幼女に転生したのでドヴァーキンに会いにいく話 (Leni)
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幼女に転生したのでドヴァーキンに会いにいく話

 PCゲームやってたらPCゲーム世界に転生した。

 いきなりすぎるだろうが、それは話の大前提なので受け入れて欲しい。つまらない前世語りだがそんなに長くないので受け入れて欲しい。

 

 前世は日本の大学生。趣味は洋ゲーだった。

 学生だから金が無くて、買うゲームは発売からしばらく過ぎてからのセール品。

 でも古いセール品も悪くない。なにせMODが出てるから。英語とか俺読めないから、日本語化MODがなきゃプレイできないからね。

 で、転生したPCゲームというのが、そのセールで買ったMODの入れられるゲームだ。

 このゲームは(MOD作り放題入れ放題という意味で)自由度が高く、人気のゲームだった。流行りのオープンワールドRPGだ。

 フル3Dのゲームだったが、女キャラクターが致命的に可愛くなかった。北米産のゲームの宿命か(偏見)。なので俺は、ゲームを開始する前に美形化MODの類を片っ端から導入してプレイを開始した。

 

 ところで俺はロリコンである。ゲームの操作キャラは男の尻を長時間見ていたくないという理由で女キャラにするのが日常だったし、幼女キャラが選べるなら迷いなく選んでプレイヤーキャラにしていた。

 しかしこのゲームは女キャラを主人公に選べるが、子供は選べない。だがMODは神である。有志によって製作された幼女種族MODを導入すれば、幼女をずっと眺めながらプレイが可能になるのだ。

 

 俺は幼女を操作しながらこのゲームを思いっきり楽しんでいた。

 だが、ある日突然俺はゲームの中の世界に入り込んでいた。自分の操作していたキャラクターになって。

 ああ、転生という言葉は適切ではなかったかもしれない。転移だな。ただ、幼女のゲームキャラクターになっていたがな。

 これはジャンルとしては異世界転移か? ゲームキャラで異世界転生か? よくわからんが日本人の俺の身体が失われたのは確かだった。だって向こうでの最後の記憶、火事だったもの。

 

 そういうわけで俺は、TES――The Elder Scrolls V: Skyrimの世界で今日も生きていく。

 

 

 

 

 

 

 ここはTESの世界だが、時間軸としては今現在、TESの五作目SKYRIMの時代だ。ドラゴンがスカイリムの大地を蹂躙し、ドヴァーキンがそれを討伐して回るそんな混乱の時代。帝国とストームクロークが内乱を続ける戦乱の時代。

 そんな時代のスカイリム地方で、ゲームキャラ故か永遠に歳を取らない幼女先輩こと俺は内乱には手を出すことなく、村々を襲うドラゴンや巨人や軍人崩れの山賊を退治して首長から金をせびり日々の糧を得ていた。俺ってこう見えても有名人なのよ。

 子供の体躯ながら全身鎧に身を包み、危険な野獣を巨大な両手斧で叩きつぶす謎の戦士。付いたあだ名はウサミミ。

 顔を隠すフルフェイスの黒檀の兜のてっぺんから、獣の耳が覗く謎の人物ってな。そう、俺の頭にはウサギの耳が生えている。こんな生物、タムリエルのどこを探しても俺しかいない。探したが俺しかいなかった。そりゃそうだよな。MODで主人公限定種族として追加してたんだもん。

 

 全身鎧にフルフェイス兜で気分はどこぞのゴブスレさんだが、頭から生えるウサミミで雰囲気台無しである。あ、あと声も可愛かったや。デフォの女ボイスは幼女に相応しくないと、主人公の音声MOD入れてたからね。

 

 そんな台無しウサミミの俺は、久しぶりに首都ホワイトランへと訪れていた。普段は防備の薄い村々で害獣退治とか山賊退治とかしているのだが、今日はこの都市に用事があってやってきた。

 向かう先は、酒場。酒を飲みに行くわけではない。幼女先輩は酒を飲まないのだ。人前では。

 今日ここに来たのは、情報屋に用があったからだ。現実となったSKYRIM。ゲーム中にいなかった人物が大量にいて、ここホワイトランも千単位の人口で賑わっている。情報屋なるものを営んでいる怪しい人物もその中にいた。

 こう見えてもかなり長く生きている。そういう人物への伝手も俺はしっかり持っているのだった。

 

「よう、ウサミミ。今日もご機嫌な格好をしているな」

 

「本当はドレスでも着飾りたいところだよ」

 

「ははっ、そうしたら明日にはホワイトランに妖精現わると大騒ぎだ」

 

 俺は蜂蜜酒を頼んで、席に座る。自分で飲むためではない。情報屋に奢る分だ。

 

「おおすまんな。蜂蜜酒が俺の生き甲斐よ」

 

 情報屋が酒を飲み干すのを待って、俺は話を切り出した。

 

「で、見つかったのか」

 

「おう、ばっちりよ」

 

「ヤツは今どこに?」

 

「なんでもリーチのマルカルスで捕まって鉱山入りしたとか」

 

「おお、そんな時期か……」

 

「時期?」

 

「いや何でもない」

 

 思わせぶりなこと言ったけど、時期とかねえや。だってこれオープンワールドだもの。

 

「しかし何だってドラゴンボーンの居場所を探してるんだ?」

 

 情報屋が疑問を一つ俺にぶつけてきた。

 そう、俺はSKYRIMの主人公ことドヴァーキンの居場所を見つけ出そうとしているのだ。

 何故かというと――

 

「ちょっと仲間になろうと」

 

「仲間ぁ!? そりゃあいいや。ドラゴン殺しのウサミミが、伝説のドラゴンボーンと手を組むのか! 吟遊詩人も大忙しだな!」

 

「それほどでもない」

 

 賞賛が耳に心地よい。俺は自己顕示欲が強いのだ。だからこそゲームキャラのスペックを活かして害獣退治などに精を出しているのだが。

 吟遊詩人も大忙しか。そうなったらこうしてまた酒場に来るのも悪くないが。

 

「それじゃあ、今日はこのまま宿に泊まるよ。世話になったな」

 

「おお、もういなくなるのか。せっかくだから、俺から一杯奢らせてくれよ」

 

 そう酒場に併設された宿に向かおうとする俺を止める情報屋。だが、俺は顔を覆うフルフェイスの兜を指でこつこつと叩きながら言う。

 

「俺に人前で兜を外せと?」

 

「……悪かったよ」

 

 ぷりちーな幼女先輩の俺は、人前で兜を脱ぐには覚悟が必要なのだ。周りに騒がれると嫌だからね。

 

 

 

 

 

 

 馬に乗って一路スカイリム西部のリーチ地方へと向かう。リーチの町マルカルスへと入り、情報屋に渡りを付けドヴァーキンの行方を捜す。

 鉱山を脱出したドヴァーキンは、マルカルスを既に経ったばかりだとか。外見は、黒檀の全身鎧(私と同じだ)に盾と剣を装備しているらしい。堅実な装備構成だ。両手斧という脳筋な俺とは大違いだ。

 そして、彼にはなにやら美人の連れがいるらしい。名前はセラーナ。そう、SKYRIM最大のヒロインこと吸血姫セラーナさんである。美形化MODを入れていたから、この世界でも美人なのだろう。この世界、MODを入れた内容がおおよそそのまま適用されるっぽいからな。あまり変なMOD入れなくて良かったわ。

 しかし、セラーナさんが一緒にいるのか。Dawnguard進行中ってことだ。どっちのルート進むんだろ。

 

 そして街道で名馬『馬並みくん』(三歳メス)を走らせることしばし、徒歩で道行くそれらしき一行を見つけることができた。

 

「おうい、ドヴァーキン、ドヴァーキンや!」

 

 兜をずらし口を露出させ、そう叫んで二人を呼び止める。

 その声に反応したのは女性。セラーナさんらしき人だ。

 

「呼ばれてますわよ」

 

「ん?」

 

 黒檀の全身鎧が振り向く。体格からして男だ。情報通りである。何故世界は幼女を選ばないのか。

 いや、ダメだ。幼女が戦うとか創作だと良いけど現実にしたらダメ。幼女は健やかに育つべき。幼女先輩である俺以外は。

 

「そちら、ドヴァー、ドラゴンボーンとお見受けする!」

 

「ああ、そうだが……なんだこいつ」

 

 小声でなんだこいつって言われましたー。まあそうだよな。ウサミミの生えた全身鎧の子供(幼女ボイス)が突然自分を呼び止めるのだ。怪しさ満点だよな。

 

「俺の名は通称ウサミミ! “冒険者”の幼女先輩こと、ウサミミだ! ドラゴンボーンと話がしたい」

 

「自分の名前なのに通称とか言いだしましたわよこの子」

 

 うろんげな視線を向けてくるセラーナさん。でも仕方ないじゃん。俺って本名が日本語名だからタムリエル人の覚え悪いし。だから通称のウサミミでずっと通しているんだ。

 しかし、セラーナさん美人だなー。美形化MODが現実化するとこうなるのか。

 

「むう、ウサミミ……」

 

「知っているの、あなた」

 

 良かった、ドヴァーキンは私の通り名に心当たりがあったようだ。

 

「子供の体躯にウサギの耳を持つという伝説的な傭兵だ」

 

「冒険者だよっ!」

 

 戦争にはノータッチがモットーです。最近はね。

 

「……その斧捌きは百の兵をなぎ倒し、巨人を真っ二つにすると言われているが」

 

「事実です☆」

 

 限界まで育てたゲームキャラのスペックを持って転生して、さらに百年以上鍛えてきたからね。死にやすいSKYRIM世界といえど、最早雑兵など敵ではなし! 黒檀の全身鎧だって錬金と付呪を使って限界まで鍛えてあるよ! デイドラ装備はびかびか光ってあまりにも目立つから黒檀だけど!

 

「事実だとしたらすごいことだな」

 

「うさんくさいですわね」

 

 セラーナさんが素直な意見をぶつけてくる。うーむこの外付け良心回路感。

 

「で、その伝説のウサミミ殿が俺に何の用だ?」

 

「うむ」

 

 ドヴァーキンが単刀直入に聞いてくる。話が早くてありがたい。

 そこで、俺も単刀直入に言うことにした。

 

「ドラゴンボーン、その使命は世界を滅ぼすドラゴンを滅することとお見受けした! ゆえに、その旅路に同行したい!」

 

「ふむ……」

 

 ドヴァーキンは考え込むように拳を口元へと当てる。黒檀の兜を被っているのでその表情は見えないが。

 セラーナさんはというと、ますます胡散臭げな視線でこちらを射貫いてくる。

 

「このままドラゴン達を放って置くと、悪のドラゴンの親玉アルドゥインによってタムリエルは滅ぼされることだろう。スカイリムに生きる幼女先輩としてそれは看過できない! 同行を許されたし!」

 

「あなた、ただのお人好しのドラゴンボーンってだけじゃなくて、そんな使命があるの?」

 

 セラーナさんがそんなことをドヴァーキンに訊ねる。

 

「ああ……」

 

「あ、別に急ぎじゃないので、セラーナさんの吸血鬼関連のこと優先で構いませんから」

 

 そう俺が横から口を挟むとセラーナさんの表情が変わる。

 

「なっ、あなた、私の――」

 

 何故名前がわかったのか、吸血鬼のことを知っているのか。そう言いたげに視線を強めるセラーナさん。

 

「ドラゴンボーンは世間で大注目だからね。同行者のことは情報屋に聞けば教えてくれたよ」

 

 教えてくれたのは名前と性別までだけどね。

 それでもにらみつけるのを止めないセラーナさん。しばし沈黙が場を支配するが、ドヴァーキンが話し出すことで、それは破られた。

 

「強者の同行、願ってもないことだ。――しかし、君がかのウサミミだと言う確証がない」

 

「ああ、そういうこと」

 

 俺は兜の中で思わず笑みを浮かべ、背中に手を伸ばした。

 そこにあるのは、名斧ぶっ殺し丸。鍛冶の腕を駆使し、自らの手で鍛えた逸品だ。

 そのぶっ殺し丸を両手に持ち替え、構える。

 

 刹那、ドヴァーキンが戦闘態勢を取る。

 彼の両手にはもう剣と盾が構えられていた。

 

「本物かどうか、その目で確かめてみな!」

 

 瞬時に肉薄し、斧をドヴァーに叩きつける。

 金属の塊と盾がぶつかり合うどでかい音が周囲に響き渡る。

 うむ、見事な盾使いだ。これがゲームなら相当スキル高いぞ!

 

「いきなりなんですの!?」

 

 突然の事態に叫び声を上げるセラーナさん。

 

「大丈夫、峰打ちだから! 峰打ちだから!」

 

「斧で峰打ちって何ですの!?」

 

 できるんだよ! 百年の研鑽があればなあ!

 どっかんどっかんと斧が盾にぶつかっていく。ドヴァーも負けじと剣閃を走らせてくるが、斧の柄で受け流していく。

 一進一退の攻防がしばし続く。

 決定打が無いな、と思っていた瞬間のことだ。ドヴァーの兜の奥で、息を吸う様子が察知できた。

 竜の声、スゥームだ。ならば、こちらもやることは一つ。

 

「フス・ロ・ダー!」

 

「ふすろだー!!!」

 

 ドヴァーのスゥームに被せるように、俺のスゥームを叩きつけた。

 互いの声の衝撃で、よろめく俺とドヴァー。

 俺はよろめいた勢いをそのままに、後ろへと大きく跳躍。転がるようにしてドヴァーから距離を取った。

 うむ。

 ここまでやれば十分だろう。

 

「我が威これで示せたと思うがいかに!?」

 

 斧の構えを解き、とりあえず格好付けておく。

 

「い、今のは……」

 

「スゥームだと……!」

 

 お、ちゃんと驚いてくれたセラーナさんとドヴァーキン。隠し球に取っておいて良かった。

 

「古のノルドの兵達は皆、スゥームを技術として扱えていたけれど……」

 

 そう言葉を続けたセラーナさん。確かに今でもスゥームの技術は、世界のノドの修験者達にも受け継がれていたりする。だが、違うんだよな。

 

「ソルスセイム島での冒険はまだかなドヴァーキン。俺は幼女先輩。そう、俺はドラゴンボーンの先輩だよ」

 

 俺はゲームキャラのスペックを持ってこの世界に転生した。SKYRIMのプレイヤーキャラのスペックを持ってだ。

 スゥーム、すなわちドラゴンシャウトの能力も持ち合わせていたのだ。ドラゴンの魂を吸収する能力もだ。

 それなら自分でアルドゥインを倒せばいいかって? そうはいかん。ゲームではただの雑魚だったアルドゥインだが、ここは現実。どんな凶悪ドラゴンになっていることか。

 というかカタログスペックで考えたらゲームの弱さなわけがないと思うなぁ! かのアカトシュ神が世界で最初に生み出したドラゴンであり、世界を滅ぼせる怪物なのだ。だからドラゴンボーン後輩のドヴァーキンと共に挑むのだ!

 

「俺と同じドラゴンボーンだと……」

 

 剣の構えを解きながら、そう困惑の言葉を漏らすドヴァーキン。

 

 この世界にゲーム主人公のスペックとスゥームの能力を持って転生した過去の俺。当時の俺は、自分がSKYRIMの主人公なのだと思い込んでいた。そうして百余年生きてきたが、つい最近になってドラゴンが復活し、そしてドラゴンボーンが現れたと噂になった。

 ドラゴンボーンは俺のことか、俺が噂になったのか。などと思ったが違った。俺とは違う、もう一人のドラゴンボーンが現れたのだ。ドラゴンが復活する時期に現れた新たなドヴァー。

 俺は直感した。そいつがSKYRIMの主人公だと。俺はただの世界の異分子でしかなかったのだ!

 

「どうかな、俺の同行は許してくれるだろうか」

 

 斧を背中のアタッチメントに付け直しながら、俺はそう言う。

 断られたらどうしようもないけど、断られないといいなぁ。

 

「あなた、どうするの? 私の旅には彼女は不要だけれど、あなたのドラゴン退治の旅には私、無関係ですのよ」

 

 セラーナさんがそう言葉をドヴァーキンに投げかける。

 ふむ、セラーナさんはドヴァーキンの旅にずっとついていくというわけでもないのか。デレ前だな。

 

「ふむ……」

 

 考え込むような動作を見せるドヴァーキンだったが、すぐに考えをまとめたのか、こちらを真っ直ぐと見てきた。

 

「かのウサミミ殿、そして俺と同じドラゴンボーンならば心強い。同行してくれ」

 

「そうか! そうか、そうか……! やったあ!」

 

 いえーい。やったぜ。

 

「あ、倒したドラゴンの魂はそっちが持っていって良いよ! 俺はもうだいたいのスゥームを覚えているからさ」

 

 ゲームに出てこないスゥームは知らんが、ゲームのスゥームはDLCも含めてフルコンプだ。ドラゴンを呼び出すスゥームとかは、どんなことが起きるかわかったもんじゃないから、使ったことないけど。

 そんなことを言っていると、ドヴァーキンは唐突に兜を外すと、その中の人、もとい中の顔を開帳してこちらに向けてきた。

 その顔は、ヒゲ面のノルドらしき青年のものだった。なるほど、これがこの世界の主人公の顔か。

 正直、女の子の方が良かったなぁー!

 

「では、よろしく。仲間になるんだ。君も顔を見せてくれないか」

 

「えっ!」

 

 唐突なドヴァーキンの言葉に、困惑する俺。

 

「あら、兜を取るなんて珍しい。でもそうですわね。仲間になるなら顔くらい知っておくべきですわ」

 

「あー、取らないとダメ?」

 

「無理にとは言わないが」

 

「ダメですわ」

 

 セラーナさん厳しい!

 

「しょうがないにゃあ……いいよ」

 

 両手で兜を掴み、上に引き上げる。寝るときと食事を取るときにしか解放されない幼女フェイスが周囲にさらされる。

 

「むっ!?」

 

「えっ!?」

 

 我が麗しの幼女フェイスを見て、途端に固まる二人。

 おうどういうことだゴラァ!

 

「ウサミミ、君は……」

 

「おうよ」

 

「その大きな目……人間なのか……? 種族は?」

 

 大きな目。そう、幼女先輩こと俺はとても大きな目をしているのだ。それはまるでアニメの世界にでもいるかのような……。

 

「人間だよ! 種族は精霊樹の化身、エリーン!」

 

「エリーン? セラーナ知っているか?」

 

「聞いたことないですわ。その……、大きな瞳と頭の獣耳……アルゴニアンとカジートとの混血とかでなく?」

 

「エリーンだっつってるだろうが、オラぁん! まあこの世界に私しか居ない種族だがな!」

 

 そう、俺は種族エリーン。TERAというMMORPGに登場する幼女限定種族である。

 TERAに登場するエリーンの3Dデータ。それを勝手にぶっこ抜いた有志達がSKYRIM用の種族追加MODとして製作したのが、エリーンRACE。ロリコン御用達の有名MODである。勝手に他のゲームからデータを引っ張った、いわゆるアングラな違法MODってやつだな!

 俺はSKYRIMのプレイ中、エリーンをNPCに追加するMODは導入していなかった。あくまでエリーンMODは主人公限定で導入していた。

 するとどうなったか。プレイしていたゲームがMODごと現実化した世界に、エリーンは俺ただ一人ということになったのだ。

 幼女の体躯に、むちむちの太もも。頭には獣の耳。顔はアニメ調の大きな瞳。それが俺のハンサム顔だ。

 理想のエリーンが自分の身体になるとか最高かよ、と思っていたが世間は厳しかった。その大きすぎる目玉に、人々は俺をミュータントでも見るかのような目で見るのだ。

 だから俺はフルフェイスの兜を被った。幼女を着飾らせて周囲を魅了するということは、永遠の夢に終わった。キモ可愛いという評価は貰ったことあるが。

 

「お前らにもエリーンの良さは伝わらなかったか……」

 

「う、すまない。外見的特徴を悪く言うつもりはないんだ」

 

「そもそもエリーン顔は悪くもなんともねえよ」

 

 価値観の相違ー。く、ここがTERAの世界だったなら……。あ、TERAはTESよりもっと悲壮な世界なのでやっぱりいいです。

 ま、いつものことか。ここでつまづいていたら何も始まらん。

 

「まあ、とりあえずよろしくな!」

 

 話を打ち切り、ドヴァーキンへ右手を差し出す。

 

「あ、ああ、よろしくお願いする」

 

 気を取り直して、よろしくのシェイクハンドである。

 そんな俺達の様子を横から見ていたセラーナさんが、一つ言葉をこぼした。

 

「ところで今は私の旅が優先なのですけど、ついてくるのですか……?」

 

「行くよー。あ、でも吸血鬼化は勘弁な!」

 

「むしろ吸血鬼を殺す側ですわね」

 

 あ、そっちのルートなのね。ドヴァーキン真面目そうだからそうなるか。

 それなら喜んでついていくよ! ソウル・ケルンとか楽しみだなー。

 

 そんなこんなで、俺達のアルドゥイン打倒の旅はこうして始まったのだった。

 

 つづかない

 




外見でまともな女扱いされなかったため、女としての自意識が目覚めなかったそんなTS主人公です。


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