ドールズフロントライン ー疾走する本能ー (パNティー)
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Eー0戦役

初めましてのかたは初めまして。おひさの人はおひさ。

パNティーです!

私がこよなく愛する仮面ライダー555とドールズフロントラインのコラボ作品。グダグダになるかもしれないけど一生懸命頑張っていきます!

では、どうぞ!


「……死を届けに参りましたよ」

 

強く締めつける腕の力で喉が締め付けられ、強制的に意識を起こされる。

 

「ほら、目を開けなさい……」

 

言われた通りに目を開けるとそこには、黒を基調とした体躯に三叉に別れてる白いラインが全身を覆っており。そして、オレンジ色の冷徹な複眼がじっとこちらを見ていた。

 

腰回りには体躯と同じ色をしたベルトと、中央にΔ(デルタ)のマークが付いたメモリー。

 

「……わたくしをご覧なさい、戦術人形M4A1。さあ、幕引きの時間ですわ。あなたには最後まで見届けてもらいますわよ」

 

「ゲホ……代理……人」

 

マスク越しに聞こえてくる代理人(エージェント)の声。しかし、その見た目は映像で見た鉄血のハイエンドモデルのメイド姿ではない。

 

「面白いですわ。死ぬ間際の目つきまでさえ、あの娘たちとは違うのね」

 

どうにかして拘束されている腕から逃れようと腕に力を込めるが予想を遥かに上回る力が逆に自身の首を絞める結果となってしまう。それでも睨みつけれたのは意地だった。

 

しかし、代理人はマスクの下でそれを嘲笑う。

 

「そう、その目つきよ。もっと驚き、悔しがり、恨みなさい!」

 

「ぐっ……ゲホッ……」

 

「ご主人様の大事なものを盗んでおいて、逃げおおせられるとでも思っていたのかしら?」

 

M4は自分の生みの親、ペルシカに頼まれてこのSO9区にAR小隊の仲間とともに潜入した。目的は「リコ」という人物が残したデータととある()()()()()()()()の回収だった。しかし、データを回収している途中で鉄血が奇襲してきた。M4は自身が使える指揮官能力を使ってこのSO9区に放置されたグリフィンの戦術人形を迎撃に向かわせた。

 

「まずはあなた、次にAR小隊。そしてあなたのために命がけで戦っているグリフィンの人形たち。すぐにあの娘たちも親をなくした赤子のように、途方に暮れることになりますわ。戦場で必死にあがいて、最後はわたくしたちの餌食となるのよ……」

 

そう代理人は言い終わると、M4を締めつける力をさらに強くした。

 

「まず手始めに、あなたにはここで死んでいただきますわ」

 

代理人はベルトの横に取り付けられている携帯電話とデジタルカメラが一体となった銃の見た目をした武器を取り外すと、自分の口元に持ち上げた。

 

「Fire」

 

代理人がそう銃に向かって言うと、

 

----Burst Mode

 

電子音声と共に銃は起動した。銃口をM4に向け、トリガーに力を込めた瞬間。

 

「……悪いが、そいつをここで死なせるわけにはいかん」

 

「……!」

 

M4に意識が集中していた代理人は突如現れたM16A1に気づかずに反応に遅れる。その隙を逃さずM16は代理人に向かってトリガーを引いた。

 

「ごちゃごちゃ言ってないで、今すぐ地獄に堕ちろ……!鉄血のクズが!」

 

5.56ミリ口径の銃口が激しく火を噴く。無数の弾丸が代理人へと殺到する。確実に殺した。いかにハイエンドモデルでも至近距離で食らえば死ぬ。

----そのはずだった。

 

「ーーー残念ですが。その程度の弾ではこの鎧は貫通しません」

 

代理人に殺到した5.56×45mm NATO弾はその黒の鎧に弾かれ傷さえつけることは出来なかった。

 

「なん……だと……!?」

 

驚愕にM16は目を剥く。そして、生まれた隙を今度は代理人が利用した。持っていたM4をM16へと投げる。

 

「キャアッ!」

 

「M4……ぐっ!?」

 

M4を受け止めたM16は予想以上の力に耐えきれず瓦礫へと倒れる。そして、代理人は再び銃口を向ける。

 

「ここまでか……」

 

M16が悔しそうに唇を噛み締め。M4が来る痛みに目を瞑った。トリガーに力を込めた次の瞬間---

 

「ッ……!?」

 

上から降ってくる瓦礫に代理人は飲み込まれた。

 

「た、助かったのか……?」

 

M16は動かない瓦礫に目を向ける。偶然にも降ってきた瓦礫に代理人は埋もれたらしい。自然と安堵の声が漏れる。あんな化け物が偶然にも落ちてきた瓦礫の下敷きになってくれて助かったのだから。

 

M16が安堵に胸を下ろしていると、M4が声をかける。

 

「M16姉さん、今は逃げることに集中しましょう。外はどうなっているのですか? AR15たちはーーー」

 

「戻ったわ、鉄血の増援が来ている。急いで撤退しないと」

 

M4が脱出するための脱出経路を探していると、ちょうど外からST AR-15がM4 SOPMODⅡを連れて帰ってきた。

 

「支援部隊が食い止めてくれているから、急ごう!」

 

SOPMODが慌てた様子でM4を急かす。よく見るとAR-15とSOPMODの身体には無数の傷があった。

 

「M4、指揮はとれるか?怪我は軽くないようだが」

 

首を絞められていたため、どうやら喉にダメージを負っているらしい。その他にも身体の至る所に怪我がある。

 

「大丈夫です、ゲホッ……M16姉さん、修復を手伝ってください。私は先に指揮システムをチェックしてきます」

 

M4はそう言うと、修復をM16に任せて自身に備え付けられている戦術マップを開く。

 

「よかった、戦術マップが無事で。通信システムは……」

 

今度は通信システムを確認すると、スピーカーの向こう側から声が聞こえてきた。

 

『通信システム正常!はっきり聞こえてるよ!』

 

この元気な声はスコーピオンだろうか。M4はこの後の彼女達の役割に罪悪感が漏れ謝罪の言葉が出る。

 

『……すみません。あとはお願いします』

 

そうM4が謝ると、今度は違う人形が回線を通して言う。

 

『ご遠慮なく。それがわたしたちの務めですから』

 

静かに微笑みを添えながら言うのはPPSh-41。そう、彼女達はこれから脱出するAR小隊の時間稼ぎのために犠牲となるのだ。たとえグリフィン本部から放置されてたとしても、気の優しいM4には罪悪感があった。

 

『……了解、なるべく早く撤退します』

 

M4は通信を切ると目を伏せ後悔の表情を作る。しかし、後悔に時間を割いている暇はない。

 

「支援小隊も長くは持たないわ。例のデータとアタッシュケースは回収したから早く先へ進まないと!」

 

AR15が叱咤の声をM4に言う。

 

「……ええ、そうね。 AR小隊、SO9区から離脱します!」

 

一度、M4は強く頷くとすぐに指揮を出す。そして、数多の戦術人形とM16、 AR15、SOPMODⅡを犠牲にしてM4はSO9区から脱出をした。

 

ーーーーーー

 

M4達がセーフハウスから離脱して数十分。炎が未だ立ち昇る瓦礫の中から瓦礫を押し退けるように代理人は出てきた。

 

「……どうやら。思惑通りにことは進んだようですね」

 

先程まで瓦礫に埋もれていた奴が言うセリフではないが、その身体には傷が一つも付いていない。

 

それもその筈である。この『デルタ』にはダイヤモンドに近い硬度を持つソルメタルを使用した特殊なスーツなのだから。

 

「誰も私の上に瓦礫が落ちてきたことが()()()()()ことなんて思わないでしょうね」

 

そう言って代理人はデルタフォンをデルタドライバーから外しベルトに変身解除コードを送信する。すると、黒の鎧は青紫色に変わると粒子となって消えた。

 

代理人はメイド服の埃を払うとセーフハウスの外に出る。一面に広がるのは真っ白な雪。デルタならM4に追いつき殺すことも容易であろう。しかし、それはできないーーー。

 

そうこれは我が主人が望んだこと。いかなる事があろうと使命を果たすのが自分の役割。そこに如何なる演算も介入しない。

 

デルタフォンを取り出し、回線を繋げる。

 

「ご主人様、目標が例のアタッシュケースを持ってグリフィンへと向かいましたーーーはい、承知しました。この後、スケアクロウに任務を後続させたのち帰還します」

 

デルタフォンをデルタドライバーに戻し回線を切る。代理人は地平線の向こうを一度見たあと、デルタドライバーをアタッシュケースに入れSO9区を去った。

 

 

これは世界を巻き込んで起きた三本のベルトと、少年少女の物語。

 

 




どうでしたかね?基本的に原作通りに進めていきます。

まだ未熟なところもあるかもしれませんが、暖かい目で次も読んでいただけると嬉しいです!

感想・評価・批判よろしくお願いします!


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Eー1戦役

頑張って第二話を書きました。今回は主人公の一人目の登場です。

では、どうぞ!


私がまだ、造られて(うまれて)間もないころ。16Labで訓練を受けていた時の話。

 

当時の私はまだ未熟で先に生まれた姉達に比べたら訓練で良い成果を得られなかった。その日も一人で模擬訓練場に残って練習していた。だけど、来る日も来る日も練習しても一向に上達することはなかった。

 

疲れ果てた私は模擬訓練場の隅で眠っていた。その時だった、彼に会ったのはーーー。

 

一定の感覚で聞こえる乾いた音。最初は寝惚けて分からなかったが、だんだんとそれが銃の発砲音だと気づいた時には飛び起きていた。

 

「ッ……!?」

 

まさか16Labが攻撃を受けているのではないか?そう思った私は自分の名前の銃を持って構えた。しかし、目の前に広がるのは真っ白な模擬訓練場の壁だった。しかも、銃声も一つで争っている雰囲気では無く。ただ一人、的に向かって拳銃を撃ち続けている青年がいた。自分の足元を見ると、男性用の16Labの制服が落ちていた。きっと彼が私に冷えないようにと掛けてくれたのだろう。

 

一通り終えたらしい青年は、模擬訓練場の隅に置いてあった汗拭きタオルを取りに行く。

 

「あ、あの……」

 

声をかけると青年は私が起きた事にいま気づいたらしく振り返った。私が見た青年の顔は銃を持つにはまだ若過ぎると思った。しかし、童顔の顔に似合わずその瞳は深い黒色。癖っ毛がある黒い髪が目元に影を作り更に童顔の顔に老いを感じさせる。失礼かもしれないが、幸せが逃げてるような顔だった。

 

「これ、ありがとうございます……」

 

「………」

 

私が御礼を言うと、青年はつかつかと私の方に歩いてきて手に持っていた制服を素早く奪って行った。

 

「え、あ、あの……」

 

青年の行動に唖然とする私を置き去りに青年はまた模擬訓練を再開する。だが、先程と違った訓練の内容に私は更に驚いた。

 

(あれは、戦術人形用の!?)

 

青年は拳銃ーグロック18ーを片手に今度は的ではなくちゃんとした戦術人形が訓練相手にやる自律人形だ。もちろん戦術人形並みに戦闘能力や演算機能が備わっている訳でわないが、人間が生身で敵う相手ではない。

 

無茶苦茶な訓練方法に私は止めようと動いたが、その前に彼は始めてしまった。ボコボコにされる未来を私は予感し、彼に合戦しようと武器のセーフティーを解除した。

 

がーーー

 

次の瞬間、私は予想以上の事が起きて演算が追いつかなかった。

 

「シッ……!」

 

彼は鋭い掛け声と踏み込みと共に武器を持ってない方の腕で人形の顔を殴る。人形は人間の構造と似通っている部分が多いので頭にダメージが入れば当然に機能が停止する。しかし、人間の柔らかい拳だと人形の硬い金属骨格には鈍く響くだけで致命打とは言えない。現に人形はカウンターの攻撃を彼の顔目掛けて見舞う。

 

「危なーーー」

 

い、と私が言い終わる前には彼は次の行動に移っていた。身を捻り攻撃をすれすれで避けるとお返しとばかりに顔に向かって弾丸を浴びせる。撃たれた反動で人形が仰け反ると足を払い人形を倒す。そして倒れた人形の顔に向かって拳銃を突きつけた。

 

「………」

 

彼は最初から表情を一切変えず、無感動のままトドメの引き金を引いた。まるで一つの仕事を終わらせたかのように。

 

私が有り得ない現実に目を丸くして驚いていると、彼はその場に座り込み蹲ってしまった。彼の震えている身体に私は不思議に思って近づくとーーー

 

「痛ぇ……」

 

殴った拳を彼は苦悶の表情で摩る。人間の彼が人形の硬い骨格を殴れば無事では済まなかったらしい。良く見ると手の至るところに絆創膏が貼ってあった。

 

「す、直ぐに手当てします!」

 

私は彼の手を取り応急処置をしようとするが、彼は私の手を振り払う。

 

「必要ない……」

 

少し潤んだ瞳で彼は私を振り払い自分の私物を纏めて模擬訓練場から出ようとする。私は彼を引き止めるために彼の手を掴む。

 

「あ、あの……ちゃんと手を治さないと……傷口からばい菌が入ります……」

 

滲み出る赤色の手を掴み私はおどおどしく言う。初めてペルシカさん以外の『人』と話すので、緊張して言葉が詰まってしまう。俯いていた私を見て彼は鬱陶しく思ったのか再度手を振り払う。

 

「お前は俺に関係ない、だから俺に構うな」

 

彼は不貞腐れた様な顔つきで私から去ろうとする。しかし、最後に見た今にも泣きそうな私の顔に彼は胸がチクリとしたのだろう。去ろうとした足が急に重く感じ、扉の前で止まる。はあとため息を吐くと私の前まで彼は戻ってきた。

 

「ん……」

 

「………?」

 

彼が差し出した腕の意味が分からず私は首を傾げる。それに苛立ち彼はチッと舌打ちをするのを心の中で堪えた。

 

「お前のやりたい様にしろ」

 

突き放す様に彼は私に言ったが、私は目を輝かせて彼の手を取る。もし私に尻尾が付いていたらきっと喜びでブンブンと振っていただろう。

 

「頑張らせて貰います!」

 

「そう言うのはいいから早くしろ」

 

「はい!」

 

「だから……はあ、もうどうだっていいや」

 

彼は諦めてなされるがままになる。私と彼は部屋の隅に移動すると私のポーチから包帯と傷薬を取り出し彼の手を応急処置をする。その間に私は彼の事が気になったので話を振る事にした。

 

「あの、質問をしてもよろしいですか?」

 

「質問の内容によるな」

 

素っ気ない返答でも了承は貰えた。それに私は少し驚きながらも彼が苛立つ前に質問を開始した。

 

「どうして、貴方は16Lab(ここ)にいるんですか?」

 

「……さあな、気づいたらここにいた」

 

「なんで人形相手に訓練をしていたのですか?16Labの人なら別にしなくてもいいんじゃないですか?」

 

「……日課みたいなもんだ。ペルシカに言われてそうしてる」

 

まったくもって可笑しな訓練だがペルシカから言われたのであれば仕方がないだろう。もしかしたら彼は、16Labにはいるが実は研究者ではないのではないだろうか?

 

「あの、私M4A1と言います。よければですが……お願いがあります」

 

「厄介なお願いごとはやらないが、まあ聞いてやる」

 

「私を……強くして下さい!」

 

私がそう言った瞬間、彼はすぐ顰め面になった。そして嘲笑うかのように彼は鼻で笑った。

 

「残念だが、それは無理だな」

 

「ど、どうしてですか!?」

 

「理由なんて簡単だ。戦術人形は人間より強い」

 

先程は人間が人形に勝てたが、それは人形側が戦術人形ではなかったからだ。演算能力、出力どれをとっても差がある。

 

「お前より弱い俺が一体全体なにを教えられる?俺よりも適任の(人形)はここには沢山いるぞ」

 

「そ、そうなんですけど……」

 

たしかに彼の言葉は的を得ている。人間が人形に勝てる訳がないし、教えを請うなら姉達がいる。だが、何故か彼が私を強くさせてくれると信じてやまない自分が心の中に居る。だが、彼は不貞腐れた表情で断った。これ以上はいくら願ってもきっと彼は首を縦には振るわないだろう---。

 

そう思った私は俯いていると、

 

「……まあ、見てるだけなら自由だ」

 

「え……?」

 

彼が唐突に発した言葉に、私は俯いていた顔を上げる。彼は「よっこいっしょ……」と立ち上がるとそのまま部屋の出口へと向かう。彼の言葉の意味を理解出来ないでいる私は彼を追おうと立ち上がると、彼は出口の手前で止まり顔をこちらへ向けた。

 

「早朝と、夕方にはここで訓練してる。教えれることはまあ無い気がするが、見たければ好きにしろ」

 

「え、それってーーー」

 

私が言い終わる前に、彼は模擬訓練場を出て行ってしまった。そして、無機質な部屋に私だけ取り残されてしまう。

 

「……」

 

取り残された私は篭った熱を排熱させるのに精一杯だった。初めての『人』と話すのが緊張してしまったせいなのか、それとも、

 

(この胸の……締め付けは一体なんでしょう?)

 

終わりが見えない胸の鼓動となお昇り続ける熱。それが一体なんなのかを私は知らない。彼が最後に見せた表情。笑った時に暗かった目元に照明灯の光りが入り彼の青年らしい笑顔に産まれたこの熱。姉達に聞いたら答えてくれるだろうかーーー。

 

「あ、……名前を聞くのを忘れてました」

 

私は唐突に思い出し、一気に熱は冷めて行くこの感覚にまた私は不思議に思ってしまうのだった。

 

 

ーーーーーー

 

 

グリフィンSO9区ーー

 

舗装されていない道を護送車が走る。揺れる車内で俺は目を瞑り車が拠点に着くのを待つ。既に拠点にはG&Kの戦術人形が複数部隊そこに待機している。

 

2030年の北蘭島事件により、崩壊液(コーラップス)が漏出し人間が住める地域は激減した。しかも崩壊液の被曝し変異した生命体、『E•L•I•D』により人々は眠れない夜を強いられた。

 

その後、各国はこの事件をきっかけにいがみ合いそして、爆発させた。2045年、歴史の中で稀に見る凄惨さを残した第三次世界大戦。それにより人口は半分以下まで減少し、少なかった居住区は更に減った。

 

停戦後、人々はいがみ続けたが国家は治安を維持する程の力は残っていなかった。そこで国家の代わりに国の治安を守るのがPMC--民間軍事会社--と呼ばれる者たちだった。更に、民間軍事会社の中でも大手の企業G&Kーー通称『グリフィン』、正式名称は『GRIFON & KRYUGER』ーーにより、都市運営は行われていた。

 

今回は新任の俺が人手不足からの急遽な任務により現場へと急行されている。こんなご時世ではあるから仕方ないが、着任の時に挨拶を交わしたあの元気(うるさい)な後方幕僚はひどく心配していたな。

 

そんなことを思いながらあと少しで目的地に到着する時、

 

---Prrrrrrrr♫

 

懐にある携帯端末が鳴り出す。俺は懐から携帯---ガラパゴス携帯型と言うらしい---を取り出すと真ん中から上半分になっている液晶の部分を持ち上げる。今の時代にこんな骨董品を使っているのは世の中で俺ぐらいだろうかと、内心で苦笑いしながら電話を掛けてきた名前を見る。そこには先程まで噂をしていた後方幕僚だった。

 

「俺だ」

 

『あ、指揮官様!』

 

通話開始ボタンを押してスピーカーに耳を当てたると案の定に元気(うるさい)声が響いてくる。俺はそれにうんざりしながらも会話を続ける。

 

「……どうした?」

 

『あの、非常に申し訳ないと思っているのですが……。本当に今回の作戦を受けてよろしかったのでしょうか?』

 

「なんだ、そんな事を言うためにわざわざ俺に電話をしたのか?言っただろう、俺は既に16Labで作戦指揮のノウハウは学んでいる。今回の作戦に支障は出ない」

 

『ですが、着任したその日にブリーフィングを開かずにやるのは---』

 

苛立ち舌打ちしそうになるのを心の中で抑え込む。別段、今回の任務は難しくない。この後方幕僚はただ俺の能力を知らないだけだ。だから、この初任務はうってつけであった---

 

「今回の任務はスケアクロウの捕獲および捕虜になっている人形の確保。これぐらいの任務なら別に即席の部隊でもできる」

 

会話をしていたから気づかなかったが、どうやら護送車が目的地まで着いたようだ。俺は自分の武器が入っている銀のアタッシュケースを持つと護送車の扉を開ける。扉の隙間から入り込む光は、暗い車内を明るく照らす。

 

「いいか、カリン。この任務で俺の能力を見せてやる」

 

少しだけ口角を持ち上げると、俺はゆっくり護送車から降りる。乾いた空気に混じって感じる硝煙の臭いを鼻で感じながら、目の前に整列している人形達を一瞥する。俺は通話終了ボタンを押すと人形達に言い聞かせるように言う。

 

「俺が君達の臨時指揮官の、エド・ソーンだ」

 

 




今回は主人公の名前程度の紹介でしたが、次回からはより深く紹介していきます。

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Eー2戦役

今年最後の投稿です。では、どうぞ……


彼の訓練を見続け、はや二週間が経つ。彼の訓練の内容は日によって違う。筋力トレーニングだったり、射撃訓練だったり、訓練用の人形相手に訓練したり、はたまた単なる座学だったりした。

 

私が見ていて分かったことは、彼はとても勤勉で近道はせず、努力をし続けていることが彼の強さの一つだとわかった。

 

彼は最初は何も言わず、ただ私に訓練を見せるだけであったが、次第に彼は私に指導してくれるようになった。最初は戦術の話だったが、銃の色々なカスタムや対人用の格闘術も教えてくれた。

 

今日は模擬訓練場で訓練をする。いつもは殺風景な部屋が今回は森林を模した部屋になっている。訓練用の人形一機を指揮官と戦術人形の立場で戦う実戦的な内容だ。

 

草むらの奥から進軍してくる人形を彼が確認すると、私の通信機越しに彼の声が届く。

 

『目標を視認、これより作戦行動に移る。俺が弾幕を張り続ける。お前は隙を狙って目標を攻撃しろ』

 

「りょ、了解です!」

 

彼の言葉で私は自身の銃のセーフティーを解除した。しかし、どんどん呼吸が荒くなって、緊張で銃を持つ手が震える。

 

(どうして……!?)

 

うまく的に当てられるか不安だから?だが、彼が弾幕の中にレーザーサイトを紛れ込ませているため狙うのは難しくない。だが、この手の震えに理由が付かないのだ。目頭が熱くなってきて視界が霞みかかって来た時---

 

『---M4』

 

通信機越しに聞こえてくる彼の声。それが私の意識を彼の方へと引き揚げた。

 

『今までの訓練通りにやればいい。大丈夫だ、お前なら出来る』

 

「……!?」

 

私は驚愕をした。なにせあのぶっきら棒で常に不貞腐れているあの彼が私に「大丈夫だ、お前なら出来る」と言ったのだ。そんな言葉今までの訓練の中で言ってもらったことは無かった。

 

「ふふ、あははは……」

 

堪え切れなくなった私は笑った。先程までの緊張は何処へやらスッキリとした感覚が全身に往き通っている。これならば、やれる。

 

『なに笑ってるんだ気持ち悪い』

 

「ふふ、すみません。ですが……ありがとうございます」

 

『何がだ?』

 

私がお礼を言っても彼は疑問の声を言った。きっと私がお礼の意味を言ったとしてもきっと理解はしてくれないだろう。

 

「いえ、なんでもありません」

 

私がそう言うと、彼は『そうか』とだけ言ってそれ以上喋らなくてなった。彼は重度の鈍感だ。唐変木で私の言葉にも気に留めてないだろう。でも、今はそれでもいい。

 

『来たぞ、カウトダウンを開始する』

 

彼が普段より低いトーンで告げる。私は深く息を吸って先程までより強く返事をした。

 

「了解です!」

 

今なら行ける!私は強い気持ちで銃を握った。

 

『3……』

 

彼は銃---FMG9---のセーフティーを解除する。

 

『……2』

 

突撃の姿勢に入った。

 

『1、GO!』

 

掛け声と共に彼は目標の前に躍り出てトリガーを思いっきり引く。銃口が激しく火を噴いて45ACP弾を発射した。人形は足止めを食らってその場で縫い止められている。

 

「今だM4!」

 

彼の合図で私も草むらから飛び出た。そして的にある赤い点を見つけるとそれに標準を合わせて、トリガーを引いた。

 

 

ーーーーーー

 

 

俺は作戦開始時間を腕時計で確認しながら全体に聞こえる様な大きな声で告げる。

 

「今回の作戦は案山子(スケアクロウ)の捕縛及び捕虜にされているグリフィンの人形の回収だ」

 

今回の部隊はRFとHGの構成部隊と、ARとSMGの構成部隊の二部隊となっている。今回は新任の俺にグリフィン本部が急遽貸し出しと言う事で預かっている。

 

「まず第一狙撃部隊と第二部隊の2名はここから500m離れた高台に移動。俺がスケアクロウにレーザーポインターでマークする、WA2000とSV-98はそれを視認したら俺に報告を送ってくれ。俺の合図で狙撃のタイミングを合わせろ。第二突撃部隊の一部は俺と一緒に敵の周辺まで近づく。狙撃部隊がスケアクロウの体勢を崩したら制圧行動に移る。以上だ、何か質問は?」

 

俺が作戦の内容を説明し終わり、質問がないかと問いかけると真っ先に手を挙げた人形がいた。第一狙撃部隊の隊長、深いワインレッド髪のWA2000だ。鋭い目で俺のことを睨みながらまだ指名もしていないのにこの人形は答えた。

 

「あんた、バカじゃないの?」

 

「……あ?」

 

理由もなく罵倒されて、数秒遅れて眉間皺が寄った。その瞬間、この場の空気が悪くなったが、エドとWA2000は気づいていないだろう。

 

「し、指揮官様に失礼ですよWAさん⁉︎」

 

「ふんっ!いいのよこんな無茶な作戦を考える奴なんて」

 

WA2000より小柄な人形、SMGのMP5がWA2000の言葉を諌めるが当の本人はエドが出した作戦案が悪いと言った。これに対してエドの口角が上がり、誰が見ても彼が酷くご立腹なことがわかる。

 

「なんだ、どこがいけなかった?」

 

「わからないの?部隊に割く人数のことよ。ライフル部隊で上から援護するのはいいけど、護衛を二人も付けるのは本隊の攻撃力を落とすことになるわ」

 

確かにWAの言うことは正しい。少ない人数で奇襲作戦を行うには本陣の火力が何よりも大切。5名うち2人も抜けてしまっては押し切るのは難しいだろう。

 

「ここは護衛役を1人に削って本陣の攻撃力を上げたほうがいいわ」

 

「それをしたら、今度はお前たちが危ないだろ」

 

WAの言葉を素っ気なく返したエドに、人形たちが驚いた表情をする。さっきまで怒っていたWAまでもがだ。それを見たエドは首を傾げる。

 

「何がおかしかった?」

 

「い、いや。私たち人形のことを『危ない』って言う奴なんて初めて見たから」

 

「……」

 

WAが言った瞬間、エドは苦虫を潰したような表情になる。それがまるで苦悩している様にも見えたし、憤っている様にも見えた。

 

「作戦の変更はしない。2人の代わりに俺が、()()()()()()()

 

「「「……はぁぁああああ!?」」」

 

何気なく放った俺の言葉に、今度はWAだけではなく他の人形たち全員が耳を疑った。

 

「あんた本気で言ってんの?人間なのよ、簡単に死んでしまうし死んでも私たちと違ってバックアップはないのよ?」

 

「分かっている。だが、俺にも戦える力はある」

 

俺はそう言うと左手に持っていた銀色のアタッシュケースを見せつけた。見た目はなんの変哲もないただのアタッシュケースだが。

 

「俺は戦える。だからこの戦場に呼ばれた」

 

エドの言葉には戦う意思が感じられ、瞳からは闘志が感じられた。

 

「約束する。俺はお前らの期待以上の結果を出す」

 

エドがそう宣言して、数秒の間が生まれ沈黙が続いたかの様に見えたがWAがため息を吐いた。

 

「分かったわ……あんたの指揮に従う」

 

「えっ⁉︎ WAさんいいんですか!?」

 

MP5が驚いた様な声を上げる。まさか、あのWA2000がすんなりと頷くとは思ってもいなかったからだ。それはここにいるエドとWAを除く全員も同じらしい。

 

「ただし、ここんで死んだら承知しないわよ?」

 

「言われなくても分かっとるわ---ツンツン」

 

「……ッ!誰がツンツンよ!」

 

WAの耳は誰がみても明らかなほど真っ赤に染まっている。

 

「誰かってお前以外いないだろ」

 

「わ、私はWA2000って言うちゃんとした名前があって---」

 

「はいはい、作戦時間が迫っているから移動を開始するぞ」

 

「ちょっ!無視をするなーーー!」

 

エドはWAを無視して第二部隊を連れて移動開始した。それを見てたWAも唇も尖がさながら部隊に指示を送る。

 

「私たちもさっさと行くわよ!たく、私の名前はWA2000よ。第一にね---」

 

ぶつくさと言いながら早足で進むWAを追いかけるように第一部隊も狙撃ポイントへと進行を開始した。

 

 

--30分後

 

 

林の中で身を潜めるエドと第二突撃部隊。エドの耳に仕込んだインカムから離れた位置にいるWAの声が届く。

 

『こちらブラボー。予定の狙撃位置に到着、指示を待つ』

 

それを聞いた俺は懐からガラパゴス型携帯の『ファイズフォン』を取り出した。

 

「何ですかそれ?」

 

俺のすぐ側にいたステンMk-Ⅱが手元にあるファイズフォンを凝視する。見た目は携帯なのだが、フレームの表面にΦを模したメモリーが埋め込まれているのだ。

 

「これは……銃だ」

 

「!……それがですか?」

 

ステンMk-Ⅱが驚くが、それも無理がない。携帯(これ)が銃に成るとは思えないからだ。

 

ファイズフォンを開くと上半分を横に折り、テンキーを『103』と押す。

 

---『Single Mode

 

スピーカーから電子音が鳴るとともにファイズフォンは起動した。更に銀のアタッシュケースからデジタルトーチライト型ポインティングマーカーデバイス、『ファイズポインター』を取り出すとファイズフォンの上に取り付ける。

 

「こちらアルファ。目標を視認した。作戦行動に移る」

 

インカムに喋りながらファイズポインターのスイッチを押してデジタルトーチライトモードを起動させ、シリンダーを絞って標準を合わせる。

 

---スケアクロウ。周りに自動で飛び回るビットが主兵装の鉄血工業のハイエンドモデル。容姿はまるでビットと言う楽器を操る指揮者のようだ。

 

敵に気づかれないように浮遊するスケアクロウの右脚にレーザーポインターを合わせる。

 

「俺のカウントダウンに合わせて狙撃しろ」

 

『了解』

 

WAが返事を返したのと同時にエドは極限まで殺気を低くした。

 

「3……」

 

ファイズフォンの引き金に指をかける。

 

「……2」

 

呼吸を止め意識を集中させる。

 

「『1、撃て」』

 

エドとWAの呼吸が完璧に合い弾丸と赤い閃光が走り抜けた。

 

 




いかがだったでしょうか?今年は色々と忙しい時期だったので来年の抱負はもっと投稿ペースを上げたいと思います。

では、来年も宜しくお願いしますのと良いお年を。

感想・評価・批判よろしくお願いします!


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