ひねくれハンター弟子を取る (虎王)
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ハンター編 ひねくれハンター弟子を取る


何か書きたくなったヤツです。

駄文オンパレードですので、ご注意を



 

「ししょー!おはよーございます!」

 

「おう、とにかく俺の腹の上からどけ」

 

ベッドの上で寝ていた俺の腹の上でぴょんぴょんと跳ねるちっこいの。

朝いつも子の起こし方というのはやめて欲しい。

 

「ししょー!朝ご飯作りました!」

 

「焦げ焦げだな」

 

焦げた米、焦げた肉、唯一焦げてないのは野菜。

まだ生だし、焦げようがない。

焦げるか生か、どっちかしかないのか。

 

「ししょー、美味しくないですよね?」

 

「腹に入れば栄養だ」

 

不味いけど食べる。食べるけど不味い。

こんなものを作るとは、後で教えてやらないといけないな、全く。

 

「ししょー、狩りに行きましょう」

 

「そうだな」

 

彼女の名はアオイ。青い髪をポニーテールにまとめあげ、顔に赤いペイントを付けている。

何故顔にペイントを付けているかというと、俺の真似らしい。

集会所に向かい、クエストボードを見る。

 

「ししょー!あれ行きましょー!ジンオウガ!」

 

「お前はまだアオアシラだ」

 

アオイがジンオウガの依頼書を取ろうとしていたので、先にアオアシラの依頼書をクエストボードから取って、先に契約金を支払って契約を済ませる。

 

「ししょー、じゅ、準備で、出来まし…た」

 

「お前の体格にガンランスは合わない。外せ」

 

「砲撃はロマン…ですっ!」

 

プルプルと全身を震わせ、ガンランスの重みに耐える。

ちょっと小突けば崩れそうな程、ガンランスの重さに押し潰されそうになっている。

当たり前だ。ガンランスは成人男性でも訓練していなければ僅かな時間でバテる。

 

「先ずはモンスターとの立ち回りを覚えるためには、片手剣を使え」

 

「ううっ、仕方ないです」

 

「基礎を怠る奴は大成しない。覚えとけ」

 

ブーブー言っていたアオイだったが、狩り場に着くと割と片手剣も気に入ったらしい。

先程から試し斬りに襲ってきたジャギィを倒している。

 

「ししょー!片手剣良いですね!」

 

「立ち回りを覚えるにはうってつけだからな」

 

「ししょーは、片手剣使わないんですか?」

 

「俺は弓でちまちま攻撃するのが性に合ってる」

 

アオアシラを探し、渓流を歩き回る。

渓流のエリアは、素材集めにも適しているため、大型中型のモンスターを狩りに来たついでに素材を集めて変えるハンターは多い。

アオイも薬草を集めたり、虫を取ったりしている。

 

「ししょー、アオアシラ出てこないです」

 

「ハチミツを取りに行っている可能性が高い。

そっちに行ってみるか」

 

アオアシラはハチミツが大好物で、よくハチミツを食べに歩き回っている。肉を食べるところを目撃されたことがないと言っても過言ではない程、ハチミツをよく食べる。

 

「ししょー、アオアシラいましたよー!」

 

「静かにしろ、バレる」

 

腰を深く下ろし、両腕に着いたハチミツを左右交互にぺろぺろと舐めまわしている。

口の肥えた人間が美味いと思うのだから、さぞモンスターには美味いだろう。

 

「俺が一発、ヤツに当てる。それ以降は死にそうにならない限りお前一人だ、いいな」

 

「わ、わかりました」

 

アオアシラに一発矢を撃ち込む。

突然受けた衝撃と痛みに悶え、すっ転ぶアオアシラ。

その隙にアオイが片手剣で刻んでいく。

ようやく立ち上がるアオアシラだったが、怒りで我を忘れ、腕を振り回しては吠えて暴れている。

 

それを絶妙な距離で躱し、隙をついては攻撃していくアオイ。まだまだ動きは及第点だが、悪くない。

しかし、調子に乗ったのか、ぬかるみに足を取られて逆に転んでしまう。

 

「ひっ!」

 

「ゴァァ!」

 

アオアシラが両腕を振りかぶった瞬間、弓を最大限に引き絞り、腰を深く下ろして一気に解き放つ。

空を切って進む矢は、アオアシラほ脳天へと突き刺さり、アオアシラは絶命する。

 

「し、ししょー!今のどうでした!?」

 

「10点」

 

「10点もあるんですか!?あと90点ですね!」

 

こいつはきっと、何点でも喜んで受け取るだろう。

 

「攻撃は良かったが、最後に油断したな?

あんなぬかるみでハマるなんて、集中力が足らないぞ」

 

「はい、頑張ります!」

 

アオアシラも討伐し、帰ろうかと言う時。

アオイが林に向かって走り出した。

 

「ししょー!凄いのがあります!」

 

「黄金でも埋まってたか?」

 

「いえ!黒っぽい緑色のモンスターです!

うわぁ、こんなモンスター初めてだなー」

 

黒っぽい、緑のモンスター……?

い、いや待てお前それは。

 

「グルルルルルルルル」

 

「あ、起きました!」

 

「ゴアアアアアアアアアア!!!」

 

「イビルジョーじゃねぇかぁぁぁ!」

 

アオイを担いで一目散に走り出す。

クソっ、なんでこんな所でイビルジョーが寝てんだよ!

 

「ししょー、アイツ速いです!」

 

「少し黙ってろ!バカ!」

 

イビルジョーの事を少しでも教えておくべきだった。

イビルジョーと言えば誰もが嫌がるモンスターだ。

暴食、凶暴、強靭。疲れを知らぬその巨体は暴れ続けては喰らい、疲れたとしても喰らってはまた暴れる。

そんな馬鹿げたモンスターだ。

 

「アオイ、こやし玉投げろ!」

 

「はい!」

 

「おまっ、それはペイントボールだろ!」

 

こんな時にマークしたって意味無いだろ!

自力でこやし玉を投げつけ、激臭でイビルジョーが怯んだ隙に生肉を等間隔で投げ捨てながら逃げる。

そして、投げ捨てた方とは逆に向かって走る。

イビルジョーは知能は無いから、肉に釣られるはずだ。

 

キャンプまで逃げ、用意されたベッドに飛び込む。

 

「だぁぁ、死ぬかと思った」

 

「ししょー、ごめんなさい」

 

「何で謝るんだよ」

 

「だって、ししょー危ない目にあわせたから」

 

「はぁ、謝るのは俺の方だよ。イビルジョーの事をしっかり教えていなかったのは俺だ。悪かったな、怖い思いさせて」

 

そこから集会所へ戻り、アオアシラ討伐の報告を済ませ、報酬金を貰う。

その報酬金を、アオイに全て渡した後、雑貨屋に向かう。

 

「あの、ししょー。お金は半分この方がいいです」

 

「気にするな。お前はお前のために使え。

遠慮する若者は嫌われるぞ」

 

とはいえ俺もまだ20代後半なんだがな。

 

「じゃあししょー、美味しいもの食べましょう!」

 

「おっ、いいな。アオアシラ討伐祝いだ」

 

「今夜はパーッと酒盛りですね!」

「いいなそれ!モスジャーキーをつまみにって、お前まだ酒飲んじゃダメだろ!」

 

そんなこんなで、俺達の師弟関係は続いた。

この子を見ていると、昔を思い出す。

思い出してはいけないはずなのに、俺は思い出す。

馬鹿なヤツだ。捨ててしまえばいいものを捨てれない。

だからこうして馬鹿な事をしてるのに。

 

「ししょー、お風呂入りましょー!

お背中流しますよ?なんなら全身洗います!」

 

「俺のことは良いから先に行け」

 

「では、待ってます!」

 

夕食を終え、集会所に隣接された飲食店から勢いよく飛び出していくアオイ。

風呂は一応大衆浴場があり、ユクモ村の温泉を真似て作ったらしく、混浴になっている。残った酒を飲んでいると、目の前にリオレウスの大剣を背負った男が座る

 

「あの子、君の弟子か?」

 

「そうだ。鬱陶しいったらありゃしない。

ま、大人になったら剥いてやる」

 

「ははは、相変わらずのひねくれ具合だ。

君はあの子には手を出せないさ。何故なら…」

 

「その話をするのなら、この場はやめろ」

 

「済まない、軽率だったよ。また、会おう」

 

そう言い残して、男は去っていく。

途端に耳鳴りがする。頭が痛い。

これは酒のせいだと言いたいが、違う。

もう、終わったことだ忘れるべきだ。

そう言い聞かせ、気持ちを鎮める。

 

会計を済ませたあと、風呂にアオイを置いてきたことを忘れ、急ぎ向かったが手遅れて逆上せていた。

クーラードリンクを飲ませたので回復はしたが、終始機嫌が悪かった。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

私がししょーに弟子入りしてから一年。

私は漸くハンターランクを上位に上げる事が出来たので、一人でクエストを受けるようになっていた。

ししょーのいないクエストは不安だらけだけども、一人でも狩りに行けるように頑張らないと!

 

「えーっと、今日は…うわー、アルセルタスしかないよー」

アルセルタス、飛び回ってるから中々剣が当たらなくて嫌いなんだけどなー。

仕方無い、好き嫌いしたらまたししょーに怒られるし。

 

「あの、アルセルタスの上位お願いします」

 

「はい、アオイさんも立派な上位ハンターですからね」

 

「えへへ、まだまだ未熟者ですよー」

 

「当たり前だ、ハナタレめ」

 

「し、ししょー!?」

 

背後からコツンと拳骨が降ってくる。

ししょー、いつの間に。

 

「ししょー、お久しぶりです!」

 

「おう、朝家から別々で出ただけなんだがな?」

 

「それでも、お久しぶりです!」

 

「お、おう」

 

どこか戸惑うししょー。

あれ、私何か変なこと言ったかな?

 

「それより、俺の方の仕事だ」

 

「あっ、ししょーも来てくれるんですか!」

 

「違う、俺の仕事はこれだ」

 

「らおしゃんろん?」

 

確か、すっごく大きな古龍で、歩くだけで街とか壊滅させるほどおっきいモンスター。

流石ししょー、らおしゃんろんもたおしにいくなんて!

 

「ししょー!ラオシャンロンの討伐頑張って下さい!」

 

「馬鹿言え、調査だ調査。最近ラオシャンロンの動きが変だって言うからな、調査して来いって龍歴院がうるさいんだよ」

 

古龍の調査……ししょーなら余裕です!

 

「それじゃ行ってくる」

 

「はい!頑張って下さい!ししょー!」

 

私も頑張らないと。アルセルタスなんて、ししょーなら10分もあれば倒せる!

だったら、私もそれぐらいで倒せるようにならないと!

「じゃ、私も行ってきます!」

 

 

 

 

「ギシュアアアアア!」

 

「ひいぃぃ!何でゲネル・セルタスまでいるのぉぉ!?」

 

おかしい、絶対におかしい。

アルセルタスだけの討伐なのに、どうしてゲネル・セルタスまでいるの!?

調査隊の人ちゃんとしてよ!

とにかく今は逃げないと!

 

ゲネル・セルタスはアルセルタスとの番。

ということは、奥さんと旦那さんで襲ってくる。

奥さんと旦那さん。ししょーと私……。

なんて思ってる場合じゃない!今は集中!

 

「よーし、かかってこい!お前なんてひとひねりだ!」

 

「ギシュアアアアア!」

 

「ギィィィィィ!」

 

「ごめんなさいやっぱ嘘です!」

 

それからアルセルタスとゲネル・セルタスを、3日もかけて狩猟した。ゲネル・セルタスは特に強かったけど、なんとか倒すことが出来た。

まだ上位に上がったばかりなのに、ゲネル・セルタスを倒すなんてすごいねと褒められた。

 

帰りの途中、移動用の荷車のおじさん達がめちゃくちゃ褒めてくれた。えへへ、ししょーも褒めてくれるかな?

 

「ししょー!かえりましたよー!」

 

家の扉を開け、中に飛び込む。

 

「私、ゲネル・セルタス倒したんですよ!

凄いでしょ!頭ナデナデして下さい!」

 

返事がない、また怒ってるのかな?

 

「ししょー?」

 

分かった集会所にいるんだ!

きっとそこで私待ってるんだ。

ししょー、結構イタズラ好きだもん。

 

「ししょー!どこですかー!」

 

わたしが来るまで騒がしかった集会所が静かになった。

あれ、私も何かやっちゃったかな?

 

「ししょー!ゲネル・セルタス倒しましたよ!」

 

返事はない。それどころか皆私から目をそらす。

 

「ししょー?」

 

私がキョロキョロと集会所を見渡していると、受け付けのお姉さんが飛び出してきた。

 

「あっ、お姉さん!ししょーは!?」

 

「ゲネル・セルタス倒したのね、えらいわね」

 

そう言って、涙を流しながら頭を撫でてくれた。

えへへ、でもししょーに褒められたい。

贅沢言うなら、初めはししょーに褒めてもらいたかったなぁ。

 

「ししょーどこですか?」

 

「偉いわね、えらいわね」

 

そう言いながら、お姉さんは私に抱き着いてわんわんと泣き始めた。大人の人がこんなに泣くなんて初めて見た。

 

「あなたの……師匠さんはね、死んだのよ…」

 

「えっ…」

 

そんな訳ない。ししょーが死ぬわけないもん。

ししょーは強い。この世のハンターで1番強い。

どんなモンスターにだって負けないもん。

 

「分かった、ししょーがドッキリ仕掛けてるんでしょ。どうせその辺に隠れてるんでしょ?ししょー!」

 

集会所に、私の声だけが静かに響く。

これはもう、私が探し出さないと。

 

「ししょー!」

 

受け付けのカウンターの裏を覗く。いない。

 

「ここかー!」

 

テーブルの下を見る、いない。

 

「さてはししょー、誰かに変装してるな!」

 

でも、返事はない。

 

「し、ししょー…」

 

「今日ね、これが届いたのよ 」

 

お姉さんが出してきたもの、それは弓。

でも、ただの弓じゃない。ししょーの弓だ。

 

「嘘だ、ししょーが死ぬはずないもん」

 

「よく見て、他にも防具が見つかってるのよ」

 

「嘘だ!」

 

「あなたのお師匠さんは、ラオシャンロンの調査に行ったんじゃないのよ」

 

「先輩、それはギルドの極秘情報じゃ!?」

 

「黙って!」

 

優しい受け付けのお姉さんが叫ぶ。

こんな怖いお姉さん初めて見た。

 

「あなたのお師匠さんはね、黒龍を倒しに行ったのよ」

 

「黒龍…?おとぎ話の?」

 

聞いたことがある。黒龍っておとぎ話に出てくるすっごい怖いドラゴン。

 

「極秘に黒龍を倒しに動いていたあなたのお師匠さんは、黒龍との戦いの最中、仲間を逃がすための殿になったのよ」

 

「じゃ、じゃあししょーは…?」

 

「……」

 

何も言ってくれない。

ししょーが死ぬはずない。

涙が止まらない。何でししょーが死ぬの?

そんなわけが無い。ししょーは強いから。

 

「私、ししょー探してくる」

 

「アオイちゃん、もうあなたのお師匠さんは」

 

「死んでない!」

 

その時、パァンと乾いた音と共に私が吹っ飛んだ。

何が起きたのか分からなかったけど、私がはたかれたのだと分かった。

 

「お前の師匠は死んだ。現実を見ろ」

 

「あ、あなたは?」

 

とても大きな大剣装備した、リオレウスの装備を纏った男の人。

 

「ザックだ。お前の師匠とは古い付き合いだ」

 

「だったら、ししょーが死ぬはずないって…」

 

「一緒に居たからこそ、分かるんだよ。

今回ばかりはどうにもならん。諦めろ」

 

何でそんな酷いことを言うんだろう。

ししょーとの古い仲なのに。

 

「うわぁぁぁぁぁん!」

 

膝から崩れ落ちて泣いた。

どれだけ泣いたか分からなかったけど、泣いた。

涙が枯れるぐらい泣いた頃、家でししょーの剣を見た。

昔は剣士として前衛で戦ってたらしいけど、怪我でそれが出来なくなったからガンナーになったと聞いた。

 

「ししょー、力借ります」

 

壁に立て掛けられた、黄金の剣。

ししょー、この剣勝手に使うけど、許してね。

泣いてなんていられない。

ししょーに怒られちゃう。もっと強くなならいと。

それからは一心不乱に狩りの腕を磨いた。

 

ししょーに教わったことは全部やった。

何度も死にかけた。でも、ししょーの事を思えばちっとも怖くなかった。

集会所のお姉さんも、私のことを凄く気にかけてくれた。

 

あれから時間がかなり流れた。

私の背は、前より伸びた。少し女らしくなったと、ザックさんは言う。たまに会っては、一緒に狩りに行く。

でも、一つだけ変わったことがある。

それは……

 

「お師匠、待ってくださーい!」

 

「ほら、置いてくよー」

 

私にも弟子ができた。

まだ小さくて可愛らしい。昔の自分と姿を重ね合わせては、思い出して笑ってしまう。もちろん、ししょーのことも。

 

「お師匠、今日はジンオウガを狩りましょう!」

 

「ダメダメ、基礎を怠るヤツは大成しないんだよ」

 

ししょーの受け売り。

 

「アオアシラですか、分かりました!頑張ります!」

 

張り切って装備を整えに行く。

そこで一言、何となく言いたくなった。

 

「ガンランスはダメだよー」

 

「ええっ!?私ガンランスがいいです!」

 

「その筋力じゃ、まともに動けないでしょ?」

 

やっぱり、懐かしいなぁ。

自分はこんな風にししょーから見えてたのか。

 

「じゃ、狩りに出発!」

 

「おー!」

 

結果は大失敗。孤島エリアでアオアシラを倒す筈が、ラギアクルスとロアルドロスに追いかけ回されてアオアシラどころではなかった。

 

「お師匠、失敗しましたね」

 

「あははー、失敗は成功のもとだよ。

さっ!気にしてても始まらない!今日は美味しもの食べよう!」

 

「はい!」

 

その夕飯。お酒で潰れた。

ししょーがいつも飲んでから、真似したけど体質に合わないみたい。

 

「お師匠…」

 

「ごめーん、先に帰っててー」

 

「は、はい。遅かったら迎えに来ますね」

 

とてとてと、小さな手足を動かして家に帰っていく。

ふふっ、可愛い。

でも、同時にすごく不安になる。

私なんかが教えていいんだろうか?

ししょーみたいに、強くない私が。

 

「はぁ、ダメだなぁ私」

 

「そんな事ない、お前は頑張ってるよ」

 

「そうかなー」

 

「それに、お前は上位に上がってすぐゲネル・セルタスを討伐したんだろ?」

 

「そーだけどさー」

 

そんなの昔の話だし、ゲネル・セルタスなんてめちゃくちゃ危険視されるほどのモンスターじゃないよ。

それに、そんな昔のことを覚えてる人いない。

それに、その時ししょーに褒めてもらってないもん。

 

「まぁ、3日もかかって倒したのは及第点だが、乱入してきたゲネル・セルタスを倒したのは満点だ」

 

「なんでそんな昔のこと褒めるの?」

 

「お前が褒めてもらってないって泣いたらしいからな」

 

その一言で酔いが覚めた。

アルコール?そんなものは知らない。

今の私ならばイビルジョーでも瞬き一つで殺せる自信がある。それだけ身体から何かがみなぎってきた。

ぼんやりとしてた視界が蘇る。

 

人相の悪い悪人顔。目元の傷。そして赤いペイント。

忘れもしない、優しい人。

 

「ししょー!」

 

「おわっ!?」

 

「ししょー!ししょー!」

 

「だー!くっつくな!暑苦しいし酒臭いぞお前!」

 

「ししょー!」

 

「ししょーしか言えねぇのか!」

 

暫く抱きついた後、ししょーに引き剥がされる。

もっとししょーを感じてたいのに。

 

「ししょー!お久しぶりです!」

 

「今回は本当に久しぶりだな」

 

「ししょー!お家に帰りましょう!また2人で暮らしましょう!あ、今は3人か」

 

「悪いな、それは出来ない」

 

「どうしてですか!?」

 

「お別れを言いに来たからだ」

 

「お別れ?」

 

「ずっと気になっていた。お前が一人でやっていけるのか。いや、それよりもゲネル・セルタスを倒したことを褒めてやりたかった。でも、お前は俺無しでも充分やって行けるさ」

 

「ううっ、ししょー!」

 

「泣くなバカ、代わりにこれやるよ」

 

そう言ってししょーは胸のペンダントを渡してくれた。

 

「お守りだ」

 

「あ!ししょー!どこ行くんですか!?」

 

「じゃあな」

 

待って、まだ行かないで。

ししょーがいないと私、何も出来ないのに。

 

 

行かないで

 

 

 

 

 

「ししょー!」

 

気が付くと、ベッドの上にいた。

ズキンと頭が痛い。お酒飲みすぎた。

 

「そっか、夢か」

 

気が付くと、胸にペンダントがかけられていた。

キラキラと輝くペンダントが。

ぎゅっと握りしめ、飛び起きる。

 

「お師匠!クエスト行きましょう!」

 

「よーし、行こっか!」

 

大丈夫、私にはししょーがいる。

ずっとずっと、一緒に居るから。

だから、行くよししょー。ししょーと同じ高みへ。

 

 

 

 

 

 

 

そこから長い時間が経って、私と弟子で黒龍を倒したのはまた別のお話。

きっとししょーも褒めてくれるから、ししょー以外は誰にも自慢しないんだ。

だって、また頭撫でて欲しいから。

 





なんか反響あれば続くかも


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ひねくれハンター弟子を思う

 

「リュウガ、お前弟子は良いのか?」

 

黒龍討伐の遠征中、狩り仲間のザックが言う。

人が飛行船から見える雲海を楽しんでいるというのに、全く無粋なヤツだ。

 

「構わない。黒龍が動いた方が重要だ」

 

「もうちょっと素直になれ」

 

「俺は俺に素直だ」

 

そう言うと、ザックは溜め息をつきながら船の室内へと入っていく。

アオイの事は気がかりではあるが、あいつも上位ハンターだ。そろそろ、俺の手から離れることを覚えてもらわないといけない。

 

「リュウガー、作戦会議開くから来てー」

 

「待ってろ、今行く」

 

室内の会議室へ向かい、揃えられたハンターが集まる。

俺とザックの他に、3名。

面識は無いものの、若くして良い功績を残したハンター達が集められた。

 

「今回、黒龍討伐の際に当たっての注意事項てす。

まず、ラオシャンロンが逃亡を始め、現在砦にて応戦中。その隙に黒龍を叩きますが、元々黒龍はラオシャンロンを追っているため、黒龍をラオシャンロンの元へ向かわせてはいけません」

 

司会の進行はカエデ。近頃アカムトルムを単騎で討伐した功績を称えられ、今回のチームに入った。

残りは腕っぷしのいいギザロ。

細身だが腕のいいガンナー、ショウジ。

ガンナー、剣士の比率の良いチームだ。

 

「まぁ、クシャルダオラを倒した事もあるし、俺達ならいけるさ」

 

「そうだ、俺達ならやれるやれる」

 

ショウジとギザロの会話が士気を高めた。

そう、俺とザック以外の者は思うだろう。

だが、黒龍はそれでは倒せない。

 

「どうしたリュウガ、黙りこくって」

 

「クシャルダオラごときで勇気づけていては、ヤツには勝てない」

 

「おいおい、これから倒すのに何言ってんだよ」

 

「そうだよ、同じ古龍なんだろ?」

 

「ではお前達は飛竜種という一括りで、イャンクックとアカムトルムを同族として見るのか?」

 

「このっ!言わせておけば!」

 

掴みかかってくるギザロ。

ザックが仲裁に入るが、それでも彼の興奮は収まらない。

 

「離せザック!こいつはぶちのめさないと気が済まない!」

 

「よせ、これから一丸となって戦うんだぞ!

リュウガ!お前も口が過ぎるぞ!」

 

「本当のことを言ってるまでだ」

 

「だからその態度が……!」

 

その後も喧嘩ムードは続き、夕食後も彼らと話すことは無かった。彼は早めに寝ると言い、寝室に飛び込んで行ったが、俺は何となく月夜を見たかった。

標高が高いため、少し肌寒いが満月が美しい。

雲海を下に、そらは満月。実に幻想的だ。

 

甲板で一人ボーッとしていると、横にカエデがやって来た。

 

「隣、良いですか?」

 

「既にいるじゃないか」

 

「良いという返事しか来ないから言ってるんです」

 

「ははっ、いい根性してるわ」

 

「何故、あのような事を言ったのですか?」

 

あのような事。先程の会議の話だろう。

まあ、普通の人が聞けば俺は調和を乱す邪魔者と扱うであろう。実際、俺もそんなやつがいたら殴る。

いや、もしかしてら縛り上げてガノトトスの餌にするかもしれない。

 

「そうだな、単刀直入に言おう。

俺とザックは一度黒龍と対峙している」

 

「っ、それは本当ですか?」

 

「このタイミングで詰まらない嘘はつかない」

 

驚愕に満ちた表情で、カエデは言う。

当たり前だ。伝説と対峙した者などそうはいない。

 

「その、どうでしたか?」

 

「何がだ?」

 

カエデがどうでしたかと聞くのは、含みがある。

実力か、見た目か、それともその両方か。

 

「黒龍と、戦った時のことです」

 

「そうだな。ヤツは生きた災害だ。いや、厄災の方が正しいか?」

 

そんなことはどうでもいいか。

 

「俺達は今回と同様、少数精鋭で向かった。

初めはたかが古龍だと思ったよ。クシャルダオラ、テオ・テスカトル、オオナズチ、ラオシャンロン、ジエン・モーラン、そんなヤツらを倒してきた俺達ならば倒せる、そう思ってたさ」

 

ごくり、とカエデが唾を飲む。

そんな音が聞こえた。

 

「だが、ヤツは強かった。いや、相手にされてなかったんだろうな。まず一人は食われた。一撃だ。

そしてもう一人は炎に焼き殺された。灰も残らないほどの業火でな。そして最後は踏み潰された」

 

カエデは青い顔で聞いていた。

 

「対峙したと言うよりかは、一方的に殺られただけだな」

 

「黒龍はそれほど強いのですか?」

 

「強い。その一言に尽きる」

 

不安を煽り立てるようであるが、事実ならば話さなければならない。

ヤツは、それほどまでに強いのだから。

 

「そう言えば、一人生き残った方に以前会いました」

 

「どうだった」

 

「狂ってました。突然叫んだり、泣き出したり」

 

「覚悟してかかれよ」

 

これ以上は語る必要が無い。

彼女も彼女なりに、決意を固めたのだろう。

どこか引き締まった表情で、室内へと戻って行った。

そう言えば、アオイはどうしてるんだろうか。

上位に上がったばかりとはいえ、まだ子供だ。

 

朝起きてるのか、歯を磨いてるのか。

あいつは女の癖に身だしなみを整えないから、髪の毛もボサボサになってるだろう。

いや、それよりちゃんと狩りは出来るだろうか。

道を間違えて、迷ったりしてないだろうか。

 

いつもなら、あいつがししょーししょーと、うるさい時間帯だ。

でも、風が吹く音だけでとても静かだ。

月が、俺を照らす。闇夜を照らす光だ。

アオイに、土産を買ってやらないとな。

 

 

 

 

 

翌日、ヤツとの決戦が近付いてきた頃。

シュレイド城跡に飛行船が停り、素早く降りて飛行船には帰ってもらう。

当たり前だ。黒龍がすぐそこにいると言うのだから。

 

「それでは、作戦ですが。剣士である我々ザックさん、私、ギザロさんが前衛。ガンナーのリュウガさん、ショウジさんが後衛でお願いします」

 

「分かった」

 

相変わらず、ギザロとショウジは俺を睨んでいる。

ヤツの恐ろしさを、言伝とはいえ知ったカエデは懸命に説明してくれたらしいが、二人には伝わらない。

当たり前だ。肌身で感じていないのだから。

 

「俺達は俺達でやる」

 

「皆で一丸となって戦うべきだ」

 

「お前に指図されたくない」

 

そう言って、彼らは別行動を始めてしまった。

俺の言い方が悪かった。もっと別の言い方があったのに。

 

「ザック、俺の言い方は悪かったな」

 

「いや、事実を言ったまでだ」

 

「俺への庇護じゃねぇのか?」

 

「俺は正しい方に味方するさ」

 

「お前らしいよ」

 

決戦前に、運ばれていた弾薬の確認をする。

その量が予定よりも少し少なかったが、先に行った彼らが持っていったろだろう。

 

「もう、あの人達勝手に…」

 

「いいさ、この前の余りがある」

 

前回の戦闘で投げ出された武器。

大砲の弾や、バリスタの弾が部屋の奥へ転がっている。

 

「それを使えば」

 

「量は足りるな」

 

弾薬の確認中、城が揺れた。

そして、けたたましくも甲高い、咆哮が轟く。

大気そのものが震える爆発のような声。

 

「この声…」

 

「黒龍だ。今日はここで寝て、明日に備えるぞ」

 

「はい」

 

暫くして、二人が帰ってきた。

 

「あっ、二人ともどこいってたんですか!」

 

「………」

 

ギザロは重症、血だらけでショウジに担がれていた。

それを見たカエデとザック、俺は薬と包帯で応急手当をする。

 

「な、何があったんですか!」

 

「黒龍と、やったな?」

 

こくり、ショウジは頷く。

血だらけではあるが、骨まで届いだだけなのと、内臓が少しやられている。

秘薬があれば、何とかなる負傷だ。

 

「あんたの言う通りだったよ」

 

「喋るな、内臓がやられてる」

 

「ヤツは、ヤツは生き物というレベルを超えてる」

 

「喋るな」

 

「ヤツは、ヤツは……」

 

がくり、と意識が途切れる。

問題は無い、死んではない。

 

「ヤツは…ヤツがたった一振でギザロがこうなった。

いや、かすっただけなんだ。ほんの少しかすっただけで、こんなふうになるなんて…」

 

自分の肩を抱き、ガタガタと震えるショウジ。

もう、使い物にはならない。

何とか応急手当てが終わり、一命は取り留めた。

がしかし、黒龍を怒らせたようだ。

忠告はしたんだがな。

 

「どうしますか、これから」

 

「明日明朝にヤツに奇襲を仕掛ける。

夜の間に大タル爆弾Gを並べ、翌朝黒龍ごと吹き飛ばす。そのあとはバリスタと大砲で撃ちまくる」

 

「真っ向勝負では勝ち目は無いからな」

 

「では、明日に…」

 

そこから夜になるまで、誰も喋らなかった。

カエデも、漸く実感したのだろう。

黒龍の恐ろしさの、真価を。

ヤツの事を思えば、全身が震える。

だが、不思議とアイツを思い出してしまう。

 

元気にしてるといいんだが、元気が取り柄のやつだ。

元気にはしてるだろう、きっと。

夜中になり、大タル爆弾Gを仕掛けに行く。

ヤツはぐっすりと眠ってはいるが、音を立てれば即死だ。

 

ゆっくりと並べ、キャンプに戻る。

 

「はあーっ、はあーっ」

 

「リュウガ、水を飲め」

 

「すまん」

 

ダメだ。ヤツの寝息を聞いただけで汗が止まらない。

冷や汗なんて人生でかいたことなんて少ない。

いや、ここで一生分流してしまうだろう。

 

「あと数時間で仕掛ける、いいな」

 

「はい」

 

そこからの数時間はあっという間だった。

瞬きしたぐらいの時間の早さで、流れてしまった。

夜明けの朝日が、黒龍を照らす。

 

「配置についてくれ」

 

静かに二人は配置につく。

黒龍の周りに並べられた爆弾目がけ、バリスタを発射する。

 

「ゴガアアアアアア!」

 

爆弾が連鎖的に爆発し、一つ爆裂すれば残り全てが爆裂する。寝ていた黒龍が立ち上がる。

凄まじく、大きい。そして翼だけでも並のモンスター程ある巨体が宙に浮いた。

そして、そのまま落ちた。着地、それだけで揺れる。

 

凄まじい質量が飛んで落ちればそうなる。

黒龍は前足を地面に付け、這うように俺をに向かってくる。その顔面にバリスタを撃ち込み、距離を取って回避する。

 

「ギャァァオオオオオオオオオ!」

 

黒龍が尻尾を薙ぎ払った。

たったそれだけで、崩壊していく城の壁。

それを見たカエデが、固まっていた。

 

「止まるな!潰されるぞ!」

 

弓で牽制しながら、カエデに激を飛ばす。

牽制になどなってはいないが、弓を当てる。

 

「リュウガ!大砲を撃ち込む!そこを退け!」

 

「分かった!撃て!」

 

ザックの放った大砲が黒龍の顔面にぶち当たる。

そして、運のいいことに黒龍が怯んだ。

脳をやられたのか、ガクガクと震えながらもがいている。

 

「今だ!一斉に仕掛けろ!」

 

怯んだ黒龍に対し、一斉にバリスタや大砲が浴びせられる。黒龍の片目は潰れ、翼は破れウロコは剥がれていく。

 

「一旦引くぞ、攻撃はやめろ」

 

「まだ、やれます!」

 

「よせ!深追いはするな!」

 

カエデだけがバリスタに張り付いていた。

今、今そんなことをしたら!

 

「不味い!黒龍が動くぞ!」

 

「どけ!」

 

カエデを蹴り飛ばす。が、黒龍の前足がオレの体を横に吹っ飛ばし、壁に叩き付けられた。

 

「リュウガさん!」

 

「構う、な。逃げろ」

 

くそ、骨にヒビが入った。

これじゃまともにやれないぞ。

 

「ギィィィィィアアア!」

 

怒る黒龍。もう、こうなれば誰にも止められないだろう。力と勇気を振り絞り、立ち上がる。

 

「ザック!カエデを連れて逃げろ!」

 

「っ!……分かった」

 

「殿は俺がやる!早く逃げろ!」

 

逃げていくザック達。俺に出来ることと言えば時間を稼ぐ事ぐらいだ。

逃げるザック達に向かって、ブレスを吐こうとする黒龍。させまいと、顔にバリスタを撃ち込む。

ブレスが口内で暴発し、ギロりと俺を睨む。

 

「お前の相手は俺だ」

 

その言葉を理解したのか、していないのか。

それは定かではないが、黒龍は俺に向き直り吠えた。

大気が震え、俺も震えている。

だが、ここで死ぬつもりは無い。

帰らないといけない場所がある。

 

帰ってやらないといけないやつがいる。

その辺に転がっている、誰の亡骸かも分からぬ骨から、一本の大剣を取る。

 

「行くぞ、黒龍」

 

一刀、俺は黒龍に振り下ろした。

アオイ、すまんな。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「や、やったー!ゲネル・セルタス倒したー!

ししょー、褒めてくれるかなー」

 

 



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ひねくれハンター弟子になる

 

黒龍に一刀振り下ろした瞬間。

人生が走馬灯のように見えた。

そう言えば、俺にも昔師匠がいたな。

もう、昔の話だけどな。そうか、師匠…。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ほら、しゃんとする!」

 

「いってぇな!何も叩くことねぇだろ!」

 

べちんと頭を叩かれ、激痛に悶える。

俺の師匠、ハルカの細い腕からどこからそんなパワーが出るの全くもって分からん。

 

「貴方が勉強しないからです」

 

「座学なんてつまんねぇ。狩りは強けりゃいいんだよ」

 

「またそうやってすぐに実力主義を持ち出す。

良いですか?基礎を怠る者は大成しませんよ」

 

師匠は口うるさい。俺より小さくて、強いけど。

俺は師匠に拾われた。親にも捨てられて荒んでた俺を拾ってくれた変わり者だ。

俺みたいな可愛げのないやつを拾うなんて。

 

「分かったよ。じゃ狩りに行こうぜ」

 

「何がいいですか?」

 

「んー、そうだな。リオレウス!」

 

「何を馬鹿な事を。先日ロアルドロスから逃げてきた貴方が言うセリフでは無いでしょう」

 

「う、うっせえ!」

 

そう、俺は先日ロアルドロスに負けた。

水の塊を飛ばされ、防具に付着するとあれは凄く重くなり、体力が大幅に削られる。

お陰でてんてこ舞いで、勝てなかった。

師匠が助けてくれなかったらきっと死んでた。

 

「今日はロアルドロスへのリベンジマッチです」

 

「よーし、やってやる!」

 

 

 

 

 

 

「無理無理無理無理ー!」

 

「何をしてるのですか、攻撃しなさい」

 

勢い良く狩りに出たは良いものの、ロアルドロス2頭に加え、ルドロス達に追いかけ回されていた。

なんで一体でも持て余すのに、2体も来て更に配下のルドロス達がいるんだ。勝てる道理がない。

 

「師匠、手伝ってくれよー!」

 

「自分で戦わないと開けない道もあります」

 

「師匠のアホー!」

 

反転して、ロアルドロスに向かい構える。

いいさ、少し前に貯金して買ったこの片手剣の錆にしてやる。1回言いたかった。

 

「おらっ!」

ロアルドロスのたてがみに当たり、血が吹きでる。

肉質が比較的柔らかい場所なので、簡単に刃が通る。

しかし、ロアルドロスも黙ってはいない。

横にローリングしながら推し潰そうとしたり、口から水の塊を吐き出しては攻撃してくる。

 

「2対1なんて、出来っこない!」

 

「その出来っこないをやるんです」

 

「あー!もう分かったよー!」

 

ガムシャラになって、剣を振るう。

ロアルドロスには当たらない。

また、ローリング攻撃を仕掛けてくるが、横っ飛びに回避する。そして、目を回したのか動きが鈍くなるロアルドロス。

 

「今だ!」

 

鈍くなった瞬間、片手剣をロアルドロスの喉元に突き立て、ぐりぐりと抉る。

血がドバドバと溢れ出て、ロアルドロスが絶命する。

 

「ギォエア」

 

「や、やった!ロアルドロスを倒した!」

 

「ギッ、キュイイイイイイ!」

 

残ったロアルドロスも逃げていく。

俺の強さに恐れを為したか。

突如、ズン!と大地が揺れた。

ゆっくりと振り返ると、真紅の鱗を持つ空の絶対的な王者、リオレウスがいた。

 

俺に逃げたんじゃない、コイツから逃げたんだ。

 

「グオオオオオオオオオオオ!」

 

「うわっ!」

 

俺は腰を抜かしてしまった。

俺はこんなヤツを狩ると言ってたのか!?

こんな化け物、勝てっこない。

でも殺らなきゃ殺られる。殺るしかない。

「出来っこないを、やるんだ」

 

リオレウスに向かっていくが、ペしんと尻尾を使って弾かれた。まるで、箒で塵をはくかのように。

 

「よく頑張りました。えらいです」

 

倒れ伏す俺の前に、師匠が仁王立ちで構える。

背中にかけてある、スラッシュアックスを構え、リオレウスに向かって走り出した。

 

「やっ!」

 

その軽い一言で、斧モードのスラッシュアックスをリオレウスの頭に叩きつけた。

その瞬間、メギィ!という鈍い音共にリオレウスが倒れた。

 

「ふぅ、一件落着です」

 

頭から血を流しながら、白目を剥いて絶命するリオレウス。師匠、こんなに強かったのかよ。

 

「師匠!今のどうやったんだ!?」

 

「教えて欲しいですか?」

 

「知りたい知りたい!教えて欲しいです!」

 

「なら、毎日私の言うこと聞きなさい。

良いですか?破れば教えませんからね」

 

「聞きます聞きます!」

 

「じゃ、疲れたのでおんぶして下さい」

 

「えっ、自分で歩けよ」

 

「教えなくてもいいんですかー?」

 

「わ、分かりました!おんぶします!」

 

その日から俺は師匠の言うことやること、全部真似した。お陰で強くなったし、誰もが俺を認めてくれるようになっていた。

でも、師匠はやっぱりいつでも俺を叱ってくれた。

 

「何ですかさっきの狩りは。まだまだ甘いです

甘ちゃんの甘々のあまっちゃんですね」

「甘が多いぞ、師匠」

 

「それだけ甘いんです」

 

師匠は少し変わってた。

言い回しとか、行動とか全部。

でも、凄く好きだった。

だから、分かってくれると思ってたんだ。

 

「師匠、俺さ、G級になりたいんだ」

 

「ダメです」

 

冷たい一言。師匠もG級だ。だから、師匠の背中を追いかけて俺は生きていたのに、全部否定された気がした。

 

「な、何でだよ。俺だって師匠みたいになりたい」

 

「G級は危険なんです」

 

「師匠もいるじゃねぇか。俺はG級になる」

 

「ダメと言ったらダメなんです!」

 

「なんでだよ!師匠のわからず屋!」

 

「あっ、待ちなさい!」

 

飛び出すと、外は雨だった。

そんなことは気にらない。師匠なら応援してくれると思ってた。師匠なら分かってくれると思ってたのに。

雨が強くなる。憂さ晴らしに狩り場へ出た。

ロアルドロスが孤島で暴れていると聞いたので、狩ることにした。

 

急ぎ孤島へ向かい、イライラをぶつける。

あの頃苦労したロアルドロスも、今となっては弱い。

あっさりと倒した後、剥ぎ取りを済ませて帰還準備を整える。

 

「師匠、なんで分かってくれないんだよ」

 

あの頃必死で逃げ回ってた相手も、楽に倒せるようになったのに。

そんな時ら孤島の奥地からラギアクルスが出てきた。

丁度いい、こいつも憂さ晴らしに付き合ってもらおう。

そう、ラギアクルスに剣を突き立てた瞬間、おれは吹き飛ばされた。

 

「がはっ!」

 

何が起きたのか分からない。

ラギアクルスなら、以前にも狩ったことはある。

しかし、こんな衝撃は初めてだ。

だいたい、上位のラギアクルスでもこんな攻撃…。

ハッと、嫌な予感がした。

 

「G級…のラギアクルス…」

 

直感で悟った。コイツには勝てない。

G級とはここまで恐ろしいのかと、戦慄した。

有り得ない。こんな化け物がいるなんて。

 

「ガァ!」

 

「ぐふっ!がはっ、ぐえっ!」

 

前足で弄ばれるかのように踏みつけられる。

ダメだ、反撃出来ない。強すぎる。

俺はなんて馬鹿なヤツなんだ。

師匠の忠告も無視して飛び出して死にかけてる。

これは罰だ。育ててくれた恩を仇で返した。

 

ラギアクルスが雷を蓄電し始めた。

雷のブレスで俺を殺すつもりだ。

もう、動けない。ラギアクルスがブレスを放つ。

目を瞑り死を覚悟したが、いつまで経ってもブレスは俺にも当たらない。

 

恐る恐る目を開けると、そこには小さい全身焼け焦げたハンターがいた。

 

「全く、しょうがない子ですね…あなたは」

 

「師匠?」

 

「勝手に飛び出して、死にかけて」

 

「師匠!」

 

倒れた師匠を抱き寄せた。

助からない、肌に触れた瞬間に分かってしまった。

 

「なんで、なんで俺なんか助けたんだよ!

俺は、俺は師匠の言うことも何も聞かないし、とんでもないヤツなんだぞ!」

 

「そう、本当にどうしようもない子。

ワガママだし、自信過剰。果てには勉強嫌い。

でもね、私といてくれた」

 

「な、何言ってんだよ。俺を、俺を拾ってくれたのは師匠じゃないか!」

 

「違いますよ。私は独りだった。友人もいない、家族もいない、そんな私といてくれたのはあなたです」

 

「違う、俺は師匠といたから…ッ!」

 

唇に、柔らかく湿ったものが触れた。

 

「リュウガ、愛して…まし…た…よ」

 

カクンと、師匠の体から力が抜ける。

 

「ああっ…ああっ…」

 

分かってしまう。まだ感じる温もりが、冷たくなっていくのが。師匠の体から、師匠が抜けていくのが。

 

「うぉぉおおおおおおおおおおおおおおお!」

 

俺は訳も分からず、ラギアクルスに斬りかかった。

一心不乱に攻撃して、何がなんだから分からなくなった。気が付けば、足元は血の海で埋まっており、ラギアクルスの死体があった。

 

「師匠…」

 

師匠の亡骸を抱いて、集会所に戻った。

皆、師匠が死んだと聞いても何も言わなかった。

それどころか、悲しんでくれなかった。

 

ーーはっ、あの変わり者とうとう死にやがったぜ

 

ーーラギアクルスごときに殺されたんだって?

 

「黙れよ」

 

「あ?」

 

「お前に、お前なんかに師匠の何がわかるんだよ!」

 

師匠を馬鹿にしたやつは片っ端から喧嘩をふっかけた。

半殺しにしてやったりしたし、半殺しにもされた。

師匠の墓を、家の裏に立てた。

誰も、誰一人として手を合わせに来なかった。

師匠、俺はとんだ馬鹿な弟子だったよ。

 

師匠には迷惑かけてばっかだった。

師匠の遺品整理をしてた時、一冊の日記を見つけた。

とても分厚く、古びている。

開けてみると、師匠が小さい頃から付けていた日記らしい。

 

ーー5月5日男の子を拾った。小さくて、元気が無い。

捨てられたらしく、私と同じ一人ぼっち

 

ーー5月10日私を師匠と呼び出した。師匠か、いいな。

 

ーー6月7日 とても元気でわんぱくな子だ。

将来、いいハンターになりそうだ。

 

ーー8月9日 ハンターになりたいと言い出した。

危険だけど、師匠と同じがいいと言った。

 

ーー10月10日 ハンター試験に合格した。

とても喜んでいて、喜びすぎて失神していた。

私も失神しそうになったが、舌を噛んで耐えた。

 

そこから、パラパラとめくっていく。

 

ーー5月5日あの子と会った日だ。G級になりたいと言っていた。危ない。嬉しいけど、危ない。

でも、あの子と肩を慣れべて戦いたい私もいる。

だから、ここで書く。愛するあの子の為に……

 

日記はそこで終わっていた。

途中までだから、書いてる途中に飛び出したんだろう。

 

「師匠、俺G級ハンターになるよ。それでさ、師匠が強くしてくれた。ハルカってハンターが俺を育てたんだって言ってやるんだ。だからさ、見ててくれよな」

 

それから月日が流れ、家の裏の墓の掃除に行った時、誰かが手を合わせていた。

師匠の墓なんて、誰も来なかったのに。

青い髪の少女が、長い間しゃがんで手を合わせていた。

 

「君、どっから来たんだ?」

 

「えっ、ああ、あのあの」

 

「大丈夫、悪いことはしない。

うちの墓に手を合わせるなんて、珍しいなと思っただけだ」

 

「それが、このお墓見てたらなんだか悲しくなっちゃって、つい手を合わせていたんです」

 

「そうか、それでこの村に何か用か?」

 

「はい!リュウガって方を探してるんです」

 

「ん?リュウガって俺だが?」

 

「あっ、そうなんですか!?じゃあ、お願いがあります!私を…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「弟子にしてください!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

師匠の墓の前で、土下座した少女。

墓を見れば、何故か師匠が笑った顔を思い出した。





ひねくれハンター編は終わりです

あとからちょっとした別ストーリーあります

気が向いたら、ひねくれハンターの続きも書きます


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ひねくれハンターさ迷う

ふと目を覚ますと、何も無い場所に俺はいた。

真っ白な空間だったから、雪国にでもいるのかと思ったが、寒くも暑くもないので違う。

暫く歩いていると、段々と周りの景色が見えてきた。

 

「ここは…」

 

ここは俺の住んでいた村だ。あぁ、ただの白昼夢か。

そう思い、家に向かって帰る。

ギシギシと鳴るボロい戸を開けると、いきなり叫び声が聞こえた。

 

「こら!こんな所に来ては駄目じゃないですか!」

 

「し、師匠……」

 

「全く、本当に貴方は昔からふらふらと…」

 

「師匠?」

 

こんな所に来ては駄目って、ここは俺達の家じゃないか。俺はいつの間にか勘当されてたのか?

 

「師匠、済まない。何言ってるか分かんない」

 

「はぁ、でも良かった貴方は立派に成長してくれて」

 

師匠にそっと抱きしめられた。

優しく抱きしめられ、ほんわか暖かい。

 

「リュウガ、もっと顔をよく見せて下さい」

 

そっと顎に手を添えられ、じっと見つめられる。

そんなに俺の顔が気になるのか。

いつもと変わらない、普通の顔の筈なんだが?

 

「リュウガ、貴方に会えたのは嬉しいです。

でも、まだ貴方はこちらに来てはいけない」

 

「まさか師匠、G級に上がるのまだ怒ってるのか?

大丈夫だって、俺はG級に上がったら……」

 

俺はG級?待て待て、いつから俺は師匠G級に?

 

「貴方にはまだ、帰らなければいけない場所があるはずです」

帰らなければならない場所は、この家だ。

そう、師匠との家。

 

「貴方には、帰りを待つ人がいる」

 

「帰りを待つ人?」

 

「そう、思い出してみてください。貴方を師匠と懐く人がいたはずですよ」

 

俺を師匠と?そんなやつは…

 

ーーししょー!朝ご飯ですよー!

 

ーーししょー!お背中流します

 

ーーししょー!今日は頑張ったので頭ナデナデしてください!

 

「アオイ……」

 

「そう、貴方はまだこちらに来ては行けません。

貴方は女の子を泣かすような悪い子ですか?」

 

「師匠、俺行くよ。今度は胸張って会えるように、なってるからさ。だから…俺…」

 

そこまで言って、師匠はそっと人差し指で俺の口に当てた。

 

「それ以上は、皆まで言うな、ですよ?」

 

「うん、ありがとう」

 

師匠は俺の頭を撫でた。優しく愛でるように。

俺は照れ臭かったから、俯いてバカと言ってしまった。

 

 

 

 

 

「…………生きてんのか、俺」

 

気が付くと、俺は砂浜の上で寝っ転がっていた。

と言うより、打ち上げられただけなんだろう。

やれやれ、昔海賊が無人島に漂流する話を本で読んだが、正しくそれと同じだな。

 

「にゃー!人が倒れてるにゃー!」

 

「にゃにゃ!凄いけがにゃ!」

 

「担架!担架はどこにゃー!?」

 

何やらにゃあにゃあと騒がしいな。

アイルー達、か。

 

「にゃ!大丈夫かにゃ!?」

 

「あぁ、生きてはいるな」

 

「にゃー!腕が変な方に……」

 

「あぁもう心臓の弱いやつは来るにゃ!」

 

腕が変な方に向いたいたのか。

確かに向いているな。ついこの前死にかけたんだ。

腕が変な方に向いていようと気にはならない。

命があっただけ儲けものだ。

 

「にゃ、ハンターさん大丈夫かにゃ?」

 

「あぁ、すまんな」

 

アイルー達に運ばれ、巣穴へ寝かされた。

全く、まさか今まで見向きもしなかったヤツらに救われるとはな。

 

「にゃ、今からスープ作るにゃ」

 

「お前達、料理が出来るのか?」

 

いや、ベルナの龍歴院近くにも、ポッケの方にも飯を作るアイルーはどこにでも結構いたな。

近頃は有名な村ならどこにでもあるんじゃないか?

 

「すまんな、助けて貰って」

 

「いいにゃ。困ってるヤツを助けるのはアイルーもメラルーも関係無いのにゃ」

 

「ははっ、カッコイイ事言うな、お前」

 

出されたスープを飲み干し、腕を見てみる。

折れてると思っていたが、どうやら脱臼しているだけらしい。有り得ない方に曲がって見えたのは、恐らく気の所為だろう。

 

「むっ……ふんっ!」

 

ゴキコキン!と気味の悪い音と共に、外れた骨がきっちりと収まった。

しかし、俺は本当に生きているのか……。

伝説に挑み、敗れたというのに。

 

「そう言えばハンターさんはなんで砂浜に転がってたにゃ?」

 

「あぁ、狩りをしくじってな。生きてるのが奇跡だ全く」

 

果たして俺は黒龍を倒せたのか、はたまた俺は負けて終わっただけなのか。

いや、生きてるのならば良い。

大事なのは、生きているという事だ。

 

「にゃ、大変だったにゃね」

 

「あぁ、だが良い」

 

「にゃ?」

 

「俺には帰ってやらないといけないヤツがいる」

 

「にゃー、憧れるにゃー」

 

くねくねと体を揺らすアイルー。

何だか、可愛いヤツらだな。

 

「にゃ、そう言えば名前はなんて言うにゃ?」

 

「リュウガ、リュウガだ」

 

「にゃ!リュウガってあの竜殺しのリュウガかにゃ!?」

 

「あぁ、そんな名前知らないが一応はリュウガだ」

 

知らない間にとんでもない名前付けられたな。

くぅ、他人と関わるのを面倒がったのが仇になったな。

 

「お前達はなんて言うんだ?」

 

「ボクはイスルギ、料理係のライメイ、掃除係のヒバナ、それから食料調達係のツムジにゃ」

 

「良い名前だ。恩は返す」

 

そこからアイルー達、イスルギ達との生活が始まった。

小さな島らしく、住んでいるアイルー達もイスルギ達4匹のみらしい。

 

「それから、最近凄く困ってるにゃ」

 

「困ってる?何かあったのか」

 

「にゃ、ここは大して大きな島じゃないんにゃけど、ラギアクルスが住み着いて困ってるのにゃー」

 

「ラギアクルス、か。何かと大変だな」

 

ラギアクルスは海の王者とも呼ばれるモンスターだ。

近頃ニャンターと呼ばれる狩り専門職のアイルーメラルーがちらほら見られるが、それでもラギアクルスの狩猟は難しいだろう。

 

「倒してやろうか?」

 

「えっ、そんな怪我もしてるのに」

 

「治ればラギアクルス程度すぐだ」

 

「にゃー!ありがとにゃー!」

 

飛びつかれ、頬ずりされる。

ふむ、野生のくせに中々毛並みがいいな。

抱いて寝たいな、このモフモフ感。

 

「いつもこの島の裏の洞窟に来ては暴れるにゃ。

あそこはボク達の魚の漁場になってるのにゃ」

 

「なるほど、先ずは偵察だな。お前達は待ってろ」

 

場所だけ教えて貰い、裏の洞窟とやらを目指す。

確かに大きな空洞になっていて、魚は集まりそうなんだが…どうもおかしい。

入り口が、ラギアクルスの成体では通れないのだ。

ラギアクルスのどの小さいサイズでも、無理だろう。

 

「うーむ、潜れば広いのか?」

 

かと言って今の体で潜れば確実に溺れ死ぬ自信があるので、洞窟の中に入ってみる。

中はそこそこ広いので、入ってしまえばラギアクルスでも動くことは可能だ。

丁度探索をしていた時、ザバァン!という水飛沫。

 

岩陰に隠れ、ラギアクルスの様子を見た瞬間、俺は思わず驚いて言葉を失った。

アイルー達は、何故こんなにも大事な事を黙ってたんだ。この、このラギアクルスは……

 

 

 

「キュアアアアア」

 

 

子供じゃないか……。

待て待て勘弁してくれ。

まさかラギアクルスの幼体だったとは…。

俺にとっては縁とゆかりしかないヤツだが、これはちょっと予想外過ぎた。

 

「キュ?」

 

「む」

 

俺を見た途端、目を爛々と輝かせながら、ラギアクルスが近付いてきた。

まさか、アイツらはコイツに負けたのか!?

馬鹿にする訳じゃないが、仮にも飛竜が来たら確実にアイツらやられちまうぞ。

 

「キュアー!」

 

「ええい、あっち行け」

 

まだ発達しきっていない手足を動かし、よちよちと着いていくる。ラギアクルスの場合前足と後ろ足か。

 

「鬱陶しい、来るんじゃない」

 

「キュアー!」

「…」

 

「キャンキュン!」

 

「あー!もう分かったから着いてこい!」

 

巣穴に戻ると、イスルギ達が近寄ってきた。

 

「どうだったにゃ?」

 

「手懐けた」

 

「にゃ!?ホントかにゃ!?」

 

「まぁ、あのサイズだからなー」

 

流石に成体ならば仲間にすることは難しい。

それほどの技術もないからな。

 

「まぁ、これからは仲良く暮らすんだぞ」

 

「ぜ、善処するにゃ…」

 

 

 

 

 





暫く続きます

あと2話ぐらい


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ひねくれハンターハンター帰還する





イスルギ達とも長い付き合いになった。

懐いていたラギアクルスもいつの間にか大人になり、それなりのサイズになった。

名前はシーラ。一応メスだがちょっとやんちゃだ。

 

「イスルギ、少し話がある」

 

「何にゃ?」

 

「俺はこの島を出ようと思う」

 

少し驚いた顔をしたあと、寂しそうに俯くイスルギ。

他のアイルー達も同じような反応だ。

 

「そうにゃね、リュウガは元々帰らなきゃいけない場所があるんにゃもんね」

 

「あぁ、お別れだ」

 

「元気出にゃ。もう、会えないかもしれにゃいけど」

 

「何馬鹿な事を言っている。お前達も出るんだ」

 

「にゃ?」

 

「知り合いにネコバアという人がいる。

そこのばあちゃんは沢山のアイルーが暮らしてるところに居るし、またいつでも会いに行ける」

 

「ホントかにゃ!?」

 

「嘘はつかない」

 

名前はなんて言ったか忘れてしまったが、住んでいる住民全てがアイルーメラルーで構成されていたはずだ。

ネコバアを抜いて。

 

「でも、どーやって行くにゃ?」

 

「そいつはこいつに乗ってさ」

 

「ギュアアアア!」

 

昔みたいに巣穴に体は入れれないシーラ。

穴に顔を突っ込んで、最近では顔だけ出ている状態で集まっていたことが多い。

これを見ていると、ダラ・アマデュラのトラウマを思い出してしまう。

 

「さぁ、全員シーラの背に乗れ乗れ」

 

荷物をまとめ、シーラの背中に乗っていく。

俺の方は荷物は無い。帰ったらアイツはどんな顔をするだろうかと、少し不安になる。

島の名前は思い出せないが、場所は覚えている。

大陸から南西にひたすら向かった先の島だ。

 

シーラが海竜種であるため、泳ぎはとても速い。

お陰でアイルー達のいる島まで早く到着出来た。

 

「にゃ、チコ村にハンターさんが来るにゃんて久々にゃ」

 

そうだったそうだった、チコ村だ。

もう何年も前に訪れたっきり来てなかったな。

 

「そこの猫ちゃん、この子達をここで住まわせてやって欲しい。料理掃除に洗濯、家事や食い物の採集までエキスパート揃いだぞ」

 

「にゃ、仲間が増えることはいいことにゃ。

ボクが小さい頃に来てたハンターさんも言ってたにゃ」

 

「へー、どんな人なんだ?」

 

「とても小さくて、スラッシュアックスを抱えた女ハンターさんにゃ。誰にでも敬語で、とても親切だったにゃ。元気にしてるといいけどにゃー」

 

「元気に……してるさ」

 

きっと、向こうでは元気にやってるだろう。

師匠……ありがとうございました。

 

「よし、俺はこれから故郷の村に帰る」

 

「また、会えるにゃ?」

 

「寂しそうな顔すんな。今生の別れじゃあるまいし」

 

「にゃ、そうにゃね」

 

「じゃあな」

 

「今度会いに来てにゃよー!」

 

シーラに乗り、俺の村を目指す。

内陸部に位置する村だが、そこそこ大きい村だ。

ラギアクルスも通れる大きな道があるため、シーラのせに背に乗り、村に向かう。

流石に村にシーラが入っては大問題になるため、外で待機させる。

 

「懐かしいな」

 

どれほどの時が経ったのだろう。

俺は、どれほど時を経てここに来たのだろうか。

涙が滲み出てくる。

 

「アイツに会わないと」

 

そんな気持ちというか、使命感に駆られた。

家に向かい、入ろうとしたが鍵が閉まっている。

今は夕方だ。あいつも狩りに出ているであろう。

だが、この戸には誰も知らない開け方がある。

鍵がかかっている時、2回引いて3回押すと開く。

 

これは鍵の取り付けが甘いらしく、泥棒に知られたらいけない話であるが、まあ気付くことも無いだろう。

中に入れば、きちんと整理整頓されていた。

壁に立て掛けていた剣が無くなっている。

アオイのヤツが使っているのだろうか

師匠の墓を見ても、きちんと清掃されている。

 

あいつにはもう何年も前に師匠の話をしたっきりだったが、きちんと守ってくれているんだな。

 

「集会所、行くか」

 

家からいつもアオイが飛び出していた道。

少し集会所までは下り坂になっていて、小さい体をぴょんぴょんと跳ねさせて走っていたな。

集会所に入れば、知っている面々もいたが大半が知らないヤツらだった。

 

「受付嬢、ここにアオイというハンターはいるか?」

 

「ええ、いらっしゃいますよ。最近はお弟子さんも出来て、G級ハンターとして大活躍です」

 

「G級……あのひよっこがか」

 

「え、ちょっと、あなたまさか………!?」

 

「少し静かにしろ」

 

「アオイちゃん、泣いてましたよ。ゲネル・セルタスを上位に上がって直ぐに倒したはいいけどししょーが褒めてくれないって」

 

「そのツケは今この場で払う」

 

受付嬢を他所に、集会所横の酒場に入る。

ワイワイと狩ったモンスターの自慢や、武器を見せびらかしたり愚痴を零すハンター達。

その中でも、ひと目でわかるヤツがいる。

 

ーーにゃははー!もっと酒持ってきらしゃーい!

 

ーーお師匠、酔いすぎですよー

 

ぐわんぐわんと全身を揺らす飲んだくれ。

ジョッキに注がれた酒を浴びるように飲んだのか、顔が赤い。

 

ーーごめーん、先に帰っててー

 

ーーは、はい。遅かったら迎えに来ます。

 

どてん、とテーブルに突っ伏す。

全く、女が顔を大事にしないとはな。

多少出るとこ出て、背が伸びても中身はあの頃のままか。

 

「はぁ、ダメだなぁ私」

 

「そんなことない、お前は頑張ってるよ」

 

「そうかなー」

 

「それに、お前は上位に上がって直ぐにゲネル・セルタスを討伐したんだろ?」

 

「そーだけどさー」

 

相変わらず、自分には厳しいやつだな。

のほほんとしてて、間抜け面晒してるくせによ。

 

「まぁ、3日もかかって倒したのは及第点だが、乱入してきたゲネル・セルタスを倒したのは満点だ」

 

「なんでそんな昔のことを褒めるの?」

 

師匠が弟子の頑張りを褒めないハズが無いだろう。

 

「お前が褒めてもらってないって泣いたらしいからな」

 

次の瞬間、顔をガバッと上げて俺を見つめるアオイ。

ふふっ、相変わらずヘッタクソなペイントじゃないか。

あぁ、頬に傷が付いている。女の子の大事な顔に傷を付けたモンスターを八つ裂きにしないと。

そして、うるうると瞳をうるわせ俺の胸に飛び込んできた

 

「ししょー!」

 

「おわっ!?」

 

思ったより激しい抱きつき、というかタックルに近い。

 

「ししょー!ししょー!」

 

「だー!くっつくな!暑苦しいぞお前!」

 

「ししょー!」

 

「ししょーしか言えねぇのか!」

 

本当は俺の胸で泣かせてやりたい。

この手でめいいっぱい抱きしめてやりたい。

だけど、もうその時期は過ぎた。

少しだけ強引にアオイを剥がす。

 

「ししょー!お久しぶりです!」

 

「今回は本当に久しぶりだな」

 

あの頃は朝会ってなくても久しぶりと言うようなヤツだったが、今回は長かった。そう、あまりにも。

 

「ししょー!お家に帰りましょう!また2人で暮らしましょう!あ、今は3人か」

 

いいな、師匠と弟子、そしてそのまた弟子と3人暮らし。俺からすれば夢のような暮らしだ。

でも…

 

「悪いな、それは出来ない」

 

「どうしてですか!?」

 

もう、この子は俺の手を離れてしまった。

俺の手がないと生きていけないなんて、俺がこの子といたいがための嘘だった。

 

「お別れを言いに来たからだ」

 

「お別れ?」

 

「ずっと気になっていた。お前が一人でやっていけるのか。いや、それよりもゲネル・セルタスを倒したことを褒めてやりたかった」

 

「ううっ、ししょー!」

 

すまん、アオイ。雛はいつか親の巣から飛び立たなきゃいけないんだ。親だって苦しい。

だけどな、子供が飛び立つのを親が止めちゃダメだ。

そう、俺はすることは歩み出せないコイツの背をそっと優しく、それでも力強く押すことなんだ。

 

「泣くなバカ、代わりにこれやるよ」

 

俺の師匠から貰ったペンダントだ。

俺の師匠は手先が不器用だったから、不細工な形だが、気持ちだけならばどの宝石にも勝る。

 

「お守りだ」

 

「あ!ししょー!どこに行くんですか!?」

 

「じゃあな」

 

そう、俺が踵を返した瞬間アオイが倒れた。

酔いで潰れたのか、ぶっ倒れた瞬間に渡したはずのペンダントが俺の額に当たった。

師匠、こいつを家まで送れってか?

 

「ったく、いつまでたってもアオイはアオイだな」

 

アオイを背負い、家に向かう。

空を見あげれば、星空が見える。

 

「覚えてるか、アオイ。お前がリオレウスに襲われた時もこうやって背負いながら帰ってきたんだぞ」

 

あの時は本当にこっちまで死ぬかとも思った。

火竜のブレスをまともに受けるバカはコイツぐらいだ。

ま、俺みたいに小便チビりかけたよりマシだがな。

家に入ると、先程のアオイの弟子が本を読んでいた。

俺が昔、読んでいた本だ。タイトルは、草原の命。

 

って、どーでもいいか。

 

「えっと、あなたは?」

 

「すまん、こいつの師匠だ」

 

「えっ、お師匠のお師匠!!」

 

「しー、アオイが起きるだろ」

 

「す、すみません」

 

どこか、小さい頃のアオイに似ている。

何にでもオーバーなリアクションで、他人思いで、そしてどこか抜けている。

 

「でも、あなたは死んだんじゃ?」

 

「あぁ、死にかけたな」

 

三途の川を渡るとこだった。

 

「な、なら早くお師匠に顔を見せて上げてください!

お師匠、いつもあなたの話しかしないんです」

 

「ははっ、そいつはありがたいが俺はもうここを去る。それがこいつのためだ」

 

最後にペンダントを机に置いて、戸に手をかける。

振り向くと、気持ち良さそうに寝ているアオイ。

間抜け面め、そんなんじゃ男は出来ないぞ。

まぁ、出来たらいつでも殴りに行くがな。

 

「んんっ、ししょー…むにゃむにゃ」

 

半分開けていた戸を急いで閉め、アオイを抱きしめた。

 

「アオイ、アオイ。こんな俺を、俺を許してくれ!

風邪ひくな、飯はちゃんとよく噛んで食え。

狩りの支度は怠るな。調合は調合書をよく見ろ。

それから、それからー」

 

だめだ、言葉がまとまらない。

このままでは俺は明け方まで話し続けるだろう。

 

「アオイ、愛してる」

 

最後にぎゅっと力いっぱい抱きしめた。

大丈夫だ、俺達ハンターである限り、いつでも会える。

そん時は見せてくれ。

G級へと上がったお前の実力を。

そして倒せ、俺が2度も倒せなかった黒龍を。

 

「アオイを、頼む」

 

「はい」

 

家を出ると、家の前に人影が見える。

誰かと思って近付けば、赤い鎧が見える。

 

「ザックか、久しいな」

 

「生きていたとはな、リュウガ。

なんだその鼻水やら涙やら色んなものが出てきた不細工な面は」

 

「うるせぇよ、ばーか」

 

互いにがははは!と高らかに笑い合い、何故か握手していた。

 

「達者でな」

 

「ばか、いつでも会えんだろ?俺達はハンターだぜ?」

 

「ふっ、死人が面白いことを言う」

 

「生きてるっつーの」

 

「はは、悪い悪い」

 

「アオイを頼むぞ」

 

「初めはお前、亡くなったハルカさんに似ているから弟子にしたと言ったな?ホントのとこ、どーなんだ?」

 

「さぁ、どうだろうな」

ザックと別れ、村の前で待っていたシーラに飛び乗る。

アオイ、強く生きろとかハンターの高みへ目指せとは言わない。でも、お前と肩を並べて戦う日を望んでる。

俺の師匠が、俺とそうなることを願ったように。

 

「さーてシーラ、次はどこ行こうか」

 

「グオオオ」

 

「ははっ、そうだな。西へ東へ北も南も行ってみっか」

 

遠くなっていく村。聞こえなくなる音。

アオイ、また会おうな。

 




ちなみに、アオイちゃんはたぁー!の一言で言わくずしたり、泣くだけで辺りを揺らしたり、後にギルドの親方になったりはしません

…多分

上記のネタがわかる人、ポケダン経験者です

ちなみに、この話を書いててそっちの方思い出したのでパクリとかじゃないです

感想待っちょりもす


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ひねくれハンター 再会する

「モンスターの調査?」

 

「はい、近頃多くて…」

 

仕事の都合で来ていたユクモで、そんな話を聞いた。

調査ってのはギルドナイトの仕事で、俺達ハンターの仕事では無い。

 

「ギルドナイトはどうした?」

 

「それが、ことごとく倒されてしまって…」

 

「ギルドナイトがか?」

 

それはおかしな話だ。

ギルドナイトは腕利きのハンターが集められた、言わばエリート集団。

まぁ、その分お高く止まってるからハンター達からは嫌われがちだが。

 

「それは古龍でも出たのか?」

 

「いえ、同地区にジンオウガ、ライゼクス、ブラキディオス、ティガレックス希少種の4頭が集まってまして、特に人が襲われたとかそういった情報は聞いてはいないのですが、危険だということで調査を……」

 

「妙だな、ライゼクスはともかくジンオウガは縄張り意識の強い種だ。ほかの3頭がいれば一触即発間違い無しのはずなんだがな」

 

ジンオウガはモンスター界でも珍しい、牙竜種である上に、縄張りという事に対してこだわりの強いモンスターであり、縄張りに侵入してきた者は誰であろうと牙を向くようなヤツだ。

近くに3頭も大型の竜達がいて黙ってるはずがない。

 

ましてやそのうちの2頭は獰猛で有名なティガとブラキディオス。

どちらも縄張りという観念は薄いものの、 相手が古龍でも無い限り喧嘩をふっかけるような竜だ。

どちらも特にこれといった動きを見せないのはおかしい。

 

「別に調査する点は構わないんだが、調査隊に言っておけ」

 

「なんと言えば?」

 

「臨時収入出せってな」

 

「あはは、伝えときます」

村の入り口で待たせていたシーラに飛び乗り、村を降りていく。孤島のエリアにいるらしいが、相手が相手だ。

シーラは戦闘に参加させるのは少しばかり不味いか?

幸い孤島は周りが海に囲まれているから、いざとなれば海に飛び込めばシーラの独壇場みたいなものか。

 

「シーラ、無理だと思ったら下がれよ」

 

「グオオン」

 

「へいへい、俺も気を付けますよ」

 

孤島は本来船でしか行けない場所であるが、シーラのいる俺にとっては関係が無い。

その代わり目立つ為、大型モンスターに見つかりやすいという難点もあるものの、ラギアクルスに喧嘩を売るようなモンスターは少ない。

 

つまり、船よりも安全かつ快適に行けるわけだ。

蓄電殻を触ると少し痺れるため注意がいるが。

 

「よし、様子見だからお前はここで待ってろ」

 

「ギュウウ……」

 

「大丈夫だ。最悪こやし玉で逃げる」

 

昔は逃げず、退かずが美学だと思っていた時期もあったが、命あってのこの生業だからな。

そう易々と無茶は出来ない。

そう言えば、応援のハンター一人を寄越すと言っていたが、まともなのが来るんだろうな。

 

足跡を探して、孤島エリアを歩き回る。

一つはブラキディオスのを見つけ、その真横にティガレックス希少種の物が。

足跡が多数あるが、全て2頭の物だ。

それに、何か争った形跡も一切無い。

 

たまには仲良くしたい個体でもいたか?

 

「ひゃあああああああ!」

 

「ギシャアアアアア!」

 

「ちぃ、ったく騒がせやがる…」

 

どこからともなく女の悲鳴と、ライゼクスの咆哮が聞こえてくる。

その悲鳴を聞きつけ、シーラも陸へ上がってきた。

 

「行くぞ」

 

「ギャオオオオ!」

 

シーラに飛び乗り、悲鳴と咆哮の元へ向かう。

少し開けた場所へ向かうと、ジンオウガの装備に身を包んだ女性ハンターが、ライゼクスと雷狼竜の挟み撃ちにあっていた。

 

「頭伏せてろ」

 

シーラの背中から、弓の剛射を放つ。

限界まで矢を引き絞る事により、放たれる弓として最大火力の射撃。

射撃はジンオウガにはかわされたが、ライゼクスは大きく後退した。

 

「はぁ、はぁ、あ、ありがとうございます」

 

「良いから乗れ。囲まれたぞ」

 

「え?」

 

辺りには、四方をライゼクス、ジンオウガ、ブラキディオス、ティガレックス希少種が囲んで陣取っている。

 

「アオイ、お前ならここをどう切り抜ける」

 

「え、なんで私の名前…」

 

「いいから言ってみろ」

 

「うーん、私なら……」

 

 

 

 

 

「逃げる」

 

「よく出来ました」

 

煙玉を5発ほど投げた後、こやし玉を手当たり次第に投げまくり、更に音爆弾を投げ、一気にその場を離れる。

視界は煙で塞がれ、匂いはこやし玉の激臭により追跡はまず不可能。そして聴覚は音爆弾によって潰され、こちらがどの辺にいるのかすら確認出来ない。

 

シーラが海に飛び込むと同時に、孤島から離脱する。

あれは危なかったが、追跡してこないということは、追うことが出来ないか、興味が無いか。

だが、この場合後者が正しいか?

 

「あのー、ありがとうございます」

 

「気にするな」

 

「あの、どこかで会いました?」

 

「…………」

 

「えっ、ちょ、痛い痛い!アイアンクローやめてください!」

 

俺もジンオウガの兜を被っているため、顔は見えないものの何か師弟として通ずる物があると期待した俺が馬鹿だった。コイツはそういうとこ鈍いからな。

 

「ところでそのヘッタクソなペイントはなんだ」

 

「あ、これですか?これはししょーに教えてもらったペイントでして、もう亡くなっちゃったんですけどね?

とても強くてカッコイイ人で、その人のペイントを真似したんですよ」

 

そ、そうなのか。俺のペイントとは似ても似つかぬ下手くそ具合なんだがな。

 

「その塗り方は間違ってる。後で教えてやる」

 

「えっ、良いんですか!?ありがとう……あれ、このペイントはししょーのオリジナルなのになんであなたが?」

 

ここでハッと何か気付いたような顔をするアオイ。

そうか、ようやく分かったか。

 

「あなたも、ししょーのお弟子さん!?」

 

あまりの見当違いな回答に、思わず海に落っこちそうになった。こ、こいつはもうこちらからカミングアウトしない限りは分からないアホなのか?

 

「はぁ、やれやれ」

 

ばっと兜を脱ぎ、少し長く邪魔な前髪をかきあげる。

 

「え…」

 

「どうした、俺の顔を忘れたか」

 

「うそ、これ……夢?それとも夢?」

 

「夢でも幻でもない、俺だよ。アオイ」

 

「ししょー?」

 

「あぁ」

 

「で、でも死んじゃったんじゃ?あれ?」

 

「これでいいか?」

 

ぽんぽんと頭を撫でてやると、目から大粒の涙を流して、顔を真っ赤にして飛びついてきた。

 

「ししょー!」

「うわっぷ!落ちる!海に落ちる!」

 

「ししょー!ししょー!」

 

グリグリと首元に頭をこすりつけてくる。

ぐうっ、意外と力ついてる。

 

「こら、一旦離れろ」

 

「ししょーが、生きてる…!ししょーが生きてるよー!」

 

「あぁ、そうだな」

 

「ししょー!その、色々お話したいことがあるんですけど何から話せばいいかわかんないんですけども…」

 

「はいはい、一旦深呼吸しような」

 

結局長い間スーハースーハー言っていたアオイ。

最寄りの街である、ベルナ村に着くまで深呼吸を繰り返していた。

 

「ししょー!ししょー!」

 

「なんだ」

 

「なでなでして下さい!」

 

「突然どうした」

 

「これ、ギルドの皆には言えないですけど、私達黒龍を倒したんですよ」

 

「そうか、それはすごいな。ただ、皆には言えない割に大声で言うのやめような」

 

成長して、女らしくもなった。

出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでいて、俺と暮らしていた頃の貧相な体とは大違いだ。

顔も逞しくなって、俺は嬉しい。

……中身が変わってりゃもっと嬉しかったが。

 

「もっとちゃんとなでなでして下さい」

 

「ん?割とやってるはずなんだが…」

 

「もっとこう、わしゃわしゃー!ってしてくださいよ!昔みたいに!」

 

「ん、あぁ、あれか…」

 

あれは時間が無いから適当に撫でてただけなんだが、本人は相当気に入ってたらしい。

頭に手を置いて、わしゃわしゃと雑に撫で回すと、髪が乱れたにも関わらずすごく嬉しそうにしている。

 

「えへへー、やっとなでなでしてもらえました」

 

「大袈裟な」

 

「だって、ししょーと離れてからもう何年経ったと思うんですか」

 

「…すまん」

 

俺が黒龍に挑んで負け、生きていたのは奇跡だ。

それだけでも感謝すべき事ではある。

だが、俺とアオイが離れた時間はあまりにも長すぎた。

 

「その分、成長して嬉しいよ」

 

「そうですか?」

 

「してるしてる」

 

「それほどでもー」

 

やはり褒められると弱い点はそこまで変わってないらしい。集会所に向かう前に雑貨屋で顔に塗るようのペイントを購入する。

 

「いいか、こうやって塗るんだよ」

 

ペイントの容器に2本指を突っ込み、頬から顎骨にかけてラインを引くように塗る。

これだけなのだが、アオイのは少し違う。

単純に見えて、中々難しい。

 

「ほら、塗ってやるから顔かせ」

 

「くすぐったいですー」

 

「我慢しろ」

 

アオイの分も終わり、正しいペイントをしてやる。

中々似合ってる。

 

「そういや、お前の弟子はどうした?」

 

「あぁ、あの子は今新大陸へ出張中です。

何でも未知の古龍が現れて、凄いんだとか」

 

「お前は行かなかったのか?」

 

「私は、ししょーと離れたくありませんでしたから」

 

「お前…」

 

涙が出そうになったが、堪える。

全く、歳食ったら涙腺が緩くなる。

 

「じゃあ、ししょー!パーっと飲みましょうか!」

 

「お前、酒弱いだろ」

 

「甘いですねー、いつまでもお子ちゃまな私と思わないでくださいよ?」

 

ふふん、と胸を張るアオイ。

そうか、酒も立派に飲めるようになったのか。

 

「じゃ、酒盛り付き合ってくれるか?」

 

「らじゃーです!」

 

 

 

 

 

「うぇー、ぎもぢわるいー」

 

「たった2杯でこれか……」

 

しかも度数が大して強くないやつ。

アオイは動けないらしいので、仕方なく宿まで背負って向かうことに。

 

「ししょーにおんぶされるの、懐かしいです」

 

「あぁ」

 

「前にもこんな夢見たんです。ししょーが私に会いに来てくれて、ゲネル・セルタスを倒したことを褒めに来てくれて」

 

「あぁ」

 

「ししょー、黒龍倒したの偉いですか?」

 

「偉いなんてもんじゃない。お前の名前は後の世に語り継がれていくレベルの話だ」

 

宿に着いて、ベッドの上にアオイを下ろす。

するとアオイは、不機嫌そうに俺を見ていた。

ぶすくれて、何か不満げな様子で。

 

「ししょー、私はどんな名誉も富も欲しくないです」

 

「どうした急に」

 

「確かに、私は黒龍を倒して沢山褒められました。

それから私を見る目が変わって、環境も変わりました。でも、そこにししょーはいませんでした」

 

黙って聞き続ける。

 

「ししょーが褒めてくれないと、そんなのはその辺の石ころ同然の価値なんです。ししょーが褒めてくれないと、どんな名声も意味無いんです」

 

「そうか」

 

「だから、褒めてください、ししょー」

 

アオイが自ら褒めて下さいと言ったのは、これが初めてだろう。

本当はアオイが、成長していく姿をこの目で見ていたかったが、結果が見れただけでも満足だ。

 

「アオイ、よくやった。えらいぞ」

 

撫でるだけじゃ足りない気がした。

だから、そっと抱きしめた。それでいても力強く。

 

「ししょー、それともうどこにも行かないで下さい」

 

「あぁ、どこにも行かない。ずっとお前のそばに居る」

 

「あとししょー」

 

「どうした?」

 

「吐きそうです」

 

「え゛っ…」

 

その場から緊急離脱する。

しかし、アオイに腕を掴まれた。

 

「お、おい離せ!」

 

「ずっとそばに居るって言ったばかりじゃないですか!」

 

「時と場合によるだろ!」

 

「うっ…出ちゃう…」

 

「厠に連れてってやるから我慢しろー!」

 

何だかんだこの子は変わってないのだと、安心するようでガッカリした気もする。

ただ一つ言えることは、この子のそばからは二度と離れないということだ。

女の子を泣かせると、駄目だもんな。

 

 

 

 

 

 

師匠

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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ひねくれハンター弟子を取る

 

あれからまた長い月日が流れた。

俺も老いたので、ハンター業を辞めることにした。

ここが引き時と言うやつを感じたのはアオイとジンオウガの狩りに出た時、動きが鈍っていたからだ。

ガンナーにおいて、回避は生命に直結する。

 

そんな中、回避もろくに出来ずにくたばるのは御免こうむりたいし、何よりパーティーに迷惑をかける。

アオイはいつまでも一緒に狩りをしたいと、言っていたが割とあっさり諦めた。

いや、あっさりでは無いな。

 

あの子も引き時とやらを学んだんだ。

もう、いつまでも俺があの子を気にかける必要は無い。

十年以上も前、あの子が結婚すると言った時は相手を殴り殺してやろうかと思ったが、幸せを掴んだあの子の笑顔を見れば、こちらから頭を下げてお願いしてしまった。

 

どうか、この子を幸せにしてやってくれと。

どこかぎこちなさそうに笑う青年と、照れ臭そうに顔を俯かせるアオイ。

その光景が今も目に焼き付いている。

結婚式では特等席でアオイのウェディングドレスを見た。

 

目がふやけるぐらい泣いた。

あの子も泣いていたが、いつまでも泣いてはいられない。

アオイの新しい人生に祝福を捧げ、俺はいつもの生活に戻った。

 

「ふぅ、相変わらずこの街はうるさいな」

 

ガヤガヤと人が行き交うドンドルマ。

商人、兵士、狩人。沢山の人々がここに集まってくる。

兵士として名乗りを上げる者。

商いをして、人旗上げてやろうと意気込む者。

そして、ハンターを志す者達。

 

若い男女が、列を作って訓練所へ流れ込んでいく。

ドンドルマは全ハンターの憧れの場所であると同時に、全ハンターの始まりの場所だ。

ここでハンターの資格を得て、各地に派遣されるからな。

 

「おーい、リュウガ。こっちだ」

 

「ザック、遅いぞ」

 

「いやぁ、すまんすまん。カミさんが怒っててな」

 

「相変わらず尻に敷かれてんのか」

 

「お前はいいよなぁ。受付嬢と結婚してさ」

 

「ばか、今は受付婆だ」

 

「ははは!後で殺されっぞ」

 

ザックもハンター業を引退した。

年老いてからの大剣は、足腰に負担がかかりまともに動けないのだとか。

まぁ、若い時でも大剣は疲れたから余計わかる。

 

「お前、アオイちゃんはどうした」

 

「アイツはアイツでハンターさ。

今確かポッケの方に行ってるはずだ」

 

「はぁ、お前ら離れてても良いのかね」

 

「いいさ、ハンターだからな」

 

「まぁ、そうだな」

 

確か子供が出来たと聞いたが、俺は見たことが無い。

以前聞いた時にはハンターにはなって欲しくない。

そう言っていた。

 

「ハンターにさせたくないんだってな」

 

「あぁ、らしい」

 

当たり前だ。ハンターとは人々から称えられ、崇められ、そして何よりの富と名声が手に入る。

しかし、それらを手に入れるには平穏を捨てなければならない。どんな強大な敵にも立ち向かい、剣を振るわなければならない。

 

死という生物がもっとも恐怖する存在と常に隣り合わせの戦場を駆け抜けることを、誰が喜ぶだろうか。

 

「まぁ、あの子らしいな」

 

「あの子あの子って、アイツ直に40だぞ」

 

「うわっ、あの子もおっきくなったな〜」

 

「60手前にした俺達が言えることかよ」

 

「ははは、そうだな」

 

互いに笑いながら、訓練所の門を潜る。

俺も若い、いや幼い頃通った門。

門をくぐった先の、闘技場の広場。

そこでは10人程度の新米ハンター達が、緊張した面持ちで待っていた。

 

「おーし、お前らが新米ハンターだな。

少し前までハンターをしてたリュウガだ。

言っとくが、お前らが今までしてきたみたいな、あまちゃん訓練はしない。ビシバシ行くから覚悟しとけ。

んじゃ、各々好きな武器を持って闘技場へ向かえ」

 

各々が用意された大剣などの武器を選んでいく。

どの子もまだ幼く、かつてのアオイを見ているようだ。

 

ーー俺大剣にしよっとー

 

ーーあ、俺もザックさんに憧れてるからな!それにしよ!

 

ーー私、非力だから片手剣で……

 

武器をそれぞれ選ぶ中、一人だけ俺の前で待機しているヤツがいた。

 

「どうした、お前は行かないのか」

 

「行きます。でも、ししょーに挨拶済んでません 」

 

「ししょー?外にいるのか?」

 

「いいえ、貴方です」

 

青い髪をして、顔に不細工な赤いペイントを付けた少女。

お下げにした髪型が、どうもおぼこさを残している。

 

「俺は教官だ」

 

「いえ、尊敬する人は母さんにししょーと呼べと言われましたので」

 

「ほう、そうか」

 

その母親は誰かは敢えて聞かない。

いや、一目見た時から知っていた。

ただ、わざと気付かないフリをしていただけで。

 

「名前は、なんて言うんだ」

 

「ハルカです、母さんのししょーの、大事な人から名前を取ったそうです」

 

「そうか」

 

全く、姿顔形はそっくりでも、えらくお利口さんだな。

アイツみたいに挙動不審な感じがない。

 

「よし、お前も行ってこい」

 

「はい、ししょー!」

 

そう言って、にこりと笑うハルカ。

その姿は昔見たあの子と変わらなかった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

それから数百年先

 

「お、お師匠!待ってくれよ!」

 

「何してるんですか、置いてきますよ」

 

「はあっ、はあっ、火山でクーラードリンク飲まずにランニングって、もうこれトレーニングというか拷問ですよ!」

 

「ほら、さっさと走りなさい!」

 

「ひぃぃ!」

 

ハンターの志は師から弟子へ。

そしてその弟子からまた弟子へ。

いつまでも続いていく。

 

時代は変わっても、変わらない物がある。

 

 

「ま、待ってください!ハルカ師匠!」

 

「ほら、行きますよ。リュウガ」

 

そこにはいつも、ハンターがいる

 

 



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モンスター編 爆砕竜 親となる

思い切ってモンスター編です

無理だと思ったら即ブラウザバック推奨です


皆、俺の事を毛嫌いした。

俺は他のモンスターから爆竜と呼ばれ、嫌われた。

本当はこんなことしたくないんだ。

頭と手から粘液が出てしまう。手を舐めなければ粘液は出ないけど、舐めていないと使い物にならない。

 

ーーまたアイツだ…

 

ーー触ると爆発するぞ

 

ギロりと睨むと、みんな逃げていく。

もう、一頭には慣れた。

今日もまた、狩りに出る。火山にいる盾竜が主食だが、最近どうも数が少ない。

たまにはあの美味しくない魚ってのを食べてみるか。

 

池の近くで右前足をべチャリと付け、緑色の粘液がドロドロと広がっていく。

緑色からオレンジに変わると同時に、ボコン!と爆発する。その衝撃で魚が浮き上がってくる。

失神した魚を食べ、巣穴に戻る。

 

元々俺達の種族は群れをなさない。

が、俺は物心ついた時から一匹だった。

この広い洞穴も、毒煙の小さな竜たちから奪ってしまった巣穴だ。

少し前に、巣穴を探していたら向こうが逃げた。

 

殺されると思ったんだろう。

友達はいない。作ろうとしても作れなかった。

丸くなって、空を眺めると月が出ている。

丸い、丸い満月た。月明かりが俺を照らす。

そんな時だった、闇夜に紛れて爆発音が聞こえる。

この音は…人間だ。人間が来た。

巣穴から少し顔を出し、外を確認してみると、人間達数人と雷狼竜が戦っている。

何故、こんな所に雷狼竜がいるんだ。

ダメだ、慣れない暑い場所のせいか戦えてない。

 

どうする、助けに入るか?いやいや、助けに入っても俺は感謝されない。

何も出来ないんだ。ここで出に行く必要は無い。

 

「グゥッ、ウオオオオオン!」

 

声にならない、唸り声を上げる雷狼竜。

よく見れば子供を守っている。

だが、このまま戦えば息絶えるのも時間の問題だろう。

 

「……くそ」

 

俺は巣穴を飛び出し、雷狼竜親子の前に立ちはだかる。

昔人間に追い回されて殺されかけた嫌な記憶が蘇る。

 

「グオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」

 

力の限り吠え、人間達に威嚇する。

前足に唾液を付着させ、爆発する粘液を辺り一帯に撒き散らしていく。

 

ーークソ!なんでこんなことろにブラキディオスが!

 

ーーここら一帯には居ないはずだぞ!

 

いつもは周りを爆発させるだけのこの俺が、まさか誰かを助けるために使うだなんて。

 

ーー引け!ここは無理だ!

 

「グァァァ!」

 

尻尾を振り回し、人間を追い払う。

格好の悪い戦い方だが、追い払う事は出来た。

いや、それより雷狼竜は。

 

「だ、大丈夫、か?」

 

「あなたは…?」

 

「ここらに住んでる爆竜と呼ばれる者だ」

 

「爆竜、あの荒くれ者として有名な爆竜ですか」

 

「あぁ、それより喋るなよ。傷が悪化する」

 

傷を舐めて治そうとしたが、出した舌を引っ込めた。

俺の舌には、爆発する粘液が含まれてる。

今手負いの雷狼竜に手を出せば、確実に死に至る。

 

「すまんな、俺にはどうすることも出来ん」

 

「ふふっ、荒くれ者と聞いている割には優しいですね」

 

「そういうあんたこそ、雷狼竜の割に愛想がいいな。

雷狼竜は他の竜達とは関わらないと聞いたが」

 

「そう思われがちですが、中には我々のように他の種と関わることを望む者もいます」

 

「そうか、達者でな」

 

去ろうとした時、カプリと後ろ足を噛まれた。

本気で噛みに来たのではなく、俺を止めるかのように、制止させるように甘い噛み方だった。

 

「な、なんだよ」

 

「この子を、どうか…」

 

「キュウウ」

 

差し出されたまだ言葉も発することも出来ない雷狼竜の赤子。

 

「良いのか、食うぞ?」

 

「それが出来る方では無いでしょう?」

 

「ふん、育ったら食ってやる。その間ならば育ててやる」

 

「…」

 

すでに返事はなかった。

息絶えた雷狼竜。不安そうに俺を見つめる子供。

 

「キャウキャウ」

 

「ちぃ、ガキは嫌いなんだよ」

 

雷狼竜の赤子を咥え、背に乗せる。

目線が高い所へ移動できたことに興奮しているのか、上ではしゃいでいる。

 

「呑気なもんだぜ、ガキってのは」

 

巣穴に戻り、クソガキを下ろす。

さて、俺の頭によじ登って遊んでいるこいつは何を食うんだ?俺と同じ突進バカの肉か?

それとも、魚や虫を食うのか?

 

「おい、お前は何を食べるんだ」

「キュウ!」

 

「まだ、言葉は喋れないんだったな」

 

仕方が無い、最近この辺に出ている油竜を狩りに行くか。ヤツは癖はあるが比較的狩りやすいからな。

 

「いいか、ここで待ってるんだぞ」

 

「キャウ!」

 

「ち、違う。お前は待つんだ」

 

腕を使ってそっと押し戻す。

しかし、ぴょんぴょんと跳ねてはまた来る。

「勝手にしろ」

 

ちょこちょこ後ろをついてくる雷狼竜のガキであったが、暑さにバテてペチャリと動かなくなった。

本っ当にどうしようもないやつだ。

 

「ここでじっとしてろ」

 

巣穴に放り込み、狩りに出る。

やはり餌が少ないので、遠出して草食竜を適当に狩る。

今日飼ったのは比較的大人しい、草食竜でよく人間にも殺されるヤツだ。

狩りやすく味も悪くないため、肉食には格好の的となっている。

 

「ほら、取ってきてやったから食え」

 

「キュウ〜」

 

中々食べようとしない。というより、牙も貧弱で顎の力も弱くまともに食えないのだろう。

 

「ちぃ、仕方ない」

 

一度口で咀嚼し、柔らかくなった肉を出す。

するとゆっくりではあるが、食べ始めた。

やはり、子供は厄介だ。

いやそれよりも、ここにいてはコイツが育たない。

 

「火山を、離れるか」

 

「キャーウ?」

 

「早いとこ大きくなれよ。俺はお前を食いたいんだ」

 

それからしばらく経ち、渓流へと引っ越した。

雷狼竜と呼ぶのも呼びにくいので、名前を付けた。

ライラ。雷狼竜の名からとった分かりやすい名前だ。

さて、そろそろ食べ頃だ。食っちまうか。

 

「さぁ、いただきま…」

 

「とーたん!」

 

「あ?」

 

「とーたん!とーたん!」

 

お、おい、俺はお前の父親じゃない。

育ったら食べるつもりだったんだ。

今すぐ食って、腹を満たす。

 

「食うぞ!」

 

「とーたん!」

 

「あぁ、分かったから離れなさい!」

 

食べ損ねてしまった。

まぁいい、いつでも食うことは出来る。

 

「とーたん、ごはんー」

 

「はいはい、今日は狩り丸鳥を食べような」

 

丸鳥は美味い。見つけ次第肉食系のヤツらが片っ端から食ってしまうから、早めに狩りに行かないとな。

手早く丸鳥を仕留め、巣に持ち帰る。

残念なことに、鳥竜の雑魚どもに先を越され、1匹しか取る事が出来なかった。

 

「とーたん!まるどりー!」

 

「こら、がっつくな。ちゃんとよくかんで食べなさい。そうだ、ちゃんと噛んで食べないと腹壊すぞ」

 

「とーたんはたべないの?」

 

「俺はもう食べたよ」

 

「そっかー。じゃあわたしのはんぶんあげる」

 

そう言ってライラは食べさしの丸鳥を差し出してきた

何言ってるんだこのバカは。俺は育ったお前を食うから良いんだよ。

 

「いいさ、俺はもう十分食べた」

 

「とーたんとたべないとおいしくなーい」

 

「わ、わかった食べる」

 

全く、コイツはなんなんだ。

いつか食べるためとはいえ、こんな屈辱初めてだ。

 

「ライラ、今日も狩りに出るから巣穴から出ちゃダメだぞ」

 

「はーい」

 

巣から出ると、いつもの狩り場に水獣がいた。

渓流を縄張りとしているヤツだが、この辺では無いはずだから、妙だ。

 

「おい、ここで何をしている」

 

「おおっ、最近来た爆竜でねぇの」

 

「何故ここにいる」

 

「わー!争う気はねぇんだよ!俺は逃げて来たんだ」

 

「逃げて来た?誰からだ」

 

「火竜だよ。ヤツら俺の縄張りを荒らしたんだが、俺じゃとても勝てん」

 

「まぁ、そうだろうな」

 

火竜は俺ですら争いたくない相手だ。

邪魔立てするのなら吹き飛ばすが、それでも手こずる。

ヤツの吐く火炎は俺の甲殻で通ることは無いが、火竜特有の毒は通る。

それにヤツらは番で襲ってくることもあるからな。

 

「だからよ、この辺に住まわせてくんねぇか?」

 

「構わんが。雷狼竜に子供を見たら手を出すな」

 

「ん、なんか理由でもあんのかよ」

 

「俺が食うからな」

 

「あー、そういうことなら手は出せねぇ。

爆竜と喧嘩はしたくねぇもん」

 

「名前は?」

 

「ルドルフってんだ。よろしく。

アンタの名前はねぇんか?」

 

「無い。爆竜で構わん」

 

本当は、皆親からもらうんだろう。

親なんていない。親なんて俺にはいない。

友達も、仲間も。何もかも持ってない。

 

「おー、噂をすれば来たんでねぇの?」

 

「む?」

 

「とーたーん!」

 

俺の頭へとよじ登るライラ。

こいつ、巣穴から出ちゃダメだぞって言ったのに。

 

「こら、巣穴から出るなと言っただろう」

 

「だって、とーたんいないとさびしいもん」

 

「くっ、わ、悪かった」

 

「おやおや〜これはこれは爆竜さん〜?」

 

うるさいのでルドルフを殴り飛ばした。

本気で殴れば首の骨はへし折れるため、軽く。

それでもだいぶダメージは入ったらしいが、自業自得だ知らん。

 

「そう言えばルドルフ、配下はどうした」

 

「俺はもう火竜に負けちまったからな。

今は新しいリーダーが率いてるさ」

 

「群れるヤツらも面倒だな」

 

「すまんね、すまわせてもらって」

 

「気にするな。非常食が増えただけだ」

 

ルドルフは結論から言っていいやつだった。

ライラと遊んでくれたり、時たま迷い込んでくるモンスターを追い払ったり、とてもいいやつだった。

そして、ライラがとうとう俺の背にも頭にも乗せれなくなってきた。

 

「今日は狩りの仕方を教える」

 

「やった!父さんの狩りに行ける!」

 

クルクルと走り回るライラ。

まだ小さいが、もっと大きくすれば食べ応えも出るだろう。

 

「ライラ、あそこに丸鳥がいる。狩りに行け」

 

「うん!」

 

俊敏な動きで、丸鳥を仕留めてかえってくるライラ。

完璧だ。これからはエサを与えなくても勝手に大きくなるエサになったぞ。まるで夢のような生活だ。

 

「ライラ、俺は少し出かける」

 

「うん!行ってらっしゃい」

 

「ルドルフ、任せたぞ」

 

「任せとけ」

 

そろそろ渓流では暮らせない頃だ。

新たな巣を探し、ライラとルドルフと暮らせる場所を探さなければいけない。

 

「ここは無理、ここは…ダメだ。水が無いからルドルフが暮らせない」

 

渓流から少し離れても、簡単に暮らせると思っていたが3頭もいては条件が厳しくなる。

 

「ここなら、うん。水も豊富でルドルフも暮らせる」

 

急ぎ足で巣穴を目指し、帰る。

 

「ルドルフ!ライラ!新しい住む場所があったぞ!」

 

返事が無い。隠れてるのか?それとも狩りに……いや、何だこの焼け焦げた匂いは。

 

「おお、爆竜かぁ」

 

「ルドルフ?」

 

奥に転がっている、黒い何か。

いや、ルドルフだ。それも真っ黒に焦げている。

 

「ルドルフ!何があった!?」

 

「へへへ、すまんなぁ。途中火竜のギドが襲ってきてな。ライラちゃんは守ったが俺はこのザマだ」

 

「火竜……!」

 

「それと、俺の仇をうちに…ライ…ラちゃん…が」

 

動かくなるルドルフ。死んだ。

ルドルフ、お前は良い奴だった。

そう、今まで俺を嫌ってきた連中とは違い、俺に対して友人のように接してくれた。

いや、友人だったんだよな、俺達は。

 

「ルドルフ、仇は必ず討つ。だから、待っていろ」

 

火竜の巣を目指し、渓流を走り回る。

途中猪達を踏み潰してしまったが、悪く思うな。

火竜の巣に飛び込んだ瞬間、ライラが戦っていた。

まだ若い火竜ではあるが、善戦していた。

 

「このっ、ルドルフおじさんをよくも!」

 

尻尾でべちんと弾き飛ばされるライラ。

 

「ライラ!」

 

「父さん…ルドルフさんが!」

 

「分かっている」

 

火竜が俺を睨んでいる。

 

「火竜ギドよ、何故我が友を殺した」

 

「そこにいる雷狼竜のガキをよこせといったらな、命に変えても渡せないと言ったんだよ。だから、燃やしてやったよ。それよりなんだお前は、俺の縄張りを荒らしやがって」

 

「先に俺の縄張りを荒らしたのは貴様だ。

覚悟しろ、貴様は例え喚き散らしても許さん」

 

こんなにも気持ちが昂ったのはいつぶりだ。

コイツは殺す。バラバラにしてその辺の鳥竜に食わせて捨ててやる。

 

「グオオオオオオオオオオオ!」

 

「食らえ!」

 

ボオッ!と火炎を吐く火竜。

前足で咄嗟に防ぎ、突進する。

飛び上がって避けようとしたようだが、分かっていない。お前達火竜と俺達爆竜では地の膂力が違う。

 

「グゴォ!」

 

「死ね」

 

岩に叩きつけ、翼を食い破る。

痛みにもだえる中、自慢の頭でひたすら頭突きを繰り出す。もう、火竜であることが辛うじて分からなくなるぐらい攻撃をし続けたあと、火竜は動かなくなった。

 

「父さん」

 

「ライラ、悪いな怖いものを見せて」

 

「ううん、父さんは悪くないよ」

 

バカが。身の程を知らずに喧嘩を売るからこうなるんだ。ルドルフ、悪ぃな。

俺が居てさえやれば、お前も死なずに済んだというのに。

 

「ライラ、これが自然なんだよ。お前も将来こうなるかもしれない、お前も覚悟しろ」

 

「うん…」

 

グチャグチャになった火竜の亡骸。

帰ってきた番の雌火竜の逆襲に襲われたが、撃退した。

当たり前だ。俺にとっては敵でしかなくても、雌火竜にとっては大事な家族だったはずだ。

無論、息の根は止めた。これが自然。そう、これでいい。

 

「ライラ、お前は大きくなったな」

 

「そう?」

 

「あぁ、大きくなったよ」

 

いつの間にか、食える大きさでは無くなっていた。

もう、大人の雷狼竜と変わらない大きさだ。

狩りも上手い、俺の自慢の娘になっていた。

 

「父さん、この前父さんに似た竜がいたの」

 

「まぁ、俺と似てるヤツなんてごまんといるだろう」

 

「うん、今日も狩りに出るよ」

 

「あぁ、俺も出る」

 

俺とライラがいては、餌が逃げる。

よって、俺達は別個で狩りを行っていた。

今日の餌は丸鳥。アイツの好きな丸鳥だったな。

仕方ない、持って帰ってやるか。

 

「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!」

 

「ライラ……?」

 

この鳴き声は、いや雄叫びはライラだ。

しかも、戦闘をしているのか?

 

「ライラ、今行く」

 

雄叫びの方へと向かうと、ライラが俺の目の前にぶっ飛んできた。

 

「ライラ!大丈夫か?」

 

「いたた、大丈夫だけどいきなりあのおばさんに殴られて…」

 

ふっと前を見ると、俺と同じ種族のモンスターがいた。

メスだ。俺よりも少し小さい。

 

「何故、この子を襲う」

 

「父さんと同じと言って来た。アタシはね、雷狼竜ってのが大嫌いなんだよ!」

 

「そんな理由で、そんな理由でライラを…!」

 

「あんたこそ、爆竜の癖に雷狼竜を庇うんじゃない!

退きな!その子の息の根を止めてやる!」

 

「なら、俺を殺してからいけ」

 

互いにぶつかり合い、殴り合う。

尻尾を振り回したが、噛み付かれた。

 

「グガァァァ!」

 

「グゴウ!」

 

くうっ、中々離しやがらねぇ!

 

「クソっ、が!」

 

無理矢理引き剥がし、殴り飛ばした。

更に頭にから粘液噴出させ、前方を爆発させては追い討ちをかけていく。

 

「くぅっ!」

 

「グガァァァ!」

 

相手の尻尾を咥え、投げ飛ばす。

最後に一撃、渾身の一撃を与えると、流石に立たなくなった。

 

「あぁ、愛する坊や。あなたは今どこに…」

 

「あんた、子供が…いたのか」

 

「そうよ、でも雷狼竜に襲われ子供ははぐれてしまったの、ちょうど火山の辺りよ」

 

「火山で…はぐれた…」

 

「もう一度、会いたかった。愛するディオール…」

 

その爆竜は、息絶えてしまった。

まさか、この爆竜は……。

 

「父さん!怪我ない…?」

 

「見てみろ、大アリだ」

 

「あー、大変!」

 

「まぁいい、それよりお前昔俺の名前を聞いた事があるな?」

「うん、聞いた」

 

「ディオール、それが俺の名だ」

 

「ディオール、カッコイイね!」

 

「さぁ、行こうか。丸鳥がある」

 

「うん!」

 

食べそびれたライラ。

まぁいい。いつか食べよう。

腹が減れば食べる。

 

「父さん、父さんはいつも食べる量少ないけどいいの?」

 

「お前と食べれば腹一杯さ」

 

どうやら、俺の腹が満たされない日は遠いらしい

 

 

 




ひねくれハンター編は続く(かもしんないです)

今回のブラキディオスも妄想の殴り書きです

このままモンスター路線も進むか、人間路線進むかは要望があった場合考えます

それと、ひねくれハンターのネタはそこそこ残ってます


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爆砕竜 困り果てる


前がシリアス濃かったので今回コメディ100パーです


 

最近ライラがよそよそしい。

どこに行くんだと聞いても散歩という。

そんな訳ない。夜中に散歩へ行くなんて。

今日もそうだ、狩りだと言うのに時間が長すぎる。

 

「ただいまー」

 

「遅かったじゃないか。襲われたのか?」

 

「ううん、ちょっと手間取ちゃって」

 

「飛竜とやり合ったのか?」

 

「え゛っなんで?」

 

「いや、飛竜の匂いがした」

 

「あぁー!私水飲みに行ってくるー!」

 

走り去るライラ。これはもう、確信した。

あの子……なんか隠してる。

年頃の娘だ。いい歳の雷狼竜とでも会っていてみろ、絶対に吹き飛ばす。粉微塵にする。

翌朝、そそくさと俺にバレないように出ていくライラ。

 

「よし、父さん起きてない…」

 

起きてるがな。

 

「いってきまーす」

 

こっそり出ていくのに、ちゃんと行ってきますと言うとは、いかん鼻血が出てる。

鼻血が止まるまで待ち、こっそりと後をつけていく。

途中わざわざ水を浴びて、匂いを消したようだが甘いな。俺はこの日のために飯を抜いてる。

 

飯を抜いたお陰で、今の俺の五感は敏感になってるからな。その程度じゃ追いかけ続けれるぞ。

向こうからは気付かれない距離を保ち、追うことしばらく、森の中の小さな広場に出た。

ふむ、ここは木が頭の上を覆っているな。

 

他の獣や竜にはそうそう見つからないだろう。

しかし、何故このような所に来ている?

 

「ジンくーん、来たよー」

 

ジン君!?

 

「ご、ごめんライラちゃん、遅れちゃって」

 

で、電竜のヤツが何故こんな所にいるんだ。

いや、それより今ライラちゃんって言ってなかった?

いやいや、落ち着くんだ。ただの友達だろう。

まだやましい仲と決まった訳では……

 

「いいよ、それよりさ。昨日のつづきしよっか」

 

「うん…」

 

「待てやコラァァァァ!」

 

思わず電竜を殴った。思いっきり。

 

「お前誰の娘に手ぇ出してんだこら!あぁ!?」

 

「うぇぇ、痛いよぉぉ」

 

「ええい、女々しい野郎だ!」

 

「うちの息子に何してんのよー!」

 

「うごっ!?」

 

今度は何か赤い飛竜が突っ込んできた。

初めは火竜のヤツかと思ったが、違った。

見た目は丸っきり轟竜のヤツだが、体色が赤い。

赤黒く変色した、しかも並の轟竜よりもデカい。

 

「何勝手にひとんちの子供殴ってんのよ!」

 

「あぁ!?てめぇこそうちの娘に手ぇ出してんじゃねぇか!」

 

「やる気!?」

 

「望むところよ」

 

互いの爪と拳が交差しようとした瞬間だった。

バチンと電撃が迸り、辺り一体が雷で包まれる。

 

「もう!2匹とも出てって!」

 

「ま、待つんだライラ…」

 

「いいから、ほら!」

 

俺は赤い轟竜と共に、外へと放り出された。

何故こうなるんだ。

 

ーーほら、ジン君怪我してない?

 

ーーうん、大丈夫

 

うちの娘とイチャつきおってからに。

全くもってけしからん。後でもっかいなぐる。

まぁ、あの女々しい電竜は置いとくとして、問題はコイツだよな。

 

「何見てんのよ、咬み殺すわよ」

 

「吹き飛ばされたいのか?」

 

そう、赤い轟竜だ。以前砂漠で黒い轟竜とは戦った事はあるものの、赤い轟竜など初めてだ。

それに、かなり大きい。総合的には俺よりも大きい可能性がある。

 

「あー、私のジンちゃんがあんなどこの馬の骨かも分からない娘に」

 

「あぁ、俺のライラがあんな羽虫みたいな女々しいガキに…」

 

「誰が羽虫みたいなガキですって!?」

 

「そっちこそ、誰が馬の骨だと!?」

 

喧嘩すること暫く、決着はつかなかった。

お互い疲労で倒れ込み、ゼェゼェと荒い呼吸をしながら、ゆっくりと立ち上がる。

 

「あんた、あの子を娘って言ってたわね。

爆竜のあんたがどうして雷狼竜を子供として扱うの?」

 

「そっちこそ、何故轟竜であるお前が電竜を息子として扱うんだ」

 

「文句ある?」

 

「ねぇよ。ただ、俺には理由があっただけだ」

 

「理由?」

 

ライラと出会った経緯を話した。

死にかけた雷狼竜から、まだ赤子のライラを任されたこと。ルドルフという良い奴がいたこと。

そして、何故俺がライラを育てようとしたかを。

 

「そんな理由があったの…」

 

「じゃ、そっちも話してもらおうか?お前の体色が赤い理由も、何故電竜を育てているのかをな」

 

「いいわ、こっちも話さないと平等じゃないものね」

 

そう言いながら、彼女はゆっくりと話し始めた。

 

「私はね、他の轟竜とは違ったの。赤いし、おおきいし、それに何故か爪の先から爆発するような粉が出るの。それでね、気味が悪いって巣を追い出されてずっと一匹で生きてきたのよ」

 

「そうか」

 

「それでね、いつも一匹だしもう孤独にも慣れた時、あの子を見つけたのよ。雨の中死にかけてるあの子を。

どんな理由があったのか知らない。追い出されたのか、親が人間に殺されたのかも。だけど、いても立ってもいられなくなって、あの子を拾ったのよ。

昔の自分に姿を重ねてしまったのよ」

 

そう、彼女の言う言い方は哀愁漂う言い方だった。

俺も、ライラを初めは食おうと思っていた。

でも、思い出してしまった。

誰もいない巣穴で一匹でうずくまってたガキの頃。

飛竜や獣竜達に追い回されては、死にかけた孤独の時間。

 

そう、ライラとどこか自分を重ね合わせてしまったんだ。孤独という立場を。

 

「あなたも、しょっちゅう爆発するようなヤツは嫌でしょう?」

 

「いや、ちっとも?」

 

「え、」

 

「俺自身が昔からその悩みを持っていたからな。

仲良くなりたくても、爆発するから怖がられるし、果てにはいじめられたりもした。あとは爆発するから…… 」

 

「巣穴が壊れる?」

 

「そうそう、んでもって音にビビって猫達が逃げていくんだよ」

 

「あっ、それ分かる!たまに魚とかビックリしてきぜつするよね。美味しくないけど」

 

「そう、まさにそれだ。それからたまに火事起こすんだよなぁ」

 

「うんうん!それでよく他の竜に……」

 

 

「「怒られる」」

 

何故か先程まで喧嘩していたのがアホらしくなってきた。良く考えれば、別にハナから喧嘩することは無かったんだよな。

 

「いやー、私と同じ悩み持ってる竜が居るなんてねー」

 

「俺もだ。この悩みは中々共有し難いからな」

 

「あんた、名前は?あたしキティ」

 

「俺か?俺はディオール。母から貰った大事な名だ」

 

その後キティとは和解し、お互い子供達も年頃になったので、温かい目でゆっくりと2匹の歩む道を見守ろうではないかという話になった。

 

「キティ、子供は子供達に任せたらいいな」

 

「ええ、親ってのはそういうもんよ」

 

また2匹のの元へ戻り、様子を見に行く。

 

ーーふぅぅん!

 

ーーあっ、こら!そこじゃないってば!

 

ーーえぇっ、どこ?

 

ーーそこでやったら、ダメ。ちゃんと中からしないと

 

「しねぇぇぇぇぇぇぇぇい!」

 

「お前がしねぇぇぇぇ!」

 

子供達を見守る?んなもん知らん。

よくもうちの娘とそういう関係になりやがって。

許さん、体目的なら尚許さん。

 

「てめっ、やっぱりそういうガキか!」

 

「あんたの娘だって、がっつきすぎよ!」

 

「肉食竜はあれでいいんだよ!」

 

「はっ、肉食過ぎて暴竜のヤツとくっつかなきゃいいわね!」

 

「んだとこらぁ!」

 

「もう!やっぱり懲りてないじゃん!」

 

再び、雷が落とされた。

反論しようとしたが、言い返せる雰囲気では無かったので大人しく引き下がる。

 

「あのね、ジン君は上手く電撃を出せないの。

私も苦手だったけど、訓練したら出来るようになったから、教えてあげてたの!」

 

「本当にぃ?こんなスケベな雷狼竜、信用出来ないわよ」

 

「か、母さん!ライラちゃんを悪くいうなんて最低だよ!そんな母さん嫌いだ!」

 

「えっ」

 

「ほら見ろ、そんなこと言ってるから…」

 

「父さんもだよ!ジン君は優しいだけなのにそこを馬鹿にするなんて、最低!バカ!あと臭い!」

 

「臭い!?」

 

「いいから、もう出てって!」

 

またもや投げ出され、2匹で喧嘩する。

そんなやり取りをする関係がが季節が2回変わる程まで続き、いつの間にか喧嘩はしなくなった。

その代わり、口で喧嘩ばかりするようになった。

 

「へっ!そんな赤いとしょっちゅう他の竜に見つかるんじゃないのか!?」

 

「そういうあんたも、頭が緑色でキモイわよ!」

 

そう、喧嘩しては並びあって愚痴を聞き合い、肉を食う。なんとも言えない、不思議な間柄になってしまった。

 

「やれやれ、これで喧嘩も1000回達成ね」

 

「ん、もうそんなにいってたか。

それよりお前、数えてたのか?回数」

 

「当たり前よ、大事な仲間なんだし…」

 

「仲間?」

 

「そ、そうよ。口で喧嘩したり、娘と息子の話で、衝突はあっても、同じ境遇の仲間でしょ?」

 

仲間、か。そういや、アイツも昔…。

 

ーーおい、爆ちゃん!

 

ーーば、爆ちゃん?

 

ーーそうだ、爆竜ってのは言いにくいからな。嫌か?

 

ーーまぁ、お前がいいのならいいが

ーーへへっ、流石俺の仲間だぜ

 

ーー仲間?…俺とお前がか?種族も違うのに?

 

ーー爆ちゃん、そんなの細かいこと気にする仲じゃないだろ?俺たちゃ出会った時から仲間だよ。

あの時、俺を殺さないでいてくれた時点でな

 

ーーふんっ、よく喋る非常食だ

 

ーー俺を食う気は無いのは知ってる。もちろん、ライラちゃんもな

 

ーーうるさい、俺は爆竜だ。気に入らなければ食う

 

ーー自分の気持ちに嘘つくな

仲間ってのはよ、互いの気持ち吐き出せる間柄なんだぜ?

 

ーーそう、なのか?

ーーそうさ、あ!俺以外お友達のいない爆ちゃんにはわかんないかー!ってやめいやめい!爆発はやめい!

 

ーー死ね

 

ーーひぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!

 

「ふふっ、ははははは!」

 

「ど、どうしたのよ気持ち悪い」

 

「いや、なんでもない。俺達仲間だなって思っただけだ」

 

「変なの」

 

2匹でボーッと空を見上げていた。

そんな中、ジンとライラが戻ってくる。

 

「父さん、あのね言いたいことがあるの」

 

「どうした、気まずそうに。あぁ、気にするな、ジンとの事はもう公認だ。何を言っても怒らない」

 

「ホント?良かった。実は前から言おうとしてたんだよね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「出来ちゃった」

 

 

 

「おお、そうかそうかおめでた……んんんん!?」

 

デ、デキタ?マサカ、コドモ?

 

「お前、それ本気かな?」

 

「うん」

 

「やっぱ死に晒せぇぇぇぇぇ!」

 

「わー!お義父さん怒らないで!」

 

「お前にお義父さんなんて言われたかねぇ!」

 

「うちのジンちゃんに何するのよ!」

 

「あー!もうどうしてこーなるかなー!」

 

 

ルドルフ、ルドルフ。

俺はさ、昔から一匹でいいって思ってたんだ。

お前に友達とか、仲間とか言われてもピンと来なかった。けど、今ならわかる。

仲間ってのは騒がしいし、時に鬱陶しいけど。

 

 

 

 

良いもんだな、ルドルフ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





はい、割とモンスターの方が好評でわざわざ個人メッセージまで来たので、出しましたがもう出ません

ここからはひねくれハンターの後日談を数話投稿しようと思ってます


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