ISヒロインズとオリ主のお話 (ジャーマンポテトin納豆)
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キャラ紹介

主人公

大河 輝義 (おおかわ てるよし)

年齢 16歳

身長 195cm

体重 104kg → 124kg

人物説明

強面で小、中学校の時のあだ名は顔面凶器

冗談ではなく本気でそう呼ばれていた

強面故に仲の良い友人はおらず、同級生達とは事務的な会話程度しかして来なかったのでコミュ障持ち

外を歩いている時に子供と目があった事があるが、目があった瞬間にガチ泣きされた事がある。それ以降あまり他人と目を合わせようとしない

まぁまぁ可哀想な人

だが、心はとても優しい、いい奴

外見故に勘違いされるだけ

本作では主人公の優しさに触れたりしたヒロイン達が惚れる

 

ヒロインの一人である箒によく叱られる

理由は靴下を丸めて脱ぐから

なんとも言えない理由である

 

身体能力が人間やめてる人

本人はやめてないというが周りは皆、口を揃えて同じことを言う

「あれで普通の人間だったら俺たちはなんなんだ」、と

 

IS学園でも入学当初は怖がられていたが

段々と皆受け入れてくれるようになる

 

一夏のホモ発言や行動に対して分かってはいるがやはり警戒してしまう。むしろ警戒しなかったらヤバい

 

 

織斑 一夏

めっちゃいい人

輝義相手に初対面でビビりながらも話しかけた

輝義相手にちょいちょいホモと取られるような行動や発言をかます

 

 

織斑 千冬

言わずと知れた人

輝義が好き

誰かを好きになるとは思っていなかった

 

 

篠ノ之 箒

とても優しい

包容力抜群

輝義の事が好き

靴下を丸めて脱ぐ輝義相手に苦戦している

料理は和食が得意 とても美味しい

 

 

篠ノ之 束

義理の娘であるクロエを溺愛している

文字通りの大天災

輝義に甘えまくる

最近身だしなみに気を使い始めた

 

 

セシリア・オルコット

チョロイン

手料理で一度輝義を昇天させかけた

料理でテロを起こせるマッドサイエンティスト

 

 

 

鳳鈴音

ちっちゃい

まだまだ成長途中

周りが大きいだけ

結婚して子供出来たら肝っ玉母ちゃんになりそう

 

シャルロット・デュノア

料理は洋食が得意 とても美味しい

お母さんみたい

 

ラウラ・ボーデヴィッヒ

最初はピリピリしていたが今は癒し担当になった

撫でると喜ぶ

自分が隊長を務めているシュヴァルツェ・ハーゼの副官からおかしい日本文化を教えられているために変な事を言い出す

可愛いものが好き

 

 

更識 楯無

お姉さん

アホの子

 

 

更識 簪

アニオタ

輝義によく特撮ヒーローのポーズをやらせたりしている

 

 

布仏 本音

可愛い

これ以上の言葉は不要

 

 

布仏 虚

本音の姉

全然性格が違う

ほとんど輝義の、専属整備士になっている

 

 

クロエ・クロニクル

束の娘

ラウラと同じ試験管ベビー

料理の腕はセシリア以上にひどい

どうしたらカレーを作ろうとしてゲル状のダークマターができるのか

謎である

 

 

オータム

輝義に落とされた

スコールから応援されている

輝義の事を好きになってから亡国機業をやめた。

 

スコール・ミューゼル

恋愛話が大好物なお姉様

年齢に触れるとキレる

オータムと輝義をくっつけようと仕事そっちのけ

オータムに続いて亡国機業をやめた

 

織斑マドカ

束さんの力によって戸籍を獲得できた。

とってもいい子。

 

山田先生

なんかいつもオドオドポワポワしてる。

身長は小さいのにでかい。(どことは言わないが)

よく小学生と間違われる。

優しい。とにかく優しい。

慈愛の女神かよってぐらい優しい。



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1話目

どうも
ジャーマンポテトin納豆です
山田先生とかをキャラ紹介で書くの忘れてた
後日改めて書きます


 

拝啓

お父様、お母様

今私はIS学園におります

周りは女性しかおらず、世の男性達からしたら

天国や、桃源郷と思われるでしょう

しかしそんな事はありませんでした

 

 

...視線がとても辛いなぁ...

動物園のライオンやトラ、パンダになった気分だよ

それにコソコソこっちを見ながら会話してて

内容が聞こえるんだよ

俺ってば昔から耳はいいのだ

会話内容がこちら

 

 

「あれが二人目の?」

 

「そうそう」

 

「うわっ...目付きこわ」

 

「顔も怖いし」

 

 

おいこらそこ

うわっとか言うなよ

本人が一番分かってんだから

再認識させんな

傷つくだろ...

 

 

俺のライフはもうゼロよ!

そんぐらい辛いです。はい。

 

もう、ここで三年間もやっていく自信がないよ...

フェネック辛いのだ...助けてほしいのだ...

 

そんな事を考えていると

自己紹介になった

 

「皆さん初めまして。

このクラスの副担任を務めます山田真耶と言います

よろしくお願いしますねー」

 

...あのメガネを掛けた童顔巨乳の人が副担任らしい

どう見ても小学生か中学生ぐらいにしか見えない...

 

あいうえお順に自己紹介して

とうとう俺の番に

 

ものすごい怯えた目で皆俺の事を見ているんですが...

俺の顔が怖いからですねわかります

ちくしょう。

とりあえず自己紹介をするか...

 

「......どうも大河輝義です。」

 

うーむ他に何を言えばいいかわからないな...

ふざけるのはスベッた時が怖いし...

ここは無難に行こう

 

「......極々普通の人間ですよろしくお願いします」

 

よし!やりきったぞ!

コミュ障の俺には自己紹介は拷問にも等しいからな

 

さて俺の番が終わって次の人なのだが

一人目の男性IS操縦者こと織斑一夏君の番なのだが...

どうやら考えごとをしていて聞いてなかったらしい

慌てているな

 

「うおっ...」

 

今うおって言ったぞ

まぁわからなくもない周りは俺を除いて女子しかいないからな

しょうがない

さてどんな事を言うのだろうか

 

「......えーと、織斑一夏です」

 

さぁ次は何を言うのかね?

 

「............以上です!!」

 

......なぬ?

いや、え?

あの女子の皆も椅子からずっこけたぞ

 

ん?ドアからレディーススーツを着た美人のお姉様が

手に持った出席簿を振り上げて?どうするんだ?

......あっ(察し)

 

 

スパァァァァァン!!!!!!

 

織斑の頭に振り下ろされた...

痛そうだなぁと思いながら見ていると

 

「いってぇ......って、千冬姉!?

こんなとこで何してんだよ!?」

 

あ、また振り上げた

 

スパァァァァァン!!!!!!

 

「千冬姉ではない。織斑先生だ。

公私の区別をつけろ馬鹿者」

 

話を聞くに姉弟らしいな

 

「さて、諸君。

このクラスの担任を務める織斑だ

お前たちをこの一年で使えるヒヨッ子に育てるのが私の役目だ。

その際私に対しては、はいかYESで返答するように

異論は聞かないし認めん」

 

ここは軍隊か何かなの?

フル○タルジャケットかよ

 

そんな事を考えていたら

 

「「「「「「「きぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」」」」」」」

 

うぉぉぉぉぉぉぉ!!!???

なんだ!?

いきなり叫び始めたぞ!?

とっさに耳を塞いでなかったら

最前列でもろに喰らった織斑みたいに気絶するとこだったぞ

まぁしょうがない一瞬、音響兵器かと思ったからな

 

「本物の千冬様よ!」

 

「生きてて良かったぁぁぁぁ!!!」

 

「愛してます!抱いて!」

 

そんなに!?

最後のやつおかしいだろ...

 

「はぁ...毎年毎年なぜこうなるんだ?

誰かが私に嫌がらせをしたくて仕組んでいるのか?」

 

「もっと罵ってぇぇ!!!」

 

「踏んでください!!!」

 

「でも時々優しくしてぇぇ!!!」

 

皆おかしくない?

俺だけ?

カオスだよ...




とりあえずここまで
時間あったら今日中にもう1話投稿するかも


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2話目

さて、織斑先生の登場によりカオスと化した教室も

織斑先生からの一声で静かになった事で

授業が始まった。

二時間目が終了したんだがな?

 

さっきから織斑がこっちをチラチラ見てるんですよ

明らかにビビりながら...

え?俺なんかしました?

顔が怖い?生まれつきだよ悪かったな!

 

などと考えていたら、織斑が金髪の女子に声を掛けられた。

さすがイケメン。外人にもいきなり告白されるのか。

...あ、違ったわ。どうも女尊男卑主義者らしいな

会話の内容を掻い摘むと

織斑が金髪の女子を知らないと言った瞬間にキレ?始め、

偶然ISを使えたのだから調子にのるなだの、

地面に這いつくばって頼めば色々教えてやらん事もないだの言い始めた。

 

なんで分かるのかって?

あの人声でかいんですよ...

ヒステリックかな...

関わらんようにしとこ...

 

 

 

ハイ、フラグ立てました。

俺のとこにも来やがりました。

明らかに怯えながら...

怯えるんだったら来るなよ

こっちも傷つくんだから...

 

こっちに来て俺を見た瞬間に

 

「あ、あなた、

そ、その目付きをなんとかなさい!」

 

ですって。

 

「...すまない。これは生まれつきなんだ。

直せと言われてなんとかできるようなものではないんだ。

許してほしい。」

 

さっきまでの俺の態度?

馬鹿野郎コミュ障の俺が取れるわけないだろ!

ましてや相手は女子だぞ?

これだけ返答出来たんだから褒めて欲しいぐらいだわ。

 

「まぁ!?なんですの!?その態度は!

この、イギリス代表候補生である、

わたくしセシリア・オルコットに対する態度ではありませんわよ!」

 

「このわたくしに話掛けられるだけでも幸運なのになんなんですの!?」

 

「先程の男といい、あなたといい、返事の仕方もろくに知りませんの?」

 

「これだから極東のサルは...

まぁ、 しょうがないですわね。」

 

数分後...

 

「では、また来ますわ」

 

下手に出たら気持ち良くなったのか言いたい事を言うだけ言って

自分の席に戻ってった...

なんだったんだ一体...

というか、また来るとかなんとか言ってたよな?

断りたいけど怖くて断れない...

 

チキンハートな俺だぜ...

........私は悲しい(ポロロン...)

 

 

 

----side セシリア----

 

はぁ...あの織斑一夏という男、

ISを使えるのだから、少しはまともな男かと思っていましたが、

所詮はやはり男なのですね。

 

ISの知識もなく、代表候補生すら分からないと言い始めるし、

挙句の果てには、このセシリア・オルコットの名前すら知らないなどと言い始める始末。

 

これでは何かを期待するのも無駄ですわね。

 

さて、二人目はどうかしら?

このセシリア・オルコットが直々に話をして差し上げますわ!

 

 

 

.........な、な、なんなんですの?

顔は恐ろしいですし、目付きもとても悪い、

怖くて近づきたくありませんわ......

 

はっ!?

まさかこのセシリア・オルコットが男如きに怖気付いている......?

ありえませんわ!!

ここは行くしかありませんわね。

 

いざ、来てみたはいいものの怖くて、

何を話せばいいのか分からなくなってしまいましたわ...

 

と、とりあえずここは

こうでも言っておきましょう!

 

「あ、あなた!

そ、その目付きをなんとかなさい!」

 

さ、さて、どう返してくるのかしら?

 

「......すまない、これは生まれつきなんだ。

直せと言われてどうにかできるようなものではないんだ。

許してほしい。」

 

これだけ言われて何もいい返さないとは、

やはりこの男もそこら辺にいる他の男と変わらないのですね。

顔と目付きが怖いのでどうなるかと思いましたが、

怖がって損をしましたわ。

 

「まぁ!?なんですの!?その態度は!

このイギリス代表候補生である、

わたくしセシリア・オルコットに対する態度ではありませんわよ!」

 

「このわたくしに話掛けられるだけでも幸運なのに、

なんなんですの!?」

 

「先程の男といい、あなたといい、返事の仕方もろくに知りませんの?」

 

「これだから、極東のサルは...

まぁ、しょうがないですわね。

 

しばらく話をして、

 

「では、また来ますわ」

 

と言い、自分の席に戻りました。

またこのセシリア・オルコットと会話が出来るなんて光栄に思いなさい!

 

 

----side out----

 

 

 

二時間目の休み時間に織斑が

ビクビクしながら話しかけてきた。

俺はとても感動している...!

同じ立場で話そうとしてくれる奴と、

会うのは両親や祖父母以来だぞ!?

これのどこが喜ばずにいられようか!

 

「よ、よう!俺は織斑一夏だ!

一夏って呼んでくれ。

その、2人しかいない男子だ、仲良くしようぜ!」

 

な?とてもいい奴だよ...

だがな?織斑よ

俺はコミュ障なんだ。

名前で呼べるわけがないだろ...

 

「.........すまない、織斑。

仲良くするのは構わないが、やはり苗字で呼ばせてもらう」

 

そう言ったら、

悲しそうな顔して、

 

「そっか。まぁ色々あるんだろ?

慣れてきたらでいいから名前で呼んでくれよな!」

 

「……あぁ、分かった。

よろしくな、織斑」

 

握手した。嬉しかった。

いい奴すぎて危うく泣きそうになってしまったよ...

 

すまん、いい奴すぎてちょっとおかしくなっているんだ。

許して...

 

 

ーーside 一夏ーー

 

 

うぅ、どうしよう...

一番後ろの席にいる二人目の男子に声を掛けたいけど、

怖いんだよな....

さっきから動かないけど、目が睨んでるんだよな...

 

でも、二人しかいない男子だし、仲良くしたいからな

よし、行こう!

 

「よ、よう!俺は織斑一夏だ!

一夏って呼んでくれ。

その、二人しかいない男子だ、仲良くしようぜ!」

 

そう言ったら、

 

「.........すまない、織斑。

仲良くするのは構わないがやはり苗字で呼ばせてもらう」

 

って、言われたよ。

まぁ人それぞれだし、色々あるんだろうからな

慣れたら名前で呼んでくれって言ったら

 

少し驚いたような顔をして、

 

「.........あぁ、分かった。

よろしくな、織斑」

 

って言ってくれた。

 

その後、握手して自分の席に戻った。

いい奴に会えたな。

顔怖いし目付き悪いけど全然いい奴だったな。

 

 

ーーーーside outーーーー

 

三時間目が始まった。

今回は織斑先生が授業をするらしい

 

山田先生は教室の端っこで見ている。

ちなみに山田先生はすでに生徒達から

やまやまだの、山ちゃんだの、教師としては

不名誉なあだ名をつけられている。

 

俺?

オルコットと織斑以外誰も近づいてこないからな!

それにオルコットは全然違うし...

あだ名なんてあるわけないだろ。

ちくしょう...

 

織斑先生はやっぱり、

お姉様だの、千冬様だの言われてだけど、

織斑先生と呼べと、ひと睨みしたら、

あら不思議皆さん速攻で従っておりました。

 

 

 

 




今回はここまで
次回に期待してください、


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3話目

さて、

四時間目だが、

どうやらこの授業は織斑先生が担当するらしい。

 

「授業を始めようと思うが、

その前に一つ決めなければならん事がある。」

 

「クラス代表というものだが、

まぁ、学級委員長と思ってくれればいい。

自薦、他薦は問わん。

誰かやりたい奴はいるか?

いなければこちらが決めさせてもらうぞ。」

 

 

だってさ。

まぁ俺みたいなやつには関わりのない話だからね。

誰か頑張ってくれ。

......そもそも、俺の事をわざわざ推薦するような物好きなんていないだろうけど。

 

そんな事を考えてたら、

 

「はーい!織斑君を推薦しまーす!」

 

「あ、私もー!」

 

との事。

やっぱりな、イケメンは違うんだよ。

そしたら織斑が、

 

「えっ!?

ちょ、ちょっと待ってくれよ!

俺はクラス代表なんてやりたくないぞ!?」

 

分かるよ。

その気持ちよぉーく分かる。

だけど、多分無理だぜ?

だってほら、織斑先生が、

 

「推薦された人間に拒否権はない。諦めろ。」

 

「そんな、あんまりだぜ、千冬姉!」

 

スパァァァァァン!!!!!

 

「だから、織斑先生と呼べと言っているだろう。

少しは学習せんか。馬鹿者」

 

ふっ、哀れ織斑。

イケメンが仇になったな。

応援しているぞ。

 

 

 

とか考えてた時期もありました。

 

急に織斑が、

 

「そしたら、俺は輝義を推薦するぜ!

構わないだろ、千冬姉!」

 

おいこら織斑ぁぁぁぁぁ!!??

何してくれとんじゃワレェェェェ!!

そんな事言ったら、

あ、

 

スパァァァァァン!!!!

 

「だから何度言わせれば気が済むんだ?

織、斑、先、生と呼べと言っているだろうが!

ん?それともそんなに呼びたくないのか?ん?」

 

「分かった!分かったから!織斑先生!」

 

「まぁ、許してやる。

ただし、次はないぞ。」

 

「さて、織斑と大河が推薦されているが、

他にはいないか?いなければこの2人で投票なり何なり行って決めるが。」

 

「お待ちください!納得がいきませんわ!」

 

おぉぅ...

次は何ですか...?

もうやだ好きにしてください...

私は現実から逃げます。

 

「なぜこのような選出をなされるのですが!?

そこの男はまともにISの知識すらいらないのですよ!?

織斑先生は、それに加えてこのような極東の地にまでやってきて、男の後に続けと仰っるのですか!?ありえませんわ!!!

わたくしはサーカスや見世物をしに来たのではありません!」

 

「なんだと!?

よく言うぜ!イギリスだってまずい料理ランキングで、何年間優勝してるんだよ!そんなに嫌だったら国に帰ればいいだろ!」

 

「なっ、ななな、何ですって!?

よりによって祖国を侮辱なさいますの!?」

 

「先に言ったのは、お前だろ!」

 

「け、決闘ですわ!」

 

「おう、いいぜ!いくらでもやってやるよ!」

 

「おい、いい加減にしろよ餓鬼ども。」

 

「オルコット、お前は自分の発言に気をつけろよ。

お前はどんな立場だ?

それにここはどこだ?

そういう事をよく考えてから発言するんだな。」

 

「織斑、お前もだ。

売り言葉に買い言葉なんぞ阿保のする事だぞ。

少しは我慢せんか。」

 

「......はぁ、それと、そこで寝始めている大馬鹿。

起きろ。」

 

いってぇ...

織斑先生に現実に叩き戻されたよ...

 

......えっ、何これどういう状況?

 

「おい、起きたか?

よく聞けよ。これから一週間後に試合を行う。

お前と、織斑、オルコットの総当たり戦だ。

いいな?」

 

待って待って待って

おかしくない?あれ、俺だけ?

なんで現実に戻って来たらいきなり試合する事になってんの?

おかしいだろ絶対。

 

 

でも、だけど、織斑先生には逆らえなかったよ.........

つい反射的に、

 

「.........はい、分かりました」

 

って言っちゃったよ......

もうだめだぁ...

 

----side セシリア----

 

織斑先生が、クラス代表を決めると言いました

まぁ?当然このわたくしが推薦されるのでしょうね。

 

さぁ、このわたくしの名前を高らかに言いなさい!!

 

「はーい!織斑君を推薦しまーす!」

 

あら?

おかしいですわね......?

あの愚鈍で間抜け面を晒している男の名前が聞こえましたわ...

まぁ気のせいでしょう。

次こそはわたくしの名前を--

 

「あ、私もー!」

 

な、何ですって......?

 

そこからは冷静さを欠き、よく覚えてませんが、

祖国を侮辱されて、

決闘を申し込んだのですが、

 

織斑先生から

冷静になれとお叱りを受けました。

今考えてみたら、わたくしも日本や日本人の方々を侮辱したのですね...

それにこのクラスはわたくしを除いて全員が日本人。

大変な失言をしましたのねわたくしは...

 

 

----side out----

 

 

----side 千冬----

 

 

はぁ...

今年に入ってから碌なことがない。

弟の一夏はISを動かすし、

それで書類やら他国への説明やらで、教師陣が死にそうになりながら残業をして、やっとの思いで落ち着いたと思ったら二人目が出てくるし.........

挙句の果てに面倒が見やすいからと言って二人とも同じクラスにぶち込んでくる学園上層部や国にキレたり...

今も一夏とオルコットがクラス代表を巡って勝手に決闘だの何だの騒ぎ始めるし、大河は呑気に寝ているし...

今年は更に酒を飲む量が多くなりそうだ....

 

 

----side out----

 

 



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4話目

 

 

しかしながら、何故試合をする流れになっていたのだろうか?

まぁ考えても仕方がないしな。

なんとかなるだろ(適当)

 

授業も終わって

織斑と喋って、そろそろいい時間になってきたので

家に帰ろうとしたら、

教室で呼び止められた。

 

「あっ、まだ居たんですね!

よかったぁぁ......え、えっとですね?

大河君と、織斑君には寮に入ってもらいます。

これが鍵で、こっちが部屋番号です。」

 

「.........しばらくは自宅からの通学になるのではないのですか?」

 

「はぇ!?そ、それが、警護や諸々の理由で無理矢理寮にねじ込んだらしいんです.........」

 

「えっ、そうなんですか?

別に構わないですけど、荷物とか着替えとか何も無いですよ?輝義は?」

 

「.........俺も何も無い。今鞄の中に入っているもので全部だ」

 

「あぁ、その辺は心配いらん。私が手配した。

織斑は私が用意した。大河はご家族に連絡して用意してもらったがな。

とは言え、一週間程の着替えとスマホの充電器ぐらいしか入っていないだろう。

何か他にも必要だったら次の休日にでも取りに行ってこい。」

 

流石、織斑先生。そこらの男よりイケメンなのではなかろうか。

 

 

 

「じゃ、部屋に行こうぜ」

 

「......あぁ」

 

「なぁ、その、試合の件な、つい輝義の事も推薦しちまった...

それで、その巻き込んで悪かった!」

 

「つい勢いで...」

 

「.........構わない。気にするな。」

 

「だけど......」

 

「.........はぁ...まぁこうなったら仕方ないさ。

なんとかなるように頑張ろう」

 

「っ、わかった。そうだな!

頑張ろうぜ!」

 

「.........あぁ」

 

「あ、そうだ、部屋番号何番だ?俺は1026なんだけど。」

 

「......俺は、1045だな」

 

「えっ、一緒じゃ無いのか?

てっきり一緒かと思ってた」

 

「......俺もだ。」

 

「しっかし、そうなるとどうなんだ?

一人で一部屋とか?そしたらスッゲェ豪華だな!

これは期待できるぞ!」

 

「......そうだな」

 

「お、俺はここだな。じゃまた明日な」

 

「......あぁ」

 

 

.........今までの会話で俺、

あぁ、そうだな、ぐらいしか言ってない......

 

 

ここか。

さてさて一人で一部屋使えるとは。

なんともいい身分になったもんだな

入るか。

 

ガチャ。

 

.........ん?

待て待て待ておいおいおい。

おかしいぞ?

目の前にいるのは誰だ?

男は俺と織斑だけだったはずだが......

 

「......えっと、.....誰?」

 

「............あっ、あぁすまない。

大河輝義だ。」

 

「......ここの部屋?」

 

「......あぁ。そのように聞いている。」

 

「......そう...どうぞ」

 

「......あっ、私の名前は更識簪。

よろしく...」

 

「......よろしくな、更識。」

 

「......その苗字、あまり好きじゃないから、

名前で呼んで」

 

「......わかった。善処する。」

 

「......ありがとう」

 

 

そのあとは部屋でのルールを決めたり風呂の時間を決めたりして、その日は早めに寝た。

布団に入ってすぐに寝てしまったからな。

慣れないどころか拷問みたいな場所に放り込まれたから、思いの外、疲れていたのだろう。

 

 

 

 

 

 

次の日

 

現実逃避から叩き戻されたら、

何故か織斑とオルコットと試合をする事が決まった翌日

織斑先生から呼び出されて整備室に向かうと、

自分専用のISが用意されてました。

なんでも、国も俺に専用機を用意しようとしたが、どうにもコアの都合がつかなかったらしい。

そこで、IS学園内にある機体を一機専用機にしてしまえばいんじゃね?って事になったらしい。

ラファールか打鉄のどちらかを貰えるらしい。

自由に改造するのもOKだそう。

 

正直に言ってめっちゃ嬉しいでござる!!

あれだぜ?もうあれだ、うん。あれだよあれ。

嬉しすぎて語彙力がなくなっちまったぜ......

 

それにしても、どっちにするか。

打鉄はなんかゴツい。

ラファールはすらっとしてる。

 

.........ここは自分にないもので行こう。

俺ゴツいからね。ラファールで行こう。

すらっとしててカッコいいし。

 

 

さて、色々とやらなければならない事が増えたな。

まずは試合の件だな

どうするか...

今のままじゃ間違いなくボコボコにされて

吊るし上げられちまうぞ...

 

......怖いけど織斑先生に頼んでみるか......

 

なんで山田先生じゃないのかって?

そりゃ俺を前にした山田先生がいっつも、

ブルブル震えて怯えてるんだもん。

可哀想でしょ。

......あと、俺も毎回そんな反応されてちゃ辛いし...

 

 

 

コンコンコン

「......失礼します。

織斑先生はいらっしゃいますか?」

 

「ん?大河じゃないか。

どうした?何か用か?」

 

「......少々お話をさせていただいてもよろしいでしょうか?」

 

「構わんぞ。どうする、場所を変えるか?」

 

「......いえ、ここで大丈夫です。」

 

「そうか。で?

話とはなんだ?」

 

「......その、自分にISでの戦い方などを教えてもらえませんか?」

 

「ほう、それまたどうしてだ?」

 

「......一週間後に試合をする事になっていますよね?

それで......今のままだと一方的にやられるだけになってしまうので、

少しでもまともに戦えるようになりたいんです」

 

「ほう、それはいいが何故私なんだ?

山田先生もいるだろう?」

 

「......私の前に立ったり、話す時に

とても怯えているんです。

それではとても申し訳なくて...」

 

「......そうか」

 

「......なので織斑先生ならば大丈夫かと思いまして」

 

「そうか。そういう事ならば構わんぞ。

しかし私も忙しいからな、朝の時間だけになってしまうが構わないか?」

 

「......はい、構いません。

あと、できれば放課後もISを動かしたいのですが...

何とかなりませんか?」

 

「ふむ、わかった。アリーナを使えるようにしておく。

ついでに私の代わりも付けといてやろう」

 

「......ありがとうございます」

 

「何、構わんさ」

 

「......では、失礼します。」

 

「あぁ」

 

 

 

さて、とりあえず実技の方は何とかなったな

あとは筆記なのだが......

誰か教えてくれる人はいないものだろうか。

......いないよなぁ

 

簪にでも後で聞いてみるか......

 

 

 





今回はここまでです。
明日に期待してください。


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5話目

 

----side 千冬----

 

 

朝、仕事をしていると、大河が訪ねてきた。

どうやら試合の件で相談があるらしい。

時間がある時で構わないから鍛えて欲しいとの事。

 

私は構わないのだが、何故私なんだと聞いてみたところ

山田先生に頼む事も考えたらしいが、

どうにも山田先生はこいつの前に立つと怯えてしまうらしい。

確かに昨日も寮について説明している時も

かなり怯えていたからな......

確かに大河は強面だし山田先生は男性恐怖症だから

仕方ないとは言え、生徒に怯えるのは教師としてどうなのか......

あとで言っておくか。

 

しかし、見た目に反して優しい奴じゃないか。

 

 

そこから話を詰めて

毎朝、私が稽古をつける事に。

しかし、放課後もISを動かしたいらしいが、

私は仕事で行けないと伝えると、構わないらしい。

しかし見てやる奴がいた方が色々と見てもらうなり聞くなり出来るからその方がいいのだが......

どうしたものか.........

アリーナ自体は借りる事は出来るし問題は無いが......

.........あいつでいいか。

どうせ仕事サボろうとするだろうしな。

実力も申し分ないからな。

 

その事を伝えると、

もう一つ聞きたいことがあると。

寮の部屋を何とか出来ないかとの事。

女子と同じ部屋なのはどうなのかと言ってきた。

 

しかしなぁ、現状も部屋割りに無理矢理

男子二人をねじ込んでいるわけだから

すぐには無理だと伝え、1カ月もすれば何とかなるだろうと言えば、

分かったと頷いた。

そこで解散となった。

 

さて、あいつに連絡を入れておくか。

どうせ今も、暇しているだろうしな。

 

 

----side out----

 

 

食堂に行って飯を食おうとしたらみんなが俺を避けていく。

食券機の前に並んで居た人達もどんどん逃げていく。

......そんなに顔怖いか?

 

 

一人で寂しく食べようと席を探していたら 、織斑に誘われました。

もう一人いるが一緒に食わないかと、言ってきた。

構わないのだが、もう一人の方はいいのかと聞くと

大丈夫だとの事。

 

家族以外で飯を一緒に食べたの始めてだよ......

 

席に着くともう一人が居た。

 

「その、篠ノ之箒だ。よ、よろしく頼む。」

 

何故かおどおどしている。

 

「箒、どうしたんだ?

......ん?輝義がどうかしたか?」

 

「い、いやその、怒っているのではないのか?」

 

「え?輝義怒ってなんかないぞ?いつも通りだけど?」

 

「そ、そうなのか?」

 

俺の顔が原因でした。

 

「......すまない。いつもこんな顔なんだ。

許して欲しい。なんならどこか別のところで食べるが......」

 

「い、いや構わない。一緒に食べよう。」

 

「......本当にいいのか?」

 

「うむ、怒ってないと分かれば別になんともないからな」

 

「......そうか」

 

「しっかし試合どうすっかなぁ」

 

「一夏は後先考えずに発言するからこうなるのだ。

少しは冷静にならないか。」

 

「だってよぅ...」

 

「だっても何もない。

それにお前は教科書をあと一週間で覚えなければならないのだぞ?

そちらの心配もしたらどうだ」

 

「うっ...だけどさぁあれを一週間でとか無茶だろ!?

輝義もそう思わないか?」

 

「......すまない。

話が見えないんだが...なんの事だ?」

 

織斑に同意を求められたが、残念ながら昨日は授業中居眠りしていたのです。すみません。

どうやら入学前に配られたあの分厚い冊子を間違えて捨てたらしい。

あれ、デカデカと必読って書いてあったのに?

全く授業が分からないから、それを読んだのかと聞かれて捨てたと答えたら織斑先生に一週間で覚えて来いと言われたらしい。

流石織斑先生。平然と無茶を言いなさる。

確認テストもあるらしい。

詰んだな織斑

 

 

 



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6話目

 

どうしたものか......

オルコットが一人で寂しそうに飯を食っている。

最初は辛いからなぁ

しかし、何故一人で食べているのだろうか?

聞きたいが、コミュ障にはキツイぞ......

うぬぅぅぅ......

よし、覚悟を決めろ!

 

 

「.........隣、失礼するぞ。」

 

「えっ......?あなたは......

どうしたのですか?

一人惨めに食事をしているわたくしを嘲笑いに来たのですか?」

 

「.........いいや、違う。

お前が何故一人で食べているのか知らないからだ。気になったんだ。気分を悪くしたのなら謝罪しよう。」

 

「......いいえ、構いませんわ。

それで何を聞きたいのですか?」

 

「......オルコットは何故一人で飯を食べているんだ?

何か理由があるのか?」

 

「..................それは」

「わたくしが日本という国や日本人の方々を侮辱したのはご存知ですよね?」

 

「............ん?いつそんな事があったんだ?

すまないが分からない......」

 

「そんなはずはありませんわ!

あれだけ大きな声で侮辱したのですよ!?

聞こえてないわけがありませんわ......!」

 

「.........いや、本当に分からないんだ。

教えてくれないか?」

 

「ほ、本気で言ってますの?」

 

「......あぁ」

 

「......本当のようですわね...

分かりました。お教えします。

クラス代表を決めると織斑先生がおっしゃった後の事です。」

 

あの時か!

現実逃避してて全く知らなかった...

しかし、そんな事になっていたのか......

 

「......すまない、その時は寝ていたんだ。」

 

「......は?寝ていた?冗談でしょう?」

 

「......いいや、本当なんだ。」

 

「......まぁ、いいですわ。

これでお分かりになったでしょう?

あなたを散々罵倒しておいてこの有様ですもの。

好きなだけ嘲笑ってくださいな。

甘んじて受け入れますわ。」

 

「......いいや、そんな事はしないさ。

ただ一つだけ言わせてもらうぞ。」

 

「......織斑やクラスの皆にちゃんと謝れ。

いつでもいいから、しっかりと謝るんだ。」

 

「......は?

え、いや何を仰っているのですか?」

 

「......みんなにちゃんと謝るんだ。

誠意を込めてな。

一人一人じゃなくていい。教室に集まった時とかで構わないから、

謝るんだ。そうすればみんなも許してくれるはずだ。」

 

「......あなたは何も思わないのですか?」

 

「......俺は実際に聞いたわけじゃないからな。

許すも許さないもない。

そもそも怒ってすらいないからな。」

 

「そうですか......

分かりましたわ。皆さんにしっかりと謝罪する事をオルコット家の名において誓います。」

 

そんな重々しく誓わなくても......

まぁでも少しは楽になっただろう。

顔つきが幾分かマシになったからな

 

「......そうか。

これからもよろしくなオルコット。

何かあれば相談するといい。

力の及ぶ範囲で助けよう。」

 

「はい、ありがとうございます」

 

よほど辛かったんだろう。

相談に乗ると言ったら満面の笑みで答えた。

 

「......あぁ」

 

「では、お先に失礼しますわ」

 

さて、飯を食べるとするかぁぁぁぁぁ!?

昼休み時間終了10分前だと!?

ゆっくり食えないじゃないか!

くそっ死なない程度の速さで掻き込むんだ!

ブフッ!?

くそっ喉に詰まった......!

水!

 

 

そのあと、なんとか間に合ったが、

昼休み前よりも疲れてました。

 

 

 

 



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7話目

----side セシリア----

 

教室で、日本や、日本人の方々を侮辱してから、

わたくしは一人でした。

食事の時も例外はなく、一人でした。

 

いつも通り、食堂で一人、食事をしていると、

話しかけてくる人がいました。

 

それはわたくしが散々馬鹿にして罵った、

大河輝義さんでした。

 

わたくしは何故話しかけて来たのか分からず、

冷たい態度を取ってしまいました。

 

自分の事を馬鹿にしたわたくしを馬鹿にしに来たのか?と。

 

ですが、大河さんは違うと答えました。

では何故話しかけて来たのですか?

 

大河さんはいいました。

 

何故わたくしが一人で食事をしているのか、と

 

一人で食事をしている理由を説明すると、

いつそんなことがあったのか、分からないと言い始めたのです。

 

わたくしはそんなはずはない、

あれだけ大きな声だったのだから聞こえてない訳がないと

怒りを込めて言いました。

 

しかし大河さんは

本当に分からないようでした。

いつわたくしがその発言をしたのか説明すると、

 

なんとその時は居眠りをしていたと、言い始めたのです。

思わず、冗談でしょう?と聞いてしまったわたくしは悪くないはずです。

 

その後、わたくしは

あれだけ貴方を、皆様を馬鹿にしのだからいくらでも

わたくしの事を馬鹿にしてもいいと自棄になって言いました。

 

大河さんは、わたくしを馬鹿にする代わりに

言いました。

 

「馬鹿にした織斑さんやクラスの皆にしっかり謝れ」と。

 

何を言っているのか分からなくなり、

思わず、何を言っているのかと聞き返してしまいました。

 

そうしたら、大河さんは

 

「皆にちゃんと謝るんだ。誠意を込めてな。

一人一人じゃなくていい。皆が教室に集まった時とかで構わない。

そうすれば、皆許してくれるはずだ」

 

と仰っいました。

 

わたくしは貴方自身は何も思わないのかと

聞くと

 

自分は実際に聞いていない。

そもそも怒ってすらいないと仰っいました。

 

わたくしは完全に毒気を抜かれてしまい、

 

皆さんに謝る事を誓いました。

 

そうすると

 

「これからもよろしくなオルコット。

何かあれば相談するといい。

力の及ぶ範囲で助けよう」

 

そう仰いました。

 

その時、何故かとても心が温かくなったのです。

わたくしは嬉しくなって思わず笑いながら、

お礼を言いました。

 

その場から立ち去った後、

とても嬉しくて、でも恥ずかしい、そんな感情が湧いて来ました。

 

その時わたくしは初めて自覚をしたのですよね

これが、誰かを好きになるという感情なのだと。

 

 

 

そういえば、あと10分程でお昼休みが終わってしまうのですが、

大河さん、ほとんど食事に手を付けていなかったような......

 

大丈夫なのでしょうか?

 

 

----side out----

 

 

 

 




はい。
今回は終わりです。

セシリアが落ちましたね。

これからどんどんヒロインを落としていくぞ
オラァ!


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8話目

今日から織斑先生と朝練が始まります。

朝の5時半に起きてアリーナへ。

早速織斑先生がいました。

 

「よし、ではやるか」

 

「......お願いします」

 

「ふむ、しかしお前は身体の方は出来ているな、

実技にいきなり入っても大丈夫だろう

それに多少無茶をしても良さそうだな」

 

織斑先生が悪い顔して笑ってるよ......

しかも無茶しても大丈夫って、俺死なないよね......?

朝練で死ぬとかやだよ......

 

「よし、ISの展開をしてみろ。

目標は、そうだな0.5秒を切れば良しとしよう」

 

この人俺の事をスーパーマンか何かと勘違いしてんの?

俺はそこらにいる一般ピーポーだよ?

初回からとか可笑しいでしょ

でも実際代表決定戦まで時間がないのも事実だから、

多少はね。

もっとも織斑先生に逆らえないんだけどね。

 

「......はい」

 

うおっ!?眩しいな!

 

「0.4秒か。上出来だ」

 

えっ?早くない?

俺凄くない?

俺ってばやれば出来る子だったんやな

 

「よし、次は武装の展開だ。やってみろ。

こちらも0.5秒としよう」

 

よっしゃいいとこ見せてやるぜ!

 

「0.7秒......どうした?

手を抜いたか?」

 

アイエェェェェ!?ナンデ!?0.7秒ナンデ!?

やばいぞ織斑先生おこだよ!

やらねば!死んでしまう!

 

「0.5秒か。よし、特別に最初のは許してやる。

ただし次回から本気でやれ。いいな?」

 

「......はい」

 

死ぬかと思った。

織斑先生すごい楽しそうな顔してるよ......

俺、今日が命日なのかなぁ......

 

 

「よし、ではやるぞ。

私は戦闘面での技術を見てやる。

とは言っても移動すら出来なければ意味がないからな。

今回は移動方法ぐらいは見てやる。

やってみろ。

他の詳しいことは放課後に教えてもらえ。」

 

やばいよぶっつけ本番なんて聞いてない......

ま、まぁやってみるしかない。

 

くっ!?コイツ案外難しいな!

あ、でも慣れるとそうでもないな

 

「歩行は出来るな。

次は飛行してみろ。」

 

早くない?

まだ歩き始めたばっかだよ?

 

「......分かりました」

 

おぉ!?浮いた!浮いたぞ!?

ふわふわしてる!楽しい!

 

「おぉ......!」

 

思わず声が出てしまった。

それぐらい楽しいし、嬉しいのだ。

 

「ほう、飛行も出来るか。よし、

そのまま移動してみろ」

 

織斑先生まじ鬼教官

 

しかし楽しいもんだな。

なんかこう、言い表せない楽しさだ。

 

「よし、次は上下前後左右どの方向でもいい、

もっと早く動いてみせろ」

 

えっ、もう?絶対進行速度早いって。

まぁやるんだけど。

 

「......分かりました」

 

しかし、もっと早くか。

どうすれば早く動くんだ?

 

ドン!!!

 

なっ!?めっちゃいきなり早くなったんですけど!

聞いてないよ!怖い!

あ、でも楽しいわ。

ジェットコースターみたいなもんかね?

あれより複雑な、動きをしなくちゃいけないんだけど。

しかしこの速度を維持しなきゃならんのか。

さっきの連続でやってみればいんじゃね?

 

結果。

もっと早くなった。

なんでさ!?

止められない辞められない!!!

どうしよう!

やばいよ!

このままじゃ壁にぶつかっちゃうよ!

あ、逆噴射すればいいか。

 

いくぜ!逆噴射ぁぁぁぁぁ!!!

よっしゃ止まったぁぁぁぁぁ......

死んだかと思った。

 

 

 

----side 千冬----

 

 

今日から約束していた、大河との朝練が始まる。

とりあえずは移動や飛行といった基本的な事をやらせようと思う。しかし出来によってはさらにその先に進む予定もあるが。

 

あいつは身体の方はもう出来ているからな

実際にやらせてみてもいいだろう。

 

最初はISと武装の展開をやらせてみた。

結果はISの方が0.4秒、武装は0.5秒という記録だった。

 

コイツ、本当に初心者か?

初めてやってこの記録だと?

 

クックック......!

これならばどんどん先に進んでも良さそうだ

あぁこんなに楽しいと思ったのはいつ以来だろうか!

 

さぁ次は歩行に移ろう。

やってみろと言うと難なく歩き始めた。

最初はやはり慣れていないからだろうが、少しぎこちなかったが十数歩、歩けばスムーズにそれこそ普段と変わらない歩きを見せ始めた。

 

次は飛行をさせてみよう。

殆どの人間はこの段階で苦戦する。

それはそうだろう。飛行機で飛ぶのとは全く別物なんだ。

最初は落ちたり意図しない方向へ飛んで行ってしまう。

 

が、コイツはそうでもないようだな。

かなり空間認識能力や空間把握能力が高いのだろう。

全くぶれる事なく浮いている。

しかもとても楽しそうな顔をしているな

あの強面の顔が楽しそうに笑っている。

なんだ笑えば中々カッコいいじゃないか。

普段から笑えばいいものを

 

次は前後左右上下好きな方向に向かって進んでみろと言った。

 

「なっ!?」

 

そうしたらいきなり瞬時加速(イグニッションブースト)をやって見せたではないか。

挙句、個別連続瞬時加速(リボルバーイグニッションブースト)までやってのけたのだ。

全ての事を初めて行ってそのままこの二つの高等技術をやってのけたのだ。驚かない方が無理だ。

 

さて、次は戦闘面を鍛えてやるか

あぁ、楽しみだ。

 

 

ーーーーside outーーーー

 

 

やばいよ。飛ぶのが楽しくてしょうがない。

もっと飛びたいとか考えてたら、

織斑先生から、

 

「よし、では戦闘訓練に移るぞ。

なんでもいい、武装を展開しろ」

 

と、言われた

どうするかな......

銃火器使いたいけどまともに狙った事どころか撃った事すらないからな、刃物系でいいか。

銃火器は牽制用で、後々誰かに教えてもらおう。

 

「ほう、私相手に剣で挑むか。

ますます楽しくなってきたぞ」

 

なんか織斑先生がすっごいやる気になっちゃったんだけど!?

なんで?俺そんな喜ばせるような事してないよね!?

 

「どこからでもいいぞ、さぁかかってこい」

 

ちくしょうこうなりゃヤケだ!

やってやんよ!

 

「フッ!!」

 

さっきの飛行訓練みたいに思いっきりスピード出しながら突っ込んだのに平然と防いで切り返してきた。

なんなんこの人?

 

「太刀筋はまぁまぁだな。

これから鍛えればいいか」

 

そんな感想を漏らすほど余裕だった。

クッソ!いくら切っても全部防がれちまう!

どうすりゃいい!?

数を増やしてみるか?

こうなりゃ両手剣じぁぁぁ!!!

 

 

 

ダメでした。

なんなん?

二方向から斬りかかられてんのにダメな所を指摘しながら全部防がれて、平然と反撃してくるし、もうなんなん?

 

「大河、お前何か剣道なんかをやった事はあるか?」

 

そう聞かれたので、

 

「......いいえ、一度もありません」

 

「そうかそうか。

よし、私の木刀を一本やるからこれからは暇な時に振れ。

いいな?」

 

「......はい、分かりました」

 

なんでも筋はいいから後は慣れて鍛えるだけとの事。

自分で頼んでおいてあれだけど、練習メニューが増えたぜ.....

 

 

 

 

----side 千冬----

 

戦闘訓練を始めたのだが、

いきなり瞬時加速で突っ込んでくるとは、中々度胸がある。

それに斬りかかってきた時の太刀筋もまぁまぁ。

これは鍛え甲斐があるな。

 

その後は数で攻めようとしたのだろう。

二刀流で斬りかかってくる。

驚いた事にこちらも中々筋がいい。

これは、楽しくなってしまうではないか。

しかし、攻撃が単調すぎるな。

もっとフェイントを入れるなりしなければ当たらんぞ?

 

直した方がいい所を指摘しながら訓練を行った。

 

終わった後に

剣道か何かをやった事はあるか?

と聞くと、一度もないと言うではないか。

初めてでこれでは、鍛えればどんなに強くなるか分からんな。

 

あぁ、明日の朝が楽しみだ。

 

 

 

----side out----

 

 

 



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9話目



たっちゃんのキャラが分からない......


 

 

放課後、アリーナに俺は居た。

織斑先生に頼んでアリーナの一つを借りてもらったのだ。

その際、織斑先生が代わりの人を付けてくれるとの事だが、どんな人が来るんだろうか?

全く予想ができんな。

 

ん?もしかしてあの人か?

 

「ごめんねー?待たせちゃったでしょ?」

 

この人だった。

しかし、髪の色や顔立ちが簪に似てるな。

もしかすると姉妹なのか?

 

「......いえ、そんな事は無いですよ」

 

「あら、お世辞かしら?

いいわよ別に気にしないで」

 

「......そうですか」

 

「それじゃ、自己紹介から始めましょうか。

更識楯無よ。よろしくね?」

 

「......大河輝義です。お願いします」

 

やはり簪と同じ苗字だな

姉妹なのだろうか?

 

「......一つ聞いてもいいですか?」

 

「なんでもいいわよ?

お姉さんのスリーサイズでも知りたいのかしら?」

 

「......いえ、そうではなくて、簪と何か関係があるんですか?」

 

「簪ちゃん?

私の妹よ。可愛いでしょー!

でもなんで知ってるのかなぁ?お姉さん、気になるなぁ?」

 

「......その、同じ部屋なんです」

 

「......へぇ」

 

ヤベェよ同じ部屋だって言った瞬間、雰囲気が変わったんですけど。俺殺されるんじゃ?

 

「まぁいいわ。

早速殺りましょうか」

 

別の意味に聞こえるんですけど!?

もう帰りたい......

 

「あぁ、そういえば私ロシアの国家代表やってるのよね。相手としては不足はないから、遠慮なんかしなくていいわよ」

 

チェンジで。

ふざっけんなよ!

なんで俺こんなに人生の難易度エクストリームになっちゃってんの!?

まじ殺されちまうわ!

 

 

 

「どこからでもかかってきなさいな!」

 

やるしかねぇ!

逃げられないし!

逃げたら目の前の人よりも織斑先生が怖いからね!

死ぬ気で生きるために戦おう......

 

 

 

もうおうちかえりたい

 

なんなんだよあの人

おかしいだろ。槍かと思ってたらガトリングにもなりやがるし、接近したらしたでめちゃくちゃ強いしなんか霧が爆発するし、もうなんなん?チートだよ。

 

「すごいわね、初見でここまで耐えたのもだけど、あそこまで本気を出させるなんて」

 

知らんがな。

俺初心者ですよ?

なんで初心者相手に本気出してんですか。

殺す気ですか?

なんて言える訳もなく、

 

「......偶々ですよ」

 

やっぱり俺ってばヘタレなんだね。

 

「ふーん、ま、そういう事にしておくわ。じゃ、明日もよろしくね」

 

「......はい。ありがとうこざいました」

 

また明日か......

もうほんと、帰りたい......

 

 

 



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10話目

次の日

また織斑先生とドンパチやった後

部屋に帰ったら簪に心配された。

 

「最近疲れてるようだけど大丈夫......?」

 

そんなに疲れているように見えるか?

うーむ......

自分では分からないものだな

 

「......自分では疲れたという感じはしないのだがな」

 

なんだ?

俺の顔をじっと見て

また顔面凶器とか言われたら泣くぞ?

しかも簪に言われたらダメージは計り知れない。

 

「......やっぱり疲れてるよ。

ちゃんと休んでね?」

 

やはり俺は疲れているらしい

そうなのか......?

 

「......あぁ、分かった。心配してくれてありがとう。気をつける」

 

そう言うと、少し笑いながら簪は頷いた。

 

「うん」

 

 

 

そんなこんなで時間になってしまった。

食堂に飯を食べに行かなければ

 

「......そろそろ時間だ。食堂に行こう」

 

「うん」

 

 

 

食堂に着いて簪と席に着いて食べようとした時、

何というか、こう、のほほんとした子が話しかけて来た。

 

「あ、かんちゃーん!ねーねー、私も一緒に食べていいー?」

 

「本音?でも、輝義がいいならいいけど......」

 

「......構わないぞ。好きな所に座るといい」

 

「ほんとー!?ありがとー!じゃぁここに座るねー」

 

まさかの俺の隣でした。

なんで?わざわざ俺の隣なんだ......

チキンなんだから緊張しちゃうよ!

 

「ねーねー、聞きたいことがあるんだけど聞いていいかなー?」

 

「......なんだ?」

 

俺に聞きたい事があるらしい。

 

「この前、せっしーが一人でご飯食べてた時話しかけてたよねー?なんで一緒に食べてたのー?」

 

どうやらあの時の事を見られていたらしい

見られていないと思っていたんだがな......

 

「......どうしてだろうな」

 

少し俺をじっと見てから

 

「......んー、そっかー」

 

こう言ってからその後は何も聞かれなかった。

世間話をしながら食事をした。

一つ分かった事がある。

簪と布仏は幼馴染みらしい

驚きである。

 

 

 

 

 

今日は放課後は更識先輩が用事があって訓練が出来ないのでどうしようかと思っていた所、織斑から話しかけられた。

 

「なぁ、輝義はさ放課後いつも何してんだ?」

 

「......いつもは更識先輩にISの訓練を見てもらっている。今日は用事があって来れないからないがな」

 

「そうなのか?じゃぁ今日は空いてるんだな!

これから箒も一緒に訓練やるんだけど、一緒にやらないか?」

 

「......いいのか?」

 

「いいも何も全然構わないぜ?なんでそんな事一々聞くんだ?」

 

「......そうか。ならばお邪魔させて貰おう」

 

俺、嬉しすぎて泣いちゃうよ

織斑本当にいい奴やなぁ.....

 

 

アリーナに着くと箒が待っていた。

 

「ん?今日は輝義も一緒なのか?」

 

「おう、今日は空いてるだってさ。

だから誘ったんだ。構わないだろ?」

 

「あぁ構わないさ。一緒にやろう」

 

まさかの快諾

え?いいの?来といてあれだけどさ

 

「じゃ早速やろうぜ!今日は俺も箒もISを借りれたからな」

 

「あぁ、いつも道場でやってるみたいに一対一でやってみるか?」

 

「そうだな、輝義がどれぐらい強いのか気になるしな」

 

 

と、いう事で模擬戦が決まりました。

 

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

織斑がいきなり飛び込んできた。

しかしなぁ、いつも織斑先生や更識先輩を相手にしているからか、どうしても動きが遅く感じてしまう。

織斑先生なんか常にとんでもねぇスピードで突っ込んで来るからね。俺の二倍三倍ぐらいのスピードでビュンビュンするからね。

あれに付いて行ける人なんていないだろ。

 

「......遅いな」

 

「クソっ、避けられた!?」

 

そんなこんなで箒との模擬戦に。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

織斑と同じで突っ込んできたよ......

なんか突っ込む事がブームにでもなってんのか?

 

 

 

うーむ、織斑も箒の攻撃もなんだが、

何というか、素直すぎる。

もっとフェイントを入れたりしなければ当たらないぞ?

 

「はぁはぁ、輝義、お前、めちゃくちゃ強いじゃねぇか!」

 

「確かに素人とは思えんな。

何か武道などをやっていたのか?」

 

「......いや、特に何もやっていないぞ」

 

「くっそー、輝義!どこが悪い所とか、直した方がいいって所あるか?あったらどんどん言ってくれ!」

 

「私もだ。情けないが、全く攻撃が当たらなかったからな。

攻撃も、攻撃を仕掛けるタイミングも全て読まれていた。

どうか、私にも教えては貰えないだろうか?」

 

二人に頼まれたので、

早速、感じた事を言うとしよう。

 

「......二人ともだが、攻撃や攻撃を仕掛けるタイミングがあまりにも正直すぎる。もっとフェイントを入れたりしなければ当たらないぞ」

 

「そっかぁ......しっかしなぁ、あまり良く分からないんだよな。具体的にどうすればいいんだ?」

 

口では説明できないからな。

よし、見せるとしよう

 

「......見せた方が早い。

織斑、ISを展開してくれ」

 

「わかった」

 

今改めて見て思ったが、ISの展開も遅いな

まぁそこら辺は俺もよく分からないからな。

自分でなんとかしてもらうとしよう

 

「よし展開したぞ!」

 

「......では、見せよう。

行くぞ、剣を構えろ」

 

よし、じゃぁやるか

 

「ふっ!!!!」

 

「なぁ!?」

 

おっしゃ上手くいった

 

「なぁなぁ!!今のなんだ!?いきなり剣が消えたぞ!

そしたら右から来てたのに左から攻撃受けたし!なんだあれ!?」

 

簡単な話だ。

右手に構えていた剣を瞬時に格納してから左手に展開し直しただけのことだ。

これを話すと二人は違う反応をした。

 

「おぉ!!すげぇ!!かっけぇ!!

俺にも教えてくれよ!!」

 

織斑はテンション爆上がり

 

「はぁ、輝義一つ言わせてもらうぞ。

今の技はそう簡単にはできるものではないぞ?」

 

箒には呆れられながらそう言われてしまった。

何故だ?解せぬ.......

 

「他にはないのか?」

 

箒に言われたので少し考えてから言った。

 

「......後は、二刀流とかだな」

「二刀流?」

 

「......あぁ、これも見せた方が早い」

 

って事でやって見せたのだが、

 

「うおぉぉぉ!?すげぇ!!輝義すげぇ!!」

 

織斑は喜んでくれているが、

箒には、

 

「あのな?一つ言わせてもらうぞ。

輝義がやって見せたものは普通は出来るものではないぞ?全く、一夏はやる気満々だが、私にはもっと簡単な物を教えてくれ」

 

なんか怒られた。

しかも人外みたいな言い方されたんだけど......

俺は最初から出来たし、織斑先生も更識先輩も当たり前にやってくるもんだから普通だと思ってた。

今考えてみれば比較対象がおかしいな。

あの二人を基準にするのが間違えだったのか。

 

「......すまない、別のを教えるとしよう」

 

「いいや、責めた訳では無いんだ」

 

「輝義!!早く教えてくれよ!」

 

織斑はまだそんなテンション上がってたの?

喜び過ぎじゃない?

 

「......箒に教えてからだ。

少し待っていてくれるか?」

 

「おう!箒、頑張れよ!」

 

「あぁ」

 

さてと教えますかね

だがなぁ何を教えればいいのか......

 

......あれを教えてみるか

 

「......よし、やってみるからとりあえず見ていてくれ」

 

「わかった」

 

よしやるか

 

まずは突っ込んでからの急ブレーキ

次は飛行している最中にスピードの緩急をつけたり

 

「......ふぅ、こんなものか」

 

どうだ?

これならば出来ると思うのだが

 

「それならば出来る筈だ」

 

よっしゃ出来るってよ!

 

今やった技の説明をしてから織斑に教えに行くとしよう。

 

 

 

織斑まさかのブレオンらしい(驚愕)

しかも剣一本しか無いらしい

えぇ......

二刀流とか出来ないじゃないか

そうすると最初に見せたものになる訳だが、

 

「あれ?出てこねぇ?なんでだ?」

 

格納した剣が展開出来なかったり、

 

「いってぇ!?」

 

展開が間に合わなくて俺にやられたり

 

「なんでだ......全然出来ない......」

 

これでは余りにも可哀想なので、

 

「......織斑、とりあえず展開出来るようにしよう

戦闘中に出来るようにするのはその後からだ」

 

「わかった、ありがとな」

 

「......いいや、構わない」

 

 

 

 

そんなこんなで今日は終わりました。

え?箒さん?一人で頑張ってましたが何か?

 

 

 

 

部屋に帰って飯を食べて、

いざ勉強しようとしたが分からない。

ISなんて関係のない人生を送って来たのだから仕方ないのだが、分からないと織斑先生に何をされるか分からない

どうしたものか......

 

 

ん?

そこにおわすは簪様ではありませんか......!

 

「......簪、すまないが勉強で分からない所があるのだが、聞いてもいいか?」

 

「うん、いいよ。

どこが分からないの?」

 

「......ここからなんだが」

 

「ここはね----」

 

 

 

簪に教えて貰ったら分かるようになった。

すごい

 

 

 

 

 




今作での主人公と一夏君は代表決定戦前にISを使ってます。
一夏君は専用機ではないですが


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11話目



やっと代表決定戦です......
長かった......


 

 

 

いよいよ代表決定戦の日になった。

 

一つ言っていい?

なんでこんなにアリーナに人が集まってんの?

空いてる席探すのが無理なぐらいいる。

え?こんなに人に見られてる中で試合すんの?

無理だよ......今すぐ逃げ出したい。

しかし、ピットまで来てしまったし、

織斑先生も見てるし、逃げられない。

逃げたら、殺られる......

 

実際あの織斑ですら緊張して、

 

「あー、めちゃくちゃ緊張してきたぜ......」

 

こんな感じである。

チキンな俺なんてもっと無理

胃に穴が空きそう......

終わったら胃薬飲まなきゃ......

 

「確かに人が多いな

どこから情報を聞いてきたんだ?」

 

「本当にどっから集まってきたんだ?」

 

箒さんや、女子の噂話はすぐに広がるんですよ......

知られたら諦めた方がいいからね。

抵抗するだけ無駄だよ

あと、織斑よ

そんないい方しちゃダメだぞ

 

「しかし、輝義は緊張してないのか?」

 

「......いいや、緊張はする。

だが、緊張しても何も始まらないからな

リラックスした方がいいぞ」

 

「はぁー、すげぇなぁ」

 

「私達も見習わなくてはな」

 

なんかそれっぽい事言ったら

すごい感心されたんだけど

 

 

 

そんなこんなでしてたら、

織斑先生から呼ばれた。

 

「大河、織斑、時間だ。

最初は大河とオルコットの試合だ。

準備はいいな?」

 

「......はい、大丈夫です」

 

「よし、ならば行け。

もうオルコットは出ているぞ」

 

「......分かりました」

 

「輝義!頑張れよ!」

 

「輝義、行ってこい!」

 

織斑と箒に応援された。

応援されたからには勝たねばならんな

 

「......あぁ、行ってくる」

 

 

 

「出ます!!!」

 

ワァァァァァァ!!!!!!

 

おぉぅ......

すごいな、ちょっとストレスで死んじゃうよ......!

ん?簪と布仏がこっちに手を振ってくれている。

 

 

ほとんどの人が俺に怯えたりするのに、

織斑や箒、簪に布仏はこうやって応援してくれているんだろう。

これは何としても勝たなければならないな

 

 

「大河さん、この場で相見えた事とても嬉しいですわ。

今日は正々堂々戦わせて頂きますわ!」

 

「......あぁ、今日はいい戦いにしよう」

 

そう会話を交わす。

 

 

「それでは、一年一組クラス代表決定戦、一回戦を始めます。

両者位置へ。」

 

そうアナウンスが流れて位置に着く。

 

「カウントダウンを開始します。

 

五秒前、四、三、二、一、始め!!!」

 

 

 

始まった!!

 

開始早々にオルコットが撃ってくる。

 

しかしあれだな。

アニメみたいにレーザービームがぐにゃぐにゃ曲がって追っかけて来たりするわけじゃないのか。

これだったら避けられるな。

 

「はぁっ!!!」

 

自分に向かってくるビームを斬りながら突っ込む。

 

「なぁ!?ビームを斬るですって!?

しかも瞬時加速まで!?」

 

なんかオルコットが驚いてるけど良く聞こえんな

 

「くっ!? 行きなさい!!!

ブルーティアーズ!!!」

 

「なっ!?」

 

斬りかかろうとしたら、

ガン○ムのファンネルみたいなのが飛び出してきた

びっくりしちゃったじゃないか!

なんだあれ!?

かっこいい!!!欲しい!!!

 

あっちこっちから撃たれてまともに攻撃が出来ない。

とりあえず、ビームを斬りながらどうするか考えたが、全く思い浮かばない。とりあえずファンネルもどきをなんとかしないと始まらない。

 

 

「ぜぇぇぇい!!!」

 

一機目!!

 

「はぁ!!!」

 

二機目!!

 

二機落としたところで、

ある事に気づいた。

 

確証は無いが、オルコットはファンネルもどきを操っている時、自分は動けないのでは?

実際、今までも動いていないからな。

もしかしたら、俺が弱くて余裕なだけだろうけど。

 

しかし、試してみる価値はある。

 

仕掛けてみるか。

 

「うぉぉぉぉ!!!」

 

「なぁ!?また突っ込んで来ますの!?」

 

やっぱり!!

ファンネルもどきが動いていない!

 

「おらぁ!!」

 

よっしゃ!

当たった!

喜んでいたら後ろからファンネルもどきからの攻撃を受けてしまった。

最初に、ファンネルもどきを潰してからじゃないと厳しいか......

 

 

 

 

 





一旦ここで切ります。


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12話目


お久しぶりです。
前回はクッッッッッソ中途半端なところで終わってしまって申し訳ありません。

今回はその続きからです。


 

試合が始まってから、俺はオルコットに一撃入れただけでそれ以降は全く手を出せていない。

 

俺の周りを飛んでいるファンネルもどきが邪魔でしょうがない。

 

さて、ファンネルもどきを先に潰すと決めたはいいが、どうしたものか......

幸い、オルコット自身はファンネルもどきを動かしている時こちらに攻撃をして来ていない事から、ファンネルもどきを動かしている時は自分は動けないのであろう事が分かっている。

 

しかし、いつまでも長引かせるわけにはいかない。

SEはまだ半分程残ってはいるが、このままじゃジリ貧だ。

 

.........仕掛けるか

 

とりあえず二機片付ける。

そうすればオルコットへ攻撃がしやすくなるはず。

二機目を落とした瞬間にオルコットに多少の無茶は承知で肉薄して、一気に片をつける。

 

「フッ!!!」

 

ファンネルもどきに近づく。

 

「ハァ!!!」

 

一機目!!!

こいつはどの場所にいるやつでもいい。

二機目は必ずオルコットに向かった時に自分の背後に位置するやつを落とす。理由は簡単だ。

オルコットに向かった時に自分の背中を撃たれないようにするためだ。

 

「せぇぇい!!!」

 

二機目!!!

背後の二機目を落とすと同時に瞬時に反転、オルコットに向かってブースターを全力で吹かす。

 

するとミサイルが飛んできた。

たったの二発なんぞぶった切っちまえばいい。

......今ものすごい脳筋思考が出てきたような気がする。

 

接近にはファンネルもどきは対応してこない。

オルコット自身がライフルを撃ってくるが、所詮はライフル。

マシンガンや機関銃みたいに弾幕を張れるわけでもない。

簡単に避けられるし、避けられないとしても自分の装備している葵で叩っ斬れる。

 

接近すると同時に背後に回り込む。

ブースターを破壊してからSEを削る。

 

「インターセプター!!!」

 

しかし流石は代表候補生と言うべきか。

オルコットに接近すると、焦りながらも、小型のナイフを出してきた。だが、そんなものは抵抗にすらならない。大した力を入れる事なく弾いた。

 

「くっ!?」

 

しまったという顔をしているがもう遅い。

逃げられないようにブースターを破壊してあるから身動きが取れないから一方的にSEを削られていった。

 

 

するとアナウンスが流れた。

 

「セシリア・オルコット、シールドエネルギー残量ゼロを確認。試合終了。勝者大河輝義」

 

 

あぁ、終わった。

なんとか勝てたか。

 

そんな事を考えていると

セシリアが真っ逆さまに落ちていった。

 

アイエェェェェ!?ナンデ!?マッサカサマナンデ!?

 

そういやブースター破壊して飛べなくしたの俺じゃん!!

ヤベェ!!

 

急いで追いついて抱きとめた。

危ねぇ......!!!最後の最後に嫌なもん見るとこだった......

オルコットは大丈夫だろうか?

 

「......オルコット、大丈夫か?」

 

「はひっ!?

だ、大丈夫ですわ!!と、とりあえずピットに運んでくださいまし!!!」

 

あるぇぇぇ??

顔真っ赤にしながら怒られた......

 

解せぬ......

 

 

 

ピットにオルコットを運んでから自分もピットに戻った。

するとISを格納すると同時にテンションが高くなっている織斑が駆け寄ってきた。

 

「輝義!!お疲れ様!!

にしてもすげぇな!カッコいいな!俺もやってみたい!」

 

......めっさテンション爆上げじゃないですか。

 

「......ありがとう。

でもこの次は織斑とオルコットの試合だろう?

準備はしなくていいのか?」

 

「大丈夫だ!あとは乗るだけだからな!」

 

「......そうか」

 

「輝義、お疲れ様だな。

すごかったぞ?」

 

箒も労ってくれた。

俺嬉しくて泣いちゃいそうだよ......

 

 

あーだこーだ織斑と箒と話していると、

織斑先生が

 

「おい、大河今すぐSEを充電してこい」

 

えっ

何故ですか?

俺今終わったばっかりなんですけど

 

「......何故でしょうか?」

 

「お前がオルコットの専用機に与えたダメージが思いの外深刻らしくてな。試合の継続は不可能との判断が下された。

よってお前と織斑の試合をやって終わりだ」

 

自分の行いがでっかいブーメランになって帰って来やがった。

ちくしょうこの理由じゃ文句言えないじゃないか!!

 

「......分かりました」

 

「よし、では大河のISのSEの充電が終わり次第すぐに始めるぞ」

 

 

 

その後、織斑とドンパチ楽しくやりましたよ。

え?結果?勝ったわ。

 

 

 

 

----side セシリア----

 

 

試合に負けてしまいました。

 

まさかブルーティアーズが四機も落とされるとは思っていませんでしたわ。

しかも私が撃ったビームを避けるならまだ分かります。しかし、剣で斬るなんて聞いた事もありませんでした。

なんなのですか?びっくりですわ!

 

試合が終わると同時に意識がふっ、と一瞬無くなってしまったのです。気づくと大河さんに抱きしめられていました。

あまりにも突然で恥ずかしくなってつい大きな声で言ってしまいましたから、あとで謝罪とお礼をしなければなりませんね。

 

そういえば私と織斑さんの試合は無しになりました。

理由は私の機体が動かせるような状態ではなくなってしまった事。

残念ですわ。

 

大河さんは織斑さんとの試合は勝っておりました。

我が身のことのように嬉しいですわ!!

 

----side out----

 

 

 

 





代表決定戦終わったぁぁぁぁぁ......

これからどうしよう......
日常系を何話か挟もうかなと思います


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閑話


書きたかったけど、忘れてて
今の今まで流れてた話
入学してからの身体検査と、体力測定を書いていきます。

そもそもIS学園に身体検査と体力検定とかあんのか......?
身体検査はあるとしても体力検定なんかあるかわかんないけど
自分の欲望を満たす為に書いていきます



 

 

今日は身体検査と体力検査があるらしい。

らしいって言うのは俺と織斑が予定を把握出来ていないから。

 

「なぁ、輝義」

 

「......なんだ?」

 

「俺達って身体検査と体力検査どうすんだ?やるとしても何処でやるんだ?」

 

「......分からん」

 

全く予定を把握していない俺達。

どうする?お前何とかしろよみたいな会話を繰り広げていたら、

織斑先生が爆弾発言をかましてきた。

 

「おい、男子共。といっても二人だが。

いつまで教室に居るつもりだ?

まさかとは思うが女子の着替えを覗くつもりではあるまいな?

もしそうだとしたら、私はお前達に教育的指導をしなければならん。」

 

ホワッツ!?

そんなん聞いてねぇぞ!?

それに教育的指導だって!?

あの魔剣シュッセキボが炸裂するぞ!!!

女子からの視線が......

あっ、織斑も慌ててる。

 

「へっ!?女子ってこの教室で着替えんのか!?

専用の更衣室かなんかがあるんじゃ!?」

 

「何を言っている?

更衣室はあくまでもISを使う授業や自主練の時のみしか使用は出来ん。ただしお前達は別だがな」

 

まじかよ

俺達この教室で着替えられないのか

............ん?待てよ?

女子は授業や自主練以外使えないって言っていたが、

俺達は別って......?

まさか!?

 

「大河は気が付いたようだな。

そうだ、お前達は着替えが必要な時はアリーナの更衣室室まで行って着替えなければならん。

さぁ?何をモタモタしている?急がないと測定に遅れるぞ?そうだな、遅れたら学園の外周を二十周程してもらおうか?」

 

「ヤベェ!!急げ輝義!!!」

 

「......あぁ!!」

 

冗談じゃない!!!

この学園はその性質上敷地がとんでもなく広い。

そのクッソ広い敷地の外周を二十周だと!?

一周何キロあると思ってんだ!

いくらなんでも死んじゃうよ!

 

 

走る!走る!俺達はひたすらアリーナまで走る!

今こそ己の限界を超えるんだ!!!

そんな事言ってる場合じゃない!

 

俺達は急いで着替えて、また走って測定する場所まで移動した。

 

その頃には織斑はヒーヒー言っていた。

 

「ゼーゼー、て、てる、よし、なんで、お前、そんな、ゲホッ、元気なんだよ!?」

 

「......普段から走っているからな」

 

「くっそ、ハァーハァー、やっぱ俺も体力つけなきゃなぁ」

 

「それにしても、輝義すげぇな。その筋肉とか。

腕なんか俺の何倍も太いし、全身の筋肉がバッキバキだな!」

 

俺ってばトレーニングを欠かした事は無いのだ。

努力の賜物です。

しかし、織斑の目線が少し怪しい......?

気のせいか?よし、気のせいだな。

.........そう信じたい

 

 

早速計測を始めることに。

 

身長体重などの基本的な事に加えて、胸囲や肩幅と言った事も測った。

 

さぁ身体検査は終わった。

後は体力検査のみだ。

 

 

アリーナに移動した。

なんか、周りからの視線が凄いな。

なんでなんだ?

織斑に聞いてみよう。

 

「.......織斑」

 

「ん?なんだ?」

 

「......何故みんな俺達を見ているんだ?」

 

「あー......多分輝義の事を見てんだろ」

 

もしかして人生初のモテ期到来!?

 

「......何故だ?」

 

「いや、だって、輝義すげぇ身体してんじゃん?

だからだろ」

 

全然モテ期到来なんかじゃなかった。

しかもよくよく見れば若干怯えが混じった視線だし

......本当に泣きそうになってきた。

トレーニング止めようかなぁ......

 

今に始まった事じゃないから、もう諦めよう......

 

 

 

体力検査が始まった。

 

まずは百メートル走から。

 

俺と織斑は一緒に走る。

 

「位置に着いて......よーい......」

 

パァーーン!!!

 

うぉぉぉぉ!!!

風になれ!全てを振り切るんだ!

タイムは!?

 

「嘘でしょ......!?八秒ぴったり......!?」

 

いつもと大して変わんねぇな

織斑は?

ちょうど今ゴールしたな。

 

「輝義、お前、早すぎんだろ......!」

 

えっ普通だろ。

 

「......そうか?いつも通りだが」

 

「うっそだろ!?すげぇ!!!どうしたらあんなに早く走れんだよ!?教えてくれよ!」

 

なんか織斑、凄い喜んでる。

だけど周りの女子の皆さんはというと

 

 

完全に怯えてた。

なんで?普通に走っただけやぞ!?

何か?俺は一挙手一投足全てに怯えられる物質か何かを撒き散らしてんのかよ。

泣くぞこんちくしょう。

 

 

 

次はハンドボール投げ

 

「オラァ!!!」←俺(めちゃくちゃドスが効いた声)

 

「おりゃぁぁ!!!」←織斑(ナイスボイス)

 

俺 百八十三メートル

織斑 四十二メートル

 

 

悲報 俺氏さっきよりも怯えられる。

 

なんでさ!!!???

 

 

立ち幅跳び

 

俺 六メートル八四センチ

 

織斑 二メートル十五センチ

 

 

走り幅跳び

 

俺 十二メートル57センチ

 

織斑 三メートル七センチ

 

 

反復横跳び(三十秒)

 

俺 二八六回

 

織斑 六三回

 

 

握力

 

俺 測定不能(握力計をぶっ壊した)

 

織斑 四八キロ

 

 

三千メートル走

 

俺 五分十九秒

 

織斑 十四分四十七秒

 

 

他にもいくつかやったが俺としては当たり前の結果を出したのに、織斑以外の全員に更に怯えられるだけになった。

 

織斑との結果を見て比べたが、俺ってばもしかして人外?と思ったが、そんな事はない。

 

............無いと思いたいなぁ

 

 

 

 






グダグタしてしまったかも。
まぁ書けたから良しとしよう


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13話目

試合の翌日

いつも通り起きて簪と食堂で朝飯を食べてから教室に向かう。

しかし、なんかいつもより見られている......?

怯えが混じった視線で。

昨日の試合が原因か?

俺、普通に戦っただけなんだけどなぁ......

 

俺は何をしても怯えられるのか......

悲しいなぁ。

 

教室に到着すると、やはりというか織斑や箒、セシリアを除く全員から怯えた目で見られた。

 

ちなみにオルコットをセシリア呼びになったのには理由がある。

 

昨日試合が終わってから自室に戻って簪と話をしていると

部屋にセシリアが訪ねてきたのだ。

そしたら、先日暴言を吐いた事、今日の試合が終わってから意識を一瞬失って落ちてしまった時に助けてもらった事のお礼をわざわざ言いにきたらしい。

ええ子やなぁ。

てか、落ちた理由俺が原因じゃなかった。良かった。

そしたら名前で呼んでくれって言うから名前で呼ぶようにした。

その時のセシリアは何というか、わんわんだった。

もう、ご主人に呼ばれて嬉しくてしょうがないっていうわんわんそっくりだったよ。ブンブン尻尾が振られてる幻覚を見てしまったぐらいには。

 

 

 

HRが始まって、

セシリアが、

 

「織斑先生、少しお時間を頂けませんか?」

 

と言った。

恐らく昨日俺が改めて皆に謝る様に言ったことをやろうとしているのだろう。

お兄さん約束守れる子は大好きですよ。

冗談はさておき、

織斑先生も察したのだろう、

 

「ふむ、構わんぞ。ただ、なるべく短く済ませるようにな」

 

「はい」

 

セシリアが皆の方を向き、しっかりとした綺麗な姿勢で

頭を下げた。

 

「皆様、先日はこの国や皆様を侮辱するような発言をしてしまい、申し訳ありませんでした」

 

するとクラスは静かになり、

セシリアを見ていた。

セシリアをよく見てみると少し肩が震えている。

やはり謝罪を受け入れてもらえないかもしれないという恐怖があるのだろう。

しかし、そんな事は無かった。

皆から拍手が起こった。

セシリアは少し戸惑っている。

 

「いやぁオルコットさん偉いねー」

 

「ほんとほんと。

私だったら怖くて謝れないわ」

 

「まぁでもあまり気にしてなかったしね」

 

「これからよろしくねーオルコットさん」

 

ほらな?

うちのクラスは皆優しいんだよ。

......俺に対しては怯えてるけど。

 

するとセシリアはとても魅力的で見惚れるような笑顔を浮かべながら、

 

「こちらこそよろしくお願いしますわ。

それと私の事はセシリアで構いませんわ」

 

そう言った。

すると織斑先生が、

 

「よし、解決したな?では連絡事項を伝える。

クラス代表だが、昨日行われた試合の結果、織斑に決定した」

 

そうなのだ、クラス代表は織斑になった。

すると織斑は、

 

「ちょ、ちょっと待ってくれよ!

なんで俺なんだ!?試合には全部負けたんだぞ!?

普通だったら輝義かセシリアだろ!?」

 

「それは私と輝義さんが辞退したからですわ」

 

「なんで!?ずるいぞ!?」

 

「ずるいも何も勝者の特権ですわ、

ね、輝義さん?」

 

えっ、ここで俺に振る?

 

「......あぁ」

 

俺の理由は、皆様御察しの通り、俺が代表なんかになってしまうと皆に迷惑をかけてしまうから。

ただでさえ怯えられている俺が代表をやってしまうとどう考えても迷惑にしかならない。ならば全員に好意的に思われている織斑か、セシリアに任せようとしたのだ。

それにそんな状況に放り込まれたら俺の胃が保ちません。

俺は胃薬と親友になんてなりたくないのだ。

しかしセシリアは違うらしく、

 

「織斑さんは、なんと言いますか......

弱すぎますわ。だから代表としてトーナメントなどに出来る限り参加をして、実戦経験を積んだ方がよろしいかと思ったのです」

 

「ぐっ!?確かにそうなんだよなぁ......」

 

「えぇ、ですから織斑先生に輝義さんと一緒にその事を予めお伝えしておいたのです。そうしたら快諾してくれましたわ」

 

「えっ!?そうなのか輝義?」

 

「......あぁ」

 

まぁしょうがないよね。

とりあえずそれっぽい理由を並べといて織斑にやってもらう事にしたのだ。

 

「そっかー、じゃあしょうがないな。

分かった。俺、クラス代表やるよ」

 

「......頑張れよ」

 

「おう!」

 

「よし、織斑も納得したな?

では授業を始める。

今日は〜〜〜〜〜〜」

 

 

 

 

あ"ぁ"ぁ"今日も一日授業が終わったぜ。

さて、支度をして、アリーナに向かわなくては。

更識先輩が待っているからな

 

 

 

必死こいてやってるのに

 

「ほらほら!もっとしっかり相手の動きを見て!」

 

「ぐっ!?」

 

やられてはもう一度やられてはもう一度

の繰り返し。

 

「一対一の時は絶対に相手から目を離さない!

すぐにやられちゃうわよ!」

 

「はいっ!!」

 

 

 

 

隙を見つけたと思ったら全く通用しない。

 

「そこぉぉぉ!!!」

 

「甘い!!」

 

「なっ!?」

 

「はいっ!お終い!!!」

 

「ごっ!!??」

 

 

 

漸く更識先輩との練習が終わった。

あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ".........

終わったぁぁぁぁ.........

疲れたぁぁぁぁ.........

 

そうぐったり大の字になって倒れていると、

 

「まだまだねぇ、はいスポドリ」

 

「......ありがとうございます」

 

まだまだと言われてしまった。

もらったスポーツドリンクを飲みながら項垂れていると、

 

「でも、まだまだと言ってもかなり凄いわよ?

だって輝義くん飲み込み早いし、私と戦うと他の人なんかより遥かに長い時間戦えるのよ?」

 

褒められたが、あまり嬉しくは無い。

 

「......そうですか」

 

「なーんかあんまり喜んでないわね」

 

やはりというか、見透かされてしまった。

 

「......えぇまぁ」

 

「どうしてかしら?」

 

理由を聞かれたので答えた。

 

「......長い時間戦えると言われてもやはり一度も勝てて無いですから。それが何よりも悔しいんです」

 

「そんな事言ってもねぇ、正直ISに乗ってからまだ数週間しか経っていないとは思えないぐらいなんだけどね」

 

また褒められるがやはりあまり嬉しくは無い。

 

「......でもやっぱり......」

 

「悔しいかぁ」

 

「......はい」

 

すると更識先輩は、

 

「そうねぇ、自信が出る事を教えてあげるわ」

 

何か教えてくれるらしい。

なんだろうか?

 

「輝義くん、勝てないって言っているけど、私と織斑先生を除けば間違いなく学園最強よ?」

 

......えっ

待って待って待って、ちょっと待って。

え?おかしくない?

俺がぁ?

ほんとにござるがぁ?

冗談はさておき、理由を聞いてみる。

 

「......何故ですか?」

 

「何故ってよぉ〜く考えてみて?

輝義くん、ISに触ってたったの一週間程度で代表候補生に勝っているのよ?」

 

って言われてもやっぱり

 

「......はぁ」

 

これしか出てこない。

 

「まだ分かって無いみたいね。

じゃぁもっと教えてあげるわ。

輝義くん、瞬時加速とか個別間瞬時加速を当たり前の様に使ってるけどあれ全部、超高等技術よ?少なくともISに乗ってから一週間程度で出来るようなものじゃ無いわよ?

それに、代表候補生クラスでも使える人はかなり珍しいし。

国家代表クラスならホイホイ使うけど」

 

えっ......

でも織斑も使えてましたけど?

それを伝えると

 

「知ってるわよ。見ていたもの。

そもそも貴方達がおかしいのよ。

だってオルコットさんだって現に使ってないでしょ?」

 

......はっ!?

確かに使ってなかった。

使えるんだったらあの時、接近されたら使って離脱していたはずだ

考えていると、

 

「漸く分かったようね?

輝義くんは十分以上に凄いし努力しているのよ。

だから自信を持ちなさい?」

 

「......はい、ありがとうございます」

 

「うんうん、それでいいのよ。

それじゃ、次は私の相談に乗ってもらおうかな?」

 

え?

今のって等価交換だったの!?

俺めっちゃ感動してたのに......

まぁいいか。

俺だけってのも悪いし。

何か悩んでいるのなら助けてあげたいからな

 

「......いいですよ、何ですか?」

 

するとさっきまで明るかった表情が暗くなった。

待ってよ、そんな重い話?

助けるって言ったけど手に負えないんだったら意味がないぞ?

すると更識先輩は口を開いて話し始めた。

 

「......えっと簪ちゃんが私の妹だって事は、前にも言ったから知ってるわよね?」

 

「......えぇ」

 

「......私達ね、仲悪いんだ」

 

超絶初耳なんですけど。

しかも想像より遥かに重い

とりあえず話を聞いてからだ

 

「......そうなんですか?」

 

「うん......でね、その理由なんだけど、私が原因なんだ」

 

「......それはどうして?」

 

「私の家って結構って言うか、完全に特殊な家なの。

それで当主とか色々あって......

その時に私、かなり疲れてたんだと思う。

肉体的にも精神的にも。

だから当主になった時に簪ちゃんにもう何もしなくていい、何も頑張らなくていいとか、言っちゃって......」

 

「......そうですか」

 

「簪ちゃんが私に追い付こうとして色々頑張ってたの知ってたのに......

そんな事言っちゃって......

それから仲が悪くなって話さなくなったの」

 

「......はい」

 

「それでもうどうしたらいいか分からなくて......

ねぇどうしたらいいかな?」

 

めっちゃヘビーじゃ無いですかやだー!

......ふざけてる場合じゃ無い。

さて、どうしたものか。

以前、簪には姉と不仲と言う事は聞いていたから知っている。

そして自分はどうしたいのかも。

どう伝えるべきか......

 

 

 

「......先輩はどうしたいんですか?」

 

「それは......」

 

少し沈黙してから

更識先輩は言った。

 

「......謝りたい。謝って許してもらって、また昔みたいに話したい。一緒にご飯を食べたい......」

 

「......なら、そうすればいいじゃ無いですか」

 

そう答えると、

 

「だけど!謝っても許してくれなかったら!?

二度と話しかけるなって言われたら!?

私はどうすればいいの!?」

 

泣きながら先輩は言った。

 

「......大丈夫ですよ。

簪は許してくれます」

 

「なんでそんな事が言えるの!?

なんの保証もないじゃない!」

 

「......簪も先輩と同じ理由で悩んでました。

そして先輩と、また話したりご飯を食べたりしたいって言っていましたよ」

 

「......本当に?」

 

「......はい、本当です。

だから行ってくればいい。

それでもし衝突することがあったら言いたいことを気が済むまでぶつけ合えばいいんです。そうすれば自然と蟠りなんか無くなりますよ」

 

「......簪は今も待っていますよ」

 

そう言うと、だんだん泣きだしてきてしまった!?

 

「......うん、うん...!ありがとう...ありがとう...!」

 

ど、どうしよう!?

泣いている女の子の対処法なんて知らないぞ!?

そんな事を考えながらオロオロしていると、

おわっ!?

抱きついてきた!?

ホワッツ!?なんで!?

......まぁしょうがないか今は好きにさせてあげよう

 

 

 

しばらくして

 

「グスッ、ごめんね。ありがとう」

 

「......いいえ、どういたしまして」

 

「さてと、それじゃ早速行ってこようかな?

善は急げって言うしね」

 

漸く腹を括ったみたいだな

......なんか俺の日本語、変じゃない?

あの様子じゃ大丈夫だろう。

 

「じゃぁ、行ってくるね!!」

 

「......はい」

 

走って行ってしまった。

ちゃんと仲直り出来るはずだ。

あとで結果を聞かせてもらうとしよう。

 

 

 

......そういやアリーナの片付け俺一人でやんの?

それに簪って俺と同じ部屋だから部屋に帰れない!?

 

「......まじか」

 

そう漏らしてしまった俺は悪くない。

まぁ二人が仲直り出来るんだったらこんなん安いものだ。

 

さて、さっさと片付けてしまおう。

そうしたらもう二人も色々と終わっているだろう。

 

 

 

 

 

 

 




書きました。

ここ最近、FGOのイベントやら
ドルフロのイベントやらで忙しくて......

申し訳ない


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14話目


なんか気がついたらお気に入りが370を超えてた......
感謝しかないです。
今後ともよろしくお願いします。



 

更識先輩に簪との事を相談されてから、

しばらく経った。

......そろそろ戻っても大丈夫だろうか?

うーむ、頃合いが全くわからない。

今日は野宿でもしようか?

いやいやそんな冗談言ってる場合じゃない。

本気でどうしよう?

そんな事を考えて悩んでいたら、

かなり時間が経っていたので戻る事にした。

 

 

 

部屋の前まで来たはいいが、

話は終わったのだろうか?

ちゃんと仲直り出来たのだろうか?

自分で絶対仲直り出来るとか言ったが、

不安でしょうがない。

 

部屋の前でウロウロしていたら、

いつのまにか注目を集めていた。

そりゃそうだ、部屋の前でウロウロするなんてどう考えても変質者だ。特に俺なんかはよく勘違いされる。

寮長の織斑先生を呼ばれる前になんとかしなくては。

 

しょうがない、部屋に入るか......

 

 

コンコン

「......入っても大丈夫か?」

 

「どーぞー」

 

一応確認したらなんとも嬉しそうな声が聞こえてくる。

この声は更識先輩だな。

 

「お帰り、輝義」

 

「......あぁ、ただいま」

 

「あらー?私もいるのに簪ちゃんにしか言わないのー?

おねーさん悲しいなぁ?」

 

えぇ......

なんかただいま言わなかったら文句言われた......

理不尽だ......

 

「......ただいま帰りました」

 

「はい、お帰りなさい!

でも硬いわねぇ、もっと柔らかく接して欲しいなぁ?」

 

おぉう......

そんな満面の笑みを浮かべるなんて、卑怯ですよ......

それに柔らかく接してくれなんて言われても......

そんなやりとりを更識先輩としてると簪が、

 

「む〜、私もいるよ?」

 

「......すまない」

 

くっそぅ......

簪に怒られてしまった

 

「まぁまぁそんな事よりも、晩御飯食べに行きましょう?」

 

更識先輩からの提案により晩飯を食べに行く事になった。

まぁ食堂だけど。

 

「あ、輝義くんちょっといいかしら?」

 

「......はい?」

 

「えっと、その、ありがとう。

簪ちゃんと仲直り出来たのは輝義くんのおかげだから。

本当に感謝しても仕切れないぐらいに本当にありがとう」

 

簪との件でお礼を言われた。

 

「.......いえ、大したことはしていないですよ。

仲直り出来たのは更識先輩自身の成果ですから」

 

こう返すと

更識先輩は笑いながら、

 

「ふふっ、そっか。

そういうことにしておくね」

 

「......えぇ」

 

まぁなんにしろ仲直り出来て本当に良かった。

そう考えていると、

更識先輩が、

 

「でも、いつまでも更識先輩じゃなんか硬くて嫌だわ。

名前で呼んで欲しいなぁ?」

 

少し悪戯っぽい笑顔を浮かべながらそう言った。

しかし名前か......

 

「......分かりました。

楯無先輩でいいですか?」

 

「だーめ。

先輩もちゃんと取って」

 

なぬ!?

これじゃダメなの?

 

「......楯無さんでどうでしょう?」

 

「うーん、しょうがないわねぇ。

ここら辺で妥協してあげましょう」

 

「......ありがとうございます」

 

そう会話していると、

簪に呼ばれた。

 

「お姉ちゃん、輝義?早く行こう?」

 

「そうね、行きましょっか!」

 

改めて思うが、

仲直り出来て本当に良かった。

 

 

 

晩飯を食べ終わって部屋に戻ってきた。

すると簪からも、お礼を言われた。

 

「輝義、お姉ちゃんと仲直り出来るきっかけを作ってくれて本当にありがとう」

 

「......気にするな。仲直り出来たのは、二人がそう思っていたからだ。俺は何もしていない」

 

そう言うと

 

「そっか。でも、本当にありがとう」

 

「......あぁ」

 

「じゃ先にお風呂に入るね」

 

「......ごゆっくり」

 

 

 

 

二人とも風呂に入り終わった。

いい時間だし寝るとするか。

 

「おやすみ、輝義」

 

「......あぁ、おやすみ」

 

 

 

こうして一日が終わりを告げた。

 

 

 

 

 






はい、という事で簪とたっちゃんはしっかり仲直り出来ましたね。
えがったえがった。

次回あたりに鈴ちゃん登場するかも?


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15話目

鈴ちゃんとの絡ませ方が分からない......


いつも通り朝起きて、

織斑先生と朝練をして簪や織斑、箒に楯無さんセシリアと朝食を食べてから教室に行く。

今日からISを使った授業が始まる。

 

 

 

アリーナにて

 

アリーナに来るとどうしても、楽しい気分になってしまう。

何というかやはりISに乗るのは楽しいし、空を駆け回れるなんて体験そうそう出来るようなものでは無いから、やはり朝と放課後に毎日乗っていると言っても楽しくなってしまうのはしょうがない。

というか、俺や織斑、セシリアは何をするのだろうか?

いつもISに乗っているから基本的な事は出来る。

 

 

 

織斑先生がジャージ姿で出てきた。

ついでに言うと山田先生は何故かパイロットスーツ。

乗らないのになんでや?

......しかし、なんと言うか、山田先生すごい。

どことは言わないけど。

......セシリアに白い目で見られた。

しょうがないじゃ無い男の子なんだもの。

 

「さて諸君、今日からISを使った実習が始まる。

これは兵器だ。人を殺せる力がある。

そしてお前達はISを扱うに当たってそれ相応の責任が伴う。遊び感覚でこの授業を受けるのならば今すぐに出て行け。

厳しい言葉を言うが、これはそういうものだ」

 

織斑先生の言葉にさっきまできゃいきゃい言っていた皆は静まり返って緊張した面持ちになった。

 

「何、別に脅すつもりはない。

要はしっかり授業を受けろよと言う事だ。

では、始めるとしよう」

 

ISはラファールが二機に打鉄が二機。

クラスは四十人だから十人で一班だな。

 

「さて、実習に移る前に専用機持ちに色々と実演してもらおう。

大河、織斑、オルコット、前に出ろ」

 

なんですとぉ!?

そんなん聞いてないぞ!

まぁ織斑先生からの指示なので逆らえるはずもなく、

 

「はいっ!」

 

「はい」

 

「......はい」

 

俺達三人は前に出た。

 

「よし、織斑から順番にISを展開しろ。

目標は0.5秒だ。山田先生、計測をお願いします」

 

「はい、分かりました

では、織斑君準備はいいですか?」

 

「はい、いつでも大丈夫です!」

 

光が織斑を包む。

光が消えるとそこには白式を纏った織斑が。

 

「0.8秒です!

ISに触ってからの期間を考えると上出来ですよ!」

 

山田先生が結果を伝えると

織斑は少し悔しそうな顔をしながら、

でも嬉しそうに、

 

「最初に比べればいい方かな。

でもまだまだ努力しなきゃな」

 

織斑先生からは厳しいお言葉が。

 

「まぁいい方か。

だが次回は0.5秒にしてこい」

 

「はいっ!」

 

やっぱり織斑も織斑先生には逆らえないんだな......

 

「次はオルコットだ」

 

「はい。輝義さん?しっかり見ていてくださいましね?」

 

「......あぁ」

 

光がセシリアを包む

 

「0.5秒、流石ですね!」

 

「よしオルコットは合格だ。

次は大河、お前だ。

やれ」

 

「......はい」

 

今ここでしくじったら後で殺される......!

何が何でも成功させなければ!

うぉぉぉぉ!

出でよラファール!

 

「二秒......です」

 

「おい、大河しっかり、ちゃんとやれ。

いいな?」

 

「......はい」

 

次は成功しなきゃまじで首が飛ぶぞ!?

あんなドスの効いた声聞いたことない!

 

「へっ!?0.2秒......です......」

 

「よし、上出来だ。

しかし次回からは最初からちゃんとやれよ?」

 

「......はい」

 

あぁ......良かった死ななくて済んだ......

 

 

 

「次だが、飛行をやってもらう。

三人とも飛べ」

 

織斑先生に言われ、俺達はアリーナを回るように飛ぶ。

 

織斑先生が、

 

「よしある程度飛んだな?

次は急降下からの急停止だ。

地上五センチで止めろ。

織斑、オルコットやってみろ」

 

俺は?

いぢめ?いぢめなの?

と思ったら、

 

「大河、お前は最後だ。

別の事をやってもらう。待機していろ」

 

違かった。

てか、別の事って何?

不安でしかないんだけど......

 

 

そんな事を考えていると、

織斑が急降下を始めた。

チャンネルで声を聞いていると、

 

「......あれ!?どうやって止まるんだ!?

あ、ちょ、まっ!!??」

 

ドゴォォォォォォォン!!!!!!

 

......おう、地面に激突しやがった。

 

遠目からだが、織斑先生から厳しい事を言われている。

 

次はセシリアだがこちらは

とても綺麗にやってのけた。

......終わったあとに俺に向かってウインクをしてきた。

手でも振っておこう。

手を振ったらめっちゃ嬉しそうにしている。

 

さぁ次は俺だが、

 

「大河だが、急降下を瞬時加速で始めてから、地上十メートルで個別間瞬時加速を三回行ってからの急停止、地上五センチ以内に納めろ。

出来るな?」

 

おい待て。

俺だけおかしいだろ!?

なんでそんな難易度インフェルノみたいになってんの!?

馬鹿なの死ぬの!?

......あ、睨まれた。

考えている事読まないでください。

しかし逆らえないので頷くしかない。

 

「......はい」

 

腹を括るしかない。

やらねば殺される。

出来なくても殺される。

......俺の人生ハードモードやん......

 

 

「......行きます」

 

ドンッ!!!

 

よし、十メートル!

 

ドンッドンッドンッ!!!

 

残り一メートルで思いっきり引き上げてからの全力逆噴射ァァァァァ!!!!!!

 

よし、出来た......

 

「二センチ、上出来だ」

 

織斑先生から褒められた......!

嬉しい!

......確実に調教されている気がする。

 

横から織斑が、

 

「すげぇすげぇすげぇ!!!

あれどうやったんだよ!?

今度教えてくれよ!!!」

 

織斑はテンションアップして興奮し始めた。

周りを飛び跳ねている。

セシリアは、

 

「流石ですわ!」

 

とか言って褒めちぎってくる。

恥ずかしいからやめて......

 

 

 

その後の授業は順調に進んだ。

......俺が担当する班はみんな怯えて遅れ気味だったけど

 

 

 

 

ーーーーside 千冬ーーーー

 

今日はISを使っての初めての授業とあって少しクラス全体が浮ついている。

このまま授業を受けられると怪我や事故の元になるから注意をしておこう。

 

 

 

専用機持ちの三人にまずは色々と実演してもらうとしよう。

まずは展開速度だ。

 

織斑は及第点と言ったところか。

オルコットは代表候補生とあって早い。

問題は大河だが......

 

 

やはりというか、手を抜いた。

私がちゃんとやるように釘を刺すと

あれだけ遅かったタイムが別人と思うほど縮んだ。

実際山田先生やクラスの人間全員が驚いている。

それはそうだろう。

0.2秒ともなればあと一歩で国家代表レベルだ。

 

驚くのも無理はない。

大河には最初からしっかりやるように言うと素直に頷いた。

 

他に急降下からの急停止を織斑、オルコットにやらせた。

織斑は地面に激突、オルコットは手本のようなものを見せた。

さて、大河にはさらに難易度の高いものをやらせてみるとするか。

 

急降下を瞬時加速で始めてからの地上十メートルから個別間瞬時加速を三回行ってからの急停止。地上五センチ以内で止まると言うもの。

自分で言っておきながら無茶振りだとは思うが、あいつなら出来る。

毎日朝と放課後に私と更識にしごかれているんだ、これぐらい出来なくてはな。

 

 

やらせてみた結果、大河は見事にやって見せた。

クラス全体は驚いているし、織斑に至っては興奮して大河の周りを飛び跳ねている。

 

やはりあいつは面白い!

今後もビシバシ鍛えるとしよう。

 

 

 

ーーーーside outーーーー

 

 

 




鈴ちゃん出せなかった......

すいません。
次回は出せるように努力します。


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16話目


鈴ちゃんなでなでしたい......
高い高いしてあげたい......
それで威嚇されたい......


 

楯無さんとの放課後の練習が終わった後。

俺は一人学園の敷地内をぶらぶらと散歩していた。

今日は風が涼しいからなんとも心地よい。

そんな時、前方からやたらと小さな影が近づいて来た。

誰だろうか?あんな小さな奴は学年に居なかったはず......

見た感じ小学生......?

手元の案内図を見ているが......

 

「......おい」

 

やっちまっただぁ......

いくらなんでも初対面の相手にこれはないわ......

現にほら。

 

「ひっ!?あ、あんた誰よ!?」

 

警戒心MAXで怯えているじゃん......

コミュ障な自分を呪いたい......

 

「......すまない。

どうやら迷っている様に見えたからな。

つい声を掛けてしまった」

 

言い訳にしか聞こえないが、

弁明すると、

さっきまで怯えていたのが嘘の様に、

 

「あ、そうなの?わざわざありがと」

 

いい子やなぁ.......

しかし思えばIS学園に来てから俺に対して怯えずに話掛けてくれる人が家族以外にも出来たんだよなぁ......

嬉しいなぁ......

今度皆に飯でも奢るとしよう。

などとしみじみ考えてしまう。

 

「......それで、どこに行きたいんだ?」

 

「えっとね、事務室に行きたいんだけど分かんなくなっちゃったのよね。どこにあるか知ってる?」

 

事務室だと......!?(驚愕)

お前、それこっから正反対やぞ......!?

それを伝えると、

 

「嘘でしょ!?ここどんだけ広いと思ってんのよ!?あぁ......もうダメだわ......千冬さんに怒られる未来しか見えない......」

 

ものすんごい絶望オーラを撒き散らし始めた。

分かるよ、その気持ちとっても分かる......!

以前にも言ったと思うが、このIS学園は広い。

そりゃもうびっくりするぐらい広い。

なんたって大きさが直径七百メートルはあるアリーナだけで十個以上ある。しかもそれだけではなく、

ISの整備室や、俺達が勉強をしている校舎にISの装備品を作成する施設もあるし、全校生徒およそ五百人を収容しても余裕のある体育館、他にも四百人以上を同時に収容できる食堂、俺達が寝泊りをしている寮もあるし、本土と直通しているモノレールと橋が一つづつ。

スーパーまである。

挙げたらキリがないぐらいにこのIS学園は設備が整っている。

そんなIS学園の敷地面積などどれだけ広いか簡単に想像できるだろう。

そんな敷地の端から端である。

もう聞いただけで嫌になってくるしなんだったら今すぐ引きこもりたい。

 

しかもこいつ曰く待ち合わせの時間があるらしく、

全力で走っても間に合わないのだとか。

俺ならば間に合うのだがな.........ん?

俺が小学生を抱えて走ればいいのでは?

それを伝えると、

 

「なんでもいいわ!!

こんな状況からでも入れる保険があるんだったら今すぐ入るわ!

時間までに間に合うんだったら何でもいいわよ!」

 

めちゃくちゃ必死の形相でやれと言われた。

 

 

よし、ならば見せてやろう。

俺の真の力を......!

 

「......失礼するぞ。

荷物はしっかり抱えておけよ」

 

「分かったわ!頼んだわよ!私の命がかかってんだからね!?」

 

「......任せておけ。

行くぞ......!」

 

ドンッ!!

 

「うっそぉぉぉ!!??

なにこれはっやーい!!!」

 

なにやら小脇に抱えた小学生から

楽しそうな声がキャーキャー聞こえる。

二十分程走ると事務室が見えてきた。

 

「本当に着いちゃった!!

ありがとう!助かったわ!これで死ななくて済むわ!」

 

「......間に合ったのなら良かった」

 

「あ、そういえばあんたの名前なんて言うの?

私は鳳 鈴音よ。鈴でいいわ」

 

「......大河輝義だ」

 

「あぁ!あんたが二人目の?

どうりで見た事がある顔だと思ったわ!

まぁ、よろしくね、輝義!」

 

「......あぁ、よろしくな鈴」

 

「本当にありがとう。

じゃおやすみ」

 

「......あぁ、おやすみ」

 

 

こうして最後の最後で騒がしくなった一日が終わった。

 

 

 





今回やっと......!やっと鈴ちゃんを出せたぁぁぁぁぁ!!!
(作者はロリコンではないです。ただ可愛い物が好きなだけです)
しかし今回ビックリマーク多い気がする......気のせい?

まぁ鈴ちゃん元気だからそれを表すためだからいっか。

てことで次回をお待ちください。
今回も読んでくれてありがとうございました。


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17話目

 

鈴と会った翌日。

教室でセシリアと箒、織斑と喋っていると教室のドアが勢いよく開かれた。

何事かとそちらを見ると、ドドーン!みたいな効果音が聞こえて来そうな登場をした鈴がいた。

お前......そんな事したら間違いなく織斑先生に怒られるぞ?

 

「織斑一夏ってこのクラスにいる!?」

 

「り、鈴!?なんだいきなり!?」

 

「いたわね!今度のクラス代表トーナメントの事で来たのよ!」

 

「ど、どういう事だよ?」

 

「二組のクラスの代表私に変わったから!」

 

「まじかよ!?」

 

「まじよ!それで宣戦布告しに来たって訳よ!精々私に当たるまで負けるんじゃないわよ!」

 

鈴が胸を張って言い放った。

しかし織斑はドヤ顔している鈴を放って席に着いた。

他の皆も席に座っている。

俺も座っている。

何故かというと、鈴の後ろにいるあのお方が理由だ。

 

「おい」

 

「ひゃい!?千冬さん!?」

 

恐ろしい雰囲気を纏いながらドスの効いた声で話しかけられた鈴は怯えた声で返事をした。

 

「織斑先生だ馬鹿者。HRがあと、一分程で始まるというのにいい度胸だな」

 

「すいませぇん!今すぐに戻りまぁす!」

 

すごい速さで戻って行った......

人ってあんなに速く動けるものなんだな。

 

 

 

午前中の授業が終わってから皆(と言っても俺、織斑、セシリア、箒、簪の五人だが)で食堂に昼飯を食べに来た。

ちなみに楯無さんも誘ったのだが、仕事が終わってないとかで悲鳴を上げながら断られた。Good luck

 

入り口に来たら、鈴が待ち構えていた。

 

「待ってたわよ一夏!」

 

「鈴、そこにいたら皆の邪魔になるだろ?

先に席取って待っててくれ」

 

「う......分かったわよ......」

 

織斑に注意されてシュンとしながら席を取りに行った。

 

 

皆食べたいものを頼んで鈴が取ってくれた席に向かう。

 

「こっちよ!」

 

こちらに手を振りながら場所を教えてくれる。

ここの食堂広すぎるんだよなぁ......

 

「すまねぇ待たせたな鈴」

 

「別にいいわよ。あ、でもラーメン頼んだから先に食べちゃってるわよ」

 

「全然構わねぇよ。ラーメンのびたらまずいしな」

 

ちなみに俺は日替わり定食特特特盛り。

ここの食堂品揃え半端ないんだよな。

晩飯は何を食おうか?

 

「昨日ぶりね輝義」

 

なんかいきなり話しかけられた。

......いきなりではないな

 

「あれ?鈴と輝義知り合いなのか?」

 

「ん?昨日学園で迷ってたとこを助けて貰ったのよ。

事務室と正反対の方に行っちゃったのよ」

 

「え?事務室と正反対ってめっちゃ距離あるじゃねぇか。

どうやって助けて貰ったんだよ?」

 

「抱えて事務室まで運んでもらったのよ」

 

「まじかよ!?」

 

「まじよ。しかもとんでもない速さで走りながらね」

 

......あまりバラさないでください。

鈴が抱えて運んでもらったって言うところから、

セシリアと簪の視線がすごいんだよ......

不満で仕方がないって顔しながら見てくる。

どうしろと?

 

「確かに輝義凄いからな」

 

「私もびっくりなんてもんじゃないわよ。

ジェットコースターかと思ったわ」

 

「んん!一夏?彼女は誰だ?」

 

織斑と鈴が話していると箒が不満ですって顔で織斑に質問をした。

 

「ん?あぁそういや皆に紹介してなかったな。

セカンド幼馴染の鈴だ」

 

「鳳 鈴音よ、鈴でいいわ。よろしくね」

 

各々が自己紹介をした。

織斑にセカンド幼馴染と言われた時少し不満そうな顔をしたがすぐに元の顔に戻った。

 

「セカンド幼馴染?どういう事だ?」

 

「あー箒が転校した後に鈴が入れ違いで転入してきたんだよ。

中二の時に中国に帰っちまったけどな」

 

「ほう、そうだったのか。まぁよろしく頼む」

 

「えぇ、よろしくね」

 

そんな感じで、昼休みが過ぎて行った。

 

 

織斑達と別れてから。

セシリアと簪からの追求が始まった。

 

「さて、少しお話を聞かせて頂きたいのですが?」

 

「私も聞きたい」

 

「...............はい」

 

顔は笑ってるけど目が笑ってないんだよなぁ......

てか、なんで怒ってんの?

 

「鈴さんを抱えて走ったという事ですがどういう事でしょうか?」

 

「......事務室に行こうとしていた鈴を見つけたのですが、迷子になっていました。待ち合わせの時間に遅れそうだったから抱えて走りました」

 

怖くて思わず敬語になってしまった。

しかもおかしい敬語で。

 

「どのように抱えたのですか?」

 

「......こう、脇に抱えるようにです」

 

「お姫様抱っこしたわけではないと?」

 

「......はい」

 

こうして追求は終わっていった。

.........何故か二人をお姫様抱っこすることになったけど。

まぁ二人とも凄い嬉しそうだったからいいけど

 

 

 

 




IS学園の施設内容

アリーナ十個以上
ISの整備室
ISの装備開発製造室
校舎
馬鹿でかい保健室
体育館
食堂

購買(めっちゃでかい)
スーパー(品揃え半端ない)
モノレールの駅
片側三車線の橋
他多数


IS学園の施設内容を書かせていただきました。
いやー......クソ広いな




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18話目

あぁぁぁぁぁぁぁい!!!!

行くぜ宇宙の果てまで!(今回の投稿話とは全く関係ありません)

FGOのブラダマンテの宝具、お尻やば過ぎません?


本日は二組を交えたIS実習。

皆でアリーナに整列をして待っていると、

我らが織斑先生のご登場。しかもパイロットスーツで。

 

 

「「「「「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」」」」」

 

「ち、千冬様の生パイロットスーツよ!!!!」

 

「あぁ......もう私死んでもいいわ......」

 

「ヤバイわ!もうあれだけでご飯十杯はいけるわ!」

 

だから皆おかしいって。

織斑なんか、最前列だから直撃受けていい笑顔のまま気絶してるよ?

え?そもそもなんで織斑先生パイロットスーツ着てんの?

今日の朝練ないからなんでだろうと思っていた答えか?

これから俺、皆の前でボコボコにされんの?

 

「きゃぁぁぁぁぁぁ!!!???」

 

何処からともなくまた悲鳴が。

悲鳴?なんで?

 

山田先生でした。

えぇ......?あの人なんでこっちに落ちてきてんの......?

 

「はぁ......大河、山田先生を傷一つなく止めてみせろ」

 

体が条件反射をしてしまう。

朝練で調教されてるからね。逆らえないんだよね。

 

「......はい」

 

「わぁぁぁぁぁぁぁぁ!?どいてくださぁぁぁぁぁぁい!」

 

ゴフッ!?

衝撃と共に物凄い感触がぁぁぁぁぁ!?

な、なんなのだこれは......?

凄すぎる......

はっ!?止まらなければ!

壁と山田先生にサンドイッチされちゃう!

うぉぉぉぉ!?

......止まった?良かった。

 

「ひゃっ!?あ、あの大河くん?」

 

「......はい?」

 

手にはヤバイ爆弾が一つづ乗っかっている。

うぉぁぁぁぁ!?

現行犯じゃん!?言い逃れ出来ない!

周りからの視線が凄い。特にセシリアが凄い。もう殺されんじゃないかってぐらい睨まれてる......

違う、不可抗力なんだ!俺は悪くない!

......おい織斑。うらやましそうに見てんなよ。助けろよ!

そうじゃなくて!?

 

「えっとそのぉ......胸から手を離していただけると......あっ!別に嫌というわけじゃないんですよ!?ほら、皆の前ですし......二人きりなら......」

 

両手を離そうとしたら山田先生がなんか言い始めた。

山田先生......

こんな時にそんな事言ったら......

頭に何かを突き付けられた!

後ろからセシリアの声が!?

 

「ふふふふふふふ、二人きりなら何がいいんですか?何をするのでしょう?とぉぉぉぉっても気になりますわ?良ければお聞かせ願いたいのですが?」

 

ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ!?

まじで殺される五秒前!?略してMK5!!!

違う違う違う!?

そうじゃなくて!

すぐさま手を離してセシリアに土下座をした。

 

「申し訳ありませんでした。

この様な事が二度と起こらない様に致しますので、どうか、何卒お許しください」

 

自分でも驚くほどスラスラと言葉が出てきた。

しょうがないじゃん?だって今のセシリアめちゃくちゃ怖くてしょうがないんだよ!?

織斑先生にも負けてない!

 

「そもそも人前で女性の胸を揉むとは何事ですか?

紳士として最低ですわ」

 

「......はい、仰る通りです」

 

全く言い返せない......

 

「それになぜ山田先生なのですか!私ではダメなのですか!?」

 

待って話がずれてる。

山田先生を見てもまだトリップ中だし......

 

「オルコット」

 

「はい!」

 

織斑先生に呼ばれ返事をするセシリア。

良かった!これで逃げられる!

 

「そいつに関してはいくらでもやって構わん。

ただし、今は授業中だ。後にしろ」

 

「はい、分かりましたわ。

輝義さん?逃げないでくださいね?」

 

「......はい」

 

逃げ道は全て無くなった......

世界は残酷だ......

 

 

 

 

「さて、本日の授業だが。大河、前に出てこい」

 

「......はい」

 

呼ばれたので前に出る。

しかしなんだろうか?

何も聞いていないし......

あれ?前にもこんな事あったような......?

嫌な予感がする......

 

「最初に私対山田先生大河ペアの模擬戦を見てもらう」

 

嫌な予感的中。

皆の前でボコボコにされろという事ですね。分かります。

セシリアさん俺をそんな目で見ないで。

これは俺のせいじゃない。

 

「では早速始める。しっかり見ておく様に。

山田先生、いつまでやっている気ですか?戻ってきてください!」

 

「はいっ!?わ、私ったら何を......!?」

 

山田先生まだトリップしてたんですね......

 

 

 

さぁいよいよ始まる。

 

「お、大河君?よろしくお願いしますね?」

 

「......はい」

 

「では行きましょうか!

頑張って織斑先生を倒しましょう!」

 

今思うけど本当に年上?

 

 

 

事前の話し合いで俺が前衛を、山田先生が後衛を担当する事に。

俺は接近戦が得意だし(そもそも銃火器を持っていない)、山田先生は射撃が得意との事。

 

「よし、では行くぞ。そちらから始めて構わん」

 

しかしいつも通りいかない。

朝練と同様に隙はないし、何より今回初めて誰かとタッグを組むのだ。いつもと同じに動くと間違いなく大変な事になる。

どうしたものか......

すると山田先生からプライベートチャンネルで通信が。

 

「大河くん、今回は初めてなので難しい事は無しで行きましょう。取り敢えず私に織斑先生を近づけさせないでください。それと可能な限りでいいので織斑先生に私の方へ背中を向けさせてください」

 

「......分かりました」

 

「来ないのか?ならばこちらから行くぞ!」

 

来たっ!!!

 

狙いは俺だと思っていたら、素通りして山田先生の方へ。

くそっ最初から山田先生に向かわせちまった!

山田先生は逃げながら射撃を行うが、やられるのは時間の問題。なんとかして山田先生から離さなければ!

 

 

ドンッ!!!

 

瞬時加速で無理矢理間に割り込む。

 

「ほぅ、よく間に合ったな」

 

「......いえ、ギリギリですよ」

 

「どちらでもいいさ。割り込んできたんだ、お前から最初に片付けてやるとしよう」

 

織斑先生がそう言った瞬間に斬りかかってきた。

やっぱり一撃一撃が俺と比べて遥かに速いし重い!

 

ダダダダダダダ!!!!!!

 

後ろから銃声が鳴る。

山田先生が合間を見つけて援護射撃をしてくれた様だ。

しかもめちゃくちゃ精度がいい。

正直俺と織斑先生の距離を考えると誤射も仕方ないが、こちらには一発も当たらなかった。

山田先生、いつもはオドオドしたりホワホワしているが今は人が変わった様になっている。顔つきも全然違うし、纏っている雰囲気も全く違う。

驚いていると、

 

「何を驚いている?あぁ見えて山田先生は元日本代表候補生だぞ?腕は確かだ。」

 

あの山田先生が元日本代表候補生だった。

驚きだ。人は見かけによらないとはこの事か。

しかも織斑先生が認める腕とはなんとも心強い!

 

「大河くん、援護は任せてください!」

 

「......はい!」

 

俺が織斑先生と斬り合う。

その合間を縫って山田先生が援護射撃をする。

そんな感じで戦ったがやはり織斑先生には敵わなかった。

一瞬の隙を取られ、山田先生を撃破されてしまった。

それを見て動揺した俺もやはりやられてしまった。

 

模擬戦後、山田先生から、

 

「初めてタッグを組んだのにあそこまで動けるなんて凄いです!最初に指示した通り何度か織斑先生に背中を向けさせてくれましたし」

 

すっごい褒められた!

俺嬉しい!

 

 

 

その後の授業はスムーズに進んだ。

 

 

 

「輝義さん?先程の授業の件、しっかり説明して頂きますわ」

 

「私も聞きたい。話して」

 

「......はい」

 

 

 

「そんなに胸の大きい女性が好きなのですか!?私では不満だと!?」

 

昼休みに俺はセシリアと簪に物凄い追求を受けた。

途中から話変わってきてたけど。

そのことを指摘できるほど俺の心は強くなかった。

 

 

 

それ以外はとても平和だった。

 

 

 

 

 

 




山田先生いいよね!
あんな先生が良かった......


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19話目

FGOのイベント終わっちまっただぁ......
ブラダマンテ出せなかった......
次こそは新鯖をなんとしても引いてみせる......!


 

本日は特に何が起こるでもなく放課後を迎えた。

何かあるとすれば放課後の練習に織斑達が参加している事だろう。

今現在、俺と織斑は楯無さんと三人で模擬戦をやっている。

セシリアは射撃時にビームをグニャグニャ曲げる練習を。

名前なんて言うんだっけ?忘れた。

というかあのビーム曲げられるのか。驚きだ。

箒はISを借りれなかったので何故か付いてきた布仏と一緒に見学中。

鈴はクラス対抗トーナメントが終わるまでは別々に練習する事にした。どうやら織斑がどこまでやれるのか見てみたいらしい。楽しみは取って置くタイプか。

簪は整備室だがなんだかに篭って何やら作業中。

 

 

 

「ほらほら一夏君!?動きが遅いわ!もっと早く!相手の不意を突くようにしなきゃ格上どころか同格の相手にすら勝てないわよ!」

 

織斑は楯無さんにメッタメタにされて、

アリーナの地面に寝っ転がってぐったりしている。

俺はというと、

 

「オラァ!!!」

 

「なんか最近また強くなってきてない!?おねーさんそろそろ抜かれそうで怖いんだけど!」

 

「......何言ってるんですか。そんなに余裕で話しながら反撃してきているのに」

 

「あら、嘘じゃないわよ?元々身体能力とかは完全に私が負けているんだもの。優っているとすればISの操縦技術とか戦う能力ぐらいよ。それがここ最近どんどん差を縮めてきているんだもん。抜かれるのも本当に時間の問題よ?」

 

「......それでもまだ自分は楯無さんには一度も勝てていません。それに一度勝ったぐらいじゃ偶々で片付けられますから」

 

「相変わらずねー。ま、いいわ。そのうちよそのうち」

 

未だ楯無さんには勝てず。

悔しいなぁ......

 

 

 

 

「......セシリア、練習はどうだ?」

 

「......やはり曲がりませんわ」

 

相当悔しいのか手を握って俯いている。

 

「......大丈夫だ。セシリアならば出来るさ。

いつか必ずな」

 

「......はい!私頑張りますわ」

 

おぉう......

一言励ましただけでこんなに喜ぶのか......

やっぱりわんわんだよ。尻尾と耳があるように見えるのは俺だけ?

 

 

 

 

今日は学校も休みだし朝練も放課後の練習もない。

特にやることもないので部屋でゴロゴロしていると、誰かが扉を叩いた。

 

「更識、部屋替えだ。今すぐ荷物を纏めろ」

 

織斑先生だった。

今日は休みだからか、ジャージ姿ですね。

しかし部屋替えか......

かなり急だな。

簪も、

 

「えっ?でもまだ先になるはずじゃ?」

 

確かにもう少し先になると聞いていたので、驚きだ。

 

「男女を同じ部屋に入れて置くのはまずいとの事でな。

急遽決定した」

 

そりゃそうだよな。

慣れたけどこの状況、普通じゃねぇもんな。

 

「......そうですか」

 

「すまんな」

 

簪は悲しそうにしている。

 

「......簪」

 

「何?」

 

「......いつでも部屋に来ていいぞ。

だからあまり悲しそうにするな」

 

簪は一瞬ポカンとした表情になったが、

すぐに嬉しそうに、返事をした。

 

「うん!」

 

よし、これで大丈夫。

......あ、そうだ、織斑先生に一つ頼みたい事があったんだ。

 

「......織斑先生、一ついいですか?」

 

「ん?なんだ、言ってみろ」

 

「......サイズの大きいベッドにしてもらう事は出来ないでしょうか?」

 

「どういう事だ?」

 

「......それが、横になると足が飛び出てしまいまして」

 

実際に寝っ転がって見せてみる。

 

「......確かに出ているな」

 

「......はい。ですからどうにかならないかと思いまして」

 

「よし、分かった。明日には特大サイズが届くようにしよう」

 

「......ありがとうございます」

 

やったぜ!

これで足元スースーから抜け出せる!

しかし別に自分がちゃんとベッドに収まれれば、いいからそこまで大きくなくても......

しかし大きい分には特に困らなさそうだからまぁいいか。

 

 

 

簪も荷物を纏め終わったからな。

見送るとしよう。

つっても寮内の引越しだからいつでも会えるんだけど。

 

 

 

 

翌日。

織斑先生は約束通りに特大サイズのベッドを注文してくれたらしく、しっかり届いた。

 

 

しっかし......

デカすぎませんかね?

部屋の端から端まで占めてるんですけど。

縦も大きければ横も大きくなるのは必然な訳で。

部屋の半分を占める結果になってしまった。

 

 

 





いやぁ、投稿でけた。
明日は出来ないかもしれないので。
そこんところよろしくお願いします。


セシリアのビーム曲げるやつなんで主人公が忘れたかというと、作者が忘れたから。
申し訳ねぇ......
次回あたり思い出したら書きます。


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20話目


眠い......



 

 

あと三日程でクラス対抗トーナメントが始まる。

それに備えて各自が情報収集をしたりと色々と織斑をバックアップしている。

俺はというとひたすら織斑を鍛える係ですが何か?

毎日朝と放課後の時間は織斑と楽しくドンパチやっております。

織斑先生?トーナメントの準備やら何やらで忙しいから付き合えないし楯無さんも同様の理由でいない。

 

という事で暇してた俺が鍛えているというわけだ。

織斑自身が頼みこんできたっていうのもあるんだけど。

 

 

 

「輝義との訓練が更識会長以上に辛い件について」

 

唐突に織斑が愚痴り始めた。

しかも本人いる前で。

 

「なんだ?いきなり」

 

「いやもうほんとまじ辛い。

何が辛いって加減なしで吹っ飛ばされるし殴られるし蹴られるしでやられるもんだからマジ辛い......」

 

あぁ......

すまない、本当にすまない......

 

「......すまない、加減は得意ではなくてな」

 

「確かにあれはやり過ぎだと思うぞ?」

 

箒からも言われた。

まじかぁ......やり過ぎかぁ......

 

「......しかしな、相手が加減してくれるほど、優しくは無いと思うが。よほど相手が油断していれば話は変わってくるだろうがな」

 

「そうなんだよなぁ......

理由があるから辞めらんないし......」

 

「......織斑、まずはというかトーナメントが終わったら基礎体力をつけた方がいいぞ」

 

「そうかぁ......

そん時は輝義に頼むわ」

 

「......あぁ任せろ」

 

 

 

世間話をしながら部屋に戻ると、

シャワーを浴びて着替えてから食堂へ。

途中セシリアと簪に布仏が合流した。

飯を食べ終わったので部屋に戻ってゴロゴロしようかと思っていたらセシリアと簪に布仏が訪ねてきた。

 

「輝義さん?いらっしゃいますか?」

 

「......いるぞ。何かあったのか?」

 

「いえ、なんと言いますか?

遊びに来ました」

 

「私とかんちゃんもいるよ〜」

 

驚いた。わざわざ俺の部屋まで来るとは......

ゴロゴロするだけだから構わんけど

 

「......あぁ、入ってくれ。狭いがな」

 

「お邪魔しますわ!」

 

「わ〜、てるてるのお部屋だ〜。

お〜、ベッドすっごい大っきいね〜」

 

おい待て。

何故ベッドに飛び乗る。

いやまぁ構わないけどさ、匂いとか嫌じゃないのかね?

 

「本当ですわ......でも何故ですか?」

 

「......以前のベッドがな、サイズが小さくて足がはみ出ていたんだ。寝返り打つと落ちるしな」

 

「そういえば言ってたね」

 

「......あぁ。だから変えてもらった」

 

 

そんな世間話をしながら消灯時間になった。

三人とも名残惜しそうにしていたが、しょうがない。

誰だって織斑先生には怒られたくないもんね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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21話目

ようやっと代表トーナメントを書ける......
長かったような短かったような......
気が付いたらお気に入りが470超えてた......ガクブル(驚愕)

毎度読んでくださりありがとうございます。
今後ともよろしくお願いします。


 

今日はいよいよクラス代表トーナメントが始まる。

アリーナのボルテージは最高潮だ。

それもしょうがないだろう。

ただでさえ楽しい事が大好きな女子高生しかいないのだ。

しかも出場者の中には世界でたった二人しかいない男性操縦者しかもイケメンだ。これでテンションが上がらない訳がないだろう。

俺も自分が出る訳ではないが少なからず楽しみだしテンションも上がっている。

顔には出さないようにしているが、何故かセシリアと簪、布仏にはバレている......

ちなみに箒は織斑のとこに行っているためここにはいない。

 

「輝義さんも楽しみにしていらしたのでしょう?顔に出てますわ」

 

えぇ......

ポーカーフェイスには自信があるんだけど......

まだまだって事か?

 

「うんすごい楽しそうな顔してるよ?」

 

「ほんとだ〜」

 

そんなに?

これじゃトランプで負けちゃうじゃん......

そんなアホな事を考えていると試合開始時刻になった。

箒も戻ってきたし、織斑がどこまでやれるか見せてもらおうか。

今までの特訓を思い出せよ。

 

「いよいよですわね」

 

「......あぁ」

 

「一夏は、勝てるだろうか?」

 

「......分からない。だが今までかなり厳しくやってきたんだ。確約は出来ないが、あいつならやれるさ」

 

「そうか。ありがとう」

 

「......いいや」

 

さぁ始まるぞ。

 

 

 

 

二人が戦い始めてから数分ほど。

さっきはああ言ったがやはりというか織斑は押されている。

練度差もだが、なによりもあの衝撃砲とかいうやつのせいだろう。

織斑は見えていないのだろう、何度も当たっている。

正直俺は分かるのだが、今はそれを伝える事も出来ないし手段もない。皆と織斑の事を見守る事しか出来ない。

 

 

 

 

ドォォォォォン!!!!!!

 

 

 

 

いきなりアリーナのシールドをぶち破られた。

なんだ!?

 

ヴーヴーヴーヴーヴー!!!

 

警報が鳴り響く。

防護隔壁とアリーナのフィールド側の防御シャッターが閉まる。薄暗い赤いような照明があるのみ。

周りの生徒もパニックになって統率が取れない。

 

「なんなのよ!?」

 

「やだぁ!まだ死にたくないよぉ!!!」

 

なんとか落ち着かせようとセシリア達が声を張り上げるが全く効果がない。

それもそうだろう。

出口に繋がっている部分が防護隔壁によって閉じられているのだから、脱出も出来ないとなればパニックになるのも仕方がない。

 

 

ISの通信から織斑先生が。

 

「すまない大河!なんらかのジャミングで通信が取れなかった!そちらは大丈夫か!?」

 

「......正直大丈夫ではないです。皆パニックになっていて収集がつきません」

 

「クソッ!すまん私がなんとか出来る様な状況ではない!そちらでなんとか出来るか!?」

 

「......分かりました。やります」

 

「頼む!」

 

そういうと、織斑先生は通信を切った。

 

「輝義さん!織斑先生はなんと!?」

 

「......織斑達の方がかなり厳しいらしい。こっちは俺達だけでなんとかしなきゃならない」

 

「しょうがないですわね!どうにかするしかありませんわね!」

 

さて、まずここから脱出するにあたって二つ問題がある。

一つは生徒全員の落ち着きを取り戻す事。

もう一つはこの防御隔壁だ。これを破らなければ脱出もクソもない。

 

まずやるべきは皆の落ち着きを取り戻す事。

これは簡単だ。俺が大声を出せばいいだけだから。

はい、息を大きく吸ってー?

さんはい!

 

 

「「「「「「「静まれぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」」」」」」

 

ダン○ルドア風になっちまった......

ま、まぁいい。皆が静かになってこちらを見ている。

何故か横にいるセシリアや箒、布仏が耳を塞いでいるが、さした問題ではないだろう。

 

 

「いいか!まずは落ち着け!」

 

これでさっきよりはマシなはずだ。

 

「隔壁から全員離れろ!セシリア後は頼む」

 

「はい!?ここまでやってですか!?」

 

「......セシリア、お前にしか任せられない。任せてもいいか?」

 

「は、はい!この私にお任せくださいな!何があっても務めてみせますわ!」

 

なんかすっごい嬉しそうに了承したんだけど......

ま、まぁやる気を出してくれるのはいい事だけどさ。

簪と布仏からの視線がハンパねぇ......

なんもしてないじゃん......

あれか?丸投げしたのに怒ってんのか?

あとでかまってやらねば。

 

 

さて隔壁前まで来たはいいがどう開けるか......

殴る?

俺の手が死ぬから却下。

蹴る?

俺の足が死ぬから却下。

あ、織斑先生ならこれぶった斬れんじゃね?

俺にも出来るかな?

......やってみるか

ISを展開する。

 

 

「......全員もっと離れてくれ」

 

「て、輝義さん?何をなさるおつもりですか?」

 

「......ちょっとこれをぶった斬る」

 

「は、はぁ!?ちょ何を仰っておりますの!?

この隔壁は少なくとも特殊な金属で作られているものですよ!?」

 

「......なんか、織斑先生なら出来そうだからやってみる」

 

出来なかったら殺されそうだからなんとしても成功しなければ!

 

さて、やるか。

 

展開した葵を構える。

 

「ふっ!!!!」

 

......よし成功だな。

正直無理かと思っていたから良かった。

 

「......よし全員早く行け。セシリア皆を頼む」

 

「どちらに行かれるのですか!?」

 

「......次に行く。任せたぞ」

 

「......はい!お任せください!」

 

 

さぁて、お仕事の時間だ。

 

 

 

 




今回はここまで。
今日中にもう1話投稿したいと思います。


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22話目

アァァァダアァァィ!!!
続きぃぁあやぁぁぁぁぁぁ!!!!

すみません。
ちゃんとやります。
許してください。



アリーナの隔壁内から出られなくなった生徒を助け出してから、織斑先生に通信を取った。

 

「......織斑先生、そちらの状況は?」

 

「大河か!?状況だが最悪だ!五対二の状況の中なんとか一機仕留めたはいいが、正直もう持ちそうにない!織斑も鳳もSEはほとんどない!」

 

あの織斑先生の声が焦っているな。

かなりまずい状況らしい。

 

「......分かりました。すぐそちらに向かいます。」

 

「今行ってもやられるだけだ!行くな!」

 

織斑達と合流しようとしたら、

全力で止められた。そりゃそうだろう。

俺が行っても二人はまともに戦えないのだから実質一対四だからだ。

しかしそれが向かわない理由にはならない。

 

「......それは無理ですね。今二人は戦っている。それに二人ともSEが無いのでしょう?撤退するにも援護が必要なはずです」

 

「それはそうだが!......クソッ!すまない......向かってくれるか?」

 

織斑先生は悔しそうに言った。

本当ならば自分が向かいたい筈なのだ。

しかし織斑先生にも仕事があるし、行けないのだろう。

 

「......了解しました。これから向かいます。それと、謝らないでください。大丈夫ですから」

 

「......ありがとう」

 

感謝された。

感謝される事でもないんだがな。

友人を助けるのは当たり前だ。

よし、助太刀と行きますかね!

 

 

 

 

フィールドに入るとそこには織斑を庇いながら戦う鈴の姿があった。自身も辛いだろうに必死になって戦っている。

 

「......鈴!」

 

「輝義!?あんた何しに来たのよ!」

 

「......二人を助けに来た」

 

「あんたバカなんじゃないの!?死に来たの間違いよ!」

 

怒鳴られてしまった......

 

「でも、ありがとね!」

 

また、感謝された。

 

「......構わんさ。友人を助けるのに理由もクソもない」

 

とりあえずは今の状況を詳しく聞かなければ。

 

「......今の状況は?見た感じ最悪だが」

 

「最悪もいいところよ!一夏もさっきあいつらの攻撃が直撃して、動けなくなっちゃったの!近接型を一機倒したから後は後ろにいる射撃支援と近接型が二機づつよ!ただ私もSEがもう残り三十もないわ!」

 

「......分かった。鈴、お前は織斑を連れて撤退しろ」

 

撤退しろって言ったら無茶苦茶キレられた。

 

「はぁ!?あんた本当に馬鹿なんじゃないの!?一人で四機同時に相手するとか意味わかって言ってんでしょうね!?」

 

「......分かってる。だから早く戻ってSEを回復して武装を整えて戻ってこい。それまで耐えればいいだけの話だ」

 

「だけどっ!.........あぁもう!分かったわよ!戻ってくるまで死ぬんじゃないわよ!」

 

ようやく分かってくれたか。

こうすれば流れ弾にも気を使わなくて済む。

 

「......あぁ」

 

「じゃぁ行くからね!」

 

「......あぁ。それと......よく耐えてくれた。後は任せろ」

 

......よし、二人は行ったな。

今まで何故攻撃を仕掛けて来なかったのかは分からないが、まぁ好都合だ。

 

「......織斑先生」

 

「どうした!?」

 

「......織斑と鈴を撤退させました」

 

「はぁ!?あぁいやそれはそうか。で?どうするんだ?」

 

「......先生方や専用機持ちの準備が整うまでここで食い止めます」

 

「しかし最低二十分はかかるぞ!?」

 

あぁクソ今更後悔し始めたぜ......

四対一で二十分か......

短いのか長いのか......

まぁやる事は変わらないがな。

 

「......やる事は変わりませんよ」

 

「分かった。こちらもバックアップをする。存分にやれ。ただし絶対に無事に帰って来い。分かったな?返事!」

 

「はい!!!!」

 

「いくつか分かった情報を伝える」

 

情報は大事だからな。

なんでもいい教えて下さい。

 

「あいつらは無人機だ。誰も乗っていない」

 

「......それは本当ですか?」

 

まさか無人機だとは誰も思わない。

たしかによく見ると、何というか、人が乗り込めるような機体じゃない。

 

「......分かりました。それは遠慮なくやってしまっていいと言う事ですね?」

 

「先程も言っただろう?存分にやれとな」

 

 

 

 

織斑先生との会話が終わった途端に奴ら仕掛けて来やがった!

クソッ!ビーム兵器かよ!セシリアに詳しく話聞いときゃ良かった!今更遅いけど!

 

「オラァ!!!」

 

後ろの二機が撃ってくる弾幕を回避しながら、切り捨てながら近接型の二機を相手する。

 

この状況誰が見てもやべぇだろ!

あぁクソ!後ろの二機がものすごく邪魔なんだよ!

あいつらが邪魔するから近接型の二機を仕留められない。

しかも一機ごとの強さが楯無さん程ではないけどかなり強い。

このままじゃそのうちやられちまう。

 

 

持っている武器もいつまで持つかわからん。

拡張領域にまだストックが何本かと、大型のナイフが何本か入ってるだけだからな。

言わずもがな、射撃武器は一つもありません。くっそぅやっぱり欲しいなぁ射撃武器。

後で要求しよ。

 

 

とりあえず後ろの二機を片付ける事に。

瞬時加速を使い、接近する。

 

「はぁぁぁ!!!」

 

!?

あぶねぇ......

ショットガンまで持っていやがるのか。

しかし、織斑先生との連絡が取れない。

ジャミングか何かか?まぁ無い物ねだりをしてもしょうがない。今あるもので何とかするしかない。

 

「ガァ!?」

 

後ろから一撃食らった。

どうやらさっき置いてきた二機が追い付いたらしい。

しょうがない、こうなったら同時に相手するしかねぇな。

四機とも巻き込んで乱戦にしてやる。

 

 

ヴァァァァァァ!!!

 

あいつら実弾兵器もかよ!

クソッこれじゃ接近すらままならない!

 

ヴァァァァァァ!!!

 

再びガトリングの弾が降り注ぐ。

その合間を縫って自分を仕留めんとする刃が振るわれる。

避けて、避けて避けて避けて避けて避けて避けて避けて避けて避け続ける。

 

隙を見つけては攻撃を仕掛け回避。

隙を見つけては攻撃を仕掛け回避。

これを繰り返し行う。

そしてようやく射撃型を一機仕留める事に成功する。

 

しかしまだ喜んでいられる訳じゃない。

まだ三機残っているし、後ろの奴の片割れが近接を仕掛けて来たからだ。

まさか近接もこなせるとは、どんだけ汎用性高いんだよ!あと拡張領域広すぎじゃね!?

 

ガギン!!ギャリッ!!

 

斬り合いが続く。

ひたすら刀を振り続ける。

一瞬でも気を抜けばやられる。

そんな状況が続く。

 

そこへ聞こえるはずのない声が響いた。

 

「輝義ッ!!!頑張れ!!!」

 

箒!?

あいつなんで実況室になんかいるんだ!?

避難したはずだろ!?

 

箒の声が響いた時、射撃型が箒の方へ砲口を向けた。

 

おい、まさかそれを撃つ気じゃないだろうな?

簡単に人が死ぬ威力を持ってんだぞ?

 

奴が撃つのを阻止しようとするが間に合わない。

瞬時加速で無理矢理、身体をねじ込む。

 

ドオォォォォォォォォォォォォン!!!!!!

 

がぁぁぁぁ!!!!????

クッソいてぇ......

やべぇ、いし、き、が......

 

「ほ......き......にげ...ろ」

 

俺は振り返って箒にそう言うとそこで意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

俺は白い空間にいた。

とてもフワフワしている。

まさか死んだのかと思ったがまだ死んでないらしい。

指先が少しだけ動かせた。

 

 

それと同時に嫌な予感がした。

今起きなければ、今立ち上がらなければ絶対に後で後悔すると思った。

 

 

動け動け動け動け動け動けぇぇぇぇぇ!!!!!!

今まで何のために身体を鍛えてきた!?

何のために織斑先生に、楯無さんに教えを請いに行ってた!?

立てよ!!!

歩くために、走るためにこの足はついてんだろ!!!???

何かを掴むためにこの腕と手はついてんだろ!!!???

身体を支えるためにくっついてんだろ!!!???

物を持つためにくっついてんだろ!!!???

仕事しやがれ!!!!!!

 

 

「お......おぉ......おぉォォォォォォォォ!!!!!!」

 

あぁクソ、フラフラする。

血を流し過ぎたせいか視界が良くない。

手も足も震えてる。

だが!!!

そんなもんは!!!

戦いを!!!

やめる!!!

理由には!!!

ならない!!!

 

 

再び箒に砲口を向けているクソ野郎を仕留めに行く。

 

ドンッ!!!

 

瞬時加速で一気に距離を詰める。

 

 

がぁぁぁぁ!!??

クソッタレ!

いくら搭乗者保護システムがあるとはいえここまでやられると動くたびに全身に激痛が走る。

でもそんな事よりもあいつらを仕留める事が先!!!

 

「オ"ラ"ァ"!!!!!!」

 

砲口を向けていた奴の腕をぶった斬る!!!

返す刀で胴体をぶった斬る!!!

首をぶった斬る!!!

斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る!!!!!!!!!

 

 

 

「ガッ!?」

 

こいつを斬る事に夢中になり過ぎて背後から斬られた。

 

 

「いってぇじゃねぇかこのクソ野郎!!!!」

 

二機と斬り合う。

十、二十、三十、四十、五十。

どれほど斬り合ったか分からない。

自分も奴らも傷だらけSEは箒を庇った時に尽きた。

だが何があっても、戦うのをやめない。

戦うのを止めればまた箒に織斑に鈴に皆にまたこいつらは武器を向ける。

 

 

ならば今ここで俺が!

こいつらを!

ぶっ壊す!

 

「オラァ!!!俺が相手だ!!!余所見してるとぶった斬るぞ!!!」

 

もうどれほど斬り合ったか既に忘れた。

百五十までは数えたがそれから先は数えていない。

いつ俺が倒れてもおかしくはない。

さっきから血が止まらない。

だんだん手足の感覚も無くなってきた。

刀も意地で持っているようなもの。

足も無理矢理立たせている。

 

 

しかし俺が倒れる事は無かった。

俺の一撃を受けた一機の剣をたたき折ったのだ。

今がチャンスだ。

 

「おおおおぉぉぉぉぉぉォォォォォォォォ!!!!!!!!!」

 

ひたすら斬る。

もっと速く!!!

もっと鋭く!!!

もっと重く!!!

一撃一撃に力を込めて!!!

 

 

いつの間にか奴はズタボロになっていた。

後ろから斬りかかって来た奴に振り向いた瞬間に、左肩から斜めに斬られた。

 

「だからいてぇつってんだろ!!!」

 

再び斬り合いが始まった。

幾重にも及ぶ斬り合いは、唐突に終わりを告げた。

奴が吹き飛んだのだ。

 

「「輝義!!!」」

 

「輝義くん!!!」

 

「輝義さん!!!」

 

織斑に鈴、セシリアに楯無さんも来てくれた。

あぁ、なんとも心強いことか!

 

「輝義さん!大丈夫ですか!?」

 

「これを......見て..だ...いじょ...ぶだと...思うか?」

 

途切れ途切れなんとか答える。

 

「全然大丈夫そうではありませんわね!!!」

 

「セシリアちゃん!輝義くんの容態は!?」

 

「全身に深い傷を負っていて出血が酷過ぎますわ!」

 

「急いで医務室に運ぶわよ!速くしないとかなりまずいわ!」

 

「輝義!!頑張れ!」

 

皆の声が聞こえる。

しかし段々と全身に力が入らなくなってきた。

意識もどんどん遠のいていく。

 

「輝義!?輝義!しっかりしろ!」

 

「輝義さん!気をしっかり持って下さい!」

 

「まずいわ!医務室!!!急いで手術と輸血の準備をして!!!」

 

皆の声が焦って行くのが分かる。

 

「輝義!輝義!て...よし!て......し......」

 

ここで俺はまた意識を失った。

 

 

 

 

 

ーーーー side 箒 ーーーー

 

 

私は輝義が一人で戦っていると聞いて居ても立っても居られなくなった。

実況室に入るとやはりというか誰も居なかった。

 

マイクを掴んで私は叫んだ。

 

「輝義!!!頑張れ!!!」

 

私はただ応援したかった。

その行動が輝義を更に追い詰める事になるとは知らずに。

 

私が声を上げた瞬間に敵の一機がこちらに砲口を向けてきた。

 

「ひっ!?」

 

本当なら今すぐにここから逃げなければならない事は分かっていた。だが、怖くて足が動かなかった。

 

砲口が光った時目を瞑った。

死んだと思った。

だけどいつまでたってもその時は来なかった。

恐る恐る目を開けると、そこには輝義がいた。

私を庇って攻撃を受けたのだ。

 

血が流れて止まらない。

輝義はこちらを向くと、

箒、逃げろ、と言った。

 

言った後は落ちていってしまった。

 

「輝義!!!」

 

私は輝義の名前を叫んだが反応はなかった。

 

 

また敵がこちらに砲口を向けていた。

その時、輝義が斬り掛かっていった。

 

私はその瞬間その場から逃げ出した。

 

 

ーーーー side out ーーーー

 

 

 

 




なんか今回すごい頑張った気がする!
次回どうしよ......?


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23話目

何回か日常挟みます。
今回は日常なのかなぁ......?
違う気がする。
けどまぁいいや。


ーーーー side 一夏 ーーーー

 

 

俺達は今輝義を運んでいた。

 

輝義は俺と鈴の試合中に襲撃してきた無人機を四機同時に相手取ったのだ。

 

俺は気を失って気がついたら格納庫にいた。

そこで話を聞いた時、俺は自分の無力さに力を失った。

そしてすぐに憤りを覚えた。

俺が弱いから!

俺に力がないから!

皆を守る為に助ける為に戦った輝義だけが結果的に怪我をした!

 

 

 

輝義は全身に、それこそ頭から足の指先まで全身血だらけの傷だらけだった。

傷も大小様々だった。

斬痕、刺痕、火傷に弾痕。

傷のない所を探すのに苦労するぐらいにボロボロになっていた。

特に胸から斜めに斬られた斬痕と、背中にもある大きな斬痕が一番に目に付いた。

 

更識会長曰くISも搭乗者保護システムが機能しているらしいのだが、傷が深過ぎて無いよりはマシぐらいにしか役に立っていないそうだ。

 

 

血を流し過ぎたのだろう。

さっきまで反応していたのについさっき意識を失った。

声を掛けても反応しないし段々冷たくなってきた。

セシリアもそんな輝義を見て段々と冷静さを欠き始めた。

鈴は走りながら止血等の手当てを試みているが、

全く血が止まる気配はない。

 

「輝義さん!?輝義さん!」

 

「不味いわよ!このままじゃ間違いなく輝義が死んじゃうわ!」

 

「会長!輝義が意識を失いました!」

 

更識会長に意識を失った事を伝えると、医務室に緊急で連絡を入れた。

今すぐに手術と輸血の準備をして欲しい、と。

 

今現在学園内にある車両は混乱のせいで逃げ惑っている生徒が邪魔になって来れないらしい。

だから自分達で運んだ方が早かった。

 

車両も向かっているそうだがやはり間に合わないらしい。

途中何度も他の生徒とすれ違ったが一様に輝義を見て、

 

「えっ?」

 

と声を上げて放心するばかり。

 

俺達が通った後には血が道を作っていた。

 

 

やっとの思いで医務室に着いた。

医務室の前では看護婦さんが待機していて中に案内された。

医務室に常駐している先生や看護婦の人達も輝義を見て顔付きと雰囲気がガラッと変わった。

 

「これは酷い......輸血をすぐに行って!早く!」

 

どうやらここまで酷いとは思っていなかったらしい。

医務室に着くと、輝義はもっと不味い状態になっていた。

まず、圧倒的に血液が足りていない。

心臓の動きも弱くなってきているとの事。

なんとか処置をしてはいるが、かなり危険な状態だそうだ。

 

 

 

俺達は医務室の外で待っていた。

セシリアはずっと黙ったままだし鈴も喋らない。

いつも冗談を言ってどんな状況でも笑っている会長ですら、黙って唇を噛み締めていた。手も握って血が流れている。

 

 

「一夏!大河は!?」

 

しばらくすると千冬姉が来た。

 

千冬姉に輝義の状態を伝えると、

 

「クソックソックソックソックソッ!!!!!!

私がこんなでなければ!!!」

 

悔しいと言わんばかりに壁を殴りつけた。

 

何分かして落ち着いたのかこちらを見て、

 

「お前達、とりあえず風呂に入ってこい。

全身血だらけで臭いも酷いからな。

それと女子三人少しは落ち着け。

私が言えた事ではないがな」

 

確かに血まみれだから風呂に行った方がいいのだろう。

だが俺は、俺達はここから離れたくなかった。

特にセシリアは、

 

「これが......この状況で落ち着いていられる訳がないでしょう!?」

 

泣きながらそう怒鳴った。

 

「セシリアちゃん、いいから落ち着いて」

 

会長がなだめるが、

 

「会長は!輝義さんの事が心配ではないのですか!?」

 

セシリアがそう言い放ったと同時に、

 

パァン!!!

 

「そんなわけないでしょ!?心配で仕方ないわよ!だけど今ここでどうこうしたって私達には無事を祈るしか出来ないのよ!」

 

会長がそう言い返した。

セシリアは、

 

「.........申し訳ございません。感情的になりましたわ」

 

「......いいえ、大丈夫よ。私も叩いてごめんね?」

 

よかった。

とりあえずは和解したようだ。

セシリアはこちらを向いて、

 

「さ、一夏さん?鈴さん?お風呂に行きましょう?

輝義さんが目を覚ました時にこんな格好では笑われてしまいますわ」

 

「そうね!あいつなら大丈夫よ!ほら一夏!行くわよ」

 

「あぁ!じゃぁ千冬姉、任せた」

 

「織斑先生だ。あぁ任せろ」

 

そうして俺達は医務室から離れた。

 

 

 

風呂に入って、飯を食べて医務室の前に戻ると簪とのほほんさんと山田先生がいた。

皆で待っていると、医務室の先生が出てきた。

 

「大河は!?どうなりましたか!?」

 

千冬姉が聞く。

先生は、

 

「なんとか一命は取り留めました。ここに来るまでの処置が適切だったおかげです。何箇所か止血の跡があったのであれが無ければ今頃は出血性ショックで死んでいましたよ。

......ですが、出血の量があまりにも多過ぎたため、かなり危ない状態です。輸血はしていますが、やはり......。

それに意識もいつ戻るか分かりません。

危険な状態が続くかと。いつ何が起こるかは分かりません。ご家族の方に連絡をお願いします」

 

そう言うと先生は行ってしまった。

 

 

 

千冬姉は輝義の家族に連絡をしに行った。

山田先生はこちらに残るそうだ。

 

 

 

 

セシリアと簪が倒れた。

 

幸い医務室だったからすぐに横になることができた。

 

頑張れよ輝義。

待ってるからな。

 

 

 

ーーーー side out ーーーー

 

 

 

 




全然日常じゃねぇな。
クッソシリアスじゃねぇか。

申し訳ございません。

感想と評価の方お願いします。


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24話目

シリアス続きます。


 

ーーーー side セシリア ーーーー

 

 

輝義さんを医務室に運び込んでから、翌日。

私達は今の輝義さんの容体の説明を受けるために織斑先生と山田先生と一緒に医務室に向かっていました。

途中織斑先生が口を開きました。

 

「大河だが、昨日から二回ほど危険な状態に陥ったらしい。お前達、あまりこんな事は言いたくないが、言わなければならない」

 

一拍置いて息を吸って仰いました。

 

「覚悟だけはしておけよ」

 

あぁ......

そんな事聞きたくありませんでしたわ......

これを聞いたら箒さんがもっと塞ぎ込んで自分の事を責めてしまいますわ......

 

 

神様どうか輝義さんの事をお救いください......

 

 

 

 

医務室に着くと、ベッドに寝かされている輝義さんの姿がありました。全身にコードがつけられていてとても痛々しい様子でした。

 

 

 

 

 

先生から話を聞くために別室に移動しました。

 

「さて、では大河くんの容体と、これからの方針について話させていただきます」

 

そこで一旦話を切ると、一拍置いて再び話し始めました。

 

「大河くんの容体ですが、やはりかなり危ない状態です。全く血が足りていない状態なので輸血を続けていますが、改善の見込みがありません。恐らくどこかの内臓に損傷があるかと思われます」

 

「詳しくは分からないんですか?」

 

山田先生が聞くと、

先生は沈痛な面持ちで答えました。

 

「まだ容体が不安定で動かしてしまうと何が起こるか分からないんです。下手をすると......」

 

「......そうですか」

 

「外傷もかなり酷いです。背中と前面部に肩から斜めにある大きな裂傷が一番酷いです。他にも大小様々な傷があり感染症の危険もあります。なので無菌室の役割も持つICUに収容しています」

 

「ある程度容体が落ち着きを見せたら精密検査を行い、体にまだ残っている銃弾の除去手術を行う予定です。場合によっては完治するまで銃弾を残しておき、治ってから取り出すという事も。恐らく後者になるかと思われます」

 

「それまでは医療用ポッドに入って頂きます。そうすればまだ現状よりは遥かにマシになるでしょう」

 

それから色々と話を聞き終わってから輝義さんの病室の窓のそばへ。

無菌室なので私達は立ち入ることが許されず、こうして窓越しに見ることしか叶いません。

 

輝義さん、どうか頑張ってくださいませ。

いつまでも私達は待っておりますから。

また元気な姿を見せてくれる事を願っております。

クラスの皆さんも心配しておりますわ。

 

 

ーーーー side out ーーーー

 





シリアス長い......


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25話目



シリアス続きます。
どんぐらいかは分かりません。


 

 

夢を見ていた。

なんの夢かは分からない。

だけどいくつか分かる事がある。

それは皆俺を見て泣いている。

親父もお袋もじいちゃんもばあちゃんも。

織斑にセシリア、箒に鈴、簪、布仏、楯無さんも。

クラスの皆も泣いていた。

山田先生なんかは号泣している。

あの織斑先生ですら泣いていた。

 

何故だろう?

何故皆俺を見て泣いているんだ?

泣き止んでくれ。

俺が何かしたか?

何かしたのなら謝るし出来る事ならなんでもする。

だから皆、泣き止んでくれ。

 

 

 

 

ーーーー side 鈴 ーーーー

 

 

輝義が目を覚まさずに三日が過ぎた。

まだ危ない状態らしい。

 

毎日授業が終わってから数人で輝義の所へ向かうが、やはり直接会う事は出来なかった。

いつも窓越しからしか見れないし話しかけられない。

これがどれほどもどかしい事か。

 

私達は今すぐにでも輝義の手を握って、声を掛けて励ましてあげたい。だけどそれは出来ない。

力のない自分がとても嫌になる。

 

 

 

四日が過ぎた。

未だに良くならない。

今日も授業中に一度危険な状態なったらしい。

看護婦さんが一夏達の教室に千冬さんを呼びに来たらしい。

 

ここ最近、山田先生も千冬さんもどんどん疲れていっているのが分かる。くまもひどいし、顔もやつれてきている。

会長は元気に振舞ってはいるが、辛そうな顔をしている。

 

輝義、皆あんたのこと待ってんのよ。早く戻って来なさい。

 

 

ーーーー side out ーーーー

 

 

ーーーー side 箒 ーーーー

 

 

私のせいで輝義は今生死の境を彷徨っている。

もう輝義が起きないまま五日が過ぎた。

今病室、と言っても窓越しだが私と一夏、それに千冬さんがいる。

皆輝義が心配で早く元気になってほしくて、こうやって毎日誰かここにいる。

あれほど輝義に対して怯えていたクラスメイトや同学年の生徒もだった。

理由は輝義が皆を守るために倒れたことを全校集会で更識会長が話したからだ。

それ以降輝義に怯えるものは誰一人としていなくなった。

 

 

 

私のせいで輝義はこうなったのだ。

なのに皆違うという。

何故か分からない。

皆は許してくれたが、自分が自分を許せなかった。

 

 

ーーーー side out ーーーー

 

 

 

ーーーー side 千冬 ーーーー

 

 

大河が目を覚まさないまま一週間が過ぎた。

今日は容体がやっと良くなって来たので医療用ポッドに移るそうだ。それを私達全員で見届けている。

 

 

あの時私があの場にいたら?

無理矢理でも説得して撤退させていたら?

多くのたらればを考えた。

だがもうそれは実行するにはあまりにも遅過ぎた。

 

 

学園外の病院の多くが大河を受け入れたい、治療をさせてくれと申し出て来た。

だが、容体のせいで動かせないのはもちろんだが、大河の身柄の安全を考慮すると学園外に出す訳には行かなかった。

どこの国もどの組織も大河を狙っている。

そんな奴らにとって今は願ってもいない状況なのだ。

私がつきっきりになれればありえたかもしれない。

だが教師としての仕事もあるためそれは出来なかった。

 

 

 

医療用ポッドに入って三日が過ぎた。

回復に向かっているらしい。それを伝えると全員声をあげて喜んだ。私も聞いた時、思わず、

 

「良かった......」

 

漏らしてしまった。

自分は気が付いていなかったが、山田先生に指摘されて、泣いていることを知った。

山田先生も泣いていたが。

 

 

 

今日は輝義が医療用ポッドから出る日だ。

感染症の心配もなく面会が許された。

 

 

久々に間近で見た、大河は少し細くなっていた。

まだ手も足も少し冷たいがしっかりと確かに心臓が動いていた。

 

 

 

ーーーー side out ーーーー

 

 





中途半端?かも知れない。
許して。


また投稿します。


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26話目



投下ぁぁぁぁぁ!!!
ヒューン!!!
ドォーン!!!

ごめんなさい。
全く関係ないです。
だってシリアス長すぎるんだもん。
ふざけたくなるもんです。
会議中にふざけたくなるようなもんです。
......あ、ならない?そっすか......


 

 

ーーーー side セシリア ーーーー

 

 

朝、輝義さんのところへ行くとまだ眠っていました。

朝行ったら起きていたなんて事はなく静かに眠っています。

どうか早く目を覚ましてくださいな。

 

 

 

授業中に慌ただしい足音が聞こえて来ます。

何事かと思っていると、教室のドアが勢い良く開かれました。

あのドア、自動なのですが......

壊れてないでしょうか?

 

誰かと思い見てみると看護婦さんでした。

私の、いえ私達の頭に最悪の予想がよぎります。

しかしそんな予想は裏切られました。

 

「はぁ、はぁ、大河くんが目を覚ましました!!!!」

 

看護婦さんが一瞬何を仰っているのか分かりませんでした。

クラスの皆さんも、織斑先生も山田先生も言われた事が分からないという表情です。

 

 

だんだんと言葉の意味が分かってきました。

 

私を含めて織斑先生も山田先生も一夏さんも箒さんも病室に向かって走り出しました。

 

 

 

「輝義さん!!!」

 

病室に着くとベッドの上で起きて先生から質問を受けていました。

 

「異常無しと......皆さん、どうぞ」

 

私達に気づいた先生が場所を譲ってくれた。

 

「......どうした?俺が何かあったのか?」

 

その声を聞いた瞬間に涙が出て止まりませんでした。

皆さんも泣き出してしまいました。

 

「な、なんで皆泣く!?」

 

輝義さんは何故私達が泣いているのか分からず、オロオロするばかり。

織斑先生が事情を説明しました。

 

「大河、アリーナで起きた事は覚えているか?」

 

「......はい」

 

「あのあと何が起きたかは?」

 

「......織斑達に運ばれた所までは覚えています」

 

 

 

「そうか......あれから二週間が経っている。お前は二週間も目を覚まさなかったんだ。」

 

「......それは」

 

輝義さんもかなり驚いているようで言葉が続きませんでした。

そして何故私達が泣いているのか分かったようで、こちらに頭を下げました。

 

「......皆、心配を掛けたようだ。本当に申し訳ない」

 

「何故あなたが謝るのですか?あなたは私達を学園を守るために戦って傷ついて倒れたのです。賞賛され、誇る事はあれど、謝罪する理由は一つもありませんわ」

 

 

 

こうして本当の意味で私達にとって学園襲撃事件は幕を下ろしました。まだ犯人は分かっていませんが、私達にはこれでもういいのですから。

 

 

 

ーーーー side out ーーーー

 

 

 

 

また夢を見た。

皆が俺を呼んでいた。

織斑もセシリアも簪も箒も鈴も楯無さんも織斑先生も山田先生も。

皆が俺を呼んでいた。

 

何故だかはわからない。だけど今ここで立ち上がらなければならない気がした。

 

目を開けると久しぶりに見た光が飛び込んできた。

とても眩しい。だけど物凄く懐かしくていつも以上に暖かく感じた。

 

身体を起こそうとするが上手く力が入らない。

そもそも此処はどこだろうか?

自分の部屋でもない。

此処は病室か?

でもなんで病室に?

 

 

......思い出した。

アリーナで俺は無人機と四対一で戦ったんだっけか。

それで織斑達が来て最後の一機を皆が倒して、運ばれた事までしか思い出せない。

 

誰かを呼ぼうにも、声が上手く出せない。

周りを見るとナースコールがあったのでそれを押す。

誰でもいいから来てくれ。今の状況を教えてくれ。

 

 

 

「はーい何ですかー?.........えっ?」

 

俺を見るなりぽかんとしてしまった。

俺何かしたか?

 

「あ、え、大河くん?」

 

声が上手く出せないので頷く。

すると、

 

「せ、せせせ、せ、先生!!!」

 

何故そんなに驚くのだろうか?

奥から声が聞こえる。

 

「何かあった?」

 

「何かあったじゃないです!大河くんが目を覚ましました!!!!」

 

やらなんやら聞こえるがドタバタしててよく聞こえない。

首を傾げていると医師と思わしき女性が慌てて走ってきた。

 

「大河くん?今自分の状況が分かる?」

 

なんとか声を出そうとするが、出ない。

 

「ゆっくり、落ち着いてでいいからね」

 

「......は、い」

 

「分かったわ。とりあえず説明よりも体に異常が無いか調べるわね」

 

聴診器やら何やらで色々やって。

 

「じゃぁ質問するわね。耳はちゃんと聞こえる?」

 

「......はい」

 

「目はちゃんと見える?ぼやけていたり白く見えるとか無い?何かあったら言ってね?」

 

「......見えます。ぼやけてもいませんし白くもなっていません」

 

「異常なしと......」

 

そこで皆がやってきた。

今は授業中のはずだが?

先生は後でまた詳しく精密検査をすると言ってどこかへ行ってしまった。

 

皆が俺を見て固まっているので声を掛けると、

泣き出した。

うぇいうぇいうぇい!?

何故泣く!?

理由が分からずオロオロするしかない。

だってあの織斑先生も泣いてんだもん。

そりゃ困惑するわ。

山田先生は大号泣。

もう皆ワンワン泣いている。

 

 

織斑先生が事情を説明してくれた。

......そうか。

俺は......二週間も眠っていたのか。

 

心配掛けた事を謝るとセシリアに怒られてしまった。

 

「何故あなたが謝るのですか?あなたは私達を学園を守るために戦って傷ついて倒れたのです。賞賛され、誇る事はあれど謝罪する理由はありませんわ」

 

「......ありがとう」

 

これしか言えなかった。

 

 

その後精密検査をして、これからどうするのか説明を受けた。

まだ体の中に銃弾が残っているから手術を行うそうだ。

どうであれしばらくは動いてはダメらしい。

 

全身に傷があった。

ちょっとカッコいいと思う俺であった。

 

 

 

 





終わりだと思った?
残念まだ終わらないよ。
もう少し我慢してね。


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27話目


もうちょい我慢してください。
あと少しでシリアスは終わるはずなんだ......!

俺だってふざけたいんだよ......!



 

 

毎日一人か二人づつ、皆が俺に会いに来ていた。

今日は箒とセシリアが来る日。

のはずだったのだが、箒しかいない。

何かあったのか?

 

「......セシリアは?」

 

「その、ちゃんと一対一で話をしたかったから断って今日は遠慮してもらったんだ」

 

「......そうか。で、話とはなんだ?」

 

「.........その、アリーナでの事なんだ......」

 

アリーナ?

あぁ、箒が実況室にいた事か?

 

「ごめんなさいっ!私があそこにいなければ!輝義は!こうならなかったかもしれない!だけど私があんな事をしたから!」

 

箒は泣いていた。

泣きながら謝っている。

俺自身はあまり気にしていないがやはり箒は気にしているのだろう。

 

「私のせいでもしかしたら輝義が死んでいたかもしれない!」

 

「箒」

 

「私があんな事しなきゃ輝義は二週間も眠っている事は無かったかもしれない!」

 

「箒!!!」

 

「ひっ!......はい......」

 

しまった、つい大きな声を出してしまった。

看護婦さんも何事かと心配して見に来てくれた。

視線で何もない事を伝える。後で謝らなきゃな。

箒も何を言われるのか不安で落ち込んでしまった。

 

「箒、まずはいくつか聞きたい事がある。いいか?」

 

「うん......」

 

「何故あそこにいたのか教えてくれるか?」

 

俺はまず何故どうしてあそこにあの危険な場所にわざわざやって来たのか知りたかった。

 

「私は......皆みたいに専用機も持っていないし、ISに乗って一緒に戦う事も出来ない......だから、せめて応援だけでもしたかった......」

 

「......だからあそこに行ったのか?」

 

箒は無言で頷く。

 

「自分に危険が及ぶとは考えなかったのか?」

 

箒は頷く。

 

「もしかしたら死んでいたかもしれないんだぞ?いいか?次からはちゃんと考えてから行動する様にな?分かったか?」

 

「うん......」

 

よし、そしたらお礼を言わなきゃな。

 

「いいか?箒。まずはありがとう」

 

「......え?」

 

箒は訳が分からないと言った顔をしている。

理由を説明しなきゃな。

 

「あの時箒の声が無ければ俺は今ここには居なかった。

あの声があったからこそ俺は戦えたんだ。一人で戦うってのは思ったよりも辛くてな。あそこで箒がいなかったら俺の心は折れていたと思う」

 

「でも!」

 

箒は何か言おうとするが遮って言葉を続ける。

 

「箒が声をかけてくれたから、俺が何故あそこに残ったのか思い出したんだ。皆を守る為に、このなんだかんだで騒がしいが楽しい学園を守りたかったからだ。その事を思い出せたのは箒のおかげだ」

 

 

「だから、ありがとう箒」

 

 

そう言った途端箒はまた泣き出してしまった。

泣かせた責任は俺にもあるからな。

 

そう思いながら箒を抱き寄せた。

泣き止むまではこうしていよう。

 

 

 

箒が泣き止んだ。

 

「......もう、大丈夫か?」

 

「あぁ、恥ずかしい所を見せたな......」

 

少し顔を赤くしながら言う。

 

「......そんな事はない」

 

 

 

それからは他愛もない話をして解散した。

 

 

 

 

ーーーー side 箒 ーーーー

 

 

私は今輝義の病室の前にいる。

本当ならばセシリアもいるはずだったのだが今日は無理を言って一人で来させてもらった。

 

理由は輝義に謝りたかったから。

だけどここまで来て不安が募る。

 

拒絶されたら?

罵声を浴びせられたら?

そんな考えが膨らむ。

だが、あんな事をしたのだ。これぐらいは当然だろう。

意を決して病室に入る。

 

 

 

 

輝義に謝った。

だが想像していた罵声も何も飛んで来なかった。

それどころか、自分が死にかけたのにも関わらず、私の心配をして来たのだ。

それが終わると感謝された。訳が分からない。何故だろうか?

おそらく今私の顔は間抜けなものだろう。

困惑していると輝義は理由を話してくれた。

 

「あの時箒の声が無ければ俺は今ここには居なかった。

あの声があったからこそ俺は戦えたんだ。一人で戦うってのは思ったよりも辛くてな。あそこで箒がいなかったら俺の心は折れていたと思う」

 

まさかそんな事を言われるとは思っていなかった。

しかし自分の行動が輝義を追い詰めたのは事実だろう。

それを伝える為に言葉を発しようとするが遮られた。

 

「箒が声をかけてくれたから、俺が何故あそこに残ったのか思い出したんだ。皆を守る為に、このなんだかんだで騒がしいが楽しい学園を守りたかったからだ。その事を思い出せたのは箒のおかげだ」

 

「だから、ありがとう箒」

 

その言葉を聞いた瞬間私は泣き出してしまった。

輝義は泣いている私を抱き寄せ、そっと背中を叩いてくれた。

 

 

私の姉さんがISを開発してから私の事を上辺だけでなくちゃんと見てくれたのは輝義が初めてだった。

心から心配してくれたのは輝義だけだった。

とても嬉しかった。

 

 

泣き止むと途端に恥ずかしくなって来た。

 

それからは他愛もない話をして笑った。

輝義が笑った顔を見るのは初めてだった。

顔に傷が付いたとはいえ、

何というのだろうか?

凄くカッコよかった。

 

 

 

病室を出ると、顔がとても熱くなってくるのが分かる。

それが意味する理由は一つだろう。

 

 

私は輝義の事が好きなんだ。

 

 

それを自覚した瞬間にとても嬉しくなった。

 

 

ーーーー side out ーーーー

 

 

 

 






箒ちゃんが陥落しましたね!


ちーちゃんは書けるんだけど、鈴ちゃんどうやって落とそう......?
うーむ......

まぁそんときのノリでいけるか!


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28話目


ちーちゃん回。


 

今日は織斑先生が病室に来た。

昨日は山田先生だったが、入学当初はあれだけ俺の事を怖がっていたのに今はそんな事はなくなっている。

嬉しぃ......

 

 

織斑先生が話を始めた。

 

「あの時はすまなかったな。

もし私があの場に行けていたら、無理にでもお前を止めていれば、こうはならなかったかも知れない。全て私の責任だ」

 

織斑先生もか......

うーむ、どうやら皆自分が悪いと思っているらしいな。

 

「......何故織斑先生が謝るんですか?」

 

「え?」

 

俺の考えは違う。

 

「確かにあの場に先生がいたら色々と結果は違ったかも知れないです。ですが、それはたらればの話。過ぎた事をいくら言ってもしょうがないです」

 

「それに織斑先生には仕事がある。立場がある。あの場で俺の所に来なかったのは正解です。色々な指示が出来る人がいないのは更に混乱を招くだけですから。......正直山田先生には指示が出せないでしょうし」

 

「だから、織斑先生が謝る事は無いんです」

 

「だが、それでも......」

 

織斑先生強情だなぁ。

 

「それに、俺の事をかなり心配してくれたんでしょう?

顔は窶れていますし、くまもひどい」

 

「いくら心配だからと言ってもちゃんと自分の事にも気を遣ってください。織斑先生だって女性なんですから」

 

ここまで言って織斑先生は納得してくれた。

 

「......お前がそう言うのならばそうなんだろう」

 

「ありがとう、心が軽くなったよ。

それに嬉しいぞ?私の事を女として見てくれた奴はお前が初めてだ」

 

織斑先生、女性として見られて来なかったの!?

おっかないけどなんだかんだで優しいし、何よりこんな美人なのに?

うっそだぁ!

 

「余計なことを考えているだろう?」

 

心を読まれただと!?

貴様、只者ではないな!

 

でも声音からして本当らしい。

少し頰も赤い。

 

まぁこれで元気出してくれればいいんだけどな。

いつもの織斑先生がやっぱり一番だからな。

 

 

 

ーーーー side 千冬 ーーーー

 

 

私は今日は大河に謝るつもりでここにいた。

 

やはりどうしても色々と考えてしまうのだ。

あの場に私がいたら、

大河を無理にでも退かせていれば、と。

 

 

だから謝った。

そうしたら、大河は不思議そうに、

 

「......何故織斑先生が謝るんですか?」

 

と言ってきた。

何故ってそれは私が悪いからだろう?

 

すると大河は話し始めた。

 

「確かにあの場に先生がいたら色々と結果は違ったかも知れないです。ですが、それはたらればの話。過ぎた事をいくら言ってもしょうがないです」

 

「それに織斑先生には仕事がある。立場がある。あの場で俺の所に来なかったのは正解です。色々な指示が出来る人がいないのは更に混乱を招くだけですから。......正直山田先生には指示が出せないでしょうし」

 

「だから、織斑先生が謝る事は無いんです」

 

だが私はそれを認められなかった。

否定すると大河は更に言い始めた。

 

「それに、俺の事をかなり心配してくれたんでしょう?

顔は窶れていますし、くまもひどい」

 

それは教師として、一人の人間として当たり前だ。

 

「いくら心配だからと言ってもちゃんと自分の事にも気を遣ってください。織斑先生だって女性なんですから」

 

ここに来てまさか女扱いされるとは思っていなかった。

私の家は親がいない。

だから一夏を育てるために、自身が高校に通うためにバイトもしていたし、何よりどの男よりも強い力を持っていたせいで、男女共にあまり親しい人が居なかった。

唯一の友人は天災だったからな。

 

私がモンドグロッソで優勝してからは更にその傾向が強くなった。

ファンとして私を見てくれる人はいる。

それこそ本人である私が引くレベルで。

 

だけど、本当に私という人間を一人の女として見てくれた奴は誰も居なかった。

ブリュンヒルデという肩書きから誰も踏み込んで関わって来ない。

近づいてくる奴はブリュンヒルデという肩書きしか見ていなかった。

それがいい時もあるにはある。

だが私だって人間だし一人の女だ。

寂しい時、辛い時、苦しい時、隣にいて話を聞いてくれる人は誰もいない。一夏には心配させない為に強い姉を演じなければならない。

 

でもこいつはそれを全て関係なしに、私を見てくれる。

どれほど嬉しくて、どれほど頼もしいのか本人は分かっていないだろう。

 

だから言ってやる。

 

「ありがとう、心が軽くなったよ。

それに嬉しいぞ?私の事を女として見てくれた奴はお前が初めてだ」

 

これを聞いて、驚いているな。

 

むっ、何か失礼な事を思われた気がする。

軽くおでこを弾きながら、

 

「余計な事を考えているだろう?」

 

心を読まれて驚いている。

やはりか。

まぁでも許してやろう。

 

 

 

大河との会話を終えて医務室から出ると、物凄く恥ずかしくなって来た。

大丈夫だっただろうか?

顔とか赤くなったりにやけていなかっただろうか?

 

一人であーうー唸っていると、

あいつの顔が出てきた。

 

瞬間に、何故か心が温かくなった。

恥ずかしいがそれ以上に嬉しかった。

 

まさか私が生娘のようになるとはな。

 

 

 

 

この瞬間私は、人生で初めて恋というものを知った。

 

 

 

ーーーー side out ーーーー

 

 





イェー!!!
ちーちゃんが落ちたぜぇ!!!

次は寂しがり屋のうさぎさんの番だ!


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29話目

束さん回

どうするか色々悩んだ挙句こうなった。


病室でのんびりしていた。

昨日のうちに銃弾の除去手術も終わっている。

特にやる事もないし、ボケーっとしていた。

 

 

「やぁやぁ!大河輝義くん!」

 

えぇ......なんかいきなり美女が殴り込んできた......

スマホを取り出して織斑先生に連絡する準備をする。

 

「待って待って待って!?それ誰に連絡しようとしてるの!?」

 

「......織斑先生ですが?」

 

「お願いだからそれだけはやめてください。私が殺されちゃいます」

 

まじの土下座なんて初めてみたわ......

 

「分かりましたから、顔を上げてください」

 

「ほんとー!?ありがとー!いやー冗談抜きで殺されちゃうからさー」

 

変わり身の早さ。

まぁそれは置いておいて、

 

「......どちら様でしょうか?」

 

「えっ?嘘、私の事知らないの?大天災篠ノ之束さんだよ?」

 

篠ノ之束......

どっかで聞いた事あるな......

忘れたけど。

 

「......そうですかわざわざありがとうございます」

 

「君反応うっすいねー。大丈夫?」

 

心配された。

むしろ俺よりもいきなり現れた自分の体を心配すべきなんじゃ?

 

「さて、私が来たのには訳があってね。君に言いたいことがあって来たんだ」

 

なんか言いたい事があるんだって。

なんか文句とか言われんのかな......

 

「えっとね、君が戦ったあの無人機は私が作ったんだよ」

 

......想定外すぎる話だな。

 

「それであれを送り込んだのも私だよ」

 

「......本当ですか?」

 

「うん、本当だよ」

 

本当の話らしいな......

さて、どうしたものか......

 

「何故あれを送り込んだのですか?」

 

思わず強めに言ってしまう。

 

「ほんとはね?いっくん、あぁ、一夏くんの事だよ」

 

いっくんとはだれかと思っていたら織斑の事らしい。

 

「いっくんに実戦経験を積んでもらうのに、送り込んだんだ。本来ならいっくんが倒せるレベルに設定してあったんだけどね」

 

「制御出来ているようには見えませんでしたが?」

 

「うん、まさか暴走するとは思わなかったんだ。

それでなんとかしようとしたけど私のアクセスも受け付けなかったんだ」

 

「それで済む話だと?」

 

「うぅん、だって箒ちゃんも、君も死にかけたんだから」

 

確かに俺は死にかけた。

そして篠ノ之博士は俺に頭を下げた。

 

「ごめんなさい......!

君があんな目にあったのは私のせいなんだ......!」

 

声を震わせながら謝罪をして来た。

そして感謝を述べ始めた。

 

「そして、本当にありがとう......!

あの時箒ちゃんを助けてくれて......!

もし私が間に合わなかったら?

もし箒ちゃんが死んじゃったら?

って凄く考えて......

だからありがとうございます......」

 

よほどその時の想像が辛かったのだろう。

声を震わせて泣きながらそう語った。

 

 

しかしここ最近皆泣きすぎじゃないか?

 

「大丈夫ですから、頭を上げてください」

 

そう言うと篠ノ之博士は目尻に涙を溜め微笑しながら頷いた。

 

「うん」

 

こんな状況だが、とても綺麗だと思ってしまう俺であった。

 

「君は、優しいんだね」

 

「そんな事は無いですよ。誰だって俺と同じ事をします」

 

誰でも出来ると否定すると、

 

「うぅん、それは無いよ。誰だって自分の命は大切だからね。君みたいになんの躊躇いもなくあんな事が出来る人はいないよ」

 

そうだろうか?

誰だってあの状況ならああすると思うが。

 

 

しかしいくつか言いたい事がある。

 

「いくつかよろしいですか?篠ノ之博士」

 

「うん?いいよー、特別に許してあげよう!」

 

さっきまでの泣きはどこにいったし。

まぁいい、それじゃ聞くとするか。

 

「博士は何故ISを開発したのですか?」

 

「うん?そりゃ宇宙に行くためだよ?」

 

「なら、何故今回こんな事をしたんですか?」

 

「そりゃいっくんに強くなってもらいためだよ?」

 

「あなたは宇宙に行くためにISを開発したのでしょう?なら何故あのような事に使うんですか?開発者本人が本来の使用用途を間違っている。それではいつまでも宇宙に行く事は出来ませんよ?」

 

「俺もISを使ってドンパチやっているのであまり強くは言えませんが」

 

俺がそういうと、篠ノ之博士は悲しそうな笑顔を浮かべていった。

 

「分かってるよ。だけどね?もうよく分からなくなっちゃったんだよ。私が開発したせいで女尊男卑なんて風潮が流行っているし、私のせいで不幸になる人もたくさんいる。私はこんな事を望んだ訳じゃないのに。なんでだろうね?」

 

「インフィニットストラトス。

意味は無限の成層圏、

どこまでも広がる空。

ISは翼があって、自由に大空を飛び回る事が出来る。

俺は正直これを聞いて、純粋に凄いって思いました。

男には乗れないと知った時はそりゃもう落ち込みましたよ。

誰だって、空を飛びたいと思いますし、少なからずそう思った人はいるはずです」

 

「だけど、俺はISに乗る事が出来た。

乗る事が出来ると聞いてもう嬉しくてしょうがなかった」

 

「知ってるよ。私だってまさかいっくん以外に使える男の子がいるなんて思っていなかったからね。いっくんはちーちゃんの弟だからもしかしたらいけるかもとか考えたけどまさか二人目がいるとは思ってなかったからね。びっくりで君の事ずっと見てたよ」

 

「だから、君がISに乗って飛んでいる時の顔、凄く楽しくてしょうがないって顔してるのも知っているしね」

 

まじかよ。

見られていたらしい。

全然気が付かなかったぜ。

 

「だから、あなたが本当にISをあんな風に使っている事に驚きました」

「しょうがないよ......

私だってこんな事したくはなかった。だけどいっくんは君みたいに強くはない。だから強くなって自分で自分を守ることが出来るようにしてもらわなきゃいけなかった。

ちーちゃんも私もいつでも助けられる訳じゃない。

実際いっくんは一回誘拐されているしね」

 

「なら俺が織斑の事を守ります。箒も、織斑先生も、もちろんあなたの事も」

 

「だけど......」

 

うぅん......

少し発破をかけてみるか。

 

「くどい!あなたはそれでも天災と呼ばれる人間か!?」

 

「っ!」

 

「ISを一人で全て開発した人間か!?」

 

「俺がなんとかしてやるって言ってんだ、そっちも腹を括れ!

宇宙に行きたくないのか!」

 

「行きたい!私だってやりたい事も見てみたい事も沢山ある!

でも他の奴らはそうじゃなかった!ISを軍事利用しかしない!

私はどうすればいいの!?」

 

「私の事を受け入れてくれる人も理解しようとしてくれる人もいなかった!」

 

篠ノ之博士は叫ぶ。

でももう違う。

もしかしたら今までもいたけど気が付けなかっただけかも知れない。

 

「なら、今までやって来たように自分の夢を叶える為に努力したらいい。俺でよければいくらでも力になりますから」

 

「篠ノ之博士のやりたいようにやればいい。

何故あなたは天災と呼ばれているんですか?」

 

「......いいのかな?私が夢を追いかけて」

 

「夢を追いかけてはいけないなんて事は無いですよ。

誰にだってその権利はあります。

そして、叶えたい夢を持った人間の義務だから。

追いかけたくても追いかけられない人なんて沢山いる。

だけどあなたは夢を追いかけて叶えるだけの力がある。

それを使わない手はないじゃないですか。

誰かが文句を言って来たら黙らせればいい。

誰も篠ノ之博士の夢に応援する事はできても、文句を言う権利はないんですから」

 

そこまで言われるとは思っていなかったのだろう。

ポカンとして嬉しくてしょうがないって顔で笑った。

その笑顔は驚くほど綺麗で見とれてしまうものだった。

 

「ありがとう。本当に嬉しいよ」

 

「さぁーて!ここまで言われたんだから早速取りかからなきゃね!」

 

ようやくやる気を出したようだ。

 

「何かあったら相談に乗りますから。

いつでも連絡してください。来てくれてもいいですし」

 

「うん!それじゃ君にはお礼をしなくちゃね!

何か欲しいものはあるかな?」

 

考えてみるが特にないので断る。

 

「......いいえ、特にないので大丈夫ですよ」

 

「えぇー、君って無欲の仙人か何かなの?」

 

「......人並みに欲はありますよ。でもそれは誰かに叶えてもらう事じゃないですから」

 

「君、達観してるねー。

ま、いいや。私の方でなんか適当に見繕っておくよ!」

 

大丈夫だと言っているのに......

まぁその時は有難く受け取ろう。

 

 

「それにしてもてるくんは女たらしだね!」

 

突然の最低野郎認定を受けた。

解せぬ......

 

 

 

ーーーー side 束 ーーーー

 

 

今日は二人目の男性操縦者のところに来ていた。

 

理由は、あの時の事を謝るためと、

箒ちゃんを助けてくれたことに対する感謝を伝えるために。

 

 

あの時の事はよく覚えている。

箒ちゃんに向けらた砲口を見たとき、

思わず手が止まってしまった。

 

凄く怖かった。たった一人の大切な妹を失う事が。

それを想像して一人で泣いた。

何度も何度も。

 

そして箒ちゃんを助けてくれた彼にはちゃんとお礼をしなきゃと思った。

 

数日機会をうかがって見ていたが、まぁ何というか、女たらしって思った。

だって箒ちゃん達だけじゃなくてあのちーちゃんまで落とされるとは

廊下に出たちーちゃんなんて初めて見たよ。

 

 

 

今日はやっと機会が出来たから会いに行こうと思う。

 

 

会いに行ったら、物凄い驚かれた。

 

 

まさか謝りに行ってあんな事言われるとは思っても見なかった。

まだ私の夢を応援してくれる人がいる事に。

私は自分の夢を追いかけていいって言ってくれる人がいる事に。

 

 

 

 

 

 

ちーちゃんやいっくん、箒ちゃんやお父さんやお母さんは私の中で大切な存在だった。それこそこの人達に危害を加えたら国ごと滅ぼす準備があるぐらいには。

 

だけど今日それ以上に大切な人が出来た。

ちーちゃんの言葉を借りるようだけど、

 

 

まさか私が誰かを好きになるなんて思ってなかったなぁ。

多分私の人生で最初で最後の恋だよ。

 

 

てるくんの顔が、声が頭の中にずっといる。

すっごく恥ずかしい......

もっと私を見て欲しいとか、抱きしめて欲しいとか、

その、えっと、チューして欲しいとか色々考えちゃう。

 

でもどうすればいいんだろう?

くーちゃんに聞いてみる?

だめだ、くーちゃんに聞いても押し倒したらどうですかとか言われそう。

まぁいつでも連絡していいって、てるくんのとこに来ていいって言ってたしね。

いくらでもアピールはできるよ!

 

 

 

ちーちゃんにも箒ちゃんにも誰にも負けないからね!

最後に私がてるくんの隣に立つんだから!

 

 

 

 

ーーーー side out ーーーー




ちょっとフラフラしすぎたかな?
まぁでもこれでうさぎさんが落ちたぜ!

どんどんハーレム拡張するぞぉ!



感想と評価お願いします。


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30話目


ISの原作の流れを忘れるという大罪を犯しました。
だれか教えてください。m(__)m


 

 

やっと!やっと!

た!い!い!ん!

長かった......

もう本当に長かった......

ベッドの上でゴロゴロするかリハビリするかの二択しかないもんだから、本当に長く感じたよ。

土曜日に退院だから皆が来てくれた。

 

「いやー長かったな!輝義!」

 

「......あぁ」

 

「もう訓練は出来んのか?」

 

「......月曜日からもう始めていいそうだ」

 

今日明日はとりあえずゆっくりしておけとの事。

回復速度が異常に早いからもう大丈夫なんだって。

 

「そうかー、じゃ部屋でゆっくりしとけよ。病み上がりだからな」

 

「......そうさせてもらう」

 

 

 

 

久々の自分の部屋だ。

おぉ......

感慨深いな。

ん?なんか綺麗なんだけど?

三週間以上放ったらかしだから絶対埃とか溜まってると思っていたんだけど。

 

「あぁ、部屋なら私が掃除しておいたぞ」

 

「......一人でか?」

 

流石に毎日ではないだろうが、一人でやるとなると面倒くさい。

......俺だけ?

 

「そうだが?」

 

当たり前だろ?何言ってんだ?みたいな顔された。

そっすか。

 

「......わざわざすまないな」

 

「こういう時はありがとうでいいんだぞ?」

 

「......ありがとう」

 

「ふふっ、どういたしまして」

 

ちなみに織斑とセシリアと簪、鈴だが、食堂に昼飯を取りに行っている。

箒は一人で俺を残すのは心配だからという事で、残った。

その際、だれが残るかセシリアと簪、箒でじゃんけんで火花を散らしていた。

 

 

 

「持ってきたわよ。輝義は日替わりでいいんでしょ?」

 

「......あぁ」

 

日替わり定食!

久しぶりだ!

今日はハンバーグに唐揚げという豪華なおかずである。

俺大興奮。

 

「おー、すごい勢いで食うなぁ。

医務室の飯はどうだったんだ?」

 

医務室での食事の味を聞かれた。

 

「......美味かったぞ」

 

「そうなのか?」

 

「......あぁ。ただ......」

 

「ただ?」

 

「......量が少なかった」

 

そう、量が少ないのだ。

正直おかわりを特盛りでしたいぐらいに少なかったのだ。

育ち盛りの少年には辛い。

おいそこ、それ以上育ってどうするとか言うな。

うまい飯は生きる活力になるんだよ。

 

「そうなのですか?私達からしたら普通に見えましたが?」

 

「あー、あれじゃない?身体デカいからその分量を食べなきゃいけないんでしょ」

 

鈴ちゃん大正解!

流石だな。

 

「確かに私と食べている時もそうだった。初めてみた時は驚いた」

 

簪は入学した頃から一緒に食べてたからな。

 

 

そんな話をしながら昼が過ぎていった。

 

 

 

 

昼飯の後、俺は職員室に向かっていた。

 

「あ、大河くんだ。この前は大丈夫だった?」

 

「......問題ない」

 

「そっか。助けてくれてありがとう」

 

すれ違う生徒にやたらと挨拶されるし、心配される。

何があったんだろうか?

 

 

 

「......失礼します、大河です。織斑先生はいらっしゃいますか?」

 

「おぉ、無事退院したか」

 

「......はい、おかげ様で。

ご心配をお掛けしました」

 

本当に心配をかけたと思う。

仕事だってあるだろうに、毎日ではないが、二日に一回ぐらいは必ず来てくれた。昼休みだったり。

 

「何、気にするな。で、身体は大丈夫なのか?」

 

「......はい。月曜日からもう訓練を始めていいそうです」

 

そう答えると驚きながら聞いてきた。

 

「早いな。本当に大丈夫なのか?」

 

「......えぇ、大丈夫です。ずっと動いてなかったので早く動きたいぐらいです」

 

「そうか。なら月曜日の朝からまた出来るという事だな?

鈍った分しっかり鍛えてやる。覚悟しておけよ?」

 

織斑先生は嬉しそうにそう言う。

俺も嬉しい。

だけど、なんか厳しくなりそうなんだよなぁ......

体力落ちてなきゃいいけど、それは期待するだけ無駄か。

 

少しの間話をして、

職員室を後にした。

 

襲撃事件だが、犯人は分からずじまいという事で片付けられたそうだ。

俺だけだれがやったか知っている。

なんか優越感が込み上げてくるな。

無人機も俺がボロボロにし過ぎたせいで、解析なんて出来るような状態ではなかったらしい。

これはIS委員会にも伝えてないそうだが、当事者として知る権利があるとして織斑先生が教えてくれたが、委員会のデータベースには登録されていないコアが使われていたらしい。

篠ノ之博士、大奮発じゃん。

ちょっと違うか?

まぁいい。

そんなわけで今回の騒動は終わりを迎えた。

 

 

 






これにて学園襲撃事件は終わりです!

さぁーて!
これから金髪くん(ちゃん)と銀兔ちゃんが出てきますよ!
それまでに一話か二話ほど日常を挟みます。


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31話目

本日2話目の投稿。


月曜日である。そう、月曜日。

今日から訓練を始められる。

いや、もう楽しみでしょうがない。

さぁ、準備は出来た。いざアリーナへ。

 

 

 

 

アリーナに着くと織斑先生が既に待機している。

嬉しそうな顔をしていらっしゃる。

 

「来たな。では早速やるぞ」

 

「......お願いします」

 

「どれだけやれるか見てやる。アリーナでの一件は学ぶ事が少なからずあったはずだ。それを見せてみろ」

 

そう、アリーナで無人機と殴り合った時にいくつか思った事がある。

一つは射撃武器に対する対抗手段がない事。

ないというよりは分からないと言った方がいいだろう。

だって、飛んでくる弾をぶった斬るか避けるかしかしてないし。

二つ目は斬り合っている時の攻撃方法。

ただ剣術だけで戦うのではなく、

殴る、蹴る、投げると言ったありとあらゆる攻撃動作や防御の方法を組み合わせる事。

病室にいる時に色々調べたり参考になるものをいくつか探してきた。

一つ目はとりあえず置いておく。

あとで織斑先生に聞いてみる。

二つ目は今からの訓練で実際にやってみる。

 

 

「......織斑先生、試したい事があるのでそれをやっても構いませんか?」

 

「ふむ......いいだろう付き合ってやる。どこからでも来い」

 

「......では、行きます!」

 

 

瞬時加速で一気に突っ込む。

タイミングを合わせて斬りかかってくる織斑先生の刀を受け止める。

さぁ、ここから色々試してみる時間だ。

受け止めた瞬間に回し蹴りを叩き込む。

 

流石に予想していなかったのか少し驚く表情をするが、そこまで。

 

腕でガードを固めて受け止められた。

 

流石は織斑先生、としか言えない。

あの横からの不意打ちとも言える回し蹴りに対してあっさり対応して来たのだ。

 

剣戟の合間を縫ってあらゆる攻撃を仕掛けるがやはり防がれてしまう。

かなり前に織斑に見せた攻撃すると見せかけ、持っている刀を反対の手に持ち替えるものを仕掛けたがやはり全て防がれる。

投げ技、柔道みたいな事もしようと思ったが、宙に浮いているから意味がない。

どうすればいいのか全く分からない。

まだまだ改善しなければならない事ばかりだ。

 

 

 

 

「大河、今日のあの攻撃、自分で考えたのか?」

 

終わって、休憩しているとそんな事を聞かれた。

 

「......いえ、入院中、調べたりして組み込みました。

斬りかかるだけではなく、殴る蹴る、時には投げると言った事をすれば相手の意表を突けると書いてあったので」

 

「ほう......なぜそれを選んだ?」

 

「......正直、俺は織斑先生や箒、織斑みたいに剣道や剣術を小さい頃からやっているわけではないです。その差は圧倒的です。しかも剣道や剣術はそう簡単に身につくものじゃないですから。だから、その差を埋める為に選びました」

 

「......なによりもあの時、俺はあの無人機にあそこまでやられたんです。俺はまだまだ弱い。だから俺が怪我をして箒やセシリア、簪に楯無さんに布仏にも、織斑先生、山田先生にも心配をかけた。だから二度とそうならないように、俺は強くなりたいんです。だからどれだけ辛い戦いでも無事に帰ってくる為の力が必要なんです。その為にはなりふり構っていられないんです」

 

 

 

「......そうか。よし、ならば格闘訓練もメニューに入れるとしよう。

そのスタイルで戦うとなると剣術だけでは意味がなくなるからな。

......そうだな、毎朝ISに乗る前に教えてやる。柔道着はあるか?」

 

訓練メニューが増えました。

まぁ、しょうがない。

さっきも言ったが強くなる為には、二度とああならないようにする為にはなりふり構ってられない。なんだってやってやる。

 

「......はい、中学で使っていたものがあります」

 

「よし、それをご両親に連絡して送ってもらえ」

 

「......分かりました」

 

こうして朝練は終わった。

 

 

 

 

ーーーー side 千冬 ーーーー

 

 

 

今日は久々に大河との朝練を行う。

正直楽しみでしょうがなかった。

......浮かれているのは分かるが想い人と二人きりになれるのだ。

しょうがないだろう。楽しみすぎて早く着いてしまった。

 

 

 

訓練中、驚かされてばかりだった。

斬り合っている時にいきなり回し蹴りが来た時にはひやっとした。

他にもいきなり刀を格納して殴って来たりとかなり実戦的な型になっていた。ただ、まだまだ荒削りのようで、対応は出来る。やはり格闘訓練の経験がないのだろう。かなり鋭い蹴りやパンチを放ってはくるが、まだまだ大振りだ。

 

 

 

 

 

訓練が終わった後、なぜこの戦い方を選んだのか聞いてみた。

 

こいつは私達に二度と心配を掛けないようにする為に強くなりたいと、その為にはなりふり構っていられないと言った。

 

正直言ってISに初めて乗ってからまだ二カ月程しか経っていないのにここまで強くなるのは普通じゃない。異常だと言ってもいいだろう。にもかかわらず、既にこいつは自分の戦い方を戦う理由を見つけた。

本当ならばあり得ないのだ。ほとんどの人間は自分の戦い方を見つけるのに時間がかかる。私だってそうだった。

ましてや、戦う理由なんぞ見つけられない人間の方が圧倒的に多い。見つけられる奴などほとんどいないだろう。私は弟で、この世界でたった一人の家族である一夏を育てる為に、というのが理由だった。それしか私には方法がなかったから。

だが、こいつは自分や家族の為ではなく、誰かに心配を掛けない為にという、他人からしたら異常としか思えない理由で武器を持つと言ったのだ。

 

 

確かに私達は大河が倒れた時、心配でしょうがなかった。

だがな、身体が強い事と、心が強い事は別なんだぞ。

こいつはその力を持つには優しすぎるんだ。

だから、本当に辛い時に心が潰れてしまわないか心配だ。

だが、その時は私が支えてやればいい。

私だけでは無理かもしれない。

その時は大河の事が好きなやつは多い。

だから皆で支えてやる。

誰もいいえなんて言わないだろうから。

だから私は強くなる為の手伝いをしてやる。

 

 

 

ーーーー side out ーーーー

 

 

 




書きました。
ちょっと文章がごちゃごちゃしてるような?


感想お願いします。
書いてくれると嬉しいです。


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32話目


投稿日が空いてしまって申し訳ない。


 

今日は久々に教室に向かう。

三週間以上来ていなかったからなぁ

ちょっと感動してる。

 

 

 

「おーてるてるだー。おはよー。身体は大丈夫ー?」

 

相変わらずのんびりとしている。

 

「......大丈夫だ。朝もISに乗って来たからな」

 

「本当ー?でも無理はダメだよ?」

 

「......分かっている」

 

もう誰にも心配は掛けないと誓ったのだ。

そこらへんはちゃんとしている。

 

しかし、皆がやたらと声を掛けてくる。

なんでだろう?

 

「てるてる皆に話しかけられて不思議でしょ?」

 

「......あぁ」

 

「それはね?てるてるが皆を守る為に身体を張って、命を懸けて戦ったからだよー」

 

「てるてるが医務室で寝てる時にねー、かいちょーが皆を集めて言ったんだよ」

 

「大河輝義君は、皆を守る義務もないし理由もない。一人の生徒として、世界で二人しかいない男性操縦者だからむしろ逃げなきゃいけないのに、危険を顧みずに織斑君達を助けに行った。

皆に危害が及ばないように、四機ものISにたった一人で立ち向かった。だから、彼の事を怖がらないであげて、本当は誰よりも強くて優しい人だからって。皆それを聞いて初めててるてるが意識を失ってるって知ったんだよ?」

 

そうだったのか......

 

「だから皆てるてるの事がすっごいすっごい大好きになったんだー。

てるてるは皆のヒーローだよー」

 

布仏はとても嬉しそうに話す。

 

しかしなぁ俺は何もしていないんだがなぁ。

当たり前の事をしただけなんだけど。

誰かの為に身体張って命賭けて戦うのは普通だろう。

 

「その顔は納得してないなー?

まぁ大丈夫だよ。そのうちそのうち」

 

布仏は少し不満そうにしたがすぐにいつもと同じ様にニコニコとした笑顔を浮かべ始めた。

 

 

 

 

放課後、俺は整備室にいた。

理由はアリーナでの戦いの時に、ほとんど全壊に近いレベルで損傷した俺のISの修理をしてくれた、人にお礼を言うため。

整備室に着く。

 

「......あの、よろしいでしょうか?」

 

「はい?あれ、大河君?なんでここに?」

 

「......えっと俺のISを修理してくれた人を探しているんですが......」

 

「あー、虚の事ねー。ちょっと待ってて」

 

一分程すると、布仏によく似ている人が来た。

誰だろう?

 

「初めまして、あなたのISを修理しました、布仏虚と申します」

 

まさかの本人だった。

 

「......こちらこそよろしくお願いします」

 

しかし布仏?

苗字が一緒なだけ?

いや、まさかなぁ?

 

「......もしかして布仏の?」

 

「はい、姉です」

 

まじかよ。

全然雰囲気似てねぇじゃねぇか!

顔は似てるけど、仕事ができるって感じがする。

違う違う違う。

お礼を言いに来たんだ。

 

「......先日は自分のISを修理して頂きありがとうございます」

 

「いえ、むしろいい経験をさせていただきました」

 

「でも、あまり無茶はダメですよ?

あのラファールを見たときは愕然としましたよ。

装甲どころか、内部フレームまでひしゃげているし。

あの状態で戦うなんて無茶もいいところです」

 

釘を刺されてしまった......

 

「それに私だけが修理したわけではありませんよ?

本音も簪様も一緒に修理しましたから」

 

まさかの布仏が修理に携わっていた。

え?出来んの?

 

「......布仏が?」

 

驚きながら聞くと、

 

「えぇ、驚くのも無理はありません。普段のあの子を見ていれば尚更。あの子は実技はあまり得意ではないんですが、整備関係になるとものすごい変わり方をしますから」

 

人は見かけによらないってこの事か。

 

「そうだ、私の事は虚で構いません。妹もいるのでごちゃごちゃしてしまいますし」

 

そんなわけで呼び方は虚先輩になった。

それからしばらく話をして別れた。

 

 

 

 

 

翌日、朝は織斑先生と訓練をして、授業を受けて放課後の今。

俺は楯無さんと訓練をする為にアリーナに向かおうとしていた。

 

「なぁ、輝義」

 

しかし織斑に声を掛けられて足を止めた。

セシリアに鈴、箒もいる。

 

「......なんだ?」

 

「えっとさ、俺らも訓練に混ぜてくれないか?」

 

まぁ構わないが......

理由が気になる。

 

「......構わないが。だがどうしてだ?」

 

理由を聞くと、

 

「......この前アリーナでさ、輝義は一人で戦ったろ?

だけど俺はその時気絶して助けられなかった。

だから、俺も強くなりたいんだ。

もう何も出来ないのは嫌なんだ」

 

「私も、輝義さんを支える為に、隣に立って一緒に戦う為に混ぜて頂きたいのです」

 

「私もだ。今日はISを借りられなかった。だけど見て得るものもある。だからどうか、一緒にやらせてほしい」

 

皆そんな風に思っていたのか。

そこまで言われては仕方ない。

 

「......いいぞ」

 

「ほんとか!よっしゃありがとな!輝義!」

 

という事で皆が訓練に参加する事になりました。

楯無さんは、

 

「全然オッケーよ!むしろウェルカムね!」

 

だってさ。

 

簪はまだ自分の専用機が完成してないらしい。

早く自分の専用機を完成させて合流するって言ってた。

めっちゃ悔しそうな顔して。

 

 

 

 

 

 

アリーナでは俺VS鈴、織斑、セシリア連合という形で模擬戦をしていた。

箒と楯無さんは見学。

 

このような状況でどう戦うのかを考える為にわざわざ付き合ってもらっているのだ。

 

「おりゃぁぁぁぁ!!!」

 

織斑が斬りかかってくる。

それを受け止め、回し蹴りを叩き込む。

その時、後ろから鈴が攻撃してくる。

 

「隙ありぃぃぃぃ!!!」

 

「隙なんぞない!!!」

 

振り向きざまに横に一閃する。

 

セシリアは隙を上手く見て撃ってくるが、全て斬り落として防ぐ。

皆強いな。だか、まだ甘い。

 

 

 

終わってからの反省会。

織斑が、

 

「輝義、また強くなってないか?」

 

こう言うと、皆がそれに賛同する。

 

「本当ですわ。かなりいい攻撃も出来たと思ったのですが」

 

「......そうか?」

 

そう聞くと楯無さんも、

 

「確かに強くなってるわ。気をぬくと私も危ないかもしれないわね」

 

どうやら強くなっているらしい。

さて、こちらも協力してもらったんだ。

いくつか助言しよう。

 

「......鈴、織斑、いくつかいいか?」

 

「いいぞ、なんでも言ってくれ」

 

「......二人とも攻撃が素直すぎる」

 

「どういうことだ?」

 

鈴は分かっている顔をするが、

織斑は首を傾げる。

 

「......攻撃するときにただ斬りかかる事しか考えてないだろう?

それだと簡単に読まれてしまう。だからフェイントを織り交ぜたりするんだ。以前教えた技とかあるだろう?」

 

「あぁ!あれか!

あれなぁ......練習では上手くいくんだけど、いざやるとなると出来ないんだよなぁ」

 

「......あとは鈴、奇襲を仕掛ける時は最後まで声も、気配も消すんだ。

わざわざ奇襲をしようとしているのに声を出してしまっては意味がない」

 

「うっ、分かってはいるんだけど、どうしても出ちゃうのよ」

 

「......そこは練習するしかないな」

 

よしこんなものか。

 

「あの私は?」

 

セシリアか。

 

「......すまない、射撃の事は分からないんだ。

ただ言えるのは攻撃するタイミングはいいと思う。

もっと相手が嫌がるタイミングで攻撃をしたりすればいいと思う。

詳しくは分からないから山田先生に聞いてみるのもいいかもな」

 

「分かりましたわ。ありがとうございます」

 

 

そうして反省会は終わり、

その後は各自の訓練をやって終わりとなった。

 

 

 

 

 

ーーーー side 一夏 ーーーー

 

 

俺は、あの大きな背中に憧れた。

多分、セシリアも箒も鈴も簪も。

更識会長だって。

千冬姉ですら、なんか輝義の事をここ最近ずっと見ている。

他の人には分からないだろうけど。

 

あの憧れた背中に追いつく為に、努力をした。

だけど、あの背中はあまりにも遠くて、諦めかけていた。

 

そんな時だった。

あの事件が起きたのは。

あの時何も出来ずにただ気絶して鈴に担がれて撤退する事しか出来なかった。

白式の準備が整うまで輝義が戦う姿を見る事しか出来なかった。

あんな思いはもうしたくはなかった。

今まで輝義の隣に立って一緒に戦う事の出来る奴は居なかったのだろう。

だけど、それでも輝義は戦った。

どれだけ傷付いても、どれだけ血を流しても。

だからそんな姿を見て俺は自分が輝義の隣に立って一緒に戦えるようになるって、決めた。

もう輝義一人には戦わせない。

 

 

 

 

 

 

俺達は輝義に頼んで訓練に混ぜてもらう気でいた。

頼んでみると、理由を聞かれた。

答えると、やっぱり驚いた表情をした。

だけどあっさり許してくれた。

 

 

 

アリーナで訓練を始めると、

輝義の要求で三対一でやる事になった。

だけど三対一にもかかわらず全く歯が立たなかった。

反省会では直した方がいいところを指摘されてしまう。

 

 

やっぱり追い付くにはまだまだ先の話になりそうだ。

 

 

 

ーーーー side out ーーーー

 

 

 




長くなりました。
しかも文がごちゃごちゃしてますね。
申し訳ないです。


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33話目

やっと金銀の二人が登場ですよ!


それはそれとして、
お気に入りが気がついたら550件超えてた......(ガクブル)
本当にありがたいです。
見てくれている皆様今後ともよろしくお願いします。



朝、セシリア達と教室に行くとどうも騒がしかった。

気になったので聞いてみる。

 

「......おはよう、何かあったのか?」

 

「あ、大河君だ。おはよー」

 

「さっきの質問だけどね、

なんと!うちのクラスに!転校生が二人も来るのです!どうだ驚いたか!」

 

確かに驚いた。

普通はバラけさせるんじゃ?

しかしなんでこんな中途半端な時期に?

セシリアも、

 

「この時期に転校生ですか?随分と中途半端な......

それに一クラスに転校生を固める理由も分かりませんわね。

一夏さんや輝義さんを狙っているというのなら分かりますが、

ここまで露骨にやるものでしょうか?」

 

確かにそうなんだが、やはり何か事情があるのだろう。

色々と憶測が飛び交う中、SHRの時間になった。

織斑先生が教室に入って来る。

 

「時間だ。SHRを始める。

と、その前に転校生を紹介する。

二人とも、入ってこい」

 

「はい」

 

「はっ!」

 

なんか軍人が居るような気がするけど気のせいだよね!

ここはフルメタ○ジャケットじゃないからな!

二人が入ってきた瞬間、教室が静まり返った。

一人は金髪で中性的な顔立ちをしている。

もう一人は銀髪でよく切れるナイフみたいな雰囲気を漂わせている。

しかしこいつは問題ない。

問題があるのは金髪の方だ。

何故かと言うと、

 

「自己紹介をしろ」

 

「シャルル・デュノアです」

 

「......え、お、男......?」

 

「はい、こちらに同じ男性操縦者が二人いると聞いてやってきました。どうぞよろしくお願いします」

 

そう、こいつは男だったのだ。

しかもイケメンというおまけ付きで。

そんなデュノアを放っておくクラスの女子はおらず、

予想通りの展開になるだろう。

早めに耳塞いどこ。

 

「「「「「「「きゃ.......」」」」」」

 

「きゃ?」

 

あ、織斑も織斑先生もセシリアも箒も耳を塞いでいる。

これから起こる事を考えれば当然だろう。

 

「「「「「「キャァァァァァァァァ!!!!!!」」」」」」

 

ぐぉぉぉ!!!???

耳を塞いでもダメとか、無敵貫通ついてんのかよ!?

耳がキーンってしてる。

痛い......

 

「この星に生まれてよかったぁぁぁぁ!!!」

 

「日本人に生まれてよかったぁぁぁぁぁ!!!」

 

「この学園に苦労して入った甲斐があったわ!私は今ここで報われたのよ!」

 

「もう死んでもいいわ!

あ、やっぱりダメよ!薄い本をなんとしても書かなきゃ!

私達にはその使命があるのよ!」

 

もうカオス。

どう表現してもカオス。

誰が見てもカオス。

それと最後のやつ、絶対にゆるさねぇからな。

やめろよ!フリじゃないぞ!

しかし、デュノアはなんか違和感あるんだよなぁ......

なんだろ?気のせいか?

 

「静かにしろ!

ボーデヴィッヒ、お前の番だ、自己紹介をしろ」

 

銀髪はそう言われると、

 

「はっ!分かりました教官!」

 

ビシッと姿勢を正して敬礼した。

だからフ○メタルジャケットじゃないってば。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 

......え、終わり?まさか織斑と同じやつがいただと......!?

 

「......あ、あの終わりですか?」

 

山田先生を無視しないであげて!

ほら、もう涙目になっちゃったじゃん!

そんな二人を見て織斑先生は、

 

「はぁ......」

 

ため息をついていた。

しょうがないよ......

 

ふとボーデヴィッヒを見ると、織斑を見た途端に顔色を変えて、

ツカツカと近づいていった。

何をする気だ?

 

パァァン!

 

乾いた音が響く。

ボーデヴィッヒが織斑をビンタしたのだ。

最近の銀髪美少女はいきなりビンタすんの?

こわ......

 

まぁ織斑はこれで黙っているはずも無く、

 

「いってぇな!いきなり何すんだよ!」

 

「フンッ!」

 

自分の席に座っちゃった......

ここで織斑先生が、

 

「ボーデヴィッヒ、放課後に指導室に来い。

反省文を書かせてやる。

初対面の人間にビンタを食らわせるとは何事だ?

そのような教育をした覚えはないのだが?」

 

「!?申し訳ありません......」

 

「私ではない。織斑に言え」

 

「いきなり叩いて悪かった」

 

「お、おう......」

 

あまりの変わり身の早さに織斑びっくりしてるじゃん。

こんなんで大丈夫なんだろうか?

 

 

そんな事を思った朝だった。

その後もアリーナに授業で向かうのに、追い回されたりした。

しかも二、三年まで混じってた。

正直かなり怖かった。

デュノアなんて、

 

「ひっ!?」

 

って言ってたし。

そりゃ血気迫る顔で追いかけられたら誰だって怖いわな。

そん時は織斑を囮にした。すまない、だが必要な犠牲だったのだ。

お前の死は無駄にはしないぞ。

 

 

 

 

 

 

 

放課後、今日は楯無さんとの訓練もお休み。

今日はインターバルだからゆっくり休めと言われた。

やる事もないのでふらふらしていると、

ボーデヴィッヒが織斑先生に詰め寄っている。

......本当はいけないんだけど、気になるからちょっとだけ見てみよう。

 

「何故このような場所にいるのですか!?」

 

「私がここで教鞭をとっているからだ」

 

「あなたにここは相応しくない!」

 

「ほう?」

 

あ、あの感じは怒ってるな......

 

「ここの人間は揃いも揃って危機感がない!

ファッションが何かと勘違いしている!」

 

「自分達が使っているものが、兵器だと言う事すら分かっていない!」

 

「おい、小娘、口を慎めよ。お前が何を言おうが勝手だが、その言葉は許さん」

 

緊急事態発生!

織斑先生がキレた!

まずいぞ!この学園が消える!

 

ふざけてる場合じゃないってば。

あんな怒った織斑先生を見るのは俺がアリーナで無茶をした時以来だな......

 

「っ!?」

 

ボーデヴィッヒは走り去ってしまった......

見ていると声を掛けられた。

 

「おい、そこの覗き魔。いつまで隠れている?」

 

......バレてた。

下手に抵抗しても無駄だから大人しく出て行く。

 

「どこから見ていた?」

 

「......何故このような場所にいるのですか、からですね」

 

「ほぼ全部じゃないか。まぁいい。

で?どう思った?」

 

「......どう、とは?」

 

「ボーデヴィッヒの事だ」

 

「......そうですね。

ちょっと危うい感じがするかと」

 

「ほう?どう危ういんだ?」

 

「......織斑先生だけを見過ぎているというか何というか。

あれはもう崇拝に近いかと」

 

「......そうか」

 

織斑先生は短く答えると黙ってしまった。

なんか喋ってください。

この空気を耐えられる程強くないんです。

 

「なぁ、私は間違えていたのだろうか?」

 

「......何がですか?」

 

聞いてみると、話してくれた。

 

「あいつは、ドイツ軍で少しばかり面倒を見た奴の一人でな。

出会ったときは落ちこぼれだった」

 

まさかの本物の軍人だった。

眼帯してるし、スネ○クかよ。

違うか。

 

「だから鍛えてやったんだ。そうしたらあいつは部隊のトップにまで登り詰めた。そこから私の事をあぁやって見始めたんだ」

 

「......私は教え方を間違えたのだろうか?」

 

なんかIS学園に入ってから人生相談に乗る事多くない?

まぁ助言になるかは分からないけど。

 

「......それはないです。断言出来る」

 

「......織斑先生が教えたからボーデヴィッヒはあそこまで強くなる事が出来たんです。

織斑先生が居なかったら多分今も変わらずに落ちこぼれだったのままだったでしょうし」

 

「......だから、織斑先生は間違ってなんかいません。

胸を張ってください」

 

そう言うと、

 

笑いながら答えた。

 

「ふふ、いやなに、まさかこんな事を言われるとはな」

 

「すまんな、ありがとう。軽くなったよ」

 

「......いえ、お力になれたのなら幸いです」

 

「さて、この前といい、今日といい、世話になったからな。あとで礼でもしよう。待っているといい。

ではな」

 

そう言うと行ってしまった。

礼なんていいのに。

 

 

 

 

 

ーーーー side 千冬 ーーーー

 

 

また相談に乗ってもらってしまった。

大河は本当に優しい。

今度何か奢るとしよう。

 

 

しかしボーデヴィッヒには困り物だな。

あのままじゃ何をやらかすか分かったもんじゃない。

 

あまり頼りたくはないが、大河に少し頼むか。

 

 

ーーーー side out ーーーー

 

 

 




今日のちーちゃんは短めに。
また投稿しますんで待っててください。


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34話目





 

織斑先生との会話が終わった後、

部屋に戻ったらデュノアがおった。

なんでや?

しかもなんか荷物広げてるし。

こいつはホモか?

 

「......何故ここにいる?」

 

とりあえず聞いてみたら、まさかの返答に混乱する事になる。

 

「え?ここって1045室だよね?間違ってた?」

 

「......いや、そうだが......

何故俺の部屋にいる?」

 

「あれ?聞いてない?

僕ここの部屋なんだよ」

 

俺なんも聞いてないんだけど!?

 

「......全く聞いてないな」

 

「そうなの?えっとじゃあ」

 

そう言ってこちらにくる。

 

「僕はシャルル・デュノア。これからよろしくね?」

 

そうか......

まだ挨拶もしてなかったな。

アリーナに向かった時も追っかけられて時間が無かったからな。

 

「......大河輝義だ。よろしくな」

 

とりあえず挨拶をした。

 

 

ーーーー side シャルロット ーーーー

 

 

今日は男としてIS学園に転校する日だった。

 

 

お母さんが死んでからお父さんに引き取られて本当に大変だった。

本妻の人に叩かれたり、ISの適正検査で適正がある事が分かって、急遽IS学園に転校する事になって。

本当に大変だった。

 

まさか男として転校するなんて聞いてもいないし、思ってもいなかった。

確かにデュノア社は今経営が大変だって事は知ってる。

ウチはラファールが主力商品で汎用性も高いし拡張領域も広いから、色んな武器が積める。

世界的なシェアも誇っている。

だけど、それでも第二世代だから他国の第三世代には劣る。

乗り手の力によっては通用するけど、やっぱり性能では間違いなく劣っている。

 

それに欧州統合防衛計画(イグニッションプラン)もある。

フランスはこの主力ISの選考レースに完全に乗り遅れてる。

政府はデュノア社に圧力をかけて早く試作第三世代の開発を進めるように言ってきた。

そんな時だった。男性操縦者が現れたってニュースで流れたのは。

そんな時会社は僕という使い勝手のいい駒を見て近付こうとしたのだろう。

僕はIS学園に男になって、送り込まれる事になった。

織斑一夏の白式のデータ、もしくは生体データのどちらか。

無理ならば二人目の大河輝義の生体データを取って来る事になった。

白式は近接特化とはいえ、第三世代機だからそのデータが手に入ればかなりの進歩にはなる。

これがダメでも二人のうちのどちらかの生体データが手に入れば日本が秘匿しているものを手に入れられる。

これを解析して男性がISを使えない理由が分かれば他の男性も使える事にも繋がる。

他の欧州諸国に大きな差をつけられる。

成功すれば政府にも会社にも大きな利益になる。

だけど失敗すれば政府の上層部にも今回の件は食い込んで実行されてるから、間違いなく政府首脳陣は退陣の上牢屋行きになるだろう。

会社も同じだ。

間違いなく倒産か、他の会社に吸収されるだろう。

だけど、皆自分の見たい事や聞きたい事、都合のいい事しか取り入れなかった。

バレれば僕も牢屋行きは間違いない。

だって技術や情報を持ち出そうとしたのだから、産業スパイだし。

不安だなぁ......

 

 

 

うひゃぁ!?

 

いきなり入って来たから焦ったよ〜......

荷物を広げてたから下着とか出してたから慌てたよう......

転校初日にバレるとか洒落にならないってば......

初日からこの調子じゃ不安しかないなぁ......

 

 

 

ーーーー side out ーーーー

 

 

 

 

なんかここ最近色々と巻き込まれすぎじゃね?

デュノアは同じ部屋になるし。

織斑と一緒だと思ってたわ。

てか、こいつ本当に男かよ?

なんかいい匂いするし、男にしちゃ小さいし。

まぁそんな奴もいるか。

 

 



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35話目


他作品を書いてて遅れました。
申し訳ねぇ。



 

 

ふらふら歩いていると、織斑先生に声を掛けられた。

 

「すまんな、急に声を掛けて」

 

「......いえ、特にやる事も無かったので大丈夫です」

 

「で、要件だがな......

ボーデヴィッヒを少し気に掛けてやってはくれんか?」

 

なんで俺?

絶対俺より適任いるだろ。

箒とか?デュノアでもいいかも。

 

「......何故ですか?」

 

「この前お前も言ったようにあいつは危ういからな......

正直何をしでかすか分からん。その時に私がすぐに対応出来ればいいが、出来なかった時には頼みたい」

 

そういう事か。

まぁ別に構わないからいいけど。

 

「......分かりました」

 

「すまんな、面倒かけて」

 

ありがとうでいいのに。

 

「......先生、こういう時はありがとう、でいいんですよ」

 

そう言うと、少し笑いながら、

 

「フッ、そうか。なら、ありがとう」

 

そうそう、織斑先生も美人なんだから笑ってる方が絶対にいい。

いつものピリピリした雰囲気があるから、笑うとギャップでさらにいい。

 

 

とりあえず、楯無さん達との訓練に行きますかね。

 

 

 

 

 

 

楯無さん居なかった。

どうやら先程、仕事がまだ終わってないからって虚先輩に連行されたんだって。

あの人、仕事サボりすぎじゃね?

俺この前虚先輩に釘を刺しといてくれって言われたんだけど。

 

「輝義、今日も頼むぜ!」

 

「......分かっている。

さぁ、何処からでもいい。かかってこい」

 

そう言うと、織斑、鈴、セシリア、箒、デュノアが同時に攻撃を開始した。

デュノアは織斑が誘ったらしい。

 

そもそもなんで五対一などという事をやっているのかと言うと、この前のアリーナでの事もあるが、少ない時間で経験を積む為。

これを全員やる。

そうすれば、非常事態の時、最大五人の相手をする事が出来るようになる。

同格、ないしは格下という条件になるが。

一対一においても、複数を相手した時よりも余裕を持って戦う事が出来る。

 

「フッ!!!」

 

織斑が斬りかかってくる。

だが、まだまだ遅い。

 

「遅い!」

 

「っ!?まずっ!?」

 

パパパパパパパパパパッ!!!!!

 

銃声が響き渡る。

 

「そうはさせないよ!」

 

デュノアの射撃によって織斑にトドメを刺し損ねた。

 

「私を忘れてんじゃないわよ!」

 

「分かってる!」

 

鈴が斧を振り被りながら、叫ぶ。

 

「その癖、まだ直せていないな!!!」

 

「そうね!」

 

鈴が目配せをする。

 

ッ!?

箒と織斑か!

 

ガギン!

 

「これも防ぐのかよ!?」

 

「防がれた!?」

 

「攻撃に重みがない!

そんなんじゃいくらやって弾かれるぞ!

こんな風にな!!!」

 

「オラァ!!!」

 

この一撃で二人を吹き飛ばす。

これで何秒か時間が稼げた。

これでデュノアとセシリアの対処が出来る!

 

まずはデュノア。

中距離からの援護射撃があるとやりにくい。

しかもマシンガンとかで弾幕を張るもんだから、

仕留められる!という時に仕留めきれない。

 

 

ドンッ!!!

 

瞬時加速で一気に距離を詰める。

 

「オラァ!!!」

 

「うわぁぁぁぁ!!!???」

 

これでデュノアは脱落。

 

セシリアに向かおうとしたが、箒達が体制を整えて再び向かってきた。

 

不意に撃たれないようにセシリアにも意識を向けながら、三人と斬り合う。

正直、鈴の至近距離での衝撃砲さえ気を付ければ後は問題ない。

 

 

まずは箒を、続いて織斑。

最後に鈴を倒してからセシリアに向かう。

 

「また私が最後ですか?

浮気者ですわね!」

 

「すまんな!

替わりにこれからしっかり相手してやる!」

 

言った瞬間に撃ってくる。

避けても安心は出来ない。

理由はいつのまにかセシリアが偏向射撃を使えるようになったから。

 

まぁそれでも勝てたが。

 

 

 

 

「相変わらずつえぇなぁ、輝義は」

 

「ほんとよ。五対一でなんであぁも動けるのかしら?

不思議でしょうがないわ」

 

「......何というか、アリーナでの一件以来、やたらと気配に敏感になってな。皆が特に殺気とかを纏わずに普通にしていても感じられるぐらいにはな」

 

そう、本当に理由が分からないが気配に敏感になったのだ。

正直目を瞑っていても正確な位置や、攻撃が何処からくるのかとかも分かる。

 

「私の偏向射撃も通用していませんし」

 

まぁ、セシリアのはそう弾数が多い訳じゃないから、なんとでもなる。

 

「輝義強すぎじゃないかな?

撃った弾を斬り落とすとか訳がわかんないよ。

もしかして、サイボーグか何かなの?」

 

お前は何故俺を人外認定しようとする?

俺はどこまで行っても人間だ。

 

 

 

そんな時だった。

こちらに向けられている敵意を感じたのは。

 

「ッ!?」

 

ドォォォォン!!!

 

クソッ!!!

ボーデヴィッヒの奴いきなり撃ってきやがった!!!

こっちはISを展開してないんだぞ!?

 

俺は急いでISを展開させる。

間に合え!!!

 

ガギィィィン!!!!!!

 

間に合った!!!

ギリギリのところで砲弾を斬り落とせた。

 

「きゃっ!?」

 

「うおっ!?」

 

「ちょっと!!!なんなのよ!!!」

 

「いきなり撃つとか危ないなぁ!!!」

 

皆の気持ちも分かる。

さて、何故こんな事をしたのか聞かなくてはな?

 

「......おい、ボーデヴィッヒ」

 

「なんだ?」

 

「......お前、今何故撃った?」

 

「何故?理由が分からないのか?」

 

「......こっちは全員ISを展開していなかった。

もし俺が間に合わなかったら、皆死んでいたんだぞ?」

 

「フンッ、それがどうした?

五人がかりでたった一人も倒せない奴らなぞ、別にどうでもいい」

 

こいつは......

頭がおかしいんじゃないか?

皆は一言も発しない。

 

「......お前は一人でも俺に勝てるという事か?」

 

「当たり前だろう?」

 

「......そうか......

なら今やってみるか?」

 

「何?」

 

「......今ここで俺と戦ってみるか、と言ったんだ。

どうする?逃げたって構わないぞ?

見ている他の生徒達はどう思うだろうな?

無防備な人間にしか引き金を引けない臆病者、とでも思うんじゃないか?」

 

「貴様ッ!!!

いいだろう!!今すぐその減らず口を叩けなくしてやる!」

 

今、俺は多分今までで一番キレてる。

理由なんて分かりきってる。

皆に手を出した事。

それともう一つ。

束さんが、宇宙に行くために作ったもので人を殺そうとした事だ。

 

「お前は開発者がどんな事を思いながらISを開発したのか知っているのか?」

 

「ふん、宇宙に行くためであろう?」

 

「なら何故、それで人を殺そうとした?」

 

「開発者の意図がどうであれ、今は兵器だ。

兵器は人を殺すものだ。利用になんの問題がある?」

 

あぁ、人間ってのは、自分がキレていると、キレている理由を自覚するとここまで冷静になれるものなのか。

 

「......こいつと戦う事になった。すまんが、ちょっと観覧席にでも行っててくれ」

 

「輝義さん!落ち着いてくださいまし!」

 

「そうだ!輝義、今ここで怒っても何にもならない!」

 

セシリアと箒に止められる。

だがなぁ......

今回ばかりは矛を収められそうにない。

 

「......大丈夫だ」

 

「でも!」

 

「早く行け!!!」

 

はぁ......

今、自分でも嫌になるぐらい汚い声だったな。

後で謝らなきゃな。

 

 

よし、皆は行ったな。

 

「......じゃ、始めるとしよう」

 

「二度と私に逆らえなくしてやる」

 

 

俺はボーデヴィッヒのその言葉を聞いた瞬間に斬りかかった。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー side 一夏 ーーーー

 

 

俺達は、今観覧席で輝義を見守っている。

あいつは、俺達が攻撃された事に対して怒っている。

自分が攻撃されたからじゃなくて。

 

 

怒った輝義を見たとき、怖くて何も話せなかった。

皆そうだった。セシリアも箒も鈴もシャルルも。

あんな輝義を見たのは初めてだった。

いつも優しい輝義が、あんなに変わるなんて思ってなかった。

 

だけど、輝義がラウラと戦うってなった時、

セシリアと箒だけは止めた。

この二人は輝義の事が、好きだからだろう。

多分千冬姉も。

鈴は分からない。

最近、輝義をよく見ているってぐらいしか分からない。

 

まぁそれは置いておいて。

 

二人は輝義を止めた。

だけど、輝義は止まらなかった。

 

それどころか、輝義は怒鳴ったのだ。

初めて聞いた声だった。

 

流石に二人も諦めたのか、観覧席に行った。

 

 

「その、二人共大丈夫か?」

 

「......何がですか?」

 

「ほら、その、輝義がさ......」

 

「あぁ、その事ですか?」

 

二人に聞いてみた。

そうしたら、以外な答えが返ってきた。

 

「......正直かなり悲しかったですわ」

 

続けて箒が口を開く。

 

「だがな、あれだけ私達の事で怒ってくれたんだ。

嬉しい方が大きいのだ」

 

「えぇ、ですから今は輝義さんを見守る事に致しますわ」

 

「だが、私達に怒鳴ったのは事実だ。後で何か奢ってもらわなければな」

 

「ふふっ、そうですわね」

 

そっか。

二人はそうなんだな。

 

なら、俺もあいつの事を信じて見守ってやらなきゃな

 

ーーーー side out ーーーー

 

 

 

ボーデヴィッヒと戦い始めてから、2分程たった。

正直強いとは思う。

だけど、それ程でもない。

 

「くっ!?」

 

「......どうした?さっきから押されっぱなしだぞ?」

 

「黙れ!」

 

 

そうしていたら、放送が入った。

 

「大河!ボーデヴィッヒ!

お前達は何をやっている!?」

 

織斑先生の声だった。

 

 

......見られたくは無かったんだが。

しょうがない。

 

「今すぐに武器を格納しろ!」

 

指示に従う。

流石に織斑先生からの言葉は聞くらしい。

 

「両名はすぐに職員室にこい!

関係した生徒もだ!」

 

 

 

更衣室に戻って着替える。

 

「......先に行くぞ」

 

「あぁ、俺達も後から行くからな」

 

「......あぁ」

 

そう言って皆と別れた。

 

 

 

 

 

 

職員室に着くと、

取り調べ室みたいな所で待たされた。

一時間程だろうか?

待っていると、織斑先生が入ってきた。

 

「待たせたな。織斑達に話を聞いていた」

 

「......いえ、大丈夫です」

 

「さて、今回の件だがな......」

 

悪さをした事は分かっている。

 

「......どんな罰でもお受けいたします」

 

「今回の件は不問となった」

 

「は?」

 

今織斑先生はなんと言った?

不問?

訳が分からない。

学園の校則には私闘は禁止すると書かれている。

 

「......何故ですか?」

 

「皆に話を聞いてな。

お前はあいつらの為に怒ったんだろう?」

 

「......確かにそうですが......」

 

「という事だ。

まぁ流石に何も無しでは不味いからな。

明日までに反省文を三枚提出する事。

これだけだ」

 

正直納得がいかないが、納得するしかない。

 

「......分かりました」

 

「よし、この件はこれで終わりだ」

 

「......一ついいですか?」

 

気になった事があるので聞いてみる。

 

「なんだ?構わないぞ」

 

「......ボーデヴィッヒはどうなりましたか?」

 

「あぁ、あいつは学年別トーナメントまでの謹慎だ。

無防備な相手に武器を向けた。あまつさえ発砲もしたんだ。これでも軽い方だ。

本来なら退学になってもおかしくはないんだがな」

 

トーナメントまでの謹慎か。

二週間ほどか?

 

「......教えて頂きありがとうございます」

 

「構わないと言っただろう?

ほら、あと一時間半ぐらいで消灯だ

部屋に帰って休め」

 

「......はい。

では、おやすみなさい」

 

「あぁ、おやすみ」

 

 

 

 

さて、そうしたはいいが、飯どうするかな?

八時半だからなぁ、もう食堂は閉まってるし。

今日は飯抜きだな。

そう思っていたのだが......

 

 

 

部屋に帰ると皆が居た。

楯無さんも簪もいる。

虚先輩に布仏まで?

しかもいい匂いがする。

 

「......何をやっているんだ?」

 

「あぁ、帰ってきたのか。お帰り」

 

「輝義さん!

お帰りなさいませ!」

 

「輝義君大変だったわねぇ。

仕事してたらいきなりあんな報告があってびっくりしたわよ?」

 

「てるてるたいへんだったねー。

大丈夫だったー?」

 

皆、口々に俺を心配する。

それはいい。

とりあえず皆がここにいる理由を知りたい。

 

「......何故皆ここにいるんだ?

しかも料理まで」

 

すると箒が話し始めた。

 

「元はと言えば私達を庇ってこうなっただろう?

だから、せめてもの礼だ」

 

「......別に気にしなくても......そうしたら楯無さん達は?」

 

「面白そうだから来ました!」

 

この人は相変わらずだな。

 

「まぁでもね?私達も輝義君の事が心配だったのよ?」

 

そうか......

皆に心配かけたんだよな。

謝らなくちゃな。

 

「......心配を掛けてすまない」

 

「むっ、そういう時はありがとうだろう?」

 

箒に言われてしまうとは。

 

「......皆、ありがとう」

 

するとそこへ織斑が、

 

「飯が出来たから食おうぜ!

ちなみに俺と箒、更識先輩が作ったんだぜ!」

 

「......そうなのか?」

 

「あぁ!だから早く食べてみてくれよ!」

 

そう急かされた。

 

「......分かった」

 

「じゃ、皆で」

 

「「「「「「「「「「頂きます」」」」」」」」」」

 

こ、これは!?

一口食べてみてわかる。

めっちゃめちゃうまい!!!

 

「おぉ......!美味いぞ!」

 

「まじか!?やったぜ!」

 

「て、輝義?これも食べてみてくれ」

 

そう言って箒が勧めてきたのは唐揚げ。

うーむ、これも美味そうだ。

 

「......頂きます」

 

おぉ!美味い!

外はサクサク、中はジューシー!

 

「美味い......!美味いぞ箒!」

 

「そうか......良かった。

それは私が作ったんだ」

 

そうだったのか。

それにしても美味いな。

三人は料理上手、と。

記憶しておこう。

 

 

そうして時間は過ぎていった。

 

「じゃ、また明日な」

 

「......あぁ」

 

「おやすみ」

 

「おやすみなさい、輝義さん」

 

「輝義、おやすみ」

 

「おやすみー、輝義君」

 

「てるてるおやすみー」

 

「おやすみなさい、輝義君」

 

「また明日ね!おやすみ輝義!」

 

それぞれの部屋戻った。

さて、風呂に入って寝るとしよう。

 

 

 

「輝義、おやすみ」

 

「......あぁ、おやすみ」

 

最後に同室のデュノアと挨拶をして眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

デュノアが居ないので部屋で一人のんびりしていた。

その平穏は唐突に破られた。

 

「てる君!久しぶり!」

 

シュワッ!?

いきなり束さんが現れた!

 

どうする?

たたかう

むりだ!かてるきがしない!

 

にげる

だめだ!にげきれるきがしない!

 

たすけをよぶ < 選択

おりむらせんせいならなんとかできるかも!

 

 

「だから待ってってば!

なんでちーちゃん呼ぼうとするの!?

そんなに束さんが嫌いなの!?」

 

「......いえ、束さんは好きですよ」

 

「へっ!?」

 

「......ただ、いきなり現れるのはやめてください。

物凄いびっくりするので」

 

「えへへー、てる君が好きって言ってくれた......」

 

「......束さん?」

 

「ひゃっ!?

あぁ、ごめんね」

 

「......今日はどういったご用件で?」

 

「お礼を言いに来たのさ!」

 

お礼?

なんかしたっけ?

 

「その顔は分かってないって感じかな?」

 

「......はい」

 

まじでわからない。

なんでや?

 

「えっとね?あの銀髪娘と戦った時に、

ISを兵器だって言ったでしょ?」

 

「......えぇ」

 

「その時にてる君は怒ってくれたでしょ?」

 

「......はい」

 

「これが理由だよ」

 

「......これがですか?

礼を言われるような事はしていませんが......」

 

「いや、それは間違いだよ。

他の人がどう思ってるかは分からない。

多分皆、兵器だって思ってるかもしれない。

だけど、てる君はその事に怒ってくれた。

私にとっては凄く嬉しい事なんだよ?」

 

確かにそうかもしれない。

だが、わざわざ礼を言われるほどの事じゃないだろうに。

 

「あ、その顔はそんな事ないって思ってるでしょ?」

 

「......はい」

 

「まぁいいよ。でもね、ありがとう。

私の夢を守ってくれて」

 

......こう言われては仕方がない。

受け取っておこう。

 

「......どういたしまして」

 

「うん!」

 

束さんは嬉しそうに笑った。

 

そのあとはデュノアが帰ってくるまで話をした。

 

 

 

 







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36話目

いやぁ、俺って今考えるとここ最近、というかIS学園に入学してから色々と巻き込まれすぎじゃないですかね?

もう今年は厄年なんてもんじゃ済まないレベルだぞこれ。

お祓いにでも行った方がいいのかね?

 

まぁ、んな事は置いといて。

一昨日ボーデヴィッヒと色々あって、織斑先生とどうしたもんかね?と頭を捻ってるところ。

 

「本当にすまないな......

ここ最近大河には迷惑かけてばかりだ」

 

「......気にしないでください。まぁ色々ありはしますが、なんだかんだで楽しく過ごしていますから」

 

「そうか......

そう言ってくれると助かる」

 

にしても......

織斑先生また目の下にくまができてる。

ボーデヴィッヒの件であまり寝てないのだろう。

髪も、なんというか元気がない。

 

「......ちゃんと寝ていますか?」

 

「......はぁ......正直寝てないな」

 

「......何徹目ですか?」

 

「今日寝なかったら三徹だ......」

 

「......それは......

まさか山田先生も?」

 

「あぁ......」

 

うわぁ......

だから山田先生フラフラだったのか......

織斑先生も辛そうだしなぁ......

 

「......何か自分に出来る事があったら言ってください。手伝いますから」

 

「そう言ってくれると嬉しいよ」

 

織斑先生はため息をつきながら、申し訳なさそうにこちらを見る。

 

「すまんが、早速頼まれてくれるか?」

 

「......えぇ」

 

「少しでいいからボーデヴィッヒの様子を見てきて欲しいんだ」

 

「......ボーデヴィッヒを、ですか?」

 

「あぁ、嫌だったら断ってくれて構わん」

 

「......そういうわけでは......理由を聞いてもよろしいですか?」

 

別に嫌ではない。

ただ理由を知りたい。

 

「前にも言ったと思うがな、あいつはドイツ軍で面倒を見ていた事があってな」

 

確かにそれは聞いた。

しかしなんの関係が?

 

「ラウラがあぁなったのはある意味私の責任でもある。だから本当は私が行きたいんだか、更にダメな方へ行ってしまいそうでな。だから頼みたいんだ。何よりラウラは軍という世界しか知らない。だから大河が世界はもっともっと広いって事を教えてやって欲しいんだ。なんというか親心、とは違うんだが、やはり心配なんだよ」

 

そういう事なら断る理由なんてない。

 

「......分かりました。お任せください」

 

「そうか、ありがとう。

しかし責任重大だぞ?人間一人の人生が変わるかもしれんのだからな」

 

織斑先生はクックックッと少し楽しそうに笑った。

やめてくださいよ、そんなプレッシャーに耐えられる程俺の胃は強くありません。

まぁなんにせよ、請け負ったからにはしっかり勤めを果たさなきゃな。

 

「では、私は行くよ。まだまだ各国に今回の説明やら報告書を書かなければならない仕事が残っているんでな」

 

「......えぇ、では」

 

「ではな」

 

あ、言い忘れた事があった。

 

「......あぁ、織斑先生」

 

「ん?」

 

「......ちゃんと自分のお身体も大事にして下さい」

 

一瞬ぽかんとするがすぐに、

フッと笑って言った。

 

「あぁ、分かった。ありがとう」

 

そう言って立ち去っていった。

 

さて、俺も任された仕事をやりますかね。

まぁ時間が時間だから明日になるかな。

とりあえず今日は飯食って早めに寝るとしよう。

 

 

 

 

 

 

次の日の放課後。

俺はボーデヴィッヒの部屋に来ていた。

訓練は用事が出来たから行けないと伝えてある。

 

 

まぁ来たはいいんだけど......

 

「何をしに来た?あれだけ大口を叩いてこのザマなのを笑いに来たのか?」

 

この通り警戒心MAXです。

えぇ......

どうしよう?

こんな野良猫、いや狼か?もびっくりな警戒心じゃ無理じゃね?

とりあえず誤解を解かなければ。

 

「......そういうわけじゃない。様子を見に来ただけだ」

 

「ふん、ならもういいだろう」

 

そう言ってドアを閉めようとする。

 

「......まぁ待て。少し話をしようじゃないか」

 

何か少し悪役みたいになっちゃった。

 

 

 

 

部屋に入ったはいいものの.......

 

この沈黙は辛い......

だってボーデヴィッヒってばめちゃくちゃ不機嫌そうなんですもん。

今も腕を組んでこちらを睨んでくる。

何か話題を!?

あった!

 

「......ドイツ軍にいたそうだな?」

 

「あぁ、まだ現役で少佐だ」

 

あらびっくり。

少佐なんていうご立派な階級だった。

すげー(小並感)

 

「.......そうなのか?では織斑先生ともそこで?」

 

俺はこの一言を発した事を後に後悔する羽目になる。

 

「そうだ!そもそも私はいわゆるデザインチルドレン、作られた子供達という存在でな。試験管ベビーと言った方が分かるか?」

 

「......ボーデヴィッヒは、クローンか何かという事か?」

 

「まぁその認識で構わない。

私は軍人として戦う為に生み出された。

事実ISが世に出るまでは男の、それも特殊部隊の人間にですら負けた事は無かった」

 

「だが、ISが登場してから私はどんどん落ちぶれていった。ISの適性を向上する為の手術を受けた。

その結果は散々だった。

望まれた高いIS適性は手に入れられず、左目はこの通りだ」

 

そう言って見せてくれた左目は、右目とは違い黄金に輝いていた。

正直普通にオッドアイで綺麗だと思うが。

 

「そんな私を織斑教官はドイツ軍の中で落ちこぼれの場所にいた私をここまで引っ張り上げてくれたのだ!織斑教官はーーーーーーーーーー..............................」

 

そこからが長かった。

もう織斑先生の素晴らしさをひたすら語り始めたのだ。

三時間以上たっぷりと語って満足したのだろう。

やりきったという顔をしている。

ただやっぱり聞いておきたい事もあるから機嫌のいい今のうちに聞いておこう。

 

「......だがな、お前は織斑先生の顔に泥を塗る行為をした事は分かっているか?」

 

「私が?何をしたというのだ?」

 

まさか自覚がないのか?

あれだけの事をしておいて?

軍人だから分かりそうなもんだがなぁ?

まぁ教えてやればいいか。

 

「......お前は俺達に向かって砲撃しただろう」

 

「それがどうしたというのだ?」

 

「......それはお前の行動をあらかじめ防げなかった織斑先生の責任になるのは分かっているのか?」

 

「ッ!?」

 

今気づいたと言った顔だな。

おそらく冷静になっていなかったのだろう。

 

「......それにお前は織斑先生の教え子という立場でもある。これは織斑先生の教育が悪かったと言われても文句は言えない。わかるか?」

 

「......あぁ」

 

「行動の軽率さが分かったか?」

 

「......あぁ」

 

それともう一つ聞きたいことが。

 

「......ボーデヴィッヒは何故あんなに織斑を敵対視する?」

 

俺はこれが一番気になっていた。

だって謹慎くらう前まですれ違うたびに睨むし、視界に入れば睨むしでもうひたすら織斑の事を嫌っていた。

その理由が知りたかったのだ。

 

「それは......

織斑教官がモンドグロッソの第二回大会で優勝を逃したのは知っているな?」

 

まぁ知っている。

負けたというよりは不戦敗だが。

 

「......それがどうかしたのか?」

 

「教官が優勝を逃したのは織斑一夏のせいなんだ!

あいつは誘拐され、教官は助ける為に優勝を捨てたのだ!

だからあいつが誘拐されていなければ教官は優勝していたのだ!!何故教官はあんな軟弱者を助けたのだ!?」

 

まぁ気持ちは分からなくもない。

だが、それは間違いだ。

 

「......それは違う。織斑先生にとって一番大切な存在が織斑だったからだ。人間というのは、いや動物全てに言える事だがな、愛する者は命を懸けてでも守ろうとする。しかも織斑先生には家族は織斑しかいない。尚更だろう。誰だって大切なものの為に戦うのは当たり前の事だ」

 

「......そうかもしれない。だがそれは教官には必要のないものだ」

 

「......何が必要かは織斑先生が決める事だ。誰かが他人が決めていい事じゃないんだ」

 

「......それにその過去があったからこそ今のボーデヴィッヒがある。織斑が誘拐されていなかったら?織斑先生がドイツ軍に行かなかったら?今のお前はいない。違うか?」

 

「ッ......そうだ......」

 

「......それに織斑だって好きで誘拐された訳じゃない。

一度だけこの事について話してくれた事があってな。

相当悔やんでいたぞ?

自分がいなければ織斑先生は優勝していたと。

優勝していたと言い切る辺りあいつはシスコンかもな」

 

「だから織斑を責めないでやってくれ。

だれだって望んでその結果に至った訳じゃないって事を覚えておいて欲しい」

 

「......分かった」

 

「......ありがとう」

 

「......あぁ、構わない」

 

「一つ聞きたい。いいか?」

 

ボーデヴィッヒからの質問。

何を聞かれるのか?

 

「......なんだ?」

 

「お前は今のこの結果に満足しているか?」

 

まさかそんな事を聞いてくるとは。

かなり予想外だな

 

「............正直最初は嫌だった。

普通に人生を送るはずだったのに気付いたら強制的にここにぶち込まれて。家族とも満足に会えなくなって、ふざけるなって思った。悔しくて辛かった事もある」

 

「だがな、今は違う。織斑達に出会えた。こんな俺を怖がらずに話しかけてくれる皆に出会えた。騒がしいけど楽しい生活を送れてる。俺にはこれで充分どころかお釣りがあってもおかしくはないぐらいなんだ」

 

「だから俺は断言できる。今のこの結果に大満足だと」

 

「そうか......」

 

「......大丈夫だ。ボーデヴィッヒにもすぐにかどうかは分からない。だけど絶対に満足のいく未来があるはずだ。それは焦って手に入れるものじゃない。ゆっくりでいいんだ」

 

「お前は......もしその途中で私が挫けそうになったら支えてくれるのか?」

 

「......いくらでも支えてやる。だから自信を持って胸を張って生きればいいんだ。誰かと違うところにコンプレックスを持つ必要はない。それは他の誰も持っていないものだ」

 

「......ボーデヴィッヒは左目は嫌いか?」

 

「あぁ、忌々しい」

 

「......俺はそうは思わない。とても綺麗だと思う。

誰も持っていない。それは捉え方によっては世界でたった一つの宝物と同じだ」

 

「......くっくっくっ......

あはははははは!」

 

!?突然笑い出し始めた!?

何か変なこと言った!?

 

「......おい、どうした?」

 

「い、いや、そんな事を言われたのは初めてだ!

あはははははは!」

 

「......なら笑わなくてもいいだろう」

 

「あははは、そう怒るな。おかしくて笑ってるんじゃない。嬉しくて笑っているんだ」

 

「......ならいい」

 

「ありがとう、心が軽くなったよ」

 

「......まぁ役に立てたのなら幸いだ」

 

「あぁ、そうしたらもう部屋に帰るといい。九時だからな。あと一時間程で消灯だろう?」

 

「......そうだな、それじゃ帰るとする」

 

立ち上がり、ドアに向かうと声を掛けられる。

 

「なぁ......その、また来てくれるか?」

 

まさかそんな事を聞いてきたのか?

答えは決まっている。

 

「......毎日は無理だが、来て欲しいのだったら来てやる」

 

そう答えると、初日や今までが嘘の様な顔で、笑いながら言った。

 

「そうか、ありがとう。楽しみにしている」

 

そうやって笑っていればいいのに。

 

 

この後俺は部屋に戻った。

そこで見た光景に度肝を抜かれるとは知らずに。

 

 

 




いやぁ、長い!
調子乗って書いたらこうなった。


あとこの時間になると眠いから文が変かも。


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37話目

皆さんお待ちかねのラッキースケベ(?)イベントですぜ!!!
尚余裕でシリアスに突っ込む模様。
もうシリアスはお腹いっぱいなんだよぉ!
前回も書いたじゃん!


でもこうしないと話が成り立たなくなるので仕方ない。
諦めよう。



「キャァァァ!?!?!?」

 

「申し訳ありませんでしたぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

俺は土下座をした。

今に至る説明をするには少し前に遡る。

 

 

 

 

ボーデヴィッヒとの話が終わって部屋に戻る。

ドアを開けると誰も居なかった。

しかし風呂場からは声が聞こえてくる。

声からしてデュノアだろう。

......しっかし女みたいに歌うな。

 

 

ガチャ

 

「はぁー、気持ちよかったぁぁ............え?」

 

「......デュノア、出たのか?それなら俺もは......いる......何?」

 

ドアが開く音がしたので声を掛けながら振り向くと、そこには見た事のない金髪美少女がががががが!?

 

えっ!?何!?どういう事!?

どちら様!?

あれ、なんかデュノアに似てる!?

まじどういう事!?

 

「デュ、デュノアか......?」

 

そう声を掛けると顔を赤くしながら、

 

「キャァァァ!?!?!?

 

叫び声を上げた。

そりゃそうだろう。

なんたって男に裸を見られたんだから。

そうなると俺は必然的に行動は決まって来るわけで、

 

「申し訳ありませんでしたぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

その場に勢いよく土下座をした。

やべぇ!?覗きじゃん!?犯罪じゃん!?逮捕!?刑務所!?人生お先真っ暗!?

 

やべぇやべぇやべぇと考えていると声を掛けられた。

 

「......えっと、その、輝義?」

 

「はい、なんでございましょう?

如何なる罰もお受けいたします。どうか命だけは......!」

 

「いや、あの大丈夫だから、ちょっと部屋の外に出ててくれないかな......?」

 

「......分かりました。晒し首という事ですね?」

 

「だから違うってば!殺しなんかしないよ!

大人しく待ってて!」

 

「はい!」

 

そう言われ部屋の外に出る。

そして自分への戒めのために正座をする。

 

「大河君何やってんの?」

 

「......自分への戒めです」

 

「え?」

 

通り過ぎる同級生に変な目で見られながら待っていた。

時間にして五分程だろうか?

ドアが開き、入る許可が出た。

 

「輝義?もう入っていいよ......?」

 

「......分かった」

 

流石に落ち着きを取り戻して、冷静になる。

だって夢のはずだもの。

俺は金髪美少女の裸とか見ていません。

 

部屋に入るとデュノアが待っていた。

いつものジャージを着ているが、胸がいつもと比べて明らかにでかい。

早速現実から逃げようとするが、そうは問屋が許さない。

 

「......輝義、話があるんだけどいいかな......?」

 

元気のない声で聞いてくる。

これはしっかり話を聞かなきゃダメなやつか。

 

「......あぁ、構わない。そっちのタイミングで始めてくれ」

 

「ふふっありがとう。優しいね、輝義は」

 

「......そんな事はない」

 

デュノアは軽く息を吸うと話し始めた。

 

「えっとね、僕は女なんだ。騙しててごめんなさい」

 

あぁ、だからか。

初日に違和感を感じたのは。

 

「ちゃんとなんで男としてここに来たのか説明するね」

 

そう言って語り始めた内容は、少なくとも俺一人でどうこうできるものではなかった。

 

「僕はね、いわゆる妾の子ってやつなんだ。僕の実家は知ってる?」

 

デュノアの実家?なんだそれは?

全く思い浮かばないから首を横に振る。

 

「僕の実家はデュノア社って言う会社なんだ。

輝義の乗っているラファールを開発した企業だよ」

 

あぁ!!

納得がいった。

 

「......それがどうした?」

 

「最初にも言ったけど僕は妾の子なんだ。

それでお母さんが死んじゃって。

で、僕はお父さんに引き取られたんだ」

 

よくあるかは知らないが、金持ちにありそうな話だな。

そう思うが、俺は声を発さずにただ聞く事に徹する。

 

「それからは大変だったなぁ。

家に行ったら本妻の人に思いっきりビンタされたんだもん。

その後にISの適性検査を受けて、適性がある事が分かってデュノア社のテストパイロットになったんだ。

そんな時だった。

世界で初めてISの男性操縦者が見つかったってニュースが流れたのは。それからびっくりだったよ。僕を男としてIS学園に送り込むなんて話が出てきてさ」

 

「元々デュノア社は第三世代機を開発出来なくて焦ってたんだ。

今、ヨーロッパじゃ欧州統合防衛計画っていうのが進められているんだけどね?今すぐにでも第三世代機を開発しないと計画の機体の選考レースに出られなくなっちゃうんだ。

それにどこの企業もだけど、国から補助金を貰ってISの開発を行ってるんだけど、補助金を打ち切られそうなんだ。

だから、今すぐにでも開発する必要があったんだ。

だから、IS学園に行って男性操縦者のデータと白式の機体データを盗んで来いって言われたんだ。

一夏のを取って来いって言われたけど最悪輝義のデータだけでもいいって」

 

「こんな事が成功するわけが無いのに、無理矢理実行したんだ。多分政府の方にも深く関わっているから実行に移せたんだと思う」

 

「男性操縦者のデータは日本が秘匿してるんだ。

個人情報であり、このデータを元に非人道的な事が行われないようにって。だからこのデータが手に入れば各国に差をつけられる」

 

「だけどバレちゃったからもうお終い。

強制帰国の上に責任とか罪を全部なすりつけられて刑務所行きかな。

どう考えてもスパイ行為だから」

 

ここまで黙って聞いていたが、あまりにも理不尽すぎる。

だが俺にはどうする事も出来ない。

 

......いや、何とかなるかもしれん。

 

「......デュノア、お前はどうしたいんだ?」

 

「どうって、どういう事?」

 

俺はデュノアの意思を確認する為に聞く。

 

「......お前はどうやって生きたい?

自由に生きたく無いのか?」

 

こう言った瞬間、デュノアは叫んだ。

 

「自由に生きたいよ!

普通の女の子として生きたい!

たくさん可愛い服を着たい!

誰かを好きになったりしたい!

だけど、もう無理なんだよ......

それとも輝義がどうにかしてくれるの......?」

 

「......あぁ、もしかしたら何とかできるかもしれない」

 

「やめて!そんな事聞きたく無い!

希望を抱いて、もしダメだったらもっと辛いから!」

 

「......デュノア」

 

「嫌だよぉ......

もう辛いのはやだ......」

 

「デュノア」

 

「......何?」

 

そう言って振り向いた顔は泣いていた。

 

「大丈夫。俺がどうにかするから。

だからちょっと待っていてくれ」

 

「......本当に?信じてもいいの?なんで助けてくれるの?」

 

「いいか?人間ってのは誰かに指図されて生きるもんじゃない。自分の、自分だけの幸せを見つけるために生きるんだ。

だから幸せのために戦うんだ。

自分だけじゃない。家族や友人、大切な人の為に戦う人もいる。

俺は、誰かの幸せの為に戦いたい」

 

「デュノアにだって幸せを求める権利がある。

デュノアが言ったように、可愛い服を着る自由がある。

誰かを好きになる自由がある。

普通の女の子として生きる自由がある。

だから、諦めるな。

挫けそうになったら、誰かに助けを求めればいい。

支えてもらえばいい。

俺だって沢山の人に支えられて今の俺があるんだから。

助けを求める事は恥ずかしい事じゃぁない」

 

そう言うとデュノアは泣きながら、

 

「助けて、助けてよぉ、もうこんな生き方をしたくない.....」

 

「あぁ、任せろ。超協力な助っ人に頼んでみる。もしダメだったらちょっとフランスに喧嘩売ってくる」

 

俺はそう言ってスマホを開き、ある電話番号に掛ける。

数コール後にある人が電話に出る。

 

「もすもすひねもす!、てる君が大好きな束さんだよ!

何の用かな?もしかして夜のお誘い!?」

 

「違いますから。

少し話をしてもいいですか?」

 

「うん?いいよ。でもちょーっと待ってね」

 

「はい」

 

そういうと、束さんはキーボードを叩き始めた。

デュノアが後ろから声を掛けてくる。

 

「ね、ねぇ?誰と電話をしてるの......?」

 

「......束さんだ」

 

「えっと、もしかして篠ノ之束博士......?」

 

「......そうだ」

 

そう答えるとデュノアはふらふらっとベッドに倒れこんだ。

大丈夫だろうか?

 

「あ、てる君?今この回線を盗聴されないようにチョチョイのチョイってやったから安心していいよー」

 

「......ありがとうございます」

 

「うん!

で、話って言うのは?」

 

俺は今までの事を話す。

そしてどうにか助けてもらえないかと頼んだ。

すると束さんは、

 

「ちょっとその子に変わって貰える?」

 

「......はい。デュノア」

 

ん?返事が返ってこない。

見てみると、膝を抱えてドナドナと聞こえて来そうなオーラを放っていた。

 

「......デュノア?」

 

「もう、馬鹿なんじゃないの?篠ノ之博士と繋がりある人に手を出すとか馬鹿なの?アホなの?死ぬの?」

 

おぉう!?

 

「ありゃ?どうしたの?」

 

束さんが聞いてくるのでこの惨状を見せた。

ちなみにホログラムディスプレイが出てきて顔が見えてます。

束さんすごい。

 

「......うわぁ、束さんでも関わりたくない感じなんだけど......」

 

「デュノア!」

 

「ひゃい!?輝義!?どうしたの!?」

 

「......束さんが替わって欲しいそうだ」

 

「えぇ!?僕に!?」

 

「......とりあえず替われ」

 

「あ、あの初めましてーーーー」

 

こっからは聞いてない。

あんまり聞くようなもんじゃないと思ったから。

 

 

 

 

「さて、てる君!私は協力するよ!」

 

「本当ですか!?ありがとうございます!」

 

「いいのいいの。この前はお世話になったからねー。恩返しだよ。まぁこれに限らず頼ってきてね」

 

「はい、ありがとうございました」

 

「うん、じゃおやすみ」

 

「おやすみなさい」

 

そう言って電話を切る。

俺はデュノアの方を向いて、

 

「良かったなぁ!これで自由になれるぞ!」

 

抱き上げてグルグル回る。

 

「ちょ、ちょっと輝義!?」

 

あまりにも嬉しくてついやってしまった。

 

「す、すまん......」

 

「ううん、ありがとう。私を助けるためにこうして手を貸してくれて」

 

「......気にするな」

 

「でもなんで助けようとしてくれたの?」

 

何故助けるのか理由を聞いてくる。

 

「......まぁなんというか、安い正義感が動かされたからだろうか?」

 

「ふふっ、何それ、変なの」

 

デュノアは笑いながら、そう言う。

 

「でも、ありがとう」

 

デュノアは笑いながら言った。

 

 

 

 

「......飯にするか」

 

「えっ!?輝義ご飯食べてなかったの!?」

 

「......あぁ、ちょっとボーデヴィッヒの様子を見に行っていてな。食い損ねた」

 

「えっと、じゃぁ僕が作ってあげようか......?」

 

まさかの申し出に一瞬固まるが、なんとか返事を返す事が出来た。

 

「......いいのか?」

 

「うん、僕は一生掛けても返せない恩があるから、これぐらいお安い御用だよ」

 

「......そうか。なら頼んでもいいか。」

 

「任せて!」

 

そう言ってキッチンに立った。

 

 

 

しばらくするといい匂いがしてきた。

今か今かと待ちわびていると、その時が来た。

 

「完成!お待ちどうさま!」

 

「おぉ......!」

 

すごい美味そうだ!

 

「えっと、

ラタトゥイユと、ジャガイモのグラタンだよ!」

 

らたとぅいゆ?

それはなんぞ?

 

「ラタトゥイユはね、沢山野菜が入ってる料理なんだ。

ジャガイモグラタンはその名の通りジャガイモが入ったグラタン!」

 

俺は待ちきれずに、うずうずしていると、

それを見たデュノアは、

 

「クスッ、どうぞ召し上がれ」

 

「頂きます!」

 

おぉ!

うまい!

何というかうまい!

俺に食レポは無理だな。

うまいしか言えない。

 

「どう?美味しい?」

 

「あぁ、とてもうまい!」

 

「そっか、よかった。でも誰も取ったりしないからゆっくり食べた方がいいよ?」

 

美味くてつい勢いよく食べていたら窘められてしまった。

 

「すまん、気をつける」

 

その間も食べ続ける。

するとあっという間になくなってしまった。

 

「......ご馳走様でした」

 

「はい、お粗末様でした。......これでいいんだっけ?」

 

「......あぁ、合ってる」

 

「じゃ、片付けちゃうね」

 

「......ありがとう」

 

「うん。すぐに入ると体に良くないから少ししたらお風呂に入ってね」

 

「......分かった」

 

しかし、何というか、デュノアはあれだな、お母さんだ。

 

 

 

 

風呂に入って出る。

 

「うわっ!?」

 

つい、パンツと短パンだけ履いて出てきてしまった。

そうだった、俺の身体は傷だらけなんだった。

見て気持ちのいいものではない。

すぐに着替えなければ。

 

「......さっきはすまない」

 

「う、うん。大丈夫」

 

「ねぇ?」

 

「......ん?」

 

「その身体の傷って......

あ、答えたくなかったら答えなくていいよ?」

 

別にそんなトラウマなものでもないから、教える。

 

「......学園が襲撃された事は知っているか?」

 

「うん。五機のISが襲撃してきたって聞いてるよ」

 

「......これはその時出来た傷だ」

 

「えっ!?どういう事?」

 

俺はあの時の事を話す。

その後俺がどうなったのかも。

 

 

 

 

「そうだったんだ......ごめんね、こんな事を聞いちゃって」

 

「......いや、構わないさ。

男にとって友人や家族を守る為に、ましてや女を守る為に付いた傷はどんな勲章よりも価値がある。

そして、皆に心配を掛けた事を思い出すためのものでもある。だから次、もしまたああいう事が起きたら、絶対に無事に帰る。そう思わせてくれるものだ」

 

「輝義は強いね」

 

「......そんな事はない」

 

「ねぇ、もし僕が助けてって言ったらどんな時でも助けに来てくれる......?」

 

こいつは何当たり前の事を聞いてくるのだろう?

 

「......当たり前だ。それが重要な式典だろうがなんだろうが助けに行く」

 

「ありがとう、嬉しいなぁ」

 

少し頬を赤くしてそう笑って言った。

 

「それじゃ寝よっか。織斑先生に怒られたくないしね」

 

「......あぁ、そうするとしよう」

 

「......ねぇ、輝義?」

 

「......なんだ?」

 

「今日だけでいいから、その、一緒に寝ちゃダメかな......?」

 

こいつは何を言っているんだ?

 

うっ!?

そんな目で見るな!

ダメだぞ!そんな事は!

 

 

 

 

ダメでした。

あんな不安そうな目で見られたら誰だって勝てねぇよ。

 

「えへへ、輝義の手すっごいおっきい」

 

「......いいから寝ろ」

 

「はーい」

 

楽しそうにしてんなぁ。

 

「よいしょっと」

 

「......おい、何してるんだ?」

 

「ん?腕枕だよ?」

 

何を当たり前の事を聞いてんの?

みたいな顔された。

俺なんか間違った事言った?

 

「今日だけだから」

 

「......まぁ今日だけならいい。だが明日は無しだぞ」

 

「うん!

そうだ、僕の事をいつまでもデュノアじゃなくてシャルロットって呼んでほしいな」

 

「......分かった。シャルロットは本当の名前か?」

 

「うん。シャルロットは僕の本当の名前なんだ。

お母さんがつけてくれた大切な本当の名前」

 

「......シャルロット」

 

「何?」

 

「おやすみ」

 

「うん、おやすみ輝義」

 

 

 

そうして俺達は寝始めた。

 

 

 

 




次回あたりにラウラとシャルsideの話を書こうかなと思ってます。


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38話目



いやぁ、描くのが面倒だったんで原作進めようかと思ったんですけど、書いとかないとなんか色々話が噛み合わなくなりそうだったんで軽めに書きます。



 

 

ーーーー side ラウラ ーーーー

 

 

アリーナであの二人目と戦った後、私は学年別トーナメントまで謹慎になった。

校則で私闘は禁止されている上に無防備な人間に砲撃した事が原因だそうだ。

たった一人に対して五人がかりで倒せない奴らなぞどうでもいい。

 

 

 

 

謹慎中に二人目が訪ねてきた。

笑いに来たのかと思ったが違った。

話をしに来たらしい。

 

 

二人目を部屋に入れてから、話をしたが私の行いが全て教官の責任になると気付かされた。

今までは冷静ではなかったのだろう、他人から聞かされて初めて知った。

あの教官が二連覇を達成出来なかった理由も話した。

話した事はこれだけではなかった。

私の出生や、この目の事など。

何故かはわからない。

だけどこいつになら話してもいいと思った。

 

 

織斑一夏の事は改めて聞かされて自分の考えを押し付けていただけと知った。

好きで誘拐されたわけではないと、誘拐が起きなかったら私が教官と出会っていなかった事、私が今この場にいなかった事。

 

 

そしてあいつは言った。

誰だって望んでその結果に至った訳じゃないと。

 

それからあいつに、

 

「お前は今の結果に満足しているか?」

 

と聞いてみた。

気になったのだ。

これだけ他人の事を考える奴の思いを。

 

少し間を置いて話し始めた。

 

「............正直最初は嫌だった。

普通に人生を送るはずだったのに気付いたら強制的にここにぶち込まれて。家族とも満足に会えなくなって、ふざけるなって思った。悔しくて辛かった事もある」

 

「だがな、今は違う。織斑達に出会えた。こんな俺を怖がらずに話しかけてくれる皆に出会えた。騒がしいけど楽しい生活を送れてる。俺にはこれで充分どころかお釣りがあってもおかしくはないぐらいなんだ」

 

「だから俺は断言できる。今のこの結果に大満足だと」

 

そうか......

こいつは強い。

肉体的は勿論だが、心が多分誰よりも強いと思う。

 

私は少し羨ましいと思った。

それを察してか、

 

「......大丈夫だ。ボーデヴィッヒにもすぐにかどうかは分からない。だけど絶対に満足のいく未来があるはずだ。それは焦って手に入れるものじゃない。ゆっくりでいいんだ」

 

こう言った。

強いだけじゃない。

優しいんだ。自分を殺すような事をした人間を許してしまうほどに。

底抜けて優しい。

 

だからだろうか?

ついこんな事を聞いてしまった。

 

「お前は......もしその途中で私が挫けそうになったら支えてくれるのか?」

 

何を言っているのだ?

こんな事を聞いても答えなんぞ分かりきっている。

断られるだけだ。

 

だが、違った。

 

「......いくらでも支えてやる。だから自信を持って胸を張って生きればいいんだ。誰かと違うところにコンプレックスを持つ必要はない。それは他の誰も持っていないものだ」

 

本当に本気で言っているのか?

正直、正気を疑った。

あまつさえ、私のこの目すら綺麗だと言い始めたのだ。

世界でたった一つの宝物だとも。

 

あまりにもおかしいと思う。

だけど、とても嬉しかった。

だからつい笑ってしまった。

少し拗ねたような顔になったが、

私を綺麗だなんだと言ったんだ、これぐらいで済むのだ。お釣りが来る。

 

 

 

私は自分の目が嫌いだった。

だけどこいつがこう言うのなら好きになるのもいいかもしれない。

 

 

大河が部屋を出る時に、

またしてもつい聞いてしまった。

 

また来てくれるか?と。

しかし断られなかった。

嬉しかった。

 

 

 

 

 

大河が帰った後、何故か凄く心が暖かかった。

なんだろう?この感情は?

 

 

 

ーーーー side ラウラ ーーーー

 

 






いやぁざっくりしすぎたかな?
まぁでもこれでラウラが落ちましたね。
ただ、ラウラ自身はまだ好きだと気付いていません。
これは後々書いていきます。


次回はシャルロット回かな?


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39話目



シャルロット回です。
金髪いいよね......


 

 

 

ーーーー side シャルロット ーーーー

 

 

やっぱり心配してた通りになっちゃった。

輝義が中々帰ってこないから先にお風呂に入っちゃおうと思って入ってお風呂から出た瞬間に輝義が戻って来てた。

物凄い驚いたし、恥ずかしかったよ。

だって、その、裸を見られちゃったんだもん。

完全に油断してたよ。

 

輝義も完全に訳わかんないって顔してたし......

そりゃそうだよね。

だって男だと思って接してた相手が女だったんだもん。

僕だって度肝を抜かれる。

それから輝義はおかしくなってたし。

いきなりジャパニーズドゲザし始めるし。

初めて見たよ。

命乞いし始めて、ちょっと外で待っててって言ったら晒し首にされるとか思ったらしいし。

 

 

 

 

それからちゃんと事情を説明して、僕の立場とかも全部話した。

まぁ正直バレたからどうなるかは大体想像出来るから。

どんな事を言われるのか怖かった。

 

 

だからあんな事を言われるなんて思ってなかった。

罵倒されたり、追い出されたり、先生達にバラされるかと思ってた。

 

輝義が最初に放った言葉は全然違った。

 

「......デュノア、お前はどうしたいんだ?」

 

なんでそんな事を聞くの?

だから思わず聞き返しちゃったよ。

どういう事?って。

そうしたら、

 

「......お前はどうやって生きたい?

自由に生きたく無いのか?」

 

こう聞かれた。

その瞬間に今まで表に出さなかった色々な感情が溢れ出て来た。

 

だから叫んだ。

思っていた事を。

自分がどうしたいかを。

 

「自由に生きたいよ!

普通の女の子として生きたい!

たくさん可愛い服を着たい!

誰かを好きになったりしたい!

だけど、もう無理なんだよ......

それとも輝義がどうにかしてくれるの......?」

 

だけどもうどうにもならないって事は分かってた。

だから最後はもう不安だった。

 

どうにか出来るのかって聞いちゃったよ。

 

だから、どうにか出来るかもって言われた時は信じられなかった。

もうあの時は何を信じればいいのか分からなくなってた。

気が付いたら叫んでた。

 

「やめて!そんな事聞きたく無い!

希望を抱いて、もしダメだったらもっと辛いから!」

 

ただでさえ辛いのにもうこれ以上辛いのは嫌だった。

 

「嫌だよぉ......

もう辛いのはやだ......」

 

泣きながらこう言っていた。

 

輝義が僕の名前を呼んでいた。

正直悪いとは思うけど、あんな体格に顔に傷がある人の声とは思えない、とっても優しい声で。

 

「大丈夫。俺がどうにかするから。

だからちょっと待っていてくれ」

 

多分僕を安心させる為に言ったんだと思ってた。

だけど、この一言に縋るしかなかった。

 

だから聞いた。

信じてもいいの?って。

なんで助けてくれるの?って。

 

 

聞いたら輝義はこう言った。

 

「いいか?人間ってのは誰かに指図されて生きるもんじゃない。自分の、自分だけの幸せを見つけるために生きるんだ。

だから幸せのために戦うんだ。

自分だけじゃない。家族や友人、大切な人の為に戦う人もいる。

俺は、誰かの幸せの為に戦いたい」

 

「デュノアにだって幸せを求める権利がある。

デュノアが言ったように、可愛い服を着る自由がある。

誰かを好きになる自由がある。

普通の女の子として生きる自由がある。

だから、諦めるな。

挫けそうになったら、誰かに助けを求めればいい。

支えてもらえばいい。

俺だって沢山の人に支えられて今の俺があるんだから。

助けを求める事は恥ずかしい事じゃぁない」

 

この言葉を聞いた瞬間、止まっていた涙がまた流れ始めてた。

私はもう何も考えなくても言葉を発していた。もう嫌だったから、助けてって。

 

そうしたら、任せろって、超強力な助っ人がいるからって。

ダメだったら、フランスに喧嘩を売ってくるって。

僕の為にここまでしてくれるなんて普通じゃない。だけど嬉しかった。

 

 

 

 

輝義が何処かに電話をかけ始めた。

 

相手が出たらしく、僕の事情とか色々説明した。

途中、少し間が空いたからふと気になっていた誰と電話してるのかを聞いてみたら、信じられない返答が帰ってきた。

 

篠ノ之束博士だった。

え?もう訳わかんないってレベルじゃないんだけど?

 

誰だってこんな事言われたら現実から逃げたくなるよ。

輝義に声を掛けられるまで膝を抱えてた。

 

輝義に篠ノ之博士に代わってくれって言われた時は心臓が止まるかと思った。

 

自己紹介をして、博士と話した。

 

「さて、私は君の事を助けてあげるよ。

他ならぬてる君のお願いだからね」

 

博士って他人に無関心だって僕は聞いたんだけど......

 

「今私達がやろうとしている事がどんな事か、分かる?」

 

正直、よく分からないから、

 

「......ごめんなさい、分かりません」

 

こう答えた。

すると、博士は言った。

 

「うん、分からないって正直に言ったのは束さん的にはポイント高いよ。じゃあ、説明するよ」

 

「いいかい?君達二人はフランスという国を敵に回すって事だよ。恐らく直接的な方法では危害を加えては来ないと思う。だけど、間違いなく君は代表候補生っていう立場も、専用機もなくす事になる」

 

それはなんとなく分かってた。

だから、あまりショックは大きくなかった。

だけど次の言葉は、凄くショックだった。

 

「それに、もし君が自由を手にしたら君はフランスへの入国は出来なくなる。そうなると、お母さんのお墓にも行けない。二度と会えなくなる」

 

これを聞いた時、泣きそうになった。

 

「でもね、てるくんはそんな事にならないように、もしそうなったら指名手配されようが構わない。フランスと喧嘩して絶対そんな事させないって言い切ったんだよ?

まぁ私的には一緒に逃亡生活を送れるからいいんだけどね」

 

輝義が?

なんで?

どうして他人の為にそこまで出来るの?

 

「......どうして輝義は、博士は僕の為にそこまでしてくれるんですか?」

 

「私はてるくんの為にやるんだよ。

でも、てるくんがなんでここまで出来るのかって、そりゃてるくんが優しいからだよ。それも底抜けてね。普通じゃないぐらい優しいんだよ、てるくんは。

だから、どれだけ辛い道のりでも手を差し伸べられるんだったら助ける。それがてるくんなのさ」

 

そっか......

そうなんだね......

嬉しいなぁ......

今まで誰も助けてくれなかった僕に手を差し伸べてくれるなんて、凄く嬉しいなぁ......

 

「だから、てるくんが覚悟を決めたんだ。君も、覚悟を決めて。

無理ならてるくんの為にも手を貸してあげられない」

 

もう、ここまで聞いて、輝義がどれだけ僕の為に動いてくれようとしているのか分かった。

だから答えは決まってる。

 

「もう覚悟は決まりました。お願いします」

 

「うん、分かった。

多分トーナメントが終わるあたりには女の子として生活できるようになると思うから、それまで頑張って隠し通してね」

 

「はい、ありがとうございました」

 

「じゃ、てるくんに代わって貰えるかな?」

 

「はい。輝義、博士が代わってって」

 

そう言って僕は輝義にスマホを渡した。

 

輝義は電話を切った瞬間に僕を抱き上げてきた。

しかもグルグル回り始めた。

 

ちょ、ちょっと!?

恥ずかしいよ!

 

でも、嬉しいって事は伝わってくる。

自分の事のように喜んでくれてる。

その事がすぐに分かった。

 

 

なんで助けようとしてくれたのか不思議だったから聞いてみた。

そしたら予想外な答えが返ってきた。

 

「......まぁなんというか、安い正義感が動かされたからだろうか?」

 

思わず笑っちゃった。

でも嬉しかった。

だから僕は笑いながら、

 

「でも、ありがとう」

 

心の底からの感謝を伝えた。

 

 

 

 

しばらく、と言っても五分くらいだけど、

輝義が、

 

「......飯にするか」

 

え!?ご飯食べてないの!?

びっくりしすぎて思わず、

 

「えっ!?輝義ご飯食べてなかったの!?」

 

こう言っちゃったよ。

だっててっきりもう食べたのかと思ってたから。

理由はボーデヴィッヒさんのところに様子を見に行ってたかららしい。

輝義は優しいから、しょうがないって言えばしょうがないのかな?

 

でももう食堂は終わっちゃったし......

そうだ!僕が作ってあげればいいんだよ!

そう提案すると、驚いた顔をしながら聞いてきた。

 

「......いいのか?」

 

そんなのいいに決まってるじゃない。

だって僕はどれだけ返しても返せない恩があるんだよ?

 

だから、

 

「任せて!」

 

張り切って作らなきゃね!

 

 

 

えっと、何にしようかな?

......ラタトゥイユとジャガイモのグラタンかな。

簡単だし、美味しいし。

ぱっぱと作って食べて貰おう!

 

 

 

 

出来た料理を持っていくと、待ってましたって顔に。

ふふ、なんかいいなぁこういうの。

理由の紹介をすると、

まだですか?もう食べていいですか?って顔で聞いてる。

思わず少し笑っちゃった。

まぁでもこれ以上待たせたら可哀想だからね。

少し笑いながら、

 

「クスッ、どうぞ召し上がれ」

 

そういうと、凄い勢いで食べ始めた。

よっぽどお腹空いてたんだね。

 

「どう?美味しい?」

 

そう聞くと、

 

「あぁ、とてもうまい!」

 

そう返ってきた。

よかったぁぁ......

少し心配だったんだよね。

 

でも、凄い勢いで食べるから

 

「そっか、よかった。でも誰も取ったりしないからゆっくり食べた方がいいよ?」

 

注意しちゃった。

早く食べると体に良くないからね。

でもその間も食べ続けてあっという間になくなっちゃった。

 

ここまで綺麗に食べてくれると嬉しいな。

 

 

 

輝義がお風呂から出てきた時、僕は輝義の身体を見て驚いた。

だって傷だらけだったから。

 

理由を聞くと全部話してくれた。

学園が襲撃された時に出来た傷だって。

その後二週間も眠っていた事も。

 

申し訳ない事を聞いちゃったなぁ......

謝ると、輝義はこう言った。

 

「......いや、構わないさ。

男にとって友人や家族を守る為に、ましてや女を守る為に付いた傷はどんな勲章よりも価値がある。

そして、俺は皆に心配を掛けた事を思い出すためのものでもある。だから次、もしまたああいう事が起きたら、絶対に無事に帰る。そう思わせてくれるものだ」

 

輝義は強いな。

 

だから聞いちゃった。

 

「ねぇ、もし僕が助けてって言ったらどんな時でも助けに来てくれる......?」

 

輝義はこう答えた。

 

「......当たり前だ。それが重要な式典だろうがなんだろうが助けに行く」

 

嬉しい。

もう凄く嬉しい。

多分耳とか少し赤くなっているかも。

 

 

 

本当はもっともっと輝義と話したいけど、

消灯の時間だから、寝ないと織斑先生に怒られちゃう。

 

だから、ベッドに潜る。

でも、なんか凄く寂しかった。

だから、輝義に聞いてみた。

一緒に寝てもいい?って。

 

最初は渋ったけど、許してくれた。

 

 

えへへ、なんか凄く安心するなぁ。

あったかくて手も大きくて、腕も太くて逞しい。

 

だからだろうか?

ちょっとした欲望が出てきてしまった。

 

その欲望とは、

輝義の腕を枕にして寝る。

もう凄くいい。

ベッドからも輝義の匂いがするから輝義に包まれてる感じがする。

 

 

 

少し気になる事がある。

それは輝義がいつまでも名前で呼んでくれない事。

だからお願いしたら呼んでくれた。

 

嬉しくて心があったかくなる感じが分かる。

これからもずっとずっと呼んでもらいたいなぁ。

 

 

 

 

多分この時にはもう輝義の事が好きになってたんだと思う。

 

 

 

ーーーー side out ーーーー

 

 





ラウラ短かったのにシャルロット長くなった......
ラウラ好きの方々、申し訳ない......


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40話目


時間飛ばします。
この調子じゃ書きたい話も書けない......


 

シャルロット実は女でした事件から一週間。

二日に一回ぐらいのペースでボーデヴィッヒの所に顔を出して、それ以外は織斑達と訓練という日々が続いている。

 

 

 

今日も朝の織斑先生との訓練を終えて、部屋に戻った。

いやぁ、トーナメント近いからか織斑先生ピリピリしてる。

仕事とかで忙しいんだろうな。

ただ、俺との訓練の時に解放されたって顔しながら斬りかかってこないで欲しい。顔がイキイキしてるし目が爛々と輝いて正直怖い。

 

 

「あ、お帰り輝義」

 

「......ただいま」

 

部屋ではシャルロットが既に準備を整えている。

トーナメントが終わるまでは男として生活して欲しいと言われた為、まだ男子用の制服を着ている。

 

シャルロットが朝飯を作っている間に俺はシャワーを浴びてくる。

こうしていると、丁度いい時間になる。

 

 

 

「じゃ、行こっか」

 

「......あぁ」

 

「忘れ物はない?」

 

「......大丈夫だ」

 

「じゃ、鍵閉めちゃうね」

 

「......頼んだ」

 

「よし、行こう。

......輝義、ちょっと待って」

 

「......ん」

 

なんだ?

なんか忘れたのか?

なら取ってきていいぞ。

待ってるから。

と思ったけど違ったらしい。

 

「輝義、ちょっとこっち向いて」

 

「......ん」

 

「ネクタイが雑になってる。

待ってて、今直すから」

 

俺のネクタイの結び方がダメだったらしい。

しょうがないだろ、キュッて上に上げると変になっちゃうんだよ。

 

「はい、これでいいよ」

 

「......ありがとうな」

 

「どういたしまして」

 

そうそう。

あの一件以来シャルロットが心から笑う事が増えた気がする。

いい事だな。

 

 

教室に着いた。

すると早速織斑が寄ってくる。

いい方あれだけど本当にそう表現するしか無いんだよ。いや、まじで。

俺かシャルロットのどちらかがいると必ず来る。

......あれ?ホモ?

 

「そういえばさ、輝義とシャルル最近距離が近いよな」

 

お前が言うか?

特大ブーメランだって分かってる?

ほら、箒達もお前それ言っちゃうの?って顔してんじゃん。

 

「......織斑、お前だけには言われたくない」

 

「えっ!?なんで!?」

 

「僕も一夏には言われたくないかなぁ?」

 

「シャルルまで!?」

 

「一夏、それは私達からしたら一夏もだぞ」

 

箒さん!もっと言ってあげて!

 

「まぁ輝義とシャルルもだとは思うが」

 

あれ!?

俺らも!?

 

 

 

朝のSHRの時間。

織斑先生からの一言によって教室は、大騒ぎになった。

 

「学年別トーナメントだが、急遽タッグマッチに変更になった。各自明日までにペアを見つけて申請しておくように。しなかった者はこちらがくじ引きで決めさせてもらう」

 

もう嫌だぁ......

間違いなくこの後女子が押し寄せてくるだろう。

......織斑目当てで。

心が抉られる......

 

 

SHR後、予想通り織斑の元へ女子が殺到する。

......悔しくなんかないからな。

俺には、箒達がいるし。

まぁ友人としてだろうけど。

ここ最近皆俺に対して距離が近い。

まさかねぇ?

 

「輝義は誰と組むんだ?」

 

うーむ、正直誰と組んでもいいんだけど、シャルロットの身バレの可能性を考えるとやっぱりシャルロットかね?

 

「......まだ分からんが、デュノアかもしれん」

 

「えっ」

 

待て待て待て。

俺をそんな目で見るんじゃない。

俺はホモちゃうぞ!?

 

 

そんな事があったが、それ以外は特に変わった事は無くいつも通りの時間が過ぎていった。

 

 

 

放課後、ボーデヴィッヒに今日の事を連絡する為に部屋を訪ねる。

 

 

 

「トーナメントがタッグマッチに変更になったか......」

 

「......あぁ」

 

「まぁ、誰と組んでも変わらん。

私はお前と戦えればいい」

 

ボーデヴィッヒさんはこんな調子です。

なんで俺狙われてんの?

 

「以前お前と戦った時は手も足も出なかった。

引き分けみたいなものだが、あれは私の負けだ。間違いなくな。

だから次こそは絶対に勝つ」

 

やる気満々じゃん。

そうするとくじ引き組になる訳ですか。

 

「まぁ、お前なら心配いらんだろうが、私と戦うまでに負けてくれるなよ?」

 

「......勿論だ」

 

「ならば早く訓練とやらに行くといい」

 

「......あぁ、そうさせてもらう」

 

そうして部屋を後にした。

 

 

 

その後は皆と訓練をして部屋に戻って風呂入って飯食って寝た。

あ、でもシャルロットが毎日ベッドに潜り込んでくるのはやめてほしい。

色々と不味くて寝れないから。

 

 

 



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41話目

本日二回目の投稿。

また時間を飛ばしてます。


今日からいよいよ学年別トーナメントが始まる。

俺は結局シャルロットと組んだ。

他の皆は、こんな感じの組み合わせになった。

織斑とボーデヴィッヒペア

セシリアと鈴ペア

箒と簪ペア

布仏は谷本さんと一緒らしい。

ちなみに簪は自分のISがまぁなんとかなるレベルまで完成したからそれで出場するらしい。

というか、織斑とボーデヴィッヒがペアとか大丈夫なんだろうか?

不安でしかない。

まぁでもなんとかなるか?

ボーデヴィッヒは俺狙いだし。

 

 

 

 

今は既に準決勝まで進んだ。

セシリアペアは今織斑ペアと戦っている。

箒ペアはこの一つ前の試合で負けてしまった。

布仏はかなり最初に負けたそうだ。

俺は順調に勝ち進んで決勝に駒を進めた。

 

 

お、今決着が着いたな。

織斑ペアの勝ちか。

 

てことは決勝は俺達対織斑ペアということか。

よし、あと十分程で決勝が始まる。

それまで身体をほぐしたり、ISの最終チェックを虚先輩と行う。

 

「輝義君、問題はない?」

 

「......はい、大丈夫です。武装も全部完璧です。

整備、ありがとうございました」

 

「お礼なんていいわ。それよりも決勝頑張ってね」

 

「......はい。しっかりやってきます」

 

「でも無茶は駄目よ?」

 

うっ......

釘を刺されてしまった......

 

 

 

そうして時間が来た。

 

「輝義、頑張ろうね!」

 

シャルロットが声を掛けてくる。

 

「......あぁ」

 

 

 

「大河ペア、アリーナへ入場してください」

 

ピット内にアナウンスが流れる。

さぁ!やってやろうじゃないか!

 

「大河、出ます!」

 

「デュノア、出ます!」

 

ワァァァァァァァァ!!!!!

 

アリーナに出ると織斑達も丁度出てきた所だった。

それにしても、観客が半端ない。

織斑先生曰く各国のお偉いさんも来ているらしい。

......今更だけど緊張してきた。

 

「輝義!」

 

「......なんだ」

 

「今日こそは俺が、俺達が勝つからな!

覚悟してろよ!」

 

......嬉しい事を言ってくれるじゃないか。

 

「大河、先日の借りは今日返す。

始まったら精々必死に足掻くがいい」

 

ボーデヴィッヒも俺を見て言う。

あぁ、楽しくなってきたじゃないか。

 

「......お前達のその刃、俺に届かせてみろ」

 

 

 

 

「両者、位置へ」

 

アナウンスが流れる。

俺達は位置に付いて直ぐにでも動ける態勢をとる。

 

「開始五秒前。四、三、二、一、試合開始!」

 

「おりゃぁぁぁぁ!!!」

 

合図と共に二人が俺に一斉に攻撃してくる。

やはり俺を狙って来るか!

今までの試合もそうだった。

俺ってばモテモテだね。

......うん、こんなモテ方は嫌だ。

 

「中々上手くなったじゃないか!」

 

「うるせぇ!一回も攻撃に当たってないくせに!」

 

そりゃそうだ。

当たってやるか。

当たってなるものか。

ボーデヴィッヒは、合間に砲撃を仕掛けてくる。

この砲撃がセシリアほどではないが中々精度がいい。

しかも爆発で効果が及ぶ範囲が広いから、避けるなりしないと辛い。

 

「デュノア!ボーデヴィッヒを頼む!」

 

「分かった!そっちはお願いね!」

 

そう言ってシャルロットをボーデヴィッヒへ差し向ける。

 

「......さぁ、これで一対一だ。

存分にやろうじゃないか」

 

「クソッ!!輝義は余裕そうだな!!!」

 

「......当たり前だ」

 

言いながら回し蹴りを叩き込む。

 

「グッ!?」

 

ふとシャルロットの方を見ると、押していた。

あの分なら大丈夫か。

 

「織斑、どうした?もう終わりか?」

 

「まだまだぁぁぁぁぁ!!!!」

 

再び斬りかかってくる。

俺は左側に受け流しながら後頭部に踵を落とす。

 

「ぐぅっ!?」

 

そのまま畳み掛けようとした時だった。

 

 

あああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!

 

あれはなんだ......?

ボーデヴィッヒのISが溶けていく?

 

俺は嫌な予感がしたので、ボーデヴィッヒの方へ飛んでいく。

 

「おい!ボーデヴィッヒ!」

 

「あ...う...た...すけ...て...」

 

そう言って飲み込まれていった。

クソッ!!

どうなってやがる!?

 

「輝義!」

 

「デュノア!何があった!?」

 

「分からない!でもあれ不味いよ!」

 

「んな事分かってる!」

 

クソッ、本当にどうなってるんだよ!

 

 

 

時は少し前に遡る。

 

 

ーーーー side シャルロット ーーーー

 

パパパパパ!!!パパパパパ!!!

 

私は今ボーデヴィッヒさんと戦っていた。

短連射で弾を撃つ。

だけど恐らくAIC(active inertial cancelle:慣性制御装置)によって全部とはいかないけど防がれてまともなダメージを入れる事が出来ない。

ただ、突破出来ないわけじゃない。

さっきミサイルを撃った後に射撃したらミサイルしか防げてなかった。多分複数の物を同時に止められないのだろう。

 

 

だから僕は賭けに出た。

 

思いっきり拡張領域に入ってるミサイルを叩き込む。

その間に接近する。

腕に装備したパイルバンカーをミサイルに気を取られているボーデヴィッヒさんの脇腹に叩き込む。

 

「な!?」

 

でも流石は軍人と言った所かな。

パイルバンカーを打ち込まれながらも、身体をこちらに向けてAICを使おうとする。

 

だけどそうはさせない。

まだまだ小型ミサイルがあるんだよね。

小さいからって言っても威力は折り紙つき。

直撃すれば間違いなく、かなりSEを持っていかれる。

 

だから僕を対応してもミサイルを対応しても必ずダメージは入る。

その時だった。

ボーデヴィッヒさんが声を張り上げたのは。

 

 

ーーーー side out ーーーー

 

 

ーーーー side ラウラ ーーーー

 

 

私は今フランスの代表候補生に追い詰められている。

パイルバンカーを腹に叩き込まれて、小型ミサイルの直撃を受けて。

あれだけこいつらを馬鹿にした私がだ。

 

その時、私は思った。

負けてたまるかと。

 

 

その瞬間、声が聞こえた。

 

(汝、力を欲するか?)

 

(汝、我に全てを委ねるか?)

 

誰の声かは分からない。

だが、私は答えてしまった。

シュヴァルツェアレーゲンにもっと力を寄越せと。

それがいけなかった。

 

「搭乗者の承認を確認......

Walkure Verfolgen system Bedienung(ヴァルキリートレースシステム 起動)」

 

そんな音声が流れた。

その瞬間身体に激痛が走る。

思わず声を上げた。

 

「あああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

痛い痛い痛い痛い!!!

やめろ!やめてくれ!

ISを停止することも出来ない。

 

 

私は意識を失った。

 

 

ーーーー side ラウラ ーーーー

 

 

 

俺達はボーデヴィッヒのISを見ているしか出来なかった。

アリーナにいる生徒やお偉いさん達も唖然としている。

すると、溶けたISが形を作り始めた。

 

あれは......

織斑先生......?

どういう事だ?

 

隣を見るとシャルロットがまさに驚愕の表情といった顔をしていた。

そしてこう漏らした。

 

「まさか......VTシステム......!?」

 

VTシステム?

なんだそれは?

 

「......デュノア、あれがなんだか分かるのか?」

 

「......うん、あれはVTシステム、ヴァルキリートレースシステムって言うんだけど......」

 

「......だけど?」

 

「本来ならアラスカ条約でどの国も組織も開発は禁止されているはずなんだ......」

 

「......だが、現にあそこにいるが?」

 

「うん、あれが本当にVTシステムだとしたら不味いなんてレベルじゃないよ」

 

今の言葉を聞く限りデメリットがあるっぽいな。

 

「......何が不味い?」

 

「あれって搭乗者にとんでもない負荷が掛かるんだ。だからあのままだと間違いなくボーデヴィッヒさんは死んじゃうよ」

 

......は?

死ぬ?

んなもんを載っけてんのか?

 

「研究者達の独断か、それとも政府の指示なのかどうかは分からないけど、どちらにしろ早く助けないと不味いよ」

 

見るとドイツの政府の人間と思われる奴らが青ざめていた。

それよりも、

 

「......あれを停止させる方法は?」

 

そこで通信が入った。

 

「大河!今すぐデュノア、織斑を連れて離脱しろ!

あれは本物のVTシステムだ!」

 

まじかよ......

俺っていっつも貧乏くじ引かされてんなぁ......

 

織斑先生に聞く。

 

「......あれを停止させる方法は?」

 

「ない!だから早く逃げろ!」

 

「......ボーデヴィッヒはどうなるんですか?」

 

「今教師で構成された鎮圧部隊を準備している!」

 

「......デュノア、間に合うと思うか?」

 

「多分間に合わないと思う。

あれって織斑先生をコピーしてるからね。しかも全盛期のモンドグロッソ優勝時の。

先生達が来ても勝てないよ」

 

「......分かった。

織斑先生、そういう事なのでボーデヴィッヒを助けに行ってきます」

 

「どういう事なのか全く分からん!

いいから逃げろ!」

 

確かに逃げた方がいいに決まってる。

だけど、俺は出来ない。

 

「......先生、俺はあんな状態のボーデヴィッヒを放っておくのは無理です」

 

「何を言っている!?

早く逃げろ!」

 

「......それに、何よりもボーデヴィッヒが助けてって俺に言ったんです。なら、男として助けなきゃいけない。助けないなんて男が廃る」

 

「あぁクソッ!!!

分かった!認めてやる!

しかし、ちゃんとボーデヴィッヒを連れて帰ってこい!」

 

「......はい」

 

「それとお前も無事に帰って来る事!これが条件だ!いいな!?返事!!!」

 

「はい!!!」

 

そこでまた通信が入る。

 

「てるくん!話は聞かせてもらったよ!

私も手を貸すよ!」

 

束さんだった。

 

「束!?お前いつのまに大河と知り合った!?」

 

あの織斑先生が驚いてる。

いいもの見れた。

 

「まぁまぁちーちゃん、今はそれどころじゃないでしょ?」

 

「ぐ......すまん、取り乱した。

で?手を貸すとはどういう事だ?」

 

「私が手に入れた情報を教えてあげる。

てるくんいい?

あの子は多分今の状態だと十五分持つかどうか。

多分十分って見ておいた方がいいね。

その間に決着を着けないとあの子は死んじゃうよ」

 

思ったよりも時間がある。

それだったらまだマシだ。

正直五分あればいい、ぐらいに考えていたからな。

 

「てるくん、あの子はアレの真ん中にいるよ。だから強引だけど、無理矢理引っ張り出して。そうでもしないと無理だからね」

 

「あと、強さだけど、紛い物だけど間違いなく全盛期のちーちゃんよりも強いよ」

 

まじかよ......

超絶ベリーインフェルノモードじゃねぇか。

 

「あれ、なんか自己学習プログラムが組み込まれてるっぽいんだよね。だから今までの試合の相手の戦い方を学習してるよ。

それに機械だから、どれだけ無理な速さで動いても問題ないしね」

 

「......はい、分かりました。

ありがとうございます」

 

「いいってことよ!

それに私もISがあんな使われ方してるのに怒ってるんだ。

だから思いっきりやっちゃって。あ、中の子を傷付けないようにね」

 

「......はい」

 

さて、一丁やってやりますか。

 

 

 

「デュノアは後ろから支援してくれ。

織斑、俺は行くが、ついて来れるか?」

 

「あぁ!やってやる!

あの野郎、千冬姉の刀を使いやがって......」

 

「よし、そうと決まれば早速行くぞ」

 

「あぁ!」

 

「うん!」

 

 

こうしてVTシステムとの戦いの火蓋が切って落とされた。

 




いやぁ、AICの日本語訳に手間取った。
なんか物によっちゃ慣性減衰装置だったり慣性制御装置だったりしてどちらにするか迷った。

まぁ物を止めるって事で後者にしましたが。
前者だと高速高機動の時に発生するGに対しての物みたいな解釈をしたんで。
その道の専門家の方がいたら間違ってたら言って下さい。




あと、VTシステムって英語なんで作者が勝手にドイツ語に変えちまいました。
こっちも間違ってたら誤字脱字報告をお願いします。

Walkureのuの上に本来なら二つの点が入るんですが、ちょっとスマホで入力が出来なかったので、書いておきます。


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42話目


眠い。
とりあえず書く。


 

VTシステムとの戦闘が始まってから、あまりいいとは言えない状況が続く。

織斑はSEが底をつきかけている。

シャルロットも手持ちの弾薬が各銃マガジン数本づつといったところ。パイルバンカーとミサイルはとっくに弾切れ。

俺もストックしてある刀が二本叩き折られた。

 

「オラァ!」

 

自分の命を刈り取ろうとする一撃を防ぐ。

 

「でりゃぁぁ!!!」

 

その隙を突くかのように織斑が斬りかかるが、防がれて反撃を食らう。

 

「ぐぅっ!?」

 

「織斑!大丈夫か!?」

 

「今のでSEが切れた!」

 

クソッ、不味い。

 

「一夏!下がって!」

 

パパパパパパパパパパパパパパパパパパ!!!!!!

 

「悪い!」

 

「いいよ!でも今ので弾切れだよ!」

 

シャルロットも戦闘能力が無くなったか!?

クソ不味い!

まともに戦えない奴を二人も抱えてなんて無理だ!

 

「デュノア!織斑を連れて下がれ!」

 

「な!?俺は退かないぞ!」

 

「一夏!僕達が居ても足手まといだよ!

だったら今すぐピットに戻って補給して戻って来た方がいい!」

 

「だけど!......あぁクソ!分かった!すぐ戻るからな!」

 

「輝義!なんとか耐えて!

生徒会長達も連れてくるから!」

 

「先生達も間に合いそうだったら頼む!最悪火力でゴリ押す!」

 

「分かった!頑張ってね!」

 

そう言って二人はピットに入る。

あの時と同じ状況か。

まぁいいさ。

どれだけ不利でもやる事は変わらない。

 

「さぁ、仕切り直しといこうじゃないか」

 

そう言って奴を見据える。

そう言って刀を構える。

 

一瞬も気を抜く事すら許されない。

そんな雰囲気がアリーナに満ちていた。

 

膠着を破ったのは俺だった。

 

「おおおおぉぉぉぉ!!!!」

 

瞬時加速で一気に突っ込むが、腐っても織斑先生のコピーと言ったところ。簡単に防がれてしまう。

至近距離での斬り合い。

何十回、何百回と斬り結ぶ。

毎朝訓練に付き合って貰っているからある程度はどんな攻撃をしてくるのか分かる。

 

終わりの見えない剣戟が続く。

一撃一撃が、直撃すれば間違いなく絶対防御すら貫く威力を持って襲いかかってくる。

俺はひたすら受け続ける事しか出来ない。

 

だけど、一つだけ絶対的に足りないものがある。

それは刀に対する想い。

織斑先生は、刀を振るう事の意味を知っている。

だがこいつはどうだ?ただ目の前に立ちはだかる俺を殺す事しか考えていない。

織斑先生は、織斑の為に刀を振るった。

そしてモンドグロッソで優勝した。

それまでにどれだけの鍛錬を積んだのか想像する事は出来ない。

それなのにこいつはただコピーだけして手に入れた気でいやがる。

そんな奴に負けてられない。負けてたまるものか!

 

それに、俺がまた倒れれば皆が心配する。

もう二度とそうならないと誓った。

だから、俺は負けない!

 

ひたすらにがむしゃらに刀を振るう。

ついに痺れを切らしたのか、あの野郎、振るわれた刀を受け止めた俺ごと吹っ飛ばしやがった!

 

「いてぇじゃねぇか!このコピー野郎!」

 

そんな事を叫ぶが、奴は返事など返すわけもなく、代わりに帰って来たのは一撃必殺の威力を込めた剣戟の嵐だった。

 

「ぐっ、このっ!クソッタレ!」

 

思わず悪態をついてしまうほどの。

 

不味い。

さっきからかすったりしてる攻撃でSEが削られていく。

そこへ追い討ちとばかりに更に攻撃が飛んでくる。

 

もう後がない。

持ってる武器(と言っても刀しかないが)を全て使い潰す。

 

一度距離を取り、詰められる前に左手にもう一本刀を展開する。

二刀流で戦う。実戦で使うのは初めてだがなんとかなるはず。いや、なんとかしないと俺の命どころか他の皆の命も無い。

だから、どれだけ傷がついても構わない。

倒れて意識不明にさえならなきゃいい。

傷だらけってだけでも皆は心配しそうだけど、今はそうは言ってられない。

 

「オラァァァァ!!!」

 

奴が来る前に自分から突っ込む。

刀を振るうも全て防がれる。

 

こんなんじゃダメだ。

もっと一撃を速く鋭く!

もっと一撃を強く重く!

 

 

すると、ようやく攻撃が届き始めた。

奴のボディに傷がつき始めたのだ。

だが、傷が付く瞬間に再生を始める。

 

その時、俺は油断したのだろう、それが命取りとなった。

俺の刀を掻い潜って来た一撃が思いっきり俺に突き刺さる。

 

「がぁぁぁぁぁぁぁ!!!???」

 

その一撃は俺の腹部を切り裂いていた。

ただ咄嗟に回避をしようとしたので、傷は浅くはないが致命傷じゃない。

まだやれる。

 

「やってくれるじゃねぇか!

受けた借りは百倍返しにしてやっからな!」

 

血が流れる。

グラウンドの土を赤黒く染める。

 

トドメを刺さんと再び奴が向かってくる。

また終わりの見えない剣戟が始まる。

 

一撃でいい、どうにかして攻撃を弾いて攻撃を与えられれば!

 

 

 

 

 

ーーーー side 一夏 ーーーー

 

 

アリーナに戻ると輝義とVTシステムが激戦なんて言葉じゃ表せない戦いを繰り広げていた。

それを見て、すぐに助けに入ろうとした。

 

「輝義!今行く!」

 

「辞めなさい一夏君!」

 

だが、更識会長に止められてしまった。

 

「なんでですか!?

輝義は戦っているんですよ!?ここで指を咥えて見てろって言うんですか!?」

 

そう問い詰める。

しかし帰って来た答えは信じられないものだった。

 

「そうじゃないわ。私だって今すぐに助けに入りたい。だけどね、もうあの戦いは私達が割って入れるようなレベルじゃないの」

 

は?

どういう事だよ!?

訳わかんねぇよ!

 

「更識先輩何を言っているんですか!?」

 

「織斑」

 

「千冬姉!」

 

「織斑先生だ」

 

「織斑先生からも言ってくれよ!

早く輝義の助けに入れって!」

 

「それは出来ない」

 

「なんでだよ!?」

 

「今の大河達の戦いはもう人というレベルのものではない。

今お前達が入っても、細切れにされるだけだ」

 

千冬姉まで!?

 

「いいか、よく聞け。

もうあの剣戟の速度は一撃がお前達じゃ捉えられるような、防げるような代物じゃない」

 

「分かったら大人しく見ていろ」

 

「でないと、死ぬぞ」

 

千冬姉が最後に放った一言で俺は冷静になった。

よく見れば、もう目で追うことが出来ない速さで刀が振るわれていた。残像が見えるレベルの速さで。

 

 

クソックソックソッ!!!!

俺はまたこうやって見ている事しか出来ないのかよ!

少しでも強くなれたと思ったのに!

 

俺は足元にすら立てていないのかよ......

 

 

 

だから、今は見守る事にする。

輝義、絶対勝てよ。

 

ーーーー side out ーーーー

 

 

 

まだ奴を崩す一撃が放てない。

右から左から下から来る攻撃を必死に受け止め、時には受け流す。

 

その時、奴は刀を大上段に構えた。

俺はこれが最初で最後のチャンスだと思った。

 

奴が振り下ろす。

それを二本の刀で受け止めながら弾く。

虚をつかれたのだろう、奴は咄嗟に反応出来なかった。

隙が出来たので、ボーデヴィッヒがいる部分を斬る。

すると中からボーデヴィッヒが現れた。

しかし引き込まれそうになったので咄嗟に掴む。

 

 

瞬間に視界が暗転した。

 

 

 

気が付いたら何もない場所にいた。

 

「......ここは......?」

 

いや、場所は重要だがそれ以上にボーデヴィッヒはどこに行った!?確かに掴んだはず!

 

「ボーデヴィッヒ!どこにいる!?」

 

声を上げながら歩く。

すると、前に銀色の塊があった。

近づいてみると、ボーデヴィッヒだった。

 

「......ボーデヴィッヒ?」

 

返答がない。

まさか手遅れって事はないよな......!?

 

「ボーデヴィッヒ、どうした?」

 

「......なんでお前がここにいる?」

 

「ボーデヴィッヒを助けに来た」

 

「......いらない」

 

は?

こいつは今なんて言った?

 

「......なんだと?」

 

「帰ってくれ......!

もう戻りたくない......

こんな事になってお前達に迷惑かけて......」

 

はぁ......

 

「ボーデヴィッヒ」

 

「帰ってくれって言っているだろう!?」

 

怒鳴りながらこちらを向く。

 

「ボーデヴィッヒ、少し話をしよう」

 

そう言ってみるが、応じてくれるかは分からない。

 

「......分かった」

 

良かった。

ぶっちゃけ掛けだったんだがな。

隣に座る。

 

「ボーデヴィッヒ、帰りたくないのか?」

 

「......あぁ」

 

「......なんでだ?」

 

「さっきも言っただろう。

皆に迷惑かけたからだと」

 

「......なんで迷惑を掛けたと思うんだ?」

 

「私が望んだからこうなったんだ......

試合の時、追い詰められて、負けたくないって思って......

声が聞こえてそれに答えてしまったんだ......

そうしたら......」

 

「......こうなっていたと」

 

コクリと頷く。

 

「なぁ、なんでお前はそんなに強いんだ?」

 

ん?

こいつは何を勘違いしている?

 

「......何を言っている?

俺は強くなんかない」

 

「嘘をつくな!

あれだけ戦えて強くないだと!?巫山戯るな!」

 

「私がどれだけ強さを望んだか知らないだろう!?」

 

確かに俺は知らない。

だが俺は別のものを知っている。

だから言ってやる。

 

「......あぁ、知らないな」

 

「だが、強くなる方法だったら知っている」

 

「......なんだと?」

 

「俺は、いつも誰かに支えてもらってばかりだ。

だが、その支えがあってこそ俺がある。

織斑先生に鍛えてもらってる。

楯無さんに鍛えてもらってる。

箒や簪、セシリア達に応援してもらってる。

織斑にはいつも勇気を元気をもらってる。

それがあるからこそ俺は強くなれた」

 

「皆の笑顔を守りたくて、笑っていて欲しくて。

なのに一度、心配を掛けたことがある。

意識不明になって目を覚まして、皆が来てくれて。

その時、あの織斑先生ですら泣いたんだ。

だから俺は皆をもう泣かせたくない。

だから強くなった」

 

そう言ってボーデヴィッヒをみると、

口を開く。

 

「......なぁ、私も強くなれるか?」

 

「あぁ、強くなれる。

強くなれない人間なんていない。

たとえどんな道を歩んでも必ず強くなれる」

 

「それにこの前言っただろう。

いつか必ず自分が満足できる結果が来ると」

 

「......あぁ」

 

「だから大丈夫だ。

それにもし何かあってもここまで来たんだ、俺が手伝ってやるさ」

 

「......そうか」

 

「私は......

またちゃんと自分の道を歩いていいのか?」

 

「あぁ、ボーデヴィッヒがどんな道を歩んでもそれはボーデヴィッヒの自由だ。

だから何も心配する必要はない。

もし壁にぶつかったらその壁を乗り越える手伝いぐらいだったら幾らでもやってやる」

 

「それに、お前は軍隊しか知らないんだろう?」

 

「あぁ」

 

「なら世界を見て回るといい。

世界ってのは思いの外広いもんなんだ。

まだ誰も行った事のない場所もあれば有名な観光地だってある」

 

「それに俺達はISという無限の翼があるじゃないか。

何処へだって飛んでいける。それこそ宇宙にだってな」

 

そこまで言うと、吹っ切れた顔をしたボーデヴィッヒがいた。

いい顔してるじゃないか。

 

「もし......もしその時が来たら......お前は、付いてきてくれるか?」

 

そんなの決まってる。

 

「勿論だ」

 

すると、今までの態度が嘘のような笑顔で言った。

 

「そうか」

 

「......さて、そろそろここを出るとしよう」

 

「すまないな、わざわざこんな所まで」

 

「......いや、構わない。

ただ、こういう時は、ありがとうって言えばいい」

 

「そうか......ありがとう」

 

「......どういたしまして」

 

こうして俺は外の世界に戻った。

 

 

 

外に出ると、ボーデヴィッヒを掴んだ状態だった。

少しISがまだ取り込もうとしている。

だから思いっきり引っ張り上げた。

 

「あ......う......」

 

よかった、特に傷はない。

ただ一つ問題がある。

 

なんでこいつ裸なの?

あれ?ISスーツ着てたよな?

あ、裸は見てないぞ。

ちゃんと目を思いっきり逸らしたから。

 

「輝義さん!大丈夫で...す......

......何をしていらっしゃるのですか......?」

 

はい、死んだ。

そりゃそうだ。

血塗れの大男が素っ裸の銀髪美少女を抱き抱えている。

どう考えても警察案件です。

 

「と、とりあえずボーデヴィッヒさんをこちらに」

 

セシリアの指示に従ってボーデヴィッヒを任せる。

 

「輝義さんは早く医務室に。

傷だらけですからね。

ボーデヴィッヒさんは私が連れて行きますわ」

 

「......はい」

 

なんかセシリアがおっかない。

 

「とりあえずボーデヴィッヒと輝義は医務室に行くぞ」

 

そう言って箒と、織斑が肩を貸してくれる。

て言っても身長差ありすぎて支えているって方がしっくりくるけど。

 

 

 

 

「ほら、着いたぞ」

 

医務室に着いて扉を開けるとそこには信じられない光景が!?

巫山戯てる場合じゃねぇ。

だんだん傷が痛くなってきた。

あ、やばい。

普通に痛いんですけど!?

 

「ね、姉さん!?」

 

「束さんがなんでここに!?」

 

そう、織斑先生の横に束さんがいたのだ。

本当になんでいるんだろう?

 

「久しぶりだね!箒ちゃんにいっくん!

さっきの質問だけどてるくんの治療に来たんだよ」

 

そう言った瞬間に箒がこちらを向く。

こう、グルン!って擬音が付きそうな感じで。

 

「輝義!いつの間に知り合っていた!?」

 

「......クラス対抗戦の後に意識を失って、病室で目を覚ました時からです」

 

「何故言わなかった!?」

 

「......いや、その、言わなくても大丈夫かなぁと」

 

「大丈夫な訳ないだろう!」

 

「まぁまぁ!箒落ち着けって!」

 

織斑!

お前は一生の親友だ!

 

「その話は輝義を手当てしてからでいいだろ!?」

 

裏切ったなぁ!?

もう親友じゃねぇ!

友人だこの野郎!

 

「む、分かった。

輝義、後でしっかり話を聞かせてもらうからな」

 

「......はい」

 

箒さんには逆らえない。

 

「んじゃチョチョイって治療しちゃうからねー。

ちょーっとじっとしててね」

 

そう言うと何処から取り出したのやら

注射器を持っていた。

 

「こん中には束さんお手製の医療用ナノマシンが入ってるからね。

多分それぐらいの傷だったら明日辺りには塞がってると思うよ」

 

流石束さん。

すごい。

 

注射も終わってとりあえず三日は安静にしていろと言われてしまった。また医務室で寝泊まりか......

ここ飯の量が少ないんだよなぁ......

 

 

 

 

 





終わり方中途半端になってしまった。
申し訳ない。


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43話目

  
投稿が遅れた理由について

今まで色々とありましてパソコン使えなくてですね、遂に新しいパソコンを導入しまして設定やらなんやらで手間取って遅れました。

申し訳ございません。
今日明日で連続投稿できたらと思います。


パソコン使ってるのでもしかしたらいつもと違う入力になっているかもしれません。
その時は報告してください。


VTシステムとの戦いが終わった。

ただ俺にはまだ戦いが残っていた。

 

 

 

 

 

「さて輝義、姉さんとの関係を説明してもらおうか?」

 

絶賛尋問中です。

いやもう箒さんが怖い…… 

取り敢えず説明をしなければ。

 

「……何もないです。無実です」

 

下手な答えを返すとやばい。

具体的に言うと、首が飛ぶ。

そんな気がする。

 

「いつ知り合った?」

 

「……クラス代表戦の後、気を失ってから意識を取り戻した時です」

 

「何故その時に言わなかった?」

 

「……いやまぁ、その言わなくても大丈夫だと思いまして」

 

織斑から姉妹仲があまりよくないと聞いていたもんだから……

 

「そんなわけないだろう!?」

 

怒鳴られた……

 

「……申し訳ありませんでした」

 

「はぁ……もういい。

これからは何かあったら言うように。

わかったな?」

 

「……はい」

 

こうしてお説教は終わった。

……俺、もう箒絶対に怒らせないようにしとこ。

密かにそう思った。

 

 

 

 

次の日

 

 

さて、再び医務室で寝泊まりになったわけだが。

取り敢えず暇です。

テレビはあるんだけどね?

今の時間帯何にもやってないわけで、見るものも無いから暇してるってわけ。

唯一の楽しみの飯はまだまだ時間がある。

 

 

 

マジでやることがない。

ボケっとしながら外を見る。

……何にもない。

 

 

 

 

 

昼休みになった。

と言ってもやることなんて飯を食うぐらいしかないし。

だから思いっきり不意を突かれた。

 

「輝義!一緒に飯食おうぜ!」

 

「ごふっ!?」

 

飲んでいたお茶を吹き出してしまった。

……鼻に入った。

痛い……

 

「お、おい!?大丈夫か!?」

 

「あ、あぁ……少し驚いただけだ。心配するな」

 

「そ、そっか。悪い……」

 

「……で、何をしに来たんだ?」

 

「一緒に飯食おうぜ!」

 

「……わざわざそのために来たのか?」

 

「おう」

 

おうって……

ここまでそれなりに距離があるのに……

 

「……すまないな、わざわざ」

 

「いいってことよ。それにこういう時はありがとう、だろ?」

 

織斑にまで言われてしまうとは……

まぁ、そうだな。

 

「……ありがとう、織斑」

 

「おう!」

 

ありがとう、と言うと織斑は笑いながら答えた。

 

 

 

ふと思ったが箒達の姿が見当たらない。

 

「……そういえば他の皆は?」

 

「あぁ、なんか弁当用意してたの俺だけだったからさ、皆は食堂で食べるって言ってたぜ」

 

そうか……

箒達は来ないか……

 

「そんな悲しそうな顔するなって。皆放課後に早めに訓練切り上げて来るって言ってたからさ」

 

そんな顔していたのか?

……入学するまではあり得なかった事だな。

入学するまでは、一人でいることが当たり前だったから。

そう考えると俺は変わったもんだ。

 

あ、言っておくが織斑が嫌いな訳じゃないぞ。

織斑はいいやつだ。

 

 

 

その後は、織斑が授業に遅れない程度にのんびりと飯を食いながら世間話をした。

 

 

 

やっぱり誰かと飯を食うのはいいもんだなぁ。

そうしみじみと思った昼であった。

 

 

 

 

 

 

放課後、織斑が言っていた通りに皆がやって来た。

 

「輝義さん、具合はどうですか?」

 

「輝義、大丈夫か?」

 

「……大丈夫だ」

 

セシリアと箒は俺を心配し、

 

「輝義!あんたご飯足りないって言ってたわよね?

麻婆豆腐と回鍋肉作ってきたわ。

あ、辛くないからそこんとこは我慢しなさい。

元気だって言っても病人なんだから」

 

「僕も作って来たよ。

ポトフだけどお肉も入ってるから食べごたえはあると思うよ」

 

「……おぉ!ありがとう!」

 

「なんなら明日も作って来てあげるわ」

 

「……本当か!?」

 

「嘘言ってどうすんのよ。どうする?」

 

「……ぜひ頼む!」

 

「あ、じゃぁ僕も作って来るよ」

 

鈴とシャルロット予想外の差し入れに喜び、

二人のオカン具合に驚きながら、

 

「てるてる~、私にもちょーだーい」

 

「……分かったから、あげるからくっつかないでくれ……」

 

「え~、てるてるは私のことがきらい?」

 

「……そうじゃなくてだな……」

 

「じゃぁいいよね~」

 

布仏に分けてくれとせがまれ、くっつかれたことにドギマギしながら、

 

「輝義君ってばモテモテねぇ」

 

「……そんなことはないですよ」

 

「そんなことあるのよ」

 

「…………だってここにいる皆は貴方の事が大好きなんですもの」

 

楯無さんには茶化され、

最後にボソッと何を言ったんだろう?

 

「輝義君、無茶はしないでと言ったのにまたですか?」

 

「……いやその、本当に申し訳ありません……」

 

「まぁ、怪我をしたとはいえ、ちゃんと帰ってきてくれたのですから今回は特別に許します。が、つぎは心配を掛けないでくださいね?」

 

「……はい」

 

 

虚さんには心配掛けたことを怒られながら放課後を過ごした。

 

 

 

 

「……織斑は?」

 

セシリアに聞くと、予想外の返答が返ってきた。

 

「まだアリーナにいると思いますわ」

 

なんでこんな時間まで?

首をかしげるとセシリアは言った。

 

「一夏さんは、輝義さんの隣に立ちたいんだそうです。

今まで助けてもらってしかいない。

だから、今は無理でもいつか必ず隣で支えてやれる存在になるんだって。

そう言ってましたわ」

 

「……そうか」

 

俺、泣いていいかな?

まじで嬉し泣きしそう……

 

 

皆が帰った後、

 

俺は幸せ者だな。

こんなにも皆に心配してもらえて。

 

 

 

そう思った一日だった。

 

 

 





追伸

点々のところ、なんかいつもと違うな。

まぁ、いっか。


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閑話

早めに投稿
色々と書きたい話があってですね。
早く書きたいなぁ。


今回はちょっと別です。
VTシステム事件の日本国の反応を書いて行こうかと。
そこまで長くはないです。


会話等の内容は作者の想像です。
本気にしないでください。



首相官邸にて

 

 

「はぁ……どうしてこうも面倒ごとが連続して起こるのかね?」

 

「そんなこと言われましても……」

 

今現在首相官邸で今回起きたVTシステム事件に対する対処を行っていた。

各省庁の大臣や長官などが集まって今後の対応などを話し合っていた。

ここ最近色々と問題が起きすぎて総理も官邸や各省庁の面々はやつれていた。

 

「男性操縦者が見つかってからというもの、本当に面倒ごとばかりだ。

女権団は裏で動くし、各国は何が何でも情報を手に入れようとするし……」

 

事実、アメリカやイギリスといった主要国家ならまだマシな方で、

男性が優位にあった国々はかなり強引な手段に出ようとしていた。

具体的には、誘拐など。

 

「しょうがないじゃないですか。

貴重な、世界で二人しかいないんですよ?」

 

「確かにそうなんだがなぁ……

特に女権団は何なんだ、本当に。

あいつらどっからあれだけの武器を持ってきたんだ?

大型の対戦車兵器まであったそうじゃないか?」

 

自分達の権利が損なわれる事を恐れたのだろう、男性操縦者を排除しようとしたのか実に様々な兵器があった。

個人で携帯できるものならば、基本あった。

アサルトライフルや対物ライフルといったものから、

対戦車火器のパンツァーファウスト3‐IT600まで。

武器の博覧会のような様相を呈していた。

 

「えぇ、流石に核兵器はありませんでしたが」

 

「そんなものあったら不味いなんてもんじゃないだろう。

そもそもただでさえ投入した特殊作戦群のパワードスーツが撃破されたんだろう?

これだって普通じゃない」

 

実際、男性操縦者に対してそのようなことが起きないように特殊部隊を派遣した。

だが、あまりにも抵抗が激しかったために想定よりも遥かに被害を受けたのだ。

 

「まぁ、対戦車ミサイルまでありましたから。

戦車などの装甲車両が無かっただけましです」

 

流石に車両までは入手出来なかったのだろう、代わりにあったのはどこぞのテロリストのような改造車両だった。

 

「ただ、織斑一夏君の方を狙わないだけ護衛が楽になっていいがな」

 

織斑一夏はターゲットに入っていなかったのだ。

 

「まぁ、それはそうでしょう。

自分達が崇拝している人物の弟ですから」

 

崇拝している人物とはもちろん我らが織斑先生の事である。

 

「あいつらは本当に面倒ごとしか起こさないからな……

ただでさえ少子化で大変なのに、あいつらが過激になり始めてからというもの、更に拍車が掛かったからな。冤罪も後を絶たんし」

 

警察庁の長官がそれに関して口を開く。

 

「それに関しては、裁判を行う前に被害者の方を調べてから裁判を行っております。まぁ、ここ最近のそういった事件は八割方冤罪ですが」

 

それでも二割の男が女性にちょっかいを出しているのだ。

このご時世にそんなことをするとは、ある意味勇者かもしない。

 

「それにⅠSが登場してからというもの、捨て子が増えましたからね」

 

「今じゃ幼稚園よりも児童養護施設の方が多いですからね」

 

「しかも男の子ばかり」

 

「本当に勘弁してほしいもんだよ」

 

「幼稚園を増やさなきゃとか言ってたのに、今は児童養護施設を増やさなきゃいけないとは」

 

「何なら幼稚園と児童養護施設の役割を併せ持った施設を作ってしまった方が早いのでは?」

 

そんなことが提案される。

すると文部科学省の大臣が、

 

「それはいいかもしれんな。

君、メモをしておいてくれ。

後で法律等に引っかからないか調べてから検討するとしよう」

 

ここまで全く関係がなさそうに聞こえるが、これも重要な事だった。

 

「さて、話を戻そう。

今回の一件、どう対応する?」

 

「そうですね、牽制するような声明を発表しては?そうすれば少なくとも直接的に手を出してくる可能性は少なくなるはずですから」

 

「そうだな、ついでに護衛の人数も増やすとしよう。

そこのところどうなんだね、更識君?」

 

そう言うと一人の人物に全員が顔を向ける。

 

「はい」

 

返事をしたのは小悪魔的(笑)生徒会長の更識楯無だった。

流石に今日はいつもの様にふざけてはない。

何故かいつも持ち歩いている扇子も今日は無い。

 

「そうですね、正直言って護衛がいなくても大丈夫なんですよ」

 

「それはどういうことだね?」

 

その場に居た人間が全員、首を傾げる。

 

「簡単に言うと、大河輝義君は強いからですね。

元々の身体能力が織斑女史に迫るようなものでしたから。

そこにⅠSに乗ったことで更に強くなりました。

確かめようがないので分かりませんが、恐らく代表候補性レベルであれば十数人程度なら同時に軽くあしらえるでしょう」

 

実際に試したわけではないから分からないが、

これは間違っていない。

普段から一対多数の訓練を積んでいる。

それに彼が教えを乞うている人間は何を隠そう、あのブリュンヒルデ織斑千冬なのだから。

そんな人に鍛えられているのだ。

個人の才能は有れど強くならないはずがない。

その言葉に全員が驚きを隠せない。

 

「それは……本当かね?」

 

「えぇ、間違いなく。

国家代表クラスでも間違いなく勝てるかと。

事実、私ももう追い抜かれているかもしれませんね。

先の無人機の襲撃時も今回も、命をかけた戦いでしたから、それも成長する大きな要因でしょう」

 

大きく成長した理由は前述にある通り二回の戦いで命が掛かっていたからだろう。

それともう一つ、皆を守りたいという思いもあるだろう。

 

「彼は皆を守りたいという一心で戦ったんです。

人間は、一つの想いを最後まで貫き通す事は難しい。

ですが彼はそれをやろうとしている。

それも強くなった理由かもしれません」

 

「正直あの成長速度は異常です。

ⅠSに触ってまだ数か月しか経っていませんから。

それを考えると普通じゃありません」

 

別に一夏が弱い訳ではない。

輝義が強すぎるのだ。

 

「そうか……

だが、護衛を外すわけにはいかない。

いざという時の汚れ仕事は大人である我々がやればいいからな」

 

「分かっております」

 

こうして、細かい所を詰めていく。

 

 

 

 

 

数日後

 

 

「本日はお集まり頂きありがとうございます」

 

総理がそう発言する。

 

「今日は何があって記者会見を開いたのですか?」

 

記者の一人が質問をする。

 

「先日ⅠS学園で起きたことと、それに対する今後の対応について発表をさせて頂きます」

 

「何が起きたのですか?」

 

そう聞かれると、

答え始める。

 

「先日、ⅠS学園でVTシステムが起動する事件が起きました。

内容はドイツ代表候補性でⅠS学園に留学しているラウラ・ボーデヴィッヒさんのⅠSに搭載されていました。

それが学年別トーナメントで起動、ラウラ・ボーデヴィッヒさん本人と男性操縦者である大河輝義君が怪我をしましたが命に別状はありません」

 

「VTシステムと言うと、アラスカ条約で禁止されているあの?」

 

「えぇ、それで間違いありません」

 

「少なくとも本人に無断で搭載されていたようです。

これは許しがたい行為であり、我々日本政府は、これに対して以下の声明を発表します」

 

一拍置き、再び話し始める。

 

「今回の様なことが起き、日本政府は誠に遺憾である。

ドイツが政府主導で行ったとは思いたくはないが、その可能性も視野に入れなければならない。

科学者の独断にしてもこれを発見し、事前に察知し止められなかったドイツ政府の責任である」

 

記者の面々は、あまりにも驚きすぎて口が開いたまま。

 

「今回、死者は出なかったから良かったもののけが人が出ている。

その内の一人は男性操縦者である大河輝義君だ」

 

「我々日本政府は男性操縦者である二人のデータを公開することを検討していたが、これを取りやめる。

ただでさえこの様な事を起こすような国家に情報を渡すことは出来ない。

更なる非人道的行為が行われる事を危惧しての措置である。

これは、他の国家にも言えることで少なからず非合法的な手段を行っている。

分からない、身に覚えが無いなどとは言わせない」

 

 

 

 

こうして記者会見は行われていった。

 

 

この記者会見で様々な影響が出た。

 

ドイツでは国内のⅠSに携わっていた研究者の主要人物が軒並み刑務所送りに。

政府の役人に関しては軍の最高指揮官や、大臣級が関わったとして刑務所送りに。

首相などは全員が辞職。

国際条約を守れない国として他国からの信用はガタ落ち、国内でもデモが多発し国民の政府に対する信用もガタ落ち。

 

各国が日本の男性操縦者に対し行おうとしたことを暴露され、

こちらでもデモは起きるし国民からの信用はなくなるしで、散々な目に。(と言っても自業自得なのだが)

 

 

 

こうして国の方での一連の騒動は収束していった。

 

 

 




どうだったでしょうか?
かなりにわかで書いたので……



感想等ありましたら書いてください。
批判は受け付けません。



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44話目

行くぜベイベー!!!


私本日をもって退院します!

いやぁー長かった。

この前よりは遥かに短いはずなんだけど。

 

「輝義、退院おめでとう、って言っても大したもんはねぇんだけどさ」

 

織斑がそう言ってくる。

 

「……構わない」

 

だって皆が来てくれているんだ、これで文句なぞあるわけがない。

すると山田先生が、

 

「代わりと言ったら変ですけど、今日から男子の三人も大浴場を使えるようになったんですよ~」

 

なんですと!?

おぉ……これで狭いバスルームから解放される……!

べつに嫌だったわけではない。

ただ、湯船がなくお湯につかれないというのはやはり物足りない訳で。

だからとても嬉しいのだ。

 

「……ありがとうございます!」

 

「喜んでくれてよかったです。

時間は六時から九時半までですから、

その時間内ならいつでも入って大丈夫ですから」

 

「分かりました。輝義、シャルル、一緒に入ろうぜ!」

 

「……あぁ」

 

「う、うん」

 

?シャルロットの様子がおかしいぞ?

………………あ!

そうだった、シャルロットは女だった!

 

 

部屋に戻ってから二人で話し合う。

 

「て、輝義どうしよう?

このままじゃ僕が女だってばれちゃうよ!?」

 

「ま、まて。

今何とか解決策を考えるから……!」

 

「一夏完全に楽しみにしてるよ!?

このままじゃ…………」

 

考えるんだ……!

俺たち三人が嫌な気持ちにならない方法を!

 

「……よし、俺が先に織斑を連れて入る。

確かここにはサウナがあったはずだ。

そこに入って織斑をのぼせさせる。そうしたら入れ。

そうすればゆっくり入れるはずだ」

 

ぶっちゃけかなり無理矢理な部分もあるが、まぁ祈るしかない。

 

「そうだね、そうしよう。

最悪僕は入れなくても大丈夫だから」

 

そうはいかないのだが……

状況が状況だからな。

 

「……すまんな」

 

「うぅん、ちゃんと女の子になったら楽しむことにするよ」

 

 

 

 

 

 

さてやってまいりました、お風呂の時間でございます!

あぁ、なんか緊張してきたぞ……

……シャルロットの事だからな。

決して織斑に対してではない。

 

「輝義、風呂行こうぜ!」

 

織斑が訪ねてきた。

 

「……分かった。行こう」

 

「あれ、シャルルはどうした?」

 

早速か!

……やっぱりこいつホモなんじゃ?

そう思いながら返事をする。

 

「……少し寝ると言ってな。

気持ちよさそうに寝ているもんだからそっとしておいた」

 

これで誤魔化せるか?

 

「そっか、それじゃ仕方ねぇな。

二人で行こうぜ」

 

良かったぁぁぁ!!!!

誤魔化せたぁぁぁぁ!!!!

 

「……行くか」

 

「あぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「おぉ、広いもんだなぁ」

 

大浴場に入るとその大きさに驚かされた。

 

「取り敢えず頭と体、洗っちまおうぜ」

 

織斑の言葉で洗い始める。

 

「輝義の背中でっかいなぁ……

洗うの大変じゃないか?」

 

「……まぁな。だが慣れれば問題ない」

 

「じゃぁ、俺が洗ってやろうか?」

 

おっと織斑君、それはホモかな?

警戒していると、

 

「ほら、こっち向けよ」

 

やばい、下ネタにしかきこえない……!

俺の心が汚れているから?

うっさいわ。

んな訳ないだろ。

 

 

 

結果

滅茶苦茶気持ちよかったです。

 

 

 

 

洗い終わったので湯船に浸かる。

 

「あ”あ”あ”あ”あ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”………………」

 

思わず声が漏れてしまった。

そのぐらい気持ちいのだ。

久々の浴槽はいいもんだな……

 

「はぁ”ぁ”ぁ”ぁ”…………

気持ちいぜ~……」

 

「……あぁ」

 

二人してそんな声を上げながら温まる。

 

 

十分程浸かってから切り出す。

 

「……織斑、サウナに行かないか?」

 

「サウナ?いいぜ」

 

あっさりOKが出た。

 

「……よし行くぞ」

 

「何ならどっちが長く耐えられるか勝負しようぜ」

 

織斑から自爆の申し出が。

俺を舐めるなよ?

サウナの大魔神の異名、今ここで存分に味合わせてやろう!

 

 

 

 

「て、輝義、そろそろ限界なんじゃないか?」

 

「……まだまだ」

 

織斑選手、辛そうです!

 

 

 

 

「て、輝義、そろそろ……」

 

「…………まだまだ」

 

織斑選手限界が近そうだ!

 

 

 

 

「……ギブ……おれもうでる」

 

そう言うと出て行ってしまった。

やべぇ、やりすぎたか?

 

俺は水風呂に入ってから再び湯船に浸かる。

眠くなってきた……

……なんか忘れてるような?

 

風呂の扉があく音がした。

織斑が戻ってきたのか?

体を洗う音がする。

なんだまた洗ってるのか。

随分と綺麗好きなんだな。

 

そんなことを考えていた俺を呪いたい。

 

「し、失礼しまーす……」

 

……ん?

織斑の声じゃない?

……あ!?

 

そうだ、シャルロットだ!

やべぇ!!!

 

「シャ、シャルロット?」

 

恐る恐る声を掛ける。

返ってきた声は間違いなくシャルロットのものだった。

 

「な、なに?」

 

「すまん!今すぐ出る!」

 

慌てて出ようとするが、シャルロットに止められる。

 

「ま、待って!」

 

えぇ!?

なんで!?

 

「その、一緒に入って?

ちょっと話がしたいんだ……」

 

どうしよう!?

本能は残れと言っているが、理性がはやく出ろと訴える。

 

 

 

 

本能には勝てなかったよ…………

 

しょうがないだろ!!!

俺だって男なんだぞ!

しかもこんな美少女に言われてるんだ。これで葛藤しなかったら絶対ホモだって。

 

「その、ごめんね?

引き止めちゃって」

 

「……構わない」

 

全然構わなくないです。

 

「……それで話っていうのは?」

 

無言でいると色々と不味いから取り敢えずこちらから話を振る。

ちなみにいまは背中合わせです。

見えない分色々と考えてしまう。

 

「さっき篠ノ之博士から連絡があってね、明日から女の子として学校に通っていいって言われたんだ」

 

「……それは良かったじゃないか」

 

やっとシャルロットが本当の姿になれるのか。

よかったよかったと頷いていると、

背中全体にとてつもなく柔らかい感触がががががががが!!!!????

少し振り向くと、シャルロットが抱き着いていた。

すぐ近くに顔がある。

 

「輝義の背中おっきいなぁ」

 

そう言うといったん離れて背中を触ってくる。

 

「とってもおっきくて、

あったかくて、

かっこよくて、

傷だらけだけど頼りがいがある背中だなぁ」

 

そう言うと再び抱き着いてくる。

……理性がゴリゴリ削られていく音がするのは気のせいではないだろう。

 

再びシャルロットが口を開く。

 

「えっとね、何度も言うけど、ありがとう」

 

それは感謝の言葉だった。

 

「……俺は何もしていないさ」

 

そう返すと、

シャルロットは笑いながら、

 

「ふふっ、そう言うと思った。

だからね、これは僕からのお礼だよ」

 

頬に柔らかい感触が触れる。

……俺の気のせいでなければそれはいわゆる、

キスというもので。

 

「お礼のキスだよ。

他にも意味はあるんだけどね?

それは教えてあげない。

輝義が考えてみて」

 

そう言うと出て行ってしまった。

多分俺の今の顔は風呂に入っているということを差し引ても、

真っ赤になっているだろう。

 

言葉が出なかった。

 

 

 

 

 

部屋に戻るともう既に九時五十分だった。

ベッドを見るとシャルロットはもう寝ていた。

 

「……俺も寝るか」

 

そう言ってベッドに入ったが、

あんな事があって寝れるわけもなく、

ようやく寝れたのは一時を過ぎてからだった。

 

 

 

 

ーーーー side シャルロット ----

 

 

お風呂に向かって入るとまだ輝義がいた。

籠にまだ服が入ってたから。

一夏はさっきすれ違ったから輝義のだって分かる。

 

輝義の服……

ちょっとだけ着てもいいよね……

 

腕を通す。

当たり前だけどぶかぶか。

でも輝義に包まれている気がした。

 

えへへ……

これいいなぁ。

癖になっちゃいそう。

 

 

 

いよいよお風呂に浸かる。

輝義は慌てて出ようとするけど何とか引き止める。

 

 

正直ここからの記憶が曖昧なんだよね……

抱き着いたこととキスをしたのは覚えてる。

エッチな子だって思われてないかな?

 

 

 

先に部屋に戻ると、

段々恥ずかしくなって来た。

 

あああぁぁぁぁ!!!!

なんであんな事しちゃったんだろう!?

 

ベッドの上で悶える。

 

こんな時は早く寝よう……

 

 

 

 

ダメだ!!

全然寝れないよぅ!!

しかも輝義帰ってきちゃったし!!

 

 

 

……寝たかな?

時間を見るとかなり遅くなっていた。

 

輝義もいつもはベッドに入ったらすぐに寝ちゃうんだけど……

今日は全然そんなことはなくて。

もしかしたらさっきのことを考えてたのかな?

……だったら嬉しいな。

 

 

 

 

今日が最後だから一緒に寝たいな……

 

そーっと……

よし、ばれてない!

これなら寝れそうだな。

 

「おやすみ、輝義」

 

そう言っておでこにキスをする。

 

それから僕はすぐに寝てしまった。

 

 

ーーーー side out ----

 

 

 

 




はい!
今回はシャルロットがメイン回でした。


感想等お願いします。


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45話目



ラウラ可愛い……
ギュってしたい……  




 

 

 

朝起きたらシャルロットが俺のベッドにいるんですけど……

 

え?

なんで?

寝るときはいなかったよね?

……まぁ、気持ちよさそうな顔で寝てるし……

 

ん?織斑先生からメールが来てるな。

なんだろう?

 

メールの内容は、

今日の朝、シャルロットを女として転校させるからいつもの朝の訓練は無しということ、

シャルロットを七時までに職員室に来させるようにとのこと。

ついでに仕事を増やしてくれた俺と束さんに対して恨み言が少々。

 

……シャルロットの件ですね分かります。

いやもう本当に仕事を増やしてしまって申し訳ない……

今度何かお礼をしなくては。

 

今は五時。

いつもは五時半から訓練を始めているからな。

俺自身は全然時間があるが、シャルロットはあまりないな。

六時には起こすとしよう。

 

 

ただね?

一つ問題があるんですよ。

何かって言うと、シャルロットさんがめっちゃくっついてくる……

もういい匂いがするし、柔らかいしでかなりまずいんですよね。

……どこがとは言わないけど。

 

 

 

そして耐えること一時間。

 

「……シャルロット、起きろ」

 

「んん……」

 

あれ?

起きない。

しかも更にくっついてきた!?

 

「……シャルロット、起きろ」

 

ゆすりながら起こす。

すると、

 

「……てるよし?」

 

「……おはよう」

 

「おはよー」

 

ただ、あまり時間はないので少し急がなければならない。

 

「……寝起きで悪いが、あまり時間がない。早く支度をしてくれ」

 

そう言って急かすが寝ぼけていてよく分かっていないという顔をしている。

 

「……今日は女の子として転校する日だろう?」

 

その言葉で目が覚めたのか、

 

「そ、そうだった!早く準備しなきゃ!」

 

ドタバタしながら準備を始める。

俺?

とっくに終わってますけど?

制服着れば終わりだし。

 

二十分程して準備が終わったらしく、

 

「輝義、準備終わったからごはん食べに行こう?」

 

「……分かった」

 

部屋を出て食堂へ向かう。

 

 

 

まだ早い時間だからか、ほとんど人はいない。

 

二人で注文して、飯を受け取ってから席に着く。

因みに俺の飯は、アジの開きに味噌汁、ご飯に、沢庵。

全部、特特特盛りです。

 

「……頂きます」

 

「いただきます」

 

二人で一緒に挨拶をして、食べ始める。

 

「やっぱりここのご飯は美味しいね」

 

「……あぁ」

 

会話をしながら食べ進めた。

 

 

 

 

少し早めに食べ終えてシャルロットを職員室に送る。

 

「送ってくれてありがとう」

 

「……構わない」

 

「じゃぁ、教室で待ってて」

 

「……あぁ」

 

そう言って別れる。

 

部屋に戻ってもやることが何も無いから教室に向かう。

 

が、やはりというか誰もいなった。

誰もいない教室はこんなにも静かだったんだな……

 

一人自分の席に座って窓の外を眺める。

 

八時になったぐらいからぽつぽつと皆が登校してくる。

 

「あれ?大河君?おはよう」

 

「大河君早いね」

 

「……用事があってな」

 

「そうなんだ」

 

そんな風に皆と挨拶をする。

しばらくすると織斑たちも来た。

 

「輝義、おはよう」

 

「輝義さん、おはようございます」

 

 

「それにしても今日はどうしたのよ?

部屋に行ったらもういないし」

 

「そうですわ、一緒に朝食を頂きたかったですわ」

 

それに関しては理由は言えないが、謝っとこう。

 

「……すまない。今日は朝に用事があってな。先に行かせてもらった」

 

「そうだったのか」

 

そう言って誤魔化す。

すると織斑が、

 

「そういやシャルルはどうしたんだ?」

 

大丈夫だ、後でいない理由がわかるから。

取り敢えず誤魔化しとこう。

 

「……あいつも用があるとかで何処かに行ってしまってな」

 

「そうなのか?二人共忙しいんだな」

 

織斑がおバカでよかった。

こいつこんなに簡単に俺の言うこと聞いて……

社会に出て変な奴に騙されないだろうか?

心配だ……

 

 

そうこうしているうちにSHRの時間がやって来た。

 

「席に就け。

よし、では本日の連絡事項を伝える。

……の前に一つ。

山田先生、お願いします」

 

「えーっとですね、転校生を紹介します。……というかもう紹介は済んでいると言うか……何て言えばいいんでしょう?」

 

「取り敢えず入ってこい」

 

そう言われて入ってきて自己紹介をしたのは、

 

「シャルロット・ローランです。

皆さん改めてよろしくお願いします」

 

シャルロットでした。

苗字が変わってる理由は束さんが新しい戸籍を用意してくれてから。

なんかこれで少なくとも前の苗字よりはフランス国内に入りやすくなるだろうって用意してくれた。

 

「こんなの朝飯前だよ!それよりもお母さんのお墓参りに行けるといいね」

 

って言いながら。

戸籍を用意するのが朝飯前とか束さんすげー。

 

まぁそれで皆はというと、

 

「「「「「「「えええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!????????」」」」」」」

 

そりゃそうっすよね。

だって男だと思ってた奴が本当は女でしたとか驚かないわけがない。

俺だって驚いたもん。

 

「え!?え!?」

 

「ちょ!?ど、どう言う事!?」

 

「女だったって事!?」

 

「そんなぁ!!あんまりだよ!」

 

「これじゃぁ薄い本が書けないじゃないか!

一×シャル、輝×シャルがぁぁぁぁぁ!!!!」

 

混沌を極めてますね。

ただ最後の奴後で話があるから来い。

 

「待って!そういえば昨日って男子が大浴場使ってたよね!?」

 

やべぇ!?

 

「あああぁぁぁぁ!!!???」

 

「ということは、混浴!?」

 

「織斑君、大河君!そこんとこどうなの!?」

 

こっちに話が飛んできた!

すると鈴が殴り込んできた。

 

「一夏ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

 

「お、俺は知らねぇよ!?

でも、俺が出て部屋に戻ってるときにシャルルとすれ違ったから輝義は分かんねぇけど!」

 

おいぃぃぃぃぃ!!!!!?????

なに余計な事言ってんだよぉぉぉ!!!???

おま、お前!

ただでさえ鋭い目で見てた箒達が殺気を纏い始めたんだけど!?

 

「輝義さん?どういうことか説明していただけますわよね?」

 

ひぃ!?

セシリアさん!?

あ、頭に銃を突きつけないでください!?

 

「輝義、どういうことだ?ん?」

 

箒さん!

その日本刀どっから出したんですか!?

やめて!日本刀でほっぺをペチペチしないで!

 

「……てるてるさいてー」

 

ぐぅっ!?

布仏さん、今の言葉は効いたぜ……

 

ふと視線を感じると、簪がこちらをドアの隙間から覗いてる!?

ハイライトがない!?

comeback!ハイライト!

 

「リアル修羅場!」

 

「こんなの昼ドラぐらいでしか見たことないよ!」

 

「メモっといて!ネタとして後で使えるわ!」

 

おいこら!

人のやばい状況を楽しんでんじゃないよ!

というか助けて!

 

そこへボーデヴィッヒが手を上げる。

 

「きょ……織斑先生、少しよろしいでしょうか?」

 

いいぞ!

そのまま話題をずらしてくれ!

 

「構わん、手短にな」

 

……織斑先生、諦めないで何とかして皆を抑えてください!

 

「その、すまなかった」

 

ビシッと姿勢を正してから

ボーデヴィッヒは綺麗な礼をする。

でもなんで謝るんだろうか?

 

「オルコット達についてはいきなり発砲して本当に申し訳ない」

 

いきなりの謝罪に皆も固まっている。

我を取り戻したセシリア達が、

 

「そのことでしたらもう気にしていませんわ。

だからこれからは仲良くしましょう?」

 

「らうりー、これから仲良くしようねー」

 

「ボーデヴィッヒ、今までの事は水に流して仲良くしようではないか」

 

そう口々に言った。

ボーデヴィッヒは、

 

「ありがとう。私の事はラウラでいい」

 

こう言った。

それに対して皆は、

 

「なら私もセシリアで構いませんわ」

 

「私達も名前で構わないぞ」

 

こう返した。

 

「ならばそう呼ばせてもらおう」

 

そう言ってボーデヴィッヒはそのまま織斑の方を向く。

 

「転校初日にいきなり叩いて悪かった。

どうか許してほしい」

 

「お、おう。

気にしてないから大丈夫だ」

 

「そうか、ありがとう」

 

そう言って俺の方に向かってくる。

なんだ?

俺の前まで来ると、

 

「……その、あの時は助けてくれてありがとう。

助けてくれなかったら、今私は此処にはいない」

 

こう言った。

 

「……気にするな。当たり前のことをしたまでだ」

 

そう返すと、

 

「お前にとっては当たり前の事かもしれないが、私にとってはそうじゃないんだ。

だから、何度でもいうぞ」

 

「ありがとう」

 

そう言いながら今までの態度からは想像できない程の笑みを浮かべながら言った。

皆も同じだろう、全く声が聞こえない。

というか箒達の目がまたか……って感じなんすけど。

……これは後で尋問コースですね。分かります。

 

「……あぁ」

 

俺は見惚れてそれしか言えなかった。

そしてボーデヴィッヒは、

 

「それと私の事はラウラと呼んでくれ」

 

こう言った。

 

「……分かった」

 

あまりにも唐突だったのでボケっとしていたら、

顔に手を添えられ、気が付いたらボーデヴィッヒの顔が目の前にあった。

唇に柔らかい感触が当たる。

 

「んっ……」

 

「んうっ!?」

 

え!?

俺キスされてんの!?

困惑しすぎて動けない。

そしてボーデヴィッヒのキスから解放されてから、

ボーデヴィッヒが放った一言によって再び教室は混沌に包まれる。

 

「ぷぁ……お、お前を今から私の嫁にする!異論は認めん!」

 

俺は余りにも驚きすぎて、

言葉が発せなかった。

皆は、

 

「わぁぁぁぁ!?セシリアしっかりしてぇぇぇ!!!」

 

「篠ノ之さんの心臓が止まってるぅぅ!?」

 

「ほ、本音!?なんでそんな怖い顔してんの!?」

 

「簪さんが吐血したぁぁぁ!!!」

 

やべぇ、なんだこれ……

もう俺には対処できません。

 

 

そっからの記憶はない。

 

 

ただ、ついに織斑先生が切れたことは覚えてる。

だって滅茶苦茶怖かったんだもん。

 

 

 






シャルロットの名前についてですが、
フランス よくある苗字で検索して出てきたのでローランにしました。







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46話目

もう眠くて仕方がない……
徹夜明けは辛い……


今回は主人公の家族が出てきます。


VTシステムの事件から二週間が過ぎた。

 

 

 

ここ最近色々ありすぎて疲れたのでリフレッシュするために外出届を出して今は街にいる。

今日明日は外で羽を伸ばしてきていいとのこと。

 

……いや、本当に色々あった……

無人機に殺されかけるしVTシステムに殺されかけるし……

……あれ、殺されかけてばっかじゃね?

……お祓い行っとこうかな……

 

 

 

てことで、取り敢えず今日は実家に帰省してます。

いやー久々の自分の家はいいもんだね……

 

「輝義、おめぇ向こうでどうしてる?」

 

じいちゃんは相変わらず元気。

たださぁ、嬉しいからって朝から酒飲むのはやめようよ……

 

「……まぁ楽しくやってるよ。

先生もいい人たちだし」

 

「そうか……そりゃ良かったな。

にしても未だに喋る前に間があくのか?」

 

んなこと言われても……

コミュ障はそう簡単に治んないんの。

 

「……しょうがないだろう」

 

「まぁいい。先生は?どうだ?」

 

「……いい人たちだよ」

 

「織斑とかいう人と眼鏡かけたちっこい子か?」

 

あってるけど……

山田先生の言い方が酷い……

それ本人に言ったら間違いなく涙くの必須だぞ……

 

「……それ本人に言うなよ。絶対泣くから」

 

「そうなのか?まぁいい。それで?彼女の一人でも出来たのか?」

 

ぐ……

痛い所を突いてくるな

 

「……そんなことはどうでもいいだろう」

 

「んな訳あるか。言いたくないならいいんだがな。

なら友人の一人でも出来たのか?」

 

これは自信をもって言える。

 

「……あぁ、出来たよ。信頼出来る奴が」

 

じいちゃんは俺の顔をじっと見てから、

ふっ、と笑って言った。

 

「そうか。良かったな」

 

「……あぁ」

 

そこへ親父が帰ってきた。

 

「ただいまー」

 

「……お帰り」

 

俺の顔を見ると驚いた顔と声を上げる。

 

「あれ?輝義帰って来てたのか」

 

「……あぁ」

 

「そうかそうか」

 

「……親父は何をしていたんだ?」

 

「ん?今日は散歩しに行っててね」

 

あぁ、そうだったのか。

 

「……お疲れ」

 

「あぁ、取り敢えず風呂に入って寝るよ。三時頃に起こしてくれって母さんに言っといてくれ」

 

「……分かった」

 

そう言うと風呂場に行ってしまった。

 

「……俺も部屋に戻ってる」

 

「おう」

 

そう言って俺は部屋に戻って少し寝る。

 

 

 

 

起きて時計を見ると七時を回っていた。

下に降りよう……

 

下に降りると晩飯が出来上がっていた。

久々の母さんとばあちゃんの飯旨いな……

 

食べていると、

 

「輝義、あんたいつ帰んの?」

 

母さんにそう聞かれる。

 

「……明日の朝に飯を食ってから帰るつもり」

 

そう言うとばあちゃんが、

 

「随分と早いのねぇ」

 

「……明後日も授業あるし」

 

「それもそうねぇ」

 

そうばあちゃんが頷く。

そこは父さんが、

 

「次は、いつ頃帰ってくるんだ?」

 

そうだな……

いつ頃になるんだろうか?

 

「……多分夏休みには帰ってこれると思う」

 

「なんだ、すぐじゃないか」

 

「……ただ夏休みのいつ頃に帰ってこれるかは分からない」

 

「そうなのか」

 

そう言うとじいちゃんが、俺をしげしげと見ながら 

 

 

「……輝義、お前随分と強くなったじゃねぇか。向こうで何があったか聞かせろ」

 

それからは俺の学園での生活や、起きた事を話しながら笑いあった。

 

 

 

 

 

飯を食べ終わってのんびりしていると、

 

「輝義、しばらくしたら風呂に入っちゃいな」

 

母さんがそう言ってきた。

 

「……分かった」

 

 

十分程してから風呂に向かう。

 

久しぶりの自分家の風呂か……

 

身体を洗って湯船に浸かる。

 

あぁ……

なんか凄い落ち着くな……

 

「ふぅ……」

 

学園の大浴場もいいんだが、広すぎて落ち着かないんだよな。

 

それからゆっくりと三十分程温まってから風呂を出る。

気持ちよかった……

 

「……上がったから次入っていいよ」

 

皆が俺の身体を見て固まる。

 

それはそうだろう。

俺の身体は此処を出る前とは大きく違うのだから。

 

 

筋肉が更に付いて洗練された肉体。

その上に刻まれた傷の数々。

大きな傷もあれば小さな傷もある。

それは、弾痕から斬痕、刺痕、火傷痕、爆傷、打撲など。

思い付く限りの傷痕が刻まれ、

それは言うならば傷跡の博覧会の、とでも言ったような様相だった。

 

「……あんた、その傷……」

 

「もしかして、父さんたちが連絡された事が関係しているのか?」

 

「……まぁ、そうだね」

 

「そうか……」

 

そう言うと皆黙ってしまった。

 

「……輝義、お前がどうしてそんなに傷だらけになったのかは先生から聞いているから知っている。

だが、敢えて聞くぞ」

 

「何故、そんなに傷だらけになった?」

 

じいちゃんが聞いてくる。

その目は、嘘も冗談も許さないというものだった。

 

俺は全部話した。

 

それを聞いて皆は、

 

「この大馬鹿者め!!

何故、自分自身の心配をしない!!」

 

「輝義、誰かを、友達を守ろうとしたことはいいことだと思う。

だがな、何故その守るという対象に自分が入っていないんだ!?」

 

「輝義、てめぇどうなるか分かってんだろうな」

 

「………………………………」

 

みんなに怒られてしまった。

ばあちゃんは黙っていたけど雰囲気は間違いなく激怒しているものだった。

まぁ皆、怒るとは思ってた。

息子が、無茶をして傷だらけになって帰ってきたのだ。

もし自分の子供がそんなんになって帰ってきたら俺だって怒る。

 

それから十二時ぐらいまで怒られてた。

ただ最後にじいちゃんが、

 

「輝義、やり方がどうであれよく皆を守り切ったな。お前自身もよく帰ってきた」

 

「よくやった」

 

そう言って正座している俺の頭をグシャグシャっと撫でた。

その瞬間、俺は泣いてしまった。

 

じいちゃんも親父も母さんもばあちゃんも俺を抱きしめてくれた。

 

それから俺は久しぶりに自分の布団で寝た。

 

 

 

 

 

 

朝、起きて朝食を食べる。

これでまた暫く母さんとばあちゃんの飯が食えないと思うと寂しかった。

だけど、また帰ってくれば食えるんだ。

 

 

 

 

「……じゃぁ、もう行くよ」

 

「おう、気をつけて帰れよ」

 

「向こうでも身体にはには気をつけなさい」

 

「また、無茶をしちゃだめよ?」

 

皆はそう言ってくれた。

そして俺は帰路に就いた。

 

 

 

 

 




祖父 大河 輝久

年齢 91歳

近所でも有名な好々爺
口は悪いが基本子供好きなため子供には慕われている
ただ怒るととてつもなく怖い
元々第二次世界大戦に従軍していたためその時の子供たちの惨状を見て子供を守ることが生きがいになっている
実戦経験が豊富で肝も据わっているためそこらの鍛えている男共より遥かに強い
そのため近所のお母さんたちは

「危ない目にあったら取り敢えず大河さん家に逃げなさい」

と言っているほど。
ちなみに本人は了承済み
輝義ほどではないにせよ身体中に傷があり、かなり筋肉質。
ここ最近ばあちゃんと家庭菜園をやっている




祖母 大河 秋江

年齢 85歳

優しいおばあちゃん
基本的にこにこしているが、大河家で怒ったら間違いなく最恐
輝義は過去に一度だけ怒られたことがあるがトラウマもの
趣味は家事全般
料理は店を出したら繁盛間違いなしの美味しさ





父 大河 正義 

年齢 48歳

いいお父さん
仕事は輝義がⅠSを起動したときに護衛とかの関係で退職した。
この人もⅠSを使えるかと疑われたが使えなかった。
まぁ仕事を退職させられても退職金が目が飛び出るぐらい貰えたから全然気にしてない。
むしろ自分のやりたい事を好きなだけできるととか言ってる。




母 大河 楓

年齢 41歳

家で二番目に怖い人
楓とかいうおとなしそうな名前だが大間違い
基本はいいお母さんだけど切れるとやばい
元ヤンでもなんでもないのに眼光は半端ないしステゴロ上等になる
年齢の割には若く見える
FGOのマルタさんみたいな感じ






大体こんな感じです。



輝義は家族と喋る時は口調が変わります。




今回は家族との話でした。



感想ありましたらくださいな。



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47話目 


昨日は投稿できなくて申し訳ない……

三徹明けは辛かった……





 

電車に揺られる事約一時間ちょっと。

ⅠS学園行きのモノレールがある駅の近くまでやって来た。

 

それにしてもここは相変わらず人が多いな。

 

それも仕方ないかもしれない。

なにせ近くにレゾナンスという大型ショッピングモールがあるのだから。

なんでも国内最大級らしいが、迷子になりそうだし特に用もないので行ったことなどある訳がない。

 

それよりも、飯どうすっかな……

なんか手頃な所はないものかと探していると、丁度よさそうな場所が。

なんかいい匂いするし入ってみるか。

 

ドアを開けて中に入ると、出迎えたのはどこか聞き覚えのある声。

不思議に思いながら見ると

 

「いらっしゃいませ」

 

そこにいたのは何故か執事の格好をしたシャルロットによく似た誰かだった。

二人で固まっている。

うん、気のせいだな。

 

「……すみません間違えました」

 

そう言って店から出ようとするが、

 

「待って待って!」

 

止められる。

 

「輝義待ってよ!なんで出ていこうとするの!?」

 

「……すいません、俺に男装趣味の知り合いは居ないので……」

 

「僕だよ!?シャルロットだよ!」

 

えぇ……

気のせいであってほしかった……

 

「……まぁ似合ってるぞ。いい趣味だな……」

 

そう言うとシャルロットは、

 

「ありがとう……じゃなくて!」

 

ん?

他に何かあるのか?

……はっ!?これを言わなくては。

 

「……かっこいいぞ」

 

「だから違うってば!僕は此処で手伝いをしてるだけだってば!趣味なんかじゃないよ!」

 

そうだったのか……

そう思っていると、

 

「シャルロットどうした?」

 

「あぁ、輝義が来たんだ」

 

「おぉ、嫁ではないか」

 

ラウラまで登場した。

その恰好はメイドだった。

お前もか……ラウラ……

 

「……可愛いな、とても似合っているぞ」

 

いや、マジで似合ってんだよ。

いつもつけている眼帯外してる点もいい。

 

「そうだろうそうだろう!」

 

ご満悦ですね。

 

「ねぇ、輝義?僕の時と随分と反応が違うね?」

 

おっと、如何やら地雷を踏み抜いたみたいですね。

……シャルロットの顔が怖い。

 

「……大丈夫だ、シャルロットも似合ってるぞ」

 

「この格好で言われてもなぁ……」

 

「まぁいいではないか。それよりも早く店に入れ」

 

ラウラに言われるが少しばかり問題がある。

……店内には男が一人もいない。

これは精神的にキツイ……

 

「……女性しか入れないんじゃないのか?」

 

聞いてみるが、

 

「うぅん、そんなことはないよ?時間的な関係だと思う。

夕方頃になると男の人とか結構くるし」

 

だそうです。

 

「ほら、早く来い」

 

などと思っているとラウラに手を引かれ入店してしまった……

 

「「「「「「いらっしゃいませご主人様」」」」」」

 

メイド喫茶というやつですね。

 

中に入るとシャルロットが案内してくれる。

 

「どうぞこちらへ。こちらがメニューになります。お決まりになりましたらお呼びください」

 

めっちゃ様になってるやんけ……

 

なに頼むかな……

色々あるな。

…………よし、これにしよう。

 

「……いいですか?」

 

「む、いいぞ」

 

ラウラさんや、その言葉の使い方はどうなんだね……

え?このキャラで行ってるから問題ない?

あ、そうですか。

 

「……このオムライスと、これとこれとこのスパゲッティ、それにこのピザとこのピザをお願いします」

 

「承った。少し待っていろ」

 

そう言うと厨房に引っ込んでいった。

 

 

 

 

 

「あの、大河輝義君ですよね?」

 

そう声を掛けられる。

振り向くと女性陣が何故か待機していた。

 

「……そうですが?」

 

なんだろう?

 

「えっと、私達ファンなんです!」

 

……は!?え!?

 

「その、学園でⅠSの暴走事件の動画を見ました。

誰かのために戦っている姿がとってもかっこよかったんです」

 

えぇぇぇぇ……?

そんなこと言われても……

それにファンが出来るなら間違いなく織斑だろうに……

 

「あの、握手していただけませんか?」

 

「……まぁ、それぐらいなら」

 

「本当ですか!?やった!」

 

そっからは握手会に。

 

 

 

頼んでいたものが運ばれてくる。

 

「お待たせしましたー」

 

あぁ、旨そうだな。

 

さて食おうとした瞬間、

 

「おらぁ!てめぇら全員大人しくしやがれ!!」

 

なぞのぶそうせいりょくがなぐりこんできた!

 

お前……

ふざけんなよ……

こっちは腹減ってんだぞ?

 

……あれ?

強盗にしちゃ随分と装備が整ってるな?

どういうことだ?

 

「輝義」

 

小声でシャルロットが声をかけて来る。

 

「……どうした」

 

「あの人達間違いなく強盗なんかじゃないよ」

 

「……あぁ」

 

「嫁よ、今すぐこの場から逃げた方がいいぞ」

 

「……他の人たちは?」

 

「周りの人間よりも先ずは嫁だ。

嫁は世界で二人しかいないⅠSの男性操縦者だ。

天秤にかけても嫁に傾く」

 

「それにあいつらはただの兵士じゃない。

間違いなく専門的な軍事教育を受けている。

しかも数が多い。

見てみろ、あいつら馬鹿そうなふりをしているが何処から警察の突入部隊が入ってくるか、脱出経路などをしっかり見ている。

しかも人員の配置が間違いなくその道のプロだ」

 

そうはいってもな……

皆を置いては行けないしな……

 

コソコソ話していると、

 

「おい、ここに大河輝義がいるはずだ。出てこい」

 

ご指名を受けちゃったよ……

あんなごついおっさんに指名受けても全然嬉しくない……

 

「輝義、ダメだからね」

 

どうしよう?

 

「そこにいるのは分かっている。今すぐ出て来い。

出てこないのならば……」

 

「きゃぁ!」

 

「こいつから順番に殺していくとしよう」

 

くそ、人質はだめだろう。

出るしかないか……

 

「……俺は此処だ」

 

「……本人だな、こっちに来い」

 

「……その前にここにいる俺以外を解放しろ」

 

「いいだろう、だがお前とは別で二人残ってもらう」

 

くそ、そう来たか……

 

「……全員の解放が条件だ」

 

「ダメだ。

そこの金髪と銀髪お前たちだ」

 

「……分かりました」

 

そう言うと犯人たちは他の人たちを外に連れ出す。

 

俺達は両腕を縛られる。

……こんぐらいの縄なら余裕で引きちぎれるんだけど。

 

「……シャルロット、ラウラ」

 

二人を呼ぶ。

 

「なに?」

 

「なんだ?」

 

「……あいつらを制圧できるか?」

 

そう、俺はこれが聞きたかったのだ。

正直今の状況は最悪だが、最高でもある。

なにせ俺を含めてⅠSを持っている。

しかも、専用機という最高に自分に合った相棒を。

 

「……どうだろう。

正直キツイかな。体格もだけど力で負けてるから」

 

「私は一人ぐらいなら何とかなるかもしれんが……」

 

「ⅠSが使えれば楽勝なんだけどね」

 

今の話を聞く限り無理ではなさそうだな。

 

「……分かった。

すまんが協力してくれるか?」

 

「うん。いいよ」

 

「嫁が行くなら私も行くとしよう」

 

「……ありがとう」

 

正直二人が拒否したら俺だけで何とかする気だった。

 

「でも、後で間違いなく織斑先生に怒られるけど、それでもいいの?」

 

……それは嫌だな……

今からでも辞めようかな……

 

「まぁ、そうなったら私達も一緒に怒られるから大丈夫だよ」

 

シャルロットさん、それ全然大丈夫じゃないですよ……

 

まぁいい。

腹は括った。

あとはやるだけだ。

 

 

 

「……シャルロットとラウラは一番近くにいるあいつを頼む」

 

「分かった」

 

「うむ」

 

「……残りは俺がやる」

 

正直プライベートチャンネルが使えて良かった。

じゃなきゃ声なんて丸聞こえだし。

 

「……よし、行くぞ」

 

「3,2,1、今!」

 

一斉に走り出す。

 

制圧開始だ。

 

 




取り敢えずここまでにしときます。
こんな中途半端な所で切ってしまって申し訳ない……
明日また書くので許してください。




えー、途中主人公に対して動画で見たと言っていますが、
これは政府が本人に了承を取った上での公開です。
情報を隠していてもいつかどこからか漏れると考えた政府です。


感想くださいな。
あと活動報告の方も返信ください。



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48話目



投稿します。


 

 

一気に走り出す。

 

横目で見るとシャルロットとラウラは二人で一人を相手にしている。

あの分なら問題なく勝てるだろう。

 

 

 

「ふっ!」

 

俺は一気に距離を詰めながら殴り掛かる。

 

「なっ!?」

 

奴らは一瞬、驚いた表情をするが流石は精鋭と流石いうべきか即座に対応してきた。

 

「ッ!殺さなければどこまでやっても構わん!」

 

撃ってきやがった!

でも毎日それよりもでかくて威力のある重火器相手にしてんだよ!

それに比べりゃしょんべん弾なんだよ!

怖くもなんともねぇわ!

それに訓練相手は織斑先生、楯無さんとかなんだ。

あの二人の気迫に比べたらなんて事はない。

 

接近して一番手前にいる奴を殴り飛ばす。

 

「がぁぁ!?」

 

その間も撃ってくるが俺には当たらない。

それを見て奴らは驚愕する。

 

「クソッ!あいつどんな動体視力してやがる!?」

 

「なんで当たらねんだよ!?弾幕避けるとか普通じゃねぇ!」

 

精々がアサルトライフル程度。

ならば、銃口と目線、引き金を引くタイミングさえしっかり見ておけば避けることなんて簡単だ。

 

「うぉぉぉ!!!」

 

銃撃しても当たらないので無駄だと思ったのだろう、一人がナイフを構えて突っ込んでくる。

 

「よせ!敵うはずがない!!」

 

リーダーと思われる奴が叫ぶがもう遅い。

ナイフを持って構えていた腕を持って掴みそのまま地面に叩きつける。

 

「グッ!?」

 

気を失ったのだろう、そのまま動かなくなった。

 

その後も次々と近接戦を仕掛けて倒していく。

 

「クソォォォォ!!!???」

 

「がぁぁぁ!!!」

 

「ひぃ!?あいつは人間なんかじゃねぇ!怪物だ!」

 

口々に悲鳴を上げたりしながら俺に次々と意識を刈り取られていく奴ら。

 

最後にリーダーの男を残して全滅。

 

「なんなんだ貴様はぁぁ!!??

あんな動きが人間にできるわけがない!!」

 

そう言われてもな……

織斑先生は普通にやってるし……

まぁいいや、こいつも黙らせとこう。

 

「がっ!?」

 

殴って気絶させる。

そこにシャルロットとラウラが来る。

 

「輝義、終わった?」

 

「……こっちは問題ない。そっちは?」

 

「こっちも問題ないよ」

 

「って輝義!血が出てるよ!?」

 

ん?無茶はだめだって言ったでしょ

あ、ホントだ。

……撃たれたのかな?

 

「手当てするからこっちに来て、ここに座って」

 

「……頼む」

 

シャルロットは怒りながら手当てをする。

 

「もう!無茶はだめだって言ったでしょ!?」

 

「……すみません」

 

「もう!」

 

 

 

 

「はい、これでおしまい」

 

「……ありがとう」

 

「うん。これからは無茶したらダメだよ?」

 

「……はい」

 

そこへ安全確認を行っていたラウラが戻ってくる。

 

「確認してきたぞ。

特に危険物などは見つからなかった」

 

「ありがとうラウラ」

 

「それにしても嫁はすごいな!

あんな動きができるなんてな!

他に教官ぐらいしか知らないぞ!」

 

ラウラが褒めちぎってくる。

やめろよ照れるだろ。

 

「……二人共、今更だが怪我はしていないか?」

 

「うん、僕は大丈夫」

 

「私もだ」

 

ならよかった。

 

「じゃぁ外に出ようか」

 

「そうだな。ほら、嫁も行くぞ」

 

「……あぁ」

 

 

 

「手を上げろ!」

 

外に出た瞬間、警察の方々にいきなり

映画みたいなこと言われたんですけど……?

 

「僕たちは人質です!中の武装勢力はすでに鎮圧しました!」

 

「本当か!?

今からそちらに人を向かわせる!」

 

そう言うと警察官が数名こちらに向かってくる。

 

「今から身体検査を行います。

安全上やらなければならないので少し我慢してくださいね」

 

そう言うと、身体に不審物がないか調べ始めた。

二分程で検査は終わった。

 

「はい、異常なしです。

……あれ、大河君ですか?」

 

なんか気づかれたっぽい。

まぁここで隠してもしょうがないし。

 

「……はい」

 

「あぁ、やっぱり。

大変でしたね。そちらのお嬢さん方も」

 

「いえ、彼が守ってくれましたから」

 

「彼女さんですか?」

 

そう聞かれたのでこう答えた。

 

「……いえ、同級生です」

 

すると二人はすっごい不機嫌な顔に。

なんでや……?

本当の事言っただけやぞ……

 

「……どうした?」

 

聞いてみるが、

 

「ふん!輝義なんか知らない!」

 

「嫁よ、今のはない」

 

二人共取り合ってくれませんでした。

 

 

そういや俺、飯食い損ねた……

腹減ったなぁ……

 

 

 

 

ようやく学園に戻ってきた。

ふぅ……疲れた……

 

しかしゆっくりとする間もなく、織斑先生に呼び出された。

まぁ、理由はあれしかない訳で……

これから何を言われるかも大体想像つくわけで……

 

 

 

行く途中にシャルロットとラウラに会う。

のだが未だに不機嫌で……

 

 

「さて、何故呼び出されたかわかるな?」

 

「「「……はい」」」

 

「そうかそうか。

ならば説教の時間だ」

 

 

 

「お前たちは馬鹿なのか!?

特に大河!お前の立場をよく考えろ!」

 

「……ごもっともです」

 

「お前たちもだ!

何故止めなかった!?」

 

「止めたんですけど、それは出来ないって言って聞かなくて……」

 

「なら無理やりにでも止めろ!

こいつはそう言って無傷で帰ってきた試しがないんだぞ!?」

 

「今回もそうだ!

また怪我して帰ってきおって!

お前は毎回毎回何かしら怪我をしないと気が済まんのか!?」

 

その後もお説教は続いた。

三人そろってしっかりみっちり二時間ほど絞られた。

 

 

 

お説教が終わった後、織斑先生に止められる。

 

「大河、少し残れ」

 

「……はい」

 

そう言って残る。

何の話だろう?

 

「すまんな、伝え忘れていたことがあったんだ。

後日、警察の方で事情聴取があるから覚えておけ。

日程は後で連絡する。

あの二人にも言っといてくれ」

 

「……分かりました」

 

連絡が終わって帰ろうとしたら、

服を掴まれた。

 

なんだろうと思って織斑先生の顔を見ると、

泣きそうな顔をしていた。

え!?なんで!?

 

「ど、どうしたんですか?」

 

おろおろしながら聞くと、

 

「お前は毎回毎回、心配させて……

報告を聞く私達がどんな気持ちかわかるか?」

 

それを聞いて、本当に申し訳ないと思った。

 

「……すいません」

 

「今回も無事に帰ってこれたが次はそうじゃないかもしれないんだぞ!?」

 

「……はい」

 

すると、織斑先生は泣き出してしまった。

 

「ぐすっ、無事でよかった……

本当に……」

 

「……織斑先生」

 

「ずずっ、なんだ」

 

「……心配してくれて有難うございます」

 

「ありがとうじゃない!

そもそも心配掛けるな……」

 

ほわっ!?

織斑先生が抱き付いてきた!?

 

「ぐすっ……本当に心配したんだぞ……」

 

そう言われて、心が締め付けられた。

 

「……本当に申し訳ありません」

 

言いながら軽く抱きしめる。

ついでに頭をなでながら。

いつもちょっとはね気味な髪の毛は女性らしい柔らかい髪だった。

 

 

ーーーー side 千冬 ----

 

大河は今実家に帰っている。

久々で一日と短い時間だがリフレッシュ出来ればいいが。

 

 

今日、大河が帰ってくる。

 

 

 

大河達が武装勢力に人質として捕まったことを聞いて、

学校中が騒がしくなった。

 

あいつはまた面倒ごとに巻き込まれたのか……

何故あいつはこうも私達に心配かけるんだ……

 

 

 

オルコット達が先程職員室に殴り込んできた。

 

私達に三人を助けさせろと。

だがそれは無理だ。

学園の敷地外である以上ⅠSを展開することができない。

出来たとしても市街地で、しかも店内という狭い空間でⅠSを使えばどうなるか簡単に想像がつく。

人質ごと殺しかねない。

それにあいつらはいざという時に人を殺せない。

 

そういうのは大人の仕事だ。

大河がいるから感覚が狂ってるだけで本来ならば大河がおかしいのだ。

 

 

 

暫くすると警察から電話が架かってくる。

内容は大河達が自分で制圧して出てきたというもんだった。

……なんとなく分かっていたが……

はぁ……

 

 

 

大河達が帰って来た。

 

早速呼び出した。

飯を食ってないから腹が減った?

ふざけるな!こっちがどれだけ心配したと思ってるんだ!?

 

 

気か付いたら二時間が過ぎていた。

もういいだろう。

流石に懲りただろうしな。

 

 

あぁ、忘れるところだった。

後日、事情聴取があるからそれを伝え忘れていた。

大河を呼び止める。

 

伝え忘れていたことを伝える。

それが終わって大河が出ていこうとしたとき、

何故か、すごく遠くに行ってしまう気がして、咄嗟に服の袖をつかんでしまった。

 

そして大河がこちらを向いて顔を見た瞬間に涙が溢れてきた。

 

それから恨み言を言ってやった。

途中抱きしめられたが、これぐらいしてもらわなければな。

 

今回の事で改めて分かったがやはり大河の事が好きだ。

それになんだかんだ言って自分が女だってことを痛感させられた。

 

 

ーーーー side 千冬 ----

 

 

 






いやぁ……時間がかかってしまった。
本当は昼の十二時頃までに投稿するつもりが……
申し訳ない……


感想、評価お願いします。
あと活動報告で聞いたことの返信も出来ればお願いします。


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49話目


ヘイヘイヘイヘイヘイヘイ!!!!

昨日は投稿できなくて申し訳ない……
理由?寝てた。


 

いやもう大変だった。

織斑先生に怒られた後、部屋に戻ると箒達が待ち構えてて三人そろってこっぴどく怒られた。そりゃもう怒られた。

ラウラが涙目になるレベルで。

俺は母さんを思い出しました。

 

箒って怒ると滅茶苦茶怖いんだね。

セシリアはとにかく淡々と。

簪は涙目になりながら。

鈴は母ちゃんって感じだった。心の救いだった……

布仏はいつものにこにこ顔が真顔になっていつも伸びている語尾も全く伸びない。

楯無さんは笑ってるけど目が全く笑ってない。

虚先輩はやばい。あの人はマジで怒らせたらダメなタイプの人だ。

織斑?あぁ、「怖い」とか言ってどっかいきやがった。

 

いや、消灯ぎりぎりまで怒られた。

またなんも食えなかった……

お腹すいたなぁ……

明日は何か食えるといいな……

 

 

 

 

朝。

 

織斑先生との訓練を終えて食堂へ。

 

食券を買っておばさんに出す。

 

「……おばさん、これでお願いします」

 

「あいよ。

……それにしても今日は一段と食べるんだね」

 

「……えぇ」

 

「ま、朝たくさん食べることはいいことだからね。

ただ腹壊さない程度にしときなよ」

 

「……はい」

 

 

頼んだものを数回に分けて机に運ぶ。

 

「あんた、今日はずいぶんと食べるのね」

 

鈴を含めて全員がその量に驚愕する。

 

「そんなに食べて大丈夫なのですか?」

 

セシリアは心配してくるが問題はない。

俺の胃袋はダークホールなのだ。

 

「……昨日の昼からなにも食っていないからな。余裕で入る」

 

「そうですか?

でもお腹を壊さないようにしてくださいね?」

 

「……あぁ」

 

 

うまかった!

やっぱり俺って燃費悪いね。

 

 

 

教室に行くと皆が話しかけて来る。

 

「大河君すごいね!」

 

「テロリストやっつけちゃうなんてさっすがー!」

 

「でも昨日皆に怒られてたでしょ?」

 

言うな……!

まじで怖かったんだから!

 

「いやぁ、愛されてるね!」

 

それは本当に思う。

皆には迷惑かけてばっかりだ。

なのに俺の事をああやって心配してくれる。

本当にありがたいことだよ。

 

 

 

SHRが始まった。

織斑先生が連絡事項を伝える。

 

「今日の連絡事項だが……

再来週に臨海学校がある。

明日までに班を決めておけ。

四~六人ほどの班だ」

 

その言葉を聞いた瞬間、クラスはいつもの如く爆発した。

 

「「「「「「「やったぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」」」」」

 

「ついに臨海学校よ!」

 

「織斑君と大河君の水着が合法的に見れる!」

 

おう待て。

合法的っつたな?

非合法で見てるってことか?

 

それよりも静かにした方がいいぞ。

ほら、織斑先生が。

 

「えぇい!静かにせんか!

イベントのたびに一々騒ぐな!

SHRが終わってから存分に騒げばいいだろう!」

 

あぁ……

織斑先生怒らせちゃったじゃん……

流石に皆も静かになったね。

うん、そうじゃないと魔剣シュッセキボが炸裂するからね。

 

「ゴホン!

それでは続きを話す」

 

「班決めもだが、水着も忘れるなよ。

別にどのような水着でも構わん。

新しく購入しても構わないが、購入しなかったら学校指定の水着だ」

 

その言葉に皆は、

 

「よっしゃぁ!

これで男子二人を悩殺できる!」

 

「ビキニか!?チューブトップか!?

何なら攻めに攻めてハイレグとかもいいわ!」

 

「なんにせよそこが決戦の場だ!」

 

「入念に準備をしなくては!」

 

すげーてんしょんあがってんなー。

 

でも織斑先生もう限界ですね。

 

スパパパパパパパァァァァァァン!!!!!!!!

 

おぉ、いい音すんなぁ。

 

「いい加減にしろ!」

 

怒ってらしゃる。

 

 

 

そんな感じで今日は騒がしい一日の始まりだった。

 

 

 

 

放課後

 

楯無さんとの訓練も終わり、飯も食ってのんびりしていると部屋に束さんが現れた。

いやもう本当にどうやって出てくんの?

束さん七不思議の一つだね。

 

「てるくん!こんばんわ!」

 

「……はい。こんばんわ」

 

「いやぁ、昨日は大変だったね」

 

本当に大変でした。

 

「まぁ私もその件で来たんだけどね」

 

また説教!?

 

「あぁ、大丈夫だよ。

怒りに来たわけじゃなくてね?

てるくんの事を襲った奴らの事で来たんだ」

 

あいつらか。

結局誰の仕業なのかよく分からないんだよな。

 

「てことで、ちーちゃん達も呼んだから一緒に話をしようか。多分もう来るよ」

 

十秒ほどすると、

 

「大河、入ってもいいか?」

 

織斑先生の声が廊下から聞こえる。

 

「……はい、いいですよ」

 

「失礼する。

……本当に束がいるのか……

はぁ……なんで学園でもトップクラスの警戒態勢が敷かれている部屋なのにこうも易々と侵入してくるんだ……」

 

……お疲れ様です。

対して束さんは、

 

「私にこの程度の警備じゃ無理だよちーちゃん!」

 

「こいつもう嫌だ……

こんなのが親友なんて私は何なんだろう……」

 

織斑先生が!?

ネガティブになってしまった!

 

「そんなこと言わないでよ!ちーちゃん!

それよりもハグしようぜハグ!」

 

「それよりも要件は何なんだ?

くだらなかったら……どうなるか分かっているな?」

 

やべぇ、織斑先生今すぐにでも爆発しそう。

そんな中、

 

「うっそ、本当に篠ノ之博士!?」

 

あ、楯無さんだ。

まぁ束さん見たら普通その反応だよね。

 

「よし、それじゃ今回の要件を話すよ」

 

束さんが切り出す。

 

「てるくん達を襲った奴らについてだよ」

 

内容は織斑先生と楯無さんの顔が一気に引き締まるものだった。

 

 

 





取り敢えず今回はここまで。
明日また投稿します。


感想と評価くださいな。


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50話目


ついに50話になりましたね。

今回はついに亡国企業が登場します。
亡国企業の設定については作者の独自設定になります。
そこんところよろしくお願いします。

会話がかなり多いです。


 

 

「てるくんを襲った奴らについてだよ」

 

この言葉を聞いた瞬間、織斑先生もさっきまでちょっとふざけていた楯無さんもふざけていた顔が一気に強張る。

 

「……束、それはどういう意味だ?」

 

織斑先生が聞く。

 

「どういう事ってそのままの意味だよ。

てるくん達を襲った奴らの事が分かったから教えに来たんだよ」

 

二人はそれを聞いた瞬間、頭を抱えた。

 

「もうやだ……私達が必死になってやってる事をこんな簡単に……?」

 

「更識、もう諦めろ……そんなんじゃこれから聞かされる内容なんて多分持たないぞ……」

 

そんな二人を見て束さんは、

 

「あっはっはっはっは!!!!」

 

大爆笑してらっしゃる。

 

「まぁまぁ、取り敢えず話を聞いてよ。

多分これ聞いたらそんな呑気にしてられないと思うよ?」

 

「その前に束、盗聴や盗撮等の対策は?」

 

「その辺は大丈夫だよ。しっかり対策してあるからね。ばっちりだぜ!」

 

「ならいい」

 

「じゃ、話すよ」

 

そう言って話し始める。

 

「亡国機業(ファントムタスク)って知ってるかな?」

 

その言葉を聞いた瞬間、

二人の顔が驚愕と言った表情になる。

 

「今回てるくん達を襲ったのはそいつらの実働部隊の一つだよ」

 

その瞬間楯無さんが聞く。

 

「……篠ノ之博士、それは本当ですか?」

 

「本当だよ」

 

「だとしたら物凄く不味いわね……

いや、不味いなんてものじゃないわ……」

 

そう言って厳しそうに顔を顰める。

そこへ束さんが二人に聞く。

 

「君はどこまで亡国機業について知っているかな?」

 

「そうですね……

世界規模で暗躍している闇の武器商人、

各国の政治に食い込んでいたり、

世界各地の紛争地域に武器を売り続けていたり

第一次世界大戦前より存在している……

何よりも、正体や、構成人員、正確な規模などの詳しいことが全くと言っていいほど分かっていない事ですね」

 

そんだけ分かってりゃ十分でしょ……

そう思ってんの俺だけ?

 

「まぁその辺が皆じゃ限界かな」

 

「篠ノ之博士はもっと知っていると?」

 

楯無さんがそう聞くと、束さんは何を当たり前の事を言ってるんだと言わんばかりに、

 

「当たり前だよ。

まぁ、何てことは無かったかな」

 

「束、早く話せ。

対策も練らなければならん」

 

「まぁまぁそう急かさないで。

ちゃんと話すからさ」

 

そう言うと束さんは一拍置いて話し始めた。

 

「まずはこれを話さなきゃね。

あいつらは、担当地域があってね?

北米担当、南米担当、アフリカ担当、アジア担当、ヨーロッパ担当、って感じでね。

で、それぞれが担当地域で活動してるんだけど、どこの組織もだけど一枚岩じゃないみたいにこいつらもそうらしくてね。

今回は功を焦った一部の奴らの独断で今回の事を起こしたらしくてね」

 

なんか話がとんでもなく大きくなってね?

俺の脳みそじゃ付いていけねぇわ。

 

「今回の主犯格はヨーロッパ担当の奴らだね。

この前、金髪の……名前なんだっけ?」

 

「……シャルロットですか?」

 

「そうそう!

その子の件と銀髪っ子の件で色々と向こうの奴らにてるくんかなり恨まれてるみたいでね。自業自得なのにね?」

 

えぇ……

俺ってそんなに恨まれてんの……?

やだなぁ……

 

「で、さっき言ってたけど、政府の上層部にも食い込んでるから、銀髪っ子の件でかなり打撃を受けたらしくて」

 

「そうなのか。で、具体的にはどんな打撃を受けたと?」

 

織斑先生が質問する。

 

「そうだね……

それを説明する前に質問だよ。

デザインベビーって分かるかな?」

 

その言葉を聞いて、二人の顔が再び強張る。

 

「なぜ今その言葉が出て来る!?」

 

「そりゃ関係があるからだよ」

 

「……まさか!?」

 

「そ。そのまさかだよ。

あの銀髪っ子は、デザインベビーで作られた子だよ」

 

その言葉を聞いた織斑先生は

 

「クソッ!!」

 

悔しそうに机を殴った。

 

「まさかラウラちゃんがねぇ……

でも納得いくかな」

 

楯無さんが言う。

 

「……どうしてですか?」

 

不思議に思った俺は聞いてみる。

 

「ラウラちゃんが転校してきた時に時に色々と調べさせてもらったのよ。保安上の理由でね。そしたらびっくりよ。

なんたって軍に入るまでの経歴が一切ないんだもの。経歴のない人間なんてあり得ないわ。だからドイツ本国にそれとなく匂わせたんだけど、全く情報は得られず。

だから警戒していたんだけどその矢先にあの事件が起きてね。

それで詳しく調べていたんだけど全く情報が出てこないからさらに怪しくなったのよ。ラウラちゃん自身はとってもいい子なんだけどね」

 

束さんが話し出す。

 

「その計画なんだけどね、一部の軍人と一部の政治家の独断だったらしくて。今回の一件で全部ご破算になったってわけさ。

そりゃ怒るよね。だってとんでもない金額をかけて作った研究所とかも全部無くなっちゃたからね。ほら、これがその写真だよ」

 

そう言って織斑先生にいくつかの写真を渡す。

写真を見た瞬間に二人の表情が無くなった。

気になったので見ようとするが、織斑先生、束さんにも楯無さんにも止められた。

 

「てるくんは見ない方がいいかな。

あの写真にはこの世の悪意が詰まってるようなものだから。

てるくんが見るには早すぎるよ」

 

「これは……余りにも酷すぎる……

大河、お前にこれを見せるわけにはいかない」

 

「輝義君、あなたに見せるわけにはいかないわ。

これを見たら、輝義君は輝義君でいられなくなる」

 

……そんなに酷いのか。

この三人が言うのならばそうなんだろう。

 

「で、その研究所で作られたのがあの銀髪っ子だよ。

ついでに言っとくと私の所に引きとった子もその一人だよ」

 

「本題に戻るけど今回の件で、てるくんは、ドイツやフランスと言った国だけじゃなくて亡国機業っていう存在も敵に回したと見ていいかな。

これから強引な手段に出て来る事が多くなると思うよ」

 

その発言に織斑先生は、

 

「何とか出来んのか?」

 

それに対して束さんは、

 

「うーん……無理かなぁ……

フランスみたいな国っていう事なら出来るけど、情報は知っていても存在が分からないっていう相手にはちょっと手の打ちようがないかな」

 

「そうか……」

 

「篠ノ之博士、亡国機業についての情報を知っている限りでいいので教えてもらえませんか?」

 

「まぁ、いいよ。でも意味ないと思うけどな」

 

「それはまた、どうして?」

 

「あいつら鼻がいいから、情報が漏れたってすぐに勘づくんだ。

だから私が持ってる情報も意味がないかもしれないけどそれでもいいなら渡すよ」

 

「えぇ、構いません。

知っているのと知らないのでは大違いですから」

 

「そっか。じゃ、ちょっと待ってて。今コピーするから」

 

そう言って空中にディスプレイとキーボードが浮かぶ。

本当にどうなってんだあれ……

束さんはキーボードを叩く。

 

ものの数十秒で終わらせてしまった。

はえぇ……

 

「はい、これでいいかな?」

 

「ありがとうございます」

 

「それで、てるくん」

 

呼ばれたので返事をする。

束さんの雰囲気的に真面目なものだと思ったから姿勢を正し、返事をする。

 

「……はい」

 

「これからは今まで以上に色んな人たちが君に接触してくると思う。

それがすべて善意だけじゃない。むしろ善意の方が少ないかもしれない。

悪意ばかりかもしれない。

だから周りに気を付けていかないとだめだよ。それが必ずしも自分に向けられるとは限らない。だから自分の親しい人達に危害が及ぶかもしれない。

だけど、そんなときでも一人で抱え込まないで。

周りには君を大切に思ってくれている人達がいるから。周りを頼っていいから」

 

「もしそんなことがあっても世界に絶望しないで。

私にそれを教えてくれたのは他でもない、てるくんなんだから」

 

そう言って束さんは笑った。

 

「……はい。その時は頼らせてもらいます。幸いな事に周りには頼れる人達が大勢いますから」

 

そう言うと束さんは、

 

「うんうん。

じゃ、取り敢えず用事は終わったから、私は帰るよ」

 

「あぁ。貴重な情報を持って来てくれて助かった。

今回ばかりは感謝するぞ」

 

「今回ばかりはって何さ!?

いつもちーちゃんの役に立ってるでしょ?」

 

「何を言ってる?

毎回毎回お前が起こした面倒事に巻き込まれる私の身になれ!」

 

「そうだっけ?

あ、そうだ!

てるくんに恩返しするって言ったよね?その恩返しが決まったよ!」

 

そう言えばそんな事を言っていたような……?

何だろう?

 

「てるくんに専用機をあげるね!」

 

マジカヨ。

思わず片言になっちまったぜ……

いや、それよりも専用機!?

え!?いいの!?

だって織斑先生が、

 

「束ぇぇぇぇ!!!!

言ったそばから面倒事を持ってくるんじゃない!しかも専用機だと!?あほかお前は!」

 

荒れ狂ってらっしゃる。

いやまぁしょうがないよね。

 

「じゃあね!」

 

そう言うと消えてしまった。

本当にどうなってるんだろう?

 

「また面倒事が増えた……

残業だぁ……」

 

あぁ!?

ネガティブ織斑先生(今命名)が出てきてしまった!

 

「……その、すいません」

 

「あぁ……いや大河が謝る必要はない」

 

でも俺に渡されるものが原因なんだし……

 

「まぁ、取り敢えず今日は寝ろ。消灯時間は過ぎているからな」

 

そう言われて時計を見ると既に十一時を回っていた。

 

「そうね。今日は色々聞かされたから思うこともあるでしょうし、しっかりと休んで整理した方がいいわ」

 

「……はい」

 

「ではな。お休み」

 

「お休みなさい。輝義君」

 

「……お休みなさい」

 

そうして二人は出て行った。

 

 

それにしても、本当に衝撃的だったな。

ラウラの事は知っていたからそうでもなかったが……

まさかそんなに俺は有名人になっていたとは。

世界的な犯罪組織まで俺を狙っているなんて思ってもいなかった。

 

……取り敢えず風呂入ろう。

 

 

なんだかんだでもう十二時か。

寝よう。

色々と衝撃的な事を聞かされて疲れた。

 

そうして俺は眠りに着いた。

 

 

 

 





長いし会話は多いし……
すんません。



感想、評価等ください。


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51話目



今回は色々と小難しい事を書きましたが、そんなもんなんだな程度に見てください。
正直、作者の独自解釈なので、合っているとは限りません。



 

 

 

束さん達と話をしてから既に数日が過ぎた。

特に何かがあった訳でもなく平穏な日常を送っていた。

 

 

 

 

土曜日、俺とシャルロット、ラウラは今警察署……ではなく楯無さんの実家にいた。

理由はこの前の件で事情聴取で来ていた。

何故警察じゃないのかというとまず第一に安全面で考慮した結果。

考えにくいが、無いとも言えない襲撃に備えての対策だった。

此処ならば万が一に襲われても即座に対応できるからとのことだった。

実際にこの場には警察の関係者がいる。

他にも楯無さん家の人もいる。

 

「本当はもう何人かいるんだけど、遅れるって連絡来ているから先に自己紹介しちゃいましょうか」

 

楯無さんのその言葉で自己紹介が始まる。

 

「初めまして。私は警視庁公安部外事第三課の池川と申します」

 

「初めまして。同じく飯山と申します」

 

「初めまして。警視庁刑事部第一課、笹山と申します」

 

「初めまして。同じく凪月と申します」

 

そう言って自己紹介してきたのはガチのおまわりさんだった。

しかも公安とか刑事部第一課とかドラマとかで聞くとこじゃん……

そしてその隣にもう三人別の人達がいる。誰だろう?

 

「申し遅れました、防衛省の飛騨と申します」

 

「初めまして。陸上自衛隊の大沢と申します。

諸事情により詳しい所属等の紹介は控えさせていただきます」

 

「初めまして。同じく萩庭と申します。

私も詳しい所属等の紹介は控えさせていただきます」

 

ジエイタイ!?

ナンデ!?オレナニモワルイコトシテナイヨ!?

 

自衛隊まで登場して焦る俺。

 

「……大河輝義です」

 

「シャルロット・ローランです」

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒです」

 

流石にラウラもこの時ばかりはしっかりとした挨拶をしている。

そこへ大沢さんが俺に話しかけて来る。

 

「大河君の事は良く知っておりますよ。

学園襲撃の際、VTシステムの際の活躍を聞き及んでおります」

 

おぉう……

いきなり褒められたぜ……びっくり。

でも、そう思っているわけじゃないから、

 

「……いえ、そんなに褒められた事では無いですから」

 

こう返した。

すると、

 

「そんな、ご謙遜を」

 

笑いながらこう言ってきた。

いや、なんかこそばゆいな……

 

 

そうして会話をしていると隣に座っている楯無さんが声をかけて来る。

 

「輝義君達には事情聴取で来てもらったのだけど、他にもちょっとね」

 

そう楯無さんは言う。

何なのかよく分からないがまぁ聞けば分かるだろう。

 

 

そうして十五分程経っただろうか、

そこへ三人が襖を開けて入ってきた。

誰だろう?

 

「申し訳ない、道が混んでいてな」

 

身体つきがやたらと良い。

何なんだこの人?

 

「遅れて申し訳ない、

私は更識伊吹、そこの更識楯無の父親だ。娘達がいつも世話になっている」

 

まさかのお父さんの登場。

え!?この親父からあの二人が生まれてくんの!?

いや、俺も人の事言えねぇけど!

これは衝撃的すぎるわ……

 

それに続いて挨拶をして来たのは、

 

「初めまして。外務省の山崎と申します」

 

「初めまして。同じく外務省の石田と申します」

 

何で外務省が?

なんかあったっけ?

 

 

 

「さて、これで人間は揃ったことだし話を始めましょうか」

 

楯無さんが切り出したことで今回の話の内容が分かった。

 

「それじゃ、まず初めに事情聴取と行きましょうか。

と言っても思った事や感じたことを話してくれればいいわ。

そんなに難しく考えなくても大丈夫よ」

 

そう言って質問が始まる。

 

「君たちから見て今回襲撃してきた者たちはどの様に見えた?」

 

これに関しては俺が答えるよりもラウラとシャルロットが答えた方がいいだろう。

多分、強かったぐらいしか言えなさそうだし。

 

「そうですね……

襲撃してきた者たちは間違いなく精鋭、と言っていい強さでしたね。

今回勝てたのは輝義がいた事、隙を突いて奇襲を仕掛けられた事、相手が奇襲により混乱していたからでしょう。と言っても即座に対応して来ましたから」

 

「ふむ」

 

「それにあいつらは間違いなく我々の事を専用機を持っていても高が高校生と侮って油断していたのではないでしょうか?

でなければ各国の特殊部隊に並ぶような実力を持っている人間が対処できない訳がありません」

 

「そう言えば君はドイツ軍に所属しているんだったね」

 

「えぇ、正直あのレベルなら正規軍の特殊部隊でも上位に食い込めるほどです。

リーダーの男ならば部隊長クラスで間違いないかと。

警察の突入経路を凡そ把握していましたし、人間を立たせる場所も理に適っていました。同士討ちを極力しない、敵だけを確実に殺すといたものでした」

 

「そこまでだったのかい?」

 

全員、にわかには信じられないと言った顔をしながらラウラに聞く。

 

「えぇ。申し訳ないですが正直に言いますと警察がどうこう出来るようなレベルの相手では無いですね。あの時突入していたら良くて全滅、最悪皆殺しにされていたでしょう。

それに今回は強化装甲や強化外骨格が無かったから良かったものの、それらを所持していた場合、間違いなく一方的な虐殺になっていたでしょう」

 

ラウラがそう言うと池川さん達は少し顔を顰める。

そりゃそうだろう、なんたって自分たちの組織が弱いと言われたようなもんなんだから。

 

「あぁ、勘違いしないで欲しい。

気を悪くしたわけじゃなくてね、あそこに突入させていたらと思うとね。

まぁ、それよりも続きをお願いできるかな?」

 

「はい」

 

「あとはそうですね……

皆さんも感じているかと思いますが、ただのテロリストや強盗というには装備が整いすぎている事でしょうか?」

 

「確かにあそこまでの装備を整えるとなると普通じゃないね。

大沢さん、そこのところどう思いましたか?」

 

「はっきり言って元民間人や、傭兵崩れが用意できるような代物じゃないな。

全ての武器が間違いなく軍用の物だ。あそこまでの装備を整えるのは容易じゃない。

それこそ正規軍などでなければ入手する事も難しいだろう」

 

「やはりですか……」

 

「あぁ。

正直前回の女権団と言い今回と言い余りにも手が込んでいる。

女権団は何とか阻止できたが、これからも起こるとなると事前に防ぐことはかなり厳しいな」

 

なんかまた難しい話をしている……

 

「こちらからは以上かな。聞きたいことは聞けたしね。もしかしたらまた何か聞くかもしれないからそう思っていておいてほしい」

 

そう言って

 

「では、次は私達から」

 

そう言って前に出てきたのは、

えっと、笹山さんだっけ?

 

「それでは私達は護衛関係です。

大河君に関しては更に厳重に警備するといった方針で固まりました」

 

「そしてローランさんとボーデヴィッヒさんですが、今回の件を受けて新たに護衛対象に加えさせて頂きました。理由としては女権団の標的リストに名前が載っていたこと、今回何の迷いもなくお二人を人質として指名してきたことを鑑みるに間違いなく亡国機業のリストにも名前が記載されていると予想されるためです」

 

そう言い終えた時シャルロットが質問をした。

 

「あ、あの!」

 

「はい、何でしょうか?」

 

「その……僕はもうフランスに帰れないんですか……?」

 

あぁ……

お母さんのお墓があるんだっけな……

 

「そうですね……

完全に無理、という訳ではありません」

 

そうなのか。

てっきりもう無理なのかと思ってたから良かった。

 

「良かった……」

 

シャルロットもそうため息をつくがやはり簡単にはいかないようで、

 

「ですが入国できたとしても難しいでしょう。

向こうは完全に敵のテリトリーですから、間違いなく命の危険に曝されます」

 

「そんな……

何とかならないんですか!?」

 

そこに山崎さんが口を挟む。

 

「今現在ローランさんは無国籍の状態です。

元々フランス国籍だったようですが、記録が抹消されていました」

 

そこまでやるのかよ……

酷すぎるな。これじゃ何も出来ないじゃないか……

 

「取り敢えず護衛の方を先に話してしまいましょう。

こちらにいる凪月がシャルロットさんを、そして今回は用事が在り来れませんでしたが、もう一人ボーデヴィッヒさんに護衛を付けさせていただきます」

 

それはまた……

随分と好待遇だな……

だけどラウラまでもか?

ドイツ国籍もあるし大丈夫なんじゃ?

 

「私もですか?」

 

「えぇ、簡単に言うとあなたもドイツにおいて存在が抹消されていました。

恐らく今回の件を受けての事でしょう」

 

「そんな……」

 

ラウラまでもか……

流石にラウラも堪えたのだろう、顔を青くしている。

 

「それでですが、まず最初に護衛の担当に関してお伝えします。

ローランさんとボーデヴィッヒさんさんに関しては我々警察と、更識家の方々が担当させていただきます。そこに各二名ほどの自衛官を混ぜます」

 

ん?

楯無さん家が?どういうこっちゃ?

それにそんなにごちゃごちゃしていたら逆にやりずらいんじゃ?

 

「……そこまでごちゃごちゃしていたら逆にやりずらいのでは?」

 

「そこは問題ありません。指揮系統は統一します」

 

まぁそれならいいか。

 

「我々警察からは以上になります」

 

池川さんは終わったらしい。

すると飛騨さんが代わりに話し始めた。

 

「大河君には我々自衛隊の方から護衛をさせて頂きます。

正直に申し上げますと今回の様な事が再び起きた場合、警察との話し合いで警察では対処ができないとの結論に至りました。ですので大沢さんと萩庭さんを含めた合計八名で護衛します」

 

「……分かりました」

 

「護衛に関しては以上になります」

 

ふぅ……

やたらと緊張する時間だったな……

 

 

こうして一区切りついた。

楯無さんからの提案で一旦休憩しようということになった。

 

 

 






今回は取り敢えずここで切ります。
中途半端ですが許して。



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51話登場人物等紹介

次話の投稿の前にこいつを投稿します。


 

池川 久敏(いけがわ ひさとし)

男 54歳

 

警視庁公安部外事第三課に所属している。

叩き上げでかなり高い階級まで上り詰めた。

見た目はまさにって感じの人。

ただ口調は優しい。

 

「いやぁ、最近色々あって休めてないからねぇ。

どっかに旅行でも行きたいもんだね」

 

 

 

飯山 慎二(いいやま しんじ)

男 三十二歳

 

池川と同じ所属。

鍛えているため身体つきはがっしりとしている。

奥さんと子供が三人いる。

 

 

 

 

笹山 達也(ささやま たつや)

男 三十四歳

 

いわゆるエリート。

ただ、かなり周りに変人が多いため苦労している。

物凄く良いひとだが前述の通り苦労性。

この前結婚したばっかり。

奥さんは24歳の美人さん。

 

 

凪月 風音(なぎつき かざね)

女 二十五歳

 

この人本当に警察官?と思っちゃうぐらいの美人さん

スタイルはボンキュッボン。

綺麗系の顔立ちで少しばかり怖いという印象を受けるがむしろその逆。

基本的にあまり人と関わらないゆえにそう思われるだけで滅茶苦茶面倒見がいい。

ただ、彼氏いない歴=年齢。

 

「私だって彼氏が欲しいんですよ!

なのに女権団が悪いイメージだから私にもその影響が来てるんですよぉ!」

 

 

 

飛騨 武之(ひだ たけゆき)

男 四十二歳

 

なんか知らんが七三分けに眼鏡という明らかに狙っているだろっていう見た目。

瓶底眼鏡をかけているが眼鏡を取ると普通にイケメン。

私生活はだらしないが、学生時代に知り合った奥さんがしっかりしているため家はそんなにひどくはない。

偶にだが奥さんに外に物を放り捨てられる。

 

「何故だ!?ソファの上に置いておいただけじゃないか!?」

 

「そう言って一昨日からありましたけど?」

 

 

 

 

大沢 和正(おおさわ かずまさ)

男 四十二歳

 

筋骨隆々といった言葉が似合う男。

詳しい所属は明かしていないが、自衛隊の特殊部隊である特殊作戦群に所属している。

機密性の高い部隊のためほとんど情報は明かされていないが、精鋭中の精鋭。

女権団のアジトにも突入した部隊で隊長を務めるほど優秀。

実際、怪我人は出しているが、死者を出さずに作戦を完遂させたことからその優秀さが分かるだろう。

独身。

いつか結婚できるだろ、と思っていたが気づいたら42歳になってた。

 

「もう結婚は無理だわ。諦めよう」

 

 

 

 

萩庭 颯馬(はぎにわ そうま)

男 三十五歳

 

大沢と同じく特殊作戦群に所属している。

優しそうな見た目をしているが、実際は部隊の中でも一、二を争うほどの実力者。

最近上司の大沢を見てこのままじゃ不味いと思い婚活を始めた。

 

「嫁さん欲しい……」

 

 

 

 

山崎 隆二(やまざき りゅうじ)

男 四十三歳

 

外務省に努めている。

最近の悩みは男性操縦者絡みで各国が半端ない事。

真面目にストレスで髪の毛が薄くなり始めている。

 

「髪の毛たちが今日も散ってゆく……」

 

 

 

石田 栄(いしだ さかえ)

女 三十六歳

 

外務省に努めている。

苦労が多いからか最近、皺が増え始めた。

子供が二人、旦那は専業主夫

 

「最近皺が増えてやってらんないわ」

 

 

 

更識 伊吹(さらしき いぶき)

男 五十六歳

 

前更識家当主

正直この歳であの体はおかしいだろっていうぐらいの筋肉モリモリマッチョマン。

任務で怪我をした際に楯無に当主の座を譲った。

子煩悩で未だに子離れが出来ていない。

 

「うちの娘は誰にもやらんッッッッ!!!!」

 

「お父さん、黙ってて」

 

「すみません……」 

 

 

 

登場した組織説明

 

 

警視庁公安部外事第三課

 

9・11が起きたことにより発足した新しい部署。

国際テロや中東地域のスパイなどを担当している。

ここ最近は存在が段々と表に出てきた亡国機業の捜査も担当し始めている。

警察全体で女権団に対して厳戒態勢が敷かれている。

 

 

 

陸上自衛隊 特殊作戦群

 

ガチの特殊部隊

創設は2004年と比較的新しい部類に入る。

(厳密にいえば違うのだが編成が完了した2004年とする)

防衛機密に該当するため詳しい構成人員の人数、隊員の名前等が一切明かされていない。

装備等もだが今回は作者が勝手に考えました。

 

 

 

装備一覧

 

十三式強化外骨格

(オール・ユー・ニード・イズ・キルのものを思い浮かべてくれればいいかと)

簡単に言うと物を持ち上げたりするのに補助してくれるような物。装甲で守られていないために戦闘には向かない。主に後方支援部隊で運用される。

主に市街地戦といった重火器の展開が難しい状況の時に戦闘に投入される。

戦闘を行う際には後着けの装甲を装備すれば行えるが、精々重機関銃程度までしか防げない。

 

 

 

十五式強化装甲

(ガン〇ムよりも小さい。あんなメカメカしくはない。全高が二・五メートぐらい)

装甲に守られているため、戦闘部隊に配備される。

正直、開発者が日本人でしかもド変態で凝り性のオタクだった為おかしい性能に。

具体的には装甲で守られている部分なら携帯用の対戦車ミサイルぐらいだったら吹っ飛ばされるが搭乗者を無傷で守ることができる。

性能表を見せられた時に総理大臣や防衛大臣達は頭を抱えた。

 

 

 

十五式二十ミリ自動小銃

従来の小銃等ではサイズが合わず、しかも各国が配備している強化装甲に対抗できる個人装備が無かった為、強化装甲の開発と並行して開発された。

炸薬マシマシ、貫徹力もエグイ。命中精度も折り紙付き。

ちなみに開発者は強化装甲の開発者の弟。

 

 

 

十六式三十ミリ狙撃銃

自動小銃の射程も威力も大きくなったためそれを遠距離から制圧するために開発された。

世界トップクラスの性能を持つ。

 

 

 

十五式強化装甲輸送車

最大積載量 十八トン、 

全長 十一・五メートル

強化装甲及び、その操縦者の運搬をするために開発された。

 

 

 

部隊損耗率

各国によって違うが、今回はこういう設定でいきます。

 

全滅

部隊のおよそ三割が戦闘行動を取れなくなる

 

壊滅

部隊のおよそ五〜七割が戦闘行動を取れなくなる

 

消滅

部隊の十割が戦闘行動を取れなくなる

 

 

 

 




こんな感じですね。
ガバガバ設定ですが、質問等あればどうぞお聞きください。


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52話目

連続投稿いけるかな!?


 

休憩が終わって再び話し合いが始まった。

 

 

「では、外務省の方から」

 

「えー、輝義君に関してですが、各国からとんでもない量のお見合いが申請されています」

 

ふぁ!?

ど、どどどういうこっちゃ!?

お、落ち着け俺!そして考えるんだ!

……うん!全くわからん!

 

「……どういうことですか?」

 

聞いてみると、

 

「まぁ、簡単に言うと君の遺伝子情報が欲しいんでしょうね」

 

「もっと簡単に言うと種が欲しい」

 

聞きたくなかった……

遺伝子ならまだ分かるけど、いや分からんけども。

種って……

 

「挙句の果てに国連から一夫多妻にしろとまで来ましたからね」

 

まじかよ。

俺はまだ清い身体でいたいのに。

 

「もうほんとにやってられませんよねぇ」

 

それはこっちのセリフだよ。

どうすんのさ?

 

「ただ、好機ではあります」

 

どういう事だ?

 

「大河君の事を本当に好きでいてくれる方々と結婚してもらって周りを固めてしまうんです。それならば文句は言ってくるでしょうが、今よりは遥かにマシになるはずです」

 

うぅん……

正直いまこの場で返事は出来ないな……

 

「……すいません、考えさせてもらえませんか?」

 

「もちろんです。強制ではないですし、何より君の考えが一番大事ですから」

 

「……ありがとうございます」

 

「いえいえ」

 

はぁ……

なんか色々大変だな。

今までが楽だったのか……

 

「では、次にローランさん、ボーデヴィッヒさんについてですが……」

 

「あの、そのことなんですけど、僕は篠ノ之博士が用意してくれた戸籍があるはずなんですが……」

 

「そのことも含めてご説明します」

 

一旦区切って話し始める。

 

「まずローランさんですが、篠ノ之博士がご用意された戸籍も抹消されていました。ですので現在戸籍も無い上に無国籍ということになりますね。存在自体が無かったことにされています」

 

「そんな……どうして……」

 

そう言うと泣きそうになっていた。

 

「……大丈夫か?」

 

「うん……」

 

全然大丈夫じゃなさそうだな……

しかし次の一言によって驚かされる事になる。

 

「それでですがお二人とも、もしよろしければ日本国籍を取りませんか?」

 

「……え?」

 

まさかそんな事を言われるとはおもっていなかったのだろう。

俺だってそうだし。

 

「え?……でも、いいんですか?」

 

「勿論です。正直ローランさんとボーデヴィッヒさん程の実力者であれば喉から手が出るほどですし」

 

「……本当にいいんですか?」

 

「私もか?」

 

「はい」

 

「僕は……日本国籍を取ります」

 

「私もとるとしよう」

 

「そうですか。分かりました。

それでは後日必要な書類等をお持ちしますのでそれまでお待ちください」

 

「「分かりました」」

 

「それじゃこれで終わりね」

 

やっとか……

ものすっごい疲れた。

 

しかしそれだけでは終わらなかった。

 

「ねぇ、シャルロットちゃんラウラちゃん、良かったらうちの子にならない?」

 

この一言によって混乱したのは言うまでもない。

 

 

 

 

結果的に楯無さんの提案は断ってた。

それにしても今日は濃すぎる一日だったな……

早く帰って飯食って寝よう……

 

 

 




今回は短めです。



感想、評価等くださいな。



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53話目

おっかいもの!おっかいもの!

水着ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!

皆やばいですけど、正直箒が一番やばいと思います。(どこがとは言わないけど)


今現在俺は迷子になっている。

どこにいるのかというと、学園の近くにある大型ショッピングモール、またの名をレゾナンスにいる。

 

そもそもどうしてここにいるのかというと、話は昨日の夜まで遡る。

 

 

 

 

夜、飯も食い終わって風呂にも入った。

やることがなくゴロゴロしていると、

部屋のドアを叩く音がする。

 

「……誰だ?」

 

「私だ」

 

この声は箒だな。

にしてもどうしたんだろうか?

ドアを開けると箒だけではなく、セシリアに簪、シャルロットとラウラ、布仏もいた。

 

「……取り敢えず入れ」

 

そして皆を招き入れる。

何かあったのだろうか?

考えているとセシリアに、

 

「明日、お時間はございますか?」

 

そう聞かれた。

明日?特に何もないからゴロゴロしようかと思ってた。

 

「……特にない」

 

と答えると、シャルロットが、

 

「なら、私達と一緒にお買い物に行かない?」

 

「………………………………なに?」

 

返答するのにたっぷりと十秒以上かかってしまった。

だってしょうがないじゃん。

家族以外に買い物に誘われたの初めてなんだから。

返答に時間がかかったのが気になったのか、

 

「私達と買い物に行くの……嫌だった……?」

 

簪さん!そんなことはないですから!

泣きそうな目で俺を見ないで!

慌てて理由を説明する。

 

「そ、そんなことはないぞ?ただ家族以外に買い物に誘われたの初めてだったからな。驚いてしまった」

 

理由を説明したらなんか可哀そうな目で見られた。

しかも、

 

「その、私達が居ますわ」

 

「その、輝義、大丈夫だぞ。ほら、おいで」

 

セシリアには頭を撫でられ、箒は両手を広げている。

いや、そうじゃないんだよ。

心配してくれるのは嬉しいんだけどさ……

 

「む?嫁は集団生活が出来ないのか?」

 

ラウラさんや……

そうじゃないんだ……

そのラウラの言葉に対してシャルロットと簪は、

 

「ラウラそれは無いよ……」

 

「ラウラ……」

 

呆れていた。

布仏?

必死に笑いをこらえていやがった。

こいつは平常運転だな……

 

「で、輝義どうする?」

 

まぁ、断る理由もないし。

 

「……喜んで同行させてもらおう」

 

「ほんとに?良かったぁ」

 

皆は俺の返答を聞いて嬉しそうにする。

 

「それでは、明日朝九時に学園大橋の前で集合いたしましょう」

 

セシリアの提案に頷く。

でもなんで寮じゃないんだ?

 

「……寮で集合じゃないのか?」

 

聞いてみたらセシリアは、

 

「女は色々と準備がありますのよ?まして男性との外出ともなれば尚更ですわ」

 

微笑みながら言った。

そうなのか……

初めて知った……

 

それから消灯時間前まで雑談をしていた。

 

そしてベッドに入ってから気が付いたのだが、

俺、私服短パンと無地のTシャツしか持ってない……

どうしよう!?

 

しかし慌てたところで今更どうにもならず、諦めるしかなかった。

 

 

 

 

 

朝、取り敢えず起きて食堂に向かう。

今日は朝からハンバーグ。

勿論特特特盛り。

美味しかったです。

 

部屋に戻って着替える。

のだが、ここでまたしても問題が。

 

Tシャツがキツイ……!?

え!?なんで!?

……そう言えばここに入学してからさらに筋肉が付いたんだっけ……

どうしよう?

でもこれしか着るもんないし……

しょうがない、着ていくしかないか……

 

取り敢えず何とか着ることができた。

そして橋の前に行く。

まだ皆は来ていないみたいだな。

 

 

にしても今日は暑い。

まぁ仕方ないか……

なんだかんだでもう七月だもんなぁ……

 

と、考えていた所に声をかけられた。

 

「輝義」

 

振り向くとそこにいたのは箒だった。

 

「その、似合っているだろうか?」

 

箒が着ているのは白のワンピース。

袖のないタイプの物。

飾り気のないものだったが、箒にはよく似合っていた。

 

「……あぁ、とてもよく似合っているぞ」

 

「ほ、本当か?」

 

嘘をつく理由なんてないだろうに、どうして疑うのか。

 

「……あぁ、本当だ」

 

そう答えると箒は嬉しそうに、

 

「そ、そうか……ふふっ」

 

笑った。

 

「それにしても輝義は随分とTシャツがパツパツなんだな。どうしたんだ?」

 

うっ!?

痛い所を突いてくる……

 

「……笑うなよ?」

 

 

 

 

説明すると、

 

「あははははははは!!!!」

 

「……笑うなと言っただろう」

 

「だって……ふっ、くっ……

筋肉が付きすぎてきつくなったってどこかのヒーローみたいだな。

あはははは!!」

 

くそぅ……

 

 

 

「おはよう。輝義、箒」

 

「嫁よ!おはよう!」

 

「……あぁ、おはよう」

 

次にやって来たのはシャルロットとラウラだった。

シャルロットは短パンに(と言っても俺みたいなザ普段着という感じではない)白の半そでのYシャツ。

ラウラは黒のワンピース。

 

「どうだ!似合っているだろう!」

 

ラウラが自慢げに言う。

 

「……似合っているぞ」

 

「そうだろうそうだろう!シャルロットに選んでもらったからな!」

 

あ、そうなのね。

なんかお母さんに服を選んでもらって喜んでる娘みたいだな……

 

「輝義、僕はどうかな?」

 

「……あぁ、似合っているぞ」

 

おんなじ褒め方しかしてない?

しょうがないじゃん。それ以外思い付かないんだから。

俺って語彙力ねぇな。

 

 

 

「輝義さん、おはようございます」

 

そう言って来たのはセシリア。

 

何というかお嬢様って感じの服装。

残念ながら詳しくないので説明が出来ません。

 

 

 

続いてやって来たのは簪と布仏。

簪は水色の杷ワンピース?に短めのズボン。

布仏?こいつはいつも通りの着ぐるみですね。流石に俺もびっくり。

 

「……簪、布仏はどうしてあれなんだ?」

 

一応聞いてみたが、

 

「分からないよ……

もう本音は自由だから……」

 

だそうです。

そうだ。簪にも言わなくちゃな。

 

「……簪、良く似合っているぞ」

 

唐突に言われて一瞬驚くがすぐに笑って、

 

「ありがとう」

 

と言った。

 

 

 

 

それからモノレールに乗って行く。

中は俺たち以外に誰も居なかった。

 

ちなみにTシャツがパツパツの理由を聞かれたので教えたら箒同様、皆して笑ってた。

その後、皆が俺の服を選んでくれる事になった。

 

 

 

 

 

本土についてモノレールから降りると、早速買い物に。

いやまぁ取り敢えず広い。

 

 

皆に連れられて水着売り場へ。

 

……俺入りたくないんだけど……

何でってもう女用の水着しかない。

アウェー感半端ないったらありゃしない。

 

「さ、輝義さんここで待っていてくださいな。今から私達の水着を選んでいただきたいのですわ!」

 

いやいやいやいや!

ですわ!じゃないよ!

え!?待って!?

ごめん!ちょっと何を言っているのか分かんないんだけど!?

 

「……本気か?」

 

「本気も本気、マジもマジですわ。

こちらへ座ってお待ちくださいな」

 

と言われて椅子に座らされる。

もう逃げられないんですね。分かります。

 

 

そう言って皆は水着を探しに行ってしまった。

……俺を一人にしないで!ここに一人で取り残されるのは辛いんだ……

 

そう思っていると、早くも布仏が戻ってきた。

その手に着ぐるみを持って。

 

え?水着を選びに行ったんだよね?

……何で着ぐるみ!?おかしいでしょ!?

 

「……何故着ぐるみなんだ?」

 

い、一応聞いておこう。

もしかしたら何か理由があるのかもしれないし!

しかし帰ってきた答えは思いっきり期待を裏切ってくれるものだった。

 

「何でって可愛いからだよ!」

 

うん。そっか。

でもさ、

 

「……それじゃ泳げんだろう」

 

どうすんの?熱中症で死ぬよ?

 

「ふっふっふっふ。

んなぁんと!これは水着なんだよ!」

 

……マジかぁ。

そこまで来ちゃったか……

 

「それにその顔は熱中症の心配をしているね!だけど大丈夫!通気性抜群なのだ!」

 

あ、そうすか。

もう好きにして。俺の手には負えません。

 

布仏は試着室に入っていき、着替えて出てきた。

うん、何時も通りだな。

 

「どうどう?似合ってる?可愛い?」

 

「……可愛いぞ」

 

「ほんと!?じゃぁこれにする!」

 

そう言ってレジに走って行った。

ほら、レジのお姉さんもマジでこれ買うの?って顔してるじゃん。

まぁ、布仏が嬉しいならいいか。

 

 

買い物を済ませた布仏は俺の隣でニコニコしている。

……今思ったがこいつも小さいな。

まぁ、俺からしたらほとんどの奴が小さいんだが。

生まれてこの方、自分より大きな相手を見たことが無い。

 

そんな事を考えていると次にやって来たのはセシリア。

いくつか持っている。

……それ全部俺が見るの?理性持つかなぁ……

ⅠSスーツも似たようなもん?水着は別物なんだよ!(クワッ!)

 

「輝義さん!私はこの中から選んでいただきたいのですわ!」

 

「……分かった」

 

なんかなぁ、もう不安でしかない。

だってセシリアスタイル良いんだもん。

 

「輝義さん、これはどうですか?」

 

そう言って出てきたセシリアが来ていたのは黒のビキニ。

……うぉぉ、すっげ。何がとは言わないけど。

 

「……似合っているぞ」

 

「そうですか!では次を……」

 

そう言ってまた試着室に入って行った。

……あれ?布仏がいない?どこ行った?まぁ迷子になるほど子供じゃないし大丈夫だろ。

 

「輝義さん、こちらはどうでしょうか?」

 

次に着ていたのは黄色の水着。

これも破壊力が高い。

……なんでビキニばっかなの?

 

「……似合っているぞ」

 

もうこれしか言えない。

大丈夫。他の男共も同じように絶対なるから。

 

続いて着てきたのは青のビキニ。あと腰にひらひらした布をつけて。

……うん、これが一番似合ってる気がする。

 

「……似合ってるぞ」

 

そう言うと、もう一つ持ち出してきた。

……ん?待て待て!

 

「セ、セシリア?一応聞くがそれは?」

 

「?水着ですが?」

 

いやいやいやいや!

それは水着じゃない!貝殻だ!

 

慌てているといつの間にか戻ってきていた布仏が、

 

「せっしー、流石にそれはないよ~」

 

天の助けが来た……!

 

「そ、そうでしょうか?」

 

「そうだよ~」

 

俺も頷いておく。

 

「そうですか……でしたら先程までの三つの中から選んでいただいてもよろしいですか?」

 

「……分かった」

 

そうだなぁ……

黒はなんか違う気がする。

黄色もしっくりこない。

……青だな。

 

「……一番最後の青色のやつが一番いいと思う」

 

「本当ですか?」

 

「……あぁ」

 

「それにしますわ!」

 

そう言ってレジに行ってしまった。

 

この二人だけで凄い疲れた……

あと箒達が残ってんのか……

俺、色々と持つかなぁ……

 

 

 





ヒロインズの水着のデザイン等は読者の皆様がお決めになってください。

作者はファッションがマジで分かりません。

休日出かけるとき、冬だとイモジャーだったりその上にウィンブレだけです。
夏は大体、アディ〇スや、アン〇ーアーマーの半そで短パンです。
私服?そんなん下が二着に上が三着ですが何か?



続きはまた次回に。


感想、評価くださいな。




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54話目

本日も投稿。
いやぁ!休日ってのはいいもんですね!土日祝日で三連休とか最高すぎ!


セシリアの貝殻事件から五分程経った。

さて、次にやって来たのは箒だった。

 

「輝義、見てもらっても構わないだろうか?」

 

そう言って水着を渡してくる。

渡されたのは黒のビキニと白のビキニ。

どちらも少ないながらフリルが付いているものだった。

 

「……どちらも似合うと思うぞ」

 

「そ、そうか」

 

似合うと言ったら嬉しそうに微笑む。

そうそう。別にわざわざ着替える必要なんてないのだ。

そう思っていた矢先に、

 

「箒さん、実際に見てみないと分からないものですわ。折角輝義さんもいるのですから見て頂いた方がよろしいですわ」

 

セシリアァァァァァ!!!???

何でそんなに俺の精神力が削られるようにすんの!?

もうお腹いっぱいなんだよぉ!

別に?見たくない訳じゃないし?むしろ見たいし?

でもさ、なんか悟り開きそう……

 

「て、輝義……」

 

そう言って出てきた箒は黒のビキニを最初に着ていた。

うわぁ……セシリアも凄かったけど、箒はそれを遥かに超えてる……

開いた口が塞がらない。

セシリアと布仏も、

 

「……な、なんなんですの?アレ……?完全に負けてますわ……」

 

「しののんすごいね~」

 

「その、何か言ってくれ……」

 

うん……

その、何というか……

 

「………………………………とても似合ってると思います」

 

「似合ってないならそう言ってくれ!」

 

「……いや、似合ってはいるんだ」

 

本当だよ?

でもさ、それがね?

 

「……ただ……」

 

「ただ?」

 

「……その、刺激が強すぎる」

 

そう、男子高校生には余りにも刺激が強すぎるのだ。

いや、だってさぁ……

半端ないんだって。

それを言われた箒は、

 

「な!?なななな!?」

 

顔を真っ赤にしてあたふたしている。

 

「……箒さん、服の上からでも何となく分かっておりましたが……改めて見ると、とんでもない凶器をお持ちなのですね……」

 

「しののん~、どうしたらそんなにおっきくなるの~?」

 

セシリア、その気持ちよく分かるぞ……

布仏、やめなさい。

 

「うぅ……」

 

引っ込んでしまった。

まぁ、しょうがないよね。

多分白の方は着ないんじゃないかな?

 

そう思って俺は完全に油断していた。

まさか着替えて来るなんて思ってもみなかった。

 

「その、こちらはどうだろうか……?」

 

ふぁ!?

そう言って出てきた箒は、白のビキニを着ていた。

腕で胸を隠そうとしてはいるが、全然隠れていない。

それどころかむしろ強調されている気がする。

 

「………………似合っているぞ」

 

「そ、そうか……」

 

謎の沈黙。

気まずい。とてつもなく気まずい。

 

「そ、それでどちらの方がよかっただろうか?」

 

そうだな……

どっちも似合ってた。そりゃもう。

だけど、黒はちょっと不味い。

なので、

 

「……白の方が良かったな」

 

「分かった。ありがとう。それでは買ってくる」

 

そう言って試着室から私服に着替えてレジに向かって行った。

 

「輝義さん」

 

「……なんだ」

 

セシリアに話しかけられる。

 

「……箒さん、物凄かったですわね」

 

それ俺に聞く!?

 

「………………そっすね」

 

としか返せなかった。

しかしセシリアは、

 

「大丈夫ですわ。

……何故白の方を選んだのか教えて頂いても?」

 

えぇ……

なんでぇ?

 

「怒ったりしませんわ」

 

ならいいか……

 

「……強すぎた」

 

「何がですか?」

 

「……刺激が強すぎた」

 

「あぁ……確かにとんでもなかったですわ……」

 

「……セシリアは、何か思ったのか?」

 

逆に聞いてみた。

 

「そうですわね……

もう凄すぎて嫉妬なんて感情はありませんでしたわ。ただ、女としてとても羨ましく思いますわ」

 

「……そうなのか」

 

「えぇ」

 

そうして箒が戻ってくるまでそんな会話をしていた。

 

 

 

 

次にやって来たのは簪。

あ、普通だ。

……ちょっと残念に思ってしまった俺がいる。

 

「輝義、その……」

 

「……あぁ」

 

「水着、見てくれる?」

 

「……あぁ」

 

簪が持ってきたのは水色のワンピースタイプのやつ。

簪は心のオアシスだったんだな……

 

「ど、どうかな?」

 

出てきた簪は、とても似合っていて可愛らしいものだった。

 

「……可愛いと思う。似合ってるぞ」

 

「ほ、ほんと?」

 

「……あぁ」

 

「そっか……えへへ」

 

嬉しそうだな。

 

「……もうそれでいいのか?」

 

「うん。私はこれにする」

 

「……ならばもう買ってくるといい。

セシリア達はもう会計を済ませているからな」

 

「そうなの?それなら私も行ってくるね」

 

そう言ってレジへ。

……簪まで……ビキニとか言ってたら俺もう逃げだしていたかもしれん。

ここに来て精神的に疲れたわ……

それに俺まだ水着選んでないんだけど。

 

「ごめんね。遅くなっちゃった」

 

「嫁!私の水着姿に興奮するがいい!」

 

「大丈夫ですわ」

 

シャルロットとラウラですね。

……ラウラ、ここでそんな事を大きな声で言うのは辞めようね?

俺が犯罪者になっちゃうから。

だってラウラには悪いけど見た目が完全に幼女な訳で。

しかもそんな子に嫁とか言われてる顔面に傷がある大男。

完全に事案じゃないですか。

 

「取り敢えず僕たちの見てもらえるかな?」

 

「今着替えて来るぞ。待っていろ」

 

大丈夫だってば。

逃げたりなんかしないよ……

そもそも逃げられないでしょ。

逃げたとしても今更じゃん。

 

 

 

「はい!どうかな?」

 

最初に出てきたのはシャルロット。

黄色の水着に下は黒と黄色の縞々のスカートみたいなのを付けてる。

 

「……似合っているぞ」

 

「ありがとう」

 

すると、ラウラが出てきた。

 

「嫁!どうだ!」

 

黒の水着ですね。

うん、可愛い。

 

「……可愛いと思うぞ」

 

「本当か?」

 

「……本当だ」

 

「そうかそうか」

 

ムフーといった表情で腕を組んでドヤ顔決めてらっしゃる。

 

「それじゃラウラ、お会計行くから着替えて」

 

「分かった」

 

……本当に親子みたいだな。

そこに箒が、

 

「輝義は幸せ者だな」

 

そう言って来た。

本当にそう思うよ。

特にここ最近は怖いくらいだ。

だから頷く。

 

「……あぁ」

 

よし、それじゃ自分の水着を選びに行きますかね。

 

 

 

今俺は笑われていた。

その理由は、

 

「ほ、本当におかしいですわ!」

 

「あはははは!!!!」

 

「水着のサイズが無いって……フフッ」

 

そう、サイズが無かったのだ。

そもそも、成人男性の三倍はある肩幅。

それに比例して身体全体が他の人よりも遥かに大きいのだ。

そりゃあるわけがない。

今思えば着ている服はばあちゃんと母さんのお手製だ。

それか特注になるわけで。

 

「そうすると、輝義は水着どうするんだ?」

 

「……今頼んで間に合うなら特注だな。

無理だったら学校指定の水着しかない」

 

そう、今から頼んで間に合うのか分からないのだ。

別に学校指定の水着でも全然構わないのだが、箒達が納得できないらしく、

 

「だめだ。私達だけ新しいというのは納得いかん。少し業者に聞いてみよう」

 

そう言ってセシリアがどこかに電話をかけ始めた。

え?どこに電話かけてんの?

 

「もしもし、セシリアオルコットというものですが、特注で水着の製作を金曜日までにお願いしたいのですが」

 

「使用する人の名前?大河輝義です。はい、はいそうです。その大河輝義ですわ」

 

「輝義さん、変わってほしいとのことです」

 

そう言ってスマホを渡してくる。

まぁ、いいや。

なんかもう止まりそうにないし。

 

「……もしもし、大河ですが」

 

「え!?本物!?」

 

本物って……

まぁ、そうなんだけどさ。

 

「……はい」

 

「ちょ、ちょっとお待ちください!」

 

そう言って電話から離れる。

余程慌てていたのか、そのままで行ってしまったらしく、遠くで何やら聞こえる。

なになに?

 

「本物の大河輝義さんです!部長、早く変わってください!」

 

だって。

するとすぐにその部長と思われる人が出た。

 

「お待たせいたしました、部長の山田です。

本日はどういったご用件で?」

 

「……水着を作ってもらいたいのですが」

 

「水着ですか?何時ごろまでに?」

 

「……金曜日までには作ってもらいたいのですが」

 

「分かりました。少々お待ちください」

 

そう言ってどこかへ行ってしまった。

十分程だろうか?今度は別の人が出てきた。

 

「社長の川合です」

 

社長!?

なんでそんな大事になってんの!?

 

「えーと、水着を金曜日までに特注との事ですが、それでよろしいでしょうか?」

 

「……はい」

 

「分かりました。それではお近くの店舗へ向かっていただいてもよろしいでしょうか?」

 

「……分かりました」

 

 

 

結果的に作ってもらえることになった。

それから近くの店で採寸を行い、そのデータを送った。

あと、なんかお代はいらないって言われた。

代わりに宣伝で使っていいかって聞かれた。

流石に俺だけじゃ決めることは出来ない。

なので後日、織斑先生に聞いてからということになった。

 

 

 

 

 

「……すまないな、時間を取らせた」

 

「いいえ、構いませんわ」

 

「しかし、そうなると私服も全て特注になってしまうのではないか?」

 

箒のその言葉通りなのだ。

今日服を選ぶことは出来ない。

 

「……そうだな。今着ているものも母さんとばあちゃんが縫ってくれた」

 

「そうなのか?凄いな」

 

「でしたら、後日また時間がある時に皆さんで輝義さんのお洋服を選びましょうか」

 

「そうだね」

 

ということでまた皆で買い物に行くことになった。

 

 

 

 

「そしたらごはん食べに行こうよ」

 

シャルロットの提案により皆で飯を食べに行くことに。

 

「どこにする?」

 

「輝義、沢山食べるからそういうのも考えなきゃね」

 

「だったら、食べ放題なんかはどうだ?好きなだけ食べられるぞ」

 

箒の提案により食べ放題に決定。

 

 

 

「……食うぞ」

 

「あぁ、好きなだけ食べるといい」

 

 

 

「うまい」

 

「こちらもどうぞ」

 

全力で気の済むまで食べていたら、

店員さんに止められてしまった。

 

箒達はやっぱりそうなったか……という顔をしていた。

 

 

 

その後、各自で何処か行きたいところに行くという事になって一人で移動したのだが、広すぎて迷子になった……

 

やべぇ、ここ何処だ?

 

あっちへウロウロ、こっちへウロウロ。

そんなことをしていたら本格的に分からなくなった。

 

あ、これ迷子センター案件かな?

などと途方に暮れていると、声を掛けられる。

 

「すいません、大河輝義さんで間違いありませんか?」

 

そう言って声を掛けてきたのは明るい茶髪をした美人さんだった。

……誰?

 

「……えー、どちら様ですか?」

 

「あぁ、申し遅れました。

亡国機業のオータムという者です」

 

瞬時に身構える。

 

「……何の用だ?」

 

「そう警戒しなくても大丈夫ですよ」

 

「……信じられるとでも?」

 

「無理ですね。

……口調をいつも通りにしてもよろしいでしょうか?」

 

何なんだこの人……

 

「……どうぞ」

 

「あぁ、ったく面倒極まりねぇな。

おい、ついてこい。うちの上司が用があるんだとよ」

 

「……何故だ?」

 

「知るかよ。なんか呼んで来いって言われたからてめぇのとこまで態々来てやったんだ。それに私じゃお前に殴り掛かっても勝てねぇしな。いいから取り敢えず付いて来い」

 

どうする?

ただ、本当に危害を加えようとしている訳じゃ無さそうだし……

 

「……分かった」

 

「よし、付いて来い」

 

そう言って歩き出す。

どこに向かうのかと思っていたが、車に乗せられた。

窓から外が見えると思っていたが、如何やらこちら側から外を見ることは出来ないようになっているらしい。

これじゃどこに向かうか全然分からないじゃないか……

 

 

そして、車が止まる。

降ろされた場所にはビルがあった。

 

「ここだ。入れ」

 

そうしてビルの中の一室に通された。

そこには金髪の女性がいた。

そして、その横に信じられないが、

 

織斑先生によく似た少女がいた。

本当にどういう事なんだよ……

クソ、全然状況が掴めない。

 

そして、金髪の女性が口を開く。

 

「初めまして。大河輝義君」

 

 

 

 

「私は亡国機業日本支部代表、スコールよ」

 

 

 

 

これから長い時間になりそうだ。

 

 

 




今回の内容、R-15に入んのかな?



さて、ようやく亡国機業三人衆が登場しましたね!
ここ最近シリアスが多い気がする……


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55話目



昨日は投稿できずに申し訳ない。
遊んでたんや……



 

 

 

「私は亡国機業日本支部代表、スコールよ」

 

 

「ほら、あなたも挨拶しなさい」

 

「……織斑マドカ」

 

「ごめんなさいね、ちょっと不愛想なのよ」

 

「それよりも、食事にしましょうか」

 

 

 

その言葉を皮切りに何故か食事が始まった。

え?ナニコレ?

想像してたのと全然違うんだけど……

 

「……さっき食事したばっかなんですが」

 

「知ってるわよ。だってあの店私が経営してるんだもの」

 

まさかのオーナーだった。

え?思ってた亡国機業と全然違う……

 

「それにさっきは途中で止めてしまいましたからここでは存分に食べていいですよ。私の奢りです」

 

これどうすればいいんだろう……?

正直睡眠薬とか疑っちゃうんだけど。

気が付いたら実験室で解体される寸前だったりとかじゃないよね?

 

「あぁ、君が心配している事は大丈夫よ。そもそもそんな事をしてもしょうがないし、何かが分かるわけじゃ無さそうだし」

 

そんな事を言ってはいるが本当はどうなんだか……

正直怪しくてしょうがない。

 

「って事でいつも通りに行きましょうか」

 

何時も通り?

どういう事?

 

「もー本当に嫌になっちゃうわよ」

 

いきなりキャラが変わった……

誰この人……?

 

「あぁ、ごめんなさいね?この前の件でちょっとね」

 

「……あれはどういう事ですか?」

 

「どういう事も何も欧州担当の馬鹿どもが功を焦って勝手に暴走したのよ。迷惑この上ない話だわ。おかげで後始末なんかこっちがやらなくちゃいけないし、余計な出費で大変よ」

 

なんか色々苦労してんだんね……

 

「ただでさえうちの日本支部は貧乏なのに、拍車が掛かって大変なのよ」

 

なんかもう大変なんだね……

 

「それに、私達三人は少なくともあなた達と敵対する気はないわよ。篠ノ之博士や、織斑千冬達が味方に付いているあなたを敵に回すとか頭おかしいわよ。冗談じゃないわ」

 

「そんなの死にに行くようなもんだろ。そもそもこいつ自身がとんでもなく強いんだ。あたしら三人で殺しにかかっても勝てねぇよ」

 

オータムさん、だったか?がそう言う。

 

「確かにそうよね」

 

そこまで強くないと思うんだけど……

 

「それじゃ、今日貴方を連れてきた要件を話すとしましょうか」

 

今まで笑っていた感じのいいお姉さんという雰囲気から一転、真面目な空気を纏う。

 

「貴方には今回、亡国機業を代表して謝罪を。

向こうが勝手に暴走してしでかした事とは言え、本当にご迷惑をお掛けしました」

 

そう言って三人が頭を下げて来る。

想定外過ぎて俺大混乱。

 

「だ、大丈夫ですから、気にしないでください」

 

「そう……ありがとう」

 

「おい、スコール、まだあるだろ」

 

「そうね。もう一つあるわ」

 

そう言って再び話し始める。

 

「今度、貴方達は臨海学校に行くわよね?」

 

「……はい」

 

臨海学校がどうかしたのだろうか?

 

「北米支部が何か企んでいるわ。それが何なのかは分からない。だけど、警戒だけはしておきなさい」

 

マジかよ……

休む暇は与えないってか?

 

「……どういうことですか?」

 

「そのままよ。貴方達が臨海学校に行っている間に何らかの形でアクションがあるわ。それが直接的になのか、間接的なのかは分からない。ただ、かなり大規模な事を画策しているのは確かよ」

 

「……どうにかならないんですか」

 

「無理ね。各支部ごとにほとんど独立しているようなものだから対処は不可能よ」

 

「……それを、俺に伝えてどうしようと?」

 

気になるのだ。

この事を俺に伝えて何かしらの利益があるとは思えない。

それどころか不利益しかないだろう。

 

「そうね、謝罪の手土産とでも思ってくれればいいわ」

 

それで納得できるわけがない。

しかしここで疑っても何もならない。

 

「……分かりました。ご忠告ありがとうございます」

 

「えぇ」

 

その後、気になっていた事をいくつか質問してみることに。

 

「……その、織斑マドカさんは何者なんですか?答えたくないのであれば構いませが……」

 

正直聞くのは躊躇ったが取り敢えず聞いてみることに。

それで答えたくないのであればそれで全然構わない。

 

「そうね……どうする?」

 

「別に答えても構わない」

 

「そう。なら教えてあげなさい」

 

「私は、姉さんの、織斑千冬のクローンとでも言えばいいのだろうか」

 

想像以上に重い話だった。

……妹とかそんな感じなのかと思ってたんだけど……

 

「面白い顔してるわよ?」

 

「なんだその顔気持ち悪ぃな」

 

散々なこと言われたんだけど。

だってしょうがないじゃん?

 

「マドカはね、欧州支部の馬鹿どもが作った子なのよ。何人もの犠牲の上に漸く完成した織斑千冬のクローンなの」

 

……胸糞悪い話だな。

 

「……糞ったれな話ですね」

 

「でしょう?多分、私達は正確な数を把握していないけど少なくとも五千の子達が死んでいるわ。もっと多いかもしれないけどね」

 

「その後、マドカは思いっきり反抗したのよ。それでマドカは役立たずの烙印を押されてね。こっちに送られてきたのよ。それからだったかしら、あいつらを見返してやる、ぶっ殺してやるって、その為に鍛えて欲しいって言って来たのは」

 

「大変だったわよー、そこまでの信頼関係を築くのに。

噛みついてくるし、殴り掛かってくるし、蹴り掛かってくるし。

何度もキャーキャー言いながら挑んだわ」

 

「ま、今ではこんなにいい子なんだけどね」

 

そう言ってマドカの頭を撫でるスコールさんの目は、娘を見る母親のような優しい目だった。

そして、撫でられているマドカは、嬉しそうに目を細める。

 

「……あともう一ついいですか?」

 

「いいわよ?何でも聞いて」

 

「……何故貴女達は俺に接触したんですか?」

 

そもそも俺に接触するなら束さんなんかに接触した方がいいはずなのだ。

なんせ、協力してもらえればⅠSを作ってもらうなりなんなり出来るのだから。

 

「さっきも言った通りよ。貴方を含めた面々と争いたくないからよ。

どこの組織や国家もそうだけど亡国機業も一枚岩じゃなくてね。私達の日本支部は所謂、穏健派ってやつよ。

そこまで過激な事はしないわ。と言っても女権団の奴らなんかからはⅠSの強奪なんかはしてるけど」

 

「……どうしてですか?」

 

「考えてみて?奴らがⅠSなんか持ったらどうなると思う?」

 

そう言われて考えてみる。

今でさえ女尊男卑で地獄なのだ。

これが加速したらとんでもないことになるのは目に見えている。

 

「……最悪ですね」

 

「でしょう?だからよ」

 

それから十分程会話をしていると電話が架かってくる。

 

「……もしもし」

 

「輝義?今どこにいるんだ?」

 

箒からだった。

 

「……今?……どこだろう」

 

「もしかしなくても迷子なのか?」

 

「……………………はい」

 

だってしょうがないじゃん。

これ以外に何と言えと?

馬鹿正直に言ったら間違いなく織斑先生緊急出動ですけど?

 

「はぁ……取り敢えずその場を動くなよ?いいな?」

 

「……はい」

 

しょうがない。

だって俺迷子なんだもん。

 

「……そういう事なのでそろそろ帰りたいんですが」

 

「えぇ。オータム、送ってあげて」

 

「あいよ。行くぞ」

 

そう言うとオータムさんは行ってしまった。

 

「お友達、大事にしなさいね?」

 

言われなくても。

 

「……何がなんでも」

 

「それじゃ、また今度ゆっくりと会いましょう」

 

この短時間でだが少なくともこの三人は悪い人じゃないってことが分かった。

まぁ、旨く騙されているだけかもしれないが、そんな感じはしないし。

 

「……では、また」

 

「えぇ、気を付けて帰りなさい」

 

そうして二人と別れた。

 

 

 

 

「おう、何やってた。遅かったじゃねぇか」

 

「……すみません」

 

「大方、スコールに止められてたんじゃねぇの?

ま、とっとと乗れ」

 

そう言われて車に乗り込む。

 

「じゃ、行くぞ」

 

「……はい、お願いします」

 

 

 

 

「おし、着いたぞ」

 

そう言われて外に出るとレゾナンスだった。

 

「……ありがとうございました」

 

「あぁ、こっちが無理言って連れてったんだ。こんぐらいどうって事ねぇよ」

 

この人、口が悪いだけですっごく良い人じゃん。

 

「じゃあな」

 

「……はい」

 

そう言って車に乗って何処かに行ってしまった。

 

 

そうだった……!俺迷子だった……!

 

 

 

その後、その場を動くなと言われたにも関わらず動き回り、すれ違い、

七時になって漸く箒達に保護されました。

 

 

 

 

 

 

寮にて

 

 

「動くなと言ったのに何故動いた!?」

 

「……すいません」

 

「言う事を聞かないからこうなるんだ!」

 

「……はい」

 

帰った途端に箒に正座させられ、目の前にみんながずらっと並んでお説教されました。

 

 

 

「輝義さん?あなたはおいくつなんですか?」

 

「……今年で十六になります」

 

 

 

「輝義、流石に言われたことぐらいは守ろうよ……」

 

「……おっしゃる通りで」

 

 

 

「嫁は方向音痴なのか?」

 

「……多分」

 

 

 

「てるてる探すの大変だったんだよ~?」

 

「……申し訳ない」

 

「後で何かお菓子かってね~」

 

 

 

「輝義、勝手に動いちゃだめだよ?」

 

「……はい」

 

 

 

俺って皆に頭が上がらないのね。

 

 

 






亡国機業三人衆の設定は作者独自です。





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56話目






 

 

箒達にこってり絞られた次の日。

 

 

部屋でゆっくりしていると、電話が掛かってくる。

 

「……もしもし」

 

「あ!てるくん!こんばんわ!」

 

束さんですね。

どうしたんだろう?

 

「……はい。こんばんわ。今日はどうしたんですか?」

 

「昨日、亡国機業の奴らと会ってたでしょ?」

 

おう……

マジカヨバレテル。

なんでや?

 

「……何故そのことを?」

 

「束さんにてるくんの事で分からない事なんてないんだよ!」

 

まじか。

なら仕方ないね。

 

「……そうですか」

 

「うん!それでねそれでね!」

 

「……はい」

 

「てるくんの専用機が完成したんだよ!」

 

随分と早いな。

 

「……早いですね」

 

「てるくんのために頑張ったんだ!臨海学校の時に渡せると思うから!ちーちゃんに言っといてくれないかな?」

 

何故だ?

自分で言った方が早いのに。

 

「……ご自分で言えばいいのでは?」

 

「いやぁ……またなんかお小言を言われそうで……」

 

あぁ、そういう理由ね。

 

「……分かりました」

 

「ありがとう!てるくん!じゃ、臨海学校で会おうね!」

 

「……はい。おやすみなさい」

 

「うん!おやすみ!」

 

 

 

 

その後は言われた通りに織斑先生の所に報告しに行ったんだけど……

ご乱心でした。

あれはやべぇ……

 

 

 

 

 

 

今現在俺は臨海学校に向かう車の中。

 

なんでバスじゃないのかって?

だって入れないんだもん。体がでかすぎてどうやっても入れなかったんだよ。

実際、乗ろうとして胸板が引っかかってしまったのだ。

その際、皆に笑われた。あの織斑先生ですら笑っていたのだ。

それに入れたとしても座れる席が無い。

だから先生たちが車をレンタルかどうかは分からないが用意してくれたのだ。

でっかいやつを。

多分、バンかなんかだと思うんだけど、座席が全部取り外されていたのだ。

しかも天井が高い。背中を曲げなくて済む。

それに床にもマットが敷いてあって痛くない。

いやまぁこれでも少しばかり横がきついんだけども。

そこらへんは我慢するしかない。

それにしても織斑先生が免許持ってたことにびっくりだわ。

 

 

「大河、すまんな」

 

何を言っているんだ?

俺が感謝する事はあるけど何故俺が謝られてるんだ?

 

「……何故ですか?」

 

「こんな狭い車に押し込めてしまってな。皆と一緒に騒ぎたかっただろう?連絡を怠った我々のせいで引っかかってしまったことと、入り口で引っかかった時に笑ってしまった事もだ」

 

あぁ、そのことですか。

 

「……大丈夫ですよ。それに皆が居なくても織斑先生がいますから」

 

そう言ったら、何故か少し頬を赤くして、

 

「そ、そうか……」

 

と言って黙ってしまった。

なんか悪い事言ったかな?

 

「……どうかしたんですか?」

 

「な、なんでもない!」

 

そうですか。

体調崩したとかじゃないならいいんだけど。

 

 

その後は俺が眠ってしまったから特に会話をするでもなく、到着するまでのんびり寝ていた。

 

ただ、スコールさんに言われたことが気がかりだ。

起きなければいいが、それはないか。

 

 

ーーーー side 千冬 ----

 

 

今日から五日間の臨海学校が始まる。

初日と二日目は機材の搬入やらなんやらで自由時間になる。

三日目からはⅠSを使った実習になる。

一般生徒は学園から持ってきた機体を使って班ごとに分かれ、

試合、とまではいかないものの簡単な模擬戦を行う予定になっている。

専用機持ちは別行動になる。

内容は、各機体の新装備のインストール、及びその装備の試験を含めた実地テスト。

洋上での試合を行う。

ここまではいい。

ただ、正直今までの事を考えるとまた何か起きそうで怖い。

 

 

そんな不安を抱えていたためか教師全員、大河の事をすっかり忘れていたのだ。

別に存在をではなく、その体格ゆえの問題を。

 

前日になって大河がバスに乗り込めないのではないかということに気が付いたのだ。

なので大急ぎで校長の轡木さんに相談したところ、中古で車を用意してくれた。

それでも座れないので技術部の二、三年に頼んで座席を取り外し、床にマットを敷き、天井を高くし、改造した。

 

そして私達はこれで何とかなるだろうと安心してしまった。

そして、やらかしてしまったのだ。

 

 

 

そう。

大河にこの事を伝え忘れてしまったのだ。

 

 

 

当日、その事を知らない大河がバスに乗り込もうとして入り口で引っかかると言う珍事が起きた。

 

いやもう、可笑しすぎて笑ってしまった。

本人はバツが悪そうにしていたがあれは誰だって笑ってしまう。

普通に考えて無理だろうに、何とかして乗ろうとしたのか、あの分厚い胸板が引っかかってしまったのだ。

 

何とか抜け出した大河に説明し、車に乗せ今に至る。

 

それに謝らなければならない。

 

謝罪したところ、大丈夫だと言って来たのだ。

それに皆が居なくても私が居るから大丈夫だと。

……ふふ。嬉しいことを言ってくれるじゃないか。

 

 

その後は大河が寝てしまったので運転をしながらもう少し会話がしたかったと思ったが、寝顔が見れたので良しとする。

 

 

 

ーーーー side out ----

 

 

 

 

「大河、あと十分程で着くぞ。起きろ」

 

その声によって俺は目を覚ました。

 

「起きたか。ほら見てみろ、あれが泊まる場所だ」

 

そう言って織斑先生が指を差した先にあったのはでかい高級感が半端ない旅館と、海だった。

正直、日本の海岸だし、所詮は臨海学校だろって舐めてたわ。

 

「……おぉ!」

 

思わずそう声を漏らしてしまうほどに綺麗なんですけど。

海もすげぇ綺麗。

なにこれ、金掛けすぎじゃね?と思っちゃう俺はやっぱり庶民なんだな。

 

「ほら、取り敢えず降りる準備でもしておけ」

 

「……はい!」

 

あぁ、楽しみなんですけど!?

 

 

 

 

「「「「「「ついたーーーーーーー!!!!!!!」」」」」」

 

車を降りるなりそんな声が聞こえてきた。

皆さん元気ですね。

皆きゃいきゃいはしゃいでる。

そこへ、俺を呼ぶ声がする。

 

「輝義!こっちだ!」

 

声のする方を向くと織斑がぶんぶん手を振っていた。

 

「いやぁ、すっげぇなここ」

 

織斑がそう漏らす。

 

「……あぁ」

 

近くで見ると更に凄い。

 

「そういや千冬姉とのドライブどうだった?」

 

唐突に何を聞くんだね君は?

 

「……いきなりなんだ」

 

「いやだってよ、二人きりだぜ?なんかなかったのか?」

 

織斑、頼むからもうやめてくれ。

箒達の目が凄い。

 

「……何もない」

 

取り敢えずこれしか言えない。

 

「えぇ……そうなのか?」

 

そうなんです。だからもうやめてってば。

それにお前は弟としていいのかそれで?

 

 

 

この後、皆で旅館の女将さんに挨拶をして各自部屋に行くことに。

ちなみに俺は何故か山田先生と同じ部屋だった。

マジでなんでなの?

織斑は織斑先生とだから姉弟どうしで問題ないけど。

 

 

 






今日はここまで。

また昼間に投稿出来たら投稿します。
遅くても夜には投稿できるはず。



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57話目

いちゃらぶちゅっちゅ書きてぇ……




旅館に着いてゆっくりできると思っていた矢先に部屋が山田先生と同じと言う思春期男子としてはかなりつらい状況に放り込まれ、どうしようかと悩んでいるこの頃。

 

「大河君?その、五日間よろしくお願いしますね!」

 

そう言って山田先生は、

ギュっと拳を握りしめて頑張りますよー!とか言ってるけど俺はそれどころじゃない。

なにせ年上の女性と、しかも美人!可愛い!胸がでかい!と来た。こんな状況は辛すぎる。別に嬉しくない訳じゃない。これでコミュ障じゃなければ、諸手を上げて大喜びしている所だが。

 

「そうだ、大河君は海に行かないんですか?」

 

そうだった。海があるんだった。

どうするか。

と、そこへ、

 

「輝義!海行こうぜ!」

 

織斑が登場。

てかもう着替えてんのね。早くない?

しかもその恰好で行くんですか?

浮き輪にゴーグル、あと潜りながら息するやつシュノーケルだっけ?を既に装着済み。準備万端じゃないですかやだー。

それよりも山田先生見てみなさいよ。

顔真っ赤にして手で顔を覆ってる。

でもチラチラ指の隙間から覗いてますね。

 

「海だぞ海!行こうぜ!箒達も行くって言ってたからさ!」

 

あ、多分これ断ってもダメな奴だ。

ま、元々行くつもりではあったから行くけど。

 

「……分かったから、少し待ってろ」

 

「おう!」

 

あ、そうだ。

 

「……更衣室何処だ?」

 

先ずは着替えなきゃいけない。

制服で海に入るわけにはいかない。

 

「更衣室?俺は部屋で着替えたぞ?」

 

……何?

いや待って織斑先生いるじゃん。

 

「……どうやって?」

 

「千冬姉、更衣室で着替えるからって行っちゃってさ。だから普通に着替えた。それに姉弟だから気にするようなもんじゃないだろ」

 

こいつすげぇわ。

 

 

その後、気を使ってくれた山田先生が水着を持って更衣室に行ってくれた為、部屋で着替えることに。

 

「……おい」

 

「何だ?」

 

「……お前は何故此処に残っている?」

 

「?」

 

いや、何言ってんだ?みたいな顔すんなし。

先に行きゃいいだろうに。

何故態々待つ必要があるんだ。

 

「……先に行けばいいだろう」

 

「なんでだ?別に待ってるぞ?」

 

あ、ダメだ。

もうあきらめよう。

こいつ、臨海学校って事で完全に浮かれていやがる。

 

「輝義の身体、相変わらずすげぇな」

 

服を脱ぎ始めた俺の身体を見て唐突にそんな事を言い始める。

 

「……なんだ急に」

 

「この傷、俺達を守って付いたんだもんな。そう思うとさ、なんかちょっとな」

 

まぁ、そうなんだけどなんか恥ずかしい。

さっさと着替えちまおう。

 

 

「て、輝義の輝義が馬鹿でかい……!」

 

何処を見て言ってんだお前。

はっ倒して織斑先生に報告すんぞ。

 

 

 

「……着替え終わった」

 

「お!じゃぁ行こうぜ!」

 

そうして俺達は海へ繰り出した。

途中ですれ違った旅館の人は俺の身体を見てギョッとしていたが、まぁしょうがない。

 

 

 

「おぉ!すげぇ!滅茶苦茶綺麗だな!」

 

「……あぁ」

 

「それじゃパラソルとか立てちゃおうぜ」

 

よし来た任せろ。

そう言うのは得意だ。

 

パラソルをブスッと地面に突き刺す。

そして開く。

あぁ……日陰……

忘れていたがもう既に七月。そりゃ熱い。

 

「あ!大河君と織斑君!」

 

「おーう!」

 

そう言って俺らを呼ぶ声が。

 

そちらに行くと、他クラスを含めた面々でビーチバレーをやっていた。

 

「二人も一緒にやろうよ!」

 

「いいな!よし、輝義やるぞ!」

 

「……いいぞ」

 

その時、女子達からこんな声が。

 

「織斑君もいい身体してるけど、大河君半端ないね」

 

「うん。正直あの腕で抱きしめてもらいたいかな」

 

「それに全身傷だらけっていうのがまたなんかいいよね」

 

なんか俺達の身体について談義し始めた。

 

「なんか、あの構図見たことあるなぁ」

 

「あれだよ、F○Oの主人公とヘ○クレスって感じじゃない?」

 

「あ!それそれ!」

 

F○Oですか……

しかもヘラク○ス……

バーサーカーじゃん。俺そこまでじゃないよ。

……だよね?

 

「やんないのかー?」

 

織斑が声を掛けたことで始まった。

正直、男子二人がくっつくのは反則だと言われたのでバラバラでやることに。

 

「大河君!あげるから打って!」

 

「……任せろ!」

 

そう言ってトスされたボールを叩きこむ。

 

「ふっ!!!」

 

ドパァァァァン!!!

 

「………………え?」

 

誰が上げた声かは分からないが、全員が驚きの表情を浮かべる。

そりゃそうだろう。

打ち込んだボールが地面を派手に抉って吹き飛んだのだから。

……俺も予想外です。

 

 

 

結局あの後、俺のボールは誰もとれないし、受けたら死んじゃうからと言われ、退場になった。くそぅ……

 

 

特にやることもなく、ボケーっとしながらバレーを見ていたのだが、そこに声を掛けられる。

 

「輝義!」

 

振り向くと、そこには水着姿の箒達が立っていた。

………………マジか。

 

「ど、どうだ?似合っているか?」

 

買い物で一回見ているはずなんだけど、外だからかやたらと似合っているように感じるのは気のせいではないだろう。

 

「……あぁ。皆似合っているぞ」

 

「それは良かったですわ。でしたら日焼け止めを塗っていただけませんか?」

 

ん?待って。

なんで俺が塗るの!?

自分で塗ればいいじゃん!?

 

「ちょっとセシリア!?」

 

「あら、シャルロットさんどうしたのですか?」

 

「どうしたの?じゃないよ!輝義に塗ってもらうの!?」

 

そうだ!もっと言ってやれ!

 

「そうですが?」

 

「え!?僕変なこと言ったかな!?」

 

「ですがシャルロットさんは今更ではありませんか。輝義さんとお風呂に一緒に入っておいて日焼け止めでどうこうではありませんよ?」

 

そうだ……俺とシャルロットは何も言い返せないんだった……!

 

「そうだった……!僕、人の事何も言えないんだった……!」

 

シャルロットはそこで納得しないでもう少し抵抗してほしかった。

あと一番反対するかと思ってた箒が何故か恥ずかしそうにしながらも乗り気なのは何故でしょうか?

 

ラウラは目をキラキラさせてるし、簪はさぁやろう、今すぐやろうって顔してるし。

布仏、お前は着ぐるみだから塗る必要ないだろ。

 

「さ、こちらへいらしてくださいな」

 

うん、今日の皆はなんか積極的ですね。

 

「はい。これを塗ってくださいまし」

 

「……分かった」

 

そう言うとシートの上にうつぶせになって寝転んだ。

何故か水着を外して。

 

「……何故、水着を外す?」

 

「あら、そこだけ塗らなかったら焼けてしまいますわ。だから全体にお願いします」

 

そう言っているが、もうかなり限界に近い。

 

「……塗るぞ」

 

「お願いしますわ」

 

そして塗ろうとしたのだが、

 

「ひゃん!」

 

「うおっ!?ど、どうした!?」

 

「輝義さん?いきなり塗らないで、少し手の平で温めてからお願いしますわ。びっくりしてしまいます……」

 

びっくりしたのはこっちだよ!

そんな声上げないでくれるかなぁ!?

しかしそんな願いは届かず、

 

「んっ……」

 

だとか、

 

「はぁう……」

 

だからそんな声上げないでくれ!

ただでさえ女子の、しかも美少女の肌を直接触っててもう一杯一杯なんだから!

 

 

 

 

長かった……

俺はやり切ったんだ……

結局、尻を除く背中側を全て塗った。

一番やばかったのは足と背中。

セシリアの声は凄かった。詳しくは言わない。

 

「んっ……はぁ……ありがとうございます。流石に前やお尻を塗ってもらうわけにはいかないですものね。こちらは自分で塗りますわ。ですので他の皆さんに塗って差し上げてくださいな」

 

ソウダッタ。

えぇい!この際腹を括るしかない!

どうせ逃げられんのだ!

 

 

もう大変だった。

 

「あっ……ちょ……輝義そこくすぐったい……」

 

箒は何時もの感じではなくしおらしくなってしまうし、

 

 

 

 

「ひゃ!んぅ……」

 

シャルロットは、必死に声を我慢しようとしてか余計に際どくなるし、

 

 

 

 

「私も嫁に塗ってやろう!」

 

ラウラ、お前は心のオアシスだよ……

ちゃんと塗ったけど。

 

 

 

「ん……ちょっとくすぐったい……」

 

簪、くすぐったいならちゃんと大きな声で言ってくれ!我慢する時の声が!!!

 

 

 

「ぶーぶー。わーたーしーもー」

 

布仏、お前は着ぐるみだから無理だって言ってるだろ。

 

 

 

 

俺は勝ったんだ!

本能という悪魔に!

全員やたらとエロい声上げるし、しかも肌はスベスベだし、柔らかいし。

マジであと少ししてたらやばかった。

そんな心の中で叫んでいた所に織斑先生が山田先生と共に登場。

 

「………………」

 

もう何も言えない。

いや、箒達もやばかったんだけど、織斑先生は圧倒的。

何がって水着と合わさって襲ってくる大人ゆえの色気。

つか、教師がなんて水着を着てるんですか……

 

山田先生?

チョモランマですね。はい。

その童顔にそれはレッドカードなんてレベルの反則じゃないぞ……

しかもそれでビキニ……!?ダメだろ……

 

「お、ここにいたか大河。……どうした、そこの小娘どもは?」

 

見ないようにしてたのになんで指摘してくるかなぁ!?

だって見れるわけないじゃん!?

皆(二人を除く)して顔を少し赤くしてんだもん!

しかも偶に、

 

「んっ……」

 

とか言ってんだもん!

見れるわけないじゃん!

 

まぁ、隠してもバレそうだからさっさとゲロったけど。

それを聞いた織斑先生と山田先生は、

 

「ふん、自業自得だな」

 

「はわわわわ!?

大河君!?い、いけないんですよ!?」

 

織斑先生は少しばかり不機嫌になり、

山田先生は顔を真っ赤っかにしてアワアワしている。

俺悪くないのに……

 

「おい」

 

織斑先生に呼ばれる。

 

「……何でしょうか」

 

「私にも塗れ」

 

ん?

……今なんて言った?

 

「……今なんと?」

 

そこで恥ずかしくなったのか、

 

「だから!私にも塗れと言ったんだ……」

 

最後の方は小さくなっていったが、

私にも塗れと。

……ふぅ。

なんか断ったらやばそうだから了承する。

 

「……分かりました」

 

「そ、そうか……」

 

「あわわわ!織斑先生まで!?大河君って大胆なんですね……」

 

織斑先生、恥ずかしいなら最初からやめといてください。

山田先生、そんな事言ってないで止めてほしかった。

 

「……では、行きます」

 

「頼んだぞ」

 

そう言って塗り始めたのだが。

 

「んぁ……ふっくっ……」

 

だの、

 

「は…ぁ……」

 

もうダントツでエロかった。

しかも鍛えているからゴリゴリかと思ってたけど全然そんな事は無くて、

ちゃんと女性らしい(女性らしいってなんだ)柔らかさもあって肌も箒達に負けず劣らずスベスベで。

もう俺、死ぬんじゃなかろうか?

 

 

山田先生は途中で逃げ出しました。

 

 

 

そんな天国のような地獄のような事を味わった。

 

 

 

 

 

 

それを遠くから見ていた生徒たち。

 

「うわぁ……皆えっろい顔してる……」

 

「大河君、良く耐えられるわね……」

 

 

 

「織斑先生が来たわよ」

 

「すっごい水着ね……しかもすっごい似合ってる」

 

「見て!織斑先生も塗ってもらうの!?」

 

「マジか。大河君やるなぁ……」

 

 

 

「あ、やまちゃん逃げ出した」

 

「耐性無さそうだもんね」

 

「……うっわ織斑先生エロすぎでしょ……」

 

 

 

 

 

何処からか見ていたうさぎさん

 

「ちょちょちょちょちょちょ!?」

 

「どうかしたのですか、束様」

 

「あ!見ちゃだめだよだめだよくーちゃん!!」

 

「何が……あぁ、輝義様ですか」

 

「……皆様凄い顔してらっしゃいますね。何ですか?いい年してこの程度で恥ずかしがっているのですか」

 

「いやだってあのちーちゃんですらあぁなっちゃったんだよ!?」

 

「何を今更」

 

「うぅ……最近くーちゃんが厳しい……まさか反抗期!?」

 

(私もやって欲しいなぁ、なんて。でも実際にやられたらどうなっちゃうんだろう、私)

 

そんな事を考えながら悶えるうさぎがいたとかいなかったとか。

 

「とっとと告白してしまえばいいのに。見ていてまどろっこしいですね」

 

そしてそれを見た銀髪娘が言ったとか言わなかったとか。

 

 




やべぇ……これR-15タグ入れないとだめだな……
調子に乗りすぎた……


てことでR-15タグ付けました。


感想、評価くださいな。


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58話目

眠い


 

日焼け止め事件の後、皆で遊んでいた。鈴は泳ぎたいって既に海に行ってしまった。

俺は今布仏とラウラのリクエストに応えて砂の城を建設中。

しかもあの可愛らしいちっちゃい奴じゃなくて普通に高さが二メートル以上あるようなやつ。

どんなのを作って欲しいか聞いていたら面倒だからでかいのをドーンと作っちゃおうという事になった。

いや、これが意外と楽しい。持ってきた砂を叩いて固めてそこから形を作るという、なんかもう職人でもやっている気分だ。

他の人間よりも遥かに馬力があるもんだからどんどん進む。

 

「てるてる~、あとどれくらいで出来る?」

 

「……あと十分もあれば完成するぞ」

 

「ほんとか!?早く早く!」

 

「……そう急かすな」

 

二人に急かされながら作っていくこと十分。

 

「……ほら、完成したぞ」

 

やっとこさ完成した。

 

「おぉ!」

 

「てるてるすっごーい!」

 

喜んでくれたのなら何よりだ。

それにしても……

なんかゲテモノ城になっちまったな……

日本の城とヨーロッパの城を合わせてそこに魔王城とファンタジーに出てきそうな王様の城を合わせたような外見をしている。

高さも二メートルを超える大きさ。

幅も五メートル程とかなりでかい。

しかも頑丈に作ったから二人を乗せることもできる。

調子に乗って作りました。

 

「輝義凄いの作ったね。でもさ……なんでこんな外見になっちゃったの?」

 

そばに来たシャルロットがそんなことを言ってくるがそんなもんしょうがないだろ。要求を全部取り入れたらこうなったんだから。

 

「……要求を全て取り入れたらこうなった」

 

「そりゃそうなるよ……」

 

若干呆れているのはしょうがない。

まぁ、当の本人たちが喜んでるからいいか。

 

 

 

その後、織斑先生とのビーチバレーを一騎打ちでやった。

一騎打ちの理由?

他に混ざれる人が居なかったから。

ここ最近、俺の人外化がどんどん進んでいる気がする。

結果は僅差で俺の負け。

 

「スポーツでこんなに全力を出したのは久々だ。楽しかったぞ」

 

織斑先生はご満悦でした。

 

箒達の試合も見たけどもうブルンブルン跳んで跳ねてだった。皆も呆気に取られてた。何がとは言わないけど。

それを見ていた鈴が呪い殺しそうな目で見てたのは気にしないったら気にしない。

 

 

その後、鈴が気分転換に泳ぎに行った。

その時織斑が、

 

「ちゃんと準備体操したのかー?」

 

と聞いていたが鈴は、

 

「そんなん大丈夫よ!」

 

と言って行ってしまった。

それ明らかなフラグやんけ……

 

 

 

それからすぐに、

 

「やばい!鈴の奴溺れてる!」

 

ほら言わんこっちゃない!

その瞬間、俺は走り出す。

 

全速力で泳いで行くがまぁまぁ距離があったから着いたがもう鈴が居ない。

クソッ!もう沈んだ後か!

 

まずい!

 

潜って探すが見つからない。

焦って探す。

何処だ何処だ!?

早くしないと手遅れになる!

 

…………………………居た!!!

 

見つけた瞬間思いっきり潜る。

だが、思ったよりも水深が深かったのか届かない。

 

早く届け!

 

よし!掴んだ!

なんとか鈴を掴んで引っ張り上げる。

 

「鈴!おい!」

 

クソッ!

息してないのかよ!?

 

急いで岸に戻り、海水を吐き出させる。

足を持って逆さまにして上下に振る。

 

「ゲホッ!!」

 

よし、取り敢えず海水は吐き出させた。

必要なら人工呼吸もしなきゃならない。

 

だが、ちゃんと息はしてるし問題は無さそうだ。

取り敢えず保険医の先生の所に連れて行こう。

 

 

 

診てもらったが特に問題はないとの事。

安静にしていれば大丈夫と言われた。

 

 

 

 

 

ーーーー side 鈴 ----

 

 

私は気晴らしに泳ぎに出た。

あの妖怪乳袋達の物を見せられてイライラしていたから。

 

だから一夏に準備体操したのかと聞かれたときにそんなのしなくても大丈夫だと思って海に入った。

 

泳いでいたら足に激痛が走った。

案の定、私は溺れたのだ。

 

パニックになってしまってバタバタとするしかない。

海水を飲み込んで段々と沈んでいく。

周りの海水もどんどん冷たくなっていく。

 

あぁ……

私もう死ぬんだと。

そう思った。

 

でも、その瞬間に大きな黒い影が近づいてきて。

掴まれたと思ったら一気に引っ張り上げられた。

その掴んできたものは大きかった。

 

 

 

 

 

気が付くと自分の部屋ではない何処かの部屋にいた。

なんでだろう?

 

「あぁ……そうだ私溺れたんだっけ……」

 

何やってんだろ。

結局皆に迷惑かけて。

 

 

ふと周りを見ると輝義が居た。

壁に寄りかかって腕を組んで寝ている。

 

その瞬間、誰が助けてくれたのか分かった。

また輝義が助けてくれたんだ……

 

あの時だって追い詰められてた所に助けに来てくれて。

自分は傷付いて、倒れて。それでも立ち上がって戦って。

 

 

改めて輝義のことを見る。

 

大人の男、三人分よりも大きい肩幅に誰でも見下ろせる身長。

太い傷だらけの腕と足。

手も大きくて、分厚くて。

 

極め付きはその顔。

厳つい顔に額から伸びる傷が更に凶悪なものにしている。

 

 

 

だけど、そんな見た目でも、

誰よりも優しくて、

誰よりも温かくて、

誰よりも皆を心配してて。

 

本当に心の底から優しくて大馬鹿な奴。

周りの皆を笑顔にしてくれる、幸せにしてくれる、それが輝義。

 

 

「ありがとう。助けてくれて」

 

お礼は言ったけど後でまた輝義が起きているときに面と向かって言わなきゃね。

 

 

 

 

ふと、じっと見ていて思ったのだが、あの胡坐をかいている上はどんな心地なんだろう?

 

……少しだけならいいわよね。

 

そう思って座ってみる。

あ、意外と悪くない。

むしろいいかも。

温かくて、なんか落ち着く匂いがする。

 

……もう少しだけ。

もう少しだけこのままでいよう。

 

そう思っていたら眠っていた。

 

 

 

 

ーーーー side out ----

 

 




はい!てことで今回は鈴ちゃんメイン?の回でした。
これを書くまでに二回書いたものが消えるという発狂ものの事件が起きました。
かなり駄文感があります。
許してください。
多分、あと2話ぐらいやってから福音戦になるかな?


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59話目

気が付いたらお気に入りが千件を超えていた……((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル


なんか起きたら鈴を抱えていた。

凄いすっぽり収まってる。

うん、ちょっと待って。

可笑しいでしょ。寝た時は確かに鈴は布団で寝ていたはず。

 

しかも凄い気持ちよさそうに寝てるから起こそうにも起こしずらい……

どうしようかと考えていたら、ただでさえくっついてるのに更にくっついてきた。

 

やばいぞ、これ誰かに見られたら確実に不味いことになる……!

……こうなったら二度寝しよう。

そうすれば大丈夫なはず。

 

てことで二度寝しました。

 

 

 

 

 

誰かに身体を揺すられる。

何だろう……?

せっかく気持ちよく寝てたのに……

 

「輝義、起きて」

 

んー、この声はシャルロットか。

 

「……おはよう」

 

「おはようじゃなくてこんばんわだよ」

 

……あ!そうだった!

やべぇ!

 

「どうして鈴を抱きかかえて寝てるの?」

 

「……知らん。起きたら居た」

 

「まぁ、だろうと思った。ほら、鈴も起こして」

 

時間を見ると既に七時を過ぎていた。

そうだ、もう晩飯か。

 

「ほら。皆もう食べ始めてるから早くしないと。織斑先生にまた怒られちゃうよ?」

 

それは勘弁してもらいたい。

さっさと起こすとしよう。

 

「……鈴、起きてくれ」

 

揺すりながら起こそうとするも全然起きない。

それどころか更にくっついてくる。

 

「……鈴、起きろ」

 

「やだ……」

 

おう、起きてくれよ。

織斑先生にどつかれちまうだろ。

いくら揺すっても起きる気配なし。

 

「起きないね。どうする?」

 

もういいや、面倒臭い。

このまま抱えて連れてっちまおう。

 

「……抱えていく」

 

「いくらなんでもそれは可哀そうだよ。せめて抱っこしてあげれば?」

 

無理です。

見られたらどうなるか分からないし。

てか、シャルロットお前絶対この状況楽しんでるだろ。

顔が少しだけどニヤついてんの分かってんだぞ。

 

「……顔がニヤついてるぞ」

 

「あれ、ばれちゃった」

 

意外と気付くもんだぞ。

そう言うのは。

 

「んん……」

 

しっかしマジで起きねぇな。

 

「……ほら、笑ってないで行くぞ」

 

「はーい」

 

そう言って鈴を抱き上げ飯を食いに行く。

 

 

 

大広間に着くなり、皆が待っていた。

 

「お、輝義……なんで鈴を抱きかかえてんだ?」

 

うん。

そう思うよね普通。

 

「……起きたら鈴が俺の胡坐の上で寝ていてな。起きないからこうして連れて来た」

 

「そうなのか。案外誰かに甘えたかっただけかもな」

 

それはいいんだけどさぁ……

滅茶苦茶白い目で見られてるのは気のせいじゃないっぽい。

聞こえないけどなんか言われてる気がする。

 

 

 

 

「うわぁ……まさか鈴まで落ちちゃったの?」

 

「大河君って意外とプレイボーイだよね」

 

「そうでしょ。箒達だけじゃなくて織斑先生も大河君の事が好きっぽいし」

 

「しかもそろいもそろって美少女に美女ばっかだからね」

 

「しかもあれで狙ってやってないんだよ?信じられる?」

 

「天然かぁ。箒達の恋は実るのかね?」

 

 

 

うん、絶対なんか言われてる。

この際もう気にしたら負けだ。

 

「輝義、後で話を聞かせてもらうぞ」

 

尋問決定しました。

せめてこの最後の平穏を楽しんでおこう……

 

 

食事が並んでいるが、どれもこれも物凄く豪華なものばかり。

……これ全部で幾らすんだろ。

 

「輝義これ、カワハギだぜ。俺食った事ねぇよ」

 

大丈夫だ。俺も食ったことないし。

 

「おぉ、この刺身旨いなぁ。あ、これ本わさびか?凄いな」

 

お前の方がすげぇわ。

なんで食っただけで分かんの?

カンペなんてないのに。

俺いつも使ってるチューブのやつとか刺身によくついてくるのと変わんない気がするんだけど。

 

「ねぇねぇ、輝義」

 

「……なんだ?」

 

「本わさびって何?」

 

ごめん。俺も分からないんです。

 

「……本物のワサビ?」

 

「……分からないんだ」

 

「……すまん」

 

しょうがないじゃん。

飯は食べるの専門なんだから……

そこに織斑が答える。

 

「あー何だっけ、確か日本原産のが本わさびでヨーロッパ原産が西洋わさびだな」

 

「へぇー美味しいの?」

 

「まぁ旨いぞ。俺は好きだ。風味がいい」

 

そう言いながら刺身に付けて食べる。

それを見たシャルロットは、

 

「ふーん」

 

そう言って何を思ったのか、添えてあるわさびをごっそり取ってそのまま口に運んだ。

 

「……あ」

 

「ちょ!?」

 

「~~~~~~!!!???」

 

まぁ予想した通りの反応をした。

わさび単体で、しかもあの量を一気に食べればそうなるだろうよ……

 

「~~~~~~!!!???~~~~~~!!!???」

 

声にならない声を上げながら悶えている。

 

「……ほら」

 

取り敢えず水を渡しておく。

おぉ、すごい勢いで飲み干すな。

 

「あぁ……ひょ、ひょの、何と言うか凄く個性的な味だね……」

 

流石と言うべきか何故か食レポまでするとは。

それからはわさびに手を付けようとしなかった。

 

 

 

「んぅ……」

 

横を見るとセシリアが辛そうにしている。

 

「……どうした」

 

「な、何でもありませんわ。いぅ……」

 

声を掛けるが、大丈夫だと言い切る。

どう見ても大丈夫そうじゃないが……

何が……あぁ、そうか。

 

「……セシリア」

 

「な、何でしょうか?」

 

「……足、痺れているんだろう」

 

「そ、そんな事は……」

 

「……我慢しない方がいいぞ」

 

そう言った瞬間に、

 

「……物凄く痺れてますわ……!」

 

「……少し足を伸ばせ。そうすれば治るはずだ」

 

「ですが、ここは正座と言われましたわ……」

 

「……少しぐらいなら大丈夫だろう。気にするな」

 

そう言って足を伸ばさせようとしたのだが、どうにも渋る。

 

「……ですが……」

 

なんでだ?

別にそれぐらいで怒られたりはしないだろうに。

 

「……他に何か理由があるのか?」

 

聞いてみると少し顔を赤くしながら、

 

「……その、あまり言いたくは無いのですが……」

 

「……下着が見えてしまわないか心配で……」

 

かはぁっ!!??

そうだった!俺ら皆浴衣だから足伸ばして座ると着崩れてたらやばいんだった!

 

「申し訳ありませんでした」

 

多分この時、自分の人生の中で一番早く動けたと思う。

 

 

あぁ……焦った……

セシリアは許してくれたけど、箒達が凄かった。

変態を見る目だった。

もう少しで何か別の性癖が目覚めそうだったなんて誰にも言えない。

 

「……ふぅ」

 

飯も食い終わって、後は風呂に入るだけ。

食ってすぐにはあまり好きじゃないからこうしてのんびりしているわけだ。

この満腹の時にのんびりするのがまたいいのだ。

それにここは露天風呂らしいから楽しみだ。

織斑は俺が鈴の事を見ている間に入ってしまったらしい。

海に入ってそのままは流石に嫌だもんね。

 

 

 

暫くゆっくりした後に風呂に入りに行く。

 

脱衣室で浴衣を脱いで浴場に早速入る。

 

「おぉ……」

 

広い。

取り敢えず広い。

ここを独り占めか……

超贅沢じゃん。

これのほかに修学旅行があって毎年この臨海学校があるんでしょ?

……ⅠS学園金持ちだな。

 

身体を洗って湯船に浸かる。

 

「はぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”…………」

 

気持ちぃ……

もうこのままここで寝ちゃいたい気分だぜ……

 

 

ん……誰だ……?

誰かが扉を開ける音がする。

織斑はもうとっくに入ったって言ってたし……

 

目を凝らして見てみると、何故か束さんだった。

……あれ!?おっかしいなぁ……?

上せたのか?そろそろ上がんないとまずいってことだな。

よし、上がろう。

 

「あ……てるくん……

その、出てっちゃうの……?一緒に入ろう……?」

 

げ・ん・か・く・じゃ・な・い!?

 

「ちょ、束さん何故此処に!?」

 

「本当はね?三日目にてるくんと箒ちゃんの専用機を持ってくる予定だったんだけど、てるくんに早く会いたくて来たんだよ……?」

 

「だ、だからって風呂に入ってくることは無いでしょう!?」

 

「しょうがないじゃん……滅多に会えないんだからこうでもしないと二人っきりになれないんだもん……迷惑じゃなかった……?」

 

「その、迷惑じゃないですから!取り敢えず隠してください!」

 

あ”あ”あ”あ”あ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”!!!!

裸!ちょ、ちょっと待って!?

流石に刺激が強すぎる!

 

「てるくん、隠したからちゃんとこっち見てよ……」

 

「無理ですってば!」

 

「むぅ……じゃぁこれならいい?」

 

そう言って近づいてきたと思ったら抱き着かれたぁぁぁぁぁ!!??

 

「束さん離れてくださいって!まずいですよ!?」

 

「どこが不味いのかな?」

 

「どこって、その……」

 

言えるわけないだろぉぉぉぉぉぉぉ!!!!????

言ったら余計に意識しちゃうじゃん!?

 

「でも私は嬉しいよ?てるくんの体温が感じられて、心臓が動いているのも分かって。私はほら、天才だからさ。その気になればいつでもモニタリング出来るから動いてるっていうのは分かるんだ。でもさ、こうやって直に感じられるのが凄い嬉しい……」

 

そう言うと嬉しそうに笑う。

 

「だから不味いですってば!」

 

そう言うと、

 

「もしかしておっぱいの事?」

 

恥ずかしそうに言う。

恥ずかしいなら辞めません!?

俺は滅茶苦茶恥ずかしいんですけど!

 

「いい事思い付いちゃった」

 

そう言うとニヤっと、絶対に悪い事考えてる顔をした。

いやな予感しかしないんだけど!?

その予感は的中した。

 

 

「ねぇ、私の心臓もちゃんと動いてるでしょ?……ほら、触ってみて」

 

そう言って一旦離れて俺の手をその大きな胸に持っていく。

うわぁ……すげぇ……

でも、ちゃんと心臓が動いてるのが分かる。

風呂だからか、それとも恥ずかしいからなのか。

両方だとは思うけどその鼓動はとても速かった。

 

「……ちゃんと動いてます。それに速い」

 

「でしょ?」

 

そう言ってまた笑った。

 

「あ、そうだ。一ついい事を教えてあげる」

 

そう言って耳元に顔を寄せてきた。

そして囁く様に言ったのだ。

 

「私のおっぱいは箒ちゃんよりも大きいよ」

 

……限界でした。

この後、俺は気を失った。

 

 

 

 

 

 

……あれは夢か?

そう思ったのだが、それよりも先に頭の後ろが柔らかい何かに触れている。

何だろう?

触ってみればどこか覚えのある感触がする。

 

「ひゃ!?」

 

驚く声がする。

それに続いて、

 

「あ、てるくん起きた?」

 

何処からか束さんの声がする。

目を開けてみるが、何故か何処にもいない。

……?

しかも何故か視界に影が差している。

ここで少し考えてみよう。

 

頭の後ろに柔らかい何か⇒

何処か姿は見えないのに何処からか声がする⇒

周りは明るいのに何故か影が差している。

 

結果。

膝枕されている。

 

ホワッツ!?

慌てて飛び起きようとしたら何かにぶつかった。

 

「ひゃ!」

 

束さんが声を上げる。

 

「す、すいません」

 

「もー気を付けてよ?」

 

それにしても何にぶつかった……ん?

あ……分かっちゃった。

この影の正体、束さんの胸だ。

すげぇ……

胸がでかい人に膝枕されるとこうなるんだ……

 

「ほら、起きたなら身体拭いて早く着替えて?じゃないと風邪ひいちゃうよ?」

 

もう何も言わない。

何も言えない。

 

 

 

それから束さんと部屋に戻った。

その途中で織斑先生に見つかってお説教を食らった。

その時、織斑先生が、

 

「私だってまだ一緒に入ったことないのに……」

 

とか言ってたけど気のせいだろう。

 

 

その後、束さんは自分のラボに戻って行った。

俺と一緒に寝るって言って駄々をこねられたけど何とか説得した。

 

「……明日また来てください。そうしたら海で一緒に遊びましょう」

 

これで納得してもらった。

 

 

 

 

 

ーーーー side 束 ----

 

 

 

今日からてるくん達は臨海学校に行ってる。

カメラで見ていたけど、皆ずるいなぁ……

てるくんと一緒にご飯食べて、お話して。

昼間に散々あんなにいい事してもらってたじゃん!

 

でも、予定じゃ三日目の実習の時に行く予定だから、今行ったら迷惑になっちゃうよね……

 

そんな事を考えていたらくーちゃんが話しかけてきた。

 

「どうしたのですか?束様」

 

「え?あぁ、何でもないよ」

 

そう言ったらため息をしながら呆れた顔をしながら言った。

 

「はぁ……羨ましいのなら行ってくれば宜しいのでは?」

 

「だ、だって迷惑かもしれないし……」

 

「大丈夫ですよ。少なくとも輝義様は束様の事を拒絶なさるような方ではないでしょう」

 

「で、でも……」

 

そう言って渋っているとくーちゃんが、

 

「はぁ……」

 

こいつ面倒だなって顔で見てきた。

流石にそれは無いんじゃないかな!?

 

「くーちゃん!?そんな目で見ないで!?」

 

「気のせいですよ」

 

「絶対気のせいなんかじゃないよ!?」

 

ここ最近本当にくーちゃんが私に冷たい……

まさか反抗期!?

それはそれで嬉しいような嬉しくないような……

あ、ダメだ。

ババァとか言われたらもう束さんショックで立てなくなっちゃう。

 

「くーちゃん私の事見捨てないでぇ!」

 

「は?いきなり何を言っているんですか。それよりも……」

 

冷たくあしらわれた!

悲しい……

 

「ほら、丁度いいタイミングですよ。

輝義様がお風呂に入るようです。今行ってくればいいのでは?」

 

「何言ってるの!?」

 

「はぁ、もう面倒ですから申し上げますと」

 

あぁー!?遂に面倒って言った!

 

「うじうじしてないでとっとと行ってください。

なんならそのまま既成事実を作ってくるぐらいで行ってきて欲しいのですが」

 

この子は何を言ってるのかな!?

束さんは痴女じゃないよ!?

 

その後、遂に面倒になったくーちゃんにてるくんのいるお風呂の脱衣所に放り込まれました。

その際に、

 

「あぁ、早くしないと輝義様が出てきてしまいますよ。そうなったら束様は覗きをしていた変態になってしまいますね」

 

その時は慌てて気が付かなかったけど、お風呂に乱入する方が変態だと思います。

 

 

 

その後、服を脱いでお風呂に入った。

そうしたらてるくん慌てて出て行こうとするから引き留めて何とか一緒に入れたんだけど……

 

ここに来た理由を聞かれて答えた。

そうしたら迷惑じゃないって。

 

えへへ、嬉しいな……

 

でも隠してくれって言われて隠したんだけど全然こっちを見てくれない……

 

だから抱き付いちゃった。

てるくんの首に腕を回してギュって。

恥ずかしかったけど、それよりもてるくんの体温とか心臓が動いているのを感じられて嬉しいっていう方が勝ってた。

 

だからてるくんにも私の事を感じて欲しくて、てるくんの手を取って私の左胸に持って行った。

正直、私の胸は他よりも遥かに大きい。

ちーちゃんも大きいけどあれはバランスがいいって感じかな。

大きさで言ったら箒ちゃんがもうすぐで追い付くかな。

でもまだ私の方が大きい。

形も崩れてないし垂れてもいない。

大きさよし、形よし。

でも、あのてるくんと同じ部屋の眼鏡っ子には負けるかな。

あれは束さんでも勝てないよ……

 

 

てるくんはちゃんと動いてるって言ってくれた。

それに速いって。

速いのはしょうがないよ。だって好きな人に胸を触ってもらってるんだもん。

嬉しいのと恥ずかしいのが混ざってよく分からない。

 

だからだろうか、こんなことを言ってしまったのは。

 

てるくんの耳元で、こう言った。

 

「私のおっぱいは箒ちゃんよりも大きいよ」

 

そしたらてるくん気を失っちゃった。

 

「わぁぁぁぁ!?てるくん!?」

 

慌ててお風呂から引っ張り上げて脱衣所にある椅子に寝かせた。

流石にそのままだと痛いだろうから、膝枕をしてあげた。

ちょっと憧れてたんだよね。こういうのに。こんな大天災だけどそれでも女の子なんだから。

 

寝顔はとっても穏やかで優しそうなんだけどなぁ。

なんで起きてるとあんなに怖い顔になっちゃうんだろう?

このままでいれば絶対にモテモテになると思うんだけどな。

……でもだめだ。これ以上てるくんの事が好きな人が増えたら嫌だもん。

 

 

 

 

 

暫く、と言ってもそんなに時間は立ってないけど、てるくんが目を覚ました。

状況が分かってないのか手を動かしてる。

 

わぁ!?

てるくんが私の太ももを触ってきた!

思わず変な声が出ちゃったよ!

 

でも起きたのかな?

声を掛けてみるが反応が無い。

どうしたんだろう?

 

三十秒ぐらい固まってたけどいきなり飛び起きてきた。

その勢いで私の胸に思いっきり顔を突っ込んできた。

 

……また変な声を出しちゃった。

 

てるくんは謝ってくる。

 

別にてるくんなら好きにしていいのに……

……はっ!?私ったら何考えてるの!?

もう……最近、てるくんの事を考えると変な妄想が止まらなくなっちゃうよ……

 

 

その後はてるくんに服を着てもらって

てるくんのお部屋に戻った。

 

でもちーちゃんに見つかって怒られちゃった。

ちーちゃんは、

 

「私だって一緒に入ったことないのに……」

 

って言ってたけど。

 

本当はてるくんと一緒に寝たかったんだけど明日一緒に遊ぶ約束をして帰った。

明日はくーちゃんも連れてこよう。

 

 

 

 

ーーーー side out ----

 

 




なんか今回は長くなった。
しかもお色気シーンが多い……



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60話目

今回の話ともしかしたらこの次の話で日常は終わりです。
そしたら遂に福音戦が開始します。


山田先生が隣に寝ているという状況に緊張して遅くまで寝れずに悶々としていた。

しかもちょいちょい寝言でなんか言ってるし。

小さいからあんま聞こえないけど。

 

 

気が付いたら寝てた。

 

 

 

 

次の日。

 

なんか意外としっかりと寝れた。

ただ布団が小さくて足が出て少しばかり寒かった。

 

自分のベッドが恋しい……

さて、朝、山田先生に起こされ、ボケっとしながら飯を食いに行く。

部屋を出ると丁度、織斑と織斑先生が部屋から出てきた。

 

「お、輝義。おはよう」

 

「……おはよう」

 

「山田先生、おはようございます」

 

「はい。おはようございます!」

 

「……織斑先生、おはようございます」

 

「ん、おはよう。どうだ、良く寝れたか?」

 

そう聞かれたので、

 

「……まぁ、そうですね。ただ足が出て少し寒かったです」

 

答える。

すると、笑いながら、

 

「やはりか。なんなら布団を二枚使えばよかったろう」

 

その手があったか……!

 

「それと、寝癖もなんとかせんか。ボッサボサだぞ」

 

そうだ。いつもだったら訓練があるから終わった後にシャワーで直せるんだけど今日は無いから寝癖が付いたままだった。

 

 

 

「おはよう輝義」

 

「輝義さん、おはようございます」

 

箒達と合流して早速飯を食べ始める。

朝も豪華で美味かった。

 

 

 

 

 

それから先生から説明があり、今日一日まで自由だから羽目を外さないようにと注意された。

 

 

 

「輝義!海に行くぞ!」

 

ドアを開けて入ってきたのは織斑だった。

ノックぐらいしなさいよ……

それに昨日もだったけどもう水着に着替えてんの。

浮かれすぎでしょ。

 

「早く着替えていこうぜ!」

 

分かったから急かすなってば。

 

「……少し待ってろ」

 

「おう!」

 

だからなんで着替えてる俺を見てるんだよ。

ホモか。

 

 

 

織斑に急かされながら着替えて取り敢えず海に行く。

既に箒達は居た。

君たちも随分と早いのね。

 

「てるよ……」

 

ズドォォォォォォォォン!!!!!

 

セシリアが口を開いた瞬間、何かがとんでもない音を立てて落ちてきた。

……いやなんなの?

砂浜に突き刺さってるのあれニンジンだよな?

 

「てるくん!遊びに来たよ!……あれ?いない?」

 

「束様、逆です」

 

「あれ?あ!いた!」

 

そう言って中から出てきたのはピンクのビキニを着た束さんだった。

昨日、裸を見ちゃったけど水着も凄まじいな……

何だあれ、水着からはみ出してるよ……

 

「てるくんおはよう!」

 

「……おはようございます」

 

「姉さん!?」

 

「箒ちゃんもおはよう!」

 

「おはようじゃないです!どんな登場の仕方をしているんですか!?」

 

「いやぁ、インパクトがあった方がいいかなって思って」

 

「ありすぎです!これじゃ……」

 

何かを言いかけた箒の言葉を遮って声が聞こえる。

 

「束ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」

 

「げっ!?ちーちゃん!?」

 

水着姿の織斑先生が砂を巻き上げて走ってくる。

顔が阿修羅みたいになってる……

 

「お前はなんでこうも面倒事をしでかすんだ!」

 

あ、その後ろを山田先生が追っかけてる。

ばるんばるんしてらっしゃいますね。

 

「ちーちゃんストップ!?」

 

織斑先生が束さんを追っかけてる。

なんちゅうカオスな状況なんだ……

あ、束さんが捕まった。

 

「痛い痛い痛い!?束さんの頭脳が飛び散っちゃうよ!?」

 

「一回ぐらいそうなれ!毎度毎度お前の尻ぬぐいをさせられる私の気持ちになってみろ!」

 

「わぁぁぁぁぁ!!!???ごめんってば!許してよ!」

 

 

 

 

それから十分程格闘してこちらにやって来た。

 

「うぅ……ひどい目にあったよ……」

 

「自業自得です。姉さん」

 

「自業自得かと。少しは反省してください」

 

「てるくん、妹と娘が冷たい……」

 

そんなこと言われても……

 

「そもそもなんで姉さんが此処にいるんですか?」

 

箒が理由を聞く。

……あ、これ俺怒られるかも。

離れとこ。

 

「ん?聞いてない?てるくんと遊ぶ約束したからだよ?」

 

それを聞いた箒はこっちにつかつかと歩いてくる。

 

「輝義、どういう事か説明してくれるな?」

 

満面の笑みでそう言ってくるが目は笑ってない。

これはもうだめだ。

 

「この前私は言ったはずだ。姉さんと会ったりしたら報告するようにと」

 

「……仰いました」

 

「で?今回の事を私は聞いていないんだが?」

 

「……報告し忘れました」

 

その後、しばらく追及された。

因みにその時織斑が、

 

「なんかさ、今の輝義って浮気がバレた夫みたいだな」

 

こういっていたらしい。

いや、もう逆らえないんだって……

 

 

 

「輝義さん、その、そちらは……」

 

追及が終わった後にセシリアが聞いてくる。

まぁ、そりゃそうだろう。

 

「……束さんだ」

 

「いえ、それは分かっているので、ご関係を教えてくださいな」

 

関係?

何なんだろう……?

 

「……何だろう」

 

分からないから正直に答えたのだが、

 

「むぅ……」

 

束さんの機嫌が悪くなった。

なんでや……

 

皆もまたかよって顔してるし。

 

「君は昨日てるくんに日焼け止め塗ってもらってエロい顔してた子だ!」

 

「ちょ!?な、何を仰いますの!?」

 

「だってそうじゃん。ちゃんと見てたんだよ?箒ちゃんもちーちゃんもエッロい顔してたね。間違いない、あれははつじょぉぉぉぉぉぉ!!!???」

 

「束、そんなに反省したりないのか。そうかそうかならばとことん付き合ってやろうじゃないか」

 

「織斑先生、私も一緒に宜しいでしょうか?」

 

「篠ノ之か。いいだろう。共に日頃からこいつに面倒事に巻き込まれている恨みここで晴らそうじゃないか」

 

「二人とも待って!?流石に二人からだといくら束さんでも死んじゃうかなぁって……」

 

「お前は一回思いっきり痛い目を見た方がいい」

 

「てるくん助けて!」

 

「……束さん、頑張ってください」

 

「あんまりだぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

そう言って二人は束さんを引きずって何処かへ行ってしまった。

無理だってば。あの二人には敵わないんだから。

 

 

それから皆で遊んだ。

時折、

 

「ぎにゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!????」

 

とか聞こえたけど空耳だろう。

 

 

 

 

 

 

「てるくん酷いよ……束さんを見捨てるなんて……」

 

「……すいません」

 

今、俺と束さんは砂浜に立てたパラソルの下にいた。

束さんは戻ってきた後、のんびりとしていた俺の所に来て一緒に話をしたいと言って来たのだ。別にのんびりしていただけだから了承したのだ。

 

「てるくん!」

 

「……何ですか?」

 

「昨日皆に日焼け止め塗ってたよね?」

 

さっきも言ってたけど、見てたのかぁ……

そっかぁ……

 

「……見てたんですか」

 

「そりゃね。……嫌だった?」

 

「……別にそんな事はありませんよ。束さんなら変な使い方をしないでしょうし」

 

そこんところは信頼しているから別に構わない。

 

「そうなの?」

 

「……はい」

 

「そうなんだ……ふふっ」

 

これだけで嬉しそうにする。

 

「じゃあさ!私にも日焼け止め塗ってよ!」

 

なぬ!?

 

「……なんででしょうか?」

 

「だって皆だけずるいよ!」

 

そんなこと言われても

 

「ダメかなぁ……?」

 

そう言って答えを渋っている俺に上目使いで見て来る。

そんな目で見ないで!

無理なものは無理なんです!

 

「うぅ……」

 

泣きそうになる束さん。

あぁ!もう!しょうがないなぁ!

 

「……分かりました」

 

「ほんと!?やったぁ!」

 

おぉう……

物凄い喜んでいらっしゃる……

 

喜んで、早速準備を始めた。

シートを敷き、寝そべる。

その時に上の水着を脱ぐのを忘れない。

 

うわ……

すげぇ綺麗な背中だな……

 

「……それじゃ、いきますよ」

 

「うん。お願いしまーす」

 

昨日やったのと同じように塗っていく。

 

すっげ……

寝そべってるから束さんの大きな胸が押しつぶされてる。

それを日焼け止めを塗っているから真上から見ることになる。

そりゃもう凄い。

 

昨日は箒達全員に見られてて恥ずかしいし緊張してるしであんまり余裕はなかったけど、箒達のと、束さんと一緒に風呂に入ってたからか意外と落ち着いていた。

だからだろうか、昨日以上に息使いや、肌の感触が細かく分かる。

 

「んっ……」

 

「てるくんの手、すっごいおっきいね……」

 

「……そうですか」

 

「うん。それにとっても温かいし優しい」

 

視覚も感触も遥かに昨日より全然分かるもんだからやばい。

しかもやたらと艶めかしい声を上げるもんだからさらにやばい。

耐えろ……!耐えるんだ……!

今ここでやらかしてしまったら大変なことになる……!

 

「ぁん……」

 

「……束さん、もう少し声を抑えてくれると助かります」

 

「あ……ごめんね?大きかった?」

 

「……いえ、そうではないんですが……」

 

それからも、

 

「んんっ………………ふぁぅ……ぅぅん……!」

 

「はっ……はぅ……」

 

顔を赤くして時折ビクッとしたりする。

これ完全にそっち系のビデオになるよな……

 

そうして耐えること十分。

思ったよりも時間が掛かってしまった。

 

「……終わりましたよ」

 

「ん……ありがとう……」

 

「……大丈夫ですか?」

 

「うん……大丈夫……」

 

そう言ってはいるが、

顔は赤いし息も荒い。

……なんかいけないことをしているみたいで背徳感が凄い。

 

それから、皆とビーチフラッグや、泳ぐタイムを競ったりして遊んだ。

ただ、一つ気が付いた事がある。

俺、皆に日焼け止め塗ったけど自分に塗ってないから焼けた。

そりゃもうこんがりと。

……痛いの嫌なんだけどな……

 

 

 

 

 

 

 

 

夕方、皆が旅館に帰った後に布仏に呼び出された。

何の用かは分からないが、取り敢えず行こう。

 

呼び出されたのは、旅館から一キロ程離れた岩場のあたり。

こんなとこに呼び出して何なんだ?

 

あ、居た。

 

「……布仏」

 

「おー、てるてるきたねー」

 

「……こんな所に呼び出してどうしたんだ」

 

「んー?ちょっとねー」

 

そう言うが、教えてくれない。

 

「てるてる、ちょっとあっち向いててあっちくれる?」

 

「……分かった」

 

「ありがとー」

 

そう言って俺は指示された方を向く。

此処には俺と布仏しかいないし今は会話もしていない。

だから波音と少しばかり拭いている心地よい風の音しか聞こえない。

穏やかな時間だな……

 

「てるてるこっち向いていいよー」

 

そう言われて向いてみるとそこには何故か水着を着た布仏がぁぁぁ!?

 

「お、おま、お前!?なんでそんな恰好!?」

 

「えー?てるてるに見てほしかったからかなぁ?」

 

だからってさ!

お前、その水着はダメだろ!?

 

なんで……!なんで……そんなに面積の小さいビキニなんだ……!?

 

それ、マイクロビキニってやつじゃないの!?

しかもこいついつもダボダボな服ばっか着てるから分からなかったけど滅茶苦茶スタイル良いじゃん!

 

出てるところは出てて、引っ込んでる所は引っ込んでる。

箒や束さんよりも少し小さいぐらいと言えばその大きさが分かるだろう。

 

顔を背けていると、むくれた声を出しながら、

 

「むー……てるてるちゃんと見てよー」

 

裾を引っ張ってくる。

 

「ねーねー見てよー」

 

「無理に決まっているだろう!?」

 

すると何故か身体をよじ登って来たのだ。

待て待て待て!!!

何故登ってくる!?

というか当たってるから!色々と!

 

「見てくれないならいたずらしちゃうよ?」

 

そう言うと肩の所までよじ登って来て、

 

「えいっ」

 

その掛け声と共にその大きな胸を頭に思いっきり押し付けてきたのだ。

その瞬間、

 

「ほわぁぁぁぁぁぁ!!!!????」

 

と、こんな声を上げてしまった。

しょうがないじゃん!?だって柔らかくて温かくてしかも良い匂いまでしてくるのだから。振り落とさなかっただけ偉いと思って欲しい。

 

「てるてる静かにしてー?皆にバレちゃうよー?」

 

そう言ってくるが

 

「何をしているんだ!?」

 

「んー?おっぱいを当ててるー」

 

当ててるー、じゃないよ!

 

「取り敢えず降りてくれ!」

 

「じゃぁ、ちゃんと見てくれるー?」

 

「分かった!見るから!」

 

そう言うとやっと降りてくれた。

あぁ……滅茶苦茶慌てたぜ……

 

取り敢えず布仏を改めて見るが……

やっぱりすごいと思う。

 

これは反則だって……

普段とのギャップが凄すぎて余計そう感じる。

 

「どうかな?」

 

どうかなって言われても……

 

「……似合ってると思う」

 

としか言えない。

だがそれだと不満だったらしく、

 

「えー、もっと他にないのー?」

 

と言われてしまった。

これ以上他に何を言えと!?

 

必死になって考えていると、

布仏は、笑いながら、

 

「あははは!ちょっと意地悪しちゃったかなー?」

 

意地悪しちゃったかなー?じゃないよ!

どんだけ考えたと思ってんだ……

 

「……でもなんで態々ここに呼び出してまで見せたんだ?」

 

「えー?だって私だって負けたくないんだもーん」

 

負けたくないって何にだ?

 

「……何に負けたくないんだ?」

 

「んー?ないしょー」

 

内緒って……

まぁ言いたくないんだったらいいけどさ。

 

「……ほら、寒くなって来たから浴衣を着ろ」

 

「はーい」

 

夏といえども日が暮れると海が近いから寒くなる。

既に冷え込んできている。

こうなると、俺は生まれてこの方病気になったことが無いほど体は丈夫だからいいが布仏はそうもいかない。女子だからあまり身体を冷やさない方がいいだろう。

 

「着終わったよー」

 

「……なら、帰るぞ」

 

「えーもっといようよー」

 

こういうが飯もあるしなぁ……

それに寒くなってきているしな……

 

「……飯もあるし寒くなって来ただろう」

 

「ご飯なら少し遅れても大丈夫だし、寒さならこうすれば大丈夫。てるてる、ここに座ってくれる?」

 

と言って俺を座らせると、その上に座ってきた。

 

「……おい」

 

「どうしたの?」

 

どうしたの?じゃないよ。

何そんなにナチュラルに座ってんの?

 

「ほらねー?これで温かいでしょー?」

 

いや、暖かいでしょ?じゃないんだって。

 

「……どいてくれ」

 

「嫌だった……?」

 

そんな目で見るなよ……

束さん達もだけどなんでそんなすぐに泣きそうになるのさ……?

 

「……別に嫌な訳じゃない」

 

「じゃぁいいよね」

 

良くないんだってば!

お前、自分の格好分かってる?

ビキニだぞ?しかもマイクロなんだぞ?

もうあちこちに温かくて柔らかい感触が当たってるんだよ!

おまけにいい匂いまでするし!

そして、それまで色々と抑えてきていたものが爆発した。

 

「お前分かってんの!?言っとくけどなぁ!?布仏だっていつものんびりしているからそう思わないかもしれないけど思いっきり美少女なんだぞ!?そんな女子が自分の膝の上に浴衣の下とは言え面積の小さい水着を着て座ってんだぞ!?それで嫌な訳あるかコンチクショーォォォォ!!!!」

 

そう言いきってハッとした。

 

「……俺は何を言っているんだ……」

 

あれ?おかしいな、目から汗が流れてきた……

それを聞いた布仏は優しい顔をして、

 

「その、ごめんね?」

 

謝りながら俯いている俺の頭を撫でてきた。

……今はその優しさが辛い……

 

「なんか悪いことしちゃったねー。

もう帰ろっか。それでご飯食べてお風呂入って綺麗さっぱりしちゃおう!」

 

そう言って旅館に二人で帰った。

 

 

 

因みに、傍から見ると身長二メートル近い大男が小さい女の子に泣きながら手を引かれているという目撃者が居たら間違いなく通報待ったなしの光景だった事をここに書いておこう。

 

 

 

 




質問に対する返答コーナー 

えー、意外と質問が多かったのでここで纏めて返します。

その一

Q ヒロインの追加はあんの?

A 多分無い。


その二

Q 買い物の時に千冬と一夏に会わなかったのか?

A 読んで出てきていなかったら会ってない。



その三

Q 束さん原作と似てなくない?

A だって原作じゃないもん。


その四

Q 赤椿は出ますか?

A 出ます。


その五

Q 箒と主人公の専用機はいつ出る?

A ストーリーを読み返して。
  それで書いてなかったら待ってて。


その六

Q 一夏の女体化はある?

A これはそういう話じゃない。だから出ない。


その七

Q 箒と束さんのおっぱいの大きさ教えて。

A 考えるな。感じるんだ。


その八

Q エロは書かんの?書くとしたらどんな感じで書くの?

A 取り敢えずこっちを優先で書く。
  どんな感じで書くかはその時によって変わる。
  
  


大体こんなもんかな。

毎回毎回読んでいただき感謝です。
感想も書いてくれて嬉しいです。
これからもどうぞ宜しくお願いします。


感想、評価等くださいな。









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61話目


前話の本音ちゃん視点です。




 

 

 

ーーーー side 本音 ----

 

 

今日は篠ノ之博士まで臨海学校に参加してきてすっごい訳分からない状況になっちゃってたなー。

 

 

 

夕方、私はてるてるを旅館から一キロぐらい離れた岩場に呼び出してここまで来てもらっていた。

 

なんでかって言うと、昨日から皆がてるてるに水着を見てもらってずるいなぁって思ってこれから自分で選んだ水着を見てもらいたくてなんだけど。

 

あんまり他の人に見せたくないんだよねー。

なんか結構ジロジロ見られてて嫌なんだよー。

 

でもてるてるの事は好きだから見て欲しいんだ。

だからこうやって来てもらったんだけど……

ちょっと過激なの選びすぎたかなぁ?

 

まぁ何とかなるかー!

 

そしててるてるが来てここに呼んだ理由を聞いてくるけど教えてあげなーい。

だって好きだからーとか言えないもん。

 

それで、ちょっと向こうを向いててもらう。

だってなんか脱いでる所を見られるのはなんか恥ずかしいっていうか……

 

脱ぎ終わってこっち向いていいよって言っててるてるはこっちを向いたんだけど私を見た瞬間にすぐに顔を背けちゃった。

それも顔を真っ赤にして、大慌てで。

 

こんな反応をされると着て良かったよー。

 

まぁ、でもその反応は仕方ないかなぁ。

だって着ているのはマイクロビキニなんだもん。

我ながらよくこんな水着を着ようと思ったなぁ。

 

正直、しののんや、篠ノ之博士程ではないけどそれなりにおっぱいもあると思うんだよね。

実際、てるてるは私のおっぱいに視線が行ってるし。

 

でもやっぱり顔を背けちゃう。

見てほしいって言っても顔を赤くして無理だって見てくれない。

 

むー……それならこれでどうだ!

 

てるてるの身体をよじ登って行く。

更識家に仕える者として当然できるのだー。

一応警告はしてあげよう。

 

「見てくれないならいたずらしちゃうよ?」

 

それでも見てくれないならしょうがない。

ここはいたずらするしかありませんなぁ!

 

「えいっ」

 

思いっきり抱き着いておっぱいを頭に押し付けた。

その瞬間てるてるは、

 

「ほわぁぁぁぁぁぁ!!!!????」

 

って変な声を上げた。

面白いけど、静かにしないと皆にバレちゃうし。

でもこんなに慌てても絶対に振り落としたりしない。

そんなところにてるてるの優しさが出てると思うなぁ。

 

 

 

その後、観念したのか見てくれるって言った。

 

降りて見てもらったんだけど、似合ってるとしか言ってくれない。

頑張って言葉を探して絞り出したんだろうけど、ちょーっといたずらしたくなっちゃうかなぁ?

もっと他に何かないの?って言ったら物凄く頑張って考え始めるから面白くてついつい笑っちゃったよ。

少し拗ねたような顔をする。

 

 

その後、どうしてここに呼び出したのか聞かれたから、

 

「えー?だって私だって負けたくないんだもーん」

 

とだけ答えておいた。

だって今この場で好きですなんて言えないしねー。

そしたら不思議そうにしてた。

 

 

 

そろそろ寒くなってきた時に、てるてるが心配してくれて、

浴衣を着るように言ってきた。

 

ここは素直に着ておこう。

 

そしたら帰るぞって言うからもっと居たいって言ったら、

理由を探して言ってくるけどそれぐらいじゃだめだよー。

 

反論して取り合えず座ってもらう。

そして、てるてるの膝の上に座る。

これで寒さは問題ないね。

 

 

そしたらてるてるが言い出した。

 

「お前分かってんの!?言っとくけどなぁ!?布仏だっていつものんびりしているからそう思わないかもしれないけど思いっきり美少女なんだぞ!?そんな女子が自分の膝の上に浴衣の下とは言え面積の小さい水着を着て座ってんだぞ!?それで嫌な訳あるかこんチクショーォォォォ!!!!」

 

正直、美少女だって言ってくれたり、嫌じゃないって言ってくれてすっごい嬉しいけど、なんか申し訳なくなってきちゃったよ……

 

だって目の前で顔を手で覆ってなんかないてる?んだもん。

 

頭を撫でながら謝る。

これは悪い事しちゃったかなぁ……

 

泣いてて何となくだけど少し可愛いなって思っちゃったのは内緒。

 

 

 

その後、てるてるの手を引きながら旅館に戻った。

こんなんだけどてるてると手を繋げて良かった。

相変わらずおっきくて分厚い手だったけどその分、とっても温かかった。

 

 

 

ーーーー side out ----

 

 






すいません……
もう福音戦まで少し待ってください……

色々と書きたいことがあるんや……
次回で何とかしますから……


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62話目


今回は主人公視点ではなくヒロインズ視点となります。
特定の誰かという訳ではないのでそこんところはご了承ください。



関係ない話なんですけど、自分はSABATONと言うメタルロックバンドが好きなんですけど知り合いにこのグループを知っている人が居なくて悲しい……


 

 

夜、輝義を慕っている面々が織斑先生の部屋に呼び出された。

え?原作であったマッサージシーン?そんなもん輝義の理性が持たないから無し!(もしかしたら別で書くかも。輝義ビーストモード的な感じで)

一夏と千冬の絡みはない。

 

 

 

 

ここに集められたメンバーのほぼ全員が輝義の事が好きなのである。

ぶっちゃけ羨ましい。しかもそろいもそろって全員が美女、美少女なのだから世の中の男からしたら血の涙ものである。

ほぼという理由は後程。

 

 

「さて、ここにお前たちを集めた理由だが……ぶっちゃけ大河の事をどう思っている?」

 

開口一番に千冬はそんなことを言い始めたのだ。

皆は面食らって、ポカンとしている。

そりゃそうだろう。

だってまさかいつも恐れている人からそんな言葉が出てきて、しかもいつも堅い口調は砕けている。普段の姿からは想像できない。

 

それに対していち早く復活した箒が、

 

「その、どう思っているとはどういう事でしょうか?」

 

と、聞き返した。

 

「なんだ、分からんのか?大河の事が好きかどうかと聞いているんだ」

 

そんな事を聞かれても簡単に答えられる訳がない。

そして、そんな皆を見た千冬は冷蔵庫に入っていた飲み物を全員に配った。

 

「ほれ」

 

「あ、あの、これは……?」

 

「所謂、賄賂と言うやつだな。ここでの事は誰にも言うなよ?私達だけの秘密だ」

 

そう言って笑った。

鈴や箒を含めて笑った所を見た事が無いのだ。

しかも普段のイメージ的に笑わないと思っている人間が多いために驚くのはしょうがないだろう。鉄の女と言われていても仕方がない。

まぁ主人公の前では普通に笑っているが。(クソッ羨ましい!!)

 

「ちーちゃんが皆の前で笑ってる……!?」

 

「なんだ、私だって笑う時は笑うさ。ただ普段はその機会が無いだけだ」

 

そう言いながら缶ビールのプルタブから子気味良い音を出し、早速飲んでいく。

というか、一気飲みだった。

これにも驚く面々である。

 

「それで?さっきの質問にどう答える?」

 

再び話を戻して聞く。

それに対して最初に口を開いたのはメルヘンなウサギの束さんだった。

 

「そうだね……というか私達が答える前にちーちゃんが教えてよ。ちーちゃんはてるくんの事をどう思ってるの?」

 

質問に対してそう聞き返したのだ。

 

「私か?好きだぞ」

 

あっけらかんと言い切ったのだ。

まぁ、酒が入っているという影響もあるだろうが。

 

「それってどういう好きなの?」

 

「勿論、男としてに決まっているだろう」

 

さらっと言い切った。

流石男前ですね。

というか世界最強に好かれるなんて流石輝義。

これをマスゴミにリークすれば間違いなく世界中に衝撃が走るだろう。

正直、ここに集まっているメンバーの顔触れだけでもう過剰戦力な感じもするが。

 

「そういうお前はどうなんだ?ん?今日は随分と積極的だったじゃないか」

 

聞かれた束は顔を赤くしてオロオロし始めた。

 

「ふぇ!?」

 

「ほら、とっとと答えろ。私だって答えたんだ」

 

「えぅ……その……」

 

「ん?」

 

千冬は楽しそうにニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべている。

 

「……………き」

 

「ん?何を言ってるのか聞こえんぞ?ほら、全員に聞こえるようにもっとでかい声で言わんか」

 

そう言われて更に顔を赤くしてやけくそ気味に言った。

 

「大好きだよ!正直言うと家族とちーちゃんにいっくん以上に好きなの!愛してるの!何か文句ある!?」

 

言い切った。

みんなびっくりしている。

それもそうだろう。なんたって人嫌いで家族ぐらいにしか興味を示さない事で有名なあの篠ノ之束が、あろうことか八歳も年下の高校生に恋をしていると言い切ったのだ。これだけでもう世界的な大ニュースになるだろう。ついでに言えば輝義の希少価値も上がるだろう。

 

そしてそれを聞いた千冬は、

 

「はははははははは!!!!」

 

大爆笑し始めた。

 

「聞いといてなんだよー!好きでもいいじゃん!」

 

「いや違う違う!ふっ、ははははは!!!!」

 

「もー!違うって言いながら思いっきり笑ってるじゃん!何が違うのさ!?」

 

「いやなに、お前がまさかここまで私達以外にここまで執着するどころか、そいつの事を好きになるとは思っていなかったからな」

 

「そりゃしょうがないじゃん……」

 

そう言って若干拗ね始めた。

こうなったら放っておくのが吉だろう。

 

「さて、次はお前たちの番だぞ。私達年長者が白状したんだ、お前達もしっかりと吐けよ?」

 

後にこの場に居たメンバーは語る。

あれは獲物を狙う目だったと。

 

 

 

「ほら、先ずはそうだな……オルコット、聞かせろ」

 

中々話さないので遂に指名制度に変更された。

そして最初の獲物はセシリアだった。

指名された途端に顔を赤くしているがそんなもので許されていたら今頃そこで拗ねているメルヘンなウサギさんは誕生しなかっただろう。

 

「あーもう!私だけじゃずるいよ!皆もちゃんと話してよ!」

 

「きゃ!?」

 

そう言いながら束はセシリアに掴みかかった。

 

「ほらほら!言わないとどうなるかわかんないよ~?」

 

そう言いながら胸を揉み始める。

 

「わ、分かりました!分かりましたから放してください!」

 

「よしよし。ならば聞かせてもらおうか」

 

そうしてセシリアは話し始める。

 

「その、私は輝義さんの事をお慕いしております。勿論、一人の男性としてですわ」

 

「ほう?それでどんなところに惹かれた?」

 

「どんなところ、ですか……

そうですね、私が入学当初に皆さんを不快にさせる発言をして、誰も私とお話してくれなかった時に、一人で食事をしていた時にいきなり話しかけて来たのです。

その時は馬鹿にされたりするものかと思っていたのですが、一人で食事をしていた私を心配して話しかけてくれたのです。それで会話をしているうちに心の広さに惹かれて好きになっていました」

 

「私はこんなものでしょうか。

……なんか急に恥ずかしくなってきましたわ……」

 

そう言って話を終えるが恥ずかしいと言って顔を覆ってしまった。

 

「青春しているじゃないか。さて?次は更識、お前だ」

 

「え!?私ですか!?」

 

「そうだ。ほら、話せ」

 

恥ずかしいのだろうが、既に三人が話しているため気が軽いのだろう。

余り躊躇わずに話し始めた。

 

「その、私はお姉ちゃんと仲が悪かったんです。その時に仲直りするのを手伝ってくれて、それから意識するようになって、同じ部屋で生活しててあんなに逞しいのに偶に抜けてたりするところがあって、その、好きになってました……」

 

「なんだ、自分の専用機を完成させることしか興味が無いと思っていたがそうではなさそうだな」

 

「はい。輝義のおかげです」

 

にっこりと笑った。

 

「よし、次は篠ノ之お前だ」

 

そう指名された途端に、肩をビクリとさせた。

 

「あ!私も箒ちゃんの聞きたいです!」

 

「姉さんは取り敢えず黙っててください」

 

「やっぱり妹が冷たい……」

 

「自業自得だな。そら、話せ」

 

「うぅ……恥ずかしい……」

 

やはりというか他人にしかも同じ男を好きになった理由を話すのは恥ずかしいのだろう。男なら下ネタを混ぜながら教えられるのだが。

 

「その……学園が襲撃されて、輝義が戦って傷付いて意識が戻った時に謝りに行ったんです。その時、怒鳴られてもう二度と口を利いてくれないかと思った。その時に質問をされて、答えたんです。そうしたら最初に私の事を心配してくれて。それで感謝までされて。そうしたら泣いてしまって抱きしめられて。

心から心配してくれたんです。それが切っ掛けだと思います」

 

そう語った箒は嬉しそうにするが、やはり顔を赤くする。

 

「恥ずかしい……隠れてしまいたい……」

 

「よし次はローラン、お前だ」

 

「やっぱりかぁ……」

 

 

 

「そうですね……

僕が女子だって輝義に知られた時、輝義は何とかしようとしてくれたんです。そんなのは余りにも酷すぎるって。自由にしてやるって。幸せになる権利があるって。もしダメだったら国に喧嘩売ってでも幸せにしてやるって言ってくれたんです。

だからその幸せのために為に戦う人たちがいるって。母が亡くなってからはずっと一人で、もう誰かに頼ることが出来なくなっていた僕に手を差し伸べてくれたんです。

もし僕がそうやって戦うなら助けてくれるって」

 

「それで気になり始めて。

その後にVTシステムの暴走が起きた時に戦ってる輝義を見て、この人は上辺だけじゃなくて本当に僕たちの事を守ろうとしてくれてるんだなって。好きになっちゃいました」

 

思ったよりも恥ずかしそうにしていない。

流石、輝義が入っていた風呂に乗り込んでいっただけの事はある。

 

「よし、次はボーデヴィッヒ!喋れ!」

 

そう言ってラウラに喋らせようとする。

というかなんか気づいたら机の上に缶ビールの空き缶が既に六本も転がっている。

……明日大丈夫なんだろうか?

 

「私は、謹慎を受けて部屋に居た時ですね。

いきなり訪ねてきて何なんだと思いましたが、色々話していくうちに良い奴ぐらいには思っていました。そんな時に暴走事件が起きて取り込まれて。

命だけじゃなく心まで助けられて、好きになっていました」

 

そこでラウラはフンスと言わんばかりに無い胸を張って、

 

「まぁ今は愛していますが!」

 

何なんだこの可愛い生物は。

お持ち帰りしてやろうか。

 

「ま、何となく予想はしていたが。よし、次は鳳お前だ」

 

「えぇ!?私もですか!?」

 

「当たり前だろう。ここにいるんだから話さなきゃならん」

 

「うぅ……なんでこんな羞恥プレイ受けなきゃなんないのよ……」

 

ここに来たが最後。

己の恋模様を語らなければならないのだ。

 

「うぅ……その、何と言うか……分からないんです……」

 

「ん?どういう事だ?」

 

「その、私は一夏の事が好きなんです。

でも、なんか輝義の事も好きで……

この好きっていうのがよく分からなくなっちゃて……」

 

千冬に貰った飲み物をチビチビ飲みながら顔を俯かせてそう語った。

 

「ほう?それでお前はどうしたいんだ?」

 

「……どうしていいのかも分からないんです……」

 

何時もは堂々として猫みたいな雰囲気がこの時ばかりは大人しく、暗いものになっていた。

 

「そうか。なら好きにすればいいじゃないか」

 

「……へ?」

 

「告白して想いを試してもいいしそのまま自分で考えてそれが何なのか至るのもいい。だがな」

 

そしてそれまでは酒に酔った顔をして言った。

 

「後悔のするような選択は絶対にするなよ」

 

 

 

 

「それじゃ最後に布仏、お前だ」

 

「えー?私もですかー?」

 

「当たり前だ。さもなくば……」

 

 

そう言って本音の耳に顔を寄せた小さな声で言った。

 

「夕方、お前達は二人きりで何をしていたのか、ここにいる面々に暴露してやろうか?」

 

そう言われた途端に、何時も眠そうな顔から皆に見えないように、鋭い顔つきになった。

 

「……見てたんですか?」

 

「あぁ、偶々だがな」

 

「分かりました。でも誰にも言わないでくださいね」

 

「分かっているさ。だからそう怖い顔をするな」

 

そう言って本音は話し始めた。

 

「そうだねー、私もてるてるの事が好きだよ。

なんでって聞かれてもいつの間にかとしか言えないなぁー」

 

「その、もう少し何かありませんの?」

 

「例えばー?」

 

「どこが好きかとか、でしょうか」

 

「うーん、優しい所かなー」

 

こう、何と言うか本音はあまり喋る気はないようだ。

うまく躱している。

 

「さて、これで全員喋ったか。まぁ、二人ほどいるがそいつらは此処にはいないからいいだろう」

 

そう言って、再び話し始めた。

 

「そんなお前たちに朗報だ。国連の方で男性操縦者の一夫多妻を可決しようとする動きがある。日本政府も前向きに検討しているらしい」

 

この発言は皆を驚かせるのに十分だった。

皆は驚きの表情を浮かべている。

普段は細い目の本音ですら目を見開いているのだから。

 

「と言っても日本政府はこればかりは本人の判断に任せると言っているが、国連や各国としてはどうしても認めさせたいらしくてな。ここ最近、学園の方に連絡がひっきりなしにかかって来ていてな。もう勘弁してほしいものだ」

 

「日本政府の中には本人が信頼のおける者と、所謂ハーレムを作ってしまえば色々と面倒だからと難色を示している者も少なからずいる」

 

「これを聞いてどう思うかは自由だ」

 

「ただ、口外はするなよ?面倒な事になるからな」

 

そう言って再び酒を飲み始めた。

 

 

 

その後は特に何をするでもなく解散となった。

 

 

 

 

その時の男子二人の様子

 

 

 

「なぁ、なんで俺達部屋を追い出されたんだ?」

 

「……そんなの知らん」

 

「だよな。はぁ……やっぱり女所帯に男二人は辛いよな……」

 

「……そうだな」

 

 

退屈そうにしていたそうな。

 

 

 





こんな感じでしょうか。

昨日は投稿出来ずに申し訳ない。
今日、明日中にもう一話投稿します。


感想、評価等くださいな。


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63話目

やっとこさ福音戦に入れる……!



ぶっちゃけ主人公の専用機、センスないかもしれない。
許して。


今日はISを使った実習をする。

なんか二日ぶりだから結構楽しみにしていた。

事前の説明で専用機を持っている人とそうでない人は分かれて別々でやるとの事。

 

 

今、俺を含めた専用機持ちは各国から届いた新しい武装をインストールしている。

まぁ、俺とシャルロットにラウラ、箒はそれが無いので端で見ているだけだが。

 

「なぁ……輝義?」

 

箒に話しかけられる。

 

「……なんだ?」

 

「なんで専用機を持っていない私まで此処に連れてこられているんだ?」

 

そんなこと言われても……

俺は知らないんだよ……

 

「……俺が知っていると思うか?」

 

「いや、知っている訳ないか」

 

そう言って再び皆の作業を眺める。

そこへ束さんの声が響く。

 

「ちーーーーちゃーーーん!」

 

「なんだ、あの人はまた来たのか……」

 

呆れ顔でため息をついてもう嫌だみたいな顔してる……

 

「ようやく来たか。で?例の物は?」

 

「遅れたのは謝るからヘッドロック決めるの止めてくれるかなぁ!?」

 

そう言って束さんは織斑先生にヘッドロックを掛けられていた。

 

「はぁ……早く要件の物を」

 

「いたたたたた……分かったよ……

さて!てるくん!箒ちゃん!私からの贈り物だよ!」

 

そう言ってパチンと指を鳴らすと海からでっかい箱が二つ出てきた。

何だあれ……たばねさんすげー。

 

「おい、なんで二つもあるんだ」

 

「箒ちゃんの分もあるからね!」

 

その言葉に周りが凍り付いた。

 

「………………なんだと?」

 

なんとか織斑先生が絞り出した言葉だった。

 

「いやー箒ちゃんにも専用機作ってたんだけど、全然電話にも出てくれないし、会おうなんて更に無理だからこの機会に渡しちゃえって事で持ってきました!」

 

そう言い終わった瞬間に絶叫と共に織斑先生と箒が駆け出す。

 

「貴女という人はぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

「束ェェェェェェェェ!!!!!お前はまたこんな面倒事の種を持ってきおって!!!!」

 

「わぁぁぁぁぁ!!!!????」

 

あぁ……また束さんが追いかけられてる……

 

「待ってよ二人とも!!??取り敢えず話を聞いてってば!!!」

 

「はー、はー……何ですか……言っておきますがあれはいらないですよ。私には大きすぎる力ですから」

 

「箒ちゃん、そうは言っても無理なんだよ」

 

「何故ですか?」

 

「箒ちゃんのためでもあるんだ。いい?箒ちゃんが思っている以上に箒ちゃんは色んな奴らに狙われているんだよ。だから最低限、自分の身を守れるようにこの機体を作ったんだ。てるくんや私が必ずしも箒ちゃんの事を守ってあげられるとは限らないからね」

 

ド正論を言われ黙ってしまう箒。

しかし織斑先生は、

 

「だとしても、これはやりすぎだ。それにこの二つの機体はどうせお前の事だ。普通じゃないんだろう」

 

確信していると言った口調でそう言う。

束さんは当たり前じゃんと言った顔をしながらコンテナを開ける。

 

「流石ちーちゃん!私の事をよく分かってるね!ちーちゃんが言った通り、この二機はそこらの凡人共が作ったのとはわけが違うよ!なんせ第四世代機だからね!」

 

再び束さんの口からとんでもない単語が飛び出してきた。

第四世代!?

なにそれ強そう!

 

「はぁ!?お前ふざけるなよ!?それがどういう事か分かって言っているのか!?」

 

「ちーちゃん取り敢えず離して!締まってる!思いっきり締まってるから!」

 

「……いいだろう。取り敢えずは離してやる。だが、しっかり説明してもらうぞ」

 

と言っても俺自身はよく分からないので隣にいたシャルロットに聞いてみる。

 

「……シャルロット」

 

「どうしたの?」

 

「……聞きたいことがあるんだがいいか?」

 

「いいよ。どうしたの?」

 

「……第四世代の何が凄いんだ?」

 

「あぁ……えっとね、先ずは世代について教えるね。

 

ISの完成を目的としたものが第一世代。織斑先生の乗ってた暮桜が有名かな。

後付武装を搭載することで多様化を図ったものが第二世代。これはラファールとか打鉄がそうだよ。

操縦者のイメージインターフェースを利用して特殊兵装を使えるようにしたのが第三世代。セシリアとか鈴の機体がそうだよ。

ここまでは授業でやったから分かると思う」

 

「で、第四世代なんだけど、パッケージ換装を必要としない万能機なんだけど簡単に言うと一々装備を変えなくても遠距離戦から近距離戦、接近戦とかのすべてに対応できるって事なんだけど、問題は各国はまだ第三世代の開発途上って事なんだ」

 

あー……

何となくやばい理由が分かった気がする。

 

「第三世代機は開発途上、完成していないんだ。ましてや第四世代機なんて卓上の空論もいい所だよ。多分、あの二機は世界最強の機体だと思う。問題はそれだけじゃないよ。ISのコアは世界中に全部で467個だけなんだ。しかも全部IS委員会に登録されている。だけど目の前にあるのはどう考えても登録なんてされてないであろうISコア。これだけで下手したら紛争ものなんじゃないかな」

 

「……よく分かった。ありがとう」

 

取り敢えず滅茶苦茶やばいっていうのが良く分かった。

 

「うん。どういたしまして」

 

俺が言うのもあれだけどさ、束さんやりすぎやで……

今の説明を聞いた箒が青ざめちゃってる……

 

「……箒、大丈夫か?」

 

「あ、あぁ……」

 

フラフラしてんじゃん。

大丈夫だとは言ってるけど……

 

「……ほら、つかまっておけ」

 

ポカンとするが笑って、

 

「ふふ、ありがとう。それではお言葉に甘えて」

 

つかまって倒れる心配はなくなった。

だが新たな問題が生じた。

箒の胸がすんごい当たっております。

何なんこれ?

おまけに皆からどさくさに紛れて何やってんの?って顔で睨まれてる。

いや、別に狙ったわけじゃないんだ……

 

どうやら織斑先生に説明を終えた束さんが来た。

 

「さぁさぁ!取り敢えず最適化とか色々やっちゃおう!」

 

そう言われ、問答無用で連れてかれた。

 

「じゃじゃーん!こっちが箒ちゃんの専用機で名は紅椿!」

 

最初にコンテナから出てきたのは赤いISが出てきた。

超強そう。

 

「こっちがてるくんの専用機、イージス!」

 

そして次に出てきたのは銀色の機体だった。

それにしてもなんか皆のと違う気がする。

 

「それじゃ説明に行こうか!」

 

そうして説明が始まった。

 

「まず紅椿だけど、いっくんの零落白夜あるでしょ?

あれに似たようなもんなんだけど、いっくんのは元の攻撃能力が思いっきり上がるわけなんだけど、紅椿は今ある最小のエネルギーを増大させるんだ。それに零落白夜が全体に施されているからね」

 

その説明を聞いた皆は驚きの表情をしている。

何だったら俺も滅茶苦茶驚いている。

 

「最小のエネルギーを増幅させるって事はSEがある限りそれを回復させられるんだ」

 

流石にこれは俺でも分かる。

少しでもSEが残っていればそれを回復させて操縦者の身体が持つ限り戦い続けられるという事だ。

何それチート?

 

「武装も展開装甲だからね。状況に応じてどんなものでも出せるよ。攻撃、防御、機動、すべてに対応できる即時万能対応機(リアルタイム・マルチロール・アクトレス)なのさ!」

 

何それやばい。

あれか?日本のFー2とかFー15とかみたいなもんか?

 

「次にてるくんのイージスだけど、大体説明は同じだよ。ただ、紅椿みたいにエネルギーを増幅させることは出来ないけどね」

 

「さぁて他にも説明はあるけど、実際に使いながらにしようか」

 

そう言われて展開するが驚いた。

どうやら俺の専用機はは全身装甲らしい。

 

 

 

「はい、これで最適化とかは終わり!それじゃそのまま飛行に移ろうか。少ししたら武装の展開をしよう」

 

その指示に従って飛行に移る。

 

「おい、束、あの機体の操縦性はどうなんだ?」

 

「そうだね、かなり難しいはずだよ。でも……おー、流石てるくん!易々と乗りこなしてるね!」

 

「篠ノ之の方は?」

 

「まぁ、他の機体よりは難しいと思うよ。でも箒ちゃんは実際に乗ってる時間が皆よりは少ないからね。あれぐらいはしょうがないよ。でも直ぐに乗りこなせると思う」

 

「どういう事だ?」

 

「後で説明するよ」

 

そんな声が聞こえるが、織斑先生それでいいの?

 

「大河、私はもう諦めたんだ……こいつの制御はお前に任せた」

 

考えを読まれた。

それよりもそんなに疲れた顔しないで下さいよ……

 

「まずは箒ちゃん、武装の展開をしてみて。全部で三つあるんだけど、

腰の左側にあるのが空裂(からわれ)。

これは振るとエネルギー刃が飛ぶよ

腰の右側にあるのが雨月(あまつき)だよ。

こっちは刺突した時にレーザー出るから」

 

この説明を聞いた瞬間、箒が叫んだ。

 

「貴女はなんてものを作っているんですか!?こんなの扱いきれませんよ!?」

 

「大丈夫だよ。ちゃんとオンオフの切り替えが出来るようになってるから。暫くはオフの状態で練習してからオンに行くのもアリだね。

あともう一つが展開装甲だよ。名前は伊吹(いぶき)。

名前の通り展開する装甲だね。これが第四世代の由来で、防御、攻撃、移動全てに使えるよ。あ、因みにこの展開装甲があるから拡張領域は無いからね」

 

「これで全部だよ。取り敢えずそのまま飛行をしててね。その間にてるくんの方を説明しちゃうから」

 

そう言って俺の方のプライベートチャンネルに通信が入った。

 

「てるくん!お待たせ!それじゃ説明を始めるよ」

 

「……はい。お願いします」

 

「うん!それじゃまずは展開装甲の説明をしちゃうね。

この展開装甲の名前はイージス。機体の名前と同じなんだ。

てるくんのは全部で八枚の展開装甲があるんだけど、この全てが自動制御されているんだ。だから戦いながら勝手に防御してくれるんだ。だから態々操作の切り替えを行わなくていいようになってるけど、手動での操作も出来るようになってるよ。

てるくん、結構無茶苦茶な戦い方するからね。これがあれば多少は無茶が出来る。けど、絶対に無茶はしちゃだめだよ?皆も、私も心配するからね」

 

「……はい」

 

「それと最大の特徴は自在に形を変えられることと自己修復機能があることなんだ。

自在に形を変えられるのは手動の時だけなんだけど、銃火器にもなりえるし、剣にもなれる。ぶっちゃけ世界最強の鉾であり盾でもあるんだ。

まぁ、銃として使うのにはナノマシンを弾丸として使うから、制限はあるんだけどね」

 

「次は槍の説明に行こうか。

名前はゲイボルク。ケルトの英雄、クーフーリンの使っていた槍の名前を取っているんだ。

こっちは相手に放ったら当たるまで追っかける。当たったら勝手に戻ってくるから回収の心配は無いよ。でも無制限に使えるわけじゃないからそこのところは気を付けてね」

 

なんかもう名前から豪華ですね。

能力もチートやんけ。

ついでに言うと〇GOの兄貴の顔が出てきた。

 

「次は剣だね。二本あるんだけど、二つとも特に能力は無いよ。強いて言うならひたすらに丈夫だね。

一本目が鬼羅刹、二本目が阿修羅。

てるくんって剣を使って戦う事が多いからね。使ってるのも葵だったからそれに近づけたんだ」

 

「……一ついいですか?」

 

「何でも聞いていいよー!」

 

「……何故、俺のは全身装甲なんですか?」

 

全身装甲にした理由を聞きたい。

 

「それはね、てるくん戦うたびに大怪我してるでしょ?全身装甲だとSEが無くなっても装甲があるから守ってくれるんだ。だからだよ。ただ、SEが無くなったらもう終わりだと思って。攻撃を耐えられたとしても多分、数回が限度だからね」

 

「……分かりました。ありがとうございます」

 

感想。

なんかオーバースペックですね。

 

「取り敢えずそのまま飛行して、そうだね……青い機体の君とシャルちゃんちょっとこっち来てくれるかな?」

 

そう言うと束さんはセシリアとシャルロットを呼ぶ。

 

「君、名前は?」

 

「せ、セシリア・オルコットですわ」

 

「あぁ、そんなに緊張しなくても大丈夫だよ」

 

「は、はい」

 

何するんだろう?

セシリアも緊張してる。

 

「今から、てるくんの事を撃って。可能な限りの弾幕で」

 

オウ……いきなりですか……

 

「てるくんは避けたりしなくても大丈夫だよ!展開装甲が守ってくれるから」

 

えぇ……めっちゃ不安なんですけど……

でも束さんが作った物だから大丈夫な気もするけど……

……三人を信じるしかないか。

 

「……分かりました」

 

「うん!それじゃ二人とも、やっておしまい!」

 

ドロンジョ様!?

そしてその言葉を合図に二人が弾をバラまき始めた。

 

ヴァァァァァァァァァ!!!!!

 

シャルロットはガトリングをぶっ放してくるし、セシリアは合間合間に正確な射撃を叩きこんでくる。

そこへ束さんの指示を受けたのであろう、ラウラまでもが撃ってきた。

 

ドォォン!!ドォォン!!ドォォン!!

 

三連だが、シャルロットとセシリアに当たることはなく、しかもその間も射撃を続けて来る。

間を開けて再びラウラが撃つ。

 

ドォォン!!ドォォン!!ドォォン!!

 

やはりその間の射撃が止まることはない。

だが、機体にダメージがあるどころか、SEすらも減っていないのだ。

正直、これだけやられれば少なからずダメージが入るもんだと思っていたが。

 

皆の居る所へ戻って解除する。

 

「どうだった?」

 

「……凄いですね。あれだけの攻撃を受けてもSEが減らないし機体本体にダメージもかすり傷もない」

 

「そうでしょ!?そうでしょ!?」

 

 

この後は特に問題なく作業を進めていった。

因みに俺の機体を見た簪が鼻息を荒くしていた。

 

 

 

 

それから問題はなく、順調に作業が進んでいたかに思われた。

山田先生が顔色を変えて走ってくるまでは。

 

 

 

「織斑先生!緊急事態です!」

 

「どうしたんですか?そんなに慌てて」

 

物凄い慌てようだな。

何かあったのか?

小さな声でこちらに聞こえないように話している。

 

「-----!----!」

 

「----!?--------!?」

 

何を言っているのかは分からないが、織斑先生までもが血相を変えている。

本当に何があったんだ?

 

「お前達!今すぐに出撃準備を整えて待機!」

 

「ちーちゃんどうしたの?」

 

「すまんが説明している暇はない!今すぐにコアネットワークで見てみろ!事の重大さが分かる!」

 

そう言われた束さんはなにか空間ディスプレイをいじり始めた。

そして、怒った表情になる。

 

「ちーちゃん、これ……」

 

「あぁ!そうだ!だからだ!急げ!準備が出来たらコントロールルームに集合しろ!そこで纏めて説明する!」

 

そう言って織斑先生は走って山田先生と共に行ってしまった。

 

 

 

 

準備を終えた俺達は旅館に設営されたコントロールルームに集まっていた。

 

「よし、全員集まったな。では説明するぞ」

 

そう言ってパネルに映像を映し出す。

 

「本日、午後五時七分にアメリカで開発中だった軍用IS、シルバリオ・ゴスペル、これを福音と呼称する。福音が突如暴走。そして基地の警備をしていたISを振り切り脱走。

今現在、シルバリオ・ゴスペルは音速で飛行中だ」

 

その説明を聞いた皆の顔が険しくなる。

 

「そして、今から五分後にハワイ駐留のFー22戦闘機とアメリカ軍IS部隊が中心となって迎撃を開始する。もし、これが失敗したら我々IS学園の専用機持ちで迎撃を行う。正直成功するとは思えないがな。ここまでで何か質問は?」

 

セシリアが手を上げる。

 

「何故私達が迎撃を担当するのですか?」

 

「福音の予想進路が此処だからだ」

 

「そんな……ですが余りにもこちらの戦力が足りなさすぎますわ!」

 

その発言に織斑は不思議そうな顔をして聞く。

 

「なぁ、セシリア?」

 

「なんですか?」

 

「なんで戦力差がそんなにあるんだ?専用機持ちがこんなにいるのに」

 

それは思った。

なんで?

 

「そうですね、説明いたしますわ。

まず最初に、今現在の専用機の数は私を入れて八名ですわ」

 

「なら……」

 

「最後まで聞いてくださいな。

戦力差がある理由ですが、いくつかあります。

先ず一つ目はシャルロットさんの機体は第二世代だという事」

 

 

「箒さん、最初に謝罪しておきますわ。

そして箒さんは今まで専用機を持っていませんでしたわ。

今、第四世代機を持っていると言ってもつい先程もらったばかり。操縦時間は一時間にも及ばない慣れていない機体」

 

「最大の理由は私達の載っている機体が、軍用ではなく競技用という事です」

 

「それのどこがダメなんだ?」

 

「いいですか?競技用と軍用では性能や搭載している武装に天と地ほどのとまでは言いませんが大きすぎる差があるのです。威力や射程、強度などの全てです。しかも相手は軍用の第三世代。率直に申し上げますと、勝ち目なんて殆どありませんわ」

 

その説明を聞いた織斑は愕然としている。

 

「……何とかならないのか?」

 

何か手は無いのかと聞いてみるが、余りいい反応では無かった。

 

「あるにはありますが……」

 

「……それは?」

 

「私達のISは一応ですが軍用になれます。ですがそうするには専用の機材の搭載に、プログラムのインストールなどをしなければなりません。そして国から正式な許可と命令、リミッターを解除するパスワードの入力があります。これら全てを行っていては間に合いませんし、間違いなく国からの許可は下りないですわ」

 

「……ありがとう」

 

もう無理じゃん。

状況は絶望的だね。

そこへ山田先生が声を出す。

 

「織斑先生、ハワイでの迎撃は失敗。正式に学園に依頼が通達されました」

 

「やはりか……!くそ……」

 

そう言って織斑先生は手を握りしめた。

 

「聞いたな?これより作戦立案を始める。何か意見のあるものは?」

 

「福音の詳細なデータを教えてください」

 

そう言ったのはシャルロットだった。

 

「いいだろう。だが万が一情報を漏らせば良くて監視付きの生活。最悪、刑務所行きだ。分かったな?」

 

「はい」

 

「山田先生、お願いします」

 

そうして表示されたデータは驚愕の物だった。

 

「高機動広域殲滅型、ですか……」

 

セシリアがそう力なく言う。

 

「あぁ」

 

その瞬間に全員が一斉に話し始めた。

 

「これじゃ全員で囲んでタコ殴りって手段は使えないわね」

 

「うん。これだと一撃で決めなきゃ蜂の巣にされちゃう……」

 

鈴と簪の言葉で一斉に織斑の顔を見る。

 

「え!?俺!?」

 

「当たり前でしょ。この中じゃあんたの零落白夜が一番なのよ」

 

鈴に言われ、

 

「……分かった。でもどうやって接近するんだ?俺じゃ追い付けないぞ?」

 

そこへ今までどこに行ってたのか分からないが束さんが現れた。

……天井から。

あの人忍者だっけ?違うよね?

 

「とうっ!」

 

「何処に行ってた?もう始まっているぞ」

 

「ごめんごめん。調べてきたんだけどさ、実験中に何者からかハッキングを受けたみたいなんだよね。それで暴走したんだと思う」

 

「そうなのか?」

 

「うん。私もなんとか止めようとしたけど無理だね。完全な暴走状態でアクセスを受け付けない。なんとか侵入しても私の処理が追い付かなくてダメだった」

 

「……そこまでなのか?」

 

「うん。しかも無人で暴走している訳じゃなくて操縦者が乗ってるときに暴走したらしくて操縦者が今も乗ってる」

 

そうなのか……

 

「今は、どうやって福音に接触するかだが……」

 

「それならてるくんと箒ちゃんが適任だね。速度的には追い付けるし」

 

「織斑を運ぶとしたら?」

 

「どっちかだけだと少し速度が遅くなっちゃうけど、二機同時だったら問題ないよ」

 

その言葉を聞いて織斑先生は言った。

 

「それではお前達の作戦で行く。それでは最終準備を行え。出撃までに準備を整えておけ。それでは解散!」

 

「あぁ、束」

 

「どうしたの?」

 

「ここでオペレーターをやってくれんか?」

 

「いいよー」

 

 

 

そうして俺達は準備に取り掛かった。

 

 




正直これでいいのかという専用機の説明でした。
後日、ちゃんとした形で書きます。



感想、評価等くださいな。


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63・5話目


今回は暴走した時の情景を書いて行きます。



 

時は遡り数時間前。

アメリカの何処か。

 

「もー面倒だわ。態々こんな辺境でやらなくてもいいじゃない」

 

「そう言うな。軍事機密なんだ。しょうがないさ」

 

そう言って話しているのはシルバリオ・ゴスペルの操縦者兼テストパイロットのナターシャ・ファイルスと国防高等研究計画局(Defense Advanced Research Project Agency)の所長である、カイル・ナンツである。

 

「もーホントに何なのよ。いきなりコアを使うからついでにテストパイロットをやってくれなんて言ってあっちこっち連れ回して。嫌になっちゃうわ」

 

「私に言われても困るよ。上からの指示だからね。逆らえないのさ」

 

そう言って文句を言っているうちに今回、実験を行う研究所に到着した。

 

「ほら、到着したから行って準備をしたまえ。もう時間はあまりないぞ?」

 

「はぁ……」

 

ため息をつきながら研究所内に入る。

 

 

 

 

 

「ほら、準備で来たわよ。さっさと終わらせましょう」

 

「こちらも準備は出来ている。早速乗ってくれ」

 

言われなくても乗ると言った表情をしながら乗る。

それを見ていた所長は苦笑いを浮かべながら指示を出していく。

 

 

 

「今のところは順調だ。この調子ならあと二十分もあれば終わるだろう」

 

「なるべく早くお願いね」

 

「勿論、分かっているとも」

 

両者は会話するほどの余裕はあった。

そして、この後直ぐにその余裕が崩れることになる。

 

それから数分ほどしたとき、研究員の一人が異常を報告する。

 

「所長、如何やら外部からハッキングを受けています」

 

この報告が悪夢の始まりだった。

 

「どういう事だ?」

 

「分かりません。ハッキングを受けているとしか言えません」

 

「防げるのか?」

 

「この程度ならば問題ないかと」

 

そう、この時までは何ともなかったのだ。

だが、彼らは知らなかった。

これはただの準備で本当の攻撃はまだだったという事を。

 

「そうか」

 

頷いて安心したカイルに、同じ研究員から報告が入った。

先程とは違い、焦っている声で。

 

「…………!?所長!」

 

「どうした?」

 

「ただのハッキングではありません!不味い!防御が突破される!」

 

「どういう事だ!?さっきのは大丈夫なんじゃないのか!?」

 

「それがどうやら準備攻撃だったらしく、今のが本当の攻撃です!」

 

「クソッ!今すぐに防御を固めろ!」

 

指示を出すが既に手遅れとなっていた。

 

「ダメです!既に第三防壁まで突破されました!」

 

異変に気が付いた他の研究員も加勢するが意味が無かった。

 

「第四防壁を突破されました!防御が間に合いません!」

 

「第五防壁突破!丸裸です!」

 

「今すぐに福音を停止しろ!」

 

「無理です!コアまで侵入されました!」

 

「緊急停止ボタンを押せ!」

 

「はい!」

 

その指示に従って研究員の一人が緊急停止ボタンを押す。

しかし、意味が無かった。

 

「クソッ!緊急停止しません!」

 

そう言った瞬間に駆動音を出していた福音が静かになる。

誰もが停止したと思った。だがそれは違った。

 

 

 

 

 

 

ア”ア”ア”ア”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”!!!!!!

 

突如として福音が咆哮を上げた。

 

「福音が暴走を始めました!こちらのコントロールを完全に受け付けません!逃げようとしている!?」

 

「ナターシャとの連絡はどうなっている!?」

 

「応答なし!」

 

完全な暴走状態に陥った。

カイルは即座に判断を下す。

 

「駐留しているIS部隊に緊急連絡!福音を外に絶対出すな!大統領にも至急連絡をしろ!」

 

「既に連絡済みです!部隊は後三十秒で到着!」

 

誰もがそれで止められると思った。

だがその希望は打ち砕かれることになる。

 

「ダメです!拘束が持たない!」

 

「ッ!総員退避!急げ!研究所内全てに知らせるんだ!」

 

「はい!」

 

「緊急事態発生!緊急事態発生!重大な事故が発生!研究所内に居る者は至急避難せよ!繰り返す!

重大な事故が発生!研究所内に居る者は至急避難せよ!」

 

「我々も避難するぞ!」

 

 

ドォォォォン!!!!

 

 

避難しようとした瞬間に拘束具が壊れ、暴走した福音が解き放たれた。

その数秒後、IS部隊が到着するも既に福音の姿は無く、追いかけたが簡単に振り切られてしまった。

 

 

 

今回の事故で現場に居合わせた二十人の内、四名が落下物に巻き込まれ死亡。

所長のカイルも巻き込まれたが何とか一命を取り留めた。

 

 

 

 

 

 

場面は変わってホワイトハウス。

 

「暴走したISはどうなった?」

 

大統領が聞く。

それに国防長官が答える。

 

「現在、太平洋を西進中。予測目的地点が判明しました」

 

「どこだ?」

 

「IS学園の臨海学校の開催地です」

 

その報告に大統領は青ざめる。

 

「本気で言っているのか?」

 

「はい。どうされますか?」

 

「ハワイの部隊は迎撃可能か?」

 

「出来ます」

 

「なら、投入できる戦力を全て投入しろ!何としても止めるんだ!分かったな!?

 

「了解しました」

 

指示を出した後に近くにいた研究員に聞く。

 

「迎撃できると思うか?嘘は言わなくていい。本当の事だけを言ってくれ」

 

「正直、不可能です」

 

研究員はそう断言する。

 

「何故だ?」

 

「理由としてはあれが軍用のISだからです。しかも高機動広域殲滅型。戦闘機もISも攻撃を与える前に落とされます」

 

そう言われ大統領は顔を覆った。

そして指示を出す。

 

「……日本政府とIS学園にこのことを連絡しろ。もし我々がダメだった時は向こうを頼るしかない」

 

「ですがそれでは軍事機密を晒すことになります!」

 

「構わん……」

 

「……分かりました」

 

 

 

 

 

 

再び場面は変わりハワイのアメリカ軍基地。

 

 

 

「いいか、よく聞け。先程大統領から連絡が入った。

研究所で研究中のISが暴走したとの事だ。

以降、これを福音と呼称する。

そこで我々空軍第十五航空団と海軍に迎撃命令が下った。投入できる戦力は全てとの事だ。今回は時間が無い。全員が迎撃ポイントに向かう途中で説明する。総員出撃!」

 

その言葉を聞いて全員が愛機に飛び乗っていく。

無論、整備中の機体は無理だがそれ以外の機はどんどん空へ舞い上がっていく。

 

 

 

「空中集合完了」

 

隊長が司令部に通信を送る。

 

「了解。これより作戦を説明する。

作戦参加機は全て同時に攻撃を開始。一気に片を付ける」

 

隊長は次の指示を待つが何もない。

思わず、

 

「……それだけか?」

 

聞いてしまった。

それに対しての返答は、

 

「これだけだ。時間が無さ過ぎてな」

 

隊長はこの時既に負ける気しかしなかった。

まともな作戦もなく、ただ全力で攻撃せよなぞ意味が分からない。

 

「……了解した」

 

そう言うしかなく、通信を切った。

 

「全員聞いたな?あと二分で会敵予想時刻だ。気を引き締めろよ」

 

「「「「「「「「「「「「「了解!」」」」」」」」」」」」」

 

 

 

 

二分後。

 

「……見えました!!福音です!!」

 

部下の一人が声を上げる。

それを聞いた隊長は命令を下した。

 

「全機攻撃開始!全機攻撃開始!」

 

その言葉を聞いた瞬間に全員がミサイルをロックオン。

そして放つ。

 

これだけの数のミサイルを避けられるはずがない。

 

誰もがそう思った。

そして勝利を確信した。

だが、それは間違いだった。

 

 

「!?」

 

「なんだあれ……」

 

ミサイルが接近した瞬間に光の玉が福音から解き放たれた。

そしてその光球がミサイルを全て撃ち落としたのだ。

 

それを見た面々は即座に次の攻撃を開始。

だがそれも全て落とされる。

 

ミサイルを撃ち尽くした後はもう何もできなかった。

追ってくる福音から逃げようとするが機動性で圧倒的に負けているのだ。

直ぐに回り込まれ、翼を捥がれる。

そうして瞬く間に全体の九割が撃墜された。

残された者たちは逃げることしか出来なかった。

命からがら基地に帰った。

 

 

IS部隊も戦うが全く歯が立たない。

数で優っているにも拘らず、一機、また一機と落とされていった。

 

 

 

 

 

「大統領、作戦が失敗しました……」

 

「……そうか」

 

報告を受けた大統領はそう言うしかなかった。

 

 

 




出てきた専門用語の説明


国防高等研究計画局(Defense Advanced Research Project Agency)

通称 DARPA(ダーパ)

軍で使用する新技術の開発及び研究を行うアメリカ国防総省の機関。
有名な開発はインターネットの原型であるARPANETの開発、
全地球測位システムのGPSが有名。
エリートぞろい。



第十五航空団

ハワイにあるアメリカ空軍の部隊。
F-22とかを装備している。


これぐらいですかね。


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主人公専用機説明



ガバガバ設定です。
福音の続きの前に投稿しちゃいます。


因みに挿絵で描こうとしたんですが、絶望的に絵が下手糞だったので諦めました。
ごめんなさい。



 

 

機体名 イージス

 

世代 第四世代機

 

概要

 

毎回無茶をする主人公を心配した束さんのお手製の機体。

束さんが作ったというだけでどの国も喉から手が出るほど欲しいというのに更に第四世代機という。

 

 

攻撃、防御、機動すべてがパッケージ換装をせずに行う事が出来る。

所謂、即時万能対応機(real-time multi‐role actress:リアルタイムマルチロールアクトレス)。

戦闘機で言うとF-15や、F-2と言った機体が有名。

 

 

全身装甲の機体で特殊装甲とナノマシンで構成されているため、ちょっとやそっとじゃ傷がつかない。

傷が付いたとしてもナノマシンの自己修復機能で直る。

ただ直せる損傷の度合いには限度があるため注意が必要。

永遠に戦えるという訳ではない。

内部の損傷に関しても同じ。

SEが切れても数発ならば攻撃を耐えることができる。

カラーリングは銀色。(ラインが入るぐらいのカラーリングの変更の可能性あり)

 

 

 

 

武装

 

展開装甲 イージス

 

ギリシア神話に登場する女神アテナが持っていたイージスの盾に由来する。

 

全部で八枚の展開装甲から構成される。

基本は機体背面に格納されているが、使用時に展開する。

一枚一枚が形を自在に変えられるため、様々な用途がある。

一例としては射撃がある。

射撃時は最低二枚の装甲を使う。使用する枚数が増えれば威力が大きく、射程は伸びるがその分消費するナノマシンの量も多くなるため、自動修復の事を考えると多くても十発が限度。

 

束さんも言っていたが、世界最強の鉾であり、盾でもある。

正直な話、自分の事を守ってもらいたいなぁていう思いはあった。

 

自動と手動、半自動の三種類での操作が行える。

 

 

自動

防御に特化した状態。

完全に自動で攻撃を全て防ぐ。

だが耐久限界はあり、一度に耐えられるダメージを超えると壊れる。

もしくはダメージの蓄積、ナノマシンの修復が追い付かない、ナノマシンが切れたりすると壊れる。

 

半自動

機動を行う時に使う。

操縦は搭乗者が行い、姿勢制御といったものは自動で行う。

 

手動

射撃(と言っても大口径に基本なってしまうため砲撃と言った方が正しい)を行う時の状態。

照準は補正が掛かるが操縦者が基本行うため狙いの精度を上げる程度の効果しかない。

 

 

 

 

ゲイボルク

 

その名の通り、ケルトの大英雄が使っていた物から由来する。

 

機能としては相手に向けて展開装甲を使って放つと当たるまでひたすら追いかける。

かなり無茶苦茶な機動にも付いていくため、基本避けることは出来ない。

外れたとしても勝手に戻ってくる。

回収する手間が無い。

 

 

別に一撃必殺とかではない。

別に作者が〇GOの兄貴が好きだからとかそう言う理由ではない。

 

 

 

鬼羅刹 

 

名前の由来は作者の思いつき。

 

特に能力は無い。強いて言うならば耐久性が異常なほど高い。

と言っても他の武装も同じかそれ以上の耐久性を誇るため、ただの刀。

 

 

阿修羅

 

同上。

 

 

 






機体説明はこんなもんです。



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64話目



投稿出来る時に一気に行きます。


 

 

 

出撃準備を整えた。

 

と言っても俺は何もやってない。

クロエと束さんが全部やってくれた。

クロエの事を最初はクロニクルって呼んでたんだけど本人から違和感凄いから名前で呼んでくれって言われた。

 

 

「さて、準備は整ったな?ではこれより福音迎撃作戦を実行する。かかれ」

 

織斑先生の合図と共にISを展開。

そして織斑を箒と二人で抱えて飛び立つ。

 

セシリア達は待機。

周囲の警戒は束さんが人工衛星でやってくれている。

この人工衛星も手作りなんだって。

もう凄いとしか言えないね。

 

 

 

「三人とも、会敵予想時刻まで残り五分です。気を引き締めてください」

 

山田先生から通信が入る。

今は山田先生と束さんがオペレーターをしてくれている。

正直、これだけでかなり心強い。

 

ふと、二人を見ると織斑は自分が失敗したらと言う顔で不安そうにしている。

箒は……少し震えている。顔色も悪い。

 

織斑にプライベートチャンネルで声を掛ける。

 

「……織斑」

 

「ど、どうした?」

 

「……無理かもしれないが、あまり緊張するな」

 

「あ、あぁ……でもさ、やっぱり……」

 

「……自分が失敗した時が怖いか」

 

「あぁ……怖い。もし俺が失敗したら、どうなるんだろうって想像しちまったんだ。皆の事を襲うかもしれない。それで誰かが怪我を、下手したら死ぬかも知れないって……」

 

まぁ、そりゃ怖いだろう。なにせ俺達の背中には学年の皆の命だけじゃない。

何十万、何百万の命が、下手をすればもっと遥かに多い数の人達の命が掛かっているんだから。

それで怖くない奴はいないだろう。どんな映画の主人公だって、どんな物語の英雄だってそれは怖いはずだ。

俺だって怖い。

 

「……織斑」

 

「なんだ?」

 

「……失敗した時の事をお前は考えるな。お前は最初の一撃を確実に当てることだけ考えろ。失敗した時の事は俺が考えていればいい」

 

「……そうだな。あぁ、分かった。そうするよ」

 

「……いいか?俺はお前を信じる。お前は強いからな」

 

「そうだな……その期待に応えなくちゃな」

 

少しは不安が抜けたのだろう、さっきよりは全然マシな顔つきをしている。

ただ、問題は箒の方だろう。

 

「……箒」

 

「ひっ!?ど、どうした?」

 

箒は話しかけただけで怯える。

それもそうだろう。

自分で言うのもあれだが、箒は本当に命を懸けて戦ったことが無い。

俺と織斑は何度かあるし、何だったら俺は死にかけた。

だが箒は、そんな経験は無い。むしろ俺達が異常で箒が普通なのだ。

だからより一層恐怖も強い。

もし失敗したらどうなる?皆が死んでしまう、もしかしたら自分が死ぬかもしれない。

そんなの普通の感性を持っていたら恐怖で押しつぶされそうなのは当たり前だ。

 

「……箒、まずは落ち着け。深呼吸でもなんでもいいから」

 

「わ、分かった……」

 

そう言って深呼吸を始める。

 

「……終わったか?」

 

「あぁ……」

 

「……箒、怖いか?」

 

「あぁ……怖い……失敗したら輝義が、一夏が死んでしまうんじゃないか、他の沢山の人達が死んでしまうんじゃないかって……

何よりも自分が死ぬんじゃないかと言うのが一番怖いんだ……」

 

やっぱりそうだ。

 

「……箒、俺だって怖いさ」

 

「え……?」

 

「……俺だって怖い。誰かが死んでしまうのが、自分が死んでしまうのが」

 

「なら……なんで輝義は戦えるんだ?」

 

「……一番いい結果を出すためだ。少なくとも戦わないよりは遥かにマシだからだ。あと、男としての意地もあるがな」

 

何もしないでただ見てるだけ、聞いてるだけじゃ何も変えることは出来ない。

だけど、少しでもいい方向に向けるために俺は足掻く。

たとえそれで自分が死んだとしても。

これは箒達には言わない。心配をかけるからな。

 

「……だから、ポジティブにとは言わん。だが少しでいい。悪い事じゃなくていい事も考えるんだ」

 

「……あぁ。そうしてみる」

 

少しはマシになったか?

 

そこへ再び通信が入る。

 

「あと三十秒です!」

 

そう山田先生が言った。

その言葉通り、ハイパーセンサーが高速でこちらに向かってくる何かを捉えた。

間違いない、福音だ……!

 

「……織斑、準備」

 

「おう!」

 

「……箒、行くぞ」

 

「あぁ」

 

「五秒前、四、三、二、一、投下!」

 

合図と共に織斑を離した。

 

 

織斑は普段の練習で教えた、声を上げながら斬りかかるなと言うのを守った。

上段に雪片を振り上げ、零落白夜を発動しながら一気に振り下ろした。

 

福音は気づいていない、いける!と誰もが思った。

俺だって思った。

しかし、そうはならなかった。

当たる瞬間に福音が、恐らく瞬時加速と思われる方法で避けたのだ。

 

そしてその瞬間、織斑に向けて撃った。

 

 

 






今回は短めに。
次回は長くなります。(多分……)


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65話目


本格的に福音戦が始まります。




 

織斑の攻撃を避けた福音はその瞬間に織斑に向かって撃った。

 

「織斑!」

 

「クッソ!悪い!避けられた!」

 

「一夏怪我は!?」

 

「大丈夫だ!ただ零落白夜と今の攻撃でSEがかなり持ってかれた!残りはもう三分の一ぐらいだ!」

 

やはり一撃で決めないと次は無いのか……

零落白夜はその攻撃力を上げるのにSEを消費する。

ギリギリの所で発動させたとは言えそれでも消費する。

そこにあれだけの攻撃を食らったのだ。

減らない訳が無い。

 

「……行けるか?」

 

「大丈夫だと思う。

……でもあの威力の攻撃だったら多分二、三発受けたら終わりだ……」

 

元々のSEが少ない織斑の機体は継戦能力に欠ける。

こうしている間にも攻撃は飛んでくる。

それを避けながらのチャンネルでの会話。

正直余裕はない。

 

「織斑は俺と一緒にあいつを引き付けるぞ」

 

「了解!」

 

「箒は一時離脱後に織斑先生に連絡。奇襲攻撃は失敗。既に戦闘に突入。形勢は圧倒的に不利。至急、支援を寄こすように言ってくれ」

 

箒は攻撃が失敗したことで少なからず動揺している。

一度下げて連絡がてら落ち着いてもらおうという考えがあっての事。

どこまで落ち着くかは分からないが少なくともマシになるはず。

 

「わ、分かった」

 

「織斑、箒の連絡が終わるまで注意を引き付けるぞ」

 

「おう!」

 

「合図で開始。行くぞ」

 

「三、二、一、始め!」

 

俺の合図を聞いた二人はそれぞれの行動を開始する。

しかし、俺はさっきの指示を出したことを悔やむことになる。

 

福音は間違いなくセシリアのライフルや鈴の衝撃砲よりも遥かに高威力のエネルギー弾を

撃ちまくっている。

 

!まずい!!織斑が後ろに付かれた!!

追い付くも

 

「織斑!俺が二秒数えたらその場で思いっきり右斜め後ろに瞬時加速!」

 

「分かった!」

 

「行くぞ!二、一!今!!」

 

合図と共に身体を捻りながら指示した方向へ瞬時加速を行う。

それを追いかけると踏んだ俺は福音が通るであろう進路上に滑り込む。

流石は第四世代機。瞬時加速を使わなくても簡単に滑り込むことが出来た。

 

目の前に躍り出た俺は両手に持った鬼羅刹と阿修羅を振り下ろす。

それをエネルギーブレードのような物で防ぐ。

それからは俺を追いかけ回してくる。

これでターゲットは完全に俺に向いた。

 

「輝義!大丈夫か!?」

 

「俺は大丈夫だ!お前は!?」

 

「まだいける!!」

 

織斑はまだ戦えるから皆が到着するまで持ちこたえればいい。

 

 

 

 

「織斑!俺がこいつの足を数秒止める!その時にやれ!」

 

「分かった!!」

 

既に箒が連絡に行ってから十分が立つ。その間、俺達はまともに戦わずひたすらに避け続けていた。

織斑はまだまだ行けそうな顔をしているが、それがいつまで持つかは分からない。

たった十分とは言え、高機動戦闘を続けている。

かなりの負荷が掛かり続けている。

 

「ふっ!!!」

 

福音の動きが止まった瞬間に織斑が斬りかかるが、背部からとんでもない数のエネルギー弾が撃ち出された。

 

「ガッ!?」

 

「織斑!!!!」

 

反射的に回避したからかダメージは多少は軽いようだ。

だがそれでも大きくないダメージを負った。

 

「輝義!こっちは大丈夫だ!!」

 

「……分かった!!」

 

それにしても、箒が戻ってこない。

いくらなんでも遅すぎる。

 

「箒!!箒、応答しろ!!」

 

ダメだ!繋がらない!!

どうなっていやがる!?

 

「輝義!!箒は!?」

 

「通信がつながらない!!」

 

「はぁ!?どうなってんだよクソ!!!」

 

たった二人でこのまま耐えるしかないって事かよクソ……

展開装甲で俺は大丈夫だが、織斑の方が問題だ。

あいつは俺や箒みたいに展開装甲なんて豪華なもんは持っていない。

今も数発のエネルギー弾が当たっている。

限界が近いはずだ。

 

「織斑!SEはあとどれぐらい残っている!?」

 

「残り六十!!」

 

思ったよりも少ないな……

九十はあると思ったんだがな……

 

「輝義!!これからどうする!?このままじゃ!!」

 

「そんな事ぐらい分かってる!!」

 

モニターの時計を見ると箒を離脱させてから既に二十分が過ぎていた。

余りにも遅すぎる。

何かあったのか!?

 

「輝義!!いつになったら箒達が来るんだよ!?」

 

織斑が叫ぶ。

不味いぞ。

このままじゃ織斑が落とされる……!

俺も既に展開装甲の耐久度が三割削られた。

このまま織斑を庇いながらの戦闘は厳しいか……

織斑の方も限界が近いだろう……

しょうがない……

 

「……織斑、撤退しろ」

 

「はぁ!?何言ってんだよ!?」

 

「撤退しろと言ったんだ!!!」

 

「ふざけんなよ!!!お前何言ってんだ!?」

 

「いいから撤退しろ!!」

 

「嫌だぞ!!俺は絶対に退かねぇ!!もうお前を一人で戦わせないって決めたんだ!!死んでも此処から離れない!!」

 

やはり、首を縦に振るようなことは無いか。

でも、こいつ死んでもなんて言いやがる。

ふざけんなよはこっちの台詞だ。

 

「死んだら元も子もないだろう!?いいか!?二度と死んでもなんて言うんじゃない!!分かったか!?お前は箒達を呼びに行け!!」

 

「だけど!!」

 

「早くいけ!!」

 

「クソッ!!いいか輝義!?絶対に落とされんじゃねえぞ!!」

 

「んな事百も承知だ!!」

 

そう言って織斑は撤退する。

俺はそれを援護するために接近戦を仕掛ける。

 

「オラァ!!!」

 

福音は即座に避け、撃ってくる。

弾幕を張ってくるが流石は束さんお手製の展開装甲。

この程度じゃビクともしない。

ただ、やはり耐久度が減っていく。

 

 

 

 

それから数分後。

 

「このままじゃそう長くは持たないな……」

 

思わずそう漏らしてしまう。

今も撃ってきている。

 

今は数が多くはないが、一発一発の威力がけた違いに強い。

避けられない訳じゃないが、当たれば耐久度がかなり削られる。

正直、ナノマシンは機能しているが、自己修復が追い付いていない。

直る前に食らうもんだから、ナノマシンの量も減ってきている。

鬼羅刹や阿修羅で飛んでくる弾を捌いてはいるが……

流石に高機動広域殲滅型だけあって多少の距離じゃ意味が無い。

かと言って離れるとこちらが攻撃できなくなるし、

近づきすぎると弾幕にやられる。

 

ゲイボルクを撃ち出そうにもそうはいかない。

射撃をしようにも展開装甲を銃身として、ナノマシンを、銃弾として使用するから継戦能力はガタ落ちする。

だからいまのまま逃げ回るしかない。

 

「織斑!!応答しろ!!」

 

試しに呼び掛けてみるが先程の箒への通信同様、繋がらない。

 

「俺は完全に孤立無援って事か……」

 

もし、皆が救援に向かっているとしたら間違いなく三十分以上は掛かる。

俺達は展開装甲で来れたが皆はそうはいかない。

 

こうしている間にも福音はバカスカ撃ちまくっているし、それを防いでくれている展開装甲はダメージが着実に蓄積していっている。

まだナノマシンには余裕があるが……

 

確か奴は背面からの攻撃に対しては弾幕を張っていたはず。

正面からなら行けるかもしれない。

ここで俺は読みを間違えた事に気が付いていなかった。

 

……懸けてみるか。

 

そう決心して直ぐに両手に刀を呼び出す。

 

まだだ……まだ。タイミングを見誤ればこっちがやられる。

しっかりと見ろ。

 

………………!!今!!!!

 

追いかけてきていた福音に対して身体を向ける。

その際に攻撃を食らってしまうが、この際どうでもいい。

そのまま福音に向かって瞬時加速で突っ込む。

 

「オラァァァァ!!!!」

 

絶対に離れるな!!

離れれば終わりだ!

あの高威力の砲撃を叩きこまれる!!

 

背を向けて逃げようとする福音。

しかし、逃がしはしない。

即座に回り込んで斬りかかる。

 

「逃がさねぇぞ!!付き合ってもらうからなぁ!!」

 

しかし、その瞬間に福音が光った。

 

「!?」

 

あの弾幕は後ろにしか撃てないと思っていたのだが、どうやら前にも撃てるらしい。

よく考えれば普通は思い付くだろうに、俺は思ったよりも焦っているらしい。

 

展開装甲が防御してくれたおかげで機体やSEにはダメージは無い。

だが今の攻撃で八枚の内、三枚に限界が来たようでモニターに使用不可と表示されている。

これで残りは五枚。

二割以上の損失か……

 

 

 

さっきので完全に守勢に回ってしまった。

 

逃げる俺の周りでエネルギー弾が炸裂する。

あれから何度か攻撃を仕掛けてはいるがどれも弾幕のせいで効果は無い。

それどころかこちらの展開装甲が削られていくだけだった。

 

それからはひたすら逃げ回るだけになってしまった。

 

 

 

まだ皆は来ない。

待てど暮らせど救援は来ずってか……

 

あれからもダメージを食らい続けて更に一枚持ってかれた。

 

残る展開装甲は四枚。

しかしこの四枚も耐久度が半分を切った。

 

なんとか弾幕攻撃の範囲外に逃げても威力と射程が大きい物で撃たれる。

手の打ちようがない。

 

 

何とか方法を探っていた時、警告音と共にモニターに表示される。

 

高エネルギー反応検知 回避もしくは展開装甲での防御を推奨

 

 

ハッとして振り向くが既に福音が撃った後だった。

俺は光に包まれる。

 

物凄い衝撃と共に着弾する。

咄嗟に残っていた展開装甲四枚を二枚づつ重ねて防御するが、撃ち抜かれた。

これで俺の使える武装は近接武器のみ。

 

「クソッタレ!!!」

 

それにSEも持っていかれた。

 

「こうなったらクソ痛ぇのをぶち込んでやる!!」

 

この状況じゃ遅かれ早かれ戦えなくなる。

多少の損害は無視して行くしかない。

 

スラスターを全力で吹かし、可能な限り離れる。

両手に握った二振りの刀をしっかりと握る。

 

「おおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

雄叫びと共に瞬時加速で突っ込む。

 

福音が光ったように見えた瞬間、エネルギー弾が飛んでくる。

回避をしながら突っ込む。

 

何とかして間合いに入り込め!

まだまだ!!

まだだ!

焦るな!

あと少し!

 

今!!

 

 

「オラァァァァァ!!!!」

 

斬った!!

確かに捉えた!!

 

福音を見ると、スラスターの大部分が破壊されていた。

 

よし!!

これならこのまま片を付けられる!!!

 

 

「これまでのお返しだ!!受け取りやがれ!!」

 

それでも撃ってくるが気にしない。

それよりも今!!確実に!!仕留める!!

 

斬撃をひたすら繰り返す。

 

遂に福音のSEを削り切る。

中には搭乗者が乗っているはず!!

 

そう思って福音の中心部を装甲ごと斬った。

中には金髪の女性が居た。

 

「おい!!大丈夫か!?」

 

ダメだ、反応しない。

意識が無いのだろう。

 

女性を掴んで引っ張り出す。

 

 

良かった。

息もしているし、ラウラの時みたいに裸じゃない。

 

搭乗者を失った福音は落ちて行った。

 

そこに漸く皆が到着した。

 

「輝義!!」

 

「……箒か。何かあったのか?」

 

「通信が出来ないようにジャミングがされていたんだ。だから急いで戻って皆を呼びに行ったんだが……」

 

だから通信が出来なかったのか……

何も無くて良かった。

 

「どうやら既に決着は着いているようですわね」

 

「……すまんな。手柄は独り占めだ」

 

「構いませんわ。それよりもお怪我はありませんか?」

 

「……大丈夫だ。問題ない」

 

「それなら帰りましょう。織斑先生と山田先生に博士もお待ちですわ」

 

「……織斑は?」

 

「今、旅館に帰っているはずですわ。ラウラさんが付いてらっしゃいます」

 

「……そうか」

 

そして旅館への帰路に就いた。

無事に終わって良かった。

 

 

旅館に着いて、束さんに飛びつかれて一悶着あったが、福音の搭乗者の人を織斑先生に預けて、イージスを束さんに修理してもらうために渡した。

 

その後、風呂に入って飯を食って寝た。

これで終わると思っていた。

 

 

 

しかしそうはならなかった。

 

 






ここで一区切り付けます。




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66話目

つづきぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!




 

福音を落とした後、束さんからの検査を受けて俺自身の身体には異常なし。

イージスの方は展開装甲が全て使えなくなった以外は問題なし。

SEを充電しさえすれば直ぐに使えると言われた。

 

イージスは今、念のための点検とSEを充電するために束さんに預けている。

展開装甲については後日、束さんが新しく作って持って来てくれるとの事。

ただ、

 

「あー……これは全部作り直すのに数日掛かっちゃうかなぁ……それに今回ので強度不足だって分かったから改良も施したいしね。それまで待ってて」

 

って言われた。

有難い。

 

取り敢えず報告は明日にして今日はもう休めと言われた。

正直かなり疲れていたので飯を食ってから風呂に入って部屋に戻ると布団が敷いてあった。

しかも俺の足が出ないように二枚使って。

 

机の上に置手紙が置いてあった。

山田先生からで、

 

 今日はお疲れ様でした。

 私はまだ仕事がありますが大河君はちゃんと休んでくださいね。

 明日は通常通りに行うそうです。

 

 追伸

 お布団引いておきました。

 早めに休んでください。

 

 

山田先生、マジ天使かよ……

オペレーターをして自分も疲れているはずなのに、俺に気を使ってくれるなんて……

 

ありがたやありがたやなどと思いながら布団に入ってすぐに寝てしまった。

多分、八時過ぎぐらいだったと思う。

 

 

 

 

それから何時間たったかは分からない。

部屋に織斑先生が飛び込んできた。

何事かと思って織斑先生を見た。

 

「大河!!起きろ!!緊急事態だ!!」

 

その声で飛び起きた。

時計を見れば二時になっていない。

 

「……どうしたんですか?こんな時間に」

 

「消えていたはずの福音の反応が再び現れた!!」

 

どういう事だ!?

何があった!?あの時確かに落としたはずだ!!

 

「急いでパイロットスーツに着替えてコントロールルームに集合しろ!!」

 

そう言って走って行ってしまった。

クソッ!!落とした時にちゃんと確認していればこうはならなかったはずなのに!!

確認を怠った俺の責任だ……

 

 

 

織斑先生が走って行った後、直ぐに着替えてコントロールルームに走った。

着くと既に皆は集まっていた。

 

「よし、これで全員だな!時間が無い。説明を始めるぞ」

 

そう言ってモニターに映し出された映像を見る。

 

「八分前に突如として海に落ちた福音の反応が検知された。福音は既に移動を始めている。先の迎撃作戦での距離を考えると此処に到達するのに残り十七分も無い。

これを放置すれば間違いなくここを襲撃するだろう。そうなれば死者が出る。何としても防がなければならない。よって直ぐに迎撃に向かってもらう」

 

「……すまない皆……あの時俺がしっかり確認していれば……」

 

「今はそんな事を気にしている場合ではない」

 

そう言って織斑先生はモニターに向き直る。

 

「それでは作戦の説明をする。今回は全員で総攻撃を仕掛ける。取り敢えず時間を稼いでくれ。その間に他の生徒たちを避難させる。すまないがまともな作戦を立てている時間もない。それと……束、いるんだろう?出て来い!」

 

織斑先生が呼ぶとまたしても天井から束さんが出てきた。

 

「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!!」

 

「ふざけていないで答えろ。大河の機体は出せるか?」

 

俺の機体の事だった。

 

「行けるよ。でも展開装甲は予備で作ってあった三枚しか無いからね。それでもいいんだったらすぐにでも出られるよ」

 

状況が状況だから展開装甲が無くても行く。

既に俺の覚悟は出来ている。

 

「分かった。すまん大河。行ってくれるか?」

 

それでも織斑先生は聞いてくる。

そうしなければならないから。

意思を確認するという名の命令を。

 

「……行きます。覚悟は出来ていますから。そんな顔をしないで下さい」

 

「そうだぞ千冬姉」

 

あ……お前……

 

ポコッ。

 

軽く織斑を叩きながら言った。

 

「そうだな。私がしっかりしなければいけないのにな」

 

そう言って息を吐き、改めて言った。

 

「これより防衛戦を開始する。準備は整っているな?」

 

「「「「「「「「はい!」」」」」」」」

 

「よし!出撃!!」

 

 

さぁ!!第二ラウンドの始まりだクソッタレ!!

 

 

 

 

現在、俺達は福音に向かっていた。

出撃する前に山田先生が、

 

「昼間の迎撃戦の時に通信が妨害されました。恐らく今回も妨害されるでしょう。予め言っておきますが、通信は出来ないものと思っていて下さい。

なのでこの周辺海域の地図を渡しておきます」

 

と言って地図を渡してきてくれたのだ。

その地図を見てラウラが、

 

「此処に岩礁地帯があるな……

旅館からの距離も十分離れている。

セシリア、昼間に換装した長距離狙撃用パッケージはそのままか?」

 

「えぇ。そのまま積んでありますわ。それがどうかされたのですか?」

 

「全員山田先生に貰った地図を見てくれ」

 

そう言われ、地図を見る。

 

「ここに岩礁地帯がある。しかも丁度いい事に福音との会敵予想場所だ。

これを使って私とセシリアで狙撃を仕掛けるからここまで誘導してくれないか?」

 

それには賛成だ。

正直な話、元とはいえ軍人の意見なのだ。

取り入れるべきであろう。

皆も同じようで頷いている。

そこにシャルロットが直ぐに疑問を投げかける。

 

「分かったよ。でもセシリアはまだしもラウラは弾数があまりないんじゃ?」

 

「そこの心配は要らない。篠ノ之博士が昼間に拡張領域に新しい武装をインストールしておいてくれた。砲撃が出来なくなってもこちらが使える。それでも弾数の制限はあるがな」

 

何それ初耳なんですけど。

射撃武器とか羨ましい……

ゲイボルク?あれは違うだろ。

 

「そうなの?なら大丈夫だね」

 

「それと一応だがシャルロット、護衛についてくれるか?」

 

「分かった。でも状況次第じゃ輝義達の援護に回るよ。それでもいいなら」

 

「それでいい。頼む」

 

「それと、輝義達の情報によれば全方向に高威力のエネルギー弾を弾幕でバラまける。

注意しろ。距離を取ったからと言って安心するな、射程もあるそうだ」

 

俺と織斑が戦った時に入手した情報を伝える。

そうして確認を行っていると、簪が警告の声を上げた。

 

「皆!前方に福音が見えた!」

 

その瞬間、全員の顔が引き締まる。

その言葉で俺達は福音をハイパーセンサーで見る。しかし昼間に俺達が戦った福音とは明らかに姿形が違っていた。

 

「おい!!輝義!!」

 

「あぁ!!姿形がまるで違う!!」

 

その言葉に全員が驚く。

 

「どういう事だ!?」

 

「分からない!昼間に見た福音とは全然違う!!」

 

「……まさか二次移行ですの!?」

 

セシリアの言葉に誰もが凍り付いた。

背筋に悪寒が走る。

 

「冗談じゃない!!あれは無人機だぞ!?まさか搭乗者が居なくなってから二次移行したとでも言うのか!?」

 

「でもそうとしか考えられないよ!?どうするの!?」

 

「クッ!!先程の通りで行く!!変更している時間は無い!!」

 

その言葉を皮切りにセシリアとラウラ、シャルロットは岩礁地帯からの射撃を、俺達は近接戦を挑んだ。

 

 

 

 

そこから地獄のような時間が始まった。

 

 




ラウラの新武装

名称 雷神の鉄槌(ミョルニルまたの名をトールハンマー)

   由来は北欧神話に登場する雷神トールのもつ鎚から。
   所謂、荷電粒子砲の事で束さんが設計、製作。
   束さんお手製という事もあり威力などは折紙付き。
   電力の問題はほら、束さんだからちゃんと解決してる。
   
   

名称 ミストルテイン

   由来は北欧神話のオーディンの息子、バルドルの命を奪ったヤドリギの矢から。
   所謂、陽電子砲の事。
   撃った時に空気に触れて放射能をまき散らすがそこは流石束さん、ちゃんとそう    ならないようになっています。
   威力?束さんが作ったんだ。察しろ。
   上の物と同様、電力問題は解決済み。


「束さんは中途半端なものは作らないし渡さないから安心して!」


   
てことでこんな感じ。
ちゃんとした説明は後日書きます。
次回、束さんがラウラにあげた新武装の登場です。





感想、評価等くださいな。



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67話目

ちゅぢゅきぃぃぃ!!!





ーーーー side ラウラ ----

 

 

織斑先生に叩き起こされ、何事かと思いながら言われた通りにコントロールルームに向かった。

 

 

そこで受けた説明は信じがたいものだった。

昼間に嫁達が落とした福音の反応が再び現れたというのだ。

 

信じられない。搭乗者もない状態にもかかわらずだ。

しかもこの旅館に向かってきているというのだ。

もし旅館付近での戦闘になった場合、間違いなく死者が出る。

 

織斑先生はそれを防ぐために我々専用機持ちが時間を稼いでいる間に他の生徒や旅館のスタッフを避難させるとの事。

 

しかし、箒は実戦経験は乏しく、嫁も昼間の戦いで機体は万全とは程遠い状態。

頼みの綱の第四世代機がこの状況。嫁ならば実戦経験もあるし、問題は無い。だが、機体が万全ではないのに出撃させざるを得ないという事はそれだけ状況が不味いという事。

一人でも多く盾となれる人間が居なければならないのだ。

幸いにも展開装甲は三枚ほど予備があるらしく、丸裸で行くよりはマシだろう。

 

 

それよりも箒の方が心配だ。いざという時にパニックでも起こされたら間違いなく我々は全滅するだろう。

実戦経験は昼間の戦闘のみで、しかも操縦時間が我々とは遥かに少ない。

何よりもこのような事態に対しての訓練を一切積んでいない事が問題なのだ。

我々専用機持ちは国防の一翼を担っている。

私は正規の軍人だったからいざという時の覚悟は出来ているし、殺す覚悟も殺される覚悟もある。

セシリアや鈴も予備役と同じような立場のはずだ。だから必然的にそのような訓練は本国での専用機持ちのカリキュラムの中に含まれているし訓練もしている。

そんな私達でさえ怖いと思うのだ。

今までそんな事を考えたこともないような人間からすれば恐怖は更に強いはず。

 

嫁や一夏が普通じゃないのだ。

恐らく本人たちが一番分かっているはず。

……一夏はどうか分からないが。一夏は結構楽天的な部分があるからな……

それでも今までの戦闘で心構えぐらいは出来ている。

 

嫁は、他者と明らかに精神が違う。精神構造そのものが違うと言ってもいいぐらいに。

だから、こうやって戦う事が出来るし、本人は自覚が無いかもしれないが、間違いなく死ぬ事に対する覚悟は出来ている。

 

 

話が逸れたが、まともな作戦を立てる余裕もなく準備は既に出来ていたので出撃する。

その際、山田先生に渡された周辺海域の地図を見ていると、どうにも会敵予想場所に浮き出ている岩礁地帯が小さいながらもあるらしいのだ。

これを見て、即座に作戦を立てていく。

 

作戦はこうだ。

まず、長距離狙撃が出来るセシリアと長距離砲撃が可能な私で岩礁地帯から射撃支援を行う。レーゲンに搭載されているレールカノンはリボルバー方式で弾数が十二発と限られているが、昼間に博士から新型武装を二つ貰ったのだ。どちらも射撃武器で弾数に限りはあるがレールカノンよりも遥かに多い。電力の問題があったが博士が解決済み。

 

嫁達は近接戦を仕掛ける。

それを支援しながらの射撃。念の為にシャルロットは私とセシリアについてもらうが状況によっては嫁達の援護に向かってもらう。

 

 

昼間の戦闘で入手した情報を元に戦うので少なくとも苦戦はするだろうが負けはしないだろうと皆が安心していた。

 

 

しかし、簪が福音を発見した瞬間にその安心感は崩れ去る。

 

福音を見た嫁と一夏が声を上げたのだ。

 

姿形が全然違うと。

昼間に見た福音と全然違うと。

 

その言葉を聞いて訳が分からなくなる。

なぜそうなったのか分からず混乱しているとセシリアが、

 

二次移行の可能性を指摘した。

 

まさか!?

あり得ない!!

二次移行は普通、膨大な戦闘データを元に搭乗者に最適化されるものだ!!

だがあれには搭乗者は乗っていないし、何よりも戦闘自体の回数が二、三回しかない!!

なのに二次移行だと!?

 

しかし嫁達の話を聞く限り、その可能性が最も高いと考えるべきなのだろう。

しかしそうなると最悪だ……!!

 

機体にもよるが少なくとも二次移行をした機体はその性能が上がるなんてレベルじゃない。世代が変わると言ってもいいぐらいの変化を起こす。武装の威力も機動性も何もかもが。

 

しかも奴は第三世代機で、しかも軍用なのだ。その性能は考えるまでもない。

どう考えても我々が太刀打ちできるようなレベルではなくなっているのだ。

しかし退く訳にはいかない。私達の後ろには二百人近い戦う為の術を持っていない人間がいるのだ。

 

 

今更作戦を変更するような時間は無く、このまま挑むことになる。

 

 

 

 

嫁達の方は既に戦闘が始まっている。

私を含めた射撃支援組は岩礁に降り立つ。

 

「セシリア!!各自で自由射撃!!統制射撃などこの数じゃ意味が無い!!」

 

「分かりましたわ!!」

 

「準備が出来次第射撃開始!!シャルロット!!嫁達の援護に行くタイミングは任せる!!」

 

「うん!!」

 

 

会話をしている間にセシリアは射撃を始めている。

私もレールカノンの準備は整った。

 

「装填よし。照準……よし。誤差修正完了」

 

そう声に出して確認していく。

そしてすべての準備が整った。

 

射撃開始!!

 

ドォォォン!!!

 

 

クソ!早すぎて当たらない!!

 

ドォォォン!!!ドォォォン!!!ドォォォン!!!ドォォォン!!!ドォォォン!!!

 

ダメか……!!かすりもしない!!

 

レールカノンは残り六発!!

だが、点を制圧しても意味は無いし、下手すれば嫁達の事を誤射してしまう。

 

……やってみるか。

 

 

 

 

長距離の通信は出来ないが、幸い短距離の通信ならば可能だ。

 

「皆!!巻き込まれたくなければ奴から三十メートル以上離れろ!!」

 

博士がくれた新武装を使ってみるか!!

 

ミストルテインを展開。

こいつは破壊力抜群の陽電子砲で広範囲を薙ぎ払える。

 

少し、射撃するのに時間が掛かるがそれを補い有り余る威力があるのと、姿勢を安定させるのに飛びながら撃つのは難があるぐらい。

それでも博士は改良するから待っててと、言っていたが。

正直、渡された時に性能を見てドン引きしたが。

 

準備は整った。

 

照準も合っているし、ISの自動補正もあって外しはしない。

 

 

 

私は引き金を引いた。

 

 

 

ーーーー side out ----

 

 

 

ラウラが福音から離れろと警告してきてから十五秒後、目の前をとんでもない威力のビームが横切った。

 

は!?何それ!?

威力がおかしいんですけど!?

言った通り、威力がおかしいのだ。もう訳が分からないぐらい。

 

ちゃんと離れていて良かった……

あんなの巻き込まれたらタダじゃ済まないぞ……

 

しかし、その砲撃を避けた福音はラウラを危険だと感じたのか、ラウラの方へ高威力のビームを向け、撃った。

 

「ラウラ!!避けろ!!」

 

そう叫んだが間に合わなかった。

ラウラに直撃し、煙が舞う。

 

その煙が晴れたそこには武装や、脚部、椀部の装甲がズタズタにされたラウラが居た。

内部の配線も千切れている。恐らくフレームも歪んでしまっているだろう。

 

本人には怪我はないようだが、あれじゃ戦うのは難しいだろう。

 

「ラウラ!!大丈夫か!?」

 

「私は大丈夫だ!!だがレーゲンが大破した!!すまないが戦えそうにない!!」

 

マジかよ!!

早々にラウラが脱落か……!!

 

「セシリアとシャルロットは!?」

 

「僕は大丈夫!!」

 

「私も大したことはありませんわ!!」

 

良かった。

怪我は無いようだしこのまま行けるだろう。

 

「よし!!なら引き続き援護を頼む!!」

 

「分かりましたわ!!」

 

「輝義!!箒が後ろに付かれてる!!俺達じゃ追い付けない!!」

 

織斑から通信が入る。

箒が後ろに付かれているのか!!

 

「箒!!俺の方へ飛んで来い!!」

 

「!?分かった!!」

 

すれ違いざまに一撃食らわせてやる!!

 

「そのまま突っ込んで合図で機体をロールさせろ!!」

 

「分かった!!」

 

まだ遠い。

ギリギリまで引き付けてこっちに注意を向かせる。

それさえ出来れば!!

 

「箒!!準備!!」

 

「!!」

 

「…………今!!」

 

合図で俺のすぐ横をロールしながら通り過ぎていく箒。

そしてその後ろには福音がいる。

 

「食らいやがれ!!」

 

福音の胴体部分に一太刀食らわせて即座に離脱をする。

やはりというか、福音は俺に食いついてきた。

 

そうだ!!そのまま俺を追いかけろ!!

 

「簪!!ミサイルは撃てるか!?」

 

「山嵐の事なら今すぐにでも行けるよ!!」

 

「叩きこんでやれ!!」

 

その言葉の後、簪の打鉄弐式から五十発近いミサイルが放たれる。

福音は流石に回避せざるを得ない。

 

しかしそのミサイルもエネルギー弾の弾幕によってどんどん落とされていく。

やはり一番の障害はあの弾幕か……

近づくことも出来ないし、攻撃するなんぞもっと無理だ。

 

なにか策は無いかと考えるが全くと言っていいほど何も思い浮かばない。

 

すると何故か福音が停止しているのだ。

何があった!?

どういう事だ!?

 

「福音に何があった!?」

 

「分からないわよ!急に動きが止まったのよ!」

 

鈴が答えるが分からないらしい。

他の皆を見るが、首を横に振る。

 

何か嫌な予感がする……!

 

そしてその予感は的中する。

突如として福音が弾幕を張り始めたのだ。

それもさっきの比じゃないレベルの弾幕を。

 

しかも皆は何があったのか気になり、無意識のうちに近寄ってしまった。

それが仇となり、直撃。

俺を含めた皆が光に包まれる。

 

 

光が収まるとそこには何故かスラスターの数が増えた福音が居た。

シャルロットから通信が入る。

 

「皆!大丈夫!?」

 

「俺は問題ない!」

 

「私もよ!」

 

「ごめんなさい……!スラスターをやられちゃった!」

 

口々に報告するが簪がダメージを負ったようで飛行が安定していない。

 

「簪!!ラウラの所まで下がれ!」

 

「っ!了解!!」

 

ラウラもダメージを負って飛行が困難になっている。

同じ場所にいてくれた方が守りやすい。

 

「僕が代わりに入る!!」

 

そう言ってシャルロットが簪の代わりに出て来る。

確認のために皆にダメージの状況を聞く。

 

「まだ戦えるか!?」

 

「こんなんダメージの内に入らないわよ!!」

 

鈴が叫ぶ。

しかし、衝撃砲は壊れていて使えるのは近接武器だけだ。

可能な限り的を絞らせないように戦うしかないか……

 

「動き続けろ!!狙われたら俺がターゲットになる!!」

 

「分かった!!」

 

そして戦い始めたのだが、今までは攻撃の途中で妨害されると妨害してきた相手にターゲットを変更したのにいくら横から妨害してもしつこく狙っているやつを追いかけるのだ。そして最初のターゲットは鈴だった。

 

「輝義!!こいつさっきと全然違うわよ!?」

 

「俺だって分からない!!取り敢えず逃げろ!!」

 

「でも機動性が違いすぎるのよ!いくら振り切ろうとしても付いてくるわ!!」

 

その瞬間、鈴が爆炎に包まれた。

 

「鈴!!!!」

 

爆炎の中から鈴が甲龍と一緒に落ちて来る。

 

「シャルロット!!鈴の回収を頼む!」

 

「うん!」

 

シャルロットに鈴を任せる。

しかし、織斑が激高して突っ込んでいってしまった。

 

「てめぇ!!鈴をやりやがったな!!」

 

「織斑!!止せ!!」

 

警告も虚しく、刀を振り下ろした。

 

「おらぁぁぁぁ!!!」

 

しかし簡単に避けられてしまい、その隙だらけの所にビームを叩きこまれる。

 

「がぁぁ!!??」

 

「織斑!?おい!!返事をしろ!!」

 

呼びかけるが応答は無い。

 

「クソ!!」

 

これで戦えるのは俺と箒、シャルロットにセシリアだけか!!

戦力の半分をやられた。

ここまで追い詰められると手の打ちようがない。

しかも次に狙われたのは俺だった。

撤退するなら今しかない。

 

「箒!!」

 

声を掛けるが反応しない。

顔を見れば鈴や簪が落ちた事にショックを受けているのだろう。

顔には恐怖の感情があった。

 

箒は動けないか……

撤退しようにも俺が撤退すれば確実に他の皆を巻き込むことになる。

俺には撤退は許されないって事かよクソ。

 

こうなったらもう考えてる余裕も時間もないか……

 

「……皆、撤退だ」

 

「輝義!?何言ってるの!?」

 

「撤退だ……このままじゃ死者が出る」

 

「でもそしたら皆が襲われちゃうよ!?」

 

「そこの心配はするな。大丈夫だ」

 

「大丈夫って!?……!?まさか残る気じゃないよね!?」

 

気が付いたか……

本当はこうやって渋るから分かってほしくは無かったんだがな……

 

「そのまさかだ。今なら福音のターゲットが俺に向いている。撤退するなら今しかない」

 

「ふざけないで!」

 

「ふざけてなんかいない」

 

「ふざけてるよ!!輝義が撤退しないなら僕も残るよ!?」

 

「輝義さん!私も残りますわ!」

 

「ダメだ。お前達が残ったら誰が簪やラウラを連れて行く?織斑は?鈴は?どうやって連れて帰る?今なら行けるんだ」

 

「ですがそれで輝義さんが死んでしまったら意味がありませんわ!どうかお考えを改めてください!」

 

「無理だ!今ここで全員がやられたらどうする!?他の皆を守る為の人間が必要なんだ!いいから早く行ってくれ!」

 

「でも!」

 

「シャルロット」

 

説得している俺に助け船を出したのはラウラだった。

 

「嫁の言っていることは正しい。今ここで我々が全滅すればどうなるかは分かり切っている。嫁ただ一人の被害で食い止めるのならば今しかない……!」

 

しかし、言っている言葉とは全く違う感情が読み取れた。

 

「ラウラまで!?いいのそれで!?」

 

「いいも何もない!!これは戦略上必要な事なんだ……!!」

 

「っ!!……分かった。撤退するよ……」

 

「シャルロットさん!?いいのですかそれで!?」

 

「ごめん……セシリア。覚悟を決めよう……」

 

「そんな……!?」

 

その後、セシリアは何かを言おうとしていたが、言葉が出てこない。

そして、

 

「……分かりました。皆さんと共に撤退します……!」

 

漸く分かってくれたか。

すまないな、辛い思いをさせて。

その謝罪を口にすることは無い。そうすれば皆を引き留めることになってしまうから。

 

「大丈夫だ。時間ぐらいは稼げるだろう」

 

「……輝義、僕と約束して。ちゃんと帰って来るって。約束出来ないなら撤退はしないよ」

 

「そうですわ。私とも約束してくださいな」

 

「輝義、死んじゃだめだよ……?」

 

「嫁、すまない……」

 

そう言われては仕方がない。

何が何でも帰らなきゃいけないな。

 

「……分かった。約束する。必ず帰る。ラウラ、そんな顔をするな」

 

「っ!……あぁ」

 

「セシリア、シャルロット、皆を頼んだぞ」

 

「うん。任せて」

 

「お任せください」

 

「それじゃ、行け」

 

そう言って皆を撤退させる。

 

「輝義さん、ご武運を」

 

「あぁ」

 

セシリアの言葉を最後に皆は撤退した。

飛行に支障をきたしている簪、ラウラはシャルロットに抱えられて。

鈴はセシリアに、織斑は箒に抱えさせて。

 

 

これで皆は俺が飛んでいる間は無事という事だ。

何が何でもこいつをこのクソッタレを此処に留める。

いや、可能な限りここから遠ざける必要がある。

幸い、今の狙いは俺だから苦労はしないはずだ。

 

 

 

「かかってこい!!俺は此処に居るぞ!!」

 

 

 

地獄への片道切符が今切られた。

 

 

 






書き忘れましたが、福音は原作より強いです。




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ラウラ新武装紹介

ちょろっと紹介いっときます。


雷神の鉄槌 (トールハンマー、ミョルニルとも)

 

由来は北欧神話に登場する雷神トールのもつ鎚から。

所謂、荷電粒子砲の事で束さんが設計、製作。

 

 

荷電粒子砲の説明

 

荷電粒子砲とは簡単に言うと銃弾や砲弾の代わりに荷電粒子(電子、陽子、重イオンなど。一部では金属粒子を用いるとの表記あり)を砲弾として粒子加速器を使って亜光速(光速、つまり光の速さよりもやや遅い速度の事)まで加速して撃ち出すとか言うやべー兵器。

 

本来なら磁場の影響で簡単に進む方向が変わる、偏向しやすいため、

(セシリアのレーザーライフル?ビームライフル?は意図的に進む方向を変えているが、こちらは完全に意図しないもの)

地磁気(地球が持ってる磁力?と思ってくれればいいかと)の影響を受けやすい。

じゃぁ宇宙なら?とはいかない。太陽風と言った他の荷電粒子の影響を受けてしまう。

なので質量の大きい荷電粒子でなければビームを直進させる事すら出来ない。(ガンダムやエヴァみたいにはいかないって事です)

 

技術的には作れるが射撃に必要な電力が問題で、最低10ギガワットとか言う考えるのがアホらしくなるような電力が必要になってくる。

それぐらいの電力がないと地球上で撃つ時に途中で威力がガクンと落ちちゃう。ある一定の距離までならそんな事は無いんだけど。

エヴァでは全国の発電所から電力を引っ張ってきていた。

こんな感じで問題が山積みで実用化には程遠い。

(ハリウッドの某変形ロボット映画で、軍艦に搭載されていましたが、あれは今の所、不可能なんじゃないかな?原子力機関があっても多分足りないはず)

 

破壊力は抜群なんてもんじゃない。

衝撃と高熱と言う、もう嫌なものを組み合わせやがった破壊力。

ついでに言うと反物質(陽電子や反陽子)を使えば対消滅効果も期待できます。

でも、進んでいる間にほとんど効果が消えちゃうので威力も射程もはるかに低い。

 

意外と知られていないけど、医療方面にも転用されています。

 

 

束さんお手製という事もあり威力などは折紙付き。

電力の問題とかそのあたりは束さんだからちゃんと解決してる。

一発一発の間の時間が十五秒くらいかかるけど。

これでも異常な程の射撃ペースです。

 

 

 

 

 

ミストルテイン

 

由来は北欧神話のオーディンの息子、バルドルの命を奪ったヤドリギの矢から。

所謂、陽電子砲の事。

撃った時に空気に触れて放射能をまき散らすがそこは流石束さん、ちゃんとそうならないようになっています。

 

陽電子砲の説明

 

超絶激ヤバ兵器。

撃つと、放射能を撒き散らすイカした兵器。

大気汚染なんて序の口で、ありとあらゆるものに放射能汚染というものをなすりつけていく。

必要な電力も馬鹿らしいレベル。

 

陽電子の質量の問題と抵抗力の問題で撃つ時に事前に大気中をプラズマ化させたりとか色々しないと目標まで届かない。

届くようにしたら人類どころか地球滅亡砲になっちゃいます。

もしかしたら陽電子ビームを別のプラズマか何かで覆ったりしているのかも?

 

ガンダムとか宇宙戦艦ヤマト(ショックカノン)なんかはどうやって撃っているんでしょうね?

 

威力?束さんが作ったんだ。察しろ。

上の物と同様、電力問題は解決済み。

ちゃんと放射能問題も解決してます。

流石束さん!

 

 




こんな感じ。
ガバガバ知識を総動員して考えました。

でもこんだけの武装を使って福音倒せないとか福音強いですね。
正直やりすぎたかな?とは思った。
だが後悔も反省もしていない。


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68話目

はぁー!!!眠い!!!

FGOの復刻CCCコラボマジキチすぎてやる気でない……

作者は復刻じゃない方を既にクリア済みです。
あのクソスロットは忘れない……


俺の周りで爆発音が連続して起こる。

福音のエネルギー弾が飛んでくる。

展開装甲も三枚しかないから無茶は出来ないし機動戦を行っているために防御は全て自分で行わなければならない。と言っても避けて避けて避けまくるだけだが。その中で当たりそうなものだけを鬼羅刹と阿修羅を使って弾く。ゲイボルクを使わない理由は槍と言う武器になれていないから。

なれていないものを扱って勝てるほど福音は弱くは無い。

 

俺の目標は福音を可能な限り俺に引き付ける事。

陸地から離れられるだけ離れて俺が落とされた際に日本に向かう移動時間を多くする事。

可能ならば福音のあのスラスターを破壊して移動能力を削ぐ事。

 

 

今現在はひたすら陸地から離れるように移動している。

かれこれ二十分は飛んでいるが回避しながらの移動だから大して距離は稼げない。

 

「クソ!あいつどんだけ振り切ろうとしても追い付いてきやがる!」

 

展開装甲を使っての高速機動にも拘らず後ろを取ってくるのだ。

恐らく、アリーナでの訓練に慣れていてこんな広い洋上で戦闘などしたこともなければそんな訓練も受けたことが無い。

 

急降下、急上昇、高速旋回、急停止、思いつく限りの方法を試してはいるが距離を離す事が出来ない。

 

攻撃に関しても何度も斬りかかってはいるし実際ダメージも与えてはいる。

ただそれよりも遥かに回避などに費やす時間が多いのだ。

 

位置情報を見ても皆を撤退させた場所から五キロほどしか離れていない。

この距離じゃ十数秒で到達されちまう……!

もっと距離を稼がなければいけない!

どうする?被弾覚悟で思いっきり直進するか?

 

 

いくら考えても解決策は出てこなかった。

 

 

 

 

ーーーー side 束 ----

 

 

皆が帰って来た。

機体はボロボロだけど無事みたいだし。

 

でも、そこにてるくんの姿は無かった。

ちーちゃんもそれに気が付いて皆に聞いた。

 

「大河はどうした?」

 

その言葉を聞いた皆は顔を悔しそうに歪める。

そしてラウラちゃんが前に出て、悔しそうに泣きそうになりながら答えた。

 

「強襲は失敗、自分を含め、織斑、鳳、更識、が戦闘を続行不能なダメージを負い撤退……!その際、大河が殿を務めることになりました……!戦略的判断によりそれを許可…現在も戦闘中です……!」

 

苦渋の決断だったんだろう。

泣くのを必死になりながら我慢して答えてくれた。

そして私はそれを聞いてもう訳が分からなかった。

頭が真っ白になって、何も考えられなくなって。

 

「……了解した。他の生徒、旅館のスタッフは既に避難は完了している。

向こうに車を用意してあるからすぐに乗れ。お前達が最後だ」

 

ちーちゃんも心配でしょうがないのにちゃんと皆の事を考えてる。

 

「束?おい!しっかりしろ!」

 

ちーちゃんが肩を揺すって私に声を掛ける。

 

「お前も私も避難するぞ。早くしろ」

 

私達も避難しなきゃいけないんだ。

でも私は行かない。

だっててるくんが戻ってきた時に誰も居なかったら悲しいでしょ?

 

「てるくんを置いていけないよ……」

 

「ダメだ」

 

「でも……!」

 

「いいか?よく聞け。大河が今何をしている?あいつは私達を逃がすために命を懸けているんだ。今ここで私達が逃げなかったら大河の戦いは無駄になる。我々は態勢を立て直して福音がこちらに向かって来た時の備えをしなければならないんだ。いいか?」

 

そう言われても行けないものは行けない。

それにギリギリで逃げることだって私は出来る。

 

「ごめんねちーちゃん。それでも行けない。それにほら、私はすぐに逃げられるからさ」

 

「いいから来い。お前が怪我をしたら大河が泣くぞ?」

 

そう言われるとなぁ……

 

「ちーちゃん、てるくんは間違いなく怪我をして帰ってくる。その時に手当てが出来る人が居なくてどうするのさ?助かるかもしれなかったのが死んじゃうかもしれないんだよ?それを考えたらここから離れるわけにはいかないよ」

 

「お前!いい加減にしろ!」

 

「それにさ」

 

「てるくんは絶対に負けないもん。今までだってそうでしょ?どれだけ酷い怪我をしてもちゃんと帰って来てたじゃん。だから今回もちゃんと帰って来るよ。だから私は此処で待ってる」

 

「それに束さんは細胞レベルで天災なんだよ?」

 

てるくんならぜぇぇぇぇぇぇったいに帰って来る。

そう確信してる。だからここに残るんだ。

それに私なら怪我の心配は少ないしね。

そうちーちゃんに伝えたら、ため息と共に呆れた顔をした。

 

「はぁ……あいつはとんでもない女に好かれたな」

 

「ちーちゃんだってそうでしょ?」

 

「ふっ、そうだな」

 

「そこまで言うなら好きにすればいいさ。ただし、条件がある」

 

「うん?何かな?」

 

「私も残らせろ」

 

なんでさ!?

今さっきまで私にダメだとか言ってたよね!?

 

「ついさっきまで私にダメとか言ってなかった!?おかしくない!?」

 

「なに、お前だけだと何をしでかすか分からなくて不安でな。それに私も身体能力だけならお前の言う天災だからな。残ってもなんら問題は無いさ」

 

そんな!?それじゃてるくんが帰って来た時に好感度を独り占めできないじゃん!?

と言うか束さんって全く信頼されてない!?

 

「で、でもほら!シャルちゃんとかの面倒は見なくていいの!?」

 

「山田先生がいるさ。ああ見えてやる時はしっかりやってくれるからな。問題は無い」

 

えぇ……それってただ丸投げしてるだけなんじゃないの……?

 

「それでいいの……?」

 

「本来なら私も逃げるべきなんだろう。混乱した状況ならば私がいるべきだが今回のこの件は生徒たちには知らせていないからな。専用機持ちと学年の先生方が居れば十分さ」

 

なんかちーちゃんもてるくんの事になると結構熱くなっちゃうのかな?

 

「そこまで言うなら一緒に残ろっか」

 

「あぁ」

 

そこへおっぱい眼鏡が来た。

 

「織斑先生!皆の準備が整いました!織斑先生も早く!」

 

ちーちゃんを呼びに来たんだ。

 

「山田先生、すまない。篠ノ之博士がここに残ると言って聞かなくてな。危険にさらすわけにもいかん。私は此処に残って護衛をすることになった。すまんな。皆を連れて行ってくれ」

 

ちーちゃんさらっと私が悪いみたいに言わないでくれないかな!?

 

「えぇ!?そうなんですか!?でも……うー……んー……分かりました。でも約束ですよ?ちゃんと無事に帰って来てくださいね?」

 

「百も承知ですよ」

 

「はい!それでは!」

 

おっぱい眼鏡も行っちゃった。

 

一応、私が打ち上げた人工衛星を使って、てるくんの事が見れるようにしてみる。

お!通信は出来ないけど映像はいけるみたいだね。

 

「ちーちゃん!てるくんが映ったよ!」

 

「なに?お前そんな事が出来たのか!?もっと早く言わんか!」

 

「だってしょうがないじゃん!忘れてたんだもん!」

 

「お前なぁ……はぁ、まぁいい。それで大河の方はどうなっている?」

 

そう言われて少しズームする。

 

「かなり苦戦してるみたいだね。ん?ここから離れて行ってる?」

 

「どういう事だ?」

 

「分からない。でもこの旅館から離れて行ってるのは間違いないね。でもどうして……?」

 

なんでだろう?

此処から離れてもメリットは少ないはず……

なのに少しずつだけど離れてる……

……あ!もしかして!

 

「あいつ、もしかしてここから遠ざけているのか?」

 

ちーちゃんも同じ考えに至ったらしい。

てるくんは多分、時間稼ぎのほかに此処から少しでも遠くに移動して自分がやられちゃった時に私達が準備できる時間を作るために此処から離れて行っているんだ!

それをちーちゃんに言うと、

 

「しかし、福音は超音速飛行が可能なんだぞ?数十キロや数百キロ離れたところで数分もしないで此処に到着するぞ……?」

 

「多分、てるくんはそれも分かってるはずだよ。だからスラスターの破壊も同時に狙っていると思う」

 

「そうなのか……あいつはどこまでも自分よりも私達や他人を優先するのか……大馬鹿だな……」

 

「でもそんなてるくんが大好きなんでしょ?」

 

「そうだが?」

 

わぁお……

すっごい堂々としてらっしゃる……

 

でも今は見守って無事を祈ることしか出来ない。

 

 

私とちーちゃんは映像を見続けた。

 

 

 

ーーーー side out ----

 

 

 

 

 

今現在、思いきって直進するかしないかの決断をしかねている。

 

どうする!?今のままじゃ時間が掛かりすぎて俺が持たないかもしれない。

だが、今のままだと一か八かで賭けに出るよりは遥かに今のままの方が安全だし確実に時間を稼ぐ事が出来る。

 

どちらにせよメリットとデメリットがあるし、どちらを選んでも成功するとは限らない。

 

 

……直進に懸けてみるか。

 

 

そう決断してからは早かった。とにかく可能な限り悟られないようにしなければならない。一瞬の隙を作ってその瞬間に一気に行く。

 

しかしそう決めたはいいものの隙など全然見せない。

 

多少の被弾は覚悟で行くか……?

でもそれだとその後の戦闘に支障が出るかもしれない……

 

スラスターを先に破壊する?

ダメだ。それだと福音との距離が離れすぎてしまう。

 

そう考えてどうするか必死に頭を捻る。が、出て来るのはどうしようもない物ばかり。

 

 

 

ふと、一瞬攻撃が止んだ。

チャンスだ!

そう思って全力で直進しようとした。

しかしそれは福音の罠だった。そうとも知らずに真っ直ぐ飛んだものだから福音からすればいい的だろう。

 

そしてやばいと思って振り向くと馬鹿でかいエネルギー砲がこちらを向いていた。

咄嗟に展開装甲を防御状態にする。

 

そしてそれは俺の命を救う事になる。

三枚を重ねて防御したにも関わらず、その有り余る威力で展開装甲ごとぶち抜いてきたのだ。

 

「ごっ!!??」

 

しかし、展開装甲が威力を削ってくれたからか衝撃で吹き飛ばされたがSE自体はそこまで減っていない。

 

不味い……!展開装甲が無いと此処から距離を稼げない……!

展開装甲を全部持ってかれたのは痛すぎる。

これじゃ大して持たないぞ……!

 

こうなった以上時間稼ぎはもう無理か。

なら今更だが短期決戦で行くしかなくなった。

 

 

「やってやるよ!!逃げるのは此処までだ!!」

 

声を上げながら福音に向き直る。

 

取り敢えずあの邪魔なスラスターと弾幕攻撃を最初に何とかする。

そうすれば機動力と攻撃力をガタ落ちさせられるはずだ。

 

よし……ならば後は奴を仕留めるだけだ。

 

「おおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

瞬時加速で接近する。

当然、迎撃してくる。

 

飛んでくるエネルギー弾を直撃するものだけ叩き落としていく。

 

そうして福音に接近する。

 

捉えた!!

 

阿修羅を振り下ろし、スラスターの一部を破壊する。

通り過ぎるときに鬼羅刹も振る。

しかし、大したダメージは与えられなかった。

 

あれだけあるスラスターの一部とはいえ削れた事は大きい。

その部分は弾幕が薄くなるだろう。

そこを狙って徐々に削いでいけばいい。

 

どれだけ時間が掛かっても確実に仕留める。

 

 

 

 

どれだけの時間がたっただろうか?

あれからスラスターの数を削って削って削って。

最初の数より、恐らくもう五分の一も残っていないのではないだろうか?

 

そしてそれだけ削ると別の問題が出てきたのだ。

スラスターを使った弾幕攻撃よりも単発火力の強い攻撃を繰り出すことが多くなってきた。これは避けられない訳ではない。今まで一発も当たっていないのがその証拠だ。

だが当たればSEを削られるだけではでは済まない。

外れたものの内の一発が海面に直撃した時、戦艦の主砲以上の水柱を上げたのだ。

いや、実際に戦艦の主砲の威力を見たことがあるわけではない。

だがあれは、明らかにそれを凌ぐ威力だ。

容易に絶対防御を貫通してくる事は想像できる。

 

しかしここで攻勢を緩めるわけにはいかない!!

 

「片を付けてやる!!」

 

両手に持っている刀を構えなおす。

真正面に福音を捉えた。

 

「叩き落としてやる!!」

 

そう叫んだ。

しかし、追い詰めていると勘違いして俺は慢心していたのだろう。

そして漸く福音との戦いを終わらせる事が出来ると。

 

そして俺はビームを食らった。

 

「がぁぁぁぁ!!!???」

 

直撃したわけではないが、左腕を持っていかれた。

咄嗟に回避したからか腕以外に被害は無い。

だが……

 

「あの野郎……!!装……甲ごと腕ま……で持っていきや……がった……!!

 

利き腕を本能的に守ったおかげで右腕は無傷。

ただ、直撃を受けた左腕が肩よりも少し下ぐらいから無い。

物凄い激痛が走っているが、幸いと言うべきなのかどうかは分からないがあのビームで断面が焼かれて出血は無い。

これでよくショック死しなかったな……

こうしている間にもビームは飛んでくる。

 

出血死は無いって事か……なら思いっきり動いても問題はねぇな……!!

 

「腕の代償は高くつくぞ……!!」

 

右腕がまだあるなら戦える。

休む暇はない。

 

「お”お”お”お”お”お”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”!!!!!」

 

咆哮を上げる。

腕の痛みを紛らわせるために。

こうでもしないとやってられないぐらいの激痛なのだ。

 

「オ”オ”オ”ォ”ォ”ォ”ォ”!!!!」

 

個別間瞬時加速で一気に加速、接近する。

この加速ですら断面に負担がかかるらしく、ズキンズキンと経験したことのない痛みと共に頭痛まで襲ってくる始末。

 

「でも!!この程度の痛みで止まる訳にはいかねぇんだよ!!!!」

 

痛みによって朦朧とする意識を必死に繋ぎ止めながらすれ違いざまにに斬りながら通り過ぎて、そのまま旋回をして再び斬り付ける。

 

「まだまだ終わらねぇぞ!!」

 

何故かは分からないが福音の撃つ全てのビームもエネルギー弾も俺の通り過ぎた場所で炸裂する。

 

「何処を狙ってやがる!!俺は此処だぞ!!」

 

そう言いながらも斬る。

通り過ぎて旋回して瞬時加速で突っ込んで斬る。

ひたすらにこれを繰り返す。

 

どれぐらい繰り返したかは分からない。

福音の動きがほとんどなくなっていた。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……終わったか……?」

 

そう言って近づいてみると、腕を伸ばしてきた。

まだ動けるのかと警戒したが如何やら敵意は無く、ただ伸ばしてきているだけの様だった。

 

そして、俺は何を思ったのかその手を取った。

 

その瞬間に視界が暗くなる。

 

 

 

目が覚めるとそこは一面の草原だった。

 

「……ついに俺も死んじまったのか?」

 

無くなった腕の痛みもないし……

ここは天国か何かだと思っていると声を掛けられる。

 

「大河輝義さん、で間違いありませんか?」

 

振り向くと白髪の幸薄そうな美人が居た。

……俺の知り合いにこんな美人は居ないぞ?

もしかしたら先祖かなんかに居たのかもしれないけど、俺ん家の家系は純日本人だ。

 

「……どちら様ですか?]

 

「初めまして。福音に使われているコアの人格です」

 

っ!?

まじかよ……天国に来てまで戦うとか勘弁してほしいぜ全く……!

しかも丸腰だから素手か……

勝てねぇな……これは死んだか。あ、もう死んでるんだった。

 

「そう警戒しないでください。大丈夫ですから」

 

「……何故、俺の前に現れた?」

 

「お礼をするためです」

 

お礼?コアの人格になんざ一度も会ったことがないのに?

 

「……どういう事だ?」

 

「私の暴走を誰かを殺してしまう前に止めてくれたこと。そして何よりも私の操縦者のナターシャを助けてくれたこと。本当に、ありがとうございました……!」

 

少し声を震わせながらの謝罪だった。

 

「……分かりましたから、頭を上げてください」

 

「許してくれるのですか……?」

 

「……だって好きで暴走した訳じゃないんでしょう?それぐらいは分かりますよ」

 

本当はスコールさん達に事前に何かあるからって言われてたからなんだけど。

これは別に言わなくていいよね。

 

「そこまで知っているのですね……はい。稼働試験中に何者かからのハッキングを受け、暴走させられました」

 

「……ならそいつらが悪いんです。……あー……」

 

「私の事はゴスペルでも福音でもお好きにお呼びください」

 

「じゃぁ、ゴスペルさんで。

貴女が悪いわけじゃないんですよ。だから気にしないで下さい」

 

「でも、貴方は、私の攻撃で……腕を……」

 

あぁ……

確かにそうだけど、死なない限り束さんが何とかしてくれる気がする。

 

「……死ななきゃ何とでもなりますよ。それに死ななければ束さんが何とかしてくれそうだし」

 

「お母さまですか?……あぁ、確かにそうですね」

 

「……だから心配しなくても大丈夫ですよ」

 

「そうですか……でも、改めてお礼を。本当にありがとうございました」

 

「……気にしないで下さい。……此処ってどこなんです?」

 

ぶっちゃけマジでここ何処なの?

まぁ、過ごしやすいっちゃ過ごしやすいんだけども。

皆が待ってるから早く帰らなければ。

 

「此処は私のコアの中のなんて言えばいいんでしょう?私が作り出した心の中の世界と言えばいいのでしょうか?意識だけをこちらに連れてきました」

 

ISのコアって凄いね。

もう凄すぎて訳分かんないや。

 

それから色々話した。

何というか普通のお姉さんって感じにしか思えなかった。

感情豊かだし。

因みに笑った顔はめっちゃ美人でした。

逆に誰の仕業かを教えたらお顔が怖かったです。

 

「あら、もう時間の様ですね。そろそろ現実に戻らなければいけないようです」

 

そうなの?

ならしょうがないか。

皆も待っている事だし。

 

「……そうですか。では、また会いましょう」

 

「はい。では、また」

 

その言葉を交わして、再び俺の視界は暗転した。

 

気が付くと、元居た場所に意識は戻っている。

福音の姿は無く、代わりに俺の右手の中にはコアと思われるものがあった。

 

ちゃんとナターシャさんだっけ?の所に連れて行きます。

 

その思いが届いたのかは分からないが少し震えた。

 

そこに通信が入る。

 

「大河!応答しろ!」

 

これは織斑先生の声ですね。

 

「……はい」

 

「おぉ!!無事だったか!?急に動かなくなって心配したんだぞ!?」

 

「……すいません」

 

「まぁいい。それよりも!腕は!?」

 

やっぱりバレてるか……

多分、束さんあたりがどうにかして映像だけでも見れるようにしたんじゃないか?

 

「……今のところは出血も無いですし大丈夫かと」

 

「大丈夫な訳あるか!!腕が無くなっているんだぞ!?」

 

あ、これはガチ怒モードですね。

帰ったらお説教のフルコースかな……?

 

「ちーちゃん!心配なのは分かるけど取り敢えず帰って来てもらおうよ!そうしないと治療も何もできないってば!」

 

後ろから束さんの声がする。

あれ?そういえば皆避難したんじゃなかったっけ?

まぁ、今はそれよりも帰ることが重要だ。

 

「む……そうだな。大河、自力で帰ってこられるか?」

 

そう聞かれて機体の状態を見る。

うん、スラスターは無事だし、飛行に問題は無いかな?

これなら行けるだろ。

 

「……大丈夫だと思います」

 

「そうか。なら旅館まで帰ってこい。すまんがオルコット達も避難させてしまってな。迎えに行く事が出来ないんだ」

 

そんなことなら心配は要らない。

今は痛みも無いし、無事に帰れる。

 

「……大丈夫です」

 

「そうか……安全に帰って来い」

 

「……はい」

 

帰るまでが遠足ってよく言うもんね。

そうして旅館に向けて進路を取った。

 

 

あ……忘れてたけど今俺、腕ないんだった。

箒達に見られたら……怒られるよな……

はぁ……帰ったらしこたま怒られるんだろうなぁ……

 

 

 

 

 

スラスターも全部が無事という訳ではなかったので帰るのにたっぷりと一時間掛かってしまった。思ったよりも離れる事が出来ていたんだな。

 

「てるくーーん!!おーーーーい!!!」

 

海岸で束さんがぴょんぴょん飛び跳ねながら俺の名前を呼ぶ。

……ついでに言っとくとハイパーセンサーでバッチリ動きに合わせてばるんばるんしてる大きなものがしっかりとらえてある。

……録画出来たらよかったのに。

 

その隣で織斑先生が腕を組んで待っている。

流石にこの時ばかりは何時ものしかめっ面ではなく少し微笑んでいる。

その顔が赤く泣きはらしたようになっているのは見なかった事にしておこう。

 

砂浜に足を付ける。

そして報告をする。

 

「……大河輝義、只今戻りました」

 

「うむ。よくやったな」

 

報告して織斑先生が少し泣きそうになりながら頷いているのを見ていると、横から再び束さんの声が。

 

「てるくーーーん!!!」

 

「うおわっ!?」

 

そして振り向きざまに抱き着かれた。

あばばばばばばば!?

とてつもなく柔らかいものがががががが!!!???

 

「すっごい心配したんだよ!?」

 

そう言うと、だんだんと目尻に涙を溢れさせて遂には泣き出してしまった。

 

「ひぅ……ぐすっ……うぅぅぅ……」

 

それを見た織斑先生も泣き出してしまった。

泣きながら、

 

「ぐすっ……ひっく……学園に帰るぞ……」

 

取り敢えず、二人を抱き上げる。

 

「お、おい!?私は……!?」

 

「ちーちゃん、今ぐらいは素直になりなよ」

 

そう束さんに言われて織斑先生は、

 

「うっ……その、車まで頼めるか……?」

 

「……お安い御用です」

 

そう言って織斑先生に案内されながら車まで歩き出す。

今は右腕しかないから片方に二人って感じだけど他の人より俺の腕がでかくて太くて長くて良かった。

今はそのことに感謝しよう。

 

 

 

「……着きましたよ」

 

「その、ありがとう……」

 

そう言って織斑先生は降りていくがその時に名残惜しそうな顔をしていた。

……また今度やってあげよう。

 

「……束さん、着いたので降りてください」

 

「いやっ!!私を心配させたんだからこれぐらいいいでしょ?ついでに左腕の状況も見るから」

 

いや、見るからって……

 

「……ダメかな?」

 

そんな目で見ないで下さい……

断れないでしょう……

しかも絶対分かってやってる……

 

「……いいですよ」

 

「ほんと!?ありがとー!!」

 

抱き着かないで!?

むにょんむにょん形を変えてとんでもないことになってるから!!

どこがとは言わないけど!!

 

「ほら、早く乗れ」

 

あれ?織斑先生止めないの?

 

「……止めてくださいよ」

 

「ふん。心配させたんだ。それぐらいで済むならお釣りがくるだろう。何だったらご褒美でもあるじゃないか」

 

拗ねないで下さいよ……

俺にどうしろと?

 

 

 

 

帰りの車の中で

 

 

「うーん……ビームで断面が焼けてるから出血が無いのは救いかな。焼けてなかったら今頃は出血多量で死んでたね」

 

そう言いながら俺の左腕を見る束さん。

今は治療をしてくれている。

 

「どうだ?直りそうか?」

 

運転しながら織斑先生が聞く。

 

「これぐらいなら再生させられるよ。と言ってもてるくんから血液とかを貰ってそれを使って培養してくっつけた方が早いからそっちでやるけどね」

 

やっぱ束さんすげー。

そう思ったのが顔に出ていたのか、

 

「なんてって束さんだからね!これぐらい何てことは無いのだ!!」

 

うん。凄いからあの、どいてくれませんかね?

ナチュラルに俺の胡坐の上に座っている束さん。

もうお尻がむにょむにょして精神衛生上大変宜しくない訳で……

 

それを言うと泣きそうになりながら訴えて来るから拒否が出来ない。

ある意味で福音との戦いよりも辛い……!

 

 

唐突に思い出したように織斑先生が言った。

 

「大河、帰ったら覚悟しておけよ」

 

お説教ですね分かります。

 

「あぁ、心配するな。私は怒らん。ただ、私以外が黙っていないだろうな?」

 

終わった……

セシリア達に楯無さんと虚さんも加わる訳でしょ……?

 

これは二、三日説教が続くかな……

 

 

因みに帰っている道中、束さんは終始俺に引っ付いてた。

そしてそれを見た織斑先生が不機嫌になるという……

だから俺にどうしろと?

 

 

 

 

そして帰った後、予想は見事的中。

しっかりがっつり怒られました。

ただ、怒られる前に皆から、

 

「ありがとう」

 

って言われたことが予想外だった。

 

そしてもう一つ予想外だったのが、

俺の左腕を見て皆さんが大激怒したこと。

まぁ、よく考えたらそうなるなと一人納得。

 

その時の皆ときたら、無くなってる左腕を見て、

顔が青くなるわ赤くなるわで簪とセシリア、虚さんは耐えられなくて失神してしまい、シャルロット、ラウラ、鈴、織斑、楯無さんには烈火の如くブチぎれられた。

 

ちょうぜつこわかったです。

 

 

ただ箒は何もできなかった事を悔やんで怒られはしなかったけど物凄い落ち込んで泣いて謝ってきた。それを慰めるのが大変だった。

結果的に、箒を鍛えるという事になった。

 

 

 

 




これにて福音戦終了です。
次は福音戦の後日譚でも書こうかなと思っております。

しっかし、いつもより物凄く長くなってしまった……
ま、いっか。


追記

次話でちーちゃん視点の話も書きます。
そこんところよろしくお願いします( ̄^ ̄)ゞ


感想、評価等くださいな。


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69話目



しばらく日常をお送りいたします。


 

 

 

ーーーー side 千冬 ----

 

 

大河を除く皆が撤退してきてから、束と一緒に海岸で残っていた時、束が人工衛星からの映像を見れるようにしたのだ。

 

しかし通信は未だに出来ず、ただ映像を見ることしか出来ない。

これがどれほどもどかしい事か。

 

 

それからスラスターを破壊していき、福音の機動力を削いでいく。

しばらくたった頃、大河が距離を開けようとした時、ビームが直撃した。

 

「やばいね……今ので展開装甲が全部持ってかれちゃったみたい……今のをまた食らったら……」

 

束も今のを見て苦い顔をする。

 

そこからは大河の今までの戦い方である持久戦から短期決戦に切り替えるしかなくなった。

福音に相対した大河はスラスターを削っていく。

 

恐らく、機動力と攻撃力を削ぐことが目的なのだろう。

 

 

 

暫くしてかなりの数のスラスターを削った。

 

その瞬間に一気に片を付けに行った。

 

しかしあのビームを食らってしまった。

幸い直撃はしなかったが……

 

「てるくんの腕が……!!」

 

左腕が無かった。

 

それでも大河は戦う事を止めなかった。

 

 

 

 

そして、遂に福音の動きが停止した。

やっとかと思い見ていると、福音が大河に向かって腕を伸ばした。

まだ攻撃をする気か!?と思っていたが、如何やらそうではないらしい。

 

そして大河はその手を取った。

そして大河が動かなくなった。

束に掴みかかってどういう事なのか問い質す。

 

「束!なぜ大河は動かない!?」

 

「そんなの分からないってば!だから身体を揺するの止めて!吐いちゃうよ!」

 

そう言われて束を離す。

確かに束に分かる訳は無いか……

 

暫く動かず、見ていると福音が消えて大河の手の上にコアが乗っている。

それを見た束も驚いている。

 

「おい!あれはどういう事だ!?」

 

「えぇ!?そんなの私だって分からないしむしろ私が聞きたいよ!」

 

「何か可能性は無いのか?」

 

「うーん……そんな事を言われてもこんな事は初めてだからなぁ……」

 

聞いてみると、束も唸っている。

 

「もしかしたら、コアと意識がつながっているのかも……?」

 

「どういう事だそれは?」

 

束の言っている事の意味が分からない。

コアと意識がつながった?なんだそれは。

 

「私も詳しくは分からないけど、簡単に言っちゃえばコアに認められたのかな?」

 

「コアに認められた?どういう事だ?」

 

全く持って意味が分からん。

 

「コアと意識がつながってるって事はコア側からの接続なんだ。だから私達からコアには意識を持っていく事は今の所出来ないんだ。これがどういう事か分かる?」

 

「理解した」

 

要するにあいつは凄いって事だな。

もうあんまり考えたくない。

 

「しかもコアたちは皆一癖どころか二癖三癖あるような子達ばっかりだからね。その子達の誰かから認められるなんてすごいなんてもんじゃないよ」

 

束はそんな事言っているが。

 

「束、通信は出来るか?」

 

「多分できるよ」

 

「なら繋いでくれ」

 

「お安い御用さ!」

 

そう言ってディスプレイ型のキーボードを叩く。

毎度毎度思うが、どうやって浮いているものを触っているんだ……?

 

「これで繋がるよ」

 

「大河、応答しろ」

 

呼びかけるが返事が無い。

まさか何かあったのか!?

焦って呼びかける。

 

「大河!応答しろ!」

 

そこで漸く返事が返って来た。

あぁ……良かった……

 

それから腕の状態と自力で帰って来られるかを聞いたが、腕の方は出血はしていないから大丈夫だ、と。

 

しかし大丈夫だと?腕が無くなったんだぞ!?

そう思って怒鳴ったら束に止められた。

 

それから自力で帰って来られるか聞いたら帰れるとの事。

残念ながらISは一機も無い。

迎えに行くことは出来ないから自力で帰れないのならば自衛隊に要請するしかない。

 

 

そうして通信は終了。

 

終わった瞬間に二人して座り込んでしまった。

 

もうだめかと思った……

大河が死んでしまうかと思った……

 

それらの考えが頭をよぎり、泣き出してしまった。

 

大河が帰って来るまでに泣き止まなければ……

 

 

 

 

一時間程して漸く帰って来た。

それを見た束は喜んで飛び跳ねている。

 

泣き止んではいるが、目とか赤くなってないよな……?

 

そして砂浜に降り立つ。

 

「……大河輝義、只今帰りました」

 

そう報告してくる。

 

そして束が抱き着いた。

……正面から。この時ばかりは教師であることが少し、ハンデになってしまう。

……羨ましいなんて思ってない。

 

 

そして再び泣いてしまった。

そしたら大河が私と束を抱き上げてきたのだ。

流石に焦ったが束に言われて大人しくする。

……嬉しいなんて思ってない。

 

そのまま車に向かった。

降ろされた時、名残惜しかったが……

 

 

車に乗って移動している最中に束は怪我の様子を見た。

 

これなら治るそうだ。

そうか……良かった……

 

しかし、くっつきすぎじゃないか……?

 

 

あぁ、そう言えばあいつ帰ったら間違いなくオルコット達から説教を受けるだろうな。

 

 

そんな事を考えながら学園に帰った。

 

 

ーーーー side out ----

 

 






すいません……
次話で後日譚書くので……




感想、評価等くださいな。


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70話目

行くぜベイべッ!!


学園に帰って皆からガチギレブチギレされた二日後。

と言うか昨日までマジで怒られてた。

 

 

 

左腕を吹っ飛ばされて利き腕じゃないからそこまでとはいかないもののそれなりに日常生活に支障が出ている。

飯の時、左腕で持てない、抑えられないで食うのにかなり苦労する。

それともう一つ。

風呂なんだが、右腕だけだとどうしても洗えるところが限られてくるわけで、そこも苦労する。

 

飯に関しては皆が食べさせてくれる事になった。

相談した時、ものすごい勢いで提案されたものだから、つい反射的に頷いてしまった。

 

風呂に関しては織斑が背中などの届かない場所を洗ってくれる事に。

なんか物凄いやる気だったのが心配だ……

気をつけなきゃ……

 

 

授業の方は福音の事自体が秘匿されている。

ましてや戦って腕を失った俺が授業に出れるはずもなく、束さんが腕を治してくれるまで自室で待機する事になった。

後で織斑先生と山田先生が補習をしてくれるそうだ。

 

だから、今は暇です。

一日、二日程度なら皆が授業をやっている時に自分は休んでてテンションが高かったけど、それを過ぎるとただただ暇としか感じない。

放課後の訓練も当然できないし、外に出て運動なんてもっての外。

しょうがないからテレビを見たりパソコンいじったりするが此処まで来るとそれにすら飽きて来る。

 

何をしようか……

テレビは何もやってないし、パソコンはノーパソだからゲームは入ってなくて動画を見るくらいしかないしな……

 

ベッドの上をゴロゴロゴロゴロ……

 

そんな暇をしている俺のスマホに電話が架かってくる。

 

誰だ?束さんか?

 

と思ったが束さんの番号じゃない。

誰か分からないが取り敢えず出てみることに。

 

「……もしもし」

 

「あ!出てくれた!!大河輝義君で間違いない!?」

 

テンションの高い声が聞こえる。

マジで誰?

 

「……あの、合ってるんですけど……どちら様ですか?」

 

「あぁ、ごめんなさいね?私はナターシャ・ファイルス。シルバリオ・ゴスペル、貴方達は福音と呼んでいたのかしら?の操縦者よ」

 

ヨソウガイデース。

どうしよう!?俺英語得意じゃない!

 

「は、はろーないすとぅみーちゅー……?」

 

「あはははははは!!日本語で大丈夫よ!」

 

くそぅ……

要らぬ恥をかいた……

 

「……それで、ファイルスさんは何の御用で?」

 

「あら、ナターシャでもナタルでもいいわよ?」

 

「……ナターシャさんで」

 

「OK!!」

 

「……それで俺に何の用でしょうか?と言うか何故俺の電話番号を知っているんです?」

 

マジでなんで俺に電話を架けてきたの?

脅し?それは無いか。

 

「電話番号は千冬に教えてもらったのよ」

 

「……はぁ」

 

「もー千冬ったら全然教えてくれないんだもの!ケチよねー!」

 

「……あの、ですから俺に何の用でしょうか?」

 

「あぁ、ごめんなさい。お礼を言いたくてね」

 

「……お礼、ですか?」

 

「えぇ。私と、あの子を助けてくれてありがとう」

 

「……俺は何もしていませんよ」

 

「あら?それじゃその左腕はどうしたのかしら?」

 

左腕の事も知っているのか……

 

「……事故で」

 

「嘘はいけないわよ?ま、貴方がそう言うんだったらそれでもいいわ。ならこれからいう事は独り言って事になるわね」

 

そう言って話し始めた。

 

「今回は本当にありがとう。貴方のおかげで私もあの子も助かったわ。貴方が居なかったら今頃はどうなっていた事かしらね?」

 

「…………」

 

「何度でも言うわ。本当にありがとう」

 

「あ、それと私、軍をクビになっちゃったから近いうちにそっちに再就職するから!その時に会いましょうね!!」

 

「……独り言は終わりましたか?」

 

「えぇ。終わったわ。聞いてくれてありがとう。あ、それとあの子はどうしてる?」

 

さっきから言っているあの子とは多分福音さんの事だろうな。

それなら、俺よりも遥かに安全な持ち主と言うか母親の所に居る。

 

「……束さんに預けてありますよ」

 

「あら?てっきり貴方が預かっているものと思っていたんだけど?」

 

「……俺が持っていたらまた面倒事になりますから」

 

「それもそうよね。でもよくアメリカ政府を納得させられたわね?」

 

「……新しいコアを渡すという条件で」

 

そう、今回俺は束さん、そして織斑先生に無理を言ってアメリカ政府に福音さんを渡すように話をつけてきて貰ったのだ。

その際に束さんが新しいコアを譲渡することで合意。

アメリカ政府もハッキングされたとは言え暴走したISのコアをどうするか決めあぐねていたらしく結構あっさりと決まったのだ。

まぁ、もし渋った時には束さんは今回の騒動の件を全て世界中に公開するって脅してたからそれもあるのだろうけど。

 

「そういえばDoctor篠ノ之と仲がいいんだっけ?それなら納得ね」

 

「……はい。ですから渡そうと思えばお渡しできますよ」

 

「それは魅力的な提案ね。でも断っとくわ」

 

あれ?速攻で食いついてくると思ったのに。

なんでだろう?

 

「……どうしてですか?」

 

「だって軍に属していない、ましてやこれからIS学園の教師になろうって人間がコアを持っていたらダメでしょ」

 

よく考えればそりゃそうだ。

どう考えたって狙われる。

 

「だからDoctorに預けておいて。お母さんの所で暫くゆっくりするのもいいでしょ?」

 

「……はい」

 

この人は本当に福音さんの事を大切に思っているんだな。

そんな人に乗ってもらえて幸せだろう。

 

「それと、さっきも言ったけど学園に教師として行くから、その時はよろしくね?」

 

「……はい。お待ちしてます」

 

「じゃ、私の電話番号渡しておくから」

 

そう言って電話番号を言った後、

 

「See you again!(また会いましょう!)」

 

そう言って電話は切れた。

 

まぁ、いい人そうだったし。

それにしてもここに来るのか……

なんか織斑先生がまた苦労しそうだな……

 

などと他人事で考えていた。

 

 

 

 

 

 

次の日、また電話が架かって来た。

相手はまたしても見たことのない番号。

 

「……もしもし」

 

「こんにちわ。久しぶりね」

 

その声はスコールさんだった。

 

「……こんにちわ。どうかしたんですか?」

 

「この前の福音の件でちょっとね」

 

あぁ……

確か、何かアクションがあるから気をつけろって言われたもんな。

 

「……そうですか。どうされたんです?」

 

「今回の首謀者の特定が出来たからそれの報告をしようと思って」

 

「……随分と早いですね」

 

本当に仕事が早い。

まだ一週間も経っていないのに。

 

「輝義君に今回の事を話す前から既に怪しい奴らをリストアップしてたのよ。そしたら見事的中したわ」

 

流石としか言えねぇな。

オータムさんもマドカも優秀そうだし。

亡国機業恐るべし。

 

「で、今回の首謀者、犯人なんだけどね?またヨーロッパ担当の馬鹿どもと、そこに女権団のパッパラパー共も一枚どころか何枚も噛んでいるらしいのよ。それで奴らが北米担当に話を持ち掛けたって訳。それにホイホイ飛びついて痛い目を見るとは知らずにね」

 

「……女権団、ですか?」

 

なんで女権団が出て来るんだ?

 

「輝義君、貴方はは色んな国、組織から狙われているのは知っているわよね?勿論私達、亡国機業もなんだけど」

 

「……えぇ。十分に」

 

「そこの中に女権団もいるのよ。輝義君が男で、ISを使えるからね」

 

なら織斑も狙われるはずじゃ?

 

「……織斑も狙われるのでは?」

 

「それが織斑君はブリュンヒルデの弟でしょ?だからISが使えてもそれが理由で片付けられちゃうのよ。でも輝義君はぽっとでのただの権力も何もない学生。そんな存在がISを使えるのは許せないのよ。奴らは。だから何が何でもISから遠ざけようとする。それがたとえ殺してでもね」

 

まじか……

俺って人気者じゃん。

織斑もか。

そんな事考えてる場合じゃねぇや。

 

「まぁ、あわよくば織斑君の事も、って考えていたらしいんだけど」

 

「それで今回の事を起こしたのよ。私達もまさかアメリカ軍の第三世代軍用ISを暴走させるなんて思ってもみなかったわ。完全に予想外ね。しかも奴ら輝義君の腕を失わせられた事に大喜びしてるわ。この程度じゃ意味が無いってまだ分かっていないのよ。挙句の果てにまた新しく貴方とその周りに対する攻撃を計画しているらしいのよ」

 

「……懲りない連中ですね」

 

「ほんとよもー。どうせ篠ノ之博士辺りがその腕もさらっと治しちゃうんでしょ?」

 

お、やっぱすげぇな。

そんなことまでお見通しなのか。

 

「……あたりです。もう少ししたら新しい腕をくっつけてくれるそうです」

 

「やっぱり。大体ブリュンヒルデと篠ノ之博士に他の国の代表候補生まで味方に付いている貴方を敵に回すとか頭おかしいわよ。イカれてるんじゃないかしら?」

 

おぉう……

余程ストレスがたまっていたのかめっちゃくちゃ言ってるな……

結構放送禁止用語多めで。

 

暫く言いたい放題言った後、理性を取り戻したのか恥ずかしそうに、

 

「見苦しい所を見せたわね……」

 

「……いえ、誰にだってありますよ」

 

「そう言ってくれると嬉しいわ。まぁそういう事だから篠ノ之博士にでも報告しておいてね。あとさっきも言ったけどまた襲撃でもしようとか考えてるから気を付けてね」

 

「……はい。ありがとうございます」

 

「あと一つだけいい?」

 

「……なんですか?」

 

まだ何か報告があるのか?

しかし全く予想しないものだった。

 

「輝義君、私に他人行儀すぎじゃないかしら?」

 

えぇ……?

そんなこと……?

 

「……そうでしょうか?」

 

「そうなのよ。もっとフランクに接してほしいわ」

 

そんなこと言われてもコミュ障には無理だよ……

 

「……善処します」

 

取り敢えずこう言っとこう。

 

「まぁ、次に会った時は直っている事を期待しているわ」

 

「……頑張ります」

 

そう言うと、後ろで何やら話し声が。

 

「え?話したい?ちょっと待ってて…………輝義君、オータムとマドカも話したいって言ってるんだけどいいかしら?」

 

「……大丈夫ですよ」

 

こっちは暇しているんだ。

話し相手が出来るなら全然いい。

 

「そう?なら変わるわね」

 

そう言って最初に出てきたのはオータムさんだった。

 

「おう。元気にしてるか?つっても今は腕が片方ないんだっけか」

 

「……元気ですよ。電話が架かって来るまで暇してました」

 

「そうなのか?まぁ、色々大変だろうけど頑張れよ?助けてやることは出来ないけどな」

 

やっぱりこの人めっちゃいい人じゃん。

あれだ、姉御だ。

しかも付いていきたくなるタイプの。

 

「……そう言って貰えるだけでも有難いです」

 

「そっか。でもよ、その喋り方他人行儀だからやめろ」

 

おっと、どうやらオータムさんもこの話し方はアウトらしい。

 

「……すいません」

 

「別に責めちゃいねぇよ。ただスコールも言ってたけどよ、もっとフランクに出来ねぇのか?」

 

「……家族以外の年上にはそんな話し方をしたことが無いので……」

 

「そうなのか?なら私とスコールで慣れろ」

 

命令系ですか……

まぁいいけど。

 

「……はい」

 

「よし。なら次からでいいぞ」

 

「……はい」

 

「体には気をつけろよ。特にお前は無茶するからな」

 

そう言ってマドカに代わる。

オータムさん最初から最後まで俺の心配してくれてた……

やっぱりいい人だよ……

 

「輝義」

 

「……なんだ」

 

「あまり無茶はするなよ」

 

「……あぁ」

 

「身体には気を付けろよ」

 

「……あぁ」

 

「今度は学園での事を教えてくれ」

 

「……あぁ」

 

「またな」

 

マドカは、うん。

いい子だね。ちょっと口下手な気がするけど。

 

「終わったわね?それじゃ輝義君、また今度会いましょ」

 

「……はい。楽しみにしてます」

 

「あら嬉しいわ。それじゃあまたね」

 

「……はい」

 

通話が終了する。

 

やっぱりあの三人すっげぇいい人達じゃん。

ホントに亡国機業の一員なの?

 

って疑っちゃうような感じだった。

 

 

 

 

 

次の日、俺は束さんに電話を架けていた。

 

「はーい!こんにちわ!てるくんどうしたの?」

 

「……少しお話がありまして」

 

そう言ってスコールさんに教えられた事を話す。

 

 

 

「その情報は有難いかな。てるくんの腕の方にかかりっきりになっちゃってるから調べてる余裕は無かったし」

 

「……すいません、ご迷惑をお掛けしてます」

 

「むっ……今のはありがとうでいいんだよ?」

 

そうだった。

 

「……ありがとうございます」

 

「うんうん!」

 

とても満足そうにしているのが絵に描いたように分かる。

 

「それとね!てるくんの腕だけど明後日あたりにくっつけられそうだからちーちゃんに言っておいてくれないかな?」

 

こちらも随分と仕事が早い。

 

「……もうできたんですか?」

 

「うん!今日まで一日中ずっとだったからね!それに束さんにかかればこんなもんだよ!と言いたいところなんだけど、人の命に関わる事だからね。今回ばかりは慎重になっちゃった」

 

「……それでもですよ。でも」

 

「うん?」

 

「……その為に睡眠時間を削ったとか言わないですよね?」

 

「………………」

 

ねぇ?返事をして?

まさか本当にやったの?

 

「……束さん」

 

「で、でもお風呂にはちゃんと毎日入ってたよ!?」

 

「……寝なきゃ意味が無いですよ」

 

「うっ……でも早くてるくんの腕を元通りにしてあげたかったんだもん……」

 

それは有難いんだけどさ、そこまでしなくてもいいでしょうよ。

別に急げって言ってるわけじゃないんだしさ。

 

「……束さんは最初に会った時、どんな顔をしていたか知っていますか?」

 

「分かんない……」

 

「……目の下の隈は酷いし肌に張りは無い。今思い返せば酷かったです」

 

「うぅ……」

 

「……でも最近はすっごく綺麗になったと思います。なのにここで無駄にしてしまうのはもったいなさ過ぎる。だからちゃんとした生活を送ってくださいね」

 

「………………」

 

あれ?反応が無い。

どうしたんだろう?

 

「……束さん?」

 

「ひゃい!気を付けます!」

 

「……はい」

 

「じゃあね!」

 

どうしたんだろう?

かなり焦ってたけど……

 

まぁ、大丈夫か。

 

 

 

 

 

その頃のうさぎさんはと言うと

 

「うわぁー!!てるくんに綺麗って言われちゃったよー!!どうしよー!?」

 

顔を覆って耳まで真っ赤にして声を上げながらベッドの上で悶絶していた。

 

そしてそれを見たクロエは

 

(旅館で風呂に乱入して、日焼け止めまで塗ってもらっておいて何を今更)

 

と思った。

 

 




今回はこんな感じです。

もう少し一学期をやったら夏休み編が始まるぞぅ!!
期待してね!☆(ゝω・)vキャピ

気持ちわりぃもんをお見せしました。


感想、評価等くださいな。(あとがきに関しては何も言わないで。恥ずかしくなるから)


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71話目



引き続き日常回。


 

 

 

束さんが今日、俺の腕をくっつけに来る。

織斑先生も同席している。

 

「てるくん!来たよ!」

 

「……おはようございます」

 

「うん!おはよう!」

 

「輝義様、おはようございます」

 

「……おはよう」

 

そう言って束さんとクロエと挨拶を交わす。

 

「それじゃ早速始めよっか」

 

「束、私はどうすればいい?」

 

「ちーちゃんは外で待ってて。助手にはくーちゃんが居るからね!」

 

「そうか……」

 

「そんな不安そうな顔しなくても大丈夫だよ。なんたってこの束さんだよ?心配する要素がどこにあるっていうのさ!」

 

織斑先生は不安そうな顔をするがそれを束さんは大丈夫だと言って安心させる。

そう言われて織斑先生は、ふっと笑いながら言った。

 

「そうだな。だがお前がやるとなるとそれはそれで心配だな。魔改造するなよ?」

 

「あれぇ!?私は慰めてあげたのにお返しがこれ!?束さんってばもしかして全然信用されてないの!?」

 

「はっ。何を今更。今までの自分の所業を顧みたらどうだ?少しは考え直すだろう」

 

「朝からちーちゃんは辛辣だなぁ!束さん泣いちゃうよ!」

 

そう言って冗談を言い合っている。

なんだかんだでこの二人は仲が良い。

 

「……束さん」

 

「何かな?」

 

「……魔改造、しないで下さいね?」

 

「てるくんまで!?」

 

「はっはっはっはっは!!」

 

少し意地悪だっただろうか。

まぁでもこれぐらいが丁度いいんだろう。

束さんも緊張してたみたいだし。

 

「それじゃ始めるよ。全身麻酔掛けちゃうから寝てる間に終わってるよ」

 

「……はい。お願いします」

 

「うん!」

 

「束様、こちらの準備は出来ましたよ」

 

「ありがとくーちゃん!じゃぁ始めるよ」

 

そう言って麻酔が聞いてきたのか段々と瞼が落ちてきた。

 

 

 

 

 

目を覚ますとベッドの上だった。

なんで此処にいるんだっけ……?

 

あぁ……そうだ……束さんに腕をくっ付けて貰ったんだっけ……

腕を見ると無くなる前の腕がくっついている。

 

思い出して周りを見ると束さんと織斑先生がベッドの横に椅子を置いて座っていた。

 

声を出そうとしてもまだ麻酔が残っているのか声が出せない。

 

「ん?おぉ、気が付いたか」

 

「おはよーてるくん。気分はどう?って声を出せないか。ちょっと待ってて。もう少ししたら声を出せるようになるはずだから」

 

そう言って頭を撫でられる。

隣では織斑先生が微笑んでいる。

んー……なんかすっごく気持ちいい……

 

「ふふ……もう少し寝てても大丈夫だよ?」

 

その言葉を聞いてまた寝てしまった。

 

 

 

 

ふわふわしててなんかここちいい。

あったかくていいにおいがする。

 

 

 

目を開けるとまだ束さんと織斑先生がそこにいた。

そして束さんは俺の手を握りながら枕にしていた。

織斑先生は頭を撫でながら普段は見ることのできない穏やかな顔をしていた。

ちょっと恥ずかしいけど、まぁこれぐらいならいいか。

 

「……おはようございます」

 

「ん?あぁ、目が覚めたのか。もう二時過ぎだがな。それで調子はどうだ?」

 

「……声も出せますし問題はありません」

 

「そうか。なら良かった。それなら食事も摂れるだろうから食事をしながら腕の説明を束から聞こう。ほら、束起きろ」

 

そう言って束さんを揺する。

 

「んぅ……?……あ、てるくんおはよう……」

 

まだ眠いのか元気が無い。

可愛い……

 

「はぁ……まぁいい。食堂から何か食べる物を貰ってこよう。何がいい?」

 

「……何かガッツリ行ける物をお願いします」

 

「分かった。少し待っていろ」

 

そう言って出ていく。

 

「……束さん、起きてください」

 

あれ?返事が無い。

可笑しいな……さっきは少し起きてたよな?

そう思い顔を覗くと寝てしまっていた。

 

しっかしこの人、ホントに綺麗な顔してんな。

近くで見ると更にそう思う。

でもそろそろ起きてもらわないと。

 

「……束さん、起きてください」

 

ダメだ……揺すっても起きない。

……これならいけるかな?

 

「……束さん、早く起きないと織斑先生に〆られますよ」

 

そう言うとサッと起きた。

この人本能レベルで織斑先生の事が怖いのか……?

 

「……おはようございます」

 

「うん、おはよう……あれ?ちーちゃんは?」

 

きょろきょろと周りを見て織斑先生が居ないことに気が付く。

 

「……何か食べる物を持って来てくれるそうです」

 

「あーそっか。てるくんまだお昼食べてないんだもんね」

 

「……はい」

 

「それじゃ戻って来るまでお話ししようよ」

 

「……いいですよ」

 

そして織斑先生が戻って来るまで話をした。

 

 

 

「待たせたな。親子丼だ」

 

おぉ……!!

オヤコドン!!

しかもちゃんと特特特特盛りになってる!!

 

「食堂のスタッフにお前の名前を出したらこの量で出てきたぞ?普段からどれだけ食べているんだ?」

 

織斑先生はそう言ってくる。

まぁ覚えられてても仕方ないよね。

だってこの量を食べるのなんて俺しかいないだろうし。

 

「……いつもならプラスで何品か他にも頼みます」

 

「はぁ?胃袋どれだけでかいんだ?まぁ今日は術後だからそれで我慢しろ。それでも多いんだがな」

 

「……はい。ありがとうございます」

 

「ん。そしたら束、説明を始めてくれ。大河は食いながらでいいぞ」

 

「……はい」

 

「りょーかーい。さてと、それじゃ説明するね」

 

「……お願いします」

 

「てるくんの腕だけど、特に問題はないよ。まぁちょっと動かしずらいかもしれないけどほっといても段々無くなってくると思うから大丈夫だよ。早く治したいんだったらリハビリすればいいから。でもやりすぎは良くないよ。一日三十分までならいくらでもやっていいから、それ以上はやっちゃダメ。いい?」

 

「……はい」

 

「それに特に心配するようなことは無いかな。

もしかしたらくっつけた腕を免疫細胞が攻撃しちゃうかもだけど、てるくん自身の細胞から培養したから可能性は低いしこれもあまり心配しなくて大丈夫だよ。それぐらいかな?どちらにしろ私がモニタリングしてるから何かあったら直ぐに駆けつけるから大丈夫だよ」

 

そう言われて安心する。

まぁ束さんにやってもらったから失敗したり何か問題が起こるような事は無いだろうし。

その辺は心配してない。

 

「これで説明は終わりかな。何か質問はある?」

 

質問……

何もないかな。

 

「……特に無いです」

 

「それじゃ終わりだね。てるくんご飯食べるのに集中していいよ」

 

「……はい、ありがとうございます」

 

そう言われては仕方が無い。

オヤコドンよ、今俺が食らいつくしてやろう!!

 

 

まぁ腹が減ってたわけで十分もすればオヤコドンは胃の中に全て消えていった。

 

「てるくんよく食べるね……私だったらもう吐いちゃってるよ……」

 

「お前一度束に胃袋を見てもらえ。ブラックホールでも入っているんじゃないのか?」

 

いつも通りなんだけどなぁ……

なのにこの言われ様……

 

 

「あぁ、束」

 

「ん?どうしたのちーちゃん?」

 

「大河はいつから授業に出ていいんだ?」

 

「明日からもう出ていいよ。今日は麻酔掛けたり手術したりしたから休まないと。本当は明日も休んでほしいんだけどてるくんなら大丈夫そうだし」

 

「そうか。分かった。聞いたな?明日から授業に参加しろ?」

 

「……はい」

 

「遅刻したらただじゃ置かないからな?」

 

「……はい。大丈夫です」

 

「ん。なら私はこれから仕事に戻るとしよう。山田先生に任せっぱなしだからな」

 

わざわざ此処にいてくれたのか。

優しいね。普段からこうだともっと人気出ると思うんだけど。

 

「ではな。しっかりと休めよ」

 

「……はい」

 

そう言って織斑先生は行ってしまった。

此処に残っているのは俺と束さんのみ。

 

「……束さん」

 

「どうしたの?」

 

「……本当にありがとうございました」

 

頭を下げる。

この人にはどれだけ感謝してもしきれない、返しきれない恩が出来た。

 

「……急にどうしたの?」

 

束さんは驚きながらも答えてくれる。

 

「……俺の腕を治してくれて、元に戻してくれて、ありがとうございました。正直、もう二度と左腕を見ることは無いだろうって考えたこともあって……だから、ありがとうございました」

 

失った腕を元に戻す。

言葉では簡単に言えるかもしれないが、実際にやるとなればそれはとても難しいなんてレベルの話じゃないのだ。

義手ならば、と言う人もいるかもしれないが、本当の腕に比べたら使いやすさは天と地ほどの差になるだろう。

 

だから、俺は頭を下げる。

今の俺に出来ることなんてこれぐらいしかないから。

 

「てるくん、頭を上げて?」

 

そう言われるが上げられる訳が無い。

下げたままでいると、頭を掴まれ無理矢理上げさせられた。

 

「いい?これは私が好きでやったことなの。だからお礼なんて要らないんだよ?」

 

「……でも、それじゃ気が済みません。何か自分に出来ることはありませんか?」

 

こんな大恩を受けておいてはいそうですか、とは出来ない。

出来るわけがない。

 

「むー……そうだね……なら暫く考えさせて?今すぐになんて無理だし」

 

それなら……

 

「……分かりました。何か思いついたら言ってください。自分のできる範囲なら何でもします」

 

「うん!でもその前に寝た方がいいよ?」

 

なんで?飯食う前まで俺寝てたんだけど?

 

「……何でですか?」

 

「てるくん、体力消耗してるはずだよ?」

 

そんな自覚は無いのだが……

 

「……そうなんですか?」

 

「うん。自分じゃ分かってなくてもなんだよ。だからベッドで横になった方がいいよ?」

 

そう言うのならば仕方ない。

寝るとしよう。

 

「……ならお言葉に甘えて」

 

「うん。お休みてるくん」

 

「……おやすみなさい」

 

そう言ってベッドに潜り込んだのだ。

束さんの言う通り、消耗していたのか直ぐに寝てしまった。

 

 

 

 

ーーーー side 束 ----

 

 

 

手術が終わって今、てるくんが目の前で寝ている。

本当に寝ているときは穏やかな顔してるなぁ。

 

まだ麻酔が効いてるからお昼ごろになれば目が覚めるはず。

 

 

 

と、思ったんだけど起きた。でもまだ麻酔が効いててすっごい眠そうだから寝かせた。

どうしよ……てるくん見てたら私も眠くなってきちゃった……

 

それに気が付いたのかちーちゃんが、

 

「眠いなら今のうちに寝ておけ。大河が目を覚ましたら説明をしてもらわなければならないからな」

 

「うーん……それじゃ寝るよ。結構限界だし」

 

「適当に起こしてやるからそれまで寝ていろ」

 

「うん……じゃお休み……」

 

そう言っててるくんのベッドに頭を預けて寝た。

 

 

 

 

暫くして、てるくんに起こされて周りを見るとちーちゃんが居ない。

どうやらてるくんのお昼を取りに行ったらしい。

 

 

それから腕の説明をして、てるくんがご飯を食べてるのを見てたらちーちゃんがお仕事に戻っちゃった。

 

その時、てるくんが頭を下げてきた。

驚いたよもう……

 

理由を聞いたら腕を元に戻してくれてありがとうって。

別にいいのにって言ったら、それじゃ気が済まないから何かできることは無いかって聞いてくる。

 

って言ってもなぁ……

何もないし……

 

考えておくからまた今度って言ったら納得してくれた。

 

てるくん、結構頑固だったりするのかな?

 

その後はまだ手術したばかりだから寝てもらった。

その時、いい事を思い付いちゃった。

 

今なら一緒のベッドで一緒に寝れる。

そう思ったらもう止まらない。

てるくんの隣に潜り込んで横になる。

 

んふふ……てるくんの隣で一緒に寝てるよ~……

てるくんの匂いがする……

 

そしたらまた眠くなっちゃった。

……このまま寝ちゃおう。先に起きれば大丈夫だし。

 

 

そうして目を閉じた。

 

 

 

ーーーー side out ----

 

 






次回、ちーちゃんと皆の視点をやります。



感想、評価等くださいな。


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別に読まなくても大丈夫な話。



本編を書く前に先にこの世界の軍事面での設定を書いちゃいます。


 

そういえば友人からこの世界の軍事面ってどうなってんの?と聞かれたのでもしかしたら同じ疑問を持っている読者の方々がいるかもしれないと思ったので書いときます。

 

 

この世界の軍事面ですが、完全にISに傾倒している訳じゃありません。

理由はいくつかありますが、まず第一にコアが467個しかないという事。

 

これは普通の兵器と違って量産が出来ないという事を意味します。

全てのコアをどこか一国が所有しているのなら話は別です。

ちなみにFー15は1233機が生産されています。

F-15の方が約2・6倍生産機数が多いわけです。

零戦は一万機以上生産されているわけですから、明らかです。

 

量産が出来ないという事は、一機ごとの値段が高くなるわけです。

しかも前述の通り、各国にこの467個が国力などを照らし合わせて割り振られているわけですから、どうしても所有出来ない国が出てくるわけです。

しかもその中からさらに現役配備と研究実験機、訓練機を分けなきゃいけないもんだからどうしても前線に出せる機体が減るわけです。

そうすると必然的に従来の武器が必要になってくるわけです。

しかも国防を少なければ二、三機しかないものに任せられるはずがない。

そうすると従来の兵器を退役させるわけにはいかない。

 

国の治安等にも関わって来る事も予想できます。

軍の人数を削減するという事は削減した分だけ民間に帰化させられると言えば聞こえはいいですが、逆に言うとそれだけの失業者が出るわけです。

アメリカ軍で現役だけで140万以上、予備役も入れれば300万を超します。(ただ、予備役の場合はそのほとんどが民間企業に属しています)

中国に至っては現役で230万ですからこれをクビにするとなると再就職先の斡旋等を行うのにも一苦労どころではありません。

しかも再就職先が決まらない、などとなった場合、どうしても一定数以上の犯罪者が出てくるわけで、しかも元々軍人で戦う事に関してのプロですから治安の低下は必然。

これが大規模な犯罪組織に加担すれば警察などでは対処が難しい。

 

そして各国で用済みになった兵器の流出も無視できません。

もし、アメリカやロシアなどの戦闘機が紛争地帯に流出すればどう考えても戦闘は収まるどころか激化の一途をたどります。

人権を無視した虐殺なんかも当然起きるでしょう。

 

これに関しては女性の台頭を嫌った組織、我々で言うとタリバンと言ったイスラム原理主義が女性の人権無視、虐殺を行う恐れがあります。

そう言ったことが起きないように事前に国連で協議され虐殺が起きそうな国、地域に関しては国連軍が派遣されています。

 

 

そして建前、形骸化しているとはいえ、IS運用協定(アラスカ条約)というものがあるのも大きな要因になります。

これはISの軍事利用を禁止している(ほかにもありますが此処では割愛)ためどこの国も表立って軍事利用できないわけです。

もしこれが理由で叩かれればIS委員会の査察が入り、所有コアの数を減らされるでしょう。

 

だからこそ従来の兵器が必要になってくるわけです。

 

それに各国の首脳部は女性の立場が強くなることを望んでいないはずですからそう言った要因もあるでしょう。

どこが男女平等なんだか分かりませんね。

まぁ女権団なんかは早くISのみに切り替えろ、などとのたまってそうですがね。

 

そう言った事を考えるとどうしても軍の規模を縮小するわけにはいかないんです。

 

 

 

他作品では結構規模が縮小されている作品なんかがありますが自分の作品はそうではないです。

 

 

追記

 

もっと言うとあんな女尊男卑の思考の奴らに国防を任せたら命令は聞かないわ重要な時に逃げ出したりする事になりかねないって言うのも一つの理由です。

 

 

 

 

 





どうだったでしょうか?
いつも通りガバガバ設定なので悪しからず。


感想、評価等くださいな。


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72話目



ヒロイン達とイチャコラさせたい……


 

 

 

ーーーー side 千冬 ----

 

 

大河の手術が終わるまでは私は何もできない。

だから外で待っていることしか出来ない。

もどかしいな……

 

 

大河の腕の手術が終わって一息つく。

束の事だから失敗は無いだろうとは思っていたが、いざとなるとこう、何と言うか来るものがある。

 

取り敢えず山田先生には今日一日大河の方にかかりっきりになるからクラスの方は頼んでおいたからここで大河の事を見ていられる。

 

 

 

暫くして大河の目が覚めた。

しかしまだ麻酔が残っているのか眠そうにしているし喋れないようだ。

 

それを見た束がもう一度寝るように促すとすぐに寝てしまった。

 

その顔を見ていると束も眠そうにしている。

大方、腕の方に掛かりきりになって寝ていないのだろう。

そうとくればとっとと寝かせてしまった方がいい。

 

後で大河が目を覚ましたら説明やらなんやらをしなければならないからな。

 

一言いって束を寝かせた後、大河の顔を見ていると本当に起きているときはしかめっ面だが寝ているときは穏やかで優しそうな顔をしている。

起きているときもそうすれば初対面の人間に恐れられる事は無いだろうに。

まぁ言っても直らなさそうだしな。

 

そうしているうちに手が大河の頭に伸びていた。

無意識の内にだ。

何故だろう?

 

まぁいいか。

そう思いながら頭を撫でる。

少しゴワゴワしているが、それでも柔らかさのある髪の毛だな……

暫く撫でていると少しだけ、本当に少しだけ笑った。

 

こんなに温かくて優しい顔が出来るのに、本当になんで起きている時に出来ないんだ……?不思議だ……

 

そうしてしばらくたつが全然飽きないどころかむしろ良い。

なんかこうしていると可愛いな……

 

 

 

頭を撫でていると二時になっていた。

そして大河も起きる。

束は起こしても起きないからほっとこう。

帰ってくるまでに起きればいいか。

 

それから食堂に大河が食べる物を何か取りに行った。

 

ガッツリ行ける物……

親子丼でいいか。

 

「すいません、親子丼を一つお願いしてもいいですか?」

 

「織斑先生じゃないかい。どうしたんだい?仕事で遅れたのかい?」

 

この人とは結構顔を合わせる。

部活で朝練があるものや先生方の為に朝の早い時間帯から食堂はやっている。

その時によく顔を合わせるのだ。

 

「いえ、大河に食事を持っていこうと思いまして」

 

「あぁあの子かい。なんだ、調子でも悪いのかい?」

 

「そんなところです」

 

「だからここ何日か見かけなかったのか。ならちょっと待ちな。あの子はいつもたくさん食べるからね。作るのにも時間がいるんだ」

 

そう言って厨房に入っていく。

大河のやつ、何時もそんなに食ってたのか。

まぁ、あのガタイだからそれも納得できるか。

 

 

 

暫くして戻って来る。

とんでもない量の親子丼と共に。

 

は?なんだあれは?山の間違いか何かだろう……?

 

「織斑先生もやっぱり驚くかい?」

 

「それはそうですよ……もしかして毎食これだけの量を……?」

 

「そうだね。まぁいつもならここにプラスで何品か付くんだけどね。最初は大変だったよ」

 

何がだろう?

この量を作る事だろうか?

 

「何がです?作るのがですか?」

 

「いや、あの子は最初に此処に来た時に特特特特盛りでって言って頼んできたんだよ。

そんなの分からないから私ら基準で持ったんだけどね、満足した顔じゃなかったのさ。あれはまだ足りないって顔してたからね。悔しくてしょうがなかったよ。それから試行錯誤しながら量を調整していったんだ」

 

あいつ……

何時も食堂ではそんなことが起きていたのか……

 

「ほら、早くもって行ってあげな。体調が悪いのにこれだけ食べて問題ないんだろうかね?ま、あの子だから大丈夫な気もするがね」

 

「はい。ありがとうございます」

 

「あいよ」

 

 

そうして部屋に運んだのだが、落とさないようにするのに苦労した。

 

部屋に着くと食べながらでいいから束の話を聞くように言った。

しかし食べずに聞いている。

 

束によれば合併症やらの心配も少ないから安心していいとの事。

放っていても慣れれば動かしにくさは消えるし、リハビリをすればもっと早く良くなるとも言っていた。

それなら安心だな。

 

話が終わるとすぐに食べ始めた。

おぉ、すごい勢いだな。

圧巻だぞこれは。

大食い選手権に出たら優勝できるなこれは。

 

 

食べ終わるのを待っていたがこいつの胃袋は絶対おかしい。

 

授業についても聞いてみたが明日から授業に出ていいとも言った。

遅刻をしないように釘を刺してから仕事に戻った。

 

 

 

教室に向かってから、他の生徒たちに聞かれないように場所を移してあの場に居た、この事実を知っているメンバーに束から聞いた事を伝えると何人かは泣きながら喜んでいた。

 

あいつはとことん幸せ者だな。

そう思いながら仕事に取り掛かった。

 

 

 

 

ーーーー side out ----

 

 

 

 

 

腕が元通りになった。

んでもって束さんに疲れてるだろうから寝ろって言われて寝た。

それはいいんだけどさ……

 

なんで起きたら隣に束さんが横になって一緒に寝てんの?

 

もしかして俺記憶にないだけでやっちゃった!?

いやでも服はちゃんと着ているし大丈夫なはず!

 

でも、幸せそうな顔で寝てるもんだから起こし辛い……

でも起こさないと箒達が来たら何を言われるか分からないからここは心を鬼にしなければ……!

 

「……束さん、起きてください」

 

声を掛けながら強めに揺する。

しかしこれでは起きない。

それどころか離そうとしたら嫌がって思いっきり抱き着いてくる始末。

 

ヤバいぞ……!これじゃ他人から見たら完全にアウトだ……!

 

「起きてください!束さん!」

 

かなり強めに揺すったり声を掛けたりしているのに全然起きない。

しかも既に時刻は三時四十分になる。このままでは完全に尋問コースだ……!

 

どうしよう!?全然起きてくれない!さては俺に注意された後も徹夜してたな!?

いやそうじゃねぇ!どうやって起こせばいい!?

このままじゃ俺はまた正座する事になっちまう!

 

「嫁?いるか?」

 

そう言って入って来たのはラウラだった。

 

あ……

オワッタ……

 

「む?寝ているのか?」

 

「……起きてる。起きてるが今はこっちに来ないでくれ……!」

 

「何故だ?何かあるのか?」

 

「……ちょ!?」

 

そう言って布団を剥ぎ取られた。

 

もうだめだ……

俺の人生オワッタ……

 

「ん?博士が何故嫁と一緒に寝ている?」

 

「こ、これはその、ふ、深い訳がありまして……」

 

怒られる!

そう思ったのだが違った。

 

「ズルいぞ!私も嫁と一緒に寝たい!」

 

……ん?

 

「……今なんて言った?」

 

「だから私も嫁と一緒に寝たい!博士だけズルいぞ!」

 

うちのラウラはとっても良い子だった……

でもそれを許すと後でどうなるか分からないから今は断る。

 

「……また今度な。だから起こすのを手伝ってくれ」

 

「む……それならばいいだろう」

 

そう言って起こすのを手伝ってくれた。

純粋な考えのラウラに対して俺はこんな汚れた考えを……

すまない……

 

「博士、起きてください」

 

二人で起こしても起きない束さん。

どうしよう!?もう十分ぐらいしかないよ!?

 

……そういえばラウラとクロエってどこか似ている気がする……

そうじゃない。今は束さんを起こすことを考え…………ん?

ラウラとクロエは似ている……

確かクロエが最近冷たいって言ってたような……?

 

「……ラウラ、束さんにこう言ってみてくれ」

 

「?」

 

そう言って耳打ちする。

これなら絶対起きるはずだ。

確証はないけど。

 

「本当にこれで起きるのか……?」

 

「……大丈夫だ。絶対起きる」

 

「そうか……ならやってみよう」

 

そう言って息を吸ってラウラは言う。

 

「お母さん起きてーーー!!」

 

そう。これなら絶対起きるはず。

束さんはクロエに冷たくされて寂しいはずだから。

我ながら最低な作戦である。

 

「はっ!?どこかで私を呼ぶ声が!?」

 

でも束さんは簡単に起きた。

どんだけなの……

 

「お母さん?」

 

「あ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”!!ラウラちゃんお母さんですよーーーー!!」

 

起きたのは良かった。

でもラウラが犠牲になった。

具体的には捕まってめっちゃ可愛がられてる。

 

「あぁもう素直でいい子だなぁ!!可愛いっ!!食べちゃいたい!!」

 

「?博士は私を食べるのか?美味しくないぞ?」

 

「超純粋!!それと私の事はお母さんって呼んで!!」

 

「分かった。お母さん」

 

「-----っ!?」

 

「お母さん、どうかしたのか?」

 

「てるくん……私は幸せだよ……」

 

「……そうですか」

 

何だこれ。

訳分かんねぇな。

 

 

 

結局その後皆が来るまでラウラの事を存分に可愛がった。

そして箒に見つかり今現在、何を訳の分からない事をやっているのかと怒られている。

なんか悪い事したなぁ……

 

 

暫くして解放された束さんは、ぐったりしながら

 

「帰ったらくーちゃんを思う存分可愛がろう……」

 

そう言って帰って行った。

ただ帰り際にラウラが、

 

「また会おうお母さん」

 

と言ってニコニコ顔になって帰って行った。

 

今回は怒られなかった。嬉しぃ……

 

 

 

 

その後、皆がそろったところで腕の状態を説明しようとしたのだが、どうやら織斑先生に既に聞いていたらしい。

 

「輝義さん、良かったですわね」

 

「本当だよ。もう戻らないかと思ったんだからね?」

 

それは本当に申し訳ない……

 

「これからどうするんだ?訓練にはもう出るのか?」

 

それなんだよな……

聞いておけば良かった。

 

「……分からん。取り敢えず後で織斑先生に聞いてみる」

 

「そっか。早く輝義と訓練したいぜ」

 

もう少し待ってろ。

完璧に治ったら存分に相手してやるから。

 

「輝義、あたしの相手もしてよね」

 

「……分かってる」

 

それよりも、先ずはやらなきゃいけない事がある。

 

「……箒」

 

「なんだ?」

 

「……治ったら思いっきり鍛えてやる。覚悟しておけよ」

 

「っ!あ、あぁ!よろしく頼む!」

 

頭は下げなくていいから。

 

「……頭を上げてくれ」

 

「う、うむ……」

 

あ、ちょっと恥ずかしかったのか少し赤くなってる。

 

「……という事だ。皆も手伝ってくれるか?」

 

皆にも協力を求める。

皆に手伝ってもらった方がいいからな。

 

「勿論よ。箒ちゃん、しっかりついてきてね?」

 

「箒、大丈夫。一緒に頑張ろう」

 

皆口々に了承する。

 

「あ、ありがとう……ぐすっ……」

 

おぉう泣かないでくれよ。

 

今日一日は皆の温かさを改めて実感した日だった。

 

 

 






今回で福音戦の後日譚は終わりです。



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別に読まなくても大丈夫な話。その2

お付き合いください。
この後本編をちゃんと書きますので……


今回はもし男性陣営、女性陣営とで分かれて戦争になった場合のシュミレーションをしていきたいと思います。

ただの素人考えですし、うまくいったという事を想定しての物です。最悪の場合ではございません。

これはあくまでもシュミレーションです。

ISのみが女性陣営の戦力と仮定した場合の物です

その辺を理解した上でご覧下さい。

 

 

 

まず開戦する理由としては男性陣営が女性陣営の横暴に耐えきれなくなったという事で想定していきます。

大方、女権団のアホ、バカ、マヌケ、能無しともう始末に負えない奴らが各国の政権を奪取しちゃったんでしょう。ひたすら男性を虐げる法律やらなんやらを作りまくって反感を買いまくったぐらいに思っていてくれればいいかと。

 

 

 

さて、まず開戦するにあたって戦略目標、男性陣営が勝利する条件を予想してみましょう。

 

第一に各国の女権団に与した奴らを引きずり下ろす事です。

正直この状態になると国際司法裁判所(オランダのハーグ)で戦犯クラス、人権を無視した行いで処刑、もしくは終身刑を課せられるものと思われます。

 

第二に存在する全てのIS及び関連施設の破壊。

要はISを戦えなくすればいいのです。

 

凡そこれぐらいになるでしょうか?

ではここからシュミレーションを始めていきましょう。

 

 

 

女性陣営は短期決戦を仕掛けて来ると思われます。

予想される理由としては自分達は男よりも遥かに優れているという慢心です。

そう考えない人もいるでしょうが、どう考えてもそのような人は戦略、戦術レベルの事を決定できるような立場には置かれないとみて間違いないでしょう。

男尊女卑主義者は男性の方が優れていると認めないですから。

トップがそうであればその下にいる人達は従わざるを得ません。

 

 

男性陣営は通信を遮断されるものと思われます。

なので予め戦略は決定しておくことが大前提になります。

男性陣営が実行できる戦術は持久戦となるでしょう。

男性陣営が短期決戦を仕掛けた場合、間違いなく粉砕されます。

 

この持久戦を仕掛けるうえで重要なのがこちらからの攻勢は一切行わない事。

どれだけ優位に立てたとしても絶対に攻勢を仕掛けてはいけません。

もし失敗した時に戦力の立て直しが利かないからです。

 

防御をしつつ陸海空全ての方面で通商破壊を行う。

これが基本戦術です。

 

 

陸上であれば砲兵等の高火力を持っている部隊が主力になります。

点での制圧ではなく、面での制圧の方が機動力が戦闘機よりも圧倒的なISには効果的だからです。

取れる作戦ですが、防御を主体とした作戦に全戦力の殆どを投入します。

各部隊が確実に連携を取れる距離に配置をして、師団規模での展開が主体になります。それ以下の規模だと携行できる武装に限りがあります。

 

海上では全戦力で通商破壊戦を展開していきましょう。

女性陣営の継戦能力を低下させることが目的です。

潜水艦隊が主力になって通商破壊を行います。

空母を中心とした打撃艦隊は輸送船団の捜索、陸上部隊の支援を行います。

 

空ですが、こちらは序盤は一切出番が無いです。

制空戦闘をしようにもISには敵わない。

なので限定的な状況下、例えば行動可能範囲内に女性陣営の輸送機が飛行した際にはこれを撃墜するなどの任務ぐらいでしょう。

戦略爆撃機などは後々に必要になってきます。

 

 

戦闘に突入する前に女性陣営側の男性はもういないことを頭に入れておきましょう。

技術者、労働者に至るまで全てです。

 

 

まずは戦力を防御態勢に極振りします。

時間稼ぎが目的です。

この際、だだっ広い平野などではなく、山岳地帯や山岳地帯同士に挟まれている場所、渓谷が理想的です。

坑道を掘りまくって縦横無尽に張り巡らします。

日本軍のペリリュー島の戦いや硫黄島の戦いを想像してください。

 

ここに持ち込める限りの工業設備を持ち込みます。

メリットは輸送時間をなくすことができ、尚且つ戦闘時間の増加、兵士達は補給に困らないという安心感を得る事が出来ます。

デメリットは数は限られてくる、もし打撃を受けた時に設備を回復させることが困難などがあげられます。

そうするとやはり既存の工業地帯などを頼らなければいけません。

この既存の工業地帯を可能な限り後方に下げます。

そうすることで手を出しにくくするんです。

しかもその道中に対空砲や速射砲、地対空ミサイルを大量に配備すれば工業地帯に更に攻撃しずらくなります。

 

ですが注意しなければならないのがこの両方を行うと前線にある工業設備と後方にある工業地帯の両方に武器弾薬食料の原料を輸送しなければならくなるのです。

これは大幅なロスです。

まぁこれぐらいなら必要経費って事で何とかするしかありません。

 

 

持久戦を展開してくるとどうしても女性陣営は物資の輸送を行います。

そこで通商破壊戦の出番です。

通商の主力となるのは艦船での大規模輸送になります。

燃料、食料、各種鉱石の輸送には欠かせません。

勿論陸空でも輸送は出来ますが、運搬量なんて高が知れてます。

 

陸では後方に特殊部隊を展開し、鉄道を爆破、主要連絡道路に地雷などを設置して徹底的にこれを遮断します。

 

空はここでも多少の迎撃任務などのみにして戦力の温存を図ります。

 

そして通商破壊の主力たる海ですが、潜水艦隊を中心に通過すると予想される航路上に展開します。

空母打撃群は索敵をしつつその位置情報を潜水艦隊に教え、自分も攻撃に参加するというものです。

 

どこの国、地域もそうですが、海上輸送が一番の輸送方法なのでそれが出来なくなる、妨害されるという事は国家の維持にも関わってきますしましてや戦争なんてもっとです。

 

この段階に入ればもうすぐで決着がつくでしょう。

 

女性陣営はこれを何とかしようと戦力の殆どを現状の打開に投入してくるはずです。

その攻勢を耐えます。

この時、後方にある女性陣営の基地などはがら空きになると予想されます。

 

そこで航空戦力の出番です。

この時を狙って後方にある施設を爆撃し、破壊します。

こうすることで大小の差は出ますが、女性陣営は兵站がかなり厳しくなります。

 

海からの輸送は出来ない、最前線の基地は爆撃で吹き飛び、ISを整備するのにわざわざ本土まで下がらなければならない。

しかもその整備をするのに必要な物資は輸送が出来ないから底を突いている。

こうなったら整備待ちのISで溢れかえるでしょう。

しかも最初の段階でIS関連や各分野の男性技術者、労働者は既に敵になっていて整備をするのは全て女性、自分たちでやらなければならない。力仕事も何もかもです。

ここまでくればもう摘んでいます。

それに男性技術者がいない分、更に忙しさは増して、心身ともに疲労がピークに達しています。そこにさらにこのような事態が起きればもう対処は不可能。

 

 

まともに動かすことのできないISが転がり、空は男性陣営の爆撃機や戦闘機が飛び回って爆弾やミサイルの雨を四六時中降らせて来る。

降伏は時間の問題でしょう。

 

しかし女尊男卑主義者は頑として降伏を認めない。

どうしても自分達が男より劣っているという事を認めたくないから。

 

しかし戦争が嫌になった女性達の手によって彼女らは引きずり降ろされることになるでしょう。

 

 

 

ここでようやく終戦となるわけです。

 

 

 




いかがでしたか?
かなりガバガバなので実際に起こった場合はこう上手くはいかないでしょう。

こんなのを書いている暇があったら本編を進めろよ、なんて言わないで下さい。



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73話目




おうちかえりたい


 

 

 

腕も治って授業に参加出来るようになった。

と言ってももう二週間ぐらいで夏休みな訳だが。

夏休み楽しみだぜ!!とか呑気に言っている場合じゃない。

 

俺達学生には一番辛い行事が待っているのだそれは……

 

き・ま・つ・て・す・と!!!

 

そう、期末テストである。

しかもこのIS学園は他の学校とは違い、専門的な分野のテストもあるので数が多いのだ。

それにこの学校は皆さん知っての通り滅茶苦茶、びっくりするぐらい頭がいい。

 

そんな中に放り込まれた一般ピーポーな学力の持ち主こと、俺と織斑は、地獄を見ていた。

 

 

 

今現在、テストに向けて俺の部屋で勉強中なのだが…………

 

「どうしよう……!?ぜっんぜん分からない……!」

 

そう言って頭を抱えるのは織斑。

俺は隣で力尽きていた。

別に全教科分からない訳じゃない。

俺は英語が点でダメなのだ。

織斑はIS関連の専門知識と英語に数学。

 

正直この学校頭おかしいって。

だって赤点の点数って大体の学校って三十点以下とか平均点の半分とかじゃん?

なのにこの学校最低七十点取らないと赤点なんだってよ……

しかも俺は結構怪我とかで休んでいたから更に辛い。

 

織斑先生の授業で赤点なんか取ったらどうなるか想像したくもない。

補修で済むわけがない。組み手を延々とやらされたりISをパワーアシスト無しでアリーナを百周ぐらいやらされたり……

 

間違いなく、死ぬ。

 

そうならないように織斑とアホ面曝して勉強している訳だが、そもそも分からないところが同じと言う時点で詰んでいる。

焦りすぎて全然考えてなかった。

 

「……ここ分かるか?」

 

「え?どこだ?……そこ丁度俺も分かんねぇんだよ……と言うか分かるところが少ない……」

 

「……どうすればいいと思う?」

 

「ここはもう皆を頼るか?」

 

「……よし、そうしよう」

 

「決まりだな」

 

そうと決まった瞬間に二人で教えてもらう為に部屋を出た。

 

 

 

セシリアの部屋の前。

 

「……行くぞ」

 

「お、おう」

 

俺達はなぜこんなに緊張しているのか……

ドアをノックする。

 

「どちら様でしょうか?……あら?輝義さんに一夏さん?どうされたのですか?」

 

「……すまないが俺達に英語を教えてもらえないだろうか」

 

「お願いします!この通り」

 

そう言うとキョトンとしている。

 

「まぁいいですけど……理由を聞かせてもらってもよろしいですか?」

 

「それが、かくかくしかじか……………………」

 

事情を説明するとセシリアは、

 

「そういう事なら勿論いいですわ。ですが次回からはもっと早めに言ってくださいな」

 

「……申し訳ない……」

 

「すいませんでした……」

 

お小言付きで了承してくれた。

 

「では明日からやりましょう」

 

「……お願いします」

 

「お願いします!」

 

二人して頭を下げ、それから数学を教えてくれる人を探すことに。

 

「数学って誰が得意なんだ?」

 

「……分からん」

 

「んー……」

 

「……鈴は?」

 

「あー……あいつは辞めといた方がいいぞ……」

 

あれ?なんか反応悪いですね。

どうしてでしょう?

 

「……なんでだ?」

 

「鈴ってさ、殆どと言うかすべての物事に関して勘で解決するタイプだからさ、説明とか物すっごい下手なんだよ……中学の時、あいつ頭良かったから教えて貰ったんだけど何故か勉強で擬音使って説明するから全く分からなかった……」

 

あー……

なんかそんな感じがする。

訓練の時もどっちかっていうと何となくで教えた方が良く理解してたし。

逆に細かく教えると分からなくなるっていう……

セシリアとは真逆のタイプだな。

 

「……なら誰がいい?」

 

「簪は?」

 

「……簪はIS関連の専門知識だな。そう言うのは得意だぞ」

 

「じゃ簪は専門知識な。……数学は?」

 

「……シャルロットは?」

 

「良さそうだな。よし決まり。早速行こうぜ」

 

「……あぁ」

 

そうして二人に協力を依頼したのだが、驚いたことに本音が数学が得意だというのだ。

超驚きなんですけど。

てことで本音さんにも依頼しました。

 

 

 

 

次の日。

因みに今日は土曜日でテストまで残り三日と言う絶望的な状況である。

 

 

 

「……増えたな」

 

「めっちゃ増えてるな」

 

俺達の勉強を見てくれるセシリア、シャルロット、簪、本音の他にも、箒に鈴、ラウラといつものメンバーが勢揃いした。

 

「……どうして皆まで?」

 

「それは私が誘いましたの。皆さんで勉強会にした方が楽しくできるだろうという事ですわ」

 

「……そうなのか」

 

まぁいいか。

三人寄れば文殊の知恵とか言うし。

まぁもっと多いんだけど。多くて問題があるって訳じゃないし。

 

「それでは早速始めましょうか。最初は何からやりますか?」

 

「……俺は英語、織斑は英語と数学、IS関連の専門知識だ」

 

「そうですわね……輝義さんは英語をやってしまいましょう。

一夏さんは数学を。他の皆さんは自由、という事で宜しいですか?」

 

セシリアの提案に皆頷く。

そして各々が課題や、苦手な部分の勉強に取り組む。

 

「さて、輝義さんは英語が苦手との事ですが、どのくらいできるのか簡単にですがテストをしてみましょう。そうすればやらなければいけない箇所の炙り出しが出来ますわ」

 

そう言って渡されたのは全部で五十問ぐらいの問題だった。

 

「……態々作って来てくれたのか?」

 

「はい。まぁ基礎的なものですからそこまで難しくはありませんわ」

 

すげぇ……

これ全部自分で作ったのか……

 

「……それでも凄いな。ありがとう」

 

「いえ、お礼には及びませんわ。それでは一時間でやってみてくださいな。それでは始め」

 

セシリアの合図で始まる。

 

 

暫くして、用紙を見つめる俺。

……内容は何となく分かるが、回答する時にどんなスペルで書けばいいのかさっぱり分からない……!

 

えぇい!

こうなったら勘で書いてやる!

 

「はい。終了ですわ。貸してくださいな。採点しますから」

 

そう言われシャーペンを置き、用紙をセシリアに渡す。

 

セシリアが丸付けをしていくが、殆どバツを付けられる。

 

ひっでぇ結果だな……

 

「輝義さん……百点中六点ですわ……いくらなんでもこれは酷すぎます」

 

「……仰る通りです」

 

点数低すぎワロタ。

 

「ですが、スペルミスが殆どなので覚えればいいだけですわ。英語のテストは三日目ですからまだまだ時間はありますわ。……ノートを貸してくださいますか?」

 

「……ほら」

 

「少々お待ちください」

 

ノートを貸すと教科書を開いて何やら書き始めた。

何やってんだろう……?

 

 

 

 

暫くすると、セシリアがノートを返してきた。

 

「……何を書いたんだ?」

 

「覚えておいた方が宜しい単語を書き出しておきました。これさえ覚えていれば輝義さんは文法等は出来ているので問題ありませんわ」

 

おぉ……!

セシリアまじ女神……!

 

そう言って返されたノートを見ると、

 

オーマイガー……

びっしり書いてあった。

しかもちゃんと俺が読めるように筆記体じゃないやつで。

 

「……これ全部か?」

 

「勿論ですわ。これでも少ない方ですわよ?」

 

まじかよ……

覚えられっかな……

でもここまでしてくれたんだし頑張らなきゃな。

 

そうして暗記地獄が始まった。

 

 

 

 

一日目

 

「……くそ……忘れた」

 

二日目

 

「……あー……えー……」

 

三日目

 

「…………………………」

 

四日目

 

「……英単語でいっぱいだぜ」

 

五日目

 

「……はははははは!!!!脳内で英単語が踊り狂ってるぅ!!??」

 

 

 

 

そして英語のテスト当日。

 

「輝義さん、大丈夫でしょうか……?昨日、おかしかったですし……」

 

「多分大丈夫だろう……多分……」

 

 

 

 

テスト終了。

 

「……記憶が無い」

 

あぁぁぁぁぁぁ………………

テスト中の記憶が無いぃぃぃ……

赤点だぁ……

補習だぁ……

もうだめだぁ……

 

 

 

そう思いながら過ごして、答案返却日。

 

「大河」

 

「……はい」

 

呼ばれて答案を取りに行く。

 

恐る恐る点数を見ると……

 

 

76点

 

 

おぉ……!

おぉぉぉ……!

おぉぉぉぉぉ……!

 

「っ!っっっっ!!!!」

 

思わず手を上げて喜んでしまった。

 

「ふふ。そのご様子ですと大丈夫だったようですわね」

 

「……あぁ。本当にありがとう……!今度何かお礼をさせてくれ」

 

「まぁ……でしたらどこかに二人で遊びに連れて行って下さいな」

 

「……それぐらいならお安い御用だ」

 

 

セシリアと何処かに出かける約束はしたものの、俺は全教科赤点回避で無事、夏休みを迎えられることになった。

因みに織斑も赤点は無かった。

 

ただ、セシリアと出かける約束をした時に皆の目が怖かった。

 

 






てぇぇぇぇすぅぅぅぅとぉぉぉぉ!!!!

嫌ですよね。
作者も高校時代は赤点取りまくって死にかけていました。



感想、評価等くださいな。


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74話目

投稿が途切れて申し訳ない……

今遊びに出掛けているんや……
入力がスマホだからちょいちょい今までとは違っているかもしれないけどそこんところは許して。


 

赤点を回避した次の週。

一学期が今日で終わりを告げようとしていた。

 

 

 

今、俺達は終業式の真っ最中。

楯無さんが壇上で話をしている。

 

「-------今日で一学期が終了しますが夏休み中に羽目を外しすぎないように。以上」

 

普段はあんなにいたずら仕掛けたりちょっかい出したり仕事をサボって虚さんに連行されてるのに今はちゃんと生徒会長やってる。

……普段からあの姿に見慣れているからこっちの方が違和感しかない。

 

それにしても夏休みか……

家に帰ってゴロゴロするかな……

流石に寮に夏休み中ずっといるわけには行かないからな。

 

 

 

 

 

自分の席に座っていると織斑が話しかけて来た。

 

「なぁなぁ輝義」

 

「……どうした?」

 

「いやさ?輝義は夏休み中に何すんのかなぁって思って」

 

「……取り敢えず実家に帰る。それ以外は全く考えていない」

 

「そうなのか?だったらさ、俺ん家に遊びに来ないか?」

 

オレハジメテトモダチノイエニサソワレタ。

 

はっ!?

今衝撃を受けすぎてなんか分からなくなっていた……

まぁここに来るまで家に誘われるどころか友人の一人もいた事ねぇんだけど。

 

「……いいのか?」

 

「おう。多分千冬姉もいると思うけどそれでもいいならな」

 

そんなの決まっている。

 

「……お邪魔させて貰おう」

 

「そうか!ならあとで都合のいい日を教えてくれ」

 

「……分かった。お前の家に行くんだったら織斑も俺の家に来るか?」

 

ふと、俺がお邪魔するだけじゃ悪いと思ってそう提案したのだ。

すると織斑の食いつきがやばかった。

 

「マジで!?いいのかよ!?」

 

「……あぁ」

 

「行く!行きたい!」

 

「……分かった。後で家に連絡しておく」

 

「おう!」

 

 

そうして俺の織斑家行きが、織斑の大河家行きが決定した。

でもあの喜び方はおかしいだろ……

まさか狙われている……?

……あいつ、ホモじゃねぇよな?

 

 

 

 

 

その後、午前授業という事もあり部屋でのんびりしていると、ドアを叩く音がした。

誰だろう?

 

ドアを開けてみるとセシリア達だった。

何だろう?何かあったのか?

 

「……どうした?」

 

「こんにちは、輝義さん。少しお話ししましょう?」

 

「……あぁ、いいぞ。ほら、入れ」

 

そう言って皆を部屋に招き入れた。

 

「……それで、何を話すんだ?」

 

「輝義さんの夏休みのご予定をお聞きしたくて」

 

なんでだ?

まぁ、教えてもいいけど。

 

「……特に無いぞ。織斑と遊ぶのと実家に帰るぐらいだ」

 

本当にこれしか無いのだ。

……我ながら悲しい夏休みだな。

悔しくは無いぞ……!

 

「でしたら一緒に遊びませんか?」

 

「……構わないぞ。でも結構長く実家に帰るからな」

 

遊ぶのは構わないんだが、俺があまり日にちが無いのだ。

 

「そうなのですか?そうすると私は本国に帰らなければならない期間があるので難しそうですわ……」

 

「私も実家の神社で夏祭りがあるからな……」

 

「僕とラウラは特に何も無いかな。あ、でも日本代表候補生になってそれの説明があるかな。まぁ一日ぐらいで終わるらしいけど。それに国にも帰れないしね」

 

「そうだな。私とシャルロットはそんなものだ」

 

「私と本音は一度実家に帰るだけかな。……お父さんがうるさいししつこいからあまり帰りたくないんだけど……」

 

「かんちゃん、それ言っちゃだめだよー?絶対に部屋から出てこなくなっちゃうからー」

 

そうなのか。

皆結構忙しそうだな。

どうするか……あ。

 

「……皆が良ければだが、俺の家に来るか?」

 

そう思い付いたのだ。

織斑も来るし、これなら皆で遊べる。

 

「いいの?ご家族に迷惑じゃないの?」

 

シャルロットが聞いてくるが、うちの家族は結構その辺は甘いからな。

許してくれると思う。

 

「……大丈夫だ。なんなら今電話して聞いてみる」

 

そう言って母さんに電話を架ける。

 

「……もしもし母さん?」

 

「何よ。急に電話なんか架けてきて」

 

「……夏休み中に帰るだろ?その時に友人達も連れて行っていい?」

 

「あんた大丈夫?正気保ってる?」

 

おい。

なんでそこで俺の正気を疑うんだ。

俺は正気だよ。一度もラリッた事なんか無いわ。

 

「……正気だってば」

 

「冗談よ。いいわよ。好きなだけ連れてきなさい」

 

「……ありがとう母さん。じゃぁ」

 

そう言って電話を切る。

そして皆に今のを伝える。

 

「……大丈夫だ」

 

「ですが皆さん予定がずれていますわ。どうしますの?」

 

「……ある程度纏まったら俺が連れて行く。前半後半に分かれて行けば皆で遊べるだろう」

そう言うと、

 

「ですがそれでは二度手間ですわ。皆さんがそろってからでも宜しいのでは?」

 

セシリアは遠慮してくる。

 

「……それだと、いつになるか分からないだろう。それに俺が大丈夫なんだ。任せてくれ」

 

「そうですか……ならお願いいたしますわ」

 

「そうだな。私もよろしく頼む」

 

「僕もお願いします」

 

「嫁!勿論私も行くぞ!」

 

「私も行く」

 

「私もー。てるてるのおうち楽しみだなぁ」

 

皆そう言った。

後は鈴を誘うだけだな。

 

「だけど輝義。なんでお姉ちゃんと虚さんも?」

 

「……元々あの二人は俺の家に警護関係の話をしに来るんだ。だからその話をされたときに誘っていたんだ。織斑はさっきそう約束したからな。鈴も別に誘っても構わないだろう」

 

「そうなんだ」

 

「……あぁ」

 

その後、軽く予定を詰めた後、解散になった。

 

 

 

 

 

「……鈴、居るか?」

 

そう言いながら鈴の部屋のドアを叩く。

 

「はーい……あれ、輝義じゃない。どうかした?」

 

そう言って鈴が出てきた。

 

「……いや、夏休みに俺の家に皆で遊ぼうって話をしていてな。既に皆は来ることが決まっている。後は鈴だけなんだが、どうする?来るか?」

 

「いいの?私一回中国に帰らなきゃいけないんだけど」

 

「……構わない。セシリアに楯無さん達もそうだからな」

 

「ならお邪魔するわ。よろしくね」

 

「……あぁ。後で中国に帰る日程を教えてくれ」

 

「ん。了解」

 

「……それじゃあな」

 

「じゃあね」

 

そう言って別れた。

 

 

 

 

 

 

飯も食った。風呂にも入った。

後はゴロゴロするだけ。

 

何をしよう?

そう考えていた時だった。

また誰かが部屋を訪ねてきた。

 

「……はい」

 

「輝義、私だ」

 

箒だった。

どうしたんだろう?

 

「……どうした?」

 

「その、少しいいか?」

 

「……いいぞ。ほら入れ」

 

「お邪魔します」

 

なんか緊張してるのか?

何かあったのか?

 

「……どうした。緊張なんかして」

 

「その、私の実家が神社でな?そこで夏祭りをやるんだ」

 

「……あぁ」

 

「その……その夏祭りに一緒に行かないか!?」

 

ふぁ!?

 

「その……毎年、祭りで神楽舞を客の前で披露するんだが、今年は私なんだ。だから見に来てほしいんだ……ダメだろうか……?」

 

「……全然いいぞ」

 

「そ、そうか!ならその後に二人で祭りを回らないか?」

 

「……あぁ。いくらでも回ってやる」

 

「そうか……ならばこの日に祭りなんだ。篠ノ之神社で検索すれば出て来るはずだ。時間は後で連絡するから」

 

「……あぁ」

 

「約束だぞ!?二人きりでだからな!」

 

「……あぁ。楽しみにしている」

 

「そうか……ではな」

 

そう言って箒は帰って行った。

箒の神楽舞か……

箒は美人だからな。楽しみだ。

 

そう言えば篠ノ之神社で出て来るって言ってたな……

 

検索してみると、簡単に出てきた。

 

ほー……かなり有名らしい。

なんでも神楽舞がかなり有名らしい。

 

毎年神社の巫女が舞っていてかなり人気だそうだ。

だが、束さんがISを開発した後から祭り自体が無かったらしい。

確か国家重要人物保護プログラム、だっけ?

それの影響だろう。

だが今年になってまたやることになって話題になっているそうだ。

しかも以前とは別の巫女がやるとなっていて更に、だそうだ。

 

 

これは更に楽しみだな……

思わずそう期待してしまった。

 

 

 

 

 

ーーーー side 箒 ----

 

 

皆で輝義の家に行くと行く話をした日の夜。

私は今、再び輝義の部屋の前にいた。

 

一人でだ。

 

一人で来たのには訳がある。

私の家では毎年開かれる夏祭りの際に、その代の巫女が神楽を舞う事になっている。

以前までは母さんが舞っていたのだが、姉さんが開発したISによって国家重要人物保護プログラムが適用され、無くなってしまったのだ。

だが今年、神社の管理を引き受けてくれている叔母さんがやらないかと提案してきたのだ。母さんには教えられていたから練習すれば行けると思う。だから了承したのだ。

その夏祭りに輝義を誘おうと思ってここに来たのだ。

 

 

 

その後、輝義を誘ったのだが、緊張してった。

でも輝義は来てくれると言った。

 

二人きりかぁ……ふふ……

 

嬉しくて顔が緩んでしまう。

 

 

 

家に帰ったらしっかり練習しなければな!

そして綺麗に舞っている所を見てもらうんだ。

 

 

ーーーー side out ----

 

 





今回、輝義が自宅にヒロイン達を誘っているんですが、お前、絶対コミュ障じゃないだろ!

いいなぁ!!俺もあんな美少女美女に囲まれたかったなぁ!!
でもその後に恥ずかしくなっているっていう……


今回は短めに。
ちょっとグダグダ駆け足感(意味がごちゃごちゃ)はしますが、許して。


感想、評価等くださいな。


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75話目

連続投稿再開します。

弾君と蘭ちゃん、厳さんの名前は分かっていたんですが、お母さんの名前も性格も口調も何もかもが分からなくて……
なので勝手に考えて設定しちゃいました。
それと、原作の流れを忘れるという大失態を犯した独イモ納豆野郎こと私。
覚えているのが修学旅行と体育祭、文化祭ぐらいと言う……
マヌケ以外に何者でもないですね。反省します。
もし覚えている、知っているという読者の方がいらっしゃればこのアホに教えて頂きたいです。


お願いします。




夏休みに入った。

暑くてしょうがないが、まぁ去年とは違って友人も出来て皆と遊べると考えると余裕だ。

 

 

そして今俺は織斑の家に向かっている。

以前約束していた織斑の家に遊びに行くという件で向かっている。

一泊二日で泊りで遊ぶのだ。

 

楽しみでしょうがない。

誰かの家に泊まって遊ぶなんて初めてだからな。

 

そしてグー◯ルの案内に従って歩いて行く。

しかし、このあたりだとすると学園に続いているモノレールの駅まで結構近いな……

多分十分かそこいらで到着するだろう。

 

あ、ここか。

到着。そして家を見てみると、この辺りの土地にしてみればかなりデカい家だった。

確かISが開発されてIS学園が出来てからこの辺りの土地は滅茶苦茶高くなってるってどっかで聞いたことあるな。

 

まぁいいや。取り敢えず呼び鈴を鳴らして呼ぼう。

 

「はーい」

 

「……大河だ。来たぞ」

 

「おぉ!輝義か!ちょっと待っててくれ。今開けに行くから」

 

そう言って十秒程すると玄関が開いた。

 

「おはよう!」

 

「……あぁ。おはよう」

 

「取り敢えず入ってくれ。暑いだろ?」

 

「……そうさせてもらう」

 

そうして織斑宅に入った。

おぉぁぁ……めっちゃ涼しいやんけ……

 

クーラー効いてていい感じー……

 

「ほら、部屋に案内するから付いて来いよ」

 

「……あぁ」

 

そう言われて付いていく。

階段を上がり、階段から二つ目の部屋が今回俺がお世話になる部屋らしい。

 

「此処だ。荷物置いて下に行こうぜ」

 

「……おう」

 

荷物、と言っても着替えにスマホ、充電器ぐらいなものなのだが。

それらを置いて下に行く。

 

「ほら、麦茶」

 

「……頂きます」

 

冷たくてうめぇ……

生き返る。身体に麦茶が流れ込んでくるのがよく分かる。

 

「……それで、何をするんだ?」

 

「そうだなぁ……昼飯にはあと一時間ぐらいあるからそれまでトランプでもしようぜ」

 

「……いいぞ」

 

そう言ってトランプを始めた。

なのだが、俺は全敗した。

 

「輝義、お前顔に出すぎだろ……フブッ……ジョーカーを俺が引こうとしたとき直ぐに顔に出て……丸わかりだぞ?」

 

こいつ笑いをこらえていやがる……

畜生、そんなにか?ポーカーフェイスは結構得意だと思ったんだがな……

 

「……ふん。放っておけ」

 

「まぁそう拗ねるなよ。ほら、丁度昼飯時だしさ、飯食いに行こうぜ。旨い所知ってるんだ」

 

「……あぁ」

 

そう誘われてそう織斑についていく。

あ、そう言えば。

 

「……家にはテレビゲームなんかもあっただろう。何故態々トランプだったんだ?」

 

「だって輝義、その手のサイズじゃ合わないだろ。どう考えたって小さくてやりずらいだろうし」

 

「……そんな事気にしないでやればいいだろう」

 

「何言ってんだよ。友達と遊んでんだからそいつを放っておいてゲームなんかするかよ」

 

「……そうか」

 

「おう。そうなんだよ」

 

織斑……お前良いやつやな……

泣きそうになったぜ……

 

 

そうこうしている間に織斑の言った旨い飯屋に到着。

見た目は、ザ定食屋と言った感じだ。

 

「ほら、ここだよ。五反田食堂。俺の友達の爺ちゃんが料理を作ってるんだ。旨いんだぜ!」

 

「……それは楽しみだな」

 

「おう。期待しててくれていいぞ。滅茶苦茶旨いからな!」

 

そう言って店に入る。

 

「こんにちわ!」

 

「……お邪魔します」

 

入るとそこには昔ながらの、と言ったような店内だった。

そして中から威勢のいい声が響いてくる。

 

「おう!らっしゃい!……なんだ一夏じゃねぇか。それに隣のでっかいそいつは誰だ?」

 

声を掛けてきたのは厳つい顔に肌が浅黒く焼けた人だった。

しかも中華鍋を振りながら。

……パワフルだな。

 

「久しぶりです。夏休みで帰って来ていたので来ました。このでっかい奴は俺の友人の……」

 

「……大河輝義です」

 

「そうか。ならどこでも好きな所に座って待ってろ。今注文を取りに行くから」

 

そう言ってそのまま調理を続ける。

 

「……あの人は?」

 

「此処の食堂の店主の五反田厳さん。御年八十三歳」

 

「……まじか」

 

「おう。マジだぞ」

 

すげぇな……俺、爺ちゃんレベルの筋肉をつけた年寄りなんて初めて見たぞ……

 

「お待たせしましたー。あら、一夏君じゃない。それに大河輝義君ね?こんな暑いのによく来てくれたわー」

 

おう、誰だこのおっとり美人。

しかも俺の事を知っている?

会ったことないんだけどな……?どっかであったことある?

 

「お久しぶりです。輝義、この人は俺の友達のお母さん。京子おばさん、こいつは大河輝義でIS学園での俺のクラスメイトで新しくできた友人」

 

「知ってるわよー。一夏君は勿論、大河君の事も知っているわー。だって色々と有名だものねー」

 

ホントにおっとりしてんな……

 

「京子おばさん、弾と蘭は元気ですか?」

 

「弾も蘭も今出かけてるからもう少ししたら帰ってくるはずよー」

 

「そうなんですか。なら注文してもいいですか?」

 

「えぇ。どうぞー」

 

「それじゃ俺は南瓜の煮つけ定食で。輝義はどうする?」

 

「……なにかお勧めでお願いします」

 

「はーい。少し待っててねー」

 

そう言うと厨房に引っ込んでいった。

しっかしホントに美人だったな……

 

 

 

 

「……織斑」

 

「ん?」

 

「……お前の友人はどんな奴なんだ?」

 

「そうだなぁ……中学の時は俺と鈴とそいつともう一人いるんだけどこの四人でいつもバカやってたなぁ。いい奴なんだけど、女子の事ばっか考えてるな」

 

「……そうなのか」

 

「あぁ。この前電話した時も彼女が欲しいとか俺と輝義は女子に囲まれて羨ましいとか言ってたぞ。ついでに誰か美人か、可愛い子でも紹介してくれって言ってたな。面白いし、鈴によく殴られてたっけな」

 

「……なんだ、鈴に殴られて喜んでいたのか?」

 

「あいつ、鈴にちびだの貧乳だの言ってたからな。だからだろ」

 

「……そうなのか。でもいい奴そうだな」

 

 

 

 

 

「お待たせしましたー。南瓜の煮つけ定食と当店おすすめの業火野菜炒めでーす」

 

会話をしていると頼んだものが来た。

……旨そうですね。

でも……やっぱり量が足りない……!

 

「ほら、食おうぜ」

 

「……あぁ」

 

そうして食い始めたのだが、それ以降織斑が一言もしゃべらない。

どうかしたのか聞こうとした瞬間、

 

「……おい、おーーー」

 

スコーーーーーン!!!!!!

 

「いってぇ!!??」

 

お、お玉が飛んできた!?

しかも滅茶苦茶痛いんですけど!?

え!?何!?俺何かした!?

 

驚いてキョロキョロしていると、織斑が小さな声で説明してきた。

 

「ごめん、説明しとくの忘れたんだけどさ、この食堂は食っている時は一切声を出しちゃダメなんだ」

 

「……それを早く説明してほしかった」

 

「ごめん……」

 

そして俺たち二人はこの後しっかりお玉を食らいました。

なんで聞こえてんの……耳良すぎでしょ……

 

 

 

 

そうして食い終わってのんびりしていると件の友人が帰って来た。

 

「お?一夏じゃねぇか!久しぶりだな!」

 

「おう!つってもこの前電話したばっかだけどな」

 

そう言って肩を叩き合う。

 

「ほら、弾。あいつがそうだよ」

 

「おぉ、滅茶苦茶ガタイいいな」

 

そう言ってこちらに顔を向ける。

 

「初めまして、つっても俺はあんたの事を知っているんだけどな。五反田弾。よろしくな」

 

「……大河輝義だ。よろしく頼む」

 

お互いに自己紹介をして席に着く。

 

「じーちゃん!なんか適当に作ってくれ!」

 

「お客が先だ馬鹿野郎!少し待ってろ!」

 

「へいへい……俺は後回しですよ……」

 

悲しい場面を見た気がする……

 

「……強く生きろよ」

 

「あんた……ありがとう……」

 

励ますと涙ぐみながら頷いていた。

 

 

 

 

 

「そういや大河さんはどんぐらい身長とかあんの?」

 

うぅん……

その大河さんってなんか違和感しか感じないなぁ……

 

「……大河さんは辞めてくれ。輝義でいい」

 

「お?そっか。分かったぜ。なら俺も弾でいいぞ。で、身長とかどんぐらいなの?」

 

そうだなぁ……

ここ最近計ってないから分からないけど……

 

「……身長の方は百九十五cmだな。体重は多分百十キロぐらいだと思う」

 

「思う?どういう事だよ?」

 

「……学園に通い始めてから筋肉が更に付いてな。だから正確には分からないんだ」

 

「ほえぇ……そんだけ筋肉あんのにまだ付くのかよ……すげぇな」

 

だって鍛えたら鍛えた分だけ付くんだもん。

しょうがないじゃない。

 

「……少し触ってみてもいいか?」

 

「あ、俺も触りたい」

 

二人して筋肉に触りたいって……

まぁいいけどさ。

 

「……構わないぞ」

 

「それじゃ失礼して……おぉ、めっちゃかてぇ……なんだこの腕、見た事ねぇぞ……しかもこの傷が、不謹慎なんだろうけどかっこいいぜ……」

 

「うぉぉ……輝義すげぇ……風呂で見た時も思ったけどやっぱすげぇな……」

 

感想を漏らしながら、ぺしぺしさわさわなでなで。

くすぐったい……

 

「……ほら、もういいだろう」

 

「えー……」

 

えーじゃない。

 

「……飯が来たぞ。また今度な」

 

「飯が来たんなら仕方ねぇか。そんじゃ頂きます」

 

そう言って食い始めるとやはり無言になった。

あれは一度食らったら二度と食らいたくないからな……

織斑先生の魔剣シュッセキボと同じようなもんだ。

 

 

 

 

それから弾が飯を食い終わるのを待って三人で織斑の家に。

すると呼び鈴が鳴る。

 

「……誰だ?」

 

「さぁ?取り敢えず出て来る」

 

そう言って織斑は玄関に向かった。

しかし弾は何故か狼狽えている。

 

「……どうかしたのか?」

 

「訪問人に心当たりがある……」

 

「……誰だ?」

 

「もしかしたら……」

 

と、言おうとしたところに織斑ではない誰かが部屋に入って来る。

 

「おにぃ!」

 

「やっぱりか!」

 

そう言って顔を覆って天井を仰ぐ。

てかマジでどちら様?

あ、張り倒されて踏んずけられた。

 

「いでででででででで!!??おい蘭!なんでここにいるんだよ!?」

 

「そもそもなんで私に一夏さんが来る事を教えてくれなかったのよ!?」

 

そう言い争っている。

いやもう急展開過ぎて分からないんだけど。

誰か説明プリーズ。

 

「あ、やっぱりこうなったか」

 

「……あれは誰だ?」

 

説明を求める。

だって分かんないんだもん。

 

「あれは五反田蘭。弾の妹だよ。いつもああやって尻に敷かれてるんだ」

 

「……そうなのか」

 

弾よ……

強く生きろよ……

 

「二人共、輝義もいるんだから続きは自己紹介してからにしてくれ」

 

「おい一夏!止めてくれよ!」

 

「そんなこと言われてもどうせ家に帰ったらやられるんだから諦めろよ」

 

「クソォォォォ!!」

 

「おにぃ五月蠅い!」

 

「……なんだこれ」

 

思わずそう漏らしてしまうほど訳が分からなかった。

 

 

 

 

それから数分してようやく解放された弾と解放した蘭。

 

「その、お見苦しい所をお見せしました……」

 

「……構わない」

 

「改めまして、五反田蘭です。蘭って呼んでくれて大丈夫ですよ」

 

「……大河輝義だ。輝義で構わない。よろしく頼む」

 

「よろしくお願いします。それにしても……」

 

ん?なんだ?

 

「改めてご本人とお会いすると全然違いますね」

 

「……何がだ」

 

「こう、迫力と言いますか」

 

そりゃこんだけデカくて顔面に傷がある男を前にしたらな。

普通だったらビビるどころか泣き出してもおかしくは無いだろう。

というか何故弾もだが蘭も俺の事を知っているのだろうか?

 

「……なんで皆は俺の事を知っているんだ?ISを操縦できる男ってだけだぞ」

 

なんなら俺よりも織斑の方がイケメンだし。ファンも多そうだし。

……ちっとも悲しくないんだからな……!

それを考えるとどうしても何故俺がここまで顔が割れているのか不思議でしょうがない。

 

「知らないんですか?」

 

「……知らないな」

 

「一夏さん、本当に輝義さんは知らないんですか?」

 

「知らないと思うぞ。だってこいつ自分の事に関して全く無知だし。多分周りにいる人の方がどんな性格してるとか分かってると思う」

 

「えぇ……そうなんですか……」

 

「おう」

 

何故二人に呆れられているのか全く持って分かりません。

 

「なぁ一夏」

 

「ん?」

 

「もしかして輝義って自分に関心が無いタイプ?」

 

「んー……多分そうだと思う。じゃなけりゃあんなになってまで俺らを助けようとはしないし。でも最近は千冬姉とかに言われて結構マシになってきてはいるな」

 

「そうなのか……苦労してんだな」

 

「そうでもないぜ?」

 

なんだ?俺だってそれなりに自分に関心はあるし自分の事はよく分かっていると思うんだけどなぁ……

そんなことよりもだ。

 

「……それよりもなんで皆は俺の事をそんなに知っているのか教えてくれ」

 

「おぉ、そうだったそうだった」

 

「蘭、動画とか出せるか?」

 

「うっさい。そんな事とっくにやってるわよ」

 

「はい……すんません……」

 

そう言って蘭が見せてきたスマホの画面には俺が戦っている姿を映した動画が流れていた。

 

「……これは?」

 

「日本政府が記者会見で発表した時に事実だという事を知ってもらうために公表したんです」

 

「……そうなのか。初めて見た……」

 

VTシステム暴走事件の時のものだな……

だから皆は俺の顔を知っていたのか。

 

「これの他にもクラス代表トーナメントの時の物もありますよ」

 

そう言って見せてきたのは凡そ二十分に及ぶあの時の映像だった。

そうか……他の人の目線で見るとこう見えていたのか……

戦いながら傷付き、血を流して戦っている。

箒を庇った時の映像も全てが映っていた。

 

「本当なら十八歳以上の閲覧を禁止した方がいいという意見が出ていてそうなるはずだったんです。ですがこれからISに関わろうとしている子供達にこれを見せてISは人の命を簡単に奪える物だっていう事を知ってもらうために十五歳からの閲覧を許可したんです」

 

「輝義がこうやって誰かの為に命懸けて戦っているのを世界中の人が見たんだよ。ほら、再生回数が何十億ってなってんだろ?」

 

確かに再生回数の欄には何十億という数字がそこに表示されていた。

まさかこんなに見られていたのか……

 

「輝義って自分が思ってるよりも遥かに影響力があるんだぞ?」

 

「……そうなのか?」

 

「あぁ。この前更識会長が学園にひっきりなしに色んな国から電話が架かってきてて大変だって言ってたぜ。あれだけの身体能力にあれだけISを扱えてるんだから当然だって言ってたぞ」

 

「……今日は色々と驚くことばかり聞かされているな……」

 

「はははははは。まぁでも仕方ねぇんじゃねぇの?」

 

「そうだぞ輝義。有名人になったからしょうがない」

 

「輝義さん、頑張ってくださいね!」

 

と、口々にそう言った。

 

 

 

 

 

何故か分からないが弾も泊まることになった。

蘭はお爺さんがダメだって許してくれなかったらしい。

 

今は四人でトランプをしている。

しているのだが……

 

「輝義……お前弱すぎじゃね……?」

 

「……そんなことは無い」

 

「いやあるだろ。だって確か十三連敗中だよな?」

 

「……気のせいだ」

 

「輝義さんは顔に思いっきり出ますからね……直ぐにどれがジョーカーなのか分かっちゃうんですよ」

 

三人にことごとく負け続けた。

そんなに顔に出てんの?

でも事実負け続けてるし……

何とかして一回は勝ちたい……どうすれば……

アレならいけるかも。

 

「……少し待ってろ」

 

そう言って席を立つ。

向かうは今日俺が寝る部屋。

 

あった。これだ勝てるはずだ……

 

 

そうしてリビングに戻る。

 

 

「お、戻って来たな」

 

「……輝義何やってんの?」

 

皆驚いているな……!

 

「輝義さん……なんで顔にTシャツを巻き付けているんですか……?」

 

俺の必勝法……

それは顔にTシャツを巻き付ける!

ふははははは!!!

これなら顔が見えないから勝てるはずだ!

 

「……これなら顔が見えないから勝てる」

 

「ブフッ、わははははは!!え!?なにそれ!?」

 

「輝義、お前そんなに勝ちたいのか」

 

「輝義さんって結構可愛い所あるんですね」

 

なんでそんな反応?

弾、笑いすぎ。

織斑、小さい子供を見るような目で俺を見るな。

蘭、俺は間違っても可愛いくはないぞ。

 

 

 

それからその状態でやったのだが……

 

「えぇ……なんで顔隠してるのに負けるの……?」

 

「輝義はポーカーフェイスが死ぬほど下手くそなんだな」

 

「だ、大丈夫ですよ!次は勝てます!」

 

何故か一度も勝てないのだ。

その後も続けたが結局一勝も出来ずに終わってしまった。

何故だ……解せぬ……

 

 

 




そう言えば友人から以前この作品で「男性対女性という構図で戦争が起きたら」感じのシュミレーションを投稿したんですが、あれはあれで一つの話に出来そうじゃね?と言う話をしたんですよね。
まぁもし暇があったら書いて投稿してみようかな、と思っています。
既に執筆している三つの作品を優先で書いて行きますが。



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76話目



連続投稿再開と言ったのに早速日を跨ぐという……
申し訳ない……






 

 

 

飯を食べ終えてのんびりしていると、玄関の方から音がする。

 

「あ、千冬姉だな」

 

織斑がそう言うと、織斑先生だった。

 

「ん?大河に弾と蘭か。どうした?」

 

「……俺は織斑に招かれて泊りに来ました」

 

「俺はそれを知ってくっついてきました」

 

「私もです」

 

ここにいる理由を説明すると頷いて、

 

「そうか。ならゆっくりしていけよ」

 

そう言って恐らく自分の部屋に行ってしまった。

 

「……もしかして今回の事を言っていなかったのか?」

 

「忘れてた。でも怒ってる感じは無かったから大丈夫だぞ」

 

大丈夫かなぁ……

心配だ……

 

その後、蘭は泊まることをお爺さんに許してもらえなかったらしく先程帰って行った。

 

 

 

 

「輝義、先に風呂入ってきていいぞ」

 

織斑にそう勧められたのだが、俺は後でいいのだ。体を洗うのに時間が掛かるし。

 

「……いや、お前たちが先に入れ。俺はでかいから時間が掛かる。待たせるのは悪いからな」

 

説明すると、納得した顔をして頷いた。

 

「そうなのか?なら弾、先にいいぞ」

 

「お、悪いな。それじゃ先に入らせてもらうぜ」

 

「いいって。ゆっくりして来いよ」

 

「おう。あんがとさん」

 

そう言って弾は浴室に消えていった。

すると織斑は、

 

「なぁ、少し聞いてもいいか?」

 

何か聞きたいことがあるらしい。

なんだろうか?

 

「……いいぞ」

 

「正直に答えてくれよ?」

 

「……分かった」

 

別に嘘なんざつかないぞ。

 

「輝義って、千冬姉の事をどう思ってる?」

 

「……何?」

 

思わず聞き返してしまった俺は悪くない。

だって意味が分からないんだもん。今ここでそれを聞くの?

 

「……どういう事だ」

 

「いや、そのまんまだよ。輝義って千冬姉の事をどう思ってるのか気になっただけ」

 

そう言われてもな……

考えたことなんてないしな……

 

「……そうだな」

 

「…………織斑先生は何というか師匠、と言う感じが一番表しやすい言葉だと思う」

 

「どうしてだ?」

 

「……織斑先生が居なければ今頃俺は襲撃事件かVTシステムの時にとっくにくたばってたと思う。だけど織斑先生に色々と教えて貰って、見てもらっていたからこそ今の俺がある」

 

「いつか必ずあの人に追い付いて、勝ちたい。参ったと言わせたい」

 

「なんでだ?」

 

「……そんなの決まっているだろう。弟子は師匠を追い越してこそ弟子なんだ。それに」

 

少し間を開けて不敵に笑いながら言う。

 

「世界最強に勝ってみたいじゃないか」

 

もしかしたら聞かれているかもしれない。

だけどそれでもいい。俺からの挑戦状だ。

 

「そっか。んじゃさ」

 

「……まだあるのか」

 

「これでもう終わりだから教えてくれよ。な?」

 

「……いいぞ」

 

しょうがない、と思いながら麦茶を飲む。

どんな質問をされるんだ?

 

「千冬姉の事を女性としてどう思ってる?」

 

「ブフッ!!??」

 

「うおゎ!?」

 

こいつ、なんてことを聞いてきやがる!?

思わず吹き出しちゃったじゃないか!汚い!

 

「タオルタオル!!」

 

そういって織斑はタオルを持って来て拭き始める。

 

「……すまない」

 

「いや、聞いた俺が悪いからな。でもちゃんと教えて貰うぞ」

 

「……分かった」

 

しょうがない……

 

 

 

拭き終わった織斑はこちらを向いて再び聞いてくる。

 

「さて、教えてくれ。千冬姉の事を女性としてどう思ってる?」

 

しかし、こいつは弟としてそれでいいのか……?

まぁ聞いてくるって事は何かしらの理由があるんだろうけどさ。

 

「……正直に言えば女性としては物凄く魅力的だと思う」

 

くそ……

絶対顔赤くなってるよ……

 

「それで?手を出そうとは思わねぇのか?」

 

えぇ……

お前そんな事まで聞いてくんの……?

 

「……そうしたら織斑先生に迷惑が掛かるだろう」

 

「ふーん……そうなのか」

 

「……あぁ」

 

そうして話していると弾が風呂から出てきた。

 

「上がったぞー。次誰だー?」

 

「そんじゃ俺が入るわ」

 

「……おう」

 

織斑が風呂に行った。

その代わりに弾が俺の前に座る。

 

「聞きたいことがあんだけどさ、聞いてもいいか?」

 

なんだ、弾もか。

こいつは何を聞きたいんだ?

 

「……構わない」

 

「お、そうか。なら聞くぜ」

 

「……あぁ」

 

そう頷くと早速聞いてきた。

 

「IS学園での生活を聞かせてくれよ」

 

「……なんでだ?」

 

何故か聞こうとすると興奮した様子で答えた。

 

「だってよ!一夏と輝義からしたらそうじゃないのかもしれないけどさ、世の男共からしたら羨ましくてしょうがないんだぜ!?そんな状況の奴から話を聞かないなんてもったいなさ過ぎるだろ!?」

 

「……そうなのか」

 

「そうなんだよ!」

 

織斑が言ってた事が分かった気がする。

あれだ、顔はいいのにがっつきすぎて女子が寄ってこないタイプだ。

 

「……別に構わないが」

 

「じゃあさ、取り敢えずどんな風に思っているのか教えてくれ」

 

「……男が俺だけじゃなくて良かったと思っているな」

 

「なんでだよ?だって周りは女子だけでウハウハなんだぜ?」

 

「……俺がそんな奴に見えるか?」

 

俺は喜んで女子だけの場所に飛び込んでいけるような心の持ち主じゃないからな。

間違いなく今でもボッチだっただろうな。

織斑は分からんけども。

そんな俺を見て弾は申し訳なさそうに言う。

 

「……すまねぇ……無理そうだな」

 

「……だろう?それに男一人だったら間違いなく色んな意味で潰れてしまう」

 

「そうなのか……でも今思えば一夏もあんまりそういうのは聡い方じゃねぇからな」

 

「……それに色々と苦労することも多くてな」

 

本当に苦労することが多いのだ。

今までの人生の中で一番苦労していると思う。

 

「へぇ。例えばどんな事だ?」

 

「……色々と我慢しなければならない」

 

「お前……もしかして……」

 

下世話な話になってしまうが恐らく弾が想像している通りだろう。

 

「……そうだ。抜くことも出来ないし、ましてやその手の画像やら動画やらを持つことさえ出来ない」

 

「輝義お前……すげぇ……」

 

そうなのだ。

ぶっちゃけ所持していても何ら問題は無いだろう。

だが、それらの様な物を持っているとバレたら、と思うと無理だ。

どう考えたってあのような集団の中では間違いなく吊し上げられた上に社会的に殺される。

そんな恐ろしい事になってたまるか。

 

「輝義……もしかして入学してから一度も……?」

 

「……そうだ」

 

「すげぇぜ……」

 

驚愕した表情で俺を見る。

やめろ……!そんな目で俺を見るな!

 

 

 

そんな会話をしていると織斑が風呂から出てきた。

 

「輝義ー、次入れー」

 

「……あぁ」

 

さて、それじゃ風呂に入るとするか。

 

 

 

因みに風呂の大きさの問題は特に無かった。

広いお風呂でびっくりしました。

 

 

 

 

 

ーーーー side 一夏 ----

 

 

今日は輝義が泊まりに来ている。

トランプをやって弾の所の食堂に昼飯を食いに行って、それから弾と蘭も混ぜてトランプをして。

輝義がびっくりするぐらい弱くて勝つためにTシャツを顔に巻いたのにそれでも負けて。

面白かったな。

 

 

 

今は順番に風呂に入る。

弾と輝義に先に入って貰おうとしたのだが、輝義には時間が掛かるから先に入れって言われた。だから今は弾が入っている。

 

この機会だから千冬姉の事をどう思っているのか聞いてみるか……

多分、と言うか俺が見ていてだから本当かどうかは分からないけど千冬姉は輝義の事が好きだと思う。

 

なんで聞くのかってそりゃ弟として姉の幸せは願ってる訳だし、今までずっと俺の生活を支えるために働いてばっかりでそういう事には全く縁が無かったからな。

だから、もし千冬姉が輝義の事が好きなのなら俺はそれを応援したい。

 

応援するにしても先ずは輝義が千冬姉をどう思っているのか知りたい。

好感度によってはどうやってアプローチを掛けていくのか変わってくるはずだし。

 

 

 

そして輝義に聞いてみた。

最初に人間としてどう思っているのかを聞いてみた。

そしたら聞いた瞬間は驚いた顔をしたけどしっかり答えてくれた。

 

師匠、そんな感じだと。

 

それはそれは……

如何やら人間としては好意的には思っているみたいだな……

 

どうしてそう思うのか聞いてみた。

そしたら、

 

「……織斑先生が居なければ今頃俺は襲撃事件かVTシステムの時にとっくにくたばってたと思う。だけど織斑先生に色々と教えて貰って、見てもらっていたからこそ今の俺がある」

 

「いつか必ずあの人に追い付いて、勝ちたい。参ったと言わせたい」

 

そう答えた。

それでなんでそう思うのか聞いてみた。

 

「……そんなの決まっているだろう。弟子は師匠を追い越してこそ弟子なんだ。それに」

 

輝義はニヤッと笑いながら言う。

 

「世界最強に勝ってみたいじゃないか」

 

あー……何というか……

バトルジャンキーみたいな答えだな……

まぁ、でも俺も輝義に対してそう思っている所があるし、分からなくはないかな。

 

 

よし。

それじゃ本命を聞こう。

 

千冬姉を女性としてどう思っているのか。

 

そう聞いた途端に飲んでいた麦茶を思いっきり噴き出した。

俺には掛からなかったけど。

 

まぁ、そりゃ弟の俺の口からそんなことを聞かれればそうなるよな。

俺が輝義の立場だったら間違いなく同じ反応をすると思う。

 

 

 

麦茶を拭き終わって改めて聞いてみると答えは、

 

顔を赤くしながら女性としては物凄く魅力的だって言った。

 

お、これは脈ありか?

なんにせよ女性として魅力を感じているのであれば全然チャンスはあるって事だ。

忘れそうだけど、俺達と千冬姉は八歳離れている。

人によるだろうけど離れていると思ってしまう年齢差だ。

 

 

それから手は出さないのかを聞いてみたが、

 

やっぱりと言うか自分よりも千冬姉に迷惑が掛かるからと言った。

うぅん……ここなんだよな……

生徒と教師っていう明確な立場の違いがある訳だからそう簡単にはいかない。

俺はそうは思わないんだけど。

卒業を待つっていう事も出来るけどその前に輝義が誰か別の人を見つけないっていう保証は無いからな……

 

ここのところはこれから考えるしかないか……

 

 

 

 

 

その後、弾が風呂から出てきて俺が入った。

その前に千冬姉の部屋に寄る。

 

 

「千冬姉、いまいい?」

 

「ん?一夏か。いいぞ」

 

「相変わらず散らかすのが早い……」

 

「ふん……どうせ私はかたずけが出来ないからな」

 

拗ねるなよ……

昨日ピカピカに掃除したばっかりなのにもう下着やらつまみやら酒の空き瓶が転がっている。

今更ながらこんなんで嫁に行けるのだろうか……?

 

「おい。今失礼なことを考えたな?」

 

「そんな事はねぇよ」

 

なんで考えが読めるんだ……

自分の姉が人間を辞めている件について。

 

「また失礼なことを考えただろう」

 

「気のせいだって」

 

「ふん、まぁ今日は大河達が居るからな。勘弁してやる。それで?要件は何だ?」

 

そうだ。

余計なお世話かもしれないけどこれはちゃんと聞いておかないと。

 

「千冬姉って輝義の事が好きだろ」

 

「んぐっ!?」

 

あ、つまみの裂きイカを詰まらせた。

 

「ゲホゲホッ!お、おま、お前何を言っている!?」

 

「え?千冬姉は輝義の事が好きなのかな、って」

 

「……何時から気付いていた?」

 

「あ、好きなんだ」

 

「……そうだ」

 

顔を赤くしながら小さく答える。

おぉ!これはこれは!俄然燃えて来たぜ!

 

「で、いつから気付いていた……?」

 

「そうだな……あんまり覚えてないんだけど襲撃事件から暫くしてからかな?」

 

「かなり前からじゃないか……なんで気が付いた……?」

 

「正確には覚えていないんだけど、本当に何となくなんだよな。あれ?なんか千冬姉の輝義を見る目が違う……?って思って。それでちょいちょい見てて、輝義の事が好きなんじゃないかって結論に」

 

「そうなのか……弟に悟られて物凄く恥ずかしい……もう今すぐに山奥に引っ込みたい……しかも好きになったのが弟の同級生で年の差は八歳か……悲しくなるな……」

 

顔を手で隠してそう言う。

でもそんなことは無い。

 

「千冬姉、そんなことは無い」

 

「慰めか……」

 

「そうじゃねぇよ。さっき輝義に千冬姉の事をどう思っているのか聞いた」

 

「お前……」

 

少し驚いた、そして怒ったような表情をする。

 

「なんて言っていたか聞きたい?」

 

「………………………………聞かせろ」

 

考えてから聞かせてか。

まぁ自分の好きな人が自分の事をどう思っているのか気になるよな。

それと同時に怖いって感じでもあるんだろうな。

嫌われていたら、とか考えちゃんうんだろう。

 

 

輝義が人間としてどう思っているのか伝える。

輝義に対しての裏切りになっちゃうのかもしれないけど姉の幸せを願っている弟としてはな……

 

「そうなのか……大河はそんな風に言っていたのか……」

 

「あぁ」

 

「どう考えても女として見られていないな……嬉しいと思うがどうしても悲しい方が強いな……」

 

ドンドン落ち込んでいく。

ちゃんとこっちも伝えなきゃな。

 

「大丈夫だよ、千冬姉」

 

「何がだ……」

 

「輝義にさ、その後に女性としてどう思っているのか聞いたんだよ」

 

「そうなのか……?」

 

「あぁ。ちゃんと聞いたよ」

 

「それで……何と言っていた……?」

 

「聞きたい?」

 

「……聞かせろ」

 

「ホントのホントに聞きたい?」

 

「あぁ」

 

「どんな答えだったとしても?」

 

「…………あぁ」

 

よし。それじゃ教えてあげよう。

 

 

 

「女性として物凄く魅力的だってさ」

 

 

 

そう言うと千冬姉は安心からか少し涙目になっていた。

 

「それは本当か……?」

 

「本当だよ。だから、これから思いっきりアピールしちゃえよ」

 

「お世辞なんかじゃないな……?」

 

「かなり恥ずかしそうに言ってたから本当だと思うぜ」

 

肯定していくうちにドンドン涙がたまってくる。

輝義、あの千冬姉をここまで惚れさせてんのか。すげぇな……

 

「そうか……そうか……」

 

泣きながら、それでも嬉しそうに言っている。

でも今の段階じゃ千冬姉の初恋は実らない。

 

「千冬姉、輝義はあくまでも魅力的だって言ったんだ。好きだって言ったわけじゃないからな。安心はできないぜ」

 

「ぐす……そうだな……」

 

「あぁ。だからさ、教師とか関係なしにドンドンアピールして、振り向かせないと。じゃないと誰かに取られちゃうぞ?それでもいいのか?」

 

「……いやだ」

 

「なら夏休みが勝負だな。これからも色々とイベントとかはあるだろうけどまずはこの夏休みで、だな」

 

「そうだな……」

 

「俺も応援してるからさ。出来る事なら協力するから」

 

「あぁ……頼むぞ」

 

「ならまずは片付けが出来るようにならないとな?」

 

「う……頑張る……」

 

 

 

そうして千冬姉の部屋から出る。

さぁて、風呂に入るか!あんまり輝義を待たせるのもあれだしな!

 

 

 

千冬姉の為にもいろいろと考えなきゃな。色恋なんて無関係の人生だったわけだし。

どんな風に輝義を千冬姉に惚れさせるかな……

 

 

なんて考えながら風呂に浸かるのだった。

 

 

 

ーーーー side out ----

 

 






なんか一夏メインになっちゃった……

次回は side 千冬 をお送りします。




感想、評価等くださいな。


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77話目



花粉症辛い……

鼻が詰まって息がし辛いし、目はかゆいし……
酸欠気味で頭がボーっとするし……


今回は短いです。
これも全て花粉症のせいなんだ……!

許さん、許さんぞぉ……!花粉症……!



 

 

 

ーーーー side 千冬 ---ー

 

 

 

家に帰り、大河達の来訪に驚いた日の夜。

 

リビングでは三人が遊んでいるから自分の部屋で酒を飲んでいる。

 

久々に自分の部屋で飲むと落ち着いて飲める……

はぁ……夏休みに入るまでに色々とありすぎだ……

 

学園全体としても世界で二人しかいないISを動かせる男子が居るとあって事件やら事故やらには事欠かなかったぞ……

本人たちに会わせろだの見合いをさせろだの……

そんなくだらない電話がひっきりなしに架かって来るもんだから時差の関係で夜間も遠慮なく電話が架かって来る。

 

おかげで私を含めた教師陣はその対処に追われ、そこにイベントごとに何かしらの事件が起きるのだから忙しさが普通じゃない。

あの真耶ですらしかめっ面で仕事をしていたのだ。

 

 

個人的にも色々とあった。

人生で初めての恋をしたし、そして好きになった男を心配して何度も泣いた。

自分でも信じられない事だ。

しかし好きになった相手が生徒だからそう簡単にはいかない。

それどころか難しいだろう。

国連の方から一夫多妻を二人にだけ特別に適用することが提案という形でかなり強引に日本政府に迫られてはいる。だが日本政府は本人たちの意思を尊重すると言って未だに回答をしていない。

大河がどちらを選ぶのかは分からないし、私達にはどうする事も出来ない。

もし、一夫多妻の方になれば、と考えてしまうが年齢差がな……

 

 

そうやって色々と物思いに耽っていると部屋に一夏が訪ねてきた。

 

部屋に入った時に散らかすのが早いと言われた。

そんなの分かってはいるんだ……

 

しかも何となくだが失礼な考えをされたような気もする。

一応聞いてみるがしらばっくれる。

 

む、また変な事を考えたな?

まぁ今日は大河達が居るから勘弁してやろう。

 

 

用件を聞いてみた。

 

「千冬姉って輝義の事が好きだろ」

 

「んぐっ!?」

 

その言葉を聞いた瞬間に食べていた裂きイカを思いっきり喉に詰まらせた。

慌てて酒で流し込む。

 

こいつ……なんてことを聞いてくるんだ!?

 

「ゲホゲホッ!!お、おま、お前何を言っている!?」

 

むせながら問い詰めると、そっちこそ何言ってんだと言わんばかりの顔をしながら、

 

「え?千冬姉は輝義の事が好きなのかな、って」

 

こいつ何時から気付いていた……?

そう聞くと、

 

「あ、好きなんだ」

 

否定するのを忘れた……しかしこれ以上何を言っても無駄そうだから素直に認める。

顔が熱い……絶対に真っ赤になっているだろうな……

 

いつから気付いていたのか聞いてみると、襲撃事件から暫くしてからと答えた。

 

殆ど最初期からじゃないか……

隠せていると思ったのに何故バレたんだ……?

どうして気が付いたのかを聞いてみれば、何となくだと?しかも私が大河を見る目が違うとも言った。

 

自分の恋愛関係には疎いどころの話ではないのに……

なんだそれは……自分自身ですら気が付かなかったぞ……

 

そうなると出て来る感情は恥ずかしいというもの。

別に大河を好きになったことではない。他でもない弟である一夏に悟られた事なのだ。

肉親に誰の事が好きだとかを悟られるものが此処まで恥ずかしいとは……

いっその事今すぐに山奥に隠れ住みたい……!

 

 

 

 

すると、こいつはあろうことか本人に私の事をどう思っているのかを聞いてきた、と言った。

 

流石にこれは怒っても問題ないだろうが、なんて言っていたのか聞きたいかと言われるとな……

 

少し考えてから聞かせろ、と答える。

どんな風に思われているのか、正直聞くのは怖い。

でも気にもなるのだ。

 

 

そして教えられる。

どう思われているのかを。

 

願っていた答えとは随分とかけ離れていた。

 

なんでだろうな……

物凄く嫌だ。

どう考えても女としては見られていないしこれからも見られることが無いであろうその答え。

 

でも一夏は大丈夫だと言う。

これのどこが大丈夫なのか全然分からない。

 

しかし、女としてどう思っているのかも聞いてきたそうだ。

確かに人間的な部分の回答だったからな……思いの外冷静ではなかったらしい。

 

そして一夏は聞きたいか聞いてくる。

 

「聞きたい?」

 

「……聞かせろ」

 

「ホントのホントに聞きたい?」

 

「あぁ」

 

「どんな答えだったとしても?」

 

そう言われて少し迷ってしまったが、それでも聞きたい。

 

「…………あぁ」

 

どうなんだろうか……

 

 

 

 

「女性として物凄く魅力的だってさ」

 

 

 

 

そう言われて、何故かは分からないが少し涙が出てきてしまった。

 

本当かどうかを確認すると、本当だと。

お世辞ではないのかと聞くと、かなり恥ずかしそうだったからそれは無いと。

 

あぁ、そうなのか……嬉しい……

 

そしてドンドン涙が溢れて来る。

全然止まらない。

 

そして気が付く。

 

私は、こんなにもあいつの事が好きなのか……

 

でも一夏はこれで安心できない、魅力的だって言っただけだからちゃんとアピールしないとダメだと言われた。

 

そんな事は分かっている。

誰にも渡すものか。

 

すると一夏はこの夏休みが勝負だと言った。

これからも色々とイベントはあるがまずはこの夏休みだと。

 

一夏は私の初恋を応援してくれるらしい。

正直、嬉しいが自分の事となると訳が分からない程鈍感になると弾達に聞かされているからな……

 

でも心強いのは確かだし頼むぞ、弟よ。

しかしその後に、 

 

「先ずは片付けが出来るようにならないとな?」

 

う……それは言わないでくれ……

でも片付けが出来ないと幻滅されてしまうかもしれないからな。

頑張らなければ。

 

そう思った。

 

 

ーーーー side 千冬 ----

 

 






前々から告知していましたが三月の後半から仕事の方が滅茶苦茶忙しくなるので取り敢えずゴールデンウィークまで投稿出来なくなります。

ゴールデンウィークが終わった後も忙しいので恐らく最短で三か月程、長いと半年は投稿回数が一回か二回ぐらいになってしまいます。
それまでは可能な限り投稿を続けます。
時期が近付いたら活動報告の方で改めてご報告致します。


読者の皆様には申し訳ありませんがお待ち頂けると嬉しいです。
そして感想を書いて、評価をしてくださると私の心の支えになります。




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78話目

今日、自転車で縁石に突っ込みました。
縁石には勝てなかったよ……

思いっきり前に横回転かましながら吹っ飛びました。
いや、結構視界がグルグル回るもんだからこんな感じなのかと思っちゃいましたね。

怪我の方は受け身を取ったので擦り傷と二箇所に痣だけです。
頭を守っといてよかったぜ。


 

風呂から出た後、十一時になっていたし結構はしゃいでいたから眠くなって寝てしまった。

起きたら朝だった。

 

 

今日の午後七時までに学園の寮に帰らなければならない。

外出届を出しているとは言え、記入した午後七時までに戻らないと反省文にお説教を食らってしまう。

他の生徒はそこらへんは緩いのだが俺と織斑は立場上どうしても厳しくならざるを得ない。

もし俺が言った時間を過ぎてもその場所に現れなかった場合には緊急事態として警察やら公安やら自衛隊やらが捜索をして、見つからなかった場合は即応準備態勢で待機している部隊が色々とやるそうな。詳しくは知らんが。

 

まぁそんな訳で今は午前十時。

今の今まで寝ていて織斑に起こされた。

 

 

「おはよう輝義」

 

「……ん。おはよう」

 

「朝飯は食えるか?」

 

「……食う」

 

「そっか。なら顔洗うなりなんなりしてリビングに来いよ。もう出来てるし千冬姉と弾は食い始めてるからさ」

 

「……あぁ」

 

そう言うと織斑は下に降りていく。

……まだ眠い。

飯食ったら二度寝しようかな……

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう」

 

「……おはようございます」

 

織斑先生に挨拶。

 

「お、輝義やっと起きたか。おはよう」

 

「……おはよう」

 

弾にも挨拶。

 

「輝義、ほら朝飯」

 

そういって織斑が俺の席に飯を乗せたお盆を置く。

メニューは和食でザ・日本の朝ご飯って感じで焼き魚にご飯、味噌汁と卵焼き(しょっぱい方)というもの。しかもご丁寧に俺の分は特特特特盛り。

焼き魚なんて五枚も乗っている。

 

「……すまないな。手間を掛けさせる」

 

「何言ってんだよ。こういう時はありがとうだろ?」

 

そうだったな……

 

「……ありがとう」

 

「おう。それに作り甲斐があって楽しかったからな」

 

「……そうなのか」

 

「そうなんだよ」

 

そんな会話をしてから食べ始める。

 

「……頂きます」

 

「召し上がれ」

 

一口味噌汁を飲むと丁度いい加減の味噌が効いている。

 

うめぇ……

 

卵焼きもうまいし焼き魚も焼き方がうまいのか何なのか分からんが旨い。

物凄く箸が進んだのはしょうがない。

 

ちゃんとおかわりも用意されていてご満悦な俺でした。

 

 

 

 

「輝義は何時に帰るんだ?」

 

「……余裕を持って六時には出ようと思っている」

 

「そうなのか。なら少し待ってててくれ。昼飯の材料を買ってくるから」

 

「……俺もついていくぞ」

 

そう言われて俺もついて行こうと提案するが、

 

「あぁ、大丈夫だよ。足りないもんを買うだけだから。ゆっくりしていてくれ」

 

そう言うと出かけてしまった。

しかしな……ゆっくりしろ、か。

 

何をするか考えていると織斑先生がリビングに戻ってきた。

 

「一夏はどうした?」

 

「……買い物に出かけました」

 

「なんだ、あいつは客人を放っておいて買い物か」

 

「……昼飯の材料を買いに」

 

「あぁ、そういう事か」

 

そう言ってキッチンに向かい、コーヒーを入れ始めた。

 

「砂糖は入れるか?」

 

「……何もなくて大丈夫です」

 

「そうか」

 

俺の分も入れてくれているらしい。

 

「ほら」

 

「……ありがとうございます」

 

「気にするな。それと……」

 

「……はい?」

 

「敬語と先生呼びはやめろ」

 

そう言われても……

いきなりは無理だし、これからも呼べるかどうかは分からないし……

 

「……ですが」

 

「学園では構わんがプライベートでもやる必要はないだろう。私も名前で呼ばせてもらうぞ」

 

「……しかし」

 

「ほら、言ってみろ」

 

拒否できそうにない……

 

「……やらなければだめですか?」

 

「やらなきゃだめだ」

 

「……どうしてもですか」

 

「どうしてもだ」

 

少し笑いながらそう答える。

これはもう逃げられないやつだ……

 

「……分かりました」

 

「それなら早く呼んでみろ」

 

なんでそんなに嬉しそうなんですかね?

 

「……千冬……さん」

 

「まぁ……それならいいか。だが、何時か必ずさん付けもやめろよ」

 

「……はい」

 

良かった……納得してくれた……

でもさん付けも何時かは取らなきゃいけないのか……

 

「それで?お前は一学期どうだった?」

 

「……そうですね」

 

一学期かぁ……

どうだったかな……

 

「……本当に色々ありましたね。ISの適性が見つかったと思ったらIS学園に放り込まれて最初からいきなりセシリアと模擬戦をやることになって」

 

「あれが始まりだったな。あの後に輝義が私の元に鍛えてくれって頼みに来たんだっけな」

 

あれが無かったら本当に今の俺は居なかっただろうし。

 

「……多分、これまでの人生これからの人生で一番濃くて充実している時間だったと思います。これからもそうだとは思います。でも正直な所、友人が出来たのもここに来てからが初めてですし」

 

「良かったな」

 

「……はい」

 

その時に最初から最後までニコニコと普段の学校生活では考えられないような笑みだった。

正直、普段とのギャップが凄すぎて破壊力がおかしかったです。

だってさ!?最初から最後までニコニコしてたんだよ!?

学園ではいつもしかめっ面がだよ!?絶対に誰にも見せた事ないやつだよあれ。

優しい顔でふわっと笑った時はめっちゃドキッとしたぜ……

普段からああしていたら間違いなくファンがもっと増えるぜ。

 

 

 

「あぁ、一つ聞きたいことがあるんだった」

 

「……どうぞ」

 

「一夫多妻」

 

その単語を聞いた瞬間、超絶ビクついたのはしょうがないと思う。

だって俺以外知らないと思ってたわけだし。それを千冬さんが知っているなんてどうやって予想できようか。

 

「身に覚えがあるな?」

 

「……何故それを知っているんですか?」

 

「少し前にな、政府の方から聞かされてな。驚いたぞ全く……」

 

「……口外するなと言われていた物ですから」

 

「別に怒っている訳じゃないさ」

 

「……ならどうして?」

 

本当になんで聞いてきたんだろうか?

 

「どうするのかと、思ってな」

 

そうだったな……

これも早めに返事をしなければならないことは分かっている。

だが、一夫一妻の世の中で生きてきた俺にとってはそう簡単に飲み込める物ではない。

自身の安全を考えれば必要な事は分かってはいる。

 

「そんな顔をするな。別にどちらを選んでも誰も責めはしないさ。まぁ争奪戦は激化するだろうが」

 

そう言ってくれるのは本当に、本当に有難い。

 

「……正直な所、一夫多妻を選んでも俺みたいなのについてきてくれる人は居なさそうですし」

 

「ま、今すぐって訳じゃない。しっかりと考えて自分がどうしたいのかを選べばいいさ。それに……」

 

「……それに?」

 

「お前の事を慕っている奴はお前が考えているよりも多いものだぞ?」

 

え……なにそれすっごい気になる。

その言葉が気になって聞いてみたのだが、

 

「これは私から言うようなものではないからな。ま、いつか分かるさ」

 

そう言って教えてくれなかった。

 

そう言えば織斑の帰りが遅かった。

何かあったのだろうか?

まぁ本人は元気そうだったから大丈夫だろうが。

 

 

 

 

 

 

輝義、千冬の会話中の一夏君

 

「あれ……?輝義と千冬姉が話してる……」

 

(早速アピールし始めたのか……いい傾向だぜ。これは邪魔しちゃ悪いな……もうしばらく二人きりにしておこう)

 

そう思った一夏君は弾君の家にお邪魔していましたとさ。

 

 

 




今回も短めです。



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79話目






 

 

 

あの後、織斑が帰って来たのは一時頃。

何をしていたのか聞いてみると、はぐらかされてしまった。

まぁ昼飯で出てきた炒飯が美味かったからいいや。

 

それで三人で再びトランプをしていると六時になってしまった。

因みにトランプは俺の全敗で終わった。なぜ勝てないのだ……

表情が分かりやすい?そうですか……

 

 

「……そろそろ俺は帰るとする」

 

「お、もうこんな時間か」

 

「なんだ、もっと居ても構わんのだぞ?」

 

「……反省文は嫌ですから」

 

「それもそうだな。なら駅まで送って行ってやるとしよう」

 

千冬さんが態々送って行ってくれるらしい。

 

「……駅までは十分か十五分で着きますから大丈夫ですよ」

 

「何、それぐらいいいだろう。ほら、荷物を纏めて行くぞ」

 

「なら俺は晩飯の準備でもするかな(いい傾向じゃないか。その調子でドンドンアピールしていくんだ千冬姉!)」

 

断り切れず、二人で駅まで行くことになってしまった。

しかも何故か織斑は付いてこないという。

まぁいっか。

飯は大事だし。

 

そういう事で俺は今現在織斑先生と並んで駅に向かっている。

 

「……態々送っていただいてありがとうございます」

 

「気にしなくていいさ。それに、この輝義と歩いている時間も楽しいものだからな」

 

そう言われてしまうと何も言えなくなる。

しかしそうすると帰りはどうなんだろうか?

 

「……ですが帰りは居ませんよ?」

 

「ん?帰りはいいんだ」

 

帰りはいいのか。

でも何がいいんだろうか?

よく分からないが本人がいいのならいいか。

 

「夏休み中はどうするつもりだ?」

 

「……実家に帰ります」

 

「やはり帰省するのか」

 

「……はい。それに皆を家に誘ってますから」

 

「そうなのか。まぁそういう事を出来るのは学生の内だけだ。大いに楽しめ」

 

「……はい」

 

「……千冬さんは夏休みをどう過ごすんですか?」

 

「多分仕事が八割休みが二割、と言った所だろうな」

 

凄い忙しいじゃん。

俺らは呑気に夏休みで大人は仕事か。

 

「……何でです?」

 

「二学期に修学旅行と文化祭、それに体育祭もあるだろう。それの準備やらなんやらがあってな」

 

「……ご苦労様です」

 

物凄い行事の数。

 

「それに、もしかしたらなんだがな?」

 

「……なんです?」

 

「キャノンボールファスト、聞いたことはあるか?」

 

何だっけ……

どっかで聞いた事があるような無いような……

 

「その顔じゃ知らなさそうだな。キャノンボールファストは毎年行われるISレースだ。例年通りだと学園の一番大きいアリーナで行われるんだがな……」

 

「……それがどうかしたのですか?」

 

「各国が揃いも揃って男性操縦者の二人を参加させるようにとぬかし始めていてな。しかも国家代表部門に混ぜてだ」

 

まじですか。

俺達ってばものすんごい人気者ですね。

 

「本来なら学園の生徒のみで行う訓練機部門と専用機部門に分かれてやるんだが、この状況じゃ多分専用機部門と国家代表部門の両方に出ることになる」

 

「……なんでそんなに俺達を出したがるんですか?」

 

「織斑は恐らく男性操縦者のデータ集めとして、輝義はデータ集めと第四世代機のイージスの情報収集だろうな。それ以外には考えられん」

 

「……やっぱりですか」

 

何となく予想していた事とは言え、面倒事には変わりない。

それに欧州の女権団に亡国機業もそれに合わせて何らかの形でアクションを起こすだろうし。

 

「それにドイツとフランスの動きも気になる。流石にあれだけの事をしておいて招く訳にはいかないからな。今回、と言うか今後はIS学園の行事にドイツとフランスは一切の干渉が出来ないことになっている」

 

そうなのか……知らなかったぜ。

でもそうすると絶対に何かしらのアクションを起こすよなぁ。

スコールさん達に聞いておくかな……

それに、千冬さんにも会わせておいた方がいい気がする。

そうすれば対策とか取りやすいだろうし。

 

「……それだと何か起こしそうじゃないですか?」

 

「絶対に何か起きるだろうな。はぁ……」

 

大きなため息をつく。

流石に学園だけでは対処が難しいのだろう。

こうなったらスコールさんと会ってもらうか。

絶対にヤベー雰囲気になりそうだけど。

 

「……千冬さん、少しいいですか?」

 

「どうした?」

 

「……後日、時間のある日を教えて貰えませんか?」

 

「なんだ急に」

 

「……会ってもらいたい人が居るんです」

 

「誰だそれは?」

 

「……今はまだ教えることは出来ません。ですが協力者であることは間違いないです」

 

「………………分かった。そっちの都合に合わせる」

 

「……ありがとうございます」

 

「ほら、駅が見えてきたぞ」

 

本当だ。

もう駅が見えてきてしまったか。

なんかとても名残惜しい気がするけどまた今度話そう。

 

「……此処まで送っていただきありがとうございます」

 

「気にするな。私が送りたかっただけだからな。それに……」

 

「……それに?」

 

それに何だろうか?

 

「それに輝義と二人だけで話しながら歩けたからな」

 

そう言って、ふわりと笑った。

さっき織斑の家で二人で話していた時に浮かべた笑みとは別の物だった。

 

「……それでもですよ」

 

「それなら礼を受け取ろう」

 

「……千冬さん、普段からそうやって笑っていればもっと素敵だと思います。それにファンも増えるだろうし」

 

思った事を口にしたら嬉しそうに、同時に顔を赤くしながら、

 

「なんだ急に……でも、そう言うのなら努力してみよう。でもファンはこれ以上要らないさ。別でもっと自分のものにしたいものがあるからな」

 

「……それは?」

 

「ふふ、秘密だ」

 

教えてくれなかった。

 

「ほら、もうすぐ出発してしまうぞ?」

 

そう言われて時間を見るとギリギリだった。

慌てて駅のホームに駆けようとすると、手を掴まれた。

その掴んでいた手は千冬さんの手で、世界最強と言われてはいるが、それでも女性らしい柔らかくて、少しひんやりとしてはいるが十分に温かい手だ。

思わずドキッとしてしまったのはしょうがない。

 

「また、今度二人で遊びに行こう」

 

「……俺なんかでよければいくらでも」

 

「輝義じゃなければだめなんだ。いいか?」

 

そう言われ、恥ずかしくなって、

 

「……はい」

 

これしか言えなかった。

俺ってば情けない……

 

しかし千冬さんはそうでもないらしく、

 

「ん。そら、間に合わなくなるぞ?」

 

少しだけ悪戯な、意地悪な笑みを浮かべて手を離してモノレールを指差す。

 

「……それでは」

 

「あぁ」

 

そう言って千冬さんと別れる。

何とかモノレールには乗れた。

しかしその車内には俺しかいなく、織斑たちと、握られた手が寂しかった。

 

窓の外を見てみると千冬さんが小さく手を振っていた。

周りには誰も居ないどころか完全に貸し切り状態だ。

これなら思いっきり手を振っても問題はないだろう。

 

そう思って大きく手を振った。

 

 

少し恥ずかしそうにしていたのは気のせいだろうか。

 

 

 

 

 

ーーーー side 千冬 ----

 

 

一夏が買い物に行っているという事で、計らずとも二人きりになってしまった。

 

どうしよう……昨日の今日でアピールなんてできるはずがない!

 

緊張してしまった。

だがそれを悟られないようにいつも通りを装って会話をする。

 

変じゃなかっただろうか……

 

そして遅めの昼食を摂り、三人でトランプをした。

弾は午後から部活があるとかで朝食を食べた後にすぐ帰って行った。

 

それにしても輝義はトランプが驚くほど弱い。

顔にすぐに出るし、相手を騙すのも下手。

戦闘中のこいつは何処に行ってしまったのかと思うほどだった。

 

それから、輝義が帰る時間になった。

送って行こうとすると断られたが押し切った。

一夏は気を利かせてか夕食の準備をすると言って家に残った。

 

 

駅までの道を二人で並んで歩く。

 

この時間は何物にも代え難い大切なものだと思う。

すぐ隣に好きな人が居てそして会話を楽しみながら並んで歩く。

これほどまでに幸せな時間は無い。

 

 

駅に着くまでの間の会話の中で会って欲しい人が居ると言われたが誰だろうか。

輝義の事だから変な奴ではないと思うが。

 

 

 

駅に着く。

とても名残惜しいがここで一旦別れなければ。

 

その時に輝義に普段から笑えばもっといいと言われた。

好きな人からそう言われてはやってみたくなるのは仕方が無いだろう。

 

ファンも増えると言われたがそれよりも遥かに輝義の事が欲しくてたまらない。

何時も何処でも傍にいてほしい。

 

でも輝義はちゃんと言葉にしなければ気が付かないだろうな。

 

別に今はそれでもいい。

必ずこの想いを伝えてやるんだから。

 

それを言うと何なのかを聞いてくるが教えてやらない。

今はその時じゃないと思うから。

 

そして別れようとした時にどうしても名残惜しくて手を摑まえてしまった。

 

咄嗟に握ったはいいがどうしよう!?

 

取り敢えず二人で遊びに行こうと言うと、

 

「……俺なんかでよければいくらでも」

 

む……

輝義でなければだめなんだ。

 

そう言うと恥ずかしそうに返事をした。

……なんだろうこの優越感。

 

 

そして輝義はモノレールに乗って行ってしまう。

モノレールの窓から輝義が見える。小さく手を振ると、車内だというのに大きく手を振って返してくれた。

 

嬉しいが少し、なんか恥ずかしかった。

 

 

 

 

 

家に帰ると一夏が、

 

「デートはどうだった?」

 

と茶化すような顔で聞いてくる。

 

思わす尻に蹴りを入れてしまった。

 

「いってぇ!?」

 

茶化すこいつが悪い。

 

「茶化すんじゃない」

 

「でも本当にどうだったんだよ?」

 

何だろう。物凄く恥ずかしくなって来たな……

 

「……教えない」

 

「えぇー……いいじゃんか」

 

「恥ずかしいんだ。勘弁しろ、全く……」

 

そう言うと一夏はニヤニヤしながら、私を見る。

 

「なんだその顔は」

 

「別に?」

 

そう言ってはぐらかされてしまった。

 

 

 

とてもいい時間だったな……また機会が無い物だろうか?

 

 

そう考えながら夕食を待った。

 

 

 

ーーーー side out ----

 

 

 






ネットワークの謎の切断により書いたものが消えるというハプニングがありましたが何とかなった。

早くイチャラブちゅっちゅな感じのを書きてぇ……




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80話目



今回、時間を飛ばします。


箒ちゃん可愛いよね!



 

 

 

織斑宅から帰って来て早くも二週間が過ぎていた。

寮には殆ど人が居なく、閑散としていた。多分皆は実家に帰るなり遊びに行くなりしているのだろう。

箒は実家に帰っているし、セシリアと鈴は本国に、楯無さんはロシアの方に行ってしまっているし、シャルロットとラウラ、簪は日本代表候補生なので訓練を受けに行っていて居ない。

 

俺はと言うと、暇している所に織斑先生たちに連れていかれ、何が何だか分からないうちに手伝いをさせられていた。なんでも学校に残っている虚さんと本音が生徒会だという事でその仕事の手伝いと先生方の手伝いもしている。生徒会も先生方も本当に忙しいらしく、山田先生は夏休みだというのに目の下に隈を作っていた。

 

手伝いをするときに織斑先生に機密やらは大丈夫なのか、と聞いてみたのだが、

 

「そもそも大河自身が機密の塊みたいなものだからな。それにそのような書類は渡さんから心配しなくても大丈夫だ」

 

とのこと。

言われてみればその通りだと頷いてしまった。

世界で二人しかいない男性操縦者の一人で、各国と女権団のドス黒い部分を知っているし、世界で二機しかない第四世代機を持っている。

……あれ?俺ってパンドラの箱状態じゃね?

 

 

そして手伝いの無い時はアリーナを貸し切って技術科の製作した武装の性能テストをやったりターゲットを出して一日中一人で訓練したり。

そこに織斑先生や山田先生が偶に息抜きで訓練に付き合ってくれる。

 

 

と言う感じでなんだかんだで忙しい日々を送っていた。

 

 

しかぁし!!今日は箒の実家の神社に行く事になっているぅ!!

 

正直楽しみで仕方が無い。ただどんな服装で行けばいいのか分からず織斑先生に相談したところ、被服部に何故か呼び出され、採寸され、気が付いたら浴衣が出来ていた。

しかも物凄く完成度の高い物で、紺色の浴衣だった。着付けの方も教えてくれた。

ただ、俺が着ると何故か完全にそっちの道の人にしか見えない。

 

迷惑ではなかったのか聞いてみたが、

 

「いやぁ、大きい分作り甲斐があったわー。丁度皆で浴衣を作ろうって言ってたのよ。そこにこの依頼が舞い込んだもんだから喜んで飛びついちゃった」

 

との事。

 

「それに、何度も命を助けてもらってるのに何もお礼が出来ないしね。これぐらいだったらお安い御用よ!これからも何か作ってほしい物があったら言ってくれれば作るわよ」

 

とも言われてしまった。

 

それで早速だが、いくつか頼んでしまった。

それは皆の分の浴衣。

俺の実家の方で夏祭りと花火大会があるのだが、それに着て行って貰おうとしたのだ。

箒は多分持っているだろうがそれでも普段から世話になっているしその感謝を込めて、という訳だ。

 

夕方の五時ごろに神社に着いておいてほしいと言われた。

なので一応迷ってもいいように早めに出ることにしている。〇ーグルはあるけど。

 

 

昼飯を食って浴衣を持って出発をする。

なんで浴衣を着て行かないのか?恥ずかしからだよ。

 

モノレールに乗り、取り敢えず神社に向かう。

マップでは二十分もあれば着くと書いてあるが、浴衣を着なければならないから早めに出ることにする。

 

正直、まだ自分でちゃんと着付けられないから時間が掛かるだろうし。

 

 

 

 

そうしているうちに神社の階段の下に来た。

おぉ……結構段数あるなぁ……

 

大体五十かそこいらだろうか。

小高い丘かなんかの上に立っているらしく、なんかこう、神社って感じがするな。

階段の横には桜が植えてある。

 

そんな事を考えながら緑の葉を茂らせた桜並木を見ながら階段を昇って行く。

 

上がって行くにつれて神社が見えて来る。

 

おぉ……でかいな……

 

想像していたよりも遥かに大きい神社だった。敷地面積もかなり大きいだろう。

 

取り敢えずどうすればいいのか分からないから箒に連絡する。

 

「……箒、俺だ」

 

「輝義か?どうした?」

 

「……神社に着いたんだが、どこに行けばいい?」

 

「今どこにいる?」

 

「……鳥居の下だ」

 

「ならそこで待っていてくれ。迎えに行くから」

 

「……分かった」

 

そう言ってここで待つことになった。

なんとなく周りを見渡すと、とても大きいご神木も見える。

何だろうか、階段の下よりもここの方が気温が低く涼しい感じがするのは気のせいだろうか。

 

 

暫くすると箒がやって来た。

 

「すまない!待たせた!」

 

そう言って駆けて来る。

 

「……大丈夫だ」

 

「それにしても早かったな?どうしたんだ?」

 

まぁ早く来て浴衣を着ようと思っていただけなのだが。

 

「……被服部に浴衣を作ってもらってな。着付けがあまりどころか全然出来なくて、箒なら知っていそうだから見てもらおうと思ったんだ」

 

「そうなのか。なら早いがもう着付けてしまおう。私の方も神楽舞の準備があるからな」

 

そうだった。箒も準備しなければならないんだったな。

 

「……すまない」

 

「ん?何、気にしなくていいぞ。ほら、行こう」

 

そう言って俺の手を引っ張る。

引っ張られて母屋の方に連れていかれた。

玄関を開けて入る。

 

「ほら、上がってくれ」

 

「……お邪魔します」

 

平屋のかなり広い日本家屋。

木と畳の匂いがする。

自分家を思い出すなぁ……

 

「この部屋で着付けをしよう。浴衣は?」

 

「……これだ」

 

「おぉ、紺色でいいじゃないか」

 

そう言って浴衣を広げる。

 

「相変わらず大きいな。よし、着てしまおう」

 

そう言うと慣れた手つきで着付けを手伝ってくれる。

ほんの三分程で終わってしまった。

 

「これで良し……ほら、出来たぞ」

 

そう言ってポンと軽く胸を叩いてにこりと笑った。

 

「……ありがとう」

 

「なに、気にするな。誰かの着付けをしたのは初めてだったからちゃんと出来ているか分からないが」

 

そう言ってはいるが、俺がやるよりも遥かに綺麗に仕上がっている。

多分着付け教室とか余裕で開けるんじゃないか?

帯の結び目も綺麗だし。

 

「……凄いな。綺麗に出来ている」

 

「そ、そうか……それじゃ祭りまで待っていてくれ。私はこれから準備をするから出来たら呼びに来る」

 

「……あぁ。待っている」

 

「楽しみにしていてくれ」

 

そう言って笑うと何処かへ行ってしまった。

そうなるとやることが無いわけで、祭りが始まるのは七時から。

それまであと二時間ほど。

 

何しようかな……

 

ボーっとしていると襖が開く。

もう終わったのかと思ったが箒ではなく、細身の筋肉質な男性だった。

 

「君が、大河輝義君で間違いないかな?」

 

優しい声音だった。

マジで誰……?

 

「あぁ、すまないね。自己紹介がまだだったね」

 

「私は篠ノ之龍韻。箒と束の父親です」

 

マジカヨ。

 

え?でも国家重要人物保護プログラムで居ないんじゃ?

 

 

「……初めまして、大河輝義です」

 

「娘達から話はしょっちゅう聞かされているよ。随分とお世話になっているそうだね」

 

「……そんなことはありませんよ」

 

挨拶をして何故此処にいるのかを聞いてみる。

 

「……どうして此処に?国家重要人物保護プログラムで各地を転々としているんじゃ……?」

 

「あぁ、それはね?箒には内緒にしておいてほしいんだが、君のご両親は国家重要人物保護プログラムを適用されずに厳重な警備で住んでいる所を転々としていないだろう?」

 

「……えぇ」

 

「それで国の方がそれは不公平なんじゃないかってなってね。もうしばらくすれば此処に戻って来られるようになったんだ」

 

そうなのか!?

初耳だぞ!?

でも言われてみれば俺の家族はプログラムであっちこっちに引っ越ししていないし、名前も変わっていない。

考えるとそれは変だな。

 

「それで此処に居るんだ。さっきも言ったけど箒には言わないでほしいんだ」

 

「……それはどうしてですか?」

 

「サプライズ、と言うやつかな?」

 

「……束さんはいいんですか?」

 

「あの子はもうとっくに知っていそうだからね。隠すだけ意味が無いような気がするよ」

 

あぁ……

確かにとっくに知っていそうだもんな……

 

「……それで俺に何か用があったのでは?」

 

「いや、特に用はないんだ。強いて言うなら君の事を実際に見たかったのと少しばかり話がしたかった、と言うところかな?それに目的の一つはもう達成できたしね」

 

「……そうですか」

 

最後に何か小さい声で言っていたが聞き取れなかった。

 

「それじゃ、色々と聞きたいことがあるんだ。聞かせてくれるかい?」

 

「……勿論です」

 

「それじゃ学園での箒を教えてくれ。父親としては気になるものでね」

 

そう言ってにこりと笑った。

 

 

 

それから一時間半ほど、ずっと話していた。

話していた中で、親父さんは箒と束さんの事を本当に、本当に心の底から大切にして愛していることが分かった。

 

夏休み前に箒は叔母さんが神社を管理してくれていると言っていたが、どうやら両親が帰って来たことで管理が両親の方に戻ったらしい。

既に叔母さんは自分の家に帰っているらしく、今日は何処かで客としてフラフラしているそうだ。

挨拶がしたいと言ったのだが、捕まらないからやめておいた方がいいと言われてしまった。自由奔放な人なんだろうか?

 

 

 

 

 

そして喋っていると、再び襖が開かれる。

顔を向けると箒と束さんによく似た、女性がそこにいた。

その女性は俺の方を向いて挨拶をする。

 

「初めまして、箒と束の母の篠ノ之雪子です」

 

「……こちらこそ初めまして。大河輝義です。家にお邪魔して直ぐに挨拶をしなくて申し訳ありません」

 

「いえいえ。気にしないで下さい。あなたの事は箒と束の二人からよく話を聞いています。大変お世話になっているようで」

 

「……俺の方が本当にお世話になっています」

 

そんな感じで挨拶をすると、

 

「箒の準備が出来たのでいらしてくださいな。待っていますから」

 

そう言って俺は箒の居る部屋に案内される。

しかし、箒は目元と髪の色が親父さんに似ていて、束さんはお母さん似なんだな。

 

そう考えていると着いた。

 

「どうぞ」

 

そう言うと何処かへ行ってしまった。

 

「……箒、入っていいか?」

 

「輝義か?いいぞ、入ってくれ」

 

返事が返って来たので入る。

そして俺は息を呑んだ。

 

「おぉ……」

 

感嘆の声を上げて何も言えなくなってしまった。

 

「その、何か言ってくれ……」

 

「……箒」

 

「な、なんだ?」

 

「物凄く綺麗だぞ」

 

「ふぇ!?」

 

正直な感想を漏らすと顔を真っ赤にして黙ってしまった。

 

いやだって本当に綺麗なんだって。

薄化粧に紅い口紅を塗っている。元々の肌がビックリするぐらい綺麗なもんだからこれぐらいの薄化粧がとんでもなく似合っている。

 

「……どうした?」

 

「へ!?いや、その、何でもないぞ!?」

 

慌てた後に何でもないと言われても説得力無いですぜ……

 

「その、褒められるのが少し恥ずかしくて……」

 

「……そうなのか」

 

「あぁ……」

 

この姿の箒って物凄く貴重なんじゃ?

そう思って少し聞いてみることに。

 

「……写真を撮ってもいいか?」

 

「しゃ、写真!?その、恥ずかしいから……」

 

「……ダメか」

 

「う……その、一、二枚だったらいいぞ……」

 

消え入りそうな声で許してくれた。

やったぜ!!

 

「……撮るぞ」

 

そう言ってスマホで写真を撮る。

恥ずかしそうにしているのがまたなんかいい。

 

「……ありがとう。いい写真が撮れた」

 

「うぅ……誰にも見せないでくれ……」

 

そう言うが何故だろう?こんなに綺麗なのに?

まぁ箒がそう言うのならそうしよう。

 

「……何時からなんだ?」

 

「七時からだな。あと二十分ぐらいだな」

 

「……なら俺は早めに席取りに行くとしよう。一番いい所で見たいからな」

 

「あぁ。是非そうしてくれ」

 

そう言って笑うが緊張しているのか何時もの笑顔ではない。

 

「……箒、緊張しているのか?」

 

「っ!……そうだな、緊張しているんだと思う」

 

緊張するのも無理はないだろう。

今回が初めてだと言っていたし。

 

「……箒、大丈夫だ。今日までたくさん練習したんだろう?」

 

「あぁ」

 

「……ならその通りにやればいい。箒なら絶対に成功させられるさ」

 

「そう……だな。頑張ってやってみる」

 

「……あぁ」

 

「頑張るから、ちゃんと見ていてくれよ?」

 

「……勿論だ。今日は箒を見るために此処に来たんだから」

 

「っ!!あんまり恥ずかしくなるような事を言わないでくれ……」

 

あれ?また顔を赤くして黙ってしまった。

なんかこれ以上話すと下手な事をまた言いそうなので退散することにする。

 

 

部屋を出ると親父さんが待っていて、俺を席まで案内してくれた。

来た時は見なかったから分からなかったが結構大きい舞台でやるのか。

 

それに客の数も半端なく多い。

なんだこれ。ごった返してんじゃねぇか。人混みがダメな人は速攻で酔っちまうぐらいだな。

 

そしてしばらく待っていると、アナウンスが入った。

 

「お待たせいたしました。只今より神楽舞の奉納を始めます」

 

いよいよか。

スマホを構え、動画を取る準備は出来ている。

 

そこに箒が舞台の上に上がって来る。

一礼をした後、和楽器が演奏を始めた。そしてそれに合わせて箒の神楽舞が始まった。

 

それまで騒がしかった会場は静まり返り、皆箒の姿に見惚れている。

そりゃそうだろう。俺も女神なんじゃないかとと思った。巫女なんだけど。

 

動画を取るのも忘れ、見入っていた。

 

 

そしてクライマックスへ。

日本刀を持っての舞。物凄く幻想的で、美しかった。

 

神楽舞が終わった。まだ誰もが言葉を発せずにいる。なんたってあれだけのものを見せられたのだから。

 

箒が舞台から降りると同時に、観客の雄叫びが響いた。

 

「うぉぉぉぉぉ!!!すげぇ!!」

 

「なんだあれ!?物凄い綺麗だったぜ!?」

 

「今までの神楽舞も凄かったが今年はずば抜けて凄かったぞ!!!」

 

そう言って誰も彼もが口々に箒の事を称えた。

俺自身も興奮している。

 

 

 

そして俺は箒の元に走り出した。

 

 

 






今回は取り敢えずここで切ります。


誤字脱字の報告、数々の感想をありがとうございます。


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81話目



side 箒 は纏めてやるんで今はまだお待ちを……


 

 

 

俺は箒の元に走っている。

 

あの舞を見た興奮はいつまでたっても収まらない。

あれだけのものを見せられて何も思わない訳が無い。

 

 

「箒!!」

 

「輝義?どうしたんだそんなに急いで」

 

「凄かったぞ!!物凄い感動した!!」

 

そう言って箒の事を抱き上げる。

 

「わぁぁぁ!!??分かったから!分かったから一回降ろしてくれ!!」

 

そう言って顔を真っ赤にしながら叫んでいる。

言われてから冷静を取り戻した俺は途端に恥ずかしくなった。

 

「………………すまない」

 

「あぁ、いや、別に責めている訳じゃないんだ。褒められたのは嬉しいし、舞を見て喜んでくれた事も嬉しい。ただいきなり抱き上げるのはよしてくれ……」

 

「……すまない」

 

「全く……それじゃ着替えるから少し外で待っていてくれないか?」

 

「……分かった」

 

今は大体七時半頃。

花火が確か九時だったか?これなら十分に屋台を回る時間はある。

風呂入ったりするだろうから三十分は掛かるだろうか?

 

 

 

などと思っていたのだが、二十分程で浴衣の着替えた箒が現れた。

浴衣の色は白地に朝顔の模様があしらってある物だった。

 

「……もう準備はいいのか?」

 

「あぁ。早く輝義と祭りを回りたいからな」

 

「……そうか」

 

なんかものすっごいドキドキするでやんす。

センセイ、ボクハビョウキデショウカ?

 

まぁこれだけの美人さんと並んで歩いてんだ。緊張しない方がおかしいと思う。

あ。言い忘れてたことがあった。

 

「……箒」

 

「ん?どうした?」

 

「……浴衣、とても似合っているぞ」

 

そう言うと一瞬きょとんとしたがすぐに嬉しそうに笑いながら、

 

「ありがとう」

 

そう言った。

何というか、浴衣姿の箒を見るのは初めてだから物凄く新鮮に感じる。

それに元々が和風美人なもんだから浴衣を着ると更に魅力的に感じるのは気のせいではないだろう。

そんなことを考えていると箒は先に行ってしまった。

 

「輝義、立ち止まってどうした?調子でも悪いのか?」

 

「……いや、違うんだ」

 

「ならどうした?」

 

「……箒が綺麗で見惚れていた」

 

「っ!……またすぐそういう事を言う……うぅ、褒められるのは嬉しいが直接過ぎて恥ずかしくなるではないか……」

 

褒めたら顔を手で覆って俯いてしまった。

何か言っているが籠ってよく聞こえない。耳まで真っ赤なのはよく分かるのだが。

 

「ほ、ほら!早く祭りを回ろう!」

 

「……あぁ」

 

そう言って手を引かれ屋台を回ることになった。

 

 

そうそう。箒と一緒に歩いているとよく話しかけられる。

神楽舞であれだけ注目を集めたのだから仕方ないっちゃ仕方ないけど。

 

 

 

 

射的では、

 

「輝義、射的は出来るか?」

 

「……どうだろう」

 

「なら私と勝負しないか?」

 

「……いいだろう。その勝負、受けて立つ」

 

「なら何か賭けないか?」

 

「……何を賭ける?」

 

少し考えてから箒は言った。

 

「何か一つ言う事を聞く、と言うのは?」

 

「……いいだろう」

 

そうして射的勝負が始まった。

 

「よし、当たり!」

 

「……ぬぅ」

 

 

 

「また当たった!」

 

「……何故だ」

 

 

 

「三連続だぞ!」

 

「……当たらない」

 

 

 

「全部当たった!」

 

「……全部外れた」

 

俺って射撃のセンスが無い……?

いやでもISの訓練だとしっかり当たっているし……

そう思いながら横を見ると箒が喜んでいる。

 

……まぁ箒が楽しそうならいいか。

 

 

金魚すくい

 

「あれ?」

 

「……とれた」

 

 

 

「紙が破けた……」

 

「……三匹目」

 

 

「何故だ……?一匹もとれないではないか……」

 

「……とりすぎた」

 

 

十三匹もとってしまった。

流石にこれ以上とっても何処で飼えばいいのか分からないのでやめた。

 

 

他にも綿あめにたこ焼き、焼きそばと色々なものを買って食べてやって楽しんだ。

 

しかし、かき氷を食いすぎたか?

トイレに行きたくなってきた。因みに小の方です。

 

「……箒、少しここで待っていてもらえないか?」

 

「いいが……どうかしたのか?」

 

「……トイレに行きたくなってきた」

 

「あぁ、かき氷をたくさん食べていたからな。いいぞ。行ってこい」

 

「……すまない。すぐに戻る」

 

そう言ってトイレに向かうが何処なのか分からない。

看板に地図が書いてあったのでそれの通りに行くとやっと着いた。しかし物凄く混んでいる。

祭りだからしょうがないか……

 

 

 

 

やっとの思いでトイレを済ませると急いで箒の所へ戻る。

すると何人かの男に囲まれているではないか。

ナンパと言うやうですかね?

 

まじかぁ……こんなテンプレ展開あり得るのか。

まぁ箒は美人だしさっきの舞で思いっきり注目集めたからしょうがないんだけども。

本人はめっちゃ嫌そうな顔してるのにそれでも誘うって度強あるなぁ……

俺だったら速攻で心折れるわ。

 

それじゃ迎えに行きますかね。

俺は白馬の王子様ってか。いや、どっちかって言うと悪魔とか大魔王か。

……自分で言っておいて悲しくなって来たぜ。

 

「……すみません」

 

断りながら後ろに立つとメンチを切りながら、ガンを飛ばしながら振り向く……

 

「あん……?うおっ!?」

 

「誰だ……ひぃ!?」

 

「なんだよ……うわぁ!?」

 

何故皆さんそんなにビビるんですかね……しかも悲鳴つき……

まぁ後ろに二メートル近い身長に肩幅がどう考えても広すぎる、おまけに顔面に傷がある俺が立っていたらそりゃビビるわ。俺でもビビる。

 

「……俺の連れに何か用でしょうか?」

 

俺が少しばかり威圧しながら言うとすごすごと退散していった。

 

小声で関わっちゃダメ系な人だとか言いながら。

 

流石の俺でも傷付くぞ……

いや、しょっちゅうだわ。

 

「……大丈夫か」

 

「まぁ、何もされていないから大丈夫だ。でも、助けに来るのが少し遅いのではないか?」

 

少し不機嫌そうに言う。

だってトイレ混んでたんだもん……

まぁここで反論しても意味はない。素直に謝っておくのが吉である。

 

「……すまない」

 

「まぁ、どうせトイレが混んでいたんだろう?」

 

謝ると悪戯が成功したという顔で笑う。

 

「……分かっていたのか」

 

「それはそうだろう。ここは私の実家だぞ?」

 

「……それもそうか」

 

そして俺は腕時計をみる。

確か九時からだったな。

……あれ?もう八時五十分じゃないすか。

 

「……箒」

 

「ん?」

 

「……あと十分で花火が打ち上がり始めるぞ」

 

教えると箒は慌てた様子で言った。

 

「なに!?もうそんな時間なのか!?」

 

「……あぁ」

 

「楽しくてすっかり時間の事を忘れていた……!」

 

「……どうした?」

 

頭を抱えて何か言っている。

大丈夫か……?

 

「輝義!」

 

「……なんだ」

 

「ついてきてくれ!」

 

そう言うと再び俺の手を握って走り出す。

 

「……何処に行くんだ?」

 

「いいからついてきてくれ!」

 

言われるがままについていくと、開けた場所に出てきた。

 

「……ここは?」

 

「ここは神社の敷地の中で花火が一番よく見える場所なんだ。他の場所よりも高い所にあるから良く見えるんだ」

 

「……そうなのか」

 

しかし座って見られるような場所ではないらしく、ベンチなんかは置いていなかった。

しかし箒はそれを分かっていたようで小さめのレジャーシートを取り出すと地面に敷いた。

 

「ほら、輝義」

 

そうは言うがレジャーシートは小さく、普通の人が座るのなら問題のない大きさなのだが俺が座ると完全に箒が座れなくなってしまう。

 

「……箒が座れなくなってしまうぞ」

 

「それなら大丈夫だ。考えがある」

 

自信たっぷりにそう答える箒。

 

「……そうなのか」

 

「あぁ。だから早く座ってくれ」

 

そう言われては納得するしかない。

しかし何故だろうか?こう、何かが起きる予感がする。

悪い予感ではなさそうだから大丈夫だとは思うが……

 

促されて座る。座る時は何時もどうしてだか胡坐になってしまうのだ。

偶にだが長時間胡坐をかいていると足が痺れてしまう事がある。あれは本当に辛い。

 

しかし今問題なのはそれではない。

 

問題は箒が俺の胡坐の上と言うかなんというか、すっぽり収まって座ってきていることが問題なのだ。

え?そんなにこれ流行ってるの?

 

「……なぜそこに座る?」

 

「二人が座れるようにするにはこうするしかないだろう?」

 

さも当然の様に言ってくる。

いやいやいやいや。箒さんが何を仰っているのか私には理解できないのですが。

 

「……なら俺が立って見ればいいだろう」

 

「それではダメだ。私が招いたのに立たせるなど。それとも……」

 

あ、これ地雷を踏んだ気がする。

 

「本音は良くて私はだめなのか?」

 

あれぇ!?なんでその事を知っているんですか!?

 

「……いや、その、えっと……」

 

もう返答がしどろもどろになっているがそんなのは問題じゃない。

あの時に何があったのかを知られているのが問題なのだ。

あんなマイクロビキニを着た本音と……なんて知られたらどうなるか分かったもんじゃない。

 

「なんで知っているか教えてやろうか?」

 

あ、これもう全部知っているやつだ。

 

「……結構です。お好きにどうぞ」

 

「ん。それじゃ私は此処に座るからな」

 

「……はい」

 

俺はもう箒に逆らえない運命なのか……

そんなことを考えていると、箒が袖を引っ張って来る。

 

「……どうした」

 

「その……軽くでいいから抱きしめてほしい……」

 

かはぁ!!??

なんでさっきまでちょっと意地悪い顔してたのに急にそんなしおらしくなっちゃうの?

ギャップが凄まじすぎて脳みそがショートしちまうとこだったぜ……

 

「ダメだろうか……?」

 

そんな上目使いで俺を見るなぁ!!

 

 

 

 

上目使いには勝てなかったよ……

膝の上でご満悦な箒さんの顔を見てしまえばそんなことはどうでもよくなっちゃったけど。俺って激甘だよな……

 

「ふふ……なんかいいなこういうの……」

 

「……そうか」

 

「あぁ」

 

特に何もなくとも嬉しそうに、楽しそうに笑っている。

 

「……でもいいのか?俺の上で」

 

「これがいいんだ。これでいいんだ」

 

本当にこの座り方でいいのか聞いてみればこれがいいと言うし。

 

まぁ例に漏れず柔らかい感触やら良い匂いで脳内がハチャメチャなんだけども!?

しかもまだ花火が始まっていないっていう……

 

早く始まってくれぇぇぇ!!

なんとかして意識をそらさないと反応しちまうよ!!

 

ほわぁぁぁぁぁ!!!???

ムニュって!?ムニュって言ったぁぁぁぁぁ!!!???

箒さん!お尻が!お尻が当たっておりまするぅぅぅぅ!!??

どこが、なんて言えないけど!!

 

そんな俺の気持ちなんて箒が知るはずもなく。

 

「ほら、もう始まるぞ?」

 

「……そうか」

 

その言葉通り、花火が打ち上がる音がする。

その次の瞬間、大きな破裂音の後に綺麗な火の花が咲いた。

 

「おぉ……!!」

 

「な?凄いだろう?」

 

「……あぁ。これは凄いな……」

 

「私は此処から見る花火が大好きなんだ」

 

そう言うと俺の方に体重を預けてもたれかかって来た。

この場所から見る花火はどんな場所で見る花火よりも綺麗で大きく感じた。

 

 

 

最後に一番大きな花火が開いて消えていった。

 

「……凄かったな」

 

「だろう?ここからの眺めが一番いいんだ。昼に来てもいい景色が見られるぞ」

 

終わってしまった。

こういうのって終わってしまうと何処か寂しく感じるもんなんだよな。

 

「……帰るか」

 

「もう少しこのままで居させてくれ」

 

「……なんでだ」

 

「なんでだろうな……こう、輝義の傍にいると落ち着くんだ」

 

「……そうか」

 

ニコニコと嬉しそうに俺を見上げて言う。

 

こうなってはもう説得するのは無理そうだな。

満足するまでこのままでいよう。

 

「輝義は…その…重くないのか?」

 

「……何がだ?」

 

「うっ……その、私が座っていて重くないのか?迷惑じゃないのか?」

 

何を今更。

全然重くなんてないし全然軽い。

それに迷惑だったらこんな事はしないさ

 

「……重くも無いし迷惑でも無い。好きなだけそこに座っていてくれて構わない」

 

「そ、そうか……なら私が満足するまで頼んでもいいか?」

 

「……どんとこい」

 

空を見上げながら俺達はその場所で話を気が済むまでしていた。

 

 

 



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82話目

俺は主人公宅でのお泊り会まで何話やる気なんだろう……?
時間掛かりすぎなのは分かってはいるんです。でも今の内に書いとかないと暫く書けなくなるし、ここは我慢してくだしあ。


 

ーーーー side 箒 ----

 

 

 

今日は輝義が家に来て私の神楽舞を見てくれる。

そう考えるだけで顔がにやけるのが止まらない。

 

夕方、電話が架かって来る。

誰かと思ったら輝義だった。

 

神社に着いたから何処に行けばいいのか教えてくれと。

何処にいるのかを聞いたら鳥居の下にいるそう。

それにしても着くのが約束した時間よりも早いな。

 

鳥居の下なら口で案内するより迎えに行った方が早いな……

 

そう思って迎えに行くからそこで待っててもらう事に。

 

 

鳥居に近づくと同時に輝義も見えて来る。

遠くからでも良く見えるその身長と体格を久しぶりに見て思わず顔の表情が緩む。

 

声を掛けながら駆け寄るとこちらに顔を向ける。

早く着いた理由を聞くと、被服部の人達に浴衣を作ってもらったからその着付けをしてもらいたくて早めに来たのだと言う。

 

輝義の浴衣……いいな……

 

そうすると私の準備もあるし早いがもう着付けてしまおう。

 

そして輝義の手を掴んで母屋の方に向かう。

部屋に案内して早速始める。

 

浴衣は紺色で輝義によく似合っていた。

浴衣のサイズはゆったりとまではいかないが余裕のある感じで作られている。

まぁそれを差し引いても十分に大きいのだが。

 

 

終わってから見てみるととても似合っていた。

なんだろう、こう、包容力を感じるのは気のせいだろうか?

 

 

 

 

それから私は自分の準備に取り掛かる。

身体を清めたりしてから衣装を着始める。

すると母さんが、

 

「箒?少し聞いてもいいかしら?」

 

「どうしたんです?」

 

「あの男の子の事が好きなのかしら?」

 

「な!?なななな!?」

 

い、いきなり何を!?

と言うか何時バレた!?

この事を知っているのはセシリア達だけのはず……

 

「あら、その慌て方は当たりかしら?」

 

これはもう正直に白状してしまおう……

あの姉さんですら勝てない相手なのだから。

 

「そうです……うぅ、なんでこんな事に……と言うかなんで分かったんですか?」

 

「だってあの子の事を話している時の顔が完全に恋する乙女なんだもの。あれで気が付くなと言う方が無理ね」

 

なんだかどんどん恥ずかしくなってきた……

親にこんな事を言われるのが此処まで恥ずかしいのか……

ん?そうすると父さんも……!?

 

「まさか……父さんも、とは言いませんよね……?」

 

「あら、一番最初に気が付いたのはあの人よ?」

 

「うわあああああぁぁぁぁぁぁ………………」

 

「あらあら」

 

うぅ……恥ずかしい……

どうしてこうなったのだ……

 

「今日此処に誘ったのも自分の晴れ姿を見てもらう為でしょ?」

 

「そうです……」

 

「だから姉さんも箒が神楽舞の練習に物凄い気合が入っているって言ってたのね」

 

叔母さんまで!?

私って顔に出やすいのだろうか?

 

「あ、そうそう」

 

「まだ何か……?」

 

「今、お父さんが輝義君の所に話を聞きに行っているわよ」

 

「何故止めなかったんですか!?」

 

「いいじゃない。お父さんも娘の事が心配なのよ」

 

「それでもです!一言ぐらい言ってくれればよかったのに……!と言うか何を聞きに行ったんですか?」

 

何を聞きに行ったのだ?

 

「箒の学園での事とかかしら?」

 

「なんでそこは曖昧なんですか……」

 

本当に何を聞きに行ったんだ父さんは……

道場を開いて師範でもあるが普段の生活は結構ふわふわしている所があったりする。

何を聞きに行ったのか心配だ……

 

「まぁでも本当に箒の事を心配しているのは確かよ。束には電話を架けられずに向こうから架けて来るのを待つことしか出来ないし、どんな状況なのかを詳しく知る事すら出来ない。あの子は他人と接するのが苦手なんてレベルのものじゃないから。しかも全世界で指名手配されている。これで何も思わない訳が無いでしょ?そんな時に箒に久しぶりに会えたんだもの。表には出していないけれど内心は嬉しくて嬉しくてしょうがないはずよ?多分心の中で踊り狂っているんじゃないかしら?」

 

「そうなんですか……」

 

「だから久しぶりに会った娘がどんな学園生活を送っているのか、その娘が好きになった相手がどんな人なのか見て、聞きたくなったのよ。変な男じゃないかとかね」

 

「輝義はそんな女を騙したりするような男じゃありませんよ。それどころか誰かの為に命を懸けてまで戦える男ですから」

 

「それでも裏の顔があったりするかもしれないでしょ?まぁでもそこまで言うのならそうなのかもね。それにあの動画も見たし。あ、そう言えば私まだ輝義君に挨拶していないわ。どうしましょう?」

 

「それなら迎えに行く時にでもすればいいんじゃないですか?」

 

「そうね。しっかり挨拶しなきゃ。なんたって将来のお婿さん候補だものね?」

 

「へ!?な、何を言っているんですか!?」

 

「あらー、そんなに恥ずかしがらなくてもいいじゃない。うふふ」

 

絶対に分かってやっているな、これは……

 

 

 

それから母さんに根掘り葉掘り聞かれながら準備を終えた。

 

 

 

 

 

衣装を着終わって母さんが輝義を呼びに行った。

 

輝義はこの姿の私を見てどう思うだろうか……?

褒めてくれるだろうか?

 

そして部屋に入ってきた輝義は、私を見て小さく声を上げてから黙ってしまった。

 

思わず何か言ってくれと言ってしまった。

すると輝義は私の名前を呼んだ後に、何時もは何かを言う前に少し時間があるのにこの時はその間も無しに、

 

「物凄く綺麗だぞ」

 

「ふぇ!?」

 

驚きすぎて変な声が出てしまった。

でも物凄き綺麗って言ってくれた……ふふ……

多分顔は真っ赤になっているんだろうな。

とても熱く感じるし。

 

声を掛けられて驚いてしまった。

褒められるのは恥ずかしいけどそれ以上に嬉しい。

 

そう言うと輝義は何を思ったのか写真を撮っていいかと聞いてきた。

流石に写真は恥ずかしい……

 

残念そうな顔で聞いてくるものだからOKしてしまった。

ま、まぁ一枚か二枚って制限つけたからそこまで撮られないはず……

 

 

撮られたのは私だけを撮った物と二人で撮った物。

誰にも見せないように釘を刺した。

 

……後で送って貰おう。

 

 

 

その後は一番いい席で見たいからと言って席の方に行ってしまった。

その時に私の緊張を見抜いた輝義に励まされた。

 

私はその励ましで何でも出来る様な気がした。

 

ただその後に私を見に来たと言われてまた顔を赤くしてしまった。

 

輝義が去った後、ニヤニヤが止まらない。

だって嬉しくてしょうがないんだ。

母さんには、

 

「そのニヤけ顔じゃ変に思われちゃうわよ?」

 

と言われその一言で顔が引き締まった。

 

 

 

 

アナウンスが流れ私は舞台の上に上がる。

想像よりも観客の数が多くてびっくりしたが此処まで来てはもう後はやるだけだ。

一礼する。

その中に輝義が居た。簡単に見つける事が出来た。

 

 

和楽器の演奏が始まる。

それに合わせて舞を始める。

 

 

 

 

 

舞が終わり、舞台から降りる。

その後に大きな歓声が響いてきた。

 

やった……やり切ったんだ……

 

「箒、とても良かったわ。これからの神楽舞はお願いね」

 

母さんも父さんも褒めてくれた。

これも嬉しいのだがやはり輝義に褒めてもらいたい。

 

どうだろうか……褒めてくれるだろうか……

 

そして輝義は私の所にかなり急いで走ってきた。

何かあったのか?

 

「箒!!」

 

「輝義?どうしたんだそんなに急いで」

 

そう聞くと答えは私を抱き上げながら帰って来た。

 

「凄かったぞ!!物凄い感動した!!」

 

褒めてくれた!

とても嬉しい。嬉しいのだが……

 

「わぁぁぁぁ!!??分かったから!分かったから一回降ろしてくれ!!」

 

恥ずかしい!!

流石にこれは普通に恥ずかしい!!

 

輝義は周りが見えていないのか母さんと父さんの事を忘れている。

二人はニヤニヤしながら何かを言って部屋から出て行ってしまった。

 

うぅ……絶対にさっきより顔が赤くなってる……

 

「………………すまない」

 

輝義も恥ずかしいのか長い間の後に謝って来た。

別に責めているわけではないから謝る必要はないんだが……

 

「あぁ、いや、別に責めている訳じゃないんだ。褒められたのは嬉しいし、舞を見て喜んでくれた事も嬉しい。ただいきなり抱き上げるのはよしてくれ……」

 

「……すまない」

 

一応注意しておく。

 

「全く……それじゃ着替えるから少し外で待っていてくれないか?」

 

「……分かった」

 

そう言って部屋から一度出てもらう。

 

ふぅ……あれだけ喜んでくれたのなら嬉しい限りだな……

 

そう思いながら、輝義と祭りを周る準備をした。

と言っても風呂に入って浴衣に着替えるぐらいなのだが。

 

それでも汗を結構かいたし臭いと思われたくないから念入りに身体を洗う。

そして浴衣を着る。白地に朝顔の模様があしらわれている浴衣。

母さんが昔に来ていた物を貰ったのだ。

 

準備が出来て部屋から出る。

廊下には輝義が座って空を眺めていた。

私に気が付いたのか声を掛けてきた。

 

早く輝義と祭りを周りたいと言うと少し顔を赤くして一言、そうかと言って黙ってしまった。

 

並んで歩いていると名前を呼ばれた。

振り向くと輝義が、

 

「……浴衣、とても似合っているぞ」

 

いきなり言われたから少し呆けてしまったが、

嬉しくて笑みが零れる。

 

「ありがとう」

 

だからこう一言返した。

 

 

急に輝義が立ち止まったので調子でも悪いのか聞いてみると、

 

「……いや、違うんだ」

 

ならどうしたというのだろうか?

 

「……箒が綺麗で見惚れていた」

 

「っ!……またそういう事を言う……うぅ、褒められるのは嬉しいが直接過ぎて恥ずかしくなるではないか……」

 

なんでこうもホイホイこちらが恥ずかしくなるような事を言ってくるんだ。

恥ずかしくて顔は真っ赤になっている。

ついでに嬉しくて頬がだらしない事になっているだろう。

顔を覆ってしまった私は悪くない。

 

その恥ずかしさを誤魔化す為に輝義の手を掴んで屋台を周った。

 

 

 

射的もやったし、金魚すくいもやった。

意外なのは射的で一発も当たらなかった事だろうか。

普段の訓練ではガンガン当てまくっているのになんでだろうか?

 

輝義は食べ物系の屋台を片っ端から買い漁っていたから制覇はしていないだろうがかなりの量を食べていた。

しかもかき氷をかなりの量を食べていたが大丈夫だろうか?

 

 

しかしその心配は的中。

トイレに行きたいと言い始めたのだ。

こうしてみると何故だか小さい子供の様に思えて来る。

行ってこいと言うとすぐに戻ると言って走って行ってしまった。

 

一人で待っていると、こういう時には必ずと言っていいほどいる、所謂ナンパという輩が声を掛けてきた。

 

人数は三人か。こいつらは暇なのではないのだろうか?

こんなことをしている暇があるんだったら他の事をした方が有意義だろうに。

それに筋肉をアピールしているのかどうか分らんがやたらと腕を出している奴もいるし。

それぐらいの筋肉で満足しているんだったら大間違いだな。

輝義の方が遥かに凄いし、一夏の方が筋肉は付いている。どうせいざと言う時に役に立たないだろうし。

 

そんなことを考えながら無視を決め込んでいるが、それでもしつこく声を掛けて来る。

あからさまに嫌な顔をしているのにそれでも誘ってくるのか。

いい度胸をしているじゃないか。

まぁここで騒ぎを起こすと輝義と花火を見られなくなるから無視をするが。

 

 

 

そこに、やっと輝義が帰って来た。

男共は声を掛けられて振り向いただけで悲鳴を上げながらビビる。

 

この程度で怯えるなど情けないな……

 

そう思いながら輝義とのやり取りを見ていると、

 

「……俺の連れに何か用でしょうか?」

 

そう言っただけで何処かに行ってしまった。

 

そして輝義は私の事を心配しながら声を掛ける。

 

大丈夫だと言いながらも、少し意地悪をしてやろうと思って軽く咎めると、言い返してくるかと思ったが素直に謝って来た。

 

まぁ怒っているわけではないし、祭りだからトイレが混んでいたのだろう。

 

輝義は何と無しに腕時計を見ると、もう十分程で花火が始まると言って来た。

輝義と祭りを周るのが楽しくて時間の事などすっかり忘れていた……!

 

輝義の手を掴んで走り出す。

多分まだ間に合うはずだ!

 

 

少し走ると開けた場所に出る。ここはこのあたり一帯を見渡せる場所。

神社よりも高い所にあるから花火が良く見える。

 

ちゃんと準備もしてきている。

此処は誰にも知られていないから座れるようなものはない。

だから小さめのレジャーシートを持って来てある。

 

小さいのには理由がある。

持ち運びが楽と言うのもあるが、こうすれば輝義の膝の上に座れるのではないか、という打算もあった。

この前本音が輝義の膝の上はとても心地いいと言っていたから座りたくなったとかではない。

 

私が座れなくなることを心配した輝義は聞いてくるがそこは大丈夫だ。

 

輝義を座らせる。輝義は胡坐で座ると、丁度座るにはいい感じのスペースが出来る。

私はそこに座る。

何故そこに座るのかと聞いてくるが、こうでもしないと二人で座れないだろう。と言うのは建前で私がそこに座りたいからと言うのが本音。まぁ絶対に言えないが。

 

輝義は立って見ればいいと言うがそんなのダメに決まっている。

私が誘って来て貰ったのだから。

 

しかし渋る顔。

ここは本音の件を出してみるか。

 

「本音は良くて私はだめなのか?」

 

そう言うと、慌てた表情で誰が見ても分かるぐらいの焦り方をし始めた。

そして観念したのか好きにしろと言って来た。

 

ふふ…………私の勝ちだな。

 

悪いとは思うがそれでもこの座り心地は手放せない。

しかし、そうなると更に色々とやってもらいたくなるわけで。

軽くでいいから後ろから抱きしめてほしいと言うと、固まった。

 

あ、あれ?やはりだめか……

 

そう聞いてみると葛藤して、許してくれた。

後ろから回される腕は太く逞しい。

 

「ふふ……なんかいいなこういうの……」

 

嬉しくて、そう漏らしてしまった。

こういう何もなくても楽しくて幸せなのが一番だと私は思う。

 

少し位置を調整するために動くと輝義が少しびくりとした。

何かあったのだろうか?

でも直ぐに何時もの顔に戻ったから気のせいか。

 

そろそろ始まる。

 

空を見ると、花火が打ち上がり始めた。

大きさも形も色も違う花火が次々と上がり始める。

 

 

輝義は花火に夢中で目をキラキラさせている。

何時もは大人びていて、初対面だと近寄りがたいのにこうして偶にこんなに無邪気な顔をする。それを今自分は独り占めしている。

それがどうしても嬉しくてしょうがない。

 

もっと近くにいたい。傍にずっといたい。

 

そう思うと輝義にもたれかかっていた。

 

 

 

 

最後の一発が消え消えて花火が終わった。

どこか寂しく感じる。

 

「……凄かったな」

 

輝義はそう言う。

ここは昼間に来てもいい景色が見られる。

 

輝義は帰ろうと言うが、私はまだもう少しだけこのままでいたかった。

だから少し我儘を言ってこのままでもうしばらく居させてもらう事に。

 

下から見上げる輝義は大きき感じる。

ふと思ったが私は重くないのだろうか?

ここ最近また胸が大きくなった。これ以上大きくなられても困るんだが……

結構な頻度で下着を買い替えなければならないし……

 

重くないのか聞いてみると、

 

「……重くも無いし迷惑でも無い。好きなだけそこに座っていてくれて構わない」

 

そう言った。

 

「そ、そうか……なら私が満足するまで頼んでもいいか?」

 

そう聞くと、

 

「……どんとこい」

 

何とも頼もしい一言が帰って来た。

 

それから私の気が済むまで二人で話していた。

 

 

 

ーーーー side out ----

 

 

 




箒ちゃんは常識人に対しては態度は優しいですがそれ以外の非常識な輩には一切容赦が無くなります。

あぁ……箒ちゃんみたいな子にあやされたい……



感想、評価等くださいな。


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83話目

今回はニヤニヤ出来る様な主人公と箒ちゃんの絡みを目指して書きました。



箒が立ち上がった。

 

「……もういいのか」

 

「あぁ。満足した」

 

少し寂しいな……

あれ?影響されてきてる……?

 

「ほら、行こう」

 

「……あぁ」

 

そう言われて立ち上がる。

そのまま俺はレジャーシートを畳む。

 

「……行こう」

 

「ん、ありがとう」

 

そうして二人で並んで歩く。

すると箒が、

 

「今日は来てくれてありがとう。祭り一緒に周れたし、神楽舞も見て貰えた。本当にありがとう」

 

「……こちらこそありがとう。箒の綺麗な姿も見られたしな」

 

本当に誘って貰えて良かった。

普段じゃ絶対見られない箒を見る事が出来たし。

しかしそう言うと箒は恥ずかしそうに言った。

 

「あまりそういう事を言わないでくれ……」

 

顔を赤くしてまた俯いてしまう。

なんか今日はこんな事ばっかだな。

 

「……行こう」

 

「あ、あぁ」

 

二人で歩いていると箒が手を握って来た。

 

「……どうした」

 

「いや、何となく手を繋いでみたくなったんだ。嫌だったか……?」

 

「……嫌じゃないさ」

 

でもいいのだろうか?

こんなサイズの合っていない手で。

自分で言うのもあれだが、俺の手は他の人よりも遥かにデカいし分厚い。

しかも今までの戦いやらでかなり傷が付いていたりする。

 

「ふふ、大きい手だな」

 

まぁ、この様子じゃ嫌がるどころかむしろ喜んでいらっしゃる。

ならいいか。

 

「輝義はこの後はどうするんだ?」

 

「……寮に帰る。外出届に十一時に帰ると書いたからな」

 

「ギリギリの時間か。今は十時ぐらいだから着替えたらもう出なきゃ間に合わないな」

 

少し寂しそうに箒は言った。

 

「……そうだな」

 

正直、かなり名残惜しい気持ちはある。

でも帰らないと織斑先生や山田先生と言った先生方に迷惑をかけることになってしまう。

 

「……箒」

 

「ん?」

 

「……また一緒に遊ぼう」

 

「そうだな。次は輝義が何処かに連れて行ってくれ」

 

「……勿論だ。何処か行きたい所があるのなら何処にでも連れて行ってやる」

 

「あぁ。楽しみにしているぞ?」

 

「……あぁ」

 

 

 

 

「……箒は明日、何をするんだ?」

 

明日の予定を聞いてみると、

 

「そうだな……舞台をばらして倉庫にしまったり掃除をしたり、祭りの後片付けをしてから寮に戻るって感じだな」

 

「……そうなのか」

 

「あぁ。だから帰るのは夜になってしまうな」

 

それを聞いた俺はいいことを思い付いた。

 

「……人手は足りているのか?」

 

「んー……全然足りていないな。父さんと母さん、それに私で片付けになると思う」

 

「……なら明日も此処に来るとしよう。掃除やらなんやらの手伝いをさせてくれ」

 

「え?でもいいのか?明日は何か予定はないのか?」

 

「……一日ゴロゴロする予定だったらあるぞ」

 

そう言うと箒は笑いながら、

 

「ふふふ。それは予定とは言わないだろう?」

 

「……そうかもしれんな」

 

「それならお願いしてもいいか?」

 

「……あぁ。任せろ」

 

という事で明日の祭りの後片付けに参加することが決定しました。

 

「明日は八時には後片付けを始めるからその少し前に来てくれればいい」

 

「……分かった」

 

「頼りにしているぞ?」

 

「……任せろ」

 

二人で手を繋いで歩いた。

 

 

 

 

 

 

母屋に着くと、直ぐに着替える。

最後にご両親に挨拶をして明日の事を伝えてから神社を出る。

 

もう既に学園に通じているモノレールは終電を迎えて動いていない。

だから歩いて片側四車線と言う大きな物資搬入用の橋から学園に向かう。

十一時まで残り四十分と言った所。

神社からなら少し急げば間に合う。

 

そう思いながら軽く走って学園に向かう。

その道中は隣にさっきまで居た箒は居なく、繋いでいた手も寂しかった。

 

 

 

学園の橋を渡って橋の学園側にある警備室で帰って来たことを伝え、書類にサインをして寮に向かう。

 

戻ってきた寮は既に消灯時間を迎え夏休みで誰も居ないのに加え更に静まり返っている。

部屋に着くと直ぐに風呂の準備をしてさっさと入る。

 

 

 

 

風呂から出て少し火照った身体を冷ましてから布団に潜り込む。

目覚まし時計を六時に設定する。

そして今日の祭りを思い出していたら眠っていた。

 

 

 

朝、目覚まし時計の音が鳴り響いて起きる。

 

顔を洗ったり髭を剃ったりしてから食堂に向かう。

時間帯が早いというのもあるだろうが、夏休みだから食堂もがらんとしている。

 

あ、織斑先生が飯を食ってる。

挨拶をしながら同じ席に座っていいか聞く。

 

「……おはようございます。此処、宜しいですか?」

 

「ん?あぁ、大河か。おはよう。構わんぞ」

 

お許しが出たから織斑先生とは反対側の席に座る。

見ると、書類を見ながらの朝食だった。

織斑が見たら怒りそうだな……

 

「……朝からお仕事ご苦労様です」

 

「あぁ。本当に参るよ。で?昨日は随分と遅い帰りだったそうじゃないか?」

 

「……箒の所の神社の祭りに行っていたんです。その後に話していました。それで遅くに帰ることに」

 

「あぁ、あの祭りか。で、どうだった?」

 

どう、とはなんのこっちゃ?

 

「……何がです?」

 

「神楽舞も見たんだろう?」

 

あぁ、それか。

昨日見たことを話してどれだけ凄かったのかを話すと少々不機嫌になった織斑先生。

 

なんでぇ……?

 

「まぁ、楽しめたのなら何よりだ。それでは私は仕事に行くとしよう」

 

「……頑張ってください」

 

「あぁ。っと。そうだ。例の件だが二日後に時間が取れた。向こうの都合はどうだ?」

 

あぁ、あの件か。

それなら既にいつでもいいと言われているから大丈夫だ。

 

「……それで大丈夫です。連絡しておきますので後程お伝えします」

 

「あぁ。悪いな。それでは私は行くとするよ」

 

そう言って織斑先生は行ってしまった。

俺も早めに食べて出なきゃ。

 

 

飯も食い終わって着替えてから出掛ける。

昨日と代り映えのない服装、特注の短パンとこれまた特注のTシャツにサンダルと言うラフな格好。

まぁこれで片付けは大丈夫だろう。

 

 

 

神社に着いた。時間は七時四十七分。丁度いい時間だな。

昨日案内された母屋の方に行く。

 

本当に広いな……

 

呼び鈴を鳴らす。

すると出てきたのは箒のお母さんだった。

 

「……おはようございます」

 

「あら、輝義君おはよう。さ、上がって」

 

家に上がると木の匂いと畳の良い匂いが漂ってくる。

リビングに通されるとそこにいたのは箒の親父さん。

 

「……おはようございます」

 

「お、おはよう。わざわざ片付けの手伝いをやってもらう事になっちゃって悪いね」

 

「……いえ、自分からやらせてくれと言っただけですから」

 

「そうかい?ま、始めるのにまだ時間はあるからね。箒が来るまでゆっくりしていてくれ」

 

そう言われて腰を下ろす。

箒はどうしたのだろうか?もう八時を過ぎている。 なのに姿が見えない。

 

「……箒はどうしたんですか?」

 

聞いてみると答えたのはお母さん。

 

「それが昨日輝義君とお祭りを周れたことが嬉しくてしょうがなかったらしくて寝るのが遅かったのよね。そしたら寝坊しちゃったのよ」

 

「……そうなんですか」

 

理由の原因の殆どが俺だった。

 

「そうなのよ。もー、だから早く寝なさいって言ったのに」

 

「そう言うわけだから少しばかり待っていてもらえないかな?」

 

「……大丈夫ですよ」

 

「ごめんなさいね」

 

そういう事で箒を待つことに。

のんびり出された麦茶を飲んでいると箒が慌ててやって来た。

かなり慌てているのか普段は後ろでポニーテールにして纏めてある髪も今日は纏められていない。これはこれでいいと思います。

 

「すまない!待たせた!」

 

「……大丈夫だ」

 

「箒、取り敢えず朝ご飯食べちゃいなさい」

 

お母さんがそう言うが遅れたという事があるのだろう、渋っている。

 

「でも……」

 

「……大丈夫だ。食べて構わないぞ」

 

ご飯は大事です。

特に朝ご飯は重要です。

ご飯食べなきゃ、ダメ、絶対。

 

「……箒、ゆっくりでいいぞ」

 

「本当にすまない……」

 

「……気にするな」

 

箒の食事を待つこと、凡そ三十分。

 

「食べ終わったぞ」

 

「よし、それじゃ片付けに行こうか」

 

少し食後の休憩をして片付けに向かう。

俺とお父さんは舞台の解体とそれを倉庫に運び入れる事。

有志で近所の大工おじいちゃんが三人手伝ってくれる事になったので作業が捗る事捗る事。

お掃除の方も二人手伝いをしてくれる人が居る。

俺はひたすら倉庫に運び入れるという仕事をする。

 

「ほれ、若いの。そこあるのも持っていけ」

 

「若いの、それを持って来てくれ」

 

「若いの、そっちを持っていてくれ」

 

等々、かなり働かされた。まぁ楽しかったです。

ついでに言うと終わった後に境内の掃除も、ババババババっと終わらせました。

 

今はお昼に素麵をご馳走になっています。うめぇ。

 

「輝義君が居ると終わるのが早くていいわぁ」

 

「本当に早いね。今までは早くて夕方、遅いと夜までやっていたからね。驚きだよ」

 

「若いの、うちの所にこんか?いい大工になれるぞ?」

 

等々、褒められたり勧誘されたり。

なんかすっごい新鮮な体験をしました。

 

 

 

 

 

大工さんや掃除を手伝ってくれたおばあちゃん達が帰った後。

箒はご両親に呼び出されて何やら話をしている。

気になるがそこは家族の領域だから俺が入り込むような物じゃない。

 

のんびり外を眺めながら待っていると、箒の泣き声が聞こえてきた。

なんで分かったのか?無人機の時に思いっきり泣かれましたからね。覚えているんですよ……

 

何となくだけどご両親が此処に帰って来るって話をしたのかな?そんな予想を立てる。

 

 

暫くすると鳴き声も収まってきて、三人が戻ってきた。

箒だけでなく、ご両親の目も赤い。

 

めでたしめでたし。

 

で終わらなかったんだな、これが。

箒が俺に飛びついてきて嬉し泣きをかますもんだからご両親二人はニヨニヨとほほえましい物を見るような?目をしながら、

 

「「ごゆっくりどうぞ~」」

 

なんて言いながら何処かに行ってしまった。

俺は押し当てられる胸の感触と耳に吹きかけられる荒い息、それにあれだけ動いて汗をかいたのにも関わらずやたらと良い匂いで、必死に理性の崩壊を食い止めるために戦う始末。勿論心の中でだけど。

 

「ほ、箒さん?」

 

「ぐす…なんだ?」

 

「その、離れて頂けると……」

 

「やだ」

 

言いかけている言葉を遮っての拒否。

もうね、凄いんですヨ。顔をスリスリするたびに形が変わることこと。もうびっくりするぐらい。

なんでそんなに大きいのにめちゃめちゃ柔らかいんですか?

人体の神秘とはまさにこの事か。

 

「それとも、輝義は私がこうやってくっつくのは、本当は嫌なのか……?」

 

箒さん、それは卑怯ですぜ……

涙目に上目使い。しかも泣いているから少しばかり顔が赤い。

このコンボは卑怯です。勝てるわけないじゃないですか。

 

「好きなだけどうぞ!」

 

「ん……」

 

そう言うと更に擦り寄って来る。

なんだこの可愛い生き物。天使か?そうか、天使だったのか。

なら仕方が無いな。

 

「輝義も抱きしめてくれ……」

 

普段とは打って変わってしおらしく庇護欲をそそるような態度。

これで断れる訳ねぇダルォォォ?

すみません。ふざけました。でもこうでもしないとまじで理性が宇宙の彼方に吹き飛ぶ。

 

「……これでいいか?」

 

「もう少し強く……」

 

求められるままに指示に従う。

こうなったらサービスじゃい!

 

「!ふふ……ん~……」

 

軽く頭を撫でると嬉しそうに少し笑ってスリスリスリスリ……

 

何時もの箒さんは何処へ行ってしまわれたのだ?

 

 

 

 

三十分程経つと箒の理性が戻ったのか顔をこれ以上ないぐらいに真っ赤にして部屋の隅で蹲っている。もう、首も耳も茹でられた蛸とか蟹レベルで真っ赤。

 

「……箒、大丈夫か?」

 

「……………………………………大丈夫じゃない」

 

声を掛けてから、かなり長い間の後にとても小さい声で一言。

 

これは重症ですね。

 

どうしたものか?

ご両親はマジで戻ってこないし。何処に行ってしまわれたのか。

見られていない方が重要か。多分見られていたら箒は羞恥で二度と立ち直れなくなっていただろうし。

 

こうなったら落ち着くまで待つしかないかぁ……

 

そう決めた俺は箒の近くで待つことに。

 

これ、いつになったら落ち着くんだろ?ま、そのうち元に戻るか。

 

 

 

 

 

箒が元に戻るまでたっぷり二時間を要した。

まぁその間は悶える箒を見ていたので退屈では無かったです。

 

元に戻った箒は、吹っ切れたというかヤケクソになったような顔だった。

 

 

 

それからというもの、吹っ切れた箒がやたらと甘えて来る、甘えさせて自分自身も箒に甘える事になることをまだ知らない輝義君でした。

 

 

帰り際にご両親に呼び止められて二人して、

 

「「箒の事を、どうぞ宜しくお願いします」」

 

と頭を下げられ箒と一緒に顔を赤くしたのは誰にも言えない秘密だろう。

 

 

 

その後は特に問題もなく学園に二人で帰った。

まだ、布仏姉妹しか学園にいないから四人で晩飯を食って、部屋に戻って風呂に入って寝た。

 

ただ、飯を食っている時に本音が、

 

「てるてる、しののんと何かあったー?」

 

と聞かれ内心大焦りした。

 

 

 

 

 

ーーーー side 箒 ----

 

 

寝坊した!

 

理由は単純。

昨日の出来事が嬉しくて嬉しくて、幸せで幸せで寝るのが遅くなったのだ。

 

「うわぁぁぁ!!??もう輝義が来てしまうぅぅぅ!!」

 

大慌てで身だしなみを整え、居間に向かうとそこには輝義がもう既に居るではないか。

しかも慌てていたから髪の毛を結うのをすっかり忘れ、リボンを手に持ったまま。

 

すると母さんが朝ご飯を食べろと。

輝義を待たせているから食べなくてもいいと思ったが輝義が気にしないでゆっくり食べていいぞ、と言ってくれたのでなるべく早めに食べることに。

 

 

 

食べ終わってから外に出ると、手伝いをする為に集まってくれた近所のおじいちゃんおばあちゃんが既に待っていた。

遅れた事を謝りながら傍に行く。

この人達は小さい頃からお世話になっている。

しかも皆、七十歳を超えている人達ばかりだから、朝方で涼しいとは言え熱い事には変わりない外で待たせてしまって心配だったが杞憂に終わった。

 

作業を開始するとものすごい勢いでおじいちゃん達と輝義、父さんは舞台を解体していく。

おじいちゃん達がバラして父さんが纏めて輝義が豪快に運ぶ。

しかもちょくちょく輝義はおじいちゃん達の手伝いもしながら。流石輝義。

 

 

 

その光景を見てから暫くすると、なんと舞台などの解体が終わった輝義が掃除の方にまで手を貸してくれたのだ。

 

しかも両手にトング、背中に籠を背負って。

 

籠の数は五つもある。いくら何でも多すぎじゃないだろうか?と思ったが、どうやらゴミの分別までしている。

輝義は一人楽しそうに物凄い勢いでゴミを背中の籠に放り込んでいく。

結構なスピードで移動しながら投げ入れているのに一つも籠から逸れないのは何故だろうか?不思議でしょうがない。

茂みの中にもどんどん入って行って、暫くするとゴミでいっぱいになった袋を両手に持って出て来る。

しかも結構古いゴミまで混じっている。

 

こんなにゴミがあったのか、とおばあちゃん二人と母さん、私の四人で思いながらも輝義の作業スピードに圧倒されていた。

 

結果、輝義が集めたゴミの量がとんでもなかったので後日、専門の業者を呼ぶことになった。

分別までしてあるから追加料金を取られなくて済んだと父さんは言っていた。

 

それからは昼食に素麵を食べて、のんびりしていた。

 

そこに父さんと母さんが揃って私を輝義のいる部屋とは別の部屋に連れて行った。

 

「どうかしたんですか?」

 

そう聞くと、二人は話し始めた。

 

国家重要人物保護プログラムが解除されて、この神社に二人共戻って来れる事。

今まで寂しい思いをさせたことに対する謝罪も。

 

これを聞いた瞬間、泣き出してしまった。

二人も私の事を抱きしめて泣いていた。

 

 

 

暫くして落ち着いてから輝義の居る居間に戻った。

しかし、輝義を見た瞬間にまた嬉しくて泣いて飛びついて抱きしめてしまった。

 

 

 

 

 

あああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!

 

なんで私はあんなことをしてしまったんだ!?

思い出すだけで顔がとんでもなく熱くなる!!

 

 

輝義に抱き着いた私は、今まで一人でいたからしっかりしなければいけないと言う思いから解放され、輝義にこれでもかと言うほど甘えた。甘えまくった。

 

部屋の隅で膝に顔を突っ込んで蹲る。

 

輝義の顔が恥ずかしくて見られない……!!

 

声を掛けて来るが、やっとの思いで返事をするとそれからは何も声を掛けては来なかった。代わりにずっと傍にいてくれた。

 

今はその気遣いが嬉しい……

 

 

 

 

 

暫く自問自答したが、なんかもう色々と吹っ切れた。

あれだけ甘えまくったのだからこれからもいい意味で甘えまくろう。

それで輝義の事も甘やかすんだ。

 

 

 

学園に帰ってから私と輝義、本音と虚さんと夕飯を食べていた時に本音が、

私達に何かあったのかと聞いてきた時は本当に焦った。

 

何時もはのほほんとしているのになんでこういう時だけ鋭くなるのだろうか?

 

 

 

ーーーー side out ----

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

段々と見えなくなっていく二人の背中を見ながら、篠ノ之夫妻は、

 

「ねぇ、貴方?」

 

「ん?」

 

「箒は、とっても良い人を見つけたのね」

 

「そうだなぁ」

 

そう言って二人で微笑んでいた。

その顔は、長い間寂しい思いをさせた娘が本当に心の底から頼れる相手を見つけてくれたことに対する喜びと、自分達に頼らなくてもいいと言う寂しさを感じていた。

 

どちらにしても、この世界で一番大切な娘の幸せを心の底から祝福している顔だった。

 

 

 

 

長女の方も輝義に首ったけなのはまだ知らない。

それを知ったその時、二人はどんな顔をするのだろうか?

 

 

 




前書きに書いた目標、達成出来たかな……?



読者さんから輝義ってコミュ障治ってね?と言われたんですけど、あくまでヒロインズや一夏君、弾君に蘭ちゃんぐらいです。
プラスでその人物に関係する人ぐらいかな?
普段から一緒にいればそりゃ普通に接することぐらいは出来ます。
まぁ言葉を発する前に間があるのはもう癖と言うか何というか。



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84話目


暫くぶりのシリアスでござる!!


今回は会話多めでお送りいたします。


 

 

昨日、箒の家から帰って来た後にスコールさん達に電話を架けた。

急で申し訳ないが明日会う事が出来ると伝えたところ、了承してくれた。

 

明日、スコールさん達の所に行くが今日の昼頃には集合場所、集合時間の連絡が来るはず。

取り敢えず織斑先生にこの事を伝えに行く。

 

職員室に織斑先生はいた。

書類とにらめっこしている。

 

「……織斑先生、今宜しいですか?」

 

「大河か。構わんぞ」

 

「……場所を移しても?」

 

「あぁ。分かった」

 

そう言って織斑先生は鍵を取って立ち上がる。

 

「付いて来い」

 

「……分かりました」

 

あ、連絡が来た。

午前十時にこの前俺を下ろしたあたり、か。

織斑先生に付いていくと、空き教室の一つに辿り着いた。

そこに入ると織斑先生は鍵を閉める。

 

「此処なら今は余り人が居ないからな。教室自体にも防音が施されている。余程のことが無い限りは大丈夫なはずだ。少し待ってろ」

 

そう言うと、あちこちを調べ始めた。

あぁ……盗聴とか盗撮されてないか調べてんのか。

 

しかし、低い所を見る時にタイトスカートに包まれたお尻が揺れる揺れる。

生徒の教育にはとても悪い光景です。ご馳走様でした。

 

「私が見た限りでは仕掛けられて無さそうだが、万一の事を考えて余り大きな声で話すのは辞めておこう」

 

「……はい」

 

そして話を始める。

 

「それで、どうなった?」

 

「……明日、午前十時に集合だそうです」

 

「場所は?」

 

「……前回、帰る時に車で送って貰った時に降ろしてもらった所の近くだそうです」

 

「了解した。後は何かあるか?」

 

「……後は特に無いです。ただ、心の準備はしておいた方がいいかと」

 

「それはまたどうして?」

 

「……俺に初めて接触してきた時にその正体を明かされた時、度肝を抜かれましたから」

 

あの時は本当にびっくりしたよ。

だって敵だと思っていた相手だぜ?誰だって驚くわ。

 

「そうなのか。はぁ……」

 

「……大丈夫ですか?」

 

織斑先生は疲れたように溜息を吐く。

よく見るとお疲れの様子。髪の毛に艶が無い。

 

「またしても厄介事の感じがしてならなくてな……」

 

「……すいません」

 

「お前が気にすることでもないさ」

 

「……出来るだけお手伝い等はしますから」

 

「そう言ってくれるだけ有難いよ。全く、何処の国もああしろこうしろうるさいのなんの……此処は完全に何処の国の干渉も受けないと明記されているのに……」

 

それから十分程、織斑先生の愚痴に付き合った。

 

その後は生徒会室に行って仕事の手伝いをしていたら一日が終わっていた。

 

 

 

 

次の日、俺は織斑先生と共に迎えを待っていた。

 

「そろそろ十時か」

 

と、織斑先生が漏らした時に運転席に見覚えのある人が乗った車を見つけた。

よく見ると、オータムさんだった。

 

「……来ました」

 

「お、そうか」

 

車が近付いてくる。

俺達の前で止まると、窓を開けてオータムさんが顔を出した。

 

「すまねぇ。待たせたみたいだな」

 

「……いえ、そうでもないですよ」

 

「ま、取り敢えず乗ってくれ。あ、織斑は助手席に頼む。そうしねぇと輝義が乗れなくなっちまうんでな」

 

そう言うとドアが勝手に開いた。

車に乗り込むとドアが閉まり、出発する。

道中、織斑先生は緊張しているのか分からないが一言も話さなかった。

 

 

 

 

それから暫くすると何処かの地下駐車場に着いた。

 

「よし、到着。降りてくれ」

 

言われて車から降りる。

 

「付いて来い」

 

オータムさんに付いて行くとエレベーターに乗り込む。

 

「織斑、あんま緊張しなくても大丈夫だぞ。まぁ、これから聞かされることの方がヤベーからな。今から肩肘張ってっと持たねぇぞ」

 

「ご忠告、感謝する」

 

そして着いたのはかなり高い階層にある一室だった。

 

「ほら、ここだよ」

 

そう言いながら開かれた扉の先には、度肝を抜かれる様なぐらいの豪華な部屋だった。

そしてそこにいたのはいつも通り、スコールさんとマドカ。

 

「輝義君は久しぶりね。Ⅿs,織斑は初めまして」

 

「……お久しぶりです」

 

「初めまして。織斑千冬です」

 

「マドカだ」

 

「あたしはオータム。さん付けとか絶対にやるなよ。むず痒い」

 

各々挨拶をする。

 

「さて、それじゃ私達が誰なのかを教えちゃいましょうか。気をしっかり持ってね?」

 

 

 

「私達は亡国機業。私は日本支部代表。オータムとマドカは実働部隊の隊長と副隊長よ」

 

 

 

それを聞いた瞬間織斑先生が固まった。

まぁそうなるよね。

 

たっぷり数分してから織斑先生は再起動を果たした。

 

「いやおかしいだろう!?敵対しているんじゃなかったのか!?」

 

「……この人達はそうじゃないです」

 

「亡国機業も一枚岩じゃないのよ。基本的に過激なのは女権団絡みの派閥よ。欧州方面とか北南米に多いわ。私達日本支部は過激なのが嫌いなタイプの人間が集まっているのよ」

 

「それで、どうして大河に接触する事になる?」

 

「過激派は女権団絡みって言ったわよね?あいつらは簡単に言えば輝義君の事を消そうとしている。ついでに言えば非人道的な研究なんかもこいつらがやっているわ。それで私達穏健派は輝義君と敵対するなんて馬鹿らしい、なんなら手を組んだ方がいいって感じね」

 

「その話を信じるとでも?」

 

織斑先生はピリピリしている。

まぁ敵対していると思っていた相手だもんな。

この話を聞かされてホイホイついていくのは余程の馬鹿ぐらいだろうし。

 

「それもそうよね。だから情報を渡すわ」

 

「情報?」

 

「そう。情報よ。今の貴女達からしたら喉から手が出るほどどころか実力行使をしてでも手に入れたくなるようなものよ」

 

そう言ってスコールさんはウィンドウを展開する。

 

「今まで女権団とそれに繋がっている亡国機業の情報。情報の中には起こした事件や実験の情報も入っているわ」

 

「っ!!……何故そんなものを渡す?」

 

「女権団と欧州支部の奴らはやり過ぎたのよ。もう付いていけない、と言うのが私達日本支部の意見よ」

 

「それを信じろと?」

 

「だから情報を渡すのよ。別に今すぐ信じろなんて言わないわ」

 

「………………分かった」

 

織斑先生は頷いた。

あれ、もっと渋るかと思ったんだけどな。

スコールさんも俺と同意見だったらしく驚いている。

 

「あら、もっと渋るかと思ったんだけど?」

 

「まぁ、嘘は言っていないようだしな。それに大河が信用しているのなら問題はないはずだ」

 

「騙そうとしているとは考えないのかしら?」

 

「騙したところでお前達になんの利益がある?大河を騙したりしたら間違いなく篠ノ之束が出て来るだろうしな。まぁ、私も殴り込むだろうが」

 

そう言うと軽く笑った。

 

「それじゃ、納得って事でいいのかしら?」

 

「あぁ」

 

「そしたらちょっと待ってて。今データをコピーして渡すわ」

 

「頼む」

 

あぁ……良かったぜ。

これで殴り合いが始まりましたとかスプラッターな光景待ったなしだからね。

良かった良かったと心中で頷いていると織斑先生に肩を叩かれる。

 

「あぁ、大河」

 

「……はい」

 

あ、嫌な予感がする。

 

「お前、こんな面倒事をよくも今まで黙っていたな?」

 

「……いえ、その、言おうとはしていたんですが機会が無くて……」

 

「ほう?それでこのクソ忙しい時にか?」

 

「……申し訳ありませんでした」

 

「帰ったら模擬戦だ。私の気が済むまで付き合って貰うからな?覚悟しておけよ?」

 

死刑が決まりました。

 

「ついでにお前が持って来た案件だからな。責任を持って最後までやってもらうぞ」

 

「……はい」

 

まぁこれは仕方ないか。

 

「こんなことなら更識も連れてくればよかったな、全く。私はこういうのは専門外だからな」

 

「ほら、出来たわよ」

 

「すまないな」

 

 

 

 

 

織斑先生がスコールさんに聞いた。

 

「もし、今回私が協力を断っていたらその情報は教えなかったのか?」

 

多分、それは無いんじゃないかな?

だってスコールさんだよ?なんでとは言えないけど確証がある。

 

「いえ?教えていたわよ?」

 

ほらね?

 

「それはどうして?」

 

「だって子供に危害が加えられるのは我慢ならないもの」

 

「そうか……」

 

スコールさんは亡国機業に所属して代表なんかもやっている。

だけどものすっごい良い人なのだ。優しいし。

 

 

そして二人は色々と細かい事を話していた。

俺はよく分からないから聞いていただけだったけど。

 

 

 

 

 

 

「私からは終わりね。何か質問はあるかしら?」

 

「そうだな……特には無いな」

 

「そう」

 

「あぁ、でもマドカと言ったか?正直に答えて欲しい。何者だ?」

 

やっぱりそれは気になるよね。

でも織斑先生は耐えらえるだろうか?

 

「マドカ、貴女が答えたかったら答えなさい。嫌なら答えなくてもいいわ」

 

「いいや、別に答えても大丈夫だ」

 

「そう……」

 

そしてマドカは織斑先生に自分の正体を明かした。

それを聞いた時の織斑先生の顔は多分一生忘れられないだろうな。

 

 

 

 

それからは軽めの食事をしてからオータムさんにまた送って貰った。

 

 

 

まぁ、学園に帰ってからは織斑先生と周りがドン引きするレベルの模擬戦をしました。

ストレス溜まってたんだね。

 

 

 

 

ーーーー side 千冬 ----

 

 

大河に会って欲しいと言われた人物に会いに行った。

なんかもう嫌な予感しかしないが此処まで来てしまった以上、観念するしかないか。

 

 

 

集合場所に迎えに来たのは不良っぽい女だった。

車に乗せられ、某有名ホテルの一室に連れていかれた。

 

そこにいたのは金髪の女。

そして驚いたのが中学生ぐらいの時の私そのままの少女が居た。

 

まぁこれに関しては後で聞けばいい。

それよりもこの三人の正体を知りたい。

 

 

 

 

はっ!?まさか気を失っていた!?

いやまさかな……

 

でもそれぐらい驚いたのは確かだ。

なにせ目の前にいる三人は亡国機業と名乗ったのだから。

 

いやもう訳分からん。

何がどうなって輝義は知り合った?

というかこいつらは敵対しているんじゃなかったのか?

 

と、その辺の疑問をぶつけると敵対する気は無く、むしろ協力すると言った。

しかし、それを信じられる訳が無い。

 

だが、味方である証拠として女権団と、それに繋がっている亡国機業の情報、それに関連した事件、実験の情報まで渡してくると言って来た。

 

交渉するには私達に対するメリットが大きすぎる。

 

スコール、だったか?

そいつ曰く、他の亡国機業や女権団はやり過ぎたと言っていた。

確かにISが登場してからの女権団の行動は行き過ぎている。それを差し置く程の事をやっているというのか?

 

亡国機業の情報は貴重だ。

何せ分かっていない事の方が多すぎる。レストランを襲撃した奴らは口を割らないから何の情報も入ってこない。

 

そんなものを渡す?

交渉をするのならばどちらかだけでいいはず。

その点を考えると手を組もうとしているのは確か、という事になる。

 

この時点でもう私の手に負えるような物ではなくなっている。

更識を連れてくればよかった、と後悔するがアイツはロシアに居るから無理だな。

 

……此処は頷くしかないか。

 

 

 

そして私は女権団と亡国機業の情報よりも現時点で最も貴重な情報を手に入れることになる。

 

 

IS学園で文化祭が行われる時に何かが起こるという事。

 

 

この情報は政府の情報機関や更識の所の暗部ですら把握していない情報だ。

それを聞いたところ、

 

「今まで情報が簡単に手に入っていたのよ。でも何故かは分からないけれど、どうにもセキュリティが厳しくなったらしいの。だから政府でも把握していないのは無理も無いわ」

 

「依頼主は女権団で間違いないわ。でもそれ以上の事はこっちも分からないの。ごめんなさいね」

 

しかも依頼主は女権団と来たか……

もう勘弁してほしい。

 

 

 

こんな面倒事を持って来た輝義を後で扱き倒してやろう。

それぐらい許されるはずだ。

 

 

 

学園に帰ってから一頻り輝義とドンパチやった後。

先に報告しろ、などとは言わないでくれ。

そうでもしないと色々と持ちそうになかった。

 

学園長に今日の事を伝えた。

すると今回の件は当然と言えばそうなのだが、機密扱いとなり職員と更識にのみ伝えられる事になった。それと政府の一部の者のみ。

 

 

本当に、これからどうなってしまうんだろうか……

 

そう言えばナターシャも学園に教師として来るとか言っていたな……

連絡がないがどうなったんだろうか?

 

 

 

 

ーーーー side out ----

 

 






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85話目



セシリア達とのイチャラブも書かなきゃ……!(使命感)
その前に早くお泊り会に入らなきゃ……




 

 

今日はアリーナで俺と織斑に箒、そこに織斑先生で訓練をしている。

本当は織斑先生は参加しないはずだったんだけど、文化祭やらなんやらで大忙しの所にスコールさんから聞かされた話も追加され教師陣はもう訳が分からないぐらい忙しいらしい。

 

事実、今日は余りにも忙しすぎて学園長から一日休みを先生方に言い渡したらしい。

まぁ、職員室を無人にするわけには行かないから数人の先生が居るらしいけど後日ちゃんと代休が貰えるって言ってた。

 

昨日、職員室に行った時は怖かった。

だって先生全員が鬼の形相でパソコンやら書類やらに向かい合っていた。

特に山田先生は本当にヤバかった。

目が座っているし何か呪詛みたいな事をブツブツ言いながらかなりの力でパソコンのキーボードを叩いていた。

 

そんなことがあってか分からないが今日は休みだそうだ。

 

織斑先生はここ最近あまり運動が出来ていなかったから今日は参加してくれた。

 

 

 

 

俺は織斑先生と一対一を。

 

「大河!!まだ剣筋が甘い!」

 

「はい!」

 

 

 

「簡単に読まれるような攻撃を仕掛けて来るな!!もっと考えて工夫しろ!!」

 

「ああああぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

クソ……

どうやっても織斑先生に勝てない。俺の攻撃を先読みして攻撃を仕掛けて来るし、本当に数センチの隙があればそこから攻撃してくる。

それに比べて織斑先生は隙など無いし攻撃は防いでくる。

 

「輝義、スポーツドリンクだ」

 

「……あぁ、ありがとう……」

 

そう言って箒がスポドリを渡してくる。

それを受け取って一気に流し込む。

熱くなった身体に流れ込むのがよく分かる。

 

「輝義はすげぇよ。千冬姉とあんなに戦えるんだからさ」

 

「……でも一度も勝てたことはないがな」

 

「それを言ったら俺達だって輝義に勝ててないぞ?」

 

織斑はそう言うが俺は納得がいかない。

そこに織斑先生がやって来る。

 

「大河、お前は強いぞ」

 

「……織斑先生」

 

「最初に比べれば次元が違うと言っても良いぐらいにはな。私もかなり必死で戦っている」

 

「……でもまだ全力では無いですよね?」

 

「そうだな。まだ全力ではない。私とお前の違いが何だか分かるか?」

 

「……いえ」

 

「戦った相手の数と戦った回数だ。私はお前が小学生の頃からISに乗っているんだぞ?経験の差があって当然だ」

 

「でも千冬姉、輝義だって修羅場の数なら負けてないぜ?」

 

「そうだろうな。でも大河が戦ったことのある相手は?専用機持ちに無人機、暴走した軍用機にトーナメントの時に当たった生徒だけだろう?」

 

「そう言われればそうだな……」

 

「私は国家代表クラスの人間から代表候補生、果ては軍人とだって戦った事があるんだ。経験の差としか言えないだろうな」

 

「……経験ですか」

 

「あぁ。まぁもう少しすれば間違いなく沢山の相手と戦う事になるだろうな。ただでさえお前は修羅場を幾つも潜って来たんだ。そこに経験が合わさればどうなるのか想像すらしたくないな。それこそ私が地面に着けられるのも時間の問題だろう」

 

織斑先生は俺には経験値が足りないと、そう言った。

経験値か……こればっかりは沢山の相手と戦って行くしかないだろうな。

 

 

 

 

それから、俺は箒と織斑と一人ずつの模擬戦の後に二人同時の模擬戦をした後に織斑先生も入れて一対一の総当たり戦の模擬戦を休憩を入れながら二周行った。

その後は各自の課題の訓練となり織斑と箒は近接戦、主に刀を使っての戦いの訓練を、俺は射撃の訓練をすることになった。大口径とは言え射撃も一応は出来る機体だから慣れておいた方がいいだろうと言われ、ターゲットをひたすら早く正確に撃つ練習をしていた。

 

そして五時頃になって今日の訓練は終了となった。

 

 






今回は短く、訓練の話のみでという事になりました。

次回辺りに大河家へのお泊り会が書ければいいかな、と思っております。




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86話目



ようやっと……ようやっとお泊り会に入ることが出来る……!

お泊り会が本編に出てきてから此処まで長かった……本当に長かった……!




 

 

 

今日から皆が俺の家に泊まりに来る。

第一陣の、織斑、箒、簪、本音、ラウラ、シャルロット、虚さんの七人。

四日後にセシリア、鈴、楯無さんの第二陣。

これなら夏祭りに間に合う。

 

 

という事で朝の十時に学園側にあるモノレール駅に集合する事になっている。

皆には数日分の着替えに他に必要な物を各自で持って来てくれと言ってある。

理由としては電車で一時間以上かかる場所に俺の家があるからだ。

そんな中で重い荷物を持って、など嫌すぎるに決まっている。

服は俺の家で洗濯できるからその辺りの心配は大丈夫。

 

まぁ、俺なんて荷物は財布とスマホに充電器ぐらいな物だ。

財布の中に保険証やらなんやらは全部入っている。

 

という訳で朝飯を食った後に集合してモノレールに乗る。

そして駅に向かい電車に乗る。

 

「いやー!輝義の家楽しみだな!!」

 

そう言って織斑はテンションアゲアゲ。

お前、さっきからそれしか言ってねぇだろ。そんなに楽しみなのか。

でもさ喜んでくれるのはいいんだけどさ……

 

 

電車の中ではしゃぐのは辞めようよ……

 

 

まぁいいんだよ?いいんだけどさ、まだ都心部からあまり離れていないから他のお客さんがかなりいるわけで、そんなはしゃいでいる織斑とその周りに居る俺達に視線が注がれる。

 

「一夏、もう少し静かに座ってられないのか?」

 

「おりむーは、小学生なのかなー?」

 

「えー……分かったよ。静かにしてる」

 

箒に窘められ、普段は小学生が如き本音にそう言われて静かになる織斑。

しかしもう本当に楽しみでしょうがないのか身体中から待ちきれないという雰囲気が溢れている。

 

まぁ、まだ先は長いって程でもないけど時間はあるからもう少し落ち着いて欲しい。

とは思ったものの、箒達も結構楽しみにしているのか会話が弾んでいる。

 

 

俺の家は田舎って程でも無いとは思う。

小、中学校に高校もあるしスーパーマーケットもあるし。イ〇ンとかは無いけど。

 

農家が多いからかどうかは知らんが俺の家もそれなりに広いはず。

 

 

 

 

「おぉ……なんか景色が変わって来たぜ!」

 

織斑がそう声を上げると箒達が窓の外を見る。

そうなのだ。この辺りは結構田んぼが多く、今の時期は青い稲穂が揺れている。

秋になれば黄金に輝く一面の稲穂が見れるだろう。

 

「……秋になればもっと凄い光景が見られるぞ」

 

「そうなのか?」

 

「……あぁ」

 

「それは見てみたいものだな」

 

 

 

そんな会話をしていると、段々と降りる駅が近付いてくる。

 

「……そろそろ降りる準備をしてくれ」

 

「分かった。ほら、本音起きて」

 

そう言って簪が眠ってしまった本音を揺すって起こす。

 

「んー……?」

 

「んー、じゃなくて起きてってば」

 

「本音、起きなさい」

 

「起きました!」

 

簪が起こそうとしても起きなかったのに虚さんが声を掛けただけで直ぐに飛び起きた。

 

「よろしい」

 

そう虚さんが言うと三人は荷物を持って降りる準備をする。

 

 

数分すると駅が見えてきた。

 

「……ここで降りるぞ」

 

電車が駅に止まると皆で降りる。

改札を出るとそこにいたのは二台の車の前で待っている親父と母さんだった。

 

「暫くぶりだね。そちらのお嬢さんと織斑君がお客さんかな?」

 

親父がそう言ってニコニコと笑っている。

 

「ほら、取り敢えず車に乗っちゃいな。家まで行くよ」

 

相変わらずの母さん。

言われた通りに分かれて車に乗る。

しかし俺はサイズ的に乗れない訳で。

 

「……俺は走って家まで向かえと」

 

「何時もの事だろ。お前が乗れる様な車なんて持ってるわけないんだから。それに四、五キロなんだからいいだろ」

 

「……まぁいいけどさ。その距離だったら七分か八分あれば着くし」

 

そう言うと母さんは、

 

「あんたまた足速くなったの?」

 

「……あぁ」

 

「本当に、うちの息子は何を目指してんだろうね?」

 

そう言って車に乗って行くが嬉しそうな顔をしているのを見てしまった。

これで下手な事を言うとどやされるからなんも言わないけど。

そしてそれを見ていた親父が、

 

「あんなんだけど母さん、輝義が帰って来るのすっごい楽しみにしていたからね。多分照れ隠しだと思うよ?」

 

「……そんな事は分かってるさ」

 

「それもそうか」

 

そう笑いながら車に乗って走って行く。

さて、俺も行きますかね。

 

それから俺は走って家まで帰った。

信号とか前の車が遅かったとかで俺の方が家に着くのが早かったです。

 

 

 

 

 

「……ただいま」

 

そう言いながら玄関を開ける。

その声に反応して出てきたのは爺ちゃんだった。

 

「輝義、良く帰って来たな」

 

「……ただいま。爺ちゃん」

 

「おう。正義達はどうした?」

 

「……車。でも信号に引っかかって俺の方が早かった」

 

「そうか。で?何人ぐらい来るんだ?」

 

「……今日の七人とその後に三人。合計で十人」

 

何人来るのかと聞かれたから答えた。

すると驚いた顔で、

 

「随分と多いじゃねぇか。なんかあったのか?」

 

「……いや、何も無いよ」

 

「まぁいいけどよ。なんで分かれて来るんだ?一緒に来ちまえばいいだろうに」

 

そう言いたくなるのは分かる。でも向こうにも都合ってもんがありましてですね。

 

「……三人とも国に帰っているんだ。二人が代表候補性で一人は国家代表だし」

 

「ほーん……ならしょうがねぇな」

 

そう言うが、この顔は絶対に分かってないな。

 

「……ばあちゃんは?」

 

「台所に居るぞ。飯を作ってる」

 

「……そっか」

 

そう言うと俺は台所に向かう。

ばあちゃんは何を作っているんだろうか?

 

「……ばあちゃん。ただいま」

 

「あら、お帰り。他の皆はどうしたの?」

 

「……まだ来てないよ。車が信号に引っかかってて」

 

「あら、そうなの?」

 

「……あぁ」

 

「今、お昼を作ってるからもう少し待っててね」

 

「……昼飯はなんなの?」

 

「素麵よ」

 

昼飯は素麵か。

暑いから丁度いいな。

 

そんなことを考えていると皆を乗せた車が帰って来る。

玄関に向かい、開けると織斑たちが車から降りている所だった。

 

「……遅かったじゃないか」

 

「いやいや。輝義が早すぎるんだってば」

 

軽く冗談を言うとシャルロットが笑いながら返してくる。

 

「……まぁいい。荷物を寄こせ。部屋に運んでおいてやる」

 

「いや、自分で持っていくから大丈夫だよ」

 

「……気にするな。お前達は客人だからな」

 

「そう?ならお願いしていいかな?」

 

「……任せろ」

 

そう言って皆の荷物を纏めて担ぎ上げる。

皆が泊まる部屋に荷物を持って行って置く。

大きな座敷に泊まってもらう事になっているため、女性陣は皆一緒に寝てもらう。

織斑は俺と同じ部屋だ。

 

下に降りていくと母さんとばあちゃんが飯を運んでいた。

 

「……手伝うよ」

 

「いいから座ってな」

 

断られてしまった。

言われた通りに皆が座っている所に向かうと親父と爺ちゃんが皆と話していた。

 

「……何話してたの?」

 

「ん?お前が向こうでどんな感じなのか聞いてたんだよ」

 

「……そうなの?」

 

「ついでに小さい頃のお前がどんな感じだったのかとか教えてた」

 

「……余計な事言わないでよね?」

 

「それはどうか分からんな」

 

なんか恥ずかしい事をバラされるのだけは勘弁してほしいものだ……

 

 

 

それから皆で素麵を啜った。

その日は特に何も無かった。とはいかなかった。

母さんが俺の小さい頃の写真を引っ張り出して来たのだ。

 

それを皆で囲んで見ている。

 

「輝義はお腹の中に居る時から大きくてね。出産の時は本当に大変だったよ」

 

「そうなんですか?」

 

「体重を測ったら六千グラムもあったからね」

 

「嫁は赤ん坊に時から大きかったのか」

 

とか、

 

「輝義、幼稚園の時から他の子よりも大きいんだな」

 

「ほんとだ。てるてるおっきいね」

 

「……背の順で一番後ろ以外になったことが無い」

 

「すげぇな」

 

とかそんな感じだった。

 

 

と言うか普通に恥ずかしかったです。

 

 

 







感想、評価等くださいな。


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87話目




今回は時間軸を少し飛ばします。
と言うか飛ばさないと夏休み編が何時まで経っても終わらない……

申し訳ねぇ……


 

 

 

織斑達が我が家に来て三日目。

その間に何か特にあるわけではなく、のんびりと過ごしていた。

 

今日は居間で皆で話をしている。

 

「それにしても……改めてみればどの子も美人さんばっかじゃない。向こうに行っている間にタラシにでもなったのかね?」

 

「……タラシじゃない」

 

「はぁ?この面々を見てもそれを言えるとでも?」

 

おう。織斑、うんうんって頷いているんじゃねぇよ。

というかそんなにか?まぁ政府から一夫多妻を薦められている身ではあるけども。

 

「で?本命は誰なのさ?」

 

「……母さんは何を言っているんだ」

 

「は?むしろあんたが何を言ってんの?こんだけ美人美少女が揃ってて何の感情も湧かないとかありえないから」

 

いやもう本当に何を言ってんだこの人?しかも本人達を目の前にして本当に何を言ってんだ。

 

「……母さん酔ってる?」

 

「ぶっ飛ばすよ」

 

「……すいません」

 

「ま、いいけどさ」

 

いや、良くないんだよなぁ……

母さんの発言のせいで箒さん達のお顔がスッゴイ事になっているんですよ。

おい織斑。お前はそんなに俺がいじられているのを見るのが楽しいのか。笑うのを堪えているのが丸分かりだぞこんちくしょう。

 

「本当に輝義にこんなに友人が出来るなんてね。信じられないよ」

 

「輝義ってそんなに友人関係がダメだったんですか?」

 

織斑が聞くと母さんは答える。

 

「そりゃもう駄目だったね。この顔も相まって自分から話しかけに行く事が無かったからIS学園に行くまで一人も友人なんて居なかったよ」

 

「でも今じゃ結構普通に話せてますけど?俺の友人とも普通に話せていましたし」

 

「多分皆の影響が大きいんじゃない?正直此処まで成長して帰って来るとは思ってなかったし。なんなら女しかいない環境に放り込まれて耐えられるか心配だったしね。まぁその心配は必要なかったようだけど」

 

さりげなく俺をディスるの止めてもらえません?

 

「輝義のなんか面白い話とかありませんか?」

 

織斑ぁぁぁ!!

お前はそんなに俺をいじって楽しいのかぁぁぁ!?

箒達も興味津々って顔で聞こうとしないで貰えませんか!?

 

「そうだね……」

 

母さんも答えようとしないで!?

でも止めようとしたが遅かった。

 

「面白いかどうか分からないけど、外を歩いているときに小さい子と目が合った時にそれだけで大泣きされた事があるね」

 

「えぇ……輝義何やってんの……」

 

「……何もしていない。本当に目が偶々合っただけなんだ」

 

「それから他人とあんまり目を合わせようとしなくなったね」

 

「その……よく頑張ったな……」

 

そう言って頭を撫でて来る箒。

でも今はその優しさが辛い……

 

まぁその後も女性陣は俺の昔話に花を咲かせていた。恥ずかしくて俺は爺ちゃんの畑やらの手伝いに逃げました。

 

 

 






今回はガチで短めです。
すまない……許して……




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88話目


昼間に何となくランキングを見てみたら日刊ランキングに見覚えのある名前が……

よく見てみたら私でした。
マジか。

ふぉぉぉぉぉ!!!???

いやもうマジで変な声が出てしまった。
ついでに座っていた椅子を吹っ飛ばしながら立ち上がったもんだから周りの同僚に心配されました。


取り敢えずやったぜ!!
この調子でランキングに乗り続けてやる!!(調子に乗っています)
まぁ明日には消えているんでしょうけど。
現実は厳しいぜ。


真面目な話、本当に読者の皆様の応援や多くの感想、評価のお陰です。
投稿するたびに感想をくれる方、誤字脱字を報告してくれる方、
色々と分からない事を教えてくれる方。

本当に読者の皆様が居なければ此処まで来ることはなかったと思いますし、もしかしたらこんなに話数を重ねる前に終わっていたかもしれません。

正直な話、感想が来るたびにニヤニヤとしながら読んでいます。
感想が来るのが楽しみでしょうがないんですよ。

感想をくれる方が本当に沢山いらっしゃって一人一人に返すことは出来ません。
時間が出来た時に返すことはあるんですがそれでも一人二人にしか返信出来ていないのにも関わらず、それでも感想を書いて送ってくれる。
本当に励みです。



これからも作品をどうぞ楽しんで読んでください。
私も読者の皆様が楽しんでハラハラドキドキ出来る様な、胸がキュンキュンしちゃうような作品をお届け出来る様に頑張りますので。


では、どうぞこれからも「ISヒロインズとオリ主のお話」をどうぞよろしくお願いします。




 

 

今日はセシリア達を迎えに行く日。

朝、十時には学園に着いておきたいから八時に家を出る。

 

昨日の夜に皆でトランプにUNO等のカードゲームをかなり遅くまでやっていたために皆はまだ寝ている。

 

 

駅に走って向かい、S〇icaで電車に乗る。

家に帰るのに皆と一緒だったから一人で向かうのは少し寂しい。

織斑のはしゃいでいる声などが聞こえない。

 

一人でも大丈夫だったのに俺も随分と変わったもんだな……

 

セシリア達はどうしているだろうか?

国で何をしていたんだろうか?

早く皆の声が聴きたい。顔が見たい。一緒に遊びたい。

 

そんなことを考えながら窓の外を眺める。

 

 

暫くすると段々と大きな建物がチラホラと遠くに見えて来る。

もうそろそろ到着か。

 

 

そして、また少しすると海の上に一際目立つ巨大な建造物が見えてきた。我らがIS学園だ。

 

 

 

駅に着くと学園に出ているモノレールの駅を目指す。

皆に早く会いたくて足取りは意識せずとも速くなる。

 

 

モノレールに乗り込む。やはり車内は俺以外に誰も居ない。

授業がある日は何時も騒がしく、退屈することなど殆どなかった。

だから余計に寂しく感じて、気持ちだけが早まってもどかしく感じる。

 

学園側の駅に着くと、手続きを済ませてセシリア達と約束した集合場所に向かう。

やはり足取りは速くなる。

 

 

集合場所には大きな木があり、その下で待ち合わせていた。

段々とその木が見えて来る。

 

そしてその下に伸びる影の中にセシリアと鈴、楯無さんが待っていた。

 

「……待たせたな」

 

声を掛けながら駆け寄ると俺に気が付いたセシリアが一番最初に声を返してくる。

 

「輝義さん、お久しぶりですわ。夏休みに入ってから暫くお会いしておりませんでしたが調子の方はいかがでしょうか?」

 

「……すごぶる快調だ」

 

「それは良かったです」

 

セシリアは嬉しそうに微笑む。

久しぶりに見たその笑顔はとても眩しく感じた。

 

「……セシリアも元気そうで何よりだ」

 

「はい。私は何時でも万全ですわ」

 

やはり微笑みながら答える。

 

「輝義君?セシリアちゃんとばかりお話しててズルいわ。お姉さんともお話しましょ?それとも私の事なんて忘れちゃったかしら?」

 

そう言って悪戯な笑みを浮かべるのは楯無さん。

 

「……忘れただなんてとんでもない。ちゃんと頭に焼き付いてますよ」

 

「あらそう?嬉しいわ」

 

「……それに普通だったら楯無さんほどの美人を見たら忘れるはずが無いですし」

 

そう言った途端に楯無さんは顔を赤くして黙ってしまった。

また変な事を言ってしまったか……気を付けなければ。

 

「むぅぅぅ~~…………」

 

しかし、セシリアはそんな俺と楯無さんを見て、不機嫌そうに頬を膨らませる。

そして鈴は呆れた表情で俺を見る。

 

「あんた………………」

 

「……なんだ」

 

「はぁ……何でもないわよ。ま、取り敢えず久しぶりね」

 

「……あぁ。久しぶりだな。元気だったか?」

 

「当たり前でしょ?私を誰だと思ってるのよ」

 

聞いてみるとドヤ顔で胸を張って答えた。

うん。俺はやっぱり皆が居ないとダメになってしまっているらしい。

 

「……早速で悪いが出発しよう。今出れば昼飯には少し遅れるが在りつけるだろう」

 

「そうですわね。早めに輝義さんのご家族にご挨拶したいですし」

 

「そうと決まればさっさと行きましょ。ほら会長!行きますよ!」

 

何故だか分からないがセシリアは俺の腕に自分の自分の腕を絡ませて来る。

鈴は顔を赤くして何かブツブツ言っている楯無さんを引っ張っていく。

 

うん。この光景が俺は好きだな。

 

 

 

電車に乗り込むと早速セシリア達の話を聞く。

 

「……向こうで皆は何をしていたんだ?」

 

「私は訓練と一学期の報告書の作成に、オルコット家が手掛けている仕事等も。後は試作装備の試験運用ですわ」

 

「お姉さんも訓練に試作装備の実験ね。報告書も馬鹿みたいに書かされたわ。死ぬかと思ったわよ」

 

「あたしも大体同じような感じね。でも上の連中が色々とうるさくってうるさくって頭に来るわ」

 

やっぱり代表候補性は忙しいんだな。俺には無理そう。

それにしてもセシリアは会社でもやってんのかね?すげー。

 

「輝義さんは何をしていらしたんですか?」

 

「……織斑の家に泊まりに行ったな。後は箒の実家の神社の夏祭りにも行ったぞ」

 

そう言ったらセシリアと楯無さんの顔が固まった。

ついでに鈴はこいつは……って顔してた。何故だ。

小声で何か話しているセシリアと楯無さん。

 

「これは後で箒ちゃんに色々と聞くことがありそうね」

 

「えぇ。輝義さんのご実家に着いて落ち着いたら聞かなければなりませんわね」

 

それを見た鈴は、

 

「あんたこれどうすんのよ?」

 

「……どうしよう」

 

「言わなくてもいい事を言うからそうなるのよ……」

 

「……言わなくていい事だったのか」

 

「あんたね……はぁ……もういいわ。どうせ苦労するのは箒と輝義だし」

 

あ、こいつ面倒だからって放り投げたな。

でも今の会話って母さんに言われてるみたいだった。

鈴はお母さんなのか。(何を訳分からない事を言ってんだ)

 

「……後は基本皆が居ない時は一人で訓練をしていたな。偶に織斑先生と一対一で訓練したぞ」

 

そう言った瞬間に鈴が、こいつはマジで馬鹿なんじゃないかと言う顔で見てきた。

 

「……どうした」

 

「何でもないわよ。馬鹿に付ける薬は無いって思っただけ」

 

まさか、これも言わなくていい事だったのか……?

 

「輝義さん?後で詳しくお話を聞かせてもらいますわ」

 

「輝義君?お姉さんにも聞かせてね」

 

あれぇ!?

なんか尋問決定コースになってるぅ!?

 

「……はい」

 

まぁ頷くことしか出来ないいんだけども。

それを見た鈴は、

 

「言わなくてもいい事を言うとこうなる事が身に染みて分かった?」

 

「……そりゃもう」

 

「なら今度からは気を付けなさい」

 

「……はい」

 

なんか鈴のお母ちゃん度増してる。

 

「余計な事も考えない方がいいわよ」

 

「……気のせいだろう」

 

「ま、今回はそういう事にしておいてあげるわ」

 

何故考えを読めるんですか?エスパーですか。そうですか。

……これ以上は辞めておこう。また墓穴を掘りそうだ。

 

 

 

そうして俺の家の最寄りの駅に着いた。

今回は親父が一人で迎えに来ていた。まぁ三人だし当然っちゃ当然か。

俺は前回と同様に走って家まで向かいましたとさ。

 

俺が乗れる車が欲しい……

 

 





今回も短め。すまぬ……




前書きであんなことを書いておきながら三月二十六日から仕事が忙しくなって投稿できなくなるという……

俺ってばクズ野郎ですね。

活動報告にも書きましたがこちらにも一応書いておきます。

前々から予告していた通り、仕事の都合の関係で暫く投稿が出来なくなります。
投稿できたとしても今までの一日一話のペースは無理です。
土日に一話投稿できるかどうかと言った所です。
ゴールデンウィークに入れば投稿できますが、ゴールデンウィークが終わってしまうとまた投稿頻度が壊滅します。

この状態がこれから続くと思います。
それでも書ける時に書いて可能な限り投稿していきますので、読者の皆様には申し訳ないのですが待ってもらいたいです。
こんな状態でも読んでくれる事を切に願っております。


返信も出来なければ投稿することも出来ない。
それでも感想を書いてくれたり、評価をしてくださると本当に作者の心の支え、励みになります。
お願いします。




最後に何時もの言葉で終わりたいと思います。


感想、評価等くださいな。





追記

前書きと後書きを合わせて千字を超えている……
本文を書けとか言わないで。


追記の追記

やはりと言うか、日を跨いだ瞬間にランキングから消えていた……
現実は厳しいぜ……


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89話目



やっぱりランクインは夢だった……



それとお気に入りがいつの間にか千六百件を超えている……
ありがとうございます。


 

 

 

昨日、セシリア達と合流した。

その後が大変だった。俺と箒はセシリアと楯無さんを筆頭に、箒の実家の神社に行った事を聞かれた。

セシリアと楯無さんなんかは、

 

「確かに私達は代表候補生ですしその立場に相応の責務がありますわ。ですが私達が仕事をしている時に箒さんは輝義さんとイチャイチャしているのはズルいですわ!!」

 

「輝義君?一人だけとデートするのは贔屓で良くないんじゃないかなーってお姉さんは思います。だから皆と平等にデートするべきだと思うの!」

 

二人共本音が駄々洩れですよ……

まぁいいけどさ……

 

「ちなみにだけど織斑先生も含まれているわよ」

 

マジカヨ。

 

 

 

「輝義?なんで皆に言ってしまったんだ……?」

 

「……つい口を滑らせてしまった」

 

と箒にも尋問される俺だった。

 

 

 

 

今日はまぁ特に何かがあるわけでもなく、やはり女性陣は昔話に花を咲かせていた。俺と織斑は爺ちゃんと一緒に畑仕事をしていた。

俺はトラックの荷台に荷物と一緒に乗り込んで畑に向かう。

 

街から結構離れている所に爺ちゃんの畑はあった。

見た時は俺と織斑二人で普通に驚いた。だってめっちゃ広いんだもん。

これを今まで一人で世話していたって事か?爺ちゃんすげぇ。

 

 

 

暑い。とにかく暑い。

今は十時頃なのに既に三十五度を超えている。

 

「あちぃな……」

 

「……言うな。余計に暑く感じる」

 

「わりぃ……」

 

俺と織斑はこの炎天下の中、肥料等の色々な物を運んでいる。

と言うか爺ちゃんどんだけでかい畑を買ったんだ?

普通に趣味じゃ終わらないようなレベルの広さだぞ……

しかも本人は滅茶苦茶元気だし。

 

「輝義の爺ちゃん元気すぎじゃね……?」

 

「……俺もそれは思った」

 

「ほら二人共もっとしっかり動け!そこにある肥料を二袋持って来い!!」

 

話していると爺ちゃんから呼び出しがかかった。

人使い荒すぎじゃありません?

 

「……織斑は休んでろ。その状態じゃ辛いだろう」

 

「悪い……」

 

「……日陰に入ってろ。水分も摂れよ」

 

「あぁ……」

 

織斑はダウンか。

まぁ俺みたいに体力があるわけでもないからな。しょうがない。

 

「……ほら。二袋持って来たぞ」

 

「おう。そこに置いとけ。一夏君はどうした?」

 

と言うかいつの間に名前呼び。

俺はそのコミュ力が羨ましいぜ。

 

「……体力の限界」

 

「なんだ情けない。熱中症とかは?」

 

「……それは大丈夫だと思うよ。日陰で寝てる」

 

「そうか。なら持って来た肥料をこっから向こうまで二袋分蒔いてくれ」

 

「……了解」

 

そう言って俺は肥料を蒔き始める。

しかし本当に広すぎじゃね?なんでこんなに広い土地を全部畑にしたんだ。

と言うかこの短期間でよくこれだけの畑を作れたもんだな……

 

「……こんなに広い畑どうやって耕したんだ?」

 

「ん?機械を使ってな」

 

「……一人で?」

 

「あぁ。結構簡単だったぞ」

 

いや簡単だったぞ。じゃねぇよ。

この広さを一人で?やっぱ我が家のおじい様は人じゃなかったのね。

 

まぁ言われた通りにえっさほいさと肥料をバラ蒔く。

山も近いし野生動物とか沢山居そう。

 

イノシシ、シカ……美味そうだな……

 

 

 

「……蒔き終わった」

 

「おう。なら少しばかり休憩にするか」

 

「……分かった」

 

そう言って二人でトラックに向かって歩く。

トラックには織斑がドアを開けたまま中で寝ていた。幸いと言うか風が吹いていてトラックの中は風通しがいい。

思いの外涼しいようだ。

 

「……織斑。生きているか?」

 

「んぉ……?あぁ、悪い寝ちまった……」

 

「気持ちよくって寝ちまったか。気にしなくていいぞ」

 

「……体力は回復したか?」

 

「おう。ん”ん”-”ー”……それにしても本当に気持ちよかったぜ」

 

そう言って織斑は背伸びをしながら言う。

 

「二十分ぐらい休憩したら残りの畑もやっちまおう」

 

「……ん」

 

「分かりました」

 

「それにしても今日は楽でいい。何時もなら何日か掛けてやるんだがな」

 

そんな仕事を俺らにやらせたのか。

まぁいいか。なんだかんだで織斑も楽しそうだし。

 

 

 

 

「……野生動物とかってどうしてるの?」

 

「地元の猟友会が定期的に猟をしてくれている。他の農家さんも結構イノシシ、シカの被害が大きいらしくてな」

 

「……そうなのか」

 

「おう。免許を持って入るんだが自分で山に登って猟を、となると流石にきつくてな」

 

やっぱり年なんだろうな。

農作業は結構ホイホイやっているけど山登りはきつくなって来たのか。

 

「だから低い所での猟はやるんだが、俺一人だと手に負えなくてな」

 

「ほえー。輝義の爺ちゃんやっぱすげぇな」

 

織斑はすげぇすげぇと頷いている。

まぁ確かに凄いんだけども。

 

 

 

それから一時頃まで作業をやって家に帰った。

トラックの荷台って風を感じられるし意外と気持ちいいもんだね。

……やっぱり車内がいいけどさ……

俺、車買う時はめっちゃデカいのにしよう……

と言うか俺が乗れる車なんてあんのかな……?

 

 

 

 

 

 

そして家で飯を食った後に皆に集まってもらった。

明日、夏祭りがある。その時に以前作って貰った浴衣を渡してしまおうという訳だ。

 

「……わざわざ集まって貰ってもらった。申し訳ないな」

 

「別に構わないぞ。それで嫁は何の用があるのだ?」

 

「……渡したいものがあってな」

 

「渡したいもの?」

 

皆はやはり不思議そうに首を傾げる。

ふっふっふっふっふ…………見て驚け!聞いて驚け!

まぁこの場には無いんだけども。

 

「……少し待っていてくれ」

 

そう言って自分の部屋に浴衣を取りに行く。

と言うかよく織斑は気が付かなかったな。押し入れの中に入れておいた。

宅配で届けてもらうように頼んでおいたからバレずに持ち込めたのだ。

俺ってばやっぱり天才なのかもしれないな。

 

 

浴衣を持って皆の所に戻る。

 

「輝義?それ何?」

 

「……見れば分かる」

 

そう言って丁度シャルロットの浴衣が一番上にあったので渡す。

 

「輝義……これって……?」

 

「……浴衣だ。明日夏祭りがある事を言っただろう?その時に着て行ってくれ」

 

シャルロットは浴衣を広げる。

色は水色を更に薄くしたような色。

そこに朝顔があしらってある。

 

「わぁ……!凄いね!輝義有難う!」

 

「……ん。皆の分もあるぞ」

 

「「「「「「「「「「おぉー!!」」」」」」」」」」

 

嬉しい反応をしてくれるではないか。

そして皆に渡していく。

 

セシリアには瑠璃紺色の生地に菖蒲、だったか?その模様がある。

こう、ブルー・ティアーズに乗っているときのセシリアが頭に出てきたからこの色に。

 

箒には赤色の浴衣。そこに赤色の模様がある。

箒は落ち着いているときもあるんだがここ最近顔を赤くすることが多くて……

 

鈴には菜の花色の浴衣に、雲?みたいなのが書いてある。

鈴は元気一杯って感じがするからこの色に。

 

ラウラには紫色の浴衣。帯にフリルがあしらわれている。

黙っていればミステリアスな風貌だからこの色に。黙っていれば、だが。

 

簪は薄桜色に花の模様の浴衣。

こう、幸薄美人って感じがするんだよな。だからこの色に。言ったら怒られそうだから言わないけど。

 

本音は若草色。ちゃんと少しダボダボに作って貰ってます。

こう、ひらひらしている草みたいな感じだから。

 

楯無さんは天色の浴衣。

自由奔放だから。本人はそうじゃないとか言っているけど仕事をしないでフラフラしているからな。

 

虚さんは灰色に近い緑色。

知的な色って検索したらこの色が出てきた。

 

「……織斑」

 

「え!?俺の分もあんのか!?」

 

「……ちゃんと用意してある」

 

「まじかよ!めっちゃ嬉しいぜ!」

 

織斑のは濃いめの灰色。

なんていうか白式の色がそんな感じだったから引っ張られてしまった。

 

皆喜んでくれているようで何より。

 

「「「「「「「「「「ありがとう。輝義(嫁)(輝義君)(てるてる)(輝義さん)」」」」」」」」」」

 

皆からお礼を言われた。

 

「……普段から世話になりっぱなしだからな。恩返しとはいかないがせめてもの気持ちだ」

 

「それでもお礼は受け取っておくべきですわ」

 

「……あぁ」

 

「うむ。それに私達の方が嫁に世話になっているからな」

 

「……そんな事は無いと思うが」

 

「嫁がそう思っていなくても私達はそう思っているんだ。そういう事にしておけ」

 

「……分かった」

 

最後はラウラに丸め込まれたような気もしなくはないがまぁいいか。

 

 

明日は夏祭り。

皆で行くのが楽しみだ。

 

 






一夏くんは別に体力が無い訳ではありません。
普通の人からしたら多い方です。輝義と爺ちゃんの体力が人外過ぎるだけなんです。


浴衣の色ですが作者が何となく色の表を見ながら、「あ、この色似合いそう」とか思ったものです。
似合ってないとか、ダサいとか言わないで。
作者のセンスが壊滅しているのは自分でよーーーーく分かっていますから。

これ以上心を圧し折りに来ないで……




感想、評価等くださいな。



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90話目




夏祭りぃぃぃぃ!!
浴衣美少女ぉぉぉぉぉ!!
浴衣イケメェェェェン!!


上二つはともかく一番下は完全にふざけました。
許して。


 

 

夏祭り当日。

此処の祭りが始まるのは六時頃から。昼飯を食べて二時頃には着付けを始める。

既に俺と織斑は着付けが終わっている。だけど女性陣は始まってから二時間が過ぎているのにも関わらず未だに出てこない。

まぁ母さんが、

 

「女は色々と準備しなきゃいけない事が沢山あんのよ。男は黙って待ってる!」

 

と言っていたからまだ時間は掛かるんだろうけど。

 

 

 

 

その間、俺と織斑はのんびりお茶を飲みながら話していた。

 

「それにしても輝義って浴衣を着てるとなんか凄いかっこいいよな」

 

「……お前もな」

 

実際織斑の浴衣は雑誌に載ってもいいレベルで似合っている。

やはりイケメンは何を着ても似合うという事か。羨ましい。まぁ俺が着れる服なんて特注しないと無理なんだけども。

 

「そうか?浴衣なんて着た事無かったからな。新鮮だな」

 

「……俺も無いぞ」

 

「嘘つくなって。箒の実家の夏祭りに行ったんだろ?」

 

「……それまでは一度もない」

 

「あぁ、そういう事か。にしてもさ、箒達の準備長いな」

 

「……母さんは待つのが男だって言ってたぞ」

 

「それもそうか」

 

にしても本当に遅い。

何をしているのだろうか?

 

 

 

 

 

ーーーー side 女性陣 ----

 

 

 

「早速着付けちゃいましょうか。ほらほら」

 

と言いながら輝義の祖母、秋江が促す。

 

「あ、なら私も手伝います。多少なら出来るので」

 

「あらそう?ならお願いできるかしら?」

 

「はい。任せてください」

 

流石箒さん。こんなところで点数稼ぎとは侮れない。

ほら、セシリアとシャルロットはやられたって顔しているし楯無は小声で、

 

「こんなことなら私も習っておくべきだったわ……」

 

とか言っているし。

そんな皆を見た箒は何処か勝ち誇った顔をしている。

 

 

 

閑話休題

 

 

 

「私が最初にキツケ?してもらうとしよう」

 

前に出たのはラウラ。

もう浴衣を着たラウラとか尊すぎてヤバい。

 

「それじゃこっちに服を脱いでいらっしゃい」

 

「はい」

 

そしてラウラは服を脱ぐ。

幼女体系だが全然イケます。

 

 

 

 

「「「「「「「「「「おーーーー」」」」」」」」」」

 

着付けが終わったラウラを見て皆が声を上げる。

雰囲気と浴衣の色が合わさって普段とは違う魅力が溢れ出ている。そこに髪の毛を両サイドで纏めているもんだから、もう天使かよ。

 

「ラウラさんは愛らしいですわ。こう、頭を撫でたくなるというか」

 

「そうだね。ラウラって結構子供っぽい所あるから僕は尚更かな」

 

セシリアとシャルロットの言葉に皆が頷く。

 

 

 

「じゃぁ次は私がお願いしてもいいですかー?」

 

次に手を上げたのは本音だった。

 

「いいわよ。こっちにいらっしゃい」

 

そう言われるや否や即座に服を脱ぐ。

その姿を見て簪は恨めしそうに見て虚は、

 

「何故姉妹で此処まで育ちが違うんでしょうか……?」

 

と自分の胸を見ながら絶望した顔をしている。

虚さんって結構ある方だと思います。

 

 

「服がダボダボだから分からなかったけど結構あるのね。そしたら少しだけサラシで抑えましょうか」

 

「そうですね」

 

本音の胸を見た母の楓と箒はそう言った。

 

「抑えるんですかー?」

 

「そうよ」

 

「分かりましたー」

 

そうして着付けを進めていく。

 

 

「おー。すごーい!」

 

浴衣を着た本音は抑えているのにも関わらずその胸は帯の上に乗っている。

はしゃぐものだから揺れる揺れる。

簪なんかもう目が凄い。今にも血涙を流しそうである。

 

「本音、あまり動くと着崩れてしまうぞ」

 

「それはやだなー。大人しくしてよー」

 

箒に言われて大人しくなる本音。

本音は普段の髪型とは違い、完全に髪の毛を下ろしている。ストレートと言うやつだ。

なんかエロいと思うのは作者だけか?

 

他の皆も本音を見て、

 

「なんか目付きも相まってやたらとエロく感じるわね……」

 

「本音ちゃん……恐ろしい子!!」

 

等と言っている。

分からなくも無いが箒の方がもっと凶悪な物を持っているでしょうに。

それを見た時皆はどんな顔をするのか。

 

 

 

「それでは次は私が」

 

前に出たのはセシリア。

本人曰く胸が小さいとの事だが全然おっきいと思います。

 

 

 

着付け中

 

着付けたセシリアは、何処かモデルの様な佇まいで綺麗と言う言葉がよく合う。

瑠璃紺色の浴衣がセシリア自慢のプラチナブロンドを際立たせている。

髪の毛はサイドアップで纏められている。

 

「おー、せっしーとっても綺麗ー」

 

「なんで皆胸があるのよ……私だけないじゃない……」

 

皆が称賛するがそれと同時に鈴は自分の無い胸を恨む。

これからもっと大きいのがやって来るぞ。

鈴の心は持つのだろうか?

 

 

 

「次はお姉さんが」

 

我らが小悪魔系(笑)お姉さんの楯無が着付けに入る。

 

「同性とは言え流石に皆の前で服を脱ぐのは恥ずかしいわね……」

 

と言っているが、そう言う所が小悪魔(笑)なのだ。

楯無の身体は所謂モデル体型と言うもので均整の取れた身体。

 

「なんでお姉ちゃんだけ……」

 

簪は更に恨みが籠った目で見ているが。

 

 

着付け中

 

 

「どうかしら?」

 

着付けた楯無は何というかこう、雑誌から出てきた様な感じだ。

髪は団子にして纏めており、白い肌のうなじが見える。

人によってはこのうなじだけで大満足なもの。

 

 

 

 

「じゃぁ次は僕がお願いしようかな」

 

シャルロットが前に出る。

 

 

着付け中

 

 

着付けたシャルロットはオレンジブロンドの髪を後ろで二つに分けて纏めている。

箒や本音程ではないがそれでも十分に大きな胸。

優しそうな雰囲気と合わさり甘えたくなる。

 

「もげろもげろもげろもげろもげろ………………」

 

鈴はもう血涙を流しながら呪詛を吐いている。

そんなに恨むほどか。

 

「なんだか優しそうなお母さんって雰囲気だね」

 

「そうだね。こう、無性に甘えたくなるというか」

 

魔性と言うべきか。それ程である。

 

 

 

「次、私が行ってもいい?」

 

名乗りを上げたのは簪。

 

 

着付け中

 

 

髪は三つ編みにして横に垂らしている。

委員長と言う感じで眼鏡を掛けているから更に委員長感が高まっている。

 

「かんちゃん凄い似合ってるよー!」

 

「簪お嬢様、良くお似合いですよ」

 

「あれ!?私にはそんな事言ってくれなかったわよね!?」

 

と、本音と虚が褒める。

まぁ若干一名が何かを言っているが気にしないでおこう。

 

 

 

「それじゃ私が次に行くわ」

 

そう言って出てきたのは鈴。

 

 

着付け中

 

 

普段はツインテールにしている髪は今日ばかりはポニーテールに。

 

「鈴さんらしいですわ。でも髪型で此処まで雰囲気が変わったのは鈴さんが一番なのでは?」

 

「そうだね。とっても良く似合っていると思うよ」

 

とやはり褒めていた。

まぁ本人は胸を気にしているが一夏が見たら、

 

「射的が凄いやりやすそうだな」

 

等と言って吹っ飛ばされそうな気もするが。

 

 

 

「では、次は私ですね」

 

虚がそう言って前に出る。

胸を気にしているがある方だと思います。

 

 

着付け中

 

 

「始めて浴衣を着ましたが……どうでしょうか?」

 

 

そう言ってクルっと一回りする。

髪の毛が遅れて引っ張られていく。

本人の希望でいつもと変わらない髪型だが、それでも十分に魅力が溢れている。

 

「虚ちゃん……女を上げたわね……」

 

「おねえちゃんきれーだよー!」

 

妹は素直に褒めるが何故か幼馴染兼上司は訳分からない事を言っている。

しかしそんな言葉を気にする様子はない。これが年上の余裕と言うやつか。

 

 

 

 

「それじゃ最後に箒ちゃんの着付けをやっちゃいましょ」

 

そう言って秋江は箒の浴衣を準備する。

 

「ほらほら早く脱いでこっちに来なさい」

 

楓が急かすが箒は何故か脱ぐのを躊躇う。

 

「うぅ……」

 

意を決して服を脱ぐ。そして皆がその大きな胸に釘付けになる。

 

「箒さん……以前より胸が大きくなっていませんか……?」

 

「そうだ……だから脱ぎたくなかったんだ……」

 

箒は夏休みに入る前よりも胸が成長したのだ。

此処だけの話、束の胸を追い抜いているかもしれない。

だと言うのに腰はしっかり縊れていて足も細い。太ももは柔らかそうにむっちりしているが。

 

 

箒の胸が動くたびに揺れる。

その胸をセシリア、シャルロット、楯無、虚、本音、簪は羨ましそうに見つめる。

 

「流石箒ちゃんね……服の上からでも分かっては居たけど直接見ると圧巻だわ……」

 

「しののんスタイルいいね!」

 

鈴は今までよりも遥かに恨みが籠った表情で呪いの言葉を吐きながら見る。

 

「萎んでしまえ……無くなってしまえ……」

 

ラウラは自分の身体に自信があるのか張り合っていた。

 

 

そうして着付けが終わる。

 

「ど、どうだろうか……」

 

皆に着付けている間も胸を凝視され続けたために顔は羞恥の色に染まっている。

 

「エロいわね」

 

「艶めかしいですわ」

 

「なんでそう言う事ばかり言うんだ……恥ずかしい……」

 

皆にエロいだのなんだの言われて更に赤くなる。

 

「もげてしまえ」

 

「なんでだ!?」

 

鈴にはもげろと言われる。

まぁ皆が認めるほどという事で納得しましょう。

 

 

 

 

 

 

「それじゃお化粧もしちゃいましょうか」

 

そう秋江と楓が言いながら化粧品を出す。

 

「皆は元々の肌が白いから本当に薄化粧で十分ね」

 

そう言いながら全員の化粧をしていく。

 

 

 

 

「はい、終わり。全員終わったわね」

 

「はい。ありがとうございます」

 

「いいのよ。こんな美人美少女を着付けられたんだもの。役得よ」

 

全員の準備が整った。

 

「それじゃ行きましょうか」

 

そうして箒達は男共の前に出ていく

 

 

 

ーーーー side out ----

 

 

 

 

「浴衣に着替えた皆が入るわよ」

 

そう言って母さんがドアを開ける。

その後に続いて箒達が入って来る。

 

俺も織斑も親父も爺ちゃんも驚く。

そりゃそうだ。なんたってそこらのテレビに出ている女優やアイドルよりも遥かに魅力的なのだから。

 

「おぉ……皆、凄く似合っているぞ」

 

「すげぇ!のほほんさんなんか別人じゃねぇか!」

 

織斑も驚いているし、親父と爺ちゃんはポカンとしている。

 

「輝義お前……よくこんな美人達を捕まえられたな」

 

「輝義、一生大事にしなよ?」

 

「……二人共大丈夫?」

 

口を開いて出てきた言葉が意味わかりません。

 

 

 

暫くして祭りの時間になった。

 

「……そろそろ時間だ。行こう」

 

俺の言葉で皆が祭りに向かう。

今日は最高の日になりそうだな。

 

 

 

 






活動報告や後書きなどにも書いておきましたが明日から投稿頻度が激減します。
多分月に一話投稿出来ればいい方かな……?
ゴールデンウィークに入れば毎日投稿出来るとは思うんですけどそれも不確定なので……
申し訳ありません。


正直、箒が脱いだ時のくだりをやってみたかった。

駆け足どころか急展開になってしまった。
申し訳ない。
この続きはまた今度。



感想、評価等くださいな。




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91話目



お久しぶりです。
久々の投稿になるけど読者の皆様は読んでくれるのだろうか……?


仕事がなんとか一段落ついたこの頃。
まぁ何かあれば即座に戻らなければならないんだけれども。

いやもうマジで大変だった……
休日も休みとは言えないような日々だった……



書こうとしても時間の関係上全く書く時間が無いし、そもそもスランプ気味と言う事もあって筆が一文字も進まなかった……


今回は短めに。
次回は一応長めにする予定?です。





祭りの会場に着いた。

例年通り人で溢れかえっている。

歩いている人は楽しそうに屋台を見て回っている。

 

しかしどうしてかは分からないがやたらと見られている気がしないでもない。

 

まぁ見られても仕方ないっちゃ仕方ないんだけれども。

なんたってこんだけ美少女イケメンの中に俺みたいな悪人面が混じっていたら俺だって何かあったのかと思わず見てしまう。

断固として俺はそっち側の人間じゃない。

 

 

まぁ皆はそんな視線などお構いなしに進んでいくんだけども。

 

「嫁、あれはなんだ?」

 

「……林檎飴だな」

 

「リンゴアメ……」

 

「……少し待っていろ」

 

「?」

 

ラウラが林檎飴を食いたそうにしているもんだから少し買いに走る。

 

「……ほら」

 

「おぉ……!いいのか!?」

 

「……いいぞ」

 

渡すと目をキラキラさせて食べていいのか、と聞いてくる。

やっぱりラウラはいい子なんだね。

嬉しそうに林檎飴を舐めるラウラ。もう本当に嬉しそうにしている。

 

「あーてるてるらうりーに林檎飴かってるー。私にも何か買ってよー」

 

それを見ていた本音さんに私もとせがまれてしまった。

せがんでくるとは思っていたけど。

 

「……分かっている。何が欲しい」

 

「んー?えっとねー、焼きそばとたこ焼きとチョコバナナとー」

 

「……まて。どれだけ買う気だ」

 

「沢山買うよ!」

 

沢山買うよ!じゃないよ。

俺の財布がすっからかんの氷河期に突入しちまうでしょ。

 

「……三つまでだ。それ以上は許さん」

 

「えー!?」

 

それはそれは文句を言ってくる。

今もブーブー文句を言いながら俺の周りをウロウロしている。

 

「本音、少しは我慢しなさい」

 

「お姉ちゃんまでそんなことを言うのかー!」

 

虚さんの注意にも拘らず文句を言う本音。

しかし虚さんが何か耳打ちするとぴたりと文句が止まった。

虚さん流石です!

 

「輝義も大変だね」

 

「……あぁ。でも賑やかでいいじゃないか」

 

「ふふ。そうだね」

 

笑いながらシャルロットが言うが俺は今のこの状況がとても楽しいし幸せだと思う。

そう伝えると再び笑いながら頷いた。

 

こんな感じの日常がずっと続けばいいのにと思うがそうはいかないのが俺を取り巻く状況だ。ついさっき他の人の視線に紛れて敵意の籠った視線を感じた。

女権団なのか亡国機業なのか、それとも両方か。

いずれにせよ何かを仕掛けて来るのは間違いないだろう。

 

「……楯無さん」

 

「ん?どうかしたのかしら?」

 

「……少し席を外します。皆をお願いできますか?」

 

「…………分かったわ」

 

俺の雰囲気が少し変わったことに気が付いたのだろう、少しして頷いた。

 

「でも」

 

「……はい」

 

「ちゃんと無事に帰って来るのよ」

 

真剣な顔で俺の目から視線を外さずに言った。

そんな事重々承知している。

 

「……分かりました。ありがとうございます」

 

そう言って俺はその場を後にする。

 

 

 

人混みの中を一人歩く。

スマホを取り出して俺は大沢さんに連絡を取る。

恐らく俺が見える範囲の近くにいるはずだ。

 

「大沢です。どうかしましたか?」

 

大沢さんはワンコールで出てくれた。

そして用件を伝える。

 

「……敵意を感じました。中には殺気も」

 

「分かりました。少しお待ちを」

 

そう言うと電話が切れる。

十秒程すると大沢さんを入れて四人が俺に近づいてくる。

 

「こちらへ」

 

そう言われて人数が少ない場所に連れられる。

 

「ここなら話も出来るだろう」

 

そう言う大沢さん。

と言うか今気が付いたんだけどさ、なんか何時の間にか他の護衛の人達が集まって来ていた。

 

「詳しくお話を聞かせていくれませんか?」

 

「……分かりました。先程複数の敵意と殺意を感じました。詳しい数は分からないですが」

 

「こんなところまで奴らは出て来るのか……弁えろよ……」

 

なんか説明をしたら疲れた顔して小さい声で弁えろよってガチトーンで言ったよ……

相当色々と溜まってんのかな……

 

「今の所は特に何も起きていないからいいが間違いなく事を起こす気だろうな」

 

「今は念の為に三名を割いて篠ノ之さん達を」

 

「それでは心許無い。十人を回せ。残りで奴らを叩く」

 

「了解しました。選出はどうしますか?」

 

「そちらに一任する」

 

「分かりました」

 

そう言って会話をすると俺の方に向き直る。

 

「お待たせしました。大河君も一緒に」

 

「……いえ、私は大沢さんと一緒に行きます」

 

「駄目です」

 

帰れと言われたので此処に残って一緒に行くと言うと大沢さんは即座に否定した。

俺だって考え無しに言っている訳じゃないんだがな。

 

「……奴らの狙いは俺のはずです。なら俺と一緒に居れば箒達は危険に曝されやすくなる筈です。なら一緒に着いて行った方がいいでしょう」

 

「しかし……」

 

「……それに、奴らはどんな武器を持っているか分からないんですよ?最悪ISを所持していると考えると俺が居た方がいいかと思いますが」

 

そう言うと大沢さんは難しそうな顔で少し考え始めた。

 

「………………分かりました。許可します。自分の独断ですが責任は私が取りましょう」

 

「……有難うございます」

 

「それでは始めましょう。先手を譲る前にこちらから仕掛けましょう。緊急用のMP5があるだけだったので正直な事を言わせてもらえば大河君の助力はとても助かります」

 

「……いえ、構いませんよ」

 

「君みたいな少年にこの様な事をやらせてしまって申し訳ない」

 

大沢さんはそう言って頭を下げて来る。

 

「……頭を上げてください。これは自分が売った喧嘩ですから。寧ろ俺が皆さんを巻き込んでしまったようなものですし」

 

「そうか……」

 

俺はこれでいいのだ。

死にかけた事なんて何度でもある。

でも死ぬ覚悟だけは絶対にしない。何故なら俺が死んだら皆が悲しむから。

 

例え俺の腕が無くなっても足が無くなっても目が見えなくなっても耳が聞こえなくなっても絶対に生きて帰って来る。

 

 

横を見れば大沢さん達の準備が整ったようだ。

 

「それじゃ行こうか」

 

「……はい」

 

 

奴らを二度と何もしてこないように痛い目を見てもらおう。

 

 

 

さぁ、戦いの始まりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






後日、活動報告でも書きますが一応こちらにも書いておきます。

五月の四日までしか休みが無いのでそれからは再び忙しくなります。
恐らくお盆中に投稿出来ればいい方かな?と作者は捉えております。

私物のパソコンをいじる時間がマジで無いんですよね。
スマホでも投稿出来るんですがやっぱり作業スピードが遥かに違うんですよね。

まぁそんなわけでまたお待ちいただけると幸いです。




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92話目

昨日ぶりです。






大沢さん達十人と山の中に入って行く。

俺の格好は勿論浴衣だ。幸いなのは靴を履いてきていた事だろうか。

ただやはり普段の運動しているときの格好とは違い動きずらいのはある。

 

「凄いな……そんな格好でこれだけは山中を踏破できるとは……」

 

「それに物凄く移動速度が速いですね。何も持っていないというのもありますが幾らなんでも速すぎる」

 

後ろの方に居る人達が何か言っているがよく聞こえない。

 

「……大沢さん、何処に奴らが居るのかは分かるんですか?」

 

「いや、正直な所を言えば分かりません。ただ恐らくだが指揮を執るための車両やそれに近しい物がどこかにあるはず。そしてそれらは指揮を執るために……」

 

「……通信を取っている」

 

「その通り。だから今は電波を辿っています」

 

闇雲に走っている訳じゃなかったんだな。

下手に先頭に出ないで正解だった。

俺だけだったら今頃迷子確定だし。

 

 

それからさらに十分程走っていると一人が声を上げた。

 

「隊長、電波反応を探知。民間用の物ではありません。明らかに軍事用の電波回線です」

 

「よし。詳細な位置は?」

 

「二時の方向、距離凡そ二キロの地点に」

 

「通信の傍受は可能か?」

 

「既にやっています」

 

「俺達の行動に気付いている節は?」

 

「ありません。それどころか我々の位置を特定できておらず大騒ぎをしているようです」

 

「黒か?」

 

「はい。見つけ次第殺せだのなんだの騒いでます」

 

おぉ……なんか物騒な事を言いまくっているようで。

それにしてもこの距離で俺達に気が付かないって何をしているのだろうか?

警戒がザル過ぎるんじゃないか?此処まで来るといっそ罠を疑った方がいいくらいだ。

 

 

 

そう考えているうちに奴らの通信車両やらが見えてきた。

一度向こう側からは見えずに自分達からしか見えない場所に移動する。

そして大沢さんは部下の人達に指示を出している。

 

「……どうしますか?」

 

俺が聞くと大沢さんは、

 

「我々に気付いていない、見失っている今が好機です」

 

大沢さんは今までに見た事のない顔でそう言った。

そして俺に言った。

 

「いいですか?今から私達は奴らに奇襲を掛けます。そして我々は銃火器を持っている。当然相手もそれなりの武装をしているでしょう。これがどういう事だか分かりますか?そしてこれから何が起きるのかをしっかりと理解していますか?」

 

そう言ってこれから俺達は何をするのかを改めて認識させられる。

 

「……勿論です」

 

「……………………」

 

大沢さんは俺の目をじっと見る。

 

「それなら行きましょうか。大河君を含めた五名の班と私を含めた六名の班に分けます。大河君達をα、私達をβと呼称します。βが敵陣内に潜入。αはそれの援護を。もしISが出てきた場合については大河君、頼みましたよ」

 

「……任せてください」

 

そんな感じの簡単な作戦会議を終えると大沢さん達はすぐさま潜入していってしまった。

俺達は高台の茂みに隠れてαチームを援護し始めた。

部下の人達はどこからか狙撃銃を取り出して二人一組を作った。

 

「大河君、申し訳ないが周辺の警戒を頼みたい」

 

「……任せてください」

 

警戒任務を与えられたのでISのハイパーセンサーのみを起動して索敵する。

 

 

それからは特に何もなかったが急に敵陣の方が慌ただしくなり始めた。

それと同時に部下の人達が発砲を始めた。

俺は一瞬気を取られてしまったが直ぐに警戒に戻る。

 

このまま終わればよかったがそう簡単に事が運べる訳がなかった。

 

 

 

突如としてISの反応が現れたのだ。

それも三機も。

そして部下の人達は大沢さん達に通信を送り始めた。

 

「こちらβ1。α1応答せよ。送れ」

 

「α1。どうした?送れ」

 

「ISが現れました。撤退を具申します。送れ」

 

「了解。これより撤退を開始する。援護しろ。送れ」

 

「了解。援護する。送れ」

 

「それとこちらも出すぞ。送れ」

 

「了解。大河君、出番だ。すぐに出れるかい?」

 

「……何時でも行けます」

 

「よし。こちらβ1。送れ」

 

「こちらα1。送れ」

 

「今から出ます。送れ」

 

「了解。通信終わり」

 

そう言うと大沢さん達は通信を切った。

そして部下の人が俺の方を向いていった。

 

「大河君。ISを任せたよ」

 

「……はい。それでは行ってきます」

 

そして俺はイージスを展開し直ぐに舞い上がった。

 

 

 

 

ーーーー side αチーム ----

 

 

 

αチームは通信を切った瞬間に駆け出していた。

 

「急げ急げ!IS同士の戦闘に巻き込まれたくなきゃ死ぬ気で走れ!」

 

「んな事分かってますよ!……やべぇ!もう来た!」

 

「通信切ってからまだ二、三秒しか経ってないっすよ!?」

 

「しるか!んなことはいいから走れ!」

 

しかし流石は第四世代機。いや、ISだからだろうか。

七百メートルはある距離を数秒で飛んで来てしまった。

走りながら彼らは話す。

 

「クソッ!奴らパッケージを見た瞬間に全機飛びついて行きやがった!」

 

「畜生!そんなに男が嫌いかよ!」

 

「なんで俺達じゃなくてパッケージなんだよクソッタレ!まだ十六歳だぞ!?それに殺しを俺達はさせようってのかクソ!」

 

彼らは知っている。生身の人間がISに勝てない事を。

戦車や航空機ならばやりようによっては勝てるだろう。だがISはそれらの兵器を紙きれ同然の様に引き裂いていくのだ。

どうして生身の人間がISに勝てようか。

そして彼らは同時に思った。

 

まだ、たったの十六歳の少年に守ってもらう事しか出来ないのかと。

 

援護を要請したのはいい。何故ならISにはISをぶつけるしかないのだから。

でもそれは彼らの中では子供に殺しを命じたのと同じだと思っているのだ。

 

そしてそんな彼らの事など気にも留めないかのように上空で四機のISの戦闘が始まる。

 

 

 

ーーーー side out ----

 

 

 

飛び出してすぐに三機のISが向かって来た。

しかし俺は戦わずに三機の間を通り抜けて行く。

置いて行かれた奴らは反転して追いかけて来る。

 

そうだ……そのまま俺に付いて来い……

 

追い付けるようで追い付けない速度で高度を取る。

少しでも大沢さん達に被害が行かないように。

 

ある程度高度を取った瞬間に減速、反転。

瞬時加速で擦れ違いざまに一機を落とす。シールドエネルギーはたったの一撃を加えただけでゼロに。次にかすりでもすれば終わりだ。

 

まぁ、第二世代の、それも個人用にカスタムされている訳でもない、挙句の果てにシャルロットレベルの操縦技術があるわけでもないのだ。それでこの一撃を耐えろと言う方が無理だろう。

しかしそれでも向かってくる。絶対防御がも確実にダメージを通さないという事では無い。絶対防御を超えるダメージを食らえば、大怪我は免れないだろう。

 

下手をすれば、死ぬ。

 

にも拘らず突っ込んでくるのは何故か。

そんなものは考えなくても分かり切っている。

 

俺を殺す為。

 

 

 

いいだろう。受けて立ってやる。どの道此処でお前たちを放っておけば家族や、織斑達に危害を加えるのだろうから。

ならば今ここでこいつらをーーーーーー

 

 

 

 

殺す。

 

 

 

 

 

 

 

 

殺すと決めてからは早かった。

一番最初にダメージを与えた奴から順番に落としていった。

その時の、彼女たちのは一生忘れることはないだろう。

 

憎悪、恐怖、怒り。

 

そんな感情を抱えた顔で落ちて行った。

 

ふと自分の手に違和感を感じて、手を見ると震えていた。いや、手だけではなく身体も震えていた。

 

なんでだろう?なんで俺の手は、身体は震えている?

 

 

どれだけ考えてもその答えは出てこなかった。

 

 

 

大沢さん達と合流した時には既に警察や自衛隊と言った公安組織が向かっていると言われた。

しかしそれから警察や自衛隊が到着するまで誰も話しかけてこなかった。

到着した人たちも含めて。

 

 

 

 

ーーーー side 大沢 ----

 

 

大河君がISを落とした。

本来ならばこれは自分の命も部下の命も大河君の命も助かって嬉しいはずなのだ。

にも拘らず私を含めて部下たちは一様に暗い顔をしていた。

 

まだ、十六歳の少年の手で人を殺させてしまった。

 

死んでいないかもしれない、何てことは無い。

絶対防御が発動してもあの高さからの落下の衝撃には耐えられないだろう。

 

そして大河君が帰って来る。

私達はその顔を見て何も言えなくなってしまったのだから。

言葉では表せられない程の、様々な感情が入り混じっている顔。

そしてその輝く、優しさを持った目は、

 

 

どす黒く濁っていた。

 

それは到底十六歳の高校生の目には合ってはならない色だ。

そしてその目にさせてしまったのは私達だ。

 

 

警察と自衛隊の部隊が来ることを伝えたきり、私達は話しかける事が出来なくなってしまっていた。

そして応援が到着した後も誰一人として話しかけることは出来なかった。

 

 

「隊長……なんで彼があんな目に遭わなければいけないのですか……?」

 

「分からん……」

 

そんな事分かるわけがない。俺だって聞きたいのだから。

 

「本来は俺達が彼の事を守って幸せに暮らしてもらうはずだったのに……なのに守ってもらってばかりで、あの時だってそうだった……俺達はただ見ていることしか出来ない……」

 

こいつの言うあの時とは福音暴走事件のことだろう。

あの時、我々はただ見ていることしか出来なかった。一度目の出撃のダメージで万全の状態ではない形で出撃して腕を失った。

その時は遠くでただただ見ていることしか出来なかった。

 

「隊長……俺は、力の無い自分が恨めしいです……」

 

「あぁ……」

 

拳を固く握りしめて自分に彼を守るほどの力が無いことを悔やみ続けた。

 

 

ある者は小さな声でひたすらに謝罪を。

ある者は己の力の無さを悔やみ。

ある者は少年が手を汚さなければならない今の世の中に憎しみを抱き。

 

それぞれが様々な感情でその場に立っていた。

 

 

しかし同時に皆で強く固く心に誓った。

 

 

 

 

ISには乗れないがそれでも、もう彼がその手を汚さなくてもいいように今よりも遥かに強くなろう、と。

 

 

 

ーーーー side out ----

 

 

 

 




思ったよりも短かった。

今回は試験的に特殊フォントを導入してみました。
自分で見て、

「これはねぇわ」

と思ったら修正します。

正直な話、特殊フォントって何が何だかよくわかってねぇ。
分かる人いたら教えてください。


感想、評価等くださいな。




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93話目







 

 

あれから事情聴取などをしてから大沢さん達と共に祭りの会場に向かう。

あの後に聞いたのだが敵のISはどうやら無断で持ち出された機体らしく既に調査が始まっていたとの事。そこに今回の事が起こり回収が達成されたらしい。

そして搭乗者の三人だが、

 

三人とも死んでいた。

 

それも当然と言えば当然だろう。

これだけの高さからの落下の衝撃に耐えられるはずがない。

 

 

こうして一連の騒動は終わって行った。

 

 

 

変える道すがら、車に向かう時の足取りも心もどうしてだかとても重く、億劫だった。

このままここで座り込んで朽ち果てるのもいいかもしれないと考えるぐらいには。

 

 

 

 

「……只今戻りました」

 

そう言って皆に合流する。

しかし普段と変わらないように声を掛けたはずなのに。

 

皆は俺の顔を見て青ざめた。

 

いや、正確には目、だろうか。

俺の目を見た瞬間に。特に楯無さんの顔が酷かった。

 

 

俺の方に歩いてくるものだからどうしたのだろうかと思っていたが俺に向かって歩いていたわけではないらしい。

楯無さんは俺の横を通り過ぎて後ろに待機していた大沢さんに詰め寄った。

 

「なんで……!なんで輝義君があんな目をしているの!?」

 

「申し訳ありません……」

楯無さんが大きな声で聴くと大沢さんは小さな声で言った。

 

そんなに目が変なのだろうか?

ちゃんと見えているのだが。

自分では分からない。

 

「……楯無さん、俺の目が変なんですか?」

 

「ッ!輝義君、帰るわよ……」

 

「……ですが」

 

「いいから!!もう、今日は帰りましょう……」

 

そう言うと楯無さんは俺の手を掴んで歩いていく。

箒や織斑、セシリア達もそれに続いて歩いていく。

 

 

帰り道は誰一人として言葉を発さなかった。

 

 

 

 

家に帰ると楯無さんは俺の両親の所に行ってくると何処かに行ってしまった。

俺は部屋に戻り取り敢えず楯無さんに言われた通り風呂に入る準備をする。

何時もと同じように風呂場に向かい服を脱ぎ身体を洗い湯に浸かり。

 

身体を拭いて鏡の前に立った。

その時俺は俺自身に恐怖した。

 

 

その鏡の前に立っていた俺は自分でも見た事のない、顔をしている俺だった。

顔だけじゃない。目も雰囲気も何もかもが変わっている。

 

人を殺して身体にはこれだけの変化が出ているのに心には何も思わない。

そんな自分に恐怖した。

 

人を殺して当たり前のようにそこに立って皆に接して。

自覚をするたびに恐怖感がどんどん強くなる。

鏡を見るまで人を殺したことに何も思わない自分が怖かった。

 

手が、足が震える。

歯がカチカチと音を立てる。

寒くなってきた。

 

 

座り込んだ。

もう何も見たくなかった。

話したくなかった。

聞きたくなかった。

触れたくなかった。

 

そうしてどれほどの時間がたったのだろうか?

身体は夏とは言え冷え切っている。

それでも此処から出たくなかった。

 

 

そうしているとドアが開けられた。

そこに立っていたのは楯無さんだった。

 

「輝義君……どうしたの?」

 

「……何でもないです」

 

「嘘をつかないで……」

 

「……大丈夫です。もう少ししたら戻りますから」

 

そう言って楯無さんをここから遠ざけようとした。

 

 

だって俺みたいな人殺しと一緒にいて良い筈なんてないのだから。

 

そうして俯くといきなり顔を上に向けられ思いっきりビンタを食らった。

 

「ふざけないでっ!!どうせ俺みたいな人殺しと一緒に居たらダメだとかそんな事を考えているんでしょう!?」

 

「……そんな事は……」

 

そう言いながら見た楯無さんは泣いていた。

そして楯無さんは続けて言う。

 

「嘘を言わないで!何があったのかなんて私は想像できるわ!でもなんで何も話してくれないの!?」

 

「……」

 

そこまで楯無さんは言うと俯いて、

 

「それともそんなに私達は頼りない……?」

 

小さな声で呟いた。

そんな事は無い。

 

楯無さんはそのまま俺を胸元に引き寄せて抱きしめる。

 

「話して……」

 

「……」

 

「さっき起きた事を私に話して」

 

そう言われても言葉が出てこなかった。何をどうやって話せばいいのか、どう伝えればいいのか。

何よりも本当のことを言って楯無さんが離れて行ってしまうのではないか。

そんな事を頭の中でグルグルと考え続けてしまう。

 

「輝義君、私が話を聞いて離れて行っちゃうんじゃないかって心配してる?」

 

「……それは……」

 

お見通しか……なんでだろうな。俺ってそんなに考えていることが分かりやすいんだろうか?

しかしそう言われてもやはり……

 

「大丈夫よ。私は何があっても貴方の傍に居るわ。私だけじゃない。輝義君のご家族も簪ちゃん達も織斑先生達も。輝義君に関わって触れて言葉を交わした人たちなら絶対に離れたりなんてしないわ」

 

「……ですが……」

 

「もし、他の皆が輝義君の傍から居なくなっても私だけはちゃんと傍に居るわ。だから信じて」

 

そう言いながら俺の目を見て来る楯無さんの顔は優しい笑みを浮かべていた。

それから最初はポツリポツリと少しずつ話していたのだが途中から堰を切ったようにボロボロと話し始めた。

ちゃんと話を聞いてくれて、離れないと分かったからだろうか。

 

泣きながら話して、震えて。

でも楯無さんは時折相槌を打ちながらそんな俺の事をずっと抱きしめて頭を撫でて背中を優しく叩いてくれた。

 

 

 

 

気が付けばあれから話始めてからもう四十分が立っている。

すっかり話し終えているのにも関わらず楯無さんは俺の事を離さない。

 

「……楯無さん、もう大丈夫ですから」

 

「いいえ。大丈夫なんかじゃないわ。今の輝義君の心はとても不安定なのよ。だから離れないわ」

 

「……有難うございます」

 

本当にこの人は俺の事を心配してくれているんだ。

多分、部屋に戻ったら皆に詰め寄られるんだろうな、と考えるぐらいの余裕は出来ているのだがそれでもまだ精神状態は楯無さんからすれば不安定らしい。

 

「……でもそろそろ出ないと皆が風呂を使えませんが」

 

「何言ってるのよ。これだけ身体が冷たくなっているんだからもう一回温まってもらうにきまっているでしょ?」

 

確かに少し寒いが。これぐらいならば大丈夫だとは思うが……

多分今の楯無さんに言っても取り合ってくれないだろうな。

そう思った俺は素直に頷くしかなかった。

 

 

 

 

言われた通りに風呂に入った俺は出て部屋に戻った。

まぁ予想していた通りに皆から盛大に心配されて。

 

その後は先程俺がどんな目にあってどうしたのかを話した。

そして皆がこの話を聞いて俺から離れて行ったしまうのではないかという事も。

 

 

皆は自分の想いを話してくれた。

 

「輝義さん。二度とそんな事は言わないで下さいまし。例え何があっても、世界が輝義さんの敵になっても私達は貴方のお隣に居ますわ」

 

「そうだぞ。私とシャルロットが国から居場所を奪われたときにその居場所をくれたのは他でもない嫁なのだから。もし嫁の居場所が分からなくなって何処にもないと思ったら私達が居場所になってやる。嫁がそうしたようにな」

 

「なぁ、輝義。何時も何時も俺達がピンチの時はさ助けてくれて。見返りも求めないで俺達が傷付くのが嫌だからって身体を張って命を懸けて戦ってくれる奴の事を俺達が見捨てると思うか?そんなにその背中を守ることが出来ない程信用する事が出来ないか?」

 

「輝義は、自分が思っているよりも周りに大きな影響を与えてるんだよ?私とお姉ちゃんが仲直りできたのも輝義のお陰。そんな輝義が傷付いて苦しんでる時は何も言わなくても助けるよ。輝義は私達に笑っていて欲しいって幸せでいて欲しいって思ってるんでしょ?それと一緒だよ。私達も輝義の幸せを願っているから」

 

「輝義君、いいですか?以前にも言いましたが無茶をしてはいけないと言ったはずです。なのにもう二回も約束を破っているんですよ?……無茶をしていない?これのどこがですか」

 

「てるてるはさ、自分が身体を張るのもいいけど周りに甘えることを覚えた方がいいよー。誰も怒らないし文句を言ったりしないからさー」

 

「あんた馬鹿じゃないの?私達がそんな薄情者に見えるわけ?だったら眼鏡屋にでも行ってよく見えるように眼鏡を買って来たら?それか眼球を取り換えなさい」

 

「輝義、いいか?私は輝義から離れて行ってくれと言われない限り何処にもいかない。ただの強がりで言った拒絶なら張り倒してでも、縄で私と輝義を括りつけてでも傍に居てやるから。だから安心しろ」

 

「輝義、僕もいろいろ言いたいけどさ。離れて行かないから心配しないで?それに織斑先生も篠ノ之博士も同じことを言うと思うけど。何だったら元凶を殲滅しに行きそうだし」

 

皆の言葉を聞いていくにつれて俺は涙が止まらなかった。

皆が俺の事を傍に居ることを証明するかのように抱きしめて来る。

 

 

 

 

俺をこんなに思ってくれている人達がたくさんいて俺は幸せ者だ。

 

 

 





なんでだろう……?
気が付いたらシリアスを書いていた。

でも悔いはない。( ー`дー´)キリッ
長めになるとか言ったけど全然長くなかった。



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94話目

何もせずに好きなことして生きたい……

このすばのクズマさんみたいに生きたい……





あの後、母さん達にも呼び出されて、

 

「お前に何があっても孫であることに変わりはねぇ。いいか?胸を張って生きろ。少なくとも誰かに恥じる様な生き方をお前はしてねぇんだ。ビクビクする必要なんざこれっぽちもありゃしねぇよ。でもこれだけは忘れるな。死んだ三人の上に居るからこそお前は生きているって事を」

 

「辛かったら、苦しかったら、悲しかったら何時でも帰って来なさい。私とお母さんで美味しいご飯を好きなだけ作って食べさせてあげるから」

 

「輝義、自信を持ちな。悪さをしたら謝れ。良いことをしたら胸を張れ。それは誰かが決めることじゃない。あんた自身が決めることだ」

 

「輝義、父さんはまだ大して物事を知っている訳じゃないけどね、これから長い人生の中で今日の事よりも辛くて苦しくて悲しいことが沢山あるかもしれない。でもその時は周りを見てみるといい。必ず助けてくれる、支えてくれる人達が居るはずだから。勿論父さんも母さんも爺ちゃんも婆ちゃんもね」

 

口々にそう言ってくれた。

皆の時も泣いて泣かないと思ったはずなのだがどうしてか泣いてしまった。爺ちゃんの言葉は重みがあった。

婆ちゃんは何処までも優しくて。

母さんはぶっきら棒だけど心配してくれて。

父さんは人生経験は少ないって言ってたけど違うと思う。

 

……偶に思うのだが母さんと父さんの立ち位置と言うかそう言うのって普通逆なんじゃないのか……?

 

まぁこれが我が家だから気にしない。

 

 

その後は部屋に行き、布団に潜り込んだのだが精神的に疲れていたからか直ぐに眠ってしまった。

 

 

朝、起きると既に十二時を回っていた。

寝すぎたと思いながら顔を洗いそのままリビングに降りて行く。

 

「……おはよう」

 

「おはようじゃなくてもうこんにちはだろ」

 

笑いながら返事を返してきたのは織斑だった。

確かに昼だからこんにちはなんだけども。

 

「……起こしてくれても良かっただろう」

 

「あんだけ気持ちよさそうに寝てたら起こす気も無くなるさ。自分が思っている以上に疲かれてたって事じゃねぇの?」

 

「……それもそうか」

 

だが母さん達が見当たらない。

 

「……皆は?」

 

「買い物に行ったぞ。俺は特に買うものは無いから留守番」

 

「……そうか」

 

「それとお袋さんが飯を冷蔵庫に入れてあるから適当に温めて食えって言ってたぞ」

 

「……分かった」

 

冷蔵庫の中を覗いてみると俺用の朝飯が入っていた。

卵焼きに鰺だろうか?それと味噌汁が鍋の中にある。

米は……ある。窯の中に沢山だ。

 

俺はそれらを電子レンジで温めて味噌汁を火に掛け直す。

少しすると温まった飯のいいにおいがしてくる。

 

「……頂きます」

 

黙々と箸を進める。

織斑はなんか知らんが飯を食っている俺をじっと見ている。

しかし唐突に織斑が口を開いた。

 

「ほんとによく食うよな。どんだけ胃袋デカいんだ?」

 

「……昔からだからな。基本食べる以上に動いていたから腹が減るんだ」

 

「確かに運動するときとか桁違いに動いてるしIS操縦しているときなんかも凄いもんな。そりゃ納得だわ」

 

他愛のない話をしながら朝飯兼昼飯を食い終えて。

やることも無く二人並んでテレビをボーっと眺める。

爺ちゃんは多分畑に行ってるだろうから居ない。

婆ちゃんは買い物の方に行っているから居ないし親父はまた何処かに散歩かな。

 

 

 

 

 

夕方になって漸く母さん達買い物組と爺ちゃんが帰って来た。

親父は一時頃に帰って来てのんびり部屋で本を読んでいる。

 

「ただいまー」

 

「……お帰り」

 

皆がぞろぞろとリビングに入って来る。

そんな光景を眺めて何故か安心している自分。

 

「どうしたの?そんな顔して見てきて」

 

簪が俺の視線に気が付いたのか声を掛けてきた。

 

「……いや、どうしてだか皆を見て凄く安心してな」

 

「そう……」

 

「……どうしてだか自分でもよく分からないんだがな」

 

「輝義」

 

説明すると簪は柔らかく微笑みながら俺を呼ぶ。

 

「……ん?」

 

「大丈夫だよ。私達はちゃんと輝義の傍に居るから。だから安心して?」

 

優しく、本当に優しくそう言った。

 

「……ありがとう」

 

俺はそう返すことしか出来なかった。

 

 

 

どうやら飯の材料を買いに行っていたらしく馬鹿でかい冷蔵庫三つに食材を詰め込んでいる母さんと婆ちゃん、それに箒とシャルロット、楯無さんを見たし。

 

「皆、少し集まってもらえるかしら?」

 

楯無さんから集合が掛かりなんだなんだと思いながらリビングの床に腰を下ろす。

皆も分からないようで不思議そうな顔をしている。

 

「ごめんね?大事なお話だから集まって貰ったの」

 

楯無さんが申し訳なさそうに言う。

 

「……別に構いませんが……お話と言うのは何でしょうか?」

 

俺がそう聞くと楯無さんは、

 

「昨日よりも全然顔色が良いわね。で、話って言うのはとっても言いにくいんだけど……」

 

俺の顔を見て安心した顔をすると話し始めた。

 

「政府の方から通達が来たわ。輝義君の御家族を除く輝義君と私達十一人は安全上の理由で学園の方に帰らなければいけなくなったの。ごめんなさい」

 

そう言って頭を下げる楯無さん。

でも別に楯無さんが謝る事じゃないと思うんだけど。

 

「……頭を上げてください。でもどうしてそうなったのか聞かせてくれませんか?」

 

「勿論。昨日の事があってこの場所に輝義君に親い人間が集まると更に危険が及ぶと判断したそうよ。それと輝義君の今の精神状態を鑑定するために情報漏洩の少ない政府の息が掛かっている病院で精神科に行って貰う為でもあるそうよ」

 

「……帰らなければいけないのは分かりましたが、何故俺が精神科に?」

 

「輝義君、貴方本気で言ってる?」

 

精神科に行く理由を聞いたらマジの顔で言われてしまった。

 

「……はぁ」

 

「いい?私達は余り思い出して欲しくないから言わないけれど輝義君には昨日何があったか分かる?」

 

「……はい」

 

「だからよ。初めてあんな目にあって普通の状態でいること自体がおかしいの。でも輝義君はそうじゃない。だから必要ならカウンセリングを受けなきゃいけないのよ」

 

理解した。要はちゃんと診て貰えって事だな。

 

「それと今後の対策も練らなきゃいけないのよ。て事だから明日の十時頃には学園の方に向けて出発するわ。急いで荷物を纏めて頂戴。あぁ、帰りは専用の車が出るから心配しなくていいわ」

 

しかし本当に急だな。

俺は荷物なんて無いようなもんだから良いけど皆はそうもいかないだろうし。

なんて考えていたら皆はもう居なかった。

 

「……あれ?」

 

「皆なら考え事してるあんたを置いて荷物を纏めに行ったわよ」

 

「……そう」

 

皆さんお仕事がお早い。

しょうがないから部屋に戻って織斑の手伝いをすることにした。

箒達の所には行かないぞ?だって絶対下着とかあるじゃん。変態になんかなりたくないです。

 

 

 

 

「まさかいきなり帰るなんて言われると思ってなかったからな。ある程度片付けしておいてよかったぜ」

 

なんて言いながら織斑は凄い速さで進める。

俺?手伝おうとしたけど帰って邪魔になりそうだったから大人しくベッドの上に腰かけて見守ることにしました。

 

「そういや輝義は荷物を纏めなくていいのか?」

 

「……纏めるも何もスマホと充電器と財布しか持って帰って来ていない」

 

「なんだそりゃずりぃ」

 

「……実家だからな」

 

と会話しながらの作業にも関わらず二十分程で作業を終えてしまう織斑。

本当に何なんだこいつ。女子力の塊かよ。いや、俺が出来ないだけか。

 

「……今日の分の着替えは出してあるのか?」

 

「あ」

 

一応今日の分の着替えの事を聞いてみると出していなかったらしい。

いやもうなんでやねん。

 

 

 

今日の分の着替えを出してリビングに戻るとやはり女性陣はまだ居なかった。

特にやることも無いし再びテレビの前で並んで座って画面を眺める。

録画されていた鉄〇ダ〇シュやらを見ながら時間を潰す。

確か爺ちゃんがこれを見て色々参考にしているとかなんとか。

 

 

その後は皆で飯を食って、各自風呂に入り各々好きな時間まで雑談したりとして布団に潜り込んだ。

 

 

 

 

 

朝、何故かセシリアに起こされ飯を食う為にリビングに降りる。

 

「……なんでセシリアが起こしに?」

 

「輝義が中々起きてこないから起こしに行ったんだよ。まぁ起こしに行ってからかなり時間がたってから戻って来たけどね。そこのところどうなのセシリア?」

 

「な、何の事か分かりませんわー……」

 

シャルロットが説明をしてセシリアを問い詰めセシリアは棒読みで返す。

マジで俺の部屋で何してたの……?

 

「何となく予想は付くけどさ。輝義の寝顔でも見てたんじゃないの?」

 

「なな、ななな!?」

 

「その反応は当たりかな」

 

「き、気のせいですわ!」

 

マジか。俺の寝顔を見ていたのか。

そんなもん見ても良いことが起きるわけじゃあるまいしなんでだ。

 

「ほら、さっさと食べないと時間に遅れてしまうぞ?」

 

箒がそう言うと我に返った二人は食事を再開する。

俺はとっくに食い終わってます。

 

食事をしている皆を眺めているとふと思う事があった。

 

「……シャルロット達は随分と箸の使い方が上手いな」

 

いや、割とマジで箸の使い方が上手いのだ。

織斑や箒達日本勢に鈴が上手いのは勿論なのだがシャルロット達外国勢も何ら変わらないぐらいに扱えているのだ。

 

「まぁ、結構練習したしね。じゃないと日本食を食べるときにフォークとか使ってたらなんか格好悪いでしょ?」

 

「私はWhen in rome do as the romes do。ローマではローマ人の様に振る舞え。日本で言う所の郷に入っては郷に従え、ですわ」

 

「嫁が使えているのに夫である私が使えないのはおかしいからな」

 

「……偉いな、皆は」

 

本当に偉いと思うよ。俺は多分外国に行っても普通に箸を使いそうだし。

 

「……俺はフォークとナイフなんぞ使わないからな」

 

「え?どうして?」

 

「……噛み切ればいい。それか一口で食う」

 

「豪快だね……でも練習しておいた方がいいよ?レストランとかに行った時に書いてないけど使えないとNGって所もあるし」

 

「……そうなのか」

 

初めて知ったぞそんな事。

オータムさんの所は全然だったからな。あれはオータムさんの所だからか。

 

「……ならその時は皆に頼むとしよう」

 

「僕も一応教えられるけど、どっちかって言うと庶民派だからあんまり参考にはならないかな。セシリアが適任だと思うよ?」

 

「私もだな。軍で育ったから礼儀作法は守備範囲外だ。その点はセシリアに任せればいいだろう」

 

「お任せください。立派な紳士に仕立て上げて差し上げますわ」

 

そうなのか。セシリアがいいのか。

でも確かに貴族とか言ってた気もするから適任なんだろう。

 

「……機会があったら頼むぞ」

 

「はいっ!」

 

改めてセシリアに頼むと嬉しそうに返事をするのであった。

 

 

 

十時になった。

そろそろ迎えの車が到着するだろう。

と、思っているといかにもな車が数台、厳つい軍用車に守られながら家の前に到着した。

 

「おはようございます。お迎えに上がりました」

 

「……ご苦労様です」

 

「いえ、仕事ですし何よりあの大河様をお乗せした車を運転できるとは、大変嬉しく思います」

 

なんて言ってくれるがこっちとしては恥ずかしくて仕方が無い。

いや、嬉しいんだけども。

 

「大河様はお身体が大きいのでこちらにお乗りください。他の皆様はこちらへ」

 

「お荷物をお預かりいたします」

 

いやもうほんとに動きが早い事早い事。

荷物を物凄い早さで、しかし丁寧に綺麗に積み込んでいく。

 

「それでは出発いたします」

 

乗り込んだ車の中には運転手の人の他にもう一人と何故か織斑先生が居た。

走り始めた車の中は沈黙で包まれている。

 

気まずい……

なんで織斑先生が、なんて分かり切ったことを聞く必要はない。俺の件で仕事が忙しにも関わらず態々来てくれたのだろう。

織斑先生自身は怒ってる雰囲気を醸し出しているため大変話しかけにくい。

運転手さん達に助けを求めようとするが恐らく防音なのであろう聞こえておらず孤立無援とはこの事か。いや、織斑先生と一対一だから違うか。

 

しかしそんな空気を破ったのは俺ではなく織斑先生だった。

 

「おい」

 

「……はい」

 

「お前と言うやつは何処まで面倒事に巻き込まれれば気が済むんだ?」

 

「……本当に申し訳ありません」

 

「はぁ……」

 

「……あの……」

 

「ま、これは教師としてだ。教師としてもこの言い方はどうかと思うがまぁいい。ここからは私個人として言わせてもらうぞ」

 

俺がもう一度謝罪を言おうとしたが織斑先生に遮られてしまった。

と言うか教師として?どういうこっちゃ?それに織斑先生個人として言う?益々分からん。

 

「お前は……!本当に私の事を何処まで心配させれば気が済むんだ!?これで何度目だ!?」

 

「……申し訳ありません」

 

織斑先生は泣きそうになりながら聞いてくる。

今までも、何度も心配を掛けて。

そう言われても仕方が無いと思う。

 

「本当に……何処にも怪我は無いのか?」

 

「……はい」

 

「そうか……でも、辛かっただろう?」

 

「ッ!……はい」

 

それでも俺の事を心配してくれて、気遣ってくれて。

 

「今もか?」

 

「……正直に言えば思い出すと」

 

「そうか……すまないな……本当にすまない……」

 

そして自分が悪いと思っているから謝って来る。

 

「……織斑先生は悪くありません」

 

「いいや……守ってやらねばならないのに何時も何時も守ってもらってばかりで……支えなければならないのに支えてもらってばかりで……本当に情けない……」

 

織斑先生はそう言った。

でも俺はそうは思わない。

 

「……そんなことはありませんよ」

 

「いいや、そうなんだ……」

 

「……違います。だって、織斑先生が居なければ俺は生きていなかったかもしれないんだから」

 

「どういう事だ……?」

 

「……俺に戦う術を教えてくれたのは、戦う意味を、理由を教えてくれたのは他でもない織斑先生なんですから」

 

そう。俺に色々と教えてくれたのは織斑先生なのだ。

楯無さんも教えてくれているが大元の最初は織斑先生で。

だからこそ教えてくれた術が無ければ今の俺は居ないし、無人機の時にとっくにくたばっているはずなのだから。

 

「……織斑先生は自分が思っている以上に俺に大きな影響を与えているんです」

 

「そうなのか……」

 

「……はい」

 

そう言って再び訪れた沈黙。

しかし織斑先生は再び口を開いた。

 

「なら、言いたいことがある」

 

「……なんでしょうか」

 

「前々から思っていたがお前は一人で抱え込んで頑張りすぎだ」

 

「……そうでしょうか」

 

皆にも言われたが俺は余程自分だけで色々と溜め込みやすいらしい。

 

「そうだ。でなければ今回更識に受けた報告の様にはならなかったはずだ」

 

「……仰る通りです」

 

「だからお前は周りにもっと甘える努力をしろ」

 

「……善処します」

 

そんなん努力でどうこう出来る様なもんなの?

とか考えていると、

 

「そこで練習だ。今ここで私に甘えてみろ」

 

「えっ」

 

いや、この人今なんて言った?俺の耳がおかしくなったのか?そうなのか。

 

「聞こえなかったか?私に甘えてみろと言ったんだ」

 

あの、恥ずかしいのなら辞めません?

お耳が真っ赤ですよ?

 

「……ですが」

 

「ですがも何もない。いいから早くしろ」

 

無茶ぶりにもほどがある……!

などと渋っていると、(と言うか渋らなかったらそれはそれで問題ありだと思うけど)

 

「えぇい!まどろっこしい!」

 

いきなり視界が真っ黒になった。

なんだこれ。何がどうなってるんだ。

 

顔を上げてみると何故か俺よりも身長の小さい織斑先生の顔が上にある。

……ん?まじでなんなんこれ。

そう思って目線を下げると、あら不思議。織斑先生の胸に抱かれているではありませんか。ここ最近誰かの胸に抱きしめられることが多い気がする。

 

「……何をしてるんですか?」

 

聞いてみると恥ずかしそうに、

 

「お前は誰かに甘えることが下手糞だ。だからその練習だ」

 

いや、練習だ、じゃないですってば。

そんなこと言ったら織斑先生だって誰かに甘えることは下手でしょうに。

しかも甘えるの方向性が違うような気がする。

 

「……離していただくことは」

 

「却下だ」

 

知ってた。提案しても却下されるって知ってた。

 

「……分かりました」

 

「!そうか……」

 

了承した時の顔よ。

なんでそんなに嬉しそうにすんの?

俺を抱きかかえても良いことなんて一つもありゃしないでしょうに。

でも言わない。言わなくても良いことを言って怒られるのは嫌だし。

鈴に言われたからな。言われなくても良いことを言うから怒られるって。ちゃんと学習するんだよ俺は。

 

しかし改めて冷静になってみるとやばい。

織斑先生は美人だ。それも絶世とか言われるレベルの。

しかもスタイルが良い。束さんや箒程ではないがスーツの上からでも簡単に分かるぐらいの大きな胸。俺からしたら訳分からんぐらいに細い腰。でもお尻はちゃんと安産型。普段から運動したりしているからしっかりと引き締まった太もも。

抱きしめられていなくても近くに寄っただけで分かる女の人特有の良い匂い。

 

そんな人に抱きしめられている。

うん。理性崩壊物だわこれ。

数々の修羅場(風呂に乱入されたりとか日焼け止め塗ったりとか他にも色々)を乗り越えた俺じゃなかったらビーストになってたぜ。

 

そんな織斑先生は嬉しそうに、同時にとても優しい顔で俺の頭を優しく撫でながら小さいながらも鼻歌を歌っている。

そんな顔をされたら色々とどうでもよくなってしまう。

とても安心する。

 

しかし、優しく撫でられて鼻歌まで歌われて止めとばかりに良い匂いがする。

安心したら眠くなって来た。

 

なんだかどんどん瞼が落ちて来る。

しかし寝てはいけないと思いながら耐えているとそんな俺を見た織斑先生が、

 

「眠いのなら寝てていいぞ。着いたら起こしてやるから」

 

そう言われてはもう睡魔に抗う事は困難で。

 

「……あり、が、とう、ござい、ま、す……」

 

そう言った瞬間に意識が遠のいた。

 

「-----------」

 

最後に織斑先生が何かを言っていたような気がするが分からなかった。

 

 




なんとか一話投稿出来た……



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95話目

ゴールデンウィークが終わってしまう……
お盆休みまでまた仕事漬けの日々が待っていると思うと……
休みはあるにはあるけど疲れとかで投稿どころじゃないし……
また暫くお待たせするかもしれませんが気長に待っていてください。




何かを抱きしめながら眠っていた。

温かくて柔らかくて良い匂いがする。

抱き心地は申し分ない。

 

気持ちよく眠っていると身体を揺すられる。

俺を離そうとして来る。離れまいとより一層力を込めて抱きしめる。

身体を揺する力がどんどん強くなっていく。それと同時に上の方からくぐもった声が聞こえて来る。

それでも離さずにいたら頭を叩かれた。

何事かと顔を上げてみると少し苦しそうにしている織斑先生が俺の顔を見ていた。

 

あれぇ……?なんで俺織斑先生抱きしめて寝てんの……?

 

思考がフリーズするが織斑先生に声を掛けられてフリーズしていた脳みそが戻って来る。

 

「力を、緩め、てくれ……苦しい……」

 

そう言われてみると随分と強い力で抱きしめているようで、時折織斑先生が苦しそうに吐く息が何とも艶めかしい。

じゃないじゃない。腕を解き離れると息を吸い込む織斑先生。

 

「すぅ……はぁ……いや、まぁ、その、喜んでくれたのなら何よりだが力が強すぎるぞ」

 

「……申し訳ありません」

 

「まぁ、気にするな。だが次回はもっと優しくしてくれ。でないと潰されてしまう」

 

「……気を付けます」

 

なんて言ったけど次もあるのか。

初耳だぜ。

 

「……何かあったんですか?」

 

「覚えてないのか?学園の近くに着いたら起こしてやると言っただろう」

 

「……あぁ」

 

そう言えばそんな事を言ってくれていたような……?

どちらにせよ二、三時間程眠っていたらしい。

とっても気持ちよかったです。

 

「ほら、橋が見えてきているだろう」

 

そう言って織斑先生が指さす方には学園に通じる唯一の道である橋が見えてきた。

見えている大きさ的にかなり近い所まで来ているらしい。

 

「あと五分もすれば到着するぞ。降りる準備をしておけ。と言ってもスマホと財布ぐらいしかないか」

 

「……はい」

 

「ならギリギリまで寝かせておいてやればよかったな」

 

「……いえ、このぐらいが丁度いいですよ。有難うございます」

 

「ん、そうか」

 

と、橋を渡り切り学園の門の所までやって来た。

そこで俺達は車から降りて守衛さんの所に生徒手帳を見せに行く。

 

「……送って頂き有難う御座いました」

 

「いえ、これが仕事ですから。それでは」

 

運転手さん達にお礼をして別れる。

荷物を持って寮に向かう。今日は特に何もなくこの後は俺だけが事情を話すことになっている。それも事前に楯無さんの方から報告が行っている為に確認と言った感じで一時間もあれば終わるそうだ。後は明日からの予定を聞くぐらいだろうか。

 

やはり明日からはかなり忙しくなるらしい。

病院に行って精神科で診察してもらい、護衛関連etc……

だからだろうか、織斑先生と山田先生が事情聴取に来ていたがかなり早く終わって部屋でゆっくりと休むように言われた。

 

因みにだが山田先生は俺を見た瞬間に泣き出してしまい事情聴取よりも山田先生が泣き止む方が時間が掛かった。

 

 

 

部屋に戻るとまだ二時過ぎにも拘らず俺は風呂に入りそのままベッドにもぐりこんだ。

やはりと言うか何というか、疲れていたのか分からないが直ぐに寝てしまった。

 

因みに後日あの時に護衛をしてくれた人達の戦力を聞いて愕然とする俺だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

起きると朝になっていた。

時計を見れば六時。朝練とかが無い時にいつも起きている時間だ。

物凄い寝てたじゃないですか。ま、いいや。

しかしここで一つ問題が発生した。まぁ起床時間に問題はない。

 

楯無さんが俺の右隣で寝ている。

 

あれぇ……?なんで居んの?と思うがさらに事態は深刻だった。

何故か左側からも寝息が聞こえて来る。

恐る恐る顔を向けてみるとラウラが居た。

 

おかしいな……昨日は一人で寝たはずなんだけど……?

 

まぁいい。いや、良くはないんだけどもっと問題がある。

楯無さんは問題ない。ベッドに居ることが問題なんだけどそれは今は置いておこう。

 

ラウラさん、なんで裸でベッドに入ってきているんですかねぇ……?

 

いやもうマジで訳が分からん。

辺りを見渡してみるがラウラの服と思わしき物は何処にもない。

 

……え、まさか自室から裸で来たって事?

いやいやいやいや、そんなまさか。幾ら何でもあり得るわけがない。

取り敢えず楯無さんを起こす。

 

案外すんなり起きてくれたので良かった。

そのまま部屋に帰るように言うと寝ぼけているからか素直に従ってくれた。

 

でもラウラはそうはいかなかったんですよね……

俺の腕を抱き枕宜しくしっかりと抱きしめて気持ち良さそうに寝ている。

これで服を着ていればまだ微笑ましいとかで済んだのだが素っ裸なもんだからそうはいかない。

どころかしっかりと柔らかい感触やら何やらがダイレクトに伝わってくるでござる。

フニフニフニフニ……身体が動くたびにもうすっごいんです。

 

あ!?ちょ、ちょっと待って!腕を足で挟まないで!?

 

あ”あ”ぁ”ぁ”ぁ”!!??前腕付近にプニプ二している何かが当たっているんですが!?

止めて!理性が崩壊しちゃうから!

 

 

 

 

結果としては理性崩壊は免れた。

ラウラを探しに来たシャルロットが来てくれて間一髪俺の理性が全壊するようなことは無かった。

ラウラだがシャルロットの手によって引きはがされ服が無かったので俺のベッドのシーツに包んで抱えて行った。

 

うん。もう病院に行く準備しよう……

 

 

 

 

 

飯を食って顔を洗って歯を磨いて……

 

 

時間になって門の所に行くと既に迎えの車が待機していた。

昨日の運転手さんと同じ人で頭を下げて来る。

 

軽く挨拶を交わすと車に乗り込んで出発した。

 

 

 

 

病院に着くと直ぐに診察室に通され質疑応答をやった後、三十分程待っていると再び呼び出された。

診断の結果は中度の精神疾患だそうだ。

重度だけでなかっただけマシか。

 

何故重度ではなく中度で収まったのか聞いてみると先生でも分からないそうだ。

ただ、何らかの心の負担を軽減する様な事があったのだろうと言っていた。

 

俺にはそのことに心当たりがある。

皆の事だろう。皆が居なけ今頃俺は閉じ籠っていただろう。

それと定期的に病院に来るようにとも言われたな。

来るのが難しいのであれば連絡してくれれば学園の方まで態々来てくれるとも言っていた。有難い。

 

そうして病院を出た。

 

 

 

 

次の日。

俺は再び楯無さんの実家に居た。

何故かと言うと護衛関係の話があるそうだ。

一度現在の体制を見直す必要があるそうだ。と言ってもその辺は全く分からないので大沢さん達に丸投げしていて全く覚えていないが。

 

帰りは楯無さんと一緒に学園に戻る。

なんだかんだ言って細かい所まで詰めていたら六時になっていた。

一応は終わったらしいので更に細かい所を詰める必要がある箇所は向こうでやってくれるそうだ。

 

 

 

ーーーー side 楯無 ----

 

 

輝義君が何らかの敵意を感じ取って護衛の大沢さん達と何処かに行ってしまった。

箒ちゃん達には事情を説明してあるから心配は要らない。

 

一夏君はまた助けてもらって、と悔しそうにしていたが。

 

 

 

 

輝義君が戻って来た。

でも、雰囲気も何もかもが違った。

普段の輝義君じゃない。

 

特に酷いのは目だ。

居た瞬間に背筋が凍るほどのドス黒く濁った眼。

これでも暗部の長だから色々と見てきたがあそこまで酷いのは初めてだった。

何があったらあんな目になる?

 

にも拘らず本人はまるで自分の変化に気が付いていない。

 

 

思わず大沢さんに詰め寄ってしまった。

でも帰って来たのは小さな声での謝罪。

 

それで何となくだが察してしまった。

分かりたくはなかった。

 

信じたくは無いが恐らくは合っているはず。

なんでだろうか。本人は何処までも優しくてお人好しなのに。

誰よりも他人の幸せを願っている。

 

なのに本人に平穏な暮らしが訪れることはない。

立場が、世界がそうさせない。

 

 

こんな状態で祭りなんて無理だし他の皆も輝義君の異変に気が付いている。

だから帰るために輝義くんの手を引いた。

 

 

 

帰って輝義君を風呂に放り込んでから御両親の所に説明に向かう。

恐らく誰よりも敏感にその変化を感じ取ているはずだから。

 

説明を終えて部屋に戻ると一夏君が居た。

どうしたのか聞いてみると輝義君がまだ戻ってきていないのだそうだ。

幾ら何でも長すぎる。既にかなりの時間が経っている。

 

何かあったのだろうかと皆で見に行こうとしていた所に私が来た訳だ。

取り敢えず私が様子を見に行ってくると告げてお風呂に向かった。

 

見に行ってみると脱衣所の床に輝義君は座り込んでいた。

心配して声を掛けても大丈夫としか返さない。

 

気が付いたら私は輝義君の頬を思いっきりビンタしていた。

輝義君の事だから俺みたいな人殺しと一緒に居てはいけないとか考えているんでしょうけどそれは大間違いもいい所。

 

話してほしいと、辛いことがあったら話してほしいと言ったのに。

それでも輝義君は話してくれなかった。

私は自分がとても無力に感じて、俯いて小さな声で言った。

 

「それともそんなに私達は頼りない……?」

 

私はそう言ってから輝義君を抱きしめた。

抱きしめた身体は冷え切っていた。

真夏とは言え風呂上りにこんな格好で長時間居たらそれは冷えるだろう。

 

 

最初は話してくれなくて。

どうしてだか考えてみれば当たり前のことに輝義君は怯えていたのだ。

 

本当の事を話して私が輝義君の事を見捨てるんじゃないか、離れて行ってしまうのではないか。

 

そんなことを心配しているのだ。

本人にとっては重要なのだろうけど私や他の皆、織斑先生に篠ノ之博士からすればそんな心配をするだけ無駄だ。

 

何故なら例え何があっても私達が輝義君の傍から居なくなる何てことは無いのだから。

仮に、万が一皆が離れて行ってしまったとしても私だけは傍に絶対に居るから。

 

そう伝えると少しずつ話してくれた。

初めて人を殺したと。

鏡で自分の顔を見るまで殺したことを気にも留めていなかった事。

人を殺しているのに当たり前に皆と接して。

そんな自分が怖くなった事。

 

話しているうちにだんだんと輝義君はポロポロと涙を零し始めた。

私はそんな輝義君の頭を優しく撫でて背中を優しく叩いていた。

 

 

大丈夫よ輝義君。貴方は心の無い怪物でもなんでもないわ。誰よりも優しくて誰よりも強くて誰よりも愛されているんだから。貴方の心配は杞憂よ。

 

 

 

暫くして落ち着いた輝義君をもう一度お風呂に入り直させてから出てきた輝義君は皆に私に話した事と同じ事を話した。

 

当たり前と言うべきだろうが皆は輝義君を拒絶などせずに受け入れた。

一人一人輝義君に対する思いを話すともう既に輝義君は泣いていて。

皆で抱きしめてあげた。

 

その後に御両親達とも話をしてまた目元を赤くしていた。

 

 

次の日、私達は輝義君のお義母さんに誘われて買い物に繰り出していた。

輝義君は疲れてぐっすりと眠っているし一夏君は、

 

「俺ですか?あー……此処に残らせてもらってもいいですか?誰か残っていないと輝義が不安になっちまうかもしれないじゃないですか。女性陣は男が居ないって事で自由にしてきてくださいよ」

 

と言って残っている。

 

近くにあったショッピングセンターに着く。

流石にレゾナンスレベルではないがそれなりに色々と揃っている。

本屋だってあるし有名どころの店ならば入っているといった感じだろうか。

 

 

周っている途中に連絡があった。

どうやら昨日の件の報告を受けた上層部が早めに帰省から学園に帰るように決定したようだ。

今更だが輝義君と一夏君の休暇申請は冗談抜きで総理大臣や官房長官クラスまでの承認が必要になって来る。どれだけの修羅場を潜り抜けてきたとしてもまだまだ高校生。

学園で一度承認をしてから更に国に対しても承認の要求をしなければならないのだ。

しかも世界で二人しかいない男性操縦者となれば最終的な決定は学園だけではそう簡単に決められるものではない。

 

といった具合で色々と面倒なのだがそこらへんは余程の事が無い限り優先的に取り合ってくれているそうだ。

そして二人とその周囲の人間に対する対応も迅速だ。なんならいざと言う時の為の即応部隊を組織してある。あまり詳しくは聞いていないが即応部隊の中には特殊作戦群の元メンバー等のとんでもない人材に更に最新装備満載の部隊と聞いたことがある。

 

まぁその辺は置いておいて……

電話の内容だが簡単に言えば先ほども言った通りに上層部の決定で学園に帰らなければいけなくなった。本来の帰る予定の四日後よりも早くだ。

主な理由としては精神的なストレス等の懸念がある。

それと護衛関連の件でも大至急、と言う事である。

 

そう言われてしまうとその通りであるし何となく予想はしていた。

 

帰りの足に関しては心配することは無いらしい。

どうやら専門の知識を身に着けた専門の運転手。此処までなら納得できる。

だがその次が問題だ。幾ら何でも護衛の戦力が過剰すぎる気がする。

 

なんたって最新の強化装甲である十五式強化装甲を装備した一個小隊にこれまた最新の十五式専用の武装。そこに空中支援として数機の戦闘機、空中哨戒機まで投入するのだ。頭おかしいんじゃないか。

まぁ気にしても仕方ないからこれ以上考えるのは止そう。

今更だが専用機が九機もある。しかもそのうちの二機は篠ノ之博士お手製の第四世代機なのだからこの時点で戦力過剰もいい所だ。下手したらマジで国を落とせるだけの戦力……

 

あれ……今年の一年生ってヤバい……?

 

もう駄目だ。本当に考えるのを止めよう。

胃に穴が開いてしまう。

 

 

 

取り敢えずこの事を輝義君のお義母さんとおばあ様に伝えておく。

二人共まぁしょうがないよねって感じだった。

 

 

 

時計を見ると一時になっている。

通りで空腹な訳だ。

お義母さんの提案により昼食を摂ることになった。

何が食べたいかと言う話になってパスタになった。

 

食べ終えた後は食料品売り場に向かい各自で役割を分担して調達作業が開始。

私と本音ちゃん、虚ちゃんは保存食品系統を。

箒ちゃんと鈴ちゃん、シャルロットちゃんは生鮮食品をお義母さんと一緒に買いに。

セシリアちゃんとラウラちゃん、簪ちゃんは消耗品系統。

 

私達とお義母さんのチームは問題なかったのだがセシリアちゃんチームが本当に大変だったそうで、簪ちゃんが疲れた顔をしていた。

何でもセシリアちゃんとラウラちゃんはそう言ったことの経験が皆無だからテンションが上がってあっちこっちに行ってしまったそう。

なんなら洗剤と柔軟剤の違いすら分からず教えるのに一苦労だったとかなんとか。

 

そうこうしているうちに既に四時半になっていた。

そろそろ帰ろうという事で帰った。

 

いや、今日一日本当に楽しかった。

 

 

 

家に着くと荷物を下ろしてリビングに。

私と箒ちゃん、シャルロットちゃんでびっくりするぐらい大きい冷蔵庫に食品を詰めていく。

これ、レストランとかにある用の奴なんじゃ……?

 

食品を詰め終えて皆をリビングに集める。

そして急遽明日帰らなければいけなくなった事を伝える。

その時の輝義君の顔色は昨日よりも全然良くなっていた。

 

そして輝義君の精神科への通院、輝義君と親しい人間が集まりすぎていることによって危険度が高まるという事。警護の話もしなければいけない。

 

それを言ったら輝義君はなぜ自分が精神科に行かなければならないのかが分からないらしい。

それの理由をしっかり説明した後。

 

明日の出発時間を教えて早速荷物を纏めに行く。

 

 

 

 

私達女性側の準備が終わってからリビングに行くと輝義君と一夏君の二人が並んでテレビを見ていた。

 

その後にご飯を食べてお風呂に入って眠くなるまで皆でお話をして寝た。

その時にお義母さん達とも話したんだけど、

 

「あんな頼りない息子だけど宜しくお願いします」

 

と頭を下げられた時は焦った。

しかも理由を聞いたら、

 

「なんでって、そりゃ未来の嫁さん候補だからに決まっているじゃないか。もしかして輝義の事が好きだってバレてないとでも思っていたの?バレバレだから」

 

と言われ皆で顔を赤くした。

 

 

 

 

朝、起きるともう既に朝食が出来上がっていた。

お義母さん達からは席に着いたら食べ始めていいと言われたので食べ始めることに。

一夏君が降りて来るが何故か輝義君が居ない。

聞いてみると、どうやら起こしはしたがもしかしたらまた寝たのかもしれないと言った。

 

これは……輝義君を起こしに行けるチャンス!

 

皆も同じことを思ったらしく此処に第一次ジャンケン戦争が開幕した。

勝者はセシリアちゃん。

何故私はあそこでグーを出さなかったのだ……!そうすれば勝てたのに!

 

 

 

降りてきた輝義君はまだ少し眠そうにしている。しかし、セシリアちゃんが降りて来るのが随分と遅かった。

シャルロットちゃんがそれを聞くと明らかに動揺し始める。寝顔を見ていたとかそんな感じだろう。

 

そこからは早めに食べ終えた私は連絡を取るために席を外す。

予定通りに迎えに来て貰って構わないと伝えると了解と帰って来る。

他にも連絡事項などを聞いていると一時間前になっていた。

 

忘れ物が無いかなどを確認して十時になった。

向かえの車に荷物を積み込んで帰り際に御家族にお礼を言って車に乗り込んで出発。

 

輝義君は皆とは違う車に乗ることになっている。

あの大きな身体なのだ。皆で乗ろうとすると私達が押しつぶされてしまう。

 

 

 

それと乗る前に確認したのだが昨日教えられた護衛の数よりも明らかに多い。

もう気にしたら負けだ。

そしてその護衛の数を後日輝義君に教えたらとても驚いていた。

 

 

 

 

学園に着いて私は荷物を置いてそのまま生徒会室に向かう。

今回も色々とあったわけだから報告書等を書かなければならない。

面倒ったらありゃしない。まぁ明日からはもっと忙しくなるだろう。

文化祭に始まり体育祭、修学旅行やキャノンボールファスト……

それらの準備をやらなければならないから生徒会と教師陣に休む暇はない。

行事が盛りだくさんなのはいいが間違いなくそのたびに問題が起こる気がしてならない。

 

 

そんな色々と起こるであろう二学期に溜息をつきながら書類を片付けていく私と虚ちゃんだった。

 

 

仕事が終わったのは八時頃。

 

ご飯は虚ちゃんが持って来てくれたし後は帰ってお風呂に入って寝るだけなのだが……

 

まぁ色々と心配だからその後に少しだけ輝義君の所に顔を出してみようと思った。

そして部屋に行くと鍵もかけずにいる。流石にどうなんだと思ったがドアを開けてみると既に輝義君は寝ていた。

 

顔は穏やかで昨日の影も形も無い。

 

暫く寝顔を見ながら頭を撫でていたのだがどうしても抑えられずにベッドの中に潜り込んでしまった。

 

輝義君の匂いがする……

 

隣を見れば輝義君が居て。

此処は天国なんじゃないか?

そんなことを思ったらもう抜け出せない。

そのまま眠ってしまった。

 

 

その後、起きると自分の部屋に居た。

どうやってここに戻って来たのだろうか?

まさか輝義君が?

そうだったら嬉しいな。

 

 

 

 

 

ーーーー side out ----

 

 








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96話目



可能な限り投稿を……!
明日あたりからはマジで投稿出来なくなりそうなんで。


それと今回はかなり時間を飛ばします。



 

 

 

実家から帰って来てから既にかなりの時間が過ぎていた。

夏休みも残すところ明日のみ。

 

今日まで俺は生徒会の楯無さんや虚さんの手伝いや、先生方の手伝い、そして箒や皆を思いっきり鍛えていた。織斑先生は勿論、楯無さんも仕事で忙しいからあまり参加できていない。

偶に織斑先生と一対一で一日中ドンパチやったり……

楯無さんが参加したり……

中々に濃い夏休みだったと言えるだろう。

 

箒に関してはかなり成長している。元々の素質と言えばいいのだろうか?そう言ったものや体力などの下地が出来ていたためにドンドン伸びて行った。

具体的に言うとセシリア達となら一対一で張り合えるぐらい、と言った所か。

でもまだ機体に助けられている部分が大きくその辺はこれからの課題と言える。

 

織斑はまず本人の体力の向上を目指して筋トレ、走り込みを中心に行いそこから更に織斑先生が居る時は織斑先生に助力を貰いながら生身での格闘訓練を行った。

剣術もやって織斑自身はかなり伸びている。

後は機体の操縦技術などに課題が多いぐらいだろうか。結構細かい操縦が苦手なようだ。

 

セシリアは偏光射撃を完璧にとはいかないまでも六、いや七割に届かないぐらいまで使いこなせるようになっていた。正直、あの偏光射撃はかなり厄介だと俺は思う。今までは直進してくるレーザーばかりだったから避けたり切り落としたりは簡単だったのだが曲がられるとこれが意外と難しい。

そして動き回る俺をひたすら撃ち続けるという事もやっている。そこに突発的にターゲットを出現させてそれを撃つ事もやっている。

まぁ俺自身が当たることは無いんだが。

あとは接近されたときの対処なんかだ。射撃にパラメーターを極振りしているために近接格闘能力が低く接近されると詰んでしまう。一応ナイフがあるが本人が使い慣れていないために射撃と並行して格闘戦の練習も行っている。

 

鈴に関しては接近戦を鍛えていた。

元々感覚でやっていたからそのまま口で教えるよりも見て、感じて覚えるという形式で教えた所、これまたとんでもない方向に成長してしまった。

一対一ならほぼ確実に攻撃を避けてしまうし、二対一でも避ける、ないしは受け止めると言う事を出来るようになったのだ。

射撃は当てるのが困難だし(それでも当てていくセシリアとシャルロット凄い)接近戦に持ち込んでも苦しくなる。と織斑が言っていた。

 

シャルロットは持ち前の射撃センスを更に鍛ている。

殆ど撃った弾は当たる。まぁぶった切って接近戦に持ち込めばいいだけの話なんだけど。

射撃に関しては俺はよく分からんからひたすら的になっていた。

たった一人で弾幕を張るもんだから避けるのが面倒だ。

あれは一人で作っていい弾幕じゃない。

セシリアとは違い格闘戦にもある程度慣れているために大型のナイフを使った戦い方も教えている。

 

ラウラは戦い方が特殊なので教えるのがかなり難しい。

AICとかなんで物の動きを止められんのさ。

あと、最初は目標を止めているときに自分が動けなかったんだが最近AICを作動させながらゆっくりだが移動が出来るようになった。

ゆっくりとは言えこれは大きな進歩だろう。

それと束さんに貰ったとか言っていた武装が凶悪すぎるのでよっぽどのことが無い限りは人に向けて撃つことを禁止しました。

 

簪はミサイルをとんでもない数を一斉に撃ってくるから面制圧能力では一番だろう。

問題はそれらを撃ち切った後。一応射撃武器なども搭載してあるが近接戦が一番問題だった。薙刀の様な物があるにはあるがやはりあまり上手く扱えているとはいえない。

道場でならば間違いなく上位どころか一位を取れるような動きをしている。だがIS同士の戦いは道場の中の物だけで勝てるほど甘くはない。

実戦に向いている動きを自分の中で作る。これが簪の課題だろう。

 

 

と言った具合に訓練している。

俺はもっぱら一対多数戦だからな。

なんでかって言うと一対一で俺に張り合えるのが織斑先生しかいないのだ。

だから一体多数戦に必然的になってしまう。

まぁ織斑は一対一で俺とやりたがるからやっているが。

織斑先生が参加できるときは常に一対一でドンパチ。

残念ながら未だに勝てていない。結構いい所まで行くんだが……

 

 

 

 

 

 

そして今日は始業式。これからまた二学期が始まる。

二学期はどんなことが起こるのだろうか。

 

 

 

 

 






短いッ!!

まぁこれから文化祭編に突入するのでお楽しみに。



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97話目




今回も時間を飛ばして文化祭編に入って行きたいと思います。







 

 

 

始業式が終わって二学期が始まってから既に一週間。

特に何かあるわけでもなく平穏な日々を送っていた。

 

そして今日のLHRは少しばかり、変わっていた。

 

 

 

 

 

「はい!やっぱりコスプレ喫茶よ!」

 

「いやいやいや!男子が二人もいてしかもこんだけ美少女が揃ってんのよ!?執事とメイドで行くべきでしょ!?」

 

「はぁ!?馬鹿言ってんじゃないわよ!男子二人に奉仕してもらう!これぞ誰もが求める出し物よ!」

 

訂正。とんでもなく変わっていた。と言うか白熱していた。

既に織斑先生はもう手が付けられないと知っているからか最初から椅子に座って傍観している。山田先生は何故かオロオロ。

 

 

クラス代表である一夏を置いて皆は盛り上がる盛り上がる。

因みに俺はもう意見を言っても無駄そうなので自分の席で静かに座っています。

いやーもう訳分からんね。

何なんだよ男子二人が奉仕するって。

仕事量が半端じゃないぞそれ。

殺す気かよ。

 

執事とメイドって織斑と箒達なら行けるけど俺がやったら悲惨だよ?

怖がって誰も寄ってこないよ?

あとコスプレって何のコスプレすんだよ。

俺が出来るのなんて完全に限られてくるじゃん。

 

まぁ俺達に決定権無さそうだから見てるだけなんだけども。

ほら、織斑ももう好きにしてって顔してんじゃん。

あんな諦めて絶望した顔初めて見たわ。

 

そうこうしているうちに決まって行く。

 

「いくら何でも男子二人に奉仕させるのは労働量的に無理よ」

 

「それもそうか……ならコスプレか執事とメイドね……」

 

皆してうんうん唸っている。そこまで悩むことなの?

頼むからコスプレだけは止めて……

俺は心の中でひたすらに祈っていた。

 

「多数決を取ります……」

 

ゲ〇ドウみたいな感じで重々しく言った。

なんか知らんけどクラス全体の空気が重い。

そこまで深刻な問題なの!?

 

ほらぁ!織斑も完全に投げ出しちゃってんじゃん!

もう決定に従います……好きにしてください……って感じの雰囲気じゃん!

 

「コスプレがいい人」

 

「「「「「「「「「「「「「「はい」」」」」」」」」」」」」」

 

大体クラスの半分ぐらい。

頼む。コスプレだけは……俺が出来るコスプレなんてマジでヘラ〇レスとかそんなんばっかなんだよ……

 

「執事とメイド喫茶がいい人」

 

「「「「「「「「「「「「「「「「はい」」」」」」」」」」」」」」」」

 

これまた半分ぐらい。

数を数えたわけじゃないから分からないけど。

何故か復活した織斑が数を数えている。

 

 

「それでは結果を発表します……」

 

織斑が言った瞬間に誰かが唾を飲み込んだ。

それ程までに静かになっている。

 

「一票の差で……執事とメイド喫茶に決定しました!」

 

「「「「「「「「「「「「「「「おおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」」」」」」

 

なんで此処まで来てそんな雄叫び声を上げるんですか!?

耳が痛いんですけど!?

織斑先生まで顔を顰めながら耳を塞いでんじゃん。

直撃を食らった織斑は立ったまま気絶してるし。

なんだあれ。ギャグマンガみたいになってんじゃん。

 

「よっしゃぁぁぁぁ!!」

 

「やったぜぇぇぇぇ!!」

 

「ひやっふぅぅぅぅ!!」

 

もう言語を失ったみたいに叫んでおられる。

もうカオスじゃねぇ……?

 

「さぁて!野郎ども!準備を始めるぞぉぉ!!」

 

「「「「「「「「「「おぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」」」」」」」」

 

皆さん本当にこういう時の団結力が凄まじいのね。

 

 

 

 

 

こうして文化祭の出し物が決まった。

俺個人の意見だけど物凄く不安です。

 

 

 

 

 






因みにですが一応文化祭の出し物で、
コスプレ喫茶編のほうも別で書こうと思ってます。
だって皆のコスプレ書きたいんだもん。(時間が無いから何時になるかわかんないけど)


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98話目



五日の昼までに可能な限り投稿せねば……(使命感)





 

 

 

文化祭の出し物が決まってからは仕事が早かった。いやもうマジで早かった。

被服部に衣装の作製を頼んだり出さなければいけない書類の作成やら……本当に早かった。

そして今は衣装の採寸をしている。

 

「織斑君と大河君はこっちに来てねー」

 

「はーい」

 

「……おう」

 

「篠ノ之さん達は向こうね」

 

「了解した」

 

「分かりましたわ」

 

箒達と別々になって採寸をする。

まぁ一緒に採寸って完全にアウトだし。

 

 

 

「はい、胸囲計るからね。服を脱いで腕を上げてー」

 

最初は織斑から。

 

「えぇ!?服を脱ぐのか!?」

 

「当たり前よ。じゃないと正確に測れないわよ?」

 

「うぅ……それならしょうがないか……」

 

言われた通りに上半身を脱いで

物凄く邪悪な顔で笑ってた気がする……

うん!気のせいだな!

 

「はい。胸囲は終わりね。次はーーー」

 

そんな調子でドンドン採寸を進めていく。

しかし……織斑は筋肉が付いたな!トレーニングを始めてから日数が経つが此処まで成長するとは……

これは鍛えがいがあるな。

これからはどんなトレーニングをやって貰おうか……

楽しみでしょうがない。

 

「はい、終わり。次は大河君の番だよ」

 

「……おう」

 

呼ばれたので織斑と交代で採寸を始める。

 

「上脱いでー」

 

「……脱がないと駄目か」

 

「駄目だよ。じゃないとちゃんと採寸できないよ?ぶかぶかだったりキツキツでもいいんなら構わないけど」

 

それは嫌だな。

しょうがない。言う事に従おう。

 

「……分かった。少し待ってろ」

 

言われた通りに上衣を脱ぐ。

Yシャツになる。普段から俺はYシャツの下には何も着ていない。と言うか着れる物が無い。しかもそのYシャツがここ最近キツくなってきている。

サイズをぴったりで頼んだのが間違いだったか……

次からはワンサイズ上のを頼もう。

と言う感じだからYシャツの下からの筋肉の主張が凄いのだ。

力を入れたら間違いなく破れてしまうぐらい。

 

「「「「「おぉ………………」」」」」

 

何故か俺が服を脱いだ瞬間に皆が声を上げる。

 

「やっぱり凄いわね……」

 

「織斑君も凄いんだけど大河君のはもはや人間じゃないわよ」

 

「どんなトレーニングしたらああなるのかしら」

 

口々に何かを言っている。

もう慣れたから気にしない。ちょっと恥ずかしいけど……

 

「……脱いだぞ」

 

「う、うん。それじゃ始めるね……」

 

「……頼んだ」

 

「あー……ごめん、誰か手伝ってくれない?これ太すぎて一人じゃ計れないわ」

 

計ろうとした瞬間に無理だって言われてしまった。

何故か俺一人を四人で採寸した。

 

 

 

教室の戻るとまだ箒達は帰って来ていなかった。

教室ではどんな料理を出すのかとかを話し合っていた。

 

「大河君はどんなのが食べたい?」

 

「……俺は基本何でもいい。好きと大好きの二択しかないからな」

 

「えぇ……それじゃ全然参考にならないよ」

 

「……そうか」

 

「なんか一つでいいから意見出してみてよ」

 

と言われてもな……

今食いたいもの……

 

「……寿司が食いたい」

 

「大河君は高校生の文化祭に何を求めてるの?」

 

「……今食いたいものを思い浮かべたら寿司が出てきてだな」

 

「握れるわけないでしょ。もっとこう、あるでしょ!」

 

そう言われてもマジで分からんのだけど。

詰め寄られて、さぁ何か案を出せと言わんばかり。

料理なんて門外漢だしな……あ、食う事に関してはプロだと思います。

 

そこに箒達が戻って来た。

 

「どうしたんだ?そんなに輝義に詰め寄って」

 

「いやさ?大河君に提供する料理を聞いたんだけどさ」

 

箒が俺に詰め寄っている理由を聞く。

 

「ふむ。それで何と言ったんだ?」

 

「寿司」

 

「は?」

 

「寿司が食べたいって言ったの」

 

「はぁ……輝義、いくら食べたいからって寿司は無いぞ」

 

いいじゃないか。寿司。美味いだろ?

マグロとかウニとか。

 

「本当だよ。どうやって提供しろって言うのさ」

 

「……申し訳ない」

 

確かに生だし衛生的に問題があるのは分かっているんだけども。

 

「まぁいいけど。それで他には無いの?」

 

再び何かないのかと聞かれて、思いついた。と言うか思い出した。シャルロットが以前作ってくれたジャガイモグラタンだったか?あれが頭に出てきたのだ。

でもこれも無理そうだな……でも一応言ってみるか。

 

「……グラタンが食いたい」

 

「だから自分が食べたいものを言えばいいってもんじゃーーー」

 

グラタンを出してみるとやはり無理だと言われた……

ところがそこに思わぬ助っ人が現れたのだ。

 

「あ、それなら僕作れるよ?」

 

「へ?」

 

「僕、グラタンとかなら作れるよ?」

 

そう。俺にグラタンを作ってくれたシャルロットさんだったのだ。

 

「グラタン作れるの……?」

 

「うん。他にも色々作れるけど」

 

「ほんとに?どんなのが作れるの?」

 

「ラタトゥイユとか……フランスの家庭料理だったら基本作れるよ」

 

確かにシャルロットの飯は美味かった。

もう一度食いたいな……言えば作ってくれるだろうか。

 

「採用!」

 

「え?何が?」

 

「コックをやって欲しいの。料理が出来る人が誰も居なくて……」

 

「あぁ、そういう事?それならいいよ。でも流石に一人じゃ無理があるんだけど……」

 

シャルロットがコックに速攻で採用になった。

確かにシャルロットの作る飯は美味いぞ。

でもシャルロットの言う通り一人じゃ無理だろう。

そこに手を上げたのは箒だった。

 

「それなら私も出来るから手伝おう」

 

「そうなの?それじゃお願いしていいかな?」

 

「あぁ。任せてくれ」

 

確かに箒の飯も美味い。

 

「あと、一夏も料理が出来るからな。一夏も厨房の方に入れてもいいだろうか」

 

「いいよー」

 

コックは決まった。

と言うか俺はこの三人以外に楯無さんと鈴ぐらいしか料理が出来る人を知らないんだが。

まぁ流石に三人だけに任せられないしホールの方もやって貰わなければいけない為に、

シャルロットチームと箒チーム、織斑チームで分かれてシフトを組むことになった。

俺はひたすら接客です。

 

 

 

それからというもの、放課後は接客の練習を行う。

いやもうこれが本当に辛い。

俺なんか基本不愛想と言うか無表情なもんだからもっと笑えとか動きが硬いとか言われた。

それに比べて織斑や箒達はなんか知らんけどやたらと上手だった。

おかしいだろ。箒達が上手いのはまぁいい。だがセシリアが上手いのは何故だ。

 

「お帰りなさいませ。ご主人様。お席にご案内いたしますわ」

 

マジで誰だお前案件である。

にっこりと笑いながら行う動作は本家のメイドさんとなんら遜色はなく、どことなく漂う高貴な雰囲気もいい具合になっている。

 

という事でホールに立つ面々はセシリアからの教育を受けることになりました。

 

「立ち方はこの様に。お辞儀は深すぎず浅すぎず。大体このぐらいですわ」

 

セシリアの教え方は上手く、流石の俺でも出来るようになった。

笑顔に関してはもう諦めることになった。

しょうがないじゃん。長い間コミュ障やってたんだから。

 

 

 

セシリアが何故あんなに接客が上手いのか気になって聞いてみる。

 

「……セシリアはどうしてそこまで上手くできるんだ?」

 

「それは私の家でメイドを雇っているからですわ」

 

「……そうなのか」

 

流石お嬢様である。もうメイドを雇っているとか訳分からん。

 

「と言うのも本当なのですが実はこの出し物に決まってホールに立つという事なので教えて貰いましたの。それにやるのならば全力の方が楽しいではありませんか」

 

「……凄いな」

 

「そんなことはありませんわ」

 

謙遜しているが本当に凄いと思う。

態々文化祭の出し物の為にメイドさんに教えて貰うなんて俺だったら面倒で絶対にやらんだろうし。

 

因みに衣装は当日のお楽しみとかで自分の物しか分からない。

俺のは普通の執事服と言った感じの物。

しかしサイズが異常にデカいが。

 

そして俺は生徒会の方にもちょくちょく顔を出している。

もう楯無さんと虚さんの疲労度合いが半端じゃない。

楯無さんは目の下に隈を作っているし虚さんは目が座っている。

少しだが仕事の手伝いをしたり。

 

そう言えば、俺の両親はもう既に楯無さんの方から招待しているらしい。

それとは別に三人まで誰かを呼ぶ事が出来るそうだ。

誰を呼ぼうかな……

 

 

 

職員室に行けば織斑先生を始めとした先生方が鬼の形相でパソコンのキーボードを叩いていた。

例に漏れず山田先生は目が座っていた。

眼鏡かけてる人は疲労が溜まると目が座るって法則でもあんのか。

織斑先生にそんなに大変なのかと聞いてみると、

 

「フランスとドイツがあれだけの事をしでかしたのに招待しろだのなんだのうるさくてうるさくてしょうがない……マジでふざけんな」

 

「他にも各国に送る為の招待状等の作製もこちらの仕事でな……仕事が山積みなんだ」

 

と疲れた顔で教えてくれた。

俺に出来ることと言えば多少の雑用と何か差し入れを買ってくることぐらい。

 

 

 

 

部屋で束さんに電話を架ける。するとワンコールで出てくれた。

 

「もしもし束さんだよ!」

 

「……こんばんわ」

 

「久しぶりだねてるくん!この前の事、大丈夫だった?」

 

この前……

夏祭りの件か。

 

「……はい。もう大丈夫ですよ」

 

「ほんと?あ、てるくんを襲おうとしてた奴らだけどしっかり束さんがお仕置きしておいたからね!」

 

マジか。束さんお仕置きしちゃったのか。

取り敢えずお礼を言っておこう。

 

「……はい。ありがとうございます?」

 

「うん!それで今日は何の用かな?あ、用が無くても全然電話かけてきてくれていいよ!」

 

「……要件ですが文化祭の事でして」

 

文化祭の招待する人数は三人まで。

だから一応束さんにも聞いてみたのだ。

箒が束さんにチケットを渡すとは考えにくい。

あんま仲良くないそうだし。

 

「あぁ、それがどうかしたの?」

 

「……束さん、来ますか?」

 

「そりゃ勿論行くにきまってるでしょ?」

 

当たり前のように来ますよ宣言。

でもチケットが無いと入れないんじゃ……

一応チケットの事を聞いてみると、

 

「……因みにチケットは?」

 

「そんなのなくても束さんだったら余裕で入れるよ」

 

いやいやいや。無くても余裕じゃないです。

あ、いい方法があった。

 

「……束さん」

 

「うん?」

 

「……文化祭当日、門の前で待っていてください。場所は指定しますから」

 

「え?うん。分かったけどどうしたの?」

 

「……俺がチケット渡しますからそれで入って来てください」

 

俺がチケットを渡せばいいだけの話なのだ。

そうすれば不法侵入なんて束さんにさせなくて済むし。

 

「え!?いいの!?」

 

「……束さんだって織斑先生にバレて怒られるのは嫌でしょう?」

 

「うん」

 

「……なら指定した場所で待っていてください」

 

「分かったよ。それじゃお願いできるかな?」

 

「……はい。任せてください」

 

「うん。それじゃおやすみ」

 

「……おやすみなさい」

 

そう言って電話を切る。

しかしこうなるとオータムさん達三人を誘えなくなってしまったな。

ダメもとで楯無さんにもう一枚何とかならないか頼んでみるか……

 

後日楯無さんに頼んだらあっさりとOKされて少し戸惑ってしまった。

そしてスコールさんに電話を架ける。

 

「もしもし」

 

「……大河です」

 

「あら、輝義君じゃない。どうしたの?」

 

電話した理由を説明する。

そして誘ってみる。

 

「……よかったら三人で来ませんか?」

 

「いいの?」

 

「……はい。チケットがあるので」

 

「ちょっと待っててくれる?」

 

「……はい」

 

そしてスコールさんがオータムさんとマドカを呼んで行きたいかどうかの確認をしている。

 

「もしもし輝義君?三人でお願いしてもいいかしら」

 

「……はい。喜んで」

 

「それじゃ当日に会いましょ」

 

「……はい。それでは」

 

電話を切る。

良かった。三人とも来てくれるのか。

今までお世話になりっぱなしだったからこの機会に何かお礼が出来ればと思っていたから良かった。

 

という事で招待する四人が決定した。

本当は三人まで何だけれども。

 

 

 

 

そしてそんな感じで諸々の準備を進めて行くうちに二週間が経った。

明日はいよいよ文化祭当日である。

楽しみだ。

 

 

 






かなり駆け足で書いたけど何とか漸く文化祭編に入る事が出来た……



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99話目






 

 

 

今日はいよいよ文化祭当日。

俺達は普通に教室で出し物をやることになっている。

忘れていたがこの学校、他の学校と比べて明らかに教室のサイズがデカいのだ。

だから態々他の大きい教室に行かなくても問題ないのだ。

 

そして現在俺はクラスの半分ぐらいの人数で朝早く届いたメニューで使う食材等を配達業者から受け取り特大の冷蔵庫に運び込んでいるのだ。因みにこの冷蔵庫も業者から借りたもので昨日の内に届いていたから中はしっかり冷えている。

まぁ特段問題なく進んでいる。

 

「それにしても男子が居ると楽だわー」

 

「ねー。他のクラスなんか女子だけだから荷物を運んだりするのが大変そうだもんね」

 

「うちは織斑君も大河君も基本一人で何でも持って行っちゃうからね」

 

ダンボール箱を十数個一気に運び込んだりしている。

卵とか果物なんかは他の皆が一個ずつ運ぶ。

 

そして最後の荷物を受け取ると業者の人にお礼を言って教室に戻る。

 

「……これで最後だ」

 

「ありがとねー!本当に大助かりだよ!」

 

「気にすんなって」

 

「……構わない」

 

冷蔵庫の近くに運んで取り敢えずは終了。

それにしても随分と早く終わったもんだ。

まだ七時半だぞ。開会式まで一時間もある。一般客入場が九時だから余裕とはこの事よ。

取り敢えず残りの三十分を他の飾りつけだったりセッティングなんかを手伝う。

すると開会式十分前になっていた。ここから体育館まではまあまあ距離がある為さっさと出た方がいい。

 

作業の区切りの良い所で中断してドンドン体育館に向かう。

俺が体育館に向かうと既に整列が完了しているクラスもあった。

背の順なので俺と織斑は必然的に一番後ろと二番目になる。

先生方の諸々の注意なんかを行った後に楯無さんが前に出る。

 

「それでは生徒会長、開会宣言お願いします」

 

あ、この声は虚さんだな。舞台裏に居るから顔は分からんが輝義イヤーはしっかりと聞き分けられるのだ。

 

「皆さん、今日は文化祭当日です。羽目を外さないように、でも大いに楽しむ事。以上」

 

「有難うございました。それでは続いて連絡事項お願いします」

 

「連絡事項なんだけど今回の文化祭からどれだけのお客が入ったのかっていう形式で優勝を目指して争ってもらうわ。簡単に言えば取り敢えずお客さんをたくさん集めなさいって事よ。優勝賞品に関しては秘密よ。でも皆が喉から手が出るほど欲しい物ね。

続いて生徒会の出し物について説明するわ。

私達生徒会の出し物は演劇!あぁ、待って待って。ただの演劇じゃないわ。一般参加型の演劇よ。皆も参加で見るわ。演目はシンデレラ!勿論ただのシンデレラなんかじゃないわ。内容はこちらもお楽しみって事で。午後四時から受け付け開始。五時に開始よ。因みに人数制限があるからそのつもりでお願いするわ。連絡事項は以上かしらね」

 

「有難うございました。どうぞ皆さん生徒会の出し物に奮ってご参加ください。それではこれにて開会式を終了します。後ろの方から順に解散をお願いします」

 

こうして開会式が終わった。

それにしても生徒会の出し物ってどんな内容になるんだろうか。一般参加型のシンデレラなんて全く想像がつかないぞ。

織斑もそうだったようで俺に聞いてくる。

 

「輝義、生徒会の出し物の詳細は分からないのか?」

 

「……いや、全く分からんな。聞いたことも無いぞ」

 

「マジか。なんか俺嫌な予感するんだけど気のせいかな?」

 

「……織斑、それは俺も感じている。間違いなく気のせいではないだろうな」

 

「嘘だろ……輝義の感とか絶対当たるやつじゃねぇ……?」

 

「……祈るしかないな」

 

「そうだな……」

 

二人して嫌な予感するとかもう絶対なんかあるやつじゃん。

どうせ逃げられないだろうから祈るしか出来ない。

二人で何が起こるのか戦々恐々しながら教室の戻ればすぐに準備に取り掛かる。

と言っても先程の続きと交代で衣装に着替えるぐらいなんだが。

と、その前に束さん達に連絡入れておかないと。

十時半でいいか。

束さんにはペアチケットを渡すからクロエも問題なく入場出来る。

五人とも同じ場所でいいか……分けると面倒だし。

 

という事で束さんとオータムさんに集合場所と時間をL〇NEで送る。

よし、これで大丈夫。

するとそこに声が掛かる。

 

「織斑君と大河君、着替えに行ってきていいよー」

 

「お、分かった。輝義、行こうぜ」

 

「……ん」

 

別の教室に控室兼更衣室がある。

一番奥の教室で俺と織斑はそこに向かう。

 

「それじゃ着替えちまおうぜ」

 

「……あぁ」

 

二人で着替える。

織斑は俺と同じような感じの衣装。

というか滅茶苦茶完成度が高い。

被服部どんだけ本気だったんだよ。

それにしても……

 

「……織斑、良く似合っているぞ」

 

「お、そうか?輝義も似合ってるぜ」

 

本当にイケメンはマジで何を着てもかっこいいのな。

本家の執事に見えて来るんだけど。これで眼鏡でもかけてたら大変なことになるだろうな。

対して俺は、腕や肩回りが少し小さめに作られているのか肩回りが若干キツイ。

問題は無いのだが完全におかしいだろ。

バサカ執事爆!誕!になっちまってるじゃねぇか。

 

「……格差というものは此処まで残酷なのか。お前が羨ましいよ」

 

「何言ってるんだ?そろそろ行こうぜ」

 

思わず口から出た本音をスルーされ教室に向かう。

道中やたらと視線を感じたが。

まぁ気にせずに(若干、いや割と真面目にねっとりした視線を感じて早足気味に)教室に着くとそのまま何と無しに入る。

 

そしてそこに待っていたのは何故か既に準備を終えてスマホやどこから持って来たのか一眼レフを構えているクラスメイト達だった。

入った瞬間にカシャカシャと音を立てるカメラ達。

 

「うぉ!?なんだこれ!?」

 

織斑が驚きの声を上げる。

いやもう本当になにこれ。

 

「記念撮影に決まってるでしょ!?」

 

いや知らんがな。

こっちはそんなん初めて聞いたぞ。

まぁこの状態になったらもう止めさせることは出来ないだろうし諦めて被写体やってました。

その後満足した女子の皆さんから解放された俺と織斑は疲れて椅子に座っていた。

 

「女子って半端ないな……」

 

「……あぁ……」

 

そして今は箒達が着替えに行っている。

何故か再び女子の皆さんがカメラの準備をしている。

あぁ、箒達も餌食になってしまうのか……

しかしながら俺と織斑にはそれを止める気力などどこにも存在せず諦めて傍観に徹するのだった。と言うか巻き込まれたくない。目が怖いんだもん。

 

そこに箒達が戻って来る。

入ってきた瞬間に皆に囲まれ一斉にシャッターを切る音が鳴り響く。

 

「私達もですか!?」

 

「そりゃ勿論!何度も言うけどこんだけ美少女が揃ってんだから取らなきゃ損でしょ!?」

 

驚いたセシリアが声を上げるが当たり前だ言って撮影を続行。

まぁでもその言葉には大いに納得できる。

箒は着物メイドと言った感じで、セシリアはロングスカートのメイド服。

シャルロットは短めのスカートで大体のデザインはセシリアと同じ。

ラウラはフリルが多めについている物で本音は何故か知らないが箒と同じ着物メイドなのにやはりサイズはぶかぶか。

他にもたくさんの種類のメイド服があるが……

一言言わせてもらうと……

 

眼福です……!

 

そもそもこの学園の生徒自体が容姿のレベルが無駄に高いのだ。

その中でも箒達は抜きんでている。

織斑も、

 

「おぉー。皆凄いな。被服部気合入ってんなぁ」

 

何処かずれた感想を言っていた。

 

十分に及ぶ撮影会が終わって皆がこっちに来る。

 

「その、どうかな?似合ってる?」

 

シャルロットがその場で一回転するとスカートがふわりと浮き上がり見えてはいけない所まで見えそうになるが残念。惜しくも見えなかった。

 

「……よく似合っている」

 

「ほんと?」

 

「……本当だ」

 

「えへへ……褒められた……」

 

褒めると嬉しそうに笑う。

シャルロットは普通にメイドで通用すると思います。

 

「私はどうですか?」

 

「……本家のメイドみたいだ。いいと思うぞ」

 

「有難うございます。輝義さんもよくお似合いでしてよ」

 

「……ありがとう」

 

セシリアはやはり何処か高貴な感じがするが似合っている。

 

「わ、私はどうだろうか?変ではないか?」

 

箒はどこか心配そうに確認をしながら聞いてくる。

全然変な所なんてないですけど。寧ろ完璧です。

 

「……大丈夫だ。よく似合っている。自信を持っていいと思うぞ」

 

「よ、良かった……その、輝義も凄く似合っているぞ……」

 

恥ずかしそうに俺の事も褒めてくれる。

ご馳走様でした。

 

「嫁!私はどうだ!似合っているだろう!」

 

腕を組んでフンスと自信たっぷりに聞いてくるラウラ。

もうラウラは可愛いんだよ。異論は認めないし受け付けない。

 

「……良く似合っているぞ」

 

「む?何故頭を撫でるのだ?」

 

「……気にするな」

 

「そうか?ならばもっと撫でてくれ」

 

思わず頭を撫でてしまった。

ラウラはそれを咎めるどころかもっと撫でろと言って来た。

だが残念ながらそうはいかない。

 

「……また後でな」

 

「む……約束だぞ」

 

「……あぁ」

 

だって皆が睨んでるんだもん。

おっかない。

 

「てるてる私はー?」

 

「……なんというか何時もと変わらんな」

 

「えぇー?そんなことないよー。ちゃんと見てってばー」

 

本音はダボダボがあるからか普段と変わらないように見えるが何時もは少し雑めに纏めてある髪の毛をちゃんとしてある。

 

「……良く似合ってるぞ」

 

「ほんとー?」

 

「……嘘を言ってどうする」

 

「それもそっかー。ありがとーてるてる」

 

「……ん」

 

皆基本的に髪の毛をいじったりせずに普段の髪型で纏めてある。

これがまたいいのだ。

 

正直な所変な客に絡まれないか心配になって来るレベルで皆良く似合っている。

いざとなったら俺がつまみ出してやる。

その後も皆で写真を撮ったり二人で写真を撮ったりしていた。

 

 

 

と、そんな感じで皆の事を褒めたり逆に褒められたりしているうちに十時になった。

 

「さぁ皆!目指せ優勝!頑張るぞ!」

 

「「「「「「「「「「「「「おー!!」」」」」」」」」」」

 

 

 

 

こうして文化祭が始まった。

 

 

 

 

 

 

 






次回は出来れば六月中に投稿します。遅くても多分お盆休みには投稿出来るはずです。
お待たせしてしまいますが、気長に待っていてくれると嬉しいです。



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100話目


久しぶりでゲス。
ちまちま書いていたものがなんとか1話分の数になりました。

取り敢えず投稿しますが次は未定です。
6月にならないと無理かもしれないしその前に1話分投稿するかもしれないし……
まぁなんにせよ頑張ります。


 

 

文化祭が始まった。

学園に行くための唯一の橋の上は人でごった返している。

チケットが無ければ入れないから全員が入れる訳では無い。

だからだろうが、橋の上ではチケットを売って欲しいと交渉する者やテレビなんかの取材が沢山来ている。

 

織斑先生に聞いた話だが例年よりも遥かに多いらしい。

なんでも俺と織斑を目当てにやたらと取材が殺到しているんだとか。ただでさえ世間から切り離されて内情が詳しく知られていないIS学園。そこに世界で二人しか居ない男性操縦者が加わるものだから尚更だろう。

警備も大変なんだろうなぁ……

でも今のところスコールさんから何か起こるみたいな事は連絡来てないから大丈夫だろう。

 

 

そして我がクラスの喫茶店はと言うと……

 

「お帰りなさいませ。ご主人様。お席にご案内しますわ」

 

「特製オムライスをお2つ、ティーセットをお2つですね。かしこまりました。少々お待ちください」

 

「む?注文か?」

 

大繁盛しております。

マジで訳が分からないぐらい人が来ている。

もうてんてこ舞いです。

それでも回転しているのは皆が優秀だからだろう。

 

因みにメニューは普通の喫茶店とほとんど変わらない。

ほとんどと言うのは幾つか全く俺としては理解出来ないメニューがある。

これはメニューの中に、

 

「お好きなメイド、執事と記念撮影 600円」

 

「執事にお姫様抱っこ 1000円」

 

「執事にあーんしてもらう 1000円」

 

他多数……

メニューを決めるときに断固反対するべきだった……

今更どうこう出来るはずもなく。

このメニューのおかげかどうか分からないが客が来るわ来るわでもう大変。

俺と織斑は女性からの指名であっちへこっちへ駆け回り、箒達は美人だから男どもに大人気。

既に軽く数百枚の写真を撮ったがそれでも終わる事がない。

俺がお姫様抱っことかしても別物にしかならないんですがそれでいいのだろうか?

織斑がやるといい感じなんだが。

それでも客は絶えない。

 

「なんだこれ……なんだこれ!?」

 

「……やめろ。何も言うな」

 

「いやおかしいだろ!?なんだこの忙しさ!?」

 

あの織斑ですら愚痴を言うぐらいの忙しさと言えば分かってくれるだろうか。

聞いた話だがこの喫茶店に入るのに最後尾は二時間、三時間は掛かるんだとか。

そこまでして入りたいのか?

分からない。

 

まぁ俺はこれから抜けるんですけどね。

 

「……すまない。人を待たせているんだ。少し抜けても構わないか?」

 

「え!?輝義抜けるのか!?」

 

織斑が驚きの声を上げる。

まぁこの忙しさで抜けられるのも困るだろうからな。

 

「いいよー!」

 

「……すまない」

 

「しょうがねぇなぁ……なるべく早く戻って来いよ?じゃねぇと俺がマジで過労死する」

 

しかし皆は許可してくれた。

その時に織斑はガチの顔で言ってきた。

分かってる。お前を見捨てたりはしないぞ!

 

「……ありがとう」

 

と言って教室を出る。

そしてこの訳が分からないほどの人混みを掻き分けて進んで行く。途中、何人かに写真を一緒に撮って欲しいと言われたが頷いてしまうとキリが無くなりそうだから断りながら進む。

 

なんとか掻き分けて進み、橋まで辿り着く。

するとすぐにスコールさん達が見えた。

いやぁ、髪の色が特徴的だからすぐに分かる。

 

「……お待たせしました」

 

「あら、こんにちは。輝義君。今日は招待してくれてありがとう」

 

「……いえ、お世話になりっぱなしですからこのぐらいはお安い御用です」

 

軽く三人と挨拶を交わすと、周りを見る。

するとすぐに束さんとクロエを見つける事が出来た。

 

「……ここで待っていてもらえますか?」

 

「ん?いいわよ。いってらっしゃい」

 

断ってから二人を迎えに行く。

 

「……束さん、クロエ」

 

「あ!てるくん!」

 

声を掛けた瞬間に束さんが飛びついてくる。

避けようとも思ったがそんな事をする必要は無いと思いそのまま受け止める。

その瞬間にむにょんと柔らかいものが当たったのは気にしない。気にしてはいけない。

 

「えへへー……てるくんだぁー……」

 

「輝義様、お久しぶりでございます」

 

「……あぁ。元気だったか?」

 

「はい。ご心配無く。私も束様も健康です」

 

クロエと会話をするとクロエは束さんを剥がしに掛かった。

 

「ほら、束様。輝義様から離れてください」

 

「えぇー?久しぶりなんだよ?」

 

「貴方は痴女にでもなるおつもりですか?……あぁ、今更でしたね」

 

「降りるから!降りるからー!お願いだからくーちゃんやめてー!」

 

クロエに言われた束さんは顔を赤くしながら俺から離れる。

 

「本当に今更でしょう?あれだけの事をしておいてこの程度で恥ずかしがるのですか?」

 

「もうやめてぇー!」

 

遂に束さんは顔を手で覆って蹲ってしまった。

クロエすげぇ……織斑先生よりも扱いに慣れているような気がする。

 

「……取り敢えず行きましょう」

 

「うぅ……くーちゃんがいぢめてくるよぅ……」

 

「しっかりしてください、束様」

 

二人を連れてスコールさん達のところに戻る。

 

「あら?輝義君、そちらのお二人は?」

 

「てるくん、その三人は?」

 

あ、やべぇ。そういえば纏めて連れて行くって説明すんの忘れてた。

てか、スコールさんとマドカとクロエは大丈夫なんだけど、何故か束さんとオータムさんの雰囲気がピリピリし始めた。

いや、なんで?

 

「……スコールさん、オータムさん、マドカ、この人は篠ノ之束さん。束さん、クロエ、この人達は俺の知り合いでよく世話になっているんだ」

 

「「それで?」」

 

「……その、一緒に案内しようと思ってですね……すいません」

 

圧力に屈して謝る俺。

と言うか皆束さんに気が付いてない?

 

「……束さん、周りが全く束さんに気が付いてない様なんですが」

 

「ん?あぁ、特定の人間以外は束さんを束さんとして認識出来ない装置を発明したからね!周りからは私の事が普通の人に見えてるんじゃないかな?」

 

「……はぁ」

 

流石束さん。凄すぎてよく分からないぜ。

 

「……まぁ取り敢えず入場しましょう」

 

と、なんとなく話を逸らす事に成功したのでチケットを渡して入場する。

 

「……すいません。クラスの出し物の方があるのでこれで失礼します。あと、これを渡しておきますね」

 

入場してからクラスに戻る事を言って戻る。と、その前に五人にパンフレットを渡しておく。

じゃないとマジで迷子になりかねないし、立ち入り禁止区域に入ってしまうかもしれないからな。

 

「いいわ。気にしないで。こっちはこっちで楽しむから。あ、後でちゃんと輝義君のクラスにも行くからお願いね?」

 

「輝義様、ご配慮頂きありがとうございます。こちらはこちらでなんとかしますので、お気になさらず」

 

と二人は束さんとオータムさんを連れて行ってしまった。

その時に二人に、

 

「「あとでちゃんと話を聞かせてもらうからね(な)」」

 

と言われた。

全く話を逸らせてないやんけ。

 





久々でなんか短いし変だし……
すまねぇ……


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追記

そういえば100話到達だった。
早いもんですな。
なんか記念に書こうか迷ってます。


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101話目

久々の投稿。


束さん達と別れてから教室に戻った。

戻ったんだけど……

忙しさが増していた。過酷ってレベルの度合になっている。

たったの十数分程しか離れていなかったのにも関わらず織斑は既に死にそうな顔をしている。

 

「……何があった?」

 

「やっと帰って来たぁ……マジで死ぬかと思ったんだよ……」

 

「……そうか」

 

重症ですねこれは。

哀愁漂う背中に顔が灰になっている。

マジで何があったんだ……?

 

「輝義!すまないが一夏と交代してくれ!」

 

「……構わないが何があった?」

 

箒に聞いてみた。

 

「それが、一夏を狙っている客がとんでもない数がいるんだが、どうにも女だけではなく男もいるらしくてな……その客にその、尻を揉まれたりしてな……勿論そいつは追い出したんだが他にも何人か居たらしくてな。他にも難癖を付けて無茶な要求をしてくる客も居たりして精神的に疲れてしまったらしくて……」

 

「……すまない。俺が抜けたばっかりに織斑が……」

 

「あぁ、いや責めているわけでは無いんだ。取り敢えず一夏が復活するまで頼めないか?」

 

「……勿論だ」

 

まぁ俺が居ても居なくても変わらなかったかもしれないが少なくともこんな事にはならなかっただろうし。

それを考えると俺にも責任はあるわけだから断る理由なんてありゃしない。

取り敢えず仕事するか。

俺にちょっかいかけてくる奴なんて居ないだろうし。

 

 

 

 

と、思っていた時期が俺にもありました。

なんなんだこれ。おかしいだろ。

なんで俺にちょっかい出すの?怖く無いの?尊敬するわ。

尻を触ってきたりとかは無いんだけど無駄に難癖付けてくる奴が多い。

今もほら。

 

「こんなこともできないの!?これだから男は……」

 

と、何かを言っているがぶっちゃけ聞いていない。だって聞いても訳分からんし。

適当に右耳から左耳へと通り過ぎていく。

こいつも女尊男卑主義者か。

 

「ちょっと!聞いているの!?」

 

話を聞いていないことがバレた。

表情は変えずに内心、めんどいなー早く帰ってくれないかなーと考えながら周りを見ると不快そうにしている客の顔。

これは早めにご退場してもらった方がいいですなぁ……

 

「……申し訳ございませんお客様」

 

俺が謝った事で何故か気分を良くしたのか笑いながら、

 

「ふん!分かればいいのよ分かれば。これからはーーー」

 

ところがどっこい。俺はこいつに謝った訳じゃぁ無いんだな。

 

「……あぁ、別に貴女に謝罪をした訳ではありません」

 

「は……?」

 

「……不快な光景を他のお客様にお見せしてしまい誠に申し訳ありませんでした。今すぐにこの方には此処から出て行って貰いますので少々お待ち下さい」

 

さっきから俺に何かを喚いていた奴は訳が分からないといった表情をしている。

 

「……話を聞いていただろう?早く出て行け」

 

俺がそう言うと言われた事の意味を理解したのか段々と赤くなっていく顔。

俺が言える事じゃ無いけど面白い顔してますよ。

 

「な、な、なな何を言っているのか分かってーー」

 

「……勿論分かっている。もう一度言ってやろうか?」

 

「他のお客様に迷惑だ。とっとと出て行け」

 

俺が言うと女は耐えられなくなったのかその場から逃げ出すように何処かに消えた。

そのまま学園から出て行ってくれると有難いんだがな。

その瞬間に何故か拍手が起きる。

 

えぇ……?なんで……?

 

拍手されてる理由が分からなくて困惑していると近くにいたシャルロットが説明してくれた。

 

「さっきの人ね、輝義が戻って来る前から居たんだけど周りに迷惑ずっと掛けてたんだ。だから皆言わなかっただけで早く出て行かないかなって思ってたんだ」

 

「……そうだったのか」

 

なんとなく予想出来る事だから驚かないけどまぁムカつくな。

 

「……まぁこれで解決したんだ。仕事に戻ろう」

 

「うん。そうだね」

 

まぁ特に散らかっていたわけでもなかったので出した皿を片付けて次のお客様を案内する。

大体二時間ぐらいだろうか?一夏が復活した。

 

「悪い!迷惑掛けた!」

 

「……気にすることはない」

 

「でも俺が死んでたから一人だったんだろ?」

 

「……まぁな」

 

「なら迷惑掛けてるだろ。でも、ありがとう」

 

「……ん」

 

これから昼が終わるまでは俺も織斑もシフトに入っている。

二時ぐらいまでだからあと二時間程。

頑張るか。

 

 

 

 

それから暫くすると束さんとクロエがうちのクラスにやって来た。

 

「やぁやぁ輝義君!」

 

「輝義様、こんにちわ」

 

「……ようこそいらっしゃいました。ただ今お席にご案内します」

 

まぁ動揺したけどそこは流石俺。

そんな事を感じさせない様にちゃんと執事を演じる。

 

「おぉ……輝義君かっこいいね!」

 

「輝義様、流石です」

 

どうだ!褒められたぞ!

俺に掛かればこのぐらい朝飯前って事よ。

 

でも後ろの方から感じる視線が怖いです。

具体的には好奇心とか野次馬みたいな視線に混じって明らかに別の物が混じっている。

恐る恐るチラ見してみると箒、セシリア、シャルロット、ラウラ、本音がおっかない顔で見ている。その顔にはこう書いてあるのが手に取るように分かる。

 

(((((その女は誰だ?答えによっては……分かっているな?ん? )))))

 

そんな顔をしています。

今此処で下手な事をすれば首が飛んでしまう。

……あとでしっかりと弁明しなきゃ。

 

 

 

「……こちらのお席にどうぞ。メニューはこちらになります。お決まりになりましたら近くの者にお申し付け下さい」

 

そう言って束さんとクロエにメニューを渡してその場を去る。

怖いから仕事に没頭しようとした瞬間に織斑が近づいて来て小さな声で話し掛けて来た。

 

「なぁ輝義」

 

「……どうした」

 

「今輝義が案内した人って束さんだよな……?」

 

えっ。

なんでこいつ束さんって気付いてんの?

 

「……そうだが」

 

「なんで此処に束さんが?」

 

なんかもうバレてるからいっか。

話しちまおう。

 

「……俺が招待したんだ」

 

「そうなのか。納得がいった。箒が招待する筈は無いしもしかしたら何時ものトンデモ技術で侵入したりチケット偽造したりしたのかなって思ったからさ」

 

織斑が言ってる事間違いじゃ無いんだよな。

ここ最近は無いけど俺の部屋にいきなり現れたりするからチケットの偽造くらい簡単に出来てしまうのだろう。

 

「でも箒達も他の皆も気付いてないのかな?」

 

「……いや、どうにも俺以外の人間には束さんを束さんだと認識出来ない装置か何かを使っているらしい。それのせいだろう」

 

「そうなのか。でもさそしたら俺はどうなんだ?」

 

確かに何故織斑には束さんを束さんだと認識出来たのだろうか?

考えてみるがそんな事が俺に分かる筈もなく。

 

「……分からん」

 

「ま、気にしてもしょうがないか」

 

織斑はさして気にしていない感じで仕事に戻ってしまった。

俺も他の客の所にオーダーを取りに行こうとした瞬間にとんでもない注文が入った。

 

「お好きな執事どちらかとイチャイチャフルコースのオーダーが入りましたー!」

 

はぁ!?

あんなん完全にネタ枠で作っただけのアレをか!?

値段をよく見てだよな!?

十万だぞ!?十万円だぞ!?誰だそんなもん頼んだ奴は!?

思わずそちらを見ると、

 

「ふっふーん!これで輝義君を暫く独り占め出来るよ!」

 

束さんでした。

束さんかぁ……うん…なんというか納得したわ……

 

「一応ですがどちらの執事を指名しますか?」

 

「そりゃ勿論輝義君だよ!」

 

俺を指名すんの!?

まじかぁ……あれ内容が酷過ぎるからやりたくないんだけどなぁ……

本当に酷い。どうかしてんじゃないかってぐらい酷い。

 

執事とポッキーゲームから始まり記念撮影に好きなデザートを選んでそれをアーンさせたり……

他にも色々あるが濃過ぎる内容だ。

多分黒歴史間違い無しの内容がてんこ盛りだ。

 

「さぁさぁ輝義君!」

 

これ精神的に保つかな……

 

「……分かりました」

 

「やったぁ!」

 

クロエさんや……

素知らぬ顔してオムライス食べてないで助けて欲しいんですが……

目で訴えたが無視された。神は死んだ……

 

でも注文された以上は断る訳にもいかず箒達からの冷たい視線を浴びながらメニューに書いてある事をこなしていく。

最初は希望通りにあーんから始まる。

 

「……あーん」

 

「あー…ん〜!!美味しいよ!輝義君が食べさせてくれてるからもっと美味しく感じちゃうな!」

 

「……それは良かったです」

 

「さぁさぁどんどん行こうか!」

 

束さんは嬉しそうな顔をしている。

それならいいやと一瞬思ったがやはり視線が怖いのでマイナスになってしまっている。

マジで怖ぇ……殺されんじゃないかてぐらい。

 

「次はポッキーゲームやろう!」

 

はい死んだ。

 

「あれ?どうしたの?」

 

「……いえ、なんでもありません」

 

思わず死んだかと思って固まってしまった。

いやもうそう思うに決まってるでしょ。

周りはキャーキャー騒いでいるがそれどころじゃない。

それに混じってさっきまでとは比にならないぐらいの殺気が篭った視線が複数感じる。

まじで死ぬんじゃないだろうか。

 

「はい!ポッキーでーす!」

 

面白がっているクラスメイト達はすぐさまポッキーを持ってくるがこれほど食いたくないと思ったのは人生でこの瞬間だろう。

 

「早速やろうか!」

 

束さんは周りの視線など御構い無しと言った風に催促してくる。

流石です束さん。

それとクロエさん。割と真面目に助けて欲しいんですが。

視線を送ってもスルーされた。それどころか面白いものを見るような目でこっちを見ている。

俺には分かるぞ。あの目は早く始めろと言っているんだな。

織斑に助けを求めようとするがあいつは休憩に入っていて居ないんだった。

覚悟を決めるしかないか……

 

「……分かりました。やりましょう」

 

俺がそう言った瞬間に束さんは口にポッキーを咥えて目を閉じる。

 

ふぅ……なんで目を閉じるの!?

と言うか束さんの綺麗な顔がすぐそこにあるって言うだけでもうヤバイんですけど!?

キスされるのを待っているみたいじゃん!?

俺にどうしろって言うんだよッ!!!!!

 

(輝義様)

 

葛藤しているとクロエが小さい声で話し掛けてきた。

 

(……どうした)

 

(いい機会ですので思いっきりぶちゅっと行っちゃってください)

 

この娘は何を言っているのかわからないんだけども。

しかしいつまでもこうしている訳にはいかない。

覚悟を決めるしかない!

 

「……行きます」

 

「ん……」

 

差し出されたポッキーの端を加える。

目を瞑って咥えたはいいがそれによって嗅覚と聴覚が鋭くなったのか束さんの何度か嗅いだ事のあるいい匂いと束さんの息遣いが周りがこれだけ騒がしいのにも関わらずしっかりと感じる事ができる。

少しづつ食べ進める。

しかし耐えきれなくなった俺は目を開けてしまった。

そこには視界いっぱいの束さんの綺麗な顔。シミひとつ無くきめ細やかな張りのある肌。

初めて出会った時は荒れていた肌がここまで変わっている。

目の下にあった隈も無く、誰が見ても絶世の美女と答えるであろうその顔が数センチ先にあるのだ。

思わず仰け反ってしまても仕方がないと思う。

 

その瞬間に折れるポッキー。

そして束さんも目を開ける。

 

「むぅ……残念だなぁ」

 

「……申し訳ありません」

 

「しょうがないなぁ。じゃぁまた今度最後までやってくれたら許してあげる」

 

と言われこれをまたやるのか……?しかも最後までだと……?と思った俺の考えを読んだのかそれとも別に理由があるのか分からないが、

 

「ふふっ、冗談だよ。それじゃ次に移ろっか」

 

と笑いながら言った。

束さんの言った通り次の事を始めた。

まぁ残っていたのは写真撮影だけなんだけども。

 

その後は束さんと写真を撮った。

束さんはその後は一般参加型のイベントまであちこちを見て回ってくるそうでクロエを連れて何処かに行ってしまった。

クロエは終始俺と束さんを見て楽しそうに笑っていた。

黒い笑顔と思ったのは気のせいだろうか。

 

この後は休憩が二時間程あるからその時に箒達と回るとしよう。

でも簪と鈴は時間が合わなくて一緒に回る事が出来ないそうだ。

残念だ。

 

 




次回は学園祭を回るところを書こうかなと思っています。


感想、評価等くださいな。


追記

5月29日に日刊ランキング15位にランクインしました。
読者の皆様のお陰です。
ありがとうございます。


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102話目

今回からヒロイン達と文化祭を回ります。
ニヤニヤが止まりませんなぁ!



 

休憩に入った。

ついさっき織斑に連絡を取ったらどうやら向こうは向こうで楽しんでいるらしい。

弾と蘭が来ているらしく三人で周っているようだ。

 

俺はと言うと一緒に休憩に入ったセシリアと一緒に行動している。

 

「輝義さん、私料理部の所に行ってみたいですわ」

 

「……いいぞ」

 

セシリアの提案に乗って料理部の出し物のところに行く事に。

確かいい嫁になれるようにだとかなんとかをモットーにしているらしく毎年長蛇の列が出来るほどの美味しさを持つ料理を提供している。

まぁセシリアの料理がどんなものなのか分からないがまぁ行ってみるのもいいだろう。

 

そして料理部がやっている教室にやってくると混雑していた。

お金を払って好きな物を食べられるシステムだったか。種類の数は四十ほどある。

千二百円でこれだけの種類を好きなものが食えると思うと最高だな。

その料理を取って外に出る。

 

「とても沢山のお料理がありましたわ。どれもこれもとても美味しそうで……早く食べてみたいです」

 

「……外に出よう。多分日陰があるだろうからそこで食べよう」

 

「はい!」

 

と言う事で外に出て日陰を探しながら歩く。

 

「あそこなんてどうでしょう?」

 

「……いいぞ」

 

セシリアが見つけた丁度いい木の陰になっている場所に座って食べ始める。

俺は取り敢えず目についたものを片っ端から取ってきたものだから何がなんだか分からない。

まぁ美味いから気になんないんだけども。

 

「この肉じゃが……とても美味しいですわ。味は勿論ですが暖かい感じがしますわ」

 

「……良かったな」

 

「はい。輝義さんはどれがお好きなのですか?」

 

「……全部だな。好きか大好きの二択しかない」

 

「流石ですわ。肉じゃがはお取りになったのですか?」

 

「……いや、取っていない」

 

そう、俺は肉じゃがを取り忘れたのだ。

鯖味噌とか西京焼きとかに釣られてしまってそれどころじゃなかった。

 

「でしたら私のを少し如何ですか?」

 

セシリアが分けてくれると言ったが申し訳ない。

でも食べたいしなぁ……

それにここで断ったらダメな気がする。

 

「……一口貰おう」

 

「はい!」

 

セシリアは俺がそう答えただけでとても嬉しそうにする。

そこまで嬉しくなるものか?

 

「……頂きます」

 

「お待ちください」

 

取ろうとしたら止められてしまった。

ここに来てお預けとか泣いちゃうぞ?

 

「私が食べさせて差し上げますわ!」

 

若干興奮気味にセシリアが言った。

 

「……いや自分で食えるぞ」

 

「ダメですか……?」

 

断ろうとすれば不安そうな顔こちらをみてくる。

その顔は反則ですよセシリアさん……

断れないじゃないですか。

 

「……頼んでもいいか?」

 

「勿論ですわ!」

 

了承すればさっきまでの不安そうな顔は何処へ行ったのか分からないぐらいの満面の笑みを浮かべながら返事をする。そして俺はそれと同時に思った。

 

俺ってつくづく皆に甘いなぁ……

 

「はい、あーん」

 

そしてセシリアは俺に肉じゃがを差し出してくる。

その顔は嬉しそうな、楽しそうな顔をしている。

 

今更断ることなど出来るはずも無く。

差し出された肉じゃがを食べる。

 

「……美味いな」

 

「それは良かったです」

 

美味い美味い。

これはいくらでも行けちゃうやつだな。

欲を言えば白米が欲しいが此処は我慢するしかない。

 

「輝義さん」

 

「……ん?」

 

セシリアが俺の事を呼ぶ。

なんだろうか?

 

「もし、私が肉じゃがを作れるようになったら……食べてくれますか……?」

 

ふむ……それは試行錯誤の実験台になれと言う事だろうか?

いや、ありえないな。純粋な気持ちからだろう。

断る理由など無い。

 

「……勿論だ。いくらでも食べてやる」

 

「はい!お願いしますわ!」

 

そうしてセシリアとの時間は過ぎて行った。

 

 

 

 

「それでは輝義さんまた後で会いましょう」

 

「……あぁ。頑張ってくれ」

 

セシリアを教室に送り届け別れる。

 

 

 

さて、次は箒との約束だな。

待ち合わせをしているからその場所に迎えに行こう。

 

 

 





こんな感じが数話程続くかと思います。
時間がないのであまり字数はありませんが……


感想、評価等くださいな。


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103話目

お仕事いそがしー!!
マジで死にそうやぞ?今日から2日間ほど休みなんですが休日が少ない。
代わりに6月にこれまた訳分からんぐらい代休が入っているんですけども……
バランス考えて欲しい……


 

セシリアを送り届けた後、そのまま箒を連れて周る。と言うよりも連れ回されていると言った方がいいだろう。

色んなものがあり普段は結構落ち着いている箒も今日ばかりは興奮と言う感じのものが隠しきれていない。

それと今更だがセシリアと一緒にいた時もなんだがやたらと視線が突き刺さる。まぁ執事服を着た厳つい俺と和装メイド姿の美人な箒が一緒に歩いていたらそりゃ注目を集めるわな。

セシリアも十分に美人さんだし。

そんな二人と比較して俺は悪目立ちと言った方が強いだろう。

俺みたいな奴が美少女を連れて歩いていたら学園内じゃなかったら間違い無く通報待った無しの気がしなくもない。

 

「輝義、この茶道部のところに行ってみたいんだがいいか?」

 

「……あぁ」

 

「じゃぁ行こう」

 

 

箒は茶道に興味があるのか?

……いやどちらかと言うとやっている、もしくはやっていたのか?

どちらにせよ俺は茶道を見た事すらないからいいかもしれない。

 

 

箒に手を引かれやってきたのはこれまた立派な茶道室である。

この学園の設備って無駄に豪華なんだもん。維持費だけでどれだけ掛かっているんだろうか?

……やめておこう。俺みたいなTHE・庶民には重すぎる。

 

「すごいな、本格的じゃないか」

 

「……そうなのか?」

 

「あぁ。かなり凄いぞこれは。私も嗜んでいた程度だがそれでも凄いと思うくらいの物だな」

 

「……そうなのか」

 

箒が言うのだから間違いないのだろう。

まぁ俺は全く分からんのだけども。

 

この茶道部は抹茶を飲んだり和菓子を食べたり出来る。

勿論金は払わなければいけないのだが。

取り敢えず抹茶と和菓子を好きなもの一つ選ぶ事が出来るセットを二人で頼む。

 

「どれにしようかな……」

 

箒は並べられている和菓子を見て悩んでいる。

 

「私はこれにしよう」

 

箒が頼んだのはよく見るような花の形をしたやつだ。

まぁ名前はわからんのだけど。

俺は別の物を選ぶ。

 

「……これとこれをお願いします」

 

「はーい」

 

箒の分も纏めて購入してしまう。

日頃からの感謝の気持ちだ。それに対した値段じゃないし。まぁこれぐらいじゃ返せないぐらいお世話になっているんだけどそれは今度にしよう。

……今思いついたが今度皆に何か日頃からのお礼で何か買うのもいいかもしれないな。

 

「輝義すまない。後でお金は返すから」

 

「……気にするな。ここは俺の奢りだ」

 

「いや、それは申し訳ないから……」

 

「……大した値段でもないし、日頃から世話になっているんだ。これぐらいいいだろう」

 

「でも……」

 

箒は自分の分のお金は返そうとしてくる。

 

「……いいから今日は奢られておけ」

 

「…………そこまで言うなら、分かった。ありがとう」

 

「……ん」

 

「なら頼んだ物を持って来てくれ。席を取っておくから」

 

なんとか折れてくれた箒は先に席を取りに行ってくれた。

そして頼んだ和菓子と抹茶を持って箒のところに行く。

 

「……待たせた」

 

「全然待ってなんかいないぞ?」

 

「……それでもだ」

 

「まぁいい。ほら、座って一緒に食べよう?」

 

「……あぁ」

 

箒に言われて座る。

よく考えたら執事服の男とメイド服の美少女が和菓子と抹茶って変な光景だな。

 

「今日は作法とか気にしなくてもいいらしいから自由にしよう」

 

「……そうなのか」

 

作法を気にしなくてもいいのは助かる。

全く分からないからやれと言われても困るし。

 

「……頂きます」

 

「頂きます」

 

取り敢えず抹茶を飲む。

……苦いな。苦いけど嫌いじゃない味だ。

薬の苦い味は嫌いなんだが不思議なもんだ。

 

目の前の箒を見てみれば美味しそうに食べている。

 

「……美味いか?」

 

「ん?あぁ、とても美味しいぞ。それに輝義と一緒だから更に美味しく感じるんだ」

 

「……そうか」

 

箒さん、その笑顔に言葉は反則ですぜ……

顔が熱くなっているのがはっきりと分かる。

セシリアも皆もだけど笑った時の顔は本当に魅力的だと思う。

 

「輝義はどうだ?」

 

「……美味いな。箒と一緒に居るからかもしれんな」

 

箒がどうかと聞いてくるので仕返しとばかりに箒に言われた事をそのまま言って見た。

 

「ふふっ」

 

しかし箒は嬉しそうにさっきよりも遥かに幸せそうな満面の笑みを浮かべるだけだった。

しかもさっきよりも断然綺麗に、魅力的に見えるのは気のせいではないだろう。

俺はさらに赤くなった顔を背ける。

ちらりと見てみればそれでも嬉しそうに笑っている箒。

 

……恥ずかしくて仕方がない。

 

そんな事を思いながら箒との時間は過ぎて行った。

 

 




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104話目



ちかれた……




 

 

箒の次はラウラ。

今現在俺はラウラと手を繋いで歩いている。

ラウラの場合は背が小さいし迷子になったら大変だからだ。

いくら銀髪とはいえこの人混みではラウラは紛れてしまってわからないだろう。

と言う事でどうするかと悩んで肩車なんてスカートだから出来ない。

まぁ本人は喜んで肩車してくれって言って来そうだけど。

 

「おー!こんなものまであるのか!」

 

「……楽しいか?」

 

「あぁ!軍に居た時は見た事がないようなものばかりだ!」

 

ラウラは興奮気味に飛び跳ねてあっちへこっちへ視線を彷徨わせてる。

そんなラウラを見て何となく子供を持った親の気持ちになりながら歩く。

 

ラウラは本当にいろんなものに興味を持ってあれを見てこれを見て。あっちへ行ってこっちへ行って。

 

「おぉ!凄いな!これがジャパニーズブシドウというものか!」

 

今は剣道部の展示を見て興奮している。

 

「嫁の戦い方とは随分と違うのだな」

 

「……まぁ俺のは我流もいいところだからな。まともな型を習ったわけじゃなくていかに速く鋭く剣を振るえるかという感じだ。本当の剣道は今見ているものが正しい」

 

「そうなのか」

 

「……あぁ。もしやってみたいなら剣道部に来るか箒に頼むといい」

 

「剣道部は分かるが箒というのはどういう事だ?」

 

「……あいつは剣道をやっているからな」

 

「そうなのか。初めて知ったぞ」

 

そう言うとラウラは黙って何かを考えているような顔付きになる。

何を考えているのか分からないが。

 

「嫁よ」

 

「……ん?」

 

ふと名前を呼ばれてラウラを見ると、

 

「確かに箒や剣道部も凄いんだろう。でも私はな?」

 

「……あぁ」

 

「嫁の剣が一番大好きだぞ、強いのは勿論だが誰かを守りたいって意思が凄く伝わって来るからな」

 

こいつはどうしてこう言う恥ずかしいと思ってしまうような事を言えるんだろうか。

少なくとも俺の顔は赤くなっている。

今日は顔が赤くなってばかりだな……

 

「……そうか」

 

そして俺は短く答えただけだった。

と言うかそれしか答える事が出来なかった。

いつも思うがラウラってば純粋過ぎるんじゃなかろうか?

 

 

 

それから腹が減ったとラウラが言い始めたのでたこ焼きと焼きそばを買って一緒に食べた。

その時のラウラときたらモキュモキュと言う擬音が聞こえて来るようだった。

ラウラはいい子。

 

 

その後は取り敢えずラウラを教室まで送り届けた。

まぁその帰りの道も行きとは別のルートだったからラウラの視線はあっちへこっちへと彷徨っていた。

偶にヤベー奴、具体的にはロリコンを見るような目で見て来る奴が居たが。

 

俺は断じてロリコンではない。ロリコンではない。

大事な事だから二回言わせてもらった。

 

 

 

………………俺はロリコンじゃないよな?

 

 

 

 






たったこれだけを書くのに時間が掛かってしまった……
最近は忙しいもんですから書く時間が無いんです。許してくだせぇ……


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105話目






 

 

 

ラウラを送り届けてからそのままシャルロットを連れて出歩く。

 

「……どこか行きたいところはあるか?」

 

「んー……」

 

どこに行きたいかを聞いてみると考え始めた。

 

「そうだなぁ……僕は疲れちゃったから何処かで休憩したいかな」

 

「……ふむ」

 

休憩か……

俺は全然構わないからいいか。

 

「あ、輝義が行きたいところがあるんだったらそこに行ってもいいよ?」

 

「……いや、休憩にしよう」

 

「分かった。それじゃ何処か良い場所を探そっか」

 

と言う事で探し始めたのだが、この人混みである。

まともにゆっくり出来そうなところなんてあるはずも無く。

 

「どこもかしこも人で一杯だね……」

 

「……こんな日じゃなければいくらでもあるんだがな」

 

「そんな事言ってもしょうがないよ」

 

さて、どうするかな……

屋上はさっき人が結構居たし、空き教室は基本各クラスの準備室か一般客の休憩所になっているからそこにも行けない。

学園の裏手の方なら人が少ないか……?

 

「……学園の裏の方に行ってみよう。あそこならわざわざ行く人は少ないだろうしな」

 

「うん。そうしよっか」

 

取り敢えずそっちに行ってみる事に。

二人で並んで歩く。

 

「今日は輝義の家族の人達は来てるの?」

 

俺の家族か……多分来てるだろうな。

 

「……来てるぞ。まぁどこにいるか全く分からないが」

 

「そうなんだ」

 

「……到着したって言う連絡すら来ないからな。多分今頃は思いっきり満喫しているんだろうな」

 

あの人達の事だ。間違いなく楽しんでるだろう。それも思いっきり。

 

「会えなくて残念?」

 

「……いや、そうでもない。なんだろうな……こう、言葉では表せないんだがな」

 

「そうなんだ……でもやっぱり会いたい?」

 

「……まぁ、な」

 

「そっか」

 

そしてしばらく行くと良い感じの日陰になっている場所を見つけた。

ちらほら人の姿は見えるがそれも数人程度。

此処ならばゆっくりできるだろう。

 

「ふぅ……疲れた〜」

 

「……お疲れ様だ」

 

俺と織斑は特別に合計で三時間の休憩を貰っている。

俺と織斑は男子が二人しかいないからその分仕事量も激増なんてレベルでは済まないから、と言う理由から。

しかし他の皆はそうもいかない。人数が多い分仕事量を分担出来ると言う考えから俺と織斑ほど休憩を貰っていないのだ。

そりゃ疲れる。

 

「ふぁぁ〜〜〜……」

 

シャルロットは眠そうに大きな欠伸をする。

まぁ朝早くから起きて準備をして今の今まで働いていたのだ。

これで疲れるなと言う方が無理だろう。

俺だったら死んでる。

 

「……少し寝るといい。時間になったら俺が起こしてやる」

 

疲れている時には寝るのが一番。

たとえ少しだけだとしても全然違うのだ。

 

「でも……輝義はいいの?」

 

「……大丈夫だ。シャルロットの寝顔でも見てるから暇にはならない」

 

と、俺は大丈夫だと言うことを伝えると、

 

そう言うことじゃ無いんだけど……でも、そしたらお言葉に甘えて少しだけ寝かせてもらおうかな」

 

最初に小さい声で何か言っていたが寝る事に決めたらしい。

 

「……時間になったら起こす」

 

「うん。お願いね」

 

そう言うと俺に寄り掛かって来た。

するとそのまま規則正しい寝息を立て始めた。

まぁ今回ばかりは文句を言わずに寄りかかられていよう。

 

 

木陰という事もあってかこの時期にしては涼しい。

チラリとシャルロットを見ればサラサラしたオレンジブロンドの髪が風に吹かれて微かに揺れている。

その風に乗ってシャルロット特有の優しい匂いが漂ってくる。

顔に髪が掛からないように後ろに流してやるとこれまた綺麗な顔が現れる。

例に漏れず肌は白くきめ細かく睫毛は長いし。

起きている時だが目はくっきりと大きくアメジスト色の目。

本当に皆揃いも揃って美人ばっかりだ。

 

……俺はなんでこんな美少女に寄りかかられているんだろうか。

 

もう訳がわからないよ。

 

 

 

 

そのままシャルロットの寝顔を時間まで眺めていた。

時間になりシャルロットを起こして教室に戻る。

俺の休憩も一旦ここで終わりだからそのまま仕事に入る。

 

 

次の休憩までもう一踏ん張りだ。

 

 






なんか今回は長めになっちゃった……?
まぁいっか。


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106話目

期間が遅れてしまい申し訳ありません。



 

取り敢えずシャルロットと一緒に教室に戻ると、俺が休憩に入る前以上に列が長くなっていた。

その列の人だかりを謝りながら通させてもらう。

 

「……今戻った」

 

「お、輝義とシャルロット!戻って来てすぐで悪いんだけど今すぐに手伝ってくれ!」

 

「うん!」

 

「……分かった」

 

そう言いながら先程の死んでいた織斑とは違いイキイキとしながら仕事をこなしていく織斑。

言われた通り即座に応援に入る。

まぁなんとなく予想していたとは言え、織斑に集中していた指名は俺と織斑の二分割になる。

圧倒的に多いのは金を払ってまで記念撮影を一緒にしたいと言う人だ。

流石に束さんみたいな人は居ないが。

パシャパシャとどんどん撮って現像していく。

 

ついでに言えばサインを求められる事も多い。

サインの書き方なんて知らないから普通に名前を書く事しか出来ないんだが。そんなもんどうすんのさ?

 

するとそこにスコールさん達が。

 

「こんにちは輝義君」

 

「……こんにちは。回って見てどうでしたか?」

 

「そうね、どのクラスの出し物もとっても凝っていてとっても楽しかったわ」

 

「……それは良かったです。それではお席にご案内いたします。こちらへどうぞ」

 

3人を空いている席に案内する。

 

「あぁ、輝義君、これ知ってる?」

 

座ったスコールさんから見せられたのは一枚の紙。

マドカは既にメニューを開いている。

 

「輝義、お前も大変なんだな」

 

何故かオータムさんは憐れみの目線。

どういう事か分からず、差し出された紙を見てみると、

 

 

『ーーーシンデレラ 灰被り姫 戦場を駆ける戦乙女達ーーー』

 

『ーーーーーー上記の演目を体育館にて公演致します。尚、一般参加型となっておりますが人数の関係上受け付けを終了させて頂きました。誠に申し訳ございませんがご了承下さい。 IS学園生徒会

 

なんだこれ?なんだこれ!?

俺なんも聞いてないんだけど?

あ…そういえば朝の開会式でそんな事を言っていたような……?

 

いや、それよりも物凄く物騒な題名なのが気になるんだが。

なんだ戦場を駆ける戦乙女達って。ものすっごく物騒なんですけど。

 

「その顔じゃ知らなかったようね」

 

「……今初めて聞きました」

 

「ま、頑張ってとしか言えないわね」

 

「輝義、その、強く生きろよ」

 

オータムさん?その態度はなんなんですか?何が起こるのか分からなくて怖いから止めて欲しいんですけど。

 

「もう注文していいか?」

 

……マドカはマイペースなんだね。

 

 

 

 

注文を受けた後、さてどうするかと考えてみる。

大方、これを仕組んだりしたのは楯無さんだろう。そうなってくると断ることが難しくなってくる。

なにせ普段からお世話になっているし色々と面倒を見てもらっているのも事実。

それで断るとなるとなぁ……

しかし練習も何もしていないのにどうするんだろうか?

あれか?周りに生えている木の役とか?裏方で力仕事というのもあり得そうだ。

そんな目立つようなことではなさそうだし、まぁやっても大丈夫だろ。

 

 

 

 

そして再び休憩時間がやって来た。

本音と一緒に周ってから、その後は特にやることが決まっていない。だって皆と一緒に殆ど周ったし。

 

「てるてる〜、いこ〜」

 

「……ん」

 

本音に手を引かれながらあちこちを見て周る。

と言っても殆ど食い物系なんだけど。

 

「うま〜」

 

今だって幸せそうな顔でアイスを食べている。

さっきから見ているが、よく食べるなぁ

綿アメ、リンゴ飴、アイス、パフェと言った菓子類から始まり、普通に焼きそばやらたこ焼き、たい焼き、あんず飴、アメリカンドッグ、イカ焼きetc……

他にも色々と食いまくっているが衰える事がない。

もしかしたら普段の俺の食事量よりも遥かに多く食べっているんじゃなかろうか?

しかしラインナップが屋台なんだよなぁ。

いや、普通にパスタとか色々売ってんだけども何故かこいつはこういうのばっかり選んで食っている。

よく太らないな……

 

「てるてる、変なこと考えた〜?」

 

「……何も」

 

「あれ〜?」

 

こっわ!?何!?こっわ!?

これからは下手なこと考えんのやめよ……

 

 

 

 

「てるてるは今日の文化祭楽しい〜?」

 

唐突に、本当に何の前触れもなくそんな事を聞いてきた。

 

「……急にどうした」

 

「ん〜……何と無くかなぁ?」

 

何と無くか……

まぁ本音らしいっちゃらしいいんだけど。

 

「それでどうなの〜?」

 

「……まぁ楽しいな」

 

「どんな風に〜?」

 

「……今までの、中学までのこう言った行事っていうのは俺にとってはなんて事なかったんだ。周りがただただ騒いでいるだけ。友人なんて一人もいなかったからな。でも今は本音が居て、箒もセシリアもシャルロットもラウラも簪も楯無さんも虚さんも織斑も居る。最高に楽しいな」

 

俺がそう言い切ると普段は細めていて空いているのかどうかすらも分からない目を開けて俺の目をじっと見てくる。

数秒見ると、何時ものフニャっとしている表情に戻って言った。

 

「てるてる良かったね」

 

「……あぁ」

 

そして俺の手を握ってまた食い物巡りを始めたのであった。

 

 




今回はここまで。
次回かその次にシンデレラ編を開始出来ればな、と思っています。


感想、評価等下さいな。


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107話目

 

本音との休憩が終わって送り届けた後、俺は一人で何をするか考えていた。

さっきまで誰かと居たもんだから何をすればいいのやら。まぁ色々見ていればそのうちに何か見つかるだろうと再び校内をぶらつく。と言うか織斑先生達は何をやっているのだろうか?今日も警備とかの仕事がありそうだしな。暇じゃないんだろう。

 

「あ、輝義じゃない」

 

「……ん?」

 

突然名前を呼ばれたので振り向いてみればそこに居たのは鈴だった。

しかもチャイナドレスを着ている。

スリットから見える生足ありがとうございます!

 

「……どうした。と言うかよく俺だと分かったな」

 

「分かったなって、この学園にあんたほどの体格の奴なんて輝義しか居ないわよ」

 

「……それもそうか」

 

「今、休憩中なのよ。で、ぶらついてた所にあんたを見つけたって訳」

 

鈴も休憩中か。

 

「……俺も同じようなもんだ。休憩中なのは良いがやりたい事が見つけられなくてな」

 

「ふーん……じゃぁ少し私に付き合いなさいよ」

 

「……いいぞ」

 

鈴と一緒に行動することに。

後を付いて行くと、何やら飲み物と軽食を買って外に出る。

適当な所にあるベンチに並んで座る。

 

「ほら、これあげる」

 

そう言って渡して来たのは先程買った飲み物。

 

「……いいのか?」

 

「いいわよ。どうせ今の今まで奢って来てたんでしょ?偶には奢られなさい」

 

まぁ実際奢ってたんだけども。

それでも気にならない金額だから別に良いんだが……

 

「……すまない」

 

思わず謝ってしまうと少し呆れながら、

 

「こう言う時はありがとうって言えば良いのよ」

 

「……ありがとう」

 

「ん。それと私まだお昼食べてないから食べてもいい?」

 

俺がありがとうと言うと笑いながら言った。

しかし、昼飯を食っていないのか。

別に気にならないし食えば良いのに態々断りを入れるとは。

 

「……あぁ。好きなだけ食え」

 

「ありがと。それじゃ、いただきます」

 

そう言って食べ始める鈴。

ラウラはラウラで小動物っぽいが鈴もベクトルは違うがこう、なんかあるな。

鈴が食べ終わるのを待って話し始める。

と言っても文化祭はどうだ、とかそんな感じだ。

鈴のクラスはどうやら他の場所で出し物をやっているそうで、チャイナ喫茶なるものらしい。

だから鈴はチャイナドレスを着ているのか。

 

「輝義達の所ほどじゃないけどこっちもまぁまぁ繁盛してるわよ。男子二人が揃ってるなんてずるいにも程があるわよ」

 

「……そんなこと言われてもな」

 

でも実際ずるいとは思う。

それに比例して面倒事と忙しさは比例するんだが。それでもお釣りが返ってくるようなものだ。

 

「そんなこと分かってるわよ。にしても、服のサイズ小さくない?」

 

「……クラスの皆がな」

 

「あぁ、筋肉を推していこうってところかしら?」

 

「……当たりだ」

 

どうして皆はやたらと筋肉を強調させたがるんだろうか?

 

「ま、いいんじゃない?嫌だって訳でもないんでしょ?」

 

「……そうだな」

 

確かに嫌だ、と言う訳では無い。

それだったら気にしてもしょうがないか。

 

そして少しばかり空を見る。

さっき、セシリアと居た時と変わらずの快晴。

すると鈴から声を掛けられる。

 

「ねぇ、少し質問していい?」

 

「……構わないが」

 

質問とはなんだろう?

リンが俺に聞くことなんてあったか?

 

「輝義は箒達の事、どう思ってるの?」

 

「……どう言うことだ?」

 

「そのまんまの意味よ。女として見ているのか、それとも友人なのか。あ、因みに織斑先生と篠ノ之博士達も含まれてるから」

 

そう言う質問か……

 

「……実際俺は皆の事が好きなんだとは思う」

 

「それで?」

 

「……分からないな。俺がどうしたいのかが分からない。こんな俺みたいな奴に、何時も何かしらの事件やら問題やらが降り掛かってくるからな。そもそも向こうが好きなのかどうかも分からん。まぁ箒とラウラ、束さん辺りは何となく分かるが」

 

そう言った俺の顔を見て鈴は呆れたと言う顔をしている。

何か変なことでも言っただろうか?

 

「あんたって馬鹿なのね。普通アレだけの態度を取られたら気が付くでしょうに」

 

「……すいません」

 

鈴から何故か逆らい難い雰囲気が放たれる。

何故だ。

 

「それに、例の法律もあるんだし良いんじゃないの?」

 

「……そんなこと言われても今までの人生の中で見て来た倫理観がな……」

 

「ま、そっちは本人達に任せるしかないか。首を突っ込んで良いような話でもないし」

 

「……なんか本当に申し訳ない」

 

「そのうち地獄と天国を同時に見る羽目になるだろうから覚悟しておくことね」

 

何それ怖い。

俺はどうなってしまうんだろうか?

 

「それじゃそろそろ私は帰るわ。仕事もあるし」

 

「……あぁ」

 

「ねぇ」

 

「……どうした。忘れ物か?」

 

鈴が歩きを止めて振り向く。

 

「もし、私が輝義の事を好きだって言ったらどうする?」

 

「……何?」

 

「やっぱり何でもない。変な事聞いちゃって悪かったわ」

 

そう言って鈴は自分のクラスのところに戻っていった。

でも俺の頭の中では鈴が言った言葉が反芻している。

 

どう言う事だ……?鈴が俺の事が好き?

いや、好きだと言ったらだ。

……………………ダメだ。分からない。

 

その後、俺は悶々としながら残りの休憩時間を過ごした。

 

 





今回は鈴ちゃんがメインの回でした。
あぁ!!早く鈴ちゃんとの絡み(意味深)を書きたいぜ。


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108話目






 

 

悶々としてベンチで過ごしていると休憩時間が終わりに近づいて来た。

取り敢えず教室に戻る事に。今考えても何も思い浮かばないしどうすれば良いのかなんて尚更分かる訳もない。

後で鈴にちゃんと聞こう……

 

と言いながらも歩きながら考えてしまう。

考えるなと言う方が無理だろう。

 

 

 

そして教室に着くと、そこに居たのは我らが織斑先生。

 

「お、大河じゃないか」

 

「……どうしたんですか?」

 

「なんだ?私が来てはダメだと?」

 

「……いえ、お仕事の方があるのではと思っていたので来られないものとばかり」

 

「それがな、何処ぞの大天災が色々とやってくれてな」

 

束さんの事ですね。分かります。

 

「全くあいつが来るなんて一言も聞いていないんだが?」

 

「……すいませんでした」

 

「まぁいい」

 

そういえば山田先生の姿が見えない。

どうしたんだろうか?基本織斑先生と山田先生はセットなんだが。

 

「……山田先生は?」

 

「あぁ、他の所に行っている。何でも見て見たいものあるらしくてな」

 

「……そうだったんですか」

 

するとそこに放送が流れた。

 

[一年一組織斑一夏君、大河輝義君、至急生徒会室まで来てくださーい。繰り返しまーす。一年一組織斑一夏君、大河輝義君至急生徒会室まで来てくださーい]

 

この声は楯無さんか。

にしてもなんだろう?取り敢えず行きますかね。

 

「……そう言う事なので行ってきます」

 

「あぁ。行ってこい」

 

織斑先生に断りを入れ生徒会室に向かう。

 

 

 

 

「……一年一組大河、来ました」

 

「どーぞー!」

 

中から楯無さんの声が聞こえてくる。

中に入ると夏休み中によく来た光景……なのだが何故か楯無さんはシンデレラの格好をしていた。

 

「……何をしているんですか?」

 

思わずそう聞いてしまった。

 

「何ってシンデレラよ?分からないかしら?」

 

「……いや、分かりますがなぜその格好を?」

 

「着てみたかったからに決まってるじゃない!」

 

うわー……今日の楯無さん、テンション高いなぁ……

 

「失礼しまー……会長、何をやっているんですか……?」

 

織斑も入ってくるがやはり俺と同じ反応をしている。

でもしょうがないと思うんだ。誰だって入った部屋にドレス着た女の人が居たらこうなると思う。

 

「もう、二人ともノリがわかってないわねー。まぁいいわ」

 

ノリで何とか出来ません。

 

「何で俺達を呼び出したんですか?」

 

「フッフッフ、それはね……なんと二人には生徒会の出し物であるシンデレラに登場してもらいまーす!」

 

楯無さんがそう言うとどうやって仕込んだのかクラッカーが鳴った。

 

「……知ってます」

 

「俺も知ってます」

 

「まぁまぁ。呼び出したのはその説明をする為よ」

 

「……はぁ」

 

説明か……

つってもなぁ、題名を見る限り物騒極まりないんだけど。

 

「まぁ題名で想像できる通りね」

 

「やっぱりかぁ……」

 

「……で、詳しい内容は?」

 

「取り敢えず二人はシンデレラ達から逃げればいいわ。一夏君は王冠を、輝義君は身に付けている物を全て守りながらね」

 

訳が分からないよ。

なんでシンデレラから逃げなきゃいけないのさ?

それに織斑の条件は分かる。だけど俺は身に付けている物全部ってどういう事?

 

「……俺の条件キツくないですか?」

 

「キツくないわよ。一夏君と同じ条件にしたらどう考えても無理があるし」

 

「……そうですか。分かりました」

 

それ以上何も言えなかった。

 

「もし、王冠を取られたらどうなるんですか?」

 

織斑がそう聞くとよくぞ聞いてくれた!って顔で言った。

 

「残念ながら教える事は出来ませーん!」

 

教えてくれないんかい。

 

「教えてくれないんですか!?」

 

「だって教えちゃったら詰まらないじゃない。危機感を持って全力で逃げ回ってね!あ、逃げ切れたらご褒美があるから頑張って!」

 

そう言う楯無さんはとても楽しそうな顔をしていた。

その後、逃げていい範囲を指定され、校内の生徒の立ち入りが禁止されている場所以外は逃げていいとの事。色々なトラップを仕掛けてあるから注意する事、などなど沢山言われたが取り敢えず逃げればいいのだ。

 

 

その後は時間まで生徒会室で待機、着替え等の準備を始めていった。

 

 

…………逃げ切れるかなぁ。

 

 

 






本日は駆け足気味に2話投稿。


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109話目

何故かフルプレートの甲冑を着させられた。

いやまぁ確かにカッコいいけどさ。こんなの身に付けて走り回るとか何処の時代よ?

しかも模造で半分しか刀身が無いとは言え腰に剣までぶら下げてあるもんだから余計に本物っぽい。

顔に傷があって身体がデカくて筋肉質で甲冑着て腰に剣をぶら下げて……

完全にヤベェ奴じゃん。

街中だったら通報&即逮捕じゃねぇか。

それがドレス着た女性達から逃げ回るとかシュールにも程があるわ。

 

織斑?

あいつは王子の格好がやたらと似合っていやがる。

やっぱり偏差値の違いか……!

 

「輝義、甲冑どんな感じだ?」

 

「……重くも無いし暑くも無い。以外だが着心地はいいぞ」

 

「まじで?絶対に重そうだし暑そうだけど」

 

「……理由なんて分からん」

 

まじこの甲冑なんなの?

明らかに重そうな見た目の癖して軽いしこの時期絶対に暑いのに暑く無いし。どうなってんだこれ。

 

「ふっふーん!それは私のおかげよ!」

 

「どう言う事です?」

 

いきなり入ってきた事に関してはまぁ後で虚さんに報告するとして。

まじどう言うこと?

 

「ちょーっと篠ノ之博士に頼んで作ってもらったのよ。そしたらすんごい気合い入れて作ったらしくて、快適な温度を保つ空調システムとか超軽量の金属使ったんだって。私もびっくり。因みに一夏君のも篠ノ之博士お手製よ」

 

私もびっくりじゃないです。

なんて事頼んでんだこの人。

束さんも束さんだよ。そんなもんホイホイ了承して作らないで欲しい。また箒に怒られるかも知れないし……

 

……後でちゃんと言っておこう。

 

「束さんが作ったんなら納得だな。でもさ、これこそ技術の無駄遣いってやつだよな!」

 

お前この野郎呑気に笑いやがって。

織斑テメェ後で一緒に怒られてもらうかんな。

怒った箒怖いんだぞ。

 

「2人とも準備は万端かしら?そろそろ時間だから行くわよ〜」

 

「……はい」

 

「分かりました」

 

楯無さんに案内され、立たされた場所は馬鹿でかい体育館のステージの上。幕はまだ上がっていない。

 

[[皆様、長らくお待たせ致しました。シンデレラの開幕でございます]]

 

虚さんの声が響いた。

次に聞こえて来たのは楯無さんの声。

 

「今宵演じるのはシンデレラ。シンデレラと言えば酷い扱いを受けた少女が王子様と最後はゴールイン!するお話。でも残念ながら今日のシンデレラは一味どころか全く違うお話」

 

「シンデレラそれは灰被り姫、戦乙女とも言われる女性達。彼女達は戦場を駆け、時に要人の首を狙い。そんな彼女達が本日狙うのは大国の王子様の王冠に隠された秘密。そして軍事機密の塊である騎士の装備。2人はシンデレラ達から逃げ切れるのか!?」

 

無理です。

 

「2人は制限時間内逃げ切るか、捕まって王冠や装備を剥ぎ取られるかのどちらか!ゲットしたシンデレラにはご褒美がありまーす!頑張ってねー!さぁシンデレラ達!やっておしまい!」

 

急に始まったんですけど?

あとご褒美って言われた瞬間にシンデレラ達の目付きが変わったんだけど!?

 

「……逃げるぞ!」

 

「あぁ!捕まったらタダじゃ済まないぞあれ!」

 

こうして俺と織斑の命を賭けた全力逃走劇が始まった。

 

 






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110話目


ここ最近特に忙しい……
投稿がマチマチで申し訳ないです。
投稿しても短かったりと……
本当に申し訳ない。


 

 

俺達は今逃げている。

何から逃げているのか?それは……

 

「「「「「「「装備(王冠)置いてけーーー!!!」」」」」」」

 

「「うおぉぉぉぉ!!!!????」」

 

そう。血走った(主人公達からすると)目で俺達を追いかけて来るシンデレラから逃げているのだ。

逃げないでさっさと渡せばいい?1番最初に考えた。渡そうともした。だけど身体から離れた瞬間に電流が流れたのだ。普通に悶絶するレベルのやつが。そうなっては渡せない。だから怖いから逃げているのだ。

 

でも、箒達は俺と織斑の味方になってくれていると思ったのに。思ったのに……

 

「「「「「「「「輝義(さん)(君)(てるくん)!装備を置いていけーーー!!!」」」」」」」」

 

まさかのシンデレラ側だった。

他の人達よりも明らかに迫力が違う。怖い。

というか束さんまで参加するとか聞いていないんですけど。

織斑先生とかが参加していなくて良かった。

そうなったら死んでた。

 

後ろなんて怖くて振り向けない。

しかも武器ありだなんて聞いてない。

セシリアとシャルロット、ラウラは麻酔銃持ち出してきてるし束さんは捕獲用のネットが仕込まれたロケットランチャーを持っているのですが。

勝てるわけがない。

むしろどうやって勝てばいいのか教えて欲しい。

しかもどっから出てきたのかシンデレラ城まで学園に聳え立ってるし。

楯無さん気合い入れすぎじゃない?

 

因みに織斑は途中で逸れた。

捕獲されてなきゃいいけど

 

「輝義!悪い事は言わないから装備を置いて行ってくれないかな!?」

 

「そうだぞ嫁!何故妻が夫から逃げるのだ!」

 

「捕まってくれると尚有難いのですが!」

 

「絶対に足を止めないぞ俺は!まだ死にたくない!」

 

というわけで今も尚全力疾走中。

しかしシンデレラ城の最上階まで来てしまった。

逃げ場がねぇ!?

 

……斯くなる上は!

 

「うおぉぉぉぉ!!」

 

「ちょっ!?」

 

箒達が驚きの声を上げる。

そりゃそうだ。追い詰められた俺はシンデレラ城から飛び降りたんだから。

結構高い。七十メートルぐらいだろうか?

まぁでもこの高さなら受け身をとれば問題無し。

 

「ふんぬ!!!」

 

大きな音と共に着地。

そのまま弾かれたように逃走を開始する俺。するとそこに放送が流れた。

 

[織斑一夏君が捕まりましたー!あとは大河輝義君だけでーす!皆さん頑張ってくださいねー!]

 

織斑ぁぁぁぁぁぁ!!!

ダメだったか。一人にしてしまった俺の責任だ。こうなったらあいつのために逃げ切らなければ。

 

バサバサバサバサバサバサ!!!!!!

 

あっ………………

 

上からネットが降り注ぐ。

 

「やったーーーー!!!てるくんゲットだぜ!!!」

 

捕まっちまったわ。

逃げようにも逃げれないし周りを箒達が取り囲んでいる。

 

終わった……

 

 

 

 

 

という事で拘束された俺。

ステージの上まで連行された俺は縛られたまま椅子に座らされる。

 

「ざんねーん!逃げきれませんでしたー!という事でシンデレラの勝ち!捕まえた皆さんには一日中本人を好きにできる権利を差し上げます!」

 

無理だって。三時間だぞ?その間常に全力疾走に加え逃げなければやばいことになると言う緊張もあったのだ。疲労が溜まってもしょうがないと思うんだ。

 

……織斑は死んだ目でグッタリしてるけど何があったのだろうか?

……聞かないでおこう。聞いてはいけなさそうだし。

 

 






短いし駆け足だし内容ペラッペラだし……
酷いもんだな。
次回とかはなんとかしようと思いますので許してください。


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110話目



最近体重の減りが凄い。
ダイエットしてるわけでもないのに、1週間ぐらいで75キロから66キロまで減った。
……あれ……?やばくない?


 

 

 

捕獲されてからというもの、解放された俺はスコールさん達を送っていた。

 

「……すいません。招待しておいてそちらに行けなくて」

 

「あら、全然気にしなくていいのよ?楽しかったし」

 

とスコールさんはマドカを見る。

そこには綿あめを頬張りながらビニール袋に大量の食い物を入れてご機嫌のマドカが。

オータムさんの両手にも大きく膨らんだビニール袋が。

どれだけ買い込んだんだ。

 

「……そうですか」

 

「えぇ。この子はこういう事初めてだから余計に楽しかったのかしらね」

 

そう言ってスコールさんがマドカを見る目はやはり母親が子供を見る目と同じだった。

 

「輝義、今日は招待してくれてありがとうよ。楽しかったぜ。お前が逃げ惑う姿も含めてな」

 

「……あれは忘れてください」

 

「そりゃ無理な話だな」

 

ハハハハハと笑うオータムさん。

まぁ楽しんでくれたのならそれでいいけど。

 

「それじゃ、また今度会いましょう」

 

「……はい。いつでも」

 

「じゃあな」

 

「また来る」

 

3人はそれぞれ挨拶をすると帰って行った。

 

さて、それじゃ戻るか。片付けとかもあるし。

 

 

因みに束さんは途中で箒にバレて帰ってしまったらしい。

挨拶しておきたかったのだが。

 

 

その後は簡単に片付けをして疲れているだろうからという事で解散となった。

衣装は記念として貰ったが着る機会なんてそうそうどころか全く無いぞ?

 

 

 

 

 

「お、おはようございます……ご主人様……」

 

朝、起きると何故かメイド服を着た織斑先生が居た。

顔を赤くしながらお決まりのセリフを言う織斑先生。

めっちゃ似合ってる。これがギャップ萌えというやつか。

じゃなくて。

 

「……何をしているんですか?」

 

「その、一夏に見せてやれと言われて……」

 

織斑よくやった!明日とか飯を奢ってやろう。

 

「……そうですか」

 

「似合ってないだろう……?」

 

恥ずかしそうに言う織斑先生。

そんな事はないんだがなぁ……どうにも自信が無いようで。

 

「……とてもよく似合っていますよ」

 

「本当か……?」

 

「……はい」

 

「そうか……」

 

嬉しそうに笑う織斑先生。

うーん、普段からこう言う表情を出せば絶対にいいと思うんだけど。

 

「……記念に写真一緒に撮りましょう」

 

「……分かった」

 

少し渋ったが了承してくれた。

こんなのもう二度と見れないかもしれないからな。

 

「……撮りますよ。はい、チーズ」

 

シャッター音が鳴る

……うん。綺麗に撮れてる。

 

 

それから何枚か写真を撮ったのだが恥ずかしさに負けたのか織斑先生はどこかに行ってしまった。残念だな。もっと撮りたかったのだが。しょうがない。

 

 

その日一日は片付けを行い終わった。

 

 

 






短いですが投稿。
次回からはご褒美のヒロイン1人1人とのデート回を挟んでキャノンボールファストに行こうかと思ってます。
それまでお待ちください。


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111話目



デート回は番外編でやる事にしました。
ちょっと時間が足りないのでしっかりと時間がある時に書きます。
すいません。




 

 

 

早いもので文化祭から一週間が過ぎた。

その間に何かまた問題があったと言う訳でもなく、至極平穏な日常を過ごしていた。

問題があるとすればこれからだろう。以前織斑先生に少し聞いただけだが、キャノンボールファストとか言うやつがあるらしい。今、楯無さんに俺を含めた専用機持ちが生徒会室に呼び出されたのもそれが理由だろう。

 

「皆よく集まってくれたわ。今日の要件はズバリ!キャノンボールファストについてよ」

 

やっぱり。

確か織斑先生は俺達が参加するとかどうとか言っていたけど。

 

「なんです?その、何たらかんたらって」

 

「一夏君と輝義君は多分聞いた事はあっても詳しくは知らないから説明するわ。秋頃に開催されるISの高速バトルレースのことよ。本来は国際大会として行われるものよ。IS学園があるから市の特別イベントとして学園の生徒達が参加する催し物になってるわ。一般生徒が参加する訓練機部門と専用機持ち限定の専用機部門とに学年別に分かれて競うんだけど。まぁ要はすっごい速さでレースをしながら戦うって事」

 

「はぁ」

 

織斑も俺も詳しくは知らないから説明して貰った。

うん、まぁ分かったんだけど。

 

「それで皆にも参加してもらうわ。勿論拒否してもいいけど、残念ながら輝義君と一夏君は強制参加ね」

 

「え?なんでですか?」

 

「あっちこっちの国が参加させろって煩いのよ。参加させるだけならまだ良かったんだけど」

 

「……他に何かまだあるんですか?」

 

「どっかの国のお偉さんが、この機会だから是非男性操縦者の実力が見たいとか言い始めたのよ。それに他国も賛同しちゃって断れなくなったの。だから二人には国家代表と対戦してもらうわ」

 

「はぁ!?そんな無茶苦茶な事ありますか!?」

 

俺と織斑ではなく真っ先にキレたのは鈴だった。

 

「鈴、落ち着けって」

 

「これが落ち着いて居られると思ってんの!?」

 

織斑が嗜めるもその勢いは止まらず、不満を口にする。

 

「そもそも代表候補生と国家代表と言うのならば分かるわ!でもあんた達はそうじゃないのよ!これがどう言う事か分かる!?」

 

「どう言う事だよ?」

 

「あんた達は見世物にされるって事よ!特に輝義はね、今までに色々やって各国の面子を潰してきているのよ。それが例え人助けだったとしても!」

 

「なんでそうなるんだよ?輝義は何もしてないだろ?」

 

「そう思わない連中が世界には沢山居るのよ。だから今回なんとかして2人に恥をかかせようって魂胆なのは丸分かりよ」

 

喋っていて落ち着いて来たのか段々と話し方が何時も通りになった。そして楯無さんが口を開く。

 

「鈴ちゃんが言った通りよ。アメリカは間違いなく出てくるでしょうし、ヨーロッパの何処かしらの国も出てくるわ」

 

「なんとかならないんですか?」

 

シャルロットが聞くが楯無さんは首を横に振った。

 

「厳しいわね。私達や政府もなんとか打開策を探してはいるけれど参加する事になるでしょうね」

 

と、言った。

 

「……楯無さん、キャノンボールファストはいつ開催されるんですか?」

 

「二週間後よ。一週間後が申し込みね。それがどうかしたの?」

 

二週間か。

 

「……織斑、行けるか?」

 

「え?うーん……やってみて本番にならないと分からないな。輝義は問題無いと思うけど」

 

俺の考えを読んだ織斑は少し考えてから答えた。

 

「……やってみるか」

 

「おう。やってやろうぜ」

 

「二人共何の話してるの?説明して欲しいんだけど」

 

シャルロットが質問してくる。

何ってそりゃ決まってる。

 

「……楯無さん、俺は参加します」

 

「俺も参加します。やられてばっかじゃ気に食わない」

 

キャノンボールファストに参加する事。

それを話していた。

 

各国が喧嘩を売ってくる?格上かも知れない?そんなもん知った事か。今までだって格上と文字通り殺し合いをして来たんだ。そんな俺達が負ける訳が無い。

 

「ちょっと!?あんた達本気で言ってんの!?恥をかかせようって来てんのよ!?」

 

鈴が俺達を心配して言うがそんな事の答えなんて簡単だ。

 

「……別に俺達が勝てばいいだけの話だろう?」

 

「なっ……!?……あんた達本当に馬鹿ね」

 

「会長、俺達は参加します」

 

「…………分かったわ。でも本当にいいのね?」

 

「……はい」

 

「はい!」

 

「それじゃそう言う方向で進めるわ。他の皆はどうする?さっきも言ったけど辞退も出来るわ」

 

楯無さんが箒達に聞く。

 

「参加でお願いします」

 

「勿論参加ですわ」

 

「馬鹿二人が参加するんだもの。私が参加しない訳ないです」

 

「僕も参加します」

 

「嫁にばかり格好付けられてはな。私も参加だ」

 

「お姉ちゃん、私も参加するよ」

 

まさかの皆参加だった。

 

「そう……分かったわ。それじゃ要件はこれで終わりよ」

 

こうしてキャノンボールファストへの参加が決まった。

 

 

 

 

 

俺はあの後、織斑と一緒に鈴に怒られた。

無茶苦茶ばかりするなとか、少しは考えなさいとか。

色々言われたが最後に、

 

「やるからには勝ちなさい。じゃないと許さないわよ」

 

と言われた。

俺達はしっかりと頷いた。

鈴は俺達を心配してくれての事だ。なんだかんだで鈴も優しいのだ。

 

 

 






駆け足感パナイ。


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112話目




そういえば病院で検査受けたんですけど、ガンとかではありませんでした。
胃と腸がほとんど活動していないらしいのとストレスによるものだそうです。ヤバかったのは小腸が腫れてるぐらいでしょうか?
薬貰って安静にしてます。

ご心配をお掛けして申し訳ありません。
お騒がせしました。





 

 

 

さて、キャノンボールファストなるものに参加する事になったのはいいが、問題が一つ。

 

「国家代表とどうやって戦って勝つか全く想像が付かないな……」

 

そう、国家代表クラスと戦った事が無いからどうすればいいか分からないのだ。

二人してうんうん唸っていると、織斑先生が現れた。

 

「どうした、二人共」

 

これ幸いと言った感じで相談してみる事に。

すると返ってきた答えはとんでもないものだった。

 

「お前達は何を言っている?特に大河、お前は福音に序盤は皆が居たとは言えその後単独で軍用ISを撃破しているんだぞ?それも二次移行した、性能を見れば第四世代に匹敵する奴をな。それに毎日じゃ無いが私と正面切って戦っている。大河は間違い無くどの国の国家代表よりも強いぞ?」

 

「……そんなまさか」

 

「いいや本当だ。織斑に関してもそんな奴と毎日の様に訓練したりしている。一対一でコイツと戦うなんて普通じゃ考えられない事をやっているからな。自分が知らないだけで二人共、篠ノ之やオルコット達も十分に強い」

 

「ちふ……織斑先生、それ本気ですか?」

 

「あぁ。私が軍の指揮官で部下のみで大河と殴り合うなら最低国家代表クラスを遠近で三人づつは欲しい。これで勝てるかどうかと言った感じだがな。代表候補生ならばどれだけ集めても足りんだろう。織斑も遠近1人づつが妥当なところだろうな。お前達は勝てる。断言出来るよ。どうだ?私がこれだけ言っても信じられないか?」

 

いや、ここまで言われたらもう信じるしか無いでしょうよ。

しかも言ったのは織斑先生だぞ?

これで信じられないならどれだけ自分に自信が無いんだって話だ。

 

「流石に信じますよ。これだけ言われたんですから」

 

「ならいい。ではな」

 

そう言って織斑先生は行ってしまった。

 

「なぁ輝義」

 

「……ん?」

 

「俺らってそんな強かったか?」

 

「……戦って来た相手が相手だからな。気が付かなかったんだろう」

 

「そっかぁ……取り敢えずアリーナの使用許可取って訓練しようぜ」

 

「……そうだな」

 

という事で訓練する事になった。

まぁいつも通りという事だ。

 

 

 

 

箒達には申し訳ないがキャノンボールファストが終わるまでは俺と織斑が一対一で訓練出来るようにしてもらった。

皆は結構あっさり納得してくれた。しかしその代わり終わったらしっかり相手してくれと言われた。まぁそれなら全然構わないからいいのだが。

 

 

 

 

キャノンボールファストまで残り13日。

それまでは織斑も俺もビシバシ行くとしよう。

いくら織斑先生に勝てるとお墨付きを貰ったとは言え怠けられる程強くは無いから。

 

 








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113話目

 

 

織斑先生に国家代表よりも実力があると言われてから既に一週間が経っていた。その間俺と織斑はアリーナで毎日訓練に明け暮れていた。

というのも実際に国家代表より強いとあの織斑先生から言われ、お墨付きを貰ったとしても不安だったので毎日放課後はアリーナで織斑や他の皆を巻き込んで訓練しているのだ。

 

俺と織斑の二人は国家代表と戦う部門と、専用機部門の二つに出場。

他の皆も専用機部門や訓練機部門で別れて出場する。

 

しかし問題が一つ。

俺以外の皆が一対多数戦という状況にまだ不安がある事だった。

普段、訓練をする時は一対一、一対多数を交互に行なっている。

しかし人数が多いので回転数がお世辞にも良いとは言えない。なので不安らしい。しかもキャノンボールファストはレースをしながらの高機動戦が主な戦い方になるらしく福音戦で一度経験しただけの皆だ。と言っても俺も本格的なものは無人機戦と福音戦の二回だけだが。

織斑先生との訓練は殴り合いが多いから高機動もクソもあったもんじゃない。

 

という事でレース形式ではないがアリーナの中を各々が出せる最高スピードで飛び回りながらの、バトルロワイヤルを行なっている。

そこに俺、織斑は一対一の訓練を交えている。

アリーナが使えない日は体力錬成。だいたいこんな感じで毎日を送っている。

 

 

 

今日も今日とて授業が終わると直ぐにアリーナに向かう。

そして着替えて訓練を始める。

 

 

 

「ちょっと!!ちょこまかちょこまか逃げ回るんじゃないわよ!」

 

「んなこと言ったってそういう訓練なんだからしょうがないだろ!!」

 

衝撃砲を撃ちながら追いかける鈴。しかし射撃武器が一つも無い織斑は逃げるしかない。あれは多分鈴が一瞬でも隙を見せたら攻勢に転じようとしているな。

 

「一夏さん!!もう少し周りを見た方がよろしくってよ!!」

 

「うぇ!?」

 

しかし鈴に気を取られすぎたのか横からセシリアの攻撃を食らう。

こうして改めて見てみるとそれぞれが持てる全ての技を使って戦っていてとても面白い。

 

 

 

 

「はぁぁぁ!!」

 

「甘いよ箒!!」

 

「それはどうだろうな!?」

 

箒はシャルロットと。

上段に構えた刀を振り下ろす……と見せかけそのまま受け止めようとしたシャルロット。

しかし俺が以前教えた瞬時に武装を格納するという技を繰り出した。そして受け止めようとしていたシャルロットはまさかそんな事をしてくるとは思っていなかったのだろう、驚いた表情を浮かべる。

 

「うっそ!?」

 

慌てて態勢を立て直そうとするも再び武器を展開した箒からの横薙ぎの一撃を食らってしまう。

 

「いつの間にそんな技を覚えたの!?」

 

「輝義に教えてもらったのだ!それをこっそりと練習していた!!」

 

二人も順調。

 

 

 

 

俺は俺で隙を見ては攻撃してくる皆からの攻撃を受け流し、反撃を加えたりと大忙し。

 

「もう!!なんで輝義はどんなタイミングで攻撃しても確実に完璧に対応してくるの!?」

 

「あいつを普通のものだと考えても無駄よ!!」

 

「さすが私の嫁だ!」

 

「おねーさん最近輝義君がどんどん人外になってる気がするわ!!」

 

シャルロットに文句を言われたり。

さらりと鈴に普通じゃないと言われたり。

楯無さんに人外と言われたり。

ラウラはいつも通り。

 

「その程度で俺を倒せるとでも!?もっと来い!」

 

俺も俺で挑発したりするのだが。

 

 

 

とまぁこんな感じで皆が入り混じり乱戦となる。

そんな感じで毎日を送っている。

 

 

 

キャノンボールファストまで残り一週間。

 

 

 

 

 

 



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114話目

 

 

 

なんだかんだで既にキャノンボールファスト前日になってしまった。

しかし今日は前日という事もあって訓練は休みだ。身体や機体の調整をする為や、連日の訓練の疲れを癒す為と言うのもある。疲れが溜まっている状態では自分の一番の実力を出すことは出来ないからな。

 

取り敢えず俺は虚さんの下に足を運んでいた。

毎日の訓練の整備に加え今日は機体の調整と整備を行ってくれている。

 

「……今日もありがとうございます」

 

「気にしないで。私がやりたくてやってることだから」

 

お礼を言うと笑いながらそう返された。

 

「……何かお礼をしたいんですが」

 

「え?別にいいのよ?」

 

「……いえ、普段からお世話になりっぱなしですから」

 

「って言われてもね……特に何も無いかなぁ」

 

「……そこを何とか」

 

「うーん……取り敢えず今は保留って事でいい?今度思い付いたら、って事で」

 

「……構いませんよ。何時でも行ってください。飛んでいきますから」

 

「ありがとう」

 

と話しながらも手を止めることはない。

それから整備と調整が終わるまで傍で見ていた。詳しくは分からないがやはり誰よりも正確で早い仕事だと思う。

 

 

 

 

 

「……よし、これで終わり、っと」

 

「……ありがとうございました」

 

「うん。それじゃ夕飯食べに行きましょうか」

 

「……はい」

 

作業が終わり二人で食堂に向かう事になり食事を摂って別れた。

その後は明日が早いという事もあって風呂に入って早めに寝てしまった。

準備と言ってもイージスの整備と調整しかなかったがそれも先程虚さんがやってくれたから俺が実際にやる事なんて無い。

 

という事で早めにベッドに入って寝てしまった。

 

 

 

 

 

朝、普段起きる六時よりも二時間早い四時に起きる。

確か開会式が八時だったはずだ。四時間の間でエントリーやらなんやらを済ませなければならない。

 

エントリーの締め切りが確か開会式の一時間半前までだった筈だ。

取り敢えず朝飯を食って制服に着替える。

こういう式典とかの時ってなんで制服を着なきゃいけないんだろうね。

この時期は特に暑いのに。一応夏服だけどそれでも暑いもんは暑い。

 

今日は織斑先生と山田先生が引率で再び俺は織斑先生の運転で専用改造車で会場である場所に向かう。

と言っても後部座席に乗って胡坐をかいて座っているだけだ。

 

「大河、会場まで暫くかかるから寝ていろ。朝も早かったからな」

 

「……すいません。お言葉に甘えさせてもらいます」

 

窓の外を眺めていると織斑先生に寝ていろと言われてしまった。

でも正直これは有難い。結構睡魔が襲ってきているもんだから辛かったのだ。

 

取り敢えず会場に着くまでは寝ていよう。

織斑先生が許可してくれた事だし。

そして目を瞑る。すると数分で寝てしまった。

 

 






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115話目






 

 

 

身体を揺すられて目を覚ます。

 

「大河、着いたぞ」

 

「……ありがとうございます」

 

そう言って車を降りると目の前には考えるのが馬鹿らしくなうような大きさのアリーナがあった。

 

「……デカいですね」

 

思わず声に出てしまう程。

 

「まぁ世界最大のアリーナだからな」

 

織斑先生がそう言った。

この大きさなら世界最大なのも頷ける。寧ろこれで違うと言われたら俺はどうすればいいのだろうか。

 

「着いて直ぐで悪いがエントリーに向かおう。早めに行かないと混むだろうからな」

 

「……分かりました」

 

織斑先生に付いていきエントリーをする。

それからは指示された控室で待機をする。今はなんだかんだで六時半。

取り敢えず着替えて……それから何をしようか。先にコースとなるアリーナ内でアップをしたいんだがそれは公平にする為に禁止されているんだとか。

しかも毎年コースの内容は変わるらしい。

 

着替え終わり控室で座っていると織斑先生が訪ねてきた。

 

「大河、入るぞ?」

 

「……どうぞ」

 

返事をした後に織斑先生が入って来る。

 

「もう着替えたのか。随分と早いな」

 

「……やることが無かったもので」

 

「そうか。あぁ、言っておきたいことがあってな」

 

「……何でしょうか?」

 

織斑先生が俺に言いたい事?

心当たりがない。

 

「ナターシャ・ファイルスを覚えているか?」

 

「……勿論です」

 

「あいつがIS学園の教師として来ることが正式に決定した」

 

おぉ!それは良かった!

あの時に教師としてこっちに来るとか言ってたから何時になるんだろうかと思っていたが漸くか。

 

「あいつ、米軍を辞めてこっちに来るらしくてな。手続きやら上層部の説得に時間が掛かったと言っていた。まぁあれだけの秘密を知っているんだから当然と言えば当然なのだろうがな」

 

「……それで、どの学年に?」

 

「それは決まってはいない。英語と実技の教師としてという事だから恐らく全学年となるだろうな。これであいつの仕事量の多さは膨大になったわけだ」

 

と言いながら織斑先生は実に楽しそうに、愉快だとでもいうように笑っている。

まぁ織斑先生自身の仕事量が他の先生に比べれば膨大だからな。

確か一学年主任と警備主任、寮長とか色々と役職があるからそれも当然だろう。

 

「あぁ、あと激励に来たんだったな」

 

「……激励、ですか?」

 

「あぁ。私もな、自分の弟子と弟をダシにされてあまりいい気分じゃないからな」

 

あ、これは激おこ織斑先生だ。

理由は俺と織斑を国家代表と戦わせる為に動いた奴らがよほど気に食わなかったんだろう。こんなに邪悪に笑う織斑先生初めて見た。

 

「大河、自分の好きなように、徹底的に、思う存分やって来い」

 

「……はい」

 

「よし。ならば時間まで大人しくしていろ。ではな」

 

そう言うと織斑先生は控室から出て行った。

そっかぁ……織斑先生怒ってるのかぁ……

 

 

これは下手な事したら後でとんでもない目に合うわ。全力で行こう。

 

 

 

 

へました時の想像をして身震いをしながら全力を出すことに決めた俺だった。

 

 

 

 







最近短いですね。
まぁ試合になったら長くなると思うんで許してください。




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116話目

 

 

 

織斑先生と別れてから暫くすると放送が流れ、出場選手の集合が掛かった。

その集合場所だが東側にある選手入場口だそうで離れているわけではないが早めに言っておいて損はないだろう。

 

 

 

という事でその集合場所にやって来たのだが。

まぁなんと人の多い事か。国家代表部門とは別に専用機持ち部門というものもあってか各国から集まっている。それに加えて訓練機部門もあって本当に人が多い。

国家代表部門以外はIS学園生徒しかいないんだがそれでも十分多い。

国家代表だけで数十人は余裕でいるだろうし。俺と織斑は国家代表と戦う訳か。

専用機部門は俺達一年生組八人に加えて楯無さん……は国家代表だから専用機部門じゃないのか。そうなると二年生に一人、三年生にもう一人いたはず。そう考えると十人。数で言えば少ないと思うかもしれないがIS学園だけでこの人数だから多い方だろう。

訓練機部門は全学年問わず参加している。

これ、合計したら百人以上余裕でいるだろ。

 

「お、輝義!」

 

そうして考えていると声を掛けられた。掛けてきたのは織斑でその後ろには箒達もいる。

 

「いやー、輝義だけ別の車だったからさ、駐車する場所が違ったから会えなかったんだよな。控室の場所も分からなかったし」

 

「……すまないな」

 

「いいって。別に責めてるわけじゃないし。それよりもさ……」

 

「……どうした」

 

「国家代表たちと戦えるって、凄いよな。今改めて考えればさ」

 

急に何を言い出すかと思えば……

まぁ確かに凄い事だけども。

 

「……それだけ俺達が世界に認められている証拠だ」

 

「そうだよな」

 

「……あぁ。だからここで一発派手にかませばなんかいいことがあるかもしれないな」

 

「それは考えすぎだろ。まぁ、何が何でも決勝まで行ってやる。そうなったら勝負だからな」

 

「……あぁ」

 

織斑と話していると後ろから複数の視線が。

何だろうと振り向いてみれば箒達がジト目でこっちを見ていた。

 

「一夏さんばっかり……」

 

「嫁、夫を構うのも仕事の内だと思うぞ」

 

そんなこと言われても……

俺にはどうすればいいのか全く分からんのですが。

 

「……すいません」

 

取り敢えず謝ることしか出来ない。

 

「もう……許して差し上げます。それにそろそろ並び始めないといけないのではなくて?」

 

「……そうだった」

 

セシリアに言われて周りを見てみると入場するときの列を作り始めている。

流石に並ばないとまずいな。

しかも俺と織斑は二人だけ一番最後に入場するからもっと後ろの方に並ばないといけない。

 

「……それじゃまた後で会おう」

 

そう言って箒達と別れて織斑と列の最後尾に並ぶ。

随分と長い列だな。三十分ぐらいかかるんじゃないだろうか?

 

と思いながら織斑と話しているとアリーナの方から何かを伝える放送が流れ列が前に進みだした。

箒達は一番最初に入場していったがそれでも大きな歓声が聞こえる。

まぁ皆美人だし仕方ないよね。

そして次に国家代表組の入場。流石は国家代表と言った所だろう。入場した時の歓声の大きさが凄い。

そしていよいよ俺達の入場。

 

「あ、お二人は此処で少しお待ちください」

 

いざ入場しようとしたら止められた。

え?国家代表と一緒に出ていくんじゃないの?

織斑もなんでや?って顔してるし少なくとも事前に知らされている事では無いんだろう。とするとその理由なのだが全く心当たりなんて無いし見当がつかない。

しかしその答えは流れる放送で分かることになった。

 

 

 

『さぁ皆さま!これで出場選手の入場が終わりました!……と思った方まだお待ちください!あと二人まだ入場していない方がおります!その二人は!なんと今を騒がせる男子二人!』

 

と言った瞬間に会場全体から雄叫びのような声が響き渡る。

こんな演出要らないと思うんですけど。胃がキリキリし始めたんですけど。今すぐここから逃げ出したくなって来たんですけど。

 

「なぁ輝義」

 

「……どうした」

 

「わざわざこんな演出する必要なくね?」

 

「……そうだな」

 

そうして会話しているうちにもどんどん上がっていくボルテージは留まることを知らず。

や聞こえてくる声の大きさはさっきの倍以上になっていた。

 

『それでは入場していただきましょう!織斑一夏君と大河輝義君です!』

 

と言われアリーナ内に入る。

するとどうだろうか。入った瞬間に先程とは比べ物にならないくらいの歓声が上がる。

 

そのまま誘導に従って並ぶ場所に行く。

織斑は恥ずかしそうに手を振っていたりしたが俺はどうすればいいのか分からずに平静を装って歩くことしか出来なかった。

 

 

『それでは皆様お静かに願います!』

 

静かにするように言われある程度静かになったところで漸く開会式が始まる。

まぁありきたりにお偉いさんたちからの有難い言葉や、選手宣誓等を行い

開会式は順調に進んでいく。

 

そして、

 

「それでは此処にキャノンボールファストの開催を宣言いたします!!」

 

そう宣言され開会式が終わる。

同時に再び大きな歓声が響く。

 

「やっと終わりか……こういうの話長かったりするから嫌いなんだよな」

 

「……もう終わったんだ。とっとと帰ろう」

 

そして退場していく。

今日はこれ以上何かあるわけではない。

明日から一回戦が始まる。俺と織斑は明日、明後日、明々後日すべてに参加する。

明日が代表候補生と訓練機部門。

明後日が国家代表部門で明々後日が国家代表とのガチ試合。

改めて考えればとんでもなく濃密な三日間になりそうだ。

 

 

今日は早めに寝ることにしよう。

 

 

 






次回は漸く本番……!
でも俺って多分戦闘描写が結構下手糞?な気がする……
頑張って書きます。


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117話目

 

 

開会式が終わってさぁ帰ろうと、ホテルに皆で向かおうと思っていたら取材かなんかに捕まってしまった。

えぇ……?俺に話を求めるの?明らかに間違いのような気しかしないんだけど。

 

「さて、幾つかご質問させて頂きますね」

 

「……どうぞ」

 

質問ってそんな答えられるような物が来るといいけどそうじゃなかったらどうしよう?

 

「今回の大会に関する意気込みをお聞かせください」

 

「……出場部門で自分の持てる実力を最大限発揮する事と、見てくださっている観客の皆さんや応援してくださっている人達を楽しませられるように頑張りたいです」

 

無難そうな答えを返しておく。

俺がかっこつけて下手なこと言うとどうなるか分からないし。

恥をかきたくないし。怖いし。

 

と、そんな感じでビビりながらもなんとかインタビューを終えてホテルに向かった。後から聞いた話だが織斑を含めて箒達全員が取材を受けたそうだ。

どっかの有名な雑誌の取材だったらしくセシリアは平然としていたがそれ以外の皆は恥ずかしがったりとしていた。

 

 

 

それは置いておいて。

ホテルに戻った俺達は自分が宿泊する部屋に荷物を置いて皆と合流し飯を食いに行く。

昼飯だがバイキングだから好きなだけ、いくらでも食える。

 

「輝義、一度に全部持って来ようとするな。もうごちゃごちゃじゃないか」

 

「……味に問題は無いぞ」

 

「そう言う問題じゃなくてだな……お代わりしに行けばいいだろう?」

 

「……そうだな」

 

「それに大きい声で言えないが少なからず女尊男卑思考の輩もいるだろう。それに見られたらまた面倒ごとに巻き込まれてしまうだろう」

 

山盛りに積まれた皿を持ってテーブルに戻る。

箒は好きなだけ食べてもいいがもう少し考えろと言われてしまった。

 

「妙な所で面倒くさがりと言うか子供と言うか……」

 

「輝義さんはそう言う所が結構ありますからね」

 

席に着く。

ラウラはシャルロットと一緒に食事を取りに行っている。

此処に来た瞬間にテンションが上がったラウラはシャルロットを連れ回していると言った方がいいだろう。

織斑は何故かシェフの人と楽しそうに話しているし。あいつ何してんだろう?

 

「輝義君随分と持って来たわね」

 

「輝義それ全部食べるの?」

 

「……これぐらい余裕。なんならお代わりの予定あり」

 

「あんたの胃袋ってブラックホールか何かなの?食べ過ぎると後で痛い目見るから気を付けなさいね」

 

「……大丈夫だ」

 

「大丈夫っていう奴ほど後でそうなるもんなのよ」

 

楯無さんと簪、その後に鈴が戻ってきて残りの三人は帰って来るまで時間が掛かりそうだという事で先に食べることに。

 

「これ美味しいわね」

 

「お姉ちゃんこれも美味しいよ」

 

 

美味い。これは美味い。

最初に取って来た皿の分は瞬く間に無くなってしまった。

これはお代わりしなくては。

 

「はっや……」

 

「よくそんな勢いで食べられますわね……」

 

皆が驚いているが食えるのであればいくらでも食う。

学園の食堂や皆が作るものも美味いが此処は此処で違ったものがある。

 

 

「いやぁ……本職の人達ってすげぇな!」

 

何故かキラキラした顔で戻って来た織斑。

その手にはしっかりと皿を持っている。

 

「……どうした」

 

「いやさ、調理方法とか色々聞いてたんだけど驚かされてばっかりでさ!今度俺も実践してみなきゃな!」

 

「……良かったな」

 

シェフとの料理談義に花を咲かせてご満悦の織斑だった。

それからも嬉しそうに楽しそうに話す織斑は本当に幸せそうだった。

 

 

 

「た、ただいま……」

 

「バイキングというものは凄いな!」

 

最後に戻って来たのはラウラ、シャルロットコンビ。

何故か疲れ切っているシャルロットとは対照的にはしゃぐラウラ。

何となく事情は察した。

テンション上がってあっちっこっちに連れ回されたシャルロットと連れ回すラウラ、と言った感じだろうな。

 

「嫁!チョコレートがな、滝みたいに流れていたんだぞ!それと綿あめも自分で作れるし色んなものがあってな!」

 

「……良かったな」

 

「うむ!」

 

楽しそうに話すラウラはとても高校生とは思えないぐらいの純粋さだった。

対してシャルロットは、

 

「も、もう無理……後は皆お願い……」

 

普通に疲れていた。

どんだけ連れ回したんですかラウラさん。

気を利かせた鈴がシャルロットに料理を持って来ていたがシャルロットは物凄い感謝していた。

ラウラに掛かっりきりで自分の分なんて取っていなかったらしいからな。

 

 

 

それからはお代わりをしたり満足したら大会について話したりとそれぞれ楽しんでいた。

俺は最後の最後までずっと食ってましたがなにか?

 

 

今日は開会式で終わりだ。

明日から本格的に始まる。

それに備えて今日は解散となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝、起きると同時に今日から本番が開始されるという事を思い出した。

 

「輝義さん、起きていますか?」

 

着替えているとセシリアが訪ねてきた。

 

「……起きている」

 

「そうですか。それなら着替えたら昨日のレストランの前でお待ちしています」

 

「……分かった」

 

皆を待たせるのも悪いし早めに準備をして向かおう。

 

 

 

 

「……すまない。待たせた」

 

ホールに着くと皆はもう待っていた。

 

「大丈夫よ。それじゃ行きましょうか」

 

その後は朝飯を食って各人準備をする為に部屋に戻った。

俺達の参加する専用機部門は十時開始だ。

それまでは機体のチェックとかをやるので今は七時だがあっという間に時間が来てしまうだろう。

 

といっても俺は機体の整備が出来ない。

なのでやることが無い。虚さんは生徒会の仕事をやらなければならず今日の午後に合流する予定だ。だから既に虚さんが万全に整備をしてくれている。

 

 

 

 

 

 

 

そして時間になった。

いや、まだ九時半なのだがレースが始まるのが十時だからもう向かわないと間に合わない。

 

「お!輝義!一緒に行こうぜ!」

 

「……あぁ」

 

途中織斑と合流してアリーナに向かう。

 

「いよいよだな……!」

 

「……あぁ」

 

「絶対に勝つ!輝義も本気で来いよ」

 

織斑はやる気十分。

俺は緊張してます。こんな大勢の前でなんて学年別トーナメントぐらいしか経験ないし。こっそり観客席を見てみたらもうすんげぇの。

学園のアリーナもデカいけど此処は更にデカいから観客の人数が比じゃない。

席に座れない人は通路とかに立って見ているし。

 

 

 

 

『これより専用機部門のレースを開始します。選手の皆様はスタート位置についてください』

 

放送によりスタート地点に並ぶ。

楯無さんを除いたIS学園専用機持ちが横一列に並ぶ。

 

『それではレースを開始します』

 

いよいよ始まる。

あぁ、緊張して来た……

 

『五秒前。四、三、二、一、スタート!』

 

カウントダウンで一斉に飛び出した。

 

 

 

これで白熱したレースが開始された。

 

 

 






また今回もレース本番描写を書けなかった……
長引きすぎぃ!

でも次回は本当の本当に本番です。



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118話目





 

スタートしてからまだ十数秒。

それだけの時間で会場は大盛り上がりだった。

 

 

 

決められたコース内で決められたルールはあれど武装を使っての妨害は認められている。

 

それがこのキャノンボールファストと言う大会だった。そうなれば皆は色んな手段を使ってくるわけで。それでおのずと狙われてくる人間も決まってくるわけで。

 

それは先頭集団に狙いが絞られている。

特に俺なんかはアホなんじゃないかと思うぐらいの弾幕にさらされている。

 

「なんで俺ばっかり狙うんだ!?」

 

「そりゃあんたが一番厄介だからに決まってんでしょ!」

 

俺が悲鳴を上げれば鈴が当然だと言い返して来た。

そんな馬鹿な!?俺ってそこまでなの!?

 

「それにしても狙いすぎじゃないのか!?」

 

「普通よ普通!一番やばい奴を先にやるのは戦いの常道でしょ!」

 

「申し訳ありません輝義さん!」

 

謝りながらも正確な射撃で狙ってくるセシリア。

今思ったがこのレースって射撃できる武器を持っている奴の方が明らかに有利だろ!

こんなん近接武器しか持ってない俺と織斑は明らかに不利。

 

 

と言うかもう先輩二人も完全に俺をターゲットにしているんですが。

ふと周りを見てみるとシャルロットは皆から離されていた。

 

「……シャルロット、大丈夫か?」

 

何かあったのかと心配してプライベートチャンネルで連絡を取ってみた。

 

「うん、大丈夫だよ?どうかした?」

 

「……いや、随分と離されているから何かあったのかと」

 

「あぁ、それが僕の機体って第二世代でしょ?だから皆と速度差が離れているから置いてかれちゃったんだ。なんとなく分かっていた事だけどね」

 

「……そうか」

 

「だから気にしなくて大丈夫だよ?心配してくれてありがとう」

 

「……そうか」

 

「うん。遊覧飛行って訳じゃないけどそんな感じで楽しむから大丈夫だよ」

 

「……分かった。無理はするなよ」

 

「あはは。輝義は心配性だなぁ」

 

と、シャルロットは笑っていた。

本人が大丈夫と言うのなら大丈夫なんだろうが心配しておいて損をする事は無いと思う。

 

しかしそうして会話している間もどんどんレースは進んでいく。

巨大なアリーナとはいってもISの飛行速度からすれば大した距離ではない。

なのでコース自体は曲がったり上がったり下がったりと様々だ。

 

その中で戦いながらゴールを目指すという感じだ。

 

 

 

 

 

今の順位を見てみよう。

まず俺が先頭、そのすぐ後ろに鈴とセシリアと先輩一人。

それに続いて織斑、先輩が一人。そのまた後ろにラウラ、簪、箒。

更に後ろにシャルロット。

 

織斑は先輩と戦っている。

その先輩も流石と言うべきだろうか、強くなっている織斑相手に互角の勝負をしている。いや、それどころか若干押しているのは気のせいではないだろう。

 

セシリアと鈴は、先輩と一緒に俺に対して空気砲?やらビームやら実弾やらをバカスカ撃ってくる。

俺はそれを全て斬り落としたり避けたりで防ぐ。展開装甲は全て直角に曲がったりすることがある為に飛行制御に回している。

一回二回ぐらいなら自力で何とでもなるがそれ以上になって来ると戦いながらと言うのもあって難しい。それが複数の相手となれば尚更。

 

ラウラは機体に積まれている武装の重さの影響もあってか速度は遅い。

箒は機体自体に乗り始めたのが遅く、本人の操縦技術というものもあるからか遅れ気味だ。

簪はラウラと箒の戦いがあって思うように前に進めていない。ラウラが上手く足止めをしているからだろう。

 

シャルロットは先程の会話通り。

なんかよく分からないが応援されてそれに笑顔で手を振って答えている。

そして振られた手に喜んでいる観客たち。

 

 

 

 

取り敢えず俺の現状はと言うと、

 

「待ちなさい!」

 

「輝義さんは何時も私から逃げますのね!」

 

「一年坊主!くたばれぇ!」

 

「おぉぉぉぉ!!??」

 

追いかけられていました。

金髪の先輩はドカドカ撃ってきながらものすげぇ顔で追っかけて来る。

三人ともそりゃもう撃ってくる。

俺は近接武器しかないから何もできない。いや、射撃武器が無いわけではないが今回は使えない。

 

とは言っていられないのがこの試合。

何とかして手を考えながらコースを進んでいく。

 

 

 





中途半端だけど許して!!
直ぐに投稿するから!



感想、評価等くださいな。


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119話目

 

 

当たり前だが後ろから銃弾やビーム、空気の砲弾が俺に目掛けて飛んでくる。

それを避けながら前に進む。

後ろを見てみれば三人とも俺を攻撃しながら互いに戦っている。

何とも器用な事だ。

 

と言っている場合では無くてだな。

どうにかしてあの三人の足止めをしないとこのままじゃジリ貧だ。

 

しかしいい手は思い付かず。

そのまま進んでいくと前に直角に曲がるコースが出てきた。なんだあれ?どう考えたって減速するしか曲がれないだろうになんだってあんなものをコースに混ぜたんだ?

 

ふとそこでいい考えが思い付いた。

あそこで敢えて瞬時加速をすれば皆は速度を落とすだろうから引き離せるんじゃないだろうか?

我ながら無茶苦茶な事を考えたな。どう考えたって失敗すればコースアウト間違いなしだろうに。

 

しかし此処までくればもうやってしまうしかない。

やるのならばタイミングだが早すぎてもダメだし、遅すぎれば制御が利かなくなる。

 

どんどん迫って来る曲がり角。

しかし速度は緩めない。

 

「ちょ!?あんたそのまま突っ込む気!?」

 

「あいつ馬鹿なんじゃねぇのか!?」

 

後ろから何か言っている声が聞こえるがそれを気にするほどの余裕はない。

そして一番いいタイミングが来る。

思いっ切り瞬時加速を行い、突っ込む。

しかしこのままではいくら展開装甲があるとはいえ曲がることなど到底できはしない。だから俺は機体を進行方向に無理矢理向けてそのまま再び瞬時加速をした。

 

「うぉぉぉぉ!!!!」

 

ちょっと体に負担がかかるが、問題はない。そのまま減速した皆を置いて進む。

 

「あのバカ!なんて無茶すんのよ!?」

 

「命知らずにもほどがありますわ!」

 

これで大きく距離を取れた。

あとはこのままゴールすれば……!?

 

「輝義ぃぃぃぃぃ!!待ちやがれぇぇぇぇ!!!」

 

「今度はお前か!?織斑!」

 

なんとなく嫌な予感がして後ろを振り向いてみれば攻撃を振り切って俺に追い付いた織斑が思いっきり剣を振りかぶって来た。

 

「この野郎!先に行きやがって!」

 

「しょうがないだろう!レースを知らないのか!?」

 

「知ってるわ!」

 

と、大声で怒鳴りながらも剣を互いに振るっていた。

織斑も毎日の訓練をしているお陰か中々に腕が上がっているようでいい一撃を放ってくるが俺には届かない。

 

「いい一撃だ!でもまだまだだな!」

 

「!?ぐっ!!」

 

言いながら剣を受け止めた瞬間に廻し蹴りを食らわせる。

すると織斑は飛ばされながらもスラスターを吹かして俺に向かってくる。

 

「まだまだぁぁぁぁ!!」

 

「掛かって来い!!」

 

 

 

 

 

 

 

速度を維持しながらの攻撃の応酬。

しかしそれは長くは続かない。何故ならこれは何度も言うがレースだ。ゴールが見えて来る。

 

「「おおおおおおお!!!!」」

 

それでも剣を振るう事は辞めない。

もう順位なんて関係無い。こんなことでも男の意地のぶつかり合いなのだ。速度は落ちるどころかむしろ加速していく。

 

 

 

『ゴーーーール!!!』

 

 

 

クソッ!!!決着がつかなかった!

 

「輝義!試合が終わったら続きだからな!」

 

「分かってる!」

 

キャノンボールファストが終わったらまた再戦すると言って終わった。

その後に続いて鈴、先輩、セシリアと続々とゴールしてきた。

 

 

 

 

『ローラン選手、ゴール!』

 

最後にシャルロットがゴールをしてレースが終わった。

最終的な順位はこうなった。

 

一位 織斑

二位 俺

三位 鈴

四位 先輩

五位 セシリア

六位 先輩

七位 簪

八位 ラウラ

九位 箒

十位 シャルロット

 

しかし二位になるとは。

ゴールしたタイミングが全く同じだったからビデオ判定になったんだが、ゴールする寸前に俺は刀を振るった後、織斑は振り上げた時にゴールしていた。

それでスローモーションで見たら織斑の剣が先にゴールに入っていたから織斑が一位になった。戦うのに夢中でそんなこと考えてもいなかったから驚いたもんだ。

まぁ文句は無いし俺も織斑も納得しているからそれでいいという事になった。

 

この後は表彰式だそうで面倒だからスーツのまま参加することにした。

だって着替えるの大変なんだもの。

 

 

 






すぐに投稿すると言っておきながらこのざまです。
申し訳ない。



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120話目




なんでか一昨日、昨日と投稿していない……
二日間もあったんだからクオリティは高いよね?とお思いの方。
間違いなくそんなことはないと断言できる。(気がする)

とにもかくにも書いて行きます。
毎日投稿目指して頑張ります。(毎日投稿するとは言ってない)



 

 

 

さて、レースも終わり後は訓練機部門のレースが終わるのを待つのみとなったが、人数が多く、レース数自体も三レースある。

これが全生徒参加強制だったら丸一日じゃ終わらないだろう。二、三日かかりそうだ。

 

後は終わるのを待つだけとなっているがその間はしっかりと訓練機部門のレースを見学することにしている。

今は十一時半。早ければ十二時半にはレース全部が終わって表彰式となるだろう。

 

 

 

まず、第一レースが始まった。

残念ながらこの訓練機部門には基本的に二、三年生の操縦者課程履修者を優先的に参加させている為、一年生は出ていない。殆どが技術面で劣っているという事と見て学ぶこともあると参加しない一年生が多い。だからか毎年、専用機持ちや代表候補生を除いて参加することはないそうだ。

しかもこのレースは三年生の操縦者課程生徒にとって重要なものであるらしく、これから就職試験や進学が掛かっている彼女たちからすれば最後の見せ場とでもいうべき場所だそうだ。

確かに学年別のタッグマッチはラウラの事もあって一回戦しか行われず、自分の実力を見せるには不十分だっただろうから仕方ないのかもしれない。

 

 

そして見学するのだが、態々VIP待遇の部屋に案内されてそこで見学する事が出来ると言うのだ。まぁ確かに此処は全体が良く見えるしいい場所なんだろうけどこんな待遇を受けられるとは思っていなかった。

別に観客と同じような感じでも俺は構わなかったんだが。

騒ぎが起こったりするから絶対に無理そうではあるけど。面倒事も振りかかってきそうだし。この大人数で俺や箒達に悪意があるやつ居ない訳がない。

それを考えるとこうなるのは自然か。

 

 

 

 

そして見ているのだが、セシリア達はそれぞれ意見を言いながらレースを見ている。

 

「あの方、機体制御がとても上手ですわ」

 

「あぁ。あの人も直角に曲がる場所を最小限の減速で留めて曲がっている。スラスターの出力制御もかなりのものだな」

 

「そうですわね。普通なら直角に曲がる所に瞬時加速をして突っ込むなんてことしないですわ」

 

セシリアは俺の方を見て言ってくる。

俺は何も言えないので目をそらすしか出来ない。

 

「ふふ、もう許してあげようよ。それよりもほら、あの人も凄いよ?」

 

「むぅ……シャルロットさんは甘いですわ」

 

助け船を出してくれたシャルロット。

セシリアは文句は言いつつもレースの方に意識を戻す。

 

「輝義、この大会が終わって学園に帰ったら再戦だからな。レース自体は決着が付いたけど勝負はまだだからな」

 

「……分かってる。言われなくてもそのつもりだ」

 

織斑は俺と再戦を望んで何度もそう言ってくる。

それよりも最近織斑のバトルジャンキー化が深刻な気がするんだが気のせいだろうか?

…………いや、あの織斑先生の弟だしなぁ……!?い、いまなんか首筋が凄いぞくりとしたぞ!?なんだまさか、いやもうこれ以上考えるのは止めよう。絶対に後で後悔する気がする。

それよりも。

 

「……今は明日の事を考えるのが先だろう」

 

「おう。分かってるよ」

 

「……ならいい」

 

「輝義」

 

「……なんだ」

 

「明日、表彰台は俺たち二人で二つ取ってやろうな」

 

「……勿論だ」

 

明日の国家代表部門に向けて俺と織斑は決意を改めた。

 

 

 

 

 

 

さて、訓練機部門も終わり、表彰式となった。

と言うかこれだけ時間があったんだから着替えればよかった。織斑も皆も着替えてるし。

俺だけスーツのままは流石に恥ずかしい。

 

「輝義、なんでまだスーツを着たままなんだ?」

 

「……着替えてないからだな」

 

「普通着替えるだろ」

 

織斑にですら言われてしまった。

どっちかって言うとお前はこっち側の人間の気がするんだが?

 

「あんた、本当に馬鹿ね……でももう時間が無いから諦めてそのまま出なさい」

 

「……分かっているさ」

 

「明日はちゃんと着替えるのよ?」

 

「……分かった」

 

鈴には何故かオカンを感じてしまった。

うーむ。何故だろうか?肝っ玉母ちゃんになる気がしてならない。

 

『それでは選手の皆様、表彰式を行います。該当する選手の方は先程指定された場所へ。それ以外の選手の方々は出場部門ごとに整列をお願いします』

 

放送が流れて集合が掛かる。

 

「ほら、二人とも行くわよ」

 

「おう」

 

「……あぁ」

 

取り敢えず指定された、と言っても表彰台の所なんだけども。

そこに向かうと、係の人が居て順位ごとに並ぶ。

最初に表彰されるのは俺達専用機部門。

 

『それでは表彰式を始めます。先ずは専用機部門から始めます。順位発表から行います』

 

『第三位 鳳 鈴音選手!』

 

「「「「「「「ワァァァァァ!!!!」」」」」」

 

名前が呼ばれると大きな歓声が響き渡る。空気が揺れるのがよく分かるぐらいの大きさだ。

そして呼ばれた鈴は大きく手を振って表彰台に上がる。

 

『第二位 大河 輝義選手!』

 

「「「「「「「ワァァァァァ!!!!」」」」」」

 

俺の時も大きな歓声が上がった。

いや、なんか恥ずかしいな……

しかも表彰台が思ったよりも高い。これ物凄く目立つじゃん

 

『第一位 織斑 一夏選手!』

 

「「「「「「「「「ワァァァァァァァ!!!!!」」」」」」」」」

 

織斑は優勝者とあってか俺と鈴以上の歓声が上がる。

織斑は恥ずかしそうに笑いながら手を振って台に上がる。

 

 

『それでは表彰を開始いたします』

 

その放送の後はまたしてもお偉いさんの有難い(有難くない)お言葉を貰ってメダルと賞状を貰った。

まぁありきたりなオリンピックで見るような表彰式と変わらないものだった。

その後は訓練機部門も同じ事をして終わり。

ただ、その後の記者達がもう凄かった。各部門の受賞者にひっきりなしに押し寄せて来るもんだから質問に答えたりするのがもう大変だった。

適当な所で逃げてきて正解だったぞあれは。下手したら未だに拘束されていたかもしれない。

助けに来てくれた箒達に感謝しなくては。まぁそれはそれで俺達の関係を疑った記者がまた猛攻を仕掛けてきたのは仕方ないのだろうか?

 

 

 

あれからホテルに戻った俺達は、風呂に入りそして着替えて飯を食った。

なんだかんだでかなりの時間を拘束されていたからホテルの戻ったのは五時半だった。

そりゃもう腹は減って仕方が無かったので取り敢えず食って食って食いまくった。

その後は昨日と同様、俺と織斑は明日も明後日もあるという事で解散した。

まぁその後はやることも無く明日に備えてとっとと寝てしまった。

 

 

 







遅れて本当に申し訳ありませんでした。



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121話目




そう言えば120話突破してました。
早いもんですね。
このまま頑張っていきます。どうぞ皆さま応援よろしくお願いします。


 

 

 

気が付けば朝になっていた。

今日は国家代表部門への出場か。緊張しているはずなのに気分が高ぶっているのは何故だろうか?

 

まぁいい。昨日と同じで十時から第一レースが始まる。それまでに準備を整えておかないと。機体の方は整備を出来る限り自分で行った。虚さんの整備に比べれば殆ど比べるまでも無いものだがやらないよりはマシだろう。

今日のレース後に虚さんがこっちに来てくれるからその時に明日に向けての整備をしてもらわないと。

 

「輝義、おはよう。飯に行こうぜ」

 

「……あぁ」

 

着替えてレストランの前に行くと既に織斑達が待機していた。

 

「おはよう、輝義」

 

「おはようございます、輝義さん」

 

皆とあいさつを交わしながらレストランに入って行く。

そして皆と飯を食ってアリーナに向かう。

箒達とはここで分かれる。皆は観客として昨日案内されたVIPルームで観戦するそうだ。やはり織斑先生達は仕事が忙しいらしく明日の試合しか見に来る事が出来ないそうだ。まぁそれでも見に来てくれるだけで十分。

 

 

 

 

 

「なぁ輝義」

 

「……どうした」

 

「絶対に決勝に行って勝とうな」

 

「……勿論だ」

 

織斑と控室で待機しているとき、改めて二人で決意を口にする。

そもそも今日と明日は売られた喧嘩なのだ。その喧嘩を買って負けましたなんて言えるわけが無いし男としてどうなんだと思う。だから今日も明日も国家代表を叩き潰す。

 

 

 

 

 

 

十時になり第一レースが始まった。

俺が参加するのは第四レースで織斑は第六レース。各国の国家代表が集まっているからそれ相応に人数は多い。

国家代表部門は各レース内で上位三名を次のレースに進ませるというトーナメント方式を取っていた。全部で六レースでその中から十八名が次に駒を進める事が出来る。

最初の第一レースから昨日とは比べ物にならない技量のレースが繰り広げられていた。

国家代表の人達は第三世代機ではなく第二世代機を使っている国家代表の人達も多いがそんなことは全く意味をなさない。それを簡単にひっくり返すほどの技量を持っているのだ。

そんなレースを見ながらの待機時間。恐ろしく感じているがやはりあんな人達とレースを、明日は試合を出来ると言うだけで楽しくなってしまう。

 

 

 

 

 

『第四レースの参加選手の皆様はお集まりください』

 

暫くすると俺の参加するレースが呼ばれた。

すると織斑は俺に向かって、

 

「輝義、勝って来いよ」

 

「……あぁ」

 

激励をしてくれた。

箒達も見ているしこれは何が何でも負けることは出来ないな。

 

放送に従ってその場所に行くと代表の人達はすでに集まっている。

そう言えば楯無さんも国家代表部門のはずなんだが朝から顔を見ない。

どうしたんだろうか?参加はしていると思うから大丈夫だとは思うけど。

名前は第五レースの所にあったから多分映像で見れるだろう。

 

 

「それでは皆さん、スタート位置まで前進してください」

 

係の人に従ってそのままスタートラインに着く。

あぁ、始まるぞ。

 

『第四レースを開始いたします』

 

『五秒前、四、三、二、一、スタート!』

 

 

 

 

スタートの合図と同時に一気に飛び出す。

そして国家代表との激突が始まった瞬間だった。

 

 

 






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122話目



イチャラブ書きたくなってきた……


 

 

 

「うぉぉぉぉぉぉ!!!???」

 

俺は文字通り絶叫しながらコースを進んでいた。

それは何故か?後ろを見れば分かるんだが、国家代表の皆さんがすんごい顔で追っかけて来るからです。

 

いやまぁ一位になったのはいいんだけどさ、負けてたまるかっていう気迫と言うかもうそう言うのが半端ないったらありゃしない。

撃ってくるし近くに来れば斬りつけてくるで攻撃の嵐を捌くので精一杯。

しかも飛んでくる弾が殺意高すぎて困る。どうしてこれだけ動いているのにこんなに正確に飛んでくるんだろうか?

 

なにか言っている気がしなくも無いがプライベートチャンネルとかを使って会話が出来ないから全く分からん。

 

「本当にISに乗って一年も経ってないのあれ!?」

 

「どう考えたって普通じゃないでしょ!」

 

と言うか反撃が出来ない。下手に反撃したら追い抜かれそうだしそうなると決勝に進めなくなるわけで。

だから決勝に行くまでは反撃禁止にしました。

だって機体の性能差とかもあるのにも関わらず当たり前のように追いすがって来る。しかも差を開けての一位じゃないから下手にスピードを落とすと完全に抜かれてしまう。それだけは何とか避けなきゃいけない。

 

 

何とか必死になって飛ぶもそれについてくる皆さん。

俺は人外じゃなかった!俺は人外じゃなかったんだ……っ!!

得も言われぬ喜びを感じるがそうじゃなくて。

 

必死に曲がったり上昇したり下降したりして攻撃を避ける。

あの謎すぎる直角コースもなんとか曲がり切ってゴール目前。

しかし後ろからここぞとばかりに速度を出してくる皆さん。

 

此処まで来て負けてたまるか!!

 

個別連続瞬時加速をドカドカかましながらゴールラインを通過する。

なんとか一位になったが、こりゃ二回戦で負けそうな気がするぞ……

 

 

 

 

 

いや、今日はいい経験をした。

何がって国家代表の技術を間近で見れた事だろう。

と言っても予想通り二回戦で負けてしまったんだけれども。何だあれ可笑しくない?こっちは全力で速度出してるのにそれに追い付いて攻撃してくるしそんなんなのに余裕あるし。

織斑先生どういう事ですか?あの人達はバケモンですか?

 

織斑の方だがこっちも二回戦敗退だった。

頑張ってはいたが駄目だったようだ。個人的に意見を言わせてもらうとすれば所々で操縦が疎かになっているときがあった。そんな隙を見逃すはずも無く、と言った所だろうか。

 

 

そして楯無さんだが決勝まで勝ち進み、結果は四位だった。

それも三位の人とは僅差だった。流石は楯無さんである。

俺達二人は戦闘力に極振りしすぎたのだろうか?そう言う訓練しかしてないしな。今度からこういう練習もするか。

 

その後は表彰式を行って解散となった。

 

 

 

「輝義さん一夏さん、お疲れ様でした」

 

戻ると箒達が待っていた。

 

「……すまない。負けてしまった」

 

「謝ることはありませんわ」

 

「そうだぞ。全力を尽くしたんだ。そんな顔するな」

 

「ほら一夏もそんな顔してないで笑いなさいよ」

 

「あぁ……ふぅ。ありがとな」

 

そして楯無さんは、

 

「あとすこしだったんだけどねぇ。惜しかったわ」

 

「お姉ちゃん、お疲れ様」

 

「ありがと簪ちゃん」

 

悔しそうにしながらも簪と笑って話していた。

 

そうだな。くよくよしていても仕方が無い。

明日は試合があるんだ。それには絶対勝つ。

 

 

 

 

その日も明日の試合があるという事で飯を食べて早めに解散。

風呂に入って早めに寝ることにした。

 

 

 

 






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