チート転生したらしいが熊本弁しか喋れない (祥和)
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覚醒せし魔王
第1話 覚醒の鼓動


なんか書きたくなった。


話は14年前に遡る。

 

俺は一度死んでいる。

こんな事を言うと頭がおかしい人だと思われるだろうが、事実なので仕方がない。

 

死因は脇見運転の車に巻き込まれて、とさして珍しくもない死に方だ。

免許取った時に日本では毎日誰かが交通事故で死んでるって言ってたしな。

即死だったのは唯一の救いだろう。

中途半端に意識が残って苦しみながら死ぬとか最悪だし、運が良かったと思う。

ん?悪いのか?

 

…まぁ、今では前世の出来事も死んだ時の事とか余程のイベント以外は余り思い出せなくなっているくらいなので、さして未練も無かったのだろう。

唯一の心残りは自分の部屋の本棚の裏に隠してある大量の変身ヒロインもののウ=ス異本コレクションくらいか…

それはもう基本のいちゃラブから触手系、闇堕ち系、百合物まで古今東西あらゆる食指に触れる物を集めに集めたものである。

こんなのが最大の思い残しとか我ながらロクでもないな…

 

という訳で、ごく普通の奴が普通に死んだ訳だ。

しかし、何故かここからが普通と違う所だった。

まぁ、死んだの初めてだからこれが普通なのかもしれんけどネ!

 

なんか死んだ、と思って気付いたら事務所みたいなところにいた。

 

『あ、お疲れさまです』

 

そこには、なんか妙に目に優しい黄緑の服を着た美人さんがいた。

死んだらお疲れさまと言われるらしい。

 

『残念ながら、貴方は死んでしまいました』

 

うん、そうみたい。

 

『でも諦めてはいけません!これは逆にチャンスですよ!』

 

え?死んでるのにチャンスとかあるの?

 

『はい!今回、特別に転生のチャンスが当たりました』

 

特別にをやたらと強調される。

ていうか、転生?

 

『はい!転生ですよ!プロ…じゃなかった、幽霊さん!』

 

幽霊か…

改めて言われると結構クる物があるな…

ところで、今何と言い間違えたの?

 

『そ、そんな事より転生する貴方のお供にライバルと差を付けるお得なスタートパックのドリンクセットは如何でしょうか?今なら3000コインと大変お得になってますよ?』

 

あ、結構です。

死んでんのに金持ってる訳ねぇじゃん…

というかライバルってなんなの?

 

『あ、それは言葉の綾といいますか…とにかく!お得なんでお一つどうでしょうか?』

 

あ、結構です。

そんなぁ…とか可愛い仕草されても無い物は無いです。

 

とりあえず、その見るからに怪しい商魂逞しい事務員?が言うには別世界でモブとして生きるか、俗に言うチート転生するかのどちらかを選べるとの事らしい。

ちなみにどちらを選んでも転生先は変わらないのと、確実に事件には巻き込まれるらしい。

 

転生しても波乱の人生とか生まれる前から絶望的なのもいいところなので、普通にあの世行きはダメか聞いてみたが、絶対裏しかない笑顔で返されたので辞めておいた。

あれは絶対いい事無いって顔だった。

 

そして、どうせ巻き込まれるなら…とチートの方を選んだのだが…

 

「煩わしい太陽ね」

 

「あ、蘭子ちゃんおはよー」

 

「おはよう、蘭子は相変わらずだね」

 

………この通り、コミュニケーション能力が著しく悪い…というより変なのだ…

より正確に言うと、発言に関する機能がバグっている。

 

先ほどの発言に俺の意志は介在していない。

普通に「おはよう」と言おうとするとこのように謎の厨二ワードに言語変換されるのだ…

後、精神的には男のままなのだが、なんか神崎蘭子という名前の女の子になってた。

TSとかこの謎翻訳フィルターとか色々聞いてないんですけどっ!?

 

更に言うと未だにチートらしいチート能力に目覚めてもいない。

この通り重度のコミュ障、体力は中の上くらい、学力は生前の知識のおかげでやや優等生といったところだ。

まぁ、見た目はかなりの美少女なのだが、このコミュニケーション能力のせいで色々と帳消しになっている感が否めない。

なんか色々と騙された感満載である。

どうやら、あの黄緑の事務員?は神様ではなく邪神の類だったらしい。

某凶悪ピエロもある意味邪神だし何かをオススメしてくる奴はだいたい邪神なのだろう。

ドリンク買わなかったから呪われたのかな…

 

…とまぁ邪神談義は置いといて、先ほど挨拶をしたのは最近友達になった立花響ちゃんと小日向未来ちゃんだ。

響ちゃんはやや茶色がかった癖っ毛の、見た目通り活発な美少女で、未来ちゃんは響ちゃんとは対照的にセミロングの黒髪で落ち着いたイメージの大和撫子を彷彿とさせる美少女だ。

二人とも何度も謎翻訳言語で翻弄したのだが、全く怯む素振りも無く、ついにはこの謎言語のニュアンスを解釈可能なレベルまで解読した猛者でもある。

ホント、めんどくさい友達でゴメンね…

 

「そういえば、響、蘭子、来週のライブはちゃんと行けるの?」

 

未来ちゃんが聞いてくる。

なんでも、未来ちゃんお気に入りのツヴァイウィングというユニットのライブらしいのだが、俺は音楽には疎いのであまり詳しくは知らない。

しかしまぁ、こういうものは友達と一緒に行く事自体が楽しい訳で、

 

「時の欠片を紡ぐなど我にとって容易なこと…来る日に魂の安息を味わうが良い!」

 

「私も大丈夫だよ!楽しみだなぁ!」

 

「良かった。当日は3人で集合ね?」

 

……ホント、予定は大丈夫、友達と遊ぶの楽しみってのが、なんでこんな不可解言語になるんだろうね…

ていうか、なんの質問も無くコミュニケーションが成立してるのがマジでスゴい。

チート能力者って実は俺じゃなくて、この二人なんじゃないの?

 

***

 

ライブ当日。

 

未来ちゃんが急に家の用事で行けなくなった。

なんでも叔母さんが怪我をしたらしく家族で行く事になってしまったとの事。

残念だがこればかりは仕方がない。

今度埋め合わせにお好み焼きを奢ってくれるらしいので、遠慮なくゴチになろう。

フッ、蘭子スペシャルを知らぬ事を後悔するといい。

あ、これなら翻訳されずそのまま言えそうだな。

 

しかし、問題なのは今日のライブの方だ。

俺も響ちゃんもよく知らないアーティストなので、楽しめるか少し不安…

まして俺コミュ障だしね…

 

いよいよライブが始まるみたいだ。

やべ、緊張してきた…

 

~~~♪

 

結論から言うと、不安は全くの杞憂だった。

ステージに立つ二人の歌姫に俺も響ちゃんも魅了されていた。

今まであまり興味が無かったんだけど、歌ってスゴいんだなぁ…

気付けば、サイリウム二刀流ではしゃぎ回る女子中学生二人組がそこにいた。

ていうか、俺達だった。

 

「スゴいね!これがライブなんだ!」

 

「我に言の葉を紡がせんとは…やりおる!」

 

そんな話をしていた時だった。

会場の盛り上がりも最高潮、歌姫達が次の歌を歌い始めるその時に事件は起こった。

 

俺の元いた世界ではあり得ないモノ…

特異災害ノイズ。

その、人を炭に変えるバケモノ達が会場に現れたのだ。

 

混乱の中、逃げ惑う人々。

それを追う異形の群れ。

 

会場は一瞬で地獄絵図と化していた。

まずいな…なんとか響ちゃんだけでも避難させないと…

 

「我が友!撤退を!」

 

「蘭子ちゃん!?」

 

響ちゃんを強引に避難する人々の波に押し込む。

これで後は、時間さえ稼げれば安全な場所まで避難できる筈だ。

俺?まぁ、俺は一度死んでる身だし、死なないに越した事は無いが優先順位は下げてもいい。

やっと出来た友達だ。

絶対に死なせたりしない。

 

それに…なんとなくだが、今この時の為に転生したんじゃないかと思えるくらいなのだ。

その割には全然チート能力とか兆しすら無いんだけどね!

まぁ、無い物ねだりしても仕方ないので、自分に出来る範囲で頑張るしかない。

 

とにかく、混乱の渦の会場の中で俺は比較的冷静だった。

 

だから、気付いていた。

会場に鳴り響く歌声に。

 

***

 

改めて、会場を見る。

この混乱の最中、おかしな話なので、とうとう言語能力だけじゃなくて耳までおかしくなったのかと心配したのだが、聞き間違いじゃなかった。

やっぱり、誰かが歌っている。

そして、戦っている。

 

…訳がわからないよ…

なんで歌いながら戦ってんの?

 

しかも、あの二人ステージにいたツヴァイウィングじゃない?

変身ヒロイン的な何かかな?

それなら触手が足りないよ?

あ、これは絶対勝てなくなるフラグだから駄目だ。

 

ていうか、あの赤い方の人、ちょっと旗色が悪くないか?

 

その時…色々と極限状態の上に理解困難な事柄を見て、脳内がショートしそうになっていたのだろう。

言い訳はいくらでもある。

要するにロクに周囲を警戒もせず、ボーっとただつっ立っていたのだ。

 

「蘭子ちゃん!危ない!」

 

「え?」

 

気付けば響ちゃんに突き飛ばされていた。

何故?とか、避難したんじゃ…とか色々疑問に思ったのも束の間…俺を突き飛ばした響ちゃんは次の瞬間、何かの破片に胸を貫かれていた。

 

「良かった…無事…だった…」

 

「我…が…友?」

 

そのまま響ちゃんは胸から血を流し倒れ込む…

世界がスローモーションになったみたいだ…

 

赤い髪の人が響ちゃんに駆け寄り何かを言っている。

その光景にただただ立ち尽くす…

 

わかっている…

 

俺のせいだ。

 

こんな状況で不注意を働いたのもそうだ。

 

それに…わかっていた筈だ。

 

あの事務員は何と言っていた?

事件に巻き込まれると。

 

なのに何故、仲良くした?

 

知って貰えるのが嬉しくて。

わかって貰えるのが嬉しくて。

 

そんな自分本位な気持ちだけで…

()()()()()()()()()()()

 

沸々と怒りが込み上げてくる――

 

ノイズに。

そして、何よりも自分自身に。

 

その言葉は気付けば、口から出ていた。

 

「我が命火(トモシビ)(ウタ)を聞け!」

 

(アルマ)の牢獄に繋がれし、我が写し身、(カルマ)の化身を幽世(かくりよ)より解き放とう…」

 

こんな時まで謎翻訳機能は健在だが、胸から歌がこみ上げてくる。

イメージは先ほど戦っていたツヴァイウィングの二人。

あの二人みたいに、戦う力を()()()()()

 

「ブリュンヒルデの輝きよ!!」

 

***

 

瓦礫によって崩落したネフシュタンの鎧の起動実験施設。

既に本来の目的が何者かによって持ち去られた後のその施設の一つの計器が反応している。

瓦礫を押し退け、偶然その反応を見た風鳴弦十郎は目を見張る。

 

「新たなアウフヴァッヘン波形…だとぉ!?」

 

それは、起動実験をしていた完全聖遺物でも、ツヴァイウィングの二人が持つ物でもない、全く新しい反応パターンだった。




聖詠も熊本弁です。


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第2話 シンデレラの靴

2話目です。


胸に浮かんだ歌を歌い終わると、自分の姿もツヴァイウィングの二人のように変化していた。

 

「お…お前…」

 

赤い方の人に声を掛けられる。

そういえば、ライブに来てるというのに俺、この二人の名前すら知らないや…

 

「我が名は傷ついた悪姫、ブリュンヒルデ!」

 

「お…おぅ、なんか強烈な奴来たな…」

 

やめて!引かないで!そんな目で見ないで!

本人が一番良くわかってるから!

 

「この劇場(オペラ)の主役は我よ!紅き歌姫よ、我が友を頼む」

 

「あ、おい!?」

 

言い終わると同時にノイズ達に向けて走り出す。

早い所事態を解決して響ちゃんを病院に運ばなきゃいけないのもあるし、正直、もうあの残念な人を見る目に耐えきれそうにない。

 

♪華蕾夢ミル狂詩曲~魂ノ導~

 

人型のノイズ達が迫ってくる。

 

「我に刃向かうか!慮外者!」

 

「封書!」

 

叫ぶと同時に黒い紙の束がノイズ達を拘束し、そのまま収束してノイズ諸共消えてゆく。

しかし、今の所無意識に使えているけど、この能力なんなんだろう…

ツヴァイウィングの二人が何で戦ってるかも不明だし、わからない事だらけだな…

 

そう思ってたら芋虫みたいなのが、粘液みたいなのを吹き掛けてくるので横っ飛びで避ける。

うわっ、きちゃな!

 

改めて向きなおし、反撃しようとすると…

 

―蒼の一閃―

 

青い方の人が芋虫を一刀両断にしていた。

 

「呆けない!死ぬわよ!」

 

す、すいません。

ここは俺に任せろ(ドヤァ)とかしながら情けない…

 

「ならば我も戒めを解き放とう」

 

「え?」

 

ん?何か青い方の人がキラキラした目でこっち見てるような…

おっといかん。集中集中…

 

「我が憤怒、煉獄の業火を味わうがいい!」

 

辺り一面を極大の炎が包み込む。

 

―Laevateinn―

 

その炎で大方のノイズは焼き尽くせたらしい。

やっぱり人を炭に変えるだけあって、よく燃えるみたいだ。

 

よし、それじゃあ響ちゃんを急いで病院に…

 

「待ちなさい!」

 

青い方の人に剣を向けられる。

 

「貴方には私達と一緒に来て貰う」

 

「おい!翼!助けて貰ったんだから礼が先だろ」

 

いや、今そんな事してる場合じゃないの!

響ちゃんが…友達がピンチなの!

 

「裁きよ!」

 

号令と共に二人との間に炎の壁が立ち上る。

 

「待て!くっ!奏!放して!」

 

赤い方の人、奏さんっていうのか…

青い方の人を抱き寄せる形で止めている奏さんがウィンクしてくる。

任せろって事か、美人は何しても様になるなぁ…

 

そんな事を考えながら、今度こそ、俺は響ちゃんを抱えて病院へと向かうのだった。

 

***

 

銀髪の謎の少女が去った後、天羽奏は風鳴翼を宥めながら周囲を見渡す。

 

「こりゃまた、派手にやりやがったなぁ…」

 

周囲には逃げ遅れた人や大切な誰かの為にその場に残った人などが見受けられる。

そう、あの銀髪の少女が放った炎は完全にノイズだけを識別して殲滅していたのだ。

自分達、シンフォギアの力は研鑽した技とフォニックゲインに聖遺物が呼応して、発現する。

しかし、彼女のそれは、まるで彼女のイメージするままに能力が発現しているように見えた。

あり得ない程の規格外の力だ。

あれが敵に回れば、厄介どころの騒ぎではない。

だからこそ、翼は彼女を引き止めたのだが…

 

「傷ついた悪姫か…」

 

彼女の口上を思い出し、笑いを堪える。

奏にはどう転がっても、彼女が人に害を為す存在には見えなかったのだ。

 

「アタシもそろそろ潮時って事かねぇ…」

 

無茶をして来た事は自分でも理解している。

度重なるLiNKER投与による薬害で何度も地獄を見てきた。

既に、自身の身体が限界である事も悟っていた。

 

正直言うと、今でもノイズ達は憎い筈だ。

 

だが、何故か今はとても穏やかな気持ちだった。

 

「ま、後は若い者に任せますか」

 

そうして、天羽奏はシンフォギア装者を引退する事を決意したのであった。

 

***

 

結論から言って、響ちゃんは何とか一命を取り止めた。

後少し遅ければ命は無かったと言われ、肝が冷えた。

しかし、胸を完全に貫通された傷がすぐに良くなる訳もなく、傷が癒えてからも長いリハビリ生活が必要となった。

 

あの事件から3ヶ月が過ぎた今でも、退院出来ず未来ちゃんと二人で週3回お見舞いに足を運んでいる。

本人曰く『へいき、へっちゃら』らしいが、やっぱり見ていて痛々しい。

 

あの後、ツヴァイウィングの二人から何かしらのアクションがあるかと思っていたが、特にそんな事もなく、平穏に過ごせている。

 

あんな事件があったのに、世間は不自然な程に穏やかだった。

やっぱりこの世界は異常だ。

少なくとも、数百、数千人単位の人が亡くなった筈なのに、()()()()()()()()()()で済んでしまうのだ。

 

あの事務員め!

こんな世界にモブで転生したら確実に2回目の死がすぐ来てたじゃないか…

 

そんな事を考えていると、いきなり周囲の景色が変わる。

あれ?ここは…

 

『お疲れさまです。蘭子ちゃん』

 

出たよ…邪神(仮)。

 

『もぅ!誰が邪神ですか!?』

 

…じゃあペニー◯イズ(女)?

 

『違います!私をあんな節操無いピエロと一緒にしないでください!』

 

まぁ、冗談はさておき、今日は何の用ですか?

ドリンクは買いませんよ?

 

『会話を先読みしないでください!』

 

買わせるつもりだったのかよ…

 

『コホン、覚醒おめでとうございます!蘭子ちゃん』

 

覚醒?あぁ、あのチート能力ね。

あの能力なんなの?

 

『説明が要ると思って、こちらに呼んだんです。ところで、ついでにドリンクは如何でしょうか?』

 

あ、結構です。

ついでじゃなくてそっちが本命では?

 

『そ、そんな事無いですよ?』

 

あんまり信用出来なくなるから目を逸らさないでくれます?

 

『じ、じゃあ能力の説明しますね!』

 

やや早口でまくし立てられる。

誤魔化しやがった…

 

この能力だが、名前は『シンデレラの靴』というらしい。

何故にシンデレラなのかは聞いても答えてくれなかった。

大人は質問に答えないという某ブラック企業重役のスタイルなんだろうか?

 

で、肝心の能力だが、簡単に言うと『何でも出来る』らしい。

まぁ、死者蘇生みたいな自然摂理とか物理法則を無視した事は無理らしいが、俺のイメージと、込める力…なんかフォニックゲインとか何とか言う力次第で本当に何でも出来てしまうらしい。

さすがにチート過ぎない?って言うと…

 

『夢見る星達の頂点、その二代目の証です。それ位出来て当然です』

 

との事だ。

まったく訳がわからないが、こんなチートが少なくとも後一個ある事の方が恐ろしいんだけど…

 

『ではその力、貴女がどう扱うか、見せて貰いますね』

 

そう結び、辺りが元の現実に戻った。

………やっぱり邪神だわ、アレ。

 

***

 

響ちゃんが退院した。

 

まぁ、あの日以来バレない程度に力を使って回復をサポートしていたので、医者の予想よりずっと早く完治まで至った。

 

しかし、退院した響ちゃんを待っていたのは、心無い人々の迫害だった。

 

ノイズ被害に対して世の中が穏やかなんていうのはまやかしだった。

ずっと…責める相手が責める事が出来る状態になるのを待っていたのだ。

完治して間もない響ちゃんに押し寄せるマスコミの人々。

あまりにしつこいので、直接来た人は全員響ちゃんの事だけ記憶喪失になって貰った。

しかし、それでももう止めようが無かった。

個人のチートが無力になる程の数の暴力という奴だ。

 

大勢の人が死んだ。

その責任を皆が皆、生死の境から生還した響ちゃんに問うのだ。

 

ノイズに対して消極的な異常な世界と思っていたが、甘かった…

 

俺が思ってた以上に、世界はこのノイズ災害に疲弊していたのだ…

本来何の罪も無い筈の響ちゃんに己を守る術などある訳が無かった。

あの優しい感じのおじさん…響ちゃんのお父さんも出て行ったまま帰って来なくなってしまったらしい。

 

今日も、響ちゃん、未来ちゃんと3人で響ちゃんの机に書かれた落書きを掃除している。

それを周囲で嗤いながら見るクラスメイト達…

 

もう自分自身、我慢の限界だった。

 

「我が友を嘲笑うな!」

 

「蘭子ちゃん…?」

 

気付けば、涙が流れていた。

それでも構わず、もう一度言う。

 

「我が友を侮辱するな!貴様等に輝き持ちし我が友を蔑む資格などありはしない!」

 

周囲からクスクス笑いが強くなる。

やっぱりこの謎翻訳は逆効果なのか…

 

仕方ない…こうなったら実力行使しかないよね?

仄暗い感情に支配されつつ、力を使おうとしたその時、不意に肩を掴まれる。

 

「ありがとう、蘭子。勇気、貰ったよ」

 

未来ちゃんだ。

未来ちゃんも目の端に涙を溜めている。

 

「私から響も蘭子も奪わないで!あの明るかった響を返して!返してよ!!」

 

周囲に動揺が走った。

それはそうだ。

迫害の対象となった響ちゃんやキワモノの俺ではない、あの陸上部のエースでクラスでも人気者の未来ちゃんが心から叫んだのだ。

 

未来ちゃんはそれだけ言って、響ちゃんと俺を連れて外へと飛び出した。

 

***

 

「ハァ…ハァ…ハァ…言っちゃった」

 

未来ちゃんが悪戯っぽく笑う。

俺の身体が男のままだったら今ので確実に陥落している。

 

「未゛来゛ぅ、蘭子ち゛ゃん、私のぜいでごべんね゛ぇぇ」

 

響ちゃんが泣き出してしまう。

 

「響のせいじゃないよ…泣かないで…泣かないでよ」

 

ついには未来ちゃんも泣き出してしまう。

俺?俺は未来ちゃんが叫んだ時から泣きっぱなしだ。

 

あの事務員が何を企んでいようとこれだけは決めた。

この先何があっても、俺はこの子達の友達でいよう、と。




という訳で2話でした。

以降は不定期更新になります…

おまけというか設定の一部

レーヴァテイン
北欧神話の神の炎をオリ主の元となった人物がイメージした疑似聖遺物。
前回、OTONAが見たアウフヴァッヘン波形はこいつのせい。
シンデレラの靴はガチチートなので、アウフヴァッヘン波形とか周囲にバレるような反応は一切発生しない。

奏さん生存
特にSAKIMORI関連が諸々大丈夫?って感じですが、全ての宿業をオリ主が背負うので大丈夫…な筈…たぶん…


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第3話 混沌への誘い

ルーキー日間6位…だとぉ!?
ノリと勢いだけで書いてるので皆さまの満足できるものが書けるかどうか…ゴクリ

とはいえ感謝。圧倒的感謝。


あれから2年の月日が経った。

 

最近の専らの悩みは、自分の身体の一部分のせいでやけに肩が凝る事だ。

しかし、男時代は見るだけでもあんだけ興奮した禁断の果実が自分の身体に付いてる物となると途端に興味が薄れるから不思議な物である。

なので、ここまで成長したのは、自分の知的好奇心の結果というよりは、響ちゃんや未来ちゃんが挨拶代わりに揉んでくるせいだろう。

最近に至ってはやけに手馴れてきている感まである。

特に未来ちゃん。

この前のは危うく雌の声が出るところだったってばよ…

さすがに高校では控えて貰おう。

 

とまぁこのように、俺のおっぱいを犠牲にして、響ちゃんと未来ちゃんにとってもようやくあの事件が過去になりつつある。

しかし、将来の事もあるので、進学だけは過去にする訳にもいかず、他の連中が行く地元の高校ではなく、東京の高校に行く事になった。

 

えっと、リリアンだったか、なんかそんなところだ。

百合を冠する女子校とか今から胸がワクワクしてくる。

 

「でね、リディアンにはなんと!翼さんが通ってるんだよ!!」

 

「響、それもう今日5回目だよ…」

 

あ、そうそう、リディアンだ。

百合じゃなかった…残念。

…ん?今なんて?

 

「輝き持つ者よ、今なんと?」

 

「だから、リディアンには翼さんが通ってるんだよ!!」

 

………What?

ツバササンってあの翼さん?風鳴の?

ズバババンとかじゃなくて?

 

………ダメじゃん。

あの元ツヴァイウィングの青い方の人でしょ?

絶対一波乱あるじゃん!!

 

「蘭子どうしたの?」

 

「さぁ?翼さんと会うのが楽しみなんじゃないかな!?」

 

「それは響の事でしょ?」

 

そうやってウキウキしてる響ちゃんややや呆れ気味の未来ちゃんを脇目に、また事件に巻き込まれる可能性が非常に高い憂鬱とか、そういや奏さんの引退ライブさすがに行けなかったな、とか色々な感情がごちゃ混ぜになって一人悶絶するのであった…

 

「くっ、魔力が足りぬか…鎮まれ我が右手よ!」

 

「蘭子もノリノリだよね…悩んでるのか遊んでるのか私時々わからないよ…」

 

「うん…私もわかんない」

 

***

 

今さら一人だけ学校を変えるなんて訳にもいかず、ついに東京まで来てしまった…

 

まぁ、これ以上悩んでもなるようにしかならないので、今日は街を散策してみるか。

ちなみにだが、響ちゃんと未来ちゃんはルームシェアをして広めの家に住むらしく、当然俺も誘われたのだが、俺は一人暮らしの家の方を選んだ。

 

こんなコミュニケーション能力なのに、両親ともに俺への愛情をちゃんと注いでくれていて、大学を出るまでの学費と生活費は見てくれるとの事で、最低限、女の子が一人暮らしを不便無く出来る家を借りると張り切って両親同伴で契約したんだが…

あの…お父様、お母様?

女の子の一人暮らしに3LDKはやり過ぎじゃないですかね?

ウチの親、親バカにも程があんよ…

 

…まぁ、一人暮らしの方が能力の検証とかがやり易いとか、色々あったんだけど…

なんか改めて家の広さ見たら色々吹き飛んだわ。

 

気を取り直して、能力については現状、この能力に頼るしかない訳で、いざ事が起きた時に柔軟に対応する為にも、何が出来て、何が出来ないかを早急に知っておく必要があるにはある。

さすがに邪神の言う事を丸まま鵜呑みにする訳にもいかんしね…

 

おっ、あの銀髪の子スッゲー美少女。

しかもおっぱいでけぇ…

でも何か強面のスーツのお兄さんに絡まれてら…

 

「だから何でアタシがっ…!」

 

「笑顔です」

 

「笑顔なんてしてねぇっつうの!」

 

「しかし…名刺だけでも!なんとか検討をお願いできませんか」

 

「ちょせぇ!ついてくんな!」

 

……なんだ、ただのスカウトみたいね。

あんな強面だからてっきり危ない感じの人かと思ったけど、どうやらアイドルのスカウトさんらしい。

 

なんでわかったかって?

能力で名刺の内容見たからね。

 

しかし、あんな飛び込み営業みたいなスカウト方法でやっていけるんかね?

あ、今度は如何にもクールそうな黒髪ロングのJKに声掛けてら…結果はお察しだけど。

 

そうやって、人間観察がてらそのスカウトさんの撃沈っぷりを眺めていると…

 

「あの…少しお時間よろしいでしょうか?」

 

「…………我?」

 

いつの間にか目の前にいた。

 

***

 

「………」

 

「………」

 

何故か無言が続いている。

アイドルとか普通に無理だしどうにかして逃げたいんだけど…

 

「あの…アイドルに興味はありませんか?」

 

アイドルね…

見るのは好きよ?見るのは。

でも、響ちゃんも未来ちゃんもいるし、俺だけアイドルになるとか無理。

特に響ちゃんをメディアに出すとか論外だ。

 

そもそも、元男に群がる男性達とか見たら人間不信になりかねん。

よって却下だ。

がんばって仕事してるのにゴメンね?

 

「輝ける星を目指すなどに紡げる時は無い」

 

まぁ、そもそも断る云々以前にコミュニケーションが成立しないから、絶対無理なんだけどね。

 

「す…素晴らしい…」

 

…ゑ?

 

「素晴らしい個性です!貴女なら、必ずトップアイドルを目指せます!是非!是非検討をお願いできませんか?」

 

………ゑ?

 

「これは私の名刺です。気が向きましたら是非ご連絡ください」

 

……………え?

 

訳もわからぬまま、お兄さんは去って行った。

………あの人プロデューサーなのかよ…

プロデューサーが外回りのスカウトって…

どんだけ人手不足なんだよ…

 

***

 

あれから少しして、無事に私立リディアン音楽院に入学した。

あの名刺には当然連絡していないが、何故か捨てるに捨てられずにいる。

今のところ、翼さん側からのアクションも特に無い。

はぁ…このまま穏やかに過ごせないかなぁ…

 

「でね!蘭子ちゃん!!」

 

目の前で響ちゃんがカツ丼を頬張りながらハイテンションで語っている。

よく食うなぁ…

 

何故こんなにハイテンションかというと…

 

「今日、翼さんのCDの発売日なんだ!」

 

そう、今日でもう8回目になる説明だが、翼さんのCDの発売日らしい。

放課後はダッシュで買いに行くみたいだ。

そんなに急がなくても予約してるなら普通に買えるんじゃないかなぁ?

と思うが、あのライブから本当にファンになったみたいなので、まぁ水を差すのは止めておこう。

絶対変な単語になるしね!

 

と思っていると…

食器を返そうとしてた響ちゃんが当の本人とぶつかっていた。

なんか頬っぺたのおべんとうを指摘されてら…

いつも未来ちゃんにゆっくり噛んで食べろって言われてるのになぁ…

 

そんな感想を脳内で溢していると…

 

「放課後…屋上で待ってるわ」

 

すれ違い様に翼さんに声を掛けられる。

さすがに見逃してくれませんか…

 

***

 

放課後、屋上に行くと、翼さんが一人で待っていた。

 

「来たわね」

 

「我に何用か?」

 

そう答えると心なしか目がキラキラしたような…

さすがに気のせいかな?

 

「立ち話もなんだし、場所を変えましょう。ついて来て」

 

まぁ、ここでバックれると後が面倒そうだし、素直について行くか。

俺はただ平穏に響ちゃんと未来ちゃんと過ごせればいいんだけど、説明しても伝わらないだろうしなぁ…

 

しばらく歩くと、学生寮と思しき一室に通される。

 

()()散らかってるけど、上がって頂戴」

 

足を踏み入れた先は…

 

「混沌の魔境か!?」

 

「す、()()散らかってるだけよ!()()

 

何処が少しだよ!

超汚部屋だよ!足の踏み場無いじゃねぇか!

これが少しだったら何でも少しになるわ!

ていうか、よくここに人を招こうと思ったね?

 

「くっ、私は戦う事しか知らないのよ…」

 

うん…言うタイミングが全然違うし、今言われても言い訳にしか聞こえない。

 

「蒼の歌姫よ…」

 

翼さんの肩に手を置き、ニッコリと笑う。

 

「我と共に静謐を創り上げようぞ」

 

「ヒッ」

 

お片付けタイムが幕を上げた。

 

***

 

結果から言うと、翼さんはまったくの戦力外だった。

片付けようと思って行動してるつもりみたいだが余計に散らかるのだ。

なので、早々に戦力外通告を出してベッドの上でいじける作業に入ってもらい、途中から参加した奏さんと一緒に片付けをしている。

しかし全然終わらんな…

 

「いやー、一人でこれやると大変だから助かるわ」

 

奏さんはいつもこれを一人でやってるらしい…

素直に尊敬するわ。

 

「で?ちゃんと言えたのか?翼」

 

「それはっ!………今から言うのよ」

 

ん?どゆ事?

俺の能力とか色々洗いざらい話して貰うぜって場じゃないの?

翼さんが居住まいを正す。

 

「あの時は助けてくれてありがとう。君がいなければ、私か奏、どちらかが欠けていたかもしれない」

 

「アタシからも、ありがとな!また改めて礼はさせてくれ」

 

二人の急な畏まった態度にポカンとしてしまう。

 

そういや、両親と二人の親友以外に礼を言われるなんて初めての事だ。

何か熱い物が込み上げてきそうになるが…

 

急にけたたましいサイレン音が鳴り響く。

 

「これは…」

 

「ノイズ!」「禁忌の狩人!」

 

………久しぶりに刺さる視線が痛かった。




完全にタイトル詐欺。

混沌=翼さんの汚部屋


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第4話 機関との邂逅

日間3位…

何があった…ホントに

とはいえ、拙作を読んで頂き感謝です。
という事で第4話、お納めください。


恩人の銀髪の少女の相手を奏に任せ、別室で翼は自分の組織である特異対策機動部二課と通信を行う。

 

「翼です。え?ガングニール!?…はい、奏は一緒です」

 

本部の通信によると、ノイズの出現ポイントにガングニールの反応があるという。

しかし、奏は自分と一緒にいる。

 

一体どうなっているのか?

訝しむ翼に指令が与えられる。

 

「了解しました。出撃します」

 

ノイズの殲滅を優先しつつ、現れたガングニールの反応を調査すること。

その内容を了承し、一瞬逡巡した後、

 

「…いえ、コードネーム:ブリュンヒルデと接触しました。同行を依頼します」

 

そう言って、一方的に通信を切る。

報告の義務は果たした。

それ以上の追及は、恩人に失礼だと思ったから…

 

剣であるはずの少女は、自分の些細な心境の変化に気付く事無く、恩人の待つ部屋へと戻った。

 

***

 

ノイズ警報が鳴ってから少し待ってて欲しいと言われて、翼さんは別室に行ってしまった。

 

ていうか、まだ別室があったのかよ!?

そっち全然掃除出来てないよ…

 

結構な時間奏さんと二人で掃除したのにまだ未開の地が残されてるとか、どんだけだよ…

ん?メール?未来ちゃんから?

 

『避難場所に響が見当たらないの。蘭子と一緒?』

 

……………え?

 

落ち着け、落ち着け俺。

 

響ちゃんは何処に行くと言っていた?

 

翼さんのCDを買いに、だ。

 

じゃあ響ちゃんがよく行くCD屋は?

 

………

 

「紅き歌姫!我は…!」

 

「お、おぅ、急にどうしたんだ?」

 

戸惑う奏さんを置いて、響ちゃんを探しに向かおうとした時…

 

「待たせたわね」

 

翼さんが戻ってくる。

翼さんには悪いが、今は響ちゃんを探さないと!

 

「行きましょう。たぶん君の行き先と同じだと思うわ」

 

……へ?

もしかして翼さんは響ちゃんの居場所がわかってんの?

 

***

 

「ではこれを被って」

 

翼さんにヘルメットを渡される。

 

そう、翼さんは現地までバイクで向かうみたいなので、後ろに乗せて貰う事になったのだ。

 

なったのだが……

 

風神(ノルズ)の息吹が我を襲う!?」

 

翼さん、めっちゃ飛ばすんですけど…

さっきから翼さんに抱き付いてるだけで精一杯なスピードだ。

ていうか、そういえば俺今スカートなんですけど!?

 

「あ、蒼の歌姫!我がっ!我が禁断の花弁がっ!!」

 

「しっかりつかまってなさい。振り落とされるわよ!」

 

駄目だ…全然通じてねぇ…ていうか、たぶん風圧で聞こえてねぇ…

 

そうして、ノイズ警報で皆避難している為、人の居なくなった公共の道路をパンツまる出しで高速移動する女子高生の姿がそこにあった…

 

ていうか、俺だった…

 

人居なくて良かったよ…マジで。

 

***

 

翼さんの後ろにしがみつく事、数十分。

周囲を見渡すと、どうやら工場地帯の方まで来ているようだ。

こんな所に響ちゃんが居ると思えんのだけど…

 

「居た」

 

え?響ちゃん!?

…ってなんだデッカいノイズじゃん。

今ノイズなんて相手してる暇は…

 

「飛ぶわよ!」

 

ゑ?

 

翼さんがトップスピードのままデカいノイズの方向に突っ込みながら器用に俺をお姫様抱っこして、座席の上に立つとそのまま宙にジャンプした。

 

うわぁ…俺今空飛んでるよ…

 

~Imyuteus amenohabakiri tron~

 

翼さんが歌を口ずさむ。

 

何で歌?

もしかして急に歌うの流行ってんの?

 

そんな事を考えていたら至近距離で翼さんの格好がみるみる変わっていく。

 

「ここで待っていて」

 

完全に変身が終わって、お姫様抱っこから解放される。

 

「すぐに終わらせるから!」

 

ヤダ!カッコいい!

 

♪絶刀・天ノ羽々斬

 

「はぁっ!」

 

―蒼ノ一閃―

 

翼さんの手に持つ剣が大刀型に変わり、斬撃を飛ばす。

 

―千ノ落涙―

 

次は上空に跳んだと思ったら無数の剣の雨がノイズ達に襲いかかる。

 

スゲーな…

俺みたいなズルの力じゃなくて研鑽された技って感じだ。

 

「蘭子ちゃん!!」

 

後ろから声が聞こえる。

知っている声…

聞き間違える筈が無い親友の声に安堵し、振り返る。

 

「輝き持つも…の…よ?」

 

「ほぇ?どしたの?」

 

なんか響ちゃんまで変身ヒロインになってんだけど…

何故か幼女抱えてるし…

 

てか、改めて見るとえっろ!

何でそんなキワどいカッコしてんの?

 

え?翼さんもじゃないかって?

翼さんは…まぁ…ね?

響ちゃんとはとある一部分がだいぶ違うし、翼さんはどっちかというとカッコいいだから…

わかるよね?

 

―天ノ逆鱗―

 

そんな事を思っていたら翼さんが丁度ノイズを殲滅し終わったみたいだ。

マジですぐだったな…

 

しかし、翼さんのあの歌…

俺の謎翻訳とめっちゃ噛み合っちゃう気がしてきた…

もしかして、あのキラキラした視線ってやっぱ気のせいじゃなかったの?

 

「はい。終わりました。ガングニールの反応と思しき装者も一緒です」

 

ん?どっかと通信してんのか?

て事は、なんかの組織が後ろにいるって事で…

 

「はい、あったかいものどうぞ」

 

「はぁ、あったかいものどうも」

 

響ちゃんが何処からか現れたキャリアウーマンっぽい美人のお姉さんから飲み物を受け取っていた。

 

おいおい…これはちょっとまずい状況じゃね?

 

最悪、響ちゃんだけでも…

周囲を見渡して逃げ道を探そうとすると…

 

「抵抗しないように。貴女達には特異対策機動部二課まで同行願います」

 

翼さんに背後から声を掛けられる。

 

………はい。

 

正直に言うと、形振り構わなければ逃げようと思えばいつでも逃げれるのだが、ここに来る前に見た翼さんと奏さんの姿をふと思い出し、彼女達をもう少しだけ信用してみようと思ったのだった。

 

***

 

翼さん達に連れられて来た先は、何故か我らが母校、私立リディアン音楽院だった。

 

「ついてきて」

 

先生達がいる中央棟のエレベーターに乗せられる。

 

「危ないからつかまってなさい」

 

翼さんに声を掛けられる。

わかりました。

 

「蘭子ちゃん!?何で翼さんに抱き付いてるの!?」

 

あれ?違うの?

だって翼さんがつかまってろって…

 

「はぁ…別にいいわ、このままで」

 

次の瞬間エレベーターが凄いスピードで動き出す。

あまりのスピードに響ちゃんとか「ほんぎゃぁぁ!」とか言っている。

女子が出していい声じゃないと思うよ…

 

かく言う俺も俺でかかるGが半端ないから、また翼さんに力いっぱいしがみつく形になっている。

うぉっ、結構キツいな…

 

ようやくエレベーターの最下層に着いたみたいだ。

 

どうやら一本道みたいなので、響ちゃんと二人で手を繋ぎながら恐る恐る先に進む。

 

翼さん?

翼さんなら何か思う所があるらしく、なんかブツブツ言いながら後ろをついてきてる。

時たま「サイズが…」とか、「年下なのに…」とか聞こえてくるけど一体何なんだろうね?

案内役を放棄して大丈夫なのかな?

 

お、あそこでいいのかな?

 

一番奥の突き当たりにあった扉を開くと…

 

「ようこそ!特異対策機動部二課へ!」

 

「輝き持つ者よ!あれに見えるは災厄の獣!仮初めの死を!」

 

「え!?熊!?死んだふりすればいいの!?」

 

俺と響ちゃんが即座に死んだふりをする。

割と覚悟して来たっていうのに熊をけしかけるなんて聞いてねぇよ!

 

「何!?熊だとぉ!?一体何処から!?緒川ぁ!セキュリティはどうした!?」

 

「いや…あの…言いにくいんですが…たぶん司令の事だと思います」

 

「何ぃ!?俺が熊!?」

 

「アハハハハ!ヒィ!ヒィ!お腹痛い…」

 

「はぁ…何やってんだよお前らは…」

 

奥から奏さんの呆れた声が聞こえる。

ていうか、一人爆笑してる人いるな…

 

聞く限り司令って事はトップって事だけど、あんな態度で大丈夫なんだろうか?

 

熊扱いして死んだふりした俺が言える立場じゃないけどね!

 

***

 

熊改め風鳴弦十郎さんから、響ちゃんが発現した能力について説明を受ける。

ん?風鳴?翼さんの血縁者かな?

全然似てないけど。

 

っと、話逸れたけど響ちゃんとか翼さんの能力の話ね。

 

シンフォギア。

 

簡単に言うと、過去の聖遺物の力を使って、ノイズと戦う為のシステムらしい。

その力を使う為には、フォニックゲインという力が必要になるので、ああやって歌っているらしい。

急に歌ってる訳じゃなかったのね…

 

しかし、何処かで聞いた話も何も発動条件とかまんま俺の力と一緒なんだけど…

偶然…というには出来すぎてるよなぁ…

次に事務員に会った時に聞いてみよう。

答えてくれるかは知らんけど。

 

どうやら響ちゃんのメディカルチェックも終わったみたいだ。

 

「これが、ガングニールの欠片ね」

 

あの場で、ただ一人爆笑してた櫻井さんから説明を受ける。

どうやら響ちゃんの胸に埋まった聖遺物は現代医学で取り除くのは難しいとの事らしい。

 

「アタシの不手際のせいで、すまねぇ…」

 

「そんな!?頭を上げてください!」

 

奏さんが響ちゃんに頭を下げる。

後で聞いた話だが、奏さんはツヴァイウィングだけじゃなく、シンフォギア装者も既に引退してるらしい。

 

しかし、いかんな…色々ありすぎて頭がついていけなくなってきた。

そして、それは響ちゃんも一緒だろう。

そろそろ何とかして帰りたい所なんだが…

 

…ん?帰る?

………そういえば未来ちゃんに返信してねぇわ…

 

恐る恐る携帯を見ると…

 

着信83件、メール393件という恐怖の数字が映し出されていた…




今回はタメ回。

次はみんな大好きやっさいもっさいなあの子の出番です。
奏さん生存なのでビッキーとSAKIMORIの確執はスキップされます。
今回のタイトルはどストレートです。
蘭子より飛鳥の方が好きそうですが(笑)


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第5話 豊穣の女神

心地の良い夜ね(こんばんは)

昨日オンリーのお気に入り追加数…1612…だとぉ!?

マジっすか…ありがとうございます!

読んでくれる皆さまへの感謝がある限り、俺は止まらねぇからよ!


やべえ…

 

何がやべえって未来ちゃんがやべえ…

どう考えても心配させ過ぎたよな…

 

とりあえず返信だけしとこう。

翼さんをダシに使う形だけど、別に間違いでもないから仕方ないよね。

 

『我、輝き持つ者と共に蒼の歌姫の居城に招かれん』

 

ん?何でメールまで謎翻訳かって?

俺が聞きたいよ…

 

どうやら、コミュニケーション目的の行動は全てこのフィルターが掛かるらしい。

 

学校の筆記試験とかは普通に書けるのにね…

ホント、徹底してやがるよ、あの邪神…

 

よし、送信っと…

 

『良かった、無事だったんだね?でも今度からはもっと早く返事が欲しいかな?電話までしてるのに全然出てくれないから、蘭子にもしかしたらって思っちゃうでしょ?後、翼さんにあまり迷惑掛けないようにね』

 

返信早っ!!

普通にメール待機してたとしても、こんな早くそこそこの文章返せるもんなの?

女子高生ってスゲーな…

なんちゃっての俺には絶対無理だよ…

 

はぁ…帰ったらちゃんと謝らないとなぁ…

 

***

 

立花響と神崎蘭子が帰宅した後。

 

特異対策機動部二課の研究室にて、櫻井了子は二人のプロフィールに目を通す。

 

name : 立花響

age : 15

profile: 人類初となる聖遺物との融合症例。

第3号聖遺物ガングニールをその身に宿す。

 

name : 神崎蘭子

age : 16

profile: コードネーム:ブリュンヒルデと思しき少女。

完全聖遺物レーヴァテインを所持していると思われるが、聖遺物の使用により外見が変異したとの記録もあり、詳細は不明。

特異な言動からも察せる通り、何かしらの秘密を持っていると思われる。

 

「面白いわね…特にこの娘」

 

画面には、銀髪の少女の写真が映し出されていた。

 

***

 

どうしてこうなった…

 

まずは順を追って整理してみよう。

 

あの後、響ちゃんを家まで送り、帰ろうとしたところで未来ちゃんに呼び止められた。

 

お茶でも飲んでいったら?と。

 

それならば、とお邪魔する事になって今に至る。

よし、おかしな所は無いよね?

 

なら、なんで仁王立ちの未来ちゃんの前で響ちゃんと二人正座させられてるのかな?

 

過程と結果があべこべだよ!

 

「…で?私に隠してる事は何?」

 

鋭い…鋭すぎるよ!

あまりにも鋭すぎて鉄の塊にすら穴開けそうだよ…

 

響ちゃんと目を合わせる。

ちょっと!?響ちゃん目が泳ぎ過ぎ!

ホント、嘘吐けない娘だよ…

 

はぁ…未来ちゃんまで巻き込みたくないんだけどなぁ…

こうなりゃ一か八か…

 

「輝き持つ者、大神(オーディン)の加護受けし歌い手となり、禁忌の狩人討ちし光とならん」

 

「蘭子ちゃん!?」

 

本当の事を言う、だ。

ただし、謎翻訳付きでな!

 

「???えっと…響がカラオケで歌を歌ったら、何故かノイズが逃げて行った…かな?響、本当なの?」

 

「え?う、うん、まぁ間違ってはないかなぁ…アハハ」

 

よし!普段の謎翻訳なら日常会話ばかりだから未来ちゃんも理解してるみたいだが、こういう専門用語が混じると何が何やらわからなくなる。

そうなると、わかる単語から流れを把握するしか無くなるから、ああいう伝わり方になるのだ。

うまくいって良かった…

 

「むぅ、何か釈然としないけど、話せるようになったら話して貰うからね」

 

まぁ、疑問は残るだろうがそれは仕方ない。

 

要するに、バレる前に終わらせてしまえば問題無しだ。

チート能力フルに使えば何とかなるだろ…

 

***

 

なんか新型のノイズが出たらしい。

ていうか、連日連夜出過ぎじゃない?

 

ノイズって確か通り魔より出現率低いとか言われてなかった?

 

翼さんは運悪く別の場所に現れたノイズの駆除に当たっているし、さすがに響ちゃんを出撃させる訳にもいかんので、

 

「この劇場(オペラ)は我の独壇場よ!」

 

と、大見得切って出撃したのだが…

 

「………」

 

「………」

 

なんか白タイツの女の子とにらめっこしている。

ん?新型ノイズはどうしたって?

あのブドウみたいな奴なら瞬殺したよ。

 

ていうか、この女の子どっかで見た事あるような…

 

「ハッ、ちょいとばかし強えみたいだが、運が悪かったな?てめえを連れて来いって命令なんでな!悪く思うなよ!」

 

あっ!この娘、あの時の強面お兄さんにスカウトされてた娘だ。

俺が一度見たおっぱいを見間違える筈が無いから間違いない。

 

「って何処見てやがんだよ!!」

 

「…禁断の果実?」

 

「訳わかんねえ事言いやがって!妙に余裕ありやがるな、てめえ!気に食わねえ!」

 

いや、そう言われましても…

そんな立派な物持ってんだから見ない方が失礼だよね?

 

「おら!ちょいとばかしネンネして貰うぞ!」

 

―NIRVANA GEDON―

 

おっぱいちゃんが肩についてる刺の鞭を振り回した衝撃でエネルギー波を飛ばしてくる。

 

「こちとら完全聖遺物を使ってんだ!てめえの貧弱な装備で何とか出来るならやってみな!」

 

「裁キヲ……」

 

炎の壁が立ち上がり、みるみるエネルギー波を呑み込む。

 

「な!?今何しやがった!てめえ!」

 

おっぱいちゃんに動揺が走るが、まだまだこんな物で驚いて貰っては困る。

 

「我が名は傷ついた悪姫、ブリュンヒルデ!」

 

「またぞろ訳わかんねえ事言いやがって…」

 

「刮目するがいい!我が第2形態!」

 

そう、新必殺技のお披露目といこうじゃないか。

 

***

 

「拘束術式!解放!」

 

…まぁ、喋らなくても出来るんだが、気分の問題だ。

出てくるのは残念な単語だけど…

というのも、この技、直撃するとヤバいのでわざとタメを長くする為にこうやって残念ワードを口にしている。

 

「覚醒せし魔王の怒りに触れし事、後悔するがいい!」

 

右手に炎が集まり、剣の形を取る。

ただし、サイズがどう見てもおかしい。

どれ位おかしいかというと、この前出てきたデッかいノイズを3体くらいまとめて包み込めるくらいの大きさだ。

相変わらず意味わからん。

 

この間見た翼さんの技がカッコ良かったので、なんとなく真似してやってみたらとんでもない技が出来てしまったものだ。

 

「チクショウ!なんでこんな訳わかんねえ奴がデタラメな力持ってやがんだよ!!」

 

うん、ホントにね…

俺にもわからん。

 

「破邪なる刃、その身に受けよ!」

 

「破邪っててめえ、魔王じゃなかったのかよ!?」

 

そんな事言われても、オートで出てくるので知らん。

 

―煉獄ノ一閃―

 

炎の刃がおっぱいちゃんに向かっていく。

 

「チィ!こいつだけでも!」

 

おっぱいちゃんが手に持ってた槍みたいな物を明後日の方向に投げる。

ん?俺こっちだけど、何がしたかったんだ?

 

「ヘッ、アタシがやられてもフィーネがきっと!」

 

そう言っておっぱいちゃんが目を閉じる。

 

…そして、極大の炎の刃がおっぱいちゃんを包み込み、辺りに静寂が戻る。

 

「神崎!無事……だな。君には無用な心配だったか」

 

どうやら翼さんが救援に来てくれたようだ。

 

「しかしまた派手にやったな…」

 

翼さんが周囲を見渡す。

辺り一面焼け野原である。

 

火力に関してはもうちょい改善が必要だな…

 

***

 

「襲撃者に関する情報は無し…か」

 

風鳴弦十郎が呟く。

神崎蘭子の活躍により、襲撃者は撃退出来た物の、彼女の規格外の力により、襲撃者の生死すら不明の状態で完全に頭打ちになってしまったのだ。

 

「しかし、最近のノイズの出現頻度を考えると、無関係とは考えにくいですね」

 

緒川慎次が答える。

そう、ここ数日のノイズ出現頻度ははっきり言って異常である。

そもそも、十年に一度あるか無いかの災害でしかなかったのだ。

この未曾有のノイズ大量発生はそこに何者かの意図が込められていると考えるのが普通だろう。

 

「デュランダルの護送…見送った方がいいのかしら?」

 

櫻井了子が今後の予定について確認を取る。

 

「いや、黒幕が居るのなら、炙り出す丁度いい機会だ!予定通り行うが…護衛は翼から蘭子君に変更する」

 

そう言って、風鳴弦十郎は不敵に嗤うのであった。

 

***

 

あー疲れた。

 

あの後、響ちゃん経由で軽く報告して通訳して貰い、疲れているという事で早めに家に帰して貰った。

 

何故なら…

 

「何のつもりだ!てめえ!こいつを解きやがれ!」

 

おっぱいちゃんを拘束した状態でマイホームに転送しといたのだ。

わざわざあんなド派手な技使った甲斐があったね!

フッフッフ、このおっぱい、どうしてくれようか?

 

「くっ、殺せ!」

 

くっころ頂きました!本当にありがとうございます!

でもおっぱいちゃんは女騎士には程遠いんだよなぁ…

 

どうせなら翼さんに言って欲しいんだけど…

ダメだ、社会的地位が傷付かずに言って貰えるシチュが思い付かん。

でもいずれは言われたい。

心の目標ノートに書いておこう。

 

「何か喋れよ!無言が一番怖えんだよ!」

 

おっといかんいかん。

今は目の前の女の子(おっぱい)に集中だ。

まずはこの邪魔な白タイツ脱ぎ脱ぎしましょうね!

 

「あっ!てめえ!何か手つきがいやらしいぞ!?ぐっ!」

 

あ、ゴメン、痛かった?

ていうか…

 

「豊穣の女神よ!?これは如何なる事か!?」

 

そう、白タイツが肉に貼り付いて侵食している。

何コイツ?無機物の癖してそんなにおっぱい好きなの?

 

「ヘッ、相変わらず何言ってるか訳わかんねえな…驚いたかよ?この鎧の特性だ。こうやって、着けた奴を最後には喰い殺す呪われた鎧なんだよ」

 

つまり、おっぱいちゃんは半ば取り込まれてるという事か。

良かった…()()()()()()()()()()()

 

♪Star!!

 

「歌?何のつもりだ!?てめえ!」

 

おっぱいちゃんが喚き散らす。

そうは言っても、今から奇跡を起こすのだ。

ちゃんと歌わないとフォニックゲインが足りない。

 

「やめろ!今すぐやめやがれ!アタシは歌が大っ嫌いなんだ!」

 

まぁ、拘束は解いてないから何を言っても俺の歌を聴いてもらうんだけどね。

中身はこんなんだけど、見た目は美少女だから大丈夫でしょ。

 

そうして、歌を歌い終わる。

 

「我が希望の星よ!豊穣の女神に祝福を!」

 

ホント、締まらねぇ…




豊穣の女神=クリスちゃん

意味はわかるよね?

おまけのような本編の補足コーナー

Q:†終焉の巫女†さんは何でビッキーよりランランに興味持ったの?
A:完全聖遺物に変身機能は無い。
でも何故か自分が作った覚えが無いシンフォギアに近い機構を持っているように見える。
真実なら彼女の計画が第3者の介入によって根底から覆ってしまうので、ランランを調べる必要があるのです。

Q:OTONAは気付いてないの?
A:現時点では気付いてません。ただ、手駒のクリスちゃんとネフシュタンが行方不明の†終焉の巫女†さんは内心だだ焦り状態なので、延期する?みたいな事聞いてます。

Q:何故『Star!!』?
A:作者の趣味です。クリスちゃんとの距離を縮める為の魔法なので、ランランの持ち歌より、明るい歌にしたかった。


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第6話 不滅の聖剣

闇に飲まれよ!(お疲れさまです!)

お気に入りがスゲー数に…
ありがてぇ。

これからも我が魂の赴くままに!


「てめえが勝手にやったんだ。礼は言わねえぞ」

 

無事、おっぱいちゃんとドスケベ聖遺物の分離には成功したんだが…

うーん、このツンツンっぷりがたまりませんなぁ!

 

「ていうか、さっきのアレは何だよ?あり得ねぇだろ!」

 

何だと言われても、俺にも良くわかってないし、説明しても伝わらないだろうしなぁ…

 

まぁ、そんな事より、

 

「我が現世での仮初めの名は、神崎蘭子という」

 

自己紹介もまだだったしね。

あのツンツンぶりだと答えてくれそうにないだろうけど、こういうのはこっちからはちゃんとやっとかないとね。

 

「………雪音クリスだ」

 

おや?意外と素直だな…

 

「んだよ、こっち見んじゃねぇ!」

 

うーん、まだまだ雪解けには時間が掛かりそうだなぁ…

 

***

 

あれから1週間。

次の任務まで特にやる事も無く、ノイズもピタリと出てこなくなったので、平穏な日常を満喫している。

 

「でね、蘭子!こういう時アニメだと、スゴい超展開になるんだよ!」

 

この娘はクラスメイトの板場弓美ちゃん。

アニメをこよなく愛する女の子だ。

俺の残念言語にいたく感銘を受けたらしく、こうして良く話しかけてくるようになった。

 

「魂の友よ。神が(したた)めし預言書は我も好ましく思う」

 

「相変わらずランランの言う事は難しいなぁ…」

 

この娘は安藤創世ちゃん。

個性的なアダ名を付けるのが好きな娘だ。

例に漏れず俺にも名付けられた結果、なんかパンダみたいになっている。

 

「何を言っているかわからないからこそ、ナイスです!」

 

この娘は寺島詩織ちゃん。

お嬢様っぽい感じで、どんな事でも褒めてくれる。

この娘が「ナイスじゃないです」って言う事あるんだろうか?

嫌われたくはないけど、一度でいいから言われてみたい。

変な扉開けちゃいそうだけど。

 

「では、魂の友よ!来るべき時に備え、魔力を蓄えようぞ!闇に飲まれよ!」

 

「じゃあねぇ蘭子、やみのま~」

 

「ランラン、やみのま~!」

 

「やみのま、ナイスです!」

 

みんなと別れる。

ちなみにさっきの「やみのま」は俺の挨拶の略語だ。

「お疲れ」とか「さよなら」を言おうとした時に出てくる「闇に飲まれよ」が元で、数ある俺の残念言語の中でもトップクラスの意味不明さなのだが、利用頻度が高いので割と浸透されており、最近ではクラスの流行語になってたりする。

とりあえず、今日も平和で何よりだ。

 

それに、最近は日々充実しているのだ。

なぜなら、

 

「楽園からの帰還よ!」

 

「おう、おかえり。きょ、今日は煮物作ってみたんだ…か、勘違いすんじゃねぇぞ!テレビで見てアタシが食べたかったから作っただけだからな!」

 

ツンデレな嫁が出来た。

 

***

 

『では続いてのニュースです。黒木防衛大臣が昨夜未明、何者かに殺害されているのが見つかり…』

 

おっぱいちゃん改めクリスちゃんと二人、夕食を食べながらテレビを見る。

うわっ、この近くじゃん。

物騒だなぁ…戸締まりしっかりしなきゃ。

 

ていうか、

 

「豊穣の女神よ…」

 

「ん?どうした?…も、もしかして口に合わなかったか…?」

 

いや、そういう事じゃない。

俺は女の子の手料理なら、響ちゃんの物体Xや未来ちゃんの全く味のしないハンバーグでも完食した実績がある。

むしろ無茶苦茶美味しい。

 

問題は…

 

「魔力濁り混沌せし円卓!」

 

そう、クリスちゃんは食べ方がもんのスゴく汚いのだ…

それはもう大惨事レベルで…

 

「し、仕方ねぇだろ!?食事マナーなんて習っちゃいねぇんだよ!」

 

ほほう、毎日口酸っぱく言ってんのにまだ言い訳するか…

そっちがそういう態度ならこちらにも考えがある。

 

「ならば今宵は我が魔力の波動は…」

 

「だぁぁ、アタシが悪かったよ!これでいいんだろ!」

 

うん、一緒に寝てあげないってだけなんだけどね。

なんかしらんが寝る時だけは普段ツンデレなのが嘘みたいにデレッデレになるのだ。

 

ん?不健全?

やだなぁ、至ってKENZENだよ?

 

「じゃあ、おやすみ…なぁ、いきなり居なくなったりしねぇよな?手、握っててもいいか?」

 

だって本当に寝るだけだからね…

チクショウ…

 

***

 

「では了子君、蘭子君、頼んだぞ!」

 

次の任務の日が来た。

なんかデュランダル?とかいう完全聖遺物の移送の護衛だ。

この前テレビで見た防衛大臣殺人事件で他国の介入が濃厚になり、二課で預かっているコイツを別の場所に移すというのが建前らしい。

 

というのも、直前に弦十郎さんから呼び出されて、黒幕を炙り出す為のおとり任務なので、相手が人間なら撤退して欲しいと言われている。

ノイズなら問答無用で殲滅でいいらしいが。

 

女子高生を人間同士のいざこざに巻き込みたくないとの事だ。

見た目はゴツいのにいい人なんだな。

 

てな訳で早速了子さんの運転する車にデュランダルを持って乗り込んだ訳なんだが…

 

「輪廻せし世界!?」

 

「しっかりつかまっててね!舌噛むわよ!」

 

運転粗いよ!この人!

もう絶対に二課の人が運転する乗り物には乗らない!

 

***

 

なんとか発砲しながら追跡してくる車を撒いたみたいでようやく、少し落ち着いた。

 

「ところで蘭子ちゃん」

 

ん?どうした?

 

「蘭子ちゃんの力、私が作った覚えが無いんだけど、どこでどうやってそれを手に入れたのかしら?」

 

まぁ、この人も研究者だしそりゃ気になるよね…

 

「我が魔力は生来の物故、何処(いずこ)かで手に入れし物ではないわ!」

 

でも、こう答えるしかないんだよね。

 

「そんな…それこそあり得ないわ?だって貴女、聖遺物を使ってるじゃない?メディカルチェックでも響ちゃんみたいな反応は無かったわよ?」

 

うーん、やけに追及してくるな。

しかし、本当の力(シンデレラの靴)の方は話すつもり無いしなぁ。

聖遺物すら自由に生み出せる能力なんて信じられないだろうしね。

 

「我にも解らん。我が目醒めし時にはあった故」

 

こう答えるしかない。

 

「謎は深まるばかり…ね。…まずいわ」

 

気付けば周囲から次々と異形が現れる。

 

「ノイズよ」

 

***

 

とりあえずノイズを殲滅したのはいいが、俺の歌によってデュランダルが起動してしまったらしい。

 

んで、デュランダル起動と共に銃を携行した団体さんのお出ましである。

撤退していいと言われているものの、下手に動くと人質にされている了子さんが撃たれかねない。

さて、どうするかね?

 

「そいつを渡して貰おうか、人質と交換だ」

 

俺の手にあるデュランダルを要求される。

まぁ、当然だよね。

仕方ない。とりあえず渡して、了子さんが解放された後にフルボッコなら弦十郎さんも許してくれるよね?

 

デュランダルを渡す。

 

「禁忌の追求者を解放せよ!」

 

「では、君は用済みだ」

 

男が俺に向けて発砲する。

まぁ、防ぐのは余裕だ。

余裕なんだが…

 

「雄ォォォォォ!!!!」

 

防ぐまでも無かった。

急に空から弦十郎さんが降ってきて、地面をパンチした衝撃で地面が隆起し、銃弾を防いだ。

コンクリート畳返しである。

 

………なにそれ?

 

「てめえら!子どもに銃を撃つなんざ外道のやる事だ!」

 

お次は大地を強く踏むと、衝撃波で数人が行動不能になっている。

中国拳法の震脚だったっけ?

威力とかなんか色々とおかしいけど…

そもそもなんで攻撃判定出てるの?

 

そう思っている間にもまるで竜巻みたいに人間を投げ飛ばしたり殴り飛ばしたりしている。

全部飛距離がおかしい。

 

え?これ全部生身でやってんの?

なんか俺の中で人間のカテゴリーに入れたくなくなってきてるよ?

本日は快晴、ところにより風鳴弦十郎が降るでしょう。アハハハハ

 

俺が現実逃避してる間に相手は虚しい抵抗の甲斐もなくほんの数秒で全滅していた。

 

ヤバいな…俺、チート持ってる筈なのにいざ戦ったら全然勝てるビジョンが見えねぇよ…

 

***

 

弦十郎無双が終わって、デュランダルも回収出来たし、任務完了かな?

まぁ、こんなお粗末な奴らが黒幕とは思えんけど。

 

「蘭子君」

 

ジャパニーズ呂布に呼び止められる。

 

「む、無双の戦神、何用か…?」

 

先ほどの恐怖映像が思い出され、少し声が上擦ってしまう。

 

「む?俺の事か…?いや、すまなかった。君たち子どもに大人の醜いやり取りを見せるつもりは無かったんだがな」

 

…ホントにいい人だな。

司令が軽く頭を下げるのはどうかと思うが…

 

「些末な事よ…我は楽園に帰還する!闇に飲まれよ!」

 

「やみ…?う…うむ、許可しよう。お疲れさん」

 

はー疲れた。

ノイズ瞬殺しただけだからそんなに働いて無い筈なんだが、色々と精神的疲労がキツい。

早く帰ってクリスちゃんのおっぱいに癒されよう。

 

「蘭子ちゃん」

 

今度は了子さんか…

てか妙に近い。

 

「どうやらバレてるみたいだから言うわね?単刀直入に言う。私に付く気は無いか?」

 

………はい?




今回はそのまま
不滅の聖剣=デュランダル

フィーネさん、痛恨の勘違い。
勘違い発生箇所は何処かな?

今回のおまけ

各々の固有名詞はランランの心境によって変化します。

響:我が友→輝き持つ者
未来:我が友→???
翼:蒼の歌姫
奏:紅き歌姫
クリス:豊穣の女神
三人娘:魂の友
OTONA:災厄の獣→無双の戦神
了子:???→禁忌の追求者


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第7話 終焉の巫女

感想欄が熊本弁で埋まっててヤベーです(笑)

お気に入りが3000を突破しました…
マジで困惑してます…


ちょっと待って?

いきなり何言ってんの、この人?

 

「禁忌の追求者よ、如何なる…」

 

「そう、それだ」

 

どれだよ!?

 

「禁忌の追求者か…どうやってそれを知ったか興味深いところではあるが…ハッ、もはやバレているのであれば取り繕う必要も無い」

 

了子さんが超めんどくさそうな髪をほどいて、眼鏡を外す。

わぉ、ちょっとばかし歳はいってるが、超美人さんだ。

そのワガママボディも合わさって、是非おねショタとかやって欲しいです!

 

「バラルの呪詛を解き放つ直前まで、この姿を晒すつもりは無かったのだがな」

 

ところで、さっきから何言ってんの、この人?

全然訳わからんのだけど、もしかして実は黒幕でしたパターン?

え?何?俺の残念言語で勝手に勘違いして、自分から暴露しちゃってる感じ?

なんかちょっと申し訳ないし、気の毒になってきたな…

 

「では交渉といきましょうか」

 

了子さんの酷薄な笑みが濃くなる。

いや、別に俺にメリットなさそうなんだよなぁ…

おねショタをやってくれるなら一考の余地はあるが。

 

***

 

「まずはこちらの要求から」

 

了子さんがなんか勝手にべらべら喋りだした。

なんでも、ネフシュタンとイチイバル?が無くなって、了子さんの現状の手持ちはノイズを呼び出せる道具だけになってしまったらしい。

 

オカシイナー、ダレノセイカナー?

 

イチイバルってのはよくわからんけど、ネフシュタンってあのドスケベ聖遺物だよね?

ソイツならウチの漬け物石にジョブチェンジしてるけど、アレってそんなに大事だったの?

 

んで、最終的には月を破壊して、統一言語とかいうコミュニケーション手段を手に入れたいので協力して欲しいとの事だ。

 

なるほど、わからん。

 

ただ言えるのは、

 

「我に栄誉が見当たらんではないか」

 

そう、ぶっちゃけ何のメリットもない。

メリットもなく手伝ってなんて労働基準法違反も甚だしい。

だから…ね?おねショタしよ?

 

「メリットは無いかもしれんが、デメリットならあるではないか」

 

………おい、もしかして…

 

「断った場合、大事なお友達がどうなるかしらね?」

 

「我が同胞に手を出すな!我が(さか)(うろこ)に触れれば、百度輪廻しようと消せぬ業火でその魂を焼き尽くしてくれようぞ!」

 

強い口調でそう返す。

()()だけは絶対に許さない。

 

「…まさかそこまで知っているとはな…ホントにお前は何処まで知っているのだ?」

 

…おや?またなんか勝手に勘違いしてない?

 

***

 

「かつての先史文明時代…私は神に仕える巫女の役割を持っていた」

 

またなんか聞いてもないのに勝手に語り出した。

自分の事をフィーネと名乗り出した彼女は、自分の動機について話しだした。

 

…うん、簡単に言うと、神様に1万年と2千年前から恋しちゃってるから告白するの手伝って?って事らしい。

 

えぇ……どんだけ重いんだよ…

ドヘヴィじゃねぇか…

愛が愛を重すぎるって理解を拒んじゃうよ?

…さて、この神という存在に心を奪われた巫女さんどうするかね?

 

なんか色々と同情の余地はあるし、可哀想ではあるんだけど、ノイズとか色々使って悪い事してるしなぁ…

 

「断る」

 

結局出した答えは否、だ。

たとえ俺の周りが無事でも、それ以外への被害が大きすぎる。

それに、まだ見ぬ美少女が出逢う前から死ぬかもしれないような事に手を貸すつもりはない。

 

「交渉決裂…ね。で、見逃してくれるのかしら?」

 

そうだな…今ここで捕まえてしまうのが正解なんだろうが…わざわざ自爆して気の毒なのもあるし…

 

顎でさっさと行けとジェスチャーする。

 

「甘いのね、私を見逃した事を後悔しなければいいがな!」

 

そう言い残して了子さん改めフィーネさんは去って行った。

 

まぁ、確かに甘いんだろう。

だけど…どれだけ悪事を働こうが、たとえ数千年生きていようが、彼女は紛れもなく、()()()だった。

相手が女の子なら…出来る限り応援してあげたいじゃないか。

 

***

 

はぁ…なんかどっと疲れたな…

早く帰ってクリスちゃんに癒して貰おう。

 

そう思いながら帰路につくのだが…

ん?家の電気消えてら…クリスちゃんは買い物かな?

クソ、おっぱいはお預けか…

まぁ、いつもお預けなんですけどね。

 

おや?…おかしいな。鍵が開いてるぞ。

もしかして…

 

嫌な予感を押し殺しつつ、急いでリビングに駆け込み電気を付けると…

 

「豊穣の女神よッ!!」

 

「おかえり、蘭子」

 

「蘭子ちゃん、おかえり」

 

「ムグゥゥ!ムグ!ムグ!」

 

手足を縛られ猿轡を噛まされた我が嫁と、目からハイライトさんがお留守になった親友二人が待っていた…

 

…え?どういう状況?

 

***

 

なんかクリスちゃんと二人、正座させられている。

目の前の二人の威圧感がヤバい。

浮気がバレて愛人と一緒に正座させられている世の既婚男性の気分だ。

結婚した事無いからよくわからんけど、きっとこんな感じなのだろう。

 

「で?説明してくれる?」

 

「この娘とはどういう関係なのかな?」

 

嫁です…とはとてもじゃないが、言えそうにない。

ていうか、さっきから視線が痛い。

 

「だからアタシは…!」

 

「黙って?私は蘭子の口から聞きたいの」

 

oh…未来ちゃんが怖いよ…

いつもの天使みたいな笑顔は何処に?

 

はぁ…答えるしかないか…

 

「豊穣の女神は…我が眷属よ」

 

「ハァッ!?お前ッ、こっ恥ずかしい事言ってんじゃねぇよ!」

 

クリスちゃんが一瞬で真っ赤になる。

うん、仕草含めて大変可愛いんだけど、ちょっとタイミングが悪いかなぁ…

と思ってると、俺とクリスちゃんの間を包丁が通り過ぎる。

 

………

 

「ねぇ、余り目の前でイチャイチャしないでね?我慢できなくなるから」

 

響ちゃんまでそんなドスの利いた声出してどうしたの?

というより、これは一体どんな状況なの?

 

「響、これは…」

 

「うん、そうだね…」

 

と思ったら、なんか二人でひそひそ話を始めた。

所々、「距離が…」とか「作戦は…」とか聞こえるけど、何の相談だろうね?

足痺れてきたし、そろそろ解放してくれないかなぁ?

 

結局二人の出した結論は…

 

「今日は私達も泊まるから!」

 

「蘭子の嫁に相応しいか、私達がチェックするからね?」

 

という事らしい。

はぁ…友達想いを感謝すればいいのか、やり過ぎを指摘した方がいいのか、よくわからんな…

 

結局、夜一緒に寝ているのが二人にバレて、また一悶着あったのだが、なんとか二人にもクリスちゃんを受け入れて貰えそうな感じだった。

 

***

 

あれから数日、姿を晦ましたフィーネさんは特に行動を起こしていないので、平和な日常が続いている。

 

変わった事と言えば…

 

「よし!響君!次はこの映画の特訓だ!」

 

「押忍ッ!!」

 

「あいつらも毎度良くやるよなぁ」

 

「あぁ、だが立花らしい」

 

「輝き持つ者の魂が滾っておるわ」

 

響ちゃんが地上最強の生物(仮)に弟子入りした。

そんで、その様子を奏さんと翼さんと三人で眺めている。

 

なんでも、守られるばかりはもう嫌だ、という事らしいんだが、ちょっと目指す高みが高すぎる気がする。

その人、たぶん俺でも勝てないよ?

 

「さぁ!こいつら相手に組み手だ!」

 

「押忍ッ!!よろしくお願いしますッ!!」

 

今日のは木○拳かな?

ホント…毎回何処から特訓セット持ってくんのかね?

 

まぁ、向こうさんは簡単には諦めないだろうし、戦いに備えるのは悪い事じゃない。

ただ、戦う事になったとしても、響ちゃんに戦わせるつもりが俺にないだけで。

 

「しかし、立花もなかなか様になってきたな」

 

翼さんが響ちゃんを褒める。

おぉ、翼さんに褒められるって事は相当だな。

努力してるって事か。

 

やっぱり、がんばってる女の子はキラキラ輝いていて、見ていて応援したくなるものだ。

特に、特訓中は凄い揺れるしね!

何処がとは言わないけど。

 

「そうだ、神崎。これを渡しておこう」

 

翼さんからチケットを渡される。

 

「私の次のライブのチケットだ。神崎には是非聴いて貰いたい」

 

おぉ、久しぶりのライブだ…

クリスちゃんと一緒に行こう。

なんか歌は嫌いとか言ってたけど、最近のクリスちゃんなら押せばいける気がする。

 

「そんな事言って、昨日までどうやって渡そうか散々悩んでたんだぞ?」

 

奏さんに抱き寄せられて、耳打ちされる。

軽く当たるおっぱいが最高です。

 

「ちょっと、奏!?それは言わないで!!」

 

「アハハ、後輩の前でカッコつけたかったみたいだけどな!翼は翼だ」

 

「むぅ、やっぱり奏は意地悪だ」

 

かわいい(かわいい)。

 

やっぱりこの二人の距離感はいいなぁ…

なんと言うか二人共全然遠慮が無い。

 

「蒼の歌姫、紅き歌姫…感謝する」

 

「来る日に備え、我も魔力を蓄えよう!闇に飲まれよ!」

 

「おぅ、やみのま~」

 

「闇に…?え?え?」

 

「やみのま」と返す奏さんと戸惑いながらも目をキラキラさせる翼さんと別れ、俺も色々と準備に向かうのだった。

 

この日常を壊さない為にも、やれる事はやっとかないとな。




今回もストレート
終焉の巫女=フィーネさん


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第8話 解き放たれし蒼き翼の独奏歌

闇に飲まれよ!(お疲れさまです)

今さらながら今週の週間4位という多大な評価を頂いている事に心から感謝を申し上げます。

皆さまの愛する熊本弁を表現できるように精進していきます。

後、誤字修正報告頂ける皆さまもありがとうございます。


某所。

 

神崎蘭子によって、計画の中断を余儀なくされたフィーネは、次なる計画の準備の為、奔走していた。

 

「やはり戦力が足りないか…」

 

目下最大の問題は、風鳴弦十郎、神崎蘭子の両名と対峙した場合に、突破できる戦力が無い事だ。

百歩譲って風鳴弦十郎に関しては、唯一の手持ちであるソロモンの杖を使えば、打倒は不可能でも撤退に追い込むくらいは出来る。

しかし、神崎蘭子だけはどうにもならなかった。

やはり、ネフシュタンの鎧を失ったのは痛い。

そもそも、ネフシュタンを纏った雪音クリスが全く歯が立たなかった相手なので、たとえネフシュタンが手持ちにあったとしても、雪音クリスより純粋な戦闘能力で劣るフィーネにとって、必ずぶち当たる問題でもあった。

任意対象識別可能な広域殲滅能力とネフシュタンをも融解させる一点特化の超火力も持ち合わせている為、数は意味を成さず、質においても巨大ノイズですら相手にならない。

更に言うとあの少女はまだ力の底を見せた訳ではない。

自らの正体すら曝かれたフィーネにとっては悪夢のような存在だ。

 

「忌々しい!この小娘のおかげで全ての計画が狂っている!」

 

元を辿れば、天羽奏、風鳴翼のどちらかは、2年前の時点で死亡する予定だったのだ。

それもまた、神崎蘭子という規格外の特異点によって阻止されている。

今に至るまで誰一人絶唱すら口にしていないのが、彼女の能力の異常性を示している。

 

「クソッ!!後少し!後少しなんだッ!!カ・ディンギルだ!カ・ディンギルさえ我が手中に収めれば…!」

 

終焉の巫女の慟哭と睡眠不足の日々は続く…

 

***

 

よし、今日の日課も終了だ。

 

あれから、クリスちゃん、響ちゃん、未来ちゃん、弓美ちゃん、創世ちゃん、詩織ちゃんには監視を付けて何があっても即対応できるようにした。

まぁ、監視というか…

 

『やみにのまれよ!』

 

『われはまりょくをもてあましておる!』

 

『きんだんのかじつ、しんくのひやくがまりょくをたかめるわ!』

 

ちっちゃい俺だ。

相変わらず残念言語は健在なので、報告を受けた俺がいまいち理解できないのが難点だが、意識すれば視覚を共有できるので、意外と便利だったりする。

これを駆使すれば禁断の花園、女子更衣室や女湯も見放題…といっても普通に俺も入れる場所なので、ワクワク感が激減してるんだよなぁ…

 

とはいえ、明日は翼さんのライブだし、厄介事が起きるなら起きる前に叩き潰さないと楽しめないからね!

だからね?皆の着替えとかが見えちゃったりするのはあくまで不可抗力であって、仕方のない事なんだよ!

断じて俺の趣味ではないよ?ホントダヨ?

 

そうそう、ライブと言えば、やっぱりクリスちゃんには最初はライブに行くのに難色を示された。

無理のある話題転換?何の事かね?よくわからないな。

 

「だからアタシは歌が嫌いだって言ってんだろ!」

 

「左様か…ならば輝き持つ者と陽光受けし者と…」

 

「ッ!?そ、そういや、丁度ちょっとばかし歌を聴いてやってもいいかと思ってた所だ!仕方ねぇから付き合ってやるよ!」

 

しかし、ちょっと落ち込む素振りを見せて、じゃあ響ちゃんと未来ちゃんと一緒に行くと言おうとしたらコロっと手のひらを返した。

 

ホント、チョロ可愛い。

ちょっとこの娘の将来が心配になるレベルだけど。

 

***

 

さて、昨日も結局何も無かったし、今日は待ちに待ったライブの日だ。

楽屋へのフリーパスも貰ったし、クリスちゃんを紹介がてら挨拶しとくか。

翼さんの楽屋にお邪魔する。

 

「神崎!来てくれたか」

 

「闇に飲まれよ!蒼の歌姫よ!今宵は我が魔力が昂っておる!魔王たる我にその天上の奏を供する栄誉を誇るが良い」

 

はぁ…相変わらずだな、この残念フィルター…

妙に上から目線なのが腹立たしい。

 

「あぁ!今日は是非、防人ではない歌女としての私の歌を聴いてくれ!」

 

ん?サキモリとかウタメとか何かあまり日常会話で聞き慣れない単語が…

完全にお前が言うなだけどね!

 

おっと、そうだそうだ、翼さんにクリスちゃんを紹介しないと。

クリスちゃんは…なんか借りてきた猫みたいに背中にピッタリくっついて俺の服の端をちんまり摘まんでいる。

大変可愛くてもうずっとこのままいて欲しい気分だが、紹介しないと話が進まんしね。

 

「我が眷属、豊穣の女神よ!」

 

「オイ!?お前毎回それでいくのかよ!?…雪音クリスだ」

 

「風鳴翼だ。神崎には世話になっている。今日は私のステージを楽しんでいってくれ」

 

「お、おぅ…まぁ…聴いていってやるよ」

 

「では蒼の歌姫よ!我は劇場にて福音の時を待とう!闇に飲まれよ!」

 

「あぁ!そ…その…や…やみのま?」

 

かわいい(かわいい)。

さて、挨拶も済んだ事だし自分達の席に戻るか…

 

ん?あの人は…

 

「!!貴女達は!」

 

ヤベー、あの強面お兄さんだ…

 

***

 

「アイドルの話、ご検討頂けたでしょうか?」

 

開口一番そんな事をどストレートに聞いてくる。

もうちょい駆け引きとか考えた方がいいと思うよ?

残念言語しか喋れない俺が言うのもなんだけど。

 

「我に輝ける星を目指す志は無い」

 

「アタシはこいつの世話で忙しいんだよ!」

 

「そうですか…残念です」

 

お兄さんが右手を首に当てながら肩を落とす。

なんとなく罪悪感を感じるけど、さすがにアイドルはちょっと無理だ。

 

「して、瞳持つ者は如何にして、この場に?」

 

まぁ、芸能関係者だから居てもおかしくはないんだろうけど、翼さん達の事務所とは少しばかり毛色が違う感じがするし、素直な疑問を口にする。

まぁ、翼さんの事務所って中身二課だから毛色が違って当たり前なんだけどね。

 

「私ですか?私はその…これは内密にお願いしたいのですが、今回風鳴翼さんに我が社のアイドルと一緒に世界進出を考えて頂けないかと思い、ご提案に参りました」

 

おぉ!世界進出!翼さんスゲー…

てか、何故かこのお兄さんには残念言語が齟齬無く伝わってるな…

地味に初見で対応されたのは、フィーネさん以来だ。

いや、このお兄さんの方が先だったか?

 

「その第1段として、我が社が誇る世界レベルのアイドルとの共演を考えて頂けないかと」

 

おぉ…プロデューサーがスカウトしてるからてっきり人手不足で火の車の事務所かと思ってたけど、世界レベルのアイドルがいるのか…

 

「おっと、そろそろ時間ですね。私はこれで。心変わりが御座いましたら是非ご連絡下さい」

 

ほぇー…あのお兄さん、口下手だからあんま仕事出来なさそうなイメージがあったんだけど、仕事はきっちり出来るタイプなんだな。

 

***

 

いよいよライブが始まる。

 

♪FLIGHT FEATHERS

 

…圧巻だ。それ以外に言葉が出てこない。

いや、勝手に翻訳されて意味不明な言葉は出てくるけどね?

そういうんじゃないんだよ。

なんっていうか、本当に心に響いてくるというか…あんまり上手い表現が見当たらん。

 

まぁ、一つ言える事はやっぱり翼さんは凄い。

 

「この魂の波動…我が魂をも魅了する!」

 

お?なんだろう…残念フィルター掛かった方が上手い事言えてない?

おいおい…さすがにこの残念フィルターに負ける事なんて絶対に無いと思ってたから、地味にショックが大きいんだけど…

 

「ま、まぁ…悪くはねぇんじゃねぇか?」

 

俺の言葉に対して、クリスちゃんがそう返す。

素直じゃないなぁ…

でも、さっきから控えめながらもリズムに乗っているのを見逃す俺じゃない。

どうやらクリスちゃんも気に入ってくれたみたいだ。

 

「なんだよ!?その目は!?」

 

「豊穣の女神よ!今こそ秘められし魔力を解き放ち、魂を共鳴する時よ!」

 

「!?」

 

そうやって無理やりクリスちゃんの首に腕を回し、サイリウム二刀流ではしゃぎ回る。

こういう時こそ楽しまなきゃ損だしね!

 

「ちょっ!?ちょっと待てって!当たってる!当たってるからッ!!」

 

ん?なんだろう?

急に顔真っ赤にして、一体どうしたんだろうね?

 

***

 

『ありがとう!みんな!』

 

歌い終えた翼さんが歓声に応える。

 

『もう知っているかも知れないけど、海の向こうで歌ってみないかって、オファーが来ている』

 

『自分がなんのために歌うのかって…ずっと迷っていたんだけど…』

 

『今の私は、もっと沢山の人に歌を聴いてもらいたいと思っている』

 

『言葉は通じなくても、歌で伝えられる事があるならば、世界中の人達に私の歌を聴いて貰いたい』

 

今まで以上に盛大な歓声が巻き起こる。

そうか…それが翼さんの夢なんだな…

 

やっぱり夢に向かってがんばる女の子は誰だって輝いている。

 

それに、今日は一つ翼さんに教えて貰った。

 

そうだ…言葉は通じなくても、歌で伝えられる事だってあるんだ!

想いを伝える術は何も言葉だけじゃないんだな…

 

俺の場合、身近な人以外ほとんど言葉が通じないから、マジで切実な悩みなんだよ…

 

しかし、翼さん海外進出って事は今後もあのお兄さんとは、微妙に関わりがありそうだな…

一応、監視付けとくか。

 

翼さんの夢は、誰にも邪魔なんてさせない。

 

今日のステージを見て、より一層強くそう思ったのだった。

 

そういえば…

 

「キュゥゥゥ…」

 

会場の熱気に当てられたのか、クリスちゃんは赤面して倒れてしまった。

 

さすがに、いきなりこんな人がいっぱいいる場所はキツかったかな?

 

仕方ない、おぶって帰るか…

 

ハッ、これは合法的にクリスちゃんのおっぱいを堪能するチャンスなのではッ!?




今回は
解き放たれし蒼き翼の独奏歌=夢に向かって進み始めた翼さんの歌
つまり1期9話サブタイ、防人の歌です。
蒼いけど3代目は関係ありません(笑)

ちょっと奏さんによって抑止されていた翼さんの中のSAKIMORIがランランとの絡みが増えた事で抑えきれなくなってきてますネ!
完全に解放される日も近いでしょう(笑)

途中に出てきたミニランランはぷちデレラのランランをイメージして頂ければ。


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第9話 幽世に囚われし堕天使

闇に飲まれよ!(お疲れさまです)

無事、1週間毎日投稿いけました。
割と執筆活動が仕事の忙しさに左右されるので、書けるうちに書いてます。

想像以上に楽しんで読んで頂ける方が多いみたいなので、励みになります。


『さて、それでは歌って貰いましょう。風鳴翼さんの特別ユニットで、"つまり、そういうこと"です』

 

クリスちゃんと二人で夕食を食べながらテレビを見る。

あのライブ以来、クリスちゃんは歌が嫌いと言わなくなったため、晴れて我が家のチャンネルの幅に音楽番組が追加された訳だ。

翼さんが出るって話なので、見たかったんだが、すんなりOKが出て良かった。

うわっ、何あの動き!?

言葉で表現するのは難しいが…なるほど、これが世界レベルという奴か…

 

「ところでさ、ちょっとお願いがあるんだ」

 

ん?急に畏まってどうしたんだクリスちゃん。

もしかして、夜のお誘い?

YesNo枕用意した方がいい?

 

「その…フィーネの動きもねぇみてぇだしさ。アタシもお前と一緒の学校に行きたいな…って」

 

と、顔を真っ赤にしながら言ってくる。

かわいい、かわいいよクリスちゃん。

よし、リディアンに通いたいなら一度弦十郎さんに相談するか。

 

***

 

「雪音クリスだとぉ!?」

 

早速弦十郎さんに相談に行ったんだが、何故か物凄く驚かれている。

クリスちゃんは俯いちゃってるし、どうしたんだ?

 

「蘭子君、彼女とどうやって知り合ったんだ?」

 

うーん、実は襲撃者がクリスちゃんでした、とは言えないしなぁ…

仕方ない、適当にぼかすか…

 

「我が魔王城の裏にて忘れ去られし豊穣の女神に我が祝福を与えん」

 

「???それは一体どういう…」

 

ぼかす必要なかったかなぁ…

まったく訳わからん単語のオンパレードで弦十郎さん戸惑ってら…

 

「ハァッ!?お前ぇ、アタシは猫かなんかかよ!?」

 

あっ、そういや優秀な通訳いたわ。

良かった、ぼかしといて。

でもクリスちゃんって動物に例えると絶対に猫だと思うんだ。

一部、猫ではあり得ない部分があるけど。

 

「う、うむ…それで、リディアン編入の件は何とかしよう。ただ、手続きの関係で2学期からになるだろう。それで住居の手続きなのだが…」

 

おっと、そうだな。

正式に二課の外部協力者枠になれば給料も出るだろうし、一緒に住む必要は無いのか…

またあの広い家で一人暮らしになるのは少し寂しいけど…

 

「アタシはこいつの世話しねぇといけねぇから、住居の手配はいらねぇよ!」

 

少し驚いてクリスちゃんを見る。

 

「んだよ?一緒に学校に行きたいのに別々に住むんだったら………意味ねぇだろ」

 

……これもう我慢する必要ある?無いよね?

かの高名な登山家の言葉に『そこに山があるから』という言葉があるらしいが、そうだよな。

山があるならば、登らないとね?

 

「オッホン!わかった、それでは編入の件だけ手配しよう」

 

あっ、弦十郎さん忘れてたわ。

危うく人の目の前でクリスちゃんのお山に登山するところだったぜ…

 

***

 

神崎蘭子と雪音クリスが立ち去った後、風鳴弦十郎は独り言ちる。

 

「雪音クリス、か…今になって2年前の任務が完遂されるとは…な」

 

風鳴弦十郎の公安としての最後の任務になったのが、雪音クリスの保護だった。

多くの仲間を失った。

弦十郎以外に関わった全ての人間が死亡、または行方不明となり史上最悪と言われた任務だった。

しかし、完全に凍結された後も一度請けた任務を投げ出すなど彼には出来ず、個人のつてを使い独自に調査を続けていたのだ。

それが今ようやく完遂された。

 

弦十郎は瞑目する。

 

「蘭子君を通じて、点と点が繋がってきている…いや、元々繋がっていたという事か?了子君、君は一体…」

 

行方不明の元部下の事を考える。

部下の不始末は己の不始末。

彼はそういう風に考える。

ならば、たとえ敵対したとしても、最終的に本人に復帰の意志があるならば暖かく迎えてやるのが、大人としての務めだろう、とも。

 

「俺も責任を取るような立場になっちまったか…まったく…年ばっか食ってる大人なんてみっともなくて仕方ないな…」

 

それは己自身に対する皮肉か、それとも己の置かれた状況やしがらみに対する不満なのか…

しかし、それも束の間、

 

「よしっ!2年越しの任務完遂祝いに今日はTATSUYAで名作を借りていくか!」

 

ストレスを巧くコントロールするのも大人の務めだと言わんばかりに弦十郎は気持ちを切り替えるのだった。

 

***

 

「あれ、蘭子ちゃん、クリスちゃん、どうしたの?」

 

「クリスが学校まで蘭子に会いに来るなんて珍しいね」

 

二課からの帰り道、中央棟を出たところで響ちゃんと未来ちゃんに呼び止められる。

やべっ、未来ちゃんに二課の事は内緒だしどうやって誤魔化そう…

いや、ここ中央棟だから普通に転入の手続きでいいのか…

 

「ハッ、アタシはコイツの()()らしいからな?会いに来んのは別におかしかねぇだろ?」

 

と思ったら、クリスちゃんがドヤ顔で先にそう答えてた。

 

「ぐぬぬぬぬ…」

 

「むぅ…」

 

ん?3人共どうしたんだ?

なんか不穏な空気が流れてるっていうか、響ちゃんは警戒してる犬みたいに唸ってるし、未来ちゃんは超不機嫌そうだ。

 

「ねぇ?丁度近くにいいお店あるし、お茶していかない?」

 

え?未来ちゃんこの空気でお茶に誘うの?

まぁ、二課の事とかどうでも良さそうだから俺的には助かるんだが…

 

「ま、いいんじゃねぇか?お前らとは、一度ゆっくりと話をしなきゃいけねぇと思ってたしな」

 

「うん、私も賛成」

 

まぁ、3人がいいなら俺も別に構わないんだけどね。

ちょっと小腹も空いてきたしな。

 

「ならば我も…」

 

「あっ、蘭子以外でって話だから」

 

「蘭子ちゃんはお留守番しててね?」

 

「ま、夕飯時には帰るから大人しく家で待っててくれよ」

 

行ってしまった…

何?こんな露骨なハブり方あんの?

チクショウ…こうなったらクリスちゃんの楽しみにしてた冷蔵庫のプリン食っちゃうからな!

 

***

 

とある喫茶店。

 

「お帰りなさいませ、お嬢様」

 

「ほぇぇ、こんな所にお店あったんだ…」

 

立花響がそう漏らす。

それもそうだ。

どう見ても、普通の会社にしか見えないビルの中に所謂メイド喫茶があるとは外から見るだけではわからない。

経営事情が心配になる所だが…

カウンターで無表情のまま、珈琲を口に運ぶミステリアスな女性…本当に飲んでいるのだろうか?

「ボンバー!」などと叫んでいる同年代くらいの女の子…個人的には割と仲良くなれそうな気がするがあそこだけ周囲と物理的に温度差がありそうだ。

はたまたタブレット片手にピンク色のパスタを横にいるスーツ姿の青い顔をした男性の口に押し込むどう見ても小学生の女の子…親子には見えないし、一体どういう関係だろうか?

など、意外にも男女問わず利用されているようだ。

 

こういうお店は男性客の方が多いという響の先入観とは裏腹に、意外にも女性客の比率の方が多いようだった。

 

「うん、割と穴場でしょ?」

 

未来が返す。

穴場は穴場なのだろうが、客層に統一性がなく、カオスに感じる。

そんな中、席についた3人に兎の耳を着けたメイドがやってくる。

 

「お嬢様、ご注文はお決まりですか?」

 

「あっ!ウサミ…」

 

そう、そのメイドは響も見た事がある女の子だったのだ。

 

「響、そういうのは無粋だからやめようね?」

 

「な、なんか慣れてんな、お前…」

 

しかし、すかさず未来が止める。

確かにこういった場所で店員の素性を問うのは無粋だろう。

誤解されがちだが、こういったコンセプトを持つ飲食店では、客側にもそれ相応のマナーが求められるのだ。

とはいえ、クリスの言う通り、弁えているにしろ、未来は他二人に比べて慣れ過ぎている。

 

「未来お嬢様は3年前から来て頂いてる常連様なんですよ」

 

兎耳メイドが説明する。

その説明で響とクリスも納得するが…

 

「アレ?17歳の3年前って…」

 

「そそそそれじゃあ、ご注文の品を持って来ますね!!ご、ごゆっくりー!」

 

「もう、響!あんまりメイドさんを困らせないの!」

 

「ほぇ?私なんか悪い事言ったかな??」

 

「お前…ホントのバカだな」

 

ため息を吐く未来と本当にわかっていない様子の響を見て、クリスも少しだけ力を抜いて微笑むのだった。

 

***

 

はぁ…凹む。

まさか嫁と親友にハブられるとは思ってもみなかったわ…

チクショウ…今ごろ3人で俺抜きでガールズトークしてるんだろうなぁ…

俺だって見た目はガールの筈なのにね…

中身はアレだけど。

………もしかしてバレた訳じゃないよね?

それとなく探り入れた方がいいかもな…

 

「久しぶりね」

 

ん?目の前の女性に急に声を掛けられる。

 

「この禁断の果実…終焉の巫女!!」

 

「何処を見て人を判断している!!」

 

いやぁ、ね?

仕方ないよ。

そんな立派な物、見ない方が失礼だと思うよ?

 

で、どうしたんだ?

もしかして、おねショタやる気になった?

 

にしてはショタいねぇし、違うんだろうなぁ…

 

「少し話をしましょう」

 

はぁ…これは、まだ俺の勧誘を諦めてないって事なのかね?

 

***

 

とりあえずフィーネさんを家に上げてお茶を出す。

紅茶とかは専らクリスちゃんにお任せなので、淹れ方良く知らんし緑茶でいいか。

 

「…渋いな」

 

文句言うなら飲むな。

で、今回はどんな魅力的な提案をしてくれるんですかね?

 

「我とて闇に漂う魔力を高めし御業がある故、手短に願おう」

 

「ごめんねぇ、夕食の支度時にお邪魔しちゃって」

 

わかってんじゃねぇか…

今日は旨い飯作ってクリスちゃんを驚かせてやらんといかんのだ。

そういや、響ちゃんと未来ちゃんも来るかもしれんし、一応、4人分作っといた方がいいのかね?

余ったら明日の弁当にすりゃいいんだし。

 

「だが!ノコノコ敵を自分の本拠地まで上げるとはな!その油断がこういう結果を招くのだッ!!」

 

フィーネさんがいきなり杖のような物を振りかざす。

 

なんだこの光!?やべっ…………

 

……

………

 

生きてる…よね?

一体何がしたかったんだ?

ただの目眩まし?何の目的で?

 

しかし、急な出来事に混乱する俺を余所に、光が完全に収まって目に入る風景は、慣れ親しんだクリスちゃんとの愛の巣ではなく、なんか古代感漂う空間と…

 

見渡す限りのノイズの群れだった。




今回は
幽世に囚われし堕天使=バビロニアの宝物庫に飛ばされた蘭子
です。

原作では2期ラストにエクスドライブでクリスちゃんが機能拡張する流れですが、本作ではフィーネさんが改造する形に。
フィーネさん渾身の反撃は功を奏するのか…?


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第10話 魔弾の射手

闇に飲まれよ!(お疲れさまです)

今回はらんらん封印中のため、熊本弁成分薄めなんだ…
本当にすまない。


ここからは時間との勝負だ。

あの規格外の娘なら自力で脱出してきたとしてもおかしくはない。

 

故に彼女は恥も外聞もかなぐり捨てて走る。

何故か仇敵の自宅で発見した失った筈の完全聖遺物を回収し、走る。

その完全聖遺物は何故か強烈な匂いが染み付いているが、ひとまずは気にしない。

彼女にとって、悲願を達成する事の方が重要だから…

 

神崎蘭子をバビロニアの宝物庫に送った後、すぐに飛行型の大型ノイズを都心に向けて放った。

小型ノイズを生み出すため、時間稼ぎには丁度いい。

これでシンフォギア装者は引き離せるだろう。

 

後は神崎蘭子が宝物庫の中のノイズを全滅させるなどという馬鹿げた…しかし否定しきれない事を仕出かす前にソロモンの杖を使い風鳴弦十郎を排除し、カ・ディンギルを押さえる。

 

これが彼女の立てた最も現実的かつ成功率の高いプランだった。

ネフシュタンの鎧が手元に戻ったのは嬉しい誤算だ。

少し匂うが…

 

だが、常識で測れない相手を二人同時に相手にしている故か。

彼女は、無意識にその二人以外を甘く見る。

 

自らが造り出した筈のシンフォギアという力を。

 

そして、死亡したと認識している故、完全に計算の外にいる一人の少女の事を彼女はまだ知らない。

 

***

 

「豊穣の女神よ。今こそ秘められし魔力を解き放ち、魂を共鳴する時よ、だ」

 

「ぐぬぬぬぬ…」

 

「チッ…」

 

「我が友を侮辱するな!貴様等に輝き持ちし我が友を蔑む資格などありはしない、だよ」

 

「クッ…やるじゃねぇか」

 

「次は私ね…」

 

その時、辺りにノイズ警報が鳴り響き、同時に立花響の端末に着信が入る。

 

「そんな…こんな時に…」

 

「響…?どうしたの?早く避難しなきゃ!」

 

未来がいる故に着信に出るかどうか迷う。

しかし、そんな響の肩にクリスが手を置く。

 

「お前はお前の大事な(モン)を守ってやんな」

 

「クリスちゃん…?」

 

「アタシが行く!」

 

~Killter Ichaival tron~

 

歌と共にクリスが真紅のシンフォギアを纏う。

 

「え?クリス!?」

 

「えぇぇ!?ウソー!?」

 

♪繋いだ手だけが紡ぐもの

 

左右に搭載したガトリングガンを両手に携え狙撃ポイントまで跳ぶ。

あの空を飛ぶ大型ノイズを倒さなければ、この混乱は収まらない。

着地と同時に空にいる飛行型の小型ノイズに向かってガトリングガンを放つ。

 

―BILLION MAIDEN―

 

「オラオラオラァッ!!」

 

次は腰部アーマーから小型ミサイルを発射し、地上にいる人型ノイズを一掃する。

 

―MEGA DETH PARTY―

 

「チッ、さすがにあそこまでは届かねぇか…」

 

しかし、遥か上空を飛ぶ大型ノイズには小技では届きそうにない。

大技を放つ必要があるが、どんどん生み出される小型ノイズがそれを許さない。

単独での戦闘ではジリ貧だった。

 

しかし、これでいい。

時間さえ稼げれば、後は愛……頼れる同居人が駆け付けてくれる筈なのだから…

そんな一瞬の気の緩みに対して飛行型ノイズが一斉に変形突進を敢行する。

 

「しまっ…!」

 

しかし、そんなノイズ達の決死の突撃は、突如現れた無機質の壁に阻まれていた。

 

「なんだこりゃ…盾?」

 

(つるぎ)だ!!」

 

見上げると、アームドギアを大型の剣に変形させた風鳴翼が柄部分に立っていた。

 

***

 

「何処の誰かは知らないが、助太刀感謝する!って、お前…雪音か?」

 

アームドギアから降りてきた翼が見知った顔に驚く。

 

「話は後だ!団体さんのお出ましだ!!」

 

翼の背後より一斉に人型ノイズが襲い掛かってくる。

 

「露は防人の剣が払おう!」

 

そう言うと逆立ち状態になり、巧みに移動しながら足に搭載されたブレードで周囲のノイズを切り払う。

 

―逆羅刹―

 

「へっ、頼む!背中は預けたぜッ!!」

 

今ならば上空のノイズに届く。

そう確信し、4基の大型ミサイルと全砲門を開く。

 

「特別サービスだ!全部持っていきやがれぇッ!!」

 

―MEGA DETH QUARTET―

 

放たれた銃弾と砲弾は、3体の大型飛行ノイズに直撃し、その全てを撃滅したのだった。

なんとか2人で対処出来たものの、クリスは疑問に思う。

アイツは…あの少女はどうしたのか?と。

 

「なぁ…アイツは?」

 

「む?神崎は一緒では無いのか?連絡がつかないからてっきり一緒にいるものと思っていたのだが…あっ!おい、雪音ッ!?」

 

………嫌な予感がする。

クリスは己の直感を否定しきれず、自分の帰るべき場所に向かって走り出すのであった。

 

***

 

いやぁ、参ったなぁ。

なんか、ノイズうじゃうじゃいるからとりあえず近寄って来る奴ら倒してんだけど、これ減ってんのかね?

割と倒したと思うけど、単調作業過ぎて飽きてきたし、なんかチマチマ倒してても不毛な感じがしてきた。

こう、砂漠で砂掘ってるみたいな感じ。

 

帰ろうにも転移するには座標をイメージしないといかんので、ここが何処なのか把握しないと無理っぽい。

とりあえず今のところ飽きてきたとはいえ、ノイズ倒すくらいしかやる事が無い訳だが…

 

うーん…飽きが来ないように趣向を変えるか…

普段なら外でも全力とか絶対できんし、丁度いいな。

 

よし、色々やってみよう!

 

***

 

小日向未来の手を引き立花響は走る。

自分も戦うにしろ、まずは未来を避難させないとそれすらも出来ない。

 

既に市街地には、大量のノイズが蔓延っており、ノイズに見つからないよう、迂回しながらシェルターを目指す。

 

「ハァッ、ハァッ、未来!もうちょっとだから!」

 

「………響、行かなくていいの?」

 

どきりと胸が締め付けられる。

そうだ。自分の力はこんな時にこそ、必要な力だった筈だ。

でも、未来を守るためと言い聞かせて、ここまで来たのだ。

未来を置いて行く訳には…

 

「正直に言うとね?私は響にも蘭子にも危ない事なんてして欲しくない」

 

「未来…」

 

「でも…私のせいで助けられる人を見捨てる響なんて響じゃない!私も、みんなも!一緒になんとかして!私の全部を任せられる相手なんて、響と蘭子しかいないんだから!!」

 

~Balwisyall Nescell gungnir tron~

 

未来の発した大きな声に反応し、ノイズが襲い掛かってくる。

 

「ありがとう、未来…」

 

しかし、次の瞬間ノイズ達は全て炭の塊に姿を変えていた。

 

「難しく考えるなんて私らしくなかった!もう迷わない!!」

 

解き放たれた少女はまるで竜巻のようにノイズの群れを処理するのであった。

 

「でも、ちゃんと説明はして貰うからね?」

 

黒い笑顔で未来が言う。

こういう時の未来はだいたい怒っている。

 

「………はい」

 

後日、確実に起こる未来の説教(災難)に響は今からげんなりするのであった。

 

***

 

ついに私立リディアン音楽院に辿り着く。

ソロモンの杖を翳す。

 

己の意志に従って、次々にノイズが現れる。

賭けに勝った。

あの化け物はまだノイズを全滅させていない。

 

「フハハハハハッ!!私の勝ちだッ!!」

 

勝利を確信し、念のためネフシュタンの鎧を纏い終焉の巫女は歩みを進める。

 

研究室に保管してある筈の不滅の聖剣へ…

 

………やっぱり臭い。

しかし、悲願さえ成就出来れば良い。

その為の力であれば何であれ使うのみだ。

 

後一歩…

 

「そこまでだ、了子君」

 

背後から見知った声が掛かる。

やはり来たか…

あの程度のノイズなら突破してくるか…忌々しい。

 

「そこから先に行かせる訳にはいかん!!」

 

「行かせて貰う!!」

 

振り向き様にソロモンの杖を翳そうとするが…

 

「させん!!」

 

弦十郎の鋭い蹴りがソロモンの杖を弾く。

 

「チィッ!!」

 

フィーネもネフシュタンの刺の鞭ですかさず応戦するが、その攻撃は読まれており、ジャンプで避けられる。

 

空中ならばと鞭の指向を変えて追撃を狙うも、相手は天井のパイプを掴み直ぐ様軌道を変えてこちらに突っ込んできた。

重い拳撃が通路に突き刺さる。

咄嗟に回避するも拳圧だけで完全聖遺物である筈のネフシュタンの鎧が軋む。

 

「完全聖遺物を圧倒するだと…やはりその力」

 

厄介だ。

わかってはいたが、やはりソロモンの杖を手放したのは痛い。

 

「知らいでかッ!!飯食って、映画見て、寝る!!男の鍛練はそれで十分よッ!!」

 

この男と正面から戦っても勝てる見込みは薄い。

 

「さぁッ!!反省の時間だ!了子君!!」

 

弦十郎が迫る。

こうなれば一か八か。

 

「弦十郎君!」

 

「ッ!!」

 

目に見えて弦十郎の動きが鈍る。

私の勝ちだ!!

 

次の瞬間、ネフシュタンの刺の鞭が風鳴弦十郎の腹部を貫いていた。

 

***

 

うーん、やっぱりちょっと趣向変えただけじゃすぐ飽きるな。

 

だって結局やってる事は変わらんしね。

向こうの被害規模がちょっとシャレにならん位上がっただけで。

 

辺りを見回すが、もう自分に襲い掛かるノイズはいないみたいだ。

途中、なんか妙に黒いノイズも交じってたけど、何だろうね?新種?

どっちにしろ瞬殺だったから、あんまり他と変わらんかったけど、ちょっと動きは速かったかな?

 

うーん、気配は感じるから全滅はしてないっぽいけど、こっちに来る気は無いみたいね。

ほっとくか。

 

ん?あっちの方のノイズの気配が一気に消えたような…

もしかして、俺以外にも誰かいるんかね?

 

やる事なくなっちゃったし行ってみるか…




今回は
魔弾の射手=イチイバルクリスちゃん

これでも駆け足なんだが、らんらん復活はもう少し話が進むまで待って下さいませ。
明日は更新できないかも…すまない。

おまけ
ニヴルヘイム
宝物庫の中でちゃっかり発現した疑似聖遺物。
左手で使用し、氷の力を操る。
途中で出てきた黒いノイズとかをこれで軽く氷漬けにしたりした。


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第11話 魂の波動纏いし聖衣

闇に飲まれよ!(お疲れさまです)

そして、お久しぶりです。


とりあえず、ノイズの気配が次々に消えてる所に行ってみたが…

 

なんか次々に門みたいなところに入って消えて行ってる。

もしかして、アレ通れば外出られるんじゃね?

 

よし、そうと決まれば行ってみよう。

 

あっ、消えちゃった…くそぅ…

 

仕方ない、次に出てくるの待つかね…

とりあえず、邪魔も無くなったし待ちながら座標把握できるか試してみるか。

 

***

 

自宅に戻った雪音クリスは呆然とする。

 

鍵の掛かっていない玄関のドア、中身が入ったままの二人分の湯呑み、無くなっているネフシュタンの鎧…そして、玄関に残っている同居人の靴。

しかし…何処を探しても、肝心のヘンテコな言葉を話すあの同居人の姿が見当たらない。

 

確かにそれら一つ一つは状況証拠でしかない。

入れ違いの可能性だってもちろんあるだろう。

 

しかし、それら全てをまとめて連想される一つの結論について、良い方向に受け取れる程、雪音クリスは楽観主義者では無かった。

 

「……赦さねぇ」

 

「赦さねぇぞッ!!フィーネェッ!!!!!」

 

夕日が赤黒く変色する少女の鎧を照らしていた。

 

***

 

雪音クリスを見失った翼は、ひとまず帰投のため、特異対策機動部二課、つまり私立リディアン音楽院へと向かっていた。

 

「まもなくリディアンの筈なのだが…」

 

「ッ!?何だ、これは!?」

 

そう、リディアン音楽院があった場所は確かにここだ。

しかし、そこに慣れ親しんだ学舎は無く、代わりに天を突くかのような異様な塔が立っていたのだ。

 

「シンフォギア装者か…ご苦労な事だ」

 

声の主の方に振り返る。

 

「まさか…櫻井女史!?」

 

そこには、ネフシュタンの鎧を纏う終焉の巫女の姿があった。

 

「間もなく私の悲願は成就される。大人しくそこで見ていなさい」

 

「何を言っている!?櫻井女史!?」

 

「月を穿つ!!」

 

塔が発光を始める。

状況は飲み込めていないが、間違いなく善からぬ事が起きようとしている。

 

~Gatrandis babel ziggurat edenal~

 

「この歌…まさか!?」

 

翼が歌の正体に気付く。

 

~Emustolronzen fine el baral zizzl~

 

この歌は…絶唱だ。

 

~Gatrandis babel ziggurat edenal~

 

「でも…一体何処から…」

 

~Emustolronzen fine el zizzl~

 

「させるかよォォォォッ!!」

 

翼の遥か後方、今まさに放たれた月を破壊する為の砲撃に対して、丁度横合いになる形で一筋の流星が放たれる。

 

ガングニール。

 

何物をも貫き通す無双の一振り。

完全聖遺物として在れば、まさにその名に偽りなく、全てを貫いたであろう。

しかし、欠片を残すのみとなったその力では、たとえ使い手の命掛けの一撃であったとしても不滅の聖剣を動力源とする超級の砲撃に対しては、僅かばかり軌道を逸らすに留まる。

しかして、逸らされた軌道は誤差の範囲に収まらず直撃軌道から外れ、月の一部を損壊させるのみに留まった。

 

「へっ、ざまぁみやが…れ」

 

そう呟いて天羽奏は地に臥せる。

 

「奏っ!!」

 

翼が奏に駆け寄る。

 

「どうして…?」

 

「翼ががんばってんのに、アタシだけ休んでる訳にいかねぇだろ?」

 

「でもっ!!そんな身体で歌ったら…!」

 

「大丈夫…少し休んだら、アタシも行くからさ…翼、頼…んだ」

 

かつての相棒にエールを託し、天羽奏は意識を手放した。

 

***

 

「ハッ、無駄な事を」

 

「………無駄だ…と?」

 

「そう、無駄だ。一撃で終わるなど兵器としては欠陥品。何度でも撃てるからこそ兵器足りえるのだ。一度凌いだ所で所詮は時間の無駄に過ぎん」

 

「無駄と…言ったか?命を賭して、大切な物を守り抜く事を!お前は無駄とせせら嗤ったか!!」

 

翼にとって、これ以上己の半身を侮辱される事は、我慢ならなかった。

今まさに、怒りに身を任せ終焉の巫女に斬りかからんとしたその時に…

黒い影が割り込む。

 

「ミツケタゾ!!フィーネェェェェッ!!!」

 

「なっ!?」

 

突然の乱入者に対して、フィーネも刺の鞭を放つが、乱射される銃弾に悉く軌道を逸らされる。

 

「お前…雪音?」

 

「バカな!?死んだ筈では…」

 

今度は翼が混乱する。

何故、櫻井了子が雪音クリスを知っていて、その上で死んだなどと認識しているのか?

 

「テメエダケハユルサネェッ!!アイツヲ…アイツヲォォォォッ!!」

 

そんな周囲の混乱などお構い無しにクリスはフィーネに向けて突撃する。

 

「クッ、もはや人に非ずかっ!!」

 

フィーネもネフシュタンの鞭で応戦するが、クリスの獣染みた動きに翻弄され、有効打が与えられない。

 

「チッ、こんな事をしている場合では…」

 

クリスの無差別砲撃でカ・ディンギルに無視できないダメージが与えられている。

早急に対処しなければ、二射目の砲撃に耐えきれない。

しかし、裏を返せば、二射目が放たれさえすれば己の勝ちは確定するのだ。

クリスは明らかに己を狙っているのだから、カ・ディンギルから引き離せばいいのだが、当然翼も無視できない。

 

少しずつ、フィーネは焦り始めていた。

神崎蘭子に風鳴弦十郎。

計画の最大の障害は既に排除し、己の勝利は確実だった筈なのだ。

しかし、結果として、カ・ディンギルの一射目は天羽奏によって逸らされ、今まさに雪音クリスによって、二射目が危うい状況まで追い込まれている。

己にとって、取るに足らないと侮っていたシンフォギアによって。

あり得ない。

己の造り出した玩具にそこまでの力は想定されていない。

一体何がここまで自分を追い込んでいるのか?

 

とにかく、今は雪音クリスを排除しなければ…

 

しかし、そんな中、クリスの前に立ちはだかったのは、フィーネでも翼でも無かった。

 

「クリスちゃん…クリスちゃんが何で怒ってるのか私には解らないけど…たぶん蘭子ちゃんの事だよね?」

 

立花響だ。

敵味方問わぬクリスの銃撃は響にも襲い掛かる。

 

「でもね?クリスちゃん」

 

しかし、その身に銃撃を受けて傷だらけになりながらも、全く怯む事無く、最速で、最短で、真っ直ぐに、一直線に向かっていき、ついにはクリスを抱き締める。

 

「蘭子ちゃんを…信じてあげよ?」

 

涙を流しながら、クリスの暴走が解ける。

そのまま、クリスは意識を失い、響に身体を預ける。

 

「立花っ!…まったく、無茶をし過ぎだ」

 

「翼さん…すみません。後…頼みます」

 

「あぁ、任せておけ」

 

そのまま力尽きたのか、響もまたクリスを庇うようにして倒れ込むのであった。

 

***

 

ついにこの場で剣を携えるのは自分1人となってしまった。

しかし、託された想いが、独りでない事を教えてくれる。

 

♪絶刀・天ノ羽々斬

 

「…待たせたな」

 

フィーネに向けて歩みを進める。

 

「どこまでも剣、か…」

 

「今日に折れて死んでも…明日に人として歌う為に」

 

そうだ、もはや己はただの剣に非ず。

 

「風鳴翼が歌うのは…戦場(いくさば)ばかりでないと知れッ!!」

 

「人の世が剣を受け入れる事などありはせぬ!!」

 

ネフシュタンの鞭を回避し、最速の斬撃を繰り出す。

 

―蒼ノ一閃―

 

そのまま返す刀で空中に飛び、巨大化させたアームドギアと共に渾身の一撃を叩き込む。

 

―天ノ逆鱗―

 

その一撃は多重に繰り出される鞭の結界によって阻まれるが、翼の狙いはそこにあった。

 

巨大化したアームドギアを足場に臨界に達さんとする塔に向けて飛び立つ。

 

―炎鳥獄翔斬―

 

「狙いはカ・ディンギルか!!」

 

フィーネの追撃が迫る。

数度躱すも、執拗に鞭は追い迫り、まさに翼を討たんとした次の瞬間…

 

「へっ…一度当たっちまえば、追撃は出来ねえよな!」

 

「奏!?」

 

天羽奏が身体を張って鞭を受け止めていた。

 

「翼、両翼揃ったツヴァイウィングならさ…」

 

「あぁ!どこまでだって翔んでいける!!」

 

「やめろォォォォっ!!」

 

そうして、風鳴翼と天羽奏。

ツヴァイウィング二人の捨て身の一撃によって、天を穿つ筈の塔はついにその役割を果たす事無く崩壊していくのであった。

 

***

 

「クソッ!!私の計画が、まさかこんな奴らに!!」

 

フィーネが呪詛を振り撒きながら周囲に当たり散らす。

 

「それもこれも貴様等のせいだッ!!」

 

満身創痍でギアすら解除された響とクリスを蹴り飛ばす。

自身の計画を台無しにしてくれたのだ。

もはや楽に死なせるつもりなど毛頭無い。

 

「月を破壊し、統一言語を取り戻し再び世界を一つに束ねる筈だった…だったのに!!」

 

フィーネが二人に迫る。

 

♪私立リディアン音楽院校歌

 

破壊された校舎のスピーカーから音が発せられる。

 

「何だこれは…?」

 

音の発生源を探し、辺りを見渡す。

 

「何が聞こえている?この不快な…歌…」

 

「歌…だ…と!?」

 

気付けば長い夜は終わりを告げ、辺りに朝日が射し込んでいた。

 

「聴こえる…」

 

「皆の歌が…」

 

♪Synchrogazer

 

無言で響とクリスは見つめ合い、頷く。

 

「私達を支えてくれてる皆はいつだって側に…」

 

「皆が歌ってるんだ…だからッ!!」

 

「まだ歌えるッ!」

 

「頑張れるッ!!」

 

二人で叫ぶ。

 

「「闘えるッ!!!」」

 

立花響と雪音クリスが手を繋ぎ、立ち上がると同時に二人の纏うアウフヴァッヘン波形にフィーネが弾き飛ばされる。

 

「まだ闘えるだと!?」

 

「何を支えに立ち上がる?何を握って力と変える?」

 

「鳴り渡る不快な歌の仕業か?そうだ、心は確かに折り砕いたはず…なのに、何を纏っている?」

 

「それは私の造った物か?お前の纏うそれは一体何だ?なんなのだ?」

 

破壊された天を穿つ塔の跡地からそれぞれ()()の光の柱が昇る。

 

「―傷ついた悪姫―」

 

「シ・ン・フォ」

 

「第二形態!」

 

「ギィィッ――ヴウゥワアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」

 

「我が名はブリュンヒルデッ!!」




今回は
魂の波動纏いし聖衣=シンフォギア

フィーネの質問責めからのシンフォギィヴゥワアァに空気読まずに割り込むらんらん。
これがやりたかった(笑)



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第12話 傷ついた悪姫

闇に飲まれよ!(お疲れさまです)

1期ラストです。


アレー…なんか出てくるタイミング間違えた?

 

完全に響ちゃんと被っちゃったよ…

 

あの後、座標把握とか、門が開くの待つより、門が無いなら作った方が早えなと思って、早速作って出てきたんだけど…

 

コレ、どういう状況?

 

なんか皆に信じられない物を見る目で見られてる気がするんだけど…

 

『お前、今どこから出てきたんだよ…』

 

ん?頭にクリスちゃんの声が響いてくる。

ナニコレ?テレパシー?

ていうか、クリスちゃんはなんでシンフォギア着けてんの?

 

まぁ、聞かれてるし、とりあえず返してみるか?

もしかしたら、普通にコミュニケーション出来るかもしれんし…

 

『隔絶されし幽世からの帰還よ!』

 

やっぱりな!チクショウ…

 

『お前…念話でもソレなのかよ…』

 

『ちょっとはまともなやり取りを期待したんだけどなぁ…』

 

『あぁ、だが、神崎らしい』

 

『まぁ、蘭子ちゃんはいつも通りって事で…』

 

まぁ、そんな気はしてたから、置いとこう。

なんか、皆シンフォギアの形変わってるし、そもそも空飛んでるし、一体どうなってんのさ?

 

まぁ、それは後で聞くとして…今はあっちが先だな。

 

***

 

それは、フィーネにとって、絶望が具現化したような存在だった。

 

あの小娘は自身の使うリィンカーネイトシステムにすら介入しかねない。

バビロニアの宝物庫から自力で脱出してくるなど、はっきり言って非常識極まる存在だ。

可能性は考慮していたものの、実際に見るとそのあり得なさが改めて際立つ。

 

彼女の最善は計画が頓挫した時点で、次に託して転生するべきだったと悟るも今となっては後の祭り。

 

勝ち目は限りなく薄いが戦うしかない。

そう覚悟し、ソロモンの杖を翳す。

 

「堕ちろォッ!!」

 

まずは街中にノイズを放ち、時間を稼ぐ。

筈だったが…呼びたかった半分もノイズが出てこない。

まさか、あの小娘がここまで減らしたというのか?

 

化け物め…

内心焦るも、期待通りノイズ殲滅に向かってくれたようだ。

あの数では大した時間稼ぎにならないだろうが、今のうちにデュランダルを…

 

***

 

とりあえず、まずはノイズ倒そ?って事になったんだが、なんかもうノイズは見飽きたな…

 

♪FIRST LOVE SONG featuring 神崎蘭子

 

さっさと終わらすか。

 

「覚醒せし魔王の魔力を解放する時よ!!」

 

左手を広げて天に翳す。

あっちで使ってて割と便利だった使い方だ。

 

―Niflheimr―

 

辺りが冷気に支配され、ノイズが次々と凍っていく。

続いて、左手を握り締めると同時に凍りついたノイズ達が一斉に粉々に砕け散る。

うーん…とりあえず出てきた分は今ので全部倒したかな?

この技…火より範囲が広い分、敵識別が曖昧だから、今回みたいな皆避難してて味方全員の位置把握してる状況じゃないとなかなか使えんのが玉に疵だけど、ノイズいっぱいいるとかめんどくさい時はかなり便利だ。

 

「えぇ…」

 

「お前…」

 

なんか皆からジト目で見られてるけど気にしない。

いや被害とか考えたら、これが一番手っ取り早いからね。

 

「なっ!?」

 

あっ、フィーネさんめっちゃ驚いてら。

なんかするつもりだったみたいだけど、空気読まなくてゴメンね?

嫁とか親友を散々痛め付けてくれたみたいだから、こう見えて結構怒ってるからね?

 

「貴様!?貴様の聖遺物は炎では無かったのか!?」

 

「フッ、魔王たる我にかかれば複数の魔力を操る事など造作も無い事!」

 

ま、チートだし多少はね?

でもまぁ、今回もなんか急に使えるようになったから、相変わらず仕組みはイマイチよくわからんのだけどね…

今はそんな事より…

 

「終焉の巫女…懺悔の時よ!!」

 

とりあえず、迷惑掛けた皆にごめんなさいして、その後おねショタな?

 

「私の…敗けだ…」

 

今度こそ、疲れ果てた顔でフィーネさんは崩れ落ちた。

 

「アレ?私達が変身した意味は?」

 

響ちゃんがそんな事を呟く。

みんな無事で終わったんだし、いいでしょ?

 

「まぁ、らしいと言えばらしいが…」

 

翼さんまで引きつった顔してどうしたの?

 

「ま、アタシはこいつが無事なら別に…」

 

やっぱり我が嫁は世界一可愛い。

 

「おいしいとこ全部持っていきすぎだろ」

 

締めとばかりに奏さんに頭をわしゃわしゃされた。

 

***

 

あれから1週間。

 

フィーネさんは捕らえられて、余罪の取り調べとか色々、弦十郎さんと緒川さんを中心にやっているらしい。

敵対してたのが嘘みたいにスラスラ喋っているらしいが、やっぱり相当悪い事してたらしく、生きてる内に釈放されるのは絶望的との事。

本人曰く転生出来るらしいので、極刑よりこのまま罪を償わせるのが彼女にとって罰になるだろうというのが弦十郎さんの考えみたいだ。

 

弦十郎さんと言えば、あの日フィーネさんに腹に穴開けられたらしいんだけど、完全に貫通してた傷がその日のうちに自力で歩けるまで回復して、次の日には普通と変わらんかった。

なんか発勁とかなんとか言ってたけど、あの人、本当に人間なの?

俺の知ってる人間の怪我の治り方じゃないんだけど…

 

とりあえず、学校の校舎自体が無くなっちゃったので、新校舎の手配が終わるまでは生徒は休みという事で、俺やクリスちゃんまで遠慮なく後始末に駆り出されている。

 

そんで、今日はその最後の後始末の日。

 

藤尭さんの話では、あの日割れた月の欠片は緩やかにだけど、着実に地球に近付いて来てるらしい。

最初は絶唱?とかいうので破壊するとか言っていたんだが、なんか半端ないリスクがあるみたいなので、「我に任せよ」と言って、俺が何とかする事になった。

 

で、今息出来る限界近くまで飛んで来ている状態だ。

まぁ、あまり機会の無い全力出せるシチュなので、遠慮なくやらせて貰おう。

 

炎を集中させて、こう、ビームを出すイメージで…

 

「魔力束ねし、灼熱の焔よ!!」

 

―Aurora―

 

……うん、確かにね?ビームをイメージしたんだけどさ…

だってビームだよ?精神は男な訳だしさ、ロマンじゃん?

 

…でもさ、その結果、月の欠片一瞬で蒸発しちゃうと思わないでしょ…

なんか達成感とか全然無いな…

 

『お疲れさまです。蘭子ちゃん』

 

油断してたらいきなり邪神とエンカウントした…

何このクソゲー…

ていうか、ずいぶん久しぶりだけど…

 

『そうですね。はい、こちらログインボーナスの無料ドリンクです』

 

はぁ、どうも。

どういう風の吹き回しかな?

無料をやたらと強調してくるし…

 

『や、やだなぁ…お試しで使ってみて気に入れば購入、なんて事考えてないですよ?善意!100%善意です!』

 

語るに落ちるとはこういう事を言うんじゃないだろうか?

で、今日は何の用事?

 

『そろそろ説明が要るかな?と思ったんですけど、要らないですか?』

 

要る。めっちゃ要る。

 

『ですよね?ところで蘭子ちゃん、哲学兵装ってご存知ですか?』

 

て、哲学兵装だって!?

 

『はい、その哲学兵装です』

 

で、その哲学兵装って何ですか?

 

『もう!知らないなら大袈裟にリアクション取らないで下さい!』

 

で、哲学兵装の説明受けたんだけど、なんか簡単に言うと()()()()()によって、概念が追加されて、本来持ち得ない能力だったりを獲得した物らしい。

で、それが何か関係あんの?

 

『ご自分の使ってる能力の正体ですよ』

 

え?そうなの?これ、そんな能力なの?

 

『はい、その靴は元々少女達の夢の一つの到達点、そう定義されていた物です。それが、不特定多数の人々の想いによって、夢を叶えるという能力を後付けで獲得したんです』

 

ほぇー、そうなんだ。

 

『夢を叶える能力を使っている、この事を努々忘れないようにして下さいね?』

 

『あ、そうそう、めんどくさいストーカーさんを懲らしめてくれてありがとうございます。あの人、ちょっとガチすぎて苦手だったんですよねぇ』

 

ん?誰の事だろう?

邪神の笑みが濃くなる。

 

『それでは、また必要が出てきたら呼びますね』

 

…ホント、一方的だよなぁ。

 

ちなみに貰ったドリンク飲んだら元気になり過ぎて2日くらい寝れなかった。

なんかヤバい成分入ってんじゃねぇの?

おかげで寝てるクリスちゃんを目の前に生殺し状態を2日も味わう羽目になったし、二度と飲みたくない。

 

***

 

とりあえず、学校は休校のまま、夏休みに突入した。

なんか、休校期間中、毎日響ちゃんと未来ちゃんが遊びに来てる気がする…

おかげでクリスちゃんとのスキンシップが減る一方なんだけど…

俺の見立てでは、そろそろ添い寝から抱き枕にランクアップしてもいい頃合いだと思うんだけど、なかなか二人きりになる機会が無い。

 

ちなみに二課とかシンフォギアとかを未来ちゃんに隠してた結果、むっちゃ怒られた。

 

「狭間の世界に住まいし我と陽光受けし者は…」

 

「そういうのいいから」

 

アッハイ。

マジで怖かった。

 

んで、今度お詫びに未来ちゃんと遊びに行く事になった。

二人で。

 

何故こんなのがお詫びになるのかよくわからんけど、まぁそれで未来ちゃんがいいなら構わんけどね…

でもやっぱり友達多い方が楽しいだろうし、響ちゃんとクリスちゃんも誘おうかな?

サプライズ的な感じで。

 

こういう時、ハブられるとハブられた方は悲しくなってくるからね、マジで。

クリスちゃんと響ちゃんと未来ちゃんの3人で遊びに行ったりされた時とか、ホント泣きそうになったからな…

んー、それなら翼さんと奏さんも誘った方がいいか?

6人で遊ぶとなると結構大がかりになってきたな。

 

♪逆光のフリューゲル

 

よし、みんなの分の弁当作ったり張り切っちゃおうかな!

 

「…で、なんでみんないるのかな?」

 

「アハハ…蘭子ちゃんは相変わらずだなぁ…」

 

「ま、こんな事だろうと思ったけどな…」

 

「奏、私達邪魔だっただろうか?」

 

「邪魔…つうか…ま、こうなったら楽しもうぜ」

 

「陽光受けし者よ!?わ、我が禁断の果実は…」

 

「うるさい!こうでもしないと気が済まないんだからっ!!」




1期終了です。
今回のタイトルは説明不要ですよね!

おまけ
シンデレラの靴
夢を実現する哲学兵装。
使用者のイメージをそのまま現実世界に再現させる極めて強力な力を持つが、夢を実現するという概念上、人の悪意を集めるなどといった負の方向の使い方は出来ない。
使用するにはフォニックゲインが必要になるが、某事務員曰くアイドルは歌ってなんぼとの事。


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戦姫絶唱しないシンフォギア

闇に飲まれよ!(お疲れさまです)

とりあえず1期終わったので、区切りと少し本編の補完に戦姫絶唱しないです。
小ネタ集なのでいつもより短め。


*** 取調室にて ***

 

ここは、特異災害対策機動部二課の仮設本部の取調室。

今日は司令である風鳴弦十郎と、シンフォギア装者の立花響、雪音クリスという面々で櫻井了子、フィーネの取り調べを行う。

 

「了子君、君の目的についてだが…」

 

まずは弦十郎が質問する。

室内が妙に匂うが、気のせいだろうと無視をする。

 

「私をまだその名で呼ぶか…まぁいい。私の目的はバラルの呪詛から人類を解放する事だ」

 

「そのバラルの呪詛って、なんなんですか?」

 

バラルの呪詛、という聞き慣れない単語に響が質問を投げ掛ける。

少なくとも、学校の授業では聞いた事が無い。

もっとも、彼女は学校の授業自体をあまり聞いていないのだが。

 

「人同士の完全相互理解、すなわち統一言語を阻んでいる呪いだ」

 

人の完全相互理解に統一言語。

また響にとって難しい単語が出てくる。

なんとか自分なりに噛み砕いて理解しようとするが…

 

「つまり蘭子ちゃんの言葉が統一言語って事ですか!?」

 

「何故そうなるっ!!?」

 

いきなり話が飛躍した。

 

「え?だってわかるし…ねぇクリスちゃん?」

 

「おう…まぁ、あいつはヘンテコな言い回ししやがるけど、言いたい事はだいたい解るな」

 

「…君たちが特殊なんじゃないか?」

 

自分は普通に解らないぞ、と思い弦十郎は嘆息したのであった。

 

『あながち間違いでもないんですけどねぇ』

 

聞こえる筈も無いが、その様子を見ていた緑の事務員は微笑むのだった。

 

*** 覚醒魔王と防人 ***

 

「魂の波動に魔力が昂るわ!」

 

「ふむ…常在戦場」

 

「っ!?我が深淵を覗くのであれば、我に魅入られる事も覚悟するのだな!」

 

「フッ、友の危難を前にして、鞘走らずにいられようか?」

 

「っ!!?黒く染まる堕天使の翼は、輝きを戻し天上高く舞い上がるであろう!!」

 

「話はベッドで聞かせて貰おう!!」

 

「っ!!!?闇に飲まれよっ!!」

 

「や、やみのま!」

 

その場を通り掛かった奏が一部始終をニコニコしながら見ていた未来に声を掛ける。

 

「なぁ…あいつらは何をやってんだ?」

 

「…さぁ?」

 

どうやらやり取りが高度過ぎて未来にも理解できなかったようだ。

 

*** マネージャーのお仕事 ***

 

「奏さん、来週の翼さんのスケジュールですが…」

 

「木曜日なら空いてるんじゃねぇか?」

 

緒川慎次と天羽奏が話し合う。

二人は風鳴翼のマネージャー業を分担しており、主にビジネス面を緒川が、プライベート面を奏が担当している。

 

「次にこれです。復興ライブQUEENS of MUSICへの出演オファーが来てます」

 

「アメリカで期待の新人歌姫との共演だったか?アタシとしちゃ、翼が別の誰かと歌うってのに複雑なんだが、仕事だしなぁ…」

 

かつての相方が自分以外の人間と歌う。

奏にとっては、少し面白くないが、ノイズ被害で疲弊した人々に勇気を与えるのも翼の大事な仕事だ。

私情は抜きにするべきだろう。

 

「ま、翼の本当の姿を知ってるのは、アタシと蘭子だけって事で我慢するか」

 

帰ったら、蘭子を誘って、翼の部屋を掃除しよう。

そう思って、奏は気持ちを切り替えるのだった。

 

「翼さん…散らかし癖、まだ直ってないんですね…」

 

「あれは一生直らねぇんじゃねぇか?」

 

そういえば、ここにも本当の翼を知る人間が居た。

最近は奏がやるので出番が無いが、一時期は緒川も翼の部屋を掃除していた時期がある。

下着まで緒川に片付けさせて何も思わないのはどうかと思う。

 

*** いきのこれ!社畜さん ***

 

「はぁ…今日も残業か…」

 

神崎蘭子の活躍により、概ね後始末も終わったかのように見えるが、それは現場に出る人間の仕事であり、彼…藤尭朔也のような事務職には適用されない。

何せ、処理すべき書類や櫻井了子から押収した聖遺物の解析など、仕事は山のようにあるのだ。

 

「ボヤかないの…口より手を動かして」

 

それは、隣で端末を操作する友里あおいも同様だ。

既に目にくっきりと隈が出来ており、寝る間を惜しんで事務処理を優先している事が窺える。

期限が近い書類から処理しているが、一向に無くなる気配は無い。

 

『我が眷属よ!魂を猛らせよ!』

 

藤尭の端末から、元気の良い美少女の声が発せられる。

それは、藤尭朔也が比較的仕事が少ない時に彼の情熱の全てを注ぎ込んで作った人工知能プログラムだ。

神崎蘭子の言語パターンを解析し、本人のように喋るサポートオペレーター。

 

「はぁ…らんらんがいるから頑張れるようなもんだよ」

 

それを横目に友里は気持ち悪っ、と思うが口には出さずスルーする。

藤尭が神崎蘭子の隠れファンである事は友里も知っているので、あまり言わないようにしている。

そもそも、二課内でも非公式に隠れファンクラブが出来るくらい、神崎蘭子は人気なのだ。

下手にツッコミを入れてファンクラブ会長藤尭の蘭子愛に火を付けてしまうと、ただでさえ終わりの見えない仕事が一向に進まなくなる。

 

『闇に飲まれよ!』

 

後日、その人工知能が響や未来に見つかり、彼女達に嘆願され、端末用に改修を加える等の余計な仕事が増える事になるのだが、それはまた別の話。

 

*** 笑顔です ***

 

都内にあるメイド喫茶。

 

響、未来、クリスで集まる時はここを使うのがもはやお馴染みになっていた。

 

響が周囲を見渡す。

今日の客層は…

 

よく見る無表情のミステリアスな女性…アンドロイド疑惑がある。

何故か大量の眼鏡をテーブルの上に置いてうっとりしてる女の子…ちょっと関わりたくないかな…

入った瞬間からクリスちゃんをガン見してる女の子…なんか手つきがいやらしいなぁ…

周りは珈琲とか紅茶なのに1人緑茶とお煎餅を食べている女の子…迷子じゃないよね?『違いましてー』っ!!?直接脳内に!?

 

と、相変わらずのカオスな客層だ。

 

今日も今日とて、蘭子に関する話が白熱してきた所なのだが…

 

「お帰りなさいませ、ご主人様、お嬢様」

 

「あの…やはり私にはこういった場所は…」

 

「えー?P君のケチ☆いいじゃん!ね?」

 

「ん?あー、別にいいんじゃない?飴くれるし」

 

新しい客が来たようだ。

随分賑やかそうだが、よく見ると金髪のギャルっぽい女の子とそれ以外の温度差がかなり激しいようだ。

男性がクリスの方を見て、少し驚く。

もっとも、表情の変化が乏しい彼が驚いているとは、よほど身近で信頼している人間でなければ察せないが。

 

「P君どうしたの?なんかあっちの女の子見てビックリしてたけど」

 

「まー、プロデューサーはプロデューサーだからねー。ビックリするアイドルの卵でも見つけたんじゃない?」

 

「あっ、いえ。知り合いを見かけたもので」

 

「そうなの?挨拶とかしなくていいの?」

 

「はい、お友達とご一緒のようなのでお邪魔しては悪いでしょう」

 

「ふーん。まぁプロデューサーがそれでいいならいいんじゃない?」

 

最後にポツリとプロデューサーと呼ばれた男性が微笑みながら呟く。

 

「いい…笑顔です」




またネタが貯まってきたら、ちょくちょく書く予定。


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堕天せし漆黒の翼
第13話 独奏歌の女王


闇に飲まれよ!(お疲れさまです)

今回からGに入ります。


あれから、夏休みが終わって新学期。リディアン音楽院も無事新校舎に移設が終わって、初日から学校に通える事になった。

 

はぁ、夏休みは楽しかったなぁ…

皆で海行ったり、プールで遊んだりしたので、遠慮無く皆の果実を合法的に拝む事が出来たし。

クリスちゃんはやっぱりG級だったし、奏さんと響ちゃんの自己主張も素晴らしかった。

 

翼さんと未来ちゃんは…うん、やめておこう。

おっぱいはみんな違ってみんないい、だからね。

 

で、そんな新学期も平和に過ぎて、今日は夜から翼さんの復興ライブに行く予定なんだけど、間が悪い事に任務が入った。

なんか、アメリカから来た生医学の権威かなんかの人がソロモンの杖を研究したいから、岩国基地まで輸送する事になったんだが、俺をご指名で護衛してくれだと。

て事で、みんなには先に会場に行って貰って俺だけ後から合流する事になってるんだけど…

 

またノイズが出た。

まぁ、瞬殺したけど。

 

一緒に居た博士が素晴らしいとか散々喚いてたけど、野郎に褒められても嬉しくないんだよなぁ…

あ、でも一緒に来てた友里さんにさすが蘭子ちゃんねって言われたのは嬉しかった。

奏さんとも違う大人の色気があっていいよね。

合コンの成果はイマイチらしいけど。

 

「ソロモンの杖の輸送中に指向性のあるノイズの襲撃…嫌な予感がするわね」

 

一息ついた友里さんが、そんな事を言うが…

 

「魔王たる我に掛かれば、如何なる敵をも撃滅してくれようぞ!!」

 

と返す。正直、響ちゃんやクリスちゃんはもちろん、翼さんにも戦って欲しくないのだ。

これからは、俺1人で全部片付けるつもりで臨まんとな。

 

「ホント、頼もしいわね。頼もし過ぎるくらい」

 

友里さんが微笑む。

大人の色気ってスゲーな…クリスちゃんという嫁がいながら今のはクラッときてしまった。

 

その後は、特に襲撃も無く、モヤシっぽい博士とソロモンの杖を無事に岩国基地まで送り届けて任務完了だ。

 

「お見事です。さすがはルナアタックの英雄!!」

 

モヤシがまたおべっか使ってくる。

まぁ、パフォーマンスもサービスの一環だし、適当に相手しとくか。

 

「我は覚醒せし魔王故、我に不可能などないわ!」

 

まぁ、あんまり嘘でもないのが、この能力の怖いところよね…

 

あ、そうそう、この前のフィーネさんの一件は世間的にルナアタックと呼ばれている。

んで、月の欠片とか処理した結果、俺だけなんか隠し切れなくなったので、事件解決の立役者という事になっているが、早い話、海外旅行とか気軽に行けなくなった。

さすがに報道とかはされてないから、一般の人は知らんけど、政府関係者とかはみんな知ってると思った方がいいと言われた。

なんでも、俺と弦十郎さんの扱いについては、新しい国際法を検討中らしい。

主に危険物取扱的な。

法案が可決されたら晴れて核兵器と同レベルの扱いになるらしい。

新婚旅行は海外にしたかったんだけどなぁ…

 

あっ、なんかモヤシはずっと英雄英雄連呼してたけど聞いてなかったわ。

割と本性は危ない人の匂いがするし、出来れば今後は関わりたくないかなぁ…

 

***

 

任務完了したと思ったら、速攻で基地にノイズが襲いかかってきた。

マジでライブ間に合わなくなるから勘弁して欲しいんだけど…

自衛隊の人とかいっぱいいるから氷の方は使えないし、チマチマ炎で殲滅してたら、ギリギリ間に合わなそうな時間になってしまった…

せっかく運んだソロモンの杖とモヤシが行方不明らしいし、踏んだり蹴ったりだ。

 

とりあえず、弦十郎さんがヘリ出してくれるらしいけど、自分1人で転移した方が早い。

後は友里さんをどう説得するかだけど…

 

「我が跳躍ならば、福音の時を待つ間を作れよう!!」

 

「?どうしたの、蘭子ちゃん?もうちょっとでヘリ来るわよ」

 

やっぱりな!チクショウ…

とりあえず、クリスちゃんに間に合わなそうってメール送っとくか…

 

***

 

「チッ、あのバカ…」

 

端末のメッセージを見たクリスが呟く。

 

「どうしたの?クリスちゃん」

 

響がクリスの様子を見て、声を掛ける。

明らかに苛立っているクリスを見て普段と変わらない態度で接する事が出来るのは、一種の才能と言ってもいいだろう。

 

クリスが無言で端末のメッセージを響に見せる。

 

『香り高き漆黒の生命淹れし者に跳躍の真意を伝える秘術を持たず。我は福音の時を終末に迎えよう』

 

「あぁ…なるほど…蘭子ちゃん、遅れるんだ」

 

横から未来が覗き込む。

 

「友里さんを説得できなかったって書いてるけど、この跳躍って…」

 

「ま、簡単に言うとテレポートだな」

 

「蘭子って何でもアリだね…」

 

そのやり取りを見ていた弓美、創世、詩織が呟く。

 

「ビッキーとヒナだけじゃなく、キネクリ先輩もランランの言葉わかるんだ…」

 

「言葉の壁を越えて通じ合う心、ナイスです!!」

 

「ねぇ、なんで3人共、普通にあの怪文書が読めてるの?アニメじゃないんだよ?」

 

それに対して未来が答える。

 

「わからないの?」

 

「普通にわからないよ!!」

 

「わからないの?」

 

「え?だからわからないよ…」

 

「まぁ、ランランは仕方ない…と、始まるみたい」

 

♪不死鳥のフランメ

 

ステージの上に、ピンクの髪の歌姫と、青の髪の歌姫が登場する。

 

『見せて貰うわよ!戦場(いくさば)に冴える、抜き身の貴女を!!』

 

ピンクの歌姫の挑発的な言葉と共に観客を熱狂させるステージの幕が上がる。

 

誰もが魅入られていた。

登場から僅か2ヶ月で全米のヒットチャートを席巻した、稀代の歌姫マリア・カデンツァヴナ・イヴとその圧倒的歌唱力とパフォーマンスで根強い人気を誇る日本の歌姫風鳴翼の共演だ。

一夜限りの特別ユニットというのは、誰しもに惜しまれるだろう。

 

会場は歓喜の渦に包まれていた。

気付けば、先ほどまで不機嫌な顔をしていたクリスも素直に歌に聴き入っている。

 

「やっぱり、生の迫力は違うねぇ!!」

 

弓美が興奮した面持ちで語る。

先ほどから彼女が持つ2本のサイリウムは忙しなく動いている。

 

「ま、悪くはねぇんじゃねぇか?」

 

クリスがそっぽを向く。

 

「素直じゃないね、クリスは」

 

それを未来が微笑ましく見守る。

 

「あ、MCが始まるよ」

 

壇上の翼が一歩前に出る。

 

『ありがとう。みんな』

 

『私はいつも、沢山の勇気をみんなに貰っている』

 

『だから、今日は私の歌を聞いてくれる人達に、少しでも勇気を分けてあげられたらと思っている』

 

それが、風鳴翼が定めるアーティストとしての己の在り方なのだろう。

奏が引退し、たとえ片翼になったとしても、何処までも高く飛び続けようという、強い意志を皆が感じていた。

 

『私の歌を全部世界中にくれてあげる!!』

 

『振り返らない!全力疾走だッ!!ついてこれる奴だけついてこいッ!!』

 

続けてマリアのMCが始まる。

挑発的な力強い言葉に、観客の一部と生中継を見ている他国の人々の一部は涙を流して拝んでいる人までいる。

当然これは彼女の高いカリスマ性の為せる業である。

某覚醒魔王がこの場にいれば、彼女の呼び名は被虐主義者の誘蛾灯に固定されていただろう。

 

『今日この日に、日本のトップアーティスト風鳴翼と共演出来た事を嬉しく思う』

 

ステージ上の二人が握手を交わす。

 

『私達が伝えていかなきゃね、歌は力になると』

 

『あぁ、それは世界を変えられる力だ』

 

二人の言葉に一層大きな歓声が巻き起こる。

 

『そしてもう一つ…』

 

マリアが前に出る。

翼が困惑している所を見るにリハーサルには無かったアドリブのようだ。

しかし、そんな事を知る由も無い観客達は、次はどんなパフォーマンスを魅せてくれるのか、と期待の眼差しでマリアの一挙一動を見守る。

 

そして、マリアの次の行動と起きた現象に熱狂していた会場は阿鼻叫喚の地獄へと姿を変えられるのであった。

 

***

 

なんか、ライブ会場にもノイズが出たらしい。

まずいな…あの会場には運が悪い事にクリスちゃん達がいる。

起きた問題に対処可能な人がいると、観客に犠牲が出かねん。

まぁ、弦十郎さんならそんな安易な指示を出すとは思えんけど。

 

「はい、はい、現場介入まで後40分という所です」

 

友里さんが本部と通信しているようだ。

とりあえず、このマリアっておっぱいがクリスちゃん並の人が首謀者っぽいけど、さっきのノイズ襲撃とも関係あるんかな?

 

しかし、ノイズが出たなら悠長な事してられんな…

事態は一刻を争うだろうし、友里さんに一言言って先に転移させて貰おう。

 

「香り高き漆黒の生命淹れし者よ、我は先に跳躍せん」

 

「え?蘭子ちゃん、何を…」

 

友里さんの返事を待つ前に転移する。

 

『私達はフィ…』

 

「傷ついた悪姫、我が名はブリュンヒルデ!!」

 

……

………

 

アレー…??なんか刺さる視線が痛いなぁ…




今回は
独奏歌の女王=マリアさん

まぁ、らんらんは空気読まないからね…(笑)

この話を書くのに、G1話を視聴したんですけどね?
気付いたらG13話まで完走してたんだ…

何を言っているのか解らないと思うが、何が起こったのか作者にもわかりません(笑)


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第14話 貶められし堕天使

闇に飲まれよ!(お疲れさまです)

G2話です。
らんらんのせいでカオスです(笑)


『最新の情報が来ました!ノイズを用いたテロ組織の名称は"傷ついた悪姫"!"傷ついた悪姫"です!』

 

アレー?どういう事?

なんか中継のキャスターが興奮しながらよくわからん事言ってるけど…

俺、もしかして名乗ったらまずかった?

 

『ただ今、ブリュンヒルデと名乗る組織のメンバーが登場した事について、各国首脳による緊急会議が開かれるとの事です!』

 

『え?もう!?今、会議の結論が出ました!異例の早さです!各国は"傷ついた悪姫"の要求を全面的に受け入れるとの事です!』

 

『これについて、各国首脳から多数のコメントが寄せられています!"勘弁して下さい"、"何が不満なんですか!"、"考え直して下さい"など様々ですが、どうやら各国首脳にとってこのブリュンヒルデという人物は無視できない存在のようです!一体何者なのでしょうか!?』

 

えぇ…仕事早すぎだろ各国首脳…

しかも勘違いだし…

 

『依然、"傷ついた悪姫"は沈黙を貫いています!今後の声明が待たれます!』

 

いや、俺問題解決しにきた方なんだけど…

なんで今俺待ちみたいになってんの?

 

『そ、そうね…差し当たっては、国土の割譲を求めようかしら』

 

うわっ…ずっる!?乗っかってきやがったよ…

 

『国土割譲!"傷ついた悪姫"の要求は国土割譲です!おっと速報です!全世界各国首脳はこの要求に可能な限り応えるとの事です!』

 

いやいやいや待って待って待って!

本当に待って!

うわっ、クリスちゃんと響ちゃんと未来ちゃんからスッゲージト目で見られてる…

 

やっべ、早くなんとかしないと…

とりあえず、まずはノイズの処理だ。

 

―Laevateinn―

 

炎と共にノイズを殲滅する。

 

「我を謀ろうとは不届者よ!」

 

よし!これで巻き返せる!

 

『無用になったノイズを処理してくれるなんて、助かるわ、ボス。さぁ!オーディエンスの諸君にはご退場願おうか!』

 

おい!ボスって何だよ!?

全力で乗っかってんじゃねぇよ!!

あ、待って!みんな!違う!違うから!

そんなゴミを見るような目で見ないで!

あっ、でもコレなんかゾクゾクしちゃう!

ナニコレナニコレ!?

俺今、絶対開けちゃダメな扉開こうとしてる!!

 

そんなこんなで混乱してる内にいつの間にかみんな出て行っちゃってたんだけど…

 

『どうやら観客は無事解放されたようです!さぁ、次なる"傷ついた悪姫"の行動はどうなるのでしょうか!?』

 

お前もううるせぇよ!!

おかげ様で社会的に死んだよ!!

 

『さぁ!首謀者と見られるブリュン…』

 

急に回線が切れる。

まぁ、こんな中継ずっと流してもいい事無いけど…

え?待って?もしかして、これ、俺世間的にテロリストのままじゃない?

 

「神崎…お前…」

 

翼さんが声を掛けてくる。

 

「蒼゛の゛歌゛姫゛よ゛ぉォォォッ!!」

 

この日、俺は久しぶりに人目を憚らずガン泣きした。

翼さんのおっぱいは柔らかかった。

 

***

 

「よしよし、落ち着け神崎、な?後で私も一緒に弁明してやるから…」

 

「ヒック、グスッ」

 

翼さんにあやされて、ようやく落ち着いてきた。

ジロリとマリアとかいう奴を睨む。

お前…おっぱい揉むくらいで赦されると思うなよ?

 

「う…わ、悪かったわよ…でも、こちらだって口上を邪魔されたのよ!?」

 

謝られても、もう遅い。

ていうか、口上なんて知らん!

 

「ゆ゛る゛さ゛ん゛!」

 

まだ鼻声だな…

でも丁度こいつのせいで、周りに人いないし、気にしない!

とりあえず、拘束しておっぱいを堪能してくれるわ!

 

「封書!!」

 

「クッ、体が…動かない!?」

 

黒い紙の束が現れてマリアを拘束する。

 

エロいおっぱいしやがって…

コイツはドスケベ聖遺物着たクリスちゃんですら拘束から逃げられなかった技だ。

さぁ!お前の罪を数えろ!

 

「ちょっと!?何よ!?そのいやらしい手つきは!?」

 

♪鏖鋸・シュルシャガナ

 

いきなり横から飛んできた円盤みたいなのをジャンプで避ける。

 

「危機一髪」

 

「ホントに色んな意味で危なそうな奴デスね…」

 

なんかよくわからんけど、チビッ子二人組が乱入してきた。

邪魔するならいくらチビッ子だろうとおっぱいを…

 

……

………

うん、なんかごめん。

無い物は、揉めない。

 

「何か赦せない波動を感じた!」

 

「し、調!?どうしたデスか!?」

 

貧しい方のチビッ子が大量の円盤みたいなのを投げてくる。

うわっ、危なっ!

 

「翼さん!蘭子ちゃん!」

 

「お前一体何やってやがんだよ!」

 

後ろから響ちゃんとクリスちゃんが来たようだ。

うわぁ…なんか気分的に前門の(貧乳)、後門の(巨乳)って感じなんだけど…

 

***

 

「もうやめようよ!今日出会った私達が争う理由なんて無いよ!」

 

響ちゃんが叫ぶ。

いや、俺にはあるけどね?

マリアだけは絶対に赦さんよ?

 

「…偽善者」

 

しかし、そんな軽い事を考えてた俺に…聞き捨てならない言葉が聞こえてくる。

 

「偽善だなんて、私…そんな…私はただみんなを助けようと…」

 

「それこそが偽善!」

 

「痛みを知らない貴女に…」

 

次の言葉が出てくる前にパァン…と乾いた音がした。

 

「蘭子…ちゃん?」

 

頭に血が昇りすぎて、気付けば体が勝手に動いていた。

赤い頬のチビッ子がこちらを睨み付ける。

 

「いきなり何を…」

 

「貴様に輝き持ちし者の何が解るッ!!」

 

もう怒りに任せて体が勝手に動くのを止めるつもりも無かった。

そのまま、チビッ子を膝に抱き抱えて、お尻に手を当てて…

 

「ちょ!?何を…」

 

「悪しき小童には、獄刑をくれてやるわ!!」

 

そのまま、お尻ペンペンの刑に処す。

パァン、パァンと何度もリズミカルにチビッ子のお尻を叩く。

 

「やめっ、痛ッ…あう!」

 

出てくる言葉が違う。

叩く手を強める。

 

「お前!クッ…ゆるさ…ウグ」

 

まだ叩かれ足りないみたいだね?

よし、もっといっちゃおう。

 

「ヒグ…うぅ…ごめんなさい!ごめんなさい!」

 

ようやく謝ったか…

………ん?

 

「うわぁ…」

 

「お前…」

 

「神崎…」

 

「………」

 

「ちょ…ちょっとやりすぎデスよ…」

 

気が付けば周りのみんなが敵味方問わずドン引きした目で見ていた…

アレ?もしかしてやり過ぎた?

 

***

 

「し、調!大丈夫デスか!?」

 

「大丈夫じゃないよ、切ちゃん…まだお尻が痛い…」

 

豊かな方のチビッ子が貧しい方に駆け寄る。

まぁ、やり過ぎたかも知れんが、俺だって親友を侮辱されたんだ。

そもそもマリアに対しては俺、完全に被害者だし。

よってマリアもお仕置きするべきだと思います。

 

でも何だろう?

なんかさっきから、貧しい方のチビッ子に熱を帯びた目で見られてる気がする…

 

「じー」

 

気がするも何も目の前まで来てたわ…

しかも、自分で効果音出しちゃうんだ…

 

「ど、どうしたデスか、調!?そいつは危ないから離れるデスよ!!」

 

「調!そいつは何をするかわからないわ!早く離れなさい!!」

 

おい、二人揃って人を危険人物呼ばわりするな!

俺はちょっとおっぱいが好きでチート能力持ってるだけの至って普通の女子高生だよ?

自分で言ってみてなんだけど、ビックリする位普通要素無かったけどね!

 

「我に何用か?」

 

「名前…教えて?」

 

「我が現世での仮初めの名は神崎蘭子という」

 

「蘭子…うん、覚えた。私は月読調。調って呼んで?」

 

「おい!調子乗ってんじゃねぇ!名前呼びなんてアタシだって!」

 

いや、呼びたくても謎フィルターで翻訳されちゃうからね?

後、クリスちゃんは何でそんな怒ってんの?

 

「そんな事より、この状況どうするの!?」

 

うん、響ちゃんの言う通りだ。

 

「………」

 

「………」

 

マリア達と睨み合う。

若干一名妙に熱い視線を送ってきてる気がするが、気のせいだろう。

お尻ペンペンの加害者と被害者だし。

 

「…今回は退かせて貰うわ」

 

「逃がすとでも?」

 

翼さんが凄むが…

 

「逃げられないとでも?」

 

マリアがそう返す。

うん、お前だけは絶対に逃がさんけどね?

 

「封書!!」

 

もう一度マリアを拘束する。

 

「何なのよ!?コレ!?初動が速すぎて反応できないし…こんな事ってあり得ない!」

 

「調!!マリアを抱えて逃げるデスよ!!」

 

「うん、切ちゃん…蘭子、またね」

 

「クッ、待て!!」

 

翼さんが追いかけようとするが、間にまたしてもノイズが立ち塞がったため、みすみす逃してしまったようだ。

まぁ、あの拘束してる時点で無駄なんだけどね!

 

「跳躍せよ!」

 

遠くから…

 

「ギャー!?マリアがいきなり消えたデスよ!?」

 

という声が聞こえるが、今は放っておこう。

 

じゃあ、さっさとノイズ片付けよっか!

後にお楽しみタイムが待ってるからね!

 

…今何やったのか察してるっぽいクリスちゃんの視線が物凄く痛いなぁ…

 

***

 

色々あって疲れたが、ようやく帰ってきたマイホーム。

冤罪の件はあの後、響ちゃんとクリスちゃんと翼さんが必死で説得してくれて、なんとか弦十郎さんの方で便宜を図って貰える事になった。

 

んで、その首謀者だが…

 

「何なのよ、これ!?私に一体何をした!?」

 

「はぁ…やっぱり家に送ってやがったのかよ…」

 

我が家に転送しておいた。

一応、我が家は防音完備の筈だが、喚かれてただのやかましいマリアとか誰得なので、口にガムテープ貼っとこう。

 

「ムグ!?ムグムグ!!」

 

「お前…なんか妙に手馴れてやがんな…んで?コイツどうすんだ?」

 

それはもちろん、このエロいおっぱいを…

 

…ちょっと待て、クリスちゃんいるじゃん…

未だに添い寝から発展しないくらい純心なクリスちゃんが横にいたら転生前に持ってたウ=ス異本直伝の変身ヒロイン凌辱フルコースとか絶対出来ないじゃん…

せっかく触手とか用意しようと思ったのに…

 

え?普通にどうしよう…




今回は
貶められし堕天使=冤罪ふっかけられたらんらん

途中からかなり不可抗力もあるけど、元を辿れば自業自得という(笑)
どうやら、国際的に核兵器と同等扱いという事をかなり甘く見ていたようです。
転移で神出鬼没で広範囲殲滅能力アリとか考えたらジッサイ、核よりも質悪いしネ!


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第15話 沈黙の魔王

闇に飲まれよ!(お疲れさまです)

G3話です。
ますますカオスです(笑)


あれから1週間経った。

 

あの全世界生中継のせいでしばらく学校には行かない方がいいだろうというお達しが出たので、自宅待機してるんだが…

 

「暇を持て余した神々の遊び…」

 

特にやる事も無いので、こうやって一日中ぐうたらしている。

それもこれも…

 

「どうしてそんなにだらけられるのかしら!?ホラ、お菓子のゴミくらい自分で捨てなさい!あっ、もう口の周りこんなにして!寝転びながらお菓子食べるのやめなさい!」

 

全自動家事ロボットがいるせいだ。

なんでこんなに世話焼いてくんの?

なんなの?オカンなの?

思わず転生する前のオカン思い出したわ…

 

「慈愛の聖母よ…」

 

「なにかしら?ようやく私を解放する気になったのかしら?」

 

うん、それは無い。

正直、今の生活を知ってしまうと前に戻れる気がしない。

 

「渇きを潤せし、生命の雫を所望する」

 

「ふふ♪はいはい…紅茶でいいかしら?」

 

「善きに計らうが良い」

 

あぁぁぁ…どんどん人間が駄目になっていく…

言ったらだいたい何でもやってくれるし、言わなくてもだいたいやってくれる。

快適過ぎて駄目になる…

 

…もしかしてコイツ…世に出すとダメ男量産機とかになるんじゃない?

 

「はい、できたわよ。ミルクはたっぷり、砂糖は少なめで良かったわよね?」

 

…うむ、これは世の殿方達の為にも、我が家に常駐してもらうべきではないだろうか?

そうだよね?それがいい。

 

「たでぇま…」

 

ん?クリスちゃんが帰ってきたみたいだ。

て事は…はぁ…また始まるのか…

 

「あっ!!おいっ、てめえ!!何度も言ってるだろ!勝手に物動かしてんじゃねぇよ!!」

 

「あら?私はただ、より使いやすくしただけよ?それに貴女、キッチン周りの掃除が甘いのよ」

 

「なんだとてめえ!!」

 

相変わらず仲悪いなぁ…

仕方ない。そろそろ仲裁を…

 

「豊穣の女神、慈愛の聖母よ…」

 

「お前は黙ってろ!!」

「貴女は黙ってなさい!!」

 

はい…

こういう時は仲良く二人揃うのに、なんで普通に仲良くできねぇんだよ…

はぁ…毎回喧嘩を横で見せられる立場にもなって欲しいわ…

 

***

 

『続いてのニュースです。先日樹立した新国家「傷ついた悪姫」ですが…』

 

『今話題沸騰中の風鳴翼さんの防人式ダイエットを徹底取材してきました』

 

クリスちゃんに露骨にチャンネルを変えられる。

あの事件以来、この話題は我が家ではタブーになっている。

 

まぁ、だいたいの国家情勢とかは響ちゃんとかから聞いてるから、ある程度知ってはいるんだけどね。

どうやらマリアのお仲間は何故か知らんけど日本の近畿地方から東海地方の西部あたりを指定して新国家を樹立したらしい。

国家名に傷ついた悪姫とか付けるのやめて欲しいんだけど…

各国政府は、向こうに俺がいると思ってるみたいで、当面は不干渉を貫くみたいだし、膠着状態が続いている。

まぁ、こっちは本当の首謀者っぽいマリアを押さえてるので、すぐに動く事は無いだろうと思う。

なので、今は完全に弦十郎さん達が事態を収拾してくれるのを待ってる状態だ。

気軽に外も出歩けんので、マジで早くなんとかして欲しい。

 

あれ?そういやあれだけ騒ぎになって、ネット上とかどうなってるんだ?

まぁ、全世界生中継されてるし、新しい国出来てるから割と騒ぎになってそうな気はするけどね…

明日クリスちゃんがいない間にちょっと見てみようかな。

 

というか…

 

「おいっ、こっち狭いんだよ!もっと向こう行けよ!」

 

「こっちこそ狭いのよ!そんなに狭いなら貴女は床で寝たらどうかしら!?」

 

「てめえこそ床で寝ろよ!!」

 

「混沌せし閨よ…」

 

寝る時まで俺挟んで喧嘩すんのはマジで止めて欲しい…

まぁ、クリスちゃんとマリアのおっぱいに挟まれてるので絶景ではあるんだけどね?

右見ても左見てもおっぱいがあるとか、マジで贅沢なんだが、もうちょっと仲良くしてくれたら最高なんだけどなぁ…

 

***

 

次の日。

さて、クリスちゃんが学校に行って、マリアはせっせと掃除してるので、今のうちにネット見てみるか…

ノートパソコンを開き昔暇だった時によく見てた某大手掲示板のurlを叩くと…

 

【傷ついた悪姫】ブリュンヒルデちゃん総合スレpart43(393)

ブリュンヒルデちゃん可愛い過ぎワロタw(68)

ブリュンヒルデちゃんについて語ろう(721)

ブリュンヒルデちゃん特定を目指すスレ(45)

大天使ブリュンヒルデちゃんをすこれ(124)

マリアさんについても語ろうぜ?(84)

可愛い過ぎる大統領がいるらしい(999)

【ぐぅかわ】ブリュンヒルデちゃん画像スレ(830)

 

えぇ………ナニコレ……

とりあえず、嫌な予感しかしないけど総合スレ見てみるか…

 

1:名無し XXXX/10/11 ID:3daimecgsisters

 

ふーん、この娘が大統領?

まぁ、悪くはないかな

 

2:名無し XXXX/10/11 ID:hshs4knyan

 

ブリュンヒルデちゃんマジ天使w

hshsしたい、絶対いい匂いするわwww

 

3:名無し XXXX/10/11 ID:kwsmsn

 

>>2

わかるわ

 

4:393 XXXX/10/11

 

ブリュンヒルデちゃんは俺の嫁だからwww

お前らはマリアさんの話でもしてろよw

 

5:名無し XXXX/10/11 ID:superzangetime

 

まーたクソコテ湧いてんよ…

大天使ブリュンヒルデちゃんがお前みたいなキモオタ相手にするわけないだろ

 

6:名無し XXXX/10/11 ID:gungnirgirl

 

ブリュンヒルデちゃんはどちらかというと俺の旦那だからwww

 

7:名無し XXXX/10/11 ID:3daimecgsisters

 

どういう事だよ…

 

8:名無し XXXX/10/11 ID:zababas

 

ブリュンヒルデちゃんに踏まれたい

 

9:393 XXXX/10/11

 

愛の前に性別とか無意味

はっきりわかんだねww

 

10:名無し XXXX/10/11 ID:superzangetime

 

>>9

お前もしかして女かよw

ま~ん(笑)

 

11:名無し XXXX/10/11 ID:atsumix

 

ブリュンヒルデちゃんのお山に登りたい

 

12:名無し XXXX/10/11 ID:sogebu3

 

ブリュンヒルデちゃんに眼鏡掛けさせたい

 

13:名無し XXXX/10/11 ID:carolnine

 

ブリュンヒルデちゃんの事を考えると臍下あたりがむず痒くなるわ

 

14:名無し XXXX/10/11 ID:zababas

 

ゴミを見るような目で蔑まれたい

 

15:名無し XXXX/10/11 ID:gungnirgirl

 

お前ら欲望に忠実過ぎだろww

 

……

………

そっとノートパソコンを閉じる。

うん、俺は何も見なかった。

 

クリスちゃんが話題にしたがらない訳だよ…

 

***

 

某所。

 

「それで、マリアは見つかったのですか?」

 

新国家『傷ついた悪姫』の大統領代行、ナスターシャ教授が偵察に出ていた月読調と暁切歌に問いかける。

 

「わからない。けど、蘭子に捕まってる可能性が高いと思う」

 

「近くまでは偵察出来たデスが、特異対策機動部二課のマークが厳しくて、なかなかチャンスが見つからないデスよ」

 

調と切歌が答える。

自分達の姉代わりでもあるマリアを純粋に心配しているが、なかなか成果は出ていないようだ。

 

「最悪、死亡している事も視野に入れるべきですねぇ…その場合、次のフィーネの器はお二方のどちらか、という事になりますね」

 

最後の1人、ウェル博士がそう発言するが…

 

「縁起でも無い事言うなデスッ!!」

 

「蘭子はそんな事しないッ!!」

 

即座に二人が否定する。

二人はウェル博士に対して明らかに敵意を向けている。

どうやら、組織として一枚岩という訳でも無いようだ。

 

「しかし、肝心の大統領も新生フィーネも不在では手の打ちようがありません。ネフィリムの餌の聖遺物だって底をつきかけているのですよ?そろそろ我々も動くべきでは?」

 

「……わかりました。では、マリアの捜索は現時点を以て打ち切り、次の作戦行動はネフィリムの餌となる聖遺物の調達を優先としましょう」

 

「マム!?そんな…それじゃあマリアは…」

 

「そんなの絶対に納得いかないデスよ!!」

 

「お黙りなさい。我々の目的をはき違えてはなりません」

 

ナスターシャ教授の言葉に二人が押し黙る。

 

「そう、人類の未来は我々の双!肩!にかかっているのですからッ!いつまでも生きてるか死んでるかわからない女に固執していては、英雄にはなれませんからねぇッ!!うふふふ、うひゃひゃひゃひゃひゃっ!」

 

静寂の中、狂気染みたウェル博士の嗤い声だけが辺りに響いていた。




今回は
沈黙の魔王=大人しくしてるらんらん

おまけ
唐突な現時点の好感度チェック
■立花響
らんらんLOVE勢1号。
中学時代に助けて貰ったと感じており、らんらんを旦那と認識している。
熊本弁検定1級

■小日向未来
らんらんLOVE勢2号。
中学時代から保護対象として見ており、らんらんを嫁と認識している。
熊本弁検定準1級

■風鳴翼
らんらんのセクハラ被害者。
絡む度に高確率でセクハラされているが、本人にセクハラされている自覚は無い。
防人語免許皆伝

■天羽奏
らんらんは可愛い後輩。
特に恋愛感情は無いが、相方をいい意味で変えつつあるらんらんに感謝している。
熊本弁はニュアンスはわかる程度

■雪音クリス
らんらんLOVE勢3号。
唐突に頭角を現した嫁。
エロに耐性は無いが、知識はある模様。
らんらんの視線などには気付いてるし、むしろ響や未来に対して優越感すら持っていたりする。
熊本弁検定1級

■マリア・カデンツァヴナ・イヴ
らんらんはなんかほっとけない。
エロに関しては純白イノセント(笑)
何故かクリスとは日夜嫁姑みたいな言い争いをしている。
熊本弁検定2級

■月読調
らんらんLOVE勢4号。
お尻ペンペンされて色々と目覚めてしまった。
ある意味被害者。
熊本弁検定初級

■暁切歌
普通にらんらんは敵。
やはり常識人は違うらしい。
熊本弁理解不能


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第16話 魔王の天敵

闇に飲まれよ!(お疲れさまです)

少し空いてしまいましたが、G4話です。


なんかクリスちゃんが出張任務とか言って、数日家を空ける事になった。

えぇ…マリアと2人とか絶対にヤバいじゃん…

確実にダメ人間になれる自信がある。

 

「いいか、てめえ!絶対に勝手な事すんじゃねぇぞ!」

 

「ふん!蘭子の面倒は私が見るから貴女は早く行きなさい」

 

「全っ然わかってねぇじゃねぇかッ!!いいか!?3日で帰ってくるからな!」

 

そう言って、クリスちゃんは行ってしまった…

 

「ふふ♪二人きりね」

 

お前、捕虜の自覚ある?

なんでちょっとテンション上がってんだよ…

 

***

 

当時の状況について、元暴走族メンバー、只野茂武雄(19)は語る。

 

「なんかその日はァ、新入りの肝試しってヤツで近所でも有名な心霊スポットの廃病院に行ってたんスよ」

 

「そしたらネ?なんかいきなりノイズとかが出てきてェ、あっ、コレ俺死んだわって…こんな時に幽霊じゃなくてノイズに遭うなんて、マジついてないっスよ」

 

「もうノイズに迫られて、今から死ぬんだなぁって時にね、走馬灯って言うのかなぁ…短い人生だけど色々思い出したんスよ、そういや、お袋にキツい当たり方して、暴走族なんてやってたなぁ、とかね?まぁ、もう死ぬ間際の最後の後悔って言うんスかね?」

 

「でもね?いるんだなぁ、天使って…もうノイズに囲まれてダメだぁ…ってなった時にサ、なんかピンクと緑の派手な服着た二人組の女の子達に助けられたんすよ」

 

「ア…コレ言っちゃマズイ奴っすかね?とにかく、その子達にはマジで感謝っすね。なんか、同じような服着た女の子達とランコ?がどうのこうの言い争いしてたけど、大丈夫かなぁ…ま、その子達に助けられてから、暴走族なんて足を洗いましたよ」

 

「今?今はお袋と一緒に新しい国に国籍変更の申請出しながら、勉強中っスね。あの子達、あっちの国の重役みたいなんで…あ、別に恩返しとかそういうんじゃないんスよ。ただ、単純に力になりたいなって…」

 

「絶対絶命のピンチの時に歌が聞こえてくるなんて…そんなの諦められなくなるじゃないっスか」

 

***

 

ヤバい…マジでヤバい。

何がヤバいって…

 

「はい、アーン♪」

 

この駄目人間製造機だ。

今日1日、気付いたら晩飯の時間になってたくらいに何もやってない。

食事すら口を動かすだけで終わるとかどうなってんの?

このままでは、ヒモにジョブチェンジしてしまう…

一番ヤバいのは、それでも別にいいか、と思い始めてる事なんだが…

 

「それじゃあ、お風呂入りましょう♪私が洗ってあげるわ♪」

 

…それだけはアカン。

それを受け入れてしまうと、もう戻れなくなる予感しかしない。

 

「慈愛の聖母よ!我が湯浴みは魔力を高める儀式故、余人には…」

 

「いいから行きましょ♪」

 

…こうして、マリアに引き摺られて全身くまなく洗われたのだった…

最後の抵抗でその豊かなおっぱいを堪能させてもらったが、全くエロい反応無くて悲しくなるだけだった。

洗ってる時の手つきも普通だったし、もしかしてコイツ…

 

「ほらっ、髪乾かすわよ」

 

うん、確定だわ…

今も後頭部におっぱい当たってるけど、反応普通だし、たぶん完全にオカンになってる。

おっぱいは女の子の反応ありきで楽しむものなのに、これじゃ台無しだよぉ…

 

***

 

「ただいま…やっぱここがアタシの帰る場所だな」

 

クリスちゃんが帰ってきた。

この日をどれだけ待ち望んだか…

 

「豊穣の女神よぉォォォォッ!!」

 

感極まってクリスちゃんに抱き付く。

もうあの世話焼きモンスター嫌だ。

 

「ちょッ!!?おま、どどどうしたんだよ!!?」

 

「蘭子待ちなさい!!まだ髪のセットの途中よ!!」

 

モンスターが後ろからやってくる。

やだ、怖い。世話焼かれるの怖い。

 

「おい!!てめえッ!!怯えてんじゃねぇかッ!!何してやがんだよッ!!」

 

「あら?帰ってたのね?今蘭子の髪をセットをしてる途中なの。邪魔しないでくれるかしら?」

 

「ほたえてんじゃねぇぞッ!!本人が嫌がってんのに邪魔もクソもあるかよッ!!」

 

さすがクリスちゃん、我が嫁だ。

モンスターにまったく怖じ気付く素振りもない。

 

「あら?せっかくキレイな髪をしてるのに、お手入れしないなんて勿体無いと思わないかしら?」

 

「うっ…それはまぁ…」

 

おや?なんか雲行きが怪しく…

 

「こう言えばいいかしら?1人でやれば時間が掛かるし本人も嫌がる。では、二人でやれば?」

 

「…時間は半分って事か」

 

クリスちゃんにホールドされる。

アレ?もしかして…

 

「大丈夫、痛くしないから、ね?」

 

「ちょいとばかし我慢してくれよな?天井の染みでも数えときゃ終わるからよ?」

 

この後めちゃくちゃ髪のセットされた…

 

***

 

さて、クリスちゃんもマリアも寝たので、ようやく解放された。

寝る前までがっちりロックされてたので、抜け出すの大変だった。

 

外には出れんけど、情報収集くらいはやっとかんとね…

あまり見たくはないんだけど…口コミレベルの話でないと二課の隠蔽工作のせいで、情報集まらんから仕方ない。

再び某掲示板のurlを叩く…

 

また総合スレでいいか…part83ってどんだけ増えてんだよ…

 

1:名無し XXXX/10/21 ID:darkilluminateA

 

ボクのツガイは非日常セカイの住人になってしまったようだね…

悲しめばいいのか、喜ばしい事なのか…

それこそ神のみぞ知るって事なのかな?

 

2:名無し XXXX/10/21 ID:lockgirl

 

なんかやべー奴来たww

マジこの板ロックな奴大杉ワロタww

 

3:名無し XXXX/10/21 ID:noanyan

 

彼女は私と同じく星を観る者

月の光が人を惑わせるように、彼女の光もまた人を魅了する、それだけの事

 

4:393 XXXX/10/21

 

ご本人の真似事とか草ww

ブリュンヒルデちゃんはもっと高度な言語だからww

 

5:名無し XXXX/10/21 ID:zababas

 

この豚って罵られたい

 

6:名無し XXXX/10/21 ID:39nyannyan

 

この板、いつもカオスですよね

 

7:風鳴翼 XXXX/10/21

 

みんなに人気なのだな

先輩として誇らしく思う

 

8:名無し XXXX/10/21 ID:lockgirl

 

>>7

こマ?

ご本人?

 

9:名無し XXXX/10/21 ID:39nyannyan

 

さすがに無いんじゃないですか?

 

10:風鳴翼 XXXX/10/21

 

信じてもらえないかもしれないが、私は…くぁwせdrftgyふじこlp

 

11:名無し XXXX/10/21 ID:lockgirl

 

翼さんご乱心www

 

12:名無し XXXX/10/21 ID:39nyannyan

 

落ち着いてww

 

13:風鳴翼 XXXX/10/21

 

すまない。

奏に止められて途中で送ってしまった。

 

14:名無し XXXX/10/21 ID:lockgirl

 

なんかマジでご本人っぽいww

 

15:名無し XXXX/10/21 ID:39nyannyan

 

え?じゃあ、翼さんの後輩って事は…

 

急に掲示板がエラー画面に変わる。

あ、コレ藤尭さんあたりの仕業かな?

 

ていうか、翼さん何してくれてんの!?

短い期間だけど割と濃い付き合いしてるからわかる、アレ絶対ご本人だよ…

 

***

 

翼さんのおかげで、ますます学校に行けなくなった。

まぁ、本人に悪気がまったく無いのと、目が死にかけてる藤尭さんと友里さんのおかげですんでのところで致命的な情報漏洩は食い止めて貰えたみたいなので、怒るに怒れない。

チクショウ…せっかくクリスちゃんと学祭回るの楽しみにしてたのに…

いっそ開き直って堂々と学祭を満喫してやろうかと思わんでもないが、弦十郎さんが必ず何とかすると言ってくれているので、大人しくしておく事にした。

んで、せっかくの学祭だが、行けなくなってしまったので…

 

「~♪」

 

「我が魔力が喪われていく…」

 

家でマリアに膝枕で耳掃除されている。

もう、完全に世話焼かれる事を諦めている。

他人から見たら今絶対レイプ目してると思うわ…

 

***

 

私立リディアン音楽院の秋桜祭特別ステージ。

 

優勝すれば、生徒会権限で願い事が一つ叶えられるという事で、沢山の生徒が参加している。

 

先ほど、アニメ大好きな女の子を中心とした、電光刑事バンの主題歌が終わったところだ。

結果は残念だったが…

 

『さて、続いての挑戦者です!』

 

♪教室モノクローム

 

次の挑戦者が壇上に現れると、それを見ていた響と未来が驚愕する。

 

「響…あれ…」

 

「うっそぉぉっ!!?」

 

翼が響の横に座る。

 

「雪音だ、私立リディアン音楽院2回生の…雪音クリスだ」

 

―少女の胸に色々な想いが込み上げる。

 

思えば、散々な出会いだった。

敵として戦って、コテンパンにやられて…

話しても意味わからない言葉ばかりで…

でも…命を救って貰った。

手を差し伸べて貰った。

 

それから、色々な事を二人でやって、色々な想い出をくれて…

日陰でしか生きてこなかったアタシにとって、ここは暖かすぎる…

でも、悪い気はしない。

 

ありがとう。心から…

 

はっきり気持ちを聞いた訳じゃないけど、アイツもアタシを好きでいてくれると嬉しいな…

だから、アタシの帰る場所は…いつだって、どうしようもなく、アイツの隣なんだ。

 

クリスが歌い終わると、会場からは割れんばかりの盛大な拍手が巻き起こるのであった。




今回は
魔王の天敵=世話焼きモンスターと化したたやマさん

マリアさん、まさかのらんらんを完全封殺するという超活躍ぶり。

おまけ
らんらんプロフィール

名前:神崎蘭子
年齢:16
BWH:闇に飲まれよ!
使用聖遺物:レーヴァテイン、ニヴルヘイム
好きな物:ハンバーグ、おっぱい
嫌いな物:自分を性的に見てくる男性
天敵:マリア・カデンツァヴナ・イヴ、風鳴弦十郎、プロデューサーのお兄さん


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第17話 憤怒抱きし魔王と禁忌の少女

闇に飲まれよ!(お疲れさまです)

G5話です。


何故かクリスちゃんが張り詰めた顔をしている。

声を掛けても「なんでもねぇ」の一点張りでよくわからん。

あのチビッ子達に挑戦されてたのと、何か関係あるんかな?

ん?何で知ってるかって?

見てたからね?

 

『やみにのまれよ』

 

久々登場のちっちゃい俺だ。

クリスちゃんや響ちゃん、未来ちゃんなど主要メンバーにはいつも監視を付けてるのだ。

まぁ、相変わらず報告内容はよくわからんのだけどね…

 

んで、視覚共有して見てたけど、なんかチビッ子達に決闘とか言われてたっぽい。

んー、さすがにそれは介入した方が良さそうかな?

響ちゃんの様子もなんか元気無くてちょっと心配だしね。

それに、女の子同士なんだから決闘みたいな血生臭い事やるより、キャッキャウフフな百合の花を咲かせたらいいと思うの。

その光景が見れるなら、俺は全力で応援するのも吝かではない。

 

「じゃ、アタシはちょっと散歩してくるわ」

 

「そ…じゃあ私は蘭子をお風呂に入れるわね。さ、蘭子行きましょ♪」

 

マリアに有無を言わさず引き摺られていく…

もはやこの扱いにも慣れてしまったな…

 

***

 

神崎蘭子に散歩と言って家を出た雪音クリスは、そのまま特異対策機動部二課へと足を運ぶ。

丁度、風鳴翼が敵性装者が申し出てきた決闘について、報告しているところだった。

 

「あ、クリスちゃん…」

 

「シけた面してんじゃねぇよ、お前はバカみたいに底無しに明るいのだけが取り柄じゃねぇか」

 

元気の無い立花響にクリスが言う。

不器用ながら彼女なりの同僚への激励なのだろう。

 

「うん…そうだね…くよくよするなんて私らしくなかったかも…でも、決闘なんて…私達、ホントに解り合えないのかなぁ?」

 

「立花…」

 

「通じないなら通じ合うまでぶつけてみろ!言葉より強い力がある事を知らぬ君たちではあるまい」

 

響の頭に手を置き、風鳴弦十郎が檄を飛ばす。

 

「師匠…言ってる事、全然わかりません…でも、やってみますッ!!」

 

その光景を天羽奏は何も言わず微笑みながら見守る。

あぁ、きっとこの子はもう大丈夫だ、と。

その時…

 

「ノイズの反応パターンを検知!この場所は…」

 

藤尭朔也がノイズ出現を報告する。

 

「狼煙とは古風な真似を…」

 

「特別封鎖地域、カ・ディンギル跡地です!」

 

***

 

カ・ディンギル跡地。

 

先日、フィーネのルナアタックによって崩壊した地域だ。

そこに赴く3人を待ち構えていたのは…

 

「ようやく来ましたねぇ!待ちくたびれて眼鏡がずり落ちるところでしたよ!!」

 

「…誰?」

 

「さぁ?おめぇ知ってるか?」

 

「いや、私も初対面だ」

 

「それよりも、調ちゃんと切歌ちゃんは!?」

 

「英雄であるボクをそれよりも呼ばわりは納得いきませんが…彼女達なら謹慎中ですよ、だからボクがこうして出張ってきてるワケです!!」

 

ウェル博士がソロモンの杖を翳すと大量のノイズが現れる。

 

「チィッ!!誰かは知らねぇがソロモンの杖をッ!!」

 

「英雄になるボクを知らないなんて、無知なお子さまには、ここで我々の糧になって貰いますよ!!」

 

「何を企てるF.I.S.!!」

 

ノイズを処理しながら、翼が問う。

 

「企てるゥ?人聞きの悪い」

 

「我々が望むのは人類の救!済!月の落下にて損なわれる無辜な命を可能な限り救い出す事ですよッ!!」

 

「月が…落ちる…?」

 

「馬鹿な!?そんな事を各国政府が黙っている筈が…」

 

「黙ってるに決まっているでしょう!自分達で処理できない極大の災厄を前に一体何が出来るというのですか?」

 

「さぁ、お話はここまでです!我々の人類救済の礎となりなさい!」

 

「なッ!!?ぐぁっ!!」

 

突如、地中から現れた黒い自律型聖遺物、ネフィリムの攻撃がクリスに直撃し、クリスが意識を失う。

 

「雪音!?くっ!?」

 

駆け寄った翼もノイズの粘着性の糸に絡まれる。

続いて唯1人自由に動ける響にネフィリムが襲い掛かるが…

 

―Laevatein―

 

炎の柱がネフィリムと周囲のノイズを包み込む。

 

「ヒィィッ!!?な、何者だぁッ!!?」

 

「傷ついた悪姫」

 

「我が名はブリュンヒルデ!!」

 

漆黒の衣を纏う堕天使が舞い降りた。

 

***

 

よし、やっとマリアが寝てくれたから出て来れたわ…

さ、我が嫁クリスちゃんを助ける為に早速…

ん?あのモヤシ生きてたの?

チビッ子達は出てきてないみたいだし、状況どうなってんの?

ってクリスちゃんが倒れてる!?

 

「…誰だ」

 

「神崎?」

 

「蘭子…ちゃん?」

 

「我が眷属に不敬を働きし不届者は誰だッ!!!」

 

俺の怒りに呼応して、炎の渦が巻き起こる。

 

「ヒィィッ!!?貴女はこちら側じゃ…仕方ない!!ネフィリム、アイツを…神崎蘭子を排除しろォ!!」

 

狼狽えるモヤシの号令で黒い変な奴が襲い掛かってくる。

…お前か?

まぁ、許すつもりなんて欠片も無いし、どうでもいいか。

ただ、消えろ。

 

―獄炎ノ一閃―

 

炎の刃で切り裂く。

が、あまり効いていないのか、斬った先から再生しているみたいだ。

 

「うひ、うひひひひ…ネフィリムは暴食の力で炎を操る完全聖遺物ゥ!そう!貴女の力は、ネフィリムにとってエサも同然ッ!!」

 

「この力が…ネフィリムがあれば!ボクこそが英雄だぁァァァッ!!」

 

―Absolute Zero―

 

「うひ?」

 

炎が駄目なら、凍らせるだけだ。

強制的に対象の温度を絶対零度にする技を受けて、黒い奴は凍り付く。

人に向けて撃つのはさすがに気が引けるけど、コイツなら遠慮無しだ。

 

「な…なんですかァ!!?その技は!!?聞いてない、聞いてないですよォッ!!?」

 

知るか。

こっちは今頭にキてんだよ!

 

「穿て!」

 

「止めろォォォォッ!!」

 

合図と共に黒い奴が砕ける。

 

「ヒ、ヒィィィィィッ!!?」

 

モヤシが何回も転けながら逃げて行く。

まぁ、逃がさないけどね?

 

「封書!!」

 

とりあえず、拘束しといて後でお仕置きだ。

そんな事より、今はクリスちゃんだ。

 

「豊穣の女神よ!!」

 

「ん……はは、お前なんでいんだよ…黙って終わらせようと思ってたアタシがバカみてぇじゃねぇか…」

 

良かった…怪我はしてるけど無事みたいだ。

さて、それじゃあクリスちゃんを傷つけた奴に報いを受けさせないとな。

でも相手男だし、テンション下がるなぁ…

男の娘なら一考以上の価値があるんだけど、どう見てもヒョロガリのモヤシだしなぁ…

 

♪獄鎌・イガリマ

 

とかなんとか拷問方法を考えてたら、モヤシを拘束してた紙が切り裂かれる。

 

「下手打ちやがって、このキテレツ!!さっさと撤退しやがれデス!!」

 

「蘭子…」

 

えぇー、ここでチビッ子出てくんのかよ…

 

「調、やるデスよ!!」

 

「蘭子…」

 

ん?なんかピンクの方のチビッ子…調ちゃんだったか?

見るからに赤い顔してるし、どうしたの?

熱でもあんの?今日はもう帰ったら?

 

「どうしたデスか、調!?」

 

「蘭子に敵意を向けられるのも…いい」

 

………はい?

ちょっと待って?俺の聞き間違いかな?

 

「ハァ…ハァ…敵なら蘭子に罵られ放題…これはいい…すごくいい」

 

「し、調!?なんでそんなに息が荒くなってるデスか!!?大丈夫なんデスか!!?」

 

…なんかしばらく見ない間にロリっ娘が開いてはいけない扉を開いてたんだけど…

マリアはオカンだし調ちゃんはMだしモヤシはマッドだし、もうヤダこの集団…

まともそうに見える切歌ちゃんも語尾がちょっと変だし、なんかありそうって疑っちゃうわ…

 

***

 

「と、とにかく仕切り直すデス!!」

 

切歌ちゃんがそう言う。

まだモチベ続くのすごいね!!

俺もう戦う感じじゃないんだけど…

 

「な、何してやがるデスか!!さっさと構えるデスよッ!!」

 

え?ヤダよ…だって…

 

「蘭子のオシオキ…ハァ…ハァ」

 

どう見ても攻撃がご褒美にしかならなそうじゃん…

そういうプレイを否定するつもりはないけど、俺はまだノーマルでいたい。

え?百合はノーマルに入るのか、って?

精神的に男だからセーフだよ!

 

しかし、どうやって切り抜けようかね…

俺的にはクリスちゃんが無事だったし、元凶は倒したからもう帰りたいんだけど…

 

「やるデス!!」

 

「蘭子!今行く!!」

 

チビッ子達はやる気みたいだし…

ん?翼さん、何して…

 

―影縫い―

 

「な!?動けないデス!!」

 

「くっ!?蘭子(ごほうび)が目の前にいるのにッ!!」

 

「蒼の歌姫…」

 

「いや…あまりにも隙だらけだったのでな、もしかしてまずかっただろうか?」

 

…うん、なんかしっくりはこないけど、俺の精神衛生的にはグッジョブかな…

ていうか、Mっ子は人の名前に変なルビ入れるのやめてくれる?

 

「しかし…対人戦技がこのような形で役に立つとはな…」

 

うん…なんか感慨に耽ってるけど、扱い困るし助かったよ…

うまい具合に拘束して無力化できたし。

………ん?拘束?

 

「私を縛り付けていいのは蘭子だけッ!!」

 

「し、調が遠くに行っちゃってる気がして怖いデスよ!!?」

 

なんと驚く事にロリっ娘は精神力だけで拘束の中、動いていた…

うん、切歌ちゃん…一緒に居たいなら、たぶん調ちゃんと同じところに行かないともう手遅れだと思うな…

 

「その…神崎?ご指名みたいだし任せてもいいか?」

 

やだなぁ…怖いなぁ…

 

「………封書」

 

「あぁ!!私今蘭子に…蘭子に拘束されてる!!」

 

1人で盛り上がるロリっ娘以外、その場にいた全員が疲れた目をしていた…




今回は
憤怒抱きし魔王と禁忌の少女=激おこらんらんと扉を開いた調です(笑)

相変わらずタイトルと内容のギャップが…
まぁ今さらですが(笑)


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第18話 再臨せし終焉の巫女

闇に飲まれよ!(お疲れさまです)

G6話です。


とりあえず、切歌ちゃんと調ちゃんも捕まえたし、もう疲れたから帰りたい。

 

「デェェェスッ!!」

 

ん?なんか切歌ちゃんが叫んでるな…

 

―切・呪りeッTぉ―

 

拘束されながら鎌だけ飛ばすとか器用な事するなぁ…

って、調ちゃんの拘束が解けてる!?

 

「調!!キテレツ連れて逃げるデスよ!!」

 

「そんな…それじゃあ…」

 

「アタシより、ソイツがいないとマムが…」

 

「切ちゃんが蘭子の鬼畜拘束プレイの餌食に!!」

 

「うん、調が何を言ってるかわからないデスよ…」

 

うん、切歌ちゃん…俺も同感だよ…

やっぱり、まともに会話が成立しそうなのは切歌ちゃんだけかな…

残念フィルター付きの俺が言うのも何なんだけどネ!

 

「逃がすか!!」

 

翼さんが追おうとするが、手で制止する。

 

「神崎!?何故…」

 

「禁忌の少女と対峙するには、我が魔力に静謐を欲す…」

 

「えっと…調ちゃんと向き合うのは心の準備が欲しいみたいです」

 

響ちゃんが通訳してくれる。

 

「そ、そうか…その、心中察する…」

 

うん、なんだろうね…

その同情の目は俺の心にクリティカルだなぁ…

 

***

 

とりあえず、捕まえた切歌ちゃんを二課の仮設本部まで連行する。

俺としては、マリアもいるし、家に連れて帰りたいところなんだが、さすがに交戦がバレてるので、マリアみたいなこっそり転移は難しいからな…

まぁ、後でダメ元で弦十郎さんにお願いしてみよう。

 

「さて、では暁切歌君、君には聞きたい事がある」

 

「黙秘するデス!!何も喋らないデス!!」

 

「え?でも今喋ってない?」

 

「バカ!!話の腰を折るな!!」

 

響ちゃんの素朴な疑問に、クリスちゃんがツッコミを入れる。

相変わらず仲良いなぁ…

さすが、未来ちゃんと3人で俺をハブって週2回遊びに行く仲なだけある。

別に悔しくなんかないやい!!

 

「ななな何の事デスか!!?アタシは喋ってないデスよ!!」

 

この娘も大概チョロそうだよなぁ…

 

「いや、聞きたいのは一つなんだが…こちらでも今裏を取らせている所だが、ウェル博士の言っていた月の落下は本当の事だろうか?」

 

弦十郎さんが軌道修正する。

色々とチャチャばかりで、イラつくだろうに大人って凄いなぁ…

 

「…本当デス!!でもそれ以上は喋らないデス!!」

 

頑なになっちゃったか…

これ以上喋らすには触手の出番かな?

 

「いや、それだけ聞ければ十分だ」

 

え?もうちょっと尋問とかしないの?

まだ触手出てないよ?

 

「師匠、何かいい案があるんですか?」

 

「了子君のところに行く。蘭子君と…切歌君は一緒に来てくれ」

 

え?フィーネさんのところ行くの?

だったらさ?いい加減ショタ連れていこうよ…

おっさんと美少女と謎言語女じゃおねショタできないじゃん…

 

***

 

「ヒッ!?ソイツを私に近付けるなッ!!」

 

「ギャーッ!!?オバケがいるデスッ!!?」

 

もう…入っていきなりなんでこんなにカオスなの?

てか、フィーネさんの反応はわからんでもないけど、切歌ちゃんはどうしたの?

 

「櫻井了子は死んだ筈デスよッ!!?じゃないとマリアが…」

 

ん?なんで今マリアの名前が…

 

「ん?どういう事だ?」

 

「マリアには…フィーネの魂が宿っているデスよ…それで月の落下を察知できたってマムが…」

 

「ハッ、F.I.S.の考えそうな事だな。大方、私が死んだと思って体よく次の指導者を担ぎ上げたんだろう」

 

うーん…よくわからんな。

まぁ、それは帰ったら本人に聞いてみるか。

割と長時間置いてきぼりだし、逃げてなきゃいいけど…

 

「しかし、了子君。君以外の人間にフィーネの魂が宿る可能性は?」

 

「あり得んな。私の使うリィンカーネーションは謂わば魂の転移。分割は出来んよ」

 

いや、こんな愛が重い人が何人もいたら普通に嫌だよね。

ん?て事はこの人がここにいる限り、他にフィーネは現れないって事か。

まぁ、あんなオカンが実はフィーネさんでしたとか言われてもそれはそれで嫌だしね…

 

「で?私に聞きたいのはそんな話じゃないだろう?話すからソイツを私の視界に入れないでくれ」

 

ずいぶん嫌われたものだ…

俺はただおねショタして欲しいだけなのに…

 

「わかった。聞きたいのは月の落下とその対策について、だ」

 

…弦十郎さんの問いにフィーネさんが考え込む。

 

「…おそらく、カ・ディンギルの砲撃によって、バラルの呪詛を司る月遺跡に何らかの不具合が生じているのだろう」

 

つまり元凶アンタかよ…

 

「そして、F.I.S.が掲げる対策は十中八九フロンティアだ。カストディアンが残した恒星間航行船で月が落下する前に地球より脱出する手筈だった筈だ。フロンティア起動の鍵、ネフィリムと神獣鏡は私があそこに持ち込んだからな」

 

それも元凶アンタかよ…

アレ?なんか今さらっと重要ワード言わなかった?

 

「…他に考えうる対策は?」

 

「…そこにいるだろう。その忌々しい小娘なら、月を破壊する事も月遺跡を修復して公転軌道を正常に戻す事も容易い筈だ。というかソイツに関しては何が出来ても不思議じゃない」

 

…え?俺?

 

「いや…蘭子君の聖遺物では破壊は出来ても修復は…」

 

「フッ、炎と冷気を操る聖遺物だけで、バビロニアの宝物庫からの脱出など可能なものか。その小娘は、もっと大きな…そう、神の寵愛でも受けているかのような力を持っている」

 

……まさかここまで分析されてるとはな…

まぁ、神というか変な守銭奴の邪神に付きまとわれてはいる。

ほぼ当たりじゃねぇか…

 

「まぁ、どうやるかまでは、力を与えた本人にでも聞いてみるんだな。さぁ、話す事は話したぞ?早々に帰ってくれ」

 

半ば追い出される形でフィーネさんとの話は終了した。

いや、あの事務員一方的だし、会いたい時に会える訳じゃねぇんだよ…

 

***

 

簡単に事務員に会う手段も無いので、とりあえず切歌ちゃんを家で預かってもいいか弦十郎さんに聞いてみたら意外とすんなりとOKが出た。

捕まえたはいいが、年頃の女の子をどう扱っていいか、弦十郎さんにもわからなかったらしい。

うーん…不自然なくらい女っ気無いもんね。

誰か心に決めた人でもいるんかね?

 

まぁ、それはさておき…

 

「アタシをどうするつもりデスか!!ガルルルル!!」

 

めっちゃ警戒されてる。

まぁ、無理もないよね…

俺自身あまり意味わかってないけど、調ちゃんがどMになった原因俺らしいし…

でも、比較的マトモそうに見えるし、美少女だし、この娘にはあんま嫌われたくないなぁ…

 

「普遍の識者よ…我が魔王城に誘おう」

 

「ままま魔王城デスかッ!!?そんな…まままさか拷問するつもりデスかッ!!?い、痛いのはちょっと遠慮したいデスよ」

 

つまり痛くなければいいと?

これは触手の出番かな?

 

「クックックッ、魔王城に帰還した暁には贄を供してくれようぞ」

 

「ギャーッ!!捕虜虐待反対デスよッ!!?」

 

うん、ちょっとリアクション面白いからなんか楽しくなってビビらせすぎた。

まぁ、普通に喋っただけなんだけどね…

いやぁ、どうやって説明するかな…

と思ってたら、クリスちゃんに後ろからチョップされる。

 

「コラ、あんまビビらすんじゃねぇよ。コイツが言ってんのは、家に連れて行って飯でも食おうってだけだ」

 

「…え?ゴハン…デスか…?」

 

さすがクリスちゃん。

何処に出しても恥ずかしくない、出来た嫁だ。

 

「おう、一晩中戦闘だったからな、朝飯にベーコンエッグでも作ってやるよ」

 

「べ、ベーコンエッグ…す、既に美味しそうな予感がするデスよ…ハッ、まさかそうやって油断させておいて…」

 

「お前普段何食べてんだよ…ま、こちとら疲れてるし、眠くて仕方ねぇんだよ。飯食ったらアタシもコイツも寝るから外出以外は好きにしてくれて構わねぇよ」

 

「ムムムム…し、仕方ないデスね、そこまで言うなら食べてやるデス!!」

 

やはりチョロい。

クリスちゃんも大概だけど、この娘もちょっと将来が心配になるレベルだよね…

 

とかなんとか言いつつ、家の鍵を開けてドアを開けたら…

 

「…随分と遅かったわね?朝帰りとは恐れ入るわ?」

 

青筋を立てたマリアがガ○ナ立ち、もとい仁王立ちで待っていた。

なんか未だかつて無いプレッシャーを感じるんだけど…

 

***

 

「…で?一晩中一体何処をほっつき歩いてたのかしら?」

 

「いい?装者だなんだ言っても貴女達はまだ高校生なのよ?」

 

「夜中に目が覚めた時、散歩すると言ってた雪音クリスどころか蘭子までいなかった時の私の気持ちがわかるかしら?」

 

「だいたい貴女達はねぇ…」

 

マリアの説教は続いている。

いい加減正座解いちゃダメ?足痺れてきたんだけど…

 

「聞いてるのッ!!?」

 

はい、すみません。

 

「ていうか、お前…アタシもコイツもいなかったのに、逃げなかったのかよ?」

 

うん、それは俺も思った。

 

「え?……………………………ハッ!!?」

 

「おい、アホだ、アホがいるぞ…」

 

どうやら、隙を見て逃げるよりも、溢れんばかりの母性が完全勝利してたらしい。

 

「ま、まぁ、逃げようと思えば逃げられたわよ?って何よ!?その目は!?」

 

ウン、ソウデスネー…

今の今まで逃げる気が無かったもんね…

 

「ていうか、何でマリアがいるデス?」

 

「え!?嘘!?切歌じゃない!?まさか貴女も捕まったの!?」

 

ホント、今さらダヨネー…




今回は
再臨せし終焉の巫女=再登場のフィーネさん

割と核心まで推察してたフィーネさん。
伊達に数千年生きていないという事ですね。

そして着々とらんらんの天敵の座を固めていくたやマさん(笑)


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第19話 堕天使の休息

闇に飲まれよ!(お疲れさまです)

少し時間空きましたが、G7話です。


「よし、そんじゃあ飯にしようか」

 

クリスちゃんが朝食を作ってくれる。

献立は、宣言通りのベーコンエッグにサラダとロールパン。

メインのベーコンエッグは、卵はオーソドックスに片面焼きの目玉焼き、ベーコンはカリカリ、調味料は塩、醤油、ソース、マヨネーズ、ケチャップをお好みで。

サラダはレタス、きゅうり、キャベツと人参の千切りにドレッシングは和風とフレンチをお好みで。

ロールパンは少しオーブンで焼いてバターが馴染んだところに自家製のポンカンマーマレードか苺ジャムで。

なんかポンカンは熊本のおばあちゃんから大量に送られてきたので、二人では食べきれずマーマレードにした奴だ。

 

うむ、さすがはクリスちゃん、今日のご飯も大変美味しそうだ。

 

「な、なんデスか、このゴチソウはッ!!?」

 

切歌ちゃんの目が輝いている。

 

「いや、別にありあわせで作っただけだぞ?」

 

「フ…切歌も驚いているようね?これが日本の中流家庭の平均的な食卓らしいわよ…」

 

まぁ、そんなもんじゃね?

今日は洋風だけど、和食だとご飯、味噌汁、サラダに一品で焼き魚とかくらいだし。

 

「そ、そんな…それじゃあアタシ達は…」

 

「切歌、それ以上はダメよ…それ以上は…」

 

悲しいなぁ…

 

「マリア!アタシ悔しいデス!!これからアタシはアタシ達の食料事情改善の為に戦うデス!!」

 

「その意気よ、切歌!!もちろん私も一緒に戦うわ!!」

 

食卓戦士キリマリ誕生の瞬間だ。

食卓戦士ってなんだよ…

いかんな…ちょっと徹夜明けのせいでテンションがヤバいわ…

 

「いいから早く食えよ、お前ら…」

 

「そ、そうね。じゃあ蘭子の玉子にお醤油かけてあげるわ!」

 

「ハァッ!!?何言ってんだ、てめえ!!コイツの玉子には塩に決まってるだろッ!!」

 

「目玉焼きに塩だなんて、それこそあり得ないわよ!!蘭子は日本人なんだからお醤油が好きに決まってるでしょ!!」

 

いや、俺マヨネーズ派なんだけど…

 

「マリア達は何で喧嘩してるデスか?どっちで食べても美味しいデスよ?」

 

「我が魔王城での喧騒は常たる事よ…」

 

「???まぁ、マリアが元気そうで良かったデスよ」

 

ええ子や…

喧嘩してる二人も少しは見習って欲しい…

 

結局その後も、玉子の黄身をいつ潰すかとかどうでもいい事でずっと小競り合いが続いた…

この二人、どうやったら仲良くしてくれるんだろうね…

でも、切歌ちゃんはマリアが元気なのが余程嬉しいのか、それをずっとニコニコしながら眺めていた。

 

***

 

あの後、またベッドの上でもクリスちゃんとマリアに一悶着あって、ようやく寝たら昼過ぎまで寝てしまった…

切歌ちゃんも誘ったのだが、顔を真っ赤にしながら断られて、もはや名ばかりのクリスちゃん用の寝室に行ってしまった。

まぁ、来たばっかりで一人になりたい事だってあるだろうしね。

それに、このベッド、キングサイズで女の子ばっかりとはいえ、四人で寝るには少し狭いしな。

まぁそれはいいとして、なんかみんなより早めに目が覚めたし、今度は俺が昼飯でも作ろうかと思ったんだが…

 

「封印されし我が両の手…」

 

クリスちゃんとマリアに両側からがっちりロックされてて動けねぇ…

両腕に掛かる弾力と柔らかさを両立させた素晴らしいシンフォニーのせいもあって、ここはもうしばらく大人しくしといた方がいいと思うな、うん。

 

「マリア…おトイレは何処デスか?」

 

しばらく幸せな感覚を堪能していると、どうやら切歌ちゃんが起きてきたみたいだ。

トイレの場所、教えてあげたいが、言葉は通じないだろうしなぁ…

 

「わわわ///…や、やっぱり…」

 

ん?何がやっぱりなんだろ?

でもトイレなら仕方ないか…

クリスちゃんもマリアも起きそうにないし名残惜しいけど、そろそろ起きるか…

二人が起きないようにそっと腕のロックを外して起き上がる。

 

「わッ!!?お、起きてたデスかッ!!?」

 

「普遍の識者よ、我に続け」

 

「な、なんデスか!!?クリスさんやマリアだけじゃ飽きたらずアタシまでッ!!?」

 

切歌ちゃんの手を引き、トイレに連れていく。

えらく慌ててるが、よっぽど我慢してたんだろう。

すぐそこだから、もうちょっとだけ我慢してね?

 

「あ、アタシをトイレに連れ込んで、ナニするつもりデスか…?」

 

ん?トイレに用があるのは切歌ちゃんの方の筈なのに何言ってんだ?

顔真っ赤だしなんかモジモジしてるし、早くした方がいいんじゃない?

あ、早くどっか行けって事か、そりゃそうだわな。

まぁ、せっかく起きたし、俺は昼飯の用意でもしとこう。

 

「…我は謁見の間にいる故」

 

「え?え?………も、もしかしてアタシの勘違いデスかッ!!?」

 

なんかトイレから切歌ちゃんの絶叫が聞こえてくるが、ほっとこう。

別にそんな事しなくても音気になるなら音姫付いてんのに。

今度使い方教えてあげよう。

 

***

 

「フッフッフ…ようやく油断したデスね!!覚悟するデス!!」

 

「ギャーッ!!?なんでバナナなんかで赤甲羅がッ!!?」

 

「フッ、我が黄金の果実は追撃の矢を容易く防ぐ!!」

 

切歌ちゃんと二人でマ○カー中。

この甲羅ぶつけられる直前にバナナ置くのスッゲー練習したからな。

家ではクリスちゃんもマリアもやらないから練習の成果発揮する機会無くて悲しかったんだが、練習しといて良かった。

やっぱゲームって偉大だわ。

あんだけツンツンしてた切歌ちゃんだが、ゲームやり始めてから、すっかり我が家に打ち解けたみたいだ。

 

「貴女達!そろそろ晩御飯の時間だからゲームはほどほどにしなさい!!」

 

「グムムム…次こそは蘭子さんに勝つデスよ」

 

すっかりオカンと化したマリアのお小言でゲームの時間は終わりを告げる。

 

「フッ、せいぜい腕を磨いておくが良い。尤も我は更にその先を往くであろう!」

 

「く、悔しいデス!!」

 

切歌ちゃんが来て今日で3日くらいだが、すっかりこの残念言語にも慣れたみたいだ。

なんか心なしかたまに目がキラキラしてる気がする。

これはアレか…翼さんパターンか…

 

「おーい、出来たぞ」

 

クリスちゃんがキッチンから料理を持って出てくる。

今日は鍋か。

 

「最近寒ぃからな」

 

まぁ、もう季節的に冬だしな。

今日の鍋はシンプルな昆布出汁ベースに、具は白菜、水菜、豆腐、えのきに…メインは牡蠣か!

牡蠣といえば、とても栄養価が高く、精力増強の効果もあるのだとか。

つまりクリスちゃん…そういう事ですね?

これは沢山食べてスタミナ付けなきゃ!!

 

「今日も美味しいデス!このお家の料理は何を食べても美味しいデスよ」

 

切歌ちゃんも喜んでくれたようだ。

 

「四人で食べるとあっという間ね…じゃあ、シメに雑炊作るわね?」

 

「…は?鍋のシメといやぁ、うどんに決まってんだろ?」

 

またか…

 

「ハハハ…また始まったデスね…」

 

切歌ちゃんもすっかり慣れたようだ。

 

「雑炊よ!!」「うどんだ!!」

 

ホント、なんなんだろうね?

 

「こうなったら蘭子に決めて貰いましょう!」

 

「上等だ!」

 

なんでそこで俺に振るかな…

 

「蘭子はどちらがいいのかしら?」

 

「もちろん、うどんだよな?」

 

正直もうどっちでもいいよ…

 

「ゴクリ…これが修羅場デスか…」

 

うーん…ちょっと違う気がするけどね?

まぁ、そんなんで喧嘩するくらいなら…

 

「双方持ってくるが良い。今宵の我は魔力に餓えておる」

 

いっそのこと、出汁を分けて両方作ればいいのだ。

 

「くっ…それだけは避けてたのに…」

 

「お前…」

 

ん?二人ともどうしたんだ?

いい案だと思うんだけど。

 

「…最近、明らかにお腹周りがキツいのよ…」

 

「お前は全然太らねぇからいいよな…食っちゃ寝しかしてねぇ筈なのに不公平だ…」

 

…なんか悪い事言っちゃったな…

女の子しかいないのに、炭水化物ダブルをリクエストしたらそりゃそうなるわな…

まぁ、二人とも全然気にする必要無いレベルだと思うけど…

ハッ!!これはなおのこと夫婦の営みという名の運動をするべきじゃないかなッ!!

いっそのこと4人でベッドの上でエクササイズはどうかな!?

ダメ?ですよねー…

 

***

 

「それで…ネフィリムは破壊され、切歌も捕まってしまったのですか…」

 

新国家『傷ついた悪姫』政務官邸の一室で、ナスターシャ教授は月読調から報告を受ける。

 

「うん…ネフィリムの残骸も調べたけど、まだ使えそうなのはこの心臓くらい」

 

「…ずっと沈黙を守っていた神崎蘭子がこのタイミングで介入してくるとは…まさか成長途中だったとはいえ、ネフィリムすら歯牙にも掛けないとは想定外でした…」

 

「まだ余力はありそうだった。もしアレが私に向けられたら…」

 

調が小刻みに震えながら呟く。

 

「たしかにこちらの予想を遥かに超える脅威です。恐ろしいのですか?」

 

ナスターシャ教授の目が少し優しくなる。

心優しい少女達に十字架を背負わせようとした挙げ句、切歌は捕縛され、マリアは依然として行方不明、残された調も強大すぎる相手に対して恐怖で震えている様子。

彼女の信念を以て始めた戦いではあるが、最近ではもっと良い方法があったのではないか、と考えない日は無い。

 

「…ううん、大丈夫。うん、大丈夫」

 

調が少し慌てたように首を横に振る。

やはり、かなり無理をしているように見える。

 

「そうですか…それで、ドクターは?」

 

「神獣鏡の方をなんとかしようとしてるみたい」

 

「…しかしあちらは装者候補すら見つかってない状態です」

 

ナスターシャ教授が瞑目する。

 

「もはやここまで…ですね」

 

「そんな!?それじゃあ弱い人達を守れない!!」

 

「しかしこちらの戦闘員は調のみに対して、あちらは万全の装者が3人、その上で神崎蘭子まで出てきたとなると…」

 

調に死ねと言っているようなものだ。

それによって計画が成せたとしても、それはナスターシャ教授にとって、到底許容できるものではない。

先の短い自分だけならまだしも、未来ある若者の命を無駄に散らせるなど以ての外だ。

 

「私一人でもやれる!!やってみせるッ!!」

 

調が強く反論するが、やはりここは投降するべきだろう。

その時…

 

「戦力が足りないなら、補充すればいいんですよ」

 

そう言いながらウェル博士が入室する。

 

「しかし、算段はあるのですか?」

 

「聞けばシンフォギアの装者候補が沢山いるらしいじゃないですか」

 

「まさか…」

 

「そうです!次の目的地は私立リディアン音楽院ですよ!!」




前半は俗に言う日常回です。
え?らんらんは今回に限らずずっと休んでるじゃんって?
まぁね!
らんらん特効のダメ人間製造機がいるからね!


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第20話 翳りし陽光

闇に飲まれよ!(お疲れさまです)

忘年会シーズンのおかげでちょっと更新不安定です…


私立リディアン音楽院。

 

そこに通う1回生、小日向未来は憂鬱だった。

授業中、ふと右端の席を見る。

 

その席には今は誰も座っていない。

その席の主、神崎蘭子は、あの事件以降ずっと休んだままだからだ。

 

「…さん、小日向さん」

 

「え?あ、はい!」

 

どうやら、教師に当てられていたようだ。

未来は慌てて意識を授業に戻すが…

 

「どうやら心ここにあらずみたいですね、では、その悩みは次の講義までに晴らしておいてください」

 

「は、はい、すみません」

 

「うえぇ…先生の対応、私の時と全然違う」

 

響が不満を漏らすが…

 

「当たり前です!立花さんはいつもいつもいつもいつもいつもいつも私の授業を聞く気自体が無いんですから!!」

 

「うぇぇっ!!?いやぁ…そんな事は無いというか…ちょっとはあるというか…」

 

「立花さん!!」

 

教室が笑い声に包まれる。

授業を聞いていない響が先生に怒られる。

実にいつも通りの光景だ。

 

だが、そのいつもと変わらない筈の光景の中に無くてはならない親友の姿は、何処を探してもずっと見当たらないままだった。

 

***

 

「運動をしましょう!食べたら食べた分消費すればいいのよ!」

 

「さ、さすがマリアデス!」

 

マリアがなんか言い出した。

昨日の鍋のシメ事件をまだ引き摺ってるみたいだ。

こいつ、クリスちゃんが学校行ってていないからってやりたい放題だよな…

まぁ、別に勝手にやればいいんじゃない?

 

「じゃあ、動きやすい格好に着替えましょう」

 

「デスデスデース!」

 

マリアと切歌ちゃんに引き摺られていく。

えぇ…なんで俺もやる事になってんの?

 

「じゃあ、まずは腹筋から。お腹周りに効く運動と言えばコレよね!蘭子は私の足を押さえてて頂戴」

 

はぁ…めんどくさいけど仕方ないなぁ…

と最初はあんまり乗り気じゃなかったんだが…

 

「19…20!」

 

正直、腹筋という運動を侮っていたと言わざるを得ない。

考えてみれば、身体を上下に起こす運動なのだ。

 

つまりそれは…足を押さえている俺の目の前でマリアの豊かな双丘がこれでもかという位に暴れ回っているという事だ。

しかもそれが一定間隔で近付いてくるのだ。

これは…なんというか…凄い、癖になりそう。

今度クリスちゃん、響ちゃん、奏さんも誘ってみよう。

翼さんと未来ちゃんは…うん、まぁ…ね?

いや、おっぱいに貴賤なんて無いんだけどね?

あまりこういう趣旨には向かないかなぁって…

いや、仲間外れは良くないな。

俺はいつもクリスちゃん達に仲間外れにされてるけど仕返しみたいで気分悪いし。

やっぱりみんな誘ってやるのが一番だな!

 

「次はアタシデス!」

 

次は切歌ちゃんか。

 

「デース…デース!」

 

うん、マリア程のインパクトと暴れ具合では無いけど、しっかりと自己主張している。

美乳って言葉が良く似合う感じだ。

割と幼い感じがするし、中学生くらいだろうか?

今からこれだと今後の成長がとても楽しみだ。

しかし、数が全部デースだから今何回やってんのか全然わからんな…

 

「1セット終わったデース!」

 

「じゃあ、次は蘭子ね?私が足を持っていてあげるわ」

 

俺?俺はいいよ…

いや待てよ…足を押さえる為に前屈みになっているこの体勢で俺が上体を起こすと…丁度谷間が目の前に来るような…

………仕方ないな、頑張るか。

 

「よし、じゃあ次はスクワットよ!私についてこれるかしら!!」

 

「負けないデース!」

 

マリアと切歌ちゃんが競争と言わんばかりに高速でスクワットを始める。

流れる健康的な汗、高速の上下運動によって激しく揺れる果実。

絶景はまだまだ続くのだった。

あぁ…ここが天国だったか…

 

***

 

「いやぁ、私達女子高生なのに粉物食べ過ぎでしょ」

 

「ふらわーのおばちゃんのお好み焼きは別腹だからね!!」

 

「でも、新校舎になって、ふらわーにも行きにくくなっちゃったね」

 

「たまに食べるからこそ、ナイスです」

 

元気の無い未来に気を使った響が企画したお好み焼きパーティーの帰り道。

尤も、名目こそ未来を元気付ける為なのだが、お好み焼きを3枚平らげた響が一番楽しんでいたのは言うまでもない。

自分が楽しくないのに、一緒にいる人が楽しい訳がない。

だから、彼女はいつでも自分が楽しむ事にも全力なのだ。

 

しかし、そんな和気あいあいと歩いていた響達の前に一人の少女が立ちはだかる。

 

「やっと見つけた」

 

「調ちゃん!?未来達は逃げ…」

 

「用があるのは貴女じゃない。貴女はこいつらと遊んでて」

 

響の周りにノイズが現れる。

即座にシンフォギアを纏う響だが、ノイズの処理を余儀なくされる。

 

「じー」

 

調が未来達を品定めするように見る。

 

「な…なにかな?私達は響が心配なんだけど…」

 

未来が代表して調に話し掛ける。

 

「うん、やっぱり貴女だと思う」

 

「一体何を…」

 

「私達に力を貸して欲しい。弱い人達を守る為の力を」

 

「どういう…こと?」

 

調のいきなりの申し出に未来が困惑する。

しかし、そのような力が…親友を守れるような力が自分にあるのなら、それは…

 

「一言で言うなら、愛」

 

「何故そこで愛!?」

 

いきなりの突飛な言葉に訳がわからなくなる。

だが、調の言葉に何故か心が惹かれている。

愛…その言葉一つで全て見透かされたようにさえ思えた。

 

「私にはわからない。でも、大事な事みたい」

 

「それは…たしかに大事だろうけど…」

 

何故自分なのだろうか?

確かに、響や蘭子は戦っている。

自分だけが守られている現状にずっとやきもきしていた。

 

「貴女に…自分を変えたいという想いがあるなら、手を取って?」

 

「私は…」

 

わからない。

常識的に考えれば、認定特異災害とまで言われているノイズを扱うような危険な集団だ。

手を取れる訳がない。

しかし、愛という妙に刺さる言葉と大切な人に守られるだけの自分という現状…考えると心が落ち着かない…

そういった迷いが未来を立ち止まらせていた。

 

「残念、時間切れ」

 

調が呟いた次の瞬間、炎の柱が立ち上ぼり、響を囲んでいたノイズ達が消滅する。

 

「やっぱり来たね、蘭子。これもまた愛」

 

「我が至宝に手を出そうとは不届き者よ!!」

 

***

 

いやぁ焦った。

マリア達のおっぱい観賞してたらいきなりちっちゃい俺が響ちゃん達がノイズに襲われてるって言うから急いで来たって感じなんだが…

 

「あぁ…睨む目もいい。蘭子、もっとウジ虫を見るような目で私を見て」

 

上下に揺れる絶景を手放して来たってのに、またMっ子の相手しないといかんのかよ…

この子の相手、俺の精神が物凄く疲れるんだよね…

 

「でも、残念だけど今日は蘭子の相手はしてられない。貴女、一緒に来て」

 

調ちゃんが未来ちゃんに手を差し伸べる。

未来ちゃんを人質にするつもりか?

それだけは許さないよ?

あ…でも、これ逆効果なのか…

Mってどうすれば勝てるの?

優しくしても厳しくしても何やっても喜ばれる気がするんだけど…

 

「でも…私は…」

 

とりあえず、向こうの狙いは未来ちゃんみたいだから、それは阻止しよう。

 

「陽光受けし者よ!」

 

「蘭子…その…久しぶり…」

 

ん?なんかモジモジしてるけど、どうしたんだろう?トイレ?

まぁ、俺の方は未来ちゃんをいつも見てるからあんま久しぶりって感じはしないんだけど、一応そういう事になるのかな?

 

「フッ、我が魂は悠久の時を統べる故、久しきとは思わぬが…」

 

「………は?」

 

アレ?なんか間違えちゃったかなぁ…

この残念フィルター、狙って出てくる訳じゃないからなぁ…

ちょぉっと未来ちゃんの目が怖いんだけど…

 

「わ、我が魂は陽光受けし者と共にある故、紡がれし時など無価値よ」

 

「うんうん、そうだよね?それで?」

 

良かった…持ち直した…

なんだったんだろう…今一瞬物凄いプレッシャーを感じた…

 

「ここは我に任せて撤退を!」

 

「……それで、また隠し事するのかな?」

 

全然持ち直せてませんでした…

スッゲー冷えきった目で見られてる。

あっ、でもなんかゾクゾクするかも…

ヤバい、調ちゃんの気持ちがちょっとだけわかる気がする。

いや、俺はノーマルだよ?ノーマルだからね!

 

「…調ちゃんだったよね?行こう」

 

「え?でも、いいの?」

 

「いいよ、()()()()は私と会うのなんて、久しぶりでも何でもないみたいだし相変わらず隠し事ばっかりだし、行こう」

 

ちょっと待って!

なんでそんなムキになってんの?

 

「陽光受けし者よ!」

 

「………何?まだ何かあるのかな?」

 

「陽光受けし者が闘争に身を置く必要などない!」

 

「我が守る…我が全て守護する故、陽光受けし者は安寧と平穏を享受せよ!」

 

これは嘘偽りない本心だ。

親友の安全と日常の為にここまでやっているんだ。

未来ちゃんが平穏に暮らせるなら、俺はがんばれる。

月の落下も事務員次第だけど絶対に止めてみせる。

事務員と会えないなら最悪、破壊しちゃえばいい訳だし…

 

「……そんなの嫌…嫌だよ…蘭子は全然わかってない!行こう、調ちゃん」

 

しかし、俺の想いは未来ちゃんには届かず、未来ちゃんは調ちゃんと一緒に行ってしまうのだった。

その後ろ姿をただ呆然と見ているしか無かったのだった…

 

最後に見せた未来ちゃんの涙の意味はわからないままだった。




今回は
翳りし陽光=闇に飲まれる393

調勧誘時点で揺れてたのに、らんらんが後押ししちゃいましたね。
まぁ、人の感情に疎いらんらんが顕著に出てしまったので、仕方ないですね。


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第21話 堕天使の黄昏

闇に飲まれよ!(お疲れさまです)

G9話です。


小日向未来が去って1週間の時が過ぎていた。

 

立花響は一人、傷ついた悪姫の首都、名古屋に来ていた。

未来と蘭子、大切な友達…いや、友達以上の感情を持つ二人がぶつかっているのに、何も出来なかった事に責任を感じていたからだ。

 

私が未来を連れて帰らないと…蘭子ちゃんにも、未来にも、もう友達だと胸を張れない。

 

その一心でここまでやって来たのだが…

 

「未来が何処にいるのかわからないよ…」

 

そう、一念発起して来たはいいが、情報がまるで無い為、路頭に迷っていた。

行動を起こす気になったら即断即決の為、事前調査などという言葉は彼女の辞書に存在しないのだ。

 

「困ったなぁ…誰か知ってる人がいればいいんだけど…」

 

辺りを見回しても誰も人が見当たらない。

尤も、響の行為は厳密には不法入国であるため、都合はいいのだが。

 

「仕方ない、探してみよう」

 

とにかく、動かない事には始まらない。

響は未来を探して、行動を開始するのだった。

 

***

 

「やっぱりおかしい…誰もいない」

 

辺りを探し回るも、市街地の真ん中だというのに人っ子一人見当たらない。

さすがに異常である事に気付いた響だが…

 

「ようやく気付きましたね!どぁが、今さら気付いても、もう遅ぉいッ!!」

 

声の主、ウェル博士がソロモンの杖を翳す。

響に向かって大量のノイズが襲いかかるが…

 

~Balwisyall Nescell gungnir tron~

 

シンフォギアの起動キーとなる聖詠を歌いながら、襲いかかるノイズを殴りつける。

 

「ぬぁッ!?人の身でノイズに!?」

 

♪正義を信じて握り締めて

 

しかし、何故かノイズの炭素分解は発動せず、次の瞬間、撃槍のシンフォギアが響の身を包む。

 

「この拳も…命も!」

 

「シンフォギアだッ!!」

 

「バ…バカな…あり得ないィィィィッ!!」

 

ウェル博士の絶叫と共に次々にノイズが現れるが…

 

「うぉぉぉォォォッ!!」

 

拳一つ、蹴り一つで次々に現れた先から、炭となって崩れゆくノイズ達。

ノイズを放ちながら徐々に後退していくウェル博士だが、呼び出すより撃破される数の方が多くジリ貧だ。

 

「そんなバカなッ!!ボクは英雄、英雄だぁァァァッ!!」

 

最後とばかりに巨大ノイズを放ち撤退しようとするが…

 

「とりゃぁぁッ!!」

 

その巨大ノイズも蹴り一つで崩れ去る。

 

「ひぃィィィィッ!!?」

 

「さぁ、未来の所まで案内してッ!!」

 

***

 

ウェル博士を捕らえ、未来の元へと案内させる響。

まったく人の気配のしない街中を抜け、気付けば港の方まで来ていた。

 

「未来は何処ッ!?」

 

「あそこですよ」

 

ウェル博士の指差す方向を見ると船が1隻、沖合いに出ようとしているところだった。

 

「クッ、未来!今行くッ!!」

 

ウェル博士を投げ捨て、助走を付けて船に向かってジャンプするが…

 

♪歪鏡・シェンショウジン

 

―流星―

 

丁度空中であった事と、船に辿り着く一心で周囲に気が回らなかった事で、船の甲板から発せられる光の帯を避け切れずに直撃してしまう。

 

「クッ、こんなのッ!!」

 

咄嗟にガードして抗おうとするが…

 

「…え?ギアが…溶けて…」

 

そう、響の纏うシンフォギアがどんどんと分解されていく。

 

「そんな…後少しなのに…未来ゥゥゥッ!!」

 

シンフォギアが完全に解除されてしまった響は、そのまま海へと落ちて行くのだった。

 

***

 

一方その頃。

 

未来との事にショックを受けた神崎蘭子は塞ぎ込んでしまい、自らの部屋からすら出てこず、同居している雪音クリス、マリア・カデンツァヴナ・イヴ、暁切歌は蘭子の事を心配していた。

 

「どうするデスか…?さすがに蘭子さんが心配デスよ…」

 

「いつの間にか居なくなってたと思ったら、帰ってきたらあんな状態になって…蘭子…」

 

「てか、お前らまた逃げなかったのかよ…いい加減アイツはアタシが何とかするからお前らは余計な事すんなよ」

 

そう、蘭子が響達の元に転移した際、この家には名目上の捕虜であるマリアと切歌の二人だけだったのだが…

 

「べ、別にスクワットに夢中で気付かなかった訳じゃないデスよ!?」

 

「そ、そうよ!あえて残ってただけだから!」

 

「いや…別に聞いてねぇよ…じゃ、アタシはアイツの部屋行ってくるわ」

 

「えぇ…頼んだわよ」

 

「お任せするのデス!」

 

クリスが蘭子の部屋の中に入る。

相変わらず電気が消えているので、まずは電気を付ける。

 

「…煩わしき光よ」

 

「よぅ…ちょっとは元気出たか?」

 

「我に構うな」

 

あの日以来ずっとこの調子である。

それこそ、クリス、マリア、切歌が何をやっても一向に変わらない。

 

「んな事言われていつまでも引き下がってると思うか?」

 

しかし、今日のクリスは少し違った。

一歩近付く。

 

「…彼方へと去るがいい」

 

もう一歩。

 

「我に構うな」

 

更に一歩。

 

「我に近付けば…」

 

「やってみろよ!お前なら出来んだろ!」

 

そのままクリスが蘭子を抱き締める。

 

「全部受け止めてやるからさ、お前はお前のままでいてくれよ、な?」

 

部屋からは誰とも解らぬ嗚咽だけが洩れていた。

 

「グスッ…グスッ…良゛か゛っ゛た゛デス!!もう後は蘭子さんにお手紙書くくらいしか思い付かなかったデスよ!」

 

「いや、お前かよっ!!?台無しだよ!!」

 

クリスが切歌を追い出す。

 

「…ったく、余計な事すんなっつっただろ」

 

「グス…豊穣の女神よ、感謝する」

 

「へッ、やっといつものヘンテコなのに戻ったな、お前、暗いの似合わねぇんだよ」

 

「今、あのバカが柄にもねぇ責任感じて未来を連れ戻しに行ってる…でも、聞いてる限り、お前が行くのが筋じゃねぇか?」

 

「未来が未練だっつうんなら、さっさと連れ戻して来い!!」

 

クリスの追い討ちの激励で、蘭子の目に完全に光が戻る。

 

「へっ、いい顔になったじゃねぇか、それでこそアタシの…」

 

何故かその先をクリスが言い淀む。

 

「?豊穣の女神の…?」

 

「なななんでもねぇっ!!ほら、お前一人の方が速いんだから、さっさと行って来い!!後でアタシも追い付いてやるよ!」

 

***

 

未来ちゃんの事でだいぶ落ち込んでたんだが、クリスちゃんに元気を貰った。

やっぱり我が嫁は出来が違うなぁ…

抱き締められた時、大変柔らかかったし。

まぁ、こんな時に何言ってんだなんだが、これが俺だ。

隠し事というか、二課の事をあんまり喋らなかったりとかが未来ちゃん的にも不満だったみたいだし、今後はもっとオープンに行こうと思う。

いや、伝わらないだけでこれでもだいぶオープンだとは思うんだけどね?

…さすがに今おっぱい見てますとかは言わなくてもいいよね?

そこまでオープンにしろと言われるとちょっと厳し過ぎるよ?

まぁ、こればっかりは話してみんとわからんな。

 

じゃあ、早速未来ちゃん連れ戻しに行こうと思うんだが…何処に行けばいいんかね?

未来ちゃん担当のちっちゃい俺、あの日以来行方不明なんだよな…

 

あ、そういやクリスちゃんが響ちゃんが先に行ってるって言ってたな。

とりあえず響ちゃんの所に行けばいいか。

 

と、気軽に転移したんだが…

 

「ッ!!!?あ、貴女はッ!!?いや…これはその、誤解、誤解です!!」

 

上半身裸の上に水浸しで酷く慌てているプロデューサーのお兄さんと毛布にくるめられて推定全裸で寝ている響ちゃんがいた…

 

…すいません!お巡りさん!コイツです!!

 

***

 

「して、如何なる狼藉か?」

 

咄嗟に正座したプロデューサーのお兄さんを見下ろしながら状況を聞く。

まぁ、俺じゃないんだし、このプロデューサーのお兄さんの事だから何か理由があるんだと思う。

無かったら?そのまま警察に直行だネ!

 

「いえ、あの…海を見ていましたら、この方が海に落ちていくのが見えた、とアイドルの方に言われまして…」

 

「…纏いし衣を剥ぎ取った、と」

 

「いえ!?違います!!誓って、この方は初めから何も着ていなかったんです!」

 

えぇ?ほんとにござるかぁ?

いくら響ちゃんがちょっと変わった子だからって全裸で海中水泳は無いと思うよ?

やっぱり悪戯目的?

まぁ、いつものように困った時の仕草の首に手を当ててるから違うんだろうけど…

しかし、このお兄さんがここまで慌てるのも珍しいのでもうちょい観察したいんだが…

 

「プロデューサー、季節外れの海はたのseaかったですか?ふふっ…あら?」

 

え?何このお姉さん…

さらっとしょーもないダジャレというかオヤジギャグみたいなの言ってたけど…

でもおっぱいは控えめだけどすっげぇ美人。

やっぱアイドルかな?

 

「プロデューサー、またスカートはいた女の子をスカウトですか?ふふっ」

 

もうなんなの?この人…

ダジャレ言わないと気が済まないの?

フリーダムすぎんだろ…

 

「いえ、あの…間違いではないんですが、今回は不可抗力といいますか…恐縮です」

 

頼むから途中で説明を諦めないで!

 

「大方この子のお友達ってところでしょうか?この子、こんな真冬に全裸で海に落ちて危なかったんですよ?」

 

そうなのか…クソッ、俺が目を離してる間に…

 

「だから、さっきまで私が人肌で暖めてあげてたんです」

 

俺のバカッ!!なんで目を離したッ!!

響ちゃんと中身はともかく超美人のお姉さんの百合空間とか永久保存版じゃねぇか!?

脳のリソース80%使うと言われても目に焼き付けるわ!

とまぁ、半分冗談は置いといて、そろそろお礼言って響ちゃんを引き取るか。

 

「瞳持つ者よ、感謝する」

 

お兄さんとお姉さんが目を見開く。

ん?どうしたの?

 

「貴女にどのような心境の変化があったのか私にはわかりません。ですが…」

 

「いい、笑顔です。今までより、ずっと」

 

そうなの?いや、自分ではよくわからんけどね。

まぁ、人を見るプロがそう言うのなら、それはきっと我が嫁のおかげだと思う。

 

「左様か…では我は覇道を往く、闇に飲まれよ!」

 

「えぇ、またその笑顔を見せてください」

 

そうして、響ちゃんをお姫様抱っこして、お兄さんと別れて少ししてからすぐに二課の仮設本部に転移したのだった。




堕天使の黄昏=落ち込むらんらん

世界レベル夫婦喧嘩ラウンド1は393の圧勝で終わりました。
久しぶりに登場のプロデューサーさんですが、アイドルの出身地巡業の付き添いで帰りだった模様。
まぁ、ダジャレお姉さんの出身地、らんらんの領土なんですが(笑)


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第22話 女神の双刃

闇に飲まれよ!(お疲れさまです)

だいぶお待たせして申し訳ない。
仕事でトラブルが発生して、ようやく休み取れました…


「帰ってきたか…ってこのバカどうしたんだよ!?」

 

二課の仮設本部に戻るとクリスちゃんが出迎えてくれる。

口ではなんだかんだ言ってるけど、やっぱり響ちゃんとは仲良いみたいだ。

 

「大海に彷徨える輝き持つ者を瞳持つ者が救済せん」

 

「あぁ、あのちょせえオッサンか…今度会ったら礼言っとかねぇとな」

 

いや、オッサンはやめてあげた方がいいと思うな…

強面ではあるけど多分20代だと思うし。

 

「立花!?大丈夫か!?しっかりしろ、立花!!」

 

翼さんも来たみたいだ。

すごい狼狽えようだけど、どうしたの?

 

「ていうか、んー…?」

 

やっぱりクリスちゃんも心配なんだな。

さっきから俺がお姫様抱っこしてる響ちゃんの顔をまじまじと見てるし。

 

「なぁ、コイツ…起きてねぇか?」

 

いや、そんな訳無いと思うよ?

起きてたら、毛布あるとはいえ、全裸で俺にお姫様抱っこされてるのとか普通に嫌だろうし。

 

「立花!!おい、返事をしてくれ!!立花ァァッ!!」

 

「だぁぁ、うっせえなッ!!オッサンもすぐにどうこうなる話じゃねぇって言ってたし、コイツならなんとかできるって説明しただろ!!」

 

「しかし雪音、たとえ神崎にそのような力があったとしても、立花は現在進行形でガングニールに侵食されているのだぞ!?もしも今目が覚めないのもそのせいだとしたら…」

 

え?何?響ちゃんもドスケベ聖遺物に憑かれてんの?

聖遺物使えるの女の子ばっかりなのってそういう…あ、どう見ても関係無いモヤシいたわ。

 

「…てい!」

 

翼さんを制止してたクリスちゃんが不意討ちで響ちゃんの脇をつつく。

いや、気を失ってるのに、そんな事しても…

 

「ひゃんッ!!」

 

……

………

沈黙が続く。

 

「……いやぁ、あの…起きるタイミングを逃しまして…も、もうちょっとお姫様抱っこを堪能したかったとか考えてないから…だからクリスちゃん、まずは落ち着いて!?今ギアはやめて!?やめて止めてやめて止めてやめて止めてッ!!?」

 

つまり、どういう事だってばよ…

 

***

 

「響君!!無事だったか!?」

 

とりあえず、響ちゃんに服を着てもらい発令所に行くと、弦十郎さんが心配そうに響ちゃんに駆け寄ってきた。

ていうか…

 

「ようやく役者が揃ったようね?」

 

「アタシ達も居ても立っても居られなかったデスよ!!」

 

え?なんでいんの?

未来ちゃんの相手は俺がするし、普通に家に居て欲しかったんだが…

 

「調達はアタシ達が説得するデスよ!!」

 

…うん、それはホントにお任せしたい。

ん?達って事は他にも誰かいんの?

もしかしてモヤシ博士?

…じゃないよね、たぶん。

 

「まったく、無茶しやがって」

 

「心配したんだぞ、コイツ!」

 

こっちはこっちで弦十郎さんと奏さんに響ちゃんがワシャワシャされている。

 

「とりあえず、状況を整理しましょう。響さん、何があったのか、説明してくれませんか?」

 

緒川さんが仕切ってくれる。

まぁ、俺が口出しても一部の人以外はハテナだろうしね…

 

「はい!えぇっと…何処から話せばいいのかな?」

 

響ちゃんの話は衝撃だった。

モヤシはいつも通りだけど、シンフォギアを纏う未来ちゃんか…

しかも、未来ちゃんのビームで響ちゃんのガングニールが溶けたらしいし…

 

「…て訳で、未来にコテンパンにやられて…私、未来と話すら出来ませんでした」

 

響ちゃん…悔しそうだ。

親友だもんな…

 

「他におかしな事は無いか?身体の調子が悪いとか…」

 

翼さんが心配しながら聞いているが、ちょっと大袈裟過ぎない?

まぁ、後ですぐにドスケベ聖遺物は剥がすけど。

 

「……胸の歌が響いてきません」

 

…え?それってつまり…

 

「メディカルチェックの結果が出ました!響ちゃんの身体のガングニールが…無くなってます!?」

 

友里さんが響ちゃんのメディカルチェックの結果を報告するけど…え?無くなったの?

 

「…神獣鏡ね」

 

「デス…」

 

マリアが呟く。

シェンショウジン?どっかで聞いた気が…

 

「人を惑わす鏡の光…人の身に纏わせたのね…マム…」

 

「マリア!まだマムと調がやったとは…きっとあのキテレツの仕業デスよ!!」

 

落ち込み気味のマリアを切歌ちゃんが励ます。

ていうか、マムはマリアじゃないの?

マリアの上に更にマムがいるとか…この組織どうなってんの?

マム、ママ、マッドに…4M集団か…

切歌ちゃんが唯一の良心かな…

 

「ていうか、お前…ちょっとコイツに言動似てきてねぇか?」

 

「ななななんの事かしら!?」

 

いや、クリスちゃん?

気持ちは解るし、俺も脳内では別の事考えてたけど、今ちょっとシリアスだったのが、いきなり急降下したよ?

俺…すっかりオチ要員だな…

 

「ま、細けぇ事気にする暇があったら、会って直接聞いてやるくらいの気概でいいんじゃねぇか?」

 

ホント、出来た嫁だなぁ…

俺をダシにするのはやめて欲しいけど。

 

「えぇ…そうね、ありがとう()()()

 

ま、女の子を笑顔に出来るのなら、ダシになった甲斐があるというものだ。

 

***

 

「南方海域より高エネルギー反応を検出!」

 

「同時に付近の米国の哨戒船から救援信号が出ています!」

 

響ちゃんの話を聞いて、さて次はどうしたものかと思っていた矢先に友里さんと藤尭さんが、周辺に異常が出たらしく報告してくる。

 

「これは…」

 

「無関係じゃなさそうですね」

 

「ならば我が出る!!」

 

「神崎!!微力ながら、この防人の剣も手を貸そう!!」

 

そこに未来ちゃんがいるなら、俺が行くしかない。

…翼さんの言動が日に日におかしな方向に行ってる気がするんだけど、大丈夫かな?

奏さん?しっかり見ててあげてね?

 

「よし!行ってこい!」

 

「蘭子ちゃん…未来を…お願い!!」

 

クリスちゃんと響ちゃんに見送られる。

 

「帰って来たら好きなもん作ってやるよ、未来も一緒にな!何が食いてぇ?」

 

「…ならば、禁断の果実を所望する!!」

 

「ハンバーグな!とびきりのを作ってやるよ!」

 

禁断の果実か…

俺の好きな食べ物はハンバーグなんだが、ハンバーグと言おうとするとこの言葉が出てくる。

ちなみにもう一つの大好物でも同じ言葉が出てくるので、割と伝わらないのをいい事にこっちのニュアンスで言ってたりする。

だってご褒美なら是非ともそっちにむしゃぶりつきたいじゃん?

…あれ?なんか響ちゃんが顔赤いような…

 

「蘭子ちゃん…人前でそういう事言うのはやめた方がいいと思うよ?」

 

………え?ナンデ?

…もしや、あっちで伝わった?

嘘だろ!?現にクリスちゃんにはハンバーグで伝わってるのに…

 

「?お前、何トンチキな事言ってんだ?」

 

「え?いやぁ、なんでだろうね?蘭子ちゃんがおっぱい食べたいって言ってるような気がして…」

 

みるみるクリスちゃんの顔が赤くなる。

 

「お、おまッ!!?何バカな事言ってやがんだッ!!やっぱお前、ホントのバカだなッ!!」

 

ゴメン、クリスちゃん…

俺、そっちのニュアンスで言いました…

でも、伝わらないとタカを括ってたから出た発言であって、決してセクハラではないのです。

あ、でもクリスちゃんのおっぱいに興味があるのはホントだよ?

 

「…いや、別にそっちがいいならアタシも考えなくも…」

 

ん?なんか言った?

響ちゃんにバレたのがショックで聞いてなかったけど…

 

「いいからお前は早く行ってこいッ!!!」

 

いや、なんでそんな顔真っ赤にして怒ってんのさ?

まぁ、行くけどね?

 

そんなこんなでバタバタしながら、ミサイルに乗せられて出撃するのだった。

 

「神崎?逆側が空いてるのに何故同じ区画に?まぁいい、神崎の不安も全てこの防人の剣が払ってみせよう!!」

 

一緒に乗った翼さんのおっぱいはやっぱり柔らかかった。

柔軟剤でもこんなに柔らかくはならないから、おっぱいはやっぱり偉大だ。

 

***

 

翼さんのおっぱいを堪能しながらミサイルに揺られてしばらくして、問題の海域まで到着したんだが…

 

「なんだ!?これは…」

 

翼さんが驚くのも無理は無い。

だって、知らんうちに地図に無い島があるんだもん…

しかも、中央の遺跡みたいな所からヤバい雰囲気の光が出てるし、早くなんとかした方が良さそうだ。

 

と、思っていたら…

 

「やっぱり来てくれたね、蘭子!」

 

4M集団の一角、というか俺の中ではトップのご登場だ。

この娘、精神的に凄く疲れるから一番相手したくないんだけどね…

 

~Various shul shagana tron~

 

調ちゃんが歌い始める。

やだなぁ…怖いなぁ…

 

~Zeios igalima raizen tron~

 

ん?

 

♪Edge Works of Goddess Zababa

 

「調を止めるのは、アタシの役目デスッ!!」

 

切歌ちゃん?いつの間に…

 

「なんとか忍び込もうとしたら、片側が空いててラッキーデスよ!!」

 

あぁ…俺が翼さんと一緒の区画に入ってたから、空いてたのか。

ふむ…つまりあのミサイルは翼さん一択ではなく、実は切歌ちゃんとの二択だったのか…

割と惜しい事をした気がしなくもないが、やはり翼さんのおっぱいも素晴らしかったので良しとしよう。

 

「切ちゃん、どいて!!私は蘭子からオシオキを貰いたいの!!」

 

―γ式・卍火車―

 

「そうは問屋が卸さないデスよ!!」

 

―双斬・死nデRぇラ―

 

「調はアタシが絶対に止めるデスッ!!蘭子さん達は先に行くデスよ!!」

 

…まぁ、切歌ちゃんが止めてくれるなら有り難いし、お言葉に甘えたい気持ちはあるんだが…

この娘に関しては、たぶん物理的な争いいらないんだよなぁ…

俺が心を殺せばの話だけど…

 

「クッ、切ちゃんの分からず屋ッ!!」

 

―裏γ式・滅多卍切―

 

「分からず屋はどっちデスかッ!!調にだけは言われたくないデスよッ!!」

 

―対鎌・螺Pぅn痛ェる―

 

ヒートアップしてんな…

まぁ、会ってしまったものは仕方ないか…

 

「禁忌の少女よ…」

 

「…蘭子?」

 

「!?蘭子さん、まだ行ってなかったデスか!?」

 

「我は傷ついた悪姫、ブリュンヒルデ!!禁忌の少女よ!我に跪けッ!!」

 

「「戦場(いくさば)で何を馬鹿な事をッ!!?」」

 

翼さんと切歌ちゃんの言葉が重なるが…

 

「はいッ!!」

 

当のロリッ娘は凄くいい返事をして物凄いスピードで平伏すのだった…

妙に息が荒いのは、さっきまで切歌ちゃんと喧嘩してたせいだと信じたい…

ていうか俺、跪けとは言ったけど、そこまでしろって言ってないんだけど…

 

困惑する翼さんと何とも言えない表情の切歌ちゃんの視線がとても痛かった…




今回は
女神の双刃=切ちゃんと調

まぁ、夫婦喧嘩前哨戦はらんらんがプレイに徹したら瞬殺だからしょうがないよね?
次の更新も怪しいんですが、なるべく早めに書きたいです…
皆さん、精神的に辛くなる事とか色々あるとは思いますが、急に無断で仕事に来なくなるのはやめましょう…
作者との約束デス!!


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第23話 緑衣の悪魔

闇に飲まれよ!(お疲れさまです)

ようやく落ち着いて、休み取れました。
年内最後の更新です。

年内にG完結したかったのになぁ…


さむっ…

 

いや、いきなりこんな感想言われても訳わからんと思うけど、マジで寒いんだ…

 

あの後、息遣いが妙に荒い調ちゃんには待てを命令して、切歌ちゃんに任せた。

「これが放置プレイ…」とか言う斬新な発言は、俺への風評被害もいいところなので止めて欲しい。

 

んで、先に進もうとした矢先にノイズの団体さんが現れて、翼さんが「防人の生き様、覚悟を見せてあげるッ!!」とか言いながら突撃して行っちゃったので、1人で未来ちゃんを探す羽目になったんだが、いきなり後ろからビーム食らって気付いたら服溶けてて今に至る。

 

12月の寒空の中お外で全裸とかマジで死ねる。

これが響ちゃんの言ってた未来ちゃんのシンフォギアの力っぽい。

まさか俺の能力で出た服にも有効とは思わんかったけど。

まぁ、普通にビーム食らったら服は燃えるか…

でも、熱さとかあんま感じなかったし、身体は無傷だし、よくわからんのだよなぁ…

 

しかし、寒い…かなり寒いんだが、また何処から未来ちゃんが狙ってるかわからんので、こうやって歌も歌わずに隠れている訳だ。

こんな時、未来ちゃん担当のちっちゃい俺が居れば…ホント、何処行ったんだ、アイツ…

このままでは風邪引きそうだし、早く未来ちゃんの隙を突いて服作れる位のフォニックゲインは補給したい。

とりあえず、確証は無いんだが、出した服とか力は消せるみたいだけど、大元のシンデレラの靴には効かんみたい。

最悪ゴリ押しすれば何とかなりそうではあるんだけど、あくまで俺は未来ちゃんと話をしに来てるのだ。

 

♪歪鏡・シェンショウジン

 

歌……?ヤバッ!!

 

咄嗟にビームを躱す。

なんでここがバレて…

 

「無駄だよ、蘭子…」

 

「蘭子の居る場所なんて…私には手に取るようにわかるの…」

 

ヒェッ…ヤンデレソング歌いながらビーム乱発してくる親友とか、何処に需要が?

あぁ、大きいお友達はそういうの好きそうですね…

中身はそっち寄りだけど、見た目はうら若きJKなので、ノーセンキューですよ!

ともかく、今は逃げの一手だ。

 

「逃がさないよ…何処に居ても…必ず見つけ出してあげる!!」

 

ヤバーイッ!!説明不要ッ!!

どう見てもスト…いや、落ち着こう、まだ慌てるような時間じゃない!!

そもそも、俺は未来ちゃんを性的に見てるけど、向こうはそんな訳無い。

見た目は女の子同士だしね!!

まずは対話だ、対話を試みるんだ。

 

「や、闇に堕ちし日輪よ!」

 

オォイッ!!?この残念フィルターいい加減にしろよッ!!

このタイミングで呼び名変えて刺激与えるような事してんじゃねぇよッ!!?

 

「それ…私の事かな?」

 

もうヤダ…お家帰りたい…

 

「現世はウンディーネの息吹の如く我が身を凍てつかせし、漆黒の衣纏いし時を紡がせん」

 

どうだ?情に訴える作戦…いけるか?

 

「寒いなら…温めてあげるね?」

 

デスヨネー…

 

―流星―

 

未来ちゃんが放つ光に包まれ、俺は意識を手放した。

 

***

 

「蘭子ちゃんッ!!?」

 

戦いの様子をモニターで見ていた響は、完敗したように見える蘭子に思わず声を大きくする。

居てもたってもいられなかった。

 

「おっさん!!アタシも出るぞッ!!四の五の言ってられねぇッ!!」

 

「クリス、私も出るわッ!!」

 

クリスの言葉にマリアが呼応する。

 

「師匠ッ!!私もッ!!」

 

「響君の出撃は許さんッ!!」

 

「でもッ!!」

 

「でもも何も無いッ!!戦う力を失っている君をノイズが居る場所に送る訳にはいかん!!むざむざ死にに行く子供を諫めるのも大人の仕事だ」

 

弦十郎と響の間に奏が立つ。

 

「何だ、奏?お前まで…」

 

「まぁ、待てよ旦那。結論を急ぎ過ぎる大人は嫌われるぜ?」

 

そう言って、自分の胸のネックレスを外し、響に付ける。

 

「奏さん…?」

 

「バトンタッチさ」

 

微笑む奏に涙がこみ上げる。

 

「蘭子も未来も助けたいんだろ?」

 

「行って、全部漏れなく救ってこいッ!!恋する女なんてのは、欲張りくらいで丁度いいのさ」

 

「…はいッ!!絶対の、絶対にッ!!二人を連れて帰って来ますッ!!」

 

そう言って飛び出していく響を見送る奏に緒川が声を掛ける。

 

「…良かったのですか?」

 

「いいのさ…アタシの魂は、キッチリアイツが継いでくれてるよ」

 

今度こそ、本当に引退だな、と誰にも聞こえないように呟くのだった。

 

***

 

気付いたら、例の事務所だった。

 

『おぉ、蘭子ちゃんよ…しんでしまうとはなさけない』

 

出たよ…てか、俺死んだの?

 

『死んでませんよ?』

 

いや、死んでないのかよ!?さっきのはなんなの?

 

『あれは演出ですよ、雰囲気出るかな?と思って』

 

いや、はじめて死んだ時ここに来てるから割と冗談にならんのだけど。

で、何の用?俺忙しいんだけど。

 

『あ、それは失礼しました。いやぁ、蘭子ちゃんお困りかな?と思いまして』

 

色々困ってるよ?

月を元に戻せとか無茶な事言われるし、アンタの呼び方わからんし、親友は闇堕ちしてヤンデレになってるし、そもそも一部以外に言葉通じないし…

 

『あぁ、色々溜まってるんですね…そんな貴女に…』

 

あ、ドリンクは結構です。

 

『せめて最後まで言わせてくださいッ!!?』

 

いや、結論変わらないし無駄かなぁ…と。

 

『もう!で、月と親友については、対処法ありますよ?』

 

でもお高いんでしょ?

 

『月は無料です。直して貰わないと私も困りますので』

 

親友は?

 

『ドリンク初回購入の特典という事で』

 

クッ、足元見やがって…

 

『まぁ、どうするかはお任せしますよ?あくまで私は蘭子ちゃんの意志を尊重しますので』

 

鬼!悪魔!邪神!

 

『……蘭子ちゃんの中で私の認識がどうなっているかわかったところで、無料分の月について先に説明しますね?』

 

あ、考える時間与えないつもりだな?

そういう所だよ?

 

『え…?そうだったんですかッ!!?まさか、敏腕事務員らしくテキパキやっていた態度が裏目に出てたなんて…』

 

いや、ショック受けてるところ悪いけど、月の対処法は?

 

『あぁ、すみません。簡単ですよ、そのシンデレラの靴に願えば大丈夫です』

 

……え?そんだけ?

 

『はい…あ、でもその代わり、今までのフォニックゲインでは全然足りないです』

 

ちなみにどんくらい?

 

『たぶん、蘭子ちゃん1人では無理ですねぇ。全世界から歌を集めるくらいしないと』

 

…は?いきなりスケールがデカ過ぎない?

 

『月ですからねぇ…こればっかりは、なんとか方法を考えて貰うしかないですね、オマケに時間もあまり無いです』

 

なんで?たしか藤尭さんの話だと、後10年くらいって話だった気がするけど…

 

『あのモヤシみたいな人…ウェルキンゲトリクスさんでしたっけ?が余計な事したので、後数日で地上に墜ちますね』

 

あのモヤシ…何してくれてんだよッ!!

 

『月に関してはこんなところですね。それで、ドリ…親友の方はどうします?』

 

欲望が隠し切れてないよ、この事務員…

クッ、背に腹は替えられんか…

 

『毎度ありぃ♪じゃあ、コインでお支払いになるので、蘭子ちゃんの口座から引き落としさせて頂きますね♪』

 

ついに…ついに悪魔の契約を結んでしまった…

 

『もう!ちょっとは遠慮してくれないと泣いちゃいますよ!?』

 

いや、そう思うならもう少し自重してくれない?

で、対処法は?

 

『それでは、まずはこの衣装をどうぞ』

 

え…今何処から出して…?

 

『この衣装は、特別な衣装…シンデレラの靴と対になる衣装です。簡単に言えば、この衣装を着る事でパワーアップ出来ます。もっとも、相応のフォニックゲインは必要ですけど』

 

答える気無しか…

しかし、何をやるにもフォニックゲインか…世知辛い世の中だなぁ…

 

『まぁ、歌が力になる世界なので、仕方ないですね。その衣装の力で、親友さんの放つ光に親友さん自体を放り込んでください』

 

いや、意味がわからん。

 

『あの光は、聖遺物の力を無力化する凶祓いの力です。その効力は己に対しても例外ではありません。なので、ポーイと放り込んじゃえば、とりあえず大人しくさせられます』

 

なんか月と違って色々雑じゃない?

 

『その衣装を使えれば、それだけの力量差があるって事ですよ。で、ここからが肝心なんですが、その後なら()()()()()()()()()()()()()()()()()。口説き文句を間違えないようにして下さいね』

 

え…?なんで…

 

『それでは、今日はここまでです』

 

これも答える気無しか…

ホント、一方的だなぁ…

 

『あぁ、ここまで頑張ってくれた蘭子ちゃんに一つご褒美を』

 

え?なんですか?もしかして、水着でお触りし放題とか!?

 

『違います!!なんでこんな寒い時に水着なんですか!?』

 

いやぁ、なんとなく?

 

『もう!!夏場に考えときます!!』

 

考えてくれるんだ…

 

『コホン、では気を取り直して。私の名前は千川ちひろです』

 

……

………

ん?そんだけ?

 

『なんですか?その残念そうな目は?晴れてお得意様になったので、名乗らせて頂いたんですよ!?もっとこう』

 

いやぁ、もう緑の事務員で定着してるし、今さら名乗られても…

 

『あぁッ!!?もしかして、私、ファーストコンタクトを間違えました!!?』

 

そういう意味ならずっと間違いっぱなしのような…

 

『という事は、ドリンクが全然売れないのも、初めてのお客様が蘭子ちゃんなのも…そうだったんですね…』

 

え?俺が最初なの?

 

『それでは蘭子ちゃん…また…何かあったら呼んで下さい。その名前を呼べば、ここに来れるようにしておきます…』

 

酷いショックを受けたみたいの事務員の姿はそのまま消えて辺りが元の島の景色に戻っていく。

 

しかし、千川ちひろか…

まぁ、ドリンク押し売りされそうだし、あんま呼ぶ機会無いとは思うけど、一応覚えておこうか…

 

とりあえず、今は月と未来ちゃんが優先だな。




今回のタイトルは説明不要ですね?

世界レベル夫婦喧嘩ラウンド2もまさかの393勝利。
相当、愛が重い模様(笑)

唐突なオマケ
登場人物の料理のワザマエ

神崎蘭子
普通に作れる。
気が向いたらやたらと手の込んだ料理を作るが、専ら嫁とオカンにお任せのため、めったに台所に立つ事は無い。
堕落の極み、ここにあり。

立花響
食材を物体Xに変換する錬金術師。
にも関わらず、らんらんに対しては作りたがる。
この結果、らんらんは耐毒の能力を生み出した。
無慈悲なる味覚の破壊神。

小日向未来
料理は苦手。
でも、らんらんには作ってあげたい。
初心者にありがちなやけに難しい料理を作りたがるので30%の確率で失敗する。
だいたいらんらんが食べるのは失敗作…

雪音クリス
らんらんハウスの台所を預かる主婦。
作る機会が多いのでメキメキ腕を上げている。
アタシはただ、アイツが喜ぶ顔が見てぇだけだよ…

風鳴翼
料理どころか家事全般何一つできない。
本人曰く戦う事しか知らないとの事。
しかし、緒川の作った料理には何故か上から目線の批評をする。
それでいいのか、防人の剣…

天羽奏
得意料理はモヤシ炒め。
炒める、茹でる以外はあんまり作らない。
メシなんて適当に作ってそれなりに旨けりゃいいんだよ。

マリア・カデンツァヴナ・イヴ
クリスのサポート役のオカン。
クリスが上達してるので、彼女も上達している。
しかし、どちらかというと他の家事の方が得意。
とにかく蘭子を世話したい。

月読調
実は凄く得意。
らんらんに振る舞いたいが、自分の作った失敗料理を冷めた目で見られるのも捨てがたい。
溢れる想いはどんどん加速していく…

暁切歌
得意料理は298円。
お湯を注ぐだけでこのクオリティはヤバいデス!!との事。
常識人とは一体…

EX 藤尭朔也
上記女性陣全員を遥かに凌ぐワザマエ。
しかし、基本ぼっち飯で披露する相手はいない。
食戟の無駄遣い。

それでは皆さま、良いお年を。


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第24話 灰被りの乙女

お久しぶりです。

副業始めた影響でみるみる時間が…な状態で更新が滞ってしまって申し訳ないです。

とりあえず確定申告終わったのでぼちぼち更新していきます


元の場所に戻ったら大量のノイズに囲まれていた。

ナンダコレ?

 

「あっ、お前こんな所にいやがったのかよ!!とりあえずこの状況なんとかしてくれ!」

 

後ろからクリスちゃんの声が聞こえる。

え?なんでこっち来てんの?

まぁ、状況は飲み込めないけど、とりあえずノイズさん達にはご退場願おうか。

 

―Laevatein―

 

周囲のノイズさん達が一瞬にして炎に包まれて消えていく。

良かった…未来ちゃんにやられたから出せないかと思ったけど、ちゃんと復活してるみたいだ。

ていうか、火力も範囲も前より格段に上がってて正直使ったこっちがドン引きした。

何?この力、某野菜星人みたいな力だったの?

オーバーキルもいいところだよ…

 

まぁ、それはさておき、クリスちゃんに話を聞こう。

 

「豊穣のめ…が…み…」

 

「バッ!!!!今こっち見んなッ!!!」

 

おっぱい…………ッ!!!

 

脳内の全てがその強烈な光景で強制的に上書きされる。

何故に全裸?まさか未来ちゃんに…?とか、一瞬のうちに色々考えたが、止まらない鼻血を吹き出しながら倒れ込むのだった…

 

「おまッ!!?やっぱ未来にやられて…」

 

心配そうに真犯人が駆けよって来るところで意識を手放した…

 

***

 

マリア・カデンツァヴナ・イヴはずっと葛藤していた。

 

妹のような才能は自分には無いと理解していた。

理解していたからこそ、その生まれ持った才能の差を努力のみで埋めた。

これまでの人生のほとんどを投げ売って、薬の力に頼ってまでして、手に入れた力は驚く事に風鳴翼(天才)に届き得るまでに達していた。

 

しかし、彼女はその力を人に振るうには優し過ぎた。

人類の未来の為、手に届く人々を守る為、自分自身の正義の為、妹の、セレナの遺志を継ぐ為…

御託をいくら並べたところで、待っていたのは守る対象だった筈の人との殺し合い。

彼女は戦いを始めると宣言した、あのライブ会場の時点で心が折れかかっていた。

 

しかし、そんな彼女の心の葛藤をブチ壊した存在がいる。

 

神崎蘭子。

 

セレナ以上の才能と力を持つ癖に、セレナとは似ても似つかない位にとにかく手の掛かる女の子。

この感情が一体何なのか、彼女は知らない。

知識として知ってはいても、一度も懐いた事が無いから。

 

調や切歌とは違う。

当然セレナとも違う。

 

だから、確かめなければいけない。

だから、蘭子が神獣鏡の光に包まれた時に、勝手に体が動いていた。

 

培ってきた己の力を正しく振るうべきは今なのだ、と。

 

***

 

♪烈槍・ガングニール

 

「くッ!!やりづらいッ!!」

 

神獣鏡の光を避けながら、槍を構え応戦する。

遠距離への攻撃方法もあるとはいえ、本来は近接戦闘型のガングニールでは、距離を取った遠距離型、しかも攻撃を受ける事でさえ敗北に繋がる神獣鏡相手には絶望的に相性が悪い。

にもかかわらず、今まで一度の被弾もなく、やり合えている。

厄介ではあれど、自分ならばやれる。

マリアは確信していた。

何故なら、彼女に植え付けられた戦闘データは()()()()()()()()()なのだから。

自分達の遠距離攻撃のパターンなど、数が知れている。

故に、自分達の戦闘の癖を知り尽くしているマリアにとって対策も容易なのだ。

 

「邪魔をしないでッ!!私は蘭子を斃さないとッ!!…アレ?私は何で蘭子を…」

 

危惧していた通り、精神が錯乱している。

あの装者はもう限界だ。

 

神獣鏡は、人の心を惑わす鏡。

その特性により、戦闘経験の無い装者でも蓄積された戦闘パターンを埋め込み、運用する事が出来るが、その特性を悪用すれば、今回のようなケースも起こりうる。

第三者によって、都合のいい感情を植え付けられたのだろう。

間違いなく、あの外道の仕業だ。

 

とにかく、一刻も早く止めなければあの装者の精神が持たない。

蘭子の親友だというあの子はこの身に代えても必ず救い出す。

 

それが…あの日妹を救えなかった弱い自分との決別なのだ。

 

そう覚悟を構えた次の瞬間、遺跡の一部が月に向かって射出される。

 

「まさか…マムッ!!?」

 

純粋な戦闘力では風鳴翼に比肩し、神獣鏡相手でも善戦していたマリアだったが、気を取られたその一瞬が命取りだった。

 

―流星―

 

「チク…ショウ…私では…何も救えないの?」

 

無慈悲な光はその言葉ごと飲み込んでいくのだった…

 

***

 

目が覚めたら、目の前に凶器があった。

 

「あっ、お前大丈夫かよ?」

 

まさか…これは、膝枕という奴か?

さすがにクリスちゃんも服を着たみたいで目の前にリディアンのエンブレムが付いた立派な双丘が自己主張している…

残念なような、まだ全裸だったら今度こそ涅槃に旅立っていたような…複雑だ。

ん?同居してるのに見た事無いのって?

無いんだよッ!!!なんでだかめっちゃガード固いからなッ!!

 

「豊穣の女神よ、纏いし衣は如何に?」

 

「あぁ…アレな…ギアの適合率下げられた所にノイズに囲まれてな…奥の手使ったんだよ」

 

…全裸になる奥の手って何?

それでいいの?イチイバル…

 

「まっ、この通りお前のおかげでソロモンの杖…アタシの罪も回収できた」

 

あぁ…それでこんな所にいたのね。

 

「その…一度しか言わねぇからな?あ…ありがとう…」

 

………この嫁は俺を萌え殺すつもりだろうか…

ヤバい…尊い…

って大事な夫婦イベントではあるが、未来ちゃんが先だ。

 

「我への賛辞が我に更なる魔力を与えるであろう。豊穣の女神よ、我は此度こそ闇に堕ちし日輪を救おう」

 

「お前…それ未来の事かよ…そりゃ怒るわな…」

 

うん、俺もそう思う。

でも、これオートだからしょうがないんや…

 

「せっかく来たんだ、アタシにも出来る事ねぇか?」

 

いや、クリスちゃんは巻き込まれないようにしてくれれば…

っと、あっちの方考えて貰うか。

 

「我に、歌を捧げよ」

 

「歌、か…アタシの歌でよけりゃ全部乗せで持って行っていいぜ?」

 

それは凄く嬉しいけど、そうじゃなくて…

 

「我が望むは世界よ!」

 

「…お前、それ本気で言ってんのか?」

 

…うん、客観的にどう考えても頭のおかしい奴のたわ言なんだけどね…

でも、クリスちゃんなら信じてくれると思ったんだ。

 

「我は戯れ言は言わぬ」

 

まぁ、日常会話全て戯れ言みたいなもんだけど。

 

「…本当に必要なんだな?」

 

クリスちゃんの確認に頷く。

 

「わかった、こっちは何か方法考えるから、お前は未来のところに行ってくれ」

 

言葉は相変わらずだけど、心が通じ合えるのは素晴らしい。

クリスちゃんだけじゃない。

響ちゃんも、翼さんも、奏さんも、マリアも、切歌ちゃんも、何故か調ちゃんも俺を信じてくれる。

 

だけど…後一人、絶対に通じ合わなきゃならない子がいる。

振り返れば、親友相手に最低な態度だったと思う。

今さら許して貰えるかは分からないが、絶対に諦める訳にはいかない。

 

人生で親友と呼べる相手に何人出逢えるだろうか?

前世では一人も居なかった。

でも、今世では、こんな変な喋り方しかできないのに二人も居るんだ。

なら諦めれる訳が無い。

 

「んじゃ、アタシはまずはあのバカと先輩と合流するわ。次は油断すんじゃねぇぞ」

 

クリスちゃんと別れて、さっき未来ちゃんと会った場所に向かう。

待ってろよ、未来ちゃん!

 

***

 

日が傾きかけた夕暮れに、未来ちゃんと対峙する。

 

「闇に堕ちし日輪よ、我と共に帰還せよ!」

 

「…帰れないよ、だって…私にはやらなきゃいけない事があるもの」

 

「…それは如何なる…?」

 

「このギアが放つ輝きはね、新しい世界を照らし出すんだって」

 

「そこには争いもなく、誰もが笑って暮らせる世界なんだよ」

 

悲しいけど、それはまやかしだ。

人が人である限り、争いは無くならない。

そんな事、正常な精神ならすぐに分かる事を今の未来ちゃんは信じ切っている。

 

「私は蘭子に戦って欲しくない」

 

「だから、蘭子が戦わなくていい世界を創るの」

 

「フッ、我が望むは左様な世界では無い!我が望むは、我が友が側にいる天上の楽園よ!」

 

「でも、蘭子が戦わなくていい世界だよ?」

 

「たとえ刃を交えようと我がさせん!」

 

「私は蘭子を戦わせたくないの!」

 

「感謝する…だが、我は…戦うッ!!」

 

高い買い物だったんだから、頼むぞ事務員。

 

「闇に堕ちし日輪よ、運命に飲まれよッ!!」

 

♪-LEGNE- 仇なす剣 光の旋律

 

歌い出しと共に今までの黒い服ではなく、事務員から渡された白銀の衣装を身に纏う。

…感覚で分かる。これは今までのとは桁違いの力だ。

えぇ……あの事務員何考えてんの?

俺、ここまでの力は求めてないんだけど…

 

「戦うなんて間違ってる、戦いから解放してあげないとッ!!」

 

未来ちゃんがビームを乱射してくる。

あぶねっ、いくらパワーが桁違いに上がっても、あの光がヤバい事に違いはないし、中身一般人の俺にあれを全部避けるのは難しい。

 

咄嗟に衣装と一緒に出て来たガラスの靴を模したマイクスタンドを振るうと、俺の目の前にデカいバリアが形成されて未来ちゃんの光を遮る。

…しかし、みんな剣とか、槍とか銃とか、カッコいい武器なのに、なんで俺のはマイクスタンドなんだよ…

事務員め…センスを疑うわ…

 

それはさておき、どうしたもんかね…

この衣装、パワーは凄いけど、凄すぎてぶっつけ本番で上手くコントロールできる気がしない。

 

あの光のせいで拘束は意味なさそうだし、力押しはたぶんいけるけど未来ちゃんに無傷で帰ってきて欲しい俺的に却下。

となると、事務員が言ってた通りにするのが無難か…

 

そんな事を考えていると…

 

『これ以上、人ん家の庭をしっちゃかめっちゃかにはさせませんよォォォォッ!!』

 

いつだったか、我が嫁を傷付けた赦し難い怪物がモヤシの声と共に現れたのだった。

しかし、しっちゃかめっちゃかって言葉自体久しぶりに聞いたな…

まぁ、外国の人だしね…




ほんと、久しぶりの投稿です。
生きてました。

今回のタイトルは説明不要ですね?
終盤の393とらんらんのやり取りは、まんまなんですが、熊本弁ェ…ですね…

トレジャーハンタークリスちゃん石板35万にたやマさんヘキサ100回とかマジかよ…という状態ですが、更新もがんばります…

Gは後1~2話の予定です。


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第25話 70億の絶唱

闇に飲まれよッ!!(凄くお久しぶりです…)

生きてました。
一応、Gクライマックスです。


時は少し遡る。

 

ソロモンの杖を回収し、蘭子と別れ翼、響と合流したクリス。

 

「クリスちゃんッ!!無事だったんだッ!!」

 

「だぁぁッ!!いちいちくっつくんじゃねぇよッ!!」

 

「雪音、無事だったのは重畳だ」

 

抱き着いてくる響を引き剥がしながら、クリスは蘭子の望みを伝えるべく話を切り出そうとするが…

 

「なぁ…」

 

「シッ」

 

翼に止められる。

 

「翼さん、どうしたんですか?」

 

「何か聞こえないか?」

 

耳を澄ましてみると、確かに何か聞こえる。

これは…

 

「誰か近くに居ないかしら!?何か…着る物持ってない!!?」

 

全裸のマリア・カデンツァヴナ・イヴが泣きながら服を求めて蹲っていた…

 

***

 

「…服は私が貸そう」

 

「翼さん、いつも替えの服とか持ち歩いてるんですかッ!!?」

 

「あぁ、防人として当然の心構えだなッ!!」

 

「何を想定した当然だよ…」

 

「よし、これだ」

 

「え……翼さん…それは……」

 

翼が取り出したのはリディアン音楽院の制服。

………制服である。

 

「オイオイ…さすがにソイツを着せるのは…」

 

「む…?何がおかしいのだ?」

 

風鳴翼にはマリア・カデンツァヴナ・イヴ(21)が高校の制服を装備するという事が何を意味するのか本当に理解出来ていなかった。

 

「まぁいい。マリア、これを着てくれ!!」

 

「ヒック…ありがとう、つば……さ?」

 

受け取った服を確認し、顔面蒼白になるマリア。

 

「こ…これを私に着ろっていうの…?無理よッ!!私には出来っこないわ!!」

 

「?…何故マリアはここまで拒絶するんだ?」

 

「そりゃあ…」

 

「ねぇ?どう好意的に見ても…」

 

「?まぁいい。時間もあまり無い事だし、無理やりにでも着て貰うぞ」

 

「え……?翼、ちょっと待ってッ!!お願い!クリス!!たすけ…」

 

助けを求められたクリスだが、翼に引き摺られていくマリアをただ眺める事しかできなかった。

合掌!!

 

***

 

「それで…何か言いかけてなかったか?雪音」

 

「ん?あぁ…アイツから頼み事があるんだが…」

 

「蘭子ちゃんから?私に出来る事なら何だってするよッ!!」

 

「…いや、適任なのはセンパイとアイツなんだが…」

 

意識的に視線を外していた人物の方を見る。

 

「うぅ…胸周りがキツいわ…なんで私がこんな格好を…マム、セレナ…私、もう駄目かも…」

 

だいぶご傷心のようである。

しかし、蘭子の望む全世界から歌を集めるという所業を成すには世界的知名度を誇る彼女の協力は不可欠だ。

何とか立ち直ってもらうしかない。

掛ける言葉は見当たらないが…

 

「私では、世界を救えない…セレナの歌を…無駄な物にしてしまう…」

 

ちょっと年齢と胸のサイズが合わない服を着たくらいでマイナス思考過ぎじゃないだろうか?

クリスが声を掛けようと歩み寄ろうとすると…

 

「セレナ……私は…歌で、世界を救いたい…」

 

何か受信し始めた…

 

♪Apple

 

そして歌い始めた。

 

「クリスちゃん…何?今一体何が起こってるの?」

 

「アタシにわかるかよ…なんか、アイツが思ってたよりヤベェ奴だって事くらいしかわかんねぇよ…」

 

「む?急に歌いたくなる事くらい、あるだろう?」

 

響とクリスには急に歌い始めたマリアを見守る事しか出来なかった。

そして、翼は安定して空気が読めていなかった。

 

『マリア!聞こえますか?マリアッ!!』

 

「マム…?マムッ!!?」

 

謎の受信は終わり、今度は本当に通信のようだ。

 

『マリア…世界を救うには貴女の歌が必要です』

 

『フロンティアの力で月遺跡を修復すれば、月の落下を阻止できそうです。その為には、世界中からフォニックゲインを集める必要があります』

 

どうやら、この通信相手が元々マリアが説得したかった人物らしい。

逆に説得されているようだが…

 

『マリア、私の事は心配無用です。もはや貴女を縛り付けるものはありません。行きなさい、マリア。行って…世界を救ってきなさい』

 

まるで遺言のような言い方だった。

しかし、その当人だけに伝わる言葉は、マリア・カデンツァヴナ・イヴを奮起させるには十分すぎた。

 

「………OK、マム…世界最高のステージの幕を上げましょうッ!!」

 

同時に、パァンッ!!と渇いた音が響き渡る。

意気込んで胸を張った瞬間に制服のボタンが全て弾け飛んでしまったのだ。

辺り一帯が静寂に包まれる中、弾け飛んだボタンが跳ねる音だけが響き渡る…

 

固まるマリア。

狼狽える響。

呆れるクリス。

涙を流す翼。

 

…少女達の世界が静止した瞬間だった。

 

***

 

もう、いきなり邪魔してきて何なの、こいつ。

俺は未来ちゃんと話するので忙しいから、さっさとご退場願おうかね?

 

「我が覇道を妨げる輩よ!!塵と消え行けッ!!」

 

―Niflheimr―

 

黒い怪物が氷の塊になって崩れ落ちるが…

 

『いくら破壊しても無駄ですよォォォッ!!』

 

即座に新しく構築される。

 

『このフロンティアと同化したネフィリムは無限の再生能力を持っているようなむぉのぉォォォッ!!』

 

邪魔だなぁ…響ちゃん達もいるから、この遺跡ごと壊す訳にもいかんし、めんどくせぇ…

未来ちゃんの方はバリアで防げてるけど、時間の問題な気もするし、ちゃっちゃと排除しないと集中できん。

今まで大雑把で雑な戦い方しかしてこなかった弊害が出てるなぁ…

そんな事を考えていると…

 

「雄ォォォォッ!!」

 

凄まじい雄叫びと共に、人類最強が来た。

怪物はパンチ一発で粉々に砕けていた…

 

………やっぱりあの人、人間じゃないよ…

 

***

 

「蘭子君!!こっちはオレに任せろ!!ノイズが相手でないなら、こっちのもんだッ!!」

 

目の前の完全聖遺物と対峙しながら、風鳴弦十郎は神崎蘭子に声を掛ける。

 

「…感謝する。無双の戦神よッ!!」

 

「応よッ!!思いっ切りぶつかってこいッ!!」

 

強者故のシンパシーか、互いに心配の声を掛ける事無く、互いの相手へと向かい合う。

お互いに敵に負ける事など微塵にも思っていないかのような示し合わせだった。

 

「さて…オレの相手はコイツだが…ウェル博士ッ!!」

 

『ヒィィィィィッ!!?一体何なのですか、貴方はッ!!ボクの邪魔をするなら…』

 

「知らいでかッ!!子どものやりたい事に手を貸せない大人なんて、カッコ悪くて仕方ないんだよッ!!」

 

『ヒッ…ヒィィィィィッ!!?や、やれッ!!暴食の二つ名で呼ばれたその力で、焼き尽くせッ!!ネフィリィィィムッ!!』

 

ウェル博士の指示で吐き出したネフィリムの火球によって、辺りが焦土となる。

 

『ヒ、ヒヒヒヒヒッ!!ネフィリムの炎にただの人間が耐えられる訳がないィィィッ!!』

 

しかし…

 

「オラァァァッ!!」

 

何事も無かったかのように、ネフィリムに拳打を叩き込む弦十郎。

 

『ヒッ、ヒィィィィィッ!!?あ、あの炎を喰らって…あ、貴方は本当に人間ですかッ!!?』

 

「炎は発勁でかき消したッ!!まぁ、さすがに靴は駄目になったがな…」

 

「だがな…ウェル博士ッ!!あまり人間の力を舐めるなよッ!!」

 

そんな事できる人間はあなただけです。

 

『し、しかァァしッ!!貴方が如何に規格外だろうと、こちらの優位は揺るがないィィィィッ!!』

 

ウェル博士の必死の言葉と共に再生を始めるネフィリム。

戦局は千日手の様相を迎えようとしていたが…

 

「噴ッ!!」

 

弦十郎の掌底がネフィリムの腹部に突き刺さる。

 

『な、何度やってもボクのネフィリムには…』

 

しかし、本来発生する筈の衝撃は腹部を突き抜けて背部から発生し、糸の切れた人形のようにそのまま崩れ落ち、稼働を停止させるのだった。

 

『ど、どうしたんだ!?た、立てぇッ!!ネフィリムッ!!立ち上がれェッ!!ネフィリィィィッム!!』

 

「浸透勁で内部のみを破壊した。外傷が無ければ、再生は出来まい」

 

「さぁッ!!年貢の納め時だッ!!首を洗って待っていろッ!!ウェル博士ッ!!」

 

『ヒ、ヒィィィィィィッ!!?』

 

完全聖遺物相手に僅か5分足らずの攻防での決着。

これが、特殊災害対策機動部二課司令、風鳴弦十郎の本来の戦闘力である。

 

***

 

うわぁ…

フォロー要らんと思ってはいたけど、あっちもう終わってら…

なんかもうあの人がノイズに対抗できる手段探すのが一番人類の為になるんじゃないかな…

無限再生する奴を破壊せずに機能だけ停止させるって俺でも出来るかどうかわからんのだけど…

まぁ…モヤシの確保はこのまま弦十郎さんに任せようかな…

 

―流星―

 

気が向こうに散っていた隙に未来ちゃんが放った光でバリアにヒビが入る。

ヤベッ…

 

「転移ッ!!」

 

咄嗟に未来ちゃんの後ろに転移で退避すると…あッ!!

 

「わがうつしみははいごにてんいせし」

 

「うん、ありがとう蘭子。後で抱っこしてあげるね」

 

「このていどぞうさもない」

 

行方不明だった未来ちゃん担当が未来ちゃんの背中にくっついていた…

アイツ…ちゃっかり買収されてやがる…

そうか…そのせいでこっちの居場所が全部筒抜けだったのか…

 

しかし、抱っことかで買収されるなんて、一体誰に似たんだよ…

チクショウ…俺だよ!!

 

まぁ…これで全自動ヤンデレシステムの謎も解けたし…

 

「待っててね、蘭子…蘭子を倒して…アレ?おかしいな…私、どうして蘭子を…?」

 

これ以上、未来ちゃんをあのままにしておけない。

だけど、いまいち決め手に欠けるんだよな…

主に制御しきれる自信が無いこのパワーのせいだけど…

 

~Seilien coffin airget-lamh tron~

 

攻めあぐねていたその時、歌が聞こえた…

 

***

 

♪始まりの歌<バベル>

 

調がいる

切歌がいる

マムもセレナもついている

それに…あの子も独り戦ってる

 

みんながいるなら、これくらいの奇跡…

 

「安いものッ!!」

 

色々と精神的な重傷を負ったマリアだったが、合流した調や切歌のフォローもあってなんとか立ち直っていた。

世界中から歌を集めるという役割も、妙にふて腐れた翼と共に、見事に立ち回っていた。

もはや、恥ずかしいの極限まで達していたため、逆に怖い物が無くなっていたのである。

 

(あの頃の、泣いてばかりいた私はもう居ない)

 

そして、ここにきて、破損した筈の銀の腕、アガートラームの起動と装者6人による同時絶唱展開。

彼女は今、奇跡を起こす為にここに居る。

 

「惹かれ合う音色に、理由なんていらない」

 

「アタシも、つける薬が無いな」

 

「それはお互い様デスよ」

 

「貴女がやっている事、偽善と言ってごめんなさい」

 

「うん、もう気にして…」

 

「でも、それとこれとは別の話で蘭子のペットの座は譲らない」

 

「ゴメン…ちょぉっと何言ってるか、わからないかな…」

 

我が道を往く月読調は健在のようである。

 

「響達も私の邪魔をするの…?でも、たった6人で…私は止められないッ!!」

 

未来の光が、アガートラームのバリアフィールドを侵食していく。

こと聖遺物に対し、その力は絶大だった。

 

しかし、彼女…いや、彼女達の想いは…

 

「6人じゃない…」

 

「私が束ねるこの歌は…」

 

「70億のッ!!絶唱ッ!!」

 

奇跡を願う人々の想いが、歌を通じて奇跡の体現者、神崎蘭子の元に集まっていく。

 

「傷ついた悪姫ッ!!」

 

「最終形態ッ!!」

 

「我が名はブリュンヒルデッ!!」

 

光り輝く灰被りの乙女(シンデレラガール)の真の姿が解放された瞬間だった。

 

***

 

『ふぅ…何度かヒヤヒヤする場面もありましたが…及第点ですかね』

 

『これで、名実共に神の代行者(アイドル)として活躍できますね、蘭子ちゃん』

 

緑の服を着た事務員は、その笑みを深めるのであった…




Gは後1話です。
例によって書き溜め無いのと仕事の影響で次の更新未定なので気長にお待ちくださいませ。

早くキャロル書きたいんだけどなぁ…


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第26話 虹の翼

闇に飲まれよッ!!

G最終話です。
今回、普段よりちょっと長めです。


響ちゃん達のおかげでパワーアップできたみたいだ。

 

よし、後は未―――んを…

 

ん?な―か今、視界が急にブツ切りになっ―――

 

……………

 

***

 

フォニックゲインの光の粒子が舞う中、一人の少女が降り立つ。

 

瞬間、小日向未来は行動に移っていた。

 

あれはダメだ。

このままでは蘭子を戦いから解放できない。

なにより…あのままでは()()()()()()()()()()()()()()

 

そう確信してからの彼女の動きは早かった。

 

~Gatrandis babel ziggurat edenal~

 

歌う。

 

~Emustolronzen fine el baral zizzl~

 

ただひたすらに、唄う。

 

~Gatrandis babel ziggurat edenal~

 

彼女にとっても、これは賭けだ。

 

~Emustolronzen fine el zizzl~

 

しかし、賭けというには些か高すぎる確信を持って、彼女は歌っていた。

命を燃やす歌、絶唱を…

 

「ぐぅぅぅ…お願いッ!!神獣鏡(シェンショウジン)、力を貸してッ!!蘭子を…蘭子を止めないとッ!!」

 

そして、彼女は第1の賭けに勝った。

 

***

 

♪永愛プロミス

 

神獣鏡のギアが周囲のフォニックゲインを取り込み、換装されていく。

 

「馬鹿なッ!!?操られた状態で、単独絶唱での限定解除だとッ!!?」

 

翼が驚愕する。

しかし、ことこの場に限られたケースにおいては、必然であった。

 

答えはフォニックゲインだ。

今、この場には、世界中からフォニックゲインが集まっている。

その総量は切っ掛けさえあれば、一つのシンフォギアを限定解除まで至らせるに充分たる量が満ちていた。

 

そして何より、神獣鏡を纏う小日向未来は初めから正気だった。

 

………正気だった。

 

ただ、彼女の中で神崎蘭子の優先順位を上げて、他を下げただけ。

意識が混濁したかのような発言は、彼女に自分の胸に秘めた想いに気付いて欲しかったから。

 

蓋を開ければ、このような非常に個人的な理由のみで彼女は今の今まで敵対していたのである。

もっとも、彼女固有の特性ともいうべき、凶祓いの力が人にまでは危害を加えないことを知っていたが故のこれまでの暴挙であるが。

響と蘭子の裸、ゴチソウサマデス。

あの陰険そうな博士も操られるふりをしながら誘導していたから、まだ誰も手に掛けてない筈だし、車椅子の女の人もマリアさんを撃退した後助けたし、調ちゃんとは蘭子談義で盛り上がった同志だし。

何から何まで、彼女は今まで表向きは操られたふりをしながら、裏で上手く立ち回っていた。

響達が合流する前までであれば、彼女の描いたハッピーエンドは目の前であった。

結局、蘭子に敗れ、蘭子を戦いから解放するという当初の目的は達成できないまでも、次善の結末くらいにはなっていた筈だ。

 

しかし、先ほどまでと事情が変わった。

変わってしまった。

 

今まで敵対していたからこそ解る。

()()は蘭子であって、蘭子じゃない。

 

あのような力、もはや人ではありえない。

言うなれば、得体の知れない何かの舞台装置とでも言うべき存在。

それに、先ほどまで、あれほど熱を帯びた目で自分を見ていたのだ。

それが打って変わって今の蘭子は自分を見ているようで、まるで見ていない。

刹那、見限られたかとショックを受けそうになったが、このような急激な変化はあり得ないと立ち直る。

 

むしろ、その変貌は、まるで人形にでもなったかのような…

神崎蘭子を神崎蘭子足らしめる魂が入っていない器だけの存在。

そういう風に見て取れた。

 

沸々と、怒りが込み上げてくる。

 

ふざけるなッ!!

何処の誰だか知らないが、私の大切な嫁を返せッ!!

 

それが、今の小日向未来の率直な意見だった。

 

…要するに、彼(女)と彼女は実に似た者同士であった。

 

***

 

―暁光―

 

先ほどまで放っていた、流星を遥かに凌ぐ光量が神崎蘭子に襲い掛かるが…

 

「翼を奪う事はできないわッ!!」

 

片手で弾かれる。

もはや、流星を防ぐのにバリアを使っていた先ほどまでとは桁違いの強さだ。

 

「ハァ…ハァ…ハァ…まだッ!!」

 

手に持っていた扇型のアームドギアを投げつける。

 

「魂を奮い立たせんッ!!」

 

これもまた弾かれる。

 

「神々の黄昏か?」

 

一か八かの賭けには既に出ている。

しかし、これでは後一手足りない。

 

「我が結界、破らせはしないッ!!」

 

蘭子の右手に炎の刃が生まれる。

 

回避ッ!!

ダメだッ!!間に合わないッ!!

こんな所で、蘭子を救えもせずに、私はッ!!

 

そんな願いも虚しく、蘭子の右手は振りおろされる。

 

……

………

あれ…?私…死んで…ない…?

 

目を開けると、そこには見慣れた背中。

 

♪Vitalization

 

「…蘭子ちゃんに何があったのかはわからない…」

 

立花響が限定解除によって槍に変形した右腕のアームドギアで炎の刃を受け止めていた。

 

「だけど私はッ!!」

 

「ひび…き…」

 

未来の頬に熱い物が伝わる。

 

「こうする事が正しいと…」

 

「信じるッ!!!」

 

響に続き、他の装者達も次々と蘭子に向かっていく。

 

「屈するな神崎ッ!!お前の胸の覚悟、私に見せてくれッ!!」

 

「何やってんだ、お前ッ!!さっさと目を覚ましやがれッ!!」

 

「ご飯抜きにするわよッ!!」

 

「マリア…こんな時にそれは…蘭子さん、訳わかんない洗脳に負けるなデスッ!!」

 

「蘭子ッ!!攻撃なら私にッ!!」

 

「饗宴の時ね。薔薇の嵐を呼ぶわッ!!」

 

若干1名明らかに自ら攻撃を望んでいるが、蘭子の力は強力無比であり、装者達も数人掛かりで攻撃を逸らすのがやっとである。

むしろ、1人だけ避けもせず自ら直撃しに行ってる人が、一番元気な気がする。

 

「調ちゃんは相変わらずだなぁ…未来、やりたい事があるんだよね?私達が蘭子ちゃんを引き付けてる間に」

 

「響…私…」

 

「話は後ッ!!待っててッ!!ちょぉっと行ってくるからッ!!」

 

響も参戦し、装者6人で蘭子を撹乱する。

 

「私が合図したら、蘭子から離れてッ!!」

 

そう言いながら、未来は最後の一か八かの一手の準備をする。

 

神獣鏡(シェンショウジン)

小日向未来との適合により、凶祓いの力を強く持つシンフォギア。

本来、神獣鏡(シェンショウジン)に他の聖遺物程の強い力がある訳ではなく、性能のみでは最弱と言っていいシンフォギアである。

しかし、小日向未来の神崎蘭子を想う愛と適合する事で、そのシンフォギアは奇跡を起こす。

奇跡とは、そんな風に誰かを想える者にこそ、相応しい特権なのである。

 

「新たなる堕天使の祝福よッ!!」

 

神崎蘭子が大技を放つ為に天に手を翳す。

 

「今ッ!!」

 

未来の合図と共に装者達が飛び退く。

 

―天光―

 

それは、天高く打ち上げられたアームドギアに己が放つ全ての光を反射させて地を穿つ光。

文字通り光速の不可避の閃光は気付いた時には時既に遅く、神崎蘭子は抵抗する暇も無く、光の柱に包まれるのだった。

 

***

 

「やったか?」

 

光の柱が徐々に力を失った頃にマリアが呟く。

 

「バッカッ!!テメェ、そりゃフラ…グ…」

 

クリスが慌ててツッコミを入れるも…

 

「や、闇に飲まれた…」

 

やはり、神崎蘭子はほぼ無傷で立っていた。

 

「そんな…」

 

「蘭子ちゃん…」

 

「もしかして…フィーバータイムおかわり?」

 

「調はちょっと黙ってるデス…」

 

「チッ、しゃあねぇ、もうひと踏ん張り…ん?」

 

クリスが異変に気付いて蘭子に近付く。

 

「雪音ッ!!」

「クリスちゃんッ!!」

 

蘭子に不用意に近付くクリスに翼と響が同時に叫ぶが…

 

「豊穣の女神よ、これは如何なる惨劇かッ!!?」

 

「おーい、もう大丈夫だわ」

 

「アハハ…アレ…?安心したら…」

 

「さすがに無理が過ぎたな…」

 

クリスと調以外の装者の気力と緊張の糸が切れてブッ倒れた瞬間だった。

 

***

 

なんか、ここ数分?の記憶が無いんですけど…

ナニソレ怖い…

 

クリスちゃんに聞くと、ひどく暴れ回ってたらしいけど、未来ちゃんのおかげで何とか止まったらしい。

未来ちゃんとは後でちゃんと話さないといかんな。

ずっと正気だったとは思わんかったけど…

………え?アレ、もしかして、素?

と、とりあえず今は一旦忘れよう…

 

しっかしコレ、ほとんど俺がやったらしいんだが、島が半壊するレベルってどんだけ怖い夢遊病だよ…

邪神に聞かなきゃいかん事がまた増えたな…

情報聞くにはまた高い買い物要求されそうで今からため息出そう…

 

とかなんとか俺が記憶失ってる間の情報聞いてたら、弦十郎さんがモヤシを連行してきた。

 

「今すぐ離脱するぞッ!!間もなくこの遺跡は…」

 

「ヒヒヒヒヒッ!!ボクが英雄になれない世界なんて蒸発してしまえばッ!!」

 

「…転移」

 

おじさんがおじさんを抱えてる絵面がちょっとしんどかったのと、なんか急いでるみたいだったので、俺以外の全員を二課仮設本部に送る。

どうせまたあのモヤシがやらかしたんだろう。

 

衣装のパワーはまだ残ってるし、月の件と合わせて片付けちゃいますかね…

 

足元の島が形を変えて、溶岩みたいに真っ赤になった例の化け物になる。

うへぇ…またこいつかよ…

 

***

 

♪Shine!!

 

「全世界、オープンチャンネルでハッキングされていますッ!!」

 

「この映像が全世界に流されていますッ!!」

 

藤尭と友里がほぼ同時に報告する。

発令所に強制的に戻された弦十郎達が目にした物は…

 

神崎蘭子が臨界寸前のネフィリムの周りを飛びながら歌い踊る映像だった。

周囲を漂うフォニックゲインが神崎蘭子に追従して、まるで虹色の翼のように見える。

 

「…あのバカは何やってやがんだ…」

 

「キレイ…」

 

装者の中で意識があるクリスと調はそれぞれ対極の反応を示し…

 

「さすがにこれは…」

 

「アハハハハハッ!!やっぱ蘭子は何するかわっかんねぇなッ!!」

 

緒川は自分に降り掛かる事後処理を想像して顔が引きつり、奏は爆笑していた。

 

「蘭子君は…目立ち過ぎるのが玉に疵だな…」

 

今さらながら、頭が痛くなってくる弦十郎であった。

 

***

 

「あっ、プロデューサー。この娘この前会ったあの娘じゃないですか?」

 

オッドアイの緑懸かった髪の女性が映像の中で歌い踊る女の子を指差す。

 

「…え?あぁ、はい。確かに彼女ですね」

 

その映像を眺める男性はどこか浮かない顔をしていた。

 

「この放送、全世界に流れているみたいですよ?やっぱり、ご自分の手でプロデュースしたかったんじゃないですか?」

 

女性の方が気を遣って尋ねる。

彼女もまた、表情の変化が乏しい彼を信頼するアイドルの1人で、彼の浮かない顔の理由を共有したかったようだ。

 

「そういう気持ちがなかったと言えば、嘘になります」

 

「そうですよね、こんなに可愛いらしい娘、なかなか居ませんもの」

 

このやり取りで我が意を得た女性の方は満足したようだ。

しかし、女性からは見えていないが、男性の顔は険しいままだった。

 

「そういう…事ですか…()()()()

 

***

 

フォニックゲインも十分だし、そろそろかね?

飛んでいた際に撒き散らした光の帯を実体化させて、化け物を縛る。

 

そんで、

 

「転移ッ!!」

 

化け物を前にフィーネさんに閉じ込められたあの空間に送る。

まぁ、爆発とかするなら、ノイズも殲滅できるし一石二鳥だ。

ちなみに、月の方は何故か歌ってる間に直ったらしく、どんどん地球から離れていくのが見えた。

特にフォニックゲインをめっちゃ使ったって感じもしなかったんだけど、なんでだろう?

世界中のフォニックゲインが要るとか言われてたからなんか釈然としないけど…

まぁ、直ったならいいか。

 

ともかく、これで終わりかな?

……これでもう無いよね?

 

なんか今回はどっと疲れたな…しばらく休み貰お。

まぁ、学校行けないから絶賛ニート継続中なんだけどね…

 

***

 

あれから数日。

今日は、色々あったけどお疲れさま、という事で我が家を開放してパーティーする事になってる。

 

そう言えば、いつの間にか俺のあの映像は全世界に配信されてたらしい。

これのせいでもうさすがに隠蔽は無理という事で、逆に全部公表してしまおうという話になって日本政府から大々的に公表された。

人類の守護者ブリュンヒルデ、と。

 

まぁ、それ関連でテレビとか雑誌のインタビューとか色々あったんだが、何を答えても全然これっぽっちも伝わらないので、世間からはそういう存在なんだと受け入れられつつある。

二課も断ってくれればいいのに、会話が成立しないのをいい事に緒川さんマネージメントの下、基本全受けしてくるせいで、もはや知らない人はいないレベルだ。

 

しかし、全世界からイタイ子扱いかぁ…

 

♪虹色のフリューゲル

 

「それでは、無事に未来と蘭子ちゃんが仲直りできたので、乾杯したいと思いますッ!!」

 

響ちゃんはいつも元気だなぁ…

 

「蘭子、これからも末永くよろしくね?具体的には一緒のお墓に入るまで。あっ、それとも…」

 

未来ちゃん、今から終活はちょっと気が早すぎるんじゃないかな?

後、怖い。

 

「奏、神崎はなんで落ち込んでるんだ?めでたい席だろう?」

 

「翼、そっとしといてやれよ…」

 

奏さんの優しさが沁みるなぁ…

 

「料理、おかわりもあるからじゃんじゃん食べて元気出しなさい」

 

「アレもコレもおいしいデース」

 

こっちはオカンが供給した料理を切歌ちゃんがすごい勢いで食べてる。

そう言えば今の状況って元はといえば、全部マリアのせいなんだったな…

 

「じー…」

 

ていうか、なんでこの子はずっと堂々と俺のパンツ覗いてんの?

さすがに全員引いてるからやめようね?

 

「ま、まぁ元気出せよ…アタシに出来る事だったらなんでもしてやるからさ…」

 

ん?クリスちゃん、今なんでもって…

 

「あっ、でもヤらしいのはナシだかんなッ!!そういうのは二人だけの時に…」

 

おっぱいはまたおあずけかぁ…

後半声ちっちゃ過ぎてよく聞こえなかったけど…

 

「そこッ!!最速で最短で真っ直ぐに一直線にイチャイチャしないッ!!」

 

「蘭子?いきなり浮気?」

 

「私はペットで十分満足してる」

 

もう、みんなと居るといじけてるのがアホらしくなってくるなぁ…

ちょっとペット枠希望してる子は誰かに早めになんとかして欲しいけど…手遅れかなぁ…

 

まぁ、とりあえずは乾杯するか。

 

「盟約は結ばれたッ!!祝杯をあげようぞッ!!」




G完結です。

そろそろグリーンエンプレスが本気を出し始めました。

次は絶唱しないGを書いてGX書く予定です。


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戦姫絶唱しないシンフォギアG

闇に飲まれよッ!!

少し遅くなりましたが、絶唱しないです。


*** 調、思い立つ ***

 

力が、足りない。

 

月読調には、愛する神崎蘭子に色々とされたい事とは別に、弱い人達、戦う力を持たない人々を守りたいという願いがある。

しかし、今回の件で痛い程身に染みていた。

 

圧倒的な力の前では、自分もまた弱い人間の1人に過ぎないのだという事を。

 

「切ちゃん、どうやったら、蘭子みたいに強くなれるのかな?」

 

「藪から棒にどうしたデスか?」

 

「私はもっと強くなりたい。弱い人達を守れるくらいにッ!!」

 

「調…やっと戻ってきたデスねッ!!」

 

それは純粋な、力への渇望の吐露だった。

切歌もようやく自分の知っている調に戻ったと喜んだ。

 

「でもどうしよう?そもそも私には個性からして足りてないし…」

 

「一回、辞書で個性って単語を調べてみるといいデスよ?」

 

「うーん…蘭子みたいに…」

 

「聞いてないデスね…」

 

やっぱり早とちりだったかも、と切歌が思い始めた時だった。

 

「そうだッ!!蘭子みたいな言葉使いをマスターしたら私達も強くなれるんじゃないかなッ!!?」

 

「調が元に戻ってくれたと安心した途端にコレデスよ…」

 

純粋さはすぐに迷子になった。

 

「そうと決まれば山籠り!修行だねッ!!行くよッ、切ちゃんッ!!」

 

「なんでアタシもやる事になってるデスかッ!!?」

 

せめて家でやれ、家で。

 

*** アタシ様は告らせたい ***

 

はじめはおかしな奴だと思っていた。

言葉使いは訳わかんねぇし、強さに関しては輪をかけてデタラメだし。

とにかく変な奴、それしかなかった。

でも、命を救われた。

 

一緒に居ると安心するし、頼られると頑張りたくなる。

そんな側面が見えてきたあたりで、気付いた。

気付いてしまった。

 

アタシはどうしようもなく、アイツに惹かれてるって事に。

 

だけど、こんな性格だから、なかなか素直に気持ちを伝えられそうにない。

まぁ、一緒に住んでるんだし、そのうち言えるだろ…

 

それから、半年が過ぎた!!

その間、特に進展は無かった!!

 

いや、おかしいだろッ!!?

ライバルどころか、同居人まで増えてやがるしッ!!?

 

ヤベェ…このままじゃぜってぇ何もねぇ気がする。

アタシから言うのは…その…無理だ。

まぁ、それだけは痛い程わかった…

 

やっぱアイツから来て貰うしかねぇな…

 

 

こうして、雪音クリスは決意を新たにした。

しかし、近い将来思い知る。

古今東西、恋愛とは、()()()()()()()()()()なのである、という事を。

そして、神崎蘭子に頭脳戦は無意味である事を。

 

*** 調、修行する ***

 

「じゃあ、始めよう。切ちゃん」

 

「もう既に帰りたいデスよ…」

 

切歌を強制的に連行し、神崎蘭子の言葉使いをマスターするべく、山に着いた調が懐いた感情は…

 

感謝だった。

 

自分を変えてくれた蘭子に

そして、この世界に

更には自分を産んでくれた顔も名前さえ知らない両親に

 

自分なりに少しでも恩を返そうと思い立ったのが

 

一日一万回

感謝の闇に飲まれよ!!

 

気を整え

 

拝み

 

構えて

 

闇に飲まれよ!

 

一連の動作をこなすのに当初は5~6秒

 

一万回闇に飲まれるまで、初日は18時間以上を費やした。

 

夜の帳が降りて闇に飲まれたら倒れるように寝る。

 

起きてまた闇に飲まれよ!を繰り返す日々。

初日の途中から切歌の姿は見当たらなかったが、集中していたため、気付いていなかった。

 

2週間が過ぎた頃、異変に気付く。

 

一万回闇に飲まれても、日が暮れていない。

そう、闇に飲まれているのに、闇に飲まれていないという矛盾ッ!!

その矛盾を実感した時、切歌がいない事にようやく気付いた。

 

月読調、齢15にして、完全に羽化する。

 

切歌を探しに山を降りた彼女のやみのまは、

 

音をーーー置き去りにしていたッ!!

 

*** 犬猿の仲 ***

 

「クリス、切歌見なかった?」

 

最近増えた同居人がもう1人を探してるみたいだ。

 

「いや、アタシは見てねぇぞ」

 

ていうか、お前らもう捕虜でもなんでもねぇんだから自分達の家探せば?

別にコイツを狙ってる訳でもねぇみてぇだし。

 

「ちょっとお買い物を頼もうと思ったのだけど…蘭子は見てない?」

 

「普遍の識者は、禁忌の少女と禁足地へと旅立ったわ」

 

相変わらず、わかりにくいな…

禁足地って単語は初めて聞くからわかんねぇ…

 

「山…?何しに?」

 

…は?今の…なんでコイツはわかったんだ?

アタシの方が付き合い長ぇ筈だよな?

 

「我の預り知るところではない」

 

「それもそうね…でも困ったわね。私は蘭子をお風呂に入れないといけないし、クリスは料理中だし…」

 

んな事ぁどうでもいい。

アタシすらわかんねぇ単語をなんで知ってんだよ。

 

「仕方ないわね。買い物は後で私が行くわ。じゃあ、お風呂入りましょ、蘭子」

 

だからナチュラルに一緒に風呂入ってんじゃねぇよッ!!

やっぱアイツとは仲良く出来る気がしねぇッ!!

 

*** この身は剣 ***

 

「翼さんの次の出演についてですが…」

 

「あぁ…おっ、結構オファー来てんな、人気者だねぇ」

 

奏と緒川さんは打ち合わせか…

 

「まぁ…蘭子さん程では…」

 

「あれは特殊過ぎるだろ…」

 

ふむ…少し手持ち無沙汰だな。

こういう時はこの前考えていた歌の歌詞を考えておくか。

 

ーー体は(つるぎ)で出来ているーー

 

お、なかなかいいフレーズだなッ!

なんか…歪な生き方しか出来ない奴が国に身を捧げるしか生き方を知らない女と出会う物語が思い浮かんだぞ♪

ふふ…まるで我が身のようではないか。

その場合、果たして私はどちらなのだろうな…

おっと、しんみりしている場合ではないな。

 

ーー血潮は鉄で心は硝子ーー

 

いいな♪なかなか今日は冴えてるぞ♪

この身を(つるぎ)と鍛えし我が身も、かくあるべしだ。

 

ーー幾たびの戦場(いくさば)を越えて不敗ーー

 

いいぞ、いいぞ♪

まぁ、神崎のおかげというかなんというかであまり目立たないのはアレだが、嘘ではないしなッ!

…嘘ではないしなッ!!

 

…少し熱くなってしまったな、いかんいかん…

ふむ、次は…

 

ただの一度も敗走はなく、ただの一度も理解されない

 

 

ただの一度も敗走はなく、ただの一度も勝利もなし

 

どちらが良いだろうか?

悩むな…次のフレーズに直結する繋ぎだけにここは重要だぞ。

 

こういう時は…歌のタイトルから考えて合う歌詞を選ぶのが定石か。

 

そうだな…この歌、いや、もはや(つるぎ)と呼ぶに相応しい物の銘は…無限の…

 

「翼さんの次の出演は料理番組に決定しましたッ!!」

 

え?は?何?緒川さん?

料理番組?(つるぎ)であり、歌女(うため)である私に?

いやいや、自慢じゃないけど料理のりの字も知らないですよ?

 

「いやぁ、正直、クイズ番組とかなり迷ったのですが、翼さんの新境地の開拓、というテーマなら女性らしさも大事かと思いまして」

 

いや、勝手に話を進められても困るというか…

 

あっ、さっきまでの歌詞が飛んじゃった…

 

*** 調、切歌を探す ***

 

「切ちゃん、どこに行ったんだろう?」

 

切歌を探して、山を降りた調だが、勿論手掛かりなど持ち合わせていない。

ちなみに切歌は当たり前に帰宅しているので、そのまま世話になっている蘭子宅に帰るのが正解だが、彼女はスタートの段階で切歌が帰宅しているという選択肢を除外していた。

 

「切ちゃん…まさか、敵に拐われたの?」

 

この少女は一体、何と戦っているのだろうか?

 

「待っててね、切ちゃん。今、助けるからッ!!」

 

根は良い子なのだろう…たぶん、きっと。

 

それから…

 

「武というよりは舞、舞踊だね。しかし、何故石や木を…?」

 

「なんだァ?てめェ……」

 

「やみのまッ!!」

 

「立ち上がる事すら…遥かに遠い…大きな収穫だ…次に活か…せる……………」

 

「安心していいよ。弱い人達は私が守護(まも)るから」

 

「殺"し"て"や"る"ぅ"ぅ"ッ!!」

 

………なんか色々やっていた。

 

*** 立花響の憂鬱 ***

 

テレビをボーっと眺めながら考える。

なんか最近蘭子ちゃんと会えてないなぁ…

 

『さて、今日の防人クッキングの時間だ』

 

いつも取材とかで忙しそうだし…

なんか一気に距離が遠くなっちゃった気がするなぁ…

 

『ではアシスタントの君、今日の献立を頼む』

 

『フフーン♪カワイイボクが発表しますよッ!!今日は、ハンバーグです』

 

ていうか、え?翼さん何やってんの?

たしか料理とか全く出来ないって奏さんが言ってなかった?

うわぁ…アシスタントの女の子、すごい楽しそうだけど何にも聞いてないのかなぁ…

聞いててアレなら、すごいプロの子だなぁ…

私より若そうなのに、アイドルってすごいなぁ。

 

『ではまずは具材を斬るッ!!』

 

『アレ?なんか切るのニュアンスがおかしくないですか?って、ななな何やってるんですかッ!?そんな長い刃物使ったらダメですよッ!?』

 

『?古来より炊事場は戦場(いくさば)と言うだろう?』

 

『え?まさかこの人ほんとに番組の趣旨わかってないんですか!?』

 

あぁ、やっぱり何も聞いてなかったんだなぁ…

ていうかコレ、放送して大丈夫なのかな?

もう既に放送事故ギリギリな気がするんだけど…

 

『このような長さでも剣には相違無いッ!!ならば往く道は一つッ!!』

 

『あぁあぁァぁッ!?ダメですッ!!危ないですッ!!包丁を持たない方の手は猫の手ですよッ!!』

 

『クッ…まさかこの身にまだ流す程の涙が残されていようとはッ!!』

 

『いや、玉ねぎ切ってるだけですよねッ!?普通出ますし、大袈裟ですよッ!!』

 

『焼くだと?甘く見ないで貰おうかッ!!』

 

『焼くってそういう意味じゃないですッ!!今どこから火を出したんですかッ!?スタッフさんッ!?早く消火器ッ!!』

 

『今度こそ汚名を灌がせて貰うッ!!風鳴翼、推して参るッ!!』

 

『油ッ!!注いでるの油ッ!!しかもそんなに注がなくていいですッ!!天ぷらでも揚げるつもりですかッ!?』

 

………………うわぁ

私も料理は人の事言えないけどこれはひどい…

 

『うむッ!なかなか良い出来だッ!!ハンバーグ、完成だッ!!』

 

『ゼェ…ゼェ…ゼェ…ここまで酷い人は事務所の先輩方にもなかなかいないですよ…久しぶりにバラエティのロケじゃないと思ったら…コレ、ロケより大変じゃないですか…え?レギュラー?ちょっ、ちょっと待って下さいよッ!!たしかアシスタントは新人の子と交代制って…え?SNSが炎上したからしばらく無理?あの子、いつも炎上してるじゃないですかッ!?』

 

この子、すごいなぁ…

でも、テレビ局もよくこれを放送しようと思ったね…

勇気あるなぁ…

 

しかし、私の感想とは裏腹に、この番組は世間では大ヒットし、国民的料理番組とまで呼ばれるようになるのだった…

…この国、ほんとに大丈夫?

 

まぁ、途中テレビの感想ばっかりになっちゃったけど…くよくよしてても始まらないよねッ!!

そんなのはきっと私らしくないッ!!

よしッ!!だったらまずは、行動しないとッ!!

 

思い付いたまま、玄関を出る。

 

蘭子ちゃんに、会いに行くんだ。

 

「やはり蘭子の家ね。いつ行く?私も同行するよ」

 

愛が重院…

 

「私も響も蘭子成分が最近不足気味だもんねッ!!クリスばっかり独占しちゃってズルいから、私達も今日は蘭子の家に泊まりに行こうね。あ、もちろん響の事もちゃんと好きだよ?そこは勘違いしないでね?私にとって響も蘭子もどっちも大事でどっちも大好きってだけだから。やっぱり中学校からの付き合いもあるし、リディアンでもずっと一緒って約束したもんね?それから…」

 

なんか私って未来によくおかしな子って言われるけど、未来も大概なんじゃないかなぁ…

 

*** Shirabe homecoming ***

 

立花響と小日向未来が神崎蘭子に会いに行く道中の事。

 

「むっ、やっと見つけた」

 

「あっ、調ちゃん」

 

「調ちゃん、なんか変わった?」

 

「お前ら、人ん家の前で何やってやがんだ?」

 

ここに、神崎蘭子を想う4人の女傑が集結するッ!!

 

「御託は後、切ちゃんはどこ?」

 

しかし、その内の1人、月読調は既に臨戦態勢に入っていた。

まさに…一触即発ッ!!

どうやら、というかやはり、調にとっての敵とは彼女達だったらしい。

途中のやり取りは一体何だったのだろうか?

 

「切歌ちゃん?今日は見てないけど…」

 

「私も見てないね」

 

「嘘。切ちゃんを人質に取るなんて…」

 

「いや、アイツなら…」

 

「あくまでもしらを切るつもりならッ!!」

 

その場に居た全員が身構える。

 

違う。

 

デタラメで不合理な鍛練の結果、今の調は生物としてのステージを1ランク上げている。

それを肌で感じ取ったが故の、警戒。

 

しかし、鍛練の質であれば響やクリスも負けてはいない。

何せ、響の師匠はあの人類、いや、実質生物界最強の男であるし、クリスもまた文句を言いながらもそういった実力者から課せられた訓練に付き合っている。

未来は先日の一件以来、なんか色々通り越した高みに至っていた。

 

だが、彼女らをして無視できない。

そういったプレッシャーを目の前の少女から感じ取っていた。

 

全員が警戒を最大限にしていた。

最悪、3対1ででも彼女を抑えなければ、周囲に被害が及びかねない。

 

来るッ!!

 

全員が動こうとした刹那、ソレは突然現れた。

 

「あっ、調。やっと帰ってきたデスか?」

 

「アレ?切ちゃん?」

 

「蘭子さんが大丈夫って言ってたから心配はしてなかったデスけど、あまりにも長いとちょっぴり寂しいデスよ」

 

完全に虚を突かれた調は切歌に抱きつかれ、身動きが取れなくなっていた。

 

その場に居る切歌を除く全員が戦慄していた。

あの瞬間の調には隙など微塵も見当たらなかった。

それをこうも容易く捕らえる事など出来うるのであろうか?

 

「クリスさん!!ようやく調も帰ってきたデスし、今日はゴチソウがいいデスよッ!!」

 

全員が顔を見合せるが、

 

「へいへい…つうか、お前は毎日がゴチソウとかいつも言ってるじゃねぇか」

 

毒気を抜かれたクリスが返すのをきっかけに、全員の緊張した空気が解かれる。

おそらく、深く考えるだけ無駄だとわかってしまったのだ。

だが、その日から彼女達の中で切歌の評価は一段上がる事になる。

何の毒気も持ち合わせず、無害そうでいる割に、重要なタイミングで重要な人物を押さえる存在。

戦闘であれ恋愛であれ、敵に回した時、こういう相手が一番厄介だ、と。

 

 

その日、神崎家では後で合流した翼や奏も交えて、久方ぶりのパーティーが開かれたのだった。

ちなみに長期間無断で家を空けた調は後でマリアにこってり絞られた。

やはり最強はオカンだったらしい。

 

*** ??? ***

 

『………神殺しと凶祓いはどちらも健在ですか…他はともかく、組まれると厄介ですねぇ』

 

『まぁ、厄介な事が認識できただけ、良しとしますか…なかなか、全部が思い通り、という訳にはいきませんね』

 

『世界の破壊者は…潰すよりは懐柔した方が良さそうですね…アイドルの本分です。期待してますよ?蘭子ちゃん』

 

他に誰も居ない事務所で、緑衣の事務員は微笑む。

 

それは、誰に向けた微笑みなのだろうか…




なんか色々思い付いたネタぶっ込んだら本編より長く……

もうちょっとらんらん出したかったんですが、熊本成分は本編で補強します。

XDでまさかの星6たやマさん降臨しました。
育成超厳しいデス…
覚醒初回から小素材1500要求って鬼デスか?


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追憶の魔王少女
第27話 世界の破壊者


闇に飲まれよッ!!(お久しぶりです)

時間空いてしまいましたがGX編です。


「システムの再チェック!軌道を修正し、せめて人が居ない所に!」

 

「そんなのわかってますよッ!!」

 

月遺跡から異端技術を回収し、帰路に就く筈だった国連調査団のシャトルは帰還時のエンジントラブルによって最悪の事態を迎えていた。

このままでは人口密集地帯に墜落する事になる。

それだけは何としてでも避けねば、と己の命を二の次に戦う彼らに対して、国連が出した答えは…

 

「地上からミサイル!?俺たちを撃墜する為にッ!!?」

 

「…致し方無しか…」

 

機長が諦観の言葉を呟いたその時…

 

『闇に飲まれよッ!!』

 

『傷ついた悪姫ッ!!第二形態ッ!!我が名はブリュンヒルデッ!!』

 

漆黒の翼を纏う堕天使が舞い降りた。

 

「ブリュンヒルデちゃんッ!!?凄いッ!!本物だぁッ!!」

 

「い、いきなり何言ってるんですかッ!!?」

 

…舞い降りた。

 

***

 

なんか大変らしいから、いきなり呼び出されていきなり出撃させられた。

エンジントラブルで墜落しそうになってるシャトルを助けて欲しいとの事。

人使い荒くない?

最近、あの事務員のドリンク飲まないと身体がツラいんだけど…

しっかし、メディア以外の仕事って、ほんと久しぶりだなぁ…

なんで毎日取材とか撮影が入ってるんだろうね…

いや、撮影ってなんだよ?なんだけどさぁ…

新しく俺の専属マネージャーに就任した奏さん曰く有名税みたいなもんという事らしいけど、なんか上手い事乗せられてる気がする。

これは一回強く言った方がいいかもしれん…

でもちゃんと伝わるかが問題なんだよなぁ…

 

っと、まぁ、晩御飯までには帰りたいし、ちゃっちゃとお仕事済ませますか。

ただ、戦ったりじゃないから微妙に難しいんだよなぁ…

そういや、この前また勝手に増えてたアレ試してみるか

 

手を開き、前に突き出す。

 

「我が魔力が滾るわッ!!」

 

ーMeginGjordー

 

***

 

ここは特異災害対策機動部二課の仮設本部。

現在、出撃中の神崎蘭子、コードネームブリュンヒルデのシャトル救助の管制を行っている。

 

「蘭子ちゃん、シャトルに取り付き…えっ!?」

 

管制員の一人、友里あおいが驚きの声を上げる。

 

「なんだ?どうした?」

 

友里に注目が集まる。

 

「蘭子ちゃん、取り付いてませんッ!!信じられませんが、シャトルを受け止めていますッ!!」

 

「受け止めている、だとぉッ!!?」

 

「…いや、まぁ…蘭子君ならあり得るか」

 

司令である風鳴弦十郎も一旦は驚愕するが、冷静に考えると神崎蘭子なら割と普通の事だった。

国際法に縛られて身動きが取れないが、それ位なら自分でも可能だろうという自負もある。

しかし、多彩な能力に目を奪われがちだが、神崎蘭子は身体能力に関しては普通の16歳の少女だった筈である。

 

「まったく…俺もうかうかしてられんな」

 

弦十郎の後ろでは、この人はこれ以上何をどうするつもりなんだろうか?といった目で緒川慎次が眺めていた。

なにげにこの空間、約2名だけ生身の強さの基準が異常である。

 

「ブリュンヒルデから新たな聖遺物のアウフヴァッヘン波形が出ています…このパターンは…」

 

弦十郎の危険な独り言を華麗にスルーし、藤尭朔也が報告する。

この男、未だに公の場で『蘭子ちゃん』と呼べないでいる。

 

MEGINGJORD

 

モニターに大きく新たな聖遺物の名が映される。

 

「メギンギョルズ、だとぉッ!!?」

 

弦十郎が二度目の驚愕の声を上げる。

 

「おい、おっさん。そのメギンなんたらってのは、一体全体どういうモンなんだよ?」

 

後ろで静かに聞いていたクリスが弦十郎に問い掛ける。

 

「ん?あぁ、すまない。メギンギョルズとは…」

 

「北欧神話における雷神が持つ力の帯。かの神はその帯を身に付ける事で怪力無双を誇った、という逸話があります」

 

弦十郎の答えを、今しがた入室してきたナスターシャ教授が引き継ぐ。

先の騒動に関しては、小日向未来の尽力により人的被害が無かった事もあり、日本政府の計らいで彼女の身柄も二課預りとなっている。

 

「マムッ!!まだ安静にしてなきゃ…」

 

「マリア、彼女のおかげで私の身体にはもう異常はありません。問題は彼女の方です」

 

「ど、どういう事デスか…?」

 

「これで名前がわかっているだけでも最低3つ、彼女は完全聖遺物を保有しているという事になります。これがどういう事かわかりますか?」

 

「?未来、どういう事?蘭子ちゃん凄いね、じゃないの?」

 

「響、今大事な話してるから」

 

「アッ、ハイ」

 

「なるほど…なかなかどうして、心胆寒からしめてくれる」

 

「翼も無理に会話に入ろうとしなくていいぞ?」

 

「アッ、ハイ」

 

「蘭子の攻めパターンが増え」

 

「調は黙ってるデスよ」

 

「アッ、ハイ」

 

一部?でコントが繰り広げられているが、誰からもナスターシャ教授の問に答えを出せていない。

それはそうと、もはや、蘭子の任務に関しては管制している大人達以外、完遂されるもの扱いである。

 

「本来、完全聖遺物とは、起動状態の物が1つあるだけでも国家間のパワーバランスを覆し兼ねない代物です」

 

「…なるほど、もしかしてそれって…」

 

得心がいった顔でマリアが答える。

 

「今まで静観していた様々な組織が表裏問わず蘭子に接触してくる、という事ね?」

 

「えぇ、恐らくは」

 

「チッ…あのバカ、わかってんのかよ…」

 

マリアの答えを聞き、クリスはモニターの先でいつも通り高らかに任務完了のポーズを取る蘭子に目をやるのだった。

 

***

 

なんか新しい聖遺物使ったら奏さんとクリスちゃんに注意された。

ひどくない?

まぁ、いつもの拘束のやつでいけたと言われたらその通りなんだけども。

でもせっかく増えたんだし、任務にも合うし使ってみたいじゃん?

後、変な勧誘には気をつけろって言われたけど、どういう事?

新聞とかはマリアが全部断ってるから大丈夫だと思うけど…

そういや、勧誘と言えばあのプロデューサーのお兄さん、あれ以来会ってないなぁ…

まぁでも、色々不満はあるものの、今…感じる感覚は…

おれは「白」の中にいるという事だ。

あの事務員は「緑」

弦十郎さん達は「白」

「正しい事の白」の中におれはいる。

 

「蘭子ちゃぁぁんッ!!」

 

通学途中、物思いに耽っていると響ちゃんが飛びついてきた。

最近スキンシップが激しいんだよなぁ…

抱き付かれた時に感じる感覚は素晴らしいけどね!!

 

「おまッ、おま、おま、お前ェェッ!!」

 

「あいたたたたたッ!!?クリスちゃん、ギブッ!ギブッ!!」

 

横にいたクリスちゃんが言葉にならない言葉で響ちゃんを引き剥がしてアイアンクローに移行する。

あれは痛そうだなぁ…

 

「やはりアレは敵…アレはいけない」

 

「調!?落ち着くデスよ」

 

おっと、こっちも臨戦態勢か…って、後ろから凄く嫌な気配を感じる…

 

「蘭子?どうしたの?響とずいぶん仲良しみたいだけど」

 

ヒェッ…

何このプレッシャー…ヤベェよ…

そこで問題だ!

この窮地をどうやって切り抜けるか、だ。

 

三択

ひとつだけ選びなさい

 

答え①

美少女の神崎蘭子は突如切り抜けるアイデアを閃く

 

答え②

友達が助けてくれる

 

答え③

切り抜けられない。現実は非情である。

 

是非答え②でお願いしたい。

というかお願いします。

 

「まったく、アンタ達相変わらずねぇ…」

 

「ランランは修羅場が好きだね」

 

「愛し愛されてこそ、ナイスですッ!!」

 

弓美ちゃん達、見てたなら早く止めてくんない?

もう怖い笑顔の未来ちゃんが目の前まで来てるからッ!!

ヤバ…

 

「もうッ、蘭子怖がりすぎッ!!」

 

…アレ?生きてる?

 

「私って、そんなに怖い?」

 

…こうやって見ると美少女なんだけどなぁ…

なんとも言えないプレッシャーがね?こう、半端ないというか…

 

「しかし、私達ももう2回生だもんね。アニメみたいな1年だったけど、時間が経つのは早いわねぇ」

 

弓美ちゃんが話題を切り替える。

そう、もうあれから1年経つのだ。

ほんと、あっという間だったなぁ…

でも、こうやってまた学校通えるようになって良かったよ…

 

「じゃあ、今日は夜にまたランランの家で」

 

「うんッ!!待ってるねッ!!」

 

「このバカッ、お前ん家じゃねぇッつうのッ!!」

 

いつの間にか、クリスちゃんの技はコブラツイストになっていた…パンツ見えるよ?

とまぁ、いつも通りの騒がしさだけど、今日は何故夜に俺の家に集合かというと、ついに待ちに待った夜の大人なスポーツ大会開催!!

という訳でもなく…

 

「もうすぐだねッ!!ロンドンでの翼さんのライブッ!!うぅ~ドキドキしてきたぁッ!!」

 

「なぁ…コイツ、つまみ出していいか?」

 

「許可する。神聖な蘭子の家にうるさいのは必要ない」

 

「まぁまぁ…二人とも落ち着くデスよ」

 

切歌ちゃん、苦労してるなぁ…

普段ストッパーのクリスちゃんが響ちゃん相手にはあぁだからなぁ…

調ちゃんだけでも大変なのに。

 

「はい、蘭子。お茶菓子とお茶」

 

…我が家のお菓子とお茶の置き場を把握されているだとッ!!?

い…いや、まぁ未来ちゃんよく家来るしね?

ぐ…偶然だよね?アハハハハ…

 

「あ、みんな始まるよッ!!翼さんとマリアさんのッ!!」

 

「歌姫の」

 

「コラボユニット復活デスッ!!」

 

♪星天ギャラクシィクロス

 

始まった。

響ちゃん、切歌ちゃん、弓美ちゃん達活発組は興奮して手をブンブン振ってて可愛い。

他のメンバーは静かに聞き入っているけど、クリスちゃんも活発組に交じりたいなら交じったらいいのになぁ…

しかし、家ではあれだけオカンのマリアがステージに立つと見違えるもんだなぁ…

なんかトップアーティストのオーラ出てるけど…アレ、オカンなんだよなぁ…

()()調ちゃんがマリア相手にはまったく頭が上がらないのだから、そのオカン力は凄まじい物がある。

オカン力ってなんだろう?

一応、生前と合わせたら俺の方が精神年齢は上の筈なんだけど…

これがバブみってやつ?

なんか違う気がするけどまぁいいか…

 

しょうもない事考えてるうちに曲は終わってた。

みんなが興奮冷めやらぬ状態の時に連絡が入る。

なんでも、火事って事らしいんだけど…

 

***

 

サクッと火事の現場を片付けたら、なんかゲームによく出てくる魔法使いみたいな帽子被ったチビッ子にサインをせがまれた。

しっかりその子の名前(キャロルちゃんと言うらしい)の宛名まで書いてしまった。

外国人にも知名度があるんだなぁ…

 

その後、家帰ろうとしたら、ちっちゃい俺から緊急報告が入る。

珍しいな…

 

『あおのうたひめのきゅうちッ!!』

 

マジか?とにかく急ごう!

 

転移した先で盛大に鼻血出た。

何故そこで全裸ッ!!?

おっぱいは控えめだけど、スレンダーで凄くえっちだ。

 

「か、神崎ッ!!?何故ここに!?というか、大丈夫かッ!!?」

 

「あらあら、これはこれは…」

 

よく見たらノイズみたいな奴に囲まれてるし確かにこれはヤバい。

翼さんをお姫様抱っこして安全を確保しつつ、コイツら片付けるか。

 

「神崎…その…助けてくれるのはありがたいんだが、私とて女なのだから…その…手が…胸に…」

 

翼さんが何か言ってるけど、とりあえずまずはお掃除が先だ。

 

「我が逆鱗に触れようとは、愚か者よッ!!」

 

―Laevateinn―

 

辺り一帯のノイズもどきが消し飛ぶ。

 

「噂に違わぬ力ね、ブリュンヒルデさん?」

 

ん?撃ち漏らしは珍しいな…

てか、人?なんでノイズもどきに交じって人が…

 

「神崎ッ!!気をつけろッ!!ソイツは…」

 

翼さんが警告するより先に向こうが動く。

ソイツは、凄いスピードで懐からある物を取り出し…

 

「サイン貰えますか?あ、宛名はキャロルちゃんへ、でお願いします」

 

お前もかよッ!!?




XVヤバいですねッ!!(語彙力消失)
1話からクライマックスで、ライブでトラウマ植え付けられたり、故人が歌ったり、OGAWAが車分身したり、キャロルちゃんが無双したり、JIJIIとOTONAがやっぱりおかしかったり…

オートスコアラー復活は1話限りとはいえ、やっぱり胸にクルものがありました。
楽曲も素晴らしく、特に8話クライマックスで流れる奈々様のFINAL COMMANDERが特にお気に入りです。
後、切ちゃんのバンク作画した人にマジで賞賛的な何かをしたいんだけど、どうすればいいんでしょう?


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第28話 堕天使の過ち

闇に飲まれよ!(お疲れさまです)

GX2話です。


1:名無し XXXX/4/20 ID:carolnine

 

ブリュンヒルデちゃんにサイン貰った!!

しかも2枚!!

これ我が家の家宝にするわ。

 

40228604201215.jpg

 

2:名無し XXXX/4/20 ID:chanmio

 

>1

マ?裏山

 

3:名無し XXXX/4/20 ID:april5cg

 

すごい!!

 

4:名無し XXXX/4/20 ID:minamy

 

いいなぁ…

イッチどこで遭遇したん?

 

5:名無し XXXX/4/20 ID:carolnine

 

>4

普通に都内に居たで。

この前火事あったやん。

近く歩いてたらいきなり空から降りてきてビックリしたわww

 

6:名無し XXXX/4/20 ID:chanmio

 

リアルラピ◯タwww

 

7:名無し XXXX/4/20 ID:april5cg

 

www

 

8:393 XXXX/4/20

 

いや、これホンマにブリュンヒルデちゃん?

サイン見たけど神崎蘭子って書いてるやん

 

9:名無し XXXX/4/20 ID:gungnirgirl

 

ホンマや…神崎蘭子って誰やねんwww

 

10:名無し XXXX/4/20 ID:carolnine

 

>8

>9

は?マジでブリュンヒルデちゃんだったし

クソコテ難癖とかマジでいい加減にしろよ

 

11:名無し XXXX/4/20 ID:zababai

 

いやいや、ブリュンヒルデちゃんマリアの妹デ…だし。

公式HPに本名ブリュンヒルデ・カデンツァヴナ・イヴって書いてるデスよ?

 

12:名無し XXXX/4/20 ID:naonottundere

 

>11

妹って割にはあんま似てないよなぁ

どっちも美人だけど、タイプ違うよな

てかマリアさん呼び捨てかよww

 

13:名無し XXXX/4/20 ID:superzangetime

 

ブリュンヒルデちゃんならオレの横で寝てるけど、サインとか知らんってさ

 

14:名無し XXXX/4/20 ID:mechayam

 

イッチ顔真っ赤で大草原wwww

自分で書いたん?

残念だったな、涙拭けよ?

 

15:名無し XXXX/4/20 ID:zababas

 

イッチ、本当にブリュンヒルデちゃんに会ったなら

冷たい目で蔑まれながら靴を舐めろって言われた?

本物なら言ってくれる筈

 

16:名無し XXXX/4/20 ID:gungnirgirl

 

>15

捏造すんなよ…

あんな天使みたいな笑顔なのに、それは無いやろ

 

17:393 XXXX/4/20

 

ちなブリュンヒルデちゃんの今の主な活動拠点は熊本なww

イッチマジで嘘松乙やなww

 

18:名無し XXXX/4/20 ID:carolnine

 

お前ら絶対に許さんからなッ!!

特にクソコテと>14は覚悟しとけよッ!!

 

***

 

私室から出た少女、キャロルは怒りを顕にしながら玉座の間へと向かう。

幼い見た目故にプンスコという効果音が聞こえてきそうな怒りっぷりだ。

 

「お前らッ!!全面戦争だッ!!計画通り世界を破壊してやるッ!!」

 

憧れのブリュンヒルデに会って態度を軟化させつつあった筈の主人のいきなりの豹変に玉座の間で待機していた自動人形(オートスコアラー)達は面食らう。

 

「なぁガリィ、マスターが派手にキレてるが一体どうしたんだ?」

 

黒髪の癖毛でカジノのディーラーのような装いの人形の一体、レイアが隣に居た青みがかったセミロングの黒髪に青を基調とした少女服を着た人形、ガリィに問う。

 

「さぁ?難しいお年頃なんじゃなぁい?」

 

レイアの問いにガリィはやや投げ槍気味に答える。

それはそうだ。

彼女達はずっとここで待機していたのだから、突然の主人の変貌の理由など知る由もない。

ただ、そう答えた後のガリィの笑顔は控えめに言っても意地が悪そうだった。

きっと何か主人を弄るネタを探しているのであろう。

 

「さっきまで私のお土産を持ってこの世の全ての幸せを噛み締めたみたいな顔してたのに…」

 

先ほど帰還し、主人に戦利品であるブリュンヒルデのサインを献上した亜麻色のロングヘアーに緑を基調としたロングドレスを着たファラが嘆くように呟く。

どうやら自分が持ち帰った献上品に不備があったのでは、と気が気でないようだ。

まさか匿名掲示板のレスバトルで負けた腹いせだとは夢にも思っていないだろう。

 

「まさか…地味に癇癪か?」

 

レイア、まさかの正解を言い当てる。

 

「見た目的にはありそうだけどお年的にそれは無いでしょww」

 

あるんだなぁ、これが。

 

「本当にそうならそれはそれは…お可愛いこと」

 

こいつら本当に主従関係なんだろうか?

そのファラの無自覚な煽りがトドメとなったようである。

 

「お前ら聞こえてるぞッ!!ガリィッ!!さっさとミカを起こせッ!!」

 

何があったのかは人形達にはわからないが、どうやら相当にお冠である。

最新の怒りは主に人形達が原因だが。

 

「はぁいはい。まったく…人形使いが荒いマスターですこと」

 

そう言いながらガリィは赤髪のツインテールに大きな爪が特徴の人形に口付けする。

 

「ん?あぁ~よく寝たゾ」

 

ガリィの口付け、想い出の譲渡により最後の人形、ミカが起動する。

彼女達の動力は人間の想い出なのだ。

 

「起きたか、ミカ。早速だが、出番だ。お前ら全員でシンフォギア装者共を死なない程度にボコボコにして来いッ!!鏡の奴は特に念入りになッ!!」

 

「なんだかよくわからないけどわかったゾ!ぶっ飛ばしてやるゾッ!!」

 

こうして多分に私怨が含まれた、後に『魔法少女事変』と呼ばれる闘いの火蓋が切られたのであった。

 

「安心しろ、お前達がシンフォギア装者共を蹂躙している間、ブリュンヒルデちゃんはオレが抑えておいてやるッ!!二段に構えるぞッ!!」

 

この主人、理由を付けてただアイドルとイチャつきたいだけなのでは?という言葉をガリィ達は飲み込んだ。

実際のところ、彼の理不尽が実体化したような存在が介入してくれば、ガリィ達では太刀打ちできないのも確かだからだ。

唯一対抗可能なキャロルが対処に当たるのは、キャロルが彼女に個人的な感情を懐いている事を除けば、何ら不自然ではない。

 

「りょーかい。じゃあ、ちゃちゃっと済ませてきますね」

 

そう言ってガリィ達が出撃し、玉座の間でキャロルは1人呟く。

 

「…これで奴らへの制裁は段取りがついたが、あの絶妙なタイミングで煽ってきた14番は本当に誰だ?まさか…オレの知らない隠し玉のシンフォギア装者がいるとでも言うのか…?」

 

ただの炎上請負人です。

 

***

 

どうしてこうなった…

 

あの後、サイン書いて翼さんをホテルまで送って、家帰って一夜明けたら訳もわからず呼び出されて奏さんの前で正座させられている。

まさか翼さんの生おっぱいを堪能してたのがバレた?

 

「アタシの言いたい事が解るか?」

 

怖えぇぇッ!!ドス利き過ぎだよッ!!

ヤバい、これマジおこだよ!

やっぱり翼さんと奏さんってそういう関係だったの?

 

「蒼の歌姫の…」

 

「翼?なんで翼が出てくるんだよ」

 

ん?なんか違うみたいなんだけど…

いや、それだとマジでわからんぞ…

 

「我が覇道には一片の曇りも…」

 

「へぇ…じゃあこれは何だ?」

 

奏さんが一枚のプリントアウトされた画像を差し出す。

 

「藤尭の兄さんが偶然ネットで見つけたみたいでなぁ?」

 

サーッと血の気が引いていく…

 

「よく書けてるよなぁ?このサイン。この一番大事な名前の所とかよ?ほら、ちゃんとよく見てみろよ」

 

そこにはやや崩れてはいるものの、通り名のブリュンヒルデじゃなく、神崎蘭子と本名で書かれたサインが映されていた。

 

「わ…我が真名は只人に晒すには魔力が満ち溢れている故…」

 

「ほぉ?そうかそうか…あんだけサインの練習に付き合ったアタシは特に何ともないみたいなんだけどなぁ?」

 

「わ…我が魔力は…」

 

覚悟を決めよう…

どう考えてもこれは俺が悪い…

後、あんだけ喜んでたけどゴメンね、キャロルちゃん。

あれ、俺のサインだけど俺のサインじゃないんだ…

もし、あんなちっちゃい子が俺のせいで嘘吐き呼ばわりされたりしたらさすがに心が痛い。

 

「此度は我の不始末よッ!!紅き鬼姫よッ!!我に神罰をッ!!」

 

「鬼なのか神なのかどっちだよ…」

 

いや、俺に言われましても。

察してくれてるとはいえ、この翻訳オートだからなぁ…

しかし、マネージャーの奏さんに鬼と付くあたり、だいぶ酷使されてるよなぁ…

 

ちなみに奏さんはデコピンで許してくれた。

デコピンとは思えんくらい痛かったけど。

後始末してくれた藤尭さんにも、手料理かなんかでお礼しとけと言われた。

自分はモヤシ炒めしか作らん癖によく言うよな…

でもまぁ、お礼として手料理というのはいい案だ。

 

なんせこの身体、見た目だけは美少女だから付加価値もバツグンだしね!

それにキャロルちゃんにもなんか埋め合わせしたいし…

 

仕方ない、めちゃくちゃ久しぶりだけど今日は台所に立ちますか。

ただこれ、普通に学校も仕事もあるし、漏れなくドリンク案件だよなぁ…

今日は調ちゃんと切歌ちゃんがナスターシャさんのとこに行くらしいし、オカンはロンドンだしで、せっかくクリスちゃんと二人っきりなのに夫婦の営みとか出来る時間なさそうだなぁ…

まぁ、一度も営んだ事無いんですけどね…

 

***

 

さて、何作るかね?

簡単に持ち運びできて、冷めても大丈夫な料理がいいんだが…

そうなるとやっぱり、お菓子がいいか。

ザ・ド定番のクッキーとかが無難な感じか…?

 

いや、待てよ…確か藤尭さんって料理の腕前は鉄人レベルだって聞いた事あるぞ…

小娘の作った小麦粉固めただけの素人臭全開の焼菓子がお礼になるか?

 

「お前、今日は急にどういう風の吹き回しだ?何か作んのか?」

 

うーん…レシピ見ながら考えるか…

 

「電脳の超越者に相応しき供物は…」

 

「藤尭さん?藤尭さんがどうしたっつうんだよッ!?」

 

プリン…いや、いつ休憩できるかわからん人だし、傷みやすいのはアウトだな…

あそこ、冷蔵庫あればいいのになぁ…

 

「急に藤尭さんに手料理…?お前…まさか…」

 

ん?クリスちゃん帰ってたの?

なんか神妙な顔してどしたの?

 

「ちょ、ちょっと用事思い出したから出てくるわッ!!」

 

あ、行っちゃった…

なんか尋常じゃない顔してたけど、ホント、どうしたんだろう?

まぁ、なんか危ない状況だったらちっちゃい俺から報告あるだろうし、今は料理決めるの優先させて貰おう。

 

結局、色々考えてシフォンケーキを作る事にした。




2話にして既に拗れまくってますね(白目)

そして、安定して無自覚に状況を悪くするらんらん(笑)


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第29話 奇跡の殺戮者

やみのま!

GX3話です。


よし、完成!

 

我ながら良い出来だ。

シフォンケーキはフワフワ感が命だからな。

 

個人的にはシフォンケーキにクリーム塗りたくったりするのは邪道だと思う。おいしいけどね。

でも、クリーム塗るなら別にシフォンケーキじゃなくてもいいと思うんだ。

 

しかし、久しぶりにケーキとか作ったな。

生前以来か?一時期パティシエなら女子との接点多くてモテるみたいな噂を信じてめっちゃ作ってたからな。

身体は変わっても魂?が作り方覚えてて良かったわ。

 

じゃあ後は切り分けて、藤尭さんの分、キャロルちゃんの分、後はみんなの分で包めば…と、よし。

 

早速、みんなに配りにいくか。

ん?なんでみんなにもって?

幸せはお裾分け、当たり前だろ?

あ、でも弦十郎さんとか甘いの大丈夫だろうか?

どう見ても堅焼き煎餅が似合いそうなイカついおじさんだしなぁ…

そんな事考えてると玄関のチャイムが鳴る。

 

ん?今日は誰か来るとか聞いてないけど、誰だろ?

新聞の勧誘なら…ってマリアいねぇじゃん。

仕方ない。謎翻訳で煙に巻くか…

マリア居ない時に来る勧誘が悪いな、うん。

 

***

 

「すっっっっっっっっごく美味しいッ!!ふわふわ~♪」

 

まさか来客が引っ越しの挨拶に来たキャロルちゃんだったとは。

偶然ってあるんだなぁ…

まぁ、探す手間省けたから良かったけど。

せっかくなので、上がって貰って食べて貰う事にした。

 

「フッ…我が創りし天上の甘露に酔いしれるがいい」

 

しかし、ご両親の付き添いも無しにご近所に挨拶なんてしっかりした子だなぁ。

日本語もすごく上手いし、スーパー幼女と言ってもいいかも知れん。

あ、サインの件は玄関でちゃんと謝った。

伝わってりゃいいんだけど…

後はもう一枚、ブリュンヒルデでサイン書くか…

 

ん?ちっちゃい俺からの報告?

クリスちゃん達があのノイズもどきに襲われてる!?

 

「金色の妖精よ…我は……?」

 

振り返ると目の前に手を開いたキャロルちゃんがいた。

アレ?なんか眠………気が…………

 

……………

 

***

 

「ふぅ…少し我を忘れていたが、上々だ」

 

アレを少しで済ますなだと?

バカを言え、アレでも自制した方だ。

ブリュンヒルデちゃんの手料理だぞ?

気を失わなかったオレを褒めてやりたいくらいだッ!!

 

「さて、後はアイツらが片付くまでオレは…」

 

ふと、寝息を立てる目の前の天使に目が留まる。

ごくり、と生唾を飲む音が聞こえる。

 

傷付けたくなかった。

だから事が終わるまで眠って貰ったのだ。

いずれ敵対する事は避けられぬ身であろうと、彼女に魅了された事は事実なのだから。

断じてやましい気持ちなどありはしない。

 

気付けば、オレの意思を無視して勝手に彼女の整った顔に手が伸びていた。

ここまで、どうしようもなく惹かれているという事か…

あ、もう少しで触れて…

 

「アイドルへのお触りは厳禁ですよ?」

 

「なッ!!?まさか、オレの術が破られただとッ!!?」

 

いや、違う。

アレは断じて彼女ではない。

そこには彼女のものとは思えない禍々しさを放つナニカが居た。

 

「さて…ビジネスの時間です。可愛らしい錬金術師さん?」

 

彼女の顔、彼女の声でその得体の知れないナニカは酷薄な笑みを浮かべるのであった。

 

***

 

時は少し遡る。

 

「えぇッ!!?蘭子がッ!!?藤尭さんにッ!!?」

 

神崎蘭子の国外活動を支援するため、二課をベースに新設されたS.O.N.G.の本部である潜水艦の一室で、立花響と小日向未来は今にも泣きそうな顔をした雪音クリスの相談を受けていた。

 

「あぁ、今日家に帰ったら"、ぶじだがざん"に"り"ょ"う"り"づぐる"って"…」

 

泣いてしまったようだ。

 

「わわッ!!?クリスちゃん、落ち着いてッ!!落ち着いてッ!!」

 

「何かの間違いでしょ?」

 

そう言って気丈に振る舞う未来も膝がガクガク震えている。

 

「だっで、アイツ、ぶだん"り"ょ"う"り"なんで、アタシ任せなのに…急に男に…グス」

 

確かに聞いている限りかなり状況は悪いようだ。

未来など既に膝へのダメージが限界に来たようで、へたり込んでしまっている。

しかし、そんな中で響は一人冷静だった。

普段なら一番衝撃を受けてそうなのだが、周りが冷静でないため、一周回って冷静になってしまった。

 

「二人とも、ちょっと落ち着いてッ!!クリスちゃん、ちゃんと蘭子ちゃんに確認した?」

 

「じでな"い"、でも…本当だったらと思うと、怖ぇんだよッ」

 

「でも、確認しなきゃ始まらないよ。クリスちゃんが嫌なら私が聞いてくるッ!!」

 

その時であった。

 

『ノイズと思しき反応パターンを検知!!装者達は出撃して下さいッ!!』

 

疑惑の藤尭から通信が入るのであった。

 

「蘭子の手足を縛って、ずっと蘭子のお世話をしてあげれば…」

 

「未来?出撃だよ?帰ってきて?」

 

「グス…グス…チックショウ…あぁ、やってやる…殺ってやるよッ!!」

 

「クリスちゃん、目が据わってるけど、大丈夫?本当に大丈夫だよね?」

 

***

 

「呆気なくてつまらないゾ」

 

「魔を祓うという割には、案外ショボいのね」

 

「地味過ぎて話にならんな」

 

「ま、ゴミ装者共が寄せ集まった所で、ガリィちゃんの相手じゃないみたいな?」

 

「クッ…未来ッ!!クリスちゃんッ!!」

 

蘭子の件でメンタルがボロボロであったクリスと未来は、突然現れた四人の襲撃者の猛攻に為す術がなく、地に臥せていた。

元々着ていた衣服が戻らない状態で倒れている事が、シンフォギア自体が破壊されてしまった事を如実に表していた。

二人を守りながら四人を相手取るのは、響といえど分が悪すぎる。

 

「隙だらけだゾッ!!」

 

赤髪の少女のクリスタルが響の胸のガングニールのコアに突き刺さる。

 

「ぐぁッ!!蘭…子ちゃん…」

 

コアが破壊され、ギアが解除されていく…

いつも自分達を助けてくれていた、銀髪の親友の姿は終ぞ確認する事が出来なかった。

彼女が居なければ、自分はこんなにも弱いのか。

一筋の涙を流し、響は意識を手放した。

 

「さて、どうする?トドメを刺せないのが地味にもどかしいな」

 

「鏡の子は念入りにって話じゃなかったかしら?あまりにショボ過ぎて一瞬で倒しちゃったけど」

 

「そう言えばそうだったね、それじゃあ…」

 

ガリィが満面の笑みで横たわった黒髪の少女に近づく。

今まで彼女達を何度も救ってきた英雄はここには来ない。

 

「性根の腐ったガリィに目を付けられたのが、派手に運の尽きだな」

 

「ガリィちゃんはお仕事に真面目なだけだっつうのッ!!」

 

「退屈だゾ、先に帰るゾ」

 

「そうね、ガリィ一人で十分だし、ガリィの悪趣味を見てるのもアレだし、私達は帰るわ」

 

ファラの投げたテレポートジェムによって、四人のうち、三人の気配が消える。

気を取り直してガリィは未来の方に向かうが…

 

「そこまでですッ!!」

 

突然の声に振り返る。

そこには、自らが主人と仰ぐ少女に瓜二つの人物が立っていた。

 

***

 

「貴様、何者だッ!!?」

 

「嫌ですねぇ…みんなのアイドル、ブリュンヒルデですよ?」

 

「ふざけるなッ!!ブリュンヒルデちゃんがお前のような喋り方をするかッ!!彼女はもっと難解で分かりにくいけどカッコよくてそれでいて可愛い喋り方をするんだッ!!」

 

「…お、おぅ…交渉の為に言語機能を貴女に合わせたのが仇になりましたね…」

 

ん?何か心なしか引いてないか?

今のやり取りに、引く要素あったか?まぁいい。

 

「私は…カストディアンと言えば伝わりますかね?」

 

…なるほど。彼女の裏にとんでもない大物がいたものだ。

しかし、そうであれば彼女の出鱈目さにも納得がいく。

 

「で?要求はなんだ?さっさと彼女を解放しろ」

 

「話が早くて助かりますね。私の要求は、凶祓いの排除です」

 

凶祓い?あぁ、あの鏡の奴か。

 

「構わん。アレはオレにとっても敵だ」

 

「交渉成立ですね♪」

 

「人質を取っておいて、交渉もクソも無いがな。しかし、いいのか?オレの悲願が達成されれば、世界ごと無くなるというのに」

 

そう、そこが解せんのだ。

何故、コイツはオレの悲願の阻止ではなく、鏡の奴だけを指定してきたのだ?

超常の存在であれば、オレの目的も知っていそうなものだが…

 

「問題ありませんよ?()()()()()()()()()()

 

「なん…だと…?」

 

「舐めてもらっては困りますねぇ…貴女では絶対にこの子に勝つ事は出来ませんよ?ちょっと抜けてる所があるのは玉に瑕ですが、私の自慢のアイドルですので」

 

「ふざけ…ッ!!?」

 

刹那、身体に大量の鎖がまとわりつく。

 

ーGleipnirー

 

何だ、コレは?

このオレがまったく身動きも出来ないだとッ!?

 

「グレイプニル。かつて世界を呑み込む獣を縛り付けるのに利用した聖遺物です。あぁ、やっぱり貴女にはよくお似合いですねぇ」

 

くっ、彼女がこんなモノ持ってるなんて聞いた事無いぞ!?

暴食を縛るのに使っていた拘束なら、オレなら問題なく破壊できると踏んでいたのだが…

 

「普段彼女が使っている拘束はコレの残滓でしかないんですよねぇ…」

 

…やはり黒幕相手に正面からは分が悪いか。

ここは大人しくやり過ごして、後で吠え面かかせてやるのが無難か…

 

「ご理解頂けましたか?貴女では()()を体現する私のアイドルには勝ち目なんて初めから無いんですよ」

 

…今、何と言ったか?

…神を語るコイツはよりにもよってこのオレの前で何を言い放ったか?

 

「………奇跡だと?」

 

ダウルダヴラを呼び出し、鎖を粉々に破壊する。

 

「なっ!?まだ反抗するつもりなんて正気ですかッ!!?」

 

辺りの景色が変わる。

室内では被害が大きいと踏んだのか、奴が転移の術式を使い開けた場所に移動したようだ。

彼女の身体を勝手に酷使しておいて、彼女に気を使ってるのか、何なのか訳がわからんな。

まぁいい。詮無き事だ。

 

ダウルダヴラの琴を弾く。

 

♪殲琴・ダウルダヴラ

 

正直、自分で立てた計画を無視して、ここまでやるつもりはなかったのだが、最早、絶対にコイツだけには負ける訳にいかなくなった。

性根の腐ったガリィにバレたら何を言われるかわかったもんじゃないな…

だが、コイツの呪縛から、ブリュンヒルデちゃんを一刻も早く解放しなければならない。

何故なら…

 

「冗談じゃないッ!!オレは奇跡の殺戮者だッ!!」




アレ?なんだかキャロルちゃんが主人公のような…
書く作品間違えたかな?(笑)

今日はえっくしぶ!放送日ですね。
前回のCパートの引きから一週間、凄く楽しみにしてました。
流れ的にはクリスちゃんアマルガムお披露目かな?と予想してみたり…
てか、後3話で本当に終わるんですかね…?
終わって欲しくないような、完結まで見たいような複雑な心境です。

XDにグロブレビッキーが実装されましたが、キャロルちゃん実装が本当に待ち遠しいです。
まさかOGAWAが先とは思いませんでしたが(笑)


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第30話 女神の裁定

やみのま!

GX4話です。


さて、大見得を切ったはいいが、まともにやっても勝てる気がせんな。

 

このオレにここまで力の差を感じさせるとはな…

呪いの旋律を集めきって、なんとか食い下がれるといったところか…

今の状態では、話にならん。

とはいえ、やれるだけはやらせて貰うぞッ!!カストディアンッ!!

 

「まったく、力の差は見せ付けたと思っていたんですがねぇ…」

 

ーMjollnirー

 

凄まじい轟音と共に辺りに稲妻が降り注ぐ。

咄嗟にヘルメス・トリスメギストスで防ぐが長くは保たんな。

 

「ならばッ!!」

 

ダウルダヴラがオレの歌に共鳴して旋律を奏でる。

増幅したフォニックゲインで一気に決めるッ!!

 

「さっさとオレの天使から出ていけッ!!カストディアンッ!!」

 

四大元素の同時攻撃。

これならどうだ?

 

「なるほど…確かに凄まじいフォニックゲインですね。量だけならこの子以上です」

 

あろう事か奴は四筋の攻撃を素手で握り潰していた。

一つ一つが街一つ更地に出来る威力があるというのに、どれだけ規格外だ。

 

「貴女の今出来る最大の攻撃でしょうに…冷静さを失わないのは賞賛に値しますが、そもそもが象と蟻の決闘なんですよ?」

 

チッ、わかっている。

奴はあの場所から一歩も動いていない。

 

「気は済みましたか?貴女にはまだやって貰いたい事がありますから、今なら見なかった事にしてあげますよ?」

 

「舐めるなッ!!何するものぞッ!!カストディアンッ!!」

 

「はぁ…凶祓い排除に貴女以上の適役はいないのですが…残念です」

 

ーNiflheimrー

 

辺りが…全てが凍ってゆく…

 

「叛意があるなら、同一体に転移なんてさせませんよ?大人しく、ここで永久に凍っていて貰います」

 

「はぁ…今から代役を探すのも簡単じゃないんですよねぇ…」

 

「ようやく隙を見せたなッ!!」

 

「なッ!!?」

 

奴は確かに言った。

オレのフォニックゲインは彼女以上だと。

 

ならば、隙を突いた状態でこの近距離ならッ!!

最大限の出力で再び四大元素の力を放つが…

 

「さすがに今のはビックリしましたよ?やっぱり貴女は危険ですねぇ…」

 

クソッ、打倒は叶わずか…

 

だが………オレの勝ちだッ!!

無視出来ないダメージに倒れ込みながら、勝利を確信していた。

 

「もう一度、氷漬けに…え?あっ!ちょっと!蘭子ちゃん、待ってッ!!?」

 

クックックッ、ようやく気付いたか。

奴はオレの術式で彼女が眠っているからこそ顕現出来ていると仮定したが、どうやら正しかったようだな。

ならば、術式を解いてやれば…

 

「煩わしい太陽ね…金色の妖精ッ!!?これは如何なる聖戦かッ!!?」

 

完全に排除は出来なかったが、奴の慌てるサマが見れただけ良しとしよう。

取るに足らんと人間を舐めるから足元を掬われるのだ、バカめ。

 

倒れているオレに近づいてくる心地いい天使の声を聞きながら、徐々に意識は遠のいていった…

 

***

 

「それでぇ?戦えもしないのに出てきちゃった理由はなんなのかなぁ?」

 

対峙するキャロルと瓜二つの人物に対して、ガリィは煽り気味に問いかける。

 

「彼女達に危害は加えさせませんッ!!」

 

「だぁかぁらぁ?それをどうやって実現するの?って聞いてるんだけどぉ?その身体じゃ人一人も抱えられないよねぇ?エルフナインン?」

 

エルフナインと呼ばれた少女?はそれでも気丈にガリィに反論する。

 

「それはボクが…キャロルの計画を止めるために」

 

「話にならねぇなぁッ!!それも今ここでガリィちゃんを止められなきゃ無理なんだけどぉッ!!キャハハハハッ!!」

 

ガリィのビンタがエルフナインに迫る。

 

「いや、よく時間を稼いでくれた。十分だ」

 

しかし、そのビンタはエルフナインに届く事なく、突如現れた巨漢に止められる。

 

「は?アンタ何…」

 

次の瞬間、ガリィのボディに拳が突き刺さっていた。

 

「弟子が世話になったなッ!!これ以上やるならオレが相手になってやるッ!!」

 

そこには、藤尭と友里の前に並べられた大量の始末書と引き換えに、人類最強が召喚されていた。

 

「あぁ、もうッ!!しっちゃかめっちゃかぁッ!!」

 

響達との戦闘でアルカノイズを切らせていたガリィは秒で逃げた。

 

***

 

なんかまた夢遊病発症してたらしい。

ほんと怖い。

 

家でキャロルちゃんにシフォンケーキ食べて貰った後の記憶が無いのに、気付いたら目の前でキャロルちゃんが倒れてた。

コレ、俺がやったの?

夢遊病で幼女虐待とかマジで洒落にならんのだけど。

 

とりあえず、傷だらけのキャロルちゃんを家まで運んで手当てするか…

 

そんでキャロルちゃん抱えて家帰ったら、神妙な顔したクリスちゃんと響ちゃん、未来ちゃんが居た。

 

「蘭子ちゃんッ!!無事だったんだねッ!!奏さんが連絡取れないって言ってたから心配したよぉ…」

 

見ると響ちゃん達も怪我をしている。

…本当に何やってんだよ、俺。

彼女達を守るためのチートだろうが。

 

「そんな事より、蘭子に聞きたい事があるの。今すぐ監禁されるのと、正直に話して監禁されるのどっちがいい?」

 

……え?今なんて?

なんか今意味の無い二択が聞こえたんだけど、俺の聞き間違いだよね?

 

「てか、後ろに抱えてるの誰だよ?ッて怪我してんじゃねぇかッ!!?早くベッドに運べッ!!」

 

やっぱりクリスちゃんは優しくて出来た嫁だなぁ…

まぁ、その怪我の原因俺かもしれんのが悲しいところなんだけどね…

 

***

 

キャロルちゃんを寝室に寝かせ治療してから、妙に重苦しい雰囲気でクリスちゃん達の前に座らされている。

何?何が始まるの?

なんか、初めてクリスちゃんが響ちゃん達と会った時とデジャヴ感じるんだけど…

 

「あの…蘭子ちゃんッ!!」

 

「な、何事かッ!!?」

 

ビックリした…この重い空気でいきなり大きい声出されたら心臓に悪い。

 

「待て…アタシが聞く」

 

「クリス…」

 

何何何?これ、実は裁判的な何かだったりする?

ちょっとみんなの表情が怖い。

 

「なぁ…お前、藤尭さんの事が…す、す、す…」

 

…す?あぁ…酢ね?いや、結局お菓子にしたから酢は使って…

 

「好きなのかッ!!?」

 

……

………え?何言ってんの?

マジで意味わからんのだけど…

 

「何故、我が電脳の超越者に恋慕を…?」

 

答えると同時になんかさっきまでの重い空気が急に霧散していく。

え?なんでそんな事になってんの?

藤尭さん?イケメンだと思うし、いい人だとは思うけど、中身男なのに男性を好きになる事は無いよ。

 

「はぁ…お前ぇ、ほんっと紛らわしいんだよ…」

 

だから何の事かさっぱりなんだけど…

 

「私は蘭子を信じてたけどね」

 

いや、さっき詰んでる二択迫ってきてなかった?

 

「なんだぁ…私、ビックリしちゃったよぉ」

 

響ちゃんが抱きついてくる。

あぁ、もしかしてこれ、アレか?

友達に恋人出来たら付き合い悪くなったりするのが不安だったりするやつか…

それにしても柔らかいなぁ…

大変発育がよろしいようで…

 

「バカッ!!お前最近調子乗りすぎだぞッ!!」

 

クリスちゃんが響ちゃんを引き剥がす。

このやり取りもお馴染みになったなぁ…

 

「あっ、そういやアタシらギア壊されちまって、しばらく出撃出来なくなっちまったから…」

 

「たぶん蘭子に負担掛かると思うけど、ゴメンね?」

 

…なんデスとッ!?

い、今以上のハードワークはキツいなぁ…

でも、これも彼女達を守れず夢遊病とかやってた罰か…

 

とりあえず撮影を減らしてもらう方向で奏さんに交渉するか…

無理ならドリンク補充になるな…

 

…まさかこの状況、あの事務員の差し金じゃないよね?

 

***

 

思い出すのは、かつての光景。

パパとの思い出。

生活はお世辞にもいいとは言えなかったが、パパと二人幸せだったあの日々。

 

そしてー

 

あぁ、そうだ。

忘れてはならない。

忘れる訳がないッ!!

()()()()()になったあの日。

 

パパはオレに何と言った?

世界を知れ、だ。

 

その為に、オレは………

……

 

「夢、か…この夢を見るのも久しいな…」

 

というか、何処だ、ここは?

見る限り、医療機関ではなく誰かの家のようだが…

傷が癒えている?

あれ程のダメージを受けていたのに?

そんな事が出来るのは…

 

『我は金色の妖精の魔力を視よう』

 

ブリュンヒルデちゃんッ!!

え?待て、まさか…このベッド、ブリュンヒルデちゃんのッ!!?

 

……

………

 

ブリュンヒルデちゃん!ブリュンヒルデちゃん!ブリュンヒルデちゃん!ブリュンヒルデちゃぅぅうううわぁああああああああああああああああああああああん!!!

あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!ブリュンヒルデちゃんブリュンヒルデちゃんブリュンヒルデちゃんぅううぁわぁああああ!!!

あぁクンカクンカ!クンカクンカ!スーハースーハー!スーハースーハー!いい匂いだなぁ…くんくん

んはぁっ!ブリュンヒルデたんの銀色の髪をクンカクンカしたいお!クンカクンカ!あぁあ!!

間違えた!モフモフしたいお!モフモフ!モフモフ!髪髪モフモフ!カリカリモフモフ…きゅんきゅんきゅい!!

ファッション雑誌のブリュンヒルデたんかわいかったよぅ!!あぁぁああ…あああ…あっあぁああああ!!ふぁぁあああんんっ!!

テレビ放送されて良かったねブリュンヒルデたん!あぁあああああ!かわいい!ブリュンヒルデたん!かわいい!あっああぁああ!

写真集も発売されて嬉し…いやぁああああああ!!!にゃああああああああん!!ぎゃああああああああ!!

ぐあああああああああああ!!!写真集なんて現実じゃない!!!!あ…テレビもよく考えたら…

ブ リ ュ ン ヒ ル デ ち ゃ ん は 現実 じ ゃ な い?にゃあああああああああああああん!!うぁああああああああああ!!

そんなぁああああああ!!いやぁぁぁあああああああああ!!はぁああああああん!!エルフナインぁああああ!!

この!ちきしょー!やめてやる!!現実なんかやめ…て…え!?見…てる?ポスターのブリュンヒルデちゃんがオレを見てる?

ポスターのブリュンヒルデちゃんがオレを見てるぞ!ブリュンヒルデちゃんがオレを見てるぞ!ポスターのブリュンヒルデちゃんがオレを見てるぞ!!

テレビのブリュンヒルデちゃんがオレに話しかけてるぞ!!!よかった…世の中まだまだ捨てたモンじゃないんだねっ!

いやっほぉおおおおおおお!!!オレにはブリュンヒルデちゃんがいる!!やったよガリィ!!ひとりでできるもん!!!

あ、写真集のブリュンヒルデちゃああああああああああああああん!!いやぁあああああああああああああああ!!!!

あっあんああっああんあパパぁあ!!レ、レイアー!!ファラぁああああああ!!!ミカァぁあああ!!

ううっうぅうう!!オレの想いよブリュンヒルデちゃんへ届け!!隣の部屋のブリュンヒルデちゃんへ届け!

 

『あっ、待てよ、アタシも手伝うぞ』

 

チッ、シンフォギア装者も一緒か…

あまりの幸運に少々取り乱してしまったが…

 

『あれ、すっかり使わなくなっちまったけど、アタシのベッドだしな』

 

………よし、これだけは決めた。

アイツだけは絶対に赦さんッ!!




途中までカッコ良かったのに何故かこんな事に……
しかし、話が進まねぇ…
GX書くの楽しいから仕方ないネ!

XV衝撃展開でしたね…
冒頭はいきなり別アニメ始まったかと思いましたが(笑)
ただ、WAからの金子ファンな作者はエンキさんがどうしてもアシュレーに見えてしまいました(笑)


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第31話 陽光と妖精

やみのま!

GX5話です。


キャロルちゃんの様子を見に行ったら、どうやら目が覚めてたみたいだ。

身体の傷は治したけど、心の傷までは治せないし、いきなり『お巡りさん、コイツですッ!!』って言われたらどうしよう…

ん?心の傷ってシンデレラの靴で治せないんだろうか?

試した事無いからわからんけど、犯人俺かも知れんのにそれやっちゃうのは人としてどうかと思うからな…今回はやめとこう。

もし、本当に犯人が俺なら誠意を込めて謝るしかない。

 

「ブリュンヒルデちゃんッ!!いきなり知らないババ…おばさんに襲われて怖かったッ!!」

 

キャロルちゃんが抱きついてくる。

よっぽど怖かったんだな…

よく出来た子だと思うけど、この辺はやっぱり子どもなんだな。

しかし、犯人俺じゃなかったか…何も解決してないし、ホッとしちゃいかんけどホッとする。

 

でも今BBAって言いかけなかった?

実は素の彼女は割と口悪いのかもしれない。

 

「金色の妖精よ。我が庇護を受けよ。安寧の時よ」

 

とにかく安心させてあげたいんだけど、伝わってるかなぁ…

あ、でもハグがちょっと強めになったから、たぶん伝わってるよね?

 

「おい、とりあえず細かい話は後にして飯にしねぇか?腹減ってるだろ?」

 

そういや、シフォンケーキ味見してから何も食べてないな。

妙に身体がだるいし、栄養補給しといた方がいいかもしれん。

前回もそうだけど、夢遊病明けって妙に疲れてるんだよなぁ。

まぁ、寝てる時に動いてるんだから、身体が休まってないんだろうけど。

 

「ブリュンヒルデちゃん。オ…わたし、もうちょっとこのままがいい」

 

「フッ、魂の安息を迎えるまで我が抱擁に包まれよ」

 

ご飯食べるにしてもキャロルちゃんが落ち着いてからだな。

しかし、下心無しで女の子と触れ合うのっていつ以来かなぁ…

まぁ、相手すると心が疲れる自称ペットの子とか、圧倒的オカンとか一部例外はあるけど、今までだいたい下心ありで接してたからなぁ…改めて振り返ると我ながら最低だな…

だけどキャロルちゃんと接してると、なんか心が浄化されていく気がする。

これが母性なんだろうか?

 

そういやさっきからキャロルちゃん、人見知りなのか、チラチラクリスちゃんの方を見てるけど、どうしたんだろう?

 

あぁ、ハグ状態で後ろにいるクリスちゃんの方見てるから、表情は見えないけど、やっぱこれくらいの年の子って、全く知らない人は恐怖の対象なんだろうな。

ただでさえ変質者?に襲われたばかりだしね。

 

ん?なんか心無しかキャロルちゃんが見る度にクリスちゃんの表情がどんどん引きつっていってる気がするんだけど、こっちはマジで何事?

 

「そ、そろそろいいんじゃねぇか?」

 

急にどうしたんだろう?

そんなにせっかちな嫁じゃなか…いや、割とせっかちだったな、そういや。

響ちゃんみたいに火の玉ストレートだったり、マリアみたいにきびきびしたタイプでもないけど、クリスちゃんも割とせっかちさんなのだ。

しかし、こんな小さい子まで急かすような感じのせっかちじゃなかった気がするんだけど…あ、またキャロルちゃんがクリスちゃんの方見た。

 

「おいッ!!さっさとそのエロガ…小娘放せッ!!」

 

「ブリュンヒルデちゃん、あのお姉ちゃん怖い」

 

ほんとどうしたんだろう?

なしてエロ?

そんな罵声をこんな性に目覚めてそうにない小っちゃい子に言わないだろうし、今のは俺に向けてだよね?

 

………もしかして、俺今藤尭さん疑惑に続く、ロリコン疑惑掛けられてる?

それは冤罪だよ、クリスちゃん…

確かにキャロルちゃんは可愛いし、数年後には絶対に美少女になるだろうけど、今時点では幼女だし誓ってやましい気持ちなんか無いよ?

まぁ、日頃の行い的に俺が言っても説得力皆無だろうけどね…

 

「ただいまデースッ!!」

 

「闇に飲まれよッ!!蘭子、貴女のペットが帰ってきたよ」

 

あぁ…結局ドタバタ状態のまま、災害級のややこしい子が帰ってきちゃったかぁ…

マリア、早く帰って来ないかなぁ…

 

とりあえず、みんなにキャロルちゃん紹介するか…

 

***

 

「我が新たな眷属、金色の妖精よ」

 

「へぇぇ、キャロルちゃんって言うんだ、よろしくねッ!!」

 

「……ふん」

 

…響ちゃんといい、マリアといいたまに凄いよね。

この謎翻訳の固有名詞を解読できるってどういう原理なんだろう?

しかし、紹介したはいいけど、やっぱりキャロルちゃんは人見知りなのか、俺の後ろに隠れてて出てこない。

 

「じー」

 

あぁ…やっぱり一番大人しくしといて欲しい子が大人しくしてる訳無いよね…

でも、無垢な子なんだからお手柔らかに頼むよ?

 

「な…何?オ…わたしに何か用?」

 

「蘭子のペットになりたいなら先輩ペットの私に敬意を…」

 

「調は黙ってるデスよッ!!」

 

「切ちゃんッ!!?まだ大事な話が…」

 

切歌ちゃんガードが発動した。ナイス

なんでそこのマウントを取りたがるのかよくわからんし、いきなり先輩ペットとかいうパワーワードはドン引きだと思う。

そもそも我が家にペットは居ない筈なんだけどなぁ…

 

「ペット……そういうのもあるのか」

 

無いよッ!!ほんとに無いからねッ!!

なんでよりによってそこ納得しちゃうかなッ!!?

 

「やっぱり素質はありそう…もしかしたら逸材かも」

 

一体何の素質だよ…

ドM界のスカウトか何かなの?

スカウトされたらドMになるとか訴訟レベルだよ…

 

しかし、良いのか悪いのか判断が難しいけど、いきなり強烈なのが出てきたせいか、さっきよりキャロルちゃんのA.T.フィー○ドが薄くなってる気がする。

相変わらず、何故かクリスちゃんとは険悪ムードだけど、切歌ちゃんと響ちゃんがデスデス言ったりお気楽発言したりしてうまくフォローしてくれている。

二人とも色んな意味で個性の強い相方がいるせいか、こういった気遣いはとても上手い。

ん?そういや、さっきからその個性の強い未来ちゃんが静かだな…

 

「ところでキャロルちゃん。何を隠しているのかな?」

 

静かだと思っていた未来ちゃんが満を持して爆弾を投下した。

 

***

 

「未来?隠してるってどういう事?」

 

「キャロルちゃん、右利きだよね?さっきから左側ばかり気にしてるし、頻繁に口元を隠してる。典型的な隠し事をしてる人の反応だよ?」

 

……鋭いな。まさか、十数年しか生きていない人間に見抜かれるとはな…

 

「当ててみようか?私達を襲ってきた四人とキャロルちゃん、関係者なんじゃないかな?新しい敵が出てきたタイミングで蘭子に近付いてくる、偶然にしては出来すぎてるよね?」

 

オレにとってはブリュンヒルデちゃん以外はどうでもいい奴らだが、これであれば神とやらがあそこまで警戒するのも納得がいく。

 

「それに、極めつけは蘭子が来なかった事とキャロルちゃんの怪我。蘭子に意識が無かったのなら、私達にはその理由がわかるの。大方、蘭子を引き付ける役割で眠らせるか何かしたけど、アレが出てきてやられたって感じかな?」

 

「…証拠は?」

 

「無いよ?でも、強いて言うならそうやって証拠を聞くところかな?的外れなら、意味わからないって反応になるよね?」

 

…認めよう。

オレの悲願の最大の障害は確かにコイツだ。

 

「そんな…キャロルちゃん」

 

「いまいち理解が追い付かないデスが、悪い子なのデスか?」

 

「…ん?私の同志の可能性は?」

 

…一緒にするな。

確かにブリュンヒルデちゃんのペットというのが魅力的なのは認めるがな。

 

しかし、このタイミングで暴きに掛かるという事は余程勝ちを確信していなければ出来ないだろう。

3人が戦闘不能、残る2人もLiNKER頼みの後天的適合者しか居ない状況で?正気か?

ブリュンヒルデちゃんだけでは不確定要素の方が強い筈なのだが…

…ん?待てよ…つまり、残る1人、あのスレの14番がこの部屋の何処かに潜んでいて、いつでもオレを攻撃出来る状況にあるという事かッ!!

 

このオレに気配すら感じ取らせないとは、ずいぶん()()奴のようだな…

 

さて、どうする?

ブリュンヒルデちゃん…愛でる対象であり戦うなど論外だ。

シンフォギア装者どもは…取るに足らんが、姿を見せない14番の存在が不気味ではある。

八方塞がりだな。

カストディアンとの戦闘の消耗が大きいし、強行は愚策か。

 

「…ここは退かせて貰おう」

 

「そう…気をつけて帰ってね?」

 

イヤミかッ!!貴様ッ!!

いや…言葉通りなのだろうな…

余程、14番の戦闘力に自信があると見える。

アイツらがむざむざ破壊されるとは思えんが、オレの指示の割にコイツの傷が少ないのも気になる。

やはり、14番の横槍が入ったと見るべきだろう。

 

「金色の妖精よ…」

 

…ブリュンヒルデちゃん。

こんな形の別れになるとは思わなかったが、次に会う時は敵同士という事か…

…敵同士、まるでロミオとジュリエットのように惹かれ合う2人、高い障害に燃え上がる恋……アリだな。

 

「ブリュンヒルデちゃん、またね」

 

テレポートジェムを使い、チフォージュ・シャトーに帰還すると、待機していたオートスコアラー達の姿が見える。

無事だったか…もしあの場で破壊されていたら、全てが台無しになる所だった。

敵もなかなかにやるが、計画は続けられるな。

 

「あら、随分と遅かったですね。夕べはお楽しみですか?マスター?」

 

コイツ、いちいち一言多いな…

オレの中にも、コイツみたいな部分があるという事になるから余計に気が滅入る。

 

「ガリィ、奴らの隠し戦力についてまずは報告しろ」

 

14番だけは要警戒だ。

オレの勘が正しければ、ガリィ達と接触ないし戦闘している筈なのだが…

 

「隠し戦力?………あぁ、アレの事かなぁ?」

 

やはりかッ!!

あの場で事を起こさなかったのは正解だな。

よもや、カストディアン以上という事はあるまいが、オレの消耗も大きかったしな。

 

「なんか…とんでもなく強いオッサンでしたよ?」

 

………さすがにこれは予想外だ。

シンフォギア装者だよな?

オッサンが歌いながら攻撃してくるとか、最低最悪で実にオレに対して効果的な嫌がらせだ。

そりゃあ奴が自信満々になるのも納得がいく。

初見殺しもいい所だ。

 

本当にあの場で戦っていたら、この身体を廃棄する事になっていたかもしれんな…

ブリュンヒルデちゃんとのハグの感覚が残ったこの身体、簡単に廃棄する訳にはいかなくなったからな。

 

***

 

理解が追い付かない。

あれだけ無邪気に接してくれてたキャロルちゃんが敵だったらしい…

 

「未来、お前アイツがなりふり構わず襲ってきたらどうするつもりだったんだよ?アタシら、今戦えねぇんだぞ」

 

「うーん、何て言ったらいいのかな?あの子、たしかに敵だし、隠し事もしてたけど蘭子に好意を持ってるのは本当みたいだったし、無茶な事はしないと思ったからかな?クリスもそれは感じてたんじゃない?」

 

「あぁ…思い出したらムカついてきた。確かにアイツは色んな意味で敵だわ」

 

…マジでどうしたらいいんだろう。

クリスちゃん達を戦わせるのも、あの金髪幼女と戦うのも、どっちも嫌だ。

何とか平和的に解決出来る方法を考えなきゃいかんな…

 

「へいき、へっちゃらッ!!蘭子ちゃんの事が好きって気持ちが本当なら、私達はきっと手を繋げる筈だよッ!!」

 

…響ちゃんの言葉には救われてばかりだ。

太陽のように眩しい自慢の親友だよ、本当に。

 

「蘭子の事が好きだけど、敵対する?…やっぱり私と同じ匂いがする」

 

…………響ちゃんとの落差よ。

君との戦い、ほぼ全部トラウマなんだから、もう一回アレやるとか絶対無理だよ…

 

「蘭子さん、アタシは1人で手一杯デスよ?」

 

うん…そんな保険かけなくても俺もこれ以上増やすつもりはないからね?

 

***

 

某事務所風亜空間。

 

『………ババアでもおばさんでもないですよぅ…まだ若いし、イケるし』

 

その領域の主、千川ちひろは観察対象を観察中に精神に大ダメージを受けていた。

こうかはばつぐんだ。

 

『そもそもそんな事言ったら、貴女だっておばあちゃんじゃないですかッ!!?』

 

世の中、見た目に勝る情報はさほど多くはない。

幼女はどう見たって幼女なのだ。

現実は非情である。




キャロルちゃん、勘違い発生(笑)

今日はXV放送日です。
今日こそ、満を持してアマルガムクリスちゃんの筈…
そして、いつも通りなら、特殊ED黒背景の12話ですね。

11話で393の意識がまだ生きてる希望が見えましたが、どうなるか楽しみです。
…ほんとに後2話で完結できるんでしょうかね?
13話が1時間スペシャルでも不思議じゃないレベルです。


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第32話 銃剣再び

やみのま!

GX6話です。


新しい敵(俺は認めたくないんだけど)が出てきたので、ロンドンに行ってた翼さんとマリアが帰ってくるらしい。

そういや翼さん…ホテルの部屋もすげえ汚かったし、荷物まとめるの大丈夫だろうか?

なんか壁に刀とか刺さってたんだけど、一体何が起きたらあぁなるんだろう?

まぁ…有能マネージャーとオカンがいるから大丈夫か…

 

そんで空港まで迎えに行ってるんだが…

 

「あ、翼さーん、マリアさーん」

 

「話は後、私達にはやるべき事がある筈よッ!!」

 

このオカン、どうしたの?

何か変な物でも食べた?

 

「あ、タピオカミルクティーが売ってるデスよ」

 

「なんか流行ってるらしいな、カロリーがアレだからアタシは飲んだ事ねぇんだけど」

 

相変わらずマイペースだなぁ…

なんかタピるつもりらしい。

 

「奏、タピオカとは一体何だ?」

 

「カロリーの暴力だよ。アレでラーメン一杯分くらいあるらしいぞ」

 

「何故そんな物が流行に?」

 

ほんと、なんでだろうね?

ていうか、そろそろドヤ顔キメポーズ維持してるマリアに誰かツッコミ入れてあげたら?

 

「切ちゃん、タピオカチャレンジっていうのがあるらしいよ」

 

「タピオカチャレンジ?なんデスか?」

 

タピオカチャレンジ…まさか一番成功確率が薄そうな子から出てくるとはな…

察してるのは…クリスちゃん、響ちゃん、未来ちゃんと後奏さんか。

依然マリアは放置プレイ継続中。

 

「こうやってタピオカミルクティーが胸の上に載れば成功なんだって」

 

「わわッ、危ないデスよッ!!?」

 

そう言って切歌ちゃんのおっぱいにタピオカを載せる調ちゃん。

まぁ、年齢にそぐわない立派なのが付いてるからねッ!!

 

「響と蘭子もやってみたら?私は出来そうもないし、やめとくけど…クリスもほら」

 

「冷てぇッ!!?いきなり載せんじゃねぇよッ!!」

 

あぁ…クリスちゃんのおっぱいで見事に固定されるタピオカ…

控えめに言っても素晴らしい…

良いものを見せてもらった…

お返しと言ってはなんだが、俺もやってみるか。

 

「我にとって造作もない事よ」

 

うん、普通に載った。

ん?なんかカシャカシャ聞こえるんだけど…

調ちゃんと未来ちゃんに色んな角度からめっちゃ撮られてた…

調ちゃん、さてはこの為に話題出したな?

まぁ、悲しい事に撮られ馴れてるせいで別に何も感じなくなってきてるんだよなぁ…

 

「チャレンジか…挑戦と聞いて臆しては防人の名折れ、か…」

 

「おい、翼?」

 

「もっとも『難しい事』は!」

 

「翼?」

 

「いいか、奏!もっとも『難しい事』は!!」

 

「『自分を乗り越える事』だッ!!」

 

「私はこれから自分自身の『胸が控えめ』という風潮を乗り越えるッ!!」

 

「おい、馬鹿ッ!!やめ…」

 

意気込んでタピオカを胸に載せようとした翼さん…

載せようとしたタピオカは無情にも…駄目だ、これ以上は語るのもつらい。

 

「なんで出来ると思ったんだよ…」

 

奏さんのその一言で翼さんの目からハイライトさんが完全にご臨終になった。

 

「ちょっと、あなた達いい加減にしなさいッ!!」

 

あ、マリア忘れてた。

 

***

 

「戻ったか、翼、マリア君。む…どうした?」

 

「いえ、何でも無いわ」

 

「任務に私情は持ち込みません」

 

何故姪がここまで心が折れた顔をしているのだろうか?

やはり、先のロンドンでの襲撃で胸の歌が破壊されたのが大きいのだろう。

弦十郎はそう納得し、話を次に進める事にした。

 

「そうか…それで、蘭子君は?」

 

「なんでもこれから雑誌の撮影があるみたいで奏さんに引き摺られていきました」

 

「まったく…奏の仕事熱心にも困ったもんだな…もう少し蘭子君にも休養が必要だろうに」

 

神崎蘭子の表の仕事に関しては、翼に対する緒川と同じでほぼ全てマネージャーである奏に一任している。

あまり子どもをハードワークに追い込むのも考え物なので、奏に少し注意した方がいいかもしれんな、と弦十郎は心のメモに書き留めておく。

ただでさえ、神崎蘭子は現状で人類最後の砦と呼ぶに相応しい人物なのだから。

 

「まぁ、居ないのなら仕方がないが…紹介しよう、今回の事件の情報提供者のエルフナイン君だ」

 

弦十郎から紹介された人物は…

 

「えぇッ!!?キャロルちゃんッ!!?」

 

「おいッ!!オッサンッ!!ソイツは敵…」

 

「待って下さい!ボクはキャロルじゃありません!皆さん、キャロルを知ってるんですね?」

 

エルフナインと呼ばれた少女?は即座にキャロル自身である事を否定する。

だが、それにしたって似ている。

いや、()()()()()()

本人だと自己紹介されれば、簡単に信じてしまう程だ。

 

「それなら似ていて当然です。ボクはキャロルに造られたホムンクルスの一つ、廃棄躯体11号エルフナインです」

 

「未来、ナインなのに11号なの?」

 

「うーん、詳しく覚えてないけどドイツ語じゃないかなぁ?」

 

「って造られたデスかッ!!?」

 

今、目の前に表の科学では未だに為し得ていない人造人間がいる。

その事に驚きを隠せない面々。

だが、未来だけは蘭子が生み出していたアレに近しい存在か、と妙に納得していた。

今でもたまに買収したりしている。

 

「はい、あの…憧れのブリュンヒルデさんに会えるのは残念ながらお預けみたいですが、ボクはキャロルの計画を止めるためにここに来ました」

 

エルフナインの言葉を聞いて、コイツもか、と辟易した顔をするクリス。

無理もない。

今まで、ライバルは響と未来しか居なかった筈なのに、調の登場で最近では同居という唯一無二のアドバンテージまで失ってしまっている。

さすがに、奥手が過ぎる彼女でも焦りを憶え始めていた。

これ以上増える前に自分だけを見て貰わなければならない。

クリスは決意を新たにした。

 

「それで皆さんのシンフォギアに改修を…あの…皆さん聞いていますか?」

 

どうやらクリス以外もそれぞれで思う所があったようだ。

もはや話を聞くどころではない防人の剣。

最近、周囲からのネタキャラ扱いに悩むオカン。

だいたいクリスと同じ考えのイケメンとヤンデレ。

自分が先輩ペットだと1人ドヤ顔のドM。

真面目に話を聞く常識人。

 

「…いつもの事だ。気にせず続けてくれ…」

 

弦十郎は大きなため息を吐いた。

 

***

 

「なん…だ、コイツは…あり得んだろう」

 

ガリィからの情報を元に、14番…風鳴弦十郎の情報を調べたが、信じられん情報ばかり出てくるんだが…

 

「シンフォギアも纏わずに生身で完全聖遺物を圧倒だと…」

 

まずいな…さすがのオレもコイツに懐に入られたら対処できる気がせんぞ…

 

「これは訓練映像ですが、ただの拳圧でアメノハバキリのアームドギアを粉々にしてますね…ふふ、天然ソードブレイカー…」

 

「ただ、出撃回数も少なく地味な戦闘が多いな」

 

「ただのパンチなのに、普通に刃物に勝ってるし威力がおかしいゾ」

 

コイツが本気を出したら際どい格好で歌いながら襲ってくるのか…

 

「マスター、これキツくないですか?ガリィちゃん、誉れってのは理解してるんですけど、このオッサンの呪いにやられるのはちょっと嫌かなぁって」

 

そんなのオレだって嫌だ。

わかってる、わかってるが…

 

「今さら計画は止められん。エルフナインも予定通り出奔しているのだ」

 

クソッ、このオッサンだけが完全に計画外だ。

何か対処法を考えないといかんな。

シンフォギアを纏わない状態で十分過ぎる脅威とか意味がわからん存在に何をどうすればいいのかさっぱりだが、このままでは確実に計画に支障が出る。

 

「もういっそのこと派手に5人でブリュンヒルデちゃん親衛隊を結成するというのは?」

 

「いいなッ!!それッ!!…じゃないッ!!」

 

「あらあらマスター、お可愛いこと」

 

「もう条件反射だゾ」

 

コイツら、もしかしてオレで遊んでないか?

ガリィとか何も言わずに大爆笑してるし。

マスターとしての威厳を損なうような振る舞いはしていない筈なのだが…解せんな。

 

「とにかく、そろそろエルフナインのイグナイト改修が完了する頃合いだ。アルカノイズを放ってレイラインを開放しろ。ブリュンヒルデちゃんが出てきたら無理せず撤退だ。オレ以外では相手にならん」

 

「了解ッ!!」

 

うむ、ガリィのせいでマスター弄りが増えてはいるが、まだオレの言う事を聞いてはくれるな。

これで命令無視とかし出したら本格的に考えねばならんがな…

 

「マスター、オッサンが出てきたらどうします?」

 

「…イグナイトを使用したら本懐を果たせ」

 

「……了解。はぁ…しゃあねぇなぁ」

 

心底嫌そうな顔をして、ガリィは出撃していった。

まぁ、アレはアレで責任感の強い奴だ。

性根は腐っているが。

 

***

 

やっと撮影から解放されたと思ったら、またノイズもどきが出たらしい。

オーバーワーク過ぎない?

だが、キャロルちゃんと話をするチャンスでもある。

絶対に根は悪い子じゃない筈なのだ。

じゃないと、別れ際にあんなに悲しそうな顔する訳がない。

 

ノイズもどきのせいで人に被害が出る危険性がある?

明確に敵対してる以上、戦うしかない?

 

それがどうしたッ!!?

 

確かにそれは正しい事なんだろう。

でも、正しいというだけで、あの子の話すら聞かないで戦うなんて、俺は嫌だ。

人に被害?そんな物は絶対に俺が出させない。

 

…そう思ってた時期が俺にもありました…

 

4箇所同時攻撃とか聞いてねぇよ…

残り3箇所のうち、1箇所は謎の眼鏡掛けてどっかからLiNKERくすねてきた調ちゃんと切歌ちゃん達が対応してるが、あまり時間は掛けられない。

ノイズもどき対策されてないシンフォギアでは油断したら翼さんの二の舞らしい。

完全に対応できるのは今時点では俺だけだ。

 

「塵に消え行けッ!!」

 

ーLaevateinnー

 

広範囲技で瞬殺しながら、4箇所回るしかないな。

モタモタしてると、マジで人に被害が出かねん。

 

***

 

つ…疲れた…

けど、何とか人の被害はゼロだそうだ。

施設優先で壊されてたみたいで、さすがにそっちの被害は大きいらしい。

こっちは何とかなったし、切歌ちゃん達と合流しようと思ったら…

 

「はじまるゾッ!!バラバラ解体ショーッ!!」

 

「調ェェェッ!!誰かァッ!!」

 

ボス戦中ですごいヤバい状態だった。

2人とも裸なのは、今気にしてる場合じゃない。

落ち着け、いつもやってる。

いつも通りやれば絶対に間に合…

 

「誰か、だなんて水くせぇ事言ってくれんなよ」

 

♪BAYONET CHARGE

 

「つるぎ…」

 

「あぁ…振り抜けば風が鳴る剣だ」

 

………完全に出るタイミング無くした。

いつも、みんな俺に対してこんな気持ちだったんだな…

 

俺としてはあんまり危険な事して欲しくないんだけど…

真面目な2人はやっぱカッコいいなぁ…




キャロルちゃん、本作では痛い子ですが、XVではシェム・ハ393に勝ちかけたり、マジで最強クラスデスね…
てか神獣鏡ヤバすぎません?最弱設定は一体何処に…

待望のクリスちゃんアマルガムとか、ビッキーがどさくさ紛れにクリスちゃんのおっぱい触ってるように見えたり、ダイダロスエンドと月の距離とか他にも色々と感想あるんですが、キャロルちゃんとラストのおっぱいの付いたイケメンビッキーがインパクト強すぎました。
やっぱりこのハイスピード展開はシンフォギアだなぁ、と思います。
たぶん、1話見逃したら何が起きてるかわからん(笑)

XV全面通して切ちゃんが可愛い過ぎデス。
12話ラストのエクスドライブのロングヘアー切ちゃんも凄くいいデスね。


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第33話 黒き衝動

やみのま!!

GX7話です。


来たか。シンフォギア。

だが、近くにブリュンヒルデちゃんもいる、か。

 

「オレが出る。お前達は手を出すな」

 

「マスターミズカラガッ!!?」

 

ガリィ…

こいつ、また訳わからん知識を仕入れてきたな…

変な奴の想い出ばっかり吸い取ってるんじゃないだろうな?

 

「計画の為だ。譜面を準備するまで、万が一にもお前達が破壊されたらオレが困るからな」

 

「サスガダァ…」

 

こいつ、既に壊れてるんじゃないか?

いや、躯体自体に損傷が無ければ問題は無いんだが…

…まぁ、下準備も後少しだ。

計画に支障が無ければ、多少は構わんか。

 

「ミカ、下がれ。後はオレがやる」

 

「わかったゾ」

 

ブリュンヒルデちゃんとのハグの想い出があるこの身体を失うのは少しばかり惜しいが、いよいよ終わるのだ。

 

「楽しませてくれよ、シンフォギア」

 

「来やがったか」

 

「だが、そのようななりで…」

 

…オレの本能が告げている。

この二人は今ここで排除するべきだと。

…何故だ?

こいつらからはあの鏡の奴ほどの脅威は感じないのだが…

もしや、ブリュンヒルデちゃん絡みか?

ならば、手を抜く理由などありはしないッ!!

 

「フッ、姿を理由に本気を出せぬなどと後で吠えられても敵わんな」

 

「ならば刮目せよッ!!」

 

ダウルダヴラの琴を奏でる。

 

***

 

赤髪のコアラみたいなのが撤退してキャロルちゃんが出てきた。

って、なんかキャロルちゃんがおっぱい美女にッ!!?

………いや、なんか確かに俺好みのおっぱい美女ではあるんだけど、キャロルちゃんがやるのはなんか違うかな、って。

出来たら戻してくんない?

とりあえず、伝わるかは微妙だが、まずは話をしないと!

あ、おっぱいの話じゃないからね?

いや、念のため、一応ね。

 

「金色の妖精よッ!!」

 

「ブリュンヒルデちゃん…くっ、大人しくしていてくれッ!!」

 

キャロルちゃんが糸みたいなのを飛ばしてくる。

払おうとしてみたけど、割と頑丈だった。

それに、全方位から飛んでくるからやりずらい。

とかやってたら、糸に拘束されてしまった。

鉄砲縛りとかマニアックなの知ってるなぁ…

マニアックな緊縛が趣味のロリとか…まぁ、ありっちゃありだね。

 

「おま…ぐはッ!!」

 

クリスちゃんが鼻血出してぶっ倒れた。

え?いつそんなダメージ受けたの?

ヤバいな…早く抜け出さないと…

 

「くっ、さすがはブリュンヒルデちゃん。ただでは縛らせてもくれんか」

 

見ればキャロルちゃんも鼻血を出している。

え?何が起きてるの?

俺、本当に特に何もしてないんだけど…

 

「さて、では貴様らの相手を…って何で既に一人脱落してるんだッ!!?」

 

キャロルちゃんがやった訳でもないの?

俺が聞きたいよ…

 

***

 

「神崎、すまないがここは私に預けて貰おう」

 

勝手に一人脱落しやがったが、ようやく想定通り装者共と戦えるな…

後は力の差を見せ付けてイグナイトを使うように誘導してやれば…

 

「ドーモ、ハジメマシテ、レンキン・ジツシ=サン。キョニュウスレイヤーデス」

 

おい、なんだコイツ!!?

平坦な胸の女がオレに実際奥ゆかしいアイサツなど…

 

「ドーモ、キョニュウスレイヤー=サン。キセキスレイヤーデス」

 

アイサツは大事だ。

古事記にもそう書いてある。

…じゃなくてッ!!一体全体何が起きている!!?

 

「キョニュウシスベシッ!!ジヒは無いッ!!」

 

「アイエエエ!サキモリ!?サキモリナンデ!?」

 

突然のサキモリの登場にサキモリリアリティショックに陥ったオレだが決断的な意志で恐怖を振り払う。

実際サキモリはコワイ!

 

「イヤーッ!!」

 

「ンアーッ!!」

 

ジョッザイ・センジョッの体現めいたワザマエを持つキョニュウスレイヤー=サンのカラテに防戦一方になる。

サキモリのワザマエはカラテで決まる。

ノーカラテ・ノーサキモリなのだ。

実際ツルギを振り回されるとスゴクコワイ!

ってさっきから何だッ!!?この精神汚染みたいな現象はッ!!?

 

「オレのレンキン・ジツを舐めてくれるなッ!!」

 

ゴウランガ!レンキン・ジツの炎がキョニュウスレイヤー=サンに直撃する。

 

「死ね!キョニュウスレイヤー=サン!死ね!!」

 

実際オレが本気を出せばシンフォギア装者などベイビー・サブミッションなのだ。

ええいッ!!鬱陶しいなッ!!なんだこれは!?

 

「イヤーッ!!」

 

「アイエエエッ!!」

 

オレのレンキン・ジツの前にしめやかに爆発四散する筈のキョニュウスレイヤー=サンが手に持ったツルギで炎を切り裂いて突撃してくる。

炎がツルギで切れますか?おかしいと思いませんか?あなた

 

ーフーリンカザンー

 

「キセキスレイヤー=サンッ!!ハイクを詠めッ!!」

 

くっ、馬鹿な…加減しているとはいえ、イグナイトも起動していない装者1人にオレが一方的に?

 

そうか…なるほどな…そういう事かッ!!

ずいぶんと陰湿な嫌がらせをしてくれるな、カストディアンッ!!

 

***

 

『私は契約に基づいて対価を支払っただけですよ?別にババアだとか、おばさんだなんてありもしない中傷、気にしていません。えぇ、気にしていませんともッ!!』

 

某事務所空間で、その空間の主である事務員は呟く。

無論、その言葉が相手に届く事は無い。

 

『それはさておき、これはただの予定調和。あの子に与えた私の本来の権能がようやく開花しただけの事』

 

誰にも届かぬ言葉を呟きながら、事務員は微笑み続ける。

 

『あの子がもう少し賢い子なら、もっと早く目覚めてた筈なんですけどねぇ…』

 

どうやら、彼女も割と苦労しているようだ。

 

『まぁ、出来の悪い子ほど可愛いんですけどね』

 

***

 

すげえ…翼さんがキャロルちゃんを圧倒している。

なんかいつも以上に訳わからん言葉使いだけど。

まぁ、俺にだけは絶対に言われたくないだろうけどね…

 

で、俺もさっさとこのマニアックな緊縛から抜け出したいんだけど、さっきからシンデレラの靴にゴッソリ絞られてて、まったく力が使えないから困っている。

どう考えても、めっさパワーアップしてる翼さんのアレが原因っぽいよなぁ…

にしてもあの防人、ノリノリだなぁ…

 

「蘭子ちゃんッ!!大丈夫ッ!!?」

 

お?響ちゃんも来たみたいだ。

とにかく、この糸外して貰おう。

 

「輝き持つ者よ、我に施されし封印を解き放…」

 

「ぐはッ!!」

 

え?振り向いた途端に響ちゃんも鼻血出してぶっ倒れちゃったんだけど…

なんか俺の周りに呪いでも掛けられてんの?

 

「響もクリスも初だなぁ…私はこういうのいつも想定してるから大丈夫だけど」

 

未来ちゃんも来てたのか。

未来ちゃんは大丈夫なんだろうか?

あぁ、そう言えば未来ちゃんのギアって呪いとかそういうのに滅法強いんだったっけ。

 

「じゃあ、私はあの子と話してくるから、ちょっとの間大人しくしててね?」

 

うそーん…

しばらくこのままという事らしい…

 

***

 

S.O.N.G.管制室。

 

「アメノハバキリ、依然出力向上。過去例を見ない伸び率」

 

「響ちゃん、バイタル低下」

 

「まったく、何やってんだ…あの馬鹿弟子は…」

 

神崎蘭子という圧倒的な存在がいるせいか、装者達には一部のメンバーを除き、緊張感が足りていない。

 

「蘭子が縛られてる!?行かなきゃッ!!」

 

先程、服を着て戻ってきた緊張感の無い最たる例は蘭子の状況を聞いて暴走していた。

見る限り、神崎蘭子に直近危機は無さそうである。

蘭子のみを戦わせるのに反対している未来が救助を後回しにしているくらいには安全圏で戦闘不能になっている。

しかし、調としては蘭子が縛られている、という事が問題なのである。

供給元であるご主人様が同類になってしまっては元も子も無い。

故に彼女にとって見れば死活問題なのだ。

 

「ギアも無いのに何処に行くつもりデスかッ!!?大人しくしてるデスよッ!!」

 

調の首筋に切歌の渾身の手刀が炸裂した。

常識人は今日も苦難の連続である。

 

その様子とモニターの先で戦ってもいないのに次々に戦闘不能になる装者を見てエルフナインは、この人達に任せて本当に大丈夫かな?と少し不安になった。

周りの大人達が一連の奇行を全てスルーしているのが余計に不気味だった。

 

それはそうと、ブリュンヒルデの緊縛方法を見て、もしかしたらキャロルとわかり合えるかもしれない、という期待も生まれてきたのだった。

生まれてこの方、感じた事の無い感情の芽生えに戸惑いを覚えるが、不思議とその感情に対する嫌悪感は無かった。

 

エルフナインは今まさに扉の前に立っていた。

 

***

 

チッ、増援か。

こいつばかりに手こずる訳にもいかんな。

しかし、奴が肩入れしてるせいか、中途半端に強くて加減が難しい。

気を抜くとまた例の精神汚染にやられるので、本当にやりずらい。

 

「イヤーッ!!」

 

「臍下あたりがむず痒いッ!!遊びは終わりだッ!!」

 

ダウルダヴラの弦を弾き、四大元素の水と炎の二重奏を放つ。

想い出の喪失感を覚えるが、もうすぐオレの悲願は達成される。

であれば、惜しい事ではあるが、ブリュンヒルデちゃんとの■■もブリュンヒルデちゃんの■■■の記憶も捧げよう。

ん?オレは何故今惜しいなどと思ったのだ?

……何か大事()()()想い出を焼却したようだな。

だが、今さら後には退けんッ!!

 

「くっ、小日向と二人掛かりで尚も押されるか…」

 

「翼さん、ここは私に任せてください」

 

「何を馬鹿な…ッ!!?小日向、まさかッ!!?」

 

「イグナイトモジュール、抜剣ッ!!」

 

やっと使ったか…

大事であった筈の想い出など、こちらの損失もゼロではないが、ようやくだ。

ようやく終わらせられるッ!!

 

***

 

小日向未来は心の奥に沈んでいく。

相対するは、黒き己。

 

『響も蘭子もどちらかじゃなく、両方だなんて都合が良すぎるよね?貴女(わたし)の愛ってその程度なの?』

 

うん、そうだね。

(あなた)はいつだってどっちつかず。

本当にどっちも好きなのかさえ怪しいね。

 

『蘭子を戦わせたくないだなんて綺麗事ばかり言って恥ずかしくないの?蘭子のおかげで今があるような物なのに』

 

うん。

蘭子には感謝してる。

でも、それ以上にあなた()を理由に戦って欲しくないの。

蘭子には、もっと蘭子自身の事を大事にして欲しいから。

 

『結局、(あなた)は自分の主張だけして、ロクに行動も出来ないお子様でしかないよね?』

 

うん、そうだ。

(あなた)貴女(わたし)

いつも考えている事だし、自分の一番許せない所。

 

でもね?

 

「この程度の衝動で塗り潰せるなんて甘く見ないでッ!!」

 

呪いの魔剣の黒い邪気は禍払いの光によって祓われる。

その先に顕れるのは、漆黒の輝きを纏う神獣鏡のシンフォギアであった。




神獣鏡健在の世界線なので、イグナイト393が生まれてしまいました…
でも、実際393は決意した後は強メンタルなのでイグナイト余裕だと思うんだ。
ぶっちゃけ神獣鏡に内蔵されてるDFSの方がダインスレイフよりたち悪いしね…

XV最終話視聴しました。
関西圏の地上波はまだ放送されてないみたいなので、ネタバレは避けますが、ただただ、ありがとうと言いたいです。
1日1万回、感謝のえっくしぶ!とかしたい衝動に塗り潰されそうです(笑)

オマケ
千川ちひろ
契約を司るカストディアン。
彼女の持つ権能も契約とその履行に特化している。
ただし、彼女に支払う対価と受ける恩恵は必ずしも比例しない。
すべては自己責任である。
今話の防人のパワーアップはR相当の強化と事象改変、対価はらんらんの全フォニックゲイン。
対価に対する結果を見れば、Rレベルでは割に合うとは言い辛いが、ランダム性が高くSSRを引けば…


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第34話 漆黒の陽光

やみのま!

GX8話です。


未来ちゃんがなんか黒いおどろおどろしいヤベエのに変身した。

ただでさえアレなのに、光と闇が両方そなわり最強に見える。

 

なんか不思議な事とか普通に起こしそうで怖い。

あのゴーグルが割とトラウマなんだよなぁ…

 

しかし、未来ちゃんも美少女なんだから無理に戦わなくていいのにね。

え?お前まだ懲りてないのかって?

正直、なぁなぁになり過ぎてる感はあるけど、何回言っても全員に反対されるから言わないだけで、俺は俺以外の身近な人が戦うのには反対なんだよ。

 

…あ、弦十郎さんは除く。

さすがに自分より強い人に偉そうな事は言えない。

 

しかし、このままだと未来ちゃんとキャロルちゃんが戦う事になってしまう。

早くこの鉄砲縛りから抜け出して止めたいんだけど、翼さんに根こそぎ持っていかれたせいか、転移もその他諸々も全然反応しなくて困ってる。

 

とりあえず、説得だけでも…

 

「陽光受けし者よ!!」

 

「蘭子、安心して。酷い事には絶対にさせないからッ!!」

 

「オレを相手に簡単に言ってくれるッ!!」

 

………ほんと、未来ちゃんってこんなに頼もしかったっけ?

 

…いや、違う。

こんな力が無い頃から、いつだってあの親友は頼もしかったじゃないか…

そんな事すら忘れてたのか…

 

***

 

さて、コイツには個人的な借りもある。

ただ呪いの旋律を受けるだけではつまらんな。

 

ブリュンヒ■デちゃんがあの状態だからアルカノイズは使えんが、しばらく遊んでやるとしよう。

 

「舐めるなよッ!!シンフォギアッ!!」

 

ダウルダヴラの弦による斬撃を放つ。

全てを切り裂く6本の斬撃だ、どう捌く?

 

ー閃光ー

 

奴の鏡の光が弦の全てを飲み込み…弦ごと消滅しただと!?

チッ、アルベドでこの威力か…凶祓い、想定以上に厄介だな。

可能なら、奴と風鳴弦十郎だけは最終決戦前に排除しておきたい所だな。

 

「なら、コイツはどうだッ!!」

 

四大元素の炎を放つ。

聖遺物に由来しない錬金術なら…

 

ー流星ー

 

力押しだと?

舐めてくれるッ!!

 

「まずは戦えないようにするッ!!お願い、届いてッ!!」

 

チッ、おとりか…

もう少し遊んでやるつもりだったが、油断し過ぎたか…

 

ー蘭愛ー

 

…おい、なんだその不快な技名はッ!?

計画変更だッ!!絶対にこの技にはやられてやらんッ!!

 

「何する物ぞッ!!シンフォギアァァァッ!!!!」

 

ダウルダヴラの弦を弾き、四大元素全てを一斉に放つ。

しまッ、やり過………

 

「馬鹿なッ!!?拮抗しているだとッ!!?」

 

おい、本当にコイツ、ミカ達に瞬殺されたのか?

イグナイトで強化されているとはいえ、オレの本気に近い出力だぞ?

 

「あなたが何の為に戦ってるか、エルフナインちゃんから聞いた!でも…私にだって、守りたい物、戦う理由があるからッ!!」

 

「ハッ、笑わせるッ!!貴様にオレの何がわかるッ!!」

 

言うに事欠いてオレの想いを理解しよう、わかり合おうとでも言うのか?

人を救う為に己の秘術を使ったパパを…恩を仇で返して裏切った人間風情がッ!!

 

不愉快だッ!!コイツはこのままここで消し去るッ!!

 

「オレの想い出よッ!!燃やして力と変われッ!!」

 

「ぐぅぅぅ…あぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

「ハァ…ハァ…ハァ…」

 

押し切ったぞ…ザマァ見ろッ!!

オレの勝ちだッ!!

 

「陽光…受けし者よ…」

 

ブ■■ンヒ■■ちゃん…そんな目で…

ッ!!?まさかッ!!?

 

「後ろッ!!?」

 

「今度こそッ!!ヤァッ!!」

 

ー蘭愛ー

 

バカなッ!!?このオレがッ!!?避けきれ…

 

……

………

 

最後のアレに関しては手は抜かなかった。

確実に息の根を止めるつもりでやった筈だ。

 

なのに…何故オレが地べたに這いつくばっているッ!!?

ダウルダヴラは…チッ、シャトーに戻らんと修復も叶わんか…

奴が近づいて来る。

 

「解せんな、どういうカラクリだ?」

 

「このギアには、人を惑わす力があるの」

 

奴が二人に分かれ、片方の存在感が希薄になっていく。

…なるほどな。ステルスとデコイか…

やはりコイツは想像以上に厄介だ。

カストディアンが排除したがるのも得心がいく。

 

…しかし、結果的に計画通りとはいえ、まんまとしてやられたのは気に食わん。

この躯体を破棄する前に呪いの言葉一つでも掛けて消えてやるか。

 

「貴様がオレの…」

 

「蘭子ッ!!?いきなり服を脱ぐなんてどうしたのッ!!?」

 

えッ!!?ブリュンヒルデちゃんがッ!!?

このダメージでソレを見てしまうと確実に失血死する自信があるが、振り向かないなんて選択肢は無かったッ!!

 

………?

おいッ!!服着てるぞッ!!言っていい嘘と悪い嘘があるだろッ!!

 

「なんてね。大人しくしててね?蘭子、今は力使えないみたいだから」

 

チッ、上手く嵌められたな…

先ほどまで激闘を繰り広げた相手とは思えない()()()手刀で意識を刈り取られたのだった。

 

***

 

チフォージュ・シャトーの謁見の間で、オートスコアラー達は呆然と様子を見ていた。

 

「……ねぇ?マスター捕まっちゃったんだけど?」

 

ガリィが信じられない物を見る目で言う。

 

「あぁ、派手に捕まったな」

 

レイアがいつも通り応える。

が、いつものキメポーズが若干崩れている。

 

「一応、譜面は出来てるから、計画通り動けばいいのかしら?」

 

ファラが困り気味に誰に言うでもなく独りごちる。

 

「アタシ達がやる事は変わらないゾ」

 

ミカは平然とやる事をやるだけだと主張する。

すげえよ、ミカは。

 

「てか、どんだけあのアイドルが好きなんだよッ!!?」

 

ガリィが爆発した。無理もない。

自分の人工知能のオリジナルがアイドル狂いの上にハニトラで捕まるとか、普通に嫌すぎる。

 

「まぁ、一時はあのアイドルの為に計画止めようとしてたくらいだし、仕方ないんじゃないかしら?」

 

そう、当人にとっては既に燃やし尽くしてしまった想い出だが、入手した二つのサインのみで計画のけの字も出なくなる程幸せそうだったのだ。

むしろ、直接的に接触する機会が増えた最近がよく保っていた方だと言える。

そういった事情を察してファラは主人にフォローを入れつつ、ガリィを宥めるのだった。

 

やり取りに飽きた戦闘特化型のミカは変なポーズをして暇潰ししていた。

何やってんだ、ミカァッ!!

 

***

 

結局、力が戻ってきたのは全部終わってからだった。

遅えよ。

 

ほんと、俺って奴は肝心な時に限って役に立たないな…

大事な事は全部溢してしまう。

 

…今回のは、いや、今回のも、さすがに堪える。

親友と、俺のファンだと言ってくれた子が戦わなきゃいけない理由なんてある筈が無い。

ましてや、それを止める事すら出来ないなんて、何がチートだよって話だ。

 

そんなだから、本当はキャロルちゃんみたいな子にファンになって貰える資格なんて俺にはないのだ。

キャロルちゃんだけじゃない。

響ちゃんも、未来ちゃんも、クリスちゃんも、翼さんも奏さんも切歌ちゃんも調ちゃんも仲良くして貰う資格なんて俺は持ってない。

 

マリア?マリアはなぁ…

何故かマリアだけには謎の安心感がある。

けど、それだってまやかしだ。

 

最後には、わかり合えない()()()()が、いつか、決定的なところで誰かを傷付ける。

それが凄く怖い…怖くて仕方がないから、せめてみんなの役に立つ自分でありたい…ありたいんだ。

夢を叶える哲学なんだろ?叶えてくれよ…

 

「またお前はウジウジしてんのかよ?」

 

クリスちゃん…

 

「あんな?未来だってそれなりの想いで戦ってんだ。あのガキだってな。お前が割って入れる道理なんてありゃしねぇんだよ」

 

「…それでも我は…争いを好まぬ」

 

ふわっと暖かく柔らかい温もりに包まれる。

 

「知ってるよ。ハチャメチャな奴だけど、お前がみんなの為に頑張ってるのも全部知ってる」

 

でもな、と前置きしてクリスちゃんが続ける。

 

「一度ぶつかんなきゃわかんねぇ事だって世の中あるんだよ。お前と未来だってそうだったろ?ましてや今回は世界潰そうって奴だし尚更だ」

 

…え?世界?それは初耳なんだけど。

 

「あぁ、お前は仕事行ってたんだったな。エルフナインって奴からアイツの目的とか色々聞いたんだよ」

 

そうなのか…

キャロルちゃんはなんで世界を壊したいんだろう?

キャロルちゃんの目が覚めたら聞いてみよう。

 

そうだ、伝わらなくたって話してみなきゃわからない。

伝わらないからってコミュニケーションすら避けてちゃ何も始まらないからな。

ちょっと臆病になり過ぎてたみたいだ。

 

「ま、どうしても辛い時はいつでも言えよ。何度だって…その…励ましてやるからよ」

 

ありがとう、クリスちゃん。

元気出た。

柔らかい感触のおかげで色々と違う所も元気になりそうだけど。

…結局、予行練習だけで一度も実戦で使わないまま無くなっちゃったけどね…

 

「感謝する。豊穣の女神よ」

 

「おう、一人で抱え込まずもっと頼ってくれよな…一緒に住んでんだからよ」

 

今さらだけど、めっちゃ近いな。

チューとかしちゃえる距離だよ、これ。

いや、やらないけどね?

 

***

 

未来が出て行った時もそうだったが、コイツは意外と繊細な心の持ち主だった。

何考えてるかいまいちわかんねぇし、やる事為す事でたらめな奴だからメンタルも強いもんだとばかり思っていたが、今回みたいに知り合い同士が争うみたいな時は普通に落ち込むみたいだ。

人として当たり前の事なのに、コイツに関してはその当たり前が適用されてないように見えていた。

 

いや、なんも見えちゃいなかった。

あのバカや未来には付き合いの長さでは負けるが、今現在はアタシが一番一緒に居る筈なのに。

コイツの抱えてるモンを何も理解せずにバカみたいに一人浮かれて本当に情けねぇ。

 

これじゃダメだ。

こんなんじゃいつかコイツが潰れちまう。

 

バカや未来はコイツの帰る場所をちゃんとやってる。

マリアだってそうだ。

先輩と後輩は…まぁ、うん…

とにかく、アタシだって…もっとちゃんとコイツの帰る場所になってやんなきゃなんねぇ。

ほんと、アタシが一番しっかりしなきゃいけねぇのに、この有り様だ。

支えてやらねぇとな…

 

…てか近ぇな。

変なテンションでちょっとやり過ぎたか?

この距離はキ…キスとかの距離だよな…

どうしよう…意識したら急に恥ずかしく…あ、コイツまつ毛長ぇな…

 

 

 

 

「ねぇ未来、あんな事言ってイチャイチャしてるけど、今回あの人鼻血出して気絶してただけだよね?」

 

「うん、それは響もだけどね?」




皆さま台風は大丈夫だったでしょうか?
私は三連休利用して関西の実家に戻ってるので事なきを得てます。
帰宅後どうなってるかがちょっと怖いですが…

それはそうと、シンフォギアロスが割と深刻です。

XVの円盤1巻購入&残り全巻予約済みですが、次の2巻がまた11月という…
XDUのキャロルちゃんで結構散財しましたが、なんとかフルマ達成しました。
…グロブレビッキーのオマケ付きで。
ガチャ結果画面でキャロルちゃんとグロブレビッキーが並んでるのはなかなかエモかったデス。

しかし、グロブレビッキー育成はまたゴールドと素材が逝ってしまうなぁ…
たやマさんもまだ覚醒MAXいけてないんですよね…


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第35話 解かれし呪詛

やみのま!

GX9話です。


キャロルちゃんが目を覚ました。

 

エルフナインちゃんというキャロルちゃんそっくりの子が様子を見ていたみたいだけど、目を覚ましてすぐはエルフナインちゃんが何を言っても「うるさいですね…」と何故か敬語の一点張りで取り付く島も無い状態だったらしい。

未来ちゃんの一言で話聞いてくれるようになったみたいだけど。

…一体何言ったの?

 

「ちょっと写真を見せただけだよ?」

 

何の写真だろ?

弱味でも握ったんだろうか?

 

「蘭子ちゃんッ!!とにかく、今ならキャロルちゃんとちゃんとお話できるよッ!!」

 

そうだな、話…しないとな…ちゃんと伝わるかなぁ…

さっきクリスちゃんに励まされたばかりなのに不安になる。

 

チートだなんだ言っても臆病者の本質がそうそう変わる訳が無い。

人とちゃんと話して自分の気持ちを伝えるのって普通に喋れても難しい。

ましてやこの謎翻訳付き…無茶振りもいいところだ。

 

それでも、俺はあの子と話したい。わかり合いたい。

 

手を繋げるかはわからない。

けど…話もせずに諦めたりはしたくない。

 

***

 

…エルフナインの視線が鬱陶しいな。

だが、コイツを力ずくで排除するつもりも無い。

まだ計画の為にやって貰う事もあるし、奴との取引もある。

タピオカチャレンジだったか?

ブリュンヒルデちゃんのあの写真はディーンハイム家の家宝に相応しい。

ブリュンヒルデちゃんと楽しくお話するだけであの写真が貰えるなんて、勘違いしてたがいい奴じゃないか。

もっとも…完全に信用はしてないがな。

 

…おっと、ブリュンヒルデちゃんが来たか。

 

金色の妖精よ(キャロルちゃん)…」

 

…ん?なんだ?

今まで、アレがオレを指す名詞というのは理解してたが、なんだかそれとは違って…

 

金色の妖精の物語、我に囁いて(なんで世界を壊そうとするの)?」

 

??????

どういう事だ?ブリュンヒルデちゃんが何を言ってるかわかるぞッ!!?

何が起きているッ!!?

 

魂の静謐か(話す気は無いの)…」

 

あ、いや違くてッ!!

あぁもうッ!!訳がわからんぞッ!!

 

「オレのパパは…助けた人に裏切られて焚刑の煤とされた」

 

そうだ…燃やして燃やして燃やし尽くして尚、あの時のパパの言葉だけはオレの中で生き続けている。

 

『キャロル…世界を知るんだ』

 

「パパはオレに世界を知れと言った…錬金術師が世界を知る為にやる事は一つ…世界を分解し、万象黙示録に収める事だけだッ!!」

 

「それは違いますッ!!」

 

ん?エルフナイン、まだ居たのか…

今ブリュンヒルデちゃんと話してるんだから邪魔をするな。

 

「ボク達のパパは…世界を壊せなんて言ってませんッ!!」

 

「想い出の器に過ぎん奴が出過ぎた真似をするなッ!!」

 

「いいえ、言わせて貰いますッ!!キャロルは間違っていますッ!!この唐変木ッ!!」

 

同じ想い出を共有してる癖に言うに事欠いてオレが間違っているだとッ!!?

泳がせておけば調子に乗って…

…ん?コイツ今オレの事を唐変木と言わなかったか?

 

鎮まれ(落ち着いて)

 

ブリュンヒルデちゃん…

 

金色の妖精の魔力の源泉は知れた(キャロルちゃんの戦う理由はわかった)

 

なれど(だけど)

 

我は哀れなる子羊を統べる魔王(私は人類の守護者)…ブリュンヒルデよッ!!」

 

…やはりそうなるか…

世界の破壊者と世界の守護者。

はたまた、奇跡の殺戮者と奇跡の体現者。

相容れる筈が無かったのだ。

 

いずれ決別の時が来ると理解してはいたが…こんなにも苦しいとはな…

心が裂けてしまいそうだ。

 

「だが、それでもオレはパパの…」

 

禁忌の扉を開くにはまだ早い(早とちりしないで)

 

???

 

金色の妖精よ(キャロルちゃん)

 

その瞳も(貴女も)我が加護を得る資格を持つという事よ(私が守るって事だよ)ッ!!」

 

ブリュンヒルデちゃん…それでもオレに手を…

 

八百万の華は我と共に在る(みんな、私にとって大切な友達だから)

 

友達…?

あの銀髪の奴とか鏡の奴とかバカっぽい奴とかドMも明らかにブリュンヒルデちゃん狙いだったが…友達だと?

 

もしかして…あるのか?オレにもチャンスが…

おっといかん、あまりの衝撃にどこぞの全裸の変態みたいになってしまったな。

 

ブリュンヒルデちゃんにとってオレはあくまで一ファンの認識の筈…

そんな路傍の石ころみたいな相手にこうも情熱的に…普通あるか?いや、無い。

 

金色の妖精(キャロルちゃん)?」

 

いかんな、少し興奮しすぎた。

今は目の前の天使に集中を…

 

翼は健在か(大丈夫)禁断の果実を所望か(おっぱい揉む)?」

 

「揉むぅぅぅッ!!」

 

「キャロルッ!!?何を言ってるんですか?気色が悪い」

 

ハッ!?オレは一体何を…?

ていうか、エルフナイン…コイツなんかさっきから辛辣じゃないか?

前からこんな奴だったか?

同じ想い出を共有してるから兄弟みたいに感じるかもしれんが、仮にもオレ、生みの親だぞ?

敵対しているとはいえ、もうちょっと無いのか?その…敬意とか…

 

「何を見ているんですか、この変態」

 

さっきのオレは擁護できんかも知れんが、コイツ言いたい放題だな…

一体何処で道を踏み外したんだ?

 

***

 

アレ?伝わらんと思って普通におっぱいトークしちゃったけどなんかキャロルちゃんに伝わってない?

 

え?揉むの?いや、別に減るもんでもないし女同士だからいいんだけど。

…もしかして、キャロルちゃんに必要なのはアレか…お母さんか?

さっきもお父さんの話しか出てこなかったし、なんか母性的な物を求めて俺に懐いてくれてるのかもしれん。

同居人2名には負けるけど、そこそこボリュームあるしね。

 

でも、そういう事ならすごい適任が居るんだが…

 

「キャッ…蘭子ッ!!いきなり転移はビックリするからやめなさいって言ってるでしょッ!!」

 

という訳で呼んでみた。

 

「ブリュンヒルデちゃん…?コイツは?」

 

「大地母神、慈愛の聖母よッ!!金色の妖精よ、甘美なるいざないッ!!」

 

うん、このダメ人間製造機に存分に甘えるといいよ。

マジで抜け出せなくなって、この世の大抵の事がどうでも良くなるから。

おっぱいも俺より大きいし、これ以上の適任はいない。

 

「いやいや待て待て待ちなさいッ!!私はお母さんじゃないっていつも言ってるでしょッ!!?」

 

いや、お母さんですよ?

さぁ、キャロルちゃん、マリアに…

 

「うぅ…あんまりだ……」

 

泣いたーーッ!!?

え?何、どういう事?

やっぱり俺が良かったの?

俺、中身男だし、あんまお母さんには向いてないと思うから適任呼んだんだけど…

 

「いい歳して何をメソメソしてるんですか?」

 

で、このエルフナインちゃんは何でこんなにキャロルちゃんに辛辣なの?

ドSかなんかなの?うちにドM居るからいる?

…噛み合い過ぎると手に負えんからやめとこう。

 

「お前にわかるかッ!!?目の前にあった黄金がいきなり石ころに変わり果てた時の無念がッ!!」

 

「わかりません。これ以上ボクと同じ顔で残念な事を喋らないでください、気持ち悪い」

 

「ねぇ?盛り上がってる所悪いんだけど初対面の相手に石ころはさすがに酷くないかしら?」

 

うん、何か違ったみたい、ゴメン。

母性はいい線行ってると思うんだけどなぁ…

でも、あくまで俺が何とかしなきゃいかん訳ね。

 

とりあえずスーパー仙○さんタイムを一から真似してみるか…

存分に甘やかしてくれよう。

 

***

 

チフォージュ・シャトーの謁見の間ー

オートスコアラー達は、計画遂行の最終確認を進めていた。

 

「じゃあ、次はフォトスフィアの入手と要石の破壊だゾ」

 

「後は派手に装者共から呪いの旋律を受ければ…」

 

「正直、それが一番骨が折れるのよねぇ…」

 

そう、アルカノイズを放ったり、目立つ行動を取ると、装者と全く関係ないブリュンヒルデが出張ってくる事は間違いない。

まるで底の見えない彼女との戦力差を考えれば、オートスコアラー最強のミカでさえ瞬殺されかねない恐ろしさがあるのだ。

圧倒的格上と遭遇しないように一緒に行動する事が多い格下だけを狙って戦わなければならないという、ハードミッションをこなす必要があった。

 

「まったく…ほんと人形使いの粗いマスターですこと…」

 

ガリィが嘆息する。

最近はアレな言動が多い造物主だが、主の命を完遂する事こそ己の最上の誉れである故、やらないという選択肢は無い。

 

「じゃあ、打ち合わせ通りにガリィちゃんが一番乗りね」

 

「マスターは?」

 

「地味に期待する程度だな。現状ではブリュンヒルデをうまく抑えてくれれば儲け物くらいしか期待できないな」

 

「りょーかい。後は相手がオッサンじゃない事を祈るばかりだわ」

 

あのオッサンが相手だと、イグナイトを起動させるまで戦線を保たせるのも難しいかもしれない。

実際に戦ったガリィはそう予測していた。

そう言った意味でも、あのオッサンと戦うのはハズレなのだ。

当然、生理的な面が一番大きいのだが。

 

本当はシンフォギア装者ですらないので、そのような心配事はアルカノイズを放ってさえいれば全く問題無いのだが、その事をガリィ達は知る由もない。

むしろ、ブリュンヒルデ対策としてアルカノイズは限定的な利用に留めるしかないと考えてさえいた。

 

「…ガリィ、お腹すいたゾ」

 

オートスコアラーで唯一、自分での想い出補給機能を持たないミカが聖杯の能力で他者に譲渡が可能なガリィに()()()()()()()補給を頼む。

 

「はいはい…これが()()だな」

 

「…サヨナラだゾ」

 

そう言って、ガリィはミカに口付けるのだった。

 

***

 

どうしよう…

 

「金色の妖精よ…」

 

「バブバブ、キャッキャッ」

 

…………うむ、やり過ぎたッ!!

キャロルちゃん、完全に幼児退行しちゃったんだけど…

さすがにスーパー○狐さんタイムフルコースは刺激が強過ぎたか…

結局、キャロルちゃんはお父さんの遺言?に従って行動してるくらいしかわからなかった。

 

とりあえず、やり過ぎた責任を取ってキャロルちゃんはうちで預かる事になった。

俺が面倒見るのは逆効果な気がするけど、俺以外が触るとギャン泣きするので仕方なくだ。

 

「お前…なんでそう…明後日な方向になんだよ…」

 

家に帰って変わり果てたキャロルちゃんの姿を見たクリスちゃんからの視線が痛かった。




普段より熊本弁多くて少し遅くなりました…
やっぱ難しいよね、熊本弁…

チャレンジカップ達成しました。
しんどかった…平日開催なら絶対に無理だったと思います(笑)
今回は高コストキャロルちゃん単騎にどう対応するかで難易度変わりますね。
連勝切られるとキツいからなぁ…
自分でやっても大して勝率高くないのに、攻め手だと一番嫌な編成とかマジでなんなんでしょうね…
作者はEXアタックにキャロルちゃん置いて全体必殺技食らったらOGAWAが単騎生存するように調整するパーティーで安定して勝てるようになりました。
全ダメ無効か上限開放済みのアイギス393がいないと勝率安定しないですね…

ただ、初実装のダウルダヴラ大人キャロルちゃんは色々と大きいので、まだの方は今日までなので是非がんばってください。


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第36話 水精の休息

やみのま!

GX10話です。


海に行く事になった。

 

建前上は特訓兼緒川さんの付き添いらしいんだけど、最近色々あったから息抜きに海で遊んで来いという弦十郎さんの粋な計らいだ。

 

「ママ~、寝る前に本読んで欲しい」

 

しかし、キャロルちゃん連れて行っても大丈夫かな?

なんかママ認定されてるし、やっぱりキャロルちゃんにはお母さんが必要だったんだなぁ…

まぁ、簡単な会話が出来るくらいには回復してるし、連れて行っても大丈夫かな?

駄目なら俺はお留守番だな…クリスちゃん達の水着は凄く惜しいけど仕方ない。

 

てか、俺が本読んで大丈夫なの?って感じなんだが、不思議と響ちゃんやマリアみたいにこの謎翻訳が通じてるみたいなんだよなぁ…

この前切歌ちゃんに同じように本を読み聞かせてみたらまるで通じてなかったから、付き合いの長さという訳でも無いらしい。

うぅむ…謎だ。

 

「ママ、早く~」

 

はいはい。

 

「過ぎ去りし悠久の時の彼方、然る地に齢を重ねし老成の番が…」

 

キャロルちゃんはニコニコしながら聞いている。

ほんと、喋ってる俺自身がこの謎フィルター言語を理解不能なのに、なんで伝わってるんだろうね…

元のキャロルちゃんなら、実はすごい長生きさんらしいからわからんでもないんだけど、今のキャロルちゃんは見た目通りの幼女の筈なんだけどなぁ…

長生きさんが条件のひとつならおねショタお姉さ…もといフィーネさんの前例もあるしな。

そういや最近話聞かないけどフィーネさん元気してるかなぁ?

今度弦十郎さんに聞いてみよう。

 

まぁ、色々思考が脱線したけど今わかってるのは、眠くなってきてウトウトしながらも必死で聞こうとしてるキャロルちゃんが凄くかわいいって事くらいだな、うん。

 

「禁断の果実に破邪なる刃を突き立てると、深奥より童子が現界し…」

 

「マリア、蘭子さんはどんな壮大なお話を読んでるデスか?スケールがただ事じゃないデスよ」

 

「桃太郎よ」

 

「…マリア、ちょっとよく聞き取れなかったデスよ。もう一度お願いしたいデス」

 

「…桃太郎よ」

 

「…………デェス」

 

うん、切歌ちゃんのやるせない気持ちはわかるよ…

俺だって言われてもこれが桃太郎とは思わん。

 

「スゥ…スゥ…」

 

あ、キャロルちゃん寝ちゃったか。

じゃあ、ベッドに連れて行くか…

キャロルちゃんが来てからクリスちゃんとも寝室分かれちゃったし、嫁成分が不足してるんだよなぁ…

何故かクリスちゃんはキャロルちゃんにめっちゃ嫌われてるから仕方なく俺だけキャロルちゃんと一緒に来客用の部屋で寝てるんだけど、元俺の部屋、クリスちゃんとマリアだけで大丈夫なんだろうか?

最近はそうでもないけど、そこそこ仲悪かったような気がするけど…

まぁ、考えてもしゃーないか…

 

あ、ちなみにうちには確実にキャロルちゃんの教育に悪い子が居るので、俺が居ない時の接触を禁止している。

酷い?…いやいや、命令口調で禁止って言ったらすっごい喜んでメスの顔してたよ…

幼女と関わらせたらダメなのくらいわかるよね?

 

***

 

明日はいよいよ海に行く日だ。

キャロルちゃんについては、弦十郎さんに許可も取ったし、万事抜かりなくみんなで行ける。

せっかくキャロルちゃんの分も水着買ったし、行けないなんて事が無くて良かった。

俺の水着は何故か未来ちゃんにゴリ押しされて勢いで買っちゃった黒のビキニなんだけど、冷静になって見るとちょっとコレ派手過ぎない?

政府所有のプライベートビーチらしいから男共の視線を気にする必要が無いのはいいんだけど…布面積が微妙に狭い気がするんだけど…

 

「いや、アタシもビキニだしそれくらいは普通だと思うぞ?な?」

 

「同意。蘭子は肌が白いし、黒がよく似合うと思う」

 

うーん…クリスちゃんと調ちゃんもこう言ってるし、大丈夫か。

身内だけなら多少派手でも見られてどうって事も無いだろうしね。

 

「はわわ…蘭子さん大胆デス…」

 

ん?切歌ちゃん、今なんか言っ…

 

「ほら、キャロル。日焼け止め入れておきなさい。着替えとタオルも忘れてないわよね?」

 

マリアは相変わらず、オカン力が高いなぁ…

俺もキャロルちゃんの母親役として、ちょっとは見習った方がいいのかもしれないな。

ああなれる自信はまったく無いけど。

 

「うん、ありがとう、マリアお婆ちゃんッ!!」

 

…和気あいあいとしていた我が家の空気がピシッ…と音が聞こえてきそうなくらい凍り付く。

ギ…ギ…という擬音が聞こえてきそうな感じでマリアが振り返る。

ホラーかよ…

 

「…キャロル?今…なんて言ったのかしら?」

 

「?」

 

「ほら、私の事よ…聞き間違いじゃなければ、今お婆ちゃんって…」

 

「?マリアお婆ちゃんはママのママだよね?だから、お婆ちゃん」

 

ついにそこにたどり着いてしまったか…

俺がママなので、俺のお母さんムーヴをしてるマリアはキャロルちゃんから見たらお婆ちゃんになってしまうのだ。

史上最年少お婆ちゃんじゃね?ギネス載れるよ。

 

「いやいや待て待て待ちなさいッ!!私はまだ21歳よッ!!?蘭子みたいな大きな娘居ないし、そもそも男性と付き合った事も無いから、子どもが出来るような事をした経験なんて一度も無いわよッ!!?蘭子も何か言って頂戴ッ!!」

 

なんか今、テンパり過ぎてみんなの前で凄く恥ずかしい事暴露してる気がするんだけど、大丈夫?

まぁ、何か言えと言われても…

 

「慈愛の聖母は、我が第二の大地母神よッ!!」

 

しか無いんだけど。

この前も言ったけど、完全にお母さんです。

マリア is お母さん。

 

「だからなんでそうなるのよッ!!?」

 

なんでも何も…ねぇ?

 

「マリア、往生際が悪いデスよ?」

 

「否定してぇなら、ちったぁ日頃の行いを見返すこったな」

 

切歌ちゃんとクリスちゃんからも追い討ちが入る。

もはやマリアがお母さんなど、我が家では共通認識だ。

ていうかこの前は冗談だと思ってスルーしたけど、マジで自覚なかったの?

 

「?お婆ちゃん怒ってるけど、わたし、何か悪い事言ったかな?」

 

「キャロルは悪くない。むしろ正しい」

 

「だから違うって言ってるでしょッ!!?」

 

何も違わないよ?

マリアはそう、言うなれば魂のお母さんだ。

 

結局、明日の準備は主戦力のお母さんがただのやかましいマリアになってしまったので、夜遅くまでかかってしまった。

深夜になっても「違うのよ」とか言いながら暗い部屋を怨霊みたいに徘徊してたけど、クリスちゃんに羽交い締めにされながら寝室に引き込まれてた。

なんかその様にエロスを感じたけど、たぶん何も無いんだろうなぁ…

 

***

 

なんか前日から色々とあったけど、やっと海に向かって出発した。

さすがに大所帯なので、バスを手配して貰った。

ん?転移ですぐ行けるのではって?

いやいや移動だって旅の楽しみの一つなんだから、無粋な事は無しだよ。

それに、キャロルちゃんにはチート頼りのズルい大人にはなって欲しくないしな。

親の俺が手本にならんとね。

 

そういや…

 

「…違うのよ」

 

昨日のアレを引き摺ったマリアが一人どんよりしてるけど、さすがにみんなスルースキルが培われてるから全力で無視してる。

…うん、まだ言ってるんだな、これが。

 

「奏、マリアは一体どうしたのだ?剣の出番か?」

 

「さぁ?蘭子に娘みたいなのが出来たってなると、ある程度想像は付くけどな。ま、そのうち復活するだろうしほっとけよ。てかお前が行くと余計に拗れるからやめとけ」

 

あ、翼さんだけスルー出来てなかったみたいでめっちゃ困惑してら。

相変わらず純粋というか何と言うか…そのままの翼さんでいてほしい。

 

「だからとてッ!!友の危難を前にして鞘走らずにいられようかッ!!?」

 

「鞘…なんだって?お前、最近なんか蘭子化が酷いぞ?お前こそ大丈夫か?」

 

失礼な、俺はオートだけど、あっちはマニュアルだよ。

…マニュアルだよね?ちょっと自信ない…

 

「にゃッ!!?こ、これはしょの…」

 

かわいい(かわいい)

基本真面目だし、クールで凛とした美人さんなのに、ふとした時に魅せるかわいさがたまらない。

翼さんの魅力はこのギャップだと思うんだ。

 

言葉遣いだけは本当にちょっとよくわからんけどね…

 

***

 

ついに海に着いた。

みんなと一緒にお菓子食べながらお喋りしてたから、移動時間もあっという間だった。

やっぱりこういう時間は旅のエッセンスとして大事なんだと思う。

パッとショートカットなんていかんよ、マジで。

 

「未来未来ッ!!お約束、言っちゃう?」

 

「誰も居ないし、迷惑にならないからいいんじゃない?」

 

響ちゃん、バスの中でも思ったけど、やたらテンション高いなぁ…

よっぽど楽しみだったんだろうな。

 

「海だぁーッ!!!!」

 

「デーーースッ!!!!」

 

日本人って海見るとなんでコレ言う雰囲気になるんだろうね?

あ、デスの方じゃないよ。念のため、一応。

 

「ママ、あの人と切歌はなんで叫んでるの?」

 

なんでだろうね?俺にもよくわからんけど…

 

「彼の者達は、魔力の昂りを言霊に乗せている」

 

まぁ、テンションとしか言い様が無いよなぁ…

 

「そうなんだ…わたしも言った方がいいのかな?」

 

「金色の妖精の魂の赴くままにせよ」

 

「そっか…よしッ!!」

 

「ウェミだぁーッ!!!!…かんじゃった」

 

…何このかわいい生き物。

娘が可愛すぎてつらいので、今なら魔王だって倒せるかもしれない。

…いや、よくよく考えると謎フィルター込みの自称だけど魔王、俺だったわ。

 

「ほら、舌大丈夫か?水飲んどくか?」

 

クリスちゃんがキャロルちゃんに駆け寄るけど…

 

「ふん」

 

あえなく撃沈したみたいだ…

なんでこんなに嫌われてるんだろうね?

特にキャロルちゃんに嫌われる事してるようには見えないんだけど…

 

「調ちゃん調ちゃん、あの人ずいぶんキャロルちゃんに甲斐甲斐しいね」

 

響ちゃん、声デカ過ぎて全然ひそひそ話になってないんだけど…

 

「響さん響さん、ああやって必死でポイント稼ぎして外堀を埋めようとしてるんだよ」

 

「かーッ!!卑しか女ばいッ!!」

 

なんで九州弁?

なんか全体的にテンションおかしくなってない?

 

おい、てめぇら…そのウゼェキャラを今すぐやめろ

 

あ、やべ…これマジおこだわ…

 

「や、やだなぁクリスちゃん…冗談、冗談だよ?」

 

「わ、私は蘭子と切ちゃん以外お断り…」

 

うるせぇッ!!群れ雀共が、まとめてぶちのめしてくれるッ!!」

 

次の瞬間、悪ノリが過ぎた二人にクリスちゃんのアイアンクローが炸裂していた…

 

「あいだだだだッ!!?!やめて止めてやめて止めてやめて止めてッ!!!?」

 

「痛みの与え方がなってない、蘭子ならもっと情熱的。このド素人ッ!!」

 

「そうなの、ママ?」

 

……………もうやだ、この子…

さすがにこれにはクリスちゃんもドン引きしていた。




来週XV2巻発売ですね。
待ち遠しいです。

故人とユニゾン回+初回特典にサントラ付くので興味ある方は是非。
翼さんのジャケットが目安です。

オマケ
九州生まれのTさん
時空を越えてビッキーに一時的に憑依した謎の存在。
公式で言った覚えの無いセリフによる風評被害を受けている。
アイマス違い。


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第37話 妖精の魔導書

やみのま!

GX11話です。


5がつ22にち

 

きょうからにっきをつけることにしたの。

ママにいったらほめてくれた。

ママだいすき!!

でもいっしょにすんでるママとおんなじかみのいろのおんなはきらい!

あいつ、ママをえっちなめでみてる。

わたしがママをまもらなきゃ!!

 

5がつ24にち

 

きょうはママがおしごとでいないからつまんない。

ペットをなのるふしんしゃにけーい?をしめせといわれた。

けーいってなんだろう?

ふしんしゃはきりかにすぐつれていかれた。

きりかは「アタシはおねえちゃんデスからキャロルをまもるのはあたりまえデス」といってた。

きりかもあねをなのるふしんしゃだった。

 

5がつ25にち

 

きょうはパーティーなんだって!!

さきもりのおたんじょうびでごちそうがいっぱいだった。

ママのつくったケーキはとってもおいしかった。

まえにたべたふわふわのケーキもおいしかったけど、きょうのクリームたっぷりのケーキもあまくてすっごくおいしい!!

あれ?まえっていつだったかな?

うーんおぼえてないしよくわかんないや。

 

あとさきもりはよくわかんないこといってた。

つるぎときたえたこのみがかようなしゅくふくをうけるとはぎょーこーとかなんとかいってたけどじゅもんかなにかかな?

 

6月3日

 

今日もママはおしごと。

でも、わたしがいい子にしてたらほめてくれるから大好き!

ぎんいろのかみのアイツをたずねてモジャモジャとおとなしそうなのが来た。

モジャモジャはとにかくうるさい。

おとなしそうなのはなんだろう?

なんかアイツこわい。

アイツらはママについてのしゅくじょきょーてー?とかいってた。

わけわかんない。

 

6月5日

 

今日はママのおしごとについていった。

はじめて見るけどアイドルのおしごとってキラキラしててスゴい!

かなでっていうママのまねーじゃーとなかよくなった。

あめくれるし、かなではすき!

ママといっしょにおしごとしてたさきもりはよくわかんない。

ママといっしょでむずかしいこといってるけど、ママとちがってぜんぜんいってることわかんないもん。

じょーざいせんじょーってなんだろう?

 

6月7日

 

今日はマリアおばあちゃんとかいものに行った。

「ナイショよ」といってわたしだけにおかしかってくれた。

おばあちゃんがかってくれたちょこれーとはあまくてとってもおいしかった。

おばあちゃんはきびしいけどやさしいからすき。

でもアイツはわたしがちょこれーとたべてるのみておばあちゃんにおこってた。

やっぱりアイツきらい。

 

6月12日

 

えるふないんとかいうわたしそっくりのやつに会った。

なんかわたしを見てコッケー?とかいってた。

にわとりさん?

アイツはなんかトゲトゲしててあんまりすきじゃない。

 

6月20日

 

今日もママのおしごとについていった。

かなでは今日はいそがしいからかわりにおがわが来た。

ママに聞いたらおがわはニンジャらしい。

日本にはふつうにいるってどこかで聞いたけど、ニンジャははじめて見た。

おがわはさきもりのマネージャーなんだって。

ママとさきもりの2人によばれたとき、おがわが2人いるように見えたけど、気のせいだよね?

 

6月27日

 

クマさんに会った。

いそいでしんだふりしたら、クマさんは笑ってた。

クマさんにはじめて会ったときのママそっくりなんだって!!

えへへ、うれしいな!!

クマさんにえいがのでぃーぶいでぃーをもらった。

かえったらママと見るってやくそくしたけど、ママはきゅうにおしごとになっちゃったんだって。

あったかいものをくれたおねえさんがあるかのいずとかいってたけど、なんだろう?

どこかで聞いたことあるんだけど、どこだったかな?

 

7月3日

 

今日はお留守番できりかとペットと3人でゲームしてた。

きりかは弱っちくて1人でデスデス言ってた。

ペットはあんまりわたしと話しちゃダメなんだって。

なんでだろう?

ママの言いつけをやぶっておこられるのもアリとかぶつぶつ言ってたけどほっとこう。

ママにおこられるようなことしちゃダメだよね!

ペットはたぶんアイツといっしょでわるいこなんだ。

わるいこだからゲームでぼこぼこにしたら、なんか喜んでた。

きもちわるい。

 

7月10日

 

アイツは今日もわたしにつきまとってくる。

すごくウザい。

何をしてもママをえっちな目で見てるかぎり、アイツはわるいやつ!!

今日はごはんにピーマン入ってたしぜったいにゆるさない!

ピーマンだけよけたらママにおこられちゃった。

すききらいするのはわるいこなんだって。

がんばって食べたらママにほめられた。

 

7月19日

 

海に行くからじゅんびするんだって。

おばあちゃんをおばあちゃんって言ったらなんかこわいかおしてた。

みんなは悪くないって言ってくれたけど、わたし、なんか悪いこと言ったのかな?

おばあちゃんはおばあちゃんなのにふしぎだな。

 

7月20日

 

今日は海に行った。

モジャモジャがうるさかったけど、すごく楽しい!

みんなでじゃんけんしたとき、さきもりだけへんなチョキだしててかっこいいチョキって言ってたけど、へんなの。

でも楽しかったのに、青いお人形さんがいきなり出てきてみんなこわいかおしてた。

青いお人形さんはわたしを見てすごく笑ってたけど、なんでだろう?

わたしは青いお人形さんのますたーなんだって。

ますたーって何?

 

7月21日

 

ママがあるかのいず?ってやつらをやっつけにいったら、わたしのところに青いお人形さんが来た。

よくわかんないけど笑いながら「ごぶじでなによりです。ますたー?」だって。

わかんないわかんないわかんないッ!!

そのあとも「いちばんのりのえいよをあずかります。ますたー、おたっしゃで」って言われたけどわたしにはわかんないよ。

でも、なんだかモヤモヤする。

 

 

 

青いお人形さんはおばあちゃんがやっつけた。

お人形さん、こわれちゃったのかな?

さいごにわたしを見るとき、すっごくやさしいかおしてた。

おばあちゃんにはこわいかおしてたのに、なんでわたしに…

心のモヤモヤがぜんぜんおさまらない。

 

オレは一体何をやっているのかッ!?

 

***

 

♪銀腕・アガートラーム

 

白銀のシンフォギアを纏うマリア・カデンツァヴナ・イヴと水を操るオートスコアラーガリィ・トゥーマーン。

1人と1体の闘いは終始ガリィが優勢であった。

お婆ちゃん事件からメンタルにダメージを受けていた、アガートラームを纏うのは過去に一度のみで馴れていないなどの様々な要因が重なっているのは確かだが、その事を抜きにしてもその力の差は歴然だった。

 

「ホラホラ、気合い見せろよッ!!ハズレ装者ァッ!!」

 

強い。この敵は純粋に自分よりも強い…

 

かつて自分は力を追い求めた。

自分から妹を奪った残酷な現実(りふじん)に打ち克つ力を。

 

しかし、どれだけ力を付けようと、待っていたのはもっと残酷な現実(りふじん)だった。

はじめて彼女が神崎蘭子の戦闘を見た時の絶望は計り知れない。

 

自分には妹の…セレナのような才能は無い。

蘭子のような現実(りふじん)を理不尽でねじ曲げるような力も持っていない。

目の前の敵にすら勝てないちっぽけで矮小な存在でしかない。

 

「だとしてもッ!!」

 

今、自分の後ろには守護るべき人が居る。

自分をお婆ちゃんと呼ぶのはいただけないが、彼女は大事な家族だ。

なんとしても、彼女が避難する時間だけは稼ぐ必要がある。

 

ーINFINITE†CRIMEー

 

銀の左腕から短剣を抜き、周囲に展開、放出する。

 

「まぁたそれぇ?もう見飽きたんですけどォッ!!」

 

ガリィが水を纏う手を横に薙ぐと全ての短剣が力を失い地に落ちる。

 

「さぁて、そろそろ昨日の続きをやって…ってオイッ!!」

 

ガリィがマリアの方に向き直すと、キャロルを抱えて走るマリアの後ろ姿が見えた。

敵の討伐よりもマスターの安全を優先する様には好感を覚えるが、今この時に至ってはガリィにとって非常に都合が悪い。

 

()()()()()()()()()()()()()()()

 

同僚達が倒されるリスクを承知で神崎蘭子の足止め役を買っているのだ。

失敗しましたなど彼女の矜持が許さない。

 

「このままキャロルだけでも…ッ!!」

 

「オイ」

 

咄嗟に短剣で受け止めるが、急に現れたガリィの横薙ぎに対応できたのは半ば奇跡だ。

 

「舐めた真似してくれんなよ?ハズレ装者…」

 

クルクルとその場でバレエダンサーのように回りながらガリィはマリアに詰め寄る。

 

「オラッ!!」

 

「キャッ!?」

 

ガリィの力押しに耐えきれず、マリアが吹っ飛ぶ。

どうやらその一撃でマリアは気絶してしまったようだ。

 

「あっ、ヤベ、やり過ぎた」

 

「お婆ちゃんッ!!」

 

己の主に目が行く。

え?お婆ちゃん?どういう事?なんで覚悟決めた今になってそんな面白そうな事になってるの知っちゃうかなぁ…

最高級の料理が目の前にあるのに手を出せない無念。

もし、造られた存在であるガリィに心という概念が備わっているとしたら、ソレは悔しさ、という言葉が相応しい。

しかし…

 

「マスターにおかれましてはご機嫌麗しゅう。戦闘中なので略式で失礼しますね☆」

 

スカートの端を持ち、主に挨拶する。

 

「ご無事で何よりです。マスター?」

 

「え?なに?わかんない。わかんないよ…」

 

困惑しているところを見るに主は自分の事がわからないようだ。

寂しい、と人であれば感じるところだが、彼女はオートスコアラー。

我が名はガリィ・トゥーマーン。

杯を司り、キャロル・マールス・ディーンハイムに仕える終末の四騎士(ナイトクォーターズ)の1人なのだ。

ならば、ここで主に伝えるべき言葉は一つしかない。

 

「ガリィは一番乗りの栄誉を預かります。マスター、お達者で」

 

***

 

『マリア姉さん…』

 

セレナ?私は…アイツに…ッ、キャロルはッ!!?

 

『大丈夫、マリア姉さんは気を失ってるだけだから、あの子もまだ無事』

 

そう、良かった…って全然良くないわね。

状況は変わってない。

 

『マリア姉さんはアイツに勝ちたい?』

 

…正直、難しいと思ってるわ。

切り札のイグナイトも昨日みたいに失敗したら…

そうなったら誰があの子を守護ると言うの?

 

『だから蘭子さんが来るまで時間稼ぎ?』

 

仕方ないでしょッ!!?

私に力があればッ!!

でも、私はあまりにも弱い…弱いのよ…

 

『慈愛の聖母よッ!!秘められし魔力を解き放つ時は今よッ!!』

 

セレナ?なんで今蘭子の真似を…

 

『弱いなら弱いままでいい。マリア姉さんらしさであの子を守ってあげて』

 

セレナ?待ってッ!!?

だからなんで蘭子の真似を…

 

***

 

それは夢か幻か…

気を失った数瞬、亡き妹の声を確かに聞いた。

ずっと弱いままの自分は駄目だと思っていた。

 

しかし、それでも尚弱き自分の罪の象徴たる亡き妹は自分の為に声を届けてくれた。

恨まれているとばかり思っていたが、フロンティアの時といい、自分はどうにも心配ばかりさせているらしい。

 

…人並みの幸せに触れて長らく忘れていた。

 

弱い自分からの叛逆

 

これこそが自分の始点(スタート)であり、原点(オリジン)

ならば、今ここで弱い自分を自覚した事がなんなのか?

痛い程に知っている事を再度自覚しただけである。

年頃の女子高生からお母さんと呼ばれたり、幼女からお婆ちゃんと呼ばれる事の方がよっぽど深刻だ。

今、そのお婆ちゃんと慕ってくれる幼女が危機に晒されている。

彼女を守護るのは一体誰だ?

私をおいて他に誰がいるッ!!

 

「アン?ようやく起きたか?ハズレ装者ッ!!」

 

右腕を氷の刃に変えてガリィが突進してくる。

短剣で受け止めるが、やはり力の差は歴然だ。

 

「キャハハハハッ!!弱っちいッ!!弱っち過ぎるぞッ!!ハズレ装者ァッ!!」

 

ガリィが氷の刃を振り回す度に受けきれずに新しい傷を負う。

 

「そんな事…私が一番よく知っているッ!!」

 

だが、先程までと違い、彼女の眼の輝きは微塵も絶望の色を映していない。

 

「私はもう二度と失わないッ!!溢さないッ!!」

 

長い戦闘で初めてマリアが攻勢に出る。

 

「だったらどうする?ハズレ装者ッ!!弱っちいお前がどうやって力に対抗するっつうんだよッ!!?」

 

斬撃を受けたガリィの身体が水になって崩れ落ち、背後からまたガリィが現れる。

 

ガリィへと向き直り、シンフォギアのコアに手を伸ばす。

それは…ただ、強くあろうとした弱い自分から、弱さを受け入れた弱い自分へのバトンタッチでしかないのかもしれない。

 

()()()()()

 

「そうだ…らしくある事が強さだというのなら…」

 

「私は弱いまま、この呪いに叛逆してみせるッ!!」

 

「イグナイトモジュール、抜剣ッ!!」

 

その時、白銀は漆黒に染まった。




序盤読みにくかったらすみません。
幼女化キャロルちゃんの成長の過程と周囲への認識を書いときたかった。
らんらんは今回ほぼお休みですが、カッコいいマリアさんが書けてるといいなぁ…

XV2巻購入しました。
やっぱりアマルガム回素晴らしいですね。
何回も見てるのに、サンジェルマンとのユニゾンで泣きそうになります。
有名な話ですが、これの元ネタがシンフォギアライブというね…

オマケ
セレナ・カデンツァヴナ・イヴ
姉が相当心配なのか、シンデレラの靴の助けを借りてちょくちょく姉にアドバイスを送るマリアの妹。
心優しい性格で、死後バラルの呪詛から解放された後も姉に寄り添っている守護霊ヒロイン。
姉にも伝わっているが妹も普通に熊本弁を理解していた。


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