可愛い千冬姉を書きたかっただけなのに (狐狗狸堂)
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可愛い千冬姉を書きたかっただけなのに

千冬姉作品、流行れ...!流行れ...!

とか言いながら、ろくに千冬姉をヒロインさせない作者なんて居る?ふっ、居るはずもないか(震え)

何分、初めてなので勝手が今一よくわかりませんが、表現が可笑しいところがあったら教えて頂けると幸いです。

それでは本編をどうぞ


「先輩」という単語から、何を連想するのかは人それぞれだろう。

 

  学生に限定すれば大まかに、文化系部活動(文化部)と運動系部活動(運動部)の二つに分けられるだろうか。

 

  文化部に所属する人間の多くは、先輩という存在を単に学年が上なだけ、と認識していることが多い。少なくとも多くの人間は、形だけ敬うのみではっきりと自らの上位者であるとは考える人はいないだろう。

 

  では運動部はどうかというと、ほぼ真逆と言って差し障りはないはずだ。自らの上位者であり絶対の存在、ところによっては神様のようでさえあるという。要するに、畏れて然るべき、あるいは敬うべき存在である、という訳だ。

 

  さて、一体このような他愛もないことをいつまで長々と語るつもりだ、と横腹を小突かれそうなので、私が何を言いたいのかを述べよう。

 

「俺に先輩という称号は些か重すぎる気がするんだが、そこのところどう思う? 千冬、束」

 

「……さっきから何を仰っているのかと思えば、貴方という人は……。少なくとも、そんなに重く捉えるものでもないでしょう? 御影先輩」

 

「そうそう、ちーちゃんの言う通り。相変わらず足りない頭でしょーもないことを考える人だね〜。今日の特売について考えた方がよっぽどちーちゃんのためになるし良いと思うんだけどな〜? せーんぱい♪」

 

  どうやら味方はいないようだった。すでに放課後の帰り道。行き先はこれから特売を行うというスーパー。そんな中で相も変わらず、心の中で頭を捻る。

 

 ーどうしてこうなったんだ?ー

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

  俺が彼女たちと初めて知り合ったのは、小学校生活も半ばあたりの頃だ。

 

  シングルマザーという特殊な家庭環境である俺に、当時友人という存在はほぼいなかった。皆無と呼んでも間違いとは言えないほどであった。周りが勝手に避けていたのもあったし、俺自身、友人などいらないと斜に構えていたこともある。

  そんな自分に、母は特になにか言うことはなかった。少なくとも表面上は普通であった。

 

  そんな自分に転機が訪れた。切っ掛けは些細なもので、端的に述べるのであればやはり喧嘩で負けたことだろうか。いわゆるガキ大将に母を馬鹿にされ、思わず殴りかかったものの、当時は別に身体を鍛えていた訳でも、上背があった訳でもない自分は当然のように負けた。

  そんなボロボロの自分に怒るでもなく、母はぽつりと一言口にしたものだ。

 

『無様だな』

 

  悔しかった。喧嘩に負けたことが、ではない。母を失望させたことが、である。

  とにかく必死に考えた。幾日も暇さえあらば頭を回した。そうして至った結論は一つ、ある意味最もシンプルなものだった。

 

 ーそうだ。強くなろうー

 

 どうやって?

 

 ー1つ下の学年に剣道の強い子がいると聞いたことがあるー

 

 どうするの?

 

 ー剣道を教えてもらっているところを紹介して貰おうー

 

 それでどうにかなるの?

 

 ー分からない。けど何もしないよりはまだマシだー

 

  とにもかくにも善は急げという。多分なんとかなるだろう。そんな在りし日の自分は知らなかったのだ。

  これから自分が関わろうとしている人間が、どれだけ外れた人間なのか。そんな彼女の側にもう一人、兎の皮を被った怪物がいることも。

 

  寂しがり屋の狼の様な彼女、気狂いを自覚する故に己を偽る兎の様な彼女。

  そんな彼女たちと出会い、時に語らい、時に死にかけ、一緒に遊んだり、友達になったりと、すったもんだの末に今の関係に落ち着くようなアレコレを、俺はまだ知らなかったのだ。

 

  それでも一つだけ分かることもある。もしどれだけ人生をやり直そうと、例え記憶がなくなりお互いのことが分からなくなろうと、きっと俺は彼女たちと知り合い、仲良くなり、理解に努め、今のような関係に落ち着くことを望むだろう、ということだ。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

「先輩と束はそこにいて下さい。カートを取ってきますので」

 

  スーパーの中で後輩と二人きりというのは、なんだかんだ慣れないものだ。それが飛び切りの美少女と、というのもあるのだろうが。二人揃って壁際で、ぼんやり店内を眺めていた。相変わらずやたら眩しい店内は、余り好きになれそうにない。

 

「ねえ、秋水」

 

「なんだ、束」

 

「秋水は、束さんたちと一緒にいるの後悔してる?」

 

  その言葉にどんな意図が含まれているのか。なんとなくだが、察しはつく。

  後ろに手を組み、じっと佇む彼女の横顔に表情はない。俺といるときだけの素の彼女がそこにいた。

 

「いや全然。ただな、余りにもお前たちが凄すぎて自分がよく分からなくなっただけだ」

 

「ふーん、ほんとーは?」

 

「……嘘じゃないぞ?」

 

  気づけば、下から覗き込むように上体を向けている。顔には悪戯っぽい笑み。背筋が震えるほどに艶やかな眼差しと視線が絡む。

 

「言ってくれなきゃ分かんないかなって」

 

「普段の察しの良さはどこに行ったんだ……」

 

「良い子だったよ……。察しの良さは」

 

「亡くなってんじゃねぇか、おい。……流石に素面じゃキツイというか……」

 

  先のやり取りの中で、彼女の笑みは一層深みを増し、その眼差しには揶揄いの色が見て取れるようでさえある。

  兎というか、こういうところはさながら蜘蛛である。ずる賢い女だ。卑怯に過ぎる。

 

「お前たちと居られて幸せだよ。満足してる。……これで十分か」

 

「うん、もちろんだよ。お礼にね〜……えい♪」

 

  言うが早いか腕を取られる。彼女の胸に寄せられ、腕で、身体で絡め取られる。こちらが鬱陶しくないギリギリの力加減、立ち位置ということはつまり、彼女の肢体を十分以上に感じることが出来ることを意味するわけで――――

 

 ーふむ、これは中々……C、といったところ「ぐぁっ!?」ー

 

  気づけば、近くに来ていた千冬にもう片方の腕を持っていかれる。腕のみならず全身を使うように、最大限に関節へ負担がいくようにと捻られる、寸前で止まる。多分、ほんの少しでも動くだけでとんでもなく痛くなるだろう。その程度のことは呼吸をするほどに容易くやれる。そのくらいは理解しているつもりだ。

 

「随分とお楽しみのようで。秋水さん」

 

「ああ、いや、その、なんだ。すまんがその腕を外して貰えると助かるんだが……」

 

「ほう?なぜです」

 

「それは「それはだね、ちーちゃん。腕っていうのはこういう風に組むものだからさ」……」

 

  気づけば束の手によって、先ほどの束とのような理想的な腕の組み方が為されていた。

  束を見ると、にやにやしながらウインクを一つ。

 

「さてと。じゃあ買い物に行くか」

 

「は?」

 

「そうだね。束さんは面倒いから休んでるよ」

 

「え」

 

「どうした千冬。早く行くぞ」

 

  未だ目を白黒させている千冬に畳み掛けていく。すでに束はこちらに背を向けていたし、余り騒がしいのも良い顔はされないだろう。

  だからこれは仕方ないことなのだ。

  腕を組んだままカートを押す。彼女はというと俯いていて表情は伺えないが、咎められてはいないので問題はないのだろう。

  腕を組んだまま共に歩く彼女の耳が、赤く染まっていることは敢えて無視しながら、一先ず売り場の方に向かうのだった。

 

 

 

  ちなみに、なにがとは言わないが、微妙に束の方が勝っているっぽいことは胸に秘めておこうと思う。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 ーずるい人だー

 

  腕を絡める相手を見上げて、心の底からそう断じる。

 

 ー卑怯な人だー

 

  貴方は私の苦悩を知らない。こんなにも私を惑わせておきながら、私のことなど見向きもしない。

 

 ーいや、そうではないかー

 

  即座に否定する。全ての問題は、私自身にあるのだ。

  毎度毎度ご苦労なことだ。こんなにも自分が浅ましく、卑しい存在だ、などと信じたくもない。ないのだが。

 

 ーああ、熱い。顔から火が出そうだー

 

  なんでそんなに近いのだ。これでは気づかれてしまうだろう。

 

 この肉の疼きが

 

 抑えがたい淫らな衝動が

 

  身体が丸みを帯びてきて、胸が重くなり、全身に適度に柔らかな肉がついて。その頃からか、あるいは前か。

  この人の顔を見るだけで、どうしようもなく心臓がうるさい。声を聞くだけで理性が削がれ、身体が触れ合うだけで熱くなる。ともすれば、呼吸すらもままならない。

 

  きっと、私は獣なのだ。だからこの人を求めてしまう。身体が、本能が、魂が、この人が欲しいと。迎え入れたいと。溶け合いたいと。――胤が欲しいと。そう叫んでいるのに違いないのだ。

  束が羨ましい。私もあんな風に、普通にこの人と過ごせたらと、そう考えてしまう。その度に自分が許せなくなる。

  融通の利かない自分が嫌だし、そうやってすぐ周りに理由を求めてしまう自分も嫌だ。

 

  だから性懲りもなく願ってしまう。

 

 ー秋水さんー

 

 ーこんな獣みたいな私でも、どうか側に置いてはくれませんか?ー

 

 ーそして、叶うなら私に、貴方の全てをー

 

  知らず絡まる指。私はそれを、どうしても解く気になれなかった。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 ーふふん、相変わらず可愛らしいじゃないか、千冬ちゃん?ー

 

  私から見ても、それはそれは仲睦まじく歩く二人の背を眺めて、そう独りごちる。しかし厳密には、その視線の先にいるのは一人の男性なのだが。

 

 ーあれは間違いないね。大方、私と千冬ちゃんを比べているに違いないー

 

  なにがとは言わないが。ちなみに、3cmほど私が勝っている。

 

 ー秋水、君はどっちを選ぶんだろうね。私?それともー

 

  そこまで考えて頭を振る。

  なんて意味のない仮定をしているのだろうか、と。

 

  彼の隣にいるのは私ではない。彼は私を受け止めきれないだろうから。理解に努めてくれるのは嬉しいし、事実成果も出ているのだが、如何せん彼はどこまでいっても凡人なのだ。

  私のことだ。愛でて愛でて愛ですぎて、彼を壊してしまうに違いない。そうなったらなったで、魂を捕獲して電脳空間に複写すれば良いのだが、それは彼によく似たナニカに過ぎないのだから、出来ればそうしたくない。

 

  だから、私には兎がお似合いだ。

  『月』を見上げて羨んで、いつかあそこに行きたいと、そう叫んで跳ねるのだ。独りは嫌だ、独りは寂しい。それを誰より知っている私こそが、きっと兎に相応しいのだ。

 

 耳を使え、知識を集めろ

 

 愛らしい姿を利用しろ、周りの愚図を騙すのだ

 

 いざとなったら直ぐ逃げろ、それも駄目なら蹴り殺せ。とにかく跳ねろ、足掻くのだ。なんのために脚がある?

 

 そしていつかあの『月』へ――――

 

 

 

 

  だからね、ちーちゃん。これは束さんの宣告だ。

 

  隣は譲ろう。彼の妻であることを許そう。いくらでも盛るがいいさ。止めはしないし、邪魔もしない。

 

  でもそれだけだ。そこまでだ。残りの全てを私が貰う。

 

 友も

 

 相棒も

 

 理解者も

 

 隙があるなら、女の地位も。

 

「だからいつかあの『月』で、一緒に笑い合おうじゃないか。せーんぱい♪」

 

 

 

 

 




本当にどうしてこうなったんやろ(遠い目)

これはキャラ設定である。深い意味はない......かも

・御影 秋水
オリ主。当初は千冬姉の憧れの人、という形にしたかったのに、気がついたら年相応になっていた。口調が硬めなくらいしか面影がない。
名前の元ネタは、母刀自殿。というか母親のモデルがその人。篠ノ之流剣術を習っている。
どうでもいいが、本編でCなどと言っているが、詳しく分かるほどの経験値がなかったりする。

・織斑 千冬
ヒロイン......のはず。少なくともそのつもりで書いたのだが、気づくと良く分からなくなっていた。曰く、寂しがり屋の狼さん。
恋愛自体を知らない。漫画や小説を買う余裕もないし、ドラマ等も見ないため。せいぜい、噂で聞くくらいか。そのため、本編では恋心による自身の変化を「発情」の一言で済ませてしまっている。
どうでもいいが、束さんに3cm負けている。

・篠ノ之 束
大体こいつのせい。小悪魔系後輩美少女とラスボス系クレイジー美少女の兼任とかバカなの?アホなの?BBちゃんなの?曰く、兎の皮を被った怪物。
ほんのりlight風味が漂っていたり、色んな意味でヤバそうだったりするのは多分、気のせいじゃない。
どうでもいいが、千冬姉に3cm勝っているらしい。

以下蛇足





本当ならこの作品ではなく、違うのを投稿していた予定だった。具体的には「チルノが本当にさいきょーだったら」(仮)と「博麗夫婦のお見合い話」(仮)

東方の作品である。チルノの方は、独自解釈・設定を全面に微妙にキャラ変させたもの。お見合いはその名の通り。オリ主×霊夢のお見合いの話。黒幕はゆかりんである。

ではなぜ書いたのかというと、とある作品にて作者さんの感想返しで、「お前も千冬姉作品を書くんだよォ!」(意訳)を受けて、なぜかやる気が湧いたからである。

結果、素人が妄想爆発させた黒歴史確定のヤバイ千冬姉と束さんが出来上がった。が、特に後悔はしていなかったり。

それでは最後に。千冬姉作品が流行らんことを!!!!


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