロワン!飛び上がライズ!ライジングホッパー!A jump to the sky turns to a rider kick.》

 

何と、仮面ライダーゼロワンにその姿を変えたのだ。

 

それを見て呆然とする或人を、無人は見つめながら、

 

「ゼロワン……?」

「そうだ。飛電 或人。今日からは、私が仮面ライダーゼロワンだ」




《ライジングホッパーレイダー》

パンチ力 25t
キック力 70.5t
ジャンプ力 95.4m(ひと跳び)
走力 3秒(100m)

飛電或人が、ゼロワンドライバーではなくレイドライザーにライジングホッパープログライズキーを用いて変身する形態。

レイドライザーの特性もあって、スペック事態はかなり高め。その場しのぎではあるものの、ザウスの相手にするには十分な強さを誇る。


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新たなゼロワン

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「突如現れたザウスにビルドドライバーを奪われ、それを追う俺だったが、そこに謎の人物たちが登場。さらに無人と名乗る男が現れて……」
或人「それにしてもゼロワンに変身するなんてなぁ」
戦兎「厳密にはビルドドライバーとフルボトルを使ってるんで、仮面ライダービルド ゼロワンフォームですけどね」
或人「まぁまぁ。そんなのどっちでも良いじゃない」
戦兎「よくないですよ!そういうのはちゃんとカクカクシカジカ」
龍誠「そんな感じで112話やってくぞ~」


「嘘だろ……何でゼロワンに!?」

「言った筈だ。このボトルにはお前の全てが入っているとな」

 

と無人は或人に言って疾走。一瞬で滅と距離を詰めると、飛び蹴りを放って滅を吹き飛ばし、その反動を利用して迅にも蹴りを入れる。

 

「ぐっ!」

「がはっ!」

「これが仮面ライダーゼロワンの力か……素晴らしい」

 

無人が掌を見ながら感激。しかしそこにビートクローザーを持った龍誠が突っ込む。

 

「おらぁ!」

「っ!」

 

しかし無人はアタッシュカリバーを出現させ、龍誠のビートクローザーを受け止めると、弾いて蹴り飛ばす。

 

「この!」

「ん?」

 

すると迅は立ち上がり、全身に炎を纏って飛び上がると、こっちに突撃してくる。それを無人は避け、

 

「ふん!」

 

その場で大きく跳躍。すると無人の姿が変わっていき、

 

《Fly to the sky!フライングファルコン!Spread your wings and prepare for a force.》

「他の形態にもなれるのか!?」

 

と地面で驚愕する或人を他所に、迅と無人は空中戦を繰り広げる。

 

(こいつ!何時ものフライングファルコンよりも強い!)

「はぁ!」

 

だがいつもとは比べ物になら無い程の出力を出す、無人のフライングファルコンを相手に、防戦を強いられる迅。その隙をついて上から迅を叩き落とした。

 

「がはっ!」

「迅!」

 

或人は勢いよく飛び上がり、無人に蹴りを放つが、横からザウスが妨害し、或人は地面に落ちる。

 

「くっ!」

「なら俺達が!」

「あぁ!」

 

龍誠と匙が地面に降りてきた無人に駆け寄り、拳を振るうが、

 

「チェンジだ」

《Attention Freeze!フリージングベアー!Fierce Breath as cold as arctic winds.》

 

今度が水色のゼロワンに変わり、両腕から冷気を噴出。

 

『さっむ!』

 

身を縮ませながら、二人が悲鳴をあげると、

 

「次はこれだ」

《Gigant flare!フレイミングタイガーExplosive power of 100 bombs.》

 

今度は赤いゼロワンに変わり、炎を出して攻撃してくる。

 

『あちちちちちち!』

 

炎に巻かれ、二人は地面を転がって体についた炎を消す。

 

《Giant Waking!ブレイキングマンモス!Larger than life to crush like a machine.》

『でかい!?』

 

今度は巨大になって、二人に襲い掛かかってきた。

 

《ポイズン!》

「はぁ!」

《スコーピオンズアビリティ!スティングカバンシュート!》

 

背後から蠍の尻尾のようなものが無人を刺すべく飛んでいくが、

 

「はっ!」

 

それを無人は片手で弾き、それを掴むと振り回す。

 

「くっ!」

 

その先にいた滅は空中に投げ上げられ、

 

「はぁ!」

 

その巨大な拳で殴り飛ばす。

 

「がはっ!」

 

近くの木に叩きつけられ、滅は息を吐いた。

 

「なんだ、この強さは」

「厄介すぎんだろ!」

 

と龍誠と匙は言いながら、無人と睨み合う。

 

「ゆっくりしてる場合じゃないぞ」

《The rider kick increases the power by adding to brightness!シャイニングホッパー!When I shine,darkness fades.》

 

また別の形態に変化した無人は、跳躍すると一瞬で龍誠の背後に降り立ち、飛び蹴り。更に瞬き程の間に、匙の背後から蹴り、

 

「この!」

「はぁ!」

 

龍誠と匙は強引に反撃。しかしそれを読んだように別方向から蹴り。

 

「なんだ!?まるでこっちの動きが読まれているような!?」

「反撃した瞬間に別のところから攻撃が来る!?」

 

地面に転がされ、二人が必死に防御行動をとるが、防御されていない所から攻撃。

 

「くそっ!」

 

或人はザウスを突き飛ばすと、走り出して横から無人を蹴り飛ばそうとするが、それを避けられて逆に蹴りで倒される。

 

「ぐっ!」

「行くぞ」

 

無人はそう言いながら、レバーを回し、

 

《Ready Go!ボルテックフィニッシュ!》

「はあぁあああああ!」

《シャイニングインパクト!》

 

エネルギーを高めると、無人は或人に向けてジャンプし、蹴りの体勢に。

 

「あぶない!」

 

だがその間に匙が割って入り、

 

《スクラップブレイク!》

 

レバーを下ろして迎撃。匙の拳と無人の蹴りがぶつかるが、

 

「ぐぁあああああ!」

「匙!」

 

匙は吹っ飛ばされ、無防備になった所に、再度無人は追い付くと蹴りを叩き込む。

 

それにより変身が強制解除されながら、地面を転がっていき、戦兎が駆け寄る。

 

「う……ぐ……」

(くそ!変身さえできれば俺も……)

 

戦兎は歯を噛み締めながら、ふと匙の腰についているスクラッシュドライバーを見る。

 

(やってみるしかねぇか!)

 

すると戦兎は匙腰からスクラッシュドライバーを外し、自分の腰に装着。

 

(あとはこれだ!)

 

と戦兎はドラゴンスクラッシュゼリーを取り出す。

 

「さぁ、実験を始めようか!」

《ドラゴンゼリー!》

 

戦兎がドラゴンスクラッシュゼリーを挿すと、全身に電流が走り、

 

「ぐ……あ……あぁあああああああ!」

 

戦兎は苦しみながらレバーを無理矢理下ろす。すると、戦兎の懐にいれてあるラビットフルボトルが服の中からも分かるほど輝き、その光がドラゴンスクラッシュゼリーに降り注ぐ。そして、

 

《ラビットゼリー!》

「へん……しん!」

 

ラァ!と気合いをいれて、戦兎が腕を払うと、戦兎の回りにひび割れたビーカーが出現し、赤い液体が中を満たす。そしてそのビーカーがガラガラと崩れていき、そこには体の右半分だけ赤く、もう半分がヒビだらけで灰色と言うか、スクラッシュドライバー系ライダーの下地が見えているライダーが出現した。

 

《駆ける!跳ねる!蹴り上げる!ラビットインスクラッシュビルド!》

「はぁ……はぁ……」

 

戦兎は荒い息を落ち着け、自分の全身を確認。

 

「変身できた……けどなんか変だな」

 

何か姿が歪な上に、左手に装着されているはずのツインブレイカーがない。とは言え、変身できないよりは良い。と戦兎は走り出すと無人に殴り掛かる。

 

しかし無人は一瞬で姿を消すと、戦兎の背後に出現し、蹴りを叩き来む。

 

「ぐっ!」

 

だが戦兎はそれを喰らいながらも、強引に無人を掴み、拳を無人の腹に叩き込む。

 

「ごふっ!」

「はぁ!」

 

そこに或人も参戦し、横面に飛び蹴りを決め、無人がよろめいた所に戦兎と或人が同時に蹴りを放ち、無人を吹き飛ばした。

 

「どうだ!」

「いや……まだだ!」

 

或人が言うように、無人は平然と立ち上がると、真っ直ぐこちらを見てきた。

 

「流石にやるか。まぁこれくらいじゃないと面白くない」

 

そう言って無人の体が一瞬光り輝くが、それを一誠が止める。

 

「おいおい待てよ。ここであっさり終わらせるのがあんたの望みだったのか?」

「……すまない。その通りだ」

 

無人は変身を解除し、その回りを絶霧(ディメンションロスト)の霧が包み込み始める。

 

「飛電 或人!いずれまた私達の世界で会おう。なに、すぐに会える」

「お前はいったい何が望みなんだ!」

 

消えていく無人に向け、或人が叫ぶと無人は、

 

「お前を……いや、飛電インテリジェンスの全てを否定する。それだけだよ」




仮面ライダービルド ゼロワンフォーム

無人がビルドドライバーとホッパーフルボトルとAIフルボトルを使って変身する姿。ベルトがビルドドライバーなこと以外は殆ど仮面ライダーゼロワンと同じ。

基本形態のライジングホッパー以外にも、ゼロワンの全ての形態になることが可能。これはフルボトルに込められているのが飛電 或人の戦いの歴史そのものだから。ゼロワンに変身できなかったのも、戦いの歴史そのもの奪われているため。その為プログライズキー自体は影響を受けなかった。

飛電 或人の全てが込められているため、強化フォームだけではなく、001やアークワンになることも理論上は可能。更に、今まで戦ったことが無かったとしても、或人の経験値もフィードバックされているため、最初から最終回直後の或人と同じ実力を持つ。


仮面ライダースクラッシュビルド

パンチ力 20t
キック力 27.7t
ジャンプ力 70m(ひと跳び)
走力 2秒(100m)

ビルドドライバーを奪われた戦兎が、匙から借りたスクラッシュドライバーとドラゴンスクラッシュゼリーが変化したラビットスクラッシュゼリーで変身した姿。

無理矢理変身した影響か、スクラッシュ系ライダーとしてはスペックは抑えめで、見た目が中途半端。スクラッシュ系ライダーの下地に半分だけ赤いアーマーがついている状態に。更にツインブレイカーも無いなど、かなり不便な姿だが、高いジャンプ力と走力を用いたヒット&アウェイ戦法を得意とする。


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協力

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「突然の襲撃を乗り切り、別世界の仮面ライダーである或人さん達と出会った俺達……」
或人「いやぁ、何か色々なことがあったなぁ。お陰でまだ処理しきれないや」
戦兎「いやいやまだまだ序盤も序盤。どんどん色々起きていきますよって感じの113話スタート!」


「成程……ヒューマギア。それに別の世界にも仮面ライダーがいるとは」

 

ザウスや無人に逃げられ、戦兎は或人達を連れて、オカルト研究部の部室に来ていた。

 

因みに結局あんな騒ぎの後では、授業どころではないという事で、学校もお休みとなっている。

 

「聞いたところ、恐らく私達が住むこの世界よりも、かなり技術も進んでいるようですね」

 

或人達から説明を受け、リアスとソーナは顔を見合わせながら話す。

 

「こっちもビックリだよ。まさか自分達以外にも仮面ライダーがいるなんてね」

 

そう言って笑うのは或人で、彼は更に、

 

「しかしあの無人って言うのは何者なんだろう……」

「話を聞く限り、飛電さん個人と言うよりも、飛電さんが経営する会社自体に因縁があるようですが……」

 

ソーナの問いに、或人は頭を掻く。

 

「俺も社長になってまだ一年ちょっとだから、それ以前の話となると副社長に聞かないと……」

「となるとまた僕達の世界に戻らないとね」

 

或人に迅が言うと、滅とイズは立ち上がり、行こうと言う。すると戦兎も立ち上がり、

 

「俺もいきます」

「え?」

 

戦兎の言葉に、或人は驚いた顔をした。

 

「良いですよね?部長」

「そうね」

 

その間に話が進むが、或人がストップをかけた。

 

「ちょ、ちょっと待って。この件はこっちの世界から始まったことだ。君たちを巻き込むことはできないよ」

「そうはいっても、俺のベルトを取り戻さなきゃなりませんし、このまま引き下がるわけにはいきませんよ。何より兵藤 一誠が絡んでるなら、無視できません」

 

まぁ実際ベルトは作り直せるが、流石に2、3日でパパッと作れるものじゃない。そんな長期間ベルトがないままでは、危なすぎる。それなら敵から素直に取り戻す方が早そうだ。

 

「そもそもなんだけど、その兵藤 一誠って何者なの?見たところ……そこの彼と似てたけど」

 

と或人は龍誠を見ながら聞くと、リアスは口を開く。

 

「そうですね。まずはこの世界について説明しなければなりませんね」

 

そうリアスは言い、この世界について説明を始める。そして或人達は聞き終えると、

 

「ここは物語の世界……か」

「はい。ハイスクールD×Dと言う小説の世界らしいです。そしてその兵藤 一誠とは、この小説の主人公の名前。本来であれば、こちらの龍誠が兵藤 一誠になる筈だったんですが、彼が成り代わって兵藤 一誠を名乗り、この世界の人間がそれぞれ持つ筈だった、神滅具(ロンギヌス)と言う……そうですね。違う世界の飛電さんにも分かるように言うならば、人知を越えた13ある、強力な武器を全て自分のものにして、現在この世界で暴れています。幾度となく私達と戦ってますが、最近になってようやく戦兎がまともに戦える力を得ましたが、未だに倒すところには至っていません」

 

リアスの言葉に迅が頭を掻く。

 

「何て言うか。そっちも厄介な事になってるねぇ」

「しかしそれだけの力を内包しておきながら、一切のデメリットがないと言うのが厄介だな」

 

迅の言葉に滅が続けると、

 

「何でもアイツは無限の才能ってやつがあるらしく……」

「話に聞く限りだが、それは才能と言うより、自分にとって利益となるもの以外を無視する能力に近いな」

 

確かにそうかも。とリアスは滅に頷く。

 

「とにかく。兵藤 一誠は厄介きわまりない相手です。そしてその相手なら私達に一日の長があります」

「成程……」

 

リアスに或人は頷くが、そこにイズが入る。

 

「ですが社長。装置は大人数での移動ができません。最大で4人まで。連れていくことはできません」

「装置?」

 

するとアザゼルが立ち上がると、或人が装置を取り出して見せる。

 

それをあアザゼルは手に取り見てみると、

 

「成程こうなってるのか……ふむ。これなら複製できそうだな」

「出来るんですか!?」

 

アザゼルが事も無げに言うと、アザゼルは頷く。

 

「ただまぁ……即興で作っても大人数は難しいな。1、2日位時間を貰えるなら大人数でも行ける奴を作れるが」

「即興で作った場合何人くらい行けるの?」

「2人だな。空間所か世界を越える装置だからな。安定性を考えたらそれが限度だ」

 

リアスの質問にアザゼルは答える。それを聞きリアスは、

 

「ならばまずはそれで戦兎と龍誠が先行してちょうだい。その後に私たちも追い付くわ」

「了解」

「うっす!」

 

それに戦兎と龍誠は頷き、アザゼルはじゃあちょっと一時間ほど時間くれと言って部屋を出ていく。

 

「何か……凄いことになってきたね」

「あぁ」

 

そんな光景を見ながら迅は滅に耳打ちすると、滅は静かに頷くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃。

 

「さてさて。これで俺の必要なものが手にはいった。だが良かったのか?」

「構わない。私にはゼロワンがあれば十分だ」

 

無人は渡していたフルボトルを一誠から受け取り、

 

「それでは失礼する」

 

とだけ言い残して、無人はその場を後にする。

 

「良かったんですか?彼を行かせて、更に魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)で作ったザウス……あれ新型でしょう?」

 

ユーグリットが一誠に問うと、

 

「無人はうまくやってくれた。その礼にザウスとゼロワン位ならあげてもいいさ。俺にはこれがあればいい」

 

そういう一誠の手には,漆黒のフルボトルが、握られているのだった。



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02

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「無人からの襲撃を受け、話し合いの末に或人さん達の世界に行くことになった俺達だが……」
龍誠「つうかこれ、映画のやつとどうすんだ?」
戦兎「ん?まぁこれはれだ。パラレルワールド的なやつだと思えば良いんだよ」
或人「つうわけでこの作品の俺達とは違う俺達が活躍する劇場版仮面ライダーゼロワンも宜しくー!」
戦兎「そんな感じの113話も始まるぜー!」


「おぉ~!戦兎!何か飛んでるぞ!ってかすげぇヒューマギアたくさんいる!」

「頼むから少し落ち着いてくれ……」

 

先日の事件から次の日、戦兎と龍誠は或人達と共に、彼らの世界にやって来た。或人達にとっては戻って来たが正しいが。

 

「現在社用車を手配しました。後五分ほどで到着します」

「うん。ありがとう。イズ」

 

テキパキと仕事をするイズに、或人は礼を言いつついると、五分ほどで社用車らしきリムジンが本当に来た。

 

「或人さんって本当に社長だったんだな」

「あ、俺もそれ思った」

「え?今まで疑われてたの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ムジン……か」

 

その後、リムジンに乗ってやってきた戦兎達は飛電インテリジェンスの社内を案内され、社長室に着くとそこには一人の男性がいた。

 

天津垓と紹介された男は、無人の名前に何か引っ掛かるのか、何やら記憶の糸を探っている。

 

すると、

 

「社長?」

「あ!福添副社長!」

 

そこに入ってきた男性は、或人に副社長と呼ばれ、

 

『ん?』

 

と戦兎と龍誠は福添を見て、

 

「何かどっかで見たような……」

「テレビじゃね?」

 

二人はどこかで見たような?と首をかしげているが、或人はそれに気づかず福添に、

 

「そう言えば福添副社長。無人と言う男に聞き覚えはありますか?」

「無人……あ!」

 

最初福添はなんのことだか分かってなかったが、すぐにその名前に覚えがあったようだ。

 

「シエスタ。風走(かぜばしり) 無人と言う名で検索してくれ」

「はい」

 

福添は隣にいたヒューマギア・シエスタにそう指示すると、天津 垓の方も思い出したらしい。

 

「そうか!風走重工か!」

「風走重工?」

 

と或人が首をかしげる間に、シエスタはプロジェクターを起動。

 

プロジェクターから写された画面には、少し若いが先日見た無人と思わしき男と、自分の祖父がそれぞれ写っている新聞の切り抜き画像が出された。

 

「じいちゃんと無人?」

「思い出した。彼は風走 無人。昔、ある大手企業の大規模プロジェクトに飛電インテリジェンスと、風走重工の二つが参入の手をあげた」

 

そう説明してくれるのは、天津だ。

 

「それはある機械部品の大量生産勝負。風走重工は腕のよい職人達を多く抱え、作る部品も素晴らしいものばかりだったそうだ」

「そ、そんなによかったんですか?」

 

或人の問いに、天津は頷き、

 

「私も直接見ていた訳じゃないから、噂程度だがね。それは福添副社長の方が詳しいんじゃないかい?」

「は、はい。そしてわが社はヒューマギアを作成し、風走重工と争いました。正直風走重工は相当な腕で、かなり際どい勝負でしたが、確かに部品の出来は良いのです。しかし良い悪いの差がわが社のヒューマギアが作成したものと比べて大きかったのです。勿論、規定の範囲内でしたが、それでもわが社の方が安定性があり、最終的に風走重工はやめると言う判断になりました。勿論ヒューマギアを使う都合上。人の増員も容易いと言う側面が大量生産に繋がると言うのも大きく働きましたが」

「後は確か、風走重工は多額の借金を抱えていたらしくてね。先行きが不安定だ。と言うのも言われていた。無人は父から会社を継いだらしいが、どうも会社運営の才能はなかったようだね」

 

そう天津が言うと、福添が頷き、

 

「当時の風走重工は借金を重ね、このプロジェクトの参入は会社の社命を掛けた物だったようです。ですが風走重工はわが社のヒューマギアに敗北し、その後会社は倒産。社長は確か……」

 

と福添がいったその時、突然また爆発音が響き、床を揺らす。

 

「なんだ!?」

「とにかく出よう!」

 

戦兎は困惑すると或人が素早く指示をだし、走り出す。

 

「しゃ、社長!」

「ごめん副社長!」

 

何事かわからず、福添は困惑する中、或人は先に行ってしまい、

 

「失礼します!福本さん!」

「ありがとうございました!増添さん!」

 

と戦兎と龍誠も或人を追いかけ、勿論イズや他に天津や滅に迅も行ってしまい、残された福添は、

 

「ふ、福添だよ!」

 

と寂しく叫び、そんな姿をシエスタは静かに見ているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだこの状況!」

 

一回まで降りた戦兎たちは、その状況に息を飲む。それはあちらこちらがボロボロになり、土煙が上がっていた。

 

「マモル!」

 

或人がそう言って駆け寄った、警備員服に身を包んだヒューマギア、マモルは、地面に横たわっていたが、或人が声を掛けると顔を起こし、

 

「申し訳ありません。あのものが突然ゼロワンに……」

 

と言われ、或人が前を見るとそこにはライジングホッパーの姿がある。

 

「無人!」

「ほぅ。戻ってきていたのか」

 

或人と無人の視線が交差し、或人はゆっくり立ち上がるとレイドライザーを装着。

 

「あんたとうちの会社の関係を聞いた」

「そうか」

 

或人はそう言いながら、ライジングホッパープログライズキーを出し、

 

「確かにあんたの会社には申し訳ないと思う。だけど他の世界の人間まで巻き込むのは間違ってる!」

「……くく」

 

そんな或人の問い掛けに、無人は笑う。

 

「間違っているか……確かにその通りだ。私は間違っている。だがそれがどうした!」

「なに?」

 

無人の言葉に、或人は眉を寄せた。

 

「私はね。私の夢のために戦うんだ」

「夢?」

 

そう。と無人は頷く。

 

「飛電インテリジェンスが崩壊すると言う夢を叶える。私の夢を奪った飛電インテリジェンスを破壊する。そのために私は仮面ライダーになったんだよ。飛電 或人くん。君にわかるかい?ヒューマギア何て言う鉄屑に、私達が汗水垂らして磨きあげてきた技術が敗北した虚しさが。しかも最近のヒューマギアを見て愕然とした。私達が必死に磨いた技術が、今やヒューマギアは標準装備だ。俺達の技術や感覚はデータ化し、なにも学ばずともヒューマギアはデータをダウンロードするだけで良い。ヒューマギアは夢の機械だと?俺はな……そのヒューマギアに夢も家族も仲間も奪われたんだよ」

「確かにそのようだ」

「天津課長?」

 

突然登場した天津は、或人の困惑を横目に、

 

「風走さん。貴方は確か会社が倒産した直後、一家心中を起こしている」

「っ!」

 

天津の言葉に、或人は驚きの表情を浮かべると、

 

「だが、幸運にも……いや、この場合は不運か?貴方だけは助かってしまった。しかし、その際に脳に損傷を受けてしまい、貴方は寝たきり……と言うよりは殆ど植物人間に近い状態になってしまった」

「あぁ、半分寝て半分起きているような……そんな状態が続いて数十年。だが何より腹立たしかったのは、その俺の介護をヒューマギアが行っていたこと。今思い出すだけでも虫酸が走る。そんなときだった。彼が現れたのはな」

 

兵藤 一誠。そう名前を言うと、追い付いた戦兎達が顔をしかめる。

 

「彼は言ってくれた。我慢する必要なんてないだと。こんなところにいて良いのかと。私の家族を死に追いやった飛電インテリジェンスをそのまま野放しにして良いのかと。このまま野放しにすれば、私のような人間がきっと増える。だからヒューマギアを滅ぼすんだ。私みたいな人間を増やさないために。笑顔のために戦うのが仮面ライダーなんだろう?私は仮面ライダーだ。だから戦う。人間の未来のために」

「そんなことさせるか」

 

そこに響いた声に、敵味方問わずその方を見る。そしてその姿を見た或人は、

 

「不破さん!刃さん!」

「話はここに来る途中で滅達から通信で聞いた。しかしさっきから聞いてれば好き勝手なことを。確かにヒューマギアは一定の職業を奪うかもしれない。だがそれが人間の居場所を全て奪うとは限らない。人間には人間にしか出来ないものがある。その逆もまた然りだ」

 

唯阿はそう言って腰にベルトを装着。

 

青い銃がバックル部分についた、ショットライザーと言うベルトは、隣にいた不破も装着し、

 

「社長は人間もヒューマギアも共に笑って暮らせる世界を願い、そして守った。今その願いが現実になろうとしてる。それを破らせる訳にはいかねぇ。よりにもよってその姿でな」

 

そう叫ぶ不破は、青い狼の姿が掘られたプログライズキーを。唯阿はオレンジのチーターが掘られたプログライズキーを出し、

 

《バレット!》

《ダッシュ!》

 

スイッチを押し、不破はプログライズキーを展開。そしてショットライザーにそれぞれ装填し、

 

《オーソライズ!カメンライダー!カメンライダー!》

『変身!』

《ショットライズ!シューティングウルフ!The elevation increases as the bullet is fired.》

《ショットライズ!ラッシングチーター!Try to outrun this demon to get left in the dust.》

 

そうして二人は変身を完了し、バックルからショットライザーを外し、銃口を無人に向けると発砲。

 

「ふっ!」

 

しかしそれを無人は全て避けながら走り出す。

 

「私達も行くぞ!」

「はい!」

 

《ゼツメツ!Evolution!ブレイクホーン!》

 

天津もベルトを腰につけ、左右に連続でキーを装填。

 

『変身!』

《パーフェクトライズ!When the five horns cross,the golden soldier THOUSER is born.Presented by ZAIA.》

《レイドライズ!ライジングホッパー!A jump to the sky turns to a rider kick.》

 

天津は仮面ライダーサウザーに。或人はライジングホッパーレイダーに変身。

 

「俺たちも!」

「おっしゃ!」

「滅!僕たちも!」

「あぁ」

《ラビットゼリー!》

《覚醒!グレートクローズドラゴン!》

《ポイズン!》

《インフェルノウィング!バーンライズ!カメンライダー!カメンライダー!》

《Are you ready?》

『変身!』

《駆ける!跳ねる!蹴り上げる!ラビットインスクラッシュビルド!》

《Wake up CROSS-Z! Get GREAT DRAGON! Yeahhh!》

《フォースライズ!スティングスコーピオン!Break down.》

《スラッシュライズ!バーニングファルコン!The strongest wings bearing the fire of hell.》

 

続いて戦兎・龍誠・滅・迅も変身し、全員で無人に襲い掛かる。

 

「ふふ。良いだろう。全員まとめて相手をしてやる!」

《Secret material! 飛電メタル!メタルクラスタホッパー!It's High Quality.》

 

すると無人は銀色のゼロワンになり、右手を前に出すと、小さな銀色のバッタの群れが戦兎達に襲い掛かった。

 

「なんだ!?」

「避けろ!」

 

突然の光景に戦兎が一瞬困惑して固まると、滅が腕を引いて回避させる。咄嗟に通りすぎていったバッタの群れを見ると、背後の瓦礫がバッタが通りすぎると、その姿を消していた。

 

「気を付けろ。あれはあのようにバッタを出して攻撃したり、変形させて盾のようにする力がある」

「そいつは厄介だな……」

 

滅に手を引かれて立ち上がった戦兎は、ドリルクラッシャーを出すと、それをガンモードにして発砲。しかし滅の言うとおり、無人の前に銀色の壁が現れ、銃弾を防いでしまった。

 

「なら!」

「これでどうだ!」

 

そこに不和と唯阿が走り込み、二方向から同時に発砲。しかしそれも銀色の壁をつくって防がれるが、

 

「そこだ!」

《ジャックライズ!ジャッキングブレイク!》

 

サウザンドジャッカーのジャッキングブレイクを発動した天津は、剣先を相手に向けると、その先から蠍のしっぽのようなものが伸び、無人を狙う。

 

「はぁ!」

 

しかし無人はそれを剣を出して弾き、

 

「プログライズキーホッパーブレードか!?」

「その通り!」

 

プログライズキーホッパーブレードをビルドドライバーにかざす。

 

《ファイナルライズ!》

「はぁ!」

《ファイナルストラッシュ!》

 

そしてそのまま剣を振り、無数の銀色の刺を天津に飛ばす。

 

「ぐぁ!」

「ちっ!」

「おぉ!」

 

天津が吹っ飛び、その後ろから滅と龍誠が飛び上がって、ダブルキックを放つ。

 

「甘いわ!」

 

しかしそれも壁を作って防ぐと、

 

「これで!」

「どうだ!」

 

そこに或人と迅が、アタッシュカリバーとスラッシュライザーをそれぞれ手にして、無人を切る。

 

「ぐっ!」

 

火花を散らし、流石にまともに喰らって後ずさる無人を更に、

 

《Ready Go!ボルテックブレイク!》

「喰らえ!」

 

ラビットフルボトルを挿したドリルクラッシャーで無人を切り、追い討ちをかける。

 

「おぉ!」

「はぁ!」

《シューティングブラストフィーバー!》

《ラッシングブラストフィーバー!》

 

不破と唯阿がジャンプで壁を飛び越え、同時に蹴りを叩き込む。

 

「ぐぁ!」

 

流石にそれを喰らっては無人も無事では済まず、後方に吹っ飛ばされ、壁に叩きつけられた。

 

「やったか?」

「不破。それはフラグだぞ……」

 

そう唯阿が言うと同時に、

 

《ゼロツーライズ!Road to glory has to lead to growin'path to change one to two!仮面ライダーゼロツー!It's never over.》

『っ!』

 

土煙の中から音声が響き、土煙を吹き飛ばすと同時に、中からライジングホッパーをベースに、赤や銀のカラーリングがなされた姿の無人が登場した。

 

「な、なんだ?随分さっぱりしたな……」

「見た目に騙されるな。あれは仮面ライダーゼロツー。社長の仮面ライダーゼロワンを越えた最強の姿だ。厄介なもんになりやがって」

「最強か……戦兎のジーニアスと違ってシンプル何だな」

 

龍誠がポカンとしていると、不破に諫められ、龍誠はフムフムと頷く。だが次の瞬間!

 

「行くぞ!」

『っ!』

 

無人が叫ぶと同時に、その場にいたライダー全員が後方に吹き飛ばされ、外に転がる。

 

「な、なんだ!?何が起きたんだ!?」

「後ろだ!」

 

龍誠が慌てて起き上がると、不破が叫び、龍誠が振り替えると既にパンチの準備を終え行動を起こし始めた無人がおり、

 

「あぶね!」

 

と咄嗟に防御……しようとした時、

 

「あがっ!」

 

同時に後ろから蹴られ、体勢を崩されたところにパンチを喰らい、後ろに吹っ飛んだところに、再度蹴りを入れられ、空中に吹き飛ばされたところに上空から蹴りを入れてきて地面に叩きつけられた。

 

「龍誠!」

「な、何なんだよ!前から殴れそうになったら後ろから蹴られて、前からも殴られてまた後ろから蹴られたと思ったら上からも蹴られてって……」

「あぁ」

 

混乱する龍誠を宥めながら、戦兎はゼロツーとなった無人を見据え、

 

「どんな手品か分からないが……速さなら負けねぇぞ!」

「ま、まって!」

 

戦兎は或人の制止を振り切り、ドリルクラッシャーを手に無人に襲いかかるが、

 

「っ!」

 

瞬時にゼロツーが同時に複数方向から、同タイミングで襲い掛かり、戦兎を吹き飛ばす。

 

「くそ……全く見えねぇ」

 

戦兎は地面に倒れながらも無人を見る。そして無人がレバーに手を掛けると、

 

「さて、そろそろ終わりにしよう」

 

レバーを回し、エネルギーを高めていくと同時に、無人は空へ飛び上がると、そのまま飛電インテリジェンスの会社より高く飛び上がり、一気に落下してくる。

 

《Ready Go!ボルテックフィニッシュ!ゼロツービックバン!》

「建物を狙ってるのか!?」

「させるか!」

 

それを見た或人は、バックルのスイッチを押す。

 

《ライジングボライド!》

「はぁああああ!」

 

そして或人は飛び上がると、エネルギーを右足に集め、バッタの脚のような幻影を見せながら無人の蹴りとぶつかる。

 

だが無人の蹴りの前に、或人の蹴りは無意味で、そのまま押しきられそうになるが、

 

「おぉ!」

《スクラップアタック!》

「むっ!?」

 

戦兎もスクラッシュドライバーのレバーを下ろし、飛び上がるとエネルギーを右足に迸らせ、無人の蹴りを正面から受け止める。だがそれでも足りなく、二人は弾き飛ばされた。しかし、

 

《シューティングブラスト!》

《ラッシングブラスト!》

《サウザンドライズ!サウザンドブレイク!》

《スコーピオンズアビリティ!スティングカバンシュート!》

《バーニングレイン!》

「っ!」

 

不破達がそこに総攻撃を叩き込み、無人に追い討ちをかけるが、それすらも突破。

 

「いくぜ!昇格(プロモーション)!ルーク!」

「なにっ!?」

《スペシャルチューン!》

 

だが最後に、飛電インテリジェンスの屋上へと上がった龍誠が、ロックフルボトルをビートクローザーに挿し、

 

《ヒッパレー!ヒッパレー!ヒッパレー!》

「ホームラン……バスタァアアアアアアアアア!」

《メガスラッシュ!》

 

ルークのパワーを上乗せした、ビートクローザーによる渾身の一振りが、無人の蹴りとぶつかる。

 

火花と耳をつんざく音が響く中、

 

《Ready Go!ボルテックブレイク!》

《メタルホッパーズアビリティ!メタルライジングカバンストラッシュ!》

 

戦兎と或人が、それぞれの武器を龍誠のビートクローザーにぶつけ、押し返すのを手伝う。

 

『うぉおおおおお!』

「ちぃ!」

 

流石にここまで妨害が入ると、無人も押しきれないのか一瞬力が弱まり、

 

『今だ!』

《Ready Go!》

 

その隙を三人は見逃さず、龍誠はレバーを回し、戦兎はレバーを下ろし、或人はバックルのスイッチを押して必殺技を発動。

 

《ライジングボライド!》

《スクラップアタック!》

《ドラゴニックフィニッシュ!》

 

三人は強引に必殺技を叩き込み、遂に無人を弾き飛ばす事に成功し、そのままビルの屋上から落下していく。

 

「ここまでやってどうにか弾くのがやっとかよ……」

 

戦兎はそう文句を言いながら、落ちていった無人を見ようと下を覗くと、そこには何事も無かったかのように立ち上がる無人の姿があった。しかし、

 

「ザウス?」

 

そう。ザウスが来て、無人に何か耳打ちすると、無人は頷きこちらに背を向け、そのままどこかに跳んでいってしまう。

 

「取り敢えず……なんとかなったのか?」

「さてな」

 

戦兎は龍誠に返しつつ、その場にへたり込むように座り込みながら変身を解除した。

 

「流石にしんどい……ってか体中いてぇ……」

「お疲れ様」

 

或人も変身を解除し、こちらに来ると、

 

「それにしてもゼロツーにまでなれるのか……本格的に対策を考えないとダメだな」

 

そう呟きながら、大きなため息を吐くのだった。




ゼロワンの映画見に行きました。最高でしたね。まさにゼロワンの集大成って感じ。ただ最高すぎてセイバーの内容が頭にのこらなゲフンゲフン!


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対策会議

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「或人さん達と共にゼロワンの世界にやって来た俺達だったが、ゼロツーに手も足もでなかった」
龍誠「くそー!あれもうどうやったら勝てんだよ!なんかないのか?動きを停止させるスイッチとか!」
或人「残念だけどそれはないんだよねぇ」
戦兎「まぁそんな感じの114話スタートだ!」


「とにかく、無人と戦うには対策を立てないと……」

 

無人が撤退した日の夜。社長室に集まった面々は、無人への対策を考えていた。しかし中々良い案は浮かんでは来ず、

 

「そもそもあのゼロツーってやつが強すぎなんだよなぁ」

「なにか攻略法はないんですか?」

 

龍誠のぼやきを耳にしつつ、戦兎が問うと天津が、

 

「ゼロツーに対抗するとしたら、あれの予測を凌駕する力か、予測できないと言うか、ゼロツーの記録にない攻撃をすればあるいは……」

 

うぅん。と全員が頭を捻るが、中々いいアイディアは出てこない。

 

「今までにはない力……それを求めて作ったのがゼロツーなんだ。そこからに変わった力……か」

 

不破がそう呟くと、唯阿も頷く。

 

「まさか、アークを倒すために産み出した力がここに来てもっとも厄介な存在になるとはな」

 

そしてまた皆で長考。するとイズが口を開き、

 

「一つ。心当たりがあります」

『っ!』

 

突然の言葉に、皆の視線が集まった。

 

「ゼロツーに勝てるかはわかりませんが、今までにない力であれば、私たちの目の前にあります」

 

とイズが示したのは戦兎だ。

 

「この世界にはない仮面ライダーの力。これであれば、あるいはゼロツーの意表を突くことが出来るかもしれません」

「ま、待ってくださいイズさん。残念だが、俺たちも既にアイツに負けて……」

 

と言う戦兎にイズは頷き、

 

「それだけではそうでも、そこに更にこの世界のライダーの力と合わせたらどうでしょうか?ゼロワンとビルドの融合。厳密には今或人社長はゼロワンに変身できませんが、無人が行っていることをこちらでも行うのです」

「だけどそんなことは可能なの?」

 

そう問いかけたのは迅だ。それに対して、

 

「ゼアは可能とのことです。それには桐生様の協力が必要ですが」

 

イズはそう答えながら戦兎を見る。戦兎としても、このままでは手詰まりだ。となれば、少しでも可能性がある方に賭けるしかない。それにその手があるなら、もう一つ試したい事ができた。

 

「分かりました。ただ一つ俺からもお願いがあるんですが」

「構いません。何でしょうか」

 

イズから了承を貰い、戦兎は自分を願いを口にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ」

「お疲れ様」

 

戦兎は飛電インテリジェンスの屋上で星空を見ながら息を吐いていると、背後から或人が声を掛けてきて、缶ジュースを渡してきた。

 

「完成しそう?」

「はい。後はここの機械がやってくれますから。良いですね、データ打ち込むだけで全部作ってくれますし」

 

戦兎がそう言って笑うと、或人は首を傾げ、

 

「そっちではライダーシステムってどうやって作ってるの?」

「ん?まぁ一部の奴を覗いて殆ど俺が作りましたね。あとメンテは俺がやってますし」

「えぇ!?」

 

スクラッシュドライバー関連は自分で作ってないが、メンテナンスは自分がやっている。

 

勿論全て手作業ではなく、PCを使ってもいるが、それの操作は戦兎がやっていた。そう或人に伝えると、

 

「す、凄いね……俺なんてイズとかゼアがいないとなにも出来ないや」

 

と笑っていた。そんな或人に戦兎は、

 

「無人の言い分。少しだけ理解できます」

「え?」

「科学が発展すれば、それだけ人々の役に立つこともある。でも同時に、ああいう不幸を呼ぶこともある」

 

戦兎が思わず呟くと、或人は優しげな笑みを浮かべ、

 

「俺さ。ついこの間までお笑い芸人やってたんだよ。誰かが笑うところがみたくて、日々爆笑ギャクを披露してた」

「は、はぁ」

「まあ聞いてよ。でもある日お笑い芸人型のヒューマギアの方が面白いって言われて仕事無くしちゃってさ。まぁその直後に社長になっちゃったんだけど」

 

元々この会社は俺のじいちゃんの会社だからね。と或人は言い、

 

「最初は成り行きでさ。でもヒューマギアを守るためには、社長になって仮面ライダーとして戦うしかなかった」

「守る?」

 

今度は戦兎が首を傾げる番だった。ヒューマギアに仕事を奪われた筈の或人が、なぜ守るためには戦うのか……

 

「うん。だって俺、ヒューマギアに命救われてるんだ」

「命を?」

「俺の両親は小さい頃に事故で亡くなっててさ。それからはヒューマギアに育てられて、命を救われたりしたんだ。だから俺はヒューマギアの可能性を……ヒューマギアは人類の希望になるって信じたいんだ」

 

そう言って自分の握った拳を見る或人に、戦兎は笑みを浮かべ、

 

「すごいですね。流石社長」

「いやいや、そっちだって大変そうじゃん?兵藤 一誠にハイスクールD×D……俺には想像のつかない世界だなぁ」

「或人さんの世界だってもしかしたらそうかもしれませんよ?」

 

戦兎は意地悪そうな顔でそういうと、或人はニカッと笑って、

 

「それでも構わないよ。例え俺がゼロワンになって戦うことが、誰かに決められたことだったとしても、今までの出会いや別れが全て想像の上の事だったとしても、それでも俺にとっては掛け換えのない物ばかりだった。だから構わない。寧ろ自慢したいくらいさ。俺の物語は凄いだろってね」

 

と言い、戦兎は肩を竦めた。

 

「敵いませんね」

「そりゃあ戦兎君もだろうけど、俺だって色々乗り越えてきたんだからね。ちょっとやそっとの事では動じないよ」

 

アッハッハ。と或人は笑い、戦兎も釣られて笑う。

 

「多分また早ければ明日無人は来る」

 

或人はそう言いながら、今度は片手を差し出して来る。

 

「無人は強敵だ。だから改めて、力を貸してくれ」

「はい」

 

戦兎もそれに応え、二人は握手を交わすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……ふぅ」

 

明くる日の早朝。無人は飛電インテリジェンスの建物の前にいた。

 

「やはり少し間を開けるべきでは」

「いや、一刻も早く飛電インテリジェンスを消さなければ……」

 

ザウスに言われるものの、無人は首を横に振り、変身を開始する。

 

《ホッパー!AI!ベストマッチ!Are you ready?》

「へん……しん!」

《ゼロツーライズ!Road to glory has to lead to growin'path to change one to two!仮面ライダーゼロツー!It's never over.》

 

一気にゼロツーに変身し、飛電インテリジェンスに攻撃を加えようとするが、

 

「させるかよ」

「ん?」

 

そこにやって来たのは、或人と不破の二人だけだ。

 

「二人だけか?」

「あぁ、俺たちだけだ」

 

そう言いながら、不破はショットライザーを装着し、或人もレイドライザー着ける。

 

「まぁいい。まずはお前達から始末してやる!」

「そう簡単にいくかな」

 

無人に或人はそう返し、プログライズキーを取り出した。それは赤と青で彩られ、ビルドの顔の模様が彫り込まれている。

 

「そしてもう一つはこれだ」

 

不破も或人に続いて、真っ赤なドラゴンの模様が描かれたプログライズキー……いや、厳密にはこれは、ゼツメライズキーと呼ばれるものを出した。

 

「なんだそれは……」

「これはアンタを止めるため、この世界にはない力をこの世界の技術で産み出した物だ」

《ジーニアス!》

 

或人はボタンを押して、レイドライザーに装填。

 

《ウェルシュドラゴン!》

 

不破も同じくボタンを押し、ゼツメライズキーに指を掛けると力を込める。

 

「ふぐぅううううううあぁあああああああ!!」

 

メキメキと音をたて、キーが悲鳴と僅かな火花を散らした後、キーのロックが外れて展開。

 

それをショットライザーに装填し、

 

《Kamen(Warning!)Rider……Kamen(Warning!)Rider……》

『変身!』

《レイドライズ!》

《ショットライズ!》

 

ショットライザーの発砲と同時に、銃弾が赤いドラゴンに変化して不破を飲み込もうとするが、それを渾身の右フックで破壊し、バラバラになった破片が不破の体を包み込んでいく。

 

同時に或人の方も、赤と青のボディが半々ずつ構成され、それが或人に装着された。

 

《Fullbottle shake shake!ベストマッチングビルド!A genius physicist whose mind surpasses all.》

《ドラゴニックバルカン!The Red Dragon Emperor now destroys the world.》

 

二人の変身が終了し、それぞれの武器を構え、

 

「行こう。不破さん!」

「あぁ!」

 

或人の言葉に、不破は応えながら、二人は共に無人に向かって走り出すのだった。



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戦うための力

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「無人の力を前に、或人さんと不破さんはそれぞれ新たな姿に変身!」
龍誠「とはいえあのゼロツーに勝てるのか……」
戦兎「まぁその辺はうまくやるさ。ってな感じの115話スタート!」


『ハァアアアアアアア!』

 

変身した或人と不破は同時に走りだし、ゼロツーとなった無人とぶつかる。

 

「はぁ!」

「くっ!」

 

瞬時に後ろに回り込んだ無人は、或人に蹴りを放つが、それを背後に出現したダイヤモンドの壁で防ぐと、

 

「おらぁ!」

 

不破が横から殴りかかる。しかし、無人はその拳を掴んで止めると、

 

「はぁ!」

 

蹴り飛ばす。そこに或人が横から飛び蹴りを放ち、それも無人は高速移動で回避し、背後に回り込むが、今度は或人の背後から分身が現れて無人を止め、不破がショットライザーを手に取り発砲。

 

「ぐっ!」

 

ダメージは大したことはないが、少し怯んだ所に、或人が連続で拳を叩き込んだ。

 

(なんだ!?)

 

無人は困惑する。今までの二人じゃない。ゼロツーの力による予測。それは未だに効果を発揮している。しかし、時折その予測を上回ってくるのだ。

 

(何かが可笑しい!)

「困惑してるだろ?」

 

すると或人が声を掛けてきた。

 

「このプログライズキーは特別でね。この世界のじゃない仮面ライダービルドのデータが込められてる。それによりフルボトル?の力を使える」

 

そこまではわかる。だが無人が疑問なのは、何故自分の動きを読んでくるのかが分からない。

 

「ゼロツーは衛星ゼアの人工知能を直接搭載している。それにより高度な演算を行うけど、勿論これ事態には衛星ゼアの人工知能はない。でも宇宙にはちゃんと衛星ゼアはいる」

 

そこまで聞いて、無人は納得した。そう言うことかと。

 

「成程、衛星ゼアを直接搭載したゼロツーに対抗するには、衛星ゼアは必須。つまりその仮面ライダービルドの力をもったプログライズキーは……」

「そう。これは衛星ゼアとオンラインで繋がっている。厳密には、衛星ゼアと俺を飛電インテリジェンスのコンピューターを介して繋げている。これによりゼロツーの兆にも及ぶ演算に並ぶ程の演算能力を得る事に成功した」

 

しかし、それにより新たな謎が生まれていた。

 

「だが、それだけのデータをオンラインで介せば、データを処理し、お前に送るだけでもスーパーコンピューター並の機材が何百単位で必要なはずだ。幾らなんでもそんな用意があったとは思えないが?」

「ふっふーん。確かにうちにはそんな数のスパコンはない。でも、スパコンにも負けず劣らずの仲間がいる」

 

或人の一言により、無人の中で全てが繋がった。

 

「ヒューマギアか」

「そうだ。飛電インテリジェンスが今まで作り、そして人々の夢と希望となるヒューマギアがいる。今そんな皆の人工知能をオンラインで繋ぎ会わせ、うちの社員達や刃さんに天津課長が操作する飛電インテリジェンスのコンピューターと共に衛星ゼアの予測データを処理し、適切なフルボトルの力を選択、そして俺に伝えてくれている」

 

すると無人は舌打ちをすると、

 

「ヒューマギア……どこまでも俺の邪魔をする。まぁ良い。だが飛電 或人!例えそうだったとしても、ゼロツーには及ばない!」

 

そういった次の瞬間。ゼロツーの姿が複数出現し、それが次々或人達に襲い掛かった。

 

「お前がどれだけ数を揃え、予測しようとも直接搭載しているゼロツーに比べ、どうしても予測とその行動の決定には、タイムラグが生まれる!」

 

複数のゼロツーが連続して或人達に襲い掛かる中、無人は叫ぶ。

 

「なにより、幾ら手数で誤魔化そうとも、単純にスペックが足りない!」

「それは俺が埋める!」

 

しかし無人と或人の間に割って入り、ゼロツー達の攻撃を一人で受け止めた不破は、強引に押し返した。

 

「なっ!」

 

その力強さは、明らかにさっきよりも大きく上回っている。

 

「やっと体が暖まってきたぜ」

 

不破はそう言って走り出すと、一瞬で間合いを詰め、ゼロツーに殴り掛かる。しかしそれを回避し、無人は連続で拳を叩き込んだ。そこに、

 

「はぁ!」

「っ!」

 

蜘蛛の糸を射出してゼロツーを捉えると、不破の渾身の拳が無人に炸裂。そのまま後方に吹っ飛ばした。

 

「あがっ!」

 

だがそれと同時に不破が右腕を抑え、苦しそうに呻く。

 

「大丈夫!?不破さん!」

「平気だ!それよりまだ来るぞ」

 

不破が言うと同時に、無人が土煙の中から飛び出し、二人に襲い掛かる。しかしまずは或人が止め、不破がその隙に攻撃。

 

若干読みが遅れるが、不破が体を張って稼ぐ時間を使って準備し、無人を足止めしていた。

 

その間にも不破のスペックは上昇していく。

 

「何なんだ……このパワーは!」

「このゼツメライズキーはな。何でもとんでもない力を持ったドラゴンのデータが入ってるらしくてな。力が溢れてくるぜぇえええ!」

 

メキメキと不破は自分の体が軋むのを感じつつ、無人に食い下がる。

 

「無人様!」

 

そこにザウスが割り込もうとするが、

 

『させるかぁ!』

 

そこにそれぞれ変身した戦兎と龍誠がザウスを止めた。

 

「くっ!」

「お前の相手は俺たちがしてやる!」

「或人さん達の邪魔はさせねぇ!」

 

ザウスを押し返し、戦兎と龍誠が追い込む中、或人と不破も無人を追い詰めていく。

 

「くっ!仮面ライダーの力を奪われても、なお俺にここまで立ちふさがるか。飛電 或人!」

「当たり前だろ!俺は別に仮面ライダーだから戦うんじゃねぇんだよ!」

 

なに?と無人は眉を寄せる。

 

「俺はな……仮面ライダーだから戦うんじゃない。戦うために、仮面ライダーの力を手にしたんだ!」

 

或人はそう叫びながら、右手からゴリラのオーラを纏わせた拳で、無人に殴る。

 

「人間もヒューマギアも守りたい。どっちも笑い、手を取り合って暮らせる未来を作るために、俺は仮面ライダーの道を選んだ。だから例え仮面ライダーの力がなくても関係ないんだよ!」

「……そうか」

 

無人はそう言いながら、レバーを回す。

 

「だがそれでも、ここで貴様は片付ける!」

《Ready Go!ボルテックフィニッシュ!ゼロツービックバン!》

「行こう不破さん!」

「あぁ!」

 

その無人を相手に、或人と不破も必殺技を発動する。

 

《ベストマッチングボライド!》

《ウェルシュドラゴンブラストフィーバー!》

 

三人は同時に飛び上がり、キックの体勢に入る。

 

『ハァアアアアアア!』

 

キックがぶつかり合い、火花と爆音を撒き散らすが、ゼロツーのキックの方が威力があるのか、少しずつ押していこうとする。

 

「おぉおおおおおお!」

 

しかしその時、不破の体が赤く光り、ゼロツービックバンを押し戻していき、

 

「な、なに!?」

「負けるかぁああああああ!」

 

遂には或人と共にゼロツーのキックを打ち破ると、そのまま無人を蹴り飛ばした。

 

『はぁ!』

「ぐぁあああああああ!」

 

後方に無人は背後に吹き飛ばされ、そのまま壁に叩き付けられた拍子に、ベルトとフルボトルが宙を舞う。

 

「あっぶね!」

 

それを見た戦兎は、ザウスを突き飛ばすとジャンプしてビルドドライバーをキャッチ。

 

「ヨッと!」

 

龍誠も走ってフルボトルをキャッチし、二人は目を見合わせて一息吐いた。だが、

 

「うぐぁああああ!」

「不破さん!?」

 

そこに不破が悲鳴をあげ、次の瞬間変身が強制解除される。

 

「不破さん!不破さん!」

「不味い!」

 

或人・戦兎・龍誠の三人は不破に駆け寄った。

 

今回使ったウェルシュドラゴンのゼツメライズキーは、龍誠の体内にある因子から作ったものだ。

 

その能力は、スペックを無限に上げ続けると言うもの。それにより、不破の意思に関係なくスペックを上げ続け、遂にはゼロツーすら大幅に上回るほど、スペックを叩き出していた。だがそれは変身者への負担が尋常ではないと言うことで、限界を迎えたらしい。

 

「不破!」

 

そこに唯阿や他の面子も、作業をやめて飛電インテリジェンスの社内から飛び出してきた。

 

そこに、

 

「ぐ、ぐぐ」

「無人……」

 

瓦礫の中から無人が立ち上がり、或人もそれを見る。

 

「もうやめろ無人!もう良いだろ!」

「お前に……俺の何がわかる!」

 

そんな無人を或人は止めつつも、無人は耳を貸さない。しかし、

 

「分かるさ!あんたが一番恨んでるのはヒューマギアじゃないってこともな」

「なに?」

「俺も社長だからわかる。あんたが一番許せないのは、時代の流れに逆らえず、でも乗ることも出来ず、社員や家族を不幸にしてしまった自分自身だ!違うか!?」

「っ!?」

「あんただって分かるだろ!こんなことしたって、何にもならないってこと!」

「だまれ……」

「家族は戻ってこない。会社だって戻ってこない。あんたの過去は変えられないんだよ!」

「だまれだまれだまれぇ!」

 

無人がそう叫んだ瞬間、無人の全身が魔獣に変わっていく。

 

「な、なんだあれは!」

「そうか。なんで先日まで植物状態だった人間が動き、変身まで出来たのか……お前兵藤 一誠から魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)で体を改造されたな!」

「そうだ」

 

怪物に変わった無人は言う。

 

「おれは既に脳から足先まで殆ど魔獣化させている。そのせいで長時間活動すると、体が拒否反応を起こしてしまうがな。だがそれももう関係ない!来い!ザウス!」

「は!」

 

ザウスは無人の隣に立つと、無人の体から生えた触手でザウスを絡めとり、そのまま体にくっつけて同化していく。

 

それと同時に、無人が見上げるほど巨大な怪物に変貌した。

 

「俺がどうなろうと知ったことかあ!全てを俺が破壊してやるぅ!」

 

そう言うと同時に、無人が口から光線を放ち、それが戦兎達に襲いかかった。

 

「不味い!」

 

そう感じたときにはもう遅い。既にそれは戦兎達に飛んできていた。だが、

 

『はぁ!』

 

そこに割って入ってきた者が、その光線を弾く。それは、

 

「ヴァーリ!?」

「ヴァーリだけじゃないぜ」

 

と言って来たのは匙だ。そして、

 

「今治療します!」

 

不破に光を当てて治療するアーシアがいて、

 

「待たせたな」

「お待たせしました」

 

サイラオーグとフウもいる。

 

「皆来てくれたのか」

「おう」

 

ヴァーリがニヤリを笑みを浮かべる。

 

「匙も復活したのか!」

「アーシアさんのお陰でな」

 

龍誠に匙も答えていると、

 

「あ、そうそう。匙、これ返すわ」

「おう」

 

戦兎が思い出したように、スクラッシュドライバーと、ラビットスクラッシュゼリーを渡す。するとラビットスクラッシュゼリーが戦兎の手を離れると同時に、ドラゴンスクラッシュゼリーに戻った。

 

「でもなんで皆が?」

「アザゼルの奴が徹夜して何とか転移装置を作ってな。今度は5人まで運べるようにしたってんで、俺達が来た。アーシア・アルジェントがいれば、怪我人の治療も出来るしな」

 

とヴァーリからの説明を受けているうちに、不破の治療も終わったらしく、不破は、立ち上がる。

 

「凄いな……もう完全に治ってる」

「で、でも無理はダメですよ?」

 

驚く不破を横目に見つつ、戦兎は或人に、

 

「或人さん。失礼します」

「ん?」

 

戦兎は龍誠からフルボトルを受け取り、それを或人に向けると、光が溢れて、或人の中に戻っていく。

 

「これでゼロワンに変身できる筈です」

「ありがとう」

 

そんな中、巨大化した無人がこちらを凝視し、

 

「どこまでも邪魔をしやがってぇ!」

「あぁ邪魔するさ。何度でも何度でも。俺達が仮面ライダーである限り!」

《ゼロワンドライバー!》

《ショットライザー!》

《フォースライザー!》

《サウザンドライバー!》

《スラッシュライザー!》

 

或人達は全員ベルトを装着。

 

「アーシア。下がってな」

「は、はい!」

 

そして戦兎が指示を出すと、アーシアは素直に後ろにいき、戦兎たちもベルトを装着。

 

皆がそれぞれ変身用のアイテムを取り出す。

 

「さぁ、実験を始めようか!」

《ラビット!タンク!ベストマット!》

《ジャンプ!オーソライズ!》

《覚醒!グレートクローズドラゴン!》

《バレット!オーソライズ!》

《ロボットゼリー!》

《ダッシュ!オーソライズ!》

《ドラゴンゼリー!》

《ゼツメツ!Evolution!ブレイクホーン!》

《デンジャー!クロコダイル!》

《ポイズン!》

《ギアエンジン!ファンキー!》

《インフェルノウィング!バーンライズ!》

 

全員がアイテムをベルトに装填し、構えた。そして叫ぶ。

 

《Are you ready?》

『変身!』

「潤動!」

 

《鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イエーイ!》

《プログライズ!飛び上がライズ!ライジングホッパー!A jump to the sky turns to a rider kick.》

《Wake up CROSS-Z! Get GREAT DRAGON! Yeahhh!》

《ショットライズ!シューティングウルフ!The elevation increases as the bullet is fired.》

《潰れる!流れる!溢れ出る!ロボットイングリス!ブラァ!》

《ショットライズ!ラッシングチーター!Try to outrun this demon to get left in the dust.》

《潰れる!流れる!溢れ出る!ドラゴンインクローズチャージ!ブラァ!》

《パーフェクトライズ!When the five horns cross,the golden soldier THOUSER is born.Presented by ZAIA.》

《割れる!食われる!砕け散る!クロコダイルインローグ!オラァ!キャー!》

《フォースライズ!スティングスコーピオン!Break down.》

《Engine running gear》

《スラッシュライズ!バーニングファルコン!The strongest wings bearing the fire of hell.》

 

こうして、全員が変身を終えると、或人と戦兎が一歩前に出る。そして、

 

「無人!」

 

或人は叫ぶと、

 

「お前を止める。止めて見せる。お前を止められるのは……」

 

俺だ!といつもの癖で言いかけたが、それは違うと或人は踏みとどまり、今度は戦兎と一緒に、

 

『俺達、仮面ライダーだ!』




ベストマッチングビルドレイダー

パンチ力・23t
キック力・55t
ジャンプ力・100m
走力・2.5秒

ビルドのデータから作り出した、ベストマッチングビルドプログライズキーを使って変身した姿。

スペックはライジングホッパーレイダーより劣るものの、ジーニアスとは違い一つしか使えないが、ビルドのフルボトルの力を使うことができ、更にオンラインで衛星ゼアと繋がることで、ゼロツーに匹敵する演算能力を持つ。

しかし、オンライン通信ではその膨大な情報を処理して送ることが出来ないため、外部でその処理及び、処理した情報を或人に通信で伝達する必要がある。その為飛電インテリジェンスの機材だけではなく、会社に登録されている全てのヒューマギアの人工知能をオンラインで結び、情報の処理を行わせている。そのためゼロツーとは違い、先読みにタイムラグがあり、ゼロツーとの正面からの戦いではスペック差もあって勝つことは難しい。

その為、戦いでは不破の援護に回っていた。


仮面ライダードラゴニックバルカン

パンチ力・40t
キック力・88t
ジャンプ力・55m
走力・1秒

戦兎がイズに頼んで作った秘策で、ウェルシュドラゴンゼツメライズキーで不破が変身した姿。

こちらは最初からショットライザーでの運用を見据えて作られたため、オルトロスバルカンのようにショットライザーが破損することはない。

因みにキーは龍誠からデータを得て作っている。

スペックはかなり高めで、更にスペックをほぼ限界なく上昇させる事が可能。これによりゼロツーのスペックを上回ることも可能。ただし、スペックの上昇は時間経過による自動上昇のため、すぐに上回ることは出来ない上に、上昇を適度な所で止めることも出来ないため、不破の肉体に尋常ではないほど負担をかけ、殴る蹴るの動作ですら体を壊すほど。最終的には倒れてしまうものの、アーシアの回復により全快した。



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愛と平和と皆の笑顔

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……?

戦兎「無人との激戦を経て、遂にビルドドライバーと或人さんはゼロワンの力を取り戻したが……」
或人「激昂した無人は巨大な化け物に変貌してしまう」
戦兎「そこに集う俺と或人さんのそれぞれの世界の仮面ライダー達」
或人「戦いは遂にクライマックスを迎えるのであった!」
龍誠「そんな感じの116話スタートだ!」


『皆……行くぞ!』

『おぉ!』

 

或人と戦兎の号令を合図に、全員が走り出すと、そこに向けて無人が光線を放つ。だが、

 

『はぁ!』

 

全員がそれを飛んで避け、更に或人と戦兎は舞い上がった瓦礫を足場に前に進む。

 

「喰らえ!」

 

そしてまずは或人がアタッシュカリバーを手に無人の触手を切っていき、

 

「こっちだ!」

 

戦兎がドリルクラッシャーで更に切りながら、ガンモードに変えて撃つ。

 

「ぐぉおおおおおお!」

 

無人は咆哮すると、多数の触手を一斉に放ち、戦兎達に襲い掛かるが、

 

『させるか!』

 

龍誠と不破が後ろから飛び上がり、それぞれビートクローザーとショットライザーで触手を破壊し、或人と戦兎を助ける。

 

「はぁあああ!」

「おらぁああ!」

 

続けざまに唯阿のショットライザーとヴァーリのツインブレイカーが火を吹き、更に触手を破壊。

 

それを見て或人は別のプログライズキーを出し、戦兎もフルボトルを出す。

 

《ウィング!オーソライズ!》

《タカ!ガトリング!ベストマッチ!》

 

或人はフライングファルコンプログライズキーを、戦兎はタカフルボトルとガトリングフルボトルをそれぞれベルトにセット。

 

《Are you ready?》

「変身!」

「ビルドアップ!」

《プログライズ!Fly to the sky!フライングファルコン!Spread your wings and prepare for a force.》

《天空の暴れん坊!ホークガトリング!イェーイ!》

 

龍誠と不破が切り開いてくれた道を、空を飛んで或人と戦兎は進む。

 

「はぁああああ!」

 

そこに襲いかかる触手を、戦兎はホークガトリンガーで撃って破壊し、或人もアタッシュカリバーで更に切る。

 

《ライトニングホーネット!Piercing needle with incredible force.》

《ディスチャージボトル!ツブレナーイ!ディスチャージクラッシュ!》

 

すると戦兎と或人を追い越し、ライトニングホーネットになった唯阿とヘリコプターフルボトルでヴァーリが空を飛びながら上空へ行くと、無人は腕を伸ばして二人を掴もうとするが、

 

《ライトニングブラスト!》

《チャージボトル!ツブレナーイ!チャージクラッシュ!》

 

まず唯阿がショットライザーを構え、無人の手を撃つ。

 

銃口から巨大な蜂の針が飛び出し、無人の手を刺すとそこにヴァーリがクマフルボトルをスクラッシュドライバーに挿し、チャージクラッシュで作った巨大な黄色い腕でぶん殴って更に針を押し込むとそのまま針で貫通させた。

 

「グォオオオオオ!」

 

苦しそうに声を上げる無人を目にし、或人と戦兎は一気に上空まで行くと、

 

《ファイヤー!オーソライズ!》

《トラ!UFO!ベストマッチ!》

 

二人はそれぞれベルトのアイテムを交換し、フォームチェンジする。

 

《Are you ready?》

「変身!」

「ビルドアップ!」

《Gigant flare!フレイミングタイガー!Explosive power of 100 bombs.》

《未確認ジャングルハンター!トラユーフォー!》

 

二人は穴を開けられ、動きが止まった腕に飛び乗ると、まずは或人が両腕から炎を出して相手の腕を焼きながら、駆け上がっていく。

 

「グォオオオオオ!」

 

そこに何本も生やした他の腕を伸ばし、或人を潰そうとするが、

 

「させるか!」

 

空を飛びながら、戦兎は多数の小型のUFOを出し手を迎撃。

 

「腕の動きを止めましょう」

「ならこれかな!」

《ブリザード!オーソライズ!》

「変身!」

《Attention freeze!フリージングベアー!Fierce breath as cold as arctic winds.》

《スパイダー!冷蔵庫!ベストマッチ!Are you ready?》

「ビルドアップ!」

《冷却のトラップマスター!スパイダークーラー!イェーイ!》

 

二人はその隙にフォームチェンジし、戦兎がまず糸を射出して腕を纏めてグルグル巻きにすると、或人と協力して冷気を放ち、腕をガチガチに固めてしまう。そこに、

 

《ジャックライズ!ジャッキングブレイク!》

 

ピンク色のタカを出した天津と、匙がそれに捕まり急上昇。そして上まで来ると、

 

《サウザンドライズ!》

 

アメイジングコーカサスプログライズキーをサウザンドジャッカーにセットした天津と、

 

《シングル!ツイン!》

 

匙もツインブレイカーにタカフルボトルと、ドラゴンスクラッシュゼリーをセット。そして、

 

《サウザンドブレイク!》

《ツインブレイク!》

『はぁああああ!』

 

二人の同時攻撃が、ガチガチに固めた腕を破壊。続けて、

 

「行くぞ」

「あぁ」

 

滅がベルトを二回操作し、両腕から蠍の毒針のようなものを伸ばし、それを無人の腹に二本とも突き刺すと、引っ張るようにしつつ、その反動で飛び上がり、足にエネルギーを集めた。サイラオーグもそれに合わせて飛び上がり、

 

《スティングユートピア!》

《クラックアップフィニッシュ!》

『喰らえ!』

 

強力な同時蹴りをまともに喰らい、無人は苦しそうな唸り声をあげた。

 

《ファング!オーソライズ!》

《サメ!バイク!ベストマッチ!Are you ready?》

「変身!」

「ビルドアップ!」

《キリキリバイ!キリキリバイ!バイティングシャーク!Fangs that can chomp through concrete.》

《独走ハンター!サメバイク!イエーイ!》

 

その間に或人と戦兎は更にフォームを変え、何匹もサメを戦兎が召喚し、無人の首元に喰らい着いていく。

 

「おぉおおおお!」

 

或人も腕からアンリミテッドチョッパーを伸ばし、無人の全身を引き裂き、

 

「よし、僕達も」

「はい」

 

迅とフウはそれぞれ武器を構え、

 

《バーニングレイン!》

《ファンキードライブ!》

 

フウがまず巨大な歯車を出現させ、迅がそれをバーニングレインで弾いて発射。炎を纏った歯車は、無人の胸に直撃するとガリガリと削り爆破。

 

《プレス!オーソライズ!》

「変身!」

《Giant Waking!ブレイキングマンモス!Larger than life to crush like a machine.》

 

その爆破に乗じて或人は更にフォームチェンジすると、

 

《ブレイキングインパクト!》

 

上空から無人の脳天に向けて必殺技を発動。

 

「グガァアアアア!」

 

脳天にモロに喰らった無人は苦悶の声を漏らし、或人は戦兎の隣に着地。

 

「どんどんいこう!」

「はい!」

《シャイニングジャンプ!オーソライズ!》

《ラビットタンクスパークリング!》

「変身!」

「ビルドアップ!」

《プログライズ!The rider kick

increases the power by adding to brightness!Shining hopper!When I shine, darkness fades.》

《シュワッと弾ける! ラビットタンクスパークリング!イエイ! イエーイ!》

 

シャイニングホッパーに変身した或人は、演算によって導き出した結果から高速移動で一気に間合いを詰め、無人の体を駆け上がると顎を蹴り上げ、

 

「はぁああああ!」

 

泡の反動で飛び上がった戦兎が、顎を蹴り上げられた勢いで上に向いた顔面に向かって蹴りを放つ。

 

「まだまだ!」

《ハイパージャンプ!オーバーライズ!》

「変身!」

《プログライズ!Warning, warning. This is not a test!ハイブリッドライズ!シャイニングアサルトホッパー!No chance of surviving this shot.》

 

更に姿を変え、或人はオーソライズバスターを出し、ライジングホッパープログライズキーを装填。

 

《Progrise key confirmed. Ready for buster.バスターボンバー!》

 

そのまま一気に地面に向けてオーソライズバスターを振り下ろし、無人を切る。

 

《ハザードオン!ラビットタンクスパークリング!ガタガタゴットン!ズッタンズタン!ガタガタゴットン!ズッタンズタン!Are you ready?》

「ビルドアップ!」

《アンコントロールスイッチ!ブラックハザード!シュワッと弾ける!ラビットタンクスパークリング!イエイ!イエーイ!ヤベーイ!マックスハザードオン!Ready Go!》

「行くぞ!」

《ハザードスパークリングフィニッシュ!》

 

或人の攻撃に続き、戦兎も更に蹴りを叩き込む。

 

《エブリバディジャンプ!オーソライズ!》

「変身!」

《プログライズ!Let’s Rise! Le! Le! Let’s Rise!Secret Material! Hiden Metal!Metal Cluster Hopper!It‘s high quality.》

《マックスハザードオン!ラビット&ラビット!ガタガタゴットン!ズッタンズタン!ガタガタゴットン!ズッタンズタン!Are you ready?》

「ビルドアップ!」

《紅のスピーディージャンパー!ラビットラビット!ヤベーイ!ハエーイ!》

 

或人はプログライズキーホッパーブレードと、戦兎はフルボトルバスターを構え、

 

《ファイナルライズ!》

《ラビット!タカ!忍者!海賊!アルティメットマッチデース!》

『はぁ!』

《ファイナルストラッシュ!》

《アルティメットマッチブレイク!》

 

二人は同時に特大の斬撃を放つ。或人の金属質の斬撃と、戦兎の様々な色が混じりあった斬撃が融合し、無人に襲い掛かる。

 

《タンク&タンク!ガタガタゴットン!ズッタンズタン!ガタガタゴットン!ズッタンズタン!Are you ready?》

「ビルドアップ!」

《鋼鉄のブルーウォーリア!タンクタンク!ヤベーイ!ツエーイ!》

 

タンクタンクフォームに変わった戦兎は、足を戦車のキャタピラに変形させ、背後に或人が乗ると走り出す。

 

すると銀色のバッタが或人の体から出現し、それが形を変えて集まると道が出来き、戦兎はそれを使って走っていく。

 

「ゴォオオオオ!」

 

それを迎撃すべく、触手を伸ばして襲ってくるが、戦兎がフルボトルバスターで撃ち落としつつ、間合いを詰めると或人が飛び上がり、プログライズキーホッパーブレードと、アタッシュカリバーを合体させベルトにスキャン。

 

《アルティメットライズ!》

 

戦兎もフルボトルバスターのフルフルラビットタンクボトルをセット。

 

《フルフルマッチデース!》

『オォオオオオ!』

《アルティメットストラッシュ!》

《フルフルマッチブレイク!》

 

或人の斬撃と戦兎の砲弾が無人を襲い、無人は大きく体勢を崩した。

 

《ランペイジバレット!オールライズ!Kamen Rider…Kamen Rider…》

《ボトルバーン!クローズマグマ!Are you ready?》

『変身!』

《フルショットライズ!Gathering Round!ランペイジガトリング!マンモス!チーター!ホーネット!タイガー!ポーラベアー!スコーピオン!シャーク!コング!ファルコン!ウルフ!》

《極熱筋肉!クローズマグマ!アーチャチャチャチャチャ チャチャチャチャアチャー!》

 

そこに追い込みを掛けるため、不破と龍誠がそれぞれランペイジバルカンと、クローズマグマに変身。そして、

 

《パワー!ランペイジ!》

昇格(プロモーション)!ルーク!」

《ランペイジパワーブラスト!》

《ボルケニックナックル!アチャー!》

 

不破はサメ・マンモス・ゴリラの力による力強い連撃を叩き込み、無人の崩れ体勢を更に崩す。そこに龍誠はボルケニックナックルでマグマのドラゴンを作り出し、無人の体勢を完全に崩した。

 

《パワー!ランペイジ!スピード!ランペイジ!》

《Ready Go!》

 

その隙を狙い、不破と龍誠は更に追い討ちを駆ける。

 

昇格(プロモーション)ナイト!」

《ランペイジスピードブラスト!》

《ボルケニックアタック!》

『はぁああああ!』

 

 

不破は背中に羽を生やして飛び上がると、銃口から蜂の針を撃って牽制し、そのまま落下して蹴りの体勢に入ると、龍誠も同じく飛び蹴りの体勢に入った。

 

「グガァアアアア!」

 

それを腕を払って防ごうとするが、

 

『おらぁ!』

 

それを体を捻ってキックを無理矢理キャンセルしながら避け、腕を高速で走りながら駆け抜けると、そのままもう一度キックの体勢になり、今度こそ蹴りを叩き込む。

 

《パワー!ランペイジ!スピード!ランペイジ!エレメント!ランペイジ!》

昇格(プロモーション)ビジョップ!」

《スペシャルチューン!ヒッパレー!ヒッパレー!ヒッパレー!》

 

キックを決めた反動で、後ろに飛んだ不破と龍誠は更に技を発動。

 

《ランペイジエレメントブラスト!》

《メガスラッシュ!》

 

まずは龍誠がロックフルボトルを挿したビートクローザーを振ると、巨大な錠前が出現。それを不破が出した炎と氷を纏わせ、それを二人で蹴り飛ばして無人にぶち当てる。

 

《パワー!ランペイジ!スピード!ランペイジ!エレメント!ランペイジ!オール!ランペイジ!》

 

そしてトドメとばかりに、不破は全エネルギーを銃口に集め、無人に向けて発射。

 

《ランペイジオールブラスト!》

 

しかし、

 

『クォオオォガァアアアア!』

 

無人が体を起こし、口から光線を撃つと、不破のランペイジオールブラストとぶつかり合い、押し合いになる。そこに、

 

昇格(プロモーション)クイーン!」

《Ready Go!》

 

レバーを二回回した龍誠が、炎を全身から撒き散らしながら突進。

 

「オラオラオラァ!」

《ボルケニックフィニッシュ!》

 

押し合いになっているランペイジオールブラストのエネルギー弾に、後ろから龍誠のボルケニックフィニッシュを叩き込むと、互角に押し合っていたが、一気に無人に向けて飛んでいき顔面……正確には口腔内で炸裂。

 

「ギュアアアアアアアア!」

 

口の中がズタズタになり、悲鳴にも似た咆哮を無人が上げる中、或人と戦兎は並び立つと、

 

《ゼロツードライバー!ゼロツージャンプ!》

《グレート!オールイエイ!ジーニアス!イエイ!イエイ!イエイ!イエイ!Are you ready?》

「変身!」

「ビルドアップ!」

《ゼロツーライズ!Road to glory has to lead to growin'path to change one to two!仮面ライダーゼロツー!It's never over.》

《完全無欠のボトルヤロー!ビルドジーニアス!スゲーイ!モノスゲーイ!》

 

 

或人と戦兎は最強の姿にチェンジし、

 

「勝利の法則は決まった!」

 

それぞれ最後の技を発動させた。

 

《ゼロツービックバン!》

《ワンサイド!逆サイド!オールサイド!Ready Go!》

 

二人は同時に飛び上がると、二人のオーラが混ざり合い、一つの巨大なエネルギーの塊に変わる。

 

《ゼロツー!》

《ジーニアス!》

『これで……』

 

二人は同時にキックの体勢に入る中、無人は残った触手を集め、防御体勢に移行。しかし二人はそれでは止まらず、

 

『最後だぁああああああああああ!』

《ビックバン!》

《フィニッシュ!》

 

二人の同時キックは、無人の触手をを粉砕していき、そのまま無人の胸に突き刺さると、そのまま貫通。

 

「グギャアアアアアアア!」

 

無人は大きな悲鳴を上げ、悶えて暴れる中、或人と戦兎は地面に着地。そして同時に、無人は爆発を起こし、その場には大きなクレーターと、或人と戦兎、そして人間に戻った無人がいた。



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ゼロワン

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「無人との最後の決戦を迎えた俺たち」
或人「激戦を潜り抜け、俺たちを待っていたのは……!」
龍誠「そんな感じのゼロワンコラボ章最終回!117話スタートだ!」


「う……ぐぅ」

 

その場に膝を着き、無人は或人を見る。

 

「俺を倒したところで……何も変わらない。俺のようにヒューマギアに狂わされた人間は幾らでもいる。悪意が潰えることはない!」

「そうかもしれない」

 

或人は変身を解除し、無人を正面から見据えた。

 

「それでも俺は戦う。いつか本当に人間もヒューマギアも笑いあえる世界になるその日まで。俺はその悪意と戦い続ける。それが飛電 或人の……仮面ライダーゼロワンの生きざまだ」

「……」

 

その或人の言葉に、無人は何も言わず、その場に倒れる。

 

「イズ。救急車の手配を」

「畏まりました」

 

待機していたイズに、或人は指示を出しながら無人を見直す。

 

「これから行く病院はヒューマギアが管理する病院だ。あんたにとっては地獄かもしれない。それでも、俺もヒューマギアも……あんたを見捨てることはしない。あんたが望まなくても、救うのを止めるわけにいかないから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無人が救急車に運ばれ、皆はそれを静かに見送った後、

 

「さて……俺達は帰ろうか」

 

そう言い出したのは戦兎だ。すると或人は、

 

「そっか。でもありがとね。君達には助けられた」

「いえ、この程度は対したことじゃないですよ」

 

と言い合いながら、互いに握手を交わすと、

 

「あ、これも持っていきなよ」

 

と言って、或人が渡してきたのはライジングホッパープログライズキーだ。

 

「折角だし記念にね」

「ならこれも持っていけ」

 

不破もそういってウェルシュドラゴンゼツメライズキーを龍誠に渡した。

 

すると、

 

「そして!更に更にこのまま帰らしたんじゃ、この奇跡の出会いが殺伐とした思い出だけになっちゃって詰まらないからね。俺の爆笑ギャグで笑いながら帰っていただこう!」

『え"?』

 

不破以外の、唯阿達ゼロワンの世界勢が、思わず表情を凍り付かせるが、

 

「あぁ、そう言えば或人さん元はお笑い芸人でしたね」

 

と戦兎が言い、他の皆も楽しみそうに見た。

 

「いやぁ、ホントに今回は戦兎君達には助けられた。やっぱり世界が違っても仮面ライダーは変わらない。そしてその世界も良い世界だ。ホント、()()()も良()()()だなぁ!はぁい!あるとじゃ~!ないとぉおおおおおお!」

『……』

 

ヒューっとその場を木枯らしが吹き抜けた。

 

(い、今のがギャグなのか!?)

(わ、笑いどころが分からねぇ!)

(あ、異世界と良い世界を掛けたのか!?)

(せ、世界が違うと笑いのツボがこんなに違うものなのか……)

(い、いえ。あちらの皆様の反応を見る限りそう言うわけではないようですが)

「あ、あははは……」

 

戦兎達は固まり、辛うじてアーシアだけは優しさからか空笑い。すると、

 

「……」

「龍誠?どうした?」

 

龍誠は一人うつむき、静かにしていた。それに気づいた戦兎は龍誠の肩を叩くと、

 

「ブハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」

 

突然大笑いし始め、周りがポカンとしてしまうと、

 

「おい戦兎聞いたか!?異世界も良い世界だってよ!アハハハハハハハ!」

「お!良いねぇ!じゃあ折角だし俺の爆笑ギャグ100連発と行こうかぁ!」

(100個もこれが続くの!?)

 

龍誠の大爆笑に気を良くした或人は、更に続ける。

 

「おい。誰がこのタンスを開けたんだ?あぁ、俺が開けたんす!はぁい!あるとじゃ~ないとぉおおおおおお!」

「アハハハハハハハ!」

 

その後、本当に或人はギャグを100個言い、龍誠は呼吸困難になるほど大笑いして帰っていくことになるのだった。

 

因みに、何故か不破は一人背を向け、全身を震わせていたのだが、その理由は不明である。

 

「あるとじゃ~ないとぉおおおおおお!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「無人は負けたか。まぁそうじゃないと面白くないからなぁ」

 

その頃、一誠は真っ黒なフルボトルを手で弄びながらいると、ユーグリットがやって来て、

 

「楽しそうですね。まぁその力のために今回は頑張ったようなものですから当たり前かもしれませんが」

「あぁ、飛電 或人の力の一部。アークの力。飛電 或人はアークの力で変身する、アークワンと言う変身形態があり、それに由来する力を抽出したもの。これがあれば俺は更に強くなれる」

 

戦兎は言った。自分の悪意が更に力を増させると。

 

「なら俺もその悪意を利用させてもらう」

 

このアークの力は、この世界ではその使用者の悪意によって様々な姿を取っていたらしい。

 

ならばそれは、きっと自分にとっても有益なものになるだろう。

 

「楽しみだなぁ。戦兎ぉ」

 

ニタァ……っと笑みを浮かべつつ、一誠はフルボトルを掲げた。

 

「次は俺が勝つからなぁ。くく……あはははははは!」

 

その笑い声は、悪意の満ちた不気味なものだった。



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第十七章 教員研修のヴァルキリー
祖母


前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「或人さんと無人を倒し、ゼロワンの世界を救ってから数日……」
龍誠「つうか結局兵藤一誠何しに来たんだ?」
戦兎「そんなの俺が聞きてぇよってな感じの118話スタート!」


「おうお前ら。堕天使の総督辞めて来たぞ」

『は?』

 

ゼロワンこと或人達との共闘から暫く経ったある日、アザゼルの突然の告白に、皆は硬直する。

 

さて、現在戦兎達は龍誠達の屋敷の地下にある、トレーニングルームでトレーニングに励んでいた。

 

いつまた兵藤 一誠が襲ってくるか分からない。その為全員のレベルアップは急務だ。その為皆それぞれここに集まっては弱点の克服や、長所の引き延ばしを行っていたのだが、そこにアザゼルがやって来て、前述のようなことを言い出したのだ。

 

「辞めたってどう言うこと?」

 

リアスの問いにアザゼルは、

 

「ヴァンパイアの一件で、今まで非協力的だった勢力も加入を表明してきたんだが、俺はオーフィスを勝手に匿っちまったからな。まぁその辺の責任だよ。仮にも和平を提案した立場だ。他の奴等に突っ込まれる前にシェムハザに押し付けてきた。ま、龍誠や戦兎が乗っ取られたり吸血鬼の騒動でバタついてて先伸ばしになってたからな。正式に総督の座を退いてきた」

 

やっと肩の荷が降りたぜ。と言いつつ、アザゼルは肩を回す。

 

「勿論これからも技術顧問として堕天使連中とは関わるがな。ま、これで教職に専念できる」

 

元々アザゼルは面倒見が良いので、先生という職業は自他共に認める天職だ。その為か若干ウキウキしている。

 

すると、

 

「後、客が来てるぜ」

『客?』

 

全員がまた首を傾げていると、アザゼルの横の足元に魔方陣が出現し、そこから上品な初老の女性が現れた。

 

「こんにちはリアス・グレモリー様及び眷属の皆様。私はゲンドゥルと申します」

「婆ちゃん!?」

 

礼儀正しく頭を下げたゲンドゥルと名乗った女性を見たロスヴァイセは、目をギョッとひん剥いて叫ぶ。するとゲンドゥルは頭を上げ、

 

「ロセ。そんな大きな声を出すものじゃありませんよ」

「で、でもなんで婆ちゃんがここに?」

 

ジロリ、とゲンドゥルはロスヴァイセを見る。

 

「ロセ。何でですって?逆に問いますが、折角なったヴァルキリーから突然悪魔になった不肖の孫の様子を見に来るのが変ですか?」

「いやぁ、その……」

 

祖母からの問いに、ロスヴァイセはシドロモドロになりつついると、

 

「全く。勝手に悪魔になった挙げ句ロクに連絡も寄越さないし。で?最近どうなんだい?彼氏くらい出来たのかい?」

「か、彼氏なんているわけねぇべさ!」

「まさかあんたこんなイケメンがいるってのに何もないってのかい?」

 

と戦兎達を見るゲンドゥル。タイプは違えど、戦兎も龍誠も祐斗もそれぞれイケメンだ。しかしロスヴァイセは素に戻って狼狽しつつ、

 

「あ、あたりめぇだべ!皆大切な仲間だ。ばっちゃが思うような間柄じゃねぇよ」

「はぁ~。全く。我が孫ながら顔は良いのにここまでとはねぇ」

 

ゲンドゥルは曾孫の顔はまだ先かね。なんて言っていると戦兎が、

 

「まぁ、ロスヴァイセさんって美人の前に残念な、着きますからねぇ」

『うんうん』

「どういう意味ですか!?」

 

思わず皆が頷く中、ロスヴァイセは驚愕しながら、思わず叫ぶのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、それにしてもロスヴァイセがあのゲンドゥルの孫だったとはねぇ」

「知ってるのか?」

 

トレーニングの後、戦兎はベルトのメンテナンスを行っていたのだが、そこにやって来た黒歌に言われ、首を傾げていた。

 

「北欧では超有名人よ。まぁロスヴァイセも独自の魔方陣を使ってるし、血筋かしらね」

「独自の魔方陣?」

「分かってないかもしれないけど、ロスヴァイセの魔方陣って、とんでもなく計算に計算を重ねたものよ。無駄を限界まで削り、消耗を押さえつつもその上で威力は維持している。相当才能あるわよ。ま、この辺は私よりルフェイの方が詳しいけどねぇ」

 

黒歌がそこまで手放しに誉めるということは、あの人そんな凄い人だったのか……と戦兎はクラスメイトからロスヴァイセちゃん、なんて親しみを込めて呼ばれている姿を思いだす。

 

「でも孫のために態々大変ね」

「いや、他にもソーナ会長が今度建てる学校の講師として呼ばれたそうだ」

「あら、あの話もうそんなに進んでたのね。でもなんで悪魔の学校に?」

「魔力の扱い方が苦手な奴でも魔法の適正はあるかもしれないからってさ」

 

成程ね~、と黒歌は頷く。

 

「しかし誰でも通える学校かぁ。ホントに叶えちゃうとはね」

「だな。まぁ匙いわく、まだ学校ができただけで教師の手配も授業や教育方針等といった中身もまだまだらしいからな。やっとスタート地点に立ったって言ってたよ」

「大変だったみたいだしねぇ。特に建設予定地決めの辺りから」

「まぁシトリー家の領地でやれば会長じゃなくて、レヴィアタン様の政治目的って取られかねないしな。ただでさえ昔ながらの悪魔の上役は、この学校建設には否定的だった。その性で部長も表立っては支援できなかった位だし」

 

サーゼクス・ルシファーの妹だからねぇ、と黒歌は肩を竦めた。

 

「ま、取り敢えずアガレス領の田舎町に取り敢えず試験的に設立、って感じらしいぜ」

「ふぅん」

 

すると、黒歌が少し目を細め、

 

「そう言えば戦兎、話が少し変わるんだけど、あんたはどうすんの?」

「どうするって?」

「ソーナ・シトリーや匙は夢を着々と叶えてるけど、あんたは何かないわけ?悪魔の人生は長いのよ?色々目標立てといて損はないと思うけど?」

 

そう言われ、確かに自分自信の夢としてはあまり考えたことがなかったことに、戦兎は気づいた。

 

「うぅん。仮面ライダーとして戦うことは勿論だけど、他にだろ?」

「当たり前でしょ」

「難しいな……取り敢えず今は兵藤 一誠をどうやって倒すかって方を考えるのが忙しくてな」

「んで、それもその一環ってやつ?」

 

そう言うこと、と言いながら戦兎は、黒歌にフルボトルを二本見せる。

 

「名付けてクロコダイルフルボトルにリモコンフルボトル。サイラオーグさんのクロコダイルクラックボトルを使って作ったんだ。そしてこっちのリモコンフルボトルは……」

 

ライのギアリモコンフルボトルでな。と戦兎は言うと、黒歌も目を伏せた。

 

「ライのためにも、絶対勝たないとな」

「そうね」

 

戦兎はそう言いながら、作業を再開させると、黒歌はその横顔を覗き込む。

 

「どうした?」

「んーん。なんでもない」

 

んふふ。と悪そうに笑う黒歌に、戦兎は眉を寄せた。すると、

 

「ちゅ」

「っ!」

 

何の前触れもなく、いきなりキスをしてきた黒歌に、戦兎はビックリついでに椅子から落っこちる。

 

「???」

 

いったい何のことだかわからず、戦兎はクエスチョンマークを浮かべながら固まる。

 

「な、何を急に!?」

「いやぁ、何か良いかなって」

 

何かって何!?と戦兎が軽くパニクっていると、

 

「何をしてるんですか?」

「っ!?」

 

ビキィ!と戦兎の体が固まり、ギギギ……と錆び付いた機械みたいな動きで振り替えると、そこには体から炎を立ち上がらせた(恐怖から来る幻影)小猫が、仁王立ちで立っていた。

 

 

「何ってキスしただけだけど?」

 

なにか問題でも?と言いたげな雰囲気の黒歌に、小猫は詰め寄ると、

 

「黒歌姉様とは言え、冗談でやって良いことと悪いことがあります」

「冗談じゃないって言ったら?」

 

はい?と小猫はポカンとしてしまうと、黒歌が吹く。

 

「ま、冗談だけどね~」

「っ!」

 

ぶん!と小猫は拳を放つと、黒歌はヒラリと飛び上がって回避。

 

「丁度良いわ。仙術での戦い方を鍛えてあげる」

「上等です」

 

そう言って二人はぶつかり合い、

 

「あのー。この実験部屋でやりあうのは辞めてもらえませんかねー」

 

既に退避を終えた戦兎がそう呟くのだが、それが彼女たちに届くことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふ~ん♪」

 

一方その頃、龍誠は袋を片手に鼻唄を歌いながら歩いていた。

 

お気に入りのプロテインが特売で安く手に入り、ご満悦である。

 

すると、

 

「あれ?」

 

視界の先に両手からパンパンの袋を持ったロスヴァイセが歩いていた。

 

と言うのも、彼女は見た目は美人なので、目立つのである。そこで、

 

「おーい。ロスヴァイセさーん!」

「ん?あ!龍誠君じゃないですか」

 

龍誠の声にキョロキョロと辺りを見回したロスヴァイセは、龍誠を視界に入れると此方に駆け寄ってくる。

 

「買い物ですか?」

「はい。今日は休みなので100均で色々と」

 

そう言って袋の中を見せてくると、中には大量の商品が入っていた。

 

「素敵です。これだけのクオリティを持ちながらも全てが100円。日本ってなんて素晴らしいんでしょう!」

 

こう言うところが残念な美人と呼ばれる所以なのよなぁ。と龍誠は溜め息を吐きつつ、

 

「これから帰りですか?あ、持ちますよ」

「えぇ、この量の荷物ですしね。

あ、大丈夫ですから」

 

世間話をしつつ、グッと互いに荷物を掴みあう。

 

「申し訳ないですし大丈夫ですから」

「いやいや、筋トレにもなりますし持ちますって」

 

そう言い合って暫し引っ張りあったが、ロスヴァイセは諦めて手を離した。

 

「分かりました。お願いします」

「えぇ」

 

そして二人で歩き出すと、

 

「でもゲンドゥルさんでしたっけ?お祖母さんって有名な人なんですよね?」

「えぇ、現役時代はヴァルキリーとして活躍していた人でして。と言うか、自慢するわけではないのですが、うちの家庭は総じて優秀な人が多いんですよ。私は落ちこぼれですけど」

 

落ちこぼれ?と龍誠は首を傾げると、

 

「私って攻撃系の魔法しか使えないんですよ。でもそれってうちの一族の得意な魔法ではなくてですね」

 

アハハ。と苦笑いをロスヴァイセは浮かべながら、

 

「まぁだからといって、家族や親戚の不当に扱われたりしませんでしたよ?流石に攻撃系の魔法しか覚えれない時は笑われましたが」

 

いっそ不当に扱われた方が反発できてよかったかもしれませんね。とロスヴァイセはまた笑う。

 

「良い家族なんですね」

「えぇ、とても優しくて暖かい家族で……あ、すみません」

 

そこまで言って、ロスヴァイセはハッとして口を抑える。龍誠の過去を考えれば、あまり家族の自慢はしない方がいいと思った。しかし、

 

「え?あぁ!別に気にしないでください。俺の本当の両親だって、優しくて暖かい普通の親だったんですから。それに、俺には今はオカ研メンバーって言う仲間がいますしね」

 

と言う龍誠に、ロスヴァイセは笑みを浮かべる。すると、

 

「ん?」

「どうしました?」

 

龍誠はロスヴァイセに問い掛けると、

 

「可笑しい。さっきまで人通りか多かったはずなのに」

「え?あれ?」

 

そう、まだ昼間だ。それにさっきまで人がかなり歩いていたはずなのに、いつの間にか人一人いない。それどころか気配がしない。

 

「なんだ?」

 

嫌な予感がして、龍誠はビルドドライバーを装着。ロスヴァイセも魔方陣を展開。そこに、

 

「ふふ、やはりこの銀髪は素晴らしい」

『っ!』

 

ロスヴァイセは突然背後から髪を触られ、生理的な嫌悪感から振り返り様に魔法を撃つ。龍誠も咄嗟に振り替えると、

 

「危ない危ない」

 

それを飛び上がってバク転で避けながら、地面に着地した男は乱れた髪を直す。そこに居たのは、

 

「たしかお前は……グレイフィアさんの弟の!」

「えぇ、お久し振りですねクローズ。ユーグリット・ルキフグスですよ」



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クローズVSクローズ

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「或人さん達との共闘を経て、暫しの平穏を味わっていた俺たちだったが、そんな俺達の元にユーグリット・ルキフグスが現れる!」
龍誠「俺達って言うか俺とロスヴァイセさんの前にだけどな!お前は黒歌にキスされていい思いしてるじゃねぇか!」
戦兎「いやあの後黒歌と小猫の大乱闘になってよ……片付けが大変だったぜ」
龍誠「それは……お疲れさん」
戦兎「ま、まぁそんな感じにやっていく119話スタートだ!」


《ボトルバーン!クローズマグマ!Are you ready?》

「何しに来たか知らねぇが、ここであったが百万年だぜ!」

「百年では?」

 

ビルドドライバーを腰に巻いた龍誠に、ロスヴァイセが思わず突っ込むと、

 

「ま、まぁそうとも言うけど取り敢えず変身!」

《極熱筋肉!クローズマグマ!アーチャチャチャチャチャ チャチャチャチャアチャー!》

「良いでしょう」

《エボルドライバー!》

 

ユーグリットもエボルドライバーを腰に装着し、

 

「貴方を倒してから彼女はいただきます」

《ドラゴン!ロック!エボルマッチ!Are you ready?》

「変身!」

《ドラゴンロック!フッハッハッハッハ!》

 

クローズマグマに変身した龍誠と、ヘルクローズに変身したユーグリットはにらみ合い、

 

『はぁ!』

 

同時に走り出すと、拳をぶつけ合う。

 

「ロスヴァイセさんを貰うってどういうことだ!」

「そのままの意味ですよ。彼女の知恵が我らには必要でしてね」

 

そう言いながらユーグリットは右手にビートクローザーを、左手に赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を出し、龍誠も右手にクローズマグマナックル、左手にビートクローザーを持ち、更にぶつかり合う。

 

「ロスヴァイセさんの知恵だと?」

「えぇ、彼女はアースガルズでの学生時代、一つの論文を書いていました。それが《黙示録の獣》です」

 

その名前を聞いた時、ロスヴァイセの顔色が悪くなり、

 

「待ってください!何故貴方がそれを……結局それは纏まらず別のものを提出しました!私が書いていたのを知るのは当時のルームメイトだけです!」

「えぇ、ですから少し記憶を覗かせていただきました。あぁ、それ以上の危害は加えていませんのでご安心を」

 

ふざけんな!と龍誠はクローズマグマナックルをユーグリットの胸に叩き込む。

 

「ふざけてなどいませんよ。大真面目です!」

「っ!」

 

今度はユーグリットが連続でビートクローザーと赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の拳を叩き込み、龍誠は地面を転がった。

 

「くっ!」

「龍誠君!大丈夫ですか!?」

 

えぇ、と龍誠は立ち上がると、

 

昇格(プロモーション)!クィーン!」

 

クィーンに昇格(プロモーション)し、龍誠は走り出す。だが、

 

「ならばこちらは……」

 

とユーグリットは赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を掲げ、

 

禁手化(バランスブレイク)!」

「なっ!?」

 

突如ユーグリットヘルクローズに赤い装甲が追加され、有機的なフォルムになる。

 

神器(セイクリットギア)とライダーシステムは同時に運用できます。そちらのクローズチャージも似たような事をしているでしょう?まぁあちらは無理矢理くっつけているだけですが、私のこれは最初から赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)禁手(バランスブレイカー)との同時運用が前提に作られていましてね」

 

ここからもっと行きますよ?とユーグリットは言うと、一瞬で龍誠との距離を詰め襲い掛かる。

 

「ちぃ!」

 

それを龍誠は迎撃するが、少しずつ押されていく。すると、

 

「え?」

 

突如ロスヴァイセの姿が消え、変わりにジーニアスに変身した戦兎が現れ、直ぐ様龍誠とユーグリットの間に入り、ユーグリットをダイヤモンドを纏わせた拳で殴り飛ばした。

 

「大丈夫か!?」

「戦兎!どうやって!?」

 

キャスリングの応用、と戦兎は答える。

 

「ロスヴァイセさんはルークだからな。ポーンの俺と入れ換えた。ほら、ギャスパーの一件の時にサーゼクス様達がやってくれただろ?あれの簡易版」

「あぁ、そう言えばレーティングゲームでは禁止だけど人数減らす代わりにやり易くしたんだったな。ってかよく気づいたな」

「こんな派手に結界張られたら嫌でも気づくぞ」

「成程」

 

と二人は並んで立ち、レバーを回す。

 

《ワンサイド!》

「ぐっ!」

 

ジーニアスの能力により、神器(セイクリットギア)を使用不能されたユーグリットは動けなくなっていた。そこに、

 

《Ready Go!》

《ジーニアスアタック!》

《ボルケニックアタック!》

 

二人は飛び上がると、同時に蹴りを叩き込み、ユーグリットを吹き飛ばす。

 

「どうだ?やったか?」

「それフラグ」

 

龍誠に戦兎が突っ込みを入れていると、ユーグリットは立ち上がり、変身を解除する。

 

「ロスヴァイセ殿がいなければ意味がありません。ここは引かせていただきましょう」

 

そう言ってユーグリットは空間を歪ませ、そこに入っていく。

 

「ですが必ず彼女は手に入れます。えぇ、彼女は私と共にある運命にあるのですから」

 

と言い残すと、ユーグリットはそのまま姿を消すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「黙示録の獣か」

 

一先ず屋敷へ戻った戦兎と龍誠は事のあらましをアザゼルに説明。すると龍誠が、

 

「そもそも……モクジロクノケモノってなんだ?」

「聖書の神が命懸けで封印した伝説の獣でしたっけ?」

 

あぁ、と戦兎にアザゼルは頷くと、

 

「んで、それについての研究をしていた者達が今世界的に行方不明になる事件が起きてる」

「十中八九ユーグリット……いえ、兵藤 一誠達の仕業ね」

 

アザゼルの報告に、リアスはギュッと拳を握りながら答えた。

 

「あぁ、しかしまずはロスヴァイセには論文を書き起こし直してもらいたい。そこから何か分かるかもしれん。正直黙示録の獣に関しては分かってないことが多すぎる」

「えぇ、すぐにでも取りかかります」

 

ロスヴァイセはそう言いながら、パソコンをカタカタと打っている。

 

「しかしそんなの調べてどうしようってんだ?」

「あいつらのことだ。ろくなことはしないだろうさ。甦らせて町中に解き放つとかな」

 

龍誠に戦兎は答えると、アザゼルは首を振り、

 

「もし黙示録の獣が出たら、町中に解き放つ必要はねぇ。適当に出現させれば、何もしなけりゃ一週間と持たずに地球は無くなるぜ」

『いっ!』

 

マジかよ。と戦兎と龍誠は固まると、

 

「あれとまともに戦えるのなんて全盛期のオーフィスとグレートレッド位なもんだ。あいや、後もう一体いたか」

「それは?」

 

ビジター。アザゼルはそう答えた。

 

「びじたー?」

「昔まだ三大勢力が争ってたときにな、一度だけ手を組んだことがある。ってか組まざるを得なかった」

 

アザゼルは少し懐かしむような顔をしつつ、

 

「戦争中突然現れた存在だ。名前もわからん。ビジターってのも名前がないと話しづらいってんでつけただけだ。あいつは空から降ってきて、何も言わずに攻撃を始めた。俺達は手も足もでなくてな。ま、最終的にどうにかこうにか封印した」

「先生達が手も足もって何者なんですかそいつは」

 

巨大な何かだった。そうとしか言えないとアザゼルはいい、

 

「まぁ厳密に言うと強い弱いの話じゃなく、そもそもの根元的なものが違う存在だったよ。ま、今もどっかで寝てるだろ」

「どっかて……」

 

戦兎が若干避難するような目でアザゼルを見るが、こっちは肩を竦めて、

 

「仕方ねぇだろ。何かしらの形で記憶を暴かれて、悪用されるわけにはいかねぇからな。どこに封印したかは当時関係したやつらは皆わざと記憶を消去してある」

 

厳重ね。とリアスは言う中、

 

「とにかく今はユーグリット・ルキフグスの動向に注意しとけ。これからはこう言った平穏な時に突如襲い掛かってくる事があるかもしれない。常に複数人で行動し、油断しないようにしておけ」

 

アザゼルの指示に、戦兎は確かにと頷く。

 

今まで何だかんだ言いつつ、敵が待ち受けている状況やそれに近い状況が多かった。しかし今回の襲われ方は、殆ど奇襲みたいなものだ。しかも禍の団(カオス・ブリゲード)対策の本拠地とも言えるこの駒王町でそれが起きた。

 

(余りいい状況とは言えないか)

 

戦兎はそう結論付け、

 

「おい龍誠。クローズマグマナックルとボトルを貸せ」

「は?なんだよ急に。今先生からいつ襲われるかわかんないから気を引き締めとけって言われただろ」

「だからだよ。急いでお前のクローズマグマをアップグレードさせる」

 

突然の戦兎の提案に、龍誠は何?と首をかしげた。

 

「出来んのか?そんなこと」

「一応な。ただ前にも言ったがクローズ自体はお前の素の力が大きく関わってくる。俺が出来るのはクローズマグマでの成長の切っ掛けだ」

 

後……と戦兎は続け、

 

「お前不破さんからもらったウェルシュドラゴンゼツメライズキーがあるだろ?あれも貸してくれ」

「お、おぉ。分かった」

 

龍誠は直ぐ様走りだし、戻ってくると戦兎にそれを渡した。

 

「これでクローズマグマは強くなるのか?」

「あぁ、多分俺の計算が正しければな」

 

戦兎はそう言いながら笑みを浮かべ、

 

「んじゃ、早速行ってくるわ」

 

と自宅にある地下の研究室に向かうのだった。



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必要な存在

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「ユーグリットに襲われ、俺達は新たに目次録の獣と言う存在を知る」
龍誠「しかしクローズマグマのアップグレードちゃんとできたのか?」
戦兎「ふふーん。そこが未来の天才物理学者・桐生 戦兎様に任せなさいよ」
龍誠「しかしあの兵藤 一誠の野郎。どこまでも面倒なことをするやつだぜ」
戦兎「だがそれでも俺達は諦めないぜ!ってな感じの120話スタート!」


広い屋敷の中を生気のない顔で歩く男が一人いた。彼はマグダラン・バアル。【元】バアル家の次期当主で、サイラオーグにその座を奪われ、現在は何者でもなくなってしまった男だ。

 

兄のサイラオーグと違い滅びの魔力を受け継いでいる。しかしそれが戦いに活かされるかと言うと、また別の話だ。

 

本人の性格は至って荒事には向いていない。どちらかと言うと穏やかな生活の方が性にあっている。しかし周りの環境がそれを許さず、幼い頃より虐待にも近い英才教育を施されてきたが、それでもサイラオーグに敗北し、地位もプライドも周りの関心も全て失った。

 

今や居ても居なくても変わらない。存在を認識されてるのかすら怪しい。

 

ただ毎日食べて寝て、その間に趣味の園芸に興じる。そんな日々だ。誰も自分を気にかけない。誰も自分を必要としない。

 

「マグダラン?」

「あ、兄上」

 

そこに丁度やって来たのは兄と、よく兄がつれているポーンだ。確か双子だった筈だが、片割れは戦いで命を落としたと聞く。

 

「息災か?」

「えぇ」

 

短い会話だ。それはそうだろう。サイラオーグにも引け目があった。自分を通すために、弟を引きずり下ろしたという思いは。

 

そして弟を今の状況に追いやったという思いも……

 

勿論マグダランも、サイラオーグには何とも言えない感情が渦巻いている。

 

そんな二人の会話は、母親違いとは言え兄弟の会話には見えないものだった。

 

するとサイラオーグは、

 

「そ、そうだマグダラン。今度アガレス領でシトリー家のソーナが学校を建てるんだが、お前も見に来ないか?その……いい気分転換になると思う」

「き、気が向いたら……」

 

マグダランはその場から逃げるように去っていく。そんな様子を見ていたフウは、

 

「よろしいのですか?追われずにならなくて」

「いや、アイツも俺と長話はしたくないだろう。恨まれているだろうしな」

 

そうフウに返すサイラオーグは、少し寂しげな表情を浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ」

 

マグダランは自室に戻ると、床に座り込む。

 

何が学校に来ないかだ。外に出るのも怖くしたのは何処のだれだと心で叫び、同時にそんな自分がひどく惨めに思えた。

 

その時、

 

「酷い兄だなぁ」

「っ!誰だ!」

 

マグダランは咄嗟に身構えた。だが姿は見えない。一瞬聞き間違えたか?と思ったが、

 

「気分転換だってよ。自分がお前から奪っていったくせにな」

「なっ!?」

 

今度は背後から。マグダランは滅びの魔力を手に集め、背後に放った。だがそれは簡単に払われてしまい。

 

「な、何者だ!」

「俺は兵藤一誠。お前を救いに来たのさ」

「救いにだと?」

 

兵藤 一誠という名前には聞き覚えがある。と言うか知らないわけがない。

 

今世界中を騒がせている禍の団(カオス・ブリゲード)のリーダー。

 

それが何故ここにいるのか……そんなマグダランの思惑をよそに、一誠は近寄る。

 

「酷い兄だなぁ?サイラオーグは」

「っ!」

 

マグダランは思わず口をつぐむと、

 

「いや、サイラオーグだけじゃないな。お前の周り奴等も酷いもんだ。お前に勝手に自分の望んだ道を歩かせようとして、それが潰えると掌を返す。お前の思いなんて全無視さ」

「だ、黙れ!」

 

マグダランは1、2歩後ずさる。

 

「だがそんなお前に話がある」

 

一誠はマグダランに詰め寄り、

 

「マグダラン。禍の団(カオス・ブリゲード)に来ないか?」

「い、行くわけがないだろう!わ、私はバアル家の……」

「バアル家のなんだ?誰も期待しないし、見もしないお前がバアル家のなんなんだ?」

一誠の言葉に、マグダランは言葉を詰まらせる。

 

「お前はサイラオーグに負けた。滅びの魔力を持たないとお前自身も蔑んだサイラオーグに負け、地位も名誉も何もかもを失い、無為に毎日を過ごす。ただそれだけの存在だ。そう周りはお前を見ている」

 

だが俺達は違う、と一誠は言う。

 

「お前が俺たち禍の団(カオス・ブリゲード)には必要だ。お前の力がな」

 

一誠は言葉を続け、手元にエボルドライバーを出した。

 

禍の団(カオス・ブリゲード)ならだれもお前を不要などと言わない。だれもお前を否定しないし、マグダラン・バアルになることを強要しない。ただのマグダランでいいんだ」

 

エボルドライバーをマグダランに渡しながら一誠は言い、

 

「もし気が向いたら来るといい。なに、またすぐ会えるさ。俺達はいつでも歓迎してるぜ?」

 

一誠はそのまま姿を消し、マグダランはエボルドライバーを持ったままその場にへたり込んでしまいながら、内心で呟いた。

 

(私が必要とされてる……か)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これでよし……と」

 

カチャリとキーボードのエンターキーを押して、戦兎はウーンと背を伸ばす。

 

「終わったの?クローズのアップグレード」

「あぁ。まあな」

 

背後から声を掛けてきた黒歌に、戦兎は答えながら振り替える。

 

今の黒歌は大きめのTシャツしか着てない。風呂上がりの黒歌はこう言ったラフ過ぎる服装しかせず、前までは文句を言っていたが、今はもう諦めた。突っ込んでもからかわれるだけである。

 

そして彼女の手には煎餅がある。すっかり黒歌は戦兎の家に馴染んでおり、他のヴァーリチームの面々も好きに暮らしている。

 

元々はこの家は戦兎の先祖が代々継いできた土地に建っており、家族三人で住むには大きすぎる家だ。だからヴァーリチームの面々に部屋を与えてすっかり下宿状態なのだが、母は賑やかで楽しそうだし、美空は兄しかいなかったからかルフェイや黒歌に結構なついており、戦兎も今の状況を気に入ってはいる。だがせめて黒歌のこの服装に関してはどうにかならんか……と思うがヴァーリや美猴辺りに言っても、

 

「言っても聞かん」

「右に同じく」

 

と言われてしまって相手にならない。

 

「どんな感じにアップグレードしたの?」

「ま、色々な」

 

戦兎はそう言いながら、クローズマグマナックルとクローズマグマフルボトル。それにジーニアスフルボトルも見せる。

 

「あれ?クローズマグマだけじゃないの?」

「あぁ、ジーニアスフルボトルも或人さんから貰ったビルドプログライズキー使ってアップグレードしたんだ。序でにこの間作ったクロコダイルフルボトルとリモコンフルボトルの力も追加してな」

 

そう言って肩を戦兎が回すと、ゴキゴキと音がする。

 

「悪魔になってから徹夜とかぶっ通しの作業がしても比較的平気になったけど、やっぱ流石に疲れたな。寝るわ」

 

と大きなあくびを戦兎がすると、黒歌に突然肩をさわられた。

 

「あ?」

「少しじっとしてなさい」

 

黒歌に言われるまま、大人しくしているとじんわりと肩が暖かくなり、そこからその熱が全身を巡って行く。

 

そうしていくと、体の疲れなどの悪いものが流れていくような感覚が来た。

 

「確かに悪魔なら徹夜したりある程度は無茶が聞くけどね?それでもちゃんと体は労んなさい」

「すまん」

 

ポリポリと頭を掻くと、今度は黒歌に後ろから抱き締められる。

 

「はぁ!?」

「……」

 

突然抱き締められ、戦兎は思わず背中に感じる柔らかさに狼狽えた。口が避けても言えないが、小猫にはないものである。

 

「おまっ!だから冗談でもこういうことすんな!」

「冗談じゃないって言ったら?」

 

何時ものような飄々とした声音とは違い、真面目な物だった。

 

そんな黒歌に戦兎は眉を寄せつつ、

 

「お前に好かれる理由がない」

「私達の父親ってね?科学者だったのよ」

 

そんな中、突然の黒歌の告白に、戦兎は口をつぐむ。

 

「父親って言っても、遺伝子上ってのが正しいくらいでね。愛されたことはないし、父親らしいことは一度もして貰ってない。撫でられたことも抱っこされたことだってない。よく言えば研究一筋。正直に言えば家族に興味がない男だった。まぁ母親を研究材料序でに都合の良い性処理道具位に思って使ってたらできた子供ってだけだったから、そんなもんだったのかもしれないけどね」

 

ギュッと、黒歌の腕に力が籠った。

 

「だから私は科学者ってのが嫌いだった。私にとっての科学者ってのは、自分に寄せる好意も道具にして、自分の知的好奇心を満たすクズみたいな連中だからね」

「……お前の両親って?」

「あぁ、もうどっちも死んだわ」

 

あっけらかんと黒歌は言うが、どこか寂しげな口調だ。

 

「だけどね、アンタを見てると科学者ってのも悪くないかなって思える。あんな父親でも……自分に好意を寄せる女性を実験台に使うような男にも、母が惚れる何かはあったんじゃないかなって思える。あんなクズでもさ、父親だから良いところはあったんだって思いたいんだよね」

「小猫は知ってるのか?」

「言えると思う?」

 

小猫から黒歌以外の家族の話を聞いた覚えはない。まぁこちらから話題を余り振らないのもあるが。

 

「なんか……ごめんね」

「ん、おぉ」

 

妙にしおらしい黒歌に、少し戦兎は驚きつつも、振り払おうとした手を下げ、

 

「お前……顔赤くね?」

「あんたってホントにデリカシーってもんがないわね」

 

何て事を言って、ガリッと軽く爪を立てられると、戦兎は黒歌の上昇したのか、少し暖かくなった体温を感じつつも、苦笑いを浮かべるのだった。



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学校

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「兵藤 一誠との戦いに向け、ライダーシステムのアップグレードを行う俺達」
龍誠「そんな中、遂に匙やソーナ会長の夢である学校が完成する!」
戦兎「しかし勿論何事もなく終われるはずもなく……」
龍誠「たまには平和に行きたいんだけどなぁ……」
戦兎「俺だってそう思ってるよ。ってな感じの121話スタート!」


「おめでとう。ソーナ」

「ありがとう。リアス」

 

本日リアスに連れられ、戦兎達はアガレス領にあるソーナ達の学校にやって来た。

 

本日から開校なのだが、入学希望者が想像以上に殺到したらしい。

 

その為元々用意した講師が足らず、戦兎達も今日はお手伝い要因として動くことになっている。

 

「うぅん……」

 

そんな中、戦兎は唸っていた。先日の黒歌のやり取り……結局黒歌は今に至るまでチャカしてない。

 

今までああいった場合結局は最後に黒歌がチャカして、なあなあで終わっていたのだが、今回はそれがないのだ。

 

だからと言って本気にすると痛い目に遭うタイプだが、あの一件以来黒歌の家でのスキンシップが増えた気がする。

 

その度に逃げたりするのだが向こうの方が一枚上手ですぐに捕まってしまう。それだけならまだ良い……事はないが、挙げ句小猫に見つかって黒歌とのバトルが勃発したりするし、小猫から睨まれる。

 

外では比較的マシなのだが、どうしたものなのだろう……正直黒歌は魅力的な女性であるのは客観的に見ても思えるのだが、自分には小猫がいる。

 

いや悪魔が重婚が可能(と言うか重婚している方が多い)とはいえ、それでもなぁ……と悶々していると、

 

「何暗い顔してんだよ戦兎。子供達にそんな顔見せんのか?」

 

と匙が声を掛けてきた。

 

「折角あの仮面ライダービルドにして転生してからあの短期間で中級悪魔に昇格した期待の新星・桐生 戦兎何だからもっとシャキとしろって」

「期待の新星ねぇ」

 

そう。もう大分前に受けた中級悪魔への昇格試験。前々から内々では教えられていたが、禍の団(カオス・ブリゲード)への対処もあり遅れていたものの、先日正式に通達が届いた。

 

転生悪魔でこの短期間で中級悪魔への昇格かなり珍しいらしく、冥界では龍誠や佑斗に朱乃も並んで結構なニュースになったらしい。

 

本来であれば何十年単位で昇格出来るかどうかと考えれば、一年もしないうちに昇格した戦兎や龍誠に、こちらも数年で昇格した佑斗や朱乃。どれも禍の団(カオス・ブリゲード)戦における重要チームであるグレモリー眷属の一員で、話題性があったのも大きい。

 

しかしあの場では結局流れたものの、あの日以来黒歌から想いはヒシヒシ感じるようになっていった。

 

元々戦兎は、デリカシーは無くても人からの好意に鈍いわけではない。なので、黒歌からの想いを感じないわけではないが、同時にどう対応するべきか悩ましい。とは言えこれは周りに相談できない。

 

「まぁ戦兎。もし悩んでるなら話くらい聞くけど?」

「……お前じゃ頼りにならねぇなぁ」

「おいこら」

 

匙はピキピキとコメカミを痙攣させ、戦兎をジト目で睨むが、未だにソーナと関係を進めれてない匙にこういった相談はなぁと思う。と言うか、戦兎の周りに恋愛関係の相談を出来そうな奴が殆どいない。

 

ドルオタとかセンス壊滅男とか恋愛興味ない野郎とか女装後輩とか……精々龍誠だが、それもなんだかなぁだ。

 

(自分で考えるしかないか)

 

等と戦兎は一人で納得していると、

 

「それでは皆さん。まずは校舎の案内をしますね」

 

とソーナの号令の元、戦兎達は歩き出すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「立派なものね」

 

校舎を案内される中、リアスはソーナに言うと、

 

「えぇ、お陰様で入学希望者も沢山来てくれてる。それどころか日に日に多くなっているわ」

「でも逆に言えば、それだけ教育が行き届いていないと言う証拠でもある……か」

 

そうね。とソーナはリアスの言葉に少し視線を落とす。

 

「日本は良いですねリアス。義務教育と言うシステムは良い。身分に関わらず教育を施す事が出来る」

「冥界では考えられないわよね。身分に関わらず教育がされるなんて」

 

リアスは現在、ゲンドゥルが担当するクラスの子供達に囲まれている戦兎たちを見て微笑む。

 

「でもこの学校が成功して、これか続いていけば、あの中に将来の厄介なライバルが生まれるかもしれないのよね」

「嫌ですか?」

 

まさか、とソーナの問いにリアスは笑う。

 

「私はレーティングゲームの覇者になるのが目標よ。誰が立ち塞がろうと、関係ないわ」

「貴女らしい」

 

そんなリアスに釣られてソーナも笑うと、ふと思い出したような顔になる。

 

「ですが、大丈夫なのですか?内々に話が来てるのでしょう?将来的に戦兎君とギャスパー君にはレーティングゲーム中能力の使用制限が設けられると言うのは」

「まぁ……ね」

 

ギャスパーは停止世界の邪眼(フォービドウン・バロール・ビュー)の能力の都合上、元々制限が設けられやすかったが、能力が変化し、更に危険性が増した。

 

そして戦兎だが、戦兎の場合厳密にはジーニアスの力だ。

 

特に神器(セイクリットギア)の使用をできなくする能力で、無条件に神器(セイクリットギア)どころか神滅具(ロンギヌス)まで使えなくする。使えなくするだけではなく、攻撃すら無効化してしまう。厳密には神器(セイクリットギア)の力を上乗せした攻撃だと、上乗せする前の攻撃は消せないが、それでも純粋な神器(セイクリットギア)の力による攻撃であれば完全に無効化できてしまう。

 

転生悪魔が増えてきている中、転生悪魔にはその性質上神器(セイクリットギア)持ち多い中、将来的に戦兎はバランスを大きく壊しかねない。

 

しかも単純スペックも高く、ジーニアス状態の戦兎は既に最上級悪魔所か、魔王クラスに手が届こうとしている。

 

「まぁ、その辺りも上手くやるのがキングの仕事だから頑張るわ」

「そうね」

 

すると二人がそんなやり取りをしていると、

 

「む?リアスにソーナか」

「あら?サイラオーグじゃない」

 

リアスが振り替えると、そこにはサイラオーグが子供達を連れて歩いてきた。

 

「戦兎達が着いたと聞いてな。一度授業を休みにして連れてきた」

「困りますねサイラオーグ。勝手に授業を休みにされては」

 

キラリと眼鏡を光らせ、サイラオーグをソーナは睨み付けるが、サイラオーグは笑い、

 

「良いじゃないか。子供達は楽しそうだ。一先ず今日はこうして楽しいことをするでも良いだろう?」

「全く」

 

堪えていないサイラオーグにソーナは嘆息しながら、戦兎達のいる方を見ると、

 

子供達をゲンドゥルに渡し、ヘロヘロになった戦兎がやって来た。

 

「こ、子供達はパワフルだ……」

「ふふ、お疲れさま」

 

リアスに労われながら、戦兎は子供達を見る。

 

「俺、絶対兵藤 一誠倒します」

『え?』

 

突然の宣言にリアス達は目を丸くすると、

 

「子供達が言うんです。将来はあぁなりいこうなりたいって。皆夢があって、希望がある。凄いキラキラしてて、笑ってた」

 

グッと拳を握りしめ、戦兎は真っ直ぐ子供達を見つめながら、

 

「だから俺は兵藤 一誠を倒します。倒すだけじゃない。兵藤 一誠を倒して、あの子供達が胸張って夢を語って、それを叶えようと出来る世界にしたいです」

「それは普通の悪魔ではできないことだ」

 

サイラオーグの言葉に、戦兎は頷く。戦兎の言ったことは、桐生 戦兎でも仮面ライダービルドでも出来ない所が出てくる。

 

「俺、もっと偉くなります。あの子供達色んな道を選べるように」

「うむ」

 

もっと偉く。戦兎がまだ漠然とだが、黒歌に言われた兵藤 一誠よりも先の未来の夢の原石だった。それが意味する言葉にサイラオーグは笑みを浮かべつつ、ジャケットの前のチャックを全開に。すると、

 

《共に頑張ろう》

 

と書かれている。

 

「あの……いつ仕込んだんですか?」

「ふ。企業秘密だ」

 

この人の服のセンスはやっぱり変だ。なんて思っていると、

 

「あれ?サイラオーグ。彼は……」

「む?」

 

リアスに言われ、その視線の先をサイラオーグも見ると、

 

「マグダラン?」

 

サイラオーグは少し驚きつつも、

 

「すまん。少し席を外す」

 

と言い残し、走り出す。するとマグダランも何処かに走っていき、

 

「あの人は?」

「サイラオーグの腹違いの弟よ」

 

腹違いの弟と言う言葉で、戦兎も察する。サイラオーグが次期当主だった弟を倒して、今の立場になったのを覚えていた。

 

しかしこうして出てくるのだから、意外と兄弟中は複雑ではあれど、良好だったりするのだろうか?何て戦兎が思っていると、

 

「あの……」

 

と声を掛けてきたのは一組の男女だった。男性の方に覚えがないが、女性の方は見覚えがあった。

 

「あ!確か……リレンクスのお母さん

「は、はい!ご無沙汰しております!」

 

リレンクスのお母さんは笑みを浮かべ、頭を下げる。

 

「リレンクスでしたら彼処で授業を受けてますよ」

「えぇ、でもその前に私達桐生 戦兎さんにお礼を言いたくて」

 

お礼?と戦兎は首を傾げると、

 

「あの子は……生まれつき魔力が少なく、同世代の子達が出来る事が出来ませんでした。そのせいかいつの間にか笑わなくなっていました。私たち夫婦にとってはやっと出来た子供です。魔力が少なくても大切な我が子です。でもリレンクスにとっては、周りが出来るのに自分が出来ないと言うのは、辛かったようです。でも桐生さんのビルドを見るようになってから昔のように明るくなり、今ではビルドと約束したから強くなって皆を守れるようになるんだって言って……」

 

と言ったところで、

 

「お母さん!」

 

リレンクスが走ってやってきた。

 

「見て!出来るようになったんだ!」

 

と言って見せたのは、小さな小さな炎だ。ゲンドゥルに教わった、初歩の初歩の魔法。

 

だが魔力が少なかったリレンクスにとって、大きな一歩だった。

 

それ見た母親だけではなく、父親も目に涙を浮かべ、凄いなとリレンクスを誉めている。

 

そんな光景に戦兎達も思わずジーンと来たところに、

 

『っ!』

 

ドン!っと突如大きな爆発と地響きがし、戦兎達は咄嗟にその方向を見た。そしてそこには……

 

「お前は!」

「よう。久し振りだなぁ戦兎ぉ!」

 

兵藤 一誠が立っていた。



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必要な存在

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……


戦兎「ソーナ会長達の夢である学校が完成し、そこに訪れる俺達だったが……」
龍誠「しっかし兵藤 一誠も来て欲しくないときに来るよなぁ」
戦兎「全くだ。俺もたまにはここで平和で何もなくて話すことはないので終了!ってやりたいぜ」
龍誠「兵藤 一誠を倒すまで無理じゃねぇかなぁ……」
戦兎「なら倒してそれができるようにするぜ!って感じの122話スタートだ!」


「……」

 

フラフラと覚束無い足取りで歩くのはマグダラン。

 

彼は見ていた。兄が子供達に体術を教える様を。

 

慕われていた。憧れられていた。必要とされていた。

 

だが自分は。

 

「誰にも必要とされてない……か?」

「っ!」

 

突如聞こえてきた声に、マグダランは顔を上げると、そこには兵藤 一誠が立っていた。

 

「何故貴方がここに……」

「お前に会いに来たんだ。序でに仕事もあってな。お前のことだ。サイラオーグに誘われてたし一応行ってみるかって感じで来ると思ってよ」

 

あくまでも会いに来たのがメインで、仕事はオマケと言うが、そんなわけがない。だがマグダランにとって、そんなことはどうでも良いことだった。

 

「どうだい?そろそろ俺達と来る決心はつかないか?俺達はお前が必要なんだよ」

「……」

「マグダラン!」

 

そこに背後から声を掛けたのは、サイラオーグだ。そしてサイラオーグが声を掛けると、マグダランが振り替える。

 

顔は青白く、生気を感じない。それは思わずサイラオーグですら息を飲むほどだった。だがそれよりも、

 

「兵藤 一誠……貴様何をしている!」

《デンジャー!クロコダイル!》

 

サイラオーグはベルトを装着し、クロコダイルクラックボトルを装填。

 

「変身!」

《割れる!食われる!砕け散る!クロコダイルインローグ!オラァ!キャー!》

 

ローグに変身したサイラオーグは走り出すと、兵藤 一誠に襲いかかる。だが、

 

「なっ!」

 

そこにマグダランが割って入り、サイラオーグは思わず拳を止める。

 

更にマグダランは滅びの魔力を溜め、一誠は赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を出すと、

 

《Boost!Boost!Boost!Boost!Transfer!》

「そのまま行け!」

 

譲渡の力で強化された滅びの魔力が、サイラオーグを吹き飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よう。久し振りだなぁ戦兎ぉ!」

 

爆発音と共に現れた兵藤 一誠は、ニンマリと笑いながらベルトを装着。

 

《コブラ!ライダーシステム!オーバー・ザ・レボリューション!Are you ready?》

「変身!」

《ロンギヌス!ロンギヌス!ロンギヌス!レボリューション!フハハハハハハハハ》

「ふん!」

 

そこに土煙の中からサイラオーグが飛び出し、兵藤 一誠に襲いかかるが、

 

「くっ!」

 

またマグダランが割って入り、サイラオーグは一瞬躊躇うが、瞬時に切り替えてマグダランを殴り付けようとする。だがそれを一誠は止め、

 

「酷い兄だな。問答無用で殴る気かよ」

「どんな理由があろうとも。お前を庇うと言うならば、手心を加えていられない」

 

それだけ一誠は危険な相手だ。それに事情は殴り飛ばしたあと聞けば良い。サイラオーグはそう思っていた。だが、

 

「くくく……あはははは!」

 

サイラオーグを押し返し、一誠は笑う。

 

「だそうだマグダラン。だから言っただろ?サイラオーグはお前のことなんてどうでも良いんだ。邪魔をするなら平然と切り捨てる」

「なに?」

 

サイラオーグは眉を寄せ、何をいってるんだと言う。

 

「そんなことはない。マグダランは」

「そのようだ」

 

サイラオーグの言葉を遮るように、マグダランは口を開く。

 

そこには感情はなく、ゾッとする程暗い声音だった。

 

「マグダラン?」

「兄上……いや、サイラオーグ・バアル。俺は身勝手にも貴方に期待してしまった。お互い良い感情はないだろう。それでも少し位は兄弟の情があるかもしれない……とね。だが当たり前だ。俺自身。貴方を滅びの魔力もないと蔑み、次期当主の立場を奪われたことで憎んでさえいた。それなのに今更誰かに必要とされたくて、挙げ句の果てに貴方に期待してしまった。身勝手な事をして申し訳ない。だがもう大丈夫だ。俺が必要だといってくれる人がいる」

「な、何を言っている!」

 

サイラオーグが珍しく感情を乱す中、マグダランはエボルドライバーを出し、腰に装着。

 

《エボルドライバー!》

「必要だといってくれた。だから俺はそれに答える!」

「ハハハハ!良いねぇ最高だねぇ!」

 

一誠はそう言ってまた笑うと、二つのフルボトルを出してマグダランに放り投げる。

 

「クロコダイルフルボトルとリモコンフルボトル!?」

「何を驚くんだ?あぁ、もしかしてお前も作ったのか?だが元々クロコダイルクラックフルボトルもギアエンジンボトルもギアリモコンボトルもこちらが作ったんだ。その元となったボトルもあるに決まってるだろう?」

 

戦兎の驚きに一誠が答える中、マグダランは渡されたフルボトルを振り、

 

《ワニ!リモートコントローラー!エボルマッチ!》

 

ベルトにフルボトルを装填。そのままレバーを回すと、全身に電流が走る。だがそれを強引に無視して、

 

《Are you ready?》

「へんしん!」

《クロコダイコン!フッハッハッハッハ!》

 

電流を振り切り、変身を完了したマグダランは、紫を基調とした牙のようにトゲトゲとしたシルエットにリモコンのボタンを模した模様が入った姿に変身した。

 

「仮面ライダー・イービルローグ。ってのはどうかな?」

「……」

 

マグダランはゆっくりと顔を上げ、サイラオーグに向かってゆっくりと歩みを進める。

 

「マグダラン!」

 

サイラオーグはマグダランに殴りかかるが、その拳を体で受けて止めると、反対側の拳で殴り返した。

 

「がはっ!」

「サイラオーグさん!」

 

戦兎が駆け寄ろうとした次の瞬間、

 

「きゃあ!」

「っ!」

 

背後で悲鳴が聞こえ、振り替えるとそこにはユーグリットがロスヴァイセを強引に連れ去る瞬間だった。

 

「ロスヴァイセさん!」

 

しかしそれを龍誠は追う。

 

「私も行くわ!」

「お願いします!」

 

その龍誠を追うようにリアスも動き、戦兎は頷きながら一誠達を見る。

 

「ロセ……」

「大丈夫です!」

 

そんな中、背後で心配そうに声を漏らしたゲンドゥルに、戦兎は叫ぶ。

 

本当は彼女もロスヴァイセの方に行きたいだろう。だが今彼女の周りには子供達がいる。下手に離れればこの子供達に危険が及ぶと判断した。

 

そんな彼女を安心させるように、戦兎は言う。大丈夫だと。

 

「ロスヴァイセさんは龍誠と部長が助けます!そしてこいつらも俺が倒す!」

「俺もいるぜ!」

 

戦兎の叫びに匙も来る。

 

「この学校でだけは……お前らに好き勝手にされてたまるか!行こうぜ戦兎!」

「あぁ!」

《グレート!オールイエイ!ジーニアス!イエイ!イエイ!イエイ!イエイ!》

《ドラゴンゼリー!》

 

二人はベルトをつけ、ジーニアスフルボトルとドラゴンスクラッシュゼリーを装填。

 

《Are you ready?》

『変身!』

《完全無欠のボトルヤロー!ビルドジーニアス!スゲーイ!モノスゲーイ!》

《潰れる!流れる!溢れ出る!ドラゴンインクローズチャージ!ブラァ!》

 

二人がそれぞれ変身を終えると、背後から歓声が上がる。特に子供達のものが大きい。それはそうだろう。子供達にとって仮面ライダーの変身シーンを生で見れるなんて言うのは、興奮物だ。

 

お陰で突然の襲撃で混乱していた子供達や親御さん達も一旦落ち着きを取り戻した。

 

「会長!他の皆と一緒に避難を!」

「分かりました。戦兎君。匙。頼みましたよ!」

 

ソーナは戦兎の頼みに頷き、そのまま避難のために走り出す。

 

「よっしゃいくか……って待て戦兎。お前会長に戦兎君って呼ばれてるの?」

「あぁ、龍誠だって龍誠君だぜ?何でも親友の部長の婚約者だかららしいけどな。俺はその流れで龍誠の親友だしって感じで。まぁあっちも名前呼びで良いですよって言ってたけど流石に遠慮したよ」

「嘘だろ……俺なんて未だに会長から名字よびなのにぃいいいいいいい!」

「大変だな」

 

うるせぇ!っと匙は叫ぶと、

 

「とにかく俺はサイラオーグさんの援護に!」

「分かった。兵藤 一誠は任せろ!」

 

こうして、学校を守るため、戦いの火蓋が切って落とされたのだった。




仮面ライダーイービルローグ

パンチ力49t
キック力57.6t
ジャンプ力65m(ひと跳び)
走力1.8秒(100m)

マグダラン・バアルがエボルドライバーにクロコダイルフルボトルとリモコンフルボトルを装填して変身した姿。

邪悪や不吉を意味するイービルが着くように、かなり禍々しいオーラを放っている。

ローグ同様防御力に優れ、相手の攻撃を受け、その隙に反撃すると言うスタイルを取る。

そのためかヘルクローズよりも機動力が劣るが、その分パンチ力やキック力が高い。


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Newクローズマグマ

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「匙達の夢であった学校にやって来た俺達」
龍誠「しかーし!そのまま平和にとは問屋が卸さない!兵藤 一誠達の襲撃まできてしまった!」
戦兎「しかもサイラオーグさんの弟であるマグダランさんが何と兵藤 一誠側につきイービルローグに変身!」
龍誠「ホントこれこのままどうなっちまうんだよ!」
戦兎「ってな感じの123話スタートだ!」


「待ちやがれ!」

 

ロスヴァイセを連れ去ったユーグリットを龍誠は走って追い、一瞬方向転換のために減速したのを見逃さず飛び上がると、ユーグリットをクローズマグマナックルを着けた手でぶん殴る。

 

「くっ!」

「よっしゃ!」

 

空に投げ落とされたロスヴァイセをキャッチし、龍誠は地面に降りると近くの木に持たれかけさせた。

 

「大丈夫ですか!?」

「え、えぇ。何とか」

 

取り敢えずロスヴァイセが無事なのを確認し、龍誠はロスヴァイセを捕縛するためにユーグリットが巻き付けたロープ引きちぎろうとするが、中々取れない。

 

「それは特殊な術式で組んだロープでね。力ずくでは解けませんよ」

《ドラゴン!ロック!エボルマッチ!Are you ready?》

「変身」

《ドラゴンロック!フッハッハッハッハ!》

 

土煙をあげて地面に叩き付けられたユーグリットは、ヘルクローズに変身しながらやってくる。

 

「龍誠!」

 

そこにリアスがやって来た。そして龍誠は、

 

「リアス!ロスヴァイセさんを頼む!」

 

普段は人前ではリアスと呼ばない龍誠がここで呼んだ。それはつまり、それだけ緊張していると言うことだ。

 

ユーグリットは油断できない。だが緊張しているが、余裕はあった。なにせクローズマグマは戦兎がアップグレード済みだ。それだけで龍誠には余裕がある。

 

全幅の信頼を寄せる戦兎が着けてくれた機能だ。無駄なわけがない。

 

《ボトルバーン!クローズマグマ!Are you ready?》

「変身!」

《極熱筋肉!クローズマグマ!アーチャチャチャチャチャ チャチャチャチャアチャー!》

 

そう信じ、龍誠もクローズマグマに変身すると、二人は睨み合う。

 

「彼女を渡しなさい。そうすれば命は助けましょう」

「渡すかよ。そこまでして情報が欲しいのか?」

 

龍誠の問い掛けに、ユーグリット少し驚いた後、突然笑いだした

 

「いやはや。正直に言うと別に情報にそこまで興味はないんですよ」

『え?』

 

ユーグリットの告白に、龍誠達はポカンとする。

 

「私はね。ロスヴァイセ殿そのものが欲しいのです」

 

ユーグリットはそんな三人を放って置きながら、話だけ進め始めた。

 

「私はですね。一度死んでいるのです。姉であるグレイフィアが悪魔擬きのサーゼクス・ルシファーに寝取られた時にね。姉は聡明でした。そして何よりも美しかった。ですがね。そんな姉があんな男と恋仲になってしまい、私は生きる気力を失いました。分かりますか?私の絶望を。ですが兵藤 一誠は言ってくれました。新たな世界になった暁には、姉上を私にくれると。自分には作った方の姉上で十分だからと。それも望めば望んだ分だけの姉上を作ってくれると。厳しい姉上の優しい姉上も全て望むまま。まさに私のユートピアです!私の私による私のための世界!姉上ランドがもう目の前まできているのです!そこには是非ロスヴァイセ殿も迎えたい。姉上と同じ美しい銀髪を持つ貴女をね」

『……』

 

楽しそうに話すユーグリット。しかし三人はドン引きしていた。だが同時に、龍誠の中に怒りが沸いた。

 

「お前。そんな事のために兵藤 一誠と一緒に暴れてるのか?」

「そんなこととは酷いですね。悪魔とは欲を願い。欲を叶える存在。私にとっては姉上との日々を取り戻すことがそうだっただけですよ」

 

ユーグリットの言葉に、龍誠は思わず歯を噛み締める。

 

「ふざけんな……そんな事のために、あの子たちの時間を奪ったのか。そんな事のために、沢山人を泣かせたのか……」

「あの子たち?あぁ、あの誰もが通える学校とか言う下らない場に集まった者たちですか。全く、本当に下らない。悪魔と言うのは才能と身分が全てだ。しかし才能も身分も持たない者たちに時間を裂いてどうしようと言うのか。理解に苦しむ」

「……」

 

グラグラと、龍誠の怒りのマグマが沸騰する。

 

「もう喋るな。もう俺は俺を抑えられねぇ」

 

静かに。だが龍誠の怒りのボルテージは確かに最高潮を迎えた。

 

昇格(プロモーション)・ナイト」

「良いでしょう、ならば前に手も足もでなかったこれでいきます。禁手化(バランスブレイク)!」

 

ライダーシステムに神器(セイクリットギア)を重ねたユーグリット。しかし龍誠は腰を落とすと、

 

「なに?」

 

一瞬で間合いを詰め、ユーグリットに龍誠は連続で拳を叩き込む。

 

「ぐっ!」

 

一瞬姿を見失った事に一瞬動揺したものの、ユーグリットは素早く体勢を建て直し、空中に無数の魔力弾を形成。それを一斉掃射。だが、

 

「はぁあああああ!」

 

龍誠の気合いと共に、オーラ上の無数の蜂の大群が出現し、それがユーグリットの魔力弾にぶつかり爆発。しかもその大群はその魔力弾を打ち消しあってもまだおり、 そのままユーグリットに襲い掛かる。

 

「ぐあああああ!」

 

小規模ながらも圧倒的な数で爆発する蜂の大群に、ユーグリットは転がって逃げるが、一瞬で回り込んだ龍誠に捕まる。

 

昇格(プロモーション)・ルーク」

 

ルークに昇格(プロモーション)した龍誠の左手に、オーラで出来たサメが出現し、そのままユーグリットに噛みつく。

 

「おぉおおお!」

 

がっちりと噛みつかれた状態のユーグリットに、今度はゴリラのような力強さを感じる右腕でアッパー。

 

「おらぁ!」

 

更に空中のうち上がったユーグリットに、龍誠は地面に立ったまま回し蹴りをすると、それと同じような動きのマンモスのようなオーラ状の足が出現し、ユーグリット蹴り飛ばした。

 

「がはっ!な、なんだこれは……」

 

ユーグリットは咳き込みながら、魔力を両手に集め、倍加してそれぞれ発射。

 

昇格(プロモーション)・ビジョップ」

 

しかし龍誠はビジョップに昇格(プロモーション)し、両手にそれぞれ炎と冷気を集め、それぞれユーグリットの魔力弾とぶつけて相殺。更に、

 

「うぐっ!」

 

舞い上がった土煙の中から飛び出てきた蠍の尾にユーグリットは刺され、そのまま空中の持ち上げられると龍誠の元に引き寄せられる。

 

《ボルケニックナックル!アチャー!》

 

その間にクローズマグマナックルを右手に装着し、ドラゴンマグマフルボトルを装填し直し、必殺技を発動。

 

 

「おらぁああああ!」

 

渾身の拳が炸裂し、ユーグリットを後方に吹き飛ばす。

 

「ごほっ!がはっ!こ、この力は……」

「これは別の世界の仮面ライダー。仮面ライダーバルカンの力だ。不破さんから貰ったウェルシュドラゴンプログライズキーにはな、不破さんの今までの戦闘データが組み込まれてたんだ。その戦闘データから不破さんのランペイジバルカンの力を再現した。らしいぜ?俺も戦兎から使い方聞いただけだから良く分かってないけど」

 

成程、とユーグリットは立ち上がると、

 

《Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!》

 

倍加で肉体を強化し、ユーグリットは龍誠に向かって走り出す。

 

昇格(プロモーション)・クィーン!」

 

それを龍誠はクィーンに昇格(プロモーション)し、更に全身から炎を噴出させるボルケニックモードに移行。

 

「こいよシスコン野郎」

「シスコンですか……良いですねぇ。最高の褒め言葉ですよぉ!」

 

魔力を爆発させ、背中のスラスターからエネルギーを噴出させて推進力を得たユーグリットは更に速度をあげて龍誠に接近。

 

「はぁ!」

 

それを龍誠も拳を構えて迎撃し殴り合う。

 

「おらおらおらぁ!」

 

ゴリラのパワーを上乗せした両拳がユーグリットに何度も炸裂。しかし、

 

「ごほぉ……ぐぅ!あねうぇ……あねうぇえええええええええ!」

《Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!》

 

ユーグリットは叫びながら倍加で、更に身体能力を上げ続けながら殴ってくる。

 

「げほっ!がはっ!」

 

すると龍誠の拳でヘルクローズの仮面が割れ、ユーグリットの素顔が晒される。

 

するとその中の顔は、既に目や鼻や口から夥しいほどの血を出していた。

 

「お前……!」

「ふふ。この痛みすらも姉上を取り戻すための試練だと思えば、何と甘美でしょう」

《Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!》

 

更に倍加を掛け、ユーグリットは血の塊を吐き出しながら龍誠を殴り続ける。

 

「こいつ!イカれてやがる!」

「イカれてる?違いますよ。これは愛の力!姉上への無限の愛が私にどんな苦しみも乗り越えさせてくれるのです!」

「お前気持ち悪すぎるだろ!」

 

龍誠はユーグリットを突き飛ばすと、その隙にビートクローザーのクリップエンドを引く。

 

《ヒッパレー!ヒッパレー!ヒッパレー!メガヒット!》

「更に!」

 

龍誠はビートクローザーに氷を纏わせ、ユーグリットを斬りまくり、クローズマグマナックルを反対の手で握ると炎を纏わせて殴る。

 

「ぐぅ!まだまだぁ!」

 

しかしユーグリットはエボルドライバーのレバーを回し、右手にオーラを集めると龍誠に殴りかかる。

 

「おぉ!」

《Ready Go!》

 

そこに龍誠もビルドドライバーのレバーを二回回し、両腕にゴリラのパワーを上乗せする。そして、

 

《ボルケニックフィニッシュ!》

『はぁああああああああああああ!』

 

両者の拳が激突する。だが、

 

「なっ!」

 

ユーグリットの拳と龍誠の拳がぶつかった瞬間、ユーグリットのライダーシステムの拳の部分のアーマーが割れ、そのまま生身の拳を砕く。

 

「おぉおおおおおおおらぁあああああああ!」

 

そして龍誠は連続で拳を叩き込んだ。

 

拳の壁にも見えるほどの連続突きで、ユーグリットを殴りまくり、

 

「はぁ!」

 

トドメの一発で吹き飛ばした。

 

「うぎ……ぎぎ」

 

その反動でベルトが外れ、変身が解除されたユーグリットだが、それでもまだ立ち上がる。

 

「しつこい野郎だな」

「倒れるわけにはいかない。倒れればそれは私の姉上への愛がその程度だと言うこと。そんなものは私は認めない!」

 

ユーグリットはそう叫び、再び龍誠に挑もうとするが、その前に突如炎が壁のように燃え上がり、ユーグリットと龍誠を隔てる。

 

「なんだ!?」

 

突然の出来事に龍誠は驚くが、その中赤と黒でカラーリングされた機械的なフォルムの何者かがいる。

 

だがエボルドライバーを着けてるのを見る限り、一誠の仲間の仮面ライダーなのは間違いない。

 

「おいおいユーグリット君。無茶はいけないなぁ」

「邪魔をする気ですか?」

 

ユーグリットはソイツを睨み付けるが、相手はケラケラ笑いながらユーグリットの肩を叩く。

 

「まぁそういうなって。まだ無茶をするタイミングじゃないだろ?」

 

そう言って相手は体から炎を出すと、龍誠たちの方を振り替えった。

 

「さて、申し訳ないがここで俺達は帰らせて貰うよ」

「待て!お前何もんだ!」

 

龍誠はその相手に詰め寄ろうとするが、更に炎の壁の勢いが増し、近づけない。

 

「リゼヴィム。ヴァーリにそう伝えれば分かると思うぜ?」

 

それだけをリゼヴィムと名乗った相手は言い残し、飛び去っていった。

 

「リゼヴィム……?」

 

名前を聞いたものの、リアスは聞いたことのない名前に、首をかしげている。すると、

 

「部長。龍誠さん。助けて貰ってすいませんでした」

 

ロスヴァイセが頭を下げて来た。そんなロスヴァイセに二人は顔を見合わせると、

 

「すいません。じゃなくて、ありがとう。でしょ?仲間何だから当然よ。まぁ頑張ったのは龍誠だけどね」

「そうそう。助けに来るのは当たり前ですよ。そんな申し訳なさそうな顔しないで下さい」

 

と言って笑う二人を見て、ロスヴァイセも笑みを浮かべた。そんな中リアスはふと気付き、

 

「あら?」

 

近くに落ちていた物を拾い上げた。それは、

 

「エボルドライバー?」

「ユーグリットが落としていった奴か……折角だし後で戦兎に調べて貰いましょう」

 

それが良いわね。と龍誠にリアスは頷きながら、エボルドライバーを手に学校の方を見る。

 

「とにかく、学校に戻りましょう」

 

そんな彼女の言葉に、龍誠とロスヴァイセは頷くと、三人は学校に向かって、走り出すのだった。




仮面ライダークローズマグマver2.0

ウェルシュドラゴンプログライズキーのデータによりアップデートしたクローズマグマ。

素のスペックに大きな変化はないが、その真価はプログライズキーに取り込んだ、不破 諌の今までの戦闘データから再現したランペイジバルカンの力。

元々このデータは、ただのプログライズキーでは或人のシャイニングホッパーのように、不破の動きについていけないだろうと考えられたため、そのアシスト用に組み込まれたもの。

厳密には擬似的に再現しているため、出力自体は本物のランペイジバルカンに劣るものの、それを昇格(プロモーション)や魔力と合わせることで補っている。

ルークではパワーランペイジ、ナイトではスピードランペイジ・ビジョップではエレメントランペイジ・クィーンではオールランペイジに対応。



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兄弟

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

龍誠「ユーグリットの恐るべき計画を聞き、俺はユーグリットをぶちのめしたぜ!」
戦兎「グレイフィアさん量産計画……聞くだけで怖いな」
リアス「えぇ、本当に恐ろしいわね」
戦兎「なんか部長遠い目してません?」
リアス「き、気のせいじゃない?間違っても口煩いのが増えたら嫌だな何て思ってないわよ?」
グレイフィア「ほほう?どう言うことかしら?リアス」
リアス「ひぃ!」
戦兎「えー。ってな感じでこんな緩い前書きとは正反対な124話スタート」
グレイフィア「ちゃんと説明しなさいリアス!」
リアス「ごめんなさーい!」


「オラァ!」

 

匙はツインブレイカーをアタックモードにしてイービルローグとなったマグダランに襲い掛かるが、

 

「ふん!」

「あがっ!」

 

攻撃は通らず、逆に攻撃を当てた一瞬の隙を着いて反撃を喰らい、後退る。

 

「どけ!」

「あで!」

 

そこにサイラオーグが駆け込み、匙を突き飛ばしてマグダランに肉薄する。

 

「マグダラン!目を覚ませ!お前はこんなことをするやつではないだろう!」

「こんなこと?ふふ……あははは!違うよサイラオーグ・バアル。これが俺だ。バアルじゃない。ただのマグダランとしてやりたいんだ!」

 

そう言ってマグダランはサイラオーグを殴り飛ばすと、レバーを回す。

 

《Ready Go!エボルテックアタック》

 

右手にワニの上顎、左手に下顎のような形をオーラが形作り、サイラオーグ両腕で挟み込むと捻りながら振り回し、何度も地面に叩き付けてからぶん投げた。

 

「がはっ!」

 

その反動で変身が強制解除され、サイラオーグは血を吐く。

 

それにマグダランは近付こうとするが、

 

「潤動!」

《Engine running gear》

 

エンジンブロスに潤動したフウが割り込み、マグダランを攻撃するがびくともせず、

 

「くっ!」

 

それでも銃で攻撃する。しかしそれを無視して近付き、

 

「はぁ!」

「あがっ!」

 

腹部に一発喰らい、地面に倒れ伏す。そしてマグダランは進もうとするが、

 

「ま、て」

「ん?」

 

フウはマグダランの足を掴み、足止めする。

 

「げほっ!サイラオーグ様は……やらせない」

「……」

 

マグダランはフウを反対の足で思い切り踏みつけた。

 

「がはっ!」

「思えばお前も目障りなやつだったな。サイラオーグ・バアルに認められ、そしてお前もお前の弟もその信頼に答えた。本当に目障りな奴だったよ」

《Ready Go!》

 

そして踏みつけたまま、レバーを回し、必殺技を発動。

 

「させるか!」

《スクラップブレイク!》

 

そこに匙がスクラップブレイクを発動し、マグダランに狙いをつけるが、

 

「効かん!」

 

片腕で匙の一撃を弾き、

 

《エボルテックアタック!》

 

マグダランはそのままフウを蹴り上げ、大きく吹き飛ばした。

 

「げほっ!」

 

それによりフウは元に戻ってしまい、地面を転がる。

 

「この!」

 

匙は再びマグダランに肉薄し、

 

黒い龍脈(アブソブーション・ライン)!」

「っ!」

 

黒い龍脈(アブソブーション・ライン)をマグダランに着ける。

 

「ぐぅ!」

 

しかしそれを気にせずマグダランは匙を殴りまくり、匙も負けじと殴るが、マグダランには通じず膝を付く。

 

《Ready Go!エボルテックアタック!》

 

そしてその隙を突いて、マグダランはエボルテックアタックを発動させ、エネルギーを右手に集めてぶん殴る。

 

「がっ!」

 

変身が強制解除され、匙も地面を転がり、黒い龍脈(アブソブーション・ライン)もマグダランから取れてしまった。

 

「皆!」

 

戦兎はそれを見て助けに向かおうとするが、

 

「おいおい。邪魔してやるなよ!」

 

と一誠が邪魔をしてくる。

 

「そっちが邪魔だ!」

 

戦兎は一誠を一発殴ると、戦兎の神器(セイクリットギア)封印能力で異常起こし、動けなくなったため戦兎はそのままマグダランを止める。

 

ダイヤモンドで覆った腕で殴り、電気や炎を纏わせた手足で更に攻撃して吹き飛ばすと、

 

「おぉおおおお!」

「サイラオーグさん!?」

 

戦兎が驚くのを余所に、サイラオーグは生身のまま突っ込み、

 

「サイラオーグ様!」

 

フウが慌てて援護射撃するものの、マグダランには効かず、サイラオーグの拳も効果はない。

 

「サイラオーグさん俺が!」

「桐生 戦兎!邪魔をするな!これは俺の問題だ!」

 

しかし戦兎の心配を無視して、サイラオーグは走り出す。そこに、

 

「戦兎!」

 

と龍誠たちが戻ってきた。

 

「おいサイラオーグさん変身してねぇぞ!?」

「分かってるよ!」

 

戦兎と龍誠は二人でマグダランを殴り、サイラオーグを助けるが、

 

「邪魔をするなといっている!これは俺達の問題だ!」

「そんなこと言ってる場合じゃないだろ!」

 

サイラオーグに龍誠は怒号をあげる中、

 

《Ready Go!ロンギヌスフィニッシュ!》

「しまっ!」

 

復活した一誠のロンギヌスフィニッシュから放ったエネルギー弾が戦兎達に炸裂し、戦兎達を吹き飛ばした。

 

「皆!」

 

リアスが叫ぶ中、晴れた土煙の中からダイヤモンドの壁が現れる。

 

咄嗟に戦兎がそれで守ったようだが、それでも負担はあったようで膝をつく。

 

「何とかしなければ……」

 

フウがそう思ったとき、リアスの手にあるエボルドライバーが目に入った。

 

「リアス様。そちらのベルトは……?」

「え?あぁ、ユーグリットが使ってたのを落としていったから拾ったのよ」

 

リアスがそう言って見せると、フウは意を決したように、

 

「お借りします!」

「え、ちょ!」

 

そう言ってリアスからエボルドライバーを奪い、戦兎に駆け寄ると腰から、

 

「戦兎様。失礼します!」

「あ、おい!」

 

と、腰からクロコダイルフルボトルとリモコンフルボトルを取って、エボルドライバーを腰に装着。しかし、

 

「ぐぁああああ!」

 

全身に電流が走り、フウの口から血が溢れた。

 

「やめておけ。エボルドライバーはお前みたいな神滅具(ロンギヌス)が出なかったから代わりに配置されただけの下級モブ悪魔じゃ使えねぇよ。まぁ駒は二つ使ったみたいだがな。まぁそれでも死ぬだけだ」

「黙れ」

 

一誠の嘲りを、フウはにらみで返す。

 

「確かに私は下級悪魔だ。駒が二つ必要ではあったが、どんどん強くなっていく戦兎様達仮面ライダーとの力の差は開いていく一方だ。だがそれでも私はライと約束したんだ。生き残った方がサイラオーグ様をお守りし、お支えすると!」

《ワニ!リモートコントローラー!エボルマッチ!》

「ぐぁあああああ!」

「止めろ!フウ!」

 

更に強い電流がフウの体に走り、フウは苦悶の表情を浮かべた。それを見たサイラオーグが駆け寄り、フウからエボルドライバーを引き剥がそうとするが、サイラオーグの方にも電流が走った。

 

「ぐぁあああ!」

「サイラオーグ様!離れていてください!」

 

フウはサイラオーグを突き飛ばし、電流が体を痛め付ける中、マグダランに殴り掛かる。

 

「貴方は何も分かってない!」

「なに?」

 

しかしフウの拳は止められ、二人は睨み合う。

 

「サイラオーグ様はずっと悩んでおられた。貴方とどう接すれば良いのかと。自分の夢のため、貴方を蹴落とした事をずっと考えていた。サイラオーグ様は一度たりとも貴方の存在を居ないと思ったことなどない!」

「……だからどうした」

 

マグダランのフウの手を握る力が強くなり、フウの表情が歪む。

 

「それが真実か偽りか等わからない。だがもう私は決めたんだ。私はもうマグダラン・バアルじゃない。ただのマグダランだ!」

 

そう言ってマグダランはレバーを回し、

 

《Ready Go!エボルテックアタック!》

 

レバーを話した手を握ると、それでフウに殴り掛かった。

 

「フウ!」

 

サイラオーグが叫ぶ。変身できていない状態で、あの一撃を喰らったら命が危ない。

 

だが距離がある。幾らサイラオーグでも、これは間に合わない。

 

「クソ!どけ!」

 

戦兎も一誠を押し退けようとするが、戦兎や龍誠と着かず離れずの距離を取って邪魔をしてくる。

 

「やめろおおおおおおお!」

 

サイラオーグは手を伸ばし再び叫ぶ。脳裏に浮かぶのはライを失ったときの光景だ。

 

何もできず、ただ奪われた。今度はフウを失うのか?そう過った次の瞬間、

 

『え?』

 

突如電流が走っていたエボルドライバーに装填されていたクロコダイルフルボトルとリモコンフルボトルが砕け、光が溢れ出す。

 

そして砕けて溢れた光が集まると、二つのポーンの悪魔の駒(イーヴィル・ピース)となり、それが更に変化して人の形となると、それがマグダランの拳を止めた。

 

《ったく。アニキは俺がいねぇとダメだな!》

「……ライ?」

 

そこに立っていたのはライだ。フウは自分の目が可笑しくなったのかと疑うが、目の前のマグダランの驚き方を見る限り、幻ではないらしい。

 

《おらぁ!》

 

ライはマグダランを押し返すと、フウの隣に立つ。

 

「っ!」

 

それを見た戦兎は、直感的に二つのフルボトルを取ると、

 

「フウ!これを使え!」

 

フウは戦兎が投げたフルボトル受け取った。

 

「そっちの方がお前は相性が良い筈だ!」

「……」

 

戦兎から受け取ったフルボトルを見てからフウは、

 

「そうだなライ。俺達は何時だって一緒だったな」

《あぁ》

 

フウとライは笑みを浮かべ、フウがベルトにフルボトルを振ってから装填した。

 

「行くぞ。ライ!」

《行こうぜ!アニキ!》

《コウモリ!発動機!エボルマッチ!》

 

一瞬フウの体に電流が走るが、レバーを回し、

 

《Are you ready?》

 

フウとライは走りだし、ライの体が透けていくと胸の辺りに悪魔の駒(イーヴィル・ピース)が見えた。

 

それがフウの体に溶け込んでいき、二人の体が重なる。

 

そして、二人は叫ぶ。サイラオーグや戦兎達と同じ、あの言葉を。

 

『変!身!』

《バットエンジン!》

 

そして完全に二人は一人になると、フウの体が紫基調にした禍々しい姿に変わり、マグダランを殴り飛ばした。

 

《フッハッハッハ!》

「我が主の為に……貴様を倒す!」




ずっと言われてたマッドローグどうするんだの件。漸く出せました。変身者はフウです。そして闇落ち裏切りもありません(断言)


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進化

前回までのハイスクールD×DBe The Oneは……

戦兎「マグダランの強さに圧倒されるサイラオーグさん達。しかしそこにフウがなんとエボルドライバーで変身!」
龍誠「しかし俺たちの前にはまだ兵藤一誠もいて……」
戦兎「ま、俺の超絶強いジーニアスがいるんだから安心しなさい。ってな感じの125話スタートだ!」


「はぁああああ!」

 

変身したフウは背中からコウモリのような翼を出すと、飛翔して上空からマグダランに襲い掛かる。両者一歩も引かない。

 

「く……」

 

それを見ていたサイラオーグは悔しそうに拳を握る。すると、

 

「なにいつまで寝てるんだアンタは!」

「なっ!」

 

いきなり胸ぐらを捕まれ立ち上がると、匙が睨み付けてきた。

 

「今アンタの眷属が戦ってんだぞ!このまま寝てる気か!?あんたなんのために戦ってたんだよ!」

「っ!」

 

匙はサイラオーグから手を離し、再度ドラゴンスクラッシュゼリーをドライバーに装填。強制解除後の再変身の影響か全身に激痛が走るが、

 

「変身!」

《潰れる!流れる!溢れ出る!ドラゴンインクローズチャージ!ブラァ!》

 

強引に変身し、

 

「フウ!今行くぞ!」

 

ツインブレイカーからビームを連射しながら駆け出す。それを見たサイラオーグは立ち上がり、

 

「オォオオオオオオオオオオ!」

《デンジャー!クロコダイル!》

「変身!」

《割れる!食われる!砕け散る!クロコダイルインローグ!オラァ!キャー!》

 

再び変身すると、走り出すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、あっちは大丈夫そうだしこっちはこっちでいきますか!」

「おうよ!」

 

戦兎と龍誠は並び立ち、一誠を睨み付けると、

 

「くく……あはははは!」

「何がおかしい!」

 

突然一誠は笑い、戦兎は眉を寄せた。

 

「いやなに。俺に勝てる気でいるのがおかしくてな!」

「勝つ気に決まってんだろ!つうかお前は戦兎のジーニアスに手も足もでねぇじゃねぇか!」

 

一誠の笑いに龍誠が怒りを込めて答えると、

 

「バカだなぁ。俺がなんの対策もしないと思ったかぁ?」

『っ!』

 

一誠はそう言うと、両手に抱えきれないほどの大量のフルボトルを異空間から取り出した。

 

「な、なんつう量のフルボトルだよ」

「だが可笑しい……どれも絵がない。全部エンプティボトルだ」

 

その通り!と一誠は叫び、

 

「だがただのエンプティボトルじゃない。これは様々な世界の力だ」

「世界の力?」

 

戦兎は一誠の言葉の意味がわからず、困惑すると、

 

「何で俺がゼロワンの世界に手を出したと思う?」

『っ!』

 

二人は目を見合わせ、一誠を見た。

 

「お前も知ってるだろ?エンプティボトルに力を吸わせる事が出来るのをな。だから俺は様々な世界を回った。他にも色んな話があったぞ?まぁまだ話が始まる前の世界も多かったが、後々俺も知ってる話が始まる世界だ。例えばそうだな。これは魔法を科学技術の体系として進歩させた世界で手に入れた力で、不可能を可能にする逸般人の少年が戦う世界。後は手にすればどんな武器でも使える能力を得た少年が主の少女のために戦う話の世界や、英雄を召喚して、世界を救う少年と少女の物語の世界とかな。勿論さっき言ったようにまだ物語が始まる前の状態だ。その主人公達は存在しない。だがその世界に元からある力や霊脈がある。だからそこからも集めた。こっちの世界でもしたようにな。ゼロワンの世界も偶然見つけた一つにすぎない」

 

そう言った一誠は、エンプティボトルを全て空中に投げ、ロンギヌストリガーを外して掲げる。

 

「そして今!その全ての力をエネルギーに変換し、俺は更に進化する!ピンチになってから進化して逆転なんて主人公らしいだろう!?」

 

その宣言と同時に、エンプティボトル達は爆発し、破損すると同時に力が溢れ、それがロンギヌストリガーに吸い込まれていく。

 

『なっ!』

 

そのすさまじいエネルギーの奔流は、戦兎と龍誠を吹き飛ばし、

 

《オーバー・オーバー・ザ・レボリューション!》

 

エネルギーを吸収しきった一誠は、ロンギヌストリガーを起動し、ドライバーに装填。そしてレバーを回し、

 

《Ready go!フィーバーフロー!》

「さぁ!新たなステージだぁ!」

《フハッハッハッハハハハ!フハッハッハッハッハハハハハ!!》

 

変身が完了すると、一誠の姿が今までとは全く違うものに変わっていた。

 

赤黒く、化け物じみたその姿に、戦兎達の背筋に冷たいものが走った。

 

「行くぞ!」

『っ!』

 

一誠は走り出すと、戦兎達と間合いを詰めて来る。

 

「ちっ!」

 

龍誠がそれを迎撃しようと殴り掛かるが、それを一誠は受け止め、反撃で殴り飛ばした。

 

「あがっ!」

「龍誠!」

 

一瞬で遥か遠くまで吹き飛ばされ、戦兎は驚愕しつつも、ジーニアスの拳で一誠を殴る。

 

「よし!」

「それはどうかなぁ!」

 

戦兎はジーニアスの能力で一誠を封じたと思った瞬間、変わることなく殴りかかってきたのだ。

 

「なっ!」

 

何時もなら動けなくなってた筈なのに、平然と動いて反撃してきたことに驚きつつも、ギリギリで避けると、

 

「そうか……お前!」

「気付いたか?そうだよ。俺が様々な世界の力をエネルギーに変換してこの力を手に入れた。その結果、俺はジーニアスの力を克服したのさ。例えロンギヌスを封印されても、俺は新たなエネルギー源を手に入れた。そして何より!」

 

一誠のスピードは更に加速し、

 

「俺はゼロワンの世界でアークの力を手に入れた」

「アーク?」

「ゼロワンの世界の敵さ。悪意を力に変える奴でな。これだけはエネルギーに変換せずロンギヌストリガーに組み込んだ。それにより俺は力を上げられる。お前はいったよな戦兎!ジーニアスは俺の悪意で強くなると。なら俺もそれで強くなる!」

 

ダイヤモンドで防ぐも瞬時に破壊され、戦兎は高速移動で距離を取るが、追い付いてくる一誠に、戦兎は内心であせる。

 

(くそっ!厄介だな)

「おらおらどうした!その程度かぁ!」

 

更に追い詰めてくる一誠に戦兎は、

 

「ならこっちも出し惜しみしてる場合じゃないか」

「なに?」

 

戦兎の呟きに一誠は違和感を覚えたが、まぁいいと殴り掛かった。だが、

 

「っ!」

 

戦兎は一誠が殴り掛かるよりも先に、振り上げようとした手を掴んで止めると、驚いた一誠の顔面を殴った。

 

「ちっ!」

 

よろめいた一誠は憎らしげに呟くと、戦兎を見ようとするが、その時には既に背後に回り込み、背中から攻撃。しかし、

 

「しゃらくせぇ!」

 

効きは悪いらしく、簡単に反撃されてしまい、戦兎は避けながら下がる。

 

「なんだぁ?俺の攻撃を簡単に避けてる。いや、避けてると言うより、予め避けやすい様に動いてる?」

「あぁ、ビルドプログライズキーを使ったんだ。あれには龍誠のウェルシュドラゴンゼツメライズキーに不破さんの戦闘データが入ってたように、こっちには或人さんの戦闘データが組み込まれてる。それから再現した高速演算による未来予知だ。まぁあくまでも予知するだけで、どう行動するかは俺が選択しなかきゃイケないけどな。それでもお前の攻撃を避けるくらいなら余裕だ!」

 

戦兎は叫びながら、拳に雷と炎を纏わせて殴るが、

 

「成程これは厄介だ。だが残念だなぁ戦兎。お前がいくら俺の行動を予測したとしても……」

 

火力が足りない!っと一誠が腕を振ると、凄まじい衝撃波が戦兎に襲い掛かり、それをギリギリで回避しようとするが、

 

(不味い!この角度は校舎に当たる!)

 

校舎には避難した生徒や親御さんがいるため、戦兎は回避をやめ、ダイヤモンドの壁を作り出し、それを蜂蜜で覆い、更にワニの鱗のようなオーラでコーティングして防ぐ。全ては防げないが、最低限必要な分を防げれば良い。

 

「ふん!」

「っ!」

 

しかしその隙を突いて一誠が殴り掛かる。

 

「くっ!」

 

それを避け、戦兎はオーラを纏わせた両腕で連続パンチ。

 

「痒いぜ!」

 

それにはびくともしない一誠は、更に拳を振るうが戦兎は全て避けて反撃。しかしそれは効かず一誠が反撃。

 

それを延々と繰り返し、両者は一旦距離を取る。

 

「ふん。これでは勝負がつかないな」

「……」

 

一誠の言うとおりだ。

 

一発でも致命傷になりえる一誠の攻撃は当たらないが、逆に戦兎に一誠の防御を突破する方法がない。

 

延々に互いのスタミナが切れるまで戦い続けるだけの戦いだ。

 

「まぁいいさ。他にも世界はある。その内お前の力を越えられるさ」

「っ!」

《ワンサイド!逆サイド!オールサイド!》

 

これ以上他の世界に迷惑はかけられない。戦兎はそう判断し、必殺技を発動。

 

《Ready Go!ジーニアスフィニッシュ!》

「ふん!」

 

しかし戦兎のジーニアスフィニッシュすら一誠は弾き、悠々と歩き出す。

 

「それじゃ、チャオ!」

 

そしてそんな言葉を残し、姿を消した。マグダランも同様に姿を消し、戦場だったその場は一瞬で静かになる。そして、

 

『ワァアアアアアア!』

 

歓声が上がり、戦兎達に称賛が浴びせられた。端から見れば、戦兎達が一誠達を追い払った形だ。

 

『……』

 

しかし歓声に応えつつも、戦兎達の心は暗い。

 

更なる力を手にした一誠に、マグダランのこともある。

 

サイラオーグもその表情には何時ものような自信が感じられない。

 

何よりもまだ他の世界と言った。つまり一誠は今以上の強くなるだろう。

 

(こりゃ不味い……かもな)

 

戦兎はそんなことを考えながら、歓声に応えて手を振るのだった。




仮面ライダービルド・ジーニアスフォームver2.0

ジーニアスフルボトルに或人から託されたビルドプログライズキーのデータを入れて強化された姿。

スペックに変更はないが、ゼロワンの力による未来予知を手に入れたことにより、更に戦闘能力が向上した。しかし前述の用にスペックに変更はなく、一誠の防御を突破することはできなかった。

とは言え一誠の攻撃を全て簡単に避けきるなど、戦兎のテクニカルな攻撃と組み合わせることで、非常に厄介な存在となった。


仮面ライダーエボル・怪人体

一誠がロンギヌストリガーに様々な世界の力をエネルギーに変換して手に入れた姿。

元ネタはビルドのエボルトで、スペックも大幅に上昇。更にアークの力により、自信の悪意を力に変えて戦える。

特に防御力が高く、戦兎のジーニアスですら有効打を与えれなかった。

しかし同時に、非常に高いスペックで殴る位しか攻撃方法がなく、戦兎のジーニアスによる未来予知には着いていけなかった。

とは言えジーニアス攻撃が効かないため、お互い疲れるだけという理由で勝負は終えられた。



ざっくりと説明させてもらいました。因みに一誠が行った世界。全部私が好きな作品なのですが、元ネタ分かる人いるかなぁ。


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違う世界

前回までのハイスクールD×DBe The Oneは……

戦兎「兵藤一誠の新たな力に苦戦しつつも、何とか退けた俺達だったが……」
龍誠「しかし別の世界の力までってズルくねぇ!?」
戦兎「確かに滅茶苦茶強かったな。正直ジーニアスの新能力がなかったらやられてたよ」
龍誠「ちくしょー!どうやったらアイツに勝てるんだよ」
戦兎「まぁ、まだ難しいかもなぁって感じの126話スタートだ」


「んで?新しい世界はどうだ?」

「あぁ、あれならアイツが上手くやってるよ」

 

根城に帰った一誠が聞くと、リゼヴィムは肩を竦めながら答えた。

 

「そうか。なら問題はなさそうだな」

 

その答えに満足そうに頷いた一誠は空を見る。

 

(今度こそ。今度こそ殺してやるよ戦兎)

 

ニヤリと笑みを浮かべ、一誠はそんなことを思うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、

 

「別の世界の力……ねぇ」

 

アザゼルはやってくれるぜ、と嘆息する。

 

さて無事学校を守った戦兎達は、屋敷に帰ってくるなり集まって会議を開いていた。

 

サイラオーグとフウだけはマグダランの一件の話があるらしく、冥界に戻っていったが。

 

「つまりアイツはこうしている間にも、違う世界から力を奪い続けて強くなってるって事なのか?」

「恐らくな」

 

龍誠のボヤきに戦兎は頷き、アザゼルを見る。

 

「正直一誠の力は今までとは比べ物にならなかった。先読みで何とか互角には持ち込んだけど、正直言って正面からの殴り合いになったら手も足もでない」

「戦兎先輩でも……」

 

ギャスパーがそんなことを呟きつつも、ふと何か思い付いた顔をし、

 

「じゃ、じゃあ僕達も違う世界に行って力を探しましょう!ゼロワンさんの世界みたく、迷惑を掛けない範囲で貰えば戦兎先輩も強くなりますし!」

「嫌だめだな」

 

ギャスパーの案に、確かに良いかもと思った面々だったが、アザゼルはそれを却下した。

 

「理由はいくつかあるが、一番はその世界にどんな影響があるかわからんってことだ」

『?』

 

どういうことか分からず皆が首をかしげると、

 

「例えばだ。その世界に行ったとして、その世界には仮面ライダーという概念がない世界だとする。だが戦兎がいけばそれは仮面ライダーがいた世界に変わるんだ。世界の概念って奴は強

いが同時に脆い。今までになかった概念を持ち込むだけでも、世界が崩壊するような衝撃かもしれないんだ。そうなればその世界に住む世界の人間も無事じゃすまない」

『成程……』

 

アザゼルの言葉に皆は頷き、

 

「え?じゃあアイツは力取り放題だけど俺達はどうしようもないってことか!?」

「まぁそう言うことだな」

 

龍誠の言葉に戦兎は頷くと、龍誠はあんぐり口を開けて、

 

「アイツ!ズルすぎだろ!」

「兵藤 一誠は世界を気にする必要もないからな」

 

そう言いつつも戦兎はアザゼルの方を向き、

 

「そして逆に言えば、こっちの世界にも影響があるかも……だろ?」

「あぁ、こっちにも力を持ち込めば何が起きるかわからない。今この瞬間にも何か起きるかもだしな」

 

その場を重い空気が支配する。だがそんな中戦兎は、

 

「どちらにせよ次に勝てば良い。これ以上アイツにこの世界も、他の世界も好きにさせないために」

 

と言い、拳を強く握った。他の皆もそれに同意するように頷く。すると龍誠が、

 

「あ、そう言えばヴァーリ」

「ん?」

 

あることを思い出した龍誠がヴァーリに声をかけた。

 

「お前さ、リゼヴィムって名前の知り合い居ないか?」

「っ!なぜお前がその名前を……」

「ユーグリットと戦ったときに出会ってよ。ヴァーリに言えば分かるって言われたんだ」

 

そうか、とヴァーリは殺気を滲ませながら、答えて来たため、龍誠がどういう関係なんだ?と聞こうとした次の瞬間!

 

『っ!』

 

ゾクッと全員の背筋に冷たいものが走り、その方角を見ると皆で振り向きながら立ち上がり、飛び出すように家を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれがこの世界の皆か」

「そうみたいだね。お兄ちゃん」

 

戦兎達が気づく少し前、屋敷を見ながら話す二人の男女がいた。

 

どちらも駒王学園の制服に身を包んでおり、高校生くらいだろう。暗闇の中で顔は見えない。

 

「んじゃ、行ってくるわ」

「りょーかい」

 

そんな中少年は歩き出し、気配を滲ませるとすぐに中から戦兎達が飛び出してくる。

 

「ごきげんよう。元気そうだな」

「なにもんだ?お前」

 

戦兎が絞り出すように声を出した。余りにも圧倒的な存在感。いるだけで何かを感じるオーラを持っている。だが不思議なほど人間にも見えた。

 

「人間か?あれは」

 

アザゼルも思わず呟く。すると少年の顔が街灯に照らされ、

 

「そうか。アザゼル先生も元気なんだな」

『っ!兵藤 一誠!?』

 

そう。その顔は兵藤 一誠だ。だが何時ものアイツとは少し違う気もする。と戦兎は違和感を感じつついると、

 

「そう。俺は兵藤 一誠だ。でも皆が思う兵藤 一誠じゃない。何せ俺は……」

 

と自称・兵藤 一誠は言いながら、何かを取り出すとそれを腰に当て、それが巻き付いて装着された。

 

《ジクウドライバー!》

『なっ!』

 

皆が目を見張り驚愕する中、一誠は更にストップウォッチのようなものを取り出す。しかしそれには、なにやら絵が書いてあり、それを回してスイッチを押す。

 

《ジオウ!》

 

そしてそのストップウォッチをベルトに装着し、バックルのスイッチを押してから構え、

 

「変身!」

《ライダータイム!仮面ライダー!ジオウ!》

 

バックルを回転させると、姿が変わっていき、黒を基調とし顔にライダー書かれた姿に変わった。

 

「お、おい戦兎!アイツ仮面ライダーだぞ!」

「いやなんでそう言いきれるんだよ」

「だって今仮面ライダーって音鳴ったし、額にカメンで顔にライダーって書いてあるぞ!」

「んなあんちょくな」

「いや、合ってるぜ」

 

いや合ってるんかい!っと戦兎は思わず叫ぶと、

 

「俺は仮面ライダージオウこと、兵藤 一誠。まぁ、最低最悪の王様の生まれ代わりさ」

 

まぁでも今そんなことは関係ない。と一誠は言うと、

 

「悪いけどお前を倒させて貰うぜ。桐生 戦兎……いや、仮面ライダービルド」




次回。最高最善のサイキョーキング編。


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第十八章 最高最善のサイキョーキング
最低最悪の王


???「僕はそう……仮面ライダーアンチビルドだ!」

突如襲い掛かる謎の強敵、アンチビルド。

「俺は最低最悪の王様の生まれ代わりさ」

現れる、最低最悪の王の生まれ変わりを名乗る少年、兵藤一誠こと、仮面ライダージオウ。

戦兎「皆……行くぞ!」

そんな敵達に、戦兎達が立ち向かう!

今、仮面ライダー達と本来の神滅具(ロンギヌス)所有者たちが交わるとき、二つの世界の命運を賭けた物語が始まる!

戦兎「愛と平和のために!」
一誠「俺達は戦える気がする!」

そして今、ビルドは新たなステージへ。

「仮面ライダービルド・ゴールデンラビットラビットフォーム。って所かな」

さぁ、二つの世界の未来をビルドせよ!

一誠「スペシャル前売り券を買った人には、作中で戦兎が使うフルフルゴールデンラビットボトルが付いてくるぞ!」
戦兎「劇場へ急げ!って感じの127話スタートだ!」


「俺を倒すだと?」

「あぁ、つうわけでいくぞ!」

 

そう言って仮面ライダージオウになった一誠は走り出すと、

 

「くっ!」

「ん?」

 

リアスが咄嗟に滅びの魔力を放ち迎撃。しかし、

 

《ジカンギレード!ケン!》

 

側面にケンと書かれた剣でリアスの滅びの魔力を真っ二つにする。

 

『はぁ!』

 

そこに祐斗とゼノヴィアが襲い掛かるが、

 

《タイムチャージ!》

 

一誠は剣のスイッチを押すと、二人の剣を避けながら、

 

《5・4・3・2・1!ゼロタイム!ギリギリ斬り!》

『なっ!』

 

横一文字に斬り、二人を吹き飛ばした。

 

『変身!』

《鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イェーイ!》

《Wake up CROSS-Z! Get GREAT DRAGON! Yeahhh!》

《潰れる!流れる!溢れ出る!ロボットイングリス!ブラァ!》

《潰れる!流れる!溢れ出る!ドラゴンインクローズチャージ!ブラァ!》

 

戦兎達も変身して一誠に襲いかかる。しかし全て剣でいなされ、

 

「はぁ!」

「この!」

 

小猫と黒歌の仙術による攻撃も避けられる。そこに、

 

「これなら!」

「どうですか!」

 

と朱乃とロスヴァイセが雷光と北欧魔術の砲撃をそれぞれ放つ。だが、

 

《リアス!》

「え?私?」

 

今度は別のストップウォッチを押すと、突然自分の名前を呼ばれたため驚くが、一誠は気にせず剣を変形させ、

 

《ジカンギレード!ジュウ!》

 

今度は銃になった武器にストップウォッチを装填。

 

《フィニッシュタイム!リアス!スレスレシューティング!》

 

一誠が発射したのは、巨大な滅びの魔力の弾丸だ。いや、弾丸と言うよりは塊に近いそれは、朱乃とロスヴァイセの連携攻撃を押し返し、

 

「皆避けろ!」

 

全員が伏せるとそのまま空の彼方に飛んでいく。

 

「あぶねぇあぶねぇ。ここ住宅地だから気を付けねぇと」

 

何ていっている間に、近隣住民が何事かと出てきた。

 

「うっさいなぁ……」

「どうしたのかしら?」

 

その中には美空と母の姿があり、戦兎はギクッと体を強張らせたが、

 

「悪いけどやかましくされるわけにはいかないんでね」

《ギャスパー!》

「ぼ、僕ですか!?」

 

今度はギャスパーのストップウォッチを起動。すると周りの住人達は突然目が虚ろになり、それぞれの家に戻っていく。

 

「さ、催眠。一瞬でこの人数を……?」

「驚くのはまだ早いぜ?」

 

一誠は驚いて唖然とするギャスパーに言いながら、またストップウォッチを取り出し、

 

《リアス!》

「ん?良く見るとあのストップウォッチ、部長の絵が書いてありません?」

 

戦兎の言葉に確かにと皆が見ると、一誠はそのストップウォッチをベルトに装填。そしてバックルのスイッチを押し、

 

「変身!」

 

バックルを回転させる。すると、

 

《アーマータイム!リーアースー!》

 

バックル回転させると同時に、深紅のアーマーが出現し、一誠はそれを蹴っ飛ばす。

 

そしてそれはバラバラに分解され、一誠の体に装着された。

 

「仮面ライダージオウ・リアスアーマー。って言うんだぜ?はぁ!」

『っ!』

 

一誠はそういうと、手から滅びの魔力を発射し、戦兎達を狙う。

 

「なんでアイツが滅びの魔力を使えるんだ!?」

「俺が聞きてぇよ!」

 

龍誠と一誠が、そんなやり取りをしながら避けていると、

 

「そこですわ!」

 

隙を見て朱乃が雷光を落とす。だが、

 

《アケノ!》

 

一誠はそれを避けながら違うストップウォッチに交換し、

 

《アーマータイム!アーケノー!》

 

今度は真っ黒なアーマーを身に纏い、朱乃と同じ雷光を出して防ぎながら、ベルトを操作する。

 

《フィニッシュタイム!アケノ!》

 

そして全身から雷光を発生させ、

 

《ライコウ!タイムブレーク!》

「きゃあああああああ!」

 

朱乃の雷光を軽々と押し返し、そのまま朱乃に雷光を浴びせ、ダウンさせた。

 

「この!」

 

そこに祐斗が駆け出し、一誠に剣を振り下ろすが、

 

《ユウト!アーマータイム!ユーウートー!》

 

また別のアーマーを纏い、聖魔剣に似た剣で祐斗を迎撃。二人は高速移動で剣を交えるが、

 

「がはっ!」

 

祐斗が吹き飛ばされ地面を転がった。

 

「何て早さだ」

「ならこれだ!」

 

とゼノヴィアはエクスデュランダルを光らせ振り下ろすが、

 

《ゼノヴィア!アーマータイム!ゼ!ノ!ヴィ!ア!》

 

今度がエクスデュランダルに似た剣を持つアーマーと交換し、ゼノヴィアの一撃を弾くと一閃。

 

「が、はぁ」

「安心しな。峰打ちだ」

 

それ両刃だろ。と皆は思いつつも、ゼノヴィアに目立つ傷はないことに安堵する。

 

「な、なら僕が!」

「俺もいくぜ!」

 

ギャスパーが眼で一誠を止めようとし、その隙を匙が狙うが、

 

《アーマータイム!ギャースパー!フィニッシュタイム!バロール!タイムブレーク!》

 

次の瞬間何かが起き、

 

『キャア!』

『がはっ!』

 

全員が吹き飛ばされた。

 

「ギャスパーの時止めを無効化どころか逆にこっちを止めたのか」

「ぼ、僕と同じ能力ですかぁ?」

 

ピヨピヨと目を回しながら言うギャスパーに、朱乃は首を横に振る。

 

「同じじゃありません。私たちと同じ力を私たち以上に使いこなしていますわ」

「一体どういう原理なの?」

 

と皆に動揺が走る中、

 

《紅のスピーディージャンパー!ラビットラビット!ヤベーイ!ハエーイ!》

「うぉ!」

 

戦兎はフォームを変え、一瞬で一誠との間合いを詰めると連続で攻撃を叩き込む。

 

「いっつ!」

一誠は必死に防御するが、戦兎の方が速さは上だ。

 

「あぁくそ!これテクニック系だから難しいんだよなぁ!」

 

と言いつつ避けて距離を取ると、

 

昇格(プロモーション)!ナイト!」

 

龍誠が走ってきて、ナイトに昇格(プロモーション)しながらビートクローザーを手に襲いかかる。

 

「んじゃこれかな」

《ミナ!アーマータイム!ブースト!ミナ!ミナ!ミーナー!》

 

すると今度は赤いアーマー出現し、一誠はそれを殴ってバラバラにすると、身に纏った。

 

「ヨッと!」

 

そして剣でビートクローザーを止めるが、

 

「遅いぜ!」

「っ!」

 

ナイトの高速移動で一誠を追い詰めた。

 

「成程早いな。ならついでにこれだ!」

《ユウト!ブーストタイム!ユユユウト!》

 

すると再び祐斗の絵が書かれたストップウォッチを、今度は今つけたストップウォッチに装着し、ベルトを一回転。

 

「序でに、このまま決めるぜ!」

《ブーストタイムブレーク!ユユユウト!》

 

ジオウと言ったストップウォッチのスイッチを押し、他のストップウォッチも押してからバックルを一回転。

 

すると両手に持った剣にエネルギーが集まり、

 

「はぁ!」

 

一瞬で龍誠に接近し、刹那の瞬間に斬撃を叩き込みまくった。

 

「一刀両断!」

「いや二本あるし滅多斬りじゃねぇか……」

 

地面に倒れながら、龍誠が突っ込みを入れる中、

 

《ミラクルマッチブレイク!》

「うぉ!」

 

フルボトルバスターを構えた戦兎が一誠に向けて発射。だがそれをギリギリで避け、

 

「あんたにはこれかな」

《ジオウⅡ!》

 

すると今度は、今までとは少し違った形状のものを取り出すと、それは二つに別れてそれぞれ金と銀のストップウォッチになる。

 

そしてそれをベルトに装填してバックルを回転。

 

一誠「変身!」

《ライダータイム!仮面ライダー!ライダー!ジオウ・ジオウ・ジオウ!Ⅱ!》

 

そうして一誠は、今までとは明らかに雰囲気が異なる姿に代わり、

 

「仮面ライダージオウⅡだ。宜しく」

「何が宜しくだ!」

 

戦兎が高速移動で撹乱し、背後から襲い掛かるが、

 

「そこだ!」

 

一誠が鍔本にジオウの顔が付いた剣を取り出し、戦兎の一撃を止めると、弾いてからスイッチを押す。

 

《ライダー!ライダー斬り!》

「はぁ!」

「がはっ!」

 

斬撃を喰らって吹っ飛んだ戦兎は、地面をゴロゴロと転がる。

 

「この!」

 

しかし戦兎は素早く立ち上がると、もう一度高速移動で間合いを詰めた。が、

 

「はぁ!」

「くっ!」

 

何度高速移動で撹乱しても、確実にその出現先を捕捉され、戦兎に攻撃を入れていく。

 

(可笑しい……!)

 

明らかにこちらの動きが読まれている。初めてお披露目した時のラビットラビットフォームは、サイラオーグに見切られたりしたが、あれはその前にクイーンと戦いを見られていたからだ。初見の一撃目から読まれる速さじゃない。しかもあの時とは違って使いなれている。

 

(まるでそう……俺の動きを読まれてる!?)

 

その中、一誠は剣のレバーを操作した。

 

《ジオウサイキョー!覇王斬り!》

 

そこに追撃を掛けるように、一誠は攻撃を放った。

 

「この!」

《フルフルマッチデース!フルフルマッチブレイク!》

 

その一撃を戦兎もフルフルマッチブレイクで打ち消しながら、

 

《鋼鉄のブルーウォーリア!タンクタンク!ヤベーイ!ツエーイ!》

 

爆風の中からフォームチェンジしつつ飛び出し、戦兎は強引に間合いを詰めて殴り飛ばした。

 

「よっ!」

 

しかしそれも読んだのか、避けて反撃。だがタンクタンクの防御力で無理矢理耐えると、強引に殴り飛ばした。

 

「がはっ!」

 

強烈な一発を入れられ、吹っ飛ばされた一誠は、慌てて立ち上がると、そこにアザゼルの光の槍が降り注ぐ。

 

「流石だな。こっちが不利なタイミングを良くわかってる」

 

一誠はそれを転がって避けながら、最初に使っていた剣と、ジオウⅡになってから使った剣を両手に持ち、槍を弾きながらその剣を合体させ、

 

《ジオウサイキョー!フィニッシュタイム!キングギリギリスラッシュ!》

「どりゃああああ!」

 

巨大なオーラによる刀身を出現させ、一誠はアザゼルの槍を纏めて凪ぎ払うと、そのままアザゼルごと吹き飛ばした。

 

「ちっ!」

 

空中で体勢を建て直し、舌打ちするアザゼルに一誠は笑みを浮かべ、

 

「へへ、やっぱり強いなぁ。アンタは」

 

すると、

 

「ならこれで行くぞ!」

《グレート!オールイエイ!ジーニアス!》

 

戦兎はジーニアスフルボトルをベルトに装填。それを見た一誠は、

 

「あ、それ貰い」

 

と言って、色のないストップウォッチを出して戦兎に向けてスイッチを押すと、

 

(なんだ?)

 

一瞬何か力が抜けたような違和感を感じつつも、戦兎は構わずレバーを回す。が、

 

「あ、あれ?」

 

何の音もならなくなってしまった。一瞬壊れたのかと思ったが、整備は万全だ。と言うか途中までは起動したのに、今度はその起動すらしなくなった。

 

《ビルド!》

 

そんな中、一誠の手にあったストップウォッチは変化し、ビルドの絵が出現した。

 

「ごめんな桐生 戦兎。俺の狙いは実はこっちさ。あ、ジーニアス以外なら変身できるから安心してくれ。んじゃ、この力貰っていくな」

 

そう言って一誠は飛び上がると、そのまま飛んできた巨大な赤い龍の背中に飛び乗り、

 

「じゃあな!」

 

何てことを言い残すと、赤い龍が一鳴きし、飛んでいくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれで良かったのかなぁ」

「ん?」

 

一誠は変身を解除し、赤い龍の背中に座っていると、龍はそんなことを言い出した。声音からして、先程一誠と一緒にいた女の子だ。だが、

 

「だが悠長にはしていられない。だろう?」

 

今度は渋い声音で龍はしゃべる。まるで人格が変わったようだった。

 

「あぁ。のんびりしてられないし、ただでさえ俺は今本調子じゃないしな」

「でも完全に恨まれたよねぇ……ってあれは!」

 

ん?と一誠は見てみると、地面をバイクで爆走する戦兎の姿があり、

 

「逃がすかぁ!」

「お!来た来た」

 

戦兎はバイクで飛び上がり、そのまま龍の尻尾を掴み、這い上がってきたのだ。

 

「流石しつこいねぇ」

「捕まえたぜ!」

 

叫びながら戦兎は一誠を掴むと、そのまま二人は龍の背中を転がりながら、もみ合いになる。

 

「うぉ!あぶねえ!こっちはただの人間だぞ!」

「嘘つけぇ!」

 

そうして揉み合いになると、二人は足を踏み外して龍の背中から落下してしまう。

 

「不味い!」

「お兄ちゃん!」

 

龍は急いで追い付こうとするが、ギリギリ間に合わなそうだ。すると一誠はストップウォッチを出し、スイッチを押すと空間が歪む。そして二人はその歪みの中に消えていき、龍は一人取り残されてしまった。

 

「も、もしかして置いてかれた?」

「まぁそうとも言うな」

 

何て一人二役で喋っていると、リアスたちが追い付いて取り囲んで来る。

 

「うーん。これは多勢に無勢。これは無理かなぁ」

「本音を言うと?」

「皆に攻撃とか嫌だもーん!」

『?』

 

端から見ていると、声音を変えて一人で二役をしながらしゃべっているようにしか見えない。そんな姿を見た龍誠は、

 

「やっぱり。アイツ赤龍帝だ!前に見た!」

「え?そうなの?」

 

と龍誠の言葉にリアスが驚いていると、龍は発光し、そのまま人型に姿を変えた。駒王学園の制服に身を包んだ、可愛らしい少女はにっこり笑うと、

 

「始めまして!私は兵藤 実奈です!兵藤 一誠の妹してます!」

『は?』

 

と言った次の瞬間、雰囲気と目付きが変わり、オーラも別人のようになり、

 

「そして俺はドライグ。赤龍帝・ドライグだ。宜しく頼む」

『はぁあああああああああああ!?』

 

皆の絶叫が辺りに木霊したのだが、一誠の影響なのか近隣住民は誰も起きないのだった。




兵藤 一誠

仮面ライダージオウに変身する少年。見た目はまんま一誠。

本調子じゃないと言いつつも、戦兎達と一人でやりあうなど、非常に高い戦闘能力をほこる。

その正体は、前に公開したハイスクールD×Dと仮面ライダージオウのクロスオーバー物の主人公本人。折角色々考えたからタイミングがあれば絡ませたいと考えていた所今回満を持して登場。

しかしその行動は未だに謎。





兵藤 実奈

一誠の妹にして転生者。しかし戦兎たちの世界で暴れている一誠とは違い、原作大事に派のためか本人的には余り物語には関わりたくないらしい。

そもそも本人の素の能力は低く、戦闘はもっぱら色々あってドライグが表に出てこれるため、そっちに依存している。ただしドライグが表に出れる影響かドライグの姿に変身したり、その姿で戦うこともできる(但しお腹が空くらしい)。

スタイルは本人いわく平均的(周りがデカいだけby実奈)。しかしドライグ曰く基本寸胴鍋だが、運動不足から少し太腿が太め。


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前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「突如襲い掛かってきたのは、仮面ライダージオウを名乗る兵藤 一誠が現れ、俺達に襲い掛かってきた!」
龍誠「ジオウの兵藤 一誠の目的は何なのか……そして戦兎は何処に行ってしまったのか!」
戦兎「そんな感じの128話スタートです!」



「うぅん……」

 

背中に走る痛みに顔を歪め、戦兎は目を覚ますと、そこは何処かの家の屋根の上だった。

 

「俺は……そうだ!兵藤 一誠!」

 

ジオウの方の!と戦兎は立ち上がるが、

 

「何だよこれ」

 

眼前に広がる景色に戦兎は驚愕した。

 

眼前の街は炎が上がり、爆発や悲鳴が聞こえてくる。

 

「た、助けて!」

「っ!」

 

悲鳴に戦兎は反応し振り替えると、そこには魔獣に襲われて逃げ惑う女性がいた。

 

「くそ!良く分からねぇけど変身!」

《鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イェーイ!》

 

見てるわけにもいかず、戦兎がビルドに変身するとドリルクラッシャーで魔獣を切って蹴り飛ばすと、

 

「大丈夫ですか!?」

「ひっ!いやぁあああ!」

 

え?と戦兎が呆然とする中、女性はまた悲鳴をあげて逃げ出してしまった。

 

「今……俺を見て逃げた?」

 

魔獣と間違えたのか?と思いつつ、戦兎は再度魔獣を見ると、仲間と思われるやつらもやって来ている。

 

「しょうがねぇ。来いよ!」

 

戦兎がドリルクラッシャーを構えると、魔獣に向かって走り出すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「来たようだね」

 

戦兎の様子を遠くから見る影がある。声音からして男だが、そこまで年が行っている様子はない。

 

「仮面ライダー……ふふ、君は僕が否定してあげるよ」

 

そう呟く男の手には、エボルドライバーと、戦兎のラビットフルボトルとタンクフルボトルに似て、だが禍々しい模様が彫られたボトルが握られていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ!」

《Ready Go!ボルテックフィニッシュ!》

 

魔獣にキックを叩き込み、戦兎は一息吐きながら周りを見回す。

 

あちこちの家はボロボロになっており、酷い状況だった。

 

「あれ?」

 

そんな中、戦兎は電柱に駆け寄ると、そこには駒王町と書いてある。つまりここは駒王町と言うことだ。

 

「俺が気絶している間に町がこんなことに?」

 

一体何が……と思いつつ、ジオウの一誠はどこに行ったんだと思っていると、

 

「居たぞ!」

「ん?」

 

戦兎は声のする方に向き直る。するとそこには先程助けた女性や、他にも角材やら金属バットやらを持った人々が戦兎を取り囲んだ。

 

「えぇと、どちら様?」

 

何か嫌な予感が……と戦兎が思った次の瞬間!

 

「ビルドだ!殺せぇ!」

「ですよねぇ!」

 

全員に襲い掛かられ、揉みくちゃにされる戦兎。しかし戦兎は人々の足の間から這い出ると、そのまま逃げ出す。

 

「あそこだ!追えぇ!」

「このまま殺されるくらいならやってやる!」

「こっちだぁ!」

 

四方八方からやってくる人々に、

 

「あぁもう!何がどうなってんだよ!」

《ビルドチェンジ!》

 

戦兎は走りながらバイクを出すと、そのまま走りだして逃げた。

 

「逃がすなぁ!」

「いぃ!」

 

パン!とお巡りさんが銃まで撃ってくる。変身していれば当たってもどうって事はないが、それでもいい気分はしない。

 

「死ねぇええええ!」

「うわぁ!」

 

そこにバイクに飛び付いてきた人を振り落とし、戦兎はバイクを爆走させる。

 

「一体どうなってんだよぉおおおおおおお!」

 

戦兎のそんな悲痛の叫びが、空に木霊するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ改めて聞くわね。貴女の名前は?」

「兵藤 実奈。年齢は16歳。駒王学園の一年生です!宜しくお願いします!兵藤 一誠の妹してます!」

 

ビシッと元気に答える実奈に、リアスは頷きながら、

 

「驚いたわ。別の世界の兵藤 一誠には妹がいるのね」

「まぁ私は本来いない存在ですけどね~」

 

実奈と名乗った少女の言葉に、リアス達は首を傾げると、

 

「そっちの兵藤 一誠に合わせるなら、私は転生者ってやつなんです」

『っ!』

 

実奈の言葉に、その場の全員が身を強ばらせた。

 

「あ。ちょ、ちょっと待ってくださいね?私はどっちかって言うと原作準拠派と言うか原作を第三者から見ていたい派なのでそっちの世界の奴みたく関わりたくないタイプなんですよ。なのに神様のやつ……勝手に赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)付与してくんだから……」

 

最後の辺りはブツブツ言っていて聞こえなかったが、取り敢えずは敵意はないのか?と思いつつも、あの襲い掛かってきたジオウの兵藤一誠の妹だ。油断はできなかった。

 

「じゃあ次の質問。何で私たちを襲ったの?」

「いやぁ、それに関しては申し訳ない。こっちとしても色々事情がありまして。とにかく手っ取り早くビルドと言うか、桐生 戦兎さんの力を頂く必要があったんですよ」

 

どういう事だ?と皆は目を合わせていると、

 

「うちの世界で暴れてる奴がいましてね。そいつを倒すのにビルドの力が必要だったんですよ」

「だったら戦兎がそっちの世界に行けば良かっただろ」

 

龍誠のそんな問いに、実奈は苦笑いを浮かべると、

 

「それがそう言うわけにも行かなくてですね。お兄ちゃん曰く、アレはビルドじゃないと倒せない。でもビルドでは倒せない。らしいですから」

『はい?』

 

言っている意味がわからなかった。そりゃそうだろう。今の実奈の言っている意味は矛盾している。だが実奈の表情は真面目なものだ。

 

「じゃあ次。戦兎はどこ?何で襲ってきたの?せめて事情を話すとかあったんじゃない?」

「それはですね……」

 

神妙な顔で答える実奈に、全員が思わず息を飲む。そして、

 

「わかりません」

『だぁ!』

 

ズルッと全員で思わず、ずっこけ掛けた。

 

「分からないって!」

「いや私もまずは話してって言ったんですけどね?お兄ちゃんがそれはしたらダメだって言いましてね?理由は聞いても教えてくれないですし。あと多分戦兎さんはお兄ちゃんと一緒に私たちの世界にいっちゃんたんじゃないかなって」

 

実奈がそう言うと、突然の彼女の体からガクンと力が抜け、纏うオーラが変わる。

 

「まぁ、相棒は嘘が下手で単じゅ……じゃない、素直だからな。下手な事は教えられまい」

「ちょっとドライグ!今単純って言ったよね!」

 

事実だろう。何だとー!と突然一人二役で寸劇を始めた実奈に、リアス達は困ったような表情を浮かべつつ、

 

「えぇと、そちらはドライグだったっけ?」

「あぁ、赤龍帝・ドライグ。と名乗った方が分かりやすいか?」

 

いやそれは分かるけど……と皆は顔を見合わせつついるとアザゼルは、

 

「だとしたらおかしいな。赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の所有者だったとしても、お前がこうして表に出てくるのは出来なかった筈だ。ましてやさっきのあの姿は、お前が神に赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)にされる前の、言うなれば全盛期の姿じゃねぇか」

「うむ色々あったんだが……」

「色々あって私が死んじゃってドライグが完全復活して、一緒に私もくっついてきたって感じですかね」

 

その色々が一番気になるのだが、と皆が思うと、

 

「まぁ、今は俺が本体だと思えば良い。本来なら俺が相棒に赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)として着いているのを、逆に俺に相棒がくっついている状態だ。この姿も燃費と小回りを考慮して擬態しているに過ぎない」

「そうか、だからおっぱいが小さくなったのか。通りで復活してから小さくなったと……」

「いや元々こんなもんだが?」

「こんなもんとな!?」

 

いやもっとナイスバディだったでしょ!と叫ぶ実奈と、何を言ってるんだと呆れるドライグは、人格を次々入れ換えながら口論している。

 

そんな様子にまたもやリアス達はポカンとしそうになったが、

 

「お、オホン!」

「あ、すいません。ドライグっていつも余計なことばかり言うから」

「相棒もな」

 

何て言ってまた口論に発展し掛けるが、これ以上好きにさせると話が進まないので、リアスは無理矢理話を続ける。

 

「それで?その暴れてるやつって何者なの?戦兎からジーニアスになる力を奪うまでの敵なんでしょう?アレほどの力を持つそっちの世界の兵藤 一誠がああ言うほどなのだから」

 

ふむ……と実奈は一息吐くと、

 

「そいつの正体は分かりません。でもそいつは仮面ライダーアンチビルドと名乗ってました」

『っ!』

 

その場の全員が息を呑む。ビルドの名を関するライダー。そんなライダーを送るやつなんて一人しかいなかった。そして実奈は言葉を続けて、

 

「そいつだけじゃない。こっちの世界は今数えきれないほど魔獣が次々襲い掛かってきてるし、ヘルクローズとかイービルローグとか言う見たことない仮面ライダーまで襲ってくる。お陰で町は大混乱。そんでもってボロボロですよ」

「ごめんなさい」

「え?あ、そっちの世界の部長達のせいじゃないですよ!?悪いのはそっちの兵藤 一誠!ってか世界を滅茶苦茶にするなんて兵藤 一誠の風上におけない!マジで解釈違いなんだけど!」

「そっちの世界の奴等がちゃんとしていれば良かったのは本当だろう」

 

ちょっとドライグ!と実奈は嗜めるが、ドライグは言葉を続ける。

 

「厄介な相手何だろう。強いんだろう。だがな、そんなもの他の世界には関係ない。理不尽を与えられ、大切なものを奪われるだけだ。お陰で先日避難の遅れた住人を助けようとして相棒が怪我をした。連戦が続いて俺が眠っていたところでな。幸いこっちのアーシアのお陰で今は平気だが、もしまた相棒が命を落としていたらと思うと肝が冷える」

『……』

 

ドライグの言葉が、刺のようになって皆の胸に刺さった。

 

「実際のところ、俺はそこまで不満がある訳じゃない。こっちだってお前達にいきなり襲い掛かっているし、どうしようもないほど厄介な相手と言うのは存在する。聞いた範囲でだが、相手の強さもそれなりに理解しているつもりだ。だがお前達は覚悟しておいた方がいい。お前達が倒すのが遅れれば遅れるほど、世界が壊されれば壊されるほど、奪われていった者が生まれる。その奪われた者達の中には、奪い返そうとするだろう。それの意志が兵藤 一誠に向くとは限らない。兵藤 一誠ではなく、倒すのに手間取ったお前たちに向くこともあるだろう。意志が悪意になり、今度はお前達に理不尽を与える存在なってしまうかもしれない」

『……』

 

ドライグの言葉に、皆が口を閉じた。それは皆が感じていたことだ。だがそれを口にしなかった。

 

兵藤 一誠の居場所は掴めない。世界中の勢力が力を合わせて探しているが、影すら掴めない。

 

基本的に、兵藤 一誠側から姿を見せるのを待つしかない。だがその間も他の世界が襲われていく中、待つことしか出来ない。

 

「……」

 

リアスは息を吐く。別の世界。消えた戦兎。アンチビルド。問題は山積みだ。

 

(本当に、やってくれるわね。兵藤 一誠)




セイバーもう最終回なの……?


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アンチビルド

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……


戦兎「突如襲い掛かってきたジオウの兵藤 一誠の妹こと、兵藤 実奈に話を聞く龍誠達だったが……」
龍誠「一方その頃戦兎も別の場所で事件に巻き込まれていた」
戦兎「しかし一体全体何がどうなってんだって話だぜ」
龍誠「色々な事が起こりすぎてるもんなぁ……」
戦兎「正直まだまだ分からないことが多すぎる129話スタート!」



「はぁ、全く。どうなってんだよ」

 

戦兎は裏路地に隠れながら、大きなため息をついた。一体何が起きてると言うのか、街は滅茶苦茶だし住民には襲われる。

 

自分が何をしたんだと思う中、

 

「辛そうだね」

「っ!」

 

戦兎は突然の声に、驚きながら振り替えると、そこにがローブを被った声音からして男が立っていた。

 

「誰だ……?」

「あぁ、声だけじゃわからないか。だろうね。君にとって僕は取るに足らない存在だった」

 

そう言ってローブのフードを外すと、そこには戦兎は見覚えのある顔があり、

 

「ディオドラ・アスタロト?」

「そうだよ。半年前にクローズに負けたディオドラさ」

 

あり得ない、そう戦兎は呟いた。

 

「お前はあの一件の罪で捕まったはずだ。今だって厳重に幽閉されてるはず」

「だが、そんなものは関係ないやつもいるだろう?」

 

そう言われ、戦兎の脳裏に兵藤 一誠が浮かぶ。

 

「君の想像通りだよ。彼は救世主だ。君達に負け、僕は全てを奪われた。眷属も、地位も名誉も何もかも!」

 

荒く息を吐き、ディオドラは淀んだ目で戦兎を睨み付けた。

 

「あぁそうだ。仮面ライダーさえ居なければ、僕は自由だったんだ!仮面ライダーのせいで僕は地獄を見た。愛と平和のためだって?僕の全てを奪っておいて笑わせる!」

「こっちこそ笑わせんな。てめぇがやったクソみたいな計画に巻き込まれたせいで不幸になった奴が幾らでもいる。アーシアだけじゃねぇ。お前の眷属たちもだ。まぁ、今は真実を知って監視つきだが平和に暮らしてるらしいがな」

 

戦兎はそう言うと、ディオドラはニヤリと笑みを浮かべる。

 

「平和に……ねぇ?」

 

含みのある言い方に、戦兎は目を細めた。

 

「何がおかしい」

「いや、そうだね。彼女達は平和そうだったよ」

 

まるで見てきたかのような言い方に、戦兎は嫌な予感が過る。

 

「なんだ。その言い方は」

「ふふ、そうかそうか。なに、君は知らないんだったね。僕はこう見えても、眷属思いなんだよ」

 

言ってる意味が分からず、戦兎は困惑すると、突如空から何かが降って来た。

 

「くっ!」

 

それを転がって避け、戦兎は降ってきた奴を見ると、

 

「なっ!」

 

それはグチャグチャと音を立てて動く、何かの集合体みたいな姿の怪物だった。

 

『ウゥ~グゥ……』

 

戦兎が思わず見上げるほど大きなそれは、呻き声を上げている。

 

だが戦兎は気づいた。最初は傷か模様と思った胸の当たりにある物。それは人の顔だ。しかも一つ二つじゃない。

 

それに、

 

「ウゥ」

「モウ、イヤァ」

 

呻き声だと思っていた声は、あの顔が出す片言の声だ。

 

何よりあの顔には見覚えがある。

 

「まさか……その顔はお前の!」

「そうだよ桐生 戦兎。僕はね、抜け出してからすぐに皆にそれぞれ会いに行ったんだ。そしたら酷いんだよ。皆僕のこと毛嫌いしてさ。こんなに皆に会いたかったのに、何を吹き込まれたのか知らないけど僕のこと貶して自分は罪を償うとか言ってさ、笑えるよね~!僕に騙されたあげく悪魔になって純潔まで散らしてさ、今更償おうったって遅いっつーの!まぁ?僕は優しいからね。そんな茨の道を可愛い眷属に歩ませるわけにもいかないだろう?だから引っ張りあげてやったのさ。少し強引だったけどね」

 

ふざけんなぁ!と戦兎は叫び、ビルドドライバーを装着し、

 

《ラビット!タンク!ベストマッチ!Are you ready?》

「変身!」

《鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イェーイ!》

 

ビルドに変身し、ディオドラに殴り掛かる戦兎だが、それを化け物に成り果てたディオドラの眷属達が止める。

 

「くっ!」

『グギャアアアアアアアア!』

 

悲鳴にも似た声をあげ、ディオドラの眷属が戦兎に襲い掛かった。

 

「なんだっ!?」

 

すると戦兎の体に向け、蜘蛛の糸のような物が射出され、体に巻き付くと戦兎を殴り飛ばす。

 

「がはっ!」

 

壁に叩きつけられ、戦兎は息を吐くと、

 

「なんだ今のは……?」

 

完全に予想外だった。あんな能力を持った眷属はいない筈だ。となるとあの体にされてからか?と疑問符を浮かべていると、

 

「君は知ってるはずだけどねぇ。異なる生物同士の遺伝子を融合させ、全く新しい生物を産み出す技術をさぁ」

「っ!」

 

まさかと戦兎は目を見開く。その技術には聞き覚えがあった。かつて共に戦った男である本郷 猛。そしてその男を苦しめた敵。

 

「ショッカー……?」

「正解。元々あの生き残りにショッカーの最後の切り札を教えたのは彼でね。偶然見つけたらしい。そして場所を教える代わりに、ショッカーの改造技術を教えてもらった。それと同時に魔獣に相手の肉体を侵食させ、操る研究も行なっていてね。先日完成したばかりなんだ。彼女達はその第一号というわけさ。名前は……様々な人や生物を繋ぎ会わせ、作り出す驚異の怪物・《フラン》。フランケンシュタインが元ネタ何だけど、それだと可愛くないだろう?」

「ふざけんなよ……」

 

戦兎は拳を握り締め、

 

「ぜってぇテメェは倒す!」

 

戦兎は叫びながらディオドラに向かって走り出そうとすると、

 

「居たぞ!ビルドだ!」

「っ!」

 

物音を聞き付けてやって来たのは、先程撒いた住人たちだった。

 

そしてディオドラはニヤリと一瞬笑うと、

 

「た、助けてくれ!あの辺な化け物に助けられてなかったらビルドに殺されるところだったんだ!」

「なっ!」

 

ディオドラは一瞬で恐怖で歪み、泣きそうになっているような顔になると、リーダー格らしき男にすがり寄る。

 

「そうだったのか。分かった。後ろに下がってろ」

 

その男はディオドラの肩に手を置き、後ろに下がらせる。

 

「あんな優しそうなアンちゃんまで手に掛けようとするとは。もう許せねぇ!お前ら!今度こそ決着つけるぞ!」

『オォオオオオオオオ!』

 

住人達は武器を手に、戦兎に襲いかかってきた。

 

「な!や、やめろ!」

「死ねぇ!」

 

襲い掛かる住人を避けるが、如何せん数が多い上に、反撃できない。するとディオドラは少し離れ、住人達からは死角になる位置に立つと、戦兎と目が合う。

 

「見てなよ戦兎。これが僕の新しい力。仮面ライダーを否定する力だ!」

「っ!」

 

ディオドラは腰に取り出したエボルドライバー装着。

 

《エボルドライバー!》

 

更にポケットから取り出したのは、兎と戦車が描かれたフルボトル。だが戦兎のラビットフルボトルや、タンクフルボトルより禍々しい見た目と、邪悪なオーラを放っていた。

 

《クラプションラビット!クラプションタンク!エボルマッチ!》

 

フルボトルを装填し、レバーを回しながらディオドラは笑みを浮かべる。

 

「さぁ、復讐の時間だ!変身!」

《創造の否定者!アンチビルド!フハハハハハハハハ!》

 

ディオドラが変身した姿は、戦兎のラビットタンクに良く似ていた。だが全体的に色は暗めで、禍々しいフォルムをしている。

 

「さぁ、行くよぉ!」

「っ!」

 

戦兎は住人を突き飛ばし、ディオドラを止めた。

 

「あはは!優しいね。でもその優しさがいつまで持つかなぁ!」

「なに!?」

 

そこに横から体当たりしてきたフランに吹っ飛ばされ、地面を転がるが体勢を建て直し、

 

「まだまだ!」

 

と走り出そうとする。だが、

 

「甘いよ」

 

ディオドラが手を向けると、突然戦兎の体に電流が走り、動けなくなってしまう。

 

「な、なんだ!?」

 

体が動かなくなり、訳がわからず困惑すると、突如変身が解除されてしまった。

 

「な、なんだ!?」

《海賊!電車!ベストマ……》

 

慌てて別のフルボトルを装填するが、ディオドラが手を向けるとまた変身が出来なくなってしまう。

 

「何で!?」

「僕はアンチビルド。ビルドを……仮面ライダーを否定し、拒否する存在。僕の前では仮面ライダービルドで居続けることすら出来ないのさ」

 

ディオドラがそう言って笑うと、

 

「おい!ビルドが人間になったぞ!?」

「しかも何で二人いるんだ!?」

「構いやしねぇ!ビルドなら俺達の敵だ!殺す!」

 

困惑する男達に、リーダー格の男が声を出すと、それに続いてまた戦兎に襲い掛かってきた。

 

「嘘だろ!?」

 

戦兎は人々の攻撃を避けながら、ラビットタンクスパークリングボトルを出すと、振って装填するが、

 

「ダメか!?」

 

フルフルラビットタンクボトルも使ってみるがそれもダメで、戦兎は舌打ちしながら住人の攻撃を避ける。しかし、

 

「君の相手はこいつらだけじゃないよ!」

 

そこにディオドラが襲いかかり、戦兎を殴り飛ばす。

 

「ビ、ビルドが来やがった!」

「怯むな!仲間割れだか知らないが好都合だ!こっちも殺せ!」

 

と住人はディオドラの方に行くが、ディオドラは魔力を手に集め、住人達に向かって発射する。

 

「不味い!」

 

戦兎は立ち上がり駆け出そうとするが、それをフランが阻んだ。

 

すると、

 

《ライダータイム!仮面ライダー!ジオウ!》

「はぁ!」

《ジカンギレード!ケン!》

 

ディオドラの手から発射された魔力弾は、その前に飛び降りた物に真っ二つに斬られた。

 

「お前は!」

 

戦兎が驚く中、ジオウの兵藤一誠は剣を構え、ディオドラと対峙すると、

 

『ハァアアアアア!』

「え?」

 

戦兎が呆然とする中、上から降ってきたのは祐斗とゼノヴィアで、その二人は剣でディオドラの両腕をそれぞれ切り落とし、横に飛んで離れると、

 

「これで!」

「いきますわ!」

 

滅びの魔力と雷光が炸裂する。勿論放ったのは、リアスと朱乃である。だが、

 

「無駄だよ」

 

土煙の中から出てきたディオドラは、全身がボロボロになっていた。だがそれはあっという間に修復され、元通りになってしまう。

 

「な、何で……」

 

戦兎がまたもや驚くと、ディオドラは笑いながら戦兎を見て、

 

「僕のこのアンチビルドは仮面ライダーの力を否定する。だが同時に、僕はビルドの力でないと倒せないんだよ。言うなれば、擬似的な不死でね。如何なる力を持ってしても、僕はビルドの力でなければ何度でも瞬時に受けたダメージは全快する。例え全身を粉々にされてもね。分かるかい?僕は仮面ライダービルドに対して絶対的有利であると同時に、ビルドでなければ倒せない。そういう矛盾した存在なのさ。本当ならこんな事はできないけどね。そこはそのジオウの最低最悪の王と呼ばれた力を奪ってやったんだ」

「なんだと?」

 

戦兎が眉を寄せると、ディオドラは更に笑ってジオウの一誠を見る。

 

「君も知っている方の兵藤一誠がね、上手く奪ったのさ。お陰で僕はアンチビルドになり、また眷属の皆と暴れまくれる生活に戻れたのさ」

「上手くねぇ」

 

ジオウの一誠は頭を掻き、

 

「あっちこっちを同時に襲撃しまくって、人を寝不足&疲労困憊にした挙げ句そっちの禍の団(カオス・ブリゲード)オールスターで襲い掛かって来るのを上手くやったと言えるのか?」

 

お陰で未だに絶賛不調気味だぜと言いつつ、一誠はジカンギレードを地面に突き刺し、

 

「まぁ良い。さっさと倒して寝させて貰うぜ」

 

そう言って一誠は、前腕のホルダーから別のストップウォッチ状のアイテムを取ろうとし、

 

「あれ?」

 

ホルダーを二度見して、一誠は腰まさぐる。そして、

 

「やべ、どっかにビルドのライドウォッチ忘れてきた」

『はぁ!?』

 

祐斗達はギョッとしながら、一誠に駆け寄っていくと、

 

「忘れてきたってどういう事!?」

「家、かなぁ?」

 

かなぁじゃない!と皆に詰め寄られつつ、一誠は前に出ると、

 

「取り敢えず撤収!」

《ソウソウ!》

 

一誠は急いで戦兎は見たことがない人物が描かれたストップウォッチを起動し、

 

《アーマータイム!ソーウソーウ!》

 

一誠は槍を手にした、中華風のアーマーを身に付けた姿に変わると、槍先から光を発し、ディオドラ達の目を眩ませると、

 

「逃げたか」

 

光が晴れた頃には、既に一誠は姿を消していた。いや一誠だけではなく、他の仲間や戦兎に住人たちも消えている。

 

「ふむ。逃げられちゃったか。まあいいか。どうせまた近いうちに会えるだろうし、今回でちゃんと僕のフルボトルジャマーちゃんと効果があるって分かったしね」

 

ディオドラはそう言って笑うと、フランを連れて何処かに姿を消す。

 

一方その頃、

 

「取り敢えず中で治療だね」

 

と祐斗に肩を借りながら、戦兎は建物に入る。それに続き、他の皆も入っていくと、リアスが振り替える。

 

「一誠?どうしたの?」

「え?あぁ、何でもありませんよ」

 

そう?とリアスは言いながら建物に入っていき、一誠はため息を吐く。

 

「悪いな戦兎」

 

そう呟くと、一誠は懐から()()()()()()()()ストップウォッチ状のアイテムを出し、

 

「ここまでは計画通り。だけどまだディオドラを倒すわけにはいかない。お前にはもっと苦しんでもらわなくちゃならないんだ」

 

グッとそれを握りながら、一誠は静かに天を仰ぐのだった。




仮面ライダーアンチビルド

パンチ力65t
キック力70t
ジャンプ力75m
走力100m0.8秒

クラプションラビットフルボトルと、クラプションタンクフルボトルをエボルドライバーにセットしてディオドラ・アスタロトが変身した姿。

他のエボルドライバー系ライダーと比べ、非常に高いスペックを持ち、本人の狡猾さも相まって厄介な存在となっている。

だが最も厄介なのは、フルボトルジャマー本人が言う能力で、デメリットは無しで、フルボトルを一時的に無効化することができる。それにより、戦兎の変身をいきなり解除させることが可能。

あくまでもフルボトルの無効化のため、戦兎自身が変身能力を失うわけではないが、それでも実質ディオドラの前では変身出来ない。しかもそれはフルボトル由来も力も有効なため、スパークリングやフルフルラビットタンクボトルも使えなくされてしまう。それどころか、龍誠のクローズは勿論、スクラッシュゼリークロコダイルクラックフルボトルもフルボトルの力が使われているため、グリスやクローズチャージにローグにとっても天敵。

但しこの能力はエボルドライバー系ライダーには効かない。

そしてもう一つ厄介なのは、ビルド以外の力が効かないと言うこと。

ジオウの一誠から奪った最低最悪の王の力により、ビルドの力を効化にするという能力を持ちながら、ビルドでなければ倒せないと言うが因縁を得ている。その為、ビルド以外がどれだけ頑張っても、倒すことは不可能。


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仲間達

前回までのハイスクールD×D Be the oneは……

戦兎「ジオウの兵藤 一誠を追い、意識を失っていた俺だったが、そこはなぜか荒廃した駒王町だった!」
龍誠「しかしジオウの兵藤 一誠って何がしたいんだ?コメントでも色々言われてるだろ?」
戦兎「んまぁ、それはもう少し謎なんだよなぁ」
龍誠「しかもディオドラ再登場だしな」
戦兎「まぁ何気に生き残ってたからなコイツ。だからいつか再登場させたかったらしい」
龍誠「なるほどなぁ」
戦兎「と言うわけで、そんな感じでまだまだ謎が多い130話スタートだ!」


「これで大丈夫ですね」

「サンキュー。アーシア」

 

アーシアに治療してもらい、戦兎お礼を言うが、アーシアの方は少し困惑した表情を見せ、しまったと頭を抱えた。そりゃそうだろう。

 

こっちのアーシアは、戦兎のことを知らない。

 

アーシアから見れば、実質初対面の男に親しげに来られれば、そりゃ困惑するだろう。

 

「えぇと、桐生 戦兎君で良かったかしら?」

「あ、はい。そうです」

 

リアスが向ける目はまるで他人のような……いや、実際他人だ。あっちの世界ではリアスの眷属でも、こっちに自分はいない。いない以上、少なくともこの世界では他人だ。

 

リアスだけじゃない。他の眷属も戦兎を見る目は他人を見る目で、正直かなりしんどい空間になっている。

 

「桐生 戦兎君。幾つか聞きたいことが……」

「あ、俺ちょっとトイレ行きたいんですけど!」

 

余りにもあからさまな逃亡だった。しかしリアスは目を少しパチクリさせると、

 

「トイレはここを出て右に行くと、左側に見えてくるわ」

「ありがとうございます」

 

戦兎は急いで立ち上がると扉に向かって歩き出す。すると丁度こっちの世界の小猫と黒歌が入ってきて、

 

「すいません」

「あ、ごめーん」

「いや、大丈夫です……」

 

小猫は明らかに警戒している。黒歌も一見フレンドリーだが、自分の世界で付き合いがあるから分かる。信用していない相手に対する、一種の壁なのだと。

 

「っ!」

 

そして耐えきれなくなった戦兎は、二人の間を抜けて走り出すと、それを見届けたリアスは、

 

「ねぇ一誠」

「はい」

 

声をかけられた一誠は、顔を上げてリアスを見ると、

 

「彼は、結局何者なの?今回の襲撃者の関係者……とは聞いてるけど、結局詳しいことはまだ聞いてないわ。それに実奈まで置いてきて。どういうつもりなの?」

 

リアスは一誠を見つめ、問いただす。

 

「彼の目は、まるで私達を知ってるようだった。ただ知ってるんじゃない。もっと深いところで知ってる。そんな感じだったわ。ねぇ一誠。貴方まだ私達に言ってないことがあるんじゃない?」

 

そんな彼女の問いに、一誠が立ち上がると、

 

「そうですね。まだ言ってないことは山程あります。実奈にだって言ってないことはありますしね。しかし部長。ちょっとこればっかりは貴女に説明するわけにはいかない。勿論いずれ話します。でも今は駄目なんです。ただこれだけは信じてください。俺はハッピーエンドが好きです。多少無理矢理でも、皆が笑って終われる。そんな話がね。その道中で辛い目に合わせたりもしますが、それでも最後はハッピーエンドになれるように頑張ってるつもりです」

 

そう言う一誠とリアスの視線が交わり、その場の空気が重くなるものの、リアスが大きくため息を吐き、

 

「分かったわ。貴方の好きにしなさい。でも終わったら、ちゃんと説明があるんでしょうね?」

「それは約束します」

 

ならいいわ。とリアスが言い、それを聞いてから一誠は部屋を出ていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……」

 

しんどい、と言いながら戦兎はバルコニーに出ると、大きく溜息を吐く。

 

知ってる顔の奴らが自分を知らない顔をする。そんな光景を見るたびに、この世界で自分は一人なのだと感じる。

 

どうしようもなく孤独を感じてしまう。よく考えてみれば、今まで本当に一人だったことはなかった。

 

いつも龍誠がいたし、リアスたちと出会ってからは皆もいて、一人ぼっちだったことはない。

 

仲間達と完全に離れ離れになるのは、初めてだ。

 

「俺いつの間に寂しがり屋になってんだよ」

 

壁を背に、ズリズリと座り込んだ戦兎に、

 

「随分暗いな」

「っ!」

 

突然掛けられた言葉に、戦兎は顔をあげると、そこには一誠が立っていた。

 

「何のようだ」

「なんのって。ここは俺の家でもあるんだぜ?どこにいたって変じゃないだろ?」

 

その通りだ。と戦兎が思っていると、一誠はバルコニーのテスリに手を掛けると、

 

「酷いもんだろ?」

「……」

 

外の惨状は酷いものだった。あちこちで火の手が上がり、この屋敷以外家の原型を留めている物のほうが少ない。

 

この屋敷は、現在は認識阻害の術を掛けているため、周りからは変に思われていないが、無事なのはこの屋敷位だ。

 

「一ヶ月前だ。突然奴らは現れた。街は壊され、それの迎撃に向かった奴らも何人もやられた。俺もその中で力奪われたしな」

「……」

 

兵藤 一誠の影響。あちこち世界に進出し、こうして被害を出している。それをこうして目の当たりにすると、胸が締め付けられた。

 

自分がもっと強ければ、そう思うと頭をガシガシと掻きたくなる。すると、

 

「ま、取り敢えずこの屋敷でゆっくりしとけよ。俺達がチャチャッと解決しとくからさ」

「なに?」

 

一誠の言葉に戦兎は眉を寄せると、

 

「どちらにせよアンチビルドはアンタじゃ倒せない。それどころか、変身できないんじゃ並の転生悪魔レベルだろ?アンタは決して悪魔としては強いわけじゃない。素の戦闘能力だけなら、アンタは寧ろ弱いほうだ」

「……」

 

一誠の言葉に、間違いはない。自分でも、自身の強さはライダーシステムに依存しているのは分かっていた。

 

「だから何もしなくていい。それにこの世界じゃ誰もあんたを認めない。ビルドはこの世界じゃ街や人々を壊し尽くす最悪の存在。どれだけアンタが頑張って誰かを助けても、周りも助けられた人もアンタを認めることはない。何せビルドがもしかしたら良い人だったなんて認められないからな。街を壊され、大切な人々を奪われた人々にとって、そんな現実はあってはならない事態だ。そしたら奪われた悲しみや怒りをどうすればいい?どうにもできるわけがないよな。だから見ない。振りじゃない。本当に見えてないんだ。そんな不都合な事実は視界に入らないし認知もしない。だからアンタはこの世界じゃ存在そのものが憎悪の対象でしかないんだ。だーれもアンタの味方なんてこの世界にはいないよ。この世界の部長達だってそうさ。心の何処かでは考える。アンタの世界のせいだってな。アンタ達がちゃんとしてないから兵藤 一誠は今もこうして好き勝手にし、その仲間達がこうして他の世界に迷惑を掛けてる」

 

ドクン、と戦兎の胸に痛みが走る。

 

「ビルドは正義のヒーローなんだっけ?笑わせんなよ。アンタは、目につく範囲をちょこっと守って気分良くなってるだけだよ。結局何も出来やしない。何も守れやしない。一人ぼっちで、そこに座り込んでるのがお似合いなのさ」

「……」

 

喉が渇き、心がひび割れて行く感覚。違うと叫びたいのに、声が動かない。ひび割れた心から、何かが漏れていく。

 

いつもなら、一緒にいてくれる仲間もいない。それが戦兎の心を余計に締め付けた。

 

するとそこに悲鳴が上がる。

 

戦兎と一誠がバルコニーからその方を見ると、フランが暴れてその近くに人がいた。

 

「っ!」

 

それを見た戦兎は、バルコニーから飛び出し、

 

「変身!」

《鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イェーイ!》

 

落下の間に変身すると、戦兎は地面に降りると同時に走りだした。

 

「流石。精神的に追い込まれても、助けを求める人がいれば考えるより先に体が動き出す。まさにヒーローだ」

 

一誠はそんな戦兎の背中を見ながら、ビルドが描かれたストップウォッチを取り出し、

 

「だからかな。そんな貴方だから、俺はファンになっちゃったんだろうな」



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立ち上がる強さ

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「異なる世界に来てしまい、一人孤独を味わう俺だったが……」
龍誠「そこに上がる悲鳴。それを聞いたとき、戦兎は走り出す」
戦兎「って感じだったけど、いやはやどうなっていくのやら」
龍誠「なんかジオウの一誠も意味深な事言ってたしなぁ」
戦兎「そんなわけでもうちょっとだけ謎が続く131話スタートだ!」


「く、来るなぁ!」

 

必死に走る男性。それを追うフラン。そこに、

 

《Ready Go!》

「ハァアアアアアア!」

《ボルテックフィニッシュ!》

 

フランを横からキックを叩き込んで吹き飛ばす。

 

「はぁ、はぁ」

 

荒く息をしつつ、戦兎は着地するとフランと睨み合う。

 

「ひっ!何でビルドがここに!?」

 

戦兎を見て怯えながら逃げ出す男を背に、戦兎はドリルクラッシャーを構えて走り出すが、

 

「くっ!」

 

地面に火花が散り、思わず足を止めるとフランの背後から歩いてきたのは、ユーグリットとマグダランだった。

 

「おやおや?ビルド一人だけですか?」

「……」

 

既に変身を終えいる二人は、戦兎に狙いを定めると、一気に間合いを詰めてくる。

 

「ちぃ!」

 

戦兎は二人の攻撃を避けるが、そこにフランが突進してきて体当たり。

 

「がっ!」

 

吹き飛ばされ、地面を跳ねながら転がって行き、更にユーグリットとマグダランが追ってくるが、

 

「変身!」

《ライダータイム!仮面ライダー!ライダー!ジオウ・ジオウ・ジオウⅡ!》

 

戦兎と、ユーグリットとマグダランの間に割り込んだのは、ジオウⅡに変身した一誠だった。

 

《ライダー!ライダー斬り!》

 

そして斬撃を飛ばして二人を吹き飛ばすと、

 

『はぁあああああああ!』

 

フランに襲い掛かるのは、リアス達この世界のチームグレモリーだ。

 

「成程。流石に流石に数が多い」

 

ユーグリットはそう言って指をパチンと鳴らすと、空間が歪み多数の魔獣が出てきて襲いかかる。

 

『はぁ!』

 

すると皆が魔獣の迎撃に入る中、空中から何かが飛来し、魔獣達を吹き飛ばした。

 

「大丈夫か!?兵藤!」

「あれは匙か?」

 

匙だけではない。空にはよく見知った顔のヴァーリやサイラオーグまでいる。

 

だがヴァーリは白く光る羽を背中から出していたり、サイラオーグの隣にはフウではなく金色の獅子がいる。

 

するとその面々は戦兎を見て、

 

「おい兵藤 一誠。何故ビルドを守ってるんだ?」

「色々あってね!」

 

ユーグリットとマグダランの同時攻撃を避けつつ、一誠はヴァーリに向かって叫ぶが、

 

《Ready Go!》

「ヤベッ!」

《エボルテックアタック!》

 

二人は必殺技を発動させ、一誠に向かって同時にライダーキックを放つ。

 

「ちっ!」

《ジオウサイキョー!覇王斬り!》

 

一誠は剣を操作し斬撃を飛ばすが、二人の同時攻撃に弾かれ、一誠は吹き飛ばされた。

 

「ガハッ!」

「クソ!」

 

戦兎は立ち上がって走り出そうとするが、突然全身から力が抜け、気づくと変身が解除される。

 

「おっと、君の相手は僕がしようじゃないか」

「ディオドラ……!」

 

戦兎は歯を噛みしめると、ディオドラが襲い掛かってくる。

 

「がはっ!」

 

ディオドラの拳が腹にめり込み、戦兎は胃の中身を撒き散らしながら地面を転がる。

 

「げほっ!うげっ!」

「くく、良い眺めだねぇ。ビルド!」

 

戦兎の髪を掴んで立たせると、ディオドラは戦兎の顔面にパンチを叩き込む。

 

「ごふっ」

「僕はねぇ。今すごく気分がいいんだ。万丈 龍誠に負け、全てを奪われた。君が彼に仮面ライダーの力を与えさえしなければ彼はタダの悪魔だった。それなら負けなかったのにさぁ。君のせいで僕はぁああああああ!」

 

恨みをぶつけるように、ディオドラは何度も戦兎を殴りつけ、蹴飛ばした。

 

「だから決めたんだ。君を殺す。君の全てを否定して殺す。そしたらきっとクローズも悲しむよねぇ?」

「っ!」

 

戦兎は口から血を吐きながらディオドラを睨みつけながら立ち上がる。すると、

 

「その為にも、まずは彼女たちを殺そうか」

「っ!」

 

ディオドラが手を向けたのは、魔獣の相手に気を取られているこっちの世界の小猫だ。

 

「させるかよ!」

 

戦兎は走り出すと、小猫とディオドラの間に入る。それ見たディオドラは、魔力弾を発射し、戦兎に炸裂した。

 

「だ、大丈夫ですか!?」

 

地面に血だらけで転がった戦兎に、小猫が駆け寄ると、戦兎は大丈夫だと手を向けた。

 

「必死だねぇ」

 

そんな戦兎をディオドラは笑う。

 

「人々から否定され、拒絶されてもなお必死に立ち上がろうとする。理解できないよ。異常だ」

「……だからどうした」

 

フラつきつつも、戦兎は立ち上がる。

 

「ある人は例えその身が異形の化け物でも、人々の自由のために戦ってた」

 

ゆっくりと一歩目の足を前に出した。

 

「正義を否定しつつ、嘲笑いながらも、それを捨てきれずもがく奴がいた」

 

更に一歩。力強く前に足を出す。

 

「戦う為に力を願い、そして夢のために飛び続ける男がいた」

 

戦兎は無意識にラビットフルボトルを出して握ると、前に出す足を少しずつ早くしていく。

 

「誰かから認められるためじゃない。褒めてもらうためじゃない。皆、必死に戦ってた。苦しくても、どんなにみっともなくても、もがいてもがいてもがきまくって戦ってた!きっと皆同じだったんだ。諦められたら、捨てられたら楽だった。でも気づくと胸の奥から熱くなって、また立ち上がっちまう。その炎が何度でも燃え上がって、俺達は叫ぶんだ!」

 

戦兎はそう言って走り出す。

 

「下らないな」

 

ディオドラは掌を戦兎に向け、魔力弾を連続で発射。

 

「ウォオオオオオオオオオオオ!」

 

戦兎の周りに着弾した魔力弾は、爆発を起こして土煙と爆炎で戦兎を包む。

 

舞い上がった石礫が戦兎の体を貫き、炎が体を焼く。強烈な爆発音は、戦兎の鼓膜を破き、閃光は視覚を奪う。

 

土煙を吸い込んで肺が痛み、胃から血の塊がせり上がると、口から吹き出す。

 

それでも止まらない。

 

「アァアアアアアアアアアア!」

 

魔力弾が直撃する。戦兎は止まらない。いや、止まれない。

 

胸に灯る炎は寧ろ強く燃え上がっていく。その炎が燃えがるほど、火力発電所の如く戦兎を動かすエネルギーを生み出す。

 

「ちっ」

 

するとディオドラはフルボトルジャマーを発動させ、戦兎の持つラビットフルボトルを無力化させた。

 

「ま、一応ね」

 

しかしディオドラがそう言った次の瞬間、戦兎の掌から太陽のように輝く光が溢れる。その輝きは辺りの面々が思わず目を瞑る程だ。

 

「俺は……」

 

そして戦兎は叫ぶ。胸の中で燃え上がる炎が導くままに、本能が発させたその言葉を。

 

「あきらめねぇえええええええええええええ!」

 

すると手から光を溢れさせ、戦兎の拳はディオドラに炸裂。

 

「あがっ!」

 

完全に油断していたディオドラは、苦悶の声を洩らしながら、遥か後方に吹っ飛びそのまま瓦礫に突っ込んだ。

 

「なんだ。今のは」

 

戦兎は呆然としながら手を見るが視力が低下し、ボヤけた視覚では分からない。

 

しかし、戦兎の手にあるラビットフルボトルは、何時もの赤色ではなく、何故か金色に変化していた。

 

「よく分かりませんが、厄介そうですね」

「あぁ」

 

それを見ていたユーグリットとマグダランは、フルボトルの変化には気づいていないものの、何かを感じ取ったらしく戦兎に襲い掛かろうとするが、

 

《ジオウサイキョーフィニッシュタイム!キングギリギリスラッシュ!》

『っ!』

 

走り出そうとした二人の前に、巨大な刀身が振り下ろされ、ストップをかけた。

 

「無事予定通り。待ちくたびれたぜ」

 

一誠は楽しそうに振り下ろした剣を肩に担ぎ、二人を睨みつける。

 

「さて邪魔はさせない。折角ヒーローが立ち上がったんだ。ここからはヒーローの独壇場じゃないとな」

 

そう言うと、一誠の手には今までのストップウォッチとは違う形状のストップウォッチがあり、そのスイッチを押すと、

 

《ジオウトリニティ!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかし別の世界の兵藤 一誠の妹ねぇ」

「確かに似てるっちゃ似てるよな」

「しかも赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の所有者なんだろう」

 

ヴァーリ・匙・サイラオーグの三人は隅でコソコソ実奈を見ながら話していた。他の面々も遠巻きに実奈を見ている。

 

「気まずいな〜」

《仕方なかろう》

 

実奈とドライグもコソコソ話していたその時、

 

『え?』

 

突然皆に光が降り注ぎ、ゆっくりと体が浮き上がっていく。

 

「も、もしかしてこれ呼ばれた感じ!?」

《恐らくな》

 

すると実奈は慌てて、

 

「じゃ、じゃあ私達帰れるみたいなのでここで失礼させて貰います!桐生さんは必ず送り届けますので!」

 

と挨拶すると、龍誠はなにか思いついたような顔して、

 

「あれに捕まっていけば俺たちもいけんじゃね?」

『……』

 

一瞬の静寂の後に、龍誠達は走り出すと実奈の体に掴まり、掴まりきれない者は掴まっている者の体を掴む。

 

「え?ちょ!そう言うのは予想外っていうか!きゃあああああああ!」

『うわぁあああああああああ!』

 

皆の視界が一瞬暗転し、気づくと辺り一帯が瓦礫の山と化した地面に落ちる。

 

「いててて……あ!戦兎!」

 

腰を擦りながら、龍誠は辺りを見回すと、ボロボロの戦兎が立っていた。

 

「すぐに治療を!」

 

と着いてきたアーシアが駆け寄り、戦兎に回復の光を当てると、目や耳から全身の傷が治っていき、

 

「みん……な?」

 

仲間達の存在を確認すると、戦兎はその場にへたり込んでしまう。

 

「それにしても……」

 

周り見たリアスは、眉を寄せる。

 

動きを一度止めた魔獣達と、それに相対する自分と眷属などの仲間達と同じ顔の者たち。その中の自分と同じ顔の者が近づいてくると、

 

「えぇと、名前を聞いてもいいかしら」

「私はリアス・グレモリー。グレモリー家の次期当主よ」

 

そちらは、と戦兎の世界のリアスが聞き返すと、

 

「私もリアス・グレモリー。グレモリー家の次期当主よ。一つ聞きたいのだけど、そちらの桐生 戦兎君とはどういう関係で?」

「私の眷属よ。因みに駒はポーン」

 

なるほどね。とジオウの世界のリアスは頭を掻き、一誠をジロリと睨みつける。

 

「一誠!どういうことか後で説明あるんでしょうね!?」

「そりゃ全部終わったらね」

 

その前に、と一誠は先程のストップウォッチをベルトに装填し、

 

「まずはお前ら二人には一度退場願おうか」

「おや、私達二人の苦戦してた割に大口を叩くんですね」

 

ユーグリットの返答に、一誠は笑うと、

 

「あぁ、大口も叩くさ。何せ……」

《ジオウ!リアス!ミナ!》

 

一誠はベルトを操作しながら、ユーグリットとマグダランを見つめ、バックルを回転させた。

 

「ここまでも、そしてこの少し先も、俺が既に見た未来だ」

《トリニティタイム!》

「あちょ!」

「いっくぞー!」

 

するとジオウの世界のリアスと実奈が突然浮かび上がり、全身を鎧が覆って変形。腕時計のような形状になると一誠の両サイドにそれぞれ待機し、

 

《三つの力、仮面ライダージオウ!リアス!ミナ!トーリーニーティー!トリニティ!!》

 

何と両肩に合体した。

 

『は……?』

 

その光景に戦兎達は思わず絶句し、

 

「一誠!」

 

右肩にくっついたリアスは、怒声を発しながら抗議する。

 

「いつも言ってるでしょう!これを使うときは言いなさいって!いきなり使われると心の準備ができないの!これ全身の関節が無理やり外されてハメ直される感じで痛いんだから!」

「いやぁ、俺も余裕があったら言いたいんですけどねぇ」

 

なんてやり取りをしているのを他所に実奈は、

 

「よーし!取り敢えず何時もの言っちゃいますか!ってなわけで、ひれ伏せ!我が名はジオウトリニティ!王の兵藤 一誠!悪魔のリアス・グレモリー!赤龍帝の兵藤 実奈!三位一体となって物語を創出する最大の王者である!」

《相棒。いつも思うのだが、その口上いるか?》




金色のラビットフルボトル。

戦兎の叫びに呼応するようにラビットフルボトルが変化したもの。ディオドラのフルボトルジャマーの元でも戦兎に力を与え、ディオドラを殴り飛ばすなど、他にはない効果を持っている。ジオウの一誠は、これを見たときこうなるのがわかっていた上で待っていたような発言をしている。


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トリニティ

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「遂に俺の世界の仲間達もやってきて、物語は佳境に!」
龍誠「そんな中、ジオウの一誠は何と部長と妹の実奈と合体してジオウトリニティに!」
戦兎「しかし合体かぁ」
龍誠「やるんだとしたら俺と戦兎か?」
戦兎「えぇ、お前と合体とか嫌だなぁ」
龍誠「俺だって嫌だよ。まぁそんなのはないだろうけどな」
戦兎「だな!って感じの132話スタート!」


『ハァアアアアアアアア!』

 

ユーグリットとマグダランは同時に飛び掛かる。しかしジオウトリニティとなった一誠達は、二人の拳をそれぞれキャッチし、強引に押し返した。

 

「くっ!」

 

マグダランは滅びの魔力を撃ち出し、一誠達を狙うが、

 

「部長!」

「任せて!」

《リアス!》

 

一誠達も滅びの魔力を発射し、マグダランの魔力弾を打ち消しつつ、そのままマグダランを吹き飛ばす。

 

「ハァ!」

《Boost!》

 

そこに飛び込んだのはユーグリットで、ユーグリットは自身に倍加を掛けながら、ビートクローザーを手に飛び掛かるが、

 

「実奈!」

「OK!ドライグ!」

《あぁ!Boost!》

 

サイキョーギレードを構え、身体能力を底上げして迎え撃ち、剣をぶつけ合わせていく。

 

「オォ!」

《Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!》

 

ユーグリットは倍加を重ねながら一誠達にビートクローザーを振っていくが、

 

「ならこっちも!」

《Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!》

 

同じく倍加を重ね、サイキョーギレードで弾くと、ジカンギレードを出して斬る。

 

「ぐっ!」

 

斬って後ずらせた後、ジカンギレードとサイキョーギレードを合体させ、

 

《ジオウサイキョーフィニッシュタイム!》

「部長!」

「えぇ!」

 

刀身から伸びた巨大なエネルギーの刃に滅びの魔力を纏わせ、

 

「そして実奈!」

「あいよー!」

《Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!》

赤龍帝からの贈り物(ブーステッド・ギア・ギフト)!」

《Transfer!》

 

倍加の力を刀身に譲渡すると、巨大なエネルギーの刀身が更に巨大化し、

 

《キングギリギリスラッシュ!》

「何か凄くなったヴァージョン!」

 

その巨大な刀身を振り下ろした。

 

『ぐぁああああああ!』

 

その衝撃により、二人は吹き飛びながら地面を転がる。

 

「ガハッ!」

「ゴホッ!」

 

そして咳き込みながら立ち上がろうとする二人を見下ろすと、

 

「そんじゃあ」

《フィニッシュタイム!》

 

一誠達はベルトのストップウォッチのスイッチを3回押し、

 

《ジオウ!リアス!ミナ!》

 

それからベルトのバックルを回転させてから飛び上がった。

 

《トリニティ!タイム!ルイン!ブーステッド!ブレーク!》

『ハァアアアアアアアア!』

 

ジオウトリニティの左右に、リアスと実奈のアーマータイムに出るアーマーがオーラとなって現れ、それぞれが一つとなるとライダーキックの大勢になり射出。

 

「ならば!」

 

ユーグリットは腕を払うと、そのあたりの空間が歪みそこから魔獣が現れ、

 

「ここは撤退です!」

「あぁ!」

 

代わりにその歪みにユーグリットとマグダランが飛び込む。

 

『ハァ!』

 

その直後に一誠達のキックが直撃して爆発。

 

盾代わりに出された魔獣は消し飛ぶものの、ギリギリで逃げられたようだった。すると、

 

「逃げられたようね」

「ちぇ!」

「ふぅ」

 

リアスと実奈が残念がる中、一誠が息を吐く。

 

「すっげぇ」

 

そんな光景を見ていた龍誠が呟くと、

 

「お前らは合体しないのか」

「するわけねぇだろ」

 

ジオウの世界のヴァーリにそう尋ねられ、龍誠は首を横に振って否定していると、

 

「ハァ、ハァ」

 

全身を震わせ、ディオドラが瓦礫の中から立ち上がる。

 

「ありえない。僕のフルボトルジャマーをすり抜けて来るなんて……。そうだ。今のは偶々だ。偶々能力を使い損ねてたんだ」

「何だアイツ」

 

戦兎の世界のヴァーリが眉を寄せて見ると、

 

「ディオドラだよ。俺達の世界のな」

『っ!』

 

そう言えば会うのは初めてかと戦兎は思っていると、

 

「まぁいいさ。さぁ行くんだ魔獣達!せっかく皆いるんだ!全部壊しちゃえ!」

「来るわよ!」

 

戦兎の世界のリアスが言うと、他の皆も身構え、

 

『うわ!』

 

突然目の前が爆発し、魔獣達を一度足止めする。

 

「お前あぶねぇだろうが!」

「これくらい避ければいいだろう」

 

戦兎の世界のヴァーリが講義した相手は、ジオウの世界のヴァーリ。そしてしばらく睨み合ったあと、

 

「自分の顔が目の前にあるって不気味だな」

「それに関しては同感だ」

 

確かに……と皆はお互い同じ顔をした相手を見て頷く。実際は同じ顔というか、同一人物なのだが。

 

そんな中龍誠は一人、

 

「そうか?」

 

と首を傾げていた。龍誠の場合、もう慣れっこである。

 

すると一誠は戦兎に歩み寄り、

 

「あれ?戻ってる!?」

 

戦兎の手元を覗き込むと仰天。戦兎は訳が分からず困惑する。

 

そんな戦兎を他所に一誠は頭を抱え込み、

 

「マジかぁ。やっぱ早めの覚醒だと維持が出来ないんだな」

「おい。何いってんだ?」

 

傷が治ったのを確認し、戦兎は一誠の肩を掴むと、

 

「これ以上の介入はまずい……いやでももうちょいは行けるか?」

「だから何の話だ!?」

 

一誠は一人で勝手に納得し、戦兎を見ると、

 

「実奈!倍加と譲渡だ」

「え?う、うん」

《Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!》

「つうわけで赤龍帝からの贈り物(ブーステッド・ギア・ギフト)!」

 

戦兎の胸に手を当て、いきなり力の譲渡が行われ、戦兎の体にとてつもないエネルギーが流し込まれ、

 

「あがっ!」

 

戦兎は全身を満たす高密度のエネルギーに、戦兎は戸惑いつつも手に持っていたラビットフルボトルが再び輝き出し、

 

「あら?」

 

すぐにまた収まってしまった。

 

「お、おいおい嘘だろ!?マジかこれでも駄目なのか!?」

 

と、今までの態度と違い明らかに狼狽している。しかし、

 

「ん?」

 

戦兎はふと懐に熱が籠もっている事に気づき、見てみるとフルフルラビットタンクボトルが仕舞っている場所で見てみると、

 

「これは……っ!」

 

それは普段のフルフルラビットタンクボトルとは違い、黄金の装飾が付き、更にラビットの絵柄で固定されている。

 

「あ、成程。こういう感じなのか。いやー、焦った」

 

良かった良かった。と一誠は言いつつ、ベルトのストップウォッチを外すと、ジオウトリニティが解除され、3人にそれぞれ分離する。

 

「つうわけで、ディオドラは頼んだぞ」

「……は?」

 

いきなりディオドラを任せられ、戦兎はポカンとしているが、一誠は気にせずフランの方を見る。

 

「あっちは俺が何とかするからさ」

 

そう言って取り出したストップウォッチは、ビルドの絵が書かれたもので、

 

「あぁ!一誠!あなたそれ無くしたんじゃなかったの!?」

「実は持ってたりして」

 

プルプルと怒りでリアスは全身を震わせつついるが、一誠は涼しい顔だ。それを見た戦兎は、

 

「おい」

「ん?」

「お前、結局何がしたいんだ?俺から力を奪ってみたり、かと思えば力をくれたり。一体何を考えてんだよ」

 

その問いかけに一誠は少し黙ると、

 

「さて、どうかな」

 

とだけ言って、一誠はフランの方に向かって歩き出し、戦兎はため息をつくとディオドラを見た。

 

「んじゃ俺たちはあれかなぁ」

 

そんな光景を見つつ、龍誠の視線の先には、魔獣を群れが待機している。

 

「ったく。よくもまぁこんだけ作ったぜ」

「数が多けりゃいいってもんでもないさ」

 

と龍誠が言うとヴァーリは言い、

 

「いつも通り蹴散らす。それだけだろう」

「いつも通りってのが悲しいですけどね……」

 

サイラオーグとフウもそう言って笑う。

 

「んじゃあ行きますか!」

 

そして匙が叫ぶと、龍誠達はベルトを装着。するとその隣に実奈を筆頭にそっちの世界のヴァーリ達も立つ。

 

「そちらばかりに任せるわけにも行かないからな」

「ふん。足引っ張んなよ」

 

そっちこそな。と二人のヴァーリは言い合い、それに続くようにそれぞれの世界の皆が集まった。

 

「まぁいいだろ。夢のこらぼれーしょん!ってやつだ!」

「お、龍誠の奴が難しそうな言葉を間違えずに使ったぞ」

「ハッハッハ!って匙うるせぇぞ!」

《ボトルバーン!クローズマグマ!》

《ロボットゼリー!》

《ドラゴンゼリー!》

《デンジャー!クロコダイル!》

《コウモリ!発動機!エボルマッチ!》

 

なんてやり取りをしつつ、龍誠達は待機状態になると、ジオウの一誠の世界のヴァーリ達も構え、

 

《Are you ready?》

『バランス……』

 

ベルトを操作し、龍誠達は叫んだ。

 

『変身!』

『ブレイク!』

《極熱筋肉!クローズマグマ!アーチャチャチャチャチャ チャチャチャチャアチャー!》

《潰れる!流れる!溢れ出る!ロボットイングリス!ブラァ!》

《潰れる!流れる!溢れ出る!ドラゴンインクローズチャージ!ブラァ!》

《割れる!食われる!砕け散る!クロコダイルインローグ!オラァ!キャー!》

《バットエンジン!フッハッハッハッハ!》

《VanishingDragonBalanceBreaker!》

 

それぞれの変身が完了し、魔獣たちを見据える中、

 

《ならば開幕の挨拶は任せてもらおうか》

「ん?」

 

龍誠が振り返ると、そこに立っていたのは実奈だが、声音から察するにドライグだろう。

 

《行くぞ相棒!》

「OK!ドライグチェーンジ!」

 

実奈はそう言って飛び上がると、全身が発光し巨大化。そしてあっという間に見上げるほど大きな赤い龍に姿を変えた。

 

「さぁ、行くぞぉおおおお!」

 

ドライグの咆哮と共に、巨大な火球が放たれ、地面に着弾すると同時に、皆は飛び出す。

 

「さて」

 

そんな光景を背景に、一誠は両手にそれぞれジオウの顔が書かれたストップウォッチと、ビルドの顔が書かれたストップウォッチを持つと構え、

 

「悪いがさっさと終わらせてもらう。まだやることが山積みなんでね」

《ジオウ!ビルド!》

 

そしてストップウォッチを同時に起動させ、一誠がベルトに装着。そして、

 

「変身!」

《ライダータイム!仮面ライダージオウ!アーマータイム!》

 

目の前に出現したのはラビットタンクをイメージしたと思われるアーマーで、一誠はそれを殴って分解させると、全身に纏う。

 

《ベストマッチ!ビールドー!》

《お!あれは!》

 

その光景をドライグの中で見ていた実奈は、

 

《ドライグ!あれやるよ》

「別にやらなくても……」

 

文句言わない!と実奈に怒られ、ドライグは渋々一誠の頭上を飛ぶと、人格だけ一時的に実奈と入れ替え、

 

「祝え!全ての時空・事象・次元を支配する最高の王者。その名も仮面ライダージオウ・ビルドアーマー!ここに、異世界の仮面ライダーの力を手にした瞬間である!」

「久々に聞いたなぁそれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……』

 

そして戦兎は、静かにディオドラを睨み合っていた。

 

「やはり、君のことは僕自身で殺さなければならないようだね」

「悪いが俺は殺されるつもりはねぇよ」

《マックスハザードオン!》

 

戦兎はビルドドライバーを装着し、ハザードトリガーを装填。そして変化したフルフルラビットタンクボトルを持ち、

 

「お前を倒して、全部終わらせる!」

 

その宣言と共に、戦兎はボトルを振り半分に折る。その形は、まるで黄金の兎で、そのままベルトに装填。

 

《ゴールデンラビット!》

 

そしてレバーを回し、ディオドラを見据えてからゆっくりと構える。

 

それと同時に頭上から金色の兎が降ってきて、戦兎の周りを飛び回ってからバラバラになって戦兎の周りでパーツが浮かび、

 

「変身!」

 

戦兎の叫びと同時に、浮かんでいたパーツが一斉に戦兎に集まると、装着されていった。

 

《黄金のライトニングストライカー!ゴールデンラビット!ヤベーイ!トーマーラーネー!》

 

「さぁ、実験を始めようか」




仮面ライダージオウ ビルドアーマー

ジオウの一誠がビルドライドウォッチを使って変身した姿。

見た目は原作通りのビルドアーマーだが、原作とは違いジーニアスから力を奪って作ったビルドライドウォッチを使ってるため、ジーニアス由来の力も使用可能。



仮面ライダービルド ゴールデンラビットフォーム

パンチ力75t
キック力80t
ジャンプ力300m
走力100m0.05秒

戦兎が一誠に力を譲渡してもらい(厳密には実奈とドライグだが)、一時的にハザードレベルが7.0に至ったことでフルフルラビットタンクボトルが変化したゴールデンラビットフルボトルで変身した姿。

基本スペックが大幅に上昇。特に機動力関係は驚異的なレベルにまで引き上げられており、それに応じてアーマーも最適化されていて、今までの物より頑丈かつ軽量化に成功。そして高速移動した際の空気抵抗をほぼ0にしている。

更にアンチビルドのフルボトルジャマーを無視したりするなど、既存のライダーシステムの枠を超えているらしく、ジオウの一誠も少しばかり予想外のフォームだったようで、驚いていた。


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黄金の兎

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「全員集合し、ディオドラとの最終決戦」
龍誠「というか良いなぁ!お前の新しいフォーム!ゴールデンラビットだっけ?」
戦兎「そうそう。俺も最終決戦仕様となって大暴れするぜ!」
龍誠「俺も新フォーム欲しいいいいいい!」
戦兎「駄々こねるんじゃないよ!全く。お前だってシルバークローズマグマがあるでしょうが」
龍誠「そういう問題じゃねぇ!」
戦兎「ったく。ジオウの一誠も俺のジーニアスで作った力で新しい姿に変身してるし、この章ももう終盤!」
龍誠「つうわけでどんどん行くぜ!」
戦兎「ってな感じの133話スタートだ!」


『ハァアアアアアアアア!』

 

龍誠達は魔獣達に飛び掛かると、まずはクローズマグマナックルを持った龍誠が、前にいた魔獣を殴り飛ばすと、続いてグリスのヴァーリが龍誠の肩を台に飛び上がり、ツインブレイカーのビームモードで撃ち抜き、白龍皇のヴァーリの魔力砲が追い詰め、

 

『はぁ!』

 

二人のサイラオーグの拳が魔獣達を蹴散らす。

 

『この!』

 

続け様に二人の匙が黒い炎を出して囲むと、そのまま包み込んで空中に浮かし、

 

「私が!」

《Ready Go!エボルテックアタック!》

 

フウがレバーを回し、銃を構えてエネルギーを溜めると発射すると、そのまま黒い炎の球体は爆発した。

 

「まだまだ!」

「行くわよ!」

 

そこに続くリアス達は、それぞれ滅びの魔力を撃ち、雷光を降らし、斬って蹴散らしていく。

 

すると、

 

「グォオオオオオオオ!」

『はぁ!?』

 

空間が歪み、そこには巨大な魔獣が出現。

 

「俺がやる!」

 

そこに割り込んだのはドライグで、巨大な魔獣に掴み掛かると、

 

「オラァ!」

 

ドゴン!っと空気が震えるほど強烈な拳が魔獣に刺さり、魔獣が苦悶の表情を浮かべ、

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!」

 

連続パンチで魔獣を滅多打ちにし、

 

「オラアアアアアアア!」

 

アッパーで空中に打ち上げた。

 

「オォオオオオオオオ!」

 

そしてドライグは咆哮と共に力を上げると、

 

「ロンギヌス……」

 

口からエネルギーを迸らせ、ドライグは空の魔獣を見て、

 

「スマッシャァアアアアアアアアアア!」

 

強力な一撃を放ち、魔獣を消し飛ばすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「相変わらずスゲェなぁ」

 

ヒューっと口笛を拭きながら様子を見ていた一誠は、フランを見据えると、

 

「さて、さっさと終わらせようか」

「ギャアアアアアアア!」

 

悲鳴にも似た咆哮で突っ込んできたフランに、一誠は右手のドリルクラッシャーを模した武器で止め、

 

「はぁ!」

 

左手にダイヤモンドを纏わせて殴り飛ばし、炎を出して怯ませ、続け様に電撃を当てる。

 

「凄いなこれ」

 

思わず感心していると、フランは再び突っ込んできた。

 

「おっと!」

 

一誠はソレを転がって避けながら、すれ違いざまに右手の武器で斬り、背中に蹴りを入れ、

 

「はぁ!」

 

更に背中に右手の武器をぶつける。

 

「グゥウウウウウウ!」

「一誠!そっちは大丈夫!?」

 

えぇ!と叫ぶリアスに答えながら、一誠はフランを蹴り飛ばす。

 

「アイツ……ジーニアスの力を使ってんのか?」

「あぁ、見た目はラビットタンクだけどな」

 

龍誠とヴァーリはそんなやり取りをしている中、一誠はベルトを操作し、

 

「そんじゃま。もう終わらせるか」

《フィニッシュタイム!ビルド!》

 

一誠は腰を落とし、フランに狙いを定めると、周りに文字が浮かび上がる。だが、

 

《中学でやったやつ》

《教科書でみた気がする》

《何か英語がいっぱい》

《将来絶対使わないやつ》

 

等の戦兎のものとは異なる文字が浮かび上がっていた。

 

「何か……ちがくね?」

「うむ」

「ですね」

 

それを見ていた匙とサイラオーグとフウが頷き合う中、一誠は走り出して跳び上がると、真っ直ぐな線グラフが現れ、それに乗ってフランに突撃。そして右手の武器を振り上げると、

 

《ボルテック!タイムブレーク!》

「ハァ!」

 

一誠の一撃が炸裂し、フランは爆発。するとフランの体がバラバラに崩れ、それがそれぞれディオドラの眷属だった女性達に変わった。

 

「いやー。この能力ホント凄いな」

 

パンパンと体についた埃を落とし、一誠は戦兎の方を見た。

 

「ま、これは前哨戦。メインはアッチだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何で上手く行かないかなぁ」

 

ディオドラはイライラした様子で、周りの光景を見ていた。

 

「でもまぁいいか。君を殺して、またやり直せばいい。魔獣は幾らでもこっちの世界の兵藤 一誠が貸してくれるしね」

「またはねぇよ」

 

戦兎は拳を握り、ディオドラを睨みつけると、

 

「もうここで終わりにする」

「終わらせないよ。僕の夢は始まったばかりなんだ!」

 

そう言ってディオドラは戦兎に飛び掛かると、戦兎は横に跳んで避けたが、

 

「くっ!」

 

思った以上に跳んでしまい、ディオドラとの距離を開けすぎたが、

 

「ハァ!」

「グェ!」

 

再びディオドラに向かって走り出し、一瞬で間合いを詰めるとディオドラを殴り飛ばした。

 

「オォオオオオオオオ!」

 

吹っ飛んだディオドラを先回りして、再び殴り飛ばし、瓦礫の山にぶつけると、

 

「うがぁ!」

 

瓦礫を吹き飛ばし、ディオドラは立ち上がった。

 

「ムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつく!ムカつくんだよぉおおおおおお!」

 

ディオドラは多数の魔力弾を出し、辺りに向かって無差別に放つ。

 

「させるか!」

 

しかしそれを見た戦兎は走り出すと、魔力弾をパンチや蹴りで次々と消し飛ばした。

 

その余りの速さに、まるで全ての魔力弾を同時に消し飛ばしたのかと錯覚するほどで、

 

「無駄だディオドラ。お前がどれだけ壊そうとしても、俺が全部守って見せる」

「上等だぁあああああ!」

 

ディオドラが走り出し、戦兎に向かって殴りかかるが、それを避けて戦兎はディオドラの腹部にパンチを叩き込み吹き飛ばす。それを追って戦兎は走り出すが、ディオドラは体制を戻し、パンチを放つが、戦兎はそれをダッシュの大勢から一歩だけ下がって避け、瞬時にまた走り出すとディオドラに蹴りを叩き込む。

 

「がはっ!」

 

本体を殴ったと錯覚したディオドラだったが、それは残像なことに気づき、地面を転がりつつドリルクラッシャーを出し、

 

《Ready Go!ボルテックブレイク!》

 

クラプションタンクフルボトルをセットし、ディオドラは砲撃を模した攻撃を発射。だが、

 

《ゴールデンマッチデース!》

 

フルボトルバスターにゴールデンラビットフルボトルをセットし、エネルギー弾を戦兎も発射。

 

《ゴールデンマッチブレイク!》

「ハァ!」

 

そのエネルギー弾は、ディオドラのボルテックブレイクの一撃を軽々と押し返し、そのままディオドラに直撃して爆発した。

 

「あ、が……」

 

地面に膝を付き、声を漏らすディオドラは、戦兎を睨みつける。

 

「僕の邪魔をしやがってぇ!僕は悪魔だ。自由にやって何が悪い!愛だの平和だのと語って好きにする君が良くてなんで僕がだめなんだ!」

「そうだな」

 

戦兎はレバーを手に掛け、ディオドラを見つめ返した。

 

「でも俺は笑ってる顔が好きなんだ。誰かが笑ってるのを見ると、俺もクシャって笑っちまうんだ。だから俺は戦う。愛と平和のため……ラブ&ピースのため、理不尽に誰かの笑顔を奪おうとするものと戦い続ける。俺が出会ったヒーロー達のように、お前から見たら俺の身勝手でも、俺は俺を信じて前に進む!」

 

戦兎はそう叫び、レバーを勢いよく回すと、

 

《Ready Go!》

 

腰を落として意識を集中させると、その場で大きく飛び上がった。

 

「そう言うのがウザいんだよぉおおおおおおお!」

《Ready Go!》

 

それを見たディオドラもレバーを回して、戦兎を追って飛び上がる。

 

そして二人は空中で睨み合うと、

 

『ハァアアアアアアア!』

 

同時にライダーキックの大勢を取り、二人はぶつかる。

 

《ゴールデンラビットフィニッシュ!》

《クラプションボルテックフィニッシュ!》

 

二人のぶつかり合ったライダーキックは火花を散らし、辺りに爆音と衝撃波をもたらす。

 

お互い押し合い、互角の勝負に見えたが、

 

「勝利の法則は……」

 

戦兎は全身を発光させ、太陽の如く輝くと同時に、ディオドラの蹴りを打ち破ると、高速の連続蹴りをディオドラに叩き込んでいく。

 

「ぐぁああああああ!」

 

ディオドラのベルトやフルボトルがヒビ割れていき、そのまま蹴り飛ばすと、近くの崩れた建物に叩きつけ、

 

「決まったぁああああああ!」

 

そしてダメ押しのライダーキックを決めると、辺りを爆発が包むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ」

 

地面に膝を付き、戦兎の変身が解除されると、変化していたフルフルラビットタンクボトルが元に戻った。

 

「ぐ、う」

 

ディオドラはボロボロになったまま砕け散ったフルボトルの残骸を集め、

 

「ぼくの……ちから」

「お前のじゃねぇだろ」

 

と、ジオウの一誠は突っ込みつつ、自分に力が戻ったことを確認。

 

(とりあえず戻ったか)

 

一息入れて戦兎を見る。そこには既に戦兎の世界の皆が集まって、健闘を称えている。

 

するとジオウの一誠の世界の皆が来て、

 

「一誠。どういうことなのか説明があるんでしょうね?」

「えぇまぁ。ただその前に……」

 

一誠は頭を掻きつつ、ディオドラを見ると、突如ディオドラが爆発。厳密にはその場所に攻撃が加えられたからで、消し飛んだディオドラの代わりに、その場に立っていたのは、

 

「全く。折角新アイテム与えたってのに役に立たないやつだなぁ」

『兵藤 一誠!?』

 

戦兎達は身構え、逆に別世界のリアス達はポカンとしてしまう。

 

「あぁ、あれが今回の主犯ですよ。別の世界の兵藤 一誠。中々厄介なやつでしてね」

 

と、ジオウの一誠は説明していると相手はこちらを見て、

 

「ようこっちの世界の兵藤 一誠。ご機嫌如何かな?」

「あぁ、お陰で力も返してもらえたしな。絶好調だぜ」

 

そんなやり取りをしているとジオウの一誠の世界のリアスが、

 

「貴方が今回の一件の主犯だそうね。一体どういうつもりでこんなことをしたの!?」

 

その問いにエボルの一誠は、

 

「なぁに。そちらの仮面ライダージオウ。いや、オーマジオウだったか?その力が欲しかったのと、序でに新しい道具の試運転がしたくてね」

「そんなことのために?」

 

リアスが信じられないといった表情を浮かべる中、エボルの一誠は実奈を見て、

 

「そっちも元気そうだなぁ?」

「そうだね」

 

実奈の素気ない態度に、エボルの一誠は肩を竦める。

 

「おいおい。折角同じ転生者同士なんだ。仲良くやろうじゃないか」

「冗談言わないでよ。あんたみたいなやつと同じだなんて思われたくないんだから」

「冷たいやつだなぁ。お前なら分かるだろ?俺は兵藤 一誠に……主人公になったんだ。なのに物語に関われず、1から作り直そうとしたら邪魔するものがいる。なら俺の目的を達成するために努力するだけさ。何か問題でも?」

 

エボルの一誠の言葉に、実奈はため息をつくと、

 

「私もさ。この世界に転生して最初浮かれたよ。ずっと好きな作品の登場人物に会えるってさ。でもこの世界で生きてて分かったんだ。この世界にいるのは、物語の登場人物じゃないって」

「何?」

 

実奈の言葉に、エボルの一誠は眉を寄せる。

 

「この世界にいるのはの、普通に生きてる人たちなんだって。普通に笑って、普通に泣いて普通に怒る。何も特別なんかじゃない。普通の物だった。お父さんはちょっとエッチだけどお仕事と家族サービス両立に一生懸命で、新しい洋服を見せると似合うって褒めてくれて、テストの点数がいい時は頑張ったなって言って頭撫でてくれて、こっそりお小遣いくれる。お母さんは専業主婦で毎日おいしいご飯作ってくれて、一緒にご飯作ったりショッピングしたり、髪を結ってくれたり、しんどくなったとき抱きしめてくれる。隣の佐藤さんは笑顔が素敵な夫婦で、近所の山本さんは庭で作った野菜を分けてくれる。普通の生活を営んでる普通の世界。だから私はアンタが大嫌いだ。そんな素敵な普通の世界だったこの世界を滅茶苦茶にしたんだから。それに力が幾らあったってアンタは主人公じゃない。力があるだけで主人公なら苦労しないんだよ。痛くて苦しくて、それでも立ち上がれる者を、人が呼ぶんだから」

 

その点赤龍帝宿してても痛いの嫌だし苦しいのから逃げたいタイプの私は主人公にはなれないよねー。と実奈は笑い、エボルの一誠は鼻を鳴らし、

 

「ふん。解釈違いだな」

 

と言って、オーラ弾を実奈に向けて発射。しかし、

 

「ヨッと」

 

その前にジオウの一誠が割って入り、オーラ弾を手を前に出して弾く。

 

「お前の相手は俺がしてやるよ。折角イイ感じに来たんだ。さっさとアンタにはお帰り願おうか」

 

ジオウの一誠は、そう言うとジオウトリニティの時にも使っていたストップウォッチと、金色で豪華な見た目で、更にジオウだけではなく他の皆の顔も描かれたストップウォッチを手に持つ。

 

「おいおい。俺が負けると思ってるのか?まぁいいさ。せっかくだ遊んでやるよ!変身!」

《オーバー・オーバー・ザ・レボリューション!Ready go!フィーバーフロー!フハッハッハッハハハハ!フハッハッハッハッハハハハハ!》

 

笑いながらエボルの一誠は変身し、ジオウの一誠も同じく笑みを浮かべる。

 

「思ってるさ。なにせ……」

《ジオウ!グランドジオウ!》

 

2つのストップウォッチを同時に起動し、ベルトに装着。そしてバックルを操作し、

 

「うぉ!?皆の銅像!?」

 

突然地面から出現した仲間たちの銅像に、疲労からまだ立てなかった戦兎と仲間達がギョッとし、

 

「今のお前より、俺の方が100倍は強いからな。変身!」

《グランドタイム!リアス・アケノ・アーシア・ユウト・コネコ・ゼノヴィア・ギャスパー・イリナ・ロスヴァイセ・クロカ・サジ・ヴァーリ・サイラオーグ・ミナ・ソウソウ・レイヴェル・デュリオ・アザゼル・オー・フィ・ス~。祝え!仮面ライダー!グ・ラ・ン・ド!ジオーウ!》

 

その銅像達は突如彫像に姿を変え、ジオウの一誠にくっつき、黄金の姿に変えた。

 

「そ、そこで貼りつくのな」

『うんうん』

 

思わず戦兎が突っ込むと、周りの仲間達も頷きを返す。

 

そんな戦兎達を見たジオウの一誠の世界のリアス達は、

 

(もう見慣れた光景だったから気にしてなかったけど、やっぱり凄い絵面なのね)

(うんうん)

 

と、頷き合うのだった。



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グランドジオウ

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「ディオドラのアンチビルドを倒し、これで一安心……かと思いきや!」
龍誠「なんとそこに俺達の世界の兵藤 一誠が乱入してきやがった!」
戦兎「しかしそれを仮面ライダージオウの兵藤一誠が最強の力、グランドジオウを開放して迎え撃つ!」
龍誠「さぁ勝負の行方は!」
戦兎「ってな感じの134話スタートだ!」


『オォオオオオオオオ!』

 

ジオウの一誠とエボルの一誠は同時に走り出し、互いのパンチをぶつけ合わせる。

 

「ハァ!」

 

しかし次の瞬間、ジオウの一誠は高速移動でエボルの一誠の背後に回り込み、蹴りを叩き込む。

 

「ぐぁ!」

「まずはこれだ」

 

するとジオウの一誠は、リアスと朱乃が描かれた体の彫像をタッチし、

 

《リアス!アケノ!》

『えぇ!?』

 

戦兎達が驚愕する。その視線の先には、突如現れたリアスと朱乃が立っており、思わず皆でリアスと朱乃を見て確認。そしてもう一方の二人も確認するが、間違いなくどちらにもいる。つまりあの場にいるのは、3人目のリアスと朱乃の二人だ。

 

「何!?」

 

エボルの一誠も驚く中、ジオウの一誠に召喚されたリアスと朱乃はそれぞれ滅びの魔力と雷光を放ち、エボルの一誠に攻撃。

 

「続いてこれ!」

《ユウト!ゼノヴィア!イリナ!》

 

リアスと朱乃が消え、それを入れ替わるように開かれた空間からそれぞれ飛び出したのは祐斗とゼノヴィアとイリナの三人で、それぞれ剣を手にエボルの一誠を斬る。

 

「ガハッ!」

《コネコ!サイラオーグ!ソウソウ!》

 

3人の斬撃に合わせ、ジオウの一誠は今度は別の3人を呼び出し、小猫の拳とサイラオーグの拳がエボルの一誠を殴り飛ばし、吹っ飛んだ先に現れた槍を持った青年が穂先から出した光で一誠に攻撃。

 

「あれ……黄昏の聖槍(トゥルーロンギヌス)か?」

「恐らく。兵藤 一誠が神滅具(ロンギヌス)を独占しなければ、本来の持ち主になっていたであろう男かもな」

 

とサイラオーグにヴァーリが説明していると、

 

「くそがぁああああああ!」

《Ready Go!ロンギヌスフィニッシュ!》

 

エボルの一誠は必殺技を発動し、頭上に巨大なエネルギーボールを作り出す。

 

「纏めて消えやがれ!」

「そうはいかないな」

《アーシア!ミナ!ヴァーリ!サジ!オーフィス!》

 

するとジオウの一誠も次々と喚び出すが、現れたのは巨大なドラゴン達だ。

 

「なっ!?」

「別に驚くことじゃない。俺が喚び出すのはその者の力の全て。ならばその力の元となる物も呼び出せる。実奈やヴァーリならドライグとアルビオンとかな」

 

しかしエボルの一誠は笑みを浮かべると、

 

「だったらこの一撃に龍殺し(ドラゴンスレイヤー)の力も付加すればいい。俺の龍殺し(ドラゴンスレイヤー)はグレートレッドも殺せるんだ!」

 

そう言うエボルの一誠に、ジオウの一誠はそれは凄いと頷き、

 

「ならこうしよう」

 

と言って、ジオウの一誠は手をエボルの一誠に向けると、額のジオウの彫像は光り、

 

「時間よ戻れ!」

 

それと同時に、エボルの一誠の動きが逆再生され、必殺技を発動させる前に戻される。

 

「ハァ!?」

 

エボルの一誠が驚き固まる中、ジオウの一誠はサイキョーギレードを構えながら間合いを詰め、

 

《ジオウサイキョー!覇王斬り!》

「はぁ!」

 

ジオウの一誠の覇王斬りによって空中に打ち上げられたエボルの一誠。

 

「ぐぁ……」

「そして喰らえ!オールドラゴンブラスター!」

 

ジオウの一誠が召喚したドラゴン達が、一斉にブレスを放ちそのブレスがエボルの一誠を飲み込む。

 

「ガハッ!ゴホッ!」

 

咳き込みながら地面に落ちたエボルの一誠は、何とか立ち上がると空中にいくつものエネルギー弾を出し、ジオウの一誠に向けて発射。しかし、

 

《クロカ!》

 

ジオウの一誠は黒歌を召喚し、召喚された黒歌は仙術で地面から木を生やし防ぐと、

 

《アザゼル!》

 

今度はアザゼルを召喚して大量の光の槍を出して、エボルの一誠に降りかかる。

 

「この!」

 

それをエボルの一誠はデュランダルを出して弾く。

 

《ゼノヴィア!》

 

するとジオウの一誠もゼノヴィアの彫像タッチし、空間からデュランダル取り出すと、エボルの一誠との間合いを詰めて、相手のデュランダルを弾くと、

 

《レイヴェル!》

 

レイヴェルの彫像をタッチして召喚し、召喚されたレイヴェルが炎を撒き散らして攻撃。それによりエボルの一誠を後ずらせた。

 

「さて、そろそろ終わらせようか」

《フィニッシュタイム!グランドジオウ!》

 

ジオウの一誠はバックルを操作し、必殺技を発動させ、飛び上がると同時に、周りにオーラ状のリアス達が出現し、ジオウの一誠と同化すると同時に、ライダーキックの構えとなり、

 

《オールトゥエンティ!タイムブレーク!》

 

巨大な光の塊となったジオウの一誠の一誠は、そのままライダーキックを放ち、それにエボルの一誠は飲み込まれ、

 

「ぐぁああああああ!」

 

閃光と爆発が起き、見ていた者たちは思わず目を瞑り耳を塞ぐ。

 

そして土煙が晴れると、

 

「くそ!」

 

足を引きずりながら、変身が解除されたエボルの一誠は逃げ出す。

 

「逃げる気よ!」

 

ジオウの一誠の世界のリアスが叫ぶと、皆で追おうとするが、

 

「追うな!」

『っ!』

 

ジオウの一誠の怒声に、思わず皆が足を止め、その間にエボルの一誠は空間を歪ませその中に消え、逃げてしまう。

 

「おい!」

 

そこに戦兎がジオウの一誠に近づき、

 

「なんで止めたんだ!今チャンスだっただろうが!」

「そう怒るなよ」

 

そんな戦兎にジオウの一誠はビルドの絵が描かれたストップウォッチを差し出すと、

 

「ほら。返すよ。序でにオマケもつけといたからさ」

「何?」

 

戦兎はそれを奪い返すように取ると、眉を寄せる。しかしジオウの一誠は気にせず手を戦兎に翳すと、

 

「んじゃ。後はそっちの世界の領分だ。これ以上は不味いんでね。お帰り願おうか」

「な!?」

 

すると戦兎の体が突然透ける。厳密には同じ世界の仲間たちも消えていっていた。

 

「おいどう言うつもりだ!」

「悪いとは思ってるんだよ戦兎」

 

ジオウの一誠は変身を解除しながら、戦兎の顔を見る。

 

「ただ俺にはこれしか思いつかなかった」

 

戦兎は思わず目を見開く。

 

それは一誠の目が余りにも悲しそうな色を宿していたからだ。今までのふざけたような態度からは考えられない、深い悲しみを宿した瞳。

 

「アンタはこれから絶望し、その度に立ち上がる。でもそれでも足りない。だから忘れないでくれ。アンタは仮面ライダービルド。作る、形成するを意味するヒーローだ。絶望を希望に変えられないかもしれない。でも0から希望を作り出す事ができる筈なんだ」

 

ジオウの一誠がそこまで言うと同時に、戦兎達は姿を消す。

 

「一誠?」

 

リアスは一誠に駆け寄ると、一誠はその場にしゃがみ込む。

 

「大丈夫?」

「えぇ、何とかね」

 

一誠は頭を振ってもう一度立ち上がり直すと、手短な瓦礫に腰を下ろした。

 

「さて、皆には話さなきゃいけないことがあるな」

「無理しないで一旦休んでからでも」

 

そう言う実奈に一誠は首を振り、

 

「いや。皆には知る権利がある。だから話すよ。そうだな。どこから話すべきかな」

 

まずは……そう一誠は口を開いてる中、その頃エボルの一誠は、

 

「はぁ。はぁ」

 

自分の椅子に腰を掛け、一誠はフルボトルを見る。

 

それは王冠の模様が彫られた光り輝くフルボトルで、

 

「くく。はは!」

 

やってやったぞと一誠は叫ぶ。

 

実際アンチビルドに組み込んだジオウの力は、一部でしかなかった。

 

ジオウの一誠は気づいてないようだが、ここに別にして残してある。

 

極少量。ジオウの一誠も気づかぬほどだがそれだけでも十分過ぎるほどの力を秘めていた。

 

これがあれば、更に次の強さのステージに行くことができる。

 

「でも足りない」

 

もっとほしい。一誠は呟く。もっともっと力を手に入れなければらない。もっと強くならなければならない。

 

「俺は兵藤 一誠だ」

 

どこまでも強くなって見せる。そう一誠は声を上げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「って、今頃一人で高笑いしてるでしょうね」

 

場所は再び戻って、ジオウの一誠達の世界で、一誠がそう呟くとリアスは眉を寄せる。

 

「つまり貴方はわざと力を奪われたってこと?」

「えぇ」

 

それって大丈夫なの?と問う実奈に、一誠は大丈夫だと答えながら、

 

「力自体は幾ら奪われても問題ない。俺にはこれがあるからな」

 

そう言って一誠が出したストップウォッチは、金色の装飾と黒と金カラーリングの者が描かれている。

 

「オーマジオウライドウォッチ。これを使えば何時でも奪われた力は復活する。ただアッチの兵藤一誠に上手く行ってると思わせるために今回は敢えてアイツの思惑に乗ってやりましたがね」

 

一誠はそんなことを言いながらストップウォッチをしまうと、

 

「さて、さっき言ったようにアッチの一誠は、今頃高笑いでもしてる頃でしょう」

「えぇ、でも何であなたはそんな面倒なことを?」

 

リアスに再び問われ、一誠は頷きつつ少しため息をつき、そして口を開く。

 

「あの世界……戦兎達の世界は、言うなれば絶望が確定している世界。バットエンドしかない世界。希望が存在しない世界。いや、これは正しくないか。正しく言うなれば、ある意味ではハッピーエンドが確約された世界なんですよ」




グランドジオウ

ジオウの一誠が変身したジオウ最強のフォーム。

圧倒的なスペックと、仲間達本人やそれに関連するものの召喚能力を持ち、実奈であればドライグ本人を呼び出したり、ゼノヴィアの力でデュランダルを出すことも可能。

エボルの一誠の怪人体をも圧倒する強さを持ち、ジオウの一誠曰く100倍は強いとのこと。

しかし追い込みはしても、トドメを刺すことはしなかった。


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未来

一誠「さて、今回は少しお邪魔させていただいて、はじめまして。いや、皆さんは俺のこと知ってるかな?ですが一応挨拶をさせていただきたい。俺は兵藤 一誠。仮面ライダージオウに変身して戦ってます。そんな私が起こした今回の一連の出来事。戦兎だけではなく皆様も困惑させてしまったでしょう。なので今回皆様にだけ真相を明かさせていただきます。ですが一つだけ約束していただきたい。これから話すことは、戦兎たちには秘密でお願いしたいのです。理由は本編を読んでいただければご理解いただけるはず。と言う訳で、お待たせしました。これよりこの一連の事件の秘密お話しましょう。この世界は……おっと、ここで話してはなりませんね。それでは134.5話。スタートです」


「待って一誠。ごめんなさい。でもちょっと意味が分からないわ」

「ですよね。今俺が言った言葉は完全に矛盾してる。とはいえこういう表現しかなくてですね。まぁまずはあの世界と兵藤 一誠について説明し無いといけませんね」

 

一誠はそう言い、一度呼吸を整えてから再度話し出した。

 

「そもそもあの世界は何なのか。それは兵藤 一誠が兵藤 一誠になる前に願われ、作られたということです。自分の思い通りに行くように、力も何かも手に入れ、好き勝手に出来るように。できない事なんてない。不可能もない。どんな望みも叶えられるように。そんな風に願って作られた世界。言うなれば、根本的には兵藤 一誠に都合よく出来てるんですよ。あの世界はね」

 

だからこそ厄介なんです。と一誠は言葉を続け、

 

「だから兵藤 一誠は絶対に倒されない。一時的に追い込む事はできます。でも倒し切ることはできない。どんな攻撃を入れても、運良く外れたりしてゲームで言うなら体力が必ず1残って新しい力に目覚めて全快しちまうんです。あっちの世界ではグレートレッドは倒されてるんですが、それの力が大きい。ただこの力は兵藤 一誠本人には自覚がないようでしてね。まぁ何せこの力はアイツが世界を作る際に力を盛りまくった結果、偶然手に入った力。兵藤 一誠で居続ける限り、諦めなければ必ず望めるが叶う力。名付けるなら主人公補正。いや、ご都合主義とでも言うべきかな」

「じゃあお兄ちゃんがわざと見逃したのは……」

 

実奈が問うと一誠は頷き、

 

「あぁ、同じくらいの強さ同士で戦って偶に負けるくらいなら良い。一時の敗北も物語のスパイスだからな。でも俺のグランドジオウだと現時点では強さに開きがありすぎる。んでそんな実力差で追い込みすぎると、都合よくアイツは新しい力に目覚めて強くなっちまう。それでもオーマフォームなら負けはしない。何せこれなら相手より必ず強くなる。だがそれでも兵藤 一誠を倒すことはできず進化され、こっちも強くなって進化されてを永遠に繰り返すだけだ。そうしてればいつかアイツも自分の力に気づく。そしたらいよいよ手に負えなくなるだろ」

 

だから適度にボコしてお帰り願うしかなかった。そう一誠が言うと、祐斗が口を開く。

 

「そんな相手。あっちの世界の僕達に勝てるの?」

「無理だな」

 

きっぱりと一誠は言う。

 

「戦兎がどんなに奇跡を起こし、未来を変えても無意味だ。言っただろ?あの世界は、ある意味ではハッピーエンドが確約されてる世界だって。どんな事になっても、兵藤 一誠(主人公)が完全敗北するなんてバットエンドは起こらない。兵藤 一誠が諦めない限り、最後に勝って、笑って終わる。最高にハッピーエンドだろ?まぁそれは兵藤 一誠から見た場合って注釈は付くけどな。ただまぁハッピーエンドかバットエンドかなんてそんなもんさ。見る視点でそんなのは変わっちまう」

「でもなんでそこまで知って……」

 

朱乃の言葉に一誠は、

 

「未来が見えた」

 

と答える。

 

「ある日突然だった。突然未来が見えて、俺はあの世界の成り立ちも兵藤 一誠の事も知った。何より戦兎がどんなやつかもわかった。真っ直ぐなやつで、諦めることを知らなくて何時でも必死だった。生きることを諦めなかった。そして最後は必ず兵藤 一誠に敗北する」

 

何度も戦兎を助けようとした。でもどのルートでも、兵藤 一誠を超えることはできなかった。何をしても兵藤 一誠の運命を超えることができない。

 

「未来と絶望が一気に押し寄せてきて俺は考えた。どうすれば未来を変えられるのかを。そして一つ思いついた。未来を変えなきゃいいんだと」

 

一誠の言葉に、皆は思わず顔を見合わせた。それを察した一誠は笑みを浮かべ、

 

「未来を変えるのは不可能なんだ。あの世界では兵藤 一誠は絶対だ。兵藤 一誠以上の運命を引き寄せる力を持つものはない。だがもし、この先の様々な経験や出会いから戦兎が全く違う未来を作ったんだとしたら……それなら可能性があった」

 

だから力を兵藤 一誠に奪われたままにしたんだ。と一誠は続けて、

 

「未来では兵藤 一誠は俺に力を全て取り返されて、異世界への進行を止めてしまうんだ。もう懲り懲りだってね。だがそれじゃ駄目なんだ。それでは戦兎にきっかけが与えられない。様々な出会いや事件が戦兎を成長させ、変化させる。その果てが未来を作り出すんだ。どんな結果であろうとも、異世界への進行には旨味がある。そう兵藤 一誠に思わせないといけなかった」

 

そして戦兎の方にも刺激を与えた。と一誠は言う。

 

「同時に戦兎には精神的に追い込まれてもらう必要があった。理由は一つ。ハザードレベル7.0に到達してもらう必要があったからだ」

「ハザードレベル?」

 

アーシアの問いに一誠は、まぁビルドに変身するための力みたいなもんだと教え、

 

「7.0はあの世界においてあらゆるルールや概念、法則を超えた力。兵藤 一誠との戦いにおいて、7.0に至っているのは絶対に必要だ。だがそれに到達するのは容易じゃない。と言うか、そもそも普通は無理。だが龍誠は既に一度それに至っている。だが龍誠がなれるなら、戦兎もなれる。二人の違いは何なのか。それは絶望から這い上がってるか否かだ」

 

一誠の言葉に、皆は思わず息を呑む。

 

「龍誠は過去に恋人を殺され、そこから這い上がることってクローズに変身できるようになった。かけがえのない親友の戦兎が兵藤 一誠の毒で犯される中、一人立ち上がってクローズマグマに変身した。そして戦兎の体を奪われ、変身能力すら失う中でも立ち上がり続け、変身能力を取り戻すだけじゃなくハザードレベル7.0に至ってみせた。だが戦兎は違う。アイツは身も心も絶望で押し潰されそうになっても這い上がったことはない。厳密に言えば、沈みきる前に解決策を考えちまうタイプだ。精神面で左右されることが少ない。新アイテム作ったりとかな。もしくは下手すれば自棄っぱちになってしまう。龍誠の体が奪われた時みたくな。精々が父親との決別の時くらいみたくね。それがあってジーニアスに目覚めたけど、それもあって戦兎自身の成長を阻害していた。兵藤 一誠を倒すには、ライダーシステムがあっての戦兎じゃなく、戦兎があるからこそのライダーシステムじゃなきゃならないんだ」

「もしかしてお兄ちゃんが戦兎さんの力を奪ったのって……」

 

ふとガッテンがいった顔をした実奈に一誠は頷くと、

 

「ジーニアスは反則でな。あれとクローズマグマは最早ライダーシステムの枠組みか外れつつある。この二つならアンチビルドも敵じゃない。と言うか、ルートによってはジーニアスであっさり勝つルートもある。でもそれだと戦兎の成長はない。だから俺はジーニアスの力を使えなくした」

「そして戦兎君だけを連れてきた。ってことかしら?」

 

流石リアス理解が早い。と一誠は褒めつつ、

 

「力を奪い、実奈と逃げればバイクで先導して追いかけて来る。ってのは予想通りでした。それで戦兎だけを連れてくれば、戦兎を一人にできる。いつだって仲間たちとともにあり、そして助けて助けられてきた戦兎にとって、初めての孤独。そして見知った顔から初対面のような顔をされ、この世界の惨状を責め立てられる。優しい戦兎からすれば、こんな精神的に来るものはないでしょうね」

「そう言えば一誠。私は彼があっちの世界のグレモリー眷属と言うのは聞いてなかったぞ?」

 

そりゃ言わなかったからな。と一誠はゼノヴィアに答えると、

 

「今言ったように、戦兎を追い込む必要があった。でも皆に話した状態でできたと思うか?リアス何か違う世界とはいえ、自分の眷属だと分かったら親近感くらい湧いちまう。でもそれではだめなんだ。徹底的に追い込まないと、7.0には届かない。実奈をあっちの世界に一度置き去りにしたのは、こっちの世界に一緒に連れて帰るとそうなると踏んだからだ。それに……」

 

それに?と皆が一誠に首を傾げると、

 

「例え演技でも、皆が嫌われ役をするところを見たくない。嫌われるのは俺だけで良かった」

「で、ですが最後にちゃんと説明すれば……」

 

それは駄目なんだよアーシア。そう一誠は言葉を遮り、

 

「俺は戦兎から嫌われてなきゃならなかったんだ」

 

意味がわからず、皆は困惑していると、

 

「さっき言ったように、未来を変えるのは不可能だ。だから俺は戦兎自身で未来を作るルートを作ろうとしてる。だが俺が深く交流し、絆が生まれたとしたら、未来を知るものが戦兎の物語に関われば、それはもう未来を変える戦いになってしまう。未来を知らない者同士であればいい。でも俺は駄目だ。俺は未来を知ってしまっている。知っているものが行動すれば、それは未来を作る行為じゃない。知ってる未来を変えようとする行為だ。だから俺は戦兎達と仲良くしちゃいけない。寧ろ嫌われるくらいじゃないといけなかった。当然だが事情も話せない。話せば俺が見た未来も話さなくちゃいけなくなる。そうなったら結局未来を知る戦兎の未来を変える物語にしかならない。それじゃ意味がない。だから戦兎と距離を取った。案の定今回はライドウォッチ生まれなかっただろ?そうじゃないと不味かったんだけどさ」

「だ、だけどさ!一誠くん頑張ったしこれで未来作れるんだよね?」

 

イリナの不安げな問いに、大丈夫だと答えたくなる衝動に駆られるが、

 

「難しいかもな。未来を作るってのは、実際変えることより難しい。変えるなら、既存の流れから変化させるだけで良い。でも作るのは、0からなかった流れを生み出す行為だ。ただでさえ、あの世界の驚異は兵藤 一誠だけじゃないしな」

「と言うと?」

 

ロスヴァイセが聞いてきて、一誠は頷くと、

 

「ビジター。あの世界ではそう呼ばれる存在で、本来は名前なんてない。だがその正体は、あの世界が生み出した自殺装置だ」

 

自殺装置。その言葉に皆が唾を飲むと、

 

「兵藤 一誠によって生み出されたあの世界は兵藤 一誠にとって都合良くできている。だが世界の意思そのものも味方しているわけじゃない。寧ろこれから起こる醜悪な結末を嫌い、自らの崩壊を選択した。だがそれだけで自ら崩壊はできない。だから世界が持てる力を全て吐き出して生み出したのはビジターだ。決して倒されない。ただそれだけの概念を纏ったそれは、兵藤 一誠自身を倒せないのを知っている。だからそれ以外の全てを破壊する事にした。あの世界でアザゼルたちが封印できたのは、世界が予め壊させようとビジターを産み落としたものの、兵藤 一誠が関わったもの破壊する存在だったビジターは本来の力を発揮できなかったからだ。だが今は違う。兵藤 一誠は生まれ、あの世界で色んな場所に関わっている。そしてビジターは決して倒されず、兵藤 一誠が話し、触って見て聞いて感じたもの、その全てを消し去り続ける。兵藤 一誠が他と関わるのを諦め、世界が消え去るその時までな。だがここで一つ問題だ。ビジターは兵藤 一誠の関わったものを滅ぼすのなら、それはあの世界だけなんだろうか?」

 

あ、と皆は目を合わせ、そんなまさかと見合うと、

 

「そう。ビジターの破壊対象は異なる世界もだ。勿論、俺たちのこの世界も含まれる。他の世界もだ。兵藤 一誠が侵略した世界は一つ二つじゃない。その膨大な数の世界が全て破壊対象だ。そしてビジターは目覚めたら戦兎達には止められない。さっき言ったように、兵藤 一誠に勝つ未来はない。だがそもそも、兵藤 一誠との決戦まで行ったルートが少ない。大半は途中で目覚めたビジターに敗北するルートだ。運良くビジターが目覚める前に決戦に持ち込んだのが、兵藤 一誠に敗北するルート」

「なんですかそれ……じゃあ今回先輩がやったのって無意味じゃ」

 

小猫は体を震わせながら、拳を握る。

 

「小猫。言っただろ?あの世界は、もう終わってるんだ。俺が今回やったことだって、道端に石ころ置いて誰か転ばないかなってくらい小さなものさ。普通なら転ばない。石ころ蹴っ飛ばすか、そもそも足に当たらない」

 

でも、と一誠は続けると、

 

「戦兎はどのルートで俺を助けてくれた。少なくとも俺は、あいつを友達だと感じた。だからそのために動くことは無意味じゃない。何かが起こるかもしれない。俺はその可能性がある限り……いや、無かったとしても、俺はそのために動くよ」

 

そう言い切り、皆は一誠を見つめると、

 

「質問いいかしら?」

「どうぞ」

 

リアスからの質問を一誠は促すと、

 

「今の話だと、龍誠君と戦兎君は7.0になれるのよね?他の子たちはだめなの?」

「無理ですね。あの二人だけが特別ですから。兵藤 一誠に兵藤 一誠の立場を奪われた龍誠と」

 

本来存在しない存在の戦兎君?とリアスが聞く。しかし、

 

「アイツはいますよ。バグでもなんでもない。ちゃんと役割を持った奴です」

『?』

 

意味がわからず、皆は首を傾げる。

 

万丈 龍誠(ひょうどう いっせい)と共に生き、力を授け一緒に戦う。そんな存在がちゃんとね」

「もしかして……」

 

実奈だけはわかったらしい。そして一誠は笑みを浮かべているとヴァーリが、

 

「兵藤 一誠。お前は言ったな。向こうの兵藤 一誠に異世界の進行をやめさせてはいけないと」

「あぁ」

「つまり今回のお前の選択は、ビジターが狙う世界増やす行為なんだな?」

 

皆が分かっていたこと。だがヴァーリはそれを敢えて口にした。そして一誠は頷き、

 

「あぁ。そしてそれだけじゃない。ビジターに襲われる前に、そもそも兵藤 一誠の侵略も受けることになる。俺がやったのは、被害者を増やすことに他ならない」

 

戦兎を救う可能性を求め、多くの世界を巻き込む。それが一誠の選択だった。

 

「どうすればいいのか。全部無傷で救う方法はないのか。そればかり考えた。でもこれしか思いつかなかった。もしかしたら戦兎が作り出す未来には、ビジターを倒して兵藤 一誠も倒す未来もあるかもしれない。そんな希望的観測を元に作った道標。それが今回の一連の戦いの真相だ」

 

一誠はそう言って息をつくと、他の皆も息を整える。

 

そんな光景を見ながら、一誠は願う。

 

(そんな都合よく行くはずがない。そんなの分かってる)

 

でも、と一誠は心の中で手を伸ばし、

 

(もし、俺が放った石ころに蹴っつまずく誰かがいるなら……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《ブレイブストライク!》

「ラァアアアアアア!」

 

とある世界のとある場所で、ライダーキックを放つ姿があった。

 

黒の下地に、金属質の赤いアーマーをまとった姿で、額には王冠のようなパーツが着いていて、怪人にライダーキック叩き込むと同時に、爆発するとその爆心地に人が倒れいた。

 

それを確認するとバックルの王冠型のアイテムをバックルから外し、変身を解除すると、そこには黒髪の高校生くらいの少年で、大きくため息をつく。

 

「お兄お疲れ様」

「あぁ、ありがとう。妃愛(ひより)

 

駆け寄ってきた少女に、少年は妃愛と呼び、妃愛と呼ばれた少女は少年を兄と呼ぶ。

 

「今日も無事生徒会業務並びに仮面ライダーキングの仕事も終わったね」

「生徒会業務はともかく仮面ライダーキングはなぁ」

 

そう言いながら少年は上を向き、

 

「帰るか。この人はこのあと来る警察に任せればいいし」

「そうだね」

 

妃愛は少年の言葉に肯定の頷きを返しつつ、少年の手を取ると、

 

「じゃ、帰ろっか」

「あぁ」

 

妃愛に引かれ、少年は歩き出そうとすると、

 

「ん?」

「どうしたの?お兄?」

「あぁいや。気のせいかもしれないんだけど……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっと」

 

また世界は変わり、別の場所では中学生くらいの少年が空から落ちてきて着地し、背中を伸ばす。

 

「無事怪獣退治も終わりかな」

《あぁ、そうだな》

 

少年は声を聞き、ポケットからスマホのようなものを取り出すと、

 

「グランドさんもお疲れ様でした」

《陸人の方こそお疲れ様だ》

 

そんなやり取りをしていると、ふと陸と呼ばれた少年は空を見上げる。

 

《どうした?》

「いえ、なんか今お願いされたような気がして……」

 

スマホのようなものから聞こえる声は、首を傾げているようで、

 

「グランドさんには聞こえなかった?」

《すまんが何もだな》

 

そっかぁ。としつつも陸はまぁいいかと言い、

 

「とりあえず帰りましょっか。俺お腹すいちゃって」

《そうだな》

 

と陸はスマホをポケットにしまい直し歩き出す。

 

そんな彼の後ろには、青い宝石のようなものを胸につけた、巨人が立っているように見えるのだった。




最後まで読んでいただきありがとうございました。

やっと、やっとここまで来ました。初期から考え続けていたお話がやっと書けました。

そう。この世界はハッピーエンドの世界です。どんなに回り道をしても、兵藤 一誠は必ず勝つ世界。それが戦兎達の世界です。さてここで明かされた世界の秘密。戦兎達は未来を作れるのか……

いやぁ、ジオウの一誠には中々嫌な役をさせてしまいました。この話で少しでも株が上がって頂けたら幸いです。

と言うわけで物語も終盤戦。新しく出た二人の戦士がどう関わってくるのか……そして兵藤 一誠との戦いの行方は、更にビジターもどう来るのか……そんな感じで次回以降も宜しくお願いします。


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第十九章 聖誕祭のファニーエンジェル
準備


前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「ジオウの一誠との出会いを経て、元の世界に戻ってきた俺達。しかしこっちはもうクリスマスの時期なのだ!」
龍誠「俺も色々店決めないとなぁ」
戦兎「初めての彼女とのクリスマス……失敗はできない」
龍誠「まぁそんなに固くならずにだな」
戦兎「そうも言ってられねぇだろ!ってな感じの135話スタート!」


「うぅむ……」

 

戦兎は研究室で悩んでいた。理由は唯一つ。それはクリスマスが目の前に迫ってきているからだ。

 

彼女との初めてのクリスマス。それが重要なこと位は理解している。

 

メジャーなものであれば雰囲気のいいレストラン。と言うのもあるがどうしたものか。なんて悩んでいると、

 

「あ、おーい戦兎!」

「ん?」

 

屋敷と異次元空間によって直通で繋がっている扉から顔を出したのは龍誠で、

 

「お客さんだぞ」

「客?」

 

誰だろう。と思いながら龍誠に付いていくと、屋敷のリビングで座っていた一人の男性。最初は誰か分からなかったが、すぐに思い出せた。

 

「久しぶりだね。戦兎君」

「もしかして、イリナのお父さん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう!パパったらいきなり来るんだから。びっくりしちゃったわ」

「いやぁすまない。折角だから少し驚かせようと思ってね」

 

そう言ってイリナに笑みを向ける穏やかな雰囲気をまとった男性は、紫藤 トウジと言い、戦兎と龍誠も幼い頃に面識があった人物だ。

 

「では改めてはじめまして皆さん。いや、戦兎君と龍誠君は久しぶりだね。私は紫藤 トウジ。プロテスタントの牧師をしている」

「因みにパパは昔エクソシストとしても活動してたのよ」

 

イリナの補足を受けつつ、トウジは頷くとアザゼルが、

 

「そんでだがお前ら。今度のクリスマス。教会でクリスマスイベントをやるらしくてな。駒王町にもあるだろ?それで手伝いのスタッフに俺達が選ばれた。んでコイツがその担当ってわけだ」

「そうなります。あ、難しく考えないでください。面倒なことはこちらでしますので、皆さんには精々サンタクロースのマネをしてもらいたいのです」

 

成程と皆は頷く。何でもプレゼントを配るらしいのだが、何分手が足りないとのことで、それで今回白羽の矢が立ったらしい。そしてイリナがいて、ならばとトウジが選ばれたとのこと。

 

「丁度娘の顔も見たかった事ですし、久し振りに駒王町の様子も見たかったので、ありがたい限りでした」

 

なんて言いつつ龍誠とイリナを見ると、

 

「それでイリナ。進展具合はどうなんだい?」

「ちょ、ちょっとパパ!?」

 

突然の話題に、イリナは驚愕していると、

 

「いやほら、イリナは天使になってしまってもう孫は見れないかな〜って思ってたら、ちゃんと好きな人はできたみたいだし、ミカエル様に聞いたんだが最近は堕天せずに子供を作れる装置を開発中だという言うじゃないか。いやぁ、時代は変わったねぇ」

「もうパパ黙っててて!」

 

イリナはトウジの口を塞いで騒ぐ。しかしもう一人の渦中の龍誠は、

 

「大変だなぁイリナ」

「他人事みたいな顔してるけどお前関係だからな?」

「他人事でいたかった……」

 

と現実逃避をしていたので、現実に引き戻しておく。

 

そしてイリナに押されて後ろに下がったトウジは笑うと、

 

「本当に変わった。本当に……」

「パパ?」

 

少し寂しげな声音でつぶやき、イリナが首を傾げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ戦兎君!準備はいいかい?」

「あぁ!」

 

その後トウジは駒王町の教会の人間と打ち合わせがあると言って屋敷を出ていき、皆は戦兎の頼みで屋敷の地下のトレーニングルームに集まっていた。

 

ここは次元が歪んでおり、非常に広くで頑丈にできている。

 

そして戦兎はジーニアスフォームに変身し、取り囲むように祐斗とゼノヴィア、ロスヴァイセに朱乃が立っていた。

 

「それにしても急にトレーニングに付き合ってくれってどうしたのかしら?」

 

と呟くのは離れたところで見守るリアスだ。

 

普段戦兎はライダーシステムを使うからかトレーニング自体は比較的抑えめだ。しないわけじゃないが、それでも積極的と言うわけじゃない。

 

しかしそんな戦兎がトレーニングを申し込むどころか、前述の四人と一斉に戦うというのだ。

 

確かにジーニアスは強いが、四人同時と言うのはどういうことなのだろうか。と思っていると、

 

「何でも先日の仮面ライダージオウに変身する兵藤 一誠から貰った力を試したいんだとよ」

 

アザゼルも同じく見守りながら説明。そうしているうちに始まり、皆が一斉に戦兎に襲いかかった。そして、

 

「なっ……」

 

戦いを見ていたリアスは絶句する。

 

祐斗達は地面に倒れ荒く息をする。ボロボロだが、手加減はしていたのか傷はない。

 

そして戦兎は一人そこに立っていた。

 

「おいリアス」

 

同じく唖然としていたアザゼルはリアスに声をかけ、

 

「前にも言われてたと思うが、間違いなく戦兎は……いや、ジーニアスは確実にレーティングゲームで使用禁止にされる。あんなもん使われたら、マジで対抗策なんぞ建てられねぇよ」

 

そういうアザゼルに、リアスはただ頷く事しかできないのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんで、お前が」

 

血の海に沈む男を見下ろしながら、男は立っていた。

 

「一刀両断。すごい腕だ」

 

後ろから声を掛けたのは、一誠でその声を聞いて男は振り返る。

 

「あと一人」

「あぁ。最後の一人が日本の駒王町にいるよ」

 

駒王町。という言葉を聞き、男は反応する。

 

「さて、行こうか。君の愛する人の為にね?八重垣さん」

「オォ……」

 

八重垣と呼ばれた男は、虚ろな瞳で前を見ると歩き出す。

 

「紫藤局長……殺す」

「そうそうその調子。そしてもし俺に協力してくれたら、ちゃーんと君の愛する人も生き返らしてあげるからね」

 

一誠の囁きに、八重垣は頷く。

 

「クレーリア……クレーリアァアアアアアアア!」

 

八重垣の叫びはどこまでも轟く。

 

怒りと憎しみと、絶望と悲しみを宿して。



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復讐

前回までのハイスクールD×D Be the oneは……

戦兎「皆さん。新年あけましておめでとうございます」
龍誠「本年もよろしく頼むぜ!」
戦兎「まぁこっちはまだクリスマス前だけどな」
龍誠「いやぁ、今年もちゃんと投稿できて何よりだ」
戦兎「ま、これからもゆっくりと話は進んでいくから皆もよろしくな!」
龍誠「つうわけでクリスマスが近づく中、イリナのお父さんもやってきてイベントの準備もすることに……しかしそんな中、また兵藤 一誠が何かを計画していた」
戦兎「俺たちは無事、クリスマスを迎えられるのか!ってな感じの136話スタート!」


「この辺で良いか?」

「そうですね」

 

トウジがやってきて数日。戦兎達は着々とクリスマスイベントに向けて準備を進めていた。

 

現在は教会の中の飾り付けである。まだクリスマスまで二週間程期間はあるのだが、これは二週間もではない。二週間しかないのだ。何せプレゼントの手配に飾り付け。飾り付けだってその飾り付けるものの準備もしなければならず、どれくらいのプレゼントの準備をするのかもある程度分かっていなければならない。そして教会は教会でその業務を止めるわけには行かず、合間を縫って準備を進めなければならないのだ。

 

戦兎達も学校があるし、悪魔の仕事もある。その関係で少し準備が遅れ気味だった。

 

「すみません。皆さんのお手を煩わせてしまって」

 

と頭を下げるのは今回の責任者でもあるトウジで、戦兎とギャスパーはイエイエと首を振る。丁度手が空いていたのは、戦兎とギャスパーと龍誠とイリナ。他は用事があったりで少し遅れて合流する予定だ。

 

そして龍誠とイリナは買い出しに出ていて、

 

「結構買ったなぁ」

「そうだね」

 

それぞれ大量の荷物を持った二人。悪魔と天使の二人は人間を遥かに超えるパワーを持っているので、軽々と持っているが、結構な重量である。

 

「しかしまさか悪魔になって教会でクリスマスイベントの準備をするとはなぁ」

「何があるか分からないよね」

 

そう言って二人は笑い合う。

 

「ほんの少し前まで天使と悪魔がこうして買い物だって考えられなかったし」

 

そう。馴染んではいるが、こうして他の勢力同士が一緒にいるのは、ここ最近の話だ。

 

「だけどこれからはこれが普通になるんだもんな」

「そうだね。話したり、こうして買い物したり、一緒に遊んだり一緒に色んな事をする時代になるんだろうね」

 

すぐにと言うのは難しいかもしれない。だが悪魔も天使も寿命が長いのだし、のんびり気長にやっていければいいだろう。

 

「皆イリナみたく誰とでも仲良くできれば良いんだけどな」

「そうでもないよ?私だって苦手な人とかいるし」

 

龍誠にとってそれは初耳だった。イリナは誰とでも友達になれるタイプだと思ってたし、実際見ていてはそういうふうに写っていた。しかし実際は違うという。

 

「今は違うけど、例えば初めて会った頃のリアスさんは苦手だったしね」

「そうなのか?」

 

これまた意外だった。駒王町に来てからイリナはオカルト研究部に入り浸りだったし、皆と上手くやっていたと思っていた。すると、

 

「だってあのグレモリー家の次期当主のお嬢様で上級悪魔。龍誠君にとっては主で今は恋人で身近な存在だったかもしれないけど、どうしても気後れしてたからね」

 

龍誠としてはあまり気にしたことは無かったが、外から見るとそんなものなのかも知れない。ましてやイリナは天界サイドの者としては一人だ。

 

悪魔と言う共通項がある自分たちとは違い、そういった意味では大変だったのかもしれない。

 

アザゼルはそう言うの全く気にしないだろうが。

 

「すまんイリナ。俺がもっと気を使ってやるべきだったな」

「良いって。ゼノヴィアやアーシアさんがいたし、交流していく中で良い共通の話題があったからリアスさんとも仲良くなれたしね」

 

二人の共通の話題とはなんだろう。そう龍誠が首を傾げると、

 

「龍誠君と戦兎君だよ」

「俺と戦兎?」

 

そうそう。とイリナは頷き、

 

「特にリアスさんは龍誠君の昔の話とかすると喜んでくれてね。お陰で仲良くなれたんだ」

「そうだったのか」

 

通りで最近リアスに過去の恥ずかしい失敗談とかがバレてるとは思っていたが、てっきり戦兎がバラしてるのかと思いきや犯人はイリナだったらしい。

 

「ホントは教えたくなかったんだけどね」

「え?何で?」

 

意味がわからず、龍誠は首を傾げてしまう。そんな様子にイリナは、

 

「だって初恋の男の子との思い出だもん。独り占めしたいって思うじゃん」

「ふぅん」

 

最初は何気なく聞き流し、ふと引っかかりを覚え、

 

「え?初恋?」

「そうだよ?まぁ龍誠君ってば私を男の子だと思ってたみたいだから気付いてなかっただろうけどね」

 

これまた初耳で、龍誠はどう反応するべきか悩む。とはいえこの口調的に過去の話しでは?と思っていると、

 

「驚いたなぁ。久々に駒王町に戻ってきて、初恋の男の子との感動の再会!って思ったら悪魔になっててさ~。結構ショックだったんだよ?」

「そ、そうか」

 

イリナは結構夢見がちと言うか、少女漫画チックな展開を好む傾向があるタイプだ。そう考えると、確かにあの時の再会はイリナにとっては、心躍る展開だったのだろう。しかし再会してみたらその幼馴染は当時はまだ敵対関係にあった悪魔。

 

「運命って残酷よね」

 

と言いつつ結構それはそれでノリノリそうな感じはあるが、敢えては突っこまないでおく。しかし、

 

「でもね?最近思うの。一方は天使。もう一方は悪魔。運命の悪戯によって道を違えた二人の幼馴染は、再会し種族の垣根を越えて結ばれるの。凄くロマンチックじゃない?何よりこれからの世界にピッタリでしょ?ミカエル様のAと悪魔の仮面ライダーのカップルなんてさ」

「何かそう言う打算でカップルになるのは……」

 

と言いつつ龍誠はイリナの目を見て固まる。イリナの瞳は不安そうに揺れていた。

 

「そ、そんなの建前に決まってるじゃん」

 

キュッと龍誠の服の裾を摘み、目を覗き込んでくるイリナに、龍誠は息を呑む。

 

「あのさ龍誠君」

 

そう口をイリナが開いた次の瞬間、

 

「ほぅほぅ。イリナもグイグイ行くじゃないか」

「はわわ。イリナさん積極的です」

『……』

 

その空気をぶち壊す人影が二つあった。

 

「何やってんだゼノヴィア。アーシア」

「む。見つかってしまったか」

 

隠れてるつもりだったのか?と電柱の影から出てきたゼノヴィアとアーシア突っ込みつついると、

 

「ちょ、ちょっとなんで二人がここにいるの!?」

「先程用事が終わったので教会にゼノヴィアさんと向かってたんですけど」

「丁度二人が見えてね。少し観察させてもらったんだ」

 

少しバツが悪そうなアーシアと、全く悪いと思ってなさそうなゼノヴィア。そんな対象的な二人にイリナは怒っていると、

 

「そう言えばゼノヴィアとアーシアはなんの用事だったんだ?」

 

龍誠はそう言って空気を変えようとすると、

 

「私は部長さんから引き継ぎの件で」

 

と言われて納得した。もう十二月に入り、どこの部活動も三年は引退だ。勿論オカルト研究部にこれからも出入りするが、リアスや朱乃も同じで、次期部長にはアーシアの名前が上がっている。それに関しては龍誠も含め他の面々も納得しているのだが、アーシア自身がそれに難色を示していた。

 

本人曰く、グレモリー眷属に今年から入った自分より、祐斗やギャスパーの方がいいんじゃないかとのことだが、ギャスパーは後輩であり、何より部長というタイプじゃないし、祐斗も他人を引っ張るタイプではない。

 

その点アーシアは意外と言うと失礼だが、人当たりがよく人間関係の潤滑油になるのが上手い。上に立っても充分活躍できるタイプだ。

 

だが本人にその自覚がなく、どうしたものかとリアスもボヤきつつ交渉中と言ったところだった。

 

一方ゼノヴィアは、

 

「私はちょっと授業で分からなかった所を先生に聞きに行ってたんだ」

 

そう。何でも最近ゼノヴィアは勉強に目覚めたらしい。先日のテストも何と平均90点以上を叩き出し、現国に至っては戦兎の87点を超える96点を取っていた。そのせいで戦兎はゼノヴィアより俺は馬鹿だったのかと言って2日ほど寝込んでいたが。

 

「勉強熱心だなぁ」

「あぁ、教会時代は戦ってばかりだったからね。知らない知識を得ると言うのがこんなに楽しいとは知らなかったよ」

 

戦闘は未だに全力押せ押せ脳筋スタイルの癖に、意外と勉学ではインテリ方面の才能を発揮しているゼノヴィア。

 

元々は色んな事に興味を持っていきたいと言う思いが始まりだったが、それがこう言った開花を見せるとは。

 

(戦兎のやつも色々考えてるみたいだし、俺も長生きするんだから色々見つけねぇとなぁ)

 

悪魔は長命だ。だからこそ生き甲斐がないと体は生きてても心が死んでしまう。

 

(とはいえ兵藤 一誠との戦いに蹴りをつけねぇとどうにもなぁ)

 

なんてことを考えながら、龍誠が道を曲がった時、少し先の方に誰かが立っていた。そしてそれを見た次の瞬間、

 

『っ!』

 

思わず龍誠はベルトを装着し、ゼノヴィアはエクスデュランダルを、イリナは天使の羽を出して臨戦態勢を取った。この辺りは人通りが殆ど無い場所なのが幸いだ。

 

「あれは……」

 

アーシアですら、何かしらの嫌な物を感じ取ったらしく、体を震わしている。

 

「おっと、つい殺気が漏れてしまった」

 

男はそう言って視線をイリナに向けると、

 

「私は八重垣 正臣。そちらの天使が紫藤 トウジ。いや、今は局長に昇進したんだったかな。まぁどうでもいい。あの男の娘だろう?」

「パパを知ってるの?」

 

イリナの問い掛けに、八重垣は笑みを浮かべる。

 

「知ってるとも。私はあの男に全てを奪われたんだからね。だから君を殺せば……私と同じ思いを味合わせることができるかな?」

 

と言いながら、八重垣は剣を手にこちらに突っ込んで来た。

 

「くっ!」

 

それをゼノヴィアはエクスデュランダルで止め、

 

「オラァ!」

 

クローズマグマナックルをつけた龍誠の一撃が八重垣の頬を捉え、そのまま殴り飛ばした。

 

「大丈夫か!?ゼノヴィア!」

「あぁ、だがあの八重垣と言うやつが持っている剣。あれは危険だ。そんな気がする」

 

成程な。と龍誠は答えつつ、

 

「変身!」

《極熱筋肉!クローズマグマ!アーチャチャチャチャチャチャチャチャチャアチャー!》

 

クローズマグマに変身すると、八重垣はユラリと立ち上がる。

 

「……な」

「なに?」

 

何かを呟いた八重垣に、龍誠は顔を顰めると、

 

「邪魔をするなぁああああああああ!!」

『っ!』

 

突如剣から触手が伸び、八重垣の腕に絡みつくと、八重垣の体が音を立てながら変質し、先程までの人間と同じ姿から全く違う異形の怪物になった。

 

「殺すんだ。アイツを殺すんだ。身も心も絶望に沈めて殺すんだ。そしたらまたクレーリアが帰ってくる」

「クレーリア?」

 

聞いたことのない名前に、龍誠が首を傾げるが、

 

「だから消えろぉおおおおお!紫藤 トウジの娘ぇえええええ!」

『っ!』

 

空気が震える程の怒声に、皆が身体をこわばらせる中、八重垣は爆走。

 

「狙いはイリナか!」

 

龍誠はビートクローザーを構え、八重垣の剣とぶつけ合う。しかし、

 

「何だ!?」

 

刀身をぶつけ合い、押し合いになった時、八重垣の剣から触手がビートクローザーを這うように伸びると、龍誠の体に巻き付いてきた。

 

「気持ちわりぃ!」

 

それを咄嗟に全身に炎を纏わせ、触手を焼き払って距離を取る。

 

「なんだあれ」

「あれは……魔剣?いや、聖剣か?」

 

ゼノヴィアは目を細めて八重垣の剣を見た。

 

「何というか、どっちの性質も感じる。木場の聖魔剣に似たオーラだ。魔剣の特性も聖剣の特性も感じる」

「だけどあれどう見ても聖剣ではないだろ!?」

 

明らかに見た目からして禍々しいし、かなり歪なフォルムだ。すると、

 

「いや、それは元々聖剣だぜ?」

『っ!』

 

突如現れたのは、白髪と長いひげを生やした老人だ。そしてその老人は、龍誠の顔を見てニンマリ笑うと、

 

「久し振りだねぇ。万丈 龍誠君」

「え?」

 

急に懐かしむように声を掛けられ、何の事かと記憶を遡る。しかし全く見覚えがない。すると老人は、

 

「あぁ、この姿で会うのは初めてだったか」

 

そう言って取り出したのは、エボルドライバーで、

 

『なっ!』

 

龍誠達が驚く中、老人はそれを腰に装着し、ボトルを取り出して振ると、

 

《不死鳥!ロボット!エボルマッチ!Are you ready?》

「変身!」

《フェニックスロボ!フッハッハッハッハ!》

 

次の瞬間、老人の姿が赤と黒を基調とした機械的な姿に変わった。そしてその姿に龍誠は見覚えがあり、

 

「お前はユーグリットとの戦いのときに邪魔してきた確かリゼヴィム!!」

「覚えていてくれて何よりだよ万丈 龍誠」

 

両腕を広げ、老人は笑う。

 

「因みにこの姿は仮面ライダーグリスブレイク。宜ぴく〜」

「何がグリスブレイクだ。下らない」

 

リゼヴィムと名乗った老人が名乗ると、今度は聞き馴染みのある声だった。しかし初めて聞く程低く、冷たい声音だった。

 

「おやおやヴァーリ君じゃないか。そんなに僕ちんに会いたかった?」

「あぁ、ずっと探していたぞ」

 

ヴァーリは龍誠達を見ず、リゼヴィムを見る。

 

「知り合いか?」

「まあな」

 

龍誠の問い掛けにヴァーリは答えつつ、

 

「アイツはリゼヴィム・リヴァン・ルシファー」

 

ルシファーと言う名前に、他の皆はハッとすると、

 

「血縁上は、俺の祖父にあたる男だ」

「そうでーす!孫がいつもお世話になってまーす!なんてね〜」

 

ゲラゲラと笑うリゼヴィムに、ヴァーリは苛立ちを見せた。

 

「変わらないな。その下劣なところは」

「そう言う君こそどうなんだい?ヴァーリ君。少しは強くなったか?ママに庇われたあの頃よりはさぁ?」

「黙れ!」

《ロボットゼリー!》

 

ヴァーリはリゼヴィムに向かって走り出し、スクラッシュドライバーを腰につけてゼリーを装填してレバーを下ろす。

 

「変身!」

《潰れる!流れる!溢れ出る!ロボットイングリス!ブラァ!》

 

仮面ライダーグリスに変身したヴァーリは、リゼヴィムを殴る。だがリゼヴィムはビクともしない。

 

「無駄だよヴァーリ君。君じゃ俺には傷一つけられない」

「うるさい!」

 

再びリゼヴィムに拳を叩き込むが、全く効いている様子はなく、

 

「クソ!クソ!」

「だから無駄だってお前だって知ってるだろ?俺の能力をさぁ!」

 

リゼヴィムは何度も殴り続けるヴァーリに向け、手に炎を纏わせて殴り飛ばした。

 

「ガハッ!ゲホッ!」

「ヴァーリ!」

 

地面を転がるヴァーリの元へ龍誠は駆け寄る。

 

「お前だって知ってるだろう?俺の神器無効(セイクリット・ギア・キャンセラー)神器(セイクリットギア)の力を無効化する力だ」

「だがヴァーリは神器(セイクリットギア)を使ってない筈だ!」

 

しかし龍誠の言葉に、ヴァーリは首を横に振る。

 

「いや、もしやとは思ったがやはりか」

「どう言うことだ?」

「元々ライダーシステムは戦兎の神器(セイクリットギア)である瓶詰め(ボトルチャージ)を使って作られたフルボトルを使っていた。そのフルボトルの成分をゲル化して、力を高めたものが俺のロボットゼリー。つまりだ。ライダーシステムは神器(セイクリットギア)の力を宿したものってことだ。そうなれば、アイツの力の適用範囲内となる」

 

そんなのありかよ……とボヤく龍誠だが立ち上がると、

 

「だったら俺がぶん殴る!」

「あ、おい!お前のクローズマグマだってライダーシステムだから同じことだぞ!」

 

ヴァーリの静止も聞かず、龍誠はクローズマグマナックルを手に付け、リゼヴィムを殴ろうと拳を振りかぶった。

 

「オラァアアアアアア!」

「ハッハッハ!無駄だって言うのに頑ばブベェ!」

 

リゼヴィムは余裕綽々と言った風情で立っていたが、龍誠の一撃を喰らって吹っ飛んだ。

 

「は?」

「何だよヴァーリ!俺のクローズマグマは普通に効くじゃねぇか!」

 

ヴァーリは意味がわからず困惑する。するとリゼヴィムは立ち上がり、

 

「成程。既にクローズマグマはライダーシステムの枠から外れた力だったな」

 

リゼヴィムは瓦礫から立ち上がりつつヘラヘラ笑う。

 

「何笑ってやがんだ!仕掛けが分かればお前の能力なんて怖くねぇぜ!」

 

そう言って龍誠はビートクローザーを片手に再びリゼヴィムに突進し、斬り掛かった。

 

「オラァ!」

「うぉ!」

 

龍誠の斬撃はリゼヴィムの片腕を切り落とす。

 

「グッ!」

 

リゼヴィムは片腕を抑え、呻きながら後退った。

 

「何だお前!能力頼りで弱いじゃねぇか!」

「へぇ?そうかな?」

 

すると突如、リゼヴィムの切り落とされた腕から炎が燃え上がり、その炎の中から腕が現れた。

 

「はぁ!?」

「言い忘れてたな。俺のライダーシステムは少し特殊でね。フェニックスフルボトルの力により、俺は一時的に異常な再生能力を得ているのさ。これにより俺はどんな攻撃を喰らっても死なない。バラバラにされたとしてもな」

 

そう言ってリゼヴィムは全身から炎を撒き散らし、その炎をフェニックスの形状に変えて突っ込んでくる。

 

「くっ!」

 

龍誠はそれを横に転がって避けるが、

 

「オォオオオオオオ!」

「しまっ!」

 

その隙に八重垣がイリナに向かって突進し剣を振り上げた。しかし、

 

「何っ!?」

 

突然八重垣の腕が黒い靄のようなもので覆われ、動きを止められた所に、

 

「ハァ!」

《フルフルマッチブレイク!》

 

ラビットラビットフォームに変身した戦兎の一撃で八重垣を吹き飛ばした。

 

「ギャスパー!戦兎!」

「ったく。何してんだか」

 

戦兎は呆れた声を出しつつも、イリナと八重垣の間に割って入る。

 

「成程。兵藤 一誠の新しい仲間か」

「なんか嫌な感じがします」

 

戦兎の言葉に、腕から黒い靄みたいなものを出しながらギャスパーは答え、

 

「もう来たのかよ。厄介だねぇ」

 

なんて言ってリゼヴィムは肩を竦めた。しかし八重垣は、

 

「どけぇえええええ!」

『っ!』

 

咆哮と同時に、こちらに突っ込んでくる。

 

「ちぃ!」

《鋼鉄のブルーウォーリア!タンクタンク!ヤベーイ!ツエーイ!》

「戦兎!そいつに触れるな!」

 

咄嗟にタンクタンクフォームになり、突っ込んできた八重垣を止める。しかし龍誠の叫びに、戦兎は困惑した次の瞬間、八重垣の体から無数の触手が伸び、戦兎の身体を絡め取ると、

 

「なっ!」

 

戦兎の体を引きずり込み、そのまま呑み込んできた。

 

「不味い!」

「先輩!」

 

するとギャスパーは黒い靄を出し、戦兎の体だけ包むようにすると、八重垣の体から無理矢理引き剥がす。

 

「サンキューギャスパー」

「いえ。先輩こそ大丈夫ですか?」

 

あぁ、と頷きつつギャスパーの頭を撫でて立ち上がった戦兎は、

 

「早速実戦投入させてもらうか」

 

と言って、ジーニアスフルボトルを取り出した。すると、

 

「随分集まったじゃないか」

「兵藤 一誠」

 

空間が歪み、その中から現れたのは一誠で戦兎は睨みつけた。

 

「元気にしてたかぁ?なぁ戦兎」

「お陰様でな」

 

二人の視線が交差する中、先に一誠は肩を竦めると、

 

「まぁ良いさ。帰るぞ。八重垣君。リゼヴィム」

「まだだ。まだ紫藤 トウジの娘を殺していない」

 

全身から殺気を滲ませながら進もうとする八重垣に、まだ早いと言って一誠は止めると、

 

「ただ殺すだけでいいのか?お前の無念はその程度で収まるのか?違うだろ?アイツを殺す場はちゃんと用意してやる。最高の舞台と最高の演出があってこそ、復讐は映えるんじゃないか?」

 

そう言われて八重垣は止まると、

 

「分かった。一度引こう」

「そうこなくっちゃ」

 

そういうが早いか、一誠達は撤退し始めた。しかし戦兎達はあえて動かない。

 

ここは人通りが殆ど無いとはいえ、普通の道だ。ここで本格的にやり合えば、余計な被害を生む。

 

「それじゃな……って忘れてた。おいギャスパー!体は大丈夫か?」

「っ!」

 

突然の一誠の問い掛けに、ギャスパーはビクッと体を震わせ、カァっと顔を赤くすると、キッと睨み付ける。普段の彼らしからぬ光景に、戦兎は少しばかり驚いていると、

 

「成程。そんじゃ改めて。チャオ」

 

一誠はニヤニヤしながら姿を消し、それと共に八重垣やリゼヴィムも消えていった。

 

「大丈夫かヴァーリ」

「あぁ」

 

少し暗い表情を見せるものの、概ねヴァーリは落ち着いていそうだ。

 

「その……アイツが前に言ってた」

「あぁ、母を死なせる原因となった男だ。あいつが父を唆し、俺と母に暴力を振るうように仕向けた元凶」

 

しかしそう言いながらヴァーリは龍誠を見ると、

 

「さっきは悪かったな。冷静さを失ってた」

 

そう言ってヴァーリが頭を掻く中、

 

「ギャスパー。さっき兵藤 一誠が言ってたことだけど、何かあったのか」

「い、いえ何も」

 

明らかに何かあった表情を浮かべるギャスパーだが、戦兎はため息を吐くと、

 

「大丈夫なら良い。でも何かあるならすぐに言えよ?」

「は、はい」

 

俯きながら答えるギャスパーに、戦兎はヤレヤレと肩を竦めた。取り敢えず大丈夫だと言うなら、大丈夫ということにしておいたほうが良さそうだ。

 

(見たところ体調不良の兆候はなさそうだしな)

「しかしあの八重垣って何者なんだ?」

 

そんな中、ゼノヴィアがそう呟くと、

 

「私が説明しましょう」

 

と言って、皆が振り返るとそこには、肩でゼィゼィと息をするトウジがいた。

 

「年は取りたくないものですね。昔であればこの程度ですね。現役の頃はこれくらい走ったくらいで疲れなかったものなんですが」

 

息を整えつつ、トウジは戦兎達を見る。

 

「一度教会にお集まりください。皆さんにお話いたします。この街で起こった悲劇を……いえ、私の罪を」




仮面ライダーグリスブレイク

パンチ力40t
キック力46t
ジャンプ力50m
走力100m5秒

リゼヴィムがエボルドライバーにフェニックスフルボトルとロボフルボトルを使って変身した姿。

スペック自体はエボルドライバー系ライダー最弱だが、最も厄介なのは、フェニックスフルボトルの力を過剰に発揮することによって得た、異常再生能力で体が一部でも残っていればそこから再生することが可能。

更にリゼヴィムの神器無効《セイクリット・ギア・キャンセラー》も使用可能で、神器(セイクリットギア)自体の能力がそもそも効かず、万が一それを突破しても再生能力と言う二段構えになっており、原作から神器無効《セイクリット・ギア・キャンセラー》を突破されるとリゼヴィムは弱いと言うのを知っていたため、兵藤 一誠はこの能力を与えた。

但し、一部でもあれば再生可能と言うことは、一部も残さない攻撃には弱く、実はリアス等が使う滅びの魔力には弱いものの、狡猾なリゼヴィムを一発で肉片一つ残さず消し飛ばすと言う無理ゲーをクリアしなければならない。


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前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「突然襲いかかってきた八重垣さんとリゼヴィム。彼らは案の定兵藤 一誠の仲間だったわけだが……」
龍誠「しかし八重垣さんのことあの力。やばいんだけどなんか悲しい感じだったぜ」
戦兎「それが明かされるのが今回のお話だ」
龍誠「つうわけで137話スタートだ!」


「アレは10年前の事です」

 

そんな言葉からトウジは始めた。

 

さて、先程の八重垣の襲撃から一時間ほど経ち、戦兎やあとから合流したリアス達は全員教会に集められていた。

 

今回の襲撃。そして八重垣とは何者なのかを含めて話すために。

 

「彼は元教会に所属する剣士です。優秀な人間でしてね。人格も含めて私も全幅の信頼を寄せてました。しかし十年前にこの地に赴任した際、当時駒王町を縄張りとしていた悪魔と恋に落ちてしまいました」

 

その言葉に皆が息を呑んだ。最近ならまだしも、十年前に悪魔と教会側の人間が恋に落ちるなど、あってはならない自体である。

 

「勿論私達は説得を試みました。しかし八重垣君の意思は堅く、説得が難航していた所悪魔側から接触があり、きっと二人は恋に落ちたばかりで少し暴走しているのだと、だから少し強引にでも引き離すべきだと。そう言われ力づくで引き離しに掛かりました。ですがその中両者から抵抗を受け、粛清という形で八重垣君達二人を殺しました」

 

どちらから始めたか分かりません。とトウジは言いながら、

 

「あの一件は悪魔と教会の両者が話し合い、それぞれが互いの人物の説得に当たっていました。ですがどちらも説得はできず、粛清という形を取ることにしました」

「そんなにヤバイ事だったのか……悪魔と教会の人間の恋って」

 

龍誠が思わずそう呟くとトウジが、

 

「それもありますが、八重垣君と恋に落ちた悪魔と言うのが不味かった」

 

不味かった?と皆で首を傾げると、

 

「当時接触してきたのは悪魔側で言う大王派。そしてその先頭にいたのがバアル家の初代当主でした」

『っ!』

「そんな。初代バアルはもう隠居して長いはずよ。それがわざわざ出てくるなんて……」

 

リアスは言いながら、一体八重垣は誰と恋したんだと思うと、

 

「女性の名前はクレーリア・ベリアル。現レーティングゲームチャンピオン。ディハウザー・ベリアルの従兄妹に当たる女性です」

『っ!』

 

名前を聞き、皆が思わず息を呑む。

 

「こちらとしても、チャンピオンが出てくれば無事じゃ済まない。いや、下手すれば壊滅しかねない。同時に悪魔側も転生悪魔の台頭で立場がなくなっていた中、レーティングゲームチャンピオンであり古い純血の悪魔の一族でもあるベリアル氏の従兄妹が教会の人間と恋に落ちたなんて話が公になれば、騒ぎになってたでしょう」

 

そんな互いの思惑も重なり、粛清は行われた。そうトウジは言った。

 

「そしてその後関係者は全員それぞれ報酬と地位を貰い、新たな赴任先を告げられました」

「もしかして急にイリナが引っ越したのって」

 

戦兎が聞くとトウジは頷いて、

 

「はい。それが理由です」

 

さて、とトウジは言いながら少し席に深く腰を掛け直し、

 

「これが八重垣君の真実です。本来であれば私は聖職者を名乗る資格なんてありません。血に汚れ、同僚を殺して地位と金を受け取った最低な男です」

 

俯きながら、トウジはそう呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ」

「元気なさそうだな」

 

テラスでため息をついていたイリナの所に、龍誠はやって来て声をかけると、イリナは振り返る。

 

「うん。色々驚いちゃって」

 

だろうな。と龍誠は隣に立つと、一緒に夜空を見上げた。

 

「八重垣さんのことどう思う?」

「どうって?」

 

イリナの質問の意図が分からず、龍誠は聞き返すと、

 

「八重垣さんの気持ち。分かる気がするの。本当に好きだったのに立場の違いから引き裂かれて」

「あぁ」

 

そう言う事かと龍誠は頷くと、

 

「確かにな。でも好きにさせるわけにもいかないだろ?」

「うん」

 

首を縦に振るイリナに迷いはない。

 

「私ね。パパがやった事は最低だと思ってる」

 

でもね。とイリナは続け、

 

「そうしなければ、きっと私達が危なかったと思う」

 

粛清も、その後の報酬も受け取らなければ、きっとその泥は別の人間がかぶり、今度はその対象は自分達に向いていた筈だ。

 

「私はパパに守られてた。それで許されるわけではないけど、同時にそれに文句を言う資格も私にはないんだ。出来ることは八重垣さんを向き合うことだけ」

 

そう言ってイリナは天使の羽と輪っかを出して、

 

「それがパパに守られて育ち、ミカエル様のAになった私のやることだと思うんだ」

「そうだな」

 

龍誠はイリナの言葉に笑みを浮かべ、

 

「俺もやるよ。八重垣さんを止めようぜ。あの時とは違う。悪魔も天使も今は手を取り合って一緒に戦えるんだからな」

 

龍誠の言葉に、イリナはうんと頷くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……」

 

一方ギャスパーは大きな息を吐く。少し苦しそうなため息は、見方によっては非常に色っぽい。そんなギャスパーに後ろからやってきた戦兎が、

 

「おいギャスパー。大丈夫か?」

「ぴっ!」

 

驚いたのか飛び上がったギャスパーは慌てて戦兎と距離を取る。

 

「あー。俺なんかお前になんかしたっけ?」

「い、いえ先輩は何も。問題は僕の方にあるといいますか……」

 

歯切れの悪いギャスパーに、戦兎は首を傾げた。

 

「何か兵藤 一誠も言ってたし、それが関係してるのか?」

「それは、その」

 

何かある。そう思いつつも、ギャスパーに思いっきり距離を取られ、

 

「す、すいません先輩!僕行きます!」

「あ、おい!」

 

そう言ってギャスパーは全速力で何処かに行ってしまった。

 

「あら戦兎。なんかすごい速さでギャスパーが走っていったんだけどどうかし……って戦兎!?」

 

するとそこにギャスパーの逃げた方から、入れ違いでやってきたのはリアスで、少し驚いたような表情を浮かべながらやってきた彼女は、

 

「おれ、ギャスパーになんかしましたかね?」

「ど、どうしたの急に!?」

 

その場にいきなり膝をついて倒れた戦兎にリアスは駆け寄りつつ、困惑するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっちゃった……」

 

ギャスパーは屋敷の自分用に与えられた一室に飛び込むと、自己嫌悪に襲われながらその場に座り込んだ。

 

「明日からどういう顔して戦兎先輩にあえばいいだろう……」

 

そう呟きながらも、取りあえず着替えようと服を脱ぎながら考える。だがいい考えは浮かばない。

 

「そもそもこんなこと言えないしなぁ」

 

ギャスパーは来ていたブラウスを脱いで行くと、胸に巻いていたサラシを外す。

 

するとその下には明らかに女性的な膨らみがあった。それは明らかにギャスパーにはなかった筈のもので、

 

(ちゃんとついてる……)

 

これを見ると思わず自分の股を確認してしまう。そんな行為をもう何度も繰り返していた。

 

「僕どうなっちゃうんだろう」

 

ギャスパーは備え付けのベットに腰を掛けると、そんなことを呟きつつ、大きなため息を吐いた。




ギャスパーの件。なんか気づいたら書いてたんよ。まさかスタンド攻撃!?


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変異

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「八重垣の過去を聞き、それぞれ覚悟を決める中、ギャスパーの様子がなんかおかしい」
龍誠「なんかお前やったんじゃないのか?」
戦兎「まるでいつも俺がなんかしてるみたいな言い方はやめてもらおうか?」
龍誠「だってそれ以外思い付かねぇもん」
戦兎「まぁそれもそろそろ判明するからな。って感じの138話スタートだ!」


この異変が起きたのはジオウの一誠との一件が起きる少し前の事だった。

 

なんか胸がムズムズするなと思っていた中、どんどん胸が膨らみをもってきたのだ。

 

最初は気のせいかと思った。だがどんどん大きくなる胸は無視できる物ではなくなり、サラシで潰して隠すようになった。しかしそれは結構苦しく、ため息ばかり出ようになったのは余談として、

 

「うぅ」

 

廊下で呻きながらギャスパーは歩く。

 

自分の体を隅々まで調べて分かったことがある。それは胸だけではなく、それ以外の部分でも女性的な部位や特徴が現れ始めているということだ。だが同時に、男としての部位も残っていた。

 

しかし胸から始まったこの変化は日に日に加速していき、最近は隠すのも一苦労だ。何て思っていると、

 

「おうギャスパー。おはよう」

「は、はひ!」

 

朝、戦兎に会うと飛び上がってしまう。これは別に戦兎が嫌いになったわけじゃない。寧ろ逆だ。

 

(戦兎先輩がカッコ良すぎる!)

 

そう。この肉体の変化と同時に、精神もそれに引っ張られているからなのか、戦兎が異様にかっこよく見えるのだ。

 

見てるとドキドキする。ドキドキしてギューってしてそして……と考えた所でギャスパーはブルブルと首を振る。

 

これはいけない。何故なら戦兎は自分が男だと思って接している。そんな相手に自分の今の状況を伝えたら、戦兎だから嫌われはしないだろうが、それでも困らせるだろう。そんなことは出来ない。

 

それと同時に、未だ自分の中でどうすればいいのか分からなかった。男としての自分と徐々に大きくなりつつある女性としての自分。二つの自分が混ざり合って、グチャグチャしているのだ。

 

しかし、

 

「どうした?」

 

ギャスパーの髪を撫で、戦兎は声を掛けた。よくあるいつものことだったはずだが、ギャスパーにとっては違う。

 

頬が紅潮し、耳まで真っ赤になってしまった。そんなギャスパーに戦兎は驚き、

 

「おいおい。風邪か?」

「いやあの違くて」

 

と言いながら後退ったとき、ギャスパーは足を引っ掛けて転んだ。

 

「ギャスパー!」

 

そして戦兎はギャスパーを助けようと手を伸ばしてギャスパーを掴まえるが、無理して掴まえたためかバランスを崩し、そのままギャスパーを押し倒すような形になりそうになるが、

 

「くっ!」

 

咄嗟に体を捻った戦兎は、ギャスパーを抱き締めて自分を下にするように転んだ。

 

「いつつ。大丈夫か?ギャスパー……ん?」

 

ギャスパーを抱き締め、戦兎は何か違和感を覚えた。

 

何かお腹に当たる柔らかな感触。そう、例えるなら水饅頭と言うか水風船というべきか。

 

「なんだコレ」

 

戦兎は悪気なくその水饅頭の正体を知るべくそれに手を伸ばし掌で掴む。

 

「んっ!」

「……」

 

ギャスパーの口から漏れる艷やかな声に、思わず戦兎は固まり自分の手の先を見た。

 

その先にあったのはギャスパーの胸だ。だがそれは転んだ拍子にボタンが弾け、サラシがズレて顕になったもので、戦兎は自体が理解できず二、三度と揉んでしまう。

 

「ギャ、ギャスパー?」

 

少し自体を飲み込み、どう言う事?とギャスパーを見ると、顔を真っ赤にしたギャスパーはワナワナと体を震わせ、

 

「イヤァアアアアアアアアアア!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぅん」

 

アザゼルはカチャカチャと弄っていたパソコンの手を止め、コーヒーを口に運ぶ。

 

「チェックメイト」

「な!ま、待ってくれ木場!」

 

それもう5度目だよ?とゼノヴィアに返す祐斗だが、なんだかんだ言いつつ待ってやるのだろう。いつもの光景だ。

 

「この服もいいわね」

「これも良いですね」

 

二人でファッション紙を見るリアスとアーシア。これもいつもの光景。

 

「おら勝ったぁ!」

「ふざけんな!」

「クソ!」

「負けたか……」

 

龍誠・匙・ヴァーリ・サイラオーグの四人でゲーム大会。いつもだと戦兎も参戦しているが、今は丁度席を外している。

 

「姫島様。こちらの茶葉は使っても宜しいですか?」

「えぇ、構いませんわ」

 

では失礼して。と厨房に立っていた朱乃に声を掛けてからフウは紅茶を淹れていた。

 

「いやぁ、豊作でしたねぇ」

「また百均巡りですか?」

「これだけ買ったら百均でも意味がない気が……」

 

趣味の百均巡りから帰ってきたロスヴァイセと、その買ってきた量に引くイリナと小猫。

 

なんてことのない日常の一コマだ。

 

だがこの面々にこの世界の命運が掛かってると言っても過言じゃない。兵藤 一誠は目の前の皆を巻き込むように事件を起こしている。それがハイスクールD×Dと言う話の流れだからだろう。

 

だが不安に思うときがある。皆にはもっと普通の生活を営む権利があったはずだ。普通の高校生として生きてて良かったはずだ。だがそれを奪われ、戦いに次ぐ戦いを強いられている。

 

(兵藤 一誠との戦い。早く終わらせねぇとな)

 

等と黄昏れていた次の瞬間、

 

「イヤァアアアアアアアアアア!」

『っ!』

 

突然響いた悲鳴に、皆が瞬時に臨戦態勢に入った。

 

そして部屋を飛び出すとそこには壁にめり込んだ戦兎と、その戦兎を必死に壁から引っ張り出そうとするギャスパーがいた。

 

「ちょっと一体何が……え?」

 

リアスが駆け寄ると、ギャスパーを見て固まる。思わず顔と胸を何度も視線を上下させて見て、

 

「ぎゃ、ギャスパー?」

「……」

 

ギャスパーはプルプルと体を震わせ、

 

「いぃいいいいいいやぁああああああ!」

「ちょっ!」

 

次の瞬間ギャスパーの全身から黒い靄が溢れ出す。

 

「て、撤退!」

 

リアスは走り出しながらそう叫び、皆も慌ててその場から走り出す。

 

その後、パニックになったギャスパーが落ち着くまで三十分ほど、皆で屋敷中を逃げ回ることになったのは余談だ。



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未知の世界

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「八重垣さんとトウジさんの因縁を聞き、覚悟を新たにする俺達だったが、ギャスパーに異変が?」
龍誠「いやぁ。お前も大変だなぁ?」
戦兎「他人事だと思って……」
龍誠「だって他人事だしな〜」
戦兎「ったく。そんなわけでギャスパーとの関係も気になる139話スタートだ!」



「それで?ギャスパーに一体何が起きたの?」

 

ギャスパーがパニックを起こした日の夜。皆は集まるとリアスから問うと、アザゼルは口を開いた。ギャスパーは現在別の部屋にいる。

 

「あーそうだな。色々検査したんだが……うん。取り敢えずだな。アイツは今男であり女ってことだ」

『……はぁ?』

 

訳が分からず、思わず皆で顔を見合わせる中、アザゼルは言葉を続ける。

 

「どういうわけだか分からんが、アイツには男女両方の特性が現れてる。まぁ生々しい話をすれば、乳もチ○コもある」

「やめろ!」

 

スパコン!とヴァーリが思わずアザゼルを引っぱたき、アザゼルはイッテェと悲鳴を上げつつ、

 

「どういう原理か分からねぇ。性別を入れ替えるなんざやりようは幾らでもあるしな。だが誰がこんなことしたかはわかる」

 

それは言われるまでもない。兵藤 一誠だろう。こんなふざけた真似をするのは。

 

「でも別にアイツがどうなろうと、俺達の仲間だろ?」

 

そんな中発した龍誠の言葉に、皆は頷く。しかしアザゼルは少し苦い顔をして、

 

「それはいいんだが少し厄介でな」

「どういうことだ?」

 

アザゼルの言葉に龍誠は聞き返し、他の皆も首を傾げた。

 

「今のギャスパーは男であり女だ。どっちの性質も持ち合わせてる。それ体だけじゃない。それに引っ張られるように心も変化してる。それがどういうことかわかるか?」

『……』

 

イマイチよく分からず、皆は顔を見合わせると、

 

「アイツの恋愛対象も変化するってことだ。そうだな……例えば今までただの同性の憧れの先輩とかな」

『あ……』

 

そう言われ、皆の脳裏に浮かんだのは戦兎だった。そしてアザゼルは、

 

「今戦兎はそれを承知の上で会いに行ってるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ギャスパー。入るぞ」

「っ!」

 

ギャスパーが寝ている部屋に戦兎は声をかけて入ると、ギャスパーは体を起こしながらこっちを見た。

 

「せ、戦兎先輩!すいませんでした!」

「いや。大丈夫だ」

 

アーシアに怪我は治して貰ったし、特に問題はなかったが、ギャスパーは申し訳無さそうに頭を下げている。

 

「あー。取り敢えずギャスパー。頭下げるのはいいから胸元隠せ」

「え?……あ!」

 

ギャスパーの胸元は少々乱れており、いつものようにサラシで潰していない。つまり胸の膨らみがしっかり見えていた。

 

慌てて布団を胸元に持ってきて隠す様子を見つつ、戦兎はため息をつく。

 

(完全に女の子じゃねぇか)

 

元々女装が似合う。そんなギャスパーが今のような状況になれば、ますます脳が混乱してきていた。

 

それに、アザゼルから言われたことだ。今のギャスパーは男であり女。身も心もだ。それが意味するところも。そしてそれはギャスパーも気づいたようで、

 

「分かってますよね?」

「あぁ」

 

そう言ってギャスパーに戦兎は頷くと、ギャスパーは体を向け、

 

「ごめんなさい」

「え?」

 

突然謝られ、わけがわからない思っていると、

 

「気持ち悪いですよね。僕なんかが戦兎先輩好きになって」

「そんなことは……」

 

無いって言いたい。だがそれは本心なんだろうか。ただ大事な後輩を傷つけない方便なんじゃ?そんな思いが脳裏を駆け巡る。

 

「ありますよ。だって僕はずっと男だったんですから。そんな僕に好きになられて、気持ち悪いに決まってる」

「そんなわけ無いだろ」

 

必死に言葉を絞り出す。気持ち悪いなんて思ってない。それは本当だ。

 

「じゃあ僕とキス出来ますか?」

「っ!」

 

戦兎はギャスパー言葉に息をつまらせる。

 

「それ以上のこともできますか?できないですよね?だって先輩にとって僕は男の後輩なんですから。きっとこれからもそうでしょう?」

「……」

 

違うというべきなのかもしれない。だがそれは、ギャスパーの想いを肯定するということだ。それがどういう意味なのか分からない程子供じゃない。

 

「だから先輩。ごめんなさい。ちゃんとこの気持ちは捨てるので、それまで待ってください。ちゃんただの先輩と後輩に戻りますから。お願いします」

 

そう言って深々と頭を下げるギャスパーに、戦兎は何も言えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ」

 

戦兎はバルコニーの縁に腕を乗せ、大きなため息をつく。

 

「なにため息なんか吐いてるのよ」

 

するとそこにやってきたのは黒歌だ。お菓子を片手に風呂上がりの姿でやってきた彼女に戦兎は、

 

「いやちょっと……って誤魔化してもしょうがないか。ギャスパーのことだよ」

 

どうすれば良いのかわからん。戦兎は素直に黒歌にボヤくと、

 

「そりゃそうでしょうね〜」

 

黒歌は何も言わずに、素直に同意してくれた。

 

「だって後輩の男の娘がフタナリになって好意を向けられてますってどういう状況?ってなるでしょ」

「あぁ」

 

良いも悪いもない。ただ困惑してる。そう戦兎が言うと黒歌は笑って、

 

「アンタも中々大変な恋愛関係作ってるわねぇ」

「最近龍誠のこと笑えなくなってきたなとは思ってるよ」

 

ハァ。と戦兎がまたため息を吐いたその時、

 

「戦兎!黒歌もいたのね!」

「部長?」

 

走ってきたリアスに、戦兎は少し驚くと、

 

「兵藤 一誠が出たわ!」

『っ!』

 

その名前に、戦兎達は一気に戦闘モードに意識を持っていくと、

 

「何処にですか!?」

 

戦兎はリアスに駆け寄り聞く。そしてリアスの口から発せられた場所は、

 

「天界よ」

『は?』

 

意味がわからず、戦兎と黒歌は顔を見合わせると、

 

「天界に直接、兵藤 一誠達は襲撃を掛けたのよ!」

『はぁ!?』

 

リアスの言葉に、驚愕の声を出すのだった。



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後悔

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……


戦兎「ギャスパーの異変に続き、何と天界に禍の団(カオス・ブリゲード)の襲撃が!」
龍誠「好き勝手やりやがって!そろそろどうにかしないとな!」
戦兎「ま、そこんとこも含めてやっていく140話スタートだ!」


「ここが天界?」

 

転移により天界にやってきた戦兎達だったが、目の前に広がる光景に思わずそんな言葉をつぶやく。

 

火が上がり、あちこちの建物が崩れている。

 

「既に襲撃を受けたあとだろうな。俺の記憶じゃこんな光景じゃねぇよ」

 

唯一天界の光景を知るアザゼルは言うと、

 

「兵藤 一誠達禍の団(カオス・ブリゲード)は冥府から天界に侵入。その後天界のあちこちで暴れまわってるそうだ」

「冥府から?ならハーデスは何をしてたわけ?」

 

アザゼルの説明にリアスは眉を寄せながら言うと、

 

「あぁ。見てなくて気づかなったってよ」

 

あの爺さんはこっちに嫌がらせができるんなら何でもするさ。とアザゼルは言いながら、

 

「お前らも知ってると思うが、天界はまず7層に分かれている。連中の目的は不明だが、7層には神の奇跡を司るシステムがあってな。そこだけは壊されるわけにはいかんそうだ。他の勢力からも応援要請はしてるが、俺達は先発隊として現在戦いが起きてる第三層に向かうぞ!」

 

了解!と全員は頷き、皆で走り出す。

 

「さて」

 

そんな光景を遠くから見ていたのは兵藤 一誠と、

 

「ほんじゃま行こうかねぇ」

 

ニヤニヤと笑みを浮かべるリゼヴィムだ。

 

「場所が分かってるのはお前だけだ。頼むぞ?」

「おうとも。しかしいいのか?戦兎にお礼参りにいかなくて」

「こっちの目的を果たしてからでも十分だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『変身!』

 

戦兎達は変身しながら飛び上がると、魔獣達に攻撃を開始する。

 

「ようミカエル。助けに来たぜ」

「えぇ。助かります。如何せん数が多い」

 

何処からともなく湧き続ける魔獣の群れに、ミカエルはため息を吐きながらアザゼルを見て、

 

「アザゼル。少し妙なんです」

「だな」

 

やはり分かりますか。とミカエルは言う。

 

「あぁ。今までの進行では必ず兵藤 一誠がいた」

 

それがいない。偶々?いや違うはずだ。今回転移する時に感じたが、妨害工作はしてあったが余りにも稚拙。まるで好きなだけ入ってこいというように感じた。

 

態々こんなことするとしたら、恐らく戦兎を誘ってる筈だ。だがそれなのにこの場にいないと言うのはどういうことだ?と考えていると、

 

「うわぁああああああ!」

 

誰かの悲鳴と共に、地面が隆起し爆発。その中心地にいたのは八重垣だ。

 

「クレーリア、クレーリア……」

 

既に人間だった部分は殆ど残っておらず、ブツブツとずっとクレーリアの名前を呟いていた。

 

「八重垣さん!もうやめて!」

 

その前に立ち塞がったのはイリナだ。そしてイリナを見た八重垣は、

 

「紫藤……の娘ぇええええええ!」

 

全身から触手伸ばし、剣を手に走り出す。

 

「こっちよ!」

 

するとイリナは天使の翼を出して飛び上がると、一目散に逃げ出す。

 

「まてぇええええ!」

 

それを八重垣は追って行くと、

 

「ここからは計画通りにね!」

「了解!」

「任せてくれ部長!」

 

そう言って、龍誠とゼノヴィアはイリナを追って走っていった。

 

これはここに来るまでに決めてたことだ。恐らく今までの行動からして八重垣はイリナを積極的に狙う。だから乱戦時にはイリナが八重垣を引き付け、その場を離れて最も連携が取れてる龍誠とゼノヴィアのトリオで八重垣の撃破か、足止めを行うというものだ。

 

絶対無茶はしないこと。それがリアスからの条件。

 

「よし」

 

戦兎はそれを見届けながら、ハザードトリガーを出す。

 

《マックスハザードオン!》

「ビルドアップ!」

《鋼鉄のブルーウォーリア!タンクタンク!ヤベーイ!ツエーイ!》

 

フルボトルバスターを構えつつ、戦兎は龍誠達が行った方を横目で見て、

 

「気をつけろよ。3人共」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この辺りで良いかな」

 

少し離れた所にイリナは着地し、追ってきた八重垣に向き直る。

 

「ムスメェエエエエエ!」

 

咆哮で空気が震える中、突っ込んでくる八重垣だったが、

 

《極熱筋肉!クローズマグマ!アーチャチャチャチャチャ チャチャチャチャアチャー!》

 

クローズマグマに変身した龍誠がマグマを作り出し、八重垣の足に絡みつかせて足止めすると、

 

「喰らえ!」

 

ゼノヴィアが頭上からエクスデュランダルを振りかぶり、八重垣に斬撃の衝撃を落とすが、

 

「ガァ!」

 

八重垣も剣を振り上げ、放った衝撃をぶつけると相殺。

 

「まじかよ……」

 

龍誠が思わずつぶやく中、イリナは八重垣に叫ぶ。

 

「こんなことして……何になるんですか!」

 

歯を噛み締め、拳を握って叫び続けた。すると、

 

「彼女と、また会える」

 

そう呟きながら八重垣はイリナを見る。その目に写っていたのは悲しみと絶望の炎だ。

 

「もう一度彼女に会えるなら私はなんだってする。全てを蹴散らし、全てを滅ぼす。私達は理不尽に引き裂かれたんだ。それを彼女だって望んでいるはずだぁああああああ!」

 

八重垣は大気が震える程叫びながら、イリナに向かって走り出す。

 

「っ!」

 

それをイリナは天使の羽根を広げ、幾つもの光の輪を投げつけて攻撃。しかし八重垣は傷つく体を物ともせずに剣を振り上げ、イリナに振り下ろす。

 

「させ……」

「るかぁ!」

 

それを龍誠とゼノヴィアが弾き、押し戻すとイリナはまた叫ぶ。

 

「私だったら……自分の好きな人が今の貴方の様になったら悲しい。死んでも死にきれなくなる。クレーリアさんは貴方が苦しむのを望む人なの!?」

「違う!」

 

彼女は優しい人だった。優しくて素敵な人だ。だから望むはずが……そう言いかけ、八重垣の思考が止まる。ならなぜ自分は戦っているんだろう。

 

【このままでいいのか?】

 

脳裏に声が蘇った。

 

【きっと彼女は苦しんだだろうな】

【彼女はおまえといたかっただろうなぁ】

【クレーリアはお前とまた会えるのを楽しみにしてるはずだ】

 

だから、と必ずその声は続けてきた。

 

【お前達を不幸に落とした奴らも、それを守ろうとする奴らも全て滅ぼさないとな】

 

「あぁ……」

 

何かが別の考えが浮かぼうとする。だが、

 

「アァアアアアアアア!」

 

八重垣は思考を振り払うかのように全身を変異させ、巨大化すると咆哮。

 

違う違うと心が叫ぶ。それではまるで、今まで自分がやってきたのはクレーリアを理由にし、鬱憤を晴らしてきただけではないか。

 

「おいおい暴走したんじゃねぇか?」

「でも何だか悲しそう……」

 

龍誠とイリナは並び立ちながら会話を交わす。

 

「さて、どうする?」

 

ゼノヴィアはそう言いながらエクスデュランダルを肩に担いで聞くと、

 

「取り敢えずぶっ飛ばして、それからもう一度話すしかねぇだろ」

 

だな、とゼノヴィアは頷くと、エクスデュランダルを振り上げて、

 

「行け!龍誠!」

 

おう!と龍誠は左手にクローズマグマナックルを嵌めながらドラゴンフルボトルをセット。

 

「オォオオオオオオ!」

 

襲いかかる触手はゼノヴィアとイリナが薙ぎ払い、龍誠は飛び上がりながらナックルの拳部分を叩き、

 

《ボルケニックナックル!》

「オラァアアアアア!」

《アチャー!》

 

蒼いエネルギーとマグマを纏ったクローズナックルで、巨大化した八重垣の顔面を殴り飛ばす。

 

だが、

 

「なっ!」

 

地面から生えた触手が龍誠を捕まえ、一気に締め上げた。

 

「ぐぁああああ!」

「龍誠!」

 

ゼノヴィアが慌てて助けようとするが、目の前の触手が邪魔をする。

 

「なら纏めて!」

「待ってゼノヴィア!貴女の攻撃じゃ龍誠君も吹き飛ばしちゃうわ!」

「しかし!」

 

のんびりしてては龍誠が危ない。そんなのはイリナも分かってる。

 

(どうすれば……)

 

すると、

 

「イリナさん!」

「え?」

 

突如空から掛けられた声に、イリナが驚いて顔をあげると、そこにいたのは、ウェーブが掛かったブロンドの美女。

 

「ガブリエル様!?」

「これを!」

 

そう言ってガブリエルがイリナに向かって投げたのは、鞘に納められた剣だ。

 

「っ!」

 

イリナはそれを咄嗟にキャッチし、鞘から抜く。

 

「アァアアアアアア!」

 

するとそれを追うように触手が伸び、イリナを狙ってきたが、

 

「はぁ!」

 

剣の一振りから放たれた光は、触手を破壊……いや、浄化して消滅させると、その先の触手に捕まっていた龍誠を傷つけずに助ける。

 

「これは……」

「それは聖剣・オートクレール。シャルルマーニュに仕えたオリヴィエの使っていた物であり、アロンダイトと同一視されている聖剣です。この度ミカエル様のAであり、この先の禍の団(カオス・ブリゲード)戦が更に苛烈になっていくことを想定し、イリナさんへの使用許可が降りました」

 

ガブリエルはそう言いながら何百もの光の輪を作り出し、八重垣の触手を一気に破壊。

 

「道は作ります!行ってください!」

『はい!』

 

イリナとゼノヴィアは頷いて走り出す。

 

「いてて……」

 

地面に落ちた龍誠は腰を擦りながら立ち上がると、

 

「よし俺も!」

 

走り出そうとしたところに、

 

「あん?」

 

空から何が飛来するのを見つけ、思わず足を止めるとすぐ目の前に飛来した一本の剣が突き刺さった。

 

「それはアスカロン!?」

 

剣を見たガブリエルは驚きの声をあげる。すると龍誠は、

 

「よく分からねぇけど使えってことだな!」

 

と言って柄を握った。不思議と手に馴染む感覚を感じながら、龍誠は走り出す。

 

次々襲いかかる触手を斬り捨て、3人は飛び上がる。すると刀身が共鳴し合うように光り輝き、まるで太陽のようだ。

 

『いっけぇえええええええ!』

 

そして3人が刀身を振り下ろすと、輝きは更に強くなり、その光は八重垣を飲み込む。

 

『はぁ、はぁ』

 

三人は着地すると荒く息をついた。しかし、

 

「あ!」

 

イリナが声を上げると、そこには人間の姿に戻った八重垣が立っている。

 

ボロボロになり、所々体が崩れ落ちていく。

 

最早生前の姿は失われつつあった。しかし、

 

「クレーリア、クレーリア」

 

ずっとうわ言のように愛する女性の名を呼びながら、その場を右往左往し始める。

 

「今の一撃で八重垣さんを侵食していた物はなくなったみたいだね」

「だが……」

 

そう。力を失えば、そこにいるのはただ正気を失い、失った女性を求めるただの廃人だった。

 

すると、イリナの持っていた聖剣が輝きだし、三人が驚くと、

 

《正臣さん》

 

そこに現れたのは、美しい女性だ。それを見た八重垣は、目を見開きながら歩き出し、

 

「クレー、リア」

 

手を伸ばすと女性はそれを優しく受け入れ、

 

《もう。終わりにしましょう》

「だめだ、まだおわってない。まだ。まだなんだ。おれがあきらめたら、だれがきみのむねんをはらすんだ!」

 

そんな事を言う八重垣に、クレーリアは首を横に振ると、

 

《私は貴方がそれで傷ついていくほうが悲しいわ》

 

クレーリアは言うと、八重垣を優しく抱きしめた。

 

《だからもうやめて、お願いだから、もう誰かを傷つけないで》

「あ、あ」

 

八重垣は震える手でクレーリアを抱きしめ返すと、体がゆっくりと崩壊していく。

 

『……』

 

三人はソッとその場を後にする。もう八重垣には何もできないだろう。これ以上は野暮になると思った。

 

「ん?」

 

すると龍誠の手の中にあったアスカロンが光り輝き、そのまま姿を消してしまう。

 

「そういえばなんでアスカロンが……」

 

イリナが不思議そうな顔をすると、ゼノヴィアが神妙な顔をして言った。

 

「恐らく戦兎だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、少し時間が巻き戻り、イリナたちが八重垣を連れて離脱した頃、戦兎たちが魔物を蹴散らしている所、

 

「クソ!一体何体いるんだ!」

 

フルボトルバスターを振り回し、戦兎が荒く息をつくと、

 

「戦兎先輩!危ない!」

 

背後から飛び掛かってくる魔獣。しかしそれは闇の塊のようなものに吹き飛ばされた。

 

「大丈夫ですか!?先輩!」

「あぁ、済まないギャスパー」

 

お互いの安全を確認すると、ハッとしたように気まずそうな顔をするギャスパー。それに吊られて戦兎も気まずそうにすると、

 

「おうおうお熱いねぇ」

『っ!』

 

その場に姿を見せたのは、兵藤 一誠だ。

 

「兵藤 一誠」

「ようやく会えたな。戦兎」

 

一誠は既に変身を終えており、戦兎はジーニアスフルボトルを取り出した。すると、

 

「ようギャスパー、体の具合はどうだ?」

「っ!」

 

一誠の言葉に、カッと血が熱くなるのを感じたギャスパーは、腕から闇の塊を作り出し、

 

「黙れ!」

 

それを一誠に発射!しかしそれは片手で弾かれ、

 

「いやぁ、しかし傑作だなぁ。まさか本当に女になってるとは。で?戦兎には告白したのか?ん?」

「……」

 

ワナワナと体を震わせ、ギャスパーは顔を真っ赤にしながら怒りを露わにする。すると戦兎はギャスパーの肩に手を置き、前に出る。

 

「てめぇはもう黙ってろ」

《グレート!オールイエイ!ジーニアス!イエイ!イエイ!イエイ!イエイ!Are you ready?》

 

「ビルドアップ」

 

《完全無欠のボトルヤロー!ビルドジーニアス!スゲーイ!モノスゲーイ!》

 

「最早ジーニアスは俺の敵じゃねぇんだよ!」

 

一誠はそう言って巨大なエネルギー弾を作り出すと、戦兎に向けて発射!だが、

 

「はぁ!」

 

戦兎は剣を出すとそれを両断し、更にその剣から生み出された衝撃波で一誠を吹き飛ばした。

 

『なっ!』

 

一誠だけではなく、ギャスパーも驚く中、戦兎はゆっくりと一誠を見つめる。

 

「なんでおまえがそれを」

 

そして一誠の視線の先には、()()()()()()()()()を担ぐ戦兎の姿が、あったのだった。



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新ジーニアス

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「龍誠達は八重垣さんを浄化し、一息つく中俺は兵藤 一誠と戦っていた」
龍誠「ってお前何か新しい力に目覚めてるじゃねぇか!」
戦兎「いやぁ。色々あってなぁ。その辺も明かしていく141話スタートだ!」


「まぁいいさ」

 

一誠は言いながら立ち上がると、オーラを体に纏わせてから戦兎を見て、

 

「どんな仕掛けは知らないが、関係ないからなぁ!」

 

一気に走り出す。だが戦兎はエクスデュランダルを地面に刺すと、右手に滅びの魔力を。左手に雷光を纏わせて両手を合わせて融合させた球体を作り出し、それを一誠に向けて発射!

 

「なにっ!?」

 

一誠は驚きながらそれを避けたが、目の前にスマホの画面のようなエネルギーの壁が現れ、それに滅びと雷光の球体は吸い込まれ、一誠の背後に出現したもう一枚のスマホの画面から発射された。

 

「ぐああああ!」

 

それにふっとばされた一誠に、戦兎は手を頭上に掲げると、空中に無数の聖魔剣が生成され、それぞれに滅びの魔力や雷光、光や北欧魔術に炎や電撃等様々な属性を付与し、それらを一気に落としていく。

 

「ちぃ!」

 

一誠はそれを転がって避けつつ、デュランダルで弾くが、

 

「はぁ!」

 

戦兎は両腕にダイヤモンドを纏わせ、一誠を連続で殴りつけた。

 

「どういう、ことだぁ?」

 

一誠は口元を拭うような動作をしながら呟く。すると戦兎は口を開く。

 

「ジオウの一誠から力を返してもらったときのオマケだ」

「なに?」

 

戦兎の言葉に、一誠は怪訝な声を漏らした。

 

「ジオウの一誠からのオマケには、皆の力が込められていた。そして俺はその力をジーニアスフルボトルに組み込んだんだ。その影響でな。ジーニアスフォームの時に限り俺は皆の力と、それぞれが持っていた駒の力を上乗せできるんだ」

 

戦兎の言葉に、一誠は息を呑んだ。

 

「成程。そういうことか」

 

しかし同時に急激なスペックの上昇に加え、エクスデュランダルを取り出したことに納得がいった。

 

「だが分かってれば簡単だ。対応のしようはいくらでもある!」

「やってみろ!」

 

そう言って二人は再度ぶつかり合う。両者の拳がぶつかり合い、戦兎は衝撃で少し後ずさるが、地面に触れると地中から無数の巨大なロボットアームが現れ、その先にはロボットアームサイズの聖魔剣がつけられており、一誠に襲い掛かる。

 

「ちぃいいい!」

 

一誠はそれを次々避けながら、戦兎に近づくが、戦兎はエクスデュランダルとオートクレールを二刀流で構え、交差させると光り輝き、それを振り下ろすと凄まじい衝撃波が放たれた。

 

「くっ!」

 

しかしそれを一誠は跳んで躱し、レバーを回す。

 

《Ready Go!エボルテックフィニッシュ!》

 

そしてそれを見た戦兎もレバーを回し、

 

《ワンサイド!逆サイド!オールサイド!Ready Go!ジーニアスフィニッシュ!》

 

一誠の蹴りを戦兎も回し蹴りで受け止め、爆発し、二人は後方に吹き飛びながら体勢を立て直す。

 

「凄いわね」

 

そんな光景を見ながら、リアスが呟くと朱乃が、

 

「ですわね。私達より威力も上ですし」

「そりゃそうよ。私達の力に駒の力を上乗せしてるのよ。でも……」

 

あれはゲームじゃ使えないわね。とリアスが言うと小猫が、

 

「やっぱりだめですよね?」

「ど、どうしてなんですか?」

 

アーシアが分からずにいるとリアスは、

 

「戦兎も言ってたでしょ?あの姿は貴方達の駒の力も上乗せしてる。そのせいで今の戦兎にはクイーンの駒1、ビジョップの駒が5、ナイトが2、ルークが2、ポーンが戦兎自身のコマも入れて16。しかもそのどれもが、戦兎自身が持ってた駒も含めて変異の駒(ミューテーション・ピース)化してる。まぁ戦兎の駒自体はジーニアスになってる間だけらしいけどね。他にも天使に堕天使の力や、一部の神器(セイクリットギア)神滅具(ロンギヌス)も使える。これだけ力を持ってたら、現行のレーティングゲームのルールではジーニアスの出場を想定してない状況では使用禁止が妥当でしょうね」

 

サイラオーグのときみたく駒の価値で出場する選手を決めるみたいなルールならとくにね。と言われ、アーシアはなるほどと頷いた。

 

「こい!アスカロン!」

 

その中戦兎は空中から剣を召喚し、キャッチしようとするが、

 

「あれ?」

 

戦兎を素通りしてどこかに行ってしまう。

 

「うっそーん」

 

流石にこれはわけが分からずに呆然とするが、

 

「ならこっち!」

 

と今度は槍を取り出して一誠に応戦。連続突きで追い詰めつつ、

 

「いけ!」

 

素早く黒い炎を地面から立ち上らせ、一誠を包んだ。

 

「ちっ!匙の力か」

 

それを振り払った一誠だが、続け様に光の槍を作り出し追撃。

 

「くっ!」

 

一誠はそれを避けながら下がった。

 

「成程。たしかにこりゃ厄介だな」

 

などと一誠は呟きながらいると、

 

「おいおいイッセー君。随分苦戦してるんじゃないの?」

「リゼヴィム!」

 

他の魔獣と戦っていたヴァーリが叫ぶと、リゼヴィムは一瞥してから、一誠の元に行くと、

 

「今回は戦うことは目的じゃないだろ?程々にしとこうぜ」

 

リゼヴィムにそう諭され、一誠は舌打ちしてから変身を解除すると、

 

「まぁいいさ。目的は果たしたからさな」

「まて!」

 

戦兎は一誠を追い掛けようとするが、リゼヴィムが炎を撒いて足止めし、その間に消えてしまった。

 

「逃げられたか」

 

戦兎は思わずため息を吐きつつ周りを見ると、辺りで暴れていた魔獣達も姿を消していた。

 

「目的は達成した、か」

 

一体何をしにきたんだ?と思ったが、今考えても意味はなさそうだ。と諦めて変身を解除すると、

 

「しかし、これはひどいな」

 

襲撃で荒れ果てた天界の景色に、戦兎は胸を抑えるのだった。




仮面ライダービルド ジーニアスフォームver.3.0

ジオウの一誠から返却されたビルドライドウォッチによって新たな力が付与された姿。ジオウの一誠の力が反映されており、あの世界の仲間たちの力を使うことが可能。召喚能力はないが、グランドジオウにできることはほぼ可能。それにより滅びの魔力や一部の神滅具(ロンギヌス)を使える。更に他の仲間達の駒の力も反映されており、この形態を取っている間だけクイーンの駒1、ビジョップの駒が5、ナイトが2、ルークが2、ポーンが戦兎自身のコマも入れて16ある。更にそのどれもが変異の駒(ミューテーション・ピース)化しており、戦兎が元々持っていた駒もジーニアスの間だけ変異している。ポーンの駒は昇格可能で、普段は16あるうち、クイーンを7、ビジョップを1、ナイトを4、ルークを4つずつ昇格させて戦うが、状況に合わせて構成を変えながら戦うことも可能。これによりジーニアスのスペックを大幅に上昇させながら、状況に応じたスペックに変化させることで、更に臨機応変に状況に対応することも可能。

更にジオウの一誠の力は常に成長しており、使えば使うほど、戦えば戦うほど更に力が上がっていくという性質を持っており、漸く兵藤 一誠に一旦スペックでも追いついた。

ただこの形態になると、戦兎はある程度ルールを無視して昇格することも可能であり、それを利用することでレーティングゲームで相手陣地に入らなければ昇格出来ないというのもやろうと思えば無視することが可能。ただそもそもこんな出鱈目な数の駒を持った者を想定したルールはなく、それもあってレーティングゲームではジーニアスは使用禁止措置を取られるだろうと言われている。


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後片付け

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「新たなジーニアスフォームで兵藤 一誠を撃退した俺だったが……」
龍誠「おいなんだ戦兎!あれどう見てもやべー能力じゃねぇか!」
戦兎「正直言うとな、俺も若干引いてる」
龍誠「クソいいよなぁ!俺もあんな能力がほしいぜ!」
戦兎「あのなぁ。あれだけ能力が多いと能力の取捨選択が大切なんだ。お前みたいなバカに扱いきれるかよ」
龍誠「何を!」
戦兎「さ、そういうわけで142話スタート!」


「そっか。天界の復興は無事進んでるか」

 

天界の襲撃から数日経った頃、現在戦兎たちは先日まで準備に勤しんでいた教会にいた。

 

そしてイリナから現在天界の復興が急ピッチで進められている旨を伝えられ、戦兎達は胸をホッと撫で下ろす。

 

「被害は大きいけど重要な場所の被害は殆どなかったみたい」

「実際、兵藤 一誠も何かの用事のついでって感じだったしな」

 

イリナと戦兎がそんな話をしていると、

 

「そういや戦兎。話は変わるが、今度美空が全国ライブ行くらしいな。ヴァーリが騒いでたぜ?追っかけしなきゃーってよ」

「あぁ。ヴァーリのやつどっかの会場の最前列のチケット取れたって狂喜乱舞してたな」

 

アザゼルの言葉に、戦兎はそうだそうだと思い出す。実は戦兎は関係者席を身内枠で貰ってたりするのだが、ヴァーリには内緒だ。

 

すると、

 

「おーっす!帰ったぞー!」

 

そこに龍誠が大量の食料を手に帰った来て、他の面々も続々と入ってくる。

 

今日は無事教会の飾り付けや準備も終わり、プレゼント配りも終わった。というわけで皆でドンチャン騒ぎの予定である。

 

そして龍誠がジュースを紙コップに注ぎ、皆が受け取っていく。そしてリアスが皆の前に立つと音頭を取って、

 

「そんじゃあ改めて……ハッピー!メリー!クリスマース!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ」

 

ギャスパーは外に出ると白い息を吐きながら空を見上げる。星が輝き、遠くから団欒の声が聞こえてくる。

 

「ようギャスパー」

「先輩?」

 

そこに戦兎がやって来て声を掛けると、ギャスパーは驚きながら振り返った。

 

「少しいいか?」

「は、はい」

 

隣に立つ戦兎に、思わずギャスパーは自分の胸が高鳴るのを感じた。だがそれを振り払う。これは捨てると決めた感情だ。しかし戦兎は、

 

「お前の俺への気持ちだけどさ」

「ひゃい!?」

 

振られると思ってなかった話題を振られてしまい、ギャスパーは変な声で返事をした。

 

「正直。どーしていいのか分からん。良いも悪いも無いんだよ」

 

だから、と戦兎は続け、

 

「少しくらい考える時間よこせ」

 

一旦保留。勝手に結論出して逃げるな。と戦兎は言った。その言葉にギャスパーの目から涙がポロポロと落ち、戦兎はギョッとする。

 

「お、おい泣くなよ!」

「だって僕。こんな気持ち悪い……」

 

それは違う。と言って戦兎は言葉を遮ると、

 

「お前が何になろうと、お前はお前だ。誰がなんと言おうとお前なのは変わらない。そしてお前が俺が好きでもだ。そりゃずっと同性の後輩だと思ってたやつに好きだって言われればびっくりだってする。でもそれでお前を嫌う理由には絶対ならない!」

 

本当ですか?本当だとも。とお互いにやり取りをする。大丈夫だから、と戦兎はギャスパーを慰めつつ、

 

「だから心配するな」

「はぃ」

 

そう言うと、ギャスパーは戦兎に体を寄せると、抱きつく。

 

まぁこれくらいならと戦兎は抱きしめ返してやりつつ、頭を撫でるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?」

 

なんてやり取りをした次の日の朝。戦兎は目覚めて体を起こす。

 

寝ぼけた頭で、とりあえず起きるかとベットから降りようとすると、

 

「え?」

 

思考が停止した。そこにいたのは一糸まとわぬ姿で寝るギャスパー。そして思い出す。昨晩ギャスパーに要求されるまま、これくらいならこれくらいならと要求を飲んでいくうち、色々後戻り出来ないことをしたことを。

 

(な、なんとかヤれるもんだなー)

 

現実逃避しつつ、思わず天井を煽ぐ戦兎。何がちょっとまってほしいだ。と自分を叩きたくなる。しかしそこに、

 

「オイ戦兎!そろそろ起きろよ」

 

龍誠が入ってきた。そして部屋を見て固まり、

 

「その……失礼しました」

 

龍誠深々と頭を下げて部屋を出ていった。

 

「ま、待て龍誠誤解だ!いや誤解じゃないけど色々待ってくれぇえええええ!」

 

と、朝から戦兎の叫びが木霊する。

 

その後色々修羅場があったのだが、戦兎の名誉のために、割愛させてもらおう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く。戦兎のやつも厄介な力を手に入れたもんだ」

 

拠点の椅子に座りながら、一誠はため息をつく。しかしそこに一人の影が現れる。

 

「よう。待ってたぜぇ。いやぁ、八重垣は残念だったよ。もう少しでクレーリアを取り戻せそうだったんだけどなぁ」

「……」

 

一誠に声を掛けられた存在は、ゆっくりと一誠に視線を向けた。

 

「ここに来たってことは、覚悟を決めたってことかな」

 

一誠はそう言って、少し変わった形の形状をしたフルボトルを出す。

 

「アンタなら、二人を救える。ハッピーエンドにできるさ」

 

そしてフルボトルをその人物に挿した。

 

「ぐっ!うぐ、ガァアアアアア!」

 

苦悶の声と表情をしながら、肉体が変化し、その姿は禍々しい化け物の姿に変わる。

 

一誠はそれを見届けると、ニヤリと笑みを浮かべながらポンッと肩を叩き、

 

「八重垣とクレーリアのハッピーエンドのために、頑張りなよ?ディハウザー・ベリアル」

 

禍々しい化け物の姿から、普段の姿に戻ると、ディハウザー・ベリアルと呼ばれた男は顔をあげると、

 

「二人の無念。必ず晴らそう。だが約束は守ってもらう」

「あぁ勿論。アンタが頑張って働いてくれれば、約束通り二人を生き返らせてやるよ」

 

そう言って、その場をあとにする。それを見ていたマグダランが一誠のもとに行くと、

 

「あれは新しいタイプですか?」

「あぁ。元来の魔獣に加え、別の世界の仮面ライダーの怪人の力を加えた新型さ」

 

成程。とマグダランは頷くと、

 

「確か今度本格的に行く世界でしたよね?」

「あぁ、名は仮面ライダーキング。まぁ目的はそいつ自身じゃねぇが、やりようじゃこっちの味方に出来るやつさ」

 

それは楽しみですね。マグダランが言うと、一誠も笑みを浮かべる。

 

「そうすればこれも無事復活できるしな」

 

と言った一誠の視線の先には、巨大な石像があった。

 

神々しさと邪悪さが混じった、なんとも言えない雰囲気を持つ、不思議な存在。

 

「ビジター。目覚めてくれた暁には君の働きにも期待してるぜ?」

 

一誠は笑いながら、その場を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハックショイ!」

「ちょっと和泉。アンタ風邪でも引いたの?」

「え?先輩大丈夫ですか!?」

 

和泉と呼ばれた少年はズズっと鼻を啜ると、自分を心配してきた二人の少女を見て、

 

「いや、何か急にくしゃみが」

「ふむ、となると誰かが君の噂でもしたのかな?」

 

今度は先程とは別の少女からの問いかけに和泉は首を横に振り、

 

「まさか勘弁してくださいよ。戦いも終わって今は平穏な日々なんですから。そんな誰かに噂されるような事はありませんよ。ていうかあってたまるか」

 

ヤダヤダと目の前の書類を手に取った和泉は、

 

「はぁ。世界は救えてもこういう書類仕事は好きになれないなぁ」

「はいはい。文句言ってないで仕事終わらせてね。生徒会長のアンタがハンコ押さなきゃいけないのも多いんだから」

 

へーい。と和泉はハンコを捺すのだった。



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第二十章 ハミダシモノノ王
その男、生徒会長にして仮面ライダー


人々が平和に暮らす現代。しかし、その平和な世界に半旗を翻す悪の反乱軍、レボル軍が現れた。

歴史の影に幾度となく現れ、その度に人々の平穏を奪おうとするレボル軍と、それが率いる怪人、リベリオン。

しかし、悪の前には正義がある。

それぞれの道、王道を胸に戦う正義の王。仮面ライダー。

そして今、王の力と世界の未来は、四人の若者に託された!

智宏「そんな感じの143話スタート!」
戦兎「それ俺のセリフぅ!」


「うーさむー」

 

すっかり年の暮れの寒空の下、学校の校門を潜る人影が2つ。

 

「お兄ちゃん今日はお鍋にしよっか?」

「そうだなー」

 

そんなやり取りをしつつ校門をくぐると、

 

「和泉 智宏だな」

「ん?」

 

和泉 智宏。と呼ばれた少年が前を見ると、そこに立っていたのは同い年くらいの少年だ。

 

「えぇと……どちら様ですかね?あ!もしかして他校の生徒会長!?す、すいません!」

 

思わず頭を下げたが、その少年はいやいやと手を振り、

 

「俺は兵藤 一誠。アンタのことは調べさせてもらったよ。現、千玉学園生徒会長にして覇権声優、小泉妃愛の実の兄。ただし生徒会長という役職も前生徒会長が失踪して代理を立てるために行われたくじ引きで偶々引き当てただけ。それでついたあだ名がくじ引き会長」

 

そこまで言われ智宏は眉を寄せる。

 

「一体どこでそんな情報を。まさか妃愛のファン!?」

「情報なんていくらでも調べようがある。それだけさ。別にあんたの妹のファンじゃない。ただまぁ、少し身柄を預からせて貰うだけだ」

 

その一誠の言葉に、智宏の目付きが変わる。

 

「妃愛の身柄だと?」

 

智宏は隣の少女を見て、一歩前に出て庇うように立つ。

 

「別に悪いことはしないさ。ただちょっと使わせてもらうだけだ」

 

一誠はエボルドライバーを腰に装着する。

 

「ベルト!?」

 

妃愛は驚いたような声を上げると、

 

《コブラ!ライダーシステム!エボリューション!Are you ready?》

「変身!」

《コブラ!コブラ!エボルコブラ!フッハッハッハッハッハッハ!》

 

そうして仮面ライダーエボルとなった一誠を智宏は睨みつけ、

 

「どこの誰だか知らないけどな」

 

そう言って今度は智宏がバックルを取り出し腰に装着。

 

《キングドライバー!》

「俺は妃愛を道具のように言われるのが一番腹が立つんだよ!」

 

智宏は叫びつつ、今度は懐から取り出した手のひらサイズの王冠のような形をしたアイテムのスイッチを押す。

 

《ブレイブクラウン!》

 

そしてそのアイテムをバックルに装填。

 

そして意識を集中させながら構えを取り、

 

「変身!」

 

王冠のスイッチを押す。すると、

 

《勇気の力が未来を切り開く!立ち上がれ!ブレイブキング!》

 

智宏の姿は、赤を基調とした西洋の鎧姿風の物に変化し、真っ赤なマントがつく。

 

「それが仮面ライダーキングの姿か」

「行くぞ!」

 

智宏は感心する一誠に飛び掛かる。拳を一誠は回避し、智宏の腹部に拳を叩き込む。だが、

 

「はぁ!」

 

それを受けながらも強引に蹴りを放ち、一誠を吹き飛ばす。更に手を掲げると、そこに両刃の西洋風の剣が現れた。

 

《キングブレイド!》

 

その剣を手に智宏は一誠に斬りかかると、一誠もデュランダルを取り出しぶつけ合う。

 

「おぉおおおおお!」

「くっ!なんつうパワーだ。流石時期的に言うなら最終回後の仮面ライダーってわけかぁ!?」

 

意味わかんねぇよ!と智宏は押し飛ばすと、バックルから王冠を取り外して剣の鍔に装填して王冠のスイッチを押した。

 

《ブレイブチャージ!》

 

すると王冠からエネルギーが剣に充填され、剣の柄のスイッチを今度は押すと、

 

《ブレイブスラッシュ!》

 

剣を振り下ろし、エネルギーの斬撃を一誠に放つ。そして一誠に当たると、大爆発を起こした。

 

「やったか?」

 

と智宏が呟いたとき、

 

「危ない危ない」

 

炎が巻き上がり、煙を吹き飛ばすと、そこには変身したリゼヴィムや他の仮面ライダーたちが立っていた。

 

「あいつの仲間か」

 

不味いな。と智宏は冷や汗をかく。幾ら何でも智宏一人で四人の相手はキツイ。

 

「ぼーっとしてる暇はありませんよ!」

「くっ!」

 

そこにユーグリットが来て智宏に襲い掛かる。

 

それをキングブレイドで弾くが、マグダランとリゼヴィムが同時に来た。

 

「ガハッ!」

 

同時攻撃を受けて智宏は転がるが、急いで大勢を立て直して立ち上がる。だがリゼヴィムは続けて火炎弾を作り出すと、それを智宏に向けて放つが、

 

『はぁ!』

 

そこに割って入った影に弾かれた。智宏と同じベルトと形状と色は違うが王冠をつけた、全体の姿は鎧のよう。

 

一人は黒を基調とし、もう一人はオレンジを基調としており、

 

「詩桜先輩!聖会長!」

 

なんで、と智宏が言いかけると、

 

「莉々子さんと遊んだ帰りに近くを通ったんだ」

「爆発音聞いた途端ものすごい勢いで走り出しましたけどね、貴女」

 

そんなやり取りの中、今度は一誠達の足元に銃弾が当たり、相手方は下がる。

 

「びっくりしたよ。帰り道でいきなり爆発音だもんね」

 

智宏達の後方から銃を構えながら、緑を基調とした鎧風の姿の少年らしき声音が聞こえた。そしてその脇をすり抜け、

 

「ひよりぃいいいん!」

 

3人の少女が妃愛に駆け寄った。

 

「常磐先輩!?錦さんにアメリ先輩まで!?先に帰ったんじゃ!?」

「心配で戻ってきたのよ!」

 

常磐先輩と呼ばれた少女は叫びながら智宏を見て、

 

「ホラ和泉!よくわかんないけどそいつら敵なんでしょ!チャチャッと倒しちゃいなさいよ!」

「簡単に言ってくれるなぁ」

 

智宏はボヤきつつもやれやれと立ち上がる。

 

「まぁ、皆がいるなら百人力だ」

 

そう言いながら、智宏は剣を、詩桜先輩と呼ばれたものは槍を、聖会長と呼ばれたものはハンマーを、そして銃を持った仮面ライダーは隣に並びながら構える。

 

しかし、

 

「やる気なとこと悪いんだが、今回はここまでだ」

 

と一誠は言うと、手元のスイッチを押す。すると空に次元の裂け目のようなものが生まれ、智宏達の体を浮かび上がらせた。

 

「な、何これ!」

『里先生!?』

 

何でここに!?と皆が叫ぶと、

 

「学校前でこんなドンパチしてたら様子くらい見に来るに決まってるっしょ!」

「他の先生は!?」

「逃げた!」

「判断が早い!」

 

里と智宏がそんなやり取りをしている間にも、智宏達は裂け目に吸い込まれていく。

 

「くっ!」

 

その中でも智宏はどうにか妃愛に近づいて手を掴むと抱き寄せつつ、周りの皆も集める。

 

「ちょっとちょっと!これ一体どうなってるのよ!」

「絶対これまずいよぉおおおお!」

「あわわわわ!」

「と、常磐!首しまってる!アメリも!錦さんは落ち着いて!」

 

等とワチャワチャしている面々を尻目に、

 

「ふぅむ。突然の裂け目か、この先一体どこに通じてるんだろうなぁ」

「なんで貴女はそんなに落ち着いてられるんですの!?」

「ここまで引っ張られてはもうどうしようもないからねぇ」

 

フッフッフと笑う詩桜に、キーッと怒る聖。

 

「こうなったら新川!アンタがあれを射って壊しなさい!」

「あれそういう感じのではないと思いますが!?」

 

新川と呼ばれた緑の仮面ライダーが里先生にツッコミを入れる。

 

そしてそのまま、皆は次元の裂け目のようなものに吸い込まれていくのだった。

 

「作戦成功。かな?でもホントはあの妃愛って子だけで良いんだろ?」

「まぁな。だが仮面ライダーキングは未来のうちの仲間になるかもしれないやつだ。今回戦ってわかった。あれはぜひ仲間にしたい強さだ」

 

他のはまぁおまけみたいなもんだし。と一誠は言いながら、もう一度今度は小さめの次元の裂け目のようなものを作り出し、

 

「それじゃあ帰ろうぜ。今頃アイツも一仕事終えた頃だろ」

 

そう言って、一誠達が次元の裂け目に消えていった頃。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ふぉおおおおおおおおおお!みーたん!みーたん!』

 

巨大なドームで歌うのは戦兎の妹の美空。そしてその最前列には手作りのみーたん法被を着たヴァーリを筆頭とした親衛隊の面々だ。

 

「たいちょおおおおおお!今日もみーたんは可愛いでありまぁああああす!」

「当たり前だぁああああ!みーたんの前ではヴィーナスですら霞むわぁあああああ!」

 

一糸乱れぬ動きでヲタ芸を披露しながら、みーたん親衛隊隊長ヴァーリは隊員と話す。

 

このライブを希望に今日まで生きてきたと言っても過言じゃない。とヴァーリは心の底から思っていた。

 

だが、

 

「え?」

 

突然の爆発と共に、屋根が崩落。

 

「マジかよ!」

 

人間より遥かに優れた反応速度と反射神経を持つヴァーリは瞬時にステージに上がり、美空を庇いながら転がった。

 

「なんだ!?」

 

ヴァーリは屋根を壊して入ってきた影を見ると、思わず驚愕の声を漏らす。

 

「ディハウザー、ベリアル?」

 

現レーティングゲームチャンピオン。皇帝(エンペラー)。冥界最強。色々な呼び方はあるが、そんなことはどうでもいい。

 

「てめぇ、みーたんに会いたいからって天井から突っ込んでくるやつがあるか!ライブに遅れたときは後ろからこっそり入るのがマナーだろうが!」

 

ズコッと美空や会場の全員が思わずずっこけた。

 

「そのためにきたんじゃない」

「あ?じゃあなんのために来たんだよ」

 

ヴァーリが怪訝な顔を向けると、

 

「大切な存在のため、その子には犠牲になってもらう」

「っ!」

 

ヴァーリはベリアルがそう口にした瞬間、手に魔力弾を形成し発射。次の瞬間起きた爆発に、会場から悲鳴が上がる。

 

「後でアザゼルに頼んで記憶消してもらわねぇとな」

 

ヴァーリがそう呟くと、煙の中から悠然と歩いてきたベリアルは、体が変化し、見たことのない怪物に変貌した。

 

「あぁ?アイツの一族の特性じゃねぇな」

 

ヴァーリはスクラッシュドライバーを着けて言うと、

 

「となると大方裏にいるのは兵藤 一誠だな!」

 

最早テンプレだ!っとヴァーリはロボットスクラッシュゼリーをベルトに装填。

 

《ロボットゼリー!》

「変身!」

《潰れる!流れる!溢れ出る!ロボットイングリス!ブラァ!》

 

仮面ライダーグリスに変身し、

 

「みーたんちょっとまってててねー!」

「……ええええ!?」

 

驚愕する美空をバックに、ヴァーリはベリアルに襲い掛かる。

 

「オラァ!」

 

ヴァーリの右ストレート。だが、

 

「なっ!」

 

簡単にそれを止めたベリアルは、そのままヴァーリの腕をひねり上げながら蹴り飛ばす。

 

「ぐぁ!」

 

吹き飛ばされ床を転がったヴァーリは、ツインブレイカーをビームモードにし、ベリアルに発射。

 

「ふん!」

 

しかし放たれたビームは全て手で弾かれ、

 

「終わりだ」

「っ!」

 

一瞬で間合いを詰めたベリアルの一撃が、ヴァーリを観客席後方の壁に叩きつけ、めり込ませた。

 

「がはっ……」

 

変身が強制解除され、

 

『たいちょおおおおおお!』

 

ヴァーリに親衛隊の皆が駆け寄る中、

 

「いや!離して!」

「行くぞ」

 

美空を抱え、ベリアルは消えていく。

 

「み、い、たん」

 

薄れゆく意識の中、ヴァーリは腕だけのばし、そのまま気を失うのだった。




仮面ライダーキング ブレイブフォーム

パンチ力・30t
キック力・45t
ジャンプ力・55m
走力(100m辺り)・3.5秒

和泉 智宏がキングドライバーとブレイブクラウンを使って変身する姿。所謂初期フォーム。
専用武器、キングブレイドを用いた接近戦を得意とし、未来を切り開く王。

フォーム固有能力として、感情が昂ぶるとスペックがそれに合わせて上昇するというのもがあり、スペック表以上の力を発揮することも可能。ただし落ち込んでるとスペック表以下しか発揮できない。

そのため今回は若干キレていたのもあり、兵藤 一誠のコブラフォームを押すほどの活躍を見せた(兵藤 一誠が本気を出してなかったのも大きいが)。


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別世界の仮面ライダー

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……


智宏「突如謎の少年。兵藤一誠の手により謎の裂け目に放り込まれた俺達」
戦兎「一方その頃。俺の妹の美空がレーティングゲームチャンピオン。ディハウザー・ベリアルに誘拐されてしまった!」
妃愛「一体どうなる144話スタート!」
戦兎「だからそれ俺のセリフー!」


「スマン戦兎!」

 

龍誠達が住む屋敷にて、ヴァーリは床に頭を叩きつける勢いで土下座する。

 

さてディハウザー・ベリアルの襲撃を受けた次の日、ヴァーリは目覚め戦兎に謝罪していた。しかし戦兎は、

 

「大丈夫だヴァーリ。相手も相手だったし、何か狙いがあるみたいだからそれまでは美空も大丈夫だろ」

 

そういうものの、戦兎は気が気じゃなかった。一重に冷静なのは、そう自分に言い聞かせているのと、ヴァーリに当たったところで何も解決しないからだ。

 

「だけどなんでチャンピオンが」

 

と動揺を隠せないのはリアスだ。とはいえ、他の皆も似たようなものだ。

 

レーティングゲーム現チャンピオンの襲撃。一体どういうことかと思っていると、

 

「今冥界でもそれに関して調査中だ」

 

そう言ってきたのはアザゼルで、

 

「あとヴァーリ。会場にいた奴らの記憶操作は終わったぞ。老朽化による事故だがけが人は居ないってことにした」

「助かる」

 

とはいえ、美空が連れ去られたのは紛れもない事実だ。どうしたものかと皆が悩んでいると、

 

「ん?」

 

ビルドフォンが鳴り、戦兎が通話に出た。

 

「はいもしもし?どうした匙」

《大変だ戦兎!駅前広場で魔獣……っていうか人形だから怪人か!?とにかくいまそいつらが暴れてる!》

「なに!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソ!数が多すぎだろ!」

 

匙は襲いかかる怪人を蹴散らしながら、文句を叫ぶ。

 

一般人を避難させ、怪人たちを相手のするのは骨が折れるが、

 

《シングル!》

 

合間を見てツインブレイカーにドラゴンスクラッシュゼリーを装填し、

 

《シングルブレイク!》

 

ツインブレイカーアタックモードで怪人の一体を撃破した。だが、

 

「ん?」

 

爆発が晴れると、怪人の姿が人間の姿に変わる。匙はその姿に覚えがあった。

 

「お前、確かサッカー部の!」

 

そう。駒王学園の制服を着た少年に、匙は見覚えがある。彼は先日レギュラーの選考を兼ねた部内練習試合で、同じポジションだった同級生に負け、一人泣いていた。

 

「しまっ」

 

だがそれに気を取られた匙は、他の怪人達からの攻撃をモロに喰らい、変身が解除されてしまう。

 

「まずい……」

 

匙は体を起こそうとするが、既にこちらまで迫る怪人。しかし、

 

「はぁ!」

 

匙を飛び越え、怪人に飛び蹴りをかまし、怪人は後ずさる。

 

「大丈夫ですか!?」

「え?あ、はい」

 

匙は声をかけてきた妃愛に、思わず敬語で返事をすると他にも続々と見たことのない人たちが集まってきた。

 

「だ、誰だ?」

「説明は後でお願いします!とにかくまずはリベリオン達を片付けないと!」

 

そう言ってバックルを取り出したのは智宏。

 

「詩桜先輩!聖会長!新川!」

 

その声に続くように他の3人も前にバックルを出しながら立つ。

 

「さて、行くとするか」

 

詩桜先輩と呼ばれた黒髪の少女はニヤリと笑みを浮かべ、

 

「全く。知らないところに来て早々これですか……」

 

聖会長と呼ばれた銀髪の少女はため息を一つ。

 

「まぁまぁ。そんなこと言わずに人助けと行きましょ」

 

と宥めるのは黒髪の中性的な顔立ちの新川と呼ばれた少年だ。

 

《キングドライバー!》

 

そうして四人はバックルを腰に装着し、それぞれ王冠のようなアイテムを出す。

 

智宏は赤、詩桜は黒、聖はオレンジで新川は緑。そしてそれぞれの王冠のスイッチを押すと、

 

《ブレイブクラウン!》

《ロマンクラウン!》

《ヘルシャフトクラウン!》

《アモーレクラウン!》

 

四人はそれぞれ王冠をベルトにセットし、意識を集中すると、

 

『変身!』

《勇気の力が未来を切り開く!立ち上がれ!ブレイブキング!》

《物語の力が未来を紡ぐ!綴れ!ロマンキング!》

《支配の力が未来を治める!跪け!ヘルシャフトキング!》

《愛の力が未来を救う!想え!アモーレキング!》

 

変身が完了した4人は手を掲げると、武器が出現。

 

《キングブレイド!》

《ロイスピアー!》

《ケーニヒハンマー!》

《エマヌエーレシューター!》

 

それぞれ武器を手に持ち、

 

「行くぞ!」

『おう!』

 

怪人たちに向かって突っ込む。

 

「はぁあ!」

 

智宏は剣を振り回して次々斬りながら、目の前にいた怪人を足場に飛び上がると、

 

「ハァ!」

 

後ろから黒いライダーに変身した詩桜が槍を突き刺す。

 

「グガ!」

 

怪人が思わず苦悶の声を漏らす中、詩桜はベルトから王冠を外し槍に装填。

 

《ロマンチャージ!ロマンスティング!》

 

穂先クラウンからチャージされたエネルギーが穂先に集まり、一気に開放されると怪人は爆発。怪人が人間の姿に戻ったのを確認しつつ、続けて詩桜は色は同じだが形状が異なる王冠を取り出してスイッチを押す。

 

《イメージクラウン!》

 

そしてそれをバックルにセットすると、

 

《絵画の力が未来を彩る!描け!イメージキング!》

 

今度は重厚な鎧姿に変わった。怪人達は次々襲い掛かるが、それを詩桜はガードせずに体で受けると、怪人達の攻撃をそのまま押し返しながら槍を頭上で振るうと、剣の絵になる。するとそれは質量を持った絵となり、

 

「いけ!」

 

剣は次々と怪人達にむかって射出!

 

《シャンソンクラウン!》

 

その間に詩桜はまた別のクラウンに変え、

 

《奉唱の力が未来を讃える!歌え!シャンソンキング!》

 

今度は細身で頑強さよりも美しさに重点を置いたような姿に変わる。

 

そして槍を地面に突き刺すと、クラウンのスイッチを押した。

 

《シャンソンストライク!》

 

それから詩桜は息をたっぷり吸うと、

 

「アァアアアアアアアアアアアア!」

 

詩桜の声を取り込んだ槍から強力な破壊音波が生み出され、怪人達を次々爆発させていく。

 

「ふぅ、最近ボイトレを頑張った甲斐があったな」

「詩桜さん!」

 

スパン!と最初に変身に使った王冠をに戻す彼女の頭を叩いたのは聖だ。

 

「莉々子さん。急になんだ」

「貴女のそれは周りの影響がデカいですから少し考えて使ってくださる!?」

「まぁそう言うな。こんだけボロボロにされてるんだ。少しくらい被害が増えても変わらんさ」

「やってること悪役のそれですわよ!?」

「元々私は正義のヒーローでもないからなぁ」

 

フフフ、と笑う詩桜に襲いかかる怪人。しかしそれを聖はハンマーで殴り飛ばす。

 

「はぁ、なんだってこんな人が仮面ライダーなんでしょう」

 

なんてため息を吐きつつベルトからクラウンを外し、ハンマーの側面にある窪みに嵌めた。

 

《ヘルシャフトチャージ!》

「あぁこの街の管理をされてる方々。申し訳ございませんわ!」

《ヘルシャフトブレイク!》

 

聖は地面を殴ると、その衝撃で前にいた怪人達を空中に浮かび上がらせ、

 

「せぇの!」

 

エネルギーで更にハンマーを巨大化させ、横薙ぎで纏めて吹き飛ばした。

 

「そっちこそ周りに被害出しまくりじゃないか」

「貴女と違って申し訳ないとは思ってますわ!」

 

等と言い合う二人を見ながら銃を撃つ新川は苦笑いを浮かべ、

 

「あの二人も変わらないねぇ」

「だなぁ」

 

智宏も同意すると、そこに武器を持った怪人が集まって襲い掛かる。

 

「あぶね!」

《ロイヤリティクラウン!》

 

智宏は急いで別のクラウンをベルトに装填。

 

《忠義の力が未来を守る盾となる!守護せよ!ロイヤリティキング!》

 

智宏は重厚な鎧と、巨大な盾を装備した黄色い姿に変わり、怪人達の攻撃を受け止めると、新川も腰につけてあるアタッチメントを銃に装着。

 

《バスターモード!》

 

そして智宏の肩を足場に飛び上がると、新川は銃を発射。エネルギーの塊の弾丸を放ったそれは怪人達纏めて吹き飛ばした。

 

《カームクラウン!》

 

その間に智宏はまたクラウンを変え、

 

《平静の力が未来を見据える!射抜け!カームキング!》

 

剣から今度は弓に武器を変え、それを構えると、エネルギーの矢が現れ発射。休まず次々発射していくが、

 

「あれだけ射って命中率凡そ3割弱かぁ……」

 

新川が言う通り、飛ばした矢の数に対して当たった数が少ない。殆ど周りの建物に当たっていた。

 

「やっぱ弓で斬ったほうがいいな」

 

智宏もそんなことを呟いてベルトの王冠のスイッチを押して走り出す。

 

《カームストライク!》

 

弓にエネルギーが集まり、怪人とすれ違いざまに弓で斬り捨てていく。

 

「確かにそっちのほうが和泉らしいや」

 

新川もそんなことを言って笑い、銃からアタッチメントを外してから、マガジン部分にある窪みに、ベルトから外した王冠を装填してスイッチを押した。

 

《アモーレチャージ!アモーレショット!》

 

智宏が仕留めそこなった怪人を撃って掃除。

 

「あとはあれだけか」

 

智宏も最初に変身に使った王冠をベルトに戻し、姿を戻すと四人は集まり、

 

「じゃあ終わらせますか」

《ブレイブストライク!》

《ロマンストライク!》

《ヘルシャフトストライク!》

《アモーレストライク!》

 

ベルトの王冠のスイッチを押して四人は腰を落とすと、足にエネルギーが集まり、同時に飛び上がってライダーキックの大勢に入ると、

 

『はぁあああああああ!』

 

同時攻撃で残った怪人達をなぎ倒し、4人が着地すると爆発。

 

「これで終わりかな」

「あぁ」

 

新川に同意しながら、智宏が変身を解除しようとするとそこに、

 

「グギャアアア!」

『っ!』

 

潜んでいた怪人が智宏に襲いかかろうと飛び出してきた。

 

「おにい!」

 

妃愛が叫ぶ中、怪人の攻撃が智宏に迫る。そこに、

 

《Ready Go!ボルテックフィニッシュ!》

 

ラビットタンクになって駆けつけた戦兎のライダーキックが炸裂し、怪人を吹き飛ばして人間に戻した。

 

『……』

 

智宏と戦兎の視線が交わり、戦兎は変身を解除する。

 

「お前たち、一体何者だ?」

 

そう問われ、智宏達も変身を解除し、

 

「えぇと、初めまして。おれ、じゃなくて自分は和泉 智宏って言います。助けていただきましてありがとうございます!」

「あ、どうもご丁寧に」

 

頭を下げられ、戦兎も思わず頭を下げた。そして智宏は、

 

「それでなんですけど、ここってどこですか?千玉市に帰りたいんですけど」

「千玉市?そんな市あったっけかな。ここは駒王町だけど」

 

思わず互いに首を傾げる二人。するとそこに龍誠が来て、

 

「戦兎!大丈夫だったか!?」

『あぁ!』

 

その姿を見た智宏と妃愛が声を上げた。

 

「兵藤 一誠!」

「へ?」

 

智宏は龍誠に詰め寄り、

 

「さぁ俺達を早く帰すんだ!」

「え?え?え?」

 

困惑してハテナマークを浮かべる龍誠に、戦兎やれやれと肩を竦めつつ、

 

「落ち着け。そいつは万丈 龍誠。似てるけど別人だ」

「え?」

 

今度は智宏が困惑する番だ。

 

「後で説明する。それよりも……」

 

戦兎はそう言って辺りを見回すと、怪人から人間の姿に戻った者たちが地面に転がっていた。

 

「これ、どうすればいいかなぁ」




前回いい忘れてたのですが、仮面ライダーキングの皆は元々ハミダシクリエイティブと言うゲームの登場人物たちです。うちの友達がこのゲームの実況プレイ上げてたので、仮面ライダーキングの設定を考えてた際に組み合わさせていただきました。


【仮面ライダーキング・ロイヤリティフォーム】

《忠義の力が未来を守る盾となる!守護せよ!ロイヤリティキング!》

 

パンチ力・35t

キック力・42t

ジャンプ力・25m

走力(100m辺り)・20秒


キングドライバーにロイヤリティクラウンをセットして変身する。

 
ブレイブフォームと比べ、鎧を着込んだような姿のためか、パンチ力やキック力は若干上がったものの、機動力は下がっている。

 

専用武器である西洋風の大盾、ロイヤリティガードを使い、敵の攻撃を強引に受け止め、キングブレイドで反撃するスタイルを取る。

誰かを守りたい。と言う気持ちで鎧や盾の硬度やスペックが変わると言う特性がある。


必殺技は、ドライバーのクラウンを一回押して発動し、敵をロイヤリティガードでぶん殴る《ロイヤリティストライク》と、キングブレイドにロイヤリティクラウンをセットして発動する《ロイヤリティスラッシュ》。キングブレイドにブレイブクラウンをセットし、ドライバーのロイヤリティクラウンを一回押して同時に発動させる事も可能。但し、体への負担が大きい。

【仮面ライダーキング・カームフォーム】

《平静の力が未来を見据える!射抜け!カームキン

パンチ力・20t

キック力・25t

ジャンプ力・70m

走力(100m辺り)・2秒

 

キングドライバーにカームクラウンをセットして変身する。

ブレイブフォームやロイヤリティフォームとは違い、キングブレイドを使わずに戦い、弓型の武器・カームアローで戦う。機動力重視の姿のためか、パンチ力やキック力は最低だが、ジャンプ力や走力は高い。

更に五感が鋭敏になり、特に聴覚や視覚が鋭くなる。その為、ちょっとした騒音にすら過敏に反応してしまうようなってしまうが、ライダーのシステムにその騒音を適度に抑え、変身者にとって必要な情報のみを感じ取れるようにするシステムが搭載されている。

しかしそれを起動させるには、常に平静な心を持っていなければならず、少しでも心が乱れると、大量の情報が一気に流れ込んできてしまい、変身が強制解除してしまうほど消耗してしまう。

カームアローによる遠距離攻撃を使うが、智宏が弓矢が下手くそなため、下手な鉄砲数撃ちゃ当たる戦法でやり、あっちこっちに被害が出てしまう。なので妃愛から発射禁止令がでるほど。実際カームアローが近接武器にも使えるため、撃つより斬った方が早い(智宏談)。

必殺技はドライバーのクラウンを一回押して発動し、カームアローで相手を攻撃する《カームストライク》。


【仮面ライダーロイ・ロマンフォーム】

パンチ力・25t

キック力・38t

ジャンプ力・23m

走力(100m辺り)・4秒

仮面ライダーロイの基本フォーム。専用武器のロイスピアーで戦う。

固有能力は想像力を力に変える事。高い想像力を持っていればいるほど、スペックを上昇させることが出来る。

基本的なスタイルのロイスピアーによる近接戦が主だが、戦いの流れを組み立て、相手の動きを話を作るように予測し、相手を翻弄しながら戦う。

詩桜いわく、ベルトはキングドライバーで変身音もロマンキングなのに、なぜ名前はロイなのかが気になるらしい。

必殺技は、ドライバーにセットしたクラウンを一回押して発動する《ロマンストライク》。ロイスピアーにクラウンをセットして発動する《ロマンスティング》。

【仮面ライダーロイ・イメージフォーム】

パンチ力・34t

キック力・46t

ジャンプ力・20m

走力(100m辺り)・5秒

仮面ライダーロイのパワー形態。

重装甲に身を包み、力業で相手を倒す戦法を取る。

固有能力は絵を描くとそれを具現化することが出来ることしかし。詩桜本人としては余り使い勝手は良くない能力らしい。

必殺技は、クラウンを一回押して発動する《イメージストライク》と、クラウンをロイスピアーにセットして発動する《イメージスティング》。

【仮面ライダーロイ・シャンソンフォーム】

パンチ力・20t

キック力・32t

ジャンプ力・30m

走力(100m辺り)・3秒

仮面ライダーロイのスピード形態。なのだが、殆ど動かない。

固有能力は声を破壊音波にして飛ばすこと。

ロイスピアーはマイク代わりになっている。

必殺技はクラウンを一回押して発動する《シャンソンストライク》と、ロイスピアーにクラウンをセットして発動する《シャンソンスティング》。

【仮面ライダーケーニヒ】

パンチ力・32t

キック力・36t

ジャンプ力・25m

走力(100m辺り)・5秒

聖会長が変身するライダー。

重装甲に身を包んでおり、智宏や詩桜のようなフォームチェンジはせず、基本的にこの姿で戦う。ただ二人のクラウンを借りることでフォームチェンジすることは可能。

専用武器は巨大なハンマーのケーニヒハンマー。

固有能力はクラウンが支配を司ることから物騒な能力に思われがちだが、仲間からの声援を力に変えるというもの。そのため元の世界ではお供を引き連れ、応援させながら戦っていた。

必殺技はクラウンを一回押して発動する《ヘルシャフトストライク》と、ケーニヒハンマーにクラウンをセットして発動する《ヘルシャフトブレイク》。

【仮面ライダーエマヌエーレ・アモーレフォーム】

パンチ力・20t

キック力・25t

ジャンプ力・60m

走力(100m辺り)・3.5秒

新川が変身する仮面ライダー。

仮面ライダーケーニヒ同様フォームチェンジを持たないライダーだが、ケーニヒとは違い軽装で機動力に特化している。

専用武器は、腰のアタッチメントを交換することで能力を変えることができる銃。エマヌエーレシューター。

固有能力は、人々から愛されれば愛されるほどそれを力に変換するというもの。

必殺技はクラウンを一回押して発動する《アモーレストライク》と、エマヌエーレシューターにクラウンをセットして発動する《アモーレショット》。


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ヒモ

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……


戦兎「突如俺達の世界を襲う新型怪人!しかしそれを倒したのは別世界の仮面ライダー!?」
智宏「そして出会う仮面ライダー達!ってか俺たちこれ帰れるのかぁ?」
戦兎「まぁ全部終われば帰れる装置作る余裕もできるだろ」
智宏「そんなのも作れるのか……なんでもありだなぁ」
詩桜「というわけでそんな感じの145話スタートだ」
戦兎&智宏「あ!一番いいところ」


「改めてお礼を言わせてもらうわ。私はリアス・グレモリー。この屋敷のまぁ管理者であり、駒王学園のオカルト研究部部長をしてるわ」

 

先程助けてくれた智宏達を屋敷に連れ帰ってきたリアスたちは、リアスの挨拶を口火に挨拶をしていく。

 

「あ、どうも。えぇと、和泉 智宏って言います。千玉学園という学校で生徒会長してます。こっちは妹の妃愛です」

「初めまして。和泉 妃愛です。去年までは副会長してたんですけど今年から別件で忙しくなってしまったのでお手伝いとして生徒会にいます」

「じゃあ次私。えぇと、常磐 華乃です。広報やってます」

「わ、私は錦 あすみです!書紀です!」

「私は鎌倉 詩桜だ。気軽に詩桜と呼んでもらいたい。あ、役職は副会長だ」

「あ、初めまして!竜閑 天梨です!アメリでいいですよ!役職は庶務です!」

「ワタクシは聖 莉々子。別の学園で生徒会長をしてますわ」

「僕は新川 広夢。生徒会とは関係ないんだけど和泉のお手伝いとか偶にしてるんだ。宜しく」

「私は和泉 里。そこの和泉 智宏と和泉 妃愛の従兄弟で千玉学園の先生兼生徒会顧問やってまーす」

 

さっき剣を使う仮面ライダーに変身していた和泉 智宏、見た感じ余りパッとした印象はない。どこにでもいそうな雰囲気だ。

 

続いて和泉 妃愛。ホントに智宏と血が繋がっているのか?と思うほど雰囲気が違う。容姿も整っており、普段から気を使っているのも分かった。

 

常磐 華乃。気の強そうな雰囲気だが、さっきから少し智宏の影に隠れる位置にいるので、多分余りコミュニケーションが得意な方ではなさそう。あと胸がでかいゲフンゲフン。

 

錦 あすみ。小柄で非常に可愛らしい雰囲気の子だ。こっちは常磐以上に緊張しており、顔色まで悪い。

 

鎌倉 詩桜。黒髪のスタイルのきれいな女性だ。こちらも仮面ライダーに変身していた。絶対Sだろう。

 

竜閑 天梨。見た目通り明るい性格で物怖じせずハキハキ喋る。こっちも接しやすそうだ。

 

聖 莉々子。なんというか少し偉そう。ただ悪いやつではない。そんな感じがする。彼女もそう言えば変身していた。

 

新川 広夢。中性的な顔立ちをしている男。少しギャスパーに通ずるものがありそうだ。こっちも変身していて、銃を持つライダーだ。

 

最後に和泉 里。一番最年長だろう彼女は教師で和泉兄妹の従兄弟らしい。アメリに似た雰囲気があり、明るく物怖じせずこちらに話しかけてくる。

 

これで全員か。と戦兎が内心つぶやくと、

 

「じゃあ早速で悪いけど、貴方達は何者なの?貴方達も仮面ライダー、なのかしら?それにあの怪人は何?」

 

リアスはそう問うと、智宏はワタワタしつつ、

 

「え、えぇとですね。まずどっから説明すればいいかな」

「まずは怪人から説明すればいいじゃないか?それから仮面ライダーについて話したほうがわかりやすいし説明もしやすいだろう」

 

詩桜がそれとなくアドバイスすると、智宏はそうかと頷き、

 

「えぇとですね。アレはリベリオン。俺達の世界ではそう呼ばれてました。なんていうか、人間が持つ負の感情。妬みとか嫉妬とか。そんなのをエネルギーのして人間を怪人に変えるコアみたいなものを埋め込むとああいう姿に変わってしまうんです。そしてそれをしていたのがレボル。厳密にはその部下のエンビーっていうやつがやってたんですけど、それは一旦置いといて、昔からレボルってやつは何度倒しても復活して人々に迷惑をかけてましてね?それと戦っていた来たのがこの仮面ライダーです」

 

と言って智宏が見せたのは、さっき変身する際に使ったバックルとクラウンだ。

 

「裁定者。そう呼ばれる存在がいて、それに選ばれた四人の若者。それが仮面ライダーになれるようになるんです」

 

ちょっと自分は特殊例でしたが、とボソッと智宏は言っていたが、戦兎は取り敢えず置いておくことにして、

 

「そのライダーシステムに選ばれる基準とかはあるのか?」

「才能あふれる若者らしい」

 

そう答えたのは詩桜で、

 

「それぞれのライダーにはそれぞれクラウンによって固有の能力を得ることができる。私の仮面ライダーロイはロマン・イメージ・シャンソンの3つだ。それぞれ物語を考える才能。絵の才能。歌の才能がスペックに影響を与えるんだ。まさか小説家を生業としててこういう役に立つことがあるとは思わなかったが」

「あら、貴女小説家なの?」

 

リアスは少し驚いて詩桜を見ると、

 

「あぁ、星しをんと言う名前で書いているんだ。まぁ他の皆も私に負けず劣らずの才能の持ち主だよ」

 

そう言われ、戦兎達は他のライダーや智宏の仲間達を見る。確かに容姿は整っているし、何名かは不思議と華がある雰囲気を持っていた。約一名を除き。

 

「あ、いや詩桜先輩。俺はそんな対したやつじゃ」

「いやいや。君も対した男だよ」

 

しどろもどろする智宏に、詩桜はケラケラ笑うと、戦兎は智宏を見て、

 

「えぇと、和泉もなんか仕事してるのか?」

「え?」

 

ピキッと空気が固まる。そして智宏はニヘラっと笑みを無理やり作ると、

 

「そ、ソシャゲを少々?」

『だぁ!』

 

思わず戦兎達はズッコケそうになった。しかし詩桜は、

 

「いやいやただソシャゲをしているわけじゃないぞ?」

「確かにひよりんに炊事洗濯掃除等の家事全部やってもらって悠々自適にソシャゲやれるってのも才能よね」

「ゴフッ!」

 

詩桜と常磐の連携に智宏はダメージを受ける。

 

「だ、大丈夫ですか先輩!」

 

そんな様子を見たあすみは慌てて智宏に駆け寄り、

 

「だ、大丈夫ですよ!先輩は凄く頼りになるのも皆わかってますから!」

「あ、ありがとう錦さん。でも家事全部やってもらってるのはホントだから」

「朝も起こしてもらって妹からのお小遣いでガチャも引くがな」

「ゴフぅ!」

 

詩桜にとどめを刺されて智宏は遂に地面に倒れ伏した。

 

「せんぱぁああああい!」

 

ユサユサと体を揺すって動かなくなった智宏に声を送るあすみを見ながら、戦兎達は妃愛を見る。

 

「アレマジなのか?」

「え?はい。おはようからおやすみまで兄のお世話をするのが私の仕事なので!」

 

と、ニッコリいい笑顔で答えられてしまった。

 

「それ世間一般ではヒモとか寄生って言われる行為だけど」

「じゃあ頑張って兄の分も働いて家事もこなさないとですね!」

 

何だこの妹。と戦兎たちの思いが一つになりつつ、

 

「働くって和泉……さん?はなにかしてるの?」

「名字だと紛らわしいので下の名前でいいですよ?あ、私は声優してまーす!」

 

通りでいい声を、と戦兎は思う。普通に話してても喋りもきれいだ。等と思いつついると、

 

「しかもただの声優じゃなくて今をときめく覇権声優ですからね。年間3桁万円から下手すると4桁って話も聞くくらいですから、ホントに和泉を養っていけそうですよ」

「3桁万円!?」

 

ギョッとして戦兎達は、今話した新川と妃愛を交互に見た。

 

「だとしたら忙しいんじゃ……」

「そうですね。その時は兄のご飯も遅くなってしまいますので申し訳なく思います」

『いやもう兄に家事させろ!』

 

と戦兎達は思わず全員で突っ込んでしまう。

 

そして戦兎は智宏の元に行くと、肩を掴んで立たせて、

 

「えぇいそもそもお前は恥ずかしくないんか妹に生活全ての面倒を見てもらって!」

「て、てへ?」

 

笑って誤魔化す智宏の肩をグラグラ揺らして戦兎はさらに言葉を続け、

 

「お前一生妹の世話になるつもりかー!」

「あうあうあうあうあう」

 

グラグラ揺らされて顔色が悪くなってきたので、戦兎を落ち着かせて一旦離れさせると、

 

「そもそもよくそんな感じで生徒会長やる気になったよなぁ」

 

龍誠のそんな素朴な疑問。すると智宏は、

 

「あぁ、前生徒会長が突然行方不明になって、行事の関係で急いで別の生徒会長出さなきゃっていけなくなって、くじ引きやることになって当たってしまったんだ」

『だぁ!』

 

本日二度目のズッコケだった。なんちゅう適当な。

 

「まぁまぁ。言うてトモスケ今二期目で今生徒会長なのはちゃんと本人の意思で選挙も通ってだからさ」

 

と一旦ストップを掛けたのは智宏と妃愛の従兄弟の里だ。

 

「つうわけで、そろそろそっちの話も聞きたいかな」

 

確かにこっちばかり聞いていた。と思い至った戦兎達は、これまであったこと。兵藤一誠の事や仮面ライダーのことを話していく。そして一通り話していくと、

 

「ってくらいかな」

 

そう戦兎が締めた。すると智宏と常磐が、

 

「なぁ常磐」

「言いたいことはわかるわ和泉」

 

二人は目を合わせ、そして叫ぶ。

 

『原作ブレイカーものじゃ(ねぇか)(ない)!』

 

はぁ?と戦兎達は、ポカンとしてる間にも智宏と常磐は、

 

「え?しかも俺TUEEEEに加えて原作知識あり物!?いやいやなにその俺が考えたサイキョーの俺的なやつ!一時期はやったけどさぁ!後で見てはずくなる設定じゃん!」

「しかも能力強奪もあるでしょ!?最早話として成立しないわよそんな二次創作!全部ドカーンで終わるわよ!設定モリモリ過ぎて収集つかなくなるやつわよ!」

 

ウガー!っと叫ぶ二人を見て呆然としてしまう戦兎たちに、妃愛が、

 

「すいません。なんか二人の地雷を踏んだみたいで」

「恐らくあの二人の似たようなことは考えたんだろうなぁ」

 

続いて詩桜もそんなこと言うと、智宏と常磐が固まり、

 

『イ、イヤマサカソンナコトハ』

「めちゃめちゃカタコトだが?」

「それにお兄ちゃんまだ昔の自作小説の色々書いたノート部屋に隠してあるしね」

 

ブフ!と智宏は驚愕の眼を妃愛に向けて、

 

「な、なぜそれを!?アレは部屋の奥底に隠して!」

「フッフッフ。甘いなお兄ちゃん。誰がお兄ちゃんの部屋を掃除してると思ってるんだい?お兄ちゃんが部屋で食べたお菓子から最近購入したであろうエッチな本やゲームもすべて把握してるのさ。最近はメイド服物が好きみたいだねぇ?」

「やめろぉおおおお!」

 

智宏は妃愛の口を塞いで黙らせる。そして、

 

「と、とにかくその兵藤 一誠の目的ですよね!」

「あ、話変えた」

 

アメリのそんなツッコミもスルーして智宏は、

 

「そもそも何で桐生さんの妹さんを?」

「分からない。アイツはただの人間だし、理由がな」

 

ただの人間。それだとまるで自分は違うと言いたいのか?と智宏は聞こうとした時、

 

『っ!』

 

突然地面が揺れ、外で爆発音が響く。

 

それを聞いた面々は急いで外に飛び出すと、そこには、

 

「兵藤 一誠にその仲間たちか」

 

他にも多数の怪人達が屋敷の周りを取り囲んでいた。

 

「おい美空はどこだ!」

「まぁそう焦るな。すぐに会えるさ」

 

そう言って笑う一誠に、戦兎は苛立ちを覚えたが、それを抑えてドライバーを装着。

 

《ラビット!タンク!》

 

「狙いは妃愛か!?」

 

《ブレイブクラウン!》

 

智宏の問いに、一誠は正解とまた笑う。

 

「だったらぶっ飛ばす!」

 

と言ってクラウンを装填。それと同時に一誠が爆発を起こすが、変身したライダー達が爆炎を払い、背後の皆を守った。

 

「下がってろ!」

 

智宏はキングブレイドを手に走り出し、怪人達次々切っていく。

 

「はぁ!」

 

戦兎も続いてドリルクラッシャーで切っていき、戦兎と智宏は背中合わせになり、

 

「それ手作りなんですか?」

「あぁ、ドリルクラッシャーっていうんだ」

 

それオーバーテクノロジーだよなぁと呟く智宏に、マグダランが襲い掛かるが、それを避けて蹴り飛ばす。しかしそれと入れ替わるようにリゼヴィムの炎。

 

《Ready Go!ボルテックブレイク!》

 

そこに戦兎が消防車フルボトルを挿して発動した一撃で生み出した水で鎮火し、

 

《ロイヤリティチャージ!ロイヤリティスラッシュ!》

 

キングブレイドにロイヤリティクラウンを装填して放った一撃で、リゼヴィムを吹き飛ばす。

 

《Ready Go!エボルテックアタック!》

 

その隙をついてきたユーグリッドの一撃だが、

 

《Ready Go!ボルテックフィニッシュ!》

《ブレイブストライク!》

 

戦兎と智宏のダブルキックで迎え撃ち、同時に吹っとんだ。

 

「ちっ!流石に数が多いな」

 

ロイスピアーで怪人を倒していく詩桜だが、ふと背後を振り返り、

 

「しまった!」

 

その視線の先にいたのは妃愛。そして背後には、ディハウザー・ベリアルがいた!

 

「ちぃ!」

 

咄嗟に詩桜は投げ槍の要領でロイスピアーを投擲したが、ベリアルはそれを魔力弾で弾き、

 

「きゃあ!」

「妃愛!」

 

妃愛の悲鳴で智宏も振り返り、咄嗟に走り出すが、

 

「悪いがそうはいかないな」

「っ!」

《Ready Go!エボルテックフィニッシュ!》

 

背後から放たれた一誠の一撃が智宏に炸裂し、爆発とともに変身が解除された。

 

「ひよ……り」

「お兄!」

 

遠くなる意識の中、必死に手を伸ばす智宏だが、その中で最後に見たのは、泣きそうになりながら、何処かに消えていく妃愛の顔だった。



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純血の悪魔

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「異世界の仮面ライダーの智宏達と出会い、そしてディハウザー・ベリアルに襲撃を受ける俺達だったが……」
智宏「てかマジで容赦無く攻撃してきたなぁ。めっちゃいてぇ」
戦兎「お前体外頑丈だなぁ」
智宏「そりゃ色々潜り抜けてるからなぁ」
戦兎「まぁそんな感じの」
常磐「146話スタート!」
戦兎&智宏「おい!」


「妃愛!」

 

ガバっと体を起こした智宏は、周りを見回すと見たことない部屋のベットにいた。

 

「ここは?」

 

とベットを降り、自分の体を触る。何となく覚えているのは妃愛が連れ去られ、自分は兵藤 一誠の攻撃を受けたところだ。すると、扉がガチャリと開かれ、

 

「先輩!?」

「会長!?」

「ん?」

 

入ってきたのはあすみとアメリで、二人は智宏の顔を見ると飛び付いてきた。

 

「良かったですもう痛くないですか!?」

「なんかね!アーシアさんって人が凄かったの!あとなんかさっき聞いてなかったんだけどあの人たち悪魔でね!それでそれで」

「お、おちつけ……」

 

最早二人がかりで放たれた、強烈なタックルだった抱きつきに、智宏は悶絶しつつ、二人を連れて部屋を出ると、リビングに行く。

 

「和泉!」

「あ、桐生さん」

 

部屋に入ると、一番最初に目があったのは戦兎で、それに続いてゾロゾロやってくる。

 

「和泉!怪我は大丈夫!?」

「大丈夫だよ常磐。不思議なくらい痛みがない」

 

最初に声をかけてきた常磐に、マッスルポーズをしながら答えた。

 

「さて、和泉君も目覚めたことだし、これからどうしようか。ひよりんがどこに連れて行かれたのかもわからないしな」

 

確かに、と全員が頷くと、

 

「お前ら!」

 

アザゼルが部屋に飛び込んできて、皆が思わずそっちを見ると、

 

「今冥界にこんな映像が流れた!」

 

そう言って、テレビを弄ると、どこかの空が映し出され、そこに写ったのは、

 

『ディハウザー・ベリアル!?』

 

思わず皆でテレビに齧りつくように寄って見る。

 

そしてそこから声が聞こえてきた。

 

「今更自己紹介もいらないと思うが、改めて名乗ろう。私はディハウザー・ベリアル。レーティングゲームの現チャンピオンだ。だが今は禍の団(カオス・ブリゲード)に席をおいている」

 

ザワッとテレビ越しの向こう側から動揺の声が聞こえる。

 

そんな中、ベリアルは話を続けた。

 

「突然の出来事に、驚くものも多いだろう。だが今までの立ち位置では出来ないことをする必要があるからだ。そしてそれを話すために、今ここにいる」

 

そう言ってベリアルは、手に持ったコマを見せる。それは今まで見たことない形状のコマだ。確かあれは、

 

「チェスのキングのコマ?」

 

詩桜が呟く中、ベリアルは続けて言う。

 

「これはキングの悪魔の駒(イーヴィル・ピース)だ」

「うそ」

 

リアスが呆然と口にした。

 

「キングの悪魔の駒(イーヴィル・ピース)は存在しない。と言われているが、実は少数ではあるが製作されていた。能力は単純な強化。ただその強化率は尋常じゃない。下級悪魔ですら魔王クラスにまで引き上げるほどのな。さて、そしてここからがレーティングゲームの闇だ。現在レーティングゲームの上位を占める者達は、元々はそこまで突出した力はなかった。だがある日突然力を増し、頭角を現した」

 

このキングのコマを使ってな。と言われ、もうリアスはその場にへたり込みそうになった。それを龍誠は慌てて支え、

 

「そしてその闇を暴こうとしたものがいた。名はクレーリア・ベリアル。私の従兄妹だ。彼女はその秘密に限りなく近づき、そして消された。表向きは、人間の聖職者と恋仲になったと言う名目でな」

『っ!』

 

戦兎達の間に、衝撃が走った。

 

「私は今の冥界と、古き悪魔の血筋を滅ぼすため、禍の団(カオス・ブリゲード)の元に行くことにした。以上だ」

 

それを最後に映像は途切れ、消失した。

 

「やってくれたな」

 

戦兎は苦虫を噛み潰したような顔をする。

 

「これは相当荒れるぞ」

「だろうな」

 

ヴァーリと匙がそういう中、

 

「リアス」

「サイラオーグ?」

 

今の見たか?とやってきたサイラオーグに問われ、リアスは頷くと、

 

「そうか。ならうちの爺さんが話があるらしい。来てもらえるか?」

「えぇ、私も聞きたいことがあるわ」

 

リアスは自分の足で立つと、サイラオーグに体を向ける。

 

「きっちり話を聞かせてもらうわよ」

「あぁ。勿論だ」

 

なんてやり取りを観ていた智宏は、戦兎に耳打ちした、

 

「あの、どうしてあの男性のお祖父様が?」

「いや俺も詳しくはないんだが、さっき出た古い悪魔の血筋って奴らの大将みたいな感じかな?」

 

成程。と智宏は戦兎の言葉にうんうん頷くと、

 

「あのグレモリーさん」

「何かしら?」

「自分も一緒に行っていいですかね?ちょっとそのお爺さんに聞きたいことがあるので」

「はい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔法陣から出現したリアスたちと、智宏達。

 

智宏達は空を見たりして物珍しそうな顔をした。

 

「ホントに魔法陣で移動なんてあるのね」

「俺は戦兎さんたちがほんとに人間じゃなかったことにも驚いてるよ」

 

常磐と智宏がそんな会話をしていると、

 

「あれー?」

「どうしたアメリ」

 

智宏が急に声を上げたアメリに向きなおる。

 

「せっかくだから、いんちゅたに空の写真あげようと思ったんだけど、繋がらないんだよね」

「世界違うからなぁ。俺もソシャゲやろうと思ったら繋がらなかったよ」

 

残念がるアメリを宥めつつ、皆で屋敷に入っていくと、サイラオーグに案内され、初代バアルが待つ部屋につく。

 

「初めまして。グレモリーのお嬢ちゃん。他の皆もレーティングゲームの映像で見たことがあるのばかり……おや、見たことない人間もいるようだ」

 

ビリビリとしたオーラを纏った老人だ。これが古い血族の頂点。初代バアルかと思う。

 

「単刀直入に聞きます」

 

そう言って口火を切ったのはリアスだ。

 

「チャンピオンが……いえ、ディハウザー・ベリアルが言っていたことは本当なのですか?」

「本当じゃよ」

 

初代バアルは悪びれることもなく、あっさりと認めた。余りにもあっさりと認めたため、リアス達は肩透かしを食らった気分だ。まるで何か問題でも?と言いたげなくらいである。

 

「それは転生悪魔の台頭があったからですか?」

「流石よく分かっておるわ」

 

リアスの問い掛けに、初代バアルは喉を鳴らすような笑い声を出す。

 

「転生悪魔が増え、レーティングゲームが盛り上がってくるとな、段々純血の悪魔たちの戦績が落ちていった。転生悪魔の多様な能力に神器(セイクリットギア)、中々に厄介。じゃがそれは宜しくない」

 

宜しくない?と智宏は意味が分からず、首を傾げた。ここに来るまでに転生悪魔の話は聞いている。数が減った悪魔という種の存続のため、生まれたのが転生悪魔。だとすれば強い転生悪魔がいるのはいいことなのでは?と。

 

「人間の坊やには分からないかもしれないが」

 

とそれを見た初代バアルは智宏と視線をぶつけると、

 

「転生悪魔は悪魔じゃないからだ。悪魔というのは、古くからその血筋を繋いだ純血の者のみをさす。故に転生悪魔がレーティングゲームで幅をきかすなどあってはならないんだよ」

「な、成程」

 

智宏は嫌な爺さん。と思いながらそれ以上は口にしない。いっそ清々しいほどだ。

 

「それでキングの駒を使ったと?」

「そうじゃよ。多少順位が上の方に転生悪魔がいるのは仕方ない。じゃが上位クラスは古き血脈の純血が立っておらんとな」

 

示しがつかんじゃろう、と言う。

 

「じゃが厄介なことになった。ただでさえうちはマグダランの阿呆が禍の団(カオス・ブリゲード)についた。そのせいであちこちから文句を言われとるからのう」

 

このままでは行くあてもなく他の純血達と一緒に逃げるしかない。と笑う初代バアル。それを聞いて戦兎は眉を寄せると、

 

「まさか禍の団(カオス・ブリゲード)につくなんて言わないですよね?」

「ハッハッハ。今行ったところでディハウザー・ベリアルに殺されてしまうよ。言っただろう?行くあてはないと」

 

冗談なのかそうじゃないのかわからない言い方に、その場の空気がピリついてきた。しかしそれを智宏が手を上げて、

 

「あ、あのバアルさん?でいいですかね?」

「ふむ。なにかな?」

 

智宏はペコペコしながら前に出ると、初代バアルの目を見ると、

 

「あの、クレーリアさんって何者なんです?」

「クレーリア?あぁ、ディハウザーの従姉妹の娘じゃよ。聞いてないのかい?」

「あいや、どんな関係だったのかなーって」

「目を掛けてたのは知っとるが、深くは分からんな」

 

そうですか、と智宏はガックシ肩を落とす。戦兎達は、そんな智宏を見て首を傾げた。一体何をしたいのだろう。

 

「そんなことよりグレモリーのお嬢ちゃんよ。これからどうするんだい?」

「どうするとは?」

「聞いた話ではビルドの妹が誘拐されたらしいじゃないか」

「勿論取り戻します。こちらの和泉 智宏君の妹さんも連れ去られましたし」

 

なら気をつけることだ。と初代バアルは言い、

 

「あやつの強さに偽りはない。元々の才能と修練を積み重ねたものだ」

 

それは皆もそうなんだろうとは思っていたが、改めて言われると背筋に冷たいものが走る。

 

下級悪魔でも魔王級まで引き上げるキングの駒を使ってきた面々を倒し、そして長くチャンピオンとして立ってきた男。その強さに嘘はないらしい。

 

「正真正銘の怪物。せいぜい気をつけなさい」

 

口元に笑みを浮かべながら、初代バアルはそういうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんなのあのじじいいいいいいいいい!」

 

屋敷を出た瞬間。常磐が叫ぶ。あのあとも少し話したが、少なくとも彼女は初代バアルが嫌いになったらしい。

 

「むかつくむかつくむかつくー!」

「落ち着けよ常磐」

 

どうどうと智宏が抑えつついると、

 

「しかしまぁどうしたもんかなぁ」

 

ひとまずの行動指針としては美空と妃愛の救出だが、隠れている場所が分からない以上動きようがない。とはいえ、兵藤 一誠のことだから、タイミングを見て現れるはずだとも思っている。だがそれまで動けないのもそれはそれで落ち着かない。と戦兎はいうと、

 

「それにしてもあのお爺さん優しいね」

 

は?と皆がアメリの発言に固まる。

 

「え?態々気をつけなさいって言うために呼んでくれたんだよね?」

『うーん』

 

皆が思わず唸る。確かに今回の会話の内容としては説明とベリアルへの注意だったが、なんとも言えない空気があった。すると詩桜が、

 

「いや、恐らくそれだけじゃないだろう」

「え?」

「あのご老人は仕切りに純血が大事だと言っていた。あの口ぶりから察するに、あの人が重視するのは冥界そのものより純血という事実。それこそ1に純血2に純血。3、4ときて5に純血というくらいだろう。恐らくだが、世界が滅びようと純血の悪魔がいればいいと思ってる」

 

確かに思ってるだろうなぁ。と戦兎達悪魔組は思う中、さらに詩桜は続け、

 

「ただ逆に言えば、純血悪魔の立場を考えてくれるのであれば、恐らく協力は惜しまないということだ。言っていただろう?このままでは他の純血悪魔を連れて逃げるしかないと。それつまり、あの御老人が声をかければ動かせる人材は多いということだ。だが同時に、行くあてはないとも言っていた。それは、かなり切迫してはいるということ。そしてリアスさんを呼んだのも、貴女は魔王の妹なのだろう?恐らく狙いは貴女のお兄さんに話を通したかったんだろう。お兄さんと直接会えば、周りの目もある。だがリアスさんや私達も入れてなら、桐生くんの妹さんの件もあるし、言い訳は幾らでも立つ」

「じゃああの人の目的は」

 

あすみが詩桜に問うと、恐らくはだが、と前置きを置いてから、

 

「歩み寄り、だろうな。いやまぁ、私も悪魔の社会がはっきり分かってるわけじゃない。そちらの世界の説明とあのご老人の会話から推理した所もあるがな」

「はぁ!?じゃあそれ自分の立場が悪くなったからすり寄ってきたってこと!?」

 

まぁ悪く言えばな。と詩桜は怒る常磐に言い、

 

「だが恐らくあのご老人も現体制と歩み寄るタイミングは測っていたと思う。さっき言ったように、純血の存続が一番だ。だがそれは結局、今の体制に合わせなければ生き残れない。最初から自分達だけでどうにかなるなら、そもそも転生悪魔という制度に頼る必要などなかったんだからな」

「でも前から現体制は歩み寄ろうとしてたはずだけど」

 

と龍誠が言うと、

 

「それに素直に応じれば弱腰と取られるからだろう。あくまでも自分達が主体で妥協した。という体でなければ、更にそこから離反するものも出たはずだ。あの御老人が目指したのは、自分についてくる純血も一族を極力離反させず、且つ一定の地位を得た状態で現体制に入り込むこと。そういう意味では、今のタイミングは良かったはずだ。何せ大規模テロが起きている今の状況では、現体制もある程度妥協しなくていけない。そこまで余裕がないのは純血だけじゃない。現体制の方もだろう。その状況なら、純血主導で話を進めたと話をしても問題にはならないだろう。細かいところをお互い指摘しあってる余裕はないからな。だからリアスさんを通してお兄さんにメッセージを送った。今ならお互いチャンスではないか?とね。現体制もいま純血悪魔の離反なんて言う騒ぎを起こされても困るはずだろう?」

 

まぁ全部想像の域だがね。と詩桜は締めた。ついでに今度小説に使わせてもらうかと言うと、アザゼルが、

 

「俺も同じ意見だ。ま、色々あるからな。どうするリアス?サーゼクスに伝えるのか?」

「政治的なことに関してはお兄様が決めることよ。でもお兄様がずっと古い血族達との和解も願ってたのも知ってる。そのチャンスが来たなら私が邪魔するわけにいかないでしょ。普通に伝えるわよ」

 

そんなやり取りを見ながら、龍誠は智宏に、

 

「なぁ、お前のとこの先輩すげぇな」

「あの人基本的に完璧超人ですから。まぁ性格は一癖どころか百癖くらいある人ですけどねー」

 

アッハッハと笑う智宏を見ていた龍誠だが、突然ギョッとした顔をする。

 

「どうしました?」

「う、後ろ」

「後ろ?」

 

そう言って振り返った智宏の目の前に、ニッコリ笑顔の詩桜が立っていた。

 

「コソコソと随分なことを言うじゃないか和泉くん」

「あ、いやー」

 

今度はアハハと力なく笑う智宏に、詩桜はゴキッと指を鳴らすと、

 

「フン!」

「あぎゃあああああああ!」

 

一瞬で智宏の腕を掴んでひねり上げるとそのまま関節を極めた。

 

「せ、先輩ギブギブ!人間の腕はそっち側には曲がらないように出来てるんですから!」

「なら人類初を目指してみようじゃないか!」

 

そんな初はやだー!と智宏は叫び、

 

「止めるか?」

「その内勝手にやめますわよ」

 

一応戦兎は聖に聞くと、呆れた様子で言われた。そして暫しじゃれ合ったあと、詩桜に解放された智宏は涙目になりながら、

 

「いつか見てやがれ三浦大根が」

「なんか言ったか?」

 

イエナンデモー!と詩桜についた悪態も聞かれて詰め寄られる中、

 

「あ、あの」

『ん?』

 

と声を掛けられ振り返ると、そこには一組の男女がいた。見たことはない。

 

「あ、貴方が仮面ライダービルドですか?」

「あ、はい」

 

なんだ?と首を傾げると、目の前の二人は急に土下座をしてきた。

 

「はい!?ちょ、ちょっと!?」

 

突然のことに、戦兎はわけが分からず困惑していると、

 

「本当に!今回のことは申し訳ありませんでした!私共の息子がとんでもないことを!」

 

その言葉に、戦兎は気づく。まさか、と。

 

「もしかして、ディハウザー・ベリアルの?」

「はい。ディハウザーは私達の息子です!」

 

突然の登場に、戦兎達は互いに目を合わせ、困惑するのだった。



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お兄ちゃんとして

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「兵藤 一誠の襲撃を受け、美空と妃愛を奪われた俺達に、初代バアルが接触してくる中、続いて現れたのはディハウザー・ベリアルのご両親!?」
智宏「しかも敵の親ってことで警戒してたらなんといきなり土下座&謝罪!一体これからどうなるんだー!」
あすみ「そ、そんな感じの147話スタートです!」
智宏「いよっ!今日も輝いてるー!」
戦兎「どういうテンションなんだよ」


「お、落ち着かれましたか?」

「は、はい」

 

さて突然の現れたディハウザー・ベリアルのご両親に土下座されたものの、戦兎達はここでは何だからと、一旦自宅に移動し、改めて話を聞くことになった。

 

「この度は本当にとんでもないことを」

「まぁ更に言うなら桐生さんの妹さんだけじゃなくてこの和泉くんの妹であるひよりんも誘拐されたしな」

 

先輩!っと智宏は嗜めるが、詩桜は素知らぬ顔で、相手のご両親は顔面蒼白を通り越して最早形容しようのない色に変わっていた。

 

「そ、そんな。何とお詫びすればいいか」

「あぁいえいえ。ひ、一先ずですね、何故来たのかの話から」

 

話が進みそうにないので、智宏は止めつつ話を聞くと、

 

「たまたまバアル家に皆様が顔を出されてると聞き、今回息子がしたことの件でいても立ってもいられず。謝って済む問題じゃないのは分かっていますが、せめて直接謝罪をせねば」

 

と言って夫婦共々また土下座でもしそうな雰囲気だったので、慌ててみんなで止めた。

 

すると智宏が二人の前に立ち、

 

「あ、あの。つかぬことをお聞きするのですが」

「は、はいなんでも!」

 

父親の男性は顔を上げながら聞き返すと、智宏は口を開く。

 

「いえね。クレーリアさんとディハウザーさんってどんな関係だったのかなってお聞きしたくて」

 

それを聞き、戦兎達は顔を見合わせた。さっきも初代バアルに聞いていたが、なにか気になるのだろうか?

 

しかしそんな中、男性は口を開く。

 

「二人は従姉妹の関係です。ですが昔から仲がよく、まるで本当の兄妹のようでした。クレーリアがディハウザーによく懐き、ディハウザーもクレーリアを非常に大切にしておりました」

 

そう言って、父親はお茶を一口飲んで口の中を濡らした。

 

「ですがクレーリアが、当時の話では、聖職者と恋仲になりその中で殺され、ディハウザーはずっと後悔しておりました。あの時自分が間に立ててればと。その前からクレーリアから話がしたいと来ていたそうです。ですがレーティングゲームのチャンピオンとして、分刻みで予定があるあの子は、どうしても後回しにせざるを得ず、時間を取れずにいたところあの事件が起きて」

 

と言って、父親は俯いて声を詰まらせた。そして、

 

「いえ、そもそも私達のせいなんです。我が一族は歴史があるとは名ばかりで、没落の一途を辿っていました。ですがディハウザーがレーティングゲームのチャンピオンになり、一気に盛り返すのには成功しました。そうしていく内に、私達夫婦もディハウザーに頼り切ってしまったんです。あの子は責任感が強い。そうすれば必然的にあの子は、全部一人で背負ってしまうとわかり切っていたんです。ですが全て頼ってしまった。その結果、あの子が本当の妹のように大切にしていた子との、相談に乗る時間すら奪ってしまった」

 

両親二人はボロボロと泣きながら叫ぶ。

 

「それでもあの子は自分に言い聞かせてきたんです。あれは時代だった。仕方なかったんだと、ギリギリの所で踏みとどまっていた。ですが今回の一件が、全てを崩した。ですが、その前に私達が声をかけるべきだった。でも大丈夫だというあの子に甘え、たとえぶつかってでも声をかけるべきだったのに、気づけばあの子の顔色を伺うようになっていた」

 

そう言って、自分を責める二人に、戦兎達は何も言えなくなってしまう。

 

そんな中、智宏が口を開いた。

 

「そうか。だからだったんだ」

「え?」

 

その言葉に、皆が反応し、

 

「あ、すいません。突然変なこと言って。いや、ディハウザーさんの話してる姿を見てたら、懐かしくなったんですよ」

 

はぁ?と皆が思わず首を傾げる中、智宏はディハウザーの両親に歩み寄る。

 

「俺。両親がもう居ないんです。まだ俺が小学生だった頃、交通事故で突然この世を去りました。連絡を受けて、急いで病院に向かって、そこにいたのは両親の遺体の前で、立ち尽くしてる妹でした」

 

自分の顔を見るや泣き出し、胸に飛び込んで来た妹を見て、後悔した。

 

こんな小さな……と言っても一つしか違わないのだが、そんな妹を抱きしめ、どれだけ心細かったのだろうと思った。だからその時決めたのだ。例えどんなことになったとしても、必ずこの妹の側にいようと。

 

だからかもしれない。あの映像を見て、智宏が気づいたのは。

 

「それと同じだったんですよ。ディハウザーさんが。泣きたくて、恨んでて。でもそれをどうしようも出来なくて、もう自分でも何がなんだか分からなきて、あの言葉一つ一つが、助けてって言ってるような……そんな顔でした。お二人も気付いてたんじゃないですか?」

『っ!』

 

ビクッと、ディハウザーの両親は体を震わせた。きっと気付くだろう。だって家族なのだから。こうして息子のしたことのために、謝りに来るくらい息子を愛する両親なんだから。

 

「だから息子さんを助けます」

『え?』

「あんな顔されちゃったら、見捨てられないんですよ」

 

アハハと笑う智宏。だって見ないふりをしたら、あの時の妃愛を、見捨てるのと同義だと思うからだ。

 

「だからお願いします」

『っ!』

 

深々と頭を下げる智宏に、ディハウザーの両親だけではなく、他の皆も驚く。そして、

 

「必ず息子さんは助けます。だから、今度は沢山話してあげてください。別に何だっていいです。今日天気いいねとか。そんな話でもいい。偶に意見が食い違って喧嘩したっていい。でも、お願いだから話してあげてください。沢山話したいこと、あると思うんです」

 

その言葉に、ディハウザーの母はワッと泣き、父は智宏の手を取る。

 

そんなことは望んではいけないと思っていた。だがもしそれが許されるなら、

 

「お願いします。息子を、ディハウザーを助けてください」

「必ず」

 

泣きながら、そう懇願する父親に、智宏はそう応えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で?思いっきりカッコつけたけど、どうするわけ?」

「いやー。どうしようかなぁ」

 

二人を帰した後、常磐にそう問われて智宏はアハハと笑いながらそう答える。

 

そして何も考えてないんかい!っと常磐からツッコミを受けていると、詩桜が、

 

「まぁその辺の探索であれば、そちらも方が得意なのでは?」

 

と戦兎達を見ながら言う。しかし、

 

「アイツ神出鬼没だから、俺等もどう探せばいいのか」

 

と答えるしかない。すると、

 

「ん?」

 

智宏の懐が光り、そこに手を入れて取り出すと、手にあったのは智宏達が変身で使うクラウンを、一回り大きくした物だ。

 

「それは?」

 

戦兎が聞くと智宏は、

 

「ブライトネスクラウン。俺の変身アイテムなんですけど、多分妃愛と共鳴してるのかな」

 

ほう?とそれに反応したのはアザゼルだ。

 

「ならそれを使えばもしかしたら行けるかもな」

 

え?と全員の視線がアザゼルに集まり、

 

「兵藤 一誠の元に飛ぶんじゃなくて、お前さんの妹のところに飛ぶイメージだ。それならもしかしたらいけるかもしれん。それ貸してくれるか?」

 

はい。と智宏は貸すと、アザゼルはニヤリと笑い、

 

「一時間で段取りを整える。行くやつはそれまでに準備済ませておきな」

 

とだけ言って、部屋を出ていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よう」

「あ、お疲れ様です」

 

バルコニーで黄昏れてた智宏の元に、戦兎がやってきた。

 

「お前、結構かっこいいところもあるんだな」

「え?あー。あれはちょっとカッコつけすぎましたね」

 

アハハと照れ臭そうに笑う智宏に、戦兎も釣られて笑う。

 

「結局お前ってどっちが本当のお前なんだ?」

「はい?」

 

そんな中、突然の問い掛けにポカンと口を開けた智宏に、

 

「妹におんぶにだっこするかと思えば、ああやって手を差し伸べる一面もある。お前という人間が分からなくなったよ」

「あぁ、それなら間違いなく前者が俺の本当の姿ですよ」

 

そう智宏は言い切ると、

 

「さっき言ったように、俺と妃愛の小さい頃に両親が死んで、妃愛を守らなきゃって思ったんです。でも俺もガキで、色々やってはみるんですけどうまくいかなくて」

 

両親の葬儀のことも、遺産や色々な法律に絡むことも、子供の智宏に出来ることなどなくて当然だ。本来であれば、両親の庇護下にあって当然なのだから。

 

「それにそもそも、妃愛に俺の力なんて必要なかったんですよね。何せもうあのとき既に子役として、名前が売れていたアイツは、俺なんかよりずっと大人でしたし」

 

誰からも愛され、大切にされる。それがあの妹、和泉 妃愛という人間だった。

 

「よくお前それ妹さんと仲良くしてられるなぁ」

「え?そうですか?」

 

コンプレックスとかなかったのかよ。と戦兎に言われると、智宏は少し考え、

 

「コンプレックスとかは感じたことはないですね。さっき言ったように子役時代から成功して知らぬ人はいないほどでしたけど、それでも両親は妃愛を普通の娘として愛してましたし、父さんからは、お前はたった一人のお兄ちゃんなんだから、大切にしなさいって言われ続けてきましたし」

 

それに何より、と智宏は言い、戦兎は何より?と聞き返した。

 

「両親がなくなってすぐ、親族一同で話し合いが行われました。両親が残した莫大な遺産に大きな一軒家。何より世間から大きな支持を受ける、天才子役の妃愛。どれも皆欲しがる中、じゃあ逆に俺の扱いをどうするかってなりましてね。まぁ可愛げもなかったんでしょうね。両親が亡くなって、お兄ちゃんとして、しっかりしなきゃーって思ってて、涙の一つも見せずにムスってしてる子供と、両親を失って涙を流す可愛げのある子供だったら後者の方を選びますよね」

 

最終的に遺産を多めに俺に分配して誰が引き取るかってなって、結局誰も手を挙げなかった。誰もが家と妃愛の引き取りを望んだ。

 

「まぁ今なら少し気持ちも分かりますけどね。子供引き取るって金銭的な面だけじゃない。社会的にも法的にも簡単なことじゃなくて、手間も責任も掛かる。人一人育てるんですからね。それだったら少しでも楽な方がいい。せめて俺を引き取るなら家くらいはよこせ、いや妃愛も家も渡さない。って親族大荒れ。そしたら妃愛が怒りましてね」

 

私から家もお兄ちゃんも奪う皆なんて大っきらい!そう親族の前で泣きながら叫ぶ妹に、誓ったのだ。この先幾らでも才能あふれる妹に嫉妬することも、惨めに思うこともあるかもしれない。

 

それでも、この妹のお兄ちゃんでいようと。たった一人の家族でいようと。

 

「だからアイツが望む限りは、俺はアイツのお兄ちゃんだってだけです。それで偶々あんなの見て、気づいちゃったら放っておけない。あれから目を背けたら、もう俺は胸を張って妃愛のお兄ちゃんだって言えなくなる。俺は対して何も自慢できるものはないけど、それだけは俺の唯一のアイデンティティだから絶対に捨てるわけにいかない」

 

成程ね。と戦兎は頷きつつ、

 

「だけど妹のヒモになるのはいいのか?」

「人間頑張り過ぎは良くないので」

 

そこはせめて頑張れよ……そう戦兎はため息を吐きつつ、呆れるのだった。



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オールスターキングダム

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「ベリアルの両親と話し、奥底に隠された真実を知る俺達だったが……」
智宏「いやぁ。それにしてもこれからが大変ですからねぇ」
戦兎「確かに実際問題ベリアル達と戦うだろうし、どうしたもんかねぇ」
智宏「まぁなんとかしていきますよ!」
常磐「てなかんじのー!」
アメリ「148話スタート!」
戦兎&智宏「だからそれ俺達の!」


「よしお前ら!準備はいいか!」

『おう!』

 

全員準備を済ませ、アザゼルが声を発すると、大部屋の中央に作られた魔法陣を戦兎は見る。

 

「これが?」

「あぁ、智宏のアイテム使って作った。ただ飛んだ先の安全性が確保できねぇからよ。周辺に転移するようにした。近くまで飛んで、そこからは徒歩で近づく」

 

案外原始的なのね。と常磐が驚くと、アザゼルは笑って、

 

「まぁな。案外どんだけ技術が進化しても、そういうのが一番確実だったりすんのさ。ってかお前らもついてくる気か!?」

 

当たり前です!と皆が叫び、それに気圧されながらアザゼルもそれなら行くやつは入りな。と諦めながら言うと、全員が中に入る。そして、

 

「恐らくだが、兵藤 一誠のことだ。周辺にも転移阻害がされているはず。一応対策はしてあるが、不測の事態にはまず互いの合流を優先するぞ」

 

勿論!と頷き、転移が始まり、不思議な空間に体が投げ出された。

 

「うぉ!何だこれ!」

「慌てるな!転移阻害を強引に突破してるだけだ!変な体勢をとると出たときに危ないぞ!」

 

変な体勢って言われても、上下も分からなくなってくるこんな空間じゃ!と皆が思う中、光に包まれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい。大丈夫か?」

「あれ?鎌倉さん?」

 

詩桜でいい。と詩桜は答える。

 

龍誠は頭から落ちたため、イテテと頭を擦りながら立ち上がった。

 

「ここは?」

「さてな。君がわからないのでは私にもわからないよ。だがそっちの先生が言っていたように、まずは合流を目指そう。というわけで連絡をお願いしてもいいかな?私のスマホはこっちじゃ使えないんだ」

 

あ、そっかと龍誠はアザゼルに連絡を取ろうとするが、

 

「だめだ繋がらない」

「ふむ。通信機器のジャミングもされてるか。となると」

 

詩桜が周りを見回す。辺りは木々が生い茂っているが、木々の隙間の遠くに、巨大な建物が見えた。

 

「あの建物なら目立つ。通信機器が繋がらないのであれば、一先ずあの建物を目指すのはどうだ?」

「それが良さそうですね」

 

と二人の意見は一致し、その建物に向かって歩き出す。しかし黙ったままというのも空気が重いので、

 

「い、いやぁでも詩桜さんって落ち着いてますね」

「そうでもない。これでも不安だよ。ひよりんの安否とかもあるしね。ただ冷静でいようとは思ってるくらいさ。ただでさえひよりんが絡むと熱くなりやすい男がいるもんでね」

 

そう言われ、龍誠は首を傾げた。

 

「そう言えばなんで詩桜さんって副会長やってるんですか?いや智宏がっていうんじゃなくてですね」

「はっきり言って構わないよ。あんな妹のヒモなんてしてる男の副会長なんて何でしてるんだって言いたいんだろう?」

 

苦笑いを浮かべた詩桜に、龍誠は気まずい顔をした。龍誠だけじゃない。リアスたちもなんとなく思っていたことだ。

 

いや悪いやつではないが、私生活がそれではどうなんだろうかと思ってしまう。すると詩桜は、

 

「まぁそう思うのは最もだ。私だってそう思ってた。だから生徒会長を辞めたのさ」

 

辞めた?と龍誠は聞き返しつつ、思い出す。

 

「あぁ!そう言えば智宏が生徒会長になる前にいきなり辞めた生徒会長がいるって!」

「あぁ、それが私だ」

 

アンタかい!と思わず龍誠はツッコミを入れた。しかし、なんでそれが生徒会長をやめることに?と新たな疑問が浮かぶ。すると詩桜は、

 

「私も最初から辞めるつもりはなかったよ。ただある日のことだ。里先生とひよりんのマネージャーが一緒に来てね。ひよりんを生徒会メンバーに入れてほしいと言ってきたんだ」

 

売れっ子声優として、多忙な日々を過ごしていた妃愛は、学業成績自体は非常に優秀だったが、出席日数が足りていなかった。このペースで行ったら確実に留年コースだっただろう。しかも妃愛にとって、学校は兄が行くから自分も行くという程度で、そこまで思い入れがあるわけじゃなく、留年するならあっさり辞めて、仕事に専念するのは、火を見るより明らかだった。だから二人は動き出し、その結果が生徒会活動に参加することで不足分を補うことだった。

 

「だが私は使えない人間は不要だと思っててね」

 

当時の生徒会には詩桜しかいなかった。厳密言えばいたのだが、副会長以下全ての人間は、詩桜に着いてこれずやめたいうか、詩桜に追い出された。なまじ詩桜は一人でも、膨大な量の仕事をこなせてしまう程度には優秀だったのも、それに拍車をかけたのだろう。

 

そもそも生徒会長という役職に着いたのも、小説のネタになればくらいの気持ちでやっていた。だからこそネタにもなりそうにない人間たちは不要だと思っていた所に、その話だ。

 

だからこそ、二人から優秀だと言われても、また万が一追い出す騒ぎになったら、流石の詩桜も困る。そもそも、どうやって勧誘するというのか。声優で忙しく、話を聞く限りそこまで学生という身分に固執している気配はない。兄がいるからと言うのが大きい。

 

態々生徒会活動なんて言う、自分の仕事や兄の世話の支障をきたすような真似をするだろうか。というか、

 

「なんて兄なんだと思ったよ」

 

妹におんぶに抱っこ。ろくでもない男だと思った。妃愛のマネージャーからの言葉を聞く限り、そう思った。同行した里は、色々あったとか、良いところもあると言っていたが、それも癪に触った。成程随分甘やかされてるようじゃないかと。だから提案したのだ。

 

自分が生徒会長を投げ出すから、代わりに彼を生徒会長にしようと。引き継ぎもなく、ノウハウもないまま押し付けられた生徒会長職はさぞかし大変だろう。そう思い提案した。当初、里は勿論反対したが、兄が生徒会長という方が妃愛の性格的に、自分が会長であるより、余程世話を焼くだろう。

 

何より、妃愛の出席日数のためともなれば、普段お世話になっている智宏も流石に動くはずだ。寧ろ動かなかったら、いよいよ救いがない。

 

そう言われ、里は何も言えなくなった。しかし更に詩桜は条件をつけ、この一件は智宏には伏せ、あくまでも偶然選ばれたことにするというものだ。

 

もしこの裏事情をしれば、きっと智宏はまた甘えると思った。妃愛を理由にその業務を、他にも色々な理由をつけて逃げると思った。だからあくまでも不運で偶発的というスタンスを取るべきだ。不運だった諦めろ。そう言ってやればいい。

 

こうして、不幸なくじ引き会長が誕生する事になったわけだ。

 

「正直楽しかったよ」

 

とはいえ全て詩桜の言う通りになったわけじゃない。里から一つだけ頼まれたこと。それは智宏が自分の意志で詩桜に生徒会の業務に関する質問をしたときは、教えるというものだ。

 

確かに自分から気概を見せたのを無碍に扱うのは違う。というわけで教えてあげた。とはいえ飽くまで教えただけだ。何も手出しはしない。手伝わず、口出しもしない。

 

そんな中で彼も仮面ライダーだということを知った。

 

毎度毎度戦うのは嫌だ痛いのは嫌だと言い、皆から激励されていやいやながら戦う。

 

そんな姿を見る中、知人が偶然千玉市に期間限定で、アンテナショップにカフェを出店すると聞き、宣伝も兼ねて丁度暇だった智宏を連れて行った。

 

その店は大賑わいを見せ、店主一人で回すのは不可能な程だった。その為詩桜は手伝いを申し入れた所、智宏も手伝うといい、期間限定のアルバイトをした。

 

智宏は人一倍働いていた。店内の配膳や、猛暑続きの中、外の人の整理に、変な人間の対応等。

 

確かに、その前から生徒会活動を見ていて薄々思っていたが、意外と気が利くし働き者だった。

 

一番驚いたのは、変な客に自分が絡まれた際、間に素早く入って頭を下げながらも、毅然とした態度で客に帰って貰った時だ。

 

戦う前のあの情けなさはどこへやらで、後々聞いたら、

 

「いやぁ。殺されるわけじゃないですし」

 

仮面ライダーとして戦うのは嫌いだ。何せ怪我するかもしれない。下手すれば死ぬかもしれない。だから嫌だと。

 

妃愛のそばにいれなくなるかもしれないから。

 

そう言って笑う彼を見てから、見る目が少しだけ変わった。その後もたくさん見た。良いところも情けないところも沢山見て、気づけば彼や生徒会メンバー達との時間が大切になっていった。

 

だが、自分がそこに深く立ち入る権利はない。何故なら、最初に一線を引くと決めたのは自分だ。里に智宏を騙させ、好き放題してきたのは自分だった。智宏を困らせ、楽しんだのは自分だ。

 

それを謝罪せず、立ち入る権利などない。だがそれを言えば、里と智宏の関係にヒビを入れかねない。

 

あのときは知らなかったが、智宏は里に絶大な信頼を寄せている。幼少の頃、親戚の誰からも必要とされなかった中、彼女だけは妃愛と自分を区別せずに接してくれた存在だったからだ。だからこそ、くじ引きで偶々自分が引く、なんて言うどこか疑いを持ったままでもおかしくない出来事でも、智宏は信じたのだ。

 

だから謝罪もできない。だが同時に皆を気に入っていく自分。それに挟まれていた所、遂にその微妙な関係が崩れた。

 

つかず離れず、口を出すだけの自分に、常磐が遂にキレたのだ。元々余り相性は良くなかった。

 

そもそもの性格も違う。詩桜は人付き合いは面倒だし、他人に自分のリソースを割くのは無駄だと考えていた。今だって根本的にはそうだ。しかし常磐は、リアリストを装っているが、かなり恩や情で動くし、その為ならある程度採算度外視で行動する。

 

そして常磐は最後に智宏に突きつけた。もう詩桜がいるならば生徒会活動に協力できないと。

 

常磐を追い出すか、詩桜を追い出すか。二者択一を突きつけ、智宏は詩桜に言った。

 

「すいません詩桜先輩。出ていってください」

 

分かった。とそれだけ言って出ていった。だが内心は違った。自分でも驚くほどショックを受けていた。

 

いや当然だ。常磐は正規のメンバーで、詩桜は外部の質問にしか答えるだけの存在。

 

どっちを取るかなんて決まり切っていたのに、改めて言葉にされると、心がザワついて、涙が出た。

 

そんな中、敵からの襲撃があり、戦おうとするが、変身ができなくなってしまい、益々追い詰められる中、智宏が会いに来た。里から全てを聞き、どんな言葉で詰られるかと思いきや、全部許すと言ってきた。

 

そもそも怒ってすらない。と言ってきた上に、お陰で妃愛の出席日数も助かるし、常磐やあすみにアメリと出会えた。感謝してる。と言ってきた。人がいいにも程がある。

 

でもきっと許すと言わなきゃ、詩桜自信が進めないと思ったから、きっと敢えて許すと言ったんだろう。

 

「だから決めたんだ。今までの分も含めて、この先も彼が何かするなら、私は全てを掛けて手伝うとね」

 

二度目の生徒会長に彼が立候補するといったとき、自分が真っ先に副会長に立候補した。本来、三年生でしかも卒業する自分が、生徒会に参加するなどありえない。だが学校側としても、学校に来ない生徒が居るよりは、生徒会活動を通してでも来た方がいいと、判断したらしく、半ば特例の形で決まった。

 

「まぁ元々、不登校生徒が集まってできた生徒会だ。土壌としては上々さ」

「不登校?」

「あぁ、常磐さんも錦さんも元々はそれぞれの事情で不登校してたんだ。まぁそれを、新生徒会を立ち上げる関係で、折角だからひよりんだけじゃなく、他の生徒の出席日数の補助もしようという意味もあったらしいが、その際に和泉くんが勧誘したのさ。あぁ、言っておくが和泉くんは不登校してないぞ」

 

だから二人共和泉くんに懐いていただろう?と詩桜は笑う。

 

「アメリだってそうだ。確かに傍から見れば和泉くんは頼りなく見えるかもしれないが、皆それぞれ事情があって、それを和泉くんに助けられてるのさ」

 

なるほどねぇ。と龍誠は頷く。人は見た目によらないということか。と思っていると、

 

「いい話だねぇ」

『ん?』

 

そう言って現れたのは、リゼヴィムだ。

 

「お前はあの時の」

「はぁいお嬢さん。会いたかったよ〜」

 

私は会いたいとは全く思ってないんだがな。と詩桜は呟きつつ、ベルトを装着。

 

《キングドライバー!》

「おいおいいきなり臨戦態勢かよ」

「お前は敵だろう?話し合いならブチのめしたあとでも十分できる」

《ロマンクラウン!》

 

そう言って、詩桜は走り出しながらベルトにクラウンを装着。

 

「変身!」

《物語の力が未来を紡ぐ!綴れ!ロマンキング!》

 

ロイスピアを手に、リゼヴィムに向かって走る詩桜を見て、

 

「うちの女性陣も大概おっかないけどあの人も負けてないなぁ」

《覚醒!グレートクローズドラゴン!Are you ready?》

「変身!」

《Wake up CROSS-Z! Get GREAT DRAGON! Yeahhh!》

 

龍誠も変身して走り出す。

 

「全く野蛮だねぇ」

《エボルドライバー!不死鳥!ロボ!エボルマッチ!Are you ready?》

「変身」

《フェニックスロボ!フッハッハッハッハ!》

 

リゼヴィムもグリスブレイクに変身すると、両腕から炎を出す。

 

「はぁ!」

 

それを詩桜は槍を振り回して掻き消すと、そのまま腕を切り飛ばす。だが、

 

「いつつ。だけど甘いねぇ!」

 

腕を再生させ、炎を撒き散らして詩桜を牽制。

 

「ほぅ!」

 

それを回避しつつ、槍を回転させて掻き消すと、更にバックステップで下がる。

 

「再生能力か」

 

ふぅ、と詩桜はため息を吐く。

 

「アレも仮面ライダーの力か?」

「えぇ」

 

変身してなら、と詩桜は槍を持ち直すと、再度距離を詰める。槍を振り回し、リゼヴィムを追い詰めていきながら、槍を地面に突き刺し、それを軸に飛び上がると蹴りを放つ。

 

それをリゼヴィムは防ぐが、詩桜は槍を手放し拳を握ると、渾身のパンチをリゼヴィムに叩き込み、ヒビを入れる。

 

「ライダーシステムという外部装置による再生能力なら、ベルトへの損傷とかはどうかな?」

 

と詩桜は言うが、リゼヴィムのベルトは治ってしまう。

 

「残念だけどエボルドライバーってのは特殊でね。装着者と一体化する性質があるんだよ。このベルトは機械であり、一種の有機物でもある。だから変身中であれば再生能力が適用されるって話だ」

 

俺もよく分かってないけどな。とリゼヴィムは言うが、それは困ったなぁと、詩桜は頬を掻く。

 

「余裕そうですね」

「まぁ攻略法くらいなら思いつくからな」

 

そう言って、詩桜はベルトからバックルごとクラウンを外し、今までの物より一回り大きなクラウンを取り出して、スイッチを押す

 

《オールスターキングダム!》

 

それと共に、詩桜の背後に、彼女だけではなく、智宏や他の仲間たちのライダーが使う装甲が展開され、重なり合うと一つになる。

 

そして詩桜はクラウンをベルトに装着し、

 

「変身!!!」

《今!全ての王が集結する!愛し!支配し!歌い!描き!綴り!射抜き!守護し!立ち上がれ!オールスターキングダム!》

 

全身に重装甲を纏い、鮮やかなカラーとなった詩桜は、ゆっくりと歩を進める。

 

《ロイグニル!》

 

槍も今までとは比べ物にならない鋭さと大きさになり、リゼヴィムが放つ炎を軽く振って掻き消す。

 

「はぁ!」

 

詩桜は、ロイグニルを突き出し、リゼヴィムの腹を貫くと、そのまま岩壁に向かって槍ごとぶん投げ、固定した。

 

「がっ!クソ!」

 

慌てて逃げ出そうとするが、詩桜が両手を掲げると、

 

《キングブレイド!》

 

智宏が使っていた剣が2本出現し、手に収まると、リゼヴィムの手にそれぞれ突き刺して固定。

 

「お前、私が攻撃した時、痛みを感じていたな。つまり、お前は不死身の如き再生能力は持っているが、五感はそのままということだ。つまり!」

 

詩桜はロイグニルを引き抜き、

 

《エヌマエーレシューター!》

 

素早く広夢が使っていた銃を出して、銃口を開いた傷口に強引に差し込む。更に、ロイグニルを地面に突き刺し、槍に装着されていたブレイブクラウンを取り外した。

 

《ブレイブクラウン!ブレイブチャージ!》

 

それをエヌマエーレシューターに装填し、チャージを開始。

 

「どんなに再生しようと、治らない限り痛みは続くはずだ。だろう?」

 

《ブレイブショット!》

 

詩桜の放った一撃は、リゼヴィムの体の中で爆発し、

 

「あ、が」

 

声にならない痛みと苦しみに、リゼヴィムは悶えるが、

 

「まだまだ!」

《ブレイブショット!ブレイブショット!ブレイブショット!ブレイブショット!》

 

何度も引き金を引き、連続で銃弾を撃ち込む。

 

「変身中が厄介なら、自分で変身を解き、私にもう殺してくれと泣いて懇願するまで、苦痛を与え続ければいい」

「ふざ、けんな!」

 

リゼヴィムは全身を発火させて爆発し、詩桜を吹き飛ばす。

 

「くそ!あんたみたいなイカレ女と戦ってられるかよ!」

 

そう言って飛んで逃げようとするリゼヴィムだったが

 

《スペシャルチューン!ヒッパレー!ヒッパレー!ミリオンスラッシュ!》

 

鎖を出してリゼヴィムを龍誠は引っ張り戻す。

 

「流石に全部任せてたんじゃ、立つ瀬がねぇ!」

「いいね。面白いじゃないか!」

 

詩桜は走ってロイグニルを取ると、ブレイブクラウンを戻し、ブレイブクラウンのスイッチを押す。

 

《ブレイブブースト!》

 

それから持ち手のレバーを引き、構える。

 

《ブレイブスプラッシュ!》

 

槍が輝き、そのまま飛んできたリゼヴィムを引き裂く。

 

「ぐぁ!」

 

再生するリゼヴィムだが、そこに追い打ちを掛けるように、

 

《ブレイブブースト!ロマンブースト!》

 

ブレイブクラウンとロマンクラウンのスイッチを押し、再度持ち手のレバーを引くと、

 

《ユニオンブースト!ブレイブロマンユニオンスプラッシュ!》

 

再生して立ち上がったリゼヴィムに、再び攻撃を入れ、体の半分を消し飛ばす。

 

「クソ!クソ!」

「お前は強い。だが話してわかった。お前は子供だ。新しいおもちゃを手に入れると無敵になるような気分になってすぐ慢心する。これでわかっただろう?お前の力は、確かに脅威だが、基礎スペックが敵わない相手ではただのサンドバックだ。まぁ、相手と泥試合繰り広げるだけの根性があるなら別だろうが、なまじお前は強いだけに、普通にしてても大概の相手には勝てたんだろう?だが残念だったな。私は大概の相手じゃない。そうするとお前は、まず逃げることを考える。うちの生徒会長の根性を見習いたまえ。普段はあれだが、妹が絡んだ時と、世界の危機にはやる男だ」

《ブレイブブースト!ロイヤリティブースト!カームブースト!ロマンブースト!イメージブースト!シャンソンブースト!ヘルシャフトブースト!アモーレブースト!》

 

全てのクラウンを起動し、レバーを引く。

 

《オールスターブースト!オールスタースプラッシュ!》

 

金色に輝く槍の穂先が、リゼヴィムに向けられ、

 

「はぁ!」

 

放たれると同時に、閃光と爆発。そのまま大地が揺れ、抉れていく。

 

そして煙が晴れると、

 

「しまった。吹き飛ばしてしまった」

 

詩桜は、やってしまったと言う。

 

「あの一撃なら倒せたんじゃないですか?」

「どうかな。粉々にはした感触があったが、再生したかもしれない」

 

もっと確実に痛めつけてやれば良かった。と言いつつ、変身を解除すると、

 

「まぁ丁度道も開けたし、ここからすすんでいこうか」

 

ハッハッハ。と笑いながら進む詩桜の背中を見ながら、

 

「ホント、うちの女性陣も大概恐ろしいと思ってたけど、別の世界にはあんなおっかない女もいるのか……」

「なんか言ったか?」

「イエナンデモ!」

 

地獄耳!?と驚きつつ、龍誠も詩桜の後に続くのだった。




仮面ライダーロイ オールスターキングダムフォーム

パンチ力・75t
キック力・80t
ジャンプ力・50m
走力(100m辺り)・2.8秒

仮面ライダーロイの強化形態。

生徒会から追い出され、変身ができなくなった詩桜が、智宏から許され、吹っ切れた詩桜が手に入れた力。

専用武器、ロイグニルには全ライダーのクラウンがついており、クラウンの限界以上の力を引き出すと同時に、複数のクラウンの力を使うことが可能。

所謂てんこ盛りフォームで、全てのクラウンと、武器を使うことができる。

必殺技はロイグニルのクラウンを全て起動し発動する、オールスタースプラッシュと、ベルトのクラウンを操作して発動するキック。キングダムフェスティバル。


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それぞれの思い

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「美空と妃愛を取り戻すため、乗り込んだ俺達」
智宏「だが俺達はバラバラになってしまう!って皆大丈夫なのかなぁ」
戦兎「まぁうちの連中はしぶといけどなぁ」
智宏「うちも何だかんだで悪運強いですよ?」
戦兎「じゃあ皆の様子見に行くか〜!」
智宏「それいいですね!」
広夢「てな感じの149話始まるよー」
戦兎&智宏「だから俺達のセリフだってば!」


「あーもう!ここどこなのよー!」

「まぁまぁカノちん。落ち着いて落ち着いて」

 

常磐とアメリが目覚めると、知らない景色に困惑したものの、一先ず目立ち建物を目指して歩き始めることにした。のだが、

 

「落ち着いてられるかー!」

 

と二人の背後には無数の魔獣が迫っている。

 

「もう最悪なんですけどー!なんでこういう時に和泉も詩桜先輩も誰もいないのー!」

「そもそもこっちで合ってるのかな!?」

 

二人はキャイキャイ騒ぎながらも、全力疾走。だが、

 

「アメリ……もう私だめかも」

「諦めないでカノちん!?」

「普段デスクワークしかしてない人間の持久力舐めるなぁ!」

「どこに自信持ってるの!?」

 

徐々に速度が落ちてきた常磐の手を引き、アメリは走る。そこに、

 

「間に合ったわね」

「えぇ」

 

巨大な滅びの魔力と雷光が、魔獣たちに炸裂し、消し飛ばした。

 

「良かったわ。リベリオンとか言う奴だったら加減しなきゃいけないけど、ただの魔獣なら遠慮しなくていいからね」

「リアスさん!」

 

アメリはリアスに駆け寄り、手を握って何度もありがとうと言う。

 

「大丈夫ですか?」

「も、問題ないですわよ」

「カノちん疲れすぎて言葉おかしくなってるよ」

 

こうして、無事リアスと朱乃と常磐とアメリは合流し、常磐の呼吸が整うのを待ってから、移動を始める。

 

「じゃあやっぱりあの目立つ建物を目指すんですね?」

「えぇ、この辺りで目立つのはあそこしかないし、多分他の皆も同じよ」

 

あそこにひよりんいれば良いんだけど、と常磐はリアスと話しながら歩く。

 

「ふふ、妃愛さんは愛されてるのね。こんな危険な所に乗り込んでくるくらい」

「そりゃひよりんはいい子だし普通にファンですし。それに和泉の奴、ひよりんが絡むと無茶するので」

「ホントねー。会長ひよりん絡むとすぐ無茶するからほっとけないもんねぇ」

 

アメリも混ざって、ニコニコ笑うと常磐は、今も馬鹿やってんじゃないでしょうねぇとボヤく。

 

「そう言うってことは、前にも同じことが?」

 

と言う朱乃の問いにアメリは、

 

「前にもひよりんが攫われたことがあって、その時なんて会長見たことないくらい怒って周りが見えなくなってたことあったんですよ。その時カノちんと会長大喧嘩したもんね」

「う……」

 

常磐はそっぽを向きながら、視線を逸した。だがアメリは更に、

 

「その時カノちん会長をぶん殴って止めたんだよね?」

「もうやめてアメリ。あれは黒歴史なんだから」

「えー。カノちんあの時かっこよかったよ?一人で突っ走んな馬鹿!って。いつもみたく周り頼りなさいよ!一人で何もできなくても、周りと力合わせてどうにかするのがあんたでしょうが!て怒ってグーパンチだもんね」

「いやもうホント私、グーって何よグーって……平手打ちなら分かるけど」

 

雄々しすぎるわと、頭を抱える常磐に、アメリはヨシヨシと頭を撫でる。

 

そんな二人のやり取りを見てリアスは、

 

「何だかんだで人望あるのね。彼は」

「ま、まぁ成り行きでもありますし?」

 

常磐はそう言うが、アメリは、

 

「でも会長が二期目に立候補するって決めた時、誰よりも早く立候補したのカノちんですからね?」

 

アメリー!と常磐はアメリの頬をムニムニ引っ張り、アメリはいたいよカノちん〜っと笑って返す。

 

「ま、まぁアイツとの約束なんで。借りもありますし」

「借り?」

「前にマジで私困ってどうしようも無くなった時があって、そのときにアイツ深夜だって言うのに駆けつけてくれて、徹夜で手伝ってくれてその後も一緒にやってくれたんです。だからアイツが頑張るうちは、私も手を貸すって決めてるんです」

「私も会長には居場所を作ってもらった恩があるんで」

 

アメリもそう言って笑う。

 

「私は前に知り合いからハブられてボッチになりかけたんですけど、会長からじゃあ生徒会に遊びに来れば?って言われて出入りするようになって、それからずっと居させてもらってるんです。それなかったら多分私も不登校気味になってたかもしれない」

 

二人の言葉に、リアスと朱乃は成程と頷く。一見すれば頼りない男の智宏だが、少なくとも彼女たちにとっては頼り甲斐のある男と言うわけだ。なんて言っていると、

 

「見えてきたわね」

 

周りの景色の中、一際目立つ建物を見ながら、リアスは呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えい」

 

少し時間を戻し、別の場所ではバコ!っと大きな音と共に、魔獣が吹き飛ぶ。

 

「凄い……」

「ホントだね」

「悪魔というのは流石人間離れしてますわ」

 

あすみと仮面ライダーエヌマエーレに変身した広夢、そしてケーニヒに変身した莉々子の三人は、魔獣を殴り飛ばした小猫と、

 

「にゃははは!」

 

黒歌を見て頷く。

 

「ま、ざっとこんなもんよねぇ」

 

手に付いたホコリを払いながら、黒歌は言うと、小猫もそうですねと頷き、広夢や莉々子も変身を解除すした。

 

「んで?まずはどこ目指す?」

「目指すならやはり目立つあの建物では?」

 

黒歌の言葉に、莉々子が提案すると、他の皆もじゃあそれで行こうと同意し、歩き出す。

 

「それにしても美空たち大丈夫かしら」

「そもそもなんで美空さんや妃愛さんを?」

 

黒歌と小猫姉妹がそんな話をすると、あすみが少し考え、

 

「美空さんって確か桐生さんの妹さんですよね?」

「そ。現役アイドルの戦兎の妹。ってかアイドルと声優って似てるようで違うし共通点としては弱いか」

 

二人を繋ぐものは……とブツブツ黒歌が言う中、あすみは小猫を見て、

 

「美空さんってどんな方なんですか?」

「優しい子。でも兄の戦兎さんには結構我儘と言うか、まぁ甘えてると言うか」

 

仲いいんですね。とあすみが言うと、小猫は頷く。確かにあの兄妹も仲はいい。しかし、

 

「そっちの和泉兄妹程じゃないわよ〜」

 

と黒歌が返した。するとあすみは笑って、

 

「そうですね。先輩とひよりんはすごく仲いいですから」

(多分若干皮肉も入ってると思うんだけどなぁ)

(まぁ気づいてませんからほっときましょ)

 

広夢と莉々子が笑いを浮かべるが、あすみは首を傾げている。すると、

 

「でも分かんないのよねぇ。あの男ヒモなのか案外かっこいいところもあるのか」

「先輩はすごくカッコイイです!」

 

黒歌がそんな事を言い、あすみが叫んだ。これまで静かに喋ることが多く、大声を出すのを初めて聞いたが、小柄な体の何処からこんな大きな声が出せるのかと思うほどだ。

 

「それに先輩は凄いんです!困ってると必ず駆けつけてくれるし、どんな相手にも臆せず戦いますし、優しくて頼りになって家族思いで気遣い屋で」

「そ、そうなの?」

 

あの黒歌ですら圧倒するマシンガントークのあすみを横目に、莉々子は小猫に耳打ちをする、

 

「一応言っておきますが、あながち嘘ではありませんが、錦さんは和泉会長を美化し過ぎてる所がありますので」

「成程」

 

まぁ実際良いやつではあるよ。と二人にフォローを入れたのは、広夢だ。

 

「元々僕は和泉と席が近くてよく話してたんだけど、生徒会長になるまではホント目立たないていうか、気配消して生きてるやつだったよ」

 

話し掛ければ、普通に対応してくれる。けど深く立ち入ってこないし、同時に立ち入らせない。そんなやつだった。

 

「多分アイツなりの処世術だったんだと思う。自分が良くても悪くても目立てば、その分妹さんに迷惑をかけるからね」

 

まぁ生活に頼るのは良いみたいだけど、と笑う広夢。

 

「和泉なりのラインはあって、そのラインを超えない範囲で生きてく。って感じなんだろうね」

 

今は大分そんな感じはなくなったけど。するとそんな広夢に続いて莉々子が、

 

「まぁ確かに、私も最初は詩桜さんの代わり位に思ってましたが、和泉会長は中々頑張りやですし、結果も伴わせるタイプですわよ」

 

オホホ、と莉々子は笑う。それを見た小猫は、

 

「アレはそう言うキャラ付けで?」

「アレは多分マジ」

「どういうことですの!?」

 

そんなやり取りをしていると、

 

「見つけましたよ」

『っ!』

 

声の方を見ると、そこに立っていたのは、ユーグリットとマグダランだ。既に変身し、ユーグリットは禁手化(バランスブレイカー)までしている。

 

「手厚い歓迎かな?」

「あら?二人だけのお迎えなんて寧ろ質素なくらいですわ」

《キングドライバー!》

《アモーレクラウン!》

《ヘルシャフトクラウン!》

 

広夢と莉々子は、それぞれベルトを装着し、クラウンのスイッチを入れた。そして、

 

『変身!』

 

二人は変身を完了し、広夢はエヌマエーレシューターを発射。それをマグダランが体で防ぎ、ビートクローザーを手にしたユーグリットが飛び上がると広夢を狙う。

 

「させませんわ!」

 

それを莉々子がケーニヒハンマーで弾くと、

 

「はぁ!」

 

小猫の一撃がユーグリットを吹き飛ばす。

 

「オマケよ!」

 

更に黒歌の仙術で操る植物の蔦が、二人に襲いかかった。だが、

 

《Ready Go!エボルテックアタック!》

 

マグダランの必殺技がそれを消し飛ばす。

 

(厄介ね)

 

そう黒歌が思った時、

 

《ツインフィニッシュ!》

 

皆の間を2つの光弾がすり抜け、マグダランに炸裂。

 

《クラックアップフィニッシュ!》

《Ready Go!エボルテックアタック!》

 

続けてそれに耐えたマグダランに、2つの必殺技が炸裂し、吹き飛ばした!

 

「間に合ったみたいだな」

 

現れたのは、ヴァーリと匙とサイラオーグとフウ。

 

「やれやれ、流石にこの数は不味いですかね」

 

とユーグリット言うが早いか、レバーを回し、

 

《Ready Go!エボルテックアタック!》

 

地面に必殺技を放ち、砂塵を巻き上げるとあっさり撤退した。

 

「ちっ、逃げ足が速いな」

「まぁそう言うな。今は全員と合流するほうが先だ」

 

ヴァーリとサイラオーグは変身を解除し、二人に続いて他の解除する。

 

「怪我はなさそうだな」

「当たり前でしょ。ヴァーリ」

 

黒歌が笑って答え、ヴァーリも笑う。

 

すると匙が、

 

「で、皆もあの建物目指してる感じ?」

「あそこが一番目立ってますからね」

 

じゃあ俺達もだ。と言う匙に、続いてフウが、

 

「では皆様。襲撃を受けたばかりでおつかれかと思いますが、急がれたほうが良いと思いますので行きましょうか」

 

と言い、皆はそれに従って歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぃ〜。疲れたー」

「何だだらしないなぁ」

 

と里のボヤキに、アザゼルは笑う。

 

「休むか?」

「大丈夫です。トモスケもきっとひよりんのために休まず歩いてると思うんで」

 

大した信頼だな。と苦笑いするアザゼル。ならせめて気を紛らわすためになんか話題を振るかと思い、

 

「確かお前さん。和泉兄妹の従兄弟なんだっけか?」

「そうです。トモスケ達の母方の親戚です」

 

ヨイショヨイショと足を動かす里は答える。

 

「随分と目を掛けてんだな」

「まぁ二人の両親が亡くなってからずっと見守ってきましたから」

 

智宏達の両親が亡くなり、親戚が揉めて妃愛がキレたあと、二人が後見人として選んだのが、親戚の中で最も若く、当時高校生だった里だった。

 

未成年で責任能力がなく、遺産騒動では蚊帳の外の彼女が、結果として信頼を得たのだ。

 

「それにあの当時、自分の両親とも大喧嘩しちゃって。皆揃って金とひよりんばっか。トモスケを見ようとしない。ってね」

 

実際は違う。智宏も気にかけていた親戚もいた。だが、いざ引き取るかとなったら、妃愛の方がいい……というのが正直なところだ。

 

だがそれが、当時の里には納得行かなかった。今であれば理解はする。だがそれでも、今でも受け入れてはいない。

 

「だから決めたんですよ。あの時に、この兄妹の味方で居続けようって。例え世界中が敵になってもって」

 

そのはずだったんだけどなぁ……と里は足を止めた。

 

「どうした?」

「トモスケが生徒会長になったの。あれ仕込みだったんですよ」

 

と言う里にアザゼルは、

 

「だろうな」

 

とあっさり言った。

 

「流石に出来過ぎだろ、クジ引きで親戚に教師がいる男がピンポイントで引くなんてよ。逆に智宏だったら幾らでも誤魔化しようがあるからな」

「ですよねー」

 

アハハと、里は笑うと、詩桜とのやり取りを教え、

 

「結局私がしたことって、嫌いだった親戚連中と同じことだったんですよねぇ」

 

智宏と妃愛を天秤にかける行為。それに何より、どこかで思っていた。自分が偶然と言えば、それを信じるだろうし、万が一バレても、智宏は自分を許すだろうと。智宏は自分を無条件で信じてくれる。だから大丈夫だ。そんなことを考える自分が、心の何処かにいた。

 

「小さい頃のトモスケ。私のこと覚えてる?って聞いたら、一番キレイなお姉ちゃんって言ったんですよ」

 

この子も守らないと。そう思ったのは、きっとその時だ。

 

モジモジしながらそう言ってくる可愛い男の子。だがそれを利用したのだ。自分は。

 

「こんな大人になるもんか……って思ってたはずなんだけどなぁ」

「ふっ」

 

するとそんな里の姿に、アザゼルは笑みを浮かべた。

 

「まだまだ若いなぁお前さんも」

「え?」

 

里は顔を上げてアザゼルを見ると、

 

「大人になるって辛いよな。中々綺麗事じゃ済まないことも多くなる。っていうか、世の中綺麗事より、汚いことのほうがよく回ってるもんだ」

 

正直より、ズルいほうが簡単に、且つ確実に成果を出せる。となったらズルい事をする。なんてことが大人の世界じゃザラにある。

 

「いちいちそんなことに心痛めてたらモタない。だからそんな心はどっかに置いていくもんだ。でもお前さんはそれを後生大事に抱えてる。中々出来ることじゃねぇ」

 

それが愚かな行為なのだとしても、きっとそういうやつだから、智宏と妃愛は彼女を選んだのだろう。

 

「ならいいじゃねぇか。智宏は許したんだろ?それに甘えちまえよ」

 

きっと、里は智宏の初恋何だろうと、簡単に想像できた。ならきっと許すだろう。

 

「ガキの頃の初恋ってのはいつまでもキレイなもんさ。寧ろ時間が経てたば経つほど、美しくなっていく」

 

アザゼルはそう言って笑い、里も笑う。

 

「へぇ、じゃあアザゼルさんにもそういう思い出が?」

「……もう100年単位で昔の話だから忘れちまったなぁ」

 

ほらさっさと行くぞ!と歩き始めるアザゼルに、里はついていく。

 

「ここだけの話教えてくれません?」

「ぜってぇ言わねぇ!」

 

そんなやり取りが、建物につくまで続いたのは、また別の話である。




常磐の話

常磐は実はイラストレーターとして活躍しておりますが、基本的にそれを人には隠してます。生徒会メンバーは皆知ってますがね。
常磐は2年から転校してきた子で、前の学校でオタクバレしてそれが原因でイジラレ、不登校になってしまい、千玉学園に越してきてますが、実は常磐と智宏は小学校でも同級生で、その時は普通にオタクであることを隠しておらず、オタクであることを智宏が学園でバラし、それでまたイジラレるのではという恐怖から学校に来なくなってしまってました。ただ智宏もオタクなのと、そもそも智宏は同級生の常磐か確信を持っておらず、完全に常磐の独り相撲です。
因みに常磐の助けられた話は、コミケ前夜に大量の本の修正をしなければならず、徹夜で智宏は手伝い、途中で一時間だけ仮眠を取った常磐を敢えてそのまま起こさず修正を全部終わらせて、その後の売り子の手伝い等なども快く引き受けてくれたのが始まりでした。常磐が智宏を見直したのはそこからです。

アメリはの話

アメリは読者モデルをしており、物語開始時でも、少しずつ知名度を上げていってました。ただそれが原因で、今までいたグループと遊ぶ機会が減ったことと、偶然見つけてしまったアカウントに自分の悪口が書かれていたこと(内容的に、そのグループの誰かでないとかけないことを書いてあった)があった中、偶然智宏と話す機会があり、その際に智宏が勧誘しています。智宏自身もイジメの経験があり、ほっとけなかったのもありますが、その後も智宏と交流を通じて、生徒会メンバーとの絆を深めていきながら、今に至っているため、アメリにとって、智宏は恩人なのです。

あすみの話

彼女は常磐やアメリと違い、イジメはありません。ただ彼女は過去に大きな挫折を味わい、人と関わることができなくなっていました。

その中で見出したのは、Vtuberという存在で、彼女はそこで活動していました。直接人とは関われなくても、ネット越しで充分だと思っていましたが、そこに現れたのが智宏です。生徒会メンバーの勧誘にやってきた智宏は、彼女が初めて緊張しないで話せる存在で、本人も何故かはわからないけども、智宏は平気だと言い、智宏のために生徒会に入ってくれました。その後も表立っての活動はしたがりませんでしたが、智宏を通じて外の世界に触れ、今まで感じたことのないものに、あすみはいつしかそれがとても掛け替えのないものになっていました。だから彼女は今日もそれを教えてくれた智宏に尽くすのです。

里の話

彼女は従兄弟であり、後見人として和泉兄弟の最も近くにいて、更に絶大な信頼を得ていました。だからこそクジ引きで会長に選ばれるなんて言う、ありえない自体も納得させられたのです。

妃愛の出席日数をダシにやらせた生徒会長でしたが、里も驚くほど、智宏は頑張っていました。ですがそうであればそうであるほど、里の心に影を落とします。智宏を騙してやらせたことですからね。

ただ、真相を知った智宏は驚きはしましたが本当に怒ってはいません。寧ろ妃愛の出席日数を補填してもらえたことに加え、彼にとっても生徒会メンバーとの交流は掛け替えのないものになっていたからです。だからこそ里も詩桜も許したのです。

因みに里は、本当に智宏の初恋の相手です。というか今も、好みの女性と言われると里を上げています。厳密に言うと、本人も認めていますが、子供の時の両親をなくした影響からか年上の女性が好みで、特に実母と雰囲気のよく似ている里は、今も智宏にとって、特別な女性という位置づけとして、彼女はいます。

という感じで、少し補足させてもらいました。作中で語りたかったのですが、それをやると余りにも長くなってしまうますので勘弁を。


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本質

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「それぞれの思いを吐露し合う中、俺達は同じ場所を目指す」
智宏「いやまぁこうしてみると結構恥ずかしいな」
戦兎「意外とお前かっこいいところもあるじゃん」
智宏「意外ととな!?」
戦兎「まぁそんな感じの」
智宏「待て待て!意外とって何!?」
戦兎「いやもうそこは良いでしょうが!」
莉々子「ってな感じの150話スタートですわ!」
戦兎&智宏「あぁっ!」


「う、ん」

 

妃愛が目を覚ますと、体を起こして周りを見る。

 

「あ、目を覚ましました!?」

 

そこの居たのは、自分より年下の女の子。

 

「ずっと寝てたんで心配してたんですよ」

「あ、ありがとうございます。ご心配をお掛けしました。えぇと」

「あ、はじめまして。私は桐生 美空って言います。みーたんって言えばわかりますかね?」

 

そう言われ、あぁ!っと妃愛は声を上げる。

 

「もしかして、桐生 戦兎さんの妹さん!?」

「あ、兄をご存知なんですか?」

 

まぁ助けていただいたので、と返しながら、周りを見ると、見たことのない牢屋のような場所だ。

 

「ここどこなんでしょう」

「私もわからないんですよ。そこの窓から見える景色も見たことないし」

 

妃愛と美空は話をするが、

 

「まぁその内、うちの兄が助けに来てくれるから」

「信頼してるんですね」

 

妃愛の言葉に、美空はそう言いつつ、

 

「うちの兄は薄情だからなぁ」

「そんなことないよ。桐生さん凄く心配してたよ?」

 

ホントかなぁ。と美空はそんな事を言うが、落ち着いてるのを見るに、何だかんだで戦兎が来るのを信じているのだろう。

 

「まぁでもホント、信頼できるお兄さんでいいですね」

「そりゃもううちの兄はかっこよくて優しくて頼り甲斐があるから」

「そんな凄いんですか?」

 

まぁその分家事は私がやるけどね〜っと普段の生活を話すと、美空は眉を顰めて、

 

「お兄さんは何をしてるんですか?」

「ゲームとか……かな?」

 

それはどうなんです?と怪訝な目を向ける美空に、妃愛は少し複雑そうな笑みを浮かべて、

 

「ううん。私が望んだことだから」

 

え?と美空がポカンとすると、

 

「昔ね、私は最低だったんだ」

 

妃愛は、ポツリポツリと語りだした。

 

幼少の頃、声優の前に子役として活躍していた妃愛は、朝の連続ドラマ等にも出演した。容姿もだが、当時から突出した演技力を持ち、大人の世界に身を置き、その結果、全国で知らぬものが居ないほどの有名人になった。

 

しかし、それと同時に、妃愛から見た当時の兄の智宏は、幼く映っていた。子供っぽいというか、まぁ実際子供だったのだから当たり前なのだが、アニメの話とかヒーロー物の話だとかをずっと話してる兄の事を、正直に言えば見下していた。

 

そんな態度が両親から見て、目に余ったのだろう。ある日、両親が妃愛を呼び出し、言ってきた。たった二人だけの兄妹なのだから、仲良くしなさいと。

 

そんな両親の言葉に、妃愛はカッとした。大人たちに囲まれ、周りから褒められて来た彼女には、納得いかないものだった。

 

なんで両親は自分を怒るのだろうと。悪いのは子供っぽい兄の方なのに、と。今思えば、子供だったのは自分だったのは明らかだ。だがその時の自分は最低の言葉を放った。たった二人の兄妹に仲良くして欲しいと願う両親に対して、

 

《お兄ちゃんなんていなくてもいいもん》

 

あの時の両親の顔を、今でも覚えている。あの悲しそうな顔を。そして次の日、両親と会話もせず家を出て、電話が来た。両親が事故で死んだと。

 

駆けつけた病院で、両親の遺体を見つめながら、呆然としていた。きっとこれは罰だと思った。両親に酷い言葉をぶつけた罰なのだと。

 

そしてこのまま一人ぼっちで、この世界に取り残されたような感覚。どこまでも奈落の奥深くに落ちていくような感覚。フワフワと何処かに消えてしまうような気持ち。その時来たのが、兄の智宏だ。

 

智宏は自分を抱きしめ、自分がいると言ってくれた。思わず泣いた事を、智宏は両親の死に悲しんでいると思ったらしいのだが、それはちょっと違う。勿論悲しかったが、それ以上に、一人じゃなかったことに安堵したのだ。自分にはまだ兄がいる。それがあの時の自分にとって、どれほどの救いだったか。

 

だから自分と兄を引き剥がそうと親戚がした時、本気で怒ったし、里を味方にして自分達が両親の残した家で過ごせるようにした。

 

しかし、同時に常に脳裏にチラついていた。自分が両親に投げつけた言葉。そしてまるでそれを罰するように起きた事故。

 

いつかそれが兄に知られたらどうしようか。兄は自分を軽蔑するかもしれない。自分を見下し、両親を殺した自分を。

 

そんなある日、兄が申し訳無さそうに来て言ってきた。

 

《ごめん妃愛》

 

何事かと思えば、洗濯機に入れる洗剤の量を間違えて、泡だらけにしたのだ。兄なりに、家事を手伝って自分を助けようとしてくれたのだが、上手く行かず助けを求めてきた。

 

まぁ大したことじゃない。そもそも両親が生きてた頃は家事なんてやったことがない兄が、いきなりやって上手くやれるはずはない。裏面の洗剤の量の表示で凡その判断をすれば良い。そう教えるだけで良かった。もしくは改めて一緒にやって教えても良かったはずだ。だが自分は発した言葉は、

 

《もうお兄はしょうがないなぁ。無理して家事なんてしなくても大丈夫だからゲームでもしときなよ。家事は私がやるからさ》

 

家事なんてできなくて良い。しっかりしなくて良い。自立しなくて良い。だらけてくれ。何もできないままでいてくれ。堕落してくれ。そんな呪いをかける言葉。

 

その後も、智宏が失敗するたびに同じような言葉をかけ続けた。

 

無理しなくて良い。出来ないままでいい。頑張らなくて良い。

 

人間は失敗から学ぶものだ。失敗から学び、そこから成功させていく。その成功体験が、人間を成長させ、次の挑戦を後押しする。

 

だが妃愛がしたのは、失敗を失敗のまま終わらせる行為。そうしていく中で、智宏は自分は何をしてもだめな人間だと思うようになっていった。当たり前だ。失敗だけして、成功したことがないまま育ったのだから。

 

そうして、元来の面倒見の良さや、優しさは抑えられていった。それを妃愛はだめなことなのくらいはわかっていた。だがどうしても駄目だった。

 

いつかバレて、兄が自分を軽蔑しても、兄の身の回りの世話させてくれれば、一緒にはいられる。兄に嫌われても、一人にはならない。そんな歪んだ想い。それが妃愛の献身の正体だ。

 

「でもお兄ちゃんはね、私のせいにはしないんだ」

 

だが智宏は、周りにどんな目で見られても、笑って俺が何もできないからな〜っと言う。

 

本当は違う。兄の世話を出来ないと、不安になって調子が不安定になってしまう自分に、兄は智宏は合わせて何もしないでいてくれる。だがそれに対して妃愛のためだとかは決して口にしない。

 

自分が悪い。とだけ言って周りからの冷ややかな目を受ける。

 

だが、生徒会長になり、仮面ライダーとして戦う中で、智宏は変わっていった。いや、変わったのではない。本来の智宏が戻ってきたのだ。

 

誰かのために、必死に立ち上がって戦う。不器用で容量なんて全く良くない。泥臭くて情けなくて、それでもいつだって笑って、気づけば世界だって救っちゃう。和泉 智宏の元来の本質。

 

そうしていく中で、皆に認められていく兄に、嬉しく思った。自分のせいで本来の性格を失っていた兄が、それを取り戻していく姿は嬉しかった。だがどこかで、それを嫌がる自分もいた。兄が自立し、自分が離れていく未来。家族とはいえ兄妹なのだから、いつか兄は家を出て、家族を持つだろう。しかしそんな未来を拒絶する自分がいた。

 

「そうだったんですね。なんかごめんなさい。知らないでお兄さんを悪く言って」

「あ、良いの良いの。知らなかったらそう思っちゃうよね」

 

本当に悪いのは自分だ。そう妃愛が言ったとき、

 

「確かに酷い妹だなぁ」

『っ!』

 

牢屋の扉が開かれ、入ってきたのは兵藤 一誠だ。

 

「龍誠?」

 

美空がポカンとする中、

 

「他人の空似だよ」

 

と妃愛が訂正。それを見て一誠は笑うが、

 

「さぁ、着いてきてもらおうか」

「お断りです!」

 

と妃愛が叫んだ瞬間、目の前から一誠は消え、一瞬で背後に回ったかと思えば、妃愛と美空の首を掴み持ち上げた。

 

『あがっ!』

「拒否権はねぇんだよ」

 

そう言って二人を引きずり、牢屋を出たあと連れてこられた部屋に投げ捨てられ、二人は咳き込む。だが同時に、目の前の物体に目を奪われた。

 

「これはビジター。大昔、戦争中だった三大勢力が手を組んで漸く封印するのがやっとだった化け物だ。だがこれの封印が厄介でね。物理的にも魔術的にも特殊で、中々壊れない。俺ですら難しい程だ。しかも解除方法も不明だった。当時の奴らはほぼ全て意図的に記憶を消してたからな。まぁうちには唯一それを回避した悪魔がいたお陰で解除方法はすぐにわかったんだが、その解除方法が特定の音を持つ二人の声が重なった時に生まれる共鳴音だった。んで世界中探したんだが見つからねぇ。その中やっと見つけたのがまずは美空。お前だった。しかしもう一人が見つからなくてな。だが他の世界も探し、そして見つけたのが妃愛。お前さ。やっとこいつの封印を解けるってもんだ」

『……』

 

それを聞き、二人は口を噤む。その次の瞬間、

 

『っ!』

 

全身に電流が流れ、二人は目を見開く。

 

「げほ……」

 

美空は咳き込み、その場に崩れ落ちる。妃愛は、それに耐え、声を発さなかった。

 

「おいおい。同時に声を出してもらわないと困るんだが?」

『……』

 

声を出すものか、二人は無言で一誠を睨みつける。

 

「まぁ良いさ。時間はまだある」

 

一誠はそう言って、手を二人に向けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いてて」

「ふぅ」

 

少し時間を巻き戻し、智宏と戦兎は、運良く目立つ建物のすぐ近くに降りていた。

 

「ここ、なんか怪しいですよね」

「あぁ。他に目立つ建物もないし、多分皆もここを目印に来るんじゃないか?」

 

なんて話していると、二人の前に現れたのは、

 

「ディハウザーさん」

 

智宏が呟くが、相手から返事はない。そのまま黙って見つめてくる。

 

「正解引いたっぽいですね」

「あぁ」

 

智宏に戦兎は肯いていると、

 

《キングドライバー!》

 

智宏はベルトを装着し、戦兎を見る。

 

「中にもしかしたら妃愛がいるかもしれません」

「美空もな」

 

だからお願いします。と智宏が言うと、戦兎はわかったと言い、ビルドドライバーを装着。

 

《ブレイブクラウン!》

《ラビット!タンク!ベストマッチ!Are you ready?》

『変身!』

 

二人は同時に変身し、智宏はディハウザーに飛び掛かると、その横を戦兎は走り抜けていく。

 

「邪魔をするなっ!」

「悪いけど通さねぇよ!」

 

智宏はディハウザーを掴み、そのまま引っ張って投げ飛ばすと、剣を取り出し斬りかかる。

 

それをディハウザーも肉体を変化させ応戦。

 

「もう少しだ。もう少しで取り戻せる!」

「悪いけど約束したんだ」

 

なに?とディハウザーが怪訝な声を出す中、智宏は拳を握って殴り飛ばす。

 

「あんたは連れて帰る。連れて帰って、ちゃんと話してもらうぞ!」

 

剣を肩に担ぎ、智宏はそう叫ぶのだった。



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前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「遂に兵藤一誠のアジトにたどり着く俺たちだったが…」
智宏「そこに立ちふさがるのはディハウザー・ベリアル!ちょうどいい!今こそ約束を果たさせてもらうぜ!」
戦兎「きっちり勝ってこいよ!」
智宏「当たり前だ!」
広夢「そんな感じの151話スタートだよ〜」
戦兎&智宏「こらー!」


「おぉおおおお!」

 

智宏はキングブレイドをディハウザーに振り落とすが、ディハウザーは腕に付いた刃で受け止め、逆に智宏を斬る。

 

「ぐっ!」

 

後退った智宏だが、

 

《ロイヤリティクラウン!》

「変身!」

《忠義の力が未来を守る盾となる!守護せよ!ロイヤリティキング!》

 

盾を構え、再びディハウザーと距離を詰めるが、ディハウザーは高速移動で翻弄し、連続攻撃を瞬時に叩き込む。

 

「なら!」

《カームクラウン!》

「変身!」

 

高速移動を転がって避けながら、再び別の姿にチェンジ。

 

《平静の力が未来を見据える!射抜け!カームキング!》

 

弓を振り回し、ディハウザーの速さに着いていくが、

 

「軽い!」

 

智宏の攻撃を受け止め、強引に押し返して反撃。

 

「がはっ!」

 

ふっ飛ばされ、地面に叩き付けられる智宏。

 

「和泉!」

 

そこに他の皆が丁度来て、駆け寄ろうとするが、

 

「来るな!」

 

智宏が叫び、皆が足を止める。

 

「大丈夫だから。そこで少し待っててくれ」

 

息を整え、再び立ち上がると、智宏とディハウザーの視線が交差する。

 

「もう辞めろよディハウザーさん。こんな事して、一体何になるってんだ」

「クレーリアのためだ」

 

智宏の問い掛けに、ディハウザーは答える。

 

「私のせいであの子は死んだ。愛する人と過ごす時間も失った。だから私があの子とあの子を愛するものを蘇らせる!だから邪魔をするなぁ!」

 

ディハウザーが腕のブレードを使って智宏に斬り掛かり、弓でそれを受ける。

 

「それをその人が望むとでも!?」

「あぁ望むさ!」

 

ディハウザーに押し切られ、連続で切られて蹴り飛ばされた。

 

「がはっ!」

 

地面を転がりながら、智宏は体を起こす。

 

「だから叶えてみせる。あの子の幸せのために!」

 

ディハウザーはそう言って、両手に魔力の塊を作り、智宏に発射。

 

「くそ!」

 

それを智宏は飛んで避けながら、ブレイブクラウンをベルトにセットし、フォームチェンジ。

 

「まだまだ!」

 

智宏は拳を握りしめ、ディハウザーとの間合いを詰めると同時に、殴り飛ばしたが、

 

「ぐっ!」

「どんな手を使おうとも、どれだけの不幸を生み出そうとも、俺はあの子の幸福のためならどれだけの犠牲でも払って見せる!」

 

ディハウザーは瞬時に間合いを詰めて殴り飛ばす。

 

「そうか」

 

しかし後退るものの、智宏はしっかりとした足取りで立ち、相手を見据えた。

 

「貴方の気持ち。少し分かるんだよ」

「ふざけるな!」

 

智宏の言葉に激昂したディハウザーは、腕のブレードで斬り掛かるが、それを剣で弾く。

 

「お前に何が分かる!妹に頼り切り、甘えるだけのクズに!何が理解できるんだ!?」

 

猛攻に智宏は耐えきれず、ブレードを喰らうが、智宏はそれを強引に耐え、ブレードを掴んで止める。

 

「分かるよ。俺だって妃愛が死んだらきっと狂っちまう。もうどうでも良くなって、どんな犠牲払っても取り戻せるならそうしようとするさ。まぁきっと出来ないだろうけどな」

「ならば所詮その程度の思いというだけだ!」

「そんな訳あるか!」

 

声を荒げ、ディハウザーを睨みつける智宏。

 

「アイツはな。俺の全てだ。両親を失っても、他人を信じれなくなっても、それでもこの世界に繋ぎ止めてくれた存在だ。俺が一人だったら今はない。今があるのは、妃愛がいたからだ!」

 

両親が残してくれた、たった一人の家族。それが妃愛だ。何もない自分に、和泉 妃愛の兄という居場所を作ってくれた、かけがえのない妹だ。何よりも尊く、大切で愛おしい存在だ。

 

「でもな。馬鹿なことをやろうとすると、錦さんやアメリは泣くし、詩桜先輩は命懸けて止めようとするし、常磐にはぶん殴られるんだよ!何やってんだバカって言われるんだよ!」

 

智宏は、そう言って優しい声で、ディハウザーに語り掛ける。

 

「アンタは凄いもんな。誰よりも凄いんだ。俺なんかじゃ足元にも及ばない。だから誰も止められなかったんだ。だが俺の周りには止めてくれる掛け替えのない仲間もいたんだ!い」

「っ!」

 

ディハウザーは体を震わせ、2、3歩後退ると、

 

「だから俺がアンタを止める。そうじゃなきゃ、皆不幸になる」

「黙れ……」

「アンタだって分かってんだろ?アンタみたいに凄い人が、そんなに狂っちまう位大事な人なんだろ?誰かの犠牲の上で幸せになれるような人じゃないことくらい分かってるんだろ?」

「黙れぇええええ!」

 

再び魔力弾を形成し、ディハウザーは発射。しかし智宏はブレイブクラウンをベルトから外し、剣に装填。

 

《ブレイブチャージ!ブレイブスラッシュ!》

 

それを切って捨てると、

 

「アンタも、そしてクレーリアさんも、このまま不幸にさせない!」

 

そう言って、智宏は巨大なブライトネスクラウンを取り出し、バックルの台座を外して、クラウンのスイッチを押す。

 

《ブライトネスクラウン!》

 

それと共に、智宏の背後に黄金の甲冑が出現し、智宏は構える。そして、

 

「変身」

《光の力が未来を照らす!輝け!ブライトネスキング!》

 

黄金の甲冑が智宏を包み、そして現れたのは、光り輝く黄金の王の姿。

 

《キングカリバーン!》

 

それと同時に、もっていた剣も輝き、二回り程巨大な剣になった。

 

「っ!」

 

次の瞬間、体を発光させ、智宏はディハウザーとの間合いを詰めて一瞬で詰め、キングカリバーンで斬る。

 

「がっ!」

 

文字通り光速移動で立ち位置を変え、次々と斬撃を繰り出す智宏に、ディハウザーは防御しか出来ない。しかし、

 

「うぉおおお!」

 

全身から魔力を放出させ、辺り一帯を爆発で吹き飛ばす。だが、

 

「ハァ!」

 

爆発が届くよりも早く、仲間達の前まで移動し、キングカリバーンにブライトネスクラウンをセット。

 

《ブライトネスチャージ!ブライトネスバースト!》

 

必殺の斬撃で、爆発を相殺するどころか、そのまま余波でディハウザーを吹き飛ばした。

 

「ぐっ!」

 

しかしディハウザーは空中で態勢を戻し、再び智宏に突っ込む。

 

「はぁあああ!」

 

智宏もそれに合わせて突っ込み、互いの武器をぶつけ合わせる。

 

「うぉおおお!どけぇえええ!」

「どかねぇ、絶対にどいてたまるかぁああああ!」

 

智宏は全身を発光させ、ディハウザーは押して行き、そのまま殴り飛ばした。そしてキングカリバーンを地面に突き刺すと、

 

「これはお父さんの分!」

「っ!」

 

再び距離を詰め、顔面を殴る。

 

「これはお母さんの分!」

 

今度は腹を殴り、ディハウザーは苦悶の声を漏らす。

 

「そしてクレーリアさんの分!」

 

回し蹴りがディハウザーを吹き飛ばし、智宏はベルトのバックルに指をかける。

 

「がはっ……クソっ」

「最後は俺からだ」

 

《ブライトネスクラッシュ!》

 

ベルトのスイッチを押し、智宏は腰を落とす。

 

「どんなに辛くてもさ。それでもカッコつけなきゃいけない時もあんだろ。俺もアンタもお兄ちゃんなんだからさ。だからよ……」

 

智宏は飛び上がると、まるで太陽の如く輝き、ディハウザーを見据え、

 

「妹泣かせるようなことしてんじゃねぇよ!ばかやろぉおおおおお!」

「っ!」

 

そのままライダーキックの大勢に入り、一気に急降下。

 

それを咄嗟に防御しようとしたが、

 

「……」

 

ディハウザーはそのまま両腕を下ろし、まるで智宏のトドメを受け入れるように、そのまま智宏のライダーキックを受けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそ。思ったより広いな」

 

戦兎は智宏と別れ、建物を探っていたが、思っていたよりも大きく、困っていたが、

 

「成程。侵入者はお前だったか」

「っ!父さん!」

 

暗闇の中から現れた父の姿に、戦兎は驚きつつ、ベルトを装着。

 

「美空はどこだ!」

「さて、どこだろうな」

 

なら力づくで聞き出す!と戦兎はハザードトリガーを取り出し、

 

《鋼鉄のブルーウォーリア!タンクタンク!ヤベーイ!ツエーイ!》

 

タンクタンクフォームになった戦兎は忍と距離を詰め、

 

「変身!」

 

忍もニンニンコミックに変身し、切り結ぶ。

 

「俺だけじゃなく、娘も利用する気か!」

「正義のためだ!」

 

ふざけるな!と戦兎は力で押していくが、忍はそれを受け流し、そのまま四コマ忍法刀の柄でハザードトリガーを叩く。

 

「何だっ!?」

 

すると突然全身に電流が走ったようになり、体が動かなくなる。

 

「悪いがお前には退場してもらう」

「っ!」

 

そして忍は四コマ忍法刀から煙を出し、それは戦兎を包んで、戦兎は姿を消してしまった。

 

「……」

 

その場に残った忍は変身を解除し、姿をまた消すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いでぇ!」

「戦兎!?」

 

煙に包まれ、気づけば空に放り出されていた戦兎は、そのまま地面に落下したが、周りを見ると、龍誠や仲間たちに、智宏達までいた。

 

「すまん妨害にあった。だけどすぐまた向かえば」

「その必要はない」

 

突然聞こえた声に、皆はその声の方向を見ると、

 

「美空!」

「妃愛!」

 

建物の屋上には、兵藤一誠の他に、美空と妃愛が縛られていた。

 

「大丈夫か!?」

 

戦兎が叫ぶが、美空は首を横に振って答えない。

 

「おい!どうしたんだ!」

「戦兎や智宏からも言ってやってくれ。いい加減声を出せってな」

 

何だと?と智宏が言うと、

 

「俺はある封印を解きたいんだが、それにはこの二人の声がハモった時に生まれる音が必要なのさ」

「音だと?」

「そう。お前たちは知らないかもしれないが、封印というのは解除が単純であるほど強く、そして簡単に封印できるんだ。声のハモった時に生まれる音なんて凄く単純だろ?だがただハモっただけじゃだめなんだ。特定の特別な声。聞いただけで誰もが聞き入り、歌えば誰もが聞き惚れる生まれ持った特別な声を持つもの。それが美空だった。この若さでドームでライブができるほど特別な声。だがハモらなきゃいけない以上、もう一人必要だ」

「それが妃愛だったのか!?」

 

正解!っと智宏に一誠は指をさし、

 

「同じ声を録音してもだめだ。生の声を同時に聞かせる。それで封印はとけるんだが、強情でねぇ。中々声を出さないんだこいつら」

 

「ひよりん!?」

 

妃愛の髪を掴み、頭を振り回す一誠を見て、あすみが悲鳴を上げた。

 

『……』

 

すると戦兎と智宏は一歩前に出て、そして、

 

「美空!」

「妃愛!」

 

二人の声には、怒りと何より、兄として、妹を思う優しさが含まれていた。

 

『声を出せ!何があってもお兄ちゃん達(俺達)がなんとかする!』

 

その言葉を聞き、美空と妃愛は口をグッと噛み締めると、

 

『助けて、お兄ちゃん!』

 

次の瞬間、建物が揺れ、亀裂が入るとともに巨大な人形の物体が立ち上がる。

 

「ビジター」

「え?」

 

アザゼルの呟きに、皆が振り返ると、

 

「思い出した。クソっ!封印が解けたのか!」

「思い出したって……記憶消したんじゃ!?」

「いや、万が一封印が解けたときのこと考えて俺はコッソリ記憶を封印される程度に留めといたと言うか」

 

遠い目をするアザゼルにおいおいと思うものの、今はそれどころじゃない。

 

ビジターの頭部には、まだ美空と妃愛が引っ掛かっている。

 

三大勢力が集結し、封印するのがやっとだった存在。ビジター。

 

それが今、現代に蘇った瞬間だった。




智宏と妃愛の関係

前回では妃愛にとって智宏がどれだけ大事かを語りましたが、智宏にとっても妃愛は両親を失っても一人ぼっちにならずにすんだ、かけがえのない家族であり、切っても切り離せない。そのため、この兄妹は互いが絶対に必要だと思ってるので、お互い兄離れも妹離れも出来ないと言うか、するつもりもない感じです。

【仮面ライダーキング・ブライトネスフォーム】
《光の力が未来を照らす!輝け!ブライトネスキング!》

パンチ力・70t
キック力・85t
ジャンプ力・55m
走力(100m辺り)・3秒

智宏が変身する仮面ライダーキングの準最強フォーム。体を光に変えて、文字通り光速移動するなど、能力も高いが、単純スペックも高水準。レーティングゲームチャンピオンである、ディハウザーを圧倒するなど、戦闘能力も非常に高いフォーム。


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不屈

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「さぁ、遂に目覚めてしまったビジター」
智宏「今まで見たことのない存在に、俺達は困惑するが……」
戦兎「だが俺達も美空たちを助けるために諦める訳にはいかない!」
妃愛「そんな感じの〜」
美空「152話スタート!」
智宏「あれ?」


「あれがビジター」

 

戦兎は天を突くほど巨大な人型のそれに目を奪われる。

 

そしてそれはこちらを見下ろすと、

 

「ビジター。そう呼ばれているのはわかっている。だが本来、我に名はない」

「じゃあ何者だ!」

 

意思疎通はできるのか?と戦兎は思い質問した所、

 

「我は救済者。兵藤 一誠により歪められた世界を消し去り、安寧をもたらす者として、この世界の意思が作り出した存在だ」

『はぁ!?』

 

突然の告白に、戦兎達だけではなく、知らなかったらしい一誠も驚く。

 

「おいおい待てよそりゃ聞いてねぇぜ」

「っ!」

 

そう言って油断した一誠に、リアスは滅びの魔力を撃つ。だが、

 

『なっ!』

 

それをビジターは片手で軽く払ってしまった。

 

「おいこら!なんで兵藤 一誠を守ってんだよ!」

「我が使命は兵藤 一誠に歪められた世界の救済である。その遂行を妨げることは認めない」

 

何を言ってるんだ?と?皆が首を傾げる中、詩桜が成程と口を開く。

 

「アレは言うなら機械だ」

「ど、どういうことです?」

 

常磐が聞き返すと、

 

「言っただろう?兵藤一誠に歪められた世界の救済のために作られたと。世界の意思というものがどういった物を指すのかは分からないが、そこに何者かの意思が介入し、作り上げたのだとしたら、機械と同じさ。そして機械ってのは万能じゃない。プログラムし、それを忠実にこなす。そしてアイツのプログラムは、兵藤一誠が歪めた世界を消し去ること」

 

そこまで言われ、戦兎もそうかと理解する。

 

「兵藤一誠が歪めた世界を消すには、兵藤一誠がいないといけないってことですか」

「あぁ、兵藤一誠がいることで、兵藤一誠に歪められた世界が作られる。そしてその世界をビジターが消す。その一連の遂行のためには、兵藤一誠という存在そのものが、必要不可欠なんだ」

 

あくまでも、ビジターは兵藤一誠を倒す存在ではなく、兵藤一誠の関わった世界を壊す存在だとしたら、兵藤一誠を守るのも仕事のうちか、

 

「どちらにせよ、妃愛と美空さんを助けないと!」

「だなっ!」

 

《ブライトネスチャージ!ブライトネスバースト!》

《フルフルマッチデース!フルフルマッチブレイク!》

 

智宏と戦兎の二人は頷くと、最大火力をビジターに放つ。しかし、

 

「なっ!」

 

それを軽く腕をふるだけで払い飛ばし、逆に口から光線を放つ。

 

『っ!』

 

次の瞬間爆発と閃光が轟き、皆をふっとばす。

 

「く、くそ……」

 

変身が強制解除された戦兎は悪態をつきながら立ち上がり、智宏も変身が解除されながらも立つ。

 

「皆!大丈夫か!」

 

皆も立ち上がり、大丈夫と返す。

 

「咄嗟に結界を皆で張ったけど殆ど意味がなかったわ」

 

リアスが頭から垂れてきた血を掌で拭い、背後を確認する。

 

常磐達のような人間組に怪我はないようだ。

 

「兵藤 一誠よ。この世界を立ち去るのだ」

「はぁ?」

 

なんでだよ!と怒る一誠に、ビジターは告げる。

 

「我が使命は、汝が関わった世界を滅ぼし、救済すること。汝との戦闘行為は命じられていない。汝がいては、破壊できない」

『っ!』

 

その場の空気が凍りつく。つまりそれは、今の一撃も本気じゃなかったということだ。

 

「アハハハ!なるほどね!そりゃ俺がいちゃ出来ないか!おいお前ら〜!どうする?俺帰った方がいい?」

 

ゲラゲラ笑う一誠だが、智宏は首を横に振ると、

 

「そこにいろ」

 

はっきりと、そう口にする。

 

「だよなぁ!帰ったらまずいよな!」

「あぁ。またどっかに行かれると、追いかけるのが大変だからな」

 

は?と一誠がポカンとすると、

 

「お前は一発ぶん殴ったあと、泣くほどボコす。じゃないと俺の腹の虫が収まらん!」

「それは違いねぇな」

 

戦兎もそう言って一誠を睨みつける。

 

「美空に怖い思いをさせたんだ。俺達にぶっ飛ばされる覚悟くらいしてんだろ?」

「おいおいお前ら現実が見えてるのか?その前にこいつぶっ倒さないとこの世界がぶっ壊れるんだぜ?」

 

わかってる!と戦兎と智宏はベルトを装着するが、

 

『っ!』

 

突然、ビジターの目が怪しく発光し、目が眩む。そして、

 

「なっ!」

 

突然他の皆が戦兎や智宏の腕を掴んだり、足に絡みついて邪魔をしてきたのだ。

 

「おいみんな!何してんだ!」

「わ、分からないの!」

 

それにリアスは答え、

 

「でも急に、ビジターに殺されるのはすごく幸せなことなのって思ってしまうの!それを邪魔したり抗うことは、絶対許されないことって思ってしまうの!」

 

そう思ったら体が!と他の皆も口々に言う。となれば答えは、

 

「お前か!ビジター!」

「その通り。我に身を預けよ。汝らを苦しませぬ。絶望させぬ。兵藤一誠には誰も勝てぬ。そんな絶望の未来を生きる必要はない。幸福なまま全てを終わらせよう」

 

ビジターはそう言って、頭上に巨大な光の塊を作り出し、

 

「まずは汝達を救い、その後この世界を救済する!そう。我は救世主なのだ!」

『ふざけるな!』

 

そう声を荒げたのは、戦兎と智宏だ。

 

「誰もそんな事望んじゃいない!」

 

先に戦兎が叫び、そして智宏が、

 

「勝手に諦めて、勝手に逃げ出しておいて、勝手に皆を巻き込むんじゃねぇ!」

 

二人が怒り、声を上げた時、二人の体から光が放たれ、二人を邪魔するように掴みかかってきていた仲間たちが吹っ飛んだ。

 

そして、戦兎のラビットフルボトルが金色になり、智宏のブレイブクラウンも、今までのものとは違う、豪華で派手な物に変化した。

 

「あ、何だあれ?」

 

一誠は眉を寄せつつ、まあ良いか、と一旦ビジターから離れた。

 

更に、

 

「ん?」

 

龍誠も懐の輝きに気づき、その光るものを取り出すと、それは銀色に変化したドラゴンフルボトルだ。

 

「なんだコレ……いや、それよりも!」

 

驚きながらも、龍誠は意を決し、

 

「戦兎!これ使え!」

 

龍誠はドラゴンフルボトルを戦兎に投げ渡し、戦兎は少し驚きつつも、その意味を理解して、

 

「さぁ、実験を始めようか!」

《ラビット!ドラゴン!》

 

本来なら生物同士は組み合わせられない。反発しあい、爆発してしまう。だが、龍誠は使えと言って渡してきた。

 

理由なんてものはない。ただ、ラビット(自分)ドラゴン(龍誠)のフルボトルならば、いけると思っただけだ。

 

そう確信し、戦兎はレバーを回していく。

 

《エンドレスブレイブクラウン!》

 

一方、智宏もクラウンのスイッチを押し、天高く拳を掲げた。

 

この力を、智宏は知っている。一度だけ使えた、全てを超える力。敵のボスとの戦いに終止符を打った力だ。

 

だが強力すぎるほどの力。間違った使い方をすれば、間違いなく守りたい者まで傷つける。だから改めて、その力の使い道を考えた。守りたいものを。そして倒すべき相手を。

 

そして二人は叫ぶ。

 

『変身!』

《ベストマッチ!》

《無限の勇気の力が!最後の奇跡を起こす!奮い立て!エンドレスブレイブキング!》

 

戦兎は左右が金と銀でできた姿になり、智宏はブレイブフォームの姿に変わる。だがその体から溢れるエネルギーは、ブレイブフォームとは比べ物にならない。

 

「っ!」

 

すると、一度弾き飛ばした皆が立ち上がり、再度戦兎たちに襲いかかる。だが、

 

『変身!』

 

ビジターの能力に対して効果がなかったのか、詩桜達や、龍誠にフウなどは、それぞれ変身したり、生身のままリアス達を止めに入る。

 

「いけ!ふたりとも!」

『あぁ!』

 

龍誠の檄に、二人は頷くと、

 

《ビルドチェンジ!》

《ストライカークラウン!》

 

戦兎はビルドフォンをバイクに変形させ、智宏もクラウンのスイッチを押して上に投げると、巨大化し、バイクの形に変形した。

 

「行くぞ!」

「おう!」

 

二人はエンジンを蒸かし、ビジターに向かって爆走を開始、

 

「哀れな。だがそれも救ってみせよう!」

 

ビジターはそう言って、巨大な光の塊からいくつもの光弾を発射。

 

『はぁ!』

 

それを二人はギリギリで回避し、更にスピードをあげる。

 

次々飛んでくる光弾を全て避け、ビジターとの距離を詰めると、

 

二人はバイクから飛び上がり、ビジターの体を駆け上がる。

 

「ぬん!」

『がはっ!』

 

それを拳で殴り落とされ、地面に叩きつけられる二人。

 

「潰れよ!」

 

そこに向かって踏みつけ攻撃をするビジター。

 

「お兄ちゃん!」

「おにい!」

 

悲痛の叫びを揚げる美空と妃愛。だが、

 

『おぉおおおおお!』

 

自分たちより遥かに巨大な、ビジターの足を持ち上げ、押し返した。

 

「ぬぅ!」

 

少しバランスを崩しそうになったが、直ぐに立ち直る。しかし、

 

『おぉおおお!』

 

二人は再度飛び上がり、ビジターの腹を殴る。

 

「ゴフッ!」

 

初めてダメージらしいダメージを受け、ビジターが困惑する中、更にビジターの体を駆け上がっていく。

 

「美空ああああ!」

「妃愛いいいい!」

 

駆け上がっていく中でも、ビジターの攻撃は来る。それを避け、時には落とされそうになっても、もう一方が援護して時間を稼ぎ、その間に体勢を取り戻す。

 

「おぉおおお!」

「らああああ!」

 

そして、頭近くまでやってきた二人は、強力なアッパーをビジターに叩き込んだ。

 

ビジターの体が浮き上がるほど強力な同時攻撃に、ビジターの頭にまだ縛られたままだった二人の体が空中に投げ出される。

 

だが、

 

『大丈夫か!?』

 

二人は、それぞれの妹をキャッチし、ビジターを見る。

 

ビジターは既に拳を振りかぶり、こちらを攻撃する構え。ならば、

 

《Ready Go!》

 

戦兎はレバーを回し、智宏もクラウンのスイッチを押す。

 

《ボルテックアタック!》

《エンドレスブレイブストライク!》

 

二人の体が発光し、同時にライダーキックの体勢に入ると、一気に降下。ビジターの拳とぶつかり合うが、

 

『はぁ!』

 

ビジターの拳を粉砕し、そのままビジターの胸を貫いて大穴を空けた。

 

「これで」

「どうだ!」

 

と二人が着地しながら振り返ったが、

 

「まてまて。折角の新しいおもちゃをそんな簡単に壊されたんじゃ敵わん」

「なっ!」

 

そこに現れた一誠が手をかざすと、ビジターは小さくなっていき、そのまま小さな球体に姿を変えた。

 

「お前それが何なのか分かってるのか!?」

「勿論。だからこそ、まだまだこれで遊ばせてもらわないとなぁ」

 

ふざけるな!と戦兎と智宏は、一誠の元に向かおうとするが、

 

『ぐっ!』

 

二人の変身が強制解除され、元に戻ってしまった。

 

「成程、やはり一時的なブーストか」

 

まあいいさ、と一誠は笑い、

 

「そろそろ本命を完遂させてもらうぜ」

『っ!』

 

と言って、戦兎達を煙が包んでいく。

 

「まずい!智宏!」

 

戦兎は慌てて智宏達のもとに行こうとするが、そのまま姿を消してしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは……」

 

気づけば、智宏は一人だった。いや、一人ではなく、

 

「よう。智宏」

「お前!」

 

眼の前に現れた一誠に、智宏怒りを露わにするが、

 

「おいおい待て待て。俺はお前と仲良くなりにきたんだよ」

 

意味がわからない!という智宏の背後に突然現れた一誠は、

 

「調べさせてもらったよ。お前の過去をな」

「っ!」

 

智宏が振り返ると、そこには一誠はいない。

 

ヌルリと心入り込んでくるような感覚。それがたまらなく心地よく感じた。

 

「幼い頃から天才子役と持て囃される妹に比べられ、両親が死んだ際には親戚からは邪魔者扱い。誰もお前を引き取りたいなんて思うやつはいなかった。その後の人生だってそうさ。妹に縛られ、自由に生きることもできない。妹以外から必要とされず、その妹も別にたまたまお前が兄だったからと言うだけ」

 

声の方を振り向くが、やはり一誠はいない。

 

「挙げ句にやりたくもない生徒会長という役職を、妹の出席日数の補填もためにやらされ、それすらも本当は別の狙いがあった。そうやってどいつもこいつもお前を利用するばかりだ。そんなのあんまりじゃないか?」

 

そう言って、一誠は眼の前に現れる。

 

「他の奴らだってそうさ。誰もお前がいなくたって生きていける奴らだ。偶々お前が生徒会長にさせられて、行動を共にしてただけ。お前がいないといけないわけじゃない」

 

そうかもしれない。そう思わせてくる、不思議な声音。

 

「だが俺は違う。俺は前が必要だ。他の誰でもない。お前自身が必要なんだよ。智宏」

 

だから俺とともに来い。そう言って、手を伸ばしてくる。俯いて動かない智宏に、一誠は近づく。

 

一誠の洗脳は、僅かでも思っていることであれば、それを引き出し、まるで心の底からからそう思っていたことかのようにさせる。

 

そして一度ハマれば、抜け出すことは難しい。

 

「……な」

「どうした?智宏?」

 

ブツブツと何かを呟いた智宏に、一誠は顔を近づけて聞く。そして聞こえたのは、

 

「あいつらを、馬鹿にするな!!!」

「っ!」

 

一誠の頬に、智宏の拳が炸裂する。

 

変身していなければ貧弱な体の、智宏のガムシャラに叩きつけられた拳は、大した威力はないが、予想外の一撃だったためか、驚きで一誠に尻もちをつかせた。そして、

 

「わかってるよそんな事」

 

拳から血を垂らし、智宏は叫ぶ。

 

「アイツらの凄さは、俺が一番知ってるんだ!皆すげぇ!常磐の描いた絵が一枚で何百万も動かすのを知ってる!錦さんの歌が、何十万人もの人を感動させるのを知ってる!詩桜先輩の本が、ベストセラーとなってドラマ化も映画化もしてる!アメリの写真一枚で大勢の女の子がこぞって同じコーディネートを真似しようとする!妃愛の言葉一つで、沢山の人達がそれに耳を傾ける。でも俺には何もないんだ」

「そうだ。でも俺は」

「違う!」

 

智宏は一誠の言葉を遮ってまた叫ぶ。

 

「それでも俺には皆が必要なんだよ!皆には俺が必要なくても、俺には皆が必要なんだ!誰一人として欠けちゃいけないんだよ!」

「そうやってずっと良いように使われて良いのか!?お前はこれからも和泉妃愛の兄でしかいれないんだぞ!?お前だって何者かになりたいはずだろ!?」

「だからもうなってるじゃねぇか。妃愛のお兄ちゃんってやつによ」

 

それがあれば充分だった。でも今は、生徒会長っていうものにもなれた。そこで出会った、かけがえのない仲間たち。仮面ライダーというものにもなれた。そこで知った、戦うことの怖さ。だがそれを振り切ってでも、戦うことの覚悟を。

 

「もう俺には充分すぎるほど皆からもらってるんだ。これ以上は、貰いすぎだ」

 

そう言って、智宏がブライトネスクラウンを掲げると、強い光を放ち、空間にヒビが入っていく。

 

すると空間が崩壊し、他の仲間たちも姿を現した。

 

「お兄!」

 

妃愛が智宏の姿を確認すると、駆け寄ってきた。それを抱きとめ、

 

「おかえり。妃愛」

「うん。ただいま」

 

他の皆もそれを見守り、

 

「私も抱きつけばよかった?」

「アホか」

 

美空に言われて、戦兎は受け流す。そして一誠が、

 

「このシスコン野郎が!」

「シスコンか。いいね」

 

智宏は一誠に笑みを浮かべ、

 

「俺にとっちゃ世界一の褒め言葉さ。妹が大事だ。大切だ。何よりも愛おしい!俺はそれを恥ずかしいと思ったことはない!」

「クソが」

 

一誠はそう言って、転移しようとするが、

 

「させないわよ!」

 

それを邪魔するように滅びの魔力と雷光が降り注ぎ、転移を妨害。

 

「成程。そんなに死にたいわけか」

《オーバー・オーバー・ザ・レボリューション!Ready go!フィーバーフロー!フハッハッハッハハハハ!フハッハッハッハッハハハハハ!!》

 

一誠は仮面ライダーエボルとなり、それと同時に多数の魔獣を出現させる。

 

「んで?どうする?」

 

戦兎が智宏に聞くと、

 

「言ったでしょ?しこたまボコって泣かすってね」

「だな」

 

戦兎と智宏の二人が並ぶと、他のライダー達も共に立つ。

 

「部長!魔獣は任せます!」

「えぇ!全力で叩きのめしなさい!」

 

戦兎の頼みに、リアスたちは頷き、全員でベルトを装着。

 

「あ、美空さん達はこっちへ」

 

とアーシアは美空や常磐たちを連れて行こうとし、

 

「あれ?妃愛さん?」

「あ、私は大丈夫なので」

 

と言って、智宏についていく。

 

その中戦兎はジーニアスボトルを出し、智宏は妃愛を見て、

 

「行けるか?」

「うん!」

 

智宏と妃愛は手を繋ぐと、ブライトネスクラウンが一瞬発光し、別の形状へと変化した。

 

「それじゃあ、行くぞ!」

『あぁ!』

《グレイト!オールイェイ!ジーニアス!》

《レジェンドクラウン!》

《ボトルバーン!クローズマグマ!》

《オールスターキングダム!》

《ロボットゼリー!》

《ドラゴンゼリー!》

《ヘルシャフトクラウン!》

《デンジャー!クロコダイル!》

《コウモリ!発動機!》

《アモーレクラウン!》

 

全員が一気に変身を開始し、それぞれ構える。そして一誠を見据え、

 

《Are you ready?》

『変身!』

《完全無欠のボトルヤロー!ビルドジーニアス!スゲーイ!モノスゲーイ!》

《伝説の王の力が!今再び目覚める!刮目せよ!レジェンドキング!》

《極熱筋肉!クローズマグマ!アーチャチャチャチャチャ チャチャチャチャアチャー!》

《今!全ての王が集結する!愛し!支配し!歌い!描き!綴り!射抜き!守護し!立ち上がれ!オールスターキングダム!》

《潰れる!流れる!溢れ出る!ロボットイングリス!ブラァ!》

《潰れる!流れる!溢れ出る!ドラゴンインクローズチャージ!ブラァ!》

《支配の力が未来を治める!跪け!ヘルシャフトキング!》

《デンジャー!クロコダイル!割れる!食われる!砕け散る!クロコダイルインローグ!オラァ!キャー!》

《バットエンジン!フッハッハッハッハ》

《愛の力が未来を救う!想え!アモーレキング!》

 

そして変身が完了し、全員で一誠に向けて歩き出した。

 

「さぁ、ここからは俺たちのお通りだ!」




仮面ライダービルド ラビットドラゴンフォーム

パンチ力・47.8t(右腕)/55.8t(左腕)
キック力・61.3t(右足)/54.5t(左足)
ジャンプ力・ひと跳び79.8m
走力・100mを1.1秒

ビジターへの怒りで、感情が高ぶり再びハザードレベル7.0に到達した戦兎が、変化したラビットフルボトルと、その余波で共鳴して同じく変化した、龍誠のドラゴンフルボトルを使用することで変身した姿。トライアルフォームでありながら、破格のスペックを誇っているが、この姿の本当の力は、あらゆる法則を超える力を持っており、その為実際は、スペック表以上の力を発揮できる。但し、その力を完全に使いこなせるわけではなく、あくまでもその力の一端を使える程度。更に長時間の変身はできず、短時間の変身となった。


仮面ライダーキング エンドレスブレイブフォーム

パンチ力・∞
キック力・∞
ジャンプ力・∞
走力・∞

智宏がエンドレスブレイブクラウンを使用して変身した姿。

智宏の世界の最終決戦にて、敵のボスの策略により異次元空間に閉じこめられた智宏が、絶望仕掛けながらも、それでも立ち上がり、皆のもとに帰りたいと願い、智宏の感情の高ぶりが最高潮になった時に生まれた力。

スペックが全て∞というのも、智宏の感情が常に高ぶっているため、ほぼ無限に上昇しているから。

謂わば最終回限定フォームであり、こちらも長時間変身はできないが、ビジターに有効打を与えている。

仮面ライダーキング レジェンドキングフォーム

パンチ力・120t
キック力・150t
ジャンプ力・100m
走力(100m辺り)・0.5秒

智宏が、妃愛の力を借りてブライトネスクラウンを変化させた、レジェンドクラウンによって変身した姿。

仮面ライダーキング最強フォームであるが、この姿になるには妃愛が常にそばにいなければならず、離れてしまうとブライトネスフォームに戻ってしまう。

というのも、この姿は智宏自身の力と言うよりは、妃愛の力が重要なため。

元々仮面ライダーキング自体が、智宏ではなく、妃愛に与えられただったのを、智宏が変身しており、ライダーの素質自体も、智宏は妃愛に大きく劣っていた。

それから紆余曲折あって生まれたのがこの形態であり、妃愛がいないと変身も、変身形態の維持もできない。

その為常に妃愛を守りながら戦わねばならないものの、結界を張ったり、テレポートも可能だったり、基礎スペック自体もかなり高い。

見た目は純白の装甲で、この形態になっている間は、妃愛の服もドレスのような物に変わる。これ自体にも多少は防御力はあるものの、ないよりはマシ程度らしい。


ビジター

現代に蘇った、世界の自殺装置。

智宏と戦兎に破れはしたものの、これは一誠が世界にいるため本気の攻撃ができなかったのが大きい。

3大勢力に封印されたのも、実はまだ兵藤一誠が生まれるより前だったため、この世界自体はまだ兵藤一誠が関わった世界じゃなく、誤動作していたから。

逆に言えば、誤動作でも3大勢力がどうにか封印するのが限界で、ルールを無視する力とスペック∞の同時攻撃でなければ傷を負わせることができない存在。

そもそも、一誠がこの世界に残ってなければ、初手で世界を消し飛ばされてしまっていた。

ジオウの一誠が見た様々な時間軸の戦兎達は、このビジターに勝ったものはなかったらしい。

因みにビジターが今回のような歪んだ行動方針になったのは、世界そのもの意思だけではなく、兵藤一誠のご都合主義により、自分に有利な状況が生まれやすいことも要因。世界の意思とはいえ、物語の中の世界より、外の世界から転生してきた一誠の力のほうが、優先されてしまうかららしい。


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伝説と天才

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「美空と妃愛を取り戻し、遂に兵藤 一誠との決戦!」
智宏「全員全力全開で今までの恨みを晴らしてやるぜ!」
戦兎「そんな感じの!」
智宏「152話スタート!」


『おぉおおおお!』

 

全員で一気に一誠に飛びかかり、一誠は空中に無数のデュランダルを作り出し、射出してきた。

 

「任せろ!」

《キングブレイド!》

 

それを詩桜が前に出て手を翳すと、詩桜の周りにキングブレイドを召喚し、それをぶつけて相殺。更に、

 

《エマヌエーレシューター!》

 

無数のエマヌエーレシューターを、一誠の背後に召喚し連射。

 

「がっ!なんだ!?」

 

驚きながら振り返った一誠に、

 

『隙ありだ!』

 

匙とヴァーリがツインブレイカーを一誠にぶつけ、

 

「もういっちょですわ!」

 

莉々子のケーニヒハンマーが一誠を吹き飛ばした。

 

「ちぃ!」

 

一誠は空中で体勢を直すが、

 

「おらああ!」

 

龍誠が突撃してきて、ビートクローザーを振り下ろす。

 

「あめぇ!」

 

デュランダルでそれを弾き、その隙に追撃。を掛けようとしたが、

 

「させないよ!」

「させません!」

 

広夢とフウが、それぞれの武器で銃撃し、一誠の手からデュランダルを落とさせる。

 

「クッ!」

「ふん!」

 

そこにサイラオーグが一誠を背後から抑え込む。

 

「はなせ!この!」

 

一誠は暴れて肘を何度もサイラオーグに叩き込むが、

 

「龍誠君!」

「っ!」

 

詩桜が龍誠の前にキングブレイドを召喚し、更にロイグニルからブレイブクラウンを外して投げた。

 

「これを使え!」

「成程!」

 

龍誠はキングブレイドを手に持つと、ブレイブクラウンを装填。そしてビートクローザーを持ちながら、

 

《スペシャルチューン!ヒッパレー!ヒッパレー!ヒッパレー!メガスラッシュ!》

《ブレイブチャージ!ブレイブスラッシュ!》

 

龍誠は二刀流で一誠との距離を詰め、一気に斬りかかる。

 

「オラオラオラオラ!」

 

サイラオーグはタイミングよく離脱し、龍誠の滅多斬りから離れると、眼の前にケーニヒハンマーが落ちる。

 

「サイラオーグ殿にはこれだ!」

 

と詩桜は合わせてヘルシャフトクラウンを投げ、更にフウにエマヌエーレシューターを召喚して、ロイヤリティクラウンと合わせて渡す。

 

「面白いな」

「えぇ」

 

サイラオーグはケーニヒハンマーにヘルシャフトクラウンをセット。

 

《ヘルシャフトチャージ!》

 

龍誠の滅多斬りの終わりに合わせ、サイラオーグはケーニヒハンマーを一誠に叩きつけた。

 

《ヘルシャフトブレイク!》

「ガハッ!」

 

空に打ち上げられた一誠に、フウは2丁拳銃で狙いを定め、

 

《ファンキードライブ!》

《ロイヤリティショット!》

 

同時射撃で、一誠を打ち抜き、更に弾き飛ばす。

 

「く、くそ!」

 

一誠は慌てて立ち上がるが、眼の前に詩桜が立つ。

 

「この!」

 

デュランダルを再度召喚し、詩桜に切りかかるがロイグニルで受け止められ、弾かれるとそのまま回し蹴り。

 

「さぁ、真打ち登場だ」

 

詩桜が蹴り飛ばした先には、智宏と戦兎が待機していた。

 

『はぁ!』

 

二人の同時パンチが、一誠に炸裂して逆方向に吹っ飛ばすが、

 

「はぁ!」

 

智宏が、妃愛と共にテレポートして先回りして、キングカリバーンで斬って止めて弾く。

 

その先に戦兎も先回りし、フルボトルバスターで打ち返す。

 

《レジェンドブレイブチャージ!》

 

智宏はベルトからレジェンドクラウンを外してキングカリバーンに装填。すると王冠が展開し、そこに更にブレイブクラウンをセット。

 

《レジェンドブレイブフィーバー!》

 

飛んできた一誠に、智宏は剣を振り下ろし、その衝撃波を放つ。

 

「がはっ!」

 

そのまま吹き飛びそうな一誠だが、智宏が一度剣を地面に突き刺し、指を鳴らすと、一誠の吹き飛ぶ先に不可視の結界が現れ、それでバウンドした一誠が戻ってくる。

 

《レジェンドロイヤリティチャージ!レジェンドロイヤリティフィーバー!》

 

再び飛んできた一誠に、智宏は再び剣撃を放って吹き飛ばす。

 

「なら!」

《ロック!ローズ!ジャストマッチデース!ジャストマッチブレイク!》

 

戦兎はそのまま切っ先から出たトゲの付いた鎖で一誠を捕まえると、強引に引っ張り戻す。

 

《レジェンドカームチャージ!レジェンドカームフィーバー!》

 

それに合わせ、智宏も一誠に再び攻撃を与えて、壁に叩きつけた。

 

「行くぜ!」

「はい!」

《フルフルマッチデース!》

《レジェンドブレイブチャージ!レジェンドロイヤリティチャージ!レジェンドカームチャージ!》

 

智宏は全てのクラウンをセットし、剣のトリガーを引く。

 

《フルフルマッチブレイク!》

《レジェンドキングフィーバー!》

 

二人の同時攻撃が、一誠に炸裂する。

 

「がはっ!くそ!」

《ロイスピアー!》

 

床に転がり、一誠は悪態を吐く中、ヴァーリと匙がロイスピアーを手に、突っ込んでいく。

 

《アモーレチャージ!アモーレスティング!》

《ブレイブチャージ!ブレイブスティング!》

 

 

二人はロイスピアーで必殺技を発動し、そのまま一誠を突き刺すと、そのまま壁に固定し、横に飛ぶと背後から戦兎と智宏が立ち、戦兎がレバーを一回回し、智宏もクラウンのスイッチを一回押す。

 

《ワンサイド!》

《ワン!》

 

そして二人は走り出し、一誠との距離を詰める。

 

「ちっ!いけ!」

 

一誠は魔獣を召喚して二人に向かわせるが、二人はそれを蹴散らしながら進み、

 

《Ready Go!》

 

拳を握ると、

 

《ジーニアスアタック!》

《レジェンドストライク!》

 

二人の拳が、一誠を壁に大きくめり込ませて更に、

 

「俺達も行くぜ!」

『おう!』

 

《スクラップフィニッシュ!》

《スクラップブレイク!》

《クラックアップフィニッシュ!》

《エボルテックアタック!》

《ヘルシャフトストライク!》

《アモーレストライク!》

 

ヴァーリ達が次々に飛び上がり、連続でライダーキックを次々に叩き込んでいく。

 

「ぐぁああ!」

 

一誠は壁にぶち破り、そこに戦兎と智宏は走っていく。

 

《ワンサイド!逆サイド!》

《ワン!ツー!》

 

レバーとスイッチをそれぞれ2回操作し、吹き飛んだ先に先回りした二人は、更に同時キックで逆方向に飛ばす。

 

「今度は俺たちだ!」

「あぁ!」

 

一誠が吹っ飛んだ先に待ち構えていた、龍誠と詩桜は走り込む。

 

「ふざけるなぁ!」

 

一誠は無理矢理体勢を戻し、ブレーキを掛けると、結界を作り出し、それを何十にも張って、分厚い一枚の壁を作り出す。

 

「どんなに硬い壁も、一点集中には弱い!」

《ブレイブブースト!ロイヤリティブースト!カームブースト!ロマンブースト!イメージブースト!シャンソンブースト!ヘルシャフトブースト!アモーレブースト!》

 

ロイグニルのスイッチをどんどん押していき、詩桜はやり投げの構えを取る。そして、

 

《オールスターブースト!オールスタースプラッシュ!》

「おらぁ!」

 

思いっきりやり投げの要領で一誠に投げつけると、壁に深々と突き刺さる。そこに、

 

《Ready Go!ボルケニックフィニッシュ!》

 

龍誠がマグマを纏わせた拳で殴りまくり、ロイグニルを支点に壁をどんどん破壊していく。

 

「うぉ!」

 

そのまま壁を破壊し尽くしたロイグニルが飛んどきたが、一誠はギリギリで避けた。しかし、

 

《Ready Go!》

 

龍誠と詩桜はベルトを操作しながら飛び上がり、ライダーキックの大勢に入る。

 

《ボルケニックアタック!》

《キングダムフェスティバル!》

 

二人の同時キックによって、地面を転がしながら吹き飛ぶ一誠。

 

「くそ!くそ!俺が追い詰められるはずが!俺は主人公だぞ!」

「だから何だ」

 

智宏は一誠を見下ろしながら言う。

 

「確かに世の中にはな。信じられないくらいすごいやつはいる。きっとこういうのを主人公って呼ぶんだろうなってやつもいる。俺みたいな平凡で地味な男とは違うさ。でもな、凄いやつってのはそれだけ悩んで、努力してんだ。お前はどうだ?神様だか知らないけどそんなやつから力を貰って、俺つえーってやってるだけ。主人公ってポジションをただで貰おうとしただけ。お前な。主人公ってのは大変なんだよ。しんどいんだよ。凄いってな。辛いことも沢山あるんだ。でもそれでも皆頑張ってるんだ。だから見てると思うよ。あー、俺凄くなくてよかったってな。って言うと怒られそうだけど」

《ワン!ツー!スリー!》

「お前も充分凄いだろ」

「そうそう!お兄だって凄いんですから!」

 

そんなんじゃないけどなぁ。と智宏が肩をすくめる横で、戦兎もレバーを回す。

 

《ワンサイド!逆サイド!オールサイド!》

「兵藤 一誠。結局お前は何もわかっちゃいない。凄いってことの大変さも、何より凄いってことの責任も何もな!」

《Ready Go!》

 

戦兎が飛び上がると、

 

「妃愛。捕まれ!」

「うん!」

《Ready Go!》

 

 

智宏は妃愛を抱き上げ、一緒に飛び上がった。そして二人はライダーキックの体勢に入ると、

 

「勝利の法則は決まった!」

「さぁ、バットエンドを受け入れな!」

《ジーニアスフィニッシュ!》

《レジェンドスクリーム!》

 

一気に降下し、一誠を狙う。

 

「ふざけるなよ。俺が何もわかってないだと?馬鹿にするなぁ!」

《Ready Go!ロンギヌスフィニッシュ!》

 

一誠も飛び上がりながらライダーキックを放ち、二人とぶつかる。

 

「ぐぐぐ!」

「おおお!」

 

一度拮抗するのの、二人が力を込める。

 

『はぁああああああ!』

 

そのまま押し切ると、地面に叩きつけ、そのまま地面をエグりながら押し込んでいき、

 

「これで!」

「終わりだ!」

 

二人のダブルライダーキックを受け、一誠は爆発。その爆炎の中から戦兎と、妃愛を抱えた智宏は飛び出し、着地すると、

 

「ふざけやがって」

 

一誠は立ち上がり、ビキビキと音を立てこちらを睨みつける。

 

「殺してやる」

「そこまでだ」

 

そう言って割って入ってきたのはニンニンコミックに変身した忍で、煙を出すとそのまま消えてしまう。

 

「あれ?今のはビルド?」

 

智宏が驚いて戦兎を見ると、

 

「俺の父親だ」

「な、なるほど。色々あるみたいですね」

 

まぁな。と戦兎が答えると、

 

「ちょっとお兄ちゃん!」

 

そう怒鳴りながら、美空が詰め寄ってきた。

 

「一体どういうことなのか説明してもら……」

 

そこまで言ったところで、美空がガクンと力を失ったように、倒れそうになったので、戦兎がキャッチ。

 

「ありがとう。アザゼル先生」

「あぁ」

 

アザゼルはなんてことないような顔で言う。まだ美空には教えるわけにはいかない。なので記憶を改竄する必要がある。

 

「取り敢えずはまぁ、一件落着かな?」

「ですね」

 

戦兎と智宏は変身を解き、互いを見て笑みを浮かべると、拳を軽くぶつけ合わせて称えるのだった。



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それぞれの形

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……



戦兎「一誠との激戦を終え、日常に帰っていく俺たちだったが」
智宏「いやぁ。改めてお世話になりました」
戦兎「いやいやいいんだよ。俺も助かったからな」
智宏「って言っても、まだあいつは生きてますし、大変なのはこれから……ですかね?」
戦兎「そうだな。新たな脅威であるビジターもいるが、俺たちは負けないぜ!」
全員『そんな感じの153話始まるよー!』
戦兎&智宏『いや多い多い!』


一誠との戦いから二日。バルコニーで智宏が黄昏ていると、

 

「お兄」

「妃愛?」

 

声を掛けられ、振り返ると妃愛が立っていた。そして妃愛はそのまま隣に並び、

 

「そろそろ帰る時間だってさ」

「もうそんな時間か」

 

スマホの時計を見ようとし、こっちでは電波がこちらでは受信できないので使えない。

 

「それにしても、世界って広いよなぁ。他の世界の仮面ライダーとかここに来るまで知らなかったぜ?」

「ホントだねぇ。でもお兄、ここだけの話、ちょっと兵藤 一誠羨ましいって思ったでしょ?」

 

そう言われ、智宏はキョロキョロ周りを見回してから、

 

「ちょっとだけな?好きな作品に転生して俺つえーは、オタクならば誰もが考えるからな。でもやっぱり、こうして実際見てみるとダメだな」

「そうだね」

 

ここが物語の世界なのかもしれない。でも、ここに人はいて、生きて日々を過ごしている。少なくとも智宏達にはそう感じた。

 

「案外、俺達の世界も何かの物語の世界かもしれないぞ?」

「そしたらお兄ちゃんは主人公だろうね」

「馬鹿言え、俺じゃ魅力もなんもないだろ」

 

そんなことないよ。と妃愛は智宏の肩に頭を乗せ、

 

「お兄はいつだって私を大事にしてくれる。私の為に頑張ってくれる。どんな困難も乗り越えてくれる。私にとって、お兄は世界一大好きなお兄ちゃんなんだから」

「それは光栄だな」

 

智宏は妃愛の頭を軽く撫で、

 

「俺も妃愛は自慢の妹さ。かけがえのない家族だ」

 

えへへ、と笑う妃愛を見て、智宏も笑う。すると、

 

「あのー。お邪魔か?」

 

戦兎が気まずそうに声を掛けると、二人が振り返って、

 

「あ、すいません。すぐ行きますね」

 

ペコペコ智宏が謝りながら、妃愛を連れて歩き出す。

 

そんな二人を連れて、

 

「お前ら、恋人とか作るの大変そうだな」

「いやぁ。恋人とか結婚とか出来なくても妃愛に面倒見てもらうんで」

 

その場合妃愛の恋人とか結婚はどうすんだと思うと、

 

「あ、私恋人とか結婚には微塵も興味無いので、お兄のお世話が出来れば満足です」

 

妃愛にそう答えられ、ダメだこりゃ。と戦兎は肩を落とすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソが!」

 

一誠は椅子を蹴り飛ばし、荒れていた。

 

「そう荒れるな。また新しい世界を探すのだろう?」

「当たり前だ!」

 

舌打ちして、忍を睨みつけながら息を整え、

 

「教会側でクーデターの動きがある筈だ。なら暫くは俺達は俺達のやりたいことする」

 

世界の選定を任せたぞ。とだけ一誠は言って奥に消えていき、忍はため息をついて自室に戻る。

 

そしてパソコンを起動させ、パスワードを打ち込んでいく。これは忍しか知らない隠しパスワード。普段のパスワードは既に知られている筈だ。だがそれはブラフ。そしてそのパスワードを打ち込むと、画面が点灯し、その画面に出たのは、左右が金と銀のビルド。先日戦兎が変身した姿だ。

 

「ハザードレベル7.0に到達した際に起きるフルボトルの変化。それを二本組み合わせた時のパワー。だがまだ足りない」

 

やはりこれは使えないな。忍はそう呟き、その画面を落とし、椅子に背を預けると、大きなため息を吐くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「面白い人たちでしたね」

「だな」

 

戦兎と小猫は二人でオカルト研究部の部室に入ると、

 

「なにぃ!?」

 

龍誠の声が部室に響き、驚いて中を見ると、そこには他のオカ研面子も集まっており、皆驚いていた。

 

「どうしたんだ一体?」

「あぁ、戦兎じゃないか」

 

そう言って、ゼノヴィアはこちらに来ると、何枚かの紙を見せてきた。それは先日行われた期末テストの用紙で、どれも80点後半以上と言う点数だった。

 

「凄いじゃないかゼノヴィア」

「勉強頑張ってましたもんね」

 

そう。最近ゼノヴィアは学ぶ楽しさを得たとかで、勉強に力を入れていた。戦闘スタイルは相変わらず脳筋だが……

 

「んで?龍誠、まさかお前、点数見てびっくりしたのか?」

「んなわけ……はちょっとあるがそこだけじゃねぇ!ゼノヴィア、もう一回戦兎と小猫ちゃんにも言ってやれ!」

「あぁ。年明けに行われる、来年度の生徒会長を決める選挙に、生徒会長候補として出ようと思ってるんだ」

『……はぃ!?』



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仮面ライダーキング設定集(本編編)

【和泉 智宏】17歳

 

千玉高校2年・生徒会長。

 

仮面ライダーキングに変身する主人公。基本的に怠惰でめんどく下がりやの陰キャオタク。更に自称クズ。

 

後述の妹である妃愛の稼ぎで生活し、その他の家事の一切を任せ、その間自分はソシャゲに勤しむと聞き方によってはと言うか、どう聞いてもかなりとんでもないゴミ野郎。

 

ライダーに変身する際も、序盤では基本的にはご褒美がないと戦えず(例外的に妃愛やストーリーが進むと生徒会メンバーの危機で変身することもある)、世界の危機よりゲームの戦デレ周回の危機を心配するなど、序盤はライダーとしての活動に消極的。

 

そんな引きニート予備軍の彼がくじ引きで偶然生徒会長に選ばれ、そして仮面ライダーになってしまったことから物語は始まる。

 

 

運動神経は並以下で、性格も表面上は前述の智宏だが、元来はお兄ちゃん気質のためか、面倒ごとに巻き込まれるとついつい付き合ってしまう性格。更に基本的には誠実なタイプで、困ってる人は放っておけず、一度した約束は必ず守ろうとする性格のためか、きちんと付き合うと引き込まれるタイプ。不器用で要領は悪いが、腹を括れば強い。

 

その為か仲間からの信頼は絶大。本人曰く過大評価も良いところらしいが、本人が思っている以上に仲間達の支えになっている模様。

 

元々今の性格になったのも、小学校時代に人気子役として有名だった、妃愛に会わせろとしつこい同級生の、妃愛を鑑賞動物か何かのように扱う姿にキレ、掴み合いになった際に相手に拳が偶然当たって引っくり返ったとき、相手に怪我をさせてしまい、後見人である従姉妹の里が頭を下げまくる姿を見て、更に周りの人間達が、自分に対して今まで仲良かった人達までが掌を返して自分を避けるようになっていき、それによって対人関係を拗らせ、他人を信用するのが怖くなり、妹の妃愛や従姉妹の里以外を信じれなくなり、そんな自分自身に自分はダメなやつだと思い込むようになっていったため。

 

それ以来は極力自分の感情を動かさないようにし、他人と距離を取るようになっていく中で、自分のために怒ることが出来ない性格になっていった。

 

そもそも元来は面倒見の良い性格で、他者を放っておけず、困ってる人間には手をさしのべるタイプだが、同時に他人を信じるのを怖がっている。その為、他人と自ら距離をおき、交流を断つことでしか自分を守れないと言う中々にめんどくさいタイプ。

 

ただ妃愛のことになると採算度外視で動く傾向がある。これは普段から甘えてダメな兄である自分を無償で支えてくれる妃愛への恩返し。と言っているが、妃愛に捨てられると生きていけないと言う思いからの恐怖もある。これは金銭的な面だけではなく、和泉 智宏のあらゆる面が妃愛で成り立っているためで、妃愛がいないと本当に生きていられないから。元々生徒会長を引き受けたのも、妹の出席日数のため(詳しくは後述)。

 

その為結婚や恋人と言うのに憧れはするものの、陰キャで地味な自分が出来るわけがないし、出来ても妃愛優先してしまう(これは幼少時に両親を失った際に約束したずっと一緒にいると言う言葉を守る意味合いが強い)ため、諦めて妃愛に一生養ってもらおうとしている。その為か周りからの好意に鈍感と言うか、無意識のうちに気づかないことにしている節がある。

 

ただ陰キャで地味と言うが、本人が言うほどブ男ではなく、ヒョロヒョロではあるが、見てくれは中々整ってる(妃愛談)とのこと。

 

当初ライダーとしての活動に消極的だったのも、口では面倒だの知らない他人のために体は張れないだの言うものの、本当は危険なことをすれば妃愛とのずっと一緒にいると言う約束を守れなくなる可能性が高いと、感じていたため。更に妹も世界も守れるほど器用じゃないから。ただ中盤以降は、妃愛や他の仲間たちと共に生きる明日も守りたいと思うようになり、ライダーとしての活動にもある程度積極的になっている。

 

前述通り腹を括れば強いタイプなためか、生徒会メンバーの華乃やあすみ、アメリに対しても生来の面倒見のよさが発揮されており(あすみには若干変なテンションになってたりするが)、詩桜にも共に戦うライダー仲間としても信頼を置いている。

 

ただ同時に、失った時の恐怖もあるらしく、華乃たちへの信頼や面倒見のよさは、裏切られたくないための献身にも見えると言われる。不器用で要領が悪いから相手を信頼するとき0か100しかない。だから信じるのに時間が掛かるが、一度信じれば自分の全てを掛けて相手を信じぬいて、ボロボロになっても相手に尽くす為、危なっかしいタイプじゃないといわれるほど。

 

とは言え人見知りのコミュ障ではあるが、基本的な礼儀は身に付けているため(妃愛が芸能人のため自分がスキャンダルを起こさないように努めているのが大きい)、リアス達にも割りと丁寧に接したためか、リアスサイドからの受けも結構よく、最終的にはライダー仲間として戦兎達と絆を紡いでいく。

 

前述のように恋愛に関しては諦めモードの智宏だが、事あるごとに妃愛のためならと自分を奮い立たせ、華乃からは妃愛のために何でもする。限界でも不可能でも何でも乗り越えることができるやつ。と太鼓判を押される程、妃愛に対する思いが強かったが、物語が進むにつれてその思いは兄妹としての思いや、昔の約束を守るためでは説明がつかない物になっていくことに。

 

一方、華乃に対しては同級生でオタク仲間であり、後述するが自分の好きな神絵師なためかよき友人として(少なくとも智宏自身はそう思ってる)、話も合うためか、かなり打ち解けている。序盤では彼女のオリジナル絵が変身する際のやる気の起爆剤になっていた。

 

あすみに対しては事あるごとに天使と呼び、心の中ではハッスルして結婚したいとのたまうほど。彼女もそんな智宏に少し困ったり照れたりするが、基本的には智宏の優しさと誠実さもあって、良き先輩後輩と言う関係(少なくとも智宏自身は以下略)。彼女のぎゅうは智宏の序盤では変身のやる気の起爆剤になっている。

 

詩桜に対しては同じ仮面ライダーとして信頼しているが、前生徒会長である彼女が急に辞めたせいで自分が生徒会長になってしまったため、扱いが他のメンバーに比べて雑。ただ足が綺麗なためかそれをダシによく使われている変身のやる気にも使われており、触るか挟むか好きな方を選ばせてくれる。

 

アメリは元々陽キャグループに属する相手だったためか交流するようになってからも苦手意識があったものの、物語が進むにつれて打ち解けていく。ただ彼女からの好意には気づかない模様。

 

聖会長とは学校は違うが生徒会長同士と言うことで交流があり、更に仮面ライダーでもあったためそれなりに信頼はしていたが、今でも若干苦手な模様。

 

広夢とは元々同級生で席が近いのもあり、最初から比較的打ち解けており、智宏も早い段階から受け入れている。

 

仮面ライダーキングとして戦うが、他のライダーと比べて弱く、何故選ばれたのかが謎なほど(本来仮面ライダーは才能に溢れる者が選ばれる)だが、何故かはじめて使うベルトやフォームの使い方が最初から分かるなど、結構謎が多い。これは物語で大きく関わっていくことになる(妃愛の項目に少しだけ参照)。

 

序盤ではどうしようもない彼だが、物語が進んで行く中、様々な出会いと試練。そして妃愛への想いや関係。何故仮面ライダーに選ばれたのか。更に自身のルーツを知っていく中仮面ライダーとして、そして一人の男として成長していく。

 

因みに女性の好みは年上(甘えたい盛りに母親を亡くしたのが理由との事)で、顔は実際のところ妃愛(と言うより母親)が好み。

 

【和泉 妃愛】16歳

 

千玉高校1年・副生徒会長。

 

職業・声優。

 

主人公・和泉 智宏の実の妹にして、今作のメインヒロイン。

 

おはようからおやすみまで兄の智宏に尽くすことが生き甲斐で、智宏曰く、人生の運を全て使いきって妹ガチャしたら引き当てた最高の妹で、戦兎からも前世で世界まるごと救ってその徳を全部使ったんじゃね?と思うほどできた妹。

 

小泉 妃愛と言う名義で声優もしており、演技力や歌唱力もさることながら、顔よし性格よしスタイルよしの全てが揃っており、その界隈では有名人。だがその忙しさからか余り学校に通えておらず、智宏がくじ引きで引き当てた生徒会長を辞退せずに引き受けたのは、妃愛に副会長を受けさせて出席日数を補填させるため。

 

勿論家事能力も高く、忙しい声優業をこなしつつ、寝坊助(と言うか、ゲームの周回などで夜更かし気味)の智宏を毎朝起こし、ご飯を作り掃除洗濯までこなす完璧超人。

 

周りからはなんでこんなに凄い妹の兄があれなのかと言われるが、本人は寧ろ智宏に尽くしてないと体調を崩すほど。智宏が家事をしないように見えるが、実際は妃愛がさせないのが本当は正しい。

 

智宏には寧ろダメダメでいて欲しいらしく、毎日ゴロゴロしてゲームだけしてて良いから家にいて欲しいらしい。

 

和泉家の財布も握っており、普段の生活費や智宏のお小遣いなどは全て妃愛の管理の上、彼女の声優としての稼ぎで賄っている。

 

だが財布を握っているのも、兄にダメダメでいて欲しいのも、彼に自立をさせないためと言う理由が実はあったりする。

 

と言うのも、昔は兄の事を疎んでいた。幼い頃から子役として活躍していた彼女は大人びており、逆に年相応に幼かった兄を見下していた。そんな兄への態度を心配した両親に諭されるも、そんな両親に妃愛は兄なんか居なくても良いと言い、その次の日に両親が事故で亡くなり、最後の会話が家族を大事にして欲しいと願う家族への拒否。そしてこの事故はそんなことを言った自分への罰で、唯一の家族である兄も、自分を拒否し、自らの言動によって家族を死なせ、兄から家族を奪った自分をきっと許さないと思い込む中、病院に駆けつけた兄が、自分がいる。ずっと一緒にいると言ってくれたことで、今のように兄に尽くすようになっていった。

 

つまりは両親を失った際に感じた孤独への恐怖。そしてそれから救ってくれた、唯一の家族である兄への恩返しと、両親を奪ったことへの贖罪とその事を打ち明ける事ができず、でもたった一人の家族にずっと側に居て欲しい等々、複雑な思いが絡み合っている。普段からお兄は私がいないとと言うが、実際はまた一人になってしまう恐怖から、兄と離れられないのは妃愛の方。

 

結局の所、和泉兄妹は互いが居ないと生きていけないのである。

 

ただ同時に、智宏には幸せになってほしいと言う気持ちもあり、素敵な女性と出会って幸せな家庭を築いてほしいと言う気持ちも嘘ではない。だが兄が自分から離れてほしくない。ずっと養ってあげるからそばにいてほしい……とずっと智宏に対しては複雑に絡み合った感情を抱いていたが、物語が進むにつれ、彼女自身も変化し、生徒会メンバー等の、素敵な女性達と智宏が交流していく姿に、兄には幸せになって欲しい筈なのに、なぜか祝福出来なくなっていき、いつしか智宏を兄として見れなくなっていく中、物語の終盤、智宏から妹としても一人の女性としても大切な存在と告白を受け、それを受け入れることでかけがえのない唯一の家族であり、大切な恋人となる。

 

本来、仮面ライダーキングに選ばれたのは実は彼女の方。ただ敵に襲われる中選ばれたため、智宏と逃げる時、爆発の中妃愛の元から飛んでいったキングドライバーを拾ってしまったのが智宏。そしてそれを使って智宏が変身したのが最初。他のライダーに比べてスペックが低いのも、本来選ばれた変身者ではないため。

 

その後、紆余曲折あって(後述)智宏が変身者に選ばれ直したものの、その後も彼女の力は重要になってくる。

 

 

 

 

【この世界における仮面ライダーとは】

 

選定者と呼ばれる存在が、レボルと呼ばれる存在から世界を守るため、才に溢れる若者を選び、力を与えられた存在。因みにレボル側の戦士をリベリオン(今作の怪人枠)と呼び、上位のリベリオンが人を選び、コアを体内に埋め込むことで、リベリオンへと変えていく。こちらは才に溢れる若者を選ぶ仮面ライダーとは異なり、才がなく才あるものに嫉妬する者が選ばれる。

 

レボル側は歴代の仮面ライダー達によって何度も壊滅するものの、大元のボスを倒せなかったため、何世代にも渡って戦いが続いており、一般の人々にも仮面ライダーの存在は認知されている(一応変身者の姿は晒さないように智宏達は隠れて変身する)。

 

変身方法は、ドライバーを腰に装着し、クラウンと呼ばれるアイテムをドライバーにセットして変身する。

 

 

 

【仮面ライダーキング】

 

主人公・和泉 智宏及び、和泉 妃愛がキングドライバーを用いて変身する仮面ライダー。

 

本来は多数選ばれる仮面ライダーの中でも、中心人物となる存在で、最も才に溢れるものが選ばれる。

 

両刃の西洋風の剣・キングブレイドを使い、未来を切り開く王。

 

《基本装備》

 

・キングドライバー

 

変身時に腰につけるベルト。基本的に選ばれた物でなければ使うことはできないが、とある理由で智宏も使う事が可能。

 

・クラウン

 

王冠型の変身アイテム。ドライバーにセットして変身する事が可能。他のライダーのクラウンをセットして変身することも可能だが、才能がない智宏は自分のクラウンすらもて余すため、余り使うことはない。但し、他のライダーに使わせることは多い。

 

・キングブレイド

 

両刃の西洋風の剣。鋭い切れ味を誇り、決して折れず、刃零れしないらしい。鍔の台座にクラウンをセットすることで、必殺技を発動可能。

 

・キングストライカー

 

ストライカークラウンのスイッチを押し、放り投げると巨大化しバイクに変形して現れるバイク。オフロード型のバイクで、荒れ地も気にせず走れるが、智宏は免許を持ってないため、変身時以外では余程の事がないと乗らない(万が一警察沙汰になると妃愛に迷惑をかけるため)。ガソリンは必要なく、永久機関が搭載されており、多少の傷なら自動で修復される。

 

【仮面ライダーキング・ブレイブフォーム】

《勇気の力が未来を切り開く!立ち上がれ!ブレイブキング!》

 

パンチ力・4t

キック力・10t

ジャンプ力・16m

走力(100m辺り)・8秒

 

主人公。和泉 智宏が変身する仮面ライダーキングの基本形態。

 

キングドライバーに、ブレイブクラウンをセットして変身する。

 

キングブレイドを用いた接近戦を得意とする……のだが、序盤はスペックの低さと智宏のやる気のなさも合間って、苦戦させられることが多かった。

 

この形態の固有能力として、勇気を力に変えることができる。と言うのも、この姿は心を震わせれば震わせるほど、それが力になるため、本来であれば、スペック表より高い能力を発揮できる。但し、智宏は残念ながら基本的に小心者で戦いに意欲的ではなく、ご褒美がないと心が震えないため、実際はスペック表以下……下手すると変身すら出来ない時もあった。その為序盤は周りからは変身しなければならない時など、ご褒美をぶら下げてもらうことで変身を成功させている。

 

因みに基本スペックが低めなのは、本来の変身者ではない智宏が変身しているため。ただ、本来ドライバーは選ばれた者以外は使えないようになっているのに、何故か智宏は使える。これは当初、妹である妃愛が選ばれ、偶然兄妹である智宏が使ったため誤差動を起こしたのでは?と思われていたが……

 

必殺技は、ドライバーにセットしたクラウンを一回押して発動するライダーキックの《ブレイブストライク》と、キングブレイドにクラウンをセットして発動する《ブレイブスラッシュ》。

 

【仮面ライダーキング・ロイヤリティフォーム】

《忠義の力が未来を守る盾となる!守護せよ!ロイヤリティキング!》

 

パンチ力・8t

キック力・15t

ジャンプ力・14m

走力(100m辺り)・13秒

 

キングドライバーにロイヤリティクラウンをセットして変身する。

 

ブレイブフォームと比べ、鎧を着込んだような姿のためか、パンチ力やキック力は若干上がったものの、機動力は下がっている。

 

専用武器である西洋風の大盾、ロイヤリティガードを使い、敵の攻撃を強引に受け止め、キングブレイドで反撃するスタイルを取る。

 

誰かを守りたい。と言う気持ちで鎧や盾の硬度やスペックが変わると言う特性がある。

ブレイブフォームとは違い、この形態には妃愛や誰かのために体を張る場面が多く、スペック表通りの力を発揮しやすい。智宏もブレイブフォームより使いやすいと言う場面も……

 

必殺技は、ドライバーのクラウンを一回押して発動し、敵をロイヤリティガードでぶん殴る《ロイヤリティストライク》と、キングブレイドにロイヤリティクラウンをセットして発動する《ロイヤリティスラッシュ》。キングブレイドにブレイブクラウンをセットし、ドライバーのロイヤリティクラウンを一回押して同時に発動させる事も可能。但し、体への負担が大きい。

 

 

【仮面ライダーキング・カームフォーム】

《平静の力が未来を見据える!射抜け!カームキング!》

 

パンチ力・2t

キック力・3t

ジャンプ力・40m

走力(100m辺り)・4秒

 

キングドライバーにカームクラウンをセットして変身する。

 

ブレイブフォームやロイヤリティフォームとは違い、キングブレイドを使わずに戦い、弓型の武器・カームアローで戦う。機動力重視の姿のためか、パンチ力やキック力は最低だが、ジャンプ力や走力は高い。

 

更に五感が鋭敏になり、特に聴覚や視覚が鋭くなる。その為、ちょっとした騒音にすら過敏に反応してしまうようなってしまうが、ライダーのシステムにその騒音を適度に抑え、変身者にとって必要な情報のみを感じ取れるようにするシステムが搭載されている。

 

しかしそれを起動させるには、常に平静な心を持っていなければならず、少しでも心が乱れると、大量の情報が一気に流れ込んできてしまい、変身が強制解除してしまうほど消耗してしまう。

 

カームアローによる遠距離攻撃を使うが、智宏が弓矢が下手くそなため、下手な鉄砲数撃ちゃ当たる戦法でやり、あっちこっちに被害が出てしまう。なので妃愛から発射禁止令がでるほど。実際カームアローが近接武器にも使えるため、撃つより斬った方が早い(智宏談)。

 

必殺技はドライバーのクラウンを一回押して発動し、カームアローで相手を射抜く《カームストライク》。

 

【仮面ライダーキング・ブレイブフォーム 妃愛ver】

 

パンチ力・40t

キック力・55t

ジャンプ力・80m

走力(100m辺り)・2.5秒

 

物語が進む中、今までの智宏達の前に存在を出さなかった選定者が、智宏達をドライバーを通じて次元の狭間の呼び出した際、本来選ばれたのは妃愛だと伝えられ、この先の激化する戦いの中、智宏では着いていけないだろうと言われる。勿論智宏は妃愛が戦うことに反対するが、ある日レボル軍の幹部であるラースが出た際に、智宏が倒され変身が強制解除され、妃愛がドライバーを奪って無理矢理変身した姿。

 

基本的な能力などは智宏が変身する場合と同じだが、本来の変身者である妃愛が変身したためか、スペックは智宏のものとは比べ物にならない。

 

しかし、戦闘経験が皆無の妃愛にたいして、レボル軍の幹部の一人である、ラースとの戦いは劣性強いられ、何とドライバーを破壊されてしまい、主だった活躍はなかった。

 

 

基本的なスペックは高いどころか、他のライダーと比べても高水準。これは妃愛の仮面ライダーに対する適正の高さゆえ。最初から戦えていて、経験を積めていれば強力な戦士になっていたと思われる。

 

 

【仮面ライダーキング・ブレイブフォーム New智宏ver】

 

パンチ力・30t

キック力・45t

ジャンプ力・55m

走力(100m辺り)・3.5秒

 

ドライバーを破壊され、変身できなくなった智宏が、再生させたドライバーを使って変身した姿。

 

ラースとの戦いでドライバーが破壊され、変身できなくなる中、ラースの破壊行動は続き、町だけではなく詩桜や聖会長等のライダーもやられ、遂には千玉市もラースの手によって壊されそうになる中、生徒の避難誘導のせいで取り残された華乃やあすみにアメリを救うため、智宏は変身できないまま単身ラースを止めることに。

 

勿論変身すらできない智宏では、手も足も出ないものの、華乃達を守るため、ボロボロになりながら何度も立ち上がる中、くじ引きでなってしまった生徒会長と言う仕事。だがその中で出会った華乃達生徒会のメンバー。そして今まで関わることの無かった、良いやつも悪いやつたくさんいる生徒達を守るため。そして、妃愛に手を上げたラースを倒すため、初めて力が欲しいと口にした時、智宏が持っていた破壊されたドライバーの破片と、ひび割れたブレイブクラウンが輝き、その破片からキングドライバーが再生され、変身能力を取り戻した智宏はラースを撤退させた。

 

再生されたキングドライバーにより、本来の変身者となった影響かスペックも上昇。他のフォームも軒並み上がっている。

 

ただ、本来破壊されたドライバーの再生は選定者も不可能で、なぜ再生を智宏が起こせたのかが謎らしい。

 

必殺技は今までと変わらない。

 

 

 

【仮面ライダーキング・ダークネスフォーム】

《暗黒の力が未来を包み込む!呑み込め!ダークネスキング!》

 

パンチ力・43t

キック力・54t

ジャンプ力・65m

走力(100m辺り)・2秒

 

レボル幹部の一人であるエンヴィーとの戦いで、リベリオンコアを埋め込まれた際に、生まれたダークネスクラウンで変身する。

 

エンヴィーによって埋め込まれたリベリオンの力は、本来才能の無い者の、才ある者への妬みや嫉妬を力に変換させ、暴走させる事で成り立っているのだが、智宏は才能はないが、他人をリベリオンへと変貌する程妬みや嫉妬を持っておらず(全くないわけではない)、それどころか才能の塊である妃愛へ、日々の感謝の気持ちを持っているほど。更に周りの華乃やあすみへは推しなのもあり、好感を抱いていたのもあって、中途半端なリベリオン化が起きてしまい(本来仮面ライダーに選ばれる程の人間であれば、そもそもリベリオン化しない)、それがキングドライバーと反応を起こしてダークネスクラウンが生まれた。

 

本来このような現象はあり得ないらしく、ダークネスクラウンは歴代のクラウンにはないイレギュラーなものとのこと。だが選定者は、レボル側の介入もあったとは言え、何故クラウンの創造が出来たのか、と新たな謎が生まれた。

 

所謂強化フォームであり、スペックは上昇。但し、変身中は自我が失われてしまう暴走フォームでもある。

 

しかもただの暴走ではなく、ライダーを優先的に狙うと言う特性をもち、変身時は敵を無視して他のライダー達に襲いかかってしまう。

 

ただ人間には襲い掛からないため、このフォームを使う際は、周りのライダーは変身を解除すれば、ちゃんとリベリオンを狙う。

 

その為、強化フォームでありながらも、使う際は周りのライダーに一度変身を解除してもらい、智宏だけで戦うことになる都合上、トドメに使われたり、かなり追い詰められないと使わない(と言うか使えない)。

 

固有能力として、闇を全身から噴出させ、それを使った推進力を攻撃に利用したり、闇を人型に変えて戦わせる事が可能。

 

レボルの幹部クラスとも渡り合える力を持ち、暴走以外に目立ったデメリットはないように見えるが、実は変身すればするほど自身の負の部分が増幅していくと言うデメリットがあり、智宏自身は妃愛の存在のお陰でそれが表面化しなかったが、幾度と無くリベリオンや幹部たちと戦い、そして倒していく中でそれらの力を吸収した結果、作中である時、ダークネスフォームで人型の闇を作った際に、それが人格を持ち智宏を襲い受肉。残っていたのレボルの幹部をも上回る、最強の敵を産み出してしまう事態に……

 

必殺技はドライバーのクラウンを一回押して発動する、闇による分身を大量に作り出して放つライダーキック、《ダークネスストライク》と、キングブレイドにクラウンをセットして発動する《ダークネススラッシュ》。

 

後述のダークネスリベリオンが出現した際に、ダークネスクラウンは力を失ったため、その後は変身不可能になってしまった。

 

 

【ダークネスリベリオン】

 

ダークネスフォームを使い続けた弊害で生まれたレボル軍最強の戦士。

 

感情と言うものが薄く、周りからは生まれたばかりの赤ん坊と言われる。ただ本能的に他者への憎悪を抱いており、他者を虐げて、その命を奪うことに躊躇いがない。ただ智宏から分離した影響からか、生徒会メンバーには優しい。特に妃愛に対する愛情は尋常じゃなく、一緒にレボル軍にいこうと幾度となく誘いをかけ、智宏と戦うことに。

 

その力はリベリオン化するほどの才能への妬みが少なかった智宏とは違い、純粋に負の感情を増幅させ、自身のパワーを上げていくため他のリベリオンとも隔絶した力を持ち、分離された影響でダークネスフォームが使えなくなってしまったのを差し引いても、他のライダー達と全員で相手にしても敵わず、これでもまだ本気じゃない(近くに妃愛達がいることが多いため)らしく、その気になれば千玉市を焦土に変えるのは朝飯前とのこと。

 

 

【仮面ライダーキング・ブライトネスフォーム】

《光の力が未来を照らす!輝け!ブライトネスキング!》

 

パンチ力・70t

キック力・85t

ジャンプ力・55m

走力(100m辺り)・3秒

 

中盤後半にて、ダークネスリベリオンに妃愛が連れ去られ、妃愛を助け出すために智宏が使えなくなったダークネスクラウンを変化させた、ブライトネスクラウンで変身した姿。

 

ダークネスリベリオンに妃愛を連れ去られ、焦りから自己を見失いかけた智宏に、華乃達生徒会メンバーからの叱咤を受け、自分を取り戻した智宏は、ダークネスリベリオンとの決戦の際に、妃愛を取り戻すため限界の壁を越え、使えなくなってしまったダークネスクラウンが智宏や他の仲間たちが持っているクラウンと共鳴し、変化することで使えるようになった姿。前述のようにクラウンを作り出したり、元からあるクラウンを変化させるのは通常あり得ない現象。

 

仮面ライダーキングの準最強フォームに当たる姿で、スペック表では若干ダークネスフォームに比べて機動力は落ちているように見えるが、体を光に変えて高速移動することが可能のため、実際はもっと速い。あくまでも数値は能力を使わなかった場合。

 

それ以外のパンチ力とキック力は大幅上がっており、単純な肉弾戦も非常に強く、体を光に変えての高速移動と組み合わせることが可能。

 

専用武器はキングブレイドが進化したキングカリバー。キングブレイドと比べ、巨大化し、切れ味と共に重量は増したものの、上昇したスペックで従来のキングブレイド以上に軽々と扱う。

 

その強さはダークネスリベリオンを圧倒し、撃破寸前まで追い込むものの、ギリギリ逃げられてしまう。

 

その後何度も戦い、常に圧倒するが……

 

ダークネスフォームとは違い、デメリットはない。

 

必殺技はドライバーのクラウンを一回押して発動させる《ブライトネスクラッシュ》と、キングカリバーにブライトネスクラウンをセットして発動する《ブライトネスバースト》。

 

 

【アルティメットリベリオン】

 

智宏に敗北し続け、追い込まれたダークネスリベリオンが、自身に他のレボルの幹部達を無理矢理取り込んだ姿。

 

ダークネスリベリオンが、生徒会メンバーに囲まれ、妃愛に愛される智宏への負の感情を募らせ、更に他の残っていたリベリオン幹部達を取り込んだことで大幅なパワーアップを果たした。

 

その力は凄まじく、ブライトネスフォームで漸く互角。単純なスペックはブライトネスフォームに軍配が上がるものの、智宏への負の感情がブーストを掛けるため、殆ど差はないらしい。

 

その為、幾度となく戦いを繰り広げるものの、決着はつくことはなかったが……

 

 

【仮面ライダーリベリオン】

 

パンチ力・105t

キック力・135t

ジャンプ力・95m

走力(100m辺り)・1秒

 

物語終盤。レボル本人がアルティメットリベリオンの肉体を乗っ取って復活。

 

今まで表舞台に姿を見せなかったレボル本人だったが、究極の肉体として選んだのがアルティメットリベリオン。

 

肉体を乗っ取り、更にレボルが産み出したリベリオンドライバーにて変身した。

 

ブライトネスフォームを上回るスペックを持ち、アルティメットリベリオンの肉体を乗っ取った影響か、智宏と同じ力や武器を持ち、ブライトネスフォームの高速移動や、ダークネスフォームの闇。更にはブレイブフォームの心が震える事によるスペックの上昇もある。

 

何やら智宏とあすみに対して、理由は分からないが並々ならぬ憎しみを抱いている。それは何故か智宏やあすみもで、話しているだけでゾワゾワするとのこと。

 

圧倒的な力で侵攻を進めていく中、レボルの正体(後述)も明かされていき、戦いは終盤に……

 

必殺技はドライバーのクラウンを一回押して発動する《リベリオンディストラクション》

 

 

【仮面ライダーキング・レジェンドフォーム】

《伝説の王の力が!今再び目覚める!刮目せよ!レジェンドキング!》

 

パンチ力・120t

キック力・150t

ジャンプ力・100m

走力(100m辺り)・0.5秒

 

ドライバーにレジェンドクラウンをセットして変身する、仮面ライダーキング最強フォーム。

 

物語終盤。様々な葛藤の末に、遂に恋人関係になった智宏と妃愛は一夜を明かし、レボルとの戦いを迎える。

 

その際に二人が手を取り合う中、二人の気持ちがブライトネスクラウンに進化をもたらし、レジェンドクラウンへと変わった。

 

変身時は智宏だけではなく、妃愛の服装もウェディングドレス風のに変わり、これはある程度の防御力を持っている。

 

その関係上、変身するには妃愛が近くに居らねばならない上に、変身中も妃愛が近くに居ないと変身を維持できず、離れすぎるとブライトネスフォームに戻ってしまうため、敵との戦いも妃愛を守りながら戦わなくてはならない。

 

ただスペックの高さ以外にも、結界を張ったり、ショートワープ等の能力もあり、妃愛を守る能力も多い。

 

武器は引き続きキングカリバー。

 

その姿は選定者やレボル曰く、初代仮面ライダーキングと同じ姿らしく、因縁があるレボルからは激しい怒りを買うことになるが、幾度となくぶつかり合い、その力でレボルを追い詰めていく。

 

必殺技はドライバーにセットしてあるクラウンを一回押して発動する《レジェンドストライク》、二回押して発動する《レジェンドクラッシュ》、三回以上押して発動する最強のライダーキック、《レジェンドスクリーム》の三つと、キングカリバーにレジェンドクラウンをセットするとクラウンが開き、そこにクラウンを3つセットできるため、そこにブレイブ・ロイヤリティ・カームのクラウンをセットして発動する《レジェンドキングフィーバー》。

 

 

 

【仮面ライダーキング・エンドレスブレイブフォーム】

《無限の勇気の力が!最後の奇跡を起こす!奮い立て!エンドレスブレイブキング!》

 

パンチ力・測定不可能

キック力・測定不可能

ジャンプ力・測定不可能

走力(100m辺り)・測定不可能

 

最終章のレボルとの決戦にて、レボルの罠で次元の狭間に落とされた智宏。

 

この次元の狭間は時間の概念がなく、年を取ることも、空間を支配する特殊なエネルギーの影響で身動きがとれないため自ら死ぬことも出来ず、半永久的に留まり続けることを知り、心が折れ掛けるものの、ブレイブクラウンから聞こえてくる仲間達の声を聞き、そして思い出す。必ず勝って帰ると皆と約束したこと。そしてこれからもずっと一緒にいると約束した最愛の妹、妃愛との約束。もし自分がここで諦めたら、妃愛はまた一人になってしまうと。

 

いつだって一緒で、自分を信じてくれる誰よりも大切な最愛の存在である、妃愛をまた家族を失わせて泣かせるわけにはいかないと自分を奮い立たせた時、ブレイブクラウンが輝き、次元の狭間のエネルギーを吸収。そうして生まれたのが、エンドレスブレイブクラウン。

 

スペックは測定不可能。と言うのも、智宏の感情が最高潮に震えている状態であり、スペックは智宏が願うだけ上がってしまうため。

 

最強フォームのレジェンドフォームは 、ダークネスフォームから派生したブライトネスフォームを更に派生させた姿で、これはブレイブフォームからの派生の初期フォームに近い存在。更に、ダークネスフォーム自体はリベリオン側の影響込みで生まれたのに対し、こちらは純粋に智宏自身の力のみで生まれた姿のため、かなり特殊なフォーム。

 

所謂最終回限定フォーム。ゼロワンで言うとリアライジング。ビルドで言うとラビットドラゴン。

 

その力で次元の狭間から強引に脱出し、レボルとの最終決戦に挑み、その後撃破。長き因縁に決着をつけた。

 

戦い後はただのブレイブフォームに戻ってしまったが、戦兎との共闘で感情が高まり、一時的に再度変身した。

 

必殺技は《エンドレスブレイブストライク》。

 

 

 

【常磐 華乃】17才

 

千玉高校2年・生徒会 会計

 

職業・イラストレーター

 

今作のヒロインの一人。

 

元々は千玉高校に転入してきた生徒さったが、ある理由で引きこもりになり、生徒会長になった智宏から勧誘を受け、出席日数の補填を目的に加入した。

 

とは言え、本人曰く一応は通う気はあったらしいが、実は智宏とは小学校時代の同級生で、その際の自己紹介の時に、好きな漫画のキャラについて滔々と語ってしまい、それによりクラスから浮いた上に弄られまくってしまい、その後親の都合で転校し、その先の学校でもオタクがバレて孤立。

 

それ以来オタクなのを隠すようになったところに、自分の黒歴史を知る智宏が居たため、また過去のような事態になるのを恐れて引きこもってしまった。

 

ただそもそも智宏は華乃が昔の同級生だか確信を持ってなかった上に、それを話す友人もおらず、この件がなかったらお互い話すことは無かった為、殆ど華乃の勝手な杞憂で、半ば自爆だったことが判明。

 

とは言え本当にばらされてないのか信用できない。と言うこともあり、序盤は引きこもりは継続中。

 

性格は義理堅く、智宏曰く恩も仇も全部忘れない性格とのこと。その為か後述の詩桜とは相性が悪く(と言うか遊ばれている)、度々ぶつかっている。

 

何だかんだでクラスには行かないものの、生徒会には欠かさず顔を出すなど、どんなに面倒ごとでも引き受けたら必ずやり遂げる責任感も強い。

 

そんな彼女だが、その正体は神絵師としてオタク界隈では超有名人なイラストレーター・ののか。

 

コミケでは常に満員御礼。更に顔立ちも整っていてスタイルも良いため(本人は絵で勝負したいようだが)、そう言ったファンまでいる模様。しかし基本的に顔出し厳禁を徹底しているため、智宏も今まで知らなかった。

 

しかし絵は智宏も大ファンで、彼女の同人誌は勿論、彼女が原画を担当したゲーム(エロゲーが殆ど)も全て揃えており、そんな純粋に絵を好きでいてくれる智宏とはオタク仲間と言う共通点もあり、良き友人として接していたが、物語の中で様々な交流を経ていく内に、好意を抱くようになる。

 

 

【錦 あすみ】16才

 

千玉高校1年・生徒会 書記

 

職業・Vtuber

 

妃愛と同級生の1年で、智宏の最高の後輩(智宏談)。

 

小柄な体躯で、顔立ちも非常に可愛らしい天使(智宏談)。

 

性格も穏やかで礼儀正しくまさに天使(智宏談)。

 

と言うほど今時珍しい位の良い子で、智宏からは天使扱いされていて、とても可愛がっている。

 

可愛がりすぎてたまに智宏のテンションが変になることもあり、妃愛から強烈な突っ込みを貰うこともあるが、存在自体が癒しで、周りからも可愛がられる存在。と言うか妃愛も突っ込みつつも、あすみのことは気に入っているのか、度々セクハラ行動に及んでいる。

 

そんな彼女だが、元々は重度の人見知りと様々な出来事が重なった影響で学校には殆ど通えなくなってしまった。

 

特に年上の異性が苦手とのことで、本来なら智宏はその苦手な属性コンプリートしているのだが、何故か苦手意識は抱かず、それどころか最初から好感を持つことに。本人も何故だか分からないが、この人なら大丈夫と思ったらしい。

 

そんな彼女だが、実は雪景シキと言う名前でVtuberをやっており、その歌唱力は界隈では有名人。かくゆう智宏も初期からの大ファンで、正体を知った際にはなぜ気づかなかったのかと、ガチで凹んでいた。

 

そんな彼女も智宏を助け、そして助けられていく内に彼に好意を抱くようになっていく。

 

智宏と妃愛の関係に薄々気づいている人物の一人。

 

【鎌倉 詩桜】18才

 

千玉高校3年・元生徒会長

 

職業・小説家

 

元生徒会長にして、ある意味全ての元凶。

 

元々彼女が急に生徒会長を辞め、急遽新たな生徒会長を選ばなければならなくり、その際に行われたくじ引きで智宏が選ばれたのが、この物語の始まりでもある。

 

見た目はスタイル抜群な美人で、特に脚が綺麗。但し性格は自由気ままで傍若無人。そして度々智宏達に余計な案件を持ち込んだりとかなり厄介な人物だが、一応これには理由があり……(後述)

 

元々生徒会長になったのは、職業である小説のネタになれば良いと思って立候補したらしいが、かなり優秀だったらしく、他の役員たちを役に立たないとクビにしたりし、全ての業務を一人で行っていたらしい。更にカリスマ性もあったのか、他校にまでその人気はある。

 

因みにファンの事は後家人と呼ばれ(ファンたちが勝手に名乗っている)、詩桜の事は鎌倉将軍と呼んで(本人は嫌らしい)敬愛されている。

 

前述通り実は「星しをん」と言う名前で小説を書いており、その界隈では有名なベストセラー作家(智宏は歴史小説以外読まないため知らなかった)。

 

鎌倉と言う名字で良く歴史ネタいじりされるのが嫌いで、名前で呼ばれるのを好む。

 

実は妃愛の大ファン。

 

今作で言う二号ライダー。仮面ライダーロイとして智宏たちと戦う。

 

と、かなり性格に難がありそうだが、所々で生徒会関係では助け船を出したり、仮面ライダーとしても智宏を援護するなど意外と面倒見が良いところも見られるためか、意味もなく生徒会長の職を投げ出したとは思えない。と言われるように。

 

と言うのも、実は本当は彼女から投げ出したのではなく、元々生徒会長だった彼女に、妃愛を生徒会役員に入れて貰うことで出席を補填させたかった里と、妃愛のマネージャーが彼女に接触したのが始まり。

 

ただ詩桜が元々他の役員をクビにしたには、あまりにも仕事が出来なかったのが原因のため、今更新たにいれるのを渋った上に、話しに聞く兄(智宏のこと)が気に喰わず(生活の全てを妃愛に頼っているところとか)、折角だからそいつに嫌がらせをしようとなり、自分が生徒会を辞め、彼が生徒会長になるなら良いと言い出し、妃愛の出席日数のために里が渋々了承した。つまり、智宏が最初にくじ引きを引いたのは不運でもなんでもなく、里の仕込み。

 

更に度々余計な仕事を智宏に背負わせてたのも、彼への個人的な嫌がらせ。本人いわく、試練を与えて成長を何てものは微塵もなく、ただ単に妹に寄生するクズが気にくわなかったから。

 

しかし、そんな中交流していく内に、智宏の本来の気質を知り、それは誤解(とも言い切れないby智宏)だと言うことを知り、お気に入りの後輩と言うほどになっていくが、同時にその事に関する謝罪をするわけにいかず、人知れずに板挟みになっていく。

 

なにせ、それを公開すると言うことは、同時に里が智宏を利用するのを選んだと言うのを知らせる事に他ならず、里を無条件に信用するほど、信じている智宏との信頼関係を壊しかねなかったから。

 

だが物語は進む中でそれが発覚し、妃愛のためなんだし気にしないと智宏はそれを許し、その中で詩桜は智宏に好意を抱くようになる。

 

好意を抱いて以降は、文字通り智宏のためなら何でもするようになり、その多才さを遺憾なく発揮するが、それと同時に常磐から誰この人と言われるほどにキャラが崩壊してギャグキャラ要因になっていくことに……

 

実はシュートボクシングと柔術の使い手で、変身せずともかなり強い。

 

【仮面ライダーロイ】

 

鎌倉 詩桜がキングドライバーを用いて変身する仮面ライダー。

 

芸術家タイプが多く選ばれるライダーで、幅広い知識と好奇心。そして感性が重要になる。智宏のキング同様、状況によってクラウンによるフォームチェンジを行うが、武器は後述のロイスピアーのみで戦う。智宏のキングと比べて、実は結構トリッキーな戦いが得意なのだが、詩桜のスタイルのせいか接近戦が多い。

 

槍型の武器、ロイスピアーを手に我を貫き通す王。

 

《基本装備》

 

・キングドライバー

 

変身時に腰につけるベルト。基本的に智宏のキングドライバーと同じだが、こちらはカラーリングが黒を基調としている。

 

・クラウン

 

王冠型の変身アイテム。ドライバーにセットして変身する事が可能で、こちらも殆ど智宏の持っているものと変わらない。

 

・ロイスピアー

 

仮面ライダーロイの槍型専用武器。厚さ数十センチの鉄板も軽々と貫くほど鋭い。槍の真ん中辺りに穴があり、そこにクラウンをセットすることで必殺技を発動可能。

 

・ロイストライカー

 

ストライカークラウンのスイッチを押し、放り投げると巨大化しバイクに変形して現れるバイク。智宏の物とは違い、ハーレー型の大型バイクで、純粋な早さなら智宏のものより早い。智宏と同じく免許を持ってなかったが、作中で取得し、変身時以外でも乗り回している。キングストライカー同様にガソリンは必要なく、永久機関が搭載されており、多少の傷なら自動で修復される。

 

【仮面ライダーロイ・ロマンフォーム】

《物語の力が未来を紡ぐ!綴れ!ロマンキング!》

 

パンチ力・25t

キック力・38t

ジャンプ力・23m

走力(100m辺り)・4秒

 

仮面ライダーロイの基本フォーム。専用武器のロイスピアーで戦う。

 

初期の智宏を大きく上回るスペックと、変身前から鍛えているため強いのもあり、かなり高い戦闘能力を誇る。

 

固有能力は想像力を力に変える事。高い想像力を持っていればいるほど、スペックを上昇させることが出来る。

 

基本的なスタイルのロイスピアーによる近接戦が主だが、小説家と言う職業がらか、戦いの流れを組み立て、相手の動きを話を作るように予測し、相手を翻弄しながら戦う。

 

詩桜いわく、ベルトはキングドライバーで変身音もロマンキングなのに、なぜ名前はロイなのかが気になるらしい。

 

必殺技は、ドライバーにセットしたクラウンを一回押して発動する《ロマンストライク》。ロイスピアーにクラウンをセットして発動する《ロマンスティング》。

 

【仮面ライダーロイ・イメージフォーム】

《絵画の力が未来を彩る!描け!イメージキング!》

 

パンチ力・34t

キック力・46t

ジャンプ力・20m

走力(100m辺り)・5秒

 

仮面ライダーロイのパワー形態。

 

重装甲に身を包み、力業で相手を倒す戦法を取る。

 

固有能力は絵を描くとそれを具現化することが出来るで、序盤はその能力を使いこなせなかったが、作中で華乃から絵のコツを教えて貰い、使えるようになった。とは言え、詩桜本人としては余り使い勝手は良くない能力らしい。

 

必殺技は、クラウンを一回押して発動する《イメージストライク》と、クラウンをロイスピアーにセットして発動する《イメージスティング》。

 

【仮面ライダーロイ・シャンソンフォーム】

《奉唱の力が未来を讃える!歌え!シャンソンキング!》

 

パンチ力・20t

キック力・32t

ジャンプ力・30m

走力(100m辺り)・3秒

仮面ライダーロイのスピード形態。なのだが、殆ど動かない。

 

固有能力は声を破壊音波にして飛ばすこと。最初はただ大声を出していため、すぐに喉を痛めてしまったが、あすみとの特訓によってそれを克服した。

 

ロイスピアーはマイク代わりになっている。

 

必殺技はクラウンを一回押して発動する《シャンソンストライク》と、ロイスピアーにクラウンをセットして発動する《シャンソンスティング》。

 

【仮面ライダーロイ・オールスターキングダムフォーム】

《今!全ての王が集結し一つとなる!愛し!支配し!歌い!描き!綴り!射抜き!守護し!立ち上がれ!オールスターキングダム!》

 

パンチ力・75t

キック力・80t

ジャンプ力・50m

走力(100m辺り)・2.8秒

 

仮面ライダーロイの強化フォーム。

 

所謂てんこ盛りフォームであり、全てを明かして吹っ切れた詩桜の手元に生まれた新しいクラウン。実は初代仮面ライダーキングが最後の戦いで使ったと言われる伝説のクラウン。ただ才能に乏しい智宏には使いこなせないもので、そのまま詩桜のものとなった。

 

全ライダーの武器を召喚したり、それを遠隔で操ったりするなど、物量で押すタイプの戦闘もできるが、武器の召喚で仲間の援護を行えるなど、サポート性能も高い。

 

常に戦闘の場を構築しながら戦う詩桜とは相性がいい模様。

 

 

【竜閑 天梨】17歳

 

千玉高校2年・生徒会・庶務

 

元々は智宏と同じクラスの陽キャグループの一人。

 

読モをやっていて、最近ではその仕事も忙しくなっていく中、それが原因でグループ内で孤立していき、成り行きでフォローしてたり、相談に乗っていく中交流を持っていくことに。

 

元々陰キャの智宏は、陽キャの天梨のことを苦手にしていたが、物語が進むにつれて大切な仲間になっていく。

 

智宏に対して最初は。同じクラスの人位の認識だったが、交流をもった序盤から比較的好意を抱いており、結構押せ押せで来るが、智宏は鈍感なためか空振り気味。

 

智宏と妃愛の終盤の関係には実は気づいており、その理由は智宏をずっと見てたら、二人の空気が変わってることに気づいたかららしい。それでも智宏のことは好きらしく、二人の事は祝福するけど、会長の事が好きなのは変わらないからとのこと(因みに智宏と妃愛はバレてるのに気づいてない)

 

 

【和泉 里】

 

千玉高校教師。

 

智宏と妃愛の従姉妹に当たる人物で、色々あって他人を信用しない二人にとって、唯一といって良いほど数少ない信用できる人。その為智宏も彼女には頭が上がらず、後見人と言うこともあり無条件に信用してしまう人で、詩桜との一件はその信頼を利用する形で進めてしまったため、里にとっては心に影を落とす原因に……

 

その為か事あるごとに生徒会が楽しいか聞いたり、馴染んでいっている智宏を見て嬉しそうにしている。

 

実は智宏の初恋の人(と言うよりは憧れに近かったが)で、今もある意味では特別な存在。

 

詩桜のことが発覚したあとも、許してくれた(きっと智宏は許すだろうと言うのも分かっていたことも、里としては影を落とす要因だった)智宏とは変わらず大切な家族として、見守っている。

 

【新川 広夢】 17才

 

千玉学園2年

 

智宏のクラスメイトにして、数少ない友人。

 

小柄な体躯と女顔のためか、中性的所か殆ど女子のような扱いを受けている。

 

何時も授業が終わると急いで帰るため、私生活は謎に包まれていたが、その正体は人気Vtuber・雨野葉レマにして、3人目の仮面ライダー・仮面ライダーエマヌエーレ。

 

当初はお互い正体を隠していたが、作中で正体が発覚し、その後は行動を良く共にするようになる。

 

実は女装レイヤーとしても有名だったりする。

 

【仮面ライダーエマヌエーレ】

 

パンチ力・20t

キック力・25t

ジャンプ力・60m

走力(100m辺り)・3.5秒

 

広夢がキングドライバーを用いて変身した姿。

 

人々から愛され、愛する者が選ばれるライダーで、専用武器・エマヌエーレシューターによる遠距離攻撃を得意とする。

 

銃型の武器・エマヌエーレシューターを手に自らの存在を轟かせる王。

 

《基本装備》

 

・キングドライバー

 

変身時に腰につけるベルト。基本的に智宏のキングドライバーと同じだが、こちらはカラーリングがピンクを基調としている。

 

・クラウン

 

王冠型の変身アイテム。ドライバーにセットして変身する事が可能で、こちらも殆ど智宏の持っているものと変わらないが、智宏や詩桜とは違い、一つしか持っておらず、場面に合わせて二人からクラウンを借りて戦う。

 

・エマヌエーレシューター

 

仮面ライダーロエマヌエーレの銃型専用武器。形状は拳銃型。コンクリートの塊に穴を開けるほどの破壊力を持ち、腰についているアタッチメントを付けて切り替えることで、通常時の連射と威力のバランスがいいノーマルモード・連射は出来ないが貫通力が高いスナイパーモード・威力は低いが連射が出来るマシンガンモード・連射が出来ず、貫通力もないが威力が最も高いバスターモードと言った、場面に合わせたモードを使うことが可能。

 

・エマヌエーレストライカー

 

ストライカークラウンのスイッチを押し、放り投げると巨大化し変形して現れるバイク。智宏の物とは違いバギー型で、どんな悪路も物ともせず走り続けることが可能。智宏と同じく免許を持ってないため、変身時以外では乗らない。キングストライカー同様にガソリンは必要なく、永久機関が搭載されており、多少の傷なら自動で修復される。

 

【仮面ライダーエマヌエーレ・アモーレフォーム】

《愛の力が未来を救う!想え!アモーレキング!》

 

アモーレクラウンで変身するエマヌエーレの基本フォーム。

 

エマヌエーレシューターによる射撃を得意とし、他の王サポートを行うことが多い。

 

愛されるほどそのスペックが高くなると言う固有能力があり、それは本人がというより、レイヤーとしてや雨野葉レマとして愛されているのをパワーにしている。

 

必殺技はクラウンを一回押して発動する《アモーレストライク》と、エマヌエーレシューターにクラウンをセットして発動する《アモーレショット》。

 

 

【聖 莉々子】17才

 

百合ヶ峰学園・生徒会長

 

百合ヶ峰学園の生徒会長を務める、今作の4号ライダー。

 

詩桜をライバル視しており、事あるごとに突っ掛かるものの、良いように弄ばれている。

 

同時に、詩桜の後継者(と周りが勝手に思ってる&詩桜が意地悪で焚き付けている)である智宏に対しても、勝手にライバル視している(智宏にとっては良い迷惑)。

 

常に周りに人を連れて行動しており、自分の意見に同調させて圧を掛けてくるため、智宏からは同調圧力の鬼と呼ばれる事に……

 

 

《仮面ライダーケーニヒ》

 

パンチ力・32t

キック力・36t

ジャンプ力・25m

走力(100m辺り)・5秒

 

聖会長が変身するライダー。

 

人々を纏めあげる素質を持つものが選ばれる仮面ライダーで、専用武器の巨大なハンマーのケーニヒハンマーによる接近戦を得意とする。

 

人々を集め、賞賛を得ながら共に道を作り出す王。

 

《基本装備》

 

・キングドライバー

 

変身時に腰につけるベルト。基本的に智宏のキングドライバーと同じだが、こちらはカラーリングが紫を基調としている。

 

・クラウン

 

王冠型の変身アイテム。ドライバーにセットして変身する事が可能で、こちらも殆ど智宏の持っているものと変わらないが、広夢同様、智宏や詩桜とは違い、一つしか持っておらず、場面に合わせて二人からクラウンを借りて戦う。

 

・ケーニヒハンマー

 

巨大で重量のある仮面ライダーケーニヒ専用装備。大振りではあるが、破壊力はピカイチで、重量と破壊力にものを言わせて叩きまくる戦法をとる。

 

・ケーニヒストライカー

 

ストライカークラウンスイッチを押して放り投げると巨大化及び変形して生まれる専用の乗り物。ホバーバイク型の他のメンツの中で唯一空を飛べる乗り物。そのため乗り物の機動力はトップクラス。キングストライカー同様にガソリンは必要なく、永久機関が搭載されており、多少の傷なら自動で修復される。

 

【仮面ライダーケーニヒ ヘルシャフトフォーム】

《支配の力が未来を治める!跪け!ヘルシャフトキング!》

 

ヘルシャフトクラウンで変身する基本フォーム。

 

重装甲に身を包み、防御にものを言わせて突っ込み、破壊力のあるケーニヒハンマーで叩くのが基本戦法。

 

固有能力はクラウンが支配を司ることから物騒な能力に思われがちだが、仲間からの声援を力に変えるというもの。そのため元の世界ではお供を引き連れ、応援させながら戦っていた。

 

必殺技はクラウンを一回押して発動する《ヘルシャフトストライク》と、ケーニヒハンマーにクラウンをセットして発動する《ヘルシャフトブレイク》。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《レボル軍》

 

本作の敵側。

 

七人の幹部を従えるレボルを筆頭に、世界を自分が支配するために長年幾度となく進行をし、その度に、その時代の仮面ライダー達に退けられていた。ただしレボルを完全に倒すことが出来ず、未だ後手に回ることになっていた。

 

七人の幹部は、それぞれレボルから直々に象徴する七つの大罪に因んだ名前と力を与えられている。

 

普通の怪人は一度怪人化してしまうとライダーに倒されるまで人間には戻れないが、幹部たちは人間体と怪人体の切り替えが可能で、人間社会に溶け込みながら生活していた。

 

 

《プライド》

 

レボル軍幹部の一人。

 

自分の能力を過信する悪癖があり、油断も隙も多い。但し、幹部としての実力は高い。仮面ライダー達を自分達の征服のちょっとしたスパイスだと言い、侮っていたが、中盤でダークネスフォームになった智宏に倒され、闇に飲み込まれて消滅した。

 

正体は、千玉学園の教師で、昔から有名大学出を鼻にかけた嫌な先生だった(当時千玉学園生だった里談)。

 

《グリード》

 

レボル軍の幹部の一人。

 

強欲の名を関する程、欲しいと言う欲求を抑えられないタイプで、幹部の中では頻繁に街中で暴れていた。

 

正体は智宏の好きなソシャゲのクランマスターをしていた男で、智宏が一度だけどこかのクランに入ってみるかと奮起して入ったものの、智宏のあることないことをでっち上げて最終的に追い出している。

 

因みに追い出した理由は自分の好きなキャラが好きじゃなかったから(正しくは好きじゃないんじゃなく、もっと好きなキャラがいるというだけなのだが、どう曲解したのかそう理解した)

 

好きな作品の商品を店から強奪し、それをフリマサイトで高額転売するなど、それで儲けていたが、最終的には智宏があのひよりんの妹だということを知り、奪おうとしたことに激怒した智宏にボコボコにされ、ブレイブスラッシュで滅多切りにされてトドメにダークネスフォームによって倒された。

 

作中で一番最初に倒された幹部であり、激怒していたとはいえ智宏単独で撃破するなど、戦闘能力自体は幹部の中では低かった模様。

 

《エンヴィー》

 

レボル軍幹部の一人。

 

幹部の中で唯一、人間を怪人化させる力を持っている。だが、スペック自体は然程高くないらしく、あくまでも後方支援担当な模様。

 

怪人も連続で作れないらしく、一体作るだけで相当エネルギーを消費するとのこと。

 

正体は常磐千玉学園に来る前に虐めていた主犯。元々容姿が整っていた常磐に嫉妬し、疎んでいた。

 

そして物語が進んで招待が発覚した歳も、未だに智宏達から大事にされている常磐を妬み、常磐を狙うが、智宏達に幾度となく退けられる。

 

最終的にはダークネスリベリオンに取り込まれ、あっさりと消滅した。

 

《ラース》

 

レボル軍の幹部の一人。

 

常に何かしらに怒っており、今どきの若いものはが口癖。

 

怒りをパワーに変え、単純な破壊力だけであれば幹部トップクラス。

 

正体は、あすみが高校に進学する前に通っていたエスカレーター式の音楽学校の教師。

 

その時から高圧的な態度であり、あすみが年上の男性が苦手になった要因を作った張本人。

 

あすみの事を逃げ出した弱者と断ずるが、それは違うと言った智宏と交戦。しかしスペック差で押し勝ち、続いて変身した妃愛に至ってはベルトとクラウンを破壊した。

 

その後調子づいて学園も襲うものの、再変身した智宏に敗北。

 

後日それに対する怒りで再び智宏達の前に現れるが、ダークネスフォームを手に入れていた智宏と他のライダー達の連携に押され、最後はダークネスフォームで倒された。

 

《ラスト》

 

レボル軍幹部の一人。

 

扇情的な格好をした女性で、蠱惑的な喋り方をする。ただその反面、若い女性という存在を憎んでおり、特に広夢に対して攻撃的な態度を取っている。

 

正体は元人気配信者の女性。

 

昔はその美しさで人気だったが、段々過激な発言が増え、最終的にはファンが離れていってしまった。

 

そのため、人気Vtuverとして名が知れている広夢を憎み、その命を狙い、智宏達とは幾度となく戦う事に。

 

最終的にはダークネスリベリオンに取り込まれて消滅した。

 

《グラトニー》

 

レボル軍幹部の一人。

 

非常に太った男性で、常に何かを食べている。

 

正体は元人気モデル。

 

元々は奇跡的なほど美しいスタイルを誇っていたが、芸能界でのストレスから逃れるために暴飲暴食を繰り返し、現在は見るも無惨な姿になってしまった。

 

そのためか、美しいスタイルを持つものに負の感情を抱いており、特にアメリに対しては、強い怒りを覚えている。

 

最終的には、ダークネスリベリオンに取り込まれて消滅した。

 

《スロウス》

 

レボル軍幹部の一人。

 

めんどくさいが口癖で、殆ど前線に出ない。

 

正体は、元々莉々子の同級生で、共に生徒会長選挙で戦ったが、敗北し、堕落して行った。

 

しかし現在も、莉々子に対しては苦々しい感情を持っているらしく、莉々子と戦う時だけは面倒くさがらない。

 

最終的に、莉々子と智宏のコンビに押され、ダークネススラッシュでトドメを刺された。

 

《レボル》

 

レボル軍のボスにして、全ての元凶。

 

過去に幾度となく仮面ライダー達に敗北するものの、その度に復活し、世界を自分のものにするために暗躍してきた。

 

その正体は、とある古代民族の魂で、初代仮面ライダーキングの弟。

 

人間の持つ感情や才能を結晶にし、力に変えることが出来る一族で、その結晶が智宏達が使うクラウン。

 

更にそれを効率的に、且つ安全に使える用にドライバーも生み出している。

 

リベリオン達を生み出すコアも、元々はレボルが作り出した歪んだクラウンを直接埋め込まれた存在で、エンヴィーも同じことを行えるが、同時に何人も変貌させることが可能だった。

 

そんなある日、才能と人望に溢れ、更に人格者でもあった実の兄に嫉妬し反乱を起こす。

 

自分と同様に他者を妬み、嫉妬するもの達を集め戦う中、初代仮面ライダーキングに倒されるものの、弟への愛情故か、倒しきることが出来ず、自らの怨念を込めたクラウンを作り出し、起動させることで魂だけの存在となって、難を逃れた。

 

それ以降も魂だけの存在であるレボルだが、魂だけの存在になってしまった影響で、直接現世に介入することが出来なくなり、そのため幹部を生み出し、それらを通して介入して来ていた。

 

しかし、終盤でアルティメットリベリオンへと進化したのを見て、その強靭な肉体に目をつけると、そのまま身体を乗っ取り、遂に直接介入出来るようになる。

 

仮面ライダーリベリオンとなったその強さと、エンヴィーとは違い無尽蔵に怪人を作り出す力を駆使し、初代仮面ライダーキングを超えたと豪語しながら、智宏達を追い詰めていくが、レジェンドキングフォームに覚醒した智宏に逆に追い詰められていくことに。

 

初代仮面ライダーキングに酷似した姿をするレジェンドキングフォームには、憎しみに近い感情を抱いている。

 

最終的には、智宏を次元の狭間に追放することに成功。時間の概念も体の自由もない場所に閉じ込め、智宏を絶望させかけるが、仲間と愛する家族の声を聞き、エンドレスブレイブフォームに変身した智宏と、一歩も引かない殴り合いを演じるが、徐々に仲間達や家族への思いで、スペックを爆上げしていく智宏に追い付けなくなり、智宏のエンドレスブレイブストライクで倒された。

 

今までは魂だけの存在だったため完全に倒しきれなかったが、肉体を得て復活していたため、二度と蘇ることは無いと言われる。

 

 

こうして智宏達は長き因年に決着をつけ、平穏な日常に戻っていくことになる。因みにこれの直後くらいに、兵藤一誠から襲撃を受けた。

 

しかし更にしばらくたったある日、智宏達に新たな脅威が襲いかかり……(次回・劇場版編に続く)



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劇場版 仮面ライダーキング設定集

レボルとの決戦からしばらく経ち、千玉学園の卒業式に向けて準備をする、智宏を筆頭にした生徒会メンバー。

しかしそんなある日、自身を本物の仮面ライダーキングと名乗るものが現れる。智宏大人っぽくした雰囲気の、人間に、皆は動揺するものの、智宏達は変身しようとするが、突如智宏以外の仲間が正気を失い、智宏に襲い掛かると、それに気を取られ、クラウンを奪われてしまう。

そして本物の仮面ライダーキングと名乗った男は、詩桜から受け取ったオールスターキングダムクラウンを、金を基調にしたドライバーに装填し、変身した最凶の敵、仮面ライダーキング《真》と戦うことに。

かけがえのない仲間を失い、クラウンもほとんど失い、智宏の孤独な戦いが幕を開ける。


《和泉 智宏》

 

ご存知、本作の主人公。戦いを終え、平穏な日常を享受していたある日、突然偽物の仮面ライダーと呼ばれ、仲間も力も奪われた。

 

力を奪われたあと、仮面ライダーキング《真》に殺されかけるが、寸での所で裁定者のテレポートで助けられ、その際に知るのだが、自身は何と初代仮面ライダーキングの生まれ変わり。正確に言えば、初代仮面ライダーキングが自身を呪い、力と才能を否定して捨てた残りカスが転生したのが智宏。そのため妃愛が選ばれたはずの仮面ライダーの力で変身したり、新たなクラウンを生み出せたのもそのおかげで、レボルを見た際にゾワゾワしたのもこれが理由。

 

不器用でもいい。才能なんてなくていい。ただ家族と仲間たちと共に居たい。そう願った王が生まれ変わったのが智宏で、それを裁定者が理解したのは仮面ライダーキング《真》を見たあと。

 

更に仮面ライダーキング《真》の正体(後述)と仲間達のことを聞き、智宏は助けに行こうとするが、たった一人で、更に殆どのクラウンを奪われた状態では何も出来ないと言われる。だがそこに仮面ライダーキング《真》が襲い掛かり、智宏は裁定者に言われるがまま逃げ出し、離脱に成功。

 

しかしたった一人で何が出来るのかと自問自答する中、何と仲間達が次々と智宏達から奪ったクラウンを使って変身しながら智宏に襲いかかり、戦うことに。

 

その際にピンチの中、死にかけながらも対抗するものの、仲間との戦いを強いられ、心身ともにボロボロになりながら戦うことに……

 

【仮面ライダーキング エンティネスフォーム】

 

パンチ力・2t

キック力・5t

ジャンプ力・8m

走力(100m辺り)・12秒

 

智宏が常磐に襲われた際、攻撃を受けそうになった時に、咄嗟に生み出した白を基調としたクラウン。元々はブレイブクラウンだったが、智宏が精神的に追い詰められていたためか、歪な形状をしており、所々ひび割れて欠けているような形状をしている。

 

変身音は砂嵐やノイズのような音が鳴り響くだけで、特定の音声はない。

 

戦闘スタイルはパンチとキックのみで、特定の武器はなく、更に智宏自身も、戦いに積極的でない上に、初期のブレイブフォームすら下回る程の低スペックも相まって、戦い慣れしていない常磐が変身する姿相手でも、苦戦を強いられることに。

 

ただこのフォームの特殊能力として、破壊したクラウンの力を吸収することが可能で、戦えば戦うほどし強くなることが可能。

 

必殺技はクラウンを一回押して発動する渾身のパンチであるエンティネスアタック。

 

言うなれば、劇場版限定の急造フォーム。

 

《常磐 華乃》

 

智宏の同級生にして生徒会メンバーの一人。

 

今作では操られ、智宏に襲い掛かる。

 

【仮面ライダーイメージ】

 

常磐が金色のキングドライバーにイメージクラウンをセットして変身した姿。

 

詩桜のイメージフォームと同じ力を持ち、ロイスピアーを使って描いたものを具現化して戦う。

 

操られてるとはいえ、戦闘経験が皆無の常磐が返信してる為か、そこまで強くは無いものの、詩桜よりも画力が高い常磐が使っているためか、能力の使い方は上。

 

最終的には、変身能力を取り戻した智宏のエンティネスアタックでクラウンを破壊され、気を失った。

 

 

《錦 あすみ》

 

智宏の後輩。

 

今作でも引き続き生徒会メンバーとして、智宏を支えていたが、常磐同様操られてしまい、智宏と交戦することに。

 

【仮面ライダーシャンソン】

 

シャンソンクラウンと、金色のキングドライバーであすみが返信した姿。

 

ロイスピアーのマイクによる破壊音波攻撃で智宏を苦しめたものの、最終的には智宏にクラウンを破壊された。

 

《竜閑 アメリ》

 

智宏の同級生で生徒会メンバー。

 

引き続き智宏の補佐として動いていたが、操られ交戦することに。

 

【仮面ライダーロイヤリティ】

 

ロイヤリティクラウンと金のキングドライバーで変身した姿。

 

頑丈な体と盾を用いて戦い、スペック差で智宏を苦しめたが、最終的には智宏にクラウンを破壊された。

 

《和泉 里》

 

智宏の従姉妹にして、生徒会顧問。

 

いつも智宏や他の仲間達を優しく見守っていたが、操られて智宏と戦うことに。

 

【仮面ライダーカーム】

 

カームクラウンと金のキングドライバーで里が変身した姿。

 

カームアローによる遠距離攻撃と機動力で智宏を苦しめたが、最終的にはエンティネスアタックでクラウンを破壊された。

 

【新川 広夢】

 

智宏の同級生にして友人であり戦友。

 

智宏たちと共に幾度となく死線を超えてきたが、今作では莉々子とタッグを組んで智宏と戦うことに。

 

【聖 莉々子】

 

智宏とは違う学校の生徒会長で仮面ライダー。

 

広夢同様、智宏たちと幾度となく死線を超えてきたが、今作では操られて戦うことに。

 

広夢とタッグで智宏を襲うが、最終的には二人ともクラウンを破壊された。

 

 

《和泉 妃愛》

 

智宏の妹にして家族であり恋人。

 

人前では隠しているが、本編終了後も恋人であり家族として一緒にいる。

 

しかし、本編では敵に操られ、智宏と戦うことになるが……

 

 

【仮面ライダーレジェンドキング】

 

妃愛が金のキングドライバーと、智宏から奪ったブライトネスクラウンをレジェンドクラウンをセットして変身した姿。

 

智宏は妃愛に力を借りる都合上、一人で変身出来ないが、妃愛は単独で変身可能。

 

圧倒的なスペック差と能力で智宏を追い詰めていくが、とどめを刺す瞬間、一瞬正気に戻って動きを停めた瞬間を狙い、智宏がクラウンを破壊して撃破された。

 

 

【仮面ライダーキング《真》】

 

智宏達の前に現れた、智宏によく似た容姿をした男性。

 

自身こそが本物の仮面ライダーキングと名乗り、智宏に襲い掛かると同時に、仲間達を操った。

 

その後も執拗に智宏を追い、何度も命を狙うほどの執着を見せる。

 

その正体は、自らその命を絶った初代仮面ライダーキングの肉体。力と才能を拒絶し、捨ててきた己そのもの。

 

長い年月を経て、後悔と絶望を残した体に意思が宿り、怨念となって蘇った。

 

長い時を経ても肉体が朽ち果てない強力なエネルギーを内包しており、変身せずとも強い。

 

更に変身することで、レボルを上回るパワーを発揮する。

 

智宏に対する恨みは深く、その理由はたった一人地下深くに自分だけ放置される中、智宏を通して外の世界を見ており、その世界で仲間達と共に暮らす智宏をみて、徐々に憎しみを抱いていった末。

 

そのため元来の初代仮面ライダーキングの人格と言うよりは、彼が抱えた後悔や悲しみが人格を持って動き出したに近い存在であり、初代仮面ライダーキング本人とは厳密には違う模様。

 

【仮面ライダーキング《真》 オールスターキングダムフォーム】

 

パンチ力・200t〜

キック力・300t〜

ジャンプ力・500m〜

走力(100m辺り)・測定不可

 

本人いわく、これが真の姿らしい。

 

圧倒的なスペックだが、これも最低値であり、ここから各種クラウンのブーストが入るため、この値は余裕で超えている。

 

更に詩桜よりも各種クラウンに対する適性もあり、その力は計り知れない。

 

元々は昔、初代仮面ライダーキングが変身した姿であり、仲間達を失ってな立ち上がった際に生み出された全ての力を一つにした究極の姿。

 

全てのクラウンの力を吸収した智宏の、エンティネスクラウンの力を持ってしても、殆ど相手にならず、一方的にやられるばかりだった。

 

だが、その中で仮面ライダーキング《真》の真意を聞かされる。

 

彼は智宏を絶望させることが目的だったこと。

 

自分と同じように孤独を味わい、そして死んでいって欲しかったこと。そのために仲間も力も奪ったことを聞き、智宏は思い出す。変身を強制解除させた仲間たちの目が涙で濡れていたことに。例え操られていても、その心の奥底で苦しみ、無理矢理戦わされていたことに。そしてそれに激高し……

 

《キングドライバー》

 

仮面ライダーキング《真》及び、彼がベルトを与えたものたちがが使うドライバー。基本的な機能自体は智宏が使っていたものと変わらないが、クラウンの力を限界以上に引き出すことが可能等、一部機能は強化されている。

 

 

【仮面ライダーキング インフェルノフォーム】

 

パンチ力・100t

キック力・120t

ジャンプ力・80m

走力(100m辺り)・7秒

 

仮面ライダーキング《真》への憎しみや怒りに心を飲まれた智宏の感情が、空っぽのエンティネスクラウンを満たし、変化したインフェルノクラウンで変身した姿。

 

他者への負の感情に支配されて変化した、という点に関して言えば、レボルに近く、実際の姿も全身赤い蒸気を噴出させながら、禍々しくモンスターの様でもあるため、リベリオンに等しい存在でもある。

 

そのためか、エンティネスクラウン同様変身音はなく、亡者のうめき声のような音声が響き渡るだけ。

 

完全に自我を失っており、目につく人やものを全て破壊する破壊衝動に支配されており、ダークネスフォームの様に仮面ライダーを優先しつつも、いなければリベリオンを狙うなどといったものもなく、ただひたすらに破壊し続ける。

 

更に超高温の熱を発しており、近づくだけで金属もドロドロに溶かすことが可能。

 

ただし、変身時の体への負担が尋常じゃなく、超高温の熱に常に晒されながら戦うことになる上、アーマーが出力だけを求めている結果、防御面に問題があり、自身の攻撃の衝撃ですら変身者の体が自壊してしまう。

 

全身から赤い蒸気を出しているのも、アーマーの下は全血みどろになっており、それが高温によって蒸発しているため。本来血液が蒸気になるようなことはないが、それが起こるほどの超高温状態ということでもある。

 

しかしスペックは見ても分かるように、ブライトネスクラウンよりちょっと上がった程度で、高速移動などの特殊能力は無い上に、殴る蹴るしか攻撃方法もなく、自我も失っているため、総合的に見れば実質弱体化しており、智宏一人では、例え命を掛けても仮面ライダーキング《真》は愚か、初代仮面ライダーキングの基本フォームにあたるレジェンドキングフォームにも届かないということでもある。

 

放っておいても勝手に自滅するだけだ。と仮面ライダーキング《真》からも言われるほどの存在で、実際戦闘中に自壊を始めていた。

 

既に仮面ライダーキング《真》も、最早相手をするまでもない。と背を向け立ち去り……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《カノン》

 

常磐そっくりの女性。初代仮面ライダーキングの身分を超えた幼馴染であり、悪友。

 

初代仮面ライダーキングに対して好意を抱いていたものの、身分の違いからそれを抑えていた。

 

絵に関しては天才で、初代仮面ライダーキングの肖像画を描いたりしており、王室の壁に飾られていた。

 

最後は、レボルが軍を率いて王国に乗り込んできた際に、初代エンヴィーに殺され、初代仮面ライダーキングを通して、彼女が生み出したイメージクラウンを託しながら、その命を落とした。

 

《シオン》

 

詩桜によく似た容姿を持つ、中性的な男性。

 

世界中を旅する旅人で、現地で見て経験したことを本にしていた。

 

その中で初代仮面ライダーキングと出会い、友としてドライバーと自身が仮面ライダーキングを通して生み出したロマンクラウンを授かっていた。

 

最終的には、レボルと戦い、瀕死の重症を負い、ロマンクラウンを託していた。

 

周りから死んだと思われていたが、実は生きており、仮面ライダーキングが自ら命を絶った後にその場に訪れ、キングの遺体を埋葬した。

 

その後唯一の生き残りとして再び世界各地を回る中、レボル復活の兆しを感じ取り、レボルに対抗するべく自ら肉体を捨てることで世界を守る機構になることにした。

 

つまり、彼こそが智宏達を仮面ライダーにする要因となった、裁定者そのもの。

 

既に肉体も魂も消滅しており、自我はなく、魂も詩桜に転生しているが、仮面ライダーキング《真》を見て一時的に自我を取り戻したものの、智宏を助け、その後逃がす際に、仮面ライダーキング《真》に破壊された。

 

《アスミ》

 

あすみそっくりの女性。

 

あすみより若干スタイルがいい(本人談)らしいが、殆ど差は無い。あすみとは違い活発で、自分の思ったことをはっきり言う性格。

 

ただ歌が上手く、歌姫としてもその名は知られていた。

 

そして初代仮面ライダーキングの妹で、兄に対しては禁断の思いを抱いていたが、結婚に関しては普通に祝福するなど、そこは常識を弁えていた模様。

 

あすみがレボルを見た際に、智宏と同様でゾワゾワしたのも、それが理由。

 

最後は、レボルが攻め込んだ際に、レボル本人にこんなことはやめて欲しいと説得するものの、聞き入れられずその身を切り裂かれ、ギリギリで間に合わなかった初代仮面ライダーキングに、シャンソンクラウンを託して、命を落とした。

 

《アメーリ》

 

アメリそっくりな少女。

 

初代仮面ライダーキングのお世話係をしており、彼の身の回りのお世話をしていた。少しドジだが、朗らかで初代仮面ライダーキングからも信頼されていた。

 

時折初代仮面ライダーキングが城を抜け出して城下町に遊びに行く際には、協力して抜け出すのを手伝うなど、意外とノリがよく、その際にお土産を要求するなど、意外と抜け目がないところも。

 

ただ国のことで常に心を痛め、弟が反乱を起こした際には、初代仮面ライダーキングに寄り添い、共に守るために戦うと声をかけ、元気づけたが、戦いの中でその命を落とし、初代仮面ライダーキングにロイヤリティクラウンをたくした。

 

《ミリー》

 

里そっくりの女性。

 

初代仮面ライダーキングの先代の王の時代から使える重鎮で、初代仮面ライダーキングからの信頼も厚かった。

 

物静かな女性で、いつも優しく初代仮面ライダーキングを見守っていたが、レボルの反乱の際にはそちら側につき、裏切った様に見せかけ、情報を流していた。

 

しかし、それは見抜かれており、その命を奪われるが、死にかけの体で初代仮面ライダーキングに最後の情報とカームクラウンを託した。

 

《リリコ》

 

莉々子そっくりな女性。

 

圧倒的なカリスマで国を支配している女王。

 

しかし国民からの指示は高く、初代仮面ライダーキングも、苦手だけど王としては見習うところもあると言われる。

 

初代仮面ライダーキングの隣国を支配しており、交流を深めていたが、レボルの反乱によって、滅ぼされた。

 

自身もその際に命を落とすが、初代仮面ライダーキングの元に来て、国の仇を頼むと、ヘルシャフトクラウンを託し、その命を散らした。

 

《ヒーロ》

 

広夢によく似た女性。

 

リリー同様、初代仮面ライダーキングの隣国の女王。

 

民から愛され、本人も民を愛している。

 

初代仮面ライダーキングとは幼少の頃から王族同士交流があり、互いの国のために協力しあっていた。

 

だが、レボルの反乱によって国を滅ぼされ、初代仮面ライダーキングが駆けつけた際には既に虫の息になっており、アモーレクラウンを彼に託し、命を落とした。

 

《ヒヨリ》

 

妃愛そっくりな女性。

 

初代仮面ライダーキングの妻で、初代仮面ライダーキングから、民からも愛され、信頼されている。

 

常に初代仮面ライダーキングと共に国と民のことを考え、そのために尽力し合いながら、夫婦仲も良好だった。

 

しかし最後は、レボルの反乱により命を落とし、その死によって、初代仮面ライダーキングは深い悲しみに陥りながらも、失った仲間たちと、彼女の死を受け入れることで、オールスターキングダムクラウンを作り出した。

 

 

《初代仮面ライダーキング》

 

レボルの兄にして、ドライバーとクラウンを生み出した古代民族の王。

 

性格は穏やかで人格者。民のために尽力することを惜しまず、民からの信頼も厚く、愛されていた。

 

しかし有事の際にはその力を振るい、外敵を打ち破る、苛烈な一面も。

 

その力は圧倒的の一言に尽き、基本フォームのブレイブフォーム(と言うか、当初はブレイブフォームしかない)で、智宏のレジェンドキングフォームと同等の力を持っている。

 

しかし家族想いすぎる余り、弟のレボルの嫉妬に気づかず、更にトドメをさし損ねるなど、そう言った甘さもあった。

 

最終的には、争いの中で仲間を失うが、それでも民のために奮起し、オールスターキングダムへと覚醒し、レボル軍の幹部や雑兵達をたった一人で殲滅し、更にレボルを倒すものの、レボルとの最後の戦いの後、クラウンを起動されてしまい、その際に起きた大爆発に巻き込まれ、変身していた自身は助かったものの、大陸ごと消し飛んだ影響で民達まで死なせてしまった。

 

因みにその一件が、古代民族滅亡の理由。

 

たった一人生き残ってしまい、守りたいと願った仲間も、見守るべき民も失い、そしてたった一人で生きる勇気も失った彼は絶望し、自らその命を絶った。

 

自身が王でなければ、この力さえなければ、才能さえなければ。そう自身を呪い、弟を歪めるきっかけになった才能も、民を守ってきた力も、そして王という立場すらも否定し、民に愛された王は誰にも知られることなくその命を散らすのだった。

 

その後魂だけ転生したのが智宏で、初代仮面ライダーキングとは違い不器用で要領は悪く、才能も何も無いが、仲間たちと共に生きることになった。

 

因みに死したあともその体には強いエネルギーが宿っており、シオンに埋葬されたあとも朽ちる事なく存在し、人格が宿って復活したのが、仮面ライダーキング《真》。

 

その肉体だけでも前述したように凄まじいエネルギーを内包しており、そのエネルギーと才能を持ち合わせた仮面ライダーキング《真》は、まさしく最強。仮面ライダーキングとしては、後にも先にも彼以上の存在が現れることは決して有り得ないため、仮面ライダーキングとして、彼に勝つことは不可能なのだが……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【仮面ライダーアルティメイト】

《最高の力!最高の願い!最高の想い!最高の絆!最高の希望!全てを繋ぎ、今こそ我らは一つとなる。一致団結せよ!我ら!仮面ライダー!アルティメイト!!!!》

 

パンチ力・なし

キック力・なし

ジャンプ力・なし

走力(100m辺り)・なし

 

智宏を捨て、自身の拠点に戻ってきた仮面ライダーキング《真》の前に降り立った仮面ライダー。

 

白を基調としつつ、様々なカラーリングを施されており、一見するとかなり派手。

 

既存のライダーとは一線を画しており、スペックも全てなし。というのも、これは現代では最早数値や言語として表現する方法がないため。

 

ベルトもアルティメイトドライバーと言い、クラウンと一体化した形をしており、クラウン部分には智宏達のクラウンが飾り付けられており、それぞれのクラウンをタッチすることで対応した必殺技を発動可能。

 

更に、必ず相手の弱点を突けるという能力があり、常に相手の弱点となるものを自身に付与し、攻撃することが可能。弱点がなければ弱点の概念を捏造して相手に付与して攻撃する。

 

攻撃方法もスペックでぶん殴る以外にも、多彩且つ圧倒的な物量で押す戦法を取り、オールスターキングダム同様武器の召喚能力もある。但し、オールスターキングダムとは違い、キングカリバーンの召喚も可能で、武器の召喚数も多く(作中では天を地平線の彼方まで覆う程のキングカリバーンを召喚した)、クラウンも同じものを無数に召喚可能で、召喚した武器全てで必殺技を発動させ、一斉に射出することも可能。

 

極めつけに、ドライバーをつけているだけで、あらゆる病気や怪我を瞬時に完治させることが可能。厳密に言えば、装着者の肉体を常に最善最高の状態にしておくに近い。

 

そのため、装着時は老化することも無く、実質不老不死状態。

 

つまり倒すには、常に弱点を付与してまで突いてくる、スペックが文字通り異次元の不老不死を倒さなければならない。

 

その正体は、勿論智宏……ではなく、厳密に言えば智宏を含めた、仲間たち全員。

 

因みににあくまで肉体の主導権は智宏が持っているため、皆で別の動きをしようとして失敗みたいなのは無い。ただ智宏が意図して別の人に主導権を渡すことは可能で、それを行うこと長時間の戦闘になった際も、交換しながら戦うことで休憩して精神的な疲労も回復できる。

 

 

智宏に皆敗れ、意識を失った世界で、仲間たちが自分達を呼ぶ謎の声に、それぞれ目を覚ますと、目の前にいたのは見たことの無い服を着た自分たちそっくりの人間。

 

それらは自分は初代仮面ライダーキングの仲間であり、君の前世だと言う。

 

そして自分の前世を名乗る相手に、今の暴走する仮面ライダーキングを助けて欲しいこと。そして、仮面ライダーキング《真》を止めて欲しいと頼まれる。

 

そして目覚めると、手元には破壊されたクラウンとドライバーがあり、それを手に導かれるように走り出す。

 

そこにたどり着くと、既に体の大半が焼失し、体が崩れ始めていた智宏がおり、仲間達は変身して止めにかかった。

 

高熱で火傷を負いまがら、それでも仲間達は智宏に声をかけ続ける中、インフェルノクラウンが輝き、皆は全員が智宏の精神世界にやってきた。

 

そこは辺り一面が真っ黒で、業火だけが立ち上る世界。息を吸うだけで肺が焼けるような感覚を覚える中で、既に全身が炭化していた智宏を見つける。

 

駆け寄り、皆が触れるだけで崩れ落ちそうな体を抱きしめ、皆で智宏の名を叫んだ時、そこを中心に世界は真っ白になり、炎が消えると智宏の体が元に戻り、共に泣き、笑いあった時、智宏のクラウンとドライバー。そして仲間たちのドライバーとクラウンが融合し、一つとなった時に生まれた、インフィニティドライバーで変身し、傷もなにもかもが癒えると、仮面ライダーキング《真》の元に向かった。

 

仮面ライダーキング《真》の前で一度変身を解くと、仮面ライダーキング《真》は睨み、何故いつもお前の周りには人が来るんだ。才能もないくせにずるいじゃないか!俺はひとりでずっと土の下で暗い中生きていたのに!と怒り出し、皆は気づく。彼はいうなれば子供なのだと。たった一人で生まれ、そのまま力だけを持った存在なのだと。

 

だからこそ、自分たちで終わらせるしかないと覚悟し、智宏がアルティメイトドライバーを装着し変身。両者の最後の戦いが幕を開ける。

 

陸と空を縦横無尽に駆け回りながら、攻撃し合う両者だったが、そもそもスペック差が違うため戦いにならず、追い詰められていく仮面ライダーキング《真》。最後はなぜ自分が負けるのか理由も分からず、必殺技のアルティメイトストライクにより、肉体ごと完全に消滅した。

 

飛行能力に加え、レジェンドキングフォームでも見せた結界や時間操作能力も持っており、それにより時間を巻き戻したり止めたり自分だけ早めたりするなどが可能。ただこれは時間そのものの操作と言うよりは、世界の概念そのものを歪めているに近く、文字通り世界を意のままにする力とも言える。

 

弱点はないが、強いてあげるとすれば、仲間たち全員が揃ってないとなれないこと。だが、変身すると瞬時にどんなに離れて居ても呼びせ寄せて変身可能なこと。もしそれを見越して不意打ちしても、即死でなければベルトを装着することで復活可能なこと、仲間を狙ったとしても、ベルトは普段異空間に隠されており、仲間たちの呼びかけでも現れ、変身することも可能。

 

必殺技は、ドライバーに着いているクラウンをタッチして発動するアルティメイト《クラウン名》ストライクと、全てのクラウンを発動して放つ、アルティメイトエンド。

 

《アルティメイトドライバー》

 

仮面ライダーキング《真》への怒りでインフェルノフォームに変身した智宏を救うため、仲間達がベルトに触れた際に、怒りや憎しみの感情の代わりに、智宏への愛情や友情などの想いを込め直すことで生まれた。

 

ドライバーとクラウンが一体になっており、装着して上部のスイッチを押すとクラウン部分が展開し、変身する。

 

智宏達の想いが込められた唯一無二のベルトであり、智宏達の意思に応じて取り出すことが可能。

 

ちなみにこの一件で智宏はキングドライバーを失うが、仮面ライダーキング《真》が使っていたものを使うようになるが、特にスペックに変化はない模様(ブレイブクラウンは戦いの後手元に戻った)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれもきっと、仮面ライダーキングの側面ではあったんだと思う」

 

全ての戦いが智宏ふとそんなことを呟いた。

 

何を急に?と首を傾げる皆に、

 

「初代仮面ライダーキングは、凄かった。でもその心は人間だったんだ。怖かったり悲しんだり、寂しがりだったり。だからアイツも暴走したんだ。アイツは仮面ライダーキング本人じゃない。そうだったら絶対生まれ変わりの皆を利用するようなことはしない。でも、アイツも仮面ライダーキングの一部ではあったんだろうな」

 

だからといって許せはしないけど。と智宏は倒した後に残っていた、キングドライバーを見ながら、そう言って笑う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

漆黒の空間に仮面ライダーキング《真》はいた。

 

智宏達に敗北し、気づけばここにいた。

 

「まるで捨て犬だな」

「バカにしに来たのか」

 

まさか、と男は言う。その顔は、智宏とよく似ている。

 

「迎えに来た」

「迎えに?」

 

驚いた声を漏らしながら、顔を上げると、あぁと言いながら手を差し出して来た。

 

「私は自分を否定した。何もかも捨ててしまいたいと。だがそれは間違いだった。あの時必要だったのは、諦める事じゃない。勇気をだして、生きることだった」

 

どんな絶望が襲ってきても、一人ぼっちになったとしても、勇気を振り絞り、生きることだけは諦めてならなかったのだ。

 

「私にはその勇気がなかった。だが智宏は違う。あの状況に置かれても、生きることだけは諦めなかった。才能もなく、仲間も力も失っても、生きることを諦めることだけはなかった。それが奇跡を産んだ」

 

私なんかよりずっと強い子だ。

 

初代仮面ライダーキングはそう言いながら、もう一度相手を見ると、

 

「だから今度こそ、俺は全てを受け入れる。受け入れて、前に進みたい。そのために、俺には力が必要だ」

「……遅いんだよ」

 

仮面ライダーキング《真》はそう言って手を伸ばすと、初代仮面ライダーキングにゆっくり吸い込まれていく。

 

そして二人が一つになると、初代仮面ライダーキングが振り返る。

 

その視線の先には、光が溢れ出し、その中には失われていた仲間たちが立っていた。

 

「行こうか」

 

そう言うと皆は頷いて一緒に歩き出し、そのまま皆は光に飲まれ、消えていくのだった。




色々書き連ねましたが、まぁ細かいところはね。
いつかちゃんと描きたい気持ちもある。実は作中で次回作のライダーが登場みたいなネタもやりたかったけどそれやると設定集がいつまでも終わらないからねw



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第二十一章 総選挙のデュランダル
新年と反旗


前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……


戦兎「智宏達との共闘からしばらく経ち、俺たちは新年を迎えていた!」
龍誠「いやぁ、流石にあいつらも新年から騒ぎは起こさないみたいだな」
戦兎「って言ってると、どうせまたなにか起きるんだぜ?」
龍誠「だよなぁ……」
戦兎「まぁヒーローには休みはないってなわけで!154話スタートだ!」


「戦兎!!」

 

新年となり、皆であけましておめでとうの挨拶を済ませた朝、戦兎達はテレポートで京都に来ていた。

 

そして社につくと、九重が戦兎の足に飛びついてくる。

 

「九重、元気そうだな」

 

戦兎はしゃがんで相手をしつつ、九重の頭を撫でると、彼女は気持ちよさそうに目を細める。

 

「あら九重、そんなに、はしゃいでははしたないですよ」

 

その後ろからやってきたのは、九重の母親の八坂だ。

 

先日の京都襲撃で、肉体の殆どを化け物に変えられたが、戦兎のジーニアスボトルによって治されており、現在は後遺症もなく元気に暮らしている。

 

「ふふ、戦兎殿。息災だったか?」

「あ、はい。八坂さんもお元気そうで何よりです」

 

汝のお陰でな。と八坂さんはコロコロと笑い、妖艶な笑みを浮かべる。

 

「戦兎殿の活躍はこの京の都にも届いておる。これなら妾としても安心じゃよ」

 

というのも、来年から九重を駒王学園の初等部に編入する予定で、九重は今から指折り数えている。因みにこっちに来たら龍誠達の屋敷から通う予定だ。

 

なんて思っていると、

 

「戦兎!母上とばかり話していないで妾とも遊ぶのじゃ!」

「はいはい。何して遊ぶんだ?」

「まずはお参りに行くのじゃ!それとおせち!今年の煮豆は母上に習って妾が作ったのじゃ!」

 

九重に手を引かれ、戦兎が行くと、それを他の面々は笑ってみていた。

 

「微笑ましいわね」

 

ライバル登場かしら?とリアスは冗談交じりに小猫に言うと、

 

「戦兎さんは優しいので、あれくらい目くじらたてることもないですよ」

 

と小猫は余裕綽々といった風情だ。すると、

 

「おやおや、どうかのう?」

 

と八坂はこちらに来た。

 

「我が娘、九重は妾の血を引いている。つまりこうなるということだ」

 

と自分の豊満な胸を寄せて持ち上げてみせる。

 

スタイル抜群の彼女がやると中々の光景だ。

 

「と、突然変異ってありますよね?」

「まぁ、ないとは言わんが将来有望じゃ」

 

ニンマリ笑う八坂を見て、小猫も戦兎の後を追う。

 

「意地の悪い女だなアンタも」

「いやはや、ああいうのを見るとついな」

 

オホホ、とアザゼルに黒い笑みを浮かべる彼女。しかし、

 

「じゃが実際、これから戦兎殿にすり寄る輩は多かろう」

「だろうな」

 

現在起きている禍の団(カオス・ブリゲード)との戦い。そしてそれに伴う兵藤 一誠との戦いは、激しさを増すばかりだ。そしてその中、戦兎は兵藤 一誠に対して優位を取っている存在。

 

それだけに政治的にもすり寄る輩は多くなっていくはずだ。何より、

 

「それに禍の団(カオス・ブリゲード)には彼の父上もおる。未だにそれを言う輩も居るのではないか?」

「あぁ」

 

実際、父の忍の件は未だに言われる。戦兎はスパイなのでは?と。すると八坂は表情を引き締め、

 

「ならば戦兎殿の後ろ盾に妾を筆頭にした京の者がなろう」

「本気か?」

 

あぁ、と八坂は袖で口を隠すような仕草をする。

 

「彼には図りしれぬ恩義がある。そんな彼の力になれるなら、お安い御用だ」

 

兵藤一誠及び、戦兎の父である忍に地獄を見せられた彼女が主導となって、戦兎の後盾になる。これ以上に戦兎の汚名を濯ぐ事ができるものはないだろう。

 

「して、兵藤一誠の行方は?」

「まだ掴めていない。今度は一体何を企んでいるのやら……」

 

苦虫を噛み潰すような表情をアザゼルは浮かべながら、そんなことを呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「準備完了しました!」

 

男が駆け寄り、声をかけた先にいたのは、皺くちゃの顔をした老人。だが首から下の体が異様な程鍛えられており、肉体から見られる年齢は非常に若々しい。

 

そんな男は、報告を聞きながら別の少年に顔を向け、

 

「宜しいのですね?」

「あぁ」

 

その返答にうなずき、男は立ち上がる。

 

「これより我等は天界と世界に反旗を翻す!このヴァスコ・ストラーダに続けぇ!」



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デュランダルVSエクスデュランダル

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「新年を迎え、お参りを済ませた俺達だったが……」
龍誠「いやぁ、やっぱりこうなるんだよなぁ」
戦兎「仕方ないさ。困ってる人がいるなら行くしかない!」
龍誠「それが仮面ライダーだもんな!」
戦兎「ってな感じの155話スタートだ!」


「天界で反乱が起きた!?」

 

新年から京都でお参りを済ませ、帰ってきた戦兎達の元に来た連絡に全員が驚愕し、互いに顔を見合う。

 

「とにかくじゃあ!」

「あぁ、禍の団(カオス・ブリゲード)が関わっている可能性もあるからな。お前らにも出動要請だ!」

 

新年早々忙しいな、とぼやきつつも、戦兎達は魔法陣に飛び乗って転移すると、既に戦闘後なのか、所々破壊された光景が広がっていた。だが、

 

「思ったよりきれいだな」

 

そう。前に禍の団(カオス・ブリゲード)が襲った際より、破壊が少ない。そう思った時、

 

「待っていたぞ。仮面ライダー」

 

突然声を掛けられ、驚いてその方角を見ると、その先にいたのは筋骨隆々とした老人。

 

誰だ?と戦兎がポカンとすると、ゼノヴィアがボソリと呟く。

 

「ヴァスコ・ストラーダ猊下」

「え?」

「先代デュランダルの使い手。ミスター・デュランダルと呼ばれる、教会最強の男だ」

「まさか助けに来てくれたのか!?」

 

と龍誠が言うと、アザゼルが首を横に振る。

 

「あの男がいたなら、こんな事になってねぇさ。遅れてきた、って風情でもないしな」

「詳しいのね」

「ウチのコカビエルが昔にな」

 

リアスにそう答えつつ、アザゼルは相手を見る。

 

「久し振りだな。アザゼル殿」

「あなたも元気そうだ。とても80を超えた男の持つオーラじゃねぇな」

 

80……と皆が改めてストラーダを見る。あの肉体に覇気。とてもそうは見えない。

 

「貴方ともあろうものが、よもや判断側に組みしたというのですか!?」

 

ゼノヴィアがそう叫ぶと、ストラーダが頷く。

 

「私達は此度の同盟に納得していない」

「何を今更言ってんだよ!禍の団(カオス・ブリゲード)がどんだけやばい奴らだって思ってんだ!」

 

それには龍誠が叫ぶと、ストラーダは首を横に振る。

 

「分かっているさ。だがな、それで納得出来るとは限らぬ。故に我等は立ち上がった。言葉を尽くして納得できぬのなら、この拳で問うしかないのだ」

 

そう言って拳を握るストラーダに、戦兎は、

 

「ならやるしかねぇか。いいのかよ爺さん!今のあなたはデュランダルがないんだろ?」

「問題はない」

 

そう言って、ストラーダが手を掲げると、そこに握られたのはデュランダルだ。

 

「なっ!」

 

デュランダルはゼノヴィアが持っているの以外は、本来存在しない。だがそこにあるということは、

 

「兵藤 一誠か。よりによってデュランダルを渡すとはな」

 

気をつけろよお前ら、とアザゼルは言う。俺はあの男以上のデュランダル使いは知らん。というと同時に、ストラーダはデュランダルを振り下ろす。

 

聖なる力も何も込められていない、ただの剣圧。だがそれだけで戦兎達を吹き飛ばす。

 

『変身!』

 

しかし吹き飛びながらも、戦兎と龍誠は変身し、

 

《完全無欠のボトルヤロー!ビルドジーニアス!スゲーイ!モノスゲーイ!》

《極熱筋肉!クローズマグマ!アーチャチャチャチャチャ チャチャチャチャアチャー!》

 

煙の中から飛び出した戦兎は、ストラーダに殴りかかる。

 

しかしそれは軽く避けられ、デュランダルで切り返す。

 

「くっ!」

 

それを転がって避けながら、戦兎もデュランダルを取り出した。

 

「ほぅ?面白い力だ」

「デュランダルにはデュランダルだ!」

 

そう言ってデュランダルで切り結ぶが、ストラーダは涼しい顔で受け切る。

 

「確かにそれは本物らしい。使う力もな。だが、それでは私には勝てん!」

「っ!」

 

デュランダルを弾かれるが、聖魔剣を複数作り出し、連続射出。それをデュランダルを高速で回転させて弾き切り、

 

「お前はただ力を使っているに過ぎない。様々な力を同時に駆使し、本来にはない力を発揮する。だが、極めた1の力を、お主は知らぬのだ!」

「っ!」

 

戦兎は咄嗟にダイヤモンドの壁を作るが、ストラーダはそれを拳で破壊し、振り上げたデュランダルで斬った。だが、

 

「偽物か」

 

斬られた戦兎は、ボフンと音を立てて煙とともに霧散し、別の所に現れる。

 

「バケモンだな」

 

そう思わず呟く。ジーニアスの力は、別世界の仲間たちの力もフィードバックされている。剣術の実力としても、ゼノヴィア、祐斗、イリナの実力が反映されている。

 

つまりあの老人は、少なくとも剣術だけに限ってはあの三人を合わせ他よりも強いということだ。

 

勿論、単純な強さだけではなく、戦い方という面では、戦兎に依存するため、必ずしもそうなるとは限らないが。

 

「オラオラオラァアアアア!」

 

すると煙の中から龍誠も飛び出し、ゴリラのパワーを付与してストラーダを殴りつける。

 

「ぬぅ!中々の一撃!じゃがまだまだよ!」

 

しかし逆に龍誠が殴り飛ばされ、吹き飛んだ。

 

「ならこれはどうかしら!」

 

入れ替わるようにリアスと朱乃の、滅びの魔力と雷光の同時攻撃。しかしそれは、

 

「喝!」

 

ストラーダはなんと、気合いでかき消した。

 

「嘘でしょ」

「一体どういう能力を」

 

持っちゃいねぇよ。と朱乃にアザゼルは槍を多数展開し、一気に放つ。

 

それもデュランダルで弾き切り、

 

「あの男はな。ただの人間だ。魔力も光もない。ましてや神器もない。ただの人間だ。唯一できるのは、デュランダルを扱うことだけ。だから鍛えまくったのさ。信仰心を胸に、限界を超え続け、気づけば、デュランダルを持たずとも聖なるオーラが全身を覆うようになり、拳でも悪魔を屠れるようになった。言うなれば、人間の到達点」

 

それがヴァスコ・ストラーダという男さ。アザゼルの説明に、リアスは息を呑む。ただの人間がそこまで到達できるのかと。すると、

 

「はぁあああ!」

 

エクスデュランダルを構えたゼノヴィアが、ストラーダに突っ込む。

 

「全く。そんな訳のわからない装飾を施すとは」

「何を!」

 

ゼノヴィアとストラーダは切り結ぶ。

 

「貴方ほどの御方が反乱だけではなく、テロリストとも手を結ぶとは!」

 

エクスデュランダルをブンブン振り回し、ストラーダを追うが、それを軽々と避け、デュランダルの切っ先をゼノヴィアに突き付けて動きを制する。

 

「デュランダルはそれ単体で完成された聖剣。それにジャラジャラとつけるなど言語道断だ」

「くっ!黙れ!」

 

ゼノヴィアは一旦下がり、エクスデュランダルを輝かせて振り上げた。

 

「おぉおおおお!」

「成程。それが今のお主の全力か」

 

それに合わせ、ストラーダもデュランダルを掲げると、ゼノヴィア以上の輝きを放つ。

 

「さぁ、いつでも来るがいい」

「この!」

 

互いに聖なる波動を纏わせた一撃を放つが、ゼノヴィアの一撃をあっさりとストラーダの一撃が押し切り、ゼノヴィアに襲い掛かる。

 

「ゼノヴィア!」

 

そこに龍誠と戦兎が割って入り、龍誠が地面を殴るとマグマが隆起し、それが冷えて固まると、壁のようになる。更に戦兎がそれをダイヤモンドでコーティングし、

 

「ロスヴァイセさんの力とサイラオーグさんの力で!」

 

北欧魔術の結界と、サイラオーグのレグルスの力で更に包み込む。レグルスの力は飛び道具の無効化だ。幾らデュランダルの力でも、遠距離攻撃には変わりないので、これにも効果があるはずだ。

 

しかし、

 

『なっ!』

 

壁がストラーダの一撃と激突すると、ビキビキ音を立ててヒビが入っていき、砕け散ると?戦兎達に当たり爆発。

 

威力が減衰していたためか、変身が解除されることはなかったが、戦兎達は地面を転がった。

 

「なんて威力だ、私の倍じゃ足りないぞ」

「モロに食らってたら変身解除どころか消し飛んだんじゃないか?」

 

ゼノヴィアと戦兎は立ち上がりながら言うと、ストラーダは地面にデュランダルを突き立てる。

 

「どうした?それで終わりか?」

 

どうする?と皆が顔を見合わせた瞬間、

 

『っ!』

 

突如空から飛来した黒い物体に、戦兎達は身構えると、そこにいたのは、十代前半の少年。しかしその体は半分以上が魔獣に侵食されていた。しかし、それには不釣り合いな、人間の部位からは真っ白な片羽が生えている。

 

「テオドロ殿!下がっておられよ!」

「ならヌ!悪魔ハ私が殺スのダ!」

 

ビキビキ音を立てて、魔獣側の腕が伸びて襲い掛かる。

 

「侵食なら!」

《ワンサイド!》

 

レバーを回し、戦兎は拳を握る。

 

《Ready Go!ジーニアスアタック!》

 

伸びてきた触手を殴り、ジーニアスの力が触手を伝わって浸透していくが、

 

「ガァあああああああ!」

 

テオドロと呼ばれた少年が叫ぶと、ジーニアスの力が押し返され、触手がそのまま戦兎を吹き飛ばした。

 

「がはっ!」

「戦兎!」

 

龍誠が駆け寄り、大丈夫だというが、

 

「ジーニアスが負けただと?」

 

戦兎はそっちのほうが驚きだった。

 

「殺ス。悪魔は滅びヨ!」

 

テオドロは更にこちらに来ようとするが、

 

「なりませぬ!」

 

ストラーダはそれを抑え、

 

「引くぞ!」

 

ストラーダが声を上げると、方々から声が上がり、相手が次々転移で消えていく。

 

「話すノだストラーダ卿!」

「なりませぬ!」

 

ストラーダに引かれ、テオドロは消えていくが、

 

「覚悟しロ。悪魔!オ前達は、私が滅ボしテやル!」

 

そんな呪詛を流し、テオドロは消えていき、戦兎達は一息吐くと、

 

「何なんだあの子は……」

 

テオドロから感じたのは強い恨みだ。許さぬと。だが自分達に彼から恨まれる覚えはない。そう思っていると、

 

「彼等については私から話しましょう」

『ミカエル様!?』

 

そこに現れたミカエルに、戦兎達は驚くと、アザゼルが、

 

「やはりアレか?」

「えぇ、それでは皆さん。詳しい話はこちらへ」

 

ミカエルに導かれ、戦兎達は移動を開始するのだった。



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怨念

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「ストラーダに敗北し、ミカエルさんに連れられやってきた俺たちだったが……」
龍誠「いやぁ、しっかしバケモンみたいな爺さんだったよなぁ」
戦兎「たしかになぁ。それに他にも色々不可解な点があるし、謎が深まるばかりだぜ」
龍誠「だがそれでも俺達が戦うことには変わりない。だろ?」
戦兎「あぁ!ってわけでそんな感じの156話スタートだ!」


「奇跡の子?」

 

ミカエルに連れられてきた場に集った戦兎達は、ミカエルの言葉に首を傾げた。するとイリナは、

 

「天使ってね、邪な感情を抱いたりそれに溺れると、堕天しちゃうの。だけど天使同士でも子供を作らなくちゃでしょ?だから特別な儀式を行い、そういった邪念を一切持たずに子供を為す。そうやって生まれた子を、奇跡の子っていうの」

「邪念を持たず……」

 

戦兎は思わず呟きながら思い浮かべるが、一体どんな心持ちでやっているのだろうか。

 

「まぁイリナさんの言う通りです。そしてテオドロ殿は天使と人間のハーフでありながらも、その中でも非常に高い才能を発揮し、あの若さでヴァチカンのナンバー2の枢機卿にまで上り詰めました」

「それならなんで反乱なんかを」

 

リアスの問いに、ミカエルは暫し黙り込むと、

 

「彼は最後まで。いや、今もなお他の陣営との同盟。主に悪魔との同盟に反対しております」

「何で悪魔にそこまで……」

 

さっきもそうだが、テオドロは悪魔に強い憎しみを抱いていた。その原動力が何なのか。そう問うと、

 

「彼の両親は眼の前で悪魔に殺されているのです」

『っ!』

 

その言葉に、皆は息を呑む。

 

「テオドロ殿を守るため、我が身を呈して庇い、残った体力で悪魔を滅しました。そして残されたのが彼で。彼は悪魔への憎しみを持ちながら、しかし堕天しないだけの高潔な精神の宿していました」

「そうか」

 

戦兎はその時思い出す。

 

「テオドロ、堕天してないんだ」

 

その言葉で、あの場にいた面々も思い出す。あのときに見た、テオドロの羽はまだ白かったことに。

 

「八坂さんから聞いたことがある。魔獣に体を侵食される感覚って、外側より内面の変化がヤバいって。あっという間に自我を黒く塗りつぶされる感覚。正気を保っていることなんて不可能だったって」

「でもあのテオドロって自我を保ってたじゃないか。ちょっと喋り方おかしかったけど」

 

それはこれを読んだほうがいいかと。そう言って、ミカエルが差し出したのは一枚の紙だ。

 

「ストラーダ殿が残したものです」

『っ!』

 

そう言われ、皆は集まってその紙を見る。

 

【これを見ているということは、恐らく私はテロリストとして人生を締めくくる覚悟を決めたのでしょう。

まず最初に、このような事態を引き起こしたこと、謝って済むことではありませぬが、誠に申し訳ない。ですがそれでも、私には無視することができなかった。

ある晩、テオドロ殿が私を訪ねてきた。此度に同盟、やはり納得がいかない。そのために教会に引いては天界及び世界に反旗を翻す。その為に力を貸して欲しいと。勿論最初は止めました。そんな事は辞めるべきだと。幾ら同じ思いを持つものがいたとしても、勝てぬ戦いになるのは明白。しかし、テオドロ殿が着ていたローブを外すと、そこは既に人あらざるものに変わっておりました。

それは日本の京都で行われた、魔獣による肉体の侵食なのはすぐに気づきました。

そして彼は言いました。徐々に自分が自分じゃなくなっていく。だがそれでも、少しでも戦いの役に立つならばと受け入れたことを。

まっすぐ私の目を見て放たれた言葉に、私は言葉を失いました。そして二度目にその口から放たれた勧誘の言葉を

振り払う言葉を、私は持ち合わせていなかった。このテロ行為も、テオドロ殿を止めることができぬのも、全て私の弱い心が原因でございます。天界には私と戦うことに拒否感を示すものもおりましょう。ですが遠慮はいりませぬ。殺す気で掛かってきてくだされ。私が頼めた義理ではないことは分かっておりますが、何卒お願い致します】

 

そう締めくくられた手紙を起き、戦兎は机を叩く。

 

「その思いを利用したのか……兵藤 一誠は」

 

両親を殺され、悪魔を心底憎んでも、それでも堕天しなかった心を持った少年を利用したのだ。

 

「えぇ、魔獣化とストラーダ殿のデュランダルを考えても、恐らく禍の団(カオス・ブリゲード)が関わっているのは間違いないでしょう。それで戦兎さん。テオドロ殿ですが、戻すことは可能なのでしょうか?」

「あのときは咄嗟だったからですが、全力のジーニアスフィニッシュなら戻すことは可能だと思います。ただまさか押し返されるとは……」

「恐らく、今テオドロ殿は人間の部分と天使の部分と魔獣の部分が入り組んでおり、それで複雑な肉体になっているのだと思います。大丈夫ですか?」

「えぇ、ハーフの肉体の再構築はギャスパーの時でも成功させたので、問題なく行えます。ただ……」

 

今回の一番の難題は、前回の一件は暴走して自我がないのに対し、今回は暴走に抗い、その上で魔獣の力を求めていること。悪魔による救いを否定し、ジーニアスの力を押し返した。

 

「強引に魔獣化を解くことはさっき言ったように可能です。ですがそれは根本的な解決にならない」

 

そう、それではテオドロの憎しみは終わらない。この戦いの根本は彼の悪魔への憎しみと、それに従う者たちの戦いだ。どうするべきか。そう思った時、

 

「俺がやる」

「龍誠?」

 

そう言って、名乗り出たのは龍誠だ。

 

「あいや、俺だけじゃ魔獣化解けないから、魔獣化だけは戦兎にお願いしなきゃなんだけど……」

 

そんな様子に、戦兎は笑うと、

 

「じゃあ俺が魔獣化は解く。後は任せていいか?」

「おう任せろ!」

 

後はストラーダ殿か。とミカエルは言う。

 

「ストラーダ殿は私が戦う」

「ゼノヴィア……」

 

私が超えるべき相手なんだ。ゼノヴィアは拳を強く握りながら、そう呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ、はぁ!」

 

ミカエルの話を受けた日の夜、トレーニングルームで、戦兎はジーニアスフォームに変身しながら、デュランダルを振っていた。

 

「なんだ、精が出るな」

「アザゼル先生」

 

デュランダルを肩に担ぎ、戦兎は息を整える。

 

「どうした?珍しいじゃねぇか」

「あの爺さんに言われたんだ。俺の剣はただ力を使ってるだけだって。極めた力には勝てないって。だから少しでも剣を振っておけば次戦ったときに……っておい、何笑ってんだ」

 

戦兎は怪訝な顔をしながら、アザゼルを見ると、彼はそっぽを向いて肩を震わせて笑っていた。

 

「いやわりい。意外とお前も気にしてたんだなと思ってな」

「あのな」

 

文句を言おうと笑うアザゼルに近寄ると、アザゼルは指先で戦兎の額を小突く。

 

「あのな戦兎。そもそもの前提が間違ってんだよ」

「なに?」

「あの化け物爺さんはお前も知っての通り、デュランダルを只管振り続けた末の強ささ。それこそお前が生まれるよりずっと前から、晴れてようが雨降ってようが雪降ろうが、槍がふろうが、何があっても振り続けて、戦い続けた。勿論その中で沢山失って、それで膝を折りかけた事もあっただろうな。でもそれでも、あの爺さんは爺さんになる前から覚悟を決めて立ち上がり続けた。挫折と絶望を星の数ほど味わい、それでもデュランダルを振ることを辞めなかった。それがヴァスコ・ストラーダという男だ。それにちょっと言われて振った程度のデュランダルで戦おうってのが間違ってるぜ」

 

じゃあどうするんだ!と戦兎が聞くと、

 

「そんなもん。他にあるもんでどうにかするしかねぇだろ。そもそも、お前はそうやってきたじゃねぇか。あんな爺さんと同じ土台で戦おうとすんな。お前はお前として戦えばいい。そうすれば勝てるさ」

「バケモンとかあんたがいう爺さんにか?」

 

戦兎は皮肉のつもりでそう聞くと、アザゼルは優しい笑みを浮かべながら、

 

「あぁ、俺はあの爺さんの強さもよく知ってる。だが同時に、お前らの強さもまた、良くわかってるさ。そしてお前らのことを俺は信じてんだよ」

 

そう言い、アザゼルは戦兎のドライバーからジーニアスボトルを引き抜き、戦兎が慌てて取り返そうとするがそれを軽く避け、戦兎の頭をグシグシと撫でた。

 

「自信持ちな。俺はな、ストラーダどころか、兵藤 一誠との戦いにも、最終的にはお前らが勝つって信じてんだよ。俺の全財産をベットしてもいい」

 

まぁ有り金殆ど無いけどな。とオチをつけられ、ズッコケながらも戦兎はアザゼルに釣られて笑うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゼノヴィア」

「ん?あぁ龍誠」

 

バルコニーにて佇むゼノヴィアの元にやってきた龍誠に、ゼノヴィアはどこか上の空で返事をする。

 

「何してるんだ?」

「あぁ、今度の選挙で何を話すか考えていたんだ」

 

そう。コイツは今度の生徒会選挙に立候補している。確か相手には匙とかもいたはずだ。

 

「だが何を話すべきかと思ってな。勿論今までの候補者がどんな話をしてきたかは聞いてきたんだが、どれもしっくりこない」

「そもそも何で生徒会長になろうと思ったんだ?」

「うむ。最近勉強を頑張ってみただろう?それで点数が上がって、色々なことを学んだり挑戦するのが楽しくなったんだ。そしたら今度はそれを後押しする立場というか、その土台を作る側にも興味が湧いてな……だからだ」

「じゃあそういえばいいんじゃね?」

 

流石に変じゃないか?というゼノヴィアに、龍誠はでもさ、と言いながら、

 

「下手な建前を並べるよりも、お前の気持ちをぶち撒けた方がいいんじゃね?基本的にお前勉強できるようになっても単純脳筋だし」

 

失敬な、とゼノヴィアは半目で見てくるが、そのあと直ぐに成程、と頷き、

 

「自分の気持ちか」

 

そう呟きながら、ゼノヴィアは何かを確信するのだった。



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宣言

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「助言を受け、吹っ切れた俺達だったが」
龍誠「いやぁしかし皆悩みが多くて大変だなぁ」
戦兎「確かにどっかの単細胞くんには悩みはなさそうでいいなぁ」
龍誠「誰が単細胞だ!」
戦兎「ま、それでも救われるやつがいるんだからいいだろ?」
龍誠「た、確かに?」
戦兎「そんな感じの157話スタート!」


「えぇと、まずは……」

 

カンペを見ながら、ブツブツと呟いているのはアーシア。

 

今日は生徒会選挙前の、全校生徒前で行う最後の演説がある。その際には、立候補者達が推薦した人間による、応援演説もある。今回ゼノヴィアの応援演説をするのがアーシアで、最初はイリナという話もあったが、アーシアは現在来年からオカルト研究部の部長予定である。

 

なので、現在の部員でもあるゼノヴィアの応援演説はアーシアに任せようという話になり、ここ最近ずっとウンウン唸りながら書いていた。

 

ゼノヴィアも少し緊張した面持ちだが、自信が満ち溢れている。

 

しかしそこに、

 

「皆!」

 

リアスが飛び込んできて、

 

「再び天界での反乱が起きたそうよ!」

「こんなときに!?」

 

先程まで自信で満ち溢れていたゼノヴィアも、顔色を変えて立ち上がる。だが、

 

「お前は演説を済ませてこい!」

 

龍誠がゼノヴィアの肩を掴み制止するが、

 

「だが!」

「だけどもなにもないだろ」

 

反論するゼノヴィアを止めたのは、戦兎で、

 

「安心しろよ。お前が来るまでもたせるどころか、勝っちまうかもだからさ」

 

そう言い、リアスたちにも目配せすると、戦兎達は走り出す。

 

「匙も演説が終わってから来るように」

「え?あ、はい!」

 

ソーナも匙にそう指示をし、こちらに続いた。

 

「全くタイミング悪いな」

「仕方ないだろ」

 

互いにそんなことを愚痴りながら、ベルトを装着し、

 

『変身!』

 

魔法陣に飛び込みながら、変身するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良いのですな?」

「あぁ」

 

ストラーダとテオドロは並んで立ち、背後に仲間たちを連れて歩く。そこに、

 

「来たか」

 

ストラーダが呟くと同時に、眼の前に戦兎達が魔法陣から現れ、テオドロは憎々しげに睨みつけてくる。

 

「いいな皆」

「あぁ!」

 

戦兎はそう言って右手を前に出すと、テオドロの背後にスマホの画面が現れ、戦兎がそこから出現し、テオドロを引き剥がす。

 

「させん!」

 

しかしストラーダはその不意打ちにも反応し、拳を向けてきた。だが、

 

「そっちこそだよ!」

 

相谷龍誠が割って入り、ガードを破られながらも、戦兎がテオドロを引き剥がす一瞬の隙を作り出した。

 

「やってくれるな」

「まぁな」

 

背後の仲間達もテオドロを助けようと動くが、リアスやソーナ達の攻撃で阻まれる。

 

「さぁ、実験を始めようか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし行くぞ!」

「うん!」

 

匙に演説が終わり、応援演説を引き受けた匙の仲間は二人で体育館から飛び出す。

 

その間にアーシアはゼノヴィアの応援演説を行い、ゼノヴィアの番になる。

 

息を吸い、ゆっくりと吐き出しながら、壇上に上がると、

 

「こんにちわ」

 

まずは当たり障りのない言葉を紡ぎながら、周りを見舞わす。見知った顔や、関わったことのない顔。そして、体育館の隅っこにいるのは、シスターグリゼルダがいた。

 

彼女には今日、ここに来て話を聞いてほしいと願い、来てもらった。彼女にも、反乱の話は来ているはずだが、それよりこちらを優先してくれたことに、感謝しかない。

 

そして、

 

「私は孤児だった」

 

突然の身の上話に、会場がザワつく。

 

「昔から一つのことだけに撃ち込んできた。それ以外の道は関係ないと思っていたし、興味もなかった」

 

流石に教会の戦士として戦っていた事は言えないので、そこは誤魔化しつつ話し、

 

「だがこの学園で様々な経験を得た。学び舎で友人達と学び、食事を共にし、遊ぶという経験。それは新たな私を作り出した。一つの道以外にも、沢山経験し、そしてこれからもまだ見ぬ経験をしていきたい。そして私が得た分、皆にも経験してほしい。まだ見ぬ世界を知ってほしい。だから私は、誰かのまだ見ぬ世界を見せる手伝いをしたい。そして私自身がもっと沢山の世界を見たい」

 

そう言って、ゼノヴィアは体育館を見回し、

 

「それが私が……ゼノヴィア・クァルタが目指す生徒会だ!」

 

そう宣言し、ゼノヴィアは壇上を後にする。

 

「行くぞアーシア!」

「もういいんですか?」

「あぁ、全部伝えた!」

 

ゼノヴィアは制服を脱ぎ捨て戦闘服に着替え、アーシアと共に魔法陣に飛び込む。

 

そして会場がザワつく中、グリゼルダはそっとその場を後にし、

 

「全く。勝手に言いたいことを言って好き勝手にどこか行ってしまうのは相変わらずね」

 

ずっとゼノヴィアを目にかけてきた。将来有望というのもあるが、それ以上にほっておけない危なさがあった。そんな彼女が、今日こうして宣言し、走り出した。

 

「あなたの旅立ちの祝いと言うには少々安いかもしれないけど、欲しければあげるしかないわね」

 

ゼノヴィア・クァルタ。いい名前じゃない。そう呟き、グリゼルダは笑う。

 

「今更(お姉ちゃん)が出しゃばる必要もなさそうね。気をつけていきなさいね」

 

ゼノヴィア()。グリゼルダは、そういい残し、その場をあとにするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ!」

 

無数に迫る触手を次々避け、戦兎は隙を伺う。

 

(どうにか隙があれば渾身のジーニアスフィニッシュを打ち込めるのに……)

 

悪態を吐きつつ、戦兎は更に速度を上げるが、

 

「オォオオオ!」

「ん?」

 

空から何やら声が聞こえ、上を見るとエクスデュランダルを構えたゼノヴィアが落ちてくる。

 

「はぁああああ!」

「マジかあいつぅうううう!」

 

全身を虹色に発光させ、最高速度で戦兎はその場を離れると、爆発と轟音と共に、触手が吹き飛び、

 

「今だ!」

「サンキュー!」

《ワンサイド!逆サイド!オールサイド!》

 

戦兎は砂塵の中に突っ込み、レバーを回すと、背中から虹色の羽のようなものが現れ、それで砂塵を吹き飛ばすと、テオドロにライダーキックを叩き込む。

 

「がっ!」

 

地面をガリガリと削りながら押していき、そのまま蹴った反動で吹き飛ばすと、テオドロの魔獣部分が消失した。

 

「く、くそ!」

 

テオドロは魔獣部分が消えても、天使の力はあるため、それを使って反撃しようとしたが、

 

「は?」

 

ポカンと思わずしてしまう。それもそのはず、戦兎とゼノヴィアは、テオドロに背を向け走り出していたからだ。

 

「ま、待て!」

 

驚きながらもそれを止めようとしたが、

 

「後は頼んだぜ!」

『あぁ!』

 

それと入れ替わるように龍誠が変身を解除しながら走ってくると、拳を握って、

 

「おらぁ!」

「ぶっ!」

 

何とそのまま殴りつけたのだ。

 

「立てクソガキ!お前の相手は俺だ!」

「ぐっ……悪魔風情が!」

 

そして、

 

「急に逃げ出すからなにかと思ったが、まさか入れ替わるとは」

「ストラーダ殿……いや、ストラーダ!」

 

エクスデュランダルの切っ先をゼノヴィアは向け、

 

「貴方の凶行、私が……いや」

 

ゼノヴィアは戦兎を見ると戦兎も頷き、エクスデュランダルを取り出す。

 

『(俺)(私)達が止める!』



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エクスデュランダル使い

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……


戦兎「ゼノヴィアの宣言と共に、開始される反乱側との決戦だが」
龍誠「テオドロを戻し、それぞれの決着をつけるぜ!」
戦兎「しかし今回表土意 一誠が関わってこねぇな?」
龍誠「確かに……」
戦兎「まぁいいや。そんな感じの158話スタート!」


『オォオオオ!』

 

エクスデュランダルを手に、ゼノヴィアと戦兎はストラーダに向かって走る。

 

「前にも言ったはずだ。余計な装飾品を着けた剣では私には勝てん!」

 

ストラーダはそれをデュランダルで受け止める。しかしゼノヴィアは笑うと、

 

「あぁ、勝てないだろうな」

「なに?」

 

諦めただと?とストラーダは眉を寄せる。

 

「最初から勝てぬと諦め、我が前に立ったというのか!」

「違う!私一人では無理だという意味だ」

 

それと同時に、戦兎と二人で押し返し、

 

「ゼノヴィア!」

「あぁ!」

 

戦兎はエクスデュランダルを放り投げると、ゼノヴィアはそれをキャッチ、

 

「はぁ!」

 

戦兎は拳を握るとストラーダを殴る。しかし、オーラのようなものを纏った体はビクともしない。

 

「相変わらずホント人間かよ!」

「そちらこそ私のオーラに当たれば並の悪魔であれば、それだけで消滅させられるのだが」

 

ホント人間!?と戦兎は若干ドン引きしつついると、ゼノヴィアが背後から飛び上がり、エクスデュランダル二刀流で飛び掛かる。

 

「オラオラオラァアアア!」

 

エクスデュランダルをぶん回し、刀身を強く輝かせ、

 

「デュランダルはそれだけで完成された剣かもしれない。だがエクスカリバーを重ねることが邪魔とは限らない!」

 

元々デュランダルの過剰な破壊力を抑え、制御しやすくするためのエクスカリバー。だがそれをゼノヴィアは全て攻撃に向ける。

 

「貴方は歴代最強のデュランダル使いだ。だが私は、初代エクスデュランダルの使い手だ!エクスデュランダルはまだ誰も使ってない。ならばその可能性も無限大だ!」

 

ゼノヴィアは更に剣速と刀身の光を上げ、

 

「王道も邪道も全て糧として、私は前に進む!」

 

ガン!っとエクスデュランダルを叩きつけ、ストラーダは後退る。

 

(エクスカリバーをデュランダルを抑えるカバーとしてではなく、デュランダルもエクスカリバーが互いに力を共鳴させて高め合うようにしている)

 

まるでデュランダルとエクスカリバーが、もっと力を上げれるぜと言わんばかりに、エクスデュランダルは更に光る。

 

(まるで意思があるかのようだ)

 

ストラーダは感嘆の息を漏らした。デュランダルの使い手という意味なら誰にも負けない自負がある。だが、ここまで聖剣に愛される使い手がいるだろうか?いやおるまい。

 

「妬けるな」

 

ストラーダは思わず笑みを浮かべ、

 

「良かろう。認めようじゃないか。お前はデュランダル使い……いや、エクスデュランダル使いのゼノヴィア!」

「オオオオオオ!」

 

ゼノヴィアはエクスデュランダルの輝きを増させ、二刀で攻め続けるが、ストラーダはそれを全ていなし、

 

「聖拳」

「っ!」

 

ストラーダは、空いた拳を握り、オーラを集めると、それで殴りつけてきた。

 

「ぐっ!」

 

ゼノヴィアはそれをエクスデュランダル交差させて受けるが、それでも吹き飛ばされる。

 

「はぁ!」

 

そこに戦兎が割って入り、フルボトルバスターで切りつけた。

 

「ぬぅ!」

 

刃を回転させ、押し切ろうとするが、オーラに阻まれ火花を散らす。しかし、

 

「半減!」

「っ!」

 

戦兎はそこに、半減の力を発動させ、ストラーダのオーラを削り取り、

 

「ぐぉ!」

 

ストラーダの胸に傷を刻んだ。

 

「ゼノヴィア!」

「おう!」

 

ゼノヴィアは走り、刀身を輝かせると、一気に振り下ろす。

 

「まだまだ!」

 

ストラーダはデュランダルでそれを受ける。

 

両者一歩も引かぬ押し合いだが、

 

「むっ!」

 

なんとストラーダが持っているデュランダルにヒビが入った。

 

「オォオオオ!」

 

ゼノヴィアはそこをつくように、押し込みながら刀身を輝かせ、

 

「はぁああああ!」

 

遂にストラーダのデュランダルが砕け散る。しかし、

 

「まだ終われん!」

 

そう言って拳にオーラを集め、ゼノヴィアを狙うが、

 

「デュランダルは私が、貴方自身は主役に任せる」

《Ready Go!》

 

ゼノヴィアが横に飛ぶと、背後からキックの大勢に入った戦兎が飛び込み、

 

《ジーニアスフィニッシュ!》

「聖拳!」

 

戦兎のジーニアスフィニッシュと、ストラーダの聖拳がぶつかる。

 

「ぬぉおおおお!」

 

ストラーダは全身の筋肉を躍動させ、戦兎を押し返そうとする。だが、

 

「負けるかぁああああ!」

 

戦兎の全身が一瞬白から金色に変わり、ストラーダを一気に押し切ると、そのままストラーダを吹き飛ばした。

 

「はぁ、はぁ」

 

戦兎は地面に降りると、ストラーダが吹っ飛んだ先を見る。

 

「ハッハッハッハ!」

 

舞い上がる砂塵の中から、ボロボロのストラーダが、それでもしっかりとした足取りでやってくる。

 

「おいおいマジか」

「本当に人間なんだろうか……」

 

戦兎とゼノヴィアが構えるが、

 

「降参だ」

『え?』

「紛い物とはいえ、デュランダルを砕かれ、聖拳も破られた。これ以上足掻くのは、余りにもみっともなさ過ぎる」

 

ガハハと笑い、その場に座り込むストラーダ。そして、

 

「全員止まれい!」

 

その声に、反乱側の面々が止まる。

 

「もう終わりだ」

 

ストラーダの重く、静かな声に、皆がそんな、とか嘘だと口にするが、逆らうものはいない。

 

「終わった、のか?」

「多分?」

 

戦兎はゼノヴィアに返しつつ、龍誠の方を見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し時間を戻し、龍誠がテオドロの前に立った直後頃、

 

「立てクソガキ!お前の相手は俺だ!」

「ぐっ……悪魔風情が!」

 

龍誠に光の輪を投げつけるが、龍誠はそれを避けてテオドロを殴り飛ばす。

 

「あ、ぐ」

「どうした?その程度か?お前が憎くて憎くて仕方ない悪魔が眼の前にいるんだぞ?」

 

龍誠がそう追って煽ると、テオドロは睨みつけながら殴りかかってきた。しかし10代前半程の体格のパワーでは、対した威力はなく、殴ってもペチっと音がするだけだ。

 

「ふん!」

 

更に龍誠は殴る。

 

「うぐっ!」

 

地面を転がりながらも、テオドロはまた殴りかかってくるが、龍誠は殴り返す。

 

立っては殴られ、殴っては殴り返され、テオドロはあっという間にボコボコにされた。

 

するとテオドロはボロボロと泣きながら、

 

「何故だ……何故かてんのだ!」

 

地面を殴り、テオドロは叫ぶ。

 

「何故悪魔に勝てんのだ!」

「……」

 

龍誠はそれを静かに見つめると、テオドロは睨みつけてくる。

 

「私に力があれば……あの力があれば!」

「それでどうすんだよ」

 

龍誠の問いかけに、テオドロは睨み返す。

 

「悪魔を滅ぼす!一体たりとも残さず殲滅する!」

「その後どうするんだ?」

 

それで終わりだ。テオドロはそういう。

 

「未来などいらない!悪魔がこの世から滅びるなら私に明日などいらない!」

「……」

 

テオドロの言葉に、龍誠は悲しそうな目を向けると、

 

「悪魔が私に同情するなぁ!」

 

テオドロは龍誠に光の輪を作り出し発射。それは龍誠の顔の真横を通って背後に飛んでいった。

 

頬を浅く切り裂き、シュウシュウと煙を立てる。

 

「悪魔が私を憐れむな!悪魔のせいで……私の両親は死んだんだ!」

 

両親に愛される日々を失ったのも、暖かい家族を奪ったのもお前達悪魔だ!そういうテオドロに、龍誠は口を開くと、

 

「羨ましいよ。お前が」

「何だと……?」

 

ピキっとテオドロが怒りをにじませる。

 

「何が羨ましいんだ?」

「愛されてるってのを肌で感じれたことさ」

 

なに?とテオドロが眉を寄せた。

 

「俺は物心付く前に、両親に兵藤 一誠の手によって捨てられた。そのあとは俺も両親の顔も知らない。それでも俺の両親は普通に家庭を大切にし、普通に子供を愛してくれる人だって言うのがわかったけどな。その後も初恋の人を殺されたこともある。理由は幸せそうだったからだぜ?まぁそれも兵藤 一誠の策略だけどな」

 

俺はそうやってずっと奪われ続けてきた。

 

「でもな、それでも俺は兵藤 一誠は許せないけど、憎しみで戦ってはいない。憎しみで戦っても、何もならない」

 

とそこまでいった龍誠だが、

 

「って言っても納得しないだろ?簡単に納得なんて出来るわけがねぇ。だからよ、怒りも憎しみも俺にぶつけろよ。お前の大嫌いな悪魔が眼の前にいるんだからよ」

「アァアアアア!」

 

テオドロは龍誠に飛び掛かる。殴っては殴り返され、また殴っては殴られ、殴り飛ばされては立ち上がって投げ飛ばされる。

 

全身土にまみれながら、テオドロは何度も龍誠に襲い掛かり、龍誠にぶっ飛ばされた。

 

「う、う」

 

テオドロは涙と鼻水まみれの顔で、再度立ち上がる。

 

そしてまた殴りかかるが、龍誠にカウンターを決められ地面に転がった。そして、

 

「う、うわあああああん」

 

ボロボロと涙を流し、声をあげて泣き出した。

 

「お、龍誠が子供泣かしてるぞ」

「う、うっせ!」

 

そこに戦兎達がやってきてからかうと、龍誠は声を荒げて反論する。

 

「テオドロ殿」

「ストラーダ……」

 

しゃっくりしながら、テオドロはストラーダを見ると、

 

「もうここまでにしましょう」

「……」

 

テオドロは泣きながら下を向く。その時、

 

「おいおいもう終わりかぁ?」

『っ!』

 

その声に、戦兎達は顔を上げると、そこに立っていたのは一誠だ。

 

「やっとお出ましか。随分今回は遅かったじゃねぇか。前にボコられた傷がまだ痛むのか?」

 

戦兎は一誠にそう言うが、余裕そうだ。

 

「いや?今回はちょっと準備が忙してな」

 

そう言って、一誠はスイッチを押すと、戦兎たちの足元が突然歪み、戦兎達が飲み込まれてしまう。

 

「不味い!皆!」

「テオドロ殿!」

 

それぞれが近くにいる仲間達の手を掴み、浮遊感を感じると同時に、そのまま落下していく。

 

「クソ!」

 

そこに慌ててアザゼルも駆けつけるが、既に皆どこかへ飛ばされたあとだ。

 

「先生!」

 

そこに祐人たちもやってきて、

 

「やられましたね」

「あぁ。飛ばされたのは戦兎と龍誠ゼノヴィアにリアスに小猫。あとはストラーダの爺さんとテオドロか」

 

先程まで一誠が立っていた場所を睨みながら、アザゼルは憎々しげに言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、

 

「ここは一体……」

 

突然知らない街に放り出された戦兎達は、周りをキョロキョロと見回す。すると近くの街頭テレビからニュースが流れ、

 

「先日出現した巨大生物を、再び謎の巨人が倒しました。本日は巨大生物の生態に詳しい本間教授をお呼びしております」

「どうも本間です」

「本間教授は先日の一件をどう考えておりますか?」

「えぇ、先日暴れた巨大生物は、本来大人しく、人を襲ったり暴れたりしません。つまりこれは今までにない何かが起きている。もしくは、そもそもの考えが間違っているかです」

「というと?」

「SNSでは、まるであの巨人が正義の味方であるように思われてるようですが、全くそんな事はありません。彼こそが真の黒幕なのです!」

「なんですって!?」

「ここ最近の巨大生物の活性化、そして外星生物の来襲。それとほぼ同時期に現れたあの巨人。しかしそれがあの巨人の仕業なのだとしたら全ての説明が行くのです!」

 

その後も教授は滔々と何やら語っているが、戦兎達は背景に写っている怪獣と巨人が戦う映像を見て困惑。すりと、隣でそれを見ていた男性が、

 

「全く。あの教授何もわかってねぇや。なぁ!」

「は、はぁ」

 

突然声を掛けられ、戦兎は驚きつつ曖昧に答えると、

 

「俺はあの人に助けられたことがあるんだ。だからあの人が黒幕だなんてぜってぇ思わねぇ!」

「あの人って、あの巨人のことですか?」

 

リアスがそう聞くと、男性は驚いた顔をして、

 

「何だお前ら知らねぇのか?今やSNSで聞かない日はないぜ?」

 

男性はコホンと咳払いをして、説明を始めた。

 

「最近突然起き始めた、謎の巨大生物暴走事件。その時突如宇宙から飛来した巨人!」

 

人はそれをこう呼ぶんだ!男性は笑って叫ぶ。

 

「ウルトラマングランド!」




次回、我らウルトラマングランド編。


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第二十二章 惑星(ほし)を守りしグランド
巨人


前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「反乱との戦いを終え、突如知らない世界に飛ばされた俺たち!」
龍誠「しかもそこはウルトラマンとか言う見たことない巨人が戦う世界だった!」
???「さてさてこの世界ではどんなお話が紡がれるのか……」
???《まぁこれからのお楽しみって感じの159話スタートだ!》
戦兎「それ俺のセリフなんだってばぁ!」



「ウルトラマングランドか……」

 

見知らぬ街を歩きながら、戦兎が呟くと、龍誠が此方をみてくる。

 

「あのでっかいやつだろ?しっかしこの世界にもヒーローがいるとはなぁ」

「まぁさっきからSNS見る限りウルトラマングランドは人類の味方じゃないっていうやつも結構多いけどな」

 

と、ビルドフォンを見ながら戦兎が言うと、リアスは驚いた顔をし、

 

「貴方こっちでもスマホ使えるの!?」

「えぇ、最近別の世界に関わることが多いので、改造して電波さえ飛んどけばその世界で使えるようにしときました」

 

地味に凄いことしてるわね……とリアスは苦笑いを浮かべると、

 

「あぶっ!」

「あら?」

 

曲がり角でリアスが別の人間にぶつかり、リアスの胸で弾かれて後ろに吹っ飛んだ。

 

リアスも悪魔なので、身体能力は言うまでもなく高く、体幹も強い。そして自分の半分程しかない身長の少年とぶつかった程度では揺るがない。

 

「あらごめんなさい。大丈夫かしら?」

「あ、いえこちらこそごめんなさい」

 

150と少し程の身長の少年は、ペコリと頭を下げながら顔を赤くしながら立ち上がる。

 

「ごめんなさいね」

「いやこっちも焦ってたから」

 

そんなやり取りを皆で見ていたその時、少年の胸元から声が響く。

 

《待て陸人!コイツらだ!》

『え?』

 

戦兎たちだけではなく、少年も驚いた声を漏らすと、

 

《体借りるぞ!》

「あ、ちょ!」

 

何やら会話する少年は、突然脱力し、一気に後ろに向かって跳躍。その速さと高さは、先程リアスとぶつかって吹っ飛んだ少年の身体能力ではない。

 

「お前達。何者だ?」

『っ!』

 

ズンッと響く声音に、戦兎立は息を呑む。あの小柄な少年が、何十倍も大きく感じた。すると、

 

「お待ちいただきたい」

 

ストラーダが前に一歩出て、待てを掛ける。

 

「我等に敵意はありませぬ」

 

ストラーダと少年の視線が交錯し、静けさが辺りを包むと、

 

「失礼した。確かに敵意はないようだ。ここ最近姿を見せる怪物と同じオーラを持っていたのでな」

 

そう言って、少年は頭を下げると、先程までの雰囲気から一転、元の雰囲気に戻り、

 

「ちょっとグランドさん!急に人の体使わないでよ!」

《す、すまない。咄嗟だったから……》

 

少年は胸元からスマホを取り出し、なにか怒っていた。そしてこっちを見ると、

 

「ごめんなさい!グランドさんが威圧しちゃって!」

 

と言って、スマホの画面をこちらに向けてきた。そしてその画面を見ると、

 

『あぁ!』

 

そこに写っていたのは、先程テレビやSNSで見た姿。そう、ウルトラマングランドと呼ばれている者だ。

 

「ウルトラマングランド!ってことはまさかお前が!?」

 

戦兎は驚いて少年を見ると、少年は少し悩み、

 

「えぇと、僕がグランドさんではないんだけどグランドさんというかえぇと……」

《私が説明しよう》

 

スマホの画面の中のグランドは、そう言って話だし、

 

《私はこことは別の宇宙にある、M78星雲・光の国からある人物を追って来た。そうだな……この星的に言えば、宇宙人だ》

「宇宙人……」

《あぁ、そしてこの星に来たのはいいのだが、ある事情があって、私は地球での活動が他のウルトラマン達以上に制限されていてな、その為この少年、青空 陸人と融合し、有事の際に本来の姿に戻って戦っている》

 

成程、とリアスはうなずき、

 

「因みに話は変わりますが、先程言っていた、同じオーラを持っていたというのはどういうことですか?」

 

リアスの問に、戦兎達も確かにとなる。今まで、別世界の人間達に誤解される時は、兵藤 一誠がなにかして、同じ顔をした龍誠が間違われるのが常だったが、今回は少し違う。全員が疑われていた。

 

《ふむ。厳密に言えば、そこのご老人と少年からは感じない。だから私も対処に迷ったのだ》

 

ストラーダとテオドロ以外、残った面子の共通点、それは悪魔であるということだ。

 

(どういうことだ?)

 

戦兎がそんなことを考えた時、ストラーダは振り返る。

 

「なにものだ!」

 

そこに現れたのは、男女の集団。何だ?と皆が思った時、突如ビキビキと音を立て、その姿を変えていく。それは魔獣に侵食された者たちと同じ特徴だ。

 

「アイツらだ!」

 

陸人が叫ぶと同時に、戦兎と龍誠はベルトを装着し、

 

『変身!』

 

ジーニアスとクローズマグマに変身する。

 

「まずは魔獣化を解く!」

《Ready Go!》

 

戦兎は最初に飛び出してきた魔獣化した男に、ジーニアスフィニッシュを放つ。

 

「っ!」

 

あっさり魔獣化は解けた。だがそれと同時に、倒れて動かなくなる。

 

それにストラーダは近づき調べると、

 

「死んでいる……」

「そんなっ!」

 

戦兎はストラーダの言葉に驚愕すると、

 

《そいつ等は化け物状態を剥がすと死ぬようになっている!》

 

グランドが叫ぶ。

 

《生命と力が繋がっているため、解除すれば命も尽きる》

「おいおいマジかよ」

《因みにだが、これは放っておいても死ぬ。生命と力が繋がっているからな。力を使えばその分生命も消耗する》

 

龍誠のぼやきにグランドは追い打ちを掛け、

 

「既に実験済みってことですか」

《あぁ、化け物状態の解除や消耗を狙って見たが、どれも死亡している。それに彼奴等の頭を覗いたことがあるが、どれも空っぽだ。ただ暴れろという命令が動かすだけのな。機械と変わらん》

 

そこまで言うと、陸人はグランドが映るスマホを掲げて、

 

「とにかくこいつらを倒さないと!」

《そうだな。よし陸人!行くぞ!》

「はい!お願いします!」

 

陸人はそう言って、スマホの画面を操作し、グランドの顔アプリをタッチし、

 

《ウルトラマングランド!》

 

スマホを前に向けると、陸人の体を光が包み、少し大きくなると、テレビで見た姿に変わる。

 

「ジャ!」

 

そしてグランドは気合を入れると、他の魔獣化した奴らに飛び掛かった。

 

素早い手刀と蹴り、そして手先から出す光線で牽制しつつ近づき、体当たりを決める。

 

「俺達も負けてられないな」

「だな!」

 

それを見て戦兎と龍誠も走り出し戦い、

 

「私も行くか!」

 

とゼノヴィアも走り出す。しかしストラーダとリアスは、

 

「気づいてるか?グレモリー嬢」

「えぇ、でも今は」

 

あぁ、倒すのが先決だな。とストラーダは頷き、

 

「テオドロ殿。暫しここで待たれよ」

 

とストラーダは言い残し、リアスと共に戦う。テオドロはそれを呆然と見ていた。

 

「ジャァ!」

 

そして、手先から放った光線が相手に炸裂し爆散すると、他の魔獣化した奴らも次々撃破されていく。すると、

 

「なんだ!?」

 

ズンッ!と地面が揺れ、戦兎達は見上げると、そこには巨大な魔獣が闊歩している。

 

「でっか!?」

 

思わず龍誠がびっくりして声を上げると、グランドは陸人の姿に戻り、

 

「でっかいのは寧ろ煎餅特価です!」

『……』

 

全員が思わず首を傾げる。すると、

 

《それを言うなら専売特許だ。陸人》

「それそれ!」

 

そう返しつつ、陸人は再び画面を操作し、

 

「刮目せよ!時代の幕開けだ!」

 

と言って、3つのアプリを起動させる。

 

「グランドさん!」

《ウルトラマングランド!》

「マン君さん!」

《ウルトラマン!》

「ギンガ君さん!」

《ウルトラマンギンガ!》

 

その時、陸人の背後にオーラ状の巨人が出現し、真ん中に立つグランドが叫ぶ。

 

《我等、ウルトラマン!》

「グラァアアアアアアアンド!」

 

スマホを天に掲げ、陸人が叫ぶと陸人を光が包み、オーラ状のグランドと融合。そして両サイドの巨人とも融合し、

 

《ウルトラマングランド!グランガマン!》

 

光の中から生まれた巨人、ウルトラマングランドは魔獣の前に降り立つ。

 

「ジャ!」

 

構えを取り、魔獣に向かって走り出すと、タックルを決めて下がらせる。更に続けざまに連続手刀を叩き込み、魔獣を怯ませると、魔獣は下がって距離を取る。そして、

 

「ギャアアア!」

 

魔獣から触手が伸び、グランドを狙う。

 

「ヤバい!」

 

グランド越しに外を見ていた陸人が叫ぶと、

 

《陸人!マン君の力を使うんだ!》

「成程!分かりました!」

 

陸人はグランドの指示でウルトラマンのアプリを起動し、

 

《ウルトラマン!八つ裂き光輪!》

「マン君さん!力、使わせてもらいます!」

 

するとグランドの掌に、ギザギザの円形が現れ、それで次々と触手を切り捨てていく。

 

「このまま切り刻みます!」

 

そして、隙を見て陸人は再びアプリを起動。

 

「悪を切り裂け!正義の刃!」

 

3つのアプリを選択し、

 

「グランドさん!」

《ウルトラマングランド!》

「セブン君さん!」

《ウルトラセブン!》

「メビウス君さん!」

《ウルトラマンメビウス!》

 

再びオーラ状の巨人を背後に立たせ、グランドと陸人は叫ぶ。

 

《我等、ウルトラマン!》

「グラァアアアアアアアンド!」

《ウルトラマングランド!グランセブウス!》

 

別の形態となったグランドは、頭部から刃を取り外し、魔獣を斬りつける。続け様に、ブレスレットから光の刃を伸ばし、魔獣の腕を切り落とす。

 

「条理も不条理も投げ飛ばす!投げの鬼のお通りだ!」

 

続いて更に別のアプリを起動。

 

「グランドさん!」

《ウルトラマングランド!》

「ジャック君さん!」

《ウルトラマンジャック!》

「ガイア君さん!」

《ウルトラマンガイア!》

《我等、ウルトラマン!》

「グラァアアアアアアアンド!」

《ウルトラマングランド!グランジャイア!》

 

今度はマッシブな形態に変わり、魔獣を掴むと持ち上げて投げる。地面に叩きつけては再び盛り上げて投げる。そしてそのまま空に投げ飛ばすと、

 

「混ぜて生み出せ!スペシャルミックス!」

 

再びアプリを起動。

 

「グランドさん!」

《ウルトラマングランド!》

「オーブ君さん!」

《ウルトラマンオーブ!》

「ジード君さん!」

《ウルトラマンジード!》

《我等、ウルトラマン!》

「グラァアアアアアアアンド!」

《ウルトラマングランド!グランオージ!》

 

別形態になった陸人は、更にアプリを起動。

 

《ウルトラマン!スペシウム光線!ウルトラマンゾフィー!M87光線!ウルトラミックス!》

「M8シウム光線!」

 

腕を交差させ、光線を放つと魔獣に当たり爆発。

 

《やっぱり思うんだがな陸人。M8シウム光線って変じゃないか?》

「そんなことないって。こういうのが最近の流行り何だよ?」

 

そんなもんかぁ。とグランドは首を傾げていたが、

 

《む、アレは!?》

「なに!?」

 

煙の中から、現れたのは、背中から生やした翼に、更に禍々しい形態になった魔獣。

 

「あれは!」

 

地上にいた戦兎達はそれを見て驚愕する。その翼は見間違うはずはない。悪魔の羽だ。しかしそんなことを知るはずもない陸人とグランドは、

 

「第2形態ってことか」

《来るぞ!》

 

先程よりも大きいのに、速さは上なのか凄まじい速度で突っ込んでくる魔獣を避けつつ、

 

「魅せるぜ!3つの力のスペシャルコンボ!」

 

更にアプリを起動。

 

「グランドさん!」

《ウルトラマングランド!》

「トリガー君さん!」

《ウルトラマントリガー!》

「デッカー君さん!」

《ウルトラマンデッカー!》

《我等、ウルトラマン!》

「グラァアアアアアアアンド!」

《ウルトラマングランド!グラントリッカー!》

 

高速移動で間合いを詰め、連続パンチで怯ませると後ろ回し蹴りで吹き飛ばし、顔面にドロップキックを叩き込む。

 

腹にパンチを叩き込み、横っ面にパンチ。そして後ろに回り込み、尻尾を掴むとそのまま背負い投げの要領で投げ飛ばす。

 

「ギャアアア!」

 

地面に叩き付けられ、悲鳴をあげた魔獣に、グランドは両手で光のリングを作り出し、それを射出するとそのまま魔獣を拘束し持ち上げた。

 

そしてそれをそのまま振り回し、ひっくり返して頭から地面に叩きつけ、グランドは両腕を交差させる。

 

「これで終わらせましょう!」

《あぁ!》

 

そのまま両腕にエネルギーを集め、それ高めながら集中。そして、

 

「《グランディウム光線!》」

 

今度こそ、魔獣に光線は着弾し、大爆発が起きた。魔獣は爆発四散し、今度こそ消滅を確認。

 

「これで終わりですかね」

《あぁ》

 

陸人とグランドがそんな話をしていたその時、

 

「成程中はこんな風になっているのか」

「え?」

 

突然背後から声がして、陸人は振り返ると、

 

「何で貴方が」

《陸人気をつけろ!そいつはさっきのやつじゃない!》

 

はい?と陸人がポカンとする間に、立っていた兵藤 一誠は陸人と間合いを詰め、スマホを取り上げた。

 

「成程、これはこうなってるのか」

「あ!返せよ!」

 

陸人は取り返そうと飛び掛かるが、ボディに一発入れられてしまう。

 

「げほっ……」

「ほら、返してやるよ」

 

一誠は陸人にスマホを返しつつ、首を掴んで持ち上げると、

 

「序でにこれは貰うぜ」

 

とそのまま陸人を放り投げると、

 

「なっ!」

 

外にいた戦兎達の目に、空に放り投げられた陸人が入り、

 

《陸人!》

 

グランドが咄嗟にキャッチして地面に下ろす。しかし陸人は困惑し、

 

「何で人間に戻ったのにグランドさんは消えないんだ!?」

 

それに慌てて見ている中、

 

《何者だ!貴様!》

 

内部では一誠の目の前に、グランドの分身が現れ睨み合う。

 

「新しい御主人様……ってやつかな?」

 

と言って指を鳴らすと、グランドに激しい頭痛が走った。

 

《ぐぉお!》

「これは好都合。アンタには深い後悔があるようだ。なら俺がそれから開放してやろう。なぁに。何も思い出す必要はない。ゆっくりゆっくり、眠りにつくといい」

 

グランドはそれから逃れるように身を捩るが、それをあざ笑うかのように、意識は闇に落ちていく。そして、

 

「兵藤 一誠!?」

 

外にいた戦兎は、姿を見せた一誠に向かって叫ぶと、笑いながら陸人と同じスマホを取り出す。

 

「あれはグランフォン!?」

「さぁて、戦兎風に言うなら、実験を始めようか!」

 

陸人の驚きを余所に、一誠は高らかに宣言すると、スマホを操作し、

 

「ウルトラマングランド」

《ウルトラマングランド!》

「仮面ライダーエボル」

《仮面ライダーエボル!》

「ビジター」

《ビジター!》

 

一誠がスマホを操作すると、グランドは苦しみだし、一誠は笑う。

 

「仮面ライダーとウルトラマン。奇跡のコラボレーションだぁ!」

《ウルトラマングランド!グランエボルター!》

 

一誠はグランドと融合。その姿は、禍々しい怪獣のようだ。

 

「おいおいそんなのありか!?」

 

戦兎達が呆然と見る中、一誠はこちらに手を向けると、光線を放つ。

 

「危ない!」

 

戦兎は陸人を守りながら、後ろに跳んでギリギリ回避する。

 

「あんなデカイのとどう戦えってんだよ!」

「大丈夫です!」

 

戦兎が慌てて逃げるが、陸人が叫ぶと、

 

「多分後一分も保たない筈です!」

「はぁ!?」

 

陸人の言葉に、戦兎が困惑する。

 

「ん?」

 

すると、一誠の胸の青い部分が、赤く点滅し始めた。

 

「成程、制限時間か。まぁいいさ。そのうちこれも解消できる」

 

そう一誠はいいながら背中を向けると、

 

「それじゃ、チャオ」

 

それだけを言い残し、姿を消すのだった。




青空 陸人

身長・156センチ

体重・52キロ

年齢・14歳

現在中学2年生の少年。小柄なことを気にしており、毎日牛乳を飲むのが日課。

この世界ではウルトラマングランドとして戦うものの、争いは基本的に嫌い。というか痛いのが嫌い。

シングルマザーの母を困らせないように余り自分を表に出さない性格だったが、グランドと関わっていく中で、年相応の顔を出すようにもなった。

朝にめっぽう弱く、よく寝坊して遅刻仕掛けてはグランドに変身して連れてってもらうこともしばしば(文句を言いつつもそれをしてあげているグランドも甘い)あり、余り他人に甘えない彼には珍しく、グランドには甘えているという面でもある。

余談だが、ネーミングセンスが絶望的に悪く、形態名や技名等は気分が上がるという理由から陸人が着けているのだが、安直だったり酷かったりするので、度々グランドから疑問を投げられているが、最近の流行りで押し通されている。

【グランフォン】

スマートフォン型のアイテム。
陸人がウルトラマングランドになるためのアイテムであり、ウルトラマンヒカリによって作られたアイテム。
独自の認証システムにより、認証されたものしか使えない。
グランフォンという名前は、元々つけられていたものではなく、陸人が手にしたときに、グランドさんと戦うためのスマホだから、グランフォン!っと言ったのが始まり。
画面を立ち上げると、様々なウルトラマン達の顔を描いたアプリ(通称ウルトラアプリ)があり、それをタッチすることで変身する。
しかしグランドは未だにこれの使い方をよく分かっておらず、陸人はスマホの要領でしょと言って使いこなしている。

形態変化以外にも、ウルトラアプリを起動することで、そのウルトラマンの技を放つことが可能。



グランド

M78星雲系シルバー族ウルトラマン。

かつて、現在ではウルトラの父と呼ばれるウルトラマンケンと、ウルトラマンベリアルと共に戦った歴戦の勇士。

しかし現在は大幅に弱体化しており、地球上では他のウルトラマン達が3分活動可能なのに対し、1分ほどしか戦えない為、戦闘の際には他のウルトラマンの力を使うことで、3分間の活動を可能にしている。

とはいえ、あくまでもその場を凌ぐための急造形態であるのは否めず、変身した後は目茶苦茶疲れるらしい。

陸人に口煩く言うこともあるが甘く、良く陸人の母から怒られることも……(特に遅刻しかけると空を飛んで送っていた件は、後で烈火の如く陸人共々怒られた)。ただそれでも甘く、二人のやり取りは親子のようだとも。

とある事件から、自身の事はウルトラマンと名乗る資格はないと語っている。その為、変身の際の我等ウルトラマングランドは、陸人と共になら、もう一度ウルトラマンとなると言う、グランドの覚悟でもある。

必殺技は全形態を通して、両腕にエネルギーをためて、十字にして放つ【グランディウム光線】

【グランガマン】
《刮目せよ!新時代の幕開けだ!》

グランド・ウルトラマン・ギンガの力を使って変身する形態。

バランスの取れた形態で、まずはこの形態で戦い、そこから最もあった形態に変身し戦う。

基本的に殴る蹴る投げる等の、素手での戦いや、光線技等を使う。

【グランセブウス】
《悪を切り裂け!正義の刃!》

グランド・セブン・メビウスの力で変身する形態。

頭部に装着されているグランスラッガーと、両腕から出すグランブレードで戦う。

硬い相手や、触るのが危険な相手に使われる。

【グランジャガイ】
《条理も不条理も投げ飛ばす!投げの鬼のお通りだ!》

グランド・ジャック・ガイアの力で変身する形態。

因みに投げまくってたのはガイアはガイアでもガイアの強化形態のSVだが、細かい事は気にしてはいけない。

パワーに優れ、投げ技等のプロレス技を多用する。

【グランオージ】
《混ぜて生み出せ!ウルトラミックス!》

グランド・オーブ・ジードの力で変身する形態。

特筆した能力はないが、唯一二つ以上のウルトラアプリの起動を行え(普段は形態変化に用いたウルトラマンの力以外は使えない上に、二つ以上の力の起動は行えない)、それを用いた多彩な技で戦う。

【グラントリッカー】
《魅せるぜ!3つの力のスペシャルコンボ!》

グランド・トリガー・デッカーの力で変身する形態。

中盤以降に使用される強化形態で、速さと力がどちらもバランス良く高く、更にバリアやテレポートなど、アプリを使わずとも使える特殊能力も多数あるため、頼れる形態として陸人も愛用していた。

【グランエボルター】

一誠が陸人のグランフォンをコピーして作り出したもので変身した姿。グランドを介してエボルとビジターが融合しており、その為ビジターの洗脳能力などは使えなくなってしまっているが、単純なスペック向上のためと割り切っているため、余り問題にはならない。


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戦う理由

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「ウルトラマングランドという戦士が戦う世界に連れてこられた俺達」
龍誠「しかしそのグランドがなんと兵藤一誠に乗っ取られちまった!」
戦兎「どうなるんだこの世界……って感じの160話スタートだ!」


「これで良しと」

 

戦兎はジーニアスボトルを手に言うと、龍誠は肩を回す。

 

先程の戦闘で、多少の怪我を負ったものもいたため、戦兎のジーニアスボトルアーシアの力で治療を行っていた。

 

しかし、

 

「それでは戦兎さんの治療ですね」

「あぁ」

 

戦兎自身は治療できないため、小猫に治療してもらい、

 

「後は一応仙術の氣を当てておきますが、アーシア先輩のと違ってすぐ治るわけじゃないので、無理はしないでくださいね。かすり傷ですが大きな怪我につながることもありますから」

「あぁ」

 

などとやり取りをしている。

 

さて現在戦兎達は、陸人の連れられ、彼の自宅にやってきていた。

 

「あのー。つかぬことをお聞きするんですが……」

 

そこに、お盆の上にお茶を淹れた湯呑みを載せた陸人がやってきて、

 

「あのお二人って恋人なんですか?」

「えぇそうよ。先輩と後輩だけどね」

 

ほぉおおお。と陸人は感心し、

 

「これで良いですね」

 

小猫は治療を終え、救急箱を片付けると、陸人が小猫の元にやってきて、

 

「あの」

「はい?」

 

陸人は真面目な顔で小猫を見ると、

 

「師匠って呼んでもいいですか?」

「はいぃ?」

 

小猫はポカンとすると、玄関の方でガチャっと音がして、

 

「ヤッホー陸人ー!」

 

玄関の方から聞こえてきた声に、思わず一番近くにいたストラーダが顔をのぞかせた。

 

玄関に立っていたのは、制服を着た身長が170センチほどのスタイルのいいボーイッシュな少女。そして彼女はストラーダと目が合うと、

 

「あれ?あー、すいません部屋を間違えました!」

 

その少女は慌てて部屋を飛び出し、2、3歩部屋を出て歩いて表札を確認。

 

「いややっぱこの部屋だよね?鍵空いたわけだし」

 

むむむ、と思案し、

 

「まさか強盗!?」

 

少女は学生鞄を手にし、部屋に再度乗り込む。

 

「陸人を離しなさい!筋肉ハゲだるま爺妖怪いいいいい!」

 

玄関を勢いよく開けながら飛び込む少女。しかし玄関を開けたそこにいたのは陸人が立っており、

 

「何してんの?真海(まみ)姉」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「申し訳御座いませんでした」

 

水沢(みさわ) 真海と名乗った少女は、深々と土下座していた。

 

「いや気にするな。寧ろ乗り込んでも彼を助けようとしたその気概は素晴らしいと思う」

 

とストラーダは快く許しているが、

 

「筋肉ハゲだるま爺妖怪……プフ!」

 

その場の誰もが笑いそうなのを必死に堪えていた。龍誠に至っては堪えられず、隅で声を殺して笑っていた。

 

「っていうか今日早かったね。部活は?」

「顧問の先生が休みでね。だから早くなったんだ」

 

そう言って、真海は袋を見せると、

 

「今夜はカレーにしよう。陸人の好きなお肉が沢山入ったやつ」

「よっしゃ!」

「ただし人参はちゃんと食べるんだぞ」

「……」

 

スッと陸人は視線を逸らした。

 

「好き嫌いしてると大きくなれないぞー」

「ま、毎日牛乳飲んでるし、これから成長期くるから!」

「私は中二の頃にはもう165センチはあったぞ」

「うぐ!」

「因みに今はこの間測ったら172センチあった」

「うぐぐ……」

 

悔しそうに真海を見上げる陸人と、それを見て笑う真海。そんな光景を見ながら、

 

「仲が良いのね」

「えぇ、陸人がこっちに越してきてからの付き合いなので、もう7年になりますね。弟みたいなもんですよ」

「ゴフッ!」

 

あ、と皆が陸人を見た。勿論比喩だが、血を吐いていた。

 

(ファイト)

 

と皆陸人にガッツを送りつついると、

 

「あれ?そういえば今日随分グランドさん静かじゃない?」

「あ、それは……」

 

と陸人は真海にも説明していくと、

 

「ちょっとそれ大丈夫なの?」

「グランドさんなら大丈夫だよ」

 

と言うが、陸人は不安そうだ。しかし、

 

「あの兵藤 一誠のことだ。一筋縄じゃ行かないと思うぞ」

 

戦兎はそういう。すると、

 

《その兵藤 一誠というのが何者かはわからないが、不安要素が多いのが事実だな》

『え?』

 

皆がびっくりしながら、陸人がテーブルの上に置いていたグランフォンを覗き込むと、その画面には青いウルトラマンが写っていた。

 

「ヒカリ君さん!」

 

誰?という目で皆は陸人を見ると、

 

「グランフォンを作った光の国の科学者です!」

「ウルトラマンにも科学者がいるのか……」

 

科学者という単語に戦兎が反応しつつ、陸人はヒカリを見る。

 

「どういうことですか?」

《グランドを助けるなら、一つ手はある》

 

何?と全員が目を見合わせた。

 

《戦いはグランフォンを通して見させてもらった。まさかグランドが乗っ取られるとはな》

「それでヒカリ君さん!どうやってグランドさんを助けるんですか?」

 

陸人の問い掛けに、ヒカリは頷くと、

 

《陸人とグランドは今融合を引き剥がされた状態にある。だが無理やり引き剥がした状態のため、完全に繋がりが断たれたわけじゃない。これならばグランフォンを使って再融合することが可能だ。但しこれには欠点もある》

「兵藤 一誠とウルトラマングランドの中でかち合うってことだろ?」

 

戦兎の答えに、ヒカリは頷く。

 

《陸人はウルトラマングランドにならなければ普通の地球人だ。その兵藤 一誠というのが何者かはわからないが、グランドを容易く洗脳した手腕。そしてお前達が警戒する様子を見ても、タダモノではないのだろう》

「なら論外だ。アイツと陸人を二人になんてしたら殺されちまう」

 

うんうん。と戦兎側の面子はに頷く。ただの人間にどうこう出来る相手ではないのだ。しかし陸人は、

 

「でもそれしかないんですよね?」

《今のところは……な》

 

ならやります!と陸人は言う。それを戦兎は止めて、

 

「馬鹿言うな。アイツの強さを知らないから言えるんだ。あれはただの人間のお前がどうこうできる相手じゃない。俺達がなんとかするから隠れておけ」

「グランドさんを放っておいて隠れてるなんてできません!」

 

戦兎と陸人が睨み合う。すると、

 

「はいそこまで」

 

真海がお盆を二人の間に差し込んでストップを掛けた。

 

「陸人。悪いんだけどオカズ買ってきてよ。買い忘れちゃった」

「え?」

 

ほらいったいった。と真海に背中を押され、お金を渡されると家を追い出される。

 

そして戻ってくると、

 

「すいません。アイツ結構頑固なところもあるんで」

「いやすまない。俺も大人気なかった」

 

そう言い合うと、真海は少し視線をそらす。

 

「陸人にとって、グランドさんは実の父親以上に父親みたいな存在なんです」

「実の父親以上に?」

 

どういうことだ?とストラーダが問うと、

 

「陸人がこっちに越してきたのは、アイツが7歳の時でした。母親と一緒に来てて、あの頃は一言も喋らない子だったんです」

「父親は?」

 

リアスの言葉に、真海は少し悩んだあと、

 

「陸人のお父さんは、酒浸りでギャンブル狂いの最低のクズです。陸人のお母さんが稼いだお金をギャンブルで使い込み、二人に酔った勢いで暴力を振るったりもする。ただある時、ギャンブルで相当ひどい負け方をしたらしく、酔って二人に暴力を振るったらしいんです。その時に、陸人の中で何かが壊れて、家にあった子供用のハサミを父親を刺して、それを見たお母さんは咄嗟に陸人を抱えて逃げ出したんだそうです。そしてこの街に来て、今は離婚して接近禁止命令が出てますけどね。でも結構最近まで陸人はハサミ以外の刃物全般を見るとその時のトラウマが蘇ったりしてて、大変でした。今は落ち着きましたけどね」

 

だから多分、と真海は続け、

 

「陸人にとっては、グランドさんは理想の父親なんです。優しくて強くて大きい。年上の自分より大きな男性に恐怖心を覚える陸人が、唯一気にならず話して接することができる相手。だから熱くなっちゃうんです」

 

そうだったのか。と皆が話を聞いて頷く中、

 

《成程な。それはグランドが可愛がるわけだ》

『ん?』

 

今度はグランフォンから聞こえてきたのだが、ウルトラマンヒカリの声とは違い、再び覗き込むと、ひげと角が生えた姿をしたウルトラマン。

 

《失礼。私はウルトラマンケン。と言っても、その名で呼ぶのは最早グランド位だ。今はウルトラの父と呼ばれることが多い。まぁ彼とは古い友人だ》

 

すると真海はハッとし、

 

「あぁ!グランドさんから聞いたことある!なんだかんだ孫に甘い奴って!」

「そんなことはないと思うが……」

 

ケンはうぅむと唸りながら否定しつつ、

 

「でもグランドさんが陸人を可愛がってるのは気づいてましたけど、そう言えば理由は知らないかも」

《あぁ、アイツにとっては思い出したくない過去だろうからな》

 

そう切り出したケンは、語りだす。

 

《アイツは元々私ともう一人のウルトラマン。ウルトラマンベリアルと共に様々な死線をくぐり抜けてきた勇士だ。多くの戦いを乗り越え、絆を深めていった。と私は思っていた》

 

その言葉に、皆は思わずつばを飲み込む。

 

《ある時ベリアルが力を求め、罪を犯した。それと時を同じくして、グランドも何かに迫られるようになっていった。それからだ。私達の仲に溝が生まれたのはな。そしてグランドは宇宙警備隊の候補生達の教官として動き出した。アイツは教えるのが上手くてな。教官という立場は天職でもあった。そして特にその中でも目を見張る才能を持った者がいた。名はユダ。両親共に宇宙警備隊に所属していたが、任務の過程で命を落としている。それを両親に代わって育てたのがグランドだ。ユダの才能は群を抜いていた。グランドの数多くの技を全て受け継ぎ、更に昇華させるほどにな。強さも才能も若くしながらグランドを超えていた。だが内心に私は影を見ていたんだ。どうしようもない黒いものをな。一度それをグランドに指摘したが、放っておいてくれと言われてしまった》

「何かあったんですか?」

 

戦兎がそう問うと、ケンは少し考え、

 

《私は過去の戦いを乗り越え、強大な力を得た。その力を私は正義のために、そして友のために使うと決めた。だがそれは友の心に影を落とさせた。一人は自身の力を求め、もう一人は自分を、そして私を超える次世代のウルトラマンを作り上げる事にしたんだ。当時の私はそれに気付けなかった》

 

その後力を求めた友人は自らの子に討たれ、グランドは、

 

《ある日そのユダを含めた、複数名の候補生達と、グランドは別の惑星で訓練を行うことになった。そしてそれが悲劇を起こすことになる。訓練を終え、皆が休憩していたとき、ユダが牙を剥いた。候補生たちを殺し、グランドの力を奪い去ったのだ》

「そんな事が可能なんですか?その……力を奪うなんて」

《不可能ではない。力を与える術を私達ウルトラマンは持っている。ならばその逆もな。だがそれは両者の奪う側が奪われる側よりも実力が上の場合のみだが、ユダはその時既にグランドを上回っていた》

「だけど何でそんなことを?」

 

リアスからの続けての問いに、ケンは深く息を吐くと、

 

《ユダはグランドを尊敬していた。いや、信仰していた言うレベルだ。だがその余りにも強すぎる思いが、ヤツを狂わせた。グランドは前線を退き、表立って活躍することがなくなっていた。それをユダは嫌った。もっとグランドの活躍を見たい。とな。ならばどうするか。簡単だ。グランドが戦うべき悪を用意すれば良い》

「それが自分だった……ってわけか?」

 

龍誠にケンは頷き、

 

《だが、ただ戦っても面白くない。ユダが見たかったのは、数多くの危機を乗り越え、戦う姿。そう、物語上のヒーローのようにな。しかし多くの戦いを乗り越えた、歴戦の勇士である当時のグランドならば、並の怪獣ではまず相手にもなるまい。だから力を奪い、姿を消した。グランドが活躍する舞台。それがユダが用意したこの地球だ。あの事件以来、教官という地位を捨て、ウルトラマンと名乗る資格もないと言いながら、ユダを探していたグランドはそのユダに導かれ、この地球にやってきた。ただ陸人に会ってからのグランドは楽しそうだ。きっとグランドにとって、陸人は地球で活動するための仮の姿だけではなく、我が子同然なのだろうな。本来であれば、グランド一人ではなく、他のウルトラマンを派遣するのだが、ユダがバリアを張っているせいで侵入ができなくてな。出来ることといえば、こうしてグランフォン越しに通信したりするくらいだ》

 

だからこそ、とケンは続け、

 

《もし今の操られているグランドが、陸人を傷つけるなんて言う事態を引き起こす訳にはいかない》

《だがウルトラの父よ。グランドの救出はどうする?》

 

何か他に方法は?とケンはヒカリに聞くが、現段階では、と返すヒカリ。

 

すると、

 

「あらほんとに沢山の客さんが」

 

玄関が開けられ、中に入ってきたのは陸人とおっとりとした女性。

 

「あ、皆さん母です」

「ど~も~」

 

先程までの張り詰めた空気も霧散する程、穏やかなオーラに、皆の緊張も解け、

 

「一先ず、ご飯にしますか」

 

と真海が言うと、一旦話し合いは終わるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぁぁ……ん?」

 

夜中にトイレに起きた陸人は、箱詰めで寝ている戦兎達を躱しながらトイレを済ませると、ドアが少し空いているのに気づく。

 

「あ、テオドロ君」

「ん?」

 

外に出ると、夜空を見ていたテオドロがおり、

 

「朝早いね。まだ夜明け前だよ?」

「私はいつもこの時間に起きている」

「へぇ~。凄いなぁ。僕朝起きるの苦手で」

 

そうか。とテオドロに返され、陸人は頬を掻く。

 

元々陸人は人付き合いがうまいほうじゃない。グランドと出会い、改善はされたが、それでも初対面のテオドロを会話を弾ませるのは難題だった。と思っていると、

 

「君は苦労されていたんだな」

「え?何が?」

「父親の話を聞いた」

 

それを言われ、陸人は成程と頷くと、

 

「まぁもう過ぎた過去ですから」

 

少し遠くを見ながら、そう呟いた。

 

「まぁ今は母も真海姉もグランドさんもいるし、あんまり気にしてないよ。まぁどこかで今も生きてるでしょ」

「羨ましいな。君には周りに人がいて、自由で」

 

テオドロの言葉に、陸人は首を傾げる。

 

「テオドロ君は友達がいないの?」

「昔から教会の中で生きてきた。両親は殺され、恨みだけを糧に生きてきた」

 

だが今はそれで良かったのか分からなくなってる。とテオドロが言うと、

 

「うぅん。別に恨んだりしたって良いんじゃないかな?」

「なに?」

「あぁいや、だって辛いものは辛いし、悲しいものは悲しいもんだよ。恨むな〜って言われたってどうしようもないから、僕はしょうがないんじゃないかなって思うんだけど」

 

陸人は困ったような顔をしながら言うと、テオドロは、

 

「ならお前は復讐しないのか?」

「え?」

「父親に、恨みをはらさないのか?ウルトラマンの力で」

 

その言葉に、陸人はパチクリと瞬きしつつ、

 

「しないよ。復讐は」

「恨んでないのか?」

「恨んでないわけじゃないかな。今だって嫌いだし。あの人は」

 

凄いな、とテオドロが言うと、

 

「私には、そんな高潔な心は持てなかったよ」

「え?僕そんな凄い人間じゃないですよ」

「だがそれほどの力を持って尚、他者の為に戦うことを選んだから今があるのだろう?素晴らしい心だよ」

 

テオドロにそう言われ、陸人はウーンと唸った。

 

「そんなもんじゃないんですけどねぇ」

「なら何故君は戦うんだ?」

 

テオドロの問い掛けに陸人は、

 

「僕が戦うのは……」

 

とそこまで言ったとき、

 

『っ!』

 

ドンっと地面が揺れ、爆音が響くと、二人がその方向を見た。その視線の先にいたのは、グランエボルターだ。

 

「出やがった!」

 

その音を聞き、戦兎達も外に飛び出してくる。

 

「どうしますか?部長」

「一先ず止めるわよ!」

 

リアスの言葉に、皆は頷くと走り出す。

 

「陸人とテオドロはそこで待ってろ!」

 

戦兎はそう叫びながら、皆の後を追っていった。

 

「大丈夫かな……」

「そうねぇ」

 

すると、部屋の中から真海と母も顔を出すが、

 

「っ!」

『あっ!』

 

陸人も突如走り出し、

 

「陸人!」

「自分が行きます!」

 

それを追い、テオドロも走り出すのだった。




水沢 真海

身長・174センチ

体重・65キロ

年齢・17歳

陸人の家の近所に住む幼馴染であり、陸人の初恋であり現在の想い人。

ボーイッシュな見た目で男女ともに人気が高く、バレー部に所属する高校2年生。

陸人がこちらに越してきてからの付き合いで、弟のように可愛がっており、陸人からの好意には全く気づいていない。

しかし部活帰りに陸人の様子を見に顔を出すなど、面倒見は良く、陸人がウルトラマングランドとして戦うのを知った当初は、余り良く思っていなかったが、戦う中でたくましく成長していく姿を見て、見守っている。

好みの男性は、背が自分より高くて、大人な年上の男性。と言っているが、成長する陸人の言動にドキドキさせられることもあるものの、自覚していない。

青空 (よみ)

身長・160センチ

体重・50キロ

年齢・ヒ・ミ・ツ

陸人の母。のんびりとした性格で、殆ど怒ることはない。

夫からのDVに怯える日々を過ごしていたが、陸人が夫を刺した際に、陸人を抱えて逃げ出して現在に至る。

今は働きながら陸人を育てており、過保護な一面もあるため、当初はウルトラマングランドとして戦う事に大反対していた。

その為、それを知った際は、グランフォンを取り上げてそれを捨てようとしたりし、陸人と大喧嘩することに。(今まで自分に反抗しなかった陸人が初めて反抗したため、驚いていた)

その際にグランドから陸人の力がないとダメだということ。陸人がいるから自分は戦えること。そして陸人は必ず無事に返すことを誓われ、戦うことを許した。

現在も戦いに巻き込むグランドには思うところもあるものの、陸人が寝たあとに、グランフォン越しに話してたりするなど、仲は悪くない模様。

のんびりとしているが、陸人が遅刻しかけた際にグランドになって飛んでいった際には、かなり怒ったらしい。



陸人の過去

陸人は幼少時に父から虐待を受けており、ある時母を守るために父親を家にあったハサミで突き刺し、母と逃げ出して今に至る。

物語初期はトラウマから刃物を見たり持ったりするだけでパニックを起こすほどで、グランセブウス初変身時も、取り乱して怪獣に敗北してしまったほど。

しかし、その後ギランガマンでは対抗できず苦戦するが、真海が怪獣に襲われて危険に晒さた際に、トラウマを乗り越える形で変身した。

作中では父親も登場しており、母と会わせろと詰め寄られるが何とか逃げ、その後宇宙人に乗り移られ、怪獣に変貌した父と戦い撃破。再度父は陸人に詰め寄るが、陸人は過去を振り払って会わせない、二度と来るなと叫び、父親は激昂するが、グランフォンから現れたグランドが一喝し、びびって逃げ出している。

その一件から、陸人はグランドになつき、父親のような目を向けるようになった。



















ウルトラマンユダ

グランド元弟子にして、今作のボス。

元々は宇宙警備隊の両親を持つ光の国の住人だったが、両親を失い、グランドに引き取られた。

若くしてグランドを超えるほどの天才で、グランドの数々の技を受け継ぎ、グランドの後継者として、戦っていくはずだった。

しかし、その本質グランドの崇拝者であり、彼が戦うところを見たい。と常々思っていた。更にグランドの技や技術を他のものが使うのを嫌い、他の訓練生達に厳しく当たるなどと言った面もあった模様。

そしてそれがある日ついに爆発し、当時の訓練生達を殺害し、グランドから力を奪い逃亡。

目的は、グランドが戦う物語を見たいからで、そのために自分が悪役となり、グランドが戦う舞台を整えた。力を奪ったのも、そのままではグランドが強すぎるからで、ただ戦うだけではなく、苦戦したりしつつも、それでも勝つ劇的な展開を見たいから。

現在は陸人が住む宇宙の地球にて暗躍し、グランドと戦わせる為に怪獣を暴走させたり、宇宙から外星人を呼び寄せるなどをしている。

陸人のことは、本来グランドが戦うところみたいのに、グランドに他のウルトラマンの力をベタベタと付ける邪魔者であり、異物だと思っている。その為、いずれは排除する予定。


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我らウルトラマングランド

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……


戦兎「兵藤 一誠に操られたウルトラマングランドを救うため、陸人たちと話し合う俺達だったが……」
龍誠「まだ何も決まってないのにもう来ちまったどうするんだよ戦兎」
戦兎「とにかくなんとかするしかないでしょ!」
陸人「まぁ僕に任せてくださいよ!」
戦兎「いやいや陸人。お前はちょっと下がってて……」
陸人「てなわけで161話始まるよー!」
戦兎「俺のセリフー!」


「まて!」

 

走る陸人を捕まえ、テオドロが叫ぶ。

 

「危険だ!」

「でも!」

 

とやり取りを見据える影。それは先日、本間という名でテレビに出ていた男。

 

「全く。先生をそういう風に使うのは解釈違いなんだよなぁ」

 

それだけ言うと、本間はグランフォンを取り出し、アプリをタッチする。

 

《ウルトラマンユダ!》

「さぁて、魅せてもらおうか!」

 

本間は元々この星に住む人間だ。しかし、ユダがこの星で活動するために必要な体として、偶々選ばれた。

 

光に身を包み、飛び上がるとそれは巨人となってグランドの前に降り立つ。

 

《そういうのはあんたらしくないなぁ》

 

言うが早いか、ユダはグランドに飛びかかり、押し合い殴り合う。近くのビルをなぎ倒し、戦う姿を見ながら、二人は慌てて逃げた。

 

「クソ!ユダまで出てきやがった。ヒカリさん聞こえますか?」

《あぁ、大分ヤバいようだな》

 

陸人は通信でヒカリを呼び、

 

「これからどうすれば!?」

《一先ず、もっと近づいてくれ!後はアプリで融合させる!》

 

近づく……と二人は振り返りながら、あの巨人二人が戦う様子を見た。

 

「アレに近づくのか?」

「ちょっと作戦考えるー!」

 

陸人はテオドロと共に大慌てで逃げ、ビルの影に隠れる。

 

「とにかくどうにかして近づかないと」

「もう逃げたほうが良いんじゃないか?」

 

テオドロの提案に、陸人は首をふる。

 

「グランドさんを助けないと!」

「だがお前はただの人間だ!あんなのに近づいたって踏み潰されて死ぬだけだ!」

 

そんな言葉に、陸人はそうかもしれない。と頷き、

 

「でも、このまま逃げ出したほうがもっと後悔するから!」

 

それだけ言い、陸人は走り出す。飛び交う光線と爆発をくぐり抜け、陸人は迫るが、

 

《邪魔だ!》

「っ!」

 

ユダが陸人に光線を放ち、爆発する。しかし、

 

「テオドロ君!?」

「全く、信じられない無茶をするな君は」

 

天使の羽を羽ばたかせ、陸人を持ち上げて飛び上がる。

 

「どこまで上がれば良い!?」

「胸のカラータイマーまで!」

 

あの宝石みたいなやつか?とテオドロは頷き、羽を羽ばたかせて更に飛び上がる。そこにグランドの拳が振るわれたが、

 

「くっ!」

 

テオドロはギリギリでそれを避け、更に飛翔。絶えず飛んでくる光線や拳を避けながら行くと、カラータイマー前にやってきた。そして、

 

「必ず帰ってこい!君が戦う理由。まだ聞いてないんだからな!」

「うん!」

 

テオドロは陸人を放り投げ、陸人はグランフォンを起動。

 

「今行くよ!グランドさん!」

 

と言って、カラータイマーに飛び込むと、再び融合。それと共にグランドの動きが止まり、

 

《ちっ。異物が紛れたか。まぁいい、それならこれ以上は任せてや》

 

ユダは舌打ちしながら背を向けると姿を消し、

 

「何やってんだ!」

 

そこに戦兎達もやってくる。

 

「お前たちこそ何してたんだ!」

「あちこちに魔獣も湧いてきてたんだよ!そっちは!」

 

テオドロは地面に降り立ち、グランドを指差す。

 

「陸人がグランドを助けに向かった」

「おいおいマジかよ……」

 

戦兎達が頭を抱える中、テオドロは動かなくなったグランドを見るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いてて」

 

飛び込んだ勢いで転んだ陸人は、異空間の中で立ち上がると、

 

「あ!」

 

そして視線の先でグランドを見つけた。鎖で体を縛られており、陸人は急いで駆け寄ると、

 

「今助けるからね!グランドさん!」

 

だが鎖を引っ張ったりしてもびくともせず、必死に外そうとしていると、

 

「おいおい何してんだ?」

「っ!」

 

振り返った瞬間、陸人は顔面を殴られ、横に吹き飛んだ。

 

「あが!」

 

ゴロゴロと転がりながら、口いっぱいに広がる血の味。

 

それでも立ち上がり、陸人は拳を握って一誠に襲い掛かる。

 

「鬱陶しいなぁ」

 

一誠は陸人の腹部に蹴りを叩き込み、怯んだ所に、顔面にパンチを叩き込む。

 

鼻をツンとする感覚と共に、ドロっと鼻血が出た。

 

そして一誠は陸人に近づくと、踏みつける。

 

「全く。何しに来てんだよガキ」

 

グリグリと顔を踏みつけ、一誠は笑う。

 

「ウルトラマンがいなけりゃ、何もできないおこちゃまは家でママのオッパイでも吸ってりゃ良いものを」

 

顔を踏みつけられ、陸人は息苦しそうな声を漏らすが、一誠を睨みつける。

 

「ふざけんな!」

 

陸人は叫ぶ。

 

「何でこんなことをするんだ!」

「俺が主人公になるために必要なことだからさ。そのためには力が必要だ。そのための道具を揃える必要があるんだよ」

「道具だと……?」

 

陸人は奥歯を噛み締め、

 

「グランドさんは道具じゃない!」

「だがお前にとっては力じゃないか?戦うため、何もできないガキのお前が戦うための力。それがコイツだろう?」

「違う!」

 

一誠の言葉を強く否定した。

 

「グランドさんは……そんなんじゃない!確かに俺は弱い。グランドさんがいるから戦えるんだ!でもそれだけじゃない!グランドさんは俺に道を教えてくれる。悩んだ時そばにいてくれる。悲しい時、肩を叩いてくれる。怖い時、前に立ってくれる。そして何より、俺がやるって決めた時、隣に立ってくれる!そんなグランドさんは道具じゃない!」

 

陸人の叫びが響いた時、グランドを縛る鎖が僅かに揺れる。

 

「ん?」

 

一誠がその方を向くと、

 

《りく……と》

「馬鹿な、俺の催眠を受けながら、正気にかえろうとするだと?」

 

一誠は眉を寄せながら、再び催眠をかけた。

 

「抗うことなんてない。そのまま夢の世界でいろグランド!」

《う、うぅ》

「グランドさん!」

 

陸人が再び叫んだ時、グランドが思い出すのは、初めてこの地球に来た記憶。

 

イジメっ子達にいじめられていた陸人を見つけ、一喝しイジメっ子達を追い払った。その時陸人にも、お前もやり返さないかと怒って、陸人はなんとも言えない表情をしていたのを思い出す。

 

その後地球での活動が長く出来ず、咄嗟の判断で、ヒカリから受け取ったグランフォンに自身の肉体を収納し、陸人に拾ってもらうことで難を逃れたのだが。

 

そして、初の怪獣事件が学校の近くで勃発し、その際陸人は、何とそのイジメっ子を、踏み潰されそうな所に飛び込んで、助けたのだ。

 

イジメっ子を逃がし、怪獣に追われる中、自分は聞いた。何故助けたのかと。それを聞いた陸人は答える。

 

「だって僕は!」

 

その答えで決めたんだ。この子となら、一緒に戦えると。もう一度だけ、ウルトラマンになると。だから、

 

《陸人……!》

「うん……!」

 

催眠に落とされても、それでも消えない思い。二人で決めた、合言葉。

 

《我ら!》

「ウルトラマン!」

「《グラァアアアアアンド!》」

 

グランドが鎖を引きちぎり、陸人が一誠の足を押しのけながら、同時に叫ぶ。その時空間に光が溢れ、

 

「な、何だこの光は!ぐ、ぐあああああ!」

 

一誠は苦しみながら押し飛ばされ、そのまま追い出された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「陸人!」

 

外でグランドを見ていた戦兎達だが、突如グランドが発光し、グランドが消えると、そこに陸人が立っていた。

 

そして皆駆け寄ると、

 

「あ、皆さん」

「お前大丈夫かよ!」

 

ボロボロの陸人を見て、皆ギョッとしながら見ると、

 

『陸人ー!』

 

そこに母と真海が来て、

 

「ちょっと陸人!?どうしたのその怪我!」

 

と母が悲鳴を上げたかと思えば、

 

「ちょっとグランドさん!どういうこと!」

《す、すまない》

 

操られたのは自分の責任なので、グランドが謝り、真海と陸人がまあまあと宥めると、

 

「見せてみろ」

 

戦兎が陸人に手をかざし、怪我を治した。すると、

 

「あーあ。全く面白くねぇな」

 

そう言って、一誠が歩いてきた。

 

「兵藤一誠!」

「よう戦兎。俺はもう今日は飽きたからな。これだけおいて帰るよ」

 

そう言って指を鳴らすと、町中にビジターが降り立った。

 

「ビジター!?」

「んじゃ、ちゃおー」

 

それだけ言って、一誠は姿を消すと、ビジターの目が光り、

 

『っ!』

 

リアス達の体の自由を奪う。

 

「不味い操られる!」

「え?え?」

 

陸人が驚くと、操られない戦兎と龍誠が慌てて守るように立つ。

 

「ビジターの能力だ!ああやって皆を操る!」

《なるほどな。なら陸人!コスモス君の力だ!》

「は、はい!」

 

陸人はグランフォンを操作し、

 

《ウルトラマンコスモス!ルナモード!フルムーンレクト!》

 

アプリをタッチすると、オーラ状態で現れたグランドが、掌から光を放ち、皆に降り注ぐと、動きが止まってその場に座り込む。

 

《心を落ち着け、戦意を奪う技だ。ダメージはない》

「た、助かったわ」

 

リアス達が礼を言うと、

 

《何故抗うのだ》

 

ビジターは言う。

 

《我は汝等を救いたい。ただそれだけなのに》

「その為に操んのかよ!」

《抗うからだ。死は救いである。苦しませず、希望なき明日を迎えさせぬ》

 

陸人の問いかけに、ビジターがそう答えると、陸人が、

 

「だったらそんな救いなんていらない!」

《なんだと?》

「僕は明日がほしい。高校だって行きたい。大学行って、就職して、母さんに初めての給料でご飯食べさせてあげたい。結婚して子供もほしい。家族を大事にして、おじいちゃんになったら孫に囲まれて畳の上で大往生するんだ!」

《そんな未来は来ない。けっして。我には未来が見える。幾千幾万の可能性を見た。そしてそこに希望はない。確約された絶望のみがあった》

「なら僕がその未来を作る!希望がないなら作れば良い!0から1を生み出せば良い!」

 

陸人はそう言ってグランフォンを構え、ビジターを睨みつけると、

 

「あ、そうだ!」

 

とこちらに振り返ると、テオドロに近づく。

 

「言うの忘れるところだった」

「何がだ?」

 

突然なんのことかと、テオドロが首を傾げると、

 

「何で僕が戦うかって話」

「あ、あぁそれか」

 

そうテオドロが返すと、

 

「僕ね、痛いのが嫌いなんだ」

『……はぁ?』

 

テオドロだけではなく、戦兎達も思わずポカンとしてしまった。しかし陸人は構わず続けると、

 

「殴られるのは嫌だし、蹴られるのも嫌だし、暴言を吐かれるのも嫌だ。だって痛いじゃん。痛いって辛くて悲しくなる。泣きたくなるんだ。だから僕は喧嘩だって嫌いだし、戦いたくだってない」

 

その言葉に、テオドロは益々首を傾げた。なら何故戦うのかと。すると、

 

「でもそれ以上に、他の誰かに同じ思いをしてほしくないんだ。辛くて悲しい思いをしてほしくない。でも世の中には、それを理不尽に与えようとするやつって沢山いるんだ。他人に痛い思いをさせて楽しむやつがいて、話し合っても通じない相手っているんだ。そしてそんなやつと戦わなきゃいけない。何してんだやめろってぶっ飛ばさなきゃいけない。でもぶっ飛ばす方も痛い思いをしなきゃいけない。誰かを虐げるのを止めさせるために、その人を虐げなきゃいけない。痛い思いして、暴力を止めるために暴力を振るって罪を背負わなきゃいけない。だったら、僕がその罪を背負うことにしたんだ。誰かがやらなきゃいけないなら、僕がやる。だから……」

 

僕はウルトラマンになったんだ。ニッと笑い、陸人はテオドロに言う。

 

実の父に虐げられ、それでも陸人は心から光を捨てなかった。辛い思いをたくさんし、悲しい思いを沢山した。それでも陸人は、誰かに同じ思いをしてほしくない。理不尽に晒されてほしくない。ただそれだけを胸に、戦う決意をした。

 

「じゃ、行ってくるね!」

 

そう言い残し、テオドロに背を向け陸人は走り出す。

 

「今こそ集え!伝説の勇士たち!」

 

グランフォンを掲げ、アプリをタッチしながら叫ぶ。

 

「グランドさん!」

《ウルトラマングランド!》

「ベリちゃんさん!」

《ウルトラマンベリアル!》

「ケンちゃんさん!」

《ウルトラマンケン!》

 

陸人の頭上に、三体のウルトラマンが出現し、グランドが叫ぶ。

 

《我ら!ウルトラマン!》

「グラァアアアアンド!」

 

陸人がグランドと融合し、同時に他のウルトラマン達も融合。

 

全身赤と銀と黒で彩られ、鋭い目つきとウルトラホーンが形成され、ビジターの前に降り立つ。

 

《ウルトラマングランド!グランベリン!》

「《さぁ、俺達が相手だ!》」




【グランベリン】
《今こそ集え!伝説の勇士たち!》

グランド・ベリアル・ケンの力で変身する形態。

終盤に変身する最強形態で、圧倒的な強さを誇る。

ケンの力強さとベリアルの荒々しさ、そしてグランドの判断能力が合わさって、隙がない。

元々ベリアルのアプリは実装されていないのだが、作中でバロッサ星人との戦いで次元の裂け目から飛び込んできたウルトラマンゼットこと、ハルキから奪った、ベリアルのウルトラメダルから作り出された。

強力な反面、ベリアルのアプリには欠点があり、それはまず、他のウルトラアプリが使えなくなってしまうこと。そして、アプリが勝手に起動し、変身者の意志に反して勝手にグランドに変身させること。最後に、使用者の精神を蝕むということ。

それは使用者の狂暴性を引き上げ、暴走させてしまうため、使用時には陸人が暴走してしまっていた。

元々、陸人には実父と同様の、他者を虐げようとする狂暴性があり、それを抑えていた(作中で度々怒りに任せて怪獣を痛めつけようとする描写はあった)が、ベリアルのアプリでそれが表面化し、陸人は戦うことを恐れ、自身で変身出来なくなってしまう。だが勝手に変身もしてしまうため、逃げ場がなく、一時グランドとの融合を解除するかどうかまで追い込まれる自体に。

しかし、ハルキから人間は誰しも綺麗なわけじゃないこと。それでも、誰かの為に戦うから、凄いんだということ教えられ、陸人は自身の狂暴性も受け入れ、その上で戦う覚悟を決めたことで、ベリアルの力を克服し、この形態に変身した。以降は、他のアプリも使えるようになる。

ベリアルのアプリのデメリットからも分かるように、これは元々ユダが陸人とグランドを引き離すための、言うならばウィルスアプリ。陸人を暴走させ、グランドを一人に戻すためのものだったが、この一件で、ユダは陸人をある程度は認め、自身の計画の障壁になる存在だと言い、今回も陸地が行ったなら大丈夫だとしていた。

とはいえ、完全に影響がないわけではなく、この形態に変身すると、一人称が俺になるなど、ちょっと口調が乱暴になる。

徒手格闘も勿論強いが、専用武器として、グランドの頭頂部を模した片刃の青竜刀のような刀身と、ケンのウルトラホーンを模した鍔、ベリアルの目のような刃紋が走った、【グラベリケン(命名・陸人)】があり、それを使った剣術戦も得意とし、グランドとベリアルとケンのアプリをそれぞれ起動させ、陸人が刀身をスキャンさせることで強力な技も発動可能。

因みに名前は、グランドアプリを起動させてスキャンさせて衝撃波を放つ、【グラグラアタック】。ベリアルのアプリをスキャンさせて刀身に黒い稲妻を纏わせて放つ、【ベリベリスラッシュ】。ケンのアプリをスキャンさせて刀身から斬撃を飛ばす、【ケンケンビーム】といった、余りにも名前が酷い技ばかり(共に戦ったハルキやゼットからも、もう少し名前を考えたほうが良いと突っ込まれた)である。そもそもケンケンビームに至ってはビームですらない。

必殺技は、変わらずグランディウム光線だが、エフェクトに黒い稲妻が入るなど、少しベリアル要素も足される。更にこの形態時には、全てのウルトラアプリ起動させ、全ウルトラマンの力を上乗せして放つ光線技【マキシマムグランディウム光線】を放つことが可能だが、これを使うと陸人は全身重度の筋肉痛になり、グランドも数日エネルギー回復のために戦闘の一切が行えなくなるほどのダメージを負う。


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希望の光

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「ウルトラマングランドを取り戻し、陸人は最強形態、グランベリンに変身する」
陸人「ついに来たぜこのときが!ぶちのめしてやる!」
龍誠「お前そんなキャラだっけ?」
陸人「あぁわりぃ、ベリちゃんさんのアプリ使うと何かこぅ盛り上がっちゃうんだよ」
グランド「まぁそんな感じの162話スタートだ」
戦兎「俺のセリフが〜!」


「《おおおおお!》」

 

グランベリンとなった、陸人達はビジターに突撃し、殴りかかる。ビジターも負けじと殴り返すが、それを躱して蹴り飛ばす。

 

「こい!グラベリケン!」

 

陸人が叫ぶと、光の粒子が集まり、陸人の手に剣が出現し、グランドの手にも同じものが現れる。

 

「行くぜ!」

 

陸人が剣を振ると、それに合わせてグランドも動き、ビジターを斬りつける。更に、陸人は剣にグランフォンを装着し、グランドのアプリを起動。

 

《ウルトラマングランド!》

「グラグラアタック!」

 

剣を地面に突き刺し、衝撃波を放つとビジターは体勢を崩し、

 

《ウルトラマンベリアル!》

「ベリベリスラッシュ!」

 

黒い稲妻を纏わせた刀身で、ビジターを斬る。そして、

 

《ウルトラマンケン!》

「ケンケンビーム!」

 

斬撃を飛ばし、ビジターに当たると爆発。しかしその土煙の中からビジターは飛び出し、グランドに組み付くと膝蹴りを叩き込む。

 

「おら!」

 

しかし負けずに膝を叩き込み返し、そのまま投げ飛ばし、剣を投擲。

 

それをビジターはビームで弾くが、その隙に間合いを詰めて腹にパンチを叩き込む。

 

「《おおおおお!》」

 

連続パンチを叩き込み、怯んだ所に、顔面パンチで倒す。

 

「これで終わらせる!」

 

陸人はそう言うと、グランドが両腕にエネルギーをため、

 

「《グランディウム光線!》」

 

必殺の光線を放つ。それはビジターに着弾し、閃光と爆発を起こすのだが……

 

《陸人!》

「なっ!」

 

煙の中から極太のビームが伸び、グランドに当たると爆発を起こす。

 

「《がはっ!》」

 

地面に転がり、その衝撃で変身が解け、通常状態のグランドに戻ると、カラータイマーが赤く点滅し始めた。

 

「くそ……なんて威力だ」

 

悪態をつきながら見ると、煙の中にビジターは立っているが、

 

《成程、鎧を着ていたわけか》

「あぁ」

 

ビジターの着ていたアーマー部分が砕け、素肌が露わになる。そしてその胸には、大きな傷跡がある。二人は知らないが、それは戦兎と智宏がつけた傷である。

 

「あの傷を狙えば……っ!」

 

そう陸人がいった時、グランフォンに通信が入った。

 

「ヒカリくんさん?」

《良かった。間に合ったみたいだな》

 

何の話だ?と陸人とグランドが首を傾げると、

 

《なに、やられたことをやり返すだけだ》

 

そう言って、ヒカリが手元の端末を操作すると、グランフォンに新たなアプリが追加される。そこには、ビルドの顔とクローズの顔があった。

 

「これはっ!」

《あぁ、グランフォンを通して戦闘データは取らせてもらったからな。即興だが》

「よーし、やってみます!」

 

陸人はそう言って、グランフォンを操作する。

 

「未来を創れ!最強コラボレーション!」

 

スマホを構え、次々にアプリをタッチ、

 

「グランドさん!」

《ウルトラマングランド!》

「戦兎さん!」

《仮面ライダービルド!》

「龍誠さん!」

《仮面ライダークローズ!》

 

一方その頃、

 

『ん?』

 

戦兎と龍誠の体が輝き、戦兎自身も含めて驚くと、二人が突如姿を消し、

 

「ここは!?」

 

陸人がいる、融合空間に飛ばされた。

 

「え?なんで戦兎さんと龍誠さんが?」

「いや俺も何がなんだか……」

 

ヒカリくんさんそんな設定を?と首を傾げると、ヒカリも想定外だったらしい。しかし、

 

《今はいいだろう。とにかく戦うぞ!》

「確かに」

 

グランドに言われ、陸人は頷く。そして、

 

「まぁお二人も驚いてると思いますけど、お願いします!」

「ま、やるしかないか」

「だな」

 

陸人の言葉に、戦兎と龍誠は頷くと、

 

「形態名はそうだな……グランド・ビルド・クローズだから、グランビルーズでいこう!」

『安直すぎない?』

 

思わず二人でツッコミを入れた。

 

「いやいやこういうのが最近の流行りなんですから」

「そんなもんかぁ?」

 

戦兎がそんな事をいうが、

 

「さぁさぁ!行きますよ!」

《我ら!ウルトラマン!》

「ま、今回はそっちの流儀に合わせるか」

「だな!」

 

戦兎と龍誠は、陸人に合わせて叫ぶ。

 

『グラァアアアアンド!』

 

グランド内の戦兎と、龍誠が、それぞれラビットタンクと、クローズに変わり、グランド自身も、左右で赤と青にの姿に変わった。

 

《ウルトラマングランド!グランビルーズ!》

 

新たな形態。グランビルーズに変わったグランドは、ビジターに向かって走る。

 

「《はあああああ!》」

 

高速移動で間合いを詰め、胸の傷を蒼い炎を纏わせた拳で殴り、ビジターは怯む。

 

《やはり胸の傷が弱点だ!そこを攻めるぞ!》

『おう!』

 

手から光線を出し、胸の傷を狙うと、ビジターはそれを庇うような大勢を取った。だが、

 

「《はぁ!》」

 

再び間合いを詰め、両腕を掴むと、強引に腕を広げさせ、掴んだまま飛び上がるとドロップキックを放ち、当たる瞬間に手を離して、そのまま吹き飛ばす。

 

《おのれ、救いに抗う愚か者共よ。度し難い》

「頼んでないんだよ!そういう押し付けがましいのは!」

 

陸人がそう叫びつつ、飛び蹴りを放つが、ビジターは空に飛んで避けると、

 

《度し難い度し難い度し難い度し難い度し難い度し難い度し難い度し難い度し難い度し難い度し難い度し難い度し難い度し難い度し難い度し難い度し難い度し難い度し難い度し難い度し難い度し難い度し難い度し難い度し難い度し難い度し難い度し難い度し難い度し難い度し難い度し難い度し難い度し難い度し難い度し難い度し難い!》

 

ビジターは巨大なエネルギーボールを作り出すと、大気が揺れ、空が割れる。

 

《だが救うのだ。全てを救う。我は救世主なり!》

「させるか!」

 

グランド内の、戦兎と龍誠はベルトのレバーを回し、

 

《Ready Go!ボルテックフィニッシュ!》

《Ready Go!ドラゴニックフィニッシュ!》

「《グランディウム光線!》」

 

全員のエネルギーをグランディウム光線に乗せて、ビジターに放つと、ビジターもエネルギーボールを落とす。

 

両者の攻撃が拮抗し、押し合いになるが、徐々に押されていく。しかし、

 

「勝利の法則は決まったぁああああ!」

「負ける気がしねぇえええええええ!」

 

戦兎と龍誠の叫びが木霊し、二人をそれぞれ、金と銀のオーラが包み込むと、光線の出力が跳ね上がる。更に、

 

「今だ!全ウルトラ戦士の皆さん!力ぜーんぶ使わせてもらいまーす!」

 

陸人はアプリをフリックでなぞり、全てのアプリの力を開放した。

 

《ウルトラオールスター!》

「《マキシマムグランディウム光線!!!》」

 

それと同時に、グランドの周りに、オーラ状の多くのウルトラマン達が現れ、光線を撃ちながらグランドと一体化すると、光線の出力が更に上がり、

 

『うぉおおおおおおおおお!』

 

戦兎と龍誠が叫び、

 

「シュワアアアアアアアアアッチ!!!」

 

陸人の気合で最後の押し込み。

 

そのままビジターのエネルギーボールを押し返すと、それを飲み込み、ビジターの胸の傷に直撃すると、光線が傷口に流し込まれ、内側から破壊していく。

 

《あ、ありえぬ……我が、滅びるなどぉおおおお!》

 

そのままビジターは光に飲み込まれ、消滅するのだった。




【グランビルーズ】
《未来を創れ!最強コラボレーション!》

グランド・ビルド・クローズの力で変身する形態。

ヒカリがグランフォンを通して得た戦闘データを使い、即興で作った。

アプリを起動すると、戦兎と龍誠がグランド内に転送され、変身が完了すると、二人の姿も仮面ライダーの姿に変わる。

二人の転送は予想外だったらしく、ヒカリも驚いていた。

戦闘スタイルはビルド由来の跳躍力と高速移動に加え、クローズ由来の格闘技能力とパワーで戦う。

実は単純なスペック自体はグランベリンに劣っているのだが、光線を撃った際に見せた、ハザードレベル7を戦兎と龍誠が超えた際の効果である、あらゆる物理法則を超える力を使えるなど、その真価は計り知れない。

更に、グランベリンで放つと、陸人もグランドも大きなダメージを負う、マキシマムグランディウム光線を放っても、戦兎と龍誠のあらゆる物理法則を超える力の恩恵からか、大幅に軽減されている。


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予感

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「ビジターとの激闘を制した俺達だったが……」
龍誠「いやぁ。まさかあんな形態になれるとはなぁ」
陸人「僕達もびっくりですよ〜」
グランド「だがお陰で倒すことが出来た。感謝するよ」
戦兎「とはいえ、兵藤一誠には逃げられたし、まだまだ俺達の戦いは終わりそうにないけどな」
龍誠「たしかになぁ。でも俺達に諦めの2文字はない!」
陸人「って感じの163話」
陸人&グランド「はじまるよー」
戦兎「俺のセリフ〜!」


「お疲れ様でした」

 

元の姿に戻った陸人達の元に、リアス達が駆け寄り、互いに労い合っていると、

 

『ん?』

 

すると空間が歪み、その中からアザゼルが飛び出してきた。

 

「おいお前ら無事か!」

 

大急ぎでやってきたアザゼルを見て、戦兎達は思わず笑うと、

 

「良くこれたな」

「何度か異世界に行ったり来られたりしたからな。時間は掛かるが、お前らの存在を探知してその世界に行くくらいなら出来る」

 

コイツも大概何でもありだな。と戦兎達は苦笑いを浮かべつつ、陸人の方を見ると、

 

「じゃあ俺達は行くな」

「はい。皆さんお気をつけて!」

 

陸人達が手を振る中、戦兎達も振り返して、歪みに飛び込んでいく。

 

「でも大丈夫なのか?」

「何が?」

「いや、あっちも色々ヤバい奴がいるみたいだし」

「大丈夫だろ」

 

きっとな。と返しつつ、戦兎は足を進めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちっ。壊されたか」

 

一誠は舌打ちをしつつ、椅子に座ると、忍がやってくる。

 

「良かったのか?ビジターを倒されてしまったが」

「いいさ、別にな。既にビジターの膨大なエネルギーは吸収できた」

 

そう言って、ロンギヌストリガーを手で遊びながら、一室を覗くと、

 

そこには機械に繋がれた、龍のような似たなにかの巨大な生物の頭が蠢いていた。

 

666(トライヘキサ)。これももう少しで復活だ。そうすればこの戦いの決着をつけれる。ハハハハハハ!」

 

そう言って笑う一誠に背を向け、忍は部屋を出ると、

 

「あぁ、決着を着けよう。兵藤 一誠」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうか」

 

サーゼクスは頷きながら、アザゼルからの報告を聞いていた。

 

「アイツら良くやったよ。ほんとにな」

「テオドロとストラーダもあの後捕まったらしいね」

 

あぁ、とサーゼクスの言葉に頷きアザゼルは、

 

「二人とも天界に大人しく捕縛されてな。ストラーダはともかく、テオドロも大人しく尋問に従っているらしい」

 

ポリポリとアザゼルは頭を掻きながら、

 

「何か憑き物が落ちたっていうか、魂が抜けたっていうかでな。ただ、自分がしたことをちゃんと清算して、今度は自分もウルトラマンにって言ってた。一体何のことなんだか」

 

意味わからん。そうアザゼルが言うと、サーゼクスは笑う。

 

「それにしても、戦兎くんたちはすっかり強くなった。心身共にね」

「それは間違いないな、もう一端の戦士だ」

「あぁ、僕に何があっても大丈夫だね」

 

おいおい縁起でもないな、とアザゼルが苦笑いを浮かべると、サーゼクスは真剣味を帯びた顔をし、

 

「嫌な予感がするんだ。この先、今までの比ではない何かが起ころうとしている。そんな気がね」

「その予感が外れることを願うぜ」

 

サーゼクスになにかある。そんな事が現実になれば冥界は必ず荒れるだろう。しかしサーゼクスは穏やかな笑みを浮かべ、

 

「大丈夫だよアザゼル。そう簡単にはやられるつもりはないからね」

 

そんな事を言いながら、サーゼクスはまた笑うのだった。




ビジターの倒し方

まずスペック無限とあらゆる物理法則を超える力を用意します。その位じゃないとまずダメージが通りません。ただしその力はハイスクールD×Dの世界の住人ではダメです。ビジターに操られちゃいます。
続いてその力で作った傷に、ビジター自身の攻撃を上乗せしたエネルギーを注ぎ込みましょう。ただしこのエネルギーは歴代ウルトラマンたちの力を一点に集め、更にあらゆる物理法則を超える力も上乗せしたくらいのエネルギーじゃないとなりません。でないとそもそもビジターの攻撃に押し切られちゃいます。

この2つをクリアするだけで誰でも簡単にビジターは倒せます。







できるかぁ!ってなってたのが、ジオウの一誠です。しかし、もしかしたら数多くある世界にはそれに合致する戦士がおり、それが奇跡的に戦兎達と出会うことを信じ、託したのが今回のお話でした。因みにジオウの一誠が見た世界線はこの出会いはなく、全て戦兎達は敗北し、滅ぼされています。奇跡に奇跡を重ねた結果生まれたのが、今回のビジターの勝利だったのです。なので、この時点で既に、ジオウの一誠が見た未来から変わっていっています。しかしそれが吉と出るか凶と出るか……それはまだわかりません。


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ウルトラマングランド設定集

青空 陸人

 

身長・156センチ

 

体重・52キロ

 

年齢・14歳

 

現在中学2年生の少年。小柄なことを気にしており、毎日牛乳を飲むのが日課。

 

少し気が弱く、暴力を受けるのもするのも嫌い。

 

そのためか学校ではイジメを受けており、物語序盤では同級生から暴力を受けていた。

 

それに対し、丁度地球にやってきたグランドがそれを見つけ、イジメっ子達を追い払った際に、やり返さないのかと聞いた際には、暴力はされるのも嫌だが振るうのも嫌だからと答えている。

 

しかし、一人で自分を育てている母に心配を掛けないために、それを隠していた。

 

元々こういう性格になったのも、実の父から虐待を母と共に受けており、その経験から暴力とは父の象徴であり、それを忌避していたため。

 

しかし、初の怪獣騒動の時、怪獣に襲われた際に、自分を虐めていた同級生を助け、その場に駆けつけたグランドが、何故助けたのかと聞くと、痛いのは嫌だからだ。痛いのって辛くて悲しくなるから、誰にもそんな思いはしてほしくないんだ!と恐怖で泣きながら叫ぶ陸人に、グランドは可能性を見出し融合。ウルトラマングランドとして、戦いに身を投じて行くことになる。

 

作中で明らかになっていくのだが、気弱で引っ込み思案なのは彼の本質ではなく、それは母に迷惑をかけないためのもので、実はかなり頑固。一度決めたことは絶対に曲げない。

グランドからも俺より石頭、と呆れられるほど。

 

とはいえ結構子供なところもあり、宿題よりゲームをやろうとして、グランドに怒られた際には不貞腐れたり、寝坊して遅刻仕掛けたときには、グランドに頼み込んでグランドに変身して飛んでいったこともあった。

 

更にネーミングセンスが絶望的に悪く、グランドの形態は彼が名付けているのだが、使ったウルトラマンの名前を合体させる等から、グランドからも安直すぎやしないか?と突っ込まれたこともあるが、これが最近の流行りだと言って納得させている。

 

グランドのことは、口煩いなぁと言いつつ、強く優しい彼を理想の父親と思っており、慕っている。

 

【グランフォン】

 

スマートフォン型のアイテム。

陸人がウルトラマングランドになるためのアイテムであり、ウルトラマンヒカリによって作られたアイテム。

独自の認証システムにより、認証されたものしか使えない。

グランフォンという名前は、元々つけられていたものではなく、陸人が手にしたときに、グランドさんと戦うためのスマホだから、グランフォン!っと言ったのが始まり。

画面を立ち上げると、様々なウルトラマン達の顔を描いたアプリ(通称ウルトラアプリ)があり、それをタッチすることで変身する。

しかしグランドは未だにこれの使い方をよく分かっておらず、陸人はスマホの要領でしょと言って使いこなしている。

 

形態変化以外にも、ウルトラアプリを起動することで、そのウルトラマンの技を放つことが可能。

 

 

 

グランド

 

M78星雲系シルバー族ウルトラマン。

 

かつて、現在ではウルトラの父と呼ばれるウルトラマンケンと、ウルトラマンベリアルと共に戦った歴戦の勇士。

 

しかし現在は大幅に弱体化しており、地球上では他のウルトラマン達が3分活動可能なのに対し、1分ほどしか戦えない為、戦闘の際には他のウルトラマンの力を使うことで、3分間の活動を可能にしている。

 

とはいえ、あくまでもその場を凌ぐための急造形態であるのは否めず、変身した後は目茶苦茶疲れるらしい。

 

陸人のことは、とても大切にしており、いつも口煩く言っては鬱陶しがられるなど、やり取りは実の親子のよう。

 

自身の事は、ウルトラマンを名乗る資格はないと語っており、掛け声の「我らウルトラマングランド!」は、陸人と共にだからウルトラマンと名乗れるという思いから。

 

そうなったのも、元々弟子としていた、ユダが悪のウルトラマンになってしまったため。

 

彼の歪みに気づいていながらも、友であるベリアルは闇に落ち、同じく友であるケンは、順調に出世していき、手の届かない存在になっていく焦りから、才能に恵まれたユダを育てることで追いつこうと、それに気づかないふりをしていたため。

 

しかしユダに裏切られ、力の殆どを奪われた。

 

必殺技は全形態を通して、両腕にエネルギーをためて、十字にして放つ【グランディウム光線】

 

【グランガマン】

《刮目せよ!新時代の幕開けだ!》

 

グランド・ウルトラマン・ギンガの力を使って変身する形態。

 

バランスの取れた形態で、この形態から最もあった形態に変身し戦う。

 

基本的に殴る蹴る投げる等の、素手での戦いや、光線技等を使う。

 

【グランセブウス】

《闇を切り裂け!正義の刃!》

 

グランド・セブン・メビウスの力で変身する形態。

 

頭部に装着されているグランスラッガーと、両腕から出すグランブレードで戦う。

 

硬い相手や、触るのが危険な相手に使われる。

 

【グランジャイア】

《条理も不条理も投げ飛ばす!投げの鬼のお通りだ!》

 

グランド・ジャック・ガイアの力で変身する形態。

 

パワーに優れ、投げ技等のプロレス技を多用する。

 

【グランオージ】

《混ぜて生み出せ!奇跡のミックス!》

 

グランド・オーブ・ジードの力で変身する形態。

 

特筆した能力はないが、唯一二つ以上のウルトラアプリの起動を行え(普段は形態変化に用いたウルトラマンの力以外は使えない上に、二つ以上の力の起動は行えない)、それを用いた多彩な技で戦う。

 

【グラントリッカー】

《魅せるぜ!3つの力のスペシャルコンボ!》

 

グランド・トリガー・デッカーの力で変身する形態。

 

中盤以降に使用される強化形態で、速さと力がどちらもバランス良く高く、更にバリアやテレポートなど、アプリを使わずとも使える特殊能力も多数あるため、頼れる形態として陸人も愛用していた。

 

【グランベリン】

《今こそ集え!伝説の勇士たち!》

 

グランド・ベリアル・ケンの力で変身する形態。

 

終盤に変身する最強形態で、圧倒的な強さを誇る。

 

ケンの力強さとベリアルの荒々しさ、そしてグランドの判断能力が合わさって、隙がない。

 

元々ベリアルのアプリは実装されていないのだが、作中でバロッサ星人との戦いで次元の裂け目から飛び込んできたウルトラマンゼットこと、ハルキから奪った、ベリアルのウルトラメダルから作り出された。

 

強力な反面、ベリアルのアプリには欠点があり、それはまず、他のウルトラアプリが使えなくなってしまうこと。そして、アプリが勝手に起動し、変身者の意志に反して勝手にグランドに変身させること。最後に、使用者の精神を蝕むということ。

 

それは使用者の狂暴性を引き上げ、暴走させてしまうため、使用時には陸人が暴走してしまっていた。

 

元々、陸人には実父と同様の、他者を虐げようとする狂暴性があり、それを抑えていた(作中で度々怒りに任せて怪獣を痛めつけようとする描写はあった)が、ベリアルのアプリでそれが表面化し、陸人は戦うことを恐れ、自身で変身出来なくなってしまう。だが勝手に変身もしてしまうため、逃げ場がなく、一時グランドとの融合を解除するかどうかまで追い込まれる自体に。

 

しかし、ハルキから人間は誰しも綺麗なわけじゃないこと。それでも、誰かの為に戦うから、凄いんだということ教えられ、陸人は自身の狂暴性も受け入れ、その上で戦う覚悟を決めたことで、ベリアルの力を克服し、この形態に変身した。以降は、他のアプリも使えるようになる。

 

ベリアルのアプリのデメリットからも分かるように、これは元々ユダが陸人とグランドを引き離すための、言うならばウィルスアプリ。陸人を暴走させ、グランドを一人に戻すためのものだったが、この一件で、ユダは陸人をある程度は認め、自身の計画の障壁になる存在だと言い、今回も陸人が行ったなら大丈夫だとしていた。

 

とはいえ、完全に影響がないわけではなく、この形態に変身すると、一人称が俺になるなど、ちょっと口調が乱暴になる。

 

徒手格闘も勿論強いが、専用武器として、グランドの頭頂部を模した片刃の青竜刀のような刀身と、ケンのウルトラホーンを模した鍔、ベリアルの目のような刃紋が走った、【グラベリケン(命名・陸人)】があり、それを使った剣術戦も得意とし、グランドとベリアルとケンのアプリをそれぞれ起動させ、陸人が刀身をスキャンさせることで強力な技も発動可能。

 

因みに名前は、グランドアプリを起動させてスキャンさせて衝撃波を放つ、【グラグラアタック】。ベリアルのアプリをスキャンさせて刀身に黒い稲妻を纏わせて放つ、【ベリベリスラッシュ】。ケンのアプリをスキャンさせて刀身から斬撃を飛ばす、【ケンケンビーム】といった、余りにも名前が酷い技ばかり(共に戦ったハルキやゼットからも、もう少し名前を考えたほうが良いと突っ込まれた)である。そもそもケンケンビームに至ってはビームですらない。

 

必殺技は、変わらずグランディウム光線だが、エフェクトに黒い稲妻が入るなど、少しベリアル要素も足される。更にこの形態時には、全てのウルトラアプリ起動させ、全ウルトラマンの力を上乗せして放つ光線技【マキシマムグランディウム光線】を放つことが可能だが、これを使うと陸人は全身重度の筋肉痛になり、グランドも数日エネルギー回復のために戦闘の一切が行えなくなるほどのダメージを負う。

 

【グランビルーズ】

《未来を創れ!最強コラボレーション!》

 

グランド・ビルド・クローズの力で変身する形態。

 

ヒカリがグランフォンを通して得た戦闘データを使い、即興で作った。

 

アプリを起動すると、戦兎と龍誠がグランド内に転送され、変身が完了すると、二人の姿も仮面ライダーの姿に変わる。

 

二人の転送は予想外だったらしく、ヒカリも驚いていた。

 

戦闘スタイルはビルド由来の跳躍力と高速移動に加え、クローズ由来の格闘技能力とパワーで戦う。

 

実は単純なスペック自体はグランベリンに劣っているのだが、光線を撃った際に見せた、ハザードレベル7を戦兎と龍誠が超えた際の効果である、あらゆる物理法則を超える力を使えるなど、その真価は計り知れない。

 

更に、グランベリンで放つと、陸人もグランドも大きなダメージを負う、マキシマムグランディウム光線を放っても、戦兎と龍誠のあらゆる物理法則を超える力の恩恵からか、大幅に軽減されている。

 

 

 

水沢 真海

 

身長・174センチ

 

体重・65キロ

 

年齢・17歳

 

陸人の家の近所に住む幼馴染であり、陸人の初恋であり現在の想い人。

 

ボーイッシュな見た目で男女ともに人気が高く、バレー部に所属する高校2年生。

 

陸人がこちらに越してきてからの付き合いで、弟のように可愛がっており、陸人からの好意には全く気づいていない。

 

しかし部活帰りに陸人の様子を見に顔を出すなど、面倒見は良く、陸人がウルトラマングランドとして戦うのを知った当初は、余り良く思っていなかったが、戦う中でたくましく成長していく姿を見て、見守っている。

 

好みの男性は、背が自分より高くて、大人な年上の男性。と言っているが、成長する陸人の言動にドキドキさせられることもあるものの、自覚していない。

 

青空 詠

 

身長・160センチ

 

体重・50キロ

 

年齢・ヒ・ミ・ツ

 

陸人の母。のんびりとした性格で、殆ど怒ることはない。

 

夫からのDVに怯える日々を過ごしていたが、陸人が夫を刺した際に、陸人を抱えて逃げ出して現在に至る。

 

今は働きながら陸人を育てており、過保護な一面もあるため、当初はウルトラマングランドとして戦う事に大反対していた。

 

その為、それを知った際は、グランフォンを取り上げてそれを捨てようとしたりし、陸人と大喧嘩することに。(今まで自分に反抗しなかった陸人が初めて反抗したため、驚いていた)

 

その際にグランドから陸人の力がないとダメだということ。陸人がいるから自分は戦えること。そして陸人は必ず無事に返すことを誓われ、戦うことを許した。

 

現在も戦いに巻き込むグランドには思うところもあるものの、陸人が寝たあとに、グランフォン越しに話してたりするなど、仲は悪くない模様。

 

のんびりとしているが、陸人が遅刻しかけた際にグランドになって飛んでいった際には、かなり怒ったらしい

 

 

ウルトラマンユダ

 

元グランドの弟子にして、今作の黒幕。

 

現在は本間啓として地球で生活しており、作中冒頭でテレビに出演していた本間教授は彼。

 

地球である程度の発言力を持ち、グランドへのヘイトを高めているが、本人はグランドの大ファン。

 

そもそも彼は、両親がウルトラ警備隊の隊員であり、任務の最中に死亡。天涯孤独の身になったところをグランドに拾われ、育てられた。

 

類まれなる才能を持っていたが、両親を失い孤独を味わった影響で、強さへのあこがれが強く、そこからグランドを崇拝するようになってしまい、ある時グランドを裏切り力を奪い取ってしまう。

 

というのも、彼はグランドが活躍する物語を見たいと思っており、その為に自身が悪役となり戦うことでその強さを間近で見れると思ったから。

 

ただその前にもグランドが戦っているところを見たいという思いがあったものの、その時点でのグランドでは殆どの怪獣に苦戦することはなく、ユダが見がかったのは苦戦しても、それでもヒーローのごとく立ち上がり戦うグランドの姿であったため、その為力を奪った。

 

その為、陸人のことを異物と呼び、いずれ排除しようと考えている。

 

彼もグランフォンを光の国から強奪して奪っており、本間からユダに戻る際に使用しているが、本来使用が許可された者以外使えないようになっているのに使えるのは、彼がグランドから力を奪っているからで、グランフォンには、ウルトラマングランドだと認識されているから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウルトラマン アース

 

最終回に登場する、ウルトラマングランドの死によって生まれたウルトラマン。グランドによく似ているが、別のウルトラマンである。

 

その正体は陸人本人。

 

最終回にて、遂にユダとの最終決戦を迎えるのだが、グランベリンを持ってしても、ユダには敵わず敗北。カラータイマーを撃ち抜かれ、地面に倒れ伏すグランドだが、融合している陸人も致命傷を負ってしまう。今はグランドの中にいるからいいが、いずれこのままでは、陸人が死んでしまうと判断し、自身の命を陸人に渡すことで、陸人を助けようとする。

 

しかし力を奪われ、自身も致命傷を負った状態では陸人を助けることは出来ず、絶望しかけるが、そこに街の人々が集まってくると、誰からともなくウルトラマンの名を叫び、声援を送る。

 

本間ことユダの策略により、人々から誤解されていたと思っていたが、ウルトラマンを信じ、立ち上がることを願う人々も沢山おり、その声が光になり、陸人に降り注ぐ。更にグランフォンからも光が溢れ出し、陸人に命を与えていくことに。

 

それがグランフォンを通し、アプリに実装されていた、歴代ウルトラマン達に加え、ユダの事件前に独り立ちしていった、グランドの教え子達(グランドは後ろめたさから、連絡を取っていなかったものの、ずっとグランドのことを案じており、今回では我先にと集まってきていた)が、グランドの思いを汲み、力を陸人に注いでくれていた。

 

そして、傷がすっかり治り、起き上がった陸人を見て、安心するグランドだったが、陸人はグランドが消えかけていることに気づく。

 

そして、自分が死ぬことを伝えられると、陸人は当然拒否するものの、グランドはそれを受け入れると、グランフォンを陸人に改めて渡し、礼を言う。

 

陸人がいたから、再び戦えたこと。陸人がいて楽しかったこと。陸人に出会えて良かったことを。

 

そして同時にすまないと。戦いに巻き込んだこと。辛く苦しい思いをさせたこと。そして何より、ユダと言う敵を残してしまうことを。

 

しかし陸人は泣きながらも、逆にグランドに礼を言う。グランドがいたから強くなれたことにはグランドがいたから、将来に夢を見れるようになったこと。そして何より、誰かを守れるようになったのは、グランドのお陰だと。

 

だから、と陸人は言い、グランドから飛び立つと宣言。いつかグランドを超えて見せると。

 

その言葉にグランドは頷くと、最後の贈り物だと言って、何かを呟くと、陸人は頷いて背を向け、

 

「行ってきます。父さん」

 

ずっと父のように思ってきたが、それでも直接呼ぶのは憚られた父という呼び方に、グランドは少し驚きつつ、

 

「あぁ、いってこい。息子よ」

 

と激励して送り出すと、陸人は未練を振り切るように走り出す。グランフォンを構え、それを掲げながら、陸人は叫ぶ。それは父が息子に送ったプレゼント。

 

親から子へ、こんな風に育ってほしいという願いを込めて送るもの。それは名前だ。

 

そして人々は何度でも叫ぶ。自分が信じたヒーローもウルトラマンを。

 

それに合わせ、陸人も叫んだ。父から貰った、ウルトラマンアースの名を。

 

それによって生まれた新たなウルトラマンこそが、アースであり、陸人の新たな姿。

 

その姿にユダはありえないと言い、グランドは陸人の代わりに死んだことを自覚し、もうグランドがいないのであれば、その強さを自分が受け継ぎ、新たなグランドになると宣言。

 

しかし陸人は、グランドの凄さはそんなものじゃないといい、ユダと戦いを繰り広げる。

 

しかし、一年戦ってきたといっても、戦闘経験も才能も、そもそもの基礎スペックからして、ユダにアースは勝てず、苦戦を強いられることに。

 

とはいえ、アプリの使い方では陸人に部があったり、諦めない心で必死に食らいついて致命的な一撃は避けていくが、最後は光線の打ち合いに発展。

 

地球ごと破壊するために放った、ユダのグランディウム光線に、陸人は咄嗟に放った、アースィム光線がぶつかり合い、互いのアプリの全開放を行ってうが、元々の光線の威力自体に下がったため、アースは圧されていくものの、最後の最後で、グランドのアプリの力を陸人は開放し、押し返してユダを倒した。

 

ユダは前述通り、あらゆる点でアースこと陸人を上回っていたが、最後にもグランディウム光線を放つなど、グランドから得た力をそのまま使っていたのに対し、陸人はアースィム光線といった、自身の光線を生み出すことで、グランドの力を上乗せできた。その点が、両者の命運を分けたとされている。



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劇場版ウルトラマングランド設定集

ユダとの戦いから3年。

 

陸人は高校生になり、勉学と高校を機に入った天文学部を楽しみつつ、ユダの一件で、未だに起きる怪獣事件や、異星人騒動のために奔走する毎日を送っていた。

 

そんなある日、自身の前に現れた、神を名乗る存在と出会い、陸人ことウルトラマンアースの史上最悪の戦いが始まる。

 

 

青空 陸人

 

17才

 

高校2年生

 

ウルトラマンアースとして戦いながら、高校生活を謳歌する本作の主人公。

 

未だに背が伸びないことを気にしているが(これはウルトラマンになったことで、成長が遅くなっているのが大きい)、精神面では大きく成長しており、かなり大人びた性格になっている。

 

ただ根底は変わっておらず、誰かが苦しまないために、日々戦いの毎日を送っていた。

 

真海との関係だが、実は高校入学時に告白して振られており、それ以来少し疎遠になっているが、未だに真海のことを引きずっていて、吹っ切れていない。

 

しかし、虐められていた中学時代とは打って変わり、現在は実は結構モテており、学校では異性の友人も多くなっている。

 

勉強面は余り改善されていないが、運動神経に関しては、ウルトラマンになった影響から大幅に上昇しており、寧ろ思い切り手加減しないと相手に大怪我させてしまうため、その加減に苦労している模様。

 

そんなある日、神様と名乗る存在が現れて……?

 

 

 

ウルトラマンアース

 

陸人がグランフォンを使用して変身する姿。3年前の戦い以降も数多くの激闘を繰り広げた影響で、戦闘能力も当時より向上している。

 

グランドとは違い、他のウルトラマンの力を自身に上乗せして戦う事はできないが、様々なウルトラマンの技をアプリで使用して戦う。

 

 

 

水沢 真海

 

20才

 

陸人の幼馴染にして、現在は大学生。

 

陸人とは少し疎遠になっているが、今も陸人のことを大切に思っている。

 

そもそも、陸人を振ったのは、好意に全く気づいておらず、突然の告白に驚いたのが原因。今は寧ろ逆に意識してしまい、そのため話せなくなったらしい。

 

ただ陸人のというか、ウルトラマンアースの活躍は追っており、世間では新たに現れた正体不明のウルトラマンとして話題になっているアースの正体を知るものとして、その動向を気にかけていた。

 

そんな折、最悪の戦いに巻き込まれていくことになる。

 

 

 

 

 

自身を破壊と想像の神を自称する謎の青年。

 

男女問わず見た者を魅了する見た目をしており、陸人は逆に不気味と称している。

 

その正体は、正真正銘神様。あらゆる宇宙を作り出し、平行世界の全てを司る存在。

 

この世界は愚か、平行世界のあらゆる存在の上に立つ存在であり、完全無敵の力を持つ。

 

目的は、世界の整理。余りに増えすぎた世界を、整理するために来たのだが、宇宙の平和を守るウルトラマンという存在は、自分が出張る理由を無くす為に必要なコマのため、陸人に別の宇宙へ行ってほしいと言いに来たのだが、勿論陸人はそれを拒否すると、ならばお前ごと滅ぼそう。といい、空から大量の怪獣達が降ってくる事に。

 

その怪獣達の正体は、歴代ウルトラマンに勝った世界線の怪獣たちで、本来ならウルトラマン達に敗北する運命をある意味で乗り越えた存在達。それを世界を超えて呼び出すことで、他にも数多くの世界を消し去ってきた。

 

ラスボス以外にも、それぞれの話数で登場した怪獣達が街を襲う中、陸人はウルトラマンアースに変身。しかし多勢に無勢で、倒されてしまい、変身が解除されてしまう。

 

天を覆うほどの怪獣の群れに街は破壊されていき、陸人を心配して来た真海が陸人を連れて逃げるのだった。

 

それから半日経って陸人は目を覚ますが、既に街は無く、世界各地で怪獣が暴れ、地球崩壊のカウントダウンが始まっており、陸人は急いで再び戦おうとするが、真海に止められる。

 

もうこんなのを打開するのは不可能だと言う真海に、陸人は首を振ると、

 

「諦めない。だって俺はウルトラマンだから」

 

と言って、陸人は再びウルトラマンアースに変身。

 

しかし先程同様、多勢に無勢で苦戦を強いられる中、生き残った人々がアースに声援を送ると、それが光に変わり、アースは復活。そのまま光線で怪獣達を蹴散らしていくが、次の瞬間アースの胸を光が貫き、アースが地面に倒れた。

 

その攻撃の主は神で、抵抗されるのは面倒だと発言。そもそもその気になれば、指パッチンで世界を消せる彼が、何故こんな事をするのか。それは、絶望に包まれ泣き叫ぶ人々の姿を見るのが楽しいから。

 

せめて壊す前に、自分を楽しませてもらうはずが、思った以上に抵抗され、面倒くさくなったのか、神は手を上げ、指を鳴らすと、アッサリと世界が消滅。そのままアースも、消えてしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウルトラマン エターナルアース

 

世界が消滅し、次の整理する世界に行くべく、移動しようとした所に現れた謎のウルトラマン。

 

手を振るだけで消滅した世界が元通りになるなど、その力は未知数。

 

スペックも既存のウルトラマン達を凌駕し、軽く拳を振るだけで、惑星をも消し飛ばす。

 

破壊と創造を司り、神如きウルトラマンというよりは最早、神をも超えた存在。

 

歴代ウルトラマンの力を、本人達以上に、ノーモーションで扱うことが可能。

 

必殺技は、全エネルギーを内包して放つ、エターナルアースィム光線。

 

その正体は、真海と融合し、更に他の宇宙のウルトラマン達と、その世界に住んでいた人々の願いが具現化した、アースの究極形態。

 

そして消滅し、暗闇を漂う中、陸人の元に真海が来て、無茶ばかりする陸人に怒り、それでも戦う彼に、涙を流すと、それが陸人の胸に落ちた時、光が溢れ出し、更に敗北し、バットエンドを迎えた世界のウルトラマン達だが、その魂はまだ残っており、それがアースに取り込まれ、更にそれぞれの世界の人々が、アースの戦いを見て、もう一度ウルトラマンを信じ、希望を託した。

 

これが行えたのも、アース自体が、歴代ウルトラマンの力を受け取って生まれた存在だったからというのもある。

 

そしてそれによって、陸人は復活し、真海と光りに包まれ、改めて真海に告白し、真海はそれを受け入れると、二人でウルトラマンに変身し、エターナルアースは生まれた。

 

神は自身をも超えるであろう存在となった、エターナルアースに敵意を向け、怪獣達をけしかけるが、全ての怪獣達を軽々と蹴散らしていき、最終的に、必殺のエターナルアースイム光線で、怪獣と神を纏めて撃破した。

 

その後、再び平穏の日々を取り戻した陸人と真海だが、高校生の彼氏(見た目中学時代から変わらず)に見た目犯罪だよねぇ。と真海は悩むのを背景に、物語は終了。

 

その後もこの形態にはなれるらしいが、陸人自身はこの形態は存在してはならない姿だと思っており、この形態にはならない方針らしい。



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第二十三章 絶望のエンドロール
家族


前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「陸人達との共闘を乗り越え、日々を過ごす俺達だったが……」
龍誠「遂に兵藤 一誠が遂に全てを終わせるために動き出す!」
戦兎「これから俺達はどうなるのか。そもそも世界はどうなるのか。乞うご期待!」
龍誠「物語も遂に最終章な164話はじまるよー!」



「兵藤 一誠の弱点を発見したかもしれない」

 

陸人とウルトラマングランドたちとの出会いと別れから数週間経った頃、戦兎は仮面ライダー組を集め、驚きの言葉を発した。

 

「どういうことだ戦兎?」

 

皆が口をポカンとする中、龍誠が代表して問うと、スクリーンに戦兎は画面を写す。

 

「兵藤 一誠のロンギヌストリガー。これはアイツの力の源と言っても過言じゃない。つまり、アイツの力はここに集約されていて、非常にデリケートな部分だ」

 

そう言って戦兎は、ハザードトリガーを取り出した。

 

「俺は先日父さんと交戦した際、ハザードトリガーに攻撃を加えられ、一時的に動きに制限が掛かった。そしてビルドドライバーと、エボルドライバーは非常に似た構造をしている。これはフウのエボルドライバーを調べたときに知った事だけどな」

 

だからおそらく、と戦兎は続け、

 

「ハザードトリガーとロンギヌストリガーも構造はかなり近い」

「つまりロンギヌストリガーをピンポイントで攻撃できれば、兵藤 一誠に大きな隙を作れる」

「その隙に俺達の全身全霊を叩き込めばいけるかもしれない」

 

ただ問題は、と戦兎はヴァーリに言うと、

 

「あの兵藤 一誠の猛攻を掻い潜りながら、ピンポイントでそこを攻撃する必要があるということです」

 

そこが一番の問題だった。あの男の攻撃を避けながらそれを達成するのは、困難を極めるのは間違いない。だがそれでも光明は見えた。

 

「なら他の皆にも教えないと!」

 

と龍誠が立ち上がっていこうとするのを、匙が止めた。

 

「バカ。何で俺達だけを呼んだと思ってんだ。これは俺達だけでやるって話だろ?」

「あぁ」

 

何で?と龍誠が首を傾げると、サイラオーグが、

 

「あの兵藤一誠の猛攻を躱しながらロンギヌストリガーを狙うなんていう分の悪い賭けに巻き込むわけには行かない。そもそも戦兎の読みが当たる保証もない。何より、今どこに禍の団(カオス・ブリゲード)のスパイが潜り込んでいるかもわからない。冥界も天界も今やどこにスパイがいるのか分からず、疑心暗鬼状態だ」

「あぁ、だからこれは俺達だけで行う。だから龍誠。頼むからお前は口を滑らすなよ」

「お、おぉ!」

 

こいつが一番心配だ。と全員思ったのだが、それは飲み込んでおきつつ、戦兎はプロジェクターの画面を見る。

 

(必ず。倒してみせる)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうぞ」

「ん?」

 

次の日、研究室でのんびりしていると、小猫がやってきて、箱を渡してきた。

 

「あ、今日バレンタインデーか!?」

「忘れてたんですね」

 

戦兎は苦笑いを浮かべながら、箱を受け取っていると、

 

「せんぱーい!」

「やっほー」

 

そこにギャスパーと黒歌もやってきて、ワイワイしだした。

 

自分の事を好いてくれる女性達(ギャスパーを女性枠にいれるのはまだ若干抵抗があるが)。これからもそんな皆との日々も守りたい。そう思いながら見ていると、

 

「賑やかだなぁ」

『っ!』

 

部屋の隅から聞こえた声に、戦兎達は振り返ると、そこには兵藤 一誠がいた。そしてその腕の中には、

 

「母さん!美空!」

 

意識を失っているのか、二人はぐったりとしており、戦兎の呼びかけに答えない。

 

「今すぐ離せ!」

 

戦兎は変身しようとするが、一誠はデュランダルを取り出し美空に突きつける。

 

「おっと動くなよ戦兎。大人しく着いてきてもらおうか。お前一人でな」

「なに?」

 

戦兎はドライバーを一度下し、眉を寄せた。

 

「ドライバーとボトルをそこに置き、俺について来い」

「ダメです戦兎さん!」

 

小猫が止めるが、戦兎は首を振ってドライバーとボトルを机に置き、一誠の元に行く。

 

「行ってくる」

 

そう言い、戦兎は一誠と共にテレポートした。

 

そしてついたのは、見たことのない大きな部屋の一室で、一誠は母と美空を投げ捨てる。

 

「うっ……」

「母さん!美空!」

 

咄嗟にキャッチしたものの、その衝撃で意識を取り戻した二人は、一誠を見て驚き、

 

「龍誠君?」

「他人の空似だよ」

 

戦兎は二人を庇うように立つと、一誠を睨みつける。

 

「どういうつもりだ?」

「なぁに。少し話でもしようと思ってな」

 

そう言って指を鳴らすと、背景にプロジェクターが映され、そこにいた不気味な化け物に戦兎達は息を呑んだ。

 

666(トライヘキサ)。お前も前に名前は聞いただろ?」

「バカな。そいつは聖書の神が命を代償にした封印が施されているはずだ!ロスヴァイセさんの研究もあの後改めて検証されたはず!」

「あぁ、だが俺なら解除が出来る。大変だったぜ。ロスヴァイセの研究を見ながら、他の世界から集めたエネルギーを注ぎ込んでやっとここまで着た。後は勝手に復活するだろう。さて戦兎。二択クイズをしようじゃないか」

 

益々意味がわからず、戦兎は息を呑みながら困惑すると、

 

「一つ。お前の仲間たちを別世界に連れてってやろう。そしたら俺はもうお前らには関わらない。但し、後ろの二人の家族を連れて行くのは許さない。二つは、家族だけは連れて行くのを許そう。但し、他の仲間達を連れて行くのは許さない。破れば、他の世界に逃げても追いかけて世界ごと滅ぼす」

「そんなの!」

「俺を倒すか?できると思ってるのか?確かにお前は強くなった。だが、俺が本気になればお前達を消すなんて簡単だ。俺の軍勢は既に完成している。更に666(トライヘキサ)が蘇れば、更に強固になるだろう。ましてやお前、ドライバーもないじゃないか」

 

だから選べと、一誠は改めていう。

 

「仲間を選べば、お前だけをまず送る。その後仲間達も送ってやるさ。ただし後ろの家族は今すぐに殺す。家族を選べば3人とも送ってやる。だがその後すぐに全勢力で俺はこの世界を滅ぼし、真の世界に変える」

 

さぁどうする?と一誠は問うが、戦兎は言葉を発しない。

 

「おいおい悩むなよ戦兎。せめて嘘でも家族だけは助けてくれとか言ったらどうだ?あ、もうそんな人間らしい感情は失っちゃったかな?」

『え?』

 

一誠の言葉に、母と美空は驚き、戦兎は眼を見開く。

 

「やめろ!」

「そうだよなぁ。折角美空の記憶を消してまで自分の正体を隠してたんだもんなぁ。悪魔くんよぉ!」

 

次の瞬間、プロジェクターに映されたのは、戦兎の背中から悪魔の羽根が生えている写真だ。

 

「お二人さんよ。そいつはもう人間じゃない。悪魔に成り果てた化け物さ」

 

ずっと一誠は考えていた。どうすれば戦兎の心を砕けるか。幾度となく自分の計画を阻む相手。ただ力付くで潰すのも良い。だがそれでは腹の虫がおさまらない。徹底的に、これでもかというほど潰したいという感情。

 

だから態々呼び出し、暴露した。

 

「言っておくがCGじゃないぜ?聞いてみろよ。ほら戦兎、オレハニンゲンデスって言ってみろよ。なぁ?」

 

ギリッと奥歯を噛み締めるが、振り返れない。母と妹の顔を見れない。智宏の一件は、助けるのに必死だったが、今は家族だけの場。その場での暴露の反応に顔を見れずにいると、

 

「そうだったの。悪魔の息子なんてびっくりだわぁ」

 

母はあっけらかんと答えた。

 

「は?」

 

一誠はポカンとし、戦兎も思わず振り返る。

 

「戦兎達がなにか隠してるな〜っていうのはずっと気付いてたわ」

「だよね。隠してる気になってるのお兄ちゃん達だけだし」

 

なんてことのない顔で言う二人に、一誠は待て待てと言い、

 

「何いってんだお前ら。家族が悪魔になったんだぞ?化け物になったんだぞ!?」

「えぇ、でもそれがなにか?例え戦兎が何になろうとも、私の息子だということに変わりはないわ。それに何あの質問は。うちの子はね、誰も犠牲になんてしない。最後の最後まで全員助かる方法を考え、実行する子に育ててるのよ!戦兎を馬鹿にしないで。貴方が何者か知らないけど、戦兎はあなたに勝つんだから!」

「そーだそーだ!お兄ちゃんは変人だけどメッチャクチャ頼りになるんだから!」

 

二人の言葉に、戦兎は不覚にも泣きそうになった。

 

「はぁ、ウッザ」

 

一誠はそう言って、もう良いわと言って、エネルギー弾を放とうとしたが、

 

「そこまでだー!」

「っ!」

 

天井が破壊され、そこに飛び込んできたのは龍誠を筆頭に仲間達と、各勢力の精鋭達がいた。

 

「なぜここが!?」

「残念だったな」

 

そう言って、戦兎はビルドフォンを出して見せる。

 

「これにはGPSが仕込んであってな。俺が何で大人しく着いてきたと思ってんだ」

 

そう言いながら、戦兎は小猫からドライバーとボトルを受け取り、

 

「心配しました」

「わりぃわりぃ」

 

と返し、母と美空を見る。

 

「ごめん黙ってて。全部終わったら話すから、今は見てて欲しい。俺の今を」

 

その言葉に二人は頷くと、他の仲間に避難させられ、

 

「兵藤 一誠。もうそろそろ終わらせよう」

《グレート!オールイエイ!ジーニアス!》

 

そしてそこに仮面ライダー組が並び、ベルトを装着。

 

「そろそろお前との因縁も飽きたんでな」

《ボトルバーン!クローズマグマ!》

「お前みーたんにヒデェことしやがって。心火を燃やしてぶっ飛ばす!」

《ロボットゼリー!》

「今回のやり口は結構プッツンきたぜ!」

《ドラゴンゼリー!》

「終わらせましょう。この戦いを!」

《コウモリ!発動機!エボルマッチ!》

「あぁ!」

《デンジャー!クロコダイル!》

 

最後にサイラオーグは右に同じく!っと書いたTシャツを見せながらボトルを装填するが、それを見たヴァーリが、

 

「全員左側だけどな」

「ん?」

 

シャツに描かれた矢印を目で追い、逆なことに気づき、正しい位置に移動。

 

「どこ見てんだよ」

「わざとだ」

 

そんな締まらないやり取りに、戦兎は笑う。

 

「何笑ってんだ?」

「いや、なんともカッコいがつかねぇなと思ってさ」

 

龍誠はそんな戦兎を見つつ、匙が嫌なのか?と聞くと、

 

「いや、さいっこうだ!」

「同感です」

 

戦兎達はレバーを回し、構える。そして、

 

《Are you ready?》

『変身!』

《完全無欠のボトルヤロー!ビルドジーニアス!スゲーイ!モノスゲーイ!》

《極熱筋肉!クローズマグマ!アーチャチャチャチャチャ チャチャチャチャアチャー!》

《潰れる!流れる!溢れ出る!ロボットイングリス!ブラァ!》

《潰れる!流れる!溢れ出る!ドラゴンインクローズチャージ!ブラァ!》

《割れる!食われる!砕け散る!クロコダイルインローグ!オラァ!キャー!》

《バットエンジン!フッハッハッハッハ!》

 

全員変身し、一誠を見つめる。それを見た一誠もドライバーを装着し、

 

「良いよ分かったよ。お前ら全員皆殺しだぁ!」

《ロンギヌス!ロンギヌス!ロンギヌス!エボリューション!フハハハハハハハハ》

 

一誠も変身を完了。

 

こうして、最後の戦いの火蓋が切って落とされたのだった。




すごーく今更なんですが、総合評価が1000突破してました。皆様ありがとうございます。自分の書きたいように書いてる作品ですが、ぜひ最後まで戦兎達の有志を見届けてください!


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前奏曲

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「遂に、兵藤一誠との最終決戦の幕が開ける!」
龍誠「長かった因縁もここで終わらせるぜ!」
戦兎「最後まで見届けてくれよな!」
龍誠「ってな感じの165話スタートだ!」


『はああああああ!』

 

一斉に戦兎達は一誠に襲い掛かるが、一誠はそれをすべて捌き、弾き飛ばす。

 

飛んでくる魔力や光を避けつつ、合間に入ってくる聖魔剣やエクスデュランダルを自身のデュランダルで弾く。

 

ここまでの人数差があっても尚ここまでとは。

 

「前より更に強くなってやがる」

「怯むな!行くぞ!」

 

龍誠に檄を飛ばしつつ、戦兎はフルボトルバスターを手に間合いを詰め、一誠に斬りかかる。

 

刃が動き、火花を散らすが、一誠はそれを受け止めながら、戦兎を殴り飛ばした。

 

「おいおいどうした戦兎。その程度か?」

『はぁ!』

 

そこに匙とヴァーリが飛び蹴りを叩き込み怯ませ、フウが銃撃して追撃。そして、

 

「ふん!」

 

サイラオーグが一誠の腹部。厳密に言えばロンギヌストリガーを殴った。

 

「どうだ!?」

 

サイラオーグが一誠を見るが、

 

「効かねぇなぁ!」

 

一誠は、サイラオーグを殴り飛ばす。

 

「ダメか!?」

「いやまだだ!」

 

龍誠は転がるサイラオーグを飛び越え、クローズマグマナックルを装備し、ドラゴンフルボトルを装填。

 

《ボルケニックナックル!アチャー!》

「はぁ!」

 

再びロンギヌストリガーに一撃を叩き込む。しかし、

 

「うっとおしい!」

 

一誠に殴り飛ばされる。

 

《ツインブレイク!》

 

そこに匙とヴァーリが同時に叩き込み、一誠は後ずさる。すると、

 

「ん?」

 

バチッっと音がして、一瞬動きが鈍る。それに一誠は少し驚くと、

 

「おぉ!」

《ワンサイド!Ready Go!ジーニアスアタック!》

 

それを見て、行けると確信した戦兎が、再び一撃を叩き込んだ次の瞬間。

 

「んなっ!?」

 

全身に電流のようなものが走り、動けなくなった上に、コブラフォームに戻ってしまった。

 

「ど、どういうこと?」

 

仮面ライダー組以外は驚きで困惑しているが、

 

「とにかく説明は後です!全身全霊の一撃を叩き込んでください!」

 

戦兎の声に、全員は頷き、

 

「全員構え!」

 

アザゼルが叫ぶと、精鋭達が一斉攻撃する。降り注ぐ攻撃に、一誠はコブラフォームでは耐えれず、ダメージを負い、リアス達もそれに加わる。そして、

 

『はあ!』

《スクラップフィニッシュ!》

《スクラップブレイク!》

《クラックアップフィニッシュ!》

《エボルテックアタック!》

 

ライダー四人の同時キックが一誠に炸裂し、壁に押し付けられる。更に、

 

《ワンサイド!逆サイド!オールサイド!Ready Go!》

 

戦兎と龍誠が飛び上がり、同時にキックの大勢に入り、

 

『これで終わりだぁああああ!』

《ジーニアスフィニッシュ!》

《ボルケニックアタック!》

 

ダブルキックが炸裂し、爆炎が上がった。

 

「そんな……ありえないいいいいい!」

 

一誠が断末魔を上げた時、突如ロンギヌストリガーが唸りを上げ、ドライバーを中心に一誠を吸い込んでいく。

 

「なんだ!?」

 

予想外の反応に、戦兎が驚くと、次の瞬間にはドライバーが地面に落ちるときだった。

 

「一体何が……」

 

困惑を隠しきれないでいるとそこに、

 

「それが本来の力だ」

『え?』

 

皆が声の方を見ると、立っていたのは戦兎の父、忍だ。

 

「エボルドライバーとロンギヌストリガーは兵藤 一誠の変身アイテムであると同時に、トリガーに一定以上のダメージが入り、動きを抑制した状態でとどめを刺したとき、兵藤 一誠を取り込み、封印するための装置なんだ」

「どういうことだよ」

 

戦兎は理由がわからず問うと、忍は目を瞑り、

 

「全てを話そう」



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真実

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「遂に兵藤一誠を倒した俺達。しかしその前に現れた父さんが、真実を語り始める」
龍誠「一体その口から何が語られるのか」
戦兎「そんな感じの166話スタートだ」


 

失踪する直前。忍の眼の前に現れたのは、まだ子供だった兵藤 一誠だった。最初はただの子供かと思ったが、恐ろしい力を持っていた。

 

そして言ったのだ。

 

「お前が作っていたベルトをよこせ」

 

戦兎の不思議な能力を用いた変身アイテム。まだ誰にも言っていないはずのそれを、彼は知っていた。

 

なぜか後で聞いたら、偶然戦兎が神器(セイクリットギア)を自分の前で出したのを見ており、それを調べているのを知っていたから。

 

物理学の権威として知られる自分が、それを見た時どうするのかを見ていたらしく、その過程でドライバーの存在を知っていたらしい。

 

タイミングと都合が良すぎる。そう思ったが、後々思えば当然だったのかもしれない。

 

そして一誠はまだ出来ていないと言う忍に、ならば完成させろといい、できないならば家族を殺すと言い出す。

 

抵抗はできなかった。言われるままにベルトを完成させた。だが、その時に既にこの仕掛けを考えていた。

 

一定以上のダメージが入った時、エネルギーが逆流し、一誠を封印する装置を。

 

しかし予想外だったのは、一誠の強さだ。明らかに不自然だ。あの頃から様々な種族を相手にしていたが、追い込まれると都合よく新たな力に目覚め、逆転する。

 

彼はそれを無限の才能だと言うが、それは違うと思った。あれは才能じゃない。言うなれば、ご都合主義だ。

 

無限に強くなり、それもやばくなったら都合よく力に目覚めて強くなる。それが兵藤一誠だった。

 

だから計画を見直し言ったのだ。倒せないなら、倒さなきゃ良いと。

 

「私を仲間にしてほしい。君専用のドライバーと強化アイテムを作ろう」

 

それがエボルドライバーとロンギヌストリガー。一定以上のダメージが入った時エネルギーが逆流し、一誠を封印する。そして封印したあとは、逆に一誠の力をエネルギーに変換し、封印する力を強める。

 

つまり、一誠が強くなれば強くなるほど封印する力が強くなる装置だ。一誠のご都合主義を逆手に取った封印装置。それが仮面ライダーエボルの正体だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それが真実なのか?」

「あぁ」

 

戦兎の問いかけに、忍は頷く。

 

「だがこの計画には欠点があった。それは兵藤 一誠の強さが一定上にならなければ、封印したとしても意味がないということだ。ある程度以上の強さがなければ、そもそも封印エネルギーに変換できない。そして何より、その力を持つ一誠を、一度倒さなければならない。そのために戦兎。お前と仲間たちに頼る他なかった」

 

忍が計画を実行に移したときから、戦兎は巻き込まれる運命だったのだと。そう言われた気がした。

 

「そのために騙したのか?俺も、皆も」

「あぁ。許してほしいとは言わない。私も罪は償うつもりだ」

 

忍はそう言い、エボルドライバーを拾い上げる。

 

「後はこれを……」

 

そう言った時、地面が大きく揺れた。

 

「な、なんだ!?」

 

突然の揺れに、驚きながら戦兎が屋根を見ると、突如屋根にヒビが入り、そこから先程一誠に見せられた化け物の顔が入ってきた。

 

666(トライヘキサ)!?何で!?」

 

そして更に、忍の手元のドライバーが震える。

 

「こ、これは!?」

 

次の瞬間。ドライバーが発光し、そこから再び現れた一誠の拳が忍の胸を貫いた。

 

「父さん!」

 

忍から腕を引き抜いた一誠は、こちらを見ながら冷たい視線を向ける。

 

「どいつもこいつもふざけやがって。あぁもうどうでもいい。お前ら全部殺してやる。この世界も何もかも壊してやる。それが出来るなら、俺はもうどう兵藤一誠じゃなくてもいい」

 

その言葉とともに、ロンギヌストリガーが回転し、666(トライヘキサ)を取り込んでいき、

 

「変身」

 

一誠の姿が変わる。化け物の姿で、カラーリングは白と虹色。それはまるでジーニアスフォームのよう。

 

そしてその体から発するエネルギーは、以前とは比べ物にならない。というか、あまりのデカさに感じ取ることもできない。

 

「ここで消してもいいが、それでは面白くない。今から1ヶ月後。駒王学園の卒業式の日に、俺は全ての戦力をそこに向かわせる。別にそれまでに襲いかかってきてもいいぜ?俺はもう逃げも隠れもしねぇ」

「ふざけないで!」

 

リアスが一誠に向け、魔力を放つが、それは一誠に届く前に消滅してしまった。

 

「え?」

「それじゃ、ちゃお」

 

それだけ言い残し、一誠は姿を消すが、

 

「アーシア!治療だ!」

「は、はい!」

 

アーシアは急いで忍に駆け寄り、癒やすの光を当てるが、どう見てもこれは助かる傷ではなかった。悪魔であればまだしも、ただの人間の彼には確実に致命傷だ。

 

「ごほっ!これでも駄目だったか」

「今喋ったらダメです!」

 

アーシアの言葉に、忍は首を横に振ると、

 

「まだ希望はあるんだ」

「希望?」

「あぁ、戦兎。お前と龍誠君。二人が最後の希望なんだ。二人の力が合わされば、どんな物理法則も超える。真のビルドとなれるんだ」

 

ごほっ!ごほっ!と咳き込みながら、忍はリアスを見た。

 

「リアスさん」

「は、はい!」

「戦兎は、まだまだ未熟です。ですが、中々に男前で頼りになる自慢の息子です。主として、これからも宜しくお願いします」

「……はいっ」

 

忍は続いて、小猫達を見て、

 

「コイツは……女心に少々鈍い。かなり苦労させてしまうと思うが、宜しく頼むよ」

 

はい、と小猫達は頷く。そして祐人達をみて、

 

「私に似て研究バカでね。振り回されることもあると思うが、お願いしてもいいかな」

 

勿論。と祐人達も頷く。そして今度は離れた所にいた美空を呼び、

 

「美空。ここをでて、少し進むと私の研究室がある。そこにお前へのプレゼントがあるんだ。毎年誕生日プレゼントだけ買っていてね。ほら、昔好きだったキャラクターのぬいぐるみだ」

「馬鹿だなぁ。お父さん。私もうぬいぐるみで喜ばないよ」

 

でもありがとう。と美空がいい、今度は、

 

「京香。すまないな。苦労ばかり掛けて」

「良いのよ。貴方に振り回される人生も素敵だったわ」

 

妻にそう声を掛け、京香も答えた。

 

そうして今度は龍誠を見て、

 

「龍誠君。ありがとう。戦兎の親友でいてくれて。そして相棒でいてくれて。後は頼むよ」

「うす」

 

最後に、戦兎を見た。

 

戦兎は何が来るのだろうと思う。あとは頑張れとか、そんな感じだろうか。

 

だがそんな予想は裏切られる。

 

「大きくなったな。すっかり父さんより大きいじゃないか」

「っ!」

「俺に似てイケメンだし、学校じゃ女子にモテモテだろ?」

「そんな訳あるか。実験ばっかして避けられてるよ」

 

そっか。と忍は優しく微笑む。

 

「戦兎。俺が何で科学者になったのか覚えてるか?」

「ラブ&ピースだろ?」

「あぁ、人々の幸せと平和のために。だが俺は、家族と世界を天秤に掛けられ、家族を選んだんだ。意地でもベルトを教えなければ、光はならなかったかもしれないと、今でも思う。だが、お前はあの場でも家族も世界も諦めようとはしなかった。お前はもう俺を超えている。だから」

 

忍は戦兎の手を握り、そして、

 

「後は任せたぞ」

 

とだけいい、忍の体から力が抜けた。

 

「父さん?」

 

戦兎が体を揺するが、忍の体から命を感じない。

 

死んだ。そう理解するのに、暫くの時間を必要とした。

 

美空は泣き、母はその場に崩れる。

 

戦兎は涙も出ず、心にポッカリと穴が空いたまま、その場に呆然としているのだった。

 




仮面ライダーエボル 超越体

パンチ力・∞
キック力・∞
ジャンプ力・∞
走力・測定不可

忍に封印されかけ、全てがどうでも良くなった彼が、兵藤一誠でなくなってもいいから力が欲しいと願った際に、自分が持ち込んだ転生特典が進化し、その力に共鳴して復活し現れた、666(トライヘキサ)を取り込み、仮面ライダーエボルと融合し生まれた姿。

スペックが∞というのも、一誠の無限の才能の進化により、スペックが常に上昇し続けているから。

そして固有能力として、あらゆるものを無効化する【全否定(オールキャンセル)】がある。

これはあらゆる能力や物理的な破壊エネルギーすらも無効化する能力。

リゼヴィムの上位互換的な能力であり、これによって実質一誠にダメージを与える手段は存在しない。

唯一の突破手段は、一誠のスペック以上の攻撃だが、スペックが上昇し続ける相手なので、不可能と言っても過言ではない。


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希望の脈動

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

龍誠「戦兎のお父さんが明かした真実。そしてその死。それは確実に戦兎の中に傷をつけた。だが俺は信じてるぜ!必ずあいつは立ち上がるってな!さぁて皆誘ってお菓子持ってくかぁー!おっと、そんな感じの、167話スタートだ!」


忍の死から一週間後。戦兎は研究室でボーッとしていた。

 

先日父の葬式が終わり、やることもない。

 

あの後一誠は、太平洋に巨大なアジトを作り出し、そこで時期が来るまで待つつもりらしい。

 

だが今の戦兎は、その話を聞いても呆然としていた。父の背負っていたもの。たった一人で戦っていたこと。知った情報の多さに、戦兎は思考を放棄していた。

 

すると、

 

「やっほ。戦兎」

「黒歌?」

 

フラリとやってきた彼女に、戦兎は視線だけ向けた。

 

「いつまでも落ち込んでるんじゃないの」

「うるせぇな」

 

戦兎が悪態を吐くと、黒歌は前に回り込んでくると、

 

「えい」

「むぎゅ」

 

胸で包み込むような抱きしめ方に、戦兎は驚いたが、黒歌はそのまま戦兎の頭を撫でた。

 

「あなた。葬式の時も泣いてなかったでしょ。今なら私以外誰もいないからさ。ね?」

「……うぅ」

 

戦兎は声を殺して泣いた。

 

「おれは……さいていだ。父さんにひどいことを言った」

「うん」

「おれ……おれ……」

 

言葉も支離滅裂で、会話になるような話し方ではない。だが黒歌は頷いてくれる。

 

「大丈夫。あなたのお父さん。あなたのこと恨んでなんかいない。寧ろ誇らしげだった。かっこよかったじゃない」

「あ、あ、ぁ……」

 

嗚咽を飲み込み、泣き続けた。そして落ち着くと、

 

「すまん」

「良いのよ」

 

戦兎の涙と鼻水で汚れたシャツを拭きつつ、黒歌はUSBを渡してきた。

 

「さっきアザゼルから預かったの。戦兎のお父さんの研究部屋に隠されてたんだってさ。それで見てみたんだけど、中身はなんてことのない日記だった。でもそれにしては隠し方がイヤに厳重だったんだって。だからアンタなら」

「……わかった」

 

戦兎はそれを受け取り、パソコンに接続。確かに中身はなんてことのない日記だ。

 

「隠しファイルか?」

 

検索で、ビルドとか仮面ライダーとかそれらしい言葉を打つが、ヒットはない。

 

「解析には時間がかかりそうだ」

 

時間は一ヶ月もない。急がなければ。そう思っていると、

 

「おーい」

「ん?」

 

研究室の扉から皆が顔を覗かせていた。

 

「何してんだ?皆」

「いや何してんのかなって」

 

そう言って仲間達がぞろぞろ入ってくると、その手にはお菓子やジュースが握られている。

 

「まぁひとまず、これで騒ごうぜ」

「あのな。俺はいま忙し」

 

と言おうとしたところで、祐人とゼノヴィアに捕まり、強制連行である。

 

「全く」

 

こいつらがいると作業もできねぇ。と言いながら戦兎は笑う。

 

父には俺を超えた。とか言われたが、今はそうなのかわからない。でも父にあって、自分にないもの。それはこの仲間たちだ。

 

自分はひとりじゃない。それだけでも、十分何じゃないだろうか。そう思った時、

 

「そう言えば何でここに黒歌いるんだ?」

 

と龍誠が余計なことをいう。いやまさか泣いてたとは言えねぇよなぁ。と思い、頼むから誤魔化してくれと目配せすると、

 

「ちょっと戦兎にベトベトに汚されちゃった」

『……』

 

ビキィっと空気が凍りついた。いや間違ってないけどね?間違ってないけどその言い方は語弊を招くというか……と思った時、背後に般若の気配を感じた。

 

恐る恐る振り返ると、そこには小猫が立っており、

 

「どういう、ことですか?」

「いやあのその」

「もう白音そんな顔しちゃって。駄目よ。戦兎にだって言えないことあるんだから」

 

だから何でそういう事言うかなぁっと戦兎は内心慟哭を上げたが、

 

「へぇ?」

「あばばばばばば」

 

益々小猫のさっきが強まり、戦兎はガタガタ震える。

 

「詳しく聞きましょうか」

「か、勘弁!」

 

殺される!と確信し、戦兎は逃げだし小猫が追いかける。

 

「やれやれー!」

 

そして皆はそれを肴にジュースとお菓子を食べ始めた。

 

「ふ、ふざけんなぁああああ!」

 

戦兎は叫ぶが、どこか楽しそうに、小猫から逃げ回るのだった。




物語はもうちょっとだけ続くんじゃよ


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幕間
父親というのは


「ひぃいいい!」

 

駒王町の町中にある、商店街のアクセサリーショップの店主が怯える中、そこに立つ化け物はアクセサリーを荒らす。

 

「た、か、ら」

「は、はひぃ?」

「おでのだがらぁあああああ」

「ひぇええええ!」

 

叫び、暴れ出す化け物から逃げだし、逃げ切った店主は言った。

 

「黒い羽を持った化け物だ」

 

と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よしできた!」

 

先日の一件から2日。戦兎は解析ソフトを掛け、無事に忍の遺品から隠しファイルを見つけ出した。

 

「何があったんだ!?」

 

横から見てくる龍誠と一処に中を見てみると、そこにあったのはラビットドラゴンのことについて。

 

「そうか。父さんはハザードレベル7.0を超えた物同士の進化したボトルの組み合わせを考えていたんだ」

「つまりこれなら兵藤 一誠を倒せるってことか?」

「いや、これは結局不完全みたいだ。やっぱりドライバーに負担がかかるし、長時間キープもできなければ安定性もない。父さんはここから先が思いつかなかったみたいだ」

 

他のファイルは……と思いみてみると、

 

「なんじゃコリャ」

「これは……」

 

龍誠は何が書いてあるのか分からないようだが、戦兎はこれを見てなにか勘づいたみたいだ。

 

「まだ未完成だけど、もしかしたら」

 

と戦兎が何やら思案していると、

 

「戦兎ー!ちょっと来てー!お客さーん!」

「ん?」

 

母から呼ばれ、来客のもとに向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はじめまして。仮面ライダービルド」

 

そこにいたのは巨大な猫。七つの尾を持ち、

 

「フカフカだー!」

 

と美空はお腹に顔を埋めている。

 

「離せー!」

 

と何故か、黒歌は前足で抑えられているが。

 

「アタシは参曲(まがり)。黒歌と白音の後見人みたいなもんでね。猫又の長老なんてのもやってるんだ」

「へ、へぇ」

 

デカい猫って威圧感凄いなぁ。と思うものの、美空はモフモフを満喫しているし、母は、

 

「冷たいお茶です」

「気遣かってもらって済まないね」

 

いえいえと普通に受け入れている。我が家の女性陣ども強すぎだろと思うが、あまり気にしてもしょうがないかもしれない。

 

「そ、それで参曲さんはどういった要件で?」

「いや何、このバカ娘と白音に良い人ができたっていうからどんな男かと思ったんだけど、中々にいい男じゃないか」

「因みに何で黒歌を取り押さえてるんで?」

「このバカ娘は勝手に出てって最近まで連絡もよこしやしなかったんだ。良い人ができたってのも白音から手紙が来なけりゃ分からなかったよ」

「だって怒るでしょ?」

「当たり前だろうがバカ娘!」

 

バシンっと猫パンチが放たれ、家が揺れる。

 

「あ、すまない」

「いえいえ」

 

成程これは頭が上がらないパターンか、と苦笑い。

 

「そうだ戦兎。参曲さんお土産までくれたのよ」

 

と母が出したのは桐の箱。その中には鰹節が入っていた。

 

「凄くお高いやつよこれ。今夜はこれで煮物にしましょうか」

 

ホントなんで違和感なく受け入れてるんだこの母親は。と戦兎は相槌を打ちながら思う。

 

先日悪魔であることを明かしたあとも、変わらず母親として一緒にいてくれる彼女には感謝しかない。

 

「ま、見たところ噂通り中々いい男じゃないかい。藤舞にも見せておやりよ」

「藤舞?」

「母親のことよ」

 

黒歌が参曲の前足の下から這い出ながら教えてくれる。

 

「暫く墓参りも行ってないだろう?」

「分かってるわよ」

 

何てやり取りをしていると、

 

「失礼します」

 

と小猫がやってきた。

 

「お久しぶりです」

「おや白音。あなたも元気そうで何よりだ」

 

一礼しながら小猫は戦兎を見ると、

 

「部長がお呼びです」

「え?なんかあったっけ?」

 

えぇ少し。と小猫に言われ、戦兎は分かったと言って立ち上がると、

 

「ちょっと行って来るわ」

「あ!私も!」

 

黒歌はここぞとばかりに手を挙げる。だが、

 

「なら私も行こうかね。二人がお世話になってる人だ。挨拶の一つもしないと……って黒歌。あからさまに嫌そうな顔するんじゃないよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう小猫と黒歌の後見人なのね」

「いつもお世話になってるね」

 

いえいえこちらこそとリアスは頭を下げつついると、戦兎が、

 

「それで何かあったんですか?まさか兵藤 一誠関係で?」

「まだわからないわ。でも先日、駒王町の雑貨店が襲われたの」

 

何?と思わず戦兎達が顔を見合わせると、

 

「店主に怪我はないわ。でもその人が言うには、羽が生えた化け物だったらしいのよ」

 

と、店主の証言を元に描いたらしい羽は、悪魔の羽だ。

 

「どこかのはぐれ悪魔が出たのかしら?」

「どうかしらね。ただ現場を見てきたけど、僅かに魔力の残滓があった。悪魔の仕業であることは間違いないわね」

 

朱乃に、リアスが答えると、

 

「そもそもなぜ雑貨店が襲われたのでしょうか?他の店に被害は?」

 

祐人がそう問うと、

 

「不思議なことに雑貨店だけだったそうよ。ただ別にその雑貨店も普通のお店でね。強いていえば、猫関係の雑貨やアクセサリーが中心のお店ってくらい」

 

戦兎達も、その店については知っている。なんてことのない猫好きの店主が経営する普通の店だ。

 

「後その化け物は、宝はどこだって言ってらしいわ」

「宝ぁ?」

 

一体何のこっちゃと龍誠は混乱。

 

「まぁひとまず、その化け物が何者なのかは分からないけど、探し当てる他はないわ。皆には悪いけど、何人かずつに分かれて捜索を行ってほしい」

『了解!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で?こっちでの二人はどうなんだね?」

「そうですね」

 

戦兎は普通サイズの猫になった参曲を連れ、町を探索する。

 

最初は小猫や黒歌も来ると言っていたのだが、参曲が二人で話させてほしいというので、二人で来ている。

 

「って感じです」

「全く。黒歌のやつは」

 

呆れながらも、どこか優しげな参曲の声音に戦兎は、

 

「俺からもいいですか?」

「なんだい?」

「二人の両親についてなんですけど」

「アンタ聞いたことないのかい?」

「あまり詳しくは……父親がかなり酷かったというのは聞きますけども」

「そうだね」

 

参曲は渋い顔をしながら、

 

「藤舞も厄介な男に惚れちまったのさ。挙げ句に実験の失敗でおきた事故で二人共死んじまった」

 

そう言いながら、天を見上げると、

 

「実験にしか興味がなく、藤舞を要求処理に使って認知すらせずに死んだ男。藤舞が惚れた相手に言うのも何だけど、クソ野郎だね」

「成程」

 

当然だが中々辛辣だ。

 

「ん?」

 

何て思いながら歩いていると、眼の前に一人の男が立っていた。

 

「しろ……ね」

「アンタはっ!」

 

参曲が巨大化し、毛を逆立て警戒する。良くわからないが、小猫の本名を呟く男に、戦兎も警戒する。

 

「あずけた……たからをよこせ」

「宝だと?」

 

確か雑貨屋を襲った化け物も、宝を寄越せと言っていたはずだ。そう思っていると、

 

「よこせぇえええええ!」

 

男は背中から悪魔の羽を生やし、あっという間に恐ろしげな化け物に姿を変えていく。

 

「何だあれ……っ!」

「来るよ!」

 

飛び掛かってきた化け物を横に飛んでかわすと、

 

「今更現世になんの用だい!」

「知り合いですか?」

 

戦兎が問うと、参曲は叫ぶ。

 

「コイツは黒歌と白音の父親だよ!」

「え!?でも確か人間では!?」

 

そこが訳わからないんだけどね!と参曲も言いながら避ける。

 

「たから!わたしのたから!よこせええええ!」

「一体何の事を言ってんだよ!」

 

戦兎はビルドドライバーを装着し、ボトルを振り、

 

「変身!」

《鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イエーイ!》

 

タンク側で受け止め、ラビット側で蹴り返す。

 

「しろね……わたせ、わたしのたからを!」

「もしかして、俺を小猫だと思ってるのか?」

 

なんでだ?と思うと、

 

「恐らくだけど、あんたの体には白音や黒歌の匂いがついてる。そのせいだよ」

 

成程、と戦兎は頷くと、

 

「たから、たから、たから!わたせぇえええ!」

 

再び襲いかかってくるのを、戦兎は回避しながらドリルクラッシャーで斬る。しかしまだ追い掛けてくる。そこに、参曲の猫パンチが炸裂し、吹き飛ばした。

 

「そもそも宝って何の話なんですかね?」

「さてね。ただ白音達を指しているわけじゃないのは確かだよ」

 

それはわかる。と頷くと、化け物は立ち上がり、

 

「わたしのすべて。わたしのじんせい。かくすならゆるさんぞぉおおおおお!」

 

咆哮を上げ、空気が震える。しかし、戦兎は、

 

「……ふざけんなよ」

「仮面ライダービルド?」

 

参曲が戦兎を見る。戦兎の体から滲むのは怒りだ。

 

「さっきから宝宝叫んで。俺を小猫だと勘違いして襲ってきて。ふざけんなよ!これが本当に小猫本人だったら、父親に襲われてたってことじゃねぇか!」

 

グラグラと腸が煮えくり返る想いだ。

 

「小猫だと認識したうえで、意味も分からず襲ってくる。父親ってのは……そんなもんじゃねぇだろ!」

《グレイト!オールイエイ!ジーニアス!》

 

戦兎はジーニアスボトルを装填し、レバーを回す。

 

「ビルドアップ!」

《完全無欠のボトルヤロー!ビルドジーニアス!スゲーイ!モノスゲーイ!》

 

ジーニアスフォームになった戦兎は、高速移動で近づくと殴り飛ばした。

 

「お前のせいで、黒歌がどんだけ苦しんだと思ってんだ!」

 

戦兎は殴り飛ばした先に回り込むと、蹴り返す。

 

「科学ってのは家族を苦しめるためのものじゃない!家族も世界も全部幸せにするためのものだ!それをできなかったアンタは、科学者失格だ!」

 

戦兎はフルボトルバスターを発射しながら叫ぶ。

 

「でもな。アンタに俺は感謝もしなきゃいけない。あなたがいなければ、黒歌も小猫も生まれてない。そしたら俺達は出会えなかったんだ」

 

戦兎はフルボトルバスターを捨て、レバーを回す。

 

《ワンサイド!逆サイド!オールサイド!》

「だからお義父さん!俺が教えます!アンタが教えなかったこと。家族の温かさも家族の形も、科学ってのは幸福を生み出すってことも、全部俺が教えてみせます。だから……っ!」

《Ready Go!》

「娘さんたちを、俺にくださぁああああああああああああい!」

《ジーニアスフィニッシュ!》

 

戦兎の渾身の蹴りが炸裂し、化け物は爆発するとそのまま消滅した。

 

「随分激しめなプロポーズだねぇ」

 

参曲はそう言って笑う。

 

「どっちかって言うとご両親への挨拶では?」

「確かにね」

 

と言いながら参曲は通常猫サイズになると、

 

「ホントはね。アンタを見定めようと思ってたのさ」

「でしょうね」

 

なんとなく、そんな気はしてた。二人で話したがった辺りから。

 

「結果はどうでした?」

「合格だよ。アンタ、いい男じゃないか。同じ科学者とは思えない」

「ああいうのが珍しいんですよ」

 

戦兎は変身を解除する。すると、そこにリアス達がやってきた。

 

「一体何があったの?」

 

リアスの問いに、戦兎と参曲は顔を見合わせる。

 

「謎の悪魔に襲われました。正体はわかりません」

 

そう言って、正体は濁す。後でリアスにはちゃんと報告するが、小猫や黒歌の前では憚れたのだ。

 

「そう。じゃあ一先ずは問題は解決したのね?」

「えぇ」

 

戦兎の頷きに、リアスは納得すると、

 

「それじゃあ帰りましょうか」

 

彼女のその言葉に、皆は歩きだすと、黒歌と小猫が来た。

 

「なんかあったの?」

「何も」

「ホントですか?」

「ホントだって」

 

戦兎は笑みを浮かべて返すと、参曲と目が合い、

 

『……』

 

言葉を交わさず、意思を伝える。今回の一件は、まだ話すことはない。でもこの先機会ができてから話す。それを参曲はそうかいと言わんばかりに顔を逸らすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうか」

 

先日の事件から二日後、サーゼクスの元にアザゼルが報告を持ってきていた。

 

「小猫達の父親復活は兵藤一誠の仕業だろう。そして目的はおそらく」

「ナベリウス家の実験のデータか」

 

サーゼクスは眉を寄せる。

 

ナベリウス家。それは黒歌が以前眷属をしていた家であり、人工的に悪魔を作るという実験を秘密裏にしていた。

 

「その過程の事故で亡くなっていたが、生き返らせることでその記憶を奪ったか」

「あぁ、戦兎の話を聞く限り、自我が崩壊していた。恐らく記憶を絞りとり尽くされた結果だろうな」

「そして残った記憶で、娘に預けた研究データを探したということか」

「リアス達がウルトラマングランドというやつのところに行ったときに、見たことのない悪魔と出会ったと言っていた。恐らく研究自体は兵藤一誠が完成させてて、捨てられた後に残った本能で研究データだけを探してたってことだろうな」

 

その研究データは?というサーゼクスに、アザゼルは、

 

「分からん。どっかにはあるんだろうけどな」

 

そうか。と頷き、

 

「話は変わるが、決行の日が決まった」

「遂にか」

 

決行の日。それは兵藤 一誠に総攻撃をかける日のことだ。

 

「2月末。3月前に終わらせる。リアスの卒業式に出れなくなってしまうからな」

「妹思いなこって」

 

アザゼルがそう言って苦笑いを浮かべるが、サーゼクスは真面目な顔をして、

 

「アザゼル。お願いがあるんだ」

「あん?なんだよ」

「もし僕に何かあったときは、皆を頼む」

 

おいおい縁起でもねぇな。と言おうとしたが、サーゼクスは真面目な顔だ。

 

「ってかそういうのは戦兎達に頼めよ」

「残念だが彼等にはもっと別の事を頼む予定でね。その点君はもう提督ではないし暇だろう?」

「暇じゃねぇよ」

 

呆れつつも、アザゼルは分かった分かったと頷き、

 

「だがなにもないのが一番だからな?」

「当たり前だ」

 

そんなやり取りを二人はしながら、笑い合うのだった。



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第二十四章 破滅のイニティウム
託す者


前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「小猫達の父親との戦いから暫く経ち、俺達は兵藤一誠への総攻撃を開始する!」
龍誠「何度もしてやられたけどよ、今度という今度は勝つぜ!」
戦兎「という感じの168話スタートだ!」


2月最後の日、戦兎達は集まっていた。

 

「間に合わなかったな……」

「何が?」

「あいや。なんでもない」

 

龍誠の問い掛けに答えながら、戦兎はビルドドライバーを装着し、

 

「終わらせよう」

「あぁ!」

 

変身しながら走り出すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全勢力を集結させ、兵藤 一誠を叩く。そう伝えられたのは、小猫達の父親との戦いの後だった。

 

世界中の神話体系も一同に集結し、一誠を倒すために動くそうで、その前線に戦兎達はいた。

 

だが、

 

「敵襲!」

 

そこに襲い掛かってきたのは、天を覆い尽くす程の魔獣達で、悪魔の羽が生えている。

 

聞いていた人造悪魔というやつだろう。

 

「一体一体の魔力が殆ど最上級クラスだなんて」

 

リアスは気後れしそうになるが、喝を入れて前を見る。

 

「目指すは兵藤 一誠よ!一点突破!」

『はい!』

 

強引に突破しながら、戦兎たちが進むと、

 

「来たぞ!」

 

そこに降ってきたのは、ヘルクローズ、グリスブレイク、イービルローグの3人が魔獣を引き連れて現れた。

 

「俺達に任せろ!」

 

しかしそれを、ヘルクローズには匙達シトリーチーム、グリスブレイクにはヴァーリチーム、イービルローグにはサイラオーグチームがぶつかる。

 

「頼んだ!」

 

戦兎達は、その横を抜け、更に進むと、

 

「っ!」

 

海上に巨大な魔獣が出現し、戦兎達に食種が襲い掛かるが、

 

「はぁ!」

 

アザゼル達堕天使が光の槍を降り注がせ、

 

「いけ!」

「あぁ!」

 

足止めしてくれている間に、更に進む。

 

その時空から光線が降り注ぎ、

 

「今度は何だ!?」

《宇宙から光線を撃っている魔獣がいるようです!》

 

通信で連絡が入り、宇宙ではすぐに対処出来ないとなったリアスが戦兎をみて、

 

「この際光線は無視するしかないわ!」

「わかりました!」

 

全員で避けながら更に進む。道中邪魔する魔獣は他の人達が対処し、そして!

 

「兵藤一誠!」

「んー?」

 

遂に一誠の眼の前に来ると、戦兎はフルボトルバスターを振り上げ斬りかかる。だが、

 

「なに?」

 

刃を押し当て、回転させているのに切れない。というか、火花すら散らない。

 

「どけ戦兎!」

「私達がいきます!」

 

龍誠と小猫が戦兎と入れ替わり何度も殴るが、ダメージはない。

 

「なら僕たちが!」

 

そこに祐人とゼノヴィアとイリナが斬りかかるが、同じく効果がない。

 

「皆どいて!」

 

それを見たリアスが、朱乃とロスヴァイセとギャスパーと同時砲撃。だが土煙を上げるだけで、効果はなかった。

 

「俺の新たな力。全否定(オールキャンセル)だ。残念だが、俺にダメージを与えることができない。何故なら、如何なる能力でも物理的な破壊でも、その全てを否定し、なかったことにするからだ。最早お前らの攻撃なんて、避ける必要もないのさ」

 

そう言って一誠が腕をふると、その衝撃波で全員が吹き飛ぶ。

 

「がはっ!」

 

近くの岩に叩きつけられ、血を吐くリアスの元に、一誠はやってくると、

 

「まずはお前だ」

「部長!」

 

そこに戦兎が割れて入り、一誠の拳を受け止めるが、衝撃で仮面が割れてしまった。

 

「この!」

《Ready Go!ジーニアスフィニッシュ!》

 

戦兎はそれでも構わずジーニアスフィニッシュを発動し、拳にのエネルギーを集めて殴る。だが一誠には効果がなく、一誠は戦兎を殴り飛ばす。ただそれだけなのに、戦兎は海面を跳ね、変身が解除されてそのまま沈みそうになる。

 

「戦兎先輩!」

 

それをギャスパーが回収し、黒い霧でリアスも撤退させる。

 

「ハハハ。コイツは最高だ。俺はまさしく最強になったってことだなぁ!」

 

そう言ってゲラゲラ笑う一誠だったが、そこに降り立つ人影を見て、

 

「サーゼクス」

「兵藤 一誠。久しいね」

 

マントを脱ぎ捨て、一誠を見つめるサーゼクス。すると、二人を中心に結界が貼られた。

 

「ん?結界か?」

 

一誠は興味なさげに見ていると、

 

「お兄様!」

 

リアスが叫ぶ。しかしサーゼクスは笑みを浮かべ、

 

「大丈夫だ。少し危ないから結界を張っただけだ」

 

と言った次の瞬間、サーゼクスの全身を滅びの魔力が包み、肉体が変化していく。

 

「成程。そう言えばお前には真の姿があったか」

 

生まれついての異能であり異常者。存在してはならない怪物。それが超越者サーゼクスであり、その真の姿は滅びの魔力が人の形となった姿。

 

「行くぞ」

 

サーゼクスは滅びの魔力発射。しかしそれは一誠に届く前に消えてしまう。

 

「ならば!」

 

サーゼクスは直接殴りかかるが、サーゼクスの拳が触れる瞬間に、逆に腕のほうが消えてしまった。

 

「なっ!」

「残念だったなぁサーゼクス。アンタも力でも俺には敵わない。寧ろ、相性最悪さぁ!」

《Ready Go!ロンギヌスブレイク!》

 

一誠はゆっくりとレバーを回し、サーゼクスに蹴りを放つと、サーゼクスは吹き飛び、結界もその衝撃で破壊される。

 

「あなた!」

 

そこにグレイフィアが降り立ち、近づくと、ボロボロの普段の姿に戻ったサーゼクスが転がっている。

 

「アハハ!最高だ!サーゼクス相手にもこれならなぁ」

 

一誠はレバー再び回すと、今度はエネルギーを頭上に集め、巨大なエネルギーボールを作り出す。

 

「さぁ、全員消し飛べぇ!」

 

そしてそれが地面に落ち、爆発が起きる瞬間。

 

「おぉ!」

「っ!」

 

サーゼクスは最後の力を振り絞り、その衝撃からグレイフィアを守った。

 

「あなた!」

「そこから動くな!」

 

前方に滅びの魔力を展開し、衝撃を止めるがそれも突き抜けてくるのは肉体で防ぐ。

 

「おぉおおおおおおお!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごほっ!」

 

爆発で吹き飛んだ龍誠は、近場の島に転がり、変身が強制解除されながらも立ち上がる。

 

口の中は血の味と砂でジャリジャリ言うのを耐え、周りを見回す。

 

一誠の攻撃で、敵味方関係なく吹き飛び、遠くで戦いが続いている状態だ。すると、

 

「よう龍誠」

「兵藤 一誠!」

 

龍誠は身構えようとするが、全身に走る痛みに膝をついてしまう。

 

「これで分かっただろ?俺にはお前たちは勝てない。今日はこれで終わりにしてやるよ。俺は優しいからな。ちゃーんと卒業式の日まで待っててやるよ。それじゃあチャオ〜」

 

そう言って、一誠は笑いながら姿を消す。

 

それと同時に、遠くで起きていた戦闘も急に静かになっていく。恐らく一誠と共に撤退していったのだ。

 

「クソ!」

 

地面に拳を叩きつけ、龍誠は歯を噛みしめる。だがいつまでもこうしてはいられない。

 

「皆の安否を確認しないと」

 

龍誠は重い足取りで歩き始める。そしてそこにいたのは、

 

「お兄様!」

 

リアスとグレイフィアに寄り添われながら、アーシアの治療を受けるサーゼクスの姿だ。

 

「サーゼクス様!」

 

龍誠も駆け寄ると、既に治療が行われたらしい戦兎が待てと止めた。

 

これはもう……とは言いたくなかった。だが明らかにもう手遅れだ。

 

「そんな……」

 

誰か嘘だと言ってくれ。そんな思いが胸に去来する間に、他の面々も集まってきた。全員かなりの重症を負っている。だがサーゼクスよりマシだろう。

 

「やぁ、皆集まってきたみたいだね」

 

そんな中、サーゼクスは優しげな声音で話し、

 

「悪いがアーシア君。治療だけは続けてほしい」

 

サーゼクスはそう言いながら、グレイフィアを見る。

 

「怪我はないかい?」

「はい」

「それは良かった」

 

グレイフィアはボロボロと泣き、サーゼクスは困ったような顔をした。

 

「そんな悲しそうな顔をするな。愛する女性を守れたんだ。後悔はない。ミリキャスのこと、頼んだよ」

 

そう言って、リアスを見る。

 

「リアス。あまりわがままを言って、皆を困らせてはいけないよ」

「お兄様……」

 

そして今度は、戦兎と龍誠を見て、

 

「戦兎君。龍誠君。覚えてるかな?魔王の心構えの話」

「は、はい」

 

確か、まだ悪魔になってすぐの頃に、サーゼクスが遊びに来たときに聞いた話だ。だが確か、あのときは秘密だと言われた気がする。と思っていると、

 

「僕が思う魔王の心構え。もしくは上に立つ者の心構えと言い換えても良い」

 

それはね?とサーゼクスは続けると、

 

「誰かに自分の夢を託せる者だ。上に立つ者は、夢を持たなければいけない。何故ならその夢を共に見たいと思うから、民はついてくる。だが時には夢半ばで倒れることもある。その時に託せる者を育てなければならない。託せる者を見つけ、育て、そして時が来たら託す。そうして意思は受け継がれていくものだ。だから戦兎君。龍誠君。君達に僕の夢を……冥界の未来を託したい。誰もが平等に笑える未来を、皆が幸せに暮らす未来を……」

 

そう言って伸ばす手を、戦兎と龍誠は掴み、

 

「任せてください」

 

戦兎の言葉に、サーゼクスは嬉しそうにほほえみ、天を見上げる。

 

「これで、安心だ」

 

サーゼクスの瞳はゆっくり閉じられ、力が抜けていき、その生涯の幕は閉じられるのだった。



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抗う者

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「兵藤一誠に敗北し、サーゼクスさんも亡くした俺達」
龍誠「だけど俺達はまだ諦めてないぜ!なにせ託されちまったからな!」
戦兎「あぁ、例え何が待ち受けていようと、俺達は戦い続けるぜ!」
龍誠「そんな感じの169話スタート!」


魔王サーゼクス・ルシファーの死は、冥界に衝撃が走った。

 

いや、冥界だけじゃない。その様々な勢力が動揺し、先日の戦いで大きく戦力を消耗していた。

 

特に、サーゼクスの死は、グレイフィアとリアスに大きな傷を残し、二人共部屋から出てこなくなってしまった。

 

そんな時、

 

「アジュカさんから呼ばれた?」

 

機材を弄っていた戦兎の元へ、そんな連絡が入った。

 

サーゼクスに並ぶ魔王、アジュカからの呼び出しに、訝しみつつも、呼び出しに応じて移動。

 

行き先は冥界にある、魔王城の一室。

 

そこには既に、他の仲間達が既におり、その直後にアジュカを筆頭にした、魔王達と、アザゼルにミカエルが入ってきた。

 

「急にどうしたんですか?」

 

戦兎はそう問う。いつもならリアスが会話を切り出すのだが、今は呆然としているため、とても話せる状態ではなかった。

 

すると、

 

「兵藤一誠との戦いについてだ」

 

アジュカがそう言うと、戦兎達は息を呑む。そして、

 

「私達はこの世界を放棄し、別の世界で再起を測ることにする」

「……は?」

 

戦兎は思わず、そんな言葉が口から出た。一体何を言ってるんだ?と。

 

「兵藤一誠の強さは先日痛感したと思う。今のままでは勝てない。ならば一度撤退し、対抗策を練る」

「待ってください!そんな世界中の人達を移動なんてできるんですか?」

「移動するメンバーは選別する」

「じゃあ他の人達は置いていくってことですか!?」

 

戦兎が身を乗り出してアジュカに問う。

 

「そうだ。全てを連れて行くことはできない。その為人数を絞り、それらだけ連れて行くことにする」

「そんなっ!」

 

戦兎はアジュカに抗議しようとすると、

 

「全滅するよりは良い」

「追いかけてきたらどうするんですか?」

「もし兵藤一誠が追いかけてきた場合、すぐにまた別の世界に移動する。それを繰り返し時間を稼ぎ、対抗策を練ればいい」

「そしたらいった先の世界はどうなるんですか!?」

「ならば他に手はあるのか!?」

 

アジュカは机を叩き、戦兎を睨みつける。

 

「俺達が倒します!」

「どうやって!」

「なんとかします!今はまだないですけど」

「話にならないな」

 

アジュカはため息を付きながら、椅子に深く座った。

 

「本気のサーゼクスですら、手も足も出なかった。君達は強い。だがサーゼクスには及ばない。そんな君達が戦ったところで勝てると思ってるのかい?」

「思ってます」

 

戦兎は、アジュカの目を真っ直ぐ見据えながら、そう答えた。

 

「分かった。ならばこうしよう。悪魔らしく、明日に私、セラフォルー、ファルビムの3人と戦い、それに勝てたら認めよう」

『っ!』

 

すると、突然のアジュカの提案に、その場の全員が驚く。厳密に言えば、セラフォルーやファルビムにアザゼル等の反応がないことから、恐らく戦兎立が納得しないのも承知の上で、元々こういう提案をするつもりだったのだろう。

 

「そちらは何人でも構わない。兵藤 一誠に勝てると言うなら、その可能性を私達に示してもらおう」

 

アジュカ達はそう言うと、席を立ち部屋を後にする。そして戦兎達が取り残されるが、

 

「ま、まぁ!一先ず明日あの3人を倒せばいいってことだな!」

 

龍誠は、そう言って気合を入れ、

 

「よし皆頑張ろうぜ!」

 

と皆を見る。だが誰もそれに答えない。

 

「み、皆?」

「ごめんなさい龍誠」

 

最初に答えたのはリアスだ。

 

「私は戦わないわ」

「……え?」

 

リアスは力なく答える。

 

「私はもう、戦えない」

 

それだけ言い残し、部屋を出ていく。それに続いて他の面々も部屋を出ようとした。

 

「お、おい皆!?」

 

龍誠が慌てて止めようとすると、

 

「龍誠君。僕も部長と同じだ。あの男に僕の剣は届かなかった。多分……この先も届くことはないと思う」

 

裕斗がそう言って出ていき、皆同じような表情でその場を後にしてしまった。

 

「もしかして……」

「あぁ、戦うのは俺とお前だけみたいだな」

 

二人だけ取り残され、互いに見合うと苦笑いを浮かべる戦兎と龍誠。

 

「逆にお前は良いのか?」

「当たり前だろ!お前が戦うなら俺も戦う!逃げ腰ならケツを蹴って戦う!」

 

フンス!と気合を入れる龍誠を見て、戦兎は笑い、

 

「俺等は逃げるわけにいかないもんな……」

「だな」

 

そう言いながら、互いの拳をぶつけ合わせるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

「匙?」

 

帰り道、ボーッとしていると、ソーナに声を掛けられ、慌てて匙はそっちを見る。

 

「悩んでいるのですか?」

「ま、まぁ」

 

ソーナはそんな匙に、

 

「今の兵藤一誠の強さは異常です。このまま戦っても勝ち目はありません。貴方も分かっているはずです」

「それはまぁ……」

「勝ち目のない戦いに無理に挑むのは勇気ではなく無謀。違いますか?」

「違いません」

 

ソーナの口調は冷たいが、それは悔しさからだ。どれだけ考えても計算しても、勝つ道のりが存在しない相手。それが兵藤一誠である。

 

「この話はこれで終わりです。行きますよ」

「はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

「ご機嫌斜めですね」

 

寝転がりながらいたヴァーリの元に、アーサーがお茶を持ってくる。

 

「うるせぇ」

「悩んでいるのですか?」

 

ヴァーリは答えない。そんな様子を見てアーサーは、

 

「変わりましたね」

「あ?」

「前の貴方なら、リゼヴィムを倒せるならどうなっても良いと思っていたでしょう?ですが今のあなたは、リゼヴィムだけじゃない。兵藤一誠も倒せるかを考え、不可能だと感じ、あの場を去った。今までの貴方なら考えられないことです」

「……」

 

ヴァーリはアーサーから目を逸らし、空を見る。

 

「変わった、か」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダメだな。俺は」

「サイラオーグ様?」

 

二人になった時、サイラオーグが突如そんな事を呟き、フウは驚く。

 

「マグダランも止められず、兵藤一誠にも勝てず、俺は何もできない」

 

俺は弱い。そう呟くサイラオーグに、フウは何も言えない。自分も同じだ。何もできず、ただそばにいただけ。

 

そして逃げようとしている。情けない限りだ。

 

「結局、何も俺は変わってないのかもな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなそれぞれの思惑が交差する中、日が明けるのだった。



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続く者

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……


戦兎「サーゼクスさんの死から、魔王3人と戦うことになった俺と龍誠」
龍誠「皆は今は少し休んでるだけだ、その間は俺達が戦う!」
戦兎「そうだな。必ず皆もまた立ち上がるはずだ。そう信じてる!」
龍誠「そんな感じの170話スタートだぜ!」


「さて行くか」

「あぁ」

 

ジーニアスとクローズマグマに変身した戦兎と龍誠は、会場に入る。

 

広い荒野に放り出され、眼の前にはアジュカ、セラフォルー、ファルビムの3人が立っている。

 

「今からでも遅くはない。大人しく言うことを聞きなさい」

『断る!』

 

戦兎と龍誠は、アジュカにそう返しつつ、走り出すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴方達……?」

 

リアスが扉を開けると、リビングには眷属の皆だけじゃない。ソーナ達やヴァーリ、サイラオーグたち全員が集まっていた。

 

「何してるの?」

「部長こそ」

 

アザゼルに呼ばれたのよ。そうリアスが言うと、他の皆も同じ理由のようだ。

 

すると、そこにアザゼルが来て、

 

「ようお前ら集まったな。丁度始まったところだ」

 

そう言ってリビングのテレビを付け、何やら機械を弄ると、画面に戦兎たちが映った。

 

「一部の奴らは視聴ができるようになっててな。繋いどいたぞ」

「やめて頂戴」

 

リアスがリモコンを取ろうとすると、それをアザゼルが奪い取る。

 

「だめだ見るんだ」

「嫌よ!」

 

そう言って、リアスはその場を去ろうとするが、

 

「逃げるな!リアス・グレモリー!」

 

空気が震える怒声に、全員の体まで震えた。

 

「兵藤一誠から逃げるのは良い。だがな、あの二人からまで逃げるな!ここで逃げたら、お前はあいつ等と二度と会う権利はない!」

「……」

 

リアスは振り返って画面を見る。3人の魔王の攻撃に晒され、吹き飛び、転がるがそれでも立ち上がる姿。

 

「なんであの二人が戦うかわかるか?仮面ライダーだからだけじゃない。あの二人は背負ってるんだ。全員の明日を!」

『……』

「サーゼクスに託された冥界の未来も、お前達の明日も、この世界中の人々の明日も、全部守るために戦ってるんだ!それを諦めきれないから戦ってるんだ!どうするかはお前らが決めれば良い。だがな、アイツらが戦うのから目を背け、逃げ出すのだけは絶対許さん!」

 

画面の向こう側では、戦兎達の攻撃はファルビムに弾かれ、セラフォルーとアジュカの同時攻撃で吹き飛ぶ二人が映る。

 

そんな光景を見ていると、

 

「あぁクソ!」

 

机を叩き、立ち上がったのは匙だ。

 

「アイツらはほんとによぉ」

「匙?」

 

ソーナは、止めるかのように匙の手を掴む。しかし匙はそれを振り払うと、

 

「すいません会長。俺、やっぱこのままは納得いかない!」

「良いんです匙!誰もあなたを責めたりしない!」

 

このまま逃げても、誰も文句なんて言わない。そう口にするソーナに、

 

「責めるやつならいます」

「誰がっ!」

 

俺自身です。匙はそう口にした。

 

「俺が俺を許せなくなる。ここで逃げたら、俺はきっともう前を向けなくなる。そんなの、死んでるのと同じだ!」

「なんで……」

 

ソーナはなぜそこまで、と口にする。それに対して、

 

「俺はソーナ・シトリーのポーン。そして、仮面ライダークローズチャージです!」

 

そう宣言し、匙は部屋を飛び出す。

 

「……ったく」

 

それを見たヴァーリも立ち上がると、

 

「どいつもこいつも馬鹿ばっかだ」

 

そう言いながら、ヴァーリも出口に向かうと、

 

「ま、俺も大概だな」

 

そのまま部屋を出ていく。

 

「お前達」

 

サイラオーグは、自分の眷属達を見ると、

 

「好きにしろ。俺もそうする」

「ならば勿論お供します」

 

フウの言葉に笑みを浮かべ、サイラオーグも部屋を出た。

 

「……」

 

リアスは、静かに画面を見つめる。何度も吹き飛ばされ、それでも戦い続ける二人。

 

「なんでこの二人は強いのかしら」

 

気づけば、涙が止まらない。そんなリアスを見ながらアザゼルは、

 

「強くなんかないさ。あの二人はいつだって必死だ。足掻いて足掻いて足搔きまくって、泥臭く頑張ってる。それが出来るのは、守るものがあるからだ。仮面ライダーとして、託されたものとして、お前らと自分自身の魂のために戦う」

 

黙ってそれを聞き、リアスは深呼吸すると、自分の頬を力一杯叩いた。

 

「皆!」

 

リアスは自身の眷属を見て叫ぶ。

 

「私はね。このまま引き下がるのはもう沢山。なんであんな男のためにこの世界を諦めるのかしら?そう思ったら段々腹が立ってきたわ。だから……私は戦う!貴方達には何も命令しない。自分の未来は自分で選びなさい!」

 

そう言い残し、リアスは部屋を出た。残された皆は、

 

「全く。うちのキングは無茶を言うね」

 

裕斗がそう行って立ち上がると同時に、他の皆も立ち上がった。

 

「行きましょうか」

『はい!』

 

そして朱乃につづき、全員で部屋を出ると、

 

「嫌になりますね」

 

ソーナはそう口にすると、立ち上がる。

 

「確率で言えば0。勝率なんてないのに」

 

奇跡を信じたくなる。ソーナはそう言って部屋を飛び出すと、他の皆もそれに続くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『がはっ!』

 

地面を転がり、変身が解除された二人は、口に溜まった血を吐き出す。

 

「もう諦めろ」

「まだ……」

「だぁ!」

 

二人は歯を食いしばりつつ、再びボトルを握った。その時、

 

『え?』

 

眼の前に降り立った面々に、戦兎と龍誠は呆然とする。

 

「待たせたわね」

 

リアスがそう言い、他の皆も振り返った。

 

「今治します」

 

アーシアの回復を受けつつ立ち上がり、戦兎と龍誠は皆を見て笑う。更に、

 

「龍誠様ー!」

『ん?』

 

空からやってきたのは、レイヴェルとライザーにその眷属たち。そしてタンニーンを筆頭に、多数のドラゴンたちがやってきたのだ。

 

「ライザー殿」

 

アジュカがライザーを非難するように見る。

 

「フェニックス家は我らの意思に同意してくれていたはずですが?」

「えぇ、アジュカ様。ですのでこれはフェニックス家は関係ない。私個人の行動です。この二人の戦いを見てたら、胸に炎が燃え上がっちゃいましてね」

 

アジュカは続いてタンニーンを見る。

 

「タンニーン殿」

「申し訳ない、アジュカ殿。ですが、私にはこの二人が足掻く中、逃げ出すことはできなかった。ドラゴンの誇りだけなら、幾らでも捨てられる。それによってドラゴンという種を守れるなら。だが、この二人の姿を見たら、共に進みたくなってしまった。私個人でも共に行こうとね。そしたら一族全員ついてきてしまった」

 

そんな皆の様子を見て、戦兎と龍誠は笑いながら立ち上がった。

 

「全く。皆遅いんだよ」

「悪かったな」

 

龍誠の言葉に、匙は答えると戦兎が、

 

「全く。さいっこうだな!」

《グレート!オールイエイ!ジーニアス!イエイ!イエイ!イエイ!イエイ!》

《ボトルバーン!クローズマグマ!》

《ロボットゼリー!》

《ドラゴンゼリー!》

《デンジャー!クロコダイル!》

《コウモリ!発動機!エボルマッチ!》

 

全員ベルトを付け、ポーズを決めた。

 

《Are you ready?》

 

もう迷わない。もうためらわない。そう覚悟を決め、叫ぶ。

 

『変身!』

《完全無欠のボトルヤロー!ビルドジーニアス!スゲーイ!モノスゲーイ!》

《極熱筋肉!クローズマグマ!アーチャチャチャチャチャ チャチャチャチャアチャー!》

《潰れる!流れる!溢れ出る!ロボットイングリス!ブラァ!》

《潰れる!流れる!溢れ出る!ドラゴンインクローズチャージ!ブラァ!》

《デンジャー!クロコダイル!割れる!食われる!砕け散る!クロコダイルインローグ!オラァ!キャー!》

《バットエンジン!フッハッハッハッハ!》

 

全員で並び立ち、構える。しかし戦兎と龍誠の姿がいつもと違った。

 

戦兎のジーニアスは、白い部分が金色に代わり、龍誠クローズマグマは黒い部分が銀色になる。

 

「勝利の法則は……決まった!」




ゴールデンジーニアス(仮名)

駆けつけた仲間達に後押しされる形で、ハザードレベル7.0に到達した戦兎がジーニアスに変身した姿。

あらゆるスペックが、ゴールデンラビットを上回っている。


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作り出す者

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「俺達の戦いを見て、駆けつける仲間達」
龍誠「仲間達がいれば、誰にも負ける気がしねぇ!」
戦兎「さぁ、勝って未来作ろうぜ!」
龍誠「そんな感じの171話スタートだ!」


「行くぞおおおおお!」

 

全員で走り出し、それに対してアジュカたちが迎撃を開始。

 

飛んでくる攻撃を皆は避け、タンニーン達ドラゴンが、口から炎を吐く。

 

「っ!」

 

それをファルビムの防御術で止めると、続け様にライザー達が攻撃をして視界を奪う。

 

「はぁあ!」

 

ソーナが操る水を、セラフォルーが凍らせた。

 

「ソーちゃん!やめなさい!」

「やめません!」

 

ソーナと眷属たちが更に攻撃を加え、

 

「行くわよ!」

『はいっ!』

 

リアス達もそれに加勢。セラフォルーの操る氷を破壊し、道を作った。

 

「行くぞおおおおお!」

 

そこにサイラオーグを筆頭に、開いた道を更にこじ開けるように突入。そのまま魔王たちに肉薄していく。

 

「甘い!」

 

それをアジュカが攻撃するが、

 

「おぉ!」

《クラックアップフィニッシュ!》

《Ready Go!エボルテックアタック!》

 

二人の必殺技でアジュカの攻撃を止めると、

 

「そこ!」

 

セラフォルーとファルビムがアジュカの攻撃に上乗せして押し返そうとする。

 

《スクラップフィニッシュ!》

《スクラップブレイク!》

『させるかぁ!』

 

しかし、そこにヴァーリと匙が同時に攻撃を叩き込み、押し返そうとする力を押し止める。他の皆も押し返そうと、援護するが、魔王3人のパワーは凄まじい。

 

「もう諦めろ!」

『諦めるかぁああああああ!』

 

アジュカの言葉に、全員が叫んだ。最後の一滴まで力を振り絞ろうと、必死に抵抗。その時、

 

「え?」

 

リアスが思わずポカンとしながら横を見た時、そこに立っていたのは、

 

「お義姉様?」

「待たせたわね。リアス」

 

グレイフィア。彼女もまた、サーゼクスの死を受け、心を壊していたはずだ。そんな彼女がなぜ、そう思ったのは魔王達も同じだ。

 

「戦兎さん達の戦いを見ました。だから来たのです。サーゼクスが託した未来。彼らはそれを守ろうとしていました。だから……私も戦う!」

 

未だ立ち直ったわけじゃない。寧ろ無理をしてここに来ているのが分かる。だがそれでも、無理をしてここに彼女は来たのだ。愛する男が託した、未来のために。

 

『ハァアアアアアアア!』

 

グレイフィアの参戦で、拮抗した力が弾け爆発。それにより思わずアジュカが目を細めた時、

 

《ワンサイド!逆サイド!オールサイド!》

 

爆風の向こう側から、戦兎と龍誠が走りながら、レバーを回して飛び上がる。

 

《Ready Go!》

 

二人でライダーキックの体勢に入り、魔王達に向かって飛ぶ。

 

《ジーニアスフィニッシュ!》

《ボルケニックフィニッシュ!》

 

二人のキックを迎え撃つように、ファルビムが結界を貼ると、ぶつかり合う。

 

『オォオオオオオオオ!!!!!』

 

冥界の最強硬度のファルビムの結界。それをバチバチ音を立てながら、押し込もうとしていく。

 

「くっ!」

「はぁ!」

 

アジュカとセラフォルーも、援護するように戦兎と龍誠に攻撃を放つが、それも二人は耐え、結界を震わせる。その次の瞬間、

 

『っ!』

 

魔王たち3人は見た。戦兎と龍誠の体が輝き、一つとなる。

 

今まで見たことのない、金と銀の瞳を持つ姿に。

 

『ハァ!』

 

二人で結界を破り、そのまま魔王達にキックが炸裂。そのまま爆発した。

 

「戦兎!龍誠!」

 

爆炎が上がり、リアスが心配そうに見ると、その中から戦兎と龍誠が戻って来る。

 

「いっちょ上がり!」

『っ!』

 

皆で戦兎と龍誠の元に駆け寄り、皆でワイワイ騒ぐ中、二人のライダーキックで吹き飛んでボロボロになった、魔王達が地面に転がっていると、

 

「よう」

「アザゼル殿」

 

アジュカが絞るような声を出すと、アザゼルは笑う。

 

「見事なくらいボロ雑巾だな」

 

そう言いながらアザゼルは、

 

「お前らは強い。単純な実力だけなら俺より上だ。だが、俺にあってお前らにはないものがある」

「え?」

 

セラフォルーは、それはなんだという目で見ると、

 

「アイツ等と過ごした時間さ」

 

ニッと笑みを浮かべ、アザゼルは言葉を続けた。

 

「アイツ等は、今まで様々な苦境に立たされた。勝利の確率0%。そんな戦いばっかりだった。だがな、アイツらはそれでも抗い、戦い、立ち上がった。そして立ち上がる度に強くなり、奇跡を起こしていった。0%の勝率を、1%にして、その1%を掴んで今に至っている。俺はそんなアイツ等を見てきた。誰よりも近くでな。だからかもな。アイツ等ならきっとまた奇跡を起こすって信じちまう。だから、俺はアイツ等に賭ける」

 

アザゼルはそう言い、戦兎と龍誠達の元に歩き出す。

 

「よーしお前ら!作戦会議するぞ〜!」

『おぉー!』

 

こうして皆の声が、空に響くのだった。



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幕間
幕間の話


「これでいいですかね」

「えぇ。ごめんなさいね」

 

龍誠がそう言うと、朱乃が顔を覗かせる。

 

現在龍誠は、朱乃の家の蔵の片付けに着ていた。

 

卒業式も間近になり、春の訪れが感じられる今日このごろ、春用の物たちを蔵から出すのに、龍誠が駆り出されている。

 

戦兎達は、現在リアス達の卒業式前祝いという形で、焼き肉パーティーをやるので、その準備をしているはずだ。

 

「じゃあこれを家に入れたら俺達も行きましょうか」

「そうね」

 

鍵を締め、朱乃と並んで歩き出す。すると、

 

「ん?」

 

神社の境内に一組の男女。恐らく夫婦だろう。

 

「こんにちわ」

「あ、どうも。おや、巫女さんは彼氏と一緒ですか?」

 

朱乃が声を掛けると、男性のほうが挨拶をした。

 

「うふふ。ありがとうございます」

 

朱乃は腕を組んでアピールしてくるので、奥さんの方もニコニコしている。

 

「えぇと」

「あぁごめんなさい龍誠。このお二人はよく家の神社に来てくれるの」

「成程。あ、はじめまして。万丈 龍誠です!」

 

ビシッと挨拶すると、御夫婦は笑た。

 

「へ、変でしたかね?」

「あぁすまない。私達には子供がいなくてね。君みたいな子供だったら良かったなって思ったんだ」

「そうね」

 

ニコニコとしている二人に、龍誠は気恥ずかしさを覚える。すると、

 

「失敬。自分は兵藤五郎。妻の三希です」

『っ!』

 

名を聞くのは初めてだったのか、朱乃も驚いている。たまたま同じ苗字なのか?少しそう思うものの、見ていると何か通ずるものがある。これはいつもの勘なのか……それとも。

 

「お子さん……居ないんでしたっけ?」

「あぁ。子は授かり物っていうくらいでね。縁がなかった。あ、でも夫婦二人での生活というのも悪くないよ」

 

そう言って笑い合う二人を見て、龍誠も笑う。

 

「必ず……守るよ」

「え?なにか言ったかい?」

 

いえ何でも!そう言いながら龍誠は歩き出す。

 

「じゃあ、俺達はここで」

 

それだけ挨拶し、龍誠がその場を後にすると、

 

「良かったの?」

「あぁ」

 

きっとこれで良いんだ。あの二人が本当の両親なのか否かは分からない。調べれば分かるかもしれないけど。

 

「きっと良いんだよ」

 

そう言いながら、会場に向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『カンパーイ!』

 

さて皆で集まり、コップを掲げると全員で飲み食い開始。

 

「まてまだ早い!」

 

そんな中、肉を焼いているヴァーリは、箸を伸ばそうとするサイラオーグを止める。

 

「ねぇヴァーリおかわり」

「んもう!みーたん任せてよ〜!」

 

ニコニコしながら、ヴァーリは美空に肉のおかわりを渡している。

 

皆それぞれパーティを楽しみ、騒ぐ。

 

来週には、リアス達は卒業式がある。そしてその日、兵藤 一誠が全勢力で襲い掛かってくのだ。誰も負ける気はない。だが、それでも不安はある。それを吹き飛ばすように、皆で騒ぐ。

 

敢えて来る日が分かっているので、ギリギリまで準備にあて、迎え撃つ。それがアザゼルの作戦だ。今こうして騒いでいるが、上層部は今頃準備でバタバタしているはず。

 

「よっ」

「おう」

 

戦兎が少し外れた場所でジュースを飲んでいると、龍誠がきた。

 

「今日な。両親にあったんだ」

「そうか。言ったのか?」

「言えるかよ」

 

それもそうか。とだけ返しながら、

 

「なら、勝たないとな」

「あぁ」

 

こちんとコップを軽くぶつけながら、戦兎と龍誠は、笑い合うのだった。




次回、ハイスクールD×D Be The One最終章開幕!

サイラオーグ「大義のためにっ!」

フウ「誓いのためにっ!」

匙「愛のためっ!」

ヴァーリ「心火を燃やす!」

龍誠「俺達は誰にも負けねぇ!」

戦兎「さぁ、最後の実験を始めようか!」

戦兎達は、未来をビルドできるのか!?


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最終章 明日を作るヒーロー
それぞれの戦い


前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「最後の平和な日々を過ごす俺達」
龍誠「そして遂に最後の戦いが幕を開けるぜ」
戦兎「この戦いがすべてを決める。そのために俺達は絶対勝つ!」
龍誠「最後までみんな応援してくれよな!」
戦兎「ってな感じの172話スタート!」


「私達は、この学び舎を巣立ち、明日を生きます!」

 

駒王学園の卒業式。代表のソーナがそういう中、戦兎達は屋上から街を見ていた。

 

「そろそろ終わるな」

「あぁ」

 

既に禍の団(カオス・ブリゲード)は動き出している連絡は来た。目指すはこの学園。それを迎え撃つ準備はできている。

 

聞こえてくる声から察するに、卒業式は終わり、皆が出てくる。そしてそれを待っていたかのように、

 

「来たぞ!」

 

遠くから、禍の団(カオス・ブリゲード)の軍勢が来るのを見た龍誠がいうと、

 

「行くぞ!」

『おう!』

 

戦兎がそう言って屋上から飛び降り、他の皆も続く。

 

『変身!』

《完全無欠のボトルヤロー!ビルドジーニアス!スゲーイ!モノスゲーイ!》

《極熱筋肉!クローズマグマ!アーチャチャチャチャチャ チャチャチャチャアチャー!》

《潰れる!流れる!溢れ出る!ロボットイングリス!ブラァ!》

《潰れる!流れる!溢れ出る!ドラゴンインクローズチャージ!ブラァ!》

《割れる!食われる!砕け散る!クロコダイルインローグ!オラァ!キャー!》

《バッドエンジン!フッハッハッハッハ!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、何だあの化け物は!」

 

町中で、普通の生活を営んでいた男性の前に、化け物が現れる。それを見た男性は腰を抜かすが、

 

「逃げてください!」

 

空から降ってきた光に化け物は消し飛ばされ、その間に逃される。

 

「ガブリエル様」

「えぇ、始まりましたわ」

 

街の人々は、駒王学園に避難される。駒王学園は、内部に幾つもの魔法陣や魔術が施され、見た目は変わらないが、一時的に街の人々全員を入れても、余裕なほどの広さに変わった。

 

だが、禍の団(カオス・ブリゲード)の進軍は早く、すぐに駒王学園にも手が及びそうになったが、

 

『はぁ!』

 

戦兎達の一撃が、化け物達をなぎ倒す。

 

「避難は!?」

「殆ど完了だ!」

 

匙がそう叫び、ヴァーリが答えたその時、

 

『っ!』

 

爆発が起き、戦兎達は転がって避ける。

 

「おやおや。まだ足掻くのですか」

 

変身した状態で現れた、ユーグリット。それを見た匙が、

 

「皆、行け」

「え?」

 

本来の作戦は、避難が完了次第、仮面ライダー組は兵藤一誠討伐に当たるはずだが、

 

「まだ避難は済んでない。それになにより、これ以上コイツに大事なものを壊されるわけにいかない!」

「……わかった」

 

戦兎がそう言い、良いのか?という目で龍誠は見るが、良いんだとうなずき、走り出す。

 

「行くぞおおおおお!」

 

それを見届けた匙は、ユーグリットに向かって走り出すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぉ!」

 

走る戦兎達の元に、炎が降り注ぐ。

 

「リゼヴィム!」

「おいおい俺を無視するなよ。寂しいだろ?」

 

そしてその前に立つのは、ヴァーリだ。

 

「行けお前ら。こいつは俺がぶっ倒す」

「……分かった」

 

戦兎達はヴァーリを残し、走り出す。

 

「死んでもお前はぶっ倒してやる」

「やってみなよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マグダラン……」

 

匙とヴァーリを残し、走る戦兎質の前に降り立ったのは、マグダラン。そしてその前に立ちふさがったのは、

 

「すまない戦兎。任してもらいたい」

「私もです」

 

サイラオーグとフウが残るという。

 

「気をつけろよ」

 

言葉少なく、戦兎と龍誠は二人を置いて走り出す。

 

「行くぞ。マグダラン」

 

サイラオーグは静かにそう呟き、飛び掛かるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「来たか」

 

そして、一誠が陣取っている場所に、戦兎と龍誠がやってくる。

 

「一番はお前たちのような気がしたよ」

 

そう言いながら、一誠は笑うと、

 

「さぁ、最終決戦だ」

「行くぞ龍誠」

「あぁ、戦兎!」

 

こうして未来をビルドするため、最後の戦いの幕が、上がるのだった。



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不屈の邪竜

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……


戦兎「遂に始まった、最後の戦い」
龍誠「全ての因縁を終わらせるときだ!」
匙「まずは俺の出番だぁあああ!」
戦兎「って感じの173話スタート!」


「はぁあああ!」

 

ヘルクローズこと、ユーグリットに向かって匙は襲い掛かるが、

 

「ふん!」

 

簡単に弾かれ、蹴り返される。

 

「がはっ!」

 

後退り、怯むものの、匙は再び襲い掛かるが、カウンターを入れられ、それに耐えて強引に反撃するものの、ユーグリットは意に返さず連撃を叩き込んだ。

 

「諦めろ。君は私に、ライダーシステムのスペックも、悪魔の力も、才能も練度も汎ゆる点で劣っている。君が僕に勝っている点は一つもないんだよ」

「はぁ、はぁ」

 

それでも匙は、立ち上がると拳を握り直す。

 

「だから……なんだってんだ!」

 

匙は叫ぶ。

 

「俺は、もう奪わせねぇ!」

 

再び殴りかかるが、ユーグリットやれやれと首を振る。

 

「全く。救えないほど愚かな男だ」

 

ユーグリットはブーストを掛けた拳で匙を殴り返す。

 

「ぐぁ!」

 

顔面を殴られ、仮面が割れて素顔が露出した。

 

「お、おいあれ匙じゃねぇか?」

 

それを見た、学園の生徒が呟く。

 

「がはっ!」

 

腹を殴られ、口からゲロを吐き散らし、ユーグリットは気持ち悪そうに避ける。

 

「みっともない。美しさのかけらも気品もない」

「っ!」

 

匙はツインブレイカーで殴るが、それをユーグリットはキャッチし、腕をへし折った。

 

「がぁああああ!」

 

痛みに悶え、腕を抑えながら後退り匙は痛みに必死に耐える。

 

「分かったでしょう?私には君は勝てない。ほら、膝をつき、頭を垂れなさい。足を舐め、服従しろ。そうすれば命は助けてあげますよ」

 

ユーグリットの言葉に、匙は奥歯を噛みしめた。その時、

 

「匙!」

「会長……?」

 

背後から聞こえた声に振り返ると、ソーナが立っている。

 

ボロボロの匙に、ソーナは声を出す。もう良い。援軍が来るまで待て、色々な言葉が脳裏に浮かぶ。だがそれでも絞り出したのは、

 

「勝って」

「……承知しました」

 

ソーナの言葉を聞き、匙は折れていない方の腕でフルボトルを取り出す。

 

そのフルボトルは真っ黒でドス黒い色をしており、今まで見たことのないもの。

 

この戦いの前夜、戦兎にライダー組が集められ、渡されたものがある。

 

ヴァーリとサイラオーグには、追加で作ったビルドドライバーと、強化アイテム。

 

そして自分にはこのフルボトルだ。

 

「ごめん匙。間に合わなかった」

 

連日戦兎は不眠不休で強化アイテムを作っており、実際2人分は完成させたのだ。

 

ただ自分のは、まだ未完成。ただこれでも、一時的にブーストをかけれるらしい。

 

スクラッシュドライバーには拡張性がなく、現状ではこれが限界とのこと。

 

「謝る事なんかねぇよ戦兎。ありがとな」

《チャージボトル!ツブレナーイ!チャージクラッシュ!》

 

匙はベルトにフルボトルを装填し、レバーを下ろす。

 

「おぉおおおおお!」

 

折れた腕がゴキゴキと言いながら治り、飛び出す。

 

「っ!」

 

ユーグリットの反応速度を上回る程の速さで詰め寄り、殴り飛ばした。

 

「匙。頑張って!」

 

ソーナの声が響く中、匙は血を吐きつつ、ユーグリットに連続で拳を叩き込む。

 

「うぉおおおおお!」

 

このブーストは、強化アイテムの安定化を行う前の状態で行うもので、体に大きな負担をかけるが、ドラゴンの力を何倍も高める。そして強引に自己治癒も行う状態。自分で傷つけ自分で治す。それを常に行うため、全身激痛が走り続けている状態だ。

 

それでも匙はソーナの声援に答えるため、前に突き進む。

 

「匙いいいいい!まけんなぁああああ」

 

すると、学園の誰かがそう叫び、

 

『頑張れー!』

『やっちまえー!』

 

口々に声援が起こる。

 

「おぉ……任せろおおおおおおお!」

 

匙の猛攻が、更に激しくなっていく。

 

「くっ!何だこの力は!?」

 

ユーグリットは訳が分からんというが、匙は笑うと、

 

「これが、仮面ライダーの力だああああ!」

 

匙はそう言いながら、フルボトルとスクラッシュゼリーを入れ替え、レバーを下ろす。

 

《スクラップブレイク!》

 

その場で飛び上がり、蹴り飛ばす。だが、

 

「がぁ!」

 

それをユーグリットは腕を払って弾いた。

 

「おおおおお」

《スクラップスクラップブレイク!》

《シングル!シングルフィニッシュ!》

 

レバーを連続で2回下ろし、ブースト用のフルボトルをツインブレイカーにセットして必殺技を発動。

 

「はあああああ!」

 

飛び上がり、再度キックを放つが、

 

「舐めるなぁああああ!」

《Ready Go!エボルテックアタック!》

 

ユーグリットも必殺技で応戦し、無理やり匙を弾いた。

 

「転生悪魔如きが、私に勝てるとでも!?」

 

上空に打ち上げた匙を目で追うユーグリット。だがその視線に捉えたのは、

 

「え?」

 

ユーグリットが慌ててベルトを確認すると、そこにはあるはずのドラゴンフルボトルがない。

 

(まさかあの打ち合いで奪ったのか!?)

「俺の神器(セイクリットギア)。忘れられちゃ困るな」

 

匙は黒い龍脈(アブソブーション・ライン)で奪った、ユーグリットのドラゴンフルボトルをツインブレイカーにセット。更に、

 

《シングル!ツイン!ツインフィニッシュ!》

 

ブースト用のフルボトルもセットして必殺技を発動。そしてトドメとばかりに、レバーを3回下ろした。

 

《スクラップスクラップスクラップブレイク!》

 

「これで……トドメだぁあああああ!」

 

全身から黒い炎を噴出させ、全力のライダーキックを放った匙は、そのままユーグリットに叩き込む。

 

「ぐああああああ!」

 

全身を黒い炎で焼かれ、変身が強制解除されるユーグリット。

 

「馬鹿な。この私がなぜぇええ!」

「才能も実力も、お前のほうが上だ。でもな、何一つ勝ってないといったが違う!俺にもお前に負けないものがある!」

「何だと!?」

「それは守りたいって思いだ。お前たちは奪うことしかできない。だが俺達は守ることが出来る。誰かの明日を、守り繋げる事ができる。自分の欲望のためだけじゃない。誰かの願いのために戦える。自分と誰かを背負って戦える俺達が、お前らみたいなもんに負けるかぁあああああああ!」

 

匙の叫びと共に、炎がユーグリットを飲み込み、消し去ると、そのまま匙は着地に失敗し、地面に転がる。

 

「匙!」

 

ソーナは匙に駆け寄ると、匙は弱々しく笑い、

 

「へへ、勝ちました」

「良かった……」

 

匙の勝利宣言に、ソーナも共に笑うのだった。




ブースト用フルボトル

本来は匙用の強化アイテムを制作するためのものだったのだが、時間がなくて未完成のまま使われた。

拡張性のないスクラッシュドライバーのスペックを強引に引き上げることが可能で、匙に大幅な自己治癒能力を付与する。但し、変身者への負担が大きく、自己治癒能力も苦しみを長引かせる事になってしまうという諸刃の剣。

ただ、エボルドライバー系ライダーを圧倒するスペックを引き出せるなど、パワー自体はかなり強い。

真っ黒なのは、戦兎がジーニアスボトルから作り出したヴェルドラの力を込められているから。


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不滅の王者

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「兵藤 一誠達との最後の決戦が始まり、それぞれの戦いが幕を開ける中……」
龍誠「無事匙はユーグリットを撃破!」
サイラオーグ「そして今度は俺の番だ!」
戦兎「そんな感じの174話スタート!」


「おぉ!」

 

サイラオーグとマグダランの拳が交差する。

 

「くっ!」

 

だがスペック差から、サイラオーグが押され気味だ。

 

「……」

 

それを、フウは悔しそうに見ながら、周りの雑魚を処理する。

 

これは事前に言われていたことだ。サイラオーグから、もしマグダランと好戦になったら、邪魔はしないで欲しいと。だから自分にできるのは、サイラオーグがマグダランの戦いに、水を差せないことだ。

 

「サイラオーグ。貴方は俺には勝てない」

「勝つさ」

 

サイラオーグは諦めず、マグダランを蹴るが、それを簡単に止められ、逆に蹴り返される。

 

「いい加減認めろ。お前より、俺のほうが優秀だと!」

 

その言葉を聞き、サイラオーグは立ち上がると、変身を解除した。

 

「認めてるさ。俺よりも、お前のほうが優秀な事は」

「なに?」

 

サイラオーグの声音は、どこまでも優しく、穏やかなものだ。

 

「俺には滅びの魔力がない。この肉体と、ライダーシステムがなければ、満足に戦えなかっただろう。だから、俺はお前が羨ましかったよ。マグダラン」

「っ!」

 

サイラオーグは、言葉を続ける。

 

「滅びの魔力がある。たったそれだけでお前は周りから愛された。俺はそれがないだけで、周りから迫害され、母も追い詰めた。ただ魔力がない。それだけでなぜここまでの扱いを受けるのか。ずっと考えていた。お前を見る度に、そんな憎悪がどこかに湧き上がっていた。お前を倒し、何処か喜んでいた。そしていつしかお前の顔を見れなくなり、お前を追い詰めた。俺は逃げたんだ。だから、今度は逃げない」

 

サイラオーグは、そう言ってビルドドライバーを装着。そして、見たことのない形状のフルボトルを取り出す。

 

それは、ワニの上顎と下顎になった形状をしていた。

 

《ガブッ!ガブッ!ガブッ!ガブッ!ガブッ!》

 

半分に折り、開くを繰り返して、半分に折ってからドライバーに装填。

 

それからレバーを回し、

 

《Are you ready?》

「変身!」

《大器晩成!プライムローグ!ドリャドリャドリャドリャ!ドリャー!》

 

マントを翻し、新たな姿となった、サイラオーグの新形態。プライムローグとなり、サイラオーグは前に進む。

 

「さぁ、兄弟喧嘩をしよう」

「ふざけるな……何を今更!」

 

マグダランが滅びの魔力が直撃するが、サイラオーグは怯まず進み続けて間合いを詰めると、マグダランを殴り飛ばした。

 

「くっ!」

 

マグダランは大勢を戻し、サイラオーグを殴る。サイラオーグは殴り返す。それを受けて再度殴る。サイラオーグも殴る。

 

殴って殴られてを繰り返す。

 

「なにがっ!羨ましいだ!お前のせいで!俺がどんな惨めな目に!あったと!」

「お前こそ!滅びの魔力を持っているというだけで!チヤホヤされて!俺と母さんが!どれだけ冷遇されたと!」

 

殴り、蹴り、頭突きを掴み合うと投げて転がり、立ち上がるとタックルして、押し倒して殴ろうとすると、それ避けて腹筋で振りほどき、また殴り合う。

 

泥と血で汚れ、それでも殴り合った。互いを罵り合い、罵倒しあう。だがそれでも、

 

「なんで、お前はそんなにカッコいいんだ。お前は、そんなに人から好かれるんだ。当主の地位も、そんなに欲しければ勝手にすればいいじゃないか。滅びの魔力を(こんな力)、望んで手に入れたわけじゃない!」

「俺は滅びの魔力(その力)が欲しかった!お前は俺が欲しかった何もかもをお前は最初から持ってたじゃないか!」

 

殴り疲れ、マグダランが膝を折ると、サイラオーグの膝蹴りで吹き飛ぶ。

 

「だがな。それでも、お前のことを嫌いになったことはない。大切な弟で、愛しているよ」

「……」

 

マグダランは、レバーを回し、サイラオーグもレバーを回す。

 

《Ready Go!》

「それを、最初から聞きたかった」

「そうだな。だが、今更遅いということもないさ」

 

両者は飛び上がると、同時にキックを放った。

 

《エボルテックアタック!》

《プライムスクラップブレイク!》

 

キックがぶつかり合い、火花と爆音を散らす中、サイラオーグは息を吸い、

 

「ハァアアアアアア!」

 

そのまま、マグダランのキックを呑み込むように、両足で挟んで捉えると、爆発が起き、

 

「が、はぁ」

 

変身が解除され、マグダランが倒れそうになると、サイラオーグは抱き止める。

 

「さぁ、もう帰ろう。マグダラン」

「……あぁ、兄さん」




プライムローグ

パンチ力 52.3t
キック力 60.0t
ジャンプ力 74.4m(ひと跳び)
走力 1.3秒/100m

サイラオーグが、ビルドドライバーとプライムローグフルボトルで変身した形態。

特殊な武装はなく、殴る蹴るしか攻撃手段を持たないが、ローグを超える防御力を持ち、スペックも大幅に上昇している。

マント自体も防御力を持ち、マスクは汎ゆる空気に順応でき、戦兎のジーニアスボトルから作り出した、レグルスの力を組み込んでおり、飛び道具等の遠距離攻撃に耐性がある。

これにより、飛び道具等を無効化しながら、強引に接近戦に持ち込んで殴り合う。といった芸当が可能。

必殺技は、プライムスクラップブレイク。


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不変の魔王

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……


戦兎「続々と禍の団(カオス・ブリゲード)との決着をつけていく仲間達」
龍誠「ナイスファイトだぜ〜!皆!」
ヴァーリ「そして最後はこの俺だ!全てに決着をつけ、俺は勝つ!」
戦兎「そんな感じの174話スタート!」


「アハハハ!無駄無駄ぁ!俺には勝てないよヴァーリきゅん!」

「黙れ!」

 

ヴァーリはツインブレイカーで攻撃するも、リゼヴィムの再生能力には勝てず、そもそもリゼヴィムの素の能力の関係でただ無意味に攻撃する。

 

その合間に、リゼヴィムは炎を放ち、ヴァーリは吹っ飛ぶ。

 

「がは……」

 

地面を転がり、変身が強制解除されるが、ヴァーリはそれでも立ち上がった。

 

「無駄だっただろ?もう諦めなって。半分人間の弱々ヴァーリでは俺には勝てないんだよ」

「……」

 

ヴァーリは、ビルドドライバーと、クローズマグマナックルと同じ形状のアイテムとフルボトルを取り出す。

 

「あん?何だそれ」

 

ヴァーリはアイテムを見て、戦兎の言葉を思い出した。

 

「ヴァーリ。これはお前の力を引き出すことができる。サイラオーグさんのプライムローグとは違い、お前の魔王の力を引き出す。だがそれは……」

 

そう。ヴァーリは、自身の悪魔の力を完全に引き出せない。引き出せば、自身の肉体の崩壊が待っている。だから、自分は悪魔の力ではなく、仮面ライダーの力を頼ったのだ。

 

「おい戦兎。そんな危ねぇもんをわたすなよ」

「バカ。お前を信じてんだよ」

 

受け取りながらそういったヴァーリに、戦兎は返す。

 

「安心しろよ戦兎。死んでもこいつだけはぶっ倒してやっからよ!」

 

ヴァーリはビルドドライバーを装着。フルボトルを振り、ナックルに装填。今度はそのナックルを、ビルドドライバーに装填すると、

 

「変身!」

 

レバーを回し変身しようとする。だが、

 

「あがっ!」

 

全身に電流が走り、激痛に顔を歪める。体の細胞が崩壊するような感覚。自分の中の何かが崩れるような感覚。それに支配されたヴァーリは膝を折った。

 

「おいおいなんだよヴァーリ。びっくりさせやがって」

 

遠のく意識の中、リゼヴィムのそんな声を聞きながら意識を手放す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?」

 

真っ白な世界に、ヴァーリはいた。なにもない、真っ白な場所。

 

「ヴァーリ」

「っ!」

 

突然声を掛けられ振り返ると、そこに居たのは一人の女性。忘れようもない。

 

「母さん……?」

 

幼少の頃、父から自分を庇い、命を落とした大切な女性。その人が眼の前にいた。

 

「良く頑張りましたね」

 

そう言って自分に優しく触れる手の温かみは、決して幻じゃないことを教えてくれる。

 

「そうだ!俺は確かリゼヴィムと戦って!」

 

ヴァーリは、急いで走り出そうとすると、母はヴァーリの手を掴む。

 

「もういいのよヴァーリ」

「え?」

「もう良いの。貴方は頑張ったわ」

 

優しく包みこんでくる感覚に、酔い始めるのを感じる。だがそれに抵抗する気が起きない。

 

「これ以上。貴方が苦しむ姿を見てられない」

 

母に抱きしめられ、何もかもがどうでも良くなっていく。

 

しかし、

 

「ダメだ」

「ヴァーリ?」

 

ヴァーリの拒絶。

 

脳裏に浮かぶのは、仲間達との日々。

 

戦兎の変な実験に付き合ったり、龍誠と筋トレしたり、匙とトレーニングしたり、サイラオーグの謎ファッションに突っ込んだり、フウのいれるお茶を飲んだり……リアスたちと馬鹿騒ぎもした。美猴達と色んな旅をした。

 

「ごめんなさい。お母さん」

 

ボロボロ泣きながら、ヴァーリは謝る。

 

「俺さ、やっぱり死ねないんだ。ずっと後悔してた。弱かったから、お母さんを守れなくて、何もできなくて、こんな自分に生きてる価値なんてない。死んでも構わない。どうなってもいいからリゼヴィムを倒れるなら良いって、そう思ったんだ。でもさぁ」

 

まるで子供のように泣きじゃくり、それでもヴァーリは叫ぶ。

 

「皆すごくいいやつなんだ。馬鹿だけど、とんでもなく良いやつなんだ。俺さ、自分勝手にもほどがあるんだけどさ、俺、まだ死にたくないんだ!」

 

ごめんなさい。そう言うと、母は優しく笑った。

 

「やっとわかったのね」

「え?」

「貴方はずっと私に罪悪感を抱いて、前を見ようとしなかった。でも貴方はやっと前を向こうとしてる」

 

母はソっとヴァーリの涙を拭い、

 

「良いのよ。生きてヴァーリ。貴方が守りたいものを守って。自由に生きて。貴方の幸せが私の幸せよ。貴方なら大丈夫。悪魔の力と人の心を持つ貴方なら、誰にも負けないから」

 

その言葉とともに、視界が白くなり、母が消えていく。思わず伸ばしそうになる手を止め、そしてヴァーリは、

 

「ありがとう。母さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?」

 

立ち上がったヴァーリを見て、リゼヴィムは、面倒くさそうにため息を漏らし、

 

「おいおい。もう寝とけって」

「残念ながら、世界救うまで寝てる暇はないんだよ」

 

ヴァーリは再び、ナックルとフルボトルを手に持つ。

 

「アハハハ!さっき使えなかったアイテムまた使う気かぁ?無理すんなよ」

「さっきは……な。だが今は違う」

 

ヴァーリはフルボトルを振り、息を吸った。

 

「俺に足りなかったのは覚悟!何が何でも生きる覚悟だ!」

《ボトルキーン!》

 

ナックルにボトルを装填後、ビルドドライバーにナックルを装填。

 

《グリスブリザード!》

 

レバーを回し、腕を上げて構える。まっすぐリゼヴィムを見つめ、

 

覚悟はできているか(Are you ready)?》

変身(出来てるよ)

 

背後にナックル型の溶鉱炉が現れ、そこから液体窒素のような液体が振りかけられ、ナックルが氷を破壊すると、

 

《激凍心火!グリスブリザード!ガキガキガキガキガッキーン!》

 

真っ青な姿のグリスとなったヴァーリは、

 

「心火を燃やして……明日を生きる!」

 

腰を落として走り出す。

 

「ちぃ!」

 

リゼヴィムは炎を放つとヴァーリは冷気を放つ。すると、

 

「なに!?」

 

炎が凍り付き、ヴァーリは飛び上がって、リゼヴィムと肉薄した。

 

「くっ!」

「はぁ!」

 

ヴァーリがナックルをつけて殴ると、防御したリゼヴィムの腕が凍り付き、そのまま腕が砕け散る。

 

「ぎゃああああああ!」

 

悲鳴を上げ、リゼヴィムは地面を転がった。

 

リゼヴィムは急いで再生しようとするのだが、

 

「な、なんで再生しない!?」

 

傷口を見ると、そこは氷付き、それが阻害してるのだと分かった。

 

「く、クソ!」

 

傷口に炎を当てて氷を溶かそうとするのだが、氷が溶ける気配がない。

 

「な、なんで!?」

 

その間に、レバーを回しながら、ヴァーリは近寄ってきた。

 

《シングルアイス!》

「こ、この!」

 

リゼヴィムは炎を放ち、それを受けるが、氷のロボアームを作り、それでぶん殴る。

 

「ぐあああああ!」

 

腕どころか、肩周辺まで吹き飛ばさて、両腕を失ったリゼヴィムはイモムシのように動いて逃げ出そうとした。

 

「ふん!」

《ボトルキーン!グレイシャルナックル!カチカチカチカチカチーン!》

 

ナックルにボトルを装填し直し、握り直すとリゼヴィムの腰を殴り、下半身を凍りつかせて砕く。

 

「あひ、ちょ!まてヴァーリ!」

 

リゼヴィムを掴み持ち上げると、リゼヴィムは命乞いを始めた。

 

「お、俺が悪かった!な?そんな怒んなって冗談だよ?ね?」

 

だがヴァーリは、

 

「怒ってないさ」

 

ヴァーリは、冷たくも、穏やかな声音で、

 

「ただお前はこの世にいてはいけない。この世にいれば、多くの不幸を呼ぶ。お前の呼ぶ不幸は、俺で終わりにする!」

 

空高く放り投げ、レバーを回す。

 

《シングルアイス!ツインアイス!》

 

ヴァーリは冷気を噴出し、飛び上がるとライダーキックの体勢に入った。

 

「これで終わりだぁああ!」

《グレイシャルフィニッシュ!バキバキバキバキバキーン!》

 

リゼヴィムの全身が凍り付き、ヴァーリのキックで粉々に砕け散り、消えていく。

 

「安心しろリゼヴィム。お前には死すら生ぬるい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いっでええええええええ!」

 

リゼヴィムは悶絶しながら叫ぶ。

 

「クソ!あのガキ!復活したらぶっ殺してやる!」

 

リゼヴィムは怒り狂いながら、復活を待つが、いつまで待っても体が戻る気がしない。

 

「な、なんで!?」

 

全身が粉々に砕かれる痛みが、全く引くことがなく、リゼヴィムは焦り始めた。

 

そして思い至る。さっきの戦いでも、傷口が凍り付き、治らなかったことを。

 

見えないほど粉々になった破片一つ一つが、氷付き、コーティングされている。つまりそれは、氷が解けない限り、復活できないということ。そしてその氷は、自身の炎でも溶けることはなかった。

 

「やめろ……やめてくれ」

 

リゼヴィムは、震えだしていた。体はなく、意識だけなので、そういう気持ちというだけだが。

 

「いやだ!この痛みにずっと苛まれるのか!?」

 

変身している状態では、自分は不老不死だ。つまり、死ぬことはない。だが、粉々に砕かれた痛みは、常に味わうことになる。

 

つまりこの先、死ぬまでこの痛みを味わい続けることになるが、リゼヴィムは死ぬことはない。

 

「頼む!ヴァーリ!俺が本当に悪かった!だから……だから!」

 

永遠の暗闇の中、粉々になる痛みだけを味わい続ける。それがリゼヴィムの末路だ。

 

「俺をせめて殺してくれぇええええええ!」

 

 

勿論この叫びは、音となることもなく、暗闇の中に、消えていくのだった。




仮面ライダーグリスブリザード

パンチ力50.7t(右腕)、61.7t(左腕)
キック力59.9t
ジャンプ力64.9m(ひと跳び)
走力2.1秒(100m)

ビルドドライバーとグリスブリザードナックル、ノースブリザードフルボトルで変身する強化形態。

スペックの上昇に加えて、冷気を操る力を持つ。

この能力は、ジーニアスボトルから作った、白龍皇の力が元になっており、周りの汎ゆるエネルギーを取り込むことにより、その過程で熱エネルギーも吸収。結果として、冷気を操っている。

この吸収は、変身者にも適応され、変身しているだけで膨大なエネルギーを奪われてしまう。同時に、変身者の秘められた力も強引に引き出す。

ヴァーリの魔王としての膨大なエネルギーがあるから成り立つ形態でもあり、魔王の力を克服していなければ、ヴァーリは命を落としていた。


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ヒーロー集結

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「それぞれの戦いを乗り越えた仲間たち」
龍誠「そして最後の相手は兵藤一誠」
戦兎「全てに決着をつけるため、俺達も戦うぜ!」
龍誠「そんな感じの175話スタートだ!」


「どいつもこいつも役に立たねぇなぁ」

 

一誠はふんぞり返りながら、しみじみと呟く。

 

「まぁ良いさ。俺一人がいればどうとでもなる」

「がは……」

 

地面に転がる戦兎と龍誠は、変身が強制解除された状態だ。

 

「さて、クライマックスといこうか」

 

一誠は立ち上がると、空に手をかざす。すると、空にプロジェクターのように映像が投影され、それに一誠が映る。

 

「あ、あれは……?」

 

地上で見ていた人間が、そう呟くと、

 

「俺は兵藤 一誠。この世界の中心人物だ。いや、そうだった。だが俺は色々あって、世界を滅ぼすことにした」

 

ふざけるな!誰かがそう叫んだ瞬間。駒王町の一部が爆発。

 

「なっ!」

 

戦兎が目を見開きが、一誠は気にせず、

 

「さて、この世界はお前たち人間以外にもたくさんの種族がある」

 

一誠がそう言って指を鳴らすと、空に映されたのは、悪魔のいる冥界や天界、堕天使にその他多くの人外達だ。

 

現在、戦いに参加していない。もしくはできない者たちにも、戦いの映像が写されていたのだが、それをジャックしたらどう。皆、突然自分の姿が映されたことに驚いている。

 

「見えるか?コイツ等はお前らが悪魔、天使……まぁ何でも良いや。そう言われる奴らだ。俺はコイツらとじっと戦ってきたんだが、そろそろ飽きた。全部終わらせてしまおうと思う。だが、流石にこのままあっさりじゃつまらない。折角だ。まだ戦う意志があるやつはこい」

 

そう言い、指をまた鳴らすと、各地に魔法陣が現れた。

 

「戦いたいやつはこれに乗れ。俺が相手してやる」

『そうかよ!』

 

次の瞬間、一誠の背後に人影。

 

《スクラップブレイク!》

《プライムスクラップブレイク!》

《グレイシャルフィニッシュ!》

《エボルテックアタック!》

 

四人の仮面ライダー達が、同時攻撃するが、一誠はそれを払いのける。

 

『はぁあああ!』

 

そこに、リアスたちも乗り込み攻撃し、それに合わせて全勢力がなだれ込んだ。

 

だが、

 

「弱いなぁ」

 

汎ゆる攻撃が無力化され、一誠は一方的にやり返す。ただそれだけだ。

 

「弱い弱い弱い!お前ら弱すぎんだよぉ!」

 

殴り、蹴り、叩きつける。光線を放ち、衝撃波を撃つ。それを繰り返すだけで、軽々と跳ね返す。

 

「で?まだやるやつはいるのか?」

 

一誠を中心に、皆が倒された。

 

「これを見てる奴ら!まだ戦えるやつはいないのか?ほらほらこのままだと俺が滅ぼしちゃうぞ〜?」

 

しかし、誰もが二の足を踏む。当然だ。あの力を見て、戦いを挑むものなど、もうこの世界にはいない。

 

「待てぇ!」

「ん?」

 

筈だった。誰もが諦めたその時、唯一人だけ、立ち上がった者がいた。この世界で唯一、兵藤一誠に立ち向かおうとする者。その顔を見た一誠は、

 

「誰だ?お前」

 

そう。見覚えがなかった。原作知識と、戦いの中で得た情報。その全てを動員しても、眼の前の少年の顔に見覚えがない。

 

だが戦兎は、その顔を見て、

 

「リレンクス!?」

 

そう。仮面ライダービルドのファンであり、ショーにも足繁く通ってくれた。匙達の作った学校でも会い、魔法を覚えて両親達を喜ばせた少年だ。

 

「リレンクス〜?あぁ、そう言えば原作でたまに出てきてたなぁ。挿絵のないキャラだったから分かんなかったぜ」

 

一誠はやれやれと言いながら、

 

「おいモブ。そんなんで俺と戦おうってのかい?」

 

リレンクスが持っているのは、ドリルクラッシャー。但し、冥界で大人気の玩具である。本物ではない。腰にもビルドドライバーとラビットフルボトルとタンクフルボトルを挿しているが、それも玩具だ。頭にはビルドのお面もつけているが、それに至っては手書きで、手作り感満載の物だ。

 

「約束したんだ……」

 

リレンクスの足は震えていた。歯もガチガチ音を立てていた。だが、それでもまっすぐ一誠を見ていた。

 

「誰かが困ってるときに、前に出れるようにならなきゃいけないって。今、皆困ってる。だ、だから」

 

玩具のドリルクラッシャーの刀身を回転させ、リレンクスは叫ぶ。

 

「ぼ、僕が相手だ!」

「ぶふ!」

 

それを見た一誠は、ゲラゲラ笑う。

 

「おいおいまじかよ。本気で俺と戦うのか!全く。しょうがねぇなぁ」

「お、おいやめろ兵藤一誠!相手は子供!」

 

戦兎は立ち上がろうとするが、痛みで顔を歪める。

 

「見てろよ戦兎。お前の正義が、このガキを死なせるんだからなぁ!」

 

次の瞬間、リレンクスに向けて光弾が放たれ、リレンクスの前で爆発。光と爆炎が上がり、リレンクスを消し飛ばす。

 

「あ……あぁ」

「アハハハ!どうだ戦兎。これがお前の正義の末路だぁああああ!」

 

一誠の笑い声は、天高く何処までも、響き渡るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時、人々は見た。風が吹き、それが炎を吹き飛ばす。

 

「は?」

 

一誠だけじゃない。他の人々もポカンとした。

 

「だれ?」

 

リレンクスは、眼の前の人物に問う。

 

緑の体とバッタのような顔。そして赤いマント。その人物は、人の姿に戻ると、

 

「私は本郷猛。仮面ライダービルドには恩があってね。だが少年。君は強いな。誰もが諦めたあの中で、ただひとり立ち向かった。お陰で、ここに間に合えたよ」

「お前がなぜここに」

 

一誠は驚きつつも、それでも笑い、

 

「だがお前一人じゃどうしようもないだろう?」

「私一人じゃないさ」

 

はぁ?と一誠が眉を寄せた時、土煙の中から他にも多くの人影が写った。

 

「あれはっ!」

 

戦兎が驚くのも無理はない。そこに居たのは、

 

「間に合ったみたいだな」

 

炎磨率いるエレメンジャー。

 

「さて、行きますか」

 

或人率いるゼロワン世界の皆。

 

「この未来は初めてだな」

 

ジオウに変身する一誠が率いる皆。

 

「ギリギリセーフ、かな?」

 

智宏率いる皆。

 

「いやぁ。すごい数だ〜」

 

そして最後に、陸人もいる。

 

「なぜお前らがここに……」

 

一誠が絶句していると、ジオウの一誠が、

 

「お前はやりすぎたんだよ。色んな世界にちょっかい掛けて、その結果世界同士の境界線が緩んでしまった。そして、悪魔は人の願いに応え、召喚されることもある。だがそれは逆も然り。願い、それに応えるものを呼び寄せることも……」

「あーもう!お兄ちゃん小難しい話いらない!」

 

実奈がベシっと突っ込むと、

 

「声が聞こえたから。これで十分でしょ」

「たしかにな」

 

実奈と一誠が笑い合う。

 

「まぁたしかに、声が聞こえたから飛び出したらここに居たって感じだしね」

「あ、そちらもそんな感じで?」

 

そんなやり取りをするのは、或人と智宏。

 

「皆お優しいこったねぇ」

「でも流れ的に貴方も同じでは?」

 

炎磨は陸人に突っ込まれ、他の皆も笑う。

 

「では、皆。準備はいいか!」

『おう!』

 

全員並び、本郷はジャケットを脱ぎ捨てた。

 

「少年!」

「は、はい!」

「名前は?」

「り、リレンクス!」

 

本郷に問われ、リレンクスは答えると、

 

「そうかリレンクス。私達も、一緒に戦わせてくれるか?」

「……うん!」

 

リレンクスの頷きと同時に、皆は構える。

 

「ライダー……」

『精霊!』

「ウルトラマン!」

《ジャンプ!オーソライズ!》

《バレット!オーソライズ!カメンライダー!カメンライダー!》

《ダッシュ!オーソライズ!カメンライダー!カメンライダー!》

《ゼツメツ!Evolution!ブレイクホーン!》

《ポイズン!》

《インフェルノウィング!バーンライズ!カメンライダー!カメンライダー!》

《ジオウ!》

《ブレイブクラウン!》

《ロマンクラウン!》

《アモーレクラウン!》

《ヘルシャフトクラウン!》

《サラマンダー!》

《サンダーバード!》

《ウンディーネ!》

《ドリアード!》

《シルフ!》

《ノーム!》

《ウルトラマンアース!》

 

全員意識を集中し叫ぶ。

 

『変身!』

『チェンジ!』

「アース!」

《プログライズ!飛び上がライズ!ライジングホッパー!A jump to the sky turns to a rider kick.》

《ショットライズ!シューティングウルフ!The elevation increases as the bullet is fired.》

《ショットライズ!ラッシングチーター!Try to outrun this demon to get left in the dust.》

《パーフェクトライズ!When the five horns cross,the golden soldier THOUSER is born.Presented by ZAIA.》

《フォースライズ!スティングスコーピオン!Break down.》

《スラッシュライズ!バーニングファルコン!The strongest wings bearing the fire of hell.》

《ライダータイム!仮面ライダー!ジオウ!》

《勇気の力が未来を切り開く!立ち上がれ!ブレイブキング!》

《物語の力が未来を紡ぐ!綴れ!ロマンキング!》

《愛の力が未来を救う!想え!アモーレキング!》

《支配の力が未来を治める!跪け!ヘルシャフトキング!》

 

全戦士は変身を終え、前を見る。その背後に実奈は立ち、

 

「よーし。ここは盛大に!」

 

飛び上がり、両手を広げて高らかに宣言。

 

「祝え!ここに、ヒーローが集結した。世界も違い、信念も違い、生きた時間も違う。ただ、同じものが一つ。それは、明日を願う誰かのために戦うこと。さぁ!刮目せよ!遠からのものは音に聞け!我ら!スーパーヒーローなり!」




この全員再登場はずっとやりたかった。


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希望の光

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「兵藤一誠の強さに、希望を失いかける俺達だったが……」
龍誠「そこに駆けつけてくれたのは、俺達と共に戦ってくれたヒーロー達!」
戦兎「絶望も希望に変えるヒーロー達と共に」
龍誠「俺達の戦いもクライマックスだぜ!」
戦兎「ってな感じの176話スタートだ!」


「ち……いけ!」

 

一誠が指示を飛ばすと、各地の魔獣が動き出し、各地に襲い掛かる。

 

「とぉ!」

 

最初に動き出した本郷は、降り立った場所で、次々に魔獣を撃破する。

 

「貴方は……」

 

助けられた住人が、本郷に問うと、

 

「仮面ライダー……いや、仮面ライダー1号!本郷猛!」

 

それに続いて他のメンバーも飛び出し、各地で魔獣を撃破していく。

 

「燃え上がれ!聖なる炎よ!エレメンレッド!火乃炎磨!」

「轟け!聖なる雷よ!エレメンイエロー!麻比 雷華!」

「湧き上がれ!聖なる水よ!水嶋 流那!」

「生い茂れ!聖なる木々よ!エレメングリーン!木ノ本 琴葉!」

「吹き荒れろ!聖なる風よ!エレメンホワイト!吹上 風琥!」

「讃えよ!聖なる大地よ!エレメンブラック!土田 早地!」

『我ら!精霊に選ばれし聖なる戦士!』

「精霊戦隊!」

『エレメンジャー!』

 

炎を纏わせた刀身で切り、雷が降り注ぎ、水が押し寄せ木々が襲いかかり、風が吹き荒れ大地が揺れる。

 

「ハアアア!」

《Attache case opens to release the sharpest of blade.》

「仮面ライダーゼロワン。飛電 或人!宜しく!」

 

或人はアタッシュカリバーで敵を切り裂き、不破と刃が銃撃。

 

「仮面ライダーバルカン。不破 諫だ。人々の笑顔を奪うやつはぶっ潰す!」

「仮面ライダーバルキリー。刃唯阿だ!」

 

《ジャックライズ!》

《Progrise key confirmed. Ready to utilize.ヘラクレスビートルズアビリティ!アメイジングカバンシュート!》

《バーニングレイン!》

 

「仮面ライダーサウザー。天津垓だ」

「仮面ライダー滅」

「仮面ライダー迅の迅だよ!」

 

追撃とばかり、三人の同時攻撃で魔獣たちを一気に押し返す。

 

「仮面ライダーキング!和泉 智宏!」

《ブレイブチャージ!ブレイブスラッシュ!》

「仮面ライダーロイ!鎌倉 詩桜だ」

《ロマンチャージ!ロマンスティング!》

「仮面ライダーエマヌエーレ。新川 広夢」

《アモーレチャージ!アモーレショット!》

「仮面ライダーケーニヒ。聖 莉々子ですわ!」

《ヘルシャフトチャージ!ヘルシャフトブレイク!》

 

押し返された所に、智宏達がなだれ込み、必殺技を叩き込む。

 

「ゴォオオオオ!」

 

そこに巨大な魔獣が飛び込む。

 

「ウルトラマンアース!青空陸人!」

 

巨大魔獣を抑え込み、そこから引き離しながら、陸人は殴り飛ばす。しかし、

 

「っ!」

 

上空と遥か彼方から光線が飛んでくる。

 

「何だ!?」

 

ウルトラマンとなった陸人の視力に写ったのは、宇宙から攻撃してくる魔獣と、海から攻撃してくる魔獣。

 

「なら!」

《ウルトラマンティガ!ウルトラマンダイナ!》

「ティガ君さん!ダイナ君さん!力使わせてもらいます!」

 

アプリを操作し、グランフォンを掲げると、アースの両側に、ウルトラマンティガとダイナの分身が出現し、ティガは海を、ダイナは宇宙の魔獣に向かって飛んでいき、

 

「更に!」

《ウルトラマンガイア!フォトンストリーム!》

「ガイア君さん!力使わせてもらいます!」

 

隣に現れた。ウルトラマンガイアと同じ動きをし、アースは光線を放つ。

 

ティガとダイナの分身も、同じく光線を放ち、魔獣を撃破。

 

「大丈夫?」

「え?リアス?」

 

一方、学園で魔獣と戦っていたソーナの下へ、リアスたちが現れる。

 

「え、えぇと、私はリアスだけど、貴女の知ってるリアスじゃないというか……」

「あ、あぁ!ジオウに変身する兵藤 一誠の!」

「そ、そうそう!」

 

合点がいったのか、ソーナは成程と手を叩き、

 

『はぁ!』

 

リアス達も、戦いに加わる。

 

「私達もやるわよ」

「力強い」

 

しかし一方では、

 

「いやあああ!」

 

逃げ送れた、住民が魔獣に追われる。そして襲われそうになったその時、

 

「危ない!」

 

その人は突き飛ばされ、ギリギリ回避。

 

「大丈夫ですか?」

 

高校生くらいの女の子達に、住人は困惑する中、

 

「妃愛!」

 

智宏がやってきて、皆を見る。

 

「行けるか?」

「うん!」

 

智宏は、確認を取ってから、クラウンを渡していく。

 

「先輩からも預かってきた」

「助かる!」

 

そして他の面々もベルトを装着し、

 

《イメージクラウン!》

《シャンソンクラウン!》

《ロイヤリティクラウン!》

《カームクラウン!》

《レジェンドクラウン!》

『変身!』

《忠義の力が未来を守る盾となる!守護せよ!ロイヤリティキング!》

《平静の力が未来を見据える!射抜け!カームキング!》

《絵画の力が未来を彩る!描け!イメージキング!》

《奉唱の力が未来を讃える!歌え!シャンソンキング!》

《伝説の王の力が!今再び目覚める!刮目せよ!レジェンドキング!》

 

妃愛を筆頭に更に変身し、魔獣達と戦う。

 

《エブリバディジャンプ!オーソライズ!》

「変身!」

《プログライズ!Let’s Rise! Le! Le! Let’s Rise!Secret Material! Hiden Metal!Metal Cluster Hopper!It‘s high quality.》

 

街を覆い尽くそうとする魔獣達を、更に覆い尽くす大量の飛蝗が襲いかかり、食い尽くして行く。

 

「社長!」

「イズ!」

 

或人は、ゼロツードライバーとゼロツープログライズキーを投げて渡し、

 

「行くよ!」

「はい!」

《ジャンプ!オーソライズ!》

《ゼロツージャンプ!》

「変身!」

《イニシャライズ!リアライジングホッパー!A riderkick to the sky turns to take off toward a dream.》

《ゼロツーライズ!Road to glory has to lead to growin'path to change one to two!仮面ライダーゼロツー!It's never over.》

 

ゼロツーに変身したイズと、或人は同時に走り出し、目にも映らぬほど速さで魔獣達を撃破。

 

《エンドレスブレイブクラウン!》

「変身!」

《無限の勇気の力が!最後の奇跡を起こす!奮い立て!エンドレスブレイブキング!》

 

その爆発の中を、智宏は駆け抜け、魔獣達を倒し、倒しそこねた魔獣を妃愛が片付けた。

 

《ランペイジバレット!オールライズ!Kamen Rider…Kamen Rider…》

《オールスターキングダム!》

『変身!』

《フルショットライズ!Gathering Round!ランペイジガトリング!マンモス!チーター!ホーネット!タイガー!ポーラベアー!スコーピオン!シャーク!コング!ファルコン!ウルフ!》

《今!全ての王が集結し一つとなる!愛し!支配し!歌い!描き!綴り!射抜き!守護し!立ち上がれ!オールスターキングダム!》

 

両者の最強フォームに変身した、不破と詩桜は、互いに武器を構えると、

 

《ブレイブブースト!ロイヤリティブースト!カームブースト!ロマンブースト!イメージブースト!シャンソンブースト!ヘルシャフトブースト!アモーレブースト!オールスターブースト!オールスタースプラッシュ!》

《パワー!ランペイジ!スピード!ランペイジ!エレメント!ランペイジ!オール!ランペイジ!ランペイジオールブラスト!》

 

同時に攻撃を放ち、それが一つになると魔獣達を飲み込み爆発。

 

「超!精霊チェンジ!」

《スーパーサラマンダー》

 

その中炎磨も姿を変え、炎と雷を混ぜ合わせたエネルギーを斬撃に乗せて放ち、

 

「シュワーッチ!」

 

アースも、光線を連続で放ち、追加で来た巨大魔獣を倒す。

 

《グランドジオウ!》

「変身!」

《グランドタイム!リアス・アケノ・アーシア・ユウト・コネコ・ゼノヴィア・ギャスパー・イリナ・ロスヴァイセ・クロカ・サジ・ヴァーリ・サイラオーグ・ミナ・ソウソウ・レイヴェル・デュリオ・アザゼル・オー・フィ・ス~。祝え!仮面ライダー!グ・ラ・ン・ド!ジオーウ!》

 

そこにグランドジオウとなった一誠が降り立ち、

 

《ジオウサイキョーフィニッシュタイム!キングギリギリスラッシュ!》

 

巨大な刀身で薙ぎ払う。

 

「……」

 

それを上空に映る画面でみていた、子供がいた。そして、

 

「頑張れ……」

 

最初はポツポツとした小さな声。だがそれは少しずつ大きくなり、

 

「頑張れええええ!仮面ライダービルドォオオオ!」

 

大きな声で叫ぶ。それを皮切りに、

 

「がんばれー!」

「負けるなー!」

「たってくれー!」

「ビルドー!」

「クローズー!」

 

冥界や天界。その他の神話体系達の声。それに釣られるように、人間達も、声援を送る。

 

「うるせぇなぁ!」

 

鬱陶しそうに、一誠は吐き捨てる。だが、

 

「あはは。あったけぇな」

「全くだ」

 

戦兎と龍誠が、笑いながら立ち上がる。それを一誠は、忌々しげに見た。

 

「お前はこれをうるさいって思うんだな。兵藤一誠」

「あぁそうさ。戦えないくせに、声だけは上げる騒音だ!」

 

可哀想な奴だな。戦兎はそう言い、一誠は何?という。

 

「お前はこの温かさをわからないんだ。自分たちのために、声を上げてくれる。それがどれだけ嬉しいか。お前には一生理解できないんだろうな」

 

その時、戦兎の左手が光り輝く。それを見た実奈が、

 

「そうだよ。戦兎さんはこの世界の人間なんだ。だから使えるんだ!その力を。兵藤一誠はただの力だとしか思ってない。だが本質は違う。時にはくだらなくて、時には最高に感動させてくれる。諦められなくて、苦しみを乗り越えて起こす奇跡の力。仮面ライダーの力だけじゃ駄目なんだ。仮面ライダーもこの世界の力もぜーんぶ纏めちゃうんだ!もう分かってるよね!?その力の名前!」

 

戦兎は、その問いに頷き、左手を掲げる。すると、ジーニアスボトルと呼応するように金と銀に色をそれぞれ変えた、ラビットフルボトルとドラゴンフルボトルが浮き上がり、叫んだ。

 

禁手(バランスブレイク)!」

 

次の瞬間、戦兎の左手から、金色のリングが現れ、それが外れると浮かんだフルボトルを包み込む。そして3つだったフルボトルは1つとなり、戦兎の手に収まった。

 

禁手(バランスブレイク)だと?そう言えば一応神器(セイクリットギア)だから、あるっちゃあるのか。でもまぁ確か、瓶詰め(ボトルチャージ)の力は、確か作ったボトルを混ぜ合わせ、新たな成分を作り出す。だったか?所詮俺に負けた力を混ぜ合わせた程度で何ができるのやら」

 

だが、戦兎はジッとそのフルボトルを見つめ、顔を上げた。

 

「出来るさ。お前を倒すことはな」

 

そう言い、戦兎はフルボトルを振り、

 

「さぁ、最後の実験を始めようか」

 

ビルドドライバーに装填。

 

《クローズビルド!》

 

それを見届け、龍誠はその場を後にしようとすると、

 

「ん?」

 

戦兎がレバーを回し、フレームが展開すると、龍誠まで閉じ込められてしまった。

 

「ちょ!おい待て!閉じ込められてるぞ!?」

 

龍誠は慌てて戦兎に言おうとするが、既に戦兎は構えており、

 

《Are you ready?》

「駄目です!」

「変身!」

 

ちょま!と叫ぶ龍誠と共に、フレームは閉じられ、変身シークエンスが始まる。

 

《ラビット!ドラゴン!Be The One! クローズビルド!イェイ!イェェーイ!》

『……ん?』

 

金と銀の瞳を持ち、赤と青をメインカラーに、金と銀のカラーリングを施した肉体を持つ仮面ライダー。しかし、

 

「えぇと……」

「俺達……」

『合体しちゃってるー!?』

「おい戦兎!どういうことだよこれ」

「いやぁ、完全に物理法則無視しちゃってるよなぁこれ」

 

端から見ると一人だが、どうやら中身は戦兎と龍誠の2人らしい。だが、

 

「とは言え、凄い力を感じる」

「それはまぁたしかに。なら戦兎!」

「あぁ、行くぞ!」

 

この戦いに決着をつけるため、戦兎と龍誠は、一誠に向かって飛び掛かるのだった。




ずっとクローズビルドは出したくて、どうしようかなぁ。と思いつつ、バランスブレイカーと組み合わせて出させていただきました。ビルドと言うか、この世界の仮面ライダーは、元々戦兎のセイクリットギアから始まったので、絶対バランスブレイカーは出さなきゃだと思い、ここまで寝かせてました。バランスブレイカーの設定、別に忘れてたわけじゃないんだからね!


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ラブ&ピース

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……


戦兎「人々の声援に背中を押され、遂に俺達は究極の姿に至る!」
龍誠「長い長い戦いも、今度こそ終わりだ!」
戦兎「泣いても笑っても最終決戦!見逃すなよ!」
龍誠「ってなわけでそんな感じの〜」
戦兎&龍誠「第177話スタートだ!」


『ハアアアアア!』

 

新たな形態、クローズビルドとなった戦兎と龍誠は、一誠に飛びかかる。

 

だが、

 

「うぉ!」

「うわ!」

 

パンチしようとする龍誠と、キックしようとする戦兎で、動きが噛み合わず、簡単に避けられる。その隙にカウンターまで貰い、逆にふっ飛ばされる。だが、舞い上がった土煙の中から再び飛び出し、

 

『うぉおおおお!』

「ふん!」

 

今度は動きが噛み合い、一誠の顔面を捉える。しかし、

 

「だから俺の能力。忘れたのかよ?」

『まだまだああああ!』

 

それでも戦兎と龍誠は殴り蹴る。

 

「うっとおしい!」

 

一誠の拳が炸裂し、背後の建物を破壊しながら吹き飛ぶ。だが再び建物から飛び出し、一誠に襲い掛かった。

 

「頑張れえええ!」

「負けるなああ!」

「そこだあああ!」

 

そんな光景の中でも、声援は熱を増していっていく。

 

「あぁ喧しいなぁ!」

 

一誠はその声援に向けて光弾を放つ。だが、

 

『させるかぁ!』

 

それを戦兎と龍誠が、光弾の行き先に先回りすると、蹴り飛ばして弾き、

 

「ありがとな!」

「応援サンキュー!」

 

と言って、再び一誠に向かって飛ぶ。

 

「ちっ!」

 

すると一誠の指示で、魔獣たちが襲いかかってきた。

 

『ハァ!』

 

龍誠が拳を振ると、巨大なエネルギーの龍が形成され、魔獣達を呑み込む。そこに次々襲い掛かってくるが、ダイヤモンドを作り出し、破片を飛ばして迎撃したり、UFOやトラのエネルギー体を飛ばしたり、雷光や滅びの魔力を纏わせたトゲを飛ばすなど、多種多様な能力で魔獣達を薙ぎ払った。すると一誠も飛び出し、戦兎と龍誠を掴んで、そのまま建物に叩きつける。

 

「おらぁ!」

 

幾つもの建物を蹴散らしながら、戦兎と龍誠をぶつけていくのだが、

 

『オォオオオオオオ!負ける気がしねぇええええ!』

 

二人の雄叫びが木霊し、全身が発光。それと同時に、一誠の拘束を振り払い、殴り飛ばした。

 

「なっ!」

 

突然走った痛みに、一誠は困惑。自身の能力により、ダメージ等は一切入らなくなった筈なのに、痛みを感じた。

 

『ハァ!』

 

速さもパワーも、追い抜かれてきている。

 

「何故だ……」

 

スペックも上がり続けている。能力でダメージもない。そのはずなのに、何故負けているのだと、一誠は驚き、信じられないと首を振る。

 

「アレは……」

 

それを見ていたリアスが、驚いていると、

 

「成程そういうことか」

 

とジオウの一誠が呟く。

 

「わかったの?そっちの一誠」

「えぇ。変身した直後は、まだ兵藤一誠を上回ってなかった。でも、今あの二人はハザードレベルが常に上がり続けている。しかも足し算じゃない。1+1=2ではなく、100にも200にもなる勢いだ。それがようやく、兵藤一誠を上回ったんだ」

 

そう言いながら、ジオウの一誠は別のライドウォッチを取り出すと、

 

「そこでだ。戦兎と龍誠にだけやらせたんじゃ、悔しくないか?あんたらも彼奴等にやられてたんだろ?」

「そりゃできるならしたいけど、私達ではもう……」

「なら任せてよ」

 

一誠はそう言いながら、ライドウォッチを起動。

 

《オーマジオウ!》

「変身!」

《キングタイム!仮面ライダージオウ!オーマ!》

 

仮面ライダージオウ。オーマフォームになった一誠は、手を掲げると、

 

「さぁ、クライマックスだ!」

 

ジオウの一誠の手から光が溢れ、それが世界を包んでいく。

 

「これは……」

 

各地で戦っていた人々や、倒れていた仲間たちがその光を浴びると、全身から力が溢れてくる。

 

「オーマジオウの力を皆に付与した。さぁて暴れようぜ!」

 

それを見ていた智宏も、変身を解除すると、

 

「俺達も行くぞ!」

《アルティメットドライバー!》

 

腰に別のベルトを装着し、スイッチを押すと、バックルが展開。

 

「変身!」

《最高の力!最高の願い!最高の想い!最高の絆!最高の希望!全てを繋ぎ、今こそ我らは一つとなる。一致団結せよ!我ら!仮面ライダー!アルティメイト!!!!》

 

戦っていた他の仲間達と融合し、仮面ライダーアルティメイトへと変身。

 

「神霊チェンジ!」

《ゴットサラマンダー!》

「導け!神の力!ゴッドエレメンレッド!」

 

炎磨も最終形態、ゴッドエレメンレッドへなり、

 

「皆!行くぞ!」

 

炎磨の合図で、全員ブレスレットを操作。

 

「神霊召喚!」

『精霊召喚!』

《ゴッドサモン!》

《サモン!》

 

それと同時に、巨大な精霊と、神霊へと進化したサラマンダーが出現し、炎磨たちは乗り込む。すると、

 

「陸人ー!」

「真海?来てたの?」

 

勿論!と答えると、陸人の手から出た光を受け融合。

 

「久々に行きますかぁ!」

「だね!」

『エターナルアース!』

《ウルトラマン!エターナルアース!》

 

エターナルアースへと変身したのと同時に、

 

『神霊合体!』

 

炎磨達も合体し、

 

『完成!シンレイオウ!』

 

新たな形態の姿に代わり、エターナルアースとシンレイオウが並び立つ。

 

「ねぇ陸人」

「ん?」

 

その頃、内部で真海が陸人に声をかけ、

 

「この力ならさ、兵藤 一誠に殺された人達も生き返らせられるよね?」

「うん」

 

陸人はそう返しつつも、

 

「でも、それをしたらそれを乗り越え、今ここに立ってる人たちに失礼じゃないかなって思うんだ。この力は何でもできる。でも何でもして良いわけじゃない」

「うん。そうだよね」

 

まぁ生き返らしてほしいって気持ちも否定できないけどさ。と陸人は言いつつ、

 

「今は目の前の敵を倒そう!」

「そうね!」

 

巨大魔獣達を、エターナルアースとシンレイオウは次々と撃破していく。

 

「ハァアアアア!」

 

そして、一誠に向かって、侑斗が空を駆けていき、戦兎と龍誠は入れ替わるように離れた。そして一誠を取り囲むように聖魔剣を出現させ、

 

「っ!」

「オォオオオオオオ!」

 

グラムを手に、すれ違いざまに斬ると、駆け抜けた先の聖魔剣を掴み、振り返って斬る。そのまますり抜け、また斬ってすり抜けて斬って、を繰り返し、

 

「ば、馬鹿な!?何故俺にダメージが!?」

「俺の力だよ」

 

ジオウの一誠が、そう話しかけてくる。

 

「オーマジオウの力は相手より必ず強くなるだ。お前には十分だろ?」

「クソ!」

 

一誠は振り返り様に攻撃しようとするが、ジオウの一誠はそれをガードし、殴り返す。

 

「そして、お前はもう主人公補正はない。つまり、容赦なくやれるってことだ!」

 

ジオウの一誠は、手をかざすと、一誠は磔にされ、空中に浮かび上がる。

 

「オオオオ!」

「ハアアア!」

 

ゼノヴィアが、エクスデュランダルで切り裂き、イリナがオートクレールで追撃し、トドメにロスヴァイセの砲撃。

 

「行くぞ、朱乃」

「はい」

 

朱乃とバラキエルの雷光が一つとなり、一誠に襲い掛かった。

 

「ぎゃー君!!」

「うん!!」

 

ギャスパーの黒いモヤが拳を形取り、小猫と共に一誠を殴り飛ばす。

 

「がはぁ!」

 

拘束ごと破壊し、吹っ飛んだ一誠を、

 

「行くわよ〜!」

「えぇ」

「全力だぁ!」

 

黒歌を筆頭に、ヴァーリチームの皆が攻撃を叩き込む。

 

「リアス。準備はいいわね?」

「えぇ」

 

グレイフィアとリアスの魔力が一つとなり、一誠を飲み込んでいった。

 

更に、世界中のドラゴンや悪魔に天使や堕天使たちが、力を増大させ、攻撃を叩き込み続けていく。

 

「うっとおしい!」

 

だがそれを、一誠が振り払う。

 

「はぁ、はぁ!そうだ。俺の力はどこまでも強くなる。俺を超えるならもっと力を!無制限に、全てを超え、全てを飲み込み破壊する力を!」

 

一誠の体から、力が溢れ出し、さらなる進化をしようとする。だが、

 

《アルティメイトブレイブストライク!》

 

そこに仮面ライダーアルティメイトの智宏がキックを叩き込んだ。

 

「悪いが、お前に弱点を付与させてもらった」

「は、はぁ?」

 

一誠の体を、次の瞬間とてつもない疲労感が襲う。

 

「汎ゆる攻撃に弱くなり、体力が続かなくなり、体の動きが悪くなるていう弱点さ」

「アホが、そんな出鱈目なことあっかよ!」

 

一誠は反撃しようとしたが、

 

「チェストォオオオ!」

 

突き出した腕を、本郷の手刀が切り落とす。

 

「最早ここまでだ。諦めろ。兵藤一誠!」

「ふざけんな。おれは主人公なんだ!」

 

残った腕で、本郷に襲いかかろうとした一誠だが、光速で近づいた或人とイズの蹴り上げで、上空に吹き飛ばされる。

 

「皆!合わせるんだ!」

「一斉総射だ!」

『おう!』

 

全勢力の中でも魔術系が得意な面々が、エターナルアースとシンレイオウの周りに集まり、力を集め、

 

『エターナルアースイム光線!』

『シンレイオウ!ゴットインパクト!』

 

二人の光線を中心に、全勢力が力を合わせたビームが放たれ、一誠を呑み込む。

 

更に、

 

「ライダー!キィイイイイック!」

《グレイシャルフィニッシュ!》

《プライムスクラップブレイク!》

《スクラップブレイク!ツインフィニッシュ!》

《エボルテックアタック!》

《キングタイムブレーク!》

《リアライジングインパクト!》

《ゼロツービックバン!》

《オールランペイジブラストフィーバー!》

《サンダーライトニングブラストフィーバー!》

《サウザンドディストラクション!》

《スティングユートピア!》

《バーニングレインラッシュ!》

《アルティメイトエンド!》

 

全ライダーから放たれるキックと、他の全勢力の近接攻撃主体のメンバーが、一気に襲い掛かる。

 

吹き飛びながら、全身がぼろぼろになり、虫の息となった、一誠を追うように、戦兎と龍誠のクローズビルドは空に駆け、レバーを回す。

 

『これで終わらせる!』

 

それを見たセラフォルーは、空の映像に映ると、

 

「よーし皆ー!最後はアレ。行くよー!」

 

アレ?と人間達、仮面ライダービルドを知らない人々は、周りを見て困惑する。すると、

 

「じゃあわからない人達のために、やり方を教えるね?」

 

セラフォルーは、手で兎を作って頭上に掲げるいつものポーズと決め台詞。人々もそれを真似する。

 

そして戦兎と龍誠はレバーを回し終えた時、黄金の兎が現れ、背後に来ると、戦兎と龍誠は足の裏を兎に向け、兎は後ろ足のキックで、勢いよく発射。そのままキックの体勢に入る中、

 

《Are you ready?》

『勝利の法則は決まったぁ!!!!』

 

悪魔も天使も堕天使も、神も人間もあらゆる種族は関係なく、この世界に生きる全ての人々の叫びが、戦兎と龍誠の背中を押す。

 

《Ready Go!》

『ラブ&ピース!フィニイイイイイイイイイイイイッシュ!!!』

 

金と銀の螺旋が、一誠を絡め取り動きを止め、そこにドロップキックを叩き込むと、そのまま上空に押し上げていく。

 

「クソ!クソ!何でだ!才能も力も全て持ってたのに!今度こそ前世で出来なかったことをするはずだったんだ!誰もからも好かれて認められる。そんな俺が負けるはずがないのにぃいいいいい!」

「お前は可哀想なやつだよ。兵藤 一誠」

「なに!?」

 

戦兎の言葉に、一誠は反応する。

 

「お前は強い。誰よりも強い。だったらなんでその力を誰かを救うためじゃなく、誰かを虐げるために使ったんだ!誰かのために使えてたら、お前は誰からも好かれ、認められる存在になれたんじゃないのか!?主人公じゃなくたって、誰かのヒーローに!?」

「っ!」

「結局お前はな。自分勝手で人を思い通りに動かそうとする。そんな奴が誰かに認められる理由がねぇ!そして俺達は、そんなやつに屈しない!」

 

クローズビルドの体が更に輝き、

 

『だから俺達は、負ける気がしねぇええええええ!』

 

さらなる推進力を得たキックに、一誠の体が崩壊を始め、

 

「あ、あぁっ」

 

次の瞬間、爆発が起き、一誠が消滅する。

 

「勝った……の?」

 

呆然と、リアスは上空の爆発を見つめていた。そしてその爆発から降りてきた、クローズビルドの姿に、思わず涙を流す。

 

「勝ったのね?」

 

誰も聞き取れないほど小さな呟き。だが、戦兎と龍誠には届いたのか、サムズアップを決めた。

 

そのタイミングで、歓声が上がる。

 

「勝ったぞおおおおおおおお!」

 

互いに抱き合い、ハイタッチをして涙を流す。

 

そこに種族の壁はなく、ただただ生きていることを喜び合っていた。

 

そして、地面に降りて変身を解除した戦兎と龍誠は元通り二人に戻ると、

 

 

「終わったんだな」

「あぁ」

 

夢でも見ているような、そんな感覚に、どこか現実味はない。

 

「な、なぁ戦兎。俺を一発殴ってくれ。まだ夢見てるへぶぁ!」

 

戦兎のパンチに、龍誠は吹っ飛び。

 

「お前せめて最後まで言わせろ!」

「どうだ?痛いか!」

 

いてぇよ!と龍誠がプリプリ怒ると、

 

「じゃあ俺も頼ぶばぁ!」

 

まだ頼むと言ってねぇぞ!戦兎は転がって立ち上がると、龍誠にもう一発殴らせろと飛び掛かり、龍誠も何をー!っと反撃。ポカスカポカスカと殴り合う二人を、

 

「何してるのかしら……」

「さぁ?」

 

リアスと朱乃を筆頭に、皆苦笑いしてみていた。

 

だが、そんな光景すらどこか愛おしい。やっと、やっと届いた平和へのチケットだ。

 

「まぁ部長、折角の今回の戦いの英雄がアオタン作ったんじゃカッコつきませんし」

 

侑斗が言うと、たしかにそうね、とリアスはうなずき、

 

「アーシア。治療の準備だけお願いね」

「はい!」

 

リアスはコホンと咳払い。それからゆっくり息を吸い込むと、

 

「戦兎!龍誠!いい加減にしなさぁああああああああい!!!」

『す、すいませんでしたぁああああああああ!』

 

リアスの怒号と戦兎と龍誠の土下座。それを見て笑う面々。

 

こうして、長い長い戦いに、終止符が打たれるのだった。




クローズビルド

パンチ力 55.0t〜(右腕)/64.2t〜(左腕)
キック力 70.5t〜(右足)/62.7t〜(左足)
ジャンプ力 91.8m〜
走力 0.8s/100m (時速450km)〜

正式名称は、仮面ライダービルド クローズビルドフォーム。

様々な戦いを乗り越え、戦兎が禁手(バランスブレイク)に至って生まれた究極のフォーム。

汎ゆるスペックが非常に高く、ジーニアス由来の多種多様な能力に加えて、龍誠の格闘センスも同時に使える。

ただ、戦兎と龍誠が融合したことで、肉体の操作には、二人の息を合わせる必要があるものの、その点は元々のコンビネーションにより問題はなかった。

更に、最も厄介なのは、スペック表を見ての通り、全てに《〜》がついていること。つまり、スペックが常に上がり続けており、ジオウの一誠曰く、1足す1は2どころか100や200になっている。とのこと。

一誠もスペックが上がり続けているが、こちらは2人分な上に、その速度もどんどん上昇していくため、一誠のスペックも上回れた。

これがもし、戦兎か龍誠のどちらかだけで行う変身だったら、恐らく追いつけなかったか、もっと追いつくのに時間がかかったと思われる。

手数もそうだが、単純なスペックでも、この世界では勝てるものは存在しない。まさに究極の姿である。


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幕引き

前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……


戦兎「長い長い戦いを終え、遂に平穏な時を掴んだ俺達。これから色んな事があるのかもしれないけど、今はただ平穏を味あわせてもらうぜ。ってなわけで、そんな感じの最終回始まりだー!」


「うぅん……」

 

戦兎は紙を穴が開く勢いで見ており、

全身から変な汗を掻いている。

 

「戦兎さん。緊張し過ぎです」

「そうだけどさぁ!」

 

兵藤 一誠との最終決戦から、既に半年の時が流れていた。

 

あの戦いの傷は深く、破壊された建物の修復や、悪魔達に関する記憶の削除等、様々な作業も、やっと最近落ち着いた。

 

その時、ふと思い出す。助けに来てくれたヒーロー達が帰る中、陸人が残り、

 

「もし死んでしまった人を生き返らせられるとしたら、どうします?」

 

そう問われ、一瞬言葉が詰まったものの、

 

「いや、望まないよ」

 

父のこと、サーゼクスさんのこと、様々な出来事が脳裏をよぎったが、戦兎は首を横に振った。

 

「一度でも、誰かを好きに生き返らせたら、もうこれから必死に生きていけなくなる。死んだら終わりなんだ。だから悲しいし、必死に命をかけて生きようとする。だけどもし、一回でも死んでも生き返ったっていう経験をしたら、何処かでまたその奇跡を願ってしまう。それは、きっと良くない」

 

戦兎のその返答に、陸人は頷くと、分かりましたと言って帰っていった。

 

「ってかさぁ!何で俺だけなんだよ!龍誠にもやらせろよ!」

「龍誠先輩に向いてると思いますか?」

 

思わんけどさぁ!と戦兎は嘆く。

 

これから行われるのは、戦勝記念の式典だ。様々な復興作業がやっと一段落し、それの祝いも含めた行事だ。

 

そしてその式典にて、戦兎はスピーチをすることになってしまった。

 

まぁこの戦いの立役者とも言える戦兎が、スピーチを行うのは当然かもしれない。しかし、この式典は他の神話体系も含めた全てに見られる。

 

その緊張たるや推して知るべし。

 

「頑張ってください。これからそういう機会も増えていくんですから。上級悪魔として」

 

小猫にそう言われ、戦兎は眉を寄せる。

 

先の戦いの功績も含め、戦兎の昇格が決まった。本当は、一気に最上級悪魔の称号の授与も話されていたらしいが、前例がないことと、段階を踏まねばということで、まずは上級悪魔になった。とは言え、高校卒業のタイミングで最上級悪魔への昇格も決まっている。

 

そもそも、

 

「超越者かぁ」

 

そう、この戦いを経て、戦兎と龍誠は超越者の枠になってしまった。厳密にはまだ発表されてないが、こちらも最上級悪魔への昇格と同時に、行われる予定である。

 

「さ、そろそろ時間ですから諦めてください」

「へーい」

 

小猫に促され、会場に向かう戦兎。

 

「ビルドだ!」

 

壇上に上がると、ワッと歓声が上がり、ビリビリと戦兎の肌を叩く。

 

「よし」

 

落ち着け俺。とマイクに顔を近づけつつ、会場を見渡す。

 

そこには収まりきらないほどの人々が来ており、更にこの映像は中継されていた。緊張で心臓が痛くなってくる。しかし、

 

「あれは……」

 

会場の特等席に、リレンクスがいた。彼は、あの戦いの行動が評価され、今回は超VIP待遇だ。

 

そんな彼の目を輝かさる顔を見たら、緊張が解れ、同時に戦兎はカンペをビリビリと破り捨てた。

 

会場が少しざわつく中、戦兎は口を開く。

 

「失礼しました。では改めて、私は仮面ライダービルド、桐生戦兎です。この度の戦いでは、俺は沢山の人々に助けられました。兵藤一誠。彼は強敵でした。正直、半年経った今も勝ったという実感が湧いていません。どこか夢を見ている気分です。ですが、現実はこれが答えです!」

 

戦兎は、会場にいる人々を見ていく。

 

「戦いに勝ちました。平和を勝ち取りました。ですが、この戦いで失ったものが多すぎる。どれも失ってはならない大切なものを、失った人たちがいます。だからこそ、俺の戦いはまだ続きます。俺はこれからこの勝ち取った平和を守らなくてはならない。そして、未来をビルドし続けなくてはいけない。それが、この戦いを生き残った自分の仕事だと思っています。ですが、今回の戦いで痛いほど味わいました。一人の力なんて言うのは、本当にちっぽけで弱い。だからこそ、皆さんにこれからも力を借りる事になると思います。その際は、宜しくお願いします。必ずや、俺はこの平和を守ってみせます!」

 

戦兎のその宣言に、世界中が湧き上がる。その声援を背中に、戦兎は壇上を降りると、

 

「良い演説だったわ」

 

リアスを筆頭に、仲間達が待ってくれていた。

 

「緊張がやばかったですけどね」

「まぁこれから慣れていけばいいわよ」

 

皆の顔を、戦兎は見る。この戦いを経て、この掛け替えのない仲間達との出会いがあった。

 

それがあっただけでも、意味はあったのかもしれない。まぁそう思ってないとやってられないのかもしれないが。

 

「じゃあ、行きますか!」

 

これから、近くの会場を貸し切ってパーティーも開かれる。半年経って、漸く戦勝祝いもできるのだ。

 

命を落とし、ここに来れない者もいる。だからこそ、自分達はその人達の分まで楽しむ。それも弔いのはずだ。

 

「ほんじゃあレッツゴー!」

『おー!』

 

そんなことを思いながら、仲間達と会場に向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいさ、暫くは平和を味わうと良い」

 

戦兎達を見つめる視線。どこまでも冷たく、どこまでも暗い。

 

「だが仮面ライダー。我こそ、この世界を正しく導ける」

 

顔は見えないその男は背を向け歩き出す。深く被ったフードで顔は見えない。だが、腰にあったのはエボルドライバーとハザードトリガー。そして、黒いジーニアスボトルだった。




Vシネ編開幕!

兵藤一誠との戦いから1年後。最上級悪魔となった戦兎達の元へ、新たな敵が襲い掛かる。

匙、ヴァーリ、サイラオーグの3人が主人公のVシネ編を見逃すな!

まずは匙の物語……

戦兎達「ソーナ会長初恋の人!?」
匙「そーなんだよぉおおおお!」

突然匙達の前に現れた、ソーナ初恋の人。そして襲い掛かる、禍の団(カオス・ブリゲード)の残党たち。

匙はソーナを……愛する主を守れるのか?

???「何故だ……何故お前はそこまで戦えるんだ!」
匙「そんなもん。決まってんだろうが!大事なもんのため……愛のためにだ!変身!」
《最凶不滅のドラゴンヤロー!仮面ライダーデーゴン!コエー!ムッチャコエー!》


















そして始まる。仮面ライダービルド。本当のラストバトル!

戦兎「何だアイツら……仮面ライダーか?」
???『変身!』

突如現れた謎の二人の仮面ライダー。そして、桐生戦兎の最強最後の戦いが幕を開ける!

未来を、そして今をビルドせよ!

???「桐生戦兎。ソイツはもう、この世にはいない」


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Vシネマ・仮面ライダーデーゴン編
初恋の人


兵藤一誠との最後の戦いから半年。ようやく手に入れた平穏な時間を、戦兎たちは生きていた。

しかし、そこに伸びる暗躍する魔の手。戦兎達の新たな戦いが幕を開ける!

匙「いやいや待て待て!主役はオレオレ!」

ソーナの前に現れた男。そして再び動き出す、禍の団(カオス・ブリゲード)の残党たち。

匙は愛する主を守るため、再び仮面ライダーになる。

匙「行くぜ。変身!」
《最凶不滅のドラゴンヤロー!仮面ライダーデーゴン!コエー!ムッチャコエー!》

Vシネ、仮面ライダーデーゴン編。ここに開幕!


「ふぅ」

 

大学の講義を終え、ソーナは帰路についていた。

 

先日の戦兎の演説を経て、兵藤一誠との戦いは一度区切りとなった。だが、考えることが多い。

 

先日の最後の戦いで、多くの有力な悪魔が死んだ。

 

これからは、転生悪魔の時代が来るだろう。更に、血筋には囚われない悪魔の登用。

 

つまり、ソーナが目指す、別け隔てのない教育機関が、必要になってくるのだ。

 

あの時は禍の団(カオス・ブリゲード)の襲撃により、学校計画は一度取りやめになったが、再度進めてもらえる事にもなった。

 

これは、先の戦いでユーグリッドを撃破し、仮面ライダーとして多くの功績を残した匙の影響もある。

 

今度匙には何か礼をせねばなるまい。ケーキでも作ってあげようか。なんてことを考えていたら、

 

「ソーナ殿」

「え?」

 

声を掛けられ、振り返ると、そこに立っていたのは、

 

「ゴーマ・アロケル殿?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フッフフーン」

 

ある日の匙。今日は生徒会の買い出しに向かっていた。

 

ゼノヴィアが生徒会長となったが、副生徒会長として匙は現在も活動している。

 

新入生が自分が買い出しにと言ってくれたが、手が空いているのは自分だけだったので、自分が動くしかない。

 

と思って来たのだが、

 

「ん?あれは」

 

街の一角のカフェに、見知った女性がいた。ソーナだ。

 

「かいちょ……じゃない。ソーナせんぱ……い?」

 

未だに会長と呼びそうになり、注意されるのでソーナ先輩と呼ぶ努力をしている真っ最中なのだが……

 

「ソーナ殿はすっかり大きくなりましたね」

「そうでしょうか?確かに背は伸びたと思いますが……」

「いや、すっかり大人っぽくなって美しくなった」

「そ、そんな」

 

自分が見たことのないソーナの女性としての顔。それが相手の男に向けられたものなのは明らかだった。

 

「ん?」

 

ソーナは振り返るが、そこには誰もいない。

 

「ソーナ殿?」

「いえ、何か知り合いの声が聞こえたような……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、ソーナが知らない男とお茶をしてて匙くんはこうなってると」

 

龍誠達の家にて、リアスはやれやれと肩を竦める。

 

現在匙は机に突っ伏し、干物みたいになっていた。

 

「さっきまで泣いて騒いでそのまま乾物になりました」

「面白い体してるわね彼」

 

戦兎が状況を説明し、リアスは匙が隠し撮りした写真を撮る。

 

「これがソーナの彼氏ね」

「はい。みてください会長の顔。この幸せそうな顔。いや良いんです。俺は会長が幸せならそれで……」

 

どんよりと匙の周りだけ重力が十倍になってそうなくらい空気が重い。すると、

 

「あら?この人ゴーマ・アロケル殿じゃない」

「アロケルって言うと……確か断絶した家の?」

「そう。教養を司る悪魔で、ソーナの家庭教師をしていた人よ。中学生の辺りまでだったかしら」

「家庭教師!?」

 

匙はその言葉を聞き、飛び上がった。

 

「つつつつつまり、会長の恋人では!?」

「え、えぇ。ソーナはそもそも恋人はいないわよ?私が知る限りでは」

 

拳を天に掲げ、勝利のポーズをする匙。しかし、

 

「でもそれならこんな顔しなくないですか?」

 

と聞いてくる戦兎に、リアスはそっと耳打ちをして、

 

「ソーナの初恋の人なの」

『えぇ!?ソーナ会長の初恋の人!?』

 

思わず戦兎と龍誠が叫び、慌てて周りで口を塞ぐがもう遅い。しっかりそれを聞いた匙は、

 

「ごふぅ!」

 

血を吐きながら床に膝をついて崩れ落ちた。

 

「で、でも別に初恋ってだけなんだし今はただの憧れの可能性もあるだろ!?」

 

流石に悪いことをしたと思ったのか、戦兎がフォローすると、

 

「そうだよな!?」

 

と復活する匙。しかし、

 

「まぁ逆に再会してから盛り上がる恋もあるけどな」

「がはぁ!」

 

ヴァーリの言葉に再び吐血して匙は倒れた。

 

「さじいいいいいい!」

 

再び動かなくなった匙の体を戦兎は揺らすが、

 

「い、息をしていない!?」

 

死んでいた。

 

「サンダーボルト!」

「あばばばばばば!」

 

なので速攻電流を流して復活させると、

 

「と、とにかく!まだ希望があるはず!多分!きっと……」

 

語尾に行くにつれて弱々しくなっていく匙に、どんなやつなのかリアスに聞くと、

 

「さっきも言ったようにソーナの家庭教師をしてた人でね。才能溢れる素晴らしい人だったわね。あ……」

 

ずぅん、と匙が落ち込み、部屋の隅に体育座り。すると、

 

「うぅむ。没落したとは言え、家柄はよくイケメンで家庭教師が出来るほど頭も良く、初恋の人になるほど信頼もされている。匙が勝てるとこねぇじゃねぇか」

「がぼぁああああ!」

 

皆がちょっと思ったが言わなかったことをヴァーリがいい、匙は血反吐を吐いて倒れた。

 

「まぁ諦めろ匙。人の夢と書いて儚いだぞ」

「お前なんか今日酷くないか!?」

「うるせぇ!こちとらみーたんの周年記念ライブチケット抽選に落選して傷心なんだ!てめぇも一緒に苦しめぇええええ!」

「八つ当たりじゃねぇかぁ!」

 

遂にポカスカと泣きながら殴り合いを始めた二人を見て、ため息をつく戦兎達。

 

「全く。喧嘩するなよな」

「ってか戦兎!結局俺の強化アイテムってどうなったんだよ」

 

そんな中、匙にそう問われ、戦兎は少しポカンとすると、

 

「え?いる?」

「いるに決まってんだろうがぁああああああ!」

「いやぁ、兵藤一誠との闘いも終わったし、そんな次々強化アイテム制作もいらないかなって」

「なんでだよぉ!俺にもくれよぉ!皆持ってるのに俺だけないんだぜぇ!?」

「フウもないぞ?」

「あれはもう最初から強化アイテムみたいなもんだろうがぁ!」

 

と泣きながら縋り付いてきた。

 

「そんで強化フォームを最初に試すのはゴーマ・アロケルだぁああああ」

「私怨たっぷりじゃねぇか!」

 

オイオイ泣く匙を宥めつつ、戦兎は深々と、更にため息を吐くのだった。



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正体

「ヴァーリのやつ好き勝手に言いやがって」

 

匙はドスドスと夜道を歩く。だが、

 

「確かに勝てるとこ一個もねぇよなぁ」

 

思わずその場にしゃがみ込んでしまう。

 

仮面ライダーとして、禍の団(カオス・ブリゲード)との戦いを乗り越えたが、あの時ユーグリッドに勝てたのは、最後の最後まで自分に対して油断していたのが大きいのは理解している。

 

最初から本気だったらきっと……そんな事を思っていると、

 

「ん?」

 

匙の視線の先に、ゴーマ・アロケルの背中が見え、思わず柱の影に隠れてしまった。

 

(いやなんで隠れてるんだ俺は)

 

そんな事を思いつついると、路地裏に入って行く。

 

(あの先はなにもないはず……)

 

匙は気配を殺し後を追うと、裏口からビルの中に入っていった。

 

(ここは確かもうテナントも入ってない廃ビルのはずなんだけどな)

 

匙は益々不審そうな顔をし、こっそり扉を開けた。その時、

 

「これは」

 

扉を開けた先は、別の空間に繫がっており、見たことのない建物の内部に繋がっていた。

 

「なるほどね」

 

改めて見てみると、結界が張ってある。これは人が無意識に近寄らなかったり、そもそもこの扉の存在に気づかないようにする結界だ。ただ匙は悪魔なのと、ゴーマを追ってきたという条件が重なり、この扉を認識できたのだろう。

 

「益々怪しくなってきたじゃねぇか」

 

そう呟きながら、建物の奥を目指して歩き出す。

 

似たような装飾が続く内部に、道を間違えているような気持ちになってしまうが、多分大丈夫なはずだ。

 

自分にそう言い聞かせ、歩いていくと、広場のようになった空間に出た。そこにはゴーマと、何百人単位の人々が居た。

 

「集まったな。同志達よ」

 

ゴーマがそう口を開く。

 

「兵藤一誠様が悪しき者たちに、討ち滅ぼされ、禍の団(カオス・ブリゲード)は散り散りになった。その後も、我らの正しき思想を理解できぬ愚か者達の手によって、生き残った同志達も次々討ち取られていった。だがそれもここまでだ。今こそ、我ら禍の団(カオス・ブリゲード)は、再び動き出す!まずは有象無象を育てようとする学園機関を作ろうという思想を駆逐する!」

「っ!」

 

ゴーマの言葉に、思わず匙は絶句する。その言葉の意味は勿論、

 

「君の主も当然だよ。匙君」

 

バレてたか、匙はため息を吐くと、姿を現した。

 

「今の言葉……本気か?」

「あぁ、久し振りに会ってね。話をして思わず殺してしまおうかと思ったよ」

 

ゴーマは、怒りに顔を歪めながら、口を開く。

 

「学園機関など存在してはならない。正しき悪魔のみが育ち、その正しき悪魔が有象無象を引き連れる。有象無象は正しき悪魔が死ねと言えば死に、手足となってその生涯を全うする。それが正しい姿だ。だが今の悪魔は弱体化し、それを為す事ができない!」

「だからこそ変わる必要があるんじゃないか!」

「それが間違っているのだよ」

 

ゴーマの言葉に、匙は益々意味がわからないと言う顔をすると、

 

「正しく居られぬなら、存在する価値はない。ならば私は悪魔を滅ぼす。一人残らず駆逐し、悪魔という種を根絶する。そうすれば、もう間違った道に進むことはない。変わる必要なんてない」

「お前正気か?」

 

何を言ってるのか分からず、匙はポカンとしてしまう。

 

「転生悪魔に頼る必要などない。私は悪魔という種を愛している。だからこそ、私は悪魔を滅ぼす」

「ふざけるな!」

《ドラゴンゼリー!》

 

匙はベルトを装着し、スクラッシュドラゴンゼリーを装填。

 

「てめぇの勝手な思想で、会長の夢も命も奪われてたまるか!」

 

匙はそう言って、レバーを下ろす。

 

「変身!」

《潰れる!流れる!溢れ出る!ドラゴンインクローズチャージ!ブラァ!》

 

変身を完了した匙が走り出すと、禍の団(カオス・ブリゲード)の残党たちが阻むが、

 

「おらぁ!」

 

次々と蹴散らしていく。襲ってくる奴は蹴り、殴り、

 

《シングル!》

 

ツインブレイカーにガトリングフルボトルを装填し、

 

《シングルフィニッシュ!》

 

ツインブレイカーのビームモードを乱射。数の差を物ともせず、匙は倒していく。

 

すると、

 

「それ以上はやめてもらおうか」

 

そこにゴーマが割って入り、匙は咄嗟に殴り返そうとするが、それ片手で止めてしまった。

 

「ちっ!」

「我が同志達に手は出させん!」

 

ゴーマは魔力を纏わせた拳で匙と殴り合う。

 

(強い。けど!)

 

かなり強い。パワーもスピードもテクニックもある。だが、数々の激戦をくぐり抜けた匙の敵ではなかった。

 

「おらっ!」

 

蹴り飛ばし、距離を取る匙。するとゴーマは、

 

「成程。やはりその仮面ライダーの力。あってはならない物のようだ」

「仮面ライダーがなんだって?」

「仮面ライダー。それこそが間違った悪魔が蔓延った根幹にあるもの。そんな物があるから、世界は間違った方向に行こうとしているのだ。だが、それを受け入れなければ正せぬなら、致し方ない」

 

ゴーマは、そう言って取り出したのは、

 

「ビルドドライバー!?」

「転生悪魔でも作れるものだ。複製することは容易い。幸い、設計図自体は残っていたからな」

 

そういいながら、ゴーマはベルトを装着し、フルフルラビットタンクボトルのような形状のフルボトルを取り出す。

 

「悪魔を滅ぼすならば、あってはならない力をも使おう!」

《ガオ!ガオ!ガオ!》

 

フルボトルを折りたたみ、開く動作を繰り返す。それはまるで、ドラゴンの横顔のようだ。そして、折りたたんだままビルドドライバーの装填。

 

《ネオクローズチャージ!》

 

レバーを回し、ゴーマは匙を見ると、

 

「変身」

《万物滅殺!ネオクローズチャージ!ガオガオガオガオガオォオオオオオオン!》

 

腰巻きを翻し、姿を現したのは全身が真っ黒なクローズチャージ。

 

「何だよそれ……」

「桐生忍は、クローズチャージ、グリス、ローグのライダーシステムに発展型を作ろうとしていた」

 

それは匙も知っている。それがグリスブリザードであり、プライムローグだったはずだ。

 

「勿論、完成データは桐生戦兎の手に渡ったが、これは残っていた研究施設に行き、削除された研究データから私が作ったものだ。勿論削除されていたから、データの復元には時間が掛かったし、復元データも完全じゃないから穴だらけで大変だったがな。だが無事完成した。更にこれはオマケだが」

 

ゴーマが1回レバーを回すと、

 

《Ready Go!ネオスクラップブレイク!》

 

ゴーマの全員から宿主のようにドラゴンが伸び、次々と禍の団(カオス・ブリゲード)の残党たちを食っていく。

 

「何を!」

 

匙が驚くが、残党たちは動かず、寧ろ食われることに喜んでいた。

 

「これは他者を食い尽くし、自分の力にする」

 

ゴーマのオーラが、先程とは比べ物にならないほど強くなる。

 

「さぁ、こい」

 

地面が真っ赤になり、一人残らず食い尽くしたゴーマが、匙の元に来る。

 

「ふざけやがって!」

 

匙が飛び掛かるが、殴ってもびくともしない。

 

「クソ!」

《スクラップブレイク!》

 

匙は必殺技を発動し、蹴り飛ばすが効く様子はない。

 

「無駄だ。お前では俺には勝てない」

「同士とか言っておいて、利用したやつが何を!」

「同士だからだよ。同士だからこそ、彼等は私に喜んで命を捧げたのだ。言っておくが、この場にいる全ての者が、こうなることを望んできているのだよ」

 

ゴーマの拳が、匙を殴るとそのまま吹き飛ぶ

 

「がはっ!」

「同士達の命を使い、私は正義を実行する。それが私の覚悟だ!」

 

そう叫びながら、ゴーマは2回レバーを回し、

 

《Ready Go!ネオドラゴニックフィニッシュ!》

 

右足に全エネルギーを集め、飛び上がると、匙に向かって蹴りを放つ。

 

《スクラップブレイク!》

 

匙も咄嗟に必殺技を発動し、拳で迎え撃つが、

 

「ぐ、ぐぎ」

 

拮抗することもできず押し込まれ、

 

「ぐぁあああああああ!」

 

そのままキックを決められ爆発。

 

「安心しろ。すぐに皆そちらに行く」

 

全身がバラバラになり、物言わぬ肉塊へと変わった匙に、ゴーマは声を掛けると、その場を後にするのだった。




仮面ライダーネオクローズチャージ

パンチ力97t
キック力95t
ジャンプ力80.2m(ひと跳び)
走力2秒(100m)

ゴーマ・アロケルが変身したクローズ系ライダーの最終形態。

元々は忍が完成させた研究データから作っており、戦兎がもし最終決戦に制作が間に合っていれば、匙が変身したであろう姿。

だがゴーマに手によって改造されており、元々のスペックよりも大幅に上昇している。

更にオマケと称して、他者を喰らい、自らに力とすることが可能。

匙のクローズチャージでは手も足も出ず、完全敗北を喫した。

ゴーマ自身は、研究者ではなかったものの、忍のデータ込とは言え復元した未完成データから作り出すなど、間違いなく彼も天才である。



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勃発

「一体どこに行ってしまったの」

 

街中を走るソーナは不安そうに周りを見回す。

 

匙が突然消息を絶ってから既に3日。ソーナを筆頭にシトリーチームの面々は元より、戦兎達も捜索していたが、未だに消息がつかめない。

 

「どこに行ったの。匙」

「ソーナ殿」

 

突然掛けられた声に、ソーナは振り返ると、そこに立っていたのはゴーマだ。

 

「ゴーマ殿。すいません。匙を見なかったか……って匙を知りませんでしたね。彼は私の眷属で」

「えぇ、知ってますよ」

 

そうか。映像で見たことくらいあるか。ソーナがそう理解した時、ゴーマがスマホを取り出し、彼女に見せる。

 

「え?」

 

そこには、バラバラになり、地面を血で濡らす匙の写真があった。

 

「ご、ゴーマ殿。今はそういう冗談は」

 

理解が出来ない写真に、ソーナはゴーマを見るが、

 

「冗談ではありません。彼は私が殺しました」

「っ!」

 

全身の血の気が引き、一瞬体温が下がったような感覚になるが、直ぐ様ソーナはゴーマに至近距離で魔力をぶつけた。しかし、

 

《万物滅殺!ネオクローズチャージ!ガオガオガオガオガオォオオオオオオン!》

 

爆発したものの、中から変身しつつ歩いてきたゴーマに、ソーナ驚愕する。

 

「仮面ライダー?」

「えぇ、貴方の眷属を葬った力ですよ」

「なぜ!」

 

ソーナは再び魔力を放ち、水を集めるとゴーマにぶつける。だがゴーマは意に返さず、

 

「彼は私に襲い掛かってきました。その為に返り討ちにしました。悪いのは彼ですよ」

「理由もなく匙が襲うありませんわけがありません」

「襲われる理由はないはずなんですがね。ただまぁ、私の理想が理解できなかったのでしょう」

「理想?」

「そう。悪魔という種の根絶です」

「は?」

 

意味が分からず、ソーナは攻撃の手を止める。

 

「悪魔は滅ぶべきだ。どうせもう長くはない」

「そんな事はありません!その為に転生悪魔も」

「それがいらないって言ってんだよぉ!」

 

間合いを詰め、ソーナをゴーマは殴り飛ばす。

 

「転生悪魔に頼らなくちゃ生き残れないなら、もう悪魔なんて言う種がいる必要はない。速やかに滅ぶべきだ」

「くっ」

 

ソーナは反撃するが、ゴーマは腕を払って消し飛ばす。

 

「転生悪魔何ていう物があるからいけないんだ。転生悪魔はこの世界の異物であり害物!それを赦し、生み出す今の悪魔社会は間違っている。ならば私はその間違いを正し、悪魔を滅ぼす。まず第一歩は貴女だ。ソーナ・シトリー。お前の作る学校。アレも良くない。才能も家柄も無い者に教えるだと?それは間違っている!才能も家柄もあり、それが悪魔社会の秩序とルールを作る。それ以外は黙って従う。それが正しき姿。そこから這い上がる必要も、這い上がろうと上を見る必要もない。大人しく這いつくばって泥水をすすってれば良いんだよ!」

 

ソーナを踏みつけ、叫ぶゴーマ。するとソーナは、

 

「貴方は、そんな人じゃなかった。私の夢も、応援してくれていた!」

「目が覚めた人ですよ。真実にね」

 

ゴーマの冷ややかな声音に、ソーナの表情は歪み、

 

「やはりあの事件ですか?」

「っ!」

 

ソーナの問いに、ゴーマは僅かに動揺する。だがすぐに冷静になり、

 

「関係ありませんよ」

 

追撃の一発を決め、ソーナの意識を奪い、

 

「さぁ、最終段階だ」

 

ソーナを抱え上げながら、ゴーマはそう言うと姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ソーナ会長までどこ行っちまったんだ」

 

龍誠がそうボヤくと、他の面々も頷く。匙に続いて、ソーナまで行方知れずになってしまった。

 

勿論、そのせいで妹を探すと暴れるセラフォルーの話も聞いている。

 

すると、

 

「おいお前ら。これを見ろ」

 

アザゼルが来て、テレビを付けると、冥界の映像が流れ、そこには、

 

「ソーナ!」

 

リアスが驚きながら画面に近づくと、そこにはソーナが囚われた状態の映像が流れる。

 

そしてゴーマが映ると、

 

「私はゴーマ・アロケル。既に断絶した家の者だ。私は現冥界のあり方に疑問を感じ、考え抜いた末に、悪魔という種の根絶を行うことにした。例外はない。まずはこの者、学校を作り、別け隔てなく教育を行うという愚行を行おうとした罪を、ここに断罪する!」

 

その次の瞬間、天を覆うほどの氷が、ゴーマに襲いかかる。

 

「ソーちゃんを離せぇええええ!」

 

乱入したセラフォルーだが、ゴーマも変身し、対抗する。

 

「あれは仮面ライダー?」

 

困惑するリアス達だったが、だがこうしてはいられない。

 

「私達も行くわよ!」

『はい!』

 

リアス達も、魔法陣の準備。その間に、戦兎はリアスに問う。

 

「ゴーマ・アロケルって、ソーナ会長の家庭教師だったんですよね?その割に……」

「多分。あの事件が原因でしょうね」

「あの事件?」

 

リアスは、少し息を吐くと、

 

「アロケル家は、元々は別け隔てなく知識を与える家だったのよ。それこそ、下級悪魔も含め、様々な地位の悪魔に教育を施していた」

「今とは違いますね」

 

そうね。とリアスは目を伏せ、

 

「だけどね。そんなある日、アロケル家に強盗が押し入って、財産の殆どを奪われた。犯人はその後判明するけど、アロケル家に勉強の為に出入りしていた悪魔だったらしいわ」

「そんな」

「元々裕福な家ではなかった。でもそれが引き金となり、アロケル家は没落。それでも、これまで通り別け隔てのない教育を辞めることはなかった。その中で、ソーナを教える機会もあったのだけどね。だけど数年前、元々は転生悪魔だったのだけど、その後はぐれとなった悪魔が、ゴーマ殿の奥様と子供を襲い、命を奪った」

「まさかそれが……」

「えぇ、尽力した者たちに裏切られ、そして転生悪魔に愛する妻と子供を奪われた。それが今のゴーマ殿を生み出したのかもしれないわね」

 

だがだからといって、ゴーマ殿の行いを許すわけにはいかない。そういいながら。魔法陣を見ると、

 

「行くわよ!皆!」

『はい!』



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デーゴン

「きゃあ!」

 

地面を転がりながらも、大勢を立て直すセラフォルーに、ゴーマはレバーを回す。

 

《Ready Go!ネオスクラップブレイク!》

 

それと共に、黒い炎が上がり、人型となる。

 

「分身か。厄介ね」

『変身!』

《鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イエーイ!》

《Wake up CROSS-Z! Get GREAT DRAGON! Yeahhh!》

 

そこに、魔法陣が出現し、戦兎達が飛び出すと、分身達を吹き飛ばす。

 

「大丈夫ですか?」

「ありがとうリアスちゃん。でもあれ、相当厄介ね」

 

セラフォルーが言うように、実力だけなら余裕で魔王クラス。

 

「お姉様!皆!」

 

すると意識を取り戻したらしく、ソーナが顔を上げ、叫び声を上げた。

 

「ゴーマ殿もう辞めてください!貴方はそんな人じゃなかった!誰よりも優しく、平等に教育を受ける権利があると説いてくれた。私が学校という夢を持てたのです!」

「そう。私の罪だ。貴方にそんな夢を見せてしまったのがね」

 

え?とソーナは呆然とする。

 

「私は間違っていた。この世に平等はない。不平等が突如を生み出す。そしてその不平等と秩序を作り出す救世主こそ、兵藤一誠様だった!」

 

ゴーマの言葉に、皆が驚愕する。

 

「お前、兵藤一誠に会ってたのか!」

「えぇ、彼は私の目の前に現れ、言ってくれたのです。我慢する必要はないとね。私は耐えてきました。平等であれ、優しくあれと。だが、その結末は裏切りだ。私の思いなど届いてなかったのだ!ずっと耐え忍んだ。裏切られても、没落した後、人々から向けられる憐憫の目を見ても、それでも絶えた。だが、私が救われることはなかった。ただ無意味に、優しさと平等を説く日々、それがソーナ殿(彼女)のような間違った思想を生み出してしまった。だから、私は間違った思想を広めた罪を背負い、全てを終わらせる。私が為すべき正義だ。私が犯した罪、私が精算する!」

 

完全にイカれてやがる。龍誠がそうボヤく。だがソーナは、

 

「うそ。そんな……」

 

いやだ。やめてくれとソーナは首を振る。こんな現実は認めたくないと、自分が憧れた夢。それを教えてくれた人自身が否定する。その現実に、ソーナが潰されかけた時、

 

「それに救われたやつもいんだよ」

『っ!』

 

突然響いた声に、全員が反応し振り返る。そこにいたのは、

 

「匙?」

「会長。遅れてすいません」

 

そう。匙が立っていた。服がボロボロだが、間違いなく匙だ。

 

「何故お前が。私が殺したはず」

「あぁ、俺は確かに死んだ。だけどな、未練がありすぎて生き返っちまった」

 

そうゴーマに返しながら、匙は振り返る。

 

ゴーマに倒され、自分は間違いなくあの時死んでいた。だが真っ暗な世界で意識を取り戻した自分の目の前に現れたのは、黒い龍。そう、龍王・ヴリトラだ。

 

「だ、誰だ!」

《全く。今まで助けてやっただろう》

 

その龍の冷たい声を聞き、匙は察するものがあったのか、

 

「もしかしてヴリトラか?」

《そうだ。やっと話せたな》

 

ヴリトラは降り立つと、匙の周りをグルリと囲む。

 

《クローズチャージを扱えるようにしたのも、ユーグリッドに勝てたのも、我の手助けがあってこそ。少しは感謝してほしいものだ》

「今まで何度呼びかけても返事をしなかったくせに」

《完全に覚醒していなかったからだ。どこか夢見心地な感じだった。完全に意識が戻ったのは、ユーグリッドとの戦いで、黒いボトルを使っただろう?あれでようやく目覚めた》

 

あのボトルか。そう思ったが、

 

「いやそれにしたって半年以上の期間があるんだが!?」

「起き抜けでボーっとしてたらそれくらいになっていただけだ」

 

半年間寝ぼけてたってどんなスケールだと言いたいが、一旦それはおいておこう。

 

「もしかして今も助けてくれたのか?」

《厳密にはお前は死んでいる。だが、我の力でバラバラになった体を繋ぎ合わせ、動くことは可能だ。どちらかというとゾンビだな》

 

邪竜由来の生命力がなければとっくに手遅れだ。そう言うヴリトラに匙は、

 

「つまりまだ、あいつと戦えるんだな?」

《あぁ、それにしたって死んだというのに意外と冷静だな》

「いや結構冷静じゃないんだけどさ、それでも、まだ戦えるならこの際悪魔でも龍でもゾンビでも何でも良い」

 

匙の言葉に、ヴリトラは少し笑った。

 

《いい考えだ。そうでないとな》

 

ヴリトラの体が光、匙の体と一つになる。

 

《我が分身よ。行こうではないか》

「あぁ!」

 

こうして匙は、ヴリトラの力で蘇ったのだが、

 

「目覚めたら目の前に戦兎がいてよ」

「え?じゃあ貴方匙くんが生きて楽しってたの!?」

 

リアスがびっくりして戦兎を見ると、

 

「す、すいません。ゴーマを引っ掛ける為にあかせなくて」

 

戦兎はリアスに言いながらもジーニアスボトルを出し、

 

「三日前、ジーニアスボトルが匙のヴリトラの力と共鳴して、俺を匙の所にに導いてくれたんです。行ったらびっくりしましたよ。肉片がウネウネ集まって匙の体を作ってたんですから」

 

何かのホラーだったわ。という戦兎に、匙は苦笑いを浮かべ、

 

「お前がどんな過去を持っていようと、俺は会長が教えてくれた未来を信じてる」

「成程。お前を倒すには、肉片一つ残してはならないようだな!」

 

匙が一歩前に出ると、

 

「ほら匙!お届け物だ!」

「ん!」

 

戦兎はビルドドライバーと、ジーニアスボトルと同じ形状のボトルを投げて渡した。

 

「あれは?」

「匙専用の強化アイテムです。元々父さんが考えたのは、ゴーマが使っているネオクローズチャージなんですが、匙のはそれを超える物。元々前々から匙の強化アイテムは考えてたんでね。ただ準備にめっちゃ時間がかかってたもんで大分待たせてましたけど」

 

戦兎がリアスの説明する中、匙はビルドドライバーを装着。

 

「我が正義のために。お前を何度でも殺してくれる!」

「好きにしろよ。俺は何度殺されようが、お前を倒すまで闘い続ける!」

《ドラゴンフェスティバル!》

 

ボトルのスイッチを押し、ボトルをドライバーの装填。そしてレバーを回す。

 

デーモン(D)ドラゴン(D)デーモン(D)ドラゴン(D)デーモン(D)ドラゴン(D)デーモン(D)ドラゴン(D)デーモン(D)ドラゴン(D)!》

 

そしてレバーから手を離し、匙は叫ぶ。

 

《Are you ready?》

「変身!」

《最凶不滅のドラゴンヤロー!仮面ライダーデーゴン!コエー!ムッチャコエー!》

 

全身黒を基調とし、赤や白、他にも様々なカラーリングが施された仮面ライダーへと、匙は姿を変える。

 

「何だそれは」

「仮面ライダーデーゴン。お前を倒す者の名前だ!」




仮面ライダーデーゴン

パンチ力100t
キック力104t
ジャンプ力100m(ひと跳び)
走力0.5秒(100m)

匙がビルドドライバーとデーゴンボトルで変身する強化形態。厳密に言えば、ベルトも違う上に、名前も変わっているので、別ライダー扱い。

メインカラーは黒だが、他にも様々な色のカラーリングが施されており、ジーニアス程ではないがかなり鮮やか。

クローズチャージよりスペックも大幅に上昇しており、更にヴリトラの力を引き出す為、匙専用にチューニングされている(クローズチャージは無理矢理適応させていたに過ぎないため)

そして、これにはヴリトラだけではなく多数のドラゴンの力を内包しており、戦兎のジーニアスからドライグやアルビオン、オーフィスだけではなく、タンニーンやファーブニル、ミドガルズオルムやティアマット、玉龍などの龍王達から貰った力まで組み込んでおり、フルボトルてんこ盛りならぬ、ドラゴンてんこ盛りフォーム。

実はかなり゙前から構想は練っていたらしいのだが、ドラゴンたちから力を貸してもらうのにかなり手間取ったため、ギリギリの完成となった模様。

必殺技は、レバーを1度回して放つ、デモニッションブレイク。2度回して放つドラゴニックブレイク、3度回して放つデュアルデモゴニックブレイク。


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暗闇の光

「おぉおおおお!」

 

仮面ライダーデーゴンとなった匙は、ゴーマに組み付くと膝蹴りを叩き込む。

 

「ぬぅ!」

 

匙に触れられ、力が抜けるような感覚と同時に叩き込まれた膝蹴りに、ゴーマは苦悶の声を漏らしながら振り払うと、匙を殴り飛ばす。

 

「くっ!」

 

匙は怯んで下がるが、右手を掲げると背後の空間が歪み、多数の宝具が射出され、ゴーマに襲い掛かった。

 

「ぬぅ!」

 

それを炎で弾くが、匙はその隙に駆け寄り、全身から黒い龍脈(アブソブーション・ライン)を出し、地面に落ちた宝具を拾うと、それで攻撃。

 

ゴーマは全てギリギリで避けていくが、匙が力を込めると、背後にタンニーンを模したオーラ上のドラゴンが現れ、ブレスを放つ。

 

そして爆発と同時に火柱があがり、ゴーマは転がったが、

 

「おぉおお!」

 

素早く立ち上がり、拳を突き出すとオーラのドラゴンを生成し、匙に向かって飛ぶ。

 

「はぁ!」

 

対する匙も拳を突き出すと、巨大な龍を象ったオーラを飛ばして相殺。

 

「さらに!」

 

だがそこから黒い炎を出すと地面を這わせて攻撃。

 

「っ!」

 

ゴーマは飛び上がって避けるが、

 

「おぉ!」

 

再びブレスを放ち、ゴーマは体をひねって回避。空を覆っていた雲が吹き飛び、空を炎が覆い尽くした。

 

「な、何て戦いなの」

 

リアスが熱い空気を吸い込んで咳き込みそうになる中、闘いは更に加熱する。

 

「はぁ!」

 

続け様に、懐に飛び込んだゴーマの連撃が匙に打たれる。

 

「ぐっ!」

 

匙は負けじと反撃するが、ゴーマはそれを避けて攻撃を叩き込んだ。

 

「舐めるなよ。どんな力を持ったとしても、貴様と私は覚悟が違うのだ!」

「覚悟だと!?」

「そうだ!私は正しきことを為すため、己の間違いを正すために戦っているんだ!負けるわけにはいかない!」

「フザケンナ!」

 

ゴーマの攻撃を強引に耐え、匙は殴り返した。

 

「間違ってただと?違う!ソーナ会長は間違ってなんかいない!」

 

奥歯を噛み締め、ゴーマの言葉を否定する。

 

匙は両親を既に失っている。眷属になる前は、弟妹の面倒を見るため、日夜バイトに励み、家事の全てを担っていた。

 

将来は公務員辺りになれば良い。そんな事を漠然と思いながら、ガムシャラだった。

 

そんなある日、弟妹がなんの因果か、ソーナを呼び出し、自身の力を見抜いた彼女が、眷属となれば支援してくれると言うので、悪魔になった。

 

最初は、弟妹の面倒を見るのに割の良いバイト先が見つかった、位の感覚で、眷属としての仕事をし、比較的金銭的に安定してきた中、ソーナの夢を聞いた。

 

「いつか、身分など関係ない、学校を作りたい」

 

自分は素直に良い夢だと思った。お金がなく、弟妹達に苦労をかけてきた自分の過去を振り返り、身分に関係なく誰でも受け入れる学校。

 

凄く良いものだと思った。何より、真っ直ぐそれを語る彼女の目に、凄く惹きつけられた。目を逸らせなくなり、胸が高鳴った。

 

そうだ。きっとこれが恋なのだと。その時理解した。自分は、ソーナのその目に。そしてその夢に恋をしたんだと。

 

「だから、お前は俺が倒す。お前を倒して、会長の夢を続ける!」

 

匙はそう言って、左腕に付いているスイッチを押す。

 

《Boost!》

「おぉおお!」

 

匙は走り出すとゴーマを殴り飛ばす。

 

「何故そこまでっ!」

「大事なものが……譲れないもんがあるんだよ!」

 

ふっとばした先に回り込んだ匙は、蹴り飛ばして再度別方向に飛ばすと、ゴーマは壁に叩きつけられる。

 

《Reset!》

 

全身から煙を噴出させ、力を抜くと、ゴーマは立ち上がった。

 

「諦めろゴーマ。お前は俺には勝てない。分かっただろ。死にたいのか」

「死にたいか。そうだな。正義を為すために死ぬなら本望」

 

ゴーマはそう言って駆け出すが、匙はレバーを一度回して、

 

《デーモンサイド!Ready Go!デモニッションブレイク!》

 

右拳に集めたエネルギーを叩きつけるようにぶん殴る。

 

「そういうことかよ。お前」

 

匙は、同情的な、それでいて冷ややかにも聞こえる声音で喋る。

 

禍の団(カオス・ブリゲード)の残党には、大きく分けて2つの特徴があった。一つは、兵藤一誠に心酔していた者。もう一つは、洗脳によって、意識を捻じ曲げられた者」

 

後者は、マグダラン等が筆頭だ。厳密には、根底にあった黒い部分。それを表に引き出され、他者を憎むようになったもの。

 

しかしそれらは、兵藤一誠が死んだ後、罪の意識を感じ、今は専用の施設にて隔離されている。

 

問題は前者だったが、

 

「俺はてっきり、お前も前者だと思っていた。兵藤一誠に心酔していた残党。だが本当は違う。お前はただの死にたがりだ」

「っ!」

 

ゴーマは何もかもを奪われ、失った。築き上げたものも、大切な家族も、何もかもを失い、ただ死ぬのを待つだけだった。だがそこに、兵藤一誠が現れ、戦う場所を得た。

 

戦う間は、何もかもを忘れることができた。何より、楽しかった。自分は奪われたのだから、今度は誰かから奪ってもいいじゃないか。そんな気持ちもあった。

 

「お前は、自分が苦しむのから逃れるために死にたがり、その前に兵藤一誠に拾われたから気持ちの逃げ道を覚えた。だが、兵藤一誠がいなくなり、逃げ道がなくなったから暴れまわって死のうとしてる身勝手野郎。それがお前だ。正義もクソもねぇよ」

「黙れ!」

 

ゴーマは再び先に飛びかかるが、レバーを2度回し、

 

《デーモンサイド!ドラゴンサイド!Ready Go!ドラゴニックブレイク!》

 

匙は何と地面を踏みつけた。すると巨大な大穴ができ、二人はその中に落ちていく。

 

「おいおいマジか!?」

 

龍誠が慌てて駆けつけ中を覗くが、底は見えないほど深い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!」

 

着地したゴーマに、匙はゆっくり詰め寄る。

 

「はぁ!」

 

それを見て、ゴーマは殴るが、

 

《Boost!》

 

装置を起動し、ゴーマの拳を自らの拳で迎え撃つ。

 

「ぐぁ!」

 

骨が砕ける音とともに、ゴーマは右手を抑えるが、

 

「らぁ!」

 

ゴーマは左手で殴る。しかし、匙はそれを頭突きで迎撃し、骨を砕く。

 

「ぐぉおおお!」

 

後退り、悲鳴を上げるゴーマに、更に詰め寄る。

 

《Reset!》

「何で二人きりになったか分かるか?」

 

匙は、ゾッとするほど冷たい声音で、ゴーマを見る。

 

「これから行うのは、蹂躙だ。きっと戦兎や龍誠なら、生きて償わせようとするだろうな。だが、俺は違う」

 

匙の蹴りがゴーマを吹き飛ばした。

 

「俺はお前を許せない。きっと昔のお前は良い人だったんだろう。そして様々な経験を得て、変わってしまったんだろう。凄く可愛そうな人なんだろう。でもな」

 

会長を悲しませやがったな?地獄の底から湧き上がってきたような、憎悪のオーラ。

 

龍には、触れてはならない物がある。それは逆鱗。それに触れられた龍は怒り狂うらしい。

 

匙にとって、それがソーナだった。

 

「だが、過去に尊敬したお前を眼の前でボコボコにし、殺せば、きっと会長の傷になる。だからせめて、見えない所でお前を殺す」

 

匙はそういいながら、レバーを3度回した。

 

《デーモンサイド!ドラゴンサイド!デュアルサイド!Ready Go!》

「ククク……アハハハハハハ!」

 

ゴーマは、それを見て笑う。

 

匙は飛び上がり、キックに体勢に。

 

ゴーマはそれを見て、両腕を広げて、受け入れる姿勢をとった。

 

「ハァアアアアア!」

《デュアルデモゴニックブレイク!》

 

キックを受け、爆発が起きる。

 

そして、

 

「いつか、お前達も同じ目に遭う」

「……」

「恩を仇にされ、今までしてきたことを否定され、奪われ失う。ソーナが語る学校なんて空想でしか無い」

 

匙は変身を解除し、ゴーマを見た。

 

「そうかもな。でもなゴーマ。だったら俺は、その悪意と闘い続ける世の中、悪いやつばっかりなのかもしれない。でもだからこそ、教えを信じてくれる僅かな光が、何より大事なんだ。アンタにもいただろ。そんな光がさ」

「……」

「暗いところばかり見ても、先は見えない。だからこそ、僅かな光を大切にする。それが教育ってもんだろ」

「どうしてそこまで戦えるんだ。お前は」

「決まってんだろ。愛する人のため。愛ゆえにさ」

 

愚かな。ゴーマはそう言いながら、消滅していく。

 

「いいさ、お前たちが裏切られ、絶望していく様を、見届けてやる」

「じゃあ残念ながら、俺達が死ぬまで見ることはないな。諦めて成仏することをオススメするぜ」

 

消滅し、消えたゴーマの場所に、匙はそう声をかけ、目を伏せる。

 

ゴーマとの戦いは、きっとこれからだ。ゴーマの言ったことを否定し、自分の信じた道を全うすること。それがゴーマを倒した、自分のケジメだ。

 

そんな事を思いながら、匙は穴を上がっていくのだった。




仮面ライダーデーゴン その2

様々なドラゴンの力を使用可能。

例えばブレスはタンニーン由来。オーラ状で放ったドラゴンは、ミドガルズオルムイメージ。触れている間力を奪うのはアルビオン。一時的なBoostはドライグ、宝具を召喚し射出して攻撃はファーブニル。そこにティアマトやオーフィスのパワーを上乗せして使用可能。

パワーもさることながら、防御力も非常に高く、並の攻撃ではビクともしない。

更に胸のパーツにはアルビオンの力が使われており、受けた攻撃を吸収、半減さぜ、背部から放出させてダメージを軽減させることも可能。

そして、左手腕に取り付けられた装置のスイッチを押すことで、一時的にブースト状態に移行。一度押せば、最大で10秒間その状態で戦うことが可能で、素の能力倍の力で戦うことが可能。

但し、負担が大きいため、10秒経つと、胸の機構を利用した処理が行われ、自動的にブースト状態は解除される。

一応10秒前に押し直せば、再度10秒間の使用が可能になり、ブースト状態も更にアップさせることが可能なのだが、体への負担が大きくなる。

固有武器はブースト装置位だが、ファーブニル由来の力で宝具を使用可能なため、余り問題にはならない。


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代償

ゴーマとの戦いから数日。

 

「いやぁ、しっかし今回は元ちゃんが大活躍だったねぇ」

 

と、シトリー眷属の花戎は言う。

 

現在、事後報告も兼ねて戦兎達グレモリーチームと、シトリーチームは集まって書類制作中である。

 

「現場についた頃には終わってたとは……痛恨の極みです」

 

そう言って渋い顔をするのは、シトリーチームのクイーン。椿である。

 

あの時、シトリーチームの面々は匙とソーナ捜索のために、方々を駆け回っております、連絡がつかず結局事の顛末を知ったのがすべてが終わったあとだった。

 

「まぁ無事帰ってきたのだから良いじゃない」

 

リアスはそう言ってフォローするが、シトリーチームの面々はションボリしている。するとそこに、

 

「ま、ケリは俺がつけたんだし実質シトリー眷属が頑張ったようなものじゃん」

 

匙が部屋に入ってきてそう言う。

 

先日までグレゴリの堕天使の研究所にいた匙は、思ったより元気そうだ。

 

結果として、匙は死んでるが生きている状態らしい。

 

生きる目標があり、その為に半ば強引に生きている状態とのことで、逆に言えば、その目標が達成されたら元の死体に戻るのでは?とも言われているのだが、前例がない為に暫くは定期診断が義務付けられている。

 

しかし匙は意外とケロッとしていた。匙曰く、やることが沢山あるから死んでる暇はないとのこと。中々逞しいものである。

 

そして、

 

「皆ごめんなさいね」

 

暫くすると、ソーナが入ってきた。

 

「さ、休憩にしましょう」

『……』

 

ソーナが作ってきたケーキを見て、思わず皆の表情が固まった。

 

「ケーキを作ってきたの。今回はかなり自信作よ」

 

一見すれば、出来の良いケーキだが、激マズケーキである。するとソーナは、切り分けると匙に渡し、

 

「今回は助けられました。匙、貴方には感謝してもしきれません」

「いやいや!俺は会長のために必死だっただけで」

 

ソーナは、そっと匙の手に振れる。驚くほど冷たく、生命の脈動を感じることが出来ない。

 

「ごめんなさい。私のせいで」

「違いますよ。会長が悪いところなんて」

 

匙はそういうものの、ソーナは首を横にふる。

 

「だからこれから貴方には長い時間をかけて恩を返していきますね」

「恩返しなんてそんな」

「良いのです。ずっと私のそばにいてください」

 

その言葉に、匙はギュンっと胸が熱くなる。自分はきっとこの為に頑張ってきたのだ。というか今すごく良い雰囲気というやつではないか?ちょっとギャラリーが多いけど、今こそ告白チャンスでは!?

 

「か、会長!俺!」

「これからも、家族のようにいましょうね」

 

ヒューっとその場に木枯らしが吹いた。

 

「家族?」

「はい。匙がまるで弟ができたかのようです。これからも、仲良くしましょうね……って匙?どうしました?急に固まって」

「ソーナ。今の貴方が悪いわ」

 

ウンウン。とリアス陣営だけではなく、シトリー陣営の面々すら頷いていた。

 

すると、

 

「な、なに!?」

 

急にズシン!っと空が暗くなり、地面が揺れる。

 

思わず皆で顔を見合わせて外に出ると、そこには、

 

『はぁ!?』

 

そこにいたのは、五大龍王達。そしてタンニーンが口を開き、

 

「匙元士郎よ。我等と来てもらおう」

「お、俺がなにかしましたか!?」

 

突然の指名に、匙は驚いて飛び上がった。すると龍王達は顔を見合わせ、

 

「約束を果たしてもらいたいのだが」

「約束?」

 

匙だけではなく、皆で顔を見合わせると、

 

「桐生戦兎が言ってたのよ。力を貸してくれるなら、匙元士郎が何でもしてくれるって」

『はい?』

 

ティアマトがいった言葉に、皆は呆然としていると、

 

「因みに、私はドライグが借りパクしたお宝の回収のお手伝いね。最近居場所がわかったのがあるのよ〜。ちょっと厄介な場所にあるけどお願いね」

「僕は良い快眠アイテム見繕ってもらおうかと思ってねぇ」

「俺は久々にうまいもんでも食わせてもらおうかなと」

「僕はまだ見ぬお宝を求めて一緒に冒険に出てほしいかな」

「我はドラゴンアップルの収穫をお願いしたい。収穫土地が広くてな。こっちでいうとそうだな……日本大陸3つ分くらいか」

 

ティアマト、ミドガルズオルム、玉龍、ファーブニル、タンニーンが次々そう言い匙は、

 

「オイコラ戦兎ぉ!」

 

振り返りながら、匙は戦兎に文句を言おうとすると、

 

「戦兎ならタンニーンのおっさん達が来た時点で用事思い出したって言ってどっか行ったぞ」

「あのやろおおおおおお!」

 

匙が思わず悲鳴を上げた瞬間、タンニーンはヒョイと匙を摘み上げ、

 

「それでは行くか」

「ま、待ってくれ!俺はそんな話聞いてない!」

「あらあら、龍王の力を借りるんだから相応の覚悟はしてもらわないとねぇ」

 

そうして、龍王たちに匙は連れて行かれながら、

 

「嫌だぁああああああ!誰か助けてくれってええええええ」

 

こうして、涙と悲鳴を撒き散らしながら、匙は空の彼方に去っていき、

 

「どうしましょうこの空気」

「と、取り敢えず……ここまで!」

 

リアスのボヤキに、龍誠は締めの言葉。

 

因みにだが、それから1ヶ月後、ボロボロになった匙が帰ってきたのだが、定期的に龍王達に拉致されるようになったのは、余談である。

 

「まぁ一件落着ってことで」

「んなわけあるかぁ!」

 

戦兎と匙のそんな声が聞こえたのも、きっと気の所為である。




戦兎「美空が襲われた!?」

突如起きた美空襲撃事件。

ヴァーリ「みーたんを傷つけるやつは……ぜってぇ許さねぇ!」

犯人と相対するヴァーリ。しかし、

「我が名はラヴィ・ルシファー。ルシファーの正統後継者だ」

目の前に現れる新たなルシファー。

「アイドル何ていうものにうつつを抜かす貴様に、俺は負けない」

ルシファーとして、そして愛する推しの為に、ヴァーリは限界を超える!

「心火を燃やして、俺は推し活も戦いも諦めねぇ!」
《マオウズマーチ!グリスサターン!ドカドカドカドカドカァアアアアアン!》



















そして、劇場版編は……

戦兎「お前たちは……」
黒兎「俺は桐生黒兎」
戦音「私は桐生戦音!私達は、今から30年後の世界に生きるあなたの息子だよ。そして!」
《フューチャーラビット!》
《フューチャータンク!》
黒兎&戦音『変身!』

未来からやってきた戦兎の子供たち。

戦兎?「俺は桐生戦兎。まぁ、お前たちの知っている桐生戦兎はもういない。変身!」

戦兎達の目の前に現れたのは、何と戦兎!?

戦兎?「俺は仮面ライダーディザスター。破壊、滅亡って意味だ。以後お見知りおきを」

最後の敵は、己自身!?戦兎は自身を超え、今と未来をビルドできるのか!

黒兎「お教えてやるよ。桐生戦兎はな、最低最悪のクソ親父だ!」


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Vシネマ・仮面ライダーグリスサタン編
血筋


『みーたん!みーたん!』

 

一糸乱れぬ動きで、ペンライトを振るのは、ヴァーリを先頭に置いた集団である。

 

美空の歌に合わせ、声援を送る。

 

(あー!今俺生きてるー!)

 

ヴァーリは今、生を実感していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後の戦いから半年が過ぎ、ヴァーリは平穏の中で生きていた。

 

推し活と時折旅したり、美空が望んだものを手に入れにいったり。

 

今日も応援のための法被を来て手製の団扇まで作ってきていた。準備万端も良い所。充実した推し活には念入りな準備が大切なのだ。

 

そんなことを思いながら歩いていると、

 

「ヴァーリ・ルシファーですね」

「あん?」

 

突然声を掛けられ、ヴァーリは振り返る。ルシファーの名前までされるとはろくな要件ではないな。等と思っていた所に、

 

「っ!」

 

突然殴られ、ヴァーリは後ずさる。

 

「何しやがる!」

「ぬるい」

 

眼の前の男は、歯軋りしながらヴァーリを睨む。

 

「ルシファーの血と名を受け継ぎながら何だこの体たらくは!」

「はぁ?」

 

なんか良く分からないが叫ぶ相手に、ヴァーリは意味がわからんと首を振る。

 

「お前、旧魔王派のやつか?」

「旧魔王派だと?違う!私達こそが真だろう!」

 

なんか前にもそんな事言ってるやつがいたなぁとヴァーリは思いながら、眼の前のやつを見る。

 

自分と同じ、髪色に、目鼻立ちもよく似ている。っていうか、全体的に自分とそっくりだ。

 

「お前何者だ?」

「俺はラヴィ。ラヴィ・ルシファー。真の魔王にして、最強の悪魔だ!」

 

そっか。とヴァーリは頭をかき、

 

「お前俺の親戚かよ。まぁ爺も父親も色んなところで女作ってたからな。どっかに親戚が居ても驚かねぇよ」

「馬鹿が。私はリゼヴィム様のクローンだ」

「は?」

 

突然の告白に、ヴァーリは思わずポカンとしてしまう。

 

「リゼヴィム様は己の肉体が衰えてい言うことを危惧していた。故に若い肉体を作り、己の精神を移植しようとした。だがお前の打ち取られ、計画は中断された」

「で、お前が生まれたってわけか」

「そう。リゼヴィム様にこのお体を献上するのが私の生きがいだったのに。貴様のせいで全てが無駄になった」

 

敬愛ねぇ、とヴァーリは眉を寄せる。

 

「んで?今更何の用だよ」

「うむ。これより真の魔王として、偽りの魔王達に鉄槌を下す。お前も来い」

「アホか。なんで俺まで」

「リゼヴィム様に手をかけたお前だが、私は心が広い。お前の強さがあれば、戦力になるだろう。真の魔王のと血を引く者として、戦わない理由はないと思うが?」

 

成程全く話が通じない。っていうか、コイツ目が逝ってやがる。とヴァーリは頭を掻くと、

 

「どちらにせよ、お前を生かしておくとろくなことにならなさそうだな!」

 

ヴァーリはそう言って、スクラッシュドライバーを装着し、

 

《ロボットゼリー!》

「変身!」

《潰れる!流れる!溢れ出る!ロボットイングリス!ブラァ!》

 

仮面ライダーグリスに変身したヴァーリは、ラヴィに向かって走り出すと、

 

「なに!?」

 

ラヴィもスクラッシュドライバーを装着し、ロボットゼリーを装填。

 

《ロボットゼリー!》

「変身」

《潰れる!流れる!溢れ出る!ロボットイングリス!ブラァ!》

 

何とラヴィもグリスに変身し、ヴァーリと拳を交える。

 

「元々グリスのアイテムは禍の団(カオス・ブリゲード)からお前に渡った物だ。なら別にまだあってもおかしくはないだろう?」

「なるほどな!」

 

ヴァーリはラヴィを蹴り飛ばしながら追撃を掛けるが、

 

「くっ!」

「お前と俺ではスペックが違う。俺は純粋な悪魔にして、ルシファーの力を何倍にも高め、使う事ができる様に作られた。俺はパーフェクトな悪魔だ」

「そうかよ!」

 

ヴァーリはビームモードにしたツインブレイカーを、ラヴィの足元に撃って視界を塞ぎ、その間にビルドドライバーとグリスブリザードナックルを取り出した。

 

「それがグリスブリザードか」

「これで終わらせてやるよ!」

 

ビルドドライバーを装着し、グリスブリザードナックルとボトルを出す。あが、

 

「悪いが。それは出来ない」

 

ラヴィがヴァーリに手を向けると、ヴァーリの体から力が抜ける。

 

「な、何だ!?」

 

驚きながらも、ヴァーリは変身しようとするが、ナックルにフルボトルを装填した瞬間、電流が走る。

 

「がはっ!」

 

地面に転がり、ヴァーリが咳き込むと、ラヴィは落としたナックルとフルボトルを拾い、ヴァーリの腰からビルドドライバーを奪い取る。

 

「俺は全てのルシファーの頂点に立つ悪魔。ルシファーの力を奪い、一つにできる」

「俺の体から、ルシファーの力を!?」

「そう。そして俺の中には、お前の力もある。残念だよヴァーリ。だが安心したまえ。お前の力は、俺が有意義に使ってやろう」

 

ラヴィはビルドドライバーを装着し、グリスブリザードナックルにフルボトルを装填。するとラヴィの力を取り込んだナックルとフルボトルが変質し、どす黒く禍々しいものになる。

 

「成程。想定外だが面白い」

《オンリーワン!グリスルシファー!》

 

ナックルをビルドドライバーの装填し、レバーを回しながら構える。

 

《Are you ready?》

「変身」

《魔王降臨!グリスルシファー!ジャキジャキジャキジャキィイイイイン!》

 

悪魔の羽を模したようなマントと角を携えた、全く違う姿のグリスに、ヴァーリは唖然とする。

 

「素晴らしい。これが俺の新たな力だっ!」

 

高らかに宣言して笑うラヴィに、ヴァーリは奥歯を噛む。すると、

 

「ヴァーリ?」

「ッ!」

 

声に振り返ると、ポカンとした顔の美空が立っている。

 

「みーたん逃げろ!」

 

ヴァーリがそう叫ぶと、美空は驚きながらも逃げる姿勢に迷わず入る。だが、

 

「確かヴァーリがお熱のアイドル?とかいうやつか」

 

ラヴィが手から光線を放とうとし、ヴァーリは再度グリスに変身しながら、美空を庇うように立ち上がった。

 

それと同時に、爆発と閃光。ヴァーリは変身が解除され、地面に倒れる。

 

少し離れたところには美空が倒れており、

 

「成程。相当大切なようだ。ならば」

 

ラヴィは美空を担ぎ上げ、

 

「返してほしければ、我が城に来るが良い。分かるだろう?場所は」

「や、やめろ」

「期限は一週間だ。それまでにこなければ殺す。来てもお前とこの女を殺す。お前が悪いんだ。悪魔の誇りを捨て、リゼヴィム様を殺めた挙げ句、こんな下賤な人間の女を崇拝する。あり得ない。全ての悪魔の頂点であるルシファーの……ひいては悪魔という種のの品位を下げる行為だ。だからせめて、苦しんで死んでいくが良い。それがお前に出来る唯一の贖罪だ」

 

そういう残し、ラヴィはその場を去っていく。

 

「ま、待ちやがれ……」

 

ヴァーリは手を伸ばすが、そのまま意識を手放してしまうのだった。




グリスルシファー

パンチ力95t(右腕)、93t(左腕)
キック力88t
ジャンプ力80m(ひと跳び)
走力3秒(100m)

ラヴィ・ルシファーが、ヴァーリのグリスブリザードナックルとノースブリザードフルボトルに、自身の力を注ぎ込むことで生まれた新たな形態。大幅なスペックの向上がなされている。

冷気を操る能力は失われているが、魔王由来のパワーを持っており、グリスブリザードよりも遥かに強い。

本来は想定されていない形態なのだが、ヴァーリから奪った力と、ラヴィ自身の力を過剰に注ぎ込むことで変質している。


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グリスサタン

「み、みーちゃん!」

 

体を起こし、ヴァーリは周りを見ると、

 

「目が覚めたか」

 

ベットの隣に居たのは、戦兎だ。

 

「何日寝てた」

「4日だな」

 

クソ、とヴァーリは悪態をつきつつ立ち上がると、

 

「待てよ。先日、ルシファーの正統後継者を名乗る奴が、宣戦布告しやがった。何者なんだ?」

「アイツは……」

 

ヴァーリは戦兎に事情を説明すると、

 

「とにかく、俺は急いでアイツの居城に向かう。行かせてくれ」

「今のお前じゃ、返り討ちが関の山だ」

「次は負けねぇ!」

 

そういうヴァーリだが、

 

「今のお前の体、どうなってるのか分からねぇのか?」

「なに?」

 

ヴァーリは、自分の体を見る。すると戦兎は、

 

「さっきあアザゼルが検査結果を持ってきた。今のお前、悪魔の力を殆ど失ってるらしいじゃないか。ただの人間と変わらないらしいぞ」

「っ!」

 

ラヴィの言葉を思い出し、ヴァーリは奥歯を噛む。

 

「だがそれでも、俺は行く!」

「はぁ」

 

すると戦兎は、ビルドドライバーと、フルボトルとクローズドラゴン型の装置を渡す。

 

「止めても無駄だと思ってたからな。作っといたぞ。お前の最強アイテム」

「いつの間に」

 

それを確認しながら、ヴァーリは戦兎を見ると、

 

「それには魔王たちの力が込められてる」

「魔王って……アジュカ達か!?」

 

そういうことだ。と戦兎は頷き、

 

「元々グリスの強化案は考えてたんだけどな。グリスブリザードは、いうなればお前個人の完成形。だがこのグリスサタンは、お前と言うよりは、悪魔の力の集大成だ。お前のルシファーだけじゃない。悪魔の頂点に立つ力だ。当然、使いこなせなければ」

「死ぬ……だろ?」

 

戦兎は、静かに頷く。

 

「魔王様達から力を借りること自体は、実は結構前からできてたんだ。でも、そもそも安全性がどうしても確保できなかった」

 

だけど、と戦兎は続けると、

 

「力を奪われた今のお前なら、寧ろ安全かもしれないと思ってな」

「成程。余計なものが抜けてる俺なら……な」

 

そう言いながら、ヴァーリはベルト達を持ち歩き出す。

 

「手伝うぞ」

「いや、良い」

 

ヴァーリは一度止まり、

 

「これは古い悪魔の因縁だ。なら、俺はその頂点のルシファーとして、この因縁を終わらせる義務がある。これは俺がつけなきゃいけないんだ。だから俺だけに行かせてくれ。すまん戦兎」

 

それを聞いて、戦兎はため息をつく。

 

「一応、俺妹誘拐されてる立場なんだが」

「それもすまん。俺が必ず助ける」

 

すると戦兎はヴァーリの肩を掴むと、

 

「美空を……妹を、頼んだぞ」

「あぁ、心火を燃やして助けて見せる」

 

そしてジャケットを羽織り、ヴァーリは外に飛び出し、魔法陣を展開してその中に飛び込むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラヴィが指定してきた場所は、すぐに分かった。

 

幼少の頃過ごした、因縁のある屋敷。ルシファー邸だ。

 

もう二度とここに来ることはないと思っていた。ここで母を失い、暴走した力で父を殺した。

 

だが、ラヴィはそこをあえて指定してきている。何とも嫌らしい奴だと、苦虫を噛む気持ちで歩いていると、屋敷の前には多数の悪魔がいた。成程、旧悪魔派の奴らはまだ残っていたということか。

 

殆どの旧悪魔派は、初代バアルの手引で手打ちをしている。だがそれでも、まだ反発するやつがいるということだ。

 

「きっちり終わらせてやるよ」

 

ヴァーリはビルドドライバーを装着し、クローズドラゴン状のアイテムに、フルボトルをセット。

 

《カモン!デモンズミックス!》

 

そのま2まアイテムをセットし、レバーを回す。そして腰を落とし、構えると、

 

「変身!」

《マオウズマーチ!グリスサターン!ドカドカドカドカドカァアアアアアン!》

 

ヴァーリの周りを、氷や数式、結界が包み込み、中から弾け飛ぶと、全身が禍々しい暗黒の姿となったグリスが誕生する。

 

「絶滅!虐殺!全員纏めて消えやがれぇえええええ!」

 

新たな姿、グリスサタンとなったヴァーリは、悪魔たちに飛びかかるのだった。



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新時代

「オラァ!」

 

屋敷の壁をぶち破る氷の龍で悪魔達を蹴散らし、数式から組み上げられた術式が襲い掛かる悪魔達を蹴散らす。

 

攻撃は全て結界で弾かれ、パンチや蹴りで倒していく。

 

黒い装甲は返り血で真っ赤になり、逃げようとするものもいたが、ヴァーリは先回りして殺した。

 

「一切の禍根を、ここで消し去る。お前らに逃げ道はねぇよ」

 

ヴァーリはそう言って左手を掲げると、

 

《サタンブレイカー!》

 

ツインブレイカーの発展型の専用武器、サタンブレイカーを出現させ、

 

《クラッシャーモード!》

 

近接用のモードで相手を殴る。攻撃部分がドリルになっており、高速回転しながら殴られた相手はミンチに、

 

《キャノンモード!》

 

スイッチを押すと変形し、砲身となったサタンブレイカーから発射された一撃に、悪魔達は消し飛ぶ。

 

「まだ行くぜ!」

 

ヴァーリはロボットフルボトルと消しゴムフルボトル、ローズフルボトルを取り出し、サタンブレイカーに装填。

 

《シングル!ツイン!トリプル!トリプルフィニッシュ!》

 

三つのフルボトルの力を集約し、増幅させたキャノン砲は、悪魔達を蹴散らし飛んでいく。すると、

 

「ずいぶん暴れているな」

「よう。約束通り、来てやったぜ」

 

上から見下ろしてきたのは、ラヴィだ。ラヴィは既にビルドドライバーを装着しており、

 

《オンリーワン!グリスルシファー!Are you ready?》

「変身」

《魔王降臨!グリスルシファー!ジャキジャキジャキジャキィイイイイン!》

 

変身したラヴィはヴァーリに襲い掛かる。

 

ナックルとサタンブレイカーのクラッシャーモードをぶつけ合うと、凄まじい火花と轟音。だが二人は気にせずぶつけ合わせる。

 

合間に蹴りを叩き込み、怯んだラヴィにサタンブレイカーを叩き込む。だがラヴィは喰らいながらも、ナックルからフルボトルを外して装填し直し、

 

《ルシファーナックル!ジャキジャキジャキジャキィイイイイン!》

 

モロにナックルの一撃を喰らったヴァーリは吹き飛んで壁を壊すが、

 

《シングル!ツイン!トリプル!トリプルブレイク!》

 

サタンブレイカーのクラッシャーモードで飛び出すと、渾身の力で攻撃を叩き込んだ。

 

「がはっ!」

 

壁を突き破り、吹っ飛ぶラヴィを追い掛けると、

 

「みーたん!?」

「え?ヴァーリ?」

 

部屋に捕らえられていた美空を発見し、ヴァーリは駆け寄ると鎖を外す。だが、

 

「ヴァーリ危ない!」

「っ!」

 

背後から飛んでくる光弾を、ヴァーリは背中で受け止めた。

 

「ヴァーリ!」

「大丈夫だみーたん。ダメージはねぇよ」

 

美空を抱きかかえ、その場を離れるヴァーリ。部屋を飛び出し、広間の影に隠すと、

 

「荷物を庇いながらとは大変だな。ヴァーリ」

「逆だよ。庇うもんが……守るものがあるから、俺達仮面ライダーは強くなれるんだ」

 

ヴァーリは駆け出すと、再びラヴィと戦う。

 

攻撃が入り乱れ、火花と轟音が響く中、ヴァーリの拳がラヴィにめり込んだ時、体に力が迸る。

 

「な、なんだ!?」

「ばかな!?」

 

ヴァーリは自分の中に力が戻ってくるのを感じる。

 

「悪魔の力が、戻ってきている?」

 

完全ではないが、僅かに力を感じる。

 

「このまま行けば!」

「ちぃ!」

 

ヴァーリが再び殴ると、更に力が戻ってくる。だがラヴィも負けじと殴り返して力を奪う。

 

「なぜだ!なぜそこまでして人間をかばう!悪魔という種をなぜ蔑ろにする!」

「人間だからじゃねぇ。この世界を生き、明日を願う人だからだ!そして、俺が行きててほしいと願う人だからだ!」

 

家から逃げ出し、アザゼルに拾われたあとも、ヴァーリは生きる目標を失い、自暴自棄に生きていた。

 

力をつけ、リゼヴィムに復讐する事だけを生きがいにしてきた。だがそんなある日、偶然テレビで見た美空の姿。

 

初めて見た時、まだ彼女は番組の端っこに映るかどうかだった。しかし、ワンフレーズだけ流れた彼女の曲に、ヴァーリは心を奪われたのだ。

 

その日から、自分は美空のファンになった。彼女の歌、踊り、トーク。全てが自分の失ったものを埋めてくれた。

 

「彼女は、俺の全てだぁあああああああ!」

 

ヴァーリの渾身の拳が、ラヴィの顔面を捉え、仮面を破壊し素の顔を殴り飛ばす。

 

「がはぁ!」

 

地面を転がるラヴィをヴァーリは追いながら、全身に力が漲るのを感じる。

 

バチバチと全身が放電し体を蝕む。体がバラバラになるような感覚。口の中が血の味で一杯になる。

 

「はぁ、はぁ」

 

だがヴァーリはレバーを回す。

 

《Ready Go!サタンブレイク!》

 

ヴァーリは飛び上がり、キックの大勢に入ると、ラヴィを睨み付け、

 

「終わりだ。全てな」

「なぜだ!お前も悪魔であるならば、なぜ悪魔のことを考えない!」

「考えてるさ。旧悪魔(俺達)は負けたんだよ。悪魔は実力が全て、だろ?負けて、新たな時代が始まったんだ。それを止めることは出来ない。例え、お前がどれだけ否定したとしても、それは変わらない。その世界を、俺は生きて行くんだ!」

 

ヴァーリの必殺の蹴りがラヴィに炸裂すると同時に爆発。

 

こうして、ヴァーリは己の手で、古い時代に決着をつけるのだった




仮面ライダーグリスサタン

パンチ力105t
キック力125t
ジャンプ力140m
走力0.05秒

グリスのさらなる強化形態。スペックの増加に加え、魔王達の力を内包した、魔王てんこ盛りフォーム。

固有の能力として、魔王達の力を使える。

殴る蹴る以外にも、専用武器のサタンブレイカーを用いた遠近両用で戦うことが可能。

【サタンブレイカー】

グリスサタン専用武器。ツインブレイカーの発展形で、パイルバンカー部分がドリル状になっていたり、ドリルがひっくり返ることで大砲として遠近どちらでも対応可能。更に、最大でフルボトルを3つまで組み合わせる事が可能。


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ハッピーエンド

「嫌だぁあああああ!行くんだぁあああ!」

 

全身包帯グルグル巻きのヴァーリは、病院のベットで暴れていた。

 

全身ボロボロの大怪我を負ったヴァーリは、先日の戦いから一ヶ月経っても、ベットの上から動けずにいる。

 

「今日はみーたんのライブなんだぁああああ!追っかけるんだぁああああ!」

「何言ってるんですか。まだ当分絶対安静ですよ」

 

看護士に怒られ、ベットに縛り付けられるヴァーリ。

 

アーシアの治癒能力を持ってして、ヴァーリの体は治せず、3ヶ月は入院と相成った。

 

戦兎曰く、やっぱり安全性が皆無だったなぁとのこと。

 

一応戦兎の名誉のために言っておくと、ヴァーリなら大丈夫だと信用していたというのと、ルシファーの力を奪い返すのは予想外だったのも大きい。

 

「あのマッドサイエンティストがぁあああああ!」

 

ベットの上で、ジタバタするヴァーリだったがそこに、

 

「あ、いた」

「み、みーたん!?」

 

顔を覗かせてきた美空の姿に、思わず体を起こそうとするが、全身に走った激痛に、思わず顔を顰めると、

 

「はい」

 

そう言ってお見舞い用のお菓子の袋を置く美空。

 

まさかの推しからのお見舞いという状況に、さっきまでの不満はどこへやら行ったのか、ヴァーリはウキウキしている。

 

すると、

 

「ありがとう」

「え?」

 

そういえば、あの時は戦ってたし、その後の脱出もバタバタしてた上に、帰った直後はそのままぶっ倒れていたので、ちゃんと話してなかったかもしれない。

 

「良いんだよ。みーたんのためなら例え火の中水の中さっ!」

 

ビシっと効果音でも付きそうな勢いのヴァーリに、美空は笑う。

 

「うん。でも凄く嬉しかった。かっこよかったよ」

「そ、そうかなぁ」

 

デヘヘと鼻の下を伸ばし、非常に情けない顔をするヴァーリ。包帯で隠されてなかったら危なかったかもしれない。

 

「それじゃ、これからライブだから行くね」

「ちくしょー!やっぱり抜け出してでも……」

 

と拘束を外そうとするヴァーリだったが、

 

「ちゃんと治ってから来てね」

 

チュっと頬にキスをされ、ヴァーリは固まる。美空は耳まで赤くして扉まで行くと、

 

「じゃ、またね!」

 

部屋を飛び出していってしまった。それと入れ違うように、

 

「何だ美空のやつ。慌ただしくでていったけど」

 

と戦兎がやってくるのだが、

 

「な、なんじゃこりゃあああああああ!」

 

血で真っ赤に染まった布団の上に、幸せそうな顔で鼻血を流すヴァーリの姿。

 

「我が人生に……一変の悔い無し」

「し、死ぬなヴァーリィイイイイイイ!」

 

こうして、ヴァーリの入院期間が延長することになったのは、余談である。




サイラオーグ「歴代最強のバアル……だと?」

平穏な時を生きるサイラオーグの元に舞い込んだ、事件の一報。

フウ「余りの狂暴さから、封印されたバアルがいたらしいのです」

今、最悪の悪魔が再び暴れ出す。

『変身!』
《クロコダイルインローグ!》
《バットエンジン!》
《クロコダイコン!》

最悪の悪魔の前に立ちふさがるのは、3人の仮面ライダー。

???「弱い。コレが今の悪魔か」

サイラオーグ達は、勝てるのか?

サイラオーグ「俺は誰が相手でも、大義のために、勝って見せる」
《灰燼不壊のムテキヤロー!エンペラーローグ!》

男は今、全てを手に立ち上がる。




























そして劇場版では!

「桐生戦兎はもういない。桐生戦兎は死んだんだ!だから俺達がお前を倒すんだ!」

戦兎を失った未来。最悪の敵、仮面ライダーディザスターを前に、なすすべもない仲間達。

「絶望しか無いなら、希望をビルドすれば良い。それが……仮面ライダービルドの力なんだ!」

それでも、0.1%の奇跡を信じ、戦兎は戦う。

「変身」
《未来を駆けるフォーエヴァーヒーロー!フューチャービルド!》
「さぁ、新たな実験を始めようか」


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