転生したら竜魔人? (レベル)
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死・・・そして?

初めまして。作者のレベルです。


一言

『頑張ります』


  (苦しいなぁ・・・)

 

 病室で咳をしながらそう少年は思う。少年の名は荒木 星夜。10年間、病室で寝たきりで過ごしている。

 

 産まれて6年経った頃、星夜は突然下半身が動かなくなってしまった。病名は不明。医師からは手の施しようがないと宣告された。

 

 其れからはずっと病院の個室のベッドで過ごしてきた。入院して間もない頃は通信教育で勉強したり、食事も出来た。だが、4年経った頃には全身動かなくなり、食事は儘ならなく、点滴で栄養を得ていた。

 

 そんな姿を毎日見ていた両親はよく泣いていた。

 

「大丈夫」と声かけようとした事もあった。しかし、思うように口が動かなかった。

 

 それから更に1年が経った。その頃には意識を失う事が日が経つにつれ多くなり、また意識を失っている時間も長くなった。

 

 5年経った頃、両親の他に可愛らしい少女と少年の二人がいた。

 

 恐らくは妹と弟だろう。両親と妹は自分を見て顔を歪ませていた。

 

 そして、両親の瞳には涙が溜まっていた。

 

星夜「大丈夫・・・泣かな・・・い・・・で・・・

 

 安心させようと掠れながらも何とか声を出す。すると、両親は泣きながら、星夜を抱き寄せた。

 

 ようやく声が出せた事に安堵する。しかし、其の直後に猛烈な眠気に襲われ、星夜はゆっくりと瞳を閉じていく。

 

 星夜が瞳を閉じると、「星夜!?」「星夜、起きて星夜!!」と、自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。しかし、次第に声は小さくなり、暫くしたら聞こえなくなった。

 

 

――――――――

 

星夜(あぁ・・・)

 

 意識が段々と遠退いていく中、少年は両親に恩を返せなかった事、そして最後まで両親を悲しませてしまった事を後悔していた。

 

星夜(もし次の人生があるならあの主人公の様に成りたいなぁ・・・)

 

 そう願った。自分の父親が漫画家で良く漫画を書いては持ってきては読ませてくれていた。

 

 漫画の内容は死んだ主人公の少年が肉体を持たない幽霊となり、魔法と肉弾戦で悪魔達と戦い、最終的に龍の力を得て、魔物や魔王、時には悪人を倒すという物語。入院して2年経った時に読んだ漫画で当時は其の存在を格好いいと思った。

 

  特に龍の力を得た時の姿は特に可愛くて、そして格好良かった。少女の様な中性的な容姿に長く薄い緑の髪、金色と銀色の瞳を持ち、白い肌をした主人公。其の姿と丈夫な体を羨ましいとも思った。

 

《確認しました。“竜種“の情報を入手して、統合します・・・・・・成功しました。星夜は“竜魔人(ドラゴノイド)“と成りました。続けて容姿を形成します・・・成功しました。

 魔法の情報及び武術の情報を入手・・・成功しました。ユニークスキル『魔術者(マホウツカイ)』、『武闘者(タタカウモノ)』を獲得しました》

 

  突如響いた声に星夜は何の声だろうと思ったがどうでも良いか、と判断する。そして今迄の自身の人生を振り返る。

 

星夜(体が丈夫だったらもう少し他の技術を学ぶ事が出来たのかな・・・)

 

  未だ入院する前、星夜は様々な技術を学んだ。観察する事が好きだった星夜は良く他者を観察して、時には師事する事で其の技術を学び、独自の技術にしたりした。星夜自身新たな技術を覚える事が好きだった。体が丈夫だったらもっと様々な技術を学びたかった。

 

《確認しました。ユニークスキル『模倣者(ニセルモノ)』を獲得・・・成功しました》

 

  やっぱり此の声は何だろう、と考えながら星夜の意識は闇に呑み込まれていく。

 

  此れが死、と星夜は最後に思った。

 

 その思考を最後に、星夜は16歳という若さでこの世を去った。




続く‥‥


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目覚めたら・・・

続きです。


  《――を確認しました。此れより“竜魔人(ドラゴノイド)“への転生を開始します》

 

星夜(・・・?)

 

 段々と闇の奥底に沈んでいく様な感覚を味わう星夜の脳裏に声が響く。其の直後、星夜の意識に猛烈な感覚が押し寄せてきた。

 

 意識が闇に呑み込まれていく感覚からまるでジェットコースターに乗った時の様な感覚を味わう。落下した直後に急に浮上するような感覚を。

 

 其の感覚が終わると今度はまるで体を隈無く調べられ作り変えられていく様な不快な感覚を味わう。

 

星夜(気持ち悪い・・・)

 

 その感覚に心の中で愚痴を溢すが、其処で星夜はおかしい、という事にも気付けた。

 

星夜(あれ・・・何で・・・何で感覚が分かる?確か死んだはずだよね?)

 

  意識を失う事が多くなった時、よく自身の意識が闇に呑み込まれ、底の方へと沈んでいく様な感覚に何度も味わった事があった。星夜は其の感覚が死に向かっていく感覚だと認識していた。

 

  後悔の念を抱いた後に味わった感覚も其の感覚と同じだった。唯一違う点があったとするなら二度と戻れない、という確信があった事くらいだ。

 星夜の疑問を余所にやがて其の感覚も終わる。

 

 《“竜魔人“への転生・・・完了しました。ユニークスキル『魔術者(マホウツカイ)』、『武闘者(タタカウモノ)』、『模倣者(ニセルモノ)』の構築・・・完了しました。

 

 “竜魔人“への転生及びユニークスキル『魔術者』、『武闘者』の獲得によりエクストラスキル『万物感知』、『万能耐性』、『万物予測』、『重力操作』、『空間操作』、『万物眼』を取得しました》

 

  そして星夜の脳裏に声が響く。突然響いた声に驚く星夜。もう一度声が響くかを確認するため暫く待ったが声を感じる事はなく、代わりに星夜の体に徐々に力がみなぎる。

 

  更に数十秒待つ星夜の頬に何かが落ちてきて弾ける感触が伝わる。星夜は今の状態を自己分析し、横に成っている事を確認する。

 

星夜(・・・大丈夫、かな?)

 

  不安に刈られながら恐る恐る体を起こし、目を開く。

 

星夜(此所は・・・何処だろう)

 

  目を開けて周囲を見渡す星夜。其所は病室等でも火葬場や葬儀所、棺の中等では無い。岩肌に、あちこちに生えている草、怪しく光る鉱石。少し離れた場所には湖のようなものもある。

 

  其れらを確認し、星夜は再度目を閉じる。数秒間目を閉じた星夜は目を思い切り開く。

 

星夜(・・・間違いない!洞窟だ此所ぉーーーー!!」

 

  そして絶叫する。途中から声成って出た星夜の絶叫は洞窟内に響き渡るのだった。

 

□■□■□

 

星夜「本当に此所は何処なんだろ・・・」

 

  叫んで冷静に成れた星夜はそう呟きながら再度周囲を見渡す。其処で星夜はまた異変に気づく。

 

星夜(視線・・・低くなってる?其れに今更かもしれないけど何で体が自由に動くの・・・?)

 

  自身の視線が低いという異変と体が自由に動かせるという異変。星夜は意識を失う事が多くなる前に歩く訓練を受けた事があった。其の時よりも視線は下がっていた。

 

 

  星夜は首を少し傾げながら先ずは視線が低い事の異変を解明するため湖の近く迄移動する。そして自身の姿を確認する。

 

  年齢は12歳くらい。少女の様な中性的な容姿に白い肌、ショートヘアーの薄い緑の髪に金色と銀色の瞳をしている。

 

  着ているのは毛皮で出来た灰色のロングコート。其の下には灰色のジャケットの様な服。下は黒いズボンに黒いロングブーツである。

 

  水面に映った自身の姿を確認して星夜は納得した様に何度も深く頷く。

 

星夜(成る程、12歳の少女くらいだったら視線も低い訳だ。いや〜納得納得・・・・・・じゃない!!)

 

  慌てて再度自身の姿を確認する。また水面に映る少女の様な姿。其の姿は正しく星夜が憧れた主人公の姿。唯一違うのは髪の長さくらいだ。星夜は其のまま自身の体を調べ始めた。

 

 

 

□■□■□■

 

 

 

  詳しく自身の体を調べて分かったのは性別は男な事、そして健康状態だという事だ。調べ終えたあと、星夜は現状を再確認する。

 

星夜(やっぱりあの声が原因だよなぁ・・・)

 

  そう結論付けた。実際に『転生』と言っていた事から自分は死んで生まれ変わったのだと。

 

星夜(・・・せめてもう少し情報があればなぁ・・・)

 

  深く溜め息を吐く星夜。其の後、暫く考えた星夜は先ずは出口を目指すか、と結論を出した。幸いにも湖の反対側に薄紫ではあるが光っている場所を発見した。星夜は其所が出口かもしれないと考えて歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ――此の後、星夜はある二つの存在と出会う。後に星夜が親友と呼ぶ二つの存在と――

 




次回も頑張る。


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最初の出会い


お待たせしました〜(やっと書けた。投稿出来た)。





――テストとか滅べば良いのに・・・


  コツコツと洞窟内に足音を響かせながら星夜は歩いていた。目指すは対岸である。

 

 

星夜(光っていたし彼処が出口の可能性は高いよね)

 

  そう思いながら歩いていた。自分が居た場所から見えた薄紫の光が見えた星夜は出口があるという可能性を考えて対岸を目指していた。

 

星夜(・・・其れにしても)

 

  歩きながら星夜は辺りを見渡す。辺りには謎の草や怪しく光る鉱石がある。しかし星夜は2つ疑問に成っている事があった。

 

星夜(何で動物や虫が1匹も居ないんだろ・・・)

 

  ――1つ目は生物が居ない事。

 

  星夜は本の知識や親の話から洞窟には何かしらの生物が居ると知っていた。此れくらい広い洞窟内なら熊とかが居る可能性も高い。もし熊が居なくても蛇や蝙蝠、最低でも虫くらいは居る筈なのだ。

 

  勿論星夜は此所が自分が居た世界とは違うという事は察している。だが異世界でも大抵動物や怪物が存在している筈だと思っている。

 

  しかし、星夜が移動を開始してかなり経つが未だに虫1匹見当たらないのである。

 

星夜(其れに――)

 

『名称 :ヒポクテ草

  用途 :傷薬の原材料

  所持数 :1

  《配合》

  草の汁 + 魔素 = 回復薬

  葉 + 魔素 = 軟膏』

 

  星夜が草を見た瞬間、星夜の頭の中に其れらの文字や数字等の情報が流れ込んでくる。

 

  此れが2つ目の疑問。見ただけで名称や用途等あらゆる情報が分かる、というものである。しかし2つ目の疑問に関しては既に理由は思い当たっていた。

 

星夜(やっぱりあの声にあったスキルとかいう力のせいだよね此れ)

 

  自分が死ぬ間際に聞いた声。其の時に言っていたユニークスキルやエクストラスキルが此の現象の正体だと。

 

星夜(見ただけで情報が分かるのは大きいし、便利だとは思う。けど・・・)

 

  ヒポクテ草という草から目を離して溜め息を吐く。確かに便利な力だ。

 

  しかし現状使えている力は此れ1つのみ。他にも色々な力を授かっているが他の力は全て使用方法が不明である。

 

星夜(此の能力・・・自分は解析とか出来ないみたいだしなぁ)

 

  自分の能力の解析を試してみたが結果は失敗。二、三度繰り返してみたが結果は変わらなかった。此の結果から自分の解析は不可能だと結論付けた。

 

  せめて案内人みたいなものが欲しかった、と再度溜め息を吐きながら歩く。

 

星夜(・・・?)

 

  そんな事を考えながら歩いていていると少し広い場所に出た。其所はヒポクテ草が一面に生い茂っており、その中央には深みのある青色で楕円形の鏡餅みたいな物体があった。

 

  星夜は其の存在を知っている。いや。恐らくは誰でも知っているだろう。何故なら其の存在はゲームによく登場するからだ。

 

『名前 : ―――

  種族 : 妖魔族『拈性生物(スライム)

  ランク : A-級

  スキル : 固有×3,ユニーク×2,エクストラ×2

  耐性 : 5』

 

  其の情報が流れ込んでくると同時に星夜は急いで身を隠す。

  理由は危険度。星夜は此の世界に付いて全く知らないと言えるレベルだが漫画等の知識からA-の時点で上位で危険だと判断し、隠れたのである。

 

(其所に居るのは誰だ?)

 

  気配を殺して直ぐ隠れた星夜にそんな言葉が聞こえた。星夜は気付かれた、と判断。直ぐに逃げようと考えたが同時に意思疎通が可能なのでは、とも考える。

 

(もし誰か居るのなら出て来てくれないか?俺は見た目はスライムだけど危害は絶対に加えない!絶対にだ!)

 

 

  出て行くか逃げるかを悩む星夜だったが結局悩んでいても仕方がないと思ったのと必死に無害アピールをするスライムの姿を見て無視して逃げたら少し可哀想だと思い、出て行く事を決める。

 

星夜「は、ハロー・・・」

 

  片言の日本語で話し掛ける星夜。一応逃げる準備として右足を後ろに出す。

 

(ハロー。先程も言ったが俺はスライムだけど()()()()()()()()()()()!!)

 

  其の言葉を聞いて星夜は小さく笑い、警戒心を解く。

  相手のスライムも星夜が警戒心を解いた事を感じたのか安心した様な雰囲気を醸し出す。そして跳ねながら同じ様に笑い始める。

 

 

 

 

 

  ――洞窟内に1つの笑い声と何かが弾む音が小さく響き渡るのだった





余裕が出来たらもう一作投稿したいよ・・・


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スライムとスキル

 星夜は一旦対岸を目指すのを一時中断し、先程出会ったスライムと話をしていた。

 

スライム(――って事なんだよ)

 

 スライムの話によると星夜が思った通り、目の前のスライムは同郷の元人間で三上悟(みかみさとる)というらしい。話によると死因は刺された事による出血死。生前はゼネコンに勤めるサラリーマンだったらしい。

 

 三上悟も死ぬ間際に謎の声を聞いており、目が覚めたらスライムだったらしい。

 

星夜「へぇ・・・三上さんは自分のスキルの使い方や能力を知ってるんですね」

 

悟(まぁな。俺のユニークスキル『大賢者(エイチアルモノ)』って凄いだろ)

 

 三上悟が自慢げに言う。星夜自身も『大賢者』の能力は凄いと思っていた。

 

 ユニークスキル『大賢者』の能力は『思考加速、解析鑑定、並列演算、詠唱破棄、森羅万象』の計五つらしく、加えて三上悟のナビゲートをしているらしい。三上悟が悩んだり、何か知りたい時には教えてくれるのだと。

 

星夜「便利ですね。自分は未だどんな能力か分からなくて・・・」

 

悟(そっか。因みに聞くけど星夜のスキルは何なんだ?)

 

 訊ねられた星夜は自分のユニークスキル『魔術者』、『武闘者』、『模倣者』を話す。暫く三上悟は黙る。聞いた三上は暫く黙り混む。

 

  そして――

 

悟(よし、分かったぞ!!)

 

星夜「? 何が?」

 

悟(ちょっとさ、『大賢者』にお前のユニークスキルの能力を聞いてみたんだ)

 

星夜「え、はぁ」

 

悟(説明するぞ)

 

星夜「は、はぁ」

 

 星夜は頷きながら説明を聞いた。

 

 

□■□■□■

 

 

悟(だ、大丈夫か?)

 

 説明を聞き終えた星夜は乾いた笑い声を発していた。理由は星夜の獲得していたスキルの能力がぶっ壊れレベルだからである。

 

 先ずユニークスキルの能力は以下の通り

 

  『ユニークスキル『魔術者』の効果…

 

 魔法創造:記憶等あらゆる情報から魔法を創造出来る

 

 並列演算:思考と切り離して演算を行う

 

 詠唱破棄:魔法等を行使する際、呪文の詠唱を必要としない

 

  魔素回復:自身の魔素を回復する

 

  森羅万象:隠蔽されていない事象の全てを網羅可能』

 

 

  『武闘者・・・

  身体操作:自身の身体能力を操作する

  超速再生:受けた傷を瞬時に再生する

  急所必中:あらゆる攻撃が急所必中(クリティカルヒット)になる

  貫通:結界等を無効化・貫通できる

  思考加速:通常の1000倍に知覚速度を上昇』

 

 

  『模倣者・・・

  技術模倣:見た技術を模倣出来る

  解析鑑定:対象の解析鑑定を行う

  武器複製:あらゆる武器などを複製可能

  万物擬態:あらゆるものを再現し、能力行使も可能』

 

 以上の様に大変ぶっ壊れレベルなのだが、他のスキルに関しても同じ。

 

・魔素や熱等あらゆるものを感知する『万物感知』

・あらゆる属性に耐性を持つ『万能耐性』

・あらゆるものを予測できる『万物予測』

・重力を操れる『重力操作』

・空間移動など空間系の能力を行使できる『空間操作』

・千里眼など目に関する能力を行使できる『万物眼』

 

 以上が星夜のスキルである。

 

悟(大丈夫か?)

 

 再度三上悟が少し不安そうに訊ねる。先程から星夜が乾いた笑いを発しているので不安になったのだろう。星夜は首を振って大丈夫と伝える。

 

悟(そ、そうか。ところでさ一緒に行動しないか?『大賢者』曰く一緒に行動した方が良いらしいんだ。どうだ?)

 

 三上の提案を星夜は少し考えて直ぐに首を縦に振る。何があるか分からない以上は人数は多い方が良いと判断したのだ。

 

悟(そっか!それじゃあ宜しくな!!)

 

星夜「此方こそ宜しく御願いします」

 

  三上が体の一部を伸ばす。星夜は其れが握手を求めていると判断し、伸ばされた一部を握る。

 

 

 

 

 

 ――こうして三上と星夜。二人の転生者は共に行動を開始した。



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対岸

『水圧推進』獲得迄どう持っていくか悩んだ。



  星夜が三上と行動を共にしてから数日後。星夜と三上は湖の近くに立っていた。

 

星夜「…本当にやるんですか?」

 

悟(ああ!何かあった時は任せるぞ!)

 

  星夜が不安そうに呟くと三上は自信満々に返す。星夜は心の中で本当に大丈夫かなぁ、と呟いた。

 

 

 

□■□■□■

 

 

 

  事の発端は数分前。其の時に星夜達は休憩を取りながら、スキルの練習をしていた。

 

  スキルの使い方を知らない星夜は、三上(と言うよりは大賢者)に教えてもらいながら使用していた。

 

  そして、練習を何回も繰り返している内に現在では自由に扱えるように成っていた。

 

  空間移動をしてみたり、『重力操作』で飛んでみたり、『模倣者』で右手をスライムの様にしたりしており、また『万物感知』の練習の過程では『痛覚無効』のスキルも獲得できた(なお痛みで死にかけた)。

 

  そして三上が何か名案を思い付いたかのように星夜に話し掛けてきた。

 

悟(なぁ、星夜)

 

星夜「何でしょうか?」

 

悟(俺を水中に投げてくれないか?)

 

星夜「・・・・・・はい?」

 

 

 

□■□■□■

 

 

 

星夜「・・・本当にそんな事でスキルって手に入るんですか?」

 

  不安そうに聞く星夜。三上の話を簡単に纏めると『水中で三上が『捕食者』を発動して水を吸い込み、其れを吐き出す事で新たなスキルを手に入れられるか』という実験を行うというものである。

 

悟(大丈夫だって。失敗しても星夜の『瞬移(ムーヴ)』でどうにかなるだろ?)

 

  ウキウキとした感じで返答する三上。『瞬移』は星夜が『魔術者』で作った魔法で簡単に言えば『瞬間移動』ある。

 

星夜「・・・『瞬移』の魔法は未だ“作った“だけで練習とか何もしてないんですけど」

 

  呆れた様に星夜は答える。『瞬移』の魔法は作ったばかりであり、一度も試したりしておらず、『(()()())()()()()()()()』という事だけで作ったというものだ。

 

  ――つまり()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()3()()()()()()()()()()()()()()。そして三上は其れを知っているのに大丈夫と言っているのである。

 

悟(じゃあ俺が失敗した時に練習出来るな)

 

  其の言葉に星夜は三上を止める事は不可能だと判断し、盛大に溜め息を吐く。

 

星夜(まぁ・・・もし危険だったら『大賢者』が止めてるだろうし、止めてないなら大丈夫か)

 

  そして心の中でそう結論付けて、星夜は三上を持ち上げる。

 

星夜「・・・何処まで投げれば良いですか?」

 

悟(中央辺りで!!)

 

星夜「分かりました」

 

  星夜は三上を右手に持ち、『身体操作』で身体能力を少し上げると思いっきりぶん投げる。三上は綺麗な放物線を描きながら落下し、水中に沈んでいった。

 

星夜(さて・・・どうなる?)

 

  そう考えながら暫く待つ。すると水中から三上が勢い良く飛び出した。

 

  取り敢えずは三上の『捕食者』で水を吸い込み吐き出すという事は出来たという事である。しかし、此処で問題が発生した。

 

悟(うわあぁぁぁぁぁぁ!!)

 

星夜「・・・・・・やっぱりか」

 

  予定では星夜の居る方に飛んでくる事に成っているのだが三上は反対方向に飛んでいく。実験を聞いた直後に星夜は可能性の1つとして、威力や方向の調整が出来るのかと訊ねたのだが、其の時に三上の『大丈夫だ、問題ない』という自信満々の返答に星夜は嫌な予感がしていたのだ。

 

  星夜は『瞬移』を発動しようとしたが発動するより先に三上は其のまま対岸に消えていく。

 

星夜「・・・はぁ」

 

  星夜は再度溜め息を吐くと『重力操作』を使って、三上を追って対岸に飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ――因みに『重力操作』を使って飛ぶか、『魔術者』で移動魔法を作れば直ぐに対岸に渡れた事に気付いたのは三上を追って対岸に着いた後であった。

 

 

 

□■□■□■

 

 

 

星夜「大丈夫?」

 

悟(お、おう、なんとかな!!)

 

  三上に訊ねると三上は体の一部を伸ばして大丈夫のジェスチャーをする。星夜は一応『万物眼』を使って三上を見るが三上の言うとおり怪我はしていなかった。

 

悟(お、そうだ!さっきので『水圧推進』のスキルを獲得したぞ!!)

 

  三上の報告に星夜はそうですか、と返し、ある事に気付く。

 

星夜(此所だけ他の場所より明るい?其れに・・・)

 

  星夜は不思議に思った。星夜は『万物感知』により周囲の魔素が此所だけ他の場所より以上に多いことと背後にとんでもない程の存在感を放つ存在が居るのを感知したのだが其の存在を何故か懐かしいと感じているのだ。

 

  星夜は振り向き、そして其のまま固まる。そして何故魔素が此所だけ濃いのか、何故とんでもない程の存在感があるのかを理解した。

 

  星夜の背後に居たのは一体の竜。黒光りする鋼よりも硬そうで、柔軟性も兼ね備えているであろう鱗に覆われ、見るからに、邪龍という風格をした竜だった。

 

星夜(・・・何で)

 

  星夜は戸惑っていた。眼前に居る竜に恐怖は確かに感じているのだが其れ以上に懐かしいと感じている事に戸惑っていた。

 

  星夜は竜の顔を見ると竜は星夜と三上を交互に見ていた。星夜が呆然とする中、星夜の頭の中に声が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ――聞こえるか?小さき者よ

 

 

 







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お待たせして済みませんでした!!!


(聞こえるか?小さき者よ)

 

  頭の中に響く声。其の声もやはり何処か懐かしく星夜は感じていた。

 

(おい!聞こえているだろう?返事をするが良い!)

 

  また頭の中に声が響く。返事をしないためか少しだけ怒気が含まれている。

 

  星夜は慌てて返事をしようとするが先に三上が返事をした。

 

悟(うっさい、ハゲ!)

 

  三上の返した返事に星夜は頭の中で「死にたいのかな?」と呟いた。

 

(・・・ほ、ほほぅ! 我の事をハゲ呼ばわりするか・・・いい度胸ではないか!!! 久方ぶりの客人だと思って下手に出てやったが、どうやら死にたいらしいな!)

 

  再度響く声に怒気が含まれているのを感じ、星夜は「あ、死んだな」と他人事の様に小さく呟いた。一方、三上の方は――

 

悟(すんません! 返事の仕方も分からなかったもので、適当に思った事を試しに言ってみただけです。本当に申し訳ない!

 

 ちなみに自分、目も見えない状態でして、貴方の姿すら見えてないのですよ)

 

  体の半分を伸ばし、連続で上げたり下げたりして謝っていた。そして星夜は目が見えないという部分で納得していた。目が見えている状態で竜相手にハゲ呼ばわりなど誰が見ても自殺志願者か只の馬鹿のどちらかである。

 

(ふふふ。ふはは。ふはははははっ!!!)

 

  突然笑い出す竜。何が面白いのか星夜にはさっぱり分からない。

 

(面白い。実際、我の姿を見ての発言かと思ったが、目が見えないのか。スライム種は基本、思考もせず吸収・分裂・再生を繰り返すだけの低位モンスター。自らのテリトリーから外に出る事はめったにない)

 

  笑いながらスライムについて語り出す竜。其の声に怒気は含まれてはいない。

 

(そのスライムが我に体当たりを仕掛けてくるから不思議に思っていたのだ。再生能力も異常な速度だしな。其れに――)

 

  竜の視線が三上から星夜に移る。星夜は真っ直ぐに竜の顔を見る。

 

(そちらのお前は『竜魔人』か。最初は我が姉のどちらかの子か我が兄の忘れ形見の一人かと思ったがどうやら違うようだな。お前の容姿や雰囲気は我が姉二人と兄のどちらにも似ていないしな。お前の容姿や雰囲気は今は亡き筈の我が姉と我が姉が恋した勇者に似ているな)

 

  そう呟きながら星夜を見詰める竜。星夜は「我が姉?勇者」と小さく呟き、首を傾げた。しかし其の呟きを気にせず、竜は改めて三上の方を向く。

 

(ところでスライムよ。お前、目が見えないのだろ)

 

悟(あ、はい)

 

(見えるようにしてやろう)

 

  そして竜は見える様になっても怯えない事、また話をしに来る事という二つの条件を出し、三上は其の条件を呑んだ。

 

  其の後、三上は竜から『魔力感知』を教わり、星夜は離れた場所で其の様子を観察した。そして、数分後、湖の方に跳ねていき湖を覗き込むように見詰め、「やっぱり俺、スライムなんだ」と呟いた。そして三上は竜の方に跳ねていく。

 

悟(あ、なんか出来たみたいです。ありがとうございました―――ってげえぇっ! ドラゴン!!!!!)

 

 改めて竜を見た三上の心の叫びが、絶叫となって迸り出たのだった。





次回『竜による(異世界)講座』


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竜による(異世界)講座



地の文は少ないです


悟(とまあ、そういう訳なんすよ!超大変だったんすよ!)

 

 三上が目が見えてから数分後、星夜達は竜と会話をしていた。竜は自身を"個にして完全なる者"であり、かつて此の世に5体、現在は4体しか存在しない"竜種"が1体“暴風竜ヴェルドラ“と名乗った。

 

  久し振りに他人と話すのかヴェルドラは星夜達にスキルや魔物に魔族、ネームドモンスターにユニークモンスター等様々な事を教えた。

 

  そして今は三上がスキルの事は秘密にして、刺されてからスライムとして目覚めて、そして現在に至るまでの体験を語って聞かせていた。

 

  最初は星夜が体験を話していたが病気で話した。6歳から入院して10年間病室暮らしだった事も話したのだが其のせいで空気が重くなり、星夜自身も後から話すべきではなかったと後悔した。10年間も病室暮らしなど誰が聞いても良い気分には成らないだろう。

 

  其の後、三上に話を振り、三上が自身の体験を話しているという流れである。

 

  星夜達の話を聞いていたヴェルドラは納得そうに頷いた。

 

ヴェルドラ(ふむん。やはり、"転生者" だったか。お前達、ものすごく稀な生まれ方をしたな)

 

悟(え? 稀な生まれ方? というか、"転生者"って、疑ったり驚いたりしないのですか?)

 

 其のヴェルドラの反応に三上が訊ねる。星夜自身も少し不思議に思っていた。理由はヴェルドラの言い方が"転生者"は珍しくなく、生まれ方の方が珍しいという風な言い方だった為である。

 

ヴェルドラ(ふん。"転生者"はたまに生まれてくる事がある。意思が強いと魂に記憶が刻まれるのだろう。

 

 中には前世とやらを完全に覚えている者もいるようだが、珍しい存在ではない。

 

 ただし、異世界からの"転生者"は少々珍しいな。

 

 まして、普通は人に生まれるのだ。魔物ならまだしも、魔素から生まれて来たり、竜魔人として生まれてくるなど、我は聞いた覚えが無い。

 

 世界を超える事に耐えれる程、強い魂を持つ者はただでさえ少ない。まして、転生先が魔物や魔人では安定して定着せず、魂が消滅するのだ。

 

 お前達は特殊だよ)

 

星夜「そう、ですか。 其れで、異世界からの"転生者"って居る事は居るんですか?」

 

ヴェルドラ(うむ。異世界へ行く事は今だ成功事例がない。しかし、異世界からこちら側へ時たま落ちてくる者も居る。

 

 "異邦人"もしくは"異世界人"と呼ばれる者で、特殊な知識を持つ。また、世界を渡る際に、特殊な能力を獲得するようだな。

 

 そういう者と同等の知識を持つと確認された"転生者"の記録が残っている。確認されていない者もいただろうがな)

 

  ヴェルドラの説明に星夜はなるほど、と頷く。ヴェルドラの話す異世界が、星夜達の居た地球かどうかは不明だが、会ってみるのも一考と判断した。

 

 星夜自身、同郷の日本人も居るのならば会ってみたいと思い、目的の1つとして加えるのだった。





次回『竜による講座(異世界人&勇者編)』


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竜による講座(異世界人&勇者編)


※主に異世界人がメイン


ヴェルドラ(で、これからどうするつもりなのだ?)

 

悟(そうっすねー。とりあえず、同郷の異世界人でも居ないか探してみますよ。見つからなくても別にいいんですけどね)

 

 

 竜に予定を訊ねられ三上が答える。三上は見つかるならば其れは其れで良いと思っているが、仲良くなれるかは不明なので会える会えないは気にしていない様子だ。

 

ヴェルドラ(お前はどうするのだ?)

 

星夜「自分は三上さんに着いていこうと思います」

 

  訊ねられた星夜は三上と共に行動すると決めていた。理由は星夜自身の直感が三上と行動を共にするべきだ、と言っている様な気がしている事、そして三上と行動を共にする方が面白そうだと言っている様な気がしている為である。

 

 星夜はしかし、と思いながらヴェルドラを見る。先程からヴェルドラはピクリとも動いていない事に一瞬、不思議に成ったが会話の中で300年前に封印された、と言っていた事を思い出した。

 

星夜(ところで、ヴェルドラさんは封印された・・・と言ってましたよね?)

 

ヴェルドラ(む? まあな。ちょびっと相手を舐めてたのは間違いないが・・・途中から本気出したが、負けたな!)

 

 何故か誇らしげに負けたと言うヴェルドラに星夜は誇らしげに言う事か、と少し苦笑した。

 

 しかし星夜は少し興味が湧いた。魔法であるならばともかく、剣や槍では刃が立ちそうにもないヴェルドラを封印した人物に。

 

悟(相手はそんなに強かったのですか?)

 

 同じ様に興味が湧いたのか三上がヴェルドラに訊ねる。

 

ヴェルドラ(ああ。強かったよ。"加護"持ちで、人間の"勇者"と呼ばれる存在だ)

 

 ヴェルドラからの返答で星夜は納得していた。星夜の中では勇者とは神や運命に選ばれし者達、という印象があるためである。

 

ヴェルドラ(そういえば、勇者は自分で自分の事を"召喚者"だと言っておったぞ。お前と同郷かもな)

 

悟(え?いやいや、自分と同郷ならそんなに強いハズないですよ?)

 

  悟の否定に星夜も頷く。確かに星夜達の居た世界にも強者は確かに存在している。しかし、其れはあくまで人間としては、である。幾ら強者でもヴェルドラに勝てるとは思えないのである。

 

ヴェルドラ(いや、この世界に来た"異世界人"は、特殊能力を持つ事が多い。それは、世界を渡る際に魂に刻まれる力なのだ。

 

 "召喚者"ならば、100%特殊能力を持つ。それも、世界で唯一つの"ユニークスキル"を持つのだ。

 

 偶発的に落ちてくる"異世界人"と違い、召喚に耐えるほど強い"魂"故の事だろう。

 

 召喚の成功率が0.03%未満という事実が、裏付けておるよ)

 

星夜「召喚というと、魔法か何かで呼び出した・・・とかですか?」

 

ヴェルドラ(その通り。30人以上の魔法使いで、3日かけて儀式を行うのだ。成功率は低いが、強力な"兵器"としての役割を期待されておる)

 

星夜(兵器?)

 

ヴェルドラ(うむ。"召喚者"は召喚主に逆らえないように、魔法で魂に呪いを刻まれているからな)

 

悟(なんじゃそりゃ!? 召喚される人の人権は無視か!?)

 

ヴェルドラ(人権?・・・異世界人がたまに口にしておるな。そんなもの、この世界では幻想だよ。

 

弱肉強食こそ、万物にして絶対なるこの世の真理なのだから)

 

星夜(では、"異世界人"の扱いも奴隷みたいな感じなのですか?)

 

ヴェルドラ(いや、人によるな。"支配の呪禁"が施されていないから、受け入れられたら普通に暮らしたり、冒険者になったりしてるんじゃないか?

 

 実際、我を討伐に来た冒険者の"異世界人"も何度か撃退しているぞ! フハハハハ!!!)

 

  ヴェルドラの答えに星夜は内心で少しホッとした。“異世界人“という事で問答無用で奴隷にされたり、嫌煙されたりしていないことに。

 

星夜(召喚された場合だけ強制労働って事ですか・・・)

 

ヴェルドラ(労働ではないだろうが、まあ、そんな感じじゃないか?

 

 我は人間に詳しい方だが、全て知っている訳ではないからな)

 

悟(それもそうか)

 

星夜(・・・竜ですもんね)

 

 星夜達からしてみれば竜にしては詳しすぎな感じである。

 

  ヴェルドラは喋る事が出来て嬉しいみたいで、聞けば何でも答えてくれそうなので星夜達はヴェルドラに色々な話を聞く。

 

 ――勇者といかに戦ったか。

 

 ――勇者がいかに強かったか。

 

 白い肌に真紅の小さな口唇、長く漆黒の長髪。身長はそんなに高くない、やや小柄で細っそりとした体型だったらしく、眼はマスクで隠されていたそうだが、美人である事は間違いなかったと言う。

 

 性別は女性だったらしい。見とれて負けたのかと三上が聞くと、ヴェルドラはフザケルナ、と怒鳴った。

 

 勇者は反りの入った"カタナ"と呼ばれる剣を使い、盾は持っていなかったらしい。

 

 勇者はユニークスキル『絶対切断』、『無限牢獄』を駆使し、各種魔法を用い、自分を圧倒したのだ、と嬉しそうに語った。

 

 そうして星夜達はヴェルドラから此の世界について様々な事を学んだ。

 

  此処まで話してみてヴェルドラは人間が好きということも星夜達は分かった。

 

 ヴェルドラは口では雑魚だの塵だの言いながら、襲ってきた者を殺した事はないらしい。

 

  因みにヴェルドラは300年前にとある事件が起きて、街一つを灰塵に帰した事が原因で、勇者が差し向けられ、ユニークスキル『無限牢獄』によって封印されたらしい。

 

 星夜は封印された理由は自業自得じゃないか、と苦笑した。

 

  そして話していて星夜達はやはりヴェルドラが悪い竜ではないのだろうと感じた。

 

  そしてヴェルドラの事を気に入った星夜は三上に小声である提案をする。三上も同じ気持ちだったのか賛成した。星夜は自分から言おうとしたが三上が自分が言うと言った為、任せる事にした。

 

  三上が一歩前に出てヴェルドラを真っ直ぐに見詰める。そして星夜が三上に言った提案をヴェルドラに言った。

 

悟(よし! じゃあ、自分達・・・いや、俺達と友達にならないか?)





次回『友達と新たなる名前』


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友達と新たなる名前

地の文はまた少な目です


悟(よし! じゃあ、自分達・・・いや、俺達と友達にならないか?)

 

ヴェルドラ(な、なんだと? "暴風竜ヴェルドラ"と恐れられる、この我とトモダチだと!?)

 

悟(い、いや、嫌ならいいんだけど・・・。なぁ、星夜)

 

星夜「え、ええ。嫌なら別に・・・」

 

ヴェルドラ(馬鹿!お前達!!! 誰も嫌だなどと、言っておらぬだろうが!!!)

 

星夜「では、どうしますか?」

 

ヴェルドラ(・・・そうじゃなあ。・・・どうしても、と言うなら・・・考えてやっても・・・)

 

  チラチラ見ながら星夜達の反応を伺うヴェルドラ。其の反応が面白かった星夜は少しクスッ、と笑う。

 

星夜「どうしても、です」 

 

悟(決定な! 嫌なら絶交。二度と来ない!!!)

 

ヴェルドラ(ちょっ! ・・・仕方ないな、我が友達になってやるわ! 感謝せよ!)

 

  ツンデレ風に答えるヴェルドラ。やはり可笑しく思い星夜は笑った。

 

ヴェルドラ(何が可笑しい!!)

 

星夜「いえ、ちょっとヴェルドラの答え方が可笑しくって、済みません」

 

  怒鳴られたため笑った事を謝り、心の中でヴェルドラの渾名をツンドラと決めた星夜は、ヴェルドラを見る。

 

悟(じゃあ、宜しく!)

 

星夜「宜しく御願いします、ヴェルドラ」

 

ヴェルドラ(宜しくの!・・・そうじゃ、お前達に名前をやろう。お前達も我に名前を付けよ!)

 

星夜「名前を?」

 

悟(は?なんでだ? 突然何を?)

 

ヴェルドラ(同格と云う事を、魂に刻むのだ。人間でいうファミリーネームみたいなものだ。

 

 我がお前達に付けるのは、"加護"になるのだ)

 

 星夜は三上と顔を見合わせる。ヴェルドラの言う内容を簡単に言うと名字を考えろというものである。

 

悟(別に良いけど少し話し合って良いか?)

 

ヴェルドラ(良かろう。我も考える時間がほしいしな)

 

  そう言ってヴェルドラから少し離れて話し合う。

 

星夜「で、どうしますか?」

 

悟(そうだな。やっぱ暴風竜だし其の方向で決めたいな)

 

星夜「暴風、ですか。英語ですとwindstorm(ウィンドストーム)ですね」

 

悟(うーん。格好悪いな)

 

星夜「ではドイツ語のWindstorm(ヴィントシュトルム)は?」

 

悟(其れもいまいちだな・・・う〜ん)

 

  星夜自身言っておいて格好悪いとは思っていたためそうですよね、と呟いて別の国の言葉で考え始める。暫く星夜は中国語や韓国語、ロシア語、ギリシャ語と順に考えていく。

 

星夜「暴風・・・イタリア語でtempesta(テンペスタ)ですが・・・”テンペスト”はどうでしょうか?」

 

悟("テンペスト"、か。まぁ良いんじゃないか? 響きも良いし)

 

  2人でテンペストに決めた事をヴェルドラに伝える。星夜達は安直過ぎるので断られる事も覚悟して伝えた。

 

ヴェルドラ(決まり、だな!!! 素晴らしい響きだ)

 

 響きが気に入ったという理由で1発で決まる。ヴェルドラは其の後、よほど気に入ったらしく満足そうに何度も頷く。

 

  ひとしきり頷いた後、ヴェルドラは三上達の方を向く。

 

ヴェルドラ(今日から我は、”ヴェルドラ=テンペスト”だ! そしてスライムのお前には”リムル” の名を、竜魔人のお前には”リラ”の名を授ける。今日より”リムル=テンペスト”、”リラ=テンペスト”を名乗るが良い!!!)

 

 その瞬間、星夜は魂の奥深くで、何かが変化したのを感じた。

 

  星夜の見た目や能力に何の変化も無いが、星夜は自分の魂の奥深くで何かが変わり、”リラ=テンペスト”の名前が刻まれた事を感じていた。

 

 

 

 

 

 ――こうして、星夜、悟、ヴェルドラは、友達に成ったのだった。




次回から地の文や台詞の前の三上や悟、星夜の表記がリムル、リラに変わります。


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旅立ち

やっと旅立つ時。


リムル(で、行く前に一応聞いておくけど、その封印って解けないの?)

 

  名前をつけてもらった数時間後、そろそろ旅立とうと言う時にリムルは封印について訊ねる。

 

ヴェルドラ(我の力では解けぬな。勇者と同格のユニークスキル持ちなら、あるいは可能性があるかもしれぬが・・・)

 

リラ「ヴェルドラは自分達みたいにユニークスキルは持ってないのですか?」

 

ヴェルドラ(持っている。が、封印された時点で、全て使えないな。かろうじて、念話が出来るのみだ・・・)

 

 ヴェルドラを封印しているだけでも凄いことだがスキルすら封印する『無限牢獄』。勇者が如何に桁違いの存在かを知り、リラは勇者が敵に回らない様に願う。

 

  そして、自分のスキル『魔術者(マホウツカイ)』で『無限牢獄』の再現を試してみる。しかし、

 

  『ERROR:『無限牢獄』と同じ効果を持つ魔法を創造するのに必要な魔素量(エネルギー)が足りません』

 

  頭の中にERRORの情報が流れる。やはり無理か、とリラは魔法創造で『無限牢獄』と同じ効果を持つ魔法を創造する事を諦める。

 

  リラがリムルの方を見るとリムルはヴェルドラに触れていた。リラがリムルに何をしているのかを聞くとリムルは『捕食者(クラウモノ)』で『無限牢獄』を捕食しようとしたが失敗したと説明してくれた。

 

 しかし、リムルは『無限牢獄』の一部解析が出来たらしく、脱出方法も分かったらしくリラにだけ説明してくれた。

 

 リムルによると封印は物理的ダメージによる破壊は不可能であり、脱出方法は2つ。

 

 1つ目は意思体のみの脱出。可能性は1%。

 

 2つ目は外部に自らの依代を用意し、そこに移行を行う。成功率は3%で、プロセスは"転生"に相当するらしく、依代との相性が悪い場合、記憶と能力の全てが消去される可能性があるらしい。

 

 説明を聞いてリラはあまりの成功率の低さに驚いていた。そして物理破壊が不可能という点でリラは自分のユニークスキル『武闘者(タタカウモノ)』に結界等を無効化・破壊する『貫通』がある事を思い出したため使用しながら思いっきり封印を殴る。

 

  しかし、『無限牢獄』に綻びを作る事は出来たが直ぐに修復される。リラは破壊できない理由として自分のスキルは『無限牢獄』より格下であると判断する。

 

 リラはある事を閃き、ヴェルドラに聞く。

 

リラ「・・・勇者ってダメージ受けていましたか?」

 

ヴェルドラ(よくぞ聞いてくれた!我の攻撃はほぼかわされたのだが、何発か直撃したのだ! だが、全て効果を及ぼさなかった。

 

 "死を呼ぶ風" "黒き稲妻" "破滅の嵐"さえも、絶対回避不可能なのだが、効果なし!お手上げよ!!! 笑ってしまったわ!!!)

 

 説明しながら高笑いするヴェルドラ。リラの閃いた予想通り『無限牢獄』は、自分の身を覆う事で、外部からの攻撃を防ぐ盾にもなると。

 

リムル(脱出するには、依代になるモノが必要なようだ)

 

ヴェルドラ(む?脱出方法があるのか!実はな、後100年も持たずに我の魔力は底をつくところだったのだ!

 

 なんせ、魔素の流出が止まらなかったものでな…)

 

リラ「それでこの辺りの魔素濃度が高い訳ですね」

 

ヴェルドラ(うむ。かなり上位の魔物も寄り付けぬ。草も生えぬ土地だったろう。ここらで生息出来るのは希少な植物のみよ!)

 

  通りでヒポクテ草が生えまくっている訳だ、と納得しながらリラは頭を振る。

 

リムル(まあ・・・そういう事なら脱出を試してみるか?依代があれば、成功率上がるみたいだし。・・・で、依代ってどんなのがいいのかわかる?)

 

ヴェルドラ(・・・恐らくだが、意思のみ出ても、魔素を集めて核を再結成させる事が難しいという事だな。お前達が牢獄に綻びを作った事で、成功の可能性が出来たのだろう。

 

 で、依代。つまり、新たな核を用意するならば、そこに移るだけですむ。様は、転生か!)

 

リムル(そういう事。で、用意出来るものなら探してくるぞ?)

 

ヴェルドラ(うーむ。実は、我には核は必要ないのだ・・・。我は、”個にして完全なる者”。特殊固体なのだ。

 

 意識生命体なので、この肉体に拘りはない。周囲の信仰に応えて、この肉体になっただけの話でな)

 

 意味が分からないと言いたげな雰囲気を醸し出しているリムルにヴェルドラの説明を要約して伝える。意識のみで魔素を集め、肉体を形成。今回は、肉体が囚われただけではあるが、意識で外部の魔素を集める事が出来ない状態であるらしい。

 

 意識だけ外部に出られるのかとリムルが問うとヴェルドラは受け皿が必要だと説明した。

 

 意識だけ外に出ると、魔素と共に拡散して存在が消滅してしまう。そしてどこかで、新たな"暴風竜"が生まれるらしい。

 

  どうしたものかとリラが考え始めようとした時、リムルがある提案をした。

 

 リムルの提案は『捕食者』で、ヴェルドラを無限牢獄ごと取り込むと言う内容だった。

 

  リムルが『大賢者(エイチアルモノ)』と『捕食者』で『無限牢獄』を解析を行う。

 

  リラが『万物予測』を使ってあらゆる可能性を予測、また、勇者のスキルについて調べ、リムルに伝える。

 

  ヴェルドラは胃袋の中で『無限牢獄』の破壊を試みる。

 

  簡単に言えば内と外から『無限牢獄』を消し、ヴェルドラを開放すると言う内容である。また、胃袋の中なので、意識が拡散し消滅する恐れもないらしい。

 

ヴェルドラ(クアハハハハ!面白い!!! ぜひやってくれ。 お前達に我の全てを委ねる!)

 

リラ「良いんですか? 本当に」

 

ヴェルドラ(無論だ!ここで、お前達が帰って来るのを待つよりも、お前達と共に『無限牢獄』を破る方が面白そうだ!

 

 なあに!我とお前達と、3人でかかれば『無限牢獄』も破れるかもしれん!)

 

  其の言葉にリラは確かに3人でならば破壊する事も可能な気がしていた。

 

リムル(じゃあ、今からお前を喰うけど、さっさと『無限牢獄』から脱出して来いよ?)

 

リラ「ちゃんと協力もしますし、待ってますからね」

 

ヴェルドラ(クククッ! 任せておけ!そんなに待たせずに、お前の前に合間見えよう!!!)

 

  其の言葉を合図にリムルがヴェルドラに触れ、捕食を行った。

 

 一瞬にして、ヴェルドラの巨体が目の前から消え、大きな空間が出来上がる。

 

 捕食を終えたリムルはリラの肩に飛び乗る。

 

リムル(行くか!!)

 

リラ「ええ。行きましょうか」

 

  リムルを肩に乗せてリラは歩き出した。




次回:初戦闘


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初戦闘

パプリカという曲ばかり聞くように成った今日この頃(転スラ1期が後半カットが多かったため2期が楽しみでもあり不安な作者です)


  ヴェルドラと別れたリムルとリラは出口を探して歩いていた。

 

  リムルによるとヴェルドラを喰ってから30日が経過しているらしい。ただ歩くのも疲れるのでリラ達は休憩しながら出口を探す。今は休憩中でリムルとリラは新しいスキルや新しい技を獲得できないか試していた。

 

  現在リラはリムルより離れた場所である漫画で見た技の内、2つの魔法を創造しようとしていた。

 

リラ「――片方だけ成功・・・と」

 

  そうポツリと呟く。先に創造しようとした技は魔素量不足で不可能であったが、2つ目に創造しようとした技は成功していた。

 

  リラが次の魔法を創造しようとした時、近い付いてくる気配に気付き、其の方向を見るとリムルが此方に向かって跳ねてきていた。

 

リムル(調子はどうだ?)

 

  リラの足元で止まり、見上げながら話し掛けるリムル。リラはしゃがむとリムルを両手で自分の目線の高さまで持ち上げる。

 

リラ「調子は良い方ですね。リムルは?」

 

リムル(良くぞ聞いてくれたな! 何と新たなエクストラスキルを手に入れたぞ!!)

 

  嬉しそうにリムルは答える。リムルは水を吐き出せたためウォーターカッターが出せるのではと思い試したらしい。

 

  其の途中で体表面を振動させて、水流を作り水中遊泳を行えたらしくスキル『水流移動』を獲得。其の後本番のウォーターカッターは“水の切断“をイメージしながら試したらしく1発で成功。スキル『水刃』を獲得し、『水圧推進』『水流移動』『水刃』を獲得した事でエクストラスキル『水操作』へ進化したとのことだった。

 

リムル(リラは幾つ魔法を創造したんだ?)

 

リラ「7つです」

 

  微笑みを浮かべながら答える。幾つか試してみたが大半は魔素量不足で不可能だった。暫くリラはリムルと互いに獲得したスキルや技を見せ合った

 

 

 

□■□■□■

 

 

 

 

  休憩を終えたリラ達は1本の洞窟を歩く。リムルによると此の洞窟が出口に繋がっていると聞いたためである。

 

  洞窟は暗いがリラは『万物感知』を、リムルは『魔力感知』を使用しているためリラ達には昼間同然に映っていた。

 

  其のまま進むと其処にあったのは大きな門。リムルが扉を壊して開けるか、と提案するがリラは壊したら流石に駄目だと思うと告げて扉に触れて普通に開けようとする。

 

  リラが触れようとした瞬間、扉の鍵が外れる音がリラの耳に届いたためリラはリムルに小声で告げて慌てて、道の端に避ける。

 

リラ「済みません。ちょっと触れます」

 

  しゃがんでリムルに触れながら小声で呟き、創造した魔法の1つを発動する。リラが魔法を発動した瞬間、リムルとリラは透明になる。

 

  魔法名『(いん)』。洞窟を進んでいる中で創造した魔法。効果は透明化と気配隠蔽であり、リラとリラが触れているものが透明になる魔法である。

 

リムル(ほう、透明化の魔法か。覗きし放題じゃないか)

 

リラ(そんな事には使いませんし、使わせませんから!)

 

  少し怒気を含ませてリムルに告げる。そして扉の方に視線を向ける。向けた先では扉が完全に開いており、誰かが入ってくる気配があった。

 

「やっと開いたか。錆付いてしまってら鍵穴もボロボロじゃねーか・・・」

 

「まあ仕方ないさ。300年、誰も中に入った事がないんだろ?」

 

「入ったという記録は残っていません。それよりも、本当に大丈夫なんでしょうか?いきなり襲われたりしないですよね・・・?」

 

「がはははっ! 安心しろ。300年前は無敵だったかどうか知らんが、所詮大きなトカゲだろう!俺はバジリスクをソロで討伐した事もあるんだっ。任せろ!!!」

 

「それ、前から思ってましたが、嘘ですよね?バジリスクってカテゴリーB+ランクの魔物ですよ?カバルさんにはソロ討伐なんて無理ですよね?」

 

「馬鹿野郎!俺だってBランクだぞ!でかいだけのトカゲなんざ、敵じゃねーんだよ!」

 

「はいはい。解りましたから、油断しないで下さいよ?まあ、いざという時は私の”強制離脱”で逃げますけど・・・」

 

「二人が仲いいのは分かったから、そろそろ静にお願いしますよ。あっしの”隠密スキル”を発動させやすんで!」

 

 入ってきたのは男性2人、女性1人の3人組。リラは話してみようかと考えたがリムルがスライムだという事を考えて止める。相手は冒険者の様なためリムルを見たら問答無用で殺されかねないと考えたためである。

 

 リラ達は隠れて様子を伺う。するとやせ気味の男が何かしたのか、見えないというレベルで急に3人の姿がぼやける。リラはやせ気味の男が言っていた”隠密スキル”という言葉からリラの魔法『隠』と同じ様なものと判断した。

 

 其の後、3人が奥へと進んでいき、3人の姿と気配が消えた事を確認し、リラ達は移動を再開する。リラ達は扉を潜り抜け、その場を後にした。

 

 扉を抜け暫く進み、道が複雑に分岐している地点に到達。リラとリムルは話し合って一つの道を選んで中に入る。

 

  入って少し進んだ先に居たのは2匹の禍々しい大蛇。前世の蛇が可愛く思えるレベルで硬度が増して棘とげしい鱗に覆われた真っ黒な蛇である。

 

 リラとリムルは後退しようとする。しかし、2匹の蛇は逃がす気はないと告げる様にリラとリムルを威嚇する。逃げられないと判断し、リラは戦う事を決める。

 

リラ「・・・リムル、1匹は任せます」

 

  リラはリムるから離れて腰を低く落とし、右手を下に向け、左手の掌を前に向ける。

 

 一方、蛇は口を開き黒い煙の様な霧をリラに放つ。リラは其れを軽く横に飛んで回避する。煙が当たった場所が溶けている事を確認し、腐食系統と予想し蛇を見る。

 

『解析鑑定結果

  固有スキル:『毒霧吐息』

  内容:強力な毒(腐食)系ブレス

  効果範囲:角度120度7m延長全域程度』

 

  リラの頭の中に情報が浮かぶ。リラは情報を確認し終えると思いっきり蛇に向かって走り出す。蛇も応戦するかの様に先程のブレスをリラに向かって吐き出す。

 

  真っ直ぐに突っ込んで行くリラ。ブレスに当たる直前にリラの姿が一瞬で蛇の前から消える。蛇が驚いた様に目を少し見開く。其の次の瞬間、蛇の首が宙に舞い、リラは蛇の背後に音もなく姿を現す。

 

リラ(久し振りだけど上手く出来たか。まぁ出来は100点満点中71点くらいかな・・・)

 

  安堵の息を吐き出し、構えを解くリラ。リラが使用したのは生前父親から習った荒木家に伝わると言う武術の技。移動技の『進』と攻撃技の『連脚』の2つである。

 

  『連脚』は凄い勢いで放つ回し蹴り、『進』は向きを変えながら行う素早い突進技である。リラは此の2つの技を『武闘者』と創造した魔法の1つ『付斬(()属性()与)』を使用しながら放ったのである。

 

  リラがリムルの方を見る。リムルは倒した蛇を捕食していた。リラはしゃがんで左手で蛇に触れ、左手をスライムの様に変化させて真似る様に蛇を取り込む。其の結果『毒霧吐息』と黒蛇への擬態化を獲得する。リラとリムルは其の後蛇のスキルや実験を行うのだった。

 




(解説)
『隠』・・・気配隠蔽と透明化の魔法。父親から聞いたハーデースの隠れ兜の効果から。

『進』・・・移動技。突進を向きを変えながら何度も行い、相手の死角に移動する。鬼○の刃に出てくる技『霹靂一閃・○連』の様な技。

『連脚』・・・回し蹴り。本来は首、胴、足に対する3連続で放つ回し蹴り。




次回:『外へ』


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外へ

 webと書籍の内容が凄い違ってきている事に戸惑っている作者です


 黒蛇との戦いから3日。リラとリムルは未だに洞窟の中にいた。

 

 あれからかなり歩いているのだが一向に外へと出られる気がしない。リラはとある不安からリムルに訊ねる。

 

リラ「ひょっとして自分達迷ってます?」

 

 其の問にリムルはそんな筈は無いと答える。リムル曰く最初の洞窟で迷う話なんて聞いた事ないためだと。

 

リムル(イージーな洞窟で序盤の踏み台にするものだろ?

 

 それに、冒険者らしき3人組も迷わずに入って来れてたみたいだったし…

 

 大丈夫。きっと道が長いだけだろう)

 

 そう答えるリムルにリラは「は、はぁ・・・」と頷く。リラは少し思案した後、リムルに道が判るいい方法はないかと訊ねる。

 

 すると暫くした後リムルは有ると答えた。リムルによると先程脳内に、現在通った道を表示する様にしたと。

 

 其れを聞いてリラは最初から使ってくださいよと言うとリムルもさっき知ったと答えた。

 

リラ「同じ場所をループしてない事を祈りますよ自分は」

 

リムル(おいおい馬鹿言うなよリラ。此の俺、攻略に命をかけた事もある。 言うなればプロが迷う事など有り得ない!)

 

 リラの言葉にリムルは自信満々に答えた。其の言葉はフラグですかと言いたかったがリラは其の言葉を呑み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

◻◼◻◼◻◼

 

 

 

 

 

 

 

 

 結果から言うと有り得たようでリムル曰くループしていたらしい。

 

 其の後リムルの指示に従い、今まで進んでいない方の洞窟に侵入。其の結果、此の3日に目にした事のない風景に出くわした。

 

リムル(ふふふ。この俺を惑わすとは、この洞窟も大したものだ!ここは素直に洞窟を褒めておこう。

 

 決して、俺が方向音痴な訳ではないのだから!)

 

リラ「・・・ソーナノカー」

 

 いや迷子に成ってたしちょっと言い訳としては苦しくないかとか本当に攻略に命を懸けた事が有ったのかと心の中でツッコミを入れつつ、リムルの言葉にリラは棒読みで答えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

◻◼◻◼◻◼

 

 

 

 

 

 

 歩いていると洞窟の入り口、外への通路が近い為か洞窟内に苔や雑草が目立ちはじめた。

 

 太陽の光がどこからか届くのか、薄明るくなって来ていた。

 

 此所に到達するまでに、リラ達は戦闘を行った。リラ達が戦った生物は以下の4匹。

 

 ・エビルムカデ:ランクB+

 

 ・ブラックスパイダー:ランクB

 

 ・ジャイアントバット:ランクC+

 

 ・アーマーサウルス:ランクB-

 

 リラは基本どの生物も拳や蹴りで簡単に倒していたがリムルの方はジャイアントバットとアーマーサウルスに少しだけ苦戦していた。ジャイアントバットは何度か水刃をかわして噛み付いており、アーマーサウルスは角度が悪い為か水刃を弾いていた。

 

 ムカデの化物は、気配を消して背後から襲い掛かって来たのだが、リムルは『魔力感知』と『熱源感知』で、リラは『万物感知』で常に周囲の警戒を行っていたため通じていなかった。

 

 大きな蜘蛛はリラは蹴りで一撃、リムルは5本の水刃で切り刻んでいた。

 

 リムルは虫嫌いな為か長々と見ていたくない相手だったと終わった後に言った。

 

 倒した生物は全て捕食した。リムル曰く所詮この世は弱肉強食。負けたら相手の糧となるものらしい。

 

 因みにリラは蜘蛛やムカデに触れる事にだけ少し躊躇した。虫嫌いでは無いリラでも流石に食う(取り込む)と成れば話は別である。

 

 捕食中にリムルからゴキブリの魔物とか出てきたらどうするかと訊ねられたリラは全力で逃げると答えた。

 

 流石のリラでもゴキブリは生理的に無理である。と言うよりもリラにとってゴキブリは軽くトラウマに成っている。未だ入院生活に成る前に旅行先で飛んだゴキブリが顔に着地され父親が取ろうとして逃げたゴキブリが顔から服の中に入った記憶はリラに取って早く忘れたい記憶に成っている。

 

 因みに捕食後に入手したスキルは以下の通り。

 

 ・エビルムカデ:『麻痺吐息』

 

 ・ブラックスパイダー:『粘糸,鋼糸』

 

 ・ジャイアントバット:『吸血,超音波』

 

 ・アーマーサウルス:『身体装甲』

 

 此の中でリラが気に入ったのは『身体装甲』。腕を擬態した姿がリラは格好良いと思った為である(此の時リムルは厨二心を擽られたなとリラに聞こえない様に呟いた)。

 

 其の後リラ達は歩き続け洞窟から地上へと出る事に成功するのだった。




 次回:ゴブリン


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ゴブリン


何時もより駄文注意です


リラ「次はどっちに行きますか?」

 

リムル「此のまま真っ直ぐに進もう」

 

リラ「分かりました」

 

 リムルを抱えて歩くリラ。洞窟から脱出した2人はスキルの練習をしながら森の中を進む。リラはスキルの確認とスキルを交えた戦闘法を、リムルはジャイアントバットから得たスキル『超音波』の練習を行った。

 

 得たスキルの内の1つである『超音波』は、対象を惑わしたり失神させたりといった効果もあるのだが、本来は位置特定スキルで元の世界の蝙蝠もそうであったように、ジャイアントバットも音で位置を特定していたらしい。

 

 リムル曰く重要なのは発声器官らしい。スキルそのものはどうでもいいらしく、此の『超音波』を発する器官を、スライムボディに再現する事で何も無いところから想像で身体を操作するのではなく、参考となる機能を持つ魔物を吸収出来た事はラッキーだったらしい。

 

 リラは発声器官の再現が出来るのかと疑問に思ったがリムルは寝る間も惜しんで研究を続け、三日三晩、不眠不休で歩きながら研究した結果、発声に成功。其の後、声帯の調整を行った。

 

 そうして、色々と試しながら2人は森の中を進む。現在、リラは少し平和だなと感じていた。理由は洞窟内ではあれほど頻繁に魔物に襲われていたのに対し、外に出てからは全くと言っていいほど襲われていないからだ。

 

 一度だけ、休憩兼発声&スキルの練習中に狼に襲われた。狼の体長は普通の大型犬よりも大きく、体長2m超えの大物が何匹か居た。

 

リムル「あ”?」

 

狼's「「「キャイ────ン!!!」」」

 

 しかし、リムルが声を出して凄んだだけで、狼は悲鳴を上げて逃げて行った。

 

 リムルは走り去る狼を見て「スライムを見てビビる魔物とか、情けない限り」と狼の事を酷評した。

 

 リラは少し気に成りエクストラスキル『万物眼』で周囲の観察を行う。其の結果、リラとリムルの周囲100m以内に、魔物が入ってくる気配がない事と森の魔物が2人の事を恐れているように感じた。

 

 其の事に疑問を感じたがリラの『万物感知』とリムルの『魔力感知』が魔物の集団の接近を感知し、2人は思考を中断して向かって来る方を向いた。

 

 

 

 

 

□■□■□■

 

 

 

 

 

 

 待つ事数分後。2人の目の前に30体程の人型の魔物が現れた。

 

 魔物は小柄な体躯に粗末な装備。薄汚れて、知性に欠ける表情をしている。一応知性が無い訳ではないのか剣や盾、石斧や弓まで装備している個体も混じっている。

 

 魔物を見た瞬間リラの頭の中に目の前の魔物の情報が流れる。

 

『名前 : ──

 

 種族 : 小鬼族(ゴブリン)

 

 ランク : E級』

 

 情報を見る前から相手の正体を察していたリラはゴブリンか、と考えていた。もし戦う事に成れば2人VS30体。数上はリラとリムルの方が不利だが、2人は何故だか恐怖は沸いて来ていない。

 

 理由はゴブリン達の装備である。剣は錆付いており、防具も貧相。腐った布を纏っただけのゴブリンも居る。

 

 此れまで頑強な鱗に覆われたトカゲ、強靭な刃の付いた手足を持つ蜘蛛。そういった魔物達を倒して来たリラとリムルの2人は倒される、殺されるイメージ処かダメージを受けるイメージを持てない。

 

 ゴブリン達を再度見てやはり恐怖も感じないリラだが油断は禁物か、と考えて一応戦闘体制を取る。

 

 リラが構え、リムルも一応戦闘体制を取り、2人揃ってゴブリン達を見る。すると群れのリーダーであろう一体が口を開いた。

 

「グガッ、強キ者達ヨ・・・。コノ先ニ、何カ用事ガ、オアリデスカ?」

 

 言葉を聞いてリラは心の中で喋れるんだと考えていた。リラは一応構えたままリムルの方を見る。リムルは目でまた俺に任せてくれないかと語りかける。リラは分かりましたと頷く事で返し、1歩後ろに下がるのだった。





次回:交渉


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ゴブリンの村

やっと書けたよパ○ラッシュ


 1歩後ろに下がったリラはゴブリンの様子を伺う。ゴブリン達の中には何匹か逃げ腰になっている者も居るが油断なく武器を構えて、此方の様子を伺っている。

 

 リラは其の中でリムルとリラの2人から目を離す事なく、見つめている1体がリーダーだと判断する。

 

 リムルは何度か頷いて更に1歩前に出る。

 

リムル「初めまして、で良いのかな? 俺の名はリムル。後ろに居るのはリラという」

 

 リムルが話し掛けるとゴブリンがザワめきだす。そして何体かが武器を投げ捨てて平服し始める。

 

ゴブリン「グガッ、強キ者ヨ! アナタ様ノお力ハ十分ニワカリマシタ!! 声ヲ沈メテ下サイ!!」

 

リムル「すまんな。まだ調整が上手く出来なくて」

 

 少しビビりながらリーダーのゴブリンが返答し、リムルはビビらせてしまった事を謝罪する。

 

ゴブリン「オソレオオイ。我々ニ謝罪ナド、不要デス!」

 

リムル「で、俺達に何か用か? この先には別に用事なんかないよ?」

 

ゴブリン「左様デシタカ。コノ先ニ、我々ノ村ガ在ルノデス。強力ナ魔物ノ気配ガシタノデ、警戒ニ来タ次第デス」

 

リムル「強い魔物の気配? そんなもの俺には感じられないけど・・・? リラは感じたが?」

 

 話を降られた為リラは少し考えたが思い浮かばず首を左右に振る。

 

ゴブリン「グガッ、グガガッ。ゴ冗談ヲ! ソノヨウナお姿ヲサレテイテモ、我々ハ騙サレマセンゾ!」

 

 

 

 

 

 

□■□■□■

 

 

 

 

 

 それから暫くゴブリンと会話をし、話の流れで泊めてくれる事に成り、リラとリムルは村にお邪魔する事となった。そして2人は道すがら色々な話を聞いた。

 

 最近彼等の信仰する神がいなくなった事。神の消失と同時に魔物が活発に活動を開始した事。森の中に力ある人間の冒険者の侵入が増えた事。

 

 そして着いた村はリラのゴブリンの住処のイメージ通りにこ汚い感じだった。2人はリーダーに1つの建物に案内される。

 

 腐ったような藁の屋根。ベニヤ板を重ねただけのような壁。本で見たスラムの様な建物だな、とリラは考えていた。

 

ゴブリン「お待たせ致しました。お客人」

 

 そう言いながら、1匹のゴブリンが入って来る。

 

 入ってきたのは少し年老いたゴブリン。リラは村の村長と判断する。そして村長を支えながら先程まで2人を案内したリーダーが付き添っていた。

 

リムル「ああ、いやいや。それ程待っていません。お気遣いなく!」

 

村長「大したもてなしも出来ませんで、申し訳ない。私は、この村の村長をさせて頂いております」

 

 そう言って、目の前にお茶っぽいものを出す。リラはやっぱり村長か、と考えてお茶を啜った。一応毒の可能性も考え、少し啜るがお茶の様な味で毒も入っていなかった。リラはコップを置き村長の顔を真っ直ぐに見る。

 

リラ「あの、済みません村長」

 

村長「は、はい! 何で御座いましょう?」

 

リラ「・・・単刀直入に聞きます。自分達を村まで招待したという事は何か用事があったのですか?」

 

 友好的なだけの招待ではない事を案内されている時に察していたリラは疑問に思った事を訊ねる。

 

 村長は少し身体を震わせたが、覚悟を決めた様子でこちらを伺い、そして話し始める。

 

村長「実は、最近、魔物の動きが活発になっているのはご存知でしょう?」

 

 リラは其の言葉に道案内のときに時に聞きました、と返す。

 

村長「我らが神が、この地の平穏を守護して下さっていたのですが、ひと月程前にお姿をお隠しになられたのです・・・。その為、近隣の魔物がこの地にちょっかいをかけ始めまして・・・我々も黙ってはいられないので、応戦したのですが、戦力的に厳しく・・・」

 

 話を聞き、リラは消えた時期から彼等の神がヴェルドラだと仮定する。そして2人は何を頼みたいのかを悟る。

 

リムル「助けて貰いたいって事か」

 

リラ「御話は良く分かりましたが自分達では期待されているような働きは出来ないと思うのですが?」

 

村長「ははは、ご謙遜を! 貴方方の妖気を見れば直ぐに実力は分かります! いずれ名のある方達なのでしょう?」

 

 妖気という言葉を聞いてリラは即座に『万物感知』の視点を自分とリムルに切り替える。観察の結果リラとリムルの身体を何やら禍々しいオーラの様なモノが漂うように覆っていた。

 

リムル「ふ、ふふふ。流石は村長、わかるか?」

 

村長「勿論でございますとも! そのお姿でさえ、漂う風格までは隠せておりませぬ!」

 

リムル「そうか、分かってしまったか。お前達はなかなか見所があるようだな!」

 

 少し偉そうに話すリムルを見て恥ずかしかったのかな、と考えながら魔素を操る要領で妖気を引っ込むように念じる方法で消せないか試す。すると妖気が小さく成っていった。

 

村長「おお・・・。我々を試されていたのですね! 助かります。その妖気に怯える者も多かったもので・・・」

 

リムル「そうだな。俺達の妖気を見ても怯えずに話しかけて来るとは、見所があるぞ!」

 

 リラは何の見所かと突っ込みたくなったが話の邪魔に成ると考え、茶を再度啜る。

 

村長「はは! 有難うございます。本当のお姿をお隠しの理由はお尋ねしませぬ。ただお願いがあるのです。何とかお聞き届けて貰えませぬでしょうか?」

 

リムル「内容によるな。言ってみろ」

 

 リムルは尊大な態度を崩さずに、村長に尋ねた。リラも背筋を伸ばし、村長の話を聞く。

 

 

 

□■□■□■

 

 

 

 

 村長の話を聞き、其の内容を頭の中で纏めると東の地から、新参の魔物が押し寄せて来て応戦したが守護者的存在であった名持ち(ネームド)の戦士を含め多数の戦死者が出て、他の集落は新参の魔物がこの村を襲っている間に対策を立てる事を決定したらしい。

 

リラ「此の村には何人住んで居るのですか? その内、戦える者は?」

 

村長「はい、この村は100匹くらい住んでます。戦えるのは、雌も合わせて60匹くらいです」

 

リムル「ふむ。新参の魔物の数と種族は分かるか?」

 

村長「はい。狼の魔物で、牙狼族です。本来、1匹に対し、我々10匹で対応しても勝てるかどうか・・・それが、100匹程・・・」

 

リラ「其の情報は誰が入手した物ですか?」

 

村長「・・・この情報は、その戦士達が、命がけで入手したものです・・・」

 

リラ「・・・そう、でしたか」

 

 更に2人は話を聞く。名持ちのゴブリンは村長の息子でゴブリンリーダーの兄だったらしい。話を聞いて2人はどうするか考える。村長は何も言わず決断を待つ。横目で村長の顔を見ると其の目には涙が浮かんでいる様に2人には見えた。暫くリラとリムルは見詰め合い、そして互いに頷く。

 

リムル「村長、1つ確認したい」

 

リラ「此の村を、貴方達を助けるとして何を差し出しますか?」

 

 2人共村長を真っ直ぐ見詰めながら訊ねる。村長は自分の胸に手を置いて答える。

 

村長「我々の忠誠を捧げます! 我らに守護をお与え下さい。さすれば、我らは貴方様達に忠誠を誓いましょう!!!」

 

 忠誠を捧げる。其の言葉からゴブリンの覚悟が伺え、リラとリムルは目を合わせて頷いて村長の方を見る。

 

リムル「いいだろう! その願いリムル・テンペストと」

 

リラ「リラ・テンペストが聞き届けます!」

 

 此の日。2人はゴブリン達の主、守護者となったのだった。




次回:戦闘準備


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戦闘準備

大変遅くなり誠に申し訳ありませんでした!


 リラとリムルが村長の依頼を受け、ゴブリン達の守護者となった後2人は話し合い迎撃の準備の分担を話し合った。

 

 話し合いの結果、リムルはポーションが沢山有るので戦力確保の為に傷付いたゴブリン達の治療を行い、リラはリムルが治療を行っている間、拠点防衛の為の用意をするという内容で決まった。

 

 リムルと別れた後、リラはゴブリン達に柵の設置指示を出した。戦争迄時間も余裕もないため家を壊し、その素材を流用し、村の外周を全て覆うように円を描いて設置する様にと。

 

 リラは柵の設置班に加え、ゴブリンの中で目端の利く弓を装備した者を斥候の役に任じ、幾つかの注意事項を伝えて送り出した。そして指示を出し終えた後、拠点の周りに落とし穴の罠を設置していく。落とし穴の中には強烈な麻痺毒が噴出する魔法を仕掛けていく。

 

 そして翌日。リラが罠を設置し終えて数時間後、そろそろ夕方に差し掛かる時間になって来た時、リラの方にリーダーがやって来た。リラはリーダーの方に歩み寄る。

 

リーダー「リ、リラ様柵ノ設置終ワリマシタ」

 

リラ「ああ、御苦労様」

 

 リーダーに訊ねられリラはゴブリン達が作った柵を見て頷く。リラから見て上手と言えるレベルでは無いが柵としては合格点であると。

 

 そしてリラは蜘蛛の糸で柵の固定と強度の増加を行い、『鋼糸』によるトラップを仕掛ける。指示通り柵の正面に開口部を設けられている事を確認し、『粘糸』を張り巡らす。リラが準備を全て終えるのと同時にリムルがリラの元へ跳ねてきた。

 

リムル「終わったようだな」

 

リラ「そっちもね」

 

リムル「ああ・・・なぁリラ」

 

リラ「?」

 

 リムルの声が真面目な雰囲気になり、リラは不思議そうに小首を傾げる。

 

リムル「誰一人欠けることなく勝つぞ!!」

 

リラ「・・・当たり前」

 

 リムルの言葉に微笑みを浮かべ、リラは答える。そして真夜中になる手前頃、斥候が帰還し、牙狼族が移動を開始した、と答える。

 

 リラは斥候を見る。全員傷を負っているが生きて帰って来ていた。其の事を確認し、リラは目を閉じリムルから聞いた敵の情報を整理する。

 

 牙狼族。東の平原の覇者。1匹1匹がCランク相当の実力を持つ魔物で有能なボスに率いられた時に真価を発揮する。群れとしての評価はBランクにも相当するらしい。

 

リラ(対するゴブリン達はEランク、自分は分からないけどリムルはA-、か)

 

 此の世界のランクの差がどれだけ戦いに影響を及ぼすのかは分からないが其れでも戦力では其れなりに差があると一応心の中で想定しておく。

 

リラ(・・・誰一人欠けることなく、か)

 

 心の中でリムルが言った事を思いだし、ゴブリン達を見て少し微笑む。

 

リラ(たった2日なのに心の底から誰一人欠けてほしくないって思っている自分が居る。情が沸いたのかな?)

 

 案外自分はチョロいのかもしれないなと思ったがまぁ悪くはないなと思いリムルとゴブリン達を見て空を見上げる。

 

 リラは改めて誰一人欠ける事なく戦いを終わらせたいと願うのだった。



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牙狼族との戦い

駄文警報発令中


 ジュラの森を駆ける複数の影。その影の正体は牙狼族であり、其の先頭に牙狼族のボスは居た。其のボスの視線の前方に村が見えてきた。

 

 以前と違い柵で覆われているが問題無いとボスは判断する。唯一ボスが気に成ったのは開口部に居る一匹のスライムと其の背後の村の中に居る人間の姿をした存在である。

 

 ボスは頭を左右に振り、配下に柵を壊す様に命令を下す。十数匹の牙狼が命令に従い、柵へと攻撃を開始。しかし、柵に攻撃を仕掛けた部隊が跳ね返される。中には血飛沫を上げて地面に転がり、落とし穴に落ち悲鳴を上げる者も居た。ボスは攻撃中止を命じ、スライム達の方へ視線を向ける。視線を向けたのと同時にスライムが語り掛ける。

 

?「此のまま引き返すなら何もしない。立ち去れ!!!」

 

 スライムの声を聞きボスは少し下を向いた後、体を震わせる。其れは自分達よりも下の種族であるスライムの言葉への怒りである。ボスはスライムの言葉に咆哮で返す。

 

ボス(小賢しい!!!捻り潰してやれ!!!)

 

 咆哮を合図に四方八方から柵へと攻撃を始める。ボスの視線の先で人の姿をした者が目を閉じながら手を挙げ、其のまま振り下ろす。其の直後、自分の思い描いていたものと全く違う展開をボスは見た。

 

 ──柵に設置された小さな隙間から矢が一斉に放たれる。何匹かの牙狼が矢を受けて、悲鳴を上げる。

 

 ──隙間をこじ開けようと仕掛ける部隊は石斧装備のゴブリンに首を刎ねられる。

 

 ──柵を飛び越える為に仲間の背を踏み、宙に飛ぶ部隊が、一瞬で首を刎ねられ、胴体を切断される。

 

 次々と配下の牙狼族が倒されていく光景を見て牙狼族のボスは狼狽する。配下の方を見れば配下が戸惑っているのが分かった。

 

ボス(此のままでは不味い!)

 

 集団で真価を発揮する牙狼族にとってボスへの不信は致命的な結果を招く要因になりうるのである。

 

 

ボス(自分の力を誇示せねば!!)

 

 ボスはそう決断し、突撃を開始した。

 

□■□■□■

 

 突撃してくるボスを見てリラは流石はボスなだけはあるな、と考えていた。動きから目を離していなくても普通なら消えた様に映る程の速度。配下の牙狼族よりも速い。しかし、リムルとリラにはスローモーションの様に見えていた。

 

 リムル目掛けて襲い掛かるボス。其の動きが一瞬で止まる。開口部に設置した『粘糸』に捕らえられた為である。

 

 ボスの力であれば断ち切る事も可能であり、長時間の拘束は不可能。だが、目的は一瞬だけでもボスの動きを止める事である。

 

 其れだけでリムルには十分な時間であった。

 

 リムルは容赦なく"水刃"を放ちボスの首を刎ねる。刎ねられた首が重力に従い、地に落ちた。其れが牙狼族のボスの最後だった。 

 

 静寂が支配する中、リムルは一歩前に出て牙狼族に声を掛ける。

 

リムル「聞け、牙狼族よ!お前達のボスは死んだ!!! お前らに選択させてやる。服従か、死か!」

 




次回:名付けと進化と戦争後


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