機動戦士ガンダムDN (藤和木 士)
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プロローグ1 ビギンズナイト1

 どうも、皆様。初めましての方は初めまして。知っている方はお久しぶりです。以前は「藤和木弘」と名乗っておりました、「藤和木 士」です。「とうわき つかさ」と読みます。

 「機動戦士ガンダムDN」、投稿開始となります。以前の作品では、アシスタントやらも含めての前書き、あとがきでしたが、今回と次のプロローグ2だけは単独で紹介をさせていただきます。
 まずは、ここで謝罪を。前作「SSRと言う名のG」の更新停止、誠に申し訳ありません。停止以降も読んでくださる人もいるようで、悩みましたが、こちらを進めたいと思っていますので、理解していただけると幸いです。

 そして初めての方に向けて、本作は「SSR」と同じく、ガンダムなどのモビルスーツが人間大サイズ、そしてある意味パワードスーツ的な扱いとなっています。これはある意味、前作から変更すべきかと思った点です。
 ただ、元々この設定・原作で元々投稿しようと執筆開始当初思っていたので、それは崩したくない、ということでこのようになりました。

 なので頑強かつ、大地に立つガンダムを見たい!という方は、ここでブラウザバックをお勧めします。私もそこを言われても、設定として決めたことなので、としか返せません。(´・ω・`)
 他には、地名などを意図的に変更しています。これは歴史改変のタグで含めている内容です。理由は簡単に、そのまま使うのはどうかと考えたためです。

 では、記念すべき新作最初の話、プロローグ1をどうぞ。


 数年前、「俺」は死んだ。と言っても、実際には死んではいない。そもそもそうであれば今ここで言っている俺は何なのだという話になる。正確には心が死んだ、ということだ。

 心が死んだ、となると色んなことを思い浮かべるだろう。深いショックを受けて立ち直れないだとか、薬のせいで精神が破壊されたとか。他にはちょっとSFチックに言えば、悪魔に魂を取られた……は、どちらかというとファンタジー単体だろうか。ともかくそれなりに並べたが「俺」の場合は最初の深いショックを受けた、というのが答えだ。

 「俺」には幼馴染がいた。けれど死んでしまった。命を失った。それを見て「俺」も心が死んでしまった。ただそれだけだ。けれども、それは今もなおその出来事は「俺」の心を殺し続けるのには十分な出来事であった。

 あの事件から5年……正確には5年と半年ほどだろうか。それだけの月日がたった。今日は国民の休日の1つ、成人の日。そして成人式だ。「俺」は20歳を迎え、今日は友人達と共に成人式、それに式の後のパーティーに参加する予定である。その友人達はもちろん「俺」と幼馴染の事は知っている。当時の事件が起こる前は茶化していた友人達だったが、事件以後は状況を察してくれている。とはいえ、当時の今以上の気負いからか、元から少なかった友人が更に少なくなったのだが。とはいえ、部活仲間が離れたくらいなら、それは問題ないのではとも思う。

 就職活動用として着込んだこともある、まだ硬さの残るスーツに袖を通し、服装を整え眼鏡をかけた「俺」は写真立てに目をやる。そこには、中学1年のこの時期より少し前の正月に幼馴染に撮らされた写真があった。そこには今より無表情さが全然ない、少し恥ずかしそうにする「俺」と、「俺」の方に顔を寄せて意地の悪そうな笑みを浮かべる幼馴染の少女が写っていた。

 永遠に20歳になることのできない、幼馴染の写真を手に取ると「俺」は呟く。

 

「分かってる。行けっていうんだろう。けど、俺はもう……行けない」

 

 過去の罪を置いては未来になんて行けない。それは未だに立ち止まり続ける「俺」の言い訳だった。だが、そうでもしなければ自分は現実と向き合えない。そう思い込んでいた。

 だが、それ以上の深い記憶の海に突入しようとしたところで、現実へと引き戻される。充電コードに差して机に置いていた携帯がバイブレーションを響かせる。写真立てを本棚に戻し、携帯の画面を起こす。画面にはSNSアプリの画面が表示されており、相手が友人グループの1人であることを知らせる。

 携帯の時計も既に約束の時間を少し過ぎている。そろそろ出ないと成人式に間に合わない、ということの知らせだろう。「俺」は手早く必要なものをスーツのポケットに詰めると、急ぎ足で階段を駆け下りていく。途中眠たげな妹に愚痴と少しばかりの祝いの言葉を頂いた後、親からの定期の挨拶が掛けられる。あまり返事をしない方だが、今日は色々と節目でもあるので珍しく返し、玄関を開けてその先で待っていた友人達と共に成人式へと行く。

 玄関に掛かる表札には「黒和」の苗字。そしてそこに続く4人の名前……その中に「俺」こと、「元」の名前があった。

 

 

 

 

 成人式が終わり、時刻は既に7時半。三枝県四河市(みえけんよつかし)の有名ホテル「四河グランドホテル」8階では既に「市立四河中央中学校」卒の新成人らが成人式後のパーティーに思いのまま盛り上がっていた。久しぶりの再会に号泣とまでは行かないが懐かしむ声と談笑にしゃれ込んだりと、既に活気に満ちていた。

 その少し離れた壁際に黒和元とその友人達もいた。飲み物を片手にメガネをかけた手先が器用そうな青年がその場にいた4人のうち一番身長が小さい、髪を刈り上げている同年代の男に話を振る。

 

「……で、そっちの学校はどうなんだ?道氏?」

 

「道氏って呼ぶなって……!まぁ、ぼちぼち。単位は落としてないから問題ないってーの。それより、既に働いてる組の平氏と海氏はどうなんだよ~、仕事と特にこれの方!」

 

 道氏と呼ばれた男は呼び名を訂正しつつも、返しと共に話を振った青年と4人の中で一番背の高い、少し暗めの眼鏡をかけた男に逆に質問を投げかける。髪を刈り上げた男の手は丸を作っており、それがお金のことを意味するということが分かる。表情からも、如何にもお金にがめつそうな表情だ。

 しかし、ため息をつきつつも、いつもの様子といった具合で青年と暗めの男がその問いに答える。

 

「ホント、そういう関連ばっかだな、道氏。……2年目だけど、まだ慣れてるところの方が多い気がするよ。それよりも、上司がいちいち突っかかってくるのが気に入らないけどな。あ、給料はそれなりにもらってるぞ。趣味に十分使えるし」

 

「がめついなぁ、道氏も……。あー……俺も北さんと同じくって感じかなぁ……。けど、俺の場合はミスも多いし、それで納期がやばいってなって定時超えることもよくあるけども……。それで、給料は俺も平均くらいはもらえてるかな」

 

 各々の仕事内容と給料をはっきりとではないものの、ちゃんとやっていること、もらえていることを示す2人。話を聞いた本人も納得を示すも、ただ一点の事だけは指摘する。

 

「はー、流石ですわ、働いてる2人は!というか、道氏はやめろって!」

 

「えー、いいじゃん。道氏は俺らの事を海氏とか平氏とか呼ぶんだし」

 

「まったくもってだな。元にも……というか、今更だが何で元だけ、元氏とかじゃなくて和氏なんだよ」

 

 自身の名前である元という声にも気づかず、俺は遠くを見ていた。と言ってもその先はカーテンに覆われたステージ。なんでも、今日は特別な「お披露目」があるのだという。だが、今の元の目線はステージを見ているというものではなかった。正確には「今この光景を見ている自分は一体誰なのだろう」というものであった。

 異質かもしれないが、あの事件以来、元はこういうことに陥ることがある。当時を振り返ってみればそれは現実を受け入れられないが故の呆然さが前に出ていただけのことだった。しかし、今なお続くこれはどこかそれとは違う。まるで今あるこの景色を見ている自分は、別の誰かのように思えてしまうようになったのだ。

 とあるオカルト系サイトではこの世界よりも高次元の生命体が自分達を動かしている、なんて話もあったが、そんなものではない。ここにいる自分がこの世界に合っていないように感じられたのだ。心療内科などでは、事件のショックによるものと推測された。きっかけとしてはそうなのだろうが、しかしこの感覚はどうも違っていた。

 意識が無になるかのような感覚でジッとカーテンを見つめる元。その耳に、道氏と呼ばれていた男の声が響く。

 

「―って、おいっ!和氏!!」

 

「―――っ!な、どうした、ZE-ON(ゼオン)

 

 咄嗟にその名を呟く元。道氏とは全く関係のなさそうな名前で、誰かが聞いていれば名前を間違えたのか、と笑うところだろう。だがZE-ONと呼ばれた道氏という男はそのまま頭を抱えつつも、少し違う方面で叱る。

 

「いや、あんまりここで俺のブロガーとしてのネーム出されると……読者がどこにいるか分からねぇしよ」

 

「あぁ、悪い。……けど、そんなに言っても問題ないと思うぞ?前に道治のブログの読者、更新停止してた時期あったから減ったって前に自分で言っていただろ?そんな簡単にばれることはないだろう」

 

「その真顔に限りなく近い表情で、そんな悲しいことを平然と言うんじゃねぇ!!泣くぞ!!」

 

 新成人を迎えた直後での「泣く」という発言は、周りにいた同級生らにも聞こえ、少しばかり笑いが起こる。ZE-ONこと道治も自身の失言に気づき、慌てて平静を装う。他2人も同じく笑いを堪えつつも話を戻そうとする。

 元がZE-ONと言い、友人2人から道氏と呼ばれていた男の名は「桐谷 道治(きりやどうじ)」。中学の友人で、当時は社会分野のテストではほぼすべて満点を取り、その後は社会的問題などを主題とするブログをやっており、今では県外の大学に通いつつブロガー「ZE-ON」として活動している。元が口にしたのは、ブロガーとしてのハンドルネームであったのだ。

 ちなみに友人のうち、眼鏡をかけた暗めの方は「佐倉 海斗(さくらかいと)」。同じく中学の友人で現在は工場で働きつつ、ネット小説の投稿とライトノベルの賞に応募している。ちなみに過去に一度賞を受賞したはずだ。そしてもう一人の眼鏡をかけた好印象の青年は「星北 平次(ほしきた へいじ)」。彼だけは小学生からの友人であり、この中では元とは一番付き合いが長い。現在は海斗とは別だが、機械部品の工場で働いており、趣味でプラモデル工作とフィギュア収集を行っていたりする。

 3人とは事件前からの知り合いで、事件後は趣味の相談をされると同時にこちらのケアを行ってくれていた。元自身も最初はあまり乗り気ではなかったが、それでも大分救われたところもあった。だがもちろんこちらも彼らの悩みを聞くこともあり、結果として助け合って無事中学生活を乗り切ったというのが正しいだろうか(ただし、道治の場合はガセネタをつかまされた時の愚痴相手もさせられたが)。

 しかしながら、彼らが居なければ俺は卒業すら危うかったかもしれない。高校進学もギリギリだったが元々希望するところに行けたので彼らには頭が上がらない。

 と、そこで元は会場の一角に出来ていた人混みに気づく。誰かを囲んで話が盛り上がっているようだ。その視線の先に気づいた平次が元に聞く。

 

「どうした、元。なんかあれが気になるのか?」

 

「ん?……あぁ、まぁ……。こういう場ではよくあることなんだろうけど……」

 

 なんとなく見ていただけ、なのだが道治は茶化すように冗談を囁いてくる。

 

「まさか……可愛くなった女子とかいたのかぁ~?」

 

「アホか。というかその発言、女子が聞いたら色々と誤解するぞ」

 

 調子づく道治を、ハエ叩きで始末するかの如くツッコミを入れる。海斗も元の話の流れに乗る。

 

「確かに……じゃあ成人式の時には可愛くなかったのかって、袋叩きに遭いそう。けど、道氏ならその方が良薬になりそう」

 

「俺はMじゃねぇ!!あと、道氏やめろ!」

 

 まるで芸人のような雰囲気だが、これも悪くない。何せ今日は成人式。主役は俺たちなのだ。だからこそ、節度は守らなければいけないのだが。

 と、そこで人混みの中から誰かが出てくるのが見えた。周りの女性達よりも少し小さい、むしろ少女と言うべきだろう。だが、ここは成人式の場であり、年齢は間違いなく元達と同い年。同級生だ。だが若干着慣れない様子、もしくは恥ずかしがりながらパーティードレスを着るその姿は身長の低さを気にしない程に周りに見劣りしていない。簡単に言えば、綺麗だった。

 だが驚くべきはその彼女の行く先だった。何やらこちらの方に……いや、間違いなく元の方に向かってきていた。そして彼女の口から自身の名前が飛び出してくるなど、思ってもいなかった。

 

「は、元……君。ひ、久しぶり……!!」

 

「え、あ……久しぶり……?で、いいのか?」

 

 目の前の少女が誰なのか、覚えていない元にとってはこれが精一杯の回答であった。当然先程まで彼女を囲っていて、こちらの方に目を向けていた同級生の女性達は散々言っていたが、当の本人は無理もないと言った様子で恥じらいながらも答える。

 

「と、当然だよ……ね。普段私、こんなの着た事なかったから……。中学の時、美術部にいて……そのっ、お昼ご飯も一緒に食べてた……!」

 

「……あー。……ひょっとして、蒼梨さん?」

 

 そう聞くと彼女はコクコクッと頷く。「蒼梨 深絵(あおり みえ)」。中学時代に彼女が学校の不良方面の先輩に絡まれていた時に、幼馴染と共に助けたことがある。その時が縁で知り合いとなり、よく昼食を3人で食べていたものだ。悲劇以来は少し疎遠となってしまっていたが、何度か登校拒否になっていた時の自分に、わざわざ家までプリントを届けてくれたこともあったのを覚えている。

 少し記憶を掘り起こしてしまったものの、悪い気はしない。蒼梨は昔、オシャレなどとはほぼ無関係のような人物であったのに、今目の前にいる彼女はそんな頃の彼女とはとても思えない、可愛らしさがあったからだ。元もそれを指摘して褒める。

 

「へぇ……あの頃よりも……って少し失礼かな。けどすごく綺麗だと思う。俺も誰か分からなかったし」

 

「ふぇあ!?……あ、ありがと……う。元君は、あの頃より変わって……ないね。失礼かもしれない……けど」

 

 元の言葉に照れつつも、蒼梨もまた元の姿に感想を告げる。変わっていないというのは、おそらく2つの意味であろうと元は認識する。1つは、あの頃と肉体的な姿が変わらないということ。そしてもう1つは……元自身が出す雰囲気のことだろう。

 失礼だというからには、間違いなくそうだろう。少し息が詰まるも、蒼梨がそれを察してか話題を変える。

 

「そ、それより、今日のパーティーって何か、重要な発表があるみたいだけど……キャッ!」

 

 と、そこで空気を読んでいるのか読んでいないのか、道治が急に話に入ってきて、その話について語り始める。

 

「そうなんだよ~!!俺もちょーっとだけ、実行委員から話を聞いたんだけど、なんでも、新・時・代の作業ロボット?みたいなのが出るらしいんだよ~!!今日のブログネタはこれで頂き!って感じで……」

 

「ちょっと、桐谷君。なっしー怯えてるじゃん!」

 

「そうだそうだー。ハッジーといい雰囲気だったのにさー!」

 

 流石に見かねたのか、先程まで蒼梨の周りにいた同級生の女性達が道治を非難する。かわいそうだが、今回のは明らかに話に割って入ってきた道治が悪い。とはいえ、助け舟を出さないわけにもいかないし、明らかな誤解も生まれているのでそれを訂正するためにも話に加わる。

 

「そうだな。道治、それも気になるが、とりあえずお前は少し黙ってろ。あと、いい雰囲気ってなんだ。これくらいは普通だろう」

 

「ちょ、和氏……!」

 

「あらあら~、これくらいは普通だってー、なっしー!!」

 

「うう……マイちゃん、は、恥ずかしいよぉ……」

 

 そんなことを話していると、マイクを通して、聞き覚えのある声が会場に響く。

 

『えぇ、同級生皆様。今日は集まってくださり、ありがとうございます。四河中央中学卒業式にて答辞をやらせていただいていました、鈴川光姫です』

 

 鈴川 光姫(すずかわみつき)。彼女は元の幼馴染であった「間宮 柚羽(まみやゆずは)」の一番の親友であり、それもあって元自身もかつてはよく声をかける女友達であった。

 だがあの事件以来、めっきり話さないようになった。いや、正確には元自身が彼女を避けていたようなものだ。彼女はこちらを心配していたが、それを断っただけ。関わるなと、言ったのだから。

 当然、この場に出てくることは予想出来ていた。しかし、この後の話は予想だに出来なかったものが多すぎた。

 

『まず、言いたいことは2つ。1つは、私、結婚しました!』

 

「ブフッ!!」

 

 思わず水を吹きこぼす。パーティー会場にいた面々も様々な反応を見せる。動揺・歓喜……反応はそれぞれ。もちろん、平次達の反応も様々だ。

 

「なんだ、結婚披露宴を兼ねてるってか?」

 

「ファー!?新時代の作業ロボットはガセネタってか!?ざけんなー!!」

 

「落ち着けよ、道氏……」

 

「だから俺は道氏じゃねぇー!」

 

 ……まぁ、若干1名、全く違うことに腹を立てていたが。が、そんな声が聞こえたのか、それとも別でこうなることを予測していたのか、光姫は続けてわずかな訂正と、もう1つの話題について触れる。

 

『あー、正確に言うと、もうすぐ結婚、なんだけどね。で、もう1つの話。ちょっと会場でも聞いてた話と違う!って声が聞こえてるけど、そっちも関係があるの。……実は、私の結婚相手が開発してる、次世代作業用メカの試作機をお披露目したいの!なんと世界初!!』

 

 同時にざわっと会場内が騒ぎ出す。無理もない。成人式の余興程度の話にとても収まらない話題が飛び出たのだから。というか、世界初のお披露目をこんなところでやるのは果たして大丈夫なのだろうか。マスコミに見せるのが一番だと思うのだろうが……。

 しかしながら、それに意見を言えるわけもなく、光姫が次のステップへと進める。

 

『さっ、こちらが私の花婿。新型作業用スーツ開発者の次元 黎人(じげんれいと)!』

 

 光姫が示すと、その先から壇上へ1人の男性が上る。白のスーツの上から、白衣という、少し光が反射しすぎではと思う姿に目が行くが、髪もまた特徴的だ。髪型は少しぼさぼさの、短めのヘアスタイルだが、黒と白という珍しめのメッシュが目に留まる。何か危険とは別の意味でヤバそうな人物のような気がする。

 しかし、その線は別の場所から否定されることとなる。次元黎人の顔を見た道治が、目を丸くする。

 

「あ、あれは次元博士!!」

 

「道治、知ってるのか?」

 

「あぁ。新たな二足歩行ロボットのプランを展開して、世界を驚かせたっていう、若き天才科学者だよ!ついこの間ニュースで取り上げられた時に二足歩行ロボットの新たな可能性を見せたいって言ってたけど……まさかっ!?」

 

「新たな二足歩行ロボット、ねぇ」

 

「あー、俺も前に見たことがあったな、そのニュース。けど、動力がまだ確保できてないとか言ってた気が……」

 

 そうなのか、と元は心の中で思う。元はニュースも見るが、あまりそれに注視したことがなかったため、見ていないか、もしくは忘れてしまったのだろう。自分もこの1年、短期大学の就職活動に振り回されていて、そこまで頭が回らなかったに違いない。

 とはいえ、周りも自分と同じような人がほとんどなので、元も気にせずその成果について見せてもらうことにした。黒と白のメッシュの白スーツの男、次元黎人はマイクに向けて声を発する。

 

『皆様、ご紹介に預かりました、新型作業用スーツ「モバイルスーツ」の開発責任をやらせていただいています。私、次元黎人と申します。本日は嫁の鈴川光姫……いえ、もう次元光姫と言えばいいのかな?彼女のこのめでたい日に合わせ、私も本日、皆様へのお祝いと称してこの発表をさせていただきます』

 

 その紹介と共に同級生や当時の担任達が歓声を上げる。ちょっとしたジョークも入れるあたり、なかなか気遣いはあるのではないだろうか。そう、道治よりもそう言った才能はあるのではないかと思う。とはいえ、道治は道治ですごいところはあるので比べる意味がないというのが正しいだろう。

 そして、黎人が手を挙げてその成果を披露する。

 

 

 

 

『ご紹介いたします。これが次世代の新たな作業用スーツ……『モバイルスーツ』試作第1号、「ガン・ファイター」ですッ!!』

 

 

 

 

 カーテンが開かれ、その中が外気にさらされる。数多の機械が並ぶ中、中央に佇む1体のロボットがいた。銀色のボディに走る黒いライン。機材と通信するために肩から生える2本のフラッグ状のアンテナ。そしてバイザーの奥に光る2つのカメラアイ……。その姿は、戦争物のSFに出てきそうなロボットを人のサイズにまで小さくしたようなものだった……。

 

 

 

NEXT EPISODE

 




 ここまでお読みいただき、ありがとうございます。久々の投稿で文章の方に少々不安がありますが、出せてよかったと自分では思っています。

 しかしながらプロローグとはいえ、モビルスーツはガンダム自体は出ずに、代わりに試作機「ガン・ファイター」の登場のみとなってしまいました。ここから「ガンダム」が生まれていく予定ではありますので後々の展開を楽しみにしていてください。

 それでは、この話ではここまでで。同時刻に投稿されるプロローグ2もご覧いただけると幸いです。


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プロローグ2 ビギンズナイト2

 どうも、皆様。藤和木 士です。機動戦士ガンダムDN、プロローグ2となります。同時投稿している時点で「投稿また止まりそう」と思われるかもしれませんが、今度は流石にしたくないです。(´・ω・`)

 とはいえ、続けて投稿した理由は最後の方にも理由があります。お楽しみに。

 では連続投稿で、話すこともないので、プロローグ2、スタートです。



 それは、まさに歴史が動いた瞬間だったと言える。人が纏い、動かすパワードスーツのようなロボット。モバイルスーツ……後の時代のこの世界で「モビルスーツ」と呼称される様になった機動兵器はここから始まった。それは世界を動かす「力」となる。それもこの世界だけではなく、この世界の外に無数に存在する、「次元」にも影響していく「力」だ。

 だからこそ、今思い返してみると、これは「始まり」だったのだろう。そう、物語の始まりの夜……それも、「悪夢」と言う名の、この先長きに渡る暗い夜の始まり……「ビギンズ・ナイト」である。

 

 

 

 

「―――――」

 

 最初それを見たとき、大きく衝撃を受けたかのような感覚を覚える。しかし、同時に感じたのは、心地よさ……否、これは懐かしさであった。初めて見たような気がしなかった。だが、何処でそれを見たのかは全く覚えがない。そんな気持ちに戸惑う間に、黎人が次世代作業用スーツ「モバイルスーツ」について説明を行う。

 

『私はかつて、島北で起きた大震災で家族を失いました。年号が今の「洸明」に変わる前の年号の時、今から15年も前の事です。もしかすると、ニュースを見て覚えている方もいるかもしれません。当時9歳だった私は、レスキュー隊に助けられ九死に一生を得ましたが、近くの瓦礫に埋まっていた弟はあと10分早ければという所で死んでしまいました』

 

 15年前の島北で起きた大地震。「島北沿岸大震災」だっただろうか。そのことは当時5歳であった元も覚えている。確か死者1万人、行方不明者3000人ほどだったと記憶している。正確な数字で言えばもっと違うのだろうが、後々の教科書で出てくるものではこれくらいが限度だ。

 そのまま黎人は続ける。

 

『その時こう強く思ったのです。『もっとレスキュー隊の人が力を出せたなら、より多くの人を、弟を救えたのでは』と。これは決してレスキュー隊の人々を乏しめているわけではありません。ですが多くのレスキュー隊が出動してもこの地震で消えた命は少なくありません。だからこそ、自分は彼らの為に、彼らの力となる何かを生み出したいと強く感じました。そこで私が思い至ったのは、身体能力を強化する強化外骨格の開発でした』

 

 気が付くと、いつの間にか道治の姿が見えない。と思うと、既に前の方に居て、黎人の話を真剣に聞く姿があった。流石、情報屋タイプ。それもこの話題は道治が最も気になる、社会に貢献するタイプの話題だ。よく聞いて、ブログに書きたいのだろう。

 だがそれ以外にも何人かその話を熱心に聞く物はいた。機械関係の仕事をやっている平次と海斗も道治ほどではないものの、近くの方で話を聞きつつ、ロボットもとい、強化外骨格であるモバイルスーツに目を向けている。

 よくよく考えれば、2人は機械部品関連の仕事をやっている。そもそも平次はプラモデルでもロボット系列のプラモデルを制作しているために、機械部品系工場に勤務しているくらいだ。ならば余計に気にならないわけがない。海斗もおそらく仕事がら注目しているのだろう。もしかすると、2人がモバイルスーツの部品を担当することもあり得る話なのだから。

 

『元々、私が考えていたプランでは、専用スーツの上からパーツを取り付ける形でこれを装着し動かす、というものでしたが従来のバッテリー駆動ではどうしても私が目指した性能には届かないのが現状でした。そこに救世主の如く現れたのが、我が恩師でもあり、本研究の共同研究者、新たなエネルギーである「次元粒子」とそれを利用した世界初の半永久機関「次元粒子発生器」を発見・完成させた天才科学者「ツィーラン・パック」博士なのです!』

 

 黎人の声に合わせてスポットライトが来賓席にいた男性に当てられる。頭の上で少し平べったい団子状にまとめられた白髪と目元を覆うようなマスクをつけている。そして来賓用として整えられた黒のスーツを着こなす姿。白髪と聞くと相当歳がいっている気もするが、見た感じでは予想以上に若い人物だと思う。だがそれ以上に……。

 

(……なんか、すごいよな。あのマスク)

 

 白髪よりも明らかに目立っているマスクに目を引かれる。実際周りの同級生たちの話だけでも、マスクの方に注目している者が何人かいた。道治とでも話せれば、彼がどういった人物なのか更に詳しくわかるかもしれないのだが、あいにく道治はまだ前の方だ。

 今聞けないのは少しもやもやするが今は話に集中することにする。黎人がモバイルスーツの動力機関について詳細を明かす。

 

『そもそも、次元粒子とは我々の宇宙を外側から覆っているとされる、未知のエネルギーです。詳細は省きますが、現段階の調査では、世界はこの次元粒子から出来上がっているのではないかとのことです。次元粒子発生器は、その粒子を供給する為に次元空間に穴を空け、そこから次元粒子を取り出し、これを貯蔵・運用するエネルギー機関です。これらをモバイルスーツに搭載することで稼働時間の限界を取り払う事に成功。更には装着する方式から、身体を電子……簡単に言うとデータ化させてロボットに憑依させることで更にパフォーマンスを良くする、という予想していなかった段階に技術を発展させることにも成功しました』

 

 次元粒子、次元粒子発生器。どちらもあまり聞きなれない言葉だが、今日初お披露目となるモバイルスーツとしての動力機関に採用された代物だ。たぶん、情報規制とかがあったんだろうと予測する。

 けれど、まさか技術がそこまで発展しているとは思わなかった。人と一体化するようなロボット、初めて聞いた。人機一体という言葉がSFロボットアニメにあるのは知っているが、簡単に言えばそれを本当にそのままの意味で実際に行える、ということだ。

 会場もそんな驚きの連続にざわめく。すると、そこで同級生と思われる男性が質問をする。

 

「すみませーん。それって兵器とかにも使えるってことですかー?」

 

 まるで道治が質問しそうな内容だ。しかし声は道治のものではないのが分かる。が、そこで少し不安げな声が聞こえ始める。自分達のめでたい場で行われた余興で、そんな物騒なものの単語が聞こえれば無理もないだろう。

 するとその声にツィーラン・パックと呼ばれた男性がマイクを通して回答する。

 

『良い質問です。確かに現在、モバイルスーツを軍事兵器に転用する動きはあります。実際、ここにある試作モバイルスーツ「ガン・ファイター」にも、万全なセーフティー状態ではありますが、スポンサーからの依頼で余興用に調整した試作グレネードを搭載しています。ですが、一番大事なのは、いかに兵器と向き合っていくかです。例えばモバイルスーツの技術が発展・量産化すれば、それらは国に配備される。そうなれば、それだけ防衛能力が向上するということになります。兵器は一側面ではない。様々な使い方がある。そして、それを考えていく者の1人となるのが、新成人の皆様なのです』

 

 グレネードを積んでいるという言葉にパニックになりかけるも、その後の言葉でシィンと静まり返る会場。どことなく怖さはあるが、ツィーランという人の考えも決して間違ってはいない。急な質問ながらここまで綺麗に最後の言葉にまとめたあたり、もしかすると先程の声はパーティー側の演出の可能性もある。

 沈黙が辺りを制したのち、光姫が再びマイクに向けて声を会場に響かせる。

 

『それではいよいよ、モバイルスーツの全世界初、起動デモンストレーションを始めまーす!』

 

『おおおぉぉぉぉぉぉ!!』

 

『キャーッ!!』

 

 先程までの心配はどこへか、会場に集まっていた同級生男子女子共に一斉に声を上げて盛り上げる。すると、そのタイミングで一番前にいたはずの道治がこちらに戻ってきていた。

 もうすぐ起動だっていうのに、珍しいと思っていたところで道治がガッ!っと元の肩を掴む。

 

「うぉっ。どうした、道治?」

 

 どうしたのかと聞くと、俯けた顔を一気に上げて叫ぶ。

 

「ヒョーっ!!サイッコウだぜ、あのツィーランとかいう科学者さん!!」

 

 いきなりの奇声とも言える大声に目を閉じてしまう。どうやら興奮してその喜びを伝えるために戻ってきたようだ。

 そのまま道治は続ける。

 

「確かに兵器は危険だけど、皮肉にも人は武器を使って歴史を築いてきたんだ!でも、人はその取扱いという面では武器・兵器の開発・発展スピードに思考が追いついていない人がいる……。けど!開発者の言葉から分かる……これは行ける!もしかするとモバイルスーツは人の歴史を大きく動かすかもしれないっ!……まぁ、流石にグレネード積んでるっていうのには驚いたけどな……」

 

「そ、そうか」

 

 勢いよくそう語る道治にタジタジとなってしまう。何だかんだいって、道治も昔の性格のままなんだな、と思った。とはいえ、そのうちモバイルスーツの最初のパイロットとかに志願しそうな気もしない。あんまりやってほしくはないと思うけど。というか、果たして一体化しても機敏に動けるのだろうか。

 

「とにかく、和氏も前に行こうぜ!平氏と海氏にも声かけて、もう前に行ってもらってるからな!」

 

「分かったって……そんなに引っ張るな」

 

 まるで新しいおもちゃを買ってもらい、早く家に帰ろうとする子供のように腕を引っ張る道治に返答しながら、元は人混みの中を抜けていく。

 途中、人にもぶつかり、謝るうちに何とか前に到着する。既に平次と海斗はスマホのカメラでモバイルスーツの方の写真を撮っていた。

 

「お、元見つかったか」

 

「2人とも、もう前にいたんだな」

 

「まぁ、可能性は低いけど、俺達がこれに関わる可能性がないとも言えなさそうだからね。……大部分は道治が原因だけど」

 

 海斗の表情を見て察する。道治に連れてこられたようだ。一方の道治は既にスマホのカメラ撮影を再開させていた。

 

「あ……元君」

 

 左に顔を向けていると、後方からついさっきも聞いたことのある声が聞こえる。そちらを向き、少し視線を落とすと深絵もまたこの場にいた。

 

「蒼梨か。お前もこれを見たくて?」

 

「あ、いや……前に押し出されて行って、気づいたらここに……」

 

 何とも切なくなる発言だ。もしかすると、後ろの方にはここで見たいという人もいるかもしれないが故に、偶然来てしまった彼女にとっては不幸とも言うべきなのだろう。

 状況的には彼女の知り合いは自分以外誰もいない状況だ。道治が隣なのが心配だが、元は深絵に一緒にいるように提案する。

 

「……ここから後ろに行くのも大変だし、とりあえず終わるまで俺といるか?」

 

「えっ……!?あ、うん……いて、欲しい」

 

 顔が火照りつつも、深絵は元の横にくっつくように服の袖を握る。普通は羞恥を覚えるのだろう。いつもの元なら、いくら反応が薄くてもこの状況は少し恥ずかしい。しかし、元の意識はほぼモバイルスーツの方に向けられていた。

 人が機体にデータとして憑依し、動かす。つまり、今既にあの中には誰かがいるということなのだろうか。ちょうどいいタイミングで光姫が操縦者について明かす。

 

『ちなみに、今回モバイルスーツの運用をするのは、私の妹、鈴川夢乃(すずかわ ゆめの)よ』

 

『いぇい!よろしくお願いします!先輩方っ!!』

 

 意外な人物と言えば、意外だった。夢乃はよく知っていたが、彼女がモバイルスーツの装着者だったとは考え付かなかった。もしかすると、博士の先程の言葉を証明するのかもしれない。

 そして、いよいよモバイルスーツのその時は来た。

 

『では、ご覧ください。私達の未来を照らす、新たなマシーン……モバイルスーツの目覚めの息吹を!!』

 

 光姫の声と共に機材の前で待機していた研究員と思われる人々がキーボードを叩いていく。それらの音が収まると同時に、モバイルスーツから金属の重低音が響く。やがて機体の背面か灰色の粒子が溢れ出る。

 それはまるで雪に色が付いたような、けれど、放出された先でパソコンの画面がバグでおかしく表示されたような光景を所々で見せる。粒子とは言ったが、元としては塵……ノイズ、とでもいうような光景に見え――――。

 

 だが、モバイルスーツがちょうど手を握り、腰だめに力を入れるポーズを取ったその時である。右側の方から騒ぎが起こる。

 

「ちょ……下がって!」

 

「うるせぇ!!どけっ!!」

 

 その声に咄嗟に深絵をこちらに抱き寄せる。深絵はいきなりの事で動揺するも、ただ事ではない騒ぎに気を取られ、元はそれに気づかない。

 見ると、男が警備員を殴り倒して、機材の方へと向かっていく。一方ステージ上でも来賓らが別の場所からステージを降りたり、ステージ後方に下がっていた。そして光姫もまた黎人に庇われる様にして男との距離を取る。しかし、その様子が元には何か引っかかった。すぐにその理由が分かる。

 

「まったく……相変わらず、僕の嫁を追いかけまわすようだね。君は」

 

「あぁ?あいつが悪いんだろうが!俺のすべてを失った原因の、その女をこっちによこしやがれ!」

 

 追いかけまわす、あいつが悪い、全てを失った……。あまり想像したくはないが、おそらくあの男はストーカーだろう。それも、光姫の。正直、光姫がストーカーに狙われるという状況自体、信じられなかった。

 ストーカーに狙われる姉を守るべく、夢乃がストーカー犯の前に出る。

 

『悪いけど、お姉ちゃん達は私が守るよ!ついでに、このモバイルスーツの力を見せちゃう!!』

 

 手を反対の手の平に打ち付け、金属音を鳴らす夢乃。普通に対峙するのであれば、誰もが止める光景だが、今、彼女はモバイルスーツを纏っている。この状況なら、問題ないだろう。元もそう思って状況を見る。

 しかし、その考えは裏切られてしまうこととなる。ストーカー男は奇妙な笑い声を上げる。

 

「……っくはっはっ!甘ぇなぁ……そんなの俺は超えられるんだよ!こいつでよぉ!!」

 

「あれは……」

 

 それは1本のUSBメモリであった。黒い色の、如何にもここで出すと怪しそうな、嫌な予感のするメモリだ。その予想通り男がメモリを機材に差す。一瞬の事で、警備員や研究員たちが全力で止めようとした。しかし、男は向かってくる者達を素手で押し留めた。

 周りからも不安な声が漏れてくる。そして、面白がってか警備員に助太刀するように同級生の男子達が壇上に登り始めた時である。

 

『うぇ……?っあ!!』

 

モバイルスーツが突如として飛び上がる。最初は警備員達に加勢しようと飛び込んだのだろうと思った。だが、その着地点は警備員たちが必死に抑え込む男にではなく―――。

 

「……え、うごあっ!?」

 

 壇上に登ろうとしていた、同級生の男性の頭に、拳をぶつけたのだ。殴られた男性の頭から鈍い音が走る。男性は倒れ、頭からは血が流れだす。それが引き金となり、一気に参加者達の恐怖の感情が決壊する。

 

『きゃぁぁぁぁぁ!!?』

 

『うわぉぁぁぁぁ!?』

 

 絶叫と共に観客エリアに居た参加者達がその場から逃げようとする。だが、後ろで見ていてまだ状況が理解できていない、一部のやじ馬らが前に行こうとしているせいで衝突、そして人の波が瞬く間に元達をも飲み込む。

 

「きゃっ!は、元……く」

 

「蒼梨!……っく、はぐれた……」

 

 離すまいと深絵の腕を掴んでいた元だったが、人ごみに押され離れ離れになってしまう。丁度深絵はステージの方に押されて行ってしまったため、元の背筋に冷たいものが走る。

 そんな中、後ろから肩を掴む者がいた。振り返ると、その主が海斗であることを知る。

 

「元、大丈夫か!」

 

「海斗……みんなは」

 

 そう聞くと、首を振る。どうやら、あちらも完全にはぐれてしまったようだった。海斗は肩を掴んでここから退避するように言う。

 

「けど、あいつら、特に道治なら大丈夫なはずだと思う。きっと出口の方に居るはずだ。とにかく、俺達も下がろう」

 

「あぁ。けど、まだあの奥に蒼梨が……」

 

「な、助けに行くっていうのか!?あの中に!?ダメだ」

 

 海斗に無茶をいっているのは、元自身よく分かっていた。俺が逆の立場であったなら、間違いなくそう言っているだろう。けれど……この状況下でフラッシュバックした「あの悲劇」の光景を見た時点で、もはや答えは決まっていた。

 

 

「……悪い。けどもう、俺の知り合いが死ぬのなんて…………まっぴらだ」

 

 

 その手を振り払い、元は海斗の制止に応えることなく人混みの中をすり抜けていった。

 

 

 

 

「……いたっ。蒼梨」

 

 叫び声と金属の重みのある音が飛び交う中、人混みの中で元は深絵の姿を確認する。うずくまるようにへたり込む深絵に素早く駆け寄る。その手に肩を置くと蒼梨はビクッと体を震わせてから、元の方を見る。

 

「は、元、君……」

 

「大丈夫か、逃げるぞ」

 

 深絵にそう声をかける。存外、思っていたよりも暴走するモバイルスーツに近い位置に深絵はいた。すぐ近くでは未だに辺りを破壊し、止めようとする人に襲い掛かるモバイルスーツが暴れていた。加えて、その中に憑依している夢乃の悲鳴も聞こえる。

 

『ひやっ……いやぁぁぁぁぁっっ!!』

 

 自分が望まない破壊を行う。それがどれほど苦しいことか。一方、深絵の方は元の言葉に首を横にブルブルさせる。

 

「だ、ダメ……上手く、立てない……っ!!」

 

 完全に足がすくんでしまったようだ。後方では、研究者達が躍起になって暴走を止めようとしてくれているが、それでも危険すぎる。元は深絵の手を掴み、合図をする。

 

「蒼梨、立つぞ。せーの」

 

「あっ……っつと!」

 

 何とか立ち上がるもふらふらとする蒼梨の体を支える。そして、そのまま手で押すように走り出す。

 その時である。機械の駆動音が収まるような音と共に、研究者達の声が響く。

 

「よし、止まったぞ!!」

 

 その言葉に、はっとなる。蒼梨の背中から手を放して振り返ると、無事機動を停止したモバイルスーツの姿があった。

 その手はまるでこちらに助けを求めるかのように手を伸ばしていた。夢乃も必死だったのだろう。ともかく、これで助か……。

 

 

 

 

「―――――え」

 

 

 

 

 瞬間、少し上の方で光が走る。そして、元が見上げた先で目視したのは、手榴弾形状の物だった。

 そして、それが炸裂すると同時に、元はその光に飲み込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次元世界に存在する世界の1つ、竜と機械の2つの種族が住む世界「マキナ・ドランディア」。この世界では、数百年に続く、両種族の争いが起きていた。どちらも戦争を早期に終結させるべく、様々な策を講じている。その一環として、両国各地に点在する、「とある伝説」にまつわる遺跡を調べていた。

 その伝説にて現れた「救世主」。その力を借りて、勝利を掴もうという考えはもはや幼稚であってもどちらの種族にとっても大打撃を与えられる策であった。そして、この問題に解決すべく、各国の考古学者達は自国の様々な遺跡に派遣・調査されていた。

 

「ふぃ~……戦争はまだ終わらんみたいって……なぜここまで愚かかねぇ」

 

 この考古学ロボット「ワルト」もそのうちの1人……いや、1体であった。彼の国…「機械の種族」治める国「マキナス」の人類は現在アンドロイドが大半で彼のような見るからにロボット、というのは珍しい。それ故、同族からも少し嫌悪されていたが、彼は自身の力をフルに使い、こうして考古学を中心に現在活動している。

 彼は戦争が嫌いだった。そして創世記に伝わる「救世主」をとても尊敬していた。彼がこのバカげているような計画に参加したのも、ひとえにそれが理由だ。しかし、なかなか手がかりが見つからないので、こうして夜も見回りついでに調べているというわけだ。

 だが、そう簡単には見つからない……といつも通りと思った矢先、遺跡の入り口に影を認める。

 

「ん?あれは……」

 

 カメラアイを凝らしてみる。すると、それは人であることを知る。しかも倒れているので、慌てて駆けつける。

 

「な、なんじゃ、どうして人がこんなところに……!?しかも、服も大分汚れとるみたいじゃし……」

 

 その人物は男性で、スーツスタイルの服装、そして周りの光を簡単に反射して輝きそうな銀色の髪の毛をしていた。だがその服は至る所がボロボロであり、身体にも浅いものの、やけどの傷が出来ているのが分かった。

 ともかく、早く手当てをとワルトはすぐさまラボの方まで運ぶ。

 

 

 

 

「これでよし、と。……けど、こいつ機械族じゃないのか……竜人族……いや、しかしそうっぽくないしの……」

 

 手当てを終え、考え込むワルト。手当てをしたとき、彼の体が明らかに機人族の物とは違ったためである。血や傷口、そして生体反応など、機人族の物とは完全には一致しなかった。そこで、敵国の「ドラグディア」……竜人族を疑ったのだが、それらのデータと照らし合わせてみても合致することはなかったのだ。

 丁度50%程での一致は不可解さを感じる。と、そこでワルトはあるものに気づいた。それは彼がしていたベルトであった。

 

「……ンン?これは……ハッ!?」

 

 よく見て気づく。それはかつて救世主がその身に付けていたとされるもの。この世界で戦争の中心となっている機動兵器「モビルスーツ」を装着するための装置「スターター」のオリジナル、それによく似ていた。

 一瞬、模倣品かとも思った。だが、先程の手当ての際に調べたものが回路に走り、とある結論を出す。

 

「まさか……彼が、救世主……!?」

 

 本当かどうかは分からない。だが、それはワルトにとって目の前に現れた、自分の望みを叶えてくれる一筋の希望だった。それは彼自身の欲望……自分が救世主となるという野心に火をつけるには十分だった。

 ワルトはすぐさま準備に取り掛かった。彼が本当に救世主(ガンダム)なのか、自分の望みを叶えてくれる希望なのか。それを確かめるために。

 

 

 

 

 

 

 その夜更け頃である。ワルトのラボが大爆発を起こしたのは。爆炎がラボを飲み込む、そんな中から1つの影が上空に飛び出す。夜の帳に怪しく光る2つの「目」と月明りを反射させるV字型の頭部アンテナ。背部から吹き上がる、蒼炎とも言える蒼い粒子とそれを放出させる異形の翼を持つ、夜の闇に溶け込むような黒い機人。

 見届けるかのように静止していたその機動兵器は、しばらくしたのち、その場から飛び去った。そうして、始まりの夜は明け、全てが始まったのである。

 

 

NEXT EPISODE

 




 今回もお読みいただき、ありがとうございます。以前と違って、少し予定投稿がしずらい状況ですので、次回投稿などは今作ではしない予定です。

 プロローグ最後の飛翔するガンダム……果たしてどうなっていくのでしょうか?あ、ちなみに主人公の黒和元に関してですが、銀髪に変わっていますが、転生ではなく「順応」という設定になっています。何に「順応」しているかは、まだ明かせませんが。
 他にも、いきなり異世界に移っている点については、前作「SSR」の影響も少なからず受けているためです。異世界突然転移好きやな、私。( ゚Д゚)

 では次回から第1部、第1章ことLEVEL1、スタートしていくので、お楽しみに!!


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LEVEL1 異世界戦争編 第1章 竜と機械とガンダムと
EPISODE 1 出会い1 


どうも、皆様。作者名変えてから4日目の藤和木 士です。未だにここ藤和木弘って打ちそうになります(´・ω・`)

ジャンヌ「まぁ、最初のうちは無理ないんじゃないんですか?こちらでは初めてですね。藤和木のアシスタント(話し相手役)のジャンヌ・ドラニエスです」

レイ「同じく、話し相手2のレイ・オーバだよっ!」

ちょ……(´・ω・`)話し相手役って……

ジャンヌ「だってそうじゃないですか。元々ここを少しでも埋めやすくってことで始めたんですし」

レイ「もう埋められると思うんだけどね、今の藤和木なら。というかここあんまり長くても意味ないと思うよ?」

(´・ω・`)まぁ、うん。でも癖が付いたって感じ。ではEPISODE1です。

ジャンヌ「悪癖ですね」

レイ「というか、話数とタイトルの形式変えたんだね」

いちいち考えるの面倒になってしまった(´・ω・`)すまない。ではどうぞ。


 M.D.1428年。次元世界「マキナ・ドランディア」。この世界ではとある2つの種族による戦争が勃発していた。機械の力で制し、自らを機械の体に変えて暮らす「機人族」。そして竜の力を制し、巨大な竜を従える「竜人族」。彼らは互いに争い合い、1000年以上もの間、争いを続けていた。

 そもそも、彼らは元々同じ種族であったが、考え方の違いから2つに分裂し、戦争を始めたとされる。そして、彼らがその力を手に入れたのはとある1つの存在にあった。

 この星が2つの種族を抱える一端を記した書「機竜創世記」。そこに登場する「救世主ガンダム」と呼ばれるその存在は、彼の操る巨大な機械の竜と共に彼らの戦争を終わらせた。そして戦いが終わると、彼らの種族に自身が持つ竜と機械、それぞれの力を分け与えたのだという。その後、それぞれの種族が代表して自分達の国とそれにふさわしい「象徴」を誕生させた。

しかし、結局争いは収まらなかった。続いて両軍ともに救世主を模した新たな戦争の道具を誕生させたのだ。

機人族の生み出した機械の体と、竜人族の力で誕生させた、世界を構築するエネルギー「ディメンションノイズ」通称DNを生成する「DNジェネレーター」を搭載する機動兵器「モビルスーツ」。結局戦争は救世主によってもたらされた新たな力で更に激化していった、と言われる様になっていた。

 そして今日も、両国家の地続きの国境線で戦闘が勃発していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦場を光の矢と鋼の弾頭が埋め尽くす。その間隙を縫うように、バイザーを横にずらして赤く光る丸い2つ目を晒した、角ばった装甲を白く染め上げたモビルスーツが次々と突貫していく。それに対し、ライフルからビームを撃ち続けるモビルスーツ。こちらは黒いカラーリングに、各部が丸い装甲、そして頭部は口を開けた竜の頭部を模している。

 迎撃も抜けて接近戦を仕掛けてくる敵に、竜の頭部を持つモビルスーツは、その口を閉じる。否、口の部分と思われていた狙撃用カメラを収納し、上部の接近戦用のカメラに切り替えて迎え撃つ構えだ。ライフル射撃しつつ突撃する機体を避けると、竜頭のモビルスーツは腰部から棒状のデバイスを抜く。そのデバイスから光の剣――ビームサーベルが形成され、一閃する。赤い丸目のモビルスーツのライフルを持つ右腕を肘から両断し、蹴り飛ばす。

 蹴り飛ばされた赤い丸目のモビルスーツはそのまま退こうとするも、別の方向から僚機の放ったビームライフルの弾に貫かれる。スパークを散らせ、その機体は爆発を起こす。爆発の中に赤い粒子……DN(ディメンションノイズ)が溢れる。しかし、それを見届ける間もなく、竜頭の機体……ドラグディアの量産型モビルスーツ「ドラグーナ」は他の戦闘空域へと向かう。

 その中で、ドラグディア側の軍に一際ほかの機体と外観の違う機体があった。ドラグディア軍のとあるエース専用機「ドラグーナ・ガンドヴァル」。隊長機の「ドラグーナ・コマンド」をベースに近接戦・騎竜戦闘に重きを置いた機体である。その機体はドラゴンの背の上に立ち、回線で味方に指示を出していた。

 

「了解した。左翼部隊、持ちこたえろ、オレが行く」

 

 その声と共に乗っていた黒いドラゴンが咆哮を上げて展開する軍団の左方向に向けて飛翔する―――ように翼に装着されたブースターを吹かせる。

行く手をマキナス軍のモビルスーツ―――先程もドラグーナが撃破した敵の主力量産機体「マキナート」が4機、行く手を阻む。だがドラゴンは避けることなく加速する。と同時に肩に当たる部分に装着されたキャノン砲から砲撃が放たれる。両脇を抑え込むように放たれマキナートの集団は中央に集まる……否、集められる。そこを背部から取り出した大剣で通り過ぎる瞬間に一閃する。

 一瞬の接敵であったが、大剣で1機大破させ、その残骸でもう1機にも当て、爆発を起こさせる。抜かれた残り2機は後ろから攻撃するが、それらは他のドラグーナ達が迎撃に当たる。相手にしたい気持ちはあったが、先程味方部隊にああ言ってしまった以上、ガンドヴァルのパイロットはそちらを優先せざるを得なかった。もはや自分は多くの者達の命を預かっているのだから。

 前を見据えると、目標地点付近となる。レーダーで部隊の位置を確認すると、ドラゴンの方に語り掛ける。

 

「ジェンド、いくぞ」

 

「ゴゥゥゥン……」

 

 黒い鱗に覆われ、更にあちこちに機械のパーツを装着する愛竜……ヴァニッシュ・ドラゴンの「ジェンド」が返事の声を出すと、ガンドヴァルの装依者はその背から降りる。同時に機体のスラスターを機能させる。赤いDNが機体のバーニア部から吹き上がり、一直線に飛行する。

 その先には射撃を行いながらも後退するドラグーナと隊長機のドラグーナ・コマンドの部隊とそれを追うマキナート、マキナート・コマンダーの部隊があった。総数12機。おそらく分隊か、もしくは小隊が別れて追撃しているのだろう。すぐさま戦闘に加わる。

 まずはダブルビームライフルでの射撃で敵の注意を向ける。射撃に反応し、いくつかの機体がこちらを向きライフルを構える。しかしそれに構わず、ガンドヴァルは加速し、こちらを向かなかった機体の内、1機に狙いを絞る。その機体が反応する前にガンドヴァルは大型バスターソード「マキナ・ブレイカー」を抜き、そのまま斬りつける。マキナートは迎撃する間もなく、胸部付近にその大剣を押し付けられ、装甲に大きな斬撃跡を付けられる。身震いののち、動かなくなるがガンドヴァルはそのままの勢いで剣を振り回し、投げ飛ばす。その先には他のマキナートの姿があり、正面からその機体を受け止める形となる。

 その時になってようやくビームが放たれてくるが、そのまま「マキナ・ブレイカー」を腰溜めに構え、僚機を受け止めたマキナートを2機ごと貫く。2体分を容易く貫いた大剣の破壊力に、マキナート部隊の何機かが狼狽したように見せる。隊長機(コマンダー)だけはすぐに動けない様子のガンドヴァルにビームアサルトライフルを向けるもこれまで後退する様子だったドラグーナ部隊からの反撃で妨害される。狼狽したマキナートの内2機も友軍のドラグーナの射撃で無事撃墜される。

 その間に突き刺した機体から、足で蹴る形で大剣を引き抜くガンドヴァル。機体は剣が抜けたのち爆発を起こす。味方の部隊を追っていたマキナートの部隊は、今度は追われる立場となって他の部隊に追撃される様に後退していく。それを見送るように空中で静止していたガンドヴァルに、追われていたドラグーナの部隊のコマンドが接近して回線を開く。

 

『救援感謝します、ガンド中佐』

 

 コマンドのパイロットからの礼にドラグーナ・ガンドヴァルのパイロット「ガンド・ファーフニル」は短く応える。

 

「別にこれくらいはどうということはない。助けられた分良かっただけだ。後退して損傷機体を母艦に収容しろ。補給が必要ならその間は、オレと別の部隊で戦線は持たせる」

 

 ガンドが見ていた限り、コマンドは友軍のドラグーナ1機を抱えつつ後退していた。損傷した味方を庇いながらの迎撃・撤退でエネルギーはかなり消耗していると判断しての発言だ。言い当てられたかのようにコマンドのパイロットは驚きを示すもすぐに行動に移した。

 

『は、はい。了解しました。……聞いたな、全機、5番機を収容と同時に補給。収容は3番機と9番機で対応する。いいな』

 

『了解!』

 

 回線から隊長機からの命令に従う声が一斉に響く。次々と後方へと撤退する機体の後方を見つつ、隊長機が回線でこちらに一言入れる。

 

『申し訳ありません、中佐。一旦補給へ戻ります』

 

「了解した。気を付けろよ」

 

『ハッ!』

 

 ガンドからの返答に敬礼をして隊長機も撤退する。ちょうどジェンドもこちらに来てガンドもその背中に機体の足を乗せる。

 

「お前もご苦労さん」

 

「ガウゥゥゥン」

 

 愛竜の首を機体の腕でなでると、心地よさそうにする。とはいえ、今はまだ気が抜けない。ガンドは「マキナ・ブレイカー」を背部のソードラックにマウントし直すと、母艦にいる自身の参謀補佐に回線をつなぐ。

 

「こちらガンド、救援信号のあった部隊の救出完了。部隊は補給の為に後退した。近くの部隊は?」

 

 すると、通信画面に赤い髪の男性の姿が映る。彼はガンドの部隊の参謀補佐で、前線に出るタイプであるガンドを母艦「フリート・ガウル」から戦況を見て状況を知らせサポートしている人物だ。その赤髪の男性がそれにすぐさま返答する。

 

『了解です、中佐。近くにて敵部隊を追撃中のアシュガリア小隊が居るので、そちらに対応を要請します』

 

「頼む。その間はオレが抑えよう」

 

『承知しました。ご武運を』

 

 そう言って通信は切れる。その直後すぐに別のマキナート部隊が攻撃を仕掛けてきたのでジェンドが避ける。ガンドもガンドヴァルのライフルを構えるが、放つ前に別方向からのビームでマキナート部隊はそちらに注意を向ける。アシュガリア小隊の機体数機が飛来し、敵機体に攻撃を仕掛ける。

 敵マキナート部隊の隊長機「マキナート・コマンダー」がバックパックの飛行翼に搭載するレールガンを放ち、応戦する。だがこちらのコマンドのハイマニューバスタイルはそれを躱して接近。格闘戦で応戦しようとした隙をついて、バックステップから放ったミサイルで撃墜する。隊長機が墜とされたことで部隊に混乱が起き、その隙にドラグーナ・シュートスタイルの砲撃とフルチャージスタイルのランスによる突撃で殲滅を行う。

 この時代にフルチャージスタイルとは珍しいと思ったところで、アシュガリア小隊の1機から回線が開く。回線主はハイマニューバスタイルのコマンドのパイロットからだ。

 

『こちらアシュガリア小隊、リュノ少尉。中佐殿、こちらはシュナウダー大尉のアシュガリア小隊で引き受けますっ!』

 

 威勢よく宣言するリュノ少尉。扱いの難しいハイマニューバスタイルを難なく使いこなす姿から、いい腕前だと思われた。ガンドはすぐにそれに対し返答する。

 

「助かった、リュノ少尉。ではお言葉に甘えて、ここは貴官の所属する部隊に任せよう。私も元々の持ち場があるからな」

 

『!喜んで!!っと!』

 

 敵機からの攻撃に対応しつつ、返答するリュノ少尉。敵機のやけくそ気味の突撃射撃を避けた直後、その背後からビームライフルを撃ちこみ、爆散させる。

 その様子を見て笑みを見せたのち、ガンドはジェンドの手綱とも言える持ち手を握り、移動を開始する。だが、愛竜が加速を始めた、その時だった。

 

 

 

 

 異常なまでのアラート信号が通信回線から響く。それは回線が繋がった、周囲の味方機から発せられたものだ。音の大きさから背後、それもかなり高速で接近されたようなアラートの発し方である。どの機体かと確かめようとして後方を見た。そして、その眼ではっきりとそれを視認する。

 

「なっ……」

 

 それは先程まで会話をしていたアシュガリア小隊に所属する1機のドラグーナである。シュートスタイルのその機体は先程、散開するマキナート部隊を一掃するような活躍を見せていた機体だ。だが、その機体は胸部を蒼く光り輝くビームサーベルで、背後から貫かれていた。

 身悶えする自軍の機体。だがその機体に2本目の蒼いビームサーベルが突き刺され、同時に横へ動かし機体を引き裂く。機体は両断され、爆発を起こす。直後、リュノ少尉の声が反響する。

 

『ゴラド曹長!!』

 

 仲間の機体が突然やられたのだ。無理もない。だがしかし、その蒼いビームサーベルを見た時点で、ガンドが持ち場に戻る理由が消えたのは明らかだった。なぜなら彼がこの戦場に出た理由は、これにあったのだから。

 丁度、それを示すかのようにフリート・ガウルから参謀補佐の通信が入る。

 

『中佐!その付近に高出力MSの反応出現!識別パターン……ブラックフェニックス、奴です……!』

 

「……あぁ。みたいだな」

 

 参謀補佐の男性に、ガンドは落ち着いて言葉を返す。爆発の先で赤く光る2つの眼光。しかしマキナート系列の丸いカメラアイなどではない。それよりも角の付いた、人の目のような形だ。更に煙が薄くなるにつれてボディに走る赤いライン、そして機体の色がはっきりと視認できるようになっていく。

 間違いない、やつだ。ガンドは心の中で呟く。ここ数日、マキナスとの間で起こる戦争に突如乱入し、両軍を殲滅する謎のモビルスーツの出現が報告されていた。生存者はほぼおらず、映像も出現と同時に録画機能が使えなくなるという電波障害に陥るために、どんなMSかすらも把握出来ない状況であった。

 しかし、それは意外な形で目にすることとなった。ドラグディアの領地にあるとある村の付近で起きた両軍の戦闘にその機体が現れた際、偶然その姿がフィルムカメラで収められたのだ。しかもその村の人々は見たにも関わらず全員生存したという。そして、その生存者の発言からも、信じがたい言葉が出てきたのだ。

 それは先程の行動からは予想されない言葉。今の自分達にしてみれば、絶対に言うはずのない言葉だった。だが、目の前に現れたその機体を見て、その目撃者達の発言が嘘ではないことが証明される。

 そのMSを狩るために今回の戦闘の指揮を執ることとなったガンド。愛竜が「グルル……」と唸り声を上げ、戦闘態勢に入る。ガンドも息を飲んでガンドヴァルの手に「マキナ・ブレイカー」を右のソードホルダーから取り出し、両手で構える。そして蒼い高濃度ディメンションノイズを振りまく、頭部にV字のアンテナを持つ黒い機体の名を呟く。

 

 

 

 

 

 

「救世主…………ガンダム!!」

 

 

 

 

 

 

 この星……「マキナ・ドランディア」の醜い争いを1度止め、自分達の種族を、国を、象徴を、そしてモビルスーツが生まれる糧となった、星の救い主。救世主(ガンダム)

 まるでその言葉に応えるかのように、その眼光が赤く発光した。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただき、ありがとうございます。今回久々にアシスタント形式で前・あと書き書いてます。

ジャンヌ「ファーフニル……別名ファフナー、抱擁するものですか」(某サイトを見て)

レイ「ちょっと前だとファフニールが知られてるね」

あれをちょっと前と言ってもよいのだろうか……。というか、ファフナーにはスルーなんだね(´・ω・`)

ジャンヌ「?」

あ、素ですか。……まぁ、いいや。今回登場したシュバルトゼロガンダムは元々「SSRと言う名のG」の第2部で仕様変更する予定だったシュバルトゼロガンダム・ゴッドクロスを、一部武装変更してこっちに流用しています。
変更点としてはウイングをHi-νの物に似た形状になっています。他にも変更していますが……そこらへんは後の話で描写するつもりです。

レイ「文字でしっかり表せるのかなぁ?」

(´・ω・`)正直言って今回のオリジナル機体のドラグーナとマキナートの頭部カメラの切換用機構すら説明できているか怪しい。

では今回はここまでで。

ジャンヌ「次回もよろしくお願いしますっ」


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EPISODE2 出会い2

どうも、皆様。前回から少し長い期間が空きましたが、次話更新です。藤和木 士です。あ、ちなみに「つかさ」と読みます。

ネイ「……あの、藤和木さん」

ん、どうしました、ネイさん(´・ω・`)

ネイ「いえ……まだ私の自己紹介がまだではありますが、それ以前になんで今作読みづらい漢字の名前ばっかりなんですか。どうも、バトルスピリッツのモンスター的存在、スピリットの種族「詩姫」のネイ・ランテイルです」

グリーフィア「それはすごく思ったわ。あと、何で私達が新しくアシスタントに抜擢されたのかーとか。同じく詩姫の1人、グリーフィア・ダルクよ」

(´・ω・`)いや、まぁ……。確かに元君の名前も、「げん」じゃなくて、「はじめ」だからね。ルビ振るの忘れてたよ。今度元君が出てきた時にまた振るね。ちなみに私の名前変更は、前のが文字打つ時に難しいと言われてたので、変更しました。
で、アシスタント変更だけど、気分一新とバランス調整です。

ネイ「そ、そうですか……」

グリーフィア「まぁ、シャイニーとトワゴシ半々なら合わせやすいかもしれないわねー。……主にあなたが」

ぐふぅ(^o^)と、とりあえず、前回のガンダム襲撃からの流れです。どうぞ!


 戦場に突如現れた、黒いモビルスーツ。その姿はマキナス側の兵士達にも確認されていた。後方でマキナス軍の全体指揮を執る将兵は、自身の座乗艦にてオペレーターからの報告に耳を傾ける。

 

「ポイント、D3にて未確認MS出現を確認。最大望遠で出します」

 

「…………ふむ」

 

 ブリッジ上部のモニターにカメラで捉えたその姿に、顎のナノマシン皮膚をさすりながら唾を呑む。報告には聞いていたが、まさか救世主が本当に戦場に出ているとは。

 最初にドラグディアのMSが被害に遭ったのは救いだった。こちらとしても戦力は温存したい。とはいえ、あのMSが戦場に出た時点でほぼ終わりのような気もするが。ともかく最初の犠牲が減らせたことだけは、敵側とはいえドラグディアのMSに感謝せねばなるまい。

 状況を冷静に理解したのち、その将兵はすぐさま艦長として、マキナス軍の指揮官としてブリッジクルーに命令を飛ばす。

 

「全軍に通達。全軍後退。黒いMSは相手にするな。ただし向かってくる場合は迎撃しろと伝えろ」

 

「了解しました、艦長。……全軍へ通達……」

 

 オペレーターが報告し始めると同時に、今度は別の艦から通信が入る。その人物はマキナス軍の中でも反ドラグディア思想が強く、プライドが高いことで有名な艦長であった。その人物が声を荒げてこちらに命令の撤回を要求する。

 

『何をやっている、リヴィル大佐!撤退命令を出すなど……!ドラグディアの殲滅ついでにあのMSを捕獲するチャンスではないか!!』

 

 一応、あちらが上官ではあるのだが、今回の戦闘では自分の方に指揮を任される形となっていた。もっとも、軍が彼を敬遠している気持ちはよく分かる。風の噂ではもっぱら汚職に手を出しているとの話だ。軍も彼を切りたがっているのかもしれない。

 しかし、自分とて現在はマキナスの連隊を預かる身だ。いたずらに兵を消耗させる気は毛頭ない。仮にあのMSを撤退させる、もしくは捕獲できたとしても、消耗具合によってはこちらがドラグディアに最悪潰されかねない。……しかしながら、現在戦っているドラグディア軍を指揮する、「轟竜騎士」なら、どうかは分からないが。

 だからこそ、彼は使命に従う。

 

「私はこの戦闘におけるマキナス軍の指揮官です。不測の事態に対し、冷静に対応するのは当然であると思われます。特にあのモビルスーツはここ数日、幾度も我が陣営と、敵国ドラグディアのMSを見境なく殲滅した機体。相応の準備がなければ、また兵を失うことになります」

 

『だからこそ、今ここであの機体を撃墜し、捕獲すべきであろう!!犠牲を払ってでも、あのMSを手に入れればドラグディアなどもはやカス……。そのために費やした兵など、あのMSよりも価値などない!!』

 

 この男、屑だ。もはや軍には不要だな。モニターに映る上官に対し、そう思う。だがここで直接言ってもこちらにしか不利益が無いのは明らかだ。そもそも指揮官以前に機人族として屑だ。リヴィルは目の前の上官に対し、怒りを隠しながらもその言葉に返す。

 

「……そうですか。では黒いMSの相手は、貴官の部隊にお任せしましょう。その間に我が軍は撤退させていただきます」

 

『な、何を言っている!?全軍でと言って……』

 

 慌てる様子の上官に、リヴィルは挑発とも言える言葉を添える。

 

「それに、貴方の部隊だけで捕獲できれば、見栄えがよろしいのでは?」

 

『ぐっ!貴様……』

 

「では、失礼」

 

 上官の悔しがる表情が一瞬写ったのち、すぐに回線を切る。同時にオペレーターに彼の部隊からの通信回線を繋がないようにさせ、それを他の味方部隊に徹底させる。

 それらを伝え終わると、副長が心配するように声をかけてくる。

 

「艦長、よろしいので?」

 

「責任は私がとる。それ以前に私は、この戦闘での指揮官だ。どのみち私は、この戦闘の責任を取らされる。それなら、1人でも多くの兵士を生き延びさせるだけだ」

 

 自分自身の持論を語る。それに対し副長は少し冷めた目をして返す。

 

「お優しいことで」

 

「……まぁ、少しでも印象は良くしたいからね」

 

 いたずらをする子供のような微笑みで、発言をする。もちろん本気でそう思っているわけではないが、そうでないわけでもない。しかし、副長はいつもの事のようにため息をつくと、前に目を向け直す。

 やがてオペレーターから、あの上官の部隊が前進し始めたことを伝えられると、後退する空中艦の中で、マキナート(我が軍のMS)が黒いMSに向かっていく姿をモニターで見て呟く。

 

「―――さて、では見せてもらおうか……。我が軍(マキナス)のモビルスーツと救世主様の性能差とやらを……」

 

 自嘲気味の発言は副長以外に聞かれることなく、ブリッジに漂う緊張の中に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 空中に浮遊し、静止した状態のガンダムに対し、大剣を構えるガンドヴァル。ガンドは隙を窺っていた。しかし……。

 

(こいつの構え……なんだ?)

 

 相対するガンダムの構えは異様だった。両手にビームサーベルのデバイスを持っているが、ビームの発振はさせていない。しかも両腕は下方向に伸ばしているだけ。どこからでも攻撃してくださいとでも見える光景だ。

 が、攻撃するという考えを、先程の急襲が阻む。一瞬で背後を取って撃墜するという動き。あの高純度DNがあるとはいえ、察知できないほどの速度で動けるという事実を示された以上、慎重に行動する必要がある。

 そもそも、彼自身あの機体を本部から知らされた時、高純度ディメンションノイズが現行の機器の活動を阻害すること以前に、それが存在することなど知らなかったくらいだ。「整備長」によって、ガンドヴァルに対策はしているものの、それでも機体性能差では及ばないだろう。

 しかし、総司令部から討伐命令が出された以上、ここで退くわけにもいかない。全力を以て当たるしかない。と思ったところで、アシュガリア小隊の機体が1機突撃を掛ける。フルチャージスタイルの機体だ。

 

『こんのぉ!!よくもゴラドを!!』

 

『待て!ワリィ軍曹!』

 

 リュノ少尉の制止が飛ぶもそれを無視して突撃する。ドラグディアの量産機の中でも随一の突撃力を持つ仕様の機体だ。あっという間に距離は詰まり、その穂先がガンダムに迫る。

 

『ゴラドの、仇ぃぃ!!』

 

 だが、その攻撃は見切られてしまう。ギリギリのところで攻撃を回避したガンダム。そしてその交差の内にランスを構えていた腕の下を通るようにサーベルデバイスを潜り込ませてビームを発振する。それに気づかないドラグーナ・フルチャージスタイルは発振されたビームサーベルにそのまま体を突っ込ませる。

 

『がぁぁぁぁぁ!?』

 

『ワリィ軍曹!!』

 

 リュノ少尉の叫びも空しく、ドラグーナ・フルチャージスタイルは自身の機体速度で両断され、爆発する。背後にその爆発を受け、爆炎に照らされるガンダムの姿は、救世主ではなく、悪魔を思わせた。今も争いを続ける自分達を裁きに来たと考えれば、それも辻褄は合うのかもしれない。だがしかし、そうだったとしても彼は退くわけにはいかなかった。国の為、仲間の為に。だが生き残る。家族の為に、そして……。

 しかしその対決を邪魔する形で、前方から3機を含めて その空域の敵を掃討するようにビームの光が襲い来る。ガンドはジェンドの手綱部分を引いて翻させる。リュノのドラグーナ・コマンド・ハイマニューバスタイルも我に返ったように射撃を回避する。

 攻撃元はマキナス軍のマキナート部隊だ。見ると空中艦3隻だけが前面に出て、後のマキナス軍は後退を行っていた。囮部隊のように思える。ともかく、マキナート・コマンド2機に率いられたMS部隊16機はこちらにけん制を掛けつつ、ガンダムの方に向かっていく。

 マキナス軍のMSがガンダムに向かう間に、ガンドはリュノのコマンドに接触する。

 

「大丈夫か、リュノ少尉」

 

『お、俺は大丈夫です……。けど、ゴラドと、ワリィが……グッ!!』

 

 その声には明らかに怒りがこもっていた。隊の仲間をやられたのだ、無理もない。すると、回線にアシュガリア小隊のもう1機の隊長機からの通信が入った。通信画面にはガタイの良さげなスキンヘッドの男性の顔が映る。

 

『ガンド中佐。こちらアシュガリア小隊隊長、シュナウダー・ダリオン大尉であります。現在そちらに向かっています。リュノ少尉、状況は』

 

 それはアシュガリア小隊を率いる隊長であった。隊長からの問いかけに、おそらく分散させたメンバーのリーダーを任されたリュノが、苦しい表情で現状を伝える。

 

「……現在、黒いモビルスーツと接敵。敵からの急襲、交戦によってゴラド曹長とワリィ軍曹が撃墜……」

 

 その報告の途中で空に爆発の火がともる。マキナートが1機墜とされたのだ。既にマキナート部隊の数は指揮官機合わせて10機にまで減っていた。もしマキナスのMSが全滅すれば、距離的にはこちらが狙われる……。

 ガンドはすぐにシュナウダーにとある頼みをする。

 

「大尉、リュノ少尉をお貸しできるか?」

 

「え……」

 

『中佐?構いませんが……まさか、あのMSと!?』

 

 大尉もその考えに気づき、それに頷き返すガンド。無茶かもしれないが、数が欲しいのと、リュノ少尉の腕を見込んでの事だった。あの機体の討伐、それが出来なければ、もしあの機体が無差別に市民を攻撃するようなことになれば、悲劇は避けられない。今後の為にも、ここで撃墜必要があった。

 そしてリュノも先程予想外の事に驚きを示すも、はっきりとした口調で隊長に懇願する。

 

「シュナウダー隊長、お願いします。俺もアイツを野放しには出来ません!!」

 

 若気の至る発想だったが、それが正しいかどうかはこの戦いで決まる。シュナウダーもその返事を聞き、苦しげな表情を見せながらも了承した。

 

「……分かりました。だがくれぐれも無理をするなよ、リュノ」

 

「……っ!はいッ!!」

 

 返事を聞き届けると、シュナウダー大尉からの通信は途切れる。ガンドもジェンドを操ってリュノと離れると、再び黒いガンダムを見据える。増援のマキナート部隊が12機追加されていたが、残った機体と合わせても17機。隊長機を失った部隊と合流して態勢を立て直そうとしていた。

 マキナス軍が全滅するまで待つのもいいが、それでもこちらの集中力が持つかどうか。時間を消耗させるくらいなら、突っ込んだ方がよい。ガンドは回線を開く。

 

「リュノ少尉、行くぞ」

 

『え……もう少し待ってからの方がいいのでは?マキナスのモビルスーツを減らさせたほうが……』

 

「あちらから見れば、あまり見栄えの良いものでもないからな。それに時間を潰したくないんだ」

 

 少しトーンを低めに返す。あまりこのような手は使いたくはないが、それでも早くこの緊張感から抜け出したい気持ちに嘘は付けない。ガンドはジェンドの背から離れるとバックパックからディメンションノイズを放出して機体を飛翔、加速させる。リュノも困惑が混じりながらも、それに応えるかのように同じくDNを吹かせてガンダムに向けて飛行する。

 マキナート部隊は14機となっていた。そして、今また目の前で後方に退きながらビームライフルで応戦していた機体がガンダムに接近を許し、サーベルでその胸部を貫かれる。更にその残骸を飛行していた別の機体に投げ飛ばす。その光景は、先程ガンドが取った行動と同じであった。

 受け止める形となったのは遠距離仕様のマキナートだった。しかし、もう既に受け止められた機体のパイロットは死んでいる。すぐにどかそうとした砲戦仕様のマキナートであるが、その前に機体は光の矢に貫かれ共に爆散する。それを見下ろすように撃った張本人の黒いガンダムは、その右手に先に撃破したマキナートのビームライフルを持っていた。だが、すぐに放棄しすぐさま別の機体に狙いを定めようとする。

 こいつは危険だ。助けるつもりはあまりないが、ガンドは一気にスピードを上げ、黒いガンダムの前に機体を滑り込ませる。機体が突然現れたことで、一瞬ガンダムが戸惑ったような様子を見せるが、構わずこちらは左手を突き出す。すぐに手を交差させるガンダムだが、そのまま殴りつける。腕に装備する防御用のガントレットに備えられたブースターの加速力も合わせ、防御したガンダムを一気にはじき返す。

 しかし、状況は更にややこしくなる。突如後方からビーム射撃を受ける。幸い背部に収められた大型バスターソードが防いだものの、撃ったのは襲われていたマキナスのモビルスーツであった。邪魔をするなら容赦しない、まさにその状況下であり、舌打ちをする。

 

「ちぃ……?」

 

 だがしかし、その状況は好転する。取り囲むマキナス軍を攻撃するようにビーム射撃が包囲の外から放たれる。それはこちらに救援にやってきたアシュガリア小隊の攻撃であった。予想外の攻撃に加え、態勢を立て直し再度襲撃するガンダムに陣形はずたずたにされてしまうマキナート部隊。それを見ていると、救援にやって来たシュナウダーから通信が入る。

 

『大丈夫ですか、ガンド中佐殿』

 

「悪い、助かっ……く!!」

 

 救援に駆け付けたシュナウダーに感謝の言葉を贈ろうとしたところで、咄嗟に左後ろに武器を構える。その時点で黒いガンダムの攻撃範囲まで接近され、大剣の面でギリギリビームサーベルを受け止める。

 

「ぬぅ……はぁ!」

 

 圧倒的なまでの強襲速度だった。死角からの急接近とはいえ、アラートの鳴った直後に視認できる距離など。これもまた、高純度DNのなせる業だとでもいうのだろうか。しかし、致命傷をもらわなければ問題ない。再び機体を弾き飛ばすと右腕にマウントしたダブルビームライフルを放つ。バレルを短縮している上に本来この機体の得意分野ではない。だがこれは繋ぎの役割だ。踊るように避け続ける機体を、上空からリュノ少尉のドラグーナ・コマンド・ハイマニューバスタイルが急襲する。

 

「はぁぁぁぁぁ!!」

 

 右手にビームサーベルを構え、一気に振り下ろす。その斬撃が空を切る。寸前のところで黒いガンダムは上体を逸らして斬撃から逃れたのだ。それにより隙を晒したリュノを今度はガンダムが左手のビームサーベルで突きにいく。

 しかし、リュノはそれをさせない。

 

「甘いんだよぉ!!」

 

 機体の右膝側面のジェットブースターを全開にし、各部のスラスターをOSに制御させる。その状態から機体を回転させた。更に攻撃を避けると同時に右足でガンダムの左手を思い切り蹴り上げる。ハイマニューバスタイルの加速状態から放たれた蹴りはガンダムの左手からビームサーベルを叩き落す。

 体勢を立て直したリュノは、ハイマニューバの左手にもビームサーベルを抜かせる。そして、一気に攻めていく。対するガンダムは左ウイングのカバーの方に手を伸ばすがその前にリュノのハイマニューバスタイルによる怒涛の攻めにさらされる。

 そこでようやく分かる。あのガンダムは機体性能差による不意打ちをメインに戦っていると。量産機体があっという間にやられていく姿や、鍔迫り合いの際機体が押し込まれていくこともあって強いと感じていたが、パイロットの方はそれほど戦闘に慣れていないように思える。現に機体性能で追いつけないとはいえ、同じ機動戦タイプのハイマニューバスタイルに格闘戦を仕掛けられたガンダムは防戦一方だ。しかし、油断は禁物である。

 

「……よし」

 

 ガンドは先程の激突で小破した「マキナ・ブレイカー」を投棄し、もう1本の「マキナ・ブレイカー」に得物を切り替える。そして鍔迫り合いを行うリュノに後退を指示する。

 

「リュノ、下がれ!!」

 

「!はいっ!!」

 

 すぐさまジェットスラスターを吹かせて距離を取るリュノ。ビームサーベルが空を切ったのち、ガンダムは左手に再度ビームサーベルを構える。左ウイングの付け根から取り出したビームサーベルは右の物よりも大振りの刃を煌めかせている。しかし、その蒼い光も既に恐怖の光ではなく、自分達の物と同じ武器に見えていた。

 急接近するガンドヴァルに対し、ガンダムはサーベルを構えて待機する。どうやら先程と同じ手は喰わないつもりのようだ。しかし、それはこちらの思うつぼであった。

 

「残念だが、同じ手は使わない……ッ!!」

 

 機体が攻撃可能範囲に入る。その直前で機体の前面スラスターを吹かせて急減速する。そのタイミングでガンダムはサーベルを振るが、攻撃は空振りとなる。

だが当然こちらも機体は上体が後ろに反り、隙を晒す。その決定的な隙にガンダムはそのまま距離を詰め、

 

 

 

 

 

()()()()()()()

 

 

 

 

 

「甘いッ!!」

 

 瞬間、光が両者の間に迸る。のけ反ったドラグーナ・ガンドヴァルの胸部が展開して、そこから光が放射されたのだ。視界を光で奪われたガンダムは光剣を同時に横に振る。しかし、それはガンドヴァルを捕らえることは叶わなかった。

 そして、ガンダムの左背後に回っていたガンドは、その大剣を上段で構えて言い放つ。

 

「さっきの……お返し、だッ!!」

 

 同時に、一気に大剣を振り下ろす。ガントレットブースターに加え、剣自体の増速ユニットを全開にしての攻撃。外せば終わりだが、この機体に逃げられる前に当てるには、それしかない。

 位置を察知したのか、それとも予測したのか、機体のウイング部から粒子が噴き出す速度が上がり始める。しかしもう遅かった。

 機械殺しとも称される大剣は、ガンダムの左の翼を真ん中から両断した。抵抗はあったものの、まさに叩き切ったことでガンダムは若干バランスを崩す。

 直後、切れた翼の先と根元、両方が爆発を起こす。爆煙により、こちらの視界が奪われる。ガンダムを見失ってしまった。すぐにガンドは機体を煙から離す。幸いにもガンダムをすぐに視界に捉える。

 その機体はじっくりとこちらを睨め付けているようだった。しかし、斬られたところだけだったスパークがウイング全体にまで走り、バックパック本体からも小爆発が起こり始めると、背を向け、一気にその場から離れていく。

 その先で味方機体が止めようとビームライフルを放つも、機体は構わず突破していく。やがてその姿は最大望遠でも確認できなくなったところで、ガンドは大きくため息を吐く。

 

「……ふぅ。何とかなったか……」

 

 撃破、とまではいかなかったが、十分収穫はあった。あれならレーダーの対策や戦術フォーメーションの組み立てで他の優秀なパイロットで何とかなるだろう。それこそ「速烈の剣士」アレク・ケルツァート少尉や「竜絶の乙女」リリー・バレナー大佐ならば、おそらくガンダムを討ち取れるのではないだろうか。

 そう思っていると、今回の功労者の1人であるリュノ少尉が機体を近づけてくる。

 

『ガンド中佐、お見事ですっ!!中佐と共に戦えて、おまけに仇も討てて……この経験を活かして、もっと強くなりますっ!!』

 

「それほどでもないさ。むしろ貴官の活躍があってこそだ。おかげで、対抗策も見つかった」

 

『ほ、本当ですか!?これで、俺もエースの仲間入りに……』

 

 少し先の事を夢見るあたり、まだまだ新兵のようだ。だが、戦闘技能は悪くない。シュナウダー大尉が如何に育てるかだろうが、この先楽しみな人材であることに変わりない。彼の言葉通り、本当にエースになれるかもしれない。

 攻撃もなくマキナス軍も撤退していく、はずだった。

 

「……!グワァウ!!」

 

「な、ジェンド、何を」

 

 愛竜がガンドヴァルの腕を噛んで引っ張る。唐突なことにガンドもリュノも動揺する。が、その理由を、身をもって知ることとなる。突如ガンドヴァルの目の前を、光の奔流が通過する。同時にガンドヴァルの脚部が飲み込まれ、ハイマニューバスタイルの姿が機体ごと光の中に覆われる。

 

『あ――――』

 

「リュノ少尉!?くっ」

 

 リュノの機体は光の奔流に飲み込まれ、更に大きな爆発を引き起こす。光の正体は大出力ビームであった。方角からして間違いなくマキナス側だ。その方角を向くとマキナスの空中母艦が3隻、こちらに連続してビームを放っている。

 その攻撃を咄嗟に救ってくれたジェンドは、背にガンドを乗せてから攻撃をすり抜けていく。だが、このままは流石に辛い。いずれ直撃して……。

 しかし、その時は来なかった。あり得ない方向から光の矢が3本、砲撃する空中艦のエンジン部を貫き爆発を起こす。更に同じ方向から左右にいた艦のブリッジを正確に射貫き、撃沈させる。

 

「な、何……?」

 

 なぜマキナスの空中艦が、マキナス軍側の空から放たれるビームに撃たれるのか。可能性としてはただ一つ、裏切りだ。しかし、それが果たして今撃ちこんでいる者がしているのか、それとも撃ちこまれている方が裏切ったため、その後始末なのか。

 状況を確認すべく、ガンドはビームが放たれた空を見る。そこに見えたのは、蒼と白のカラーリングをした、1機のマキナートタイプのMSの姿。そして最後の1射を残っていた中央に陣取る艦のブリッジ付近に直撃させたのち、離脱する。マキナスの空中艦は爆炎を上げ、最後に大きな爆発を引き起こして散る。

 ガンドはその様子をチラリと見たのち、マキナス軍の方を見る。助けられた形となったが、ガンダムを撤退させたことを考えれば、これでお相子だろう。しかしリュノ少尉を、これから育ち甲斐のありそうな兵士を失ったことは痛い。アシュガリア小隊の通信回線からも生き残った隊員達の涙声が響く。

 そんな中、隊長のシュナウダーから通信が入る。

 

『ガンド大尉、ご無事でしょうか』

 

「……私は大丈夫だ。しかし……」

 

『……気になさらないでください。非があるとすれば、それは自分の方にあると考えます。自分が行けば……あるいは』

 

「いや、彼でなければガンダムに一撃入れることは叶わなかった。それを近くにいたのにも関わらず、私は」

 

 謝罪合戦になりつつあった状況だが、その流れを断ち切るようにフリート・ガウルから通信が入る。

 

『中佐、帰投していただいてもよろしいでしょうか。報告や機体の修復がありますので……』

 

「分かった。……すまない、これにて失礼する」

 

『いえ、では』

 

 互いに敬礼をして、ガンドはその場から離れる。ジェンドの背中の上で座るように搭乗する中、ふと視線をガンダムが消えた空へと向けていた。その方角は、ちょうどドラグディアの首都方面である。胸騒ぎがするが、今はともかく帰らねば。

 機体の電子空間の中で、ガンドのワインレッドの長髪が揺れる。彼の脳裏には既に愛する家族の姿が思い浮かぶ。特に妻との間に出来た3人娘の内、昔の妻によく似た面影を持つ次女の姿が印象強く映る。

 

「……昨日は言い過ぎてしまったな……よしっ」

 

 昨夜のお詫びに、ケーキでも買って帰ろうと思う父なのであった。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。さて、MS戦は一旦終了。ですが、出会い、の一節はまだまだ続きますよー。

ネイ「タイトルをいちいち考えるのが面倒だって、前にもお嬢様の前で言っていましたが、まさしくそうですね」

(´・ω・`)

グリーフィア「けれど、ドラゴンの軍事運用って、他の兵士もやってそうだけどどうなの?」

あ、それについてですが、ドラゴンの扱いが難しくてかなり熟練の兵士のサブフライトシステムとしての活躍に留まるんですよ(´・ω・`)だから、戦場でそれを見かける割合は少なくて、ガンドさんに異名が付いているのもそれが関わっています。

グリーフィア「なるほど、レアなのね」

そういうことです

ネア「けど、それならマキナスではサブフライトシステムが結構活躍してそうだと思うんですが……」

それも理由があるんだけど……それはもう少し後かな。じゃあ、今回はここまでです。

グリーフィア「現在作者君は第3話を書き終えそうみたいよ」

ネイ「でも、相変わらずのストック式ですね」

ごめん、悪癖になってしまってる(´・ω・`)あと、蒼かな攻略中なのよ。ではまた次回!


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EPISODE3 出会い3

どうも、皆様。更新がかなり不規則ですが、書く気力はまだ失せてません。藤和木 士です。

レイ「はひゃ~……更新ペース決まってないとここまで遅くなるんだね、藤和木。あ、レイ・オーバだよっ」

ジャンヌ「まぁ、以前も藤和木は「ある意味3日坊主の自分を、奮い立たせるためのモノ」として投稿予定日を言っていた的な発言をしていましたからね。ジャンヌ・ドラニエスです」

あはは……まぁ、それ以外にリアルの問題とか今回から出てくるヒロインの事とかを考えてたんだけどね……色んな理由で(;´・ω・)
さて、今回はEPISODE3です。ヒロイン登場!……先に言っておくけど、他意はないからね?……うん、理想のヒロインだからね?(´・ω・`)

レイ「それもう他意あるよね?」

ジャンヌ「なぜかここ最近、わたくし達を関わらせていなかったので、詳細は分かりませんが……これで分かりますね」

さて、ではどうぞ!


 

 

 マキナ・ドランディア大陸の1つ、「サークノ・レ・ファイ」北東側を国土とする、竜人族の聖地を保有する国「ドラグディア」。広大な大地で自然を生かすことと、文明を象徴する工業の発展、その2つの共存思想を伝統としてきた国である。

 しかしかつての戦争以来、対立し続ける地続きの機械族最大国家・マキナスとの戦争は終わりを見せない。対するドラグディアもまた竜人族最大国家。それぞれの国は救世主が舞い降りた大陸でその姿を模したMSを使い、いつまでも自分達の存在を押し付け支配しようとしていた。

 そして、その戦争を左右すると言われているのが救世主により誕生した最初の竜人・機人族の国王達が誕生させた、それぞれの国家を象徴する大型艦およびドラゴンだった。マキナスの竜型航空戦艦「マギア・マキナス」。そしてドラグディアの生ける機竜「クリムゾン・ドラゴニアス」。その力はかつての戦争でも、未だ大地に傷跡を残すほどである。その凄まじさを知りたいなら、国境付近の古戦場跡「ヴールーン古戦場跡」は大昔の関所の跡地で比較的残っており、歴史学者が今も訪れるほどだ。

 戦争を一瞬で終わらせる力を持つ象徴達ではあるものの、実はこの300年ほど、正確には297年もの間、彼らは戦場に姿を現してはいない。なぜ姿を現さなくなったのか、人々の間では象徴達すらも自らを生み出した者達が続ける戦争に呆れ、眠りについたのだと言われている。

 そのために、元来から象徴達を操る不思議な力「詩祈(シノヴァ)」を持つ者達によってその目覚めが行われていた。象徴達と共に、両種族をそれぞれ導く「指導者」とも呼べる存在。機人族では「奏女官(シアル)」、ドラグディアでは「詩巫女(キャーヴァ)」と呼ばれ、その育成学校があるほどだ。

 その中でも最も施設が充実し、首都に存在する竜人族誕生の聖地を敷地内に持つ国立学園「聖トゥインクル学園」では、多くの詩巫女候補が詩巫女として必要な知識・技術・歴史そして歌唱力を日々高めている。そのほとんどが国の戦争の道具に使われることの意味を深く知らず、ただ純粋に自身の歌で願いを成しえるために。……とある1人を除いては。

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日は本当に最悪な日だ。少女はそう思う。目の前の一番嫌な授業、詩巫女の使命を如何にも良さげに語る教師、それを憎いくらい真面目に聞く同級生達。立場が違うだけでこれほどお気楽に過ごせるなど、少女にとっては恨み言の1つでは収まらないほどの事だ。ただ1人の愛しい彼女だけを除いては。

 少女はチラリと右斜め前方に目を向ける。小柄な体躯ながらも背筋をピンと伸ばし、教師の話をノートへと書き込む、藍色の髪を独特の形で結う学生服の少女。自身がこの学校の中で、己のすべてを賭けてでも、全身全霊を以て愛したい女性である。もし何も知らない者が聞けば、動揺するのは間違いないだろう。しかし、このクラスの人物はそれを本人以外よく知っている。否が応でも知らされた。なので反応は様々だ。

 少女にとっては、彼女と一緒に居られる時間だけが、この学校、それどころか今の自分の唯一の癒しであった。そんな彼女の笑顔を見ていると、自然と嫌な授業も受けられた。けれども、昨日の事もあって今は少々難しかった。

 昨夜、少女は喧嘩をした。相手は少女を育ててくれた父親だ。喧嘩の理由は「自身の進路」。希望は無いが、それでも彼女は叫ばずにはいられなかった。詩巫女にはなりたくない、と。

 少女の家は代々詩巫女をやって来た家系だ。彼女の母もまた、詩巫女をやっていたという。だが、それは決して幸せなものではない。家柄による優劣、それにより向けられる嫉妬、更にそこに、彼女の家にだけ与えられた「呪い」。呪いさえ自由に捨てられれば、家柄など好きにくれてやるくらいだ。

 だがそんなことを父は許してはくれなかった。分かっている。もしそんなことをすれば、たちまち呪いが自分を死にもたらす。そんなことだけはさせたくないということも、彼女は分かっていた。それでも、彼女は言わずにはいられなかった。助けを求めていた。こんな忌々しい家の血から逃れたいと。例え愛しい藍色の髪の少女と、会えなくなってもそれが叶うのなら。

 もちろん、それだけで出来るのであれば、とっくの昔に先祖の誰かが呪いなど解いてくれているだろう。それがないから今もこうして少女を苦しめている。早く目の前の授業が終わり、藍色の髪の少女との昼食の時間が来ないだろうかと外に目を向ける。

 

 

(……?)

 

 

 少女の視線が、空の一点に集中する。澄み渡る空に色が同化しつつも、機械画面のノイズに似た放出のされ方をする蒼い粒子。蒼い粒子を放出する、黒い機人の姿。

 それを見つけた時、どくん、と彼女の中で何かが鳴動する。ただのMS、にしては粒子の色が通常型とは違う。通常のそれは本来、赤い粒子を放出するはずなのだ。それが何だったのかは分からないが、しばしの間それに目を奪われる。だからこそ、突然飛んだ教師からの呼び声に目を見開いてしまう。

 

「―――ジャンヌさん?」

 

「―――ッ!?は、はいっ!!」

 

 完全なる不意打ちに、少女―――「ジャンヌ・ファーフニル」はその場で悲鳴にも似た声と共に起立する。起立した勢いで、光を反射し輝く銀色の髪が黒のレースの髪飾りと共にフワッと跳ね上がる。だが、場違い感が半端ない彼女の叫びは、一瞬の静けさの後、小さな苦笑の囁きと教師のため息を誘発した。

 迂闊でした……。いくら昨日の事を忘れたいからと言って、外に目を向けたら如何にも見てくださいと言わんばかりのものを見せられて……!けれど、よりにもよってわたくしの愛しのレイアさんにまで笑われるなんて……っ。

 赤面して顔を斜め下に向けるジャンヌに、詩巫女史の担当教師はしわを寄せて叱る。

 

「もう……何を見ていたかは知りませんが、新学期も始まって1か月が経つのだから、気を緩めてはいけませんよ?」

 

「はい……」

 

「それでは……と、もう終わりのようですね。サージェさん、号令を」

 

 が、それはチャイムに遮られ一旦授業の終わりが告げられる。ホッとしたジャンヌはその間に表情をリセットし、クラスをまとめる委員長の同級生による終わりの挨拶に合わせる。

 

「起立、礼!」

 

『ありがとうございましたッ』

 

 流石に歌を習う分野の生徒。女性だけであるにも関わらず、その一声だけで教室の空気が少し震える。その様子にコクリと頷き、解散の声をかける。

 

「お疲れ様。お昼ご飯はちゃんと取るのよ。あと、ジャンヌさんは放課後先生の所に来るように」

 

「う……はい……」

 

 最後に掛けられたその言葉に、ジャンヌは重く応答する。すぐに教師は教室を出て行ったが、ジャンヌは机にもたれこむように座り、頭を腕の中にうずめる。

 うう~っ!まさか帰りにまで影響するなんて……!昼食の時間にまで影響しなかったのは良かったけれども、これじゃあそれと同じじゃないッ!!大体、何であんなところをモビルスーツが飛んでいるの!?街中を飛ぶなんてよっぽどのことだし、もしドラグディアのMSじゃないなら、何で警報なりなんなり流れていないのっ!!お父様はなぜ出撃していないのよ!そうよ、全部あの黒いモビルスー……。

 いつの間にかいなくなっていた黒いMSに対し、届かぬ八つ当たりを心の中でかますジャンヌであったが、すぐにそれは取り払われる。顔をうずめていたジャンヌの肩をポンと叩き、馴染みのある声が呼んだのだ。

 

「ジャンヌちゃんっ!!」

 

「!!レイアさんっ」

 

 聞き覚え……否、よく知る人物の声でジャンヌは声の方に顔を勢いよく上げる。先程とはうって変わって見せる表情。視線の先には、藍色の髪を両サイドでいくつか輪を作るように結び、それ以外は流すヘアスタイルが特徴の愛しの少女「レイア・スターライト」がお弁当を持ってこちらにいつもの笑顔を振り撒く。

 あぁ……やっぱりレイアさんはいつも完璧ですっ。わたくしが落ち込んでいるときに、こうもいいタイミングで声を掛けてくれるなんて……!これはもう、救世主様のお告げととっても過言ではないですっ!レイアさんは、わたくしの救世主様です!!

 脳内でそのようなことを口走る。ただ、実際に口走りはしないものの、既に表情に若干それが漏れ出ているため、あまり口走らなくても意味がないというのは、クラスでのタブーである。同じクラスである、彼女のメイドもそれについては頭を抱えていたりする。

 だが今のジャンヌにとってはそんなことは関係ない。特に今は、父の事や外で飛行していた黒いMSを忘れたいがために、視線など一切そっちのけでレイアの方に構う。

 

「さ、先程はお見苦しいところをお見せしてしまい、すみませんっ。少々、考え事をしていたところに、変なものが飛んでいるのを見てしまって……」

 

「変なもの?でも、ジャンヌちゃんが先生に怒られるのって、何だか珍しいよねっ」

 

「え、えぇ……本当、自分でも思いますが、珍しいこともあるものです……う、うふふ」

 

 痛いところを付いてくるレイアの指摘を、何とかごまかそうとする。しかしそのごまかしも、傍から見ればかなり雑であり、レイアの持つ天然さがなければたちどころにばれてしまいそうだ。それに助け船を出すが如く、紅の髪を腰まで伸ばし、物静かさの中に不思議さを取り入れたような雰囲気を持つ少女が、両手で大きめのランチ用の籠を持って、2人に話しかける。

 

「レイア、その辺にしてあげよう?お嬢様、落ち込むのは構いませんが、そろそろお昼を取らないと時間が無くなりますよ?」

 

「あ~、ネアの言う通りだね。ごめんねっ」

 

「あ、いえ、そんな謝らなくても。……ネア、そのくらいはわたくしも分かっているわ。けど……」

 

 2人がネアと呼ぶ人物は「ネア・ライン」。とある出自から、住み込みでファーフニル家のメイドをしている少女で、ジャンヌの幼少期から近しい従者の1人として行動を共にしている。3姉妹の次女であるジャンヌではあるが、彼女にとっては主従関係のない時のやりとりを含めて、1つ歳の離れた姉妹とも言える仲だ。

ジャンヌは幼い頃から彼女に陰から支えられてきていた。そしてこれもまた、彼女のささやかな助け舟でもあった。言葉を続けようとするジャンヌの耳元をレイアから隠すように片手で手筒を作り、耳打ちする。

 

「お嬢様も、今はレイアの気を話から逸らした方がよいのでは?」

 

「っ……」

 

 一瞬、思案するジャンヌ。下手に家の事を話せば、ジャンヌ自身の事情にも関わってくる可能性もある。レイアとの間に割って入られたことには納得がいかないところではあったが、それでもバレるよりはマシな方である。

 ネアの方に向けていたキツイ目線をレイアの方に戻すと、ジャンヌは奥に秘めた物をレイアに向ける愛のこもった笑顔で隠しながら、昼食に向かうことを提案する。

 

「……そうですね。次の授業のこともありますから、気分の切り替えの為にも昼食にしましょうか」

 

「だねーっ!今日は屋上空いてなさそうだから、どうする?」

 

「なら、第2中庭はどうかな。まだ桜も咲いているって話だから綺麗だと思う」

 

「さんせー!」

 

 元気よく出ていくレイアを先頭に、ジャンヌ、ネアと続いて教室を後にする。

 

 

 

 

「黒い……MS?」

 

「はい。ドラグディアでも、教科書で見たことのあるマキナスのものでもないMSです」

 

 昼食として持参した(実際に持ってきていたのは従者のネアだが)サンドイッチを口にしつつ、ジャンヌはそう語る。内容はもちろん、授業中に目に入って来た、黒いMSの姿についてだ。

 今思い返すと、あのMS見たことのない機種……というどころか、動力機関すらも違っているように見えましたね、あれ。けれど、お父様からは特に何も聞かされていない……いいえ、昨日わたくしもあの人の話をよく聞かずに出て行ったのです。言っていても届いていなかったという可能性も……。でも、あのディメンションノイズは一体……。

 同じくサンドイッチを口の中に収めたネアが、従者としての立場でそのMSの特徴を訊く。

 

「私も気付きませんでした……。他に、何か気になった点はございましたか」

 

「そうね……やっぱり、強いて言うならディメンションノイズの色が違ったことかしら。赤じゃなくて、蒼かったの」

 

「ディメンションノイズの色が……青?」

 

 レイアは首を傾げつつ、自分の持ってきていた弁当のおかずをほおばる。なぜ彼女は首を傾げたのか、理由は1つだ。

 現在使用されているディメンションノイズ……通称DNはこの次元世界を構成する次元空間内の原子の1つだ。それがDNジェネレーターを介してジェネレーターから引き出した際に、赤い粒子となってこの世界でエネルギーとして運用されるようになる。言うなれば、ジェネレーターは変圧器のようなものだ。

 そしてその変圧器の役割を果たすジェネレーターによって、DNの純度が決まる。この時純度の違いによって、色が変化するという。純度の違いは主に次元空間から機体存在座標まで、DNの原子が届く時間、というより距離によって変わる。変圧するのは、主にこの距離の話であった。特にDNジェネレーター運用最初期は、時間がかかり過ぎてDNの色が灰色か透明、最悪消失していたという。

 この問題を克服し、現在のMSの生産性・運用面での安全性を考慮して開発されたのが現在のDNジェネレーターだ。そのジェネレーターが放出するDNの色が、赤黒い粒子なのである。血のように聞こえるが、空中で生成粒子の崩壊が起こるため、実際には赤色のオーロラのようであるのだが。ネアもそれを指摘する。

 

「ですが、現在のMSと言えば、DNの色は赤。昔でもそのほとんどは薄い赤色だったと聞きますが……」

 

「えぇ。何かの見間違いかもしれないけれど……でも、それはそれで納得できないわ」

 

 ともかく、蒼い粒子などジャンヌはその眼で見たことは一度もなかった。家柄や父の仕事の関係上、ドラグディア軍の本部を訪れ、最新MSの開発現場を見せてもらったことは何度かある。けれども、あれほど兵器にあるまじき幻想的な、蒼炎とでもいうべきDNをMSが発する場など、見たことはない。

 本当に何だったんだろうか、と思いながらもサンドイッチをまた1口食べたところでレイアが咄嗟にとあることを口にする。

 

「……!蒼いDNと言えば、あれじゃない!?救世主様の伝説!」

 

「っ」

 

 レイアの一言にビクン、と反応する。決してどこかを触られて危機回避的にではない。いや、ある意味危機回避は正しいのだが、触られたからというわけでは決してなかった。だが、レイアが何気なく呟いた「救世主」という言葉に、ジャンヌは昔からの癖で反応してしまったのだ。心の底で、嫌な自分の本性が蠢く。

 

(なんで、みんな救世主なんてものを信じるの?)

 

 やめて、レイアさんの前でそんなことを口走ろうとしないで。レイアさんはただ、わたくしの発言に思い当たるものがあるから、言おうとしているの。今はあなたが出てくる場面じゃないの。お願い、消えてよ……。

 必死に自分の中から溢れてくる、嫌な感情を抑え込む。やはり今日は最悪な日だ。どうして、こんなにも世界は無情なのか。落ち着いた時なら簡単に出る答えも、今はなかなか出てこない。それに知らずと苛立ちが募る。

 一方、レイアの発言に興味を示したネアがジャンヌに目を向けつつも、話を聞く。

 

「救世主の伝説って……この星の創世記のこと?」

 

「そうそう!「機竜創世記」っていうんだっけ?そこで出てた、救世主こと蒼炎の機動戦士「ガンダム」!!」

 

「ガンダム……」

 

 ガンダム。この星がかつて2つの人類勢力で争う中、突如として現れた機械の戦士。時には救世主という文字に、ガンダムとルビが振られることもある名前だ。そして、全てのMSの祖とも言える。マキナ・ドランディアに存在するMSは、全てガンダムの模造品なのだ。

 レイアはそのまま創世記の事に触れていく。

 

「創世記の言葉に『人々が争い、枯れ果てた大地に現れし機械の竜と蒼炎の機動戦士2つの種族に機械と竜、竜が持つ2つの力を分け与えん。その力を以て人々、世界再生する』……ってあるよね。私授業で初めて聞いた時は蒼い炎がMSを覆っているのかもって思ったけど、もしかすると、出てるDNが蒼いからそういう風についたんじゃないのかなぁ?」

 

「そんなまさか……」

 

 ジャンヌはレイアの考えを否定する。本当はレイアの考えに同調したい。だがそれでも、救世主という言葉がジャンヌに、レイアの言葉を否定させていた。そんな彼女の想いを汲み取るように、ネアがもっともらしいことを口にする。

 

「でも、そういう考えもあるんじゃないでしょうか。昔より今の方がはっきり目に映るのであれば、当時と今とで認識が違うこともあるから……」

 

 まさしくその通りだ。昔からある話も、本当は今の科学で証明できるというものもある。それを見間違えた可能性はいくらでもある。ただそれをすぐに言えなかったことがつらかった。

 しかし、そんなことなど気にせずに、レイアはジャンヌに羨望の眼差しを向ける。

 

「そうだよ!はぁ~、ジャンヌちゃんいいなぁ……」

 

 あぁ……愛しい。そんなにもわたくしの事を憧れの存在のように見てくれるなんて……。わたくし、恥ずかしすぎますっ。……でも。

 でも、分かっていた。その喜びは、救世主があってこその物だと。自分の一番嫌いなものに関わるそれが、愛しい人の興味の対象であることに、ジャンヌは再び自身の中で嫌な感情―――嫉妬の炎を湧き上がらせる。

 だが、不意の一言にその感情の炎上は止まる。

 

「その人のおかげで、今私はこの学園で歌の勉強が出来るもん!」

 

「あ―――」

 

 聖トゥインクル学園高等部詩巫女養成科は、文字通り詩巫女を育成する学科だ。しかし象徴はその通り1体だけであり、共に行動できるのは詩巫女1人だ。これだけの人数の中で、それに選ばれるのはただ1人。しかもこの数百年は、誰も適合できていないという話もある。そうなると選ばれなかったり、選ばれるまでに食べていける、生活できる仕事に就いたりする必要がある。その多くが歌関係の仕事への志望を第2希望としていた。だがしかし、彼女は違った。

 彼女は、最初から歌を学びたいという理由から、詩巫女養成科を受験したのだ。しかも、学園でも珍しい、高等部への外部入学で養成科を受けたのである。詩巫女を目指さない、かつ高等部への外部入学は彼女が初めてであり、他学科からも入学当初はかなり注目され、今でも噂は絶えない。

 何よりも、ジャンヌ・ファーフニル自身がまた歌と向き合おうと思ったきっかけこそ、彼女の考えであった。

 

『詩巫女養成科だからって、必ず詩巫女になれるわけじゃない。けど、詩巫女と同じくらい、みんなを幸せにできるアイドルにはなれるよ!』

 

 如何にも彼女らしい言葉だった。聞いた当初は一瞬呆けてしまい、周囲からも笑われていたが、その評判を覆すように、彼女の歌は多くの生徒達に認められ、現在では歌の分野においては、上級生にも劣らないと言われている。

 

「……ン」

 

 それを思い出し、口角が少し上がる。しかしそれを見て、笑われたと思ったのかレイアは少し不服そうに口を尖らせる。

 

「あー、ジャンヌちゃん今笑った!?」

 

「あ、いえ。別に悪い意味ではありませんからっ。……レイさんはやっぱりすごいなぁ、と改めて思いまして」

 

 ジャンヌ自身が思ったことをそのまま伝える。すると、後頭部を掻くように、仕草を見せてレイアは照れた。

 

「んーえへへ……そんなことないよっ!」

 

 良かった……。レイアさんの頬を膨らませて怒る姿も可愛いですが、やはり笑っていて欲しいものです。それを見ているだけで、わたくしは幸せなんですから!

 満足そうにレイアの笑顔を見るジャンヌ。その心には、既に先程の事は忘れ、嫌な気持ちも消えていた。また復活するにしても、いい気分転換だ。しかし、その時間も長くは続かない。

 唐突に鳴った学校のチャイム。予鈴だ。この鳴り方からして10分前を知らせる予鈴だろう。

 

「あ、もうこんな時間ですね」

 

「そうね。レイアさんすみません。わたくしが席を立つのが遅かったせいで……」

 

 先程の教室でのことを詫びるも、それは仕方ないとレイアは笑って答える。

 

「気にしてないよ~。それよりも手を動かそうっ」

 

「は、はい、そうですね……」

 

 レイアから急かしを受け、ジャンヌはすぐに残っていたサンドイッチを口の中へ素早く飲み込んでいく。よく噛んで飲み込んだところで、ドリンクボトルから注いだお茶を口にする。

 そうして昼食を済ませ、後片付けをし終えたところで、5分前のチャイムが鳴る。

 

「じゃあ、行こっか!」

 

「はいっ」

 

「うん」

 

 レイアの掛け声にジャンヌ、ネアが応え、3人は校舎内へと戻っていった。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただき、ありがとうございます。それでは次回も見てくださいね!Uトリg……

ジャンヌ「藤和木ィ……?」

ひぃ!(;゚Д゚)

レイ「……大体わかった。けどこれ中々アウトじゃない?」

いや、まぁ確かに色々あると思う!けどさ、今回竜と機械で構築してたら、いつの間にかジャンヌさん達がオマージュされたんだ!!というか「ジャンヌ」って名前自体、創作では有名だしなにより今回のテーマに合ってるから!

ジャンヌ「だからと言って……容姿も立場も割と……いえ、かなり似ていると思われるのですが……?」

私の好みの問題だ!(キッパリ)被ってるところはあるが、リスペクトしてはいるし、何よりあの関係性で何かバトスピ系物語書きたいって欲望が前にあったからね。こういう形だが、挑戦しようと思う。

レイ「そ、そう……けど、まさかネイもね……」

ジャンヌ「今回のアシスタント変更って、これも狙ってます?」

うん、結果的に正解。こっちは本当に気づかずにいて「あ」ってなった。まぁ、まったくの別存在だから。あと、髪色とか髪飾りやら、髪型やらも変えてあるので!

レイ「こういうこと言うから、後々突かれると思うんだけど……」

(´・ω・`)けど、割と他作品をオマージュした別作品のキャラって公式でもよく出ているからね。まぁ、そこら辺はともかくとして、今回はここまで。次回もよろしくです!

レイ「あ、そういえば前に要望されてた設定の件は?」

忘れてた……(;゚Д゚)先日、前作SSRの設定を出してほしいという件があったのですが、今度の活動4周年に合わせて公開しようかな?と考えています。
周年ネタに尽きてたからってことになりますが、私としても若干心残りとかあるので……主にラスボス機体の事やら……

ジャンヌ「それでは、次回もお楽しみに」


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EPISODE4 出会い4

どうも、皆様、藤和木 士です。

グリーフィア「短っ!……まぁ、あんまり話すことないからかしら?グリーフィア・ダルクよ」

ネイ「アシスタントのネイです。……というか、前回の話見て、私も名前変えて出てたような……」

オマージュ!!いいね!?(;゚Д゚)

ネイ「あ、はい」

グリーフィア「となると私のキャラも出そうねぇ。……どうなるのやら♪」

まぁ、ともかくEPISODE4です。あと、話すことと言えばストレス溜まりっぱなしってことかな。原因は母方の実家にあるけど、とりあえず今は関係ないからお話行くよー。

ネイ「この出会いの節はいつまで続くんでしょうね」

グリーフィア「さぁ?とりあえず見てみましょ」


 

 

 黒いガンダムがドラグディア軍の指揮官ガンド・ファーフニルの機体「ドラグーナ・ガンドヴァル」に敗北した日、そしてジャンヌ・ファーフニルが黒いMSを目撃した日。それは、後の事を考えれば、「運命」とも言える日であった。何しろ、「呪いの家系」と呼ばれたファーフニル家の親子が、呪いの原因の一因でもある「ガンダム」を見ていたのだから。

 そして、彼らとガンダム―――の装依者が、まるで定められたかのように再び邂逅することも、また「運命」と言えた。その瞬間は、今、起ころうとしていた。

 

 

 

 

「……はぁッ……はぁッ」

 

 木々の中を、一人の青年が枝をかき分けて進む。白と言うよりは銀色に近い髪に、ボロボロの黒スーツ。身長は160㎝後半で、非常に弱った様子は何かから逃げている、と言う言葉が似合っている。しかし、後方からは誰も追ってきている様子はない。それでも、青年は走り続ける。

 

(怖い……怖い怖い怖い)

 

 青年の頭の中では、常にその言葉が反復している。だが、そこに何が、という対象はなかった。

 だが、森の中で目覚めた青年が、最初に思い出したことは「何かに追われているということ」だった。誰か、は分からない。けれども同時に思い出した「夜を照らす炎」が、咄嗟に青年の足を動かしていた。

 空を飛び、襲い掛かってくる竜人と機人の姿とそれが映し出される暗闇。それが終わったと思ったらいきなり森の中だ。だが、それ以上に彼を不安にさせていたのはそれが一番の問題ではなかったからだ。

 

「……っ。どこだ、ここ……。それに、俺の……名前……」

 

 分からない。ここがどこなのかということ以上に、自分が誰なのか、何者なのかが分からなかった。思い出そうとしても、逃げながらのせいなのか、それ以外の要因なのか、思い出すことは叶わない。

 

「はぁッ……っ!」

 

 光が見え始め、もうすぐ森を抜けると思われたところで何かに躓く。姿勢を保つ力もない青年はそのまま地面に顔をぶつけてしまう。顔を苦痛で歪める青年は立とうとするも、段々と意識が遠ざかるのを感じる。

 

(もう……ダメなのかな……俺)

 

 名前もここがどこなのかも、自身が誰なのかも分からない。そんな中で、青年は必死に手を茂みから伸ばすが、力尽きて地面に着ける。閉じていく視界。消えゆく意識でかすかに誰かの声が響いた。

 

『―――……ハジメ―――』

 

(……ハジメ?……ハジメ)

 

 自然と心の中で、反復する。ハジメ。それが、俺の、名前?

 そう思ったところで、「ハジメ」の意識は眠りの底に着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでさー、ジャンヌちゃんってば、いきなり今日の授業中にすっごい声出したんだぁ!初めて見るってくらいの驚いた声!」

 

「あぁ~、昼前のあれ?確かに、私達のクラスでもなんだなんだって、話題になってたんだけど、ジャンヌの声だったんだね……」

 

 レイアが昼休み前の事について、同じ学園で別の詩巫女養成科クラスに通う友人に聞かせている。その様子をジャンヌは後方からその様子を見て、片手で顔を覆い、恥ずかしいのを隠して見ている。彼女達は現在下校途中にあった。しかし、その様子は他の一般的な学生とは少し違う雰囲気を出していた。その理由は、後方にいたジャンヌの横隣りにいる2人の人物にある。

 

「……はぁ」

 

 ため息を漏らし、視線を左側に向ける。左側には彼女のメイドであるネアがいた。しかし、ネアとは反対の右側を見ると、そこにはジャンヌより背が20センチは高い、アッシュブロンドの髪の男性が黒スーツ姿で同行していた。本来の学生の帰宅姿にしては、あまりにも不自然な光景である。他の人が見れば一瞬、不審者?と言ってしまうことだろう。だがジャンヌ達の帰り道としては、これはいつもの光景。そして、聖トゥインクル学園の生徒からしてみれば、珍しいものの、無いわけではない光景であったのだ。

 聖トゥインクル学園は、所謂お金持ちと呼ばれる部類の家に生まれた子息・子女が通う学園だ。とはいえ、レイアやネアといったそうでない生徒も多く受け入れている。いわばそれらの生徒が同じ場所で学ぶ、ハイブリットの学園である。

 家柄に囚われず、自由な学園生活を、という校風を尊重した結果だ。だがそうなると子どもを学校に通わせるお金持ちの親からしてみれば、子どもが大丈夫だろうかと不安しかない。そこで聖トゥインクル学園では、申請により付き人などを子どもに付けることが出来る。家の経済状況によりそのご息女のボディーガードの人数を学園側と決め、登下校中や学校での不測の事態から守る。これは創立半年後から続く、学園の名物の1つでもあった。

 だからこそ、ドラグディアには「詩巫女を攫うなら、ステージで攫え」などという皮肉めいた格言も存在する。もっとも、警備などの数の都合上ステージの方がもっと安心なのだが。

しかし、10年ほど前に放映された「詩巫女ホリデイ」という映画作品では、ヒロインの詩巫女アイドルに惚れた男性が、何故か警戒が厳重なコンサートステージからヒロインと共に逃走に成功し、それが色んな意味で話題沸騰した。以来、誘拐未遂もちらほらと出てきて、結果的にその映画配給会社は最近続編の批判と共に倒産したそうだ。

 ため息を漏らしたジャンヌに、黒スーツの男性が声を掛ける。

 

「どうされましたか、お嬢様。何かおありしましたか」

 

 父と年齢が近いにも関わらず、若い容姿のボディーガードの口からは、その容姿から想像される濁りの少ない声が発せられる。しかし、それにキャーキャー言うような性分ではないジャンヌは、ムッとした表情でチラリと見て、また顔を正面に戻す。

 話をする気はないという自身の主に対し、学校での付き人であるネアが上司とも言える男性に事情を説明する。

 

「実は、昨日の話の事で……」

 

「なるほど……大体は察しました」

 

 少し後ろに下がって、そのようにやり取りする2人。ここで大きく話をしないのは、ジャンヌの性格と、この状況を知っているからで、ここで大きく話を広げればまたジャンヌが不機嫌になるというのを2人も分かっていたからだ。

 しかし、2人がジャンヌの事を気遣って、それ以上話にしなかったとしても、突かれてしまえば意味はない。レイアと話していた別の詩巫女養成クラスの少女が、ジャンヌに話を聞こうとする。

 

「……で、一体何を浮ついてて、ガンダムを見てたの~?」

 

「……ノーヴェさん?言っておきますけど、ガンダムだと断定はしていませんからね?」

 

 睨め付けるような視線を黒髪の少女に向ける。黒い髪をツーサイドアップの形で垂らしている同じ制服姿の少女は、幼げな顔立ちからニヤリとした表情でジャンヌに返答する。

 

「いやぁ、聖トゥインクル学園の学生で、ガンダムって話が出たら食い付かないわけないよ。で、どうなのどうなのっ?」

 

 ぐいぐいと真相を訊こうとする少女は「ノーヴェ・リントヴルン」。彼女も聖トゥインクル学園の所謂お金持ちの子女、お嬢様と呼ばれる部類だ。だが、彼女の場合ジャンヌと帰り道が一緒で、家柄の親交もありジャンヌの家のボディーガードに共に送り迎えしてもらうこともあるため、ボディーガードがいないこともある。今日は遅れて帰る妹の方にボディーガードが言っていた。

 というか、今日はこの娘と帰るんじゃなかったわ……。こっちの事情は知ってはいる家だけど、「呪い」の事とかはこの娘には知らされていないって聞いているし、今その話をあんまりしてほしくないのだけれど……。いや、いつももしては欲しくないけれども。けれど、ノーヴェって実はわたくしの呪いのこと、知ってたりする……?

 過去の話の突っつき具合からして、知っているのではという疑惑を持つも、あまり深入りしても気分を悪くするだけ、と言い聞かせて分からない、とだけ言っておくことにした。

 

「知りません。大体、わたくしは見たのがガンダムだとは一言も言っていないです。レイアさんの考えにそうかもと思っただけでして……」

 

「あれ、そう言ってたっけ?」

 

 ふとレイアが2人間に割って入る。それは、ノーヴェへのツッコミの言葉だった。ただ2人の間に顔を突き出すように入ったため、ジャンヌとの距離がかなり近く、ジャンヌも急に沸き上がったレイアへの緊張感が高まる。

 

「れ、レイアさんッ!?」

 

「あー、レイア言っちゃダメだって、それは。少しジャンヌを混乱させようかなって思って……って、別の意味で混乱してた」

 

 ちょっとしたからかいのつもりであったノーヴェの言葉は、予想外の動きで当初のジャンヌへのちょっかいに成功する。後方で付いて行きながらそれを見ていたネアとボディーガードの「フォーン・フリード」もまた、ため息と表情の動かない呆れ顔をする。

 唐突のダメダメお嬢様に見かね、ネアが付き人として仲裁に入る。

 

「レイア、いきなりお嬢様を驚かせないであげて。前も言ってたけど、お嬢様はそう言ったことにあまり耐性がないから。……特にレイア相手だと」

 

「あははー、ごめんねー」

 

 最後の言葉だけレイアに聞こえないように小さく釘止めするネア。レイアの後、ノーヴェにも言う。

 

「ノーヴェ様も、お嬢様と長年のご友人とはいえ、からかいはほどほどにしていただけると助かります。……後のフォローが大変なので」

 

「まぁ、仲はどうか分からないけど、付き合いは長いよね。善処はするね」

 

 一方ノーヴェにも注意がされる。若干ジャンヌへの不満も入っていたが、それはある意味忠誠の裏返しとも言えなくもない。

 そしてジャンヌはと言うと、呼吸をその間に呼吸と気持ちを整えていた。先程の光景を脳にしっかりと焼き付け、かつ表情を元に戻そうとしていた。

 あ、あんなにレイアさんの顔がぁ……。あれだけ近くにあったら、レイアさんと……ふぁーんっ♪

 絶対的に外には漏らせないような事を心の中で叫んでいたジャンヌ。咄嗟にレイアから表情を悟られないようにと、近くの公園の方に顔を向ける。

 と、その視界に、とあるものを見つけた。

 

「―――え?」

 

 ジャンヌの視線に留まったのは、公園のベンチの近くの茂みだ。春から夏への移り変わりの為か、茂みの緑がより深くなっていく変化の途中の隅に、それらに合わない肌色が見えたのだ。

 ペンキでも飛んでしまったのだろうか、と思ったジャンヌだったが、よく目を凝らして見て、「それ」を理解した。

 

(あれって……人の手!?)

 

 一瞬、戦慄を感じる。立ち止まっていたため、レイア達もジャンヌの異変に気づき、その方角を見始める。

 

「ん?どうしたの?ジャンヌ?」

 

「ジャンヌちゃん?公園の方なんか見て、どうしたの……って、あれ人じゃない!?」

 

 真っ先にレイアが気づく。ただならない声の上げ方に、ボディーガードのフォーンが咄嗟に動く。

 

「お嬢様、ここでお待ちを。ネア、ジャンヌお嬢様を」

 

「分かってます」

 

 指示を飛ばしたのち、すぐさま公園の塀部分からフォーンが駆けだしていった。万が一、茂みを覗いた時に急に……ということを可能な限り避けるための動きである。しかし、それをあまり理解しているはずもないレイアが、フォーンに続いて公園の出入り口の方へ走って向かう。

 

「レイアさんっ!?」

 

「大丈夫っ。私が着く頃にはフォーンさんが見てるって!」

 

 発見者ながら、レイアの唐突な行動に思わず悲鳴が漏れてしまう。が、その心配も杞憂となる。

 

「……大丈夫です、来てもらっても!」

 

「ッ……!」

 

 茂みに着いて、「それ」を確認したフォーンが振り返ってこちらに大きく声を出す。レイアが心配なジャンヌは、それを受け早急にノーヴェの横を通り過ぎて公園へと入っていく。

 

「お、お嬢様!」

 

「相変わらず早いね……多分レイアの事でなんだろうけど」

 

 そんなの当り前じゃない。わたくしにとってはレイアさんの無事が何より……もしわたくしが見ていたばかりに、レイアさんが危険な目にあったらわたくしのせい……っ。

 ノーヴェの意見を小馬鹿にするように心の中で肯定しながら、ジャンヌはレイアを追うようにして件の公園の茂みに駆け寄る。既にレイアがフォーンに抑えられながらもその手の隠れた部分を覗いていた。

 息を少し切らせ、たどり着いたところで、レイアの顔を見る。

 

「れ、レイアさんっ。一体何が……」

 

「……酷い。どうしてこんな……」

 

 一瞬、ジャンヌの体が硬直する。声を掛けたところで、そう口にしたため自身に向けられた言葉だと受け取ってしまったのだ。しかし、その後に続いた言葉で、平静を取り戻すとレイアの視線の先を恐る恐る見る。そしてレイアの言葉の意味を理解する。

 

「……っ」

 

 茂みを覗いてみると、そこにいたのは1人の男性だった。髪はジャンヌと同じくらいの色相の銀で、髪型は少しはねっけがあるが、普段のは物静かそうなものなのではという面影がある。服も材質は良くなさそうだが、黒のスーツ姿であり、それを助長させる。だが、その顔は未だ少し幼さがあるように思える。だが、それ以上に、その姿はとても良いとは思えなかった。

 服のあちこちに枝や葉が着いている。それだけならまだしも、あちこちには所々焼け焦げてしまったような跡がある。一部は焼け焦げた服の中……その下の皮膚にも生々しい傷跡があり、戦場を生身で抜けてきたのかと思われるような格好だった。

 

「……お嬢様」

 

「……」

 

 フォーンが下がらせようとするも、ジャンヌは首を振ってそれを断る。ジャンヌも父が戦場に出る軍人であるため、父がいる軍の司令部に行ったことがある。そこで戦場から帰還し、命を落とした兵というモノは、目にしたことがある。だからこそ、フォーンがあまり見せたくないと思ったのには理解はあるが、おそらく初めて見るであろうレイアを放っては置けなかった。自然とレイアの手を握る。

 同じく到着したネアとノーヴェも、それを見て各々に声を上げる。

 

「お嬢様っ。あまり急がれるとこちらも……あっ、これは……」

 

「……はぁ~。まだ、息はありそう……ですよね?」

 

「はい、確認しました。わざとというわけでもないようです」

 

 ノーヴェからの確認に予想通りの反応が語られた。一応、こういった状況でも、稀に脈拍を偽装して起こされる状況から逆転……という場面もあるので、それには非常に慎重だ。

 一先ず、偶然にも自身が視線を向けたおかげで助かった命があったというのは、少しいい気分だ。ジャンヌはそのままフォーンに救急車の手配をフォーンに依頼する。

 

「じゃあ、フォーン、救急車を呼んで。病院に搬送を……」

 

「―――ジャンヌちゃんっ!」

 

 しかし、予想外の声が響く。声の主はレイア。ジャンヌのすぐ横から発せられたので、すぐに理解と同時にはっとする。

 

「は、はいっ……て、あ、レ、レイアさ……!」

 

 そこでようやく自身の手がレイアの手を握っていることに気づく。慌てて離そうとしたが、その前にレイアはその手をがっちりと両手でつかみ、アクションを起こす。

 

「ジャンヌちゃん!」

 

「ふぇあぁあっ!?」

 

『……』

 

 れ、レイアさんに握られてる……わたくしの手、しっかりと……っ!え、これは夢ですか?夢なんですか?夢ですよね!?いきなりこんなところでレイアさんに正面向かって握られるだなんて……。まさか、わたくし……レイアさんに、こ、告白されて!?

 次々起こる急展開に、ジャンヌの思考は追いつかない。妄想たっぷりの脳内思考が表情から漏れ出ているのを見て、ネアやノーヴェは何とも言えないという表情で見守る。

 そして、当の本人であるレイアは、ジャンヌの手を強く握って言った。

 

 

 

 

「お願い、彼を助けてあげてっ」

 

 

 

 

「………………え?」

 

 妄想していた光景(欲望)が、瞬間的に消えていく。同時にジャンヌの意識も夢の中から現実へと引き戻される。強く握られ、何とかして自分の心を落ち着けさせようと、本意ではない振りほどきをしようとしていた手の力もプツンと抜けていく。

 だが、ジャンヌの思考が元の場所に着地する前に、レイアが続ける。

 

「ここからだとジャンヌちゃんの家の方が近いし、それに確か、ジャンヌちゃんの家にはお医者さんもいたよね?」

 

「え、えぇ……。確かに医者ではないですが、医師免許を持つ庭師がいたと思いますが……でも、わざわざ……」

 

「それじゃあダメだよ!!」

 

「ひゃうぅ!?」

 

 話を続けようとしたジャンヌの言葉を、レイアは彼女の腕を掴んで遮った。普通、いくら仲のいい友人同士とはいえ、レイアの行動はあまり推奨されるものではない。だが、状況とレイアの事を良く知っている面々だからこそ、止めはしなかった。……1人、どうなるのかと驚いた表情の後にやけている人物がいたが。

 対するジャンヌは二の腕を掴まれ、身動きできない。力の問題もありはするが、それ以上に突然掴まれたことへの驚きのせいだ。連続する衝撃に、もはや精神状態は(いい意味で)壊滅状態だった。レイアの一声だけで竦んでしまっているほどだ。

 

「あ、ご、ごめんね。……でも、早く助けないとって、思って……」

 

 流石に気づいたらしく、自身の突っ走りを謝罪するレイア。うって変わってしおらしい表情だ。ただ、そのしょんぼりとした中にある愛らしさに、ジャンヌはいとも容易く落とされる。

 

「い、いえ……出来ればそのままその……」

 

「……お嬢様?」

 

 ネアはその光景を白い目で見ている。そうとは知らず、ジャンヌは顔を赤らめて背けていたが、携帯を掛けていたフォーンの言葉でその場の空気が再び一転する。

 

「申し訳ございません、お嬢様。生憎と言うべきか……首都の一角で起きたマフィア同士の衝突による被害で、救急車は回せないそうです」

 

「そ、そうなの?……となると」

 

 ゆっくりと、視線をフォーンから再び青年の方に向ける。あまり家に見ず知らずの者、特に男性はあまり入れたいとは思わなかった。しかし、怪我の度合い、それに何より、レイアからの頼みである。

 少し考えたのち、ジャンヌはファーフニル家の者の1人として、決断を下す。

 

「……分かりました。フォーン、家に運んで。ネアは家の方に連絡してくれる?」

 

「分かりました」

 

「はい、お嬢様」

 

 2人の従者達は、主であるジャンヌの声に答え、すぐさま青年の搬送と自宅の者へ準備に取り掛からせた。

 それを見て、ノーヴェは意外だと言葉を漏らす。

 

「珍しいね。ジャンヌが人助けなんて」

 

「滅多にこのような非常事態がないだけであって、流石にこれは致し方ありません」

 

「そう」

 

 ジャンヌもまた竜人族の1人だ。いくらレイア第一、男性忌避の気があるとはいえ人命がかかるとなれば、仕方なかった。もっとも、レイアからということもあり、それを察してかノーヴェもどこか深入りしようとはしていなかった。

 フォーンにより持ち上げられる青年。その様子を、顔色を窺うように心配そうな表情で見てレイアは、ジャンヌに感謝の気持ちを伝えた。

 

「ジャンヌちゃん、ありがとう」

 

「いえ、レイアさんの為でしたら、大丈夫です。それに、お礼なら後で2人にも」

 

「……うん、そうだね」

 

 レイアの為、という部分には気を留めず、だがしっかりとレイアは返事をした。そしてフォーンが青年を背負ったのを確認して、ジャンヌの実家「ファーフニル邸」まで駆けだしていった。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただき、ありがとうございます。

ネイ「新しくキャラが出て、ハジメさんとジャンヌさんが出会いましたね。フリードがまさかお話に絡んでくるなんてと思いましたが……」

グリーフィア「けど定番のドラゴンの名前ね。もう1人は……リンドヴルムかしら?モチーフは」

そうだね。リントヴルムだね。

ネイ「……あ(察し)」

それでいいんだよ(^o^)

グリーフィア「詩巫女、ってやってる時点で察しねぇ。けど、レイアとジャンヌのやり取り、ある意味そっくりすぎて別の意味で怖いわ」

これがぁ、2人を3年くらいなりきり的に採用していた経験よぉ!(メタい)

グリーフィア「慰謝料を請求するわ」

なんで!?(;゚Д゚)

ネイ「2人への、って話じゃないですか?それより、次回から大きく動きそうですね」

あ、うん。そうだね。とりあえず、今裏で進めてEPISODE6くらいで出会いの節は終わりそうだから、次はEPISODE5!

グリーフィア「次回もよろしくねぇ。じゃんけーん♪」

いや、あの番組と張り合うつもりないからね!?(;゚Д゚)そしたら日曜投稿になるから!


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EPISODE5 出会い5

どうも、皆様お元気でしょうか。歯医者に行ってきたところ、虫歯ではなくいつもの知覚過敏だと言われた、藤和木 士です。

ジャンヌ「相変わらず、知覚過敏に悩まされていますね。アシスタントのジャンヌ・ドラニエスです」

レイ「同じくアシスタントのレイ・オーバだよっ!もうすぐクリスマスだぁ!」

あ、と言ってもまだこの作品始まったばっかりなので、クリスマス回とかは出来ませんので(´・ω・`)

レイ「いや、いままでもしてないじゃん」

ぐふぅ(^o^)

ジャンヌ「そうですね。ただ、藤和木から聞かされているプロットでは、それも今作では準備しやすい構成だとか?」

うん。作中の経過時間速度が結構早くなるようにしてるからね。クリスマス回とかも、外伝的にストーリー構成できるようになってるから、そういうのに便利だよ。

レイ「これはSSRからの教訓だね」

ジャンヌ「けれど、人物のモデルにわたくし達がいるので、実質藤和木にとっては妄想を実現できる口実という」

もうやめて!(;゚Д゚)私のライフはゼロだよ!?

ジャンヌ「いつものようにノヴァの煌臨時で回復させればいいじゃないですか」

(´・ω・`)そういう話じゃ……さて、今回はEPISODE5です。

レイ「元君がジャンヌ・ファーフニルちゃんの家に運び込まれるってところで終わったんだっけ?」

ジャンヌ「というか、同じジャンヌ、なので呼び方変えませんか?」

あ、それについては作中で愛称出たら変えるのでご安心を(´・ω・`)それではどうぞ。


 

 

 ジャンヌ達が青年を運んでから、1時間。既に診断・けがの手当ては終わり、青年は空いていた部屋の一室のベッドに寝かされていた。

 手当てをした医師免許持ちの庭師からの判断では、切り傷ややけどこそあるがいずれも軽く、酷かったのは服の損傷のせいだと聞かされ、レイアは一安心していた。

 

「とりあえず、手当てはしましたのでもうすぐ起きても良い頃だと思われます」

 

「よかったぁ……」

 

「ありがとう。急なことで悪かったのに、ここまで……」

 

 レイアの感謝の気持ちを代弁する。が、40代の庭師は首を振って謙遜する。

 

「いえいえ。むしろ久々に医師免許が役立ったことに関して、ジャンヌお嬢様には感謝しております。路頭に暮れていた私を庭師として雇い入れてくれた、ガンド様も含めて、私は頭が上がりませんよ」

 

 彼は医師免許を持っている。つまり、元々は医者だったのだ。だが、勤めていた病院の経営不振が重なりクビ。それにより悪事に手を染めようとしていたところで、勧誘されていた裏社会の組織がドラグディア軍により壊滅させられ、部隊を率いていた父に彼の趣味である造園に目をつけ、庭師に採用されたのだ。

 しかしながら、父の話題を出されたところで顔がうっすらと強張る。それでも、手当てをしっかりとして、レイアを安心させてくれたためそれを出さないように我慢する。

 

「ですが、傷口からのウイルスのせいで後遺症が出る可能性もありますので、彼が目覚めましたら一度病院に行くことを提案していただけるとありがたいです。それでは」

 

「はい、ありがとうございます」

 

「あ、ありがとうございましたっ」

 

 手当てを終え、仕事に戻っていく庭師をネアと慌てた様子のレイアがお礼と共に見送る。完全にドアが閉まったところで、部屋の椅子に座っていた、ジャンヌに似た銀髪の女性が息を吐いて立つ。白のオフショルダーに藍色の膝丈スカートの容姿は、意外さもあるが彼女の性格を表しているようにも見える。

 

「……さて、いきなりだったけれど無事でよかったわね、レイアちゃん」

 

「い、いえ!クリエさんには、本当に感謝しています!!」

 

 その女性から向けられた言葉に、レイアがかしこまってお辞儀する。恐れ多いという気持ちがダダ漏れになってしまう。だが、実際にはレイアだけでなく、ノーヴェとネアも内心緊張している。唯一緊張していないのはその女性と縁の深いジャンヌと、フォーンだけである。とはいえ、別の気持ちなら持ち合わせてはいたが。

 微笑でそのお辞儀に返すと、今度は振り返ってジャンヌの方に顔を向ける。しかし、今度は驚いた様子でジャンヌに訊くように声を掛ける。

 

「……けれど、驚いたわ。ジャンヌが男の子を家に招き入れるなんて……ひょっとしてこ・れ?フフッ」

 

 左手の薬指の所に嵌めた、銀色の指輪を示して見せる女性。その仕草に若干の不快さを見せつつも、その人にジャンヌは少し違った口調で否定する。

 

「ちょっと、お母様!変なこと言わないでくださいっ!詩巫女だって……あれ、なのに、男だなんて!」

 

 バツの悪そうな声で、確かにお母様と発言した。その女性は「クリエ・ファーフニル」。ジャンヌ・ファーフニルの母にして、ファーフニル家の「現詩巫女当主」、そして世界に現在数名しかいないとされる名誉詩巫女の1人でもある人物だ。レイアがかしこまっていた理由は、その名誉詩巫女というものにあった。

 名誉詩巫女。その名の通り詩巫女という職で功績を挙げたものに贈られる称号であり、それもありクリエは様々な詩巫女養成機関に講師として呼ばれていた。もちろん自身の母校でもあり、娘の通う学校でもある聖トゥインクル学園にも講師要請で出たことがある。

 とはいえ、家ではうって変わって子供の母親。名誉の文字はどこへか、たまに娘であるジャンヌをからかってしまう癖もあった。

 

「あらあら……残念」

 

 娘から自身の考えを否定され、目に見えるように肩を落としてがっかりする母。その様子に、尊敬の念を抱いている娘の友人たちは落ち込んでいたが、それにはまだ気づいていない。

 もう……変な期待をして勝手に落ち込まないでほしいです。お母さんも昔は嫌だったって話をしていましたけど、本当にこんな人が本気で落ち込んでいたとかあり得ない……!絶対お父さんとの出会いを劇的にしよう!とかで裏で口合わせしてるに違いないも……です!それよりも、名誉詩巫女としての威厳をしっかりして!レイアさんの目がどんどん白けていってるから!

 心の中でそのように思うジャンヌだが、それはそれと久しぶりに屋敷に入ったノーヴェが屋敷の事について話題にする。

 

「でも、久々に屋敷の中を見た気がする……。前にここに来たのっていつでしたっけ?」

 

「そうね……今年の初めじゃなかったかしら。でも、そんなに変わった?」

 

「いや……あの時って新年の飾りつけがあったじゃないですか。そうじゃない平常時だと、あんまり見てない気が……。多分年末前の、冬の節目にジャンヌが風邪引いた時の見舞いじゃなかったでしたっけ?」

 

「あー……そんなこともあったわね。私がスイート学院に講師として呼ばれた、次の日だったかしら」

 

 2人は親しそうに話しているが、これは家の繋がりに加えてあまり家柄などを気にしていないためである。元々ファーフニル家とリントヴルン家だと、リントヴルンの方が地位は上だ。しかし、リントヴルン家とファーフニル家は大元を辿ると、1つの家である。それが大昔のとある代で、12人兄弟が生まれた。そして各々家の名前を争ったのだが、とある者達の提案で家は大元を残し、12の家に分かれたという。

 そして、その提案をした家こそ、リントヴルン家とそれに共鳴(というより、加担)したとされているファーフニル家なのである。もっとも、この説には様々な諸説があり、歴史家もそのあたりの歴史を調べているとのことである。

 だが、それすらも彼女達には関係なく、ただ関係があるのは2人が性格的にかみ合っているからである。もっと言うなら、ジャンヌをからかいたいという点で共感したのだ。

 話によればノーヴェのお母様のアニエスさんも、昔はお母さんをからかっていたっていうし……遺伝なんですかね。

 2人が話に夢中になっていると、突然レイアが声を上げる。

 

「あっ!ジャンヌちゃん!」

 

「どうされました、レイアさん?」

 

 名前を呼ばれ、すぐに傍に向かうジャンヌ。そしてレイアが喜びの知らせを口にする。

 

「今、彼の瞼が少し動いたの!」

 

「本当ですか?」

 

 その知らせに、部屋にいた者達が次々と集まっていく。フォーンのみは怖がらせないようにしつつ、後ろで有事に備えていた。

 

「ということは、もうすぐ目を覚ますパターンね」

 

「奥様……パターンっていうのはどうなんでしょうか」

 

「ネア、あまり言わなくていいと思うわ。いつもの事だから」

 

 若き日を思い出したかのように興味津々に見るクリエ。母の子どもっぽさは時たま使用人達も心配にさせられる。一方ノーヴェの方はそれに賛同する勢いだ。

 

「ですね!ここはジャンヌかレイアが、甘いキスで起こしてあげて、彼をメロメロにさせるとか……」

 

「へ……?」

 

「ッ!!ノーヴェ……あなた、それで色々と責任とれるというんですかッ!?」

 

 ノーヴェの言葉に若干の殺意を持って返す。責任と言うのは様々だが、彼女にとっての責任第一候補は、まぎれもなくレイアの唇を取った責任を取れるのかと言うことである。

 ただし、ノーヴェの方ももちろん本気ではない。流石にやり過ぎたと謝罪を入れる。

 

「ごめんって。レイアも大丈夫?」

 

「う、うん……。けど、ちょっと驚いちゃった、えへへ」

 

 全く、と言いつつも、レイアが本気でしていたらどうしようと思っていたジャンヌ。しかし、その優先候補に本来上げるのは自分である。しかし、それに気づく前に、青年が目を覚ました。

 

「…………んぁ……」

 

「皆様、目を覚ましたみたいです」

 

 その声に一斉に目を向ける。レイアとノーヴェが顔を突き出して覗き込む。母クリエもまた、少し背伸びをしてその様子を見ようとしていた。

 そして青年が目を開いた。焦点が合っていないような表情の中、最初に声を掛けたのはレイアだった。

 

「はぁぁぁ……気が付いた?」

 

 ある意味、定番の言葉だろう。それ以外が飛んでくることもあるかもしれないが、まず間違いないのはこの言葉だ。

 

「あら、本当にこういう風に目が覚めるのね」

 

 ノーヴェは若干メタな方面で言葉を掛ける。確かによくある展開に誰も疑いを持たないというのはおかしいかもしれない。でも、それはあくまで流れなのだし、それ以上に現実でそんなことが起きても瞬時にそう思えないからそのようになるのなら疑いはない。彼女の場合は面白そうだから言っているのだ。

 

「目覚めましたね……少年」

 

 一際、異彩を放ったのは自分の母親だった。内心嫌な予感はしていたが、それ以上だった。完全に伝記やゲームでいう所の女神のようなものだろう。

 ていうか、お母さん本気でやらないで。今すぐやめて。目覚めた人の前で雰囲気出すように、正面に立って手を広げて、そしてネアに下の方から風を送らせるのも今すぐやめさせて。レイアさんの前どころか、人の前で母親の醜態を見せられる娘の気持ちになってください!

 心の中で嘆願するジャンヌに、ノーヴェが肩をつつく。

 

「ジャンヌ、あなたは顔出さないの?」

 

 小声で問いかけるノーヴェ。しかし、ジャンヌはそれを断ろうとする。

 

「いいですよ。だってわたくしは別に……って、ひゃあ!?」

 

 いきなり背中に力を加えられて、前に出される。背後を見ると、押したのがレイアであることを知る。突然の奇襲に声を上げてしまう。

 

「れ、レイアさん……?何を……」

 

「ジャンヌちゃんが出なきゃダメだよっ!だって、最初に見つけたのはジャンヌちゃんなんだから!」

 

「う……あう……」

 

 レイアの言葉に、納得せざるをえないという反応をするジャンヌ。

 うう……。レイアさんのまさに言う通りなんですよね。あの時わたくしが気づいていなかったら、この人は死んでいたかもしれないわけですし……。で、でも何でそれだけでわたくしが声を掛けなきゃ……。

 言い淀んでいたところで、青年の視線がこちらを向いているのに気づく。寝ぼけているといったような感じだが、それでもこちらの方をじっくりと見ていた。純粋無垢、疑心暗鬼。その2つの言葉が似合うかのような瞳に、ジャンヌは困惑と嫌悪の気持ちになりたじろぐ。

 それらは全て圧迫感となってジャンヌを絞める。何か言葉を、と思ったところで、青年の口が開いた。

 

「…………ここは……貴女は……?」

 

 完全に先に言われてしまう。だが、それが逆にジャンヌの会話のペースを作った。

 

「っ……ここは、わたくしが家族と住む自宅。わたくしは、ジャンヌ・ファーフニルです。あなたは?」

 

 こういった場面では、相手の質問に答えるのが一番楽な展開だ。特に青年は意識は朦朧とはしているものの、はっきりとそれを口に出したため、答え易かったのも幸いだった。

 それを聞いて、少し首を傾げるも視線を外す青年。事態を把握していないような眼をする彼は、ジャンヌからの質問に唸る。

 

「名前…………ハジメ……?」

 

 首を傾げながら、そう答える青年。確証のなさそうな声には流石に後方に待機していたフォーンが危機感を感じ、前に出る。

 

「なんだ、その答えは。自分の名前くらい普通は分かるだろう」

 

「……あの、もしかしてなんですが……」

 

 すると、ネアが何か意見があるようにおずおずと手を上げる。視線を感じつつも、ネアは前に出て、青年にとある質問をした。

 

「もしかして、思い出せない、とか?」

 

 一瞬、空気が重くなったように感じる。レイアがすぐに青年に本当なのかと問い詰める。

 

「え……それ、本当なの!?」

 

「…………」

 

 青年は首を縦に振る。どうやら本当の事らしい。しかし、名前だけでも分かっているのは好都合だろう。もし覚えていないのなら、誰なのかという手がかりはもちろん、今どうやって呼べばいいのかも少しばかり問題となっていただろう。

 

「記憶喪失……ネアちゃん、もう一度庭師さんを呼んできてくれる?専門じゃないかもしれないけれど……」

 

「分かりました」

 

 先程のノリをいずこかに捨て去ったクリエは、ネアにもう一度医師の庭師を呼ぶように伝える。のんびり屋の母の真剣な声からも分かる通り、状況がややこしくなったのは明らかだった。

 

「……あー……っと、こういう時って、どうすればいいんだっけ?」

 

 ノーヴェがいつもの調子を狂わされて、まごついている。逆に先程一番に驚いていたレイアは、すぐに状況を整理しようとした。

 

「どうして……まさか、この怪我のせいで?」

 

 しかし、歌関連において優秀な成績を収めるレイアも、そんなことには当然最良の予測が出来るはずはない。けれども、フォーンがその予測は遠からず当たっているであろうことを指摘する。

 

「おそらくは。ただ、本当にそれは確かめてみないことには分からないかと」

 

 複雑な目で青年を見つめる。心配そうに装ってはいるが、その瞳には未だ警戒心が残っている。それは、彼が演技をしているのではないか、という疑惑だった。

 何か疑惑の目を向けているようね。わたくしも元々入れたくはないというのはあったから、一先ずそれらを指摘してから先生の診断の後、フォーンに進言する形で病院に送りましょうか。それならフォーンも味方してくれそうね。

 そう思うジャンヌだったが、その思案の途中、部屋のドアが開かれる。おそらく庭師を呼びに行ったネアが返ってきたのだろう。だが、その予想は裏切られる。いや、正確には、予想を超えていた。

 

「只今戻りました。それから……」

 

 ネアと庭師が慌ただしく部屋の中に入る。だが、入ったにも関わらずドアを閉めず、続いて大柄な男性が白に紺のラインが入った制服姿で入ってくる。ワインレッドの長い髪に前髪が少し立った髪型は、老戦士の威風を出しているようにも見える。

 しかし、その姿をジャンヌはよく見ていた。むしろ、毎日見て、かつ学校に行っている間、もう見たくないと思っていた人物の姿だったのだから。

 

 

「あら……貴方、早かったわね」

 

 

 ササッと前に歩み出るクリエ。母の微笑に、その男性も優しく返す。

 

「あぁ、予想以上に早く仕事が終わったからね。それより2人に話を聞いたが……そこにいる彼かい?」

 

 男性はハジメ?と言った青年の方に目を向ける。当然、ジャンヌの姿も目に入るわけであり、視線を向けられたジャンヌは不機嫌そうに目を細める。それを見て、男性はやれやれ、と言った様子を見せたのち客人であるレイア達に挨拶をする。

 

「レイア君とノーヴェ君も大変なことに巻き込まれてしまったね」

 

「い、いえいえ!ジャンヌちゃ……じゃなかった。ジャンヌさんのお父さんも、お元気で……急に押しかけてしまって、ごめんなさい」

 

「お久しぶりです、ガンドさん。まぁ、そうですね。ちょっとややこしい状況になったのは後悔してる節もあるかなぁ……って感じです」

 

 対照的な対応で男性に返事をする2人。レイアの言葉からも分かる通り、彼はジャンヌの父であり、ドラグディア軍の大隊隊長を務めるガンド・ファーフニルである。先の戦闘で、ジャンヌも目撃した黒いガンダムと交戦し、撃退した人物である。

 しかし、お互いにそれはまだ知りえていない。まさかそんな偶然が起きているとも知らず、ガンドは娘のジャンヌに状況を確かめる。

 

「……ジャンヌ、お前が彼を見つけたそうだな」

 

「…………はい」

 

 少しの沈黙の後、そう答える。昨日の今日で口も利きたくない程ではあったが、今はレイアの視線がある。そういったことを悟られまいと苦虫を潰す思いで実の父への恨みごとを押し隠したのだ。

 だが、そんな父からの返しは、彼女の心の不意を突く。

 

「流石だな。お前は私達の、立派な娘だ。……嫌なことを言えることも含めてな」

 

「え……」

 

 最後に小さく掛けられた言葉に、自分でも気づかずに素っ頓狂な声を出してしまうジャンヌ。しかし、父はそのまま青年の元に座る。

 何よ……人前ではそういう風にいいこと言って……。それで許してもらおうってことなの?いつもお父様は身勝手だ……お母様の時も、あんな風だったの?

 色々と心の中で思うことこそあったが、決してレイアの前では口にしなかった。そして、ガンドは医師免許を持つ庭師の横で、青年と話し始める。

 

「記憶がない、というが、どこまでの記憶がないんだ?」

 

 その物言いに、若干青年は縮こまる。というより、警戒だろう。しかしガンドもそれを考え、青年との視線を自分が低めになるようにしていた。それもあってか、青年は少しずつ自身の状況を伝えていく。

 

「……森の中で目覚めて、それで走ってて倒れて……」

 

 青年の言葉に頷き、簡易的なカルテに書き込む庭師。ガンドの方は更に続けて他に覚えていることが無いか確かめる。

 

「それより前は覚えていない、ということか?」

 

「後は、何かに追われてて……あ、でも……」

 

 青年は腕を擦ってから、思い出したようにとあることを口にした。

 

 

「―――炎」

 

『……炎?』

 

 その場にいた全員が、青年の声を同時に反復した。

 

「はい……。真っ暗なところで、自分の足元で炎が燃えていました」

 

 再び耳にするその単語。それはガンドとジャンヌ、親子の間で場面は違うものの、同じものが己の中で思い浮かんでいた。

 ―――ガンドは今日、戦場で戦った黒いガンダム。ジャンヌは教室の窓から見えた、蒼い粒子を放出する黒い機人。場面が違えば印象も、抱いている気持ちも違う。それでも2人の中で、その言葉は1体の存在へと集約されていた。

 同時に、レイアが炎と言う単語に反応して昼休みの話を持ち出した。

 

「それって……もしかして、ガンダムっ!?」

 

『!!』

 

「ガン……ダム……」

 

 場の空気ががらりと変わる。だが、驚きというのもあれば、よく分かっていない、と言う人物もまちまちだ。それでも、青年程の全く分からないという反応を除けば予想通りと言うモノだろう。

 クリエはレイアにその意図を問う。

 

「んー……レイアちゃん、それってどういうこと?」

 

「はいっ。実は今日、ジャンヌちゃんが見てたんです、ガンダム!!」

 

「……そうなのか?」

 

 レイアからの話を聞いて、怪訝そうに娘に訊く軍服姿のガンド。いきなり予期せぬことを話されたため、どうしようかとオロオロしていたところで、ネアが代弁する。

 

「本物かどうかは分からないそうですが、お嬢様のお話では授業中、蒼い粒子を放出する、黒いMSを見た、とのことです」

 

「……そうか」

 

 ガンドは何かを考えるように唸る。今度はそれを持ち上げて、また詩巫女への説得に利用するのだろうかと考えるジャンヌ。しかし、それが若干繋がらないことに気づく。

 ……あれ、いつものお父様なら国内でのMSの出現には結構敏感なはずなのに、どうして今日はあんな考え事するみたいに……?

 自身の周りしかまだ知りえていないジャンヌは目を細める。しかし、流れを切るように庭師が声を出す。

 

「お取込み中の所、申し訳ありませんご当主。そろそろ、こちらも記憶喪失の度合いを確かめたいと思うのですが……」

 

 庭師の申し訳なさげな声に、今やるべきことを止めてしまっていたガンドが手を少し上に上げて謝罪する。

 

「すまない。始めてくれ」

 

「はい。では、少し質問するので、大丈夫でしょうか?」

 

「……はい」

 

 先程のガンドの対応とは全く違う庭師の検診に、青年―――ハジメは頷く。そして、問診が始まった。

 

 NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただき、ありがとうございます。

ジャンヌ「……藤和木、今回のお話でハジメさん、記憶喪失なんでしたっけ?」

うん?そうだよ?

レイ「記憶喪失って、物語ではよくある展開だよね。ま、王道の1つって感じだね」

うん、そうだよね。

ジャンヌ「……そういえば、SSRの主人公の光樹さん、最初のどういう形でネプテューヌさんと出会ったんでしたっけ?レイさん」

レイ「確か……記憶喪失だったと思うなぁ。……藤和木、もう1つ良いかな?」

……

2人『また、異世界転移の記憶喪失?』

勘のいいガ……ってぇ!それ最初に話した奴!!(;゚Д゚)元々異世界転移と記憶喪失の下地自体があって、それをSSRに流用したの(;゚Д゚)本来ならSSRの光樹君は記憶喪失にならないし、こっちが最初投稿する予定だったし!!

レイ「まぁ、それは言ってたね」

ジャンヌ「けれど、竜と機械の世界観とか、わたくし達を流よ……オマージュしたキャラは今回付けた物でしょう?」

それは言い訳しない(´・ω・`)そういうことで。

ジャンヌ「はぁ、分かりました。次回で出会いの節も終わりそうですし。というか、クリエさんの性格が……」

レイ「あー……個性的だね。SSRでは光樹君が願い出たから良かったけど、ハジメ君はそんなことが出来そうとはいまは思えないからなぁ……クリエさんがどうにかするのかなぁ?」

それは次回のお楽しみだね(*´Д`)

ジャンヌ「そうですね。それでは次回もお楽しみに」


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EPISODE6 出会い6

どうも、皆様。バトスピ弾さん復活が嬉しい\(^o^)/藤和木 士です(*´ω`)

ネイ「いきなりその話題ですか……。アシスタントのネイ・ランテイルです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよ。他にもここでも登場してるアシスタントのレイ・オーバと、作者君お気に入りのジャンヌ・ドラニエスの新イラストまで公開されたことだし……」

負ける気がしねぇ(^o^)

ネイ「何にですか、何に」

さぁ、EPISODE6投稿です。今回のお話で出会いの部分は終了です。

グリーフィア「にしても、あの状況からどうやったら作品紹介のあらすじのようになるのかしら?気になるわぁ」

あぁ……それに関してはすっごい楽しく書かせてもらいました(^ω^)

ネイ「……なんか不安になりますね、それ。ジャンヌ・ファーフニルが、お嬢様……ジャンヌ・ドラニエスをベースにしているとのことなので、一応報告はさせて……」

(´・ω・`)……黙っててくれないかな?

ネイ「次の投稿で怒られるか、投稿終了後に怒られるか、どっちが楽だと思います?」

(^o^)あっ……今日中でお願いします。

グリーフィア「ジャンヌに怒られる展開確定なのね。まぁ、とりあえず話に入りましょう?」

あっはい。ではどうぞ('ω')ノ


 

 

「……では、最後にこちらの読みを答えてください」

 

「はい。……「モバイルスーツ」……いや、「モビルスーツ」でしょうか」

 

「……分かりました。ありがとうございます」

 

 いくらかのやり取りの後、庭師は「お疲れ様です」とハジメと言った青年に声を掛けてから立ち上がる。やり取りを見ていたガンド達の方に顔を向けると、そこから分かった事を報告してくる。

 

「どうやら、知識分野での記憶は大丈夫なようです。道具の使い方などにも、影響はないので生活面では問題ないでしょう」

 

「そうですか」

 

 ガンドの応答の直後、ジャンヌやレイア達もまたホッと胸を撫で下ろす。生活が出来る、というレベルの知識なら、問題ないだろう。

 しかし、と庭師の言葉が続く。

 

「どうにも記憶におかしな点があることは否めませんね」

 

「おかしな点……?」

 

「……というと?」

 

 自身の雇い主でもあるガンドに訊かれ、庭師はカルテを見てその点を述べる。

 

「結論から言うと、彼は竜人族、そして機人族でもないかもしれません」

 

「え……?」

 

 不思議そうな声が、横で聞いていたクリエの口から洩れる。クリエだけではなく、他の者達も、表情に困惑の色が浮かぶ。

 

「どうしてそう思ったんだ?」

 

「はい。確かに生活面の知識はあるのですが、途中竜種についての質問をしたのですが、答えられませんでした。そこで、機人族についての必須知識……アンドロイドタイプについて訊いてみたのです。……ですが、こちらも同じく答えられずにいました」

 

 庭師の口にした「竜種」、「アンドロイドタイプ」。これはいずれも、竜人族、機人族の種類についての事だ。どちらも種族や地位に関わることであり、道具の使い方にも影響することがある生活知識であるはずだ。

 しかし、それを彼は覚えていない。あまりにも不自然である。都合よく忘れたにしても、生きているうちに何度も耳にする言葉である。忘れたとは考えづらいものなのだ。

 その場にいた青年を除く者全員が、不思議そうにする。続けて庭師は、もう1つそう思った理由を口にした。

 

「そして……彼はどうも、竜人族や機人族の事を知らないようです」

 

「知らないだと!?どういうことだ」

 

 思わずフォーンが声を荒らげる。庭師もその声の大きさと突然のタイミングに竦む。彼でなくても、後方にいたレイアも思わずビクつかせていた。ジャンヌの視線が細まり、彼の背中を睨め付ける。

 だが、庭師も流石に慣れていたのか、それとも予想通りだったのか、息を吐いてから自身の限りなく推測しかない予測を伝える。

 

「詳しくは分かりません。……ただ、彼はこの世界の動物の内、ドラゴンだけは彼にとっては「空想上の生き物」のように言っていたのは間違いありません」

 

『…………』

 

 それは、あまりにも自分達にとって荒唐無稽な話だった。特に敵である機人族の子どもですら、ドラゴンを目の敵にしていると、学校から教わってきていたジャンヌを除く学生組は動揺している。ただ1人、ジャンヌは少し違うことを考えていた。

 ドラゴンが空想上の生き物……か。そんな世界で生まれたなら、わたくしはこんな苦労はしなかったんでしょうか。……考えるのもナンセンスですね。

 この家でなくても、救世主という存在に引っ張られ続けるこの世界で生きなければならない。それならそんなものが存在しない、ついでにドラゴンもいない彼のような世界観ならば、自分は幸せに生きられたのだろうか、と考えていた。

 一方で状況を整理できた大人達は、今後の対応について協議し出す。

 

「状況は分かった。となれば、問題はこれからどうするか、だな」

 

「はい。彼の素相が分からない以上、監視できる環境がおすすめですが……そうなると軍病院になるかと……」

 

「そんな!!」

 

 ガンドと庭師の会話に、待ったの声が飛ぶ。声の主は、ジャンヌの愛しき人物、レイアである。

 レイアはジャンヌが止める間もなく、その意見に反論する。

 

「酷すぎだと思います!彼は記憶がなくなって怯えてるのに、そんなことしてたら、余計に記憶が思い出せなくなるんじゃないですか?」

 

 現役軍人であるガンドに、物おじせず意見するレイアの姿は大変勇ましい。しかし、その考えはあまり褒められたものではない。否定しきれないところもあるが、それでも取捨選択しなければならないことを、ガンドの口から語られる。

 

「レイア君。確かに君の意見ももっともだ。けれど、これは少し例が特殊だ。彼は竜人族ではない。少なくとも外からの人間……侵入者だ」

 

「う……けど、それでも!」

 

 外からの侵入者であるという可能性が高い、ということを密に言われるも、それは関係ないと言いたげにするレイア。ジャンヌとしてもレイアの味方に付きたかったが、自身もまた国に深く関わって来た家の者。簡単な理由では動けないし、それが無茶苦茶な願いであることも分かっていた。

 ……なのだが、どうもそれも簡単な話ではないようだった。続けてガンドは息を吐いて、困った様子で続きを話す。

 

「ただ……軍病院も今、ちょっとしたパニック状態でね。これは機密事項でもあるんだが、簡単に言えば今日戦闘があったんだよ。そのせいで空きがないという話だった」

 

「そういえば、ニュースでマキナス軍との戦闘勃発って出ていたわね。見るたびに心配だわ」

 

 夫の知らず知らずの戦闘参加に、ため息を吐くクリエ。しかしいつもの事のように取り乱すことはない。結婚してもう20年も経っていれば、これくらいの事では慌てることはないということなのだろう。

確かに戦闘があり、それで負傷者が出たのなら軍病院にもかなりの軍人が入院するだろう。普通の病院も、先程青年を家に運ぶ際に聞いていたように、首都で起きたマフィアの抗争で病院施設にも空きはない。となれば、普通の病院も警備を付けての入院なども厳しいかもしれない。と同時に、ジャンヌの中に1つ納得のいく事柄があった。それは、昼間の黒いMSの事だ。

あの時軍が出てなかったのは、戦闘があったから……。でも、それなら逆に警戒態勢があるから、モビルスーツが出ていてもおかしくないような気もするけれど……?まさか、軍はあのMSを見つけられなかった?可能性はなくないし、それでしか納得できない。でも……そんな事って、あり得るの?

自身の中で黒いMSに関する様々な考えが再び、だが今回は冷静につなぎ合わされようとする。ところが、その思考はまたも別の人物の発言で遮られる。フォーンがその処遇について問う。

 

「では、いかがいたしますか?一番はそれなりに警戒も出来るここ、でしょうが、あまり推奨は……」

 

「あぁ、そうだな。色々と不都合もあるし……」

 

 そう言ってジャンヌの方にチラリと目を向ける。分かっている、その理由はジャンヌにあることは。実はジャンヌは、軽い男性不信の気がある。もっとも、それは好みによるところが大きく、家の人間に関しては大きくはない。

 しかし、ひとたび家の外の人間となると、学校の方でも詩巫女としての共鳴者……簡単に言えばパートナーともあまり会話しない程だ。学校の先生もあくまで立場に則った程度の会話くらいしかしない。またパートナーの方はどうも外部からの人間らしく、それも相まって会話していく気がしなかった。

 父親であるガンドも、それは十分に理解して家には既知の信頼できる男性以外は家に入れていない。使用人面接などは別だが、その場面でもガンドはジャンヌの事も考え、慎重に人選している。

 

(そこはちゃんとしてる……いえ、それをちゃんとしないと、受け入れてもらえない、と思っているんでしょうね。お父様は)

 

 とはいえ、向けられた視線に何か思う所があるのには違いない。それを娘の詩巫女にさせようとする意志と解釈したジャンヌは、不服そうにしながら顔を背ける。一方父親も、仕方ないと言った様子でそれを指摘はしない。

 とはいえ、このまま何処に……という所で、ジャンヌ自身が思いもよらないところから、受け入れ先が見つかる。いや、見つかってしまうこととなる。

 

 

「じゃあ、私の所とかはどうですか!」

 

「ッ!?」

 

 レイアの発言に、思わず驚く。ジャンヌはすぐに顔をレイアの方へと向けた。思わないところからの発言にガンド達も言葉を失っている。唯一、ネアだけは言葉を失うのと並行して、視線を自身の主の驚く様を見てしまうこととなったが。

 ジャンヌ自身が考えなかった、しかし考えれば最も危険な選択肢だ。なぜなら、男が最愛の人物の元にいるということなのだから。とはいえ、その意見に落ち着いたガンドとフォーンも難色を示す。

 

「うーむ……確かにうちで置くのはとは言ったが……かといって民間人の所にというのは……」

 

「それは同感です。レイア様、先程も申しました通り彼には不明なところが多すぎます。いくら何でも、レイア様の家には……それに、彼を保護できるだけの十分な余裕も……」

 

 そうです、いい感じです!レイアさんの事を乏しめることは苦しいですが、それでもあんな男をレイアさんの元に置くことよりははるかにマシ……!レイアさん、大変胸が痛みますが、これもわたくしの想いです!どうか2人のやわらかーな拒否を受け入れて……。

 心の中で、絶対に当人達の前で口に言えないような事を言い続けるジャンヌ。必死に念を送るようにその様子を見ていたが、しかしジャンヌの愛しの少女であるレイアは、彼女のその予想を上回る考えを出す。

 

「大丈夫です!最近私の実家、改築工事して広くなったうえに「セルム」の試験運用入れているので!」

 

「えっ……」

 

 フンスッ!と擬音が出るかのように鼻息を出し、自慢げに語る。彼女の実家は首都セント・ニーベリュング市の隣、シャインライト市にある。このファーフニル邸はその間に位置し、そのため帰りが一緒になっているのだ。そして彼女の実家は果物屋を経営しており、この度店舗兼自宅を改築したと学年が上がる前に聞かされていたのだ。

 そのため家のスペースには説明がつく。しかし、よりによって軍主導の監視・通報システムの「セルム」を採用しているとは聞いていなかった。CMでは「家を、家族を護る鋼の要塞」という謳い文句と共に、国のスポーツ祭典「ドランピック」の選手兼ドラグディア軍軍人のレスラー3人が映っている。そのモニターとして協力してくれる家を募集中、とは聞いていたが、流石にレイアの家がそれに協力しているとは聞いていない。

 そ、そんな……ということは、今後こっそり盗聴器やらノートやらを持って帰ること出来ないということ!?いえ、それはいいです。でもそれならある意味軍の管轄下と言うことで、父も納得してしまう……!?さ、流石に、そんなことはないですよね……考え過ぎ……。

 しかし、現実は非情だった。

 

「あぁ、セルムか。あれを入れているなら、問題ないかもしれないな。確かそれ関連の運用試験もしよう、という話もあると聞いた覚えがある。」

 

「確かに。あのシステムならば実質軍が監視しているのと大差ないという話ですし」

 

「……えぇ……」

 

 父も、付き人のフォーンも納得してしまう。そこには間違いなく、軍というものが関わっているからこその安心感というものがあるのだろう。しかし、それではダメなのだ。少なくともジャンヌにとっては。

 迂闊でした……以前からレイアさんは、異常なまでの幸運があると聞いていましたが、違います。これは間違いなく悪運……!どうやら彼は、レイアさんを陥れるために現れた悪魔のようです……!ここでレイアさんの幸運とあわよくばレイアさんの隣をわたくしから奪い取ろうというのでしょう!……ですが、そうはさせませんよ!

 この流れに明らかにあり得ない考えに至ったジャンヌは、とある手段に出る。それは、自身にも多大なダメージを負う、いわば諸刃の剣であった。しかし、今のジャンヌにとっては、最愛の少女(レイア)を護れるのならば―――答えはただ一つであった。

 

「それじゃ、ハジメ君だったか。彼の事は……」

 

 

「―――その必要はないと思いますよ、お父様」

 

 

 父の声を遮る形で、ジャンヌは声を発する。唐突に制止させられるような形だったため、ガンドも困惑した様子で次女を見つめる。

 

「どうしちゃったの、ジャンヌ?」

 

「お嬢様……?」

 

 母や自身の従者も、その視線をジャンヌ本人に集中させていく。こういう場面では、普通心理的圧迫を受け、緊張しやすいものだ。竜人族も機人族もそこは基本関係ないだろう。しかしながら、もうジャンヌの中ではレイアとハジメの同棲生活以上に心身的に辛い状況……プレッシャーを感じることはない。

 そうして注目が集まったところで、ジャンヌは同棲を阻止するための切り札を切った。息を吸って、それを宣言する。

 

「お父様、彼をここで預かりましょう。このファーフニル邸で」

 

 

 それは、自身の家で、素小不明の青年を預かるという、ジャンヌの今までの家での振る舞いを、志向を大きく外れる提案であったのだ。

 もはやこの手しかない、とジャンヌは思った。ここでレイアから青年を離す為には、誰か別の人物の家に入れるしかないのだ。しかし、使用人の家に送るというのは、軍志向の父やフォーンに反対されてしまう可能性がある。かといってノーヴェの方に頼むのも、母とノーヴェの関係や家同士の力関係も考えるとあまり得策ではない。そもそも母にはあまり迷惑を掛けたくはない。

 途中父の知り合いの人の家に送る、というのも考えたが、父が納得するとは思えないし、そもそもレイアが少なからず青年に好奇心を持っており、あまり近づけないようなところに預けると、かえって不況を買ってしまう可能性があった。

 そうなると、一番リスクが少なく、かつ最善の手はこれだった。一番損するのは他ならぬジャンヌ自身であるが、それでもレイアが守られるのなら、ジャンヌ自身はそれでもかまわない。覚悟を決めたのだ。そもそも、屋敷の中でもあまり話さなければ実害はないはず……。

 

(既にわたくしは悪魔に魅入られたようなもの……なら、せめてレイアさんだけでも護りますっ!)

 

 心の中で、そのようなことを宣言するジャンヌ。一方、あまりにも突飛な路線変更に、娘の好き嫌いなどはある程度熟知するガンドも状況が飲み込めないまま聞き返す。

 

「え……ジャンヌ、本当にそれでいいのか?」

 

「貴方、本音がダダ漏れですよ。……けれど、意外ねぇ。どうしちゃったの」

 

 クリエも笑顔で夫のミスを指摘しつつも、分からないと言った様子で首を傾げている。しかし、その理由を詳しくは言えない。むしろ、そんな理由を真っ向から話しては否定されるだけなのは分かっている。だから、ここでは本心は隠す。実際隠しているモノ自体はそんな危険視されるものではないとジャンヌは思っていた。

 両親からの心配の声に対し、ジャンヌはその建前を語り出す。

 

「最初に彼を見つけたのはわたくしです。それなりに何かしなくては、とは少し思っていました。お父様は先程、軍の情報漏えいを恐れての発言をしていましたが、それくらいは自分の問題なんですから、お父様自身が気を付けていれば何の問題もないのでは?」

 

「あ、いや……確かにそうなんだが……」

 

 ガンドは困惑した、それよりか呆然とした様子で娘の言葉に返答する。もちろん、この困惑は指摘されてのではなく、今までとの対応の違いへの困惑である。

 しかし、もちろんジャンヌもそれを指摘されてはこの隠蔽工作もといレイアとの関係維持が半分無駄となるため、その父の言葉の先を塞ぐように少し威圧感を持って、表情はにこやかに発言を続けた。

 

「なら、いいですよね?」

 

「あ、あぁ……分かった」

 

 娘の気迫に、並々ならぬ物を感じた職業軍人の父親は沈黙する。それを確認すると、一泊置いて、今度はレイアに対する建前を語る。

 

「それに、こちらで預かった方が色々と小回りが利きやすいと思います。買い物や検査なども首都に近い方がよろしいと思いますし、まだ軍の方でも調べるということが残っているかもしれませんから」

 

「うー……でもぉ……」

 

 少し不満そうにレイアは頬を膨らませた。かわいらしさのある怒り顔に、若干見惚れていたいという本音がのぞきそうになる。しかし、今はその場面ではない。それを護るために、継続するための行動……彼女への致し方のない犠牲(コラテラル・ダメージ)なのだ。

 

「それに、わたくしも当事者の1人です。これくらいはさせてください」

 

 優しい表情で、レイアの気持ちを汲み取るような発言をするジャンヌ。とはいえ、その心の中は、半分「早くレイアさんから離れさせないと」という、自身の思惑がほとんどを占めていた。しかし、それを隠しきれていたのか、それともレイアの性格故か、それに気にすることなく、レイアはその藍色の髪を揺らす勢いで頷く。

 

「……うん!分かった!ありがとう、ジャンヌちゃん!!」

 

 ……はぁあぁっ!!レイアさんの純粋な笑顔っ!!もうこれを見ているだけで、わたくしはこの最悪な状況でも平静でいられるんです!!出来ることなら、写真に撮って収めたいくらい……。

 心の奥では全く平静を保てていないジャンヌは、無意識にレイアの手を取っていた。微笑ましい状況で、両親は娘と友人との仲に安心した様子で見守るが、その傍らで彼女の付き人を務めるネアは全てを察し、目を閉じていた。

 夢のような時の中で、ジャンヌはこのままずっと続いてほしいと思っていた。だが、そのわずかな隙が、とんでもない事態を引き起こしてしまう。それはクリエの発言から始まった。

 

「けど、タダで置くっていうのも、なんというか引けるんじゃないかしら?」

 

「と、言うと?」

 

 夫の発言に、クリエはそれを指摘した。

 

「いや、家で過ごすにしても、仕事はしてもらいたいわぁ。けど監視は少し必要だって言っていたし、それにここばっかりだと変わり映えが無いじゃない?彼自身記憶が戻っても戻らなくても生活できるようにならなくちゃいけないでしょう?」

 

「確かにな。竜人族の知識もないんだったな?」

 

「はい、そうですね」

 

 ガンドからの質問に、庭師は先程のカルテを見せた。質問の部分は、竜人族の固有生活知識以外はほぼ大丈夫なものの、記憶が戻った際、生活が出来るかどうかは不明だ。この星にいる以上、どちらかの種族であってほしいが、そうでなかった場合はとても辛いのは間違いない。ならば、今の内から覚えさせるのは悪くない判断だ、ということになってくる。

 そうなると、どうすればいいか。すると、そこでレイアがジャンヌの手を繋いだまま、その問題にとある提案を出した。

 

「そうだ!それなら、彼を学校に入れるっていうのはどうですか?学校は元々知識を学ぶための場所なんですし」

 

 突飛な発想に、一瞬大人達が硬直する。当然だ。何せ、不審人物と仮定している人物を、そんな子どもが多数いる場所に入れるのだから。

 しかし、同時にそれも良いかも、という考えが次第に伝播していった。

 

「学校……危険だが、確かにそれはよさそうだな。事情を話せば……特に、ファーフニルの家名なら、少しは融通が利くはずだ」

 

 ガンドはレイアの意見に頷きながら、それに賛成する。続くフォーンも、本来の護衛対象に対して意見を述べる。

 

「私も多少の危険性は感じます。しかしそれ以上に状況に適している、といえばその通りだとも言えます。学校施設の監視カメラや警備員なども使えば、彼の動向をチェックもしやすいでしょう。私は構いません」

 

「私もね。それに、ジャンヌの為にもなりそうだわぁ」

 

 危険もあるが、同時に利点もある。それはまさに彼らにとっての諸刃の剣であろう。彼ら自身も、本来ならとある理由で、そんなことは許可できないという立場であった。しかしここにきてその問題が解消されてしまっていた。そう、(ジャンヌ)の態度の一変だ。

 今まで自分に近寄る部外者の男との接近に、恐ろしいまでの難色(というより拒絶)をしていた娘が、いきなり自分達の意見を押し退けて青年を受け入れたこと。それは、十数年彼女を育ててきた親からしてみればとんでもないことだ。この転機に、彼らはこう思っていた。『これは、何かの前触れなのか?』と。

 これがもし、娘を変えるチャンスなら、今ここで娘の為に行動するのが親なのでは?という考えが両親、そして立場は違えど長年間接的に警護してきた者も感じ取っていたのだ。

 この少し前、レイアが提案をした時点で、ネアは何かやばいと思い止めようとしていた。しかし、あまりにも可能性のない話で、誰かが止めるだろうという浅はかな考えと、ここで意見出来るような立場ではないと引っ込んでしまった結果がこれであった。現在、彼女の中では主への『ごめんなさい』の一言が脳内で反復し続けていた。

 未だに夢から回帰しないジャンヌ。……しかし、ネアの取った行動(現実逃避)。それが最大の失点となってしまう。抑え役が機能しない状況で、ジャンヌへのいじりを喜々として行う幼馴染の少女。リントヴルン家の長女・ノーヴェが、決定的な一言を発してしまった。

 

 

 

「あ、じゃあ彼、ジャンヌの正規従者にしません?前にそれしてた人、ジャンヌからクビにされたって話を聞いてましたから、その穴埋めに、って感じで……」

 

 

 

 ノーヴェ・リントヴルン。彼女もまた、ジャンヌと同じお嬢様だ。もちろん自身が発した言葉の意味を一応は理解している。ジャンヌの正規従者……正確にはジャンヌ・ファーフニルに対し、直接世話をする従者の事をここでは指している。一応ネアがそれに当たるのだが、ファーフニル家の場合、それを男女1名ずつ付けることになっていた。

 現在はフォーンがやっているが、それはあくまで兼任で、彼は正確にはファーフニル家の当主・ガンドの秘書兼執事であるのだ。そんな彼が現在そうなっているのは無論、先程も話に出た、従者のクビが原因である。

その日、機嫌の悪かったジャンヌの前で、彼女の従者はミスを犯した。家に仕えた歴もそれなりだが、出自的にそれなりに忌避されていた竜人族の男性に、彼女が腹いせにクビにしたのだという。その従者はすぐに抗議したものの、それが騒動とされ即座に家を追い出され、以来ここ数日、代わりの者を雇うまでの間フォーンがそれを兼任していた、というものだった。

 ノーヴェも、それが通るはずがないと分かっていた。それは即ち、素性の分からない男を、自分達の娘の傍に置くことである。即座に反対の意見が飛ぶのは当然である。

 

「いや、流石にそれは……」

 

「そうだな。そこまでは……行き過ぎだと、思うな」

 

 フォーン、そしてガンドも我に返って反対する。クリエもノーヴェの考えを理解し、優しく乏しめる。

 

「そうね。ちょっとやり過ぎよっ?」

 

「あはは、すみませ……」

 

 互いに舌を出して、笑い話で終わる。はずだった。が真に受けたレイアは咄嗟にジャンヌを問いただす。

 

「どうなのっ!ジャンヌちゃん!!」

 

「ふぇあっ!?……え、何が……」

 

 口の端に自分の液体を垂らすジャンヌ。寝起きの如く、状況を理解しきれていない彼女に、レイアは二択を迫った。

 

「イエスか、ノーか!!」

 

 そこでふと、我に返ったジャンヌは、状況を冷静になった頭で分析する。

 ……イエスか、ノー。先程、わたくしはレイアさんと手を繋いでいた。そして、今この二択を迫られている。はい、か、いいえ。これで何かが決まるということですね。けど、それが何のことなのか飲み込めませんね。ここはどういう話なのか聞くべきなのでしょう。けど、ここで聞いていない、というのはご法度……今日は既に学校で1回聞いていないことで怒られている。それはつまり、レイアさんの中で、わたくしはそんなうつつにぬかしがちな女性に見られるということに……!

 いいえ、そんなことではいけません!そんな「だらしない女」のような印象をレイアさんに植え付けさせるわけには行きません!それにお父様やお母様が見ている前でそんな醜態を見せれば、また昨日のように説教が待っているに違いないです。流石に、2日もあんなものを聞きたくはありません!それにレイアさんの問いへの答えなど、ただ一択!

 瞬間とも言える時間の中で、普通の人間ならば熟考に値する計算を終えたジャンヌは、自身が見出した勝利の方程式(最適解)を口にする。

 

「―――そんなの決まっています。……イエスです!」

 

 

 

 満面の笑みで、自ら敗北の宣言(最大のミス)を口にしたジャンヌ。もちろん、そんなこと彼女自身は知らない。が、動き出した状況が、次第に彼女に気づかせていく。

 

「……よし、分かった!フォーン、すぐに学校と、家の者にそれぞれの支度を!庭師も手伝ってくれ!」

 

「分かりました」

 

「た、ただちに!!」

 

 父の命令を受けた2人がすぐさま部屋を出ていく。その様子を見て、やれやれと呆れた様子で見るジャンヌに、レイアが礼を述べた。

 

「ありがとう、ジャンヌちゃん!ハジメ君を預かってくれて!おまけに学校にも入れてくれるなんて!」

 

「いえいえ、レイアさんの為ですから…………え?」

 

 礼を述べるほどではないと返そうとしたところで、ようやくその違和感に気づく。だが、レイアに確かめる前に更なる事実をノーヴェから告げられる。

 

「いやぁ……冗談だったのに、まさか本当に付き人にするなんてさ……」

 

「は?何言って……」

 

 冷や汗を垂らすノーヴェに、小馬鹿にするような態度で言葉をぶつける。

 何?状況が理解できない。どういうこと?ネアは……って、なんか小言で独り言呟いていますし……。

 そして、状況の理解できない彼女の前で、レイアが現状を述べた。

 

 

「いやぁ……ハジメ君が学園に通えるだけじゃなくって、ジャンヌちゃんの付き人になるなんて……!よかったね、ハジメ君!!」

 

 その言葉で、ようやく理解した。あの青年が同じ学校に通うこと、そして、自分の付き人になってしまったことを。

 停止しかける思考と、どうにかしなければという思い。だが、目の前の最愛の少女の笑顔を見て、それは出来ないことを悟る。

 ……そうだ。これは呪いなんだ。レイアさんの想いを踏みにじった呪い……。けど、レイアさんは凄く嬉しそう。なら、これでいいのかな?うん、いいんでしょうね。レイアさんが笑顔なら。レイアサンガ、エガオナラ……。ウン……?

 目元を伏せ、息を吸ったジャンヌ。そして、両親がハジメのすぐ傍まで行き、手をバンザイさせたところで、

 

 

 

 

「ひぃやああああぁぁぁぁーーーー!?!?!?」

 

 

 

 

 彼女の、本音の絶叫が屋敷に響き渡ったのであった。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただき、ありがとうございます。次回は少し時間が経った頃の時間軸になります。

ネイ「……なんでしょうね。確かに作者さんの妄想が詰まってそうな気がするんですが、ジャンヌお嬢様ならありえそうという感が否めない決め方だったんですが……」

グリーフィア「そうねぇ。というか、私達の知るジャンヌもこれくらいじゃない?カタコトは流石に笑ったけど」

ネイ「あ、そうだね、姉さん」

あ、じゃあジャンヌさんへのチクリはなしで……(*´Д`)

ネイ「報告はしますよ?」

(´・ω・`)そんなー

グリーフィア「言っておくだけなら問題ないんじゃない?それに怒るかはモデル本人次第!」

(´・ω・`)それが問題なんですが……。

グリーフィア「けど……ファーフニル家もなかなか大変そうねぇ……呪いとかあるみたいだし。あと、レイアの幸運がすごい気がするんだけど……」

ネイ「私は、ファーフニル家の皆様の気苦労が気になります……あと、監視のCMの内容が……」

(;´・ω・)まぁ、それも含めて以前と同じように黒の館とか作る予定ではあるよ。ただ、前と違って結構解説寄りだけどね。CMは察してくれ。

グリーフィア「まぁ、分かったわ。じゃあ、次回もお楽しみに~」


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EPISODE7 ハジメテノ1

皆様、新年あけましておめでとうございます。藤和木 士です。

ジャンヌ「今年もよろしくお願いしますっ。ジャンヌ・ドラニエスです」

レイ「今年はバトスピチャンピオンシップにも出るから、大変だねっ!レイ・オーバだよっ」

さて、新年一発目の投稿はEPISODE7です。

ジャンヌ「藤和木、タイトルがアウトです」

少なくとも今回はあっち方面じゃないから!(;゚Д゚)

レイ「今回は、なんだね……」

うっ……(;´・ω・)ま、まぁ、ハジメ君がファーフニル家に雇われてから2週間。どんなことになっていたのか、そして、ここからどうなっていくのかの話です。どうぞ!


 

 

 ファーフニル家が記憶喪失の青年・ハジメこと、「ハジメ・ナッシュ」(仮名)を保護し、使用人として雇ってから2週間が過ぎた。季節は既に5月の下旬に入っている。

最初の2日間、ハジメは病院で検査を受けた。もちろん、普通の病院ではなく、軍の病院である。ガンドから軍医にも話し、科学者も同席しての検査などが行われた。その結果は「至って健康。普通の記憶喪失である」こと。そして、もう1つは彼が竜人族や機人族である可能性が低いということであった。

 ただし、それ以上の事は残念ながら、彼らも答えを出すことが出来なかった。辛うじて、遺伝子学の研究者が「竜人族・機人族両方のDNAの面影がある」ということこそ掴んだものの、それ以上は何も分からず、検査は継続するものの、ハジメはファーフニル家へと戻った。

 その次の日から、ハジメはジャンヌ達の通う「聖トゥインクル学園」の高等部・マネージメント科へと編入された。マネージメント科は詩巫女と非常に関わりのある科であり、主な就職先は、詩巫女のマネージャー。ただ、その過程で竜人族や機人族の歴史についてより多く、かつ多角的に知ることが出来ることから、学園側とファーフニル家側共に満場一致となった。

 編入当日は、記憶喪失であることは明かしつつも、種族に関しては機密とされた。しかし、クラス自体が割とそれを受け入れやすい生徒が多かったことと、とある内部工作によりハジメは問題なくクラスに馴染むことが出来た。

 最初の1週間は学校内外問わずの情報量の多さと、集中的な居残り補習もあり、かなり疲労が目に見えていたものの、2週間も経つと学校関係や、家での仕事などにも無駄なく動けるようになっていた。―――()()1()()()()()()()を除いては。

 そしてちょうど今、学校初登校から2週間後の、水曜日の放課後となったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……っと」

 

 帰りのホームルームが終了し、席を立っていくクラスメイト達。自身は2週間前、この学校、このクラスに転入してきた生徒だ。しかし、どこかでそんな事をあまり感じない自分がいるのを感じている。

 まるで、前からそこにいたような。もちろん、2週間経ったからであり、最初の内は質問攻めにも遭うことが多かった。とはいえ、自分が今いる国……ドラグディアと呼ばれるこの場所の住人である「竜人族」ではないことだけは知っている彼らが、あまりそれを気にしてくれていないことはどこか安心感があった。

 気にしていない、というのは無視しているという意味ではない。それを理由に毛嫌いしているということが少ない、という意味だ。それは記憶がなく、右も左も分からないような状況の自分に都合がよかった。もっとも、多くいないだけであり、少しそんな感じが垣間見えているのも事実だった。

 けれども、友人がいないわけでもなかった。その友人の1人が、声を掛けてくる。

 

「よっ、ハジメ。2週間お疲れ様だったな」

 

「あぁ。けど、自分としてはそれがまだ実感できてないところがあると思う」

 

「なんだそれ、フフッ」

 

 男子の制服を纏う、明るい緑の髪の生徒に思ったことをそのまま返す。その人物はハジメがクラスに馴染むきっかけとなった生徒だ。だが、驚くのは、その人物の性別。その人物は、実は女性だ。彼もとい彼女曰く、男装するのが趣味になってしまったそうだ。

 けれども、その彼女のおかげで自分がここに居られるという感じがあったため、それは特に指摘していない。むしろ、そういった人物がいたからこそ、自分のここにいられるのではと考えられるようになっていた。

 

「……で、そろそろもう行く時間か?」

 

 壁に掛けてある時計の方を見て、その男装生徒が聞いてくる。ハジメも壁掛け時計の時刻を見て、確認すると肯定する。

 

「そうだな。じゃあまた来週」

 

「おう。今日こそはちゃんと相手にされて来いよ~?」

 

 からかうように応援を送る友人に、右手を上げて「頑張る」と返す。そうして他の友人達の元に行く彼女と別れて、教室を出る。教室を出ると、ハジメは迷うことなく、左側の通路の方を歩いていく。

 彼には仕事があった。とは言っても、学校の仕事というわけではない。彼を預かってくれている家、ファーフニル家の従者としての仕事だ。内容はファーフニル家の次女の護衛。といっても、主に学校の登下校の間、共にいるという、言うなれば一緒に帰るだけというごく簡単なことだ。ただそれだけである。

 だが、これから行うその1つの仕事さえも、彼には大仕事であった。なぜなら―――と思っている間に、目的の場所が見えてくる。ハジメの視線の先にあったのは、高等部2年の詩巫女養成科コース、そのAクラスの教室だ。その教室の前に、既に大仕事と思う理由の1人が腕を組んで待機していた。

 

「…………」

 

 その人物は年季が入りつつも、毎日手入れされていると思われるスーツを着こなしていた。また彼のアッシュブロンドの髪はワックスで整えられ、清潔感と共に戦場を駆ける英雄が威圧感を出すような雰囲気も出していた。

 周囲の生徒達……教室の位置の都合上、女生徒たちが多いが、皆彼の姿に視線を集中させている。正確には、警戒している、と言うべきだろうか。しかし、この状況は今日が初めてというわけではなく、正確には3日目なのだが、それでも生徒達の警戒度は高いようだ。

 ハジメも少し息を飲むも、普段は家でも会っているから、問題ないと心の中で言い聞かせるとその人物に声を掛ける。

 

「すみません、お待たせしました、フォーン様」

 

「……ん、来たか」

 

 その人物はハジメを確認すると、一瞥したのち教室に目を向ける。彼はフォーン・フリード。ハジメが預かってもらっているファーフニル家の当主、ガンド・ファーフニルの秘書兼従者であり、ファーフニル家のお嬢様の従者として雇われることになったハジメの上司でもある人物だ。

 普段はガンドのいない間、家の留守を任されていたフォーン。しかし、この2週間はハジメの教育係と監視役も兼ねて、ハジメが現在仕えている「お嬢様」の送り迎えをするボディーガードもやっていた。雰囲気や視線など、監視を含んでいるためか怖い部分もあるが、分からないところなどはしっかりと教えるなど、ハジメにとってとても心強いこの世界の先輩の1人である。

 合流したところで、教室にいた女生徒のグループの1つが、教室から出てくる。先頭は藍色の髪を左右に2つずつ、輪を作る形で結ぶ小柄な少女を順に、少し背が高めの黒髪をやや左右後方でツーサイドの形で留めている少女、そしてその後方に控えるようにして並ぶ紅のお姫様のようなロングストレートヘアーの少女と、ハジメが一番懸念していた、品のある風格を漂わせる、ウェーブが軽くかかった銀髪に黒のレースを髪飾りとして付ける少女の計4人の集団だ。

 その誰もが、控えめに言っても冗談無く綺麗だった。ハジメも最初に会ったころは意識がはっきりとしていなかったものの、それでも美しいと思っていたほどだった。それは今も変わらない。ただ……。

 視線だけを銀髪の少女の方に合わせる。その容姿、仕草。申し分ないほどの可憐さだ。ハジメ自身が懸念するほどの人物とはいえ、彼女は同時にハジメとしても理想的な容姿をしていると思っている。だが、それが問題ではないのだ。問題は彼女の内面、性格。その被害をハジメはここ2週間もろに受ける対象だったのである。

 

「お疲れ様です、お嬢様」

 

 フォーンが出迎えの声を掛け、会釈を行う。彼の声に合わせハジメもまた同時に会釈する。幸い、ハジメは会釈・敬礼・最敬礼といったお辞儀の基本形は元からこなせていた。理由は不明だが、後はそれをどういった場面で使えばいいかということを教わり、こうして主である銀髪の少女を出迎えるということになっていた。フォーンによれば、昔はもっと色々厳格なルールが存在したというが、現在、少なくともファーフニル家は簡易的なこの3つの礼で済ませるというのが基本的になっていた。

 プロから見ればまだまだ未熟といった感じのハジメの会釈だが、それに対し藍色の髪の少女と、紅の髪の少女は称賛を送った。

 

「うんうん、すっかりジャンヌちゃんの執事さんって感じだよー!前の人よりも、ずっとかっこいいしさ!!」

 

「正確には執事は違うんだけどね……。まだ直した方が良いところはありますが、それでもこの短期間での成果としては合格点だと思いますよ」

 

「ありがとうございます」

 

 2人の少女に感謝の言葉を返す。レイア・スターライトと、ネア・ライン。2人はハジメの恩人とも言える人物達だ。レイアは自分をファーフニル家に雇い入れてもらえるように、働きかけてくれた人で、ネアは自分が仕える主の先輩従者で、このフォーンと共に、家での仕事のやり方などを丁寧に教えてもらっている。どちらかが欠けていたら、ハジメは2週間、いや、1日と持たず病院での管理生活か野宿の2択だったであろう。2人には感謝してもしきれない。いや、最終的に最も感謝しなければならないのは、別の人物なのだが。

 2人に続いて、黒髪のツーサイドアップを上下に揺らす少女が、かがむ形でこちらを覗き込んで一言。

 

「んー……もうちょっと笑顔が欲しいかなぁ。ま、そういう従者もいるから、問題はないけどね。社交辞令ってなるとちょっと不安かもね」

 

 表情こそ弄んでいる、面白がるといった表現の合うものだったが、視線はしっかりとハジメの仕草の1つ1つを見ていた。その2つの目に見つめられたハジメは、息が少し詰まる感覚を感じ、お辞儀でごまかす形で目を閉じ、視線を逸らす。

 

「……努力します」

 

「そ。ならいいわ。けど、これは仕えるべき相手の主ご本人が言うべきことなんだけど……ねぇ?」

 

 ハジメから目線を外すと、後方を向き、銀髪の少女に問いかける。黒髪の少女の名はノーヴェ・リントヴルン。自身の主の幼少期からの友人で、ファーフニル家と親交のあるリントヴルン家のお嬢様だ。彼女には妹もいるらしいが、最近は妹の都合により、帰りが別々になっているらしい。

 そして、ノーヴェが目を向けた銀髪の少女。ハジメが仕える、ファーフニル家のご息女、3姉妹の次女であるジャンヌ・ファーフニルはハジメを見て―――

 

 

 

「知りません」

 

 

 

 と、顔をぷいっと向け、その場を後にしようとする。これで3度目である。今週の水曜日から、ハジメは集中的補習から抜け出し、本来の仕事の1つである、登下校時の護衛をしている。教室まで迎えに行き、家まで付きっきりで護衛する。今まではネアと自分の前の担当の人がやっていたそうだが、その男性従者をジャンヌがクビにしたため、後を継いでやることになった。

 

(やることはやる。けれども……)

 

 しかし、迎えに行ってもこの始末である。この2日間など……。

 

『……』

 

『ちっ』

 

 もはや、相手にされているのか、という感じであった。言葉が出るようになっただけ、まだマシのような気もしたため、何も言いはしなかったが。

 

(いや……)

 

 そこで自分の言葉を否定する。言わなかったのではなく、言えなかったのだ、と。生活の記憶があり、感情の種類や流れなどは分かる。ところが、今のハジメにはその感情で起きた、今までの経験がない。そのため、こういった場面が、どういうことかは理解できていても、自分がどうしてきたか、自分ならどうするのがベストなのかが分からなかった。

 これでは人形だ。それでも、俺はどうするのがいいのか。そもそも、今の「俺」は、この体の「俺」なのだろうか。そもそも、「俺」は一体……。

 

 

「―――ちょっと!」

 

 

「あっ……」

 

 一際キツい調子の声が自身に向けられ、意識を戻す。視線の先には、自身の主(ジャンヌ)の姿が。どうやら、呼びかけられているのに気づけなかったようだ。

 

「っ……本当に使えないわね」

 

「すみません」

 

 主からの乏しめに変わらぬ声の調子で謝罪する。ハジメとしては、咄嗟に誤ったつもりで、実際そうだ。しかし、あまり抑揚が変わらなかったためか、更にジャンヌの気は悪くなる。

 

「何よ、その声は。そんなに嫌なら……!」

 

「………………」

 

「だ、ダメだよ、ジャンヌちゃん!」

 

 怒り心頭のジャンヌの言葉を止めたのは、彼女にとってかけがえのない友人であるレイアの声だった。レイアが2人の間に割って入ると、たちまちジャンヌはうろたえるように伸ばそうとしていた手を引っ込める。

 

「レイアさん……っ!!」

 

 視線は自然とレイアの方に向けられる。しかし、ジャンヌのその眼は先程までの怒りはいずこかへ消えてしまっていた。というより、慌てて隠したようにも見える。

 躊躇いを見せるジャンヌに対し、ハジメを擁護するレイア。

 

「まだハジメ君は学校に来て2週間くらいしか経ってないんだよ!それでいて色々と頭の中に入れている最中だから、ちょっとぼーっとしても、仕方がないよ!」

 

「うっ……」

 

 言葉に詰まるジャンヌ。ハジメはこれまでの経験上、自分の主はレイアの言葉に弱いという印象を抱いていた。友達だから、というのがあるからと認識していたが、どうにもそれ以外の何かがあるような気がしている。

 だが、ジャンヌも冷静さを取り戻せば、反論が飛ぶ。

 

「で、でもですね?わたくしの従者なのだから、しっかりしてもらわなければ困るのです。ネア達他の従者の迷惑になることも、理解してもらわなければ……」

 

 ジャンヌの言葉はもっともだ。しかし、その名指しされたネアから、ジャンヌの予想を反した、的確なツッコミが入る。

 

「……確かに、お嬢様の言葉は間違いありません。私達も私達の仕事がありますから」

 

「でしょう?だったら……」

 

「ですが、この短期間でクビを2人も、しかも同じ場所からお嬢様の手で出してもらうのも出来れば避けて頂きたいです。こちらも時間を割いて教えているので……」

 

「私も同意見です、お嬢様」

 

「うっ……」

 

 やんわりとした、だが明らかな反発である。が、2人の意見が間違いないのはこの場にいた誰もが、もちろん当事者の1人であるジャンヌも理解していた。従者もまた1人の竜人族。時間は無限ではないのだから。

まだ色々と教えている最中で、しかもそれなりに成果は出している。記憶喪失の人間でここまで出来ている人物を、ここに来て主の勝手な感情だけで決めてしまうことは、2人にとってもあまり許容できるものではないのだった。

 そして、トドメにノーヴェの口から、

 

「それ以上にジャンヌ、貴女が彼を迎え入れると決めたんだもの。簡単にそんな放り出したら、それはそれで印象が悪いと思うのだけれど?」

 

「ううっ…………はい」

 

 身もふたもない事実を突きつけられ、ジャンヌは項垂れる。見ているこちらが申し訳なるほどの落ち込みようだ。

 しかし、そこは今まで何年もジャンヌに付き添ってきた者達。すぐに本題に話を戻した。

 

「とはいえ、ハジメさんにもしっかりしてもらいたいところではあります」

 

「それね。いつまでもお荷物でいられても困るだろうし」

 

「すみません、気を付けます。レイア様も申し訳ありませんでした」

 

 ハジメは4人に向け頭を下げる。何とかこの場は回避できたが、そろそろちゃんとした方が良い。主にジャンヌ関係を。

 

「あ、大丈夫だよ。私は気にしてないし、それよりも、ジャンヌちゃんを何とかしないと……」

 

「あ、あぁ……わたくしは大丈夫ですよ、レイアさんっ」

 

 ……本当に、何とかするべきは、どちら何だろうか、と心の中でハジメは思う。しかし、それに答えが出る前に、彼らは下駄箱まで来てしまっていた。

 考えるのは帰ってからにしよう。みなさんの言う通り、少し疲れもあるから―――

 

 下駄箱の靴を取り出し……たはずだった。ところが。

 

 

 

 

「……え?」

 

 

 

 

 一瞬、視界に違和感を覚える。視界の違和感となれば、大抵はぼやけたり、目にゴミが入ったりと、理由は平凡的で様々だろう。

 しかし、ハジメの体感した違和感はそんなものではなかった。もっとスケールの大きいことが、自分の目の前、見ている景色の中で起きていた。

 自分が掴もうとしていた靴に、手が届かない。体がないエネルギーだけの存在である、というわけではない。しっかりと掴む感覚はあるものの、それはまるで砂のように崩れたのち、塵となって彼の手の周りを浮遊する。そして靴の形へと再構成される。

 更に辺りを見回すと、今まさに帰ろうとしていた面々……ジャンヌ達や、その他の生徒達は、灰色となって全く動かなくなってしまっていた。まるで、時が止まってしまったかのように、微動だにしない。

 

「…………これって、何が…………」

 

 自分が覚えている少ない記憶の中にはこんな現象は無い。そもそも時は止まることはない、とハジメも知っている。だからこそ、この状況に困惑していた。

 誰かに相談するべきか、しかしこの止まった時間の中で誰に?と対応に困る中、「それ」は出現した。

 

『やぁ、元気かい?』

 

「……誰?」

 

 声の主がいると思われたのは、校舎の昇降口方面だった。声がした方に目を向ける。ジャンヌ達がいるその向こう側から、徐々に足音が響いてくる。ハジメは身構える。

 ところが、その声の主は意外すぎる人物であった。こちらを向いて静止した状態のフォーンの影から、その人物が顔をひょこっと出す。

 

『やぁ』

 

「…………」

 

 その顔を見て、声を失う。なぜなら、そこにいたのは他でもない、()()()()()()()()()()()

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただき、ありがとうございます。

ジャンヌ「謎の青年……前作の光の枠ですかね」

大体あってるけど、あっちと出自やら何やら結構違うから(;゚Д゚)

レイ「へぇ。そうなんだ。けど、やっぱりハジメ君、結構ジャンヌ・ファーフニルちゃんに振り回されてるね」

ジャンヌ「……わたくし、あそこまで嫌な女じゃないですよ?」

すまぬ(´・ω・`)モデルは確かにジャンヌさんことジャンヌ・ドラニエスだけど、性格やらは話に結構合わせてあるから……。さて、次回はこの静止空間からのスタートです。

レイ「それじゃあみんなー、また次回ッ!!」


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EPISODE8 ハジメテノ2

どうも、皆様。昨日投稿しようと思っていたが、眠気で投稿できませんでした、藤和木 士です(´・ω・`)

ネイ「アシスタントのネイです」

グリーフィア「同じく、アシスタントのグリーフィアよぉ。……で、やけに時間空いたじゃない?作者さん」

正月気分が続いていたと思ってください(^o^)EPISODE8になります。はい

ネイ「えっと、前はハジメさんにそっくりな人が出てきたんですよね。前のSSRでは光でしたが……というか、ハジメさんは停止した状態で、ジャンヌお嬢様に変なことしませんよね?」

しないだろうって。ていうかその言い方私だとしそうなこと確定みたいじゃないですか(´・ω・`)

グリーフィア「え、確定演出じゃないの?」

確定演出はスマホゲーのガチャで十分!(;゚Д゚)では本編どうぞ(´・ω・`)


 

『やぁやぁ。驚いているようだね』

 

 目の前にいる自分は、飄々として自分に問いかけてくる。物が掴めない、時間が自分以外静止している。わけの分からない現象のシメに、これが来ている。普通の人間が混乱するのは当たり前だ。

 それを目にしているハジメは、声を上げることなく、静観していた。しかし、決して冷静に見ているわけではない。ただただ、何を言えばいいのか分からなくなっていたのだ。

 記憶があれば、もしくは他に誰かいたのなら何やら色々言えたかもしれないこの状況。静まり返る昇降口でその沈黙を破ったのは、話しかけてきた方のハジメだった。

 

『あぁ、言っておくけど、オレは別にお前自身ってわけじゃあない。話しやすいように君の姿を少し借りているだけだ。髪色も少し違うだろう?けど、逆にそのせいでお前は話しづらいみたいだな……これは失敗』

 

 しかし自分の姿を借りたというその人物の言葉でも、ハジメは理解できなかった。次々と情報が流れ込み過ぎて、今のハジメの頭では理解しきれていない。それを悟ってか、ハジメそっくりの白髪の青年はため息をつくととあることを口にする。

 

『まぁ、仕方がない。ならこれだけ伝えて、オレはここから去ろう。……君は彼女を……ジャンヌ・ファーフニルを……()()()()か、それとも()()()()か?』

 

「え……」

 

 一瞬何を言われたのか、分からなかった。同じ言葉であることは理解できたが、ニュアンスの違いが理解できなかったのだ。

 お嬢様を……まもりたい?それはもちろん、まもりたい。だけど、その2つのまもりたいって、一体どういう意味が……?

 そっくり人間からの問いかけに考えようとするハジメ。しかし、再び視界が揺らぐ。まるで、深い眠りから目を覚ますときのまどろみのように。最後にその人物は言った。

 

『時間は少ない。だが、それでもお前は見つけなくちゃいけない。オレが……いや、オレ達が歩き出す、為には……』

 

 そこで、言葉が途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その夜、ハジメはベッドに横になって考え込んでいた。今ハジメがいるのは、ファーフニル家の屋敷の一室で、住み込みの使用人が使用する「サポーターズ・エリア」と呼ばれている建物だ。ハジメがジャンヌの従者と決まった際、建物にあるこの一室「黒龍の間」があてがわれることとなったのだ。

 長年使われていなかったそうだが、意外にも部屋は綺麗だった。更に屋敷の部屋の中でも、ジャンヌの部屋からも近いということで当時放心状態のジャンヌに許可をもらい、ここが自室となった次第だ。

 ファーフニル家の財力を知るのに申し分ないほどの、良質な部屋とインテリアが周りを囲んでいたが、記憶がないハジメにとっては、自分が暮らす部屋という以上にそれ以上の感情を持っていなかった。いや、持てなかった。そして、今のハジメはそれすらも曖昧な状況で、天井を見上げていた。

 

(まもりたい…………マモリタイ…………)

 

 今日の放課後の一幕が蘇る。結局、それを問いただす前に、ハジメはあの不思議な空間から元のこの現実に戻って、というより引き戻されていた。気付いた時にはジャンヌの声が、自分のすぐ横に顔を近づけていたレイアの向こう側から飛んできており、また叱られてしまっていた。

 その時は考え事をしていたということで切り抜けたが、ネアから念には念を、ということで夕食後は自由時間をもらった。またジャンヌはレイアとの距離が近いということで、レイアと別れてからは終始不機嫌状態でもあった。夕食中もやたらと視線が痛かったのを覚えている。

 

「…………よし」

 

 このままにしておけば、また問題を起こすのは間違いない。ベッドから勢いよく体を起こしたハジメは、部屋を出る。そしてすぐ、屋敷のとある場所を目指す。何人かの同じ使用人達とすれ違い、途中用件を聞かれ、目的を伝えつつ着いた場所……。その部屋の前にいた自分の上司たる人物に、声を掛ける。

 

「フォーン様」

 

「……ハジメか。どうした」

 

 仕事を休みにしてもらい、部屋で過ごしているはずの人物が現れたことを不信に思ったフォーンは、緊張気味の従者に用件を問う。

 

「いえ……少し相談したいことが……」

 

「……それは、今必要なことか」

 

 凄まじい圧を体に感じる。それも当然、フォーンはハジメを家に入れることを反対していた人物の1人であった。お嬢様の傍にいるからこそ、更に疑惑の目を光らせているのは当然の事であった。

 しかし、ハジメもそれは重々承知だった。それにハジメは、上司である彼からも聞きたかった。自分の中で芽生えた「疑問」について、その答えを。だから、ハジメはそれを言葉にした。

 

「はい。出来れば、ご当主にも聞きたいことです」

 

「……………。……………分かった」

 

 しばし顎に手を当て、要望者の目をじっくりと見て考えていたファーフニル家当主の従者。だが、その答えとして首を縦に振ると、ファーフニル家当主のいる執務室の扉を開き、彼を当主の待つ部屋へと案内する。

 

 

 

 

「いやはや、まさか君が私に相談に来るとはね……。あぁ、座ってくれて構わないよ」

 

「はい。失礼します」

 

 部屋に入り、主であるガンド・ファーフニルからの勧めを受けてソファーに下座の位置に座るハジメ。ガンドは机に広げていた何かの資料をしまい、フォーンは2人に飲み物を出す準備をする。

 ここが、自分が働かせてもらっている少女の親の部屋……、と思っていると、ガンドが反対側の上座の位置に腰かける。今は軍人らしさを感じさせるドラグディア軍の制服ではなく、部屋着でありながら当主としての威厳を損なわないデザインのシャツとスラックスを着用していた。服だけでこうも印象が変わって見えるのはとても不思議だ。これから話すことは最初に当主と話した時と同じくらい、緊張することであるがそれでも話しづらさは軽減されているように感じた。

 フォーンの淹れた紅茶と、お茶菓子として出されたアップルパイが机に並べられる。彼が座ったのを見計らって、カップの紅茶を一口含んでからガンドが口を開く。

 

「それで、相談というのは……」

 

 根本的な問題の提示を要求され、ハジメは相談の内容を説明し出す。

 

「はい。ご当主と、その従者であるフォーン様に()()()ということが、どういうことなのかを教えて頂きたいです」

 

 ハジメの質問はシンプルかつ、答えの難しい内容だった。それを聞いたガンド達も、思わず目を丸くし、互いに顔を見合わせる。ハジメは紅茶の入ったカップを手に取り、その水面に顔を向けつつ話を続ける。

 

()()()という言葉に、様々な解釈があるのは分かっています。けど、それが実際にどういうことなのか…………自分はお嬢様……ジャンヌ・ファーフニルを()()()ことが仕事だと言われました。ですが、自分はお嬢様を()()のか、それとも()()べきなのか、それを今日、ふと思いまして……」

 

 そこまで言って、ハジメは恐る恐る顔を上げる。ハジメが見た、2人の顔は様々だ。どちらも何か言いたげなのは共通している。しかし、ガンドが目を閉じながらも口元を緩めているのに対し、フォーンは口を固く閉ざすも、ハジメの胸元近くをジッと見ている。

 2人の反応を、怯えた様子でそわそわしながら待っているとファーフニル家の当主が口を開く。

 

「ふぅ……まさか、そう来るとは、ねぇ。けれども……ジャンヌのあの心変わりも含めてなら、それは当然か。フッ」

 

 その口からは、ハジメのその言葉で、どこか納得したようなものを感じさせた。てっきり怒られるものかと思っていたハジメは、自らを家に入れてくれた当主の反応に呆然とする。一方、上司であるフォーンはというと、先程と同じく表情をこわばらせた状態のままだ。強いて言うなら、一度当主の方に目を向けて、またこちらに視線を戻したくらいだろう。だが、その目つきは何か言いたそうなものであった。

 しばし考えた様子をしたガンドが、再びその口を開く。

 

「そうだな…………まず、その二つのまもる、の違いだが……大体、意味は一緒だね。ただ、あえて違いを言うなら、度合い、と言うのかな」

 

「度合い……」

 

 何とか知恵を振り絞るようにして、右手に持ったペンを反対の手で取ったメモ帳に書き込む。書き終わって、こちらに見せたメモ帳に書かれていたのは「守る」の字だ。

 

「こっちの守る、はよく使われている一般的なものだ。こちらは普段から大事にしている物に対して使われている……ような気がするね」

 

 当主も確証はないけど、と両手を少し上げる。メモ帳を再び自らの方に戻すと、今度は「護る」の字を書いて、それを見せて語る。

 

「で、こっちの護る、だけど……こっちは特別大事にするものに対して使っている印象があるね」

 

「特別、大事に……」

 

 ハジメはガンドの言葉を復唱し、手元を見る。何も握ってはいないが、あるないの話ではない。それの行動が自分に出来るのだろうか、という不安。そして記憶のない自分が、そこまで深くあのお嬢様を()()()()と自然に思えるのか……。

 ハジメの考え込む様子を見て、ガンドは咳ばらいをして注意を向ける。ハジメもそれに気づき、慌てて視線を戻したところで、ガンドがファーフニル家の当主として発言する。

 

「それで、ハジメ君。君がどうすればいいか、だが……それは君が決めることだ」

 

「は……?あ、いや……」

 

 思わず、困惑の声が漏れる。フォーンが不満の目線を向け、失礼だと密にメッセージを送る。慌ててハジメも謝罪しようとするが、それをガンドは制止する。

 

「構わないよ。君に対しては少し難しい質問だっただろう。正確に言うなら、君がどちらのまもるでも、私達がそれを見てどう思っているか判断しているかに掛かっている、と言うことだよ」

 

 紅茶を一口含み、喉を潤わせる当主。それに倣い、フォーンとハジメも同じく口に含む。一連の流れを見てから、ガンドは口を動かす。

 

「君が娘を守る、または護る、の判断をするかどうかを、私は求めていない。もちろん、そういった仕事を任せているのだから、そのどちらかはしなければならない。だけど、そのまもる度合いに関して、それはあまり私としては気にしていないんだ。大抵他のこのような家だと、あまり娘に変な男を近づけたくない、って声はよく聞くが、私は娘の意見を尊重したい。特に今回は、珍しく男嫌いの娘が男を入れたから、それにこっちは驚かされているくらいだからね」

 

「………………」

 

 意外だ。お嬢様は、男を嫌っているだなんて。……なら、何で自分を……。けど、それ以上に守るか護るの判断は、自分が決める物、だなんて……。

 どちらを選ぶべきか、という質問に対しそれを決めるのは自分だ、と返されたことで更に自分自身が、2つの判断の間でぐるぐると彷徨うのを感じる。ハジメを段々と息が辛くなっていく感覚が襲う。

 と、そこで当主は気難しそうにするハジメに提案した。

 

「ま、その答えを出す前に、そのアップルパイでも食べなさい」

 

「あ……えと……」

 

「いいから」

 

 命令口調ではあったが、声音にはそれに付属する怖さはなかった。どこか安心する感覚を感じながら、ハジメはその言葉に従ってアップルパイを一口。

 

「…………おいしい」

 

「……!」

 

 自然と口から称賛の言葉が出る。その言葉を聞いて、フォーンも少し驚いた様子を見せる。彼らの様子を見て、ニヤリと笑みを浮かべるガンドは、更にハジメにアップルパイの感想を詳細に要求する。

 

「どんなおいしさだ?」

 

「……見た目は普通に、記憶にあるアップルパイです。それより少し形がしっかりしてないかなっていう所はあるけど……でも、素材の良さもあるんでしょうが、ちょうどいい甘さっていうか、自分はこの味、好きです」

 

 本当に、そのような感想だった。前からこの味を知っていた、などではない。けれど、まるで自分の好みに合わせたかのような味に、ハジメは記憶を失ってから、初めて自らの舌鼓を自然に打つ料理に会ったと思った。

 一方ハジメの感想を聞いていた2人の反応だが、ガンドは顔を下に向け口を手で塞いで笑いを堪え、フォーンは天を見上げる形で眉間に手を当てている。何とも不思議な光景で、これもまたドラグディア固有の様式なのかと疑う。

 

「どうされましたか?」

 

 気になったので声を掛けてみる。すると、笑いを堪えていたガンドが顔を上げ、苦笑交じりでハジメの口にしたアップルパイについて話す。

 

「いや…………それを作ったのな、ジャンヌだ」

 

「……え、そうなんですか……」

 

 わずかに目を見開いて、当主の顔から再びアップルパイに視線を落とす。自然と頭の中で、邪険に扱う様子のジャンヌの顔が思い浮かぶ。その表情と、このアップルパイの味は、あまりにも想像にかけ離れすぎていて、本当かどうか疑いたくなる。

 しかし、同時に否定することも出来なかった。このアップルパイがおいしいことと、それがとても自分好みであることを。まじまじとアップルパイを見るハジメ。それを面白がりつつも、話を戻すガンド。

 

「……で、アップルパイの件も考慮に含めても構わないのだが、結局のところハジメ君。君は私の娘のジャンヌを守りたいかな、それとも、護りたいかな」

 

「…………俺は……護りたい、です」

 

 一人称が変わっているのにも気付かず、そして迷わず当主が机に置いていたメモの紙に書かれていた「守る」と「護る」の内、「護る」を選ぶ。そして、その理由を口にする。

 

「お嬢様は命の恩人です。そのお嬢様が俺をどう思おうとも、俺は構わない。むしろ、俺はお嬢様に従うまでです。けど、俺はお嬢様の事を全く知らなかった。お嬢様が男を嫌っていることや、アップルパイを作ることも。他にも知らないことが沢山あるのなら、俺はもっとお嬢様の事を知ろうと思いました。俺が、お嬢様を護れるようになるために……」

 

 そこで、自分の失言に気づき、立ち上がって謝罪する。

 

「す、すみません…………当主の前で、俺だなんて……」

 

 しかし、当主に向かって向けられた謝罪は、その当主の隣に座っていた上司のフォーンが変わって返した。

 

「まぁ、本来なら私が止めるべきだっただろうな。……ただ、そこから来る意見がどのようなものか、それを見たかったというのが私の考えだ。―――流石に、アップルパイの感想は予想外すぎたがな」

 

「それは言えているな。ジャンヌが聞いたらどんな反応するか……」

 

 2人の会話に若干付いて行けずにいたハジメ。それどころか、自分の意見に対する言葉も聞けていない。だが、それも忘れずにハジメの言葉に2人の答えが返ってくる。

 

「それで、貴様の言葉に関してだが……なら、ぼーっとしたりするな。もっとしっかりとしなければ、ジャンヌお嬢様には付いて行けない」

 

「実際、私も親なのに分からず屋と言われる始末だからな。だから、私から言えるのは1つだ。……頑張れ。あの子が認めたんだ、君なら出来ると、私は思う」

 

「……ありがとうございます」

 

 ハジメは深々と頭を下げる。ハジメなりの今出来る精一杯の、感謝の気持ちの表現だった。しかしそれは当主の言葉で終了された。

 

「はは、もう大丈夫だよ。しかし、まさか()()()という言葉で人生相談されるとは……昔の俺達にも同じ質問してもらいたいくらいだな、フォーン」

 

「……あまり昔の話は掘り返さないでもらいたいです、当主。私はあなたと、クリエ様を賭けて死闘したことなど……」

 

「俺は死闘とか、そこまでは言ってないぞ?」

 

「…………ガンド…………」

 

 変わって、2人の個人的な話が展開され始める。「昔の自分」、「クリエ様を賭けて死闘」など、かなり物騒な言葉が飛び交う。挙句の果てに、自分の上司であるフォーンが仕えるべき対象であるガンドを睨み付けながら呼び捨てにする姿に、ハジメも背筋がゾッとする。

 流石にこれ以上は、と思ったハジメは自らが招いた事態に責任を感じ、話を終わらせるように流れを運ぶ。

 

「す、すみません。そろそろ時間も時間ですので…………」

 

「ん?……あぁ、すまない。少しやり過ぎるところだったな」

 

「そうだな。これ以上はお前の前でやるのは色々と問題だ。止めてくれて、礼を言う」

 

「いえ、大丈夫です」

 

 何とか当主と上司の対立を止められたことに安堵する。残っていた紅茶とアップルパイを平らげると、ハジメは席を立ち、礼を言う。

 

「今日は突然の訪問ながら、ありがとうございました」

 

「いやいや、とんでもない。こちらとしても、楽しい時間を過ごさせてもらった。またいずれ話そう」

 

「はい、では失礼します」

 

 一礼したのち、ハジメは部屋から退室する。体は未だ緊張感が残り、疲れが再度蓄積しているように思えたが、気持ちは軽くなったように感じる。

 

(頑張れ、か。……はい、頑張ります)

 

 心の中でガンドの言葉にそう返すと、ハジメは自室への道を戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……しかし、本当に驚いたな、あれは」

 

 ハジメが当主であるガンドの部屋の前から去った直後、ガンドはそのように発言する。当主である自分に、彼から質問が来る可能性はあるとは考えてはいた。しかし、それはジャンヌの態度に呆れて仕事を辞めたい、もしくは変わりたいという趣旨の質問くらいしか考えておらず、それ以外には竜人族独自の文化くらいのものだろうと考えていた。

 それ以外でも、ドラグディア軍関連の話が飛んで来ようものなら、間違いなく自分は彼を拘束していた。だがそれらとは予想外の方向から飛んできた質問に、ガンドも聴いた直後は動揺を隠すのと、考えを巡らせるために、目を閉じて彼を視界から外したほどだ。

 

(しかし、この轟竜騎士と称される俺が、彼に質問1つで悩まされるとは……。見どころがあるな)

 

 しかし、それは屈辱などではなく、むしろ反対の気持ちを湧き上がらせていた。もし、彼のような戦士と戦ったら、彼が戦士であるのなら、一体どのような戦いをするのか。叶わぬことと思いながら、ガンドは彼に期待を感じさせられていた。

 一方、それは傍で同じく聞いていたフォーンも感じ方は違うが概ね同じであった。

 

「キザなところが目立ち過ぎるとは思いますね。ただ、不意を突かれたのは間違いないかと思います。……おまけに、「あの話」を止めたのも結果的にアイツだ」

 

「そうだな。まさかお前が「あの話」を、ついこの間出会って部下になった記憶喪失の人の前で話すとは……。関係者一同集まってもあんまり話したがらないってのにな」

 

「……見事にかき乱された。あれで狙っていないのが、非常に腹が立つ」

 

 悔しそうに拳を握った右手を見るフォーン。その口調は完全にかつての物となっており、粗暴さが出ている。久々にフォーンとあのような掛け合いをしたが、それだけ彼の存在が新鮮だったのかもしれない。

 いずれにせよ、彼も色々と抱えているみたいだ。フォーンには、監視も兼ねてちゃんと接してもらわないとな。彼のその質問をした理由も、出来れば訊きたいところだが……果たして訊けるかどうか……。

 ハジメへの期待と心配、そして疑念を感じつつも彼の上司という立場であるフォーンに、フォローを要請する。

 

「それを今後防ぐためにも彼の指導、頼むよ」

 

「…………かしこまりました」

 

 荒んでいた精神をリセットし、普段の冷徹にも近い涼しい顔に戻したフォーンは、机の上を片付けていく。食器とメモのゴミをどかし、台拭きで机を清潔にする。

 その間にガンドは、茶菓子として出したアップルパイの事について思い出す。ジャンヌが今日、学校から帰ってきてから作ったアップルパイだ。

娘は趣味としてよく作っているのだが、早いうちに食べた方が良い、ということから自分の分以外は食べたい人が食べてくれて構わないといつも伝えられている。先程食べたのは夜食の為にと、この自室に持ってきていたものだった。

 普段ガンドは自室での仕事終了後、甘いものを食べるのが日課となっている。今日はたまたま娘がアップルパイを作っていたので、こちらを自室の方に持ってきていた。そして仕事が終了した直後、本当にたまたまハジメが部屋を訪問したので、ちょうど良いと思いフォーンにそれを持ってこさせた。

 ジャンヌの作るアップルパイには少し癖があった。ハジメも言っていたが、まず焼き方にムラが出来る。サクサクさもパイの美味しさの1つであり、屋敷の者も焼き方について娘にレクチャーしている姿も時々見る。

そしてもう1つは甘さだ。ジャンヌは甘党の部類に入るためか、砂糖を通常より多く入れているらしく、ガンドはブラックのコーヒーと合わせて頂いていた。だが、ハジメはそれも知らずに、コーヒーは飲む前に砂糖とミルクを入れていた。その上で、アップルパイを食した姿を見た時、あまりの甘さに声が出るだろうと思った。しかし、ハジメの実際の声は違っていた。

 ハジメが甘党ならあり得なくもない話だ。だが、これまでの事を思い返すと、ひょっとして……という気が起きなくもない。自分と娘がガンダムを見て、その直後に記憶喪失かつ種族の分からない青年が現れる。事実は小説よりも奇なりとは言うが、もし本当なら彼はガンダムがもたらした、何かの予兆なのだろうか。

 ガンドは机の方を見やる。仕事机として利用しているそれの上には、極秘と書かれた資料が置かれていた。その文字の少し上には、資料の名前が記されている。その名は―――

 

 

『マキナス領内の遺跡における爆発事故と、漆黒のガンダムとの関係性』

 

 

 

 

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今回もお読みいただきありがとうございます。

ネイ「ガンドさんの言葉もそうですけど、ハジメさんの決意が何だかこう……ロマンチックといいますか……」

グリーフィア「初々しいって感じはしたわねぇ。けど、それだけじゃあ、こういう役回りは難しいと思うわね。次でヘマしなきゃいいけれど」

あ、もう最初の方は触れないんですね(´・ω・`)

ネイ「いや、確かになんか不安はあるんですが……今思うとこれフラグになりつつある気がしないでもないですね」

グリーフィア「これは次の話は事件かしらねぇ……」

ソンナコトナイヨー、キノセイダヨー...("= =) トオイメ
さて、それでは今回はここまで。ちなみに黒の館こと設定資料集はこの節が終わったあたりに出しますので。

グリーフィア「それじゃあ、次回もよろしくねぇ。ばいばーい!」


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EPISODE9 ハジメテノ3

どうも、皆様。仮面ライダーの映画に行きたいと思っている、藤和木 士です(´・ω・`)

ジャンヌ「これガンダムの作品ですよ。何言ってるんですか。どうも、皆様。アシスタントのジャンヌ・ドラニエスです」

レイ「アシスタントのレイ・オーバだよ。藤和木も仮面ライダーに憧れるんだねぇ」

いや、そら私も仮面ライダー好きな時あったし、最近もカムバックしてるし。というか等身大ガンダムって実際の所ライダーとかを参考にするところも……

ジャンヌ「はいはいメタいです」

(´・ω・`)ではEPISODE9公開です。今思ったけどこの話数表記、ユニコーンみたいだな?

レイ「自分で決めたんじゃん……」

いや、前が話だったから変えたって単純な理由なんだけどね。さて、先週はハジメ君がファーフニル家当主ガンドからありがたいお話聞いたところだね。

ジャンヌ「初々しい感じで何だか目をそらしてしまいそうになりますね、ハジメさんは」

レイ「でも最後の方が……嫌な感じを思わせるっていうか……前のネイの言葉みたいにフラグ?」

さてさて、それは今回の話で分かるかなーワカルカナー……ではどうぞ。


 

 

 ハジメがファーフニル家当主・ガンドに相談してから3日後。休日を挟み、ハジメはすっかり体力を回復していた。ファーフニル家での朝は、7時から朝食を頂くことになっている。ただし、ファーフニル家で雇われる身の者は、この時間より30分前に朝食を終え、一家の朝食を用意することが1日の流れであるのが基本だ。

 唯一、ハジメだけは慣れるまではファーフニル家の家族らと共に朝食を取ることが許されていた。これはファーフニル家の婦人、クリエ・ファーフニルからの提案であり、最初の内はみんなで楽しく食べようという意向から許可されていた。

 ただし、これは昨日の朝食で最後になっており、今日からは他の従者達と同じ時間帯での起床だ。だから、油断していたのだろう。今日もまた同じだと。その結果……。

 

「…………あ」

 

 目を覚ました時には、既に時計の針は7時をとうに過ぎ、今や30分を超える事態となっていたのだ。そう、完全な遅刻状態であったのだ。

 

 

「すみません。完全に遅れました……」

 

「……何でそうなった」

 

 朝食を仕切った使用人の先輩に問われる。状況を整理すると、今ハジメは1人ダイニングにて、食べるはずだった朝食のパンを手早く口に放り込んでいる。その横で先輩使用人が状況を聞いているという光景だ。ちなみに、食べながらでもいいから、と言われたためお言葉に甘えさせてもらっている。

 口に入れたパンを噛まずに、そのままコップに入れた牛乳で無理矢理流し込む。口の中が空っぽになったところで、ハジメは先の質問に答える。

 

「簡単に言うと、時計が壊れていました」

 

「はぁ!?そんな都合よく!?」

 

 先輩も声を荒げる。疑いたくなるのも納得できる。傍から見れば、言い訳をして逃れようとしているように見えるだろう。だが、事実そうなのである。

 

「なら、見てみますか。修理をお願いする為に持ってきたんですが」

 

 軽く足元に置いていた目覚まし時計を先輩に差し出す。電波で時間を設定するタイプの目覚まし時計だが、時間を示す液晶はすっかり黒く塗りつぶされ映らなくなっていた。

 

「……あぁ、本当だ。けど、これって確かご当主が少し前に初期不良ってことでメーカーに交換してもらった奴を、お前用にって渡したやつだろう?」

 

「だから自分も不思議に思っているんです。また初期不良の物を渡した、とは思えませんがとにかく新しいのをお願いします。流石にそろそろ出ないと、学校の方まで寝坊になるので……」

 

「分かった。とりあえず事情は把握したが、お嬢様にはしっかり謝っておけよ。今日はフォーン様も都合でお嬢様達と一緒には行っていないようだし、早めに追いつけー」

 

 先輩からの声を背に、ハジメは立ち上がってカバンを持つ。忘れ物が無いかを確認したのち、了解の返事をする。

 

「分かっています。それでは、失礼します」

 

 直後すぐに部屋を出て、玄関にまで着く。その最中、クリエにも声を掛けられ、事情を説明すると「それは災難だったわねぇ」と言われ同情を受けつつ、見送られる。家の門を抜けると、ハジメはすぐに走り出す。歩いていたら間に合わないかもしれない。となれば走るのは必然だった。すぐにハジメは学校に向け、全力疾走でいつもの道を走り抜けていった。

 

 

 

 

「……っ……っ……間に合った……」

 

 教室に着き、自分の席へと座り込むハジメ。何とか朝礼の時間前には教室の席に座ることが出来た。すると、その姿を見つけた同級生が声を掛けてくる。

 

「おう、どうした、そんなに息切らせて。寝坊でもしたか?」

 

 何とも鋭い感だろうか。調子に乗った様子で話しかけてきた男装のクラスメイトは、的確にその原因を言い当ててきた。無理に隠す必要もないので、まさにその通りであることを聞かせる。

 

「…………ひょっとして預言者?」

 

「……マジでか。ファーフニル家の従者が遅刻っていいのか?」

 

「いいと思う?」

 

 息を整える間もなく、飛んできた質問にそう切り返す。しばしの間、思案したクラスメイトは、こちらに顔を向け直すと、笑顔で答えを言う。

 

「あぁ、だからか。何でそうなったのさ」

 

「なんか、目覚まし時計が壊れていた。ついこの間交換してもらった物らしいのに、また同じ理由だと思うけど……」

 

「あーあ……こりゃ不吉な予感だねぇ。今日は運勢悪いかもな」

 

 憐れむように会話をするクラスメイト。そして、そのタイミングでチャイムが鳴る。朝礼の時間だ。クラスメイトもすぐに別れを告げると、自分の席に戻る。担任が教室に入ってきて、出欠を取り始める。

 そこでふと、ジャンヌ達の事が頭に浮かぶ。

 

(そういえば、お嬢様達見かけなかったな)

 

 今朝来る途中、一度もジャンヌ達の姿を見ていなかったのだ。学校までのルートで会うと思っていたのだが、時間が時間なのでもしかすると先に学校に着いていたのだろうか。こちらに来る前に確かめておけば良かったと思いながらも、次の休み時間でいいだろうと判断する。

 そういえば、今日はやたらと警察が街を巡回していたような気がする。とはいえ警察があれだけいれば、街での犯罪も起きづらいだろう。おそらく、お嬢様達もそれは知っているはずだ。彼女は不吉と言っていたが、どうやら心配しなくてもよさそうだ。

 まさか、と思ったハジメだったが朝の街の様子を振り返り、あるわけがないと意識を目の前の現状に戻す。朝礼が終了した頃には、帰りに念のため、以前休日に立ち寄った、やたらと特徴的で聞き続けるのもおっくうになっていく音楽を流す時計店で、目覚まし時計でも買って帰ろうと考えるようになっていた。

 

だからだろうか。「それ」を聞いた時、自分の考えの前提が違っていたことを後悔したのは。そして、選んだのだろうか。あの時立ち上がり、全てを失ってでも彼女を助けようとしたのは。記憶を失う前の自分が、かつて選ばなかった決断を選んだのは。

 

 

 

 

 異変は、1時間目の授業が始まって半分を過ぎた頃だった。授業中の教室内は担任の声とチョークで黒板に書く時の音以外、ほぼ聞こえないと言っていいほどの静けさが支配したいた。それを、教室の黒板側にある扉が、乱雑に開かれた。

 

「すみません、ちょっといいですかっ」

 

 突如破られた静けさに、クラスメイトはおろか先生も驚きのあまり顔を向ける。扉を開けたのは、黒髪を同色のゴムでツーサイドにまとめた少女、ジャンヌの友人であるノーヴェ・リントヴルンであった。だがその顔色はいつものような余裕はなく、代わりに急を要するような、焦りのある顔だ。

 彼女は入ってそう言うなり、教師の了解を待たず真っ直ぐにこちらに向かってくる。そしてハジメの席の所まで来て、それを聞かれた。

 

「ハジメ、ジャンヌ達はどうしたの?」

 

「……どういう、ことです」

 

 その会話で、2人とも表情を変化させる。聞かれたハジメは表情を変えず、しかし目をわずかに見開かせ、口がわずかに開いていく。反対にノーヴェの方は目を閉じ、唇を震わせていた。だが、それも一瞬だ。

 再び目を開けたノーヴェが、ハジメの手首を強引に掴む。教室の各所から驚きの声が飛ぶ中、ノーヴェは一言。

 

「来て。ここじゃ無理」

 

 反論を聞かず、強引に教室の外へと連れ出す。だが、ハジメもあまりに急すぎたために力が入らなかったことと、状況を理解したことから抵抗はせず、彼女の力に任せて、同じく教室を引っ張られる形で出る。クラスメイト達が困惑する中、ハジメはノーヴェと教師数名らと共に教室を後にする。

 

 

 ノーヴェに連れられてやって来たのは、教員室近くの空き教室だった。だが、空き教室と呼ばれていたそこには、今では多数の竜人族の人々が出入りを繰り返している。教員らに交じり、会話をするスーツ姿の大人達。教室の前では青い帽子をかぶった人物が、見張りのように人物の出入りを確認する。

 雰囲気で分かる。教師たちと話しているのが、警察であることを。この時点で嫌な予感がし出す。そして、それを決定づけるファクターが、空き教室のドアを潜ってやって来た。

 

「失礼します……ハジメ!!」

 

「ご当主……」

 

 自身が世話になっているファーフニル家の当主、ガンドだ。だが彼だけではない。彼に続いて、クリエが入室する。そして更に1組の夫婦とみられる藍色の髪の男女が続き、最後にフォーンが入ってくる。

 だが、最後に入って来たフォーンはすぐさまガンドより先に行くと、ハジメを制服の胸倉辺りを掴んで怒声を浴びせてくる。

 

「ハジメ!!貴様……何をやっていた!?」

 

「うぐ……っ」

 

「フォーン、落ち着け。まだそれの段階じゃない」

 

 掴んだことで締まる制服の襟。それによって呼吸困難になりかけるハジメだったが、それを危険と判断しガンドは秘書の行き過ぎた行いを一旦制止させる。何か言いたそうに当主の方を振り向いたフォーンだったが、すぐにその手を放した。床に転びかけるも何とか姿勢を保ち、酸素を肺に取り込もうと呼吸を過度に行う。

 呼吸を整えている間にハジメは当主達の顔色を窺う。誰もがその表情に不安を感じさせるものだった。少し、胸のあたりが痛む。

 呼吸が整ったところで、ガンドがハジメに確認を取る。

 

「ハジメ……学校に着くまでの間に、ジャンヌ達を見なかったのか」

 

「はい……。そういうって……ことは……」

 

 ハジメからの返答で、かすかに怪訝そうな表情をするガンド。そこでノーヴェが重要なことを気づき、それを伝えた。

 

「あ……そういえば私、ちゃんと説明してなかった……。実はね、ジャンヌ達学校にまだ来てないの。それで警察に伝えたら、街の方で聖トゥインクル学園の女子生徒3人が、黒服のやつらに誘拐された事件があったらしいの」

 

「……そういう、ことだったのか……」

 

 その言葉で合点がいった。あれは事件やテロの警戒ではなく、事件が起きたために敷かれた捜査網だったのだ。

 

「その反応……警察が街で警戒網を敷いていたのは知っていたみたいだな」

 

 呆然として視線を落とすハジメ。それに気づいたガンドは、ハジメに声を掛けた。だが、その声が余計にハジメの心を押しつぶす。しかし、黙っている方が余計に心配させると思い、ハジメは自分の知っていることを話す。

 

「はい。けど、まさかあれが、お嬢様達に関わっていたなんて……」

 

「貴様……っ!」

 

 部下の反応に怒りをぶつけるフォーン。再び掴みかかる勢いで前に出ようとしたが、それを制止する形で警察官の1人がこちらに現状を伝えてくる。

 

「すみません。たった今、犯人からの連絡が入ったようです。どうか、皆様静かに」

 

「あぁ、すみません。……フォーン」

 

「…………」

 

 不満を見せつつも、仕える主からの命でフォーンの行動は未然に終わる。やがて、教室内も静かになると、警察に招かれガンドが電話のある方に向かう。フォーンやクリエらもそれに付いて行く。ハジメもその後ろを、少し間隔を空けて列に加わった。

 ガンドが鳴り響く電話の前で立ち止まる。クリエや男女1組、そしてフォーンがそれを囲むように並ぶ。警察の人に目線で確認を取ると、ガンドは電話の受話器を取る。

 

「…………ガンド・ファーフニルだ」

 

『……へっ……その声……待ってましたよ。ファーフニル家の旦那様』

 

「その声……ポルンか!!」

 

 フォーンがその声の主と思われる人物の名を叫ぶ。ガンドは手で感情が昂るフォーンを制止するが、電話の主はそれを敢えて肯定した。

 

『ふふふ……流石ですねぇ、フォーン様。やはり、育ちや生まれが良い方は、私のような劣等種よりも優れていらっしゃるようで』

 

「クッ……お嬢様への怨念返しか」

 

 怨念返し。その言葉に、どこか引っかかるハジメ。「お嬢様」と「怨念返し」と言う言葉が、最近経験した出来事と合致するような気がしたからだ。

 やがてハジメのその疑念は、ガンドの発言によって確信へと変わった。

 

「……ポルン・ドンド。かつては私の娘、ジャンヌの従者でもあった君が、なぜこんなことを?」

 

 ジャンヌのかつての従者。それはつまり、自分の前任者ということを指していた。かつて、自身がファーフニル家で雇われる際、ジャンヌの怒りを買ってクビにされた挙句、それを不服として詰め寄った結果、家を追い出されたというような話を聞いたことがある。

 今、電話に出ている人物が、一体どうしてこんな事件を起こすことになったのか。ガンドの言葉に同意するものがハジメにもあった。すると、電話主であるポルンがそれを含め、ガンドの質問に恨み言のように語った。

 

『なぜ?決まっているではありませんか!!私の竜人としての誇りを穢された!生まれた種族が、自分より竜人種的に劣る。それだけの理由でそこらにいるネズミを見るような扱いをされて、平気でいられると思うのか!!私が、古竜人族に好きで生まれたわけでもないのに!!』

 

 古竜人族、と言う単語でハジメは思い出す。ドラグディアの歴史などを補習で学んでいた時、その事についても学んだのだ。

 古竜人族。かつての姿に似た姿に戻りつつも、竜人としての魔術を使用できる種族である現竜人族と違い、竜の姿や特徴が数多く残る『進化を果たせなかったとされる竜人族』。渡された資料には、現竜人族から軽蔑される立場にあると書かれていたけど、まさかその人がお嬢様の従者だったなんて。なんというか、大変だったのは分かる。でも……だからって。

 差別は良くないのは、記憶を失ったハジメも分かっていた。しかし、それに至る感情、怒りを推し量ることはハジメにはまだ理解しきれていなかった。それはむしろ、竜人族でも機人族でもないハジメにも危惧されることだというのに。

 

「それだけで、それだけでお嬢様とそのご友人、お前と仕事をしたネアまで……!」

 

 理由を聞いたフォーンが侮辱の言葉と共に激高する。だが、怒りに任せたそれは、かえってポルンの怒りを買う形となる。

 

『えぇ、それだけですよ!!フリード家のお坊ちゃんとして貴方にはそれだけでも!私にとっては重いのです!!だからこそ、お嬢様にはご友人とネア様と共に、辱めを受けてもらわなければ……ねぇ!』

 

『っ!いやぁ!!?』

 

(…………何だ?今……)

 

 ポルンが最後の一音を強く口にすると同時に、電話口から布が裂かれるような音とわずかな雑音と共に、甲高い少女の声が響く。その声にいち早く反応したのは、電話に出ていたガンドであった。

 

「ジャンヌ!?お前……娘に何を!!」

 

『言ったでしょう?辱めを受けてもらうと……お嬢様には私からの最後の慈悲として、成長して頂くとしましょう。では、失礼』

 

 そう言ってポルンと名乗った元従者からの電話は途切れる。直前、フォーンがガンドの手から電話の受話器を奪い取り、それに向かってありったけの怒りを込め叫ぶ。

 

「待て!貴様ッ!!…………くそっ!!」

 

 電話が切れたのを知り、乱雑に元あった場所に戻す。しかし、広がる現状への不安が、入ってきていた夫婦の子どもへの心配に影響していた。

 

「あの……娘は、レイアは本当にファーフニル家のお嬢様と一緒に……」

 

「現状、声が聞けていないので分かりません。……ただ、普段から登下校を共にしているのなら、可能性は高いかと……」

 

「あぁ……そんな……」

 

 女性の方が泣き崩れ、それを男性の方が支える。どうやら、2人はレイアの両親のようだ。娘が誘拐されたという事実があれば、それだけ不安になるのも当然だろう。

 不安と絶望が広がっていく中、ハジメは考え込む。先程の電話の中で、ハジメは聞き覚えのあるものを耳にし、それが何だったのかを考えていたのだ。今この状況を打開する為に、必要なことを掴みかけているような気がしていた。

 しかし、考え込むその仕草が気に食わなかったのだろう。いつの間にか近づいていたフォーンが彼の胸倉を掴み上げる。

 

「ッ……」

 

「フォーン!?」

 

「奥様、止めないでください。……お前が、お前が付いていれば、こんな!!」

 

 クリエの声を遮って、自分の怒り、ハジメへの恨みを呪詛のように掛け続けるフォーン。しかし、ハジメは苦痛を覚えつつも、自分の中で感じる違和感の正体を掴もうと思考し続けていた。

 いまさっき、確かに聞いたことがある音が電話口から流れて来てた…………。なんだ、あれは。絶対に、どこかで聞いたことがある。思い出せ、思い出せ、思い出せよ。ジャンヌお嬢様が、レイアさんが、ネアさんがいるのに……くぅ、苦しい……。……苦しい?そうか。あの音は―――。

 ハジメの目が一瞬鋭くなる。かすかに見せた眼光が、再びフォーンを激高させて掴んでいる服ごとハジメの体を揺らす。

 

「ッ!!何だ、その態度はっ!!」

 

 しかし、今回ばかりはハジメも抵抗する。自身の服を掴むフォーンの手を、もがくように外そうとする。その甲斐あって、暴れた両足がフォーンの膝を直撃する。それによりフォーンの手が緩み、隙をついて拘束から逃れる。痛烈な痛みでフォーンは顔をしかめる。

 

「ぐぅ!?」

 

「な……大丈夫か、フォーン!?ハジメ、一体、何を……」

 

 上司のフォーンには申し訳ないことをしたのはハジメにも分かる。だが、今はそれを言っている場合ではない。制止したガンドの言葉に従うことなく、ハジメは電話の近くにいた警察官の下へ向かい、先程の電話の録画があるかどうかを聞いた。

 

「警察官さん、さっきの電話を録音したのって、ありますか?」

 

「え……あ、あぁ。あるにはあるが……」

 

 若干首を傾げる仕草をするが、警察官の1人は電話の近くに置かれていた機材を指し示す。どうやら、あそこで先程の電話を録音していたようだ。ハジメは機材の前でパソコンに向かっていた警察官に、録音した電話内容の再生を乞う。

 

「今すぐそれを再生できますか?出来れば最後の方を」

 

 先程の電話内容で、自身の気づいた違和感。それの検討は付いていたが、それが間違いではないかが知りたかった。だからこそ、警察官に頼み込んだのだ。

 当然、警察も事情を察する。だが、少なからずハジメへの猜疑心が彼らにもあった。だが、それは後方から響くファーフニル家の当主の言葉で一蹴される。

 

「すみません。お願いできますか。彼を雇っている私からの要請ということで」

 

「はい、分かりました……。こちらへ」

 

 呆然とした様子を見せてしまう警察官らだったが、最初に声を掛けられた警察官が承諾し、ハジメを機材のある所まで案内する。

 案内されたハジメは、パソコンの前に座る警察官から機材に繋がるヘッドホンを受け取る。そのまま両耳に装着したのを確認すると、警察官が先程の内容の最後の方を再生させる。

 

「では……」

 

『…………』

 

 誘拐された被害者達の両親らが見守る。ハジメはヘッドホンから聞こえてくる内容を注意して聞き取る。問題の所が流れてきて、それを確信する。

 

『辱めを受けてもらわなければ…「フィーバ」…ねぇ!』

 

「ッ!!やっぱり」

 

 すぐさまハジメは立ち上がる。警察官の手元に借りたヘッドホンを放り出すと、すぐさま教室の外へと向かう。

 いきなりの事で警察官らもハジメを止めようとするが、それを潜り抜けていく。教室のドアをガラッと開け、教室を出たところで慌てて追いかけてきたガンドとフォーンが追いつき、彼の肩を掴み状況を訊く。

 

「待て、何があった!!」

 

「まさか分かったのか?犯人の居場所が」

 

「はい、フォーン様。でも、今は……!」

 

 それだけ言うと、ハジメはガンドの手を振り払い、そのまま校舎の外へと駆けだしていく。後方でガンドがハジメの追いかけ、フォーンも遅れて来た警官らに事情を説明し、同じくこちらを追いかける。

 胸騒ぎがする。お嬢様達の身が危ない。それだけで自分は、いてもたってもいられずに駆けだしていた。こんなことが昔、あったようななかったような。けれど、1つ分かることがある。

 

(絶対に、お嬢様を傷つけさせはしない……!)

 

 心の中で強く念じたまま、ハジメは靴箱から靴を取り出し、履き替えて校舎を勢いよく走り抜ける。その勢いのまま、学園の敷地内に出たハジメは進路を東へと向け、駆けだしていくのであった。

 

 

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今回もお読みいただきありがとうございます。先週のネイの言葉がフラグだったね(^ω^)

ジャンヌ「縁起でもない、バカ」

バカ!?(;゚Д゚)

レイ「うーん……急展開と言えば急展開。だけどハジメ君としては、本当に災難というか……」

ジャンヌ「確かに。使用人としての心構えがなっていないと言いますか……目覚ましくらい確認しなさいって話です」

(´・ω・`)

レイ「あ、作者が落ち込んでる」

(´・ω・`)いや、まぁね。目覚ましで起きれなかったというのは、本当にハジメ君の失態よ。けど理由はあるから。

ジャンヌ「?……まさか目覚ましが壊れたことに理由があるとでも?」

(´・ω・`)あるよ。火のないところに煙は立たないからね。

レイ「あー……もしかしてポルンさんが?」

それは追々……。では今回はここまで。次回、教室を飛び出したハジメ君はどこに行ったのか?彼が聴いたあの単語は何を示すのか?

レイ「次回も見てね!」


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EPISODE10 ハジメテノ4

どうも、皆様インフルエンザに今まで以上に警戒し始めている藤和木 士です。

ネイ「アシスタントのネイ・ランテイルです。体調管理は常にしてもらいたいのですが……」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィア・ダルクよぉ。そうね、ネイにうつしたりしたら、覚悟しなさいよねぇ?」

さ、サー、イエッサー(;゚Д゚)さて、EPISODE10公開です。

ネイ「……前の言葉フラグになりましたね。お嬢様が言っておられましたが」

そうっすね(^o^)

グリーフィア「あらあら、すがすがしいまでの笑顔~」

まぁ、今思い出したけど、ここ表現生々しいというかあっち方面で悩んだんだったよなぁ……。けど、行ってみますか!

ネイ「え、それどういう……」

グリーフィア「それはそれは……ネアちゃん、ネイがモデルだから、果たして作者さん生き残れるかしらぁ?うふふぅ♪」

(´・ω・`)では、どうぞ



 

 ジャンヌ達がファーフニル家元従者「ポルン・ドンド」に誘拐されてから、1時間半。ドラグディア首都・セント・ニーベリュング市の街の一角にある廃ビルの1つに、3人は所々が切り裂かれた制服姿で、数人の黒ずくめの男性達に囲まれながら肩を震わせていた。

 今のドラグディアの気候は春に当たる。もうすぐ6月に入るとはいえ、それでも寒さに震える時期ではなく、彼女らの震えはそれによるものでは当然ない。ここに連れてこられてから、彼女達は自分達を誘拐した彼らに脅しとして衣服を切り刻まれ、更に体のあちこちをまさぐられる状況となっていたのだ。

 そもそも、彼女達を誘拐したのは誰なのか。ポルンだけはジャンヌ達も知っており、彼が主犯格であるのは間違いない。だがしかし、今彼女達の服を裂き、そしていやらしい手付きで触ってきていた黒ずくめの男性達だけは、自分達とどういう接点があるのか見当がつかなかった。ただ分かるのは、彼らがポルンに雇われたような者達であることだった。

 

「へへへ……レイアちゃん背はちっちゃいけど、なかなか大きなものを……」

 

「ひやっ……触らないで……!」

 

 伸びて来た手に胸の先を触られかけ、レイアが後方に逃げようとする。しかし逃げた先にも別の別の男性が居て、代わりにその男性の手に胸を触られる。レイアの嫌がる素振りに間髪入れずにジャンヌがはだけた制服の胸元を覆い隠しながらも、その男に突っかかろうとした。

 

「レイアさんっ!!レイアさんに何をし……っ!?」

 

「おっと、ジャンヌちゃんも動かない方がいいぜ?」

 

「お嬢様っ!!」

 

 しかし、横から男性が、ナイフでジャンヌのわき腹に近い部分の布地を更に裂く。制服の下のシャツまでも切り裂かれ、更に露出した肌にジャンヌは慌てて隠すが、周りから冷やかしとも取れる歓声が上がる。彼らにとっては高揚することも、彼女らにとっては死を覚悟する現状に主のジャンヌを庇いつつ、ネアは様子を窺う。

 油断してた……。今日はハジメさんがまだ寝ていたから、なるべく人の多いところを通っていたのに……まさかあんな人の多いところで誘拐するだなんて……。

 ネアの脳裏に、当時の状況が再現される。彼女達が誘拐されたのは今朝の8時ごろ。丁度その頃は学校までもう少しという所だった。広い大通りで信号を待っていたのだが、信号が変わった直後、信号無視して交差点内に車が2台侵入し、自分達の前方で急停止。車の方から男性3人、更に信号待ちの所であらかじめ待機していた男4人に抑えられ、そのまま車に詰められた。

 抵抗しようとしたが、直後に睡眠薬か何かを嗅がされ意識が途絶え、目が覚めると、このビルの中で監禁・陰湿な行為をされる状況になっていたのである。

 ここがどこなのか。それすら想定が出来ないが、やたら騒がしいサンバ風の宣伝音楽だけは外から聞こえていた。とはいえそれで何が出来るかと言うわけでもない。しかし抵抗しなければならない。先程ポルンが学校に電話した時に、ジャンヌの父ガンドの声が聞こえていた。学校に電話して聞こえたということは、既に状況は把握しているということだ。なら、ここに来るのも時間の問題。後は、それまで耐え忍べばいい。

 だが、当然それは向こう側も周知の上。電話口で喋っていたポルンが、再びこちらに来て立ちはだかろうとしたネアを無理矢理どかし、ジャンヌに迫る。古竜人族の特徴である鱗が覆う竜そのものの頭を、ジャンヌの顔に近づける。

 

「さて……っと!……お嬢様には、覚悟していただかなくてはですねぇ」

 

「きゃっ……お嬢様っ!!」

 

「っ…………クビにされた身で、貴方の自己満足に付き合うつもりなんてわたくし達にはありません。とっとと檻の中で恥じればいいのよ……!」

 

 肩に強く腕を置かれながらも、その痛みに屈することなく強気で返すジャンヌ。しかし、彼女自身にその腕を押し返す力はなく、また言葉も年齢相応の立場の物だ。見ているネアは嫌な空気が流れているのを感じた。

 不味い。前の時もジャンヌお嬢様が苛立っているときに起きたけれど、それを思い出しているのかも……。さっきの電話の事もあるから、刺激しすぎるのは却ってダメ……。

 祈るネアの心配は残念ながらすぐに現実のものとなる。しばらくにらみ合っていた両者。だがポルンの方が口角を上げ、同時にジャンヌのスカートの隙間に、竜の特徴が色濃く残る爪を差し入れる。

 

「やめて」

 

「ふふ……やめ……ませんよぉ!!」

 

 嫌がるジャンヌの拒絶に、はっきりと拒否するポルンは反対の手でジャンヌの肩を再度抑えると、スカートに爪を入れた手を下に勢いよく振り抜く。スカートは紙をハサミで切るかの如く切り裂かれ、ジャンヌの隠されていた下腹部がレース素材で出来た純白の下着と共に露わになる。

 

 

「ひ、やぁぁぁぁ!!?」

 

 

 スカートの布が引きちぎれる音の直後、ジャンヌの羞恥から来る悲鳴が響いた。女性なら当然の反応だ。暴漢に襲われ、自分の服をはぎ取られる。男は獣であるとは、まさにこのことだ。

 いくらお嬢様という立場でもジャンヌがそれらを知っているのはネアも周知だ。むしろファーフニル家では、それらに対処すべくあえてその知識も年齢ごとにラインを決めて、子女らに教えるようになっている。他にもネアなどの使用人は、入った年齢に応じてそういった性教育および子女らへの検閲、情報開示などの確認を行っている。

 だがしかし、見聞きするのと実際に体験するのとでは全く別の話だ。しかもこのような異常状況でジャンヌが平静を保てるはずがない。既にそれを見て男たちが歓声を上げ始めている。当の本人であるジャンヌは、羞恥のあまり手をどかすことよりも残った布で、必死にその部分を隠そうとしていた。

 ダメです、お嬢様ぁ!!それでは……!!私はすぐに駆けだそうとした。けれど、それを見越して周囲の男達が、私の方にも手を伸ばしてくる。

 

「あー、何々?ネアちゃんも一緒の事がやりたいってぇ?」

 

「ぅにぃ!!離して、くださ……ひゃあ!?」

 

「おぉっ、いい声~。流石詩巫女養成科」

 

 不意に胸を触られ、払いのけようとした。だがしかし、その隙に地面に押し倒され、手足を地面に押さえつけられる。別方向からもレイアの悲痛な叫びが響く。

 

「やぁ!いやぁ!!」

 

「うわっ、暴れんな!この野郎!!」

 

「レイアさんっ!!や、いやぁ!!ネアっ!!助け、てっ!!」

 

 頬を叩くような音が響き渡る。それに反応し、隙間からこちらに向けてジャンヌの声が飛ぶ。主人の言葉に応えたい。ネアのジャンヌに対する恩義から来る忠誠心で、身体に力を込める。しかし体格差から来る力の絶対的差は埋まることはなく、制服のボタンを外される。

お嬢様も、危ない状況なのに……っ!!なんで、何でこんなことに遭うの!?私のせいなの?こんな自分がいるから?私がダメな子だから……?だから、お父さんにも捨てられて……。

 その瞳から、涙がこぼれる。もう自分ではどうにもならない。その考えがよぎったネアは、かつての自分へと逃避してしまう。自分がジャンヌの家にメイドとして置かれることになった過去に。その理由なら、自分がこの状況を一番楽に受け入れると思ったから。竜人族・機人族問わず人体に備わった危機本能が、彼女を現実逃避させる。

 涙で濁った視界の先で、ジャンヌの下腹部を覆う最後の布に手を掛けるポルンの姿が映る。その姿はまるで、ドラグディアに伝説で「海竜神ポセイディア」の放った海竜「ゴジュラン」が生贄を襲う姿に見えた。その伝説では勇者「ヴルセルス」によって退治されたとされている。しかし、そんな伝説の勇者などという、空想溢れたものが救うはずもない。しかし、絶望的状況でネアは助けを願った。

 

(誰か…………助けて、私達を……!)

 

 

 

バンッ!

 

「ん?がっ!?」

 

「―――ネア、クローズ!!」

 

「!!」

 

 突如遠くから響いた扉の開閉する音と、男の悲鳴。そして聞き覚えのある声とその単語。それを聞いてネアは思い切り目を閉じる。

 瞬間、瞼越しに視界が光りで包まれる。同時に大きなクラッカーを至近距離で炸裂させたかのような爆音が襲う。爆音の影響で耳鳴り以外聞こえないが、手足の拘束が解けたのを感じ、目を開く。周囲を見ると男達は手足をバタバタさせるか、その声の主と共にやって来た侵入者と格闘していた。黒服の男が殴り掛かろうとするが、アッシュブロンドの髪を揺らす男性はそれを喰らう前に顔面に右ストレートをかまし、一撃で気絶させる。そのまま気絶させた男を武器代わりに、未だ爆音の影響が残る男性にぶつけると、空ぶる拳を避けてから腹に一発拳を打ち込む。

 もう片方ではレイアを取り囲む男達を薙ぎ払って、レイアに手を差し伸べる軍服姿の男性がいた。その男性の姿は普段からよく見るワインレッドの長髪の男性で、それだけで現状がどういうことかを理解する。

 こちらの始末が終わると、手を叩いてから、アッシュブロンドの男性がこちらに手を伸ばす。

 

「……じょう…か?……」

 

 先程のフラッシュバンの影響で聞き取りづらいが、その男性にネアは縦に頷く。そのままその手を掴み、着崩れた制服の所々を直しながら立ち上がる。見ると、残っているのは半裸状態のジャンヌと彼女を弄んでいたポルンにそれに便乗していた黒服の男性達6人、更に奥に居て影響が少なかったもう1人の主犯格とみられる男性とその部下1人だ。

 レイアももう1人の侵入者によって救出される。そしてその2人の間に陣取るように、ドアの影から飛び出す銀髪の制服姿の青年。それは、数十分前、学校を飛び出していったハジメと、それを追いかけて行ったガンドとフォーンだった。

 

 

 

 

「ちぃ……早かったですねぇ、お二方。それに小僧が一人、ですか」

 

 見知った者も含めた3人の襲撃者に、ジャンヌを立たせながら少なからず動揺を見せるポルン。周りの犯人一味である黒服の男性達も先程のフラッシュバンによる影響に未だ苦しみつつも、概ねこちらの方に向き直っている。

 なぜ、彼らがこの場所にたどり着くことが出来たのか。それは2つの要因が関わっている。

 1つは、ハジメが場所の大まかな特定に成功したことだ。学校を出る直前、ハジメは誘拐犯であるポルンからの電話の音声を再度聞いていた。電話の時点でどこか引っかかる点を感じていたため、その疑問を解決すべく警察に頼み、ガンドからの頼みもあって聞かせてもらえた。そうして電話音声を聴き直したハジメは、その引っかかりを感じたとある音楽と単語の切れ端を聞き取った。それはリズミカルな音楽と「フィーバ」という単語だ。

 このセント・ニーベリュング市には、街の名物の1つに「店頭宣伝が面白い時計屋」がある。音楽がとても時計屋とは思えず、更に宣伝文句も独特で音楽によって異なり、異彩を放つほどだ。実は、ハジメが今朝目覚まし時計を買いに行こうと考えていた店もここだったりする。

 通学路の脇道にあるため、帰り際には音楽の特殊性も含めて耳に自然と入っていたその街頭宣伝。今日はディスコ風の音楽に合わせた宣伝で、宣伝の最後には店主が実際に宣伝の中に入れたと思われる「フィーバー!!」の声と共に終わるバージョンの曜日なのだが、その単語が、ポルンが息を溜めた直後かすかに聞こえた。それを逃さず聞いたハジメは、この近くにジャンヌ達がいて電話を掛けていると判断したのだ。

 

(あの音楽が聞こえるのは、あの近く位だ。絶対、お嬢様達はあの近くにいる。……でも、ここからどうする?)

 

 しかし、物事は急がば回れ。この数分前に時計店の周辺へとたどり着いたものの、ハジメはそこからどの方向にジャンヌ達がいるか分からなかった。ただ衝動的に走り出してしまったため、それ以上はまだこの社会をよく知らないハジメには、推測しきることは出来なかった。

 しかし、後から追ってきたガンド達と合流したことで、2つ目の要因が起こる。現状を説明し、ここから先がどうすればいいか分からないと呟くハジメ。ガンドも使用人のあまりに出たとこ勝負すぎた行動に頭を掻く。しかし、しばらく思案したのち、思い出したようにフォーンがこう口にした。

 

『そういえば、この近くは以前からマフィア達のたまり場になっている廃ビルがありましたね』

 

 フォーンによれば、ハジメがファーフニル家に拾われた際に、市内の病院に最初連れて行こうとした。だが、首都にて起きたマフィア同士の衝突によりけが人で一杯の為、ファーフニル邸に運ばれ、現在に至った。そのマフィアの衝突が起こった場所がこの地域であるというのだ。

 場所が特定できたのなら、後は警察の応援を待つだけ。フォーンが時計店の店主にお願いし、警察を呼ぶよう依頼する。しかし、ハジメの中で不安が渦巻いていた。自分のせいであるということと、早く行かなければいけないという危機感はハジメの視線を、廃ビルへの道に注がれていた。

 すると、制服の裏を見たガンドは戻って来たフォーンにそれを命じた。

 

『警官が来る時間が惜しい。ハジメは初陣だが、3人の奪還に行こう』

 

『な……!正気ですか!?』

 

 ハジメも顔をはっと上げる。しかし、視線の先にあったガンドの表情が笑みを持ったものになると、フォーンを諭し、そしてハジメに決断を問う。

 

『確かに、当主本人が出ていくなんて、無謀だろう。だが、俺も軍人だ。それに、護るということをハジメ自身に実戦で体感させるチャンスだ。もちろん後方支援という立場だけどな。…………出来る……いや、やるか?』

 

 ハジメ自身も分かっていた。その言葉が、ガンドが、自分の覚悟を試しているのを。失敗した部下にチャンスを、という場面でもあるのだろう。しかしそれ以上にハジメがこれから先同じことが連続して、それでも付いて行く覚悟があるのかどうかを今一度確認する為に。

 その確認にハジメは、唾を呑みこんでからその決意を声にした。

 

 

『はい』

 

 

 それを確認後、ハジメを含めたガンド達決死隊は廃ビル群へと侵入したのだ。だが、問題はまだあった。廃ビルのどれにジャンヌ達がいるのかということだ。廃ビル群の間をすり抜けて目的地を探していたが、ガンドが突如とあるビルで立ち止まった。ハジメとフォーンも止まり、そしてフォーンが少し動揺した様子を見せていた。

 何の変哲もない、白い車が2台脇に停まるビルだが、ガンドはためらわずビルへ侵入し階段を昇って行った。遅れてフォーンとハジメが昇る。そしてとある階でドアの近くにいた警備と思われる黒服の男性を、トラップで引きつけてから無力化してからその部屋のドアまで来たところでジャンヌ達の声を確認した。

 当たりを付けたガンドも凄まじかったが、問題はここからと、小さな声で流れを説明し、中の状況が切迫した直後、ドアの開放と同時にガンドが近くの部屋にいた近くの男を制圧、同時にフォーンが用意していた非常用のスタングレネードを投擲。光と爆音の直後、一気にレイアとネアの周りにいた男達をすべて打ちのめし、救出したのだ。

 救出された2人は、2人を救出したガンドとフォーンに促され、後方にいたハジメの後ろにまで行く。残るはジャンヌ・ファーフニルただ一人。しかし、ポルンの優勢は崩れなかった。

 

「残るはお嬢様のみ。ポルン、それにマフィア共。大人しくジャンヌお嬢様を返してもらおうか」

 

「クックック。威勢がよろしいですねぇ、ポルン様。ですが、重要なのはこちらではないですかねぇ」

 

 ポルンは余裕を見せてフォーンの言葉に返す。そして自分の爪を半裸状態で立たせたジャンヌの胸元に突きつけて見せる。瞬間、動揺がこちらに走る。

 人質、ということか。くやしいけど、実際そうだ。こっちの本来の目的はお嬢様の奪還。けど撤退するときの事を考えて現在の状況になっている。この選択に間違いはない。相手の戦術が一枚上手だった。もしくは、自分に力があれば……。

 ハジメの心の中に、もしもという言葉と無力感が出来る。力への渇望。それは記憶のなくなったハジメに初めて生まれた欲求だった。

 

「…………人質、ということか。まぁ、最初からそうだが」

 

「下種が……。やはり古竜人族が……」

 

 何も出来ないことに歯ぎしりするフォーン。ガンドは冷静に対抗策を考えようとするが、動きを見せない。しかし誘拐犯であるポルンは、そして、その協力者である黒服に帽子をかぶった男は怒りを見せる。

 

「古竜人族だから?やはりあなたも、お嬢様と同じ貴族出身の竜人種のようですねぇ!」

 

「その傲慢さが、彼を怒らせた。そして、その怒りがかつてお前に所属していた組織を潰され、恨みを持っていた俺にチャンスを与えてくれた」

 

 リーダー格の黒服の男性が、かぶっていた帽子を取る。丸刈りの白髪、そして中年を感じさせる顔の右ほほに残る、連なる2本の切り傷を見て、フォーンは声を上げ、その名前を口にする。

 

「その顔……あの時マフィアの生き残りか?」

 

 あの時のマフィア、といういい方から、面識はあるものの名前は知らない様子だ。しかし、それでも相手はそれで満足したようで名前を名乗る。

 

「シグット・フィル。「シグ・ムーント」のリーダーだ。もっとも、そこの執事には元レジラムのメンバーと言った方が良いかな。まぁ、話はここまでだ」

 

 レジラム、という名前を口にして、当主と執事の2人が表情を硬くする。因縁浅からぬ中であることは察することは出来たが、それ以上考えるのは後回しにさせられる。シグットが右手を上げると、1人の竜人族の大男が前に出てくる。先程からシグットの横にいた竜人であり、サングラスをしているがそれが見えないほど色が同化した肌、帽子の上からでも分かる突起が特徴的だ。如何にもただ者ではない雰囲気を感じさせる。

 

「さて、レッドン、こいつらを始末しろ」

 

「イエス、ボス」

 

 その返答後、竜人族の男は帽子とサングラスを取る。が、外界に晒された彼の姿に一同が驚愕する。

 

「え……目が光ってる!?」

 

 下がって物陰から見ていたレイアが、そのまま素直な感想を述べる。フォーンもその姿を見て、とある名を口にする。

 

「その眼と触覚……ゼット族か」

 

「ゼット族……あれが」

 

 ゼット族。ハジメもこれまでの補習で知った、竜人族の中でも特異な能力を持つ者達の種族だ。黒い外骨格で体を覆い、更に火球を飛ばす、瞬間移動をこなすなど生身での戦闘能力に特化した種族とされている。

目とされる発光部分はかつて暗闇での生活を主としていた頃の名残で光っていて、現在ではその多くのゼット族が力強さと目、そしてレーダーにもなっている触覚で災害時のレスキュー部隊を組織しているくらいだと習った。が、力強さに目を付けた組織が、用心棒に雇う例も少なくないらしく、力は善にも悪にもなることを体現している種族とされている。

 ハジメの前に現れたゼット族も、こうして用心棒として雇われたのだろう。レッドンと呼ばれたゼット族の男は、帽子とサングラスを投げ捨てると、一瞬で姿を消す。

 

「消えた!」

 

「瞬間移動……!ハジメ!!」

 

 瞬間、フォーンの声が飛んだ。同時にハジメも悪寒がして左を見る。すると、さっきまでそこにいなかったはずのレッドンが、その拳をこちらに向けて振り下ろそうとしていた。

 やられる。そう直感した時には、既に手を交差させ防御態勢を取る。しかし相手は戦闘能力に特化したゼット族。それもマフィアの用心棒に雇われるほどの拳を無事に受け止められるのか?

 そう思った時には、時すでに遅しだった。

 

「フンッ!!」

 

「ぐぅあ!?……」

 

 振り抜かれた拳が両腕の交差した部分に直撃する。腕に強い痛みを感じるが、宙に体が浮いた感覚と共に勢いよく体を吹っ飛ばされてしまう。

 吹き飛ばされたハジメの体は思い切りビルの壁に衝突する。コンクリートへの激突で、一気に肺の酸素が吐き出され、意識が遠のいていく。

 

(ダメだ……まだ……何も)

 

 意識が飛ばないように願うハジメだが、視界の消失と体が軽くなる感覚と共に、ハジメの自意識は消えていった。

 

 

 

 

 一瞬の攻防だった。ハジメの方にゼット族の男が行ったと思った時には、既にハジメは壁に打ち込まれていた。立ち上がれない様子から、おそらく気を失ったのだろう。

 とはいえ、最初からハジメを戦力として見ていないのは、フォーンの頭にあった。しかし、これだけの戦力差があるのは、厳しい。

 

「ハジメ……!!くっ、ご当主!!」

 

「……動かない方がいいかな、とはいえ、動いても何も変わらなそうだけど」

 

 現状を見てガンドは諦めのように呟く。戦闘姿勢は崩していないものの、その表情には若干焦りが見えた。苦しい状況の中、ポルンがジャンヌの肌を擦りながら2人に勝利宣言をする。

 

「ふっふっふ。動かないのは賢明です。何せ下手に動いて気絶してしまえば、彼のようにお嬢様が大人になる瞬間を見届けられませんからねぇ……!」

 

「ひっ……やぁ……」

 

「お嬢様ッ!!……貴様!!」

 

「…………」

 

 嫌がるジャンヌの姿と、それを喜々として楽しむポルンに苛立ちを隠せないフォーンと静観しつつ打開策を探るガンド。しかし、徐々に周りに包囲網が出来あがる。その包囲は、先に救出したネア達にも及ぶ。

 

(クソッ!ここまでなのか……俺の力は……!)

 

 切り札はある。しかし、それを使うタイミングを計れない。どうにか、隙を――――

 

 

 

 その時である。

 

 

 

「……?」

 

 かすかに音が響く。その音は包囲の外からで、レッドンやポルンもまたその方向に目を奪われる。フォーンもその方向を振り向く。その方角は、ちょうどハジメが吹き飛ばされた辺りだ。

 まさか、ハジメが起き上がった。いや、あり得ない。あの勢いでぶつかって無事で済むわけが……!?

 だが、その方角には確かにレッドンに吹き飛ばされ、満足に動けないはずのハジメが立ち上がっていた。まるで、死の淵から蘇った悪魔のように、腕を垂れ下げているが、確かにハジメは立っていた。

 

「………………」

 

 無言であたりを見渡すハジメ。まさかの事態にシグット達も予想が付かなかった反応をする。

 

「な、ばかな!?ゼット族の一撃だぞ?」

 

「ほうほう、レッドンの一撃を耐えるとは……ん?」

 

 すると、シグットが違和感を覚えたような仕草をする。フォーンも注視してみると、その違和感に理解が追いつく。

 

「あいつ、気絶して……」

 

 その瞳には、生き物の光が灯っていなかった。息こそしているものの、まるで寝た状態で体を動かしているとでもいえばいい状態だった。

 ばかげている。そのような状況は普通起こりえないだろう。だが、現実としてそこにある。そしてハジメは、更に驚くべき行動を起こした。

 いつの間にか握られていたボックス状の端末を腰に当てる。直後端末からベルトが出現し、彼の腰に装着された。その形状、方法は、フォーンの記憶の中にただ一つしかない。その名を敵のリーダーであるシグットが口にした。

 

始動機(スターター)だと……?あんな小僧が?」

 

 スターター。この世界でモビルスーツに装依するために使用されるバックル式装依装置の名称だ。フォーンどころか竜人族・機人族は誰もがその名称を知る装備を、そのどちらとも付かない青年が、どこからともなく取り出し、装着した。

 そして、右手に持っていた星と歯車を合わせたようなペンダント状のタグを、スターターの開閉部に装填し、閉じる。動作はスムーズだが、その仕方はやけくそか、はたまた何かに操られているかの如く力のないものだった。俯いた状態で、彼は、ハジメはスターターの上部ボタンを押して、「それ」を行った。

 

 

 

 

「………………」

 

 

 

 

 無言のハジメを前後に現れた2つの光りのゲートが挟みこむ。挟み込んだ衝撃で周囲に突風が起こる。風は周囲の者達を怯ませるほどだ。だが、それだけでは終わらない。

 合体した光の扉は一回転しながら彼の頭上に行き、そして面を下に向けて降下する。まるでゲートに体を潜らせるような勢いだ。透けるようなハジメの体をゲートが通り抜ける。すると、そこに現れたのは、1機の機動兵器だった。

 

 

「なんだ…………あのモビルスーツは!?」

 

 シグットの率直な疑問は、この場にいる誰もが思ったことだろう。それを示すように部下達の視線は見事にすべてその機動兵器に注がれる。

 そして、それはフォーンやガンド、レイアにネアも同じだった。自分の部下が、知り合いが装依した、その起動兵器に視線が釘づけにされる。

 

「あれは……本当に、MSなのか……?」

 

 

 フォーンもため息を吐くように呟いた「それ」は、重厚な装甲で機体が構成される、見たこともない黒い機動兵器(モビルスーツ)だった。

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。

ネイ「……女性誘拐されたら、まぁ、そうなりますよね。こちらとしては不快ですが」

すまぬ(´・ω・`)

グリーフィア「私達はまだいいけれど、ジャンヌがどう言うかしらねぇ……。でもまぁ、最後の方で主人公君がカッコいいところ見せ始めているみたいだから、いいんじゃないかしら?」

あ、次回ジャンヌ達がアシスタントか(;゚Д゚)

ネイ「そうですよ?」

グリーフィア「そうねぇ」

???「というか、この感じ前にもあったよな?」

その声は……懐かしいじゃないか光樹君。でも、今この場に君の席はないよ!

光樹「いや、俺グリッ○マンじゃねぇし」

何を言うか!(;゚Д゚)グリッ○マンと同じ主人公を務めた君が言ってはいけないよ!(;゚Д゚)

光樹「はいはい、ネタはいいから、ツカえもん」

ちょ、その言い方……(;´・ω・)……まぁ、この後活動報告更新するかもしれないからなんだけどね。では今回はここまで。

ネイ「次回もよろしくお願いします」


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EPISODE11 ハジメテノ5

どうも、皆様。先日バトスピチャンピオンシップ2018神煌臨杯東海大会にてベスト32になりました、藤和木 士です("゚д゚)これは夢か?

ジャンヌ「現実です。でもまさか決勝トーナメントまで行けたのは驚きでしたね。その1回戦で負けましたけど。アシスタントのジャンヌ・ドラニエスです」

(´・ω・`)違うねん。グラニ来てればまだ勝負は変わってたのよ……だけど1枚も来なくて、後でデッキ見たら2枚中頃で重なってて、後の1枚はデッキ下近くだったのよ……。

レイ「予選で運使っちゃったんだね。けど初めてチャンピオンシップ出場でこれはなかなかじゃないかな?アシスタントのレイ・オーバだよっ」

そう考えれば……うん。バトスピカリスマのアグレッシブ健太さんにもここまで勝ち上がった証として握手出来たし、それ以上にバトスピ部アカウント名兼ペンネーム呼んでもらえたからね。結果的に宣伝になったっ\(^o^)/

レイ「うわぁ、がめつい」

ジャンヌ「本当は名前変えれたのに勝ち上がった衝撃で、頭お花畑になったせいで変えなかったっていうのに……」

(´・ω・`)
さて、EPISODE11公開です。ハジメテノ、これがなんの意味を持つのか……ここで分かる!

ジャンヌ「あぁ、そういえば前回私(モチーフのキャラ)が酷い目に遭いましたね」

(;゚Д゚)あ……いや、話の都合上だからね!?

ジャンヌ「分かっていますが……ちょっと思う所はあります。まぁ、小説作中の話なので、特に言いませんが……」

(´・ω・`)ごめん。

レイ「あ、そう言えば前は触れなかったけど、ゼットンモチーフのキャラっぽいの出てたよね」

あぁ、それに触れるの前忘れてたのよ。ぶっちゃけリスペクトはしてる。さて、では本編へどうぞ!


 

 

 それは、怒りか、嘆きか。そのように思えた。声ではなく、ただ風が周囲に吹き荒れる空間。だが、装依の余波で生じた風は、ただただ静まり返った現場に音を響かせた。まるでその機動兵器が誘拐犯ポルン・ドンドとシグット・フィルの両名に対し、怒りをため込みそれが叫びとなるように。

 だが、その風もやがて止む。風が止むと、我に返ったかのようにハジメが装依したMSに警戒し、また怒号が飛ぶ。だが、彼はもう止まらない。目的を果たすため。その目的は、ただ一つ。

 

 

 

 記憶を失った彼にとっての主、彼にとって護りたい人を救うための、「初めての殺戮」だった。

 

 

 

 

 

 

 

「な、MSだと!?クソッ、あんな奴が何で……!?」

 

「は、ハジメ……貴方……くぅっ」

 

 謎のMSの出現。それは警察が来てもレッドンで十分持ちこたえられると高を括っていたポルンらに、少なくない動揺を生み出していた。焦りのあまり、ジャンヌを捕らえる腕に力が入り、痛みにジャンヌが呻く。その声でフォーンは我に返る。

 ……しまった。今なら突撃して行けた。ハジメのMSに気を取られた状態なら、あのゼット族の男も対応が追いつかず、お嬢様を奪還できたかもしれんのに。……いや、しかしこれは……。

 この隙に助けに行けなかった自身の失態を、心の中で歯ぎしりする。しかし、同時にこれは仕方ないとも思う。突然のイレギュラーに、焦って動く方がかえって危険となることもある。過ぎたことを割り切ったフォーンは、再びジャンヌの奪還のタイミングを見計らうためにハジメとポルンの動きを注視する。すると、動きはポルン達の方が先となった。

 

「MSが出てきたのは確かに想定外だ。……しかし、こうすればどうだ?」

 

「ぇあ!?」

 

「ッ!!待て!!」

 

 フォーンは慌ててシグットの行動を制止しようと。シグットはその右手に黒いL字の金属物体を持ち、その先をジャンヌの頭に向けていた。拳銃だ。拳銃の銃口をジャンヌの頭に向けていたのだ。

 殺すことはないと思っていたため、思わず声が出るが、それに反応して周りを取り囲む男達もその手にそれぞれの武器を持って威嚇する。思うように手が出ない状況が再び展開される。

 MSが出たが、ここからどうするつもりか、とフォーンはあらゆる状況をシュミレーションする。だが、その答えが出る前にハジメが、黒いMSがその足を動かした。

 床を打ち付ける金属の音。ハジメのMSが動かした足の先はジャンヌに向けられている。彼女を助けるつもりなのだろう。だが、それはあまりにも単純すぎる。

 ハジメのMSはその着膨れしたような機体の足を、また1歩進める。しかし行動に対する反射のように、その進路方向に黒服の男達が集まる。MSに生身で立ち向かうことへの恐怖からか、身体は震えていた。しかし人質があるからか逃げようとはしない。加えて、ポルンもジャンヌの体を無理矢理寄せて、その首元に自身の爪を当て示す。

 

「う、動くんじゃねぇ!!このお嬢様の命がどうなってもいいのか!?」

 

「は、ハジメ…………くぅ……」

 

 体を傾けて、その凶器から逃れようとするジャンヌ。それでもなお機体はその足を止めない。話が通じていないかのように、ただただ一歩一歩進む。

 そんな異様な状況に、変化の一石が投じられる。黒服の1人が前に出て進攻を防ぐのを試みたのだ。

 

「おう、そんなゆっくり近づけば、俺らがいつまでも怯えてると思ってんのかァ!?こっちは人数じゃ上だし、武器も、それに人質だって……―――」

 

 しかし、最後の人質の方を指し示すために振り向いた顔を戻した瞬間に、

 

「―――――え」

 

 瞬時に振り上げた手に、光の剣が握られる。周りの者はそれに気づき後ろに退くが、妨害しようとした男は反応が鈍った。だが気づいてももう遅かった。振り上げた光剣(ビームサーベル)が、男の体を、真っ二つにする。

 吹き上がる鮮血がサーベルの熱に焼かれつつ飛散する。事態の連続転換に、誰もが理解が追いつかない。その異常な行動はフォーンも額や背中に冷や汗を掻くほどだ。だが、これは始まりの合図に過ぎない。ハジメのMSが、はっきりと光る単眼と、その奥に煌めく双眼で構成された3つ目を、黒服たちに向ける。直後、それを合図にハジメと黒服の集団「シグ・ムーント」による乱戦もとい、()()()が始まったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ……何だあいつは……バケモノか!?」

 

 ハジメの様子を見て、そのように表現するシグット。彼の言葉を聴き、その答えには同意を感じるガンド。彼は今、ハジメの方に集中がいった時から気づかれずに包囲を抜け出し、ジャンヌを拘束するポルンとシグットの近くまでたどり着いていた。

 2人の丁度死角になる位置で、再びフラッシュバンの投げ込むタイミングを見図ろうとしていた。しかし、状況の一変は、彼にも行動の変更を余儀なくされていた。

 

(さて、ハジメが気を引いてくれたのはいいが、ちょっと暴れすぎな気がするな?いや、ちょっとどころじゃない気もするけれども、あれは。ともかくあれに巻き込まれる前に、早くジャンヌを助けなくては……)

 

 指揮官を任されるほどの実力を持つガンドの目からも、その行動は異常さを拭えなかった。戦術云々の話ではない。いや、正確に言うなら、戦術にまとまりがないというのものだろう。さらに途中途中でハジメの機体は、離れたところにいた黒服の者達を、自らの手で引き寄せてサーベルを突き立てていた。そう、「手」でだ。実際の所、その光景は機体の手を飛ばし、アンカーを利用して物理的に引き寄せているだけ。だが、その戦法はどの国家の軍でもあまり見かけない戦法だ。

 ゆっくり近づいて油断させるなら一網打尽でジャンヌを救うのがベストだ。しかし、彼が選んだのは、とにかく周りを片っ端から斬ること。また腕を飛ばして引き寄せる乱戦に持ち込んだことで相手の注意が散漫になったが、逆にこちらはハジメの動きにも注意して動かなければならなくなった。

 だけど終わるのを待っていたら、いないことに気づかれてしまう。ならばと、私はフラッシュバンを再度投げる。場所はジャンヌ達とハジメの間。完全に注意をハジメに向けていたための投擲場所だ。

 

「ちっ、人質がいるというのに……ぬあ!?何だ!?」

 

「っ!!フラッシュ!?まさかあの2人が……」

 

 最後で再度のフラッシュバンに2人の誘拐犯が怯む。その隙にガンドはポルンの腕に蹴りを入れてジャンヌを掴んでいる腕の拘束を緩める。直後すぐにジャンヌの手を引き、物陰へと離脱していく。

 

「うぅ……お父様……?」

 

「はっ、と!……大丈夫か」

 

 耳こそ腕の位置のせいでまた聞こえていないようだったが、父親の手を掴んで誰かを察したジャンヌはコクリと頷く。

 一方、再度向けた視線の先では人質を取り逃がしたポルン達がこちらを捕らえようと、未だ回復しない視界を手探りで確認する。しかし、更に悪化する状況をシグットはポルンを制する。

 

「えぇい!お嬢様はどこにぃ!!」

 

「落ち着け、ポルン!まず先にあっちが問題だ……くそっ!レッドン!!」

 

 シグットの命令口調に、フォーンを相手にしていたレッドンも頷く。

 

「イエス、ボス。フンッ!!」

 

「グハッ!?ッ……」

 

 瞬間移動の直後に前につんのめったフォーンを、ラリアットで壁に叩き付けるレッドン。まるでハエを叩くかのようなスピードで振られた腕にフォーンは弾き飛ばされる。ガンドの予測ではあの勢いだとフォーンは数分まともに動けないだろう。しかし、周りの状況も大分収まりつつある状況ではまだマシだと思われた。

 いつの間にか残っているのは柱の脇に身を潜める自身と娘、壁に打ち据えられたフォーン、相対するハジメのMSとゼット族の大男レッドン、誘拐犯のポルンとシグット、そして物陰から見ているメイドのネアと、娘の友人のレイアだけとなった。後の黒服の男達はいずれもハジメのMSのビームサーベルに斬り捨てられ、死体となって地面に血を流し続けていた。血だまりの上を佇む黒い機体の一連の行動はやはり異常さを感じえない。

 もし、彼の本性がこれなのだとしたら。そう思うと私はとんでもない者を家に入れてしまったのかもしれない。いや、その責任をちゃんと感じるなら、一番辛いのはジャンヌだろう。自分の受け答えで彼を家に入れた。例え無事でも、ジャンヌは彼を家からまた追い出してしまうだろう。

 ガンドの視線は自らが抱き寄せる娘に向けられた。ジャンヌは血の匂いを嫌ってか、それともこの光景を見たくない為か、はたまたこの出来事そのものを忘れたいがためか。ガンドの胸に顔をうずめている。娘が父である自分にこれほどまで近づいたのは小さい時以来だが、この状況でなければガンドも気恥ずかしさが芽生えただろうが、ガンドは震えるジャンヌの体を抱き、状況を陰から見る。

 ハジメと対峙するレッドンが目の前に巨大な火球を生成していた。ゼット族の得意技であり、最大の一撃でハジメを葬ろうというのだろう。

 

「ヴァッ!!」

 

 放たれる火球。ここからでも熱を感じるほどの高温の塊だ。当たればMSでも熱による融解は免れない一撃。

だが、同時に加速した黒い重MSは、同時に加速すると、その火球をビームサーベルで両断した。

 

「な……馬鹿な……っ!?」

 

 うろたえるレッドン。しかし行動を次に移す前に、飛んできた腕に胸倉を掴まれる。掴んだ腕はそのままレッドンを押し掴む。進路直線状にいたポルンとシグットはすぐにその場を離れた。そして掴まれるレッドンは勢いを殺そうと足に力を入れているのが見えた。だが飛ばした状態の腕とドッキングするように激突したハジメのMSが、自身の推力を含めて押し付けると、レッドンの体はいとも簡単に柱の1つに激突する。

 激突された衝撃で、柱の一部が壊れて砂煙が立つ。レッドンは頭を振って遠のく意識を覚醒させようとする。だが、もう遅かった。

 煙の中で光るカメラアイ。直後に、サーベルの光刃がレッドンに向け上から下に振られる。同時に、レッドンのものと思われる悲鳴が響く。

 

「ガァッ!?」

 

 異常なまでの悲鳴に、全員の意識がその音の方向を凝視する。煙が晴れた先、そこに会ったのは、血飛沫を浴びたハジメのMSと、頭から体を縦に真っ二つに両断された死体になったレッドンだった。

 もはや生きてはいまい。完全に死体と化したそれから目を離したMSは、狙いを定めるかのようにシグットに向ける。

 

「く、来るんじゃねぇ!!」

 

 命乞いをしつつも拳銃を向け発砲する。だがそれを物ともすることなく、ハジメのMSは歩いて接近する。無駄弾を撃つ拳銃の発砲音とそれを跳弾させる黒い重厚の装甲の機体。手が届く距離まで接近したところで、機体の方が降ろしていたサーベルに再び光を灯し―――

 

 

「…………」

 

「ギャァァァッ!!」

 

 

 シグットの情けない声と共に銃と、それを握っていた腕が肘から斬り飛ばされる。斬り飛ばされた腕が地面に落ち、拳銃が金属音を鳴らす。背後の窓にはしっかりと血に濡れ、外からも状況が分かるようになる。

 その時になって、ようやく外の警察のサイレンが聞こえてくる。だが、むしろこの状況で突っ込んだ方が危ないのではないかとガンドは思ってしまう。それでも、助けに来てもらわねばこちらも身が危ない。

 そして、地面で身悶えるシグットに、首筋からトドメと言える一撃を差し入れる黒色の機体。こちらからは足だけしか見ることは出来ない。だが、悶えていたシグットの体は一度の大きなビクつきの後、一切動かなくなる。

 それにより、残るのはポルンただ1人となった。しかし、ポルンは最後の足掻きと言わんばかりに銃をこちらに向けた。

 

「こ、このッ!動くなぁ!!」

 

「っ!」

 

「お父様ッ!?」

 

 すぐに背を見せ、ジャンヌを庇う体勢を取るガンド。最悪ジャンヌだけでも護らねばならないと判断したための行動だ。撃たれることを承知の上で、娘を護る。それは父親としての義務であると。

 しかし、決死の覚悟は果たされることはなかった。

 

「ガハッ!?」

 

 その耳に聞こえてきたのは、銃声でも、身体の肉が抉られる音でもなかった。否、正確には自身の身体のものは聞こえてこなかった。代わりに聞こえてきたのは、犯人であるポルンの何かを吐くような声と同じ方向から聞こえる、誰かの身体を抉るような音。その正体を、振り返ったガンドが知る。

 その視線の先に移るポルンの身体。しかし、その胴体、正確には胸の部分に刃渡りの小さいナイフが突き立てられていた。先程の音は、それに刺されたことによるものだったのだ。

 

「………………」

 

 そして、ナイフを反射的に掴み、投擲した本人は膝立ちで投げた体勢から立ち上がると、こちらの方に歩み寄ってくる。

 何だ、何をする気だ。近寄ってくる黒の機械の悪魔に、心の中で問いかける。自然とジャンヌを庇う形になる。ジャンヌも先程の光景をわずかながら見ている恐怖心から、手で背中を掴んでいる。これ以上近づけるのは、例え中身が家の使用人でも危険だ。

 最悪死ぬ覚悟でジャンヌを庇い続けるガンド。ハジメも歩みを止めることなく、近づき続ける。壁に打ち据えられていたフォーンもその行動に待ったをかける。

 

「とまれ、ハジメっ!」

 

 しかし体を痛めつつの渾身の叫びも、ハジメを止めるには至らない。物陰でもレイアとネアがオロオロとする。我慢出来ずに、ネアも声を出して制止する。

 

「ハジメさんっ!!待って!」

 

 ネアの必死の声も届かない様子だ。そのまま距離を縮めてくる。一歩近づくごとに威圧感が増す。正直言って今すぐここから離れたいほどの気持ちがガンドの心にある。しかしジャンヌの手を引いて逃げようとすれば、ハジメは一気に距離を詰めるか、はたまた手を飛ばしてこちらを捕らえ、部屋の至る所に転がる死体のように惨殺されるのではと考えてしまう。

 機体の放つプレッシャーは、軍人であるガンドを圧するほどだ。これほどの恐怖はガンドが経験した中では、かつてのフォーンか、それか先日戦った、あの色が同じガンダムしかない。そしてとうとうハジメとの距離は飛び掛かれば届く距離まで近づいた。

 どうする、このまま押し倒して、ジャンヌだけ逃がす?意を決する決断に動こうとした。ところが……。

 足に力を入れた瞬間、ハジメの機体が視界からふっと消える。と思い下に目線を向けると、またハジメの機体の姿が目に入る。咄嗟に身構えるが、その姿を見て静止する。

 

「な……」

 

 言葉が出てこなかった。黒い重MSはその場に跪く。先程も膝立ちの姿勢があったが、今のこれは、敵意が全く見られない、完全に頭を下げ跪いている姿勢だった。

 

「…………?」

 

 何かおかしいと感じたジャンヌも、残る怖さからか肩を掴んだままでひょこっと顔を出し、困惑していた。今までの行動がまるで嘘のように思えた。そして、ハジメの声が響いた。

 

 

 

「…………申し訳、ありません、お嬢様」

 

 

 

 

 

 

 

 

「え…………」

 

 謝罪だった。もっというなら、懺悔かもしれない。だが、ハジメのその言葉は、完全に今まで見て来たハジメの言葉だった。父の肩越しに聞こえたその言葉は、先程人を惨殺し続けたあの黒いMSのものではないと思えた。そして、懺悔が誰に対する物かも、ジャンヌは分かっていた。そして理由にも気づく。

 ……え?でも、だって、貴方はこうして敵を殲滅して……あ、そうだ。きっと、レイアさんを巻き込んでしまったことも、含めて……。何よ……ふざけないでよ。

 意図を理解した途端、ジャンヌは自分の中が冷めていく感覚を感じた。目の前の男と、そして―――

 

「……自分が、ちゃんと付いていたら……こんなことには……」

 

「あ……う……っ」

 

 その謝罪にすぐに返答しようとする。が、言葉が自分の中で見つからない。いや、本当は見つかっているのだ。ただそれを言うのにためらいがあるだけで、それ故口に出せずにいた。

 そしてとうとう、その機会は失われる。膝を着いていた黒のMSがバランスを崩すように倒れ込む。倒れ込んだ際の金属音が耳を襲う。同時に機体が消滅し、代わりに装依状態から解除されたハジメが気を失った状態で現れる。

 力尽きたような状態で倒れるその姿は、先程の惨劇を引き起こした者とはまるで違う、純粋な寝顔をしていた。

 どうすればいい、と父に訊こうとしたが、その直後ドアが開け放たれる。

 

「警察だ!!」

 

 ドアを開けてなだれ込む警察の者達。フォーンが時計屋の店主に頼んでいた警察の応援だ。状況を見て、警察の人達も理解が追いつかないと言った様子だ。

 

 

 

 

 やがて父が端的に経緯を説明し、ジャンヌ達は保護された。結局犯人グループはポルンを残し全員死亡。ポルンも胸に重傷を負ったことで病院送りとなった。

 …………そして、ハジメはドラグディア軍の総司令部へと連行されていった。ジャンヌの中に、とある一言を残したままで。

 

 

 そして、マキナス、ドラグディア、それぞれの軍、政府が動き出すのだった。

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。さぁ、次回は黒の館改め黒の館DNを挟んでから第1章最大の佳境を迎えるお話が展開されていく予定になりますよ!

ジャンヌ「……いや、そんなこと言っていますが、今回色々と頭を抱えてしまうんですが……タイトルの伏線回収があれって……」

レイ「そういうことだったのかなぁって思ったよね。でも、何でカタカナ表記なの?」

狂気イメージ。

レイ「あ……そういうこと」

ジャンヌ「SSRは窮地に颯爽と現れて痛快に敵をやっつけましたが……これはまた正反対な……人質もいるのに立ち向かっていくのは悪役みたいですね」

外見ガンダムじゃないからセーフセーフ( ´∀` )

ジャンヌ「えぇ……(困惑)」

レイ「重装甲の単眼っていうか、三つ目?のモビルスーツ……色は黒だから、EPISODE1で出て来たガンダムと関わりはありそうだよね」

……キャラのモチーフ見たら分かるかも……(ボソッ)

レイ「何か言った?」

いや、何にも。

ジャンヌ「次回は黒の館DN。2話分同時投稿みたいですね。次回もよろしくお願いします」


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黒の館DN 異世界戦争編 第1回前編

どうも、皆様。藤和木 士です。
今回は解説回「黒の館DN」となります。以前の黒の館から質問コーナーを廃止、そして解説に特化させたものになります。

また、この会話部分も概ね私だけでいきます。ちょっと付け加えがあるときはまたアシスタントに来てもらいますけどね(*´ω`)

さて、まずは登場人物紹介からです!どうぞ!!


士「ソロモンよ、私は帰ってキタ━(゚∀゚)━!」

 

ジャンヌ「はっちゃっけすぎです!!」(100tハンマー)

 

士「あだー!?(;゚Д゚)」

 

レイ「あはは……そういえば、SSRの時の最初の黒の館が、それ関連だったね。前はやって来たー、だったけど」

 

士「もう名実帰ってきたですよ。半年くらい前だけど」

 

ジャンヌ「はぁ。まぁ、作品変わってますけど」

 

士「グサッ!(^q^)」

 

レイ「あ、ダメージ通った」

 

ジャンヌ「相変わらずの豆腐メンタルみたいですね、藤和木」

 

士「い、いや、これまでの投稿で私のメンタルはレベルアップしたから!」

 

ジャンヌ「へぇ?どれくらい?」

 

士「水銀から、フ○ーチェに(;・∀・)」

 

ジャンヌ「はぁ!?」

 

レイ「いやいや、前豆腐メンタルって言ってたのに、いつの間にレベルダウンしたのさ……」

 

士「まぁまぁ、とりあえず自己紹介。作者の藤和木弘改め、藤和木 士です」

 

ジャンヌ「話し相手(アシスタント1)のジャンヌ・ドラニエスです」

 

レイ「話し相手(アシスタント2)のレイ・オーバだよっ!」

 

士「あの……ルビが……(;´・ω・)」

 

ジャンヌ「なんのことでしょう?うふふっ」

 

レイ「さぁ、黒の館DN、色々紹介すること多すぎて次も解説になりそうなんでしょ?ちゃっちゃと行く行く~!」

 

士「あ、はい。では主人公達から行ってみましょうか。ちなみに今のところプロローグだけに登場のキャラクターはのちに紹介するので」

 

 

登場人物 (メインキャラクター)

 

ハジメ・ナッシュ

 

性別 男

身長 169cm

髪色 銀

人種 不明

年齢 不明(仮の戸籍では17才)

誕生日 不明(仮の戸籍では5月11日)

出身地 不明(現状は マキナ・ドランディア ドラグディア フリュウ州 セント・ニ

ーベリュング市)

 

血液型 O(に近い)

好きなもの 地方民話

嫌いなもの 甲殻類、ハヴィナス(海に生えるというナス。マキナ・ドランディア固有のもの)

愛称 ハジメ

 

 公園の傍で発見・保護された記憶喪失の青年。名前を聞かれた際、咄嗟に「ハジメ」と言ったため、そこに名無しをもじって「ハジメ・ナッシュ」となった(なお、命名はジャンヌの母親、クリエ・ファーフニルである)。

 竜人族・機人族のどちらでもない存在であり、DNA上はそのどちらとも半分の割合で一致するのみである。また、話を聞いた際に竜、ドラゴンが自分の覚えている限り想像上の生き物であるという発言から、異世界の人間なのではと言われている(マキナ・ドランディアでは神話での言い伝えからこの世界が次元世界の内の1つとされていて、それが可能性として挙げられた)。

 どこか抜けているような、ぼーっとする場面もあるが根はしっかりとしており、素直に物を言える人物。また特技として耳が良く、小さな物音に反応できる。

 記憶喪失の状態でファーフニル家で手当てを受けたのち、成り行きでファーフニル家のお嬢様付きの使用人となる(厳密には執事とは違うためこのような書き方である模様)。また、竜人族の知識を覚えるために聖トゥインクル学園の高等部マネージメント科の2年に通う。クラスにもなじみ始めていたが、ジャンヌ達の誘拐事件の際、犯人グループに気絶させられ、更にその状態で操られるかのように黒いMS「シュバルトゼロ・ビレフト」に装依。犯人たちを殲滅し、救出には成功するものの、その身柄はドラグディア軍に確保されることとなった。

 人物の外見モデルは機動戦士ガンダム ヴァルプルギスの主人公「マシロ・オークス」。髪色変更と眼鏡を外したのをイメージ。

 

 

 

ジャンヌ・ファーフニル

性別 女

身長 158cm

髪色 銀

人種 竜人族

年齢 16歳

誕生日 8月21日

出身地 マキナ・ドランディア ドラグディア フリュウ州 セント・ニーベリュング市

血液型 O

好きなもの レイア・スターライト、紅茶、甘いもの(特にパイ系)

嫌いなもの 熱いもの、甲殻類、関わりのない男性・女性

愛称 ジャンヌ、裁きの詩巫女、銀月の竜姫

 

 本作のヒロイン。ドラグディアの名家・ファーフニル家の三姉妹のうち次女。銀髪のウェーブがかった髪と、側頭部両サイドに黒のレースで出来た髪飾りを靡かせる少女。聖トゥインクル学園の2年生で、詩巫女養成科に通う。

 元々彼女の家は、代々国の象徴を奉る詩巫女と呼ばれる女性を輩出する家であるとのことだが、家自体に「呪い」と呼ばれるものがあるらしく、彼女はそれを嫌い、詩巫女になりたくないと願っている。

 他者から見た彼女は容姿端麗、高潔さもあり高嶺の花とも称されているほどの所謂美少女であるが、内面を見ておらず彼女からは軽く見られている。また彼女は同級生のレイア・スターライトに非常に惚れているという百合状態であり、それを隠していることがかえって周りの評価を盛大にずらしてしまっている。

 彼女の本性がここまで歪んでいるのは前述した呪いの影響らしく、レイア・スターライトの存在は彼女にとっての心の支えである。だが、本来の性格は穏やかなもので、幼少期は誰とでも分け隔てなく話すことのできる少女だったという。両親はそんな彼女に無理を言ってでも立ち直ってほしいと考えており、ハジメの存在は重要な要因だと思い込んでいる。

 学校で上空を飛ぶ黒いMSを目撃しており、その帰りにハジメを保護する。そして成り行きでハジメを家で預かることとなり、彼を自身の従者にする。彼に苛立ちをぶつけていて、早く止めて出て行ってほしいと思うほどハジメが嫌い。しかし自身が巻き込まれた誘拐事件で、彼の行動、そして謝罪の言葉に心の中で思うことがあった様子。

 ちなみに彼女の作ったパイが劇中に登場しているが、パイづくりのきっかけはレイアによってもたらされている。

 人物モデルはバトルスピリッツのスピリット「ジャンヌ・ドラニエス」。髪飾りをレースの物に変更している他、彼女よりも目が若干細め。

 

 

 

レイア・スターライト

性別 女

身長 154cm

髪色 藍色

人種 竜人族

年齢 16

誕生日 7月30日

出身地 マキナ・ドランディア ドラグディア フリュウ州 シャインライト市

血液型 B

好きなもの 歌うこと、お菓子作り、パフェ

嫌いなもの コーヒー、豆

愛称 レーア、光の詩巫女

 

 本作のヒロインの1人。聖トゥインクル学園高等部詩巫女養成科に通う少女。ジャンヌの想い人。もう一度言う、ジャンヌの想い人である。

 小さい頃からアイドルを目指しており、詩巫女とアイドル、両方の道を目指せるということから、両親にお願いして小中高一貫の聖トゥインクル学園の高等部に編入した経緯を持つ。夢は大きな舞台で歌うこと(本人曰く、全国コンサートもやりたいらしい)。

 性格はアイドルに典型的な明るい性格。しかし、裏で並みならぬ努力をしており、それは小中高一貫の聖トゥインクル学園に高等部から編入したことからも分かる。普段は実家の果物屋の手伝いをしており、アイドルとしての愛想よさの練習の場としている。若干天然なところもあり、真面目な場面では真面目にするものの、時にはあり得ない考えでジャンヌも振り回すほど。ネアをジャンヌの従者ということで気に掛ける場面が多く、周囲からも仲が良いとされている。反対にジャンヌとは普通の仲の良い友達レベルらしく、ジャンヌの重い愛情に全く気づいていない。ちなみに泣き虫な一面がある。

 趣味はお菓子作りで、実家が果物屋であることもあり、材料は店の商品の廃棄寸前の物を使うが、料理の腕は絶品。特にパイ系列が得意であり、ジャンヌもそれに影響されパイづくりに励むようになっている。

 ハジメにとっては命の恩人でもあるが、レイア自身はあの状況で助けるのは当然のことと謙遜している。

 家族構成は父と母がいる。1人っ子である。

 人物モデルはバトルスピリッツのスピリット「レイ・オーバ」。髪色を藍色に変えたほか、髪の結び方が2つの輪っかを左右でそれぞれ作り、肩の位置に掛かるようになっている(作者曰く、どうやってするんだそれ状態。近いところで言うなら元キャラの輪っかを左右に作って位置を下降・大型化、まとめない部分をそのまま流す方式)。

 

 

 

ネア・ライン

性別 女

身長 156cm

髪色 紅

人種 竜人族

年齢 16才

誕生日 2月3日

出身地 マキナ・ドランディア ドラグディア フリュウ州 セント・ニーベリュング市

血液型 A

好きなもの 読書、押し花づくり、アイスクリーム

嫌いなもの お化け、レバー

愛称 ネア、静寂の乙女、ネアきゃん

 

 ファーフニル家のメイドとして住み込みで働く少女。幼少期に養子に出され、以来メイドとしてファーフニル家、ジャンヌに仕えている。

 メイドとしての歴は10年近くになり、ジャンヌとは姉妹のような雰囲気を見せている。また自身の詩巫女としての才から学園におけるジャンヌの護衛も兼ねて自身も詩巫女養成科で通わせてもらっている(学費はファーフニル家持ち、お金の返却なども現状必要ないとのこと)。

 物静かな面と真面目さが目立つが、内心では養子に出されたことを捨てられたと思い込んでいる節がある。今なお残る嫌悪が晴れる日はいつか。

 人物モデルは同じくバトルスピリッツのスピリット「ネイ・ランテイル」。髪色の変更のみ。

 

 

 

 

士「以上が主要メインキャラになります。続いて普通のメインキャラ紹介です」

 

ジャンヌ「なんですか、その分け方……」

 

レイ「普通にメインキャラって言えばいいんじゃ?」

 

士「いや、次からのはLEVEL1を通してのキャラです。ちなみにLEVELは第○部の表記と思ってください。ではどうぞ」

 

 

ノーヴェ・リントヴルン

性別 女

身長 155cm

髪色 黒

人種 竜人族

年齢 16

誕生日 9月1日

出身地 マキナ・ドランディア ドラグディア フリュウ州 セント・ニーベリュング市

血液型 AB

好きなもの 妹、生花、パスタ系

嫌いなもの 空気を読めない人、暗いところ、豆

愛称 ノーヴェ、星光歌姫

 

 聖トゥインクル学園の詩巫女養成科に通う少女。12竜名家リントヴルン家の娘で、ジャンヌとは旧知の仲。ジャンヌの母クリエとも親交がある。

 リーダー気質の人間ではあるが、どこかつかめないところがあり、しょっちゅうジャンヌをからかうことが多い。ただし本当に急を要する場合はしっかりとした性格になる。幼少期から家の交流で顔を合わせていたため、ネアともその頃から面識があった。家族には両親の他に双子の妹と中等部の弟がいる。

 ハジメをファーフニル家に(結果的に)入れるきっかけとなった人物の1人。自身もお嬢様であるため、ジャンヌの従者であるハジメの振る舞いについては多少教えることもある。同時にジャンヌの扱い方などもレクチャーしているが、現時点では過激すぎると判断するためハジメは聞くだけにとどめている。

 容姿モデルはバトルスピリッツのスピリット「ノア・フルール」。髪色を黒に変更しているのと、髪をツーサイドでまとめる装飾品がシックなものになっている設定。

 

 

ガンド・ファーフニル

性別 男

身長 185cm

髪色 ワインレッド

人種 竜人族

年齢 50歳

誕生日 2月11日

出身地 マキナ・ドランディア ドラグディア レドラ州 ノブール村

血液型 B

好きなもの 家族、ニブル饅頭、ドラグーンレース観戦

嫌いなもの メタロン(マキナ・ドランディア版ゴーヤ)、虐殺

愛称 轟竜騎士

 

 12竜名家ファーフニル家の当主で、ジャンヌの父。ドラグディア軍の大隊を率いる軍人で階級は中佐。前線での指揮を執ることが多く、騎竜戦法を駆使することからも国内外において家の名も含めてよく知られている人物。

 元々はドラグディア国内の辺境にあったノブール村で暮らしていたが、幼少期にマキナス軍による侵攻を受け村が壊滅。戦災孤児となるも、現在の秘書であるフォーンの実家、12竜名家の1つ「フリード家」の当主「グランツ・フリード」に拾われ、養子として迎え入れられる。グランツから軍人としての手ほどきを教わり、その才能を発揮。若くしてエースとなる。その後フォーンとファーフニル家当主を決める決闘を行い、辛くも勝利。当時のファーフニル家の子女であったクリエと結婚し、現在は3姉妹を子に持つ親となった。

 仕事場では厳格、しかし倫理に基づいた判断が取れる良識ある軍人であるが、家では娘に甘い面がある。既に長女が嫁入りしていることもあり、ジャンヌには呪いの件こそあるものの、良い縁談があることを切に願っている。

 自身が得意とするMS騎竜戦法の愛竜「ジェンド」は扱いが難しいとされる「ヴァニッシュ・ドラゴン」と呼ばれる竜の若いオスであり、非常に気性が荒い、手懐けるのが難しいとされる竜であるが、ガンドはそれを完全にコントロールしており、信頼関係を築いている。これは彼が過ごしたノブール村が騎竜民族として有名だったためである。

 ハジメに対しては穏やかに接する一方、同時に素相の不明さからその行動を注視している。誘拐事件の件でハジメの身柄を軍本部に任せ、また自身も動いている。

 使用MSはドラグーナ・ガンドヴァル。彼専用のMSで、次世代機開発のための礎ともなっている。

 人物モデルはFateシリーズの英霊「ジークフリート」。髪色はネアの髪色より濃い目をイメージ。ドラグディア軍の制服は白地メインに、上着の右肩にドラグディア軍のマークが、そして紺のラインが左胸元に入っている。モデル元の紋様はない。

 

フォーン・フリード

性別 男

身長 179cm

髪色 アッシュブロンド

人種 竜人族

年齢 44歳

誕生日 1月7日

出身地 マキナ・ドランディア ドラグディア フリュウ州 セント・ニーベリュング市

血液型 A

好きなもの 鍛錬、茶器選び、ケーキ屋「グリム・ロッサ」の名物「ヴィル・ショコラケーキ」

嫌いなもの 大雑把な人物、姑息な手段、トウモロコシ

愛称 フォルド、ファーフニル家の影の守護者

 

ファーフニル家の執事を務めている男性。ハジメやネアの上司に当たる。グランツとは養子としての義兄弟である。

 寡黙な人物ではあるが、本来は感情的になりやすい一面を持ち、要警戒人物と接するときは警戒心が強まる。特に使用人が取り返しのつかないミスをした際や、護衛対象が傷つけられた際は劇中のように怒りを露わにする。

 かつてガンドとクリエを賭けて決闘をしたほか、ガンドが自身の家に養子入りした際も快く思っていなかった。現在のこの関係も決闘に負けたことで嫌々やっているらしい(ただし約束は律義に守る上に、悪くないらしい)。また退役軍人であり、最終階級は大尉。軍からは復帰の声も上がっているとのこと(本人が仕事を理由に断っている)。

 ハジメの事を要警戒しているが、彼の咄嗟の行動に奔走されることもしばしばある。仕事に関しては少し遅いところがあるが、真面目にやっているので及第点ギリギリとのこと。ハジメの軍預かりに際し、再びジャンヌの護衛に復帰している。

 人物の外見モデルはFateシリーズの「カルナ」。髪色を銀系統から金系統に変更。色は白に寄せているイメージ。ガンドのモデルのジークフリートとはシリーズの1つ「Apocrypha」での宿敵であり、これを踏まえての設定。

 

 

クリエ・ファーフニル

性別 女

身長 160cm

髪色 銀色

人種 竜人族

年齢 43歳

誕生日 4月8日

出身地 マキナ・ドランディア ドラグディア フリュウ州 セント・ニーベリュング市

血液型 O

好きなもの 家族、ピアノ、ショートケーキ

嫌いなもの 虫、クラゲ、争い事

愛称 創詩巫女(クリエイト・キャーヴァ)

 

 ファーフニル家当主であるガンドの妻で、ジャンヌの母。家の詩巫女当主であり、詩巫女の中でも特別な功績を挙げた名誉詩巫女である。聖トゥインクル学園のOBでもある。

 おっとりとした夫人といった印象であるが、いたずら心も含んだ女性で、特に娘のジャンヌに対してはそれが多々出る癖がある。本人としては娘にもっと楽しく生きて欲しいという思いから。彼女もかつては家の呪いを恨み、その影響でとても冷徹な性格だったがフリード家の養子だったガンドとの交流を機に次第に感情を取り戻していき、現在のような性格になった経緯を持つ。特にジャンヌは3姉妹の中でもよいところ悪いところ含めて昔の自身にそっくりであり、親としてとても心配している。

 名誉詩巫女の功績としては、現時点では不明。噂によれば、とある金属を歌により錬成に成功したとのこと。

 人物モデルは「L@ve Once」の高梨汐音。ジャンヌのモデル元とはイラストレーターが同じ。作者としては、ジャンヌから逆算した母親で最初に思い付いたキャラクターだったため、モデル元に採用。髪色はジャンヌと同じく銀色。スタイルなどもモデル元から据え置き。

 

アルク・スターライト

性別 男

身長 178cm

髪色 紺色

人種 竜人族

年齢 42歳

誕生日 11月25日

出身地 マキナ・ドランディア ドラグディア フリュウ州 シャインライト市

血液型 A

好きなもの 家族、ブドウ、数学

嫌いなもの 戦争、干物

愛称 ミスターフルーツ

 セント・ニーベリュング市の隣、シャインライト市にて果物屋「フルーツバスケット」を営む店主。レイアの父。温厚な性格で、家族のこととなるととても心配性になる。

 かつては航空戦艦の開発チームに携わっていたが、戦争が嫌いだったためチームから離脱。結婚後、親が農家だったこともあり、果物屋をやるようになった。

 外見モデルはガンダムXのジャミル・ニート。サングラスではなく、普通の眼鏡をしているのをイメージ。

 

 

シャイナ・スターライト

性別 女

身長 158cm

髪色 金

人種 竜人族

年齢 39歳

誕生日 10月31日

出身地 マキナ・ドランディア ドラグディア フリュウ州 シャインライト市

血液型 B型

好きなもの オレンジ、伝記、料理作り

嫌いなもの ニンニク、機械

愛称 とくになし

 

 レイアの母。夫のアルクと共に果物屋「フルーツバスケット」を営む。優しい母親としてレイアを育ててきた。やや精神的にもろい部分がある。

 実家がかつて、救世主ガンダムを祀る神社の家であったが、既にそれらとは無縁となっている。そのことをレイアはあまり詳しく知らず、彼女が詩巫女を目指したことは奇妙な縁とも言える。

 人物モデルはネプテューヌシリーズの綺麗なマジェコンヌことクロム。

 

士「さて、メイン達はこの辺で。サブキャラの紹介です」

 

レイ「名前の出てる人でまさしくサブって人達の事だね」

 

ジャンヌ「といっても、犯人グループの人達だけ……あ、戦死したドラグーナ・コマンドの人とかがいますね」

 

士「えぇ……まぁ、私も名前覚えてないけど(´・ω・`)さて、では行こうか」

 

 

ポルン・ドンド

 ジャンヌ達を誘拐した犯人の1人で、元ファーフニル家のお嬢様付きの使用人。竜人族の中でも、かつての姿、竜としての姿が色濃く残る古竜人族の人物である。そのことでちょうど苛立ち状態だったジャンヌを怒らせてしまい、クビとなる。それを撤回するように要求したが、騒動になったことで家を追い出された。

 今回の犯行の理由はその仕返しであり、旧友であったシグットと彼の組織「シグ・ムーント」の協力により誘拐し、ジャンヌを辱めようとした。最終的に銃を放とうとしたところをハジメが咄嗟に投げたナイフを胸に受け重傷。救急車で病院に搬送される。

 

シグット・フィル

 ジャンヌ達を誘拐した犯人の1人。マフィア「シグ・ムーント」のボスであり、犯行は彼の部下達も関わっていた。

 かつて別のマフィアに所属していた時、軍に在役中だったフォーンにそのマフィアグループを潰されており、以来目の敵にしていた。

 中学以来の旧友であったポルンと共謀し、今回の誘拐事件を起こす。見事誘拐に成功し、フォーンと対面するが、暴走したハジメのMSに部下達を惨殺される。更に近づいてくるハジメに拳銃を発砲するも、右腕を切り飛ばされ、最終的に首元からビームサーベルを差し入れられ絶命する。

 

レッドン・イマル

 マフィア「シグ・ムーント」に所属する用心棒。黒い体と目が発光する「ゼット族」と称される竜人族で、生身でも非常に戦闘力が強い。

 アジトのビルに突入してきたガンド達の前に立ちはだかり、ハジメを一瞬で気絶させる。しかし気を失って操り人形状態のハジメが装依した黒いMSと交戦し、最終的に火球を切り裂かれた直後、頭から真っ二つにされ死亡する。

 モデルはウルトラマンのゼットンをイメージ。

 

リュノ

 ドラグディア軍の部隊「アシュガリア小隊」の小隊長を務めた隊員。2年前に軍学校を卒業し、アシュガリア小隊に配属された。

 わずか1年でドラグーナ・コマンドを任せられるほどの実力を持ち、同部隊でもエースとして活躍していた。同じ部隊のワリィ軍曹とゴラド(階級は曹長)は幼稚園からの友人。

 5月上旬に起きた武力衝突でガンダムと接敵。ワリィとゴラドを失い、怒りに震えながらも交戦。ガンドと協力し何とか撃退するも、直後マキナス軍の艦艇から照射されたビームに焼かれ、戦死する。装依機はドラグーナ・コマンド ハイマニューバスタイル。

 

シュナウダー・ダリオン

 ドラグディア軍の部隊の1つ「アシュガリア小隊」の隊長を務める軍人。階級は大尉。ドラグディア軍の軍人の中では考えはしっかりとしているものの、焦りがちな面も見られる。

 武力衝突時には仇を討つと言うリュノを送り出す。しかし、仇であるガンダムを追い払いはしたものの、戦死したリュノに涙を流し、その場では平静だったものの、のちにアシュガリア小隊の隊長を降り、軍学校の教師に転身したとされる。

 

リヴィル

 EPISODE「出会い」の中で起きたドラグディア軍とマキナス軍の武力衝突で、マキナス軍の指揮官を任せられた機人族の男性。階級は大佐。物事を冷静に捉える戦術眼と、物事の考えに機転が利く頭脳を持つ。しかし彼の考え方の随所には、部下達や前線で戦う兵士達の配慮があり、多くの兵士から慕われている。また軍部の考えが腐った軍人とも対等に言葉を交わすことも多く、マキナス軍の穏健寄りの改革派とも称される。

 武力衝突時には、ガンダム出現後その矛先がドラグディア側に向かっていたことから撤退を選択。それに対して一部将校から非難を受けるもそれを心の中で屑と思いつつも容認。その部隊以外を下げさせる。またガンダムの様子見に徹し、更にガンダム撤退後は非難した将校を命令違反としてマキナート・バスターに討伐させる。結果として、ガンドの命の恩人となった。

 

 

 

士「以上がここまでにおけるキャラクター紹介になります。プロローグ関連のキャラはまたのちに紹介するので今回では触れません」

 

ジャンヌ「次の話ではMSの紹介になります」

 

レイ「ドラグディア、マキナスの正式採用機、そしてガンドヴァルと黒いMS「シュバルトゼロ・ビレフト」まで、紹介するよ!お楽しみに!

 




ここまでが登場人物紹介になります。続けて機体解説が同時投稿されていると思いますので、またそちらの方で!

では後編もお楽しみください!


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黒の館DN 異世界戦争編 第1回後編

続けて、解説話後半になります。藤和木 士です。

後半では現時点で出たMSの内、ガンダムを除く機体を紹介します。あの黒い重装甲MSの情報もあります!

では解説後半行きます!!


 

士「はい、では後編始めて行きます。藤和木 士です」

 

ネイ「話し相手1(アシスタント1)、ネイ・ランテイルです」

 

グリーフィア「話し相手2(アシスタント2)のグリーフィア・ダルクよ?」

 

士「またですか……そのルビ(´・ω・`)」

 

グリーフィア「まぁいいじゃないのっ」

 

ネイ「私達を登場キャラのモチーフにしているので、当然の反応です。というか当時お嬢様カードとして出てないですよね?キャラはどういう風になっていたんです?」

 

士「あ、それなんだけどね。キャラはお嬢様キャラはあてがっていたけど、それ以外は決まっていなかったと思う(´・ω・`)」

 

ネイ「そうですか……」

 

グリーフィア「それよりもぉ、今度は機体紹介何でしょう?早くやりましょうよ~」

 

士「では現時点で紹介すべきところはしましょうか。それではまずはドラグディアの主力MS「ドラグーナ」と隊長機「ドラグーナ・コマンド」、そしてガンドの機体「ガンドヴァル」を紹介ですね」

 

 

 

機体解説

 

 

 

ドラグーナ

形式番号 MS-DD08

 

・ドラグディア軍が運用する汎用型量産モビルスーツ。簡易ハードポイントを備え、DNジェネレーターの出力を許す限り、様々な武装を装備することが可能。第3世代のモビルスーツに当たり、先代機は「ドラゲス」、先々代機は「ドラゴス」と名付けられている。

 機体形状は角の取れた曲面装甲を採用。そして特徴的なのが頭部であり、竜の頭部を模した頭部となっている(形状イメージとしては鉄血のグレイズ)。通常時は口が閉じられ、上部に横長で配置されたデュアルアイを使用するが、長距離戦では口部を開いて長距離用角形センサーを展開することで遠距離戦にも対応する。

 武装構成は通常はビームライフルを1丁、ビームサーベルを両腰サイドアーマーに1本ずつの計2本、円形の実体シールドを備える。現在稼働歴25年であり、次世代機の開発が検討されている。

 

 

【機能】

・カメラ切り替え機構

 頭部のカメラを変形により接近戦・射撃戦用に切り替えることが可能。基本的にドラグーナシリーズの共通仕様である。

 

・簡易ハードポイントシステム

 隊長機・専用機のハードポイントシステムを簡易的な物に置き換えた物。主に肩部・膝側面に備える。また専用パーツにより、背部にも装備を追加できる。

 

 

【武装】

・ビームライフル

 DNを圧縮しビームとして撃ち出す兵装。ドラグディア側ではマキナス側のモビルスーツよりも近接戦に重きを置いているため、バレルストックが無い、少し小型のものとなっている。不使用時は右腕部側面、もしくは腰背部に固定される。

 

・ビームサーベル

 DNを細身の剣状に収束させ、形成するビームの剣。マキナス側のモビルスーツが遠距離戦を重視する関係上、サーベルの本数が1本なのに対し、こちらは2本をサイドアーマーに装備する。

 

・ラウンドシールド

 機体の左腕に装備する実体シールド。表面を対ビームコーティングされている。近接戦闘用に可能な限り小型化されている。防ぐほかにも殴打武装としても使われる。

 

・バックパックユニット

 機体背部の推進器を兼ねるユニット。ボックス状のユニットと上部の固定式ウイングスラスターで構成される。ボックス部側面に専用パーツを装着することでハードポイントとして機能する。

 

 

 

<チャージスタイル>

・突撃戦仕様の武装を装着した姿。

 

【武装】

・ナイトランス

 突撃用の一般的なランス。穂先の後方にグリップを備え、両手持ちも可能。一度切りだが、先端部を射出してのバンカー攻撃が可能。不使用時は基本的に肩部ブースターに懸架される。

 

・高出力ブースター

 肩と膝側面に装備される加速用のブースター。コンデンサーを内蔵しており、基本的に消費DNはここから供給される。膝側面用のブースターは専用パーツを用いて背部に装着し運用することも考えられている。その場合「フルチャージスタイル」と称される。

 

 

 

<シュートスタイル>

・遠距離からの戦闘を前提とした装備を装着した仕様。

 

【機能】

・射撃支援システム

 装備に備えられた射撃支援用システム。射撃後の機体各部バランス調整を自動で行う。

 

【武装】

・2連ビームライフル

 機体右腕部に装備する半固定式の2連装ビームライフル。カートリッジによるエネルギー供給式であり、発射可能数はカートリッジ1つにつき20発。カートリッジはリアアーマーに装着される。

 装備の関係上、通常のビームライフルは装備されない。

 

・マルチキャノン

バックパックに専用パーツを装着して装着される大型キャノン砲。左肩に掛けるように装備され、左手で持ち手を握る。2つの砲口があり、上部はビーム、下部は実弾を放てるようになっている。

 実弾の種類は通常の火薬弾頭、もしくは散弾を選択可能。弾数は3発であり、バックパック反対側に弾倉とジェネレーターを持つ。

 

・レーザーポッド内蔵型スラスターユニット

膝側面に装備される、近接防御用レーザー放射装置内蔵の増加スラスター。接近された際はこの兵装で撹乱し距離を取る。

 

 

 

ドラグーナ・コマンド

形式番号 MS-DD08C

 

・ドラグーナを小隊長用に調整・機能向上を行った機体。機体外見の違いとしては各部ハードポイントの強化とバックパックの変更・ハードポイントの常時使用可、頭部へのホーンアンテナの追加である。

 機体の出力面ではドラグーナの2割増しであるが、機体のDN貯蔵用コンデンサーの容量は増えていないため、稼働時間が短くなるという欠点を備える。そのため、通常仕様でもバックパック背面には予備コンデンサーが標準装備される。

 なお、当初は本機の仕様が量産型の本来の仕様であったが、量産を優先した結果本機が隊長機として設定され、簡易型として現在のドラグーナがある。「簡易」ハードポイントシステムとされているのはこの名残。

 

【機能】

・カメラ切り替え機能

 ドラグーナと同じのため割愛。

 

・ハードポイントシステム

 ドラグーナにも備えられている武装換装用のハードポイントシステムの強化型。装備固定の強化の他、装備使用時の反応スピードを高めている。

 

・ホーンアンテナ

 機体頭部の後部に伸びる角型のアンテナ。僚機への通信強化を目的とする。

 

 

【武装】

追加装備はドラグーナと同じものの他、専用の追加装備形態を持つ。

 

・ビームライフル

 基本的にドラグーナと同じものだが、銃身下部には外付けでバレルストック、もしくは1発限りのグレネード弾を装備できる。

 

・ビームサーベル

 ドラグーナの物を高出力化させた格闘兵装。装備位置は同じであるが、根元を可動式にしたことで抜刀時間を若干短縮に成功している。

 

・ラウンドシールド

 ドラグーナが装備する物と同じ、対ビームコーティングされたシールド。ただし裏面にはアンカー接続用プラグがあり、機体側のアンカーと接続することで投擲兵装としても使用できる。

 

・アンカー

 機体腕部側面に備えられたアンカーユニット。射出して機体を固定・拘束できるほか、シールドと接続して遠距離攻撃が可能となる。

 

・強化型バックパックユニット

 ドラグーナが装備するバックパックを高出力・大型化させたモデル。バーニアは片側1発式から2発式に変更。ウイングスラスターも根元での回転が可能となった。またハードポイントは側面2つが標準となったことに加え、背面側にも追加されて予備のプロペラントタンクを2基標準装備する。

 

・プロペラントタンク

 機体のエネルギーとなるディメンションノイズを貯蔵した、機体外付け式のエネルギーパック。動力機関のDNジェネレーターは次元空間からディメンションノイズを供給するため、事実上エネルギー切れはないが、時間毎に取り出せる量には限りがあるため、それを超える際のセーフティーとして装着されている。

 任意で取り外しが可能であり、場合によっては外部から破壊することで目くらましなどに使用可能。

 

 

 

<ハイマニューバスタイル>

・高機動戦特化の兵装を装備した仕様。基本的に隊長クラスの専用装備である。本スタイルではラウンドシールドは装備されず、代わりに両肩にバインダーシールドが装備される。

 

【武装】

・ジェットスラスター

全ハードポイントに個別に装着される高出力スラスター。ジェットと名がついているが、要は瞬間的に加速を生み出すためにその名がつけられている。

 機体に掛かる負荷が大きく、機体に装依しているパイロットも若干の負荷と制御の困難さ、そして機体と装備の固定が十分でないと勝手に外れてしまうという性質から本装備が隊長機専用となった一因でもある。

 

・バインダーシールド

 機体両肩部ジェットスラスターに装備される固定式シールド。バインダーとなっているが、高機動時の安定性のため、接続部での回転以外は動かせないようになっている。また上部はスラスター、下部には4連装ミサイルポッドがそれぞれ装備されている。

 

・4連装ミサイルポッド

 シールド下部の裏に装備される連装ミサイルユニット。追撃時の兵装や弾幕として使用される。

 

 

 

<フルアーマースタイル>

・機体各部を重装甲で覆った装備仕様。同じく隊長機用の専用装備であり、ラウンドシールドは装備されない。

 

【武装】

・アーマーユニット

 機体胸部・腕部・肩部・腰部・脚部の機体本体の装甲を覆う追加アーマー。装甲それぞれに追加サブスラスターが内蔵されており、可能な限り機動性を損なわないようにしている。また、装甲内部にマイクロミサイルを装備しており、中距離からの飽和攻撃を行える。なお、攻撃を受けた場合はその部分を即座にパージし、機体へのダメージを抑える。

 なお、ドラグーナにも装備可能な装備ではあるものの、出力が足りず戦闘機動に支障が大きく、まともに動けない。コマンドでも機動力低下は免れないものの、戦闘行動は可能であったため隊長機専用装備となった。

 

・大型バスターソード「マキナブレイカー」

 機体背部に装着する大剣。剣の側面に可動式のスラスターを備え、振る方向に合わせスラスターを偏向・噴射し威力を調整できる。更にディメンションノイズを刀身に纏わせることでビームサーベルとも切り結ぶことが可能。本装備は特にドラグディア軍でも愛用者が多く、場合によっては本装備を拝借し、別の装備形態で戦闘するスタイルも見られるため、本装備を使用するドラグーナ・コマンドは名称が「(装備名)+バスターソード(BS)」となる。

 名称はドラグディアの敵国であるマキナスの強力な兵器群を、簡単に破壊することを願って命名したとされる。

 

 

 

 

ドラグーナ・ガンドヴァル

形式番号 MS-DD08SP-GF

 

・ドラグディア軍の大隊を率いる中佐「ガンド・ファーフニル」が装依するドラグーナ・コマンドのカスタム機。MSの機体分類としては近接戦・対艦戦・強襲用機体として登録されている。また装依者の戦闘スタイルからドラゴンをサブフライトシステムとして活用する「騎竜戦法」に合わせた機体の細かな調整が行われている。

 機体胸部が同機体よりも大型化しており、コマンド用のジェネレーターを2基内蔵する「ダブルジェネレーター」が許された特別な機体。頭部や四肢も改修された専用の物に変わっているため、ほぼ別の機体である。

 機体装甲をドラグーナやコマンドに採用されているジン・カーボンより頑強な「アイオン・カーボン」で構成されており、重量では同じでありながら耐久性は1.4倍である。そのため各部駆動部もより高出力なものに置き換わっており、既存のMSとの戦闘でも損傷を軽微で済ませることが出来る。

 加えてガンドが大隊隊長でもあることから通信・索敵能力などもコマンドよりも高められている。

 機体カラーはガンド・ファーフニルのパーソナルカラーの灰色。必殺技とも言えるディメンションノイズアタックは「アッシュ・ヴァルスラッシュ」。

 

 

【機能】

・カメラ切り替え機能

 系列機が持つメインカメラ切り替え機構。本機の場合、システムは搭載されているものの、搭載されているカメラの種類が違い、通常の遠近対応メインカメラ(閉口時)と暗視用の赤外線カメラ(開口時)になっている。これは装依者の想定している戦闘状況に合わせたためである。

 

・専用ホーンアンテナ

 機体後方に伸びるように大きく2本備えられた、通信強化用アンテナ。近接戦重視の機体かつ指揮官機であるため、通信能力を高められている。更に専用の支援AIも付けて、スムーズな戦闘指揮を行えるようになっている。

 

・ハードポイントシステム

 コマンドより引き継がれたシステム。本機の場合、肩部と背部は既に後述する標準装備で埋まっているので、実質使えるのは膝側面のみである。

 

・ダブルジェネレーター

 本機最大の特徴である、DNジェネレーターを2基搭載する仕様である。出力は単純に2倍となり、その余りある出力から高出力試作兵装を搭載する。

 

 

【武装】

・ダブルビームライフル

 銃口が2つ存在するビームライフル。2連装ビームライフルと混同しやすいが、こちらは機体から直接供給される高出力・携行式モデルである。

 2連装ビームライフルよりも射角を確保しやすく、連射が効く。また重量も軽い為次世代モビルスーツ用装備の一案として声が挙がっている。

 不使用時には基本バレルを短縮して右腕にマウントされる。その状態でも射程は短くなるものの、射撃は可能。

 

・ビームサーベル

 ガンドヴァル専用に調整されたビームサーベル。出力はコマンドと同じく高出力化されているが、刀身を短く形成させたダガーモードとしても使用可能。腰部のスラスターバインダーに内蔵されている。機体の武装としてはほぼ予備兵装である。

 

・グラン・フルバスター

胸部装甲を展開して発射する単装式ビーム砲。ジェネレーター直結式でありこの機体の遠距離での最大火力を放つことのできる射撃兵装。しかしジェネレーターに大きな負担をかけ、更に本機本来のコンセプトに反するため、ガンドは高出力モードを封印。代わりにあえて圧縮させずに低出力で発射。視界を奪っての近接攻撃に移行するための兵装として活用している。(要はドムのスプレッドビームである)

 

・ジェットスラスターアーマー

 コマンドのハイマニューバスタイルで使用される装備をガンドヴァル用に調整・固定兵装化したもの。出力はそのままに瞬発力を強化しており、近接戦での速度を可能な限り高めている。

 

・ソードホルダー

 機体背面ハードポイントに接続される可動式武装ラック。下部にはスラスターが内蔵され、武装搭載による機動性低下を可能な限り抑えている。

 

・大型バスターソード「マキナブレイカー」

 コマンドのフルアーマースタイルが装備する兵装と同じ物。だが本機の場合、それを背部のソードホルダーに「2本」装備する。

 ただでさえ大きい兵装であるため、1本装備がメインでもう1本は予備である。だが最大稼働時にはこれを2本同時に運用できる。これは機体がダブルジェネレーターにより出力が足りていたことと、パイロットの腕によるものとされている。

 

・スラスターバインダー

 機動戦闘用に調整されたサイドアーマー。ビームサーベルの鞘の役割も果たす。

 

・ガントレットブースター

 左腕部に装備される、推進機関付き籠手。不意の攻撃に対する防御兵装の他、殴りつける際の威力増加、バスターソードの威力増加も視野に入れて運用される。

 

・ジェットバックパックユニット

 ジェットスラスターのシステムを採用した、近接戦闘用バックパックユニット。背面にソードホルダーを備えるほか、ウイングスラスターは通常のものを更に小型・可動域を大きくしたものを上下に計4機を備えて機動性を高めている。

 

 

 

 

士「はい、次はマキナスです。ちなみに艦艇群はまた別の機会に紹介します」

 

ネイ「文字数足りないんですね」

 

士「メタい(;゚Д゚)」

 

グリーフィア「じゃあ、見ていきましょうか♪」

 

 

 

マキナート

形式番号 MS-MM07

 

・マキナスが正式採用している量産型モビルスーツ。ドラグディアのモビルスーツよりも射撃戦を主眼に置いている。またハードポイントによる換装で機体特性の変更を行うドラグディアに対し、マキナスはバックパックごと装備を換装し、運用する方法を取っている。そのため機体自体の背部にも主推進機関がある(ドラグーナも一応バックパックを外してもディメンションノイズによる飛行は可能。ただし安定性は欠ける)。

 機体形状は基本的に平面装甲をメインに構成されている。頭部は上から見ると五角形の形状で、目元はゴーグル状のセンサーを付ける構造。口の部分は下に長いパーツで覆う形。加えてゴーグルは横に展開可能で、ゴーグルの下はモノアイが2つ並んで目のようになっている。このモノアイはそれぞれ横にレール方式で動く。基本的にゴーグルが遠距離用、モノアイが接近戦用であり、ドラグーナと同じカメラ切り換え式を採用しながらもその方式は異なっている。

 武装構成はビームライフルを1丁とビームサーベル1本、グレネード3本、そして長方形型のシールドを装備する。機体稼働歴は32年とドラグーナよりも長く、形式番号が若いがこれはモビルスーツ開発技術がドラグディアよりも高いことが要因。現在ドラグーナと同じく第3世代機であり、先代機は「マキルナ」、先々代機を「マギアリア」となる。

 

【機能】

・カメラ切り換え機構

ドラグディアのドラグーナと同じ機構。しかしカメラ切り換え方法は異なり、遠距離用のバイザーを展開して接近戦用のモノアイを露出させる方式となっている。

 

・バックパック換装システム「ゴーストシステム」

 背部に装着するバックパックユニット群「ゴースト」を換装・運用するシステム。基本ゴーストはAIでの自立飛行が可能な戦闘機型となっており、変形、もしくは機首ユニットが外れて機体と合体する。名称は背後霊→幽霊を意味する「ゴースト」から。

 

 

【武装】

・ビームライフル

 バレルストック有りのビームライフル。右腰部に1丁装備する。ただし利き手によっては装備位置を逆にすることも可能。

 

・ビームサーベル

 左下腕部に装備されるボックス装備式ビームサーベル。取り出して使用する他、そのままビームを発振させて使用することも可能。接近戦に持ち込まれた際のセーフティとして側面が強い。利き手に合わせてカスタマイズが可能。

 

・グレネード

 ビームライフルをマウントする側と反対側に装備される爆発兵装。ディメンションノイズを利用した爆弾であり、破壊力は通常の火薬式よりも高い。棒状の物を1セット3本で運用する。

 

・シールド

 対ビームコーティングを施された、一般的なシールド。射撃用ののぞき窓とライフルポートが付いており、射撃戦に優れたシールドとなっている。

 

 

 

<ノーマルゴースト>

・通常装着されるゴースター。2枚のバーニア内蔵式飛行翼を備え、空戦をメインとしている。機首変形式。

 

【武装】

・ラピッドバルカン

 鎖骨付近に当たる部分に接続される軽機関砲。連射速度が速く2連装なのでけん制以外にも、近距離発砲で敵機体の関節部破壊を狙える。ちなみに実弾式で弾数は合わせて80発。

 

・レールガン

 両翼下部に搭載される実弾兵装。ディメンションノイズを用いた加速射出法を用いているため、通常の実弾兵器よりも威力が高く、ビーム射撃による攻撃を1度のみ防いで弾丸を直撃させることが出来る(ただし威力は当然ながら落ちる)。弾数は合わせて6発。

 

 

 

<カノンゴースト>

・遠距離からの支援を前提としたゴースト。単体でも支援機として機能するだけの火力と、貯蔵DNを持つ。機首着脱式。バックパック時には機首接続部から90°下方向に曲がって装着される。

 

【武装】

・マルチビームランチャー

 ゴースト上部に搭載されるビーム砲。バックパック時にはアームにより射角を確保する。長距離ビームの他、設定により球体のビームを発射後、炸裂させて拡散弾として運用することも。

 

・マイクロミサイルランチャー

 ゴースト下部に装備される多連装式小型ミサイルランチャー。2段階に分けて発射が可能。中距離殲滅用の兵装である。

 

・ビームガン

 鎖骨部分に機体ロックとして接続される小型ビーム兵器。近接防御用ではあるが、連射性は若干低い。

 

・レールキャノン

 マイクロミサイルランチャーと選択式で装備される、実弾兵装。レールガンの上位兵装で、砲身が長い。砲撃戦重視の場合こちらが選択される傾向にある。弾数は合わせて10発。

 

 

 

 

マキナート・コマンダー

形式番号 MS-MM07C

 

・ドラグディアのドラグーナ・コマンドと対をなす、マキナートの隊長機仕様。通常型よりも頭部が大型化し、通信機能と演算能力が向上している。

 機体出力もマキナートから3割向上の他、コンデンサーも大容量型に変更されている。ただし機体操作性が困難になっている他、機体の運用次第ではオーバーロードして機能停止する可能性がある。

 

 

【機能】

・カメラ切り換え機構

 マキナートと同じ機構で搭載される。

 

・バックパック換装「ゴーストシステム」

 マキナートと同じシステム。

 

 

【武装】

・ビームアサルトライフル

 マキナートのライフルをパーツ組み換えにより連射仕様にしたもの。指揮官機はこれを通常装備として右サイドアーマーに1丁マウントする。なお、指揮官機のみ両側をライフルにしたダブルライフルが許されている。

 パーツ組み換え式なので、パーツを切り替えればその場で通常のライフルに仕様変更することが可能。

 

・ビームサーベル

 マキナートと同じく左腕のボックスに格納される近接戦兵装。マキナートと同じく、格納したままの使用、利き手に合わせての搭載位置の変更の他、両腕部に装備して近接能力を高める構成にすることも可能。

 

・グレネード

 ライフルと反対側に装備される小型爆弾。マキナートの物と同じ。

 

・可動式シールド

 収納式にして防御性能を変化させる可変シールド。通常時はライフルポートが見える大型シールドだが、近接時など不要な際にライフルポート部・上下部を内側に収納して取り回しを良くできる。

 

 

 

<コマンドゴースト>

・通常のノーマルゴーストを指揮官用に調整したアップデート版。基本的に構造は変わらないが一部武装とアンテナの追加などの点が違う。

 

【機能】

・追加アンテナ

ゴーストの上部に伸びる通信強化アンテナ。

 

 

【武装】

・ビームガン

 カノンゴーストにも採用されていた、鎖骨付近に装着されるロックユニット兼小型ビーム砲。コマンダーの場合出力の違いから連射性向上の他、機動性などから近・中距離での射撃兵装として十分機能する。

 

・レールガン

 ノーマルにも採用されるディメンションノイズによる電磁加速砲。ただしこちらは翼の上に装備されている。

 

・プロペラントブースター

 ディメンションノイズを積載したタンクにブースターとしての機能を持たせたもの。飛行翼の下部に装着される。機動性・航続力を伸ばす目的である。

 

 

 

<スーパーゴースト>

・機動力・攻撃性能を向上させる高性能ゴースト。基本的にコマンドゴーストを強化しているが、武装などはかなり違い、特に格闘用武装の追加が他のゴーストとの大きな違いとなっている。機首変形式となっている。

 隊長機の中でも特に優秀な装依者である「ネオ・エース」と称される者達だけが使用を許可される特別兵装。

 

【武装】

・ツインビームバルカン

 鎖骨部分のロックとして装備される、けん制用武器。2連装のビームバルカンで通常時でもかなりの威力が出る上に収束させて貫通性の高いビームを放つことが出来る(ただし、砲身の消耗が激しい)。

 

・ブースターレールキャノン

 飛行翼に挟み込んで装備される、推進器と武装を合わせた兵装。前方に砲身を展開することでレールガンをより強力にした「レールキャノン」を使用可能。弾数は両方合わせて10発。

 

・アンチシップブレード

 ゴースト下部に装備される実体剣。ドラグディアの大型バスターソードと比べると、幅が細いことと、刃が実体とビームを採用していることが相違点となる。他にも折り畳み式であり、どちらかと言うとビームでの斬撃を主眼としている。

 名称は「対艦刀」を英語に当てはめた物。形状はデスティニーガンダムのアロンダイトがモデル。

 

 

 

 

マキナート・バスター

MS-MM07SC

 

・マキナス陣営が開発した長距離砲撃型MS。長射程の手持ち式ロングランチャーとエネルギー供給用の専用ゴースト「タンクゴースト」を固定・標準装備とする機体であり、ごく一部の部隊にしか配備されていない。

 ある意味切り札的な運用をされる本機は、空域外からのロングレンジ砲撃を主任務とし、その砲撃も視界外から撃つという狙撃に近いことから一部では「アサシン」とも比喩される。少数量産型のエース機である。

 

 

【機能】

・カメラ切り替え機構

 マキナートから継承される機能。ただし本機はバイザーを閉じた遠距離用バイザーを狙撃特化専用バイザーに換装されている。

 

・アンチレーダーシステム

 微弱な電波を利用し、敵のレーダーに干渉して自機の位置を電子的に悟らせないシステム。元々はステルス装甲を採用予定であったが、砲撃戦も視野に入れた結果、この仕様となった。

 

 

【武装】

・ロングビームランチャー

 機体右腕部で保持する長砲身の射撃兵装。連射性は低いため、後述のタンクゴーストとの接続でエネルギーをストックすることで連射・最大出力を行う。通常出力での連射感覚は4秒に1発。

 

・狙撃用大型シールド

 狙撃の為の安定脚としての機能を備えた専用の大型シールド。先端が開いて射撃安定脚となる他、一部ではその部分を簡易クローとして近接時の防御手段として使用する者もいるらしい。

 

・ビームピストルソード

膝側面に装備する拳銃。ビーム弾を放つ他、銃口下部から防御用のビームサーベルを展開可能。

 

・タンクゴーストパック

 機体背部に接続・固定された専用ゴースト。換装機能を犠牲に固定化している(ただしゴーストは爆砕ボルトでパージ可能、更に他のゴーストも装備可能)。

 機体下部のエネルギータンクユニットと上部の可動式バーニア、そして側面の圧縮用エネルギーストックタンクから構成されている。ランチャー使用時に側面の圧縮用タンクと接続し、連射・高出力用の圧縮DNを貯蔵・開放する。

 

 

 

 

士「以上がマキナス軍のMSの紹介になります。あ、これ1万字超えたや(´・ω・`)」

 

ネイ「えぇ……でももう書くしかなくありませんか?」

 

士「やな。じゃあ、最後に謎の黒いMS「ビレフト」の紹介です」

 

グリーフィア「ビレフト……何を奪われたのかしらぁ?うふふっ」

 

士「(´・ω・`)」

 

 

 

 

シュバルトゼロ[ビレフト]

 

機体解説

ハジメが初めて装着したモビルスーツ。黒いカラーリングと赤いライン、そして重厚な騎士甲冑を思わせる重装甲が特徴的、そして内部メカニックが異質な機体である。専用のゼロ・スターターで装依する。ビレフトとは「失われた」の意味。

 頭部は上部がマキナスのモビルスーツのように大型だが前部に大きさの比重が寄っている。また頭部下部は間に入るメインカメラを調整するため(用途が不明)の開閉式になっていて、ドラグディアのモビルスーツを思わせる。

そして機体メインカメラはゴーグル式ではあるが、こちらも謎の仕様となっている。というのもメインカメラはゴーグルにモノアイ仕様のカメラなのだが、その奥が一度2つのツインアイが光り、三つ目のように見えるのである。

 更に機体を覆う重装甲はメンテナンスハッチと思われるものがあるものの、外部からの開閉は現在不可能。更に内部構造スキャンも受け付けないことから、この装甲は隠蔽用のカモフラージュ装甲であると思われる。この機体の武装が極端に少ないのも、内部の機体がメインであるため、と思われる。

 ドラグディアとマキナス、両方の機体の特徴を併せ持つ、異質の機体。果たして、内部の機体は何か。

 

【機能】

なし

 

【武装】

・ビームサーベル

 機体の腕部増加装甲に収納される格闘兵装。だが、構造がかなり古いタイプのサーベルで、エネルギー消費の激しい大剣タイプが自動選択され、抜刀される。大剣タイプのビームサーベルはビームの刃が広く、威力は高いが大きすぎて素人のハジメにはかなり扱いにくい代物となっているが、初陣では相手が生身の人間だったことと相まって凄まじい戦果を挙げている。

 

・マジックハンド

 機体の手首を射出する機能。この装甲自体が手を含めての装甲であり、普段露出している手は実際の機体の手ではない、装甲独自の手である。

 機体自体の武装がサーベルしかない為、搭載されたと思われ、操作自体はAIに依存する。射出方法はアンカー方式であり、切れても内部のDNにより飛行して帰還する。主に相手を引き寄せ、サーベルでフィニッシュを決める、という運用と目されている。

 

 

 

 

士「以上がここまでの登場人物、機体解説になります。さて、次回からハジメ君の運命が動き出す……?」

 

ネイ「まぁ明かさないでしょうね。……けれど、伏線がありますし、それにあの漆黒のガンダムが姿を現していない以上、何か起きるのは明らかですね」

 

グリーフィア「そうねぇ。ここから物語がどう動いていくのかしら?楽しみだわ」

 

士「動き出す両政府。ハジメは果たしてどうなるのか?では次のEPISODEもよろしくお願いします!」

 




2話連続での解説回、お読みいただきありがとうございました。次回から第1章も後半です。ハジメはどうなるのか、ガンダムはどこに行ってしまったのか……。それも次から明らかになります!

では今回はここまでです。

ジャンヌ「次回からもよろしくお願いしますっ」


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EPISODE12 引き継がれる、覚悟 Standby OK?1

どうも、皆様。藤和木 士です。
前回黒の館DNを挟んで、今回から「引き継がれる、覚悟 Standby OK?」の節が始まります。

ネイ「アシスタントのネイです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよぉ。……タイトル後半のこれは、繋がっているのか、それとも何か意味があるのか、気になるわねぇ」

それは……うん、見て行けばいいんじゃないかなぁ?(´Д`)

ネイ「私としては、お嬢様モデルのジャンヌさんや、レイモデルのレイアさん達があの後どうしているかが気になりますけどね」

グリーフィア「もちろん、それも書くんでしょう?」

あ、その動向についてはこのEPISODE12から分かります。最初はハジメ君視点から始まりますけど。
それでは本編へ~(´っ・ω・)っ


 

 

 真っ暗だ。最初にハジメがその場所で思ったのは、その一言だった。右も左も、正面も後ろも、上も下も真っ暗な世界。真っ暗な場所に監禁されてでもいるのかと思ったが、壁などもないことから、そんな現実の法則に従ったものではないと判断する。

 どうして、ここに……確か、お嬢様を助けようとしていて、けれど黒服の1人に吹き飛ばされて、それで……よく分からないうちにお嬢様の前にいたんだ。こっちを怖がるように、当主の背中から顔を出して、そうだ、謝った……。こんな目に遭わせてしまって、申し訳ありません、って。けど、そこで気を失って……。

 ようやくそこまで思い出したところで、横合いから光が灯る。人工の光ではない。だが自然の光でもない。心が作り出した空想の光が、ハジメの意識を現実へと引き戻していく……。

 

 

 

 

 ハジメが目を覚ましたそこは、白い部屋だった。先程見た景色とはまるで180度違う世界の光景だ。続いてハジメが気づいたのは、自分が寝ている傍に、人がいることだった。

 だが、その人物達に見覚えはない。白髪に何かの制服を着る初老の男性と、その横でパソコンのようなものを抱く、緑の髪に作業着と言った風貌の女性。明らかに病院の人ではないように思えた。彼らはこちらが目覚めたのに気づくと、初老の男性が女性の方に指示して、女性の方が部屋を出ていく。

 そして、初老の男性はハジメに対し、自己紹介をする。

 

「初めましてになるかな、ハジメ・ナッシュ君。私はドラグディア軍少将、バァン・ウロヴォースだ」

 

「……はい、初めまして……」

 

 差し出された手に反射的にこちらも手を出し、握手をする。目覚めたばかりということと、状況が飲み込めないことから、若干戸惑い気味になるハジメ。それを察して、バァンと名乗る男性は状況を一から説明していく。

 

「まず、この場所だが……ここは軍の病院だ。驚いたかい?けれど、その原因は君が誘拐事件の際に起こした行動にある」

 

「軍の……。それで、自分が起こしたことって……」

 

 ハジメはただ自分が覚えていたことを口にする。その回答にバァンは顎を擦り、状況を口にしていく。

 

「覚えていない。ということは、やはりあれは……」

 

 気になる単語が並べられていく中、再び部屋のドアが開かれる。白衣を着た医者と思われる人物と看護師、そして先程退室した緑髪の女性もその後を追って入室してくる。

 医者とバァンが言葉を交わす。それからバァンは、緑髪の女性の名を呼ぶ。

 

「ヴェール、例の物を彼に」

 

「はい。それでは、失礼しますね……」

 

 ヴェールと呼ばれた女性はパソコンを開きながらハジメの傍に腰かける。

 

「初めまして。私はヴェール・フリード。技術者をやっています。フォーンお兄さんの事は知っているよね」

 

「……妹さん、ですか?」

 

「そう。それで、君にいち早く見てもらわないといけないのが……あ、あったあった」

 

 ハジメと会話するうちに、フォーンの妹と名乗る女性、ヴェールは目的の物を見つけ、それをパソコンごとハジメに見せる。それは何かの映像だった。しかし、すぐにそれが何の……いや、()()()映像か理解する。

 

「これは……あのビルの?」

 

 その映像の静止画は、確かにハジメが気を失う前に見た、あのビルの中の景色だ。更に言うなら、映像に映る人物は、あの場にいた黒服の男達。

 だが、これを撮っているのは誰だ?あの場にいたのは自分とフォーン様、それに当主のガンド様にレイアとネア、そしてお嬢様……。この状況からして、ポルン・ドンド達ではないはずだ。それに、これを俺が見る理由は……?

 脳裏に嫌な予感が過る。しかし、そんなことはないと信じて、ハジメはその映像を再生させる。そして、見ていくうちにその表情はたちまち変わっていく。

 カメラの「撮影者」に近づいていく黒服の男。その男に急激に距離を詰めた「撮影者」は脇に出現した光の剣で黒服の男を両断する。そこから何人もの黒服を斬っていく。その度に赤い血飛沫が飛び散る。やがて黒服の男達を片付けた「撮影者」はレッドンに狙いを定めた。飛ばした機械の腕を押し付け、再度自身にくっつけた後ビルの柱に激突させた。煙で見えない中、「撮影者」は再び光の剣を手に目の前を両断する。光剣の軌跡が煙と共に、レッドンの身体を頭から真っ二つにする。

 目を背けてしまいそうになる光景だ。しかし撮影者はそれに臆することなく、自身に発砲してくるシグットに向かっていく。これもまた近づいてから右手を斬りおとし、更に地面でもだえ苦しむシグットの首筋から光剣を突き立てる。一際大きな身体の震え。そののちシグットの身体は一切動かなくなる。直後誰かの声が響くが、それに反応し「撮影者は振り向きざまに何かを投擲する。投擲したものはナイフだった。そしてそれは、拳銃を落とすポルンの胸元に突き刺さっている。それにワンテンポ遅れて、ポルンは地面へと倒れ込んだ。

 そうして、映像の音声は静かになる。だが、ハジメの心の中は未だうずく。うずきの理由、それは、この「撮影者」の正体にも関わることだということだ。同時にハジメはそれを否定したくも思っていた。病院の者、そしてバァンとヴェールはその表情を静かに見つめる。

 遂に決定的な場面が訪れる。「撮影者」の視界は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()に向けられる。「撮影者」はそのまま、ジャンヌ達に向けて歩き出す。その光景に、ハジメは既視感を覚える。徐々に自身の考えが、現実のものとなっていく。

 そして、ジャンヌ達の傍にまで「撮影者」が近づき、フォーンやネアの声なども聞こえる中、「撮影者」が口を開いた。

 

 

『…………申し訳、ありません、お嬢様』

 

 

 予想通りだった。聞き覚えのある発言。それは確かに、ハジメが言った言葉だ。それが「撮影者」の方から発せられた。そう、これはハジメが撮ったものだったのだ。

 呆然となるハジメ。だが、これを撮った覚えなどない。しかし、これはある。何がどうなっているのか頭を押さえ、思い出そうとするが当然答えは見つからない。映像を見終わったのを見計らって、バァンは映像の出所について語る。

 

「……これは、君が装依したMSに残されていた記録映像だ。スターターから勝手ながら引き出させてもらった。……もっとも、君はそれを知らないようだね」

 

「……はい」

 

「……MSのスターターを持っていたことも、知らなかった?」

 

 その問いにも縦に首を振る。記憶を失ったハジメでも、この凄惨な光景には参ってしまっていた。これが夢であってほしいと思いたかった。

 その表情に、医師も不安げに見守る中、バァンはこれからについて言及した。

 

「こういうことから、君は軍の病院にいるわけだ。これが故意であれ、そうでないにしても君には辛いことだろう。状況をすべて受け入れることも難しいだろう。だが、状況はそれを許してはくれない。君を巡る周囲の状況は厄介だ」

 

 言いながらヴェールに取り出させた資料を受け取り、それをとあるページの部分をハジメに渡す。そこに書かれていたのは端的に言うならハジメを隣国「マキナス」に引き渡すと言うものだった。

 

「マキナスのとある考古学者が、最初に君を発見したらしい。以降の足取りは掴めなかったらしいがな。君を救世主だとも言っていたが、それも眉唾だ。しかし、この事件を機に君をマキナスに渡すという決断に、政府は踏み切ったようだ」

 

「…………」

 

 バァンからも説明が入る。救世主という言葉は聞こえの良いものだが、そんな言葉は、今のハジメには何の慰めにもならなかった。

 マキナスに渡す……マキナスと言ったら、このドラグディア、いや竜人族にとって最大の敵国。そこに行くということは、もう、お嬢様には……。……いや、もう会えるわけがないか。

 映像に映っていたジャンヌの表情が、ハジメの望みを自ら潰していく。希望の光のない瞳で、ハジメは項垂れる。

 

「だが、私達とて、君の意思は尊重したい。……君はそれを受け入れられるか?」

 

 定型的とも言える問答。ここでノーと言っても、どうにもならないのは分かり切っていた。だからハジメは、希望を見るくらいならと、後悔を口にしつつもそれを受け入れた。

 

「…………はい。お嬢様が無事だったのなら、これ以上望むことはありません」

 

「…………そうか。ではその準備に動くとしよう。ヴェール、頼んだ」

 

「はい、少将」

 

 そう言って入れ替わりにヴェールが前に出る。医師に一言掛けてから、バァンは部屋を後にする。そしてハジメは医師の監視の下、モビルスーツの情報を学び始めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お嬢様、授業終わりましたよ?」

 

 従者の声が響きジャンヌは顔をはっと上げる。顔を上げた先にあるのは、声を掛けた本人であるネアと、ジャンヌの想い人レイアの顔。その表情はこちらを心配するようなもので、明らかにジャンヌに向けられたものだ。

 想い人の表情をこんなにしてしまうなんて、わたくしはダメですね。たかが1人の従者を失ったくらいで、こんな……。

 ジャンヌは席から立ち上がると、顔に笑みを作り言葉を返す。

 

「そ、そう。すみませんレイアさん。少し体調が優れなくって……」

 

「ジャンヌちゃん……」

 

 咄嗟に言い訳を口にして、帰りの準備をするジャンヌ。ネアどころか、レイアもその異変に気づき、核心を突くように前へ詰め寄る。

 

「…………れ、レイアさん……?」

 

「ジャンヌちゃん……あれから、どう?」

 

 どう?と聞かれ、一瞬戸惑うジャンヌ。しかし、その言葉が示すものをジャンヌは分かっていた。だからこそ、その質問の必要性から逃れたくてとぼけようとする。

 

「どう?と申しますと?」

 

 レイアは一瞬戸惑う仕草を見せる。まるで、返ってくると思われた言葉が全く違っていて、訝しむかのように。だから、レイアは続けてジャンヌの姿を視線から外してから問う。

 

「…………ハジメ君のこと」

 

「っ!!」

 

 思わず息が止まる。自身がどれだけどうでもいいことと思っていても、忘れたいことと思っていても気にしてしまい、そして忘れることの出来ない自身の従者。それを想い人に指摘されたのだ。動揺しない方がおかしい。

 同時にクラスの一部で笑い声が起こる。だが嬉しいことがあったからというものではなく、嘲笑にも似た笑い声だ。

 すぐさまそれが、自身に向けられたものだと気づき、笑い声を上げたクラスメイトに向け、怒りを口にした。

 

「ちょっと、何?」

 

「あらあら~、ジャンヌさん、いきなりどうしたのですぅ?そんなに怒って……あ、ひょっとして、従者君が捕まって寂しいよーってやつですぅ?」

 

「あはは、屑相手とはいえ、あれだけ酷くやったら、ねぇ……もう会えなくなるかも?きゃははっ」

 

 その陰湿な言葉に、ジャンヌの手が自然と固く握られる。無意識のうちに起きた反射的行動だ。彼女達は元々ジャンヌとの折り合いが悪かった。家柄が高いだけで、成績を伸ばす自分達よりも優遇されているジャンヌに、嫉妬を抱いていた。それは彼女達にとっての仕返しだったのだ。

彼女達の考えはジャンヌも分かっていた。そして、その挑発に乗ってはいけないことも理解している。しかし頭で分かっていても体にその怒りがにじみ出てしまう。それは却って彼女達を調子づかせるだけだった。

 

「きゃーっ、ジャンヌさんてば、ムキになっちゃってる~」

 

「図星ねぇ、レイアさんが見ているのにねぇ~。あ、もしかして、レイアさんが彼に気があるのかなぁ?うふふっ」

 

「貴女達……ッ!」

 

「お嬢様ッ!」

 

 思わず手が反応しそうになったが、間一髪ネアがそれを阻止する。ただならぬ様相を見せる彼女達の間。それを見て不安と噂が教室の中と廊下の生徒に伝播していく。しかし、間に割って入ったレイアがそれを断ち切った。

 

「当り前じゃん!!心配だよッ!」

 

「レイアさん……っ」

 

 ジャンヌを庇うように割って入るレイア。ジャンヌからは見えないが、その瞳はしっかりとしていたのは容易に想像できる声だった。

 突如割って入ってきた弄り相手の想い人に、気を良くしたのかクラスメイトの女子はレイアを話し相手に変えてからかいを口にする。

 

「あらぁ、レイアさん。聞いた話じゃ貴女もあの現場にいたっていうじゃないですかぁ。ハジメって子が人を殺すところ、見たっていうのに、それでも彼が心配なんですぅ~?」

 

 リーダー格の女子に合わせ、くすくすと笑いをこぼす取り巻き達。自分と同じようにならないかと心配になるジャンヌだったが、こちらを確かめるように振り向いたレイアは、その口元の表情を緩めるとその言葉に返答する。

 

「もちろん。だって、私達を助けてくれたんだもん。助けてくれた相手を心配しないなんて、そんなのおかしいに決まってる。ジャンヌちゃんだってそれを分かっているから、今怒りを堪えているんだよ!私はそれが……誰かの為に必死になれる人を応援出来ない詩巫女にはなりたくない」

 

「うっ…………生意気…………」

 

「生意気でいいよ。私が目指す詩巫女になるために、生意気でも私は、ハジメ君は大丈夫だって信じる!」

 

 その気迫に気圧されたのか、クラスメイトの生徒達は口を閉ざす。ジャンヌは、その背中をジッと見つめていた。

 ……やっぱり、レイアさんは凄い。なのにわたくしは……レイアさんみたいに、素直になれたなら……あの時も……。レイアさんはどうしてそこまで、あの男を心配できるの?どうしてわたくしは、ハジメとレイアさんの事についてこだわっているの……?

自分よりも素直にハジメの事を案じられるレイアの強さに、知らずのうちに嫉妬の気持ちを抱いてしまう。自身よりも従者の事を気にしていることが、ジャンヌをもやもやさせる。

 とはいえ、レイアの言葉に何も言い返さないのを見て、ネアが話の手綱をこちらに取り戻す。

 

「お嬢様。そろそろ……」

 

「……そうね。では、失礼。レイアさん」

 

「あ、うん……」

 

 レイアの手をジャンヌが引き、そのジャンヌの反対の手をネアが引いて3人は教室を後にする。教室を出た後、ネアから自身のカバンを受け取り、ジャンヌ達は帰路に就いた。しかし、その帰路の間も、ジャンヌの頭の中はレイアと、自身の従者ハジメの事で一杯だったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の夜。ファーフニル家の夕食後、ガンドはリビングで彼の家族と親しい使用人達を集めた。一般家庭の食卓にはない長い机の上座にガンドが、そして彼の手前の左右2席にクリエとジャンヌが、その背後に控えるようにフォーンとネアが立つ形だ。

 このような場面は今までにもそれなりにあった。それはガンドが父親として娘達に話をする時の形だ。大事なことを口にする時はいつもこのような形であったため、各々の表情は緊張感があった。温厚なクリエも表情はいつもの柔らかさの中に厳しさからか固さが感じられる。

 部屋にいる者の準備が整ったところで、ガンドは口を開いた。

 

「……ハジメのマキナスへの受け渡し日が明日に決まった」

 

「っ……」

 

 ジャンヌの息が少し詰まる。今この家で一番の問題は、間違いなくハジメが軍に拘束され、マキナスに身柄を移されるということだろう。そのことは昨日ジャンヌにも言っていたが、それでも驚きがあるのはあり得ない話ではない。

 やはり、ジャンヌも少し思う所があるのか……親としては嬉しいことだが、これは国の問題だ。…………けど、それでも、だからこそ……。

 自身の考えを己の中で再確認したガンドは、視線をジャンヌに向けてその内容を伝える。

 

「俺は彼の身柄受け渡しに同行する。残念だがお前を連れていくことは出来ない。しかし、言葉は伝えられる」

 

「…………」

 

 表情を見せたくないのか、俯くジャンヌ。それも全て、この後のジャンヌの対応によって決まる。

 

 

「ジャンヌ。お前は、彼にどうなってほしい。彼とすれ違うままか、彼を恨み続けるか――――それとも、彼に戻ってきてほしいか」

 

「ぅ!?……っ」

 

 

 ハジメが戻ってくる。そのような意味の言葉に一瞬、ジャンヌの顔がこちらに向く。すぐに恥ずかしさからか再び背けてしまうが、その表情には娘の様々な思いが読み取れた。

 驚愕、歓喜、苦悩、葛藤……。それらの感情をすべて抱え込むジャンヌの姿は、父親のガンドとて見たことがなかった。それだけの気持ちに彼は応えたいとガンドは思った。

 だが、それらをすべてガンドが出来るわけではない。しかし協力者はいる。ならば最後は本人達の気持ちだ。ハジメの気持ちは上司であるバァンからも聞いていた。その答えはジャンヌが無事ならば、それ以上は望まないというものであった。単純に考えるならそのままの意味だが、よく考えればジャンヌに判断をゆだねるとも取れた。軍部も政府の判断には疑念が生まれていた。だからこそガンドは、ジャンヌの言葉でそれを決めたいと思ったのだ。

 

「お嬢様……」

 

 何やら言おうとしてはその度に口を閉ざすジャンヌ。うろたえるような動作にネアが心配そうに見守る。この場でのルールとして従者は意見を求められた時以外発言を許可していない。すべて発言者の、ジャンヌの意志を、本心を訊きたかった。

 そして、長い沈黙の後、ジャンヌが口を開く。

 

 

「…………わたくしは……」

 

 

 キャンドルの明かりが、ジャンヌの影を照らし出す。目元からはとても小さな水滴が零れ落ちる。

 そうして夜は、更に深まっていったのであった。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただき、ありがとうございます。

ネイ「……レイアさん、やっぱり強いですね。ジャンヌさんの事を励ましてる」

グリーフィア「そこはレイ譲りと言っていいのかしら。でも、ハジメ君が大分マイナス思考ね~。もう少し望んでもいいのに」

もう少しって……どういうのを(;´・ω・)

グリーフィア「それはもちろん、「まだそばに居たい」ってね。もちろん、その後罪を受け入れるんだけども。記憶喪失の子だったら、それでもいいんじゃないかしらぁ?」

ネイ「姉さん……意外とロマンチスト…って、キャッ!?」

グリーフィア「んふふー、お姉ちゃんだってロマンは求めるわよぉ、ネイ~」

ネイ「ちょっと、姉さん!くすぐったいよぉ……」

さて、姉妹のスキンシップしてるが、次回はシリアス展開ですからねぇ……。引き継ぐ覚悟とその問答、次なる話も

グリーフィア「お楽しみに~」



ネイ「ちなみに作者さん、Standby OK?のやつって……」

てぇんさいのボトルラ○ダーのベルトから来てるね(^o^)アーユーレディー?に似たやつ探してこれにした。

ネイ「あ……そうですか……え?」


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EPISODE13 引き継がれる、覚悟 Standby OK?2

どうも、藤和木 士です。
EPISODE13公開です。

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌ・ドラニエスです」

レイ「アシスタントのレイ・オーバだよっ。遂にDNも1章の佳境に入ってきたねぇ……」

ジャンヌ「そうですね、レイさんっ。……先週はわたくしモデルのヒロインが自分の気持ちに色々と思っていたようですが……」

レイ「今回はその続き?」

あ、続きと言えば続きだけど、、始まりはハジメ君視点からです(´・ω・`)

レイ「ありゃりゃ。てことはジャンヌ(F)ちゃんのお話は別の所で?」

ジャンヌ「え、レイさんそれジャンヌ・ファーフニルさんの略称です?」

レイ「うん。どっちもジャンヌちゃんだと分かりにくいでしょ?」

ジャンヌ「え、えぇと……そうですね……」

さて、引き渡し場所に向かうハジメ君の心境はいかに?では本編です。


 

 

 夜は明け、その日は来た。

 この日、ハジメはドラグディア・マキナス両国家の国境にある神話時代の古戦場として知られる「ヴールーン古戦場跡」にて、マキナスに身柄を渡される。少女の涙でも、それを思う父の力でも、運命は変えられない。足りないのだ。

 だが、たった1つ、たった1つの事で運命は変えられる。それを成しえる覚悟を、思い続けることが出来るのなら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ハジメのマキナスへの身柄輸送団は今、引き渡し場所として指定されたヴールーン古戦場へと向かっていた。ハジメはその輸送団に護衛された車の中で、両脇をバァン、そして数日前まで雇い主であったガンドに固められてその時をただ待っていた。

 ジャンヌが無事ならそれでいい。そう言ったハジメだったが、その心の内は今になって決断に迷いがあった。

 

(自分は、本当にこれでよかったって、思っているんだろうか)

 

 一度は決めたことに躊躇う自分がいる。いや、躊躇うんじゃない。もっと違うことだ……そう、これは……後悔だ。

 記憶を失っての初めての後悔。しかし、ハジメはそれが後悔だと分かっていても、どうしたかったが故の後悔かを気づいていなかった。それが恩義を超えたモノであることに気づかずに……。

 ふと、隣にいたガンドが口を開く。その相手は他でもないハジメに対してのものだ。

 

「……昨夜、ジャンヌに君の事について訊いた。君をどうしたいかをだ」

 

「…………」

 

 その言葉に若干目線を上げるハジメ。しかしそれに気づいて、隠すようにまた視線を手元に落とす。手には暴動を防止するための手錠がしてあった。その手錠は果たしてあの殺戮をしたための犯罪者としてのものか、それともこれから裏切者になるが故に施されたのか。

 ハジメのそんな思惑は、続くガンドの言葉で一蹴される。

 

「……あの娘の親としては、そう答えて少し怖い。だけど、同時に良かったと思う。ちゃんと人を思うことが出来るんだって。……ジャンヌは、君が戻ってくることを祈っている」

 

「……え?」

 

 空耳かと耳を疑った。失礼なことであるのは分かっているが、それでも自身の主が自分の事を心配しているということが信じられなかったのだ。

 動揺するハジメに、ガンドが昨夜の出来事を語り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 シャンデリアの電気が消され、机の上のキャンドルだけがリビングの周りを照らす。炎に照らし出される少女……ジャンヌ・ファーフニルの姿は少ししおらしく見えた。

 娘のこんな姿を見たのは、いつ以来だろう。少なくとも高等部に上がってからは一切見たことがない。ハジメは、それだけジャンヌに影響を与えたのだとしたら……少し嫉妬してしまうな、がらでもない。

 心の中で動向を見つつも、大人げない親バカ妄想をするガンド。しかしその妄想に区切りをつけたところで、ジャンヌは口を動かした。

 

「…………わたくしは……何を思っているのか、分かりません」

 

「分からない……?」

 

「あらあら……」

 

『………………』

 

 娘の口から出てきたのは、分からない、という単語だった。その返答にクリエも手を口に当てる。唯一理由が知りたいのに、分からないとは、ガンドももう少し聞かねばと話を続けようとする。

 

「分からない、というと?」

 

 すると、ジャンヌは両手を胸のあたりで握りしめ、語り始める。

 

「最初は、どうでもいいって思ってた……。自分が選択を間違って家に入れてしまったんだから、何か理由を付けて、クビにしてしまえばいいと思ってた……。けれど、あの男はわたくしがどれだけ突き放しても、何も言わなかった。……嫌な顔……というか、困った表情はしていましたよ?……でも」

 

 勢いよく話したせいか喉の渇きを紅茶で潤してから、ジャンヌは再び話を続けた。

 

「あの男は、必死だった。自分の思ったことを、そのまま口に出来た。今まで周りの使用人やクラスメイトが裏でこそこそと悪口を言っていることもあったけれど……彼は、わたくしの事をそのまま見てくれた……。ぞんざいに扱われても、こんなわたくしを知ろうとか、どう思おうとか関係ないとか。……あと、アップルパイについての評価とか」

 

「…………!」

 

 そこでようやくガンドは気づく。娘の話した内容が、かつてハジメと執務室で言葉を交わした時の会話の内容が入っていることに。

 ……そうか、さてはジャンヌ、あの時聞き耳を立てていたな?執務室の隣の部屋でかすかに物音がしたと思ったけれど、そういうことか。

 過去の疑問点に納得しつつも、少し心の中でニヤついてしまうガンド。向かい側で話を聞くクリエも少し楽しそうだ。もっとも、あれはいじりたいという感じの笑みだろうが。

 

「けど誘拐された時、わたくしは彼に責任転嫁していました。後で考えれば無茶だというのに、護衛に付いていないからこうなったとか、後でやっぱりクビにするとか……。でも、彼はお父様とフォーンと一緒に駆け付けてくれた。倒れても立ち上がって、MSを纏って戦った。でも同時に怖かった。わたくしに銃が向けられても敵に向かっていった。正直、わたくしを殺させて今までの鬱憤を晴らすつもりなんじゃないかって。……でも違うって思ったの」

 

 いつの間にか、娘の目に水滴が溜まっていた。まだ決壊はしないだろうが、それもおそらく時間の問題だ。そして、娘は言った。

 

「近づいてきて、申し訳ありませんって謝ったの。持てる力をもって跪いて謝った……。けどわたしは返せなかった。彼が怖かった……。いいとも、ダメとも言えなかった……言って、彼の成長を促せなかった……だから、まず言いたいの。あの時言えなくてごめんなさいって……そして、これからも……文句を、言わせて……」

 

 そこで涙が頬を伝い始める。主の異変に気づき、幼少期から姉妹のように接していた従者のネアがハンカチを渡す。ジャンヌはそれをすぐに凄い勢いで奪い取ると目元を抑えて泣き出す。

 ……さてと、これは少し困ったな……。最後の締めくくりも問題だとは思うが、それ以上にハジメに対するものが、ちょっと予想を超えている気も……これはお父さん怒っちゃうなぁ……。

 ガンドは現在丁度50歳である。既に上の娘が家を出て嫁いだので、そう言ったものは既に経験している。むしろ上の娘が自由奔放な性格もあったため、これ以上上はないだろうと高を括っていた。だがしかし、ジャンヌから返ってきたものは先のあの内容である。ジャンヌは妻クリエの面影をかなり受け継いでいて、性格も含めて過保護になっている。だが、無論娘にはそういった気持ちを少しくらいは抱いてほしいとは親としては思っていた。けれど、ジャンヌが周りを遠ざけ、レイアに困った愛情をぶつける様を見ていたので、色々と多難だと思い、今回のハジメの存在が機になると思ったのだが……結果がこれだ。小説か、とでも言いたくなる。

 

(50年生きても、まだ新人なんだなぁ……グランツ司令、貴方の言葉が今よく分かります)

 

 目に見えて分かるほど大きな深呼吸をして、天を仰ぐ仕草をする。人生は常に勉強、という言葉を身に染みて学んだガンドは、言った手前引き返せないと覚悟を決めてジャンヌに誓った。

 

「そうか……分かった。その言葉、絶対に言わせよう」

 

「……はい、お父様」

 

 涙をぬぐいながらも見せたその顔は、初めて見たジャンヌの乙女としての泣き顔だった。

 

 

 

 

「……以上が、娘の本音だ。少し言葉足らずなところもあるかもしれないが、娘はそう思っているらしいよ」

 

「…………」

 

 家で訊きだした話を大まかに伝えると、ハジメはまた顔を下に向けてしまう。だが、ガンドはこれが決して嫌だから取った行動ではないと確信していた。

 少し話を削った部分もあるが、それは親としての懸念材料だ。これからも文句を言わせてなんて言葉をそのまま伝えるのもあれだから、まだ何も果たせてないという風に置き換えた。そう、これは父親として娘が心配であるが故の行動なのだ。

 頭の中で暗示をかけるガンド。とはいえ、それだけの言葉でもハジメの心にはしっかりと届いたようだった。ハジメの視線はただ下に視線を向けていたのが、真っすぐ手錠の方に向けられている。更にハジメは、ガンドに質問する。

 

「…………どうしたら、自分はお嬢様の言葉に応えられますか?」

 

「……簡単だ。帰ってやればいい」

 

「でも、自分は……」

 

 マキナスに身柄を渡される。そう思っているのだろう。確かに、マキナスからの要求を、政府は受けて指示を出した。だが、要注意人物を軍の意向を受けずに1人の人間の思惑で簡単に渡すほど、軍の人間はおろかではない。しかし、今話すのは、少々都合が悪い。だからガンドは、答えが曖昧な、しかし彼に希望があることを思わせる発言をした。

 

「それでも、君には出来ることがあるはずだ。自身が諦めれば、道は簡単に閉じてしまう。だから望み続けろ」

 

「…………はい」

 

 それ以降、目的地到着までハジメは真剣に考え込む。そして、その時は来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドラグディアとマキナスは1つの大陸に隣り合わせで存在する国家だ。サーク・ノレ・ファイ大陸はとある古代文字の形状に似ており、北部、南部、そして中央部で地続きになっている。名称もそこから付けられた。

 その両国家の国境は多々戦場となる。そのため国境には古くから数多くの古戦場が点在している。ハジメの身柄引き渡し場となる「ヴールーン古戦場跡」もまた、そのうちの1つだ。特にこの古戦場は、かつて関所兼両大陸を結ぶ中立エリアだったこともあり、居住地の建物が多く建造されていた。しかし、戦火に呑まれたことで人々は離れていき、今では両国家間で戦史扱いされる場となっている。

 今現在両国家の間には数多くの監視場が設けられている。なぜそこではなく、この古戦場跡をマキナスは指定したのか、ドラグディア軍でも理解に苦しんだその理由。それは、マキナス軍にハジメの身柄確保を要請した、とある老ロボット考古学者の要望だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが…………」

 

「そう。ここが我が国ドラグディアとマキナスが、神話時代に争ったとされる戦場跡。「ヴールーン古戦場」だ」

 

 ガンドの口から語られた、かつての街の跡地。随分前に人がいたのではと思われるほど建物が残る街。しかし、人が最近住んでいたという痕跡はとてもではないが見えない。足跡は少し点在する部分もありはするが、それでも生活感は一切ない。完全な廃墟だ。

 まさに遺跡、という街の跡地に降り立ったハジメはその壮観さに圧倒される。しかし、今の場所が身柄引き渡し場所というわけではない。

 

「受け渡し場所はもう少し奥だ。行こう」

 

「はい。バァンさん」

 

 バァンの声に頷き、その後に付いて行く。ハジメとバァンの部下であるヴェールの前後がバァンとガンドに固められ、更にその脇をMSに装依した兵士2名が護衛。更にそれらの後方を、数十人のMSを装依した兵士達が同行するという厳戒態勢にあった。これは敵国からの正式な要請とはいえ、非常事態を危惧しての配置であった。

 過剰かもしれないそれは、どれも両国家の憎しみと恐怖を体現したものと言えた。その状態で街の中央広場に当たる部分まで進んだところで、反対側からも同じようなMSに護衛された団体が姿を現す。

 護衛するMSにハジメは見覚えがあった。白基調の角張った装甲で構成され、博士帽のような尖った大型の頭部。そしてゴーグルの奥で光る2つの丸い眼光。以前教科書の中で見た、マキナスのMS「マキナート」だ。そう、彼らが今回ハジメの身柄受け取りにやって来たマキナスの使いだったのだ。

 マキナスのMS達もまた、こちらと同じく護衛する者達がいた。しかし、その中の1人とも言えるそれに少し注視させられる。機人族の者達は現在そのほとんどが竜人族と同じような外見の者がほとんどだ。かつてはMSのようなロボットじみた金属の肌だとはっきり分かる者達がほとんどだったという。これは結局のところ、かつての人々の姿に近い方が、例え竜、ひいては機械の力を得ても効率的だとそれぞれの遺伝子が判断したためだと言われている。護衛されている生身の機人族達もそれに沿った外見だ。だが、1人だけ如何にもロボットと言える外見の者がいたのだ。

 何だ……あの機人族の……人?なのか?もしかして、ポルンみたいなマキナスでいう所の古機人族みたいなやつなのか?

 すると、こちらに向かっていた機人族の軍勢が歩みを止める。こちらも同じく立ち止まり、相対する。静まり返る広場。そこにマキナス側からあの如何にもロボットな見た目の人物と、軍服を纏った老齢な男性と、反対に血気盛んな若い青年が前に出てきて挨拶する。

 

「この度はこちらの呼びかけに応じて頂いて、感謝申し上げます、ドラグディアの皆様。私、マキナス軍第2突撃中隊隊長のライド・アクセラー少佐であります。こちらは、部下のアルス・ゲート少尉」

 

「……どうも」

 

 上官と思われる男性の声に従い、こちらにそう口を開く青年。年齢は自分と同じくらいだろうかと思うハジメ。しかしその声は不満げのあるものだ。

 そして、続いてライド少佐からロボットな見た目の人物の紹介になる。

 

「そしてこちらが、今回の身柄引き渡しを政府に要請された老ロボット考古学者、ワルト氏だ」

 

「いやいや……また会えてよかった。救世主ガンダムの青年よ」

 

 一瞬、ハジメの表情が怪訝に曇る。また会えて、救世主ガンダム。その単語に対しての反応だ。

 

「……?それって、どういう……」

 

 疑問を口にする。すると、ドラグディアの方からバァンが前に出て、その説明を要求した。

 

「出来れば私達にも分かるようにお願いしたい。こちらもそれを聞いていたが、その真偽自体、確かめようがなかった。彼には記憶がないからね。特に彼が救世主であるということは、私達竜人族としても眉唾な話だからね」

 

「……それもそうですな。では、語らせていただこう……彼は私が最初に発見しただよ。とある遺跡で、ボロボロの彼をな」

 

 語られたのはハジメが最初に発見したのは、自分であるというワルトの発言。半信半疑の空気がドラグディア側に流れるが、すぐにそれを裏付けるようにワルトが話を続ける。

 

「私も最初に見つけた時は、すごい驚いたもんだ。遺跡は警戒はそれなりに厳しいのに何で?ってなぁ。けどほっとくわけにもいかんと研究所に運んだ。それから色々と彼が救世主であることを確信することに気づいて調べ出した。……けど、途中で様子がおかしくなって、彼は研究所を爆発させて行方をくらませたんじゃ」

 

 調べた、という言葉に何か不信感を思うハジメ。途中でおかしくなったというのもその発言と合わせて少し気になりだす。そしてロボット然とした機人族の博士が続いて救世主たる理由の話を始める。

 

「そして彼が救世主たる由縁。まずは、君達でも分かっているだろうことからだ」

 

 ワルトと名乗った古めかしいロボットの機人族は、手を広げ、右側に歩いていきながら語る。

 

「まず、彼の姿。彼は機人族ではない。機人族特有の微弱な電波を発することがない。そして竜人族でもない。肌に竜人族特有の若干のざらつきがない。ついでにその肌の臭いも私達のオイルっぽさや、君達竜人族の獣臭さもない。それらは特にDNAを見れば一目瞭然だ。何せ、彼は竜人族と機人族、両方の遺伝子と綺麗に真っ二つに持っているのだ。対立する2つの種族のDNAを持つ。これは奇跡、禁忌、そして、かつての姿とも言えるだろう」

 

 DNAの話はハジメも聞いたことがあった。ファーフニル家に拾われた次の日、病院で血液検査をして、その結果どちらでもないDNAが検出されたという。初めは戸惑ったが、最近は慣れてきた話題が掘り起こされ、しかもそれが救世主であるという証拠だなど、ハジメには想像もつかないほどの発想だ。

 踵を返すと、今度は反対に向かって歩きながら、2つ目の証拠を口にした。

 

「そして2つ目。彼が装依に使用したスターターっべ。それは今のモデルじゃない。一番似ているのは、創世記から残る遺跡の壁画などに描かれてる、救世主様が装着しているスターターだっぺ。わてらやあんたらが使っているスターターのプロトタイプ。その形状は間違いなく救世主様が使っていたものに違いねぇ!」

 

 元の場所まで来て立ち止まり、指先を向けるワルト。その指摘にハジメは喉の音を鳴らす。

 やっぱり、自分はその救世主……ガンダムなのか?でもガンダムって2本のアンテナに2つの目、それに顎のでっぱりのある機体だと学んだ。でも俺が装依したあの機体は……シュバルトゼロ・ビレフトとは全然違う。

 この2日ほど、ハジメはヴェールから様々なことを教えられた。その中にハジメの装依したMS、あのスターター「ゼロ・スターター」から得た正式名称「シュバルトゼロ・ビレフト」も知っていた。失われたと名付けられたその機体は、まったくガンダムらしいなりではない。大柄な装甲は全くと言っていいほど、教科書に描かれる救世主の姿には似つかわない姿だ。

 しかし、それだけの証拠があるというのならハジメに言い返せるものはない。マキナスへと渡るという不安が心を支配していく。

 ところがそれにバァンたちが待ったをかけた。

 

「ふむ。それらの話納得できるところはある。だが、それは本当にハジメが救世主であり、彼をマキナスへと引き渡す理由なのかな」

 

「何?どういうことだ」

 

 ハジメもバァンの言葉に困惑する素振りをする。言っていることが分からなかった。先程ワルトが話したのに救世主かどうか、それ以上に自分をマキナスに引き渡す理由なのかという質問は話が納得したということではないように思えたのだ。

 だがしかし、バァンはヴェールに向けてハンドサインを出して近くに来させると、その質問の意図を明確化する。

 

「簡単だ。話の方だが、君達はこれがあった、だからそう思ったということが理解できるものだ。だがしかし、それは私達が引き渡すという理由に直結してはいない。最初に彼を発見したのは君だという話だが、そこから逃げたということは、ハジメ君が君を嫌がった、ということではないかと私は思う」

 

「ふん。世迷言を……そんなもの、あるはずがないだろう。それを……」

 

 バァンの言葉を一蹴するように話を切ろうとするライド。しかしバァンはそれを機にすることなく、続いての証明に移る。

 

「2つ目はそれぞれの証拠だ。DNAの件はこちらも把握している限り確かに間違いないだろう。だが、こちらでは別の解釈をしている。……DNAが半分一致している部分は、機人族、そして竜人族共に同じ所だということだ」

 

「ならば何の問題も……」

 

「そこが問題なんだ。同じ所がそれぞれ一致するのなら、どうやって彼は、救世主は私達に竜と機械の力を分け与えたんだい?」

 

「……あ」

 

 瞬間、どよめきが起こる。彼らが言う救世主とは、竜人族と機人族のそれぞれの力を与えた機竜を従えていたという。そしてこれまで予測されている救世主の想像図は機械と竜の特徴を併せ持つ、ハイブリットとでもいうべき存在だと語られているのだ。ならばハジメも、それに忠実でなければおかしいことになる。肝心な姿の違いを、彼らはそして、本人も失念していたのだ。

 何とか反論しようとするマキナスの者達。だが、バァンが続けざまにスターターに関しても反論を挙げた。

 

「そして、スターターについてもそれを調べた技師から話が」

 

「はい」

 

 ヴェールは前に歩み出ると、映像投射機を近くの建物に向ける。光を照射すると、そこに彼女のパソコンの画面と思われる映像が映し出される。それを示しつつ、彼女は説明する。

 

「彼の始動機ですが、解析したところ制作されたのは丁度神話時代の真っただ中の物であることが、年代調査によって分かりました」

 

 その発言を聞き、マキナスのライドはホッとした様子で息をつくと、馬鹿にするようにその事実を改めて口にする。

 

「創世記時代のもの……ならば、彼が救世主であるという証拠ではないか。救世主は創世記の……」

 

「そこが、問題なんです」

 

「何?どういうことだ」

 

 筋が通っていると思うマキナスの兵士達は、皆一様にヴェールの言葉に疑問を浮かべる。ハジメも創世記時代のMSなのだから、ハジメのスターターもそれくらいにあって当然の物だという考えが頭の中を支配した。

 何でヴェールさんはそんな当たり前の事を……マキナスの人達の言う通り、伝説に登場する人物なら、創世記の物として出てきてもおかしい話ではないと思うのに……。

 マキナスの兵士達と同じことを考えるハジメ。だがしかし、続くヴェールの言葉で、重要なことに気づかされる。

 

「救世主ガンダムは、かつて争いあっていた私達の祖先の前に現れた存在です。ここで言う創世記の時代とは、その発展の中での話です。ここでもう一度言いますが、ハジメ君のスターターはその創世記時代の物です。……その中で作られた物なのに、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()というのは時代的に考えて矛盾していませんか?」

 

「あ……」

 

「っ……!」

 

 そこでハジメ、そしてライドとマキナスの兵士達もようやく理解する。そう、時間関係が合っていない。ハジメが救世主であるというのなら、ガンダムを装依するスターターは、創世記以前の物と鑑定されなければならない。だがしかし、ハジメの使っていたスターターは創世記時代に作られた物。創世記で稼働していても、それ以前の記録がないなら救世主ガンダムではない。となれば、必然的にハジメのあのMS、そしてハジメ自身が救世主であることは証明できない。切り替えたと言うのなら話は別だが、それでも可能性が限りなく小さくなったのは間違いない。

 バァンも前に出て、マキナスの兵士達に告げた。

 

「そもそも、彼にマキナスへと渡る意志はない。彼はやるべきことがある。果たさねばならない忠義がある。だからこそ言わせてもらう。君達の横暴に、我らは付き合うつもりはないとな」

 

 バァンの口からはっきりと語られた事実。ハジメもジャンヌの気持ちをガンドから聞かされ、変えたのだ。まだ自分にはやることがあると。ハジメの瞼が細められる。細めた視線の先には、歯がゆそうに拳を固く握るライドと、苛立ちを前に出したままこちらをにらみ返すアルス、そしてそれらを聞いても態度を崩さない、余裕を見せるワルトの姿があった。

 しかし、ハジメ達は気づけなかった。ワルトの目を映す液晶画面の目のヴィジュアルが、ほんのわずかだけ動いたことに。その眼に、明確な怒りがあったことに。

 まだ交渉は終わらない。いや、ここからが本当の「交渉」の始まりだったのだ。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただき、ありがとうございます。

レイ「ドラグディアの人達も、みんなハジメ君がこのままでいてくれることを祈ってるんだね!これはハジメ君責任重大だね!」

ジャンヌ「確かにジャンヌ・Fさんの想いも含めて、感慨深いものがあります……でも、今回の終わり方が完全にフラグとしか言い切れないんですが……。あと、マキナスとドラグディア勢同士の会話もぎこちない気も」

ギクッ(;´Д`)

レイ「あーそうだねぇ……ちょっとこなれてないっていうか……。けどこれはまた、何かやってくる感じだよ……でもでも、ハジメ君ならッ!!」

ジャンヌ「何とかしてくれる……と思いますね」

フフーン……それはどうかなぁ?ハジメ君が負けないとでも?(^ω^)

ジャンヌ「え……違うんです?」

レイ「えぇー!?それだったらハジメ君ジャンヌ・Fちゃんの約束守れないよ!?」

さてさて、その気になる先はまた次回!

レイ「続きが気になるよぉ~!また次回っ!!」


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EPISODE14 引き継がれる、覚悟 Standby OK?3

どうも皆様、藤和木 士です。

ネイ「アシスタントのネイ・ランテイルです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよぉ。さぁ、先週は華麗な指摘劇だったみたいねぇ」

まぁ、そうっすね。はい(´・ω・`)さて、EPISODE14公開です。

ネイ「なんだかハジメさんが負けるみたいな事を前回のあとがきで言っていましたね。本当に負けたらどう持っていくんですか……」

えーと、まぁやってくれるさ、彼なら(*´ω`)

グリーフィア「彼、って誰なのかしらねぇ……。ハジメ君ではないのかしら?」

うん……違うかな。それでは本編へ!


 

 

「やれやれ……ここまで言っても、素直に救世主を渡してくれんとは……やはり竜人族のような血気盛んな、獣臭い連中ではわたしの話を理解できんようやな」

 

「……ようやく本性を現してきたようですね。ワルトさん。いや、これはマキナスの政府も積極的な案件のようだ」

 

 うって変わった反応に、バァンがそのように返す。周囲は静寂としていたが、両者のにらみ合いは先程の騒がしい時よりも激しさを増しているように見える。素人のハジメでも、その場の空気を吸いづらくなる感覚を覚える。

 俺の身柄ひとつでこんな……俺は、いや、あのMS……みんなが言う救世主(ガンダム)っていうのは、本当に何なんだ……。

 ハジメ自身、救世主ガンダムの姿は、教科書で見ている。しかし、その姿は自分が憑依……もとい装依したあの重装甲のMSとは、まるで違った。頭部のV字のアンテナは無く、目とも言えるメインカメラは2つではなく1つ、もしくは3つだった。それ以上に機体のシルエットは、ガンダムのような細いすらっとしたようなものではなく、ずんぐりとしたものだ。とてもガンダムのそれとは違う。だが、彼らは、ワルトはハジメのあのMSはガンダムだと言い張っている。そこまで彼らがガンダムであるという根拠に疑問を拭えなかった。

 あまりにも一方的なマキナスの言い分は、ハジメを混乱させていた。そして更にハジメを、否、ドラグディアの者達を混乱させる事態になっていく。

 

 

 

 

「そうだろうッ!!!ドラグディアの薄汚いトカゲ共がァ!!!」

 

『!?』

 

 

 

 

 それは、本性を現した、ワルトの怒声であった。

 

 

 

 

 それは怒りだろうか。怒りといっても色んな種類がある。いけないことをした相手に対する怒り、酒の席でのアルコールにより助長された怒り、あるいは拒絶されたことに対する怒り。

 そのどれもが場面ごとで異なる怒りだ。そしてガンドの前にいる老ロボット考古学者の怒りは、自身の思い通りにならないが故の怒り。もっと砕けて言うなら、我儘から来る怒りだろうか。ともかくその怒りが頂点に達し、出た言葉は想像以上に予想外の反応だった。

 先程までのワルトとは別人とも言える言葉遣いと態度は、完全にガンド達にハジメを彼らに引き渡してはいけないと覚悟させた。もし彼が本当にガンダムを使えて、彼らの命令を聞くことになれば絶望的なのは明らかだ。それにハジメの意志を無視したような命令をさせるのは目に見えている。マキナス・ドラグディア両国の過激派は互いの勢力を殲滅することがすべてだ。ワルトもそれであるのなら、ハジメがジャンヌを殺してしまう可能性もある。そんなことを、許すわけにはいかない。2人の為にも、ガンドはハジメを護るように前に出る。

 

「彼を見つけたのは私や!!彼の道を決める権利は私にある!!そうだ、私が救世主の付き人……私が救世主なんじゃあ!!」

 

 狂気的とも言える発言に、ドラグディアの兵士達が気圧されている。一方マキナスの方も一般兵達は若干の困惑がちらほら見られ、マキナスの者達も全員がそれを容認しているわけではないようだ。ライド、そしてアルスもあまりにも大声で騒ぎ立てるためか味方にも関わらず、不快感を顔に示していた。

 しかし、周囲への迷惑も知らないように、ワルトはそのままの勢いで自身の野望を並べていく。

 

「そもそも、私は争いが大嫌いじゃった!私はオールドアンドロイドと呼ばれる、古い機人族の人間じゃ!!争いが嫌だというのに、旧式だからと戦地へ送られ、過酷な戦場へと消耗品のように使い潰されていく私の仲間達!!それを私はMSの開発現場で実践結果としてみることしか出来んかった……。そこで思った……なぜ私達がこのような目に遭うのか!!そして、私は様々な考えをシュミレーションした。そして分かった!!敵が居続ける限り、この連鎖は終わらん!!竜人族がこの争いの発端!!ならば竜人族を絶やさねばならん!!」

 

 あまりにも、短絡的な、かつ過激な発想だった。今でこそ両者がかつて過去に結んだ条約で、古い民族の過剰徴兵は禁止され、差別的な扱いは大幅に減少した。だがしかし、彼の場合はそれが遅すぎたのだろう。機人族という同胞に対しての是正ではなく、敵対勢力の殲滅に考えをすり替え、結果同胞を利用する。ガンドの目には、彼がこの戦争の生んだ歪みであるように思えた。

 しかしまだ彼の怒りは収まらない。なぜハジメを、救世主をそこまで欲するのかを彼は肩っていった。

 

「そのために私が目指したのは、戦争を終わらせる者……救世主の誕生じゃ。かつて再発した戦争で絶望し、消えてしまった救世主が再び降臨する方法を探るため、私は考古学者となり、遺跡を調査した!だが簡単には見つからない。救世主の歴史は辿れても、救世主を降臨させる方法はどこにもなかった。そうやって同じ日々が何度も繰り返された。それでも私は折れんかった!!そして!!遂に彼が現れた!!遺跡の前で光を発し、駆け付けた私の前に、救世主の証たる始動機を付けて!!これは天からの啓示!!私が!救世主を導くのだぁ!!」

 

 途中ハジメを勢いよく指さしし、熱弁する姿は迫力があった。立場が違えばそれは熱血というものだろう。しかし、傍から見れば、そのほとんどが彼を狂信者と言うに違いない。救世主信仰に溺れた狂信者。それが彼であったのだ。

 無論、それをドラグディアの面々は否定する。

 

「救世主の信仰……国が否定していない……むしろ、推奨した空想にすがるか。それに付き合わされるマキナスの兵士達は哀れだな。いや、それに加担している時点で、同類かな?」

 

「何?トカゲの分際で……!」

 

「ともかく、そんな連中にハジメは渡せない。彼はうちの娘がお気に入りなのでね」

 

 バァンの指摘した事実にライドが怒りの声を漏らす。だがそれに対しても、ガンドがはっきりとハジメの引き渡しを拒絶する。狂気的な人間に武器など、危険なだけである。そんな彼らにハジメを、あのMSを渡すわけにはいかなかった。ガンダムでもそうでなくても、渡せばどんなことになるか……。

 言葉では互角……より、ドラグディア側の意見が理屈的には優勢のこの状況。ところが、状況は思わぬところから崩れ出す。

 

 

 

 

「……何?本当ですか?……ガンド少佐!!大変です」

 

「……どうしたんだ、そんなに慌てて……」

 

 

 

 

 不意に連れてきていた兵士の1人が、慌てた様子でこちらに声を掛ける。緊急を要する姿に、嫌なものを感じる。続く言葉で、ガンドの考えは、恐ろしい方向で実現してしまうこととなる。

 

 

 

 

「聖トゥインクル学園を、武装集団が襲撃。ジャンヌ・ファーフニルを人質に立てこもっているとの連絡が!!」

 

「……何だと!?」

 

 娘の名前と、人質にされているという事実。それだけで思わず、父親としての側面が出てしまうガンド。反射的な反応だった。

 なぜ、娘が……。その考えだけがガンドの中を巡る。どうしてよりによって、この交渉の時にそんなことが起こるのかという疑念。更なる兵士からの言葉が、その疑念は、確信のある1つの事実にたどり着くこととなる。

 

「避難した教師からの情報によると、襲撃犯はポルン・ドンドと名乗っているそうです。それに周囲には体を機械化した竜人族の男と、マキナスのモビルスーツもいるらしく……」

 

「ポルン……マキナスの……まさか!!」

 

 振り返って向けた視線の先には、マキナスの者達……そのうちの1人であるワルトは、先程の狂乱が嘘のような、恐ろしさを感じさせる穏やかな声でそれを明かす。

 

「いやぁ、素直に応じてくれなかった時の保険、見事に働いてくれたもんやぁ。同じ種族から見捨てられ、復讐を望むもんに、報いる私達のどこが哀れかな?」

 

「貴様ら……!」

 

 ガンドの声に、怒りがこもる。関係ない者達ではないが、それは決して許されるものではない。非道なものだ。一般人が見れば涙が出てしまうようなことは、軍人であるガンドも耐え難い苦痛だった。

 

「……そう来たか……」

 

 顎に手を当て、冷静に見るバァン。だがその言葉とは裏腹に、目は厳しいものへと変わっている。誰もが動揺、怒り、そして呆然を大なり小なり感じていた。ガンドの視界から外れたハジメも、主が再び、同じ者に誘拐されたことに大きくショックを受けていた。

 それを更に追い詰めるように、ライドが部下から受け取ったパソコンの画面をこちらに向ける。そこに映っていたのは、ナイフを持ったファーフニル家元従者のポルンと、機械化されて面影がほとんど残らない、前回の誘拐事件でポルンの共犯者だったシグット。そしてそのシグットに羽交い絞めにされ、抵抗する半裸姿のジャンヌの姿であった。

 

『数日ぶりですねぇ、お嬢様ァ!!』

 

『いやぁ!!離してッ!!』

 

「ジャンヌ!!」

 

 映像に映るジャンヌを見て思わず叫ぶ。自身の娘は制服のほとんどを剥がれてしまった後で、残るのは白の下着とズタズタに裂かれたスカートだったとは思えないもののみであった。

 今すぐ走り出したくなる衝動に駆られるガンド。険しくなった表情を見てワルト、そしてライドの追い打ちが飛ぶ。

 

「やっぱ娘の方が大事だなぁ!んだんだ!!」

 

「悪趣味……!」

 

「悪趣味?立場の優位性の確保は、政争としては基本だろう!そう思う貴様らが甘いだけなのだ」

 

 ヴェールが抱いた彼らの行いへの批評すらも、ライドらは切って捨てる。その姿勢はもはや軍人とはかけ離れているように思えた。

 ふざけるな……!軍人は人殺しではない。戦って人は殺すが、それは自国民護るための行動だ。決して人を殺すことへの快感が、護るという考えより上回ってはいけない……。彼らのこのやり方は、軍人である前に、人として失格だ!許せない……だがッ!!

 ガンドの拳が固く握られる。目の前の非道に対しての怒り、娘の窮地に向かえないくやしさ……。明らかに自身に対しての精神的な攻撃は、一つも狂うことなく彼に分かれ道を与えていた。非道に屈し、娘との約束を破ってでも娘を救うか。それとも非道に屈することなく、軍人としての誇りを守って娘を見捨てるか。

 この選択肢、彼にとっての正解は間違いなく前者だろう。数週間前に家に突然転がり込んだ使用人などより、十数年育てた自身の子どもの方が大切なのは明らかだ。無論ガンドもそれを選ぼうとしていた。

 しかし、その選択を昨日の光景が遮る。娘の涙ながらの告白。男性嫌いな娘が、初めて男性の事に対して気に掛けたあの姿が、どうしてもガンドは裏切りきれなかった。こちらに関心すら持たなくなってしまった娘の、久しぶりの、心からの我儘に付き合いたい気持ち。

だがしかし、ガンドも覚悟を決める。父親にとって、大事なのは娘の望むものではなく、大切な娘なのだから。ガンドは自らの口からハジメの受け渡しの返答を、自分達の敗北を――――

 

 

 

 

『助けて……助けて、ハジメェ!!』

 

「ッ!!」

 

 

 

 

 娘の叫びが口を再び塞いだ。確かに響いた娘の、ハジメを呼ぶ声がガンドの決意をまたも揺らがせたのだ。

 ……ジャンヌ。お前は、それほどまでに……。そうだ、オレがこの場にいるのは、ハジメを渡さないためじゃないか。それをオレは……しかし、どうすれば……。

 再びその言葉を堪えたガンド。この状況を打開するのは難しい話だった。自分達は動くことは出来ない。ドラグディアの者が動くわけにはいかない。マキナスの者達にはっきりと否定できるのは、彼らを今、退けられるのはハジメだけだろう。

 ……この状況を打開できるのは……あいつらの言うことが本当なら、いや、その意思があるのならオレは……もう、それしかない!!

 ガンドは軍服の内ポケットに手を入れる。取り出したのはハジメが救世主と推測された証拠でもあるスターターだ。無論それはハジメの物ではない、ガンド自身のMSドラグーナ・ガンドヴァルの物だった。それをおもむろに腰に装着する。

 

「おやおや……何をなさるつもりで?」

 

「…………装依」

 

 ワルトの声に反応せず、ガンドはそのままスターターを作動させ、MSに装依する。光の壁にガンドの身体が前後から挟まれ、灰色の大柄なMS・ドラグーナ・ガンドヴァルへと装依する。

 重要人物の1人がこの状況下で装依したことで、両軍に緊張が走る。ライドがその行動の意図をガンドに問いただす。

 

「まさか、私達に歯向かうとでも?そうなれば娘さんはどうなるか分かった上での行動ですか?まさか、家族をお見捨てにしてでもですかな」

 

「ガンド少佐……」

 

 唐突な行動にバァンも懸念する様子を見せる。しかしガンドは決めたのだ。この状況を打開できる可能性に賭けるのを。一度バァンの方に顔を向け、謝る仕草をしてからマキナス側に向き直る。

 

「ふむ、その言葉、半分は正解かな」

 

「ほう……半分。少々気になりますね。どれが半分だと?」

 

「全部の言葉に対してさ。お前たちに歯向かう。だが、それを行うのにオレの剣を向けるのはお前たちにじゃない――――――お前だ、ハジメ」

 

 振り返りながらガンドヴァルのビームサーベルを抜刀すると、その剣先をハジメに突きつけるガンド。突きつけられたハジメの表情が凍る。

 

「え……!」

 

「が、ガンド義兄さん!?」

 

「な……貴様、正気か!?」

 

「ガンド少佐!?君は!!」

 

「何をしてるっぺ!?救世主に向かって……トチ狂ったってぇか!?」

 

 次々と投げられるガンドへの非難の声。しかしそれでもガンドは剣を降ろさない。彼の遺志は揺らがない。それが彼の決めた、娘との約束の返答だったからだ。

 死への恐怖を感じ、手を前にして後ずさろうとするハジメをガンドは制止する。

 

「動くな、ハジメ。すぐに終わる」

 

「ぅあ……」

 

 振り上げられるガンドヴァルのビームサーベル。竦んでしまい、ハジメは動けなくなる。そして、それを止めさせようと様々な方向から声が飛ぶ。だがそれに応えることなく……。

 ガンドは、その光の光刃を振り抜いた。

 

 

 

 

 サーベルが物体を溶かす音と、物体が地に落ちる音が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その瞬間、ハジメはもう終わりなのだと思った。信じていた人物が自分に剣を向け、振り下ろすなど思っていなかった。だが雇い主であるガンドは自分に向けて光剣を振り下ろした。気を失っていたとはいえ、かつて自分もマフィア達を虐殺するのに使用した武器と同じもので殺されることは、まるで運命のように感じた。天の裁きなのかもしれないとさえ思った。自分があれほどの事をしなのだから、その報いなのだと。

 しかし、それでもいいとハジメは思った。ガンドにとって、一番大切なのはお嬢様……娘のジャンヌだ。この引き渡しの場は、あくまでハジメが重要なのだ。そのハジメが渡らない確固たる意志を持つ、もしくはこの場から消えてしまえば、それだけで状況を混乱させられる。ジャンヌを人質にする意味がなくなるのだ。ハジメというたった一人の犠牲に目をつぶれさえすれば。虐殺をした自分が死んで解決できるのなら、それでお嬢様が救えるなら、ハジメはそれを受け入れた。

 光剣が物体を斬る音と、斬れた物が地面に落ちる音がハジメの耳に響いた。しかし、そこで違和感に気づく。

 

(痛みが……ない?)

 

 そう、身体のどこにも、ハジメは痛みを感じない。斬られたはずだというのに、五体満足のハジメはどういうことかと恐る恐る目を開く。すると、そこには光剣を振り終わったガンドのMSと、拘束していたはずの手錠がなくなったハジメの両腕が視界に映った。

 地面に転がる先程までハジメの両腕を拘束していた手錠。それがガンドによるものだと気づく。だが同時になぜ手錠を斬ったのかという疑問が生まれる。ガンドの行動に戸惑いが生じる中、本人が装依状態でこちらに語りかけてくる。

 

「ハジメ、君の身柄引き渡しは両政府の考えからだ。私達軍人はそれを円滑に行うための存在……そこには当然対象の反乱防止も含まれる。しかし、それ以上は現場の判断が優先されることもある。オレは……いや、私はこの場にいる責任者の1人として、君に……救世主としてではなく、1人の人間として頼む願いだ。……娘を、助けてくれ」

 

「当主……」

 

 娘の救出。ガンドから願いだされた、ハジメへの命令ではない、懇願だった。身柄を引き渡す側のドラグディアの動きに対し、マキナスの者達は手を打った。しかし、この場でハジメの意志は尊重されている。そもそも、ドラグディア側はマキナスから引き渡しを要請されたものの、その身柄引き渡しの際には両国代表、そしてハジメ自身の同意が必要だった。ならば、ここでハジメがそれを断れば、今侵攻しているマキナスの者達、そしてポルンは犯罪者として討伐することが出来ると考えたのだ。

 しかし、これは当然受け渡しに反抗したということでもある。ライドらもガンドの対応に怒声を発する。

 

「ガンド・ファーフニル!それでも私達が引き下がるとでも思ったか!!」

 

「もう少し賢明な方だと思っていましたがねぇ?やはり竜人族の考えることは野蛮だ。救世主よ、そのような言葉に従えば、どうなることだか……」

 

 ワルトの皮肉めいた視線が、再びパソコンの画面に向けられる。羽交い絞めにされたジャンヌは、スカートの布もはぎ取られ、完全に下着姿となっていた。涙ながらに必死に抵抗するジャンヌがハジメの眼に焼き付く。

 許せない。絶対に自分は……いや、俺は絶対に、マキナスもポルンも、絶対に許せない!あいつらが俺のことを救世主だっていうのなら俺にはあるはずだ……この状況を突破できる力が。それが、俺のしたいことだから。だから―――。

 

「……俺は、貴方達のような人に付いて行く気はありません。だから、俺はお嬢様を取り戻す!」

 

「ハジメ……!」

 

 ガンドの横を通り過ぎながら、ハジメはマキナスの面々と対峙する。その瞳には、ジャンヌを助けるという確固たる意志を持っていた。初陣の戦士にありがちな目ではあったが、sれでも味方の側からしてみれば、今はそれでよかった。

 その姿に感嘆の声を漏らすバァンとヴェール。

 

「ハジメ君……君は」

 

「……ハジメ君、頑張って!」

 

 ハジメが前に出ると、マキナスの側でも動きがあった。ここまで一言程度しか口にしていなかったマキナスの兵士、アルス・ゲートが前に出たのだ。

 

「アクセラー少佐、自分の出番ですね」

 

「アルス少尉……そのようだな。頼む」

 

「はい。……救世主だか知らないが、そう呼ばれたくらいで調子に乗るなよ。お前がその名を持つなら、俺にもある。「星剣使い」の名を持つ俺が、お前を跪かせてやる」

 

 星剣使い。その言葉を聞いていたドラグディアの兵士達がざわつく。その名に心当たりのあったバァンがその詳細を口にする。

 

「星剣使い……マキナスに珍しい、格闘戦MSの装依者……。まさか、彼だとは……気を付けたまえ、彼はエースだ」

 

「エース……」

 

 エース。その言葉の重みを感じるように、復唱する。それだけの相手が自身の相手であることにハジメは緊張感を抱く。本来エースと素人など、戦いにすらならない彼らが戦えるのでは思わせているのは、間違いなくハジメのMSの力が未知数であるためだろう。生身の人間相手とはいえ、あの性能は目を見張るものがあった。そしてそれを操るハジメは、マキナスから一方的にとはいえ救世主と呼ばれている。ドラグディアの面々も、否定こそしてはいても、無意識にそれに機体を寄せていたのだ。

 ハジメは脳裏でとあることを思い返す。それは、ヴェールからこの引き渡し日までの間に学んだ、スターターの装依法だった。あの時ヴェールはマキナスでももしかすると必要なこと、と言われていたが、もしかするとこの事を想定してなのかもしれないと考えていた。

 偶然とはいえ、今はそのおかげで戦える。思い出した行程を基に、ハジメとアルス、2人が向き合うと、同時にスターターを装着した。

 

『ゼロ・スターター』

 

『マキナスターター』

 

 それぞれのスターターが装着音声を鳴らす。アルスのスターターはマキナス軍共通のものだ。装着すると、互いにペンダントのようなものを、それぞれのスターターに装填する。スターターに記録されたMSのプロテクト解除用ドッグタグ「ロックリリーサー」だ。ハジメは星と歯車が合わさったようなものをスターター前面を手前に開いた部分に装填し、閉じる。

 同じく、アルスもマキナスターターの上部スリットからロックリリーサーを装填し、完全に格納させる。そして、同時にスターターの装依起動ボタンを拳で叩く。

 

 

『装依』

 

 

 同時にそれぞれの前後に光のゲートが展開される。それらは2人を挟み、ハジメの方はゲートが上に一回転してから下に潜り抜けるとそれぞれのMSが姿を現す。黒い重装甲を持つ、3つ目のモビルスーツ「シュバルトゼロ・ビレフト」。それに相対するは白色に、赤いラインがペイントされ、各所で十字を作る、マキナートによく似たモビルスーツだ。

 その機体の名を、ライドが呼んだ。

 

「マキナート・レイ。我が軍の剣が、救世主にどこまで通じるか……」

 

「勝てますな。何せ、あのMSはわてが過去にMSの技術者として開発したMSの発展型……不完全と思われる今の救世主相手に勝利するのは造作もないこと……」

 

 不敵に笑うワルト。そして、戦闘の火蓋が切って落とされた。先手を取ったのは、ハジメの方だ。

 

「いくぞっ!はぁッ!!」

 

「…………」

 

 腕部から取り出した端末を握り、光の剣・ビームサーベルを形成させるとそれを振り抜く。それをアルスのMS「マキナート・レイ」は後方に回避する。

 避けられた……でも、このまま攻める。避けたってことは、それで精一杯ってことのはずだ。攻撃し続ければきっと!

 隙を作らせない。ハジメのその判断は正しかった。戦闘においては間隙を作らず、攻め続けるのは戦闘における1つの戦法だ。ハジメも直感的にそれを考え出したのだ。攻めを続けるハジメのMSはアルスを避けに専念させ、押していた。作戦は上手くいっているように思えた。

 だが、相手は若くとも軍人なのだ。素人ではない。その認識が全く違うことにハジメは気づかされることとなる。

 

「ッ!!はぁッ……はぁッ!!……」

 

「…………その程度か」

 

 おかしい。どれだけ攻撃を重ねても、攻撃はアルスのマキナート・レイに一太刀も当てることは出来ない。それどころかこちらが先に息を切らして動きが鈍る。その様子を嘲るアルス。脚部からDNを吹かせ、距離を更に大きく取ってからシールドの先のパーツを取り外して右手で持つ。そのパーツは先の部分が分かれると、分かれた先から幅の広い光の剣を作り出す。ビームソードだ。ハジメのMS「ビレフト」が持つサーベルも、普通の物と比べればソードに近いものと聞かされていた。だがアルスが持つそれは、ハジメのサーベルよりもより大きなビームの刃を持っているように思える。正真正銘、ビームの剣と言えるだろう。

 光の大剣を構えて、アルスが言い放つ。

 

「もう少し遊んでやろうと思ったが、これで終わりにしてやる!」

 

「何っ」

 

 今までの動きは本気ではない。そういった趣旨の発言にハジメは驚きを隠せない。大剣を構えたアルスが、MSにとって必殺とも言える一撃を繰り出す。

 

DNA(ディメンションノイズアタック)!!」

 

DNA(ディメンションノイズアタック)、シャイニング・ブレイド』

 

 ディメンションノイズアタックの音声が響くと、アルスが大剣を振り上げる。振り上げた大剣にスラスター各所から放出されるディメンションノイズが集中する。そして更に大きく、そして光を増した剣を形成した。

 一目でわかる。あの一撃は危険だと。ハジメは距離を取ろうとする。

 

「甘い!!」

 

「なっ……ぐぅ!?」

 

 だが距離を取る前にアルスが距離を詰める。そして強化された光剣がハジメのビレフトに襲い掛かる。連続した剣戟。すぐにビームサーベルは弾き飛ばされ、猛撃をその身に受けていく。連撃の〆に、アルスは大きく振り抜く。直撃だ。ハジメは大きく弾き飛ばされ、地面を転がっていく。

 機体の装甲に傷は出来ていない。しかし、装依したことで装依者にダメージは反映される。転がりの止まったビレフトだったが、立ち上がろうとしたところで地面にその体は伏せる。同時にビレフトの装依が解除され、ハジメの身体が横たわる。勝敗が決した。

 敗北したハジメを見て、ヴェール達は意気消沈する。

 

「そんな……」

 

「あのMSでも、ダメだったか……」

 

「ハジメ……クソッ!!」

 

 バァンやガンドも各々悔しさを隠せない。ガンドは歯ぎしりを見せるほどだ。希望が潰えた衝撃は伝播し、ドラグディアの兵士達にも不安が襲う。

 

(ダメ……だ…………こんな、ところ、で……止まっちゃ……)

 

 諦めたくない一心で、立ち上がろうとするハジメ。しかし、うつ伏せの状態から動くことも敵わない。朦朧とするハジメの耳に、アルスが現実を突きつけた。

 

 

「言っただろう。救世主と言われて浮ついただけのやつが、俺に勝てると思うな。素人が」

 

 

 悔しい。反論したいのに、口も禄に開かない。言葉を口にしようと思っても力が入らず、うめき声にしかならない。

 

「うぅ…………ぐぁ…………」

 

 遠のく視界。そしてハジメの意識が闇へと誘われる。護りたい者の姿が、ジャンヌの姿が瞼に思い起こされ消えていく。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。

グリーフィア「あらら……本当に負けちゃったわねぇ」

ネイ「負けちゃった、じゃないよ姉さん……。ここでハジメさんが倒れたら誰がジャンヌ・Fさんの救出をやってくれるんですか、藤和木さん!?」

誰がやるかって?もちろんガンダムさぁ!

ネイ「……いってらっしゃる意味が分かりませんが?」

あわわ(;゚Д゚)落ち着いてくださいぃネイさん!

グリーフィア「ネイ。そこはガンダムが決めてくれるのよ!(ビシィ!)」

ネイ「姉さんも何言ってるんです!?」

それは次回明らかになるかな?物語が引き継がれる、覚悟という物語が!

グリーフィア「それじゃあ、また次回見ましょうねっ」


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EPISODE15 引き継がれる、覚悟 Standby OK?4

どうも、皆様。色々と疲れることもあります、藤和木 士です。

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌ・ドラニエスです」

レイ「アシスタントのレイ・オーバだよっ!」

さぁ、今回はEPISODE15、いよいよこの日が来た……漆黒のガンダムの復活だ!(゚∀゚)

ジャンヌ「あぁ……ようやくガンダムが……って、前の時ネイも言ってましたが、あそこからどうやってガンダムがどう出てくるんですか。ハジメさんがジャンヌ・Fさんを助けなかったら誰が……」

レイ「あれ、でも今復活って言わなかった?」

ジャンヌ「レイさん?確かに言ってましたが……それが?」

レイ「いや、先週復活なんてこと言ってたかなぁって。助けるのはガンダムが~って言ってたとは思うけど」

ふふ……そう、復活するのさ、ガンダムは!(´ω`*)というわけで本編どうぞ!!


 

 暗い。それが闇の中でハジメが思ったことだった。以前も同じことがあったが、違うのは直前の記憶をはっきりと覚えているということだ。

 負けた。自分は勝負に負けた。勝たなければいけない、勝たなくてはいけない戦いに負けた。立ち上がろうとしても、体に力が入らなかった。このまま眠り続けたのなら、きっと自分はマキナスに身柄が渡っているのだろう。

 それは嫌だ。そんなこと、自分は望んでいない。このままではいけない。ハジメはそう願った。だが同時にこのままでは勝てないというのも、ハジメは分かっていた。白に赤い十字のラインが入った、あの機体。力の差は歴然だった。機体の性能だけではない。操る人間の力量もまるで違う。あの攻めも相手がわざとそうなるようにしていたのだから、言い訳もできない。

 

「俺は……どうしたら…………」

 

 

 

 

「そこで、お前は諦めるのか」

 

 

 

 

 唐突に響いた声。顔を上げると、周囲の景色に変化が生じていた。真っ暗な視界にうっすらと見える大地。足から分かるその触感は柔らかな土のように思える。更に少し遠くからは波の音も聞こえ、地面の正体が砂浜であることを知る。暗闇の中の海岸はまるで夜の海岸のようだが、空に星の1つすら見ることは出来ない。

 そして、広がる砂浜の少し先に人影を見ることが出来た。影は2つ。どちらも同じくらいの大きさだ。やがてその人影はこちらに近づいてくる。とその容姿に二重の意味で驚く。1つはそのうちの1人が見たことのある人間であること。その人物は、以前自分の前に現れた、白髪のもう1人の自分だった。続くもう1つの驚くべき点は、その人物と更にかがみ合わせのような、自身と同じ顔をした黒髪の人物が隣にいたことだ。

 

 

『………………』

 

 

 3人が正面を見るような格好になる。ハジメはその状況に言葉が出てこない。2人も元と同じか、それとも敢えてかその口を閉ざしている。世にも奇妙な3人の同じ顔の人物が、その顔を突き合わせる現状。その静寂を打ち破ったのは、白髪の自身の言葉だった。

 

「また会えたな、ハジメ・ナッシュ。あの時は名乗らなかったが、オレの名はスタート。「始まり」だ」

 

「スタート……」

 

 白髪の自分の名前を続いて復唱する。ハジメが自身の名を発言したのを聞いて、スタートはこの場所の説明、そしてもう1人の正体について口にした。

 

「ここは黒白の海岸。俺が黒の機動戦士の余剰メモリで造り出した、心象空間だ。ここと外界の時間には恐ろしく違いがあるから、時間は気にしなくていい。……それで、一番に気になっているだろう、そこの男だが……そいつは、黒和 元(くろわ はじめ)。記憶を失う前のお前自身だ」

 

「記憶を失う前の……俺……!?」

 

 その言葉に、自分で復唱して驚く。思わずその人物を見る。黒髪の青年は眼鏡をかけていたが、その奥の瞳は強いまなざしをこちらに見せていた。その瞳は様々なものを感じさせる。決意と諦め、覚悟と後悔。矛盾した2人はそれぞれの瞳を見て、自分との違いを感じつつもそれが自分であることを感じ取っていく。

 黒髪の青年が眼鏡を取り、ハジメへと、記憶を失った自分自身に話しかける。

 

「初めまして……俺が、黒和元だ」

 

 はっきりとした、決意を感じさせる声だった。同時に、本当に自分であることを確信する。遂に記憶が巡り合う。スタートがやるべきことを、ハジメにとってある意味辛い現実を告げる。

 

「ハジメ・ナッシュ。記憶を取り戻す時が来た。だが、同時にお前は黒和  元となる。……ハジメ・ナッシュは、記憶の統合と共に黒和元に溶け込む。お前は消えるんだ」

 

 一瞬、何のことかと思ったが、自分が消えるという事実で、それがどういうモノか少しだけ理解する。

 ……そうか。俺は、いや、「おれ」は記憶がない時の、「俺」だから……。そういうことなんだ……。けど、だったら答えは1つだ。

 ハジメは黒髪の自身……本来の自分の前に立つと、手を顔の前まで挙げて拳を作る。その様子を元とスタートは不思議そうに見る。ハジメは呟く。

 

「そっか……そうだよな。おれは本来の俺じゃないから、過去の記憶がない俺だから。だから、記憶を取り戻すんだったら、俺も……でも、いいや。でなきゃ、俺はあいつに勝てない。お嬢様の隣にも行けない。……だからさ、託すよ。本当の俺に。受け継いでくれるかどうかは分からないけど、でも託す。……お嬢様を、救ってくれ、俺」

 

 その顔は、ハジメには分からない。だが、放心したように口を少し開いていた元は口を閉じ、口角を上げると同じように拳を作り、笑顔でそれに応える。

 

 

 

「もちろんだ。俺はおれだ。いや、お嬢様を……ジャンヌ・ファーフニルを救うのは、俺達だ」

 

 

 

 

 拳と拳が重なる。同時にハジメの身体が光となって元へと取り込まれていく。同時に元の髪色がハジメと同じ銀色へと染まっていく。

 あぁ、おれ、やっぱり消えていくんだな。辛いなぁ……お嬢様に最後に何か言いたかった……いや、違う。おれは、俺の中にいる。だから、また会える。なのに悲しくなるなんて。……でも、これだけは言おう。

 

 

 

 

さようなら、お嬢様――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

◆→

 

 

 

 

 

 

 

 

 記憶が流れ込んでくる。「おれ」が過ごした記憶だ。同時に感情も「俺」に流れ込んでくる。あいつが、「おれ」が感じた感情。それが俺は何なのかを知っていた。だが段々とそれが俺の体験したことだと知覚する。

 同時に俺の目元から水滴が滴る。それは悲しみの感情が時間差で生み出した後悔だ。それを俺は服の袖で拭う動作を取る。閉じた目を開き、俺は前を見据える。隣にいたスタートが声を掛ける。

 

「よう、黒和元。気分はどうだ?涙なんか流してたが……」

 

 記憶が封印されている間と同じように、冷やかしをかける自分と同じ顔を持つ青年の言葉。元はそれにまともに応えることなく、返答する。

 

「うるさいんだよ、お前は。それよりもお前も力を貸せ、元英雄の一部」

 

 邪険に扱いつつ、何かを要求するような動作をする元。つれない態度にスタートはがっかりした様子でため息をつく。

 

「まったく。相変わらずのドライだねぇ。……ほらよ」

 

 しかし元の手にそれを放り投げた。スタートの顔には笑みが出来ている。「ZERO」と書かれたカードがその手に握られる。

 同時に海岸線から光が漏れだす。朝日だ。もちろん現実のものではなく、この世界、黒白の海岸の偽りの朝日だ。しかしそれは、意味のあるものだ。黒和元が目覚めるその証明。夜明けが訪れ、(ハジメ)から()へと変わる象徴。朝日が元を現実へと戻した。

 

「さぁ、再来の時だ……目覚めろ、次代の「黒」の機動戦士……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やれやれ、万全でもない状態で戦うからですよ、救世主よ。まぁ、もっともこれでわてらが正しいことにも一役かってくれますさかい」

 

 うつ伏せに倒れ込むハジメに、ワルトはそのように言い放つ。勝利自体は何も引き渡す意志の決定に何も関係ないというのに、それを言う姿は自身の成果を過剰に見せびらかす傲慢さを感じさせる。もっと言うなら、高級車を買った金持ちが、必要ないにも関わらず別のジャンルの高いものまで見せつけて自分達を貧乏人と罵るかのようだ。

 しかしそう思ってもハジメが敗北したという事実は変わらない。ハジメがこの包囲網を突破し、あわよくばジャンヌの助けに行ってほしかったが、そのようなことはほぼ絵空事とガンドは受け取るしかなかった。

 

(すまない、ジャンヌ……)

 

 悔しさが募る。何も出来ない自分の無力さが娘に届かぬ謝罪を心の中で発する。視線を下に下げる。

 敗北したハジメに、アルスが更に追い打ちの言葉を口にする。

 

 

「救世主なんて、口ほどにもない。その程度の力なら救世主なんて……いらな「救世主じゃねーよ、バーカ」!?」

 

 突如、アルスの声を遮って否定が入った。その声は今聞こえるはずのない声だったため、アルスの動揺を呼ぶ。アルスだけではない。マキナス、そしてドラグディア陣営も同じくざわつく。

 まさか、この声は……っ!!まだ戦えるか。いや、戦えなくては困る。なぜなら、お前はオレの……いや、オレ達ファーフニル家の、ドラグディアの希望なのだから!

 その人物はガンドの視線の先にいた。倒れ込んでいたその人物は服の裾についた砂埃を払っていた。髪を掻いて目覚めをはっきりとさせる人物。その人物―――ハジメ・ナッシュは確かにその場に立っていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 いきなりの目覚めの一言をかました青年、黒和元は頭を掻きつつも状況を再度確認する。

 さて、ドラグディアの面々が……バァン・ウロヴォースさんと、ヴェール・フリードさん、それに俺の雇い主のガンド・ファーフニル様……それでドラグディアの兵士の皆さん方か。で、マキナスがライドっていうおっさんと狂信者のワルトってロボ、それに……あいつか。

 ハジメこと元の視線がアルス、正確にはアルスの装依するマキナート・レイに向けられ、細くなる。先程自分を倒したマキナスのMS使い。記憶を失う前に自分が見たモバイルスーツにも驚いたが、その先を行くような存在モビルスーツとそれを完璧に操る彼にも驚く。

 さて、これを倒せって普通は無理ゲーだと思うんだが……スタートの言葉通りなら、倒せないと困るけども。とりあえず、否定の意志は伝えとくか。

 元が今までの言葉に対して反論しようとしたところで、マキナスの側から、あのイキリ救世主狂信者のワルトがこちらに問いかけてくる。

 

「やれやれ、いけませんよ救世主?そのような言葉遣いは慎んで……」

 

「慎むのはお前の方だろ、救世主がどうだのこうだの、俺は救世主でも何でもねぇ。そんなに救世主なんて絵空事を口にするなら、小説でも書いてろ中古ロボット。数万年すれば伝説としてその妄想が語り継がれているだろうぜ」

 

 だがワルトの言葉に元はバッサリと言い放つ。これまでのハジメを知っていた人物達の表情に汗が浮かぶ。今までとの変容ぶりに追いつけていないのだ。しかし元の本質は、ハジメと何ら変わりはない。自分に真っすぐだった。

 しかし、残念ながら元の真っ直ぐな批判は当然ワルトの怒りを真っ向から買うこととなった。

 

「救世主とおだてられて否定するかぁ!!このわしをォォォォォォ!!もういいわ!!救世主を打ち果たした者こそ真の救世主よォォォォ!!アルス少尉ィィ!!」

 

「チッ、最初から言っておけばいいものを……旧世代が」

 

 ようやく出た殺害の命令に小さな声で文句を漏らしつつも、アルスがこちらにビームセイバーを向ける。元も改めてMSの再装依を行う。

 

『ゼロ・スターター、リスタート』

 

 スターターが再起動の音声を上げる。未だ余裕を見せるアルスは呟く。

 

「また来ても無駄だ。今度こそ俺のマキナート・レイがお前のMSをぶった切る!」

 

 威勢のいい声だ。だがしかし、元も負けるつもりはない。だからこそ得意げにその言葉を否定する。ポケットから取り出した、ZEROと書かれたカードを手にして。

 

「悪いが、簡単にやられる気は今度こそない。こいつがあるからな」

 

「……?そのカード……!?」

 

「まさか、ハジメ君、それはセレクトスーツカード!?」

 

 セレクトスーツカード。現代のMSのスターターにはない、失われたモビルスーツ換装システム。これを変更することでモビルスーツをバックパックどころか機体すらも変更できるシステムの根幹を成すカードに両国の技術者たちの声が集中する。

 それをスターターの横のスロットに装填する。スターターがカードの名前を読み上げる。

 

『ZERO』

 

 元はこの流れを何度もやっていた。体が記憶を失ったことで入り込んだ、あの黒白の海岸で、スタートに命じられてこのような有事の時に備えて訓練を受けていたのだ。あの海岸で。

 元もそれだけで普通にやって目の前の敵に敵うとは思えない。しかしやるしかない。なぜなら既に溶け込んだおれの願い、そして元自身がそれをやり遂げたいと思ったから。元は意を決し、スターターの装依ボタンを交差した両手で押す。同時に挑発を目の前の戦士に向ける。

 

「かかってこい、機械野郎」

 

『Standby OK?』

 

「貴様ッ!!」

 

 挑発に乗ったアルス。そのまま元に目がけて突撃してくる。そのタイミングで元の前後を光のゲートが挟みこむ。すぐに上部に挟み込んだゲートが回転・上昇し停止と共に下降する。

 出現したのは、黒い重装甲モビルスーツのシュバルトゼロ・ビレフト。その機体に対し、距離を詰めたアルスのマキナート・レイの光剣が襲い掛かる。元はそれに対し、右腕で受け止めた。光刃が右腕の装甲を抉った。

 

「脆い!!」

 

 確かな手ごたえを感じて、アルスが思わず歓喜の声を漏らした。だがそれでよかった。もう、その装甲は、()()姿()()()()()()()()()()()()

 光刃が装甲を抉ったのと同時に機体各所から蒼色のディメンションノイズが吹き上がる。更に装甲も随所がスライドし始める。脚部、腹部、胸部。そして受け止めた腕部も装甲が割れ、同じくDNが漏れ出す。()()D()N()()。その挙動に困惑を見せるアルス。

 

「な、何がどうなって……!?」

 

 うろたえている間に、こちらの準備は終わった。機体からスターターにより機能の名称が読み上げられる。

 

 

 

 

『ロックフルアーマー・オールパージ!!』

 

 

 

 

 元の機体の装甲が一斉にはじけ飛んだ。ビームセイバーが切り込んだ装甲まで分離し、はじけ飛ぶ装甲の直撃も受け大きく後退させられるマキナート・レイ。アルスは頭を振って意識をはっきりさせる。

 

「クソッ……パージだと!?……な、あれは!?」

 

 意識が飛ぶのを耐えたアルスが絶句する。当然だろう。先程まで自身が一度は倒したビレフトの姿が消え、代わりに細身の黒い機体が姿を現したのだ。

その機体は背部に奇怪な機械の翼を持ち、蒼いDNを放出している。そして頭部はマキナートに似た大型の装甲は消え、代わりに人の頭に似た頭部が露出する。その額にはV字を2つ、重なるように形成するブレードアンテナ。下に蒼く光る、2つの双眼がアルスを見つめ返す。

 マキナートとドラグーナに似たMSは一瞬にしてそのどちらでもない、かつて創世記に出現したとされる救世主の姿にそっくりなMSへと姿を変えていたのである。

装依した機体のコンソールにMSの名が表示される。機体名をスターター音声が二つ名とも言えるものと共に読み上げる。

 

 

『スターティング・ゼロ・アウェイクン―――――シュバルトゼロガンダム』

 

 

「シュバルトゼロ…………ガンダム……ッ!!」

 

 

 元はすぐに背中の方に手を伸ばす。翼の付け根がカバーを開き、内蔵されたビームサーベルの柄を右手で握る。抜き放ったビームサーベルが大振りの光刃と反対側に小さな光刃を煌めかせる。ガンダムはその剣を構え、マキナート・レイへと肉薄する。

 

「なっ……こんの……!」

 

 ガンダムの姿に注意散漫となっていたアルスは、ガンダムの急接近に対応が遅れる。ビームセイバーで防御しようとするが、大振りな武装が仇となり、防御する前にその右腕をシュバルトゼロガンダムのビームサーベルに斬り飛ばされる。

 勝負は一瞬で決まった。だが手負いのマキナート・レイにとどめを刺すことなく、元はその脇を通り抜ける。その先には、待ち望んだ救世主の姿に狂乱となるワルトの姿がある。

 

「き、来たぞ!!わてらの最後の希望が……がぁ!?」

 

「……黙ってろ、屑が」

 

 怒りのこもった声で元はワルトの腰部分を両断する。いくら非道だったとはいえ生身の人間を攻撃するのはマキナス、ドラグディア双方に衝撃を与える、元ももちろんどうかと思った。しかし、本当に先程から騒がしかったこと、先程と全く違うことを口走り始めたこと、そして自身の主(ジャンヌ)への仕打ちへの腹いせがこの結果を生んだのだった。

 ワルトを切り捨てたシュバルトゼロガンダムは一気に上空へと飛翔する。空中で制止した元は周波数を合わせてガンドへと回線をつなげる。

 

「周波数調整……ガンド様、聞こえますか」

 

『は、ハジメ?本当にハジメなのか!?』

 

 その声に動揺があるのを元は感じ取った。目まぐるしく変わる状況にガンドも付いていけなかったのだ。今の状況(自分)を説明したい元だったが、時間がないことに危機感を感じ、端的に要請だけを伝える。

 

「お嬢様の所へ行きます。この場はお願いできますか」

 

 あまりにも身勝手な要請だと元も思った。しかし今ベストな手段はこれしかないのだ。ポルンがまたジャンヌに手を出しているのだとしたら、いくら放出した高純度DNで通信を阻害しているにしても、いずれ気付かれる。時間がないのだ。

 おそらく行動の是非を問われるのだろう。元は覚悟した。それでもジャンヌを今助けられるのなら、それでもいい覚悟だった。ところがわずかな沈黙の後、回線先から返ってきたのは意外な言葉だった。

 

『……当たり前だ。私は君に娘の安否を託したんだ。行け、ガンダムッ!!いや、ハジメ!!』

 

「……はい!シュバルトゼロガンダム、黒和元、飛翔する!!」

 

 そうだ、ガンド様は俺に賭けてくれた。だからあの時、手錠を壊した。なら、もう止まらない。成すことを、成して見せる!

激励の言葉を受け応答の返事を勢いよくすると、元はシュバルトゼロガンダムのバーニアを全開にする。全開で吹かした影響で古戦場跡の周囲を更に高純度DNが満たしていく。ガンダムが残した飛翔の軌跡を後に、古戦場もまた戦闘の光が満ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 聖トゥインクル学園の教室の1つ、詩巫女養成科のAクラスでポルン・ドンドは愉悦に浸っていた。目の前には下着を剥がれ、一糸まとわぬ姿のかつての主、ジャンヌ・ファーフニルが泣き顔で機械化されたシグットに羽交い絞めにされていた。

 少し離れた場所には、ドラグーナのボディーガード仕様が横たわっている。中身はフォーンだ。襲撃を掛けた直後、咄嗟に装依して邪魔をしてきたのだ。しかしマキナス精鋭は伊達ではない。その程度の性能のMSをすぐに制圧し、無事ターゲットを確保できたのだ。

 既に教室にいた他の生徒達はいない。フォーンが這いつくばる姿を横目にポルンがニヤついた様子でジャンヌの白い肌を触れる。

 

「い、嫌ぁ!!」

 

「フフフ……そんなに古竜人族の私に触れられるのが嫌ですか、お嬢様。ですが、お嬢様がいけないんですよ!」

 

 ポルンの脳裏にあの時の光景が蘇る。いつものように苛立つお嬢様を見て触らぬ神に祟りなしと余計なことを言わないようにとしていた時、間違えてお嬢様が大事にしていたハンカチをうっかり勝手に洗濯へと出してしまったのだ。

 少し臭いがあったので、と言ったのだが、それも聞かず、お嬢様は言い放った。「勝手にするのなら、もうわたくしの前をうろちょろしないで。古竜人族はこれだから」と。ただ自分はなぜ自分が古竜人族であることが理由で怒られたわけが分からず、どういうことか聞こうとしただけであったのに、聞くために手を引いたのが少し強かっただけにお嬢様が叫び、騒ぎとなって自分は家を追い出されたのだ。

 傍から見ればポルンが物事の解釈違いによる自業自得とも言える一幕だが、それでもポルンにとってはジャンヌが苛立って腹いせに自分のクビを切ったと思った。その怒りが。恨みが今ジャンヌへと晴らしきれない復讐を遂げさせようとした。

 

「貴女のその傲慢さを、私が裁く!!」

 

「ひっ!ぐぅ……ぅぁ……ぁっ」

 

「ポルン!!クソォ……!」

 

 ポルンの竜の面影が色濃く残る手が、ジャンヌの頬を強く平手打ちする。ジャンヌの頬が赤くうっすらと腫れ、更に尖った爪でひっかき傷を作る。ひっかき傷から血が滴り落ちる。痛みがジャンヌの眼から水滴を流させる。

 フォーンの悔しげな声が響く。ボディーガードであるにもかかわらずその仕事を果たせないことは、フォーンにとって耐えがたい苦痛だろう。その姿はポルンにとってとても恍惚に浸る光景だった。

 

「さぁ、そろそろ本番ですよ……私の復讐の、集大成を!!」

 

 ポルンはジャンヌの下腹部へと手を伸ばす。乙女の秘める場所、侵されざる聖域を穢すために。

 だが、ハプニングが訪れる。周りのマキナスの兵士達が異変に気付き始める。

 

「……何だ?通信が……」

 

「機体カメラも……どうなって……」

 

 マキナートが次々と周囲を見渡し始める。続いてジャンヌを羽交い絞めに拘束していたシグットも異変を口にする。

 

『周囲の通信感度悪化。駆動系に異常感知……』

 

 機械化され復活したシグットは運用にDNを用いている。しかし、その運用に支障が生じ始めている。次々と起こるおかしな状況にポルンも不信感を募らせる。

 

「なんだ、何が起きて……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 その言葉とほぼ同時だった。窓ガラスが割れる。外から割れた窓ガラスがポルンに襲い掛かる直前に外から飛来した「何か」が地面へと勢いよく教室内に着地する。同時に吹き上がった床を削る砂埃で周囲に突風を起こし、飛び散るはずだった窓ガラスさえ外側へと吹き飛ばす。

 着地の衝撃波は周囲の者達の視界を奪う。その間に次々と「何か」が周りを蹴散らすような音が耳に入ってくる。ポルンも腹に蹴りを入れられ、その場から退く。

 

「ぐぅっ!?何が……」

 

 同時に目の前の方でも金属同士の激突の後、シグットがこちらに吹き飛ばされてくる。当然その腕からジャンヌの姿は消えていた。

 馬鹿な、助けが来ただと!?この状況を知っているのは国境付近にいる当主やその仲間達だけのはず……失敗の連絡なども来ていないというのに、一体誰だ。私の邪魔をする輩は!!

 憎々しげに砂埃を真っすぐと睨み付けるポルン。砂煙が晴れてくるとポルンの眼にその襲撃者の正体がはっきりと映る。

 

『グガッ!!キサマ……私ノ……!』

 

「ば、馬鹿な……貴様は、貴様はッ!?」

 

 その姿にシグットが拒否反応の如く駆動音が騒がしくなる。ポルンも目の前の人物に驚きを感じえなかった。なぜなら、その人物は自分達の一番の仇敵で、国境で依頼主のマキナス軍が確保したいと言っていた人物―――――ハジメ・ナッシュの姿だったのである。

 上着を脱ぎ、シャツの埃を払いつつ目の前の仇敵はこちらにその眼を向ける。

 

「……お待たせしました、お嬢様」

 

 (ジャンヌ)への言葉と共に、強烈なまでの敵意がポルン達へと向けられるのであった。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。さぁ、この後のEPISODE17もすぐ見られる……はず!

ジャンヌ「な、なるほど……「ハジメ」さんは消えましたが、「元」さんが助けると……」

祝え、全ガンダムを祖に持ち、全ガンダムの祖たるガンダム、その名もシュバルトゼロガンダム……ここに再誕の瞬間である!

レイ「あはは、ウ○ズさんは帰ってねー?」

ジャンヌ「そうですね、ここガンダムの小説ですし」

いや、実際の所言いたかったからね、本編でも言いたいくらいだよ!?誰が言っているかは不明だけど(´・ω・`)

レイ「でもでも、いろんな意味で再誕だよねー」

ジャンヌ「主人公の意志で再び姿を現した救世主、そして主人公の意志で再び出現したシュバルトゼロガンダム……そのセリフ、光樹さんが言ってくださると意味がありそうですよね」

あ、ちなみに光樹君にツイッターの方は行ってもらうつもりだよ。

ジャンヌ「えぇ……(困惑)」

レイ「あはは……光樹君よくオッケーしてくれたね」

それでは次のお話も

レイ「同日公開だから続けてよろしくっ!」


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EPISODE16 引き継がれる、覚悟 Standby OK?5

どうも皆様。続けて投稿です。藤和木 士です。

ネイ「アシスタントのネイです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよぉ。さぁ、遂にガンダムちゃんと元君の登場ねぇ、無事「引き継がれた」わね。うふふっ!」

ネイ「……お姉ちゃん、このことを予測してたの?」

グリーフィア「ネイ。私だってそんなに万能じゃないわぁ。作者さん、後はよろしくするわ」

はいな。EPISODE16公開です。遂に復活したガンダム。その力が発揮される…?それでは本編へ。


 

 もうダメだ。そうジャンヌは思っていた。日常を破って自分を襲ってきたポルン達。フォーンが助けようとしてくれたが、ジャンヌが人質にされ、すぐに取り押さえられた。抵抗がなくなるとすぐにジャンヌ自身の服がはぎ取られていった。クラスメイトが逃げる刹那にその姿を目に焼き付けたのは間違いない。あんまりだ。こんなのは。しかもマキナスのMSを操る兵士達、そして主犯格のポルンには堂々と見られ、衣服を剥ぎ取られる。

 どれだけ隠そうとしても隠すことのできない体。その体を男達に見られる辱め。それでもポルンはやめることなく、更にジャンヌの下腹部の秘所まで手を伸ばす。もう消えたいとさえ思ったジャンヌは現実逃避しようとした。しかし、砂煙と共に現れた最後の希望が、それをすべて吹き飛ばした。

 機械の身体となったマフィアのボスの頑強な腕による拘束を弾き飛ばし、ジャンヌを救い出した戦士。助け出された当初はそれが誰なのかは分からなかった。しかし衣服を掛けられ、砂埃が晴れた先で見た男性の後姿を見て、その人物を知った。

 少し前に自分の家で雇った記憶喪失の青年。自分の我儘に嫌と言わず、正直に自分を見てくれた人。倒れても、気を失ってでも自分を助けようとした男性。そして、服を剥がれていく中、咄嗟に名前を呼んだ、自分の従者。ハジメ・ナッシュは確かにジャンヌの前に立っていた。

 

「ハジメ……なの?」

 

 思わずそう声が出てしまう。本来なら、彼はドラグディアとマキナスの国境にいるはずなのだ。しかし自分の従者はその質問にもいつものように素早く、そして丁寧に答える。

 

「はい。いや、正確には違います。記憶の戻ったあなたの従者です」

 

「え…………」

 

 ハジメの言葉に引っかかりを感じたジャンヌ。すぐにその引っ掛かりが、記憶の戻ったことだと気づくと、混乱が生まれる。

 え、記憶が、戻った?ってことは、今のハジメは、本当のハジメなの……?なんだか、話しかけづらいっていうか……今、何を言えば……あ~あ~あ~!!

 想定外の事実に、ジャンヌは言葉に戸惑う。加えて状況も切羽詰まった状況だったため、ジャンヌはすぐに思い付く言葉を口にした。

 

「……お、遅いのよ!!あなたは、いっつも……!」

 

 瞬間、ジャンヌの中で後悔が生まれた。ジャンヌは今まで男を遠ざけることがほとんどだ。そこに上着を貸されながらも裸体を隠さねばという思いが混ざった結果が、叱りの言葉だったのだ。更にジャンヌ自身は気づかなかったが、その言葉は記憶を取り戻すのも遅いという言葉にもなっていた。

 涙ながらの言葉にもなってしまい、ここで言うのはそんな言葉じゃないとその自己嫌悪も混ざった悲しみも顔に出るジャンヌ。しかし、震えるジャンヌの言葉に、従者たる青年は変わらぬこれまでの対応で、これまでよりも少し明るい声音で応えた。

 

「はい。自分はいつも遅い。それは自覚しています。だからこそ今だけは、いやこれからは全力で、貴女を護ります」

 

「ッ!!…………うん」

 

 言葉の衝撃さに反射的に返事をする。顔が熱くなるのをジャンヌははっきりと感じていた。言葉による熱はジャンヌの本音を引き出したのだ。

 しかし、その言葉を聞いていたポルンがハジメの考えに自身が受けた仕打ちを交えて異を唱える。

 

「ヒーローのように助けに来られたからと言って、調子に乗るなよ救世主気取りの小僧!その女は、私を目立った理由なく捨てたのだ!どうせお前も、これが終われば私と同じになる。私はお前の未来の姿だ!!だから私の邪魔をするな!」

 

 自身とはまるで違ったハジメの言葉とジャンヌの反応から、嫉妬の混ざった宣告をされる。未来の姿という単語にジャンヌの中に不安が生まれる。本当にそうなってしまうのではという不安だ。だがハジメはポルンの嫉妬交じりの言葉を受け止め、そのうえで今の行動を取った自分自身の想いを押し通す。

 

「そうかもしれない。だけど、今そんなことは分からない。そんな恐れを抱いて、護れるわけがない。例えクビにされるとしても、今俺が彼女を護らなくていい理由になんかならない。だからこそ、俺はお前の邪魔をする!」

 

「ハジメ……」

 

「貴様ァ…………!」

 

 ハジメの言葉は、その言葉を這いつくばりながらも聞いていたフォーンと敵対するポルンの声を引き出す。そして、ハジメはボックス状のユニットを取り出した。

 背後から見るジャンヌも、そのボックス状のユニットが何なのか分かった。スターターだ。ハジメが誘拐事件の時に使ったのを、ジャンヌも見ていた。ジャンヌの中で、あの時の光景が蘇る。血が辺りに飛び散った地獄絵図に体が震える。恐い。あの時のようにまたここも血が飛び散るのなら、自分はまた正常でいられるのだろうか。

 ジャンヌの震えが止まらないまま、ハジメがスターターを装着する。腰に巻いたスターターに星と歯車の合わさったロックリリーサーを装填した。その光景を見ると、高笑いを上げてポルンは話し出す。

 

「アーハッハッハ!!またあの時のMSか。だけど無駄だ!」

 

 既に装着していたスターターを起動させてポルンはマキナスのMSを装依する。周囲のマキナス兵が装依するMSのカラーリングを黒に変更した、背部に装備のない軽装仕様のMSだ。

 

「この機体は、お前を倒すためにチューンナップされたマキナスのMS、マキナート・アンチドラグさ!それにモビルウエポンになったシグットもいる……。貴様に、勝ち目などないッ!!」

 

 ポルンは自身のMSに隠すことのない自信を言い放って見せる。シグットもかつての仕打ちに打ち震えるように駆動音を鳴らす。それどころか数が違う。いくらあのMSでも、どうにもならない。

 しかしポルン達の復讐の炎とジャンヌの心の中の不安を打ち消すものをハジメは見せることとなる。ポケットからカードを取り出し、ポルンの言葉に否定の問いかけをする。

 

「それは、どうかな」

 

「何?そのカードは……?」

 

 ジャンヌ自身からはカードの裏面の黒い部分しか見えなかった。だがそれがこの状況を変えるほどの何かだとハジメの喋り方からして予測する。

 ハジメはそのカードをスターターの横から内部に装填する。すると、ジャンヌへととあることを告げだした。

 

「お嬢様」

 

「な、何?」

 

「…………黒和元。それが俺の名前です」

 

「え……」

 

 名前だった。ハジメの本当の名前。なぜそんなことを今告げたのか。ジャンヌの疑問はすぐに答えが出る。

 

『Standby OK?』

 

 スターターを叩く音の後、確認を促す音声が響く。その言葉にハジメは応える。

 

「装依」

 

 光のゲートがハジメを挟み込む。挟み込んだ衝撃で周囲に突風が起こる。その突風にその場にいた全員が怯む。何かが激突する衝撃音も響く中、ジャンヌは必死にハジメの姿を視認しようと目を開く。

 挟み込まれたゲートが上から下へ通り抜けると更に強く風が吹き荒れる。しかしその風は唐突に止む。風を止ませた存在、ハジメのMSがその姿を現した。

 

 

 

 

「……え」

 

 

 

 

 ジャンヌの口から声が漏れる。それは動揺と、困惑、唖然を含む声だ。なぜ自分の前にそのMSがいるのか、なぜハジメがそのMSを纏っているのか。そのMSは、自分にとって最悪の存在と同じ姿をしていた。

 にもかかわらず、ジャンヌは酷く落ち着いていた。否、落ち着いていたのではない。そのMSに見惚れていて、言葉が出てこなかったのだ。いつの間にか彼女の頬を涙が濡らす。先程までの悲しみではない。感動とも呼べる、熱い情動による涙だ。

 突風の間に周囲のマキナスのMSを倒し、ジャンヌの元に駆け寄ったフォーンの視線も気にならない程、ジャンヌははっきりとハジメのMSの後ろ姿を見つめていた。

 黒い装甲に機械の翼を持った、蒼い粒子を放出するあの時の機体(ガンダム)を。その瞳には、かつての自分が持っていた救世主への憎しみなどなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『スターティング・ゼロ・アウェイクン シュバルトゼロガンダム』

 

 その体をガンダムに変えた元は状況を機体の示す情報から、周囲の状況を確かめる。そして後方に移動したフォーンに要請を飛ばす。

 

「フォーン様、ジャンヌお嬢様をお願いします」

 

「な、ハジメ。その姿は……」

 

 フォーンのやや狼狽した声が返ってくる。彼もまた元のガンダムに思う所があるのだろう。しかし事態は予断を許さない。元はそのまま言葉で押し切る。

 

「お願いします」

 

「あ、あぁ……分かった」

 

 声を溜めての発言にたじろぎながらも了承をするフォーン。元はそのままOSとなっているスタートに指示をする。

 

「スタート、拳による格闘戦で行く」

 

「格闘戦だと?……分かった。機体回路シフト」

 

(ありがとな、スタート……!)

 

 スタートが驚きの声を上げるも、素直にそれに従い機体の調整を行う。元としては今、ジャンヌの前でまた血を見せたくなかった。スタートが察してくれたことに心の中で感謝を送る。

 こちらが戦闘態勢を取るとポルンもまた立ちはだかる敵への闘志をみなぎらせ、マキナスの兵士達に指示を飛ばす。

 

「えぇい、ガンダムだとぉ!?それでも叩き潰す!!やれい、マキナスの兵士共!!」

 

「っ!命令するな、竜人族!!行くぞ、全機!!」

 

 隊長格のマキナート・アンチドラグを筆頭に4機からなるマキナスのMSは突撃してくる。先頭の機体がライフルをこちらに向けた。

 

「……行くっ!」

 

 元は機体のスラスター噴射と同時に地面を蹴って跳ぶ。その一飛びで距離を詰める。驚く暇を与える前に飛び蹴りを浴びせる。

 

「ガァッ!!?」

 

「……次っ」

 

 敵と接地したガンダムの足からDNの波動が発せられる。同時にマキナート・アンチドラグの胸部にへこみが生まれ、カメラアイから光が失われた。倒した敵を足場に、更にガンダムは他の敵へと強襲していく。

 蹴り飛ばし、かかと落とし、頭部を張り手してからの鳩尾への右ストレートでマキナス兵を全滅させる。破竹の勢いをそのままにハジメはポルンとシグットにも攻撃を行う。

 

「ぐえっ、く、速すぎる……!」

 

『オノレオノレオノレェ!!何故当たらない!!』

 

拳から伝える蒼いDNの波動を体に受け、徐々に動きが鈍っていく2人。2人の攻撃に掠めることなくシュバルトゼロガンダムは連続して攻撃、反動で回避を行っていく。

 背部のウイングによる恩恵は伊達ではない。飛べそうにないウイングによる機動は元の中に確かな手ごたえを覚える。この機体ならやれると。

 続く猛攻にポルン達も動く。攻撃を何とか受け止めると、そのまま弾き飛ばして距離を取った。

 

「えぇい、調子に乗るなァ!来い、シグットォ!!」

 

『システム認証、モビルウエポンモードへ移行』

 

 シグットの機械的な口調と共にその体が胸部、両腕、脚部の5つに分離する。両腕はポルンの腕に上から装着される。続いて脚部が左右を逆に腕があったところに合体する。異形の姿となったシグットの身体は最終的にポルンのマキナート・アンチドラグの背部に合体し、背負う形となって足底に備えられたキャノン砲の砲口をこちらに向けられる。

 

「見よ、これが私の全力だ!!吹き飛べェ!!」

 

 ポルンの一声と共に両腕・脚部の4門のキャノン砲を発砲する。元は避けることなくその攻撃を機体の四肢で打ち消していく。

 

(後ろにはお嬢様がいる。ここは退けないッ!!)

 

 背後にいるジャンヌとフォーンを護るために、ここを退くことは許されない。しかしいつまでもこの攻撃を耐え忍ぶのは厳しいだろう。一気にとどめを刺すための一撃を元は欲する。スタートもその事実を指摘した。

 

「おい、このままだとジリ貧だぞ。どうする」

 

「分かっている。あいつに最大の一撃を叩き込む方法は!?あのMSが出した必殺技みたいなのは無いのか!?」

 

 元の言うあのMSとはマキナート・レイのことだ。あの時マキナート・レイはビームの剣を更に大きくしてビレフトの装依を解除した。あのくらいの一撃なら、目の前の敵も簡単に倒せるだろうと考えたのだ。

 このMS(ガンダム)もその流れの始まりと言える機体。元の要求にスタートは笑う。

 

「あぁ、もちろんさ」

 

「ならっ!!」

 

 元の声に答えるように、ガンダムがツインアイを光らせる。同時に光弾を連続して弾き飛ばす。返された光弾はそのままポルンとシグットが合体したMSに直撃し、引き下がる。

 

「うごぁ!?」

 

「今だ!」

 

 反撃により生まれた隙を元は逃さない。ガンダムが高濃度DNを多量に放出する。胸部のDNジェネレーターの回転駆動数が上昇する。

 

 

 

 

DNF(ディメンションノイズフルバースト)、ディメンションスパイク』

 

 

 

 

 スターターの音声が鳴る。放出されたDNは一気にシュバルトゼロガンダムの脚部に集中する。光が完全に集まり切ったところで、元は跳躍した。ウイングからも凄まじい量の高濃度DNが放出され、教室を再び蒼いDNが舞い散る。

 

「いっけぇぇぇぇ!!」

 

「させるかァァァァ」

 

 元の声と共にガンダムは蹴りの態勢でポルン達に突貫する。ポルンもその攻撃を迎撃しようとする。だが、放つ砲撃はガンダムを押し留めることは叶わない。そのままボレーキックがポルンの顔を直撃して左方向へと吹っ飛ばす。

 

「がぁ!?あ、あぁ……」

 

 それでもまだポルンは倒れない。機体にスパークが散ってはいても、立ち上がって痛みに振るえる体を立て直そうとしている。元もそれを許しはしない。

 

「これで終わらせる!」

 

『DNF、ディメンションナックル』

 

 元の宣言に高濃度DNが今度は拳へと集まっていく。光を帯びた拳を握り、再び距離を詰めるシュバルトゼロガンダム。空いた手でポルンのマキナート・アンチドラグの肩を抑え込む。

 

 

 

 

「ひぃ!?」

 

 

 

 

「これが、俺の―――――覚悟だ!」

 

 

 

 

 逃げることの出来ない敵機へ光り輝く拳を叩き込む。装甲との衝突で周囲の空気が、建物が衝撃に震える。それだけでも凄まじい威力。だがそれでは終わらない。そのまま地面へとポルンの機体が叩き付けられ、教室内を砂塵で埋め尽くした。

 衝撃を受け建物が振動する。ポルンを挟んで伝導した高濃度DNによる打撃はまるで地震が起こったほど衝撃を周囲に与える。そしてそれをもろに喰らったポルンは地面へとその体を投げ出す形で身動きが取れなくなっていた。背後に背負っていたシグットも地面とのプレスで大破している。どちらも身動きが取れない状態で完全に機能を停止していた。

 戦闘の終了と共に、元はジャンヌの方に顔を向ける。拳の衝撃で耳を塞いでいたジャンヌだったが、戦闘が終わったことに気づくと塞いでいた手を降ろす。ジャンヌの口は呆然でお開いたままだ。

 元はガンダムの状態でジャンヌの方へと歩きで向かっていく。危機感を覚えたフォーンが遮ろうとしたが、ジャンヌがそれを手で断って横に控えさせる。その表情は先程までとはうって変わって肝の据わったような落ち着いた表情だ。元はそのまま距離を詰めていく。そうしてジャンヌの目の前まで来たところで元が動く。ジャンヌに対し膝を折って跪く。

 唐突な行動はフォーンに戸惑いを露わにさせる。しかしジャンヌはそれを分かっていたようにじっと見つめる。元は顔を下げたままジャンヌに報告する。

 

「周囲の敵を制圧しました、お嬢様」

 

 元はそう明言する。先程の元とはうって変わるような発言だ。だが従者として元はそう言わなければならないと判断し、ジャンヌの前でそう言ったのだ。

 だがジャンヌもまたそれを理解していた。だからこそジャンヌは裸体を隠す元の上着の前を強く握って隠すようにしながら返答する。

 

「……ありがとう、元。顔を上げて」

 

 ジャンヌの声に従って、顔を上げる。するとそこには今までに見たことがない、ジャンヌの微笑みがあった。同時に破顔寸前で大丈夫だろうかと思う部分もある表情だ。しかしその表情に元はどこか安心感を覚えた。むしろそれを見て元の心はとても充足感に満ちていた。自分は護ることが出来たのだと。

 

「お嬢様……」

 

「も、もういいから!あ、いや、今だけはって意味で……」

 

 

 

 

 しかし、甘い時間は終わりを告げられる。

 

「クソォ……よくもぉ!!」

 

「っ!まだ動けるのか」

 

 後ろで物音がして振り返ると、体を無理に起こそうとするポルンの姿があった。だがそれだけではない。先程の攻撃で機能を停止させたはずのマキナスのMSもぎこちない動作ながらも全機立ち上がろうとしていたのだ。

 自然と戦闘の構えを取る。しかしそれが無意味であることを知らされる。

 

「こうなれば、最後の策だ!!」

 

 ポルンの声に共鳴するように、全機から同じような音が響き始める。甲高い音で周囲に響く音はただ事ではないことを3人に感じさせる。だが音を聞いていたフォーンがすぐに正体に気づく。

 

「まさか、自爆か!?」

 

「何!?」

 

「そうだ、死なばもろともォォォォォ!!」

 

 ポルンの雄たけびが響いてすぐに元はジャンヌを抱きしめる。少しでもジャンヌを爆発から護るために咄嗟にとった防御行動だ。

 当然それだけでジャンヌを護ることなど出来ないと分かっていた。しかし元は何があってもジャンヌを護るという決意があった。ジャンヌの無事を強く願望する。

 

 

 

 

(頼む、俺にお嬢様を護る……力を!!)

 

 

 

 

 その時だ。奇跡が起きた。いや、軌跡が現れたとでもいうべきだろうか。元のガンダムの背部、ウイングの羽とも言えるパーツが根元から6つ分離する。それらのパーツは空中を光の軌跡を生み出しながらハジメ達の周囲に展開すると、光の壁が彼らを覆うように生成する。

 それに関係なく、ポルン達の機体が発光し大爆発を引き起こす。教室内の全てを破壊するほどの大爆発が教室を包み込む。

 爆発が収まると教室内は焦土と化していた。机の中に入っていた教科書なども全て燃え尽きていて、机は炭へと変わってしまっていた。ただ唯一、教室内で先程と同じ状態で残っていたのは光の障壁で覆われていたフォーンのドラグーナ・ガードマンと元のシュバルトゼロガンダム、そして元が庇うように抱きしめていたジャンヌだった。

 轟音が止んだのを感じ、元は恐る恐る目を開ける。と周囲が光の障壁で覆われていることに気づく。スタートに何が起こったのかを問いただす。

 

「スタート、これは……一体……」

 

「……あり得ないな。だが、これはお前がやったことだよ。機体のダメージはフィン・ファンネル以外一切ねぇ」

 

 スタートがフィン・ファンネルと呼んだそれが光の障壁を消失させると、力を失ったかのように地面へと落下していく。同時に元は自分の中で何かの感覚がなくなったのを感じたが、それよりも元は先に腕の中にいたジャンヌの無事を確かめる。

 

「お嬢様!大丈夫ですか」

 

「え、えぇ……だいじょ……ッ!?」

 

 ジャンヌの声が唐突に止まる。急を要するような反応で下を見たジャンヌに元は何かあったのかと同じく下を見る。

 

「え…………あ」

 

 そこで気づく。思い出した。ジャンヌの現在の状況に。

 ……そうだ、今お嬢様はほぼ裸の状態だ。あの状態を見るのは流石に恥ずかしいと思って上着だけ羽織らせたけど、それもスズメの涙程度の遮蔽物だ。それを忘れて今俺はお嬢様を抱いている。……これ、不味いやつだ?

 ガンダムを挟んでいるとはいえ、元は半裸状態のジャンヌを抱きしめていた。この状況をセーフかそれともアウトか。判断するのは他人、そして抱きしめられているジャンヌ本人だ。

 当の本人は顔を赤くしている。そして元は顔を下に向けたまま、ジャンヌの機体に押し付けられて少し潰れている胸が半分見える形になっている。このままだとダメなことは元にも分かっていた。しかし彼も1人の男性。主人とはいえその体に興味が抱かないわけではない。

 ダメだ、見るな自分。いや、でも意外とお嬢様ってそれなりにスタイルはいい……ってそんなこと考えている場合じゃな……。

 やがていつまでも自身の裸を堪能するような形となっている元に対し、ジャンヌは顔面を真っ赤にして現在抱いている気持ちを象徴する絶叫を発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?じろじろ見ないでぇ!!?抱き付かないでぇ!!?」

 

「も、申し訳ございませんでしたッ!?」

 

 

 騒動の収まった学園に2人の声が響き渡るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 同時刻、校庭には警察のテントが張られていた。そこはジャンヌを人質にしたことへの対策本部が設置され、避難してきた学園の生徒達も避難していた。

 爆発が収まったことで全員騒然としていたのだが、直後にジャンヌの声が響いたことで別の意味で騒がしくなっていた。

 

「この声……お嬢様!?」

 

「うん、ジャンヌちゃんだよ!!しかもハジメ君もいるみたいっ!!よかったぁ、無事だったんだぁ!!」

 

 ジャンヌの無事に安堵を見せるネアとレイア。2人の眼には涙が浮かんでいて、心配さを物語っていた。ジャンヌの無事に安堵する一方、クラスメイトの一部が絶叫の内容に気づく。

 

「ねぇ、なんか見ないでとか、抱き付かないでとか言ってなかった?」

 

「確かに……。そういえば、ジャンヌさんって犯人に服を無理矢理剥されてなかったっけ?」

 

「あ、私も見たー!……え、まさか……ハジメ君そんな大胆なことを!?」

 

「え!?うっそー!?」

 

 生徒達の話に黄色い物が混ざり始める。徐々にその話が警察の人達の耳にも入って、状況は混乱していく。

 

「え……ハジメという生徒は、人質救出の為に飛び込んだ生徒の名前ですか?その生徒は何かそういった前科のある人物で……?」

 

「い、いや、多分ないと思うんですが……。と、とりあえず状況確認をして、それ次第で身柄確保ということで!」

 

「わ、分かりました!全部隊突撃準備!!」

 

『了解!』

 

 警察も先生達も不安の中教室内への突撃を検討していく。そのテントから少し離れた木陰で1人の少女がコンパクトを見つめていた。コンパクトには鏡ではなく液晶が付いていて、しかも液晶は黒くノイズで塗りつぶされていて何も映らない。

 ……まさか自爆するだなんて。これであのMSのパイロット達から情報を引き出すことは出来なくなっちゃったってことね。しかも仕掛けていた監視カメラも燃えちゃったし。あれ高かったんだけどなぁ……。

 ため息交じりにコンパクトを閉じる。少女はジャンヌ達の教室に監視カメラを仕掛けていた。それも設置型ではなく、飛ばしてリモコンで操作できるリモート式のものだ。彼女はとある理由でジャンヌ達の教室を前々から監視していたのだ。

 今回は少女の目的に関わってきていなかったので状況確認がてらに使用していたのだが、そこで彼女は予想外の物を目撃した。

 

(ハジメ・ナッシュ。いえ、今はクロワ・ハジメかしら。話には聞いていたけど、いつのまにガンダムに……。けどこれは嬉しい誤算ね)

 

 少女はその顔に笑みを浮かべる。数日前は不安を多数抱えていた彼女は久々のグッドニュースに頬が緩んだのだ。

 計画は順調。彼も無事ドラグディアに残ることになった。なら、後は計画を実行に移すだけ。私の妹が危険な目に遭ったにも関わらず、もみ消そうとしたあの人に復讐するまで、あと少し……しかも、ガンダムの力を借りられるかもしれないだなんてっ、これで私の願いは果たされる……。首を洗って待っていなさい、お父様、それにお義母様?うふふっ。

 少女は空を見上げる。濃い目のオレンジ髪が揺れる。左右それぞれで大小2つのツインテールを結んだ髪は雰囲気と合わせてお転婆さと気品さを同時に感じさせる。そのような不思議な少女はご機嫌な様子で校舎内へと戻っていく。彼女の物語がもうすぐ動き出そうとしている。

 

 

 

 そしてその少女を見つめるように白色の髪の少女の姿があった。その少女もまた口元を酷く緩めていたのだった。

 

 

 

 

 竜と機械の世界、マキナ・ドランディアの運命の歯車は動き出した。新たな戦場は円形の決闘場。竜の怒りと共に新たな物語を生み出す。

 

 

第1章 END

 

NEXT EPISODE AND NEXT CHAPTER

 




今回もお読みいただきありがとうございます。いやぁ……やっぱ主役機が動くのはいいねぇ……。

ネイ「そ、そうですか……でもジャンヌ・Fさんと元さんの最後のあれは……」

あはは(´▽`*)アハッ

ネイ「アハッじゃないです。今すぐハザー○フィニッシュされたいですか?」

ごめんなさいッ( TДT)

グリーフィア「まぁまぁ、いいじゃないの~。それより、私はファンネルが動いた時のスタート君の反応と、最後の描写が気になったわぁ。あれだれ?」

あなたが言うとすっごい動揺するんですがそれ……(;´・ω・)まぁ、次の章への伏線ですよ。とりあえず今はそれで。

グリーフィア「ふーん、そう。まぁ気になることは他にもあるけれど、それは次の黒の館でね!」

あっはい(´・ω・`)では次は黒の館になります。次回も……

ネイ「よろしくお願いします」


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黒の館DN 異世界戦争編 第2回 前編

どうも皆様。藤和木 士です。
さて、前回の投稿時にも書いたように、今回は解説回こと黒の館DNです。

前半はサブキャラクターとガンダム以外のMS達、後半に主人公である黒和元とガンダム、そしてビレフトの隠された設定などを明かしていこうと思っています。

それでは、解説本編をどうぞ。


 

 

士「祝、元君登場&ガンダム登場!\(^o^)/」

 

ジャンヌ「あぁ、作者としては主人公が記憶を取り戻すというのはリベンジ的な意味合いがあるので余計に喜んでいるんですね」

 

レイ「リベンジ……あ、光樹君……」

 

士「それ以上はダメージがデカいからやめようか(^q^)さて、黒の館は第2回、第1章のこれまでで登場したキャラを紹介、そして登場したMSの紹介になります、藤和木 士です」

 

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌ・ドラニエスです」

 

レイ「アシスタントのレイ・オーバだよっ!ハジメ君から元君になって、そこからの怒涛の展開はもう爽快感があったねっ!」

 

士「あはは、アーマーパージからのガンダム出現は一回やってみたかったんですよね」

 

ジャンヌ「……けどこの展開、仮面の戦士の要素をどことなく含んでいるような……」

 

士「ナルシストで自意識過剰、そして天の道を往く……」

 

ジャンヌ「確信犯じゃないですか……」

 

士「ぶっちゃけスターターがドライ○゛ーみたいなもんだから開き直ってる(´・ω・`)さて、まずは主人公の……と行きたいところだけど先にサブキャラの紹介から~」

 

レイ「あぁ……すっごい気になる……」

 

 

 

 

 

バァン・ウロヴォース

 

性別 男

竜人族

身長 182㎝

髪色 茶髪

出身地 ドラグディア フリュウ州 ライネス市 ヴァット村

年齢 57→58

誕生日 5月9日

血液型 B

好きなもの ヴール茶、茶葉栽培

嫌いなもの キノコ類

愛称 亡霊竜騎士

 

・ドラグディア軍の総司令部の防衛隊長を務める男性。階級は少将。ドラグディア軍総本部を守る「三竜将」の1人である。かつては「亡霊竜騎士」とも呼ばれていた。

 誘拐事件後に初めて元と邂逅し、彼に事の仔細を伝える。国境での戦闘を見越して整備長のヴェールと共に簡単な戦闘技術や機体情報を教え、交渉時にも自身の機体を持ち、元が離脱後には自身の機体の殲滅力でその場を制圧し、マキナスの者達を後退させた。

 お茶を淹れるのが趣味であり、そのお茶は日本茶によく似ている品種。彼の出身地はそのお茶の名産地であるとのこと。お気に入りはヴール茶という品種。

 登場機は現時点では登場していないものの、名称は「ドラグーナ・ヴォロス」という領域制圧機。

 人物モデルは鉄血のオルフェンズの「ラスタル・エリオン」。頬に古傷があるのと、髪の生え方が左右逆になっている物をイメージ。

 

 

 

ヴェール・フリード

 

性別 女

身長 157㎝

髪色 緑

出身地 ドラグディア フリュウ州 セント・ニーベリュング市

年齢 28歳

誕生日 10月30日

血液型 AB

好きなもの あんみつ、機械解体

嫌いなもの 機械以外の騒音、辛いもの全般

愛称 ヴェール、ヴェルフ

 

・ドラグディア軍のモビルスーツ整備主任を務める女性。フリード家の血筋であり、7人兄妹の末妹にあたる。フォーンの妹。兄や姉達の多くが戦場にて多くの成果を挙げるのとは対照的に、彼女は機械工学に長ける。当初は家の方針で兄たちと同じく戦闘に関する知識を教えられていたが、才能がなく、教育係に呆れられていたものの、当時のモビルスーツ整備長で、偶然家を訪れていた「マルス・ガリス」の目に留まる。当主であったグランツと相談し、彼女を整備士見習いとして家を出る。弟子になった彼女はその構造把握能力と手先の器用さにより瞬く間に一流となり、彼の部下として格納庫Dの整備長となる。階級は技術大尉。

 誘拐事件後にバァンと共にハジメと邂逅。事の詳細を伝え、バァンの預かりとなった彼にモビルスーツの装着に付いてレクチャーし、国境での戦闘に間接的に備えさせる。また国境での交渉時にもハジメとシュバルトゼロ・ビレフトを解析して得られた反証となるデータを提示し、交渉を陰から支えた。

人物モデルはデート・ア・ライブの整備士「ミルドレット・F・藤村」。髪色の変更と、眼鏡をかけないスタイル。ゴーグルも頭の上から首かけ式に変更。

 

 

 

 

アルス・ゲート

 

性別 男

機人族

身長 169㎝

髪色 灰

出身地 マキナス ラグナ・リーン州 ユグトラン市

年齢 19

誕生日 9月23日

血液型 A(正確には油血液である)

好きなもの オルゴール鑑賞、ポルファリン(ゼリー栄養補給食品)

嫌いなもの 口の中がパサパサするもの、裏切り

愛称 星剣使い

 

・マキナス軍に所属する機人族(アンドロイド)の少年。階級は少尉。家族の為にと軍学校に入学し学校を首席で卒業後、マキナス軍へと入隊する。入隊直後は活躍が少なかったものの、過去にワルトが開発した試作格闘戦モビルスーツ「マキナート・フラッシュ」の設計を洗練したモビルスーツ「マキナート・レイ」でその才能を開花。わずか1年で少尉へと上り詰める戦果を挙げる。所謂エースパイロットの部類に入るも、主に戦闘能力での部類は、の話であり、戦術面ではまだ精細さを欠く一面が見受けられる。また言葉の面でもまだ子供の部類である。

 誘拐事件後の国境での交渉時にマキナス側の護衛隊として登場。交渉が決裂し、ワルトの策が始動した直後にビレフトへと変身したハジメを倒し、罵倒する。しかしその後起き上がって来た元の変身したビレフトから装甲をパージしたシュバルトゼロガンダムに隙を突かれ機体の右腕を両断され、逃してしまう。この際から元を強く意識するようになる。

 人物モデルはガンダムAGEのアセム・アスノ。モデル元より目が鋭くなり、更に髪もシャープさが出ているイメージで、苛立ちの印象を感じさせる。

 

 

 

 

ワルト

・マキナス出身の老考古学者ロボット。古くからガンダムについて調べている。その関係上モビルスーツにも詳しく、かつてはマキナスのモビルスーツ開発計画にも参加していた。戦争が嫌いで、ガンダムの出現でそれが収まると盲信している。それ故に狂気の行動に走ってしまいがちである。

 誘拐事件編では自身が発見した救世主ガンダムの装依者と思われる元を研究しようとマキナス軍に協力を要請、元の引き渡しとポルンらに学園襲撃、立てこもり事件を起こさせている。

 外見モデルはドラえもんのゴンスケ。……21エモンのゴンスケでも可。体色は青銅色に近い。

 

 

 

ライド・アクセラー

・マキナス軍の部隊の1つ「アクセラー中隊」の隊長。階級は少佐。ハジメの身柄引き取り部隊の隊長として依頼人のワルトと部下のアルスと共にヴールーン古戦場跡にやってくる。

 マキナス軍人としてはやや過激だが、仲間意識はとても強く、むしろそのせいでドラグディアへの敵意が強くなってしまっている。

 

 

 

士「さて、登場人物紹介はここまでで、次は機体解説に移ります」

 

レイ「あれ、元君は!?」

 

士「ごめん、後半でガンダムといっしょに紹介させてください!(´;ω;`)」

 

ジャンヌ「あー……一緒に紹介したいって感じなんですね」

 

士「その通り!!ということでアルスのマキナート・レイとマキナート・アンチドラグ、それにモビルウエポンとなったシグットの紹介に行くぞー」

 

 

 

 

 

マキナート・レイ

MS-MM07AC

 

・マキナス軍に所属するネオ・エースの1人「アルス・ゲート」少尉専用機。マキナスのMSには珍しい近接格闘戦を主眼に置いたMSで、光剣「ビームセイバー」を主兵装とする機体。

 この機体は元々ワルトが制作した「マキナート・フラッシュ」と呼ばれる機体をベースに開発されており、フラッシュを偶発的ながら唯一運用レベルまで使いこなせたアルスに合わせてチューニングされたワンオフ機である。

 機体ジェネレーターを最新の高出力型に変更しており、その出力は近接戦での

瞬発力なら単基でドラグーナ・ガンドヴァルを凌駕するほど。更にその余剰出力からスラスターを吹かせた際スラスター周囲に光の刃が発生する「光波防刃(イージス・エリア)」を発生させる。

 ドラグディア軍のMSが格闘に比重していることに対し、同じ格闘戦で渡り合うためのカウンターカードであり、パイロットと合わせてマキナス軍では「星剣使い」、ドラグディアからは「光の機械騎士」と呼ばれるほどの力を有する。機体カラーは白に赤のラインを十字で各所にて交差させている。

 

 

【機能】

・カメラ切り替え機構

 近接戦に主眼を置くため、カメラは単眼の物に頭部ユニットから降ろされるバイザーユニットを装着するタイプで切り替えを行う。バイザーの方はアンチステルスセンサーで、敵機の微弱な電磁波をキャッチし、カメラに反映させる。

 

・アンチステルスセンサー

 機体バイザーを含めた対ステルスセンサー。レーダーに映らない敵を表示し、対抗できるようにする機能。夜間時には暗視ゴーグルとしても使用可能。

 

光波防刃(イージス・エリア)

 機体のスラスターからビームの刃を瞬間的に発生させる機能。本機のシステムで最も特殊なもので、武装としてではなくシステムとして記す。

 スラスターの噴射時に高出力型DNジェネレーターの余剰出力がスラスターから噴出、それが刃の形となって噴射される。この刃が実質ビームサーベルのような役割を果たし、その部分にある物を切断することからこの名が付いた。

 現状スラスターを噴射しての咄嗟の防御にくらいしか使えず、その性能も微妙。更に自在に制御できるものではなく、アルスが使って初めて防御に何とか使える程度の為、事実上の欠陥機能。ただしこの現象が発見されたことで、軍でも研究がおこなわれている。

 

 

【武装】

・ビームマシンガン

 機体の前腕部に格納されるビーム機関砲。マガジン式であり、前腕部カバー後部からマガジンを交換する。1砲門だけではあるが、これは2連式になると反動が強くなり、近接戦で不利になると判断されたため。威力も考案当時の想定より低め。

 

・ビームセイバー「レイ・グレード」

 本機の主力兵装。専用のシールドに格納される格闘兵装で、柄を展開してから幅広のビーム刃を展開する。

 出力はかなり高く、データ上ではシュバルトゼロ・ビレフトのビームサーベルの光刃を両断するほど。

 

・アサルトシールド

 左腕に装備されるシールド。変形式で近接戦にも対応しやすい。また下部にビームセイバーの柄を装備しており、シールドに装着したまま柄尻をビームガンの銃口として使用できる。

 

・ランサーガン

 サイドアーマーに装備される実体杭射出機。専用の弾丸を炸薬式で放つ武装。弾丸自体も貫通性が高く、着弾後炸裂させることが可能。弾数は両側合わせて4発。

 

・スプレッドビームキャノン

 胸部中央に備えられた拡散ビーム砲。射程は短く、近接戦でのけん制に使用される。

 

・レイ・ゴースト

 マキナート・レイ専用にチューニングされたゴースト。上部にブースター付き可動翼、下部に高出力バーニア付きプロペラントパックを備えている構成。近接での機動性を上げる他、ブースターに武装を懸架することも出来る。

 

・ビームサーベル

 ゴーストが接続される鎖骨部に装備される通常のビームサーベル。装着時にはビームバルカンとしても使用可能なほか、装着した状態で発振して奇襲をかけることも。

 

 

 

 

マキナート・アンチドラグ

形式番号 MS-MM07AD

 

 

機体解説

・マキナートをドラグディアの市街地まで戦線を推し進めた際に備えて開発された、市街地戦特化型MS。アンチドラグは対竜人族を意識して名付けられている。本来はマキナート・アサルトと名付けられる予定だったが、軍の上層部の意向からドラグディア必滅を願って、この名前となった経緯がある。

 近接用アーマーユニットと大型スラスターノズルを各所に装備し、市街地での限られた戦闘区画での戦闘を想定。更に武装もゴーストを装備しなくても十分戦闘できるように設計。そこに専用のライオットゴーストを装備して小さなフィールドでの戦闘力を限りなく高めているのが本機の特徴である。この特性から、暴徒鎮圧も兼ねていると思われる(もっとも、その暴徒は竜人族のことを示しているようだが)。

 本編ではマキナスに提供された改修機をドラグディアのポルンが使用。その際には挙動制御の他にモビルウエポンとなったシグットの装着を前提としてライオットゴーストを装備していない仕様になっている。また機体カラーも本来の白から黒にカラーを偏向しており、カムフラージュを考慮していると思われる。

 

 

【機能】

・カメラ切り替え機構

 マキナートの物と同型のカメラ切り替え機構。ゴーグル式の切り替え機構の他、本機の場合は頭部に新たに装備されたカメラ保護用の装甲カバーの装着もシステムに組み込まれている。

 

・パック換装機構「ゴーストシステム」

 ゴーストの脱着を行う機能。本機はここにモビルウエポンと化したシグットのパーツを装備する。

 

 

 

【武装】

・ビームアサルトカービン

 機体腰背部に装備される射撃兵装。中・近距離での射撃に用いられる。市街地での戦闘ではビームの威力などからも強すぎるが、銃身パーツをパージすることで近距離用のビームピストルへと切り替えることが出来る。

 ポルンの物は最初からビームピストルに変更している。

 

・コンバットビームサーベル

 ビームサーベルの柄部分にアサルトナイフを取り付けた特殊なビームサーベル。サイドアーマーに2本装備される。アサルトナイフは電動式で、MSの装甲も溶断できる代物。ビームサーベルなどを使用できない、隠密での行動時に熱を探知しにくくしたまま強襲することが可能。

 モデルはヤクト・ドーガ(ギュネイ機)のアサルトナイフ付きビームサーベル。

 

・ライオットシールド

 暴徒鎮圧用のライオットシールドの形状と似ていることから名付けられた実体シールド。側面に実弾バルカンを備えており、構えたままでも攻撃が可能。

 ポルン機はモビルウエポンとの兼ね合いでこのシールドを装備していない。

 

・ビームガン

 機体右腕部に装備されるけん制用射撃兵装。不意打ちに対処できるように腕部に装備されるが、近接距離ならメインカメラにダメージを与えることも可能。

 

・グレネードガン

 左腕部に装備される手榴弾射出武装。弾数は4発。連装式であり、撃つまでの時間もそれなりに早い。

 

・アサルトゴースト

 背部に装備される専用ゴースト。機首格納式。縦長のボックスが背中に付いたような装着法で、下側面に可動式スラスターが2つと大型バーニアが中央に配置されている。ただしこのスラスターは局地戦用に出力が上げられており、機体各部のバーニアと合わせてホバリングが可能なだけの推力を機体にもたらす。

 ポルン機はモビルウエポン・シグットとの兼ね合いでこの兵装は装備されない。

 

・大型スラスターノズル

 円錐型の大型スラスターノズル。機体の肩部前後にそれぞれ2発、脚部前面に2発を装備している。これらのスラスターノズルにより、機体に高い機動力を与えている。

 

 

モビルウエポンD012「シグット」

形式番号MW-D012

 

解説

・マキナスには、とある技術が存在する。生身の人間を兵器へと改造し、戦争へ投入する「機械化」。端的に言えば人体改造とも言えるその技術は、かつて戦争に投入された際、その非合法性から多くの批判を浴びたため、両国家間で禁忌の技術として封印された。

 しかし、裏では現在もその研究は極秘裏に進められ、存続していた。D012はドラグディアからとあるルートでポルン・ドンドと共に回収されたマフィア「シグット・フィル」の遺体を機械化・改造し、モビルスーツが武装へと成るシステム「モビルウエポンシステム」として復活させた姿である。遺体は首元から体にビームサーベルが突き入れられていたため、頭部と脳髄以外はほぼすべて機械化。腕はキャノン兼シールドユニット、足はポルンのマキナート・アンチドラグの脚部はバーニア兼ビームキャノン砲に変更。そして体の部分は全体の制御装置へと変貌。単体でも動く砲台として機能している。

 しかしその真価はポルンの操るマキナート・アンチドラグとで行われる「合体機構」である。正確にはモビルウエポンモードとなったD012「シグット」の四肢を分離・装着しただけであるが、これによりマキナート・アンチドラグの性能を向上。理論上はハジメの時のシュバルトゼロ・ビレフトを圧倒できるものとなっている。マキナスがハジメを確保することを考えているにも関わらず、これだけの性能がもたらされた背景には、ポルン・復活したシグットの強い希望(怨念とも言う)とも、上層部がハジメの反抗を考えていたためとも言われている。

 結果的に反抗した彼と渡り合う形になったがハジメではなく、元になった事、そしてそれに比例し、シュバルトゼロ・ビレフトがガンダムの姿を取り戻したことが最大の誤算となりポルンもろともディメンションスパイクからのディメンションナックルで戦闘不能になる。だが直後に自爆モードへ移行。口封じだけは立派に果たすこととなった(なおマキナス側からは最後の手段で命を賭してでも復讐を果たせ、と騙されていた模様)。

 

 

【機能】

・モビルウエポンモード

 本機最大にして唯一の能力。

 本機の場合は、体を分割し、モビルスーツの各部に合着することで能力を引き上げる。腕部はシールド兼キャノン砲として腕部に、脚部は腕部があった部分に再接合そして体は装甲前面のアタッチメントを展開してマキナート・アンチドラグの背部にゴーストとして合体し、脚部を背負い式のキャノン砲として運用する。体自体はフロントスカート部、脚部が元々接続されていた部分がバーニアとなる他、頭部はそのまま復活したシグットの意志のある頭部の為、第2の眼として働く。

 

 

【武装】

・シールドバスター

 機体の腕部を構成する複合兵装。腕にシールドが付いており、防御にそのまま使える他、手の連装キャノン砲で砲撃をこなせる。モビルウエポンモードではマキナート・アンチドラグの腕部に装着され、砲撃と防御を強化する。

 

・レッグバスター

 機体の脚部を構成するユニット。通常は足の部分がスラスターとして機能する。モビルウエポンモード時には脚部が機体の腕部があった部分に関節を接続、背部に背負ってキャノン砲として使用可能となる。

 

 

 

 

士「以上がモビルスーツ紹介になります。さぁ、次回はアシスタント4人登場での我らが主人公の再誕を祝おう!」

 

レイ「あれ、黒作者かな?」

 

ジャンヌ「ということは白い作者はライバルポジの人を紹介するときに登場ですかね?」

 

士「自分で言っておいてなんだけど、それはやはり恥ずかしいからやめよう(*ノωノ)」

 

ジャンヌ「口は災いの元ですよ、藤和木」

 

レイ「そうそう。でも元君や新しくなったゼロも見られるから楽しみっ!!」

 

士「では後編へ続きます」

 




ここで一旦前編は終了になります。同日公開の後半へと進んで頂けると幸いです。

では、後編もお楽しみください(´Д`)


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黒の館DN 異世界戦争編 第2回 後編

後半の解説の始まりです。藤和木 士です。

後半では主人公・黒和元と彼の駆るMSビレフトの伏せていた情報、そしてガンダムの設定についての紹介になります。

それでは解説後半へどうぞ。


 

 

士「さぁいよいよ第1章の真の大詰め!記憶を取り戻したハジメ・ナッシュこと黒和元君とそのMSシュバルトゼロガンダムの紹介だぁ!藤和木 士です!」

 

ジャンヌ「本当は前作SSRでもこういうことしたかったんでしょうね。その分盛り上がりましょうっ。ジャンヌ・ドラニエスです」

 

レイ「元君の情報がいよいよ見られるねっ。楽しみだな~、レイ・オーバだよっ」

 

ネイ「無事元さんが記憶を取り戻して安心ですね。ネイ・ランテイルです」

 

グリーフィア「というか作者君、これは範囲内にちゃんと入るのかしら?グリーフィア・ダルクよぉ。全部乗せ、ってやつかしらぁ?

 

士「いやグリーフィアさんそれは全部乗せではなく、オールスターと言うべきでは……(;´・ω・)」

 

グリーフィア「そんなことはどうでもいいわぁ。それより、ちゃっちゃと紹介したら?楽しみにしていたんでしょ?」

 

士「お、おう。では我らが主人公、黒和 元の紹介に移ります」

 

レイ「括目せよー!なんちゃってー」

 

 

 

 

黒和 元

性別 男

身長 169㎝

髪色 黒髪→銀髪

出身地 地球 日本 三枝県 四河市

    マキナ・ドランディア ドラグディア国 フリュウ州 セント・ニーベリュン市

 

年齢 20才

誕生日 6月15日

血液型 O

好きなもの ボーリング、カードゲーム、パズル、アップルパイ

嫌いなもの 納豆、甲殻類、ハヴィナス(ナスのドラグディアバージョン)

愛称 ハッジー、クロ、ゲン、和氏

 

・本作の主人公。地球に住む普通の人間。普通とは思えない過去を持ちつつも、普通の生活を送っていた。過去の事件以降、感情を出すことが少ないが、熱くなりやすい性格である。

 幼馴染の「間宮 柚羽」を亡くした事件以後、周囲の人間を遠ざけていたため、高校以降の友人は少ない。

 地球での成人式終了後のパーティーにて、元クラスメイトの星北 平次や桐谷 道治と飲んでいる中、モビルスーツ暴走事件に巻き込まれ元クラスメイトの蒼梨 深絵を逃がしたところで試作グレネード「シード」の爆発に巻き込まれる。

その後爆破による影響でボロボロの状態でなぜか救世主ガンダムに関係する遺跡前で発見される。(この時点で髪色は銀色になっている。)ゼロ・スターターを持っていたため救世主と誤解されるもその際の実験が原因で暴走、シュバルトゼロガンダムで周囲を荒らし、ラボの爆発に乗じて逃げ出す。

逃走後は機体が暴走状態のまま各地のドラグディア・マキナス両国家の戦争に乱入、殲滅していた。ガンドとの戦闘後はドラグディア方面に逃走していたが途中で機体のダメージが限界となり不時着。不時着時のショックと機体との強制装依によるダメージで記憶を失い、ハジメ・ナッシュとしてファーフニル家に保護される。

記憶を失っている間は黒和元の人格とも言える記憶そのものがガンダムの余剰メモリにより構築された「黒白の海岸」と呼ばれるエリアでスタートによるMS戦闘の特訓を受けていた。

 その後ハジメがアルスに敗北した直後に彼と初めて元の自分という形で邂逅する。そして彼の願いを自分の覚悟として引き継ぎ、記憶を取り戻した。取り戻した直後にアルス、そしてマキナス側の者達を挑発し本来の装依シークエンスで最初にビレフトを装依、一太刀受けるも予想の範囲でありアルスを固定したところでガンダムの姿を現した。

 アルスとワルトを下してその場を離脱した後は学園へと急行してジャンヌを救出する。この時格闘戦でポルン達を撃破しているがこれはジャンヌがその場にいたため、少しでも血を見せないようにしたいという元の思いがあったためである。その戦闘に勝利し、続く自爆からもジャンヌを護り抜いた。

 使用機体はシュバルトゼロ[ビレフト]、シュバルトゼロガンダム。戦闘スタイルは確立していないものの、ほぼすべての戦闘をゼロの性能もあってこなせる。原石とでもいうべき状態である。

 人物モデルはハジメ・ナッシュから変わらず機動戦士ガンダム ヴァルプルギスのマシロ・オークス。ただし第2章から眼鏡をかけるようになっており、よりマシロに近づいている。(ちなみに地球にいた頃も眼鏡をかけていたが転移時に破損・紛失している。実は転移時に視力が回復しており、所謂伊達眼鏡となる状態である。それでも掛ける理由については後々作中にて明らかに。)

 

 

 

 

士「さぁ、記憶を取り戻した主人公、黒和元は一体これからどのような運命に直面していくのか?それを彩るMSシュバルトゼロガンダムと、その前形態というべきビレフトの更なる性能の紹介に移ります!」

 

ネイ「すごくテンション上がっていらっしゃいますね……」

 

レイ「というか、ビレフトもなんだ……」

 

士「ビレフトは隠すためのMSだったからね。色々と明かしていない部分がまだあるんだよね。ではビレフトからどうぞ!」

 

 

 

DNGX-XX000-SZ[B]

シュバルトゼロ[ビレフト]

 

【追加機体解説】

・内部の機体はもちろん、シュバルトゼロガンダムである。カモフラージュ装甲内はDNが詰まっており、防御力は高く、重装甲状態の見た目は伊達ではない。更に装甲内にDNが内包されているので、DNの恩恵である質量変容、無重力能力で意外にも全能力解放時は素早い。動けるデカブツである。ビレフトも本来の姿を装甲で「失われた」とすれば、意味が通る。

 カモフラージュ装甲はそもそも内部に機体を収容し、修復を行うのと同時に、機体を封印する為に使用されるロックフルアーマーと呼ばれるものであり、本来の装依行程では装依不能な機体である。だが、装依当初は完全な装依に必要なセレクトスーツカードがなく、更に機体も前回負ったダメージにより装着不能であったため(特に前者の理由が大きい)、その状態で装依した結果、このようになったのが真実だった。

 実際アルスとの戦闘でも装依こそ解除されたものの、機体のダメージのフィードバックでハジメの限界がきて解除されただけで、機体本体へのダメージはゼロだった。

 

【機能】

・ロックフルアーマーシステム

 機体全体を覆う、増加装甲システム。外界からのダメージから機体を守り、更に機体を修復する機能も持つ。

 本編では更に相手の攻撃を受け止めてからパージするリアクティブアーマーのような使い方をしており、装甲の使い捨てと引き換えに周囲への高濃度DNの散布による当時の機体の回線の遮断時間を増加させている。

 

 

【武装】

・ビームサーベル

 古いタイプのサーベルである理由はそもそもこの装甲システム自体が、古い時代の発展途中の物であったため、実験途中のこのサーベルも搭載された。しかし、MSのビームサーベルは細身のサーベルタイプへと移り変わり、結果としてこのタイプのサーベルは時代遅れと評される。

 ただし、性能的にはビーム消費量以外では同能力であり、一方的に打ち負けることは少ない(標準のビームサーベルと比べれば、という話であり、更に高出力のこの時代のビームソードなどには打ち負ける。)

 

・マジックハンド(正式名称「プロトクラッキングハンド」)

 実はコンピュータージャック機能を盛り込む予定だった兵装。敵機体をジャックし、修復・封印中の機体を護らせるための傀儡として運用することが目的だった。

 

 メタ的に言うと、過去作SSRのシュバルトゼロが持っていた「ディメンション・ブレイカー」系統の腕部武装が持つ射出機能をアレンジした武装。作者としてはコードギアスにはまった時に追加した兵装だったが色々機能を盛り込み過ぎて、登場させる予定だった改修機ではアンカーを外す予定だった。

 だがSSRが打ち切りになり、その改修機の案をベースにした今作シュバルトゼロガンダムを設定。その際ロックフルアーマーに旧ゼロの機能を継承させることを思い付き、その結果これが設定された。コンピュータージャック機能も旧ゼロのモデルであったロックマンのEXE・流星シリーズの焦点となるコンピューターハッキングから設定されている。

 

 

 

 

 

形式番号 DNGX-XX000-SZ

シュバルトゼロガンダム (DNバージョン・タイプ0)

 

 

機体解説

ロックフルアーマーをすべて解放(オールパージ)し、姿を現した漆黒の「ガンダム」。装依者はハジメから本来の記憶を取り戻した黒和 元となる。

腰に装着したゼロ・スターターに歯車と星を組み合わせた認識票(ドッグタグ)ことロックリリーサーを前面の開閉部に装填して閉じたのち、右側のカードスリットにローディングカード「ZERO」を挿入し、その状態でスターター上部のボタンを押すことで装依シークエンスへ移行する。シークエンス時には装依者前後に光の障壁「アクセス・ゲート」が展開し、それに挟まれることで装依者の体を電子体にする第1段階「クアンタム・シーケンス」が完了する。

続く装依者認証用の第2段階「ロード・シーケンス」では、装依者の上に挟まったアクセス・ゲートを移動させる過程で半回転する。このタイミングで装依者の確認が行われ、不適合者はここで排除され強制リアライズによる大ダメージを負う。

そして最終段階「ポゼッション・シーケンス」にて始動機を介して機体のリアライズ(現実転移)が行われる。最後に装依者を機体に憑依させることで装依完了となる。このシーケンスシステムはかつてドラグディア・マキナス両国のMSの始動機装依工程として採用されていたが、こなすシーケンスが多すぎて装依に時間がかかることと、始動機自体の高コスト化を招くため、現在の量産品ではローディングカード無し、アクセス・ゲートで挟む第1段階にすべての機能を集約させた背景がある(一応、ワンオフ機にはセキュリティの為のロード・シーケンスが付いているものの、シーケンスとしては前後のアクセス・ゲートを交差させてその際にロードとポゼッション、リアライズを完了させる簡易なものである)。

 機体そのものとしては、高機動戦を意識した武装と機体形状で、特に背部の大型バックパックのウイングが特徴的。基礎ウイングフレームに沿って片側3基ずつ装備されたフェザー・スラスターは、分離して遠隔操作端末「フェザー・フィンファンネル」として使用可能である。

 機体カラーリングは黒、そして光を放つ蒼いフレームを持ち合わせ、そのどれもがドラグディアのMSをはるかに凌駕する性能を現状でも誇る。

 本編再登場時には初登場でガンドに破壊されたウイングはしっかり修復されている。しかし修復に使えるパーツは今回で既にアーマー内の素材ストックが尽きたらしく、更に使用した修復素材も老朽化が激しく、ギリギリの状態。加えて武装も今の武装は本来の完全体状態ではなく、今後運用するためにも一度機体のオーバーホール・武装の補填などは必須とのこと。特にとある機能に関しては、現在厳重封印中であるらしく(リミッター解除機能らしいが、制御が不能になるシロモノとのこと)、スタートは一刻も早い機体の完全修復を考えている。(付け加えると、これを機に元に合わせたセッティングなども行いたいらしい。)

 その状態であるにも関わらずこの性能なのは、ガンダムが如何に伝説的な機体かを物語っているだろう。

 全体イメージは旧シュバルトゼロ(機体ベース・ストライクフリーダム×デスティニー)にHi-νのバックパック(プロペラントタンク無し)を付けたもの。頭部アンテナはフリーダムタイプでフェイスはゼータ顔ことスリットなしである。

 

【機能】

・DNフェイズカーボン

 DNを装甲に流し込むことで装甲の剛性を更に高める特殊素材で機体は構成されている。現時点では重装甲・高出力機にしか採用されず、ドラグディアでは総司令専用機「グラン・ドラグ・フリーディア」と国家元首専用機「ドラグディア・ロード」にしか採用されていない。

 流し込むDNの量、質によって色が変化でき、シュバルトゼロの物はどんな場面でも即座に立ち回れる軽量・バランス型の配色設定の黒となっている。この黒は高純度DNでしか設定できないDNフェイズカーボンの色であり、他に設定できる色として白色が存在する。

 現時点でも機能している数少ない機体機能の1つ。装依直後からこの機能は働くため、DNフェイズカーボン本来の色を見ることは少ない。

 

・DNLコントロールユニット

 特殊な素養を持つ者の、とある脳波に反応して起動する特殊機能。スタートによればフェザー・フィンファンネルもこのユニットで操作されるらしい。システム搭載位置は機体腹部。

 初登場時の時点で破損しており、更にこの破損が原因の1つとして機体(と元)が暴走していたとのことだが、自爆からジャンヌ達を護る際、この機能を『介すことなく』フェザー・フィンファンネルを動かしたことに、スタートは何かを確信したようだ。が、真相は現時点では不明。

 

・DNL直結式機体フレーム

 機体を構成する、青白く光るフレーム。機体全体がこのフレームで出来ている。これはDNLコントロールユニットを補助する為の機体専用フレームらしい。

 

・ツインジェネレーターシステム

 現時点で本機最大の特異システム。ツインと名が付いているが、実際の所は2基積んでいるのはジェネレーター自体ではなく、ジェネレーター内部の「次元空間接触用ゲート生成器」である。

 次元空間接触用ゲート生成器は、DNジェネレーター内部に設置された、円形のリングで、このリングを回転させゲートを生成、次元空間につなぐことでDNを抽出する。このツインジェネレーターシステムはそのリングを併設することで回転数を上昇・同期させてゲートを安定化、高純度DNの抽出量を乗化させることに特化したジェネレーター含めたシステムである。

 ただし、この併設・稼働の時点でかなりのリスクが伴い、大昔にこの案が提唱された際は製造段階でこのリングの破損、最悪爆発事故が起こったため、限られた台数を残して計画が凍結されたという。

 本機の物は製造の時点でかなり細心の注意を払って製造されたらしく、ジェネレーターの駆動音も抑えられ、ツインジェネレーターシステムとしては現DNジェネレーターの最大出力であるダブルジェネレーターすら、その出力の半分にも満たないとされるほどの高出力・高純度のDNを生み出す。

 

・???

 スタートが封印している、特殊システム。スタートによれば、ツインジェネレーターシステムの歴史を紐解いていけばいずれ辿り着く、現MSの歴史としては「禁忌のシステム」とも言える物とのこと。

 

・???

 スタートが封印しているシステムの1つ。こちらは上記のものよりロックは少ないものの、現状どうあっても記憶を取り戻した元でも運用にはとある条件がいるため、使用できないシステム。現MSの歴史にも非常に文献が少ない幻のシステムであるとのこと。

 

 

 

【武装】

・ビームサーベル

 両腕部内部に通常タイプを2本、背部ウイングの付け根に強化タイプを2本装備する。

 通常タイプはドラグディア・マキナス両軍で標準の物とされているタイプと同程度のサーベルを発振する。一方強化タイプは太刀とも言えるほどのビームサーベルを発振する上に、後端部からも小型のサーベルを発振し、大型化による近接防御の隙を抑えている。

 

・ブレードガン

 機体のサイドアーマーの上から2本装備する銃剣。グリップを傾けることができ、剣と銃のグリップに変えやすくなっている。また銃身と刀身も特殊で、銃身を挟み込む形で2枚のブレードが装備される。

 ブレードからガンに切り替える際、グリップの傾けと共に、ブレードが分かれ、その間に銃のバレルが伸長して銃として使用するようになる。

 スタートによればこちらが主力の手持ち兵装らしい。だが随分古いモデルであり、動作も不安定なところがある。そのため新造モデルが検討されている。

 武装モデルはGNソードⅡ系統。ブレードの開閉は「蒼穹のファフナー」のルガーランスおよびガンドレイクをイメージ。当初はこの時点でブレードをバレルに使用できるつもりだったが、プロトタイプと言うことでバレルの伸長に変更された。

 

・スラスターキャノン

 機体のサイドアーマーを構成する推進器兼射撃兵装。スラスターのフィンをバレルに見立て、砲撃する兵装。ただし機体の老朽化により、現在使用不能(使用すると暴発の危険性あり)

 

・ウエポンウイングユニット「WINGν-PROTOⅠ」

 機体背部のウイングユニットのうち、フェザー・フィンファンネルを除いた推進器部分。ウイングを成す上部にフェザー・フィンファンネルなどの武装類をメインに、下部は大出力バーニアを備え、この時代の空戦型MSの装備としては違う次元で高い性能を誇る。その性能は登場直後に国境付近から首都セント・ニーベリュングまでの距離10キロ近くを、3分弱で直行しているほど(地理的・気候的な変動は不明)。

 ただし、空力学的にはファンネル部を含めて飛行に若干不安定な部分を持つ。それを防ぐために中央には上部に伸びるエアバインダーが搭載され、空中機動時のバランサー等を兼ねている。このエアバインダーには武装なども懸架可能。

 モデルはHI-νガンダムのバックパック。プロペラントタンクは(現状)装備しない。

 

・フェザー・フィンファンネル

 ウイングユニットに装備される遠隔操作端末。装着時には羽に見えることから、既に存在したフィンファンネルと合わせ、この名称となった。

 機体から分離後、コの字型に変形し、DNによる飛行能力で浮遊・飛行する。ビームの弾数としては現状1回のチャージでおよそ10発、飛行や後述のバリアを含めると更に少なくなる。

 このファンネルは特定配置により機体をDNによる粒子防壁で包む機能があり、名称は「DNプロテクション」。のちに登場するDNウォールの変則互換機能である。DNプロテクションは簡単に言えばバリアの一種であるが、現状では爆風を防ぐのが精一杯で、本来のビームを防ぐという所まではいかない。

 

 

 

 

士「以上が元君のMS紹介になりますっ!」

 

ジャンヌ「元さんのガンダムも登場して、次の章が待ち遠しいですねっ。でもガンダムは老朽化が激しいですが、大丈夫なのでしょうか……」

 

士「あはは。……うん、大丈夫じゃない。ちょっと次の章でハラハラさせられることになるし」

 

ジャンヌ「大丈夫なんですか!?」

 

士「元君なら大丈夫かな?彼にはなんたって……」

 

レイ「ジャンヌ・Fちゃんがいるもんね!!」

 

ネイ「えぇ……」

 

士「先に言われた(´;ω;`)」

 

グリーフィア「しかも本当みたいね……ジャンヌ、どう思う?」

 

ジャンヌ「名前が同じなので恥ずかしいので早く終わらせてください///」

 

士「あ、はい。では第2章「陰謀錯綜、姉妹の絆はガンダムの怒り?」も」

 

ネイ「よろしくお願いいたします」

 




今回もお読みいただきありがとうございます。次回からは第1部の第2章が始まっていきます。
その中で元君は新たな力を手に入れます。またガンダムも現代改修で新たな姿へ変わります。新たな力と新たな敵、次回が楽しみですね(*´ω`)

では今回はここまでです。

ネイ「次章もお楽しみに」


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第2章 陰謀錯綜、姉妹の絆はガンダムの怒り?
EPISODE17 エラクス1


どうも、皆様。第2章の始まりです。藤和木 士です。

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌ・ドラニエスです」

レイ「アシスタントのレイ・オーバだよっ!いよいよ第2章なんだね」

ジャンヌ「ですね。第2章のタイトルは……姉妹?今までにいましたっけ?」

レイ「新しいキャラ?」

うん、半分正解で、半分間違いかな。一応伏線は既に出ているんだけどね。さて、第2章も行ってみましょうか(´ω`*)


 

 ドラグディアの首都セント・ニーベリュング市で起こった騒動は、ハジメ・ナッシュ改め黒和元とガンダムの活躍により、無事終結した。同時に国境で起こっていたハジメ身柄引き渡し部隊による戦闘も、バァン・ウロヴォース少将の駆るドラグーナ・ヴォロスとガンド・ファーフニル少佐のドラグーナ・ガンドヴァルによりその場を制して負傷者の出たマキナス側が撤退。ヴールーン古戦場跡は事実上ドラグディアの領地となった。

 様々なことがこの事件……「救世主再臨騒動」で動いた。だがこれは後の始まりに過ぎなかった。そして、戦争の足音が静かに聞こえ始めていた。

 

 

 

 

 

 元は今、ドラグディア軍の司令部にある応接室にいた。あの後、警察部隊の突入と共に身柄の保護、そして聴取の為にと警察ではなく軍の者に同行を要請されたのだ。

結局ジャンヌ・ファーフニルを人質にした、聖トゥインクル学園立てこもり事件は、同時に起こっていた関わりの深い国境での救世主身柄引き渡し騒動を含めて、その深部に当たるガンダムを含めて詳細には情報規制が掛けられることとなるという。

 無理もないな。俺の事もそうだが、それ以上にお嬢様が今回の事件で負った心の傷は浅くない。あんな映像や音声が、ドラグディアの民衆に広まればファーフニル家の権威は失墜する。ここに来るまでの間に軍の人に聞いた話だと、学校の生徒達にも情報統制が教師を通して要請されるらしいが、それでも不安はぬぐえない。

 ふと、ジャンヌの顔が脳裏に過る。無事助け出すことの出来た主の顔は、恐怖から解放されたことへの安心感に満ちていた。あの笑顔を護れたことは自分にとってもかけがえのない大きなものだ。これからもそれを護るために、自分は何ができるのか。それを考える。

 

「……!」

 

 元が考え込もうとしたところで、自分が入室した応接室のドアが開かれる。元は反射的行動で立ち上がってその方向に向き直る。しかし、直ぐにその表情に波が生まれる。入室したのはガンドと同じドラグディア軍の軍服を纏う、老齢な男性。そして、自分が良く知る1人の女性であった。元はその女性に対し、その名を呼んだ。

 

「え……ローレイン……?どうして……」

 

「おっと、この立場として挨拶するのは初めてだったな。久しぶり、ハジメ」

 

 女性であるにも関わらず、男性の服装を着こなす姿は間違いなく元のマネージメント科のクラスメイト「ローレイン・ナーグ」その人だったのである。

 日頃からハジメであったころからの友人であり、何かと気に掛けてくれていた友人がなぜここにという元の疑問は軍服の老人が教えてくれた。

 

「彼女は我がドラグディアの情報局エージェント「ファントム・ナーガ」として行動してくれていたのだ。君の事も彼女が今まで監視していたのだ」

 

「なんかだましていたみたいで悪いな。けどこっちも仕事だった。正体明かして、これから本当によろしくな」

 

「あ、あぁ……よろしく……。で、貴方は」

 

 話を聞かされて元も全ては理解できない。だがしかしとりあえずは味方であると知った元は事態の付いて行けなさに戸惑いつつもローレインと言葉を交わす。それから老年の男性に名前を問う。

 

「自己紹介がまだだったね。私はドラグディア軍全部隊を統括指揮する総司令官、グランツ・フリードだ。君も知るフォーン・フリードとヴェール・フリードは私の子ども達なのだ。よろしく」

 

「総司令官……しかも、フォーンさんとヴェールさんの……初めまして、黒和元です」

 

 慌てて握手に応じる。まさか目の前の人物がそこまで重要な職に就いているとは思ってもいなかったので顔色を変えて対応した。

 グランツは微笑んで握手を行うと、あまり緊張しないように伝えた。

 

「そんなに慌てなくても、私は気にしないよ救世主殿。その呼び方は、やめた方が良いかな?」

 

「あ……はい、そうですね……。あんまり自分もそういう自覚がないので……」

 

「そうか。分かったよ、元君。それでは本題に入ろうか」

 

 グランツがそのように発言すると、外の景色が消える。おそらく外部からの監視を防ぐためのそういった機能なのだろう。密室感が強まった部屋で、お互い席に座ったところでグランツが話し始める。

 

「今回の一件で、君はMS「シュバルトゼロガンダム」を持った。本来MSは軍の保有するものであり、個人所有物ではない。ただ、君のMSは事情が違う」

 

「はい。というより、スターターの元々あったところとかが分からないから、特定のしようがない、って感じですよね」

 

「その通りだ。だが、それでも世間からして見てもMSの個人所有はあまり例がなく、また認可されたものではないから人から見てもあまり快いものではない。そこでだ」

 

 ローレインに指示をすると、彼女は元に対してとある書類を差し出す。その書類を元が手に取ると、グランツがその書類を説明する。

 

「君を、ドラグディア軍の特別民間協力者として軍に協力してもらいたい。もちろん、これは君のMS所有を正当化するためのいわば理由づけだが、私達としても欲を言ってしまえばガンダムの力を借りたいというのがある。署名は任意だが、これは事実上の……」

 

 言葉を濁すグランツ。しかし元にもそれが何を意味するのかは分かっている。口止めというやつなのだ。書類の内容に目を通していく元。

 特別民間協力者……非常時における戦闘への協力か。1週間に一度の整備ハンガーへモビルスーツの点検要求、監視員の配属もある。……あ、監視員はローレインなのか……後はMSの必要以上の情報流布……って、ん?

 元の書類を見る視線が、とある一文に注がれる。よく読んでからその条文の内容について訊いた。

 

「あの……この部分なんですけど……場合によっては軍への正式な入隊を要請するって部分」

 

「ん?あぁ、これは……戦争の激化によっては、本当に君に力を借りなければならないかもしれない。そうなった時の条文だ。先程も言ったように、私達もガンダムの力を欲しているのは事実だからね。それがどうしたのだい」

 

 グランツの説明、それは元も意味は理解できていた。ただ、元の望んだ回答はそれではない。先程の質問には更に続く言葉があるのだ。元は続くはずだった言葉を今伝える。

 

「あぁ……いや、これって自分が望むのっていいんですかって聞きたくて……」

 

「……つまり、君は軍に入りたいと?」

 

 グランツの指摘に頷く。元は先程、ジャンヌを護るために強くなりたいと考えていた。唐突な形ではあったが、このように軍という組織ならばそのための力を付けることも出来るのではないだろうか。それが元の考えだったのだ。

 まさか本人からそのようなことを望む声が返ってくるとは、考えもしなかった2人は顔を見合わせる。少し考えてからグランツは再びゆっくりと口を開く。

 

「君がそれを所望するのなら……ただ、君は今学生であるし……」

 

 グランツの言葉を聞き、とあることを思い出す。それはある意味周りの環境が変わるかもしれない発言だ。だが元は不安要素をなくすべく、その事を2人に明かした。

 

「あ、それなんですけど俺、二十歳すぎているんですが……」

 

「え、お前二十歳なの!?」

 

 ローレインから素っ頓狂な声がストレートに飛んでくる。そう、元は本来(もと)の世界では成人式を迎えた青年なのだ。この世界では出会った当初、ファーフニル家の計らいで17歳の高等科生として学園に編入したが、それはあくまでも仮。本当はちゃんと高校は卒業している。あまり楽しい思い出はなかったが。

 それだけはファーフニル家にも伝えなければなるまいと思っていたことだった。しかし、元も年齢によって生じる件には少し思う所があるため、相談しようと思っていた。ちょうど良い機会だったので元はそれを伝えたのである。その話を聞き、伸びた髭を擦るグランツ。

 

「そうだった……君は記憶を失っていたから、仮の戸籍では17歳だったね。……それなら軍への入隊もさほど問題ではないが……学校の方は?」

 

「それを相談したいんですが……今は在籍させていただきたいと思いまして……」

 

「ほぅ?」

 

 一瞬、グランツの眼が鋭くなる。その眼は見た目が老いていても未だに威圧感を放ち、元の息を止める。

 凄まじい眼光だ。おそらくここが戦場だったなら、同時に銃を向けられていたのではないだろうか。彼が若ければ同時にその手がこちらに伸びていたかもしれない。というより既にこちらに襲い掛かってくるビジョンが眼差しと共に出てきたほどで服の中じっとりと汗が濡らしている。

 蛇に睨まれた蛙のような気分を感じていた元だったが、口の中に溜まった唾を呑みこむと、ローレインの視線もある中自らの重くなった口から理由を告げた。

 

「確かに自分は記憶を取り戻しました。でも、この世界の事を俺はまだよく知らない。もっとあの学校でこの世界の色んなことを知りたい。それにお嬢様をもっと近くで護りたい。だから、まだ学校にはいたいんです」

 

 元の素直な気持ちだった。あの学園ではまだやるべきことが元にはあったのだ。それを聞いて、一拍置いてからグランツが答える。

 

「そうか。分かった。学園にはこちらから話を通しておこう。それとガンド君にも伝えておかなければな」

 

「……!ありがとうございます!!」

 

 さっきとは一転して穏やかな表情を見せたグランツは、納得してそれを許した。元は深く一礼する。元の懸念が晴れたことにローレインも傍まで来て労いの言葉を掛ける。

 

「良かったな、ハジメ。けど本題は違うだろう?」

 

「あぁ、そうだな。それで軍にも生活していくためのお金くらいは出したいと思っていたので……それにまたお嬢様が同じ目に遭った時、いや、そうならないために強くなりたいんです」

 

 元は事情を説明する。お金の事以外にもジャンヌをまた同じ目に遭わせたくないということも伝える。すると総司令は頷きながら元にとある名称を告げた。

 

「おぉ、それもあるか。そういうことなら、非常勤軍人としての採用がいいかもしれないかな」

 

「非常勤軍人、ですか?」

 

 その単語を復唱する。非常勤というのは元にも分かる。しかし、軍人は非常勤でするものなのかという疑問が浮かぶ。するとその疑問にローレインが回答してくれた。

 

「まぁ大元は特別民間協力者と同じだ。けど非常勤なら軍のトレーニング器具とかが使えるし、戦闘・戦術の勉強も出来る。こっちも監視はしやすいし、それだけじゃなくMSのメンテナンスもやりやすい。ガンダムの整備も行いやすいから、こっちとしてもウィンウィンの関係だから軍としてもお願いしたい、理想的な関係ってことだ。それでもいいならいいんだけどよ。どうする?」

 

 話を聞き、どういうものか納得する。なら答えは決まっている。元はグランツに対しそれを要請した。

 

「はい。その方がそちらも良いのでしたら、自分も非常勤軍人としてこの先お願いしたいです」

 

「ふっ、了解した。申請はこちらに。ただ手続きにも時間がかかるから今すぐには無理だが、先にガンダムの簡単な整備には後で出してほしい。ローレイン、案内を」

 

「はい、総司令」

 

 先にローレインとグランツが立ち、それに元も続く。部屋を出ると今度はよろしくの意味を込めた握手を交わし、元はローレインと共にMSハンガーへと向かった。

 

 

 

 

「……もうこんな時間なんだな……」

 

 元は竜の背中でそのようなことを口にする。MSハンガーでシュバルトゼロガンダムの整備をお願いした後、しばらく時間を潰した元は夕刻となって用件を済ませた。それまでの間ローレインとこれからどうなるのかについてを話し合っていたのだが、思ったよりもガンダムの整備に時間が掛かりそのせいでこのような時間まで総司令部の基地にいたのだ。

 ガンダムの整備ハンガー担当となったのはヴェール。先の事件で元に色々と関わってくれたこともあり専任の整備士になるそうだ。ただ彼女の指摘もあったのだが、ガンダムの機体パーツ各部にどうもガタが来ているらしい。元々何千年も前の機体でもあったがそのせいで機体のシステムにも障害が出ているらしく、一度大きなオーバーホールに来てほしいとのことだった。

 元もそれを了承し、修理用パーツの確保の為に今日は一旦スターターを返却してもらい、帰宅となった。ちなみに今元が乗っている竜はドラグディア軍が用意してくれた移動用の飛龍だ。元の前には飛龍を操る騎手の男性が同じく竜にまたがっていて飛龍をコントロールしていた。眼下の景色は煌びやかでとても今日事件があったとは思えなかった。

 とはいえ、元もこの高さには少し恐怖を感じていた。いくらガンダムで飛んだとはいえ、あの時は全く高さなど気にしていなかったのに、今は気にしてしまうほど高いところは得意ではなかった。しかしすぐに目的地だと言われ、心を引き締める。果たしてジャンヌは今どうしているのだろうか。時刻は夕飯の時間を過ぎていることからおそらく家の人は全員休憩時間だろう。お風呂の時間には早い。帰るころとしてはそれなりにベストではないだろうか。

 と思いつつ見えて来たファーフニル家の屋敷を空から見下ろす。しかし、元の視界には予想外の光景があった。

 

「さてと…………あ」

 

 それは不意を突かれたとでもいうべきものだ。予想が外れていた。しかし悪い方ではなく、この場合はいい方の意味だ。元の口元が唖然と開く。家へと続く正門からの道に家に仕える使用人達が勢ぞろいしていたのだ。

 家に勤務しているほぼすべての使用人が庭の噴水前まで続いている。その壮観さに元や竜の騎手も驚いている。飛龍がそのまま低空飛行して噴水の奥まで降下すると、そこにガンド達が待ちわびるかのように整列していた。

 

「戻ってきたな、ハジメ」

 

「当主!それに奥様やフォーン様、それにネア先輩まで……そちらの方は?」

 

 着地した竜から飛び降りた元は当主にそのように言葉を投げかける。飛龍の騎手は送り届けたのを確認すると、また空へと上がり帰路に就く。元の疑問にクリエが答える。

 

「そういえばハジメ君は初めてだったわねぇ。私の娘たちと一番上の子のお婿さんよ」

 

「初めまして、私はジーナ・ボルメス。ジャンヌの姉よ。よく私の妹を護った、少年!!」

 

「相変わらずジーナは妹に過保護だよ……。僕はジーナの婿のテュート・ボルメスといいます。初めまして、ハジメ君」

 

「あぁ、はい。前はハジメ・ナッシュと名乗っていました、黒和元です。お二方ともよろしくお願いします」

 

 先行して挨拶する夫婦に元は丁寧に頭を下げる。2人もまるで親戚のおじいちゃんおばあちゃんのように元に接してくる。

 

「あらあら!こんな子が付き人なんて、ジャンヌが羨ましいわ~。将来のお婿さん候補じゃない」

 

「そ、そうですか?」

 

「こらこら、ジーナもからかい過ぎるんじゃないって。でもガンダムの使い手がボディーガードなら、この先またあんなことになるのは杞憂になりそうだね。フォーンさんも彼がいてくれると助かるんじゃないですか?」

 

 テュートの誘いにフォーンは一息ついた後、その言葉に返答する。

 

「そうでもないさ、戦闘の型がなっていない。お嬢様を護るならもっとしっかりしてもらわねば困る」

 

 フォーンらしい手厳しい言葉だ。元も分かっていたとはいえ少し気落ちしてしまう。しかし、その言葉に当主であり、ジャンヌやジーナ達の父でもあるガンドはフォローを付ける。

 

「フォーンの言葉は一理ある。だが初めてであれなら筋はあるさ。後はこれから指導者に師事すれば何とかなるさ。な、ボディーガードの講師?」

 

「……確かにそうだがその言い方はやめろ」

 

 当主の話にフォーンは釘を刺すような眼差しを向ける。その様子がまた一色触発のようだったので、元はもう1人の方にも声を掛けようとする。

 

「あ……そ、それでそこの彼女は……」

 

「…………あ゛?」

 

 すごい拒絶の声を出されてしまい、同じく引いてしまう。年齢はジャンヌより低めだろうか。しかしジャンヌの面影がどことなくある少女は、ふくれっ面を通り越したまるでごみを見るかのような視線でこちらを見つめている。その視線は奇しくも、数日前までジャンヌが自分を見ていた目と同じものであるのが皮肉であった。一難去ってまた一難である。

 しかし、そのタイミングでそれを乏しめる声が屋敷から響いた。

 

 

「―――――エターナ、彼はわたくしの従者ですよ。挨拶なさい」

 

 

 帰ってきたことへの喜びで沸く中庭に矢を飛ばすように鋭い、だがはっきりとした声が響く。その声は元にとって懐かしさのある、だが今日聞いたばかりのものだ。その声は自然と元の視線をその方向に向けさせた。

 視線の先にいるのは、自分が護った彼の主。切り傷などに包帯やガーゼなどを当てている姿は本来の彼女らしくはないが、それを忘れさせるような白の高貴なワンピースドレスに身を包んだ姿はそれを忘れさせるほどだ。元は彼女の名を呼んだ。

 

「ジャンヌお嬢様」

 

 元の主、ジャンヌ・ファーフニルは確かに元の視線の先、ファーフニル邸の玄関口の階段をこちらに向かって降りてきていた。腕を庇うような形でその視線をこちらに向けてくる。

 一方ジャンヌに乏しめられたエターナという少女はその続柄としての名を口にする。

 

「お、お姉様。……エターナ・ファーフニルよ」

 

 姉であるジャンヌにうろたえつつ、エターナは自己紹介する。とはいえ先程よりマシになっただけで、未だその眼には敵意を感じる。元もそれは分かっていたがむしろジャンヌとよく似ている面が強調されていて、姉妹というのを感じやすいと思ってそれには触れない。こちらも挨拶をする。

 

「よろしくお願いします、エターナ様」

 

 その声にエターナは何も返すことなく、そっぽを向く。それに呆れた様子でジャンヌはやってきて元に声を掛ける。

 

「……ハジメ、その……あの時はありがとう……。誘拐事件の時と、今日の事」

 

「いえ、それよりもお嬢様がご無事で何よりです」

 

 膝を地面に付いて、頭を垂れる。ハジメの時の記憶が残っていることから体はスムーズにその体勢となる。記憶を取り戻した直後の戦闘後でも見せたそれは、初めて家族たちが見ることとなった2人の主従関係の象徴だ。各々の表情が反応する。

 しかし言葉が自身に向けられる前にジャンヌはその顔を上げさせ別の話題に切り替える。

 

「ん……今は顔を上げていいわ。それよりハジメ、貴方の名前の事なんだけど……」

 

「え、あ……あの時も言いましたが、それがどうかしましたか?」

 

 元がそう聞くと、ジャンヌは顔を逸らしまごついた様子ながらもそれを聞いた。

 

「その……クロワ・ハジメって、言ってたじゃない?だからこれからクロワって言った方が良いのかしらって……」

 

 名前の呼び方に戸惑うジャンヌ。ドラグディアはそのほとんどが自身の名前が前に来る名づけであり、元の本来の名での言い方は彼女に混乱を与えていたのだ。とはいえそこには少なからず名前で呼ぶことへの羞恥心がジャンヌにも出てきていたことでもあった。

そうとは知らず、また元もそこまで名前に気になる方ではない。だから元は落ち着いた様子で自分の名前について説明した。

 

「大丈夫ですよ。自分の名前はファミリーネームが先に来る名づけ方なので。これまでの呼び方で慣れていらっしゃるのならこれまで通りで。後自分の名前漢字で名前を書くので……」

 

「何、君の名前は漢字で書くのかい?それは……」

 

「救世主じゃないっていうけど、流石救世主ガンダムの機体を駆る子ね。まさかドラグディア国内でも一部の地域でしか名前に使われていない漢字を使うだなんて……!」

 

 漢字と言う単語にボルメス夫妻が反応する。漢字による本名命名はドラグディアでは珍しいものなのだ。元も漢字がここでは珍しいことを納得する。ジャンヌも姉夫妻の興味には触れず、名前の事だけ少し考えてから結論を出す。

 

「そ、そう……じゃあ、これからもハジメ、って呼んでいいかしら?」

 

「えぇ。よろしくお願いします、お嬢様」

 

 2人の間で呼称が決定する。2人の信頼関係がようやく出来たような瞬間である。それを見ていた当主ガンドは納得したように頷きながら、まだ出迎えがこれからであることを伝える。

 

「さぁ、いつまでもこんなところで油を売っていないでみんな中に入ろう。今日の夕食は豪華だぞ!テュート君も一緒に」

 

「キャー!お父さん太っ腹~!!」

 

「あ、ありがとうございます、お義父さん」

 

「エターナも、今日は久しぶりに家族や家の人みんなでご馳走よぉ」

 

「…………うん!」

 

 家の中に次々と入っていく家族たち。元とジャンヌも従者であり先輩であり、家族に最も距離の近いネアとフォーンと足並みを揃えて家に入っていく。

 

「今日はハジメ、お前の祝いの席だ。遠慮するな」

 

「あはは……フォーン様にそう言われると、何だか不思議な気分ですね」

 

「そうらしいわよ、フォーン?」

 

「……片付けは手伝わせてやろうか?」

 

「え…………あ、いや……」

 

「フォーンさん、今日はあまりハジメさんを困らせないであげましょうよ。お嬢様も、久しぶりの夕食楽しそうですよね」

 

「……えぇ。特にネアも含めた従者一同となんていつ以来かしら」

 

 4人は主と従者の関係を程よく忘れた、穏やかな会話を交わしながら家に戻っていく。その日のファーフニル邸は活気に満ち溢れていた。それはまるで、新たな門出を祝うかのような活気であった。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。今回は前章のエピローグ的な視点でもありました。

ジャンヌ「そういえばわたくしモチーフのキャラ3姉妹でしたね……ということはわたくしがまた中心に?」

レイ「あれ、でもジャンヌちゃん関連で前に伏線なんてあったっけ?」

さて、そこら辺は次回明らかにする予定です。
というか先日からツイッターで呟いていたんですが、あのVチューバ―に影響されて制作放置していたMGレッドフレーム改組み上げたんですよね(^ω^)いやーアストレイはフレームとか日本刀がカッコいい。斗和キセキ本人も曲とかはいい感じですし。

ジャンヌ「あぁ、あの斗和キセキって娘ですか。いきなりクローゼットからガンプラの箱を引き出して組み始めた時は驚きました。そういえば前作SSRのゼロも日本刀がありましたよね。あれもレッドフレームが関係しているので?」

いや、あれはヴァル○レイヴ。まぁ初期に考えたゼロとかはそれがモチーフ元だけど。

レイ「でもカッコいいよねー。あんな三角形背負ってみたいなぁ」

お、これはVチューバ―レイさんのフラグか?(´Д`)

ジャンヌ「でもそれやるの藤和木ですよね?」

一応その解釈で間違ってはいないから困る(´・ω・`)では本日はここまで。

レイ「次回もよろしくねっ!」


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EPISODE18 エラクス2

どうも、皆様。藤和木 士です。

ネイ「アシスタントのネイです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよぉ。第2章が前話から始まったわね」

ネイ「そうだね、姉さん。元さんも無事戻ったみたいだし」

今回はそんな元君が戻ってから、学校での話です。平和はいいなぁ\(^o^)/

グリーフィア「貴方がそう言うと全然そう思えないの不思議ねぇ」

今までそんなやり取り一度もなかったよね!?(;゚Д゚)

グリーフィア「うふふっ。冗談よぉ♪」

ネイ「けど、事件なんてそういう時に起こるよね。特に作者さんの作品」

あ、あははー。それじゃあEPISODE18どうぞ!( ゚Д゚)



 

 

 元がファーフニル家に戻ってから、4日が過ぎた月曜日。既に季節は梅雨の時期に入る直前、生徒達も梅雨に対する備えをする声が多い。だがそんな彼らの話の中心は専ら元に向けられていた。より正確に言うなら、元の持つガンダムと、元の主ジャンヌとの関係である。

 元のガンダムはもといそれに関わった事件そのものに学園側は生徒に箝口令を敷いた。軍も関わってのこの箝口令は、竜人族が機械化を施してまで竜人族の名家の子女を襲ったという衝撃的な事実を隠すことも含められた。しかしそれでも相手はまだまだ好奇心旺盛な学生達。社会のルールをかじっている名家の者達も元の持つ、創世記にも出るMSの話題に食いつかないわけがなかった。元が監視役のローレインに聞いた話によれば、もう学園の裏サイト(運営・ローレイン)ではそれに関するスレが立っていて、学園内でもその噂を元は何度も聞いていた。

 元自身、それは学生という身分ではしょうがないことだと思っていた。以前自分が学生だった時もそういった有名人などの来訪にはクラスメイトがいつも騒ぎ、元も少しくらい気になることもあった。むしろそれこそ学生の本分の1つではないかと思う。だからこそ、元とジャンヌの関係という問題には元も手を焼いていた。

 それは学生に戻って1日目から知ったことだ。記憶が戻り、自分がただの人間であること、そして黒和元という名前であることを始業前に教卓横で話し、改めてよろしくと挨拶して席に着いた。そして1限目の授業終了後、クラスメイト達が集まってきて飛んできた最初の質問。

 

『元とジャンヌさんって、付き合ってるの?』

 

 むせた。いきなりそんなことを言われ、思い切り唾が細かく飛び、咄嗟に構えた教科書の上を濡らす。それらを拭いてから即座に否定するが、クラスメイト達が確証もない事実としていじり出す。ローレインによれば裏サイトのスレが立つ際、こちらの話題の方が先に上がり、更に数もこちら関係の方が多いらしい。

 当然それらの話題はジャンヌの周辺でも飛び出た。嫌な予感を感じて元がジャンヌのクラスに向かう。だが途中でジャンヌと遭遇し、早速その話題をジャンヌもぶつけられ、自分がその噂の出所と勝手に思い込み問いただすつもりだったという。そうした言い合いもすぐに周囲の学生が学園中に噂を広げて大騒ぎ。結局2日連続で警察を学園に呼ぶ事態となってしまったのだった。

 それらの火消しにローレインを通してドラグディア軍に要請したが、出た結論は「自分達でどうにかしろ」という事実上の責任放棄。ジャンヌとローレイン、そして友人達で相談した結果、「ノーコメント」ということで口を開かないことにしたのだった。人の噂も七十五日。すぐに忘れるだろう。……七十五日がとても長いことに、元は思ってから気づいたが。

 

 

 

 

5日目の昼休み、元は校舎の屋上に出る。学園の屋上はいくつかの背もたれ代わりの壁板とそれに平行に設置されたベンチがある。少しでも人混みを避けたいがために出たのだが、すぐに生徒の眼がそれに気づき、こそこそと小声で噂する。それに構わず元はベンチの後ろの壁にもたれかかる。

 全く、学生は呑気なもんだな。まぁ俺も専門学校卒業する直前でこんな異世界に来たから、まだ学生だったわけなんだけど。けどまさか俺みたいななんの取り得もなさそうなのがこんな学生に噂されるほどにまで成長するとは……人間何があるか分からねぇ。さっさと飯食って帰るか……って、あ。

 購買で購入したパンの袋を開いたところで視界に入った人物に気づく。銀髪のウェーブがかった髪に黒いレースの髪飾りを付ける少女。少女は2人の友人と共に地面にレジャーシートを広げ、そこに座って食事を採っていた

誰の目から見ても美少女、もしくは姫様という言葉が似合うほどの容姿端麗なルックスを備えたその女生徒。だが元は知っている。彼女の本性が実際は相当ひねくれていることも、それでも容姿にたがわぬ笑顔を見せてくれる自分の自慢の主であることを。

 その少女が見つめていた元自身を見つける。少し掌を向けて会釈するが、彼女は恨みつらみを抱えた表情を見せ顔で出口の方へと行くように指し示す。元もそれには同感だ。流石に今こんな状況でいつまでもいたらまた変な噂が立つ。ようやく見つけた食事場所を手放すのは惜しかったが、元は噂の流布を嫌ってその場を離れようとした。だが聞き覚えのある声がそれを遮った。

 

「よう、ハジメ。ここにいたのか」

 

「こんなところで昼食なんて、大変だねぇ有名人さんは」

 

 声を掛けたのは1組の男女。カップルのように聞こえるが、髪の色や質、そして顔付きの共通点からカップルよりも別の意味での仲に見える。元は彼らの名を呼んだ。

 

「そういうとこお前らはブレないよなレヴ、リッド。流石リヴァイ兄妹、仲睦まじいことで」

 

 少し茶化しながらの発言を兄妹の2人はツッコミを入れる。

 

「いや何で仲が良いことがそこで返しとして出てくる……」

 

「そうよ、ハジメ君。レヴが私を溺愛してるだけなんだから。私まで巻き込まないでっ」

 

「いや、何でだよ!?」

 

 兄妹は仲の良さを見せつけてくる。2人は双子の兄妹なのだ。兄の方でやや目つきの悪いのが「レヴ・リヴァイ」、妹の方で髪をポニーテールで束ねているのが「リッド・リヴァイ」である。

 そんな二人を見ていると、自分の事を少し思い出してしまう。自分にも昔は彼らのように仲が良く、しかし「あの時」以来家にいても話すことすらしない妹がいた。今になって生まれた妹への名残惜しさが、どうしても彼らをからかいたくなってしまったのだ。

 そんな彼らの戯れを見ながら、元はその場を後にしようとする。がそれを2人に呼び止められる。

 

「おい、もう行くのか?」

 

「あぁ。ちょっと主様の機嫌がね……」

 

 元が指を指すその先には、レイア達と昼食を取るジャンヌの姿がある。元がさっさと移動しなかったからか、その表情は更に不機嫌を思わせる顔になっていた。

 それを見て事情を察する2人。

 

「あー……ありゃあおっかねえな」

 

「ファーフニル家のお嬢様……ジャンヌさんって扱い難しいから従者さんって大変なんだよね。ハジメ君に同情するわ」

 

 あまりジャンヌと交友のない2人でもその怒りが手に取るように分かるほどの怒りが、自分に向けられていては昼食が入る物も入らない。しかしリッドが周りを見てからハジメに言った。

 

「でも今離れるのはむしろ逆効果だと思うけど?周りの人達も気付いているみたいだし」

 

 その言葉に従い、周囲を見回すと既に元とジャンヌの様子を窺う生徒が何人もいた。こそこそと内緒話している姿が、如何にも2人の事に気になっているという感じが出ている。しかもいつの間にか元達とジャンヌの周囲をそれらが取り囲んでおり、囲みを出ることすら気まずい様子だ。

 元は顔を戻し、ジャンヌの方を一瞥してからため息をつく。そして2人に話しかけるように独り言を呟く。

 

「……みたいだな。仕方ない、さっさと飯食って教室戻るか」

 

「その方が良いな。てか俺らも巻き込まれてたんだな」

 

「馬鹿?」

 

「馬鹿じゃない!」

 

 2人の双子漫才が響く。それを見ながら元も昼食のパンをほおばる。2人もベンチに座って各々の昼食である購買のパンを食する。食べ進める間に3人は会話を挟む。

 

「それで……元って今度軍に入るんだったよな?」

 

「あぁ、まぁ厳密には違うけど、そうなるな。それがどうした?」

 

「いや、俺も学校卒業したら、軍学校にでも行こうかなって思ってな」

 

「そうなのか?」

 

 パンをほおばりつつそう語るレヴ。彼の言葉にリッドは嫌悪感を示す。

 

「やめてよ、レヴ。そんな戦争に死にに行くみたいな話、こんな昼食の時にさ。ハジメ君も相槌打たない」

 

 リッドの言葉はある意味正しい。せっかくの昼食を血みどろ関係の話で汚されたくないのだろう。しかしレヴは文句を言いつつ理由を語る。

 

「死にに行くって言い方の方が縁起悪いだろ。給料的に安定するってのはあるけど、どっちかっていうと被災地支援みたいなことをする軍に入ってMSを装依したいんだよ。昔は軍もそれをやってたらしいんだけど、今はもうさっぱりだからな。戦場に駆り出されるなら、後方支援がいいなぁ……」

 

「そうか、まぁどちらにせよ頑張れとしか言えないな」

 

 元は正面を見てぼうっとしたまま返事をする。血気盛んかと思ったが、どちらかと言えば戦争が終わった後の、自衛隊みたいな組織のMS装依者になりたいのではないだろうかと感じる。どちらにせよリッドの心配は絶えないと思う。だがそれは決して一概に咎められる理由ではない。だからこそ、元もそれを応援した。

 それを聞いて、レヴは調子づいて元の肩を叩く。

 

「その時は前戦頼むぜ、ハジメ」

 

「身勝手ねぇ……けど馬鹿兄ぃ止められるのはハジメ君くらいだし、もしその時が来たらお守りはお願いするわ」

 

「任務にもよるかもだけど、善処する」

 

 そんな話と共に昼食のパンを各々ほおばる。するとそこに更に来訪者が訪れた。

 

「よう、3人共昼食早いな」

 

 声の主はローレインだった。男性用の制服を纏った彼女は袋を示しつつ声を掛けてくる

 

「お、誰かと思えばローレインじゃん。これからお昼か?」

 

「まぁね。ハジメの噂に少し巻き込まれててって感じだ」

 

 レヴの問いかけに肩をすくめるローレイン。彼女は表向きには学生、更に自身のクラスメイトだが、裏ではドラグディア軍の諜報部エージェント、そして元の監視役だ。そんな彼女も元やガンダム関連で奔走している。おそらくそれらも含めての遅れだったのだろう。元はそれに対する感謝と礼を述べる。

 

「それは悪かった。ありがとう」

 

「あー、もうそれだけ聞けりゃあ私は満足だぁ!ぎゅー!」

 

「ちょ、ローレ!?ハジメ君も驚いてるから離れなさいって!」

 

 元の言葉を聞き、突如スキンシップと言わんばかりの激しさでローレインは抱き付いてくる。そんな光景をいきなり見せられたため、リッドは慌てて大声で注意する。だがそれがむしろ周りの生徒の注目を集める。中には「え、二股?それとも三股?」と言い出している。いい迷惑だ。

 流石の元も、ローレインのこの行動に困惑が走る。いくら何でも悪ふざけすぎる。後で騒ぎを大きくし過ぎとジャンヌに怒られるのも不味い。すぐに元はやめさせようとしたが、ローレインが耳元でとんでもない言葉を発した。

 

 

 

 

(総司令からの伝言だ。ネア・ラインの周辺に気を付けろ)

 

(!?)

 

 

 

 

 抱き付くという行動から一転して仕事モードとも言える調子で、耳元に囁くローレイン。一瞬呆けてしまうが、続く言葉で元も状況を理解することとなる。

 

(以前の事件はまだ終わっていない。次はネアが狙われる。詳しいことはまた話す。スターターの使用許可を出した。もし何かあったら全力でネアを護れ)

 

 急を要する内容に元は固唾を飲む。抱き付く行動なら多少目は惹くが誰もそんなときにこれほど重要なことを話しているとは思わないだろう。あまりにも大胆すぎる伝え方に驚きつつも、元はそれを了解する。

 

(分かった。ありがとうございます)

 

 小声でそう答えたタイミングで突如ローレインの身体が元から離れる。ローレインのすぐ後ろにはリッドがその手でローレインの制服の後ろを怒りの表情で掴んでいる。羞恥も含んだその表情でリッドが抱き付いていたローレインを咎める。

 

「ローレ?今のはやり過ぎだと思うんだけど?」

 

「あははっ。……リッドの声も大きすぎだと思うんだけどなー」

 

 ローレインの指摘に顔を赤くさせるリッド。だが問題はそうではないとローレインの体を引き寄せそのまま抱きしめる。そして彼女のわき腹などを責め立てる。

 

「問題を逸らさないッ!!このっ!」

 

「あっ、やめっ!!くすぐったい!くすぐったいって!?ひゃん!?」

 

 ローレインの嬌声が響く。横で聞いているにはあまりにも恥ずかしい声で元とレヴは視線を逸らす。

 全く、何やっているんだか……。けど、ローレインのあの言葉……事件は終わっていない、ネアが狙われる……?ネアに一体、何があるっていうんだ……。

 元の視線がジャンヌ達の方に向く。こちらの様子に呆れながらも、3人で仲良く食事を行う姿。その1人であるネアは特に変わった様子なく共に食事をとっている。とても彼女が狙われているようには思えない。

 ふとジャンヌがその視線に気づいた。こちらに目線を向けていたためだろう。彼女はすぐに視線を外すように指示するハンドサインを送る。元も特にこだわることはなかったためすぐに視線をまた外す。そうこうしているうちにパンも全て食した元は、再びレヴと言葉を交わし、昼食の時間を過ごしていった。ネアに対する一抹の不安を残して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 学園の授業が終わり、その帰り道。ジャンヌはレイアとネア、それにハジメというノーヴェを除くいつもの面々で下校していた。いつも通りジャンヌはレイアの右隣り、ネアがその更に右隣でハジメはその後方だ。

 ジャンヌはいつものようにレイアとの会話に興じる。

 

「今日も楽しかったねー」

 

「えぇ、レイアさんといられて楽しいです。ただ、あの噂話は迷惑ですが……」

 

 ジャンヌは言葉を濁す。あの噂話とは無論、ハジメとの関係という話だ。比較的育ちのいい子女の通う聖トゥインクル学園も、噂話となればそれを騒ぎ立てるのは他の学園と同じ。むしろ平常が何も変哲もないからかこういった大きな出来事は、先の誘拐事件の話題の際も含めて大きく学内で取り上げられるのは必然とも言えた。

 誘拐事件の時の騒ぎも迷惑だったが、今のこの噂もジャンヌにとってはいい迷惑だ。方向性が違うとはいえ、レイアを想うジャンヌにとってはこれほど迷惑な噂話は今後一切ないだろう。それだけにハジメへの当たりは強い。

 

「ハジメ、貴方も昼食を食べる場所くらい考えてくれないかしら?」

 

「それはすみませんでした。ただ友人連中が、あのタイミングで離れる方がむしろ騒ぎを長続きさせる、と言っていたものでして。お嬢様も変に気を使われて騒ぎが大きくなるよりはいても何もない方が良いのでは?」

 

「……ハジメ、主人のお願いを聞けないということかしら?」

 

 生意気な口を叩くハジメに、ジャンヌは叱りの言葉を向ける。自分の言葉に否定的なハジメに我慢の限界が来ていた。最近のハジメはこういうことが多い。いくら職が見つかりそう、それに救世主と似たMSを駆るとはいえ、それをおごりにされては腹が立つ。ハジメは従者、自分の命令を聞いていればいいのだ。

 しかしそんなジャンヌの考えにハジメは気にすることなく更に意見する。

 

「願いは聞きます。しかし状況によって行動するかは違います。願いを聞いた方が余計問題になること、そしてお嬢様が間違った道に進みそうなときは全力で止めます。従者は主人の間違いを正す役割もあると学びましたから」

 

「うぐっ……な、生意気よ!」

 

 思わず本音が漏れる。確かに従者とは命じられて動くものだが、操り人形ではない。時によっては従者が主を止めることだってある。従者とは主と主が望むものを護るために働く存在なのだ。主の言うことの通りが通っているのなら、従者自身もそれに応えていく。それが主従関係なのだ。

 ただハジメの発言はあまりにも直球な意見だ。聞いていたネアもそれについて発言する。

 

「は、ハジメさん……確かにそうですが、お嬢様に対してあまりそういうのは……お嬢様はこういう方ですし……」

 

 ネアがジャンヌにフォローを入れる。ジャンヌ自身そういった傲慢なところがあるのは理解している。しかしジャンヌも彼女自身、個人的に噂にされたくないことだってあるのだ。そういう時は言うことを聞いてほしいと思っていた。

 だがそれはジャンヌの思う考えだ。ハジメの言葉に納得したレイアがハジメの言葉に共感を示す。

 

「でもそういうのってロマンチックだよね~!主の間違いに体を張って止める従者って、何だか「白従者」の頼れる従者さんみたいでカッコいいし!」

 

「れ、レイアさんっ……わたくしがあの漫画のように罵られるのがお好きだというのですかっ!?」

 

 2人の会話で出ている「白従者」とはドラグディアの女性達に有名な漫画のタイトルだ。内容は白い執事服を着た従者の青年が主の少女を全力で護るというファンタジー作品で、従者は多々ポカをやらかす天然主を罵倒し、それでも主従の強さで乗り越えていくというものだ。かくいうジャンヌもこの漫画の愛読者でもある。

 ジャンヌの危惧を、レイアはそうじゃないと否定する。

 

「んー、流石に現実であそこまで罵倒されるのはダメだよ?でもあれくらい仲の良い関係に2人ならなれるんじゃないかなーって」

 

「あぁ、そういう……でも前に2回助けてくれたとはいえ、ハジメとあそこまでの信頼関係になれるとは思えませんし」

 

 納得こそするものの、ジャンヌはハジメとの仲はそうではないと否定する。確かにあの時助けてくれた。しかも白従者が助ける時のようなかっこよさでだ。でもだからと言って自分はあそこまで本当に信頼しきってはいない。まだジャンヌはハジメの事をどこか不安に感じていた。

 分からない。ハジメは信頼できるくらいわたくしの事を分かっている。でも何だろう……わたくしは彼を信頼できない。もっと言うなら、信頼するのを怖がっている。何なの……?この気持ちは。

 

「――――お嬢様?」

 

「っ!!あ、ご、ごめんなさい。ちょっと考え事をしていたわ」

 

 考えるのに必死になってネアの呼びかけにびっくりしてしまう。すぐにそう返したジャンヌは足早に帰り道を行く。その様子にすぐにレイアとネアは足を揃えに走る。ハジメもその後を追っていく。とにかくジャンヌは3人に悟られないように行く。

 だがその行く手を遮るものが空より現れた。

 

「ギャウーン!!」

 

「え、な、何!?」

 

 突然響いた猛獣の鳴き声に足を止めるジャンヌ。ジャンヌだけではなく、レイアやネアも足を止める。ハジメもすぐにジャンヌのすぐ近くまで駆け寄り状況を確かめた。そのハジメがその鳴き声の正体を見つける。

 

「!上です。あれは……飛龍?」

 

 ハジメの声に誘導されて上を向くと、そこには編列を成して飛行する飛龍の群れがあった。その上には人が乗っており、それが人に飼いならされた飛龍であることを理解させる。

 その飛龍の群れの上に乗っていたのは、自身もよく見るドラグディア軍の制服を着た者達。それですぐに彼らがドラグディア軍の者達であることを知るジャンヌ。それらはレイア達も同じだ。特にハジメはそれに気づいてジャンヌの前に出て護る姿勢を取る。

 すると、飛龍たちが着地体勢に入る。こちらに降りてくるのだ。だが飛龍たちが降りる前に、1つの人影が地面へと降りてくる。かなりの高所からの着地だが、その人物は既にMSを装依していてそのままDNの恩恵で無事着地する。

 全員の視線がそのMSの方に向けられる。ハジメとネアはそれぞれジャンヌを左右で護る立ち位置でそのMSを注視する。だが緊張は向こうから解かれる。

 

『待て、こちらに今敵対する意思はない』

 

「え……」

 

「……今、ね」

 

 今、と言う言葉にハジメは気づく。ジャンヌも分かっている。今は大丈夫でも、何かをしたら被害が及ぶ可能性があるということに。しかし飛龍達が地面に着地し、他のドラグディア兵達も降りたところで、その人物はMSの装依を解除した。姿を現したのは、自分達より少しだけ年上の雰囲気を出した青年だ。年齢的にはハジメの本来の年齢と同じではないかと思う。

 装依を解除した軍服姿の青年はこちらへと自己紹介を行う。

 

「初めまして、ジャンヌ・ファーフニル嬢、それからそのご友人様、従者様。……そしてネア・ライン。私はドラグディア軍レドリック・ドラス准将直属親衛隊所属、アレク・ケルツァートと申します。以後、お見知りおきを」

 

 深々と頭を下げる彼に倣い、後方で竜を従える兵士達も礼をこちらに向ける。その様子を見つつ、ハジメが用件を聞く。

 

「そうですか。私はクロワ・ハジメ。それで、軍の人が何の御用ですか?いきなり飛龍をこんなに従えて、穏やかではないですが」

 

 ハジメの言う通り、これだけの飛龍を従えて行動など普通はあり得ない。緊急事態でもなければこれだけの飛龍を民間人の前で着陸させるなどあるはずがない。ジャンヌも自然とハジメの後ろで身構える。

 指摘を受けたアレクがその問いに頷きながら、目的を口にする。

 

「まぁ、そうですね。今回はそこにいるファーフニル家の従者の1人、ネア・ラインに用事があります」

 

「わ、私……?」

 

 言葉の矛先はネアに向けられた。ジャンヌもアルクの言葉に疑問が浮かぶ。ネアに一体何の用事なのか。その懸念は続く言葉で緊張感のあるものに変わる。

 

 

 

 

「ネア・ライン。貴女を情報漏えいおよび逃亡幇助の容疑で拘束させていただきます」

 

 

 

 自分の従者の1人に、確かにアレクはそう言った。身柄を拘束すると。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。
事件、起きましたね(´Д`)

ネイ「人のモデルキャラが巻き込まれて何喜んでいるんですかこの作者さん」

グリーフィア「本当、ねぇ。次のお話私が世界の穴でも開けて飛び込んじゃおうかしらぁ?」

いや、あの世界の破壊者みたいな真似するのはよしてください。というか行っても何も出来ないでしょうに……。
まぁ作品の中の出来事は作品内の人物達で、ね?

ネイ「……分かりました。けど、色々と心配ですけどね」

グリーフィア「本当によ。情報漏えいとか逃亡幇助って余程の事だし。ネアちゃんがそんな大事やるような娘には見えないから、次でどういうことか、そしてどうなるのやら……」

あぁ、次は本当に大変だろうね。元君のガンダムが……ね?
それでは、

ネイ「え、じ、次回もよろしくお願いします……?」


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EPISODE19 エラクス3

どうも、皆様。藤和木 士です。

レイ「アシスタントのレイ・オーバだよっ」

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌ・ドラニエスです。って藤和木、今回普段より投稿間隔空いているのでは?」

今作は明確に次回投稿間隔を言ってないからセーフ(;´∀`)(おい)さて、今回はEPISODE19、エラクスという節の3話目となります。

ジャンヌ「もうっ!……けど、今の今までエラクスという名前のあるものは一つもありませんでしたよね?」

レイ「そうだねぇ。……藤和木、出すの忘れてることない?」

そんなことはない(´・ω・`)……とりあえず、エラクスが示すものは何なのか?本編をどうぞ。


 

 

「え……私が……?」

 

 ネアの呆然の声がその口から漏れる。いや、ネアだけではない。その場にいた彼女の知り合いが、各々驚きを隠せない。その可能性を唯一知らされていた元だけは、アレクを睨み付ける姿勢を崩さなかった。

 どうして……どうしてネアが……。情報漏えいって何なの!?逃亡幇助!?一体何の情報を漏えいしたっていうのよ……ネアが誰の逃亡を手助けしたっていうのよ!!

 ジャンヌの胸中はアレクの発言に対する反論が浮かんでいく。その反論に答えるかのように、アレクは困惑するネアに向けその罪の内容を通告する。

 

「えぇ。何でも以前貴女方が巻き込まれた誘拐事件及び立てこもり事件で、彼女は犯人に情報を流して襲撃を促した。また、犯人が病院に入院した際にはその脱走の手助けを行った。その主犯として、私は貴女を拘束するよう、上司に命じられたのです」

 

「そんな……嘘だよ、そんなの!ネアがそんなことするわけ!!」

 

 レイアの悲痛な声が響く。ジャンヌだってそうだ。ネアがそんなことに手を貸すわけがない。だが、それを聞いて疑ってしまうこともないことはない。誘拐事件の際の登校ルートはもとい、立てこもり事件の際にはハジメがいない隙を狙っての襲撃。後者はマキナスが手を貸しているとはいえ、それを成立させるにはポルンを病院から連れ出す必要がある。それを行ったのがもし、ネアだったのなら。想像したくない答えが脳裏をよぎる。

 当然ネアはそれを否定した。

 

「そうです……大体、何で私がお嬢様をそんな危険な目に遭わせる必要があるんですかっ!!」

 

 その言葉はもっともだった。彼女にはそれを行う理由が見当たらない。ジャンヌも使用人の中で最も信頼できるのがネアなのだ。2人の間にそんな事をする理由は見当たらないのは明らかだ。

 そこはアレクも推測の域を出ない答えを理由として口にする。

 

「ですが、それら事件の発端はファーフニル嬢、貴女の不評を買ったことから始まったとのこと。もしかすると、そういったことが彼女にもあったのかもしれませんよ?」

 

「っ!!貴方!言っていいことと悪いことが……って、ハジメ!?」

 

 ジャンヌの怒りが頂点に達した直後、ジャンヌを抑えるように元が前に出る。その様子にアレクが口元を緩めて笑みを作る。

 

「おやおや、主人の言葉を従者が遮ってよろしいので?」

 

「構いませんよ。それにお嬢様の感情をこれ以上逆撫でするようなら、それからお嬢様を護る必要が俺にはありますから」

 

 ハジメは毅然たる声でアレクに反論する。ジャンヌもその言葉で熱くなってしまっていたことに気づき、自身の胸に手を当て落ち着かせる。ハジメにも謝罪の言葉を掛ける。

 

「……ごめんなさい、ハジメ」

 

「いえ。……それより、そうは言っていますが、その様子だとまだ動機に確証がないように見えますが?」

 

「ほう、それが?」

 

 元からの問いにそう答えるアレク。当然とも言えるアレクの返答に元は追及を行う。

 

「でしたら、それは証拠になりえないのでは?動機が確定していないのに確保するのは、些かやりすぎのように感じますが」

 

「……普通はそうですね。だが、これは普通ではない。だからこそ――――邪魔しないでほしいな、救世主」

 

「ッ――――!?」

 

「ひゃあ!?」

 

 その瞬間、アレクの敵意とも言える冷たいものがジャンヌ達を襲う。民間人であるジャンヌ達が感じたことのない、軍人としてのオーラがその眼から迸っていた。ジャンヌもその眼に当てられ足がふらつく。そこを元が支える。

 駄目……お父様とは全然違う……これが本当に同じ人間だっていうの……?怖い……気を抜いたら、一瞬で……!

 支えた元の服の袖を固く握る。だがその元は一度こちらの眼をしっかりと見てからジャンヌに言った。

 

「お嬢様、ネアと一緒に居てください」

 

「ハジメ……?」

 

 不安そうになるジャンヌの声。だが元は奮い立たせるような声と共にカバンからそれを取り出した。

 

「―――――ガンダムで、行きます」

 

 救世主(ガンダム)の証たる、始動機(スターター)をその手に立ち向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ジャンヌにそう強く言って一歩前に出る元。だが、その内心は言葉とは裏腹にアレクの殺意とも言えるそれに強く影響を受けていた。

 ああは言ったが、これを退けられる自信はない。アルスなんかとは比べ物にならないくらいの敵だ。肌でそれを感じるくらいの強敵。これが漫画とかで言う「鳥肌が立つほどの強敵」という物なのだとしたら俺はもう終わりだ。正直言ってしまえば今すぐ逃げ出したい気持ちがある。

 しかし、と元は心で呟く。今日学校でローレインに言われた通り、ここでアレクを退けなければ軍の、ローレイン達の思惑から外れてしまうことになる。それに何より、ジャンヌが後ろにいる。そのジャンヌが必死にネアの事を庇っているのなら、退くことなど出来ない。

 腹を括った元はその腹を更に物理的に括るようにスターターを装着する。

 

『ゼロ・スターター』

 

「やれやれ、こうなることは避けられなかったようですね。もっとも、そのためのこの機体。無駄にはしない」

 

 アレクもこうなることは予想済みと、既に装着していたスターターを再起動させる。

 

『ドラグ・スターター、リスタート』

 

 ドラグディア軍共通のスターターの音声が響く。そして上部ボタンをアレクは左手の握りこぶしで叩く。

 

「装依」

 

 すぐにアレクの前後を装依用のアクセスゲートが出現し、彼の体を挟み込む。ゲートが消え、再びあの装飾の施された機体が姿を現す。見ると通常のドラグーナの頭部の上に更に西洋兜のようなものを装着している。ドラグディアが主力として採用しているMS「ドラグーナ」の系譜であることは間違いないだろう。だがその外観はまるで式典に並ぶために着飾られた部分を数多く有していた。

 こんなやつが戦えるのかと元も緊張感が強くなる。あの外見で圧倒されるようなことがあればガンダムの名も名折れだ。気を引き締めつつスターターにロックリリーサーを装填、ローディングカードを装填する。

 

『ZERO』

 

 ゼロ・スターターがカードを読み込む。元はジャンヌ達が下がったのを見て装依ボタンを叩く。

 

「装依」

 

『スターティング・ゼロ・アウェイクン』

 

 スターターの読み上げと同時にアクセスゲートが元を挟み込む。装依者を認識したゲートは、元のその身を黒い機動兵器へと憑依させる。スターターの音声が周囲に機体名を響かせる。

 

『シュバルトゼロガンダム』

 

「…………」

 

 先日ジャンヌの元へ舞い降りた黒き機動戦士。シュバルトゼロガンダムは再びジャンヌを含む者達の前に姿を現した。

 装依を終えた機体であったが、その姿は先日とは明確に違う所があった。翼だ。以前はウイングに小羽のように付いていたフェザー・フィンファンネルはその姿を一切なくしていた。その点をスタートが元に伝える。

 

『元、フェザー・フィンファンネルは前回の戦いで破損している。オールレンジ攻撃は使えない。まぁ、使いこなせる段階じゃないが』

 

 そう、フィンファンネルはジャンヌとフォーンを敵の自爆攻撃から守る際焼け焦げてしまっていた。その修復が済んでいなかったのだ。

 

「そうか。なら武装は……これだな」

 

 だがあれほどの武装を自由に使いこなせるわけではなかった。元は返答と同時に両腰に装備している銃剣に手を伸ばす。形状は銃の銃身に上下から剣の刃が挟みこんだものだ。電子状態のモニターには「ブレードガン」と示されている。それをブレード形態で構える。

 通学路途中の道で2機は臨戦態勢となる。幸い近くには街道を外れて原っぱが広がっていた。それぞれの機体はそちらに移動して武器を構える。それを両サイドの人々が見守る形だ。

 そして、戦闘が始まる。最初に仕掛けたのは元の方だ。

 

「行くッ!」

 

「ッ!!」

 

 ブレードガンを突きの構えでアレクのMSに向ける。だがそれをアレクは寸前で回避する。だがそれに構わず元はもう一方のブレードガンを振り上げる。それもアレクは回避する。

 強い。元はその二撃の攻撃でそれを直感する。連続した攻撃を回避されるこの動きを元は知っていた。ビレフトの状態でアルスと挑んだ時と状況が同じだった。このまま攻撃しても回避され続けてしまうのがオチだ。

 となれば射撃戦を織り交ぜていくのが吉。しかし元が武器のモードをガンに切り替え、トリガーを引いたところで異変が起こる。

 

『ワーニング ブレードガン ガンモード アクシデント』

 

「何!?」

 

 トリガーを引いてもビームは発射されない。同時に機体側からそのような警告が響いたのだ。同時にスタートもその状況を元に知らせる。

 

『不味い、ガンモード使用不能だ。クソッ、機体が眠り過ぎてて不調おこしてやがる』

 

「なんでそんなことが今起こるんだよ。それでも元英雄の一部か!」

 

 元は八つ当たりとも言える言葉をスタートに向ける。だがその不調をアレクは見逃さない。

 

「注意が散漫だ!」

 

「クソッ!ぐぅ!」

 

 アレクのMSが構えたランスの突きをブレードモードに切り替えたブレードガンで間一髪防ぐ。だがアレクはランスを体ごと退くと、機体のスラスターを吹かせて回転させながらランスを振り回してくる。振り回しを喰らう寸前にブレードガンで防御するも、重い一撃によって武器を弾き飛ばされる。

 このまま押し込まれるのは不味い。そう感じた元は距離を取る。同時に左ウイングの付け根からビームサーベルを取り出し武器を構えなおす。一方アレクは自機のMSのスラスターを噴射し、こちらへ再度距離を詰めようとする。

 

「せぇい!」

 

「っは!!」

 

 突き出される穂先に、腕を体ごと振り回す形で振ったブレードガンではじき返す。弾いたアレクの機体に更に蹴りを入れて距離を取る。

 互いに攻防を繰り広げる状況だ。距離を取ってもアレクの機体は元の機体への突撃を繰り返し、元はその度に攻撃をいなす。連続した激突の中で元はもう1本のブレードガンを失いつつも何とか持ちこたえていた。しかしその状況は傍から見れば危険な綱渡り状態。見ていたジャンヌからも叱咤の声が飛んでくる。

 

「ちょっと、ハジメっ!押されていますよっ!?」

 

「くっ!こっちも攻め手が足りないんですよ!スタート、何か武器は!」

 

 ジャンヌの言葉にはもっともと感じる元。スタートに残りの武装について問うも、スタートからの返答は重いものだった。

 

『……サイドアーマーのスラスターキャノンがあるが、既に老朽化が激しい。使えば機体が爆発する……残っているのはその手に握ったサーベルと腕部のサーベル、それに地面に転がっているブレードガンのみ……』

 

「……風前の灯火、ということか」

 

 元は達観したような声を発する。残りの武器が今握っている2本のビームサーベルと腕に格納されている通常のサーベル、そして弾かれた武器(ブレードガン)という射撃武装が一切ない状況は元を絶望させるには十分すぎる。

 だがそれでもこちらは退くことは出来ない。この戦いにネアの身柄が掛かっている。かつて自分も身柄の引き渡しという場面の当事者だ。本人の意志なき選択や事実無根な証拠で引き離される痛みを知っている。だからこそ元はこの戦いに挑んだ。実力が上なのは先刻承知。それでも、せめてこの場で連れ去られることだけは避けたかった。

 お互いがにらみ合う状況で、アレクが動く。

 

「そろそろ終わりにさせて頂く。このドラグーナ・レドルで」

 

「来る!」

 

 ランスを放ったアレクは、ドラグーナ・レドルの両腰に装備していたサーベルユニットを握る。ビームを発振させ、再び斬り合いの勝負へと持ち込んでくる。元もビームサーベルを固く握ってその攻撃を受け止める。

 しかしそのサーベルユニットを用いた攻撃は先程よりも激しさを増していた。攻撃を防いでもすぐに次の攻撃が機体を掠め、攻撃を行おうにも機体に届く前にそのビームサーベルで受け止め、弾き飛ばす。完全にペースは向こう側に移っていた。

 何度目かの激突で、左手のビームサーベルも弾かれる。続く振り下ろしを元は右のビームサーベルと左腕で防御する。機体の左腕装甲にビームによる斬撃が刻まれる。まだアレクは攻撃の手を緩めない。そのまま切り抜けで元のガンダムの左肩装甲を斬り飛ばす。

 

「ッ!追いつけない!?」

 

「これで、終わり!!」

 

 背後を取られる。元は機体を振り向かせるが距離を取っていたアレクの機体には当たらない。ビームサーベルが空を薙ぐ。

 攻撃を回避したアレクはサーベルを柄尻で合体させる。2本のサーベルは光の双刀へと形を変え、アレクがそれを振るう。飛び込みから放たれた一撃がガンダムの胸部を切り裂く。その光景を見てジャンヌが叫ぶ。

 

「ハジメっ!?」

 

「ダメ……ハジメ君!!」

 

 レイアの口からも悲鳴が走る。だがアレクは攻撃の手を緩めない。そのままトドメとも言える一撃を繰り出す。

 

「言ったはずだ、これで終わりだと!!」

 

 双刀状態のビームサーベルを飛び込むと同時に繰り出す。自身に向けて伸びた剣は寸分狂わずガンダムの胸部に伸びる。

 死ぬ。このままだと俺は撃墜される。こんなところで終われない。終われるはずがない。必死に考える。だが最適な策が見つからない。死ぬのか、俺は……いや。

 

(こんなところで、終われるかよ!)

 

 元の心の声が反抗心を奮い立たせる。元の脳裏に今までに見た景色が映る。小学校・中学校で幼馴染と共に見た思い出、中学後半から高校、専門学校の気力のない生活。

 あの日、成人式の場で友人達と過ごした時間、長い間会っていなかった自分の事を心配してくれた少女。この世界で出会った数々の恩人達。そして自分を従えてくれた主の顔。それらの光景が走馬灯のように流れる。

 負けるわけにいかない。彼らの為にこんなことで死ぬわけには行かない。俺は、絶対に負けてなんかいられない。あの時のように……手が届かなくなるなど、そんな俺を許しはしない。

 だからこそ、元は叫ぶ。決意を込めた、怒りの叫びを。

 

 

 

 

「こんなことで、死んでたまるか!!」

 

 

 

 

 その怒りが、脳から発せられた電気信号がガンダムに伝播する。元の怒りの感情を受け、ガンダムはその力を解放した。元の咆哮に合わせ、機体のインターフェースが変わる。機体の色がたちまち胸部のクリスタルパーツの紅い一点を除いて蒼く染め上げられる。機体のジェネレーター駆動数が急激に上昇し、出力が上がっていく。

 迫る刃。敵機と自機の状況を映すインターフェース。スターターが怒りに任せ起動した力の名前を読み上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ELACS(エラクス)

 

 

 

 

 

 

 

 

 蒼く染め上げられたガンダムは超機動で、残像を残すほどのスピードを以てアレクの機体が繰り出した双刀の突きを回避したのだった。

 

 

 

 

 ハジメのガンダムが貫かれた瞬間、ジャンヌは悲鳴を上げる。

 

「ハジメぇ!!?」

 

 悪夢とも言える光景が、咄嗟にジャンヌの喉からその声を発させたのだ。が、その後の光景をしっかり見ていたネアがその認識を正す。

 

「いいえ、回避した!?」

 

「す、すごい。ハジメ君、攻撃を回避したよ!!」

 

 レイアの嬉しさのこもった声に導かれて恐る恐るその光景を見るジャンヌ。その眼には確かに突き出したビームサーベルから逃れたハジメの機体が、蒼く染まった五体満足の状態でいるのを確認した。

 そしてハジメの機体はすぐに腕部からビームサーベルに柄を取り出し、再び光の剣を出現させて反撃に移る。先程とは違ってハジメが今までとは違う圧倒的な速度でアレクを翻弄していく。

 直後、ジャンヌの膝が折れ、地面に座り込んでしまう。無事だったことへの安堵に力が抜けたのだ。そんな彼女にネアが声を掛ける。

 

「お嬢様!大丈夫ですか?」

 

「え、えぇ……でも、あれは一体……?」

 

 手を支えてもらい立ち上がったジャンヌの意識はすぐに蒼く染まったハジメのガンダムに向けられる。蒼いガンダムは圧倒的なスピードでアレクのドラグーナ・レドルに猛攻撃を加えている。先程までの劣勢が嘘のような動きは凶暴さを感じさせるほどの攻めに変わっていた。

 レイアやネアもその動きに不安さを見せる。

 

「んー……パワーアップ?押してはいるけど、でも見てて不安になるっていうか……」

 

「……もしかして……暴走……?」

 

「そうそう!なんかヤバそうっていうか」

 

「ッ!?」

 

 ネアの一言にジャンヌは悪寒を感じる。かつてハジメが誘拐事件の際に装依したとき、あの時もハジメは暴走しながら重装甲を纏ったガンダムで敵を殲滅していた。今の戦闘の流れはスピードこそ段違いなものの、あの時の光景と似ていた。

 不安になったジャンヌはハジメに向かって叫ぶ。

 

「ハジメっ!!行けそうなのっ?」

 

 状況の良し悪しを確認する声。だが従者たるハジメはそれに答えなかった。いよいよジャンヌの不安が現実のものとなる。聞く耳を貸さないハジメはそのまま痛みつけるようにアレクの機体を何度も殴りつける。地面へと叩き付け、更に一度距離を取ってからジャンプして高高度から蹴りを敢行する。

 その一撃を全力で拒絶する様に起き上がって飛びのくドラグーナ・レドル。飛び蹴りが地面へと決まり、芝生にクレーターを作り出す。凄まじい威力だ。もし直撃していたら装依者もただでは済まないように思える。渾身とも言える一撃が外れてもなお、ハジメは蒼く光を放つガンダムをアレクへ向け飛翔させる。徐々に機体からスパークが散ってくる。攻撃を受けている側だけでなく、攻撃を行っているハジメの機体も、その至る箇所から電気が迸っている。限界を超えて動いたことによる弊害のように見えた。それはジャンヌの心に危機感を抱かせるには十分すぎた。

 

「ハジメ!止めなさい!!」

 

 ジャンヌが叫ぶ。しかしハジメは、蒼く輝くガンダムはそれを聞かない。ヒット&アウェイで殴り続ける。一度身をひるがえすも機体にビームサーベルが握られ突撃状態で構える。あれでトドメを刺す気なのだ。ジャンヌの背中に冷たいものが走る。

 

(駄目!それだけは!!)

 

 よろけるアレクの機体。機体のスパークに加え、煙を上げ始めるガンダム。どちらも危険な状態となる2人に、ジャンヌは全力で従者の方を制止した。

 

 

「やめて!!止まって、ハジメェ!!」

 

 

 

(なんだ、この力は)

 

 それは元が姿の変わったガンダムで戦って最初に思ったことだ。絶対に負けられない、負けてたまるかという反骨心を抱くと同時に機体の動きがいきなり素早くなった。

 だが素早くなったと言っても軽くなったとかそういう物ではない。いきなり動かす力が強くなりそれに機体が引っ張られているかのような感覚だ。最初は危機を脱したことで安心したのもつかの間、すぐにその機能が引き起こしたもう1つの状態に戸惑うこととお鳴った。

 距離を取った際、立とうとしたにも関わらず機体が勝手に動き出した。勢い余ったというのに近いが、どちらかというと一旦傾いた駒が戻ることなくグラグラとふらつき、ずっとその運動状態を維持するような感覚だった。初めの内はそう思っていた元も次に攻撃を開始した瞬間、その認識が大きく違うことに気づかされる。

 ドラグーナ・レドルに接近しつつサーベルの柄を取り出そうとしたが、それが間に合わずタックル。次こそと思ったものの機体は止まることなくいつの間にか左拳を掲げる形アレクの機体に突撃。頭部を殴り抜け、機体の機動運動のままに地面を蹴ってターン。そこから更に殴って殴って殴り続ける。それが勢いのまま、機体に操られるような動きで攻撃を加えていくのを繰り返していって初めて元は気づいた。

 

(機体が……暴走している?)

 

 動きを止めようとしても、これまでの攻撃と機体への過剰な粒子供給で機体の動きが止まらない。むしろ加速がついて敵への突貫スピードは上がっている。むしろ止める方が更に体力を使い、機体の動きにも付いて行くのがやっとだった。

 不味い。危機的状況は脱したが、このまま動き続けたらこっちが持たない。何か止めるスイッチみたいなのは無いのか?

 必死に機体の状況を映し出すスクリーンを確認するが、そこに映っているのはモードの名前と、異常に上がった機体の出力係数。そして目まぐるしく景色の変わる機体カメラの映像だけ。が、そこで唐突に機体のスクリーンにとある表示が浮かび上がる。

 

「なん……だ?……これ、は!?」

 

 浮かび上がったのは、Emergencyの文字。見ると機体出力が限界で、もうすぐ機体の許容出力を超えるというものだった。

 それを知らせるかのように機体がスパークを帯びる。やがて煙も上がっていき、元は本格的に止める方法を探す。しかしいくらスクリーンを見ても何もなく、止めようとしても機体は慣性で勝手に挙動を行う。そのせいで更に状況は悪化していく。

 

「……スタートッ、これ、止められないのか!?」

 

 スタートに今の暴走を止める方法を問いただす。だがスタートから語られたのは、無慈悲な言葉だった。

 

『む、無理だ。今のこの機体でこの力を……エラクスを止めることは不可能だ!』

 

「なんだよ……それっ!!」

 

 スタートの言葉に舌打ちをする。スタートですらどうにもならないこの状況。そして状況は更に悪い方へと進んでいく。

 機体のスクリーンに映し出された危険を知らせるアラートが更に大きく鳴り、ポップアップが増殖する。機体の挙動も飛び蹴りをかましてからすぐに殴りつけてアレクのドラグーナ・レドルを吹っ飛ばす。そして機体の動きが十分でないそこに狙いを付けるように、一度距離を引いてビームサーベルを構える。もはや元ではなくガンダムが戦闘を行っていた。アレクに対し、突撃を掛けるガンダム。

 

「クソッ、止まれよ!」

 

 元は機体を止めようとする。これ以上暴走したら機体自体どうなるかというのがある。それ以上に元もアレクを殺す気など毛頭ない。ジャンヌの前でだけはそんなことはしたくない。だからこそ元はガンダムを制止させようと試みる。

 だがしかし勢いの付いた物体を止めるのは難しい。DNジェネレーターの生み出す多量の高純度DNの影響で、機体の動きは更に止まるところを見せない。暴走し続けるガンダム。その動きに元の体が悲鳴を上げ始める。

 くそ……やっぱり素人でこんな動き……!体中に負荷がかかっている。体を電子化するMSでも鍛えた軍人でないと耐えられないのか……。

 元が初めてMS、いやモバイルスーツを見た時、体を電子化すると聞いてそれなら体に負荷がかからないのだろうと思っていた。しかし今のこの状況は違う。MSもまたG等軽減できない物が存在する。だからこそ体をMS装依前提に鍛えなかったことを後悔した。このままではアレクの機体を串刺し確定だ。しかし体がガンダムを抑えるに至らない。

 

「ぐうぅぅっ!!」

 

 必死に止めようとするも、ガンダムの突撃は止まらない。このままでは串刺しにする――――その時だった。

 

 

 

 

「やめて!!止まって、ハジメェ!!」

 

 

 

 

 唐突に響いたジャンヌの声。悲鳴とも取れるその声に、元は意識を向ける。するとガンダムに変化が生じる。ブザー音と共に機体のエンジンの出力が下がり始める。機体の速度も落ちていき、重力に引かれて地面へと不時着、転がり落ちる形となる。

 右手に握っていたサーベルからの光剣の発振が止まる。機体の発光ももちろん止まり、いつもの黒いカラーリングとなっていた。そして機体からは黒い煙が上がっていた。煙の出所は機体胸部のダクトからだ。おそらく主動力機関からのものだろう。既に動力音は小さいものとなり不規則なものとなっていた。DNもドラグディア軍で正式採用されているDNジェネレーターから排出される赤色となっていた。

 ボロボロの状態となっていた2人に、それぞれの陣営の者達が駆け寄る。更に空から飛龍の群れが、その上に乗ったドラグディア軍の者達が次々と集結する。そして元達はドラグディア軍の飛龍達に乗っていた、以前元が世話になったかの三竜将の男性に助けられることとなったのである。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。エラクスの正体が少し分かって戦いは一旦幕引きです。

ジャンヌ「そう言えば最初に触れるのを忘れていましたが、結局のところ、ネアさんの情報漏えいとか逃亡幇助って前章の事件の事ですよね?」

はい。

レイ「え、あれってマキナスのせいでしょ?何でネアちゃんに罪がかかるの?」

何ででしょうねぇ( ˘ω˘ )

ジャンヌ「……藤和木?何か裏があるということですか?」

それは次回辺り明らかになる予定ですねぇ。……まぁ予測だけになると思いますが。

レイ「ふーん。で、話を戻すけどさ、エラクスって前作のSSRでガンダム00から流用したトランザムシステムが元?」

あぁ、まぁそうですね。詳しい話はまた解説回で明らかにするつもりだけど、今のところトランザムと厳密に違うのは、システム作動中のデメリットがあるってことだね。え、00も暴走の危険性とか停止したことがあった?( ̄∇ ̄;)ハッハッハじゃあ今回はここまでで。

ジャンヌ「では、次回もお楽しみに」


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EPISODE20 決闘宣言1

どうも、皆様。藤和木 士です。

ネイ「アシスタントのネイ・ランテイルです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィア・ダルクよぉ。先週は暴れたわねぇ、ガンダム君」

ネイ「そうだね、姉さん。今回はその後くらいですか、作者さん?」

そうですね。今回のEPISODE20は先週圧倒的な力を発揮したガンダムの暴走後のストーリーとなります。ってえぇい!文字の打ち間違いが激しい!(# ゚Д゚)

グリーフィア「ここ何回も打ち間違えているものねぇ。変換間違いもあるみたいだし?」

文字打つ側でしか分からないであろう苦労だよ、まったく(´・ω・`)ガンダムもしょっちゅう「ガンd舞う」とか打ちミスしてるし。さっきも打ちをうちにしてるし……

ネイ「急ぎ過ぎなんだと思いますよ?」

だろうね(´・ω・`)

グリーフィア「さて、今回はどうなることやらねぇ」

では本編です。どうぞ


 

 

「申し訳ありませんでした」

 

「まぁまぁ、言ったのはこちらだったから。碌な説明をしなかったのはこちらも悪いと思っているよ」

 

 部屋に響く元の声。それに対し、落ち着いた様子で言葉を返す茶髪の男性。その男性は茶器に注がれたお茶を飲み、元の横で座り心地のよさそうな長椅子に座っていたジャンヌ達にも声を掛ける。

 

「ジャンヌさん達も、大丈夫だったかな」

 

「はい。おかげで助かりました」

 

「ありがとうございます、バァンさん!」

 

「バァン少将には、なんとお礼を言ったらいいか……」

 

 3人の乙女達は助手である整備士の女性が出したお茶に手を付けつつ、自分達の危機を救った男性、バァン・ウロヴォースにお礼を述べる。そう、あの状況で元達の下に駆け付けたのは彼だったのである。

 現在元達はバァンに連れられドラグディア軍の総司令部、総司令官グランツ・フリードの影響が大きい地区である「フリード・リヒ地区」の建物にて保護されていた。ここはバァンが管理する地区でもあり、彼は総司令官グランツの命を受け彼らを保護したという。

 元もソファーに座ると、お茶を出してくれた整備士の女性、ヴェールにガンダムの状況を訊いた。

 

「それでヴェールさん、ガンダムの状況はどうですか?」

 

「えぇ、とりあえずこの基地のしばらく使ってなかった第8格納庫で機体の状況を見ているわ。けど、あの状況だと改修した方が良いかもね」

 

 ヴェールは悩まし気に状況を伝える。現在ガンダムはスターターから出力用ハンガーに出し、修復作業中だった。ジェネレーターも停止し、しばらくは使えないとのことだ。だがこれまでの戦いのダメージや劣化した部分も含め、改修するという考えは当然だった。元もそれには積極性を見せる。

 

「そうですね。その時はおこがましいかもですが、改修の方お願いできますか?」

 

「もちろん!!なんたってガンダムの整備が出来るんだもの。整備士としては1か月の給料を全部それに変換しても構わないから!……あ、本当にそうなったら困るけどね?」

 

 冗談に笑いつつ、視線をバァンの方に戻す。まだ彼には状況の確認途中だった。元はバァン、そして彼の隣に座るもう1人の少女に話を確認する。

 

「それで、今回の件はそちらの方が知らせてくれたということですが……」

 

「っ……」

 

「……フフッ」

 

 元が視線をその少女に向けると、ネアが若干目を伏せる。その様子を少女は含み笑いで濃いオレンジ色の髪を流しつつ見つめる。ネアとどこか関係のありそうな彼女をバァンが紹介した。

 

「紹介がまだだったね。彼女はグリューネ・ロード。ドラグディア首都セント・ニーベリュング市市長、ヴァルト・ロード氏の娘。……そして、公にはなっていないが、ネア・ラインの異母姉だ」

 

「ネアさんの……姉」

 

「そうなの!?まさかうちの学園の、高等部の生徒会長と姉妹だったなんて……」

 

 元はそれを聞いて納得する。先程のネアの行動はそういった関係だったために、目を合わせづらいということだったのだろう。レイアがその事実に驚きの声を出すのも無理はない。

だが一方で、ジャンヌはネアの話について周知であることを元に伝える。

 

「一応わたくしも、ネアとグリューネが姉妹だっていうのは知っていたわ。そもそもネアは、本当は市長の今の妻の子で、うちに流れて来たっていうのがあるから……」

 

「………………」

 

 ジャンヌの説明に、ネアは黙って頷く。あまり触れられたくない話題のようだ。元はすぐに話を別の物に切り替える。

 

「……それで、今回の襲撃は一体何だったんですか。監視員から話は少し聞きましたが、一体なんでドラグディア軍がネアを……」

 

「それは、私が説明するわ。黒き救世主さん」

 

 ジャンヌ達がいるので敢えて監視員の名前は伏せて訊く。するとグリューネが疑問に答えた。救世主という言い方に何かしっくりと来ないものの、その話を聞くことにする。

 グリューネはまず始まりについて話し出す。

 

「そもそも今回の件は、ネアが誘拐事件に巻き込まれたってところから始まるわ。さっきも言った通り、ネアは私の妹。それは必然的にあの人、セント・ニーベリュング市市長の子どもでもある。彼のゴシップになるのは必然的だったわ」

 

 一瞬、自分の父親の事を皮肉るような言い方をするグリューネ。仲の冷え切り具合は目に見えて分かった。そのままグリューネは続ける。

 

「まぁ普通ならゴシップくらい慣れてる人だけど、今回だけは違った。ゴシップをネタに脅してきた相手が、敵国のマキナスだったんだから」

 

「マキナスって……!」

 

「マキナスの人がどうしてそんなことを知ってるの!?」

 

 話を聞いていたジャンヌとレイアが驚きの声を上げる。2人の言う通り、ドラグディアの機密に近いであろう情報をマキナスが手に入れることは「通常では」不可能だ。しかし元はその1つの可能性を口にする。

 

「……スパイ」

 

 諜報員を示すその単語。その言葉にジャンヌ達も反応する。敵国の情報などを漏らす彼らならば、いくらでも情報を手に入れることは可能だ。バァンも紅茶で喉を潤しながら指摘する。

 

「そう。もっと君達に分かりやすく言うなら、ポルン・ドンドを病院から脱走させた際の者が、そのスパイだろう。その人物がポルン・ドンドを脱走させ襲撃計画を立てた」

 

 バァンの言葉で事件が繋がる。ポルンが脱走できたのはそういうことだったのだ。しかし同時になぜそれがネアのせいになっているのかという疑問が浮かぶ。

 

「でも、だったらどうしてネアがその犯人にされるんですか?あの時、あの兵士の方はネアが犯人だと……」

 

 ジャンヌが疑問を投げかける。するとジャンヌの質問に対しドアを開けて入ってきた人物が答えた。

 

「軍の中も一枚岩じゃない。グランツ総司令に素直に従う者もいれば、腹に一物抱えた軍人もいる。ただ、今回の仕掛け人の1人とされるレドリック・ドラス准将はグランツ総司令派の軍人だがな」

 

「お父様っ!?」

 

 ドアを開けて入って来たのは、ジャンヌの父で元やネアの雇い主であるガンド・ファーフニルであった。更にガンドがドアを抑えてその後に続いて総司令であるグランツ、それにローレインもまた入ってくる。

 予想は出来たはずの突然の来訪に、元とネアは慌てて自分達の主に事態について謝罪する。

 

「ご当主、ご迷惑をおかけしています」

 

「この度は私のせいでお嬢様に多大な迷惑を……」

 

「いやいや、2人こそ大変だっただろうに。ネア、君も今はこの騒動の中心。巻き込まれてしまったのなら仕方のないことだ。今の状況で咎める気はない。元も万全の状態の機体でなかったとはいえ、よくやってくれた」

 

 2人に対し労いの言葉を掛けるガンド。次にガンドが声を掛けたのは、ジャンヌに対して、ではなく、事の中心の1人であるグリューネであった。グリューネに対し懐かしむように話をする。

 

「やれやれ、君の願いを聞き入れた時から、こうなることは決まっていたのかな。グリューネ君」

 

「その件は私も大変心苦しく思っています。でも、そうしてくれたおかげで今ネアと会えますから、ガンド様にはどれだけ感謝しても足りないくらいだと思っています」

 

「姉……グリューネさん……」

 

 深々と頭を下げ、感謝の気持ちを伝えるグリューネ。そんな姉の姿に、本音が出かけるのを止め、名前で呼び直すネア。ネアの気まずさには触れないうちにジャンヌが話を戻す。

 

「それで、どうしてネアがその犯人に?派閥がどうして関係するんですか?」

 

「そうだったな。……これはグリューネ君の情報を元に調査した結果だが、どうやらレドリック准将はヴァルト・ロード氏に協力しているらしい。そしてヴァルト氏は自身の隠し子、ネアを犯人に仕立て上げ彼に拘束させることで、彼女の存在を国の裏切り者としてメディアに大きく取り上げさせ、自分のゴシップをうやむやにする腹のようだ。ついでにレドリックはそれを手柄に次期総司令の座に近づくための足掛かりとする腹積もりらしい」

 

「そんな……!そんなの許されるわけない!」

 

 ガンドの発言にレイアが思わず声を張り上げる。ネアの親友とも言える彼女の気持ちは分からなくもない。だが、そういった対応はどの世界でも存在する。元は言う。

 

「許されはしないけど、そういう対応はどこでもやっている。人の注目っていうのは、それと関係しても、していなくても他の事柄を大きく取り上げることで簡単に逸れていく。俺の世界でも、そういったのはいくらでもあった。そしてそれに協力した人物に、口止め料として高い位に上げる。それが一番簡単な方法ですから」

 

「そんな……でもっ!うぅ……」

 

 現実を言われ、悔しそうにするレイア。ジャンヌからも軽蔑の視線が向けられるが弁明は無い。現実問題、それが前提となってしまっている。だが、無論それで元は納得するつもりがないことを2人に向けて伝える。

 

「でも、容認されていてもそれを許すかと言われればそうじゃない。指摘し続けることで変わっていくこともある。それより今はネアの無実を証明するための方法を考えるべきだと思います」

 

「ハジメ君……うん」

 

「…………っ」

 

 2人は態度こそ違うものの元の言葉に同意を示す。そうして話を戻す方向に持っていく。

 

「そうね。証拠に関しては私が録った音声とか、映像があるから問題ないわ。けど問題はあの人をどうやって法の裁きの下に引っ張り出すか、よ」

 

「今回ハジメ君と、レドリック准将の指揮下にいる彼と戦ったから余計に問題がこじれてしまったからね。しかも民間人もそれなりに多く近くにいたことから、市長としての仕事で先に2人を処罰する可能性もある」

 

 グリューネ、それにグランツの言葉が重くなる。バァン少将からは本来なら2人の戦闘が互角、もしくはハジメが敗れかけた時点で止めに入る予定だったらしい。やはりあの状態での戦闘停止は、こちらから何か言うには辛いところがあるようだ。

 無理もないな。暴走状態となった上にあっちの人間を1人半殺し。いくらあっちが吹っかけて来たようなものとはいえ見栄えが悪い。完全にこちらが加害者だろう。

 しかしそんな無理難題な状況でもグリューネは諦めていなかった。それを打開でき、かつ彼を追い詰めるための一手をその場にいた全員、そして元に対して協力を要請した。

 

 

「それでも方法はあります。ちょっと強引な方法ですけどね。そのためにもハジメさん、協力お願いできるかしら?」

 

 

 彼女の口から語られた、その打開策に元、そしてジャンヌを含めた少女3人は驚かされることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、ドラグディアの首都セント・ニーベリュング市の庁舎。その中の記者会見室に、市長ヴァルト・ロードとドラグディアの様々な放送局の人間たちが会見の準備をしていた。会見の内容は無論元とアレクの武力衝突の件だ。それに対し、ヴァルトは会見を行うと放送局などのメディア各社に通達。こうして会見の場に集まって来たのだ。

 時間となりヴァルトが会見の席で挨拶をする。

 

「皆様、突然このような場を開くことになってしまい申し訳ないと思っております。本日はつい先日このセント・ニーベリュング市郊外で起きましたドラグディア軍と民間人同士の武力衝突についての事です」

 

 市長の口から語られる事件。それを関係各社は事細かにメモに取る。シャッターが何度も切られる。

 

「本案件は国家反逆罪に類する罪を起こしたと目される人物の拘束を行おうとしたドラグディア軍を、民間人が武力もといモビルスーツで抵抗した案件です。民間人がMSによる反抗という類を見ない事態ですが、これは民間人というのが先日聖トゥインクル学園、そして国境付近で騒ぎを起こしたガンダムであることが挙げられます」

 

 淡々と語られていく事件の内容。それらは時に取材陣をざわつかせる。

 

「国を裏切った者にガンダムが手を貸すなどもってのほか。私は国家反逆罪を起こしたネア・ラインと、ガンダムの装依者黒和元両名の国外追放処理を政府に要請することをここに宣言する」

 

 ヴァルトの決断に取材陣の声が高まりシャッターの音がさらに激しく鳴り響く。一見して彼の決意ある英断に見える宣言。しかしこれには裏があった。

 あの日、自分の今の妻の本来の娘であるネアが誘拐事件に巻き込まれた日、ヴァルトも事件の詳細は知らされていた。いくら養子として出したとはいえ、自分の子どもが誘拐されたことはあまり世間に知られたくないことだ。すぐにヴァルトはメディア各所の知り合いに通達し、事件の詳細の秘匿を要請した。特に自分とネアとの親子関係については徹底的に潰していた。

 しかしその最中に掛かった一本の電話が彼を追い詰めた。電話主はマキナスのスパイを名乗った。その人物は2人の関係を知っており「バラされたくなければ協力しろ」と彼を脅した。完全に予想外だった。まさかマキナスに自分の事を知られているなどとは思っていなかったからだ。しかし同時に彼は考えた。マキナスの者にこの機にネアを始末してもらうことが出来たなら、彼は今後一切その問題について気にする必要がなくなる。失敗した場合は彼の失脚は免れないが、可能性は少ないだろう。そうしてヴァルトは悪魔の囁きに手を貸し、娘を売ったのだった。

 だがその結果は周知の通りだ。作戦は失敗、娘は無事で事件は終わりを迎えた。その時まではヴァルトも作戦は失敗したかと思っただけだ。だが直後秘匿回線で再びマキナスの者を名乗る人物から、ヴァルトに協力を要請された。内容は救世主ガンダムの引き渡し。マキナスは失敗した作戦を再び遂行しようとしていたのだ。最初はこれ以上の動きをして軍などに知られるようなことは避けたかった彼だったが、マキナス側は協力しなければマキナスに協力していたことなどをすべてバラすと脅しをかけた。流石の彼も話を聞いて焦りが生まれる。そんなことになってしまえば自分は終わりだ。それだけは阻止しなければとヴァルトはマキナスに戦争終結後の自分の身柄の保証と、救世主と共にネアの身柄も含めて引き渡すことを条件に再びその誘いに乗ったのだ。

 それからヴァルトは自身と面識のあり、かつ今の軍の態勢に不満を持っているというレドリック・ドラス准将と接触した。マキナスが絡んでいることも含め伝えて協力を依頼し、これまでの筋書きを描いた。本来ならこの時点で確保するつもりだったのだがガンダムの予想外の反撃で捕らえることは叶わなかった。しかしヴァルトはそれを反抗した口実として国へ要請する形を取ったのだ。要請を武力で跳ね除けた彼らに対する対応としてこれ以上ない最良の策だ。

 それらを聞いていたメディアの報道陣はどよめく。携帯で局へ自体を伝えられ、すぐに情報が拡散されていく。今頃は軍でも動きがあるはず。

 しかしその予想を超えた動きがここに舞い込む。

 

 

「――――それが、貴方の隠し子とまとめて救世主をマキナスに売り渡す策かしら?ヴァルト・ロード」

 

 

 ざわつく会場を制するような声が周囲を黙らせる衝撃の言葉を紡ぐ。その言葉に気づき報道陣がその声がした方向を向く。記者会見室の出入り口から発せられた声。そこにいたのはオレンジ髪を左右で長さの違うツインテールにした少女とドラグディアの軍服を纏う男性達、それに一般人とも思える風貌の青年と少女達だった。

 見知らぬ者達の乱入は先程の発言と共に報道陣を困惑させる。が、その者達を見てヴァルトが一番困惑を感じることとなる。なぜなら彼らは自分が今まさに国外追放を要請しようとしていた者達とその関係者、そして何よりその一番前で先程の発言を言った自らの娘だったのだから。

 

 

 

 

「ぐ、グリューネ!一体何を……」

 

 動揺から立ち直ったヴァルトは先程の発言についての真偽に関して聞き返す発言を飛ばす。しかしその発言はまだ動揺を隠しきれてはいない。そんな父親の無様な姿に追い打ちを掛けるように復唱、そして更なる事実を報道陣に向け公表する。

 

「だから言ったじゃない。貴方のその発言は私の妹と、ここにいる救世主ガンダムの装依者をまとめてマキナスへ売り渡す策だって。ガンダムや貴方の隠し子ネアを、貴方の代わりに身代わりにした挙句敵国マキナスへ売り渡すようなやつを私は許さない」

 

「なっ……!何を言っている!ふざけたことを言うのはやめろ、グリューネ!!それに何でお前がそいつらと……」

 

 事実に対し激高するヴァルト。報道陣もカメラと首を2人の間であっちこっちと振り続ける。

 さて、こうして動揺してくれるのはこっちとしても嬉しいわ。上手くいっているし、それに無様な貴方の姿を見られるから。だけど、もっと動揺してもらわなきゃ。

 グリューネは愉悦に浸りつつ、それを表に極力出さないようにして返答する。

 

「貴方にとっては理解できなくても、私にとっては冤罪を掛けられた彼らと行動する理由があるわ。証拠もあるんだから」

 

「くっ……えぇい、警備部隊、出てこい!!」

 

 それ以上の混乱を抑えるために、ヴァルトの一声で警備員として会場に配置されていたドラグディア軍の兵士達がヴァルトの周囲に終結する。その中にはネアを拘束しようと接触した兵士達もいた。もちろん、アレク・ケルツァートもいた。

 そして会見の席に座っていた、バァンと同じタイプの軍服を着た男性が前に出てグリューネ達を制する。

 

「これは一体どういうことですかな?バァン少将。国家反逆罪の容疑者を庇うような姿……君も同じ罪で捕まりたいですか?」

 

「それはこちらのセリフ、とでも言えばいいのかな。レドリック准将。君の方こそ軍の全体を通したものではない命令を遂行する方が問題と思うが?」

 

 バァンとにらみ合ったのは事件の関係者の1人、レドリック・ドラス准将だ。彼こそがアレクを差し向けた張本人だった。とはいえこの場でそれを話すわけがないだろう。なぜなら本人がその隣で構えているのだから。

 アレクもまた、こちらのとある人物に視線を合わせていた。クロワ・ハジメ。話にあった救世主ガンダムの使い手。先日激突した2人は互いにその顔をただただ見つめていた。先日の続きが始まりそうな予感である。

 しかし今日は残念ながらその日は訪れない。ハジメがガンダムを装依出来る状態ではないこと、そしてそのような状況を行うにはここでは狭すぎることが理由だ。グリューネは自らの前に立ち塞がる親衛隊を見て鼻を鳴らす。

 

「んふふっ。血気盛んね。けど残念ながら今はその時じゃないわ。だって戦う場所は他にあるんだから」

 

「グリューネ・ロード。このような状況の時点で、君らが異常であるのははっきりとしている。法廷の場で戦おうものでも関係は……」

 

 法廷の場でも勝てると意気込みを語るレドリックだが、グリューネはその鼻先を思い切り折るように話をぶった切る。

 

「あら、法廷は争う場であって戦う場所じゃないですよ、レドリック准将。もっとも、部下の成長の芽と同じように証拠をすりつぶそうとしている貴方には同じことでしょうけれど」

 

「貴様、発言を控えんか!!」

 

 馬鹿にされたレドリックが声を荒げる。いよいよ会場のボルテージも高まってきたところでグリューネは本題へと入る。

 

 

 

「えぇ、だからこれで一旦ふざけるのはやめますわ。……ヴァルト・ロード、貴方に代表者同士による、1対1の決闘……ナイトバトルを申し込みます。私が賭けるのは、私の妹ネアと、救世主ガンダムの装依者の無実の証明の場よ」

 

 

 グリューネの口から、事実上の宣戦布告がされたのであった。

 

 

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今回もお読みいただきありがとうございます。

グリーフィア「いやぁ~……ネイモチーフが出るからどうかと思ったけれど……まさか私モチーフも出るとは思わなかったわぁ」

ネイ「というか、今作のアシスタントキャスティング、それ狙ってます?」

ごめんそれ途中で気づいたんだ。時期的には連載スタートする前なんだけど、あ、これキャスティング的にどうなんだ?って(´・ω・`)

グリーフィア「しかも関係的に、これ公式でも言及されている親問題含んでいるじゃない?公式に訴えられるわよぉ?」

嘘ぉ!?(;゚Д゚)

ネイ「二次創作なので訴えられることはないんじゃないです?実際ジャンヌお嬢様モチーフのジャンヌ・Fさんが出た時も作者さん自分でバトスピの外伝的なストーリーを~とか言ってましたから、言われるとしたら読者さんにどうこう言われるくらいで」

あ、まぁそれくらいかな?いやでも今回のストーリーはバトスピ公式側でのネイとグリーフィアの関係見て、書いてみたいと思ってたやつでもあるから。インスピレーションは受けてますよ~

グリーフィア「だからと言って、許すわけじゃないわぁ?」

え、許されないんです?(;´・ω・)

ネイ「非公式とはいえ、私達としてはあまり触れられたくない話題なので…」

(´・ω・`)あ、これマズイやつだ。とりあえず今回はここまで。

ネイ「次回のお話もよろしくお願いします。作者さん、お覚悟を」

(;゚Д゚)緊急離脱!詩姫総選挙投票に行ってき(ry


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EPISODE21 決闘宣言2

どうも、皆様。次の元号が「令和」になることが発表されましたね。地味に音が似ている、藤和木 士です。

ジャンヌ「どんな入り方ですか……アシスタントのジャンヌ・ドラニエスです」

レイ「同じくアシスタントのレイ・オーバだよ!それを言ったら、私モデルのレイアちゃんの名前も「わ」が「あ」に変わったくらいでそっくりだよっ」

おお、せやな!(゚д゚)!

ジャンヌ「いや、二人してそこに食い入らないでください。本日はEPISODE21ですか?紹介早く行きましょうよ」

あ、はい。(´・ω・`)EPISODE21公開です。決闘宣言をしたところですね。

レイ「前回はアレだよね。グリーフィアちゃんそっくりなネアちゃんのお姉さんのグリューネちゃん登場した回だよね!」

ジャンヌ「色とかの地の文見てもらえれば分かりますが、彼女は既に前章の最後にちらっと出ている監視カメラを仕掛けた人なんですよね。……でも本当にインスピレーションというか、パクリというか、影響されたって感じですね」

あ、あはは(;´Д`)さて、決闘の宣言は受理されるのか?

レイ「あ、ちなみにこの作品はプロローグの時は令和なの?」

今そこ触れる!?(;゚Д゚)とりあえず、説明はあとがきでね?本編どうぞ!



 

「な、何だって……」

 

「事件関連のナイトバトルって、いつ以来だ?」

 

「それより、国家反逆罪の人物が、娘?隠し子か?」

 

 グリューネの発言を聞き、取材陣は口々にその話題に触れていく。ナイトバトル。それはこの世界「マキナ・ドランディア」の伝統的な決め事の1つであった。政治的問題などで争い事が起きた際、各々の主張が混在した状況を打開する為に各々の代表者を立て、その者同士で決闘を行う。その結果勝者が属している者の主張を「確固たる意思のある意見」として認めるというものだ。いわば勝敗を「勝者側がどれだけその思いを貫き通すのに、力を込めているのか」という判断材料にすることになる。

 しかし今の現代社会は意見の整合性を重視する傾向にある。そのため力でゴリ押すようなナイトバトルは敬遠されていた。もちろんグリューネはそれを知っている。この後続くであろう言葉を予測していた。そして、その言葉がヴァルトから告げられる。

 

「ふん、ナイトバトルとはまた古いものを……力だけで意見を黙殺させるつもりか?」

 

 一般人から帰ってくる、もっともなストレートな意見だ。しかしそれは一般的に出回っているとある視点からの通説である。それを指摘する。

 

「あら、さっきの発言のどこが力だけで黙殺なんです?そもそも、ナイトバトルが決めるのは意志の強さ。意見の正当化ではない。むしろその考えこそ一部の平等主義者が言い出した、自分達を正当化するための言い訳だと思うのですが」

 

「グリューネ……!言い訳を聞いているんじゃない!私にあらぬ疑いをかけるのはやめろ!」

 

 激高するヴァルト。レドリックもその鋭い視線をグリューネとバァンの間で交互に動かす。会見の場が喧騒としたものとなり、取材陣の声も合わせて更に騒がしくなっていく。

 それでもグリューネは、当初の計画通り話し続ける。

 

「実の娘に自分の責任を擦り付ける人が言えるかしらっ!それに、これはある意味ドラグディアの歴史を鑑みれば、貴方達にも理に適っているわ」

 

「なんだと……?」

 

 思わぬ発言が周囲の者達の混乱を誘う。彼女の発言の意図が取れなかったからだ。これから一体、グリューネが何を語るのか。注目が彼女に集まる。そしてその口が開かれた。

 

「ナイトバトルは、国家間の代理戦争でもあった。そしてその代表の多くは、ガンダムが務めることがほとんどだった。もしナイトバトルを今後完全に否定するなら、そのガンダムを倒して初めて、無用の長物であることを証明することが出来るのではなくて?」

 

「……象徴たるものを倒して、初めて完全に根絶できる、と?」

 

「えぇ。それに、先の対決をした2人も、まだ納得できていないようですので」

 

 グリューネの示した視線の先には、未だにらみ合いの続く元と、アレクの姿があった。一触即発の雰囲気に、取材陣もたじろいでいた。ただ、それも見てレドリックは方針を変えた。

 

「……まぁ、それはそれでいいでしょう。アレク、構わんな?」

 

「れ、レドリック准将!」

 

 レドリックの判断に反対を示すヴァルト。しかし耳を拝借したレドリックから何かを言われたヴァルトは、その口を閉じる。そして判断を仰がれたアレクもその言葉に同調した。

 

「えぇ、僕も構いませんよ。そこの彼とは、まだ本当に決着がついたわけではない。……恥ずかしい話、僕は負けず嫌いですから」

 

 そう言って鋭い眼差しをハジメ、そして彼に付き従う形となっていたネアとジャンヌに向けられる。2人の少女達は再び向けられた戦意に怯え、ハジメで視線を遮る立ち位置に姿を隠す。ハジメも2人を護るように立ちふさがる。

 ハジメもまた、アレクの言葉に返答する形で了承する。

 

「俺も無論賛成だ。負けず嫌いっていうのもその通りだが、機体が万全でない状態で勝ち逃げされるのなんてまっぴらごめんだからな」

 

「ふっ、こちらとてそれは同じ。もうすぐ完成する僕の新型機、それで今度こそ君のガンダムを止めてあげよう」

 

 2人の宣言が終わり、その場を締めくくるようにグリューネは決闘の内容をメディアに対して公表した。

 

 

 

 

「決定ね!決闘の時間は今から1週間後!火曜日の正午から行うわ。決闘の場所はフリュウ州のナイトバトル発祥の地、ローディアン市の「グラン・ドラン決闘場」で開催することでよろしく」

 

 

 

 

 グリューネの一声に取材陣の構えたカメラのフラッシュが集中する。フラッシュがたかれる中での、彼女の表情は明るいものであった。

 

 

 

 

 

 

「さて、とりあえず無事宣言は出来たようだね。みんな、ご苦労様」

 

 ヴェールとローレインがお茶出しを準備する中、グランツは記者会見に乗り込んだ面々に告げた。バァン、ガンド、グリューネ、ネア、ジャンヌ、そして元はそのお茶を頂いて一息つく。

 

「いえいえ、頑張ったのはグリューネ嬢です。私はレドリックの注意を引いていただけですよ」

 

「そんな事無いです。バァン少将がいてくれたからあれだけの事が言えましたから。ハジメさんもアレクの相手を引き受けてくれてありがとね」

 

「まぁ、構いませんよ。ただ、最初のそのことを聞かされた時は、本当に驚きましたが」

 

 あの場で口を開いた3人は各々回想して互いに称賛する。グリューネの打開策とは、ナイトバトルを行うこと。そしてその勝利のカギとして元に代表として出てもらうことであった。

 しかしそれにこぎつけるまで、少し論争はあった。話は昨日の事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでも方法はあります。ちょっと強引な方法ですけどね。そのためにもハジメさん、協力お願いできるかしら?」

 

「……協力、というと?」

 

 グリューネの発言に、元は聞き返す。協力といっても、何に協力すればいいのかは聞いておかなければならない。内容によっては拒否せざるを得ないが、元はこの件に協力的であった。ネアは記憶喪失の時からお世話になっている。だからこそ、そのために何をすればいいのか知らなければならなかった。

 グリューネは頷くとカバンの中から端末を取り出す。そして目的の物をこちらに見せてくる。メモツールの表題に「ナイトバトル」と書かれていた。

 

「これは……?」

 

「ナイトバトル。簡単に言えば決闘。それに出て欲しいの。相手はもちろんヴァルト側から選出されるであろう人物とね」

 

 グリューネの言葉を聞きながら、端末のメモツールにまとめられた内容を見る。そこにはナイトバトルの詳細な情報が書かれていた。

 発祥は創世記時代。元々は国々でどうしても争わなければならない事態に陥った時、なるべく平和的に解決できるように考案された方法。現在は意見の対立時にどちらが信念のある意見かを決めるためのモノへと変わった風習。過去は高い家柄同士の争いでも行われたが、現在は司法重視の解決路線への路線変更と、MSの所持法改正の為行われること自体が少なくなった、か。つまりグリューネはこのナイトバトルの勝敗を味方に付けたいって感じなのだろう。

 資料を読み終えると、元はグリューネの言葉に答えを返す。

 

「なるほど、分かりました。引き受けます」

 

「ちょ……ちょっと待ってよ、ハジメ!グリューネも勝手に決めないで!」

 

 しかしその決定に話を聞いていたジャンヌが待ったをかける。隣で話を聞いていたレイアもジャンヌの声に体を強張らせる。

 

「ジャ、ジャンヌちゃん!?ど、どうしたのっ!」

 

「あら、私はちゃんと資料を見せた上で判断を促したんだけど、どこかおかしかった?」

 

 グリューネが指摘する。確かに彼女は突飛とも言える案を出したものの、ちゃんと説明はされている。何より、彼女から既に話を聞いていたであろう大人達から反対意見が出ていない。グリューネの対応にはどこも落ち度はないと思える。

 しかしジャンヌは自身の不満をぶつける。

 

「おかしいわよ!第一ハジメはわたくしの従者ですっ。いくらネアの無実の証明とはいえ、そのためにハジメが戦うのを決めるのは、主たるわたくしが決めることです!それに、そんな危険が伴うような戦いに、簡単に出すわけがないでしょう!?」

 

「お、お嬢様……」

 

 ネアがその気迫に怖気づく。ジャンヌの言い分としては、自分の従者を勝手に使うことが気に入らないように見える。それに死ぬ可能性もないわけではない。元もそれは申し訳なさと感謝の気持ちを感じる。

しかし、それは見方を変えればとある事実を証明できるものである。それがグリューネの口から指摘される。

 

「あらあら……随分彼にご執心みたいね。恋人を他の女に取られたくないって感じかしら?」

 

「はぁ!?!?な、何へ……変なこと言っているの!!こ、こんなのが恋人なわけないじゃない!?」

 

 虚を突かれた発言に慌ててその事実を否定するジャンヌ。思わぬ指摘は彼女の親であるガンドも衝撃を受けている。元も何を言っているのやら、と呆れを見せる。しかしながら面と向かって、しかも指で指された上での否定は心に来るものがある。だがグリューネも、それで引き下がりはせずにジャンヌを更にたき付ける。

 

「あらあら、そんなに慌てて否定しなくても。でもそんなに他人に自分の従者を貸すのが嫌?人を貸すのに意地を張る必要がある?それともそんなに人の頼みを断るのが好きな性格かしら?」

 

「うっ……うぅ……ぐぬぬぬぬ……」

 

 次々と図星であるように言葉に躊躇う主。元もそこまでジャンヌが嫌な性格ではあれど、根はそうではないというのは知っている。しかし元もここで言うのは更にジャンヌの立場を追い込むこととなると思い、口を閉ざす。レイアが心配そうな眼差しでジャンヌの顔を覗き込む。

 

「……ジャンヌちゃん……?」

 

「……わ、分かりました……ハジメ、貴方はいいのよね?」

 

「はい。自分もあの連中……特に、あのMSのパイロットとは決着を着けたいと思っていましたから」

 

「……じゃあ、そういうことで」

 

 投げやり気味に許可を出すジャンヌ。まだその顔には不満が残っていたが、頬に赤く残る物を隠したいがためにそれ以上は何も言わない。許可をもらい、グリューネは感謝の言葉を送り、元に早速次の行動の手はずを伝える。

 

「じゃあ決まりね。ありがと、ジャンヌ。というわけだからハジメさん。明日私達と一緒にヴァルト市長の記者会見場に乗り込むわよ」

 

「私達と……って、他に誰が?」

 

 元の疑問にバァンが自身の胸に手を当てて答える。

 

「私と、他の部隊員数人。それにネア嬢には来て頂くつもりだ。グランツ司令はここに残るがね」

 

「私はある意味この一件に肩入れするのはタブーだ。何せネア君をファーフニル家に居られるようにした者の1人だからね。それにグリューネ君の作戦は私が直接関わらないことを前提としている。会見での宣言後は少し関わらないといけないかもしれないが」

 

「分かりました。……お嬢様」

 

 バァンとグランツに了解を伝えると、元はジャンヌに声を掛ける。ジャンヌは先程の件から立ち直れずに、項垂れた様子で返事をする。

 

「……何?」

 

「よろしければ明日、お嬢様も来ていただけませんか。何が起こるか分かりませんし、グリューネさんの指示も仰がねばいけませんが、それでもネアの支えになってあげた方がいいと思うのです」

 

「ハジメ!……いや、ジャンヌ、どうする?」

 

 元の意見に待ったをかけようとしたガンド。しかし少し考えてから娘に訊く。ここで恥を掻かせたままというのもあれだというのもあるし、それに何より、本当にネアの支えとして、今まで共に過ごした家族に近しい人物が必要だと感じたのだ。

 そんな元の考えを察してガンドも娘の判断を優先した。ジャンヌは一度レイアの方を向き、それから視線を元の方に戻す。そしてその口から自身の判断を告げた。

 

「…………行きます」

 

 明確に口にした、行くという意志。それを聞いたグリューネもそれを了承する。

 

「分かったわ。じゃあジャンヌはハジメさんと一緒にネアといてあげて。レイアさんは?」

 

 グリューネからの誘いがレイアにも向けられる。レイアはネアの親友とも言える人物だ。それ関連ならばと思ったのだろう。しかしレイアは首を横に振る。

 

「私は遠慮しておくよ。……家の問題とか、私には色々と無理そうだし。でもっ、応援はするよ!ネアがいられる場所があるように!」

 

 家の問題。それはレイアには確かに重いものだ。だが、彼女は断ると同時に自身に出来ることをすると言った。その言葉だけでも、ネアには十分届く。感謝の言葉を伝える。

 

「レイア……ありがとう」

 

「ううん。私にはこれしか出来ないから……。ハジメ君、ジャンヌちゃん。後は頼んだよ!」

 

「はい!レイアさんの気持ちに賭けて、ネアの無実を証明します!」

 

「あぁ、確かにその言葉、受け取りました。お任せを」

 

 レイアからの頼みをジャンヌと元は受け止めた。そして明日に備えての準備を行っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 と言った具合に、こんな論争があったものの結局元は頼みを承諾、今日記者会見場にてグリューネの決闘宣言に同行したまでに至るのである。しかしまだこれは始まりにしか過ぎない。ガンドがそのことに触れる。

 

「とはいえ、ここからが本番だ。特にハジメ。いくら機体を強化しても、君自身が付いてこられなければ意味がない」

 

 この作戦で重要になるのは間違いなく元の役割だ。元がこの勝負に勝てなければ意味がない。だからこそ、元の戦闘能力の底上げは必須だ。そしてグリューネ達もその用意をしていた。

 

「というわけでハジメさん。悪いんだけど、この1週間グランツ総司令の管轄下にあるルヴァン基地地下に行ってもらえる?そこからならファーフニル家まで距離はそんなにないし、それにMSの整備とか、訓練施設も豊富だから。それとその基地の司令さんが今回の戦闘指南役をしていただけるそうよ。もし他にあれば言ってくれれば用意してくれるそうよ」

 

「分かりました」

 

 グリューネからの指示に元は頷く。元としても元々軍に入る段階で肉体改造は行うつもりではあった。それが少し早まったくらいだ。しかも今回は軍の司令官クラスの人間が指南に当たってくれるという。またとないチャンスと言ってもいいだろう。元にも断る理由は見当たらない。

 

「あ、あのっ」

 

 と、そこでジャンヌが手を上げて意見を申し出る。何だろうと思った者達の視線がジャンヌに集中する。視線の集中を受ける中、ジャンヌはその口から自身の考えを述べる。

 

「ネアはしばらく学校に出れないとして、その、言い方が悪くなるけどわたくし、暇、になるじゃない?邪魔になるかもしれないけど、ハジメの訓練に付いて行ってもいいかしらって。お父様、ダメ?」

 

 それは元に付いて基地に行くということだった。仮にも元が行くのは軍の内部施設。ジャンヌが軍人の子どもだとしても、そして元の主であっても同伴は厳しいように見えた。

 だが顎に手を当ててから、ガンドがグランツとグリューネに自身の考えを伝える。

 

「……グランツ司令、またうちの子が狙われる……その可能性はまだゼロではないですよね?」

 

 ガンドの口から語られたのは、再びジャンヌが狙われる可能性。ポルンがいなくなった今、その可能性は少ないと思った元だったが、グランツもそれを懸念していた。

 

「確かに。彼女もまたネアに近しい人物。レイア君の方には私の部下を監視役として付けているが、君の娘は元君がその役割を担っているわけだから出来ればその方がいいだろう。それに……」

 

「それに基地の位置はセント・ニーベリュング近郊。ファーフニル邸までの道のり近くの脇道にありますから、戻って二度手間になるよりは2人で一緒に行動してもらった方が良いかもしれません」

 

 2人もまた彼女がまた狙われる可能性を感じていた。元々ネアが巻き込まれた事件がきっかけでこの事件は起きている。いくら主犯が死亡したとはいえ、その糸を裏で引いていた者達がまた襲いに来ない保証はない。むしろ今回の件もまた引いている可能性がないとも言い切れない。ならばまだ監視の目を怠ってはいけない。

 三人の意見がまとまると、ガンドからジャンヌの要求が承認される。

 

「というわけだ。悪いがジャンヌ、元としばらくは基地の方に行ってもらう。まぁネアも同じ基地で保護してもらうつもりだから、顔出しと思ってもらえればいい。構わないか?」

 

「うん。元々は私がお願いしたことだから。ありがとうございます、お父様」

 

 ジャンヌは深々と礼をして席を立つ。元も席を立ち、グランツ総司令に声を掛ける。

 

「じゃあ、今日はこれでお開き、ですか?」

 

「そうだね。とはいえ今日から早速基地の方で司令官で指南役となるゼント君に会ってもらいたい。グリューネ君からは最初から本気でやってもらいたいというオーダーなのでね」

 

「分かりました。では失礼します」

 

 2人はグランツ、それにバァンに礼をして部屋を出る。ドアを出て案内役のヴェールとその護衛の隊員、それにグリューネと少し話していたネアが来るのを待って彼らはルヴァン基地へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドラグディアの首都、セント・ニーベリュング市の近郊に軍事基地の1つが存在する。首都は国の守るべき拠点であり、そのためにも多くの軍事基地が近くに存在していることは少なくない。これは隣国マキナスでも同じことでお互い睨みを利かせるのにも役割を果たしている。

 そしてその中の1つルヴァン基地はその要とも言える基地だ。いくつかの要因があって重要施設となっているこの基地はとある人物の部隊によって管理されていた。その部隊の名は「ガルグイユ隊」。首都とそれに類する人物達を全力で護るための人材を育てる特別訓練部隊の名だ。そしてその部隊を率いる人物こそ、グランツ総司令の懐刀と称される部隊長、そして基地司令官である「ゼント・ガルギュール」と呼ばれる男だった。

 絶対防衛線を敷く彼の部隊はいずれも一流。そんな彼の下にまた1人、訓練を受ける者が現れた。それも1週間で技術をモノにし、にも関わらずほぼ全くの素人が、だ。だが訓練を受ける側も彼を知らない。彼が別名「人斬り鬼教官」と呼ばれていることも……。

 

 

 

 

 

 

「お待たせ。ここがルヴァン基地よ。ちょっと確認してもらうから、待っていて」

 

 車に乗せられ、ジャンヌ達がやって来たのは件のルヴァン基地だ。自分達の登下校ルートからは近郊に出る道を1つ曲がってから、都市を迂回して少し離れた場所にあり、自分達の家の近くにこのような施設があったことは驚きを隠せない。途中の林地帯がカモフラージュで投影されたものだと気づかなければ、当然だろう。

 基地の入り口に車を止め、出入りを管理する入り口の見張りにヴェールが運転手と共に確認を取ってもらっている間、ジャンヌは基地の外観を見て感想を口にする。

 

「すごい……こんなところに基地があるだなんて……」

 

 自分の通学路の近くに、これほどの基地が隠されていたことは、ジャンヌにも驚きだ。内部に入らなければ中が確認できないような立体映像、そして隠し対象である基地の大きさ、おそらく自身の家であるファーフニル邸の敷地とほぼ同等ではないかとため息を漏らす。

 ジャンヌの隣でもハジメ、そしてネアが同じように呆然と感想を述べる。

 

「すごい……自分達の近くにこんな施設が本当に存在していたなんて……」

 

「そういえばこの近く、フォーン様が非常時に駆け込むように言われていた場所……。こういう施設があったからこそ、言っておられたんですね。

 

 ネアの言葉に注意が向く。確かにジャンヌも何度か、フォーンに避難経路の確認でこの近くへの非常時の避難経路として言われていたような気がした。そう思えば確かに納得できるものがあった。

 こんな施設だったら確かに逃げ込んでかつ身を護れるわ……。でも、これって知ってなかったら意味ないんじゃ……?

 思わず出た心のツッコミは、確認の終えたヴェールの呼びかけで後回しにされる。

 

「……よし、それじゃあ入るわ」

 

 車が再度発進し、フェンスタイプのゲートが開いてそこから基地内部に進入していく。やがて車が基地の建物脇の駐車場で停止して、ジャンヌ達は車から降りる。すると、車を降りた彼女達に基地の人間と思われる人物が声を掛けてくる。

 

「来たか。ヴェール・フリード技術大尉。それに……ふむ、君か」

 

「……」

 

 その人物はハジメの前に立つと、その顔をじっくりとあらゆる角度から見る。まるで買い物で商品を見定めるかのようだ。ハジメは蛇に睨まれた様子でその品定めを受ける。

 それが終わると、自己紹介を行う。

 

「俺はゼント・ガルギュール。この基地の司令官で、部隊の教官をやっている。階級は大佐だ。お前は」

 

「はい。クロワ・ハジメです。今回は決闘に備えての戦闘技術の特訓ということで……」

 

「あー、用件まではいい。既にグランツ総司令から話は聞いている。まさか俺が、ガンダムの装依者に教えることになるとは思わなかったがな。それで、1週間だったな」

 

 ゼント・ガルギュールはハジメの言葉を半分で遮って、物事の確認をヴェールに取る。ヴェールが肩を竦めて、そうであると伝える。

 

「はい……。それで、もうガンダムの方は……」

 

「おう、届いている。既に地下の秘匿ハンガーに入れてある。グランツ司令経由で、あんたが指定した改修素材も含めてな。人員も受け入れているから、問題ない」

 

「ちょ、ちょっと待ってください!貴方、いくら何でもぶっきらぼうすぎるのでは!?」

 

 ジャンヌが我慢の限界となって、従者へのを含めた非礼を咎める。ゼントは面倒くさそうな反応で顔を向ける。

 

「あー?そーいやあんた誰……って、そういやヴェールお前なんか言ってたな。追加でもう1人来るって」

 

「な……!あんたって何!?わたくしはガンド・ファーフニルの次女ジャンヌ!っていうか、こんな人にハジメが鍛えられるっていうんですか!?」

 

 思わずキレてしまうジャンヌ。自分への無作法な扱いに、彼がハジメの指南役というのも忘れて思わず口が出てしまう。しかしそれを収めるべくヴェールが2人の間に入って仲裁する。

 

「す、すみません、ジャンヌ様。この人ストイックって言いますか……。ゼントさんも出会ってすぐに人の堪忍袋の緒を切らせない!」

 

 しかし仲裁する2人の様子は、どこかじゃれ合いのようにも見える。ジャンヌはそれに気づかなかったが、それを見ていたハジメはその点を指摘した。

 

「……失礼ですが、ヴェールさんはこの方とお知り合いなんですか?仲のよさそうにしていますが……」

 

 するとヴェールが肯定し、関係を教えてくれた。

 

「ゼント大佐は私のお父さん、グランツ・フリードの友人の息子さんなの。家に来たときとかよく話し相手になってくれたから、その時からの縁だね」

 

「そういうことだ。けどその話はあとだ。ジャンヌ・ファーフニル……ジャンヌ嬢ちゃんでいいか。悪いが早速訓練に入る。嬢ちゃんの執事を借りるぞ」

 

 だがその関係が明かされても、ゼントはジャンヌの言葉に耳を貸すことなく、代わりにハジメの身柄を借りていくことを伝える。変わらない対応にジャンヌが文句を言った。

 

「だ、だからぁ!」

 

 しかしジャンヌの言葉を、ゼントが現状を語って封じる。

 

 

「聞いたところ、執事の坊主は1週間であの「速烈の剣士」と互角の戦いを所望してるっていう。けど、戦闘技能は素人らしいな?今すぐやらねぇと勝てねぇぞ?」

 

「うっ……」

 

 

 ゼントはしっかりと現実的な話をしていた。続けてゼントの口から非情な現実を告げられる。

 

「俺は勝てるように鍛えてやれとグランツさんに言われた。あの人の言葉は絶対だ。そして、執事の坊主はそれを望んだ。なら、俺は絶対的に勝てるように、そのために全力で鍛えてやらなけりゃならねぇ。時間が1秒でも惜しい。嬢ちゃんも、そのネアって子を護りたいんだろ?だったら今は従ってもらう。いいな?」

 

 ぶっきらぼうに感じられるその発言。しかし、彼の眼と言葉、そして外見からはその本気さが感じられた。それ以上に、彼女もまたそれを分かっていた。ハジメが出来る限りの力を、いや、あの男に勝たなければならないことを。

 なら彼の言葉に従うしかない。今更人選を変える暇もない。それにそれだけ考えてくれるのなら、こちらも全力で応える必要がある。それが今の彼女達に出来ること。口を挟まないことがそれに繋がるのなら。ただし、予防線だけは張っておく。

 

「…………分かりました。けど、終わったらたっぷり文句は言わせてもらいます」

 

「ヘッ、それは覚悟しとくぜ。……さて、じゃあハジメ。まずはこの訓練着に着替えてから基地の外周20周走り込み!それから基地の地下8階まで全力疾走で降りてこい!それが終わったら模擬戦闘を行う。返事は!」

 

「え……、あ、ハイ!!」

 

 ハジメの教官となったゼントからの、最初の無茶な訓練内容の通達を啖呵に、この1週間の地獄のトレーニングは始まったのである。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。最近文字数がすごく多くなってきてるんじゃあ……(;´∀`)

ジャンヌ「でしたら減らすか分けてください」

そろそろ以前みたいに投稿前に分けるって、前もやっていたことをしないといけないかもしれん(´・ω・`)

レイ「けどいきなりあんな練習メニューを言われるって相当だよねー。元君大丈夫なのかなぁ」

さぁ?けどゼントさんが言っている通り、時間がないから無理にでも付いて行かないといけないですね。あ、ちなみにそこら辺の描写はほぼ割愛して次回機体のとある機能に関しての話になります。

レイ「えぇ~、端折るの?」

いや、まぁまだ第1部の第2章だし……ちなみに第1部は4章構成になります。

ジャンヌ「意外と短いですね……戦争ってもっとかかる物では?」

いや、1年かけて戦争終結させてるのはデュ○マのアニメとかくらいのものだって……かの有名な一年戦争も、実際始まったのは1月からだから1年だけど、初代ガンダムのストーリーはその4分の1程度だからね。後は外伝で外埋めよ。

レイ「だ、大胆に言い切ったね……大丈夫なの?何か言われたりとか」

でも実際そうだからそれ以上は無理だし。それに時系列的に開ける部分があるから、そこの話をクリスマスとかそれら関連のスペシャルエピソード書くって決めてるから。

ジャンヌ「あ、そのための構成なんですね」

レイ「1年丸々使わない利点はそこかぁ……。じゃあ特別エピソードに期待だね!」

というわけで今回はここまで。

レイ「次回もよろしくっ!まったねー」




レイ「あ、ちなみに前書きで言ってた時代については?」

あ、はい。年数的に元号は平成が終わった次の元号だけど、そもそも元君の世界では、平成の終わりが5年くらい早まっているし、元号も違うからあんまり影響はないね。けど一応令和的な時期真っただ中だね。

レイ「じゃあ、令和ガンダムなんだね、シュバルトゼロは!」

……すみません、そうとは限らない(´・ω・`)(シュバルトゼロガンダム自体は平成に考えているため)

レイ「えー、残念」


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番外編 活動4周年記念~夢幻の見せる激闘~

はいはーい、初の番外編公開です。藤和木 士です。

レイ「アシスタントのレイ・オーバだよっ。いやぁ、もう藤和木が活動して4年なんだねぇ……」

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌ・ドラニエスです。わたくし達はアシスタントを担当するようになって3年ほどですけれど、感慨深いですねぇ」

というわけで今回の番外編は、前作が関わってくる「IF」とも呼べるお話です。いきなり驚く展開ですが、ご了承ください。読んでいけばなんとなく分かります。ではどうぞ!


 

 それは、地獄のような戦場だった。ふと目を覚ました元の視界は、とある戦場の中だった。見たことのない異空間と、空中に浮かぶ大陸の数々。そしてゲームでしか見たことのないような異形のモンスター達……。異世界とも呼べるその光景は、ドラゴンのいる世界へと投げ出された元すらも驚かせるには十分な光景だった。

 いきなりこうなっているのも驚くが、それ以上に驚いているのはどうして自分がこんなところにいるのかだった。既に周囲は爆発の余波で粉砕したと思われる地面と、燃え盛る炎で包まれていた。丁度近くにあった割れた水晶に目が惹かれポケットに投げ込んだところで、近くから声が聞こえてくる。

 

「頑張って!!コウキ君!!」

 

 コウキという誰かの名を指す単語を聞き、元はその方角へと向かう。すると、そこにいたのは元も驚きの存在だった。

 

「ッ!?あれは……ガンダム!?」

 

 そう、元の視界に映ったのは背中の機械で出来た翼を広げ、空中戦を展開する黒いガンダムの姿だった。シュバルトゼロガンダムにも似たその機体は、同じく空中を飛び回る黒い機体と激突している。

 自分以外のガンダムの存在に、元は岩肌で隠れて観察する。観察の中で更に気づいたのは、自身の手前の方で見物している、MSの集団があった事、そしてそこにいた機体がいずれもガンダムの顔をしたMSだったことだ。

 

(あんなにガンダムが……ここはマキナ・ドランディアじゃないのか?)

 

 マキナ・ドランディアでは救世主と崇められているほどのガンダムが、これほどいる光景に元は若干戦慄する。もしかすると、この世界はガンダムの世界なのではと思ってしまう。しかし、戦場へと視線を戻した元はその戦闘の中で更に目撃してしまう。そう、ガンダムをだ。

 

(……戦っているのも、ガンダムだ。一体、これは……)

 

 漆黒のガンダムと戦う機体もまた、同じく黒のガンダムだった。違うのは、フレームと思われる部分が赤か金色かの違い、それに武装も違う。赤いフレームの方はビームサーベルを振るい、更にその腰部にはブレードガン・ニューによく似た銃剣を装備している。対する金色のフレームを持つ黒いガンダムはその手にかなり大きめの、装飾が施された大剣を2本振り回している。どちらの機体も、よく似た2つの大型翼の間に小羽とも言える小さなパーツが浮遊しているウイングを装備している。細かいところは違うが、その装備数は3対。兄弟機の様にも思えた。

 赤い機体の姿に、元はシュバルトゼロガンダムの面影を強く感じる。武装面は翼を除き似通っており、ブレードガン・ニューに似た武装やサイドアーマーを形成している武装は強化改修前のガンダムのサイドアーマーに似ていた。それに何より戦い方が自分の使うガンダムと同じだったのだ。

 何度も激突する、2機の漆黒のガンダム。しかし、金色のフレームの機体が大きく突き放す。同時に大剣を掲げて剣の柄を煌めかせる。

 

「行くぞ、コウキよ!キングロイヤルブレイク!」

 

『ノイズフォースビックバン、キングロイヤルブレイク』

 

「ぐっ!!」

 

 柄から展開された光の障壁を貫きながら、大剣からビームが放たれる。圧倒的な出力に空気が揺れる。それらは隣り合っていた別の空間にも及び、そこにいた誰かの声が、再び赤いフレームのガンダムの装依者を呼ぶ。

 

(コウキっ!負けないでっ!)

 

 当の本人であるコウキと呼ばれた人物は、攻撃を何とか受け止めるも地面へと叩き付けられる。爆発と共に煙が周囲を覆う。煙が晴れていくと、ガンダムは無事だったが、各所からスパークが散っていた。あれだけの大きな攻撃を受けたのだ。元のガンダムでもあれを防ぐ自身は無い。それどころか、先程まで見ていた空中での激闘も、スピードを目が追っていくのが精一杯だった。一目であの2人が自分よりもレベルの高い人物だと確信する。

 劣勢状態のガンダムに、金色のフレームのガンダムが負けを認めるように言う。

 

「ここまでだな、ワトウコウキ。この次元も、いや、全次元世界は私、シュバルトキングガンダムのもの!!」

 

「させるかよ……シュバルトゼロガンダムの名に賭けて、今までに苦しんだ無数の俺達の願いを叶えるために、テメェをぶっ潰す!!」

 

 対して赤いフレームの、自身と同じガンダムの名を口にしたワトウコウキという少年は、シュバルトキングガンダムの男に抵抗する。その話の内容から、どうやらキングの方は世界を征服しようとしているようだ。コウキという少年の無数の俺達という言葉には、あまり理解が追いつかなかったが。

 ……まったく、とんだ夢物語の世界に来たみたいだ。けど、そういう話が進んでいるなら、俺も黙っちゃいられない!どういうわけか、「これ」もあるわけだしな。

 そして、元は行動した。

 

 

 

 

 

 

「やれやれ、そんな勝手に世界レベルの侵攻が進んでいるなんて、はた迷惑な」

 

「!?誰だ!」

 

 コウキという少年がこちらに声を飛ばす。そう、元はこの戦場に飛び込んだのだ。その様子を訝しむようにキングは名を問う。

 

「ほう……?見慣れぬ者だな……何者だ?」

 

 キングの問いかけを受け、元はその場にいた者達に名乗りを挙げる。

 

「俺は黒和元。かつては平和な地球で暮らして、今は竜と機械の種族の住む世界、マキナ・ドランディアの名家「ファーフニル家」預かりのしがない執事だ。……もっとも、同時にこいつの使い手だけどな」

 

 そう語り元はスターターを示しながら腰に装着する。突然現れた謎の男性に、ガンダムの集団からも警戒心が生まれてくる。

 

「クロワ、ハジメ……」

 

「地球って、私達の世界の住人?」

 

「竜と機械の世界って……?」

 

「マキナ・ドランディア……聞いたことがないな」

 

「ファーフニル家って一体どこの家?そのマキナ・ドランディアっていうところの?」

 

「っていうか、それの使い手?ベルトってことは……いやドライバー?」

 

(色々と考えてるみたいだな。けど、驚きはこれからか)

 

 スターターにガンダムを装依するための機体認証キー「ロックリリーサー」と「セレクトスーツカード」を装填する。そして、手を交差させ構えてから大仰に腕を振るってから装依ボタンを押し、構える。

 

『Standby OK?』

 

「装依」

 

 スターターからの問いかけに、元は返答する。返答に合わせ元の前後を光のゲート「アクセス・ゲート」が挟み込む。挟み込まれた元の体が電子へと変換される。ゲートは挟み込んだまま、上部へ回りそのまま下降する。光のゲートを潜って現れたのは、損傷から新たな姿へと再構成された、シュバルトゼロガンダムの改修機「シュバルトゼロガンダム[リペア]」である。修復されたその姿は、赤いフレームのガンダムに更に近くなっていた。

 

『スターティング・ゼロ・アウェイクン シュバルトゼロガンダム』

 

 スターターからの機体名称呼称がなされる。現れたもう1機のガンダムに、見物していた他のガンダム達が驚きの声を漏らす。

 

「嘘……シュバルトゼロがもう1機!?」

 

「あれも、アイツの言ってた旧戦争の遺物?」

 

「で、でもでも、キングの方も予想外みたいな反応してなかった!?あれってキングの方も想定してない、把握してない機体なんじゃ……」

 

 イレギュラーとも呼べる機体の出現。それは無論相手側にとっても同じだった。キングもその姿に動揺を見せる。

 

「が、ガンダムがもう1機だと!?えぇい、何がどうなっている!?くそっ!」

 

キングは動揺しながらも、元を撃墜しようとその剣を向けてくる。先程と同じく、圧倒的なスピードでこちらに距離を詰めてくる。が、途中、突然機体の動きが鈍くなる。

 

「何?」

 

「ッ!しめた!」

 

 スピードの失速した動きに合わせ、元はビームサーベルを振るう。攻撃自体は防がれるものの、先手をこちらが取る。なぜスピードが落ちたのか。元も疑問を抱くが、次第にその理由が明らかになる。

 

「くぅ、スピードが出せん……この蒼い粒子か?」」

 

「そうか、高濃度DNが、あのガンダムの動きを遅らせている?ならこちらが有利!」

 

 元のガンダムが放出する蒼い高濃度DN。それが相手の機体の、赤いDN、量産型の出力を落としていたのだ。それが分かると元は反対の手にブレードガン・ニューを構え、更に攻撃を加える。激突する剣筋。その間にもう1機のガンダム、コウキのシュバルトゼロガンダムが立ち上がる。コウキは立ち上がると、サイドアーマーを前方に向け叫ぶ。

 

「避けろ、クロワハジメ!!」

 

「っと!?」

 

 その声に反応し、元は退避する。その方角に向け、大出力のビームがサイドアーマーから放たれる。一撃必殺とも言える火力に見える。

 だが必殺を期して放たれたそのビームは、元の居た付近よりスピード、熱量共に落ちていく。そのおかげで間一髪攻撃を回避するキング。

 どうやら、俺の機体の粒子がこの世界のガンダムの出力を下げるみたいだ……。けど、一体どうして……?

 新たに生まれる元の疑問。しかし、その疑問は解決する前に遮られる。怒りを露わにしたキングは機体から更に粒子を放出し荒れ狂う。

 

「何故だ、何故たった1機のMS如きに、王たるこのガンダムが後れを取る!!」

 

 すると、それに返答したのはこちらに歩み寄ってくるもう1機のシュバルトゼロガンダムだった。ガンダムはブレードガン・ニューに似た銃剣を両手に装備し、元の隣に立つ。

 

「……それに関しては、俺も疑問に思うな。だが、今はそんな事を言ってる場合じゃない。さっきお前はあのガンダム……シュバルトキングガンダムの行いに対して、はた迷惑だと言った。……つまり、俺達の味方をしてくれる、っていうことか?」

 

 銃剣を構えた状態で、問いかけてくるもう1機のシュバルトゼロガンダム。こちらを疑っている、ということは間違いなく伝わってくる。誰も知らない、しかし自分達の良く知るガンダムと同じ機体にあちらは興味があるようだ。もっとも、それはどちらかと言えば敵対関係を明らかにしたい、というようだが。

 しかし、元もそこは素直に答える。それは人として当たり前の発言だった。

 

「侵攻してくるやつだったら、俺は戦う。それと敵対している人達がいるなら、俺は協力する。助け合いとは、そういうものでしょう?」

 

 皮肉っぽく、そう発言する。実際皮肉であり、元も危険だから一緒に戦う、敵の敵は味方理論での発言だったが、それでも同じ名を持つガンダムの装依者はやや緊張感を崩すように発言する。

 

「……フッ。まぁ、そうだな。あの有名特撮でも「助け合いでしょ」って言ってたくらいだ。今回の場合は……そう、ガンダムなら、助け合いだろ、ってか」

 

 もう1機のシュバルトゼロの装依者であるコウキは、剣を向ける相手をこちらから敵側……シュバルトキングガンダムへと向ける。剣を向けられるも、その心意気に余裕を取り戻すキング。

 

「ハハッ。いいのか?そいつといれば、お前も更に力を奪われるというのに」

 

「構わねぇさ。その中で一方的に戦える奴がいる、そいつが手を組んでくれるっていうんならな!」

 

 コウキは、キングの指摘した欠点に笑みを見せながら返す。そして2機のガンダムは、敵に対してその剣を向け背中合わせに口上を述べる。

 

「シュバルトゼロガンダム[リペア]、黒和元!」

 

「シュバルトゼロガンダム・ゴッドクロスR(リファイン)、和藤光樹!」

 

 2つの機動戦士の言葉に、他のガンダム達が武器を構え、援護の態勢を整える。その合図となるように執事の青年と総司令の少年の言葉が響く。

 

 

 

 

「行きます!!」

 

「目標を、撃破する!!」

 

 

 

 

 一斉にガンダム達が飛翔する。それを受けるようにキングもまた、こちらへと激突する構えを取る。2人の剣がキングの剣と激突し、光が溢れ――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――――ハジメ?起きなさいよー!」

 

「ん……んあ?あ、お嬢様?」

 

 目が覚める。まどろみから覚めた元の眼を、証明の光が差し込んでくる。目を覚ますと、そこは大きな地下訓練場のフィールドだった。先程までの不思議な異空間や浮遊する大陸などは存在しない、平和な世界が広がっていた。

 そこでようやく元は体感していたように思えた空間が、夢の産物であったことを知る。とはいえ、今になって思うとやや不整合性があったのを感じる。

 

(まぁいきなりあんなところにいるっていうのもおかしい話だ。訓練でノックアウトされたから、当然前後の記憶はない。それにあんな空間だったとはいえ、お嬢様がいなかったのも今じゃ不自然だ。それに、もっとおかしいのはあの時スタートがまったく会話に入らなかったことだ)

 

 スターターを装依したとき、そして装依後もいつもなら何か一言あるはずのスタートが何も言っていなかったのもおかしい点だ。もっとも、あの時は状況が状況だったことから、それを気になる暇さえなかったようだが。

 状況を整理し体を起こすと元は自らの主、ジャンヌ・ファーフニルへと目覚めの挨拶を行う。

 

「おはようございます、お嬢様。どうやら少し寝てしまっていたようで……」

 

「もう……っ!びっくりしたわよ。少し倒れている時間が長かったから、心配して駆けつけてみれば……本当にアレクを倒せるんでしょうね!」

 

「ははは……面目ないです。ですが倒さなければという気持ちは十分ありますよ。負けられませんから」

 

 元は心配させまいとジャンヌにしっかりと意気込みを伝える。まだ決戦までの期間は4日ある。それまでに鍛え上げなければならない。それに、あの異世界で戦った時もたまたまガンダムのDNがあの世界のガンダムに対して有効的だっただけで、実力では確実にあのガンダムに負けていた。機体相性という物があるとはいえ、あれはほぼガンダムの特殊な性能に頼って防げただけ。次に戦う相手は、そんなものは通用しないのだから。

 元は立って天井を見上げる。もしあのような場面に出会うことがあったのなら、この世界や元の世界を襲う別世界の存在がいたとしたら、それに立ち向かいたいと思う。そして、またあのガンダムと共に戦いたい。あのガンダム達と対等に立ち向かえるほどに強くなりたい。……とはいえ、彼らは空想の産物ではあるが。しかし、妙にリアル感があったよう感じる。風の感じ方も荒廃したようにも感じていた。本当にあれは夢だったのだろうか。そんな疑いを浮かべる。

 妙にリアルさのあった夢をよそに、元に帰りの支度を要請するジャンヌ。その声に急かされ、元は急いで彼女の後を追う。

 

「それより早く帰りましょ。もうこんな時間だし」

 

「あぁ、そうですね。それじゃあゼントさんに顔を見せてから帰りましょうか、お嬢様」

 

 ジャンヌの後を追うように元は走り出す。決闘の日は近い。夢のような決戦に立ち向かえるような強さを求め、まずは目の前の対決に目を向けなければ。元はこの遅れを取り戻すためにも、明日は全力で臨もうと強く思ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

だが彼のポケットから光る物質が地面へと落下していた。それは透き通るような美しさを持つ、紅い水晶の欠片。だがそれは部屋の電気が消灯されたタイミングで砕け、更に砂粒となって宙に消えた。紅い粒子と共に。

 それは水晶の見せた、夢幻。夢幻となって現れたのは、遠くて近い、ある次元の激闘の記憶であった。

 

 

EX-EPISODE END

 




今回もお読みいただきありがとうございます。番外編と同時公開のEP29では、この訓練期間後の結末が見られますので、そちらもご覧いただけると幸いです。

ジャンヌ「コウキさんは、あのコウキさんでいいんでしょうか……。でもあの物語は完結せずに終わっているので、何ともですね」

レイ「でも、きっとあの光樹君だよ!前作SSRの!けど夢オチかぁ……仕方ないけどさ」

SSRとは私が原作・超次元ゲイムネプテューヌで書いていた「新次元ゲイムネプテューヌVⅡ SSRと言う名のG」の事です。今作とは一部設定を流用した別作品ですが、シュバルトゼロガンダムなどの関連機も多く存在しています。
ちなみに今回のお話で登場したシュバルトキングガンダムは、ラスボスの予定だった機体ですね(*´ω`)出せなかったのは残念だけど、こういう形で出せてよかった。

レイ「けどキングの姿、もう少し分かりやすいといいんだけどねー」

あ、シュバルトキングガンダムはベースはSZGに仮面ラ○ダーブ○イド キングフォームのイメージを落とし込んでいます(´・ω・`)

ジャンヌ「ガンダムに仮面ラ○ダーのイメージを落とし込むって……」

まぁ鎧をかぶせていたり、武器がキングラ○ザーっぽいって感じなんだけどね。とりあえず今回はここまで。

ジャンヌ「次回黒の館及び続くお話もお楽しみください」


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EPISODE22 決闘宣言3

ど、どうも皆様、若干更新ペースが乱れているかな?と思った方、正解です。藤和木 士です。

ネイ「アシスタントのネイ・ランテイルです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィア・ダルクよぉ。……それで?遅れた理由って?」

貴方達は知っているでしょうに……(´・ω・`)

ネイ「まぁ、そうですね。……家の問題で忙しかったとは……」

グリーフィア「私達の家の問題に引けを取らないわねぇ。しかも元凶が元凶だしねぇ。聞いて、しかもその眼で見てる時期に当たるジャンヌ達の感想からも、最低よね、貴方の母親の実家」

正直言って、ただの我儘言う大人の皮被った子どもだと思ってます。(# ゚Д゚)さて、そんなつまらない話は置いておいて、EPISODE22、公開です。

ネイ「えぇと……確か前回は……元さんが凄まじい特訓の量が課せられたんでしたっけ?」

イグザクトリー。

グリーフィア「それで今回はその後、しばらくしての話なんでしょ?すっぽぬかすわねぇ」

まぁそこはね?さて、決戦直前の問題が明らかに?それでは本編へ!


 

 

 グリューネ・ロードが実父ヴァルト・ロードによって掛けられた、ネア・ラインの無実の罪を払うべく持ちかけた、ナイトバトルの宣言から5日が過ぎた。その情報は瞬く間に国内を席巻した。

 ナイトバトルに対してもだが、それ以上に市長とその娘による争い、そして父親が隠し子に自身の罪を擦り付けたというのも更にニュースに拍車をかけていた。特にグリューネや、ネア、そしてナイトバトルのグリューネ側の輩出者である元の通う聖トゥインクル学園は、校内中がその噂で持ち切りだ。休み時間も、ネア・ラインを除いた関係者の周囲には多くの見物客の如く、生徒達が押し寄せた。その騒動に教師達もお手上げ状態である。

 噂の嵐が巻き起こる学園は、授業が終わった後も収まらなかった。最初の2日も慌ただしく彼らの下へ人が集まり、グランツの指揮下にあった軍の人間がその暴動を鎮圧せざるを得なかったほどだ(呼んだのはローレインである)。

 そんな中から無事脱出した後も彼らの苦労は終わらない。グリューネはグランツの下で計画の状況確認と調整、元とジャンヌは基地まで行って訓練とその見学兼勉強……。元の訓練メニューもまさに地獄のようなスケジュールだ。

 無理もない。何せ二つ名持ちのMS装依者を素人が1週間で相手に出来るようにしなければならない。初日はそのまま基地で泊まっていったほどだ。そして学校でも暇さえあれば戦術理論の教科書による自習とやることは多い。それでも元がメニューに喰らい付いて行ったのはひとえにネアの存在があったからこそだろう。ジャンヌも元の為にと、学校や家ではなるべく自分で問題を解決し、基地での訓練後には差し入れをするなどしていた(もっとも本人はネアへの差し入れのついでと強く言っていたが)。

 そんなこんなで5日目の日曜日を迎えた。これはその休憩の合間を縫って描かれる、決闘の勝敗をも分けるかも知れぬ話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!!へぁ!!」

 

「むっ。はっ!」

 

 突き出した元の模造刀を、ゼントが自身の模造刀で受け止める。受け流して打ち下ろす構えを取るゼント。だが、その攻撃を元はそのまま勢いよく前転して回避、地面に足を着けると同時に切り返してその刀を振るう。

 お互い、一歩も退かない戦闘を繰り広げる。もちろんこれは訓練であり、怪我もしない。しかしそれぞれの鋭い閃撃、そして元の出す威勢の良い声が実践を感じさせるほどの雰囲気を出していた。

 まだだ、気を抜くな。今は押してはいるけど、押すだけじゃダメだ。今度こそ……打ち込む!!

 強く心の中で宣言すると同時に、元が動いた。連続した剣戟のパターンから一気に相手の模造刀に押し込みをかける。ゼントはそれを避けるように模造刀でそれを受け止めつつ後退していく。その状態で元は一気に模造刀を横に薙ぐ。それに流される様にゼントの刀も横に弾かれる様に退く。しかしゼントはそのまま空いた左腕を伸ばした。

 

「甘い!」

 

 一声を掛け、タックルの要領で元に拳を向ける。今まで何度も喰らっていたその拳。元は訓練の間幾度もこの拳にやられていた。最初は走り込みの訓練メニューからこの実戦形式の練習で、模造刀を用いた訓練ということで刀に意識を向けていたら、いきなりこの拳を喰らったものだ。いきなり走り込みをしてからの一撃は、とても聞いたのを今も覚えている。何度この拳にKOされたことか。

 しかし、元もそれらを通して考えた。様々なパターンで放たれた拳に対して、その対抗策を何度もシミュレーションをした。そして、元の体が動く。模造刀を逆手に構えなおして、地面に対して垂直に体の左側に立てる。そしてそれを軸にして体を急旋回、拳を回避する。

 何とか拳を回避した元。だがゼントの右手に持った模造刀がラリアットのように向かってくる。それを飛び退いて回避して、また突撃する。

 

「うぉぉぁぁぁ!!」

 

 雄たけびを上げる。その状態で振り下ろした模造刀が、ゼントの右手の上から刀を叩く。勢いよく叩いた手から刀がこぼれ落ちる。それは大きな隙だ。

 

「ぬぅ」

 

「今っ!!」

 

 元はそう声を発して懐に飛び込む。そして刀を振り上げた。しかしそれを見越す形でその右手の上から、ゼントの左拳が直撃し、刀を落とした。痛みが走る。

 そしてゼントは退いた形となった右拳を構える。溜めから放たれた拳は、ハジメが左腕前腕で受け流した。しかしゼントはそのまま押し倒そうと左手を元の肩に置き、体重をかける。そのまま元の体が押し倒される―――それでも元は諦めず、足に力を込める。

 

「っぁあ!!」

 

「ぐお!?」

 

 力を込めた右足が、ゼントの左わき腹を直撃する。それでもゼントは倒れない。だが左手の力がわずかに緩んだ隙に、拘束を跳ね除け逆に彼の左肩を掴む。流石に元が押し倒すのは難しい。正直言って模造刀のない状況で元がゼントを倒す可能性は低い。ところが元は、悪あがきの如く右手に力を入れる。拘束するのではなく、足掛かりとして既に蹴り込んでいた右足を上げ、跳び上がる。

 垂直方向への跳躍。右手を支えに、その状態からガンドの右側頭部に力を振り絞った蹴りを入れる。

 

「ぁあ!!」

 

「うぅ……」

 

 蹴りの勢いが強く、反動で投げ出されてしまう元。訓練場の床に強く打ちつけられる。何とか近くにあった模造刀を杖代わりに立ち上がる。まだ戦闘は終わっていない。立たなければすぐに追撃が来るからだ。

 

「はっ……はっ」

 

 息も絶え絶えとなって見据える元。しかし、ゼントは側頭部を抑えて数秒してから、制止の声を掛けた。

 

「よし、ここまで。生身でこれだけ出来れば上出来だ」

 

「え……つまり……?」

 

 呆然となる元に、ゼントが証とも呼べる声を掛ける。

 

「これならMS戦でも、ガンダムの性能を含めて互角に渡り合えるかもしれん」

 

「っ!本当ですか!!」

 

 それは待ち望んでいた言葉だ。アレク・ケルツァートに対等に張り合える。その喜びで地面に膝を着いてガッツポーズを取る。

 とは言ったものの、まだまだであることをゼントは告げる。

 

「だが、まだ目安となる点に着いただけだ。後は合間に刷り込んだMSでの戦闘技術と、今までの感覚とを合わせて精度を可能な限り磨いていく。今は体を休めろ」

 

「は、はいっ!ありがとうございます」

 

 模造刀を杖にしてちゃんと立ち直し、礼をする。ゼントがその場を後にすると、入れ違いにジャンヌが駆け寄ってくる。倒れそうになる元の体を支えて、その顔をタオルで拭いてくる。

 

「もう、無茶して……大丈夫なんですか?」

 

「えぇ。ただもう1発来られたら、本当にまたKOするところでした……。短期間で並行してとはいえ、体力付けておいて正解です」

 

 差し出されたドリンクボトルに口を付けて、元は言葉を返す。来訪直後に伝えられた走り込みとこの地下訓練場までの駆け下り。あれは体力を付けるためのメニューだったのだ。とはいえ、いきなりそれだけのメニューは本当にきつく、初日は疲れて基地で眠ってしまうほどだった。最初の2,3日はそうだった。

 しかし4日目、つまり昨日からそれらをこなしつつ、すぐに実践演習でも耐えられるほど、体が追いついてきた。当初より走り込み数の調整や、次の行動への間隔を開けたりもしていたが、それでも初日よりも断然体力が付いてきた。そしてこの休日2日間をほぼ訓練につぎ込んだことで、今回の第1目標点に到達した。

 ゼント大佐……最初はあまりのハードなメニューに殺す気かと思ったけど、色々と挑発されて、結局ここまで来れた。まだ先があるとはいえ、感謝しきれないな。訓練もちゃんと目的に合わせて調整してくれていたみたいだし、全部終わったら改めてお礼を言わないと……。

 そのようなことを考えると、自然と口元が緩む。と、そこに自動ドアを通ってやって来たのはガンダムの整備を担当していたヴェール。彼女は訓練の終わったこちらに声を掛けて来た。

 

「ごめん、2人とも。ちょっと来てもらっていい?無理なら少し時間を置いてからでもいいんだけど……」

 

「ヴェールさん?俺は構いませんが、何か?」

 

 元は頷き、ジャンヌとも顔を合わせて2人でヴェールの後を付いて行く。ヴェールは現在、ガンダムの修復もとい改修作業を行ってくれている。その彼女が呼び出すので、何かガンダムの方で問題があったのかもしれない。

 致命的な問題だけは無いことを祈りつつ、元はジャンヌと共にヴェールに付いて、基地の更に地下、地下10階へと向かった。

 

 

 

 

「それで、何かあったんですか?」

 

「用件がまだだったね。ちょっと機体のシステム系統をチェックしていたんだけど、ちょっとエラーが出ちゃって……ハジメ君は何か知っていないかなぁ、って」

 

 行く途中で話を切り出したハジメとヴェール。ジャンヌはその2人の姿を後ろから見つつ、話しに耳を傾けていた。

 流石にわたくしでも軍事技術とかの話はよく分からないわ。けど、少しくらい聞いておいた方がいいってこともありそうですからね。聞いてもいいかなって。

 そんな気持ちで2人の話を聞くジャンヌ。内容からして厄介なことになっていることは分かる。ハジメは頭を掻いてヴェールの言うエラーについて心当たりを探っていた。

 

「うーん……一言にエラーと言っても……。どういうエラーなんですか?」

 

 とはいえ、流石にハジメも分からず、逆に聞き返す。エラーの内容をヴェールが分かっている範囲で詳しく伝える。

 

「えぇと……ジェネレーター後方の、バックパックで封鎖される部分からアクセスできる部分に入れる、SEED-UNIT00ってパーツの交換でエラーが出てるの。あ、2人は「龍の愛」って知ってる?」

 

「龍の……愛?」

 

「……それって、あれ、ですよね。あの……その……」

 

 ヴェールから語られた龍の愛という単語。ハジメは全く知らない様子だが、ジャンヌには聞いたことがあった。

 それは創世記の時代から伝わる、竜人族が生み出す結晶体のことだ。生成方法は現在伝わる物にはとある方法で生み出す原初型と、工業技術で再現量産型が存在する。しかし原初型はジャンヌもその方法を口にするのが難しい、というより恥ずかしいものだ。

 そんな彼女の羞恥をヴェールも代弁する。

 

「あぁ……竜人族のこの頃の女の子としては言いづらいよね……。ハジメ君にも分かりやすく言うなら、性的行為をして出来るものなの」

 

「……え、いや、何で?」

 

 ハジメは聞き返す。それはまるで、まったく想像しなかったモノが現れ、何故出て来たのかと問うようだ。ハジメは竜人族ではないから知らないのも無理はないが。

 もっとも、ハジメの反応は予想通りと思っていたようで、ヴェールは彼が理解しやすいように、簡単な説明を目的地のドアの前で行う。

 

「んー……なんていうか、お互いの好きって気持ちで竜人族が持つ固有魔力っていうのに作用して、それらが結びついて出来るっていうものなの。なんていうか、私達にはそれが常識?って感じなんだけどね。分かる?」

 

「……とりあえず、生理現象ということなんですね?大体は……」

 

 未だ怪訝そうな目をするも、事情は分かったとハジメは返す。この数日でハジメの理解力の高さはジャンヌも理解していたが、それでも今までMS(本人によればそれに近いものは見たとのこと)や魔力について全く初心者の彼ではその理解にすべて付いて行くのも無理がある。

 だが物事は実物を見てからの方が速い。ヴェールはドアのロックを解除して中へと招き入れる。

 

「……うん、それでガンダムのDNジェネレーターには、それのパーツを組み込むためのスペースがあるの。それで前にあったのが壊れていたから、量産品の物と交換したんだけど……そしたらシステムを含めて、こうなっちゃったの。見てくれる?」

 

 2人への当時の状況を語り、機体前まで案内するヴェール。機体の整備を行っていた整備士から、機体に直結したメンテナンス用端末を受け取ったヴェールは2人にそれを手渡す。見ると、見慣れない単語と共に、エラーの文字が強調して表示されていた。

 端末に大きく表示された文字は英語で「ELACS」と表示されていた。その単語にハジメが反応を示す。

 

「これは……」

 

「エラクス……?っていうの、これ?ハジメ、知っているの?」

 

 ジャンヌはそれに気づき、質問する。ハジメは頷き、それを知った経緯を2人にも語る。

 

「あの時……アレクと戦った時に発動したシステムが、これなんです」

 

「え……もしかして……」

 

「……あの蒼い光……」

 

 ジャンヌの脳裏に、あの時の光景が蘇る。機体のカメラアイと胸部のクリスタルパーツのうちの1点を除いて蒼く染まったガンダム。その状態のガンダムが、アレクの機体を蹂躙したことは今でもジャンヌの記憶に残っている。あの時のハジメは、とてもハジメが操縦しているとは思えなかった。実際本人にのちに確認した時も、機体に引っ張られて暴走しているようだったと聞いている。

 そのシステムの名称だと思うと、少し鳥肌が立つ。あんな挙動を起こすシステムが、今表示されているとは思いたくない。すると、端末から声が発せられる。

 

『そうだ、ジャンヌ・ファーフニル。あれこそがこのガンダムの切り札、エラクスシステムだ』

 

「きゃ、きゃあ!?」

 

 端末画面に顔が表示され、ジャンヌは端末を放り出してしまう。宙に浮いた端末を、何とかハジメがキャッチする。キャッチされた端末の画面で、ハジメに似た顔の人物はむすっとする。

 

『ひゃあ、おっかねぇ。もう少しで画面パリーンだぞ』

 

「い、いきなり出てきて何なの!?そっちが驚かせたんでしょう!?」

 

 反射的に画面の人物にいちゃもんを付けるジャンヌ。対して、落ち着いた様子で、その画面の人物はジャンヌとヴェールに自己紹介をする。

 

『まぁそうだな。俺はスタート。この機体、シュバルトゼロガンダムのOSにして、元英雄の一部だ』

 

「元、英雄?」

 

「英雄って……ひょっとして、ガンダムの装依者!?」

 

 ヴェールの驚きが格納庫に反響する。英雄と言えば、自分達で思い付くのは間違いなくガンダムだ。その過去の装依者だというのだろうか。

 それをスタートと名乗ったOSは、答え半分で回答する。

 

『大体そんなところだ。何でこうなのかって質問は答えないぜ。それより、エラクスシステムについて訊きたいって感じだったが?』

 

「そうだ。あの時突然起動したが、あれは一体何だったんだ?」

 

 ハジメが慣れた様子で、スタートにエラクスシステムについての情報を要求する。ハジメはどうやらスタートの存在を以前から知っていたようだ。ハジメからの質問に気だるげながらもスタートは答える。

 

『まぁ、簡単に言えば出力リミッター解除機構だ。正確に言うなら、DNジェネレーターの内部、DNを取り出すための次元空間接触用ゲート生成器の回転数を引き上げだな』

 

「次元空間接触用ゲートの回転数上昇……!?ま、まさか、あれだっていうの!?」

 

 スタートの言葉に狼狽を見せるヴェール。ジャンヌはその狼狽の理由を聞いてみる。

 

「どうしたんですか?何か知っているんですか?」

 

「あ、うん……MS工学史の歴史で見たことがあるの。……ジェネレーターの回転数を限界まで引き上げて、敵もろとも自爆するって機能……」

 

「じ、自爆……」

 

 嫌な単語を聞き、2歩近く下がってしまうジャンヌ。自身を犠牲にして多大な損害を与える意味の単語が、ジャンヌの記憶の片隅に仕舞っていたポルン達の最期を思い出させる。が、すぐにスタートがそれに対し補足を含めて解説する。

 

『まぁ、俺の知っている限りじゃそれは間違った使い方だ。そういった研究がされていたのは否定しないけどな。それで話を戻すが、本来の使い方はあの時のように機体性能を上げて敵を圧倒する使い方。そしてエラクスシステムで暴走状態となったジェネレーターに冷却剤の如く投入するのが、お前たちが龍の愛って呼んでいるSEED-UNIT00、別名リム・クリスタルだ』

 

「リム・クリスタル……」

 

 その単語を復唱する。ジャンヌも授業中一度は聞いたことのある単語だ。龍の愛の別名であることも知っている。

 システムの概要を更に語るスタート。

 

『リム・クリスタルの投入で、ジェネレーターの急上昇を抑え込む。それでシステムを暴走状態から復帰させるまでがこのシステムだ。……だが前回の使用時、ハジメの意志に呼応するように勝手に起動した。封印状態を解除して、リム・クリスタルが壊れた状態で、な』

 

「え?」

 

「ちょっと、それってどういうこと!?」

 

 スタートの思わぬ発言にツッコミを入れる。封印状態という点も気になるが、それ以上にその封印をハジメが解き、しかもそれが壊れた状態で起動するなど自殺行為に等しい。当の本人であるハジメはその覚えがないようだが、一体どうしてそのようなことになったのだろうか。ジャンヌの不安が更に大きくなっていく。

 そんなジャンヌの疑問に、スタートは呆れた様子でシステムログを含めた予測を語る。

 

『落ち着きな。俺もいきなり起動したときは驚いたが、どうやら機体のコントロール系統が元の反骨心に反応してシステムの封印を解いちまったみたいだ。……まったく、この野郎は力を与えた側も考えもしないことをやってくれる』

 

 スタートの予測を、ジャンヌは全て理解したわけではない。だが、分かるのはあの時ハジメがそのシステムを機体に使わせるほど、あの戦いに負けたくなかったのだろうということだ。

 もし、自分の救出の時にそれを使わせるほど切迫していたら、どうなっていたのだろう。ハジメの意思次第でガンダムが更に力を引き出す。自身と従者の危機の違いで生まれたその差に、ジャンヌは知らずに劣等感を感じていた。

 一方話を理解した様子のヴェールは手を打って納得を示す。

 

「そっか。てことはフレームのあの輝きは、それと関係しているのね。機体のフレームもどっかで構造見たことあったんだけど……ひょっとして過去に制作されたっていう、感応波共鳴フレームかしら?」

 

『さてね。俺の生きていた時代では、別の名前だったから、それで合っているかどうかは分かんねぇな。で、そこのお嬢様は理解できたか?』

 

「ま、まぁ、一応は。それで?交換できないってことだけれど、それはどういうことなの?」

 

 ジャンヌは理解できたという返答と共に、問題となっているリム・クリスタルの交換状況について訊く。するとスタートが悩まし気になる。

 

『あー……それなんだが、実は機体と装依者の相性があるように、クリスタルとの相性があるんだよ』

 

「あ、相性?」

 

 思わず首を傾げてしまう。相性という言葉の意味はもちろん分かる。ところがクリスタルの相性が一体どう関係あるのだろうか。冷却材の相性という意味が分からなかった。

 するとジャンヌと同じく首を傾げていたハジメの様子に見かねて、スタートが簡単にその説明を行う。

 

『冷却と言っても、物を冷却するのに適切な温度とかあるだろう?リム・クリスタルの場合、急上昇したジェネレーターに適切に作用できる停止信号の周波を持ったリム・クリスタルが必要になるんだ。これまでの量産品はいずれもそれを満たせていない。それがエラーの原因なんだよ』

 

「あぁ……そういうことか」

 

「ふぅん……相性ってそういうことなのね。それで、どうするの?」

 

 説明を聞いて、もっともな意見をスタートにぶつける。エラーになったからといって、そのままではダメだ。再び封印措置を取るのか、それとも条件を満たした物を用意するのか。

 だがスタートから語られたのは、やや解釈の違う結論だった。

 

『解決する手がないわけじゃない。ただ、するんだったら君にも協力してもらう必要があるぜ、ジャンヌ・ファーフニル』

 

「え、それってどういう……?」

 

 ガンダムのOSから、なぜか協力を申し込まれてしまう。ジャンヌはもちろんのことハジメ、そして整備士のヴェールや、近くで待機していた整備士2人も話に興味を持ったのか、同じく首を傾げる。

 その言葉が意味する物、それがジャンヌを大きく動揺させる。

 

 

『ジャンヌ、君の龍の愛でどうにかなる』

 

「ブッ!?ケホッケホッ!!ど、どうしてそうなるの!?」

 

 

 龍の愛は、竜人族の男女の性的交わりで作られるもの。そしてそれを要求するということは、それをやれと言うこと。あまりに直球すぎる変態発言ととれてしまうことには違いない。

 焦るジャンヌに代わりヴェールがその是非を問う。

 

「んー、いくら何でもその要求は直球すぎると思うね。年頃の女の子に。それに相手はどうするの?ハジメ君だとしても、彼は人間で……」

 

『あ?龍の愛は片方竜人族で良かっただろう?それに、たかがキス程度で何を言っている?』

 

「……え?」

 

 だがスタートの発言に面食らうヴェール。ジャンヌ達も同じだ。両者の間ですれ違う、認識の差。彼の話にその場にいた者達は顔を見合わせる。

 

(え、片方が竜人族でも?それどころか、キス程度?いいえ、キスでもわたくしにとっては命取り……レイアさんの為の唇を、ハジメなんかに……なん、かに……ってそうじゃなくって!)

 

「たかがキスって……キスは乙女の純情ですよ!!」

 

「違うジャンヌちゃん、合ってはいるけど、今はそこじゃない」

 

 気が動転したジャンヌの発言に、ヴェールが的確にツッコミを入れる。だがジャンヌにはそちらの方が重要なのだ。

 ジャンヌに代わって、再びヴェールがスタートに本来の疑問をぶつける。

 

「それって本当?私達の間だと竜人族同士の男女が、その、性的行為をしないと出来ないっていうやつなんだけど……」

 

『はぁ!?セッ○スしねぇと無理だぁ?』

 

「スタート、流石に場を考えろ!」

 

 思い切り放送禁止用語を口にしたスタートを、ハジメが咎める。だが実際に耳にしたジャンヌは、更に顔を赤くして抗議する。

 

「い、一体何をさせようって言うのよ!第一、何でわたくしの龍の愛をハジメに渡して解決できるんですかッ!!?」

 

 ジャンヌの口から、もっともとも言える発言が飛ぶ。すると、スタートが先程とは打って変わって真剣な表情で、驚くべき事実を口にし始める。

 

『―――簡単だ。あの止まるはずのない暴走状態を止めたのは、君の「声」だ。詩巫女としての、「声」がな』

 

「……え?」

 

意味が分からない。詩巫女って、確かにわたくしは詩巫女になるべくあの学園に通わされている。でも、成績は中の下くらい。いくら家の血があっても、あの時のわたくしは、ただハジメを止めたかっただけで……。

 スタートの言葉に、心の中で動揺するジャンヌ。だがスタートはあの時機体に起こったことを事細かに伝える。

 

『あの時、あの状態ではハジメは間違いなく暴走したガンダムによって機体ごとこの世から消えていただろう。だが、あの時の君の制止の声で、機体に搭載されていた破損状態のリム・クリスタルを修復させたのは間違いない。ハジメを助けたのは君だ』

 

「だ、だからぁ……!?」

 

 思わずその先の言葉を拒もうと顔の前で両手を交差させる。顔が赤面していく。体感温度もどんどん上がっていく。これ以上言われればジャンヌ自身はおそらく……。

 そしてスタートは、ジャンヌの拒むその先の言葉を言った。

 

 

『残念だが、もう次のエラクスシステム使用時に今までのリム・クリスタルは使えない。またああならないように、そして決闘にも勝つためにも……ハジメとキスしろ、ジャンヌ・ファーフニル。そしてリム・クリスタルをガンダムに……』

 

 

 スタートは強く申し出る。スタートもまた、エラクスシステムの復旧を願う者。そのためにはなんだってするのだ。勝利の為なら、ジャンヌ自身の想い人への気持ちすらも一刀両断する勢いだ。

 無論ジャンヌにハジメへのその類の気持ちが無いわけではなかった。だがしかし、ジャンヌはそれを認めておらず、複雑な気持ちの中、そのような追い込みは適しているとは言えなかった。ジャンヌの口から、声が漏れ出す。

 

「……くにゅぅぅ~……」

 

「お、お嬢様!?」

 

 ハジメを助けられたのは自分だったからこそという事実と、決闘に何としても勝たなければならないという現実。そこに想い人のレイアか、従者のハジメかを選ぶ迷走がぶつかり合い、ジャンヌの思考が完全にショートする。奇声を上げて倒れ込むジャンヌの体を、従者であるハジメが支える。だがジャンヌはすっかり目を回している状況だ。

 結局この日、ジャンヌは訓練終了で家に帰るまでの間医務室送りとなった。そして休憩を終えたゼントも交えた決闘へ向けた話し合いで、ハジメ達は「エラクスシステム抜きでの決闘」を前提とした調整を行っていくこととなったのである。

 決闘の日はそこまで迫っている。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただき、ありがとうございます。次回はこれまでの登場人物紹介とMS紹介になります。

ネイ「……元さんの所々の疑問が本当に私達もはぁ?ってなりましたね」

グリューネ「ねぇ、これ用語解説も含めた方が良いんじゃないの?」

あ、それ本当にどうしようかなって思ってた。(´・ω・`)けどそうなると黒の館が3回構成になるから、なるべく本編で説明しきれるようにしてるつもりです。

グリューネ「そ、なら別にいいんじゃない?けど、貴方前作から結構R系列の言葉・表現でかなり攻めてない?」

あぁ、なんか吹っ切れてるよ?(*´ω`)

ネイ「まぁ、前より攻めるのは殻を破る意味でもいいですけど……気を付けてくださいね?うっかりR-18にならないように」

あ、はい。それは本当に怖いです(;・∀・)
さて、今回はここまで。

ネイ「次回もよろしくお願いします」


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黒の館DN 異世界戦争編 第3回 前編

どうも、皆様。藤和木士です。
今回は黒の館第3回を2連続でお届けします。

前半は第2章で登場した人物達の紹介、そして後半は作中に登場したMSと前半に紹介した人物達のMSを一部紹介する予定です。

では前半からどうぞ!


士「はい、それでは今回も始めて行きます黒の館DN!作者の藤和木 士です!」

 

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌ・ドラニエスです」

 

レイ「アシスタントのレイ・オーバだよっ!今回は第2章でこれまで登場した人達の解説?」

 

士「そうだね。ジャンヌ・ファーフニルの姉妹から、第2章の敵であるヴァルト・ロード陣営まで、紹介していくつもりだよ」

 

ジャンヌ「一大決戦の前にこれまでの状況を振り返る、という感じですね」

 

士「その通り!」

 

レイ「これは前半でも少し大ボリュームになりそうだね!そうと決まったら紹介に行こうっ!」

 

士「では人物紹介行きましょうか」

 

 

 

ローレイン・ナーグ

 

性別 女

竜人族

職業 表向き:学生 裏:ドラグディア軍情報局エージェント「ファントム・ナーガ」

身長 161㎝

髪色 ライトグリーン

出身地 ドラグディア フリュウ州 セント・ニーベリュング市

年齢 16

誕生日 11月22日

血液型 AB

好きなもの 株、かくれんぼ、マナ・メイダー(マキナ・ドランディア版カ○リー○イト)

嫌いなもの 力仕事、読書、炭酸飲料

愛称 ローレライ、ローレン、ナーガ1

 

 元のクラスメイトの1人。ドラグディア軍情報局所属のエージェント「ファントム・ナーガ」。

 代々フリード家に仕える軍の諜報部家系の跡取りであり、ジャンヌの見張りを行っていた。元の転入後は彼も監視対象となる。

 男の制服を着ているが、れっきとした女性である。曰く、訓練の影響で、女性の服を着ようという気があまり起きなくなった。家では下着で過ごしていることが多いとのこと。

 学園では道化師の如く振る舞っているものの、学園の情報屋として、生徒会や一部の生徒からは高く買われている。ただし、元の場合は記憶を取り戻した後、軍からの命令もあり学園内でお互い連携を取る。任務としての面が大きいが、それ以前からの仲もあって非常に良好な信頼関係である。

 モビルスーツも使うが、機体は隠密行動用の特殊カラーリング・装甲が施されたドラグーナ・シーカー。ほとんど使用することはない。

 モデルはPCゲーム「お嬢様はご機嫌ナナメ」の生摩 英子。

 

 

グランツ・フリード

性別 男性

竜人族

身長 172cm

髪色 白髪

出身地 ドラグディア フリュウ州 セント・ニーベリュング市

年齢 83

誕生日 9月7日

血液型 B

好きなもの 温泉饅頭、駄菓子、書道、落語

嫌いなもの スナック菓子、独善的な人物

愛称 総司令、グランツ爺さん

 

・ドラグディア軍の総司令官を務める男性。階級は元帥。かつてマキナス軍に対する大反抗作戦「トライデント作戦」を成功させ現在の国土をドラグディアにもたらした立役者。

 名家フリード家の現当主でもあり、フォーン、ヴェールを含めた7人兄妹の父親である。ファーフニル家現当主のガンドは彼が戦地にて保護し、育てた。彼からは普段からも尊敬を受けており、同時に相談役としても会合は多い。

 人質立てこもり事件後、元と顔を合わせる。その際に彼の軍への入隊を認める。その後起きたネアの身柄を掛けた決闘事件では裏で暗躍し、元達をサポート。ルヴァン基地の秘密ハンガーと訓練場を貸し与え、元とガンダムの状態を万全にさせた。

 装依するMSはドラグディア軍総司令しか使用できない専用機「グラン・ドラグ・フリーディア」。

 人物モデルはデート・ア・ライブのエリオット・ボールドウィン・ウッドマン。車いすを使わないほか、口ひげも触れるだけ伸びている。

 

 

ジーナ・ボルメス

 

性別 女

竜人族

身長 168cm

髪色 薄紅色

出身地 ドラグディア フリュウ州 セント・ニーベリュング市

年齢 21

誕生日 12月19日

血液型 O

好きなもの おつまみ、郷土調査、妹達

嫌いなもの エビ(アレルギーあり)、書類仕事、体重計

愛称 ジーナ、ジイナ

 ジャンヌの姉で、ファーフニル家の長女。既婚者であり、テュート・ボルメスの妻。ドラグディア歴史博物館の学芸員をやっている。

 軽率な見た目とは裏腹に歴史や文化を含めた郷土に関することが大好きという女性で、物心着いた頃から家の保管庫で古い古文書などを読み漁っていたという。かつては詩巫女をガンド達からも強く望まれていたものの、歌よりもそれら関連の方が飲み込みは良く、更に当時持っていたファーフニル家の「継承呪印」と呼ばれる証がジャンヌに移ったことで詩巫女の義務から解放され郷土関係の勉強に執心する様になった。

 ジャンヌやエターナの事をとても溺愛している。ただしそれには少なからず継承呪印の転移が関わっているようであり、博物館の内容も郷土よりもドラグディアの創世記を数多く扱う博物館に勤めている。

テュートとは博物館の見学に訪れた時に出会った。彼の家柄の事は知らなかったが、2人とも現在の両国のぶつかり合いとそれに関係する忌まわしき歴史を良しとせず、それを変えるために夫婦となった。

 実家からは既に離れているが、たまに家を訪れ家族とのスキンシップは忘れない。元の事も家に急に来たとはいえ、ジャンヌを護った事からとても気に入っている。

 人物モデルはカオスチャイルドの久野里 澪。髪型こそモデル元と同じだが、ジャンヌ達と同じ髪質からモデル元より束ねた髪がやや広がる。なおジャンヌやクリエからの逆算でこのキャラクターがモデルになっており、モデル元のイラストレーターが同じである。

 

 

テュート・ボルメス

性別 男

竜人族

身長 175cm

髪色 藍色

出身地 ドラグディア ディマーズ州 ボルメティアナ市

年齢 23

誕生日 2月26日

血液型 AB

好きなもの 博物館めぐり、料理、シュークリーム

嫌いなもの ピーナッツ、細かい作業

愛称 テュート、ボルメス家当主

 

 ジーナの婚約相手。フリュウ州と同規模のディマーズ州を発祥とする名家ボルメス家の跡取りである。ドラグディア軍の軍人で階級は中尉。

 ジーナとは博物館めぐりをしていた際に出会い一目ぼれ。そして付き合っていくうちに彼女の家の呪いを知り、彼女の力になりたいと願い結婚した。当初はガンドからも反対されていたが、自身の思いを貫き力になりたいという思いを伝え認められた。

 ジーナと同じく義妹に当たるジャンヌやエターナ達を心配している。特にジャンヌには現在の呪印継承者であることから気を使っているが、当の本人は迷惑さを感じている。ジャンヌの以前の従者ポルンに関しても古竜人族以前に、考え方の短落さを懸念しており、当初はハジメに対しても聞いた話だけでは不信感を持っていたが、誘拐事件での出来事、そして救世主再臨騒動での元の活躍でそれらが杞憂であったとして、見る目を一変させている。

 ちなみにMSは専用機持ちではなく、量産機のドラグーナ・コマンド。ただし装備は特殊な構成で別名ボルメス・スペシャルと名付けられている。

 人物外観モデルは「銀河機攻隊マジェスティックプリンス」のジアート。あそこまで極端な性格ではないが、戦闘時には熱くなりやすい性格である。

 

 

 

エターナ・ファーフニル

性別 女

竜人族

身長 152cm

髪色 銀

出身地 ドラグディア フリュウ州 セント・ニーベリュング市

年齢 13歳

誕生日 5月3日

血液型 B

好きなもの ジャンヌお姉様、アイスクリーム、編み物

嫌いなもの ジャンヌお姉様に近づく人間(筆頭は現在元)、梅干し、ゲーム

愛称 エターナ、トワ子

 

 ファーフニル家三女でジャンヌの妹。フリュウ州の隣、ディ・ブレイ州の寄宿学校に通っている。姉を一途に愛している。

 性格はジャンヌとよく似ており溺愛する対象が姉に変わっただけ。しかし頭に血が上りやすい性格で嫌悪感を隠すことなくあらわにすることが多い。現在はもっぱら元に対しその敵意を向けている(本人の元はジャンヌの事もあってそれには慣れた)。

 寄宿学校にいる時も常にジャンヌの事を気にしており、誘拐事件の時には聞いた直後に気絶してしまった。立てこもり事件ではすぐに学校を早退して姉の元へと駆けつけようとしたが、その道中で元による解決を知り、安堵と同時に元(と同時にガンダム)への嫉妬を抱くようになる。

 人物モデルは「L@ve Once」の橘 和翠(なごみ)。例によって思い付いた理由はジャンヌからの逆算である。口の悪さは彼女譲りなのかもしれない。

 

 

レヴ・リヴァイ

性別 男

竜人族

身長 172cm

髪色 焦げ茶色

出身地 ドラグディア フリュウ州 グラム市

年齢 16

誕生日 8月3日

血液型 B

好きなもの ハンバーガー、野球観戦、ゲーム(野球系)

嫌いなもの ブロッコリー、座学系授業、蛇

愛称 レヴ、リヴァイ兄

 

 聖トゥインクル学園のマネージメント科に通う学生。元のクラスメイト。リッドは双子の妹である。

 有名な家に生まれたわけではない一般学生で、ハジメとはそういった特別緊張を抱く必要のない身分であるためか初対面の頃から友人として接していた。記憶を取り戻した後の元にも以前と変わらず接しているが、少なからず元が救世主ガンダムを持ったことには緊張感が芽生えた模様。

 双子の妹リッドの事に対しては「うるさい妹」と言っているが、妹が性格のわりに体が弱いこともあってかなり心配している。シスコンである。ちなみに作業用MSを使用するバイトをやっており、本人の進路としては卒業後、軍学校に通う予定である。

 外見モデルは「機巧少女は傷つかない」のロキ。表向きの性格や普段の嗜好は似てはいないが、妹を思う点はモデル元の姉を思う点と共通。

 

 

リッド・リヴァイ

性別 女

竜人族

身長 155cm

髪色 こげ茶色

出身地 ドラグディア フリュウ州 グラム市

年齢 16

誕生日 8月3日

血液型 B

好きなもの カラオケ、焼きそば、バスケットボール

嫌いなもの 熱い物、撮影、氷上スポーツ

愛称 リッド、リヴァイ妹

 

 聖トゥインクル学園のマネージメント科に通う学生。元のクラスメイトでレヴの双子の妹。

 レヴの事は小馬鹿にした、陽気な性格の持ち主。しかし幼少期から体が弱く、小さい頃からレヴに何度も助けられている。幼少期にはアイドルを夢見ていたが、体の弱さから断念。現在はそのサポートであるマネージャーを目指してマネージメント科に通う経緯を持つ(ちなみにレヴは妹が心配なため学園に通っているのであり、本人の進路はMS装依者。シスコンである)。

 ハジメの事はレヴと共に友人として接しており、元となった後も変わらない。ガンダム装依者という点も、彼女はレヴとは違い特技が一つ増えただけとしていてむしろ性格が少しガサツになったことの方が可愛がっていた彼女としては心配とのこと。

 外見モデルはレヴと同じ作品である「機巧少女は傷つかない」のロキの姉「フレイ」。サイドテールではなくポニーテールで髪をまとめている。また性格も彼女とは真反対ではと思われるほどだが、弱っているときなどはやや似ているか。

 

 

グリューネ・ロード

性別 女

竜人族

身長 160cm

髪色 濃いオレンジ

出身地 ドラグディア フリュウ州 セント・ニーベリュング市

年齢 17歳

誕生日 4月19日

血液型 O

好きなもの ドーナツ、映画鑑賞、監視アイテム集め、妹

嫌いなもの 現在の両親、ほうれん草

愛称 グリューネ、グリュン、白亜の歌姫

 

・ドラグディア首都セント・ニーベリュング市の市長「ヴァルト・ロード」の娘。ネアの異母姉。

 本来は前妻の子どもであるものの、次第に才能を開花していったことから彼女をロード家の娘として育てられ、ネアを養子に出されてしまう。しかしその際幼いながらもネアの母親の実家と縁のあるフリード家の当主グランツに嘆願しネアをファーフニル家の使用人として保護してもらった。

 明朗な容姿だが計算高く、また策士でもある。特に現在の両親に対しては一切手を抜かず、心の奥では嫌っており、両親に内緒で監視グッズや盗聴器などを購入・使用している。

 彼女にとってネアはかけがえのない妹であり、妹の為なら世界を敵に回せるとのこと。記者会見の場でも怖気づくことなく父にMSによる決闘を申し出た(戦うのは元だが)。ちなみに女性にのみ好意があるというわけではなく、妹が心配なのであり、普通に彼氏がいる(誰かは現時点で不明)。

 人物モデルはバトルスピリッツのスピリット「グリーフィア・ダルク」。ネアとはモデル元が同じような姉妹である点が共通している。外見は髪色を濃いオレンジに変更されている他、当初はグリーフィアと似た髪型を第2章時点にて左右で長さの違うアシンメトリーのツインテールにしている。

 

 

 

ゼント・ガルギュール

性別 男

竜人族

身長 181cm

髪色 群青色

出身地 ドラグディア フリュウ州 アリアズトゥース市

年齢 33才

誕生日 8月27日

血液型 B

好きなもの 訓練、ゼリー系栄養食、部下たちの活躍話

嫌いなもの 休暇、読書、甘い物

愛称 人斬り鬼教官

 

 ドラグディア軍の防衛線の中核を担うルヴァン基地の司令官。その基地の隊員にふさわしい人員にすべく、最悪廃人が出るほどの必要以上に全力で鍛え上げることから別名「人斬り鬼教官」と呼ばれる。階級は大佐。

 ヴェールとは父親がグランツ総司令と仲が良かった関係から、家での話し相手となる関係。なお、お互いに好意はないとのこと。父親は現在ドラグディア軍総司令部付きの新人指導教官となっている。

 MSのものも含めた戦技指導者として初めて元と邂逅する。出会っていきなり走り込みからの模擬戦闘で元をKOさせているが、以降はペースを上げつつも元の体調管理などを、ジャンヌも含めて指導した。

 使用MSはドラグーナ・ガルグイユ。近接戦を得意としたMSである。

 外見モデルは「魔法少女リリカルなのはStrikers」の「ゼスト・グランガイツ」。彼よりも少し若い見た目でぶっきらぼうな面が見て取れる。

 

 

 

 

士「さて、ここまでが元君達のサイドの人達だ。続いて第2章で敵対するヴァルト・ロード陣営の紹介だ」

 

ジャンヌ「容姿も含めての紹介ですね。この作品イラストないですから、想像してもらわなければならないのが痛い点ですが」

 

士「(´・ω・`)」

 

レイ「あはは……イラスト勉強する?」

 

士「そんな暇はねぇ!紹介に行きます!(T_T)」

 

 

アレク・ケルツァート

性別 男

竜人族

身長 171cm

髪色 薄水色

出身地 ドラグディア フリュウ州 ローディアン市

年齢 23才

誕生日 1月4日

血液型 A

好きなもの ホットドック、映画鑑賞、ジグソーパズル

嫌いなもの ウニ、勧誘系列の業者、知恵の輪

愛称 速烈の剣士、アレ君

 

 ドラグディア軍の部隊の1つ、レドリック配下の親衛隊に所属するエースパイロット。階級は少尉。二つ名は速烈の剣士。その二つ名の通り近接戦に秀でた兵士であり、MSでの剣戟は未だ実戦では不敗を誇る。マキナス軍のアルスとも激突したことがあり、その際には彼を下すほど(優勢のまま撤退したため、彼の首は取れていない)。

 ネア・ラインの拘束の為に元達の前に現れ、その身柄を確保するべく元と戦う。序盤は優勢で進めるもガンダムの起動したエラクスシステムで状況をひっくり返される。危うく殺されかけるも何とか生存し、元との決闘に臨むこととなる。

 ちなみに恋人がいるらしいが、誰にもそれを明かしていない。

 人物モデルは機動戦士ガンダムSEEDXASTRAYのカナード・パルス。性格は彼よりもかなり紳士的になっている。

 

 

 

 

ヴァルト・ロード

・ドラグディアの首都セント・ニーベリュング市の現市長。グリューネ、そしてネアの父親でもある。45歳。

 現職の市長としては市民からの支持は厚いものの、裏では人使いが荒い人物としてされ、女たらしとも噂されている。ネアの母に当たる人物もそういった過程で婚姻した元愛人で、グリューネの母と離婚後、グリューネを(無理矢理)引き取り育ててきた。一方ネアを出来損ないとして家から追い出すなど、本人は優れた物にしか目がない人物である。

 人物モデルは「カルマルカ*サークル」の神楽坂弦十郎。髪色をスカーレッドにしている。

 

 

レドリック・ドラス

・ドラグディア軍の総司令官を護る「三竜将」の1人。階級は准将。かつては数々の戦線を駆け抜け、ドラグディアを勝利へと導いた。現在は指揮官として活躍する。54才。

 ドラグディア軍のトップになるという野心を持っており、三竜将もそのための足掛かりとして見ている。そのためグランツの事はおろか、彼を慕う他の三竜将も下に見ている。更に他の部隊の優秀な人材を自身の親衛隊に無理矢理引き入れ、その挙句自身の意に沿わない場合廃人にしたという噂も流れており、いい噂は少ない。

 今回の件はレドリックにとって、ネアの保護を密に行ったグランツを追いやると同時に、それらの悪評をすべて返上したうえで総司令になるという考えから、ヴァルトから受けたその話を了承したことになっている。

 

 

士「さて、今回の人物紹介はここまで。次の話では機体紹介になります」

 

ジャンヌ「ネイ達にバトンタッチですね」

 

レイ「それじゃあ後編もよろしくねっ!」

 




今回もお読みいただきありがとうございます。

続けて後半の方をお楽しみいただけると幸いです。
後半のあとがきでは少しお知らせもありますので最後までご覧いただくことをお勧めします。それでは。


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黒の館DN 異世界戦争編 第3回 後編

引き続き黒の館後編になります。藤和木 士です。

後半はMS紹介となっております。

また、あとがきには少しお知らせもありますので、最後まで読んでくださると幸いです。

それでは後半をどうぞ!


 

 

士「つーわけで後半行きます。引き続き作者の藤和木 士です」

 

ネイ「何か最近そういう風に砕けた感じになることがありますよね……作者さん。アシスタントのネイ・ランテイルです」

 

グリーフィア「んーヤクかしらぁ?グリーフィア・ダルクよぉ」

 

士「ヤクではないよ!?何言ってんです!?(;゚Д゚)」

 

グリーフィア「冗談に決まってるじゃない。それより、後半は機体の紹介なんでしょう?」

 

士「(´・ω・`)あぁ、うん。ということで後半は機体の紹介です」

 

ネイ「ええと……機体と言うと、アレクさんが使用したドラグーナ・レドル、ですか?」

 

士「あ、ごめん。まだ話には出てはいないけど今回の前半で出た諜報部タイプのドラグーナ・シーカーと、バァンさんの使う領域制圧機のドラグーナ・ヴォロス、それにゼントさんの使うドラグーナ・ガルグイユは今回紹介するね」

 

ネイ「あ、そうなんですね」

 

グリーフィア「どうせだったら艦艇紹介すればいいのにねぇ」

 

士「いや、それも思ったけどこっち先に紹介しないとな、と思ってですね。とりあえず紹介行きます」

 

 

 

機体解説

 

ドラグーナ・シーカー

形式番号 MS-DD08CS

 

・ドラグーナ・コマンドをベースとした、隠密行動用MS。主に敵基地侵入や夜間急襲などといったものから要人暗殺まで行うことを目的としている。基本的に情報局の人間の機体として使用される。

 ただし、機体自体秘匿であり、通常のドラグディア軍のMSハンガーではほぼ見ることのない機体で、存在を疑われることもしばしば。ローレイン・ナーグもこの機体を運用している。

 機体装甲は耐弾性を犠牲に最新のステルス装甲に換装。こちらは装甲にエネルギーを通すことで周囲の景色に溶け込むことが可能となっている。また専用の遮音・遮熱用マントがあり、肩部ラッチを使うことで装備可能となっている。

 機体の武装としては射撃武装もあるが基本近接寄りで、主に実弾・特殊兵装が多い。ちなみに通常の機体色はグレーだが、「ファントム・ナーガ」ことローレイン・ナーグの機体は彼女の好みにより、通常はナイトブルーに変更されている。これは偽装も兼ねているとのこと。

 

 

【機能】

・カメラ切り替え機構

ドラグーナ共通の機能。本機の場合、対暗視ゴーグルカバーを装着しており、夜間の接近戦・狙撃戦も行える特殊なものになっている。

 

・ハードポイントシステム

 コマンドが元の為、継続して使用できる。ただし、ほとんどが狙撃用ライフルのパーツや撹乱用チャフ内蔵ポッドのためにしか使われない。

 

・ステルス装甲「ミラージュ・スケイル」

 ディメンションノイズが供給される際に発生する特殊電磁波を使用して運用される特殊光学装甲。

通常これらの特殊電磁波は他の機体の場合、戦場撹乱用の妨害電波として利用されるが、その場合効力がとても限定的でもてあまされていた。しかし、ある一定の電磁波を持ち、これを専用に開発された電子装甲部材に流すことでステルス性を持たせることが可能となったことから、ステルス装甲として運用されることとなった。

その部材名である「ミラージュ・ミスト」から名称を拝借されている。

 

・遮音・遮熱マント

 機体を覆うことで機体が発する熱・音を吸収し、レーダーに反応されないようにする特殊兵装。本機の場合、肩部の専用パーツでマントを固定し、運用される。なお他機体でも使用可能ではあるものの、機密保持のためほとんど運用されない。

 

 

 

【武装】

 

・専用ビームライフル

 シーカー用に特別に開発されたビームライフル。銃身が通常の物より切り詰められ、更にサイレンサーユニットを装備されている。サイレンサーは主に光学系に作用してビームの色を限りなく無色にするものであり、消音効果もあるがどちらかと言えば前者に特化されている。

 パーツの追加でスナイパーライフルにすることも可能。その際のパーツは膝のハードポイントに装着される。

 

・ビームダガー

 サイドアーマーに装備される格闘兵装。ビームサーベルとユニットは同じであり、簡単に言えばビームを生成する長さを近接戦用に調整した兵装である。主に超接近戦で使用され、懐に飛び込んで一撃、という使い方が主流。ただし熟練者は投擲に加え、ダガーでの鍔迫り合いも行う。

 

・ショックアンカー

 膝正面に増設された装甲に装備される特殊兵装。アンカーを射出し、敵機に取り付くと特殊信号を流し込み、敵機およびパイロットを行動不能にする。この世界でのMSは必然的にMSの稼働とパイロットもとい装着者の装依運用状態の維持も行っており、機体の停止と同時に装着者を機体の運用状態から切り離すことが出来る(要するに、機器をシャットダウンさせて操作不能にする)。

 なお、現段階ではガンダム系統にはこの特殊信号が効きづらいらしいが、これは機体が放出しているDNの影響によるものが大きい(特殊信号が高純度DNに阻害されているとのこと)。

 

・ニードルライフル

 機体の両下腕部に装備される、実体杭射出打ち込み銃。要するにパイルバンカーである。ただしライフルの名の通り、手持ち式で手に持って使用する。至近距離まで目標に気づかれずに近づき、バックパックの推進システムの中枢やジェネレーターを直接貫くことを目的としている。

 一撃必殺の武装ではあるが、隠密機であるために小型化。その結果杭がニードルの名の通り細く、ゼロ距離で使用しないとジェネレーターを貫けない上に、装甲が硬すぎると折れてしまうという欠点もある。

 

・撹乱用チャフ散布装置

 両膝のハードポイントに装備される追加装備。レーダーを乱すチャフが内包されており、使用することで周囲にチャフを散布、範囲内のセンサーを狂わせる。

 ただし、チャフの金属片をばら撒く都合上、風に影響されやすく、使い手の状況判断能力が問われやすい。

 

 

 

ドラグーナ・レドル

形式番号 MS-DD08SP-RDMC

 

機体解説

・ドラグーナ・コマンドをベースにレドリック・ドラス准将直下の親衛隊用にカスタマイズされた機体。

 既存機との変更点としては親衛隊としての装飾類の増加と、固定武装の変更、更に隊員に合わせた豊富な近接主力兵装の変更可能という点である。元々レドリック准将の率いる親衛隊は祭典等の参列隊も兼ねており、それらにすぐに対応できるように各部のユニット化がなされている。

 固定武装の変更はアンカーユニットが信頼性に欠ける面も持ち合わせることから、連射式のマシンガンに変更。そして一番の特徴が隊員に合わせた主力兵装の変更である。これはレドリックの掲げる「兵士はいついかなる時も最大限のパフォーマンスを発揮できなければならない」というポリシーに合わせた結果、主力兵装のレパートリーを増やしてMSとそのパイロット、更に任務に合わせた装備を装備できるようになったためである。なおこのポリシーは結果的に祭典時の各部ユニット交換化にもつながっている。

 通常装備はストック付きビームライフルだが、アレク機はシューターサーベルと呼ばれる武装に換装。そのほかの隊員の武装には小型マキナブレイカー、ミサイル・シールドなど様々なものが用意されている。

 機体カラーは全体的に銀色。装飾パーツのみ赤と橙でカラーリングされる。

 

 

【機能】

・カメラ切り替え機構

 ドラグーナ全機に常用されているカメラ切り替え機構。本機の場合、竜の頭型の形状の上から兜状の増加装甲を纏っていて、その増加装甲搭載型近接戦用カメラを使用する。

 

・ハードポイントシステム

 ドラグーナ系共通の武装換装システム。搭載位置はコマンドと同様。レドルの場合背部にブースター付きプロペラントタンクを、更に肩に装飾具付きの増加アーマーを装備しているため、残り使用可能位置は背部側面、膝側面である。

 

・兜型センサー強化装置

 頭部を更に覆うアーマーに搭載されたセンサー強化装置。センサーと同時に戦術データリンクを積んでいて同型機との連携を強化する目的を含めて装備。ステルス機の機能を無効化することも可能。なお外観は祭典用の装飾付きと戦闘用の2種類がある。

 

 

【武装】

・バレルストック付きビームライフル

 コマンドのビームライフルにバレルストックが通常装備となった兵装。装備位置は基本的に腰背部。隊員によっては装備しない。アレク機は装備しない。

 

・ビームサーベル・カスタム

 既存機のビームサーベルにビーム刃調節機能を搭載した改良モデル。装備位置はサイドアーマー。ビームの刃を縮めることでビームダガー、柄の伸縮機能を使用することでビームジャベリンとして使用できる。アレク機は代わりにシューターサーベルを装備する。

 

・シューターサーベル

 アレク機に装備されるマルチウエポン。サイドアーマーにビームサーベル・カスタムと入れ替えで装備する。ビームサーベルの柄にビームピストルの銃口が持ち手に水平状態で備わっており、瞬時に射撃と斬撃が切り替えられる。また柄尻で合体させることでツインサーベルとしても機能する。

 形状はガンダムXのビームソードに近い。

 

・強化型バックパックユニット

 通常のドラグーナ・コマンドのバックパックと同型兵装。アレク機は更にプロペラントタンクをスラスター付きの物に変更し機動力を高めている。

 

・ナイトシールド

 上部が広く、下部が鋭くなった騎士タイプの実体シールド。装飾が施されているが、防御性能は折り紙付き。ただし重量はあるため近接重視のセッティングの場合は装備されない場合もある。

 

・マシンガン

 腕部装甲に装備される盾形装甲の中に備えられた連射式単装銃。コマンドのアンカーに変わって装備される兵装で両腕にそれぞれ内蔵。ケースマガジンでの弾丸装填式で後部から交換する。

 連射性能は高く、また単装式でブレは少な目。

 

・アクセサリブーストアーマー

 肩部ハードポイントに装着するスラスター付き増加装甲。式典用に装飾が施された装甲となっており、全機共通の親衛隊機としての装飾となっている。

 アーマーの上に更にハードポイントが備えられており、その部分に更に別の装備を装着することも可能。

 

・バスターソード「マキナブレイカー・ショート」

 大型のバスターソードであった「マキナブレイカー」を小型化・取り回しを良くした武装。元々が過剰なまでの大きさだったため、このサイズでも近接格闘戦としては十分、むしろ斬り合いに関して言えばモデル元を超えた汎用性を誇る。装備位置はアクセサリブーストアーマーのハードポイントが主な装備位置。

 

・ミサイル・シールド

 ナイトシールドとの選択で装備される武装シールド。シールドの側部に小型ミサイルを4発ずつ2回の掃射分、両腕に装備されるため計32発を備える。

 形状はナラティブガンダムB装備のシールドがモデル。

 

・テールジェットブースター

 アレク機にのみ装備される高機動ブースター。腰背部にライフル用ラッチを換装して装備する。コマンドのハイマニューバスタイルのジェットスラスターと同種の兵装で、中央のメインユニットの左右に小型プレートジェットスラスターの密集体を備えている。その密集体が可動軸を用いて推力を上下に偏向することが可能。

 

・シューターランス

 バレルストック付きビームライフルと選択式の実体槍兵装。槍の側面に4門のビームサブマシンガンが備わっており、射撃戦を行える他、それらの砲門を同時に出力最大化、槍の先端を軸としてビームの槍を形成・射出することが可能。通常は腰背部に装備するが、アレク機は右背部のハードポイントに接続した専用アタッチメントに装備する。

 

 

 

 

ドラグーナ・ヴォロス

形式番号 MS-DD08SP-BU

 

 

・ドラグディア軍少将、バァン・ウロヴォース専用機。ドラグーナ・コマンドの改修機である。

 ドラグディア軍の総司令部を護る三竜将の機体として、領域制圧機としての性能を有している。肩部の拡散ビーム砲、胸部増加装甲内のマイクロミサイル、そしてバックパックの増加ブースター兼有線式オールレンジ兵装「ガンブースター」を含めた兵装で、その能力を駆使して戦域を制圧していく。

 基本的には遠距離・空中戦を行う機体で、機体脚部はそれに合わせ接地面の薄い空戦重視の形状となっているが、搭乗者であるバァンはこの機体でも十分近接戦を行うことを可能としている。機体装甲もガンドヴァルと同じくアイオンカーボンで構成されていて、不得手である近接戦でも十分な防御性能を誇る。また頭部は内包するカメラの都合から専用の形状に改造されている。

 機体カラーリングは薄紫とグレー。機体固有DNAはガンブースターからエネルギー弾を発射して相手を包囲、一斉に突撃する「カースサーカス」。

 

 

【機能】

・カメラ切り替え機能

 ドラグーナ共通のカメラ切り替え機能。ヴォロスの場合は口を閉じた状態の通常カメラと口を開いたマルチロックオンカメラに切り替える。

 

・スライド式専用ホーンアンテナ

 通常カメラの後方に装備される、通信強化のためのアンテナユニット。ガンドヴァルと概ね同じ装備だが、スライド機構を採用していて龍の両目を覆うようにすることで通信感度を高め、暗視モードに移行することが出来る。

 

・ハードポイントシステム

 機体への追加兵装用接続機構。本機の場合は全て通常装備で埋まっているため、入れ替え時にのみ追加装備となる。

 

 

【武装】

 

・グレネードランチャー付きビームガン

 使い捨て式のグレネードランチャーを銃身下部に装備したビームガン。銃後部にエネルギーボトルを装填しており、交換によってDNを補充する。予備のボトルとグレネードランチャーは機体腰背部にそれぞれ1基ずつ。装備自体は右腰部に装備される。

本機の場合、機体自体にDNを大量に使う兵装があり、機体のDNジェネレーターもダブルジェネレーター式ではなくコマンドタイプと同じ高出力型のため、省エネルギー化に合わせてこの兵装となっている。

ビームガンは機動戦士ガンダムSEED STARGAZERのスターゲイザーのビームガンがモデル。

 

・ボックスタイプビームサーベル

 機体両腕部側面に装備される箱型ユニット内蔵のビームサーベル。携行武器を持っている場合に素早く近接戦を行えるように本装備が選択された。

 

・グレネードナイフ

 機体左腰部に装備される噴射突撃式の爆発ナイフ。敵に向かって投擲し、装甲に直撃すると同時に爆発を起こす。3本を装備する。

 

・ブラストアーマー

 機体肩部を覆う、小型エネルギータンクおよび拡散ビーム砲内蔵のアーマーパーツ。機体前面にスプレッドビームキャノンを備え、更にそのエネルギー貯蔵を担っている。

 

・胸部格納式マイクロミサイルポッド

 胸部装甲を兼ねた増加装甲式のミサイルポッド。カバーを開き、その中に内蔵されたマイクロミサイルを一気に放射する。弾数は6発×2で全12発。発射後はすぐに廃棄され、デットウェイトを避ける。

 形状は機動戦士ガンダム00のガンダムサバーニャの胸部がモデル。ただしミサイルは蓋を開いて隠されていた部位に装備されており、その部分からまるごとパージされる。

 

・膝部マイクロミサイルポッド

 膝部ハードポイントに増加装甲と共に装備されるミサイルポッド。3発ずつの計6発を備える。なおハジメの改修されたガンダムにもこの装備が転用された。

 形状は漫画機動戦士ガンダムブルーディスティニーのブルーディスティニー・フルアームドの脚部装甲を元にしている。

 

・重装シールド

 左腕に装備されるシールド。内部にビーム砲用ジェネレーターを内蔵し、更にシールド表面に砲門カバー付きのメガキャノンを備える。小型のDNジェネレーターを武装を内蔵しているため、破損時には危険が伴うが、防御性能自体も戦艦用ビームを1発受け止められるほど高い為、破壊されることは現状ほぼない。

 武装イメージは機動戦士ガンダム ヴァルプルギスのオーヴェロンが持つヒート・シザース付きシールド。ただし形状はビーム砲カバーを含め偽装状態の形状をベースに小型化させている。

 

・ガンブースター・プラットフォームバックパック

 機体背部のバックパック。通常のバックパックユニットから上部ウイングスラスターユニットを外し、代わりに有線で動かす遠隔操作端末「ガンブースター」のアンカー自体を内蔵したボックスを装備。バックパック側面・背面のハードポイントにガンブースター本体を装備する。

 装着状態でも上方面への砲撃が可能なほか、バックパック基部のアームを動かすことで砲門を前方に向けた砲撃が可能。

 

・有線式オールレンジ兵装「ガンブースター」

 推進用ブースターに2連装ビーム砲を装備し、更にそれらユニットをアンカーで射出することでオールレンジ攻撃を行う兵装。全4基をバックパック側面と背部に装備される。

DNの特性により地上でも使用可能であるが、その本領は宇宙空間で発揮される。なおアンカーを外しても本来は使用可能ではあるものの、それでも取り付けた理由はガンブースターが実戦で使用した場合、帰還前にエネルギーが尽きることが多かったためである他、パイロットが何らかの理由で操作できなくなった時の機体側での回収行動の為である。

 武装のモデルは機動戦士ガンダムSEEDのメビウス・ゼロのガンバレルである。ビーム砲に換装しているため、後継機エグザスの物に近いかもしれない。なお砲身は伸縮はしない。

 

 

 

ドラグーナ・ガルグイユ

形式番号 MS-DD08SP-ZG

 

・ドラグディア軍のルヴァン基地司令、ゼント・ガルギュールの駆る近接型拠点防衛MS。ドラグーナ・コマンドをベースに両腕部に追加された増加兵装を操る機体となっている。

 本機体は本来、ドラグディアがマキナスの攻撃を受けた際、真っ先に防衛行動を起こせるように建設されたルヴァン基地の司令官の為に開発が進められていた。本来は圧倒的砲撃能力により敵を寄せ付けない機体となる予定だったが、基地司令官となったゼントが近接格闘戦を得手としていたため本来の案を廃止せざるを得なかった。だがそこで開発部は近接戦を得手とするゼントが納得する、かつ今までのプランに合う機体を模索。そこで考えられたのが「腕部に装備した大型多目的兵装に射撃武装を装備し、射撃モードと格闘モードに切り替えて遠近に対応する」という物だった。

 本機の両腕部後方に装備された「ドラゴニック・ヘッドユニット」は龍の頭を模した装備で、それらのプランを活かせるように設計されている。またこれら装備を扱うために、機体の腕部は専用の物に変更。その際腕部をもう1ブロック肩部装甲内に内装し、近接時のリーチを腕1本分長くするという予想外の機体へと変貌を遂げた。

 結果として本機は近接戦を得手としながらも、多数と戦闘を行い、また遠距離戦でもその力を発揮できるMSとして完成することとなった。

 機体全体のイメージとしては新機動戦士ガンダムWの「シェンロンガンダム」系統をドラグーナに落とし込んでいる。

 

 

【機能】

・カメラ切り替え機能

 ドラグーナ系列が持つ共通機構。本機の物は量産型やコマンドが持つものとカメラの種類は全く同じである。

 

・通信増幅用アンテナ

 機体頭頂部から後方に伸びる龍の角状のアンテナ。機体が戦線防衛を目的としたものであるため、部隊を含め基地との連携を不備なく行うために装備されている。

 

・ハードポイントシステム

 ドラグーナに標準搭載される武装換装システム。本機の場合、バックパックが専用のものとなっているため、システム搭載位置は背部の物が側面部だけになっている。そのほか肩部もない。膝部は引き続き同一仕様。

 

・ダブルジェネレーター

ドラグーナ・ガンドヴァルにも搭載されるジェネレーター2基乗せ状態。本機の場合、長期に渡る前線防衛が主眼となるため搭載されている。

 

 

【武装】

・サブマシンガン

 機体サイドアーマーに2丁装備される実弾兵装。両手で保持する他に装備された状態で装着部から稼働させてそのまま発砲させることも可能。弾数は1丁30発ずつ。予備のマガジンはサイドアーマー内に1本ずつ。

 

・ドラゴニック・ヘッドユニット

 機体の両下腕部に装備されるマルチウエポン。竜の頭を模したナックルユニットで、口部にビームランチャーの砲身を持つ。更に砲門を短縮して歯に当たる部分からビームファングを発生させて切り裂く、口部を閉じてそのまま殴打武装として使用可能。そして腕部に装着し、肩部に収納された腕部を伸ばすことで中距離の敵に格闘攻撃が届く「ドラゴン・ハングモード」として機能する様になる。またユニット自体は対ビームコーティングがされているため、防御兵装としても機能する。

 武装モデルはシェンロンガンダム系列の持つドラゴンハング。

 

・ビームセイバー

 機体背部バックパック側面に装備された大出力格闘用ビーム兵装。マキナス軍の運用する物よりデバイス自体は小型化しており、サーベルユニットに近い外観。横に先端部が開いた形状となっていて、ビーム発振時にその部分からビームを放出、剣の形へと調整する。

 デバイスの形状は機動戦士Vガンダムのサーベルユニットを大型化したものに近い。

 

・キャノンウイングバックパック

 機体のバックパックを成す砲塔付きウイングバックパック。4門のキャノン砲から構成されており、通常時は推進機能を持ち、砲門を前面に展開することで砲撃を重視した一斉射形態へと変わる。

 砲門自体は分離可能で、分離した砲は手持ちのキャノン砲として味方機にも配布出来る。その際バックパックの付け根はバーニアパーツで機動力重視の戦闘スタイルへと変貌する。

なおこれだけの兵装を同時に使うためにはダブルジェネレーターでは足りないので、バックパックには独自に大容量エネルギータンクを別途搭載されている。

 武装モデルは模型戦士ガンプラビルダーズのフォーエバーガンダムのバックパックに近い。ファンネルとしての機能は持っていない。

 

・格納式グランフルバスター

 胸部の中央アーマーをダクト部分にスライドさせて展開する長距離ビーム砲。ガンドヴァルにも装備されていた兵装で、こちらはその改良型である。ダブルジェネレーターと直結したビーム砲で大出力砲撃の他、原型と同じように低出力拡散型の射撃としても使用可能。

 

 

 

士「以上で機体解説を終わります。さぁ、次回からいよいよ決闘へと入っていきますよー!」

 

ネイ「決闘って最初聞いた時にも思いましたが、なんていうか古臭いですよね」

 

グリーフィア「そうねぇ。けど今回は逆にその廃る点をガンダムの存在と合わせて利用しているから、この展開になっているのよね」

 

士「まぁそうだね(´・ω・`)決闘では元君の新たなシュバルトゼロガンダムと、アレクの装依する新MSが登場です。ちなみにガンダムが登場してから初めて登場する、新たに開発されたMSってことに事実上なる予定です」

 

ネイ「あ……そうなると確かにですね」

 

グリーフィア「ってことは、ガンダムに対して強く出られるものを持ってるはずよねぇ。楽しみだわぁ」

 

士「それでは今回はここまで」

 

グリーフィア「次回もお楽しみに~、ばいばーい」

 




今回もお読みいただきありがとうございます。

次回よりいよいよ第2章の見せ場、決闘が始まっていきます。
勝つのはどちらか?そしてグリューネ達は無事姉妹に戻れるのか?を描いていく予定です。


そして、少し小さなお知らせが。
先日ツイッターでも言っていたのですが、以前設定集を作った方がいいのではとアシスタントに言ってもらっていた件、本当に設定集を少し作ることにしました(^o^)
経緯としましては、作中の戦闘などを打ち込んでいる際、自身の頭の中で考えていた軍隊単位などが分からなくなってしまい、もうそれなら設定として書いてしまおう。書くならもう他の重要単語なども簡単な設定集として投げ込んでしまえ\(^o^)/……となり、まとめ始めました。はい。

現状第2章終了後の黒の館DN投稿後に、黒の館DNとは別で第2章までの主要用語の設定置き場を入れて置く予定です。今後も進展次第では別途設定集を作ると思います。


以上が報告になります。次回からもよろしくお願いします。


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EPISODE23 金粉ト蒼炎ノ戦場1

どうも、皆様。以前の投稿時では申し訳ありませんでした(´・ω・`)藤和木 士です。

ネイ「作者さん……あれはないですよ。グランツさんっておじいさんなのに、何で47歳なんです……ネイ・ランテイルです」

グリーフィア「それ以外にも、プロット時点での設定とか、まだ先の事まで書いちゃってる部分とかあったからねぇ。これはやっちゃった感半端ないんじゃない?アシスタントのグリーフィア・ダルクよぉ」

(´・ω・`)もうやめてくれ、それを聞くだけで気分が落ち込む……。さて、今回はEPISODE23、決闘を描く節の始まりです!

グリーフィア「ちなみに、もう裏ではこの節完成して黒の館DNの作成を開始してるみたいよぉ♪」

っぇーい!?(;゚Д゚)何言ってんのグリーフィアさん!?

ネイ「でも作者さん、前回までの間でツイッターにも最新書き込み話でとあるガンダムキャラみたいになってるって言っていらっしゃるじゃないですか」

(^o^)そこはサラッと流すべき部分じゃないかな?……ともかく、ネアと元君の命運を分ける決闘が、今始まる!本編へどうぞ!


 

 

グリューネが実父ヴァルト・ロードに決闘の宣戦布告をしてから1週間。6月の第2週の火曜日となった今日は、まさにその決闘の指定日である。

フリュウ州のナイトバトル発祥の地であるローディアン市のグラン・ドラン決闘場には、それらの話を聞きつけ、既に観客席に多くの観客が集まっていた。元々ナイトバトルは競技として始まったものであり、試合として楽しむと同時に、観客たちを自然と勝者の証明者として獲得することが常となっていた。勝者にとってこれほど心強い味方はなく、ある意味景品として取られることもある。逆に負けた側にとっては言い訳しても覆せない事実を何千という人物に見られることから、何が何でも勝とうという気持ちが両者に生まれる。

 公正を期すために始まったナイトバトルだったが、そのギャンブル性や、違法行為が横行し、現在は争い事でも嫌煙されているのが社会のルールというもので暗黙の了解となっていた。だが、今回は一味違う。なぜならナイトバトル発祥の地での開催、それ以上にナイトバトルが始まったきっかけの一つとされるガンダムがその決闘相手の1人なのだ。宣伝文句に「ナイトバトルの存亡をかけた」と入っているこの決闘は、誰もが注目する一戦なのだ。

 国の誰もが注目する対決。その警備には今回軍の者が当たることとなった。しかしバァンとレドリックの部下たちは互いに当事者やその関係者。三竜将の2人が事件に関わる以上、その部下達に護衛を任せるというのはあまりよろしくない話だった。が、そこに名乗りを挙げた人物がいた。

 その人物がドラグディア軍総司令を護る三竜将の最後の1人、女性だけのMS部隊「ナイツ・ヴィーナス」の指揮を執る紅一点、「リリー・バレナー」准将である。彼女はバァンと同郷の人物であり、当初はバァンの関係者と噂されていた。そのため警備隊からは外されると思われていたのだが、最終的に彼女と彼女の部隊、ナイツ・ヴィーナスが警備に当たることとなった。

 三竜将が一堂に会する決闘の地は、既に多くの観客の声で一杯だ。それは当然、決闘を行う当事者たちの待機場にも十分届いていた。

 

 

 

 

「もうこっちまで歓声が響いている。……いよいよって感じだな」

 

 壁を挟んで大きく離れているにも関わらず、聞こえてくる観客たちの声に元は緊張感を感じていた。無理もない、今日は元、そしてネアの身柄を賭けた大切な一戦なのだ。緊張感を高めつつ、元は戦闘演習の映像を映す端末を目元に掛けた2つのレンズ越しに見る。

 ハジメの時は何も掛けていなかったが、実は元は元々眼鏡を掛けなければならないほど、視力が悪かった。この世界(マキナ・ドランディア)へと転移してからは、髪の変色と共に視力も矯正されていたので特に掛ける必要は本来ない。だが、今まで使ってきた物がなくなるという違和感と、未だ引きずり続ける幼馴染の悲劇以降の世界への遮断もあり再び掛けるようになったのだ。一応MS装依状態でも掛けることは可能だったが、それでも今回は余計なものを付けて負けたことになりたくないので、装依直前に外すつもりだが。

 ドラグディアのMS戦闘データを眺め、可能な限り戦術を頭に叩き込んでいる元。そんな彼に先程の言葉を返す形で対面の席に座っていたジャンヌが声を掛ける。

 

「そりゃあそうよ。わたくし達にとってはネアと貴方の無実証明だけど、観客の人からは世紀の対決って銘打っているくらいだから。そんな形に持ち込んで、一人でも多くの証言者を増やそうだなんて……そこの妹大好きな生徒会長には恐れ入ります」

 

 皮肉を口にしてネアを励ますように両手を繋いでいたグリューネに視線を向ける。積極的に距離を詰め可愛がる姉のグリューネとは対照的に、近づくことに消極的で離れようとする羞恥さとも言える表情のネア。そんな二人を見ていると、やはりその形を崩したくないと強く思う。

 元の強い眼差しに気づいたのか、グリューネがネアに後ろから抱き付く姿勢のまま、顔を向けた。

 

「んふふー、ネアは可愛い私の妹よぉ~?そのためだったら私は、世界と戦争をするくらいだもの!」

 

「ぐ、グリューネさん……」

 

「………………」

 

 今までの行動からして、まったく冗談と思えない発言だ。次に戦争が起こった時は、彼女がその火種になるのではないだろうかと思わせる溺愛っぷりだと思う。

 しかし、と元は思う。2人が姉妹という関係から別れてもう10年になると聞いている。それだけの間、この2人にどれだけの悲しみがあったかと思うと、それもまた必然なのではと思う。自身にも生意気ながらも妹がいる元には、絶対にこの2人が再び姉妹に戻ってほしい気持ちがあった。その思いが、元に更に緊張を与える。

 そんな元の緊張を更に固めるように、グリューネは激励の言葉を掛ける。

 

「だからあんまり緊張してもらっても困るけど、絶対勝ってくださいね?ハジメさん」

 

「はい。負けるわけには行きませんよ。自分としても、お嬢様との別れに繋がるわけですから」

 

「ちょ……!は、ハジメ、変なこと言わないでっ!それは、そうだけれども……」

 

 元の発言を窘めるジャンヌ。レイアを愛するジャンヌからしてみれば、勝手なことを言うなと言う話である。元もそれは分かっていたが、少しジャンヌをからかってみたいと思ったためだ。元も今の気持ちをやや落ち着かせたかった。そのためにジャンヌに犠牲となってもらったのである。

 そのように話に花を咲かせる4人。一方その少し離れた場所には、新たな装いを見せるガンダムと、それを調整するヴェールを筆頭とする整備士数名、そしてそれを見届けるようにこちら側の大将とも言えるバァンと、護衛に当たる兵士達がいた。護衛をする兵士の中にはジャンヌの父ガンド、それに1週間の間元の指南役となっていたゼントもいた。ガンドは元とネアのこの先が気になり、護衛に志願したのだ。一方、ゼントの方は鍛えた者の奮闘ぶりを見届けると共に、バァンの護衛役も含めての参加だった。

 するとヴェールが機体の方から離れ、こちらに向かって元を呼ぶ。

 

「ハジメ君、こっちの最終整備終わったわよ」

 

「ありがとうございます、ヴェールさん。他の皆さんもお疲れ様です」

 

 整備士達にお礼を言って、ハジメはガンダムの前に立つ。その姿は、以前のシュバルトゼロとは全く違う姿だ。頭部はほぼ変わらないが、腕部と脚部は装甲が張り替えられ、新品そのもの。肩と膝にはハードポイントシステムを取り入れた増加装甲が取り付けられている。そしてその変化は武装にも及んでいる。ハードポイントに取り付けられた、ミサイルコンテナとブースター。サイドアーマーに装備される、この時代の技術で再製造された新たなブレードガン。左腕に装備された、ロストテクノロジーを復活させて搭載したという実体剣付きのシールド。

そしてウイングはファンネルの物から取り替えられ、放熱板とスラスターを合わせたようなウイングに換装、そのウイングで更にビームの砲塔を挟み込んで保持するという構成は、まさに新たなMS時代を築くという言葉に相応しい姿と言える。

ドラグディア軍のMSの技術を用いて再生された元のガンダムは、それを色濃く受け継ぎつつ、その先を行く機体デザインとなっていた。胸部のプロジェクションクリスタルの装甲も、下部に牙のような部分が付いている事からもそれが見て取れる。機体の全体を見ていると、OSであるスタートがこちらに確認の声を飛ばす。

 

『機体各部オールグリーン。待たせたな、元』

 

「スタート。前みたいなことはもうないな?」

 

『当り前だ。武装面はかなり厳重にチェックした。問題はない。……まぁ、俺としてはエラクスも使えるようにしておきたかったがな』

 

 エラクスの事が口にされると、後方で息を飲む音がする。振り返るとその先にいたのはバツの悪そうな表情で目を逸らす、ジャンヌの姿があった。

 エラクスの件に関してはガンドにも一応伝えてある。リム・クリスタルが今竜人族に伝わる方法でなくても生成出来ること、そしてジャンヌがもしかするとガンダムのDNジェネレーターと相性の良いリム・クリスタルを形成できることもだ。ただガンドもジャンヌの両親。いくら非常事態とはいえ、キス程度でもあまり好ましいものではないというのが答えだった。だが、その回答の直後ガンドは冗談で、

 

『でも、もしかすると、それくらいしてくれた方が、今までのあの子からしてみればいいのかもしれないけどね』

 

と言っていた。これまで男性に閉鎖的な面を隠し持ってきたジャンヌが、今元との交流を得てそれが軟化したのを見ていると、療法としてはありなのではという声が出たのだ。元もそれには目を丸くしたが、直後脅しとも取れる悪い笑みで「もしくっついたら銃殺刑」という発言を聞いて、絶対にそういうことはないようにしようと強く思った。

 流石に銃殺刑は笑えない。自ら墓穴に進んで飛び込んでいく行為など、絶対にしたくない。100万円もらえると言われても釣り合わないだろう。……とはいえ、それをジャンヌの前で言う気はない。言えば少なからずジャンヌが傷つくから。

 だから元は、誰よりも先にジャンヌに先程のスタートの非礼を謝罪する。

 

「すみませんお嬢様。スタートが無礼を……」

 

「い、いえ……わたくしだって、簡単に唇を奪われたくないです。けど、そのせいで元は馬万全の状態で戦えないのは……」

 

 顔を俯け、後悔するジャンヌ。自分の事を考えてくれているのは元も嬉しく思う。だが、その為にジャンヌの意志を無視することは出来ない。意志を無視した恋愛的行動は、元にとって許しがたい行為でもある。

 だからこそ、元はジャンヌの両肩に手を乗せ、顔を覗き込む形で宣言する。

 

「そんなこと言わないでください。俺にとってはお嬢様のその言葉だけで十分です。従者である俺の事をそこまで考えてくれる、それだけで俺は戦えますから。エラクスを使わなくても、俺はあの男に勝ちます」

 

「ハジメ……えぇ、そう言ってくれると、わたくしも助かります。だから、勝って。ネアの居場所を護るために」

 

「お嬢様……」

 

 ジャンヌが返した言葉に、ポツリと呟くネア。ジャンヌもまた、彼女をこれまで従えて来た身。ネアの事を思っての発言は当然だった。

 そしてそんな様子を周りの大人達とグリューネが暖かく見守っていると、待機スペースに放送が流れる。

 

『対決時間5分前です。各自、機体チェックを終え、選手は決闘場に入場してください』

 

 開始5分前を告げるそれを聞き、元は姿勢を戻すと機体出力ハンガーに取り付けられる形で接続されていたゼロ・スターターを手にする。ガンダムを装依するそれを手に、元は闘技場へ続く出入り口へ向かう。その背に、ゼントとグリューネの声が掛けられる。

 

「全力でぶつかっていけ。これまでの成果を出すんだ。限界だと思った時こそ、もっと自分を追い込め」

 

「負けるんじゃないわよ?」

 

「はい。絶対に」

 

 それだけ返すと、元は決闘場へと続く道を進んでいった。道を進むにつれて徐々に大きくなる歓声。元の緊張が更に高まっていく。

 長く続いた暗い道を抜ける。すると元の視界を、光と共に多くの観客の姿で埋め尽くされる。既に観客席は熱狂状態であり、それだけで威圧される。だがそれで終わりではない。むしろこれから、この熱狂も、そして戦いも始まるのだ。

 観客の方から視線を元に戻すと、その先にいたのはあの男だ。ネアを捕らえようとした、ドラグディア軍、レドリック・ドラス率いる親衛隊のMS装依者、アレク・ケルツァート。彼は既に決闘場の中央に立っていた。これから戦う相手を見据え、その到着を待っていた。

 元もすぐにその人物の方へ向かって歩き出す。歓声を受けつつ、中央に立った元はアレクの正面に立つ。にらみ合う両者。先に口を開いたのは、アレクの方だった。

 

「あの時の事を謝罪しよう。いきなり襲ってしまってすまなかったな」

 

 飛んできたのは謝罪の言葉だった。いきなりの事で面を喰らう元。仕掛けてきたのはあちらだというのだから、それは真っ先に言うべきことであっても、今言うべきことではないように思う。

 しかし、それが意味するものがどういうものか。続くアレクの言葉で察する。

 

「だが、今日は容赦しない。ここですべての決着を付ける。この争いの幕を」

 

「……そうですか。それならこちらも同じですよ」

 

 今回は真剣勝負だ。以前の戦闘は1対1とはいえ、野良試合のようなもの。自身の非を認め、そのうえで倒すということを伝えるための宣誓だったのだ。そのようなものだと元は理解すると、同じように返答する形でアレクに伝える。

 

「あの時、こちらから焚き付けたことは謝らなくちゃいけない。だけど、だからって負ける気はさらさらない。立ちはだかるっていうのなら、俺が倒す」

 

「ふっ。お互い、晴らすものは晴らしたというわけだな。……ならば、もはや言葉は必要ない!」

 

 2人の間で話の決着がつくと、それを見計らったように、審判によるルール説明がマイクを通じて響く。

 

『ルールの説明になります。今回の決闘の形式は1対1の対決です。勝敗はMSの装依解除、戦闘続行不能、降参、または装依者の死亡を以て付けるものとします。戦闘エリアは観客席前面を覆う電磁フィールドまでとします』

 

 審判の声と共に、フィールドと観客席の間をやや黄色い光を帯びた光の障壁が包み込む。上空まで球体の半面を作り出し、その高さは大体、決闘場の一番高いところまでだ。もっとも、そこまで追い詰められることは避けたいところではある。

 ルール確認が終わると、審判から開始準備を言い渡される。

 

『では互いに始動機の装着をお願いします』

 

「了解」

 

「承知しました」

 

 審判の声に合わせ、両者共にスターターを取り出す。MSを装依するための始動機を自身の腹に巻き付ける。スターターから音声が響く。

 

『ドラグ・スターター』

 

『ゼロ・スターター』

 

 音声が響き、それぞれ機体ロック解除キーとなるロックリリーサーを装填する。元の方は更にセレクトスーツカードを横から挿入する。

 それぞれの装依準備が終わると、審判が装依開始の合図を出す。

 

『続いて、機体装依をお願いします!』

 

「行くぞ!装依!!」

 

「……装依!!」

 

 2人は同時に装依ボタンを叩く。同時に装依の工程がそれぞれ開始される。姿を現したのは、ドラグーナ・レドルに似た部分を持つ新型のMSと、ドラグディアのMSの要素を付与された新たなシュバルトゼロガンダムだ。

 現れた2体のMSに、観客からの声援がかかる。そして、審判がそのMS達の名前を明かす。

 

『それではこれより、アレク・ケルツァートの「ドラグーナ・アレキサンドル」と、クロワ・ハジメの「シュバルトゼロガンダム[ハイブリット]」による、決闘を行います!!』

 

 両者の名を聞き、観客席のボルテージが高まっていく。そう、シュバルトゼロガンダム[ハイブリット]。それがこの機体の名前だ。過去と今の技術が交差して生まれたハイブリット機体。本来の機体の名前は[リペア]という名前だが、今の装備状態はその[ハイブリット]が正式名称だ。

 元はまじまじとアレクの機体を見る。ドラグーナ・アレキサンドル。その名はかつて歴史の教科書で見たことのある名にそっくりだ。歴史の大王に似た名前を持つその機体は、バインダーのように背負ったバーニア付きシールドと機体各部に装備された増加装甲に目が行く。

 機体の特徴からして、おそらく以前と同じ近接型だろう。元は戦略を整理すると、腰背部から取り出した小型ビームライフルを右手に持つ。アレクもアレキサンドルの同じ部分にマウントされる槍状の武器を構える。

 両者の準備が整ったのを確認すると、審判が戦闘開始の合図を告げた。

 

 

「3、2、1……決闘、開始!!」

 

 

 3カウントと同時に、決闘の幕は開かれた。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。次回から新たなガンダムこと「シュバルトゼロガンダム[ハイブリット]とドラグディア軍最新鋭機「ドラグーナ・アレキサンドル」が激突します。

ネイ「ハイブリットって……ハイブリット車とかのですか?」

そうです。古代の技術と現代の技術、その融合した姿としての名前ですね(*´ω`)

グリーフィア「へぇ~、で、アレキサンドルはまんまあのアレクサンダーかしらねぇ」

バトスピにも一応「アレクサンダー」がいるからあなたの指しているのがどっちか分からないけど、まぁそうです(´・ω・`)一応ガンランスですが槍系統武装も持っているので、ある意味それもモチーフだね。

グリーフィア「ふぅん。そう。そういえば作者さん、前に作者としての活動4周年だったかので書くって言ってた、前作のラスボスとかの機体設定集ってどうなってるの?」

あ、それだけどね。ラスボスだけかな、書くとしたら。他の機体とかこっちに持ってきたいものとかもあるし。本当ならラスボス機も名前とか変えてこっちで使いたいけども。

ネイ「でも、今のこっちを優先してもよさそうですけれども。夢オチで前作とコラボとか良さげに思います」

あ、それでもいいなら記念話として作るけど?(´・ω・`)時系列的には決闘準備期間で。

グリーフィア「仕事が早いわねぇ♪」

まぁ夢オチ前提での番外だから1話で終わる程度の長さだけどね。それでも今は問題ない状況だし。というわけで今回はここまで。

ネイ「次回も是非見てくださいね」


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EPISODE24 金粉ト蒼炎ノ戦場2

どうも、皆様。令和まで1週間を切りましたね。藤和木 士です。

ジャンヌ「令和……レイ 和……なんてことを夢見ています、ジャンヌ・ドラニエスですっ。夢を見るのは自由ですよ?」

レイ「あはは、あの人の動画のやつだね。藤和木が頭上がらないPの人の。レイ・オーバだよっ!」

さて、今回はEPISODE24の公開です。遂に戦闘開幕!新たなガンダムの武装に注目ですよ~!

レイ「うんうん!でも前作までのシュバルトゼロガンダム……えぇい、SZGとは武装がまるで方向性違うよね?」

ジャンヌ「確かに。藤和木の事ですから、トンデモ外装の馬鹿力武装ばっかりだと思ったら、実弾兵装とかもありますし」

まぁ、あくまで今回のガンダムの武装はアレクとの決闘向けだし、ガンダムの武装の方向性が決まっていないから、ドラグディアの運用する機体の武装が多くなっていますよ。……ってか、馬鹿力武装って言わないでよ(´・ω・`)私も前作の機体は途中からおかしくなってきてた感があったからさ……

ジャンヌ「まぁ、機能とかも大分抑え込んでいるみたいですからね。リアルを考えたと思えば」

レイ「あ、リアルと言えば……」

はいはい、今はこっちね(´・ω・`)ではどうぞ!


 

 決闘開始直後、最初に仕掛けたのはアレクからだった。勢いよく前に飛び出したアレクは、右手のランスに備えられた銃口からマシンガンの弾をばら撒いてくる。

 

「うらぁ!!」

 

 対して、元は後退を選ぶ。スムーズな動きで機体のウイングを開くと、機体各所のスラスターを利かせて、弾を避ける動きを行う。

 奇しくも、初めて激突した際とは逆の始まりはお互いの予想通りの動きで始まった。元は最初から距離を取って攻撃を始めるつもりだったのだ。そのため攻撃をスムーズに回避することが出来た。だがそれは裏を返せば、本来は違った展開を予測していたことになる。元は最初の激突でアレクが退きつつ攻撃を見極めると思い、距離を取って射撃戦をするつもりだった。そのため、現在の攻めは対応できるとはいえ、予想とは外れていた。内心、焦りがあった。

 まさか距離を詰めてくるなんて……最初の時に俺が突っこんでいたから、それを抑えるつもりでって感じか?それとも、まさか俺の動きを……。いや、それを今考えてる暇はない。

 だが、焦りが勝利を揺らがせると、師匠から教わった事を脳裏に過らせると、シールドを構えて被弾を防ぎつつ、右手のビームガンサイズの大口径ビームライフルを構える。ブラスターガンと名付けられたそれは、ドラグディアで次期主力MSの標準兵装として試作された武装であった。だが必要出力をジェネレーターが満たせず、お蔵入りとなった。しかしガンダムの出力なら、それを満たすことが出来ると、今回装備されたのだ。

 ためらう暇はない。元はガンダムを通して、そのトリガーを引く。引き切ると同時に、ビームガンサイズのライフルからは、大出力のビーム弾が放たれる。狙い澄まして放たれたわけではないため、その弾は回避されてしまうが、放たれた弾丸はフィールドの壁を大きく穿つ。

 その破壊力は観客達を唖然とさせる。だが元にとっては、以前のようにならずに済んだと安心感を抱かせる結果となった。

 

「よし、ブラスターガンは問題ない。なら……」

 

 破壊力に慄いた様子を見せるアレクに今度はシールドを肘に接続したジョイントで保持したまま、ライフルに左手を添えて狙い澄ました一撃を放つ。再び放たれた破壊力の塊に、アレクは咄嗟に反応し、回避する。

 

「ぐぅっ……はぁ!」

 

 不意を突いたものの、それを完全に避けたアレク。お返しと言わんばかりにランスから再びマシンガンの弾を飛ばしてくる。それをシールドで受け止める。敵の弾は何度もシールドに対してぶつけられる。おそらく、連続して放つことでこちらの動きを封じ、ライフルを撃たせまいとしているのだろう。

 実体弾の威力はさほど脅威ではないものの、当たればバランスを崩す。隙を晒すことは、今の元にとって命取りである。たちまち防戦一方となる。が、それで諦める今の元ではない。距離を取ることを心掛けつつ、続く弾丸をシールドで耐え忍ぶ。そして、時が来る。突如連撃が止んだ。

 

「ちっ、弾が……」

 

 アレクが舌打ちをする。そう、実弾の為に弾が切れたのだ。すぐに弾をリロードしようとランス後方のカートリッジを取り換えようとする。そこに元は攻撃を合わせる。

 

「させるかよ!」

 

 元の一声と共に右ひざにハードポイントを通して接続していたコンテナの蓋を開く。中には12本の金属で出来た筒が頭を覗かせている。マイクロミサイルだ。それをアレクに狙いを定め、一斉に放つ。

 12の尾を引いて、ミサイルがアレクのアレキサンドルに襲い掛かる。アレクは使い切った弾倉を捨てることだけを行うと、すぐに回避運動を取る。アームユニットに接続されたシールドが蓋を開くように内部のメカニックを露出、内蔵されたバーニアも吹かせてその場から退避する。ミサイルはそのままアレキサンドルに追いすがる。だがいつまでも追いつけるわけではなく、急上昇したアレクを通り過ぎてフィールドの電磁障壁に当たって爆散する。上空へ逃げたアレク。そこに追撃を放つ。

 

「逃がさない!!」

 

「ちぃ!!」

 

 再び向けられるブラスターガン。高出力ビームが上空に逃げたアレキサンドルに伸びる。何とか機体を捻らせ、回避するアレク。続けて元は背部ウイングで保持されたビーム砲「ハイブラスター」を向ける。ハイブラスターからはブラスターガンよりも強力なビームが2本放たれる。ブラスターガンの砲撃でバランスを崩した機体に、強烈な追い打ちが掛けられた。

 だが、アレクも負けてはいない。その刹那、咄嗟に向けたシールドでハイブラスターを受け流すと、左手で新たに構えたシューターサーベルの弾丸を放つ。威力が小さいけん制用のビームが連射され、元はすぐに退避する。瞬時に高機動モードへと切り替わったウイングは、それらの弾丸を何とか回避する。

 その間ランスに再度弾丸を込め直したアレクは、形勢を立て直すと再びランスからマシンガンを放つ。今度は腰部のスラスターを吹かせ、動き回りつつの射撃だ。元も武装をブラスターガンから新たな姿となったブレードガン「ブレードガン・ニュー」を1丁構えて応戦する。

 

(何とかついていけてはいる。けど、油断が全くできない!)

 

 連続した攻防は元に息をつかせる暇もない。とはいえ、仮にも1週間みっちり鍛えられた身。以前よりも安定した戦闘を続けていた。シールドで防御しつつ、大きく跳び上がると、すぐに上からのブレードガン・ニューの狙い撃ちで機体の頭部を狙う。

 狙い定めたその一撃は奇しくも外すが、回避に気を取られた隙に、ブレードガン・ニューをブレードモードに切り替え、アレクへと斬りかかる。

 

「てぇあ!!」

 

「ぐぅ!やる!!」

 

 左手に構えたシューターサーベルでその一撃を防御するアレク。同時に受け止めた状態でガンダムにシューターサーベルの銃口を向ける。元もそれに気づき、鍔迫り合いを回避してから右膝増加装甲の蓋を開く。開いた中には、3発のマイクロミサイルが頭を覗かせる。膝蹴りの姿勢でマイクロミサイルを放つ。放たれたミサイルに、アレクはシューターサーベルの弾丸を放って撃ち落とす。

 何とかシューターサーベルの追撃は避けられた。ミサイルを放った直後後退した元は、両手にブレードガン・ニューを構えると、ライフルモードに切り替える。ブレードが上下に分かれ、銃口を露出させると連射する。襲い掛かる銃弾に、シールドのバーニアを全開にして回避行動を取るアレク。

 それぞれの一手一手が、観客に驚きの声を響かせていた。2人の攻防は、それだけ観客にも凄さが伝わっていたのだ。実況もその白熱した試合展開を伝える。

 

『互いに互いの行動を潰す戦法を展開していますね!すさまじい攻防です!!』

 

『そうですねぇ。けん制、妨害、それらを2人は隙を見つけて凌ぎ合っている。一進一退の攻防とはこれを指すのでしょう。……っと、アレク選手が再び動きます!』

 

 実況者の1人の言葉通り、アレクが再び仕掛けてくる。バインダーのシールドを前面に展開し、ランスからマシンガンの弾をばら撒いて突撃してくる。

 

「うおおおぉぉぉ!!」

 

「突撃してくる?なら!!」

 

 元もそれに合わせて、シールドを前に構えて右のブレードガン・ニューを乱射する。そしてお互いが交差する刹那、同時に槍と剣としての機能に切り替えた武器で互いのシールドにぶつけあう。

 ランスの攻撃はシールドを貫通することなく、受け流した。そしてこちらの剣は突きの一撃がシールドに刺さった。こちらの一撃が少しだが通ったのだ。

 

「よしっ……!」

 

 攻撃が通用したことに安堵する。だが、それは相手の計算の内でもあったことを知らされる。突如シールドの蓋が勢いよく開く。開いた反動でガンダムの右手からブレードガンがすっぽ抜ける。

 

「甘いんだよ!喰らえ!!」

 

 アレクの宣言はシールドの開いた先に構えられた、シューターサーベルの弾丸で証明される。状況を理解する前に放たれた弾丸が、ガンダムの機体を揺らす。連射して放たれた弾丸が、装甲を穿っていく。

 思わぬ反撃を受けたシュバルトゼロ。しかし、元もすぐに距離を取ってシールドで防御する体勢で後退する。しばらく続いた連射の後、再びアレキサンドルが突撃を開始する。けん制の射撃はまだ続いている。止むと同時に、距離を詰めたアレキサンドルのランスによる突きが繰り出された。ところが元も同時に仕掛ける。

 

「はぁ!!」

 

「えぇい!!」

 

 繰り出されたランスの突きを再びシールドの曲面でずらす。だが、今度は左手に保持したままだった逆手持ちのブレードガンで、アレクの機体の腕からランスを弾き飛ばす。ランスは右手方向数メートルの地面に頭から突き刺さる。

 得物を弾かれ、シールドを構えた状態でシューターサーベルの射撃攻撃を行うアレク。元はその連射をシールドで防ぎつつ、逆手のブレードガンを右手に構えなおす。射撃に射撃で返す定石通りの展開。だが元は、その内の一撃をとある一点に狙い澄まして撃った。それはアレキサンドルのシールドに未だ突き刺さるブレードガンに向けて放たれた。ブレードガンに直撃すると、武器は爆発する。同時に爆風がアレクの機体のバランスを崩す。

 

「ぐぉっ!?シールドに残っていた武器を狙撃したのか?」

 

「もらった!!」

 

 バランスを立て直そうとするアレキサンドルに向けウイングのハイブラスターを展開、砲撃を行う。排熱モードに移行しての連射が半壊したシールドに向け放たれる。だがアレクも腰部のスラスターを全開にし、更にシールドのスラスターを限界まで使用して退きつつ上昇して回避する。そして反撃と言わんばかりに両腕のアーマーを開き、ガトリング砲で応戦する。実体弾であるためさほど脅威はないと思って防御するが、放たれた弾丸の内1つが左膝側面に装備されていたコンテナに着弾、パージするがミサイルに火が付き爆発を起こしてしまう。

 爆発のあおりを受け、機体がふらつく。そこをアレクがガトリングで更に追撃を行う。隙を突かれての攻撃だ。すぐにウイングを展開し、回避行動を取る。だが緊急回避とも言える行動は、流れ弾によって更に大きくバランスを崩した。

 

「くそっ!」

 

「いただく!」

 

 シューターサーベルで斬りかかってくるアレク。元もシールドで攻撃を受け止める。火花を散らせ、ガンダムを守る盾。その間に元はブレードガンをブレードモードに切り替える。息を吸ってからガンダムの駆動系を全開にし、シールドで相手の光剣を押し返す。距離を取って、ブレードガンを振り下ろす。対するアレクも、シューターサーベルの刃でそれを受け止める。互いの剣が火花を散らせる。

 出力はほぼ互角、機動性もこっちは上げているのにそれに追いすがるほどの性能……。向こうもドラグディアの最新鋭の技術で作られた機体、そう簡単には押し切れないか……!

 元は心の中で舌打ちをする。実際その通りであった。どちらの機体も、ドラグディアの現最新技術を用いて開発・改修されたMS。互いのパワーバランスはほぼ互角であった。更に精度は違えど、元が短期間の内に戦闘力を向上させたことも、この幾度も続く攻防と密接に繋がっていた。本来ならどちらかが圧倒的な力の差があれば、早々に決着は付いていた。しかし、実際はそうではない。

 とはいえ、元がアレクとほぼ同レベルの戦闘を行えるようになったかと言えば、そうでもない。既にアレクは元の到達したレベルに以前から到達している。それを埋めるのが、機体自体の性能差だ。いくら技術レベルで同じでも、違うレベルの物がある。今の技術では絶対に再現できない、元のガンダムだけが持つ力。高濃度DNを生み出すジェネレーター運用システム「ツインジェネレーターシステム」。そのシステムが生み出す膨大な高濃度DNは、機体の機動性、武装の回転率に作用し、アレクのドラグーナ・アレキサンドルよりも1手速い攻撃が出来ていた。それが技量の差を埋め、互角に渡り合っていたのだ。

 お互い攻めあぐねる状況は、しばらく続く撃ち合い斬りつけ合いの中確実にそれぞれの攻撃の択を潰す。元はアレクのアーム内蔵式のガトリング砲の弾をすべて使わせていた。代わりにこちらはブレードガン1本と左膝増加装甲内に入っていた、全てのミサイルを使い切っていたが。

 続いた攻防の後に残ったのは、お互いの肩で息をする声と、先程よりもやや声量の落ちた観客の声援だけだ。アレクはこちらを挑発する様に具合を聞いてくる。

 

「ははっ、随分と辛そうじゃないか、ガンダム」

 

「それは、こっちのセリフだ。あんただって、現役の軍人の癖に、もうギブアップですか……?」

 

「くっ、言ってくれる。とはいえ、少々油断しすぎたか。なら仕方ない」

 

 お互い肩で皮肉を言い合う中、アレクが体を大きく起こす。元も何か仕掛けてくると思い、身構える。注意を向ける中、アレクは言った。

 

「なら見せてやる。僕の、俺の、いや、俺達ドラグディアの本気を!!」

 

 

 

 

 

 

 元とアレクが火花を散らす中、決闘者達が待機するスペースへ続く道を2つの集団が通っていた。1つは、レドリック・ドラスが率いる親衛隊の面々。対象たるレドリックはおらず、代わりにずんぐり体形の男性が前に立って、彼らを率いる。

 もう一方は男性の面々が多い親衛隊とは打って変わって、女性のメンバーが目立つ集団。彼女達はレドリックと同じ三竜将の1人、リリー・バレナー准将が率いる「ナイツ・ヴィーナス」。今回の決闘場警備にも付いている集団だ。

 そんな彼女らが、なぜ揃ってレドリックの集団と共にいるのか。その疑問は親衛隊側からナイツ・ヴィーナス側の指揮官、リリーへの問いかけで明らかになる。

 

「リリー准将、彼らは……」

 

「特に動きはありません。貴方達の思惑通りに行けると思われます」

 

「そうですか。では、行きましょうか。我らの勝ちを確実なものとするために……」

 

 親衛隊の隊長がした悪い笑みに、リリーは関心を示すことなく正面に向け直す。彼らの目的、それはグリューネ達の持つ証拠の押収であった。本来の所、表向きには相手が勝利しても何ら問題のないことを市民に伝えていたヴァルトではあったが、実際の所はグリューネの握る証拠は非情に厄介である。何せ、彼女の言っていることは本当で、物的証拠を嘘だと言って裁判に勝ててもロード家の家庭崩壊は免れない。そうすれば、更に週刊誌で追及されかねない。

 しかも既に市民の中には、飛び交う根拠のない噂でヴァルトの市議解散要求、暴動も起き始めている。仮に勝てたとしても彼らの不信感はいずれどこかで暴発する可能性がある。可能性は少ないが、軍をレドリックが掌握した後でも軍内部のクーデターを起こされかねない。それらを事前に喰い止めるべく、彼女達が負けた後でも何も言えないように脅し、そして証拠の剥奪が画策されたのだ。とはいえ、それを成すために当初の決闘場警備を自分達のシンパで固める方策は失敗している。だからこそ、レドリックは同じ三竜将たるリリーに協力を依頼した。

 彼女に対してはバァンが軍の掌握を狙っていると諭し、協力させている。もし何か気づいても始末してしまえば問題ない。親衛隊の中でもレドリックに認められたエリートで構成された自分達が、不意打ち程度で女性に負けるわけがないと自負していた。

 そうこうして通路を進んでいる間に、目的地の目の前まで来る。隊長格の男はリリーに顔を合わせ確認すると、隊員達を先に突入させる。

 

「きゃっ!?何っ!?」

 

「少将!ジャンヌ達もこっちに!」

 

「あらあら……騒々しいですね」

 

「ふむ、レドリックはそうきたか……」

 

 突然の襲撃に驚きの声を上げる者、冷静に状況を見る者達の声が交錯する。だが、それを咎めるように隊長の男は言い渡す。

 

「さぁ、お遊びはここまでにしてもらう。大人しく、証拠を渡してもらおうか!」

 

 戦いは、まだ続く。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。EPISODE25は令和前にまた投稿する予定ですので、それが令和前の最後の投稿になると思われます。

ジャンヌ「というか、作中の事に関してはまったく触れないんですね……ヴァルト側が強硬策に出てきたというのに」

レイ「あれじゃない?解決するから問題ないってことじゃ?」

夢がないことを言うね、レイさん(´・ω・`)

レイ「あれ、事実なの?」

いや、私が言ったのは、そういった思い込みはどうなのかなって話。

ジャンヌ「そうですか。……でも、アレクの発言とかもありますから、逆転が巻き起こる感じではありますよね」

戦いとは、逆転が常に巻き起こるものさ!( ー`дー´)キリッ

ジャンヌ「それバトスピでデュークモン使ってブイブイ言わせてる人が言うセリフですか?」

レイ「そうそう!この前一方的なバトル展開して対戦相手が疲れてたじゃん!」

いや、そう言うけどあの対戦に限って言っても大会中かなりの事故だったからね!?(;゚Д゚)デュークモン同士でも負けるくらいだし!
あ、では今回はここまで。ちなみに前に言ってた活動4周年記念、番外編が出来あがっています(´・ω・`)その中でSSRのラスボス機の情報もちらっとだけ出す予定です。

ジャンヌ「次回の平成最後の投稿話もよろしくお願いしますねっ」


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EPISODE25 金粉ト蒼炎ノ戦場3

どうも、皆様。平成最後の日をいかがお過ごしでしょうか。藤和木 士です。

ネイ「平成最後の投稿って、本当に平成最後の日にするんですね……アシスタントのネイ・ランテイルです」

グリーフィア「んー、その流れからして作者さんひょっとして令和初の投稿は明日にするつもり?アシスタントのグリーフィア・ダルクよ♪」

あ、例にもよって考えたんですよ。ただ明日は少し忙しいので多分ない……多分(´・ω・`)

ネイ「多分って……」

グリーフィア「曖昧ねぇ……ま、でも明日はなくても、作者さんの事だから早めに投稿しそうだけれどっ」

まぁ、令和最初の投稿はなるべく早めにはするつもり。さて、令和を締めるお話はEPISODE25です。

グリーフィア「前回は元さんがアレクと決闘に臨んだ場面だったわね。何かあっちには秘策があったみたいだけど……」

ネイ「あと、控室をレドリック親衛隊の人が襲撃したりしてたね」

さぁ、波乱がありそうなEPISODE25をどうぞ!( ゚Д゚)


 

 

「ドラグディアの本気……ですか。一応こっちも、ドラグディアの総力という意味でいえばそうだと思うんですけどね」

 

 アレクの本気宣言に、ツッコミを入れる。元の言う通り、こちらもまたドラグディアの最先端技術を用いて改修された機体。どちらも現在のドラグディアの総力を集めている。しかし、そうではないことをアレクが語る。

 

「機体だけなら、そうかもしれない。だが、俺達ドラグディア軍は、ドラグディアの全国民の命を背負っている。それを、どこからか現れた英雄気取りに、簡単に超えさせはしない!心意気の問題だ!」

 

「なるほど、そういうことですか。でも、こっちにだって背負っているものがある。恩人の為にも、これからの明日の為にも、俺は勝つ!」

 

 互いに背負う者。負けられない戦いが、そこにある。それを聞き、アレクは不敵に笑う。

 

「ふっ、いいだろう。なら、この力、見せてやろう!!」

 

 機体に力を込めるようなポーズを取るアレク。すると、機体の各所にあった増加装甲がわずかに動く。そしてその力を、輝く粒子を放出し出す。

 

「何!?あれは……粉?」

 

 元が最初に思ったのは、粉のようという感想だ。金色に輝く粉が、ドラグーナ・アレキサンドルの増加装甲から機体に噴射されていた。粉を散布され、機体は徐々に金色となっていく。更にその金粉は機体の周囲に広がり、やがて元の周囲までも覆い尽くしていく。

 なんだ、これ。最初は機体を覆っていたみたいだけど、今じゃこっちの視界を……まさか?

 元は今までゼントやMS戦術論の動画から、とある結論を出す。アレクが一足早く口にする。

 

「これはビームコーティング剤。ビームの威力を減衰させるための兵装。本来は機体にコーティングを施すためのモノだ。だが、それを今、完全に放出した。通常は拡散して、効果は一瞬だが、今この閉鎖空間ならば……!つぇい!!」

 

「何!?」

 

 視界不良の中、突然襲い掛かるアレキサンドル。その手にシールドから新たに構えた二振りの実体剣を構え襲い掛かってくる。攻撃を寸前で回避する元。すぐにブレードガンをライフルモードに構えなおし、射撃を放つ。しかし……。

 

「んな……!?ビームが消えた!?これは……」

 

 放たれたビームはすぐに減衰してしまう。なぜと思った矢先、その理由に気づく。アレクが撒いたビームコーティング剤、それが今、元のガンダムのビームを阻害する障害物となっているのだ。

 気づいた元に、アレクがそのロジックを明かす。

 

「ビームコーティングは本来、機体に塗布して使用するもの。だが、こちらのコーティング剤は、更なるビーム減衰の為にDNをコーティング剤分子の中に織り込んでいる。おかげで微風程度でも辺りに留まる……はぁ!!」

 

「く、このっ!」

 

 解説をしつつ、2本の実体剣を振りかざすアレク。ブレードガンをブレードモードに切り替え、元も応戦する。だが、鍔迫り合いになった直後、瞬時に身を引いたアレキサンドルが繰り出した回し蹴りが、ガンダムの手からブレードガンを弾き飛ばす。

 ブレードガンには目もくれず、元は瞬時に距離を取る。距離を取ってから肩部増加アタッチメント付き装甲の収納スペースから、ビームサーベルを取り出す。ところが発振してもその刃は短く、また弱々しい物だった。

 

「くそっ、これもコーティング剤の影響だってか!?」

 

『なるほど、ビーム撹乱幕と同じ効果を得ている、ということか。しかもコーティング剤に色が付いているから、同時に視界も奪ってくる。……これは一本取られたぞ、元』

 

 スタートが感心したように状況を読み取る。今思えば確かにこの散布された状態、すっかり視界は金色一色、金色となった相手の機体も相まって姿が非常に見えづらい状況だ。先程の攻撃も姿に気づくのが遅れてしまっていた。まだ戦闘に慣れていない元にとって、この状況は非常にやりづらかった。

 おそらくビーム兵器は軒並み使えない。使えるとしたら、背部のハイブラスターくらい。けど、あれだけの威力でもかなりビームが減衰するだろう。それを見越してあの兵装とは、相手は既にこの状況を予測してたってことか……。

 こちらにも実体兵装はある。だがミサイルは先程の戦闘で既に撃ち尽くしていた。残るブレードガン・ニューも左右にそれぞれ1本ずつ。シールドのブレードはまだ使用していないが、若干取り回しは辛いところがある。対抗できないわけではないが、それでも元としては、ミサイルは欲しかったというのが本音だ。

 しかし、相手も今まで使用していた実弾兵装はほぼすべて落としたか使わせた。黄金の粉の中で身を潜める中、射撃攻撃が飛んでこないのが何よりも証拠だ。だからこそ、突然飛んできた実体弾がその安心を吹き飛ばす。

 慌てて前に転ぶ形で弾丸を回避する。襲い掛かって来たアレクの機体の手には、先程落としたランスが握られている。

 

「この瞬間に拾ったか!」

 

 そう叫びつつ、元は両手にブレードガン・ニューを構える。そしてその一撃を交差させた二本の銃剣で防ぐ。火花が散る中、アレクが叫ぶ。

 

「ダメだなぁ。こういう展開で、落とした武器に注意しないとは!」

 

 ある意味ブーメランとなる発言を掛け、再び退くアレキサンドル。その機体は再び黄金の粒子の中に姿を消す。元は周囲に気を配る。そしてわずかな音のした右方向に剣を構えると、その方向から再びアレクのドラグーナ・アレキサンドルが襲撃を掛けてくる。

 その急襲を再びブレードガンで防ぎながら、元は指摘する。

 

「よく言う!さっきこっちの武器でダメージを受けたくせに!」

 

「それを言われると、こっちも立つ瀬がないな。しかし!」

 

 元の指摘に肯定するアレク。だが言い切ると同時に槍でガンダムを弾き飛ばす。元のガンダムの左手から3本目のブレードガンがこぼれ落ちる。間一髪で逆手の形で握り直すが、右側から強襲してきたアレクのランスが、咄嗟に構えたシールドに火花を散らせる。

 その戦法は完全にヒット&アウェイだった。しかも風景に同化していて、機体のカメラもその姿を正しく捉えきれていない。これほどの戦法を有していたのは、元達にとっても予想外だ。それでも元は必死に食らいつく。

 

「っ!せぇやぁ!!」

 

「なっ!?」

 

 後方から攻め入ったアレクに左手のブレードガン・ニューを弾き飛ばされる。だが、それと引き換えにランスの根元付近にブレードガンを突き立て、破壊する。爆発と同時に両者が共に距離を取る。

 

(まずは槍を潰した。けど……)

 

 距離を取ってから元は周囲を見渡す。若干濃度が低くなってきた気もするが、それでも機体の姿を完全に捉えるに至らない。今度は真正面から片手剣の神速の突きが襲ってくる。

 正確無比な攻撃を、機体スラスターを駆使して回避する元。だが徐々に攻撃はガンダムの機体を掠めてくる。しかも攻撃も機体関節部近くを狙っており、なかなかいやらしい。実体剣とはいえ、狙う場所が狙う場所。回避に徹しなければ危険なのは明らかだ。

 何度目かの回避で元は反撃を行う。振り切った瞬間に、一気に振り抜く。ブレードガンと相手の実体剣が切り結ぶ。だが、その刹那。

 

「遅い!!」

 

「ぐあっ!?しまった」

 

 払いのけるように振った実体剣が、ガンダムの手首を打つ。若干のスパークと共に、最後のブレードガンが地面へと落下する。

 すぐに拾おうとしたが、続く連撃から回避するのに精一杯で、ブレードガンはその場に放置される。放置されたブレードガンに実体剣を突き立て、使い物にならなくするアレク。

 

「これで、残る兵装はそのシールドだな」

 

「ち……やってくれますね」

 

 アレクの言葉は的を射ている。シールドのブレードが現状相手から使える兵装の1つであるのは間違いない。だが、元のガンダムにはまだ、得意とする肉弾戦、そして一発逆転のDNFがある。とはいえ、相手にはまだ得物があるうえ、DNFより威力が低いものの、威力の桁違いなDNAがあるはずだ。油断は出来ない。むしろ、不利なのはこちらだ。

 それを示すように、アレクの攻めが再び始まる。何とかシールドで防御しつつ、反撃の機会をうかがう。だが、その一撃一撃は徐々にガンダムを追い詰めていく。連続した攻撃にガンダムの肩部上部のバーニアが貫かれ、爆散する。

 

「ぐぅ!!」

 

 爆散直前に分離させ、致命的な被害は免れる。だが姿勢が崩れたところに、アレキサンドルの蹴りが頭部に直撃する。

 

「どうしたぁ!?その程度か!!」

 

「くっ!まだだ、まだ!」

 

 反撃の拳を繰り出すも、それを回避し、アレクは胴の装甲の隙間に実体剣を突き立てる。若干のスパークが散る。元はすぐにそれを弾き飛ばす。小爆発が起き、ガンダムの姿勢が崩れる。

 決定的な隙が生まれた。それをアレクは逃さない。一歩下がってから高速の切り抜けを繰り出す。

 

「これで!!」

 

「ぐぁっ!!?」

 

 シールドで防御しようとするが、その前に機体の胸部に斬撃跡が残る。それと同時に爆発が起こった。

 何とか付いて行こうとする元だが、どうしてもリーチの差があった。こちらの攻撃が通る前に相手の攻撃が届いてしまう。シールドも防御に回しているため、攻撃には使えなかった。もしコーティング剤が散布されていなければ、という言葉が元の中で何度も何度も駆け巡る。

 やがて、アレクが攻撃の手を止め元に語り掛ける。

 

「お前の機体は確かに強い。だが、武器を封じてしまえば、この程度!素人が簡単に超えられるとは思わないことだ!」

 

 ガンダムの性能に頼る元の姿を乏しめる言葉だった。しかし元はそれを否定する。

 

「まだだ、まだ勝負は付いちゃいない!!」

 

 その拳を固く握り、周囲に溶け込むアレクに対しそう叫ぶ。一撃、一撃だけでいい。アレクの機体を捕らえることが出来れば、手はあるのだ。

 しかし、現実は甘くない。アレクはため息を漏らす。

 

「そうか。その覚悟だけは一人前だ。もっとも、勝負は俺の勝ちだ!!」

 

 先刻と同じように突きを繰り出す元。元はシールドのブレードを振りかざす。振りかざした一撃が偶然にもアレクの実体剣を弾いた。だが、隙を作るまいと繰り出した回し蹴りを機体に受け、後方に退く。そして繰り出された斬撃が、機体のブレードアンテナと胸部ダクトに直撃する。ブレードアンテナが両断され、ダクトも裂傷からスパークが散る。

 とうとう片膝を着くガンダム。未だに押される状況で、アレクが宣言する。

 

「さぁ、そろそろ幕を引こうか」

 

 宣言を口にすると、アレクは実体剣を構えなおし、再び攻め入ってくる。元も覚悟を決めてシールドを構えるのであった。

 

 

 

 

 時を同じくして、場所は待機スペースではバァン陣営がレドリック親衛隊とリリー・

バレナー率いるナイツ・ヴィーナスに包囲されていた。小銃を構える親衛隊に、ジャンヌ達は怯える。

 何!?どういうこと!?どうしてこんなことに……?何で待機スペースに銃を持った人達がなだれ込んでくるのよ!しかも、証拠を渡せって……わけが分からない……。今ハジメがその証拠の意味を賭けた戦いをしているっていうのに、なんで証拠を渡せって!

 困惑に染まるジャンヌの心の声に、答えを口にしたのはグリューネだった。前に出て庇う立ち位置であった兵士達の手を退け、前に出るとその親衛隊隊長に問いかける。

 

「あらあら、随分と強引ね。貴方も、そしてお父様も。まさか力ずくで証拠を押さえようだなんて」

 

「力ずくって……まさか、勝負に関係なしに奪おうっていうの!?」

 

 グリューネの言葉でそれに気づく。勝敗に関係なしに彼らは証拠を奪おうとしていたのだ。だが、その認識を隊長の男は咎める。

 

「奪おうとは人聞きの悪い。最初から勝敗など付いた戦い、やるだけ無駄だ!我らはその後に起こる混乱を取り除くために、証拠を頂くのだ。人道的に、ね」

 

 汚い。ジャンヌは強くそう思った。混乱を取り除くと言っておきながら、結局は勝負に負けるのが怖くてルール違反をしているだけ。彼女の眼には、少なくともそう思えた。

 しかし、少し視線を逸らして見たモニターには、徐々に押されるハジメの姿があった。武器を落とし、装甲を切り裂かれる。その姿にはジャンヌも目を逸らしたくなる。しかし、ジャンヌは強い眼差しをもって目の前の危機にその目を向ける。

 負けない。ハジメも、わたくし達も。こんなやつらに、ルールすらも破る無法者に、わたくし達は負けたりなんかしない。わたくしにはまだ見なくちゃいけない結果があるから、だから……!

 ジャンヌは知らずの内に未来を望んだ。それは、既に自分が捨てたはずのものだった。だが、ジャンヌは今、いつからか怖くなっていた明日を求めていた。そしてネアの手を、無意識に強く握っていた。

 そして、それは訪れた。

 

「さぁ、どうする?」

 

「決まっているわ。私達は彼の、ガンダムの勝利を願っている。それを邪魔するなんて、私達はしないわ!」

 

 親衛隊の隊長格の男に、キッパリと断るグリューネ。その様は勇ましかったが、男のため息と共に振り上げられた手に合わせ、親衛隊の男達が銃を構える。ジャンヌ達が身構える。喉を鳴らす音がかすかに響く。隊長格の男が全てを終わらせる号令を掛ける。

 

 

 

「やれやれ……ならば、少々痛い目に遭ってもらいましょうか!」

 

「っ!!」

 

「ネア、ジャンヌ!!」

 

 

 

 

 ガンドの声が飛ぶ。そして彼女らは銃弾の雨あられに……。

 

 

 

 

「な!?何だ、何がどうなっている!?」

 

 なることはなく、銃声の代わりに聞こえてきたのは親衛隊達の困惑に満ちた言葉の数々だった。

 

「く、くそっ!撃てない!」

 

「ま、まさか弾詰まり(ジャム)!?」

 

「なんだよ、全員のやつが、同時に起こったっていうのか!?」

 

 慌てふためく親衛隊員達。それらの光景に、ジャンヌとネアは困惑した様子を見せる。そしていつの間にかガンドとゼント、他の隊員数名が彼らに向かって制圧、もしくはジャンヌ達やバァンらを護衛する方に回る。

 親衛隊と呼ばれた彼らだったが、他の事に気を取られていればその実力はとても信じがたいものだ。すぐに殴り飛ばされ、ドミノ倒しに倒れていく。だがナイツ・ヴィーナスの面々はただそれを静観しているだけ。共に来たにも関わらず、協力する素振りすら見せない。その動向に、拳を殴り返して護衛の1人を倒した隊長が怒りの言葉を向けた。

 

「えぇい!何をしているリリー准将!早くこいつらを抑えぬか!!いや、それよりもなぜ貴様らが渡した銃が……」

 

 が、その言葉は鋭い視線を向けた彼女自身の言葉と、振り抜いた剣の一閃で断ち切られる。

 

「おやおや、私は貴様らの主の言う通りにしただけだ。弾詰まり起こした銃を用意しろ、と。まぁ、そちらからのオーダーは、弾詰まりを起こした「ように見せかけた使用可能な」銃、だったが。卑劣な手はあまり良くないな。―――それと……私も准将だぞ?階級の差を覚えておけ、腰抜け!!」

 

「っあ!?ぐぁぁぁぁ!?」

 

 振り抜いた細身の剣が、隊長の手の甲を切り裂く。手首にまで達したその斬撃に隊長の男は傷口を抑えて悶える。その上から護衛の男達が抑え込む。既に他の親衛隊は既にガンド達護衛人、ナイツ・ヴィーナスの隊員達、そして一部の親衛隊達によって捕縛されていた。

 目まぐるしく変わった状況をジャンヌは全て理解することは出来なかった。ジャンヌだけではない。互いに手を握るネア、それに整備士の人達もこの状況に困惑していた。彼女達以外は、その状況に混乱の様子を見せていない。

 ジャンヌ達の不安が未だ残る中、バァンがこの状況のいきさつを語り出す。

 

「やれやれ……分かっていたとはいえ、銃を向けられるのは緊張するね」

 

 肩を竦めて緊張状態を解く。バァンの姿を見て、リリーは謝罪の言葉を口にした。

 

「それは申し訳ありませんでした、バァン准将。とはいえ、グリューネ嬢からの指示もありましたから。……それで、証拠は?」

 

「もうバッチリ!そこの馬鹿隊長の言葉も全部録音させてもらったわ♪証拠を自ら提供してくれるだなんて、ねぇ?」

 

 リリーの確認の言葉に、グリューネはそう答えた。彼女の手にはレコーダーが握られており、先程の会話は全て録音されていたようだ。しかし、ジャンヌは理解に苦しむまま、グリューネに状況の説明を要求する。

 

「え……何?どういうこと?」

 

「まさか、これは……グリューネさん?」

 

 ネアは何かに気づいた様子だった。すると、ジャンヌとネアに状況の説明をグリューネが行う。

 

「安心して、リリーさんと、親衛隊の一部は味方よ。銃をすり替えてもらうようにお願いしたの」

 

「つ、つまり……グリューネは知っていたっていうの?こうなることを……」

 

「そういうことね♪ガンドさんも咄嗟に合わせてくれたおかげで、被害ゼロですし」

 

 グリューネは兵士達を捕縛しているガンドにウインクをする。ジャンヌの父親は頭を掻きつつも、苦笑いを漏らす。

 

「まぁ、全員銃が同時に弾詰まりなんて、普通あり得ないからな。流石にリリー准将が姿を現したときには終わりかと思ったが、合点がいったよ」

 

 本人もジャンヌと同じく知らされていなかったようだが、軍人としての瞬時の判断力が迅速な制圧につながったようだ。加えて、先程まで怯えていた整備員の人達もピースサインを向ける。

 

「私達は知らされていたけど、戦場に出向かない人が怖がらないっていうのもあれだから、敢えて演技していたよ。なかなか迫真の演技ではあったと思うんだけど、どうだった?」

 

「えぇ、ばれないかちょっと怖かったですけど、杞憂でした。ありがとうございます、ヴェールさん」

 

 自身と一部の面々に知らされていなかったこの騒動に、ジャンヌはネアの手を掴んだまま、へなへなとその場にへたり込んでしまう。

 

「あ、あぁ……」

 

「お、お嬢様っ!?気を確かに!」

 

 ネアがすぐにその体を支える。自身の身の心配はいずこかへ、すぐにジャンヌを労わる。そんな姿に、ジャンヌは返事と共にその様子をカラカラ笑う。

 

「大丈夫……。もう……分かってる?貴女が今一番緊張感を持たなくちゃいけないのに、わたくしの心配なんかして……。わたくしより大丈夫みたいだし、強くなりましたね」

 

「それは、その……お嬢様を支えるのが仕事ですから。それを強い、って言っていいのか……。けど、本当におかしいですね。ふふっ」

 

「おかしいわね。笑いがこみ上げてくるだなんて……うふふ」

 

 2人が平静を取り戻したところで、リリーがジャンヌの前にやってくる。そしてまだ終わりではないことを告げる。

 

「お取込み中の所、申し訳ありませんジャンヌ嬢。まだ、彼の戦いは終わっていませんよ」

 

「っ!そうだった、ハジメっ!」

 

 慌てて試合を映すモニターに視線を顔ごと向ける。ジャンヌの眼に、未だ窮地から脱することの出来ないハジメのガンダムが、黄金の粉の中にうっすらと浮かび上がっていた。

 心配そうに見つめるジャンヌに、リリーは問いかける。

 

「彼の元に行きたいですか?」

 

「え……」

 

「フィールドの端には決闘者に声を届ける待機スペースがあります。そこからなら、彼に声を届けることも出来ますが」

 

 ジャンヌに対し、そう説明するリリー。手を貸すことや、完全な状態にするために何かを行うことは出来ない。だが、言葉だけなら届けることが出来る。かつての自分ならそんなこと微塵も思わなかったであろう提案を、ジャンヌは静かに頷き、頼んだ。

 

「お願いします、准将さん」

 

「かしこまりました。ガンド少佐、ご息女をお借りします」

 

 ジャンヌの言葉を受け取り、リリーは立ちあがる。その手を取り、ガンドへと断りを入れる。連れていかれる側のガンドも、二つ返事でそれを了承した。

 

「はい、よろこんで。娘をお願いします、リリー准将」

 

「ナイツ・ヴィーナス、後は任せた。……では、行こうか」

 

 自身の隊に指示を飛ばすと、リリーはジャンヌの手を引き、フィールドへと足を急いだ。決闘の決着は、近い。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。平成最後は逆転の兆しを得て終わりとさせていただきます。

ネイ「……作者さん。一応リリーさんは中立の立場なんですよね?」

ん?そだよ。

ネイ「……なら、レドリックに協力すると見せかけてグリューネさんのサイドに協力するって、中立じゃないんじゃ……」

レドリックが協力()を要請した時点で中立を脅かしていたから、それを元に振り切った結果だよ(゚∀゚)

グリーフィア「そうね。ルール違反をした相手へのペナルティね♪」

ネイ「あ、姉さんもそっち側なんだ……」

グリーフィア「とはいえ、なかなか役者ねー。油断しきってる親衛隊が間抜けすぎるだけかもだけど」

だから反乱が起こってるんだよ( ˘ω˘ )

グリーフィア「納得だわ~」

さて、今回はここまで。次回は令和後初の投稿だぁ。あと、ジャンヌさん5位だよ、やったー!( ゚Д゚)

グリーフィア「あらぁ、バトスピ公式の詩姫総選挙の結果ねぇ。だけどネイだってベスト10入りよぉ?」

ネイ「ね、姉さん恥ずかしいよ///」

というわけでネイさん、〆をお願いします!(´っ・ω・)っ

ネイ「あ、じ、次回もよろしくお願いしますね!」


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EPISODE26 金粉ト蒼炎ノ戦場4

どうも皆様。普段より投稿間隔が遅れた理由は、アンジュ・ヴィエルジュのイベント走っていたからです、藤和木 士です。

ジャンヌ「藤和木、イベントは前もって余裕を持って参加しましょうね?ジャンヌ・ドラニエスです」

レイ「そうだよ?あと、共闘するのが目的なんだから、急いでるからって単体強パンとかちょっと非効率だよ?レイ・オーバですっ♪令和初の投稿だよー!」

そうだね、レイ和だね( ˘ω˘ )

レイ「ちょっと、それ違うから」

ジャンヌ「当たってますけど間違いですからね?」

あはは、さて今回はEPISODE26です。改元を跨いで、遂に決闘の決着ですよー!

ジャンヌ「今のところアレクがリードしていますね」

レイ「勝つのはどっちかなー?」

それでは本編へ!


 

 

「ぐっ……っは!」

 

 突き出された剣の一撃を受け、弾き飛ばされる元。まだ装依解除にはならず、疲れで更に重くなった体をガンダムの馬力で起こす。完全に勝機を失っていた。まだ武装はシールドが残っているものの、ダメ元で使用したビームサーベルは弾き飛ばされ、地面へと端末が転がった。盾に自らの拳、それだけで剣を持った達人に立ち向かおうなど、普通は無謀である。

 盾を構えた状態で膝を着く元に、剣を振ったアレクが降参を勧める。

 

「よく頑張ったよ。けど、もう勝ち目はないだろうけどね。降参した方が利口だとは思うんだけど、どうかな?」

 

 未だ視界は金色の粉が浮遊している。しかし、これまでの戦闘の最中で大分地面や壁、それにガンダムに付着していき、その濃度は薄くなっていた。しかし、それでも視界が金色に覆われているのは、間違いなくガンダムのメインカメラに付着しているのが原因だった。

 アレクの言葉を、途切れ途切れになりながらも元は否定する。

 

「ふざ……けるな……。俺が、負けることなんて……絶対に!」

 

「…………そうか。なら、仕方ない。僕の手で、この戦いを終わらせる……!DNA(ディメンションノイズアタック)!」

 

DNA(ディメンションノイズアタック)、ガングニール・ストライク』

 

 剣の柄尻を合わせ、双剣と化したそれを構え、DNAを発動させる。双剣の片側に、DNの奔流が巻き起こると、槍の形を模す。MSの必殺技、その一撃を以て、アレクはこの決闘に決着を付けようとしていたのだ。

 ダメだ、あの一撃は。いくらガンダムでも、今の装甲状況では耐え切れない。装依解除か、それか死ぬ。そうなればこの決闘は終わってしまう。避けなければいけない。頼む、動いてくれ……!

 元の必死の思いの下、ガンダムの駆動部が音を立てる。しかし、まるで固まって元に戻ろうとする金属板のように、その動きはぎこちない。そんなガンダムに向け、アレクが突撃の構えを取る。

 

「安心しろ、痛みは一瞬だ」

 

「くそっ……!動け!!」

 

 ドラグーナ・アレキサンドルが突撃姿勢を取る。その時だった。

 

 

 

 

『ハジメッ!!負けないで!!』

 

「!?」

 

 

 

 

 フィールドに響いた、少女の声。聞こえるはずのない、その声がスピーカーを通して響き渡る。その声は観客達の歓声の中でも、確かに元の耳に届く。

 元の眼の動きに合わせ、機体のカメラがその方角の景色を見せる。ジャンヌだ。自身の仕える存在。彼女は1人の女性に連れ添われ、マイクに向かって声を発したのだ。

 声援とも、指示とも取れるその言葉。しかし、元にとっては両方の意味を持っていた。いや、それ以上に大きな意味を持つ言葉。従者である元にとって主である彼女の言葉は、絶対の命令。そして、元はそれに応えなければならない。何があっても、どれだけ限界でも、成し遂げる。

 その言葉だけで、元の気力は沸き上がった。

 

「覚悟!!」

 

 アレクのエネルギーを纏った双剣がこちらに伸びてくる。元は残った体力を振り絞り、シールドを構えた。普通ならば防ぐことの出来ない、加速の付いた必殺の一撃。ガンダムの装甲すら余裕でダメージを与えるであろう一撃がシールドに激突する。

 が、しかし、その一撃は最後の一撃とはならなかった。

 

「な、なに……!?」

 

 アレクの困惑の言葉と共にあったのは、シールドに向かって伸びた光の槍が、盾本体ではなく、空中に生成された光の障壁によって押し留められる光景。そして、それを行ったのは、他でも元のガンダムだったのだ。元のガンダムが持つシールドが中央から開閉し、露出した複数の凹凸パーツからDNが放出し、障壁を空中に生成していた。

 攻撃を止めたことは、元も同じく驚いていた。だが、その機能を元は知っていた。ガンダムのデータベースから得られた、防御機構。かつてのドラグディアにも存在していた機能は神話の時代に消失し、長年再現を試みようと研究されていた。それがガンダムの技術の下に今発揮したのだ。

 攻撃を止めたことは観客の何人かが気づき、徐々にその驚きがざわめきの形で観客席に広まっていく。そして、スタートがその防御機構の名を告げる。

 

DN(ディメンションノイズ)ウォール……それがお前の攻撃を止めた、この壁の名だ。いくら撹乱幕として使用したコーティング剤と言えど、所詮ビームの形成の撹乱。粒子を圧縮し展開するこの障壁は阻害されない』

 

「そして……ようやく隙を見せたなっ!!はぁ!!」

 

 ようやく掴んだチャンスを、元は逃さない。シールドを形成した障壁ごと押し出し、態勢を崩すと大きく飛び上がる。そのままシールドのブレードを振りかざし、相手の実体剣を中心から叩き切る。続けざまにその頭部に蹴り込みを入れる。

 

「ぐぅ!?このっ!!」

 

 攻撃を受けつつも、アレクは冷静に反撃を行う。だが踏み込んで振った実体剣の一撃は、姿勢を落としてシールドで受け流される形で防がれた。そのすれ違いざまに更にシールドの先に装備されたブレードで機体を切り裂く。胸部装甲が斜め右上に向け亀裂が入った。

 先程の防御から一転して攻めに転じる元。その勢いにアレクは押されつつあった。まさに逆襲。窮鼠猫を噛むかの如き攻めだ。

 先程のジャンヌの言葉が元の意識を研ぎ澄ませ、背水の陣の如き攻勢を実現していた。その証拠に、蹴りを打ち込んだ直後の剣での反撃も、的確に面を打ち軌道を逸らしていた。まさに神業。限界まで研ぎ澄まされた集中力が、今ここで発揮していた。連続する戦いの中、元は思い出す。訓練でゼントが元に対し「限界だと思った時こそ、もっと自分を追い込め」と言ったことを。

 

(今なら分かる。あの人の言葉が。そうだ、限界だって思った時は、まだ限界じゃない。それを、お嬢様が教えてくれた!)

 

 元は先程まで限界だと思っていたが、それでもジャンヌの言葉でこうして戦えている。限界だと思った時こそが、限界を超える時だったのだ。

 遂に振り上げたシールドのブレードによる一撃が、アレクのドラグーナ・アレキサンドルを大きく退かせた。切り裂かれた装甲からスパークが散り、小爆発で更に後ろに下がる。

 

「うぐっ!?……よもや、ここまで……先程の声のせいか?」

 

「違うな。あの声のおかげで、俺は今ここに立っている!行くぞ、スタート!!」

 

『おう!DNF!!』

 

 アレクの言葉を若干訂正しつつ、元は大技「DNF(ディメンションノイズフルバースト)」の発動に入る。スターターの音声が今までとは違う口上で発動を宣言する。

 

『Ready set GO!!DNF(ディーエヌエフ)、シャドウストーム!!』

 

 ガンダムの右手にDNが集中する。すぐにそのDNが黒い渦を巻き、拳全体を覆うと、その拳を地面へと勢いよく打つ。地面へと大きな音を立て打ち込まれると、黒い渦はその範囲を広げ、ガンダムを覆うほどの竜巻となる。その竜巻に誘われる様にフィールドを覆っていたコーティング剤が竜巻に吸い込まれていく。黒に加え、コーティング剤の黄金も纏った竜巻はアレクに向けて進攻する。うねる動きで迫る竜巻に、アレクは回避しようと見せたがその前に飲み込まれる。

 

「がぁぁぁぁ!?」

 

 竜巻の中からアレクの苦痛のこもった悲鳴が飛んでくる。数秒の間の拘束の後、竜巻は消失する。その中からは、コーティングが剥げ、更に損傷の酷くなったドラグーナ・アレキサンドルの姿が現す。

 今しかない。元はすぐにシールドのブレードを構えてアレキサンドルに突撃を行う。狙うは敵機のバイタルパート。ガンダムが速度を上げる。

 

「このまま貫く!」

 

「させ……るかよ!!」

 

 しかし、アレクが動く。スパークを振り払う仕草を見せ、両サイドアーマーに懸架していたシューターサーベルを構え射撃で迎え撃つ。窮地を押し返したガンダムでも、あの一撃を喰らうのは不味い。その攻撃に元は回避しつつ、シールドのブレードを射出して応戦する。アンカーで繋がったブレードが射出され、アレクのドラグーナ・アレキサンドルの左手をシューターサーベルごと貫き封じる。距離を詰める過程でシールドをパージする。軽くなったガンダムの推力で、速度を増したガンダムは左手でアレキサンドルの右腕を、右手で頭部を鷲掴みにして抑え込む。

 抑え込んだガンダムはウイングを更に展開し推力でそのまま押し込む。ハイブラスターはこの距離では使えない。しかし、今のガンダムには、先程まで使えなかった最後の武器がある。元は再びDNFを指示する。

 

 

「スタートッ!!」

 

『分かっている!』

 

『Ready set GO!!DNF、ディメンションフィンガー!!』

 

 

 ガンダムの手が黒光りを発する。蒼いDNが手の表面から放出される。危機を感じ取ったアレクが、左腕でその拘束を解こうとしたが、元もガンダムの駆動系、何より自身の手に力を込め、そうなるまいと対抗する。元は力を入れるために叫ぶ。

 

「この……!!」

 

「……俺のこの手で、暗闇に墜ちろ!!」

 

 やがて、光は弾けた。掌の砲門からゼロ距離で放たれた高圧縮ビームが、ドラグーナ・アレキサンドルの頭部を焼き尽くす。爆発を起こしたアレキサンドルの首に当たる部分からは煙が出て、そのまま後ろに倒れ込む。

 未だ頭部があった部分から煙とスパークが散っているが、元は油断せずそのままトドメを刺そうとする。が、その行動は未然に防がれた。突如画面コンソールに文字が表示された。そこにあった文字は、元を一瞬で緊張から解放した。放送のスピーカーからも元の気づいたその事実が伝えられる。

 

『そこまで!対戦相手のアレク・ケルツァート選手の降参により、試合終了!よって勝者、クロワ・ハジメ!』

 

 一瞬だけその事実を聞いて沈黙する観客席。しかし、その事実を飲みこむと再び観客席が大きな歓声に包まれた。未だ勝利を実感できていない元の耳に、観客からの声が届く。

 

「よかったぞー!ガンダム!!」

 

「流石救世主だー!」

 

「最高の試合だったぞー!!」

 

「あ……俺、勝ったのか……?」

 

 おずおずとようやく勝利を理解した元。そんな彼にフィールドの端から駆け出してきた主が勝利を称賛する。

 

「ハジメ!勝った、私達、勝ったのよっ!!」

 

「お、お嬢様!そうみたい、ですね」

 

 慌ててジャンヌの手を取り、喜びを分かち合う。だが、ジャンヌの手を取り、元はようやくその実感を感じ取ることとなる。

 そうか。勝ったんだ。今ここにお嬢様がいて、喜んでくれている。けど、勝てたのはやっぱり……。

 ふと勝利の一因にたどり着いた元は、ジャンヌの手をゆっくりと離してから感謝の言葉を口にする。

 

「けど……お嬢様があの時鼓舞してくれなかったら、自分は負けていました。本当にありがとうございます」

 

「え、あ……そ、そうよね。あの後から急に動きが良くなったみたいだったわね!……わ、わたくしのおかげ?」

 

 ジャンヌは自分の行った行動に今さら気づき、顔を背ける。やはり面と向かってそう言ってしまったことは認めたくないのだろう。しかし、元はフォローを前提にそれに返答した。

 

「はい。間違いなく。お嬢様がいなければ負けてしました」

 

 その言葉を聞き、赤くなるジャンヌ。そして、その口から元に一言放たれる。

 

「……はっきり言わないでよ……バカ」

 

「え……」

 

「も、もういいから!とぼけたふりしないでよ!!」

 

 あまりに小さかった言葉は、残念ながら元には届かずその反射的な言葉で逆に起こらせてしまった。何だったのかと気になりつつも、ご機嫌を損ねて可愛らしく怒る主への応対を考えていると1人の女性が2人の間に入ってくる。

 

「いい関係だね。2人とも。お互いに信頼関係が出来ている。もう少し素直になれば満点かな」

 

「え……貴女は……」

 

「ちょ、准将さん!?そ、そんなことないです!」

 

「お嬢様、お知り合いで?」

 

 元が誰なのかと聞こうとすると、その女性が元に名乗る。

 

「失礼。私はリリー・バレナー。君達の決闘の会場警備隊の隊長で、ドラグディア軍の三竜将の1人だ。この戦いの見届け人も兼ねている」

 

「そうでしたか。でも、その三竜将のお1人が、どうしてここに?」

 

 元がそう聞くと、リリーはその口元を緩め、まだこの余興が終わらないことを告げる。

 

「あぁ、それはこれから、観客にも話すことだ。アレク君、生きているかい?」

 

 リリーが元達から視線を外して声を掛ける。すると、その方角で寝そべる姿勢で倒れたままのアレクが、頭部のない状態で喋る。

 

「ま、まぁ、何とか……っ!しかし、まさか本当に負けるなんて……あのまま降参していなかったら、本当に死んでいたかもしれない」

 

「きゃっ!?ま、まだ戦うっていうの!?」

 

 その見た目からか、それとも不意打ちを警戒してか、ジャンヌが元の機体に飛びつく形で体を跳び上がらせる。元も最初は注意を向けるが、不安がらせたことに謝罪しつつアレクが状況を説明してくる。

 

「安心してくれ。もう戦う必要はない。というか、負けても道は同じだったんだけどな」

 

「あ?それは……一体……」

 

 どういうことか、と言ったところでリリーが手にしたインカムに向けて声を大にして話す。

 

『皆様、今回の決闘をお楽しみいただき、ありがとうございます。私はこの決闘の警備を担当させていただきました、ドラグディア軍ナイツ・ヴィーナスの隊長を務めるリリー・バレナー准将であります。今回の決闘は見事クロワ・ハジメ選手が制しました。対戦相手であるアレク・ケルツァート選手も、よく全身全霊を賭けて戦いました。2人の闘志には、目を見張るものがあります。……ですが、どうやらそんな彼らの決闘の決着を待たずして、何やら姑息なことをハジメ選手のサイドに、しかも私達ナイツ・ヴィーナスを利用して事を勧めようとした連中がアレク選手のサイドから出たようです』

 

「何……!?」

 

 リリーの発言に元は怪訝な表情をする。するとジャンヌもその件について話す。

 

「そうです!レドリック・ドラスの親衛隊が、わたくし達から証拠を渡せと迫って来たんです!」

 

 ジャンヌの力説する姿を見て、リリーは事の主犯であるあの人物達に向けて言葉を紡いだ。

 

「みたいですね。では、戦った者達への侮辱、その代価を払っていただきましょうか。……隊員一同、レドリック・ドラス准将とヴァルト・ロード市長を捕らえろ!」

 

 観客席、そして会場全体にリリーの冷たい言葉が届いた。そして、最後の〆の作戦が展開された。

 

 

 

 

「ば、馬鹿な!?あの女何をやって!」

 

 予定にないリリーの発言に、VIPルームで状況を静観していたレドリック達は動揺していた。本来ならガンダムの敗北と共に、全ての証拠を総ざらいし、真実を知る者達を一掃、または再起不能にするはずだった彼らにとっての舞台劇。しかし、決闘はガンダムが勝った。それだけならまだいい。しかしいつまでたっても制圧の連絡は来ず、更にはその計画を進めていたはずのリリーが裏切っていた事実。無論本当は彼らこそが他人を欺いていた罪人だが、そんな認識は彼らには微塵もない。元から罪を帳消しにするつもりだった彼らは、最終的に更に大きな罪を負わされることとなったのだ。

 ざわめく観客席を見て、先程の放送を聞いていたヴァルトはすぐにこの場からの退散を提案する。

 

「ま、不味いですよ、レドリック准将!早く逃げなくては!?」

 

「分かっているわ!行くぞ、ヴァルト!」

 

 すぐに彼らは扉へと向かう。アレクがリリーを止めようとしないことから、彼もまた何かこの件に一枚噛んでいることは容易に想像できた。もしかすると、この決着も仕組まれたものではと考え込んでいた。

 出る直前に部屋の電話が鳴ったが、それを無視する。その相手がガンダム達の手の者だと感じたからだ。だがそれを無視して部屋を出た彼らに鉢合わせになるように、親衛隊のメンバーが現れる。味方だ、と思ったのもつかの間、親衛隊の者は血相を変え、彼らに掴みかかる。

 

「待て、レドリック准将!貴官らを拘束する!!」

 

「な!?き、貴様ら何を言って……!?」

 

 レドリックの制止も聞かず、親衛隊は本来守るべきレドリックを取り押さえていく。その様子に狼狽えるヴァルトも、後方から更に部屋に入ってくる他の軍服姿の女性―――ナイツ・ヴィーナスの面々にその身を拘束される。

 その身を束縛されながらもレドリックは怒りの言葉を吐く。

 

「えぇい!!離せェ!!貴様ら、誰の差し金だァ!!バァン少将か!?」

 

 激情に任せて拘束に抵抗するレドリック。すると、彼の言葉に、若い男性隊員が返答する。

 

「いいや、俺達はアレクやリリー准将の言葉に従っている!けど、そう思い立たせたのは、いつも俺らをこき使うあんたとあんたが贔屓にしていた先輩隊員だよ!!このっ!!」

 

「ぐぅっ!?貴様ぁ、顔は覚えたからな!覚悟しておけよ!」

 

 思い切り怒りの感情を込めた拳が、レドリックの頬に突き刺さる。レドリックの顔に鼻血が垂れる。威厳ある面影は既にない。いや、もしかすると部下の兵士をないがしろにしたその時から、その顔には威厳はなかったのかもしれない。

 兵士達に無理矢理立ち上がらせられたレドリックは、その顔をゆがめ、未だ暴言を吐きながら、兵士達に連行されていく。その後をヴァルトも同じく重い足取りで連行されていく。決闘はここに今、グリューネが予定した敵サイドの協力者も含めた全ての行程を終え、解決へと向かっていく。

 

 

 

 

 と、誰もが思った。しかし、まだ終わってなどいない。未だに鳴り続ける、部屋の電話。だが、突如プツンと切れてしまう。ただそれだけの出来事。しかし、事態は別の場所で動いていた。

 マキナスとの国境付近。その国境線を、マキナスの軍勢が超えたのだ。彼らの目的はただ1つ。レドリックが作戦に失敗したことによる強硬策。ガンダムの鹵獲を目的としていた。そしてその部隊は、真っすぐ首都より国境に近いこの闘技場を目指していたのであった。それは、越境を察知したドラグディア本部から、元達にもすぐに伝わることとなった。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。元君の勝利で決闘は終了しました(^ω^)

レイ「うん、終了したね。……けど最後が不穏過ぎない?」

ジャンヌ「不穏を通り越して、これまだありますよね?」

ご名答!(゚∀゚)まだもうちょっとだけ続くんじゃ!(*´ω`)

ジャンヌ「あー……元さんにオーバーワークさせ過ぎじゃないんですか?戦いを重ねてきた光樹さんじゃないのに」

レイ「それだよねー。というか、負けても結果一緒だったって感じだったみたいだけど、負けたらどうなってたのかな?」

負けた時はリリーが事実公表してそれに同調する形でアレク君がクーデター起こすって感じだね。まぁ多少流れは悪くなる感じだったから、元君が勝ってよかったじゃないの(´Д`)

レイ「そ、そだね……」

ジャンヌ「もしそうなっていたらで、レドリック親衛隊が本気でアレクさん達を止める流れがあったような……」

ま、所詮はIFの話だよ。広がらない話はここまで。次回は続く脅威に元君が立ち向かいますよー……その前にちょーっと、絡みがあるけれど(´Д`)

ジャンヌ「絡みってなんです……」

絡みは絡みだよ。

レイ「あはは……次回もよろしくねーっ。あと、令和でもよろしくねっ!」


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EPISODE27 金粉ト蒼炎ノ戦場5

どうも、皆様。藤和木 士です。

ネイ「アシスタントのネイ・ランテイルです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィア・ダルクよ♪」

さて、今回は特に話題もないので、今回はEPISODE27と続く28の連投になります。

ネイ「あれ、今度のバトスピのスターターについてはノーコメントなんですか?」

ふっざくんな、あのレムリア・ゾディアックだっけ?( ゚Д゚)あんなもん出されてまた光導の強化かって思ったわ。どうせならアポロ強化をくれ、それか星竜強化を……

グリーフィア「あーはいはい。作者さんが近頃の光導に不満持っているのは分かったわ。それで、今回の話じゃ絡みが出てくるって話だったけれど?」

あ、はい。そうですね。まぁ予想できるかもしれませんが、今回のタイトル、まだ半分しか伏線回収できていませんからね( ˘ω˘ )

ネイ「伏線って、蒼炎はガンダムの事では?」

まぁ、そこら辺は今回と連投するEP28の方で、ということで。では本編どうぞ!


 

 

 それは突然だった。リリーから主犯格、レドリックとヴァルト、それに自宅にて優雅に過ごしていたグリューネの義母でネアの母親であるシャリィ・ロードが確保されたことを聞き、喜んでいたジャンヌと元。これでようやく、問題が解決する。ネアの居場所も、ハジメの立ち位置も変わらない。そう思っていた。

 だが、その凶報はそれすらも壊すほど、大きな影響力を持っていた。フィールドにいた2人に駆け付けるように現れたヴェールが、その凶報を伝えた。

 

「大変、2人とも!急いでこの場から離れなくちゃ!!」

 

「ヴェールさん?どうしました?」

 

「な、何かあったんですか?」

 

 困惑する2人。すると、そのヴェールの言葉を代弁する形で、スピーカーから実況席の解説役が緊急を伝えた。

 

『えぇ!?た、大変です皆様!現在隣国マキナスから出撃したと思われるMS部隊が、こちらへ向かってきているとの報告がありました!!』

 

「え……えぇ!?」

 

 いきなり伝えられたのは、隣国マキナスがこちらに向かって侵攻しているということだった。決闘が終わった直後と言う魔の悪いタイミングに、動揺するジャンヌ。その動揺は、観客席にいた観客もまた同じだ。

 続くもう1人の実況者が闘技場の全員にアナウンスする。

 

『現在ドラグディア政府が停戦要請と、軍の緊急出撃(スクランブル)を掛けていますが、この場所が戦場になる可能性もあります。みなさんは、係員の誘導に従って、避難してください!』

 

 ざわつきが激しくなる。無理もない。戦場という言葉に嫌悪感を抱かない人間の方が少ないのだから。喧騒の声も響く中、係員の指示に従い、慌てて観客席を離れていく。

 ようやく状況を理解したジャンヌ達も、同じくハジメを迎えに来たバァンやガンド、それにグリューネとネア、リリーのナイツ・ヴィーナスの数名と合流する。

 

「ハジメ、ジャンヌ!2人とも急いで中へ!」

 

「お父様!」

 

「当主、俺はまだやれます」

 

 ハジメがガンドにまだ戦えることを伝える。しかし、ガンドは首を横に振ってそれを止める。

 

「いくらアレクを本気で止められたとはいえ、今の状況で出撃は無茶すぎる。機体だって万全じゃないんだ。それに、君はまだ軍人ではない。ここは、俺達に任せてもらおう。ハジメはジャンヌやネア達を護ってくれ。いいな?」

 

「う……はい」

 

 まだ納得がいっていなさそうな表情だったが、一応の返答だけはする。その後ガンドはバァン、そしてリリーと迎撃の準備を始める。

 

「では、私は前線で迎撃に向かいます。バァン少将とリリー准将は?」

 

「私は避難が完了するまで、この場で空域を防衛しよう。リリー君はガンド少佐と共に、ナイツ・ヴィーナスによる防衛線を敷いてくれるか」

 

「分かりました。少将。では行きましょう。装依!」

 

 腰に装着したスターターを叩き、ナイツ・ヴィーナス全員が一斉に装依を開始していく。光のゲートを潜ると、彼女達はドラグーナより竜の要素を控えめにした、女性らしいフォルムのMSへと装依していた。

 

「ドラグーナ・ヴィーナス、全機装依完了しました、隊長」

 

「よし……では私のドラグーナ・リリィを中心に飛翔後、迎撃ポイントまで向かう。ガンド少佐、行きましょうか」

 

 ドラグーナ・リリィと呼称されたリリーのMSがガンドの方に確認を取る。自身の父もまた既に専用機ドラグーナ・ガンドヴァルへと装依し、戦闘態勢を整えている。ガンドはその言葉に問題ないことを伝える。

 

「問題ありません。では、行きましょう」

 

 ガンドからの返答を聞き、彼らは一斉に上空へと飛び上がる。既にフィールドを覆っていた電磁障壁は解除され、闘技場の外へと出ていく戦士達。そしてバァンも遅れて彼のMS「ドラグーナ・ヴォロス」へと装依した。背部に銃と増速器が一体化した装備を背負ったその機体は、こちらを一瞥する。

 

「ふむ……では行こう。ハジメ君、もし戦うというのなら、まずは私を突破していくことだ」

 

「っ……」

 

「ちょ、ちょっと、バァンさん!?」

 

「ははっ、冗談だよ。もっとも戦うといっても私は余程の無茶でもない限り、止めようとはしないけどね。バァン、行くぞ!」

 

 笑えない冗談をやり取りしてから、バァンは上空へと向かう。それを見届け、残ったのはジャンヌ達非戦闘員と、ハジメとアレクの決闘を戦った2人だった。

 まったく……笑えませんよ。お父様にだって、さっき来るなって言われたのに。第一、ハジメは決闘の為にここまで頑張ったんです。戦闘が終わったばかりだっていうのに、また戦闘なんてあまりにも酷すぎます。

 ジャンヌは先程のハジメの眼を気にしつつも、戦わないことを望んでいた。機体が万全ではない状態で戦いに行くなど、死地へ自ら向かいに行く自殺行為であることはジャンヌにも分かっていた。例えガンダムでもそんなことは無理なのだと。

 ところが、ハジメはそんなジャンヌの思惑とは反対であった。自身の機体の握りこぶしと、ガンド達が向かった上空の方角へと交互に顔を向ける。そんな様子を、アレクが装依を解除して軽い感じでどうしたのか聞く。

 

「どうした、クロワ・ハジメ。そんなに戦場に行きたいのか?」

 

「あ、アレク・ケルツァートさん!?何言って……」

 

「ちょっと黙っててくれないか。俺はクロワ・ハジメに聞いているんだ」

 

 ジャンヌの憤りを、アレクは指に手を当て、黙らせる。ジャンヌはもどかしい思いをしつつ、ハジメがそんなことを思っていないことを祈る。しかし、ハジメの口から語られたのは、ジャンヌの想いとは真逆の発言だった。

 

「俺は、行きたい。いや、行かなきゃダメなんです」

 

「ハジメ……」

 

「ハジメさん……」

 

 ハジメの硬い意志を示すその言葉に、ジャンヌ、更にネアが声を漏らす。2人の心配そうな表情を見るも、ハジメアレクの方に向ける形で顔を背けてその考えを、理由を伝えた。

 

「スタートが計算したこの戦いの結果は、泥沼と化して更に大きな混乱を呼ぶ。それだけで済めばいいけれど、このままだと確実にここは戦場になる。リリーさんや、ガンド様も……無事では済まない」

 

「っ!お父様が負けるっていうの!?」

 

 ジャンヌは声を荒らげる。しかし、ハジメはそのままその予測を伝える。

 

「戦力比は向こうが4倍程度です。でもこれは今の話……増援が来るのは間違いない。元から戦力差は大きい、そんな状況で、いくら実力の高いガンド様でも持久戦は辛いはずです」

 

「なら、ハジメが行ったところで変わりないじゃない!なんでハジメが行かなくちゃいけないの!?」

 

 ジャンヌらしからぬ発言だった。しかし、その内容は誰もが思うことだ。いくらガンダムとはいえ、たった1機で何ができるというのか。だがハジメはジャンヌに言った。

 

「それでも、行かないよりはマシです。ガンド様が戻ることが出来たなら、お嬢様は悲しまずに済む……」

 

 自身の身を顧みない発言だった。ガンドさえ無事なら、いや、もっと言うならジャンヌの周りの人間が無事であったなら、自分はどうなってもいいという発言だった。そんな発言を聞いて、ジャンヌは背筋が凍る。

 そんな発言を聞いていたアレクは、ため息をつくとハジメへ死へと先急ぐ発言をしていることを指摘した。

 

「ハジメ、それでジャンヌが喜ぶのか?先程の君は、彼女の声があったからこそ、戦えたんじゃないのか?」

 

 アレクの言葉に若干の沈黙の後、ハジメは肯定する。

 

「……そうですね」

 

「だったら」

 

「だからこそです」

 

 肯定したハジメをアレクは諭そうとしたものの、ハジメがそれを遮って意見を言う。

 

「お嬢様を戦火に巻き込むわけにはいかない。ネアや、グリューネさんもだ。ようやく手にした2人の居場所を、マキナスなんかに滅茶苦茶にさせたくないんです。だから俺は戦う。例え、禁忌の力を使ってでも……」

 

「禁忌の力って……」

 

 単語を復唱してハッとする。これまでの間で、その言葉が指すものの正体に気づいた。かつてアレクと対決した時に起動した、蒼き輝きを放った機能。暴走した蒼き輝きはこれまで押されていた状況をたった数十秒で押し返した。あの力ならば、この現状を打破できるかもしれない。

 だが、それを話したスタートの言葉が蘇る。『残念だが、もう次のエラクスシステム使用時に今までのリム・クリスタルは使えない』。それはつまり、今使えばハジメは間違いなく……。

 言葉の意味に気づいたジャンヌは、それを必死に制止する。

 

「やめてよ!なんでそんな簡単に命を捨てようとするの!?あの力を使ったら、もうここに戻れないかもしれないのよ!?」

 

 ジャンヌ自身、最初の頃はハジメの事をレイアに気に入られているお邪魔虫程度に思っていた。その頃のままなら喜んで送り出していたかもしれない。だが、今は違う。

 自分に毛嫌いされようとも、ジャンヌの為に働くと言ってくれた。初めて自分と真剣に向き合ってくれたような気がしたのだ。短い間とはいえ、2人の間には確かな信頼関係が出来ていた。学園での噂話も、本当は気恥ずかしさから避けていたというのだから。

 同時に彼女は嫉妬もしていた。いくら頼まれたとはいえ、ネアの居場所を護るために訓練を必死になって受けていたハジメを見て、ハジメの時間を束縛していたネアの事を知らずの内に羨ましがっていたのだ。訓練に同行すると言ったのも、その状況がなぜか嫌だったからだ。

 決闘に勝った今、ハジメがネア達の為に戦う必要はない。ジャンヌもそのことを口にする。

 

「ネアの居場所を巡る戦いだって終わった。終わったばかりだっていうのに、どうしてまだネアの為に戦うっていうの!?」

 

「お嬢様っ……」

 

「………………」

 

 思わず声が出てしまうネア。グリューネは表情を硬くし、2人のやり取りをじっと見届ける。2人の意見は完全に相違していた。戦うのと戦うなという、相反した意見がジャンヌの眼差しを鋭くさせる。

 絶対に戦場に出したくないジャンヌの怒りが高まる。この緊急事態に何をやっているのか、と誰かが言いそうな雰囲気である。しかし、周囲の人間は誰も2人の言い争いを止めようとはしなかった。そして、しばし作られた沈黙の時間を、ハジメが破る。

 

「確かに、2人の居場所を作るための戦いは、既に終わりました」

 

「でしょう?だったら……」

 

「でも、それだけで終わりじゃない」

 

「えっ……」

 

 一度は認めようとしていた旨の発言に肯定しようとしたジャンヌの言葉を、ハジメは遮る。思わずジャンヌは素っ頓狂な声と共に口を開く。

 終わりじゃない?だって、今戦いは終わったのよ?ハジメが勝って、2人が一緒に居られるようになった。前だったらまだ裁判がある状況でも、あれだけの不祥事を大勢の前で見せたんだから、それだって簡単にまとまるじゃない。そもそも、それだってハジメの仕事じゃないんだから。何が終わっていないっていうのよ。

 ジャンヌの中でその言葉の状況を探ろうと記憶を巡らせる。自分が思い付く範囲で、ハジメが戦う理由はないはずだった。しかし、ハジメは言った。

 

「お嬢様は、2人でいられるようになった後は、何もしないのですか。また危機に遭った時に、護ることも」

 

「っ!?そ、それは……」

 

 ハジメの言葉でようやく気付く。ハジメが言っていたのは、状況が終了した後のアフターフォローの事を指していたのだ。更にハジメは自身の言葉に付け足していく。

 

「まだ2人の危機は去っていない。2人が姉妹としての時間を過ごせるようになって初めて、俺達の仕事は終わるんです。それに、2人の喜び合う姿を、レイア様に見せなくてもよろしいので?」

 

「うっ!……れ、レイアさんに見せなきゃ、意味はないけど……」

 

 レイアの名前を投げかけられ、言葉に詰まる。更にジャンヌの中でレイアとのやり取りが再生される。

 

『私にはこれしか出来ないから……。ハジメ君、ジャンヌちゃん。後は頼んだよ!』

 

『はい!レイアさんの気持ちに賭けて、ネアの無実を証明します!』

 

 ……そうです。わたくしは、レイアさんの思いも背負って、ここまで来ました。レイアさんがいない中で、勝手に決めるのはよろしくない。レイアさんの想いを無下になんかできません!……でも。

 ジャンヌは戸惑う。それでハジメが犠牲になってしまっていいのか。誰かを救うために誰かの犠牲を払っているのでは、納得いく結末となるのだろうか。沈黙するジャンヌに、ハジメは語りかける。

 

「お嬢様。俺は例え自分の身が犠牲になったとしても、もう悔いは……」

 

 しかし、ハジメが決意の言葉を口にしようとした、その時である。

 

「……どうして?」

 

「えっ」

 

 ジャンヌの疑問を示す単語が、彼女の口から零れ落ちた。その言葉にハジメは戸惑う素振りを見せた。ハジメだけではない。ネアも、そしてグリューネやアレクも共に不思議そうにジャンヌの方へ視線を向けた。

 投げかけられた疑問の意図が分からず、ハジメは聞き返そうとする。そこで、ジャンヌの想いが、真意が明らかとなっていく。

 

「お嬢様、それは一体何の……」

 

「どうして、貴方が犠牲になれば解決するの?貴方を失って悲しむ人がいないはず無いじゃない。友人や使用人仲間、いいえ、それらよりもあなたを心配する人達が、今ここにいいるじゃない!」

 

「…………お嬢様」

 

 ジャンヌ自身、自分が何を言っているのか分からなかった。分かるのは今言っているのはジャンヌ自身が今一番思っている事であるということだけだ。何のために、何を思って言っているのか、ジャンヌ自身は考えてなどいない。とにかく思い付いた言葉を、ハジメに浴びせる。ネアも心配そうに見つめるが、止めようとしない。ジャンヌの言葉の意味が分かったからだ。

 そのままジャンヌは言葉を続けた。

 

「わたくしは、貴方の主なのよ……?従者だったら、わたくしの命令にも従ってよ!それが、主従関係っていうものでしょう……?お願い、勝手に……いかないでよぉ……」

 

 その眼に涙を浮かべるハジメの主。それは彼女が初めて人の為に泣いた場面だったのかもしれない。ハジメの存在は、この短い間でもそれほど重要な存在となっていた。今までが今までだったことからも、余計にそうなったのだろう。

 ジャンヌの我儘とも呼べる、純粋な願いは当の本人であるハジメにも分かった。しばらく黙っていたハジメは困ったように後頭部を掻くと突如として装依を解く。ジャンヌは最初、それが自分の言葉が届いたのだと思った。ネアやグリューネも、そしてアレクもまた反応は異なるが同じことを考えたのだろう。だからこそ、ハジメが直後にとった行動に驚かされることとなる。

 装依を解いたハジメは、ジャンヌの傍まで近づく。そして、姿勢を落としその場に跪いた。跪いたジャンヌの一番の従者は、そのままの姿勢で彼女の手を優しく取る。あまりにもかしこまった、従者じみた対応にジャンヌが戸惑う。自身が考えていた予想より、さらに上の扱いでそこまでしなくてもという気持ちがこみ上げてくる。

 そして、ハジメは動いた。―――手に取ったジャンヌの右手の甲に、唇を付けたのだ。その行動が、どれほど重大なものだったのか。その瞬間の誰も知ることはなかった。

 

 

 

 

(ごめんなさい、お嬢様)

 

 

 手の甲へと唇を当てる際、元は心の中でそう思った。男が唇で肌に触れるなど、男を嫌うジャンヌにとっては嫌悪感以外の何物でもないだろう。しかし元は嫌われてもそうやらなければ彼女の我儘を破れないと思ったのだ。

 地球にいた頃、ドラマやアニメの中で、男性の執事が女性の主にこうしているシーンを見たことがあった。詳しい意味は分かっていなかったが、おそらく尊敬する人物への気持ちの伝え方の1つなのだろうと、元は思っていた。今元は死地になるかもしれない戦場へと向かう気でいる。止めるジャンヌの気持ちも今分かった。それでも向かいたいという気持ちを伝えるために、元は彼女の手の甲へとその行為を行ったのである。

 

「これは、俺の気持ちです。貴女を深く尊敬している。貴女の命令に従いたい。それでも俺は、これからのネア達の未来を……」

 

 しかしその後に続く言葉は、唐突に響いたジャンヌの声にならない絶叫で中断させられる。

 

「っ~~~~~~~~!?!?」

 

「お、お嬢様!?」

 

 いきなり暴れ出したジャンヌの振り払いで、元はその手を放してしまう。だが、ジャンヌは尋常ではない様子で、赤面してこちらに顔を隠す。

 

「ば、バカッ!?な、何でこんな時にそんな事するのッ!?今じゃなくていいじゃない!!」

 

「い、いや、まぁ、でも俺はその……お嬢様への誠意を」

 

「バカッ!誠意とかを今見せる場面じゃないでしょぉ!?分かってくれたのかと思ったら、なんでぇ!」

 

 何とか元は自分の考えを伝えようとするが、ジャンヌはそれを拒み続ける。話がかみ合っていない二人を見かね、グリューネが元にその事情を伺う。

 

「んー、ハジメさん?その行為の意味って、分かってる?」

 

「え……えーと、映画とか見ただけで曖昧なんですけど、忠誠を誓う、とか、敬意を表すとか、そんな感じですよね?」

 

 元は自身の考えを偽りなくそのまま伝える。するとグリューネが頭を抱えて苦言を漏らす。

 

「あー……まぁ、間違っちゃいないわね。間違っちゃ。……けど、今の流れ的には違うでしょ?」

 

「え?」

 

「そうですよね、グリューネさん。ハジメさん、今はお嬢様の名誉のためにも、謝った方が良いですよ?」

 

「え、いや、謝るのは謝りますけど、なんで?」

 

 2人の反応に、事態の見えない元。流石の元も、いくらジャンヌが怒っている理由は分からずとも、謝らなければならないことは分かる。だからこそ、その理由を聞きたかったのだが、2人はその情報を与えてくれなかった。

 とはいえ、このままにするのもいけないと、元はその言葉に従う。

 

「あ、あの……とりあえず、申し訳ありません?でした」

 

「うぅ……もうレイアさんと合わす顔がありません……ん?」

 

 純情を穢されたかの如く涙声で、そのようなことを口走るジャンヌ。しかしそこで異変に気づく。ジャンヌが気づいた時には、元達も既に気づき、困惑した様子でその異変を目にしていた。

 なんだ……お嬢様の手が、光っている?いや、手と言うより、正確には手の中が光って……。

 元の感想の通り、ジャンヌの握った手の中から光が発せられる。最初は小さな光で、気づくのは少数だったが、今では既に輝きがその手からあふれ出し、通信に掛かりっきりだったヴェールも何事かと整備員と共にその現象を観察していた。

 ジャンヌが恐る恐る自分の手を開く、そして、それが何なのかが判明していく。

 

「これは…………結晶?でも、これって……」

 

 光が収まり、見えてきたのはひし形の手のひらに簡単に収まる程度の結晶体であった。あのまま力を入れていれば、ジャンヌの力でも砕けてしまいそうなそれを見て、ほとんどの者達が首をひねる。しかし、その中で1人、ヴェールだけはその結晶に食い入るように見る。

 

「ちょ、ちょっと!それってまさか……」

 

「ヴェールさん?一体どうしました?」

 

 元もヴェールの尋常ではない興味に事情を聞く。だが、ヴェールがパソコンを取り出すまでに食い入る理由を答えたのは、元のスターターから響くスタートの声だった。

 

『あぁ、間違いない。それはリム・クリスタルだ』

 

「な、何だって?」

 

 リム・クリスタル。それは元のガンダムの持つ必殺の機能、エラクスシステム制御に必要な最重要パーツ。思わぬ場面での現出に、元も驚く。

 その一方、詳しい事情や、まったく知らない人物もいる。事情を聞いていたであろうグリューネが、元に確認を取る。

 

「リム・クリスタルって……ハジメさんのガンダムに足りなかったっていう?」

 

「そうです。これがあれば、エラクスシステムを完全に使いこなすことが出来る……」

 

「え、エラクスシステム?それって一体……」

 

 ネアの質問に思い出したようにアレクがあの時の事を答える。

 

「あぁ、それはもしや、僕が君と最初に戦った時に発動した、あの蒼い輝きかな」

 

「そうです。あの時は制御が利かずに殺しかけましたが、これがあればその力を制限時間内だけ使いこなせる……」

 

 元の当時の記憶が蘇る。あの時の元は機体に振り回されていたが、あの強大な力を自分の物に出来るとなると、体の震えが止まらない。なぜ出来たのかはともかく、これは嬉しい誤算だ。

 だが、それを使いこなせるかどうか、そしてそれがガンダムに合うかどうかはこれから確かめなければならない。そしてそのためには生み出したジャンヌの合意が少なくとも必要だろう。先の件も踏まえジャンヌへとゆっくりと歩み寄り、使用する許可を申し出る。

 

「お嬢様。大変おこがましいかもしれませんが……」

 

「………………」

 

 元は機嫌を取るように慎重に話しかける。が、ジャンヌは顔を背けた状態で無言のままクリスタルを差し出す。

 

「………………止めても、行くんでしょう?だったら、ハイ」

 

 諦めにも似た言葉は、ジャンヌの投げやり感が半端ではなかった。間違いなく、先程のやり取りが関係していた。とはいえ、快諾ではないにしろ渡してくれるそれには感謝しつつ、元は結晶を受け取る。

 しかし、受け取る直前、元はジャンヌから言われる。

 

「けど、約束して。必ず帰ってくるって。わたくしにさっきの非礼を怒られるために!」

 

 思わず笑いが出るような約束だ。しかし、そこに込められた元の無事を祈る気持ちを、元は確かに感じ取った。元はジャンヌの照れ隠しの約束に確かに答える。

 

「はい、仰せのままに。必ず生きて帰ってきます」

 

 そう言ってジャンヌからリム・クリスタル……龍の愛を受け取る。そしてそれをヴェールに渡す。

 

「じゃあ、準備お願いできますか?」

 

「もちろん!整備のみんな、突貫作業でやるよ!」

 

『イエッサー!!』

 

 ヴェールの号令と共に、整備員たちが元の装依し直したガンダムに取り付いていく。整備兵達は武装を予備として持ってきたものも含め可能な限り再装備させ、万全の状態へと近づけていく。一方のヴェールも、ガンダムの後方からクリスタルを装填し、適合作業を進める。

 そしてガンダムのコンソールにも、それらが正常に行われたことを告げる表示がなされる。

 

『リム・クリスタル交換完了。Matching test All complete』

 

『適合率、99.4%。これ以上ないほどベストな状況だ!』

 

「よし……ヴェールさん!」

 

 すべてが完了したところで、元はヴェールに状況を訊く。その言葉にヴェールは応え、退避を整備員たちに確認を取る。

 

「よし、みんな準備良い?」

 

「機体武装チェック完了。いつでも行けます!」

 

「うん、じゃあ全員退避っ!ガンダムが出るよ!!」

 

 彼女の号令に一斉に離れる整備兵達。そして元は空を見据えて機械の翼を広げると叫ぶ。

 

「黒和元、シュバルトゼロガンダム、行くッ!!」

 

 その声と共に、元は飛び立った。飛び立った先で、上空で待機していたバァンと目が合う。しかし、彼はコクリと頷くとそのまま前を見据える。意味を理解した元は、改めて侵攻するマキナス軍がいる国境付近へと急行する。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。続くEP28も是非ご覧になってください。

ネイ「絡みってそういうことだったんですね……なんていうか今そういうことする場面ですかって言いたくなりました」

グリーフィア「バカップルねぇ……戦場にそういうの持ち込んだら負けだと思うんだけど?」

それは主人公以外のお決まりだから問題ない(゚∀゚)

グリーフィア「顔が笑ってるじゃないの。……けど、てことは続く話はいよいよ蒼炎の力の発揮どころかしら?」

そうですね。というわけで続きもどうぞ!

ネイ「果たして逆転できるのでしょうか……」


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EPISODE28 金粉ト蒼炎ノ戦場6

引き続きどうも皆様。バトスピの光導デッキがまた強化されることにやや不満げな藤和木 士です。星座達よりもストライクジークヴルムの色違いの情報はよ( ゚Д゚)

ジャンヌ「そういえばもうそれはサーガブレイヴの予告映像で出ていましたね。アシスタントのジャンヌ・ドラニエスです」

レイ「アシスタントのレイ・オーバだよ。藤和木は所謂ブレイヴ信者なの?」

そう言われるとどうなのかあれだけど、ノヴァとか当時のアニメを見ていたことからしてみればそうだね。否定はしない(´・ω・`)ただ光導デッキをガチで組むことはしなかった。強いけど組む気が失せるくらいの値段だから。

レイ「とか言ってるけど作者それと同レベルのデュークモン使っていた件について」

あれは……うんクリムゾンモードが来たのが悪い(;・∀・)2枚来た時点で組まなきゃって思った。ただ松田が集めるの大変だった……。
さて、今回は引き続きEPISODE28の投稿です。エラクスシステムが遂に解放されます(*´ω`)

ジャンヌ「エラクスって、言ってしまえば00のトランザムを暴走要素を基本に付け足ししたものですよね。あとジェネレーターの酷使で機体性能が下がる点も似ていますし」

まぁまだそれ作中とか設定で言及していないけどね。酷使したのを休めさせる休憩時間がいるって感じ。さて、それでは本編へ!(´Д`)


 ドラグディア国内の空に、光が瞬く。ドラグディア軍と、侵攻するマキナス軍の戦闘が既に始まっていたのだ。空中艦を含め3個中隊から成るマキナス軍に対し、ドラグディア軍はガンドや彼が万が一に備え連れていた部下の1個分隊、リリー率いるナイツ・ヴィーナスのMS1個小隊、更にゼントも加わって防衛戦を展開していた。

 既にゼントがルヴァン基地から応援を呼んでいる。彼らはその増援が来るまでその侵攻を抑え込もうと応戦していた。リリーは自身の機体、ドラグーナ・リリィの持つ蛇腹剣状の武器であるショートバスターソードβ「マキナブレイカー・スネーク」で敵を寄せ付けないようにしつつ、隊員各機に指示を飛ばす。

 

「ナイツ・ヴィーナス各員はルヴァン基地からの増援が来るまで持ちこたえろ!絶対にここを突破させるな!!」

 

『了解!』

 

 リリーの声に合わせ、ナイツ・ヴィーナスの女性隊員達が一斉に返答する。息の合った一斉射がマキナスのMSマキナートを数体撃破する。だが、その反撃とも呼べる射撃が飛来し、ナイツ・ヴィーナスの駆るリリィの原型機「ドラグーナ・ヴィーナス」に次々と被弾していく。

 数を減らしていく仲間達。無理もない。戦力差はこれでも4対1。数は圧倒的に劣る上にあちらには空中艦も3隻いる。果敢に接近戦を挑んでいくドラグーナ・ヴィーナスが、空中艦からの砲撃で半身を失い、爆散していく。回線から仲間の死を叫ぶ声が響く。

 

『フィー!?くっそぉ!ヴィーナスの底力をぉぉぉ!!』

 

「待て、落ち着け!……くそっ!」

 

 制止をしようとしたリリーだったが、彼女をこの戦闘を不利にさせるもう1つの要因が襲う。突如飛来した攻撃をヴァルキュリアシールド改で防ぐ。攻撃は飛散するが、その要因でる戦闘機がドラグーナ・リリィの脇を抜けていく。1機だけではない。5つの機体が編隊を組んで彼女達の上空へと飛び去る。そして彼らはその姿を変貌させる。戦闘機のようなフォルムはたちまち腕と足が生えていき、機首は分解、代わりに姿を現したのは、見たこともないMSだ。

 リリー達の上を取ったそのMSは上空から射撃を行う。攻撃を凌ぐリリー達。しかし、上空と前方からの射撃で、再びナイツ・ヴィーナス達が撃墜されていく。あれこそが、リリー達を苦しめる要因の1つだった。その機体を見て、リリーは後退しつつ苦言を漏らす。

 

「くぅ……マキナスめ……よもやあのような兵器を既に開発していたとは」

 

 可変モビルスーツ。そう、マキナスは変形するモビルスーツを戦場へと投入していた。かつて創世記にも記されていた可変モビルスーツ。その技術を敵国マキナスは復元し、投入してきた。その性能は段違いで、攻撃はかすりもせず、逆に猛攻を受けることとなっていた。

 ガンドやゼントも防御しつつ反撃を窺っていたが、別方向からの攻撃に邪魔をされ、思うように攻撃が出来ていない。今もガンドの操るガンドヴァルのダブルビームライフルや、ゼントの「ドラグーナ・ガルグイユ」の放った背部のキャノンウイングバックパックの砲撃が可変MSの変形した戦闘機形態に回避される。近づいてきた隙なら、本来ガルグイユの腕部ドラゴンヘッドユニットで捕縛することも可能だったが、それでもそれなりに接近しなければ有効ではない。彼らは射撃でその動きを捉えなければ対抗は不可能であった。

 再び変形したマキナートの最新機は翼のパイロン下に装備されたミサイルを放ってくる。リリーは自身の機体の背部に備えられた「ネオ・ブルーム・ブースター」を吹かせて回避する。機動戦を重視した部下たちの機体に備えられた「ブルーム・ブースター」を、更に強化したブースターは相手の機体に負けない機動性でミサイルを回避していく。他の隊員達も、自慢の機動力でミサイルを回避するが、一部が隊員の機体に被弾する。姿勢を崩したところに、他のマキナートが射撃を放つ。

 

『させねぇ!』

 

 が、その攻撃はカバーに回ったゼントの伸ばしたドラゴンヘッドユニットで防がれる。ドラゴン・ハングモードなったそれは竜の頭が首を伸ばすように展開し、隊員の1人を襲うはずだったビームの一射を防いだ。直後にリリーが反撃の一射を大仰なビームライフルから放って機体の1機を落とす。自らの部下を守ってくれたゼントに礼を言う。

 

「すまない、ゼント大佐。私の部下を」

 

『気にするな。それより、このままだと全滅だぞ』

 

 礼は後にしろと言うゼント。彼の言う通り、既にこちらはナイツ・ヴィーナスの人数は4分の1が撃墜された。仲間達が1人、また1人と命を落としていく。その光景はいくら准将へと上り詰めた彼女でも辛いものだった。

 しかし、目の前の現実に逃避するわけにはいかない。ここを抜けられれば、被害は民間人にも及ぶ。それは国を守る軍人として何としても阻止せねばならない。守るべきものの為に軍人は命を張るのだ。だからこそ引けない。

 そんな心持だったからこそ、それは予想外だった。再び襲い来る可変型マキナートの進路を遮るように、後方から射撃が飛んでくる。可変型マキナートたちはすぐに攻撃を回避する。飛んできた射撃の方角からゼントの要請した増援が来たのだと思った。が、そこにいたのは武装を再装備した満身創痍のはずのガンダムであったのだ。

 なっ……!?ガンダムだと!?どうしてここに来た!?お前が来ても、この状況をどうにかすることなど……。

 リリーと同じく、動揺を見せたガンドが回線を開いて叱りつけた。

 

『ハジメ!?なぜここに!その機体状況で、一体何が』

 

『すみません、当主。でも、俺の戦いは、まだ終わっていませんから。それに……切り札はあります』

 

 しかし、ガンダムの装依者であるハジメという青年はそのように返した。切り札、いう単語がリリー達の思考にわずかな光を見せる。その切り札が、もしこの戦闘をひっくり返せるものだとしたら。これ以上の犠牲を出すことが無いのだとしたら。それはあくまで願望である。だが、それでも可能性があると言ってきた青年の言葉を、先程大逆転を起こした者の言葉に、リリーはその真偽を確かめる。

 

「それは、本当なのか?」

 

『はい。けど、ほんの少しだけ、敵の目を引いてくれると助かります。お願いできますか?』

 

 ガンダムを駆る青年は射撃攻撃を回避し、反撃のビームを背部ウイングの砲門から放ちながら嘆願する。まだそれを本当にどうにか出来る手段であるかも分かっていなかったが、話を聞いていたゼントは、ハジメの援護を行いつつリリーへと判断を申し出た。

 

『リリー准将、ここは賭けてみないか?』

 

「ゼント大佐!」

 

『あんたの言いたいことも分かる。だけどよ、このままじゃ被害は大きくなる。それにアイツだってこのまま許可をもらえなきゃ、いつ墜ちるか分からない。……この状況を打破するには、あいつの力が必要だ』

 

 ゼントの説得にリリーは思索する。その言葉には一理ある。このまま退かなければ、敵も本気で彼を撃墜に来るかもしれない。だが、その判断は果たして自分が出してしまっていいのだろうか、と。

 だが、そんな彼女の考えを、彼を雇う身であったガンドが斬り捨てる。

 

『准将、私の事は気にしないでください』

 

「ガンド少佐。しかし……」

 

 先程勝手に戦場までやって来た事を叱ったガンドの言葉に遠慮を見せる。しかし、ガンドは鍔迫り合いを演じつつも彼女に委ねた。

 

『確かに先程はああ言いました。ですが、あれは無暗に出るなということ。もし准将が彼を必要とするのなら、彼の意向を汲み取ってほしい。それが私の願いです。……でぇあ!!』

 

 思い切り敵機を弾き飛ばし、長大なマキナ・ブレイカーで両断するガンド。彼の意向は聞き入れた。ならば、今の現場で最高指揮権を持つ自分が判断すること。リリーは自身に対し嘲笑ってみせ、ハジメへと指示を飛ばした。

 

「ふっ……分かった。貴官の作戦、当てにさせてもらう。だが無理はするなよ。全機、聞いたな?クロワ・ハジメを援護する。敵の目を私達に向けさせろ!」

 

『了解!!』

 

 総指揮官であるリリーの声に、残ったナイツ・ヴィーナス全隊員の声が重なった。そして彼女達は一斉に射撃攻撃を開始したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとうございます、リリーさん。……さぁ、こっちも行くぞ、スタート!」

 

『当然だ。エラクスシステム、ロック解除』

 

 リリー達の協力を取り付けた元はスタートと共に、エラクスシステムの発動を準備する。スタートの作業開始に合わせ、コンソールに様々な情報が表示されていく。元も動いて攻撃を回避しつつその時を待つ。攻撃の苛烈さは比較的少ない。それはこちら側の陣営すべてが攻撃を引き受けてくれている証拠だ。そして遂にその時が来る。

 

『終わったぞ、元!』

 

 スタートの報告の直後、編隊を組んでマキナスの最新型可変MSがこちらを襲撃してくる。ビームライフルの集中砲火をシールドで防ぐ。シールドが攻撃の衝撃で吹き飛ぶ。しかし機体へのダメージはなく、ガンドとゼントがこちらへの救援として敵機を追い払ってくれた。

 生まれた刹那のタイミング。元は迷いなくシステムの起動を宣言する。

 

 

 

 

「俺に力を……ガンダムの本当の力を!エラクス、始動!!」

 

『ELACSSystem、Ignition!!』

 

 

 

 

 システムからの返答に、機体が蒼く光がややいていく。黒色だった機体が嘘のように蒼くなっていき、胸部のプロジェクションクリスタルが映すたった一点のみは赤く輝きを放つ。ジェネレーターの駆動回転数は上昇し、周囲に多量の高純度DNを放出していく。

 多量に噴き出す蒼い粒子に、戦闘空域のMSが戦闘を停止しこちらに注目を向ける。まるでとても美しいものを見たかのように、静止してしまっていた。

 刹那の間戦闘停止空間が生成された戦場。だが、それは一瞬にして崩れ去る。シュバルトゼロガンダムが力を込める動作を取ると、次の瞬間には敵対するマキナスのMSの1機を目の前に捉えていた。

 

『な―――』

 

 右手に掴んだブレードガン・ニューで切り裂く直前、接触回線で聞こえてくる兵士の虚を突かれたような声。だがそれをすべて聞く前にガンダムの実体剣が機体を両断する。

 直後に再び砲火が放たれる。狙いは無論、元のガンダムだ。逃げ場を失わせるほどの集中火力。ところがガンダムはそれら全てを、蒼い残影を残すほどのスピードで振り切っていく。振り切っていく間にも、何体ものマキナスのMSをその銃剣で葬っていく。戦艦からの砲撃も急停止からの宙返りで回避すると、展開したウイングのハイブラスターで周囲の敵MSごと貫通し、砲を潰していく。

 その姿はまさに戦場を駆け抜ける蒼き流星。もしくは蒼炎の火球とでもいうべきだろう。その圧倒的な動きに追従しようと迫ったのは、あのマキナスの可変MSだ。すぐにガンダムへの追跡を開始してくる。元もそのデッドレースに付き合う。

 

「この加速力……!鍛えてなけりゃ、持たない……でも、今ならいける!」

 

 ガンダムの生み出す爆発的な機動力、加速力に元も苦戦していた。しかし、以前よりも鍛えられた体は、その動きに付いて行くことが出来ていた。それでも体への負荷は重く、長時間の使用は辛く思えた。早い決着が必要だと判断する。

 飛行形態の機体に追われるガンダム。しかしエラクスの光が生み出す光の軌跡はその可変機より鋭い軌道で、より速いスピードで振り切らんとしていた。乱射されるビームに対してもガンダムは正確に回避し、またミサイルも今のガンダムの機動の前では役に立つことなく空中で爆発を起こす。

 既に戦場を掻きまわすように繰り広げられていたドッグファイトは、あまりにも苛烈で他の機体はその空域から後退していた。攻めるにしても防ぐにしても、この戦闘が終わらなければ自分達がまきこまれる。既に巻き込まれた機体を見て、そう判断した両軍は後退していた。同時に、彼らも両方の機体が見せる戦闘に魅入られていたのだ。まるで空を舞台にアートを描くような、そんな戦闘に。

 だが、戦闘をしている者達からしてみればそれはお気楽なものではない。逃げる側と追いつこうとする側、双方共に機体と体に掛かるGに苦しんでいた。ガンダムも独自の耐G機能のおかげで何とか気を失うことなくドッグファイトを行っていた。しかしこの辺りが限度だった。エラクスシステムも危険域が近い。元は勝負に出た。

 

「スタート、行くぞ!」

 

『機体を切り返して、すれ違いざまに行け!』

 

 スタートの言葉通り、元は急停止を掛ける。瞬間的にGがかかり、気が遠くなるのを耐え、機体を反転させる。いきなりの反転にただ機体を直進させるしかない戦闘機のMS達。元はブレードガン・ニューを2本構える。元とマキナス、両軍の機体が交差する。

 先頭の2機の翼を連続して切り裂く。翼を切り裂かれた機体は勢いも相まって急激にバランスを崩し、地表へと落下していく。残る3機の内、2機には無防備な変形途中にその胸部へとブレードガンを投擲。DNジェネレーターごと機体を貫き、その場で爆発四散する。

 残るは最後の1機。最後の機体は変形状態でガンダムを追い抜かしてから変形し、こちらに向き直る。スピードを失速させずに安全に変形を行った姿は、熟練さを感じさせる。最後の機体は怒りに震えるようにバインダーとなった機首のパーツからビームサーベルを振り抜く。接近戦を挑む機体に、元も肩部ウエポンラックからビームサーベルを抜き放ち、それに応える。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 声を上げ、敵モビルスーツへと斬りかかる元。お互いシールドを持たない状態での接近戦。どちらが先に相手を切り裂くか。だが、勝敗はあっけなく決まった。

 エラクスの加速力を得たガンダム、その機体で相手が振り抜くよりも早く相手の機体の右腕を切り裂いた。そして追い打ちと言わんばかりに振り向くと更にビームサーベルを背中に向けて振り下ろし、バインダーごと背中を両断する。袈裟切りの要領で両断されたマキナスの可変モビルスーツは、空中でその機体を爆散、消滅した。

 その様子を、ガンダムは蒼い光を放ったまま見下ろす。ドラグディアを苦しめた創世記以来初の可変MSは、創世記より蘇った蒼炎を纏う黒のガンダムによって討ち取られたのであった。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。第2章は次の話と黒の館DNを持って終わります。

レイ「いやー、でも予想はしていたけど結構動くね、エラクス!」

ジャンヌ「元になっているトランザムが高速機動を行いますから確かにそうですけど、本当に描写がトランザムとそっくり……」

いや高速機動の描写って大体同じになると思うんですが……(´・ω・`)まぁでもエラクスはトランザムをベースにしているから、その傾向は強いですけどね。

ジャンヌ「ですよね。けど無事に勝てて良かったですね」

レイ「うんうん!最新の可変機もあっという間にやっつけちゃったし!」

いや、あの……まだ本隊が残っていますが……(´・ω・`)

レイ「あ……」

ジャンヌ「ちょ……エラクスが限界って描写ありませんでしたか!?どうするんです!?」

どうにかなるさ( ˘ω˘ )多分。それでは今回はここまで。気になる次回をお楽しみに!

レイ「ちょ!?流石に不安だよ!?どうするの!?次回も見てね!?」


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EPISODE29 金粉ト蒼炎ノ戦場7

どうも皆様。藤和木 士です。

ネイ「アシスタントのネイ・ランテイルです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィア・ダルクよぉ」

いよいよ今回で第2章完結!EPISODE29の公開です。

ネイ「遂に2章も終わるんですね……一体どのような終わり方になるんでしょうか……」

グリーフィア「そうねぇ。とはいえ前にレイ達も言っていたけれど、まだピンチだってことには変わりないのだけれど」

そこは何とかなるさ(´Д`)まぁ今日の投稿は番外編の投稿も一緒になるからね。ちょうど2章の途中のお話になるから、そちらもご覧ください。では本編へ!


 

 

 数分に渡るドッグファイトを経て、見事可変MSをすべて撃破したガンダム。空中に漂うガンダムは戦場を統べる存在のように空中に君臨していた。が、そのガンダムを操る元は、機体をホバリングさせた状態で超機動による反動に苦しんでいた。

 

「なんとか……片付いた」

 

 息を荒々しく吐く元。同時に機体の危険を知らせるアラートが響く。だがしかし、それは背部から響いた蒸気音に近い音の直後、収まった。機体コンソールとスタートの発言から、伝えられる。

 

『エラクスシステム暴走危険域突入、と同時にリム・クリスタル投入。……よし、システム正常停止確認。しばらくの間、機体各部のエネルギー流入に制限を掛ける。元、大丈夫か?』

 

 スタートから告げられるシステム停止の知らせ。一連の動作はシステムの正常停止を行う動作だったのである。機体は蒼い光を失い、再び黒い姿へと戻る。

 機体各部の装甲破損具合はシステム作動前とほぼ変わらない。しかしモニターには機体の内部への負担が著しく出ていた。元もこれだけの戦果を挙げたので、退いた方が良いと思っていた。しかし、戦闘が終わり、退避していたマキナスのMS達が再び戦闘の光条を放ち向かっていた。

 狙いとなるのはもちろん元だ。あれほどの動きを見せた機体を、見逃すはずがなかった。元は機体性能の下がったガンダムでその射線から退避、後退していく。それを援護する様に再展開するリリーのナイツ・ヴィーナスのMS達。リリーが通信で呼びかけてくる。

 

『よくやってくれた。一度下がれ。後は私達が持ちこたえる!』

 

「わ、分かりました」

 

 リリーの言葉に従い、後方へと機体を向ける。これ以上の戦闘はガンダムに無茶をさせることになる。元も分かっていたからこそ戦闘を彼らに任せた。

 しかし、彼らのその戦闘も、間もなく終わるものとなった。

 

 

『いいえ。リリー准将も退いておくれやす。デカいのお見舞いしたるさかいに!』

 

 

 突如響いた聞きなれる女性の声。元や他のMS装依者達も動揺を見せる。だが機体モニターに映った射線退避勧告を見て、その言葉に全員従う。

 退避した直後、ドラグディアのMS達のいた空中を、地上から大出力のビームと思わしき熱を帯びた光が伸びていく。圧倒的な熱量を持った光の収束体は、空を薙いでいき多くのマキナス軍MSを焼き尽くしていく。回避しようとした敵空中艦もエンジンを貫かれ爆散する。空はたちまち爆発の光で溢れ、マキナス軍は後退、どころか撤退信号を放ち、国境方面へと撤退していく。

 あまりに劇的過ぎる逆転劇に各々固まった。あまりにも凄まじい破壊力が、もしあれに焼かれていたらと思うと素直に喜べなかったのだ。元もその威力に、誰が放ったのかということも忘れ、通信回線に向かって疑問を投げかける。

 

「い、一体、何があのビームを……?」

 

 すると元の言葉を下方に目をやったガンドが近寄りつつ訂正した。

 

『……いや、あれは炎だな』

 

「炎?ビームの炎ってことですか?」

 

『違う。魔術でドラゴンの放った炎を、収束させてビームと同じだけの破壊力にしたんだ。本来ならこんな混戦で使うべき攻撃じゃない。……で、そんな荒唐無稽なことを簡単にやっちまったのが、あれだ』

 

「…………な」

 

 ガンドの指さした方向に思わず目を丸くする。地上付近にいたのは、機械の鎧を身に付けた何か巨大な生物。あまりにも大きく、本当に生き物かと疑ってしまう。

 やがて地上に降りた元は、それがドラゴンであることを知り、更に驚いてしまった。ついでに言うなら、そのドラゴンを操っていた女性の素相にも驚いてしまうのだが。

 ともあれ、決闘とそれに端を発した国外追放未遂とマキナスの国境侵攻は無事終わりを迎えたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦闘は終わった。その事実はネアも、そして彼女の為に尽くしてくれた、全ての人々が認識した。本来なら決闘を終えた時点で祝いの言葉をもう1人の当事者である、自分の従者後輩の青年に言って終わりだっただろう。しかし、彼女が彼に話しかける時点でそのタイミングを失い、マキナス軍との戦闘に入ってしまった。次々と飛び立っていった、ドラグディアの軍人達。その列にその従者後輩までもが加わろうとしたときには、ネアはとても辛く思った。

 元は自分など、父親に厄介払いされた存在。今までも自分の腹違いの姉や遠い親戚の老人、それに自身の仕える主の父親に生かされてここまで来て、迷惑を掛けようとしていた。それくらいなら、いっそ消えてしまいたかった。でも、そうじゃなかった。

 お嬢様の言った言葉。「どうして、貴方が犠牲になれば解決するの?」「貴方を失って悲しむ人がいないはず無いじゃない」。ハジメさんに言った言葉、それは私にも当てはまる言葉だった。家から追い出された時も、私はいなくなればよかった、いなければよかったと思っていた。けれど、グリューネさん、ううん、姉さんがそれを許さなかった。私といたいからって、グランツさんに無理を言って、私をお嬢様の家に置いてもらえるようにした。

 始まりを思い返したネアの脳裏に、ジャンヌの家に置かれ、彼女の従者として働くようになった時の事が続いて思い起こされる。最初の頃はまだ仕事の失敗も多く、指導係のフォーンにもよく叱られ、隠れて泣いていたこともあった。

 

(あの頃は大変だったなぁ。でも、お嬢様が私を救ってくれた)

 

 泣いてばかりいたネアに、ちょうど居合わせたジャンヌが話しかけてきたのだ。その頃はお互いにまだ5歳。ジャンヌもまだ家の呪いなどなかった時の事だ。泣きじゃくっていたネアに、ジャンヌは迷惑気にしつつも、ネアに手を出した。

 

(いいかげんになくのをやめなさいっ!フォーンにはだまっててあげるから!わたしにだけはほんとうのことをいっていいわ。わたしはあなたのあるじさまで、あなたはわたしのはなしあいてなんだから!)

 

 ネアの手を引っ張って、ジャンヌは自身の部屋へと通した。そして彼女の悩みを聞こうとしてくれたのだ。その時は泣きじゃくってあまり話せなかったが、それ以来ネアはジャンヌに一生付いて行こうと決めたのだ。それ以降ジャンヌが性格を変えても、ネアは嫌と言わずに、彼女の為に尽くしてきた。

 後で聞いた話によれば、フォーン様もその話を聞いていたという。しかしそれ以降ネアの仕事の回転率が上がっていき、お咎めなしとなったのだ。その実、ネアは様々な人に支えられ、同時に支えにもなっていた。ネアがいなければ、この作戦は行われなかった。作戦の要因も揃わなかった。

 そう思うと、ネアの心に余裕が到来する。それは今までファーフニル家で過ごしていた時のものとは違う、解放されたような安心感。それをもたらしてくれた姉が、とても愛しい。そして、彼女の身を案じてくれていたのがもう1人いたことに、ネアも驚いた。その人物の素相に対してだ。

 ハジメが去った後の闘技場に現れた1人の女性。彼女はネア達を誘うと、1匹のドラゴンの背に乗って戦場方面へと向かった。あまりに突飛な話だったが、姉のグリューネにも急かされ、ジャンヌやアレク、ヴェールも車に乗りこんで竜を追って国境付近に向かった。

 ガンダムの蒼い光が消えた後、そのドラゴンは戦闘に介入した。たった1発の魔術収束ブレスで薙ぎ払い、敵を払いのける姿はまさに「母は強し」であった。誰の母親か、と思うかもしれないが、それはすぐに明かされる。

 ドラゴンのブレスにより窮地を脱したドラグディアのMS達はドラゴンの付近へと降り立っていく。ナイツ・ヴィーナスのMSを装依する隊員達がその迫力に驚きを見せる。それはこの戦闘の立役者でもあるガンダムも同じであった。ドラゴンの姿に改めて驚きを示していた。

 

「今さっきの攻撃を、本当にこのドラゴンが……」

 

 年相応の青年らしい言葉。そう呟くハジメに車から降りたジャンヌが真っ先に話しかける。

 

「ハジメっ!」

 

「お嬢様。ご無事で」

 

「無事じゃないわよぉ!落とされるんじゃないかって、心配で……うぅっ!」

 

 従者の手を掴んだ途端、泣き出してしまう主。しかしそれだけジャンヌがハジメの事を心配していたのも事実だ。ネアもジャンヌを落ち着かせながら、無事を祝う。

 

「お嬢様、そんなに泣いていたらハジメさんを困らせちゃいますよ?……ハジメさん、無事で何よりです」

 

「はい。お嬢様をお守りいただき、ありがとうございます。ネアさん」

 

 3人がそれぞれの無事を確認すると、ハジメはドラゴンの主について訊いてくる。

 

「それで、このドラゴンは一体誰が……」

 

「あー……それがですね……」

 

 説明に困っていると、ドラゴンの背から降りた女性がこちらに向かって降りてくる。

 

「私どす。今回は皆様方には本当にお世話になりました」

 

 なまった地方言葉で話しかけてくる女性。着物姿を着こなすオレンジ髪の女性。するとグリューネがその女性に駆け寄ってくる。

 

「お母さん!」

 

「お、お母さん!?」

 

「んもー、グリューネったら、上手くいかないかもって本当に心配したんやからぁ」

 

 グリューネにそう呼ばれた女性は、その肩書き通りにグリューネを我が子のように抱きしめる。ハジメがその女性の振る舞いに戸惑う中、アレクが説明をする。

 

「あぁ、彼女はノルン・サランディーネ。グリューネの実母で今回の主犯ヴァルトの前妻に当たる人物だ。彼女もヴァルト側が暴走して非情行動に出た時の為に準備していた人物なのさ」

 

「ちなみに、私が要請しました~。ハジメ君、よくやったわぁ~」

 

 遅れて車の中からやって来たのは、ジャンヌの母クリエ・ファーフニル。彼女もまたグリューネの協力者だったのだ。正確には彼女はノルンの知り合い、ノルンの後輩に当たり、ノルンと共にもう1人の事件の当事者、ヴァルト・ロードの現妻であるシャリィ・ロードの確保に奔走、確保したのちこちらの救援に来たというのが真相だった。

 とはいえ、他にもツッコミどころはある。クリエから子供のように頭を抱きしめられるハジメが、ドラゴンの事について尋ねた。

 

「お、奥様、そんなにされては……というか、あのドラゴンは?」

 

「あぁ、あれはうちの家系が代々育成する赤竜の一体、サラマンダードラゴンの「ヴォイガー」言います。軍にも徴用されとるんよ?ほら、挨拶!」

 

「グゥゥゥーン……」

 

 ノルンの言葉に、ドラゴンはあいさつ代わりに唸る。最初はネアも驚いたが、かなり人懐っこい。それがサランディーネ家の代々の賜物であることは間違いない。ハジメもお辞儀をする。

 そうしてこの戦いに関わった、全ての人物が揃った。実母から離れたグリューネが、ネアとアレクの横に立つと全員を見渡し、お礼の言葉を述べる。

 

「さて……今回はみなさん、本当にありがとうございました!無事にネアも妹として戻ってこれました」

 

「ぐ、グリューネさん……」

 

 妹の自分を屈託なく抱きしめ、笑いかけてくる姉に恥ずかしそうにするネア。だが、ネアもそれが分からないわけではない。幼い頃に別れた妹を取り戻すために、長い時間を掛けて妹を護りながら計画を練ってきた。今それが成就し、何の心配もなく妹と一緒に居られる。これがどれほど嬉しい物か、今まで出来なかった当たり前のことが当たり前に出来るようになる。その喜びを、ネアも受け入れその名を改めて呼んだ。

 

 

 

 

「……うん、ありがとう、姉さん」

 

「ネア……うんっ!」

 

 

 

 

 数年以来となる姉妹の再開は、ここに無事達成されたのであった。その様子を見て、各々が拍手を送る。

 

「これで、無事終わりですね、お嬢様」

 

「えぇ……そうね」

 

「兄弟姉妹が当たり前でいられる。これほど嬉しいことはないさ、2人とも」

 

「その通り。そんな当たり前を護るのが、私達軍人なのさ。……ですよね、バァンおじさん」

 

「フッ、リリー君、今はまだ仕事中ではないかね?その呼び名は近所のおじさんであった時の、プライベートな時間にしてほしかったかな……いや、今はプライベートな時間か」

 

 ハジメやジャンヌにバァンとリリーが語りかける。2人の軍人は、本来の関係性を口にし、顔を見合わせ笑う。その隣ではヴェールとゼントもかつての話を思い出す。

 

「そういえば、ヴェールは昔兄達にすごいコンプレックスを抱いていたな。いなくなればいいって言ってなかったか?」

 

「そんなこと言ってたね。……でも、そうは言っても、本当にそうなってたら、私泣いてたかも」

 

「ほう、どうしてだ?」

 

「決まってるよ。兄妹の代わりは、いないんだから」

 

「納得だ」

 

 いい感じになっていることを誰も指摘しない。いや、指摘するのもおこがましいのだろう。今はネアとグリューネが主役なのだから。気になりはするだろうが。

 一方、親組であるガンドとクリエ、ノルンはこれからの事について話す。

 

「それで、ノルンさん。ネアの事ですが……本当によろしかったので?」

 

「当り前です。うちの子は妹の為にあの毒親の下で生活してきたんですから、あの子の為なら、娘2人位苦でもありゃしません。しばらくは混乱もあるから、ネアの方はまたしばらくお願いするかもやけど」

 

「あらあら逞しいこと。流石私が憧れた先輩ですね」

 

「後輩の家族に面倒見てもらっていたんやから、当然の事よ」

 

 話によれば、グリューネとネアはノルンがまとめて面倒を見てくれるそうだ。それでも事件の騒動を鎮静化させるため、色々と動かなければいけないらしく、しばらくネアもまたファーフニル家でお世話になる予定だ。

 しかし、とネアは思っていた。今までと決定的に違うことがあった。それは、確かな肉親がいること。これは何物にも代えがたい安心感だ。改めて抱き付く姉に、苦笑いしつつも嬉しさを再び口にする。

 

 

「お姉ちゃん、ありがとう!」

 

 

 

 

「さて……そういえば、アレク・ケルツァートも何か協力していたみたいですけど、一体どうして?」

 

 姉妹の再会を喜ぶ傍ら、ハジメがそのようなことを口にする。結局のところ、遅れてやって来たジャンヌも、アレクがどういった理由でグリューネと通じていたのか不明だった。いくら欺くためとはいえ、何がどうやってレドリックの部隊のエースと、そこまで出来る深いつながりがあったというのだろうか。

 すると、その答えをグリューネがネアの方から手を放すと彼女を引き連れながらアレクへと抱き付き、答える。

 

「あぁ、アレ君は私の彼氏よ」

 

「あぁ、彼氏……って彼氏?」

 

「ちょっ……!?彼氏!?グリューネさんと、アレクさんが!?」

 

 ハジメとジャンヌは目を丸くし、その事実に驚愕する。彼らだけではなく、グリューネに腕を掴まれた状態のネアも、他数名が同じ反応をした。当の本人であるアレクも、後頭部を掻きつつ、恥ずかしさを表現しながら事実であることを告げる。

 

「えぇ。1年ほど前から交際させてもらっています。まさか最初に近づいた理由が、反乱を見越しての戦力確保とは思っていませんでしたが。今じゃお互い大事に思っているけども」

 

「えぇ!だからハジメさんがもしアレ君を殺してたら、ハジメさんだけ国外追放だったわね」

 

「…………助かった」

 

 グリューネからの脅しとも取れる言葉に、ハジメは怖気づく。とはいえこれで憂いなしだと思われた。しかし、ジャンヌはそこで思い出す。

 

「そうだ、ハジメ!リム・クリスタルが生まれた時のこと、忘れていないわよね!?」

 

「……あっ、ていうか、それまだ言いますか!?」

 

「当然よ!わたくしの純真な思い、返しなさいっ!!」

 

 忘れるはずのない、あの行為。あの時のジャンヌは本当に心配し、懇願し、そして混乱した。ハジメを止めようとしていた場面で、ハジメが行った安易な行動は例え理由を聞いてもジャンヌにとってまだ終わっていない。無理だと言われても返してもらう必要があった。もっとも返すものなどないのだが。

 掴みかかるジャンヌと力を抑えつつも反抗するハジメ。そんな2人の痴話喧嘩に、ジャンヌの両親であるガンドとクリエは妄想を織り交ぜつつ動向を窺っていた。

 

「じゅ、純真な思い!?は、ハジメが何かやったのか!?」

 

「うーん、みたいねぇ。たぶらかしてたらあれだけど。でも、今回はそこまでは行ってなさそう?ともかく話は聞かなくちゃね。ネアちゃんとグリューネちゃんも、お話聞かせてくれるかしらぁ?」

 

「あ、はい、奥様」

 

「もちろん聞かせますよ~。彼がどうしてこうなっているのか♪」

 

 躊躇いつつもその声に応えるネアと、喜々として協力を申し出るグリューネ。ジャンヌはそれに構わずハジメを問い詰め続けた。

 

「ハジメェェェェッ!!」

 

 ……この後、お縄に付いたハジメの前でジャンヌは件の口づけについて、ネアとグリューネの補足を受けつつも両親にも話した。が、両親もハジメから事情を聞き、許せないことではあるがハジメにも事情があったとして、今回は不問となった。ただし、ハジメ本人はガンドからその口づけに秘められたもう1つの意味を聞き、帰ってからベッドの枕に顔をうずめたというのは、また別の話であった。

 ともあれ今回の姉妹の運命は、ジャンヌの誘拐事件に引き続きまたしても、1人の青年と彼の操る黒きガンダムが解決したのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、こちらはマキナス領地にて。ドラグディアへと攻め込んだマキナスの軍勢は、大きく数を減らされ、国境付近の前線基地「エクセラ基地」へと後退していた。

 基地の滑走路には、既に空中艦1隻と多くのMSが駐留していた。MSの装依を解除したMS装依者の中には、反射ダメージで負傷したものも多く、衛生兵が行き来していた。その中にはガンダムに翼を両断され、地表へと落下した試作可変MS「マキナート・エアレイダー」のパイロット、「フリップ・プレイン」も怪我の手当てを受けていた。

 幸い、彼の機体は地表激突直前に何とか不時着に成功していた。しかし、同じく翼をやられた僚機はそのままなすすべなく地表に激突し、その命を散らせた。他の仲間達も、ガンダムにトドメを刺され、残った自身は撤退する部隊に救助され何とか基地へと戻ってきていた。

 だが助かったにもかかわらず、フリップの顔は沈んでいた。理由はもちろん、ガンダムの事だ。

 

「マキマ隊長、アルド……みんな……いい奴だったっていうのに。ガンダムの野郎、絶対に許さねぇ!」

 

 既に彼はガンダムへの怒りで一杯だった。今すぐにでもMSを装依して、仇を討ちに行きたい。それはこの基地に収容された部隊員達に共通できるものだった。

 が、そんな彼らを、予想外の事態が襲ってくることとなる。

 

「ん?何だお前?」

 

 1人の隊員が侵入者と思われる人物に気づいた。その人物は学生服を着た少女で、見るからにここにいるには不自然な存在だった。続いて気づいたのは、彼女から発する臭い。アンドロイドとはいえ、臭いをちゃんと感じることのできる彼らが気づいたのは、トカゲっぽさがわずかに感じられる臭いだ。それがドラグディアの住民の特徴だと気づくと、彼らは更に警戒心を増す。

 なぜドラグディアの女子学生が、マキナスの基地にいるのか。スパイを疑った隊員達が集まり、銃を向けていく。すると、少女がその光景に感想を口にする。

 

 

「おやおや、随分と物騒だこと。戦闘があったとはいえ、まだやる気は落ちてないようね。まぁ、その方がやりがいはあるけれど」

 

 

 余裕そうにこちらの精神を逆撫でする少女。隊員の1人が「捕虜にしてやろうぜ!」と叫ぶ。その声に同調していく周囲。少女を捕虜にする。その言葉だけで彼らが何を考えているかが嫌ほどわかるだろう。血気盛んな隊員達だったが続く少女の行動は、彼らを同様に盛り上げてはくれなかった。

 

「ふふっ、捕虜っていうのはいい考えね。これを使う理由が1つ増えたもの」

 

 そう言って見せるのは金属の箱のような物。しかし軍人である彼らには、それが自分達も戦うために使うMS装依装置、始動機ことスターターであることを理解する。隊員達の間に緊張が走る。

 少女は見せつけるようにしてから、そのスターターを腰に当てる。少女の細いウエストに、瞬時に巻き付いていく始動機。

 

『インフィニット・スターター!!』

 

 マキナスのMS始動機ともドラグディアの物とも、そしてシュバルトゼロガンダムのとも違う装着音声を奏でる。更に少女はスターターにガンダムの物と酷似した歯車と星を合わせたロックリリーサーと、セレクトスーツカードのようなカードをスターターに装填していく。カードの装填と共にスターターから音声が鳴る。

 

『INFINITE』

 

 無限を意味する単語が鳴る。注目を集めるように彼女は手を上に挙げる。隊員達が警戒心を上げる中、少女は遂にそれを行った。

 

 

 

 

「装依」

 

 

 

 

 賛美する様に手を広げてから、両手で装依ボタンを押す。直後前後をアクセス・ゲートが挟み込む。挟み込んだゲートは空中へ一回転してから停止すると、そのまま下へと下がり少女の半透明となった体をすり抜ける。

 

「なっ……!?」

 

 現した姿に、隊員達は驚愕した。なぜならその機体は、先程まで自分達が戦場で見ていたあのガンダムに、色こそ違えど類似していたのだ。機体色を真っ白に変え、背部のバックパックも漆黒のガンダムが背負った砲身を挟む細かなスラスターが配置されたウイングとは違う、推力を大きく変更する目的を持った猛禽類のような意匠を持った羽の揃った翼となっていた。しかし、大きく上へと伸びた形状の頭部の額には、確かにあのガンダムと同じ、V字アンテナと、その下に光る2つのツインアイがあった。

 その姿に、先程まで喧嘩腰だった兵士達は竦んでいく。スターターから、装依完了を告げる音声が響いた。

 

 

 

 

『エンディング インフィニティ スリープ―――――ヴァイスインフィニットガンダム』

 

 

 

 

「さぁ、始めましょうか。本当の、戦争を」

 

 

 

 

 ガンダムの眼が光る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 数時間後、エクセラ基地は火に包まれていた。燃え上がる空中艦。破壊され滑走路にて破片を散らすMSの残骸。床に油血をぶちまける、機人族の亡骸。エクセラ基地はたった1機の白いガンダムによって陥落した。

 空中で静止する血しぶきを所々に浴びた純白のガンダム。その機体は眼下のエクセラ基地から目を離すと、そのままドラグディアの方へと飛んでいった。その様子を、何とか生き残ったフリップが睨み付ける。呪詛のようにその名を叫んで。

 

「ガンダム……ガンダム、ガンダム……ッ!!」

 

 

 

 

 次なる戦場が幕を開ける予兆だった。遂にガンダムは、その機体と対峙する。黒と白、相反する色を持つ、自身と同じガンダムと。少女達の命を懸けた死闘が、始まろうとしていた。

 

 

第2章 END

 

NEXT EPISODE AND NEXT CHAPTER

 




今回もお読みいただきありがとうございます。ツイッターの方でリディ少尉っぽいって言ってたのはこれが原因でした(゚∀゚)

ネイ「ネアさんとグリューネさんが姉妹に戻れて私としても良かったです。とはいえ、まさか新しい敵はガンダムですか……」

グリーフィア「白いガンダム、リディ少尉の出ているあの作品とは逆ね。あっちは味方が白で敵対していたのが黒の同型ガンダムだけれど、こっちは黒が味方で白が敵って」

黒いガンダムは前作SSRからの引き継ぎ要素だからね。黒いガンダムが主人公でもいいじゃない( ゚Д゚)

ネイ「そ、そうですか……。とりあえず番外編も含めて、後は黒の館DNの用語設定集だけですね、2章は」

グリーフィア「とうとう作者君の頭の中だけじゃ用語のまとめが出来なくなったのよねぇ」

流石にオリジナル要素を高めてくと記憶に留まりづらくなってくる(T_T)では同時公開の番外編と次回の黒の館DNを、

グリーフィア「お楽しみに~」


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黒の館DN 異世界戦争編 第4回 前編

どうも、皆様。次のバトスピスターターデッキが待ち遠しい、藤和木 士です。

今回は黒の館DNの公開です。前編、後編でいつも通り分けていきます。
ただ今回は後編公開後に前々から申していた通り、ガンダムDNの用語集を公開します。合わせてそちらもご覧いただけると、今後のDNや今までの流れも少し分かるかもしれません。

それでは前半からどうぞ!


 

士「今回も始めさせていただきますよ、黒の館DN!第2章までが終了しました、作者の藤和木 士です」

 

ジャンヌ「無事ネアさんが暮らせて何より、という結末になりましたが……まだまだ不穏な動きがあるようですね……アシスタントのジャンヌ・ドラニエスです」

 

レイ「本当にね。藤和木前の作品よりもこういうの入れるの好きになってない?アシスタントのレイ・オーバだよっ!」

 

士「窮地が終わった直後の、次の危機が迫るって王道じゃない?(´・ω・`)私としてはそれがいいなぁ……」

 

ジャンヌ「あぁ、そうですか……さてさて、次の藤和木の被害に遭うのは果たして誰なんでしょうか」

 

士「ちょ……私の被害って(;´Д`)」

 

レイ「まぁ、ねぇ。それで、今回も紹介していくんでしょ?」

 

士「あっ、ハイ。今回の登場人物はリリーさん、ノルンさん、それに地の文しか出てないシャリィ・ロードと、最後の方に登場したマキナスのリディ少尉ことフリップ・プレインだね」

 

ジャンヌ「なんですか、そのマキナスのリディ少尉って……」

 

士「だってしょうがないでしょ、ガンダムって呪詛の如く連呼したら本当にそう思えてしまったんだから(´・ω・`)」

 

レイ「なんていうか……ネタキャラ?とりあえず、前回の黒の館みたく、変な設定はそのままにしないでよー?おじいちゃんで47歳とか!」

 

士「やめて!(;゚Д゚)私も深く反省してるから!あんなことになってるとか思わなかったんだよぉぉ!!」

 

 

 

リリー・バレナー

性別 女

竜人族

身長 165cm

髪色 竜胆色(薄いアメジスト)

出身地 ドラグディア フリュウ州 ライネス市

年齢 28歳

誕生日 2月27日

血液型 A

好きなもの お茶会、マカロン、剣技

嫌いなもの 卑劣な行為、両生類(特にカエル)、マッシュルーム

愛称 竜絶の乙女、紫百合

 

 ドラグディア軍の総司令を護る、三竜将の1人。女性だけで構成された部隊「ナイツ・ヴィーナス」を率いる、薄い紫の髪を下の方で2つに束ねている女性。階級は准将。独身である。

 三竜将の中でも紅一点であり、清廉さを何よりも望む女性。しかし物事すべてに無暗やたらに正常さを求めるわけではなく、話に合わせて口調を崩したり、効率よく作戦を進めるために情報戦を用いたりと、所謂任務に忠実な人物として、である。

 彼女自身は古い軍人の家系だったが、後継ぎであった兄達が相次いで戦死。家の名を守るために日々苦しい特訓に耐え、ドラグディア軍に入隊する。入隊後上官からのセクハラを受け挫折しかけるも、同郷出身で知り合いであったバァンの激励を受け再起。以後前線で数多くの戦果を挙げる。敵を殲滅するその姿は、味方をも唖然とさせる光景から敵味方共々「竜絶の乙女」として彼女の三竜将任命の一助ともなった。

 自身が率いるナイツ・ヴィーナスの隊員は、そのほとんどがドラグディア軍内部で不当な性差別を受けて来たものや、セクハラを受けてきた者達で構成されており、隊員達は皆リリーを自分達のトップとして崇拝している。その団結度は凄まじく、練度の高いドラグディア軍男性部隊を簡単に制圧してしまうほど。ただ、彼女自身は自身の崇拝などよりも、自分と対等に立ち回れる人物になってほしいと願っている。

 元とアレクの決闘ではその見届け人として会場の警備を仕切る。レドリック達と通じ、待機所にいたグランツ側の者達を拘束しに現れるが、実際はグランツ側の2重スパイで、レドリックの別動隊たちをナイツ・ヴィーナス達で制圧。ジャンヌと共に元の戦闘を見届ける。決闘終了後元に称賛を送り、裏での出来事を明かし、レドリック達を拘束する。直後に起こったマキナス軍の国境侵攻にも隊を挙げて食い止める。

 人物モデルは「星刻の竜騎士」のレベッカ・ランドールから。モデル元より年齢が上がっており、年齢相応に更に落ち着きを見せている。

 

 

ノルン・サランディーネ

性別 女

竜人族

身長 165cm

髪色 オレンジ

出身地 ドラグディア フリュウ州 グラム市

年齢 44

誕生日 8月3日

血液型 A

好きなもの 娘達、ドラゴン達の世話、モンブラン

嫌いなもの 元夫、作詞、ナス

愛称 サラン、轟熱の詩巫女、ドラゴンブリーダー・ノルン

 

 グリューネの実母で、ドラゴン育成業を行っている女性。やや京都弁に近い話し方をする。

 かつては詩巫女であり、クリエの先輩でもあった。ヴァルトの愛人であったが、先に子を授かってしまい、彼に娘であるグリューネを引き取られてしまう。本人としては当初はそれでも良かったが、グランツ、そしてクリエからヴァルトとシャリィの間に生まれたネアの件(グリューネの懇願も含めて)を聞くと、自身の娘の仕返しに協力することとなった。

 決闘時にはクリエとグランツの配下の兵士達と共に、後輩であり泥棒猫と言えるシャリィを拘束。更に自身が育てて軍へと納めたサラマンダードラゴンの1体を連れグラン・ドラン決闘場へ向かい、事を終えていたグリューネらと共に国境付近の戦場へと介入した。

 ちなみに彼女の家は代々竜を育てている家であり、詩巫女としての技能もドラゴンと心を通わせる技術として用いている。これは詩巫女養成科の卒業後の就職先として珍しいことではない。

 人物の外見モデルはFateシリーズのアーチャー・インフェルノ。髪は左側にサイドテールで括っている。ちなみに真名は一応伏せておくスタイル。

 

 

シャリィ・ロード

 ヴァルト・ロードの現妻で、ネアの本来の母親。元詩巫女であった。41歳。

 元々はヴァルトの愛人であった彼女だったが、彼にとって扱いが良かったため、妻となる。基本的に自分勝手な猫かぶりで、グリューネとも仲は良くなかった。学生時代ではクリエの後輩に当たるものの、当時の彼女を「気分が落ちたり、上がったりの面倒くさい人」として評していた(このころはクリエがガンドとの関わりで大分持ち直していた時期の為、詩巫女としての力を発揮していく彼女が妬んでいたと思われる)。

 決闘時には自宅で呑気に昼食後のティータイムを楽しんでいたものの、乗り込んできたノルンを筆頭に突入したグランツの配下の兵士により拘束され、ヴァルトと共に刑務所送りとされた。

 

 

フリップ・プレイン

 

・マキナスの新型可変MS「マキナート・エアレイダー」を装依する人物。階級は曹長。23歳。決闘直後の国境侵攻にてエアレイダーの性能を活かしてドラグディア国境防衛を行う国境駐留部隊を壊滅させ、更に防衛線を展開するリリー達を苦しめるが、エラクスシステムを起動させた元のガンダムに翼を落とされ墜落、戦線を離脱した。戦闘終了後は艦へと戻り、何とか生き残るもガンダムへの復讐心を滾らせていた。直後に起こった謎の白いガンダムによる基地襲撃を生き残るも、更にガンダムへの憎しみの炎を燃え上がらせていた。

 人物外見モデルは機動戦士ガンダムUCのリディ・マーセナス少尉。髪色を銀色にしている。当初はモブ程度のキャラで、外見モデルなどはなかったが、2章最後のセリフが決め手となり、リディ少尉モチーフとなった。ちなみに飛行機好きという点も一致していたりする。

 

 

士「はい、以上が登場人物紹介になります」

 

レイ「まんま最後のフリップさんがリディ少尉モチーフなんだね……っていうか、え、これだけ!?」

 

ジャンヌ「結構少ないですよね……そんなに人は出ていなかったんでしたっけ?」

 

士「第1章から比べると本当に結構少ないよ、出てくる人(´・ω・`)とはいえ、今回はここでは終わらない。続いて機体の方を紹介していくよ」

 

ジャンヌ「あ、機体紹介するんですね」

 

士「ぶっちゃけ言うと、機体解説が一番多くなることに気づいたから、登場人物少ないのは好都合だったり(゚∀゚)」

 

ジャンヌ「はぁ?(怒)」

 

レイ「あわわ、ジャンヌちゃんがマジおこ状態だよっ。え、そんなに機体出たっけ?」

 

士「ガンダムは[リペア]と[ハイブリット]紹介するし、ドラグーナ系列機はアレキサンドルとリリーのドラグーナ・リリィとその量産タイプの「ドラグーナ・ヴィーナス」、そこにマキナスの新型機「マキナート・エアレイダー」紹介するからね。前よりは数は少ないけど、ガンダムで文量結構取られるし(´・ω・`)」

 

ジャンヌ「はぁ……なるほど、分かりました。けど、番外編の機体はどうするんですか?」

 

士「え、何でSSRの方の機体をここで紹介するんだい……他にも色々とめんどいから今回はパス(´・ω・`)」

 

レイ「うわぁ、本音が……とりあえず、今回はそれくらいかな?どれから行くの?」

 

士「例によってガンダムは後回し。先にドラグーナ・ヴィーナスからですどうぞ」

 

 

 

 

ドラグーナ・ヴィーナス

形式番号 MS-DD08SP-NVMC

 

・ドラグーナ・コマンドのカスタム機で、リリー・バレナーが率いる、女性だけで構成された「ナイツ・ヴィーナス」隊員が装依する。

 通常のコマンドよりも装甲の重量を落とした設計をしており、身軽な機体による回避戦術を主眼とする。また女性的なシルエットを重視しており、それがナイツ・ヴィーナス機の隊としての特徴を強く示している。また頭部も竜型の頭部がややデフォルメされたように小型化、口部の短縮をしている。

 武装に関してもそれらの点が強く出ており、ビームサーベルの発振なども細かく調整され、細身のレイピアに近い出力で生成される、重武装はなるべく装備しないとなっている。そのため隊全体の火力が乏しい点が挙げられる。しかしそれらを余りある機動力で補うことでピーキーさこそあれど、原型機と同等以上に戦うことが出来る。

 機体全体のイメージは機動武闘伝Gガンダムのノーベルガンダムや、機動戦士ガンダム00のGNアーチャーなどの女性系MSのパーツを参考にしたイメージ。特に腰部はノーベルの物にバーニアノズルを増設して機体性能と再現性を強くしている。機体カラーリングは黒に銀をアクセントにしている。

 

【機能】

・カメラ切り替え機構

 ドラグーナ系列機と同じ機能。カメラを切り替える際、他の機体が口を開いて変更していたのに対し、こちらは頭頂部のカチューシャ状のユニットを目元に持ってくることで遠距離カメラに切り替える。

 

・ハードポイントシステム

 ドラグーナ系列機と同じ機能。ハードポイント位置は背部バックパックにバーニアユニットを取り外すとそれぞれ出現するので計4基、肩部は側面に1基ずつ、そして原型機にない肘部に1基ずつとサイドアーマーにも1基ずつと装備数は劣るものの、使い勝手は良くなっているとのこと。

 

 

【武装】

・ダブルビームライフル

ドラグーナ・ガンドヴァルが持つものを、カートリッジ弾倉供給式に変更したもの。右腕部側面に固定装備される。カートリッジはケースタイプで後部から装填する。弾数は1ケースにつき20発、予備弾倉はサイドアーマー下部に装備されている。

 

・ビームサーベル

 機体肩部後面に装備される格闘兵装。通常の物と変わりない兵装だがビームの発振量を調整しており、サーベルよりも細いレイピアタイプの刃を形成する。

 装備方法は機動戦士ガンダム00のガンダムエクシアの肩部ビームサーベルの収納法をベースとしている。

 

・ビームニードル

 機体膝部に装備された、近接格闘用兵装。敵機に蹴りを入れると同時にビームサーベルを発振、装甲を貫く方式となっている。

 

・スモールシールド

 機体の肘部ハードポイントに装備される選択式の小型シールド。全体の形状としては二等辺三角形の物となっており、大きくなっている方同士を合体させることでやや大きめのシールドになる。

 軽量重視の機体であるため、このように分割式となっており、それでも重量を減らしたい時は隊員によっては装備されない場合もある。

 

・ヴァルキュリアシールド

 機体左肘部ハードポイントに装備される、スモールシールドよりも大きめのシールド。防御性能に秀でており、重量も機動性を最低限損なわない程度の重量で製造されている。

 またシールド先端には簡易パイルバンカーを備えており、後述するスナイパーライフルと合わせてスナイパーライフルの支柱、もしくは近接戦闘時の隠し玉として使用される。

 外観モデルはセイバーガンダムのシールド。先端部をパイルバンカーに変更している。

 

・スナイパーライフル

 選択式で装備される長距離射程のビーム兵装。手と肘部ハードポイントによる2点固定での保持を行っており、片手でもある程度の命中精度を持ち、更に両手持ちでの精密射撃能力が向上する。

 前述したヴァルキュリアシールドは本装備の固定脚としても運用を考えられており、本装備を装備したドラグーナ・ヴィーナスは後方支援型として数えられる。

 

・レーザーポッド内蔵スラスターユニット

 ドラグーナの選択装備であるシュートスタイルにも装備される、近接防御用レーザー照射装置付きスラスターユニット。本機では後方支援型で、サイドアーマーのハードポイントに装備される。球体状のレーザー照射部とブロック状スラスターを後部に備えるユニットである。

 

・ヴァイブレーション・レイピア

 サイドアーマーに鞘に納められる形で装備される、実体剣兵装。剣自体を振動させることが出来、斬撃力を高めている。振動時には剣の色が緑色に変わる。

 武装モデルとしてはコードギアスのMVS。形状は似ていないが、振動刃、そして色が変わる点は継承している。

 

・フウマ・ツインセイバー

 両側に片刃の剣とバーニアをそれぞれ備えた武装。右肩部ハードポイントに選択式で装備される。刀身自体は中部分が厚く、押し切るイメージで使用する。だが真価は持ち手をずらして二枚刃の双剣から四枚刃の手裏剣形態への変形で、刃の反対側に付いた小型バーニアの出力を剣の質量と合わせることで強力な一撃と化す。

 外見イメージは革命機ヴァルヴレイヴのヴァルヴレイヴ一号機火人が使用したメテオールプレート。持ち手部分を軸に手裏剣になるように展開できるようになっているイメージ。

 

・ブルーム・ブースターバックパック

 ドラグーナ・ヴィーナス固有のバックパック。中央の小型スラスター付きジョイントと、そのジョイントから伸びる4本のジョイントアーム、そしてアームに接続される蕾型スラスターユニットからなっている。

 本兵装の特徴がこのジョイントアームとそれに接続された蕾型スラスターユニット「ブルーム・ブースター」である。ブルーム・ブースターはそれ自体が他機のハードポイントに接続可能なユニットであり、それを接続するジョイントアームは推進器を兼ねた可動式アーム持ちハードポイントなのである。この特性を生かすことでドラグーナ・ヴィーナスは多数の武装を用い、戦術を複雑化させることが可能なのである。また通常の状態でもドラグーナ・ヴィーナスが誇る機動性を強く補強していることもあり、本バックパックはドラグーナ・ヴィーナスの生命線と言っても過言ではない性能を与えているのである。

 外見モデルは機動戦士クロスボーンガンダムのクロスボーンガンダム系列と、機動戦士ガンダムUCのローゼン・ズール、そして機動戦士ガンダム00の外伝00Pのガンダムアルテミーを組み合わせている。ジョイント部とジョイントアームがクロスボーンのフレキシブルスラスター、ブルーム・ブースターの名称と形状がローゼン・ズールのローゼスビット、ブルーム・ブースターの個数やアームへの装着法がアルテミーから着想を得ている。

 

 

ドラグーナ・リリィ

形式番号 MS-DD08SP-NVLBC

 

 

・ドラグーナ・ヴィーナスを運用するナイツ・ヴィーナスのリーダー、三竜将の1人でもある「リリー・バレナー」に合わせ、カスタマイズされたドラグーナ・ヴィーナスのハイエンドカスタム機である。

大元はヴィーナスと同じだが、防御性能と機動性を両立し、更に新たな兵装を追加。結果高速万能機としての評価を得ることとなった。特に特徴的なのが背部ブルーム・ブースターバックパックを4基のアームから6基に増設し、更に近接兵装にビームコーティングを施した蛇腹剣タイプのマキナブレイカー「マキナブレイカー・スネーク」を装備したことである。機体バランスは悪化したが、逆にそれらを活かした変則的な機動性と攻撃能力でヴィーナスから更に一癖違った戦闘を行えるようになった。

 だが逆に高性能化と引き換えにDN消費量が激しくなっており、機体自体が薄い装甲による(なお装甲自体はヴィーナスのプラスティリィカーボンよりやや頑丈なプランチカーボン)打たれ弱さもあってエースにしか上手く使いこなせない機体となっている。

機体カラーリングは白色に金をアクセントに入れている。名称のリリィはユリの花の事であるが、専ら作者は某英雄が激突するガチャのゲームのキャラ違いの名称から取っている。ちなみにリリィの方が名称的に幼くなっているのではという点については作者曰く、純潔さを意識したかった、との談。

 

【機能】

・カメラ切り替え機構

 ドラグーナ系列機共通の機構。ヴィーナスと同じく、カチューシャタイプのゴーグルを目元に合わせることで遠距離モードへと切り替える。

 

・ハードポイントシステム

 ドラグーナ系列機共通の換装システム。ヴィーナスと同位置の他、ジョイントアーム増加分がある。

 

・カチューシャ付きホーンアンテナ

 カチューシャパーツに増設された、指揮官用通信機能増幅アンテナを装備。これにより、ナイツ・ヴィーナス所属機に的確な指揮を与えることが出来る。

 

 

【武装】

・ツインビームサーベル付きビームライフル

 機体右サイドアーマーハードポイントにマウントされる、手持ち式大型ビームライフル。

通常時は2門のビームライフルとして機能するが、上部砲口は実はビームサーベルの柄であり、外すことで双刀のビームサーベルとして機能する。また上部サーベルユニットは銃にマウントしている状態でもビーム刃を生成でき、不測の事態にも備えている。

 武装モデルは機動戦士ガンダムSEED C.E73 ASTRAYに登場したガンダムアストレイレッドフレームマーズジャケットのライフル。

 

・バスターソードβ「マキナブレイカー・スネーク」

 質量兵装「マキナブレイカー」の派生型。左サイドアーマーハードポイントにジョイントで装備される。

 特徴的なのが刀身そのものである。刀身自体が分割可能であり、それを内部のアンカーで接続。伸縮自在な鞭のように使用可能な蛇腹剣としての機能を獲得した。分割した刀身も1つ1つにブースターを備えており、蛇腹剣特有の欠点である振るために必要な力を低減し、使い勝手を向上させている。ただそれでも蛇腹剣の機動計算など、パイロット側の負担が完全に低減されたわけではなく、使い手を選ぶ武装となっている。

 武装モデルは機動戦士クロスボーンガンダムDUSTのバロックのガンダリウム合金製大剣。形状自体は刀身を細くしつつも、長さは通常のマキナブレイカーと同程度の大きさとなっている。

 

・ヴァルキュリアシールド改

 ヴィーナスが持つものを、リリィ専用にカスタマイズしたもの。左腕部で保持する他、不使用時は肘部ハードポイントに接続されたジョイントで保持する。

パイルバンカーの代わりに砲身を打突武装化したビームキャノンに変更。シールドの縁も赤熱化可能なヒートブレードに強化され、もはや別物として扱われるべき兵装となっている。

 なお、シールドの形状モデル自体がセイバーガンダムの物からフリーダムガンダム、およびジャスティスガンダムの物に変更されている。ガンポートなどはない。

 

・ビームニードル

機体膝部アーマーに内蔵された発振器から生成される、ビーム杭を蹴りと同時に打ち込む兵装。原型機とほぼ同じ仕様である。

 

・ビームサーベル

 ドラグーナ系列機に装備される、標準的なビームサーベル。本機の物は肩部装甲側面に差し込む形で装備される。

 

・ネオ・ブルーム・ブースターバックパック

 ブルーム・ブースターバックパックからアームを2本追加し、更にブルーム・ブースターも改良を施したアップデート版。

 追加のアームは元々あったクロス型から、アスタリスク型を横広に向けた形状になるように調整されている。以前の同型アームでは追加されたブルーム・ブースターの改良型のDN消費量が激しい為、プロペラントタンクとしての機能を強化した大型タイプに換装されている。

 更にアームに標準搭載されるブルーム・ブースター自体も、ブースターの前面にビームガンを増設した「ネオ・ブルーム・ブースター」へと改良されている。これはブルーム・ブースター自体に武器を付けて、機動性と攻撃性能を可能な限り維持したいという現場の意見を元に、開発部がドラグーナ・ヴォロスのガンブースターのノウハウを軸に改良を施した結果である(ちなみに三竜将の機体はいずれも同じMS開発部が改修している)。ちなみにヴィーナスと同じく、この部分を別の武装接続ハードポイントとして使用することももちろん可能。

 その結果DN消費量は増えたため、前述したプロペラントタンク機能強化と合わせて最大稼働時間はヴィーナスより1割しか減っていない(逆に言えば、航続時間が逆に減少して、燃費は悪くなっているとも言える)。

 

 

 

 

マキナート・エアレイダー

形式番号 形式番号 MS-MM08VX

 

 

・マキナス軍が本格的なドラグディア侵攻を目的に開発した、試作MS。背部のV字状に折りたたまれたバインダーを背負っている。

 その最大の特徴は、マキナート系列はおろか、創世記時代以降のMSでは初となる可変機構を盛り込んだ点にある。既にモビルウエポン012が分離変形して装備にはなったものの、MS単体運用での変形は初めてで、変形により高速巡行MA形態へと移行する。

 変形時のスピードは随一で、計算上ではガンダムよりも速いとされる。更に背部のV字バインダーも変形時には折り畳まれたパーツが機首となり、直線加速能力に秀でた形状となる。更に大気圏離脱も可能となっている(ただし現時点では大気圏再突入時に背部バインダーをパージしなければならない)。なお、シールドは装備していない。

 武装に関してはなるべく既存の物を組み合わせているが、爆撃機としても運用が可能とされている。本編に登場したものは主にドッグファイトなどを視野に入れた武装構成となっている。機体カラーは白と薄緑、それに黄色のトリコロール。

 変形機構の参考は機動戦士ガンダムUCのリゼルがベース。ただしウイングパーツの変形はダンボール戦機のLBXオーディンのウイングパーツを参考としている。

 

【機能】

・カメラ切り替え機構

 マキナート系列が共通で持つ機能。カメラの内訳は頭部が通常機と同じ、ゴーグルが遠距離用、モノアイ2つが接近戦用。MA形態ではキャノピーパーツのカメラに切り替わる。

 

・電子的ステルス装甲

 機体自体の装甲が敵から発せられたレーダー波を吸収し、電子的なステルス状態となる。電撃的侵攻を目的としているため、実験的に導入された。

 

・変形機構

 機体を高速巡行MA形態へと変形させる。変形時には背部バインダーが飛行翼を形成、X字翼の安定飛行形態から、V字翼の前進翼形態かが選択できる。飛行形態時には僚機のサブフライトシステムとしても運用できる。

 

 

【武装】

・試作ビームライフル

 銃身の長い、変形機用に新たに開発されたビームライフル。バインダー側面に装備される。バレルストックがない代わりに新たにビームサーベルを銃口から発振できるようになっており、急な接近戦に対応できるようになっている。またバインダー側面に装着して飛行形態で使用することも可能。

 武装モデルは機動戦士ZガンダムのZガンダムのライフル。ライフルのカートリッジなどは今回採用していない。

 

・腕部格納式サブマシンガン

 両腕部のアーマー内に格納される実弾兵装。蓋を開くと銃身が突き出される方式で発砲する。弾数は30発で弾倉交換時は後部から行う。予備の弾倉は所持しない。

 武装内蔵部と展開法はZガンダムのグレネードランチャーと同じ方式。

 

・ビームサーベル

 マキナスのMSで採用されている、標準タイプのビームサーベル。背部のバインダーの機首を構成するパーツに装備される。なお正式採用機ではビームガンに切り替えることも視野に入れている。

 

・ヴァリアブル・クロスバインダーバックパック

 機体背部バックパックと、それに接続された可変式バインダー。ウイングと機首パーツを分割して翼のように装備する。変形時に両側の機首パーツで頭部を挟み込む形で合体、ウイングパーツを翼に機体上部から機首までを形成する。またウイング下には4連装ミサイルランチャーを装備できる。

 

・4連装ミサイルランチャー

 主翼下部に装備される実弾誘導兵装。なおミサイル発射口はMS形態時には下方向を向いているため、実質使用不能。

 

 

士「はい、ドラグーナ・ヴィーナスからマキナート・エアレイダーまでの紹介となります。後半は新たなガンダムの紹介になっていきます」

 

レイ「結構文字数あったね……ほぼギリギリ1万字以下じゃん」

 

ジャンヌ「ですね。それでは後半へ続きます」

 




前半はここまでとなります。

後半ではガンダム、そしてドラグーナ・アレキサンドルについての紹介になっていきます。基本装備であり、番外編でも登場したリペアについても紹介がありますので、ぜひご覧ください(´Д`)


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黒の館DN 異世界戦争編 第4回 後編

続けて黒の館DN後編となります、藤和木 士です。

繰り返しますが後編ではガンダムとドラグーナ・アレキサンドルの紹介となります。アレキサンドルに関しましては、今後の追加武装についても解説する形となります。

それでは後編どうぞ!


 

士「では後編始めて行きます、作者の藤和木 士です」

 

ネイ「アシスタントのネイ・ランテイルです」

 

グリーフィア「アシスタントのグリーフィア・ダルクよぉ。さてさて、後半はネア達の命運を賭けた2機のMSの紹介になるわねぇ」

 

ネイ「そうだね。とはいえ、それだけでもかなりの文量があったみたいだけど」

 

士「それは言ってくださらなくてもいいのに……(´・ω・`)」

 

グリーフィア「けどまぁ、色々と武装も満載にしているから、仕方がないところはあるわね。それでも前作より武装とか少な目になるべくしているらしいけど」

 

士「まぁ、それもなるべく、なんだけどね。ではガンダムの方から、機体紹介していきます。どうぞ!」

 

 

 

形式番号 DNGX-XX000-SZver1[Repair]

シュバルトゼロガンダム[リペア]

 

機体解説

・老朽化が激しい状態で戦闘を行ったシュバルトゼロガンダムを現行のドラグディアのMS技術で修復・改良を施した改修機。

 前々回の戦闘で焼け焦げたフェザー・フィンファンネルを喪失したウイングパーツが現状の元では上手く使いこなせないことから完全に換装。新たに放熱板兼用の試作ウエポンウイングパーツに変更し特殊性のある攻撃力を犠牲に扱いやすさを上昇させたことが大きな変更点となっている。

 それ以外にも基本装備であるブレードガンをガンダムのOSであるスタートの設計の元新型を装備し、ドラグディアのMSの装備を活かせるよう各所に増設スラスター内蔵式、武装懸架用のハードポイントを備えた増加装甲を肩と脚部に増設し、ドラグディアでの運用を活かせる仕様となった(その際スタートからの指示でかつてのガンダムの装備もリファインして再製造されている)。

 ここで記すのはこの先数多登場するシュバルトゼロガンダムの装備派生元となる新たな通常仕様版となる。なおこの仕様でのみ登場したのは今のところ番外編のみだが、訓練では本仕様での戦闘を何度か経験している設定となっている。

 

 

【機能】

 

・DNフェイズカーボン

 DNを装甲に流し込むことで装甲の剛性を更に高める特殊素材で機体は構成されている。現時点では重装甲・高出力機にしか採用されず、ドラグディアでは総司令専用機「グラン・ドラグ・フリーディア」と国家元首専用機「ドラグディア・ロード」にしか採用されていない。機体装着直後から機能は発揮され、また非戦闘時にもある程度残留して色が維持される。

 機体の改修時に総司令官グランツの指示により新たなDNフェイズカーボンが支給されたため、消耗の激しかった腕部以外にも新造されたウイング、そして全身の装甲の張り替えが行われたことでエネルギー伝達効率が上昇している。

 

・ツインジェネレーターシステム

 本機最大の特異システム。ツインと名が付いているが、実際の所は2基積んでいるのはジェネレーター自体ではなく、ジェネレーター内部の「次元空間接触用ゲート生成器」である。

 次元空間接触用ゲート生成器は、DNジェネレーター内部に設置された、円形のリングで、このリングを回転させゲートを生成、次元空間につなぐことでDNを抽出する。このツインジェネレーターシステムはそのリングを併設することで回転数を上昇・同期させてゲートを安定化、高純度DNの抽出量を乗化させることに特化したジェネレーター含めたシステムである。

 改修時には同期回転の再調整が行われたほか、ジェネレーター後部に秘匿されていたSEED-UNIT00こと「リム・クリスタル」の装填部も発見されている。

 

・DNLコントロールユニット

 特殊な素養を持つ者の、とある脳波に反応して起動する特殊機能。スタートによればフェザー・フィンファンネルもこのユニットで操作されるらしい。システム搭載位置は機体腹部。

 初登場時の時点で破損しており、更にこの破損が原因の1つとして機体(と元)が暴走していたとのことだが、自爆からジャンヌ達を護る際、この機能を『介すことなく』フェザー・フィンファンネルを動かしたことに、スタートは何かを確信したようだ。が、真相は現時点では不明。

 

・DNL直結式機体フレーム

 機体を構成する、青白く光るフレーム。機体全体がこのフレームで出来ている。これはDNLコントロールユニットを補助する為の機体専用フレームらしいが、ヴェールはこのフレームが、旧MS時代に存在したDN結晶体で生成された特殊フレームの1つと指摘している。現時点では詳細不明。

 

・ハードポイントシステム

 ドラグディアの技術で増設された、武装換装システム。主にハードポイントアーマーで装備された部分に適用されており、様々な武装を追加で装備可能となっている。

 

ELACS(エラクス)システム

 本機体のジェネレーターに備えられた、リミッター解除機構。ジェネレーターの次元空間接触用ゲート生成器の回転数は通常設定された指数で固定されていて、必要時に更に回転数を上げるようになっている。だがそれでも上限があり、本システムはその限界を超えてジェネレーターを駆動させるシステムである。

 システム起動時には胸部のプロジェクション・クリスタルが青から1点のみ赤となり、機体の色が蒼白く変色する。同時にジェネレーターの回転数が急上昇し、機体に有り余るほどの高濃度DNを供給し、飛躍的に機体の能力を急上昇させる。

 とても聞こえのいいシステムだが、本システムの最大の問題点は特殊なパーツが運用できる状況で無ければ自爆しかねない点にある。一度限界を超えて回転数を上げたDNジェネレーターの次元空間接触用ゲート生成器は物理的に止めることは極めて難しく、しかもその状態で更に回転数を上げていく。

更にタチが悪いのが、その特殊パーツことSEED-UNIT00が無ければ、システム運用時の機体コントロール、そして装依者の精神までも蝕んでしまうことであり(元の初使用時には破損しながらも存在していたため、精神汚染はなかった)、かつての戦争で使用されていた際にはこの特性を使った特攻戦法が用いられたことでほぼすべての量産MSからエラクスシステムを抜き取る事態となっている。

 ただしシステム自体は使い方を誤らなければ文字通り切り札とも言える機能であり、機体の暴走域に達する直前にSEED-UNITの投入を前提としたのが本来の仕様である(むしろ暴走状態がイリーガルな状況)。元の場合、かつて使用されていたSEED-UNITが破損していたものの外的要因により一時的に修復、自動的に停止行動に至ったため大事に至らなかった。なお暴走域に達してもリム・・クリスタルを投入しなければ同じく暴走はする。

 機能自体は前作にも登場したガンダム00のTRANS-AMシステムがベース。そこに竜の「逆鱗」の単語の要素を合わせている(エラクスという名称も鱗を英語にしたScaleを逆にして音を合わせている)。

 

・???

 いまだ不明なシステム。ヴェールにも全く分かっていないとのこと。こちらは上記のものよりロックは少ないものの、現状どうあっても記憶を取り戻した元でも運用にはとある条件がいるため、使用できないため放置。現MSの歴史にも非常に文献が少ない幻のシステムであるとのこと。

 

 

【武装】

・ブレードガン・ニュー

 タイプゼロの時点で装備していたブレードガンの現代改修型。改修型サイドアーマーに2丁を装備する。改修に際しグリップを傾けての切り替え式から、銃用と剣用の2つのグリップを持ち替える方式に変更。更にブレードも新型のクリアブレードに変更し、切断力の向上と刀身そのものを延長バレルにしてビームを収束・発射できるようになった。また2つのガンブレードを横に合体させることで2連装の高威力バスターライフル形態に、その状態でブレード部分をレールユニット上で回転させることでドリルモードに、ブレードモードの柄尻を展開してから合体させることでツインセイバー形態にもなる。様々な状況にこの武装だけで対処することが可能であり、基本かつ万能兵装である。

 形状モデルは以前と同じくGNソードⅡ系列かつルガーランスとガンドレイク。特に持ち手はガンドレイクの形状により近くなったと言える。更に言うなら仮面ライダー電王に登場する仮面ライダーゼロノスのゼロガッシャーに持ち手は近い。

 

・ブラスターガン

 腰背部に装備する手持ち射撃兵装。ブレードガンと違い、射撃能力に偏っている兵装。小型のビームライフルだが、出力はその見た目から考えられない程高出力のものを放てる。連射モードにも切り替え可能。本来はドラグディア次期MSの主力兵装の1つになる予定の武装だったが、必要出力が多すぎて運用に向かないことからコンペに落選していたものをシュバルトゼロガンダムの主力兵装の1つとして採用。ガンダムの出力によりその性能を十二分に発揮できるようになった。

 外観モデルはキャプテンアースのライブラスター。

 

・ハイマット・ブラスター・ウイング

 背部バックパックに装備される多目的武装翼。スラスターを多数内蔵した可動式放熱翼でビーム兵器のハイブラスターを挟む形で保持。それらをバックパックから伸びるアームに接続してハイブラスターの熱を放熱する放熱板として活用している。

 多機能性であり、放熱タイミングを調整できれば機動力の向上にも使用可能な面も持ち合わせる。本来はとある機体の専用武装として用意されていたのだが、ハイブラスターの要求出力が現行のDNジェネレーターでは実践レベルに届かず断念。そのプロトモデルをガンダムの改修時にウイングパーツとして採用された。ちなみにバックパックの根本自体はシュバルトゼロガンダムのデータベースから復元したものを使用している。

 外観イメージはフリーダムガンダムの背部バックパック。ウイングそのものはウイングガンダム(EW版)になっており、ウイングの所々にスラスターを織り込んだデザインとなっている。

 

・ハイブラスター

 ウイングに挟み込む形で2基装備する長距離ビーム兵装。前面に砲塔を展開することで使用可能な武器で、同時発射時の火力は現時点で他の追随を許さない威力を誇る。

 ガンダムの出力により連射することが可能だが、砲身自体が連射後の熱量に耐えられない為、内部パーツを一部露出した余剰熱排出状態に移行する必要がある。

 元々はとある機体の専用兵装となる予定だったが、機体の出力自体が追いつかなかったためお蔵入りとなっていた。だがガンダムのツインジェネレーターの出力なら採用できるとゼロが判断し搭載を要請、無事装備し使用出来た。ちなみにその搭載予定となるはずだった機体こそ、本機が決闘で対決したドラグーナ・アレキサンドルである(当時はドラグーナ・ガンディーノと呼ばれていた)。

 武装モデルはウイングと同じくフリーダムガンダムのバラエーナプラズマビーム砲。

 

・ハードポイントアーマー

 機体肩部と膝に装備された増設アーマー式兵装懸架機構。機体本来の肩部と膝装甲の上から覆いかぶせており、それぞれのアーマーにハードポイントを設置、追加武装の懸架を行う。またアーマー内に固有武装も内蔵している。ハードポイント部分は肩部上部から後部、側面、膝部側面である。

 外観モデルは漫画機動戦士ガンダムブルーディスティニーのブルーディスティニーフルアームドの肩、膝増加装甲。

 

・ビームサーベル

 肩部増加装甲内と腕部に格納された格闘兵装。腕部格納式の物は以前と変わらない物で、腕部のDフィスト・イレイザーのエネルギー圧縮機関を兼ねている。そして肩部増加装甲内に格納されるサーベルも、元来シュバルトゼロガンダムがウイングのカバー内に装備していたサーベルユニットと同じ物を複製・移植している。格納法はモデル元と同じ方式。

 

・誘導式マイクロミサイル

 脚部増加装甲に格納される小型追尾弾。両側合わせて6発を格納しており、中距離でのけん制に使われる。装備によっては使用不能になる。

 

・ホルダーバインダー

 ブレードガンを収納するホルダー式バインダー。両腰にそれぞれ装備される。スラスターを内蔵しており、機体の機動性に一役買っている。以前と違って、バインダー自体に攻撃力は無いが、ホルダー部の回転でブレードガンを装備状態で射撃できる。またホルダー部は取り外しが可能なため、ブレードガンと入れ替えで固定兵装を装着することも可能。

 

D(ディメンション)フィスト・イレイザー

 機体腕部に搭載されるDN圧縮・開放デバイス。DNの力を最大限発揮するための武装。手で敵を捕らえてゼロ距離からビームを撃ちこむ他、拡散式にすることで短距離ながらビームを照射することも可能な武装。ライフルなどのエネルギー供給もこれで制御する。

 もっとも、それらは通常時の武装形態での話であり、本来はガンダムのツインジェネレーターが生み出す膨大な高濃度DNを活かす高威力DNFの運用が主目的。このデバイスを介すことで通常のMSでは使用不能な常識を超えたDNFを繰り出すことが出来る。

通常時の欠点は掌という非常に繊細な部分に装備されているためメンテナンス性が低い点。またビームの照射時の収縮率の悪さや、ゼロ距離でないと威力をフルに発揮できない点である(破損性に関しては、砲口が必要時に装甲内から隆起するためあまり問題ではない)。

 DNF使用時の欠点は、多々メンテナンスが必要な点である(この点が通常時のメンテナンス性の悪さも相まってなかなか厳しい)。設計自体はスタートが以前の物を流用して作成。それらをドラグディアのMS整備士ヴェール主導の元開発・搭載された。

 外見や機能のベースは機動戦士ガンダムSEED Destinyのデスティニーガンダムのパルマ・フィオキーナ。

 

 

 

 

形式番号 DNGX-XX000-SZver1[Hybrid]

シュバルトゼロガンダム[ハイブリッド]

 

 

機体解説

 シュバルトゼロガンダムに現代の装備を装備させ、限りなく以前の性能に近づけた過去と今の「ハイブリット」仕様。それがこの[ハイブリット]である。

 以前のガンダムはスタートによれば「高機動かつ万能にあらゆる戦場を駆け巡った」という。しかし現状ではそのような高性能機に技術的な面で仕上げられないかつ時間がない為、ヴェールは「あらゆる戦場に普遍的な性能を発揮できる装備」を立案。そのベースにかつてのガンダムの装備を基に武装を構築、ドラグディアの様々な装備を吟味して過去の装備も再製造、それぞれを装備させたことで誕生した。

 大きな点としては[リペア]にシールドを装備させ、更にブレードガンを2丁追加。そして肩部と膝部にミサイルランチャーとブースターを装備して火力の補強を行っている。シールドに関してはヴェールがスタートより細かなシステム調整を伝授してもらったことでロストテクノロジーとされた「DNウォール」を形成可能となっている。

 重装備した分を更にスラスターで推力を補うという本末転倒な装備だが、現状の元の技量も合わせて、まだツインジェネレーターシステムの出力に余裕があるためこれでも機動力は維持できている。

 

 

【追加機能】

・DNウォール

 DNをウォール発生器から集中放出し、一定のシールドからの座標点で固定散布して障壁を作る防御機能。

 かつてはMSの防御兵装として普及していた機構だったが、創世記の時代を最後に技術が紛失。結果的に今まで再現できなかった機能である(現状一番近かったのはアルスのマキナート・レイの光波防刃くらいのもの。それすら入り口に及ばない)。

 しかしシュバルトゼロガンダムのデータベース内にそのデータが残っており、それを基に技術が復元された。現状は元の機体のシールドのみの機能だが、量産のための研究が開始されている。

 

 

 

【追加装備】

・ブレードガン・ニュー

 ホルダーバインダーに専用の追加ホルダーを装着して2丁装備する。

 

・ミサイルポッド

 膝のハードポイントを利用して膝横に装備するミサイル格納コンテナ。本来は対艦用を想定したものだったが、今回の対決に合わせマイクロタイプを装備。弾数は片側12発である。

 なお後部には簡易スラスターが備えられ、ポッド自体もハードポイントに合わせて可動域があるため機動性が維持されている。

 

・フレキシブルブースター

 肩部の上部~後部のハードポイントに接続するブースター。かつてドラグディアで製造されていた宙戦用MSの増速ブースターを再製造し、装備される。

形状はガンダムセンチネルのSガンダムのバックパックブースターに近い。

 

・ブレードシールド

 左腕部にラッチと持ち手で固定する防御兵装。シールド下部にアンカー射出式のブレードユニットを備える。しかし本兵装の大きな特徴はそこではない。

 特徴なのはカバー式となっている部分をスライドさせて展開されるDNウォールモードである。DNを座標指定して停滞散布させることで障壁を発生させることが出来る防御兵装。その発生器を本兵装は有する。

 これによりシュバルトゼロガンダムの防御性能は元々のDNフェイズカーボンも加えて最高クラスとなっており、この状態のガンダムを落とすことは極めて難しい。ただしシールドのDNウォールモード発揮直後に絞って展開部を攻撃することが出来れば、構造上破壊することは可能。とはいえシールド単体でも防御力は高く、むしろ機体の機動性が上がるため、油断はできない。

 武装モデルは機動戦士ガンダム ヴァルプルギスに登場したオーヴェロンのヒートシザース付きシールド(偽装解除状態)。拡散メガ粒子砲が存在した部分にDNウォール発生器を備えている。

 

 

 

士「では続けて、アレク・ケルツァートが使用したMS、「ドラグーナ・アレキサンドル」の紹介です」

 

ネイ「元さんと激闘を繰り広げたMSですね」

 

グリーフィア「そう言えば頭部が破損していたからこの子は防衛線に参加出来なかったのよね。せっかくだから、グリューネちゃんのために戦う場面が見たかったわぁ」

 

士「いや、でもアレキサンドルは次章でも活躍しますよ。主に活躍どころは限られますけれども。それじゃあアレキサンドルを紹介していきます」

 

 

 

 

ドラグーナ・アレキサンドル

形式番号 MS-DD08SP-AK

 

 

・ドラグディア軍レドリック・ドラス直下の親衛隊「アレク・ケルツァート」少尉専用に、ドラグーナ・レドルをベースに改修された機体。

 以前からアレク専用機として開発されていた本機は、元々剣術と槍の扱いに長けていたアレク用に近接戦を重視したセッティングとなっていた。だが完成直前にアレクがガンダムと戦闘を行った際、万全の機体ながら敗北したという結果を受け一部仕様を変更。その結果新たに機体各部にビームコーティングアーマーを装備。更に武装もレドルから流用していたナイトシールドからバインダータイプの推進器付きシールドへと換装。ガンダムとの戦闘を見越した仕様へと変更された。ちなみに原型機に施されていた装飾類は一切排除されている。

 決闘では全武装を使用し、更にビームコーティングアーマーの全コーティング剤を散布して目くらましを行うという予想外の動きでガンダムを翻弄したものの、シュバルトゼロガンダムの新たな装備群と元の戦闘能力の急上昇もあって敗北する。

 なお、これらの仕様変更はガンダムとの戦闘を前提としたものであったが、決闘でそれなりの戦果を出したビームコーティングアーマーは通常装備として正式採用、シールドは軽量のパイルバンカーシールドを左腕に追加された。

 専用DNAは槍系兵装の先端にエネルギーを集中させ、突撃する「ガングニール・ストライク」。機体カラーリングは蒼と白、そして緑のトリコロール。

 

 

【機能】

・カメラ切り替え機構

 ドラグーナ全機に搭載されているカメラ切り替え機能。本機の物は原型機の兜状増加装甲が担っていた対ステルスセンサーの為のカメラを、近接戦用カメラ上部の可動式バイザーで行っている。

 

・ハードポイントシステム

 同じくドラグーナ全機に装備される武装換装システム。本機はバックパックを専用のバックパックに換装しているため、使用可能なのは肩部前面・後面の部分と膝部が使用可能。

 

・ビームコーティングシステム

 通常ビームコーティングとは、あらかじめシールドなどにコーティング剤を塗布しておき、防御時に効果を発揮するものである。それを本機は各部の装甲内にコーティング剤を内包。必要時にアーマーから機体に噴射して機体全体にビームに対する高い防御性能を付与することが可能となっている。

 システム自体の発想は小説版機動戦士ガンダムAGEのAGE-1ゴールドアローの機能から。ただしあちらが通常のノーマル仕様の装甲に噴射口が展開されるものに対し、こちらは増加装甲内にそれらを充填、噴射する外装方式を取っている。

 

 

【武装】

・マシンガンランス

 実体槍に内蔵する形で円形に設置されたマシンガンを備えるマルチウエポン。原型機に採用されていたシューターランスを実体弾式に変更している。腰背部に装備されている。

近接での機動力を重視して、本機の物は軽量のランスへと変更され、更に穂先を射出、射出した先からはビームサーベルを展開出来るようになった。実弾弾数は約40発。予備弾倉は腰背部コネクターの下部に2基。

武装モデルは機動戦士ガンダムF91のデナン・ゾン系列の持つショット・ランサーがモデル。ただしマシンガン砲門数はベルガ・ギロスの物、そして射出後のビームサーベル展開は同名兵装を備えるガンダムビルドファイターズアメイジングで初出のマーキュリーレヴのショット・ランサーがベースとなっている。

 

・シューターサーベル

 アレクのドラグーナ・レドルから引き継がれた斬撃兵装。装備位置が腰のジェットスラスターサイドアーマー内になった以外は以前と同じで射撃・斬撃をスムーズに行える。

 

・ジェットスラスターサイドアーマー

 サイドアーマーを構成するスラスター内蔵の装甲。レドルのアレク機で使用していたジェットブースターと同じく、プレートジェットスラスターで推力を調整し、機体に更なる機動性を与える。

 

・腕部アームガード内蔵式ガトリング

 機体腕部に格納される3連装ガトリング砲。実弾で連射性は高い。弾数は片側30発

 武装モデルは機動戦士ガンダム ポケットの中の戦争のガンダムNT-1アレックスのガトリング砲。

 

・ビームコーティングシステム搭載増加アーマー

 機体の肩部・胸部・腰部・脚部膝ユニットに装備される、ビームコーティングシステムの為のコーティング剤を内蔵したアーマー。噴射口はクリスタルパーツが使われており、その色の変色によってコーティング剤の残りが把握できるようになっている。

 残量の減りの色は青→黄→赤となっていて、完全にゼロになった時は発色を停止させられる他、装甲自体のパージも可能。増加装甲自体も堅牢な作りとなっており、また装甲下の部分にもコーティング剤を塗布できる。

 

・バインダーバックパック

 機体背部のバックパックユニット。後方に伸びた形状のアームユニット接続部位の推進器と、2本のアームで接続された2つのバーニア付きバインダーシールドで構成されている。

 バックパック自体の推進器だけでも十分なスピードが期待できるが、後述するバインダーシールドと合わせてシュバルトゼロガンダム[ハイブリット]と互角以上の機動戦を行うことが出来る。

 バックパック基部の形状はデスティニーガンダムの物に近い。アームユニットは大小のブロック形状の物を2基ずつ、関節部同士で接続している。

 

・フルバーニアン・バインダーシールド

 機体背部のアームユニットに2基装着される推進装置付きシールド。シールド両側と中央装甲下にバーニアを内蔵しており、最大稼働時には中央装甲カバーが開き、加速形態となる。

 シールド自体に武装は無いが、シールド裏側には近接戦闘用の実体剣「ブレード・エッジ」が備わっており、手持ち武装として使用できるほか、背部から分離して手持ちのシールドとしても使用可能。加えてアーム自体の稼働で前方に向けて防御出来る。

 シールドのモデルは形状としては機動戦士ガンダムの外伝系に出てくるジム・スナイパーⅡの曲面シールド。上下逆に装備し、上となった青色の部分が開閉するイメージ。

 

・ブレード・エッジ

 シールド裏に装備される細身の実体剣。重量はそこそこで、敵の関節部など構造的にもろい部分を攻撃するための兵装。4本装備される。

 ビームコーティング散布状態ではこちらが主兵装となる。柄尻を合わせることでツインランスとして使用可能。

 武装形状と機能としては機動戦士ガンダムSEEDASTRAYシリーズのゴールドフレーム天のツムハノタチに近い。

 

・パイルバンカー付きシールド

 ガンダムとの戦闘後、新たに左腕に装備することとなった実体シールド。杭打ち機構を備えたシールドとなっており、攻撃と防御を粉うことが出来る。

 この武装が新たに装備された背景としては、ガンダムとの戦闘時に背部スラスターシールドはシールドとして使うよりも背面防御や推力増加に使用した方が効果的ではというアレクからの意見を盛り込んだ結果によるもの。

 武装の外観モデルは機動戦士ガンダムSEEDのストライク系列のシールド。シールド下部の突起部分がバンカーとなっているイメージである。

 

 

士「以上が、ドラグーナ・アレキサンドルとなります。1万字超えたよ/(^o^)\ナンテコッタイ」

 

ネイ「まぁ、ガンダムの紹介だけで7千字くらい行ってますからね……しかもこの2機、第2章の主役機とも言えますから」

 

グリーフィア「必要情報が多いのね。仕方ないんじゃない?」

 

士「分けるとなると中編も作らなきゃだったし、それなら前後編にしちゃえって量だったからね。さて、というわけで今回はここまで。ですがこの後用語・設定集を投稿する予定なので、そちらも読んでくださると幸いです」

 

グリーフィア「それじゃあ、また次回ね~。次章も括目しなさ~い♪」

 




以上で今回の黒の館DN終了となります。この後さらに用語設定集も公開しますが、そちらではあとがきなど特に書くつもりはないのでここで色々書きます(´・ω・`)

第3章では2章最後に登場した白いガンダム、「ヴァイスインフィニットガンダム」との対決となります。そこで遂に主人公元とジャンヌ、2人の関係、そして過去についても焦点が当てられます。

ジャンヌ「元さんの方は今までにも何度か焦点が当てられていましたよね……」

レイ「うんうん、何せプロローグの最初っから触れられていたくらいだもんね」

ネイ「幼馴染が亡くなったんでしたっけ……。ジャンヌさんも、確かEPISODE3から進路について憂鬱だったみたいですし」

グリーフィア「んー、ここでそれを同時に取り上げるってことは、つまり2人の過去は繋がってる!とか?(笑)」

ネイ「そ、それはないんじゃ……」

貴様……なぜそれを……( ゚Д゚)

レイ「藤和木、藤和木、貴様ってなっちゃってる!」

ジャンヌ「いや、それだとなんで繋がっているんですか……」

グリーフィア「ノリよ、ノリ!で、本当にどうなっているのかしら?」

流石にないよ、それは(;・∀・)まぁその次がLEVEL1の最終章になるからね。そのための布石みたいなものだよ。

レイ「え!もう最終章なの!?」

グリーフィア「それは驚きだわ」

ネイ「LEVEL1ってことなので、前作における次元変更みたいなものでしょうか?」

そうだね。まだくわしくは言わないけど、そんな感じ。

ジャンヌ「意外と進みが早いですよね。前作に比べると」

そうでもないよ。第3章と第4章結構ボリュームある予定だから。何せカギとなるガンダム同士の対決に、LEVELのタイトルの「異世界の戦争」が舞台になるからね(´っ・ω・)っ

レイ「異世界戦争編ってそういうこと!?」

ネイ「えぇ……」

そういうことさ(*´ω`)それじゃ今回はここまで!

グリーフィア「設定集もよろしくね~♪」

ジャンヌ「次章もよろしくお願いしますっ」


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機動戦士ガンダムDN 用語設定集

用語設定集になります。

作者がこれは必要、および読者に知ってほしいと思った言葉についてまとめています。

あまりないかと思いますが、もし劇中のこれについて分からない!とあれば言ってくださればここか、次の用語設定に書く予定です。

ではどうぞ。


 

 

 

◆軍隊の単位(おおよそ)

 

 主にMSの部隊人数についての呼称を記す。なおドラグディア、マキナスで戦力数を示す人数の単位は変わらない。ちなみにMSは機械であるが、人物サイズの機動兵器であることから、構成人数は現実の陸軍と空軍の部隊構成を掛け合わせている。

 

・班

1個あたり、およそMS2機から8機。最低人数で組まれる部隊となる。なお3個分隊になると、ほぼ自動的に小隊と同じ扱いとなる。

基本的にMS少尉からMS下士官が隊長となる。

 

・小隊

 1個当たり、およそMS8機から30機で構成される。中隊・大隊が複数の小隊に分かれる場合あり。いくつか(大抵は2つ)の小隊を集めて、母艦に収容されることがほとんど。なお母艦は小型のものが1隻から3隻である。

基本的にMS大尉から中尉が隊長となるが、少尉や最悪下士官が務める場合もある。

 

・中隊

 1個当たり、およそMS30機から60機で構成される。大隊が分かれてこれになるということは少ないが、代わりに小隊を集めて中隊を結成することはそれなりにある。母艦も大型の1隻でまとまる場合もあれば、2隻以上に分かれる場合もある。

 基本的にMS少佐からMS大佐がこの指揮にあたる。この規模となると小隊の規模に分かれて複数の小隊長が存在する場合もある。

 

・大隊

 1個当たり、およそMS60機から100機で構成される。大抵はいくつかの小隊が集まって大隊を結成するという方法が取られている。更に空中艦も1艦隊を成すほどの数になる。大体の数では3~6隻ほどである。

 指揮官には少将からMS大佐が当たる。ただし二つ名持ちであるガンドは少佐でありながらこの規模の部隊を指揮する場合もある。更にそれぞれのエリアに分け、個別の部隊長を決めるなど、指揮系統も洗練されるようになる。

 

・連隊

 1個当たり、およそ100機から200機のMSで構成される。ここまで来ると国家戦争としては現在の時代でも大きな騒乱の1つとして認知されるようになる。

 指揮官には中将から少将が当たる。艦艇からの指揮がほとんどであるが、三竜将などは前線指揮も行う。そのためMS指揮官の乗艦する艦の艦長も指揮権を持つ。

 

・旅団

 1個当たり、200機以上のMSからなる想定されるMS運用規模の限界。歴史に載るほどの戦乱はこの規模が大半を占める。

 指揮官は大将、もしくは総司令官が務める。参加艦艇の数は、ゆうに20隻を超える。

 

・軍隊

 全国家兵力をまとめた総称。部隊と言うより、国家同士の最終決戦の部隊配置を便宜上名付けたもの。現状でこれほどの戦力で戦ったのは、歴史上でも創世記最終盤でのみとされている。

 もし次にこれほどの規模の戦争があった場合、長きにわたる戦争が全て終結した時であると言われているほどである。

 指揮官というより、総大将は国家元首である。国同士の戦いであるため、当然とも言える。

 

 

 

◆二つ名について

 

 劇中では何人か軍隊の中で二つ名を持つ兵士がいる。この二つ名は所謂特権階級の証として作中世界では機能している。単純な例を挙げるなら、ガンドが少佐でありながらその階級範囲以上の部隊の指揮を行えることが例として挙げられる。

 可視化するなら、二つ名は大体2つ上の階級とほぼ同じ扱いを受けることと同義である。もっと分かりやすく言うなら勲章のようなものである。

この制度は特殊な判定がされており、本人が望めばその二つ名を消費し、本当に2階級上の階級を得ることも可能。特に三竜将のリリーは以前に「猛き白百合」という二つ名を持っており、それを消費して准将の階級を得ている(つまり、本来は中佐付近であった)。

 他にもガンドの場合は家への特別手当などを受けており、三姉妹がいながら元の分の授業料を捻出出来たのもこの制度によるところがある。

これらの制度はマキナスでも採用されており、多少の差異はあれど同じ制度となっている。

 

 

◆サークノ・レ・ファイ大陸

 

 第1部の舞台となる世界マキナ・ドランディアにある大陸。救世主ガンダムから授かった竜の力を持つ竜人族の最大国家「ドラグディア」と機械の力を持つ機人族の最大国家「マキナス」がそれぞれ争っている。

形状は劇中では真ん中と両端でくっついた形状と記しているが、簡単に言えば「φ」の文字の形状である。名称もそれにちなんでいる。

 

 

◆ドラグディア

 竜人族最大の国家。サークノ・レ・ファイ大陸の東側半分が領土となっている。首都はフリュウ州セント・ニーベリュング市。国の象徴は機械竜「クリムゾン・ドラゴニアス」。

 12名家と呼ばれる家が存在しており、彼らはかつて創世記以後戦争で衰退した国内を12人の兄弟全員でそれぞれの分野で立て直したという逸話から国から特別支援を受けることのできる特権階級である。

 

◆竜人族

 救世主ガンダムの引き連れた機械竜「ジャッジメンター・マキナウス・ドラゴン」より竜の力を受け取り、発展してきた種族。かつては竜の特徴が色濃く出たトカゲ人間のような人種であったが、現在は本来の姿であった人間の姿に近い外見をしている。

 魔術を行使する種族でもあり、DNジェネレーターは彼らの儀式を行って生成がなされる。そのほか元々がトカゲに近いドラゴンであるためか、種族全体が寒さに弱く、防寒具は必須である。そのほか竜人としての特徴が色濃く残る「古竜人族」と呼ばれる種族もおり彼らは差別を受けることが多い。

 

◆12名家

 ドラグディアに存在する、かつてドラグディアの国政を立て直したとされる12の家の総称。

 元々は1つの家に12人兄弟が生まれた際、誰が家の名を継ぐかで争ったが、争いの内容は誰が一番国に貢献するかであり、全員真摯に取り組んだことで経済・軍事が立ち直り、最終的に国民全員から感謝を受けた。そして兄弟たちは和解し、最終的に家の名は一番それぞれの家に貢献した次男が引き継ぎ、他11人もそれぞれの新たな家の代表として就いたのが12名家となった経緯である。

 本来の家の名はフリード家(次男・担当…軍事)であり、後はリントヴルン家(長男・芸能)、ロード家(三男・政治)、アポロニア家(四男・魔術)、アマティラス家(五男・祭事)、スターレイ家(六男・教育)、ファーフニル家(七男・詩)、ガシュラ家(八男・食文化)、フィニル家(九男・観光業)、バンウル家(十男・警察)、ブラン家(十一男・歴史)、そしてカタシュ家(十二男・法)である。そのほかフリード家には分家としてライン家が存在する。

 名前に関しては元ネタがあるものの、いずれも判別は難しい。バトルスピリッツに関係している事だけは明記しておく。

 

 

◆聖トゥインクル学園

 元やジャンヌ達が通う小中高大一貫校。所謂貴族のご息女向けの学校だが、民間人も今日ことが出来る学校である。元々は詩巫女の養成を目的とした教育機関であり、12名家のスターレイ家が直接運営している。

 それぞれの学校で生徒会長などがおり、集会もそれぞれの学校に分かれて行われることがほとんど。また高等部から志望する学科によってクラスが分かれる。現状判明しているのは詩巫女養成科とマネージメント科であるが、普通科も含めいくつかが存在している。

 詩巫女を志望する者達への厚遇が一番の特徴であり、校内には詩巫女の発祥の地を所有し、それに合わせた行事も行われている。また敷地内には脱出のための隠し通路があり、政府が育成を望む者達を擁立する学園を色濃く反映した設備となっている。

 

 

◆マキナス

 機人族の最大国家。自然との調和を主としたドラグディアと比べ、近代化が進められている(草木が無いわけではない)。首都はラグナ・リーン州ユグトラン市。国の象徴は生きる戦艦「マギア・マキナス」。

 かつては皇帝が支配する帝国国家であったが、106年前に皇帝を打倒した新政権が樹立。以後効率を重視した洗脳政治が行われている。

 

 

◆機人族

 救世主ガンダムの引き連れていた機械竜「ジャッジメンター・マキナウス・ドラゴン」から機械の力を受け継いだ種族。当初は如何にもロボットと呼べる外見で、子孫ではなくメモリーを新たな体に移して時代を生きてきた。しかし今のような人工ナノマシン皮膚と精錬された血管チューブにより自らのパーツを使用・再生成などで母体から子孫が生まれるようになった。

 機械を使うだけあってMSの技術もドラグディアより高く、DNジェネレーターも機械的に生産が出来る。

 種族としてはほとんどが人工ナノマシン皮膚で覆われた進化元である人間に近い姿だが、古竜人族と同じように、ロボットじみた体を未だ持つ古機人族もいる。ワルトが良い例である。

 

 

◆マキナリアス皇帝一族

 マキナスをかつて治めていた血筋。機人族を発展させてきた国のトップであったが、106年前のクーデターで当時の皇帝が殺害。その子供も行方不明となった。だが噂によると今も子孫が生きていると言われており、復讐を誓っているとも噂されている。

 なおクーデターの原因は、一族独占状態を許せなかった、という説が最有力。

 

 

◆ディメンションノイズ

 マキナ・ドランディアとその周囲に広がる世界を構成しているとされている次元構成物質。MSの動力源としても使われており、この物質もまたガンダムからもたらされたと言われている。現時点では赤い色の粒子が普及しているが、創世記時代のMS、現代ではガンダムだけが本来の色に近い高濃度DNである蒼いものを放出する。

 モデルは機動戦士ガンダム00のGN粒子。

 

 

◆DNジェネレーター

 MSの主動力機関。ドラグディア、マキナス双方で製作されている、円柱形の動力機関。ただし製作法は違っており、更に製作法によってジェネレーターの特徴も違う。具体的に言うと、マキナスの物は出力がまんべんなく同じで、量産性に向いており、ドラグディアの物は出力が個々に違っており、リミッターを掛けて出せる出力を均一化している。他にもドラグディアの方は感情によって出力が向上しやすくなっており、一発逆転を期する構成となっている。

 そしてガンダムの物はツインジェネレーターシステムと呼ばれるエネルギー生成量増加システムを備えており、完成度も通常のDNジェネレーターよりも高い。

 空中艦に搭載する大型、あるいは連結タイプも存在している。

 モデルはGN粒子の発生元であるGNドライヴ。

 

 

◆機竜創世記

 マキナ・ドランディアに伝わる、竜人族と機人族の誕生と国家の繁栄、そして没落を描いた古文書。書によれば争い続けていた2つの人間の陣営の前に「救世主ガンダム」と呼ばれるMSが出現。争いを止め彼らに竜と機械、それぞれの力を分け与えて繁栄をもたらした。しかし、発展していく科学力が再び戦争を起こし、救世主へ敵対。結果救世主は去り、戦乱は果てしなく続き当時のドラグディアとマキナスは限界まで疲弊していったとされている。また詩巫女や奏女官の誕生もこの時期からとされている。

 

 

◆救世主「ガンダム」

 マキナ・ドランディアの始まりを作ったと言われる、機動兵器とその装依者を指すと言われる名称。マキナ・ドランディアでは「救世主」の読みに「ガンダム」と当てる場合もある。

 かつてその圧倒的な力で戦争を止め、それぞれの種族を発展させたとされているが、最終的に両国家の争いに見かねてこの次元を去ったと言われている。ちなみにガンダムと呼ばれる機体は両国家共に別で存在していたらしく、争いもそのガンダムが主軸であった。更に元のシュバルトゼロガンダムも現在はそのうちの1機だったのではと言われている。ちなみにガンダムの一連の物語を描いたとされる名画「終誕の日」と呼ばれる絵画が、マキナスの首都の美術館に存在する。

 

 

 

 

◆始動機(スターター)

 この世界におけるモビルスーツに搭乗、もとい憑依(装依)するために必要な、ベルト型装依装置。形状は所属する組織などによって細部が異なるが、原型となる形状は四角いボックス状のユニットである。

 構成としては装依装置本体と、正面の機体認証用キー(ロックリリーサー)装填部、そして装置上部の装依ボタンから成る。ガンダムの物になると、更にボックスの右手側側面にセレクトスーツカード用の装填スリットが存在する。

 現状はドラグディアのMS用スターターの「ドラグ・スターター」と、マキナスのMS用スターター「マキナ・スターター」、シュバルトゼロガンダム専用の「ゼロ・スターター」と、第2章ラストで登場した白いガンダムの「インフィニット・スターター」が登場している。

 装置の発想としては仮面ライダーの変身ベルトがモチーフ。特に形状とセレクトスーツカード装填は仮面ライダーゼロノスのゼロノスベルトから、機体認証用キーの装填は仮面ライダーゴーストのゴーストドライバーの眼魂装填法から、そして装依ボタンは仮面ライダージオウのジクウドライバーの中央回転用ボタンから着想を得て、アクションも意識している。

 

 

◆サブフライトシステム代わりのドラゴンについて

 ドラグディアではMSのサブフライトシステムとしてドラゴンを運用する場合がある。無論それら以外にも移動の為にドラゴンを使う場合もあり、騎乗する場面は多いのだが、それらに関して大きさの制限がある。

 具体的に言うなら、全長8メートル前後までが軍での運用できるドラゴンの大きさである。これ以上となると、空中艦に入れる際に規定数でも不具合が生じる(航続力が落ちる、といった具合)。そのためこのラインを「アーミードラゴン規定値」と呼ばれる。

 ただし、これらはドラゴンを空中艦含めて運用する場合の話であり、サランディーネ家が輩出している砲撃用のサラマンダードラゴンなどは、艦に入れる必要が無い(というより入らない)ので、15メートル級でありながら軍へと所属している。またクリムゾン・ドラゴニアスは全長約30メートルという巨体であるとされているが、それもまたアーミードラゴン規定値を大きく超えているものの、運用に問題ないことから戦争に徴用されていた。

 

◆カーボンの強度・種類について

 マキナ・ドランディアのMSに用いられる装甲は、以下の通りとなっている。

 

・ジン・カーボン

 一般的なMSに採用される装甲。強度と重量も一般的で、ほとんどのMSはこのジン・カーボンとなっている。

 名称モデルは銀から。酒のラベルに付く時の名称を参考にしている。ちなみにこの知識の仕入れ元は某小学生名探偵の映画から。

 

・アイオン・カーボン

 ジン・カーボンより強度を高め、かつ重量はほぼそのままとなった装甲。一般的に専用MSはこのアイオン・カーボンが用いられるのが通常とされる、所謂高級部材。

 名称は鉄の英語名称「アイアン」をもじったもの。

 

・メタル・カーボン

 アイオン・カーボンより更に強度を向上させ、重量も増した装甲部材。主にシールドなどの装甲に部分的に使用されているのがほとんどで、全身をこれで覆った機体はいない。

 

・プラティリィ・カーボン

 現状登場するMSではドラグーナ・ヴィーナスにのみ使用される装甲部材。早い話がプラスティックカーボンであり、軽さがウリの装甲。使用される際は機体全体にビームコーティングが施される。

 名称はプラスティックから。イメージとしては機動戦士ガンダムSEEDシリーズのガンダムアストレイシリーズ発砲金属装甲。

 

・プランチ・カーボン

 プラティリィ・カーボンに迫る軽さでありながら、ジン・カーボン並みの耐久性を誇る装甲部材。軽さと固さをある程度両立しており、高級部材の1つ。現在登場するMSではドラグーナ・リリィのみが有する。

 名称は貴金属のプラチナから。

 

・DNフェイズカーボン

 他の部材とは一線を画する部材で、ドラグディア・マキナス双方の国家元首機と最高指揮官専用機、そしてガンダムにしか採用されていない装甲部材。重量はアイオン・カーボンとほぼ同等。

 DNを流し込むことで硬度を高めると共に、機体の色を変色させる。設定できる色は流し込むDN量次第で無限にあり、特に白と黒を安定運用できるのは高純度DNを生産可能なガンダムしかいない。現在装備によって色を自動的に変更するフェイズカーボンの運用が提唱され始めている。

 名称モデルは機動戦士ガンダムSEEDシリーズのPS装甲。

 



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第3章 終わらぬ宿命の始まり
EPISODE30 インターミッション1


どうも皆様。夕食前でお腹の減っている、藤和木 士です。

ジャンヌ「なんでかは察してください。藤和木にも色々あるそうです。アシスタントのジャンヌ・ドラニエスです」

レイ「アシスタントのレイ・オーバだよっ。さて、と。第3章遂に始まったねー」

正確には今回からスタートなので、その言葉はあとがきで言うのが正しいと思うんですがね(´・ω・`)
まぁ、ともあれ第3章が今回から始まっていきます。前回からアナウンスしていますが、今章では白いガンダムとの激闘が描かれます……が、今回はその幕間の物語、マキナス軍との戦闘が描かれます。

ジャンヌ「まさしくインターミッションってことですね」

レイ「マキナス軍との戦闘かぁ。前の章でも最後はマキナス軍との対決だったねー。どんなMSが相手になるんだろう!」

いやまぁ、そこはマキナスのMSマキナートとその派生機ですよ……(´・ω・`)あ、ただ今回から本格的に空中母艦が出てきます。後々黒の館DNでも紹介します。
ではどうぞ!


 

 

 6月の第4週、この日元はドラグディアの空中艦、ニーベルング級空中母艦の1つ「ケツァール」のMS格納ブロックにいた。この艦は2週間ほど前に結成されたばかりの新部隊「ケルツァート隊」の母艦である。隊長は6月第2週の月曜日、元と決闘を行ったあの男「アレク・ケルツァート」少佐。先の「セント・ニーベリュング市長反逆事件」での功績を受け、昇進した彼が率いる部隊だ。

 部隊員の多くも、同騒動においてアレクもといグリューネ・()()()()()()()側の味方をした若手部隊員を軸に組まれている。そんな部隊の母艦になぜ元がいるのか。それは単純に、彼がケルツァート隊に編入されたからである。元々元は総司令官グランツに軍への非常勤隊員としての採用を請願しており、騒動終結後軍への入隊が認められた。その際部隊への編制を考えられたのだが、セント・ニーベリュング市内を基地とする部隊の多くが元もとい、ガンダムの引き抜きに名乗りを挙げた。その中にはガンドが指揮する「ファーフニル隊」もあり、編成を困難にしていた。

 ではそれらの高い倍率の中で、なぜケルツァート隊へと配属されることとなったのか。それは2つの大きな要因があった。1つは、隊長と元の人間関係面。お互い一度は敵として対決した者同士であるが、死闘を演じた2人の間で確かな信頼があった。信頼という面でいうなら、ガンドは元の家主であるためそちらも候補に挙がったものの、むしろガンドでは良好よりも一歩退いた関係になるのではと懸念され外れることとなった。更に2人ともネアを挟んで関係が強く、適度な距離感と判断されたのである。

 そして、もう1つの要因。これがケルツァート隊の当時の状況と合致していた。それは部隊編成。この時点ではまだケルツァート隊はその隊員の規模を確定していなかった。一応所属人数は親衛隊の対立時に若手20人が確保され、更に新人隊員、空中艦の操縦員や艦長、整備員を入れて80人程度の目途は付いていた。しかし実力が薄い若手、新人隊員もいたので他部隊からの引き抜きを考えられていた段階であった。そんな中、元という期待の新戦力はとても魅力的な話だったのだ。ガンダムという戦力の軸が出来ることもあり、戦力の枠組みがまだ決まっていないので枠を合わせることが出来る。以上の事から元がアレクの部隊「ケルツァート隊」のB班への編入が確定したのであった。

 アレク率いるA班に続くB班は元を含めた10人のMSパイロットで構成されるチーム。その特色は元のガンダムを中心として試作兵器のテストを行う試作兵装運用部隊。元を火力の中心としてサポートする部隊だ。そんな彼らと行う、2回目の出撃前に、元はガンダムの装依を行う。

 機体出力ハンガーの前で、元の体が電子となって吸収される。ガンダムの眼に光が灯る。機体の確認をしていると、隊長のアレクから通信回線が開かれる。

 

「ハジメ、機体状況は」

 

「問題なしです。シールド搭載武装差異無し」

 

「了解した。今度はしくじるなよ?といっても、前のはほぼ事故だが……ブリッジ、ドラグーナ・アレキサンドル、カタパルトに移動する」

 

 やれやれと言った具合に言葉を返す。実は元のガンダムは一度目の出撃時に窮地へと立たされていた。その時は無事帰還できたが、その際装備していた[Perseus(ペルセウス)]はほぼ全損し、素体のリペアのみの状態となっていた。

 [Perseus]とはガンダムの試作武装案の1つであり、シールドを中心とした武装構築案の総称である。名称の由来は古の創世記にて竜の魔物を打倒した英雄の名前だ。彼は手にした盾とおぞましい姿をした竜の首が髪となっていた女性の首を用いて、海の竜の魔物を倒したという。元の知る元の世界の歴史でも同じ名前の古い英雄が、似たような物語に登場していたと記憶している。その戦法にあやかり、ガンダムの装備にもそう名付けられたのである。

 しかし、そのペルセウスには問題があった。それはシールドの重さだ。シールドの中に武装を搭載するというコンセプトが、逆にスピードが取り得のガンダムでは重すぎたのだ。ガンダムの駆動部にも負担がかかり、有り余るはずの高濃度DNでも扱いきれない。

おかげで元を狙って強襲してきたマキナスのあの星剣使い率いる部隊に徹底的な攻撃を受けてしまった。兵器としては失敗とも言える装備群と言えるだろう。しかし武装を投入したガンダム整備士となったヴェール・フリードは諦めなかった。

 武装の設計から見直し、徹底的な軽量化と十分な防御力を兼ね備え、更に以前にはなかった武装群を装備したシュバルトゼロガンダムの仕様。それが[PerseusⅡ]であった。

 

「シールドユニットチェック、問題なし。ウエポンカーゴ動作確認」

 

 元の声に合わせ、シールドが動作を行う。元の体感でも以前よりシールドの軽さが分かる。以前はガンダムの火力を優先したビーム砲満載だったが故のデットウェイトが、内部武装を手持ちの兵装に変えたことでも解消されるのは驚きだ。どれだけビーム火器と運用のためのコンデンサが重いのかが分かる。

 チェック項目を進めつつ、元の機体は移動用ハンガーでカタパルトまで移動する。到着すると同時に機体が降ろされ、カタパルトに脚部を固定される。同じくカタパルトに接続されたドラグーナ系列の一機がこちらに顔を向け、通信回線を開く。

 

『よっし、接続完了。ハジメ、新装備どうだ?』

 

 通信画面に出てきたのは、髪を茶と金のメッシュにしている男性だ。元は彼の問いかけに軽く返答する。

 

「えぇ、問題ありませんよ。前みたいにエースを持ってかれることはないと思いますよ」

 

『へへっ、言ってくれんじゃねぇか。ま、前はまぐれだったとは思いたくねぇけどな』

 

 男性は元の言葉に声を嬉しそうにして返す。彼は元の所属するB班のチームメイト「カルマ・リータ」曹長だ。アレクとは永遠のライバルを自称するほどの仲で、親衛隊の元メンバーである。元と同じ部隊に配属されてからは、元もそのライバル候補らしい。しかし、ライバルと言っても競争相手と書いてのライバルらしく、以前元が危機に陥った時は彼がガンダムに代わって撃墜数を伸ばしていた。

 そんな彼をよそに、反対側のカタパルトに機体を固定した人物がカルマに静かに注意を呼びかける。

 

『カルマ曹長、鼓舞はいいですけど、間違っても当たらないからってガンダムに攻撃を当てることはやめてくださいね』

 

 物静かな佇まいを見せる青年は、少し長い水色の髪とも相まって中性的な印象を見せる。言葉もまたそれを助長しているのだろう。そんな彼は「フォウル・ヴィンド」。同じく元の所属するケルツァート隊のB班隊員だ。彼はスナイパーでもあり、前回のガンダムの撤退に関してもその正確無比な狙撃に助けられた。

 フォウルからの冗談がこもった注意にカルマはムキになって否定する。

 

『いや、流石にそんなことしねぇから!?』

 

『どうだか……まぁ、火力の要はガンダムですから、くれぐれも射線には入らないでくださいね』

 

『俺を落とすのかよ!?』

 

 間に挟まれその話を聞く元は、肩身が狭い思いをする。しかし、戦場もすぐ近くなので、元は話を遮るように当時の礼も踏まえて、今日の出撃でもよろしくとフォウルに伝える。

 

「まぁまぁ、カルマ曹長もフォウル軍曹もその辺にして、今日も支援お願いします。いくらシールドが軽くなったからって、使い勝手もあまり分かっていないので」

 

『へっ、だとよ。フォウル、ガンダムに狙撃当てんなよ!』

 

『その言葉、そのままお返ししますよ。……了解です。くれぐれも無茶はなさらないように』

 

 元の言葉に半々ながらも了承する。このB班はガンダムの運用と支援が重用される。喧嘩するほど仲が良い状況で収まっているのは幸いだが、もしこれがかなりの確執があったとしたら、不安で背中も任せられなかっただろう。

 と、そんな元の不安を代弁する様に、B班隊長の声が通信回線に響く。

 

『おい、話し合いもその辺にして、機体出せよ。後がつっかえてんだから』

 

 ケツァール隊B班の隊長、エル・グレイ大尉。薄茶色の丸刈りが特徴的な、30代の男性である。気さくな性格で、軍に入ったばかりの元を何かと気に掛けてくれる上司だ。元々はアレクの上官の1人でもあり、今回のケルツァート隊結成においても、彼の部下としてB班の隊員をまとめている。

 彼の言う通り、既に空いていた両脇に機体観測手となる2機のドラグーナ系列機が並び、カタパルト5つが埋まっている。サイドに入っているのはティット伍長とシレン伍長。2人で漫才のようなやり取りを見せる2人が、ガンダムの武装運用状況をモニターするのである。そんな2人からも早く出るよう急かされる。

 

『おっそいぞー、3人共ー』

 

『ガンダムが出てくれなきゃ俺達も仕事がないぜ』

 

「まぁ、そうですね。……機体各部オールグリーン。ブリッジ、出撃許可を」

 

 元は機体の確認を行うと、ブリッジのオペレーターに発進許可を要請する。他の4人も、同じく出撃要請を送る。

 

『こっちは問題なし』

 

「こちらもフォウル機、問題なしです」

 

「シレン、問題なしでーす」

 

「ティット、問題なし!」

 

『了解。カタパルト電圧正常。射出タイミングを、SZG[ペルセウス・ツヴァイ]、ドラグーナ・コアトルB2番、3番、4番、5番に譲渡します』

 

 カタパルトに並んだ5機の機体の装依者からの確認に、生真面目な女性の声が返答されてくる。元達の母艦、ケツァールの出撃管制を行う女性、マリー・メヌエット曹長の声だ。彼女からの射出権限移譲を受け、元は出撃体勢を取る。

 

「了解。……黒和元、シュバルトゼロガンダム[ペルセウス・ツヴァイ]、行きます――――ッ!」

 

 コールと共に、ガンダムの射出が開始される。カタパルトの起動でGがかかり、肺の空気が押し出される。それに耐えながら、元はガンダムで艦から発艦する。

 外に出ると、重力が機体を地面へと引き下ろそうと、機体に重みがかかり始める。それに逆らう形で慣性が働く段階でガンダムのウイングスラスターを展開し、飛行姿勢を取る。機体のスラスターから蒼い高濃度DNが放出され、飛行姿勢を整える。

 スピードを調整していると、後方から既に出撃していたアレクが合流する。既に彼のA班は発艦しており、その後方を隊のメンバーが付いてきている状況だ。そのアレクから、機体の状況について視線を前方に向けた状態で、並列して飛行しながらそのまま聞いてくる。

 

『どうだ、機体の感触としては』

 

「良好ですね。前みたいなことにはならないとは思います」

 

『そうか。流石に2連続で、新人を抱えた状態で戦闘と言うのもあまりよくはない。活躍に期待する。大尉、後はお願いします』

 

 社交辞令の挨拶程度の会話を行ってから、アレクは元の更に向こう側に言うように視線を向けてから、離脱していく。その先には既に自分の班の隊長であるエルがこちらの方まで来ていた。

 エルと顔を合わせ、後方に全員が付いてきているのを確認すると、その視線を前方に向ける。そのはるか向こうには、うっすらと見える、マキナス軍の中規模艦隊が見えた。既にMSを発進させ、部隊もいくつか見える。

 こちらへと向かってくる敵部隊。それと相対する元達の耳に、回線で旗艦の艦長による声が響く。

 

 

 

 

『MS隊、迎撃開始!先週の侵攻土地を奪還してやる勢いで殲滅してやれ!!』

 

 

 

 

 そうして、マキナス軍との戦闘が開始された。

 

 

 

 

 今回の舞台は、ドラグディア中央部の最北端に位置する、メレト遺跡の上空だ。先週にマキナス軍がこの土地に侵攻してきたのが始まりだった。この時も元達を含めた3部隊が応戦したのだが、ガンダムの不測の事態により撤退をしてしまっていた。いわば、この戦いはその意趣返しでもあった。

 メレト旧遺跡跡は、旧マキナス領の遺跡であり、元が最初にこの世界で発見された「ジラク遺跡」の反対側に当たる遺跡だ。なぜ彼らがこの地に侵攻してきたのかは不明だが、それを防衛しようとして、撤退してしまったことはドラグディア軍に黒星を付けたことと同義だ。

 そして、今日この日、再びガンダムを引き連れ、ドラグディア軍は奪還作戦を展開するのであった。

 

 

 

 

「いけっ!!」

 

 元の声と共に放たれたブラスターガンの光弾が、マキナートの一機を落とす。マキナートの部隊はこちらを取り囲もうとするが、それをさせまいとB班のメンバーが迎撃を行う。

 

『おらおら!回ってるだけじゃ撃っちまうぜ!』

 

 カルマの威勢のいい声と共にドラグーナ・コアトルの手に握られたシューターランスが光弾を連射する。光弾の連弾をシールドで防御しつつ後退していくマキナート。

 他のB班メンバーも纏っているドラグーナ・コアトル。その機体は元々、ドラグーナ・レドルの偽装機で、本来なら親衛隊解散と共に廃棄される予定だった機体だが、元メンバーの強い要望で装甲を換装してそのまま運用されることとなった。

 その中でもB班の機体はGアシストスタイルとされており、大型のショルダーフルシールドを両肩に装備している。主にガンダムの支援を行う機体で性能は高い。

 カルマのコアトルの攻撃で後退していく敵に、元も追撃を行う。肩部の小型バインダーを前面に向けると、はめ込まれた円形のパーツが回転し、ビームが連射される。カルマの攻撃と若干ずらした連弾は後退するマキナート2機の側面を穿ち、爆発を起こす。1機を撃墜し、残る1機も右腕を失い、僚機の援護の下、後退していく。

 反撃の射撃を、元は肩部のマシン・ビームバスターを元に戻し、シールドで防御する。攻撃がシールドに弾かれ、マキナートの1機が接近戦を挑んでくる。その動きに元はシールドを構える。

 金属音と同時に、シールドの下部から槍の穂先のような物が伸びる。そのままその槍の穂先をマキナートの懐に滑り込ませる。敵のビームサーベルによる攻撃をシールドで防ぎつつ、突き出したシールドの槍の一撃がマキナートの胸部に突き刺さる。

 

『がぁ!?うわぁぁあ!!』

 

「っ!!次っ」

 

 接触回線で聞こえてくるマキナス兵の悲鳴に構わず、シールドから突き出された槍、ショット・パルチザンを抜き、敵を爆発させる。続く敵に対しても攻撃を防ぐと共にシールドから完全に抜き放った槍を構え応戦していく。

 今回の兵装群「ペルセウス・ツヴァイ」の最大の特徴であるシールドは、内部に専用のウエポンカーゴに装備された武装を切り替えて使用する兵装だ。防御力と攻撃性能を兼ね備えた万能兵装を目指し、以前よりも攻撃性能は落ちたが、十分にその威力を発揮していた。

 元はショット・パルチザンで敵機を刺し貫き、また1機を撃墜する。直後後方に迫っていたマキナートが、横合いから放たれたビームで撃墜される。狙撃により1機撃墜したフォウルが、引き続き援護をしつつ、油断しないように声を掛けてくる。

 

『ハジメ軍曹、油断禁物ですよ。いくら以前より機体も動けているとはいえ、試作兵装群ですから』

 

「すみません、フォウル軍曹。けど、ガンダムの方も前に動かせなかった分……っと!!」

 

フォウルに返答しつつ、腰部を捻り攻撃を回避するとショット・パルチザンの代わりに取り出したショットガンを構え、銃撃する。機体のカメラを割り、視界を失ったマキナートの1機が、続けざまに放たれたハイブラスターの砲撃に貫かれ爆散する。更にショットガンのポンプアクションを行って2発連射する。散弾が機体を襲い、動きが鈍ったところに、カルマとフォウルの射撃が刺さる。

 目の前の状況は比較的良好だった。戦線としては未だ硬直状態にあるとオペレーターのマリーからも入ってくるが、それでも元達のB班は戦況としては良いと思われた。しかしこの部隊の悩みの種は、1つではなかった……。

 

『来たッ!……わわわっ、当たんねぇ!』

 

『ラルフッ!って、うわぁぁぁ!?』

 

『リーオン!何してるのッ!』

 

『くそ、一度退くんだ!俺が援護を……って!来んな、こっちに来んな!!』

 

『えぇい、ひよっこ共全員後退!俺がやる!!』

 

 騒がしくなる通信回線。最後のエル隊長の言葉が響いたのち、元は機体を翻しつつ、回線に呟く。

 

「……どうやら、新兵たちてこずっているみたいですね」

 

『お前が言えるのかよ……でもまぁ、そんな事より、助けに行かねぇと』

 

『カルマにしてはまともなことを言う。それにガンダムも前に出過ぎだと思います』

 

 カルマとフォウルの指摘に、元も頷く。このB班に限った事ではないが、ケツァール隊は新興部隊の1つである。よって、新兵がMSパイロットの4割ほどを占めており、その戦力についてはほぼ隊長のアレクや、小隊長のエルなどが補う有様となっていた。

 その中でもB班は小隊長であるエルが1人で隊員4人を見ることとなっていた。以前は漫才チーム2人が新人の枠だったのだが、前回の出撃後に現在の編成となったのだ。

 図らずも原因の1つである元は肩身が狭い気持ちになりながらも、2人の指摘にやや落ち気味のテンションで賛同する。

 

「ですね……支援、向かいますか?」

 

『だな。漫才チーム2人もいいか?』

 

 元の言葉にカルマは頷き返し、観測手となる2人にも意見を求める。2人も通信回線から賛成の声が出る。

 

『問題ナーシ。かっちょいいとこ、見せないとなー』

 

『それ以前に新兵でも命落とさせるなって話だ。俺も異論なし!』

 

 そうして5人は進行方向を左へ向け、B班のもう1つのグループに支援に向かう。

 

 

 

 

『う、うわぁぁぁ!右腕が、俺の右腕がぁ!!』

 

「落ち着け、お前の右手が斬られたわけじゃない!下がれ、こいつらの相手は俺がする」

 

 そう言ってエルは3機編成の部隊を迎撃する。マキナートのノーマル装備2機とコマンダー仕様特別仕様に対し、右手で保持するビームライフルを連射する。3機のマキナスの機体は散開してその連撃を避ける。右側に逃げた2機にエルは腕部のマシンガンを連射する。

 通常型のマキナート2機はその連射に怯む。しかしその連撃を止めさせるべく、特別仕様のその機体が、近接戦を仕掛けてくる。特注のシールドから取り出した柄から大出力のビームソードで斬りかかってくる。

 

「ぐぅっ!」

 

 すぐに左手に引き抜いた逆手持ちのビームサーベルで受け止める。ギリギリのところで切り結ぶ機体。接触回線で、敵の声が伝わってくる。

 

『少しはやるみたいだな……しかし、ガンダム程ではない!!』

 

「ちぃ……っ!?」

 

 ガンダムに対する圧倒的な戦意を込めた言葉と共に、エルの機体が振るった剣圧に吹き飛ばされる。近接戦に強いドラグディア機が、近接戦を軽視するマキナスの機体に押されるという不思議な状況だった。エルもすぐに機体のバランスを取ろうとするが、そこに警告音が鳴り響く。

 バランスを崩した機体を、先程エルに攻撃を受けていたノーマル装備のマキナート2機がこちらにライフルの銃口を定めていた。仕返しと言わんばかりの光景に、エルも危機感を覚える。新兵を護るためとはいえ、流石に度が過ぎたかと考えてしまう。回避も難しい。だが回避しなければならない。

 そう思ったのもつかの間、突如として2機のマキナートを爆発が襲う。爆風で我に返ったエルはすぐにその場から動く。ビームの光弾を連続して受けたマキナート達はすぐにその方角に目を向けた。エルもその方角を確認すると、視線の先から自身の隊のエースの1人であるガンダムが射撃を行いつつ支援に入ってきていた。

 

『エル大尉も退いてください。ここは、俺達が』

 

「っ……仮にも俺が班のリーダーだぞ。まぁ、援護はありがたい。どうやら相手はガンダムが所望のようなのでな」

 

 シールドから短剣を取り出し、斬り下ろしを仕掛けるシュバルトゼロガンダムに苦笑を交えつつも感謝を述べる。先週の戦闘での懸念材料だったガンダムの支援に、自分が情けなく思ったのだ。

 しかしエルが続けて言ったように、敵のリーダー機もまたガンダムに虜にされた者。察知させるように元へと忠告する。元は敵機の胸部にショートソードをねじ込みつつ、疑問をぶつける。

 

『所望?』

 

 すると、そんな元に自らの存在を自負する様にオープン回線で敵パイロットの声が響いた。

 

 

 

 

『そうだ、ガンダム。先週の侮辱、ここで晴らさせてもらう!!』

 

 

 

 

 若い男性の声と共に、ガンダムの至近距離をビーム射撃が過ぎる。咄嗟に剣の回収を止め、蹴り飛ばす形で回避するガンダム。遅れてマキナスの機体が助けを求めるように手を伸ばす形で爆散する。その先に居ながら、その手に応えなかったのは白い機体に赤い十字を交差させるカラーリングが特徴のマキナートのカスタム機。

 繋がる回線から、元の息を飲む音が響く。

 

『お前……あの時の』

 

 シールドから新たに銃と槍の機能を備えるショット・パルチザンを取り出し、構える元。エルも先程まで戦っていたその機体の存在を知っている。マキナスの誇るネオ・エースの1人。かつて元と国境付近のヴールーン基地で相対した剣士。彼は先週もガンダムに一直線で向かい、不完全と知ると興味をなくしたように迎撃から離脱していった。

 そんな彼―――「星剣使い」のアルス・ゲートはその右手のビームアサルトライフルを突きつけ、再戦を叫ぶ。

 

 

 

 

「さぁ、今度こそ決着を付けようか、ガンダム!」

 

 

 

 

 ビームアサルトライフルの銃口が光る。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。何気に空中艦の設定考えるのが今回の話を作る上で一番大変でした\(^o^)/

ジャンヌ「まぁよくよく振り返ってみると、藤和木今までMSとかの人型の兵器しか設定に起こしていませんでしたからね……」

レイ「一応は考えていたみたいだけど、結局SSRにも空中艦とか出てこなかったもんね。出てもせいぜいアプサラスっぽいのくらいだし」

最初は完全オリジナルで行こうとしましたけど、私の想像力では全くいい案が浮かばなかったので、ガンダムシリーズとかの艦を前後とで組み合わせて、それでドラグディア、マキナスの特色を入れた感じです。そこら辺は続くインターミッション2の次に投稿する黒の館DNで明らかになります。艦艇を考えるのって思った以上に難しいです、はい。

ジャンヌ「でもまさか因縁があるとはいえ、アルス・ゲートと再び激突することになろうとは……思っていませんでしたね」

彼は元君のライバル枠的な存在で設定したからね。ここでまた激突するのも必然かな。

レイ「その割にはどっかのガンダム少年追っかけまわす武士道のフラッグファイターに近い気もするけど」

それは……うん、騎士道も武士道も通じるってことで(;・∀・)
では今回はここまで。

レイ「次回もよろしくねー♪」


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EPISODE31 インターミッション2

どうも皆様。バトスピの最新スターターの発売が待ち遠しい、藤和木 士です。

ネイ「アシスタントのネイ・ランテイルです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィア・ダルクよ~。そういえば、先週から第3章に入ったのよねぇ。ガンダム同士の対決がようやくってところね」

そうだね。SSRの方はプロローグからガンダム同士の対決があったけれども、こっちはちょっと遅かったって感じだね。

ネイ「とはいっても、向こうとこちらじゃスタート地点が違っているともなれば、こうなるのも自然な気はします。あちらはなぜか以前からずっと戦っていたという話でしたし」

まぁ、うん(´・ω・`)そこに至るまでのストーリーは前から考えていたからね。こっちは始まりを今描いているところだし。
というわけでEPISODE31公開です(´・ω・`)

グリーフィア「インターミッションの2つ目ね。アルス・ゲートも再び登場で激突するのは間違いない、と」

第3章へ至るための幕間の物語ではありますが、これもまた重要な戦いの1つ。それでは本編へ!


 

 

「くっ!」

 

 放たれたビームを回避して、元はショット・パルチザンを構えてアレクとの戦闘に突入する。距離を詰めてのビーム射撃を返し、アルスもそれを避けつつ反撃する。ビーム射撃の応酬が空に交差していく。だが、それだけではない。

 射撃を行いつつ、元がすれ違いざまにパルチザンを振り抜く。アルスもその刃に合わせてビームセイバーを振るう。ぶつかり合う刃が火花を散らす。2,3度の火花を散らせると、一度ガンダムが距離を取って射撃に切り替えた、

 やっぱり強い。元は連撃の最中そう感じ取る。以前は不意打ちで大きなダメージを与えてその後は相手をしなかった。それに先週もこちらが不調で上手く戦えなかった。だからこそ今万全の状態でぶつかり合っている状況で、相手の強さがよく分かる。伊達にネオ・エースではないのだと。

 ビームの連弾をアルスは掻い潜るように回避して、距離を詰めるマキナート・レイ。アルスがそのビームの大剣を煌めかせ、振り抜き攻撃を仕掛けてくる。

 

『ぜぇあ!!』

 

「てぇあ!!」

 

 剣の大きさに任せて振られる大振りの攻撃。ガンダムとはいえ、一撃の重い攻撃を喰らうわけには行かない。元はそれに合わせる形でショット・パルチザンの刃でいなす。長い得物が幸いして、距離を保ちつつ攻撃を受け流すことが出来ていた。

 2人は空中を動き回り、攻撃と防御を繰り返していた。元の支援に入ろうとカルマが近づこうとした。

 

『くっ、元無茶だ!俺も加勢……』

 

『ッ!カルマ曹長、迂闊だ!』

 

 フォウルの声が響くと同時にカルマのドラグーナ・コアトルの右肩のフルシールドにビームが直撃する。近づく機体は元も確認している。槍と剣による鍔迫り合いの中、スタートが機種を特定する。

 

『機種照合。以前の可変タイプだ』

 

 可変タイプ。その単語に元は以前の戦闘を思い出す。リリー准将の率いる部隊を、数で圧倒したとはいえ追い込んだ強敵だ。ガンダムもエラクスシステムが無ければやられていたあの機体の性能は驚異的だ。しかし、アルスとの戦闘はそれを相手にするには重い。元は他のメンバーに迎撃を要請する。

 

「ティットさん、シレンさん、2人の支援を」

 

『―――いや、その必要はない』

 

 元の言葉を折るように響く声。その声と共に上空から実弾の雨あられが可変タイプのマキナートに降りかかる。連弾の雨を掻い潜ろうとするマキナートの機体。しかし何発かが翼に直撃しバランスを崩す。バランスを崩した機体に上空から急降下した機体がその手に構えたランスでシールドを串刺しにする。

 急所は逸れたようで、シールドのみをパージし人型へと変形すると可変型マキナートは襲撃者と刃を交える。その襲撃者は、他ならぬ元達の隊の隊長、アレク・ケルツァートのドラグーナ・アレキサンドルであった。

 その登場に、元も呆気に取られる。

 

「な……!?隊長!?なんでこっちに……」

 

『よそ見している、場合か!!』

 

 だが元の注意は自身を見ていないことに感情を逆なでられたアルスの、激高から来る強いはじき返しによって戻される。弾き飛ばすと同時にアルスがマキナート・レイのビームセイバーを振るう。何とか一撃目を回避し、続く斬り返しをシールドで受け止める。続けてショット・パルチザンを振り下ろし、マキナート・レイへの打撃を狙う。しかしそれはマキナート・レイのシールドに抑え込まれる形となる。

 攻守入れ替わる戦闘の中、可変型マキナートと戦闘するアレクはその状態で元に先程の質問を返答する。

 

『隊の穴を埋め合わせるのは隊長の役目だ。それに、このマキナート可変型はデータを取る必要がある。不利な状況や翻弄された時のデータ、それにガンダム相手の戦闘データじゃ、データの開きがあり過ぎる。まぁぶっちゃけて言うなら、こいつと戦ってみたいのが信条だけどね!』

 

 戦闘意欲むき出しでマキナート可変型との戦闘を続けるアレク。隊長であるアレクは普段は落ち着いた気品ある人物である。元と会った時も最初は敬語を使っていたり、戦闘の意志がないことを先に伝えたりと礼儀はしっかりとしている。ただし苛烈な戦闘になるほど言葉遣いが粗野になっていく節があった。これで冷静さはそのままなのだから、所謂バトルジャンキーなのではないかと思う。

 元は反応できないが、代わりにカルマとフォウルは再び向かってきたマキナートノーマル装備へ射撃攻撃を行いつつ、その変貌ぶりにため息を漏らす。

 

『相変わらず戦闘になるとあれだよな……アレクって』

 

『隊長と呼べ、隊長と……ッ!だがまぁ、お前の言いたいことは分かるけどな』

 

 2人は元よりも長く彼と付き合いのある仲だ。アレクの性格の事はよく熟知していた。だからこその、あの「またか」というような反応なのだろう。あれで隊長が務まるのがすごいと思う。

 しかし、思索にふけっている暇はない。話半分で聞きながらも元はアルスの攻撃を防御し続けていた。攻めにも転じてパルチザンを振るうが、回避され今またビームセイバーを防御する。

 続く剣戟の最中突如警告を示すアラートが響く。左側に目を向けると、その先でタイタン級が主砲をこちらに向け発射態勢を整えていた。互いにそれに気づき押し付けるように振るって弾かれる。直後ビームが放たれる。初撃は回避し続く攻撃も回避する。ここは戦場だ。いつどのようなタイミングで攻撃が来るかは分からない。

 しかし、まさかこの乱戦の最中ガンダムを狙ってくるとは思わなかった。とはいえそれで怖気づくようではこの先やってはいけない。元は回避運動を行い、アルスとの距離を開けてパルチザンを格納、代わりにブレードガン・ニューに武装を切り替える。が、直後ビームが真っすぐこちらに目がけて放たれる。

 

「まずっ!?」

 

 元が不味いと思った時には、既にそのシールドを掲げていた。慌てて防御姿勢を取るが、こちらは実体のシールド。相手は戦艦級のビーム砲だ。防御許容値を明らかに超えているだろう。

 しかし、元の意志に反応する様にシールドはその力を発揮する。

 

『DNProtection、オートドライブ』

 

 シールドからパーツが分離し、そのパーツが光の障壁をシールド前面に展開する。空中艦から放たれたビームは障壁とぶつかり合う。しかし主砲級のビームは障壁を貫通することはなく、光の障壁の前に拡散していく。

 光の障壁を発動した元も、最初は驚いたがすぐにその機能の名を頭の片隅で思い出す。DNプロテクション。かつて元がシュバルトゼロガンダムタイプ0で使用した、フェザーフィンファンネルで形成した防壁だ。[ペルセウス・ツヴァイ]のシールドには試験的にそのリアクターを搭載し、その運用も予定されていた。偶発的とはいえその発動・運用に成功した。

 流石に空中艦のビームを受け止めたことには、アルスも動揺を露わにする。

 

『ば……バカな!?空中艦の主砲を?……だが、それでこそ、俺の相手に相応しい!速烈の剣士を破ったお前は、俺が倒す!!』

 

 しかし、それがむしろ対抗心に火をつけた。アレクの異名を口にし、元のガンダムに恐れを抱くことなく肉薄する。上段振り下ろしからのビームセイバーの攻撃が元の横薙ぎに振るったブレードガン・ニューとぶつかり合う。

 2人の機動の軌跡が戦場を移動しながらぶつかり合う。ビームセイバーとブレードガン・ニューが交差しては離れ、再び鍔迫り合いに持ち込まれる。途中途中元も距離を保つべくガンモードに切り替えビームを撃つ。アルスはそれを避け、マキナート・コマンド用のビームアサルトライフルを撃って近接格闘の為のけん制を仕掛けていく。

 激闘に介入しようと、移動する戦場の中でマキナートやドラグーナが攻撃しようとするが、放ったビームは彼らを掠めることなく、更にガンダムに目がけて放たれた空中艦の主砲は再びDNプロテクションの前に防がれる。反撃と言わんばかりに、元はハイブラスターをアルスの攻撃を回避した直後上下反対の状態でタイタン級中型空中母艦に目がけて放つ。

 

「っ!!」

 

 放たれた2つの高出力ビームの光は戦場を貫く。射線上に運悪く入ってしまったマキナスのMSを2機巻き込んだ一撃は、タイタン級の正面主砲を貫き、爆発を引き起こす。武装を損傷した空中艦が後退の動きを見せる。

 砲撃を放ったガンダムに、更に距離を詰めるマキナート・レイ。ペルセウス・ツヴァイもハイブラスターを収納し、再びウイングをはためかせるように蒼い高純度DNを放出してぶつかり合いを再開する。

 巡りめく戦闘だったが、その中で元は確かな感覚を感じ取っていた。まだ足りないと。ガンダムはその機体の性能を引き出してはいるが、ガンダムはもっとそれ以上の力を発揮できると思っていた。それこそ、先週に使用した[ペルセウス]も武装の火力だけで言うなら合格、いや、それでも足りないかもしれない。

 そんな物足りなさから、元は勝負に出る。シールドから展開したショットガンを一発だけ放ち、ブレードガン・ニューをサイドアーマーに戻すと再びショット・パルチザンを構え叫ぶ。

 

「エラクスッ!!」

 

『ELACSSystem、ドライブ!』

 

 ガンダムが蒼炎の輝きを身に纏う。そして圧倒的なスピードを得てアルスへと強襲する。そのスピードに翻弄されるアルスはシールドで攻撃を防御するも、衝突時の衝撃でシールドを落とす。全機能の向上したガンダムにアルスは燻っていたものが燃焼し始めたようにその興奮を口にする。

 

『この速さ……我が軍の最新機を圧倒したあの光か!!面白い!』

 

 アルスはすぐに光の残像を残して飛行するガンダムを追撃する。ビームアサルトライフルの弾丸がガンダムを襲うが、元のガンダムはそれを躱す。躱し続け、更に弾丸を撃ち込まれているにも関わらず接近を試みる。近づいているにも関わらず、マキナート・レイの放つ弾丸はガンダムを掠めもしない。

マキナート・レイの目の前にまで現れたシュバルトゼロガンダムはショット・パルチザンを振り下ろす。ビームセイバーでその一撃を受け止めるアルスだが、元は受け止められた直後、機体を急加速させその場から消えるように彼の背後を取る。そして死角からショット・パルチザンの突きを喰らわせる。決まった。そう元は確信する。

しかし、その突きは背部のバックパックスラスターから放たれた光の刃で、ショット・パルチザンの持ち手を分断されたことで防がれる。破壊されたパルチザンから手を放し、爆発から身を護る。いきなりの攻撃に元は戸惑う。

 

「なんだ、今の……」

 

『……元、どうやらあいつも隠していた能力があるようだ』

 

 スタートは指摘する。パルチザンの爆発を突っ切ってアルスがビームセイバーを構えて向かってくる。

 

『俺が星剣使いと呼ばれる所以、見せてくれる!』

 

 理屈は不明だが、あの攻撃はあちらの異名の語源ともなっているようだ。その機能を顕示するように攻めるアルスに元もビームサーベルを抜き放ち、蒼く輝く機体で迎え撃つ。ビームセイバーとビームサーベルが交差すると、エラクスの加速力と再びアルスが機体スラスターから展開した光の刃の発生で周囲の空気が震える。

 すぐに光の刃は消えたが、その攻撃でこちらの衝突力はやや抑えられアルスはエラクス中の元の刃を抑える。その現象にスタートが気づく。

 

『なるほど。スラスター噴射時に生じる余剰出力がビームサーベルとなっているようだな。おそらくスラスターの内部形状が特殊なのだろう。……だが、まさかDNウォールの発展途中技術を応用してこのような使い方をするとは』

 

 何を言っているのかは分からないが、要するにそれは機体の特殊能力と言うことだと理解すると、元は再び距離を取り、機体スピードを上げながら出方を窺う。アルスも機体の加速度を維持したまま突撃の構えを維持する。そして、2機はまた激突する。

 お互い攻撃をぶつけ合い、更にスピードを上げてまた激突する。シュバルトゼロガンダムとマキナート・レイは高速機と近接格闘機という立場に似合う激しい戦闘を展開する。シュバルトゼロガンダム[ペルセウス・ツヴァイ]のショットガンの弾丸が切れ、それを捨てる形で武装を切り替える。アルスもレイ・ゴーストのプロペラントタンクをパージし、軽量化を図る。

 2人の交差と共に、アルスが胸部を向ける。光が灯り、元は距離を取ると拡散ビームが襲い掛かる。回避した射線上にいたドラグーナ数機が巻き込まれる。1機の撃墜の爆発を背に、元も両手のブレードガン・ニューを合体させ、高出力バスターライフルモードに切り替えて応戦する。ブレードユニットで収束された高純度DNがスパークを帯びるほどの出力でビームに変換され空を高出力ビームが突っ切る。大出力のビームはマキナート・レイの機体を掠める。掠めた脚部側面が爆発を起こし、バランスを崩す。更にマキナートの機体をいくつか中破および大破させ、先程のとは別の空中艦の副砲をえぐり取る威力を見せる。

 

『ぐぉっ!?』

 

「今っ!ブレードガン!!」

 

 バランスを崩したアルスの機体に、元もすぐ追撃を行う。武装の名を叫び、合体させたままの剣を今度は剣の持ち手に切り替える。するとブレードを動かすレールユニットが回転し、ドリルの様に剣が回転する。ドリル剣を手に元はそれをアルスへとぶつける。

 

「はぁっ!!」

 

『くっ、出鱈目な武装を!つぁ!!』

 

 回転しながら振るわれたそれを、最大出力へと昇華させたビームセイバーで受け止めるアルス。光満ちたる光剣をドリルとなった銃剣の刃が獣の様に喰らい、削り取っていく。熾烈を極める激突だ。どちらも最大出力を込め相手の剣を折ろうとする。

 しかしどちらも折り斬ることは叶わず、DNの反発もあり弾き飛ばされる。両者共に空中での姿勢制御に徹する。直後ガンダムの背後から蒸気音が鳴り覆っていた蒼い光が消失する。エラクスの制限時間だ。

 

「くっ……エラクスの制限時間か……」

 

 元は再びブレードガン・ニューを二刀流で構えなおす。一方的な優位性を失ったのを見て、アルスが得意げに剣を振る。

 

『どうやらその光の力はもうないようだな……ならば、まだっ!!』

 

 再びビームセイバーを構えて突撃しようとするアルス。しかし、直後空を3発の花火がマキナス側の戦艦から放たれる。その音に気付いたアルスは突撃姿勢から堪え、その花火の意味を悟る。

 

『ちっ、撤退か……これからだって言うのに……。けどこっちもこれ以上ガンダムとやり合うのは得策じゃないな……』

 

 こちらに警戒をしつつアルスはエネルギーの残量を確認する。元もいつ不意打ちが来るかもしれないとその動きに注視する。

 やがて、周囲の戦闘の光が消え、マキナスのMSが後退し始めたのを見てビームセイバーの発振を止める。そしてアルスは捨て台詞の様に元にオープン回線で宣告する。

 

『ガンダム、勝負は預ける。今度会った時は俺が勝つ!』

 

 勝負を預ける、勝つと言った戦争ではナンセンスな発言を最後に、アルスは他の機体と共に後退していく。元はその言葉に返答することなく、ただ見つめてその撤退する様子を観察する。

 その後遅れてこちら側の艦隊からも撤退信号が発せられる。加えて通信回線からは艦隊指揮官から勝利の凱歌が発せられる。

 

 

『全機一時帰投!そのまま地上の再制圧を行う。我々は勝利したのである!』

 

 

 指揮官の声に生き残った兵士達の歓声が響く。元もその様子を聞きながら空中でホバリングしていると、機体の外部観察を行っていたティットとシレンが労いの言葉を送る。

 

『お疲れー、ハジメ』

 

『一番の功労者って感じだな。空中艦2隻に手負いのダメージ与えたのが撤退を速めさせたみたいだし』

 

「2人も機体経過チェックお疲れ様です。確かに何回かハイブラスターとライフルのフル射撃で空中艦を攻撃しましたし……けど、元々アレク隊長の率いる隊も遠距離からの砲撃戦を行っていたようですから、そちらも含めての敵軍の戦力減少もあるでしょう」

 

 元は謙遜する。実際艦、および味方部隊への掩護射撃を行う射撃部隊の砲撃を見ているので、それらの影響は少なからずあった。しかし、その中でも限りなく元の挙げた功績は大きかった。それを戻ってきたカルマとフォウルも指摘する。

 

『それは謙遜しすぎだぜ。前と比べたら、ガンダムがちゃんと機能した分大分攻勢だったぜ?』

 

『作戦資料にもガンダムの不調を見越しての戦力配分がされていました。予定よりも作戦終了時間が早いですし、限りなくガンダムの力のおかげですよ』

 

「そ、そうですか……。まぁ、それならいいかな」

 

 やや恥ずかし気になる。元はそういった自分の成果を、あまり自身を持って評価するのが苦手な人物であった。そしてそれはこの短い間でも共に過ごすメンバーにも理解されていた。だからこそアレクは彼らの班へと元をあてがったのである。

 カルマが肩を組んで喜びを分かち合う。

 

『まっ、今日はあの蒼い光まで見せてエースをもぎ取っていったんだ。今日はパーッと行こうぜ!』

 

『カルマ曹長、はしゃぐのが早いぞ。とりあえず帰投しましょう。データの受け渡しも必要ですし』

 

「まぁたまには悪くなさそうですけど、そうですね。ヴェールさんも楽しみにしてそうですし」

 

『あー、確かにヴェール整備長なら得物が届くのを待つ主婦って感じで待ってそうっすねー』

 

『渡すのは得物じゃなくて成果だけどな』

 

 そうして5人は語らいながら彼らの旗艦へと帰投していくのであった。

 

 

 

 

 『経過報告書 メレト遺跡におけるマキナス軍との戦闘経過、ガンダムの装備テスト結果および遺跡における追加報告書

 

6月中旬某日水曜日、マキナス軍が1週間前に襲撃・制圧したメレト遺跡の再制圧作戦を実施。参加艦艇はニーベルング級2、ミドガルズ級3。旗艦はニーベルング級「ブルースケイル」。指揮官「バイル・ブルーアイ」少将。参加MSは全138機。帰投数は96機。

 我が隊ケルツァート隊はA班20人、B班20人、C班19人、D班18人帰投、3人が戦死。

 

・成果

敵空中艦6隻の内マキュラ級1隻、タイタン級2隻の武装にダメージ。うちタイタン級2隻は本作戦で新たに投入したガンダムの新装備仕様がダメージを与える。本作戦の迅速な終結に貢献。

 MSに関してもおよそ130機前後を80機程度まで減らしたと計算。ガンダムが内10機前後を撃墜。更にアレク・ケルツァート少佐が敵新型と交戦。腕部を斬りおとし確保。そのデータから新型機が「マキナート・エアレイダー」と判明する。

 

・ガンダムの新兵装のテスト結果

 この戦闘にてガンダムは試験兵装群α[PerseusⅡ]の運用を実施。[Perseus]で問題になった重量関係をクリアし、更に肩部武装のテストを実施。

 結果として今回はそのすべての武装を使用し、10機のMSの撃破に成功する。またプロテクションリアクターも使用され、中型空中艦の主砲を2度受け止めることに成功する。これらによりDNプロテクションの技術は問題なく我が軍に取り込むことが出来たと推測する。

 

 なお、特筆事項としてパイロットであるクロワ・ハジメ軍曹からは武装出力を上げてもガンダムならば問題ないのではとの意見を受ける。重量に注意しつつも次の試験兵装群β[Hercules]ではその火力面の限界を検討する。

 

 

 

・メレト遺跡について【極秘事項】

 

 

 

 マキナスの襲撃前後、遺跡の駐留部隊が謎のMSの襲撃を受けたとの報告。直後にマキナス軍が襲ってきたためその後の襲撃MSに関しての行方は不明。

 ただし、再制圧したメレト遺跡周辺仮設小屋にて拘束されていた生き残りの我が国研究者(足を切断される重傷のため、聴取後すぐに病院へ搬送)から話を伺うことに成功。それによると襲撃したのは「白いMS」であるとのこと。更に遺跡にいたマキナス軍捕虜によるとマキナス軍はこの白いMSを追跡していたという。

 

 更にこの白いMSは、先日マキナス基地を壊滅させた、我が軍が保有するガンダムに匹敵する存在である可能性が非常に高い。詳しくは同封の「メレト・ジラク両遺跡の5月某日に観測された超次元的現象の共通性」についても確認を。

 

報告者 ヴェール・フリード』

 

 

「……ふう。書類仕事も楽じゃないなぁ……」

 

 そう呟きつつヴェールはパソコンを打つ手を止める。手元に置いていた野菜ジュースのストローに口を付けると、それらをまとめた文章ファイルをメールで転送する。転送先はグランツ・フリード大元帥。ドラグディア軍総司令であり、彼女の父親だ。

 流石にヴェールでも、父親のグランツに「パパ」などとは仕事でも使わない。そういったものはハッキングされた際には命取りとなる可能性もある。それ以上にヴェールはグランツをそのように軽く言おうとする気はなかったのだが。

 しかし、とメールを送ってからヴェールは考え込む。次のガンダムの武装案がパソコンの画面に表示されているが、彼女の思考は別の事にあった。

 

(白いMS……マキナス軍が追うほどの機体。この戦闘を見るだけでもマキナス軍はやけに動きが活発すぎる。これもあの日の事が原因なの……?)

 

 ヴェールが視線を落としたのは、マキナスのニュースが乗った電子新聞記事。軍が入手したもので、内容は「マキナス軍基地、数時間で壊滅」。その日マキナス軍の保有する基地が、たった数時間で何者かに壊滅させられたのだ。

 ドラグディアにとっては手放しで喜ぶべきニュースだったが、問題はその時期。その日は元達がアレクと決闘を行った日。しかもその基地は、決闘後ドラグディアの国境線を超え、ガンダムによって撤退させられた部隊の収容先だったというのだ。

 良いことかどうかはさておき、その新聞では更に驚くべきことが書かれている。監視カメラに映っていた襲撃犯は、たった1機のMS。しかも純白の機体から()()D()N()を放出していたというのだ。

 蒼いDN。それはガンダムのDNジェネレーターのみが生み出せる高純度のDN。もしこれが本当だとしたら……。そこでヴェールは考えるのを止める。

 落ち着け、私。今大事なのはハジメ君のガンダムの装備。私がそのMSを倒そうとするわけじゃない。私が出来るのは戦いに出るパイロットたちの生還度を上げるための機体の調整。だったら私がするのはガンダム―――シュバルトゼロガンダムの装備を完璧に仕上げること。アレク少佐やマキナスの星剣使いを退けたハジメ君なら、この白いMSにだって……。そうだ、DNプロテクションを技術的に完全に使用可能になったのなら……。

 ヴェールは白いMSの正体に明言せず、ただ自身の仕事を再認識する。そして彼女はガンダムの強化プランについて修正を加えていくのであった。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。次回はまた黒の館DNを挟んでから、いよいよ第3章の本筋へと入っていきます。

ネイ「今回のお話はそもそも白いMSの襲撃された後に制圧したマキナス軍を追い払うための戦闘だった、ということですね」

グリーフィア「んーそうっぽい?正しく言うなら、白いガンダムを追ってたマキナス軍がそのままガンダムの荒らした遺跡をちゃっかり頂いたーみたいな感じかしらね」

そこのところははてさてどうなっているのやら(´Д`)ともあれシュバルトゼロガンダムも再度登場する時にはまた新たな武装に換装しています(*´ω`)お楽しみに!では今回はここまで。

ネイ「それでは次回黒の館DNもよろしくお願いいたします」


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黒の館DN 異世界戦争編 第5回 前編

どうも、皆様。月曜からYout○beで始まるバトルスピリッツサーガブレイヴ公開記念バトルスピリッツブレイヴ話数限定プレイバックが楽しみな藤和木 士です。ブレイヴは私の青春時代(*´ω`)

さて、今回は黒の館DNの公開になります。第五回はいよいよ空中母艦の紹介もあります。それではまず前編をどうぞ。


 

 

士「はいはい、今回も始めて行きますよー黒の館DN。作者の藤和木 士です」

 

レイ「ちなみに今回の黒の館DNの制作が始まったのは令和が始まった日の昼だよっ。レイ・オーバです!」

 

ジャンヌ「いよいよこのガンダムDNも第3章ですか。ジャンヌ・ドラニエスです」

 

レイ「前作の第3章が随分かかってるから、今回の進みがすごく早く感じちゃうね!」

 

士「ははは……まぁ、前作は第0章とかあったからね。何で0章かっていうのは、ちょっと構成内容が色々とあったからね。そこら辺は番外編あとがきにも書いている通りです(´・ω・`)」

 

ジャンヌ「ですけど、それを抜いても今作は進みが早いと思いますね。やはりストーリーをオリジナルで進めているからでしょうか?」

 

士「それは間違いなくある( ˘ω˘ )前作もオリジナルのところとかは結構早く打ててるし。原作に当てはめてだと本当に進みが遅い(´・ω・`)」

 

ジャンヌ「さて、今回も例によって人物紹介からですか?」

 

士「そうだね。ただ今回は人物紹介に含めて空中艦の紹介も前編でやっちゃうよ。後半ではドラグーナ・コアトルと新たなシュバルトゼロガンダム[リペア]の仕様である[ペルセウス・ツヴァイ]の紹介になるね」

 

レイ「コアトル……コアを取る?」

 

士「ごめん、ケツァルコアトルスから名称は取ってるから(;´Д`)」

 

レイ「あははー……でも藤和木も少しくらいそう思ってるんじゃ?」

 

士「ケツァルコアトルス!(某2人で1人のライダーの変身アイテム風)」

 

ジャンヌ「はいはい……それじゃあ、人物紹介から行きましょうか」

 

 

 

ディオン・バルトレー

 元の所属するケルツァート隊の母艦「ケツァール」の艦長。階級は大佐。年齢は50歳を超えた薄い銀髪の男性で、いくつもの戦場を、艦を変えながらも戦い抜いてきた名艦長。

 元の事に関しても、彼の雇い主であるガンドが共に時代を駆け抜けてきた戦友でもあることから気に掛けている。

 

 

エルド・グレイ

 ケルツァート隊B班の隊長を務める男性。年齢は34歳で、薄茶髪の男性。階級は大尉元々反旗を翻した反逆組のアレクと共に若手組を束ねた人物で、アレクとのコンビネーションは有無を言わさぬ相性を誇った。

 ガンダムを操る元については、決闘での激闘を制した腕を認めており、戦闘で危なっかしい面も含めて年相応という反応をしている。しかし、だからこそ元をフォローすることを忘れずに行動している。よくも悪くも、ガンダムシリーズの良き上司。

 

 

カルマ・リータ

 ケルツァート隊B班の隊員。階級は曹長。髪が左右で跳ねている、茶と金のメッシュ髪の男性。22歳。アレクの後輩に当たる。

 親衛隊若手組の1人で、アレクとは実力が違いながらもよきライバルと自称している。それゆえ元に対してもライバル視するが、どちらかと言うと超えるべき存在の1つとして見ており、仲は良好。自機の兵装にはレドルからシューターランスを引き続き使用する。

 

 

フォウル・ヴィンド

 ケルツァート隊B班の隊員。スナイパーであり、かつては親衛隊の鷹と呼ばれていた二つ名持ち。やや長い水色の髪が特徴的。階級は軍曹。20歳。

 若手組の1人で、周囲からはその物静かなイメージが祟って親衛隊の過激派にいじめられていたがアレクに誘われ反旗を翻す側に。狙撃の腕はかなりのもので、同じくスナイパーライフルを使用するエルドを超える。ガンダムの後方支援においても初戦にて窮地に陥ったガンダムを支援し、撤退するチャンスを作った。以来元から信頼を得ており、本人も警戒してはいるものの、その信頼に応えている。

 

ティット

ケルツァート隊B班の隊員。階級は伍長。19歳。若手組の1人でツッコミを入れるのが得意。シレンとは漫才をよく行う。任務においても堅実な仕事を行う。

 

シレン

ケルツァート隊B班の隊員。階級は伍長。19歳。若手組の1人でボケることがよくある。ティットと2人合わせて漫才チームと呼ばれる。攻撃を回避することに長けており、ガンダムのメイン観測者として行動する。ティットはその防衛。

 

ラルフ、メイ、リーオン、トーリ

 ケルツァート隊B班に配属された新兵。赤髪がラルフで、茶髪のポニーテールの女性がメイ、背が小さい茶髪の男性がリーオン、金髪の前髪をオールバックにしているのがトーリ。

 全員がガンダムと隊長のアレクに憧れており、新兵らしい危うさを持っている。

 

 

マリー・メヌエット

 ケルツァート隊の母艦「ケツァール」でオペレーターを行う女性。階級は曹長。普段はあっけらかんとした口調だが、任務となると別人の如くしっかりした口調へと変貌する。

 ガンダムのコールサインを「SZG」としたのは彼女である。

 

バイル・ブルーアイ

 メレト遺跡奪還戦を指揮した艦長。かつては「青い巨龍」と呼ばれるほどの作戦指揮官であり、その由来は名前の「ブルーアイ」から。

 

 

士「はい、人物紹介終了!」

 

レイ「早っ!?」

 

ジャンヌ「本当に早いことで……次は空中艦でしたっけ?」

 

士「その通り!ドラグディア・マキナスで運用されている空中母艦の紹介だぁ!例によってイラストはない文字だけの設定です(´・ω・`)まだ出てない艦も出てるよー(*´ω`)」

 

レイ「あぁ、哀しい」

 

ジャンヌ「哀れですね」

 

士「いとあわれなり\(^o^)/(色々と違う)」

 

 

 

◆ドラグディア

ニーベルング級大型空中艦

DD-WS06L

全長約250メートル

最大搭載MS数・40機

 

 

・ドラグディアで普及している代表的な大型規模の空中艦。艦橋が竜の頭を模しており、前部に向けてMS格納ブロックが二股に別れる形で接続され、更に後部にエンジンブロックを備える。艦橋を戦闘モードに移行させることが可能で、移行する際には竜の口を閉じることで外界からの被弾を防ぐ構造となっている(その際は竜の眼が外界を確認するカメラとなる)。エンジンブロックには戦艦用DNジェネレーターを1基ずつ備え、計6基を内蔵。そのほかエンジンブロックの繋がる中央ブロックにDN貯蔵コンデンサーを収容する。

 MSの発艦口は格納ブロック前面(つまり艦首側)が開く方式で、MSは後部から前面へと歩いて、もしくは移動用ハンガーに乗って移動しカタパルトに固定。リニアカタパルト方式でオペレーターからの発艦許可を受けて発艦していく。ちなみにカタパルトは上下に2段存在しており、計4つのカタパルトからMSを発艦させていく。格納ブロックも4つ存在しており、格納庫1つに10機分のMS・予備パーツを搭載、計40機分のMS運用ができる。ちなみにカタパルトのサイズはサブフライト用の竜や大型機などのことも考慮して縦横12メートルほどを確保している。更にカタパルトも1つの出口に5機分用意されており、一斉出撃が容易になっている。

 武装も主砲・副砲・ミサイルランチャー・バルカン砲と武装が揃っている他、MS格納ブロックを備える上部には竜の腕を模した作業用アームを搭載し、艦に対しての格闘戦を行うことも可能。

 なお、1.8メートル程度のMS運用の為にこれだけの大きさが必要か、とも思われそうだが、実際の所サブフライトシステム代わりに竜を何体か乗せることもあり、更にMSではない戦闘機などを受け入れる可能性も考えると船もそれなりの大きさが必要であるため。ちなみに現在サブフライトシステムの見直しが行われている。ちなみに宇宙での運用も可能(無論ドラゴンは連れていけないが)。

 艦体モデルは前部を機動戦士ガンダムシリーズのへヴィフォーク級からアイデアを頂き、

後部はガンダムSEEDシリーズのイズモ級の後部、艦橋はオリジナルである。エンジンの配置は山の字の形を横倒しにしたように配置している。名称はニーベルングの指輪から。マキナ・ドランディアの言葉ではフリード家の伝承として伝わる、最初の魔術で作られたとされる指輪から命名されている。

 

 

【武装】

・ミサイルランチャー

艦橋後部に備えられた24連装の迎撃兵装。ミサイルのサイズは艦体用であるため、MSからして見るとかなり巨大である。そのほかビーム撹乱幕専用の発射装置も連立している。

 

・バルカン砲

 実弾を連射する対空機関砲。艦艇全体に配置されており、前部で前部に10門、後部と中央ブロック掛けて8門を備える。

 

・収束ビーム主砲

 艦の前部作業用アーム正面に2つ配置された2連装主砲。左右の砲塔は上下にある程度の砲門傾斜が可能。

 

・実弾副砲

 艦艇中央ブロックに備えられた副砲。2門ずつ計4門備えられ、側面にバルカン砲を1問ずつ配置されている。迎撃能力として十分。

 

・作業用アーム

 竜の腕を模した作業用アーム。MS格納ブロックの後部に折りたたまれて設置されており、補給時のクレーンアームとして使用可能。

 

 

 

ミドガルズ級中型空中艦

DD-WS06M

全長約170メートル

最大MS搭載数・20機

 

 

・ニーベルング級より一回り小型の戦艦。全体的にダウンサイジングしたほか、前部のMS格納ブロックは1つへと減り、中央ブロックと一体化したような構成となっている。また作業用アームもなくなり、エンジンブロックも4つへと減少した。ジェネレーターの搭載数は4基。こちらも宇宙での運用を視野に入れている。

 全体的な形状はガンダムシリーズのサラミス級のように縦に長い構成となった。また名称はヨルムンガンドの別称「ミドガルズオルム」から。マキナ・ドランディアの言葉では「世界を外から守護する大蛇のような竜」を指す。

 

 

【武装】

・バルカン砲

 艦艇前部に4門、後部に4門装備された機関砲。形状はニーベルング級と同じ。

 

・ミサイルランチャー

 艦橋後部に格納される16連装ミサイルランチャー。ニーベルング級より装弾数は少ないがミサイルの種類は同じものを使用可能。更にビーム撹乱幕の発射機構も搭載している。

 

・収束ビーム主砲

 ニーベルング級と同じ出力のビーム砲。MS格納ブロック前部に1つ設置されている。

 

・実弾副砲

 MS格納ブロック後部上面に段違いになるように2つ設置される副砲。ニーベルング級とは違い、周辺にバルカンを設置してはいない。

 

 

 

アンク級小型空中艦

DD-WS06S

全長60メートル

最大MS搭載数・10機

 

・ミドガルズ級よりも更に小型の空中母艦。主に監視任務など、人数の少ない任務へ従事する部隊の母艦として運用される。いわば輸送機としての扱い。

 形状も今までのものが艦というのであれば、こちらはまさに輸送機とも呼べる規模で、飛行する船体の下の腹とも言えるコンテナを抱えるような構成となっている。とはいえ、MSを10機運用できるだけの性能を備えており、目的に合わせたバリエーション機がいくつも存在している。ちなみにこれだけのサイズでもサブフライトシステム代わりのドラゴンの搭乗も1体だけなら乗せられる(ただし暴れると凄まじく揺れる)。ちなみにこの艦は地上専用である。

 形状モデルは機動戦士ガンダムシリーズのミデア輸送機。機首は他のドラグディア艦艇と同じく竜の意匠を持ち、戦闘態勢に移行できる。名称は古代エジプト語の「生きる」だが、どちらかと言うと今回は仮面ライダーオーズのアンクから名称を頂いている。マキナ・ドランディアの言葉では「命を運ぶ翼竜」を指す。コウノトリみたいなものである。

 

 

【武装】

・レーザー機銃

 船体上部に6門を備え、対空迎撃を行う光学兵装。

 

 

 

 

◆マキナス

マキュラ級大型空中母艦

WS-MM07L

全長約240メートル

最大MS搭載数・36機

 

・マキナス軍が運用する、大型の空中浮遊艦。大型エンジンブロックを後部に2機装備する。ジェネレーターの数は4基+艦中央ブロックの1基MSの運用数はドラグディアのニーベルング級に劣るものの、最大の特徴はその汎用性である。

 艦体下部をスラスターホイールと呼ばれる浮遊兼接地用換装ユニットにしており、空中では飛行アシストのDN放出フィンスラスター、地上では90度回転させて地上を走行可能なグランドホイールへと変形でき、陸をも制する艦として運用できるようになっている。これを用いて地上を走行することで無差別破壊兵器としても運用することが可能である。

 艦体自体もニーベルング級と同じ前方が二股に別れた形状をしているが、艦の上面すべてが機体発進用滑走路となっており、格納ブロックからエレベーターで移動し瞬時に展開・ゴーストを発艦させることが可能なつくりとなっている。更に艦前方側面には格納庫から直で行けるように発艦口(元は荷物搬入路)が備わっており、出撃能力はかなり高い。

 武装に関してはドラグディアと概ね同じような構成の他、艦先端には高収束ビーム砲「スパイラル・カノン」の砲身を2門装備している。ただし外気に晒されている構成の為、開戦直後の破損率は高い(MS格納庫がその後部に存在するため、誘爆の可能性も高い)が、ユニット式で砲身部分をパージすることが可能。

 艦の外観としてのモデルは前部がマクロスシリーズの甲板一体型シールド等をモチーフに、後部は機動戦士ガンダム0083のアルビオンの物に近い。そしてスラスターホイールは機動戦士Vガンダムのアドラステア級ことタイヤ戦艦のタイヤで大きさを小さく、かつ数を多くして船底に装備しているイメージ。名称はマクロスの読みを崩して命名している。マキナ・ドランディアの言葉では「大いなる鋼の賢者」の意味を持つ。

 

【武装】

・対空レーザー機銃

 前部に8門、後部に8門装備した光学兵装の対空機銃。威力は低いが、艦に搭載されるため、MS対しては十分な威力を誇る。

 

・ミサイルランチャー

 艦体の中央ブロックと艦橋を繋ぐ接合部付近から発射される誘導兵装。10連装の物を2つに分けて搭載しているため計20連装分のミサイルを順に発射可能。アンチビーム爆雷の発射も可能。

 

・連装副砲

 中央ブロックに4基配備される実弾砲塔。2段重ねで配備されており、個別に別方向を向いての発射が可能。

 

・高収束貫通ビーム砲「スパイラル・カノン」

 艦先端にユニット方式で搭載される、高出力ビーム砲。前方にしか撃てず、砲塔が露出しているため破損率が高いものの、威力はケタ違いで艦体をも完全に撃破することが可能。なお被弾した際はユニットをパージして連鎖爆発を防ぐ。

 武装イメージモデルはマクロス系列のマクロスキャノンと宇宙戦艦ヤマトの波動砲。

 

 

 

 

タイタン級中型空中母艦

WS-MM08M

全長約160メートル

最大MS搭載数・18機

 

・マキュラ級からMS格納ブロックを減らし、ダウンサイジングした中型規模の空中艦。ドラグディアのミドガルズ級と同じく、縦に長い構造をしている。

 武装面での変更としてはユニット式のスパイラル・キャノンを廃止。安定性と信頼性を高めたユニット式伸縮型砲身持ちの2連ビーム砲へと変更された。これは艦を預かる者の実力を考慮した武装変更である。

 形状イメージモデルはマキュラ級のイメージを、機動戦士ガンダム00のバイカル級甲虫巡洋艦に落とし込んでいる。名称は巨人を意味するタイタンから。ただし作者としては機動戦士Zガンダムに登場したティターンズからも取っており、マキナ・ドランディアの言葉でも「大地に君臨する暴君の巨人」を意味する。

 

【武装】

・対空レーザー機銃

 マキュラ級と同じ対空兵装。前方に4門、後方に6門装備する。

 

・ミサイルランチャー

 マキュラ級にも装備されていたミサイル発射兵装。大体同じ部分に装備されているが、弾数は片側8発の計16発に減っている。

 

・実弾副砲

マキュラ級に搭載されているものを重ねずに配備したもの。中央ブロックに2機段違いで配備されている。

 

・伸縮2連ビーム砲

 スパイラル・カノンと同じようにユニット化されて艦先端に装備されるビーム砲。正面しか撃てない点を引き継ぐうえ、威力が減衰しているが連射性を獲得し、更に収納可能であるため不使用時の損傷率が少なくなった。

 

 

 

アローズ級小型空中母艦

WS-MM09S

全長約65メートル

最大MS搭載数・12機

 

 

・マキナス軍が運用する、小型のMS運用・輸送母艦。ドラグディアのアンク級と同じく小型だが、MSの格納量に関してはそれを上回る。また船体を上から見ると中央の船体左右に同型のMS格納コンテナを抱え込み、3つの矢を束ねたような形状を持つ。これが名称にもあるように、3本の矢達、「アローズ」の元となっている。

 外見モデルは特に考えてはいない。名称は機動戦士ガンダム00の独立治安維持部隊「アロウズ」から。マキナ・ドランディアの言葉では「決して折れない独立のための3本の矢」という伝承を指す。

 

【武装】

・レーザー対空機銃

 他の中・大型空中母艦の物より小型の光学兵器。威力は十分なものを維持しているが、ほぼ戦闘に入らないことを想定しているため、あまり期待は出来ない。

 

 

 

 

士「以上が、異世界戦争編における空中艦の詳細です。これらの空中艦から、MSが発進していくわけです( ˘ω˘ )」

 

レイ「一応大中小の3つで考えているわけだねー。ねぇ、ガンダム専用母艦って作らないの?」

 

ジャンヌ「今でこそ元さんはケルツァート隊の母艦であるニーベルング級が母艦となっていますけど、その内ケルツァート隊の母艦とかをガンダムの為に新しくしたりとかは藤和木なら作りそうですよね」

 

士「ご名答!実際それは考えてるね。……ただまぁ……本当に考えるのが大変だけどね(´・ω・`)戦艦系列のイメージ考えるの難しい…」

 

レイ「あー……確かにこの説明も大分無理ありそうだしね……」

 

ジャンヌ「とはいえ、それは承知のはずでは?」

 

士「そうだよ。全力で伝えて見せるっ( ゚Д゚)では後編はMSについての紹介になります( ˘ω˘ )」

 




前半はここまでとなります。引き続き後半もよろしくお願いいたします。


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黒の館DN 異世界戦争編 第5回 後編

引き続き黒の館DN後半の公開です。

後半ではガンダムの新たな装備群「ペルセウスツヴァイ」とドラグーナ・コアトルに関しての紹介となります。
どちらも当初とはやや変更した部分がある機体となっています。それではどうぞ。


 

 

士「それでは後半戦始めて行きましょう。作者の藤和木 士です」

 

ネイ「たまにはお嬢様達と順番変えてもいいんじゃないですか……?アシスタントのネイ・ランテイルです」

 

グリーフィア「んー、そう言えばそうね。ていうか、最近新キャラの登場割合少なくないかしらぁ?グリーフィア・ダルクよぉ」

 

士「仕方ないよ……そう名前のある新キャラの出る割合はそれほど多くないから……さて、後編ではガンダムの新兵装とドラグーナ・コアトルの紹介です」

 

ネイ「あ、このコアトル。確か以前作者さんのパソコン拝見した時にはコアトルスってなってませんでしたか?」

 

士「はい、来ましたねー。それね、文章中で打ちミスしたわ(;´Д`)」

 

ネイ「……え?」

 

士「だから、打ちミスしたの(´Д`)」

 

グリーフィア「あらあら~……つまり本当はコアトルスっていうこと?」

 

士「そうっす(^ω^)」

 

グリーフィア「極刑☆」

 

士「なんでぇ!?( ゚Д゚)」

 

ネイ「なんで文章の方直さなかったんです……」

 

士「いや、コアトルでも大元の意味は変わらないから……(´・ω・`)」

 

グリーフィア「大元って……あぁ、ケツアル?ケツァルコアトルスだったかしらぁ?」

 

士「確かどっち表記でも問題ないはず。俺の手元にある世界最大の翼竜展の本(2007~2008)によると、ケツァルコアトルスとなっているね」

 

ネイ「……ちょっとウ○ズさん意識しました?によるとの所」

 

士「祝え!(゚∀゚)」

 

グリーフィア「やっぱりねぇ。ま、そろそろ紹介に行きましょう」

 

士「じゃあ最初にガンダムの新装備「ペルセウス・ツヴァイ」から。次にコアトルの紹介になります」

 

 

形式番号 DNGX-XX000-SZver1[Perseus-Ⅱ]

シュバルトゼロガンダム[ペルセウス・ツヴァイ]

 

機体解説

・シュバルトゼロガンダム[リペア]をベースに新たな装備群を装備し、近接戦闘能力を強化した装備スタイル。特徴は様々な武装を搭載した重装複合シールド「マルチ・ウエポン・シールドⅡ」である。

 本機投入前に[Perseus]と呼ばれる装備群を搭載したものの、ウリであった「マルチ・ウエポン・シールド」がガンダムの出力を以てしても武装の搭載しすぎが原因となって途中で喪失。それを反省し、武装の見直しを図ったのがこの[Perseus-Ⅱ]である。

 近接兵装充実の他にも、実験兵装をいくつか装備しており、実験機としての側面を持っている。これらの兵装運用は6月中旬の元がケルツァート隊配属後2回目の出撃で運用されており、1回目の出撃時に成果を発揮できなかった[Perseus]の汚点を見事に雪ぐ結果を残した。ただし本人達からも不満はあり、ガンダムの機付長であるヴェールは更なる武装群の改良を目指し、新たなタイプである複合バックパック運用試作兵装群である[Hercules]の開発に取り掛かることとなる。

 機体名称はギリシアの英雄「ペルセウス」から。作中ではマキナ・ドランディアにて海の大竜(太古に暮らしていた首長竜のような竜)を退治したとされ、創世記に名を遺す竜人族の英雄から名付けられた。機体カラーは装備に合わせ黒に白のラインを入れたものをDNフェイズカーボンの設定により変更している(視認性向上の他、装備装着時の装甲変色機能(ガンダムSEED Destinyのインパルスのようなもの)を実験的に導入)。

 

 

【追加機能】

・DNプロテクション

 シールドに搭載したリアクターユニットから展開する、粒子防壁機構。元々は初代シュバルトゼロガンダムことシュバルトゼロガンダム(DNバージョン・タイプ0)のフェザー・フィンファンネルで形成していたもので、それらを技術のみ流用し、ガンダムのシールドへと遠隔操作機能を持たせた発生器で一面のみだが発生させることに成功した。

 技術が完全に解析できたか試すための、いわばテスト用兵装であり、不測の事態に対するフェイルセーフティのために防御能力の高いシールドへと搭載した。結果タイタン級空中母艦の主砲も防ぎ切り、応用した運用を行ってもおり実験兵装としては十分成功と言える成果を挙げた(ただしガンダムのOSであるスタートからは「技術的通過点で、ガンダムの本来の能力までには遠い」という評価であった)。

 

 

【追加兵装】

・マシン・ビームバスター

 機体肩部ハートポイントに装備される、回転ドラム式ビームガン。薄い円形の回転式銃身を持ち、それらを回転させつつ発射することでガトリング砲と同じだけの連射能力を付与、冷却能力も備えた兵装となっている。肩部上部のハードポイントにアームで保持されているので、武装を構えたまま、ある程度の向きを変更しての射撃が可能。

 武装モデルはSSSSGRIDMANのバスターグリッドマンのガトリング。形状のモデルはダブルオー系列のGNドライブのバインダーから。特にガンダムダブルオーダイバーエースのドライブユニットの形状に、縁に沿ってビームガンの銃口を搭載したイメージ。

 

・マルチ・ウエポン・シールドⅡ

 機体の左側に装備する、多武装収納シールド。シールド内部に武装を内蔵(というより、装備の機能からして装填が近い)し、必要に応じて取り出し、展開して戦闘を行う。内部のウエポン格納ケージはシールド自体から取り外す(抜き取る)ことが可能で、この部分を交換することで速やかな武装補充が可能となっている。更に展開部もシールド下部以外にも裏面蓋を開くことで左・右側面武装を取り出すことが出来る。

 収納武装は初出撃時には槍系武装のショット・パルチザン(中央)、ショットガン(右側)、ショートソード(左側)を備えている。またシールド外縁四角にはプロテクションリアクターユニットを備え、必要時に展開する。

 シールド自体の形状は様に広い六角形状。武装自体の機能イメージとしてはガンダムビルドファイターズAのマーキュリーレヴから着想を得ている。ショットガンとショートソードもそこからリスペクトして内蔵している。

 

・ショット・パルチザン

 槍の穂の根元にビームガンを備えた、多機能兵装。マルチ・ウエポン・シールドⅡのウエポンケージ内に内蔵されている。

 普通に手に持って使用する他、シールドから穂先のみを展開することで斬撃・突き刺しに、射出により投擲武装として使用可能。

 

・ショートソード

 DNのコーティングによりMSの装甲を斬り裂けるほどの切れ味を持つ実体剣。シールド裏のウエポンケージに内蔵される。

 実体剣としては今までの兵装よりも小振り、普遍的な剣であるが、ガンダムの有り余る高濃度DNにより、切れ味は他の追随を許さない。またそれ以外にもガンダムの機動戦においても武器が小柄であるというのは少なくない利点であり、シールド自体も大きい為隙を補う武装としてもこの場合優秀なものとなっている。シールドから剣先のみを伸ばして使用することも可能。

 武装モデルは特にないものの、形状としては中世のショートソードの柄に片刃の刃を採用している。

 

・ショットガン

 マルチ・ウエポン・シールドⅡのウエポンケージに内包する実弾兵装。特殊コーティングされた実弾を発射し、散弾として広範囲にダメージを与える。

 ポンプアクション方式を採用しているものの、シールドに装備した状態でも銃身を露出させた1発のみの発射が可能。

 ショットガン自体の造形モデルは特にこれといったものはなく、一般のFPSなどにも登場するショットガンのようなイメージである。

 

・プロテクションリアクターユニット

 マルチ・ウエポン・シールドⅡの外縁四隅を構成する、遠隔操作式の障壁展開のための粒子偏向ユニット。ガンダムのフェザー・フィンファンネルに防御兵装として運用されていたDNウォールの互換兵装の「DNプロテクション」を一面のみだが展開可能とする。

 基本的に防御兵装としてしか使用を考えられていないが、実験では武装の特性を利用し、リアクターユニットを左右で2つずつ合わせて簡易解放バレル方式のビームキャノンとしても使用可能。

 なお本武装の運用としては上出来とされ、ヴェールは最終的に完全なシュバルトゼロガンダムとしての武装群[D-STYLE]の武装群にある武装の導入を決意している。

 武装のモデルとしては機動戦士Vガンダムのメガビームシールドのビット。ビームシールド形成がDNプロテクション形成となっているが、新たにプロテクション形成を利用したビーム照射フィールドとする運用は機動戦士ガンダム00のGNフィールドでビームを束ねる技術から影響を受けている。

 

 

 

ドラグーナ・コアトル

形式番号 MS-DD08SP-KMC

 

・新たに結成されたケツァール隊に配備された、ドラグーナおよびコマンドの改修機。正確に言うと、ドラグーナ・レドルのカモフラージュ機である。

 レドルは本来レドリック親衛隊に配備された機体であり、レドリックの逮捕によりその機体は全て事件関係物として汚点にならないよう廃棄される予定であった。しかし機体のバリエーションが多く、何より反旗を翻した者達も機体の性能自体は気に入っており、素体としても非常に良い機体であった。そこで装甲を張り替え、まったく別の機体として生まれ変わったのがこのコアトルである。

 機体は主に偽装タイプと新規生産型に分けられ、偽装タイプはレドルから装甲を張り替えた初期型、新規生産型は隊員の練度に合わせ通常のドラグーナから改装された新規の機体である。偽装タイプには主に旧レドリック親衛隊反逆派が装依する。

 MSの外見としては儀礼用の装甲パーツを一切排除し、通常のドラグーナと同じ曲面装甲にスラスターが付いたものを採用している。レドルとは一見して思えない外観となっており、偽装については完璧と言える。

 レドル譲りの多様な武装を装備でき、ガンダムの所属するケルツァート隊B班の機体はガンダムの援護を行うためにB班専用装備の「Gアシスト装備」が基本装備となっている。

 何より、機体の新規生産が最小限に抑えられたことがこの機体の成功点であり、新たな姿を得たドラグーナ・レドルは、敵対していたガンダムを守る立場となって戦場を駆けていくこととなった。

 

【機能】

・カメラ切り替え機構

 ドラグーナ全機に取り付けられるカメラ切り替え機能。レドルから比べて頭部ヘルメットがなくなり、通常のドラグーナと同じ切り替え方式となっている。

 

・ハードポイントシステム

 ドラグーナから継承される武装装着機能。レドルの装備位置を継承している他、肩部増加装甲の装飾がなくなったことで肩へのハードポイント使用箇所が増えている。使用可能箇所は肩前面と後面・背部側面・膝側面

 

・胸部センサー強化アンテナ付き増加装甲

 レドルが頭部兜型増加装甲に内蔵していたセンサー強化装置を胸部の装甲として変更し装備している。以前と変わらず、戦術データリンクによる同型機との連携強化に加え、B班の機体にはガンダムの戦闘状況をモニタリングする機能を備えている。

 

【武装】

 基本的にレドルと同じ兵装を使用可能。そのため新たに追加された武装とB班装備のみを紹介。

 

 

・フルバーニアン・バーニアシールド

 隊の隊長機であるドラグーナ・アレキサンドルが装備する増速器付シールド。裏面にブレード・エッジを備えている点も同じであり、機体左肩部に背部側面から伸びるアームで固定されて1枚を装備する。高速移動時には背面中央にアームを固定し、ブースターとして使用する。

 

・ビームマシンガン

 新人用の機体のために用意された連射式ビーム兵装。腰背部に選択装備される。ドラムマガジン交換形式で、上部に備えられたドラム型のマガジンを交換して使用する。マガジンはサイドアーマー下部のジョイントに携帯する2基。

 形状モデルはザクⅡのザク・マシンガン。武装としての性能はギラ・ドーガの物を参考にしている。

 

 

<B班装備「Gアシスト・スタイル」>

・ガンダムが所属し、支援するB班の機体専用のカスタマイズ。主に遠距離支援を目的としている他、全機肩部にデータ観測用のカメラ付きショルダーフルシールドを装備している。

装備の全体的なモデルはガンダムデュナメス。ショルダーフルシールドはGNフルシールドをモデルとしている。

 

【機能】

・データ観測用カメラユニット

 機体肩部ショルダーフルシールドの固定部に装備される、観測用カメラ。主にシュバルトゼロガンダムが使用する試作兵器の撮影が主任務であり、機体とのマッチング具合や、使い勝手などを外部から測定する。

 

【武装】

・大型レールライフル

 レールガンをライフルの様に手持ち式にして装備した兵装。ショルダーフルシールドの左側裏面に装備する。

 中・遠距離支援用の兵装で、援護攻撃が主任務となるB班において有用性は高い。

 武装モデルは蒼穹のファフナーに登場するファフナー用武装の1つレールガン。

 

・ビームスナイパーライフル

 長距離の敵を狙い撃つための長射程ビームライフル。ショルダーフルシールドの右側裏面に装備する。

 ガンダム支援武装の1つであるが、扱いが難しく、使用するのはB班隊長のエル・グレイ大尉とスナイパーのフォウル・ヴィンド軍曹のみ。

 武装モデルはガンダムデュナメスのスナイパーライフル。

 

・3連ビームキャノン

 3つの独立可動式砲門を持ったビーム砲。ショルダーフルシールドの右側裏面に選択装備する。

 スナイパーライフルを装備しない機体に主に装備される兵装で、通常は3門のビーム砲として使用する他、トリガーユニットで3門を束ねることで高出力のビームを放てるバズーカモードへと切り替わる。なおフルシールド状態を解除しないと撃てない。

 武装モデルは革命機ヴァルヴレイヴのヴァルヴレイヴⅠ号機が使用する「バズ・バスター」。

 

・ショルダーフルシールド

 機体肩部ジョイントで保持する可動式大型シールド。通常時でも側面を防御するほどの大きさを誇るが、ジョイントのアームを稼働させることでシールドを前に90°回転させることで、前面を覆った「フルシールド形態」へと移行し、前面の攻撃を完全に防ぐ。

 シールド自体にも可動域を持ち、下部を展開することで防御したままの射撃が可能。

 武装モデルはガンダムデュナメスのGNフルシールド。

 

 

士「はい、それじゃあ今回の紹介は以上になります」

 

グリーフィア「ねぇ、ちょっと今までのを見返してたのだけど、マキナート・レイにビームアサルトライフルなんてあったかしら?」

 

士「あぁ、それ作中で明言されていないけど、マキナート・コマンダーのやつ。同じ名称だし、それにマキナート・レイには射撃兵装が禄なのがないから追加しておきました。あと、気づいた方はいるかもしれませんが、インターミッションで登場したマキナート・エアレイダーに新たにシールドが追加されています。(´・ω・`)形状としてはリゼルの物に近い、攻撃性能のないシールドをイメージして頂けると幸いです。ちなみに本作のMSは別の機体の兵装を使うことはザラにあると思っていてください。なるべくそれらの兵装は説明しようとは思いますが、無理な時もあるかもなので……(´・ω・`)」

 

ネイ「ちゃんとそれらもできてこその、作者なのでは……」

 

士「(´・ω・`)今回はここまで」

 

グリーフィア「あら、すねちゃった」

 

ネイ「というより、顔文字のままにしょぼくれてますね」

 

士「さぁ、次回から波乱の第3章の展開が始まりますからねー!」

 

ネイ「え、もう3章入っているじゃないですか?」

 

グリーフィア「インターミッションって書いてあったから、多分これは幕間って感じなのね。これはいよいよ味方サイド死んじゃうかしらぁ~」

 

ネイ「姉さん……不吉なことはやめようよ……」

 




後編もこれにて終了となります。ご拝読ありがとうございます。

次話からいよいよ第3章本番です(´・ω・`)白いガンダムとの対決に加え、主人公元とヒロインジャンヌの過去、現在、そして未来のための1つのステップとなるお話です。

それでは短いですが、次回もよろしくお願いいたしますm(__)m


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EPISODE32 拒絶1

どうも、皆様。最近は暑くなってきましたね。私も干からびる思いで過ごしています、藤和木 士です。

ジャンヌ「本当に暑いです……外に出るのが毎度嫌になってきます。アシスタントのジャンヌ・ドラニエスです」

レイ「アイス欲しいよねーアイス……。アシスタントのレイ・オーバだよー」

さて、小説本編はEPISODE32、第3章も幕間の物語から本筋に入っていきますよー(´Д`)

ジャンヌ「時期的には……今と同じくらい?ですか?」

えーと、大体6月の終わり付近だね。

レイ「そっか。じゃあ現実より少し早い時期なんだね」

そうですね。とはいえ、書いていたらすぐに追い抜かれますし、それに参考にしている暦は先の暦を用いていますけどね。
さぁサブタイトルから匂う不穏な空気!どんなことになっていくのか!?(^ω^)

レイ「あ、やっぱりなんか嫌な予感なんだね」

ジャンヌ「不穏さは感じていましたが、やはりなんですね……」


 

 

元の2度目の実践参加から5日が過ぎた。元はこの2週間学校からの帰りがけにドラグディア軍の基地の1つ、セント・ニーベリュング市内のフリード・リヒ地区基地へと通っていた。ケルツァート隊を保有する基地であり、総司令部のお膝元であるこの基地が元の勤める場所だった。しかし元は非常勤の軍人である。これほど頻繁に行く必要がないにも関わらず、基地へと向かう理由はいくつかあった。

 1つは訓練のため。あれほどの激闘を制した元でも、修練を怠るのはよくないと判断した。そのためグランツや直接の上司であるアレクに許可をもらい、ほぼ毎日訓練とガンダムの機体状況確認のために通っていたのだ。おかげで先週の戦闘でもその力を余すことなく発揮できた。

 もう1つがとある調べものについてだ。これは記憶が戻ってから何度か考えたことで会ったのだが、元は何度か元の世界へ戻る方法を考えていた。どうして元は遺跡で発見されたのか、未だその理由は分かっていない。光を発してそこにいたというのは、あのマキナス軍と共にいたワルトが言っていたことだが、ならどうやってこの世界にやってきたのか。もしくる方法があるのであれば、戻る方法もあるのではと考えた。そしてそういった例が過去にないか軍のデータベースを借りてスタートに調べてもらっていた。

 だが、収穫はそれほどない。そもそも別世界からの来訪者という例は今までに救世主ガンダム以外実例がない(その実例も伝説なので定かではないが)。国民も外の世界があることは知っていても、そこに至る道の確立が出来ていなかった。ただ、その直後スタートがそれを明かした。

 

(ガンダムなら、世界の壁を越えられる)

 

 スタート曰く、それはガンダムであれば次元の壁を越えられるという物であった。ただしそれには特別なものが必要であり、それがない今ではどうしようもないというのが答えだった。

 そう知らされても元はスタートに調査を依頼した。元が最後に覚えているあの爆発の光。あれが元の異世界転移に関わっていることは頑なに想像できる。あれが何だったのか、もし似たような事例がMSの技術が進んでいるこの世界のデータベースなら分かるかもしれない。そう踏んだのだ。

 他にも理由はあるが、主なのはその2点。そして訓練と調査のために今日も元は基地へと通っていた。その隣に、彼の主を連れて。

 

 

 

「……ふぅ、こんなところですかね……」

 

 銃を降ろし、射撃用バイザーを外す元。射撃訓練を終えると、その様子を後方のスペースで見学していたジャンヌが小さく拍手をしつつ声を掛けてくる。

 

「お疲れ様です、ハジメ」

 

 ジャンヌは制服姿で訓練を終えた元を迎える。彼女ももちろんだが、元も訓練用のジャケットの下は制服のシャツ、制服姿でここに来ていた。そのため普通なら軍の施設に制服姿の学生というおかしな構図が生まれている。

 銃をメンテナンス用ホルダーに戻し、訓練場から出た元はジャケットを脱ぎ彼女の差し出したタオルを受け取る。

 

「申し訳ありませんお嬢様。今日も自分の訓練に付き合わせてしまい……」

 

「仕方ありません。今日はネアもいませんし、1人で帰るのもあれですから」

 

 ジャンヌは苦笑しながら答える。あれというのは、おそらく今までの騒動が関係しているのだろう。あれだけのことがこの2、3か月で起きている。トラウマになるのもあり得ない話ではない。

 しかし元が言った意味にはもう1つあった。元は主であるジャンヌが、一緒に帰れというのならそれはそれで従うつもりだった。と言うより、この基地への通い詰めを始める時も元はそれを伝えている。それにも関わらずそれに付き合ってくれているのは、ジャンヌの普段を知る元もやや気にしていた。

 

(決闘の時はレイアと帰る時間もなかったからかてっきり2人の時間が増えると思ったけど、ここ1週間はネアさんがいる時でもこっちに来ている。……何かあったのか?)

 

 あの決闘後、ネアは無事グリューネと共に暮らせるようになった。ただその後の後始末など、ノルン1人で抱えきれない問題もありネアはしばらくまたファーフニル家で世話になることになった。そのため元が訓練などに行くときはたまにネアにジャンヌを任せていることも先週までは多々あった。

それでもネア自身が問題解決の為に放課後ノルンやグリューネを手伝っていることもあって、ジャンヌが元と共に基地へ来ている日々になっている。ただ最近はネアがいる時でもジャンヌはこちらに同行していることもある。

 レイアやネアとの不仲というあり得ない考えを思い浮かべる元。それは表情にも行動にも出ており、ジャンヌにそれを指摘される。

 

「―――ちょっと?手が止まっているけど?」

 

「――――あ。あぁ、すみませんお嬢様。少しぼーっとしていまして……」

 

「まったく……少しは訓練も休めばいいのに。別に強制はされていないんでしょう?たまにはわたくしと真っすぐ家に帰って休んだ方が良いんじゃないですか」

 

 あまりにも予想からかけ離れた提案。いつもなら「それでわたくしやレイアさんを護れるっていうの!?」とでも言われそうな雰囲気だ。しかし最近はジャンヌも自身への当たりが弱くなったというのを感じる。これは信頼関係が生まれた、といっていいのだろうか。

 とはいえ、その言葉の中に見られる自身と一緒に帰るということに引っ掛かりを覚えた元は、思い切ってその理由を聞いてみる。

 

「……失礼ですが、お嬢様。最近は自分の方によくお付き添い頂いていますが、レイア様やネアさんと一緒にお帰りにはなられなくてよろしいのですか?」

 

「っっ!?ハジメ、それはわたくしがレイアさんを嫌いになったとでも思っているのかしら?」

 

 元の指摘に驚きつつも、言葉の訂正を求めるジャンヌ。自身が思っていたことが思い切り指摘されたことと、ネアがぞんざいに扱われていたことに心の中で苦笑しつつも表面には出さず返答する。

 

「いえ、お嬢様でしたら、私がいない間に存分にレイア様を独り占めしているものかと……ネアとならまだ安心ですし」

 

「なんですか、その勝手すぎる妄想……まぁ、したいのは事実ですけれど。でも、最近はレイアさんの都合がつかない状況が多いですからね」

 

 事実なんですね、という回答は伏せつつのちに続いたレイアの状況についてやや気になる元。都合がつかないとは一体どういうことなのだろうか。それとなく質問する。

 

「都合がつかない……それは一体、どのような用件で?」

 

 すると、ジャンヌは少し虚を突かれたといった様子で聞き返す。

 

「あら……知らなかったかしら?レイアさんが今年の詩竜双極祭の出場者に選ばれたの」

 

 ジャンヌの口から語られた詩竜双極祭という単語。それを元はうろ覚えながらも手帳の行事予定にあったのを思い出す。マネージメント科でもそのような単語を最近聞いたような気もする。しかし、その内容を元はよく知らなかった。

 調べればすぐに分かることだっただろう。しかし、元はふと思った。つい先日、元はジャンヌの詩巫女養成科とマネージメント科の生徒で結ぶパートナー制度、そのパートナー相手となった。詩竜双極祭というのがどういうものかは分からないが、それがもしパートナーなどの間で重要なことなら、聞いておいた方が良いのではないだろうか。せっかくなら、ジャンヌ自身の口から教えを請いたいと思った。

 そこで元は断られるだろうと思いつつ、ジャンヌにダメ元で詩竜双極祭の説明をお願いする。

 

「あー……そういえば、授業で聞いたような気も……。けど、あんまり詳しいことは知らないですね。大変恐縮なのですが、お嬢様に教えて頂いてもよろしいでしょうか?その詩竜双極祭の内容というものを」

 

 やや遠慮しがちな態度で元は言った。元から聞き届けられるとは思っていない。だがその様子にジャンヌは少し呆気に取られた様子でそれを承諾した。

 

「え、まぁ、いいけど……歩きながらでもいいかしら?」

 

「あ、はい。構いませんよ」

 

 意外だった。今までなら少しばかり罵倒が飛んでくると思っていたからか、この対応は不思議と戸惑ってしまう。まさか本当に承諾して頂けるとはと思いつつも、せっかく乗り気なのだからとすぐに出られる準備をしてジャンヌと共に訓練場を後にする。

 訓練場を出て、基地の通路を通りながらジャンヌはまず詩巫女の始まりの部分から解説をする。

 

「詩竜双極祭は聖トゥインクル学園に通う詩巫女候補生の1つの関門よ。そもそも詩巫女はドラグディアとマキナス、それぞれの国の象徴である「クリムゾン・ドラゴニアス」と「マギア・マキナス」の内、クリムゾン・ドラゴニアスの使い手として選ばれた存在なの。それくらいは知っているわよね?」

 

「えぇ。かつては戦争でも活躍していた生ける機竜、そのドラゴンと心を通わせた存在。巫女の名の通り、女性しかなることは出来ないんでしたよね?」

 

 マネージメント科に入る際、科の目的となる詩巫女のサポートというものと共にそれを聞かされた。最初の頃はあまり気負う必要はないとは言われたが、今ではジャンヌのパートナーも務めることになり、多少なりともその気は従者だけの関係より更に強まった。

 しかしながら、無茶苦茶な内容だと思う。竜という巨大な存在をジャンヌのような少女が操るのかと思うと、竜の操り手となる少女にどれだけの責任感を持たせるというのだろうか。

 そんなことが何百年と続いているのを思うと、どこかくだらなさと、それに付き合わされる少女達の身になってみろと戦争を始めた者達に言いたくなる。もっとも今では自分もその戦争を行う者の1人であるが。

 元の言葉を肯定し、ジャンヌは元の考えていたことにも付け足しを行う。

 

「そう。それと貴方が履修しているマネージメント科も、詩巫女の守護者として配置されていた「竜騎士」と呼ばれるものが形を変えているものなの」

 

「形を変えて……つまり、マネージャーは詩巫女を護る存在だと」

 

「えぇ。最近じゃまったく象徴が戦いに出ることがないから、必修科目だったMS運用もなくなっちゃったらしいわ。けど志願者は要請すれば受けられる。確か貴方の知り合いもMS科目の履修はやっていたんじゃなかったかしら」

 

 ジャンヌに指摘され、思い出す。最近知ったのだが、どうもレヴが学校側に嘆願してMSの科目履修を受けてもらっていると。受けられるようになったのがこの2週間の間で休み時間も含めて講義を受けているのもあってあまり詳しい話は聞けていないが、あまり知られていない校則を利用したと言っていた。それがジャンヌの言うマネージメント科のMS科目履修志願なのだろう。

 

「そうですね。レヴが最近始めたと言っていました。それの事だったんですね」

 

 そんなジャンヌの話に頷きを返す。特に竜騎士という単語はまったく知らなかったので、今聞いて正解だった。先程の責任感に関しても、その竜騎士とやらが軽減することも出来るだろう。そんなかつての詩巫女を護る役目に自分が就いているのは元も多少嬉しい気持ちになる。元はそんな気持ちでジャンヌの説明の続きを聞く。

 

「まぁ、昔のいつからか戦争に投入されるようになりましたが、最初の頃は象徴と心を通わして平和を祈るのが目的だったみたいですけれど。さて、ここからが詩竜双極祭の概要よ」

 

「はい。お願いします」

 

 かつての目的という気になることを口にしながらも遂に本来の目的である詩竜双極祭の説明に入るジャンヌ。元もしっかりとした心持ちでその話に聞き入る。

 

「詩竜双極祭は簡単に言ってしまえば、詩巫女がクリムゾン・ドラゴニアスと共鳴するための練習。学園内の詩巫女養成科生の中でもトップクラスの人達を集めて、校舎の中央の中にある黒いオベリスク「ドラグーン・オベリスク」に向かって歌うの。その時に歌うのは「誓いの歌」。A級詩巫女の課題曲でもある歌をオベリスクに向かって、オベリスクに影響する反応を競う。それが詩竜双極祭の主な内容よ」

 

「なるほど……オベリスクの反応を競う、ですか。そのオベリスクとは何か特別なものなので?」

 

 ジャンヌからの説明に、そう聞き返す。オベリスクというものは聞いたことはある。確か旧遺跡のオブジェクトで四角い石の柱だっただろうか。昔にやっていたアニメで、その名前を冠した巨人の兵士が出たのを見てパソコンで調べたことがあった。流石に動くことはないだろうが、そのようなギミックがどうやって行われているのか気になる。

 ところが流石に詩巫女候補生であるジャンヌも知らないようで、首を横に振って分かることだけを元に語る。

 

「さぁ、そこまでは……。けどうちのあの学校、建つ前から竜人族の発祥の地って呼ばれていたらしくて、オベリスクもその頃のものですって」

 

「発祥の地……つまり、あのオベリスクは創世記のものであると?」

 

「そうじゃないかしら。詳しいことは知らないけれど、相当昔にロストテクノロジーで作られたものだって話よ。もしかするとガンダムにも関係するかもね」

 

 ジャンヌは本気にしていないような推測だったが、元はそれに対し気になる感覚を抱く。遺跡や決闘。それらはいずれもガンダムに関わるものだ。詩竜双極祭にしても、それの本番とも言える象徴との共鳴、共鳴対象のクリムゾン・ドラゴニアスはガンダムの出現と共にもたらされたものだという。

 確証はないとはいえ、歌に反応して光るオベリスク。元も教室の移動や休憩する場所を探すときに多々視界に入っていたあの黒柱が、よもやガンダムとかかわりの深い創世記の時代のものだったとは思わなかった。

 途端に興味が沸いてくる。もしかするとそちらも調べた方が良いかもしれない。ガンダムに関することは未だ謎が多い。次元移動もガンダムが関係するのだとしたら、そちらから分かるかもしれない。そう思いながらも話の本題であるレイアと詩竜双極祭との関係に戻る。

 

「なるほど。少し脱線してしまいましたが、つまりレイア様はその詩竜双極祭の歌い手の1人に選ばれたということですね」

 

「そうなの。レイアさんすごく嬉しそうでした。何せ詩竜双極祭の参加者は詩巫女の家柄やコネにも左右されます。場合によっては学校側から高い家柄の詩巫女に、要請が行くこともあるくらいです。にもかかわらず、民間からの、それも外部入学者のレイアさんがその権利を勝ち取ったんです!そんなレイアさんをわたくしのせいで邪魔しないためにも、わたくしは詩竜双極祭が行われる、ドラグディア建国記念日の7月7日までは練習にも顔を見せないようにしているんです」

 

 そう語るジャンヌに納得をする。だがそこでとあることにも気づく。それはジャンヌの発言に対してだ。

 

(家柄に左右……あれ、でもそれならファーフニル家も十二名家と呼ばれるくらい、それなりに力があるはず……。そういえば、お嬢様って詩巫女としてはどれくらいの力があるんだ?)

 

 元が思った疑問は、これまでファーフニル家に仕えてきて思ったことこそあったものの、聞く機会のなかった疑問である。これまでは記憶がなかったり、立て続けに事件に巻き込まれたりでとても唐突に聞ける話ではなかった。

 もちろんファーフニル家で預かられる際、ジャンヌの使用人になる上で詩巫女としての責務を全うさせる様にとは、上司であるフォーンやネアからは最初に言われていた。だがその際にもそうとは言いつつもその理由は詮索するなと言われていた。ちょっとだけだが、気になる点ではあった。

 これを聞くことは、つまりはそういうことだ。もしかするとお嬢様の機嫌を損ねるかもしれないということは元も理解していた。しかし、聞かずにはいられない。何かがあると思うから。元は意を決してジャンヌの核心を突く質問をする。

 

「……そうなのですね。レイア様は流石です。ところで、お嬢様はその詩竜双極祭の参加者としては選抜されなかったのでしょうか?」

 

「っっ!?」

 

 瞬間、ジャンヌは狼狽する。その度合いはかなり大きく、思わぬ発言だったと見ても簡単に推察できるほどであった。しばらく元の事を凝視してからやや伏目になると、こほんと咳ばらいをしてから元の平静を取り戻した口調で返す。

 

「ちょ、ちょっと、それってわたくしを馬鹿にしているの!?」

 

「え、あ、いや……単純にお嬢様ならちゃんと入っていると思っていたものですから……出過ぎた質問でした」

 

 元はすぐに頭を下げる。反応からして選ばれなかったというのを推察した。しかも、それを多少気にしている。むしろ選ばれなかったことに不満があるようだった。いつもの素早い謝罪にジャンヌは不満を口にし、顔を背ける。

 

「まったく……主に対してそんな質問しないでくれる?気にしている事なんだから。……それと」

 

 やや感情的になりながらも許す方面に話を持っていくジャンヌ。だったが、最後の言葉だけはややトーンを落とし、元に強く釘をさす。

 

 

 

 

「もう二度と、授業以外でわたくしに関係する詩巫女の話はしないで」

 

「えっ………………」

 

 

 

 

 ジャンヌの声と共に向けられた鋭い視線。それは元の背筋を凍らせるほどのものだった。目の前にいる可憐な少女が、一瞬にしてファンタジー作品で得物に襲い掛かる獰猛なドラゴンのような姿に錯覚させる。

 あらかじめ言っておくが、ジャンヌは一応竜人族だ。竜を祖先に持つ少女であり竜の姿には程遠い。竜人族という点にかけ合わせて言ったつもりではないが、ジャンヌのそれは無意識にそれを彷彿させるものだった。もしこれが竜人族の遺伝子に刻まれた本能だとしたら、思わず納得してしまっただろう。

 ただ元のその言葉に迷ったことに気づいたのか、気を利かせたのであろうジャンヌが少しだけ不満を込めた声で呼びかけてくる。

 

「ハジメ、返事は?」

 

「―――あ、はい。承知しました」

 

「そ。じゃあ行きましょう」

 

 元の返事を聞き、そっけない声で帰宅を催促するジャンヌ。不満げなジャンヌをこれ以上怒らせるわけにはいかないと元も歩調を速める。このジャンヌの態度が気になる中元は主のご機嫌を取りつつ、そのまま2人で家に帰るのであった。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。2人のあの後の関係の変化から始まる第3章本筋、これからどうなっていくのでしょうか……( ゚Д゚)

ジャンヌ「自分の事を言ってしまうようであれですが……ジャンヌさん詩竜双極祭の事を触れられたくない、というのは作中第1章でも触れられていた、詩巫女に関係することでしょうね」

レイ「だよねー?それを作中で、というより元君が知るときが来た、って感じなのかな?」

それは次のお楽しみーと言うことで(;・∀・)

レイ「あ、触れられたくないんだ」

ジャンヌ「おっと、少し先の事まで読んでしまいましたか?」

どうせならもっとウ○ズっぽく……まぁ意味は合ってるけど(´・ω・`)
さて、明日明後日と私にとってはヒャッハーな感じです(^ω^)

レイ「あ、分かったあれでしょ。サーガブレイヴ第1話先行公開とアイツのデッキ発売日」

ジャンヌ「それしかないですね。地味にこの作者ブレイヴ直球世代ですから」

というかブレイヴなかったら中学でバトスピにハマらなかったでしょうし、烈火伝での復帰もなかったでしょうし……(´・ω・`)

レイ「つまり……ジャンヌちゃんとの出会いもなかったと」

That's Right!( ゚Д゚)

ジャンヌ「いや出会いはあったでしょう!?ですよね!?」

まぁイフの話なんてどうでもいいんだ(;・∀・)さて、今回はここまで。次回も、

ジャンヌ「うう……よろしくお願いします」


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EPISODE33 拒絶2

どうも皆様。お元気でしょうか。バトルスピリッツサーガブレイヴの視聴の余韻に浸りきってしまい、本当は昨日投稿するつもりだった藤和木 士です。

ネイ「そうですか……アシスタントのネイ・ランテイルです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィア・ダルクよぉ。けどどうして日本の夏ってこんなに暑いのかしら~……日傘が手放せないわ」

ネイ「そうだよね。お嬢様やレイも最初は辛かったって言ってたし」

グリーフィア「それで作者さん。遅れたことに何か一言は?」

サーガブレイヴめっちゃエモかったです(*´ω`*)

ネイ「あっ(察し)」

グリーフィア「ここまで一辺倒だと清々しいわね」

ピンチからの弾さんチェンジはあれだけど、サジットヴルム・ノヴァ煌臨からの流れがもう圧巻の一言!久々に見れたブレイヴのキャラたちの変化とかも感動したよ(*´ω`)

グリーフィア「大満足のようねぇ。で、今日のEPISODE33は拒絶の2つ目だけど、拒絶って前の話で出てたジャンヌの事かしら?」

あっはい(´・ω・`)まぁそれが主軸ですね。何を拒絶するかはお楽しみですよ(^ω^)

ネイ「いや、拒絶は楽しむものではないかと……」

まぁ、それは気にしない気にしない(;・∀・)それでは本編どうぞ


 

 あれから夜が明け、学校で元は考えていた。授業中であるにも関わらず、ジャンヌが言っていた言葉の意味を。なぜあれほどに自分に関係した詩巫女の話を触れられたくないのか。人間誰でも触れられたくないことはある。苦手なシチュエーションだったり、人物だったり、元も今までの20年ほどの間にそういったものを経験してきた。あれほどの拒絶も経験がないわけではない。

 しかし、同時にそれほどの物がジャンヌの中にあるということを認識すると、何が一体ジャンヌを詩巫女から背けさせているのか。自身と年も1ケタ程度しか変わらない少女に何があるのか。どうしても気になってしまう。

 確かめたい。詩巫女に何があるのか。だが気になるとはいえ、それを本人から直接聞くのは不可能だ。少し失言しただけであれではどうしようもない。他に誰か聞ける人物がいれば、と思ったところで授業終了のチャイムが鳴る。

 

「っと、今日はここまで。他の先生からも聞いていると思うが、今週から詩竜双極祭の準備期間に入るから、時間割変わるぞー。ちゃんとプリント見て確認する様に。それじゃあ、ノアール、号令」

 

「はい。起立、礼」

 

 魔術歴史学の授業が終わり、各々昼食の為に席を立っていくクラスメイト達。元もノートなどを机に収め、立とうとしたところで後ろから馴染みのある人物の声がかかる。

 

「よっ、ハジメ。今日どうするー」

 

 数少ない友人の1人、ローレインだった。元の学校での軍からのお目付け役である彼女は、いつものように男子用制服の襟を外し、その首元を露わにしている。男子の制服でありながら妙な色気があるのは、間違いなくこのミスマッチが関係しているのだろう。むしろ一周回って反則だ。

 ここ最近は戦闘ばかりであり、ローレインに学校側への説明をよくお願いしている。それが仕事なので仕方がないが、お礼も含めて何か奢るのもいいかもしれない。

 

「そうだな……って、あ、そうだ」

 

 だが言いかけて元は気づく。先程の相談、ローレインに聞いても良いのではないか。学校では普段男装のイメージが強いが、裏ではドラグディア軍の諜報部所属の彼女。しかも学校でも裏では情報屋として動いている。彼女曰く学園で色々裏を知っておくと動きやすいとのことだが、もしかすると彼女ならジャンヌの詩巫女嫌いも何か分かるのではないだろうか。

 試しにローレインに聞いてみることにする。

 

「なぁ、情報屋として聞きたい話があるんだけどいいか?」

 

「いや、情報屋として聞きたいのにこのタイミングで言われるのかよ……人多いっていうのに。まぁいいけど、何だ?」

 

「あぁ、ちょっとうちのお嬢様って詩巫女のことどう思っているのかなって。ローレインは何か知っているか?」

 

 そう聞くと、ローレインがハッとしたのち、難しい顔をして元から背ける。

 

(……あれ、何かおかしい。ローレインがこうなるって、何が……)

 

 ローレインの様子に元がどうしたのか聞こうとする。しかしその前にローレインが顔を戻し、元に返答しつつ耳を寄せた。

 

「あー……ハジメ、ちょっと付き合ってもらっていいか?………………出来ればその話は、ここじゃない方がいい」

 

「?まぁ……その方がいいなら……」

 

 真面目さを醸し出すローレインの言葉に、緊張感をもってそう返答する。疑問を浮かべながらも、レヴとリッドの誘いも後回しにして2人で教室を後にした。

 

 

 

 

 やれやれ、どうしたものか……。ローレインはハジメの手を引きつつ苦悩する。これまで多くの相手とポーカーフェイスの情報戦を演じて来たローレインも、この問題は非常に困難な問題だ。

 いつか来るのではという質問ではあった。しかし、ローレインでもてっきりそういった家族の問題はファーフニル家の誰かが説明してくれる。自分が絡むことでもやや少量のことだと思っていた。しかし、ハジメの反応からそういったことをまったく聞いている様子ではない。念のため職員室で次の現代文の講師に遅れるとは言っておいたが、果たしてそれでどうにかなる問題だろうか。何せあの問題は、ファーフニル家にとって永遠に続く問題なのだから。

 

(俺が説明するのかよ……。けど、何があったかくらいは聞いておいて、それでちょっと反応見るか……)

 

 面倒くささを感じつつ、歩いていると目的の場所へとたどり着く。旧校舎に差し掛かる場所にある「資料室」。職員室に寄った際MS科目担当の非常勤講師に頼んで借りた鍵を差し込み、案内する。

 

「とりあえず、ここで話そう」

 

「ここで?別にいいけど……まさか何かやろうって言うんじゃ……」

 

 ハジメが警戒した面持ちでこちらを向く。まぁ正直言って、そうしたいところではあったが主な目的は説明に便利なのと、まだ人影が少なく、不慮の事態になった時に人目につかないというのが主な理由だ。

 だが面白そうなので半分茶化しで肯定する。

 

「おお、よく分かったな。……ってのはまぁ半分だな。ちょっと人目につかないところで話さないといけない内容だから」

 

「半分はあるのかよ……。そんなにやばいのか、お嬢様と詩巫女の話というのは……」

 

「あぁ、やばいよ。誰だってあんな家、生まれたくないだろうさ」

 

 キツイ言葉を吐く。実際それが的を射ている。さっさと終わらせなければならない。こんな話、話す側も辛いのだから。後方でハジメが息を飲む。振り返ってからローレインは口を開く。

 

 

「じゃあ、話そうか。この国に伝わる、都市伝説のお話を……」

 

 

 

 

「都市伝説……?」

 

 思わず声を漏らす。ジャンヌと詩巫女の話をと言って、ローレインに案内された場所。何かの古い資料室のような雰囲気で話の口火が切られたものの、出てきたのは都市伝説というバカげた話だ。

 思わずどういうことかと聞こうとするが、それを遮ってローレインが続けた。

 

「そう。ドラグディアのほとんどの国民にとっての都市伝説。だが、限られた人物にとってそれは嘘のような本当の話。ジャンヌが詩巫女を嫌う理由は、それくらい大きな話なのさ」

 

「お嬢様が……詩巫女を嫌う?」

 

 なぜ、という言葉が出てきそうなのを抑え込む。元々それを聞くためにお願いしたのだ。それをまた言うというのも億劫だ。そのまま話を続けてもらうことにする。

 一方ローレインも元の言葉に答えていく。

 

「そう、ジャンヌ・ファーフニルは元々詩巫女養成科志望じゃなかった。それこそ富豪の子どもが学ぶ所謂「エリート科」を目指す生徒だったんだ。けど、5年前それは起こった。とある呪いの証がジーナ・ファーフニルからジャンヌに移ったんだ」

 

「呪い……?」

 

 自然と復唱するその単語。それが他人を不幸に貶める非科学的なものであることを知ってはいた。そして、この世界マキナ・ドランディアでは魔術によってそれが可能であることも。

 しかし元が復唱したのは、それがジャンヌに移ったという点だ。ジーナ・ファーフニル、つまり今のジーナ・ボルメスからその呪いが移った。それだけで詩巫女養成科に強制されるという事実が、元の中で困惑を生む。

 ジーナから移った呪い。それが一体何を意味するのか。ローレインが続ける話が更にその疑念を徐々に加速させる。

 

「呪いの内容に関しては少し話を後にする。そもそもジャンヌの家、ファーフニル家は12名家の内、もっとも詩の扱いに長けた家。今度行われる詩竜双極祭の元となった象徴との心の共鳴、詩竜超克の儀はファーフニル家が創世記後の時代で初めて再現したんだ」

 

「お嬢様の家が……詩竜双極祭の大元を作った、と言うことか?」

 

「そう。それどころか、国の象徴の力を振るえるほどの地位になったんだ。むしろ国のトップと言っても過言じゃなかっただろうな」

 

 ローレインの話に頷きを返す。しかしよく考えるとおかしな点がある。これまでジャンヌを含めファーフニル家の人間はそれほどの重要な役目に付いているようには思えないのだ。当主であるガンドも軍では二つ名持ちの少佐だ。リリー准将はおろか元の隊の隊長であるアレクと同格。普通なら家の名でもっと上の相応の地位に居ても疑問は持たない。

 加えて今のファーフニル家でそのような話は聞いたことがない。象徴の事だってこれまでにそれ関連の話題が家で上がったことも、それに由来したような目立つ物もない。嫌な予感がする。そう思っているとローレインがその疑問に答えを明かしだす。

 

「ただ、これは過去の話だ。とある代まではファーフニル家はその圧倒的な歌の力で、国の象徴を従えていた。けど300年前、それは起こった」

 

「……起こった?何が?」

 

 聞き返す元に、しっかりとした口調で、淡々とその事実を明かした。

 

「死んだんだよ。国の象徴であるクリムゾン・ドラゴニアスが。その年起こった戦争でな」

 

「なっ……!?国の象徴が!?でも、機械の竜が死んだって……」

 

 思わず言葉に詰まる。象徴はこの国にとって竜人族の存在を示す重大なものだ。それが死んでいたということに驚きを隠せない。しかし機械の竜なら、直すことが出来る。何より今でも象徴が生きている事実があるのだ。きっとその後直したに違いない。そう言おうとした。

 ところがさらに驚くべき事実を、ローレインは元に告げる。

 

「直せるって言いたいんだろう?確かに機械の竜なら、「直す」ことは出来るだろうぜ。確かに出来る。……でも、死んだっていうのは、「生ける機竜」に「なる前」、なんだ」

 

「……は?」

 

 一瞬意味が分からなかった。何を言っているんだと、ツッコミが出てこようとする。少し経って物事を整理しても、むしろ整理したことで余計に疑問が浮かび上がってくる。

 機竜になる前?前に死んだって、つまり前の段階が存在したってことなのか?でも機竜になる前になっているものって……まさか……つまり……。

 信じたくはなかった。しかしそれは元にも分かる事実。嘘だと思いつつ元は「国民の常識」を覆す発言を、その事実を口にする。

 

「なぁ、まさかクリムゾン・ドラゴニアスって……本当は……」

 

 元の問いかけに、頷きを返してローレインがその事実を告げた。

 

「そう。クリムゾン・ドラゴニアスは生身のドラゴンだった。その時まではな」

 

 重く圧し掛かる事実。やはりという納得と、まさかという困惑が同時にやってくる。しかしそれでも疑問は残る。戦死したクリムゾン・ドラゴニアスがなぜ機械化という禁忌と呼べる方法を用いてまで蘇生させられたのか。そして、それがどうしてジャンヌの呪いに関わるのか。

 それらの答えを知るであろうローレインは、更にその話を紐解いていく。

 

「死因としては流れ弾に当たったって感じだ。もっと正確に言うなら、クリムゾン・ドラゴニアスはパートナーである当時の詩巫女、ジャンヌの先祖「オルレリアン・ファーフニル」を庇って死んだっていうのが、裏での常識だ。当然、国の象徴が死んだっていうのは当時の軍部、もとい政府は混乱状態になったさ。戦争の要である象徴が亡くなった。それだけの事実で竜人族のアイデンティティーが崩壊するってな。けど、その時丁度、ドラグディアではマキナス原産の禁忌の機械化技術で開発した新たな兵器が完成していたんだ」

 

「機械化技術……」

 

 元の脳裏に1か月近く前の立てこもり事件の光景が思い起こされる。死んだはずのシグットが、体中を兵器にして戦っていた時の光景だ。あれを既にドラグディアでは解析していたという話にやや驚く。ローレインはそれについて言及する。

 

「モビルウエポンを礎とした「機竜」の開発。創世記の時代に開発されたそれは本物の竜の骨などを生体端末とすることで、竜の復活すらも可能にした。その1号機「ガン・ドラグム」にクリムゾン・ドラゴニアスの骨そして脳を格納し生み出されたのが、今国民が知っている「クリムゾン・ドラゴニアス」。生ける機竜の完成さ」

 

「そんな……でも、いきなりそんなことしたら誰だって死んだっていうのを勘づくだろ!?」

 

 思わず声を荒らげる。誰かが気づくはずだという元の考えは、そんな現実を信じたくないという叫びだ。しかし続くローレインの言葉でそれを砕かれる。

 

「そうだろうな。普通の情勢なら。でも当時の政府はその変貌を象徴が進化したと大々的にアピールした。堂々と嘘を付いたのさ。それを当時のドラグディアの国民たちは鵜呑みにした。それで今の常識が出来上ったのさ」

 

「………………」

 

 言葉が出なかった。あまりにも荒唐無稽すぎる話だった。反論したかったが出来なかった、しても意味がなかった。元が暮らしていた世界でも、過去に世界を巻き込んだ大戦争があった。その時も自分の国は負けている劣勢の状況でも、如何にも進軍しているという宣伝を大々的に報じ、国民の士気を上げていた。その結果悲惨な終戦への流れを引き起こしたというのに、国民はその時までずっと自分達が勝ってきたと思っていたのだ。そんな流れがこの世界で起きないという保証はない。そしてそれに気づいても、もう後の祭りである。

 あまりにもとんでもない話に言葉が出ずにいる元。だがしかし、まだ答えが出切ってはいない。本当に大事なのは、ジャンヌがなぜ詩巫女をそれほどまで嫌うのか。その答えをローレインが語り出す。

 

「そして……これが一番残酷だろうな。当時の詩巫女であり、ファーフニル家における詩巫女の当主であったオルレリアンへの国民に対する口止めとしてその体に呪いが刻まれた。その呪いは、ファーフニル家を永遠に詩巫女へと引き込み続ける呪い。生まれる子供達をすべて女にし、詩巫女としての使命を果たそうとしなくなったものを死に至らしめる」

 

「何……!?」

 

 その単語に息が詰まる。詩巫女の使命を果たせなければ、死ぬ。あまりにも残酷すぎる呪いの条件。それでようやくジャンヌのあの時見せた顔の意味に気づく。

 あまりにも冷たい鋭い目。あれは絶望だったのだ。あまりにも残酷すぎる運命に精一杯抗う少女の、必死の抵抗。それがあの表情の意味なのだろう。それだけの絶望を自分の主が抱えていた。初めて会った時から、それ以上前から自分以上の絶望を抱えていた。それなら詩巫女を嫌ってもおかしくない。

 元は申し訳ない気持ちと共に、激しい怒りを感じる。それは先程反論したくても意味がないと感じたはずの当時のドラグディア政府の人間に、だ。未来のことなどは分かるはずもないが、それでもこれだけのこと予測できないはずはない。今だってこんなバカげたことはやめさせるべきなのに、政府は何もしようとしない。むしろまだ小競り合いを続けて戦争を長引かせようとさえも見える。これを聞くきっかけとなったジャンヌとのやり取りでも自分もその戦争を行う者の1人だと思ったが、それを今まで知らなかった自分の軽率さ、それ以上にまだ呪いでジャンヌを苦しめようとする政府を、許すことが出来なかった。

 その怒りが自然と、元の拳を固く握らせる。ローレインがそれに気づきつつもその後を口にする。

 

「……以来ファーフニル家は詩巫女の名家という表面と共に、呪いを受けた家系として裏じゃ知られている。ジーナ・ファーフニル、いや今はジーナ・ボルメスか。彼女も自分から呪いが移動するなんて思わなかったみたいだ。当初は呪いを戻す方法とか探していたらしい。けど結局、ジャンヌ・ファーフニルが詩巫女としての道に強制させられたって話だ。そのせいで大分昔より性格はひねくれたけどな。レイアへの依存もそれが原因……」

 

「っく!!」

 

 唐突にガン、と壁を叩く。コンクリートの壁から、しっかりとした打撃音が響く。苛立ちを露わにした様子を頬に汗を垂らし、拳を痛めていないか尋ねるローレイン。

 

「おいおい……大丈夫かよ。いきなりそんなことして、ガンダムの操縦に支障出ないだろうな?」

 

「あっ……いや、大丈夫だ。すまない、いきなり……」

 

「まぁ大丈夫ならいいけどよ、あんまりため込むなよ?」

 

 精神面で気に掛けるローレイン。あまりこういう面を見せるのも良くない。それにローレインは自分を信じてこの事を話してくれたのかもしれない。怒るのは分かっていて、それでも自分が怒りを制御できるのだと信じて。ため込むなというのもそれを感じてのことだろう。

昂る気持ちを抑え込み、平静を取り戻すとローレインに話を聞かせてもらったお礼を伝える。

 

「ありがとう。そういうことだったんだな……」

 

「ま、礼には及ばないさ。でも何でいきなりそのことを……」

 

 ローレインの疑問は当然だろう。こちらはそれほど重大なものとは知らなかったとはいえ、あまり話したくないであろう話を聞かせてくれと無理を言ったのだから。先程の壁への八つ当たりもあって、昨日からの経緯を明かす。

 

「あぁ、昨日たまたまお嬢様に詩竜双極祭の事を聞いてな。出ないのかと聞いたら怒られてしまって……」

 

「あー……ていうかそれ、怒ったで済むか?」

 

 苦笑いを見せて、訂正する様に聞き返すローレイン。元はそのまま伝えてもあれだからと思ったのだが、そこまで見透かされてしまっていると、どれだけ関係者に問題の重要性を理解されているかがよく分かる。仕方なく隠すこともない為そうであると訂正する。

 

「察しが良い。竜に睨まれたように背筋が凍った」

 

「やっぱり。そりゃあ気になるわ。けどあんまりそう言ってやるのもあれだぜ?ジャンヌ・ファーフニルも女なんだしよ。聞いてたらかなりショック受けるかも……」

 

 窘めるように指摘されて気付く。今の自分は主の心に更に棘を刺すような言い方であったと。いくら竜の特徴を持つ竜人族でも、今や自分の知る人類と同じ外見。竜人族という種族を軽率に見てしまっていた。本人としては少し茶化してローレインに心配を掛けさせないようにしていたのだが、むしろこのままいくとジャンヌの前でも茶化して済まそうとするかもしれない。これはそんな問題ではないのだ。

 元は先程の言葉を悔いるように彼女の言葉を受け入れる。

 

「そうだな。お嬢様と俺とじゃ、苦しさの度合いが違う。そう言ってしまうのはお嬢様の名誉に関わる」

 

「お前……本当に反省するときは全力だな。けど、この話は内緒にしておけよ?知ったらあのお嬢様、お前をクビにするかも……」

 

「分かってる。そんなヘマしたら、俺も生活とか本当に終わりだ」

 

 ローレインの危惧を先回りする形で遮る元。そんなことはあまり口にするものではない。本当にそうなってしまうかもしれないから。

 そして話を聞かせてもらったお礼に、元は財布から紙幣を2つほど渡す。今日の昼代と情報代を含めてのだ。

 

「じゃあ、これお代。昼飯の代金と情報代ってことで」

 

「え、あ、おい。こんなにか……やけに金払いがいいじゃねーか。ギャンブルでもするつもりか?」

 

 あまりにも気を利かせたことに疑いを向けられる。しかし元も普段からの礼を含めてのお代だ。元はそんなことはないとありのままに伝える。

 

「金を払ってのギャンブルなら金渡さねぇって。前金ならあり得るけどな」

 

「あ、ま、そっか。って、ギャンブルすることだけは否定しなかったな?」

 

 と同時にチャイムが鳴る。授業前の予鈴だ。元は話をうやむやにするようにローレインを急かす。

 

「ほら、とにかく急ぐぞ。次の授業遅れるとは伝えてあるけど、間に合わなかったら問題だぞ?」

 

「え、待てよ!もう言ってあるんだから昼飯食ってからにしようぜ~。俺真面目モードのせいでもう腹減って……」

 

「えぇ……まぁ、それでもいいか」

 

 空腹を訴え、渋々その案に従う元。使っていた資料室……「詩巫女資料室」を施錠するローレインに続いて食堂へ向かう。スキップをしながら元からもらったお金で何を食べようか妄想を膨らませるローレイン。一方その後をゆっくりとしながらもおいて行かれないように付いて行く元。

 しかしその表情はやや陰りが見えていた。それはだましてしまったという後悔から来るものだった。先程の発言で、元は言った。「金を払ってのギャンブルなら金は渡さない」と。そしてローレインもそれに対し、「ギャンブルをすることは否定しなかった」と言った。そう、元は賭けに出ようとしていた。しかしそれはギャンブルではない。いやあるいは、それ以上に危険なギャンブルだった。

 

(悪い、ローレイン。1つだけ確かめさせてくれ……ジャンヌお嬢様の事を。俺に何が出来るのかを)

 

 元の意志は固かった。聞かなければ、彼女の気持ちを。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。さぁジャンヌが詩巫女になりたくない理由が明かされましたね(´-ω-`)

グリーフィア「呪いってまた直球ね……何、ヒロインをそんなに苦しめたいの、この作者は」

ネイ「それにまだ話にも直接出ていない象徴にそんな秘密が……これ異世界戦争ってタイトルはそれを公表して国内で混乱が起きるってことなのでは……」

それはない(;・∀・)普通にドラグディアとマキナスの戦争にするつもりだよ……。まぁ呪いについては結構前から考えていた構成です。ただ象徴は最初はいなかったけどね(´・ω・`)

グリーフィア「まぁそれはともかくとして……次の話元君が何か趣味悪いこと考えてそうなんだけれど?」

ネイ「だよね?元さん変にジャンヌさんを追い詰めないといいんだけど……」

(´・ω・`)やっぱこっちの編成少し変えた方がいいかな……

ネイ「どういうことです!?」

ま、今回はここまででーす。

グリーフィア「あらあら~、それじゃあまた次回へ~」


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EPISODE34 拒絶3

どうも皆様。ガンダムTHEORIGINテレビ版の時代が、一体いつの事なのか分からなくなってきた藤和木 士です。Zの水の星よりの次はBEYOND THE TIMEかよ\(^o^)/時代が違いますよサンライズさん

ジャンヌ「どちらもUC歴のガンダム作品では有名な曲ですからね。アシスタントのジャンヌ・ドラニエスです」

レイ「水の星よりは私も歌ってみたいなー。アシスタントのレイ・オーバだよっ!」

あぁ、一応2人とも元はアイドルだもんね(´・ω・`)だったら詩姫のCV決めてサウンドトラックとか出してもいいのにバンダイさん(´-ω-`)

ジャンヌ「それは公式の方に言ってみればいかがです?」

レイ「もちろんアンケートの方でね!」

あー最近アンケート答えてなかったね……詩姫のかアイツのデッキで答えるかな。と今回はEPISODE34、拒絶3となります。

ジャンヌ「あぁ……元さんどうするつもりなんでしょうか……話を聞いて」

レイ「あの話結構重いもんねー……元君おかしなことをしなければいいけれど」

トチ狂ってお友達になりにいくとか?(゚∀゚)

レイ「というか……今元君ってジャンヌちゃんとどういう関係なんだろ」

え、主と従者ですが?(´・ω・`)

レイ「そういう意味じゃない。なんていうか、前章辺り……いや、もう1章終盤から変わってる気もするよね?」

ジャンヌ「ですよね。ただ前回の元さんは今までと違っていたような気も……主に反応が」

ふふん。それはどうなるのか気になるところですよ。それでは本編へ(´-ω-`)


 

 

 学校の終業のチャイムが鳴る。それに合わせて、ホームルームの終わったクラスメイト達が立ち上がり、仲の良い友人達と集まって下校の支度を整えていく。そんな中、ジャンヌ・ファーフニルも帰宅準備を整えつつ、先に教室を後にしようとしていた同級生のレイアにこの2週間決まっていた挨拶を送る。

 

「レイアさん、今日も詩竜双極祭の練習頑張ってくださいね」

 

「ジャンヌちゃん、ありがと!でもせっかくだからジャンヌちゃんも応援に来てくれればいいのに……」

 

 同級生であり、一番の愛しい少女は無垢な笑顔を向けてそう言った。その言葉はジャンヌの心を深く抉る。

 分かっている。レイアには決して悪意はない。自分は友人なのだから、もっと近くで応援してほしいと思って誘ってくれたのだ。正直に言えば、ジャンヌもレイアの気づかいをありがたく受けたかった。しかし自身にとって最悪とも言えるそのイベントに参加する気にはなれなかった。去年に引き続き学校側から参加を要請されるも、ジャンヌはそれを拒否した。嫌だった。今までジャンヌは真面目に詩巫女として授業に取り組んだことはない。見て覚えてノートに内容を書留める。歌も良さげに歌うだけで気持ちも何も込めていない。何も思い入れのない物事を、人前で披露するなど絶対にしたくはない。しても見透かされてしまう気がした。

 今年も何とか無理を言って参加はせずに済んだが、問題は来年。学校の教師からは「来年は絶対参加」を言い渡された。もう逃げられない。その圧迫感がジャンヌの心に重く圧し掛かっていた。しかし参加を喜ぶレイアにそんな弱い自分を見せるわけにはいかない。そんな顔を見せてしまえば、レイアも不安になる。詩竜双極祭へのモチベーションを下げてしまうだけ。だからジャンヌはレイアの誘いに行きたいのは山々であると答える。

 

「すみません……この時期になるとわたくしの家も忙しくなるので……」

 

「そっかー。でも都合が良くなったらいつでも来てくれていいからね!」

 

 そう言ってレイアは早速練習へと向かう。その様子を観察に徹していたネアが近づきその心中を気遣う。

 

「お嬢様……」

 

「大丈夫よ、ネア。……大丈夫」

 

 とはいえ、気持ちいいものではない。愛しの人に嘘を言うのは。特段大きい嘘ではない。実際この時期になると名誉詩巫女である母は学園で特別講師をやることもある。その為に資料集めを行い家の者はそのための準備を行う。ただジャンヌはそれを手伝いはしない。母には申し訳ないが見ることも嫌なのだ。

 ネアもその言葉に嘘が含まれていることは当然知っていた。しかしそこは十年にも渡って仕えてきた仲。その心中を察し、それを目の前で指摘することはしなかった。

 レイアに申し訳ない気持ちを感じつつ、ジャンヌはいつものようにネアにこの後の事を聞く。

 

「それで、今日もグリューネさんの方に?」

 

「はい。今日はレイアと同じ方ですね。グリューネ姉さんも参加者なので……」

 

「……そう、分かったわ」

 

 遠慮がちに一礼してからネアは足早に教室を出る。ネアの異母姉であるグリューネも今回の詩竜双極祭の参加者だった。ネアはそのサポーターとして姉を支援することになっていたのだ。

 ここ最近のハジメとの付き添いもこれが原因である。ネアを待っているにしても時間つぶし出来るのは詩巫女関連の著書も多い図書館くらいしかない。それくらいなら多少変な噂は付けど、ハジメと帰る方が暇つぶしには最適だ。そして今日もその迎えが来た。

 

「お嬢様」

 

「ん、来たわね。それじゃあ行きましょう」

 

 元が教室の出入り口から呼びかける。ジャンヌもそれに応え教室の出口まで向かう。合流したジャンヌは早速ハジメを引き連れていつものように軍の基地へと向かおうとする。だがしかし、そこでハジメに呼び止められた。

 

「すみません、少々お時間を頂いてもよろしいでしょうか?」

 

 珍しくジャンヌを呼び止めるハジメに、ジャンヌはやや戸惑う。これまで呼び止めることはいくつかあったが、それでも最近はほぼなかったのだ。久々の呼び止めに不満を漏らす。

 

「もう……用事だったら先に済ませなさいよね」

 

「申し訳ありません。ただ、お嬢様に関係することなので……一緒に来て頂けますか?」

 

「えぇ……?」

 

 ハジメからの申し出に、戸惑いを覚える。自身に関係ある用事と言われてもジャンヌには心当たりはない。戸惑いがを見せるも真っすぐ向けられたハジメの視線に気圧され、ジャンヌはそれに小さく相槌を打った。

 

「えっと……まぁ少し話を聞くだけなら……」

 

「ありがとうございます。それじゃあ少し職員室の方に寄ってから……」

 

 そう伝えるとハジメは行き先に手を向け、案内する。その後ろ姿に考えを巡らせながらジャンヌは付いて行く。

 

 

 

 

 ハジメの言う通り職員室で何かの部屋の鍵を借り、連れてこられたのは旧校舎の一角。とある資料室の前だった。何の資料室かと目線をドアの上部付近の室名札に向ける。それを見てハッとする。

 

(え……ここって……)

 

 思わず身震いをする。なぜならそこは、学内における詩巫女の資料を最も多く保管する場所、詩巫女資料室であったのだ。ジャンヌも名前こそ知っていたが旧校舎であることもあってあまり気に留めていなかった。しかしジャンヌとしては図書館と同じく来たくない場所であることに違いない。

 

「ね、ねぇハジメ。ちょっとここはやめましょう?勝手にこんなところに入っちゃ……」

 

 不味いと思いハジメに場所の変更を願い出る。その声には若干震えも混ざっていた。しかしハジメは、それに気づいているのか、それとも無意識か声量はそのままに冷たく提案を断った。

 

「そうですか?でも鍵は借りられたのでいいではないですか。それに今から場所を変えるというのも面倒です。それに俺はこの話はここですべきだと思うんです」

 

「…………う……」

 

 息が詰まる。喉に何かが詰まったように声音が重くなった。緊張感が更に強くジャンヌの心を縛る。ハジメは分かっていて、ここに来たのだということに気づく。

 怖い。何を考えているのか分からない不安感がジャンヌを襲う。一体これから自分は何をされてしまうのか。従者の行動に苦しむ。そんな彼女の従者はドアを開き、こちらを招く。

 

「さぁ、お嬢様」

 

「ひっ……!」

 

 差し出された手から離れるように身を引く。露骨すぎるが、それでも今のジャンヌにとってはハジメの動作1つ1つに恐れを抱いていた。

 いつもなら謝罪が来る反応だ。しかし、今日のハジメは違った。表情を険しいものとし、一歩前へ出たと思うと逃げようとするジャンヌの手を掴む。

 

「へっ!?い、嫌っ!」

 

「…………」

 

 いきなり掴まれたことに嫌悪感を示すジャンヌ。しかしハジメはそれに構わず室内へと引き込む。まるで路上痴漢のような光景で、誰かが見ていれば確実に通報物だったであろう。

 乱暴に資料室の中に引き込まれ、息を飲む。ジャンヌのその顔は既に涙でにじんでいた。しかし連れ込んだハジメはありがちな襲い掛かるということはせず、部屋の鍵を閉じただけであった。誰も入ってこられないようになってから自身を弄ぶのではと身構えるが、ハジメは仁王立ちの如くそのまま直立した状態でジャンヌに問いかける。

 

「お嬢様、お聞かせください」

 

「な、何よ……何をするのよぉ……!」

 

 恐怖のあまり足がすくみ、近くのガラス張りの展示台に手を着く。その中には詩巫女の資料などもあったが、それどころの話ではない。この異常状況からの脱出を模索する。しかしいずれもハジメとの体格差などを考えると現実的ではない。しかし助けを呼ぼうと声を上げかけたところで、ハジメの声が室内に走った。

 

 

 

 

「お嬢様は、本当に詩竜双極祭の参加者に選ばれなかったのですか?」

 

「………………えぇ?」

 

 

 

 

 聞こえてきたのは、自分が詩竜双極祭に選ばれなかったのかという問いかけだった。なぜその質問を、と最初に考える。昨日嘘の答えとはいえ確かに選ばれなかったと言った。だからこそ本来このような質問は飛んでこないだろう。

 だが質問が飛んでこないとは限らない。もしハジメがそれを信じていないのなら、今こうして聞かれるのも考えられる。なぜハジメが疑っているのか、昨日の勢い余って怒りを前に出したことが原因なのだろう。ともかくそれを踏まえて、冷静さを装ってハジメを咎める。

 

「……ちょっと、昨日も言ったじゃない!わたくしは選ばれなかったって。ハジメがわたくしの腕を高く評価してくれているのは嬉しいけれど、でもそれが事実で……」

 

 思ってもいないことを口にして、追及から逃れようと試みる。ところがハジメはそれすらも分かったように、いきなり核心を突いた。

 

「本当は嫌だったんじゃないですか。詩巫女という自分を縛り付けるそれが」

 

「―――っ!?」

 

 息が詰まる。まぎれもないジャンヌの本心だった。自分では隠していたつもりだったのに、なぜハジメが知っているのか。いや、まだ知っているというのは納得できる。なぜなら彼は彼女の従者。家の者がそれを教えた可能性は十分にある。しかしそれでは昨日のあの発言が説明できない。一体何を考えて今それを聞くのか。

 衝撃のあまり閉口したままのジャンヌ。お互いに沈黙の間が訪れる。先にそれを破ったのは質問をしたハジメだった。

 

「聞きました、お嬢様のこと。お嬢様が詩巫女になりたくなかったことも」

 

「…………」

 

 知られてしまった本心。並べられていく自分の本音にジャンヌは言葉が出ない。その表情は青ざめ、手は自然と震える。動揺が仕草に現れてしまっていた。ハジメがそれを見て目を伏せる。だが彼はそのまま言葉を続ける。

 

「お嬢様が本当は何になりたかったとかは知りません。お嬢様が感じた絶望も、大きいことは分かってもどれだけかは知りません。でも、だからこそ俺は知りたいんです。お嬢様が今の自分をどう思っているのか。どうしたいのか」

 

 自分の事を知りたい、といつものように自身の心の内へと入り込もうとするハジメ。しかしジャンヌはその行いに怒りを抱く。子どものような怒りではない、怒りよりももっとドス黒い、嫌な感情だ。

 何よ……何よ何よ何よ。貴方に分かるわけないじゃない。今わたくしがこうなっていて嬉しいとでも思っているの?聞いて何かを解決できるっていうの!?……勝手なこと言わないでよ。こうなった理由も、元をたどれば全部……全部創世記のガンダムが原因じゃない!!

 ジャンヌの中で生まれる憎悪の塊。ハジメに対するそれが今彼女の口から飛び出す。

 

 

 

 

「知りたいですって……?…………分かった気でいるんじゃないわよっ!!」

 

「あ……お嬢さ……つっ!?」

 

 

 

 

 ゆっくりと近づいて、その怒りのままに言葉を吐き捨てるジャンヌ。それだけにとどまらず、同時にハジメの頬を勢いよく叩く。少女の怒りが爆発した瞬間である。

 だがそれだけでは収まらない。一度引き起こされた怒りは噴火の如く溜まっていたもの全てを吐き出していく。

 

「えぇそうよ!いきなり変な印が出て、そしたらお父様やお母様からそれが詩巫女にならないと死ぬ呪いの証だって言われて!意味も分からず詩巫女の勉強が始まって、どんどん自由を奪われていった!嫌だったわ!家の使用人からは憐れむように見られて、家に来た詩巫女の講師だって嘲笑うように見て来た!それでも見返してやろうって必死に取り組んだわ!でもその度に他の詩巫女志望の子が呟いていたわ。『家名の七光りで詩巫女になった女子』って!使用人にも影で笑われてどれだけ嫌だったか……でもお父様に言っても何も変わらない!詩巫女になれってそれだけ言われて!何もかも呪ったわ……家もこの国も……この世界も!世界を作った、貴方の使う救世主ガンダムだって!!」

 

「………………」

 

 恨みつらみを語るジャンヌ。怒声は嗚咽交じりとなっており、その瞳からは大粒の涙が溢れていた。決闘直後の時も涙を見せたが、今の彼女の涙はそれよりももっと辛いものである。これまでにため込んだ憎しみが、ハジメの前で吐き出されていった。

 奇しくもハジメの言葉に従う形となったが、これは決してジャンヌの本意ではない。ただ精神を逆撫でられたことで、ジャンヌ自身も抑えが利かないようになってしまっていたのだ。

 やがて声を出すことに疲れ、その場に座り込むジャンヌ。だがハジメが近づこうとしたところで彼を涙目で睨み付け、遠ざける。

 

「来ないで……来ないでよぉ……!やっぱり、ガンダムなんて私に嫌なことしか……ううっ!」

 

 頭を抱え、泣き崩れる少女。嫌な記憶も思い出し一気に絶望の底へと墜ちていく。溢れ出る涙と続く嗚咽。そんな彼女に、従者の青年は立ったまま声を掛ける。

 

「……ありがとうございます、お嬢様」

 

「…………ふぇ?」

 

 それは感謝だった。場違いとも呼べる言葉の選択。ジャンヌはその言葉の意味を、自身を馬鹿にしているのだと最初感じた。ジャンヌの哀れと言える惨状を聞き、それを罵っているのだと判断したのだ。

 困惑と怒りがジャンヌの心に渦巻く。しかし続けてハジメは、彼女の話に対しての自身の考えを聞かせる。

 

「貴女の本音が聞けて良かった。やっぱりお嬢様は、ガンダムの事もそう思っていたんですね」

 

「そ、そうよ!それが何か……」

 

「これで覚悟が決まりました」

 

「え…………」

 

 ハジメの言葉に戸惑いを見せる。混乱する頭の中でジャンヌはどうなっているのか理解に苦しんだ。覚悟とは一体何なのか。何を覚悟したというのか。疑問を募らせるジャンヌにハジメが口を開く。

 

「貴女のために、俺は戦う。貴女がそれを望むなら、それを果たすために全てを賭けてそれを成してみせる」

 

「な、何を言って……」

 

 無責任なことを、と怒りを暴発させようとするが、続いたハジメの発言がそれを怒りごと凍てつかせる。

 

 

 

 

「俺は―――――――――」

 

「――――――――――え?」

 

 

 

 

 声にならない戸惑い。ハジメは「それ」を伝えると部屋から出ていく。残ったのはジャンヌと先程の騒々しさが嘘のような静寂だ。

 ジャンヌは「それ」の意味を理解していた。ただそれは自身が今望んだことであると同時に、心からは思っていなかったはずのことだ。なぜハジメが「それ」を言ったのか。理由は簡単だ。自分がそれを望んでいることを言ったから。それでも彼女は喜べなかった。自分が取り返しのつかないことを言ってしまったと思ったから。

 口走ってしまったことと、心からの願い。それを伝えることなく彼女はその場で思考を停止させてしまう。本当にそれが正しかったのか、分からぬまま。

 

 

 

 

 

 

 

 

 資料室を出ると、見知った顔が壁に耳を当てているのを見る。

 

「あ」

 

『あ』

 

 お互いに視認すると、共に一言。しかし両者共に状況を察してか、何事もなかったように自然な流れで言葉を交わす。

 

「いつからそこで?」

 

「ネアが教室に迎えに来て、それで教室を出たタイミングで2人が下駄箱とは逆の方向に行った辺りから、かしらね。ま、詩竜双極祭の練習は遅れるって言ってあるから」

 

 元の問いに、盗聴者の1人であるグリューネはそのように明かす。どうやらほぼすべて見ていたようだ。

 頭を掻きつつ、困った様子でグリューネにぎこちない笑みで言い訳をする。

 

「困りましたね。ということはさっきのやりとりも……」

 

「えぇ、見ていたわ。嫌がる女の子を無理矢理部屋に入れたことも」

 

「あ、あの、ハジメさん……。その、すみませんでした。黙っていたりして……」

 

 サラッと元が犯罪者であるとする発言がグリューネから飛ぶ。だが、先に謝罪したのはグリューネ側のネアだった。いきなり謝られては状況が飲み込み難いが、その理由を元はなんとなく分かっていた。だからこそ元はネアの謝罪の撤回を要求する。

 

「謝らないでください。それは当主達の判断だったのでしょうから」

 

「うう……それはそうですけど……。でも、状況を見てそれだけはいつか伝えておかなければならなかったわけで……」

 

 ネアは視線を泳がせて謝罪を続ける。元は当初記憶喪失の謎の青年としてファーフニル家に保護された。その際にジャンヌの従者になったとはいえ、まだ素相の分からぬ身。余計に情報を与えるのは良くないと、敢えてジャンヌの詩巫女嫌いを教えられていなかったのだ。

 元の言葉に同意する様にグリューネがネアを叱る。

 

「そうよぉ。それでジャンヌをあんなに追い込んだんだから、極刑よぉ♪」

 

「ね、姉さん……」

 

「まぁ、実際そうですから、言い訳もできませんよ」

 

グリューネの不吉な発言に、元は苦笑いしながらも肯定する。元自身あれほど追い詰めてしまったのは紛れもない自分自身であること、そしてやりすぎだというのは理解していた。それでも元はそれを聞かなければならなかった。ジャンヌの思い、特に詩巫女をもたらした原因である、救世主ガンダムの事を。それを聞けた今、元の中で決意が生まれていた。

 決意を胸にジャンヌの事を2人に任せる。

 

「すみませんがお嬢様の事、お願いできますか?」

 

「あ……ハジメさん……」

 

「貴方がやりなさいよー、貴方が引き起こしたことなんだからー。って言いたいけど、今のジャンヌに貴方が近づいたら悪化するだけよね。仕方ないからこの前の借りを返すってことにするわ。感謝なさい」

 

「えぇ、すみません」

 

 ネアが戸惑いを見せるが、渋々と言った様子でグリューネが悪態を付きそれを引き受ける。今のジャンヌには一度元と距離を取ることが必要だった。元は部屋の鍵を渡しその場を後にしようとするが、そこでグリューネに呼び止められる。その声は真面目さと陽気さを併せ持つ彼女から、更に真面目さを先鋭させたような声だった。

 

「ねぇ、ハジメさん。さっきの言葉、本気?」

 

「さっき、とは、どのことでしょう?」

 

 元は聞き返す。元としては何気なく聞き返したというつもりだったが、他人からはどこか白々しさが残っていた。それが天然さもあれど真面目さがウリの元の発言では異質だったのだろう。

 そんな彼の懐に飛び込むような発言を、グリューネは元に言い聞かせるように復唱した。

 

 

 

 

「何が『俺が終わらせます、戦争を。この身に代えてでも、貴女の嫌うガンダムが壊れてでも』よ。無茶苦茶言うわね」

 

 

 

 

 言われた瞬間、元は黙り込む。自己犠牲を意味するその発言は、確かに元がジャンヌの前で先ほど言った言葉である。

 ……やっぱり聞かれてたか。聞こえる可能性も考慮して、なるべくあの部屋の中だけに聞こえるようにしていたんだけど、あれだけ熱心に聞かれてちゃ聞こえるだろうな。無茶苦茶なのは分かっている。けど、それでも俺はやる。

 元の決意は揺るがない。ジャンヌはガンダムを恨んでいる。ならばガンダムごとこの戦争を葬って初めて彼女は元の生活に戻れるはずだ。元はそう考え、彼女の前で宣言した。

 グリューネからの呆れとも呼べる発言に対し、そのまま元は自分の考えを伝える。

 

「無茶苦茶でも俺は成します。それでお嬢様の笑顔を取り戻せるなら」

 

「もう……無茶苦茶な上に聞かん坊だなんて。ガンダムの力に酔っているんじゃなくて?」

 

「………………」

 

 ガンダムの力に酔っている。詰るように指摘したグリューネの言葉を、元は無視する。もう止まるわけには行かない。止まれば、あの時の様に悲惨な結果になるのは見えている。誰かの窮地に、躊躇いはいらない。そう考えていた。

 元の脳裏にかつての記憶が思い起こされる。下校途中の幼馴染が別れる直前に見せた、達観を感じさせる笑み。その翌日に彼女の家の前で聞いた話、葬式場で棺桶にて対面した少女の顔。別れ際の少女の言葉が蘇った。

 

『もし私が助けを呼んだら、真っ先に助けに来てくれる?』

 

 あの時はなんのことだったのか分からなかった。分かった時には既に遅かった。もう間違えはしない。命消えゆく前に、願いを果たす。元は拳をその決意が現れるほどに固く握りしめ、ジャンヌをグリューネ達に任せ、基地へと向かったのである。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。次回はいよいよあの白のガンダムが姿を現す物語が展開されていきますよー!

ジャンヌ「……元さん、あれはダメですよ……」

レイ「だよねー……トラウマをほじくり返した上に、無茶な約束おいてさ。負けちゃったらもう駄目な約束じゃん」

まぁ、そこはグリューネさんが言っている通り、ガンダムの力に心酔しているところがありますからね。それ以外にもまだ正確に明らかになっていない、元君の過去も関係していますがね。

レイ「過去が関係しているの?」

ジャンヌ「過去って言いますと……あの幼馴染のです?」

うん、そうだね(´・ω・`)あんまり言ってほしくなかったけど。

ジャンヌ「なら台本に書いておいてくださいよ……」

レイ「そうそうー。楽しみ奪っちゃダメだよー」

いや、うちの台本大まかなものしか渡してないから……。まぁでもその話まだまだ色々事情があるからね。少しずつ明かしていくからこれくらいはいいんだよ。さて、今回はここまでかな。

レイ「次回もお楽しみに―!」


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EPISODE35 白きガンダム、ヴァイスインフィニット1

どうも、皆様。ペーネロペーのHGモデル登場とバトスピ制限改定の更新が同時に来て、はえーとなっている藤和木 士です。フィックスドフライトユニット!( ゚Д゚)(EXVSでの台詞)

ネイ「はえーってなんですか、はえーって……アシスタントのネイ・ランテイルです」

グリーフィア「色々ともっさりしているガンダムの事ね。あとバトスピの方はフェンリグが制限ねぇ……。機獣の構築変えなくちゃ。アシスタントのグリーフィア・ダルクよぉ」

もっさりは私もフルブで触ってて思った。けどあれが清廉されて敵のΞガンダムがた誕生しているっていうのはいいよね(^ω^)うちのガンダムでもやってみたいもんだ。
さて、今回は2本立て。EPISODE35と36の公開だ。

ネイ「まずは35からですね。ジャンヌさんの具合が大丈夫か気になるところですが、タイトルも不穏ですね……」

グリーフィア「もうガンダムって単語が出てきちゃっているからねぇ。これがどう襲ってくることやら」

そこは本編見てもらえればって感じです(´・ω・`)それではどうぞ!


 

 

 声が聞こえる。かつて聞いた声が。それはとても懐かしい声だ。もう既に聞くはずのない少女の声。それを元は目の前に景色を映す、暗い箱の中で無意識に聞いていた。

 映されている景色からの声ではない。少女の声は、元の頭に響くものだった。少女の声が遠くから、はっきりと元の頭に聞こえてくる。

 

(あはは、また私と同じクラスだー。元ってそんなに私と居たいの?)

 

(うっせ、そっちが幼馴染離れ出来てないんだろ)

 

(あー、そんなこと言うー?あ、でも元は私のこと幼馴染ってつもりで思ってたんだー。可愛いなぁ、元~)

 

(んな……!お前……!)

 

(キャー!捕まんないよ~!フッフーン)

 

 中学入学時のクラス分けの光景が思い起こされる。それまでも家が近く比較的帰り道で一緒だった幼馴染は、中学になって更に自分をからかってきていた。やたらと小馬鹿にしていたのが、中学になって未だ色恋沙汰のない自分を面白がってか、それとも本気で心配していたのか。まして彼女が自分に気があるはずもないと、いつも文句を言って追い払ってはいじられの繰り返しだった。

 そんなこんなで中学生活の中で蒼梨とも知り合い、昼食を取るようにもなっていった。控えめに言って充実していたのだろう。その頃の元は女子2人と食事をしていて何なのだろうと退屈に思っていたが。だが、そんな退屈ながらも充実していた時間は、突如として壊された。

 中学2年の夏。元の誕生日から1か月が過ぎた時、彼女が悲しげな表情と共に言った。

 

(もし私が助けを呼んだら、真っ先に助けに来てくれる?)

 

 最初はいつものからかいなのだろうと思った。だからこそ半信半疑で答えた。当たり前だ、と。だがその時の彼女は本当に嬉しそうにありがとう、と言った。その顔を見て、呆気に取られたまま別れた。

 悶々とする夜が明け、朝彼女の家であるアパートを通った時に目についた群衆。パトカーも見える中、見知った近所の人から語られたそれに自身の時は止まった。

 

(嫌よねぇ……柚羽ちゃん、あんな目に遭って……浮かばれないわぁ)

 

 哀れみを含む言葉。続いた言葉が元に衝撃を与えた――――

 

 

 

 

『MISSON FAILED!』

 

「っっ!?」

 

 

 

 

 だが現実に響いた音声により、元は今の現実の世界に引き戻される。目の前には煙を上げたコックピットのような画像と、そこに浮かび上がる「MISSON FAILED」の文字があった。

 未だ落ち着かない様子でゴーグルを外す。そんな様子を心配する、訓練官の男性が声を掛ける。

 

「大丈夫かい、ハジメ軍曹」

 

「あぁ……はい。すみません、ちょっと嫌なことを思い出しまして……」

 

 気遣う訓練官に元はそのように答える。本当の事であるが、詳しくは言わない。下手に言っても却って相手を困らせるだけだ。それに元も、その事を他人に話すつもりは毛頭ない。触れられたくない話題だ。

 元の疲労感を含んだ言葉に、訓練官は納得したようにしつつも警告をする。

 

「そうかい?けど悪影響が出たらすぐに言うんだよ。遠隔操作端末の訓練は稀に使用者の精神を蝕むことがある。最悪廃人になる人も出るくらいだからね」

 

「はい。気を付けます。ちょっと訓練も早めに切り上げますね。失礼します」

 

 訓練官に深く一礼して、その訓練ルームを後にする。元が行っていた訓練は「遠隔操作端末操作訓練」。ガンダムが装備していた「フェザー・フィンファンネル」などの操作の訓練である。

 ガンダムの武装の1つであるフェザー・フィンファンネルだが、誘拐事件での一件以来元はあれから他の同じ類の兵装を使うのにやや四苦八苦していた。もしガンダムでも同じ装備を使う際にそれでは意味がないと、こうして訓練の1つとして取り入れていた。ちなみにドラグディアでこれらの兵装を使うのは少なく、近い範囲ではバァン少将くらいだという。

 しかし訓練とはいえその難度は実際の使用時と大差ない。ヴァーチャル空間で敵からの攻撃を回避しながら遠隔操作端末を操り、敵を撃破するという訓練は確かに精神面で非常に負担である。むしろなぜ立てこもりの際に意思ひとつで、DNプロテクションを形成する指令を出せたのか不思議でならない。先程の訓練官も最初はその話を半信半疑で聞くほどだ。

 スタートに聞いても分からないその理由だが、ともかく一度使えたのならまた使えるはず。そう思って元はこの訓練を続けていた。しかし今回のようなことは初めてだ。あんな光景を思い出したのは、間違いなくジャンヌやグリューネとの会話が原因だろう。

 

(……お嬢様)

 

 あの時の事が蘇る。元のガンダムが壊れてでも戦争を終わらせると言った事を。それを聞くまでの彼女の顔は、しっかりと見るのが難しい表情だった。憎悪と悲しみの混ざった、とても思春期の少女が見せていい顔ではなかった。

 聞いてはいけないことだと分かっていても、元は聞きたかった。ジャンヌの本当の気持ちを。そして自分の意志を伝えたかった。しかし、それを伝えた先で見せたあの表情。虚を突かれ、戸惑い、後悔したようなあの表情。

 もしかすると、ジャンヌは心からそうは思っていなかったのかもしれない。ガンダムが壊れてでも自分を苦しめている戦争を終わらせるなどということは。犠牲など求めてはいない。普段はキツイ言い方のお嬢様でも、心からそうは思っていない時と同じように。

 しかし元はその自分の思い込みを切り捨てた。例えそうだとしてもあんなことを強いる戦争を、終わらせたいと思ったから。踏み込まなければ救えないものがあると思い知らされたあの時から、元はそう考えるようになったのだ。

 今の元には「力」がある。ガンダムという絶大な力が。この力なら戦争だって終わらせられるという自信があった。だが同時にグリューネの言葉が思い出される。

 

『ガンダムの力に酔っているんじゃなくて?』

 

 力への心酔。それは間違いなく今の元の考えに、合致する言葉だった。元自身それを分かっていた。これは力を過信している証であると。慢心である。

 それでも元は構わなかった。力への信頼がなければ、己の全力を発揮することなど出来ないと考えていた。彼女のためには、それだけの覚悟と自信がなければどうにもならないと自負していた。

 かつての自分は、その先へ踏み込む「自信」がなかった。あの時その「自信」があったのならと後悔した。しかし今はその「自信」がある。もう躊躇うことはない。

 元の眼に迷いはない。その先にあるジャンヌの「未来」だけをただひたすらに見ていた。だからこそだった。突如響いた警報が、彼の心を揺らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………はぁぁ……」

 

 ジャンヌはため息をついた。詩竜双極祭の練習の脇でその様子を見るジャンヌは、絶望から来る息苦しさと、視線の先で発声練習を行う少女への胸を縛るほどの愛情から来るため息を何度も吐いていた。あの後行き場のない心苦しさを抱えていたジャンヌは、部屋へと入れ替わりで入ってきたネアとグリューネの2人に介抱された。

 最初はネアから保健室へ行くようにと言われたが、ジャンヌの様子を見てグリューネから「詩竜双極祭の練習見て行ったら?」と提案された。詩竜双極祭というジャンヌが今最も距離を置きたい行事の名を聞き、ジャンヌは気立った目つきでグリューネを睨んだ。なぜ自分の怒りを更に苛立たせたいのか、という気持ちが真っ先に沸き立つ。

 姉の予想外の判断にネアも避けた方がいいと意見するも、グリューネは別に参加するわけじゃない、レイアの前でならその不安げな表情もすぐ制御できる、とメリットのみを抽出した意見を返す。確かにレイアの姿を見ていればすぐに落ち着けるかもしれない。しかしジャンヌはレイアに今の姿を見せたくないと思った。こんな自分を見てしまって、落胆するのではないか、と。返事を渋るジャンヌだったが、悩んでいるくらいならとグリューネに連れられ、詩竜双極祭の練習場所まで連れられてきた。

 最初は遅れて来たことへの注意も含めて、だがジャンヌが共に来たことに練習に来ていたメンバーや担当の講師の顔に驚きが広がる。しかしジャンヌは練習に参加しないこと、そして講師に簡単な事情説明を行うと講師の一声もあって練習はそのまま続行した。そしてネアの隣で、レイアとグリューネ、それに同じくメンバーに選出されていたノーヴェを含めた詩竜双極祭メンバーの練習を見学する。

 最初の内はまだ鬱屈した表情で見ていたが、レイアが練習で見せる表情1つ1つが徐々にジャンヌの締め付けられていた胸の苦しみをほどいていく。上手く歌えずに落ち込んだ顔も、反対に講師に褒められ喜ぶ顔もジャンヌの黒く染まった心に響いた。

 あぁ……やっぱりレイアさんを見ていると心が楽になっていきます……。まるで浄化されていくみたい。レイアさんはやっぱり、詩巫女に相応しい存在なんだ……わたくしなんかより、ずっと……。

 レイアに対しそのようなことを考えるジャンヌ。自分とは境遇の全く違う彼女が、目の前で輝いている姿はジャンヌにあり得たかもしれない自分の姿を重ねる。しかしすぐにそれを止める。あり得たかもしれない自分を考えることほど愚かなことはない。なによりその行為がレイアを蔑むことと同じだと思ったからだ。

 

(というか、違う世界の自分の事なんて、考えたのはあの時以来……っ!)

 

 さらに自分がもしも別の世界で生きていたなら。そんな事を以前考えた時を思い出し、すぐに振り払う。なぜならそれは先程忌まわしいことを思い起こさせた張本人、ハジメと初めて出会った時だったからだ。

 あの時も竜の居ない世界で生きて来たというハジメの話を聞いて、今とは違う世界の自分を考えてしまった。その時は何とも思わなかったハジメが、今ではこれほどに忘れたいと強く思うようになっていた。

 何よ……あんな無責任な無茶ぶり言って!どうせ貴方もそんな事を言って実現できもしないくせに!……そうよ、ガンダムが壊れるなんて、そんなこと……。

 ガンダムが壊れるはずがない、と決めつけるジャンヌ。とはいえこの国で救世主とも呼ばれたガンダムが何かに負けるという考えは、ほぼないに等しいのは確かだ。国の戦争を一度は止めたガンダムは、この世界の象徴でもある。簡単には負けはしない、あるいは勝てはしないと誰もが思う。

 しかし、ジャンヌの思うのはそういった勝ち負けの問題ではない。ハジメが壊れるほどに本気で戦うはずがない。ハジメがどれだけその約束を守る覚悟があるのかという程度に対する言葉だった。壊れないと思っているからそんなことを言えるのだと、そう考えた。

 だが同時にもし本当に壊れたら?起きてしまった時の事を同時に考える。本当に壊れてしまったのなら、それはハジメの死を意味する。そんな事実に血の気が引く自分がいた。

 

(まさか……怖がっているの?あんな男が死ぬことが?そんなわけない。あんな男、死んじゃえばいい!そうよ、いつもみたいに、帰ったらすぐにクビにして……クビに、して……)

 

 帰ったらすぐにクビにするという、かつての彼女がよく口にしていた単語も今は迷いがあった。決め込んでもこれまでの記憶が蘇る。ハジメと共に経験したこの2か月の記憶が。たった2か月という、前の従者であるポルンよりも短い時間だというのに、ジャンヌの心に表しようのないもやもやが生まれていた。

 すぐに忘れなければと頭を振る。と、そこで練習の声が収まり講師が終了の号令を掛ける。

 

「では今日はここまで。詩竜双極祭も、あと1週間を切ったから風邪なんか引かないように。それじゃあ解散!」

 

『ありがとうございました!』

 

 詩巫女養成科の生徒達の声と共に解散となる練習。座っていたジャンヌ達の方に、練習を終えて駆けてくる2人の人物。レイアとグリューネが座っていた2人の下にやってくる。

 

「はうー……疲れたぁ……」

 

「お疲れ様です、レイアさんっ!」

 

「レイアお疲れ様。姉さんもお疲れ」

 

「ありがと、ネア♪ジャンヌもすっかり良くなったみたいね。来てみるもんね」

 

 練習を終えた2人を迎えるジャンヌ達。ジャンヌも先程の心情から打って変わり、レイアを頭から抱く形で幸せそうに抱擁する。そんな様子をグリューネはネアから受け取ったドリンクボトルに口を付けて、安心した面持ちで眺める。内面ではああ思っていても、今はさほど問題ないように思われる様になっていた。

 レイアもその時の事を回想する。

 

「そうだね。最初来たときはすっごい気分が優れてないと言うか、重傷?って感じだったけど、もう元気いっぱいだね!」

 

「はい!レイアさんのおかげですっ!」

 

「えー、そうなの?でも嬉しいなっ!」

 

 レイアの調子に合わせ、ジャンヌも自然と声が大きくなる。最初の頃の重苦しさはない。少しの悩みはあれど、今のジャンヌの気持ちは晴れやかだった。

 そんな様子に一安心と言った様子のネアも、じゃれ合っている2人に帰り支度をするように言う。

 

「お二人とも。仲が良いのはいいことですけど、もう時間も遅いですから帰る準備をしてくださいね」

 

「んんっ……そうですね」

 

「だねー。早く帰ってまた明日ーだね!」

 

 2人は離れるとすぐに荷物などをまとめ始める。時計の針が5分進んだ頃には支度を整えた一行は後門の方へと向かいだしていた。

 練習場から正面校門へと抜ける、オベリスクのある中央広場が見える。ここが詩竜双極祭の会場である広場だ。本番ではここが学園での詩巫女の一番を決める場となる。そこを通り過ぎようとした4人。すると後方からその4人を呼び止める声が響く。

 

「あら~なんだか久々ね、ジャンヌ」

 

「……げっ、そういえばそうでした……」

 

 声を聞いて真っ先にげんなりするジャンヌ。遅れて反応を見せる3人は対照的にその人物に挨拶を返す。

 

「あー、ノーヴェちゃんだ!今日も練習お疲れ様!」

 

「そういえばお嬢様は、最近はノーヴェ様と顔を合わせていなかったですね」

 

「お疲れ様、ノーヴェ。今日は妹さんも一緒なのね」

 

「久々の顔合わせで「げっ」はないでしょ!レイアもお疲れ様~。今日も頑張ってたわね。そうよ、貴女がちゃんと妹を連れだしてからまた見せつけたいなぁって思って!」

 

 3人と言葉を交わすのは、ノーヴェ・リントヴルン。ジャンヌの旧友で、リントヴルン家の長女である。だが、今日はその隣に顔の似たもう1人の少女を連れていた。髪色は白と姉のノーヴェの黒とは対照的なイメージだ。髪型も右片側のサイドテールと姉と似ているようで違う。しかし面影が強くあるのは双子の大きな特徴だろう。

 そんなノーヴェの妹は、薄い笑みを浮かべると口を開く。

 

「もう、お姉ちゃんも見せつけるって言い方、照れるよ。けど、ファーフニルさんが練習に来るって、珍しいですよね」

 

「そ、そう、ですね……ディーナさん」

 

 ジャンヌは歯切れのよくない返答をする。ノーヴェの妹の名はディーナ・リントヴルン。彼女に対して苦手意識はなかったものの、そうなった理由は他でもない練習へ来たことへの発言がある。

 聞かれたくない本心だったのを察し、ネアがフォローに入った。

 

「今日はお嬢様の体調が優れなかったので、こちらにサポーターとして来たんです」

 

「そうなのよ。本来ならその役目を担うはずのハジメさんも、そんな彼女を見捨てて基地に行っちゃったし」

 

「そういえば最初にそんなこと言っていたわね。何、ジャンヌまた従者と喧嘩って感じなの?」

 

 続くグリューネも事情を説明して、ノーヴェが最初の時のことを指摘する。ややハジメの行動が脚色されている気もするが、そこは全部言うとかえってジャンヌの立場が危うくなると思っての事だった。今この場には事情を知らないレイアとディーナもいる。余計なことは広めない方がいい。

 ジャンヌも2人の言葉に合わせる形で、ノーヴェの質問に返答する。

 

「えぇ、そんなところです。あんな立場もわきまえない従者、今日帰ったらクビです」

 

「えぇー!ジャンヌちゃん!」

 

 レイアの残念とも言える嘆きが響く。ハジメを家に置く要因ともなった愛しのレイアの頼みでも、今回ばかりは聞けなかった。あの時はまだ自身の意識が別のところにあったことによる弊害と、人道的対応ということで飲んだ条件。しかし今回は既に安定的な地位にある。もう甘えさせはしない。

 

「相変わらずね、ジャンヌ。前もそうやってあの事件に巻き込まれたっていうのに……今度はガンダムが誘拐するかもよ~」

 

「フン。そうなったら国中があいつを殺しにかかるわね、きっと」

 

「そんな……ダメだよ、ジャンヌちゃん!そんなこと言っちゃ!」

 

 飼い犬を蹴るが如く、吐き捨てる。レイアが悲しい顔をしてジャンヌを否定する。しかし、そこで会話の流れをさらに凄まじい流れで変えたのは、ディーナの言葉だった。

 

 

 

 

「んふふっ、これはこれは。どちらかと言えば彼が捨てたんじゃないです~?」

 

「で、ディーナ?」

 

「ディーナさん、貴女一体何を……」

 

「だって貴女の家、呪われた家系ですから、ねぇ?」

 

「―――ッ!?」

 

 

 

 

 あまりにも予想外すぎる、唐突過ぎるカミングアウト。今最も触れられたくない話題だった。一気にジャンヌの息が詰まり、胸が苦しくなる。

 その発言の重大さは、ジャンヌの事情を知る他の人物にも波及する。ネアとグリューネがディーナに詰め寄る。

 

「ちょ、ちょっとディーナさん!?何を言って……」

 

「そうよ。知っているなら知っているで、無暗に言わないっていうのが暗黙の了解だと思うのだけれど?そうよね?ノーヴェさん?」

 

「え、いや、私ディーナには喋ってないって!?」

 

「え?えぇ!?何、みんなどういうことなの!?」

 

 ノーヴェはグリューネの質問に横に振り、何も教えていないと言った。一方話に全くついていけていないレイアはどういうことなのか知っている者達にせがむ。

 何で……何で今そんなこと言うの……今はレイアさんだっているのに!レイアさんだって混乱してる……何で、何でっ!

 抑えきれない感情が沸き立つと、ジャンヌは乱暴にディーナの胸倉を掴みかかり、叫ぶ。

 

「やめてよ…………」

 

「ん?」

 

「やめてって言っているのよ!レイアさんの前で、その話をしないでッ!!」

 

「じゃ、ジャンヌ!?いくら何でも私の妹にそんなことしないでよっ!!」

 

 激情に駆られるジャンヌを、ノーヴェが妹から引き離す形で制止する。だがそんな2人の様子を、ディーナは高笑いで見物していた。

 

「フッ……アハハハハハッ」

 

「で、ディーナちゃん!なんでそんな笑えるのッ!?」

 

 ジャンヌが狂乱する姿を見るに耐えかねたレイアは、ディーナを言い咎める。その声はジャンヌの気持ちにつられて感極まっていた。すると、レイアの悲しみのこもった問いかけにディーナが一転して落ち着いた声音でそれに応える。

 

 

 

 

「ごめんなさぁい。でもそれは事実ですよ。ジャンヌの家は呪われてる。それもぜぇんぶ、これのおかげで、ね……!」

 

 

 

 

 そうして恍惚の表情を浮かべ、カバンから指示したのは夕焼けの光を反射する、白い箱状の機械だった。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。続くEPISODE36もお楽しみください。

ネイ「……まさかこのタイミングでノーヴェさんの妹さんのフラグを回収するとは……」

グリーフィア「ちょっと気になってたのは確かね。それと、第1章の終わりで笑ってた子、もう1人はディーナだったりする?」

ネイ「え……?居たの?」

グリーフィア「いたわよ~。酷く口角上げてるって感じの子。白い髪だし、間違いないんじゃ?」

それはノーコメント(´・ω・`)いや、外見としては合致しているしね……また後程(;・∀・)
では36も引き続きお楽しみください(´-ω-`)


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EPISODE36 白きガンダム、ヴァイスインフィニット2

どうも、皆様。EPISODE35から引き続いて連続投稿です、藤和木 士です。

レイ「アシスタントのレイ・オーバだよっ!いよいよ白ガンダムの登場!」

ジャンヌ「し、白ガンダムってレイさん……まぁ実際名称にも白って入っていますけど……。あ、アシスタントのジャンヌ・ドラニエスです」

白ガンダム……(´・ω・`)まぁそれはいいとして、EPISODE36の公開です。

レイ「まー前話から引き続いてのだから分かるけど……ディアナちゃんすごい改変されてるねぇ……別人みたい」

ジャンヌ「あまり元の人物を意識しないでいたいですが……確かに姉妹と言う点は同じでも、元のディアナさんとは性格が違って、すごい人の嫌なところを突いていると言いますか……」

(゚∀゚)まぁこの子は特にわけあって性格変えているからね。元ネタ知らない人には特に意味ないけど。

ジャンヌ「元からこうではないようですが……つまりガンダムの装依者になると、気分がハイテンションになる、と?」

あながち間違いじゃない(;・∀・)現に元君もちょっと調子乗っている感じだし……

レイ「あー……これはディーナちゃんにとって黒歴史になりそうな予感」

別に右腕がうずくみたいな感じじゃないのでセーフでは(´・ω・`)

レイ「いや、ハイテンションになっておかしなこと言うっていうのもこの年代の女の子じゃ結構あれだよ?」

ジャンヌ「ですね」

うん、それじゃああの後どうなるのか、本編どうぞ(*´ω`)


 突如としてジャンヌの過去を口にし出したディーナ。その彼女がカバンの中から取り出したのは、白いボックス状の機械だった。彼女達学生の日常にはあまりにも似つかわしくないそれだったが、ネア達はその機械の名前を知っていた。グリューネも正体に気づき、指摘する。

 

「ねぇ、それってスターター……?」

 

「スターターって……なんでディーナがっ!?」

 

 スターター。それはガンダムを含めた、MSの装依装置の名前。本来なら軍人が持つべき代物である。しかし今ディーナの手に握られているのは、色こそ見たことはないものの、スターターそのものだ。

その指摘を受け、ディーナの姉であるノーヴェは声を大にする。なぜ妹がそのようなものを持っているのか、理解できなかったからだ。しかし、姉の動揺に目もくれずディーナは称賛を送り頷く。

 

「フフフっ、流石に黒のガンダムの力を借りた人達はよく知ってるね。けど、これはどうかな?」

 

 ジャンヌを含め、まだ状況を呑みこめていない者がほとんどの中、彼女は更にスターターにある物を装填した。それは1枚のカードだ。カードを横のスリットに差し入れると、スターターから音声が響く。

 

『INFINITE』

 

 響いた音声にネアは身構える。しかしそれが何を意味するのか、本当の意味をまだ彼女は分かっていない。この場に居て分かっているのはグリューネだけだった。彼女はその行為を見て、血の気の引いた顔をしていた。

 まだ何も知らないネア達は、警戒をしつつ呼びかける。

 

「ディーナさん、何を……」

 

「な、何するの、ディーナちゃん!」

 

「っ……!」

 

 ジャンヌの苛立ちがさらに高まっていくのが見て分かる。しかし、気に留める様子もなくディーナは手にしたスターターにロックリリーサーと思われるものも装填してそのまま腰へと装着する。するとスターターの名前がスターターから響き渡る。

 

『インフィニット・スターター』

 

 聞いたことのない名称だ。とはいってもネア達学生が知っているのはせいぜい両軍で一般的に用いられる「ドラグ・スターター」と「マキナ・スターター」くらいのもの。ハジメに会ったことのある者達なら、ゼロ・スターターが候補に挙がるだろうがその音声とも違うものだ。

 それを身に付けると、ディーナはカバンを地面に落とす。そしてその場で一回転してから、スターターの機能を解放する。

 

「装依」

 

 ボタンの押し込みと共に宣言したディーナは、前後に現れた2つの光の壁に挟み込まれる。挟み込んだ衝撃で辺りに風が渦巻く。旋風に思わず声が漏れ出す。

 

「きゃあ!?」

 

「ううっ!」

 

「装依……!?こんなところで……」

 

「ネア……他の……早く離れ……っ!」

 

 旋風の中で動けない中、グリューネの退避を呼びかける声がかすかに響く。だがその声ははっきりとは届くことはない。そしてそれを知る前に風が止む。同時に姉のグリューネが指摘したことの意味を知ることとなる。

 風が止んだ広場に、スピーカーから出力したディーナの声が響く。

 

 

 

 

「無駄だよ。もう、なっちゃったからね」

 

「んな……!?」

 

 ジャンヌの声にならない驚きが聞こえる。ネアもそれに続いて目を開く。その意味を彼女も思い知った。

 そこにいたのは、白いMSだった。純白の装甲に蒼いフレーム。鷹のような翼を感じさせるウイング。だがそんなものはとある点に比べれば、どうでもいいことだ。指摘せざるを得ない程に大きな特徴。その機体の頭部は、V字のアンテナに2つの眼を持っていた。

 あり得ない。それがネアの抱いた感想だ。その特徴を持つのは自分達の中でたった1つの存在。その存在も目の前にいる彼女ではない、かつて自分を救ってくれた「彼」の力であるはずなのだから。

 眼を疑う光景にネアは呟く。

 

「どうして……貴女が……」

 

「どうして?決まっているよ。だって私は……」

 

 問いかけに白いMSと一体化したディーナが、自慢げに語る。

 

 

 

 

「私は、白のガンダム、ヴァイスインフィニットガンダムの装依者だから!」

 

 

 

 

 白きガンダムを纏ったディーナは自身をそう名乗った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガンダム……!?何で……何でなのよ!私の前にばっかり!!」

 

 目の前で起こったことにジャンヌは膝から崩れ落ちる。先のハジメとのやり取りに加え、ディーナから投げかけられた自身の過去の暴露。そして今目の前に見える、ガンダムの姿。

 自分を不幸に陥れたモノ達が連続してぶつけられる。これまで必死に避け続けてきたジャンヌに、この連続は鬼畜としか言いようがなかった。

 錯乱状態に陥るジャンヌにレイアの叫びが飛ぶ。

 

「ジャンヌちゃん!?ジャンヌちゃんしっかりして!!」

 

「そうよ!こんなの相手に出来るわけない。ジャンヌ、いい加減目を覚まして!」

 

 グリューネもジャンヌに叱咤を飛ばす。だが今のジャンヌにそれに応えられるだけの精神的余裕はなかった。

 駆け寄ったレイアがジャンヌの肩を持とうとする。しかしそうはさせまいと目の前の白いガンダムが動く。

 

「させないから」

 

『DNF、サイレント・タイム』

 

 機体から白い空間が周囲へと広がる。反射的に防御しようとするレイア達だったが、その前に彼女達の体が制止する。彼女達だけではない。広がった球体状の空間に覆われた学校の敷地の、草花や風が一切止まってしまっていた。

 静止した空間の中で、恐怖で顔が引きつった状態で固定されたジャンヌはその事象に届かぬ戸惑いを止まっていない自身の意識の中で漏らす。

 

(何なの……何で止まって……レイアさん!?)

 

 レイアに話しかけようとしても、その体は全く動くことなく、声すら発することもない。すべてが静止した領域で唯一静止していないディーナが、ガンダムのスピーカーを通してその現象を説明し出す。

 

「私のガンダムのDNF、サイレント・タイムは特殊でね。展開した結界内の物の時を止めることが出来るの。けどまぁ、止めるために時間を指定して、その時間分の行動範囲しか動けない。それに相手のMSのDNでも阻害されるし、展開時間分の時間への修正を体に受ける、と結構制約も多いんだけどね。……けど、生身の人間相手には十分。さぁ、そろそろ本番……っ!」

 

 説明を聞かせ終わったディーナは徐に腹部の方に手を当てる。すると彼女の手にローディングカードと思われるカードが握られる。装依状態を維持したままでのその行動にジャンヌの思考は追いつかない。しかし、続く行動は更にその理解を追従させなかった。

 カードから光が溢れ出す。やがてその光はジャンヌ達に向かう。何が起こるのかと恐怖が生まれるジャンヌ達。その光はやがて1人の少女に集約した。その少女は――――――、

 

 

 

 

(え…………レイア、さん!?)

 

 

 

 

 レイアだった。静止した状態の彼女を、カードから放たれた光が覆っていく。やがてその光に感化される様に、レイアの体も光と同じ輝きへと変わっていく。

 そんな異常事態にジャンヌは声を出したい思いで心の中で叫ぶ。

 

(駄目っ!レイアさん、レイアさんッ!!)

 

「うふふ……ちょうどいい人質になってもらうよ。絶望しようか、ジャンヌ・ファーフニル……」

 

 ジャンヌの心の声が聞こえているかのようにディーナの言葉がゆっくりと紡がれる。やがてレイアは白きガンダムに憑依したディーナの持つ、カードへと取り込まれてしまった。

 それを皮切りにジャンヌの体がガクッと倒れ込む。寸での所で手を突き出して体を支える。同じく止まっていたノーヴェやグリューネ、ネアも動き出しガンダムのDNFが終了したことを知る。反対にレイアをカードへと取り込んだディーナはやや苦しそうな様子で彼女達の姿を見つめ返す。

 

「……ふぅ。やはり、少し体力を使わされるな、これは……」

 

「ディーナ……貴女っ、レイアさんを元に戻してッ!!」

 

 レイアをいきなり光に変えられ、カードへと閉じ込めたディーナに煮えくり返るほどの怒りをぶつけようと近づくジャンヌ。ところが彼女の行く手を阻むように、上空から未確認の浮遊物体が急降下してくる。

 リング状のそれはジャンヌやネア達を囲うと、光を発する。まぶしさに目を閉じると、その時には彼女達はリングの造り出した球体の中に閉じ込められてしまっていた。

 

「きゃっ!?……何よ、これ!」

 

「ッ!閉じ込められた!?」

 

閉じ込められたことに予期せぬ動揺を漏らすジャンヌとグリューネ。他の2人も必死に球体を叩いて出ようとする。

 

「うぅ……びくともしない」

 

「ディーナ!どうしてこんなことするのよっ!?お願いだから止めて!」

 

 ディーナの連続する凶行にノーヴェからも嘆願に近い制止が掛けられる。だが姉の言葉すらも斬り捨てる形で、息が整ってきたディーナは次なる強硬な手段に出る。

 

「うるさいよ……。ちょっと黙っててぇ。今から立てないくらいに痛めつけなきゃいけないから……、あなた達全員、覚悟はいいかな……うっふふふふふふふ……」

 

「え――――あぐッ!?」

 

 ジャンヌを捕らえたリングの前まで来たディーナが、不気味な笑い声と共にその手を伸ばす。言葉の意味を理解するよりも前にリングの拘束が解ける。が、地面にその足が着くより前にジャンヌはその首を白いガンダムの、ディーナの手に鷲掴みにされる。

 ガンダムの握力によりその金属の質感が首にめり込んでいく。掴まれた衝撃による痛みと共に息を止められることに必死になってもがくジャンヌ。先程の言葉も相まってその手から逃れようと涙を浮かべて抵抗する。だが少女の力ではどうにもならない。ジャンヌの首を持ち上げたまま、ディーナはその手を振りかざす。

 

「さぁ、まずは一発!」

 

「や、やぁ……!」

 

「駄目ッ!お嬢様ッ!!」

 

 ジャンヌの儚い拒絶の声。ネアの絶叫。だがそれは彼女の拳を止めるには足りない。そして周囲に目を閉じてしまいたくなるような鈍い音と水音が響いた。

 

 

 

 

『基地隊員に次ぐ!現在ドラグディア首都セント・ニーベリュング市内にて異常なDN反応検知!場所は市内の聖トゥインクル学園敷地内!!繰り返す……』

 

 基地全体に響く非常警報。それは街への異常事態を告げる内容の放送だった。同時に基地内の隊員が慌ただしく行き来し始める。

 それは元にも同じことが言えた。すぐにガンダムとスターターがある格納庫へと急ぐ。だが、彼を急がせる理由はもう1つ存在していた。

 

(聖トゥインクル学園で異常なDN反応……まさか、お嬢様が巻き込まれているんじゃ……!)

 

 元の脳裏にジャンヌの顔が掠める。あの後ジャンヌの事はネア達に任せて基地へと来ていた元。流石にあの状態で1人家には帰さないだろうとは踏んでいた。とすれば大方保健室へ身柄を預け、グリューネの練習が終わり次第共に帰宅という流れが予想できる。そうなれば、まだジャンヌが学校に居てもおかしくはない。巻き込まれている可能性は十分ある。

 途端に頭の中で後悔が生まれる。あの時自分がジャンヌを追い込まなければ、今日でさえなければその不幸な鉢合わせはなかったのではないかと。だがその考えを基地の廊下を走りながらも頭を振って否定する。もしものことなど起きはしない。そもそもまだジャンヌが事件に巻き込まれているかどうかも分かっていないのだ。とにかく優先するのは、安否の確認である。

 そう考えているうちにケルツァート隊のMS格納庫に到着する元。既に格納庫には隊員の何人かが整備員に機体のチェック項目を確認していた。元も格納庫を走り、その先にある自分の機体、新装備を装着したシュバルトゼロガンダムの下へと向かう。既に機体の整備は終わっており、近くで機付長のヴェールが他の整備員たちに指示を飛ばす光景が見られた。

 元は彼女に一声かけ、出撃準備を行う。

 

「ヴェールさん、機体状況は」

 

「は、ハジメ君!?来てたのね。市街地戦だから武装換装を……」

 

「間に合いません!このままで行きます!」

 

 ヴェールの返事を待たず、元はスターターを装着する。急ぐ元を見て慌ててヴェールは制止する。

 

「待って待って!だから火力重視のヘラクレス仕様じゃ……きゃっ!?」

 

 しかし、その制止を聞かずに元はガンダムを装依する。ガンダムはペルセウスとは異なる、新たな武装群の1つ[Hercules(ヘラクレス)]へと換装が完了していた。背部ウイングをハイブリットの物から新たにリボルビングバスターキャノン付きウイングバックパックへと変えたその姿は支援用MSを思わせる格好だ。

 だがそれとは裏腹に元はキャノン砲を背負ったガンダムでそのまま基地出口まで全力で飛ばそうとしている。ランスも持ったその機体はあまりにも危険であることが誰の目からも見て取れる。慌てて隊員達も機体の通り道を開けていく。進路を確保したところで元は叫ぶ。

 

「シュバルトゼロガンダム[Hercules]、行きます!!」

 

「こ、こらー!勝手に行くなー!!?」

 

 ヴェールの怒鳴り声が格納庫に反響する。だが元はその勢いのまま基地を飛び出していった。

 

 

 

 

 基地を出て数分。機体を飛ばして聖トゥインクル学園の敷地内へと着地、侵入する。既に学校には静けさが訪れており、まるでそんな騒動は起きていないように思える。

 しかし、元は感じていた。普段通う学校からただならぬ気配があることに。まるで動物園で柵越しに猛獣と向かい合っているかのような感じだ。近づいていくほどに鳥肌が立つのを感じる。

 それでも元は敷地内を進んでいく。この中にまだ主であるジャンヌがいるのなら助け出さなければならない。それが元の使命であったからだ。慎重に校内を捜索する。

 やがて外周を調べ終わった元は、中庭の方へと進んでいく。進むたびに段々と嫌な感じが強くなっていく。何かがいる。元はそう判断し警戒を強めて先へ進む。そこで気づく。かすかな物音と、誰かの声が中庭から聞こえてきたことに。

声の種類からして何人かがいることは分かる。しかし声の判別までは出来ない。そこで意を決した元は中庭へと突入を試みる。機体のスラスターを吹かせ中庭へと侵入する。そして遂に、その姿を見た。

 

 

「……!お嬢様!!」

 

「……んう……ハ、ジメ……?」

 

 

 中庭の中央、黒いオベリスクのある舞台、そこに横たわるようにジャンヌがいた。ジャンヌだけではない。ネアやグリューネ、それにノーヴェも周囲に浮かぶリングが生成する光の球体の中に、ボロボロの姿で閉じ込められていた。一体何があってそうなったのか。経緯が分からずノーヴェの顔を見るのが久しぶりだということも片隅に浮かぶことなく、極限状態となった彼女達に駆け寄ろうとする。

 しかし、それを遮るように元を呼び止める者の声が中庭の中から掛けられる。

 

「待っていたよ、黒のガンダム」

 

「誰だ!?」

 

 その声に反応し、元は右手に装備するランスを構える。声の主を探して首を振っていると、声の主は舞台の影から姿を現した。顔を出したのは、白髪の少女だった。聖トゥインクル学園の制服を纏った少女。その顔はどこかノーヴェに似ていると思わせる。

 すると警戒する元に対し、少女は立ちはだかる形でジャンヌ達の前に出て自己紹介を行う。

 

「初めましてだね、クロワ・ハジメ。私はディーナ・リントヴルン。そこで倒れてる、ノーヴェ・リントヴルンの妹よ」

 

「ディーナ・リントヴルン……」

 

『……?ハジメ、あれは……』

 

 同時に彼女はその手に握るカードを掲げる。何のために、と最初は思ったがやがてスタートが何かに気づき拡大したメインカメラの画像に言葉を失う。

 カードに映った人の影。それはカードの中で動いており、こちらを向いている。しかしその人影は、その姿は元も良く知る人物だった。

 

「……なっ!……何っ!?」

 

『……た、たす……け……』

 

 画面に弱々しい姿で映るのは、藍色の髪を左右で結ぶ、主の想い人レイア・スターライトだったのである。彼女もジャンヌ達と同じように痛めつけられた1人だったのだ。

 だが、その姿は中庭のどこにもいない。どこかにいる彼女の姿を映すカードを見せるディーナに、レイアの居場所を問う。

 

「レイアを離せ!どこにやった!」

 

「あれぇ?既に見せているよ。彼女は、「この中」にいる」

 

「なんだと……!?」

 

 だが彼女は質問の意図に分からないかのように、再びガードの中のレイアを示して返答する。言っている意味が分からなかった。カードに映っているのはどこかに囚われているはずのレイアだというのに、この中にいると彼女は言っている。カードの中にレイアがいるとでも言うのか。そんなことがあり得るとは元には思えなかった。

 しかし、スタートはその行動に心当たりがあることを口にする。

 

『まさか、そういうことか?』

 

「何か知っているのか?」

 

「流石にあなたは知っていますか、元英雄。あなたの想像通り、だよ」

 

 事実に気づいたスタートに称賛の拍手をディーナは送る。何のことかさっぱりな元は事情を知っているであろうスタートに説明を要求した。

 

「おい、スタートどういうことだ?」

 

『文字通りだ。レイア・スターライトはあのカードの中、セレクトスーツカードの中に囚われている。このガンダムにもあるシステムを使ってな』

 

「セレクト……おい、それって……」

 

 スタートの説明で、元はそれに気づいた。セレクトスーツカードが指す、その意味を。だがそれを言葉にするよりも早く、分かりやすい方法でディーナが答えを示した。

 

「その通り」

 

『INFINITE』

 

 もう片方の手に握った白いボックス状のアイテムに、レイアの入ったカードを差し込む。続けて星と歯車を合わせたタグ状のアイテムを、蓋を開いて装填する。それらのアイテムを入れると、ディーナはボックスを腰に当てる。ボックスからは瞬時にベルトパーツが伸長し、彼女の腰にボックスを巻き付ける。その行動の順番は違えど、元がいつもガンダムを装着するときと同じ動作だった。

 悪寒を感じる元。その悪い予感は現実のものとなった。

 

『Standby OK?』

 

「装依!」

 

 ボックスの上にあるボタンを押して、鳴るMS装依を知らせる音声。ディーナの声に反応し、彼女の前後に2枚のアクセスゲートが出現する。そして彼女は元の時と同じようにアクセスゲートにその体を挟み込まれる。電子化した体を重なったアクセスゲートが頭上に移動し、上から下へと潜り抜ける。光が満ちる。

 光が収まったその場にいたそれが、元の動揺を誘う。

 

「嘘……だろ……」

 

『……やはり、お前か』

 

 予測をしていたスタートも息を飲んで苦虫を噛み潰す思いで見つめる。ディーナの姿は、とある1機のMSへと姿を変えていた。純白の装甲に蒼いフレーム。元の機体と全く逆の色に染まった機体。しかしその顔は、その姿はV字のブレードアンテナに緑色のツインアイと色と多少の差異を除けば元のガンダムとまったく同じだった。

 呆気に取られ固まる黒いガンダム。対して、白のガンダムから機体名称が響く。

 

 

 

 

『エンディング・スリープ・インフィニティ―――――ヴァイスインフィニットガンダム』

 

「ヴァイスインフィニットガンダム。これが、私のガンダムだよ」

 

 

 

 

 星を救いし救世主ガンダム。その名を冠した機体が今相対した。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。

ジャンヌ「ディーナさん最悪ですね……」

レイ「ディーナちゃん最悪だね……」

2人そろってですかい(´・ω・`)

レイ「いや……ガンダムになって更にお腹殴るってど畜生だよ!」

アイドルがド畜生って言わないで(゚Д゚;)

ジャンヌ「しかも圧倒的優位に立って人質もとった上でこれは……」

(´・ω・`)ま、まぁヴァイスインフィニット側からすれば、あの機体1機で他も相手取ることを考えれば……。

レイ「でもガンダム戦争状態でも圧倒してたじゃん!」

あれはほぼ不意打ちだから(´・ω・`)

ジャンヌ「んー……それから話題が離れると、元さんのEP35の回想シーンが気になりますね」

あ、それについては今後もう少し明らかにしていくつもりだよ(´・ω・`)もっともこっちより胸糞悪いかもだけど

レイ「えぇ……」

ジャンヌ「本当ですか……それ」

本当です(´-ω-`)では本日はここまで。

レイ「次回も、よろしくー!」


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EPISODE37 白きガンダム、ヴァイスインフィニット3

どうも皆様。7月に入りましたね。暑いったらありゃしない、藤和木 士です。ファッキンホット!(クソ暑い)(゚Д゚;)

ネイ「いや、それって本当に文脈合っています……?アシスタントのネイ・ランテイルです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィア・ダルクよぉ。確かそれってネプテューヌのキャラのブランって子のイラストであなたが見かけたやつだったかしら?」

そうそれ(´Д`)いや、めっちゃ暑いったらありゃしない。皆様も熱中症気を付けてね。さて今回はEPISODE37と38の連続投稿です(´・ω・`)

ネイ「最近連続投稿多いですね」

グリーフィア「進みが早いのはいいことね。でも貴方大丈夫?」

多分(´・ω・`)まぁ執筆が進むのはね、こちらとしても楽ですよ。たまにスランプになるけど。それでは本編、いよいよ黒と白のガンダムが激突する~!(゚∀゚)


 

 これは現実なのだろうか。いや、起きないはずはなかった。いくら救世主と呼ばれる機体でも、所詮は機械。他にも同じ名前を冠したガンダムがいないとは言い切れない。自分のガンダムだけであるはずはなかった。

 それでもこういう事態に陥るという可能性が、元の頭から抜け落ちていたのは自分の中で強まるガンダムへの心酔が理由だったのだろう。その結果戦闘する前から元は、強い衝撃を精神的に受けることとなったのである。

 

(白のガンダム……こいつが、お嬢様達を……っ!!)

 

 だが先程のジャンヌ達の姿が思い浮かぶと、ランスを構え敵意を露わにする。一方穂先を向けられたディーナはわざとらしくおどけて見せる。

 

「いいねぇ。主人を痛めつけられて、更に自分のプライドも傷つけられて怒り心頭ってことかな?けど、それは私も望んでいること」

 

 元の怒りを待ち望んでいたかのようにサイドアーマーに装備していたブレードガンを構える。かつてのガンダムにも装備されていた武装を、相手も持っている。間違いなく元のガンダムと関係があるのが窺える。

 共に武器を構え、戦闘態勢に入る。静けさの訪れた中庭に、最初に響いたのは元の声だった。

 

「お嬢様を……開放しろッ!!」

 

「おっと!」

 

 スラスターを点火し、膨大な高純度DNを放出しながら近距離への間合いを詰める。白のガンダムに届く距離となったところでランスを振りかざす。ヴァイスインフィニットは攻撃の当たる直前に機体をずらして回避し、距離を取ってブレードガンをガンモードに切り替え、ビームの連弾を横合いから放つ。

 放たれたビームの弾丸は真っ直ぐ元のシュバルトゼロに伸びる。しかしそれは左肩アームに装備されたシールドにより防がれる。攻撃を凌いだガンダムはそのままランスを敵である白のガンダムへと向ける。

 

「このッ!」

 

「うん?」

 

 ランスが可動し、真っ二つに割れる。割れた穂先から出現したのは長い砲身だ。露出した砲身を向け、元はランスの持ち手に展開した持ち手を握るとトリガーを引く。砲身から溢れんばかりのビームが発射された。

 ガンダムの出力を持って放たれたビームは、真っすぐとヴァイスインフィニットへと伸びる。しかしまた白いガンダムは攻撃を回避し、攻撃は校舎の壁面を貫き、爆発を起こす。破壊された校舎は教室まで届いており、破壊力は一目瞭然。ところが元はそれに構わず、逃げるヴァイスインフィニットガンダムに狙いを定め追撃する。

 この時元の頭は完全に敵を殲滅することに向けられていた。ジャンヌを何が何でもあそこから助け出す。その事だけに目を向けていた。だからこそその破壊力を見て、スタートが力のセーブを呼びかけた。

 

『おい、元!いくらあのガンダムを落とすにしても、威力は考えろ!でないと先に校舎が全壊するか、ジャンヌ・ファーフニル達も巻き込まれるぞ!』

 

「ハッ!?……っく!」

 

 ジャンヌの名前を言われ、ようやく思考を落ち着かせる元。構えていたランスの穂先を閉じ、格闘攻撃に切り替えて逃げる白のガンダムに叩き付けた。対するヴァイスインフィニットガンダムもブレードガンを剣に切り替えて攻撃を受け止める。

 攻撃を切り替えた元に対し、ディーナが接触回線でこちらの思考を読み取った発言を掛ける。

 

「おっと、近接攻撃に切り替えて来たね。あの攻撃は流石にここで使うわけには行かないだろうからね。武器を封じられて、どうだい!」

 

「ぐぅ!」

 

 切り結んだ状態からこちらのわき腹に蹴りを入れ、上に弾き飛ばすディーナ。元は蹴りで崩したバランスを立て直しながらも、勢いを利用して距離を取る。一方ヴァイスインフィニットガンダムはブレードガンをガンに切り替え、こちらの回避先に狙いを定めて放つ。

 その攻撃を元は回避し、応戦しようとする。だが思うように攻撃が出来ない。弾幕が厚いこともあったが、それ以上に相手が校舎を背に戦っていることも要因として大きかった。先程校舎を破壊した光景が過り、ランチャーランスを開くことが出来ずにいた。

 しかしこのままただ回避するだけでも厳しかった。ランチャーランスの重量が重く、ガンダムの機動に悪影響を与えていたのだ。

 このままでは、と思ったところでランチャーランスが相手のビーム射撃の直撃を受ける。爆散はしなかったが、元はそのままランスを手放す。そうして重量を減らし、新たに腰部に装備された大型化したブレードガン・ニューを握り、切り込む。相手のブレードガンよりもリーチの長いブレードガン・ニューに、ディーナはブレードガンで受け止めそのまま受け流す。

 攻撃を受け流されたことで背中を晒す元。ヴァイスインフィニットも受け流した直後機体を反転させてその背中を狙おうとする。だが元はバックパックにキャノンと共に付いたウイングスラスターで瞬時に機体を回転させ、その攻撃をロングブレードガン・ニューでやり過ごす。

 

「ぐぅぅ!」

 

「やるねぇ、でもまだッ!!」

 

 攻撃を凌いだ元に称賛の言葉を送るディーナ。その言葉を送ると同時にディーナは元の視界から消える。瞬間移動の如く姿を消したヴァイスインフィニットの動きを元は追いきれない。後方の危機を知らせるアラートに従い、向き直ったシュバルトゼロにヴァイスインフィニットがブレードガンを振るう。間一髪ロングブレードガン・ニューで防ぐが、勢いに負けて武器を弾き飛ばされる。

 徹底した下方へのポジション取りは、確実に元の攻撃の択を潰していた。もしビームを撃ってそれがジャンヌ達に降り注げば……。謎の空間に閉じ込められているとはいえ、相手にその主導権がある限り、安全と言う保障は一切ない。先程の失態が元の行動を狭める。

 しかしいつまでも近接攻撃ばかり狙っていてもジリ貧だ。シュバルトゼロが今装備する[Hercules]は本来、射撃戦を重視した構成である。射撃攻撃を以て場を制圧することが仕事である本兵装で近接戦をメインとした攻撃は効率が悪い。もっともその装備状態を、注意されながらも出撃したのは元自身ではあったが。まさかこのような事態に陥るなど、その時は全く考えもしなかった。

 

(学校に被害が出るということさえ頭に浮かんでいれば……クソッ!)

 

 自身の選んだ選択に舌打ちをする元。だが今どうにかなる物でもない。少なくともランス分の重量は減っている。それに不得手としているとは言ってもガンダムならまだ出力でどうにか出来るはずだ。その考えの下、再度シュバルトゼロガンダムはロングブレードガン・ニューを左手に、右手に新たにビームサーベルを肩部増加装甲内から引き抜き、戦闘を継続する。

 

「はぁっ!」

 

「当たらない……よっ!」

 

 サーベルによる攻撃を回避するヴァイスインフィニットは、後退しながらもブレードガンでビームを放つ。放った連弾でこちらの動きをけん制してくる。だが元はその攻撃をガンダムのシールドで防御しつつ突貫する。

 防御を硬くしての突貫。しかしシールドで防御しての突貫に切り替えたのを見て、今度はそのシールドに攻撃が集中する。放たれる連弾に勢いは削られ、動きが止まる。そこにヴァイスインフィニットの腰部から展開したバインダーがビームを放つ。

 

「行けッ最大火力!!」

 

「っっ!!」

 

 カメラを光が埋め尽くす。攻撃を受けていた元のガンダム目がけて放たれたビームは、そのままシールドを飲み込んでいく。決定的な一撃だった。

 しかし、続いて起こった爆発の違和感がディーナの口から零れる。

 

「ん?っ!!」

 

「てあ!!」

 

 ディーナが気づくのと同時に機体を蒼く光らせ飛んできた攻撃を回避する。攻撃を放った元のガンダムは、シールドを失いつつも同じく蒼く光らせた機体で反撃の一太刀を浴びせた。

 シールドを身代わりにした不意打ちに、ブレードガンを失いつつもウイングからビームサーベルを抜き放って応戦に入る。

 

「受け止めつつエラクスでの不意打ち……やるねぇ、ガンダムじゃなかったら、決まっていたぁ!」

 

「クソッ……けど、もう下には回らせない!!」

 

 攻撃を避けられこそしたものの、元の狙いは既に果たされている。下の位置を確保した元はロングブレードガン・ニューを振るってディーナと距離を取らせると、背部に背負うバックパックの、リボルビングバスターキャノンの狙いを定める。

 弾倉ユニットが2発分回転し、キャノンから楕円形のビーム弾が2発連射される。弾速は早く、すぐにヴァイスインフィニットまで届く。だがエラクスシステム下の機体を捕らえるまでには行かず、回避されるとそのままこちらに再度距離を詰めてくる。だが元もそうはさせまいと脚部のミサイルを全発射、再びキャノン砲を今度は4発分回転させると長距離用ビームを照射する。

 ガンダムの新たな武装、リボルビングバスターキャノンは弾倉の回転度合いでその性質を変化させる。弾倉1つにガンダムで換算した通常のビームキャノン1発分に相当するDNが圧縮充填されている。弾倉を1発分回すことでそのエネルギーが砲身内部に注入され、発射態勢となる。通常ならその分のエネルギー分のビーム弾を放てるが、この時2発分以上のエネルギーを充填させると連射か弾数分のエネルギーを掛け合わせた高出力単発、あるいは照射ビームへと昇華させることが出来る。

 マキナスで運用される「マキナート・バスター」と呼ばれる機体のビームランチャーの発射機構をベースとしたこの機構が、ガンダムのビーム出力の限界を探るべくタンクの代わりにリボルビングの形で装備された。今その力は十二分とまでは行かずとも、発揮されている。エラクスによる高純度DNの循環性能上昇も合わさって、尽きることのない弾幕を展開していた。

 その弾幕の厚さに、ヴァイスインフィニットも回避に専念している。シールドも構えてその動きを注視している。元も隙を作らぬよう左手のロングブレードガン・ニューからもビームを放ってけん制する。

 そこで相手の動きが変わる。するすると弾幕を抜けた純白の機体が、元の機体に目がけて急接近してくる。動きを見切られたのだ。しかし元も完全に抜けて下に行かれる前に、同じくその先に向かって立ち塞がる形でビームサーベルを交える。

 

「ふっ!」

 

「せい!!」

 

 交差する機体。打ち合いの後すぐに距離を取るが、弾幕を横向きに放ちながら、元は再び距離を詰めた。下のポジションは大事だが、それを気にしていればキリがない。この際建物の破壊はやむなしと元は判断したのだ。スタートにも切り合いの最中それを告げると共に、位置の伝達を要請する。

 

「スタート、もう学校への被害はこの際無視する!お嬢様達の位置関係と弾丸の軌道予測!」

 

『こうなってはそれしかない。出来ればエラクス起動前に決着を付けたかったが……ハジメ、エラクスが切れる前に勝負を付けろ!それ以外に勝機は……』

 

 だがスタートの言葉を最後まで聞く前に、再び切り結びに発展する。切り結ぶだけでも気を抜いていれば押し切られる。初めてエラクスシステム下の機体と渡り合ったことで、自身の切り札がどれだけ恐ろしいものかを初めて理解する。

 何度目かの弾撃が空を、そして中庭に面する校舎に直撃すると突然ヴァイスインフィニットが動きを空中で静止させる。元もつられて止まりそうになったが、スタートの言葉を思い出し、制限時間を見る。残り時間10秒、時間がなかった。再びスラスターを吹かせ、最後のエラクスが乗った攻撃態勢に移行する。

 その一方で、ディーナは顎を擦るような仕草でその動きを観察する。

 

「エラクスシステムからの不意の一撃。確かにあの攻撃は素晴らしかったよ。そこから瞬時にポジションを入れ替えての射撃戦も悪くない。君は十分ガンダムを扱えているね。―――けど」

 

 突っ込みながら左右に動いて、狙いを絞らせない。残り時間5秒。タイミングを見計らい、今、突撃する。

 

「敗因は1つ。それは―――――」

 

 ヴァイスインフィニットが動く。右からのビームサーベル振り下ろしをブレードガンで受け止める。だがそれは元の狙い通り。切り結びを避け、勢いのまま校舎側面へと押し飛ばす。こちらは反動で後方へとスライドし、リボルビングバスターキャノンを向ける。途中でエラクスが解除されるが、既にリボルビングユニットにはエラクスで供給した高純度DNが溜まっている。丸ごと1回転させた全火力を注ぎ込んだ一撃を解放するだけ。

 その一撃を放った。圧倒的な熱量を持ったビームが、空気に熱を伝えながら遠のいていく純白のガンダムに迫った。

 

「喰らえェェェ!!!」

 

 元からすればこの時相手が選ぶ択は2択しかないと思っていた。横へと回避するかシールドで防御するか、だ。横へ回避すればその分こちらのエネルギーを消費させうることとなるし、隙も出来る。シールドで防御したとしてもその分足が止まり、連撃も入れやすいはずだ。逆に一番来ないのはこちらに向かいながらの回避。おそらく回避した後の機動で制限時間が尽きると考えたのだ。エラクスシステムを後に発動したとはいえ、その差は1、2秒程度。最初はあり得ない機体が登場したことに驚きはしたものの、後から考えれば機体性能はほぼ同じだろう。ならばエラクスの制限時間も同じと考えたのだ。

 だからこその2択。そしてその考えは的中することとなった。もっともそれは一番可能性の低い行動だった。

 

「何!?」

 

 蒼く輝く純白の機体は、こちらの砲撃の脇を突っ切る形で回避した。しかもそのままこちらへと距離を詰めてきた。

 一番可能性の低いであろう3択目を取ってきた。エラクスシステムが解除されれば完成でこちらに機体が流されるはず。まさかこちらがリボルビングバスターキャノンにチャージしているように、何か策があるとでもいうのだろうか。元の抱いた危機感はスタートからの知らせと共に、最悪の形となって現実のものとなった。

 

 

 

『ハジメ、気を抜くな!』

 

 

 

「エラクスシステムを発動した時点で、君の負けは確定している!!」

 

 

 

 それに気づいたのは、些細なことだった。目の前に集中しなければならないのに、元の視線は機体状況を映すモニターに表示される時間に目が行った。なぜ?それは簡単だ。こちらがエラクスを解除してから、()()()()()()()()()()()()。単純すぎる内容の疑問。先に考えた通り、元がエラクスを使用した2秒程度後に彼女はエラクスを使用した。なら、今どれだけ経ったのか。

 既に想定した時間が経っているにも関わらず、蒼い輝きを放つ目の前のガンダムはこちらに残像を残すほどのスピードでこちらの背後へと回り込んだ。そしてビームを発射し終わったリボルビングバスターキャノンのリボルビングユニットを、ビームサーベルで斬り裂く。エネルギーが暴発して爆発が機体を覆う。あり得なかった反撃に機体を立て直そうと煙の中から抜けるシュバルトゼロガンダム。だが抜けた直後、再度エラクスの蒼い光を維持した状態のヴァイスインフィニットガンダムが再び斬りかかってくる。

 

「遅いよ!」

 

「っぅ!?」

 

 攻撃に合わせてロングブレードガン・ニューを振りかざす。が、攻撃の太刀筋に既に機体の姿はなく、代わりにこちらのガンダムの左腕が肘から斬り飛ばされる。斬り飛ばされた左腕がスパークを起こして爆散する。

 爆風に押されて地面へと墜落する元。機体を地面に叩き付けられる前に着地には成功するも、同じく地上まで降下したヴァイスインフィニットが追撃を仕掛けてくる。

 

「くぅ!!」

 

「アハハ、遅い遅い!!」

 

 エラクスによる高機動によってなぶり殺しにされるガンダム。ウイングを捥がれ、残るリボルビングバスターキャノンも根元から破壊される。右手に握るサーベルユニットも蹴り飛ばされ、残るロングブレードガン・ニューも手に取る前にブレードガンの射撃を受け爆散する。

 爆風によって更に後ろへと退けさせられる機体。食いしばるようにバランスを前に戻すが、勢い余って膝を着いてしまう。だが蒼い輝きを放っていたディーナのガンダムは追撃をすることなく、再び最初の時の様に立つ。同時にその機体の背部から蒸気が噴き上がり、蒼い輝きが失われる。

 分からない。なぜあれほどにエラクスが続いたのか。自分の機体と一体何が違うのか。すると機体のコントロールを担当していたスタートが、憎むような声でその事象に答えを出した。

 

『やはりエンゲージシステムの恩恵を受けていたか……』

 

「エンゲージ、システム……?」

 

『レイア・スターライトを取り込んだ機能だ。あれはサブパイロットとして機体に取り込む。機体のあらゆる調整を行い、機体性能を最大限発揮できるようにサポートするのさ。もっとも、今の状況からして無理矢理脳の処理領域を使用した劣化版だろうが……』

 

 正直言ってスタートの話を全て理解は出来なかった。だが分かることは1つ。レイアを取り込んだ理由と、エラクスがあそこまで続いたことは繋がっているということだ。

 スパークが散り、いたるところが動作不良を起こすシュバルトゼロガンダム。それを嘲笑うディーナ・リントヴルン。

 

「劣化版とは人聞きが悪い。機能を最大限使うための、致し方ない犠牲ですよ」

 

「犠牲……だと……!?」

 

「そうだよ?私のガンダムを最大限動かすための人材。救世主ガンダムの為になれるのなら、詩巫女として本望だと思うけどね」

 

 ディーナの口から零れ落ちたその言葉に怒りを沸き立たせる。自分の主の想い人を軽々しく犠牲と言った目の前の少女に、元の中に溢れんばかりの激情が生まれる。

 許さない。絶対に、目の前のガンダムを倒す。かつて幼馴染を失った時と同じ怒れる感情が、大破寸前の状況のガンダムを動かす。未だ動くその姿を小馬鹿に笑うディーナ。

 

「あははッ、怒っちゃった?けど、それもあるのが、戦争なんじゃない?」

 

「……けるな……」

 

「ん?」

 

 

 

 

「ふざけんなああぁぁぁぁッ!!」

 

 元の怒りの声が響く。同時にガンダムから最大級の一撃を放つ合図が発声される。

 

『Ready set GO!DNF シャドウストーム!!』

 

『待て、ハジメ!』

 

 賭けとも自棄とも思える行動に、何も知らされていないスタートは制止を呼びかける。だがもう止まらない。拳を地面へ打ち付け、発生した黒い竜巻がヴァイスインフィニットへと向かう。その攻撃を難なくシールドから発生させたDNウォールで受け止めるディーナ。彼女もその行動に呆れを呟く。

 

「やれやれ、この程度で……」

 

 だが、それで終わりではない。竜巻を突き破るようにガンダムが現れる。足にDNの光が集中している。連続DNF攻撃を仕掛けたのだ。

 

「こっちが、本命ッ!!」

 

『Ready set GO!DNF ディメンションスパイク!!』

 

 極限状態でエネルギーを2回も限界まで引き出した弊害で、電子世界にもスパークが生じる。しかしそんなことを気にしていては、ジャンヌを救い出すことなど出来ない。この一撃に、元は賭けたのだ。

 機体のダメージを押した一撃は、シールドでシャドウストームを防御していたヴァイスインフィニットの頭部を捉える。はずだった。

 

 

 

 

「本命でも!弱いんだよ!!」

 

 

 

 

 突如口調を変えたディーナがシャドウストームを霧散させつつ、ボレーキックの形で放った元のガンダムのDNFを左手で受け止める。高密度のエネルギーを受け止める白のガンダムの手は、火花を散らしつつも確かにDNF状態の黒のガンダムの攻撃を止めている。

 渾身の一撃を止められ、言葉を失う元。そのせいでヴァイスインフィニットの起動させた必殺の一撃に反応が遅れる。

 

「ディメンションノイズ・フルバースト!」

 

『DNF ディメンションスタンプ』

 

「ぐぅ!?がぁぁぁぁっっっっ!?」

 

 受け止められた状態で鳩尾に向けてハイキックが放たれる。キックに込められた高純度DNが機体に流し込まれ、蹴りを撃ち込まれた箇所から大爆発を起こす。爆発の余波を受けシュバルトゼロガンダムの機体は吹っ飛ばされる。

 機体から反映されるダメージが元の電子化した体を傷つける。ダメージは大きく、黒のガンダムは煉瓦で舗装された道を抉りながら、派手に地面を転がっていく。やっと止まった機体からは煙、スパークが激しく散っている。更に小爆発も起こし始め、最終的にその装依が解除されるとボロボロの元がそこに横たわる。それは無敵と思われたガンダムの敗北の瞬間であった。そこに立つのは、白い無敵の存在(ガンダム)だった。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。

ネイ「……は、元さんが……」

グリーフィア「負けたわねぇ……それも結構派手に」

正直言って、ここなんて反応すればいいか考えたけど、私の信条にマッチしたのは、(゚∀゚)ざまぁwって感じでした(^ω^)

ネイ「自分の作品の主人公なのに!?」

いや……(´・ω・`)うん、流れ的にも前の段階で元君調子に乗っているところありましたからね

グリーフィア「ガンダムの力に溺れている、だったかしら。けど今回の無茶な戦い方も、装備の選択も色々とミスしているところあったみたいだから、それは言えているのかもね」

ネイ「ね、姉さん……」

グリーフィア「だからって、自分の作品のキャラにそういうのはどうなの?それ書いているのは自分なんだから」

(´・ω・`)ごめんなさい。でも次の38とか、今回と今後の展開は私も書いててメンタルダメージが効果抜群になるくらい筆進まなかったんだよねぇ……(;・∀・)

ネイ「え、ということは今後……」

グリーフィア「投稿遅くなる?他にも内容重くなるのかしら?」

えぇ……まぁ……_(:3 」∠)_

グリーフィア「すごいダウナーね」

ネイ「そ、それでも頑張ってくださいね……?」

最大の見せ場に持っていけるか、それともその前に私のメンタルが撃沈するか……とりあえず、次も引き続き、どうぞよろしくお願いします_(:3 」∠)_

グリーフィア「大丈夫なの、このフルー○ェメンタルの作者君(´っ・ω・)っ_(:3 」∠)_」


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EPISODE38 白きガンダム、ヴァイスインフィニット4

どうも皆様。引き続きの方は改めまして、藤和木 士です。

レイ「アシスタントのレイ・オーバだよっ!元君やばいねー……」

ジャンヌ「ですね……このままですと、元さん殺されてしまうのでは……?アシスタントのジャンヌ・ドラニエスです」

今回はEPISODE37から引き続き、EPISODE38の連続投稿です。そうですね、このまま何もなければ、大抵は元君そうなりますね(´Д`)

ジャンヌ「だ、だったらどうするんです!?」

レイ「光樹君だったら「その時不思議なことが起こった!」みたいに新しいNPをセットオンして第2ラウンドって感じだけど、このシュバルトゼロガンダムにはそんなのついてないでしょ?」

まぁ、RXみたいなことは起きませんね(;・∀・)というかあっちのシュバルトゼロガンダムも別にあれみたいに不思議なことではないです。あらかじめ用意されていたものに乗り換える扱いなので……

レイ「乗り換え扱いなんだ……」

ジャンヌ「それはともかく、元さんやジャンヌさん達は本当にどうなってしまうのでしょう……」

それは本編を見れば……ちなみにこの節は今回が最後です。では白のガンダムとの対決はどのような形で幕切れとなるのでしょうか?それでは本編へ!


 

 決定した敗北。それは圧倒的なまでの完敗だった。既に最初から勝負が付いていたと言ってもおかしくない、いや、決定していたのだ。この結果は来るべくして来た結果だ。

 だが、それを認めるわけにはいかない。立たなければならない。立ち上がらなければジャンヌ達を救うことは出来ない。それだけを思い、元は再び立とうとする。しかしこれまでのダメージが積み重なり、四肢に力が入らなくなっていた。

 

「う……うぐぐ…………」

 

「まだ立ち上がろうとするんだ。不屈の精神は認めるよ。けど、君の負けだ。残念だけど、彼女達には痛い目に遭ってもらおう」

 

 白いガンダムで勝ち誇るディーナはその手をジャンヌ達へと向ける。すると上空にジャンヌ達を捕縛する物と同じリングユニットが半月状の形に2基、欠けた部分を下方のジャンヌ達に向ける。2つの半円状のリングからは電気が迸っていた。寒気の感じた元は精一杯ジャンヌ達に手を伸ばそうとする。

 

「や、やめっ……」

 

 だが、元の願いも空しく、ディーナはその指で半月状のユニットに指令を飛ばす。

 

「やれ」

 

『ふぐっ!?ああああぁぁぁぁぁ!!』

 

 半月状のユニットから落雷の如く電撃が、ジャンヌ達を捕らえるリングへと墜ちる。その雷撃はフィールドから中のジャンヌ達に伝わり、辺りに彼女達の悲鳴が響き渡る。

 2秒程度の雷撃だったが、治まるとジャンヌ達は至る所が雷撃による焦げ跡を作っていた。服からは黒煙もわずかに上がっており、既にボロボロだった衣服は更にみすぼらしいものへと変えられている。

 あまりにも酷い仕打ちに元はディーナを睨み付ける。必死に睨み付けてくる元を、ディーナは子どもが遊ぶようにはしゃいで反応を楽しむ。

 

「アハハっ、憎い?憎い?だろうねぇ~……。でもさ、これが戦争なんだよ」

 

 しかし冷たい声で現実を突きつける。子供染みたものではない発言に、背筋が冷たくなる。ディーナの方に目をやると、その手に握ったブレードガンを首筋に突きつけられていた。動けない。動けばすぐに首を切られて殺される。ダメージで体をまともに動かすことは出来ない。

 そして相手も見逃す気はなかった。その剣先を後ろへ引き、勢いを付ける構えを取る。元の瞼が固く閉じる―――――。

 

 

 

 

 だが、それを1人の人物が救った。

 

「俺の家族と使用人に、何してんだテメェはぁ!!」

 

「!?」

 

 聞き覚えのある声に、ハッとなる。続いて聞こえてきたのは金属同士がぶつかり合い、火花を散らす音。元は地べたに這いつくばる状況の中顔だけを必死に上げる。その先にいたのは……ドラグーナの体躯を大きくした、元にとって思わぬ機体の姿だった。

 ドラグーナ・ガンドヴァル。ドラグーナ・コマンドをとある人物専用に改修した専用機である。その人物の戦闘スタイルに合わせ、近接特化・ダブルジェネレーター仕様・マキナ・ブレイカー二刀持ちを許された機体。元は意図せずして見たのも含めて二度、この機体を目撃していた。一度目は記憶を失う前、いや、正確には失っている時。ドラグディアとマキナスの激突する戦場に現れた際に、討伐命令の出ていた元のガンダムを撃墜しようとした。あの時は結果的にあちらの攻撃を入れるのが精一杯だったこと、そして元の方もすぐに逃げてしまったからすぐに別れてしまった。そして二度目はネアと元自身の身を賭けた決闘後。マキナス軍が国境を越えて侵攻してきた時、リリー准将が率いるナイツ・ヴィーナスと共にその機体を装依した。そして元とも同じ空域を戦った。

 立場が全く逆となって戦った二度の戦闘。その果てに今こうして元を護るように割って入った灰色の機体の背中に、元の眼は釘付けとなる。相手がガンダムだと知っても臆せず立ち向かう人物。その人物を元はよく知っていた。記憶喪失だった元を自らの家に、娘の従者として雇い入れてくれたファーフニル家の当主。その言葉に救われ、元は自分を取り戻すことが出来た。元にとってはこの世界における父親とも呼べる人物。そして自分が護るべき存在、ジャンヌ・ファーフニルの実父。ガンド・ファーフニルが今、元の目の前で白のガンダムと鍔迫り合いを行っていたのだ。

 

「当主……」

 

 ヴァイスインフィニットのブレードガンとガンドヴァルのマキナ・ブレイカーが火花を散らす。その光景に目が奪われる。すると地面に転がる元の体が、後ろから抱きかかえられる。振り返ると抱えていたのは同じく元が良く知る、部隊長の機体であった。

 

「アレク……隊長……?」

 

「生きていたか、馬鹿野郎。先急ぐな!……けど、それをせざるを得ない状況になっていたみたいだけどな……。おい!第1、第2部隊、そっちは!」

 

 元に名を呼ばれたアレクは、すぐさま他の隊員に指示を飛ばす。ジャンヌ達の方角を向いており、既にそこにはリングを撃墜し、フィールドを解除していたドラグーナ・コアトルの通常仕様とGアシストスタイルの機体がジャンヌ達を抱きかかえていた。

 救出されたジャンヌ達を見て安堵する元。だがガキンガキンと響く戦闘の音に、再び元の消え入りそうな意識はガンドの方へと向けられる。

 

「当主……!」

 

「ガンド少佐、こちらは民間人とハジメ軍曹を連れて撤退する!そちらは……」

 

「無理だ!今抑えているので……俺に構わず、彼らを!」

 

 こちらに抜けようとするヴァイスインフィニットを、必死に抑え込むガンド。ガンドは自身に構わず連れ出せと指示する。その言葉にアレクも従い、自らも元を抱え上空へと退避する。それをディーナのヴァイスインフィニットは追走しようとするが、下からジェットバックパックを吹かせてガンドが追いつき、その顔面に向けDNA「アッシュ・ヴァルスラッシュ」状態のマキナ・ブレイカーを叩き付ける。攻撃は凌がれるが、行かせないことには成功した。

 その隙にアレクを中心に怪我人を抱える者達を囲う形で撤退する部隊員達。第1部隊の何人かはそのまま学校に留まり、上空で待機していたガンドの部隊員と共に支援に入る。抱えられた状態で元はアレクに謝罪をする。

 

「すみません、でした隊長……こんな無様な……」

 

「しゃべるな。強制解除で死にはしなかったとはいえ、反動は大きい。それに反省するなら病院で、出撃を止めたヴェール技術大尉の前でしろ。いいな、それまで安静にしていろ」

 

「……はい」

 

 アレクの言葉を聞き、応答する。途端に眠気が元を襲ってくる。反映ダメージが思いのほか深かった。元はそのまま首を垂れる形でアレクに抱えられたまま眠りへと落ちる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あーあー、せっかくあなたの娘さん達を人質に取ったのに……。落とし前、どうつけてくれるのかなっ!」

 

 マキナ・ブレイカーを受け止める純白のガンダムから、そんな少女の声が響く。その声にガンドは聞き覚えがあった。

 十二名家の集まりの時、リントヴルン家の双子の姉妹の片割れ。明るい印象のノーヴェとは反対の、大人しくもの静かな白髪の少女。ディーナ・リントヴルンの声であると気づく。

 しかしその口調はあの時のような謙虚さはない。遊びに夢中な印象を感じさせる。それでいて内容はあまりにも明白な敵意を持っている。とても(ジャンヌ)の同い年の友人とは思えない。それでいて彼女が纏っているのは自分も過去に戦ったガンダム「シュバルトゼロガンダム」とそっくりなMS。考えこそ追いつかなかったが、明確に分かる。彼女が敵なのだと。

 元のシュバルトゼロガンダムを退けたほどの敵、純白のガンダムは体格の違うドラグーナ・ガンドヴァルのマキナ・ブレイカーによる攻撃を片手の銃剣だけで受け止めている。初めてガンダムと戦った時もマキナ・ブレイカーで鍔迫り合いをしたが、あの時はビームサーベルの二刀流で受け止めていた。女性であるということもマイナスのハンデであるはずなのに押し切れない。ガンダムの出力の恐ろしさに改めて脅威を感じる。

 

「ディーナ君……なぜ君がガンダムを……!」

 

「なぜ?そんなこと、どうだっていいよ!」

 

 ガンドはガンダムを手に入れた経緯を接触回線から聞こうとするが、ディーナは構わずその剣を振り払う。ダブルジェネレーターの機体のパワーに押し勝つほどの力。そしてガンドヴァルを上回る機動力。その2つを備える純白のガンダムの猛攻がガンドを翻弄する。

 このままでは押し切られる。ガンドは後方に待機させていた隊の者達に、援護射撃を要請する。

 

「ファーフニル隊全機、支援攻撃を!」

 

『了解!』

 

 即座にガンダムに向けて上空から射撃攻撃が降り注ぐ。ガンドも機体を後退し腕部ダブルビームライフルを連射する。上空からの無差別射撃と地上からの狙い撃ち。二方向からの攻撃にさらされるディーナのガンダムだったが、彼女の機体はそれすらも回避していく。

 やはり侮れない……。数の利、地理的の利があってもこの動き……それに対し彼女は音も上げない。何なんだ、ガンダムの見せるこの動きは!

 まるで元と初めて戦った時の事を思い出すような高機動性だった。あの時の元もあり得ないまでの機動力で、ドラグディアとマキナスのMS両方を翻弄していた。なぜあれほどの機動性を実現できたのかは、記憶の戻った元も分かっていない。通常状態であるにも関わらず、強化形態であるエラクスほどではないものの圧倒的な高機動性はどこから来るのか。

 そんなことを考えていたせいか、それとも隙を見つけたのか弾幕を掻い潜ってきた純白のガンダムが中庭と校門前を繋ぐ通路にいたガンドに目がけて突撃を行う。すぐに迎撃しようとしたが、ダブルビームライフルを先に撃ち抜かれ、爆発の圧と煙で態勢を崩す。

 

「クッ……何っ!?」

 

「っと、防がれちゃった」

 

 煙を突き抜けて飛んでくるガンダムのビームサーベル。だがそれはガントレットブースターで防ぐ。何とか光剣の軌道を逸らし、すぐさま胸部のグラン・フルバスターを低出力拡散で放つ。瞬間的なフラッシュとなって視界を奪う。

 

「なっ」

 

「ぐっ……」

 

 距離を取ったガンドは通路から校門側に離脱する。さらにその左手にマキナ・ブレイカーを構え、両手の二刀流状態で待ち構える。

 対するディーナのガンダムは悠然と通路から出て、大型武装を両手に持つ姿に笑いを漏らす。

 

『アハっ、そんなに大きな武装を両手に持って、動けるのかな?』

 

「……軍人をなめるな、ディーナ・リントヴルン!!」

 

 だが弄ぶような物腰のディーナに、ガンドの言葉が飛ぶと共にその大剣を操り純白のガンダムとぶつかる。自身の機体の身の丈ほどある大剣をガンドは機体の腕力、それから武器自体に付いているスラスターを巧みに動かし、ガンダムの動きに追従、それどころか連撃を加え防戦一方にする。

 純白の機体は攻撃をいなし、逃れようと後方に距離を取ろうとするが、それをガンドは許さない。猛撃を加えて近距離を保つ。だが何度か連撃を加えたところでガンドは上空へと飛ぶ。同時にその周囲からビームの光条が飛ぶ。周囲に展開したファーフニル隊とアレクの残したケルツァート隊の者達による射撃がガンダムを襲う。

 普通ならその一斉射どころか、先の連撃で根を上げるほどの攻撃。しかし地上にいた純白のガンダムはそれすらも回避し、更にまだこちらへと攻撃を続けるだけのスタミナがあった。彼女が振り上げた銃剣をマキナ・ブレイカーで受け止めるガンド。

 

「へへ……一糸乱れぬ連携、流石は軍所属の人間なだけはあるよ。あのガンダムよりはまだ戦術も出来ているし」

 

「ガンダム……ハジメの事か!」

 

「うん、そうだよ!けどあいつは駄目。あんな脆いやつ、救世主に相応しくない。そう」

 

 唐突にハジメの事について話し始めたディーナ。銃剣で振り払い、ガンドを地表へと弾く。

 

「私が、本当の救世主だ!」

 

「何っ!?」

 

彼女の叫びに呼応し、ウイングユニットから小さな端末が射出される。羽のような形状の武装は、その先にビームの光を灯し周囲に展開する。その光景にガンドは息を飲む。

 

「まさかその武装……オールレンジ兵装!?」

 

「その通り!!」

 

 ディーナの一声でオールレンジ端末の羽は周囲に飛散する。進行方向の先には包囲を展開するファーフニル隊とケルツァート隊のメンバーが。ガンドは回線に向かって指示を飛ばす。

 

「全機、回避行動!クソッ!」

 

 同時に再び上空へと向かい、マキナ・ブレイカーを振るう。マキナ・ブレイカー2本で振るう大振りながら鋭い攻撃を苦も無くディーナは避ける。それでも攻撃を続ける。オールレンジ攻撃の肝となるのは脳波でのコントロールをいかに維持できるか。他の事に集中せざるを得なくなれば、その分動きも鈍る。だからこそオールレンジ攻撃の使い手は少なく、また乱戦に適さない。例外はバァン少将くらいのもの。ガンダムと言えどパイロットがあのような少女では、オールレンジが上手く続くはずがないと踏んだのだ。

 しかし、その読みは外れた。周囲を次々と機体の爆発が灯る。同時に回線からパイロット達の絶叫が響く。

 

『クソッ、逃げられない……う、うわぁぁぁぁ!?』

 

『堕ちろ、堕ちろよっ……!あぁぁあぁ!?』

 

『くそぉぉぉ!こんなのでぇ……がぁ!?』

 

 絶え間なく攻撃を加えているのにも関わらず、聞こえる断末魔。もっと速く、もっと強くその剣を振りかざす。だがそれらは全て見切られているように当たらない。

 2本による同時攻撃を躱し、今度は一歩踏み込むディーナ。その状態でマキナ・ブレイカーの峯を抑え込んでくる。刃の部分の間に入り込む形となった位置に、ガンドはすぐさまその大剣で挟み切ろうとするが、突然ガンダムの接触回線から消え入りそうな声で助けを求められる。

 

「……誰か、助、けて……」

 

「何っ!?」

 

 声の主の発言に戸惑いを見せるガンド。聞こえてきたのは少女の声だった。だが目の前のディーナのものではない。とてもディーナが演技をしているものではない。しかもその声はガンドに聞き覚えのある声だったのだ。

 どこで聞いた声だったか、一瞬思惟を巡らせるがすぐに響いたアラートで我に返る。

 

「っ!しま……」

 

『よそ見とは、いい度胸!!』

 

 気づいた時には既に周りを多数の敵反応が覆い尽くす。動かすことの出来ないマキナ・ブレイカーから手を放し、周囲に展開されたオールレンジ端末から逃れようと試みる。しかし、それは叶わない。直後にオールレンジ端末が攻撃を仕掛ける。ガンドの機体を羽が突撃して機体を抉っていく。

 

「うぉぉぉぉ!?」

 

 速い。ドラグディアはおろかマキナスのMSのどのオールレンジ端末よりも速く、そして正確にドラグーナ・ガンドヴァルを無力化していく。バックパックを裂き四肢を貫いていく。

 最後に頭部を貫かれ、フィードバックダメージがガンドの顔に受ける。浮力を失ったガンドヴァルが地面へと落ちていく。爆発を起こしながら地面へと落ちたガンドヴァルは途中で機体を維持できず消滅、代わりにガンドが緊急着装されたパイロットスーツ姿で投げ出される。

 体を起こそうとするが、その前に降りて来たディーナのガンダムの足に、上体を再び地面へと押し付けられる。

 

「ぐがっ!?……誰が……そこにいる」

 

『フッ、やっぱりそれが気になったんだ。レイア・スターライトと言えば分かるかな?』

 

「何……レイア君が……」

 

 先程接触回線越しに聞こえてきた声の主、あれは自身の娘の友人レイア・スターライトだったのである。ガンダムの中にもう1人いることと、彼女が取り込まれていることに言い表せない困惑を感じる。しかしもっとも考えなければならないのは、この状況の打破である。MSの装依を解除された状態で、MS相手にガンドに出来ることはほぼ何もない。スタングレネードで視界を奪うという方法も、今は出来ない。

 何も出来ずにいるガンドをディーナが嘲笑う。

 

「何も出来ませんねぇ。いかにファーフニル家当主となられた貴方でも、生身でモビルスーツを相手にするなんて。しかもこっちはガンダムだし」

 

「っ……」

 

 見透かしたようなことを言う。だが事実である。圧倒的優位に立つディーナと命を取られたも同然のガンド。愉悦に浸るディーナはその手にガンドの機体が投棄したマキナ・ブレイカーをその手で回している。

 

「……さて、それじゃガンダムをたき付けるために、最後の手間を加えましょうか」

 

「何を……」

 

 剣を逆手に持ち直したディーナはその切っ先をガンドの右肘に向ける。今はMSの状態ではない。それが意味することはただ一つ。だがガンドは動けなかった。

 

「ぐっ……!」

 

「さぁ、懺悔しなよ。ガンダムに逆らったことをね」

 

 辺りに血と肉片が飛ぶ。苦悶の絶叫が辺りに響いた。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。次回は黒の館DNとなります。

レイ「…………元君達は大丈夫だったけど…………」

ジャンヌ「……ちゃんと描写していない分、まだ刺激は大丈夫でしょうけれど……これ大丈夫なんです?ガンドさんの無事と、ハーメルンのR-15の描写として……」

これR-15じゃない?(´・ω・`)かの有名なドラ○ン○ールでもCVヒイロのキャラがアニメでも思いっきり斬られてたからOKだと思うんだけど……でも本当に今の風潮としてはどうなんだろうって悩んだところだからね。前作もう少し流血成分多めにして手ごたえ掴めばよかったなぁって思ってるんだよね(´・ω・`)

ジャンヌ「うう……人体分解とかいうことにならなければいいですけど……」

レイ「け、けど、これまたジャンヌちゃん病むんじゃ!?」

病みますねぇ(゚∀゚)

レイ「そこっ!堂々と言わないっ!」

ジャンヌ「しかも変なネタを持ってきて……はぁ、この2人、大丈夫なんでしょうか……あとヴァイスインフィニットガンダムにどうやって勝つのか……」

それは……次回以降のお楽しみさ(´-ω-`)では今回はここまで。

レイ「じ、次回は黒の館DNで、ヴァイスインフィニットを紹介するよっ。リングの設定とかも明らかになるみたいっ!」


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黒の館DN 異世界戦争編 第6回 前編

どうも、皆様。七夕の日の投稿になります、藤和木 士です。

今回は黒の館DNの投稿になります。前編ですので、つまり後編も連続投稿する形となります。

今回は最後の方にコラムを用意しました。内容としては作中で何度か言及のある機竜創世記について作中で明らかになっていない部分についてですね。

それでは前編からどうぞ!


 

 

士「えー、今回も始まります黒の館DN!解説内容は新たなるガンダム、白のガンダム、ヴァイスインフィニットガンダムとその装依者でありノーヴェの妹ディーナ・リントヴルン、それにシュバルトゼロガンダムの新兵装仕様「Hercules」です、作者の藤和木 士です」

 

ネイ「今回は順番を変えました、アシスタントのネイ・ランテイルです」

 

グリーフィア「アシスタントのグリーフィア・ダルクよ。けれど、今回はいよいよ元君以外のガンダムが1機だけだけど登場したわね」

 

ネイ「そうだね、姉さん。けどまさかノアさんモチーフのノーヴェさんの妹さんがヴァイスインフィニットガンダムのパイロットかぁ……」

 

グリーフィア「あら?どうせなら自分のモチーフが装依したかった?」

 

ネイ「そ、それはないかな……なんかディアナさんと結構性格が違っているし、そんな風にはなりたくないっていうか」

 

グリーフィア「そういえば今回のディーナちゃん、ディアナさんモチーフの割りにモデル元と性格違い過ぎない?」

 

士「やっと私の番帰ってきた……(´・ω・`)まぁそうだね。これは意図的なもので変えているって感じだね。とはいえ、まだバラさないよ(゚∀゚)」

 

グリーフィア「バラさないって言ってる時点でもう何か分かる人いそうだけれど」

 

士「本当にそんな気がしてきた(;・∀・)」

 

ネイ「じゃ、じゃあ早速ディーナさんの紹介からしてガンダムの紹介に行きましょうか……」

 

士「そうだね。今回紹介する人も少ないから先にディーナの紹介だぜ!(^ω^)」

 

 

ディーナ・リントヴルン

性別 女

竜人族

身長 155cm

髪色 白

出身地 ドラグディア フリュウ州 セント・ニーベリュング市

年齢 16

誕生日 9月1日

血液型 AB

好きなもの 姉、ダンス、ラザニア

嫌いなもの 考えなしの人、漬物

愛称 星暗歌姫

 

・12名家の1つリントヴルン家の少女で、ノーヴェの双子の妹。姉と同じ聖トゥインクル学園に通う、詩巫女養成科の生徒。

 姉と同じクラスであり、EPISODE3では委員会の仕事で姉とは帰っていなかった。そもそも彼女自身は引っ込み思案な性格であり、ハジメの存在を姉から聞かされてもあまり一緒に帰りたくなかった様子。そのためいることだけがジャンヌの独白で語られてはいた。

 そんな中第3章にて遂に登場することとなったが、そんな様子とは一転して、余裕の笑みを見せる少女として、そして白のガンダム「ヴァイスインフィニットガンダム」の装依者としての登場となった。また数少ない人間しか知らないジャンヌの呪いについても知っており(ノーヴェはディーナがそれを知っているはずがないという)、それ以上にガンダムの事情にも詳しく、本当に本人か疑問視される。

 外見モデルはバトルスピリッツのスピリット「ディアナ・フルール」。髪色の変更の他、右にサイドテールを作っている。また髪の編み込みはなく、すっきりとしたイメージ。

 

 

士「はい、これがディーナ・リントヴルンのプロフィールになります」

 

ネイ「あ、やっぱりディアナさんみたいに今のような感じではないんですね」

 

グリーフィア「それどころか結構大人しめの娘みたいね。それが何であんなガンドさんをあそこまで……」

 

士「一応推察できるというか、ある意味答えとなるのは本編でもちらっと出てるよ(´・ω・`)」

 

ネイ「え、答え出ているんです!?」

 

士「一応、ね。大体予測は付きやすいかもだけど、とりあえず今は明言しないよ~、本編をお楽しみに!」

 

グリーフィア「そ。じゃあ次は元君のガンダムね」

 

士「あれ、てっきりヴァイスインフィニットの方を解説すると間違えてくれると思ったんだけど(´・ω・`)」

 

グリーフィア「ネクストグリーフィアズヒント!:文字数」

 

士「メタぁい!!(゚Д゚;)」

 

ネイ「あはは……それじゃあ、元さんのガンダムの紹介に行きましょうか……」

 

 

形式番号 DNGX-XX000-SZver1[Hercules]

シュバルトゼロガンダム[ヘラクレス]

 

 

機体解説

 シュバルトゼロガンダム[リペア]に新たな装備群[Hercules]を装備させた形態。このヘラクレスでは背部のウイングスラスターを換装、新たなウエポンウイングバックパック「キャノンスラスターバインダー」へと変更されているのが特徴。

 武装群のコンセプトとしては「ガンダムの機能を阻害しない程度での最大火力の検証」であり、背部のキャノンスラスターバインダーを含め、火力の強化を行っている。手持ち武装に至っても、主兵装のランチャーランスやロングブレードガン・ニューなど、中距離での戦闘を主眼にしている。このため近距離の戦闘を不得手としているが、そもそも[Perseus]で重装に一度失敗した経験を踏まえ、シュバルトゼロガンダムの機動性をなるべく殺さない程度の重火器装備としているので、この程度は問題ないと判断された。ただその結果同型機であるヴァイスインフィニットガンダムとの戦闘ではそれが足枷となってしまい、敗北してしまったことに関しては完全に適性を誤ったとしか言いようがない(もっとも市街地の対ヴァイスインフィニットガンダム戦にこの装備で出たのは元の判断ではあるが)。

 名称モデルとしては12の試練を乗り越えた英雄「ヘラクレス」がモデル。マキナ・ドランディアでも「創世記時代に開発された12の究極のMAを狩った最強のMS使い」の名前からもらっている。ガンダムの最大を突き詰めるための準備段階としては理想的だが、敗北するその姿は名前に申し訳なさがある形態と言えるだろう。ちなみに設定当初は名称がペルセウスと逆であった。

 

【追加機能】

なし

 

【追加武装】

・ランチャーランス

 機体の主兵装となる実体剣と長距離ビーム砲の複合兵装。槍の内部に砲身を持ち、槍の根元に存在するサイドグリップ兼用の可動グリップを引くことで槍を左右に開き起動させる。

 大柄な武装であり急接近された際の防御の為に手元防御用のシールドを併設されているが、基本的に距離を取っての運用を重視した兵装である。なお装備位置は腰背部であり、ブラスターガンは本兵装では装備されない。

 武装の外見モデルとしてはガンダムビルドファイターズアメイジングレディのM91のランス。開閉ギミックはオリジナルで、砲身は円柱タイプのものを採用。

 

・ロングブレードガン・ニュー

 ブレードガン・ニューを大型化したモデル。機構はそのままに、長距離を意識したセッティングがされており、モードも変わらない。

 ブレードガン・ニューと入れ替えで装備しており、必然的に重量が重くなっていることも合わさって対ヴァイスインフィニットガンダム戦では後れを取る一因となった。

 

・キャノンスラスターバインダーバックパック

 背部を構成する、キャノン砲を備えたバインダーバックパック。キャノン砲とスラスターバインダーが分離しており、独立した運用が可能。バインダーの方は鳥類の羽のような形であり、内部を開くことでジェットスラスターを展開し、機体の速度を向上させる。またウイングの側面にマキナ・ブレイカーの最新モデル「マキナ・ブレイカーⅡ」を備えており、武装の充実には事欠かない。

 キャノンとバインダーの構成はなるべくガンキャノン系を意識しつつオリジナルに、バインダーそのものはウイングゼロEW版の副翼をモデルとしている。

 

・リボルビングバスターキャノン

 バックパック上方に伸びる、大型弾倉付きキャノン砲。肩に担ぐ形で撃つ。リボルビングユニットを挟んでおり、こちらが非常に肝となっている。

 というのもこのリボルビングユニットは実弾が込められているわけではなく、所謂エネルギータンクであり、ガンダムから供給される高純度DNを6つの弾倉に分けて貯蓄。それらを回転させる形でメインのエネルギー転換コンデンサーに充填、砲撃する仕組みとなっている。重要なのはこの充填する作業で、任意にDNを送り込むことが可能なことで、例えば2発分の高出力弾を3回に分けて砲撃することが可能なのである。

 敵国マキナスで運用されているマキナート・バスターのランチャーの運用に似た面を持つこの兵装は、当機バックパックを鹵獲したドラグディアが解析した実験成果であり、ガンダムに装備した際は膨大な高純度DNの恩恵で凄まじい連射速度を生み出す。……ただし実践投入時には相手がヴァイスインフィニットガンダムであったこと、そして学校内であったことから限られた場面でしか運用できず、結局大破してしまう結果となってしまった。

 武装モデルはバトルスピリッツのスピリット「寅の十二神皇リボル・ティーガ」の背負うキャノン砲であり、それを小型化したイメージとなっている。

 

・ブースト・バインダーシールド

 フルバーニアン・バインダーシールドの発展形となるシールド。左肩のアームに装備する。今までのフルバーニアン・バインダーシールドは機動性と蓋を開くことによる奇襲性を備えていたが、今回の物は蓋の開閉を廃止。代わりに防御面の重視を行っている。フルバーニアン・バインダーシールドが独創性を重視した結果低下した汎用性を取り戻しており、シールドの物理攻撃に対する面を強化。更にシールドの表面にフィンタイプのジェットスラスターを備えることで機動性も確保した。

 ヘラクレスにおいては射撃兵装の充実で低下した防御の安定面を重視しつつ、運用テストも兼ねて装備された。

 武装外観としては機動戦士ガンダム逆襲のシャアなどのジェガンのシールドをイメージ。ミサイル発射口がスラスターに置き換わっている。

 

・マキナ・ブレイカーⅡ

 ドラグディア軍に置いて運用される汎用バスターソード「マキナ・ブレイカー」をベースに次世代の兵装をと言うことで生み出された実体剣。重量で押し切るマキナ・ブレイカーと同じく、重量で押し切る構成はそのままに、ダウンサイジングしつつブースターをジェットスラスターに換装、更に搭載位置を剣の面から鍔に変更した。なお本編で元は一度もこれを武装として使っていないが、反転して攻撃を受け止めた際に本兵装のスラスターを全開にして対応していたりする。

 形状モデルは機動戦士ガンダムシリーズのグフのヒートソードをイメージ。形状記憶合金ではない、また鍔のデザインは先述したとおりである。

 

 

士「はい、以上がシュバルトゼロガンダムの新装備「ヘラクレス」の解説になります」

 

グリーフィア「んー……なんていうか……リボル・ティーガよね?」

 

士「それ言っちゃいけません(´・ω・`)」

 

ネイ「でもこの外見なら「ティーガー」とかでも良かったのでは?」

 

士「そうなると私の場合、簡易変形盛り込んでガンダムフラウロスのみたいな運用にしちゃうよ……(´・ω・`)」

 

グリーフィア「あんなものを街中でぶっ放す気?」

 

士「だから名前没にしてる。それにティーガー名称は他で使いたいと思っているから……」

 

ネイ「なるほど、他で使いたいから、今回はヘラクレスにしたわけですね」

 

士「その通り!あともう1つ言うなら、元君があからさまな英雄の名前の兵装を使って負けるのも面白そうかなーという思惑」

 

ネイ「えぇ……」

 

グリーフィア「確かにヘラクレスは12の試練を乗り越えた英雄だものね。聖杯を賭けた魔術師同士の激突を描いたアニメでも、分かりやすい強敵みたいに演出されてたし」

 

士「まぁあちらも無名の英雄さんのルートではAUOに簡単にやられてたけどね。雑種ゥ!」

 

グリーフィア「あら、じゃあ貴方今度バトスピのギルガメシュ入りの獣頭デッキで優勝してくる?」

 

士「それだけは勘弁してください!(T_T)けどそれを意識してる部分はヴァイスインフィニットにもあるよ」

 

ネイ「あるんですね……」

 

グリーフィア「というかまだ前半終わるには早いわよ?どうするの?」

 

士「んーそうだね。じゃあここで少し、コラムみたいなのをやってみようか」

 

ネイ「コラム、ですか?」

 

士「うん、ずばり、今の第1部で多々出てくる機竜創世記について少し語ろうかなと」

 

グリーフィア「あぁ、あの国の成り立ちとかが書かれているっていう?」

 

士「そうです。ぶっちゃけ言うと、あれは私達の世界でいう所の旧約聖書みたいなものです。どちらかと言えば、死海文書っていうやつに近いかな」

 

ネイ「死海……文書?」

 

士「説明面倒だからあれだけど、端折ったりすると宗教上での世界の作られた経緯とかが物語形式で書いてあるってやつ。とどのつまり創世記で君らのグラン・ロロでいう所の異界見聞録だよ(´・ω・`)」

 

ネイ「あ、はい」

 

士「で、まぁどっちも旧約聖書の方も死海文書も大体同じ事を指しているところもあるけど、死海文書の方だけ少しだけ必要な部分を説明しとくね。死海文書は旧約聖書の失われた部分とかを保管しているかも?って感じ。今回で重要なのはそれが色んな所に分けられて保管されていたっていうこと」

 

グリーフィア「それがどう関係するのかしら?」

 

士「機竜創世記はデータ文書なんだ。古代とはいえマキナ・ドランディアの創世記の時代はコンピューターが通っている。竜人やロボットそのものに近い見た目とはいえ、彼らも情報のほとんどを書物の他に端末にデータとして保管していたんだ。それから創世記の終盤に起こった大戦争で一度文明レベルが衰退している」

 

ネイ「はい」

 

士「で、その後無事に技術レベルを復帰させていったんだけど、その時にコンピューターの性質が変化しちゃったんだよ。簡単に事象だけを説明すると、今のコンピューターだと昔のコンピューターのプロテクトを解けない。保存した端末のデータが見られなかった」

 

ネイ「えッ!?」

 

グリーフィア「あらあら。要するに昔の言葉が分からないから解読が出来ない、みたいな感じなのね」

 

士「その通り。技術レベル衰退直後では先に人々の暮らしが優先されてすぐに技術レベルもある程度回復したね。だけど難しい技術とか、どうしても仕組みの違うコンピューターの解析だと時間が掛かってしまう。機密関連は他のプロテクトと更に異なる物でロックが掛けられてる。DNプロテクションとか、DNウォールの技術再現とかも、機竜創世記の中にあったけど解けなくて、データを保存していたガンダムがなかったらもっと遅れていたみたいだし」

 

グリーフィア「それに戦争の中でデータとかが失われたっていうのもありそうよね」

 

士「うん。実際両軍かなり争ったと創世記にも書いてあって、今ある創世記の情報は当時の人の記憶とかでも補完している。そこに更に見つかった端末のデータ解析を加えて、創世記は今までに300回ほど書き換わってるよ」

 

ネイ「さ、さんびゃく!?」

 

グリーフィア「ふーん、つまり今M.D歴が1400年くらいだから……」

 

士「5年に1回は書き換わってるかそうじゃないかって計算だね(´・ω・`)まぁ最初の書き換えがやたらと多かったっていうのが実情だけれども」

 

ネイ「へ、へぇ……」

 

士「ただ、それもあんまり今回重要じゃない。問題はこの創世記は至る所から見つかった創世記時代の古いものを集めて書かれているってこと。場合によっては誰かに嘘を書かれてしまっていることもあり得る。データだから混乱当時なら書き換えもそれなりに簡単だろうし」

 

グリーフィア「あらあら~、それは大変ねぇ……」

 

ネイ「300回も書き換わっているなら、十分あり得る話ですね……」

 

士「実際問題元君のガンダムの情報が創世記に今のところ一切ないっていう状態で、グランツさんとかのお偉いさん方が躍起になって情報探しています(´・ω・`)」

 

ネイ「あれ!?ないんです!?」

 

士「ありません!( -`д-´)キリッ」

 

グリーフィア「そうなのねぇ……」

 

士「ガンダムがワンオフ機としていくつも作られていたって言うのは分かっているみたいだけど、何ガンダムがいたっていうのは分かっていないって感じ。それに今の創世記の実情を言うと、実はまだ解読前の端末がドラグディア・マキナス両国合わせて500個以上あったりする(^ω^)」

 

ネイ「……大変ですね……」

 

士「しかも大分厄介なプロテクトがかかっているらしくて、解読する以前の問題だそうな(´・ω・`)当時のコンピューターが欲しいくらいらしいよ」

 

グリーフィア「んー残念ね」

 

ネイ「もし調べられれば、昔に何が起こったのかとか分かるんですけどね……」

 

士「さて、少しばかりのコラムはここまで。次のヴァイスインフィニット紹介に移っていくよ~」

 




前編はここまでとなります。後編ではついにヴァイスインフィニットガンダムについての解説となります。

では後編もよろしくお願いしますm(__)m


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黒の館DN 異世界戦争編 第6回 後編

どうも皆様。前編から引き続いての方は改めまして、バトスピのショップバトルで完敗しました、藤和木 士です(´・ω・`)

後編はシュバルトゼロガンダムの同型兄弟機、ヴァイスインフィニットガンダムの紹介になります。武装も似通った、しかし現代に合わせてチューンナップされたヴァイスインフィニットガンダムですが、実は本編登場時にはまだ武装をすべて使ったわけではありません。
そこら辺は後々に出していくことになると思われますので、続く投稿話をお楽しみに。

それでは本編へ!


士「後半始めて行くよー藤和木 士です!」

 

レイ「今回は後半担当~!レイ・オーバだよっ」

 

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌ・ドラニエスです。今回はヴァイスインフィニットガンダムの紹介ですね」

 

士「そう!白いガンダム!ヴァイスインフィニットの紹介だ!文字数多いのでもう紹介に入っていくよーどうぞ!」

 

 

 

 

形式番号 DNGX-XX000-WI

ヴァイスインフィニットガンダム

 

機体解説

・ディーナ・リントヴルンが装依する白銀の「ガンダム」。元の装依するシュバルトゼロガンダム(以下SZG)とは色も真反対のガンダムで、装甲の形状も改修前のSZGと似通っている。

 武装なども類似しているものがほとんどだが、明確にSZGを意識していないのは、頭部形状と背部バックパックである。これらは専用の機構と、目的の違いから導入されているとされる。

 本機の戦闘コンセプトは「指揮官機としての頂点」であり、SZGが「単機による戦場支配」とは真逆の、集団戦闘を意識している。頭部とバックパックの変更も通信範囲拡大のための頭部アンテナ強化と、士気高揚と威嚇による味方の戦闘への補助を行うとされている。

 もちろん、ガンダムの名に違わず、単機での戦闘能力は伊達ではなくパイロットの戦闘能力、そしてガンダムに共通する後述の特殊システムと相まってSZGとの初戦では完全に沈黙させるまでの戦闘能力を発揮している。

 また本機の運用によって明らかになった「エンゲージシステム」はサブパイロットとして取り込んだ人物と力を合わせることで、ガンダムの性能を最適化し、更なる力を得ることが出来るようになっている。

 なお、本機もまたSZGと同時期に運用された、創世記時代の遺物ではあるが、本機の場合初戦闘時に襲撃したマキナスの基地で素材を強奪しそれを元に修復したため戦闘能力の低下は一切見られない(同時にエクセラ基地はガンダムを襲撃する以前から、このガンダムに修復材料確保を狙われていたことになる。むしろ今回の侵攻がこのガンダムの襲撃を容易にしてしまった)。なお修復作業はSZGタイプ0が修復に利用していたヴァイスインフィニット・ビレフト用装甲内で行われた。

 機体モデルはSZG(タイプ0)をベースに、頭部をジャスティスガンダム、背部バックパックをシナンジュから参考に頂いているイメージ。

 

 

【機能】

・DNフェイズカーボン

 SZGと同じ、DNの浸透による機体剛性強化装甲。マキナス側でも旧皇帝機や現国家元首機に採用されている。

 本機の場合白にカラーリングされる様に設定されている。これは高濃度DNによって設定できる色の1つであるが、特別クラスの機体でもこちらの色は設定が可能(というより、どちらも設定は可能だが、色の維持がやや困難で、安定した運用にはガンダムなどの高濃度DN運用機に限られる、というのが真実)。

 機体を修復した際にこれら機能も復活させていることになるが、問題は修復に必要なDNフェイズカーボンがどうしてエクセラ基地に搬入されていたかと言うことである。DNフェイズカーボンは本来国か軍事のトップの許可で搬入される資材であり、SZGの場合グランツによって確保されたが、今回の場合はなぜ前線基地であるエクセラ基地に資材が搬入されていたのか不明である(一説によれば、同時期他の基地にも本来配備されない資材が搬入された報告がマキナス軍部にあり、何かが水面下で動いている可能性もある)。

 

・ツインジェネレーターシステム

 創世記のガンダムに搭載される、高濃度DNを確保するためのジェネレーター特殊運用システム。概ねSZGと大差なく、リム・クリスタルも稼働可能状態ものが搭載されている。

 

・DNLコントロールユニット

 創世記のガンダムに搭載される特殊脳波コントロールシステム。腹部に主機を搭載している。

 DNLとは「ディメンションノイズ・リーダー」の略称であり、この特殊脳波を操ることのできる人間の事を指す。ただし現時点ではそれが分かっているのみで、それがどういうものなのかは不明。

 特殊脳波を用いて機体の挙動をサポートする他、遠隔操作端末を運用することも可能。SZGのものは当初壊れていたが、本機の物は破損していなかった様子。

 

・DNL直結式フレーム「ユグドラシルフレーム」

 創世記のガンダムが機体に持つ、青白く光るフレーム。機体全体を構成しており、その強度は装甲よりも硬い。

 DNLコントロールユニットを補助するとされてきたが、実際は逆で、フレーム自体にDNLコントロールユニットをミクロレベルで配置。それらの並列駆動で主機を上回る特殊脳波演算処理を行う。ちなみに今までの戦闘で元の方も破損していなかったため特に指摘されなかったが、ユグドラシルフレームの素材は竜の死骸に高純度DNを放出し続け、結晶化したものを再構成して造られている。つまり現在でも作ることは可能(ただし今まで高純度DNを取り出す方法が復活していなかったため、ガンダムありきだが)。

 モデルは無論宇宙世紀シリーズのニュータイプ専用MSに装備されたサイコフレーム。前作に登場したノイズドエナジーフレーム系列と同じモデル元であり、この設定は物語を構成する要素として最初から設定していた。

 

・ELACSシステム

 ガンダムのジェネレーターに搭載される、出力リミッター解除機構。本機もまた「ガンダム」であることから搭載し、劇中ではSZGとのELACSシステム機同士による激突を繰り広げる。

 ちなみにELACSシステム起動時の発色は機体間で変わることはなく、胸部プロジェクション・クリスタルの紅一点も変わらずのままである。また本機の場合後述するエンゲージシステムの恩恵で稼働限界時間を伸ばしている。

 

・エンゲージシステム

 ガンダムにのみ搭載される、特殊サブパイロット同乗システム。特殊な認証を行ったサブパイロットを機体に取り込み、機体の演算処理、ジェネレーターの微調整などを行わせる。

 これらは本来機体が自動で行っている事でもあるが、サブパイロットの脳も演算処理に利用することで機体の挙動を微細に調整し、最適な稼働を行うことが可能である。

 これらのシステムは本来ジェネレーターの駆動が不安定なツインジェネレーターシステム搭載のガンダムを補助する為に取り付けられたものであり、現代に稼働する機体にはほぼ継承がされていない(継承されているに近いのは、詩巫女(もしくは奏女官)と国の象徴との連携)機能であり、ガンダムだけに課せられる最大稼働に必要な条件の1つに数えられる。

 本機の場合、レイア・スターライト取り込み後から使用し、レイアを機体の部品の様に酷使している(これは無理矢理従わせているためであり、本来の運用ならばここまで疲弊することはない)。しかし、これもまた本来の形で運用できているとは言えず、カードへの取り込みがその証拠である。それにも関わらずSZGをエラクス状態で圧倒する力を発揮しているのは、脅威としか言えないだろう。

 システムのモデルは名称をバディ・コンプレックスのカップリングシステムから取っているが、システムの内容は機動戦士ガンダム00の00ライザーに搭載されたライザーシステムの調整に近い。

 

・DNウォール

 SZG[ハイブリット]にて使用されていた、DNを定位置に集中展開して形成する防御兵装。

 本機の場合はシールドに外付けした発生器から形成する。外装式であるため、被弾率は本来高いが、ガンダム持ち前の機動力でそれを帳消しにしている。

 

・軍団指揮統制用センサー「Gの箱舟《G-Arc》」

 頭部に備えられる、一際大きく空に向かって伸びるヴァイスインフィニットガンダム専用のセンサー。このアンテナ1つで300機ものMSとのデータリンクを確立する。軍団指揮における最大感度のセンサーであり、通信不良の状況でも通常のアンテナと同じだけの通信感度を得ることが出来る。

 しかし、本機能の最大の特徴は数十機に絞ったMSそのもののコントロールであり、かつては専用の無人MS「G-ヴァイス」を率いて戦場を駆け抜けたとされている。「G-ヴァイス」が全機損失となっているため、現代では使用しない。代わりに当初は遠隔操作リング状兵器「ドレイク・リング」の操作に用いている。

 システムのモデルは機動新世紀ガンダムXのガンダムが持つフラッシュシステム。無人MSはビットモビルスーツから発想を得ている。

 

【武装】

・ビームサーベル

 SZGタイプ0が持っていたものと同型のビームサーベル。腕部内部に通常型1本ずつと、背部ウイングスラスターに強化版1本ずつを内蔵する。

 

・ブレードガン

 SZGタイプ0も装備していた銃剣。サイドアーマーに1丁ずつ装備する。こちらは修復した際に出力を向上させ、ブレードガン・ニューに迫る性能を発揮できるようになっている。

 

・スラスターキャノン

 機体のサイドアーマーを構成する武装。SZGタイプ0と同じだが、こちらは既に修復されており、出力は現代のビームキャノンを超える。更に通常出力から更に威力の増した「ブーストモード」があり、ブレードガンマウント時の威力はマキナスのマキュラ級の主砲と同出力以上となっている。

 前作SSRのSZG・ゴッドクロスのAN高純化射撃兵装「オーディン」がモデルであり、更にその元はエクストリームガンダムTYPEレオスⅡVsの高純化射撃兵装「エクリプス」である。

 

・Dフィスト・イレイザーロスト

 現SZGにも装備される。腕部のDN圧縮解放デバイス。元々はSZGタイプ0にも破損しながらも装備されていたため、本機にも装備されている。

 元々装備していたものを修復したためか、出力は現在のSZGに劣るが、現在のSZGにない元来の機能の一つ「インパクト・ブレイク」が使用可能となっている。これは腕部に格納したビームサーベルの柄をエネルギータンクに見立ててDNをチャージし、攻撃の瞬間にこれを圧縮解放することでビーム、もしくは打撃攻撃の貫通力を向上させる機能である。この機能は強力だが安定性に欠けるため、改修時にSZGの機能から外された機能となっている。

 武装モデルはSZGのものと同じく、デスティニーガンダムのパルマ・フィオキーナ。インパクト・ブレイクはSSRにも登場した、魔法少女リリカルなのはシリーズのカートリッジシステムがベースの同名システムをベースに弾切れの概念を事実上なくしたもの。

 

・ロングビームランチャー

 マキナスで開発されたマキナート・バスターのタンクゴーストとセットで装備されていた長距離射程ビーム砲。基地襲撃時に配備されていた機体から奪取して使用する。不使用時は腰背部に増設したコネクタで保持する。

 タンクゴーストは装備していないが、ガンダムの余りある出力により、タンクゴーストの圧縮エネルギータンク無しで高出力を連射することが出来る。

 形状モデルは持ち手を機動戦士ガンダムAGEのガンダムAGE3オービタルのシグマシスロングキャノン、砲身は逆襲のシャア・ベルトーチカチルドレンのHi-νガンダムのハイパーメガビームランチャーをイメージしている。

 

・マキナス・シールド改

 マキナスのMSのシールドを元に、ヴァイスインフィニットガンダム側が改造したシールド。左腕に装備している。

 ランチャーと同じくマキナート・バスターのシールドをベースとしており、クロー展開を行った後の開閉部にビームキャノンを新たに2門追加。裏面にはビームキャノン用のエネルギータンクを、加えて外装式のDNウォール発生器(自作)を装備し、DNウォールを使用可能としている。

 

・ハイマニューバウイングスラスター「WINGΣ-PROTOⅠ」

 本機の背部に装着される、特徴的な翼形状のスラスターユニット。猛禽類を思わせるウイングスラスターを1対持ち、圧倒的な加速力を生み出す。バックパック下部にはDNのプロペラントタンクを装備しており、

 通常状態でもSZG(タイプ0)の機動力を上回るが、翼をはためかせるように展開した「ハイマニューバモード」に移行することで、その機動力は他の追随を許さない程の性能を見せる。

 ちなみに名称がSZGタイプ0のウエポンウイングユニットと酷似しているが、これはウイングそのものが当時の換装兵装であったためであり、現在のSZGとも互換性がある(ただしSZGリペアが装備するウイングはドラグディアの規格に合わせたものであるため、ヴァイスインフィニットにそのまま装備することは不可能。SZGには増設コネクタを元々のコネクタに装備して接続できるようにしているのでそれらパーツがあれば可能)。

 SZGのウイングと同じくウイングスラスター側面には形状の異なる遠隔操作端末「フェザーファンネル」を装備する。

 武装モデルはシナンジュの背部ウイングスラスター。フェザーファンネルを装備する以外はシナンジュの物とよく似ている。ハイマニューバモードもシナンジュの高機動形態を意識している。

 

・フェザーファンネル

 ウイングスラスター側面に片側6基の計12基が装備される、遠隔操作端末。SZGタイプ0が装備していたフェザー・フィンファンネルの発展元であるが、単純な突撃攻撃に絞っているため、扱いやすさはこちらが勝る。またウイングに接続している間は増加スラスターとして機能する。

 攻撃方法としては羽の付け根に当たる部分にビームサーベルを生成し、それで突撃。あるいは付け根自体も鋭利なためそのまま貫く、と2パターンの突撃攻撃となる。

 DNフェイズカーボンで形成されているので、耐弾性能があり緊急時は重ね合わせて防御することも可能(当然ダメージはかなりあると思っていいので、その面での使いこなす難易度は高い)。

 武装モデルは機動戦士クロスボーンガンダムのインプルール・コルニグスの同名武器。形状はシナンジュのウイングに合わせた形状となっているので、あまり似ていない。

 

MWBR(マルチ・ウエポン・ビームライフル)

 機体ウイング側面に1丁装備される、ヴァイスインフィニットガンダム専用のビームライフル。長銃身のビームライフルと、銃身下部のコネクタに装備する武装群を含めた運用機関を指す。

 SZGも本来使用していたビームライフルであり、スタートも本来こちらを主兵装に選択するつもりだったが、銃身の長さから元が扱いきれないと判断し断念していた。こちらでは長い銃身を物ともせず運用している。

 銃身下部に装備する武装はグレネードランチャー、ランサーガンの2つで、それぞれの兵装は反対側のウイング側面に装備される。必要に応じて取り出し、装備する。

 武装モデルはシナンジュのビームライフル。グレネードランチャーもそのままだが、ランサーガンのみほぼオリジナル。

 

・ドレイク・リング

 学校での初登場時に従えていた遠隔操作端末。リング状の形状をしており、普段はDNジェネレーター付きのコンテナ内に格納される。4つのリングが存在している。

 必要時にコンテナから射出され、敵をDNプロテクションでリング内へと閉じ込める。リングは可変式であり、2つを合わせて大きなリングを作ることも可能(その際リングはいくつかのパーツに別れて合体する)。円の中に捕らえると中の対象にリングに備わった装置から電撃を放ち、感電させる。攻撃方法はこれのみであり、どちらかと言えば対人用兵装に近い。

 実際本兵装の運用は人質として捕らえたジャンヌ達の捕獲のみであり、その後は駆け付けたケルツァート隊の機体に破壊され中の人質たちも救出されている。

 

 

士「以上がヴァイスインフィニットの紹介です」

 

ジャンヌ「あの趣味の悪い拘束リングも一応紹介に入るんですね」

 

士「ちょ、趣味悪いって言わないでよ!(゚Д゚;)そんなに駄目だった!?」

 

レイ「いやいや、絶対趣味悪いって。使い方も原因だけど、設定も対人兵器ってしてる辺り、人への運用しか考えていないって気満々で悪趣味。生身の女の子に電撃浴びせるってMS越しでも危ないっていうのにさー!」

 

士「(´・ω・`)よくご存じで……まぁ人質とガンダムをたき付けるのが目的だったから、威力も結構落としているんだけどね。プロットだとヴァイスインフィニットの雷撃系DNFを落として雷撃浴びせるっていう内容だったのをマイルドにしたつもりなんだけど……」

 

ジャンヌ「藤和木は一度電気ドッキリに引っかかればいいと思います!」

 

士「そこまでです!?( ゚Д゚)」

 

レイ「まー大分畜生野郎だから、元君がどうやって戦うのか、またはけちょんけちょんにしてくれるか楽しみだけどさっ!」

 

ジャンヌ「そうですね。元さんには是非派手なリベンジを見せてもらいたいものです!」

 

士「まだ眠りに落ちたままの主人公。過度な期待を受けてますなぁ(´-ω-`)さて、今回の黒の館DN、これにて閉館です」

 

レイ「やっぱり主人公が決めなくっちゃ!私モチーフの女の子が囚われているからっていうのもあるんだけどね!またねー」

 




今回もお読みいただきありがとうございます。黒の館DN、無事第6回も終了になります。

次回からは主人公元の過去について触れていく流れとなります。果たして、元の過去とは?
では次回も、

ジャンヌ「よろしくお願いしますね」


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EPISODE39 別離、復讐、回想1

どうも、皆様。ストック先で無事山場超えました、藤和木 士です。俺はとまんねぇからよ……_(:3 」∠)_

ネイ「それで団長さんを示すんですか……アシスタントのネイです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよぉ。でもね、作者君。まだ投稿内容はその以前だから話すのはまだよー」

そんなー(´・ω・`)ってしてる場合じゃない。てからん豚の顔文字でもないし(゚Д゚;)さて、今回はEPISODE39、40の連投だ。

ネイ「……これ、読点より「と」で締めた方が良かったのでは」

それはもう第1章のタイトルで使っているからね。まぁ使ってもよかったけど、OOOみたいな感じで話す感じの内容ではなかったからね。(´・ω・`)

グリーフィア「でも前半2つが不吉ねぇ。もしかしてこれ後半もやばい感じかしら?」

それは本編を見て(´・ω・`)どうぞ!


 

 深い眠りに落ちた元が目を覚ましたのは、砂浜だった。唐突な出来事で普通なら驚くが、元は驚かなかった。なぜならこのような状況を一度経験しているからだ。

 経験したのもまた今回と似た状況。そう、敗北した直後だった。あの時記憶を失った自身を呼び込んだのは元英雄であるアイツだ。勝手に自分のデータを使って体を構成したアイツ。そのまま砂浜を歩いていくと、その先にはやはりアイツが待っていた。

 白い髪を持つ、自分と同じ姿をした男。ガンダムを先に操っていたという始まりの戦士、スタート。彼は夜の帳が落ちたような黒白の海岸でかすかに見える境目を見つめる。だが元に気づくと、彼は視線をそのままにして彼に告げる。

 

「今のままじゃ、アイツ……ヴァイスインフィニットには勝てない」

 

「…………どうするんだよ」

 

 元の問いかけは、急を要するものだった。勝てなければまたやられる。いつ襲ってくるかも分からない相手に、万全の状態でないのは心もとない。何か対抗策が必要だった。

 だが、同時にその問いかけは適切ではない。既に元はあの戦いの中でそれに対抗できる答えを思い浮かべていた。同じ機体ならではの対抗策。しかしそれを先に言ったのは問いかけた先、スタートの方だった。

 

「簡単だ、こちらも奴と同じ力を、エンゲージシステムを使用する。それしか勝機はない」

 

「………………」

 

 スタートの言葉に元は何も言わない。図星を突かれて、言葉が出ないかのように深い鼻息だけが出る。そう、それは予想通りの答えだったのだ。足りない部分があるなら、それを補えばいい。今回の場合ならエンゲージシステムで必要になるサブパイロットを確保すればいいだけ。

 だが、問題はその相手。これまでの流れから、スタートが何を言うのかを元はなんとなく予想出来ていた。それはリム・クリスタルの問題の時のスタートの言葉から、嫌な予感を感じていた程に。そしてスタートは、それを言った。

 

「幸いにもパートナーに適する人材はいる。エンゲージシステムに経験は必要ない。だから元……」

 

「………………っ」

 

 しかし元はそれを最後まで聞くことなくその場を去る。どこまで行けばこの黒白の海岸から抜け出せるのかは分からない。だがやつの口から、あの名前が紡がれるのだけは聞きたくなかった。

 あれほど傷つける行いをしながら、自分の力になってほしいなどと言いたくなかった。意地だ、それは。だが同時に戦争に彼女を関わらせたくないという願い、我儘である。そんなことをしていては、意地を張っていては勝てない。勝てるはずがない。

 ところがスタートはそれを咎めようとしない。止めもしないその姿勢は何か理由があるようにも思える。スタートから遠ざかるにつれて元の意識が黒白の海岸から離れていく。それは現実世界での元の目覚めに呼応している証拠でもあった。そうして何も答えることなく、黒白の海岸は消えていった。

 

 

 

 

 目が覚めた元の目に映ったのは、白い壁で覆われた部屋だった。以前にも訪れたことのある部屋の雰囲気、そして近くの席にはやはり人がいた。もっとも今回そこにいたのは先程元やジャンヌ達を助け出したアレクと、決闘にてお世話になったナイツ・ヴィーナス率いる竜絶の乙女リリー。2人は目覚めた元を見て各々動く。

 

「ハジメ、起きたか」

 

「は、はい……っ、まだ体の方が痛みますけど……」

 

 元に怪我の容体を確かめるアレク。一方リリーは携帯端末を取り出し、誰かに連絡を取る。ものの数十秒で終わると、彼女もこちらの方に顔を向ける。

 

「機体が大破状態でそこまで動けるなら問題ないとは思う。爆発前に装依状態を咄嗟に解除した、ガンダムのOSに感謝した方がいいな」

 

「そう、なんですか?」

 

「そうだ。普通のMSのOSではそんな識別なんて出来ない。もう少し強制解除が遅ければ、死んでいただろうな」

 

 死んでいたという単語に、あの時の危機的状況に身をもって知らされる。だが元が無事でいられたことへの安堵に浸っていられる時間は少なかった。イスに腰かけるアレクが、あの場の状況を訊いてくる。

 

「それで、元軍曹。あの時何があった?何でジャンヌ・ファーフニルを含めて捕まっていた?いや、それ以上に、あの白いガンダムは何だ?」

 

「アレク少佐、一度に全部聞いても……」

 

「いや、大丈夫です。自分の分かる範囲でなら説明します」

 

 痛む体を起こしつつ、2人に説明を申し出る元。2人にあのガンダムの正体、ジャンヌ達が捕まっていた理由、そしてあそこまで損傷させられた経緯を話し出す。

 最初は白いガンダムの正体を聞かされ驚く2人であったが、続く話をレコーダーに記録しながらも元が遭遇した状況を聞き取る。そして最後に殺されそうになったところをアレクに助けられたという話をしたところで、病室のドアがノックされる。

 

「失礼するよ」

 

「失礼します……あぁ、生きてた」

 

「お待ちしていました、グランツ司令」

 

 入ってきたのはドラグディア軍総司令官であるグランツ・フリードと元のガンダムの機付長である整備士のヴェールだった。予期せぬ来訪に元もベッドから少しだけ体を起こして、既に敬礼するアレクとリリーに遅れて敬礼を行う。

 

「ぐ、グランツ司令!?それにヴェールさんも……」

 

「怪我の具合は思っていた程重傷ではなさそうかな。いや、今の様子を見ると中の方が辛い感じかな?」

 

「機体のログから見ても、おそらくそうでしょう。まったく、あの時ちゃんと装備を変えていれば、こんなことには……」

 

「うっ……返す言葉もないです」

 

 正面から悪態を付かれて、視線を逸らす元。ヴェールの言う通りで、何も言えることがなかったのだ。あの時武装仕様を遠距離仕様のヘラクレスではなく、近接高機動に向いたハイブリット、もしくはペルセウスツヴァイだったならと今でも思う。だが、後々の事を考えると、それで凌げるのも序盤のわずか。エラクスを発動する前までだろう。

 元の推測を、既にデータで見ていたヴェールも自身の言葉に反証する形で口にする。

 

「……でも、スタートからの報告と映像見る限りじゃ、それも厳しいかな……」

 

「何?どういうことだ」

 

 ヴェールの言葉にアレクは聞き返す。アレク達にはまだ激突の内容を話していなかったためだ。状況を理解していない2人にヴェールは端末でその戦いの内容を見せる。

 端末に映る、ガンダムのカメラ映像を見て2人も息を飲む。その間に元の傍に入れ替わりで腰を掛けたグランツが元に他の者達についての現状を話す。

 

「2人が映像を見ている間に、私が今起こっていることについて話そう。まず、ジャンヌ君達は今別室で手当てを受けている。ネア君やグリューネ君、それにノーヴェ君も軽い外傷で問題はない」

 

「そうですか。……それで、お嬢様は?」

 

 ネア達の無事に安堵しつつ、名前の呼ばれなかったジャンヌの無事に関して尋ねる。するとグランツはやや顔を渋いものにした。話すのは難しいといった様子であり、一旦視線を外してまた元に向けるとジャンヌの容体について述べた。

 

「最悪、と言った方がいいだろうね。怪我の度合いもネア君達よりも大分痛めつけられている。話によると腹部に強打を受けて嘔吐したらしい。それ以外にもかなり念入りに痛めつけられているという。それに彼女の場合精神面がかなり不安定なようだね」

 

「っ!精神面で……」

 

 グランツの言葉に、元の思い当たる節は2つあった。1つは元とジャンヌが学校で交わした一幕。あの時元によって逸らそうとしていた事実と向き合わされてしまったことが、まだジャンヌの心の中で混乱をもたらしている。それが1つの理由。そして2つ目は、レイア・スターライトを人質として囚われてしまったこと。彼女はジャンヌにとって最も深く愛する人物であると共に、詩巫女としての道を未だ歩める最大の要因の1人だ。そんな彼女の大切な人を人質に囚われたのだとしたら、それをもし目の前でされたのだとしたら、彼女の精神的なダメージは計り知れないだろう。

 しかも元は先程のジャンヌとの会話で「自分のガンダムが壊れてでも戦争を終わらせると言っていた。にも関わらず、白いガンダムに対して敗北した。見栄を張ったが故の失態であり、ジャンヌに「嘘つき」と言われてもおかしくない。主へ嘘を付いてしまったという後悔の念が押し寄せる。

 

「……俺のせいだ。俺があんなこと言ったばかりに……」

 

「ハジメ……?」

 

「何か言ったのか、ハジメ軍曹?」

 

 元の言葉に映像を見ていたアレク達が反応する。するとその疑問に回答したのはドアを開けて入ってきた、もう1人の人物の口からだった。

 

「だろうね。少なくともあれを問いただしたのは間違いだっただろうな」

 

「君は……」

 

「ローレイン、お前……」

 

 ローレイン・ナーグ。元のクラスメイトにしてその行動見張り役、そしてドラグディア軍情報局「ファントム・ナーガ」と呼ばれる女性である。彼女がなぜ訪れたのか、疑問がアレクに続き彼女を知るリリーからももたらされる。

 

「ファントム・ナーガ、か。確か君がハジメ軍曹の見張り役だと聞いていたが、どういうことかな?」

 

「簡単に言ってしまえば、こいつジャンヌの弱点突いたんですよ」

 

「ジャンヌの……弱点?」

 

 アレクが疑問を復唱する。ジャンヌの弱点とは、やはり詩巫女嫌いの理由についてだった。分かっていない様子のアレクとリリーにグランツの口から詳細が告げられた。

 

「2人はまだ知らないようだね。元々ファーフニル家の女性には「詩竜の呪印」と呼ばれる魔術による呪殺刻印が1代に1人、発生する。その呪いを受けたものは強制的に詩巫女としての教育を受けさせられ、やがて我が国の象徴、クリムゾン・ドラゴニアスとの共鳴をしなくてはならないのだ」

 

「呪殺刻印って……確か国で禁止されているはずじゃ!?」

 

 アレクがその表情を崩し、声量を大きめに発する。呪殺刻印の禁止化という言葉は元も初めて知った。所謂禁呪とされるであろうその事実に、グランツも頷いて説明を続ける。

 

「確かに今は禁止されている。だがそれを施したのはその呪印が禁止化される前。もっと言うならクリムゾン・ドラゴニアスが巨龍から機竜に生体部品を移されてからしばらくしてからだ。しかもそれは国が隠蔽し、ずっと今も暗黙の了解として続いている。詩竜の呪印自体はその呪いの継承者がクリムゾン・ドラゴニアスと誓いの契約を行うことで成功・不成功に関わらず消失する。だが次の代のファーフニル家の子どもが生まれると、今度はその子どもに現れる。詩竜の呪印のもう1つの特性でもある「子どもの女化」も含めて、この呪いはファーフニル家を詩巫女の家系として縛り続ける呪いとして機能する様になったんだ」

 

「……」

 

 グランツの説明を聞いても、アレクは何も発することはなかった。経緯が壮大すぎるのと、初めて聞く単語ばかりで何も言えない様子だった。元もアレクの反応に違和感はなかった。むしろ自分もこの立場でなければ同じ反応だっただろうと思っていた。

 その一方でリリーも多少の戸惑いは見せたものの、状況の整理と今まで自身が感じていた違和感を口にする。

 

「それほどの事を……確かに弱点、いや触れられたくない過去としては充分だ。それに国の象徴が今まで300年ほどの間、姿を現さないにも関わらず詩の名家であったファーフニル家が力を持っていたという疑問も、つまりはその誓いの契約が何らかの形で失敗し続けている、にも関わらず国はずっとそれをやらせている、ということですね?」

 

「そうだ。しかし今回はその中でも厄介……。本来呪印を継承していたジーナ・ファーフニルからジャンヌ君に呪印の転移が起きてしまった。ジーナ君は特に郷土研究に興味を持っていてね。どうもその才覚の目覚めに影響して呪印が継承者を変更してしまったようなのだ。そのせいでジャンヌ君は急遽詩巫女への道を歩まされてしまった」

 

 ジャンヌの置かれてしまった立場に、グランツは顔を俯けて悲しみに暮れる。他人事のように考えることなく、接するその姿はまるで子どもを気にする子煩悩な親だ。元はその表情が気になった。だが顔を上げて表情に悲しみを残したままかつてのジャンヌについても語る。

 

「ガンドに連れられたジャンヌ君を私も何度か見た。幼い頃はとても笑顔のある少女だった。だが呪印に束縛された彼女は、それが嘘のように本当の笑顔を自ら出せる力を失ってしまっていた。高校生にも満たない彼女の顔は、とてもしていい表情ではなかった。冷たさを感じたのだ。ヴェールの成長する姿を見ているせいで余計にそう思った……同時に、私が過去に出会った彼女の祖母の苦しさを、あの時初めて理解したよ」

 

「……パパ……あっ」

 

 自身の父の独白に、ヴェールは思わずそう呼んでしまう。すぐに口を閉じ、やってしまったという表情をするが、それよりも注目はグランツの方に向けられていた。

 元は哀しみを見せるグランツに問う。

 

「グランツ司令……ジャンヌお嬢様の祖母って……」

 

 元はジャンヌの祖母を知らなかった。それよりも彼女の祖父母をガンドとクリエ、夫婦のどちら側の方も見たことがなかったのだ。元の質問にグランツが答えた。

 

「彼女の祖母はね、クリエ君を産んで彼女がまだ7歳の頃に亡くなったよ。自殺で、ね。何でもクリエ君が母親に見せた顔が、相当精神的に不安定だった彼女には耐えられなかったらしい。もしかするとクリエ君もその時のジャンヌ君と同じだったのかもしれない……」

 

 その言葉の中に、元はとある考えにたどり着く。だが今さらそれを指摘しても意味などない。むしろ元はその片鱗を再び開いてしまったのかもしれないのだ。グランツに何を言われても元は受け入れる所存だった。

 ところがグランツは、質問をした元に顔を向けるとその手を握り言った。

 

「ハジメ君、確かに君のしたことは失敗だっただろう。だが、間違いではない」

 

「え」

 

「君は先程、自分のせいだと後悔してくれた。無論、それが陥れてしまったことか、それとも護り切れなかったことに対してなのかは分からない。だがもし陥れてしまったことへの反省の意味なら、それを咎めはしない。いつか君が知らなければならないことだったのだ」

 

 グランツの口からは、後悔したことへの元の気持ちを確かめる言葉が出てくる。それはまるで、懐かしさを感じて語るようだ。

 最後にグランツは言う。

 

「だからこそ、君は後悔の中に居続けてはいけない。過去に取り込まれてしまえば、人は未来を作れない。恐れず、進むのだ。無論、考えることは大事に」

 

「グランツ司令……」

 

 その言葉を聞かせると、グランツは前のめりになっていた姿勢を戻す。そして今の雰囲気を砕く形で過去を思い出す。

 

「しかし懐かしいな。養子にもらったばかりのガンドにもその言葉を聞かせたものだ」

 

「グランツ司令……」

 

 いきなり出たガンドにまつわる衝撃の話題転換にリリーは肩を落とす。あまりにも雑な切り替えだろうが、元には衝撃的だった。まさかグランツがそのような形でファーフニル家と縁があったとは。

 体が痛みつつも元はその話題に興味が沸いていた。今が非常事態であることも忘れて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 これまで知ることのなかった情報の中でアレクは物事を整理していた。アレクはドラグディア軍のエースパイロットとしての実力、知識を兼ね備えた人物である。士官学校も出て、それなりに物事を理解出来るだけの頭脳を持っていた。

 しかし、今聞いた話はこれまでアレクが信じていた国の常識であり、真実とされていたものを覆す、信じがたい事実だったのだ。あまりにも自分の信じていた、ましてや守ろうとしていた国の姿に裏切られた気分になる。結局自分が護ろうとしていたのは、あのように自分達の利権を護る者達なのではとも思う。

 だが、とアレクは考える。それだけが人ではない。一側面だけを見られてどうにかなるほど、世界は出来ていない。隠さなければ維持できないものもあるだろう。それに護って来たものの中には、無関係な本当の意味での護るべき者達だっている。大事なのは見極めることだ。だからと言って、その行いだけは許すわけにはいかないが。

 この話は非常に重大だ。もし、それが国民に知られれば暴動が起きるのは間違いない。そうなった時、政府はその責任を追及されるだろう。そうなった時、自分達も大きな選択に迫られるのではないか。国を護るために民衆に手を貸すか、それとも政府の者達を死守するか。そんな不安を拭いきれない。だがそれ以上に現状も同じく重大だ。

 白のガンダム、元はヴァイスインフィニットと言った。そのガンダムの出現に合わせるかのように知ることとなったその事実。

 

(白のガンダム……結果的にあいつが、今回の問題を引き出したということになるか……。あのガンダムはこの事実をなぜ知っていたんだ?いや、それ以上にガンド少佐は大丈夫なのだろうか)

 

 白のガンダムの思惑、そしてあの場を引き受けたガンド・ファーフニルの動向が気になるアレク。そんな彼の不安は的中した。突如扉を開けて入ってきた看護師の女性。彼女はグランツの姿を確認すると驚くべき事実を自分達に伝えて来た。

 

「いたっ!失礼します。今大変な知らせが入ってきて……」

 

「どうかなさいましたか?」

 

 グランツはただならぬ看護師の声に、すぐさま訊き返す。看護師は息を整え、あまりにも残酷な事実を伝える。

 

 

「先程、ガンド・ファーフニルさんが重傷でこの病院内に運ばれてきたんです!今医師の方による手当てが行われているのですが……」

 

「何っ!?」

 

「それは本当なのか!?」

 

「はい、ですが、もう手遅れな状態で……すぐにみなさんを呼べと……」

 

「くぅ……当主が……!?」

 

 

 ガンドの名前に重傷という状態。嫌な予感は的中した。ガンドは負けたのだ。あの白いガンダム、ヴァイスインフィニットに。その呼び出しにアレクやグランツらに加え、ベッドに寝かされていたハジメも痛みに堪えて彼の待つ部屋へ向かった。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。引き続きEPISODE40もよろしくお願いします。

グリーフィア「作中でも言われていたけれど、よく生きていたわねぇ元君」

ネイ「そうだよね。スタートさんのおかげだね」

スタートもちゃんと戦っているんですよ(´-ω-`)まぁ、スタートに出来ることが限られているのもあるし、だからこそエンゲージシステムの必要性が問われているんですけどね(´・ω・`)

ネイ「けど、元さんはエンゲージシステムのパートナー、どうするつもりなんでしょう……避けては通れないと思うんですが……」

グリーフィア「んー、でも元君の事だから、それなしで頑張りそうな気がするんだけどねぇ。ま、それ以上に次で心配なのはガンドさんの方かしら?」

重傷で運ばれたからね(;・∀・)果たしてどれくらい重傷なのか。ではEPISODE40も引き続き是非!


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EPISODE40 別離、復讐、回想2

どうも皆様。EPISODE39から引き続きEPISODE40です、藤和木 士です。

レイ「アシスタントのレイだよっ!元君重傷だけど大丈夫かな……」

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです。それもそうですが、前話でガンドさんが重傷で運ばれたのも気になります」

レイ「だよね!別離ってまさか……」

カンのいい詩姫は嫌いだよ……ってまぁ今回で分かるけどさ(;・∀・)

ジャンヌ「そうなると復讐もなんとなく察しが……先行き不安ですね」

さぁ、気になっているであろうガンドの容体はいかに!(゚∀゚)それでは本編へ


 

 

 病院内の通路を足早に進む元達。元はアレクに肩を貸されて、先を行く看護師やリリー達の後を追う。立って初めて分かったが、身体にかなりのダメージがあった。その痛みのせいで最初はまともに歩くことも出来なかったが、無理を言って何とかその列に付いて行く。

 まだまともに歩けるようになった足を速めていく元に、アレクと同じく後ろでそれを補助するローレインは注意を払う。

 

「おい、大丈夫か。足が速くなっているが……」

 

「そうだそうだ、お前だって一応重症の身なんだから、もう少しゆっくり行ったって……」

 

「……大丈夫か、ハジメ軍曹。少しスピードを落とした方がいいか?」

 

 2人の声に反応し、リリーは振り返って確認を行う。しかし元は傷を庇うようにそれを拒否する。

 

「いいえ……それより一刻も早く、ガンド少佐の……当主の容体を……」

 

 額にも汗を浮かべており、周りからしてみればこちらも危機的状況を思わせるものだ。依者側からして見れば、本人の意思を無視してでも止めに入る状況だろう。それらに留意しつつもリリーらは元の要求を聞き入れる形を取る。

 

「分かった。ローレイン、君も肩を貸してやってくれまいか?」

 

「背中押すよりその方がいいっぽいですね。ハジメ、行くぞ」

 

「悪い……」

 

 ローレインも反対側に入り肩を貸す形で補助に入る。更に先頭も気持ち一つスピードを落として病室に急ぐ。

 ガンドがいる部屋までたどり着くと、ちょうど同じタイミングで反対側の通路からもう1つの集団が合流する。その集団はこちらと同じく看護師に連れられ、慌ただしく向かってきていた。そしてその集団の顔は元も良く知る人物達、いやこちらと同じく当事者たちがほとんどを占めていた。そこに更にガンドの関係者でもある人物が入り、家でもないのに家の主要人物全員がほぼ揃っていた。そのうちの1人でガンドの関係者の1人、クリエが重傷気味の元を見て口を押えて怪我の度合いを訊いてくる。

 

「は、ハジメ!?だ、大丈夫なの?」

 

「奥様、自分は大丈夫で……痛っ!」

 

 大丈夫だと言いかけたところで左足に衝撃が走る。見るとローレインの足が見事に後方へと戻る途中だった。

 

「なんて言ってますけど、こいつも同じく重症患者ですよ。ガンダムも大破状態で、生きてるのがほぼ奇跡な状況です」

 

「ローレイン、お前な……っっ!」

 

 咎めようとすると更に足を蹴ってくる。流石にクリエや既に顔を出していたグリューネ、ネア、それにノーヴェは笑いなどの反応を漏らす。

 

「あーいい気味いい気味。言っちゃいけないけど、因果応報って感じ」

 

「お、お姉ちゃん……流石に命からがら生き残れた人にそれは……」

 

「分かってる。流石に言い過ぎたわ」

 

「大体事情はグリューネから聞いたからあれだけど……流石に笑えないわ。大丈夫?」

 

「何も言えない……いや、話せはするけど……」

 

 グリューネの言葉通りの現状だった。あれだけ大口をジャンヌに叩いておきながら、自分は白のガンダム相手に何も出来ずに敗退。しかもMSが大破しても自分は生き残るという更に格好のつかない結果を残している。むしろ笑ってくれた方が清々するかもしれない。

 だがそれ以上に元が気になるのはジャンヌの様子だ。母クリエに肩を持ってもらって歩いているが、その眼にはまるで生気はない。絶望の淵へと追い込まれたような眼をしていた。歩いているのも不思議と思える光景だが、扉の中へと入っていくリリーやグランツ達の姿に、先に入ってくれるように頼む。

 

「すみません、先に入ってくれますか。今の状態だと入るのが遅れてしまうので……」

 

「そ、そう?じゃあお先に……」

 

 クリエも夫の無事に焦りを浮かべると、すぐにジャンヌを押しながら部屋へと入っていく。その後をグリューネ、ネア、ノーヴェと続く。その最後尾をローレイン、アレクが元に肩を貸した状態で横になって部屋に入っていく。

 ドアを閉めると、部屋の中にクリエの叫びが木魂する。

 

「貴方っ!!」

 

 悲鳴とも取れるほどの声量に元は若干竦む。2人に支えられながら、元もガンドの下へ歩み寄った。だが、それは現実として受け止めるにはあまりにも重すぎる姿だった。

 ベッドに寝かされたガンド。彼の至る所に包帯が巻かれていた。そのうちの左手と右足の包帯は本来あるはずの部分を途中から隠してしまうような巻き方だった。本来伸びるべき部分の包帯は血で染みており、ベッドのシーツにも血が付着してしまっていた。

 本来の人の生き方ならあり得ない光景。その異常性に吐き気を催す。しかし、聞こえて来た涙声でそれを堪える。既に反対側の方ではクリエたちが悲しみに暮れていた。クリエは愛する夫の右手を握って顔に当てながら涙声を漏らし、ネアは惨状に耐えられず顔を背けてはまたその姿を見てを繰り返す。そしてジャンヌは腕をだらんとさせてイスに座り、両親の姿を茫然と見通していた。そんな彼らの様子を、いつの間にか部屋にいたフォーンも視線を外し、見るに耐えられないという様子を露わにしている。

 泣き続ける妻の姿に、夫であるガンドは自身のむごたらしい姿に構わず励ます。

 

「ごめんな、クリエ……こんなことになってしまって……」

 

「私も、覚悟していたつもりです……でも、こんなことって……っ!」

 

 ガンドの声に精一杯という様子が感じ取れる。何とか平静を保とうとするも、クリエの顔は涙で歪む。そばに付いていた医師が顔を俯け、今の様子を伝える。

 

「手は尽くしました。ですが、なにぶん失血が多い。今会話できているのが不思議なくらいです。おそらく、1日も持たないかと……」

 

「そう、ですか……」

 

 リリーが沈んだ声で医師に返答する。そこで元の体が崩れ落ちそうになる。あわやという所でローレインとアレクが支える。

 

「ハジメっ!?」

 

「っ、無理もない。ガンダムの装依者とはいえ、民間人だ。それに体に力が入りにくいんだろう。けど、もう少し持たせろよ……」

 

 元に声を掛けて心を保たせようとする。反対側で起きていることに気づき、ガンドが顔をこちらに向ける。

 

「ハジメ、か?……無事だったんだな……」

 

「あ……お、俺は…………」

 

 言葉が上手く出てこなかった。恐怖と痛みで口が思うように動かない。そんな元に代わり、グランツが前に出てその姿を見て謝罪を口にする。

 

「すまない、ガンドよ。こんなことになってしまい……ファーフニル家という重荷も担がせて……」

 

「いいんですよ……家を失って、家族を失って……復讐しかなかった俺に、……貴方は生きる理由を与えてくれた。…………それだけで俺は……、このファーフニル家を継げてよかった」

 

 あまりにも潔い、全てを悟ったような返答だった。ファーフニル家という呪われた家の当主となった男は、それ以上に大切なものを今持っていた。それは自分の体の部位をなくしてしまってもなお誇れるものだと言えるほどに、強かった。第三者とも言える元にすらそうだと思わせるほどに、彼の言葉は家の大黒柱として相応しかった。

 グランツもそう聞いて一歩下がる。その顔は後悔と安堵の物が混ざり合っている。グランツとの会話が終わると、ガンドは泣きじゃくる妻に言葉を向ける。

 

「クリエ、君と出会えて、よかった……」

 

「私もよ……貴方」

 

 クリエは顔を乗り出してその唇を重ね合わせる。続いてガンドはネアにも言葉を向けた。

 

「ネア……君を家に預かってから色々と世話になった。ジャンヌの世話を小さい頃から見てくれて、ありがとう……」

 

「いえ……お嬢様のおかげでっ、私は今日まで生きてこられました……っっ!」

 

「そうか……なら、最後の頼みだ。家の者達に、これからも私の家族を頼むと、フォーンと共に伝えてやってくれ……」

 

「はいっ……!うっ……うう!」

 

 ガンドからの最後の頼みに、涙が零れつつも了承するネア。しかし最後の最後で姉であるグリューネの胸の中で泣いてしまう。そんなネアをグリューネは何も言わずに抱きしめる。

 ガンドからの最期の言葉とも取れる行動は、今度はジャンヌへと送られる。

 

「ジャンヌ。お前は三姉妹の中でも……母さんによく似た子だ。とてもこの先が心配になるほど、愛しい」

 

「………………」

 

 ジャンヌは答えない。声すらも発しない程精神の弱り切った彼女の反応は全くなかった。だがそれでもガンドは、心を閉ざす過酷な運命を背負った娘に語り掛ける。

 

「お前に詩巫女の道を強いてしまったことは……心から申し訳ないと、思っている……だが、お前が生きるには、それしかなかった……お前には生きて欲しかった。だからジャンヌ……俺が死んでも、お前は生きてくれ……ジーナやエターナ、それに母さんやネア、フォーン、そしてハジメと共に」

 

「………………っ」

 

 一瞬ハジメの名前が出て反応が帰ってくる。だが憤りのような反応であり、あまり良い印象ではない。それでもジャンヌが話を聞いてくれていたことに安心した表情を返す。

 これで終わりと思われた最期の言葉。だがそれは最後の最後に元に対しても向けられた。

 

「……ハジメ」

 

「っっ!?は、はいっ……」

 

 呼ばれたことに狼狽してしまう元。何とか口から出そうなものを抑えながら、元はガンドの近くまで行く。元が自身の視界に入りやすいところまで来たところで、ガンドは元に言葉を掛ける。

 

「恐れるな、というのは無理な話かもしれない……だが、既にお前も、ドラグディアの軍人の1人だ。それに……こんなことになってしまったのは、自分のせいだとも思っているのかもしれない。けど俺は、俺の護りたい者のために……戦っただけだ。何が言いたいのか分からないかもしれないが……言いたいことは1つだ……お前は、俺によく似ている」

 

「どういう……ことですか……」

 

 告げられたのは、自分によく似ているということだ。だが元はガンドのように心は強くない。とてもではないが、ガンド程今の状況を冷静に見て居られていなかった。それにこんなことになったのは、倒すことのできなかった自分の責任だ。もし自分が、あのガンダムを倒すことさえできていれば、こんなことにはという罪悪感があった。

 元は受け入れられずにいたが、ガンドはそれを指摘した。

 

「そういう風に真面目に、気負いすぎるところだ……。昔の俺に、そっくりだった。最初の内は戦友を失って、何度もショックに陥っていた……。だけど、全部を受け入れられはしない。全部を1つ1つ受け入れていたら……守れるものも守れなくなってしまう……怒りも同じだ。いちいち怒っていたら、キリがない」

 

 ガンドの言葉に、元はただただ聞くことしか出来なかった。最後の言葉をいちいち質問してしまえば、言いたいことを言う前に消えてしまいそうだったから。ガンドはそのまま続ける。

 

「あの白いガンダム……ディーナ・リントヴルンは、お前を狙っている……だが、怒りに飲み込まれるな……っ。冷静さを失えば……奴には、勝てない……っ!」

 

「貴方っ!?」

 

 ガンドの苦悶の反応に、クリエが思わず声を大にして呼びかける。そんな彼女を彼は笑みを作って安心させると、消え入りそうな声で全員に語りかけるように呟いていく。

 

「残念だが、そろそろ限界みたいだ……。心配なことはたくさんあるが……それは今を生きる者達に任せよう……。願うなら、グランツ司令……いや、義父さんとフォーンと一緒に見た、終誕の日を……もう一度…………見たかっ…………た………………」

 

 言葉が途切れると同時に、近くにあった機器からブザー音がなる。同時に待機していた医師と看護師がガンドの周りへと向かい、彼の体に付けられていたチューブを外していく。ガンドの手を握っていたクリエはその手を掴んだまま号泣する。

 

「貴方……貴方ぁぁぁ!!」

 

「クリエ……!」

 

 泣き崩れるクリエをフォーンがガンドの遺体から剥しつつ、その肩を抱く。速やかに行われていく片付け。元はただそれを見ているだけだった。

 その時だった。部屋の空気が変わったのは。

 

「うぐ…………がぁっ!!」

 

「ちょ、ちょっとジャンヌ!?」

 

「お嬢様……?どうなされたんです!?」

 

 ジャンヌのうめき声と倒れる音に真っ先に反応するノーヴェとネア。2人に続き、クリエやフォーン、リリーにグランツ、更にはガンドの方に気が向いていた医師の方も続々と彼女の下に集まる。

 ただ1人、元はそこに向かわなかった。失意の中でジャンヌの下にすら行くことが叶わなかった。主の危機であるにも関わらず。

 

 

 

 

「お嬢様!何が……」

 

 必死に首元を抑えるジャンヌをネアが介抱しようとする。だがジャンヌは首元を必死に抑えて悶え苦しむ。その様子は今までまったく彼女の事情について知らなかったアレクにはさっぱりだった。持病などだろうかと考えていたところで、何かに気づいたクリエが涙を拭くと、血相を変えて彼女を傍に抱き寄せる。抱き寄せるとクリエは娘の首元に当てていた手をどかし、その理由に気づいた。

 

「そんな……駄目よ、ジャンヌ!詩巫女になることを諦めないで!!生きることを諦めないでっ!!」

 

「何っ?まさか……!」

 

「お嬢!」

 

 クリエの言葉でグランツもその事態に気づく。フォーンも察知して彼女に声を掛ける。その理由に未だ気づけないアレクやリリー、グリーフィア達。多くの者が事態を理解できずにいる中、クリエにジャンヌの首筋を見せてもらったグランツがそれを口にする。

 

「……詩竜の呪印が……拡大し始めている……」

 

「なっ……!?」

 

「詩竜の呪印……まさか、ファーフニル家の呪いですか!?」

 

「嘘……クリエさんが言ってた、発動したら死ぬっていう!?」

 

 詩竜の呪印。詩巫女になることを強制させられる最悪の呪い。なれなければ死をもたらす禁忌の呪いが、発動してしまっていたのだ。それを知る者達の表情に焦りが浮かぶ。

 もしそれが本当なら、ジャンヌ・ファーフニルは死んでしまう。しかし一体どれだけの時間が残されているのか。解決する方法はないのか。それらが彼らの間に渦巻いた。

 

「詩竜の呪印……母さんから聞いたことがあるわ。どうにか出来ないんです?」

 

「グランツ司令……」

 

「……残念ながら、どうにか出来ていればこうはならん。これまでも呪いを受けて来た者達は、皆死ぬ前に誓いの共鳴の成否を確認してその役目を終えてきたのだ……」

 

「私の時も必死に共鳴が出来るレベルになれるようにしてた……諦めたらもう終わりだったから……。でも、だからってこんな……」

 

 今までに前例がなかった言える状況。続く悲劇に一同に暗い影を落とす。病院関係者達も下手に触れない方がいいと、ガンドの遺体の方を優先して処理していく。

 何かないか。アレクも考えようとしたところで気づいた。周りのどこにもハジメがいないことに。ジャンヌに何かあればすぐに駆け寄るはずの彼が、いくら怪我をしているとはいえ今なおその近くにいなかったのだ。

 直後に後方から音が響く。アレクが反射的に振り向くと、そこに探し求める人物、クロワ・ハジメが部屋から出て行こうとするのが見える。

 

「アイツ……どこへ……!」

 

 ジャンヌに目もくれず去ろうとする、あまりにも彼らしくない行動に怒りが沸いたアレクはすぐに彼の後を追う。扉を出たところで、壁に手を当てて行こうとするハジメを呼び止める。

 

「ハジメ!どこ行くんだよ!ジャンヌ・ファーフニルが大変なことになっているんだぞ……!」

 

 通路にアレクの声が響く。その声を聞いたためか遅れて病室のドアをくぐってグリューネもその現場に遭遇する。

 すると顔を半分だけこちらに向けたハジメは、気だるげな声と共に言い放つ。

 

「分かってるさ……そんなこと。けど、あの白いガンダムを殺さないと、何も変わらないじゃないか……」

 

「なっ……!?お前……」

 

「……ハジメさん、貴方本当に分かってる?あれにはディーナが……ノーヴェの妹が装依しているのよ?レイアだって人質になっている。あれを今撃墜したら、誰も救えないのよ!?」

 

 ハジメの口から出た、殺すという発言。ハジメの言葉から湧き出る殺意。それがアレクとグリューネに向けられていた。あまりにも今までのハジメと異なる口調も合わさって、上官であるアレクすらも気圧されてしまう。先にグリューネがその言葉が意味する事実をハジメへとぶつける。

 しかし、ハジメは冷めた視線のまま、考えを変えない。むしろ予想を上回る返しを口にした。

 

「分かっているよ。だけど、あれは敵だ。戦えなきゃ、犠牲は出る。殺す気で戦わないと、戦えないと、また誰かが死ぬ。だったら、俺は……」

 

 そして2人に対し、病院の通路の中で告げた。

 

 

 

 

お嬢様(ジャンヌ)に恨まれてでも、あのガンダムを絶対に殺す……!」

 

 

 

 

 護れなかったことへの怒りと、救えなかったことに対する悲しみが、憎しみすらも愛へと変える。それは復讐と言う名の轟火へと青年を浸していくのであった。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。味方サイドの名有り人物初の戦死という(´・ω・`)

レイ「ガンドさん……敬礼っ!」

ジャンヌ「彼は家族を護って……。けど、残された方もかなり不安定と言いますか……元さんとジャンヌさんがやばい方向に行っている気がします」

前作では主人公が復讐に囚われるっていう展開はなかったからね。でもストーリー進んでたらその内出てたんだよね。それでも元君がやばいのは確定的に明らかというわけでして(゚Д゚;)ジャンヌも大分不安定なのが詩竜の刻印の効果からも明らかだね。

ジャンヌ「復讐に囚われるガンダムパイロットっていました?」

一時的なのも含めると多いかもだけど、有名なのはやっぱりシン・アスカだよね。キラが嫌いってわけではないけど、それでもSEEDDestinyの主人公はシン君で行って欲しかったっていうのはある(´・ω・`)ステラをを殺した!止めようとしたのに!後敵側で人類という壮大な対象相手に復讐ならクルーゼさんとかね。

レイ「けどだからって元君が復讐していいってことじゃないよね!?」

それを止めなくちゃね(゚∀゚)

ジャンヌ「止める真剣さが(顔に)ないです」

レイ「止めるのにもう1人殺すなんてことないようにね?」

大丈夫、新たには殺さないよ(^ω^)さて今回はここまで。次回も

レイ「よろしくね!……って新たに……?」


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EPISODE41 別離、復讐、回想3

どうも、皆様。3連休終わってしまいましたね。私は3連休最後の日に名古屋の方にバトスピの公式イベント「バトラーズカップ」なる大会に友人と行ったのですが、最初は「やったるでぇ!」って思っていたにも関わらず、参加人数にビビッて当日枠をパスしました、藤和木 士です(´・ω・`)64人近くいるってどういうことじゃ……。

ネイ「アシスタントのネイです。……臆したわけですね」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよぉ♪チキン野郎ねぇ、作者さん♪」

(´・ω・`)最近復帰した友人はともかく、私はこれまで界放祭参加、しかも去年はCSの方にも出たのにこの始末だよ。チキン野郎に異存はない_(:3 」∠)_もうツイッターの後ろの方にチキン野郎とでもつけようかしら……
さて、そんなことは置いといて。EPISODE41、投稿です。

グリーフィア「んー……と?たしか元さん大分不安定な状況だったかしらね」

ネイ「そうだね。ジャンヌさんに恨まれてでも白いガンダム……ヴァイスインフィニットを撃墜するって言ってたから。今回はその後ですか?」

そうだね。まぁ前回から3日位飛んで7月に入っているけどね。あ、ちなみに最近執筆原稿として使っているワードの一番上にはサブタイトルに加えて日数も書き始めてます。いつかわかんなくなるんだよね(;・∀・)

グリーフィア「まぁ。それは作者が間違ってその部分もコピー&ペーストしてくれること期待ね♪」

変な期待するんじゃねぇ( ゚Д゚)それ今までのミスとかも含めて結構怖いんだぞ(゚Д゚;)

ネイ「あ、あはは……それじゃあ本編へ……」


 

 

 悲劇の連続が起こったあの夜から3日が過ぎた。季節は夏の盛りが始まる7月へと暦を進める。それは必然的に詩竜双極祭までの時間が短くなったということ。参加者の一部が巻き込まれ、当事者となった白のガンダム襲撃事件は学校にも震撼を与えていた。中央広場は半壊しその戦闘の傷跡を各箇所に残し、生徒達に知らしめていた。幸いにも当時学校に残っていたのは当事者を除けば職員室にいて異常を警察へと伝えた教師陣と、校門付近にいた下校前の中等部、高等部の生徒数名で無関係な人間に被害が及ばなかったのは幸運と言える。

 しかし、関係者への傷跡は深い物だった。ドラグディア軍十数名が戦死、学校生徒の負傷、犯人であるディーナ・リントヴルンの逃走、レイア・スターライトの行方……。ひと時の平和が戻ったとはいえ、注意深くならなければならなかった。

 夫を失ったクリエは続いた次女への災難から来るショックで体調を崩していた。にも関わらず、彼女は当主不在の状況で混乱するファーフニル家をまとめ上げていた。負傷していたグリューネやネアも学業に復帰し、詩竜双極祭の練習と並行して母ノルンと共にクリエを手助けしていた。傷を押して、各自出来ることをやっていた。

 しかし、その傷から復帰できていない者もいた。ノーヴェは学校には来られているものの、かけがえのない双子の妹がこれほどの事態を起こしてしまったことで詩竜双極祭への参加を辞退しかけた。幸いそれは同じく事件に巻き込まれたグリューネからの叱咤もあって回避された。だが、今どうしようもない状態の人物が2人、いた。

 ジャンヌ・ファーフニル、そして黒和元である。ジャンヌは怪我と精神的ショック、そして詩竜の呪印による衰弱で病室にこもってしまっていた。一番白のガンダム……ヴァイスインフィニットに痛めつけられたのは彼女だ。そこに続く自身の関係者の喪失、そして今度は自分が……。元が直前に起こした行動すら霞む悲劇の連続は、少女を追い詰めるには十分すぎた。それでも自殺することなく、かなりの乱れはあれど精神崩壊一歩手前の精神不安定状態で踏みとどまれたのは、まだ不幸中の幸いであった。問題なのは、元の方だった。

 彼は重度の怪我でありながらも次の日から学校へと通学していた。しかし、彼の立ち振る舞いは違った。一言言うなら、異常であった。授業以外の時間は全て戦闘教本を読み込んでいた。昼食も友人であるレヴやリッド、それにローレインすら挟まない。1人で校舎の静かなところで食事と教本の叩き込みをしていた。学校が終わると一直線にフリードリヒ地区の基地まで全力疾走、着き次第シュミレーションポッドで訓練を行う。エネミーレベルはMax、更に他の隊のエースパイロット相手に模擬戦闘を行うというあまりにハードすぎる訓練をこの2日間続けていた。

 その行動は悪魔に取り付かれたか、それとも現実問題への逃避か。しかし彼はその奇行に対し問いかける者達に、こう答えた。

 

 

 

 

「戦わなければ、護れない」と―――――――。

 

 

 

 

 そして幸か不幸か。レイア・スターライトを誘拐し、ファーフニル隊を壊滅させたディーナ・リントヴルンから既に次の出現を予告されていた。

 7月7日、その日詩竜双極祭の場で黒のガンダムを破壊すると、宣言したのだ。

 

 

 

 その日の早朝。元は目覚ましの音と共に起床する。日付は7月の4日目、土曜日である。土曜日なので学校はないものの、元は朝早くから起きる理由があった。

 ヴァイスインフィニットガンダムに負けた理由……機体の装備もあったが一番の理由は技術の格差だ。今のままでは、例えガンダムが強化されようとも負けてしまう。負ければ今度は誰が犠牲になるのか。元は絶対に負けない為に出来る限りの訓練を己に課した。今日も朝から基地へと向かい、シュミレーションポッドと生身での訓練を行う予定なのである。

 使用人達が朝の食事を用意する厨房を尻目に、玄関へと向かう元。だが元を呼び止める声が響いた。

 

「ハジメ、待て。どこへ行く」

 

 声の主は元のファーフニル家使用人としての上司たる男、フォーン・フリードだった。しかし、彼の後ろにはファーフニル家の仮の当主としてまとめるクリエ・ファーフニルと、彼女を支えるネア・ラインがいた。彼女達の表情にはどことなく曇りがあるように見える。

 表情の理由は分からない。だがその曇りが心配を意味するものだと気づいた元は、行き先だけを告げて玄関へと向かおうとした。

 

「基地です。朝食はいらないので……」

 

「待てと言った」

 

 だがフォーンは玄関の方へ向かおうとする元を、自身の方へと向き直らせる。是が非でも元を抑えようとする動きに、元は遺憾の意を示す。

 

「なんですか……用件は言って……」

 

「そうじゃないのよ……ハジメ君。あの人が言っていたのは、そんな事じゃないの」

 

 反論する元に、哀しそうに諭すクリエ。クリエはそのまま元へとガンドの言葉の意味を綴る。

 

「私の夫だって言っていたじゃない……怒りに呑まれてはいけない、冷静になれって。今の貴方は復讐に囚われているわ。お願いだから、他の事にももっと気を配って……」

 

 クリエの言葉を受ける。ガンドは確かにそう言っていた。だが、元には通さなければならないものがあった。だから元はクリエに対し視線を合わせ、譲れないものを語った。

 

「戦わなかったら、また人が死ぬ」

 

「それは……!」

 

「もう失うのなんて、嫌なんです。もう俺の前で、誰かが死んでいくのなんて……。失礼します」

 

「は、ハジメさん!」

 

 ネアの制止も振り切って元はその場を後にし、外へと出ていく。外へ出た元は早速一走りを行おうとしたところで、身体がふらつく。夏の日差しが彼の体に負担を掛ける。一度座り込むも再び立ち上がった元は、勢いを戻して基地へと向かっていった。

 

 

 

 

「…………止められなかったわね……あぁ……」

 

 ハジメが去ったファーフニル邸の廊下で、止めようとしていたクリエが重いため息を漏らす。弱り切った様子で壁に体をもたれさせる。あまりいい光景でもないので、フォーンはすぐさま代案を提案する。

 

「奥様、疲れていらっしゃるなら席に座られては?そろそろ朝食の準備も出来るころですし」

 

「うう……ハジメ君がいなくちゃ、朝食の場もネアちゃんしかいないわ……寂しいわぁ……超ショック」

 

「お、奥様……」

 

 ふざけたような言い回しに、ネアが反応に困っている。フォーンも敢えて無視したが、それでも最初の頃よりそんなことを言えるようになっているのでまだいい方だ。とはいえ、その言葉は彼女にとって重大な問題でもある。

 夫は死に、次女は未だ病床、更にその次女の使用人は暴走……。今のファーフニル家は長女と三女が普段からいないこともあって、活気が失われていた。使用人の間でもこれから先の事を考えて身の振り方が交わされているほどだ。どうにかしてハジメだけでも健在であってほしかったというのが、使用人の長であるフォーンの声だった。

 しかし今は居る者で何とかせねば。フォーンはクリエのジョークに真面目に乗ることにした。

 

「話し相手くらいなら、私も同席しますよ」

 

「あらフォーン……何?20年前の続きを始めるつもり?」

 

「……なんのことやら」

 

 クリエからの問いかけに、フォーンはそのように返して見せる。確かに自分も、クリエを妻とする機会に巡り合った者の1人だ。しかしフォーンは勝負に負けた。まだそれほどメジャーでなかったプロト・マキナ・ブレイカーを使って、射撃戦を仕掛けたフォーンに勝ちをもぎ取ったガンドとの試合は現在のドラグディア軍内でも有名な話だ。

 しかしそのガンドはもういない。加えてフォーンもその時以来自分には縁がないと諦めて彼の下に付いた。彼女のいる家を護れることを誇りとして、今日まで勤めている。可能性としてはなくはないのだろう。しかしそんな状況になろうとも、フォーンにはその気は毛頭なかった。それは、意地とも呼べる信念だった。あの時負けた自身にその資格はないと思っていた。今のフォーンとガンドならどうかは分からない。しかしあの場で、あの決闘形式の戦闘で負けた時点で、彼に挑む権利など自分にないと悟っていたのだ。

 

(あの時負けた時点で、俺の道は決まった。例えあいつが死のうとも、俺は今の執事の立場で家を護り続ける……。それが奴との約束。あの時も……)

 

 病院でのことが思い起こされる。あの時フォーンは一足先にガンドの下へと訪れていた。そこで彼に謝罪と共に2つの事を言われた。1つは元とジャンヌの事、そしてもう1つは自身に対して。死んだときには当主としてクリエを支えて欲しいと頼まれた。だがフォーンはそれを真っ先に断った。クリエの夫であり、その代の当主は誰が認めようとガンドであると。そんな事を言いたいのなら今すぐ俺が殺してやると言ってやった。そんなフォーンの言葉にガンドは笑った。力のやや抜けた、しかし元気があれば笑い飛ばすという表現が似合う笑い。だがそれを聞いてガンドは穏やかな表情で「ありがとう」と言った。

 彼の勝利に、誓いに掛けてフォーンは今の立場でいることを決めたのだ。だからクリエがどう言おうともフォーンはそれを曲げはしないのだ。一方フォーンに誘いを断られたクリエは残念そうにしながらも、同席を受けようとする。

 

「あら……残念。でも一緒に食事をするっていうのも今は嬉しい♪じゃあ一緒に……」

 

「すみません、でしたら私もお願いしてよろしいですか?」

 

 そう横から願い出たのは、かつて元を手当てしたこともある庭師の男性であった。唐突とはいえ、そんな申し出にクリエは同じく了承する。

 

「あらあら~、庭師のダエットさんじゃない。もう朝のお仕事終わり?だったら一緒に食べましょう」

 

「えぇ、まぁ。それに先程のやり取りで気になったことがありましてね……」

 

「え……さっきのって……ハジメさんが?」

 

 ハジメの事に触れるダエットにネアが首を傾げた。フォーンも気付いていないことがあることに驚きを隠せない。先程のやり取りのどこかに、彼が気になることがあったというのだ。

 どのことか悩む2人に、庭師はひとまずはと声を掛ける。

 

「とりあえずは食堂で。料理の前にお話ししましょう、私の仮定を」

 

「?」

 

 気になりつつもまずは一同食堂へと向かった。

 

 

 

 

「何?あいつが過去に何かあった?」

 

「はい。端的に申せば、彼は過去に誰かを喪っているのではと……」

 

 ダエットが語り出した予測に、フォーンは聞き返す。食堂に座って料理を待つ間、彼の話を聞くことになったフォーン達。そんな彼らが最初に聞かされたのは、ハジメが誰かの死を見届けたということだった。

 最初はあり得そうな話に、フォーンはバカバカしいとその考えを否定する。

 

「あり得ん。誰かの死など、このドラグディアでも民間人なら多々あることだ。それにアイツは仮にも軍人なんだぞ。人の死に敏感なやつに、人が殺せるか!」

 

 フォーンの考えは一般的な考えなら間違ってはいない。死ぬということは単純に殺された以外にも病気、寿命での死も意味する。それを今何人も殺すことになる戦争に足を突っこんでいるハジメに限って、そのようなことで一々気にするとはあり得ないと思っていた。

 短絡的とも取られない、しかし順当とも言える思考をするフォーン。だがダエットはフォーンにも分かりやすいように、自身の考えを1つ1つ説明していく。

 

「確かに、彼は今何度かの戦闘を経験しています。ただ、今回注目したいのは、彼の先程の言葉」

 

「言葉……?」

 

「さっきのやり取りに、何かあったかしら……。ハジメ君はさっき「もう誰も失いたくない、死なせたくない」みたいなこと言っていたけれど……」

 

「はい。先程彼は確かにそう言いました。これまでの戦いで、彼は近しい人物を、戦闘で失いましたでしょうか?」

 

「それは……なかったと思うが……」

 

 やり取りが交わされる。一体何を言いたいのかと相手となるこちらはやや懐疑的になる。だが庭師はその懐疑的な考えを、的確に飛ばした。

 

「ではなぜ彼は、もう死ぬのを見たくないと言ったのでしょうか?」

 

「それは……」

 

「……なるほど、確かに私達は今までこの世界に来た彼の事は見て来た。でも……」

 

「この世界に来る前の……ハジメさんの世界でのハジメさんは、過去のハジメさんは全く知りません」

 

 そう、ハジメの過去をこの世界の人間は一切知らなかった。ハジメの世界の事や、年齢などの必要な基本情報は知っているものの、この世界であまり必要のなかったハジメの情報を聞いた者はこの場に一切いなかった。下手をするとジャンヌも話を聞いていないのかもしれない。

 気づいたところでダエットも更に仮定を進める。

 

「何があったかは分かりませんが、彼は過去に今回の時ほどの大きな衝撃を受ける出来事を経験した可能性が高いと思われます。それも、戦争に関係ないような、しかし今回の事に匹敵するほどの……」

 

「……しかし、あり得るのか?奴は救世主ガンダムに選ばれるほどの……」

 

「ねぇ、フォーン君。それがいけないんじゃ……」

 

 ガンダムの装依者であることを引き合いに、否定しようとするのをクリエに止められる。止められたことにフォーンは不服さを見せるが、クリエはそのまま事実を反論で述べる。

 

「彼は確かにガンダムに選ばれた。でも、彼は普通の、ドラゴンのいない世界の住人なのよ?救世主っていう私達の認識も、彼にとっては救世主とされているMSを勝手に持たされた人だから……」

 

「そうか……いや、そうですね。もしかすると、アイツは救世主としてのプレッシャーに押し込まれて……」

 

「でしょうな。私は彼の活躍を見たわけではありませんが、ご当主も常々彼の凄さに感服しておられると共に不安であると申されておりました。ご当主はそれを見抜いておられたのかもしれません」

 

 思えば、初めて会った時からクロワ・ハジメという人物は、救世主などという人物には程遠かった。記憶を失っているとはいえ、突出したものはない。強いて言うなら危険に対しても必死に飛び込んでいく姿勢は、普通の人間には出来ないことだろう。だがそれを除いても前回の決闘。あの裏側を見ていたフォーンは、寝る前にガンドから戦術指南を受けていた場面を見ていた。努力とあの場にいた者達の尽力があればこその勝利だった。

 あれも救世主という重荷から来る、本来の彼と違ったものだったのだとしたら……。それは自分達が、知らずの内に期待というプレッシャーを押し付けて行動を制限させていたことに他ならない。もしかすると救世主の誕生に、自分達は浮かれていたのかもしれない。反省の言葉が頭に思い浮かぶ。

 しかし、だからと今の彼を止めないわけにはいかない。むしろ止めなくてはならないだろう。ネアもそれを指摘する。

 

「でしたら今すぐ止めないと!」

 

「あぁ、そうだな。当主」

 

 ハジメの様子が気がかりなネアとフォーンは、クリエに追走を打診した。が、クリエは難しい顔をしてそれを断る。

 

「いいえ、それよりも前に私達にはやらなくちゃいけないことがあるわ」

 

「えっ」

 

「それは一体……?」

 

 やらなくてはいけないことという言葉に、2人は動揺する。ハジメを止めるよりも前にすべきこととは一体何なのか、心当たりが全くなかったからだ。クリエの言葉に固唾を飲んで見守る2人。そんな2人にクリエは満を持して言った。

 

 

 

 

「朝食を頂かなくちゃ、ね♪」

 

『………………』

 

「ハッハッハ、そうですね。元々そのためにここに来たのですから」

 

 フォーン達の気が彼女の自由奔放さに呆れて下がってしまう。呑気なクリエに、ダエットが笑って肯定する。その後2人はクリエがご飯を食べ終えるまで、ネアも朝食を取り、そんな2人をフォーンが苛立ちを抑えつつ待つのであった。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。次回の投稿は2話連続になると思われます(´-ω-`)

グリーフィア「うふふっ♪クリエさんはブレないわねぇ」

ネイ「最後で色々と台無しですけどね……でも庭師さんがまさかの再登場とは……」

何かあったらまた使えるようにしていたからね。名前も今回に合わせて作ったくらいだし(´Д`)

ネイ「あれ、ひょっとして名前すらないモブの予定だったんですか?(汗)」

そうっす(´-ω-`)

グリーフィア「でも前に元君の先輩っぽい使用人の人もいたから、格上げと考えると面白いわね。先輩使用人が名前を与えられるのはいつになるのかしら~」

ネイ「えぇ……」

さて、今回はここまでです。次回も……

グリーフィア「よろしくっ!次回はいよいよ元君の過去が、明らかになる~?」


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EPISODE42 別離、復讐、回想4

どうも、皆様。選挙の事でも話そうかなと思っていたら、なんか水泳の大会の方で幼稚園の時の1つ上の人と同じ名前の人が出ていると親に言われ、マジか(゚Д゚;)と思いそちら主軸で今話しました藤和木 士です(´・ω・`)

ジャンヌ「いや、なんでですか……アシスタントのジャンヌです」

レイ「アシスタントのレイだよっ!そう言えば今日は丁度ソードアイズの放送日にジャンヌちゃんモチーフのジャッジメント・ドラゴニスの劇中誕生の日なんだよね」

公式のエピソード欄では火山の鳴動止めたって書いてあって、火山からジャッジメントのカード作っていたから多分今日なんだよね。けどまさか今日ジャッジメント入れたデッキでショップバトル優勝できるとは……やっぱデュークモンぶっ壊れじゃないか……(;´∀`)
さて今回はEPISODE42と43の公開です。

レイ「元君の過去に何かがあったって言われてから後の話だね」

ジャンヌ「これほどまでに元さんを訓練に打ち込ませる過去……確か幼馴染が関係していたんでしたっけ」

うん、その辺の描写ちょっと悩んでネプ小説書いているときに入ったグループの人に相談してこのくらいなら大丈夫かってなったくらいだからね。最初のEPISODE42ではそれを明らかにしていくよ。
それでは本編へ!


 

 夏の盛りが近づく街。少し前の聖トゥインクル学園での事件で多少セント・ニーベリュングの街には、警備兵など配置されていていたものの平穏であった。

 だが街の人々は知らない。また学園が戦場となることを。そして元はそんな街を駆け抜けていく。日差しが強く差し込む中、全力疾走で基地へと向かっていた。先程の足止めで少しばかり時間を食ってしまった。1秒も時間を無駄にできない。後れを取り戻すべくさらに走るスピードを上げようとする元。しかし、突然視界が揺らぐ。

 

「っっ!?」

 

 平衡感覚を失い、まともに受け身を取れず地面へと倒れ込む。幸い頭は打たなかったものの、まだ意識が遠のく感覚に襲われ、まともに立てない。周囲の状況も何人かがこちらを見ているのは分かるが、話し声も風貌も判別しづらい。というより思考も鈍って今どこにいるのかも分からなくなっていく。

 意識が遠くなっていき、瞼が落ちていく。

 

(ぁ…………もう、無理……)

 

 自分の願いと反して、徐々に体の感覚が失われていく。そして最後に元は誰かに体を起こされたのを最後に、完全に意識を失ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 眠りに落ちた世界の中で、最初に元が感じたのは冷たさだった。記憶が混濁していたため、どういうことか分からなかった。今自分がどういう状況なのか判断する為に、その瞼を開く。

 徐々に開けていく視界。そこで目にしたものを見て、元はその場所を理解する。白い壁と天井。それに自身が寝かされている医療用ベッド。加えて横の席に並んだ3日前と同じ見覚えのある顔……だが、その中に本来組み合わせとはあり得ない顔も混ざっていた。

皆元が目を覚ましたのを見て、険しい顔をこちらに向けてくる。なぜ彼らが一堂に会しているのかはさっぱりだったが、そのような視線を向けられてくる理由はなんとなく心当たりがあった。しかし、彼らが元に要求してくることをそう簡単に飲む気はなかった。ドラグディア軍総司令官らとファーフニル家当主達、そしてなぜかいた元のクラスメイト兄妹2人をどうやって撒こうかと元は思考を巡らせていった。

 

 

 

 

 まさか、こんなことに巻き込まれるなんて……。レヴ・リヴァイはそう心の中で思っていた。たまたまリッドの買い物に付き合わされたと思っていたら、突然視線の先で人が倒れ込んだ。遠目から見てもかなりの勢いでこけたように見えた上、直ぐ起きるわけではなく立ち上がれないように見えたためすぐに2人でその人物に駆け寄った。

 だが、駆け寄って起こした顔を見てぎょっとする。なぜならその人物はレヴもよく知る人物、クラスメイトのクロワ・ハジメだったのである。ここ最近は何かに憑りつかれたように教本らしいものを読み、昼食も共に取らなくなっていたため心配していたのだが、まさか休日に目の前で倒れ込むという事態に抱いていた不安が的中することとなろうとは、思いもよらぬ事態に2人道端でパニックに陥ってしまった。

 しかしそこに偶然通ったローレインが加わったことでその流れは一転、彼女の普段の言動からはとても思えない迅速な処置と対応で運ばれることになった。2人もこれには一安心……だったが何を思ったのかローレインに共に来るように言われ、到着した救急車で運ばれていった先はまさかの軍病院。しかも部屋に入ってくるドラグディア軍の軍服を着た老若男女、と思いきや貴婦人や執事、おまけに自分達も知る学園の生徒会長とその妹……。あまりにも濃すぎる面子にリヴァイ兄妹は反応に追いつけない。やがてそれが元の関係者であることと、今起こっている事を深刻に見ていることを知った。

 事実は小説よりも奇なりという顔合わせから聞かされた用件。だがレヴ達はそれを素直に飲み込むことが出来た。この数日の元の様子はおかしかった。それに学校の中央広場が立ち入り禁止になった時から何かあると思っていた彼らにとっては、納得がいく話だった。

 そこでようやく元が目を覚ました。一体なぜ親しい友人である彼があそこまでおかしくなってしまったのか、聞くチャンスである。ところが目を覚ました元は怪訝な表情をして、その場から逃げ出そうとする。

 

「って、おい。早速逃げるのかよ!?」

 

「ハジメ軍曹、あまりそういう態度を取らない方が良いぞ?」

 

 ハジメの上官に当たる男女が共にその行く手を遮る。2人の現役軍人を相手に、今のハジメでは逃げ切るのは無理のように思える。2人にけん制された状態で更に1人の老人……もとい最高司令官のグランツが、ハジメに言葉を投げかける。

 

「やぁ、ハジメ君。大分無理をしているようだね」

 

「……それほどでもないですよ。今のままじゃ、アイツには勝てない」

 

「ハジメ君……」

 

 ハジメを気に掛ける発言も、今は届かない。ガンダムの整備担当だというヴェールさんも嘆息を漏らす。この状況は中々に難しいと思える。レヴとリッドはある程度聞いたとはいえ、何か言えるかと思えばそう言えるものではない。何を言えばいいか迷う2人を尻目に、ハジメに対し直球の質問を投げかけたのはファーフニル家の従者であるネア・ラインだった。

 

「ハジメさん、ガンダムの装依者だからってこんな無茶しないでください!また失うのが怖いからって、こんな……」

 

「失う……って?」

 

「失礼。どういうことだ、ネア・ライン?」

 

 ネアの発言に疑問が浮かぶ。また、とは一体どういうことか。同じく初耳であったアレク少佐がネアへ事情の説明を要求する。

 事情の説明はネアを含めた、ファーフニル家の面々も話に加わる形で行われる。

 

「今朝ハジメ君言ってたのよ。もう誰も、自分の前で誰かが死んでいくのを見たくないって」

 

「これまでの間に、ハジメの知り合いが死んだのはファーフニル家当主のガンドのみ。にも関わらずハジメは他にも誰かが死んだような言い方をした。つまり……」

 

「ハジメさんは前にも親しい人を失ったと思うんです。今回のような戦争じゃなくても、それに匹敵するくらい、ショックな事件で……」

 

「え、あ……そう、なのか?」

 

「ちょっとレヴ……」

 

 話を聞いても本当にそうなのかと疑ってしまうレヴ。あまりにも情けない反応にリッドから雑にツッコミを入れられる。反対に同じく話を聞いていたグランツ司令やアレク達は、3人の話に理解の頷きで返す。

 

「過去に人を……」

 

「確かにその線はあるかもしれないね。現に私達はハジメ軍曹の過去を聞いた覚えがない」

 

「で、どうなんだ、ハジメ軍曹」

 

 アレクがハジメに対し、事実なのかと尋ねる。今の状況で話してくれるかどうか、微妙なところではある。これまで聞かれなかったから話さなかったのか、それとも話したくなかったから敢えて避けていたのかにもよるが、内容的に前向きに話したがる内容ではないのは明らかだ。

 ところがハジメにも思う所があったのか、話の内容に関して虚を突かれたような反応からしばしの沈黙の後それを肯定する。

 

「………………そうですね。よくもまぁそこに気づくとは」

 

 予想は的中した。ハジメは確かに経験していたのだ。しかしその表情には怒りが見え隠れしている。強くなった目つきにリッドが怯えてレヴの袖を掴んでくる。

 それを聞いたグランツ司令は慎重にハジメに対し、その時の状況説明を請願する。

 

「よかったら、話してくれないか。一体君に、何があったのか……」

 

「………………」

 

 ハジメの口が堅く閉ざされる。同時にその眼光が鋭く返していた。今までの彼とは違う表情に、只ならぬものをレヴとリッドに感じさせる。話すことは出来そうにないかと思われた。

 しかし、彼から発せられたのは、意外な回答だった。

 

「いいでしょう。ただし条件があります」

 

「条件?」

 

「はい。ここで話すには色々と不都合です。屋上で話します。もちろん、その間は拘束でも何でもされましょう」

 

 条件付きでの全てを語るというハジメの提案。条件的にはこちらが有利なものであり、レヴだったなら素直に飲み込む内容だった。他の何人かも意外な条件に呆気に取られるも、アレクなどの警戒心が強い者達は反対に警戒を強めていた。

 

「意外ね。裏がある気がしないでもないけれど」

 

「そうだね、グリューネ。あまりにも良すぎて、油断させたところで逃げ出す寸法か?」

 

「やれやれ、そんな人たちの為にわざわざ捕まろうと言っているのにこれですか。信頼無かったんですね」

 

 警戒を強める者達に対し、呆れを軽く口にするハジメ。自嘲のようにも聞こえる。そんな彼らの不和にグランツが乏しめ、最終的にまとめる。

 

「アレク、グリューネ君。少しは信用しようではないか。ハジメ君もそう自虐的になるんじゃない。いいね?」

 

 グランツの言葉に、お互いに一瞥してから頷いて見せる。ハジメの両手を手錠で拘束して、病院の人にも確認を取ってから、一同は屋上へと向かった。

 

 

 

 

 屋上の扉が開かれると、熱気が一気に肌に伝わってくる。夏服とはいえ、軍服のシャツには既に汗が染みこんでいた。こんな暑さの中でなぜハジメが屋上を指定したのか。有事の事も考えて、病院側には他の患者等の屋上への立ち入りを制限してもらっている。何かあっても、自分達がすぐに対処できる。

 屋上へ着いたところで、ハジメの拘束が外される。といっても、手錠をした程度で特に体の方に不自由がなかったわけではない。足だけでも逃げようと思えば走って逃げられる。ただハジメがそうしようとしなかったのは、足だけ動いてもどうにもならないと判断したのか、それとも本当に話す気しかなかったのか。拘束を解かれたハジメは数歩前に出て立ち止まる。空を仰ぐようにして見上げる姿は、どこか喪失感を感じさせる。歳不相応の姿勢をして、ハジメは独り言のように語り始める。

 

「……そういえばあの時もそうだった……こんな夏の始まりの時、俺の誕生日から1か月たった頃か」

 

 ハジメの誕生日。それはこの世界でも既に1度迎えている。その時当人はあまり気乗りしていなかったが、入隊祝いと同時に祝っていた。あれがハジメと自分の指揮するケツァール隊の、いやケツァール隊の結束を高める重要なイベントとなったといえよう。

 だが、もしかするとそれはハジメにとって重い物だったのかもしれない。誕生日の事を話題にした以上、そこに現状を産む原因があったはずだから。

 ファーフニル家執事のフォーンが、問いかける。何があったのかと。

 

「……何があった?」

 

 それに対し、ハジメは返答する。

 

 

 

 

「殺されたんだよ、俺の幼馴染が。クソ腹の立つ殺され方で」

 

 

 その時背中を冷たい風が通ったような気がした。風が自然と強くなったのか、それともわざとか。ありもしないことを感じさせるほどに、先程のハジメの言葉には憎悪とも呼べるものを感じた。

 口調が変わったことにも驚きだが、それ以上に亡くなったのが幼馴染だということだった。男か女かにもよるが、それが分かれば少し増悪の根源に繋がると直感する。

 気になる性別をその名前と共にハジメはその口から紡ぐ。

 

間宮 柚羽(まみや ゆずは)。近所のアパートに住んでいた子だ。いつも姉みたいに俺の世話を見たがる、大人ぶってた子だったよ……」

 

 哀愁漂う元の言葉。女ということが分かり、その情報でアレクを含めた数名がその関係に気づく。それを分かってかハジメも自嘲する。

 

「大体は気づくだろうけど、それは本当に気づくのが遅かったよ。そう、遅すぎたんだ」

 

 遅すぎたという発言を重ねて吐く。後悔の募るその言葉は、まさにその通りの現実であることを知らしめていくのであった。

 

 

 

 

 その少女は普通の少女だった。何かに秀でているというわけではなく、年齢相応の少女だった。敢えて言うなら、とても自分の面倒を見たがる少女であったのをよく覚えている。

 小学校に入学した時も、少女は母親に連れられながらも同じく母親に連れられた元を見て、元の母親に言っていた。

 

『だいじょうぶ!はじめはわたしがめんどうをみます!』

 

 その少女、間宮柚羽の言葉に最初のうちは元も本気で張り合っていた。自分はそんなに子どもじゃないと。しかしその幼馴染はそんなことなどお構いなしに、元を弟のように扱った。母親たちも仲がいいと笑っていた。

 そんな流れは小学校の間ずっと続く。クラスが別でも休み時間になると積極的に元の下に来ていた。鬱陶しく思っていたそれは歳を取るにつれて頻度は少なくなっていったものの、ずっと続いた。しかし小学校の最後の年、変化が訪れる。

 クラブが終わった後、元は偶然にも柚羽がいじめられていた現場に遭遇する。何でも柚羽の容姿を妬んだらしく、彼女をクラスののけ者にしようとしたという。入りに行くのも億劫だったが、放置することも出来なかった。元は教室を締めに来ていた先生に事情を話し、対応してもらった。所謂チクリだ。

 当然その後元は陰でこそこそと言われる様になった。しかし、いじめから助けた帰り道。柚羽は元に質問した。

 

『ねぇ、どうして助けてくれたの?』

 

 どうして助けたのか。今度は元も巻き込まれるかもという彼女の問いに、元は顔を背けながらも言った。

 

『……今までの仕返し』

 

『えっ……』

 

『今まで、ずっと俺のこと下に見てたから。だから今度は俺が下に見たんだ。あーあ、クラスのやつにまたなんか言われる……』

 

『元……うん、ありがとう!』

 

 恥を承知で言ったそれは、2人の仲を縮めるきっかけとなった。意地を見せた結果、そうなったのである。元はそれを嫌そうにしながらもドラグディアの面々に呟く。

 

「小学生の頃からずっと付きまとってて鬱陶しいって思ってた。けど、小学6年の頃、アイツが傷ついてた時、俺は助けずにいられなかった。それが俺と柚羽が一緒にいるようになったきっかけだった」

 

 中学校も2人は一緒だった。そもそも元達の住む範囲では通学する学校の第1候補はその学校が上がるためほぼ必然的であった。2人は同じクラスとなり、よく話す仲となった。それは前の学校から続くいじめも影響していた。しかし妬みはいつの間にか、仲の良さを羨み、再び2人の間に人が集まるようになっていった。

 さらに丁度この頃、2人に新たな交友が生まれた。蒼梨深絵との出会いである。2人は美術室で1人絵を描いていた深絵にちょっかいをかける上級生に立ち向かった。恐かったものの、最終的にいつもその上級生たちを注意する教師が間に入ったことで上級生たちはちり紙のように退散していった。教師に元達も事情を話し、理解してもらった。そしていつもいじめられていることを知った柚羽は深絵に対し言った。

 

『ねぇ、私達も一緒にいていい?絵を描く間でも、他の人がいればそうそう手も出ないだろうし、何だったら一緒にお昼も食べない?』

 

『え……あ、うん……』

 

 あまりにも突飛な提案だったが、深絵もおどおどとしながらも了承した。この後知ったことだが、深絵は小学校から友達を中々作れず、初めての友達にとても喜んでいたという。それ以来元と柚羽は深絵と共に中学生活を過ごすようになった。

 それからは3人で行動することが多くなった。2人も友人達と都合を調整しながらも、深絵と一緒に居られるようにした。深絵も自然と柚羽の友人達と少しながら会話するようにもなった。柚羽の友人の中には光姫もいた。そして中学2年では3人同じクラスとなり、その輪は広がっていった。

 

「中学でもアイツは姉っぽく振る舞っていた。時々からかいもした。けどそれは誰か個人にだけじゃない。困っている人に向けて目を向けられるようになった。からかいもすごくいやらしく、的確だった。俺もいつの間にか、その輪に取り込まれてたよ」

 

「元……」

 

「だけど、理想は崩れていった。あの日、突然に」

 

 元はアレクの声を遮るように言った。そう。あの日、元の誕生日から1か月が経ったあの日、それは起こってしまった。

 

「7月の中頃、学校からの帰り道、突然柚羽は俺に言ってきたんだ。彼女の母さんが再婚したって。良かったなって俺は言った。でもアイツは悲しそうに顔を俯けて言った。『もし私が助けを呼んだら、真っ先に助けに来てくれる?』って。最初はまた何かのからかいだと思ってた。けど、その時のアイツの顔はとてもからかっているようには思えなかった」

 

 何かとても重要な、相当気を病んでいるように沈んだ表情を一瞬見せられた。半端な覚悟では到底受け止めきれない。元はそう感じた。

 言葉に詰まってしまった。何か返さなくては、と元は思った。しかし、一体何を?生半可な言葉でいいのだろうかと不安が巡る。だがその時の柚羽の悲しそうな顔に、半信半疑のまま元の口は動く。

 

「言葉に迷っていた俺は、心配させまいと『当たり前だ。俺が真っ先に行ってやる』って言った。無責任な言葉だった。でもその時、アイツはすごく喜んでいた。俺の心配なんかよそに、言ってもらえたことに感謝していた。俺の方が申し訳なくなっちまった。それから他愛無い会話の後、その日は別れたんだ。その日は変な高揚感で眠れなかった。初恋だったんだろうな、今思えば」

 

 今までも何度も感じた恥ずかしさ。しかし今回は状況が特殊だった。彼女の顔に思った以上に当てられてしまったのだろう。これまでになく沈んだ彼女の顔に、本気で心配したために。

 だからこそ、翌日の事が元の全てを変えてしまった。

 

「そんな気持ちのまま、翌日俺はアイツを迎えに行った。柄にもなく一緒に登校しようとしたんだ。けど、柚羽の住んでたアパートには人だかりが出来ていた。警察まで来ていて、騒々しいったらありゃしない。けど俺の中に確信とも呼べる不安が強まっていった。それで近所で良くしてもらっていたおばさんが教えてくれた。…………柚羽が、死んだって。再婚相手の男による性的暴行のせいで、な」

 

『っ!』

 

 一気に話を聞いていた者達の声が詰まる。あまりにも突飛すぎる話の内容で、女性陣の嫌悪感も見て取れる。だが、それは紛れもない事実だった。

 おばさんもあまりにショッキングな内容の為、元にはぼかして伝えていた。しかしそれでも元の表情からは一気に血の気が引き、野次馬を退けてアパートの方に向かおうとした。だが途中で警察に止められ、それでも行きたい一心で突き飛ばそうとした。必死に柚羽の名前も呼んだ。それで騒ぎに気づいた責任者の警察官の中年男性が事情を聞いた。柚羽の幼馴染だと言うと、警察官の中年男性は事情を察したのか現場となったアパートの脇で話を聞かせてくれた。包み隠さず事情を教えてもくれた。けれど、遺体には会わせられないと断られた。

 

「警察官の人は何か分かったのか俺の話を親身になって聞いてくれた。けど、仕事の関係上いくら幼馴染でも会わせられない。葬式まで彼女の遺体に顔を会せるのは待ってくれって言った。その分、警察官のその人は自分に出来る限りの状況を教えてくれたよ。柚羽は少し前からお母さんの紹介で連れてこられていた再婚相手の男性に、この半年性的被害を受けていたらしい。軽いものがほとんどで、柚羽もお母さんに迷惑になると思って警察には言えなかったって、日記に書いてあったらしい。でも、それがここ最近は度が過ぎ初めてて体には火傷、打ち身の跡が残っていたっていう。そしてあの日、あいつは再婚相手の男に……いいように……っ!」

 

 元はその先を言えなかった。いくらその事を話せと言われても、それをすべて明かすことなど出来なかった。それでも元の話を聞いていた者のほとんどが、その事情を察することが出来ていた。あまりにも無残な仕打ち、先程のそれは、助けだったのだと気づく。

 そして元は葬式場での事を話す。

 

「それからすぐに葬式が行われたよ。柚羽の母さんは自分のせいで娘を死なせたってふさぎ込んでて、柚羽の前のお父さんの所にいたっていうお兄さんも来てた。俺は父さんと母さん、妹と一緒に棺桶に入った柚羽の顔を見たんだ。綺麗だった。本当に、眠っているだけだと思った。けどその頬はとても冷たかった。もう届かない、彼女が伸ばしていた手を、俺は掴めなかった……!泣くしかなかった!俺のせいだ、俺が気づけなかったからだって、叫んだ!」

 

 元の声が感極まる。それだけ元にとって、強く残る後悔だったからだ。グランツやレヴ、クリエらはそんな元の声に言葉を挟みはしない。ここからが、元の決意だった。あの日からずっと、これから先後悔しないために決めた決意。元の行動指針とも呼べる、これまでの行動をも裏付ける言葉。元は口を開く。

 

 

 

 

「だから決めたんだ。俺はもう、誰も失わせないって。その手を伸ばして、離さない。救わないとまた手遅れになってしまう。今もなってしまった……だから俺は失わせたやつを、許さない!」

 

 届かなかった絶望を経験した元の決意。害する者全てを滅ぼすという確固たる意志。更に救うためにその手を伸ばして護る。それが黒和元の「歪み」なのである。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。元君の歪みは「困っている人を護りたい、救いたい。だけど失ったら絶対にそうした奴を復讐してやる」という感じです。

レイ「……藤和木が言いたいことってこと?」

うん(´・ω・`)いや、ちょっと元君の言葉でだと少しずれてしまった感が出てね……ここで補足(;・∀・)

ジャンヌ「それ思うならちゃんと収まるように調整し直しましょうよ……」

いや、でもそうなっているつもりだと思ってる(´・ω・`)けど毎回描写関係変になってないか心配になるのよね……。まぁでも反射的に周り見ずにやり返そうとしている元君はダメなわけだけど。
さてEP43では遂にそんな元君に、驚きの人物が制裁に掛かる……?

レイ「驚きの人物って……誰?」

ジャンヌ「まさか……あの人物!?」

ごめん、誰思い浮かべているのかなジャンヌさん?(´・ω・`)

ジャンヌ「主人公を居候させている実は黒幕の喫茶店のマスターさん」

そんなわけないしそもそもそんな人物いないよ(゚Д゚;)てかそれエ○ルトだろ!?

レイ「いやーわかんないよ?」

流石にそんな突拍子はない(´・ω・`)それではEP43も引き続きよろしくお願いします。


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EPISODE43 別離、復讐、回想5

どうも、皆様。前話から引き続きの方は改めまして。誕生日を2日前に迎えた藤和木 士です。

ネイ「おめでとうございます。アシスタントのネイです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよぉ。それで作者さん、誕生日いいことあった?」

(´・ω・`)まぁ、想像にお任せするよ。さて続いてEPISODE43の公開です。

グリーフィア「なんていうか……元君も大分こじらせてるわよねぇ」

ネイ「過去がああなってしまったとはいえ……どうしてそこまで……」

あ、これまだ関係してないから言ってないけどね。他にもその原因少しあるんですよ(^ω^)

ネイ「え、原因それだけじゃないんですか?」

グリーフィア「なんで、と言いたくなるけれど、別のところで取り上げたい感じかしら?」

そうだね。どっちかっていうとこれは第2部で言いたい。さて元の暴走、止めるのは誰だ!?それでは本編!


 

 ハジメの話を聞いて、ようやくその一端に触れることの出来たグランツ達。これまでの一生懸命に技術を手に入れようとしていたそれも、目の前の物事に対し全力で取り組んでいたことも、全て害する者を排除し、その手の届く範囲の物を護るためだったのだ。

 グランツはかつて元がハジメ・ナッシュであった頃の様子をガンドから聞いたことがあった。その時「まもる」事についてガンドに聞いたという。その話にはグランツも興味深いと感じていた。その話を聞いていたからこそ、元へと戻った後の決闘の時も記憶を取り戻す前の彼の行動原理として、残っているのだと思っていた。だがそれは少しだけ違ったのだ。

 元々彼にとって救えないことは、自身の存在意義に直結する。過去のトラウマがあるとはいえ、歪んだ価値観がハジメを救世主らしくさせていたのである。その歪みをハジメは気づいていない。今も彼は言う。

 

「そしてこの世界に来て、俺はガンダムという力を手に入れた。この世界で絶対的な力。俺はこの力に誓って、絶対にもう負けないと決めた!お嬢様にも、ガンダムが破壊されてでも戦争を終わらせると言った!……だけど、俺は負けた。あの白いガンダムに!絶対にもう、あいつに負けるわけには行かない。だから、俺は!」

 

「だから、無茶をしてでも強くなると……?ふざけるな!お前はその強大な力に溺れている!それだけでどうにかなる問題じゃないだろ!?」

 

「だからどうした!俺は力に溺れてでも、勝利を求めなくちゃならない。この体がどうなろうと、当主を殺したあのMSを、ディーナ・リントヴルンを!!」

 

 目の前に現れた強大な存在。ジャンヌとの話もあって、それを越えなければ戦争など終わらないという強迫観念が、間違いなくハジメの歪んだ価値観に作用していた。戦争が人の心を歪めると言うが、視線の先にいるハジメもまた、この戦争の被害者となっていたのだ。救世主と祭り上げられたガンダムの存在と、ファーフニル家の現実。戦争が生み出した現実に翻弄される様は、奇しくも若かりし頃のグランツに酷似していた。自分もかつての自分の幼馴染であり、クリエの母親でジャンヌの祖母に当たるエルダ・ファーフニルを巡っての事件。結果的にエルダは当時の護衛人であったフリード家に仕えていた軍人、亡くなったジャンヌの祖父と結ばれたが、グランツは自分こそが彼女を支えるにふさわしいと信じて疑わなかった。

 だが、グランツの父親はその時言った。お前には別の仕事があると。フリード家を継ぎ、そのうえでエルダに続くファーフニル家の者を護るという使命を受け、グランツは納得した。しかし、自分はそれをどこかで悔しく思っていた。だからこそ彼女が自殺を図った時、彼女の夫に詰め寄ってしまった。無意味だと分かっていても、助けられなかった彼女の無念を晴らしたかった。だが過ぎてしまったことだと後悔した。

 今のハジメはあの時のグランツと同じだ。かつての出来事に足を取られ、戦争が作り出した物に翻弄されてしまっている。止めなければ、彼は後悔することになってしまう。今彼は、大切なものをなくしてしまうことに気づいていない。救うべき者がいる。そんなハジメの言葉を最初に否定したのは彼の学友だった。

 

「ふざけんなよ!そんなんで誰が喜ぶっていうんだ!?」

 

「レヴ!?」

 

 たまたま倒れたハジメを助けるに至った友人は、ハジメの前に一歩出て立ち塞がる。妹が心配そうに声を上げるが、兄はハジメを見据えたままだ。

 

「ふん、お前に分かるかよ。救えなかった奴の苦しみが!」

 

「救えなかった!?今も救えるはずの人の手を、自ら手放そうとしている奴の苦しみなんか分かるか!」

 

「レヴ・リヴァイ……!」

 

 アレクが咄嗟に2人の間に入ろうとするが、レヴは手で遮って拒否する。そして言った。

 

「今もそれが分からないっていうなら、俺が分からせてやる!友人として、お前の目を覚まさせてやるよ!!」

 

「っ!このっ!」

 

 啖呵を切ったレヴはハジメへ向かって駆けだす。更に伸ばした拳がハジメの顔面に向けられる。それをハジメは左腕で逸らして受け止める。その状態から乱闘が始まる。

 急遽始まった殴り合いに、リッドやネアは慌てふためく。

 

「ちょ、レヴ!?」

 

「ふ、二人とも!?と、止めなくちゃ……」

 

 しかし他の者達は動かなかった。理由はグランツ自身が言った。

 

「いや、ここは彼に任せよう。アレク少佐、リリー准将。もし危険になったら全力で止めてやってくれ」

 

「りょ、了解」

 

「そうでしょうね。ハジメ軍曹の過去は重い。ですが、ここでそれを乗り越えなければ彼は戦士として成長できないでしょうから」

 

 グランツの言葉にアレクは躊躇いがあったが、リリーは状況を理解してくれていた。軍人と民間人、本来なら圧倒的優位は軍人であるハジメに分がある。しかし今のハジメは倒れるほどに体力を消耗している。加えてレヴの怒りには、納得できるものがあったのだ。だからこそグランツは多少騒ぎがあれども、レヴの行動に賭けた。こうなることを予想して屋上から人は払ってある。後はレヴの言葉が届くかどうか。

 救世主を操る青年と、その友人。果たして制するのはどちらか。グランツはその戦い、いや、喧嘩を見守る。

 

 

 

 

 ハジメの拳が二度頭を揺らす。体勢を崩しながらもレヴは続く三度目のフックを躱す。今まで一度も拳を交えたことのなかった2人。しかしレヴは簡単には負けない。これでも昔はジュニアハイまでは殴り慣れている環境にいた。流石に軍人とは殴り合ったことはなかったが、それでもハジメの拳は耐えられると確信していた。

 拳を交わしながらレヴはハジメに言う。

 

「俺にはお前の絶望なんて分からない!分かるわけない!でも、これだけは分かる。今は勝ちに囚われている暇じゃないってことが!」

 

「何をっ!今は勝たなきゃ意味がないんだっ!邪魔するっていうなら潰す!」

 

 強烈な拳がアッパー気味にハジメから繰り出される。間一髪腕を構えて防御するレヴ。しかし続けざまにハジメはその腕を掴んで、そこに膝蹴りを連続して打ち込む。

 両腕が痺れだす。更に膝蹴りから続けて拳が二発その頬に刺さる。力もなかなかだ。拳の差し込み方もなかなか痛い。しかし、レヴには通じなかった。その拳には重さが足りていない。重みのない拳に、倒れる気は毛頭なかった。

 反対に、レヴはハジメの胸倉を掴み、その頬を叩く。更に顎に思い切りアッパーを入れて彼の頭を揺らした。ハジメが掛けていた眼鏡が弾かれ、地面へと音を立てて落ちる。意識は保つハジメだったが、その足取りはやや崩れていた。限界を見せるハジメをレヴは挑発する。

 

「へへっ、もうおしまいかよ……」

 

「おしまい、だぁ?……まだだっ!!」

 

 その挑発を受けてハジメは本気を出す。大きくレヴに向かってジャンプすると、そのまま蹴りつける。それを防ぐと今度はその防いだ腕を足場に、更に上へと飛びかかと落としを繰り出した。あり得ないほどの運動神経だ。

 流石にレヴもそれを回避する。その時アレク達が2人の間に入ろうと動くが、それをレヴは止めた。

 

「待ってください!まだいける!」

 

「レヴ・リヴァイ!しかし……」

 

「アイツの眼ぇ覚まさせないと、ジャンヌ・ファーフニルに申し訳ないんでね!」

 

 闘志を滾らせると、再度ハジメとの殴り合いに挑む。そう。これはジャンヌ・ファーフニル、ひいてはハジメ本人への礼だ。ハジメと出会っていなければ、諦めていたMSパイロットを志すこともなかった。表にこそ出していないがハジメが軍に入隊すると聞いた時、レヴは対抗心が生まれていた。自分だってMSのパイロットを目指していた。もちろん以前言っていた災害などの地域に支援する被災地活動のMSパイロットだ。けれどもリッドの体の事もあって、両親からの要望でリッドに付き添う形で聖トゥインクル学園高等部に通うようになった。ジュニアハイでもそうだ。そんなリッドに付き添わなければならない事情から、進路を自分で決められないレヴはジュニアハイ時代、荒れた。

 もちろんリッドが心配でないわけではない。しかし、そんな都合で諦め続けていいのか。別の次元から来た友人が軍に入れて、自分はこのまま諦めてしまうのか。聖トゥインクル学園高等部に通う今でも、バイトで作業用MSの操縦できる仕事を選ぶほどに未練のあるレヴは、ハジメに触発されて今からでもMSパイロットを目指せるあらゆる手段を探した。必死になって探した。それこそ軍用のMSを操縦できるものを含めて探した。しかしなかなか見つからず、諦めかけていたレヴの前にジャンヌ・ファーフニルが現れた。たまたまハジメの用事が済むのを待って図書室を訪れていたジャンヌに、レヴは自分の事情を話した。当てはない。しかし、それでも藁にも縋る思いで聞いた。

 するとジャンヌは学校の古い校則を紹介してくれた。かつてマネージメント科に対し行われていたMS教習。昔こそ必修であったそれは今も志願制ではあるものの、MSの操縦などを教われるその学校の校則はレヴにとっては渡りに船。レヴはジャンヌにお礼を言うと早速職員室の教師にMS教習の志願を申し入れた。教師の案内で校長室を訪れ、校長の下でその話を申し込むも校長はやや嫌煙気味だった。しかしレヴは諦めずにMSによる被災地支援に出たいという思いを伝えると、偶然にもその話を聞き校長の下へ案内してくれた先生がそれを応援し、校長にMS教習を推薦してくれたのだ。何でもその教師は昔MSの被災地支援チームに所属していて、近々また軍の教官に復職しようとしていたのだという。校長への請願もしてくれて無事レヴはMS教習の追加授業を受けられるようになった。もしハジメに触発され、更にあのタイミングでジャンヌに会って聞いていなかったら、こうならなかっただろう。

 だからこそレヴは退けなかった。2人へのお礼のためにも、今度は自分がハジメとジャンヌを助けなければならない。レヴは叫ぶ。

 

「お前ら2人がいなかったら、俺はMS教習の追加授業を受けることが出来なかった。2人がいてくれたから俺はまた夢を目指すことが出来た!」

 

「っ。それが何になる……」

 

「そんな2人が、すれ違ったままでいいわけねぇだろ!!」

 

「っっ!?」

 

 不意を突かれたような様子を見せる。それが大きな隙を作り逃さず拳を振るう。強力な右ストレートがハジメの頬にめり込む。

 ハジメが体勢を立て直そうと後ろに下がる。無論レヴはそうさせまいと距離を維持する。逃げるハジメは防御に精一杯で攻撃に転じられない。レヴは拳をハジメの腕にぶつけながら言葉を吐く。

 

「今のお前らは、交わっていない!ジャンヌ・ファーフニルはいつまでも部屋に閉じこもって、お前は過去のトラウマを引きずってジャンヌから逃げて!お前らはそんなままでいいのかよ!?いいわけねぇだろ!!」

 

「何を……何をぉぉぉ!!」

 

 事実を追及されて激情するハジメ。反撃と言わんばかりの拳を振るうが、速さもない苦し紛れの拳を避けるのは造作もないことだ。

 この時には既に観客サイドの者達は心配よりも見守る気持ちの方が強くなっていた。先程のレヴの制止からの流れで、ハジメの勢いが弱まったことに安心感が生まれたのだ。観客にも気付くほどにハジメの拳は弱まっていた。

 そのタイミングでレヴは一気に畳みかける。拳の空ぶったハジメの服の胸倉を掴む。胸倉を掴まれたハジメはここぞと言わんばかりにその拳をレヴの顔に向ける。掴んでいる以上距離は必然的に縮まっている。逃げられる可能性は小さくなったのだから。

しかしレヴも黙って殴られはしない。飛んでくる拳を一度空いている手で掴むと、胸倉を掴んだ腕に力を入れる。自身の方に引き寄せる形でハジメの体は引き寄せられる。同時にレヴも体を少し引いてから前へと倒す。2人の体が力の法則にしたがって引き寄せられる。このままなら互いの頭が正面から衝突するだろう。しかし、それはまさにレヴの望んだ状況だ。このまま殴っていてもらちが明かない。弱いとはいえ思った以上に体力を消費した。こっちもいつ倒れてもおかしくない。ならこの一撃に掛けるしかない。目を覚まさせる痛恨の一撃を繰り出す。

 

 

 

 

「いい加減……気づけ!!ッグ!?」

 

「グァッ!?…………」

 

 

 

 

 正面から衝突したレヴとハジメの頭部。凄まじく鈍い衝突音が響き、見ていた者達が慌てて駆け出す。ぶつかった本人達は2,3歩後ずさったのち倒れ込む。間一髪2人をそれぞれアレクとフォーンが支える。

 衝撃が思った以上に強く、平衡感覚がおかしい。どちらが上なのか下なのか。それだけでなく今の今まで何のために争っていたのかも曖昧になりかけていた。しかしそれでも何とかアレクとリッドの声で気をしっかりと保つ。

 

「おい、2人とも大丈夫か!?」

 

「兄ぃ!?生きてる!?」

 

「生きて……る、っての……!いっつつ……あー、ハジメ、は……」

 

「何とかこっちも目は開いてるようだ。しかし、本当に危険なことをしてくれるな」

 

 フォーンから状況を聞き、レヴは仕上げとしてハジメに対してしっかりと言い聞かせる。

 

「へへっ、まぁ、ね。それより……ジャンヌ・ファーフニルは、お前の主なんだろ……?なのにお前は、この3日、いや、4日か?気に掛けたこと、心配したことあったのかよ?」

 

「心配、だと?してたさ。でも、俺に何が出来る……?今まで誰も解けなかった呪いを解くことなんて!」

 

「違うだろ!」

 

「っ……!?」

 

 ハジメが話そうとしていたことを、レヴは全力で否定する。それは状況であって、質問への回答ではない。そんなことは関係がないのだ。だからレヴは否定した。

 レヴが言いたいこと。それはクリエやフォーンが言いたかったことだ。しかし彼らでは言えなかったこと。ハジメと違う位置では言えなかったそれを、荒れて下の段差でうずくまっていたハジメと同じ位置にいるレヴは言う。

 

「俺は……ジャンヌ・ファーフニルを気に掛けたのか、……って、言ったん、だ……。それなのに……何ジャンヌの陥っている状況ばかり言って、会おうとしなかったんだ」

 

「それは…………」

 

「正直言って、俺にはユズハってやつを失った時の、お前の気持ちを全部は分からねぇ。……辛かったていうのは、分かる。だけど……それに引っ張られて、ジャンヌから目を遠ざけてたら……またお前は失っちまうんじゃないか?」

 

「………………」

 

 ハジメは口を閉ざす。顔を右手で覆っていたが、おそらく後悔に満ちているのだろう。

 本当なら、グランツやガンドの最後の言葉で気づくべきだった。彼らもそうならないように願ってハジメに言っていたはずだった。ところがその時のハジメは目先の出来事に意識を駆られていて、言葉の意味も満足に理解しきれていなかった。過去に犯した過ちに怯えていたせいで、つかみ損ねてしまった手。

 しかしハジメは気づいた。自分が掴まれなかった手に、そして今掴まなければならない者の手が誰なのか。既に失われた者ではない、今そこにある手を。最後にレヴは言った。

 

 

「だからさ、護ってやれよ……。ジャンヌ・ファーフニルを。彼女を心配させた分、もう絶対に離さない位に、抱きしめてやれ……」

 

 

レヴも朦朧とする意識の中で自然と出た、ハジメへの言葉。それを聞いたハジメの口が、消えそうなほど小さい笑いを産み、感謝の言葉を紡いだ。

 

 

 

 

「……そうだな……そうだった。ありがとう、レヴ。もう、絶対に……ジャンヌを、離しはしない―――――」

 

 

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今回もお読みいただきありがとうございます。止めたのは、友人でした(綾○感)

ネイ「まさか、レヴさんが体を張って止めるとは……でもそれだけの理由があったんですね」

グリーフィア「そうねぇ。まさか第3章の本当の始まりと言っていたあそこでの会話が、ここに繋がってくるとは思わなかったわぁ」

まぁ途中から組み込んだんですけどね、その話。プロットではどうレヴに止めさせるかと悩んでいたんですけど、自然とその話が使えるんじゃね?と思い、話構成していったら割と上手く行ったという(´・ω・`)

グリーフィア「ザ・偶然の功名」

其れしか言えん(´ω`*)

ネイ「ちょっと言語おかしいです。でも……最後あんな事言っちゃうんですね……!」

グリーフィア「そうねぇ。しかも元君も返事しちゃってたし♪」

そこは次でも指摘される予定ですよ(゚∀゚)では本日はここまで。

グリーフィア「次回もよろしく~ね!」


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EPISODE44 重なる手1

どうも、皆様。つい1週間前まで梅雨みたいに雨が降ったり涼しい気候だったのが嘘みたいに晴れて蝉もミンミン鳴いております、藤和木 士です。

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです」

レイ「アシスタントのレイだよ!」

今回はEPISODE44、それから45をお届けします。タイトルが違いますが、前話からそのまま続いています(´Д`)

レイ「そうだねぇ……けど、重なる手?え、これ元君とジャ……」

ぶぁぁくしょい!(゚Д゚;)なんのことかな?

ジャンヌ「別に隠す必要あるんですか?」

というか、なんで!なんでそことそこが重なると決めつけてる!?

ジャンヌ「そりゃあ……」

レイ「藤和木が作者で、ヒロインのモチーフがあれじゃあねぇ……まぁ今作主人公のデザインは割と逸脱してるからあれだけど」

一切他意ないからね?(´・ω・`)さて派手にごっちんこした元君とレヴ君。2人の介抱から始まるEP44本編をどうぞ!


 

 

 2人の言葉を聞いて、鎮まる屋上。先程までの乱闘が嘘のような静けさだ。最初はどうなってしまうのかと心配だったクリエも、収まった騒動に一安心である。

 やがてネアやグリューネもハジメの顔を覗き込み、その寝顔に微笑む。

 

「ハジメさん、寝ちゃったね」

 

「ま、ここ最近のハードワークも重なっていたみたいだし。でも良かったですね、ハジメさんの憑き物も落とせたみたいだし」

 

「憑き物、か。確かにそうかもしれないな。それに原因は聞いたとはいえ、まだ彼がその後どういう未来を辿って今ここに来たのかすらも、私達は知らない。それでも今はこれでいい」

 

「そうだな。ジャンヌ・ファーフニルと向き直れただけでも、大きな前進だろうしな」

 

 リリーとアレクは納得したように頷く。安堵したのもつかの間、クリエはグランツの横に立ち、もしもの事を口にした。

 

「ねぇ、グランツさん。もしハジメ君がこのまま進んでいたら、どうなっていたと思います?」

 

「クリエ君?……そうだね。これは想像になるが、彼がガンダムとの戦いも制していたら、やはり救世主になっただろう。だけど、それは彼の描く1人だけの世界の救世主だろう。決して私達の世界の救世主ではなかった」

 

 グランツは難しい顔をしてそう答えた。ハジメだけしかいない世界の救世主。願いを聞いても、相手の事は聞き取ろうとはしない、救世主だと思い込んだ者になっていたのだと。奇しくもその考えはクリエも思っていたことだ。

 

「そうですね。きっと彼はジャンヌが死んだとしても、それを心から悲しんだとは思えない。泣いたとしてもそれは自分が目標を果たせなかったことに対してで、ジャンヌの死に対してじゃない」

 

「中々大胆に言うね。けど、私も同じだと思うね。彼はきっと世界を救うことを目的としたマシンとなってしまう。そう考えると私達もそれを知らずに望んで、ガンダムが願いを投影させるマシンだと思っていたのかもしれないね」

 

「そうですね。でも、今はもう違う。少なくとも、彼は」

 

 クリエは思った。例えガンダムが願いを投影させるマシンだとしても、使い手次第でそれは変わるのだと。今のハジメならそれを見せてくれるはずだと。

 未来を繋いでくれたレヴ・リヴァイには本当に感謝しなくてはならないと思う。しかし、同時にまた苦笑を感じえないこともしてくれたが。

 

「兄ぃ……」

 

「あぁ……リッド、頭が……」

 

 妹の声を聞き、心配してくれているのだと思って痛む箇所を言うレヴ。しかし彼の妹の口から出たのは、手厳しい一言だった。

 

「何やらかしてんの、このバカァ!!」

 

「あだっ!?何で!?」

 

 追撃の一発を腹に受け、涙目で理由を聞くレヴ。しかし、周りで聞いていた者達、特にファーフニル家関係者にはその致命的な発言に気づいていた。グリーフィアがその発言について語る。

 

「忘れた?さっき貴方ハジメさんに、ジャンヌをもう絶対離さないくらい抱きしめてやれって言ったこと」

 

「あ、あぁ……それが何か……」

 

「何勝手に、ファーフニル家のお嬢様であるジャンヌ様と仮にも一使用人の人であるハジメさんをくっ付けているんですか?」

 

「………………あ」

 

 続くネアの発言で、ようやく気付く。というより、それを分かって言っていなかったことが更に妹の怒りを買う。

 

「ちょっと!分かってて言ったんじゃないの!?」

 

「ごめ……!ぶつけた衝撃で言いたいことが混ざって……つまり……」

 

 タジタジになってしまうレヴ。そんな彼に追撃が続く。

 

「いやぁ、まさかこの時代に名家の娘を簡単に結ばせる勇気を持った子がいるとは……。恐いもの知らずだね」

 

「ちょっと調子に乗った子かなって思っていましたけど……いやぁ、度胸ある~」

 

「俺ですらグリューネとの交際は、ノルンさんを通したぞ……。俺より逸材だぞ、お前」

 

「え、いや、確かにMSには乗りたいですよ?でも決して度胸がいる前線というわけではなくですね……?」

 

 現役MSパイロット+整備員からのおだて上げに、必死になって止めてもらうように願うレヴの姿は滑稽だった。しかしそこまで盛り上がったのなら、オチは必要だ。その役にクリエ自身が買って出る。

 

「んー……突然で驚いたけど、私はオールオッケー、って感じかしらぁ♪もっとも……うちの執事長と末っ子がなんて言うかしらね~」

 

 そんな事を言ってハジメを介抱しているフォーンの方に顔を向ける。しかしフォーンはハジメの頭の支えを解除し、代わりにその右手の肘を持って震わせている。怒りMaxの状態であると言えよう。その肘を反対側に曲げかねない。

 そんなフォーンも口を開く。

 

「そうですね。私でしたら返事をしたハジメも含めて、後できっちり落とし前を付けてもらいましょう……。その時は覚悟していろ?」

 

「ひっ!……は、はい……」

 

 レヴは恐怖のあまり声が上ずってしまっていた。クリエは冗談のつもりだったのだが、フォーンは本気で怒っていた。これをエターナが聞いていればと思うと、彼がとてもかわいそうな気がしないでもない。これは後で少しお話が必要なようだ。もっともクリエ自身もそれはそれで悪い気はしない。

 これで終わりかと思われた一幕。しかしそこに思わぬ追加の出来事が起こったのだった。それは苦笑するだけに留まっていたローレインの口からだった。

 

「あのー、もう少しだけいいですかね」

 

「ローレインさん?どうなされたんです?」

 

 ネアが聞き返す。他の者達も何事かと顔を向ける。当のローレインも困った様子をしており、何か言い出しづらいようだ。すると同じく何かに気づいていたと思われるリリーが説明を引き継ぐ。

 

「私が言おう。とはいっても、私も先程気づいたのだがな」

 

「気づいた?何にだ?」

 

 アレクが問う。その問いにリリーは屋上に続く扉の方を向いて、声を飛ばす。

 

 

「もう出てきてもいいよ、君達。むしろ聞いていたのなら、出てきた方がいい―――――ジャンヌ」

 

「えっ……」

 

 リリーの言葉に思わずかき分けて前に出るクリエ。すると半開きになった屋上の扉から姿を現したのは……。

 

 

 

 

「………………」

 

 

 

 

 未だその眼を曇らせた、クリエの愛娘ジャンヌ・ファーフニルが病院の看護師に付き添われてそこにいた。彼女はその手にハジメの始動機、ゼロ・スターターを持っていた。そのスターターから1人の男性の声が漏れる。

 

『……俺はスタート。ハジメのガンダムに宿る、元英雄の一部。悪いが、話は全部聞かせてもらってたぜ』

 

 元英雄の声が屋上に響いた。

 

 

 

 

「お嬢様!聞いていらしたんですか……?」

 

「…………うん」

 

 駆け寄ったネアの問いに、ジャンヌは反応を伺いながらも頷き返す。看護師は送り届けたということで一礼して院内に戻っていく。ネアの中にはジャンヌが病室の外に、閉じこもった殻から自分の意志で出られたことへの喜びと、話を聞いて度思ったのかという不安が押し寄せていた。

 話を聞いていたというスターターから発せられたスタートという人物の声が確かなら、ジャンヌはさっきのやり取りをすべて聞いていたということになる。それに対して、ジャンヌはどのように思ったのだろうか。ネアも含めスタートを初めて知った者の大多数がそれを気になった。しかし先に聞かれたのはスタートに対する質問だった。グランツがスタートに訊く。

 

「スタートだったね。君はガンダム、それだけでなくハジメ君のサポートをしていた。……君は、ハジメ君の心の闇を知っていたのかね」

 

「それは……」

 

 ネアも気付く。スタートと言う存在がネア達の今知った事以上の事を知っているわけではない。それでもハジメの事を知っていたのなら、一番近くで見ていた彼なら知っていたのかもしれない。

 グランツからの問いにジャンヌにスターターを持ち上げてもらいながら、スタートはそれについて言及した。

 

『知らなかった、といえば嘘になる。そいつの記憶をロードした時に、俺も事情は知った。もちろんさっきあんたが言ってた他の過去についてもな。だが、元英雄の一部となった俺でも、装依資格者の人間がその出来事についてどれくらい後悔しているかまでは全部分かるわけじゃねぇ。結果的にそいつの闇がガンダムを引き寄せたようなもんだけどな』

 

「そうか……」

 

 グランツやアレクが、スタートの言葉に苦しく頷く。ハジメの闇がガンダムを引き寄せた。それが救世主とされたガンダムとかけ離れたものだったからだ。つまり闇を抱えたハジメだったからこそガンダムが出現したのだということだ。先程ガンダムが願いを投影するマシンであってはならないと言っていたグランツでも、ショックだったのだろう。

 ネアもその現実に辛い物を感じる。しかしスタートはこう言う。

 

『かつての戦争を経験した俺だからこそ言う。今の戦争は行きつくところまで来ちまった。人も同じだ。ドラグディア政府のように腐った連中もいる。けどな、そんな中でお前たちは闇を持って現れたガンダムの装依者の心を解いた。決してこの戦争に関連して生まれたものでもない憎しみを、癒してくれた。そんな奴らが共にいてくれれば、ガンダムはどこまでだって戦える。俺も同じだった。友と、家族と、そして愛する者と共に、戦争を終わらせるために戦った。結局俺は終わらせられなかったが、それでも希望は残ってくれた。だから、頼む。あいつと、黒和元と共に、戦ってくれ』

 

 かつての救世主はそう言ったのだ。今も戦争を続ける自分たちを希望と言い、共に戦ってほしいと願った。戦闘員でないネアでもその重みが十分分かる。きっと彼も彼の仲間も、いつとも知れない自分達の為に戦ったのだと。

 スタートの言葉に、そこにいた全員が噛みしめる。ただ1人、ジャンヌはその足を先へと進めた。ゆっくり、一歩ずつ目的の人物の下へと向かう。ネアも慌ててそれについていく。その先にいるのは、自らを護ると誓ってくれた、意識を落とした彼女の従者。ジャンヌが頭の先付近に座り込むと、フォーンはハジメの体を持ち上げ慎重に彼女の膝元に後頭部を乗せ換える。

 ハジメの顔を覗き込むように見るジャンヌ。その口元から彼女の気持ちが零れる。

 

「………………正直言って、最初は凄くあなたの事、嫌いだった」

 

 初っ端から飛んでくる、ハジメへの嫌悪。思わず何人かの息が詰まるような声を聞いた。聞きなれているネアでも、うわぁ、と顔を塞いで思ってしまったほどだ。

 ジャンヌは言葉を続けた。これまでの事を、ハジメと過ごした時の事を呟く。

 

「貴方の不注意でマフィアに捕まった時も、貴方あの事すごく恨んでた。絶対クビにしてやるって。でも、あの時初めてMSに装依して助けてくれた。あの時はとても怖かったけど、膝を着いて謝ってくれた。それからまたポルンに人質にされた時も、貴方は助けに来てくれた。私が大っ嫌いだったガンダムになった時も、貴方の言葉があったから、前を見てお礼を言えた」

 

 ジャンヌはハジメの頭を撫でる。これまでそんな事、ジャンヌは異性にしたことはなかった。それはネアの記憶の中だけだが、それでもやはりあり得ないことであるのは間違いない。

 

「事件の後も貴方はわたくしの為に尽くしてくれていた。付き合っているなんて変な噂が流れた後、昼食場所が被った時、離れようとしてくれて。それから巻き込まれたネアの事件でも、私やネアを護ってくれた。ネアの為に、自分の為に必死になって訓練を受けてた。そして決闘に勝った貴方を見て、私も安心した。本当に嬉しかったの。勝ってくれたんだって。でも、安心したのも一瞬で、またすぐに貴方は戦闘に参戦しようとしていた。その時私どうしてって思ったわ。ネアの為に、私の従者だっていうのに、どうしてそこまで必死になろうとするのって。実際に言ったわ。けど貴方は言った。それじゃあ意味がないって。最初は生意気だって思った。でも貴方は貴方なりにすごく考えていた。挙句の果てに私を納得させるためにレイアさんの名前まで出してた。どこまでもわたくしの事を考えてた。そして貴方は帰ってきてくれた」

 

 話はネアの事件の時に移っていた。あの時のハジメはほぼ勝利不可能と思われ、負けても問題ないように裏で関係者が動いていた。それでもハジメは勝ってしまった。突きつけられる現実に抗うために、ジャンヌの声もあって勝ったが、それ以上にハジメの強い意志があってのものだ。もっとも今では、それも失うことへの恐れだったのかもしれない。

 しかし今のジャンヌにそれは関係ない。戦ってくれたことへの想いはまだまだ続く。

 

「それ以来ずっと心の中で、思い初めていたの。ハジメと居るのも悪くないって。ネアと同じくらいの安心があった。だからあなたの訓練にも付いて行った。でも、わたくしが詩巫女になるのが嫌だってことを指摘された時、怖かった。結局貴方も、わたくしを詩巫女にしようとして来るんだって怖くなった。でも貴方は違った。戦争を終わらせるって、自分の命を犠牲にしてでもって。ますます怖くなった。どうして命を犠牲にしてでもわたくしを助けようとするのって……こんな卑屈な主なのにって」

 

 あの時、ハジメは確かに言っていた。戦争を終わらせてみせると。ガンダムの圧倒的な力があってこその発言であったそれにも、今はもう1つの理由があったのだと分かる。

 ジャンヌも、それに気づいていた。

 

「でも、今分かった。あなたはずっと戦っていた。過去の自分と。悲しまないようにするために、助けを求めている人に全力で、盲目になって手を伸ばし続けていたんだ……。(わたし)がずっと、嫌味を思っていた時も、止めようとしていた時も、一緒に居るのが悪くなくなってきた時も……っ」

 

「お嬢様……!」

 

 その声に嗚咽が混じり始める。気付いた時には既にジャンヌの瞳から涙が溢れだしていた。止まらない涙の雨がハジメの顔に掛かる。それでもジャンヌの懺悔は続く。

 

「最低ね、私。私なんかよりずっと救われない、それでいてそんな現実に必死に抗っていた人間を馬鹿にして……主、失格……っ!ごめん、なさいっ。ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいぃ!」

 

「お嬢様っ!お嬢様だけじゃない。私だって、私だって……!」

 

 謝罪を連呼するジャンヌをネアは必死に抱きしめる。自分もそんなハジメに助けてもらった。その辛さが分かるからこそ、ジャンヌの悲しみを受け止めようと思ったのだ。

 2人の悲しみが木魂する。それを聞いていた者は思う。かつて自分もそうであった者や、この現実を生んでしまった者の1人であることに情けなさを感じる者、関係なくとも2人の悲しみに共感する者……。様々な思惟がそこにはあった。

 やがて泣き声が収まると、ジャンヌはその手をネアの手とハジメの頬に触れる。その瞳には既に力強いものを取り戻していた。

 

「正直言って、好きかどうかって言われたら、まだ拒否したくなる。だけど、私はハジメの力になりたい。だから、私は―――――」

 

 一泊置いて、ジャンヌは周りにいた者達に言った。

 

 

 

 

「―――――ハジメの、パートナーになる」

 

 その発言は、周りの者達を大いに混乱させた。

 

 

 

 

 元は再び、黒白の海岸に足を踏み入れていた。頭はまだ痛む感覚が残っており、あの一撃がとても力のこもったものだったと改めて実感する。それだけレヴも全力で自分を止めようとしてくれていたのだろう。おかげで踏みとどまれた。

 しかしこうしてここにまた来ることになったのは、またなんとも言えない。逃げ出したような状況だったのにも関わらずアイツは引き入れた。これには何か意味があるはずだ。そう思って歩いていると、海を見つめるアイツがいた。

 白髪の短髪が海から吹き抜ける風でわずかに靡く。前髪が顔に掛かると、その人物は横に流す。そこでその人物も元の姿に気づく。

 

「ふっ、よう、ハジメ。答えは出たのか?」

 

「………………」

 

 スタートの問いかけに元は答えない。ただ元はスタートに近づき、確かめる。

 

「……もう一度だけ確かめる。行けるのか、彼女で」

 

 元が確かめたのは、エンゲージシステムの相手だ。誰とは言わない。まだ元は以前の時にそのシステムを使う必要がある、パートナーはいると言われたがそれが誰なのかは聞かなかった。聞けなかった。聞いたらもっと自分に重たく圧し掛かることが怖かったから。それに「彼女」に迷惑を、命の危機にさらすことだけはしたくなかったからだ。

 しかし、今の元は理解していた。どれだけ力を付けても機能の差で絶対に勝てない。同じ土俵で戦えなければ立ち向かうこと自体が無謀だ。ならば、元は決めなければならない。それが間違いでないか、スタートに確認したのである。

 元の覚悟を知ってか知らずか、スタートは鼻で笑いつつもいつもと変わらぬ口調で質問に返した。

 

「変わらないさ。お前の運命を決めるのは、あの銀髪お嬢様だ。後は、お前次第だ。……覚悟、出来てるか?」

 

「…………っ。あぁ……出来たさ」

 

 一瞬だけ、覚悟を確かめるようにスタートの声が鋭くなる。かつて元は彼から逃げるように黒白の海岸を去った。もう一度来たからには彼もまた確認したかったのだろう。

 その問いかけに元は頷いて答える。もう離さない。選ぶべき道を元は行く。その意思表示をすると、スタートはフッと息を吐いて言った。

 

「ならいい。行けよ」

 

「あぁ」

 

 元は踵を返して黒白の海岸を、スタートの下を後にする。その表情には憂いはない。早く現実に戻り、会って話したかった。彼女と。自分が護るべき彼女と。

 

 

 

 

 今のガンダムの装依者が去った黒白の海岸で、1人佇むスタート。彼の脳裏にかつての記憶が思い浮かぶ。突如として再び起こった戦争。それを止めようと彼と彼の仲間達は立ち上がった。だが次々と死んでいく仲間達。そんな中彼は元凶を見つけた。戦争を起こしたすべての元凶。だがその姿はおぼろげなものだ。スタートは覚えていなかったのだ。元凶が一体何だったのか。なぜ自分がこんな姿になっているのかも。覚えているのは仲間達の一部と、愛した女性との思い出、そしてガンダムの圧倒的な強さだ。

 なぜ千年もの間、自分はガンダムに封印されていたのだろうか。ただあの白いガンダムの事だけは、1つだけ分かることがある。スタートは自身の記憶に強く残る、最愛の女性の名を呟いた。

 

 

 

 

「……シア」

 

 

 黒白の海岸に、彼の言葉は消える。そして黒白の海岸に降りていた夜が明けていく。ハジメの道は照らされた。なら今の自分は、そんな彼らと共にあるべきだ。それがきっと、自分が今もここにいる理由だから。元英雄の一部はそう自分に言い聞かせるのであった。

 

 

NEXT EPISODE

 




EPISODE44はここまでとなります。続くEPISODE45もすぐ同時に投稿されていますのでそちらも是非。

ジャンヌ「……エンゲージってやっぱり直球ですよね。リングって付けたらまんま……」

だぁぁ(゚Д゚;)だから本当に他意ないんです!契約の意味ですから!

レイ「そう言ってる時点でなぁ……分かっちゃうよね、みんな☆」

(´・ω・`)

ジャンヌ「まぁ、そこから外して見ると、ものすごく地味ですがスタートさんによる過去劇場が重要そうですよね」

過去劇場ってそれただの回想……(;・∀・)

レイ「けどシアって誰なんだろう?……最愛の女性ってことだから、やっぱりスタートの彼女さんだろうけど」

まぁそこにもちょっとミスリード投げ込んでるけどね。さて、では続くEP45もお楽しみください!


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EPISODE45 重なる手2

どうも皆様。前話から引き続きの方は改めまして、例のアストレイ系Youtuberの話題の時に流れで組んだアストレイレッドフレーム改をいじっています、藤和木 士です。

ネイ「アシスタントのネイです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよぉ」

では引き続きEPISODE45の投稿です。

グリーフィア「前話はあれよね。まさか勢いで言った言葉で変な縁を結んじゃうレヴ君が憐れだったわぁ♪」

ネイ「いや、それ全然憐れんでないよね……結果的にレヴさんにとってプラスになりそうではあるけども」

(;・∀・)みんなも発言には責任もとう!

ネイ「それを言えるんですかねぇ……」

グリーフィア「それを今回の話で試してみましょうか?」

何でや(´・ω・`)さて、黒白の海岸から現実世界へと意識を取り戻した元君を待ち受けるものとは?それでは本編へ!


 

 

「…………んむ……」

 

 3人でハジメの目覚めを待っていたクリエ、グランツ、アレクは聞こえてきた声に反応し、ベッドを覗き込む。目を覚ましたハジメが、頭を抑えながら体を起こしてくる。

 目を覚ましたハジメにアレクがナースコールを鳴らす。その間にクリエとグランツは彼に容体を訊く。

 

「ハジメ君、大丈夫かしら?」

 

「お、奥様……大丈……っっ!いっつぁ……」

 

「無理はしない方がいいだろう。思い切り正面からぶつかったからね。最悪頭蓋骨が割れているかもしれない。今医師の方が……っと、来たようだ」

 

 入ってきた医師と看護師がすぐにハジメの具合を確かめる。頭を触り、また他の所にも影響がないかを聞きとっていく。

 それらはすぐに終わり、冷却ジェルシートを額に付けさせ一日安静にすると伝えると医師達はすぐに退室する。とりあえず、大事には至らなかったようだ。だが医師の退室後、アレクはベッドのパイプを掴んでハジメに聞かせる。

 

「ったく、もう夜だぞ。これでもし頭蓋骨骨折になっていたら……」

 

「まぁまぁ、アレク君。積もる話はそれくらいにしよう。……ハジメ君、もう君は大丈夫なのだろうか。怪我の具合もそうだが、君自身の答えは……」

 

 最悪の事態を危惧する発言をしようとしたアレクをグランツが抑えながらも、同時にハジメにレヴ・リヴァイとの交わし合いについて訊く。それは無論、あの時限りのものではないかというクリエたちの不安でもあった。もしこれでまた同じようなことをすれば、彼女達も気が気でならない。

 しかし、ハジメもそんな心情を知ってか、余裕のある口調でこれまでの事を謝罪する。

 

「はい。皆様には心配をおかけしました。もう無理はしません。お嬢様にも明日これまでの事を詫びます。お嬢様が受け入れてくれるかどうか……怖いところではありますが。ともかく、改めて申し訳ありませんでしたっ」

 

 精一杯上体をベッドに下げ、謝罪するハジメ。今朝までのような無我夢中に目的を追いかけていた彼ではない。自身の娘に精一杯に仕えていた、記憶を失っていた頃の彼と記憶を取り戻した後の彼が合わさったかのように澄んだ表情と声だった。もう心配しなくていい、クリエは心からそう思った。

 それはグランツやアレクにも伝わったようで、2人も安堵した表情を見せる。

 

「そうか……よかった。これで憂いはないな」

 

「まだ安心しきるには早いですがね。ヴァイスインフィニットの攻略……それに」

 

 アレクが何かを言いかけたところで、ハジメが割り込む。

 

「あの、少しだけお願いしたいことがあるんです」

 

「お願い?」

 

 お願いと言う単語に皆反応する。何をハジメは願うのか。だがそれは奇しくも既に彼女達が驚きつつも知った事実。ヴァイスインフィニットの攻略の鍵とも呼べる、唯一にして必須の方法だった。

 

「今のガンダムじゃ、絶対にヴァイスインフィニットには勝てない。でもシュバルトゼロにも、ヴァイスインフィニットがアドバンテージを取るシステムを使えるんです」

 

「それは……!」

 

 しかし、言いかけたところで彼はやや言葉に詰まる。あまり言いたくない、言いづらさが見受けられた。だがもったいぶるよりもと、アレクが彼の背中を押した。

 

「言ってみろ。ガンダムが勝つためのことを知っているのなら、お前が言わなきゃ始まらない」

 

「隊長……。はい。その名はエンゲージシステムといいます」

 

「エンゲージ、システム……」

 

 契約の名を冠したシステム名。ハジメはそのシステムの内容を3人に話していく。ガンダムの出力系統を制御するためのサブパイロットシステムであること。システム制御のためにはサブパイロットが戦闘訓練を積んでいなくてもいいこと。そしてサブパイロットにはメインパイロット、機体との相性があるということを話す。内容的に話しづらそうなところはなさそうに見えるが、問題は最後告げるべきことにあった。

 クリエ達は一足先にそれを知っていた。クリエの愛娘ジャンヌ、それから彼女が持っていたゼロ・スターターの番人、スタートがエンゲージシステムの必要性を教えてくれたからだ。とはいえ、それでも驚かされはした。まさかハジメのガンダムのエンゲージシステムを、最も使いこなせるのがジャンヌだとは思いもしなかった。最初は冗談を言っているのかとも思ったが、元英雄が投影したデータはそれが現実であることを突きつけていた。

 立ち直りかけているジャンヌではあるものの、自分の子どもを戦争に参加させることなど想像したくもなかった。それは詩巫女という象徴を操る者を目指し、また子どもに目指させた者が言うべき言葉ではないだろう。しかしそれでもクリエは、自分によく似た娘を喪う危険に飛び込ませたくなかった。だからこそクリエ達はハジメからその覚悟を聞きたかった。スタートの予測でハジメがそれを目覚めて早々に言うはずだと言っていた。そして今ハジメはまさに説明をしている。当然、重要となるジャンヌとの相性についても話し始めた。

 

「ここからが本題ですが……現状スタートの見立てで一番俺とシュバルトゼロに相性がいい人物がいます。それはファーフニル家次女、ジャンヌ・ファーフニルです」

 

『………………』

 

 ハジメの発言で一気に3人の視線が鋭くなる。部屋の空気も2,3度下がったと思われるほどで、ハジメは体を震わせる。

 

(怖いでしょうけど、私もここだけは譲れないわ。あの人がいなくなった今、私があなたを見定めなきゃいけない。娘を任せられるかどうか……確かめさせてもらうわ)

 

 ガンドはもういない。当主となったクリエも本気でハジメと向き合う気でいた。ハジメの言葉に真剣に耳を傾ける。

 

「この2日間、俺はお嬢様を遠ざけ続けました……本当はそれも、3日前にスタートから教えられた。お嬢様を巻き込みたくなかった。もちろん今も。でも、もう逃げるわけには行かない、それに、もう1人にはさせたくない!……だから、お願いします、当主……俺に……彼女を、ジャンヌ・ファーフニルを任せてください!!」

 

 ベッドからも降り、その床に思い切り額が着きそうな勢いで顔を下げる。先程も痛そうにしていたにも関わらず、彼は土下座をした。

 もしガンドが生きていて、今のハジメを見たらどう思うだろうか。散々娘から逃げたにも関わらず、それだけで許してもらえると思ったのかと怒るだろうか。それともこれまでの事もあって、許していただろうか。

 しかしそれらも今は居ない自身の夫のIF(イフ)だ。その判断を下すのは、そう、クリエ・ファーフニルの意志だ。だから――――――。

 

 

 

 

「ハジメ君。それは、どれくらいの本気?」

 

「当主……?」

 

 

 

 

 顔を上げたハジメを、クリエはしゃがんで覗き込むように見つめる。その眼力はハジメを捕らえて離さない。言葉に迷うハジメにクリエはもう一度その意思を問う。

 

「どれくらい?」

 

 ハジメを試すようにジッと見つめる。やがて、ハジメは自らの見つけ出した答えを部屋で聞く者達全てに向けた。

 

「…………ガンダムは破壊させない。ガンダムでお嬢様と共に生き延びます。主を護るのが、俺の使命だから!」

 

 主を護る。それは彼の本来得ていた仕事だ。しかし彼はそれを一度放棄した。普通なら関係が切れても当然のもの。だったが、主であるジャンヌは言った。主失格だと。お互いに失格でも、それぞれがもう一度と言うのならば……。クリエはその眼を緩くして、ハジメに語り掛ける。

 

「…………そう。ならそれはあの子の前で言ってあげて」

 

「当主……はい!」

 

「ふっ、やれやれ……」

 

「それなら、私達も責任を持ってその命を預からねばな。もっともそれも、ジャンヌ君次第であるわけだが」

 

 クリエの反応で、やがてグランツとアレクの緊張も解ける。当の本人であるハジメも感謝の返答をする。とりあえずはクリエも護ると言ったハジメを信じるしかない。それでもジャンヌが実際に許可を出すまではダメだ。もう一度娘の了解を、ハジメが聞かなければ二人はすれ違ってしまう。本人達で解決するのも重要なステップだろう。とりあえず今はもう遅い。今日の所はゆっくり休むよう、クリエとグランツの2人は言い渡す。

 

「とりあえず、今日はもう遅いからジャンヌに言うなら明日、ね?」

 

「うむ、それが賢明だろうね。何せ君も動くには辛い状況だろうし」

 

「分かりました。ありがとうございます。……あ、あとタオルか何かありませんか?何か顔がやけに塩っぽくて……すみません」

 

 ハジメもその言葉に従い、濡らしたタオルで顔を拭いてからベッドへと戻る。それを見届けてからクリエ達は病室を出た。病室を出ると、グランツが声を掛けてくる。

 

「……それでよかったかな、クリエ君」

 

「えぇ……不安でいっぱいですけれど、それでもこれはあの子たちが決めることですから。……まさかあの子が、ガンダムと一緒に戦いたいだなんて、思いもしなかったですけれど」

 

 クリエはため息を吐く。今も昼間にジャンヌが言った言葉が反芻していた。いきなりハジメのパートナーとなると言った時には、突拍子もないことで理解できず、フォーンなどはパートナーという所に目が行き、そんなことを許せるわけがないと詰め寄ったほどだ。しかしジャンヌははっきりと自分の意志を伝えた。その言葉が蘇る。

 

『それでも私は彼の力になりたいの。異性としてじゃない、主として力になりたいから』

 

 異性としてではない。それを言われてフォーンもそれならばと引き下がった。もっともクリエとしては勢いで行かなくとも、2人の合意があるのなら……と心の中で苦笑いしていた。2人とも枠に縛られ過ぎだと感じていた。2人ならエンゲージシステム関係なしにいいパートナーとなれると思う。

 ともかくそれを伝えあった時、初めて2人のすれ違いは解消される。明日が楽しみだ。

 

「さて、それじゃあ今日はこれで帰りますね、グランツ司令」

 

「そうか。では他の者に護衛を……」

 

「いえ、大丈夫ですよ。フォーンも外で待機してくれていますから。それでは」

 

「あぁ、フォーンにもよろしく伝えてくれ」

 

 互いに別れを告げて、その場を解散する。グランツ司令もガンダム討伐と並行してとある計画を進行しているという。ガンダムの方もヴェールが新装備と修復を並行して突貫で行っているらしい。この戦いはハジメだけでなく、ドラグディア軍にとってもリベンジを兼ねた重要な戦いなのだ。しかしながら全容の一部を聞かされたクリエとしては動揺を隠せない。もし本当なら、それはドラグディアという国にどれほどのダメージを与えるか……。

 乾坤一擲とも言える作戦の発令はガンダムの戦闘に掛かっている。だからこそクリエは余計にハジメとジャンヌの勝利を願わずにいられなかった。

 

 

 

 

 静けさが支配した深夜の病院。時計の短針が既に4番目の数字を刻んだ中、元も眠りに落ちていた。昼間のダメージで余計に眠気が襲ってきており、クリエ達の訪問後すぐに眠ってしまっていた。

 とても深い眠り。ところが元は自身の身体の違和感に気づいて目を覚ます。

 

「…………ん」

 

 布団がかぶせられた自身の身体に掛かる不自然な重み。それが元の目を覚まさせる。意識ははっきりしないが、感じた違和感は確かに今も残っている。布団の違和感は外から見ても確認できた。人1人分にしては異様な大きさのふくらみが現れている。まるで、もう1人いるかのような……。

 ここで元の緊張感が高まる。何者かが侵入している。しかもそのふくらみはもぞもぞと動いていた。銃かナイフを構えようとしているのか、危機を感じた元はすぐに毛布を払いのけ、侵入者の顔を確認しようとする。

 

「誰…………だ?」

 

 しかし、侵入者に問答するその声は途中で疑問の問いかけに変わる。なぜなら布団の中にいたのは自身と同じ銀色の、ウェーブの掛かった長髪を持つ1人の少女。ファーフニル家の次女で元が主と慕っていたジャンヌ・ファーフニルだったのである。

 

「………………え」

 

「………………」

 

 動揺の一言が漏れる。驚きで一気に元の意識が覚醒するも、なぜジャンヌが元のベッドの中にいるのかという問いの回答は見つからない。冷静さを欠いた元は思わず彼女がなぜここにいるのかと大声で聞こうとした。

 

「な、なぜお嬢さ……もぐっ!?」

 

「っっ!?ダメっ」

 

 だがそれをさせまいと慌ててジャンヌは小声でそう言いながらも、同時に元の口を塞ぐ。彼女の手が元の口に触れる。共にその感触、匂い、行動に赤面しているのが自分でも分かる。

 大声を止められてから数秒、匂いが鼻を通って刺激が脳に与えられ慣れたところでようやく彼女の手が口から離れる。月光に照らされ、明かされた彼女の顔が見える。顔はほんのり赤く染まり、バツの悪そうな表情で見つめ返している。そのせいか、元にはとても彼女が魅力的に見えた。これまで主の少女としてしかみていなかったことや、彼女自身がレイアへの好意を露わにしていたことへのギャップが余計にそれを助長させていた。彼女が着る病院着が着崩れているのもますます変な気を起こしかねない。

 間違いを犯す前にと、身体を半分起こした元はなぜ彼女が今いるのかを小声で問う。

 

「…………どうして、ここに?」

 

「………………」

 

 元の問いかけに彼女は黙って視線を外すだけだ。だが視線を元と外とを往復させている。何か言いたいことがあるのは明白だ。こちらから聞こうとするのではなく、話し出せるのを待つ元。

 やがて、彼女の口が開く。

 

「……それよりも、何か言うこと、ない?」

 

 少し怒った口調で逆に問いかけるジャンヌ。それはつまりこれまで顔を出さなかった元に謝罪を求めているということだった。それより、と釘っている辺り、本来の目的とは違うのだろう。とはいえ、彼女の不満も元に対し問われるべきことである。元は顔を合わせなかったことを謝罪する。

 

「……申し訳ありませんでした、お嬢様。勝手な暴走をしてしまい……」

 

 まさしくあれは暴走だった。過去の亡霊に縛られ、自分勝手な判断をした。目の前の恐怖から逃げようとした。これはもうクビを宣告されても仕方のないことだ。

 しかし今ジャンヌの下から離れるわけにはいかない。いや、もう離れてはいけない。もう離れないと誓ったのだ。今のジャンヌから離れてしまえば、誰が支えるというのだ。元は彼女の返答を覚悟して待つ。

 元の謝罪を受けたジャンヌは……。

 

「……そうね。けど、わたくしも……私もあなたの闇を見抜けなかった……見抜こうとすらしなかった……」

 

「お嬢様……?」

 

 闇と言う単語に、もしやと思った元。元は知る由もなかったが、ジャンヌもまた元の過去を知った者だ。元が幼馴染を最悪の形で失ったことも、それ以来の元の考え方が今までの行動原理にあったことも。

 しかし元がそれを指摘しようとしたその前に、ジャンヌは更に踏み込んでいく。割座の形で元の下半身、特に股間から太ももに掛けて布越しに触れ合う。逃げられない体勢に持ち込まれ、元も唾を呑みこむ。

 

「お嬢……!?」

 

「…………ごめんね……」

 

 謝罪と共に、彼女はその頭を元の胸元に付ける。何が何だか分からない。しかし今物凄くやばい状況であることは分かる。フォーンに見られていれば確実に殺される。学校の者に見られても変な噂になる上に病院の周回に来た人に見られてもアウトだろう。

 しかしジャンヌを無理にどかすわけにもいかない。どうしようと迷っているうちにジャンヌの頭が離れていく。安心したのもつかの間、ジャンヌは元を真っすぐ見て言う。

 

「本当はもっと言いたいことがある。けど今言わなきゃいけないことがあるから……」

 

「えぇと……」

 

「あなたの力になりたい。主として、ガンダムのエンゲージシステムのパートナーにして」

 

「!?それは……」

 

 先に言われてしまった、本来元が言うべき台詞。それを以って、元はジャンヌが自分の事を知っていることを知る。どのタイミングかは分からない。だがジャンヌはエンゲージシステムの事も知って、そしてそのうえでパートナーとなると言ってきているのだ。

 予想外の展開に元は迷う。こんな形でいいのだろうか。本来自分から謝りに行き、その場で言うべきはずの会話。しかし今は彼女が言いに来ている。元の知る限りでは、こういった場面では先にこちら側が言うべきだというのに。

 とはいえ、これは待ち望んでいたものでもある。彼女がその気でいるというのならむしろ好都合だ。それでもやはり気になったのは、こんな形で了承してしまっていいものだろうかという疑問だった。

 しかし、それを振り払えとジャンヌの斜め後ろの布団の中から声が響いた。

 

『お取込み中のところ悪いが、ちゃっちゃと決めろよ、元』

 

「!?……」

 

 スタートの声だった。この夜這い未遂が一体誰が仕掛けた物なのか、理解が通る。計画立案者に静かに恨みを感じながらも、その言葉通りジャンヌの言葉に返答する。

 

「…………本当に、いいんですか?」

 

「主としてなら、いいから……でもまだ好きとかの関係ではないから……レイアさんを助けたいの」

 

 顔を俯かせる。言った意味の恥ずかしさからだった。元もそれは理解している。ジャンヌにも伝える。

 

「…………もちろんですよ。敬愛の対象ですから。レイアも助けます、絶対に」

 

「…………うん」

 

 そして2人は夜遅くからにも関わらず、スタートからの指示でエンゲージシステムの認証作業に入った。

 

 

 ゼロ・スターターを装着した状態で互いの手を掴む元とジャンヌ。2人をスターターから映し出された魔法陣のようなものが包む。スタート曰くこの魔法陣は記録媒体の役割を果たしており、元に触れていれば認証もとい「契約」は果たされるらしい。

 エンゲージという単語の時点で色々深読みしそうな単語と違って、至って変わった様子のない契約方法は2人にとっても簡単だった。これでもし、深いことをしろなんて言われた日には間違いなくスタートをスクラップにしていただろう。これも全てリム・クリスタルの例があったからだ。リム・クリスタルの時も最悪彼女と大人の階段を登らなければならなかったかもしれない事態に遭った。もっともそれも偶然の行動で済んだわけだが……被害がなかったわけではない。

 過去を思い返していたところで突如ジャンヌの様子がおかしくなる。

 

「……っぅ!」

 

「お嬢様!?どうしました」

 

 苦悶の表情をするジャンヌに咄嗟に駆け寄る元。エンゲージシステムの認証もあり、手をつないだままもう片方を彼女の肩に置く。エンゲージシステムの認証で何か異変が起こったのか。しかし元の予測は外れる。

 

「……だい、じょうぶ……呪いのせいで…………こうなることが、あって……くぅ……っ!」

 

 元は忘れていた。ガンドの死亡直後に発動したジャンヌの呪い。詩竜の刻印による呪殺効果がジャンヌを蝕んでいたのだ。これまでそんな素振りをまったく見せなかったため、耐えきれているのかと思ってしまっていたのだ。

 どうする、お嬢様が痛いと言っているのならやめた方が良いんじゃないのか?けどここでやめてもこの痛みが止む保証はない。そもそも契約の影響で痛みが来たとは限らないじゃないか。でも、どうすれば……どうすれば彼女の痛みを和らげられる?

 突然の事で混乱してしまう元。だが昼間のやり取りが元の中で思い起こされる。レヴの言っていたこと、それに幼少期の頃の記憶が蘇る。その時の自分の光景を思い出し、元はそれを実行した。

 

「………………っ」

 

「!?ハジメ……?」

 

 その手を引いてジャンヌの体を抱き寄せる。いきなりの事でジャンヌも戸惑ってしまう。いきなりそんなことをされては不安になるのも当然だろう。だから元はその首筋を擦って言う。

 

「大丈夫です、自分がいますから」

 

「………………」

 

 傍にいる。それが元の出した答えである。もっともそれは本来当たり前の事であり、何を今さらと思われるだろう。

 だがこれまで離れていたことも踏まえれば、その痛みもまぎれるだろう。それに当たり前の事は必ずしも出来るわけでもないこともある。改めて護ると誓った元は今までの暴走も含めてこうするのがベストだと考えたのだった。

 無論ジャンヌが抵抗することも予想できた。しかしジャンヌは痛みからか、それとも彼に気を許したのか最初の戸惑い以外は抵抗する素振りは見せなかった。静寂が部屋を支配する。ただ一言、ジャンヌの声が響いた。

 

 

 

 

「…………バカ」

 

 

 貶す言葉とは裏腹に、手を握る力は強くなった。月夜の光が2人を照らす。そうして夜は明け方へと向かっていった。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。

グリーフィア「ねぇ、作者さん。この作品SFよりも恋愛要素多めじゃない?ラブコメに変更したら?(笑)」

それしたらガンダムなくなっちゃうよ!?(゚Д゚;)

ネイ「でも、前作に比べて恋愛要素は多いですよね、これ」

あー……それは前作が完結出来なかったことが大きく要因(´・ω・`)前作でも恋愛要素出せなかったから……反動

グリーフィア「けど前作よりやけにペース良いわよね?大丈夫?」

まぁ、今のところは。うん最初の頃にも言ってたけど、やっぱり元となるものが固定されてないと進むの速いよ。前作は台詞ほぼ原作の半固定してたからそれに沿って考えなきゃいけなかったし。

ネイ「また前作が作者さん自らにディスられていく……」

いや、でも前作があってこそ今作があるからね。ただ外伝は記憶諸共消したい( ゚Д゚)月光蝶誰か持ってきて!

グリーフィア「月光蝶よぉ♪」

ネイ「いや、それネットどころか人工物消しますから……」

それでは今回はここまで。

ネイ「じ、次回もよろしくお願いします」


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EPISODE46 重なる手3

どうも皆様。おそらく7月最後の投稿になると思われますが、第3章はまだまだ続きます、藤和木 士です。

レイ「アシスタントのレイだよ!」

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです。意外と第3章長いですね。2話連続投稿とかやっていらっしゃるのに」

私もおかしいと思ってちょっとプロットの方を確認したら、なんとプロットの文字数次の第4章より長かったんですよ(;・∀・)

ジャンヌ「あらまぁ」

レイ「へぇ意外。てことは第4章は3章より短くなるんだ?」

それはどうだろう……戦闘シーンが結構多くなりますから、その分内容大きくなるのでどちらも同じ規模になると思いますよ?
さて、それでは改めまして、EPISODE46公開です。一応作中時間としては決闘当日の午前も描いていますね。

レイ「決戦前!なんかドキドキするね!」

ジャンヌ「一大イベントの直前ですね。けど、元さん達の場合はどのような内容になるのかが気になりますね」

決戦直前、漆黒のガンダムの使い手となった2人は何を思うのでしょう?(´-ω-`)それでは本編へ!


 

 

 元とジャンヌが和解して2日が過ぎた。5日早朝2人が同じ部屋から出てきたことに、たまたま早朝巡回していた看護師は驚いたものの、2人の無事な様子を見て注意をしつつもその背中を叩いた。

 それから2人はグランツらにそれぞれが謝った事と、エンゲージシステムのパートナーとなることを了承したことを伝えた。2人が状況を理解したうえで戦場に出ることにグランツ、アレク、リリー、クリエ、それに市内防衛強化を兼ねて元の再特訓に協力するゼントが聞き届け、了承した。ようやく反撃のスタートラインに立ったと言ったところだ。

 既にヴェールによって進められていたガンダムの再強化プランに基づき、元とジャンヌの養成訓練メニューが作成された。元の方は武装の関係でゼントに加え、バァン准将も加わった。彼は今までとある作戦の準備の為に動いていたそうだが、ここでようやくその準備を他の者にも任せて訓練に加わることとなった。彼が担当するのは、ファンネルコントロール。戦闘を行いつつファンネルを制御するための技術会得のサポートだ。彼もまた有線ではあるもののオールレンジ端末装備機の装依者。これまで単体のシミュレーションで訓練してきた元を、対人戦で鍛えるということになる。

 一方ジャンヌの訓練はガンダムのOSであり、「元英雄の一部」と称されるスタートによるコントロール訓練。ガンダムの仮想空間で実際のあらゆる戦闘データを参考にしたエンジンコントロールを体感で覚えさせるというものだ。本来なら手動で正確に動かすのがセオリーとされる(というスタートの発言の)エンゲージシステムだが、ジャンヌが正規のエンジン操作を行えるような人物ではないこと、そして彼女と元のエンゲージシステム適合率が9割を超えているからこそ体感でも十分仕事を果たせることから、時短を目的とした結果、そのようになったのである。

 2人は7月7日という決戦の日が迫る中、自身に出来ることを全力で、無理のない範囲で行っていた。特にジャンヌの方は未だに収まらない詩竜の刻印の影響が出ていたが、それでもジャンヌの気持ちに呼応したのか持ち直していた。元もガンダムの新装備をヴェールと共に確認して、その度に運用を訓練に盛り込み体に覚えさせていた。そうして迎えた7月7日、元もジャンヌも課せられた訓練を終え、基地の談話室で休息を取っていた。その表情には3日前の不安はもはやない。2人でかつてのように、いやそれ以上に距離を詰めているとも思えるほど、関係は縮まっているようにも見えた。それはまるでかつての詩巫女と、象徴を詩巫女も含めて護る「竜騎士」の仲のようだった。

 

 

 

 

「何とか、ギリギリ間に合ったという感じですね」

 

「そうね。後は今日ちゃんとレイアさんを救えるかに掛かっています」

 

 元が談話室にある自販機で飲み物を買いながら、ジャンヌとそのように会話する。2人共それぞれが目標としていたオールレンジ操作とそれを絡めた戦闘、ジェネレーターコントロールを会得して一服就こうとしているところであった。

 ジャンヌも今は私服ではなく、基地から借りた訓練着を着用している。元はもとからあった自身の訓練着であり、ペアルックに近い。ジャンヌは元から紅茶の缶を受け取ると、それを開けて一口。元もカフェオレの缶を開けて同じく一口付ける。一息ついたところで2人の口が同時に開く。

 

「あの……あっ」

 

「その……どうぞ?」

 

「じゃ、じゃあ……」

 

 元が先に言うようにとジャンヌに発言権を譲る。ジャンヌは了承しながらも、一度呼吸を整えるために深呼吸をしてから発言した。

 

「元は、私に……その……ガンダムを任せられる?」

 

「……それは、自身がミスをするかもしれないと?」

 

 その言葉の意味を確かめると、ジャンヌは頷く。まだジャンヌは自身がミスをしてしまうのではないかという不安を感じていたのだ。考えてみればジャンヌは実戦が今回初めて。しかも本来なら戦闘要員ですらない。詩巫女という国にとって重大な使命を背負うかもしれないとはいえ、1人の少女なのだ。

 それが国の救世主とも呼ばれたガンダムと共に戦う。しかも相手もまたガンダム。最初からレベルマックスの相手と戦うようなものだ。不安で仕方がないのだろう。元はそんな主の不安を和らげるように自分の気持ちも明かす。

 

「でしたら、自分は絶対にミスは出来ませんね」

 

「え……」

 

「俺の方も絶対にお嬢様を護らなくちゃいけない。もちろんそれを疎かにする気はありません。でも、お嬢様の失敗を考えるとなると、俺の方でカバーするしかないですから。120%の力を出して、いつでもカバーできるようにしないと。それにお嬢様がいてくれるだけでも、以前よりはずっと心強いですから……」

 

 主のミスは自分がカバーする。それは一足先に戦場へと立った元の気遣いである。無論自分も全てのアクシデントに対応できるかどうかは分からない。それでも自身の限界を超えた力で事に当たらねば勝てる気がしないのもあった。ジャンヌのミスは怖いものの、それでもいてくれるだけでエンゲージシステムの恩恵を得られるのは心強い。機能面、そして精神面でパートナーがいることの恩恵がエンゲージシステムにはあった。実戦でそれをきっと証明してくれるはずだ。

 元の限りなく本音に近い言葉を聞き、不安になっていたジャンヌは元気を取り戻す。ただ、元気を取り戻し過ぎて、却って彼女の怒りを超えた羞恥の感情を引き出してしまった。

 

「……っ!ば、バカッ!護らなきゃいけないのは当たり前なのに、ついでに変なことまで言わないでよ!わたくしの想い人はレイアさんだけなんですよ!?」

 

「あ、はい。分かってますから」

 

 主が羞恥のあまりに頭をポコポコ叩くのを、元は慣れた様子で気にもせず受ける。それは最初からの大前提で仕事を受けたのだ。もしお嬢様の気持ちが変わっても、自分がそれを受けてしまえばフォーンや、最悪ガンドが地獄から舞い戻ってくる可能性も考えてしまう。この世界では機械化という禁断の蘇生技術もあるのだ。可能性は0ではない。そもそもジャンヌもその反応だとそう思い始めているのではとも考えてしまう。エンゲージシステムの契約時の夜這い未遂の一件でもそれは感じた上、不覚にもジャンヌの姿・匂いに反応してしまっている。

まさかとは思うが、とにかく気が済むまでジャンヌの否定を受ける元。すると、談話室に意外な人物が入ってくる。

 

「ん?おお、こんなところにいたのかね2人とも」

 

「あ……グランツさん!」

 

「っと、司令。何か御用ですか?」

 

 基地司令であるグランツの訪問を受ける元達。元はすぐに態度を改め敬礼を行う。グランツも司令官と言うことでここに来る可能性がないというわけではないが、彼の多忙さや彼専用の部屋である司令官室もあることからここに来ることはめったにない。何か移動途中だったのだろうか。

 しかし彼の用件は2人に関係する物だった。グランツは一度護衛の兵士に顔を向けると、元達に今大丈夫かどうかを聞く。

 

「いや、ちょうど2人に用があったんだよ。今時間はあるかい?」

 

「え、えぇ、訓練も目標となるところまでいってお嬢様と一息入れていたところだったので……場所を移した方が良いですか?」

 

「いや、いい。ただ談話室は閉鎖するがね。あまり他の人には聞かれたくはない話だから。2人はそれでもかまわないかな?」

 

「あ、はい。分かりました」

 

 2人が了承すると、グランツは護衛に合図を送る。するとすぐに護衛達が談話室の外に出て、出入り口を閉めてドアの前に立つ。完全に談話室が外から切り離される形となる。司令官と向かい合うというその状況は、元も一度経験してはいるものの慣れはしない。緊張感が室内を支配する。それは隣に座ったジャンヌも感じていたようで、対面に座ったグランツをやたらと気にしていた。

 元としては先程ジャンヌに訊きたいことがあったが、とりあえずは後にする。一方のグランツはそのプレッシャーを発しているとは思えない様子で、自販機から購入したコーヒーの缶を開け口に含む。文字通り一息ついたところで2人の緊張をほぐそうとする。

 

「ふぅ……ん?2人とも少し肩が固いかな?」

 

「す、すみません……やはりグランツさんとこうして面と向かっていると、少し緊張してしまいますね」

 

「無理もないと思います。それなりに顔を合わせている自分でも、やはりまだ慣れませんから」

 

「ははっ、2人とも力を入れ過ぎていると、上手く行くものも行かなくなってしまうよ。状況が仕方ないのは当然だが、君達はまだ若いんだから」

 

 2人の緊張をほぐしながらも、グランツ司令はさて、と話を切り出してきた。

 

「まずはこうして2人が共に戦ってくれるようになってくれたことを、私はとても嬉しく思っている。成り行き上そうしなければならないとはいえ、ジャンヌ君を戦いに巻き込んでしまうことにはとても申し訳ないが……」

 

「いえ、もしここで行かなくても、いずれはクリムゾン・ドラゴニアスとの誓いの契約のために仮入隊しなければなりませんでしたから。それが少し前倒しになったと思えば、まだ気楽です」

 

「お嬢様……」

 

 ジャンヌの言葉を聞いて、元は気づく。それがジャンヌ自身も口にするのが苦しいことなのであると。今回ジャンヌは詩巫女としてではなく、ガンダムのサポート役としてドラグディアに仮入隊しているが、本来ならば象徴クリムゾン・ドラゴニアスと契約する詩巫女としてドラグディアに仮入隊することが国側のルールとして義務付けられている。本来の目的とは違った入隊とはいえ、ジャンヌにとってはその延長線の途中にあるこの戦いに挑むことはそれと何ら違いないのである。

 そしてそれを加速させたのは紛れもない、救世主ガンダムの存在だ。ガンダムが目覚めなければ、彼女は至って普通の、これまで通りの流れで詩巫女となり契約に臨んでいたかもしれない。今のような、詩竜の刻印が発動した状態でドラグディア軍に入っていることが異常なのだ。自分(ガンダム)がいなければ、という元の自責の念はこれまでも感じていたことだ。しかし、ジャンヌはそれらを受け入れた上で元の考えを否定していく。

 

「ガンダムのせいでって、思ったこともありました。でも、今は違う。ハジメがいなかったら乗り越えられなかった物がある。ハジメがガンダムだったから救われた人がいるって今は思えます。だから今のこういう現状に、自分も関われることはいいと思っています。わたくしが死んだら、多分次はエターナがこうなるから。刻印の解き方すらも分からないですけど、まずは絶対に白いガンダムとの勝負に勝って、レイアさんを救い出します!」

 

 これまで元が聞いたことのない言葉は、元も半信半疑で聞いていた。まさかジャンヌが、あれほど絶望していた少女が、ここまで持ち直しているということに。グランツもその上昇志向に感銘を受ける。

 

「ははっ、流石ファーフニル家の少女だ。ハジメ君も呆気に取られている場合ではないぞ?」

 

「ですね……それで司令。本命は何なんです?」

 

「おおっと、そうだった。実は、2人に見て欲しい、そして聞いてほしいことがあるんだ」

 

 元の指摘で思い出したグランツは懐から古い書物を取り出す。本の表紙は大分痛んでいるものの、その表紙には「Diary」と書かれている。日記を示す単語だ。

 

「日記、ですか?しかし、一体誰の……」

 

 グランツから渡してきたのならグランツのとなりそうだが、実際は違った。グランツは言った。

 

「それは、私の先祖にして、件のクリムゾン・ドラゴニアス戦死・機械化時の詩巫女オルレリアン・ファーフニルを護っていた竜騎士ジード・フリードの日記だ」

 

「それって……!」

 

「……この呪いの、当事者の……」

 

 ジャンヌは首筋に手を当てる。そこには今もゆっくりと範囲を大きくしようとする詩竜の刻印があった。グランツは頷くと、話を切り出してきた。

 

「読みながらでいいから、聞いてほしい。私達フリード家の当主が代々引き継いできた、悲劇の竜騎士・詩巫女の願いを……」

 

 そうしてグランツは、昔話を語り出す。

 

 

 

 

「事件は300年ほど前、その年の戦争でクリムゾン・ドラゴニアスが当時パートナーであった詩巫女オルレリアン・ファーフニルを庇ったことが始まりだった。銃火に晒された彼女を、クリムゾン・ドラゴニアスは護ろうとしたのだ。それほどまでに彼らの絆は深かった。しかしそれが皮肉にも悲劇の引き金となった」

 

 グランツの言葉を聞きながら、ジャンヌ達は本を見る。そこには当時の詩巫女オルレリアンとフリード家当主ジードの交流が書かれていた。

 2人は幼馴染であった。他の家の子ども達が皆彼らと年が違ったこともあり、12名家同士の集まりでは2人でよく遊び、話していたという。やがて2人はそれぞれの家の役割である詩巫女、竜騎士へと上り詰め当代の国の象徴を従える詩巫女・竜騎士となった。2人とクリムゾン・ドラゴニアスは家族のように心を通わせ、過去最大の絆を以ってマキナスを退けていた。周囲からは結婚も噂され、2人もまんざらではないことがつづられている。日記の所々で彼女の名前を「レリア」と愛称で書いていることからも分かる。

 

「その事件のあった戦争で、ジードは苦戦する前線を支援すべくオルレリアンとクリムゾン・ドラゴニアスの傍を離れた。相手が既に象徴を護る機械騎士を前線へと出していたのだ。先祖のジードも一気に戦争を終わらせようと前線へと向かった。だが、それがいけなかった。マキナスは機械騎士にすらまともに知らせずに開発した、必殺の兵器を用意していたという。その兵器の名は「皇帝の心杖」。当時皇帝機に装備された兵装のプロトモデルを持ち出した。放たれた光はたちまちオルレリアンの周囲にいた兵士達を殲滅し、彼女にも襲った。だが、それをクリムゾン・ドラゴニアスが全て受け止めたのだ。……後は君達も知るように、死に、機械竜となった」

 

 日記の字はかすれている。いや、書く力のあまり震えていた。宿敵とも呼べる機械騎士を討ち取ったジードは、後方で起きていた出来事を知ると、一目散にオルレリアンの下を訪れたと書いてある。幸い無事だったオルレリアンだったが、クリムゾン・ドラゴニアスが機械竜として再誕した際にオルレリアンも政府に囚われた。そして自身には口封じと言わんばかりにマキナスの機械騎士討伐の功績を高く評価し、大元帥の座を与えたとある。だが、彼はそんなことを求めてはいなかった。オルレリアンの事をびっしりと日記に書いてある。

 そして何ページかして、再び彼らが出会った。その時にはオルレリアンの首筋には見慣れない呪いの刻印が施されていた。同時に国で呪殺刻印の禁止化が制定されたが、幼馴染のそれを国は呪殺刻印ではないと知らぬ存ぜぬを押し通し、更には彼女の身柄を人質にしてきたという。

 日記を読み進めるジャンヌも、見ていて辛くなってくる。しかし、彼らは決してあきらめなかったこと、そして決意したことを知る。

 

「オルレリアンを実質人質にした国に、ジードは歯ぎしりしたという。しかし彼はオルレリアンの導きで機械竜となったクリムゾン・ドラゴニアスと対面した。そして彼らの間で誓いを立てたという」

 

「誓い……?」

 

 ハジメが首を傾げる。その言葉の示すところをグランツが説明する。

 

「うん。国への復讐と、ファーフニルの家系の呪いを解くことをジードに託したのだ。しかもこれはジードからの申し出でだ。それを果たすためにジードは数百年単位で計画を行うように後継者を選び、クリムゾン・ドラゴニアスはまた同じ犠牲者を生まぬよう国を粛正するまでどの詩巫女とも契約を生まないように拒絶を続けたのだ」

 

 グランツの語る国の粛清とそれが完遂するまでのクリムゾン・ドラゴニアスの行動は、確かに日記にも書かれていた。他の人が聞けば絵空事と馬鹿にしそうなそれも、ジャンヌには納得できた。誓いの契約をするとはいえ、ファーフニル家からこの300年間契約者は出ていない。他の家の者でも毎年やっているというのに成功しない理由は、それを続けていたからだったのだ。もちろん彼女の母であるクリエの時も、きっとそうなのだろう。

 呪いの慣習であった象徴との果たされるかも分からない契約。それが延々と続いたのは顔も初合わせとなる自身のかつてのパートナーの二の舞を避けるための、象徴による防衛行動だったのだ。呪いによる恨みの矛先が自分に向けられようとも、悲しみを連鎖させないためのことだったのだ。

 グランツもその考えが正しいことを、これまで自身が続けて来た行動と共に明かす。

 

「彼らは自分達ではどうにもできないと気づいていた。しかし、未来を諦めてはいなかった。自分達の願いが引き継がれる様に、どれだけ否定されてもバトンを渡し続けた。いつ来るかも分からないその時が来ることを信じて。最後のページにも書いてあるだろう。「明日へと伸ばしたこの手が、いつかも知れない子供たちが受け取ってくれることを信じる」と」

 

 グランツの言う通り、その言葉は確かに書いてあった。そこに「親愛なる、愛しのO.Fのために、未来の子ども達に送る」という言葉と共に。2人の声が重なる。

 

『伸ばした手を、受け取る……』

 

「そしてそれが今だと、私は確信している。ガンダムが現れたのはきっとそのためなのだと、勝手ながら思わせてもらっている。私達大人が不甲斐なかったばかりに、君達に迷惑を掛けてしまう。それでも未来ではなく、明日の為に君達の力を貸してもらえないか?」

 

 グランツは立ち上がると、その上体を倒して嘆願した。それは司令官などではない、自分も同じ絶望に墜ち、だからこそ変えたいという気持ちを持った自分達と同じ明日を求める人の姿であった。

 ジャンヌ達も突然の行動に驚いていたが、ジャンヌは立ち上がってその手を取ると言った。

 

「顔を上げてください。……不甲斐ないとグランツさんはおっしゃいました。でも、みなさんがいてくれたから、私はここにいる。ハジメともいられる。それはグランツさんや、お父様、お母様、他のみなさんだからこそ出来たことです」

 

「ジャンヌ君……」

 

「だから、これ以上の悪夢を終わらせるために、こちらこそどうかよろしくお願いします!……ハジメは、どう?」

 

「ふっ……言うまでもありませんよ。決めるのは俺達です。戦争を終わらせるためなら、それを望むお嬢様に自分は付き従うまでです」

 

 ハジメもジャンヌの言葉に賛同し、2人でグランツの手を握る。2人の手を握り、グランツは感極まる。それでもどうしようもないことにならないように堪えると、彼は感謝と共に、それを超えて隠していたことを2人に伝える。

 

「ありがとう、2人とも。そんな2人にこそ、言わなければならないことがある。ガンダムによる対決を終えた後の2人に、頼みがあるのだ」

 

 グランツは更に声を潜めて、2人にその概要を話す。ヴァイスインフィニットを討伐した時に始動する作戦。それを聞かされて2人も反応に困るものの、その宣言通り頷いた。

 事件後、オルレリアンとジードの手は重なることはなかった。互いに顔を合わせて国から制裁を受けて迷惑を掛けることを避けるために、触れることが叶わなかった。しかし、彼らの手は、先へと伸びた。誰とも知らない未来の、自分達の遺志を継いでくれる誰かへと向かって。そしてその手は重なろうとしていた。オルレリアンの血を継ぐファーフニル家の少女と、異世界から招かれた青年、そして青年が受け継いだ戦争の引き金であり、終わらせることを望まれた機動兵器「ガンダム」。そんな彼等が伸ばした手に重なり、受け止めようとしていたのであった。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。いよいよ次回から怒涛のヴァイスインフィニットガンダムとの決戦が描かれていきます!

ジャンヌ「2人の覚悟の再確認、過去の詩巫女達の想いの受け継ぎ……様々な気持ちを背負って決戦に赴くんですね」

レイ「元君も元通りっていうか、前より明るくなった感じでいいねー!……けど作戦って何だろう。国への復讐って言ってたけど……」

気になるのも分かりますが、それは文字通りガンダムとの決戦後、までお待ちいただくことになりますね。

レイ「ふーん、そっか。楽しみは取っておかないとね!でもまさかタイトルがこういう意味もあったとはねー。前も言ってたけど、SFよりもラブロマンスとか書いた方がいいんじゃない?」

あの……(´・ω・`)ガンダム書きたいんです。ラブを入れていくのが好きなのは否定しませんけれど。

ジャンヌ「引き継がれていく力……いつか奇跡を起こしそうですね。それはそうと藤和木今日はやけに口調が落ち着いていらっしゃいますね。どうされたんです?」

それなんですが作者は落ち着いていた方がよいのではないかという考えに至り、今回このように振る舞っています(´・ω・`)ただやってみた結果、これははっちゃけるか会話もなくして文字だけで進行した方が良いのではと思いましたがね(´・ω・`)どっちかに振り分けるとしたら、私ははっちゃけかなぁ。でも昔みたいな自分だけでやるのもいいいんですけれど。
それでは今回はここまでです。

レイ「次回からいよいよヴァイスインフィニットとの再戦!遂に新しいシュバルトゼロがベールを脱ぐよ。次回も括目っ!」


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EPISODE47 復活のゼロ、RE;MATCH1

どうも、皆様。室内にいても暑い日が続いていますね。エアコン様様です、藤和木 士です。

ネイ「アシスタントのネイです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよぉ♪いよいよね、作者君」

そうですね。今回はEPISODE47、ヴァイスインフィニット対シュバルトゼロの再戦が今回から始まっていきます。いよいよ第3章のメインイベントですよ!(゚∀゚)

ネイ「一度はすれ違った2人、元さんとジャンヌさんが再び手を取り合って宿敵ヴァイスインフィニットに2人乗りで初めてのMS戦に臨むわけですね」

グリーフィア「今から興奮しちゃうわねぇ♪勝つのはどっちなの?ねぇ、教えなさいよ~」

ちょっ、ぐいぐい来すぎですって!?(゚Д゚;)

グリーフィア「ま、絡み合いはこの辺で……詳しい話は本編に入ってからってことで」

ネイ「そうだね、姉さん。作者さん、そろそろ……」

温度差が……(´・ω・`)まぁそうですね。それでは気になる方も多いと思うので、注意事項だけ言っていきましょうか。

注意、今さらですが、本作品には別作品の要素も入ってきます。特に今話には、あの有名作品の用語を入れているので、不快に思われた方は申し訳ありません。あとがきでもそれについては説明したいと思います。

それでは、本編へ!


 

 7月7日。ドラグディアの建国記念日に当たるこの日、聖トゥインクル学園は多くの学生と民間人でにぎわっていた。学校行事の1つ、詩竜双極祭を擁する祭りの正式名称は「ドラグディア建国祭」。祭りの字の通り民間人も参加可能なイベント寄りの行事である。1週間前に起こった事件を聞いて例年よりも民間人参加人数は少ないものの、小中高一貫校が誇る敷地内には多くの参加者が露店などに集まり、一番の見どころである「詩竜双極祭」の始まりを昼間の内から待っていた。

 既に今の時刻は夕刻。だが今年は夕刻からは学生と中継を行うテレビ局の人間以外は夕方から学校敷地内を追い出された。それに対し暴動も起きたが、ドラグディア軍動員での追い出しには、もちろん意味があった。ヴァイスインフィニットガンダムが、黒和元との再度の対決を指定したのはこの日この場所なのであった。学校自体にはドラグディア軍が「対策」を施したものの、校内すべてが戦場になる可能性を考慮すると被害は甚大である。そのため校舎内に収容できる人数を考え、観客を退避させたのである。テレビ中継も詩竜双極祭の模様を可能な限り伝え、混乱を収束させる狙いがあった。

 残る生徒達には少数を除いて今日ここで起こることは知らせていない。知っている生徒はグリューネとネア、それにファントム・ナーガことローレインだけである。特にローレインはガンダム出現後迅速に参加者達を校舎内に避難させるという大役があった。教師陣はもちろんこの事は周知であり、生徒を囮にするこのような作戦に多数の非難が寄せられたものの、ここで討ち取ることの重要性を何度も伝え、何とか了承するに至ったのである。

 対決への準備を整えつつ、しかし詩竜双極祭という場を作るためにこのようなこととなった建国祭。学校の全学部を繋ぐ中央広場からは既に詩竜双極祭の開始を告げる挨拶が行われていた。

 

 

 

 

「――――では、参加者みなさん、全力を以って歌い上げてください!これで開会式を終わります」

 

「では参加する詩巫女養成科生徒は準備をお願いします」

 

 開催を宣言した校長と詩巫女養成科の先生の声に従い、参加詩巫女候補生たちはステージへと上がっていく。上がろうとする生徒の中に、グリューネ・サランディーネもいた。ロード姓からサランディーネ姓へと変わった彼女が、初めて参加する学校行事である。ステージへと上がっていく姉を、妹であるネアが頑張れと声を掛ける。

 

「頑張って、姉さん」

 

「フフッ、妹の声援に応えて頑張っちゃう♪」

 

 グリューネはウインクをしてステージを上がっていく。同時に周囲から歓声が沸き上がる。高等部生徒会長を仮にも務めるだけあって、ファンは多い。それらに応えていく気配りも忘れない。手を振ってステージを上がった先で並んでいく。するとその列の中に顔馴染みのある人物がいた。ノーヴェ・リントヴルンだ。

 妹であるディーナの事があったとはいえ、彼女もまた参加者だ。小さく手を振ると彼女は少し笑って手を向ける。しかしその笑みもやや力がない。まだ後悔が尾を引いている様子だ。妹のしたことを姉が必要以上に背負っていた。

 無論グリューネも完全にないものと出来ないことは分かっている。しかし、考え過ぎても仕方がない。彼女は妹が再びこの会場を襲うことを知らないが、グリューネはその時彼女が何かやらかさないかが心配であった。突然の事で狂ってしまわないことを切に願う。

 やがて参加者が出そろう。詩巫女養成科は全部で3クラス存在する。それぞれから5人が選ばれ、計15人でオベリスクへの反応を競う。ちなみに誰の反応かはオベリスクに繋がれた機械で測定され、モニターで表示される。とはいえ、詩巫女・観客側からは一切分からず、最後の結果を緊張しながら待つ形となっている。機械が正常に動作することが確認されると、斉唱の開始を告げる教師が前へと出た。その時である。

 

 

『すみませぇん。飛び入り参加で~す』

 

「っ!この声…………ディーナ!」

 

「来たわね……」

 

 

 突如響いた飛び入り参加と言う声。ステージ上だけではなく、観客席からも困惑の声が挙がる。状況を知らされていたグリューネはその到着を待っていた。彼女だけではない。会場の警備と避難を受け持つローレインも遠目で確認し、慎重に避難させるタイミングを見計らう。

 一方でガンダムに装依していたディーナは、揚々とした態度で当然のように校長に対し参加を告げる。

 

「ねぇ、いいですよね、校長?私歌いたいんですぅ」

 

「ディーナ・リントヴルンさん……この詩竜双極祭は選ばれた詩巫女養成科の生徒のみ参加可能なイベントです。貴女は選ばれていません。だから貴女の参加を認めるわけにはいきません」

 

 ディーナの申し出を校長は毅然とした態度で拒否する。MSを纏っているにも関わらず、これだけ落ち着いて対応できるのは、やはり教師の鏡と言えるだろう。伊達に校長は名乗っていない。

 軽くあしらわれる様な形になってしまったディーナ。しかし、彼女も引き下がるはずがない。少し困ったような動作をしてから、彼女はため息と共に言った。

 

「仕方ないですねぇ……じゃあ、こうしましょう。DNF」

 

「っ!」

 

「姉さん!」

 

 ステージ前の階段まで来ていたネアが、グリューネの前に出ようと駆けあがる。しかしその間にガンダムの必殺とも言える力が開放される。

 

『DNF サイレント・タイム』

 

 ガンダムから高純度DNで形成された光の膜、もしくは領域と言うべきものが展開される。それはたちまちに学校の中央広場を飲み込んでいき、その中に入った人々の動きを、時間を止めていく。グリューネも、ネアが前に出たところで時間を止められる。グリューネの体が半分ディーナのヴァイスインフィニット側から隠される形となる。

 

(動けない……わね)

 

 唯一止まらなかった思考の中で呟くグリューネ。分かっていたこととはいえ、これへの対処法はドラグディア軍も未だ対策出来ていない。高純度DNを用いて周辺空間に干渉するこのDNFは、まさに必殺の一撃。デメリットが果たして本当に機能するのか、生身相手にはオーバーキルと言えるほどの技だ。

 誰も動くことは出来ない。しかし切り札はある。それが来るのをグリューネは全てが止まった空間の中で待った。

 

 

 

 

 すべてが止まった。ネアも姉と同じく、その感覚を理解していた。しかし視線は前で固定されており、後ろに庇う形となっているグリューネを果たして身を挺して庇えているのだろうか。

 後ろが気になるも、ネアはただ前を見渡すだけである。すべてが停止したこの空間で、ただ1人自由に動くことのできるヴァイスインフィニットガンダムの装依者。しかしその装依者であるディーナは、何を思ったのかその装依を解除した。解除と同時に機体から現実世界へと出たディーナから分裂する様に倒れ込む人影。その人影は見た目こそボロボロとなっていながらも、間違いなくネアの友人でジャンヌの想い人レイア・スターライトで間違いなかった。

ヴァイスインフィニットガンダムの取り込みからなぜ彼女が解除されたのか。真意は不明だが、思わず叫びそうになる。しかしその体はまだ動かぬまま。あの時もそうだった。装依を解除したにも関わらず、停止空間が持続したことを。

 停止した空間の中で、ディーナがレイアの顎をもたげる。

 

「ほらーレイアさーん。久しぶりの外ですよー」

 

「うぅ…………ぁ」

 

(レイア……!すぐそこにいるのにっ……!)

 

 親友がそこにいる。しかし彼女の想いに反して体は動かない。ジャンヌではないが今すぐ駆け寄りたい。早く彼女の手から解放してあげたい。しかし、ことはもっと重大だった。

 

「さて……レイアを出したのは、これから面白い事をするためなんだよね。……選ばれたってことは、枠は15枠絶対に必要ってことだよね。つまり……」

 

 腰のホルダーから軍用ナイフを取り出すと、巧みに手の上で動かしながら自身の考えを聞かせる。

 

「1人消せば、1枠空くよね?」

 

 猟奇的な発言がその口から出る。1人減れば1枠空くというその短絡的思考は時間停止状態の彼らにとっては恐ろしいものだ。何せこちらは動けない。1人消すのもこの状態なら赤子の手を捻るが如く簡単なことだろう。

 ディーナの手が参加者に対し誰にしようかと左右に動く。ナイフの先が右へ左へと動き、選別していた。そしてそれが、ネアの方に向けられて停止した。

 

「うん。やっぱり前逃げられた貴方達、消そうか。姉さんでもいいけど、貴方達を消せばまたシュバルトゼロのパイロットを追い詰められるしね♪」

 

(っっ!!そんなの……助けて、誰か!ハジメさん……っ)

 

 心の中で強く求めるネア。しかし、停止空間でその声は発することすらも叶わない。ディーナの凶行に衰弱状態のレイアが途切れ途切れの制止の声を上げる。

 

「だ……めぇ…………そん、な……の……」

 

 その声に反応も示さないディーナはナイフの投擲行動に入ろうとする。しかし、それを制止する声が、空間に響いた。

 

「――――――生憎だが、させない。俺達がお前を止める」

 

「何?」

 

 停止空間に響いた、男の声。それと共にDNFサイレント・タイムで造り出した停止領域が鏡の割れるような音と共に崩れ去る。ネアやグリューネの体が動く。他の人々の停止も解除される。時は動き出した。

 時が動き出したことに苛立ちを見せるディーナ。彼女が向けた視線の先で、人々の波が道を作っていた。声が響いたのがその方向からだったこと、そしてその人物達が向かおうとしていたことで自然と道を譲っていた。その人混みが作った道を通ってステージへと向かうのは、この学園の制服を着た1組の男女。1人はこの学園で知らぬものは居ない、ファーフニル家次女ジャンヌ・ファーフニル。そしてもう1人、声を出した張本人であり黒のガンダムを引き継ぐ、過去の呪縛を抜けた青年クロワ・ハジメ。その2人がこちらに向けて歩みを進めていた。

 遂に来た2人。ネア達も待ち望んでいた登場である。しかし、どうやってディーナの、ヴァイスインフィニットガンダムのDNFを打ち破ったのか。そんな疑問が浮かぶまま、2人の歩みを見ていた。

 

 

 

 

「まったく……遅いじゃないの、ハジメさん?ジャンヌが出るの遅かった?」

 

「そんなんじゃないですよ、グリューネ・サランディーネ。ネアさんも遅れてしまい申し訳ないです」

 

「ハジメさん……いえ、大丈夫です」

 

 元はグリューネとネアと言葉を交わしながら、ジャンヌと共にステージに上がる手前の階段の前で立ち止まる。ステージにいるディーナに対しその視線を向ける。以前会った時と同じように、その顔には余裕の笑みが現れている。そしてその隣には1週間ぶりの再会となるレイアがいる。制服は既にボロボロとなり、彼女自身も至る所が傷だらけとなっていた。思わずジャンヌがレイアに呼びかける。

 

「レイアさん……っ!」

 

「ジャンヌ……ちゃん……ハジメ……君」

 

 レイアの弱々しい声がかすかに聞こえてくる。一方後方では既にローレインと教師が避難指示を飛ばし、生徒達が移動を開始していた。ステージに上がっていたグリューネ達詩竜双極祭参加メンバー・サポーターも、次々とステージを降りてその場を離れる。

 ステージ上の参加者が降りていくのを見て、ディーナは芝居じみた笑いと共に喋る。

 

「あらあら……参加者がどんどんいなくなってきますねぇ。これは私の1人舞台?」

 

「観客のいない舞台にどれだけ意味があるのか、疑問なところだがそうかもしれないな。お前のその高く伸びた鼻を叩き折る舞台のな」

 

「ふぅーん……なかなか生意気だね。私のサイレント・タイムをどうやって打ち消したのかも気になるけど」

 

 元が言った言葉に冷たく苛立ちを募らせるディーナ。彼女の疑問はもっともである。彼女だけではない。ネアや他の観客はもちろんのこと、作戦を良く知るであろうグリューネやローレインすらも知らない方法で破っている。

 その種明かしを彼女の「正体」と共に、「自身の口」から語る「元」。

 

「簡単さ。高純度DNをスターターから通して弾かせたんだよ。もっともそれをやったのは「黒和元」じゃなく「俺」だけどな」

 

「何……?」

 

「お前と同じさ。ディーナ・リントヴルンの皮を被った、いや、身体を、口を借りた私の同類……そうだろう、「エンド」!」

 

 「ディーナ」を指さして、そのように語る「黒和元」。傍から見れば分からない会話だ。しかし、その意味を理解したのか「ディーナ」は腹を抱え、しこりが取れたように笑いその正体に頷いた。

 

「……ふっ。アーッハッハッハ!まさかもうそこに気づいていたとは……しかもエンドとまで名付けるとは……いいね。その名前、頂くよ「スタート」?」

 

 呼ばれたのは、元のガンダムのOSである元英雄の一部、スタートの名。そう、今までディーナと話していたのは、元の体を借りていたスタートだったのである。

 スタートからこの話を聞いた時は元も驚いていた。ディーナが本人ではない、自身と同じ元英雄の一部と称される者に操られていることに。しかし、スタートはガンダムに保存されていたヴァイスインフィニットガンダムとの戦闘時の映像を見せて、それを確信したことを元やジャンヌ、それにヴェールとグランツに証明した。それは、シュバルトゼロが2度目のDNFを撃ちこみに襲い掛かった時の映像だった。口調を荒げたディーナの発言がスタートに疑問を抱かせた。更にガンドヴァルから回収された映像とも合わせての検証で、外観データから判断したディーナの予想肉体負荷許容量を判断し、そのような結論に至ったのである。

 元もそれを聞いて納得した。男である自分もこれまでの特訓で何とか耐えられるようになったというのに、ヴァイスインフィニットの装依者であるディーナはその自分と互角以上の戦闘を展開した。普通なら男女という持久力の差があるはずの戦闘で、息も切らすことなく戦えたのはあまりにも不自然だ。そして今それが本当であることが分かった。

 しかし、今回は元もまたスタートに操られる形となっている。これはスタートの独断ではなく、元自身とも話しての判断だ。もしディーナがあのDNF「サイレント・タイム」を発動させたのだとすれば、スタートの方が対処しやすい。それにスタートもまた実際に自身の手で確かめたいという。その思いに元が了承し、この形に至ったのである。

 エンドとして喋るディーナに、元であるスタートが言葉を借りる。

 

「やはりか……そんなに自身が救世主であると言いたいか?」

 

「もちろんとも。救世主ガンダムとは、この俺のことなのだからな」

 

 ディーナの口で「俺」と称するエンド。そこでまだ避難していなかったノーヴェが妹の体を使うエンドに呆然とした様子で問う。

 

「……そんなことの、ために?そんな自分勝手な理由で、私の妹の体を!」

 

 ディーナの双子の姉であるノーヴェはそんな衝動的な怒りの気持ちをぶつける。ノーヴェの気持ちは当然である。しかし、ここで返ってきたのは思いもよらない言葉だった。

 

「ん?あぁ……言い忘れていたな。俺は確かにこいつの体を使って好き勝手したが、俺を受け入れ、ジャンヌ・ファーフニルやレイア・スターライトを襲うことを決めたのは、全部こいつの考えだよ」

 

「なんだと……?」

 

「……どういう、こと?」

 

 元達の間に動揺が走る。ジャンヌはその声に怒りがこもる。受け入れたことまでは頑なにいくらでも想像できるが、何がどうしてノーヴェの妹がジャンヌやレイア、ネア、それにグリューネを襲わなければいけないのか。あの襲撃は全て彼女の思惑を尊重したというのか。

 様々な憶測が巡る中、エンドはディーナの口でそれをすべて明かす。

 

「ディーナは夜中遅くに俺の封印されていたスターターを手に入れた。何でスターターがこいつの手に届くところに現れたかと言えば、スターターが封印されていた遺跡でたまたま起こった超次元現象が関係してる。拾ったディーナは好奇心で俺の力を色々使った。それであいつは色々と知った、ドラグディア・マキナス両軍部の情報を」

 

「……ハッキングか」

 

「その通り。その中にジャンヌ・ファーフニルの家が詩竜の刻印によって呪われた家だってことも知ったわけだ。最初は知ったことを後悔していたこいつだったが、同時にジャンヌ・ファーフニルが国の指示で参加を要請された詩竜双極祭を辞退したことを知った。こいつは今まで詩竜双極祭の参加を熱望していたが、参加者から外されていた。姉よりも観客を沸かせるだけの会話力がなかったからな。参加できないことも知ってこいつの劣等感が刺激された。そして俺に、仕返しと称した八つ当たりを要求した。ついでに外部入学者で、唯一詩竜双極祭への参加を決めたっていうレイア・スターライトも同じように仕返ししろって言われたな。そこで俺はレイア・スターライトを俺のガンダムの強化のためにこいつの体を使うことにしたってわけだ」

 

「……つまり、今あなたが操っているディーナが……全部やれと……!?」

 

 ジャンヌの声が怒りに震える。自分への嫉妬はともかく、レイアは巻き添えにされたのだ。エンドはそれを利用してレイアを自身のガンダムの強化素材として扱っている。レイアを想うジャンヌに対し、あまりに残酷な仕打ち。しかもそのきっかけは他ならぬディーナであったのだ。加えてジャンヌは父親も亡くしている。ジャンヌの逆鱗に触れ、ノーヴェの精神に大きくダメージを負わせる。

 

「嘘……でしょ?ディーナぁ!?」

 

「よくも……よくもレイアさんを!お父様を!!」

 

「お嬢様!落ち着いてください!」

 

「ハジメっ!……うぅ……うううーー!!」

 

 飛び出しかけたジャンヌを制する元。元の制止にジャンヌは反発しようとしたが、その瞳の訴えで溢れ出しそうな怒りと哀しみを押し留める。今じゃない。スタートのコントロールから戻った元は主の怒りを抑えさせる。

 全てを話したエンドに、元は言う。

 

「結局のところ、お前はディーナ・リントヴルンの行動に乗じて俺のガンダムとの決着を付けようとしたわけか?」

 

「そうだな。だがお前みたいなやつに、俺と同じ機体を操ってもらうのは虫唾が走る!」

 

 要するに自身の機体に風評被害を付けられるのが嫌だと語るエンド。ディーナの言葉に従ったと言っても、結局のところは先程も言ったように自らの思惑を叶えさせただけであった。そこに独善的な考えがあることに変わりはない。元は自らの口で、自らの意志をエンドに対し言い放つ。

 

「エンド、お前が救世主かどうかはどうだっていい。でも、だからって他人を利用したり、陥れたり、傷つけるやつが救世主だなんて思わない」

 

「ふん、なんとでも言え。それが俺だ!エンドという救世主なのさ!」

 

「だからなぁ……お前は俺が潰す!黒のガンダムの「継承者」としてじゃない、ジャンヌ・ファーフニルの「従者」だからってわけでもない……黒和元という、「人間」として、俺自身の意志で、ヴァイスインフィニット……お前を討つ!」

 

「いいだろう……ガンダムの正義というものを、ここで証明する!」

 

 ゼロ・スターターをその手に構える。エンドも応える形でインフィニット・スターターを再始動させる。そのままボタンを叩くと、再びその体がヴァイスインフィニットガンダムへと姿を変える。装依の過程でレイアを再び取り込む。装依が完了すると、更にそこからディーナの体が実体化、ガンダムから分離する。

 分離したディーナは、頭を振って意識を覚ます。しかしその様子は現状を理解しきれていないものだ。ディーナに対し、ヴァイスインフィニットからエンドの声が響く。

 

『ディーナ・リントヴルン……お前はいいやつだったよ。けど、俺の体にはふさわしくない。今すぐ俺の前から失せろ!』

 

「ひっ!……は、はいぃぃ!」

 

「ディ、ディーナ!待って!」

 

 今までとうって変わった臆病さを感じさせる悲鳴を上げてステージから飛び降りるディーナ。ノーヴェがすぐにその後を追って飛び降りる。おそらくローレイン達が2人も無事に校舎内へ入れてくれるだろう。一方元も装依の準備を行う。ゼロ・スターターにロック・リリーサーを装填し、カードを入れる。カードが入ると、ゼロ・スターターからはこれまでと違った音声が発せられる。

 

ZERO ZWEI(ゼロ ツヴァイ)

 

『……ほう?』

 

 変化した音声にエンドもまた反応する。セレクトスーツカードの保存データの変更と共に、その音声も変わっていたのだ。

 装依に必要なパーツをすべて投入したスターターを自身の腰へと当てる。スターターからベルトパーツが射出され、スターターの反対側と合体して腰に巻き付く。スターター名が鳴り、元はその手をジャンヌに向ける。

 

「…………よろしいでしょうか、お嬢様?」

 

 元はジャンヌの準備を確かめる。了承してもらえたとはいえ、元としては今一度彼女の覚悟を確かめたかった。もしここで嫌だ、怖いというのならそれに従おうと考えていたのだ。

 だが、今の彼女に後退の2文字はなかった。彼女は元に挑発的な態度で返答する。

 

「冗談でしょう?レイアさんが未だに捕まっているのに、ここで行かないわけがないじゃない!……いつでも行けるわ」

 

 差し出された手をしっかりと掴むジャンヌ。表情も怒りこそあれど、覚悟のあるものだった。それに答えないわけにいかない。元はその手を握ったまま、前を向く。空いた右手を拳にして、スターターの装依ボタンを叩いた。

 

『Standby OK?』

 

 スターターから装依準備が整ったかを聞く音声が発せられる。その時元の脳裏にとある記憶が呼び起こされる。それは昔憧れたヒーローの出る特撮作品のシーンだった。その特撮作品のシリーズの1つでは変身に使用するベルトが作中の時々で使用者の覚悟を問うような意味合いに取られていた。

 柚羽が死んでから、封印し続けていた特撮作品。そのシリーズで必ず言われ続けた「言葉」。覚悟に対する返答を、今元も借りることにした。ジャンヌを護りぬくために、自身の力になってくれることを信じて。願掛けを願って、ヒーロー達の微力を借りるように右手を顔の横で開くような仕草を行い、宣言する。

 

「あぁ……今、やっとな。…………変身!」

 

 その掛け声と共に手の構えを横に振るう。アクセスゲートが2人を横から挟み込む。2人分の身体をデータ化したアクセスゲートは2人の体を1機のMSへと変貌させる。漆黒のガンダムは一度敗れて地に落ちた。だがその機体は、新たな翼と共に再び空へと舞い戻る。かつてのシュバルトゼロガンダムType0に似たウイングに、両肩の大型シールド2枚を備えたガンダム。その名は……

 

『ガンダム ザ ネクストジェネレーション!シュバルトゼロガンダム[Repair-ⅡFafnir]!』

 

 シュバルトゼロガンダム[リペアツヴァイ ファーフニル]、それが元とジャンヌ、2人のガンダムの新たな姿であった。緑色のツインアイとプロジェクションクリスタルが、蒼へと変化していく。2人の変化が反映されていくように。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。……え、変身はガンダムUCでも言ってますよ?(´・ω・`)商標はありますが、別作品で使っても……

ネイ「作者さん予防線張り過ぎです」

グリーフィア「けど、これ元君言っているの「仮面○イダービ○ド」よね?」

はいそうです。というか今更黒の館の設定の抜け落ちに気づいたのですが、元君昔は特撮ファンだったんですよ。元君の世界では「マスクライダー」という名前になっていますが、私達の世界でいう所の仮面○イダーです。ちなみに元君の世界ではガンダムの代わりにバーチャ○ンみたいなロボットがアニメ化されてシリーズ化しているという設定です。今更の説明に鳴りますが(´・ω・`)

グリーフィア「ピー音君が仕事サボっているわねぇ」

ネイ「それで、なんでこの場面で変身と……」

それは彼がヒーローとなったからですよ……まぁそんなわけでは当然なく、もっと現実的なこと言うと、力を手に入れた時のハイテンションが今、出て来たって感じです。
そもそもガンダムはヒーローものではないので、はい。この演出も彼がまだ成長途中というのを表していたりします。憧れ、ではありますがね。

グリーフィア「でも英雄(ヒーロー)、ではあるんじゃない?」

なんであなたそこで私の隠したいこと言ってくるんですかねぇ……(´・ω・`)

ネイ「なんか、イタイです」

( ;∀;)ストレートな感想どうもありがとうございます。だけど、本編でも言ってる通り、空想でも物語の主人公として戦った者達の力を借りたいという、元君の願掛けとしてなので、今後は一切使わないつもりですね。それを言い続けたらガンダムという作品の趣旨から外れるので。戦争はヒーローごっこではなく、またガンダムは兵器だ(´Д`)使い手の心も現れることもあるけどね

グリーフィア「え、何だって、ライ……システムは兵器じゃ……何だったかしらぁ?」

だからそれはあっちの話だから(;・∀・)

ネイ「はいはい、その辺にして……今回はここまでですか?」

そうですね。次回は2話分の投稿になります。

ネイ「次回もよろしくお願いします」


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EPISODE48 復活のゼロ、RE;MATCH2

どうも、皆様。台風めっちゃ多いわ(;・∀・)藤和木 士です。

レイ「アシスタントのレイだよ」

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです」

今回は前回の予告通り、EPISODE48と49の公開です。さぁ今回の2話、いよいよシュバルトゼロガンダム[リペアツヴァイ ファーフニル]の活躍です。いかなる武装を持つのか、それがこの2話で明らかになります。

レイ「今度こそ負けないよねっ!新しい武装なら、負けるわけないもん!」

ジャンヌ「一度は負けてしまいましたが、今度はジャンヌさんも含めた決戦……互角の以上の状況、ヴァイスインフィニットの方が逆転する可能性は少ないと言えます」

ヴァイスインフィニットさんもといエンドさんカワイソス(´・ω・`)負けること前提で話されてるよ……。さて、本当にどうなるのでしょうか。それでは本編へ。


 

 

 ステージの上と下で向かい合う、2機のMS。1機はディーナを操りし元英雄の一部エンドのヴァイスインフィニットガンダム。そしてもう1機は元とジャンヌが装依する、シュバルトゼロガンダム[リペアⅡファーフニル]。時代を超えて激突する2機のガンダムの姿は、奇しくも過去の出来事で予見されていた。

 機竜創世記の時代後に描かれた絵画「終誕の日」。そこでガンダムを挟んでぶつかり合うように描かれた黒と白のMS。その事柄だけは確かに今、ここで再現されていた。2機のガンダムは互いをにらみ合う構図となる。かつてのドラグディア建国の地で、歴史的対決が、今起ころうとしていたのである。

 

 

 

 

 新たなるガンダム、シュバルトゼロガンダム[リペアⅡファーフニル]へと装依を果たした元。その心には今までとは少し違った気持ちを感じていた。戦わなくてはというマイナスの義務から、戦うんだというプラスの意欲へと変化していた。それには間違いなくジャンヌとの和解や過去との向き合いで得られたことが大きい。何より元は、今までテレビの中で見て来た幼少時代のヒーロー達の物語の中での思いを感じ取れたように思えた。、覚悟を感じ取っていた。ヒーローごっこからまさに本物の英雄(ヒーロー)へと変われたように思える。

 無論それだけで思うのはダメだ。英雄という言葉は善にも悪にもなる。それでも戦いへの覚悟をわずかに感じ取れた元であったが、残念ながらその言葉はもう1人の装依者には不評であった。

 

『ちょ、ちょっと元!さっきの何!?変身ってアニメじゃあるまいし!』

 

「それ言うならアニメじゃなくて特撮でしょう。……まぁ、少し言いたくなっただけです。気にしないでください」

 

『気にするわよ!学校のみんなに見られているような状況で、そんなこと言う!?』

 

 男子ならそのような言葉は憧れとなりえるが、女子への受けは少ないのも事実だ。しかし女子でもそういったものに反応することは構わないし、悪いことではない。反対の例もあり得る。ただパートナーの反応を考えなかったのは問題であるので、元は自身の考えも踏まえてジャンヌに謝罪する。

 

「それは申し訳ないです。確かにお嬢様が気にしてしまうのはありましたね。でも後悔はする気はないので」

 

『うう……分かったわよ……でもやったからには絶対に勝つわよ!』

 

「無論です」

 

 2人の意見が合致したところで、そのやり取りを見ていたエンドが嘲笑う。2人の、特に元の言動に対して言及する。

 

『フッ、ヒーローごっことは、舐められたものだ』

 

 ヒーローごっこ。それは間違いなく先程の掛け声とジャンヌの反応を見ての事だろう。あるいはこの状況でよくそんな言い合いが出来るものだとでも言っているのだろう。

 しかし元は逆に指摘した。

 

「それ、お前が言えるか?」

 

『何?』

 

「お前だってごっこ遊びじゃねえか。ヒーローがただ救世主に変わっただけだ。救世主ごっこしてんじゃねーよ、スタートと同じだけ生きてるくせして、子どもなんだよ!」

 

『貴様ッ!!』

 

 図星を突かれた、あるいはプライドを傷つけられたという方が正しいか。いずれにしろ逆上したエンドが、ヴァイスインフィニットで襲い掛かってくる。その手にブレードガンを構え斬りかかってくるのを、こちらも新たな姿となったブレードガン・ニュー改め、ブレードガンン・ニューC(カスタム)で受け止める。

 互いに動かず、互角の切り結びのように思われる。しかし。

 

「っ!!」

 

『何っ!?』

 

 元の呼吸と共に、ヴァイスインフィニットガンダムを弾き飛ばす。更に飛ばされたヴァイスインフィニットに追いつくと、今度はこちらから斬りかかる。攻撃を受け止めるヴァイスインフィニットだったが、シュバルトゼロは連撃で更に押す。以前とは違う。攻撃を避けようとスラスターを噴かせるヴァイスインフィニットの動きを、シュバルトゼロは対応していた。流れを掴んだのは元の方だった。

 だが、簡単には抜かせないとエンドも油断を払拭するかのようにヴァイスインフィニットのウイングスラスターの出力を全開にする。圧倒的高機動性でシュバルトゼロのブレードガン・ニューCの攻撃から逃れる。すぐに元が追撃に入るが、移動距離が長い。すぐに攻撃範囲内に捉えることは出来ない。更にその動きを制限する形でエンドがブレードガンをガンモードに切り替えて放った。

 

『校舎に逃げ込もうと、攻撃が当たれば危ないんだよぉ!!』

 

 ライフル射撃は元のガンダムではなく、学校の校舎に向けられる。射撃攻撃で学校を破壊すれば、生徒に被害が及ぶ。前回元が危惧していたのを踏まえて、それを逆手に恐喝の形で戦闘に組み込んだのだ。救世主と名乗っているにも関わらず、その所業はまさに悪魔とでも言える行動だ。

 とはいえ戦術的効果があるのには違いない。もっとも、それもこちらが対策していないわけではなかったが。攻撃が放たれるも、それに目もくれずヴァイスインフィニットへと突き進む元。ビームはそのまま校舎へと刺さるコースだ。ところが校舎に着弾する直前、ビームが霧散した。

 

『何!?』

 

 狙いが外れ、困惑を見せるエンド。ヴァイスインフィニットの操縦が疎かとなり、そこを元も逃さず仕掛ける。刃にビームサーベルを纏わせ振り抜いたブレードガン・ニューCの一撃が、振り遅れたヴァイスインフィニットのブレードガンを切り裂く。爆風で両者の距離が離れるが、その爆炎を貫く形で元がシュバルトゼロの腰後方に備えられたビームライフル・ゼロを左手に構えて撃つ。

 攻撃は回避されるが、それでも回避運動に散漫なところがある。未だに校舎を破壊できなかったことを疑問に思っているのだろう。種明かしとしては実に単純だが、簡単に言ってしまえば校舎の壁を飾りに偽装したDNウォール発生器で発生させたウォールで防御しているのである。DNウォールの技術は既にヴェールの手で量産化が進められていた。街への被害を留めるべく、そのような建物の防衛手段としても使用可能なようにしていたのだ。

 試験運用のために開発されたそれを今回すべて使いガンダムとの決戦の場を整えた。前回の敗因には、思うように攻撃を使えなかったことも大きかった。これで心置きなくヴァイスインフィニットと戦えるわけだ。

しかし、そのすべての攻撃をDNウォールが受け止められるわけではないだろう。現に今も攻撃が通らない仕組みに学校の校舎屋上に降りたエンドが気づく。

 

『なるほど……校舎の壁面をDNウォールで薄くコーティングして防御しているわけだ。これなら多少のビームではびくともしない、ということか……だが、それでどうにかなると!?』

 

「アイツ……!」

 

 代わってヴァイスインフィニットの手に、腰背部から右手に長砲身のビームランチャーが握られる。明らかに高出力ビーム用の兵装だ。それを地面に向ける。そうはさせまいと元はビームライフル・ゼロをバーストモードに切り替えて連射する。3連射の低出力ビームがヴァイスインフィニットを襲う。しかしそれをシールドに増設されたパーツからDNウォールを展開して防ぐ。そのままビームが屋上地面に放たれる。DNウォールとの弾き合いになるが、勢いが強い。元が到達する前にビームがDNウォールを貫通した。が、そのビームが校舎に直撃と共に拡散する。

 

『なっ……』

 

「それは予測範囲内だ!」

 

 校舎を貫かない事態に焦りを見せたエンド。こちらへの迎撃は間に合わず、元が繰り出した蹴りでシールドごとその体を蹴り飛ばす。飛ばされる純白の機体に、蒼いビームを放つ漆黒の機体が再び優勢に立つ。

 DNウォールを剥した後もビームを受け付けなかった校舎にも、細工があった。全校舎の表面に、あらかじめビームコーティングを施してあったのだ。また校舎自体も名家の家の子女らが通うということで造りは盤石であり、3重の守りが施されていた。最初の対決ではガンダムの砲撃で破壊されていた校舎だったが、これだけの守りならば突破も困難だ。加えて他にも仕掛けを用意している。果たしてそれに相手は気づくことが出来るかどうか。そうならないように元はエンドを責め立てていく。

 初等部の校舎から、中等部の校舎へ。戦いは続く。ビームライフルによる撃ち合いが空を照らす。お互いにその圧倒的な高機動性で攻撃を回避していく。反転したエンドのヴァイスインフィニットが、腰部のスラスターから高圧縮ビームを放つが、それも回避し夜の闇へと溶けていく。ビームライフル・ゼロを通常出力に切り替え、連射して動きを絞ると両肩のシールド下方を前方に向けた。シールドには銃口が1門ずつあり、そこからマシンガンの如くビーム弾をばら撒く。弾幕量で上空を制圧する。それらを避けるために下方へと向かうヴァイスインフィニット。

 DNウォールで覆われた校舎屋上に滑るように着地した純白のガンダムは、そのままの態勢で漆黒のガンダムにランチャーの砲口を向ける。もう学校に攻撃していると迎撃が間に合わないと判断したのだろう。圧縮ビームをDNFとして放った。

 

『ディメンションノイズフルバースト!』

 

『DNF レイ・ブラスター』

 

 白銀の光の光球がシュバルトゼロに向かって飛ぶ。速度こそ早いが、今のガンダムに避けられないものではない。攻撃を回避する元。だがそこに更にビームが放たれる。ビームライフルから放たれた通常弾である。回避に刺さるように飛んできた追撃だ。しかしそれすらも元は回避する。以前よりも素早く、そして鋭角的な動きで回避して、お返しと言わんばかりにビームライフル・ゼロの最大出力を放つ。

 

「行けッ!」

 

『ちぃ!』

 

 攻撃が回避され、更に飛んできた攻撃に舌打ちをしつつも避けるエンド。行ける。元の中にガンダムの確かな手ごたえを感じていた。だが元の意識は敵対する白のガンダムに加え同乗者の方にも向けられた。

 

「お嬢様、大丈夫ですか?」

 

『え?大丈夫だけど……何か不具合あったかしら?』

 

 ジャンヌは不意に聞こえて来た自身の具合を聞く質問に、そのように返答する。順調に言っていると思っていたため、元の方で気づいたことがあると思ったのか、そのように返答したのだ。

 元の方で特に不具合はない。むしろ機体の反応速度など、これまでの機体と同じとは思えないほどの操作性、出力を感じている。そのせいでジャンヌの方が疲れていないか気になったのだが、むしろ自分から聞くのは心配しすぎな証拠だ。ジャンヌもきつくなって来ればきっとそれを訴えるだろう。ジャンヌの声に注視しつつ、このまま戦闘を継続することを伝える。

 

「いえ、これだけ動いているのでお嬢様の方も大変かと思いまして……もし何かあれば言ってください」

 

『あ……うん。大丈夫だから、気を抜かないで……って、元っ!』

 

 ジャンヌの悲鳴と共に鳴り響いた接近警報。一瞬の隙を突いてビームの射線から抜けたヴァイスインフィニットが、その手に光を灯して抑え込もうとする。ブレードガン・ニューCを盾代わりにして離脱する。盾となったブレードガンがヴァイスインフィニットの掌から放たれたビームに焼かれて爆散する。

 距離を取って体勢を立て直すためにシールド裏のビームマシンキャノンを連射する。通常のビームライフルと同程度のビーム弾が、マシンガンの速度でエンドへと降り注ぐ。弾幕の雨がヴァイスインフィニットの行く手を遮る。その間に左手のビームライフル・ゼロを右手に構えなおす。利き手による狙い澄ましたビームがライフルから放たれる。ヴァイスインフィニットの脚部を掠めるが、火花が散った程度で、すぐにウイングスラスターを出力全開にして迫る。

伸ばされた手をこちらもその左手に光を灯してぶつけ合う。ビームのスパークが散るが、ヴァイスインフィニットが仕掛けた。絡み合うスパークの威力が強まり、爆発を起こす。

 

「ぐぅ!」

 

『きゃあ!?』

 

 爆風にガンダムがバランスを崩す。電子世界にいる2人にもその影響が出て、制御に支障が出る。すぐに体勢を安定させるが、既にあちらもビームライフルを構えている。

 

『受けよ!』

 

「やられるか!」

 

 しかし、タダでは終わらない。元は全力で機体を制御し、ビームライフルを構えた直後に発砲する。ほぼ同タイミングで相手のビームライフルも火を噴く。交差したビームはそのまま互いのライフルに直撃し、爆散する。

 爆風から後方に退いたシュバルトゼロは、ライフルの残りを払う。そして近接戦闘を仕掛けに加速させた。相手も同じく接近戦を仕掛ける。こちらは拳で、相手は手を開いてビームをチャージしている。先程と似た展開だ。しかし同じ展開にはならなかった。

 

「っ!」

 

 元のシュバルトゼロが手甲を展開する。トゲ付きのメリケンサックがエネルギーのスパークを散らせる。その拳でヴァイスインフィニットの掌と激突する。同じくスパークを散らせる両者。だが爆発が起こる前に、シュバルトゼロの拳がスパークを断ち切った。断ち切り抜けた拳がヴァイスインフィニットの顔面に直撃し、装甲をわずかに砕く。

 

『なっ……ぐぁ!?』

 

 拳が抜けてきたことに反応できずに直撃を受けたエンド。顔を抑えるがそこに更に追撃としてシールドを前面に展開してのタックルをかます。衝撃により機体が揺れるが、ヴァイスインフィニットを大きく突き放した。

 さらに攻撃を加えようとウイングからビームサーベルを抜き放ち、斜め方向へと急降下する元。だがこれ以上の追撃はさせまいとビームサーベルを同じく抜き放つエンド。2機のサーベルが交差し、火花を散らす。

 鍔迫り合いから一度距離を離す両機。シールドを変形させてビームを放ってけん制するヴァイスインフィニットに対し、シールドからDNウォールを正面に展開しながらビームサーベルの柄に背部バックパックのブレードユニットを取り付ける元。ブレードユニットは自身が持つバーニアで制御してサーベルユニットに取り付けられる。丁度その準備が終わったところでヴァイスインフィニットが大きな一撃を放った。

 

『スラスターキャノン、最大出力!』

 

 腰部のスラスターユニットを砲身にした砲撃の最大出力を放つ。校舎屋上を掠め、フェンスを焼き尽くしながら屋上への入り口部分を半壊させていく。しかし構わず連射出力でシュバルトゼロに砲撃していくエンド。2人はガンダムで回避行動を行わせる。森に逃れながらも木々から飛び出てビームマシンキャノンを連射、木々を薙ぎ払いつつ反撃する。

 スピードを乗せながら振りかぶったビームサーベル接続式のマキナ・ブレイカーⅡA(エース)が白のガンダムのビームサーベルと激突した。だがマキナ・ブレイカーが持ち合わせる推力と合わせてボールのように跳ね返す。

 

「せぇい!」

 

『クソッ……なかなかやってくれる……だが、まだここからだ、行けッ、フェザーファンネル!』

 

 跳ね返されながらも態勢を立て直したエンド。そのままヴァイスインフィニットの手を振るうと、展開したウイングから小羽を射出する。宙を浮く12の遠隔操作端末。あれこそガンドヴァルを沈黙させた悪魔の使役する武装だ。ジャンヌも注意を促してくる。

 

『ハジメっ、ファンネルが!』

 

「分かってる……!」

 

 オールレンジ兵装、その厄介さはバァンとゼントによる訓練でよく分かっている。ガンブースターによる攻撃に、活路を見出すのは非常に厄介であった。しかも今回はその倍以上の数に無線操作による操作だ。

 以前はその武装を自身の目で見ることはなかった。おそらく使うまでもないと判断されたのだ。しかし今は違う。その武装を使わせるところまで来ていた。ならここで簡単に落とされるわけには行かない。元はマキナ・ブレイカーⅡAを構えたまま、その武装の名を叫ぶ。

 

 

「行くぞ……フェザー・フィンファンネル!」

 

 

 シュバルトゼロのウイングが分離する。6つの羽形状のそれは変形し、コの字の遠隔操作端末へと姿を変える。シュバルトゼロ最大の兵装「フェザー・フィンファンネル」が宙に浮く。同時にサイドアーマーを兼ねたホルダーバインダーとフェザー・フィンファンネルの接続部から高純度DNが溢れ出す。それらはまるでローブと光の翼か。幻想的な姿を作り出す。

 そして互いににらみ合うのであった。

 

 

NEXT EPISODE

 




EPISODE48はここまでとなります。続くEPISODE49に話は続いて行きます。

レイ「ファンネル対ファンネル!ビュンビュン飛び交う戦場になるんだね!」

ジャンヌ「旧作でもファンネル同士の対決はガンダム対ガンダムで展開されていましたね。今度も主人公側が勝てるといいのですが……」

それは続くEPISODE49で明らかになるということで……それでは次話も引き続きよろしくお願いします。

レイ「ネイ達にバトンタッチ~!」


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EPISODE49 復活のゼロ、RE;MATCH3

どうも皆様。引き続きご覧の方は改めまして。作者の藤和木 士です。

ネイ「アシスタントのネイです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよぉ」

さて、引き続き今度はEPISODE49の公開です。もうすぐEPISODE50や(^ω^)

グリーフィア「いいわねぇ。何かやるのかしらぁ?」

すみませんそんなことはないです(´・ω・`)さてガンダムの戦闘は遂にファンネルも交えた激闘へと向かっていきます。

ネイ「オールレンジ攻撃、ですか。バトスピのアニメとかだとサジットアポロドラゴン(ダブルブレイヴ)がやっていましたが……」

グリーフィア「まぁでもあれはオールレンジ攻撃というより射出して包囲したってだけだから、厳密にいうなら違うと思うけれどねー。訓練していたけど、元君のファンネル操作はいかほどのものかしらぁ」

それでは本編へ(´-ω-`)


 

 

「……こちらファントム・ナーガ。黒と白のガンダムがオールレンジ端末を起動」

 

『了解した。ファントム・ナーガがヴァイスにばれないよう支援に回ってくれ』

 

「了解」

 

 黒と白のガンダムを監視するように状況を報告するMSが1機、屋上にいた。ドラグーナの監視・暗殺用MSの1機、ドラグーナ・シーカーである。そしてそれに装依して報告するのは、先程生徒達を避難させていた元の友人ローレインだ。

 彼女もまたこの戦闘を互角にするために重要なファクターの1つだ。DNウォールを集中展開させた発生器へのDN補給、ガンダムの戦闘状況のモニター、そしてオールレンジ兵装使用時の不意の操作ミスの支援攻撃……。それをエンドにばれないように行うという普通のMSでは実行不可能な役目を行えるのは、ひとえに彼女のMSが特殊ステルス装甲「ミラージュ・スケイル」を装備しているからだった。周囲の景色に溶け込めるこの機体ならではの作戦行動。しかし油断はできない。

 ガンダムが如何なる能力を持っているか分からない。もしかすると何かのミスでヴァイスインフィニットに感づかれることになるかもしれない。ローレインの心臓はこの時点でかなり強く脈打っていた。それでも止めることは許されない。シュバルトゼロが、元とジャンヌが心置きなく戦えるようにしなければならない。今勝ち目があるのは、2人のガンダムだけなのだから。

 そしてそんな彼女の意気込みに応えるように、シュバルトゼロガンダム[リペアⅡ ファーフニル]は交錯する羽の中で互角に戦闘を繰り広げる。光の衣を纏い、襲い来る天使のような羽を切り裂き、撃ち抜いていった。その戦闘は下手にローレインが介入できない程に激しさを増していく。

 

 

 

 

『えぇい、墜ちろ!』

 

 エンドの苛立ちと共にシールドからビームが放たれる。2連装ビームの連射を黒い羽を形成していたフェザー・フィンファンネルは容易く回避して反撃の1射を行う。その攻撃エンドはヴァイスインフィニットの背部ウイングスラスター「WINGΣ-PROTOⅠ」を高機動形態にして、圧倒的推力で強引に回避する。

 おかしい。まだファンネルの攻撃は見せてはいない。訓練でやっているにしろ、初見の動きを見切ることなど……。

 エンドの思考に焦りが生まれてくる。少し前までファンネルを使わない戦闘すらも押し込まれていた男が、何をどうしてこの短期間でここまで追い詰めてこられるのか。フェザーファンネルは既に10基にその数を減らしている。対してシュバルトゼロのファンネルは6基のまま。確実に押されていた。

 

(認めるものか……!若輩如きに、この俺が!神話の時代を戦い抜いた俺が!)

 

 エンドもまたスタートと同じく創世記の時代を戦い抜いた元英雄だ。しかし同時にその記憶も欠落していた。自身の名前、それに戦争の中での仲間の記憶。何かの為に戦ったことは覚えていたが、仲間は一切覚えておらず、覚えていたのは自身と同じ形状のガンダムと剣を何度も交えたりした戦闘の記憶がほとんどだ。なぜこうなったのかも分からない。だが彼は確信した。自分は第一線で常に活躍し、救世主という他の者には届かぬ存在になったのだと。

 だからこそ、目の前の機体がいることが許せなかった。救世主は自分ただ一人でいい。自身の声に応えた人間の、嫉妬を交えた願いも彼にとっては救世主になるためのステップの1つに過ぎなかった。余裕を持って潰しに掛かり、一度は勝利したのだ。それなのに現状はどうか。ファンネルを使っておきながら、その動きを捉えられずにいた。

 許されない、許されるはずがない。こんなことがあっていいものか。きっとスタートが力を貸しているに違いないと。シュバルトゼロがファンネルを一か所に集めて放った砲撃がフェザーファンネル2基を落とす。そのタイミングでファンネルを一度回収したエンドはその怒りを声に出して震わせる。

 

『ふざけるな……こんなやつが……こんなやつが救世主になんて!許されるわけがないだろう!!スタート、貴様はそんなやつを前に立てて、俺と戦うというのか!卑怯者め!』

 

『……何か勘違いしてるようだな。確かに武装構成は考えたが、今動かし、戦っているのはこいつらだ。俺は一切この戦いに関与していない』

 

『何!?……嘘だ!ならば、なぜッ!』

 

 追求しようとしたエンドだったが、それを止める。それを問えば惨めになるのが自分だと気づいたからだ。追及してしまえば、その差が歴然となってしまう。思い浮かべただけで劣等感を強く感じた。

 自身の想像で更に劣等感を抱くエンドは、それを返上しようと怒りの雄たけびを上げる。

 

『おのれぇぇぇ!!エラクスッ!!!』

 

『あぐ……っ!がぁ!!』

 

 エラクスの起動と同時にレイアの悲鳴が響く。しかしエンドにもはやそんなことはどうでもいい。人質がどうなろうと、絶対に目の前の敵を潰す。それしかない状態で再びフェザーファンネルを展開した。蒼い光を纏ったガンダムが機体を荒れ狂わせながら黒のガンダムへと襲い掛かる。対するシュバルトゼロもまたそれに応える。

 

「お嬢様、いきますよ!」

 

『いつでも……っ!』

 

 蒼く光らせた機体が同じくフェザー・フィンファンネルを展開して向かってくる。フェザーファンネルに指示を飛ばし、それらの相手をさせる。そしてヴァイスインフィニット本体はロングビームランチャーを構えて本体に攻撃を加える。ロングビームランチャーの射撃が校舎へと当たっても気に留めず攻撃を仕掛けてくる蒼炎を纏う漆黒のガンダム。シールドとシールドとでぶつかり合い、弾き飛ばしたところにその実体剣を突いてくる。

 だがエラクス下の機体を捉えるには至らない。圧倒的高機動で後方に宙返りを決めながら、ロングビームランチャーとシールドの2連装ビームキャノンを放つヴァイスインフィニット。エラクスによる恩恵を受けた速射をシュバルトゼロは最小で回避運動を行い、距離を詰めてくる。同じシステムなら相手も同じように回避を選択する。だがその行動はエンドの狙い通りだった。

 こちらの方に集中させつつ、ファンネルに指示を飛ばす。残り7基に減らされたものの、回避行動を取ったタイミングでフェザー・フィンファンネルの動きが鈍ったのを見逃さなかった。2基のフェザーファンネルがフェザー・フィンファンネルの内1基に狙いを絞り突撃、1基を無事貫き爆散させた。更にフェザー・フィンファンネルの内3基をシュバルトゼロ本体に差し向ける。突撃に対しマキナ・ブレイカーで捌いていくゼロ。2基ほどを撃破されるが、緩んだところに再度攻撃を行った。

 

『DNF、シャイニング・レイン』

 

『もらった!』

 

 ロングビームランチャーから拡散高エネルギー弾が放たれる。シュバルトゼロを釘付けにしたところで放った一撃は、完全にその姿を捉えていた。残るフェザーファンネルも自壊覚悟でガンダムを包囲させた。エラクスでも追尾誘導弾となったこの攻撃からこの距離を逃れることは出来ないはずだった。

 だが、シュバルトゼロはそれすらも対応して見せた。

 

「やらせない!」

 

 ハジメの声が響く。と同時に、フェザー・フィンファンネルがガンダムを包囲する。四辺と三角の頂点を作るような陣形となったそれらの間から光の障壁が展開された。光の障壁はDNFの光弾を打ち消す。

 かつてシュバルトゼロが仕える主を敵MSの自爆から護るために使用したDNプロテクション。その技術はPerseusⅡを経て再びガンダムのウイングパーツに機能を付与されていた。防御にすべてのエネルギーを使用したフェザー・フィンファンネルは重力に従い落下してくが、ガンダムは未だに健在。そして一気に加速した。

 

「はぁっ!!」

 

 マキナ・ブレイカーⅡAの切り抜けとビームマシンキャノンの掃射。それらが残ったすべてのフェザーファンネルを撃ち落とす。完璧と思われたそれは、ガンダムの肉を切らせて骨を断つとも呼べる防御で防がれ、電光石火の如き攻めでファンネル全てを打ち破られた。その状況にエンドは固まってしまう。

 

(そんな……やつがあのタイミングで!?スタートの力もなしで……これが、これがガンダムの真の力とでも!?)

 

 エンドは知らなかった。残った戦闘の記憶が自身の戦闘スタイルすべてではないことを。完璧だと思っていた自分がこの時代の救世主となることを夢見て、過去の参照にまで目を向けなかったためである。

 自身の過去の栄光にだけ溺れ、鍛錬を怠ったことがこの結果を生んでいる。しかし今なおそれに気づく余地もないエンドに、ヴァイスインフィニットのエラクス作動限界時間が近づいてくる。

 かつての対決ではエラクスの制限時間の差で勝利したエンド。だが今それがどうなっているか、エンドは知らない。ジャンヌ・ファーフニルを取り込んだという時点でシュバルトゼロもエンゲージシステムを使っているのは明白。その相性がどれほどとはいえ、少なくともこちらと同じ時間だけはシステム安全停止ラインを有しているはずだ。それを上回る方法となれば、それはシステム危険域ギリギリまでエラクスを使うしかない。エンドはヴァイスインフィニットのシステムに指示し、エラクスの使用時間延長を行った。限界を超えて稼働するエラクスの光が、機体に負荷を掛け火花を散らせる。レイアにも同じように負担を強いる。

 

『ならば、この攻撃でェェェェ!!』

 

「っ!!」

 

 捨て身の猛攻をシュバルトゼロに仕掛けるエンド。だがそれは所詮持たざる者が足掻く様子でしかない。エンドの攻撃にシュバルトゼロもまたエラクスの光を纏い続け、応戦する。マキナ・ブレイカーとDフィスト・イレイザーロストがぶつかり合う。光を放つ左腕が蒼く染まった漆黒のガンダムを掴もうとするが、その攻撃を的確に躱して反対にその一撃を振り下ろす。間一髪で受け止めるが、受け止めたところでビームサーベルを開いた膝装甲に発生させて蹴り込みを入れてくる。シールドで間一髪防御するも、DNウォール発生器を貫かれ、爆発をもろに受ける。

 既に戦闘の場所は高等部校舎上空まで来ていた。そして逃げるように再び中央広場上空まで移動する。振り返って、元に対し不意打ちを仕掛けようとヴァイスインフィニットがその腕を振り上げた。その時である。機体がスパークを帯び、その動きを止めた。

 

『なん……!?』

 

 機体の急停止にエンドは困惑する。それはガンダムの負荷の限界であった。エラクスシステムの制限時間強制延長はジェネレーター本体だけでなく、機体のモーターにも負荷を掛ける。それらの負荷もコントロールするのがエンゲージシステムの1つの仕事なのだ。それがレイアを道具のように扱ったことでその精密性は低下。今そのツケが機体の強制停止を招いたのである。

 機体の停止による反動でロングビームランチャーを取りこぼす。機体の不調に逃さず攻め込むシュバルトゼロ。マキナ・ブレイカーを振り上げる。

 

「今っ!」

 

『えぇい!うごけぇぇ!!』

 

 エラクスが止まりかける中、エンドはヴァイスインフィニットの腕を動かし、シュバルトゼロの実体剣を即座に抜き放ったビームサーベルで防御する。

 攻撃を受け止め、その場の危機を回避したと判断するエンド。だがマキナ・ブレイカーⅡAの切っ先をヴァイスインフィニットの肩口に向けた状態で、シュバルトゼロは攻撃を繰り出す。実体剣接続部から音が鳴ると、側面スラスターを全開。サーベルから抜けたマキナ・ブレイカーⅡAの刀身がヴァイスインフィニットの左腕を貫き斬る。

 

『はぁっ!?』

 

「ぐっ……これで……終わりっ!」

 

 エンドの驚愕の声が木魂する中、漆黒のガンダムが蒼い残影を残して目の前から消える。背後を取った漆黒のガンダムは最後の一撃をその一刀に込める。

 そして最大出力で形成したビームサーベルが、ヴァイスインフィニットの背部に振り下ろされる。エンドの渾身の抵抗で機体がずれる。だがその刃は猛禽類を思わせるWINGΣ-PROTOⅠの右翼をバックパックから斬りおとす。同時に2機のエラクスが解け元の白と黒の機体にそれぞれ戻る。

オーバーロード状態となったウイングが爆発を起こし、ヴァイスインフィニットが地面へと叩き落される。衝撃で電子空間のエンドは大きく痛みを感じる。対するシュバルトゼロ[リペアⅡ ファーフニル]は翼とホルダーバインダーに展開していたDNの翼を収め、ゆっくりと相対する形で地面へと着地する。

 そこにあったのは無残な姿となったヴァイスインフィニットと、傷つきながらも立つシュバルトゼロの姿。その姿に校舎からは歓声が上がる。無惨な姿に、エンドの精神が荒ぶる。

 

(あり得ない……!あり得ないあり得ない!!こんな形で負ける……?ふざけるな!負けるわけにはいかない。させない!こうなれば……あれを使うしかない。タイミングは一度……不意の一撃を……!)

 

 敗北など認められない。負ければ奴の軍門に下るだけである。そんなことをエンドは認めるわけがない。大破寸前の機体状況でも、まだエンドは諦めない。互いにエラクスを使い切った状況なら、まだ逆転の手はある。まだ見せていないあの切り札を使えば、きっと勝てる。

 エンドはヴァイスインフィニットのダメージコントロールを優先させつつ、こちらへと呼びかけるシュバルトゼロの動きをじっくりと様子を窺う。

 

 

 

 

『はぁっ、はぁっ!』

 

「ジャンヌ、大丈夫か」

 

 息を荒らげる主の声に、元は具合を伺う。エンゲージシステムのサブパイロットはメインパイロットよりも負担は少ない。それでも高機動を連続して行うエラクスシステム下での戦闘、サブパイロットにも相応の負担がかかるのだろう。だがジャンヌはそれとは違った理由で息が上がっていることを伝える。

 

『……エラクスじゃなくて、刻印の影響が……ごめんなさい』

 

「ジャンヌ……」

 

 詩竜の刻印。ジャンヌを未だに苦しめ続ける、呪殺刻印。その痛みがここに来て再発していたのだ。戦闘中であったとはいえ、それに気づけなかったのは元の心に来た。

 落ち込みに気づいたのか、ジャンヌは平静を装って叱咤する。

 

『ちょっと、まだ戦闘は続いているのよ。わたくしに目を向けるほど余裕があるんですか!?』

 

「……悪い、ジャンヌ。もう少し我慢していてくれ」

 

 謝罪を掛けてから再び地面へと足を着くと、大破状態でこちらを睨み付ける白の機体に目を向けた。その装甲には既に煤が掛かっており、純白と形容するには行き過ぎる。だがその戦意はまだ緩み切っていない。未だに下がらないその手が、こちらへの反撃の機会をうかがっているように見える。

 元は一歩一歩慎重に進み、一定の距離で停まると大破寸前の白のガンダムの装依者に呼びかける。

 

「もう諦めろ。お前の負けだ。レイアを解放しろ!」

 

『フン……誰がそんな事を。そんな事を言っている時点で、結局貴様達は俺の手からレイア・スターライトを救い出す手を持っていない!』

 

『ぐぅ……!』

 

 図星を突かれた発言にジャンヌは歯ぎしりする。厳密にいえばなくはない。スタートからその方法を2つ聞いていた。だが1つはヴァイスインフィニットを完全に行動不能にしてから他の機械で強制的にエンゲージを解除する方法。そしてもう1つはジャンヌがDNFで纏わせた高純度DNを制御して、エンゲージシステムに干渉する方法だ。だがそれも非常に制御、そしてメインパイロットの動きに合わせるというのが厳しく、2人の動きを合わせた訓練でも一度たりとも成功していない。

 出来ることなら、ヴァイスインフィニットを逃してでもレイアの救出を優先したかった。だが今まで成功していない技を、ここで使うのはあまりにリスキー。しかもジャンヌの体調もここに来て最悪と来ている。昔平次に成功していない技をここぞという時に繰り出すと絶対に成功するというジンクスが漫画にはあると聞いたが、これはそんな世界の話ではない。命が掛かっているのだ。

 それならばと元は危険の少ない方法を取っていく。ビームサーベルを再度出力し、構えながらヴァイスインフィニットとの距離をじりじりと詰めていく。動けないとはいえ、エンドの戦闘力は計り知れない。これまでの攻撃も、ほぼ咄嗟の反射的対応で最小限の被害で潜り抜けてきたのだ。油断をしていればあっという間に逆転されかねない。

 

「悪いが……動けないようにさせてもらう」

 

『サーベルで四肢を切り離すか……妥当だな。しかし、レイア・スターライトにも多少のフィードバックダメージが行くぞ?それでもいいのか?』

 

 惑わす言葉をエンドは投げかける。だがそれは既に先刻承知。戦った時点でそうなることは承知の上だ。レイアが衰弱しているのだけが気がかりだが、メインパイロットよりもフィードバックを受けにくいエンゲージシステムの特性を信じて、元は突撃する。

 一刻も早く、ジャンヌをこの機体の中から出して、負担を軽くしたい。そんな思いから機体を突っ込ませる。だが元は忘れていた。アルス・ゲートとの初対決時、勝利を焦った元は常に先に決めようと突っこんでしまい、逆に返り討ちにされたことを。その流れはこれまでも別の形で何度も経験した元の負けパターンだ。そして、その生まれた隙をエンドは見逃さない。

 

「一気に……決める!」

 

『……フハ!待ってた……ぜ!』

 

 瞬間、ヴァイスインフィニットの機体装甲が開く。同時に動き出したヴァイスインフィニットの流れるような動きが反撃に気づき急停止を掛けたガンダムの横を通り過ぎる。その刹那右肩のシールドが両断され、ビームマシンキャノンが爆発を起こす。

 

「何っ!?」

 

 爆風で何が起こったのか分からなくなる。だが状況を確かめる前に続く攻撃が死角から迫る。その接近に気づいたジャンヌが反応する。

 

『元ッ、左!』

 

「っく!」

 

 その声に従いビームサーベルを振るうが、回避される。逆に攻撃を滑り込まされ、サーベルの端末を両断された。小爆発に後退しつつ反撃としてDNFを放つ。

 

『Ready set GO!DNF、シャドウストーム・クロスレイド!』

 

 滑りながら地面に拳を打ち付けると、周囲に4つの闇の竜巻が形成される。形成された闇の竜巻は囲うように謎の動きをするヴァイスインフィニットへと進路を取る。だがヴァイスインフィニットは強化されたシャドウストームをいともたやすく回避し、シュバルトゼロの前に立ちはだかる。

 目標を見失った4つのシャドウストームは自然に消えていく。あまりに奇怪な動きで回避するその機体は、まるで別次元のMSのように思える。そしてエンドは自信満々に言い放つ。

 

「さて、ここからは俺のターンだ」

 

 ヴァイスインフィニットの奥の手が開放された瞬間である。

 

 

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今回もお読みいただきありがとうございます。

ネイ「な、なんなんですか、あの動き!?」

グリーフィア「奇怪な動き、って書いてあるけど、ほとんど本体には無傷のガンダムが対応できないって相当よねぇ……あ、あとローレインさんも頑張ってるのね~。ちょっと校舎が壊れたみたいだけど」

奇怪な動きの正体については、また次の話で明らかにしていく予定です。校舎破損は……まぁ、でっぱり部分に強い力が入って根元から、といった感じです。

グリーフィア「そうなのねぇ……。でも、エンドもなかなか往生際が悪いこと。往生際にしてはかなり強い一手みたいだけれど」

ネイ「元さん達は大丈夫でしょうか……ジャンヌさんも刻印の影響が強いようですし……」

さて、それがどうなるかは次回のお楽しみということで。次回はたぶん1話くらいの投稿になると思われます。

グリーフィア「次回も、よろしくねぇ~♪」


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EPISODE50 覚醒する機竜、戦いの果てに……1

どうも、皆様。世間ではコミックマーケットことコミケが開催されお盆にも入る今日この頃、私もコミケとまでは行かずとも名古屋のメ○ンだったりに寄りたいなぁと思っている、藤和木 士です。

レイ「アシスタントのレイだよ!私の絵師さんもコミケに出てるよっ!というか、私はバトスピの開発部の人が自ら絵師さんの出てるコミケ系列のイベントに行ってお仕事お願いしたんだって」

ジャンヌ「同じくアシスタントのジャンヌです。わたくしの絵師様も同じくコミケに出ているそうです。あぁ、それくらい特別な存在なのです、レイさんは!藤和木も是非レイさんの絵師さんの本を委託で買ってくださいっ!」

ごめん、それディーバブースターが予想より前倒しになって焦ってる人に言うセリフじゃないから(゚Д゚;)でもなるべく買いたいね。
さて、コミケもいいですが、今回はEPISODE50、サブタイトルが次へ移行しつつのヴァイスインフィニット戦の続きとなります。

レイ「前のお話ではいい感じに押してたけど、逆襲って感じだね」

ジャンヌ「隠し玉のようですが、一体どうして、あのような力を……」

その謎に満ちた機動性の正体とは、この機動性に元達はどう立ち向かうのか。本編をどうぞ。


 

 その運動性能は極めて奇怪であった。今までの劣勢が嘘のような、全く違うような動きで、攻撃を文字通り滑らかに回避するそれは確実にシュバルトゼロを、ハジメとジャンヌを追い詰めていた。先程までの攻撃の流れを考えれば、逆転という言葉が似合うだろう。

 その動きに何とか対処していくハジメ。そのハジメをジャンヌも精一杯サポートする。だが攻撃は当たらず、迫りくる攻撃に武器を削られながら忍ぶ。速度がエラクスほどではないにしろ素早いことも相まって攻略は困難を極めていた。もう1つのビームサーベルが空振りし、小さく宙に浮いたヴァイスインフィニットの繰り出すビームサーベル振り下ろしが残る左側のニューオーダーシールドのアームユニットを両断する。破壊されたアームを切り離し、距離を取るシュバルトゼロ。ハジメがあの動きについて苦言を述べる。

 

『クソッ、攻撃が読めない!スタート、どうなってる!?』

 

 スタートに助言を求める。しばらく黙っていたスタートだったが、満を持してその口を開いた。

 

「……ここまで来れば、何とかなると思っていたが……まさかまだこの手を使えたとは」

 

「スタート、知っているの?」

 

「あの動き、間違いない。あれはガンダムの高純度DNフルコントロールシステム……サイレントモード」

 

『ご名答!』

 

 スタートの指摘を受けてエンドが称賛を送る。動きが止まるが、その動きは左右前後に機敏に動き、いつでも攻撃に回れることを密に示している。

 エンドの動きに注視しながら、ハジメとジャンヌはそのシステムの説明に耳を傾ける。

 

「サイレントモードは、解放した機体装甲からコンデンサータンク内のDNを放出、機体に纏わせ外界との空気抵抗を半減させることで機動性と実体弾に対する耐弾性、そしてDNを使用する攻撃への回避性能を向上させるDN制御能力に秀でたガンダムが持つ能力強化機構だ」

 

「何よそれ……そんなの反則じゃない!ガンダムならこっちも使えるんじゃないの!?」

 

 DNを使用した攻撃に対する回避性能という性質ジャンヌは苛立つ。ほとんどのMSはDNを用いた攻撃を主力としている。その力はまさにチート級の力だ。しかしガンダムの力と言うのなら、こちらもそれと同等の力を発揮できるのではというジャンヌの考えは当然だろう。

 スタートもジャンヌの言葉を肯定する。だが、簡単には叶えられない条件を彼は2人に伝える。

 

「使えはする。……だが、それらシステムの単体での使用は制御が難しすぎる。エンゲージシステムを用いてもその制御は困難を極める。レイア・スターライトを救出するための訓練が一度も成功しなかった時点で、どうにもならないのは分かっていたからな。それに至る前に完全粉砕してくれれば良かったんだが……まさかあの状況で発動できたとは」

 

「で、でも……ならどうしてあっちは制御できているのよ!?」

 

 ジャンヌの疑問、それは向こうがこっちと違う、無理矢理のエンゲージであるにも関わらず、その難しい制御が出来ているのかというものだ。DNジェネレーターの制御はエラクス時にコントロールする感覚が多く感じたがまだ忙しいと言った程度だった。それ以上の制御を、なぜエラクスの起動時間に制限が出るあちらが使いこなせるのか。

 ジャンヌの疑問に、スタートがその真逆とも呼べる理由を答える。

 

「簡単だ。むしろそのシステムの制御はエンゲージシステムでパートナーを酷使した方が制御はしやすい。DNの定着を機械的に行えば、まんべんなく、均一にしやすくなる。そうなったらエンゲージ相手はただの処理装置に成り下がるがな」

 

『…………まさか!?』

 

 ジャンヌの悪い想像。それが現実としてヴァイスインフィニットの機体から聞こえてくる。

 

『あぁっ、あぁぁぁぁ!!』

 

「レイアさんっ!!」

 

『ハハハッ。さて、あとどれくらい持つかな?』

 

 耳に劈くレイアの悲鳴。その声を聞いて大層愉悦に浸るエンド。ジャンヌの怒りは一気にヒートアップする。

 もう自分がどうなってもいい。詩竜の刻印と合わせて死んでも構わない。助からない命なら、せめてレイアを助けたい。思考がレイア優先となったジャンヌは、ハジメとスタートに同じシステムの使用を願った。

 

「ハジメ、スタートッ!わたくしはどうなっても構わない。だから同じシステムで、レイアさんを!」

 

『………………それはダメです』

 

 だが、ハジメはそれを拒否する。一刻もレイアを助けなければならない状況で返された言葉に、ジャンヌは苛立ちをぶつけてしまう。

 

「何で!?」

 

 ジャンヌの悲痛な叫び。しかしスタートも希望をにおわせる発言と共に、それが出来ないことを告げる。

 

「だろうな。ジャンヌがもう少し安定していたなら、短時間でも発動を俺は承認してたが……もっとも、パートナーを犠牲にするような事を今の相棒が許可するわけがない」

 

「っ……!」

 

 パートナーの犠牲。ジャンヌの手を離さないと誓ったハジメが、ジャンヌを犠牲にすることはそれを自らの手で否定することを意味する。例えそれでレイアを救出できたとしても、ジャンヌがいなければ意味はない。それを彼女も知っていた。

 きっとハジメはこの状況を歯がゆく思っているんだろう。確かにそれを使えば互角に持ち込める。しかしたった少しの敵を追い詰められるとしても、そのために弱っている自分を酷使したくないと思っている。いつの間にか自分の事をお嬢様ではなく、ジャンヌと呼んでいることからも想いは明らかだ。

今も首筋から体に伝わる痛みは続いている。息が止まるんじゃないかというくらい、胸に痛みが続いている。でも、それで命が失われていくくらいなら、自分の命なんてと思ってしまう。ジャンヌは嗚咽交じりにハジメに嘆願する。

 

「お願い、ハジメ。私を使って。壊れてもいいから……レイアさんを……」

 

『…………そんなこと、するわけないでしょう?』

 

 だがハジメはジャンヌの願いを真っ向から否定する。その声に怒りを感じさせていた。臨戦態勢を取った状態でハジメは言う。

 

『もう絶対に、離さないと誓った。例えその人が自らの犠牲を望んでいたとしても、そんな方法を取らなくてもいい未来を探し出す!そのためなら、絶対に生きる。生きて君を護る!』

 

「ハジメ……」

 

 そこで恥ずかしいからやめて、などとは言えなかった。ハジメも必死にあの力を突破する方法を探している。ジャンヌの気持ちを痛いほど分かっているのもハジメなのだ。むしろ楽な方法を言っているジャンヌの方が足を引っ張ってしまっていた。

 腕部から通常出力のビームサーベルを取り出し構えるシュバルトゼロ。更に同じタイミングで上空からビームがヴァイスインフィニットを襲う。

 

『援護する、ハジメ、ジャンヌ!』

 

「ローレインさん!」

 

『!ダメだ、ローレイン!下がれ!』

 

 これまでサポートに回っていたローレインが、援護攻撃を行ったのだ。しかし、直撃を狙えたビームも今のヴァイスインフィニットには通じない。むしろステルス機体が場所を晒しただけだ。ヴァイスインフィニットも場所を特定し、襲い掛かる。

 それを阻もうとシュバルトゼロが追いすがる。だが接近に気づいたヴァイスインフィニットは宙返りを行いながら背後を取ると、その背に向けて攻撃を仕掛ける。間一髪攻撃を受け止める姿勢を取った。だがすぐに退き、間合いを測ってくる。ヒット&アウェイを徹底した動きは、その機動性も相まって非常に攻めを困難にさせていた。それでもハジメはエラクスで機能低下した機体でサイレントモード状態の機体と交戦する。

 しかし、その動きは一目瞭然。ビームサーベルを躱され、その手から弾き落とされる。続く連撃を胸部に受け、カウンターの一撃を振り抜くがまた懐に入られサーベルを弾かれる。後がなくなっていく。咄嗟に繰り出した脚部ビームスパイカーを出力して追い払うが、その刹那ビームスパイカーも突きを受けて爆発を起こす。ハジメが機体バランスを保とうとするが、既にエンドは機体をシュバルトゼロの背後へと動かしていた。

 

「う……ハジメ、後ろっ!」

 

『っ!!』

 

 背後に向けてハジメが逆手にブレードガン・ニューC持ち、差し込むように振るう。だがその刃が届く前にヴァイスインフィニットは機体を少し浮かしてその上からビームサーベルを振り下ろそうとしていた。

 

「読まれ……!?」

 

『消えろ、偽りの救世主!!』

 

 光刃がシュバルトゼロを、ハジメとジャンヌを頭部から一刀両断にした―――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はずであった。ところが、

 

 

『何っ!?』

 

『…………っ!』

 

「え……」

 

 そこにあったのは、ブレードガン・ニューCを逆手からいつの間にか順手に持ち直し、ビームサーベルを受け止めるシュバルトゼロ――――ハジメの姿であった。これまで捉えることのできなかったヴァイスインフィニットの動きを、遂に捉えたのだ。

 受け止めたことで生じたエンドのわずかな隙。ハジメはエンドのガンダムを弾き返してすぐブレードガン・ニューCの刀身からビームサーベルを発振させて追撃する。本来なら機体を覆う高純度DNの膜が防御するDNを使用した攻撃。だがわずかな動揺が高純度DNの膜を弱らせ、その切っ先が膜を切り裂いてヴァイスインフィニットの腹部に切れ込みを入れた。

 不意のガードと反撃にエンドも動揺を隠せない。なぜ攻撃を読めたのかと平静を乱した口調で問いかける。

 

『なぜだ、なぜ攻撃が!?』

 

 ジャンヌには見えていた。ハジメが振り抜いた途中でブレードガンを途中で手放し、回転させながら再度キャッチしたシーンを。それでもなぜその動きを読めたのかは分からなかった。ジャンヌも思ったその理由は、とても彼らしい、しかし聞いた者を困惑させる内容だった。

 

 

『負けたくないって思った。こんなところじゃ、終われないって。攻撃を振った瞬間お嬢様との記憶が走馬灯のように蘇ってきた……死ぬんだって思った。でもお嬢様の声が聞こえた気がした。それで聞こえたんだ。俺の周りを乱すノイズ、俺とジャンヌに向けられた殺意の音……ジャンヌのおかげで、お前の動きが分かった!』

 

「ハジメ……そうか、お前は……」

 

「ハジメ…………っ」

 

 

 スタートが何か気づいたように声を発する。だがハジメの発言を聞いたジャンヌは、言い難いもどかしさを感じていた。言わなければいけないことを言えない自分への苛立ち。気づいていた、しかしレイアという想い人のために否定し続けていた感情。今ハジメに言ったところでこの状況を覆すことのない事実。しかし先程のハジメの言葉、今までのハジメとの思い出が蘇った。強まるその想い。否定したかった感情はもう止められない。それでも言うことは出来ない。状況だけではない、戦っている時ではなくても過去を乗り越えたばかりのハジメに、そんな事を言ってしまっていいのだろうかと。

 だが、そこで誰かが言ったような気がした。「いいんだよ」と。振り返った先には電子がわずかに集まり、かすかに見える少女の影。ジャンヌは電子に映る人物を知らない。だが自然とその影に口角が上がる。

 

『ノイズだと……?ふざけやがってぇぇぇぇ!!』

 

 ハジメの発言に怒りを燃やすエンド。ヴァイスインフィニットが再び攻撃を仕掛けてこようとする。ハジメがその攻撃に合わせてブレードガンを構え、迎撃の構えに入る。そんな中、ジャンヌは心の中で、誰にも届かない「告白」をした。

 

 

 

 

(わたくしは……私は、ハジメが――――――――――好き)

 

 

 

 

 それがトリガーだった。突如光り出すガンダムの電子空間。コンソールが光り出すと、その光がジャンヌの体にも及ぶ。戸惑うジャンヌをよそに光は強くなっていき、やがて首筋から全体に伝わっていた痛みの元凶を排除する。呪いを除去され、嘘のように体が軽くなる。

 光はガンダムの中から、外にあった黒い石柱「ドラグーン・オベリスク」へと向かう。詩竜双極祭で重要となるそれに光が吸収されると、オベリスクもまた光り輝き出す。突如起こった現象は双方に衝撃を与えていた。

 

 

 

 

「なんだ?急に光り出して……」

 

 唐突に起こった発光現象に元の視線は釘付けとなる。本来なら最大の隙だったが、それに魅入られたのはエンドも同じだった。だがその理由は少し違った。その現象に彼は当たりがあったのだ。

 

『この輝き……もしやと思っていたが、やはりこの石柱は!』

 

 エンドの発言に反応したのか、石柱に変化が訪れる。ヒビが入っていく石柱はやがて崩壊を始める。崩れ落ちていく黒い石の柱。だがその中にうずくまる様に翼を閉じた何かが現れた。

 それは外界を感じ取ると、その翼を大きく広げた。黒い翼を広げ、俯かせていた首を上げる。それはまるで、機械で出来たドラゴンのようにも見える。機械のドラゴンということでクリムゾン・ドラゴニアスを連想したが、それにしては小さすぎる。そもそもこんな学園内の敷地にいるとはとてもではないが思えない。謎の機竜の正体、それをスタートが口にする。

 

『まさか、ここにいたとは……』

 

「スタート?知っているのか?」

 

『あぁ。あれはGワイバーン。ガンダムの追加兵装兼サポートマシンだ』

 

 追加兵装兼サポートマシン。ガンダムにそんなものがあったとは思わなかった。しかも学園内の、石柱の中にいたなどとは予想外すぎる。しかし、かつてジャンヌから聞いた話が思い起こされる。あのオベリスクは創世記時代のものだと。そこにガンダムの支援機が入っている。今思えばない話でもない。

 だが、そんな機械竜がなぜ今……。その目的をエンドが高らかに語った。

 

『Gワイバーン……私の力になってくれるのだな?救世主は私こそが相応しいと!』

 

「……って言ってるが?」

 

『いや、あれは……』

 

 もし本当なら危険すぎる。これ以上敵が増えたら対処しきれない。すぐにスタートに対応を打診する。が、スタートは悠長に考えていた。元の心配をよそに、エンドがGワイバーンを呼び込む。

 

『さぁ、Gワイバーンよ!我が声に応え、力となれぇ!!』

 

 呼びかけを受けてGワイバーンは翼を羽搏かせる。スラスターからDNを放出し、その主の下へ向かう。その主は……漆黒のガンダムであった。

 

「え……俺?」

 

『なんだと……?なぜ偽りの救世主を選んだ!?』

 

 Gワイバーンは元の下へとやって来たのだ。自身を選んだと思い込んでいたエンドはもちろん、選ばれた元も何がどうやらという状況だった。しかしそれが当たり前であることを、スタートが2人に語る。

 

『当然だ。そのGワイバーンのカラーリングは黒ベース。白のヴァイスインフィニットがその使い手であるわけがないだろうが』

 

 あまりにストレートすぎる、へったくれもない理由だった。カラーリングが黒なら合体するのも黒というのはデザイン面でも間違いはない。ある程度共通性を持たせるというのは、デザイン面で重要な要因の1つであるというのは元も高校卒業後の職業専門学校で習ったことだ。しかし、それがこの場面でも通用するのとは思ってもみなかったが。学校で学んだことは無駄ではなかったようだ。

 そんなストレートな理由を返され、悔しそうに怒りを沸騰させるエンド。

 

『ぬぅぅぅぅぅ!!』

 

「いや……まぁ、確かにそうなんだろうが……AIが戦闘力判断してくるのかと思ったよ……」

 

 率直な感想を言う元。だが、驚くべきはその後だったのである。殺気を全開にして再度こちらに突撃を行おうとするエンド。それにGワイバーンは反応した。

 

『えぇい、こうなればGワイバーン諸共、消し炭にしてくれ……何っ?』

 

「グルアァ!!」

 

 吠えたGワイバーンが口部からビームを照射する。ビームはヴァイスインフィニットに直撃しバランスを崩しながら弾き飛ばされる。その間に続けてシュバルトゼロが何かに操られる様に勝手にその機体を浮かせた。

 

「な、何が起こって……」

 

『ハジメ?コントロールが……これは……』

 

 ジャンヌも機体の制御に干渉できなくなっていることに言及する。2人の狼狽する声が飛び合う中、その工程は開始された。機体の装甲が開放されていく。それはまるで、ヴァイスインフィニットのサイレントモード発動と同じように。そしてそれに連動してGワイバーンにも変化が生じた。ドラゴンのパーツ各部が分離し機体周囲に展開される。そしてそれらパーツがガンダムの各部へと装着されていく。腕部にGワイバーンの手が合体し、脚部はブーツの様に足が変形し履かされる。ウイングパーツは中ほどで折れてガンダムのWINGν-HI-Aの上から被せられて大型化、その下部のバーニアの間に首と尾が合体したパーツがドッキングする。胸部パーツは分離して胸部、そして腰部のフロントアーマーへとドッキングして機体のフォルムを肥大化させる。そして最後に頭部のブレードアンテナが分離、Gワイバーンの鼻先に合体すると、その頭部をヘルメットの様に装着した。ガンダムの頭部がドラゴンに喰われたか、ドラゴンの頭の形状をした兜を被ったかのようだ。

 響くジェネレーター駆動音。満ちる高純度DN。[リペアⅡ ファーフニル]よりも大型化したそのフォルムは、ガンダムよりも竜を模した大型MSへと変貌を遂げていた。そして2人の目の前に映るコンソール画面に、その名が表示された。

 

 

『シュバルトゼロガンダム イグナイト』

 

『な…………何だこれ(何これ)!?』

 

 

 新たなるシュバルトゼロガンダムの姿。発火の意味を持った名を持つ、強力なMSの誕生。そう、まさに爆誕だった。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。

レイ「はうぅ……告白しちゃった……直接は言ってないけど」

どうでもいいけどうちの作品に黒白の海岸って場所出してるせいで告白の文字が一番目に出てこない件について(;´・ω・)

ジャンヌ「知りませんし、関係ない件について。あとこれほぼ作者の妄想入って……」

ることは認めよう( ゚Д゚)でも私の理想のヒロインとなると今本当にジャンヌさんっぽいのが筆頭に来るんですよ……

ジャンヌ「あ、そうですか……でもあまりヤンデレっぽさがないと言いますか……」

レイ「うーん、普通の女の子?っぽいね」

そこは番外編で埋めていくよ(;・∀・)

レイ「あと、イグナイトってあれだよね。ゴッドクロス・ダイだよね?」

遠からずともその通りです。もっともあれより増加パーツ付けてる分大型化というか、もとのジェニオン・ガイとかに近い体形になってるけどね。

ジャンヌ「ダイの系譜は別世界のシュバルトゼロガンダムも引き継ぐのですね」

刷新してリメイクが簡単とかではないです、これは純粋に引き継ぐなのです(´-ω-`)

レイ「その言葉で台無しだよぉ……。でもこれで勝利は確実!ダイで全部粉砕しちゃえ~!」

それはどうかな?(゚∀゚)

ジャンヌ「あっ、藤和木が言うと不安しかないです」

それどういうこと!?(゚Д゚;)

レイ「いつもやらかしてるからね。バトスピとかで。っていうか、本当にこれ勝てるでしょ」

(´・ω・`)じゃあ今回はここまでで。

ジャンヌ「拗ねましたね……では、次回もよろしくお願いします。このお盆できついペースをゆったりに出来るといいですね」

はぁい_(:3 」∠)_


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EPISODE51 覚醒する機竜、戦いの果てに……2

どうも、皆様。台風が来ている中ですが問題なく投稿していきますよ。作者の藤和木 士です。

ネイ「アシスタントのネイです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよ~♪」

さて、では今回はEPISODE51、それに52の投稿になります。

グリーフィア「そう言えば今回は投稿期間大分空いたわねぇ。何かあった?」

単にのんびりしてただけです、はい_(:3 」∠)_

ネイ「暑さも含めてぐでーとしてましたね……。前話ではヴァイスインフィニットとの対決中に何やかんやあって旧作のゴッドクロス・ダイのポジションを継ぐシュバルトゼロガンダムの新形態「イグナイト」が覚醒したんでしたね」

グリーフィア「まぁさか戦闘中に告白しちゃうなんて、ねぇ?これ死亡フラグ立ってない?」

ジャンヌの胸中だけなので立ってない……はずです(;´・ω・)

ネイ「あはは……それは今回どうなるか次第だと思いますね」

その通りです。では長い話もここまでにして、本編をどうぞ!


 

 

 自分達の機体に起こった突然の事に、思考の追いつかないジャンヌとハジメ。何しろガンダムが分離したGワイバーンと合体したのである、無理もなかった。合体が終わると、既にその制御系統は2人の側から操作が可能となっている。

 しかし、いきなり大変貌を遂げた機体の全てを受け止めるには至らない。これまでのドラグディアMSのどれにも当てはまらない出来事を戦士として日の浅い2人に理解しろと言うのは無理であった。ジャンヌはその変化にたじろぐ。

 

「な、なんなの!?こ、これ……合体!?」

 

『おいスタート!追加兵装とは言ったが、こうなるとは聞いてないぞ!?』

 

 ハジメも状況を飲み込めず、状況の説明をスタートに要求する。だがそんな暇を相手は与えてくれはしない。

 

『馬鹿め、知らないで合体するとは!むしろこちらのチャンス!』

 

『クソッ!っ!』

 

 攻撃の直撃から立ち直ると再びサイレントモードの特異な機動能力で独特の軌道を描いてくるヴァイスインフィニット。エンドの接近にハジメも気付いて距離を取ろうとスラスターを噴射した。右も左も分からない状況。一旦逃げに徹するのは最善の策であった。

 しかし、噴射と同時にその感覚に違和感を覚える。

 

「えっ」

 

『なぁ!?』

 

『この動き!?』

 

 逃れようとしたシュバルトゼロガンダム・イグナイトがスラスターを噴かせると今までよりも速い動きでエンドの攻撃を軽々と回避したのだ。だが単に速いのではない。初速が滑らかで、スピードが一定でかつスルッとしたような空気抵抗をほぼ感じない動きの様に思えた。

 感じたことはない。だが、見た覚えはある。ジャンヌはスタートに対して自分の考えを伝える。

 

「スタート、これってアイツの動きと同じ……」

 

「そうだ、イグナイトはこのガンダムにおけるサイレントモード……イグナイトモードの力を、エンゲージシステムを最大限発揮しつつ使用できる形態だ。今状況では徒手空拳でしか戦えんが……それでも十分奴と渡り合える」

 

 ジャンヌの予想通りだった。このガンダムは今、目の前の敵と同じ、いやそれ以上の力を秘めているのだ。

この形態なら後れを取ることはない。だがしかし初めての形態に、メインパイロットであるハジメは扱いに四苦八苦していた。

 

『それは凄いが……このままじゃまともに動けない!クッ!』

 

 機体は何度もふらつき、不安定な動きとなる。必死にその挙動を制御しているように見える。何とか攻撃を避けこそするが、攻撃を当てる前に先に酔ってダウンしてしまいそうな動きだ。不安さを感じる。

 何か出来ることは……そう考えたジャンヌは先程の言葉を思い出す。スタートは言った。この形態は目の前の敵と同じ力をエンゲージシステムで最大限に発揮できる形態であると。なら、この不安定さをジャンヌ自身でカバーできるのではないかと。スタートに言われる前に、ジャンヌはコントロールシステムに意識を向ける。すると機体のバランスの劣悪さをすぐに感じ取れた。あまりに乱れており自分でも出来るのかと心配になる。だがその流れは確かにジャンヌの意志に応え、変化していくのが分かる。手ごたえを感じたジャンヌはハジメに言った。

 

「ハジメっ、機体バランス制御は私がやる!だからあなたは!」

 

『!分かった!任せた!!』

 

 もはや立場など忘れ、遠慮なしに声を掛け合う2人。その言葉通り、ガンダムの反撃が始まる。逃げから攻めに転じたガンダムはその拳を振るう。だがそれよりも先にヴァイスインフィニットの懐に飛び込む形となる。避けきれずにそのまま踏み台にする形で膝蹴りをかまして背後に回る。

 勢いを殺さないまま続く攻撃を背後から狙う。蹴りを頭部目がけて横から入れようとするが、空中で変にバランスを崩し、少し上を空ぶって過ぎてしまう。なぜこんなことになってしまっているのか。それはこのコントロールが予想以上に難しい為であった。ジャンヌは機体周囲のDNの安定化を行っているが、安定化した動きにハジメも合わせる必要があった。しかし最初の攻撃ではジャンヌが急速に安定化させたためにタイミングがずれた。続く攻撃では急速に反転した動きにジャンヌがDNのコントロールしきれていなかったのだ。感覚に従い、修正しようとするも、2人の動きが合っていない。スタートが檄を飛ばす。

 

「おい!お前らちゃんとやってんのか!?」

 

『やってる……っての!』

 

「し、失礼ですね!けどこれ……感覚で安定させようとしても……すぐ乱れて……て、来た!」

 

 制御にもたついている間に再びエンドがその凶刃を向けてくる。斬りかかってくる一撃を、上下反転の状態からぬるりと横を避けていく。すぐに反撃に転じさせようとするが、タイミングが早く、ハジメが前につんのめる形で前転を決めてしまう。

 このままではダメだ。ジャンヌは何とかバランスを整えようとコントロールに全力を向ける。コントロールが成功しても、その形がすぐに乱れてしまう。これほどまでにイグナイトシステム、そしてイグナイトの操作は難しいものであるとは思わなかった。だが、見かねたスタートがジャンヌに助言する。

 

「ジャンヌ・ファーフニル、一旦落ち着け!やることは変形前と変わらない。ジェネレーターとDNの出力の波を安定させろ!乱れる出力を体に合わせる様に!」

 

「くぅぅ……っ!」

 

 スタートの言葉通り、安定化をさせようと必死になる。だが焦りがあるせいでそのコントロールは完全ではない。完全なつもりでも力で無理矢理コントロールしようとしてしまっていた。思うようにいかない。

 必死にコントロールしようとしている傍らで、ハジメとエンドの攻防が続く。ジャンヌの懸命な制御とは裏腹に、先程よりもさらに乱れるガンダムの機体。押されていく戦況にジャンヌの心は折れそうになる。

 

(駄目……私じゃ駄目なの……?今まで人を遠ざけ続けて、好き放題言ってた私じゃ……)

 

 ジャンヌに自責の念が募っていく。まるで過去の自分が陰口の様に自分ではダメだと囁いてくるようだった。諦めかけたジャンヌだったが、そこでハジメの言葉を思い出す。

 

(でしたら、自分は絶対にミスは出来ませんね)

 

 それは決戦の前に、ハジメが言ったことだった。自分がミスをして足を引っ張るのが心配だと言った時、彼は自分がカバーすると言ってくれていた。自分が120%の力を出して、そのミスをカバーすると。

 今もハジメは慣れない機体の状態で戦闘を行っていた。ジャンヌの制御が完璧ではないにも関わらず、特殊な機動性に振り回されながらも攻撃を回避して奮戦していた。危機的状況でありながら、必死に打開する為にジャンヌを護ろうとしていた。

 ……情けない。ハジメは戦っているのに、私は諦めようとして……。そうよ、私はジャンヌ・ファーフニル。ファーフニル家の次女で、ハジメの主なのよ!もう諦めない……この戦いも、私の明日も!!

 自身への鼓舞と共にジャンヌは息を吸って集中する。そしてイグナイトのコントロールを開始する。困難を極めたイグナイトの機体コントロール。だが荒れ狂う高純度DNの波を、徐々に収めていく。開いた瞳の虹彩の縁が蒼く輝く。やがてシュバルトゼロの動きが変化した。滑らかさにセーブが効くようになり、しっかりとバランスを保てるようになる。加えて攻撃のキレが出てくる。ジャンヌの制御がしっかりと出ている証拠であった。安定を取り戻したシュバルトゼロ・イグナイトは、遂に怒涛の攻めを展開する。

 

 

 

 

 急に動きの良くなったシュバルトゼロに元は驚きを感じていた。先程までのアンバランス感がなく、スピード・パワー・動きのキレがシュバルトゼロから全体的に上がっている。一体どうしてという疑問が浮かぶが、すぐにその答えにたどり着く。

 ジャンヌだ。彼女が機体に流れる高純度DNの制御に成功したのだ。どうやってコントロールのコツを掴んだのかは分からないが、これなら負担も軽い。攻めに余裕を向けられる。制御された力を振るっていく。

 

「はぁっ!」

 

『ちぃ!何だ……動きが!?』

 

 高純度DNを込めた拳の連撃がヴァイスインフィニットのサーベルを弾き、そのボディにヒットしていく。高純度DNで覆われているはずの敵機体のボディは、その拳に何度も打たれ金属音を鳴らしていく。

 もちろんエンドも攻撃を避けようと試みていた。だが回避されてもシュバルトゼロは互角となったその機動力で追従する。死角を取られようが元に響く、謎のノイズのおかげでヴァイスインフィニットがどこに行ったのか、またどこに行こうとしているのかがノイズ音で手に取る様に分かった。一体この力が何なのか、分かりもしないが1つ言えるのはこの力が相手の動きを読むことが出来るということだ。元は先読みして機体を前に踏み込ませると右の拳による正拳突きをお見舞いする。ヴァイスインフィニットがビームサーベルで防御しようとしたが、そのサーベルユニットごと吹き飛ばしてみせる。

 サーベルを叩き落されながらも、何とか体勢を整えるエンド。レイアへのダメージも気になる中、元は装依解除のための一撃を放つ。

 

「行くぞ、ジャンヌ、スタート!」

 

『えぇ!』

 

『行け、ハジメ!』

 

『ぐっ!』

 

 ヴァイスインフィニットもその拳を構えて防御態勢に入る。一回り大きく、そして竜の手を模した腕部に高純度DNが集中する。更に強化された、ガンダム必殺の一撃が発動した。

 

 

『Ready set GO!DNF、ディメンション・ブレイカー!!』

 

「はぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 拳に込めた、幾つもの想い。失ったものと、新たに得たもの。その手で無くしたものを取り返すべく、その拳を開いて、ヴァイスインフィニットの胸部に圧縮したビームを叩き込む。その破壊力は凄まじく、耐えようとしたヴァイスインフィニットは地面に接地した状態から横に回転しながら吹っ飛んでいく。吹っ飛びながら機体パーツが分解していき、地面を転がった。止まった機体の胸部が爆発し、その痛みがエンドにも伝わる。

 

『ガハッ!?……こんな、ことが……?』

 

「今度こそ本当に終わりだ……レイアを解放しろ。もう動けないだろ」

 

「ハジメ、油断するなよ」

 

『ローレインさん』

 

 避難していたローレインも合わせて投降と人質の解放を要求する。機体にいくつものショート音を響かせるエンドは戦闘不能状態でありながらも、それを軽く拒否する。

 

『はっ……受けると思うか……?お前のようなやつが、救世主などと!』

 

 未だにそう語るエンドは右腕を開き立ち上がる。何かをしてくるのは明白だ。元は一歩前に出て構える。動いたのは両機体同じタイミングだった。

 

『ディメンションノイズフルバースト!!』

 

『DNF シャインライト・ディメンション』

 

『Ready set GO!DNF、シャドウアウト・ディメンション!』

 

 両者の叫びと共に機体の右手に光と闇、対立する要素を持った球体がそれぞれの手に形成される。ヴァイスインフィニットの方が光の球体をシュバルトゼロへと投げつけた。

 圧倒的破壊力を持つ球体が、シュバルトゼロへと迫る。だが元も見ているだけではない。スピードを見切ると、自機の漆黒の球体をその手で握り潰す。漆黒に染まった高純度DNを纏った右手を、投げつけられた純白の球体にそのまま殴りつけた。

 ぶつかり合う光と闇。だが制したのは漆黒のDNFだった。叫びと共に力を込めて高エネルギー弾を殴り返す。

 

「行けェェェ!!!」

 

『なんだと!?』

 

 殴り返した弾は真っ直ぐヴァイスインフィニットに螺旋を描いて向かう。螺旋の軌道が思ったより大きく、最終的にヴァイスインフィニットのDNFはヴァイスインフィニットの少し上空で炸裂した。

 このまま抑え込む。元とジャンヌはスラスターを噴かせようとした。だがその思惑は思わぬ事態により妨害されることとなる。突如機体のアラートが鳴り響く。計器が示していたのは空間の乱れを知らせるものだ。そしてその発生源は先程爆発した光のDNFの地点。見上げた先で、空が割れていた。

 空の色とは全く違う、幻想的な光を放つ異質な景色を映し出す空の穴。だがその光景に元は見覚えがあった。あれは3か月前、この世界にやってくるきっかけとなった元自身の世界での事。深絵を逃がした後に爆発したグレネードに巻き込まれた直後、爆風に混ざってあのような景色を見たことがあったのだ。

 もしかすると……だがそんな考えはスタートの必死の大喝でかき消された。

 

『不味い、超次元現象だ!あれに飲み込まれるな!』

 

「超次元現象だって!?ハジメ、逃げるぞ!」

 

「っっ!!」

 

 その言葉に従い、すぐに距離を取ろうとする。だが直後その虚空から暴風による吸い込みが開始された。周囲の瓦礫、主に両機体の武器とドラグーン・オベリスクの残骸が飲み込まれていく。だがもっと注視しなければいけなかったのは、それらと共に飲み込まれていく白のガンダムの姿であった。

 

『ダメ……っ、ダメェ!レイアさん!!』

 

 ジャンヌが叫ぶ。まだあの中にはレイアが囚われている。ジャンヌの為にもと、元は一か八かの賭けに出る。だが、飛び込もうとしたところでスタートに止められる。

 

『おい、馬鹿なことはやめろ!あの中に飛び込むのは危険すぎる!』

 

「分かってる……だけど!」

 

『目的を見失うな!お前の役目はヴァイスインフィニットの撃退と、ジャンヌ・ファーフニルの守護だろう!それにお前達にはまだやることがあるだろうが!』

 

「……っく!」

 

 スタートの言葉に息が詰まる。悔しいが、それは確かにその通りだった。あくまで最重要目的はヴァイスインフィニットの鹵獲、もしくは撃破。それに加えてファーフニル家次女であるジャンヌの無事も強く言われていた。だがレイアの無事だけは民間人の救出とはいえ、出来たらというものだった。

 もちろん、最初はジャンヌも含めて反対していた。もちろんグランツもそれは承知していたが、ドラグディア軍総司令であるグランツを含めたこの後の「作戦」立案者達はジャンヌ・ファーフニルの身の無事を確保しなければならない。「作戦」を水泡に帰してはならないのだ。そのためにジャンヌの身の安全を確保できない状況では、人質を見捨ててでもその安全を確保せよとのことだったのだ。

 元の中で、2つの考えが交錯する。ジャンヌの声に応えたい。しかし、これまでバトンを渡し続けたファーフニル家、フリード家……それに連なる者達の苦労が水の泡になる。このチャンスを逃せば、次はいつになるか……。スタートもそれが元の為になると分かっていて、気を利かせている。いつもならそんなことを言わず、むしろ賭けのある方法でも教えてくるスタートが言っているのだ。

 元は苦虫を潰すような気持ちでヴァイスインフィニットが吸い込まれていく様を見る。その拳を硬く握り、吸い込みの流れに逆らう。吸い込まれていくエンドが、足踏みする様に睨み付ける元を嘲笑う。

 

『ははは!まさかこんなことになるとは思わなかったぞ。だが好都合だ!このまま次元のどこかに撤退するとしよう』

 

『ハジメ!レイアさんを!!』

 

「…………っ!」

 

 ジャンヌの懇願の叫び声が辛く響く。だが元のシュバルトゼロガンダム・イグナイトはスラスターを噴かせその流れに逆らっている。出力が上がったことで、その流れに逆らうことも可能となっていた。しかしほぼ同等の出力。近づけばさらに吸い込みの出力は上がるだろう。加えて地味にだが出力に波が出始めていた。機体バランスの不安定さが表れており、必然的にそれがジャンヌの方に問題があることを知らせていた。レイアの危機に、ジャンヌの意識が向けられてしまっていた。

 ジャンヌのコントロールが乱れてる……無理もないか。助けには行きたい。けど、ここで行って、もしジャンヌと一緒に別の世界に飛ばされたら……戻る当てなんてない。まだ次元世界移動の方法だって分からないんだ。だけど……!

 迷う元。だが意を決し、元はジャンヌに謝罪した。

 

「……ごめん、ジャンヌ」

 

『!!ハジメっ!?レイアさんを、レイアさんを!』

 

 ジャンヌの言葉に逆らい、その場を離脱する。既にローレインが避難していた学園校舎の手すりに掴まり、スラスターを全開にして吸い込まれないようにする。

 ジャンヌの呼びかけが響き続ける。だが彼女の想いも空しく、ヴァイスインフィニットが次元の穴へと吸い込まれていく。

 

 

『この敗北は己の糧としよう……次こそはお前を倒す、クロワ・ハジメ!!また会おう』

 

「あぁ……その時は絶対にお前の手から、レイア・スターライトを奪い返してやる!」

 

 

 オープン回線による別れ際の約束を交え、ヴァイスインフィニットの姿が次元の穴へと完全に飲み込まれた。元にとっては決意の表明であると共に、エンドへの負け惜しみでもあった。試合に勝って勝負に負けた。そんな戦いは次元の虚空が閉じたことで幕引きとなった。

 次元の虚空が閉じると、辺りに静寂が戻る。幸い校舎のDNウォールは解除されることなくほぼ無事。被害もないはずだ。だが中央広場は木々やオベリスクの残骸、ステージの跡、そして抉られた地面と見る影もない。そしてその場に残ったのは、漆黒の重MSとナイトブルーのカラーリングが施された隠密用MSの姿だけだ。

 否、もう1つだけ残っていたものがあった。ガンダムから響く、少女の悲しみの絶叫。涙声と校舎から響く歓声だけがわずかに空しく響く。

 

「…………終わったんだな」

 

「………………そう、だな」

 

 ローレインからの声かけに、元はそう呟いた。しかし勝者のその手は固く、震えていた。悔しさと虚しさの残る中庭で、2機のMSは佇む。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。さぁ、大変なことになってしまいましたねぇ( ;∀;)

ネイ「何普通に異次元に飛ばしているんですか……」

これ必要なことなので、はい(´Д`)

グリーフィア「必要な、ねぇ……」

あ、何か言うの無しですよ(´・ω・`)

グリーフィア「はいはーい。次話でどうなることやら~」

ネイ「絶対ジャンヌ様次の話で元さんを責める気が……」

それはどうでしょうね。次話も続けて投稿しますので引き続きよろしくお願いします。では次話へ続きます。


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EPISODE52 覚醒する機竜、戦いの果てに……3

どうも、皆様。前話から引き続きの方は改めまして。作者の藤和木 士です。

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです」

レイ「アシスタントのレイだよ。……レイアちゃんが次元空間に飛ばされたの何で!?」

ジャンヌ「そうですどういうことです作者?」(白い眼)

(´・ω・`)いや、だからね。これは色々とありまして……

レイ「じゃあちゃんとレイアちゃん救われるわけだ、期待だね~」

ん?(;´・ω・)

ジャンヌ「これは大作確定ですね」

待って、そこまで大きく出なくていいですから!?( ;∀;)

レイ「じゃあそろそろ本編紹介しよ?」

(;´・ω・)えぇ……。じゃあ、EPISODE52、ガンダムの対決終了後から始まります。どうぞ


 

 

 戦闘終了となり、校舎に張られていたDNウォール発生器が機能を停止する。扉の鍵も開錠され、生徒達が教師達の指示に従い、外に出る。一目散に元達の下に来たのは、元とジャンヌ、それぞれの友人であるレヴとリッド、それにネアとグリューネ達だ。

 勝利した元にレヴが歓喜する。

 

「やったな、ハジメ!」

 

「初めて見た……ガンダムの……それだけじゃない。MS同士の戦闘も……でも、これで終わったのよね」

 

 リッドも口数が少ないながらもガンダムの戦闘にため息を吐く。ホッと胸を撫で下ろす。おそらく校舎にいた多くの生徒・教師たちは、戦闘の終了に安堵しているだろう。

 だがネアとグリューネの顔は浮かない。加えてレヴとリッドも近づくにつれて表情を硬くする。それは無論、先程元が思っていたことについてだった。ジャンヌの涙声は未だに周囲に垂れ流されたままだ。ネアは泣き続ける主に言葉を掛ける。

 

「お嬢様……」

 

『っく……ひぐっ……レイアさん……レイアさぁん……!』

 

「…………ジャンヌ」

 

 2人は元のガンダムから響くジャンヌの声に同情する。この状態だと誤解が生まれそうなので、装依を解除する。解除直前にGワイバーンが分離し、元のドラゴン型に変形し直す。元の前に出たジャンヌの体が力なく前に倒れかけるのを後ろから支える。だが、そのままゆっくりと泣き崩れていく。

 この現状にレヴとリッドは互いに顔を見る。それどころか校舎から出てきた生徒達も、ジャンヌの状況にひそひそとあることないことを噂していく。何事かとレヴが訊く。

 

「な、なぁ……レイアって言ってるけど……レイアさんはどうしたんだ?ハジメ」

 

「それは……」

 

 元は言い渋る。しかし言わなければならないことだ。ジャンヌの方をネアに任せて離そうとするが、その役目を装依解除したローレインが掻っ攫う。

 

「残念だが、レイア・スターライトはあのガンダムに捕まったまま……」

 

「ローレイン……」

 

「え……?」

 

「嘘だろ……元!本当なのかよ!?」

 

 ローレインからの話を聞き、レヴは元の肩をゆする。認めたくはなかった。しかしそれが事実だ。元は重く圧し掛かる後悔の念と共に2人に真実を伝える。

 

「……あぁ、そうだ」

 

「あぁそうだって……なんでだよ!ガンダムの力じゃ、あそこから救い出すことは出来なかったのかよ!!」

 

 怒りをぶつけるレヴ。なぜ救えなかったのか。救世主と称されるほどのガンダムの性能なら、救えたのではという質問。無論元はその選択を取りたかった。だが出来なかった。その方法を取るわけにはいかなかった。ジャンヌに危機を及ぼすわけにはいかない。ジャンヌ自身とファーフニル家の者達、それにフリード家の者達が作り上げたここまでの道を崩すわけにはいかなかった。

 しかしそれを言うべきか迷う。まだ作戦は始まっていない。ここで下手に口外して、どこから情報がバレるかどうかも分からない。バレてジャンヌを呪いで殺されたら終わりだ。元はレヴの問い詰めに口を閉ざす。それに対しレヴは怒りを露わにする。

 

「何とか言えよ!ジャンヌだって泣いてんのに……お前はまた!」

 

 レヴの怒声に、周囲の生徒達もそのひそひそ声を大きくしている。不信感が募る中、1人の声が黙らせた。

 

「―――――そこまでよ。レヴ君」

 

 レヴの言葉と生徒達の声を遮った声の主は、高等部生徒会長で、「作戦」の内容を知るグリューネだった。その一声で周囲の人々の声がぴたりと止む。ジャンヌも注視する中、グリューネは作戦の内容をぼかして語る。

 

「ハジメ君はね、今回の戦いで重要な任務を受けていたのよ。ジャンヌと共に生還するっていう、大事な任務がね」

 

「それはそうだろ!2人が死んだら、意味がないじゃないか!けどレイアさんも助けなかったら……」

 

「……2人の戦いは、まだこれで終わりじゃないのよ」

 

「え……」

 

 2人の安否が大事なのは当たり前だと逆に言い返そうとしたレヴを、その一言で言葉に詰まらせる。限られた者にしか明かされていない、元達の最後の仕事が残っている。このような終わりとはいえ、それをこなす必要が当然あった。

 とはいえ、それは本来なら元達が言うべきことだ。否、本来なら何も言わずにレイアを救出してなんの悔いもなく向かうべき場面なのだ。しかしそれが出来なかった。未だ立ち直れていないジャンヌとどうすべきか迷う元に代わり、グリューネが続けて言う。

 

「2人にはまだ戦うべき相手がいるわ。それには2人が揃っていなきゃ意味がない。だから……」

 

「だからレイアさんを……レイア・スターライトをあの白いガンダムにみすみす連れ去られたっていうのかよ!無理でも手を伸ばさなきゃ……」

 

「兄ぃ、もうその辺に……」

 

 リッドの制止も聞かずレヴから飛んでくる必死の訴え。だがグリューネは息を吸ってから、その声を張り上げて黙らせる。

 

「じゃあ、どうやってあの状態で助けに行くのよ!?ガンダムのどんな能力なら、どうやって助けに行くことが出来たって?ガンダムのどういう能力があるって分かるの!?ガンダムの装依者であるハジメ君が、それらを全力で考えなかったって貴方は言える!?」

 

「っっ!?それは……」

 

「………………」

 

 グリューネの言う通り、元もあの時必死にどうにかならないか考えていた。エラクスが使えるのならその出力でどうにかなるかもしれない、攻撃でヴァイスインフィニットをホールの吸引力から引き離すという方法、そして一か八か突っ込むことも、持てるすべての能力を合算し、スタートに提案しようとしていた。だが、それらの考えで実行できるものはなかった。エラクスの使用可能時間には達しなかったし、それに不安定な出力の状態で、動くことすらも困難な状況下で攻撃も高出力化させるのも危険すぎた。だからこそ、元はジャンヌの身の安全を優先するしかなかったのだ。

 その選択がどれほど重い物だったかを、グリューネも理解していた。だからこそ作戦を知る彼女は敢えてその選択の正しさを、泥をかぶる覚悟で語ったのだ。元の呼び方が普段と違ってしまうほどに彼女も悔しさを感じていた。グリューネの言葉を受けて気まずくなりながら元に顔を向けるレヴ。元も申し訳なく思いながらその顔に目線を合わせる。

 

「そう…………なのか?」

 

「…………あぁ。俺たち2人はまだやらなくちゃいけないことがある。ジャンヌを殺させるわけにはいかないから」

 

 元もそのように語る。他の生徒にはどういうことか分からないそれも、あの日元と病院で言葉を交わしたレヴとリッドにはその意味が分かる。詩竜の刻印をどうにかするために、いかなければならない。

 レヴとリッドは何も言わず、だが頷いて状況を理解してくれる。ところがそこでジャンヌを慰めていたネアが疑問を露わにして元達を呼ぶ。

 

「……?あれ……は、元さん、姉さん!ちょっとこれ!」

 

「ネアさん?」

 

「どうしたの、ネア?」

 

 その声に従い元とグリューネはジャンヌとネアの傍に座り込む。レヴとリッドもその後ろから何事かと覗き込む。

 2人が来たのを確認して、ネアはジャンヌにとある確認を取った。

 

「お嬢様、少しだけ制服のリボンを緩めてもよろしいですか?」

 

「ひぐっ……なんで?」

 

 ネアにそう聞かれ、ジャンヌは溢れる涙を堪えて聞き返す。リボンとは制服の襟を閉めるスクールリボンの事。外すという発言に元は肌の露出と言う観点から若干警戒してしまう。

 

「リボン緩めるって……これ俺見ない方が良いんじゃ」

 

「それは少し思ったけど、確認してもいい範囲なんでしょ?ネア」

 

「うん。というより、ローレインさんにも確認してもらった方がいい案件かもしれません。これは」

 

「俺が?」

 

 ローレインも巻き込むほどの事態に、何かただ事ではないことを察する一同。再び周囲のギャラリーの声も大きくなってきたので手短に済ませるように、ネアはジャンヌの首元を締めるスクールリボンの帯を緩める。そしてジャンヌの背中を見せるようにして、制服の背の上部分を少しだけめくって、見せた。

 女性の首元から背中を覗くという光景に、羞恥を覚えて顔を背けそうになる元。しかし見て欲しいということであれば仕方ないと、元は余計なものを見てしまう前にササッと目を向けた。が、その視線は釘づけとなる。見惚れてしまったというわけではない。その凝視は困惑と衝撃によるものだった。

 

「……どういう、ことです?」

 

「え…………えぇ!?」

 

「……これは……まさか!?」

 

 各々に反応する元達。どうしてこうなっているのか、理由が誰にも分からなかった。ただ一つ言えるのは、()()()()()()()()()()()()()()()ということだ。その事実は特に元達にとって衝撃が大きかった。

 ネアの腕の中で泣き崩れていたジャンヌも、流石に反応と首元から背中に掛けて覗き込まれているのに羞恥を覚え始め、もういいかと訴える。

 

「ねぇ……もういい?」

 

「え、あ……いいですけどお嬢様、もう何ともないのですか?」

 

 口調を元に戻し、ジャンヌに確認を行う。刻印が消えているのなら痛みも消えているかもしれない。そしてジャンヌも違和感に気づいた。

 

「へ……あ、痛く、ない。というか途中首元から何かが出ていくように感じたけれど……どうしたの、みんな」

 

 ジャンヌはその時の事を話す。首元から抜けていくという表現を受けて、元達の中で1つの結論が生まれた。それはもちろん、呪いの排除というものだった。

 

「やっぱりこれって……」

 

「あぁ。解呪法とかまったく分からないが……多分呪いが解けた、あるいは別の誰かに移ったってことだろう」

 

「でも、一体どうやって?何がトリガーとなって、そんなことが起こったのよ」

 

 呪いの解除は想定外だった。むしろ元達の隠していた「作戦」の1つの目的はジャンヌの呪いの完全な解呪法を探ることもあったのだ。目的達成とはいえ、いかんせん何が引き金になったのか予想がつかない。

 そこでネアがジャンヌにどういった時に呪いが離れるのを感じたのかを尋ねる。そこでようやくその理由の一端にたどり着いた。

 

「お嬢様、それはいつ感じられたんですか?」

 

「…………確か、ガンダムがピンチになって…………その、色々考えていたら、光と一緒にGワイバーンが出現した、その時に」

 

 Gワイバーンの出現時、周囲に光が溢れ出ていた。当然シュバルトゼロはその光を多量に受けていた。もしあの光が呪いの解呪法、あるいは呪いを打ち消す力を持っていたのだとすれば、話は通るだろう。ローレイン達の間でもそれに言及する。

 

「じゃあ、Gワイバーンの出現時のあの光……」

 

「あれが詩竜の刻印の解呪条件になったのは、間違いないわね」

 

「え、てことはジャンヌさんは……」

 

「あぁ。ジャンヌはもう呪いに苦しまなくて済む……」

 

「やったじゃんか!これでもう痛みに苦しまなくて済むわけだ」

 

 レヴとリッドの二人が手放しで喜ぶ。ローレインとグリューネも想定外のこととはいえ安堵した様子を見せた。これで1つ目の上のたんこぶが取れたわけである。

 しかし、まだ終わったわけではない。危機が去っても、やらなくてはいけないことを成すために、最後の仕上げの場所へと向かわなければならない。終わっていないことを口にしながら元はネアに泣きつくジャンヌに手を伸ばす。

 

「だけど、まだ終わりじゃない。まだ俺達には行かなきゃいけないところがある。……でも、もし無理だったら、そう言ってくれ。俺が1人で……作戦を締めるから」

 

「は、ハジメ、それは……うーん」

 

 今のジャンヌには荷が重すぎるとそのように提案する元。ローレインも止めるが、同時にその判断もある意味必要性があるのではと考え込む。ジャンヌがいなければ意味がないが、それでもジャンヌに無理をさせたくはない。答えをゆだねられたジャンヌはその手に触れ、弾いた。

 

「……ジャンヌ……」

 

「1人で……?また私を置いていく気なの?ふざけないで。貴方はもう離さないと言ったんじゃないの!?」

 

 涙を拭い見せたのは怒りの表情。ジャンヌの言う通り、元はもう二度と離さないと誓っていた。ジャンヌの前で改めてその宣言はしており、周知の事であった。その宣言を引き合いに出したジャンヌは元へ自身の気持ちをぶつけた。

 

「確かにレイアさんは消えてしまった……私だってまだ信じられてない。でも!だからって作戦に参加しないわけない!お父さんやお母さんが、ここまで繋いできたすべての人達が繋いできたバトンをこぼしなんかしない。お父さんが最後に託してくれたものだから……だから絶対に、何があっても投げ出す気なんてない!」

 

涙交じりに叫んだ決意。これほどまでに両親の事を誇りに思っているジャンヌを、元は見たことがない。しかしその決意は立派であり、また当然と言うべきものだった。

 少しばかりジャンヌの事を馬鹿にしていたのかもしれない。心の隅でそう反省の気持ちを浮かべた元は、ジャンヌへと歩み寄りその体を抱き寄せて謝罪する。

 

「……申し訳ありませんでした、お嬢様。どうやら自分は少し過保護になっていたようです……軽率な判断をお許しください」

 

「は、ハジメっ!?……その……いい、ですよ?貴方もわたくしのことを考えての事だと思うから……」

 

 元の謝罪にジャンヌは顔を赤くする。今のジャンヌはああ言ったとはいえ傷心状態。傷を癒させるためと、誠意を込めるのならこれくらいは必要だと思ったため、その体を抱き寄せたのであった。

 ただそれが主従を超えた行為であることは事実であり、ネアとグリューネ、そして周囲からの声で聞こえてくる。

 

「……ハジメさん?あんまり目立つことはやめましょうね?」

 

「んー、真面目さはウリだけどたまに暴走するわよねハジメ君。悪い意味で」

 

「……え、2人そんな関係!?」

 

「グリューネさん姉妹がそう言ってるから、確定っぽい?」

 

「くっそぉ……見せつけやがって……使用人だからって生意気だぞ……!」

 

「今まで澄ましたような顔くらいしか男に見せてなかったジャンヌさんが……これもガンダムの力なのか……どうして神は平等じゃないんだ!」

 

 最後の方に哀れみを感じる。そしてきっかけとも言えるレヴとリッド、特にレヴは自身のミスを必要以上に感じていた。

 

「あわわ……やっぱみんな驚くよね……」

 

「ここで俺がその発端って言ったら……やばい寒気がしてきた」

 

「まぁ、レヴのおかげで留まれたから俺からは礼しかないけどな。……お嬢様。それではもう一度お願いできますか?」

 

「もちろん」

 

 レヴに元なりのフォローを入れてから、再度ジャンヌと装依の準備に入る。だがそこで群衆の中から「彼女達」が行ってしまう2人に対し声を挙げた。

 

「ハジメさん……」

 

「ノーヴェさん。……それに」

 

「っ!…………」

 

「貴女は……!」

 

 ノーヴェ・リントヴルン、それに今回の事件の発端とも呼べる「元」ヴァイスインフィニット装依者、ディーナ・リントヴルンの2人だ。元の声が自然と敵意のあるものへと変わる。ディーナの姿を確認したジャンヌは今に駆けだしそうになったが、元自身の腕でそれを抑える。

 なぜ今のタイミングで、と思うがノーヴェから話しかけようとしたことからその理由は容易く予想出来る。無論それはしてもらわなければならない立場だろう。だがそれは今ではないと判断する。元はジャンヌの体を回れ右させてノーヴェに対し何も言わずに作業に戻ろうとする。しかしノーヴェの声が響く。

 

「待って!……ディーナのしたことは許されないことよ。でもこの子も悪いことだって反省してる。ガンドさんまで殺して、怖くなったけど、もうエンドを止められなくなったって……。もう戻すことなんてできない……だけど!」

 

「……だけど?戻らないからこそ、簡単に済ませたらいけないんじゃないか?」

 

 ノーヴェの謝罪の申し入れを、元は本来の口調で返した。今までノーヴェに対しては使っていなかった言葉遣いはノーヴェを威圧する。だが元は今の忙しい中で流れのまま謝ってもらってもジャンヌが受け止めきれないことと、それだけで済む問題ではないことからもっとちゃんとした場所で謝る必要があると考えた。だからこそ場所を改めて謝罪することを遠回しに言ったのである。

 続けてノーヴェに告げる。

 

「俺だって言いたいことがある。言ってもらいたいことも。だけど、それは今じゃない。また改めて、互いに言おう」

 

「…………分かった。ごめんなさい」

 

 発言を飲み、引き下がるノーヴェ達。そのままジャンヌを横に立たせてから再び装依を行う。

 

「……装依」

 

 一瞬ジャンヌが身構えたが、流石にいつも毎回変身とは言えない。改めてあれがフィクション、作品の世界だからこそ言えるものなのだろうと納得する。それに本当の戦いに、そんなものは持ち込めない。あれは作品の中でこその言葉だ。現実に持ち出していい言葉じゃない。再び横から2人の体を挟み込んで認証が行われる。2人の体が今一度1機のMS、中破状態のシュバルトゼロガンダム[リペアⅡ ファーフニル]へと変換された。

 ガンダムへの装依が行われると同時にGワイバーンが吠える。咆哮と共に機体がイグナイトモードへと自動移行する。拡張された機体各部に分離したGワイバーンがドッキング、大柄な竜騎士シュバルトゼロガンダム・イグナイトへと変形が完了した。

 ウイング部を開き、飛行体勢を取る。飛び立つ前にローレインに後の事を頼む。

 

「じゃあ、後は頼む」

 

「任せろって。先生たちと一緒に生徒はちゃんと帰す。そっちもしくじんなよ?」

 

「分かってる。……レヴ達も離れて」

 

 元の声に慌てて距離を取るレヴ達。ローレインも十分な距離を取ったところで、元は宣言する。

 

「行くッ!」

 

 飛翔したガンダムは上空へと移動すると、一直線に空を飛翔する。目的地はただ1つ。呪いの元凶のいる場所だ。すべての決着を、そこで付ける。目的地はドラグディア政府のある議事堂、「龍の籠」。

 空を翔ける中、元は思い出す。今日の訓練終了後の休憩時間、ジャンヌに言おうとしていたことを。もしも、レイアを救出できなかったら、どうするのか。奇しくもその未来を辿ってしまった今回の激突。しかしジャンヌは心に深い傷を負いながらも共に行くことを選んでくれた。だからこそ元は強く願った。彼女のこれからに幸ある様に、その結末を見届けたいと。その決意に呼応するように、ガンダムの蒼く光るフレーム、ユグドラシルフレームが瞬いた。

 

 

 

 

 ガンダム同士の戦闘終結から30分。ドラグディア政府の官僚が集まる議事堂では議論が白熱していた。国の建国記念日であるこの日にドラグディア軍が政府にも知らせない作戦を展開している件、それに伴う聖トゥインクル学園の封鎖、テレビ中継によるガンダムの激突など……逐一入る情報で議会の場は大いに混乱を招いていた。

 国の一大イベントの中でなぜそんなことが起こっているのか、ドラグディア軍を動かしているのは誰だ、2機のガンダムがなぜ戦っているのか……情報量が多すぎて既に終結した議題であるガンダムのパイロットの問題までも湧き上がり、混沌を極めていた。

 騒ぎの収まらない議場。議長を務めるバロム・バハウ大統領も次々舞い込んでくる情報に頭を抱える。まさかドラグディア軍が勝手な行動をするとは思ってもいなかった。ガンダムの情報は聞いていたが、それがなぜ今日、しかもドラグディア建国の地である聖トゥインクル学園で激突したのか。未確認情報ではファーフニル家の現呪殺刻印の持ち主である次女がガンダムと合体したという話もある。にわかに信じがたい情報。同時に不安が心を支配する。

 

(さっき入った情報ではガンダムはこちらに向かって飛行していたという。……まさかここに?何の為に?……もしや、呪殺刻印を解けと言ってくるのか?しかし私は解き方など知らぬ。それに……もし「事実」を公表しようものなら、歴代大統領に伝わる呪殺刻印の起動でたちまちジャンヌ・ファーフニルは死ぬ。簡単に国家を転覆などさせぬわ)

 

 襲撃されても切り札がある。呪殺刻印を解けるのは最初に掛けた最初の大統領のみ。今となっては解けるものなどいない。それだけ国最大の失態を国民に伝えたくない歴代の大統領の意地があった。もっとも彼自身のそれは、地位に固執したものであったが。

 またそれだけではなく、大統領には伏兵がいた。護衛隊とは別に、ファーフニル、そしてフリードの家が反旗を翻した時の為の大統領お抱えの暗殺特化部隊がいるのだ。もしここにやってきても隙を突くことなど容易だ。

 だが騒々しい議場の扉が勢いよく開かれる。喧騒の起こっていた議場は静まり返る。彼らの視線の先に見えたのは、ドラグディア軍の制服を纏った老人と同じく制服に身を包む兵士達、そして老人の横を固めるのは報告に上がっていた、漆黒のガンダムであった。突然のMS襲来にパニックに陥る議場。だがそれを制する形で老人が声を挙げた。

 

 

 

 

「さて、舞台の幕引き、と行こうじゃないか。なぁ、ドラグディア大統領?」

 

 

 

 

 グランツの声が議場を震わせる。その血に宿ったジード・フリードの怒りが開放される時であった。

 

 

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今回もお読みいただきありがとうございます。さぁいよいよもう1つの作戦開始です。革命が始まる!(´-ω-`)(予告)

レイ「詩竜の刻印消えたとはいえ、それを許したままってわけにはいかないもんねー」

ジャンヌ「とはいえそれを刻印した張本人ではないんですがね……相手は」

それでも今回の場合、それを「続けている政府」に対する革命ですからね。軍事クーデターになってるけども。でもここら辺完成度低いと思うんですよね( ;∀;)

レイ「いつの間にやらストックも作れてるっていうね」

ジャンヌ「なんか作っている時「クワトロ大佐の演説には届かないなぁ(;´・ω・)」というのを聞いた覚えが」

ネタバレ止めよう?( ;∀;)悲しくなる。では今回はここまで。

ジャンヌ「次回はドラグディア政府とガンダムが正面衝突するみたいですっ、お楽しみに」


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EPISODE53 覚醒する機竜、戦いの果てに……4

どうも、皆様。お盆はいかがお過ごしでしたでしょうか。作者の藤和木 士です。

ネイ「アシスタントのネイです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよぉ~」

今回はEPISODE53と54、2話同時投稿となります。ドラグディア政府との対決が主軸です(´-ω-`)

ネイ「ジャンヌさんを含めて、ファーフニル家とフリード家を苦しめ続けた政府の系譜を断ち切る、といった意味合いで元さんやグランツさんが議事堂に突撃したところですね」

グリーフィア「政府をぶっ潰すなんて革命みたいねぇ。クーデターにあたるのかしら?」

まぁクーデターとしての扱いですね。作中では軍全体で起こしているので、かなり大がかりなことになっています。議事堂だけで戦っているのではないのですよ( ゚Д゚)

グリーフィア「それはまた大がかりだこと。成功するといいわねぇ」

ネイ「でもそのためには政府側の汚職の証拠を掴む必要もありそうですね」

うっ!(;´・ω・)あんまりそこ私の感覚では上手く描写出来ていないように思えるんだよねぇ……無理矢理な流れと言うか。ともあれ、まずはEPISODE53からどうぞ


 

 

 グランツの横で装依状態のまま議場を見渡す元とジャンヌ。議場には種族の違いこそあれど、概ね元がもとの世界で見るお偉いさん方の風貌をした竜人族の議員が大量にいた。乱入に驚く者、電話で助けを求める者、はたまたガンダムの姿をまじまじと見る者やただ静観する者まで多種多様だ。

 ただ1人、予想通りと言える反応をする人物がいた。議場の中央で最も目立つ位置に立つ、この議場で一番の権力者。国のトップであるバロム・バハウの動揺した顔が見て取れた。あれこそが呪いを維持しようとする者達の、今の顔。元のMS装依で隠れた顔が怒りに変わっていく。

 グランツを挟んで元のガンダムの反対側には、ドラグーナ・アレキサンドルを纏うアレクが護衛に付いていた。2人に護られながらグランツはバロムへ挨拶代わりの皮肉をぶつける。

 

「いきなり失礼。何やらガンダムの登場で混乱していると聞いたもので、そのガンダムを伴わせて出向かせてもらった次第だ、バロム大統領」

 

「ふん……それはご苦労なことだ。だがガンダムと兵士達には引いてもらおうか。ここは政治の場だ。MSなど不要……」

 

 バロムは模範通りにMSの退室を願った。ここは戦いの場ではないというのは理に適っている。だが、それは自分達政府のやってきたことと、それを隠し続ける自身の態度を考えてから言うべきだろう。バロムの指摘に反し、グランツがここに来た目的について部屋にいた議員達、そして同じく部屋になだれ込んできていたマスコミのカメラに向けて話す。

 

「いいや、今この場にMSは必要だ。なぜなら君達政府が私の家やファーフニル家に対し、その剣を向け続ける限り、戦いは終わらないのだから」

 

「ファーフニル家に?剣を?いつ私が、君達に剣を向けたという。今君達が剣を向けているのではないか!衛兵!」

 

 マスコミの前で失態を晒しまいと衛兵を呼んで鎮めさせようとする大統領。その姿はたちまち衛兵が遮っていく。数が多い。だがそれだけである。群がる衛兵たちのドラグーナにシュバルトゼロの手が向けられる。その構えに衛兵たちがシールドを構えるが、その攻撃は発生した。

 

『Ready set GO!DNF、フローバースト!!』

 

「ぬっ……なんだ……機体が……あぁっ!?」

 

 その手から放たれた波動が敵MSへと伝わると、機体から蒸気音と不調を示すアラートが鳴り出す。異常な駆動音を上げるDNジェネレーター。やがて機体はショートする形で機能を停止、その場に倒れ込んでいく。

 MS兵に何が起きたのか、分からずにいるバロムと議員達。何が起こったのかと言えば、ただ一つ言えるのは、元は()()()()()()()()()()()()、だけである。DNF「フローバースト」は対象にした物の運動能力に介入、その動きを急激に促進させることでオーバーヒート状態に近い状態へと陥らせて行動を抑え込むというものだった。ヴァイスインフィニットの使った「サイレント・タイム」に対となるシュバルトゼロのDNF。それをスタートからここに来る直前、もう1つの技と共に教わった。

 オーバーヒート状態となり装依解除することもままならない衛兵達。動けずに彼らに対し舌打ちをするバロムに、再度グランツが告げる。

 

「えぇい、何をしている!」

 

「ありがとう元君。……さて、先程君が私達に何もしていないと言ったが、それは少し違う。先程も言ったように、これは君個人ではなく、君を含めた歴代ドラグディア大統領すべてに対する言葉だ。これを見てもらう!」

 

 振り上げたガンドの腕。その先に示された議場内のモニターに写真とデータが記される。それはこれまでに彼らが犯した罪の内容だった。それらは議席のテーブルにある小型モニターを通して全議員、そして正面モニターからテレビ局のカメラを通して全国へと中継される。

 データにはクリムゾン・ドラゴニアスが300年前に死んだこと、死んだ象徴を機竜プロジェクトによって復活させたこと、ファーフニル家に呪いを埋め込んだこと、そしてこれまでドラグディア政府が両家関係者に行った仕打ちに関してがそれに携わった者の名も含めて書かれている。また写真にはその現場を収めた写真が添付されていた。

 グランツはそれらについて語る。

 

「これはドラグディア政府、いや、大統領陣営がこの300年の間に行った象徴とフリード家、ファーフニル家に関係した工作活動だ。象徴が死んだにも関わらず、その死をなかったものとして扱い、当時の竜騎士・詩巫女だったフリード家、ファーフニル家の関係者にはその後何度も暗殺計画が計画され、命を落とした者もいる。それだけにとどまらず、つい最近ではここにいるガンダムに関しても、彼らはその手中に収めようとさえしていた。国民の為ではなく、大統領個人の為の行動を、許してはならない」

 

「黙れ!そんな事を政府はしてなどいない!嘘を言うな!」

 

 述べられた事実を未だ否定するバロム大統領。彼は否定すると同時にこちらに警告してくる。

 

「それに、君らがどれだけ国の秩序を穢していると思うのだ!このような行為、反逆行為だ。今すぐに大統領権限でドラグディア全軍、いや、それに警察指揮件をも以って、君達を含め、関係者一同を拘束するぞ!今すぐその矛を収めよ!」

 

 大統領の権限で、となれば流石にグランツもまた劣勢になるのは明白だ。いくらドラグディア軍の総司令を務める彼でも、本来なら大統領である彼の下に付く人物。無茶苦茶ではあるが、状況が状況故にそうなる可能性が高い。軍隊が来なくても、警察組織が来られるだけでも苦戦は必至だろう。

 とはいえ、保険は用意してあるのは事実。更に元も大統領の発言に対し、物申した。

 

「まったく……そんなこと国のトップに許されてるのかよ?」

 

「ガンダム……いくら君が救世主たるMSであるとはいえ、そんな偶像では国は動かん!」

 

「あぁ、そうだな。ガンダムで世界を動かす気はさらさらない。だけど、俺の言葉は今ここにある。だから言うよ。お前、問題すり替えてるだけだろ?」

 

 元が言い放った言葉、それが何人かの議員の動揺を引き出す。まさかこの程度で動揺する奴がいるとは思っていなかったが、全員が動揺するよりは十分マシだろう。

 元の発言をガンダムの発言だと思ったバロムはその前提で話を進めた。

 

「問題をすり替えている?違うだろう。今問題なのは君達が勝手な行動をし、そして国を混乱に陥れていることだ!」

 

「だから、それがすり替えてんだろ?本来問題となるものを隠して、指摘されればそれがおかしいと問題をすり替えて逆に非難する。簡単などこの政治家も同じことやるもんだな」

 

「だから、どこがすり替えていると!」

 

「すり替えている事すら分かってないのか?これだけ事実が揃っていて、あんたらはその反証すらも出来ていない上に、目の前の出来事に関してしかうるさく言わない。反証から逃げて目の前の障害にうるさく言うことの、どこがすり替えじゃないと?」

 

 交わらない平行線の議論。本当に分かっていないのか、分かっていて言及を避けているのか。どのみち決定的なものを見つけなければならない。元は考える。そこで違和感に気づいた。この空間にて感じる、あのようなノイズ音が響く。

 そのノイズ音が示すのは、敵の存在。いったいどこから。そう思った元は感覚を研ぎ澄ませる。黙る元にバロムが言語道断と先程の言葉に怒りを含めて返す。

 

「えぇい、黙れ!とにかく警備兵!こいつらを……」

 

「――――――へぇ、こいつはお笑いだな」

 

 バロムの声を遮って、元が呟く。響いた声はグランツらも疑問を浮かべる。そんなことは知らずにバロムは口を挟むなと言おうとする。

 

「何がお笑いだと――――」

 

「だってそうだろ。来る前からステルスMSをこの部屋の中に配備しているくせに」

 

「!?」

 

 元の指摘にバロムがぎょっとする。驚きが覚めぬ間に、シュバルトゼロ・イグナイトのテイル・バスターを天井に向けて連射する。天井付近で爆発が起こり、いきなりの凶行に議員達に悲鳴が伝播する。だが、驚くべきはその後だった。

 爆発の中から何かが飛び出る。最初は何もなかったが、何かが煙を纏っていた。その姿が徐々に風景の中から現れるように姿を現した。ドラグーナタイプのMSだったが、機種照合でもどのMSとも合致しない。全軍用MSを管理するドラグディア軍のデータにアクセスしても、出てこない所属不明機。それは大統領が用意した伏兵だった。

 それに合わせて更に天井から落下してくる複数の影。地面に着地すると、ステルスを解除し、同じ姿のMSがいくつも姿を現していく。いきなりの登場に再び議員達の間に動揺が走る。それらMS達はこちらに、特にグランツに目がけて襲い掛かってくるが、それらをアレクのドラグーナ・アレキサンドルが止める。シュバルトゼロ・イグナイトもそのクローでビームサーベルを止め、謎のMSをバロムのいる方へと跳ね返す。

 奇襲に失敗した謎のドラグーナ部隊はこちらと相対する。もはや言い逃れは出来ない。アレクがそのMSのデータが存在しないものだと指摘した。

 

「そのMS、見たことがある。潜入用MSの次世代型としてコンペティションに提出されたが、その後よく分からない事件で開発した部署が政府に逮捕されて落とされた機体だ。事件自体も開発部署があまり聞きなれない架空の物だと言われ、おかしなところも多数あったが……よもや自分達が使うために、架空の部署をでっちあげていたとはな」

 

「しかも武装禁止とされる議場に、私達が来る前に配備していたとは……。これは憲法違反ではないのかね、大統領?」

 

「ぐ……くぅ……!」

 

 図星を突かれ、言葉の出ない大統領。MS部隊の面々が指示を仰いでるように見える。動揺する姿に議員達からもどうなんだと真意を確かめる声が大きくなっていく。

 素直に事実を受け入れるか、それともこれまで通り自らの罪を認めないか。2つの選択肢の中で、テレビクルーの映像で全国民が見守る中バロム大統領が取ったのは後者だった。

 

「おのれ、フリード家の一当主如きが……ガンダムの力を手に入れたからと調子に乗って!……だが分かっているんだろうな?ファーフニル家の娘の命は、私が握っていることを!」

 

「ようやく本性を現したか……諦めろ、バロム大統領。君が秘密を護っても、徳をするものなどこの国にはいない!諦めてジャンヌ君の」

 

「黙れ!国民に隠さねばならないことだってある。小を犠牲にして大を活かす。これは国の為なのだ!」

 

 グランツに応じることなく、国の為と言い訳するバロムがその手をかざす。かざしたのはシュバルトゼロ・イグナイトに対してだ。シュバルトゼロ・イグナイトの中にジャンヌがいることを彼も知っているのだ。その命を呪殺刻印で奪うために、自分達を脅していた。

 今にも呪いを発動させようとするバロム。それを止めさせようと元も説得を試みる。

 

「国の為にだと?そのために少女達に過酷な運命を背負わせることがか?」

 

「ふん、過酷な使命に抗うほど、それだけ英雄性が高まるものだ。むしろ感謝してほしいほど……」

 

「ふざけるな!苦しめることが国の為なら、そんな国滅びちまえ!」

 

 感謝してほしいなどという言葉を聞いて怒りを露わにする元。ジャンヌの前でそのようなことを言うなど、許せなかった。ストレートな買い言葉で彼の言う犠牲の美を否定する。

 こんなやつらの為にジャンヌの、ファーフニル家やフリード家の人達を苦しめさせるわけにはいかない。ガンダムのその手が得物を捉えるようにその手を開く。だが自分達の行動を真っ向から間違っていると否定されたバロムもその堪忍袋の緒が切れ、逆上する。

 

「愚かな!ならその生意気な口、すぐに絶望に歪ませてやる……」

 

「まさか……!?やめろ!」

 

 グランツが制止を呼びかける。しかしそんなことお構いなしに、彼は呪いを起動させた。

 

「死ぬがいい、ファーフニル家の娘よ!死した我らが象徴に仇なした者よ、我が国の聖なる犠牲となれ!」

 

『ぅく!?あぁ!?』

 

「ジャンヌ!?」

 

 呪いの言葉が響いた途端、ジャンヌの容体がおかしくなる。非常に苦しそうな声だ。今にも死にそうにその声が弱くなっていく。それを聞いてバロムの声が高くなり、愉悦に浸っていく。

 

「アーッハッハッハ!これは報いだ!お前たちがドラグディア政府に楯突くからさ!もっとも解き方すらも忘れられたこの呪い、使わなければ意味がないのだけどな」

 

「貴様……!」

 

 グランツが歯ぎしりして悔しさを前面に押し出す。防げなかった最悪の結末。元の必死の呼びかけ声が響く。

 

「お嬢様、しっかりしてください!」

 

「ごめん……ハジメ。……わたくし、もう……」

 

「お嬢様?……お嬢様ァァァ!!」

 

 ジャンヌの声が途切れ、元の絶叫が響いた。議場の議員の間にも不穏な空気が漂っていた。しかしそれに構わず、ジャンヌの呪いを起動させたバロムはその上機嫌な声で成し遂げたことを高らかに叫ぶ。

 

「ははっ!哀しいか?だがそれは貴様たちの招いたこと!さぁ、大人しく貴様らも拘束されるんだな」

 

「愚かな……既にこの光景は国全域に拡散されている。君が責任を逃れる術はないのだぞ!?」

 

 ジャンヌの声が途絶え、もはや目の上のたん瘤はないと邪魔者の排除に掛かるバロム。しかしこの光景は既にカメラを通して全国に伝わっているはずだ。暴動が起きないはずがない。しかしそのことを告げるグランツの言葉をバロムは歯牙にも掛けなかった。

 

「はっ、そんなものかつてと同じように情報操作すればいいのだ!機竜の時も、私達の先祖はそうして国の権益を守った……。これは国が築き上げた歴史であり、同時に触れてはいけないタブーなのだよ!」

 

 タブーであると語り、警備兵、そして伏兵の漆黒のドラグーナで周囲を囲わせるバロム。グランツを護衛する兵士達は銃を構えてけん制する。追い込まれた。シュバルトゼロの視線も周囲の敵とバロム、そして自身の中へと動く。

主の声を失い、途方に暮れた様子の元は勝ち誇るバロムに失った怒りをぶつけた。

 

「また300年前と同じことを繰り返すのか……変わろうという気はないのか!」

 

「変わる?愚問な!変わり続ける世界こそ、自分にとって一番の負担。今を維持することが最善の自身を生かす方法だ!」

 

 その手が向けられ、漆黒のドラグーナ部隊全機が構える。グランツの表情にも焦りの色が浮かぶ。その言葉を聞き、元のその手が震えに震える。まさに怒りに震えていた。

 緊迫した状況。ここで暴れれば生身の人間たちは多く犠牲となるだろう。議員達も悲鳴を上げて逃げ出そうとする中、戦端が切り開かれる――――――

 ことなく、まず響いたのは、笑い声だった。

 

「くっ…………ハッハハハハハハハ!!」

 

「なんだ?……何がおかしい!?」

 

 笑い声に対し、問い詰めたのはバロムの方だ。笑ったのはそう、元の方だった。彼らからしてみれば、なぜ、と思うのも仕方がない。だが、それに至る理由を、元、いや、元達ドラグディア軍の面々は既に知っていた。

 これまでの流れから、傍から見れば狂ってしまったのでは思う唐突な出来事。困惑に満ちた様子で、こちらを警戒するバロムと漆黒のドラグーナ達に、元は言い放った。

 

「失礼。理由は簡単さ。そこまで言ってお前らは俺達を一つも追い詰めてもいないからだよ」

 

「なんだと!?ジャンヌ・ファーフニルが死んで、なぜ……」

 

『―――――どこの誰が、死んだと言いますか?』

 

「!?!?何っ!?」

 

 響き渡ったジャンヌの声に狼狽えるバロム。当然だ。先程唱えた呪文でジャンヌは既に呪殺されているはずなのだから。だが聞こえてくるその声は、確かにジャンヌ・ファーフニル本人の声だった。聞いていた議員に少なくない衝撃が走った。

 とはいえ、理由は実に単純なものだ。既にドラグディア軍クーデター派が知る事実を、バロムに対し告げる元。

 

「生憎だったな、もうジャンヌの呪殺刻印は解除した。後はあんたたち無能な過去の敗者達の掃除だけだよ!」

 

 本来の予定とは違った方法でとはいえ、解決したジャンヌの呪印に対する問題。

 ガンダムの手が変形する。変形した手の間に光が灯り、ビームサーベルの光刃が形成される。サーベルをバロムに向けて漆黒のガンダムの装依者の声が周囲に聞こえる。

 

「さぁ、300年前の時代は終わりだ。それとさっきの言葉の1つに返しとく。タブーは破るために存在するんだよ!」

 

 今こそ、革命の時。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。描写というか、流れが下手ですみません( ;∀;)

ネイ「うん……ちょっと白日の下にさらす展開が、隠れていたMSを引きずり出すというのはあれかもしれませんね」

グリーフィア「決定的な証拠はないのー、と言いたいところだけどドラグディア政府側、というよりもバロムが頑なに認めなかったり話逸らそうとしてた時点で、現場での決定的な証拠を出すって言うのは間違ってはいないとは思うけどねぇ。強いて言うなら、証人が欲しかったって感じかしら?」

それを考えていたんですが、あんまりこの場面を引き延ばしてもテンポ悪くなると思ったんですよね(´・ω・`)けど罪を隠そうとする人って結構こういう否定し続けていれば勝ちって思考しがちだと思うんですよ。行動が正しいと思っている人ほど余計にね。だから頑なに否定し続けさせたかったし、けど一気に逆転させたいと思って漆黒のドラグーナが隠れていてそれを引きずり出す、さらにそれが訳アリの機体だったというので一気に流れを持ってこさせたという展開になりました。あと今章はガンダム同士の対決をメインにしたかったのでね。ドラグディア政府の相手はついでだ(゚∀゚)

グリーフィア「顔が生き生きしてるわねぇ♪」

ネイ「そ、そうですか……でもこれつまり議事堂の中で対決ということになるんですか?」

そういうことになるんだなぁ(;´・ω・)それなりに広い&近いところにいる議員は避難していることになっているから、流れ弾に注意だね。さて、もっと話したいところですが、それは次のEPISODE54の前書きで。

ネイ「それではお嬢様達にバトンタッチです」


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EPISODE54 覚醒する機竜、戦いの果てに……5

どうも皆様。前話から引き続きの方は改めまして、作者の藤和木 士です。

レイ「アシスタントのレイだよー」

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです」

EPISODE53に引き続き、EPISODE54に投稿になります。ガンダム&ドラグーナアレキサンドルVS漆黒のドラグーナとの対決になります。

レイ「なんか数多いね……護らなきゃいけない人も多いし、これは難関だね!」

ジャンヌ「前話の流れがあれでしたが、こちらは自然な流れに行くといいですね。……ところで藤和木。前話の最後の元さんのセリフ……」

(゚∀゚)タブーとは破るためにあるとなぁ!……はい、ギンガナムさんの言葉になります(´・ω・`)

レイ「ガンダム作品の名言の1つを使うなんて……仮面ラ○ダーの名言よりも先に出すべきじゃないかな!?」

(´・ω・`)それを言わないで……地味に辛いことだから。……と思った?

ジャンヌ「あれ、違うんです?」

実は変身の言葉の少し前の元君がエンドの行いを否定する際の言葉、あれはブルディスティニーのユウ・カジマさんのセリフを少し頂いています。「俺自身の意志で」の部分ですね(´・ω・`)

レイ「あ、変身よりも先に出てたんだ……でも同じ話でじゃん」

ジャンヌ「でも漫画のブルーディスティニーでそんな台詞出ていましたか?」

(´・ω・`)うん、分かんないからとりあえずここではEXVSの覚醒技での台詞として書いておくよ。さて、話を戻して漆黒のドラグーナ部隊を相手に勝利を収められるのか?それでは本編へ。


 

「300年前の時代が終わり、だと?ふざけるなっ!!なぜ私がその罪の代償を払わねばならない!行けッ、アサシンズ!救世主諸共……反逆者を潰せェ!!」

 

了解(ラジャー)、かかれ』

 

「アレク隊長!司令の護衛!」

 

「分かっている!」

 

 怒り狂ったバロムの命令に、淡々と答えて一斉に飛び掛かるアサシンズのMS。元達が迎撃態勢を取る。グランツも1歩引いて防御陣形の中に入り、身を護る準備を整えた。

 しかし周囲を囲うように展開していたアサシンズのMS部隊。その機体のゴーグルが閉じられると共に周囲に何かのフィールドを展開する。機体のレーダーに乱れが生じる。加えてその機体の姿が再度消えた。レーダーには一切映らないアサシンズの機影。アレクの驚愕に満ちた声が響く。

 

「クソッ!ステルスか。レーダーに映らない!?これでは……」

 

 グランツの周囲を囲う兵士達も姿が見えない様子で、銃を空に向けて連射する。だがそれらは一発も掠めることなく、議員達の悲鳴を沸き立てるだけの無意味な行為だ。

 どこから攻撃を行うのか、そもそも本当にこの世界にいるのかというほどのステルス。だが確かに彼らはそこにいた。地上からグランツに向けて放たれるビームマシンガンの光弾。それらは周囲の兵士達を貫き、グランツへと迫る。だが当たる直前、グランツの周囲を円形のフィールドが覆う。そのフィールドにビームマシンガンの弾丸が弾かれた。

 兵士達が数人貫かれて倒れる中、フィールドが光り輝く。いつの間にかグランツの周りを円盤状の機械が浮遊していた。仕留められなかったことに苦々しい思いを露骨に表すバロム。そのフィールドの正体に、彼はすぐに気づいた。

 

「ちっ……DNウォール……」

 

「そうだ。ハジメ軍曹のガンダムが持ちし力、その試作自立兵器だ。この障壁の前ではいくらその自慢のMSの攻撃でも、簡単には通さない。……もっとも、時間制限はあるがね」

 

 ドラグディア軍が量産したDNウォール発生器。それらを搭載した護衛専用の自立兵器も今連れてきていた。もっともこれを使う事態は想定したくはなかったが。それでも何とかグランツを護ってくれた。

 危機を凌いだはいいものの、未だその渦中にグランツがいるのは変わりない。しかもこのDNウォール発生器は保有するDNの貯蔵量が少ない。攻撃の激しさ次第ではあと少しで切れるかもしれない。グランツが死んでも意味がない。次の攻撃までに、相手を沈黙させる必要があった。

 未だに攻略法を見いだせないアレクは、辺りを見回して何か相手の位置が分かる手がかりがないかと探る。ジャンヌもレーダーを阻害するジャミングをどうにか取り除こうと試みていた。残った兵士達も生身用のシールドを構えて動きを探る。そんな中、元はただ佇むだけだ。ジッと何かに聞き入る様に静かに耳を澄ませる。

 既にそのわずかなノイズを元は感じ取れていた。周囲を動く何者かの気配。それは間違いなく、アサシンズのMSが動く、文字通り物音(ノイズ)だ。動き回るその動きを、元だけが捉えていた。機械すら捉えきれないその動きを捉えた元は、僭越ながらアレクに対し指示を飛ばした。

 

「……アレク隊長、いきます。そのまま動かないで」

 

「ハジメ!?何を……」

 

『は、ハジメ……?分かったの?』

 

 元の一言に、ジャンヌも半信半疑で聞き返す。まだレーダーが回復していないのにその動きを捉えたことを信じられずにいるのだろう。しかしジャンヌと同じようにレーダーの回復に努めていたスタートだけは、それに対し全面的に信じた。

 

『ほう……分かる……いや、()()()()のか?ハジメ』

 

「…………何でかは知らない。だけど、ヴァイスインフィニットの一撃を受け止めた時から、聞こえるノイズがまた響いてる……。動きが、見える」

 

 元の言葉に、再度ジャンヌの息が詰まる。ただそう言っただけだったが、それで何かを察するスタート。その力の正体を知るであろうスタートは、それを確認して元とジャンヌ、2人に指示を出す。

 

『なら元、ここに来る前に教えたあれを使え。一気に蹴散らすんだ。ジャンヌはその出力の制御。さっきの時と要領は同じ、ただし出力の波はケタ違いだ。バランスを崩すなよ?』

 

『わ、分かりました。……ハジメ、私はいつでもいい。―――――だから、終わらせて!』

 

 指示を受けたジャンヌは慌てて指示に従う。制御の準備に入り、それが整うと行動の開始を元に委ねた。すべて元の声に掛かっている。場所が分かるとはいえ、それもおぼろげ。そして分かるとはいえどのような武器で攻撃に入るかも分からない。だがやるしかなかった。この状況を潜り抜けるため、そしてジャンヌが願った未来をこの手にするために。

 ふとガンドの顔が思い浮かぶ。彼は全く情報のなく、暴走していた元のガンダムと互角に立ち向かった。圧倒的性能差がありながら、自身の戦闘勘と実力で追い払った。彼ほどの力を今の元にあるかどうかは分からない。だがこれだけは分かる。護りたいという気持ちは、負けていない。グランツが死ねば、ジャンヌも命を狙われる。そうなれば300年前と同じ。再びファーフニル家の者達が虐げられる。そんなことはさせない。絶対にもう、繰り返されてはならない。させない。終わらせるのだ、自分の手で。

 刹那の間の熟考。そして、その時は遂に来た。

 

「――――――――Yes my Lord.(イエス マイ ロード)…………行くっ!」

 

『Ready set GO!』

 

 元の声と共に発現する、DNFの宣言。一切姿の見えない機体を捉えられるわけがないとバロムは豪語して罵倒する。

 

「馬鹿め!捉えられると思うか?やれ、アサシンズ!今度こそその障壁、撃ち砕いて奴を殺せぇ!!」

 

 何かが飛び上がるような気配。既に攻撃態勢に入ったアサシンズに、アレクは見えぬ襲撃者を捉えようとしていたが、レーダーにも映らない敵を捕らえることなど不可能だった。

 周囲の兵士達が怯える中、グランツはただ一人その場を動かなかった。逃げてしまえば兵士達に示しがつかないこと、そして策を見出していた元達に賭けていたからだ。期待がかかる中、ガンダムがDNFの名を告げる―――――だが、その名は違った。

 

E(エラクス)DNF(ディメンション・ノイズ・フルバースト)、ドラゴニック・ハザード!!』

 

 普段の名称に、エラクスの名が付いた必殺の一撃。機体の色がエラクスの蒼い光を纏う。イグナイトという発火の形態に備わる、蒼き炎のエラクスの力。蒼炎が機体の各所に現れ、燃え上がる機体。その爆発的な力が開放される。

 蒼き炎を纏った漆黒の重MSが、動いた。

 

 

 

 

「フッ!」

 

 

 

 

 元の一息と共に、三度響く刺突音。元が右手、左手、そして尾から形成したビームサーベルが虚空を次々と貫いた。一瞬の事であり、周囲をエラクスによる残像が残るほどの連続攻撃は、外したと誰もが最初は思った。だが次の瞬間、それが甘い認識であると理解した。ガンダムが攻撃を浴びせた空間、その部分に機体が出現した。先程バロムを護る様に展開し、襲い掛かってきた漆黒のドラグーナ。その機体は胸部を貫かれており、たちまち爆散した。辺りに落ちるのは機体の残骸と、燃えて倒れ込む装依者の遺体。その胸部にはガンダムに貫かれた部分と同じフィードバックダメージが現れており、見るも無残な姿となっていた。

 正確に打ち込まれた迎撃にバロムが慄く。だがその流れを消すことなく、続けてその拳を地面へと叩き付ける。周囲に蒼い火の粉のエフェクトがはじけ飛ぶ。それらは周囲に広がって物に当たるとそれを避けて広がる。無意味とも呼べるその行動。だが火の粉の高純度DNは空中と地上のある空間を弾いていく。その地点を指してアレクに叫ぶ。

 

「隊長!」

 

「あぁ、一瞬だが、見えた!!」

 

 アレクもこの機を逃さずとその穂先を空中に留まる敵機に振り差した。マシンガンランスの穂先は、マシンガンを貫き爆散した。続く振り下ろしが空中で受け止められると、漆黒の敵機体がその穂を盾で受け止める姿が出現した。

 漆黒のドラグーナはX字の奇怪な盾に赤い粒子の防壁を展開する。こちらが使用するDNウォールを彼らもまた装備していた。ランスの穂そのものを受け流そうとしているように見える。その狙い通りにランスが受け流される。その拍子にアレキサンドルの手からランスが零れ落ちる。

 徒手空拳となったアレクの機体。だがそれは攻勢でもあった。ランスを落としたアレクは勢いのままに漆黒のドラグーナを地面へ押し倒す。背部のバーニアを噴かせて押し返そうとした敵のドラグーナであるものの、その前に機体は地面へと押し付けられる。馬乗りになった態勢でアレクが機体のシールドを押し付けた。

 ガンダムとの対決時にはなかった左腕に装備されたシールド。その先は鋭利に尖っていた。シールドの先を敵ドラグーナの胸部に押し付けるアレクが叫ぶ。

 

「さぁ、騙した報い、受けろ!」

 

『グエ゛ッ!?』

 

 シールドから響いた炸裂音と続く断末魔、軋轢音。地面を振動させるほどの音の後、アレクは馬乗りの体勢から立ち上がる。立ち上がったアレキサンドルのシールドの先が取れていた。代わりにその先端は地面に倒れ、撃ち抜かれたドラグーナの残骸に突き刺さっていた。爆発と共に解除される装依。漆黒のドラグーナの装依者が息絶えた姿が露わとなる。

 たちまち5機いたアサシンズ操る漆黒のドラグーナは1機の機体を残して全滅する。残る隊長機と思われる機体がステルスを解除して、部隊を全滅させたガンダム達を睨む。

 

「…………おのれ、ガンダム……!」

 

「な……!?う、嘘だ……こんな!?」

 

 未だにその現実を受け止められないバロムは後退る。残ったのは彼等のみ。エラクスを解き、ビームサーベルの光刃を収めた元は諦めるように言った。

 

「諦めてください。既にあなた達が裏で動かすであろうエージェントも、全てドラグディア軍が制圧・拘束しているはずです。もうあなた達に、逆転の目は残っていない!」

 

「ふざけるな……ふざけるなぁ!こんなことでェ……なぜ私が責任を取らねばならん!!行けッ!」

 

 振り上げた手の動きに合わせ、最後のドラグーナが突っこんでくる。その手に持ったマシンガンをばら撒きけん制してくる。その弾幕を回避して迎え撃つ漆黒のガンダム。突き出した左の拳が漆黒のドラグーナに伸びる。

 だがその一撃は捉えるに至らない。脚部スラスターを噴かせて右に回避した機体が横を抜けてグランツへと向け、その手を伸ばす。腕部装甲が動き、展開された1本の実剣。その刃が真っすぐ伸びる。その手にはまだマシンガンが残っていた。必ずグランツ・フリードを仕留めるという殺意が見て取れる。丁度その時点でDNウォールが解ける。マシンガンの銃口に光が灯る。暴力的な光が、彼を蹂躙するかに見えた。

 だが、そんなことはなかった。否、させなかった。横合いから光刃が伸び、ライフルを貫く。シュバルトゼロ・イグナイトの尾から展開されたサーベルが迎撃したのである。爆風に揺れるガンダムとアサシンズのドラグーナ。再び相対したガンダムが、ドラグーナの前を取った。護るべきものの為にその力をお互いに振るう。目の前の障害を潰さなければ、決着は付かない。2機は決め手の一撃を放つ。互いの右手が交差し、振るわれた。沈黙が空間を支配する。

 

「………………」

 

「………………あり得ん」

 

 最初に声を挙げたのは、アサシンズの方だった。ドラグーナのブレードはガンダムの頭部横を通り過ぎていた。対してガンダムの右手は束ねられて真っすぐドラグーナの胸部を貫いていた。

 刹那の一撃。繰り出した元が、引導の言葉を述べた。

 

「あり得なくても、これは俺の一撃だ。そして―――――これが俺達の、明日への一撃だ」

 

 ジェネレーターを貫いた状態で開いた右手。内部からジェネレーターを破壊し、爆発を誘発させた。爆風で後ろに下がるバロム。爆炎に呑みこまれたガンダムであったが、すぐにその姿を視認されるに至る。

 既に辺りは爆発の煙と死体の臭いで酷いものだ。換気扇と換気窓を開いて煙と異臭を追い出し、兵士達が消火活動を行っている始末である。しかしそんな中で佇むガンダムに対し、尻餅をついたバロムが貶す。

 

「あ、悪魔だ!ガンダムは救世主でも何でもない……私達を滅ぼす、悪魔だ!!」

 

 恐怖から出たのであろう。その言葉。自分達のやって来たことを考えれば、詭弁であるがこの結果を見てしまえば、そう言って事実から覆い隠したくなるのだろう。あるいは、自分も同じ目に遭うのではないかという恐れからか。

 とはいえ詭弁と思えるその発言に、元は素の言葉を返した。

 

「…………あぁ、そうだ。ガンダムは昔の人にとっての救世主だろうが、今のお前にとっては、全てを破壊する悪魔だろうな……。いや、むしろ破壊者とでも名乗ってやるよ。それでお前を殺せるならな……」

 

『Ready set GO!』

 

「ひ、ひぃ!」

 

 その手を向けて漆黒のDNFを構える元。バロムは恐怖に慄き、尻餅をついたまま後ずさる。国のトップでありながら、この醜態。下らないが、それでも彼はジャンヌを殺そうとした。因果応報である。

 だがDNFを停滞させた状態で、元はそのトリガーをジャンヌに預ける。

 

「だけど、これは俺の勝手な怒りだ。本来怒るべきは俺じゃない。……お嬢様、トリガーを預けます。どうするかは、お嬢様に任せます……」

 

「は、ハジメ軍曹!?それは……」

 

 それを聞いていたアレクから制止が呼びかけられる。分かっている。これは命令違反である。あくまで命令は拘束だ。この後の流れも考えればそれは間違いない。だがジャンヌの気持ちはどうなのだろうか。これまで自分を長きに渡り苦しめられ続けたその元凶を、彼女が許すのか。無論彼女の手で撃たせる気はない。だがその気持ちだけは知っておかなければならない。ここまでの間で傷ついた心を受け止めるために、泥をかぶってでもそれを知るのが一番の約束を果たせなかった者の務めであるからだ。

 攻撃の引き金を渡されたジャンヌは何も言わない。ただその手をバロムに向けた状態のままだ。殺されるかもしれないバロムは、恐怖で足を竦ませていた。命乞いとも呼べる涙の溢れた瞳を向ける。何も言わない彼女は、そのまま黒の光球を……撃とうとはしなかった。元のガンダムの手を自身のコントロールで下ろさせ、呟く。

 

『…………バカね。さっきここに来る前にグランツさんが言ってたじゃない。大統領は生きて捕まえろって』

 

「………………」

 

『確かにこの人は私を殺そうとした。ドラグディア大統領は私やお母様に過酷な運命を強いた。私だって許せない。でもね、だからって指示に逆らってまで殺したいわけじゃない。……そもそも、あなただって殺させる気ないじゃないの。トリガーまで丁寧にロックして、今の私が気づかないと思いましたか?』

 

「…………流石です。バレていましたか」

 

 諦めてその拳からDNFの光を消した。振りかざされた凶器から難を逃れたバロムは、生気を失ったように項垂れる。大勢は決していたが、駆け寄れなかった兵士達が今になってバロムの下に駆けていき、その手に手錠をかけると体を起こして連行していく。戦闘は終わりを告げた。

 制止したアレクも胸を撫で下ろし一安心。連行していく途中、バロムが負け惜しみと言わんばかりにグランツに言った。

 

「…………覚えていたまえ……必ず報いを受けさせてやる……っ!」

 

「…………変革の報いか、無論だ。これからの未来は、私達の未来。その道にいる限り、私達はその責任を継いでいくさ。連れていけ」

 

「ハッ」

 

 問答の後改めてバロムは連れていかれる。議場に平穏が訪れる。平穏と言っても議場付近にはMSの残骸と兵士の遺体が転がり、異常さを感じさせるものであった。議員の何人かも忌諱して見ようとはしない。だがそこでこちらに向かってくる議員の一団があった。30代の男性を先頭に仲間の議員達と共に議長席まで行き、男性がグランツに対し声を掛けた。

 

「ありがとう、グランツ・フリード司令。おかげでこの国は変わることが出来る」

 

 その人物はグランツ司令に握手を求めた。グランツもフィールドの領域を解き、その男性の握手に応じた。彼はこの作戦に賛同し、また協力してくれた者の1人であった。

 握手に応じたグランツもその議員の男性に作戦への協力の感謝を述べる。

 

「感謝するのはこちらの方だ、ダン・クロス君。国のトップを潰したとしても、その後を継ぐ者がいなければ国は混乱に陥ってしまう。軍人でありクーデターの主犯である私が、その地位に就くわけにもいかないからね。とはいえ、最初の予想よりも大分被害は出てしまったが……」

 

 グランツが見渡した先に広がる、敵味方問わない死体の数々。その遺体は今も手が空いた兵士達が布を被せて、なるべくカメラに映らないようにしていた。

 なるべくなら犠牲を出したくなかったこのクーデター。議場を穢したことを謝罪したグランツに首を振ってダン・クロスは仕方ないと言って許した。

 

「無理もないでしょう。彼らがあんなMSを忍ばせていたことは私達も知りませんでしたから。ガンダムや他の隊員の皆さんも、ありがとう。後は任せてくれ」

 

「はっ、後はお任せします、ダン議員」

 

 アレクの敬礼に合わせて、元達も敬礼する。少しだけダン議員の視線がガンダムへ向けられ、頷いたように見える。

 そしてダン議員は先程までバロム大統領がいた議長台まで進む。その前で立ち止まると、彼は混乱を収めるべく議員、そしてテレビを見ているであろう国民に対してマイクを通して宣言する。

 

「突然の事で混乱していると思われますが、この場をお借りして言わせてもらいます。私はドラグディア政府龍の革命会派のダン・クロス議員であります。今ここにドラグディア大統領バロム・バハウは国家反逆罪によりドラグディア軍に拘束されました。彼や、歴代大統領達が我が国の名家であり、象徴を操る家系であったフリード家とファーフニル家を虐げてきたこと、また象徴の真実を隠し続けてきたことは、許されざることであります。ですが、それを裁くために強硬手段に出たのもまた事実です。今もこうして反対派の意見が上がっています」

 

 ダンの言葉に、議場からも多くの声が挙がる。歓声もあればひっこめという批判の声。彼らがバロム派であることは容易に想像がつく。まだこれだけの意見を持つ者達が、また同じことをしかねないのである。恐ろしさを感じる。

 だが彼は折れなかった。ダン議員はその声に負けじと声を張り上げる。

 

「しかし!今議論すべきことは、そんな事じゃない!やれひっこめだの、やれテロリストだのと、ならばその方々は真実を隠し続けたままで良かったのですか?このまま彼らを絶望の淵に追い込んでいいと?いつまでも私達の国にそのような後ろめたいことがあっていいのですか!?それをかつての者達のように、子孫へと責任を継がせてもいいと!?そんなことがあってはいけない」

 

 ダンの言葉に反論の言葉が途切れる。言いたいことはあれど、言えば国民の非難の矢面に立つこととなる。迂闊に物が言えなくなるその様に、元はため息を覚えた。この程度の者達が国を動かしていることに失望したのである。もう少し度胸はないのだろうか。

 やがてダンの話が最後の部分に入る。彼は強く問いかけ、そして力強く発言した。

 

「マキナスとの戦争もそうだ、終わらせなければならない。だが、今のドラグディアには、それを決める代表がいない。ならば、仮ではあるが、私がなろう!権限も、責任も、今この時は全て私が背負いましょう!無論落ち着けばすぐにでも選挙を開きます。もしそれでいいのであれば、拍手をお願いしたい!!」

 

 力強い声がマイクを通して議場に響いた。ダンの声はしばしの間議場に静けさを生んだ。混乱、迷い、決断。それらが議場にいた議員達に巡る。

 やがてその声に応じて、拍手が疎らに鳴り小さく歓声が上がる。だが、その音と声が段々と大きくなっていく。小さかった拍手と歓声はものの数十秒で議場を覆い尽くした。喜び、感動、口惜しさ、企み……複雑な感情が渦巻いていたが、それでも彼がドラグディアの仮の大統領になることを了承したのである。

 その光景を見て、グランツやアレクも一息を着いて安心した顔を見せる。元もその光景をガンダムのカメラから見渡していた。これで、世界は変わる。小さな一歩ではあるが、それでももうジャンヌ達が苦しむことはない。呪いも圧力もない、彼らの日常が300年ぶりに訪れた瞬間だった。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。後1話と黒の館DNで第3章は終わりとなります。

レイ「途中危ないかもって思ったけど、最終的に元君の力で何とかなったね。革命大成功!」

ジャンヌ「ですが文字通り元さんの力とは何なのでしょう。ニュータイプのようなイメージですが、少し違う描写ですし」

まぁそれは追々話していくとして。実際元君があの力を使えなかったら全滅、あるいは拘束されて革命は失敗していただろうね。あの漆黒のドラグーナガンダムでいう所の一年戦争のジム・スナイパーⅡの位置づけで設定したからね。割とハイエンドモデルだったりします(^ω^)

レイ「ごめん、分かりやすく言って」

(;´・ω・)……簡単に言うとめちゃ強い量産機です。それこそ性能ならガンダムに匹敵するくらいの

レイ「ヤバいじゃん!?」

ジャンヌ「でも流れとしては最初の攻撃以外すべて元さんとアレクさんにコテンパンでしたね……」

(´・ω・`)そりゃあ、ジム・スナイパーⅡっていっても、想定したのホワイト・ディンゴじゃなくスカーレット隊ですから……ねぇ?

ジャンヌ「とりあえず、やられ役は否定しないと」

さ、では次回が第3章最後のEPISODE!締めくくるのは、平和か、それとも混沌か!?

レイ「と言っても前に第4章があると言ってるんだけどね~。次回もよろしくねっ♪」


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EPISODE55 覚醒する機竜、戦いの果てに……6

どうも、皆様。夏でも今日は大分過ごしやすいと感じます、藤和木 士です。雨とか結構な確率で振っていますが(´・ω・`)……ジオウ終わっちゃったよぉ( ;∀;)ジオウロスになりそう

ネイ「アシスタントのネイです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよ~♪」

スルーされた(´・ω・`)……今回はEPISODE55、第3章最後の話になります。

グリーフィア「前回が終わりでもいい流れだったのに……まだ続けるって嫌な感じがするわねぇ」

ネイ「でもこの作者さんの作品では割とある手法だよね。最後の方で次への流れをちょっとだけ出すっていうの」

旧作も然りですからね(´・ω・`)この流れが私のパターンになりつつあるという。パターンを壊した方がいいのか、それとも、とはよく悩みますよ。ともあれ今話で第3章も終わるということで、第3章最後もご覧あれ!というわけで本編をどうぞ。


 

ドラグディア国内が政権交代に沸く中、隣国マキナスでも動きがあった。隣国の政権交代に対する動きがないわけがない。マキナス政府も考え方が変わった敵国に対し、慎重に事を運ばなければならないのは当然である。

 だがしかし、その考えは非常に甘いものだ。確かに動きはあった。だが1つだけ違うことがある。それはマキナスでも国の政権変わる事態が起こっていた、ということだった。マキナスのトップの交代劇もまた既に繰り広げられ、決着が今着いたのであった。

 混乱するマキナス官邸内。大統領室内は既に血の海が出来上っていたのである。

 

 

 

 

「が、がふっ!?」

 

「………………」

 

 男の護衛である男性の突き出した剣が、スーツ姿の男性の胸を貫く。心臓部を貫いた一撃で男性の口から血液が吐き出される。しかしその血の色は赤ではなく灰色。それは男も含めたマキナスに住む機人族の特色でもある。

 絶命した男性の胸元から剣を抜き、その血を舐めとる護衛の男性。その表情は恍惚の表情であり、殺人鬼を思わせる笑顔を男に向ける。

 

「これで大統領は死亡。他の大統領候補も俺の部隊が今頃やってるころだ。よかったな、旦那」

 

「あぁ、ありがとう。流石、処刑人の称号を持つだけのことはある。褒めて遣わす」

 

 殺人鬼の男性が殺したのは、この国の大統領だ。MSを使われる間も与えず、殺すことが出来た。既に殺人鬼はここに来るまでの間に防衛部隊のMSすべてをもう1人の護衛人と共に蹴散らしていた。政府の人間は一切生かさない。それが男の要望であったためだ。

 もう1人の護衛人も硬い表情ではあるものの、その亡骸をジッと見つめていた。その視線に気づき、処刑人の男性が軽く声を掛ける。

 

「お、もしかしてビビっちまったか?けど俺の流儀は思い切り殺るっているのなんでね。慣れてくれや」

 

「…………別に、そんなことは思っていない。こうなることも覚悟は出来ている。もう国も止まらないさ」

 

 達観したような考えを口にする男性。その顔つきは愚直な青年軍人というもので、幼さが残る。だがしかし彼の上官を通して彼を護衛に付けたその分の仕事は果たしてくれた。感謝はせねばなるまい。

 

「君もありがとう、星剣使い。おかげでこうして大統領府を制圧できた」

 

「それはなによりです。ならとっととやることをやってくれ。無線によると、ドラグディアの方でクーデターが起きたという。それも含めて演説はやってください」

 

 星剣使いと称された青年はそのように今起こっている事態について告げる。気になった男は大統領の席にあったパソコンを操作し、その情報をピックアップする。

 確かにその通りだった。先程ドラグディア政府に対し、軍がクーデターを起こした事がニュースに挙がっている。クーデター部隊の中にはガンダムの姿も散見された。敵国のとある学園にてガンダム同士の激突があったというのは、既に男も大統領府侵攻前に知っていたことだが、よもやその後がこのように起こっていたとは思わなかった。

 大統領の交代。新たな大統領であるダン・クロスという男はどうやら変わらない時代を変えると宣言して変わったようだ。とても美しい心構えではあるが、マキナスという国を乗っ取ろうとする男の前では霞んで見えた。かつてのクーデターで全てを失った一族の末裔としては、そのような安定して護られてきた物を壊すという行為は見るに堪えなかった。すぐにそのニュースを閉じ、顔を上げる。

 同じようにそのニュースを見ていた星剣使いの男性は顔をこわばらせていた。待ちかねた宿敵の進化した姿に、気が引き締まっていると見える。ならば彼には最大の障害となるガンダムを止めてもらわなければならない。一方処刑人の男性は星剣使いの脇からそのニュースを見て、呆れを示した。

 

「はっ、下らねぇ。隠すなら最初っから口を塞げっての。アンタのご先祖さんの時みたいに、なぁ?皇帝陛下」

 

「エクス・サイズ中佐、そういうのは控えた方がよろしいかと……」

 

 処刑人の男、エクス・サイズは真っ直ぐ男の方に向けて語りかける。星剣使いの男性はその言動を慎むように言おうとするが、男は手を向けて構わないことを示す。エクスの言うことは紛れもない事実だ。自らの都合の悪いことは全て口を塞ぐのが一番。それを男はかつて祖父母が受けたという仕打ちの話で学んでいた。

 自らの家は革命という暴言でトップの座を追われた。結局のところ彼らは権力が欲しかったのだ。だから革命と言う言葉を盾に祖父母達……「マキナスのトップに立つべき者達」はその座を追われた。以来この国はドラグディアと同じ大統領制を取るようになった。

 ドラグディアと徹底的に対立して初めて機人族としての誇りが保たれると考える男性の一族。それは既に忘れられて久しい一族だった。100年程前まで彼の一族はマキナスの国を治めていた。今回はその復讐である。その復讐はあっという間に終わったが、まだすべてではない。これから「100年前の続き」を行わなければならない。その流れは奇しくも目を背けた今回のドラグディアの革命と同じく、政府への反逆であった。そのために軍へと命じるため、引き連れていた侍女達が運んできたカメラに顔を向け、自身の名と共にマキナス全土へ放送を行う。

 

 

 

 

『聞け!愚鈍なるマキナスの国民達よ!私はギルフォード。ギルフォード・F(フレデリック)・マキナリアス。100年前、愚かなマキナス政府を立ち上げた者達に暗殺された、マキナス皇帝「エルローディア・M(ミラダス)・マキナリアス」の血を引く者!マキナス大統領は我が僕英雄エクス・サイズが葬った……今ここに、帝国としてのマキナスを再建する……そのために必要なこととは何か!簡単だ。我らが宿敵、竜人族の一大国家ドラグディアの滅亡である!皇帝を排除してから100年、マキナス政府の愚か者共はその間に戦争こそ続けたが、押し切ることは叶わなかった!何故か!簡単だ。彼らが革命と言って手に入れたのは、政治の自由などではなく、自分達の権力の自由にすぎなかったからだ!戦争の勝利など、二の次でしかなかった者達にこの聖戦の勝利を導けるはずがないのだ!だからこそ

私は宣誓する……私が新たなマキナス皇帝となり、果てない無意味な争いを鎮め、我らの勝利をもたらすと!醜き隣国ドラグディアのガンダムすらも、我がマキナス皇帝の正統後継者の力の下に、完全粉砕してくれよう!国民よ、正しき力に従順せよ!!ジーク・マキナス!!』

 

 

 

 

 室内に響き渡るマキナス皇帝ギルフォードの声。声が響き渡ると政府官邸の中から声に応え復唱する声がわずかに響く。この部屋からも侍女たちによる号令が響く。

 

『ジーク・マキナス!ジーク・マキナス!』

 

 彼らの声を聞いてようやく、ギルフォードは実感する。祖父母や両親達の悲願が叶ったこと、そしてマキナスという国を遂に取り戻した事を。自身に従う2人の兵士達は大仰に拍手するか、複雑な表情を見せるも何も言わず聞き流している。それでも今は構わない。彼らは自身の地位などどうでもいい。戦うことを目的としている兵士だ。国のトップに従ってくれるのなら、それだけでも十分だ。

 国の方からも騒動が起きているのが分かる。歓喜か、はたまた暴動か。どちらでもいいが、それらを治めるのも皇帝の仕事である。ギルフォードは続く命令を軍へ向けた命令として再びカメラに向けて発言する。

 

『さぁ、マキナス軍よ。最初の仕事だ。マキナスの街にて起こる騒ぎを治めよ!反旗を翻すものは殺してしまうのだ!!そして、最後の戦争を始めよう。私達、機人族の勝利という未来を!!』

 

 再び湧き上がる歓声と悲鳴。既に采は投げられた。ドラグディアにもこの放送は届いているはずだ。ドラグディアの反応が楽しみで仕方がない。反応をしかるべき場所で受けるべく、ギルフォードは移動を行う。前方をエクスが先行する。その後方を遅れて星剣使いである男性、アルス・ゲートが固める。

 皇帝の舞い戻りし機人族の国、マキナスは再び帝国国家へと変貌を遂げていくのであった。

 

 

 

 

 官邸の議事堂内で起こった反乱終了から30分後、元とジャンヌは官邸外のドラグディア軍の張ったテントの中に座り込んでいた。疲れ切っていた。無理もない。2人はこれまで3日間(正確には元の場合さらに2日)訓練に打ち込んでいた。そこから本番とも言えるヴァイスインフィニットとの激闘、そして先程の革命騒動……ここまでジェネレーターの出力維持に全力を注いでいたジャンヌが限界であり、終結を見届けてすぐに2人はグランツらが議事堂のある官邸外部に立ててくれていたテントへ、装依を解除して休憩をもらったのだ。

 グランツ達からも既に了解は取っている。今は周囲にケルツァート隊のメンバーが見張りに付いているため、2人も安心して体を休める。ジャンヌの体が元の方に向かって寄りかかる。これまであり得ないような行動に元も胸の高鳴りが収まらなかった。

 落ち着け、これは疲れすぎて危機感などを失っているからなんだ、本心じゃない、またすぐに気づいて突き放すはずなのだ、と心の中で考えを巡らせる元。罠とも思えるこの行動に引っ張られないように言い聞かせる。このまま受け入れてしまえば、間違いなくフォーンにどやされるのは間違いない。いや、気づかないふりをしているのだろうがケルツァート隊の仲間達から後で意気揚々といじられるはずだ。なるべく、そのような面倒くさいことは避けたかった。

しかし、彼女の呼吸音がかすかに聞こえてきて、その考えを押し留めた。そうは言ってもやはり今回の功労者はジャンヌだ。ヴァイスインフィニットとの対決時ももちろんだが、革命時にも演技力で動揺を誘うことが出来た。ネットニュースによればバロムに対し若者からの反対意見が強く出たらしく、次代を担うのが誰なのかよく分かる結果となったという。ジャンヌ迫真の演技も「よくやった!」「一本取られました」「ざまぁwww」と好評の様子だ。それだけ頑張った彼女の為に労いを掛けるのもまた自分の役目だろう。

 ジャンヌの体を自分の体で支えていた元。すると眠りそうな声でジャンヌが話しかけてくる。

 

「…………ハジメ?いい……?」

 

「お嬢様?どうかなさいましたか?」

 

 いつも通りのやり取り。先程まで名前で呼んでいたというのに、それは恥ずかしいと正気に戻った元。テンションというものは時に恐ろしいものだと改めて気づかされた。今後はきちんとお嬢様と呼ばなければ。

 だがジャンヌがその点について指摘する。少し不満そうな口調で名前の呼び方について咎める。

 

「……なんで、お嬢様呼びなの……?」

 

「え……いや、やはりお嬢様はお嬢様と呼んだ方が……」

 

「あんなに、ジャンヌジャンヌって、呼んでたくせに……」

 

 いい感じにごまかそうとしたものの、事実を言及されてしまい言葉に詰まってしまう。まさにそのとおりであり、丁度それを避けたかったのである。当然それについて元は且座しようと試みる。

 

「あ、あれはその……」

 

「いいわよ、別に。ジャンヌって呼んで。むしろ、その方が今はいいの」

 

「え……」

 

 予想外の発言だった。むしろ推奨してくる態度に、何かおかしくなってしまったのではと考える。レイアを救えなかった反動が今来て、それで自暴自棄になってしまっているのではないかと不安になる。

 元も不安になるジャンヌの言動。だが元の予想は半分だけ当たっていた。ジャンヌは一泊置いてから無理に話題を変えて話す。

 

「……レイアさん、救えなかったわね……」

 

「!……はい」

 

 予想通り来たその言葉。ジャンヌもまた気にしていた。本来なら助けるはずだった人質。だが元は革命のためにジャンヌの身を優先して助けに行かなかった。行けなかった。もしあそこで助けに行って戻ってこられなかったら、どうなっていたか。

 あの時ジャンヌは革命の為に抜けることは出来ないと、元の革命への参加を辞退する提案を跳ね除けた。両親が繋いだバトンを離さないと気丈に振る舞っていた。あの時は大丈夫だと思ったが、やはり無理をしていたのかもしれない。

 

「力不足、だったわ」

 

「はい。俺の……」

 

 自らのせいである、と謝罪しようとした元。ところが話の主導権をジャンヌ自身の懺悔が無理矢理奪った。

 

「私の、力不足だった」

 

「おじょ……!」

 

 虚を突かれ、思わず振り向く。その時には既にジャンヌの瞳には大粒の涙が浮かんでいた。零れ落ちる涙を何かで拭こうとした元だったが、その行動よりも速くジャンヌの頭が元の肩から滑り、太ももの上に落ちる。ジャンヌは同時に号泣を響かせた。

 

「私のせいなの!私がもっと、ガンダムのシステムを安定させられていたら……!レイアさんを救えたのに!!う、ううぅぅぅ~~~っ!!」

 

 思っていた以上に抱え込んでしまっていた。レイアを救える手段はヴァイスインフィニットの反撃手段を封じること以外にもう1つ、DNFによる救出手段が残されていた。

 だがそれは高純度DNを最大限まで増幅させて繰り出す粒子制御の難易度が高い大技。ガンダムの性能面も含めて成功率は少なかった。更にそこにジャンヌが制御しきれなかったということもあって、練習でも一度も制御に成功できず、封印された手段でもあったのだ。

 もしそれが使えたなら、レイアが今ここにいたかもしれないというのは想像できる。だがそれを使うまでの段階にすら持ち込むことが出来なかった。それが余計にジャンヌの心を苛んでいた。後悔が今ここで出てきてしまったのだ。

 何とか泣き止ませようと試みる元。だが並大抵のことで泣き止みはしない。

 

「お嬢様!自身を追い込まないでください!あれは自分も……」

 

「違う!あなたは完璧だった……私がいけないの!私が出来ていたら、きっと……」

 

 自責の念に囚われるジャンヌ。元の言葉は届かない。このままではいけない。周りの目がという以上に、この状態のまま放っておいたら彼女は自ら命を絶ってしまうかもしれない。何が何でも、彼女をこのままにしておけない。どうすれば彼女を落ち着かせることが出来るか……。

 元は意を決し、行動した。ジャンヌの顔を起こし、自分の方へと向けさせて呼びかける。それも強く、はっきりと。

 

「ジャンヌ!」

 

「ひぅ……ハジメ……?」

 

 怯えるジャンヌの反応。だが構わずと元は彼女に言い聞かせる。

 

「君がDNFを会得できなかったのは事実だ。だけど、俺はレイアを別次元へと送ってしまった!俺がこの最悪を引き起こしたんだよ!!だから……だから君は傷つけないでくれ……君自身を!」

 

 精一杯の抱擁、それと共に事実を語りかける。別次元へと送ることになってしまったのは、元自身の失態だ。あれさえなければ、まだやり様はいくらでもあった。どれだけエンドが閉じ込めようと、ジャンヌがDNFのコントロールに成功し、救出することだって出来たはずだ。その可能性すらも元は奪ってしまった。

 だからこそもしもの事よりも起こしてしまった自分を責めて欲しい。それが今彼女を安心させるために必要なことだから。そして最後に言う。

 

「絶対に助ける。レイアは絶対に、俺が……」

 

「ハジメ……ッ!ハジメェ……!」

 

 ジャンヌが泣きついてくる。思うことはある。だが今はただその背中をさすり、身体を寄せるだけであった。宣言したからには必ずやり遂げなければならない。必ずその時は……。

 意志を固くしたところで、テントへ訪問者が訪れる。やがては人が来るだろうとは思っていたが、その訪問者の顔を見て元も少しだけ驚かされる。訪問者とは、ローレインだった。彼女はテントを訪れると、その泣きっぷりを見て何があったのかと問う。

 

「おーす、って何があった?」

 

「ローレインか……。ちょっと色々と限界が来たみたいでな。それより、もうみんな帰宅させたのか?」

 

 ローレインへはそのように説明しながらも、ローレインへと聞いたのは学校に残っていた生徒と教師の帰宅についてであった。彼女には決闘終了後の学校から、関係者を全員家へと帰宅させる最後の仕事が残っていた。それほど時間はかからないと思っていたが、それでも予定より早いと思う。

 すると元の疑問にローレインは得意気に話す。

 

「あぁ、元々みんな今日のメインイベントが台無しになったからって一目散に帰っていったぜ。群がるだろう記者達にはこっちの事知らせて、気を引いたからそんなに数はいないから、後は残ってた兵士達だけで十分だったぞ。それに生徒の誘導をグリューネ会長が率先して手伝ってくれたし、あとレヴも協力してくれたからな」

 

 自慢話の様に起こっていた出来事を語るローレイン。自分達が頑張っている裏側で、どうやら元達の知り合いも頑張ってくれていたようだ。ローレインには本当に世話になったと思う。元は友人、そして仲間としてローレインにお礼を言う。

 

「そうだったのか……ありがとう、ローレイン。みんなにも言わなきゃいけないけれど、特に今回はお前のおかげで、学校のみんなを護ることが出来た……」

 

「へへっ、作戦は一応成功したしな。まぁ俺としてはヴァイスインフィニットに一槍も浴びせられなかったけども。でもハジメも途中で助けてありがとな。マジでビビったぜ……あの一撃」

 

 ローレインは無事であることに安堵し、息を吐く。本当に学校の人達が無事でよかったと思う。こんな大事、あまり経験したくないものだ。2人は顔を合わせて笑い合う。

 だがしかし、彼らのつかの間の平穏は崩れ去ることとなる。見張りとして就いていてくれたケルツァート隊のメンバー、フォウルがテントに駆けこんでくる。

 

「た、大変だ!2人とも!!」

 

「お、どうした、そんなに慌てて……」

 

「フォウル、どうしたんですか?まさかグランツ司令が……!?」

 

 グランツの身に何かがあったのではないか。フォウルの慌てぶりにそのように直感を働かせる元。ところがフォウルは首を横に振って、そうではないことと、舞い込んできた緊急事態を元とジャンヌ、そしてローレインに端末の画面を向けて伝えた。

 

「そんなんじゃねぇ!アレクがいてそんなことにはならねぇよ。けどそれ以上にヤバいって、議事堂の方も大慌てだ!こいつを見てくれ!!」

 

「何々…………は?何で……!?」

 

 言われるままに端末の画面を見る3人。最初にローレインが呆気に取られたようにニュースの内容に対して聞き返す。

 続いてジャンヌもなくのを止め、端末に映る映像を見ていく。まだショックから立ち直れていない彼女であったが、その内容は大きく衝撃を受けてまた言葉を失う。

 

「そんな……これは……!」

 

 2人の反応、元もその内容を見て絶句する。

 あり得ない、これが本当なのだとしたら。これは本当にとんでもないことだ。流れとしては今起きていることと同じことだが、行きつく先は悲劇へと続く最悪の行動だ。

 元の拳が自然と固く握られる。フォウルもその表情を普段の調子のいい陽気な表情から、余裕のない焦りを感じさせるものへと変えている。端末に映る全国放送の内容。それはマキナスを再支配した皇帝の演説だった。彼が謳うのはドラグディアとの全面戦争。ガンダムすらも叩き潰すという威勢の構え。画面端に映る、2人の男性軍人。そのうちの1人は、かつて対峙した、あの星剣使いだった。

 間髪無く降り注ぐ、最悪の事態。この事実に元は覚悟を決めたような表情で呟く。

 

 

 

 

「まだ戦争がしたいって言うのかよ……この世界は!」

 

 

 機械と竜の世界、その最後の大戦争が今、始まる。

 

 

第3章 END

 

NEXT EPISODE AND NEXT CHAPTER

 




今回もお読みいただきありがとうございます。次回は黒の館DN。第3章を締めるにふさわしい3部構成となります。

ネイ「この終わり方……つまり、第4章は戦争となる、という感じですね」

グリーフィア「いいわねいいわねぇ♪作者君旧作じゃあ戦闘って区分ばっかりだったから、一気に戦闘の規模が広がるわねぇ」

(´・ω・`)でも言うて仮面○イダービルドでも、戦争って描写の戦闘シーンってあんまりなかった気が……。

グリーフィア「あれは子供向け特撮ヒーローだし、それでも戦争の描写あって戦兎君苦悩してたじゃない?」

カシラ方面がすごいその影響受けてましたね……万丈だ構文もそこから生まれたし、それに今回も元君の最後の台詞はシン・アスカの台詞をちょっと組み替えて使ったし……あれ、つまり戦争ものって名言もとい迷言生まれるんじゃね?(゚∀゚)

???「止まるんじゃねぇぞ……」

止めろ!?(゚Д゚;)というか今の誰!?

ネイ「ただの空耳です。後、元さんとジャンヌさんの距離すごく縮まってませんか?時間と比べて……」

ごめんそれは私も思った(;´・ω・)ただここでねじ込んでおかないと次が戦争を主軸に入っていくから入れ込む隙間ないだろうなぁと思ったから入れました。

グリーフィア「入れないという選択肢は?」

ない!( ゚Д゚)

ネイ「やっぱりラブロマンス書いた方がいいのでは?」

方向性変えないから!(゚Д゚;)では次回黒の館DNをよろしくお願いします。

グリーフィア「また次回ね~。もしかすると3部構成になるから前日にツイッターの方に予約投稿するかも~?」


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黒の館DN 異世界戦争編 第7回 前編

どうも、皆様。これを予約投稿しているのは深夜0時からです。藤和木 士です。

今回は黒の館DNを3本立てでお送りします。今回はガンダムの紹介がかなり大きくなったのでこうなりました(´・ω・`)

まずは前編、どうぞ。


 

 

士「さぁ今回も始まりました黒の館DN!本日は前中後編の3本でお届けしますよ~作者の藤和木 士です!」

 

レイ「アシスタントのレイだよー。あれ?てことはアシスタントどうなるの?」

 

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです。……確かに、少し人数が足りなくなると思いますが……?」

 

士「それについては問題ない。後編はいつも通りジャンレイコンビで送る予定だから!さて、第3章も終わり!今回紹介するのは、元の初恋相手の柚羽ちゃんから革命家のダン・クロス。そして機体は主役機シュバルトゼロガンダム[Repair-Ⅱ Fafnir]からあの超強い噛ませドラグディアMSのドラグーナ・ラプターまで!一挙紹介だぁ(゚Д゚;)」

 

レイ「数が多くて大変そう」

 

ジャンヌ「だから前中後編の3パートに別れるんですね……最初は人物紹介とガンダム以外のMS紹介ですか?」

 

士「ハイそうです。まずは柚羽から紹介していきましょう」

 

 

 

間宮柚羽

性別 女

身長 154cm

髪色 黒

出身地 日本 三枝県 四河市

年齢 14

誕生日 5月4日

血液型 A

好きなもの 元、ショートケーキ、母親

嫌いなもの 仲間はずれ、水泳

愛称 ユズ

 

・元の住んでいた世界に生きていた幼馴染の少女。享年14歳。元とは幼稚園以来の仲であり、元にとってかけがえのない存在、そして今まで元の心を苦しめ続けることとなってしまった人物。

 元の近所に住んでいたため、幼稚園に入る前から面識があった。元の面倒を見ると姉のように振る舞うことが多く、元も恥ずかしさから余計なお世話としていた。しかし小学校の時に彼女のいじめを見た元が助けに入ってからは、お互いに気にする関係となっていった。中学校2年の夏に母親が再婚することになったが、それ以前から再婚相手の男に性的暴行を受け始めており、元に遠回しの助けを求めた翌日、近親相姦による内臓破裂、外傷により死亡する。

 彼女の友人達もこの死には大きくショックを受けており、彼女に助けられ友人となった蒼梨深絵や小学校以来の友人であった鈴川光姫も葬式に参列している。だがそれ以上に大きくショックを受けたのは助けを求められながらもそれに気づけなかった(と思い込んでしまった)元であり、これが元の暴走を誘発してしまうことになった。ちなみに彼女には兄がいるが、葬式参列後は誰もその行方を知らないという。

 人物の外見モデルは超次元ゲイムネプテューヌシリーズに登場するプラネテューヌの女神候補生「ネプギア」。髪型は変わりなく、髪色を変更。更にロングヘアーの側頭部を少しだけヘアゴムで括っている。

 

 

ダエット

・ファーフニル家の庭師を務める男性。医師免許を持っており、家の中での手当て担当も行っている。40代。

 元々は医療関係者だったが、失業後知人の勧めで暴力系組織に拾われかけるも、直前にガンド・ファーフニルがその組織を壊滅。その際に園芸の趣味を気に入ったガンドの誘いでファーフニル家の庭師兼医者として雇われる。家に搬送された直後の元の治療を行っており、その際には名乗らなかったが、第3章にて再登場時に名を呼ばれる。精神科専門ではないものの、元の精神状況を見抜くなど、優れた洞察眼を持つ。

 

 

エルダ・ファーフニル

 先々代ファーフニル家詩巫女当主の女性。クリエの母親でありジャンヌの祖母に当たる。享年40歳。クリエが7歳の頃に首を吊って自殺している。その原因がクリエの詩巫女への嫌悪が関係しており、彼女もまたファーフニル家の呪いの被害者と言える。

 グランツの婚約候補でもあり、グランツもそれを望んでいたが当時のフリード家当主であった父が適性を考えもう1人の婚約候補を彼女の結婚相手として選定、結婚する。詩巫女としての腕は平凡であったが、MSと詩巫女の関係性をMS操縦システムに組み込む研究を行っており、その死後クリエの娘であるジャンヌがガンダムにて使用するエンゲージシステムの先駆けとも呼べるものであった(理論としてはエンゲージシステムの最初期の構想であると同時に、詩巫女と竜騎士本来の形。そしてそれを現代MSにアレンジする手前だった模様)。

 

 

オルレリアン・ファーフニル

 300年程前のクリムゾン・ドラゴニアスのパートナーである詩巫女。「機竜」のクリムゾン・ドラゴニアス誕生の当事者にして、ファーフニル家の呪いの最初の継承者。クリエから数えて11代ほど前のファーフニル家詩巫女当主に当たる人物でありジャンヌにとってはすべての始まりと呼べる人物でもある。愛称はレリア。

 事件当時の性格は朗らかでいて詩の才能を伸ばそうとする頑張り屋な面があった。戦いが嫌いであったものの、いつかみんなで歌えるようにと両国の平和を何より願っており、平和の為にクリムゾン・ドラゴニアスを操ることを願い、優秀だった姉を跳ね除けて見事共鳴者として選ばれた。共鳴率は当時の時点ではここ数十年の間でもトップクラスを誇っており、詩の精度よりも心の清らかさがクリムゾン・ドラゴニアスと本来の役目で信頼を強く繋げていたという。

 竜騎士を務めたジード・フリードとは幼馴染であり、昔はよく彼の面倒を見ていたという。互いに家の特色である詩巫女、そして竜騎士を目指し、当代の竜騎士・詩巫女コンビとなった。両者共にパートナーとなったクリムゾン・ドラゴニアスとは家族のように接していたという。

 事件当時はジードが前線に向かったところをマキナスのMS隊による奇襲を受け、クリムゾン・ドラゴニアスに庇われたことで生還する。だが代わりにクリムゾン・ドラゴニアスを喪い、その責任として継承呪印もとい詩竜の刻印を施されることとなった。その後一度機竜となったクリムゾン・ドラゴニアスとの契約を結ぼうとするが、彼女に追い払われる。しかし何かを聞き取り、彼女に代わって復讐を果たそうとするジードをクリムゾン・ドラゴニアスの下へと導いた。その後は自分の家を護るため、そして未来のドラグディアを救うためにフリード家とのつながりを、家を継ぐ者に代々秘密裏に伝えるようにした。

 人物モデルは魔法戦記リリカルなのはForceのヒロイン「リリィ・シュトロゼック」。ジャンヌのような長い銀のウェーブ髪に変更しているイメージ。

 

 

ジード・フリード

 300年程前のクリムゾン・ドラゴニアスのパートナーである竜騎士。「機竜」のクリムゾン・ドラゴニアス誕生の当事者であり、のちのドラグディア軍司令官の1人。グランツやフォーン、ヴェールの先祖であり、当時のフリード家当主となった。

 家の集まりでよく遊んでいたオルレリアンとは幼馴染であった。幼少期のオルレリアンに一緒に詩巫女・竜騎士コンビになろうと言われ、本人も承諾。当初は武に才はなかったが、努力を以って当代一と称された自身の兄に模擬戦で勝利。その代の竜騎士へと就任する。

 クリムゾン・ドラゴニアスとは家族の様に友情を結ぶが、クリムゾン・ドラゴニアスからは自分の事よりもオルレリアンを護ってほしいと常々言われていた。しかしクリムゾン・ドラゴニアス戦死の際、前線へ出ざるを得ず、更に敵の象徴を守護する機械騎士と交戦、撃破するも既に後の祭りであった。

 自身の行いを恥じ、またオルレリアンへの国の仕打ちに激怒するが、機械騎士撃破の功績としてドラグディア軍大元帥への昇格をネタに口封じを受ける。それでもオルレリアンのためにと反旗を計画。やがてオルレリアンに導かれ、クリムゾン・ドラゴニアスと再会。言葉を交わした両者はオルレリアンの子孫のために彼女の家の守護と、国への反逆を決意し、ジードは自身の家に生まれた、あるいは仕える者をファーフニル家の当主へと立てるようにし、また自身の家の次代当主にはファーフニル家を護る様に厳命した。

 彼自身もオルレリアンの事を非常に好いており、当時はもてはやされていた。しかし詩竜の刻印が刻まれた後は必要以上の関わりを避け、両家に悪影響の及ばないようにしていた。だが後年の日記では非常に辛く、後悔していたことが語られていた。なお彼の妻はリントヴルン家出身でオルレリアンの親友であり、事情を良く知る女性であった。

 当時使用していたMSは新第1世代MSのドラゲスのフルカスタム機「ドラゲス・ドラグナイト」(なお以前の説明と若干変わるが、ドラグーナはこの新第3世代MSの部類に入る)。

 人物外見モデルは魔法戦記リリカルなのはForceの「トーマ・アヴェニール」。髪はやや伸ばしており、銀髪のまま。事件直後までは幼さの残る表情が多かったが、事件後からは武人として名だたる戦果と表情をするようになったという。事件後の人物外見モデルは鉄のラインバレルの加藤久嵩。

 

 

バロム・バハウ

・ドラグディアの大統領を務める男性。50代。保守派に当たる派閥のトップ。歴代ドラグディアの大統領と同じく、フリード家とファーフニル家の監視と有事の際の呪い執行者としての任を背負っていた。

 政治家としてはそれなりだが、不正もそれなりに行っており評判はやや低い。龍の革命会派のダン・クロスとは因縁の仲。

 

 

ダン・クロス

・ドラグディアの政界の派閥の1つ、龍の革命会派のトップ。30代。時代をけん引する次世代の担い手といった風貌であり、人気も高い。

 人気こそ高く、仕事も出来るもののバロム・バハウ含めた保守派の工作によりなかなか国の代表の座に就けないでいた。グランツとは政界進出時に助言をもらった人物であり、交友がある。彼の推し進める作戦と自身の目的である国のトップの座の奪還、政権交代に共通した敵を持つ彼らは共闘、革命作戦の後詰を担当することとなる。

 革命作戦後は臨時の大統領を務めることとなるが、その直後に起こったマキナスの宣戦布告についても対応することとなる。彼の交渉と互いの国の事情により戦争は2日後に開戦することとなった。

 人物外見モデルは機動戦士ガンダムZZのシャングリラコロニーの市長の部下「チマッター」。国を変えようという革命家の側面は彼にはないものの、後年のラスト・サンでの行い

も含めて善政をするという面は受け継いでいるように思える。

 

 

 

士「以上が人物紹介になります。……え、あの皇帝さん?ちょっと今は外してありますね」

 

レイ「外してあるってことは、第1部、LEVEL1最後辺りに紹介かな?」

 

ジャンヌ「というか……ダエットさん名前決まってなかったんですか?」

 

士「決まってませんでした(´Д`)今もファミリーネームに当たる名前ないです(^ω^)」

 

レイ「ちゃんと付けてあげようよー」

 

ジャンヌ「まぁ隊員達の何人かも同じみたいですけどね。それより次はガンダム以外のMS紹介のようですが……これって1機だけです?」

 

士「そうです。あのめっちゃ強い演出で出てきてアレク達を奔走したのに、元君の謎能力で見事に完全ステルスを突破されて撃沈したあの黒いドラグーナの紹介です(´・ω・`)」

 

ジャンヌ「かわいそうなドラグーナ」

 

レイ「強いのに噛ませ役なんて酷いね」

 

士「一応活躍場面は今後あるから(;・∀・)それではどうぞ」

 

 

MS-XX02(敵対峙の仮称コード。ドラグディア軍配備状態ではMS-DD08CR)

ドラグーナ・ラプター

 

 

・ドラグディアで採用されかけたものの、謎の事件と圧力により素体諸共国に取り上げられた、軍用試作MS。ステルス装甲を持っており、その精度はドラグディアにて現在正式採用されているドラグーナ・シーカーよりも高性能。

 機体の性能も各機がドラグディア専用機群と謙遜ないほどの性能を誇り、それが量産化され各諜報部のMSとして配備される予定だったという。しかしこれは設計段階からドラグディア政府が暗殺部隊「アサシンズ」の専用機として開発を命じていた機体であり、ドラグディア軍のクーデターを鎮圧する目的で開発されていたのであった。

 軍のMSを相手取るということで、その装依者もトップクラスの暗殺者で固められており、死角が一切ない。更にその性能は前述したように1機1機が専用機クラス、しかも暗殺と言いながら狙撃・格闘・遊撃・索敵すべての任務に投入できるほどの性能を秘めており、ガンダムでも1対多では勝ち目がないとさえ予測されていた。まさにドラグディア政府の切り札であり、このようなものを軍にだまして開発を進めさせ、完成にこぎつけたところを掻っ攫って自分達で運用する政府が如何に腐敗しているかが分かる。

 実際にガンダム相手に対決するが、ステルス装甲は完全に元の「特殊技能」で無効化され、その自慢の性能もすべて披露することなく全機がシュバルトゼロ・イグナイトおよびドラグーナ・アレキサンドルにジェネレーターを貫かれて沈黙してしまった。その後は予備機が鹵獲され、その1機をヴァイスインフィニット戦で校舎を防衛したローレインに報酬として譲渡。専用機として機体カラーを紺色に塗装し直した。

 機体イメージ、コンセプトとしては一年戦争の名機ジム・スナイパーⅡを更に高性能化&暗殺特化にしたイメージ。機体カラーは漆黒だが、ローレイン機は紺色に変更された。名称のモデルとしては現実に存在する戦闘機「ラプター」から。

 

【機能】

・マルチ・コントロール・ユニット

 頭部インターフェイスを総括した機能の名称。カメラ切り替え機構を竜型頭部のゴーグルにすべて導入。更にゴーグルユニット側面に通信強化用ロッドアンテナを装備、通信範囲を強化。極めつけには頭部口部側面に粒子加速用ブレードガードを搭載し防御面も完備している。機体自身のステルスシステムも克服しており、ステルスモード時の連携に欠かせない装備となっている。

 

・ダブルジェネレーター

 ジェネレーターユニット2個積みの恩恵は凄まじく、全性能をフルに発揮することが可能。

 

・ステルスシステム「ジャマー・スケイル」

 ミラージュ・スケイルから更に進化したステルス装甲。レーダーに含めて熱探知も完全にシャットアウトしてしまう上、足音や機体駆動音すらも発生させた「サウンド・ジャマー」で打ち消してしまうほど。

 そのうえ自機周囲にもレーダーを狂わせるほどのジャミングを発生可能であり、これらに対抗する処置を有していないMSのレーダーは全てお釈迦となってしまうほどである。

 機能のモデルはガンダムSEEDシリーズのミラージュコロイドとガンダムWシリーズのハイパージャマーを合わせたようなもの。

 

・DNウォール

 ドラグディア軍から盗用したデータをもとに開発した、DN防御壁生成装置。シールドに搭載されており、シールドの外縁部から展開して防御面積を高める方式を取っている。

 

 

【武装】

・アサシンズビームライフル

 シーカー専用ビームライフルから発展させたビームライフル。機体背面に装備される。パーツの交換システムを採用しており、交換によりライフル・マシンガン・スナイパーライフル・ショットガンに切り替え可能。肩部アーマーの裏にパーツを装備する。

 

・ナイト・ショルダーアーマー

 肩部を構成するスラスター内蔵の装甲。二の腕を護るような形で横が伸びており、その裏にライフルの交換パーツを装備している。破損すると更にダメージを受ける危険な構成だがスラスターの回避性能でそれを補っている。

 

・シューターサーベル

ドラグーナ・レドルのアレク機にかつて装備されていた遠近両用兵装。サイドアーマーに装備される。ただし高出力化が果たされており、生成されるビーム刃はソードレベルに向上している。

 形状モデルはガンダムXのビームソード。

 

・ビームアサシンブレード

 腰背部に二振り向き合って装備される格闘兵装。逆手の形で抜刀し、短い高出力ブレードで敵を切り裂く。

 ガンダムAGE-1スパローのシグルブレイドの刃をビームで形成したような武装。

 

・チェーンブレイド

 機体腕部外装に収納される実体剣。飛び出すように展開し、不意を突くことが出来る。展開後は剣が蛇腹剣の様に分離し、特徴的な動きで攻めることが可能。

 使用イメージとしてはカテドラルガンダムおよびディナイアルガンダムのビームソードに近い使用感。

 

・ブーメラン・シールドⅡ

 機体左側に装備されるX字のシールド。その名の通り、ブーメランとして投擲することを考えており、当初はブーメランを腕との接続部で回転させることで防御していた。しかしDNウォールの技術を盗用後、ブーメランの羽の外縁にウォールを形成することで防御面積を広くし、使い勝手を向上させた。

 

・ハイブーストバックパック

 背部に装備される、高機動バックパック。ノズルなどが目立つが、それを6基備えており、脚部のスラスターと合わせて非常にスムーズな機動力を本機に与える。

 形状モデルはシナンジュ・スタインのバックパック。

 

 

 

士「以上が悲しき名機体、ドラグーナ・ラプターの紹介になります。性能だけ見れば現状のガンダムに匹敵できるというのにね(´・ω・`)」

 

レイ「なんか、スカーレット隊のジム・スナイパーⅡの活躍思い出したよ……」

 

ジャンヌ「ステルス装備がまさか特殊能力に阻まれるなんて、ツイていませんね……。でもこれローレインさんの機体になるんですね」

 

士「そうそう。第4章ではこいつも活躍する予定だから、期待しててください(^ω^)それでは前編はここまで、中編に続きます」

 




前編はここまでとなります。引き続き同日公開の中編もお楽しみください。


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黒の館DN 異世界戦争編 第7回 中編

どうも皆様。引き続きご覧の方は改めまして、作者の藤和木 士です。

黒の館DN中編始めて行きます。
中編で触れるのはシュバルトゼロガンダム[リペアツヴァイ ファーフニル」ただ1機。ただそれでもかなり文字数を使ったので3部構成にしました……。

それでは中編をどうぞ。


 

士「それでは中編始めて行きましょう。作者の藤和木です」

 

ネイ「アシスタントのネイです。中編は初めてですね」

 

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよ~。前作の方でも3つ構成の黒の館は珍しかったんじゃないかしらぁ?」

 

士「そうだね、1回しかないよ、それも最後にやった黒の館( ;∀;)」

 

ネイ「あ、これは触れてほしくなかった案件」

 

グリーフィア「でも章の数で言えば前作と互角ねぇ。むしろ次で4章になるから多いわよぉ♪」

 

士「(´・ω・`)ねぇ、それ数字の面でだけで言ってます?」

 

グリーフィア「もちろん♪」

 

士「;つД`)そんなこと言わないで……」

 

ネイ「はいはい分かりましたから、さっさと紹介に行きましょうよ、作者さん」

 

士「扱いがぞんざいッ!(´・ω・`)さて、では中編ではシュバルトゼロガンダムの新たな基本形態、「Repair-Ⅱ Fafnir(リペアツヴァイ ファーフニル)」の紹介ですよ」

 

グリーフィア「なんか言いづらいわねぇ。最初の修復がリペアなのも関係しているんでしょうけど」

 

ネイ「というか、ファーフニルってジャンヌさんの……」

 

士「家名ですね(゚∀゚)」

 

ネイ「ヤバいですね☆みたいにしないでください……」

 

士「と、まぁ紹介していきますね、どうぞ!」

 

 

 

形式番号 DNGX-XX000-SZver2 [Repair-ⅡFafnir]

シュバルトゼロガンダム[リペアツヴァイ ファーフニル]

 

 

機体解説

・ヴァイスインフィニットガンダム(以下WIG)との戦闘で大破したシュバルトゼロガンダムを、ヴェールとスタート主導の下完全改装・再構成された姿。リペアからアップデートを果たした形で、以降はこれがシュバルトゼロガンダムの基本形態となる。

 ペルセウスⅡの運用後に触れられていた「D-STYLE」と呼ばれる仕様であり、それを前倒しにした形で大破したシュバルトゼロガンダムリペアを二度目の修復時に丸ごと改修した。なお、Dの意味は「Dragon」または「Destroy」であった。

 変更点はいくつかあるが、大きな変更点は肩部のボールアーム・ハードポイントと背部バックパックことウエポンウイングユニット「WINGν-Hi-A」である。肩部ハードポイントをボールアームに集約させることでガンダムの可動域を可能な限り狭めることなく、装備の増加が可能となった。またウイングユニットは以前装備していた「WINGν-PROTOⅠ」の現代改良型であり、遠隔操作端末の本格復活となっている。

 他にも武装は今までのガンダムの運用を土台としたものが多く、ドラグディア軍の次期主力兵装も本機の兵装に先行採用されている。ガンダム自身の装備も強化アップデートされて装備され、新たに旧兵装から更新したものも採用されている。しかしもっとも大きな変更点はやはりシュバルトゼロガンダムにも搭載されていた、エンゲージシステムの起動だろう。

 エンゲージシステムはマッチングなど非常に厳しいサブパイロットシステムである。調整内容など出来る限りそういったコンピューターに詳しい人物が必要となるが、WIGでの運用でも分かるように、脳波による感覚的なコントロールが可能である。それにより適合率が高いサブパイロットの場合戦闘経験がなくとも十分なコントロールが可能となっている。

 本機はこれでも全盛期のおよそ4割程度の性能と言われており(スタートの話によれば)、それでも今のWIGと互角に渡り合うことが可能なスペックを獲得した。

 機体の全体的なイメージとしてはデスティニーガンダムとストライクフリーダム、それにガンダムSEEDDestinyのザクファントムとガンダムビルドファイターズAのHI-νガンダムヴレイブを足して割ったようなイメージ。頭部は以前と同じフリーダムガンダムに近い頭部。ちなみにブレードアンテナが根元から外れる仕組みになった。また名称の1つである「ファーフニル」は当然エンゲージパートナーであるジャンヌ・ファーフニルの家名「ファーフニル」から。更に言うならファーフニルはドラゴンの1種であるファフナーの別名である。ちなみに当初はツインアイと胸部プロジェクションクリスタルが緑だったが、ジャンヌとの装依後は蒼く変化している。

 

【機能】

・DNフェイズカーボン

 ガンダムの装甲として採用される、DNを流し込み剛性を高める装甲。発色は以前と同じ黒となっているが、腹部など一部装甲がエンゲージシステム起動後灰色と紺色を合わせた配色へと変更されている。これはスタートからの「気遣い」とのこと(曰く、以前とは違うことを示したかったらしい)。

 ファンネルだけではなく、シールドにも今回は採用されており素の防御性能も向上させている。ただし消費DNが多くなっている(それでも未だに高純度DNのエネルギー転換効率性から余裕はある)。

 

・ツインジェネレーターシステム

 ガンダムの持つDN生産量増加動力システム。以前と変わらないシステムではあるが、エンゲージシステムの恩恵でDN生産能力の向上が見られる。またジェネレーターをフル稼働させるエラクスシステム発動時のオーバーフローまでの限界時間が伸びている。

 

・DNLコントロールユニット

 ディメンションノイズリーダーと称される能力を使用する際に発せられる脳波で制御されるシステム。当初は暴走していたそれも今回の改修で初めて積極的に運用されることとなる。

 WIGでも述べられている通り、DNL直結式機体フレームことユグドラシルフレームの補助機構になってしまっているが、それでもこのシステムのアシストなしでは辛いところも元の場合いくつかみられた。

 

・ユグドラシルフレーム

 以前はDNL直結式機体フレームと呼ばれていた、ガンダムの特殊フレーム。ディメンションノイズリーダーと呼ばれる特殊能力により発せられる感応波をDNと合わせて制御し、機体をコントロールする。

 そもそもDNLとはディメンションノイズの波を察知することのできる能力の事であり、また同時にその波を操ることも可能な能力者の事を指す。DNの波の乱れをノイズのような形で感じ取り、先手を打つ。またDNの流れに乗せて脳波を飛ばし端末を遠隔操作することが出来る。本世界はDNによって構成されているため、戦闘において非常に有効な能力である。

 本フレームはそれを機体の動きにも反映させ、同時にその能力を高める。またその能力に覚醒を促す機能も備わっており、元はガンダムを運用することでこの能力に目覚めることとなった。

 なお本機はヘラクレスの運用時に腕部などのフレームを喪失しており、急ピッチで用意されたユグドラシルフレームを使用して修復されている(奇しくも今回使用されたのは、クリムゾン・ドラゴニアスの死骸から回収された鱗を原材料としたものである)。

 名称である「ユグドラシル」とは世界樹の名の1つであり、機体そのものも世界を構成するDNの中心となる芯の役割を持つため、名付けられた。

 モデルとなったサイコフレームに近い能力を持ち合わせるが、DNLへの覚醒を促す点はDNのモデルとなったGN粒子の特性であるイノベイターへの覚醒も反映されている。

 

・ハードポイントシステム

 リペアⅠから続投するドラグディアMSの武装換装システム。本機では肩部ボールアーム・ハードポイントに肩のハードポイントは集約されたほか、膝側面のハードポイントをなくし、新たにウイング側面への装備を可能とした。更にシールド裏にもハードポイントを備えるなど、シールドを前提とした動きとなった。

 

・ELACSシステム

 ジェネレーターの出力制限を解除するリミッター解除機能。改修前と特に変わらない危険性を併せ持つシステムだが、エンゲージシステムの恩恵を受けた機能の1つでもある。

 エンゲージシステム下においてはパートナーによるエネルギー循環制御により、オーバーフローまでの制限時間が上昇。それにより改修前の時のような先にエラクスを切らなければならないということに陥ることがなくなった。

 

・エンゲージシステム

 ガンダムに隠された、共通機構。専用のサブパイロット同乗システムである。

 通常のMSにも別の人間を取り込むサブパイロットシステムは存在しており、主に救命目的、および索敵任務での観測要員の確保に用いられる。だが本機に採用されるこのシステムは、エネルギーの循環制御や、DNLコントロールサポートといった実践向けの機能である。

 非常に強力なシステムであるが、このシステムにはメインパイロットおよび機体との相性というものがあり、相性が良くなければ動作が鈍くなる、または無理矢理従わせてサブパイロットを消耗させるという面が生まれる。シュバルトゼロガンダムのエンゲージ相手は元の主でありファーフニル家次女ジャンヌ・ファーフニル。エンゲージ係数は98パーセントと非常に高い。ちなみにリム・クリスタルが合致する相手同士なら大抵はエンゲージ相性が良いとされている。またエンゲージ以降は機体のカメラアイが緑から蒼に変化する。

 システムのモデルとしては、様々な作品におけるサブパイロットの役割から。近いものとしては機神大戦ギガンティック・フォーミュラのトランスレータの役割に近い。そのほかダブルオーライザーのライザーシステム調整など、近い役割のものは多い。

 

・DNウォール

 DNをそのまま防壁として散布・展開する防御機構。本機体では両肩のシールドから展開する。

 

・DNプロテクション

 DNウォールの変則互換となる防御兵装。フェザー・フィンファンネルで形成する周囲防御兵装。

あちらがDNを集中展開する方式なのに対して、こちらはいくつかの発生器を用いて膜を形成する様に展開される。またウォールは集中展開する関係上物理攻撃を凌ぎやすいのに対し、こちらは全方位に張ることが可能で射撃攻撃に対して強い性能となっている。

 修復前のものより、出力なども向上し、安定性が増した。爆発だけでなくビームも防御可能。

 

・イグナイトモード

 シュバルトゼロガンダムに隠されたモード。改修前から存在しており、リペア時に一度オミットされたものの、リペアツヴァイにて再度搭載された。

 装甲を展開するだけでDNを瞬発的に膜として形成し攻防に使用することが可能な高機動モードへ変形するが、実態は「イグナイト」への換装が目的の準備形態。

 

 

【武装】

・ビームライフル・ゼロ

 シュバルトゼロ専用に開発されたビームライフル。過去に存在したガンダム専用ビームライフル「MWBR」をベースに元の癖などを含め完全に新規で作成された。腰背部に装備される。

 外見的特徴は特にない細身のビームライフルだが、様々機能が盛り込まれた武装となっている。連射モードから通常出力、最大出力への切り替え・パーツの装着によるスナイパー・高出力メガビームライフルへの換装・ビームサーベルの発振など状況への対応力が高い。

 以降シュバルトゼロの主兵装として活躍する。ちなみに最初はビームバスターライフルと呼ばれる兵装が、ドラグディア軍で製作されており、装備される予定だったが取り回しが悪く、更に試作段階でのエネルギー効率がスタートの提示したビームライフル・ゼロよりも悪かったため不採用となった(ちなみにビームバスターライフルはブラスターガンの後継兵装だったりする)。

 武装モデルは機動戦士ガンダム逆襲のシャアのνガンダムが使用するビームライフル。

 

・ブレードガン・ニューC(カスタム)

 ブレードガン・ニューに改良を加えたモデル。サイドアーマーのホルダーに装備される。改良点は武装の更なる高出力化程度。しかしそれによってブレードにビームサーベルを纏わせることが可能となった(この機能により実質的にロングブレードガン・ニューの機能を再現した)。更なる改修プランによれば、高純度DNを用いた長大なビームサーベルの発生も検討している。

 デザイン元は変わらないものの、機能がGNソードⅡの機能の1つを発揮できるようになった。また長大なビームサーベルとはライザーソードから。

 

・ホルダーバインダー

 ブレードガン・ニューCを装備するサイドアーマー。基本的に機能は変わらないが、エラクスシステム時にはホルダーのスラスターから蒼い炎の翼のような噴射光を発する。炎自体は高純度DNの変容により生成され、これ自体には攻撃力はないものの熱性を帯びておりチャフとして放出することが可能。

 

・ビームサーベル

 以前と同じく高出力型と標準型の2種類を装備する、ビーム格闘兵装。高出力型をウイングの付け根に、標準型を腕部内側に格納する。つまりタイプ0と同じ収納法である。

 

・Dフィストイレイザー・ネクスト

 改修前のリペアでも使用されていた腕部ビーム砲デバイス。以前と同じく展開式のビーム砲を掌に備え、ゼロ距離砲撃、武器へのエネルギー供給、DNFの運用などを支える。外見的な変更としてトゲ付き手甲の装甲が追加されており、打撃時に手を覆うことでマニピュレーター保護と、打撃破壊力の向上を果たす。加えて手甲自体にはエネルギー放射機構を備えており、打撃時にエネルギーを放射することで物理面ではない、更なる破壊力の向上を果たす。特にこのエネルギー放射機構はのちに重要な意味を持った。

 武装自体は以前と同じくデスティニーガンダムのものが参考だが、手甲は実写版トランスフォーマーの第3作目にてオプティマスプライムの展開した腕部トゲ付きメリケンサックである。

 

・ボールアーム・ハードポイント

 肩部側面に接続される、武装装着アーム。接続部が球体で構成されており、滑らかな可動を実現する。

 通常装備しているのは大型のバインダーシールドだが、ハードポイントを持つので大型火砲やミサイルコンテナなどを装備し、アームを介して発射が可能となっている。とはいえ装備時の重心はかなりずれやすく、運用にはかなりの腕が必要とされる。

 武装モデルは機動戦士ガンダムSEEDDestinyのザクファントムのシールド接続部。

 

・ニューオーダーシールド

 両肩のボールアーム・ハードポイントに接続される、実体シールド。可変機構を持つ。可変して開いた部分にはDNウォール発生器を備える。

 ポールアームに基本的に装備されるため、DNウォールも近接防御性を高く持ち合わせながらも、広い範囲を防御することが可能となっている。またシールド裏面には武装も装備でき、加えて武装を外した後は手持ちのシールドとしても使用可能。

 名称のニューオーダーとは「新たな秩序」を意味し、次世代機のシールドとしての意味を持ち合わせると同時にガンダムを新たなる正義として掲げるためのプロパガンダとしても用いられている。

 武装外見モデルは機動戦士ガンダムSEEDDestinyのデスティニーガンダムの実体シールド。形状を更に大きく縦長に、鋭角化させたイメージ。武装の機能としてのモデルは同作に登場するザクファントムのシールドとガンダム00のダブルオーライザーのバインダーのニコイチに近い。

 

・ビームマシンキャノン

 シールド裏に装備される、ビーム兵装。ビームの連弾を放て、けん制目的に使用される。当初はブレードガン・ニューCと組み合わせて超過出力「ハイパーフルバースト」を試行されていたが、決戦までの時間が足りず搭載されていない。

 とはいえ出力はこれでも並みのマシンガンを超えビームライフルとほぼ同等の出力で連射を可能としているため、他のモビルスーツからしてみれば十分脅威。更にシールドからパージして手持ち火器としても使用可能である。ちなみに他の武装群に換装することも可能。

 武装外見モデルは機動戦士ガンダム00のダブルオーライザーのオーライザー側の武装、ビームマシンガン。ハイパーフルバーストはライザーソード(GNソードⅡ仕様)が元。

 

・ビームスパイカー

 脚部膝前面装甲に格納される、格闘兵装。装甲の蓋を開くとビームサーベルの基部が露出する。その状態でビームを発振させ、蹴り込みを入れるのがこの武装の使用方法である。

 ドラグーナ・リリィなどの武装から発展させた、膝蹴りの要領で使用する限定的な武装であるが、発生元がビームサーベルであるため物理的に取り外して非常時のビームサーベルとして使用可能。また当初は脚部の発振器と合わせてビームエッジとしての使用法を考えられていた。代わりに基部を回転させることが可能で、蹴り込みと同時にドリルの様に破壊力を増すことが出来る。

 武装の系統としてはSEEDDestinyのインフィニットジャスティスガンダムのビームエッジに当たるが、回転などの要素も含めると使用感は鉄血のオルフェンズのガンダムキマリス・ヴィダールのドリルニーに近い。

 

・ウエポンウイングユニット「WINGν-Hi-A(ハイマニューバ・エース)

 バックパックとして背負う、多目的武装懸架ウイング。遠隔操作端末とビームサーベル、姿勢制御用テールバインダー、ハードポイント、そして実体ブレードを装着する。

当初シュバルトゼロガンダムを象徴する特徴的なバックパックであったWINGν-PROTOⅠの現代改良モデルであり、フェザー・フィンファンネルを再び主兵装として取り戻している。更に以前は何も装着していなかった下部ジョイントにもバーニアをマウントユニットとしたマキナ・ブレイカーの最新モデルを搭載。そのイメージをガラリと変えている。

また性能面でも機動性の向上が見られ、特にブレードを制御翼に見立て空中での姿勢制御に役立てている。この改修によりWIGとの性能差もかなり縮まっている(ただしハイマニューバモードに関してはやや差はある)。

 武装モデルは以前と同じHi-νガンダムだが、その改造機であるHi-νガンダムヴレイブの構造を主に参考にしている。

 

・フェザー・フィンファンネルA(エース)

 タイプ0にて装備されていたフェザー・フィンファンネルをベースに新たに開発した遠隔操作端末。機能面では特に変わっていないが、性能は破損状態のものより向上している。DNプロテクションの強度も上がったほか、複数基を集合させての高出力射撃も可能となっている。

 以前は攻撃に使用していなかったものの、元の成長もあり初使用でもWIGを追い詰めるほどの成果を見せており、全基使用不可となったものの性能としては申し分なかった。

 

・マキナ・ブレイカーⅡA(エース)

 バックパックの下部に2本装備される、ブレードユニット。それをビームサーベルの柄と合わせて合体させたのがマキナ・ブレイカーⅡAである。

サーベルとのドッキングで初めて使用可能なマキナ・ブレイカーであり、扱いも特殊。衝突力強化のためのスラスターはヘラクレスに装備されたものから再び剣の面に薄いジェットスラスターとして搭載、更にジェットスラスターも偏向機能搭載でバックパックに装備した状態でも機動性の向上に力を発揮する。

 そして非常時には剣そのものを飛ばすことが可能と、トリッキーな戦法を発揮できる。もちろん質量と推力による粉砕も健在。

かつてはこの兵装の1つでウイングを破壊されたガンダムだが、その兵装の最新版で破壊したMSを撃破したガンダムと戦うというある意味運命とも呼べる状況となっている。

 武装モデルはHi-νガンダムヴレイブのブレード。使用法も同じであるが、ビーム刃の発振を行えない、実体での破壊力強化仕様となっている。

 

 

士「以上がシュバルトゼロガンダム[リペアツヴァイ ファーフニル]の紹介になります」

 

ネイ「両肩のシールド、背部ウイングスラスター……結構派手ですよね」

 

グリーフィア「確かにそうねぇ。でもシンプルな装備で纏まっていて、オールマイティに活躍出来そうね」

 

士「あくまでも基本仕様としてデザインしているからね(;・∀・)ファンネルとか付いててちょっと地味とは言えないけども。でも割とνガンダムとかを下地に考えてデザインはしていましたね。アナザーシリーズのνガンダムもといHi-νガンダム、みたいな?」

 

ネイ「ダブルオークアンタ、ガンダムAGE-FX」

 

グリーフィア「ナラティブガンダム♪」

 

士「う、うっさい(゚Д゚;)というかナラティブは宇宙世紀でしょう(;・∀・)まぁでも前作のシュバルトゼロガンダムゴッドクロスが「派手すぎた」のもあって基本のこれはなるべく扱いの難しくない基本装備を考えていたのは事実です。実際これの元はリペアと同じくゴッドクロスの改修機ゴッドクロスRがベースだからね。あれよりもさらに地味目にしてるけど」

 

グリーフィア「まぁでもそこにタイプ0だったかしら?最初のシュバルトゼロガンダムに近くしているのなら、これはこれでって感じよね。あと、地味にビームライフルはヴァイスインフィニットのやつをベースにしているのね」

 

士「ま、一応兄弟機だからね。当時のガンダムの主兵装はMWBRを改修したものが多かったんだよ。それだけ設計面が優秀って話。さて、そろそろ後編、ゴッドクロスの強化形態、ダイの姿を引き継ぐイグナイトの紹介へ移りますよー」

 

ネイ「あ、やっぱりイグナイトって前作に登場したっていうダイがモデル元だったんですね」

 

士「そうそう!では後編へ続きます」

 




中編はここまでとなります。最後の後編もお楽しみください。では続きます。


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黒の館DN 異世界戦争編 第7回 後編

どうも、皆様。引き続きご覧の方は改めまして、藤和木 士です。

いよいよこの3連黒の館DNも大詰め。後編はシュバルトゼロガンダム[リペアツヴァイ」の強化形態「イグナイト」とイグナイトへの移行のための支援機「Gワイバーン」の紹介となります。

後編はややボリューム少な目となります。それではどうぞ。


 

士「はい、では最後の後編始めて行きますよー作者の藤和木です」

 

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌ、再登場です」

 

レイ「アシスタントのレイだよー!いよいよイグナイトの紹介だね!楽しみだなぁー」

 

士「ヴァイスインフィニット戦、そして革命の場で活躍したMSですからね。肉弾戦しか展開してないけど、実際は割と射撃戦もそこそこ行える機体なんですよ。ただ先程まで紹介したリペアツヴァイの手持ち武装ほとんどが使えないんですけれども」

 

レイ「あ、使えないの?」

 

ジャンヌ「そういえば本編ではほとんどの武装を喪失した後で戦闘を行っていますね。シールドの補給もなかったようですし」

 

士「シールドは装備していたら使えるけども、両肩分がヴァイスインフィニットとの対決でなくなっちゃったからね。フル装備のイグナイトはたぶん次章の前半で見られると思いますので、是非」

 

レイ「それじゃ、とっとと紹介行っちゃう?」

 

ジャンヌ「そうですね。では藤和木、紙を」

 

士「はーい。なんか久々だね、紹介文アシスタントに読んでもらうのって」

 

ジャンヌ「そうですね、藤和木完全に忘れていましたし」

 

レイ「あはは、今気づくなんてねー」

 

士「(´・ω・`)」

 

ジャンヌ「それでは後半はまず、サポートマシンGワイバーン、そしてGワイバーンがガンダムと合体したシュバルトゼロ・イグナイトの紹介になります」

 

 

 

 

形式番号 DNMX-XX000-AP

Gワイバーン

 

機体解説

・聖トゥインクル学園の黒いオベリスク「ドラグーン・オベリスク」の中から現れた、神話時代のドラゴン型機動兵器。

 自立稼働AIで操作される無人兵器で、その正体はガンダムのサポートをする専用支援機。ガンダムの行動をサポートする他、サブフライトシステムとして機能。そして最大の特徴としてガンダムと分離合体することでガンダムの最大稼働状態「フルパワーモード」へと移行させる(名称はガンダムごとに異なる。シュバルトゼロガンダムの場合はイグナイトへと名称が変更される)。そのた同型機であるヴァイスインフィニットともドッキングが可能で、劇中登場時にはヴァイスインフィニットの側が自分の為に来たと思っていた。なお機体カラーリングが黒と灰色を基調としたものなので、このGワイバーンは出現した場所も合わせてシュバルトゼロガンダム用のものである可能性が高い。

 ちなみに単独行動時のエネルギー源はDNコンデンサータンク×2で、この世界の通常のDNでは最大出力での活動限界は10分程度。ただし高純度DNのエネルギー効率により、本機の場合40分は持つ。

 名称はガンダムのGとドラゴンの代表的な種類の1つ、ワイバーンから。

 

【機能】

・合体機構

 ガンダムとのドッキングを行う。パーツはそれぞれ頭部、胸部、脚部、首と尾部、翼部、腕部に別れ、その後ガンダムの頭部、胸部とフロントアーマー、バックパック下部、ウイング、腕部に装着される。ただしこれはシュバルトゼロガンダムの場合であり、ヴァイスインフィニットガンダムの場合ウイングのパーツはプロペラントタンク接続部に合体する。

 

・???

 詳細不明の機能。ガンダムとの併用で初めて起動するシステムであることのみここでは明記する。

 

【武装】

・ビームバスター

 頭部とドッキングしている首の先に存在するビーム砲。頭部と合体しているときには口部を通して発射する。ガンダムの強化パーツにおいてはテイル・バスターとして尾部とドッキングする。

 

・ドラゴン・クロー

 竜の爪を模した近接格闘兵装。そのままでも攻撃兵装として十分機能する他、ガンダムとのドッキング時にはその腕部を構成する。

 

形式番号 DNGX-XX000-SZver2 [IGNITE]

シュバルトゼロガンダム・イグナイト

 

機体解説

・シュバルトゼロガンダム[リペアⅡ]がイグナイトモードへ機体を移行、そこに古代に生み出された支援機「Gワイバーン」と合体した姿。それがこの近接格闘戦特化形態「イグナイト」である。

 Gワイバーンは頭部、胸部、脚部、首と尾部、翼部、腕部に別れ機体に各部に装着する。順番に並べると、頭部、胸部とフロントアーマー、バックパック下部、ウイング、腕部に上から装着する。

 シュバルトゼロガンダムが一回り大きくなったようなイメージであり、頭部はGワイバーンのドラゴン頭を上からヘルメットの様に装着し、形状を作り出している(ちなみにブレードアンテナは一度自動で取り外されてからヘルメットの上から再装着する)。特にマニピュレーターは上からGワイバーンの手を合体させているため今までの武装が使えない。そのため最初は近接戦闘特化ではなく、近接戦しか出来なくなったというイメージが強いが実際は単純にそうではない。腕部のDフィストイレイザーの出力が向上し、遠距離への対応が可能となり、更に近接戦もマニピュレーターがクローとなっているのでそのままの攻撃でも攻撃力が上昇し、加えて質量も大きくなったので単純な破壊力が増している。そして何よりヴァイスインフィニットが使用していたサイレントモードの特性を攻撃・防御・機動性にバランスよく振り分けており対応性が高くなっている。ただしその分扱いが難しく、ピーキーさに関しては以前よりも強くなっている。

 さらにガンダムの必殺技とも呼べる「DNF」もエラクスシステムとの掛け合わせでさらに強化され「EDNF(エラクスディメンションノイズフルバースト)」を使用可能となり、破壊力に磨きがかかっている。

 結論から言ってしまえば、機動兵器としての完成度はドラグディアのMSにも劣るが、性能は凄まじく、またウイングパーツが残っていればファンネルも引き続き使用可能なので扱う人物次第で機体は大きく姿を変える。それがこのイグナイトなのである。なおスタートはこの機体への変形も踏まえて[ファーフニル]を設計していたが、Gワイバーンがどこにいるのか分からなかったためこの形態になれるかどうかは一種の賭けだった模様。

 機体のイメージは前作SSRでシュバルトゼロガンダム・ゴッドクロスの強化形態「ダイ」とそのモチーフである第三次スーパーロボット大戦Zで登場する「ジェニオン・ガイ」。今回はダイの装甲展開に加え、ガイが通常形態の機体背部にまとめた強化形態移行用パーツの役割をGワイバーンに与えた形となっている。

 

【追加機能】

・???

 詳細不明。Gワイバーンの物と同じ。

 

【武装】(この形態になった際に使用可能な武装のみ抽出)

・Dフィストイレイザー・ネクスト[IG]

 Gワイバーンの腕部と合体した、腕部兵装。手の部分はそのままGワイバーンの手をかぶせ、その中に収納される形で合体する。そのため手を動かそうとすると、Gワイバーン側の大型腕部のみが動く。

 手による斬撃の他、手を変形させることでエネルギー放射部を露出させ大出力のビームサーベルを形成可能。放射部からはビームの発射も出来る。更に閉じてまとめることでドリルアームへと変形して刺突することも可能。刺突の一撃はDNジェネレーターを串刺しにする。

 武装モデルは革命機ヴァルヴレイヴのインパクトブースターとアルドノア・ゼロのディオスクリア(合体状態)の腕部およびブレードフィールド。

 

・ホルダーバインダー

 ブレードガンを装備するスラスター内蔵のサイドアーマー。ブレードガン・ニューCを装備するものの、現状使用することは不能。そのためホルダーバインダーの光のローブ形成、からのチャフ散布しか使用できない。

 

・ボールアームユニット

 ファーフニルから引き続き使用する肩部ジョイントアーム。特に変更はない。

 

・ニューオーダーシールド

 ファーフニルから引き続き使用する、実体シールド。腕部への装着は出来ないが、引き続きアームで保持することで敵からの攻撃を防御する。また機体出力が向上しているためか、DNウォールの出力が上がっている。

 

・ビームマシンキャノン

 ファーフニルから引き続き使用する、シールド裏に保持されるビーム砲。機体の出力が上がったことで更に強力なビームが使用可能となっている(ただし高出力すぎて、当初の状態では最大出力1発でダメになる)。

 

・ウエポンウイングユニット「WINGν-Hi-A[IG]」

 ファーフニルから引き続き使用するウイングユニットの上から、Gワイバーンのウイングが合体した姿。

 単純に出力が増加しただけではなく、ファンネル部も含めてドラゴンのウイングを被せて重ねたことで空気抵抗が変更され、飛行速度が上がっている。

 ただしウイングの上から重ねる都合上、ウイングに格納していたビームサーベルは取り出せなくなっている(元々腕部が大型化してしまうため、使用できないが)。

 

・フェザー・フィンファンネルA

 ファーフニルから引き続き使用する遠隔操作端末。特に強化はされていないものの、貴重な遠距離兵装である。

 

・テイル・バスター

 機体背部姿勢制御用テールバインダー接続部の下部にGワイバーンの首と尻尾を合体させたものをドッキングした兵装。長い尾の先に首のパーツが備わっており、首のパーツの先にある砲門からビームを発射する。またビームを高出力状態で維持することでビームサーベルとしても使用可能。

 単純に長い為、振り回して質量兵装として使用することが可能。その姿は頭部とウイングを含めて、人型の竜を思わせるイメージとなっている。

 

 

 

ジャンヌ「以上がGワイバーン、並びにシュバルトゼロガンダム・イグナイトの紹介になります。ガンダムを強化して格闘戦を強化するというのは、前作のシュバルトゼロガンダム・ゴッドクロスの強化形態、DAIモードに通じるところがありますね」

 

レイ「前作のダイかっこよかったのにねー。元ネタのふたご座のスフィアマシンの如く、色々なものぶち壊していたのに、打ちきり残念」

 

士「ぐふぅ!?(´ρ`)そ、そうですね……打ちきりごめんなさい」

 

レイ「あーこれまた古傷抉った感じ?」

 

ジャンヌ「直撃ですね。でも他の話題に触れればすぐに回復しますよ」

 

士「(゚∀゚)残りライフ98ィ!ってならないですから(´・ω・`)けどDAIモードの失敗点とか踏まえて考えましたからね今回」

 

ジャンヌ「失敗点?」

 

レイ「どこら辺のこと?制限時間?」

 

士「ごめん制限時間はむしろ付けたかったけど付けなかった(;・∀・)正確にいうなら変形ならぬ変身機構の変更。前は内部に収容した装甲の展開で機体を大きくしていたけど、よくよく考えるとそれって結構無茶苦茶だなって思って、解説でも書いている通りもとのジェニオン・ガイの変形機構を参考にしてジェニオンのバックパックの役割をGワイバーンにまとめたって感じ。流石にバックパックにファンネルの機能含めたまま変形用パーツにする勇気はなかった(´・ω・`)」

 

レイ「あはは、そうなったらオベリスクの必要なくなっちゃうもんね」

 

ジャンヌ「オベリスクはGワイバーンの存在ありきで組み込んだという感じでしょうか?」

 

士「そうですね。シュバルトゼロの改修型の強化形態はダイの設定があったから割と早く出来ていましたね。Gワイバーンに当たるサポートマシンの設定もそれから程なく出て、それからオベリスクの詳細とかを設定してって感じです。ただ初期構想では普通にリペアとなっていて、ツヴァイになるとは思わなかったですけれども(´・ω・`)さて、設定解説はここまでとして、次回からいよいよ第4章!LEVEL1の最終章です!( ゚Д゚)」

 

レイ「いよいよここまで来たんだー。異世界戦争、ついに始まるね!」

 

ジャンヌ「これが終わったら、元さんはどうするのでしょう……そもそも戦争はどうなるのでしょうか……」

 

士「たぶん気になるだろうから、タイトルコールだけして終わるね(´・ω・`)」

 

レイ「タイトルコール?」

 

士「次章、「機動戦士ガンダムDN」!第4章「機竜大戦」!!」

 

ジャンヌ「第4章も、よろしくお願いしますっ!」

 

レイ「そういうことかー。次回も、よろしくねっ」

 




これにて黒の館DN 第7回終了となります。いよいよ次回は異世界戦争編の名に相応しい第1部もといLEVEL1最終章「機竜大戦」となっていきます。

最初はこの部分で一旦切って第2部ことLEVEL2を続編として作ることも考えましたが、せっかくなのでこのまま続けることにしました。長くなりますが宜しくお願いします(´・ω・`)

それでは次回からの第4章、よろしくお願いします。


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第4章 機竜大戦
EPISODE56 夜明けの動乱1


どうも、皆様。この作品も第1部の最終章に入っていきます、作者の藤和木 士です。

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです」

レイ「アシスタントのレイだよー。第4章のタイトルは機竜大戦!機竜と言えば~藤和木?」

機竜かぁ……バトスピにも系統機竜って種族があるけど、私としてはここは三式機竜を推したいね。SOSの最後は感動よぉ( ;∀;)

レイ「あっ桐生戦○じゃないんだ」

ラビ○ト○ンクの方は桐生だから、読みは同じでも出さないよ(´・ω・`)

ジャンヌ「あぁ、そうですか」

では今回はEPISODE56、第4章最初のお話です。……動乱だね。

レイ「いやいやそれおかしい」

ジャンヌ「前話で国内の危機は取り払ったのですが、それは」

いやー、そうとも限らないさ。意外なところから出てくるものだよー。それじゃあ本編どうぞ!


 

 

 7月7日。マキナ・ドランディアは歴史の大きな転換点を迎えた。それは3つの出来事から成る。

 1つは、黒のガンダム(シュバルトゼロガンダム)白のガンダム(ヴァイスインフィニットガンダム)の対決、その決着。両者ともに譲らぬ攻防の果てにシュバルトゼロガンダム・イグナイトがヴァイスインフィニットガンダムを退けた。だが超次元現象により物理的にこの世界から退ける形となり、ヴァイスインフィニットガンダム本体と、その人質となったレイア・スターライトは次元世界の彼方へと消えた。

 もう1つ、竜人族の国家ドラグディアと、その敵国であり竜人族の敵対種族、機人族の国家マキナスの両政府同時政権交代。奇しくもこの日両政府の政権は革命を目指す政治家と復讐を誓った皇帝末裔により政権交代がなされたのであった。それぞれ思惑は違えども、世界を変えたいという想いからそれぞれ行った政権交代。それは国をよくも悪くも変化させる。最後の出来事を引き起こす。

 最後の1つ、マキナスを支配した皇帝末裔ギルフォード・F・マギナリアスがドラグディアに対し最終戦争を布告した。これまで100年に渡る戦争の硬直を払うように、マキナス皇帝は最後の戦争で勝利者となることを国民に宣言。その規模は凄まじく、退役軍人や士官学校の生徒はおろか、戦争が長引いた際の学徒動員までも考えていることを国民に告げ、国内がパニックとなっていた。それは宣戦布告されたドラグディア側も同じだ。全国放送だけでなく、夜中のニュース番組でも全局大々的に報じており、新生ドラグディア政府も対応に追われていた。こうなった以上戦いは避けられない。ダン率いるドラグディア政府はドラグディア軍総司令グランツと連携して全軍人、退役軍人も含めさらにドラグディアの同盟国「セントリル」および「ギルン」にも協力を要請した。

 戦うとはいえ、ドラグディア政府側はあまり戦いを行いたくはない。特にマキナスの学徒動員は、人道的・戦力的両面においてなんとしても防がねばならなかった。敵対する以上容赦は出来ない。敵以上に、味方の犠牲を生まないために戦わなければならない。

 関係者一同にも夜が明け方になるまで協力を呼びかけるドラグディア政府。両国の戦争への準備を怠らぬ中、更なるハプニングが起こりつつあった。マキナスは皇帝国家への反乱、そしてドラグディアでは、政府を含め、革命の架け橋となった漆黒のMS・ガンダムへのバロム派による反抗作戦もまた動いていたのであった。

 戦いは終わらない。むしろここからが始まりだった。この世界の最後の戦争が、今、幕を明ける。異世界の戦争……後の「機竜大戦」の幕が、上がったのであった。

 

 

 

 

 あの騒乱から一夜が明けた。しかし、ファーフニル家の自家用車に乗って登校する元とジャンヌの顔は、未だ晴れてはいなかった。やり終えたという達成感こそあったが、それ以上に達成できなかったことへの未練、そしてその後立て続けに起きた出来事に2人や周囲の人間たちも辛いものがあったのだ。

 マキナスの皇帝による宣戦布告。そのせいで街の方はパニックとなり、昨夜は騎竜部隊に乗って帰るしかなかったほどだった。帰った後も元やフォーンら家の使用人の中核をなす者達は交代で情勢の推移を観察していた。その結果暴動などの関係も含め、今日元とジャンヌ、ネアの登校をフォーンと使用人少数が車で送り迎えすることとなったのである。もっとも最初はジャンヌの様子や元の体力も踏まえ、今日は休養を取らせるという考えもあった。しかし最終的にジャンヌの判断で警護を増やしての登校となったのだ。

 これまでにない厳重警備による登校。窓の外に視線を向けるジャンヌの表情も、どこか浮かない。心配だったが、今は声を掛けない方がいいとただ見つめる。そんな様子を見るフォーンは元に対し視線を硬い物にして言う。

 

「ハジメ、何をジャンヌお嬢様ばかり見ている。鼻の下を伸ばして」

 

「え……」

 

「フォーンさん……」

 

「ブッ!……んん……ばかりは見てませんし、鼻も伸ばしていませんよ……」

 

 いきなり何を言いだすと思い、淡々と返す。おかげでジャンヌの視線がこちらに向いてしまった。昨日から一転してジャンヌの面と向かって話しづらい状況が続いていて、どうしようかと考えていた矢先にこれはないのではと思った元。ネアも哀れみを持った視線を向けている。

 そんなことは知ってか知らずか、フォーンは気合を入れろと激励する。

 

「見惚れるのもいいが、今は非常事態の中での登校だ。集中を切らすな」

 

「え…………あ、はい」

 

 発言の内容に戸惑いつつも返す。意外だった。いつもの調子なら簡潔に「馬鹿なことは考えるな。さっさと周囲を警戒しろ」というようなものだ。しかし今日の彼は見惚れるのもいいがと元の好意を肯定するかのような発言だった。もちろんそんな気を起こしてはならないと思っていた元だったが、その気遣いは自分がジャンヌを心配していることを分かっての事なのかもしれない。

 喝を入れてくれたフォーンに報いるため、元も再度外の方に視線を向ける。いつもならよく見る学園生が、今日は少し減っているように見える。それも上流階級の生徒の姿が見えないように思えた。自分達と同じように、暴動に巻き込まれないようにと親が車を手配したのかもしれない。

 念のためゼロ・スターターは持ってきてはある。機体こそ完全修復はまだなものの、機体外装のパーツの微細な交換を済ませ、既に機体そのものは稼働に問題ないとヴェールからは聞いていた。問題は武装。ほぼすべての武装を全損したことと、急遽存在が確認されたイグナイトとの武装のかみ合わせの問題を解決する為に残ったスペアを用いて実証する必要があるらしく、丸腰だという。なので昨日の官邸突入時と同じく、イグナイトでの戦闘が好ましい。Gワイバーンもヴェール達整備班の調べで発見当時のシュバルトゼロと同じくパーツの老朽化が激しいものの、まだ何戦かは耐えられるということらしい。しかしどちらも使わずに修復まで終わってくれることを祈りたい。

真剣に周囲の警戒に努める。元のその横顔をジャンヌがちらちらと見てくる。あまりそういう反応をされてしまうとこちらも反応に困る。下手に接すればまた昨日の様に縋られてしまう。それを見られた日にはおそらく目の前のフォーンからまた冷ややかな眼と共に悪態をつかれるに違いない。やや気にしつつ、ネアにジャンヌの方を任せて到着を待った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっと着いた……」

 

 学園に着くなり、ドアを開けて周囲を見渡した元はため息を吐いた。道が混んでいたとはいえたった数十分。あの息のしづらい空間から抜け出ただけでこうも空気がおいしいのはおかしな話だ。

 学校の校門近くに止められた車。車道側に出た元から見て反対側の校門側から出たフォーンの方に回り込む。そちら側のドアを開けてジャンヌ、そしてネアが出てくる。瞬間歩道の方を歩いていた生徒達の視線が集まる。未だ注目の的である2人。これは仕方ないことだろう。それを受けつつ元はフォーンとこの後の事について確認する。

 

「それでこの後は既に学園に着いているボディーガードと合流でしたよね?」

 

「そうだ。今日は学園側の方でも警備部隊を増やしているらしい。一応俺も教室までは送り届ける。少なくとも簡単に学園内部まで被害が及ぶことはないだろう。……だが油断するな。制圧したバロム派の残党が、グランツ司令やガンダムを狙っているかもしれん」

 

 警戒しつつ元へとそう告げるフォーン。朝起きた時に聞いていた、バロム派の残党。確かにあの漆黒のドラグーナ、ドラグーナ・ラプターを作り上げたバロム派。何を残しているかも分からない。幸い作られたすべてのドラグーナ・ラプターはあの場で元達が破壊、あるいは鹵獲されるに至ったという。それがないだけでもまだ楽だと思いたいが、油断は禁物である。

 気を引き締め、元はジャンヌとネアの2人をエスコートする。

 

「2人とも、早く学園の中に」

 

「わ、分かりました。お嬢様」

 

「う、うん……」

 

 元を先頭に学園内と素早く入っていく一行。学内の視線は道路脇の時よりもさらに集中する。噂声が聞こえてくる。大半はあの時の抱き合いについての妄想で、聞いていると恥ずかしくなってくる。だがその裏でフォーンがいるという事実だけで事情を察する鋭いものもおり、なるべく不安を与える前にと先を急いで行く。

 が、校舎入り口まであと少しとなったところで近づいてくる者に気づいた。校舎昇降口の脇へと移動する警備員2人。警備員の服を着ていることから間違いなくそうであると感じ取っていたが、問題はその手に持った銃。学校の警備員とはいえ名家の子女を囲う聖トゥインクル学園の警備員、もちろん武装は最低限の物を持ち歩くのが常だ。しかし、彼らが持つ銃は本来拳銃サイズのもの。今移動した2人が所持しているのは軍用のアサルトライフルだ。学校を守るにはあまりに大それた銃である。

 

(あまりに不自然すぎる……まさかこいつら……)

 

思い返せば、生徒達の間にまぎれて立っていた警備員も同じタイプの銃を所持していた。最初は警備が厳重になっていると思っていたが、今動いたことで元の直感が働く。これは危険の合図だと。同じ結論に至ったフォーンが元の方に向けて、最小限の声で注意を知らせてくる。

 

「……ハジメ」

 

「フォーンさん」

 

 気づかれない範囲で振り向き、フォーンにアイコンタクトをする。その過程でネアも気付いてジャンヌの手を掴む。ジャンヌだけが起きている状況について来られず戸惑う中、フォーンの声が周囲に響いた。

 

「走れっ!」

 

「お嬢様、行きますよっ!」

 

「へ?ふぇえ!?」

 

 振り返ってジャンヌの肩を抱くようにしてから元、ジャンヌ、ネア、フォーンの4人は校舎の入り口から少し向きを変えて走り出す。その動きに気づいて、焦った様子で銃を構え追いかけてくる。銃を持った警備員が向かってきて、その先にいた生徒達も驚き叫ぶ。

 

「きゃぁあ!?」

 

「うわぁぁ!?」

 

「え、えぇ!?」

 

 パニックが校門前広場に起こる。だがそれを良しとしない警備員側はその銃口を空に向け、トリガーを、引いた。響く銃声。それによりさらに大きなパニックとなる広場の生徒達。校舎からも生徒達が窓を開けて、状況を見ようとする。だがそれを一喝する様に、不審な警備員の1人が叫んだ。

 

「伏せろ!」

 

 命令したその声に、パニック状態となっていた生徒達は反射的にその指示に無我夢中に従う。だが無論元達は伏せない。伏せればどうなるかが分かっている。そして相手側もそれを分かっての発言だった。クリアとなった射線にアサルトライフルの銃口を向けだす。その先は元達に向けられた。だが、それは元も分かっていた。ジャンヌをネアに任せて、フォーンとそれぞれ二方向から来る警備員に懐から取り出した銃を撃ち放つ。

 

「っ!」

 

「ぐっ!?」

 

「っあ!!」

 

 ドラグディア軍から借りたセミオートの銃から放たれた弾丸は、校門側の警備員の肩と二の腕を撃ち、それぞれのアサルトライフルを落とさせる。フォーン側の警備兵2人も、フォーンが急所を外して一時的に無力化する。だがそれでもジャンヌ達に止まらないように呼びかけ、回り道をして校舎へと向かう。

 こいつら、軍人か?最初に上がった疑問はそれだ。襲うにしても囲い込みから襲う布陣、そして民間人をなるべく傷つけないようにする配慮。単なるテロリストにしては手が込み過ぎている。普通ならもっと隠密的に行動するか、あるいは逆に派手な殺戮ショーの如く銃をばら撒き、無差別に銃撃するはずだろう。それをここまで制圧作戦のように展開するのは、あまりにおかしな話だった。言うなら、格式にこだわっていた。バロム派の残党なら軍人がいてもおかしくない。だからこその考えだった。

 走りながら元はフォーンに問いかけようとした。

 

「フォーンさん、あいつら……」

 

「黙ってろ!今は足を動かせ!」

 

 今はそんなときではないと却下されてしまう。もっとも彼の言う通りである。一時的に無力化したとはいえ、彼らはまだ諦めていないはず。少しだけ振り返ると痛みに苦しみながらもこちらに向かって来ようとするのが見える。早く校舎に入らなければと彼らの足を急がせた。

 だがスターターからスタートの声が不意に響く。

 

『ハジメ!上だ!』

 

「っ?ネアさん!ジャンヌ!」

 

 スタートの危機察知に上を見上げる元。そこには校舎屋上から飛来する、MS部隊の姿があった。総数3機による編隊、それがジャンヌ達に向けてライフルを構え、降りてきていた。危ないと感じネアの肩を引いてこちらに寄せる。だが勢いが付いてしまい、2人の体が元に向けて倒れ込んだ。

 

「きゃあ!?」

 

「ひゃあ!?」

 

「ちょ、二人とも……っ!」

 

 二人の体を受け止めるも支えきれず、地面へと倒れる元。だがすぐに二人の体を抱き寄せたまま校舎と反対方向に横半回転して庇うように覆いかぶさる。直後その付近をビームライフルの銃撃音と地面の破壊音が響く。

 収まると同時に2人を素早く立ち上がらせる元。視界の端にフォーンも確認する。どうやら彼も無事だったようだ。

 しかし2人を立ち上がらせた元の視線の先で、もっとも恐れていた光景を目にする。

 

「これまでだ」

 

「っ……」

 

「あっ……」

 

 既に元達の方に空中から飛来したMS達の銃口が向けられていた。先程と違い、スピードの乗っていない状況。おまけに銃口を目にしてジャンヌが固まってしまう。これでは不意をついて逃げることも難しい。

 ガンドと共にかつてマフィア達を制圧した時の様に、スタングレネードを投げて隙を作るというのも出来ない。かといって命乞いも無駄だろう。いや、命乞いなど出来ない。それではせっかくの革命が無駄となってしまう。

 もはやこれまでか。そう思われた状況で、かすかにノイズが響いた。同時に聞き覚えのある声が聞こえた。

 

「―――――いや、ここからさっ!」

 

 同時に虚空から二振りの光刃が振りかざされる。それらの刃は瞬時に襲撃してきたMSのビームライフルを切り裂き、爆発させる。爆風からジャンヌとネアを咄嗟に護る。

 見えない場所からの攻撃、ノイズ、そして聞き覚えのある声。それは1人の人物と、1機のMSを想像させた。だが、その組み合わせは掛け合わさらないものだった。なぜなら人物は彼の戦友であり学友、そしてMSの方は昨日戦ったばかりの敵側のMSだったのだ。

 見えない攻撃だけなら、彼女の本来のMSであるドラグーナ・シーカーだと判断するだろう。だが、同時に聞こえたノイズは、間違いなく漆黒のドラグーナが発していた感覚に似ている。はっきり同じと言えないが、それに近いものを感じていた。あり得ない組み合わせ。その違和感の正体はすぐに分かった。

 

「………………」

 

 揺らぐ空間。そこに現れたのは予想通り、あの漆黒のドラグーナの姿だった。しかし、その刃はやはり襲撃してきたドラグーナの方に向けられている。その状態で、声が響いた。

 

「……遅れて悪いね、4人共」

 

「やっぱり……ローレインか」

 

 元の学友にしてドラグディア軍諜報部の諜報員「ファントム・ナーガ」ことローレイン・ナーグ。その彼女の声は確かに目の前にいる漆黒のドラグーナから聞こえてきていた。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。

レイ「最初の3つの出来事って○ーズ?」

それっぽくなってしまって申し訳ない(´・ω・`)けど要点まとめると3つが丁度いいんだよね。遊○王でもそうでしょ?

ジャンヌ「リ○ルバーさんの言葉ですね。ひょっとしてそれと第4章のタイトルかけてます」

いやヴァ○ル○ードは機竜……だよね?(;´・ω・)いやそんな事は考えてないです、はい。

レイ「それ言ってる時点で今は考えていたんだよねぇ。それより、早速登場だね、噛ませのドラグーナ・ラプター!」

かませって言ってあげないで~( ;∀;)性能的にはあの世界トップクラスなんです。ただ相手が悪かっただけだから……。

ジャンヌ「そういえば、元さんの力はどうなったのでしょう?」

それに関してはまだ秘密。詳細はもう少し……というか、実はもう黒の館DNで暴露しちゃってるんだけどね(´・ω・`)けど話的な紹介ではもう少し先になります。

レイ「ふーん、あ、そういえばラプターってどうしてローレインちゃんが乗ることになったの?」

それは次回の内容で明らかにします。ちょっとえっってなる理由ですが。ちなみにまだ専用カラーで塗装されていません。それでは次回も

ジャンヌ「お楽しみに。第4章もよろしくお願いします」


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EPISODE57 夜明けの動乱2

どうも、皆様。近頃は台風や台風に関係なく雨が多くなっていますね。これが秋雨というものなのか(´・ω・`)藤和木 士です。

ネイ「アシスタントのネイです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよぉ」

今回はEPISODE57の投稿になります。

グリーフィア「テロリスト達の攻撃から颯爽とローレインちゃんが助けに入ったところねぇ。ラプターの性能を発揮できているみたい」

ネイ「でもどうしてラプターをローレインさんが使うことになったんだろうね……?一応黒の館DNでも使うとは書いてあったけど……」

それは今回のお話で分かりますよ。それでは早速本編へ


何とかギリギリ間に合うことが出来た。慣れない機体でハジメらの助けに入ったローレインは思わず心の中で思った。先日の革命の折りに、バロム派の管轄する極秘工場から鹵獲された漆黒のドラグーナ、ドラグーナ・ラプター。それをなぜ彼女が使うに至ったのか。それには深い事情があった。

 元達と別れた後、ローレインは情報部本部へと戻った。任務終了とその報告の為に帰ったローレインは報告後、明日の為にも自宅へと帰宅しようとした。だが報告直後、ドラグディア政府と軍からの情報でバロム派の残党が逃亡したこと、そしてその追跡に当たっていた諜報員からの情報で残党が宣戦布告の混乱に乗じて反抗作戦を企てていることが判明したのである。

 錯綜する情報でドラグディア軍の手が回らないことを知り、情報部司令はローレイン達に軍へ協力してこの反抗作戦の事前の食い止め、残党の掃討を命じた。急な出撃な上に情報部向きの仕事ではないものの、ハジメ達の命が狙われるということでローレインも一肌脱ごうと任務に意気込もうとした。そこでさらに入ってきたのが、鹵獲したドラグーナ・ラプターの機体だったのである。

 なぜバロム派のMSが渡ってきたのか。それはグランツ司令による「餞別」であり、彼の裁量で機体のデータ洗い出しを行った鹵獲機体の内1機を、ガンダム同士の対決で裏方を務めたローレインのいる情報部に引き渡したのである。事実上ドラグーナ・シーカーの競合機であったドラグーナ・ラプターの性能は折り紙付きであり、情報部司令も驚きである。すぐさま残党掃討任務の戦力としてパイロットを割り振ることになる。当初はローレインの先輩であり上司である「トレノ・セブン」が候補となったが、彼自体は専用機を持っているということで自ら辞退した。相変わらず謙虚な人だ、とローレインは思ったが、続く言葉でローレインも困惑する。

 

『私は辞退させていただきます。私には専用機がありますので。ですが、もしよろしければその機体は、機体を頂くに至った任務を成功させた私の部下のローレインに任せて頂けませんか?』

 

『…………はぁ?』

 

 思わず素っ頓狂な声が出た。何考えてんだこの人と心の底で思った。その理屈はおかしいと抗議しようとしたものの、司令も納得してしまい当人の困惑をよそに流れで決まってしまったのである。

 元々、ローレインのMS操作技術は量産機の性能を確実に引き出すタイプだ。血筋としては代々諜報員を務めて来た歴史を持つ家の子どもではあったが、だからと言ってMSの運用までもが専用機のようなじゃじゃ馬を扱うタイプではなかった。学校では男装のお気楽キャラ、情報部では仕事は一つ一つ切実にこなすローレインでもこの乗機レベルアップにはキャラが崩壊してしまうほどの衝撃があった。

 何を考えて自分に任せたんだと司令との会話の後でトレノに詰め寄ったが、その当人から帰ってきた言葉は、

 

『自分の方に来たら専用機が余ってしまうだろう?部下の君に渡せば私の所の戦力は飛躍的に向上、おまけに君の評価も上がるだろう?上司としての気づかいだよ♪』

 

と来たものだ。やっぱりうちの上司、癖が強い。というより抜け目ない。情報部はこういう人物が多い。もっともその1人が男装の趣味を持つ自分なのだが。ため息をつきながらも2人の為と作戦開始前までマニュアルを読み込んでの出撃となった。最初は制御に四苦八苦していたが、作戦の中で覚えていく。そして分かったのは専用機並みのスペックと言っても量産機の機体ということだった。出力は上がっていてもバランスは程よい、むしろ操作感覚さえ覚えてしまえばドラグーナ・シーカーよりも使いやすいのではと感じた。流石ドラグーナ・シーカーの競合機といったところだ。

 作戦自体は聖トゥインクル学園の地下緊急脱出路にて行われた。潜伏し、作戦時に校舎に侵入、速やかにターゲットを撃破という流れだったらしく、なんとか学校開始前に制圧することが出来た。地下脱出路から出てそのまま学校にというつもりだったのだが、ちょうど同じタイミングで予期せぬ情報が入ってきた。内容はバロム派の犯行に見せかけてガンダムのパイロットを殺そうとするドラグディア軍離反組がいるとのこと。既に校内にいるとの情報を受けて急いで捜索を開始、そして今のハジメ達救出に至ったというわけだったのである。

 ハジメとジャンヌには因縁深いであろうこの機体、しかし、別の乗り手を得てその敵を護る姿は、まさに「昨日の敵は今日の友」と言う言葉がふさわしいだろう。ローレインは対峙するドラグーナ部隊に言い放つ。

 

「さぁ、俺の友人に手出しする奴は、このドラグーナ・ラプターの餌食になってもらうぜ!」

 

 受け取るのを嫌々感じていた装依者の言える台詞ではなかっただろう。

 

 

 

 

「ローレイン、その機体は……」

 

「グランツ司令からの贈り物だよ!それよりハジメ、早く装依を!」

 

 元の質問に簡潔に答えるローレインは、すぐさま戦闘態勢を取る様にと伝える。もう少し機体を手に入れた経緯を聞きたかったものの、彼女の言う通りだとその言葉に従う。ゼロ・スターターを腰に当て装着する。するとそのタイミングで、後方からドラゴンの叫び声が響く。

 

『グシュウゥゥン!!』

 

「Gワイバーン……」

 

 ジャンヌの声が示す通り、それはガンダムのサポートマシン、Gワイバーンの姿であった。Gワイバーンは咆哮と共にビームを放ち、校内に空から侵入しようとする敵部隊の増員を阻んでいた。

 今しかない。元はスターターにロック・リリーサーとセレクトスーツカードを装填して装依ボタンを叩く。ネアに避難を呼びかけ、ジャンヌの手を引く。

 

「ネアさんはフォーンさんと離れて!お嬢様、失礼します」

 

「はいっ!」

 

「えぇ。行きましょう」

 

 巻き起こる状況に追いつけていなかったジャンヌも、ここでようやく落ち着きを取り戻す。2人の体が光のアクセスゲートに挟み込まれる。上空へと回ったアクセスゲートが地面へと着き、2人の体が1機のMSへと姿を変えた。破損個所はそのままだが、それは確かに昨日白のガンダムを打ち破った黒きガンダムだ。

 シュバルトゼロガンダムの装依に合わせてGワイバーンも動く。けん制の光弾を数発放ってから分離していく。

 

『アーマード・シークエンス、Standby』

 

 Gワイバーンのパーツが分離、シュバルトゼロガンダム[リペアツヴァイ]の各部へと合体していく。腕部を若干伸縮させ、最後に頭部をヘルメット方式で被る。ドラゴンの口部に展開されたバイザーの奥にガンダムの瞳が輝く。力をみなぎらせるようなポーズを取る。

 

『シュバルトゼロガンダム・イグナイト、アクティブ』

 

「よしっ。行くッ!」

 

 装着が完了すると、早速校内へと侵入しようとするMS部隊に向けて飛翔を行おうとした。ところがそれを1人の男の声が止める。

 

「動くな、ガンダム!」

 

「?あれは……」

 

 反射的に振り返る。その視線の先には女生徒の1人が頭に銃を突きつけられている姿があった。銃を突きつけているのは、ドラグディア軍制服を着る男性。見たことのない人物だ。だが人質を取る姿を見て、飛翔をストップさせる。

 ウイングを収納してその男性の方に向き直る元。だがそれも銃を突きつけている男性が止める。

 

「動くなと言った」

 

「っ……」

 

 顔を向き直らせることもさせない相手と言うのは、少々厄介の様に思える。が、既に相手の姿を機体のデュアルアイで補足していたローレインはその人物の名前を叫んだ。

 

「もうやめろ、シュナウダー・ダリオン!かつての有力部隊アシュガリア小隊の隊長だったあんたが、元部下まで使って今のガンダムになんの恨みがある!?」

 

「シュナウダー・ダリオン……?」

 

 やはり聞いたことのない名前だ。だが、ローレインの言い方から、自分が、いや、ガンダムが彼に関わっていると取れた。「元」ではなく、「ガンダム」に対しての恨みとは何なのか。発言の意図に悩む。するとローレインの質問に答える形で、シュナウダーが恨みの正体について語る。

 

「黙れ!私は部下を奴に殺されたんだ!堂々と悪魔と認めたこいつを、許すわけがないだろう!?」

 

『ハジメが……?』

 

「……生憎ながら、そんな状況は昨日のバロム派の部隊を殲滅した時の事しか記憶にないな」

 

 殺したという事実を元は否定する。実際問題、これまで覚えている限りで元がドラグディアの、それも軍人を殺したという場面は昨夜の革命の時にしか覚えがない。その八つ当たりで来たというのなら容赦はしない。

 しかし、彼の言う部下を殺したというものはそれではなかった。シュナウダーは部下が殺されたその時の事を怒り散らして答える。

 

「私の部下、リュノ少尉は2か月前のガンダム暴走の時、貴様との戦闘終了直後にマキナスの艦が放ったビームによって焼け死んだ……。リュノだけではない。ワリィ軍曹、ゴラド曹長。他にも多くの我が国の兵士達が、貴様に殺されたのだ!」

 

 聞こえた2か月前、ガンダム暴走という単語。それを聞いて思い出す。かつてワルトによって強制的に装依させられた際、元を装依した状態でガンダムがドラグディア、マキナス両国の紛争に介入し、多くのMSパイロットや戦艦のクルーを殺したのだとガンドやグランツから聞いたことがある。

 無論、リュノ少尉の例だけ聞けば、少し場違いな気もした。しかし他の兵士はどうなのだろうか。当時の元……シュバルトゼロはそのビームサーベルで何十機ものMSの動力を貫き爆散させたと聞いている。意識がなかったで済む問題では相手はないだろう。

 元は静かに、なぜ今それを行おうとしているのかと聞く。

 

「……じゃあ何で、今行動を起こした。何ですぐに殺しに来なかった?」

 

『ハジメっ!』

 

 ジャンヌの声が制止を求める。なぜ殺しに来なかったなどと、挑発する言葉が危険すぎる。しかしそれでも彼に聞かねばならなかった。なぜ今なのかと。

 後ろを向きながらの質問を、シュナウダーは声を荒立てて答える。

 

「すぐ殺したかったさ!だが装依者の分かったガンダムの防衛にはグランツ・フリードを含めた、グランツ派の者達が囲っていた。簡単には手を出せない。だが今の状況なら、混乱したドラグディア政府や軍の隙を突くことが出来る!だからこそ、今なのだ!!」

 

「ひっ!」

 

 拳銃の銃口を突きつけられた女生徒は恐怖で竦んだ声を挙げた。人質が取られている以上、迂闊に動けはしない。下手に刺激しない方が良いだろう。しかし、それでも元は言う。彼に事実を伝えるために。

 

「……そうか、正直言って暴走していた時の意識はない。その件については謝ることしか出来ない。だけど、それはリュノとかいうやつらの為なのか?」

 

「何をっ!殺された者の無念を晴らすことは、生きた者にしか出来ん!」

 

 銃を人質に突きつけ、反論するシュナウダー。怒りの感情に呑みこまれ、復讐に憑りつかれたという表現が相応しい。まるでかつての元のようだ。もっとも今の元は、そんなもので止まるわけにはいかなかない。それに元が言ったのは、死んだ者の為に出来ることとは何か、ではない。本当にそれをリュノ達が望んでいると、聞いたのかということだ。

 元もその意味で再び聞き返す。

 

「無念を晴らすことを聞いてるんじゃない。俺は、無念を晴らしてくれと、今の状況をそいつらが知ってお前達は行動を起こしているのか、と聞いているんだ」

 

「何を言っている?人質が殺されたいのか――――ぐっ!?」

 

 質問の内容に怒り狂うシュナウダー。今にも銃のトリガーを引こうとする彼だったが、怒りで冷静さを欠いたことはこちらの付け入るチャンスでもあった。元は動いた。後ろを向いた状態から、一瞬にして向き直ってエラクスの蒼い残像を残してその前に移動した。そしてその銃をクローで破壊しつつ、人質をこちら側に引き寄せ、シュナウダーの腹を正面から思い切り蹴り飛ばす。

 人質を奪還した元は矢継ぎ早にローレインに通信を飛ばす。

 

「ローレイン、そっちの3機任せた」

 

『っ!相変わらずだな!?』

 

 文句を言うものの、主犯と思われるシュナウダーの危機に反応して、ガンダムを取り押さえようとするドラグーナ3機をローレインが応戦する。それを見る間もなくシュバルトゼロ・イグナイトは校舎の反対側、地上の警備員に成りすましたメンバー4人と、学園敷地内に侵入してきたドラグーナ部隊と対決する。

 エラクスの高機動でドラグーナ3機に向かう途中で一回転して地上のメンバー4人を視認する。その刹那の間にDNFを素早く発動させる。

 

『Ready set GO!DNF、ノイズ・イマジナリー』

 

 発せられたDNが4人の周りを覆う。4人はたちまち催眠状態へと陥り無力化された。その間にドラグーナ3機との距離が縮まる。

 自分達の方に一回しながら向かってきたガンダムに、ドラグーナ3機はうろたえながらも、ビームサーベルを取り出し、同時に突き出す。確実に回転後の軌道を捉えられるはずのコースだったが、エラクスのスピードの前ではその程度の予測は甘かった。直前に空中でジャンプするようにスラスターを噴射して回避すると、その背後を取ってメインスラスターに向けて腕部から発生させたビームサーベルを一閃する。一斉にドラグーナの背後が爆発を起こし、地面へと落下していく。トドメにDNFを更に繰り出す。

 

『Ready set GO!DNF、シャドウストーム・クロスレイド』

 

「はっ!」

 

 空中に拳を打ち付けると、漆黒の竜巻が彼らの周囲に巻き起こる。落ちる彼らに向かって収束した竜巻は、1つの巨大竜巻へと姿を変えた。中では金属が激しく鳴り響く音が聞こえる。やがて竜巻が収束すると、3機のMSは胸部とそれ以外のパーツに分かれ解体されてしまっていた。それらのパーツは竜巻で地上へと下ろされていく。

 元がドラグーナ部隊との戦闘を終わらせた頃、ローレインの方でも2機のドラグーナを沈黙させていた。撹乱しながらジェネレーター付近を貫き、動力を停止させたドラグーナ・ラプターは残る最後の1機に対してもステルス装甲とジャミングによるコンボで襲い掛かっていた。

 

『でいっ!』

 

『ぐぅっ!?……』

 

 最後まで抵抗をしようとしていたドラグーナだったが、機体のアイカメラから光が消えてそのまま地面へと落下していく。訪れた静寂の時間。エラクスシステムも同時に解除される。ガンダムのジェネレーター制御制御を行っていたジャンヌがこれまでの合図のない超機動に関して不満をぶつける。

 

『ちょっとハジメっ!いくら一瞬で動かないといけないからって、私に合図無しで合わせさせるのはどうなの?』

 

「あ、すみません。でも不意を突かないといけなかったので……っ、どうやらまだのようですよ」

 

『え?……あ』

 

 ジャンヌに対し、手早く言い訳しながら謝ろうとした元。だったが視界の中の異変に気づき、それを中途半端に切った。戦闘の構えを取る元の姿に謎が生まれるジャンヌであったが、ガンダムのメインカメラに映る映像でそれに気づいた。先程元が蹴り飛ばしたシュナウダーが姿勢を立て直してこちらに鬼の形相で睨んでいたのだ。

 学園の校舎の壁を杖代わりにして、震える足元をしっかりとさせるシュナウダー。呪詛の様にシュバルトゼロとドラグーナ・ラプターに向けて呟く。

 

「おのれ……よくも私の部下達を……。またリュノ少尉達と同じように殺して!」

 

「生憎だが、殺しちゃいないぞ。急所は外してるし警備員の方も眠らせただけだ」

 

「同じくだ。ジェネレーターをギリギリ停止させながら急所外すの難しいんだぞ?しかも慣れない機体で」

 

「うるさい!そんなことがなぜ信じられる?許さん、殺していないなどと言い訳する貴様らを!」

 

 殺したというシュナウダーに殺してはいないと反論する元とローレイン。だが事実であるそれを認めようとしない、勝手な思い込みをするシュナウダーは怒りに任せて装依する。

 これだけ言っても事実を確認しようとしない。彼も軍人であるのなら、冷静に状況を見るべきだと思う。だが逆に考えればそれだけリュノ少尉という人物が、彼や彼の部隊にとって大事な人物だったのだろう。人質すらも取らずに振りかざしてきたビームサーベルを腕部が変形して形成したビームサーベルで受け止めるシュバルトゼロ・イグナイト。互角に切り結ぶ両者。元は叫ぶ。

 

「復讐したいの分かる。俺だってガンド様が死んだとき、そう思ったさ。だけどそれで悲しむ人だっているんだよ!」

 

『ハジメ…………』

 

「うるさい!自分の罪を棚に上げるな!」

 

 自身の経験を通して説得を試みる元。だがそれはまったくシュナウダーの耳には届かない。反対に論点をずらしていると返されてしまう。ビームサーベルの弾き返しがシンクロして元を言葉諸共弾き飛ばす。

 その反論は辛いものがあった。確かに罪を棚に上げているのは言えるだろう、しかしその時制御できていたとは言えない状況でしかないのもこちらの言い分。譲れない主張があった。

 となればここを収めるのに必要なのは、もう1つしかない。意を決し地面を滑りながらジャンヌに告げた。

 

「ジャンヌ、もう一度エラクスを使う。駆け抜けるぞ!」

 

『了解です』

 

 今度はジャンヌの了承を得てエラクスを起動させる。再び蒼き炎を纏った漆黒のガンダム。イグナイトで跳ね上がった出力が更に上昇する。爆発的な加速力から一瞬で近接の間合いに入る。

 

「ガンダムゥ!」

 

「…………!」

 

 両者が切り抜ける。勝利したのは蒼炎のシュバルトゼロ・イグナイト。振り抜いたビームサーベルはシュナウダーが操るドラグーナの右腕を肩口から斬り裂いた。

 斬り裂いた腕が地面に落ちる前に、続けざまに後ろから逆袈裟切りで斬り上げる。左腕が右腕と同じように宙を舞う。振り向いて反撃しようとしていたシュナウダーの攻め手を奪った。

 トドメと言わんばかりにビームサーベルを停止させ、その状態でドラグーナの頭部を掴みかかるシュバルトゼロ・イグナイト。抑え込むように頭部を捉えたガンダムは暴れるドラグーナを抑え込む。抑え込めるだけの出力差とはいえ、このままというのは負担がかかる。無力化すべくイグナイトの腕部が光を放った。

 

「てぇい!」

 

「ぐあっ!?」

 

 ゼロ距離から放たれた高出力ビーム。頭部を焼いて視界を彼の視界を奪う。頭部を撃ち抜かれたドラグーナの最後の1機は後ずさり倒れ込む。すべての敵が沈黙したタイミングでようやく教師達がローレインの上司が引きつれていた部隊に護衛されて到着した。

 

「ローレイン!ガンダムの2人!無事かい?」

 

「生徒の皆さん、急いで校内に入ってください!けが人は保健室へ!」

 

「遅いですって、トレノ先輩!」

 

「自分達は大丈夫です」

 

 危険の去った事を知り、生徒達が我先にと校内へと走り込んでいく。元達も装依を解除し、フォーンに別れを告げてネアと共に校舎へと入っていく。シュナウダー達の身柄を情報部のトレノ・セブンに任せて。やがて学校から学校の休校が告げられて、元達はドラグディア軍のフリード・リヒ地区基地へと向かうこととなったのであった。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。ラプター受領の理由、それは総司令の気遣いと、先輩の計算でした( ゚Д゚)

ネイ「情報部の人みなさん特殊な人物なんですか……?」

グリーフィア「そんな感じの解説だったわねぇ……まぁローレインちゃんが男装してる時点でも察することは出来たかもしれないわね♪それ以上に、ローレインちゃん専用機無理だって言ってる割に使いこなせていて安心ね」

ネイ「そうだね。けど、まさか第1話の戦闘の余波が遂に帰ってくるだなんて……」

グリーフィア「むしろ遅すぎたっていうのはあるかもしれないわねぇ。作者さん?」

(´・ω・`)んー早めに出てきてもおかしくはなかったけど、でも第1章のポルン達の部隊に入れるっていうのは合わなかったし、入れるならここだと思って入れてますからね。本編でも言っている通り、特に元君達の周囲はグランツさんの指揮する部隊に護られていたというのもあって襲撃するのが難しかったというのもあるね。それに元君自体もガンダムを持っていたのもあるし。ただシュナウダーさんも第2話の終わりで言っているけど、自分の落ち度として処理していたのもあるから、その堪忍袋の緒が切れたのは間違いなく劇中の通り元君のあの発言が原因でしょうね(´・ω・`)

グリーフィア「悪魔……ドラグディアの黒い悪魔かしら?」

ネイ「連邦の白い悪魔よろしく?ってこと?」

グリーフィア「その通りっ!」

ガンダムだからまぁそれを狙ったのは間違いない。さて、次回は戦闘終了後のフリード・リヒ地区の基地に、いろんな人が集まるぞっ

ネイ「次回もよろしくお願いします」


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EPISODE58 かつての英雄が所望する物1

どうも、皆様。千葉の停電などのニュースを見ると、自分の地域でも以前停電になった時の不便さを思い出します、作者の藤和木 士です。

レイ「アシスタントのレイだよー」

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです」

今回はEPISODE58の投稿になります。

ジャンヌ「前回無事テロリストを退けてから基地の方へと向かったところですね」

レイ「元君どんどん強くなってきてるね!……それで、かつての英雄って誰のこと?」

(´・ω・`)それは、まぁ、作中で明らかにしていきますよ。その英雄が何を求めているのかも。
それでは早速本編へ。


 

 

「……学校が急遽休校になったから来たものの、ネアやグリューネさん、それにハジメのお友達まで来る必要ってあったんですか?」

 

 基地に来るなり、ジャンヌはそう口にした。軍人であるハジメやハジメのガンダムのパートナーであるジャンヌはまだしも、ネアやグリューネ、それにハジメの友人であるレヴ、リッド兄妹までもが基地の中へと入ってきていた。というのも学校で一度教室に集められてから担任の教師から下校となった際、ハジメが来たのだがその時レヴとリッドがハジメの後に付いて来ていた。何でもローレインから2人にも来てほしいとグランツ司令直々のお願いらしい。

 軍の高官から民間人を呼んできてほしいとは、一体どういうことなのだろう。しかしネアやグリューネも呼ばれていることから、何か特別な事情なのかもしれないとジャンヌは思っていた。グリューネも談話室のソファーに座り、両手を軽く広げて分からないとしつつも事情について予想する。

 

「それは私も分からないわぁ。けどただ事じゃないっていうのは分かるわねぇ」

 

「一体何をしようとしているのか……軍の人の考えは分かりませんね」

 

 ジャンヌが首を振って理解するのを諦めようとしたところで、部屋を出ていたローレインが再び訪れた。いつの間にかドラグディア軍の制服に着替えており、しっかりとした印象を持たせた。相変わらず男性用の制服ではあったが。

 これには彼女の友人であるレヴとリッドも気付いて指摘した。

 

「あれ、ローレイン服変えた?」

 

「それってドラグディア軍の制服よね?」

 

「あぁ。ちょっとこれから着なきゃいけない訳があってね。情報部とはいえ、俺も軍所属なわけではあるし」

 

 ローレインは制服の右肩の腕章を提示しながら答える。情報部といっても軍所属の情報部。そういった規範はあるということなのだろう。とはいえ、そうなるとハジメを制服に着替えさせなかったことも気になる。ジャンヌと同じように思ったのか、ハジメも着替えを打診する。

 

「あ……俺も着替えた方が良かったか?」

 

「いや、ハジメは大丈夫だと思う。着替えはあるにしても、一応ハジメには民間人組を安心させてもらいたかったからさ。それに俺の場合は、グランツ司令の補佐っていう仕事があるわけだから着替えなきゃいけないってだけだからな」

 

「そうか……それで、基地の方に来てほしいってのはどういうことなんだ?やっぱり、学校襲撃をしてきたやつらの件で……」

 

 ハジメの言葉に一斉に民間人組の視線が集まる。あの場でいたと確認できたのはハジメとジャンヌ、ネア、ローレインの4人。だが、既にあの時点でグリューネが学園の校舎に、レヴとリッドが学校に入る直前だったという。

 既に学園内に侵入していたというバロム派の残党。しかしジャンヌ達が接敵したのは、それとはまったく別のガンダムを討伐することを目的とした軍の脱走部隊だった。しかもその主犯は、丁度ハジメがガンダムで各地の戦争に無意識に介入していた時期の被害者の1人(一部濡れ衣な部分はあるらしいが)だという。主犯のシュナウダーはかつて父ガンドとも共闘したこともあるといい、胸中複雑な想いを抱いた。それでも彼らがただでさえ戦争になるかもしれない混乱の中で、今回の行動を起こした事は許されないことだ。

 ただし、ローレインが彼らを呼んだのは、その事だけではなかった。

 

「いや、それも少しは関係あるが、今回のメインはそうじゃない。どっちかっていうと、ガンダムと関わりがあるからこそ呼ばれたって感じだ」

 

「ガンダムと……?」

 

 ローレインの発言をリッドが復唱する。ガンダムとの関わり、そう言われてみれば、確かにここにいる者達は少なからずガンダム、もといハジメに深く関わった人物だ。命を救われた者、自身の願いを叶えてもらった者、そして暴走を止めた者……。今でこそパートナーだが、ジャンヌもまたガンダムに命を救われ、またある意味ではガンダムの危機を救った者であった。それが彼らの共通点でもあったのだ。

 しかし、それが何を意味するのかまでは分からなかった。つながりはあれど、呼ばれてどうするというのだろうか。ところがローレインはそれを説明する前に、ハジメとジャンヌの2人に自身への同行を願い出る。

 

「詳しく話したいところだが、今は時間がない。ハジメとジャンヌはそのままの服でいいから俺と一緒に総合ブリーフィングルームに来てくれないか?」

 

「総合ブリーフィングに?」

 

「普通のブリーフィングルームとは、何か違うんですか?」

 

 ローレインとハジメが口にした総合ブリーフィングルームという単語に、ジャンヌは疑問を投げる。ヴァイスインフィニットとの対決前、基地にいる時に一度作戦内容の確認の為にブリーフィングルームに行ったことがあった。広い部屋にホワイトボード、スクリーンがあり、会議室と言える設備が整った部屋だったのを覚えている。

 その部屋の名前は単にブリーフィングルームと入り口の札に書かれていたのだが、総合ブリーフィングルームとはまた違う名前だ。何か違いがあるのだろうかと思ったのだ。ジャンヌの質問をローレインが簡潔に答えた。

 

「簡単に言えば、戦争規模の作戦における指令伝達の場だ。普通のより部屋が広いのと、あと有事には司令部になるくらい設備が整っているんだ。ハジメは前に国境の遺跡奪還任務の時に使っただろ?」

 

「あぁ。てことは……」

 

 頷いたのち、言葉を濁らせるハジメ。ジャンヌにも分かっている。戦争規模の作戦、となれば思い当たるのは1つしかない。察しが早いことを感謝して、ローレインは残るメンバーに対し言う。

 

「そういうこった。じゃあみんなは呼びに来るまで待っててくれ」

 

「えぇ、そうさせてもらうわ♪」

 

「分かりました。お嬢様、ハジメさん。また後で」

 

 ネアの言葉を受けて、2人はローレインに続いて部屋を後にする。本当に戦争が始まる。詩竜の刻印が消えてから初めての戦争だ。けれど、その規模は非常に大きいという話らしい。最後の戦争とマキナスの代表が言っている以上、こちらもそれと同等の規模で当たることになるのは想像に難くない。戦争になるということはガンダムの力も必須になるということだ。

 ジャンヌは後ろを付いて行きながら考える。かつてハジメが言っていた、戦争を終わらせるという発言。それは今自分の手で終わらせることと同義となった。昔はくだらない戦争と思っていたが、いざ自分がその戦場に立つことになるとそれは責任重大となる。政府が粛清された以上、クリムゾン・ドラゴニアスが詩巫女を遠ざける理由はなくなった。だとすればそのパートナーに自分が選ばれるかもしれない。果たして何百年と遠ざけて来た機竜に、今まで詩巫女としての使命を遠ざけて来た自分が選ばれるのかどうかは微妙なところではあったが。

 そうこうしている内に、目的地に到着する。いくつかのブリーフィングルームを抜けた先にあった部屋は入り口もセキュリティ装置が多く見えていた。ローレインはそのうちの1つのモニターに顔を向ける。

 

「失礼します。情報部のローレイン・ナーグ、クロワ・ハジメ軍曹とジャンヌ・ファーフニル臨時伍長を連れてまいりました」

 

『ご苦労。今開ける』

 

 雑音をバックに男性の声が部屋への入室を了承した。モニターの映像が消えると共に、ドアのロックが外れ、部屋への扉が開かれる。ローレイン、ハジメの後に続いて、ジャンヌも中へ。

 部屋には既に多くのドラグディア軍人がいた。ほとんどが顔を合わせたこととない軍人ばかりで、部屋が以前の物よりもとても大きいことよりも注目してしまう。大体2、3倍以上の大きさの室内にはのべ100人前後軍人が刑事ドラマなどで見る長い机の前にそれぞれ座って並んでいた。それだけいれば知っている顔は少ないだろう。

 ローレインとハジメの後を歩きながら見渡すジャンヌ。層々たる顔ぶれ、これが父と同じようにこの国を護ってきた軍人たちなのだ。硬い表情に緊張感がのしかかってくる。なぜかじーっと見られている感覚もあって、直ぐに顔を前に戻して自分達の場所へと向かう。

 やがてついた自分達の席場所の近くに、見覚えのある顔が見つかる。ジャンヌは前にいるローレインやハジメよりも早く、その人物に声を掛けた。

 

「あ、アレクさん」

 

「よう、来たかハジメ。ジャンヌさんも今回はいきなり襲われて大変だったな」

 

 ハジメの所属する部隊の隊長、アレク・ケルツァート少佐。VRによるガンダム操作の訓練では、対戦相手としてお世話になったこともある、かつてのハジメの決闘相手だ。更にその奥にはその決闘で随分と世話になった鬼教官ことゼント・ガルギュール大佐も同席していた

 事件にはグリューネも少なからず巻き込まれていた。が、その口ぶりからどうやら巻き込まれたことは知っている様子。ローレインがグランツ司令の所に行くと言って離れ、2人が彼の隣に空いた2席に座ると、グリューネの様子を聞いてくる。

 

「こういうこと訊くのはあれだけど、グリューネは大丈夫だったか?一応部下の方に様子を見て来てもらって無事だってことは聞いていたんだが……」

 

「はい、グリューネさんの方は大丈夫みたいですよ。ただネアが私達と一緒に巻き込まれたので、もしグリューネさんと話すのでしたら、ネアの事も心配してあげるといいかもしれませんよ」

 

 軍人と言ってもやはり若い男性故か、恋人の無事をちゃんと確認したい気持ちが走って聞いてくる様子はどこかほほえましい。せっかくなので無事と共に敢えてネアも巻き込まれたことを伝え、グリューネへの橋渡しとしておく。アレクも少し不意を突かれたようにしつつも、笑って了解する。

 

「そうだな。ハジメもネアを護ってくれてありがとう」

 

「いえ、こちらこそ昨日は非常事態にも関わらず家に帰してくださってありがとうございます。あれから大変だったでしょうに」

 

「あぁ。今朝に至るまでバロム派の反抗作戦を潰していたからな。もっとも不意を突いて軍内部から勝手な行動をする輩がいたとはな……」

 

 ハジメの問いにやや表情を曇らせたアレク。顔こそ知らなくても、民間人に仲間が手を出したことは彼にもショックな様子だ。しかも自分の恋人に近いところでの犯行。もしグリューネが人質にされていたらと思うと、彼のショックはもっと大きいものだったかもしれない。

 色々と思うこともあったが、そこで考えは中断された。後ろの扉の開閉音が響くと共に、また聞き覚えのある声が響く。

 

「起立、敬礼!」

 

「ッ!」

 

 他の隊員が一斉に起立したのに合わせてジャンヌも慌てて立ち上がり、頭の横に手を当てる。案外急に言われると難しいものだ。ハジメのスムーズな動きに感心してしまう。そのままの状態で待機していると、後ろの方から軍総司令であるグランツを先頭に、三竜将であるリリー・バレナー准将、バァン・ウロヴォース少将、ローレイン、そして見慣れない薄いプリン色の髪を前方に2本伸ばした男性が入ってくる。

 彼らが前方に立って敬礼を返したところで、リリー准将が着席を言い渡す。

 

「着席。……では総司令」

 

 参加者の着席を確認すると、グランツは席に取り付けられたマイクに向かって挨拶もとい、今回の集まった内容に関して話し出す。

 

 

『では、これより昨夜のマキナス帝国軍の宣戦布告に対する、ドラグディア全軍による武力制圧作戦概要について説明を行う』

 

 

 

 

 グランツ司令の口から出たのは、やはりマキナスに対しての武力制圧作戦についての事だった。全軍による武力制圧。それはつまり戦争をするということを意味する。その作戦の内容を、参謀に当たる男性がグランツ司令からバトンを渡されマイクを手に持ち、説明を開始する。

 

『では改めまして、今回の武力制圧作戦における参謀を務めさせていただきます「ハッタン・フリード」大佐と申します。まず今回の目的はマキナス軍の迅速なる制圧。いかに両陣営に被害が出ないかを求められます』

 

 両軍の被害を最小限に留めての解決。それは現ドラグディア政府臨時大統領であるダン・クロス大統領の要望であるということが資料に書かれていた。資料には続けて予想される戦力対比が書いてある。ハッタンがその部分の説明に入る。

 

『我が軍が投入する最大戦力はニーベルング級40隻、ミドガルズ級80隻、そこに最新母艦トロイ級一番艦と「トロイ」2番艦「ダンドリアス」、我が同盟国「セントリル」、「ギルン」両政府にも既に協力を依頼し、戦力を整えております。見込みでは更に大型艦艇がそれぞれ5隻ずつ、中型艦艇が10隻ずつ配備される予定となります』

 

 スクリーンには艦隊戦力の総数と、その配置図が表示されている。同盟国セントリルとギルンはドラグディアと同じく竜人族が治める国家である。それぞれ国の北東部、南東部の海に浮かぶ島国であるが、戦力を十分保有した国であった。ただしドラグディア、マキナスとは違い、竜人族・機人族の仲の調和がとれている。というより実はマキナ・ドランディアの世界で竜人族・機人族で戦争が終わっていないのはこの竜人族・機人族発祥の地であるマキナス、ドラグディアと一部の立地する小国程度だったりする。他の国は象徴がない分、変なプライドもない為、簡単に収まったらしい。とはいえ、たまにいざこざは起こるらしい。

 スクリーンに映る同盟国の戦力はそれぞれ大陸の北部・南部に向けられており、近い部分に支援する様子だ。その方面にはドラグディア自体の戦力が少数となっており、中央付近に戦力の大多数が集中していた。資料ではそのドラグディア軍本隊の中に元達ケルツァート隊、リリー・バレナー准将の率いるナイツ・ヴィーナス隊が配置されていた。北方の部隊はバァンの率いる部隊が、南方はゼント・ガルギュールが率いる国境防衛基地所属のガルギュール隊を含めたドラグディア部隊が配備される構図だ。他にも多数、隊の名前を連ねていた。

 最終的に予備兵力を基地に残しつつ、全隊が作戦に参加する配置。総司令であるグランツも「トロイ」に乗艦する予定だ。続いてハッタンが予想される敵の総数をスクリーンに表示させた。その総数を見て、室内の空気が下がり軍人達の表情が強張った。元も総数に目を見開く。

 

『対してこれが、予想される敵配置図、およびその総数です。マキュラ級が約50隻、タイタン級が85隻。新造艦こそありませんが、同じく同盟国の「ドロス」、「アヴァル」からそれぞれ大型艦艇10隻ずつ、中型艦艇15隻が、こちらと同じような布陣で配備されると予想できます』

 

「本当に勝つ気でいるんだな、マキナスは」

 

「これじゃあMSの総数もかなりのもんだぞ……」

 

 あちこちから上がる、敗北濃厚と見る声。その不安は的中し、続いてMS部隊の総力図を表示された。

 

『続いて、MSの戦力についてですが、こちらは全軍合わせてMS3700機前後、対してあちらは4500機程度のMS数が存在するとされています』

 

「4000機だと!?勝てるわけないじゃないか!」

 

 勝てるわけがないという1人の声に反応し、各所からも多くの批判の声が殺到する。勝てる戦いで話をしろと暴言も出てきており、少し前まで民間人であった元達、特にジャンヌが怯えていた。暴言の大きさに涙目で元の腕にしがみついてくる。いきなりの事で慌てる元。

 

「ハジメ……怖いよ……っ!」

 

「お嬢様落ち着いて。このくらいなんともないですから……」

 

 何か少し年齢が退行してしまったのではないかと思えるほどに怯えていたジャンヌ。大丈夫だと言い聞かせるが、なにぶん周囲の声が大きい。寧ろその年齢退行は、いきなりこのようなところで大勢に囲まれたことへの恐怖感から来るものなのかもしれない。ここはハッタンか誰かに止めてもらうまで自分が落ち着かせるしか……そう思った時、声が飛び火した。

 

「それに、何だよこの面子。全戦力つってんのにこんな似合わねぇ学生カップルまで紛れ込んでてよぉ!」

 

「……あ゛?」

 

 男の挑発とも取れる言葉に、斜め後ろを振り向いて沸点が振り切れたような声を返した元。向いた先には軍服に赤い髪を鶏冠状にした男性。その表情は挑発的なものとなっており、威圧感は凄い。しかし内容が内容なだけあって、元の表情も腹に据えたものとなっていた。ジャンヌからは見えないものの、見たら泣き出してしまっただろう。

 今にも喧嘩に発展しそうな流れに、直接の上官であるアレクが制止する。同じく向こう側もその連れか知人であろう軍服姿の男性が止める。

 

「ハジメ落ち着け。今そんな事してる場合じゃない!」

 

「そうですよクックドゥー中佐!ガンダムのパイロット相手にそんな……」

 

「ほぉー、こいつガンダムのパイロットか!」

 

「それがどうしました?」

 

 ガンダムのパイロットという単語に反応した、鶏冠頭のクックドゥー中佐はいじり倒すように見てくる。元もそれがどうしたと控えめにだが挑発に乗る。まだ怒りを爆発させるタイミングではない。自制は出来ていた。

 既にハッタンから制止を掛けられるほどに切迫した状況。クックドゥー中佐が元の感情を逆撫でさせる。

 

「恋人もいなきゃ、ガンダムは戦えないってか?アッハッハ!」

 

「っ!テメェ……!」

 

「待てハジメ!冷静になれ、冷静に。そうだ、落ち着け」

 

 思わず食って掛かりそうになるものの、アレクの制止の声で何とかブチかますのを抑え込む。更にジャンヌの表情がわずかに見える。その表情に陰りと怯えがあるのを知り、拳をひっこめる。

 しかし未だにクックドゥー中佐が煽ってきていた。更に周囲の暴言に混ざっていた軍人もそれに合わせるかの如く元とジャンヌの事について落胆したような声が飛んでくる。好き放題言ってくれる、と元は苛立ちを募らせる。だがそこで彼らの言葉を一刀両断する声がハッタンやグランツ司令のいる前方ではなく、元の席の後方から飛んだ。

 

 

 

 

「下らん。文句はおろか他人ののろけ事に興味を持つくらいなら、お前らの方が出ていけ」

 

「あ゛ぁ!?」

 

 

 

 

 視線が一気に声の主へと注目する。元達の事に注意しつつも声の主は、確実に元達に向けていた暴言の主達を咎めていた。あまりに大雑把なだが、ピンポイントな制し方に元も視線を向ける。だが、そこで元も予想外の事態に陥る。

 声を発した男性。その男性は真新しい制服に袖を通す、アッシュブロンドの髪を横へと固めた髪型が特徴的だった。しかし、それらが特徴的なだけで元の動揺を誘ったりはしない。その人物が、元もよく知る男性の物だったからこその物だった。

 座っていたジャンヌも振り返って見えたその人物に言葉を失う。口をパクパクとさせて驚きを隠せずにいる。元はジャンヌの驚きを代弁する形で、その人物の名を呼んだ。

 

 

「ふぉ、フォーン様!?」

 

 

 フォーン・フリード。フリード家の跡取りの1人にして、ファーフニル家の執事である男だ。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。

レイ「え、何でフォーンさんいるの!?」

ジャンヌ「フォーンさんといえばファーフニル家の執事の方のはず……それがまたどうして……」

既に察する方もいると思いますが、その詳細は次回以降明らかにします。それより投稿頻度落ちてきているんだよな……(´・ω・`)

ジャンヌ「あ、気づいていましたか?」

レイ「第3章じゃあ2話連続投稿多かったのにねー。どうしたの?」

簡単に言うと、プロットに出していた第4章の敵陣営MSの武装とかを考えてます(´・ω・`)大まかに考えてはいたんだけど、もっと細かく書かないとね……。それをずっと考えていると本編のスピードが遅れちゃうんですよ。

レイ「あー、大体理解」

ジャンヌ「クライマックスなのでちゃんと書いてくださいね?」

MSの量滅茶苦茶多いよ……( ;∀;)でも頑張る。では今回はここまで。

ジャンヌ「次回もよろしくお願いします」


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EPISODE59 かつての英雄が所望する物2

どうも、皆様。つい先日私事ですが予言をしてしまった藤和木 士です(´・ω・`)詳細はツイートにも載っています。

ネイ「アシスタントのネイです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよぉ。けど反応少ないことから見て他の人がもっと速い段階から予想していたのかもねぇ。二番煎じってところかしらぁ?」

(´・ω・`)他の情報とか見てないんだけどなぁ……、まぁそこは広いネット世界、ありえるということで。
今回はEPISODE59の公開です。そろそろお話の方に手を回せるようになるかな?

グリーフィア「ほら、もっと手を動かすー!」

( ;∀;)誰かその部屋に入ると外の一時間が中の一日になる部屋とかくれませんかね。そんなのあり得ないけど。

ネイ「とりあえず本編の方は、フォーン様が作戦会議室にいたということに驚いている、というところでしたね……けれど、本当にどうして……」

グリーフィア「予想は着きそうだけどねぇ……そこは本編で確認しましょ」

それでは言葉通り、本編へ。


 

 

 なぜこの場に自分の家での上司であるフォーンがいるのか。元が真っ先に思ったことはそれだった。本来ならこの場にいるはずのない彼が、しかもドラグディア軍の制服を着てこの場にいる。この場に居るのは各部隊の指揮官クラスがほとんどだというのに。

 元が困惑を感じるのをよそに、クックドゥーの鬱陶しそうな声がフォーンに向けられる。

 

「なんだ、お前?どこの隊の隊長だぁ!?」

 

 声を大にして質問を投げつけるクックドゥー。元には絶対に出来ない行動であるが、気になったのは周りの反応だ。先程と同じくクックドゥーの声に加勢する声はあるが、その数は目に見えて少なくなっている。更によく見ると周囲の人間が口を塞ぐようにしていた。比率的に口を塞いでいるのはフォーンと同じくらいか、それ以上の男性が多いように見える。年甲斐もなく慌てている様は少しおかしいと印象を与える。

 だが、質問に答えていく毎にその疑問が順に解決されていく。フォーンがクックドゥーに名前と所属を名乗る。

 

「ドラグディア軍、元ファーフニル隊改め、フォーン隊隊長フォーン・フリード大佐だ。これらは今日ここに来る前にグランツ司令から拝命した。復帰という形でな」

 

「っ!大佐だと……!?」

 

「復帰……そういえば」

 

 元はかつての事を思い出す。まだ記憶が戻っておらず、ハジメ・ナッシュとしてファーフニル家にお世話になっていた頃、かつてガンドとフォーンが死闘を繰り広げたと。記憶が戻ってからガンドに聞こうとしたこともあったのだが、その時は丁度隊長になる前のアレクと決闘する直前の事であり、忙しいからとうやむやにされてしまった。それからも聞いていなかったが、少なからず、軍に所属するガンドと死闘をということから彼もまた軍人なのではという目星を付けていたのだが……まさか除隊していたとは。

 復隊したことに納得する元。その一方でジャンヌが今度は立ち上がって復隊したことに驚きを露わにする。

 

「ちょ、復帰したって……貴方お父様に負けたから辞めたんじゃなかったの!?」

 

「えぇ、そうです。けどドラグディア軍総司令から、復帰を要請された。国が戦火に晒されるかもしれないこの状況だ。復隊は任意とはいえ非常事態の中で出された宣言を断るわけにいきませんので」

 

「だ、だからって……うちの執事の仕事はどうするんですか!」

 

 復隊の経緯は聞かされても、ジャンヌは満足しない。仕事は既にあるのだ。それもガンドがいなくなり、ガンドの妻であるクリエが支えているファーフニル家の使用人達をまとめ上げるという仕事が彼にはあるはずなのに。非常事態とはいえいなくなられても困る。

 ところがフォーンにもそれには理解しているところもあるようで、説明をジャンヌと、おそらく元にも行う。

 

「ご心配なく。戦争が終われば再び除隊するようにお願いしてあります」

 

『私としては、そのまま残ってもらいたいほどの逸材だがね。まぁ、23年前の決闘の結果を甘んじて受け入れているのは律義だと思うよ。実際それで助かったわけなのだから。流石導きの英雄。戦場でもそうでなくとも腕は確かだ』

 

 会話の間に割って入ったのはグランツ総司令だった。フォーンはグランツの息子だ。養子としてフリード家に入ったガンドと戦わせたのは他でもない彼の裁量でもある。思う所があってか、私情が入った制し方だった。

 グランツが猛るドラグディア軍士官達に、フォーンを復帰させたことについても語る。

 

『というわけで、今回の戦争にあたってフォーンを含めたかつてのドラグディア軍人達もまた、ドラグディア軍に多く復帰してもらった。無論退役軍人すべてではないものの、おかげで今先程ハッタン・フリード大佐が述べてくれた通りの戦力まで集めることが出来た。これ以上を望むなら、むしろ私達はマキナスが奥の手として用意しているという、学徒動員までも考えなければならないが?君らはそれを望むのかい?望まないのであれば、多少の若者達の恋路にちょっかいを出すのはやめようか。その彼らが今回の作戦の軸を担うのだから』

 

「ぐっ……出過ぎた真似をしてしまい、申し訳ありませんでした」

 

 グランツの気迫に押されてクックドゥーが謝罪する。ただし相手はグランツに対してであり、こちらへの謝罪はなかった。上の立場の人物に対して媚びを売る大人の1つの例だろう。そうとは言わず元も頭を下げてジャンヌと共に着席し直す。後ろのフォーン「大佐」も、同じくだ。

 席に着いたタイミングで、そのやり取りを見ていたアレクが納得した様子を見せる。

 

「そうか……あの人どっかで見たことあると思えば、導きの英雄か」

 

「アレク隊長知っているんですか、フォーンさんを」

 

 ジャンヌから問いかけされる。元もそれは気になっているところであった。2人の視線を見て、アレクは前から見えづらいよう少し頭を落としてから2人の質問に知っている範囲で教えてくれた。

 

「士官学校の教本で名前を聞いたことがあるんだ。二十数年前にドラグディアとマキナスの間で起こった戦争で、ほぼすべての戦いを勝利に導いた若き士官パイロットが居たって話を。その人はリリー准将よりも若い年齢の時から三竜将の候補に挙がっていたらしく、それにも関わらず一身上の都合で群を除隊したって話だ。それが導きの英雄という二つ名の由来らしいよ。……けどこれで合点がいった。ジャンヌ。君の家の執事をやるために軍を除隊したんだね」

 

「えぇ。ただそれを決めたのは決闘の場だったらしく、観戦者はわたくしのお母様とお父様の養父でフォーンのお父様であるグランツ司令しかいなかった極秘裏の物だったようです」

 

 ジャンヌのかすかな声を聞きとる元。元も気になってこそいたが、そこまで聞いたのはこれが初めてだ。それほどの地位を手に入れられると言われながらも彼が執事としてファーフニル家に執事として雇われたのは、元も経験した決闘があったからこその物だったのだろう。

 騒ぎが収まったことでハッタンが改めて作戦の主軸となる内容について説明する。

 

『では、作戦の内容について入ります。前述したとおり、こちらは数が不利な状態で戦わなければなりません。既に今多くの批判が殺到したのもご周知の通りです。正攻法での突破は困難。いえ、はっきり申させていただくなら正面からぶつかれば負けるでしょう』

 

 はっきりと口に出された敗北宣言。これから国を護ろうというのにあっさりと負けを認める様を見て、またヤジが飛ぶ。当たり前とはいえここまで負けを達観して言い切ると、作戦会議自体が破綻しかねない。それをハッタンも分かっており、だからこその策……元が驚いてしまう作戦をハッタン達作戦参謀側は繰り出した。

 

『だからこそ、正攻法ではない。早期に戦争を終わらせることを前提として我が軍は展開する。相手側にはない、力……ガンダムの性能に、一点集中させる。……資料の4ページをご覧頂きたい。もしくは、正面スクリーンをご覧ください』

 

 強く、はっきりと言ったハッタンの言葉に従い、作戦会議参加者が各々に机に置かれていた資料のページ、あるいはスクリーンを見る。元とジャンヌも資料の方に目を通した。そしてその驚くべき方策に絶句する。

 一言で言えばあり得ないという内容だった。軍人でなくても大抵の人なら苦言を言うであろう内容。本当にこれが最善策なのかと疑う。ブリーフィングルーム内では既に動揺が生まれていた。元は咄嗟に右を向く。元の開いている資料を覗き込むジャンヌの隣で、資料に目を通していたアレクもあまりの荒唐無稽な内容故に開いた口がふさがらない。ジャンヌも資料が示す意図に気づき、困惑した様子で元に訴える。

 

「え……ちょっと元、これって……」

 

 ジャンヌの気持ちはよく分かる。なぜこれが承認されたのか。元が一番に言いたいはずの言葉だった。しかしその疑問はまず、作戦の内容を口にしたハッタンの言葉によって遮られる。

 

『今回の作戦としては、ガンダムを重武装化したうえで高加速型のモビルブースターに搭載、一気に敵中枢へと乗り込ませたのち一気に作戦の最大目標であるマキナス皇帝ギルフォード・F・マキナリアスの捕縛または殺害する。そのために他の部隊は前線の維持および突撃のサポートを行う。短期決戦による戦争終結、これが今回の作戦です』

 

 今回の作戦内容。一言でいえばそれは非常にリスクのある特攻、単機で敵陣の中に突っこみ、素早くターゲットであるマキナス皇帝を捕らえる、または殺害しろというものだった。

 冗談ではない。先程ハッタンはマキナスのモビルスーツが4500機ほどだと言っていた。無論全てを相手にするわけではないだろうが、それでも十分すぎる数が突撃するガンダムに対し襲い掛かってくるのは間違いない。振り切れるとかそういう問題ではない。突っこんでくる以上相手は全力で迎撃するに違いない。その中に突撃する様に言うハッタンら参謀が悪魔の様に思える。しかし彼らもその事は重々承知の上での発言であった。ハッタンが続ける。

 

『無論ガンダムのパイロットであるクロワ・ハジメ軍曹、ジャンヌ・ファーフニル臨時伍長に非常に負担の掛かる作戦です。対策はありますが、ただそれをどうにかするのにも戦線を支える兵士達の活躍に掛かっています。この作戦はガンダムがいかに早く、かつ戦力を削られないうちに目標眼前まで到着できるか。そのために部隊を押し留め、引きつけることを他の部隊にはお願いしたいのです』

 

『この作戦ではいかにガンダム以外の部隊を持たせられるかも掛かっている。しかし一番負担が大きいのは他でもないガンダムだ。これしか方法がない。加えてもう1つこの戦いでの重要なファクターがある。これを見てくれ』

 

 グランツ司令が合図を送ると、ハッタンがスクリーンに「SEACRET」と書かれたスライドを表示させた。重要さを際立たせたスライドからは映像が流れる。各部隊の隊長格はその内容に魅入られ、そしてどよめく。

 映し出されたのは赤い装甲を持った、巨大なドラゴンの姿。ウインドウに表示されたその名は「CRIMZON DRAGONIAS」という名前。元もその名で何を意味するのか気づく。映像に映る紅の龍を見るのは初めてだった。それでもそれがあの機竜なのだと直感する。グランツからその名前が告げられた。

 

『クリムゾン・ドラゴニアス。かつての戦争にて生身のドラゴンから機竜へと変えられたドラゴン。その力は機竜になってから一度も振るわれてはいないが、凄まじい力を誇ると言われている。旧政府によりその力を振るえる状況ではなかったが、今やその枷はないに等しい。その詩巫女として、またガンダムのサブパイロットとしてジャンヌ臨時伍長には本作戦に参加して欲しいのだ。無論、契約が上手く行くかどうかはある。もし嫌だというのならこれに関しては断ってもいい』

 

「っ!」

 

 ジャンヌが息を飲む。今まで避けていたとはいえ、それは強制されていたから。今まで苦しめ続けていた彼女の呪いはもうない。逃げたければ逃げてもいいのだ。グランツもそう言ってくれている。

 だが彼がジャンヌにそう言ったのは、彼女なら出来るのではという期待である。過去を乗り越えた今なら、と彼は挑戦する機会を与えていた。そしてそれは最後のバトンを渡したいという願いなのかもしれなかった。オルレリアンから途切れていたクリムゾン・ドラゴニアスとの繋がりを、呪いを断ち切ったジャンヌへと渡したいという願い。それを以って革命を締めたい、と。

 

『クロワ・ハジメ軍曹、そしてジャンヌ・ファーフニル臨時伍長。今改めて、そしてこの場で突然で申し訳ないが、私達を信じて今回の役を引き受けてはくれないか』

 

 グランツから要請として告げられる作戦への参加。参加をお願いされているとはいえ、拒否権はほぼないと言っていい言い方だ。ドラグディア軍とはいえ、これだけの状況を打開できるのはガンダムしかないということなのだろう。無責任にもほどがある。

 しかし元達にも拒否しがたい理由があるのは確かだ。これ以外の作戦となると、学徒を動員したり、国民を強制的に軍事に参加させる制度などを使ったりしなければならない。無論ドラグディアではそのような法案は歴代の革命会派に連なる者達の尽力で採用は見送られている。国の存亡ともなればそれも使うことも辞せないのかもしれない。

 それならば今使命を帯びている自分達で出来ることはやらなくてはならない。そのためにガンダムの力が必要なら、と元はグランツ達の言葉に返答する。

 

「……正直言って、今とても混乱しています。いきなりこんなことをやれとか言われて、思考が追いついていません」

 

『それは無論分かっている。しかし……』

 

「でも、それで成功率が下がるのなら、俺はやります。賭けるのなら大きい確率に掛けたくなる。どのみちやるのなら生き残る方を選びます。……ジャンヌ伍長はどうでしょうか?」

 

 元はOKを出す。生き残りたいというのは紛れもない事実。危険とはいえ、一番被害の少ない可能性としてそれがあるのなら断る理由はない。死中に活を求めるという言葉もある。しかし元がOKでもジャンヌがどう思うかが、もう1つの肝だ。これまで避け続けていたことを求められ、どう思うのか。元はその問いかけを主へと向けるようにして問いかけた。

 ジャンヌは俯く。考えていた。いきなりやってほしいと言われたのは元と同じ。だが、彼女は二度しか戦場に立っていない。その二度も昨日の1日の内にだけ。今日の襲撃は非常事態だったためなし崩し的に参加したに過ぎない。今彼女は人生最大の決意をしなければならなかった。考えて、考えて。周りから心配の声が上がる中、ジャンヌは答えた。

 

「あの……私、やります」

 

『ジャンヌ伍長』

 

 口にした、やるという言葉。リリーからの呼びかけへ返答する形で、ジャンヌは自身の想いを口にした。

 

「むしろ私でいいのかとも思っています。私は今まで国に言われて詩竜双極祭の参加を言われていたのに避け続けて、象徴から逃げていましたから。でもハジメ軍曹と同じように、私がやることで戦争を早期に終結出来るのなら私はやります。……それに、象徴と最後に契約したのは、私の先祖だと聞きます。ファーフニル家の名前を継ぐ私が、これまで沈黙を続けて来た象徴と向き合いたいです」

 

 元が予想した考えと同じことをジャンヌもまた口にした。背を向けていたことに向き直す姿勢が、かつてのジャンヌとは見違えるように見える。

 だが元は知らない。これが本来のジャンヌの性格であったことを。幼い時から彼女は前向きで、目に映るあらゆるものに憧れを抱いていた。それが今まで呪いと言う布で覆われていただけだったのだ。5年もの呪縛はこの数日の間に剥がれた。いや、もっと言うなら、ガンダムとの出会いが、結果的にそれを解くきっかけになっていた。

 そうとも知らずに元の視線はジャンヌに注がれる。しかし見せられている方には溜まったものではなかった。アレクも苦笑いをして2人の言葉を聞いていたが、大きく反対したのは2人。それも意外なコンビであった。

 

「へっ、熱い新婚さんでいらっしゃる。子どもだねぇ」

 

「それには同感だな。そんな言葉だけの甘い覚悟で、成功率の低い任務に立てると思っているのか?」

 

 1人は、先程も挑発を行ってきた鶏冠頭のクックドゥー中佐。少し前と同じようにまた2人の仲を甘いだの子供だましだのと冷やかしてくる。これは予想しやすいものだった。しかし、問題はもう1人。もう1人は同じく今さっきも挑発を行ったクックドゥーを黙らせた、元の家での上司であり、今は上官でもあるフォーンだったのだ。

 言葉のニュアンスは違えども、元とジャンヌに対し下に見る口ぶりの2人。共感したことに関して、2人も反応する。

 

「へぇ。あれだけ俺の事叩いといて、大佐殿も俺と同じようにあいつら恋人気分の2人が気に入らないとはねぇ」

 

「そうだな。お前と意見が合った。それは事実だ。だが、お前のような持たざる者が持つものを妬むような、そんな下賤な理由でではないがな」

 

「なんだと!?」

 

 気が合ったと思い込んだクックドゥーとは対照的に、フォーンの方は軽く埃を払うようになれ合いを拒否した。持つ者持たざる者と言う辺りはフォーンらしいが、結局のところそれは所謂「リア充」と「非リア充」の事を指しているだけ。言葉の使い方にも差を付けられているようだ。軽く持たざる者をあしらうフォーンの言葉の矛先は、そのまま元へと向かう。

 

「ハジメ軍曹。貴君は本当にファーフニル家次女であるジャンヌ・ファーフニル臨時伍長を護れるのかを試そう」

 

「………………フォーン大佐」

 

「ドラグディアのフルダイブシミュレーター。そこで貴君のシュバルトゼロガンダム[リペアツヴァイ ファーフニル]と、私のMS「ドラグーナ・バルムンク」でによる決闘を申し込む。私が勝てばこの作戦で、ジャンヌ・ファーフニル臨時伍長は私のMSのサブパイロットとして後方で行動してもらう」

 

 フォーンは確かに、元に向かって決闘の言葉を投げかけたのである。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。決闘再び!( ゚Д゚)

ネイ「は、元さんが相応しいか試すって……今じゃないとダメなんですか!?」

グリーフィア「これ前章で入れるべきだったような気がするわねぇ……作者君?」

(;´・ω・)あっ、それ当時考えていたんですけどね。ただそうなると3章がやたら長くなる、ということで却下になりました(^ω^)今章は今章で黒の館の出番がやたら出てくることになるんですけどね……。

グリーフィア「私達の出番増量ね」

ネイ「手当とかはちゃんとお願いしますね」

( ;∀;)えぇ……まぁ。じゃあ今回はここまで。

ネイ「次回もよろしくお願いいたします」


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EPISODE60 かつての英雄が所望する物3

どうも、皆様。蒼穹のファフナー全話配信に舞い上がっている藤和木 士です。あなたはそこにいますか?( ゚Д゚)

ジャンヌ「サラッと読者さんを同化するのやめてください。アシスタントのジャンヌです」

レイ「アシスタントのレイだよ♪。みんなで見てたけど、しょっぱなから中々えぐいことになってるね……」

こんなのまだ序の口(´ρ`)もっともっと重くなるから是非皆さんも見てくださいね(´ρ`)

ジャンヌ「それの呼びかけよりももっとこの作品読んでくださいと言うのが先なのでは?」

( ;∀;)さ、さてでは今回はEPISODE60の公開です。

レイ「流したね。けどフォーンさんいきなり決闘するって言っちゃってたけど、元君受けるのかなぁ……」

フォーン大佐からの要求を、元はどう受けるのか?それでは本編へ。


 

 

 決闘を申し込む。大佐となったフォーンからハジメに言われたのは、その言葉であった。突然の事でいったいなぜ、と言いたくなるジャンヌ。今ハジメと戦う理由がどこにあったというのか。しかも勝てば自分をフォーン自身と共に行動させるとまで言ってきた。自分を護ることが出来るのかなど、これまでの戦闘でそれは証明できたはずなのに。

 しかしフォーンは自分の考えを表に出した。

 

「これまでの戦闘で、何度も危機に陥っているお前ならなおさらだ。今日の戦闘だってそうだ。そこのローレイン女史が助太刀に入らなければ、お嬢様はやられていた」

 

「あっ……」

 

 今日の戦闘で逃げる最中、ジャンヌは危うく殺されそうになった。あの時は確かにローレインが割って入ってくれたから良かったものの、もし入らなければ間違いなくジャンヌは殺されていた。MSの銃弾で、身体を貫かれていただろう。

 その恐怖を今再認識し、身震いを感じる。今生きていることは当然の事ではなかった。割って入ってくれたからこその結果だ。元もそれを重く受け止め、だがしかし反論する。

 

「…………そんなに危機を続けているのを見せられては、任せられないと?」

 

「そうだ。そうとしか言っていない。これは彼女の家、ファーフニル家を護る執事としての言葉だ」

 

「よく言う。さっきクックドゥー中佐に下賤と言っておきながら、貴方も自己中心的な理由で今俺達に決闘を押し込んでいる」

 

 ハジメの言う通り、今はフォーンが家を護る執事として、部下であるハジメに言っているようなものだ。護れなかったとして責任を問われても、作戦への重要な要素を欠くような行いは例え大佐の彼でもあまりに横暴だ。

 それを分かっているのか、フォーンは認め、そのうえでハジメへと問いかけた。

 

「そうだ。これは自己中心的な申し出だ。……だが、お前はこの勝負、乗るのか、それとも反るのか?」

 

 明らかに挑発している。いくら身内でもこの行動にあまり良い気はしない。ここは自分が何とかしないと、とジャンヌは2人の会話に割って入ろうとする。が、それをハジメに制止される。

 なぜ、と思い顔を覗き込んだ時にその理由を知った。というより見てしまった。ハジメの表情がやや好戦的になっていたのを。あまりハジメが見せないこの表情を、ジャンヌは前にも見たことがあった。アレクとの決闘を宣言しに行ったとき、アレクに対して見せたことがあった。両者ともに装備が万全ではなかったことから、本当の決着を付けるべく決闘を望むべくして望み、行われた。その時のハジメも同じ表情をしていたのだ。

 ジャンヌの中で悪寒が生まれる。そしてその予想通りハジメは反応を返した。

 

「そうですね。こんなところで立ち止まるわけにはいきませんが、敢えてその勝負と言う名の挑発、乗らせていただきましょうか?」

 

「は、ハジメっ!?」

 

 やはりその挑発に乗ったハジメ。動揺もとい呆れが会議室からも出るが、そのどよめきはハッタン、そしてそのハッタンからバトンを受け取る形でグランツが1つの方向へと収束させる。

 

『……えー、このようになっていますが……総司令?』

 

『まぁフォーン・フリード大佐の復帰条件には、ハジメ軍曹との決闘も入っている。それに私もかつての英雄の力を信じていないわけではないが、それでも確かめたいと思うね。かつての英雄とガンダム、どちらが強いのかを……。ではこれより作戦のプランを細かく決めるべく、2人の決闘を開始する。フルダイブシミュレーションルームには、既に2人の機体のデータは送ってある。ヴェール技術大尉、状況は』

 

 ヴェールの名を呼ぶと、正面スクリーンが変わってフルダイブシミュレーションルームにいるヴェールの顔が表示される。画面に映ったヴェールは、グランツからの問いに答えた。

 

『はい、いつでもOKです。ただハジメ軍曹の機体の方は、ハンデが結構多めですね。Gワイバーンが構造とかの読み込みの関係上使えないのと、あとフルダイブがまだジャンヌちゃん……じゃなかった。ジャンヌ臨時伍長とのエンゲージシステムも再現できていないですね。けどエラクスシステムは充分使えます』

 

 聞く限りかなりガンダムに制限のある話と思える。だがそれは最大値で見た場合の話。他のドラグディア製MSは合体や機体システムと密接にリンクしたサブパイロットシステムを持ち合わせているわけではない。エラクスシステムだけはオーバースペックだが、それでもガンダムの特性は生かし切れる。

 と、自分の中で言い聞かせるジャンヌだが、不安は大きい。負けてしまうのではないかと思い、自らのパートナーであるハジメへ不安そうに語りかける。

 

「ハジメ、負けたりしないですよね?」

 

「それはどうか分かりません。自分はフォーン様のMSでの戦闘を見たことがないので……ただ、これまでの状況的に言えば、相応にあると言って間違いないでしょうから」

 

 やや頼りない発言をするハジメに不安が募る。しかしそこはジャンヌの従者でもあるハジメの事。そう言っても彼は心配させまいとジャンヌに約束する。

 

「でも、負ける気はありませんよ。例え家の上司でも、上官でも、これだけは譲れない」

 

「ハジメ……うん。お願い、フォーンに勝って」

 

 言葉を交わしてハジメはフォーンと共に、ローレインに連れられて総合ブリーフィングルームを出る。ジャンヌがその後を見つめる中、グランツがジャンヌ、それからアレクに言った。

 

『アレク少佐、ジャンヌ臨時伍長を連れて、君も戦いの結末をフルダイブシミュレーターの外から見て来てくれないか?』

 

「はぁ……自分が、でありますか?」

 

『そうだ。実は今回この対決を民間人にも見せるように手配してあってね。そこには君もよく知る人物が()()()()()()()()()()()()()らしい。彼らの案内を頼めるかい?』

 

 グランツが言った「民間人」というのが「彼女」の事を指しているのはまず間違いない。それを敢えて縁のあるアレクに話題を振ること、そして会議が始まる少し前の会話。それらを加味すればおのずとその予想にたどり着く。

 アレクもグランツが何を言いたいのかはすぐに分かったようで、若干むず痒そうな表情をしながらも、平静を装ってそれを承る。

 

「……了解です、総司令。ジャンヌ臨時伍長、行こう」

 

「はい」

 

 声に従い、ジャンヌもアレクの後に続いて部屋を出た。部屋を出て歩き始めたところで、ジャンヌが先程のグランツの発言に対する言葉をアレクに求める。

 

「心配を見透かされちゃいましたね」

 

「まったくだ……言葉は濁してくれていたからあれだけど、情けない」

 

 苦笑いで肩を落としたアレク。表情も失態を感じさせるものだ。しかしそこにはどこか緩んだものも感じられる。その理由は無論、「彼女」と顔を合わせられることにあるのだろう。無事を確認出来たとはいえ、まだ顔も合わせられていない。恋人ならなおさら会って無事を確認したいはずだ。

 気を使われてしまったことを恥じるアレクだったが、いつまでも恥じていても仕方がないと考えを切り替え、さっさとフルダイブシミュレータールームへと行くことを告げた。

 

「とにかく、部屋へ行こう。こっちだ」

 

「はい」

 

 2人で元達の後を追うようにルームへと足早に向かった。

 

 

 

 

「……ふぅん。つまり、ハジメさんとジャンヌの家のフォーンさんとでジャンヌをどっちが護るかってことを決めようってことなのね」

 

「そうだね。俺も聞いていなかったから、かなり驚いたけれど……レヴ君達も巻き込んでしまって申し訳ない」

 

「いや、いいですよ。俺としてはMSの戦闘見られるっていうのも勉強にはなりますし。だからと言って前線には出たくないですけど……」

 

「兄ぃ、MSに乗るか乗らないか。どっちかにしてくれる?」

 

 アレクの謝罪にレヴとリッドはそのように返答する。いきなり基地の人間に移動すると言われ、誘拐を警戒したもののそのようなことではないようで一安心したグリューネ。とはいっても、驚いていないわけでもない。

 フォーンが軍へと「復帰」したこと、そしてそのフォーンがハジメと1対1の決闘を申し込んだこと。何の因果か、2人はかつてグリューネが妹のネアを取り戻すべく、力を借りることを考えた2人でもあった。当初はかつての英雄「導きの英雄」と呼ばれていたフォーンの力を借りようとしていたグリューネ。ところがそれを一度だけ打診した際、フォーンに「今の自分にそのような力はない」と断られてしまったのだ。そんなわけはないと彼を奮起させようとしたものの、頑なに協力を断られて助力してもらうことは出来なかった。そんな中で現れたのがハジメのガンダムだったのだ。

 いわばフォーンの代わりであったハジメ。しかし今のハジメはその時のハジメよりも格段に強くなっている。それでも彼らの力がそれぞれどれほどのものか分かりかねた。それはハジメがジャンヌの力を借りずにどれほどの力を出せるのか、またフォーンの現在の力量と新型の性能がどれほどの力なのか。2つの不確定要素で生まれる差は無視できない。ネアが勝つのがどちらなのか予想を伺ってくる。

 

「ねぇ、姉さんはどっちが勝つと思う?」

 

「……正直、微妙ね。アレ君との決闘を想定して考えていた時とは状況が違うから。当時なら間違いなく私はフォーンさんの方がハジメ君を上回ると思っていたけど……ハジメさんの力は予想以上だったと今は思うわ」

 

「その言葉……地味にダメージ大きいなぁ……うぅっ」

 

 ハジメの力が予想以上だったという発言に、当時のハジメに負けたアレクが肩を落とす。恋人からの弱いという発言は遠回しでも堪えていた。なるべく率直な感想を述べようとしたあまりに、彼氏の心を傷つけてしまったことへの罪悪感からすぐにフォローの言葉を掛けた。

 

「大丈夫大丈夫。アレ君があの時手加減をしてくれていたからこそ今ネアがこうしている。強さとかじゃないわ。それにアレ君のMSと違って、ハジメさんのガンダムはヴァイスインフィニットガンダム戦のために改修されたからそもそも勝負にならないから、MSの改修があればアレ君ならすぐにまたハジメさんを追い越せるわ♪」

 

「グリューネぇ……ありがとう。そう言ってくれるだけで戦争を生き残れそうだ……」

 

 グリューネが掛けたフォローを甘えた子供の様に嬉しそうにするアレクの姿。これを一気に絶望に陥れたいと思うのは、ややサディスティックだろうか。それでも活気を取り戻したアレクに微笑み、その頭をなでる。

 しかしその様子を面白くないように見つめる者がいた。ジャンヌだ。恨めしい表情で2人のやり取りを見ており、その視線が2人とハジメがセッティングしてもらっているフルダイブシュミレーターの方を行き来している。リッドが気づいて遠慮がちに理由を聞いた。

 

「じゃ、ジャンヌさん!?……どうしたの、その顔……」

 

「……いーえ。何でもありませんよ?ただ……仲が良いことと思いましてね……」

 

 嫌味ととれる発言を口にするジャンヌの理由。それが何を示しているのか、推測するのは容易だ。ただしここまで露骨だと意地悪したくなるのも人の性。真っ向から杭を打ち込むが如く、ジャンヌに皮肉を返した。

 

「ごめんねー、イチャイチャしちゃって。ハジメ君が貴女のパートナーでいられるかどうかの瀬戸際だものねぇ。声かけられなくて寂しいんでしょう?」

 

「っ!そ、そこまでい……いえ、そんなこと……ないです…………っ」

 

 危うく本心が出かけたのを引っ込めて、好意を隠そうするファーフニル家の次女。先程は恨めしそうにしていながら、指摘されるとこの反応と言うのはあべこべではあるものの弄っていて面白い。初々しいというものだった。

 ジャンヌの反応が困る様を見て、ネアが助け舟を出そうと試みた。

 

「お嬢様……姉さん、あんまり弄ってあげないようにしようよ」

 

「えー?ネアったら、お姉ちゃんの楽しみを奪うっていうのー?悲しいわぁ」

 

「……お姉ちゃん」

 

 ネアもからかってみようとふざけて見せたグリューネだったが、ネアの注意を呼びかけるトーンの落ちた声に寒気を感じてしまう。からかうのもいい加減に、とでも飛んできそうなので、グリューネはすぐに謝罪する。

 

「ごめんごめん!……それで、決闘はまだ始まらないのかしら?」

 

 空気を変えようと話題を本来の目的に戻す。見るとまだガンダムの専任整備士のヴェールが、シミュレーターの技師とハジメ達のシミュレーター機材の前で話しこんでいる。準備は出来ていたという話だが、何か問題でもあったのか話していたが、ようやくそこで話が終わり、ハジメとフォーン、それぞれのシミュレーターポッドの扉が閉じられる。

 ヴェールがこちらに来て、息を大きく吐いて調整の終了を告げた。

 

「ようやく調整終わったー!これで戦闘始められる……」

 

「お疲れ様です、ヴェールさん。調整って何だったんですか?」

 

 先程の腹に座ったような声音から、もとのかしこまったものに戻ったネアの声。機嫌を戻してくれてよかったという気持ちを感じつつも、同じくヴェールの発言した調整という言葉が気になった。

 他の者達も同じことを思ったようで、リヴァイ兄妹がそれについて尋ねる。

 

「そういえばもうすぐハジメの決闘が始まるって聞いて来たけど、ちょっと時間が経ってますよね」

 

「調整が終わったから呼びに来たわけじゃなかったんです?」

 

 するとヴェールが謝罪と共にその原因についてを説明する。

 

「うん。これはハジメ軍曹のガンダムのOS、スタートからの指示でね。電脳空間の機体とシミュレーターの人体を繋ぐ、とある電気信号の感度を調整していたんだ。それも互いに」

 

「とある信号?どこのだ?」

 

 落ち込みから復帰したアレクが聞き返す。内容としてはシミュレーターの設定をいじっていたという内容だったが、その意図が分からないが故の反応だった。

 まだ自分の反応速度を上げるというのなら分からないでもない。しかしそれでは能力をいじっているため反則だろう。しかし、ヴェールが言ったのは電脳空間上の機体とシミュレーターに接続された人間の脳を繋ぐ電気信号の話。しかも両者共にそれを強化したのだという。

 一体どのような信号なのか。ヴェールも未だにその理由を飲みこめていない様子ながらもその箇所について明かす。

 

「はい。特に脳、それから耳の神経とのリンクを変則的に強くしてほしいってことで。けど調整してもあんまり意味ないと思うセッティングなんですよね……。みんなにも分かりやすく言うなら、野球で速いボールを投げたいのに反射速度を反映させてるようなイメージ?」

 

「え、それまるきり無駄じゃないですか?」

 

「そんなことして意味あるんですか?」

 

 リヴァイ兄妹がすぐにその変更に物申した。変えても意味がないなら、なぜそのような変更が必要なのだろうか。ジャンヌやアレクからの話によれば、ブリーフィングルームの隊長格達は、ハジメ達にあまり良い感情を持たない者が多いようだ。もしそれを聞けばふざけるなと声を大にしているかもしれなかった。

 グリューネも概ね2人と同じ感想を持つ。しかし、と考える。スタートとはかつての戦争をあのガンダムで戦い抜いたという英雄のなれの果てだ。その彼はガンダムのパイロットとして、ガンダム関連の知識が豊富だった。その彼がわざわざ変更する指示を出したのだ。何か意味がある、と思った方がいい。

 そんな中ふとジャンヌがとあることを思い出す。

 

「耳…………そう言えば、昨日スタートとハジメが妙な事を言っていました」

 

「妙な事、ですか?」

 

「ジャンヌちゃん、それ詳しく聞ける?出来れば簡潔に!」

 

 ジャンヌの発言にヴェールが食いつく。時間があまりないことを承知で彼女も聞きたいと思っているようだ。グリューネ達や周囲の手の空いていたスタッフも注目する中、ジャンヌは口を開く。

 

「分かりました。昨日ステルスMSと戦った時、場所も分からないのにハジメがその居場所を見抜いたんです」

 

「あの時か……確かにハジメはあの時正確にあのドラグーナ・ラプターのDNジェネレーターを貫いていたな」

 

「そういやそんな話聞いたな。俺の機体としてそいつを受け取った時に聞いた覚えがあるぜ」

 

 話に入ってくるローレイン。彼女も作業を手伝い、またその状況を逐一グランツへと伝えていたのだ。件のドラグーナ・ラプターを受け取った者として、話が気になったのかもしれない。

 ローレインも加わったところで、ジャンヌがその疑問の中心について話す。

 

「その直前で、スタートが訊いたんです。聞こえるのか、って」

 

「聞こえる?」

 

 レヴが訊き返しながら首を傾げる。他の者達も概ね同じ反応で一様に理解に悩む。回超えたとはどういうことなのか。一番可能性のある事をアレクが予想する。

 

「聞こえる……つまり、あいつはわずかな機体駆動音を聞き取ったということか?」

 

「いや、それはおかしいと思いますよ。俺もあの機体を駆って初めて知ったんですが、ステルスモードの時のジェネレーター駆動音は静かだし、機体の動いた時の音もなかなか聞き取り切れるものじゃない。第一、あの時は議員達の悲鳴やらなんやらで議場もそんなわずかな音を聞きわけられるわけないじゃないですか」

 

 しかしアレクの予想はすぐにローレインによって否定された。グリューネもテレビで見ていた限り、テレビクルーも実況している中でそれは流石に難しいと思える。可能性としてはあり得るが、それでは現実的ではない。

 それでも、ジャンヌは続けて更に疑問を生む発言を繰り出したのだ。

 

「そうじゃないみたいです。ハジメが返した限りじゃ、ノイズが響いてるらしくて、それで動きが見えるって言っていました」

 

「……???なんだそれ?ノイズが響いているって病気とかじゃないのか?」

 

「そうかもしれませんけど……でもそれだと、正確に機体を止めた時の説明がつきませんよ?」

 

 レヴの出した何かの病気という考えを、ネアが現実での出来事を出して否定する。病気にしたってそんな病気の実例は未だない。敵の動きが分かる病気など聞いたことがない。もっとも実例が少ない病気で、公表を控えているというのなら知らなくても仕方がないが。

 頭を悩ませるハジメとスタートの発言。しかし、今注目すべきはそこではない。スタッフから声が掛かる。

 

「ヴェールさん。そろそろ……」

 

「あ、はい。それじゃあ先に決闘を始めちゃおう。みんなもメインモニターとパイロットモニターを見てね」

 

『はい』

 

 ヴェールに従い、電脳空間を移すモニターを見る一同。何もない訓練場のような空間に、やがて2機のMSが姿を現す。1機はハジメの操るシュバルトゼロガンダム[Repair-Ⅱ Fafnir]。昨日の激戦を制したガンダムだ。対するはフォーンの駆る黒と青に白のラインが入ったMS。今までに見たことのない機体、新型のMSということが一目瞭然である。

 電脳空間で向き合う両者。戦いの合図を両者共に待っていた。観戦するグリューネ達の間にも、緊張が生まれた。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。最近は設定の方もまとまって、話の執筆がぼちぼち進んでいます。

ジャンヌ「良かったですね、前みたいに失踪コースではなくて」

( ;∀;)もうやめよ?その話。割とまだそれ関連のトラウマで落ち込んでいるから。

レイ「まぁね。みんなには詳しく話してないけど、そのトラウマが旧作の打ち切り原因でもあるわけだし」

(´・ω・`)うむ。さて、次はいよいよ元対フォーンの電脳空間での決闘です。電脳空間での対決って旧作のシュバルトゼロガンダムでも出来たんだけどねぇ……やりたかった。

ジャンヌ「シュバルトゼロガンダムのモデルが流星の○ックマン3のブラック○ースにありますからね。やりたかったというのはあるでしょう」

レイ「けど実際の所どっちが上なんだろうね?これまでなら元君圧倒的だけど、昔の英雄見たいなこと言われてるし」

かつての英雄、その実力はいかに!?それでは今回はここまで。

ジャンヌ「次回もよろしくお願いします」


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EPISODE61 かつての英雄が所望する物4

どうも、皆様。VRAINS終了で次の環境とかどうなるんだろうなぁと思っています、藤和木 士です。遊戯王はバトスピと並行してほんの少しだけやってます。主に身内の1人とですが。

ネイ「アシスタントのネイです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよぉ♪作者君は何使ってたの?」

まぁ、サイバースを一応。昔はシンクロのやり方が???状態でしたが、今はバトスピで読解力鍛えられたのかルールは理解できるようになりましたね。ただスペルスピードが若干のあやふや残しているのと、コンマイ語は分からん( ゚Д゚)全体効果は選択していないはまだ遊戯王だからで分かるけどね。

グリーフィア「でもバトスピも最近バンダイ語みたいなの出来てきたじゃない。効果受けない効果を貫通する効果とか~」

リュキオースで大体は慣れたけどねぇ……(;´・ω・)次で効果受けないバーストを戻せるカードが出てくるみたいだから、頭ごっちゃごちゃになるよ……。

ネイ「次は何を組むんです?」

ほぼノヴァの為のカード集めになるかな_(:3 」∠)_さて今回はEPISODE61の公開です。

グリーフィア「元君対フォーンって構図だったわねぇ。前回の調整はなんのためのだったのかしらぁ~?」

ネイ「姉さん楽しそうだね……。これで元さんが負けたらジャンヌさんとのパートナー解消なのに」

さて、元かフォーン、勝つのはどちらなのか?かつての英雄が所望する物とは一体?それでは本編へ。


 

 電脳空間で、機体各種の状況を確認する元。フルダイブタイプということもあり、特に操作性はガンダム装依時と何ら変わりはない。ただシュバルトゼロガンダム[リペアツヴァイ]はジャンヌとのエンゲージを前提として構成もされていた機体。ジャンヌのカバーがない分、少し扱いが難しいと考えるべきだろう。

 昨日とは違ったスタイルで挑む戦いは、少々不安は残るもののある意味勉強になりそうだと思う傍ら、フォーンの機体を確認する。敵機体は黒と青、そこに白のラインが入った機体であり、ウイングパーツを備える姿はガンダムにも似ている。話によれば、あの機体はドラグーナ・バルムンク。ガンドが駆ったドラグーナ・ガンドヴァルの後継機にして、ヴァイスインフィニットとの対決時のサブプランとしてロールアウトした機体だという。もし元があのまま復讐に囚われていた場合、ヴァイスインフィニットを止めるのはこの機体だったのだという。

 あり得たかもしれない未来。同じガンダムを討つ為に開発された機体が、電脳空間で向かい合わせに立つ。問題なくフルダイブ出来た元に、フォーンが試合開始を呼びかける。

 

「早速始めるぞ、ハジメ」

 

「フォーンさん……貴方は本当にお嬢様の護衛は自分では不足だと?」

 

 改めてフォーンの考えを確かめる。挑発に乗ってここにいるとはいえ、何を思ってこんなことをするのかを確かめたかった。しかし、彼は気になる発言と共に、先程と同じ答えを返す。

 

「くどいな、ハジメ。俺はお前がジャンヌお嬢様を護れるのかを確かめるために今ここにいる。……あいつとの最後の約束を果たすために」

 

「あいつ……?」

 

『――――――それでは、決闘を開始します。戦闘、開始!』

 

 フォーンの言葉が誰を指しているのか判断する前に、戦闘開始の合図が響く。同時にフォーンが左腕のシールドからブレードを展開し構える。反射的にこちらもライフルを構え、迎撃態勢に入る。

 フォーンがこちらに向け加速を開始したタイミングで、ビームライフル・ゼロのトリガーを引いた。2連射で飛んでいくビームがフォーンに向かって伸びていく。直撃コースだがフォーンは避ける素振りを見せなかった。

 ギリギリで避けるのか。元はそのように予想し、ならば避けたタイミングで仕掛けようとウイングからDNを放出し飛び立つ準備をした。ところがその予想を思わぬ形で裏切られる。

 

「フン!」

 

 フォーンが一声と共にシールドの剣を振るう。振るった剣が元の機体から放ったビームを一刀両断にする。続けざまにもう一閃して二射目のビームも同じく斬り裂き、攻撃を防いだ。

 切り払われたビームは2つに分かれてフォーンの後方に着弾して爆発を起こす。4つの爆発を背にそのまま元に向かって距離を詰める。思わぬ防御行動に元も対応が遅れる。

 

「ビームを切り払った!?何て動体視力だよ……っ!」

 

「遅いっ!」

 

 貫こうとブレードが突き出される。間一髪肩のシールドで受け流す元。致命傷こそ避けたものの、逃がしまいとフォーンが右腕のシールドのようなパーツを懐に滑り込ませてくる。右腕のシールドの裏には2連ビームライフルの銃口が見えた。突きつけられて瞬時に危機を感じる。ライフルの先から光が瞬く。

 が、またもやワンテンポの差で元は避ける。機体の軸をずらして脇下でからライフルのビームを逃がす。次弾発射までのタイムラグの間に銃身を踏みつけてそのまま距離を取った。遅れて再びライフルからビームが放たれるが、それを後ろ向きに回避していく。距離を取るために加速していく。

 逃げる元に対し、フォーンが追いかける。シールドから放たれるビームライフルの弾丸を元は回避していく。反撃をしようとライフルを構えようとするが、一瞬の隙をフォーンは逃さず攻めてくる。ビームライフルの弾幕に圧倒され思うように攻撃できない。

 

(っ……導きの英雄って呼ばれていたのは、今から20年も前の話……だっていうのにこの技術は……!)

 

 長い間MSを触っていないのなら、いくらフォーンと言っても実力はほぼ互角以下だと思い込んでいた元。しかし実際戦っている現状では現役の軍人であるはずの元が押されていた。実力だけならまだしも機体の方も同じだ。ドラグーナ・アレキサンドルと決闘した時よりも機体性能は格段に強化されているにも関わらず、バルムンクは確かにシュバルトゼロガンダム[リペアツヴァイ]に追いすがっていた。

 実力差は思っていた程なく、むしろフォーンの方が上とも言える。機体性能もほぼ互角。となれば、後は瞬時の判断だ。逃げ続けても埒が明かないと元は思い切って反撃の一射を放とうとした。ところが、振り返った先にフォーンの機体は見えない。

 

「いない……!」

 

「せあっ!」

 

 上方から響くフォーンの叫び声に視線を向ける。斜め上に飛び上がったバルムンクが脚部の装甲を前面に展開した。展開した装甲の先には砲身が見える。砲身から高圧縮されたビームの砲弾が放たれる。弾速の速いビーム弾はガンダムへと降り注ぐ。シュバルトゼロガンダムの機動性ならば避けることは容易いが、狙いが正確であり気を抜いていると当たりかねない。とはいえライフルからのビームが収まっているので、こちらにも反撃のタイミングは多い。ビームライフル・ゼロでバルムンクを狙い撃つ。

 回避しながら放つ弾丸がフォーンのバルムンクに砲火された。フォーンは避けながらも弾撃をシールドで防御していく。先程と違い、ビームをシールドで防御する様子は元も違和感を抱く。押している、とは言い難い攻撃。何かを狙っていると思った時には既にフォーンが動く。

 

「シュート!」

 

「っ!!」

 

 ウイングの上端がこちらに向けられたと思うと、その先端が伸びる。キャノン砲の砲塔へと姿を変えると、膝のキャノン砲とは明らかに出力の違うビームがシュバルトゼロガンダムに向けて放たれた。回避を試みる元だったが、直前に放たれたキャノン砲の弾丸にけん制され、ビームのすぐ脇をすり抜ける形となる。シールドの表面が焼け、更にライフルが飲み込まれて爆散する。

 機体バランスをコントロールしようとする元に、フォーンが責めたててくる。左腕のシールドから再度ソードを展開して、振り回す。振り回し攻撃をシールドで防御するが、衝撃で更にバランスが崩れる。巡る視界。何とかバランスを取り直して反撃のビームマシンキャノンを掃射する。

 ビームマシンキャノンが作り出す圧倒的弾幕量。避けるのも至難の業とも呼べるそれを、フォーンは滑る様に回避していく。再び構えられる大型ソード。対抗する形で元もブレードガン・ニューCを抜き放ち、ビームサーベルを展開した状態で衝突させた。衝突の余波で周囲の空気が震える。

 ガンダムの出力を全開にしてバルムンクを弾き飛ばす。弾いたバルムンクに向け、再度ビームマシンキャノンを連射。加えてブレードガン・ニューCもガンモードに切り替えて殲滅射撃を行う。圧倒的な弾幕を生成するシュバルトゼロガンダム。これにもドラグーナ・バルムンクは対応して見せる。それどころか弾幕を避けながら、こちらに近づいてきている。元は弾幕を放ちけん制しながらブレードガン・ニューCをソードモードに切り替えた。その刀身に再びビームサーベルの光を収束させる。収束したブレードガン・ニューCを叩き切るほどの勢いで、フォーンのバルムンクが振り抜くシールドのブレードと接触させた。

 接触したタイミングで、破砕音が響く。砕けたのはシュバルトゼロガンダムのブレードガン・ニューCの方だった。ブレードの刃が中程から折れてしまい、ビームサーベルの発振が停止する。剣として使い物にならなくなったブレードガン・ニューCを、元は辛うじて残っているガンに戻して連射する。加速力を生かして急速離脱していくフォーンの背に向かって放たれるが、バルムンクのバックパックが生み出す加速力に追いついていけない。更に推力を変換させてこちらに向き直ると、再びその剣を振りかざしてくる。

 

「またか!」

 

「はぁっ!」

 

 二度目の斬撃を今度はビームサーベルの柄に接続したマキナ・ブレイカーⅡAで応戦する。ところがブレードの刃を受け止めたマキナ・ブレイカーⅡAは衝突の勢いに耐えられず、接続部付近で折れてしまう。ビームサーベルの柄は無事だったものの、折れた刃が頭部横をすれすれで吹っ飛ばされていく。

 このままではまずい。突進力でこちらのペースをかき回されていた。流れを持っていかれたままでは戦闘を有利に進められる手を持っていても手出しのしようがない。エラクスを使う手もあったが、出来れば切り札としたかった元はウイングのファンネルを展開する。

ファンネルだけで追い詰めるには速度が足りない。だからこそ元はシュバルトゼロガンダムのビームマシンキャノンをフォーンに向けて放った。正面からのビームマシンキャノンの弾幕と、側面から来るフェザー・フィンファンネルのオールレンジ攻撃に流石のフォーンもスピードを落として回避に専念する。ファンネルに向かってライフルのけん制射撃を行うフォーンへ、ビームサーベルを発振させて斬りかかる。

 

「はぁっ!」

 

「っ!でぇあ!」

 

 接近に気づいたフォーンはソードで受け止めようとする。しかしシールドのソードは大柄な武装。あちら側から振り抜く時は驚異的な威力を誇る関係上、迎撃の為に振るのが遅れる。そのためビームサーベルはソードではなくシールドそのもので受け止められた。

 熾烈を極める2人の激突。光刃と盾がぶつかり合う中、元は先程の内容について問いかけた。

 

「あいつって……ガンド様と貴方の間で、何の約束が!」

 

「話をする暇があるのなら、戦いに集中しろ!」

 

 だがフォーンは答えることなく、逆に戦いを要求する。叱りの言葉に便乗して元のガンダムのサーベルを押し弾く。がら空きとなった胴に蹴りを浴びせた。蹴り飛ばされるシュバルトゼロガンダムは逆噴射で制動を掛けながらファンネルへの攻撃指令を送る。ところがそれはフォーンにもお見通しだった。

 ファンネルが再度分離したタイミングでバルムンクのバックパックが前方に向けられる。砲身を展開したウイングから高圧縮ビームがシュバルトゼロガンダムに向かって伸びる。制動を掛けたガンダムはすぐにその場を回避するが、そちらに意識を向けたせいでファンネルの1機がビームに呑みこまれて爆発を起こす。5基となったファンネルがフォーンに向け向かっていく。フォーンはバルムンクの膝装甲を再展開してビームキャノンで弾幕を張る。弾幕をファンネルは回避していくが、ファンネルの1機を2連ビームライフルで撃ち抜く。数の減ったファンネルのオールレンジ攻撃をバルムンクは的確に避けていく。

 ガンダム本体の側からもビームマシンキャノンで弾幕を形成する。だが所詮は弾幕。当てる気のない射撃などと言わんばかりにフォーンは攻撃を容易く回避していく。このまま撃っていてもDNを無駄に放出するだけ。高純度DNの恩恵であちらより消費粒子量は少なく、粒子生産量が違うとはいえ無尽蔵ではない。こちらの体力も無駄に消費してしまう。ビームを掃射しつつファンネルを回収すると、その手にビームサーベルを持ち接近を試みる。

 元の接近に反応し、フォーンも手首から端末を取り出して光剣を形成して切り結びに応じる。2人の剣が火花を散らす。そこに突然爆発が起こる。爆風が元の機体を吹き飛ばす。フォーンの機体のサイドアーマーから発射されたグレネードだ。爆発の衝撃でビームサーベルを1本落としてしまう。

 

「っつ!まだ来る……!」

 

「でぇい!!」

 

 発振させた1本のビームサーベルで、バルムンクが振るう2本の光刃を受け止める。サーベルの出力も全開にして何とか2本の光刃を受け止めきれていた。鍔迫り合いを演じる中で元は考える。ここから逆転する方法を。

 

(エラクスを使うか、それとも「あの力」に頼るのか……。決闘のルールでは機体の性能だけが制限のかかったほぼ無制限の戦いだ。個人の技能に関して一切制限はない……けど、使うべきなのか?)

 

 元は迷った。この電脳空間でも反映できるように調整されたスタートの細工で、あのノイズを聞き分けて動きが読める力を使えていた。しかし、スタートがわざわざ使えるように調整させたのに対し、元はそれを使うことを躊躇っていた。これまでの攻撃を元はなんとなくだが感じ取っていた。ビームライフルによる接射を回避できたのも、その力による恩恵だった。だが以降の撃ち合いでは、その能力になるべく逆らう形で戦闘し続けていた。

 もしその力を積極的に使っていたのなら、絶対とは言い切れないが決闘を有利に運べているはず。それでも使うことを避けて来た理由は、この力が他の人からしてみれば「チート」なのではないかという疑念からくるものだった。今前にいて戦闘しているフォーンは自身がちゃんと訓練して、更に実戦を潜り抜けてきて得てきた力で戦っている。「経験して得た確かな力」だ。それに対し、元の今の力は出所不明、しかも突然使えるようになった力。「偶然使えるようになった力」だった。その力は攻撃の動きまでもが見える。もし本気で戦えば、圧倒的な力でフォーンをねじ伏せてしまうのではないかと思う。ステルスシステムでレーダーを完全に撹乱していたドラグーナ・ラプターをもねじ伏せてしまうほどの力に、元は危機感を抱き、使わないようにしていた。

 だが、今元は劣勢に陥っている。負けてしまえば、ジャンヌは彼と共に戦争を戦うことになる。最初はその方が良いのではとも思った。危険な任務なら前線よりも後方で戦った方がいいと思った。ところがフォーンの言葉、そしてこれまでのジャンヌとの会話を思い出して、それではいけないと考えを否定した。護ると言いながらなぜ他の人に任せることを優先したのか。ジャンヌを護るのは自分の役目だ。フォーンでも譲れなかった。それを思うと力を使わなければという罪悪感に苛まれる。

 ジャンヌを渡したくない。だけど本当にこの力を使うに値する戦闘なのか。戦闘下で悩む元に、フォーンが気づいて激高する。

 

「っ!お前はまだ、覚悟がないのかっ!!」

 

「なにっ!?ぐぅっ」

 

 一気に振り抜いて後ずさりしたところに、ダブルビームライフルを収納する側のシールドで殴りつけてくる。ガントレットの様に振るってきたシールドの先が顔面に突き刺さる。ガンダムの口部マスクパーツが割れ、放熱部が露出する。殴られた衝撃で元の頭が揺さぶられる。

 発破を掛けるが如く一撃を受けて完全に追い込まれる元。追撃の更なる一撃が迫り、ビームサーベルを構える。突き出した左腕のシールドから、ソードが飛び出す。真っすぐ勢いよくガンダムの頭部目がけて伸びた攻撃をビームサーベルでギリギリ逸らす――――だがそのままフォーンは機体の右足でガンダムを蹴り上げ、上空へと飛ばした。飛ばされた機体は重力に従って落下する。あわや気を失ったとも取れる落下だったが、寸前でスラスターを吹かせて機体を着地させる。

 フォーンの動向を確認しながら損傷状況の確認。ブレードガン・ニューCは1本、ビームライフル・ゼロも喪失。ファンネルは残り4基。シールド右側表面がやや融解していた。ビームサーベルとマキナ・ブレイカーⅡAも1本喪失している。対して相手の武装はまだ1つも削れていない。このままでは押し負ける。決断するべきだと思ったところで、これまで話に応じなかったフォーンが呼びかけてくる。

 

「情けない……この程度だったのか、お前は!」

 

「言ってくれますね……調子に乗られてもらっても困りますよ」

 

 フォーンからの落胆の言葉に言い返すものの、元の側からしてみれば絶体絶命の危機。フルダイブシミュレーターなので死ぬことはないものの、このままでは負けてしまう。手はないかと考えを巡らせる。

 すると、フォーンが憤りと共に先程の約束についてを口にする。

 

「死の間際にあったガンドから、最後の仕事としてお前の実力を見るようにと言われていたが……どうやらやつの期待外れとなりそうだな」

 

「……どういうことです?」

 

 再び元は約束の内容について訊く。すると今度はフォーンの口から、その内容について語り出した。

 

「いいだろう。負ける前に教えてやる。ガンドがどういう想いで、お前に賭けたのか。ついでに、あの時の……20年前の決闘の時のこともな」

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。

グリーフィア「あらら……元君自分の力に自信がないのね」

ネイ「言われてみれば、確かにあの力は突然感覚的に分かる様になった力……ジャンヌさんを護るために無意識に使っていた時とは、今は違いますからね」

歴代ガンダムシリーズでそういうニュータイプ的な超能力に対して主人公が不安に陥るってことが少なかったと思ったからね。今回はそれを完全に吹っ切らせるためにって感じで作っています。……まぁ生まれを気にする主人公とかは割といたりするけど。

グリーフィア「それを含めると苦悩してるガンダムパイロットって結構いたりするわねぇ。SEEDのキラ・ヤマト、ガンダムXのフロスト兄弟だったり」

ネイ「悩みも色々ですから、元さんの苦悩するという話でまとめていいんじゃないですか?」

簡単にまとめるとそうなる。というかSEEDシリーズのコーディネーターとかはそういうのが多い気もする。まぁそんなのはおいておくとして、次回はフォーンさんの過去の決闘とガンドさんから最後に聞いた約束、そしてこの決闘の決着を描きます。(゚∀゚)元君は能力に対してどういう答えを出したのか?

グリーフィア「選択に後悔がない答え、期待してるわ。次回もお楽しみに~」


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EPISODE62 かつての英雄が所望する物5

どうも、皆様。前回の投稿後、友人の勧誘をかねてから受けていたアリス・ギア・アイギスを始めました、新人隊長の藤和木 士です。フリック操作慣れねぇなぁ( ;∀;)

レイ「アシスタントのレイだよ。このやり取りなんか前にも似たようなことなかった?」

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです。あれですよ、前もアンジュだったか艦これ始めた時に風紀委員か提督と言ったあれ」

レイ「あー、旧作の時のね。既視感はそこからかー」

そんなこともあったね(´・ω・`)今回のアリスギアはこっちの方でも武装とか参考にしたいなぁってのも出てきているので、少し考えていますね。さて、今回はEPISODE62の公開です。

ジャンヌ「前回は元さんがかなり押されている展開でしたね」

レイ「そうそう、それにフォーンさんが何かを話そうともしてたよね」

ジャンヌ「確か……約束と過去の決闘の事でしたか?」

20年前の決闘、フォーンはどのような心持で臨んだのか?そして元はどんな答えを導き出すのか、逆転できるのか!?そんなEPISODE62をどうぞ。


 

 

「23年前、俺とガンドはジャンヌの母クリエを掛けて決闘を行った。ファーフニル家を代々護るための当主を決めるために」

 

 ハジメへと語るフォーンの脳裏に、当時の情景が思い浮かぶ。23年前のフォーンはフリード家の者として恥じぬ振る舞いを心掛けていた男だった。実力も申し分なく、一番上の兄だったシン・フリードと共にフリード家の次代を担う人物として注目を浴びていた。史上最年少での三竜将任命も噂されていたが、フォーンからしてみればそんなものに収まるつもりはなかった。

 彼が目指していたものはただ1つ。彼の家が代々受け継いできた使命、ファーフニル家を守護するという使命。それを直接的に行うことのできる地位であるファーフニル家当主を目指していた。代々ファーフニル家の当主は候補にフリード家の血筋の者がいたものの、その一切がなることなく他の候補者に座を取られてしまっていた。それはフリード家側の候補はあくまでもストッパーとしての役割が強く、他の候補者の審判を務めるためであることが多かったからであるが、当時のフォーンはそんなことなど知らなかった。ただひたすらに、自分の妹分とも呼べたクリエと結ばれ、永遠に守り続けたいと夢を見ていた。その想いも強さの1つであった。

 だが、それを阻む者がいた。戦争で家を失い、グランツに助けられ家に引き取られた当時16歳のガンドだ。彼は自分がまだ10歳になるかという辺りで家へと迎え入れられた。当時はまだ幼く何とも思わなかったが、クリエと話をしていたところに入ってきたガンドに何度も邪魔をされて、嫌なやつと思い始めた。しかもその同時期に父のグランツからの話で、ガンドがクリエの婿候補として教養を受けることを知ると、それに対し怒りを覚えるようになった。クリエの相手は自分が相応しいんだと、フォーンは無理を言って直後から両親や兄に頼み込んで様々な勉強や指導を受けた。おかげで中等部の頃から成績優秀・スポーツ万能と当時の聖トゥインクル学園でも話題になった。それでも彼はクリエ一筋だった。

 ところがそうして目立つようになっていてもクリエが目を向けていたのはガンドだった。彼はフォーンが勉強や指導を受けている間に、グランツに同行してファーフニル家に赴き、クリエと交流していたのだ。どれだけ話しても寂しい笑みしか見せなかったクリエが、ガンドと交流するたびに笑顔になっていったのを見て、次第に妬み始めた。なぜ後から入ってきたみすぼらしいやつにクリエが惹かれるんだ、育ちも才能もある自分の方が優れているのに!クリエの興味を奪われていくにつれてフォーンにますます嫉妬の気持ちが体を巡り、余計に訓練へと打ち込んだ。それがむしろクリエとの距離を離すことになるのにも知らずに。

 そうして訪れた決闘の日。当時のフォーンの階級は大尉。しかしわずか1年で参加した戦線は100を超え、主要な戦線で確実に味方を勝利へと導く様から「導きの英雄」、次代の三竜将も噂されたエースとなっていた。一方ガンドは平凡な成績ながら安定した活躍を見せており、MSの扱いぶりから試作MS兵装を操る部隊に所属していた。

 一目瞭然とも呼べる2人の実力。だが既にクリエの気持ちはこの時決まっていた。迎えた決闘の日に、父グランツが決闘場でクリエに問いかけた。

 

『クリエ、君は今、どちらと一緒になりたい?』

 

 決闘直前の事だった。自身の経歴に自信満々のフォーンからしてみれば、先にガンドを絶望させられると、彼女の心を掴んでいると思っていた。しかし、クリエの口から語られたのは、残酷な現実だった。

 

『強さだけで見れば、フォーンの方が強い。でも、家を護ってくれて、私や家族の事をしっかり見てくれるのはガンドさん。だから、私としては一緒になりたいのは、ガンドさん』

 

 クリエの発言に、決闘前にも関わらず激高する。自分は彼女を護りたい一心で強くなったというのにこの仕打ち。許さない、許せるはずがなかった。いつの間にか抱いてしまっていたクリエへの憎悪を胸にしたまま、ガンドとの決闘に臨んだ。クリエが否定したとしても自分が勝ってしまえばいい。勝者が全てを手に入れればいいと怒涛の攻めを展開した。怒りのままに自身のMSの出力を全開にして戦う。フォーン自身の腕も合わさってガンドを追い込んでいた。

 このままいけば勝てる。ところがトドメの一撃を掛けようとしたところで機体が機能不全を起こす。DNの生産量が追いつかずにエネルギー切れとなってしまったのである。急激に機能が落ちたフォーンの機体に、プロト・マキナ・ブレイカーで攻撃を防御し続けたガンドが反撃の一太刀を浴びせた。その一太刀を受けてフォーンのMSは機能停止し、敗北した。

 敗北したフォーンは理解できなかった。なぜ負けたのか、なぜトドメを刺せなかったのか。叫ぶフォーンに父は言った。敗因はただ1つ、焦りだと。クリエの言葉を聞いて冷静さを欠いたフォーンでは、実力が劣っていても堅実な戦いを展開したガンドに勝てる可能性はなかったと。フォーンはあの時の言葉さえなかったらとグランツ、そしてクリエにあたる。だが、それをガンドが胸倉を掴み上げ、フォーンの顔を殴って止める。そして言った。

 

『自分の失態を父親や婚約者に擦り付けるな!』

 

 大きな衝撃だった。物理的にも、精神的にもフォーンのプライドを打ち砕いた発言だった。言われてフォーンは膝から崩れ落ちた。それは紛れもない事実だったのだ。自分の失敗を父親や婚約相手にぶつける自分が醜く見えた。もはや自分は相手に相応しくない。それを痛感させられる。

 それに気づいてどうすればいいのか分からなくなってしまった。だが、ガンドは言った。もしよければ、フォーンをファーフニル家のボディーガード、あるいは使用人として雇いたい、と。フォーンの強さは確かであり、またフォーンのクリエを護りたいという気持ちはよく分かったとクリエ本人も認めていた。責任転嫁をしようとした自分に対し、そのように言ってくれる2人に戸惑うが、グランツからの勧めもありフォーンはそれを承諾した。これが、23年前の決闘の事実だった。

 

「……こうして俺は軍人を辞めてファーフニル家の執事となった。丁度当時の執事長が引退を間近に控えていた頃だったから、引き継ぎのために多くを教わった。今でもあの人が居なければ、途中で投げ出していたかもしれない」

 

「………………」

 

 話に聞き入る様子のハジメ。とはいえビームサーベルをいつでも発振できるように構えている。その対応に心の中でそれでいいとしつつ、フォーンは件の約束の件について話す。

 

「そうして20年、ファーフニル家の執事として勤め続けて来た。ガンドのいない間のファーフニル家を護るために、クリエを護るために。そんな俺に、あいつは死の間際俺に2つの頼みごとをした」

 

「2つの頼み事……?」

 

「1つは、あいつが死んだ後のファールニル家を護り続けること。これは言うまでもない。何を考えたか、あいつはクリエと俺とを結び直そうとしていたみたいだが、断固拒否した。そしてもう1つ。それはハジメ、お前がもしもお嬢様と共に何かの危機に立ち向かう時、その覚悟を確かめることだ」

 

「っ!そうか……これは」

 

 それを聞いてハジメも気付く。そう、これはガンドの遺志によるものだった。軍の復帰は父であるグランツからの要請で受けるつもりだった。だが父からの話で2人が非常に危険な役目を背負うことを知り、確かめるのは今だと事情を話し、決闘を打診した。自分の復帰条件に盛り込めば、比較的通りやすいと思った提案だったが、グランツは二つ返事でOKを出す。ガンドからの最後の願いと言うのもあったためだろうが、要求を呑んだ後で父は「この時でなくともいいというのに……お前は真面目なやつだ」と言われた。

 ハジメの気づきを肯定する。そして告げる。

 

「そうだ。だがお前は動きに迷いを持っていた。今もこうして押されている。この程度の困難も押し退ける力がなければ、ジャンヌを前線に出すことなど!」

 

 声高々に宣言して右のガントレット、左のシールドからそれぞれダブルビームライフル、ソードを展開する。初めて触れた機体だが、武装の傾向はかつてフォーンが乗っていたドラグーナ・νと似通っていたのもあって何とか使える。ただ元々が新たなガンド専用機として作られていたのもあって使いづらいところも存在する。特に左腕のソードはマキナ・ブレイカーをベースとした兵装であり、フォーンには扱いの難しい兵装であった。だがフォーンはそれを積極的に使っていた。ガンドに代わり、2人の覚悟を確かめるために、その剣を振るっていた。

 フォーンからの叱責を受けて声を静めていたハジメ。まるで意気消沈したかのように視線を落としている。何を考え、どうしようとしているのか。いずれにせよ、動かないことが答えならフォーンは決めなくてはならない。この戦いの結末を。マキナスとの決戦までもう時間はない。何も彼が決断し、動くつもりがないのならここで潰すだけだ。

 加速体勢入る。そのタイミングで、ハジメが口を開く。

 

「……なら、逆に聞きますけど、フォーン大佐は覚悟出来ているんですか?負けた時のショックを受ける覚悟が」

 

 負けた時のショックを受ける覚悟と言う言葉に、フォーンは違和感を覚える。負ける覚悟など、軍人ならば想定できる、だが考えるべきではない状況だ。ショックという言葉もついていて言葉の指す意味を分かりかねたフォーンは苛立ちを以って返答する。

 

「負けた時の覚悟だと!?負けた時の事を考えてどうする!?そんなものを抱えているから負けるんだ!戦うことを考えなければ、護ることは出来ない。それを理解していたのではないのか、お前は!」

 

 激高するフォーン。ハジメの返答はそれとは対照的に冷静、いや、無味なものであった。

 

「―――――圧倒的な差を見せられたらどうするんですという意味で聞いたんですが……けど、そうですか……なら、もう迷いはしない。どうなっても知らないぞ?」

 

 どうなっても知らない。苛立ちを込めたハジメの言葉が響くと、ハジメもまたこちらへと飛び掛かる姿勢へと移行する。だが先に動いていたのはこちら。スラスターからDNを噴射してハジメに向かって加速する。一拍遅れてガンダムが飛ぶ。

 速度的に有利を取ったフォーンはシールドのソードをハジメに向けて振り下ろす。この加速度で振り下ろせば、突っ込んできている敵に対し大きくダメージを与えられる。例えガンダムでも、避けることは不可能だと思っていた。避けるためにはそれこそ未来予知レベルの戦術眼が必要だ。先程までのハジメの動きでそれはないだろうとフォーンは予想した。

 ところが、だ。想定外の事が起こる。このままなら確実にガンダムを葬れる、はずだった。だがその剣はシュバルトゼロガンダムの横を滑る様に通り過ぎた。

 

「何っ!?」

 

 あり得ない。あの速度で攻撃すれば、並大抵のMSでは避けられないはずだ。ガンダムでもエラクスを使って初めて避けられると思える攻撃。しかしハジメは機体を一切輝かせることなく、漆黒の装甲のままで剣の軌道ギリギリを通り過ぎたのである。

 まだ攻撃は終わっていない。切り返す形で反転するとシールドのソードを横薙ぎに振るう。上手く行けば反転する途中でウイングを斬り裂ける攻撃、そうでなくてもビームサーベルと打ち合う攻撃になる、はずだった。振り向いたハジメは右手のビームサーベルを発振させていない。このまま斬り裂けると思ったのもつかの間、振り向きながら一気に上空へ跳び上がり、錐もみバク宙を決めて攻撃を回避したのである。

 思わぬ行動で攻撃を回避されたことに動揺を隠せない。しかしまだ戦闘は続いていると着地地点を確認しようとしたフォーン。だが向けた先の地面にシュバルトゼロガンダムの

姿は見当たらない。

 

「どこに……何っ!?」

 

 どこにもいない。しかしアラート音がけたたましく上からの接近を知らせていることに気づき上を向くと、そこにはこちらに向けて急速落下するシュバルトゼロガンダム[リペアツヴァイ]の姿があった。ビームサーベルを発振させて両手による振り下ろしが襲い掛かる。

 咄嗟にシールドで防御するが、勢いの付いた落下切りを止めるのは難しい。攻撃を受け止めた途端に後ろへと弾かれる。地面へと着地を決めるガンダムの姿が映る。先程までの動きとは全く違って見えた。

 

(この動き……先程までとは違う。キレが出ている)

 

 バク宙からの切り下ろしというかなり姿勢制御の難しい攻撃を受けて、フォーンの中に危機感が生まれる。負けるつもりはなくとも、負けるのではという感覚だ。先程ハジメに負けを考えるなと言っておきながらあれだが、危機感は感じるものだ。変貌したハジメに恐れを抱いていた。

 しかし同時にこうも感じていた。ようやく本気になったと。本気になったハジメを見極めるのが本来の自分の仕事。待ちに待っていた展開にフォーンも負けじと反撃を仕掛ける。

 

「そうだ、それを待っていた!」

 

「っ!!」

 

 シールドソードとビームサーベルが交わる。切り結んだ状態でダブルビームライフルの狙いを定めるが、構えるワンテンポ前に切り結びを避け、姿勢を落とす。本来見据えていたはずの位置に向かってライフルのビームが放たれる。放たれた弾丸はガンダムの頭上をすり抜けていく。そして姿勢を落とした状態から、ハジメが踏み込んでビームサーベルを振るう。振るったビームサーベルは一歩引いたフォーンのバルムンクの胸部、そして左腕の装甲の一部を切り裂いた。

 斬撃を受けた箇所が火花を散らす。まだ左腕は動く。だが油断できない。ファンネルが追撃する形で襲い掛かる。数の減ったファンネルを避けることは造作ないとダブルビームライフルでけん制、狙い撃ちをしていく。しかし、けん制しているにも関わらず、ファンネルは一切乱れることなく弾幕を潜り抜け、狙い澄ました一撃も掠めることはない。寧ろ反撃のビーム弾が機体に被弾し始める。シールドを構えて防御するが、脚部のスパイク・キャノンや肩部装甲が破壊されていく。

 先程とはまるで攻防の精度が違う。別人とも取れる動きにフォーンは苦戦を強いられていく。それでも本気となったハジメと競り合っていた。その顔に笑みを浮かべて。

 

 

 

 

 先程の劣勢が嘘のように制圧してく元。その理由は無論スタートが感じ取れるようにしたあのノイズの力のおかげだ。相手の動きをノイズで把握し、それに対し一手早く行動する。これまでのMS運用を覆す戦法だった。

 本当に使っていいのか迷ったものの、フォーンからの叱咤を受けてその迷いは吹っ飛んだ。それに加え、ガンド、そしてそのガンドの遺志を受けたフォーンの言葉に動かされたのも事実だ。力を見せる必要があるのなら、迷っている暇はない。全力でぶつかり、そして見せつけなければならない。自分の覚悟を、そして自分の力を。

 迷いを振り払った元の動きは完全にフォーンを圧倒していた。大剣による攻撃を回避、更に先程のバク宙での翻弄。ファンネルの動きも先程とは違い弾幕をすり抜け、狙撃に対しても的確に回避して反撃を行っていく。確実にダメージは与えられていた。

 動きが見える。一言に言ってそれだった。しかし感覚的なものを正しく表現するなら、動く先がノイズで分かる、だ。耳、正確には脳内に響くノイズが相手の動く方向から聞こえてくる。それが敵なのか味方なのかが心とでもいうべき感覚で判断する。今のフォーンからは敵意のこもった音が聞こえてくる。それを察知して攻撃を回避、そして行く先に攻撃を向けていた。

 

「はぁぁ!!」

 

「ぐっ!!」

 

 ファンネルの包囲網を抜けたフォーンに対し、再び突撃を掛ける元。ビームサーベルの斬り下ろしがシールドに受け止められるが、直後前に突き出していた側の膝からビームスパイカーを発振させる。発振したビームスパイカーの杭がフォーンの懐に飛び込み胸部を傷つける。スパイカーを発振させそのまま一気にこちら側に引き込む。シールドを裏側から腕ごと切り裂くと思われたが、間一髪意図に気づいたフォーンが腕を開いて避ける。

 フォーンを蹴り込んだようなポーズを見せる元。フォーンは残った膝のビームキャノンを展開してその状態の元に放つ。カウンターとも呼べる速射だったが、その一撃は掠めることなく空に消える。機体を蒼く輝かせたガンダムは、残像と共に斜め上に飛んで回避したのだ。すかさず斜め下上空に見えるフォーンの機体の胸部に向けて蹴りを入れると、追い打ちのビームマシンキャノンを両シールドから連射し追撃を入れる。

 雨のように降り注ぐビーム弾をフォーンは回避する。だが一部が左ウイングに直撃し、爆発を起こして損壊した。ウイングに接続されたジェネレーターも爆発を起こして振り撒かれたDNと共にフォーンの姿を隠す。元はそこで追撃をやめ、エラクスを解いて煙が退くのを待つ。

 まだ収まらない敵意のノイズ音。それが示す通り、フォーンにまだ降参の意は見えなかった。地面へ着地したフォーンのバルムンクはバックパックの片側を損壊しながらも、そこに存在していた。ダブルビームライフルを展開し、シールドを構えている。元の猛攻撃に対し、フォーンが予想を上回るというような称賛の言葉を向けた。

 

「意外だな。まさか、こんな力を残していたとはな」

 

「……なるべく、この力は使いたくなかったんですけどね」

 

 フォーンの言葉に、しまりのない言葉で返答する。やはり使うべきではなかったのかもしれない力。しかし、使わなければ勝てない。元の言葉に疑問を持ったフォーンも何をして力を使いたくなかったのかを訊く。

 

「なぜ使わなかった。その力はお前のものではないのか?スタートが何か細工したのか?」

 

「……したといえば、そうなります」

 

『そうだな。だがこれは俺の確かめでもある』

 

 元の言葉を回線に介入したスタートが肯定する。スタートは自身のしたことについて端的に話す。

 

『もしお前が力に目覚めていないのなら、それは感じ取れない。だが、お前は今その力を確かに感じ取っている。……それは他の者が持たない、まぎれもないお前の力さ。だから……』

 

「………………あぁ、分かってる。俺はもう、迷わない」

 

 スタートに返答して、光の刃を再度展開する。静かな構えでフォーンへの戦いの姿勢を見せると、フォーンも話に一応の納得をしてそれに1つの形で応じた。

 

「―――――そうか。その力で戦うのなら、俺も本気で応じる。バルムンク、DNA!」

 

『DNA バルムンク・フルバースト』

 

 空に向けて構えたダブルビームライフルの銃口からビームが放出される。放出されたビームは巨大な光剣へと姿を変えた。高エネルギーによるスパークが光剣、そして機体から散る。ジェネレーターからは大きな駆動音が響き、破損状態の部分からもオーバーフロー状態のDNが電撃を帯びて放出される。まるで翼の様に動くそれは、勝ちへの執念を感じさせる。

 ガンダムと言えど触れたら確実にアウトなDNA。元も警戒したが、警戒が甘いことを思い知らされる。フォーンはその剣の範囲外の状態で、剣を振り下ろした。

 

「バルムンク・フルバーストォォ!!」

 

 渾身の叫びと共に振りかざされた光剣。その光剣から光の束が分裂し、こちらへカクカクした軌道を描いて襲い掛かってきたのである。唐突なホーミング弾に、元は機体のスラスターを全力で噴射、回避行動を取る。

 ノイズが周囲を離れない。何とか攻撃を回避しながら接近を試みるが、行く手を次々と光条が塞ぐ。バレルロールなども織り交ぜた回避運動で攻撃を巧みに避けていくが、その動きが止まる。周囲を完全に包囲される。

 

「っ!?くっ!!」

 

 エラクスを起動させる。だが間に合わない。シールドを構えて前面防御、後方ががら空きだ。その状態で元は光の束に押しつぶされる。ガンダムに着弾すると同時に爆発を引き起こした。

 視界が一切見えることのない煙の世界。外界からも一切詳細が見えない状況。シミュレーターポッドの外ではジャンヌが負けたと思い崩れ落ちていた。総合ブリーフィングルームでもフォーンがやったと歓声とどよめきが生まれた。

 しかしフォーンは緊張を切らさない。シミュレーターポッドの技師も終了の合図を知らせないことを理由に動かない。まだ終わっていない。そう―――――

 

 

 

 

「――――――まだだ!!」

 

 

 

 

 響く元の声。同時に煙が光の物体で振り払われる。姿を現したのは、ウイング、そしてサイドアーマーから光の翼を放出し、両手に構えたブレードガン・ニューCとビームサーベルに大きな光剣を形成した蒼く輝くガンダムの姿だ。

 既にその機体にシールドとファンネルはない。両兵装をDNウォール、そしてDNプロテクションで防御に回して攻撃を防いだのである。もっとも両兵装出力全開でも、もとの武装そのものは全損してしまったが。最大の一撃を防いだ元に、フォーンが吠える。

 

「ハジメェェェェェェ!!」

 

「フォォォォォーン!!!」

 

 元もそれに応え、突撃する。フォーンの方は再びバルムンク・フルバーストを発動させ光剣をライフル、そしてシールドソードに纏わせて形成していた。元の発動させたDNF「ディメンションブレイド」状態のビームサーベルとブレードガンとぶつかり合う。衝撃が電脳空間を揺らす。通常よりリーチの伸びた武器による斬り合い。幾度も剣を交える呼応坊の中、攻撃を避けた元の回転切りが上からDNAバルムンク・フルバーストの剣を打ち破った。

 

「ぬぁっ!?」

 

「今っ!!」

 

 素早くビームサーベルに残りのマキナ・ブレイカーⅡAを接続してバルムンクに投擲する。その一刀をフォーンは素早く展開したシールドソードで突いて正面から防ぐ。マキナ・ブレイカー側面スラスターから放出されるDNが前に進もうとする。完全にフォーンはその勢いを受け止めていた。勢いが弱まったところで弾かれるだろう。だが、その前に元は終の一撃を放つ。

 

「何っ!?」

 

「こいつも、持っていけ!!」

 

『Ready set GO! DNF、ディメンションスパイク・フルブースト!!』

 

 エラクス状態で蹴り出した脚部が、そのまま剣の柄尻に押し付けられる。剣のスラスターに加え、機体の推力も合わせた剣の蹴撃。受け止めていた実体剣からひび割れの音が鳴り始める。

 フォーンが退こうとする動きをしたがもう遅い。勢いの付いたマキナ・ブレイカーはそのままバルムンクの剣を砕く。剣が砕けると前に突き出していた腕が後方に下がり、その身に実体剣が突き刺さる。蹴りの衝撃がバルムンクを震えさせる。腕が地面に向けて落ち、そのツインアイから光が落ちた。

 勝負は決まった。奇しくも決めたのはガンドがかつての決闘で決着を付けた武器と同じ種類の武装。シミュレーターポッドの音声が元を勝者として称え挙げる。

 

『Battle Ended Winner Hajime』

 

 

 決闘終了と共に、スピーカーから歓声が響き渡る。ジャンヌやレヴ、リッド達の喜ぶ声が聞こえる。勝ったのだという実感を強く感じ、ため息をつく。フォーンはとても強かった。そして自分の力は使わなくていいわけじゃないことを理解した。全力で立ち向かう。それが一番大事なことなのだ。元はフォーン、そしてガンドへの感謝の意を呟いた。

 

「ありがとうございます、フォーン大佐、ガンド様」

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。力を使うという選択をした元君、見事勝利です(´ω`*)

ジャンヌ「無事勝てて本当に良かったです」

レイ「ほんとだよー!負けてたらジャンヌ・Fちゃんと離れて支障出たかもしれないし」

支障というか、スランプに陥っていたというか……まぁそこら辺は話すもんじゃないですね(´・ω・`)

レイ「うんうん。でも、フォーンさんも暴走しがちだったんだねぇ」

ジャンヌ「というか、元さんが暴走していた時と心境が似ていたように思えますね」

まぁ、似ちゃったね。でももしかすると、元君暴走時にフォーンさんが気に掛けたのはそれが影響していたのかも?(゚∀゚)
さて、今回はここまで。

レイ「次回もお楽しみにー!」


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EPISODE63 超克の儀1

どうも、皆様。先日行われたバトスピCS店舗決勝は権利を勝ち取れませんでした( ;∀;)作者の藤和木 士です。

ネイ「アシスタントのネイです。初戦から手札事故と判断ミスで負けていましたね」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよ。初っ端からバースト伏せていないのに突撃とかお花でも咲いていたんじゃないの?」

(´・ω・`)言うな、手札が酷すぎて正常な判断が出来なかったんじゃ……。さて、今回はEPISODE63と64の公開です。

グリーフィア「あら、久しぶりに2話連続投稿なのね」

ネイ「それくらいストックが回復したってことだね」

メタいこと言うとそうですね。さて、それでは本編へ参りましょう。まずはEPISODE63からどうぞ。


 

 戦闘が終わると、総合ブリーフィングルームは様々な声で沸き立っていた。2人の戦いに感動する者、ガンダムの戦いに驚きを表す者、予想と外れて落胆する者……そして、ガンダムの力に脅威を感じる者も当然いた。

 ガンダムが自分達では到底及ばない性能を持っていることは、無論グランツは理解していた。新たに加わったガンダムの力であるGワイバーン、そしてハジメ軍曹自身の力……。そこにクリムゾン・ドラゴニアスまで加えれば、もう止める者はいないのではないかというのは当然だ。

 それでもグランツは信じている。彼らはきっと正しい道を歩んでくれると。それを信じて、グランツは声の収まらないブリーフィングルームの者達を制する。

 

『静粛に。これで作戦の方針は決まった。ガンダム、および詩巫女が先陣を切ってマキナス軍に突入。その後マキナス皇帝ギルフォード・F・マキナリアスの身柄を制圧する作戦を採る』

 

「ま、待ってください!いくら勝ったとはいえ、あのような得体のしれない者に任せるというのですか!?」

 

 決定に反対を唱える者達の声が、1人の発言から更に伝播していく。ところがそれを遮ったのは、ガンダムと縁深いアレクの言葉だった。

 

「それだったら、あんたらがやるかい?」

 

「なっ……アレク少佐、何を……」

 

 アレクの言葉に物怖じを見せる各部隊の隊長達。真っ先に否定したにも関わらず、自分達がその役目を担うというのは考えていなかったようだ。その姿にため息を吐いて、アレクは失望の言葉と共に彼らへの信用を求めた。

 

「自分達の領域が侵されると思うと威勢よく喚いて、いざ自分達がやれと言われれば黙ってよ。何だよその身勝手な言い分は。自分はアイツらを見てきたが、ちゃんと自分達の意志に従って困難を乗り越えて来た。自分のプライドだけで行動していない。自分達で考えて、行動してる。そいつらの覚悟を、あんた達の身勝手なプライドで台無しにするんじゃない!控えめに言って、今のあんたらのそれは、俺の元上司と同じだぜ?」

 

「ぐっ……ぬぅぅぅ……」

 

 自身の過去を皮肉としたアレクの発言に、反対を示した隊長クラスの者達は口を噤む。レドリックの犯した罪は軍内部でも話題となっていた。自分達の行動がそれと同じと言われてしまえば、反論したくても余計に墓穴を掘ることになりかねない。しかもそれをレドリックの隊の部下であったアレクに言われている。それが余計に彼らの反論を塞いでいた。

 そんな彼の言葉に、ハジメ軍曹を良く知る人物達は頷く。それは彼らと違う、ハジメの戦果を正当に評価する者達の共感も得ていた。

 

「確かに。彼は一度、しくじりはしたが二度目の作戦は完璧にこなしてくれた。向上心が認められる」

 

「その資料については私も確認しているよ、バイル中佐。それに私の兄妹の中で一番出来るフォーンが本気を出して敗れたんだ。認めないわけがない」

 

「し、シン・フリード中将まで……!」

 

 メレト遺跡奪還作戦の指揮官、更にグランツの子どもの中で一番上の兄も認めている。この状況に、誰も反論は出なかった。それを確認して自身、並びに参謀を務める三男の言葉で作戦概要説明を終わらせる。

 

『反論がないのであれば、これにて作戦概要の説明を終了する。時間がないので諸君らには迅速なる作戦通達、配置をお願いしたい。』

 

『それから部隊に帰還後、各部隊に作戦資料を別途お渡しします。ここで申し上げていない、作戦で重要な説明があるので、確認を怠らないよう。それでは解散!』

 

 解散の号令で、次々と部屋を出ていく各部隊の隊長達。その中にいたアレクを呼び止める。

 

「アレク少佐、すまないね色々と言わせてしまって」

 

「構いませんよ。自分の部隊の隊員が好き勝手に言われているんです。隊長の自分がそれを掃わないと」

 

「本当に、いい隊長になった。アレク少佐」

 

 アレクの言葉に自然とそう言葉が出る。ガンダムの手綱を握るのが彼で本当に良かったと思う。グランツも安堵しつつ彼にこの後の事について話す。

 

「それで、この後だが……アレク君、君も来るんだったね」

 

 来る、というのはジャンヌがこの後行うこと、象徴との契約の儀に対しての参加についてだ。アレクは縦に頷く。

 

「無論です。あの2人の隊長ですから、象徴の事はしっかりと見ておかないと。……まぁ、今はグリューネの事も気になるので、それもありますが」

 

「ははっ、しっかりとこの目で無事を確かめなければな。では行こう、アレク少佐、リリー准将。バァン少将とゼント大佐はそれぞれの持ち場への速やかな移動を」

 

『了解』

 

 バァンとゼントは答えると部屋を足早に去っていく。彼らの戦地はそれぞれ北と南。それに協力してくれる隣国セントリルとギルンの部隊への挨拶もある。早く行ってもらって作戦内容を共有しておく必要がある。もっとも南の最終的な指揮官はゼントではないのだが。

 2人が持ち場へと向かったのを見て、続いてグランツは残っていたもう2人の者達にも声を掛ける。

 

「2人はどうするかね?」

 

 声を掛けたのは、グランツの親族であった。参謀で三男のハッター、そしてフォーンとガンドが青年時代にとても世話になった自身の息子たちの頭であるシン・フリードだ。

 弟であるハッターと共に軽く敬礼を行うとシンは父親の質問に答える。

 

「そうですね、私達は負けた側のフォローに回りますかな。久々にこの立場で話してみたいものですし……」

 

 シンは制服に施されたエンブレムを示す。フォーンの話も聞こえていたからこそ、そうしたいのだろうとすぐに分かった。ハッターも頷いて後頭部を掻く仕草を見せる。グランツはその発言に笑って返すと、2人の申し出を了承する。

 

「分かった。フォーンを元気づけてやってくれ、2人とも」

 

「そうだね、兄さんが負けるとは思わなかったからね」

 

「本当にそうだと思うか?ハッター。私はハジメ軍曹の素質は高いと思ったよ。本気の彼、いや、彼等なら、フォーンはどれだけ持っただろうか」

 

 2人の話はとても興味を感じさせられるものだ。しかしこちらもハジメ軍曹達を迎えて、「あの場所」へと向かわねばならない。名残惜しさはあったが、それは夜に聞くことにしてグランツも部屋を出て、彼らの待つシミュレータールームへと向かう。

 

「ははっ、その話はあとで訊かせてもらうよ」

 

「えぇ、後でじっくりと。アレク少佐、ガンダムのパイロット達をしっかりと守ってやるんだぞ?」

 

「ハッ!」

 

 向かう途中で、それぞれの話の花が咲いていく。しかしまだ本番はこれからだ。

 

 

 

 

 シミュレーションポッドでの戦闘から30分ほど経った後、フォーンは基地の屋上に来ていた。手すりに体をもたれさせて、空を見ている。

 本当に強くなった。あの戦闘を見て、そう思う。最初の頃は戦闘の型などなっていない、一歩間違えば危機を招いていたかもしれなかった男が、本気を出した自分にこうまで喰らい付いて来て、その上を行った。

 途中の戦闘では、まだ自身が押し込んでいる感覚があった。大勢の流れが決したというべき展開だったとあの時なら自負できる。だが、それもハジメが迷っていた、いや、あの差は手を抜いていたというべきだろう。それほどの隠していた実力を解放してからは違った。こちらの通常攻撃は一切当たっていなかった。偶然当たったDNFも、避けようと思えば避けられるものではなかったのかと、思っていた。

 だがいずれにせよ、その本気を受けてフォーンは負けた。かつてのように決闘に負けたことに、フォーンの中で昔の事が思い起こされる。ところがその途中で響いた声に意識が向けられる。

 

「フォーン!」

 

「…………兄さん。それにハッターも」

 

 その視線の先にいたのは、弟のハッター。それに自分がかつてとてもお世話になった長兄のシンであった。2人はフォーンを挟むように同じく手すりにもたれると、先程の勝負について話し出す。

 

「負けちゃったね、兄さん」

 

「そうだな。フリード家の名前に、また泥を付けた。やっぱり俺はフリード家の人間に相応しくはない」

 

 負けたことに声の調子が落ちる。かつてはフリード家の誇りを一番に持ってクリエと結ばれようとしていたフォーンも、あれ以来フリード家の誇りを背負うのにふさわしくないと、候補から外されていなくとも諦めていた。あの程度の事で揺れ動き、自滅した自分では家は継げないと自覚した。

 気の沈むフォーンに、ハッターが、そしてシンが励ましを送る。

 

「そんなことないよ。兄さんはいつだって僕の憧れさ」

 

「そうだ。俺がどれだけ若い頃手塩にかけて、合間の時間にお前を育てたと思っている?その成果を十分お前は引き出した。その度合いを比べる相手が一枚上手だったのさ」

 

「ハッター……シン兄さん……」

 

 2人の励ましを、フォーンは申し訳ない気持ちで受け止める。2度も決闘で負けたにも関わらず、変わらず接してくれる2人に。2人だけではない。家族の皆が、決闘に負けた自分を認めてくれた。

 シンが口を開く。

 

「それに、昔負けた時よりも冷静だ。昔のお前はガンドに負けてからアイツの執事になるまでの間、相当落ち込んでいたからな」

 

「そうだね。結局軍を辞めちゃったけど、最初は軍の活躍を抹消するって呟いてたくらいだし!」

 

「そんなこともあったな……あの時は落ち込み過ぎていたって思う。けど、今は不思議と軽い気持ちだ」

 

 フォーンは顔を上げる。その顔には自然と笑いがこみ上げる。フォーンの横顔にシンが静かに笑うと、顎に手を当てて言った。

 

「それで、ガンドの約束は果たせたのか?負けたとはいえ、負けが認めるわけでもないだろう?」

 

 シンの言葉はもっともだ。フォーンは決闘前にグランツに「負けたとしても相応しくなければ認めない」と言ってはいた。無論そうなった場合に批判は少なからずあっただろうが、これもジャンヌというファーフニル家の希望を護るためでもあった。力を使うことに迷っていたことに対しては、マイナスを付けたかった。だが、そうは出来なかった。

 

「……そう。俺も認めなかっただろうな。でも、シミュレーターポッドから出た後のアイツの姿を見て、言えるわけがないだろう?」

 

 自嘲気味に話すフォーン。彼が見たのは、ポッドから出たハジメにジャンヌが駆け寄る姿だった。むせび泣きながらも勝利を喜ぶ姿、彼が執事を務めてから最近まで見ることのなかったものだ。子の親となった自分ならまだ考えたかもしれないが、それを今の止めるのは無粋だった。それにガンドはフォーン自身の目で確かめて欲しいと言っていた。ならばこれで良かったのだろう。

 フォーンがため息交じりに呟いたそれを、弟を見守るような笑みでシンは理解する。

 

「ふっ……変わったな、お前も。ガンドが亡くなってしまったのは俺もとても残念だ。だが、ガンドは大きなものを遺していってくれた。ガンダムとそのパートナー、そしてフォーン……お前はもう立派な戦士だよ」

 

「戦士……か」

 

 兵士ではなく、戦士と称した兄の言葉に頬が緩む。2人の会話を邪魔することなく聞いていたハッターも口から安堵を漏らす。

 

「よかったよかった、兄さんが元気出してくれて。そういえば、父さん達もそろそろ着くころかな?」

 

「そうだな。まだ準備だというのに、不安が募るよ」

 

 ハッターの言葉を聞いて、フォーンは基地の北東を見る。その先にあるのは、ドラグディアの街。だがその一角に政府の重要施設がある。表向きは貴重竜種の保護施設とされるそれだが、その地下24階の大部屋。そこに彼らは向かったのだ。そこにいるのは、ファーフニル家、そしてフリード家が呪いに縛られる遠縁ともなった、かの竜。幽閉状態にあるその竜が今回の作戦を握る。

 フォーンは心の中で静かに祈る。

 

(ハジメ、お嬢様を護れよ……)

 

 それは抱きたくはない、象徴の恨みの矛先が向かないことを願う祈りだった。

 

 

 

 

「せ、狭い……」

 

「まぁ、これだけの人数ですからね……アレク隊長はともかく、何でレヴ達も……」

 

 ジャンヌとハジメは息苦しそうに呟く。2人がいるのはエレベーターの箱の中。その中にはグランツを中心に護衛の軍人4人とリリー、アレク、アレクの側にネアとグリューネの2人、そして反対のリリーの側にレヴとリッドがすし詰めのように入っていた。

 2人のエレベーターの狭さを訴える声はグランツやレヴ達にも届く。

 

「ハジメ、邪魔って言いたいんだろうが……俺も来なくてよかったんじゃとは思ってるぜ……っ」

 

「すまないねぇ。なにぶん昔の作りのままで……地震などの災害対策で改装してはいるんだが、それでも300年くらい前の設計がベースだから……それにしても暑い」

 

 グランツの発言通り、中は内装など比較的新しいが、造りは大分昔の物だとジャンヌでも推察できた。なぜ思い切って立て直しが出来ないのかと言えば、それは無論政府が象徴の事実を隠したかったからに他ならない。

 出来ることならあまりこんなところに何度も来たくはない。それでも、今日は重要な1日となる日だ。我慢して到着を待つ。それぞれの体に押されて2分。エレベーターが止まり、ドアが開かれると、涼しい空気を求めて外へと出ていく。

 

「はぁ……暑かった……って寒ッ!?」

 

「……対照的に中は涼しいですね。夏とは思えないです」

 

 目の前に広がる巨大な檻。周囲は非常灯の光くらいしかなく、薄暗い。しかしそれよりも部屋の寒さが彼らに襲い掛かった。先に外に出て真っ先に寒さを訴えるジャンヌ。遅れてネアや他の者達も到着した大部屋の気温の低さと視界の悪さに驚きの声を挙げる。

 

「避暑地に来たくらいの涼しさだよな……」

 

「兄ぃ私達避暑地なんて行ったことないでしょ。なんていうか、学園の見学で行った極凍部体験ルームより少し暖かいかなっていう寒さかなって思いますけど……」

 

「グリューネ、足元は平気かい?」

 

「大丈夫~、まだ非常灯のおかげで見える見える。ありがとアレ君♪」

 

 各々寒さや暗さに多様な反応を見せる。が、それらを律するかのような爆音が、突如として響き渡ることとなる。

 

「―――――グシャァァァアアアアアァァァァァン!!!!」

 

「っ!!?」

 

「きゃあ!?な、何!?」

 

 響く爆音にハジメが耳を抑えた。ジャンヌも予想だにしていない高音量のそれに、思わず声が高くなって何事かと聞いてしまう。アレクやグリューネ、ネア、それにリリーもその爆音に耳をやられたように表情を苦痛で歪ませていた。

 しかし、その轟音の答えは1つしかなかった。元々彼らは「それ」を迎えに行くためにこの場所に来ていた。ならば、その轟音は必然と「そうなる」のである。爆音……否、咆哮の響いた方向を護衛に護られた状態のグランツが、耳から手を離して宙に語り掛けるように話す。

 

「……ふぅ、このような出迎えをされるとは……だが、出会ったことこそなくとも、この感じは……」

 

 この場所にいるのは、自分達以外に除けばただ1匹しか存在しない。ハジメがジャンヌの後方で構える。

 

「お嬢様……」

 

「えぇ……」

 

 ジャンヌも理解していた。それが、これから契約を結ぶ者の叫び声であったことを。薄暗い檻の奥をじっと見つめる。そこに彼の者の眼光が闇に浮かんで輝いていた。

 

 

NEXT EPISODE

 




EPISODE63はここまでとなります。

ネイ「いよいよ、ですね」

グリーフィア「象徴とのご対面~。相当怒ってるみたいだけど、元さん達どうするのかしらねぇ~」

それはまぁ、次の話で明らかになりますよ(´・ω・`)失敗か、成功か?

ネイ「それでは次のお話に続きます」


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EPISODE64 超克の儀2

どうも、皆様。引き続きご覧の方は改めまして、魔法科高校の劣等生の第2期発表に対して、第1期がもう4年前なのか(゚Д゚;)という感想を抱きました、作者の藤和木 士です。

レイ「アシスタントのレイだよー。4年前っていうと、私達が来る少し前かな?」

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです。確かにそうですね。わたくし達が2016年の戦乱魂歌で初登場ですので、その近くで藤和木が採用~と言ってましたので」

そこまでヒャッハーしてなかったと思うんだけど(´・ω・`)

レイ「嘘嘘、紹介の時に凄いヒャッハーしてたよ?何なら旧作の私達初登場の黒の館見直せば分かるよっ!」

あからさまな宣伝ですどうもありがとうございます(´・ω・`)さて引き続きEPISODE64の公開です。

ジャンヌ「象徴との絆、残っているといいんですが……」

レイ「いきなり吠えられていたのは聞かなかったことにしたいね……」

それでは本編をどうぞ。


 

「行きます。鍵の方をお願いできますか?」

 

「うむ。すぐに」

 

 ジャンヌの要請にすぐにグランツが護衛に付いていた男性に命じて、目の前に広がる檻への入り口を開くように指示する。男性はすぐさま鍵を取り出して2人を招く。元はジャンヌの後ろに付いて、その男性の後を追う。

 たどり着いた檻の入り口。その檻の周辺に目が行く。周囲の檻の棒にはいくつもの爪痕や歯型と思われる跡が散見出来た。猛獣が暴れたのだと理解できる光景に、これからこのような強大な存在とジャンヌが心を通わせるのだと思うと警戒が強くなる。ジャンヌを見ると爪痕を見てそれに視線が集中していた。

 

「お嬢様、大丈夫ですか?」

 

「…………う、うん、大丈夫……」

 

 こちらに視線を少し向けて、そう言い切った彼女だが少し表情が硬くなっているのが分かる。これまで短い間ながらも激戦を潜り抜けて来た自分が恐れを抱いているのだ。ジャンヌのような少女がそうでないはずがない。元は彼女の右手を握り、横に立つ。

 

「お嬢様、自分がいます。だから胸を張って」

 

「ハジメ……」

 

「開きます。お二方、ご武運を」

 

 鍵のロックを解除した男性の声を受けて、2人は件の咆哮の主が待つ檻の中へと入っていく。檻の中に入ると2人の体が震えた。檻の外よりも身の毛のよだつような寒さが伝わったのと、後方から響いた檻の閉まる音に驚いてしまったからだ。檻の音に驚きすぎてジャンヌは元の腕に抱き付いてしまう。

 この形は閉じ込められたというものだが、これには当然理由がある。過去に詩竜超克の儀を行った際、契約を行おうとした詩巫女の行いに怒り狂った象徴が襲い掛かったことがあったのだという。その詩巫女本人は無事だったものの檻の入り口をこじ開けられそうになり、以来対面する際には檻を完全に締め切って臨むのだという。外ですれば、とも考えたが、詩竜相克の儀を良く知る現政府の人間によれば、契約は対等でなければいけないことから代々生身で触れ合える距離でなければ結べないようになっているのだという。本来なら中でも詩巫女が不用意に怒らせないよう監督者も中に入るのだが、今回はガンダムを操る元が担当することとなった。グランツも、

 

『私のような老人が説明するよりも、事変を終わらせた2人だけで報告した方がいい』

 

とこれまでのドラグディア政府のやり方を壊すような意を込めて2人を送り出していた。

 確かに大人数で見かけない顔の者達ばかりが入っても、ただでさえ政府の者を遠ざけていた象徴に余計に不信感を煽らせるだけかもしれない。現に伝わってくるこの檻の中の空気は非常に冷たく、まるで全身を睨み付けられているかのような視線を感じていた。

 頼れるのは自分だけ。そう改めて自身の役目を認識するとジャンヌの手を握って、腕に抱き付いてきているジャンヌと共に象徴の目の前にあたる檻の手前まで狭い歩幅で向かう。

 グランツらからあらかじめ知らされていた通り、天井からのライトで一直線に照らされたバッテンの印が施された場所までたどり着く。すると、正面の暗闇からドラゴンの唸り声と共に何者かの声が頭の中に響いてくる。

 

『お前が、今年の超克をもくろむ者、か』

 

「っ!?」

 

「……テレパシー?」

 

 元は呟く。SF作品でしか知らない精神感応の類のそれは、確かに彼らに起こっている事だった。話の内容からして、それが象徴によるものだということを察する。なのだがドラゴンということで荒々しい乱暴者の声と予想していたが、その声は意外にも和らげな女性の声を彷彿させるもので少し驚く。

 だが黙っているわけにもいかず、元の腕から手を離したジャンヌは声を大にして暗闇に身を隠す象徴に語り掛ける。

 

「少し違いますっ。わたくしはジャンヌ・ファーフニル。ファーフニル家の末裔です。あなたを縛り続けてきたドラグディア政府はわたくしと、ここにいるクロワ・ハジメがフリード家の使命を帯びた人達とそれに協力してくれた人達によって打ち果たしました。今、またこの国に危機が迫っています……わたくしと、契約を!」

 

 ここに来るまでの間にグランツから渡され、暗記したお願いを伝えるジャンヌ。詩巫女というだけあってとても澄んだ声に聞こえる。大丈夫だと、その願いが届くことを願う元。

 ところが、象徴が返した返事はあまりにそっけないものだった。

 

『フン。政府はとうとう自らの罪を解決した体で、我の力を引きずり出そうとまでしてきたか……よりにもよってファーフニルの娘を使って……!』

 

「え……」

 

『我はお前達政府に力は貸さん!奇妙な細工をして、我を騙せると思ったか!』

 

「おい、どういうことだ。どうしてそうなる!」

 

 納得がいかなかった。こちらは解決したのだと伝えているのに、詳しい話も聞かずして政府がどうだの、力を引きずり出そうとだの、挙句の果てに自分をだましていると語る象徴に怒りが沸き上がる。ちゃんと事実を伝えたというのになぜジャンヌがそんな事を言われなければならないのだ。

 だが可能性としてはありえた。象徴は政府どころか竜人族、というより人という知的生命体を嫌っているという可能性が。象徴は全体を現さないまま語る。

 

『……確かに、そのファーフニルの少女からは我に伝えたいという健気さは伝わる。だが、反対にその言葉には、自身が伝えたい思いがない。他人の作り物だ』

 

「っ!……」

 

 ジャンヌの顔が下を向く。図星だ。その言葉は正確に言えば確かにジャンヌの言葉ではない。考えたのはグランツら大人達だった。暗記したことが裏目に出てしまったのだ。

 だからといってジャンヌがそれを思っていないわけではない。ジャンヌは顔を上げて意見する。

 

「……確かに、先程の言葉はあなたに失礼がないよう、他の方に作ってもらったものです。だけど、わたくしの意志が入っていないわけでは……!」

 

『黙れ小娘!』

 

「ひゃう!?」

 

 だが咆哮と共に響いた声に、後ずさりしてしまうジャンヌ。元は咄嗟に後退するジャンヌの体を支えた。戸惑う2人の脳裏に、象徴の諦めに似た言葉が響く。

 

『外で何度か大きな力を感じたが……どうやら、見当はずれだったようだ。ジードとオルレリアンの想いは踏みにじられ、ファーフニル家の末裔は政府に取り込まれた』

 

「っ!……言わせておけば……勝手な妄想ばかりして、この分からず屋が!」

 

 思わず象徴に向けてそのような言葉が漏れ出てしまう。が、それが本当に取り返しのつかない引き金となる。その言葉を聞いたであろう象徴は唸り声を一層強くして怒声を上げる。

 

『分からず屋……だと?思い上がるな!小童!!』

 

 咆哮が檻を震わせる。怒りは真っ直ぐ元とジャンヌに向けられていた。殺意が体に突き刺さり、恐怖が襲ってくる。ジャンヌは完全に恐怖に竦み、怯えながら元の後ろに隠れてしまう。怒らせた張本人である元に謝罪を嘆願する。

 

「は、ハジメッ!は、は、早く謝って!!」

 

「…………残念ですが、そうはいきません。主の言葉を聞こうともしない輩に、このまま引き下がると?」

 

「だ、だから今現在進行形であなたがやっていることが怒らせている原因で……!」

 

 ジャンヌが指摘する最中、象徴が行動に出る。光る眼光の直下で光を集中させる。電気が帯びるそれは、DNを集中させてビームを形成するそれと似ている……いや、それそのものであると直感する。攻撃態勢に入っていた。

 あからさまな危険、耳に装着したインカムからも護衛やアレクの退避指示が来る。

 

『ハジメ様、ジャンヌ様!退避を!』

 

『馬鹿野郎!何挑発して……!』

 

「いや、退きませんよ。それより総司令、あれ、使いますよ」

 

 だがそれらの声を跳ね除けて、元は淡々とグランツにとある指示を仰いだ。それはここに来る前にあらかじめ打ち合わせてギリギリまで使用できるようにしてもらっていた、「あれ」である。象徴とのハプニングが起きた場合に、それを使って解決する。時間がなかったとはいえ、それはただ1機のみだったため、象徴との心の通わせを優先してヴェール達整備員達に修理を待ってもらっていたのだ。もっとも本来ならこうなる前に使うべきものであったのだが。

 グランツはインカムに向けため息を吐く。それから元に対し言った。

 

『まったく……忠誠心は見事だ。いや、それを超えた範疇のものかな、それは。既にその判断は君に任せている。ここまで事を大事にするのだ、ジャンヌ君をやらせるなよ?』

 

「無論です!」

 

 そう言って制服の内側から、ゼロ・スターターを取り出す。スターターを腰に当て、流れるようにロックリリーサーを装填する。その姿を見て、象徴の落胆したような言葉を聞く。

 

『MSか……。並大抵のMSで、この象徴たる私を従えると?』

 

「あぁ、思い知らせてやるさ!」

 

『ZERO ZWEI』

 

『……?』

 

 セレクトスーツカードを装填し装依ボタンを押し込む。それを訝しむ様子をする象徴だったが、構わず装依する。

 アクセスゲートが2人の体を包み込む。ゲートを通り、2人の体は傷だらけの1機のMS、シュバルトゼロガンダムへと装依を完了させた。白のガンダムを退け、革命を成した最強のMS。それが象徴と相対した。

 シールドなどはない。Gワイバーンもここに呼ぶまで時間が掛かる。だが、それでもガンダムならば、今の元なら象徴とも渡り合えると判断されてここにいる。そう思われた。

 だがそれは象徴の思わぬ行動で無に帰された。光を集めて球体を形取っていたビームが圧縮される様に縮んでいく。見えなくなるくらいに縮まっていって、象徴が声を発した。

 

 

 

 

『ま、まさか……主殿!?』

 

「……え?」

 

 

 

 

 思わぬ呼びかけだった。先程まで敵意を、殺意を向けていたはずの者から出たのは、忠義を慕う者が発する単語だったのだから。その言葉に一瞬だけ元達に隙が生まれた。

 不味いとも思って素早く構えるが、攻撃は来ない。それどころか動揺した声で何やら象徴は独り言を呟いていた。

 

『その姿……形こそ変わっているが、やはりシュバルトゼロガンダム……我が主の機体……。まさか、継承者……?』

 

『えっ何?何が起こっているの?』

 

「さ、さぁ……?」

 

 続く独り言が脳内で響き続け、どうするべきか判断に迷う2人。とりあえず警戒だけは強めておくが、その甲斐も必要なくなった。独り言を終えた象徴がこちらに微動してから先程とは違った印象を持って話しかけてきた。

 

『本当に……政府を打ち果たしたのか?世界は変わったのか?』

 

 落ち着きを取り戻した様子で話しかけてくる象徴。未だに姿は見えないが、どこか気まずさを感じさせる象徴に、ジャンヌがその問いに答えた。

 

『はい。ハジメが手にした、この力で……ハジメのおかげで、わたくしの詩竜の呪印も消えて……』

 

『………………そうか。ガンダムが……我が本来の主殿が……』

 

『………………』

 

 本来の主という単語に、元は少なからずスタートを意識した。元よりも前にガンダムを操った者のなれの果て。もしかするとスタートは象徴を知っている、あるいは象徴が彼を知っているのかもしれない。

 スタートも沈黙を守っていたが、先に象徴が動く。視界が突如光に包まれる。いや、照明に電気が通ったのだ。それは象徴の意志によってであった。

 

「っ!」

 

『まぶしっ!?………………こ、これは……』

 

 一気に明るくなった視界に対応できない2人。だがやがて目が慣れてくると、目の前に映った光景に息を飲む。

 目の前に現れたのは、紅の装甲を輝かせる1匹の機械のドラゴンだった。宝石のように輝くその体はまるで兵器とは思えぬ輝きを放っていた。深紅(クリムゾン)の名の通りのドラゴンである。だがその体は紛れもなく機械であり、装甲の隙間や翼のブースター、排気口など、特に頭部の作りは紛れもなく機械であると認識させる。

 政府関係者と契約する詩巫女以外には見せてこなかった機械の竜の姿。檻の外側で見ていたグランツ達の間でも驚きが生まれていた。目の前で衝撃を受ける元達に、象徴、クリムゾン・ドラゴニアスが首を下げて先程の行動を謝罪する。

 

『先程は申し訳なかった……私がクリムゾン・ドラゴニアス。ここに来た君達が知る様に、かつては生身の体を持ったドラゴン。今はこのような姿で生かされ続けてきたが、君達が来るのを待っていた』

 

 

 

 

 元とジャンヌがクリムゾン・ドラゴニアスと相対した頃、マキナスの政府官邸地下でも動きがあった。マキナス皇帝ギルフォードは従者と1組の男女と共にその場所を訪れていた。とても大きな部屋に掛かる、1つの橋。機械で造られたそこを歩いていく彼らは、丁度橋の真ん中にある、台座のある広い足場部分に入り、立ち止まる。皇帝の前に鎮座する機械の端末が埋め込まれた台座。それに対し、ギルフォードはその手をかざした。

 

「300年……我らが象徴「マギア・マキナス」が謎の機能停止を起こして、300年が経った」

 

 マギア・マキナス。この国の象徴。かつては皇帝が戦場で指揮を執るための座乗艦としても用いられた生ける機械の艦の名前だ。彼らが訪れたのは、その機械の艦が眠る専用ドッグの中だった。

 今でも眠り続ける象徴に語りかけるように、台座を触る皇帝。しかし彼は少女を手招きすると、すぐその場を離れる。付き従う1組の男女の内少女はそれに従って台座の前に立つ。台座の前で少女は手をかざすと、歌うように話す。

 

「我らが希望、我らが御柱、我らが象徴よ 今奏女官(シアル)たる継承者メル・オンが、皇帝の復活と共に、貴方を求めん」

 

 少女の言葉に、ドッグ内に光が灯り始める。わずかな鳴動も聞こえる。男女の片割れの青年も少女の補助に入れるようにスタンバイしていた。

 ここまでは300年以後も同じだった。そう記録にもあった。やがて、少女は叫ぶ。

 

「――――――目覚めよ、マギア・マキナス!」

 

 その一声と共に金属の衝突音のような音が響く。その直後、彼女の周囲をウインドウが表示し始める。これは300年の間、見られなかった現象だった。もしや、と思った時には、待望のそれが聞こえてくる。

 

『……300年以来となるな、この景色も』

 

「…………目覚めた、マギア・マキナスが!」

 

 マギア・マキナスの起動。その事実にギルフォードは体から湧き上がる衝動を必死に抑え込んでいた。切り札が目覚めた。約300年前から誰一人起動させることが出来なかった機動戦艦。その原因は長らく不明とされてきたが、ギルフォードの両親から続く調べで、その原因は若干ながら掴んでいた。同時期にドラグディアの機竜クリムゾン・ドラゴニアスが戦場から姿を消したこと、それが関わっていたことに。

 それぞれの象徴は鏡合わせの存在。一方が消えれば、片側の象徴もまた同じように姿を隠す習性があるという。機械でありながら生き物の特性を持つ戦艦、それがマギア・マキナス。少女から場所の移動を告げられる。

 

「皇帝陛下、どうぞ」

 

「あぁ、君は下がっていていい。君の妹に手間を掛けさせてしまい、すまないね機械騎士ランド」

 

「いえ、妹共々、恐縮です」

 

 敬礼をして妹と下がる青年。それを横目にギルフォードは目の前のモニターに向けて話す。

 

「300年の長い休暇だな、マギア・マキナス。目覚めたということは、私に力を貸してくれるな?」

 

『……私が目覚めた、ということなら、そういうことなのだろうな。300年か敵は果たしてどういったものか』

 

「昔と変わらないさ。我らが憎き竜人族。だがそこに我らに楯突く、創世記の遺物がいる」

 

『……ほう、創世記の遺物……』

 

 ギルフォードの言葉に興味を抱いたように反応を見せる。ギルフォードの顔が緩む。そしてマギア・マキナスからの返答が来る。

 

『いいだろう……此度の戦、誠興味がある。私も、参加させてもらう』

 

「ふっ、ありがとう……では、国民へ伝えよう……マギア・マキナスの復活を、祝うのだ!」

 

 振り返ったギルフォードはそう高らかに宣言する。それに対し従者たちは「ジーク・マキナス!」と叫ぶ。戦争の足音は既に目の前だ。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。

ジャンヌ「どうなることかと思いましたが、ガンダムのおかげで事なきを得ましたね……」

レイ「だねー。でも主とか気になることは多く出て来たけど」

ジャンヌ「そうですね……あとは、マキナスもまた切り札を投入してきそうです……」

レイ「象徴対象徴って……これって正に300年前の再現ってことなんだろうね~どうなっちゃうんだろ?」

もう世界大戦起こりそうだよね(^ω^)この戦い、果たしてどう転がるのでしょう!さて今回はここまでです。

ジャンヌ「次回もよろしくお願いします」


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EPISODE65 超克の儀3

どうも、皆様。台風19号直撃中の中投稿しております、作者の藤和木 士です。いや、私の地域は暴風域の所にやや掛かっている感じなんですがね(´・ω・`)

ネイ「アシスタントのネイです。避難しなくて大丈夫なんです?」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよぉ。いつ停電になるかわからないっていうのに根気あるわねぇ」

(´・ω・`)まぁまだ避難警報出てないみたいだし、それ以上に避難先より家にいた方がまだ安心っていうのもあるみたいなんだけどね。今は風が強くていつ電線切れるんだろうってビクビクしてるけど。皆様も避難警報に注意しながら過ごしてくださいね。
さて今回はEPISODE65の公開です。

ネイ「象徴の誤解は無事解けたようですね」

グリーフィア「ガンダム酷使されるわねぇ。これ最終決戦前に大破しかねないんじゃないの?」

(;・∀・)そんなことになったら笑えないよ。さてでは本編へ。


 

『先程の非礼、申し訳なかった……。君達が私を起こしに来てくれたというのに、あのような……』

 

「え、えと……」

 

 先程よりもかなり頭の低くなった話し方をする象徴を見て、反応に困ってしまうジャンヌとハジメ。自分達が敬う象徴から、いくらすれ違いによって生まれたこととはいえ頭を深く下げて謝られたことにどうしたらいいか迷ってしまう。

 いくらガンダムや象徴といった詩巫女に関係した者達を嫌っていたジャンヌでも、いや、それを克服したジャンヌだったからこそ、この状況に何を言えばいいのかが分からない。謝罪か、遠慮か。決心したジャンヌが選んだのは、前者だった。

 

「……謝るのは、こちらの方です。私は突然決められた使命で、あなたを憎んでいましたから。本当に憎まなければいけなかったのは、政府の人間だけでなければいけなかったのに……」

 

『憎む……詩竜の刻印か。当然だな、私との契約を試みることが、あれの解呪法だったから……ということは、解除する為に?いや、解除するには首相達の知る解呪法がなければ……』

 

 象徴、クリムゾン・ドラゴニアスは首をこちらに向け、ジャンヌとの会話に反応する。だが彼女にも分からないことはある。ジャンヌは彼女の知りたい答えを、ハジメを指して答える。

 

「それは、ここにいる私のパートナー……ハジメのガンダムのおかげで解けました」

 

「たぶんですが……Gワイバーン解放の時に、解除されたんだと……はっきりは分かっていないんですが」

 

 とはいえこちらもなぜ解除されたのかは分かっていない。状況的に、そう判断するしかなかった。ところがそれを聞いて、クリムゾン・ドラゴニアスは頷き、全てを理解していた。

 

『Gワイバーン……そうか、ワイバーンとの認証で呪いを解除したのだな』

 

「認証……?」

 

『そうだ。Gワイバーンは同期する機体との認証時、それから合体する際に装依者を含んだものに掛かった不純物を取り払う機能がある。Gリフレッシュ、というものだったか。それによりジャンヌ、君の呪いが解除されたのだ』

 

 クリムゾン・ドラゴニアスの説明で、納得がいった。あの光が認証を行ったのだと、理解した。偶然とはいえ、それが呪いを解く術となったのである。

 ハジメもそのメカニズムを理解し、お互いに確かめ合う。

 

「Gワイバーンの認証……お嬢様が見たという光の事でしょうか?」

 

「えぇ、多分そうかと」

 

『しかし……フフッ。そうか、解放ということは、ドラグーン・オベリスクに封印されていた個体を使ったのだな』

 

 2人が話している内に、クリムゾン・ドラゴニアスの声が上機嫌な物へと変わっていた。なぜだろうかと気になり、ハジメが質問した。

 

「?そうですが……それがどうしました?」

 

『うん?あぁ、すまない。それの解除条件が特殊だったのでね。そうか、君達の距離感はそれでか、フフフ』

 

『?』

 

 ハジメと揃ってその言葉の意味を飲み込めない。思ったよりクリムゾン・ドラゴニアスの言葉遣いも特殊で、それもあって彼女の心理を掴み難かった。とはいえ、概ね2人の感じ方は同じもので、「誤解しやすいが、根は優しい」というものだった。

 2人の仲を感じ取ったクリムゾン・ドラゴニアスに、続けてハジメが質問をする。それは、先程のガンダムを主と呼んだことに関することだった。

 

「それで、さっき貴女がおっしゃっていた、ガンダムが我が主、というのは……」

 

『……そうだね。これまで、詩巫女は竜騎士という存在が護衛するのが通例となっている。今は私が拒み続けたからいるかどうかは分からないが……本来その役目を担うのは、ガンダムの装依者だったんだ』

 

「ガンダムが!?」

 

「……ガンダムが、詩巫女の……」

 

 ハジメの口から予想外だという反応が飛び出る。しかし、隣にいたジャンヌ自身はもっと驚いていた。口には出さないが、その心の中はとても平静ではなかった。

 

(ガンダムが、詩巫女のパートナー……ってことは、ハジメと一緒に居ることが、本来の形……や、やだ……なんか、変に意識して……)

 

 顔を俯き、動揺ともう1つの感情を隠そうとする。ジャンヌが自身の感情に悶える中、ハジメは気になっていた事について話し出す。

 

「じゃあ……今ガンダムに宿っているスタートっていう、元英雄の事について知っているか?」

 

『スタート……元……英雄?』

 

 ハジメの問いに、分かっていない様子を見せるクリムゾン・ドラゴニアス。分かっていないというよりかは、知らないというのが正しいだろうか。すると、スタートがハジメの示したゼロ・スターターからその理由を告げる。

 

『当然かもな。俺のスタートという名前は、あくまで記憶のなくなった俺自身が付けた名前だ。こいつが知る名前と違うはずだ』

 

「そうなの?」

 

『ほう、この者が……』

 

「えぇ。こいつがスタート。創世記時代のガンダムを駆っていたパイロットらしいです」

 

 ハジメはスタートを紹介する。だが、それだけの情報で果たしてその素性が分かるのだろうか。創世記の次代は今から1400年もの昔、記憶が失われているのでは……。そしてジャンヌのその予感は、的中してしまうこととなる。

 

『……すまない。そのような喋り方をする竜騎士の事を、私は覚えていない』

 

「そう……ですか」

 

 覚えていないというクリムゾン・ドラゴニアスからの回答。ハジメの表情も少し曇りを見せる。スタートの事について何か分かるのではと思ったが故の落ち込みであった。クリムゾン・ドラゴニアス本人も、覚えていないことを悔いて謝罪する。

 

『おそらく、ガンダムが封印される直前のパイロットなのだろうが……創世記最終盤の頃は、私の記憶が曖昧なのだ……。確かに居たことは覚えているのだが…………パートナーでありながら、すまない』

 

『構わねえさ。俺だって昔の事は知りたいが、それが難しいことは分かっている。俺こそお前との記憶があまりないことは申し訳ないと思っている、クリムゾン・ドラゴニアス』

 

 スタートの昔を探るという副次的な目的は失敗した。しかし、やるべきことはやらなければ。ジャンヌは前へと出て、戦争への参加を頼み込む。

 

「それで、クリムゾン・ドラゴニアス様。今この国に、またマキナスとの戦争が近づいています。ドラグディア軍総司令官のグランツ・フリード司令と、新たな国家元首のダン・クロス大統領は早期の終結を願っています。急ではありますが、改めて貴女の力を貸していただけませんか?」

 

 再び語った現在の状況。復讐が解決したというのに、いきなりかつての元凶でもあった戦争に参加してもらうという無茶なお願いではあったが、それでも今は協力をしてもらわなければならなかった。

 

『マキナスと……まだ、戦争は続いているのだな』

 

「そうです。戦力比はこちらの3700に対して向こうが4500。こちらはガンダムによる先制突撃で敵の総大将を討ち取る作戦を考えています。ですが、それを盤石なものにするために、象徴、あなたの力を借りたいんです」

 

 ハジメからも象徴に対し、作戦への参加を依頼する。2人からの頼みに、クリムゾン・ドラゴニアスはしばしの沈黙の後、答える。

 

『……未だ戦争が続いていることには、私は悲しく思っている。竜人族は私の力を借りられないことを知っていても、和平を望まなかったということなのだな……』

 

「クリムゾン・ドラゴニアス……」

 

『だが、ガンダムと詩巫女が揃った今なら叶えられるのかもしれないな』

 

「それじゃあ……!」

 

 2人の顔を見て、クリムゾン・ドラゴニアスは縦に頷く。

 

『あぁ、私も此度の戦に参加しよう。これを最後の戦争とするために』

 

「本当ですか!ありがとうございますっ」

 

 象徴の了承を得て、ジャンヌの声は喜びに高まる。後は詩竜超克の儀をするだけである。ジャンヌは早速超克の儀を行うことを伝える。

 

「では、早速超克の儀を……」

 

『そうだな。お願いしよう……超克の儀のフィールドを展開する。そこに入って、詠うんだ』

 

 クリムゾン・ドラゴニアスが頭で指示した場所に、魔法陣が形成される。ハジメに相槌を打つと、ジャンヌはその中へと入る。

 体に満ちる魔力を感じ、ジャンヌは大きく息を吸う。学園で受けていた儀式の内容を思い返し、詩竜双極祭の課題曲を詠い出す。

 

 

 

 

「―――――♪」

 

『………………』

 

 

 

 

 詩巫女が嫌いだったとはいえ、これでも名誉詩巫女のクリエの娘。詩巫女養成科の授業も人並みに受けていたその歌は、控えめに言って美しい物だっただろう。間近で耳にしたハジメの口は自然と開き、視線は釘付けとなる。後方で聞いていた者達は遠くて見づらいものの、グランツやリリー、それにグリューネは各々に称賛や驚嘆を見せる。

 クリムゾン・ドラゴニアスはその詩を静かに聴いていた。ツインアイを保護するカバーを瞼の様に閉じ、じっくりと聴き入る。詩に共鳴して、魔法陣は輝きを更に激しくさせていく。魔法陣はジャンヌの周囲を覆い、何重にもなって回転していく。最後に差し掛かると、更にジャンヌは詩に想いを込める。自分を護ってくれた人達、育ててくれた人達への感謝を込めて。

 詩が終わると、魔法陣の輪は完全な輝きを見せていた。やがて魔法陣はジャンヌの周囲を離れ、象徴のもとへと向かっていく。象徴の首の付け根、胸元とでも言えばいいだろうか。その部分に埋め込まれた黄金色の冠状のパーツに球体状の魔法陣は溶け込んでいく。魔法陣を取り込み、身体の輝きを増していくクリムゾン・ドラゴニアス。完全にそれを吸収し終えたクリムゾン・ドラゴニアスは、ジャンヌに声を掛けた。

 

『ジャンヌ……お前の詩、確かに受け取った。私のパートナーとして、よろしく頼む』

 

「クリムゾン・ドラゴニアス……!ハイっ!」

 

 その言葉を聞きたかった。もしかするとダメなのではと思っていたが故に、その言葉は自然と喜びと涙が出てしまう。両手で涙を拭うジャンヌに、ハジメがそっとハンカチを手渡す。

 

「良かったですね、お嬢様」

 

「うん……うん!」

 

 象徴との絆を結ぶ。そうしてようやく、ジャンヌは呪いに打ち勝ったのであった。

 

 

 

 

「やった……のか?」

 

「みたいね……あんなにジャンヌ喜んでいるみたいだから」

 

「お嬢様……!」

 

 ジャンヌ・ファーフニルが象徴に認められた。その事実をアレクやグリューネ、ネア達は各々に喜びの声を挙げた。民間人のレヴとリッドが感動をそのまま口に出して大喜びする。

 

「すげぇ……流石だぜ、ジャンヌさん!」

 

「やっぱり銀月の竜姫って言われるだけの事はあるんだ……。他の人と全然違う実力……!」

 

 そんな彼らの喜びを見ていると、グランツも頬が緩む。横で護衛の目を絶やさないリリーもそれを見ながらグランツに聞く。

 

「良かったですね、総司令」

 

「あぁ。これで全ての用意は整った。それに父さん達に報いれたと思うよ」

 

「そうですね。ですが、まだ本番が残っている」

 

「そうだね。次はここから解放しなければ……よし、ドラゴンケージ解放の準備に掛かれ!」

 

『了解!』

 

 グランツからの指示に従い、護衛人達がすぐさまこの檻の解除を始める。天井の隔壁をすべて開き、クリムゾン・ドラゴニアスを外へと出すのだ。壁に埋め込まれた制御ユニットを操作していく護衛の軍人達。

 天井から轟音が響くと、隔壁が次々と開いていく。全24階分の隔壁が埃を落としながら開いていく。護衛から手渡されたマイクに向かって、ハジメとジャンヌ、それにクリムゾン・ドラゴニアスに通達する。

 

「ありがとう、ハジメ軍曹、ジャンヌ臨時伍長。クリムゾン・ドラゴニアス、私は此度の革命の指揮を執ったフリード家現当主グランツ・フリードだ。300年という長い時間を待たせてしまい、本当に申し訳ない」

 

 象徴に対し、フリード家の代表として謝罪する。300年という時間が1400年以上を生きている象徴にとっては、短い時間かもしれないがそれでも謝らずにはいられない。自分の代で終わらせたいと思っても果たせなかった歴代フリード家当主、特にジード・フリードへの謝罪も込めて、その想いを背負うものとして。

 象徴はこちらに視線を向けると、駆動音を鳴らしつつ脳内に話しかけてくる。

 

『そうか、お前がフリード家の……。ジードはしっかりと役目を果たしてくれていたようだ。彼に代わり礼を言う。ありがとう』

 

「!……いえ、300年もお時間を頂いたのです。達成できなければ、名折れです。それにここまで来られたのは、彼らやここまで支え続けて来た者達のおかげ。彼らを誰一人掛けること無くして、この結果はありません」

 

 ややかしこまりつつも、最後には苦笑を交えるグランツ。その中に浮かんだ、ジャンヌの祖父の顔に対してだ。彼女の祖母が死んだときには強く当たってしまった自分だが、彼が居なければクリエもジャンヌもいない。ようやく彼に対して心置きなく会うことが出来るだろう。もっともその相手はもうこの世界にはいない、いるとすれば暗い地面の下であるのだが。それでも土産話が出来ただろう。

 そのやり取りをしているうちに、檻の中に光が差し込む。照明の光ではない、外の自然が生み出す光源の光だ。丁度昼間の光が象徴に差し込む。陽を受けて紅の装甲はより光を増して輝きを放つ。空を見上げるクリムゾン・ドラゴニアス。グランツは再びマイクに向かって話しかける。

 

「もう縛るものはない……ここから、外へ!」

 

『あぁ。2人とも、私の背に』

 

 クリムゾン・ドラゴニアスも了承するとハジメとジャンヌの2人を自身の背中へと案内する。あまりの事にジャンヌが驚いてしまっているが、そこでエスコートするのはハジメ。象徴をとても上の存在と認識しすぎていないからかそれに素直に従い、ジャンヌを連れてその頭に乗ってから背中近くに運んでもらって共にジャンプする。2人が背中に移動した頃には、グランツ達も檻の内側に入ってその光景を見守る。

 そして、その時が来た。空を見上げ翼を広げ、各部スラスターからDNを放出する。徐々にその巨体が浮かび上がる。翼を羽搏かせ、その巨体を一気に上空へと浮上させた。風圧で、檻の中が凄まじい嵐の中のように荒れ狂う。

 

「ぬぅ!!」

 

「ひゃあ!?」

 

「大丈夫かい、ネア」

 

 風圧で倒れ込みそうになるネアを、咄嗟にリリーが支える。グランツも護衛の軍人数人に護られ、他の面々もパートナーに支えられる。風が収まったころには、既に象徴達の姿はない。若い者たちが我先にと中央へ向かい空を見上げる。グランツも自らのスピードでたどり着き、護衛に支えられながら空を見る。

 300年前この国には1匹の紅い巨竜がいた。詩巫女と呼ばれる竜人族の女性を介して、国の象徴として戦う巨竜。激化する戦争の中で、巨竜は詩巫女を庇って死んでしまった。だが、私利私欲を求めた統治者たちの陰謀で巨竜は望まぬ機械の体で蘇生された。その上詩巫女の女性に対し、呪いをかけた。象徴、そして象徴を護る竜騎士はその行いに怒り、共に復讐を望んだ。彼らを断罪する為に、そして彼女の未来を閉ざさないために。彼らの悲願は300年後の今日、遂に果たされたのだった。300年間待ち続けた象徴とその当時の詩巫女の子孫、そこに加わった、竜騎士と呼んで差し支えない黒き救世主……いや、黒き機動戦士(ガンダム)の装依者と共に、ドラグディアの空へと繰り出したのだった。

 今度こそ殺させない。そんな想いでグランツは象徴を見上げていた。

 

 

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今回もお読みいただきありがとうございます。

ネイ「これで戦争に対する準備は整った、という感じでしょうか」

グリーフィア「戦力としては象徴は申し分なさそうね~。ただマキナス側も前話で切り札投入できるようになってるみたいだから油断は出来ないけど」

まだドラグディア側はマキナスの象徴が復活していることを知りませんからね。どう響いてくるのか。
それよりビルドダイバーズReRIZE始まったね(゚∀゚)ジャスティスナイト隠者がベースかよ、胸部で分かるかどうかじゃないの原型機(゚Д゚;)

ネイ「アースリィガンダムの機構……なんとなくシュバルトゼロガンダム・イグナイトに似てますよね。支援機が機体の四肢になるって感じで」

( ゚Д゚)うちのはジェニオン・ガイの機構を独自解釈したから……って言いたいけど、結局のところアースリィにも似てるし他でも同じ例はあるだろうから特に何もないです。しかしOPのマギーさんは味方なのか敵なのか……(;・∀・)

グリーフィア「あの人前作でも疑われてなかったかしらぁ?ラスボスじゃない?とかってネットで言われてたみたいだし」

それもあって今回のOPでの描写が不安を掻き立てる……しかも初代ビルダイ勢と新主人公君因縁ありそうだし……ただそれが初代ビルダイ勢認知していない可能性も高そうなんだよねぇ(´・ω・`)不幸な事故というか

グリーフィア「はいはい妄想はそこまでにしておいて。次回は黒の館DNみたいね」

黒の館DNでは少し先取りした情報も展開する予定です。主にシュバルトゼロガンダム関連でね。

ネイ「それでは次回もよろしくお願いします」


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黒の館DN 異世界戦争編 第8回 前編

どうも、皆様。蒼穹のファフナーHAE見終わって、感動と共に次はいよいよEXODASかぁ(´・ω・`)となっている藤和木 士です。まぁまだ途中から見なくなった第10話以降くらいまでは割と耐えられそうなんですけどね。

今回は黒の館DNの第8回となります。前編では登場人物とドラグディアのMSドラグーナ・バルムンクと総司令官機グラン・ドラグ・フリーディアの紹介になります。

それでは前編をどうぞ。


 

 

士「来た!第1部最終章!作者の藤和木 士です。黒の館DN始まりますよー」

 

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです。この第1部もといレベル1では異世界マキナ・ドランディアでの戦争が始まろうとしている場面での黒の館DN開館ですね」

 

レイ「アシスタントのレイだよーっ!結構紹介するMSが多めなのかな?黒の館DN大活躍かもー♪」

 

士「レイさんの言う通り、って感じなんだよね……今回は第8回までの登場キャラとフォーンのMSドラグーナ・バルムンク、そして先出しになりますが総司令官機のグラン・ドラグ・フリーディアとガンダムの母艦となる新造艦トロイ級、シュバルトゼロガンダムの最終決戦仕様「ノヴァ」、更にGワイバーン・フルアーマメントの紹介になります。前後編になりますね」

 

レイ「バルムンクは凄かったねー。ジャンヌちゃんと繋がっていないとはいえ、シュバルトゼロガンダムを圧倒していたし!」

 

ジャンヌ「もし元さんが力に覚醒していなかったら、危なかったですね」

 

士「では早速紹介に移ってもらおうかな。レイさん」

 

レイ「はい!では早速登場人物から紹介するよー」

 

 

 

 

ギルフォード・F・マキナリアス

・第3章ラストにてマキナス大統領を殺し、トップへと君臨した男性。40代。マキナス皇帝を名乗る。

 彼の家系はかつてマキナスを治めていた皇帝の一族であり、栄華を誇っていた。しかし108年前に今の政府を築き上げた始祖達が地位の独占に業を煮やし、反乱を起こす。それにより当時のマキナス皇帝は殺害。その子どもであった当時生まれたばかりの彼の祖父は曾祖母と共に、侍女達の手で逃走した。以来彼の家系はマキナス政府の手が及ばないようにひっそりと暮らしていたという。しかし108年の年月を経て、彼は両親、祖父母の言葉を受けて育った彼は遂に復讐を開始。侍女たちの子孫が築き上げた秘密の皇帝軍を結成、軍の一部精鋭も味方に付けてマキナス政府官邸を襲撃して大統領を殺害。国中にそれを伝え、108年前の復讐を達成すると共にその続きと称し、ドラグディアとの戦争を宣言した。

外見モデルはポケットモンスターシリーズのダイヤモンド・パール・プラチナのギンガ団総帥「アカギ」。

 

 

トレノ・セブン

・ドラグディア軍の情報部所属のエージェント。軍の司令部連携チームのリーダーでもあり、ローレインの上司かつ先輩にあたる。

 見た目は誠実な人間であり、女性からの人気が高いものの頭の中ではかなり打算的な考えを有している人物であり、手柄を譲るときもこちらに一定の報酬が来るように調整する。ローレインのドラグーナ・ラプターも戦力強化の面を取って推薦する形で譲渡させている。実力はチームのリーダーを務めるだけあって非常に高く、ローレインを軽くひねるほどであるという。情報部の実力もガンダム暴走時の写真を手に入れるなどしている。専用機はドラグーナ・シーカーを順当に強化した「ドラグーナ・マジカルスター」。

 普段は家が古くからの魔術師一家であることから、家業の手伝いとして御守りづくりを行っている。巷では「ミスターラッキー」というカリスマ職人として知られている。

 人物外見モデルは鉄のラインバレルの道明寺誠。髪色をオレンジに変更している他、瞳の色が青となっている。

 

 

ハッター・フリード

・ドラグディア軍の参謀を務める男性。フォーンの弟であり三男。歳は41歳。フォーンの事は頼れる兄として尊敬している。既婚者であり、子どもが2人いる。

 別名「魔法の軍師」と呼ばれる軍団指揮のエキスパートで、ドラグディアとマキナスとの最終戦争ではその作戦を立案するに至る。彼自身はガンダムの戦闘を映像で確認し、そのうえでプランを作成しており特攻に見えるプランでも最良の考えを見出している。フォーンの復帰に関して話は事前に聞いていたものの、驚きが多すぎて言葉が出なかった様子。

 

 

・クックドゥー・チズキン

 ドラグディア軍に属する軍人の1人。階級は中佐。年齢は30代後半で髪型は鶏冠頭。如何にも嫌味を言うタイプの軍人であり、元とジャンヌの姿を見てお子様と称する。

 隊の指揮権を持っているが、立場を大きく扱うだけの軍人であり、隊の内部でも隊長の変更を要求されている。戦闘もマシンガンの弾幕とキャノン砲の火力で押すタイプで技術はそれほどではない。

 なお名前は鶏の鳴き声の英語版と、鶏の英語名称のチキンをもじったもの。

 

 

シン・フリード

・ドラグディア軍の一大勢力「シン・アーミーズ」を指揮する男性。階級は中将。フリード家の長男であり次期当主候補の筆頭でもある。52歳。

 戦闘・指揮において高い能力を示し、次期総司令の座も確実とされており兵士達からの人気も高い。相談事などにも肩身を入れて聞くタイプの人間であり、若い頃は弟たち、更に義弟であるガンドの相談相手となった。日常面・戦闘面において総じて完璧に近い人物である。

 人物外見モデルはコードギアスのビスマルク・ヴァルトシュタイン。髪が薄茶色となっている。

 

 

レイ「ここまでが登場人物紹介になるよー。あ、皇帝さんもここで紹介なんだね」

 

士「そうですね。一応第3章までの紹介になっているけど、ここで先に紹介しておいた方がって感じです」

 

ジャンヌ「それでも既に登場しているエクス・サイズだったり、ランド、メルといった人物だったりは紹介がまだみたいですね」

 

士「うん、彼らはMSも出てきてからだから、最後の黒の館DN辺りで紹介かな?もしかしたらもう少し手前になるかもだけど」

 

レイ「にしても、あのクックドゥーって部隊長さん、嫌な感じだよねー」

 

ジャンヌ「なんというか、嫌味な上司と言いますか……その人に限った事じゃないですが、そんなことを責めるよりもマキナスのMSをどう攻めるかといった方がいいと思います」

 

士「責めると攻めるを掛けた高度なギャグなんです?(´・ω・`)ア○トじゃないとぉ~?」

 

ジャンヌ「ふふふ、どうやら作者はひき肉になりたいようで」

 

士「ごめんなさいっ!( ;∀;)」

 

レイ「あはは……。さて次はフォーンさんの機体だね。ドラグーナ・バルムンクだっけ」

 

士「そうですね。バルムンクという名前から気づいた方もいるかもしれないけど、実はこれガンドのガンドヴァルの後継機だったりするんですね。ガンドさんのキャラモデルがFateのジークフリートさんってところからそうなってるよ」

 

ジャンヌ「あら、でも胸部は別に大きくなってないですよね?この機体」

 

士「別にガンドの体格が大きいからってわけじゃないんだけどなぁ(´・ω・`)あ、あともう1機、グランツさんの駆る総司令官機のグラン・ドラグ・フリーディアも紹介します」

 

レイ「前々から名前は出て来てたやつだね」

 

士「そうそう。ちょっと次の黒の館に盛り込むのは無理そうだったからね。今回に紹介ッさせてもらうよ」

 

レイ「じゃあ2機紹介するよっ、どうぞ!」

 

 

 

MS-DD08SP-FF

ドラグーナ・バルムンク

 

 

・ドラグディア軍が新たに開発した遊撃型MS。ドラグディア軍に復帰したフォーン・フリードの専用機である。

 系列的にはドラグーナ・ガンドヴァルの系列に当たる。それも後継機である。ダブルジェネレーター仕様でもあり、搭載位置は背部バインダー内。胸部には大容量コンデンサーを搭載する。特徴的な構成となっているが、これは後述する武装のためと戦闘スタイルの関係である。

 背部バインダーは前方がジェネレーター直結のハイブラスター、後方がジェットスラスターで構成されており、高機動と砲撃性能を併せ持つ。ビーム発射時にはジェットスラスターが放熱の役割を担い、余剰熱がDNと共に放出されるため排熱問題を解決。またジェネレーターの放出DNを推力に生かしやすい構成となり、戦闘機動にそのまま役立つようになった。

 それ以外にも全体的に射撃性能を高めており、ガンドヴァルがモデルとは思われない構成となっている。だが背部の構成や武装の一部類似などもあり、やはりこの機体がガンドヴァルの系譜であることの証明となっている。ただハードポイントシステムを排しており、武装の多様性は失われている。

 本機は本来ガンド専用機となる予定だったがその前にガンドが戦死。機体の処遇について考えられていた際にフォーンが対ヴァイスインフィニットガンダム用に機体を要請したことでフォーン専用機となった経緯を持つ。結局ヴァイスインフィニットは新たなシュバルトゼロガンダムにより撃退したものの、その後のジャンヌのパートナー相手を見定めるためにデータ内でシュバルトゼロガンダム相手に使用。ガンダムと互角の戦闘を展開した。必殺のDNAはガントレットダブルビームライフルから光剣を生成し、光剣から枝分かれしたビームを浴びせる「バルムンク・フルバースト」。そのまま斬りかかるバージョンも存在する。

 機体コンセプトとしては「射撃戦も行えるガンダムバエル」。背部バックパックはバエルに似せ、戦闘スタイルは鉄血のオルフェンズのような格闘戦ではなく射撃戦を意識した。また名称のバルムンクはニーベルングの歌に登場するジークフリートの剣から。裏設定的にはガンドの外見モデルであるFateシリーズの英雄ジークフリートの宝具の名称から。機体カラーリングは青と黒、アクセントに白のラインのトリコロール。

 

【機能】

・カメラ切り替え機構

 頭部のカメラを切り替え、戦闘に対応する共通機構。開口時にマルチロックオンを行う。

 

・専用ホーンアンテナ

 ガンドヴァルと同じ機能を備えたアンテナ。搭載位置は額から2本伸びる。

 

・DNウォール

 機体の左ソードシールドの上から被せられる、専用ユニットから形成する防御兵装。ガンダム以外では本機がMS装備として初となる兵装……のはずだったが、ドラグーナ・ラプターが先に装備していたことから、初ではなくなってしまった。

 

・ダブルジェネレーター

 ガンドヴァルと同じジェネレーター2個を搭載する状態。原型機であるガンドヴァルは胸部に並列した状態で内蔵していたが、本機においてはバックパックにジェネレーターを内包し、機体本体の軽量化と放出DNの有効活用を目的とした。

 なお胸部には大容量コンデンサーが内包されており、背部バインダー破損時のDN供給先として使用される。

 

 

【武装】

・ガントレットダブルビームライフル

 ガンドヴァルが装備していたダブルビームライフルと、ガントレットブースターの機能を1つに統合した複合兵装。右腕部に装備される。

 ガントレットの下にビームライフルの銃口を持ち合わせる。この銃口は不要時に格納され、近接戦での対応性を上げている。以前と同じくガントレットそのもので殴る戦術も可能であるが、ビームライフルを格納する関係とフォーンの戦闘スタイルから多用はされない。加えてブースターの機能も喪失している。なおガントレットと名がついているが、前身と同じくどちらかと言えばシールドダブルビームライフルという名前が正しい。殴りつける運用が多用されるためにこの名前が付けられている。

 武装モデルはフルアーマーガンダムのダブルビームライフル。持ち手はないため、発射指示をイメージして機体側に出すことで発砲する。

 

・ビームブレード

 ビームサーベルよりも片側に反りの入った光剣を形成する棒状のユニット。手首装甲内に装備される。反りを出すために出力ユニット外部が一か所だけ出っ張っており、端末自体も長方形状になっている。

 斬馬刀に近い形状のビーム刃であり、ビーム形成時の出力補助も合わさって切れ味は抜群。

 

・グレネードランチャー

 腰部に2発ずつ計4発を備えた実弾発射兵装。主に追撃の為の兵装となっている。

 

・ジェネレーターバインダー

 背部バックパックを形成するユニット。バックパック基部の上部に接続される。バインダーそれぞれに上部からハイブラスター、ジェネレーター、ジェットスラスターが備わっており、この機体の戦闘の軸を担う。

 ハイブラスターはガンダムでの運用後エネルギー効率を上昇させた改良型を搭載しており、ダブルジェネレーターでようやく実用にこぎつけた。ただし1発(双発の為正確には2発)でも放熱が必須となっており、連射までは出来ない。だがそれでも現MS相手には十分な性能を有しており、アドバンテージは取っている。

 ジェットスラスターは原型機のジェットスラスターバックパックをベースにドラグーナ・レドルのアレク機などのプレートジェットスラスターのデータからアップデートを果たし、ジェネレーター自体の放出DNも機動性に積極的に運用することを考えられた構成となっている。

 ちなみに本兵装はガンドヴァルのグラン・フルバスターから発展させた兵装になる。

 モデルはガンダムバエルの背部バックパック。原型機のレールガンをハイブラスターに換装して射撃威力を高めている半面、連射性は落ちた。

 

・ソードシールド

 通常のシールドに更に上からDNウォール発生器を取り付けたマルチ・ウエポン・シールド。左腕に装備される。

 シュバルトゼロガンダム[PerseusⅡ]から得られたデータをもとに構成されており、先端からは両刃のソードユニットを展開することが出来る。ソードユニット自体はマキナ・ブレイカーとは違うものの、単体での切れ味に特化しており重量もそれなりにあるため威力は変わらない。ただし取り回しは悪く、本機の機動性で補っている面がある。使いづらい反面、威力は充分な兵装。

 武装モデルはガンダムエクシアのGNソード。収納・展開法はデジモンシリーズのオメガモンのグレイソード方式を取っている。

 

・スパイク・キャノン

 機体膝部に装備される、スパイク兼ビームキャノン砲。膝の装甲を兼ねた砲身となっており、ビーム発射時には膝の正面装甲が外れ、前方に向けられる。砲身がスパイクの様に打突性能があるため格闘戦で蹴り込みを入れることでダメージを与えられる。

 本機では一斉射時に使用されるほか、追撃にて膝を向けたまま砲撃、あるいは蹴りを入れるように使われる。

 

 

MS-DC00GF

グラン・ドラグ・フリーディア(グランツ仕様)

 

機体解説

・ドラグディア軍の総司令であるグランツ・フリード元帥専用機として開発された機体。その名称は代々元帥機の名前として引き継がれている。機体カラーは黒と銀、そして灰色。

 機体そのものはその時代の最高峰のMSをベースに開発されており、マキナスの国家元首機と同じようなものである。ただし国家元首機と違い、本機は攻撃性能なども高いレベルで有しており、有事の切り札と言える性能を誇る。

 グランツの機体はガンダム復活後に大幅にアップデートを果たしており、ガンダムの機能も一部有している。ただしグランツ本人がMSの操縦にガタが来ているため積極的に戦うことは出来ない。しかし軍の象徴としての機能は充分有しているため、鼓舞の為に出るというのが主な仕事である。

 コンセプトは「ドラグディアのMSの粋を集めたMS」。近接戦を重視したセッティングとなっていることもまたドラグディアのMSの特徴と言える。またダブルジェネレーターで胸部にジェネレーターを2基装備する関係上、胸部は大型化しておりドラグーナ・ガンドヴァルにシルエットが近い。

 

【機能】

・カメラ切り替え機構

 機体の竜型頭部を開閉することでカメラの機能を切り替える機能。ドラグディアMSにおいてはほぼ全機が有することになっている。

 本機においても近距離・遠距離用のカメラを切り替える機能となっているが、他にもステルス用センサーも積んでおり、暗殺を防ぐ構えも見せている。

 

・ダブルジェネレーター

 機体の出力を増加させるためにジェネレーターを2基搭載する仕様。本機においては胸部に2基装備している。そのため胸部が大型化、重装甲化している。

 

・DNフェイズカーボン

 機体装甲を構成するDN変色装甲。国家元首機・軍最高司令官機、そしてガンダムに採用される装甲である。

 本機のカラーは黒と金、灰色を構成しており、機動性と防御性能、機動性に秀でたカラーリングとされている。総司令官は指揮をすることを優先することから、このようなカラーリングとなっている。

 

・DNウォール

 機体の肩部に装備されたシールドから形成されるDNの防壁。ガンダムから用いられた技術の1つ。

 性能が防御に振られているためか、ウォール発生器2基で機体全体を覆うことが出来る。更に後述するDNプロテクションも含めてガンダムの防御力とほぼ同等の性能を得ている。

 

・DNプロテクション

 ビームを専用端末から発生させて、機体を覆う防御兵装。ウォールとの違いはDNが粒子のままかビームであるか。

 本機の場合は背部にプロテクション形成に特化したフィンファンネル「プロテクト・フィンファンネル」から生成する。

 なお、本兵装はマキナスのビームシールドとほぼ同質の兵装である。

 

 

【武装】

・マキナ・ガンブレイカー

 マキナスのMSを撃滅する為に作られた大質量格闘兵装「マキナ・ブレイカー」に銃の機能を取り付けた、新型兵装。

 以前は通常のマキナ・ブレイカーを装備していた本機であるが、ガンダムの技術を得てつい最近装備された。剣の峯にあたる部分に銃口が備わっており、剣の側面に折りたたまれたサブグリップも使って狙いを付ける。なるべく接敵を避けたい本機において重要な兵装である。

 武装モデルは機動戦士ガンダム00V戦記のダブルオーガンダム7S/GのGNソードⅡブラスター。

 

・グラン・フルバスター

 ガンドヴァルにて装備されていた胸部ビーム砲。2門を装備する。ガンドヴァルと同一の兵装であるため、低出力での目暗ましも可能。ただし本機においては近づけさせないことを踏まえて連射・拡散出力を保っている。

 武装モデルはサイコガンダムMK-Ⅱの腹部ビーム砲。

 

・ウエポンケージシールド

 機体の両肩部に装備される武装シールド。ドラグーナの持つシールドよりも若干小さい大きさを持つ。

 シュバルトゼロガンダム【Perseus-Ⅱ】にて運用されたマルチ・ウエポン・シールドⅡの発展型であり、シールドの裏面、機体との接続部にダブルビームライフルとブースターを備える。またシールドにはDNウォール発生器を内蔵しており、2基同時稼働で全体にウォールを形成可能。

 武装モデルは漫画版機動戦士ガンダムブルーディスティニーのブルーディスティニー・フルアームドの2連ビームライフル。ライフルにブースターをくっ付けるという発想はガン・ブースターから引き継いでいる。

 

・ホーミングレーザーコンテナ

 機体脚部に装備される誘導式レーザー発生器。円形のコンテナユニットとなっている。円の蓋を外側にスライドさせることで発振器が露出し、発射する。

 本機における攻防の要であり、敵を近づけさせない、逃がさないための兵装となっている。

 武装モデルは蒼穹のファフナーのザルヴァートルモデルのホーミングレ―ザー。

 

・プロテクト・フィンファンネル

 機体の背部ウイングを構成する、ファンネルユニット。4つのウイング部と1つの尾部から成る。

 5基すべてで機体を覆うプロテクションを形成する。最低2基あれば1面のみのプロテクションが形成できるため、1基にならなければ使い物にならないということはない。

 

・ビームサーベル

 背部バックパックのウイング内に装備する格闘兵装。シュバルトゼロガンダム【リペアツヴァイ】とほぼ同じ要領で抜き放つ。なおマキナート・コマンドの装備する強化タイプのビームサーベルとなっている。

 

 

士「以上が前半での紹介内容となります」

 

レイ「グランツさんおじいちゃんなのに頑張るねぇ」

 

ジャンヌ「でもどちらかと言えば、こちらは脱出機としての側面が高そうですよね」

 

士「そうそう。次からの戦争開始直前の士気高揚の為に出すつもりなんだけど、多分そこだけの登場になるのかな?」

 

レイ「どこぞの皇帝も機体のコックピットから出て剣振って士気高揚させていたもんね!」

 

ジャンヌ「ギ○スの第2期の話ですね」

 

士「よく覚えていたねジャンヌさん(´・ω・`)」

 

ジャンヌ「藤和木が録っていたのを見せられていましたからね。それとバルムンクのコンセプトがまさかのバエルなんですね」

 

士「アグニカの魂!(゚∀゚)……とまぁ、バックパックにジェネレーター2個積みっていうのを考えた時点でバエルっぽくなるってことで設定したんだよね。武器も変則的に主兵装の二刀流にしたし」

 

レイ「でもダブルビームライフルとか、ガンドヴァルの事も意識してるね。あっちも小型のダブルビームライフル持ってたし」

 

士「あちらが射撃をけん制としてたのに対して、こちらは射撃もこなせる格闘万能機といった感じになっています。後継機としての設定なので、書いている通り本来ならガンドの機体となるはずだった機体だったんですが、ガンドが死んでしまったのでフォーンが今回引き継いだ形になりました。実は最初はこのバルムンクかガンドヴァルから今回のガンダム最終決戦仕様の[ノヴァ]に武装を採用しようかなと思ったんですがね。やめちゃった(´・ω・`)」

 

レイ「えー絶対そこは盛り上げるべきだよー」

 

ジャンヌ「やめたのには理由があるんです?」

 

士「まぁその武装を引き継ぐのはやめたけど、代わりに別の物引き継ぐって感じにしたね。何かは秘密だけど。それでは前半はここまで。後半もどうぞ」

 




前編はここまでです。この後後半へと続いて行きます。
後半もよろしくお願いします。


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黒の館DN 異世界戦争編 第8回 後半

どうも、皆様。引き続きご覧の方は改めまして。最近始めたアリス・ギア・アイギスをやってよかったと思う、藤和木 士です。ヴァイスのデザインとかこっちの武器に反映できそうで出すときが楽しみです。

さて、第8回後半ではガンダムの新たな母艦の同型とシュバルトゼロガンダムとGワイバーンの最終決戦仕様の紹介となります。

それでは後半もどうぞ。


 

 

士「では後編も参ります。作者の藤和木 士です」

 

ネイ「アシスタントのネイです」

 

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよ~。後編じゃもうすぐ始まる機竜大戦に向けて調整されたシュバルトゼロガンダムとGワイバーンそれにドラグディアの新造戦艦の紹介になるんだったかしらぁ?よく1日で仕上げられたわねぇ」

 

士「まぁ、ホントにね(´・ω・`)とはいえ時間に合わせるべく、武装は既存の改造だったり、前々から開発してたやつをこっちに回したり、あとシュバルトゼロガンダム[リペアツヴァイ]の武装として設定されていたけど装備していなかった武装を装備したっていう流用多めの構成で完成させているよ。あ、Gワイバーンの装甲に関しては替えの装甲の開発が間に合わなかった部分に既存機の装甲被せているって設定だから、結構脆いかもしれないけれど(^ω^)あと、戦艦は前々から作ってあったので」

 

ネイ「笑顔で言える精神が怖いです」

 

グリーフィア「つまり、それ言っても大丈夫ってことだから、壊れることはないんだろうけど♪」

 

士「そんな事言わないでおくれよ……(´・ω・`)では紹介の方お願いします」

 

グリーフィア「はいはーい。じゃあ今回は……あ、言い間違えた方が良い?」

 

ネイ「姉さん……」

 

士「それ言うくらいなら言う前に間違えてくれ(´・ω・`)間違えなくていいから」

 

グリーフィア「分かったわ~。じゃあ後半紹介するのは、シュバルトゼロガンダムの最終決戦仕様「ノヴァ」とGワイバーンの改修機「Gワイバーン・フルアーマメント」そしてトロイ級機動強襲艦よぉ」

 

 

 

形式番号 DNGX-XX000-SZver2 [Repair-Ⅱ Last battle custom-A『NOVA』]

シュバルトゼロガンダム [リペアツヴァイ 最終決戦仕様A『ノヴァ』]

 

 

機体解説

・ヴァイスインフィニットとの対決を終えたシュバルトゼロガンダム[リペアツヴァイ]をドラグディア、マキナスの最終戦争「機竜大戦」のために修復・改修した最終決戦仕様。

 主な改修点は機体の武装追加と既存武装のイグナイト時に合わせた改修、そして専用モビルブースター「ヘッジホッグ」とのドッキングである。モビルブースターの特性も合わせて重砲撃高速突撃機としての性能を付与された本機はマキナス領地への最速到達を考えられており、圧倒的なスピードで領空突入後は速やかなる任務達成を行い、離脱する。なおこの最終決戦仕様はAとなっており、最終決戦仕様Bはモビルブースターを外した形態で名称はかつての英雄、ジード・フリードの機体「ドラゲス・ドラグナイト」の名称『DragKnight(ドラグナイト)』を頂いている。機体カラーリングは機体本体が黒と灰、モビルブースターは黒と紺でカラーリングされている。

 コンセプトとしてはV2アサルトバスターガンダム+ゴトラタン、もしくはGセルフ アサルトパックであり、モビルブースターの要素がゴトラタンの長射程ビーム砲およびGセルのアサルトパックの要素を持っている。

 

【追加機能】

・マルチロックオン

 機体のプログラムに新たにインストールされた多重ロックオンシステム。一斉攻撃を行う際、そのロックオンをパイロットの意識を向けさせるだけで自動追尾し、砲撃することが可能となる。

 本システムは元自身が行う以外にも、エンゲージシステムのジャンヌの側から行うことも可能である。

 システムのモデルはマクロスシリーズにおけるミサイルのマルチロックオン。

 

・ブースター切り離し

 機体に装着されたモビルブースター「ヘッジホッグ」とのドッキングを解除する。解除後は最終決戦仕様B「ドラグナイト」へと切り替わり、ブースターは特攻兵装として機能する。

 

 

【追加武装】

・メガ・ビームライフル・ゼロ

 [リペアツヴァイ]にて使用されるビームライフル・ゼロに、追加外装パーツを装着して大出力化した大型ビームライフル。腰背部に装備する。ブースタードッキング時にはブースターに格納され、必要時にブースターから射出されて手元に来るように自動操作される(マイクロスラスター付き)。

 この高出力型は既にシュバルトゼロガンダム[リペアツヴァイ ファーフニル]の紹介にて言及されていたが、本兵装はこの実戦投入前に既に改造が施されている。というのも、イグナイトの腕部が既存武装を持つことが出来ないことが判明し、持ち手付近を改良したためである。改造にあたりトリガー部の指を入れる部分の大型化、通常時のグリップへ銃の後部ストック下部から追加グリップが合体するようになりトリガーを引く、エネルギーを送ることが可能となった。

 武器モデルはνガンダムおよびHi-νガンダムのHWS仕様のメガ・ビームライフル。

 

・ブレードガン・ニューC

 [リペアツヴァイ]より引き続き装備する実体剣と銃の複合兵装。本兵装もトリガー部が改装され、ブレードモード時の持ち手伸縮、そしてトリガー部を引き出してイグナイト用トリガーの増設を行った。装備数は4本へと増加している。

 

・ニューオーダーシールドC(カスタム)

 両肩のボールアーム・ハードポイントに新たに装備される、改修型シールド。表面からみた感じでは変わっていないものの、裏側が変化している。シールドの裏縁に沿って新開発の「レイ・アクセラレーター」を装備しており、攻撃に指向させた運用が可能となっている。

 

・レイ・アクセラレーター

 シールド裏の縁に装備される、粒子加速装置。シールド裏にそれぞれコの字の形で装備される。

 簡単に言えばビームの発振装置であり、外縁に向けて斧のような刃渡りのビームサーベルを発振できる。だが注目すべきは中央の部分のパーツ。中央にはこれまで通りビームマシンキャノンが装備されているのだが、この武装をキャノン前部に展開、通すことで本来ビームマシンキャノンが得るはずだった超過出力「ハイパーフルバースト」の出力に到達できるようになった。加えてそのままの状態でもビームマシンキャノンから巨大なビームサーベルを出力させて四刀流で戦える。

 本装備はガンダム同士の決戦前に制作されていたが、武装が過剰威力となることから装備を見送られていた。

 形状のモデルとしては新機動戦士ガンダムW デュアルストーリー G-UNITのガンダムLOブースターの武装の1つ、バインダーに装備したスラストシザースがベース。

 

・マキナ・ブレイカーⅡA

 機体下部バーニアに2本装備される、実体剣兼ウイングスラスターパーツ。こちらの変更点としては新たに持ち手が峰の部分から展開し、イグナイトが持って使用できるようにした程度である。ただしイグナイトの馬力から繰り出される重量斬撃攻撃は容易く装甲を斬り裂く。

 

・ツイン・ヴァリアブル・キャノン

 機体ウイング側面のハードポイントとその反対面を固定して装備される、長射程ビームキャノン。両翼に2門装備される。

機体前面に固定されるため、射角に乏しいもののモビルブースターとの併用時には前面への突撃がメインとなるため侵攻時にはあまりデメリットにならない、むしろ突撃への支援に使いやすい兵装となる。更に接近されたとしても砲身前部が変形して広範囲へのビームシャワーを放つクラスターモードが使用可能。破損時・不要時にはハードポイントのロックが外れ、爆砕ボルトでその反対側も除去。被害を最小限に留めることが出来る。

 なお本装備は元々ブースターに装備される予定だった兵装であり、シュバルトゼロの場合装備位置にウイングが来ることから急遽バックパックに挟み込む形で装備されることとなった。

 武装モデルとしては機動戦士VガンダムのV2アサルトバスターガンダムのメガビームキャノン、およびGのレコンギスタのGセルフ アサルトパックの大型ビームキャノン。

 

・モビルビースター[ヘッジホッグ]

 シュバルトゼロガンダム[リペアツヴァイ]を乗り手として搭載する、大型武装ブースター。[ノヴァ]の根幹を成す武装。ヘッジホッグとは「ハリネズミ」の意味。

 モビルブースターはこのマキナ・ドランディアにおいて、MSの追加兵装としての候補にたまに挙がる兵装であった。航続力を強化して敵陣に単機で強襲、離脱できる兵器として挙がっていたものの、生産コストの高さと機動性の乏しさ、そして機体操作の複雑性からエース専用としての趣が強かった。

 しかし今回の最終決戦仕様ではシュバルトゼロガンダムの作戦目標に合致すること、また使いこなせると判断されガンダム専用として旧素体を用いて急遽製作されるに至った。

 武装は機体側面のスライドコンテナ式増加スラスター付きマイクロミサイルランチャーと上部に設置された対近接防御用クラスタービームポッド、そして両サイドアームを構成するキャノン・アームである。

 合体法としては腹部への固定と脚部をバーニアブーツと呼ばれるバーニア兼着地脚への足底部固定、そしてキャノン・アームの保持により行われる。その際マキナ・ブレイカーはブースター内部に挿入される形で格納されて腹部への装着を妨げないようにしている。上部の突き出たスラスターパーツ後方にはドッキング部があり、その部分にGワイバーンがドッキング可能。GワイバーンにDNの補給を行う。

 パージ後は自動操縦となるものの、加えて特攻兵器として運用することも出来る。というより、それも運用法として計画されており、危機に陥った際はこの特攻による状況打破が考えられている。

 武装モデルは機動戦士ガンダムSEEDシリーズの核動力MSの追加モジュール「M.E.T.E.O.R(ミーティア)」と機動戦士ガンダム00シリーズのガンダムの支援機「GNアームズ」。アームと中央ブロックはミーティアに似せ、上下武装配置がGNアームズを参考にしているイメージ。

 

・キャノン・アーム

 機体の両サイドウエポンアームを構成する、武装アーム。銃口を2門持つビームライフルと機体保護用のシールドで構成。ビームライフルは連射可能、ビームサーベル形成が可能で、素早い敵へのけん制と不意の接近・攻撃への対処を行えるようにしている。ただしアームの可動域は小さく、対処は行えても迎撃には向かない。

 だがもっと言ってしまうならそれらは主目的ではなく、本来のこの兵装の運用は、ブースターと接続しているアームユニットを引き出して、機体前面で両キャノン・アームを合体させて完成する「スピアブラスター」の運用こそが、この兵装の本来の目的である。前面に合体させた本兵装は貫通性が非常に強く、ブースターの加速力と相まって正面突破力を高めており、理論上防げる兵装はないと言われるほどの威力を誇る。難点は正面しかスピアブラスターを放てないという点である。

 合体時にはシールドが手元を含めて防御し、肩部ニューオーダーシールドも合わせて前面の隙を完璧に防ぐ。なおこの時シールドは下方を前面に向けた巡行形態となっており、砲撃を同時に行うことで更に突破力を高める。

 

・マイクロミサイルランチャー

 ブースターサイドに装備される四角形状のコンテナからなるミサイルランチャー。横5列縦7列、計35門からなるマイクロミサイルランチャーとなっている。3掃射分のマイクロミサイルを有しており、面の制圧力も高い。ミサイル全弾を撃ち尽くした際には切り離してデッドウェイトを避ける。

 

・近接防御用ビームクラスターポッド

 ブースター上部に搭載される対空近接防御兵装。接近してくる対象に向けビームの散弾をポッドの球体から放ち、追い払う。破壊性能は極端に少ないが、目くらましとしては非常によく効く。またミサイルランチャーと同じく切り離すことも可能で、切り離した際には空中機雷としてビームを無差別に発射して混乱、または爆発させることも出来る。

 なおウイングユニットはこのユニットの側面下部に収まる様になっていて、最悪ウイングに被弾する場合もある(もっともそれを考慮してビームの出力が落とされている)。

 

 

 

形式番号 DNMX-XX000-APFA

Gワイバーン・フルアーマメント

 

機体解説

・オベリスクから解放されたGワイバーンは経年劣化により機体各部が大きく消耗しており、緊急の修復が必要だった。しかし1日だけで全パーツの取り換えは厳しさを極めた。更に最終決戦とも呼べる戦闘で口部ビームキャノン一門だけでは単機行動に支障が出てしまう。そのためシュバルトゼロ[Repair-Ⅱ NOVA]に追いつけるかつ、長時間の過酷な任務に耐えられるよう、重要パーツを取り換えつつも短時間で完成させられるように調整したのが、このGワイバーン・フルアーマメントである。

 主に関節部を換装して耐久性を高めている他、被弾率の低い部分またはパーツを取り換えきれなかった部分を外装装甲で覆い不測の事態から守っている。更にウイング上面にはミサイルポッドとブースターポッドの複合ユニットを備え、火力と推力、間接的に防御能力も高めている。これら武装はイグナイトへと合体した後でも使用可能となっている。

 追加された武装のほとんどはビームを使用しない。故にエネルギー消費は最小限に留まっているが、これはどちらかと言うと出力の絞り込みよりも機動性能の低下を抑えたセッティングなのが主である。本来Gワイバーンは支援機であれど合体形態が本領であるため、普段は回避行動を行いつつ素早く合体することが求められる。このことからデッドウェイト化が避けられる形で最低限の武装を施されることとなった。なおこれはあくまでも今回の戦闘に合わせた緊急の物であるため、戦争終結後は本格的な改修を以って完成形へと昇華させる予定である。

 カラーリングはリペアツヴァイに合わせる形で黒と紺、灰色へと変更された。

 

【機能】

・合体機構

 シュバルトゼロガンダムと合体してイグナイトへと姿を変える。ただ前と違いブースターへ本体からのDN供給のためのドッキング機能が追加されており、長期の戦闘でもシュバルトゼロガンダムへと追従できるように調整された。

 

・???

 未だに明かされていない機能。解析が間に合わないこととスタートから今は無視していい機能だということで後回しに。

 

・DNフェイズカーボン

 ガンダムと同じ、機体を構成するDN浸透型装甲。改修前ではガンダムとつながない状態では機能しないという破損状態だったが、改修に合わせて合体前でも部分的に使用可能となった。

 

【武装】

・ビームバスター

 口部から発射されるビーム兵装。パーツの交換により出力が10パーセントほど上昇している。

 

・ドラゴン・クロー

 手を構成する格闘用兵装。特に改修した点はない。

 

・ジェット・パック

 ウイング可変部上面に接続された装甲に装備されるブースター。前部は蓋付きミサイルポッド、後部はブースターとなっており火力と機動力の増強に一役買う。ちなみにパーツは他機のパーツ(ドラグーナ・コマンドの派生武装の1つ、アーマーパーツのスラスター付きミサイルポッドを加工したもの)を使用している。

 形状はマクロスFのVF-25アーマードパックの追加ブースターをベースに、ウイングを挟み込まない形状を取っているイメージ。

 

 

トロイ級機動強襲艦1番艦「トロイ」、2番艦「ダンドリアス」

DD-WS07M

全長 200メートル

最大MS搭載数・25機

 

・ドラグディア軍が次世代の戦艦として開発していた機動強襲揚陸艦にあたる艦艇。木馬と呼ばれる古いトラップ建造物をモチーフとしており、ニーベルング級のMS格納ブロックを洗練した物を前方左右に備える。艦橋は他の艦と同様にドラゴンの頭部型の艦橋収納型。

 機動強襲艦の名にふさわしくなるようにエンジンブロックが独特であり、後部下部が大型の円柱式エンジンが2基ずつ計4機を横並びに設置した第1メインエンジン。さらにその上部に伸びるウイングの中間地点に同型のエンジンを1基ずつ設置した第2メインエンジン。そのエンジンユニットもカバーを開くことで45度程度横に動き、機動面を大幅にサポートしている。

 武装面でも改修されたMS格納ブロックのMS発進カタパルトの下部スペースに要塞破城砲「ブレイカ」を設置。対空機銃やビーム砲も増量している。その分MS収容スペースを犠牲にしており、総数は25機とニーベルング級に届かない。もっともその収納も特殊であり、更に上部のビーム砲を側面に変更して発艦時の正面装甲を上面に固定させることで、艦上部を非常時のカタパルトとして使用することが可能(最大3段のカタパルト運用できる)。

 もっとも注目すべきは艦艇中央下部であり、その部分を展開することで突撃機用の射出リニアカタパルトとして運用することが可能な点である。これは同型艦の中でも1番艦「トロイ」と2番艦「ダンドリアス」にのみ許された仕様で、主にダンドリアスの搭載MSであるシュバルトゼロガンダムに対する特別処置である。

 1番艦トロワは白と青の2色でグランツ司令の座乗艦として運用。対する2番艦は白と赤の2色で試験運用を兼ねてシュバルトゼロガンダムが所属するケルツァート隊の新母艦として運用されることとなった。戦後には量産が進められる予定である。なおこの艦艇のサイズは区分としては中・大型の中間点にあたるものの、次世代艦では中型規模から小規模の艦艇にクラス分けされる予定となっている。

 モデルはトロイの名称からトロイの「木馬」で、ガンダムシリーズの有名艦であるホワイトベース。そこからさらにガンダムSEEDのストライクやフリーダムの母艦となった「アークエンジェル」のレイアウトを織り込んでいる。ただし大きさとしてはその半分近いサイズとなっている。

 

【武装】

・24連装ミサイルランチャー

 艦橋裏のやや下に埋め込まれるミサイルランチャー。艦体サイズの物を備える。様々な種類を備えているがビーム撹乱幕はこちらにはない。モデルはアークエンジェルのヘルダート。

 

・ウイング部マルチミサイル発射筒

 後部エンジンウイングの上部に備えられたミサイル発射装置。やや出っ張った形をしており、6発ずつの掃射、両翼合わせて計12発の掃射を行える。弾数は約18発を備える。種類の違うミサイルを放て、対象に適切に対応できる。

 モデルはアークエンジェルの尾部ミサイル発射筒。

 

・高出力ビームキャノン砲塔

 艦体前部側面に備える収納式主砲。2門1基で計2基を備える。装甲に囲まれて収納されているので、砲身展開前の不測の事態に対し防御が可能となっている。

 モデルはアークエンジェルのゴッドフリート。横に主砲を持つ構成はホワイトベースの主砲を参考にしている。

 

・バルカン砲

 艦体各所に配置された実弾対空砲。艦体中央部甲板横に左右2門ずつ、後部甲板の側面に1門ずつの計6門を持つ。

 モデルはアークエンジェルのイーゲルシュテルン。格納法もほぼ踏襲。ただしインテリアとして竜の頭部がカバーとして用いられている。

 

・突撃用ビームガン

 艦艇のMS格納ブロックの側面に備えられたビームガン。1ブロックに左右合わせて8門、計16門を備える。主に突撃時の正面へのけん制を目的に装備されており、突撃時の弾幕は目を見張るものがある。なお角度調整で対空防御にも使用可能。

 モデルはホワイトベースのミサイルランチャー。

 

・可変収納式3連実弾主砲

 艦体中央ブロックの前方に、カバーに砲門を収められた実体弾の主砲。2門を並列して配備される。使用時には後方に砲座そのものがスライドしてカバーから外し、上部に展開してから再度前部にスライドして固定する。

 実験的な兵装であり、量産化の際には数を2門に減らした上でカバーを上から開いて使用できるようにする予定。

 モデルはSEEDのアークエンジェルではなく、SEEDDestinyの艦艇ミネルバの「イゾルデ」がベース。

 

・収納式連装ビーム砲「デビルテイル」

 艦艇後部ウイングの下部、第2メインエンジンの少し下に配備される折り畳み連装ビーム砲塔群。普段は収納されてウイングのでっぱりのようになっているが、展開時には側面に展開後、中に折りたたまれたビーム砲を上部に展開して使用する。1つ1つが可動域を持っており、威力もそれなり。ただ真正面と真後ろを撃つ兵装ではないので、その部分は他の兵装で補うしかない。

 名称は直訳で「悪魔の尻尾」。外装モデルはアークエンジェルのバリアント。モデル元ではレールガンとなっているが、今回は連装ビームキャノンとして、また悪魔と言う名称をもらっている。

 

・要塞破城砲「ブレイカ」

 MS格納ブロックの前方底部に格納された、大破壊粒子砲。DNを専用エネルギー制御機で最大圧縮させ高純度DNの状態まで戻したところで発射する破壊兵装。実質的にガンダムのビームライフルを同じものを大出力で発射しているものであり、DNFとほぼ同等の出力を備えている。

 敵国マキナスの最大規模の艦艇であるマキュラ級のスパイラル・キャノンをわずかに超える出力であり、性質的にも考えるならそれ以上の火力を与えている。ただし反動もそれ相応であり、発射後は1分ほどビーム火器を使用できなくなる。

 なお、本兵装はガンダムの存在により実現したものであり、ガンダムの高純度DNというサンプルモデルから、DNから高純度DNへの圧縮を実現している(ただしDNを高純度DNに戻す技術が出来ただけであり、未だDNジェネレーターから高純度DNを取り出す技術は生み出せていない)。なお同じ兵装は創世記時代にも空中艦に装備されており、本兵装はその技術再生の1つである。

 モデルはアークエンジェルの陽電子破城砲「ローエングリン」。あちらが当初環境に悪影響を与えるために地上での使用を避けられていたことに対し、こちらは出力の膨大さから発射後のビーム砲の使用を制限されている。

 

 

 

グリーフィア「……以上が、後半の解説になるわ~。難しいことは分からないけれど、射撃が随分と強化されているって感じかしら?」

 

ネイ「たぶんそうなのかな?Gワイバーンはフルアーマメント……?って呼ばれるくらい武装が多くなってる印象はなさそうだけど」

 

士「(´・ω・`)本来Gワイバーンは合体状態がデフォルトだからね。過剰に追加武装したら合体に影響が出ちゃうんです。つまり動きづらいってこと」

 

グリーフィア「なるほどねぇ。けどそれだとシュバルトゼロガンダムも大分動きづらくなってる気がするんだけどぉ?」

 

士「ブースターが大分デッドウェイトになってる感はある(´・ω・`)でもまぁ展開上仕方ないね。最終決戦だもん。乗っけられる武装は全部乗っけるって感じだ(^ω^)」

 

ネイ「重すぎて撃墜されないといいんですが……それで新造戦艦は元さん達の母艦としても配備されているんですね」

 

士「そう!やっぱガンダムには専用母艦がないとね!さぁ、次回の節から戦争の始まりを予感させる展開、そして戦争開始だァ!(゚∀゚)」

 

グリーフィア「楽しそうねぇ♪」

 

ネイ「前作はガンダム出ていても戦闘の描写しかほとんどなかったのが大分悔しいって言ってた覚えがあるから、その分思い切り戦わせたいんだよ、きっと……」

 

士「うん、そうだね(´・ω・`)さて、では今回の黒の館DNも閉館です」

 

グリーフィア「さぁ、次にここで会うのは何時かしら~。次回もよろしくっ♪」

 




今回もお読みいただきありがとうございます。次回から戦争直前と機人族と竜人族の大決戦「機竜大戦」を描いていく予定です。黒の館DNもやや多めになっていく可能性が高いほど、MSの新登場が多くなるかと思われます。

それでは今回はここまでです。次回からのお話もよろしくお願いします。


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EPISODE66 戦嵐狂華1

どうも、皆様。今日は天皇即位礼正殿の儀。直前で晴れたのが国宝の天叢雲剣のおかげとか、空に虹が掛かった光景が歌詞の関係で劇場版ジオウの主題歌見たいとツイッターにトレンド入りするとかですごいにぎやかだなー(*´ω`)と思っていました、藤和木 士です。

レイ「アシスタントのレイだよー。ちなみに作者はOQ見てないからまだ平成のままっていうね」

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです。OQ見に行けばよかったのに」

ごめんよ( ;∀;)そのうちPSストアで見れる様になったらクローズとグリスとまとめてみる予定だから。
さて、今回はEPISODE66と67の二話連続投稿となります。

ジャンヌ「ドラグディアの象徴、クリムゾン・ドラゴニアスが空へと舞い上がったところでしたね」

レイ「こっちでも何かすごい現象起こるのかなっ!?」

あ、あははー。それでは本編へ(;・∀・)


 その景色は圧巻の一言であった。これまでMSのカメラを通して、ドラグディアの空を見たことはある。ほぼもとの視界と同じような景色であったため、その時でも一定の感動があった。だが、今は本物の体で、風を体に強く感じている。象徴である紅のドラゴンの背から見た景色は、今までとは違うものを感じられた。

 達成感に体を浸す元。横では高さにやや恐怖しているジャンヌの横顔が見えた。ジャンヌの緊張感を癒すべく、元は声を掛ける。

 

「お嬢様」

 

「ひゃ、ひゃい!……な、何?怖いの……?」

 

「それはお嬢様では?それより、すごいですね、象徴というのは。こんなに大きいのに、これだけの景色を見られるなんて」

 

 ジャンヌの質問を軽く受け流して、今見えている景色についての感想を言った。恐さよりも美しさに目を向けさせようという考えだ。元の言葉を受けて恐る恐る正面の景色を見るジャンヌ。しばしの沈黙の後、景色を一望してから口を開く。

 

「…………うん。私のご先祖様はこれと同じ景色を見ていたのね」

 

 髪を靡かせる様に掻き上げる主に、頷きを返す。全く同じではないだろうが、それでもこの景色に同じように圧倒されたのではないかと思う。竜人族が作り上げた都市と大地。300年前よりも便利となったこの国の全貌が見渡せた。

 300年ぶりの空に、クリムゾン・ドラゴニアスも懐かしさを呟く。

 

『あぁ、この国の空がとても愛おしかった……。街は随分と大きく広がったが、この空と風は変わっていない。この光景を壊してはならない』

 

 クリムゾン・ドラゴニアスの言葉に、元の表情は引き締まる。明日には戦争が始まる。自分達が明日の激突でスムーズにターゲットを抑えられなければ、この街も戦火に呑みこまれるかもしれない。泥沼の戦争となれば過去の繰り返しだ。

 先の言葉を元なりに受け止める旨を伝える。

 

「えぇ。もう誰も、欠けることのないように」

 

『……そうだな』

 

「ハジメ……」

 

 2人と1体の表情が曇る。それでも今はこの事に喜ばずにはいられない。そのまま基地へ戻ることをインカムでグランツより伝えられ、ジャンヌの早く地上に降りたいという声に従い、象徴が基地方角に向けて飛行する。その間ジャンヌはなるべく遠くを見ながら元の手を必死に掴んでいた。クリムゾン・ドラゴニアスの背中に設けられた持ち手を掴んだ方がいいとは言ったものの、本人としては誰かの手を握っていないと不安らしい。レイアを次元の彼方へ失った時ほどの大粒の涙と青ざめた表情に、仕方ないと思いつつジャンヌの手を持ち手に握らせつつその上から自身の手を握る。その方が安全だからだ。そうしてクリムゾン・ドラゴニアスによるフライトを満喫することとなった。

 

 

 

 

 フリードリヒ地区の大演習場にクリムゾン・ドラゴニアスが着地すると、既にそこには多くの基地所属の軍人達が出迎えた。象徴とその背から降りた元達に、歓声が掛けられる。それらを基地に残っていたローレインとその上司トレノにより沈静化してもらっていると、遅れて地上からやって来たグランツ達も合流する。

 グランツは出迎えた兵士達に「全部隊への象徴の戦争参加確定と、象徴の配置位置の通達」と「象徴、並びにガンダムの最終決戦に向けた調整」を先程までの最終戦争に向けた準備に加えて伝令。それを受け、全兵士達が一斉に行動を開始する。全基地への命令通達と、象徴の整備、ガンダムの整備が開始された。

 一斉に動き出す基地の人達。車から降りて来たアレク達も各々の部隊の方に顔を出しに行く。元とジャンヌはそれぞれガンダムの下とクリムゾン・ドラゴニアスの方にて最終調整を行うように通達を受けた。2人の顔にも緊張感が戻った。そして元達の見届けが終わったグリューネ達には、兵士達の護衛の下帰還することを告げられる。レヴやリッドは名残惜しさがあったが、世界の命運をかけた戦いの邪魔になるわけにはいかないと理解し、元達に別れを告げて兵士達に付いて行く。グリューネとネアも2人に声を掛けて兵士達に連れられ基地を後にした。

 グリューネやレヴ達が基地を去ると、元とジャンヌもそれぞれの仕事をこなしていく。ガンダムの装備把握とそのシミュレーション、MSからの象徴への指示出しとコミュニケーション、そしてガンダムの新たな武装のコントロール訓練。2人の忙しさも他と比にならないものとなる。その作業は夜になっても続いた。戦争までの残り時間を考えれば当然だった。

 それでも合間合間の休憩は大切なものとなる。特に2人は作戦の要。それぞれの担当者からキリの良いところで休憩を言い渡された2人は、合流して基地の食堂で休憩を取ることとなった。そこに、スターターの通信機能を通してクリムゾン・ドラゴニアスも参加する。食事の間のたわいない会話。が、そこで彼らは知る。元の力が何なのかを。

 

 

 

 

 食堂で注文したカレーライスをトレーに受け取ると、そのまま席へと座る。こっちの世界のカレーは特に元自身の世界のカレーと大差はない。味付けは日本風のカレーに近い、「ドラグディア風カレー」というもので、懐かしさを感じさせるため非常に好きだった。

 水を取ってくるころにはジャンヌも自身のトレーにカルボナーラを乗せて、元の向かい側の席に座っていた。他の席でも休憩のために兵士の何人かが、食事と談笑を行っていた。ジャンヌの分の水も持ってきて、そのコップをジャンヌの方に置いて席に座る。

 

「ありがとうハジメ」

 

「いえいえ。それよりどうです?そちらは」

 

 ジャンヌに進捗の方を訊くと、水を一杯口に含んでから答える。

 

「そうですね。象徴の方のパーツ劣化などは予定されていた部品で何とかなりそうです。象徴への指示もガンダムのDNジェネレーター制御に近いものがあるので、問題ないです」

 

「そうですか」

 

 元も頷いて口の中に水を含ませた。象徴への指示には口で伝える以外にも、詩巫女の精神的同調によるテレパシーのようなもので伝えるという方法があった。話によればクリムゾン・ドラゴニアスのテレパシーと同種のもので、詩巫女と象徴のパートナーを決めるのに必要な要因なのだという。

 机に置いたスターターから、クリムゾン・ドラゴニアスが通信回線による労いの言葉を掛けてくる。

 

『ジャンヌはよくやってくれている。ガンダムのエンゲージシステム操作が、いい方に働いているようだ。300年前のような事態に陥ることはなさそうで、安心したよ』

 

「まぁ、あまり昔の事に気を取られていると、足元をすくわれるかもしれませんが。でもそうならない事は、祈りたいですね」

 

 元は象徴に対しそう返すと、口の中にカレーを一口放り込む。スパイスが程よく効いており、食欲が増す。軍隊の施設での食べ物でも、民間施設が近くにあるくらいだからかしっかりとした味付けとなっている。もとの世界でも海軍カレーはおいしいと聞く。もし向こうの世界に帰れたときには、是非食べてみたいものだ。

 しばらくの間、食事に集中する2人。ジャンヌがカルボナーラを3口ほど啜ったところで、ジャンヌはこちらの進捗についても訊いてくる。

 

「……それで、元の方も大丈夫ですか?[ファーフニル]よりも大分武装が増えていますが、操縦とのかみ合わせなどは」

 

「ん?あぁ……一応使いまわせてはいますよ。ただやっぱり重武装なせいか、機動性が落ちているのには目を背けたくなりますね……直線加速に関しては充分な力を持ち合わせているんですがね、[ノヴァ]は」

 

「そうですか……私も負担が掛からないよう、サポートしますからね」

 

 [ノヴァ]とは、今回の特攻作戦とも呼べる突撃戦にて使用されるシュバルトゼロガンダムの装備群の名称である。元々モビルブースターが宇宙空間での運用を考えられていた兵装であり、それをガンダムが装備するにあたり宇宙の超次元現象であるディメンションノヴァと称される現象から名前を頂いたのだ。ちなみに名称理由はディメンションノヴァが宇宙の始まりを起こした超次元天体現象であることから、マキナ・ドランディアの新たな時代の始まりと掛けているという。

 元の世界にも、似たような現象の名前があった。それはスーパーノヴァと呼ばれる現象であり、この世界でも同じ名前でかつて呼ばれていたのだという。だがDNがもたらされて以後、この名前に変わったらしい。もし元の世界もDN……次元粒子が宇宙の始まりを作ったのだと知れば、そのように変わるのだろうか。もっともそれを考えるよりも先に、この戦争を終わらせることを考えなければならないが。考えを戻すべくカレーをもう一度口に含んで話題に戻る。

 

「えぇ、ありがとうございます。でも頭に響くノイズで、大分動きは読みやすくなっていますから、後は機体の挙動を体になじませてですね」

 

『……ハジメ、少しいいかな。君の頭に響くノイズ、というのは……』

 

 そこで、クリムゾン・ドラゴニアスが質問を行う。元の発した頭に響くノイズ、それに対し聞いて来たことに驚きつつ、その現象について話す。

 

「え、はい。ヴァイスインフィニットと対決した頃からなんですが、攻撃してくるって方向から、頭の中でノイズが響いてくるんです。ステルスでもどこを動いているのかが断片的に分かりますし、連続した攻撃も連なった音が聞こえてきて分かって……フォーン様との決闘じゃ、すごい感覚が研ぎ澄まされていて、動きが見えたっていうか……」

 

「そ、そこまで!?全部分かってたの……?」

 

 聞いていたジャンヌが驚きを見せる。だが事実だった。手に取る様に分かる動き、ガンダムだからというものでは証明出来ない感覚だった。

 あれが一体何なのか、元も気になっていた。それを訊いて来たということは、象徴は何か知っているのだろう。すると象徴はその正体について話す。

 

『それは、ディメンションノイズ・リーダーという能力だな』

 

「ディメンションノイズ・リーダー?」

 

「なんなんです、それは?」

 

 ディメンションノイズ・リーダー。聞いたことのない言葉だ。元もジャンヌも単語を復唱して聞き返す。分かっていない様子の2人に、象徴はスターターから声を出して説明する。

 

『単純に言えば、私のテレパシー能力と詩巫女のDN制御技術……ジャンヌに分かりやすく言うなら、象徴との共鳴能力が該当する』

 

「わ、私のあれが……ですか?」

 

 いきなり指摘されたことに、ジャンヌの戸惑いの表情が見えた。自分の能力が元と同じであるということには予想が付かなかったからだろう。しかし、今の元に今言ったような力はない。DN制御技術が、少しだけ敵意の感知に該当するかと言ったところだ。象徴もそれを踏まえて、詳細を明かす。

 

『そうだ。だが置かれている立場によってその能力の質は違いが出てくる。MSパイロットが会得するのは、DNの流れを読むこと』

 

「DNの流れを……読む?」

 

 DNの流れを読むという発言に元は頭を傾げる。読むとは具体的にどういうことなのか。あれは動きを読んでいるとはいえ、そのまま表すなら聴いているという感覚だ。元の疑問は、続くクリムゾン・ドラゴニアスの言葉で解かれていく。

 

『うむ。聞こえてくるノイズのようなそれは、DNが動く音を聞いているに過ぎない。実際には敵意そのものの音ではなく、その流れを音として感じ取っている。まぁ簡潔に言えば、その考え方でも間違いはないのだが』

 

「間違いではない……というと、何かあるようですが?」

 

『そうだ。違いはそれを敵意の音として感じるか、それとも世界の音として、他者の心の動きとして感じるかだ。他者の動きとしてDNの動く音を感じ取り、またその流れを正確に読み取れるようになるとパイロットでもDNの制御が可能となっていく。最終的には私のようなテレパシーも行える。私と同じような能力を得る……いや、出来ることを増やしていくのがディメンションノイズ・リーダーという能力の成長にあたるのだ』

 

 クリムゾン・ドラゴニアスの話を聞いて、情報を頭の中で整理する。まず元の能力は象徴自身、そしてジャンヌら詩巫女と同じ力であるということ。どれもDNに作用させる、あるいは作用して発揮する力、DNに関係している。力はそれぞれの役目によって引き出される力が違うという。元であるなら、戦闘に身を置いているからそれを行うに最適な敵意感知を会得したと言った具合にだ。だがそれで終わりではない。認識を改めることで、他の能力を会得できるということ。つまり元の能力は元の考え方次第でその力を拡大させることが出来る。

 しかし疑問はまだ残る。能力がどうしたら覚醒するのか、そしてそれらを集めた先に何があるというのか。1つ1つ、クリムゾン・ドラゴニアスへと質問する。

 

「その力に目覚める理由は?」

 

『条件の事だね。一番関係あるのは、高純度DNと多く触れ合うということだ。元来詩巫女が歌を歌う理由として、歌を介して周囲の空気中DNの密度を上げて高純度DNへと再構築させてその状態を作る。それによって象徴との対話・共鳴能力を引き出し、育てる。聖トゥインクル学園などが内包する詩巫女養成科は、その育成を目的とした機関でもある』

 

 詩巫女養成科。今では詩巫女以外にも、詩、転じて歌に関係する職を目指す少女達を育てる教育機関と結果的になっている。もちろんジャンヌに代表される詩巫女の輩出も目的とされていたが、それはあくまでも象徴を戦争に使うための、政治が大きく絡んだものだった。育成の意味する物を果たしてどれだけ理解していたのだろうか、政府の行動に改めて疑わしさを感じる。もっとも今はそれを考える必要もないが。

 それらの説明に元がなぜそれらの力を使えるのか、はっきりと言われてはいないもののクリムゾン・ドラゴニアスの言葉でその理由がなんとなく分かる。言及される前に、元がそれを指摘した。

 

「詩巫女が歌で……つまり、パイロットは……ガンダムで」

 

 元の考えに、クリムゾン・ドラゴニアスは頷く。

 

『そうだ。正確には高純度DNを生み出せるツインジェネレーターシステム搭載機のパイロット、その者が数々の戦闘を通してその力に覚醒していく。だからこそ竜騎士はガンダムのパイロットであり、ガンダムが竜騎士のMSでもあった』

 

「そう、だったんだ……。じゃあ1400年ぶりに、もとの形に戻ったんですね」

 

『そうだよ。これはマキナスにおける象徴、マギア・マキナスとそのパートナー奏女官、そしてその護衛である機械騎士にも当てはまること。争ってこそいるが、本当は鏡合わせの……いや、今はそれ以上は止そう。君達に余計な心配を掛けることになる』

 

 クリムゾン・ドラゴニアスの語ろうとしたことを元とジャンヌも何なのか気づいていた。だがクリムゾン・ドラゴニアスの気持ちに配慮し、敢えて聞かなかったことにして元が気になっていたもう1つについて訊いた。

 

「なら、最後に聞かせてくれないか。ディメンションノイズ・リーダーが能力を覚醒させていって、たどり着く領域は何なんだ?」

 

 能力の到達点。それが象徴と同じ領域なのか、それともさらに上があるのか。聞けるときに聞いておかなければ、元達がこの先困ることも考えられる。だからこそ今この瞬間にそれだけは聞いておきたかった。1400年前を知る象徴に、全てを。

 だがクリムゾン・ドラゴニアスはその質問に不明瞭な答えを返した。

 

『私の領域より、更に上の段階はこれまでたった1人しか存在しない。そして、それがもたらすのは、「万物創造」だ。全てを思うままに作り出せる。生憎ながら、どこまで作り出せるのか、それが全てであるかどうかは分からないが……』

 

「………………」

 

 創造というあまりに漠然とした言葉。だが本気ならこの世の神羅万象全てを作り出せるということになる。あり得ない、と言えばあり得ない。正直言って元は家庭の事情で神や創造主などと言った現実であろうとする妄想を信じていない。もちろんガンダムが救世主だという話も、ガンダムが存在していても救世主であるという事実に関しては否定している。ただ、これにおいては1つだけ気になることがある。「機竜創世記」における竜人族、機人族の誕生だ。救世主ガンダムは戦争状態の彼らの祖先の争いを止め、パートナーである機竜が持ち合わせていた竜と機械の力をそれぞれ授けたのだという。それがもし、その万物創造の1つだったとしたら……。

 元の体に身震いが起こる。そんなものが本当にあっていいのか。もし敵対したとして、立ち向かうことが出来るのだろうか。が、その時父の言葉を思い出した。

 

(神になろうとする人に恐れることはない)

 

 悪質なカルト集団の勧誘で怖い思いをした元と妹に、父がそう言ったのだ。人の生活に危害を加えながら、平和を謳う考えが正しいわけがない。そういった意味の言葉であった。いかに救世主と崇められていても、それが人を傷つけるというのなら戦うべきだ。それがジャンヌに向けられたのなら……その時は……。

 ジャンヌの顔を見つめる元。視線を感じたジャンヌが困惑した表情で恥じらいを示す。

 

「な、何?そんなに見つめて……」

 

「いえ……お嬢様は、自分が護りますよ」

 

「―――――ッ!!なんで今言うのっ!」

 

 慌てて声をかき消す素振りを見せるジャンヌ。既に周囲にやや聞こえていたようだが、兵士達も空気を読んでニヤニヤしながら静観を決め込む。声だけしか聞こえていないクリムゾン・ドラゴニアスも、2人の仲を微笑ましいとする。

 

『フフッ、まるで私が死ぬ前のジードとレリアのようだ』

 

「ううぅ……!もう……もうっ!」

 

 恥ずかしさを紛らわそうと、ジャンヌはカルボナーラの残りを口にすごいスピードで入れていく。水も大量に飲み、口にソースが付いているのもご愛嬌と言うべきか。元も志を新たに、気合を入れるべくカレーを口に掻っ込む。そして心の中で父親に対して言った。

 

(父さん、今は別の世界で頑張ってるよ。いつか、もとの世界にも帰って見せる)

 

 もとの世界へ帰る決意をして、食事を終えた。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。クリムゾン・ドラゴニアス解放されても特に天気が変わるとかそんなことはありませんでした;つД`)入れときゃって思ってます。

ジャンヌ「それ以上に元さんの能力に関しての重要な話となりましたね……。別に被せる必要はなかったとは思いますが、特別な類のものを入れなかった理由としては?」

思い付かなかったです。もっといろんなのを読み込んでおけばよかったと思っています。文章ですら拙い以下の文章だっていうのに……( ;∀;)

レイ「でも次からそういう時にいい感じの現象を入れようってなりそうだね。次が楽しみだよー!」

変な期待はやめてくれ(´・ω・`)

ジャンヌ「そういえば……今回から始まっている戦嵐狂華という言葉の意味はなんです?」

あ、ごめんなさいそれは造語(;´・ω・)持たせたかった意味としては戦いの嵐の中で狂った華が咲く、みたいな感じです。

レイ「狂った華……ガンダム?」

それはどうでしょう。ではEPISODE66はここまでです。

レイ「EPISODE67も見てね~っ」


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EPISODE67 戦嵐狂華2

どうも皆様。引き続きご覧の方は改めまして。作者の藤和木 士です。

ネイ「今日の天皇即位の儀礼では台風の影響もあってやらなかった部分もあるそうですね。アシスタントのネイです」

グリーフィア「確かパレードみたいなものだったかしらぁ?アシスタントのグリーフィアよ~」

そうだね。正式名称忘れたけどお顔をみんなが見るっていうのは台風の影響も考慮して来月になったんじゃないかな。
さてやたらと時事ネタぶっこんでいますが、EPISODE67の公開です。

ネイ「前話であまりツッコんでいませんでしたが、カレーとカルボナーラはドラグディアにもあるんですね」

いや、まぁあるでしょ……ない世界もあるかもしれないけど(´・ω・`)

グリーフィア「けど食べ物描写って最初ってジャンヌのアップルパイだったかしら……最近アップルパイ出てないようだけど」

忘れてない……多分(´・ω・`)さて、食べ終わった2人がこの後どうなるのか。本編をどうぞ。


 

 食事を終えてそれぞれの持ち場に戻ろうとしたジャンヌとハジメ。ハジメが通信の終わったゼロ・スターターを机の上から離し、食堂を出ようとしたところで食堂の入り口からアレクが声を掛けてくる。

 

「お、いたいた。ハジメ、ジャンヌ」

 

「アレク隊長」

 

「どうされたんですか?隊長さんも休憩ですか?」

 

 何の用かと尋ねる2人。アレクは左手に色紙と便箋のようなもの、それに小型端末を持ってきていた。それを差し出しながら、アレクはその内容について話す。

 

「さっき基地の門の方にクリエさんとグリューネ達が来ていてな。伝言としてこれらをもらったんだ」

 

「え、お母様が?」

 

 すぐにアレクの差し出したそれらをまとめて受け取る。母からの伝言と言うことで少しはやる気持ちを抑えきれなかった。伝言のそれらに注目するジャンヌの代わりに、ハジメがその詳細を代わって聞いた。

 

「クリエ様と……グリューネからの、ですか?」

 

「いや、それ以外にもネアやジャンヌの姉妹からの伝言、それにハジメ、お前のクラスメイト達からの色紙らしい。ここで見たい気持ちは分かるが、ここも必ずしも空いてるわけじゃない。会議室借りといたから、そっちで見てくれ」

 

 ポケットから取り出された会議室の鍵。ハジメがそれを受け取り、手紙に視線を釘づけだったジャンヌに会議室への移動を勧める。

 

「お嬢様、場所を移しましょう。ゆっくり読みたいでしょう?」

 

「は、はい。わざわざありがとうございます、アレクさん」

 

「いやいや、俺もグリューネと戦争前にもう一度会いたかったからな。あいつの顔見たら、絶対に死ねねぇよ。じゃ、ごゆっくり」

 

 片手を上げるアレクに見送られ、ジャンヌとハジメは会議室へと向かう。ジャンヌも知らず知らずのうちに足が速足となっていることにも気付かず、会議室を目指す。

 数分で目的の会議室に着く。鍵を開けるとハジメが先に入って安全確認、その後からジャンヌを部屋へと招き入れる。ジャンヌが入った後は念のため鍵を閉め、部屋は密室空間となる。以前もハジメに密室空間に入れられたことがあったが、今はそれを気にするよりも伝言の方だ。

 まず色紙の方を見る。色紙にはハジメのクラスメイト達による寄せ書きが掛かれていた。レヴの「生きて帰ってこいよっ!幸せ者!」という文字や、リッドの「ジャンヌさんと2人で元気な顔を見せて!!」といった2人の無事を祈る言葉や、応援の言葉が手向けられていた。しかしそれをハジメの方にぽいっと投げ捨て、自身は母親からの伝言を探す。放り捨てられそうになる色紙をキャッチしたハジメが、代わりにその内容を拝見していく。

 

「へぇ、これ半日で作ったんだ。流石だな、レヴ達」

 

「それよりも、お母様の伝言は……あ、この手紙ッ」

 

 ようやく目的の物を見つける。すぐに手紙の封を切って、中に入っていた手紙を開く。ジャンヌの眼が母の書いた手紙の文字を見通していく。

 母の手紙には、以下の様に書かれていた。

 

『ジャンヌへ

 

家に戻ったネアからの話を聞いて、忙しいだろうジャンヌのために今回こうして手紙に書きました。

 象徴を無事解放することが出来たそうで、私もホッとしています。もしあなたが失敗したら、なんていう怖い想像もしたけれど、ハジメと一緒に乗り越えたという知らせに本当に良かった。

 思えば、あの時……ハジメを保護した時からこうなることは決まっていたのかもしれない。彼が引き継いだガンダムが無かったら、きっとここまで来られなかった。でもそれは同時に、彼を家に引き入れるという当時からしてみれば勇気ある決断をしたジャンヌのおかげ。2人がいなかったらこうならなかったって思うの。

 これまでもあなたに苦労を掛けてしまって、今度の戦争にも出てもらわないといけないことに私はとても心苦しいです。でも、今のあなた達なら乗り越えられるって信じています。あまり勝手なことは言えないけど、そう思うの。

 

 だから、お願い。戦争が終わったら私のもとに、お母さんの前にあなたの元気な顔を見せて。本当はあなたに戦争に出て欲しくはないけれど、でもやるべきことだからせめて無事だけは祈らせてください。

 最後にこの言葉を贈ります。「生き残ることは戦うということ。死ぬことを前提としたものに決して命を賭けない」です。これは私達の祖先、丁度オルレリアン・ファーフニルが掲げた家訓です。自分が陥った状況を、先の未来で子孫たちが屈しないよう彼女が標榜したそうです。本当はこの言葉を糧に希望を取り戻してほしかったのですが……やはり人の出会いには敵わないみたい。

 でもこの言葉の様に、生きることを考えて戦ってください。それさえ出来れば、あなたは立派なファーフニル家の、私達の最愛の娘だから。もちろん、それはフォーンやハジメ君にも言えることだけれど。頑張ってね。私達のジャンヌ。

 

母より

 

P.S. ハジメ君へ、フォーンの非礼を謝るわ。ごめんなさい。あの人の言葉を変な方向で捉えちゃったみたいで。でもフォーンに勝っちゃうのは流石ね。いよいよ筆頭護衛人の座は交代かしらねぇ♪

 それから私も象徴の顔をもう一度拝みたいわっ。前は超克の儀の試しでしか会ったことがなかったから、試したら帰れって言われちゃったけど、会いたいから。』

 

「………………フフッ」

 

 口元から笑みがこぼれる。微笑みといったような笑い方であったが、その瞳には涙が浮かんでいた。こぼれそうになる涙に気づき、それを服の袖……は夏服なのでないので腕で拭う。ハジメも気付いたが、声を掛けてくる前にジャンヌが口を開く。

 

「あれ……なんでだろう……。母親の手紙を受け取って、何で泣いているんだろう。おかしいな。もっとこういう時って、泣いたりしないのに……いつも会ってるっていうのに、どうして……」

 

 そう、母とはいつも顔を合わせている。生まれた時からずっと育ててもらってきた。今更感動したりすることなどなかったはずなのに。先程までも母の伝言ということで、受け取ってきたはずだ。きっと象徴の復活の事についてで、いつも通りの砕けた言い方でおめでとうって言ってくれるのかと思っていた。

 だけど違った。それは至って真面目で、礼儀正しくて、でも暖かくて。今まで色々迷惑を掛けたり、我儘を言ってきたりしたのに、こんな自分をここまで愛してくれている。ただ、自分の娘だからと、当たり前の理由でこんなにも見てくれて。不意打ちすぎる、こんなにも重く、そして愛のある言葉を送ってきてくれたことが。

 涙の止まらないジャンヌに、ハジメが言った。

 

「それはきっと、お嬢様がクリエ様を……自分のお母様の事をとても大好きだからですよ」

 

「私が……お母様を……?」

 

 どうして?今まで詩巫女の使命を押し付けたと思い込んで、もう嫌だって思っていたくらいなのに。ジャンヌの言葉に出ない考えを、ハジメが見透かすように返す。

 

「詩巫女の事と合わせて嫌いだって思っていても、それ以前の時は嫌いでしたか?思い出は好きなものであれ、嫌いなものであれ心に残りやすいものです。俺が柚羽の事を忘れられずにいたように。だから詩巫女の事で嫌いになっていても、お嬢様の中にはきっと嫌いになる前の好きっていう気持ちがあったんじゃないですか?きっと今、嫌いだった時の思い出と混ざり合ってせめぎ合っているんだと思いますよ」

 

 ハジメの言葉を聞いて、思い返す。詩巫女の使命を背負う前、自分はとても好奇心旺盛な子供だった。注意するように言われても構わずはしゃいで、止めると駄々をこねた。でもその度にお互いに笑顔で抱き合っていた。両親の事が、家族の事が大好きだった。自分の事を見ていてほしかった。そしてそれに応えてくれるのが嬉しかった。

 そんな事は詩巫女の使命を背負うことになってからも同じだった。でも嫌いになったのはきっと、思うように成績が出なかったのも原因だったのだろう。他のクラスメイトに妬まれ、それを言えずに自分の中でため込み、避けるようになっていつの間にか自分の為に両親が言ってくれる言葉も避けるようになっていった。そんな中でレイアと出会い、いつしか輝きを放つレイアに惹かれて彼女に憧れるようになっていった。

 それでも根本にあったのは自分を見て欲しいという自己顕示欲からだった。両親から認められたいという気持ちは昔から変わっていないのだ。だから今こうして言ってくれたことが嬉しかった。でもずっと母は自分の事を見てくれていた。父も同じだっただろう。それにようやく気付いたことが悲しい。そう、後悔だった。ハジメの言葉に頷いた。

 

「そうね……私、お母様の事が好きだった。いろんなことに付き合ってくれて、昔はとっても楽しかった。でも詩巫女の使命に押しつぶされて、忘れていた」

 

 忘れていた過去。その時間はもう戻らないかもしれない。だが今すぐに言いたいことがあった。それはこんな状況でも言いたいことで、かつお願いしても無茶だと言われるようなもの。だからハジメに嘆願した。

 

「ハジメ……お願いがあります。今すぐお母さんに会いたい。会って言わなくちゃいけない、今までごめんなさいって!でも、それは無理だから……だから約束して!絶対に生き残るって!私を護り切るって!!」

 

「……なら、言い方は違うのでは?約束じゃない。本来あなたが言うべき言葉があるはずです。俺を……私を言い聞かせるための」

 

 ハジメの返答は一見して断っているように見えた。だが違う。約束よりももっと束縛を意味する言い方を求めて来ていた。自分に対しもっと強く願いを聞かせるための言葉を自ら要求している。それを必ず果たせるように。

 ここ最近はそういったことはほとんどなかった。あってもハジメが断っていたためだ。ジャンヌもそれに気づく。そして顔を引き締めて正面からハジメに望む言い方で強く命じた。

 

「ハジメ、わたくしを護りぬきなさい。お母様と会わせるために!」

 

「了解」

 

 ジャンヌの言葉に跪いて承諾したハジメ。密閉空間状態の会議室のためか、やや浮いたやり取りだったが2人の間ではそんなことは関係ない。2人の中で命令と覚悟を受け取り、顔を合わせて確かめ合う。もうジャンヌの顔に涙はない。ハジメに全てを賭け、自分の力を余すことなく発揮しようとする表情だった。

 そんな2人のやり取りの後、ハジメからの勧めで再度伝言の方を確認していく。残っていた端末にはメッセージビデオが残されていた。内容はネアとグリューネ、それにジャンヌの姉であるジーナと妹のエターナからのメッセージである。ネアとグリューネからは生きて帰ってくることの切望と激励、ジーナからは夫であるテュートもこの戦争に参加することと、象徴解放のお祝いの言葉などが贈られた。

 そしてエターナからの言葉。これが一番癖のある内容だと思う。エターナは未だにハジメの事を認められずにいて、ジャンヌ達へのメッセージというのにハジメへの不満を漏らしていた。だが、それでもビデオの撮影者である同級生からの言葉で「絶対に妹のエターナの前に元気な顔をお見せください!」と強く言ってメッセージは途切れた。一切ハジメに対しての応援などはなかったが、ハジメは「これもまた彼女らしい」と言って許した。

 やがて2人はそれらの言葉を胸に作業へと戻った。自分達に出来ることを果たすために。そして夜は深くなり、明けていく。戦いの嵐はもうそこまで迫っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 M.D.1428年7月9日。遂にその時が訪れた。マキナス皇帝ギルフォード・F・マキナリアスの宣言により勃発したマキナスとドラグディアによる大戦「機竜大戦」。全戦力を投入した戦争は過去に6度あった。両象徴が戦場から姿を消して300年の間は起こらなかった総力戦に、各国の歴史家はこう予想した。「今回が、最後の戦争になるかもしれない」と。

 政権交代、皇帝の再来、象徴達の参戦、そしてガンダムの登場……。様々要素が揃っていたこの大戦で、勝った側がこの星の命運を握るとさえ言われた。機械の絶対なる繁栄か、竜の調和か。それを決めるのは―――――。

 

 

 

 

『将軍殿、全部隊準備が整ったようです。激励のお言葉を』

 

「あぁ。行こうか」

 

 ブリッジのオペレーターからの指示を受け、グランツは椅子から立ち上がる。グランツが居るのは最新鋭の機動強襲艦「トロイ」の出撃カタパルト。既に何人かがMSで外に出ており、グランツが来るのを待っていた。

 彼らの役目を果たさせるべく、グランツも動く。付き人に支えられながら、自身の腰に装着されたスターターの装依ボタンを押し込むとグランツの体がアクセスゲートに挟み込まれ、1機のMSへと変貌を遂げた。ドラグディアの最高司令官専用機「グラン・ドラグ・フリーディア」である。彼専用に構築された機体で、歴代ドラグディア最高司令官達は同じ名前の各時代最新鋭機を乗りこなしてきた。もっとも今のグランツにとってはほぼ無用の長物であった。

 ゆっくりとカタパルトを歩いて行き、端の方まで行ったところで機体のスラスターを噴射、空へと浮遊する。昔ならカタパルトで射出されて大空へと繰り出していたがそれも過去の話。今ではゆっくりと出撃することが求められる。一応昔のような動きも短時間なら可能だが、やはり負担が掛かる。戦うのが若者達であることには胸を痛めるが、自分は後方で構えていることが役割なのだ。

 そして今出撃する理由も、その役割の為だった。何機かのMSに護衛されながらグランツはトロイの艦橋前方に浮遊する。周りに自立稼働カメラも滞空する中、グランツは前方を向いた状態で呼びかけた。

 

「全ドラグディア兵士諸君!この戦いは国……いや、この世界の命運をかけた戦いである!マキナス皇帝ギルフォードは竜人族の殲滅を目論んでいる。この国はもちろん、他国の竜人族・機人族の同盟国家も危険にさらされかねない。そんなことは断じてあってはならない!これ以上の悲劇を生まないために、何としても今日この場で皇帝を討たなければならない。諸君らには、作戦成功のための奮起と健闘に期待する!全員、生き残れ!以上だ」

 

 グランツの言葉に、オープン回線から兵士達の血気盛んな声が響いてくる。士気高揚は充分。得られた結果を見て、すぐさま艦内へと戻る。艦内格納庫に戻ると、既に戦闘準備した兵士達が発進する準備が進められている。グランツの座乗艦「トロイ」は後方にて指揮を執る。そのため搭載モビルスーツのほとんどはこの艦の防衛が大半となっており、機動強襲艦の性能も生かし切れるとは言えない。だが、そこはもう1つのトロイ級、「ダンドリアス」に任せてある。

 ダンドリアスとはトロイ級のネームシップ「トロイ」の2番艦だ。その艦はとある部隊によって運用させている。部隊の名はケルツァート隊。アレク・ケルツァート少佐を隊長とするMS部隊。その部隊は今回の任務にて2つの役目を帯びていた。1つは突撃の支援。この戦局を左右するMSの突撃の支援にあたっていた。この戦争はいかにそのMSが戦線を突破できるかに掛かっている。そしてもう1つは、象徴の護衛。近年全く戦場に姿を見せなかったというこの国の象徴、生ける機械のドラゴン「クリムゾン・ドラゴニアス」を護衛すること。それもまたこの部隊の仕事の1つであった。無論1つの部隊だけでは人手が足りず、この護衛にはリリー・バレナー准将が率いる「ナイツ・オブ・ヴィーナス」とフォーン・フリードが率いる「フォーン隊」も防衛しつつ前進することとなっていた。

 作戦はダンドリアス周辺の部隊に掛かっている。グランツはブリッジまで戻ると、艦長席の隣の席に座り、通信回線から呼び出す。通信相手はダンドリアスの艦長、ディオン・バルトレー大佐。彼の部隊の準備状況について尋ねる。

 

「ディオン大佐、そちらはどうなっている?」

 

『現在象徴との連携待機と突撃部隊の順次出撃、そして「ノヴァ」の発進スタンバイ状態となっています』

 

 返ってくる返答。準備はほぼ完了しているようだ。「ノヴァ」の準備が間に合わないのではと危惧していたが、どうやら「フルアーマメント」と合わせて間に合わせてくれたようだ。専任整備士の彼女には感謝しないといけないだろう。

 グランツも返答に了解を示し、作戦開始の再確認を行う。

 

「うむ。そちらの準備完了と共に作戦を開始する手筈だ。「彼」の声に合わせて戦闘を開始する」

 

『了解。「彼ら」にも再通達します』

 

 戦端を開くまで、もう時間はあと少しだ。グランツは根回しして作り上げたもう1つの「打開策」の成功も祈って、戦闘開始を慎重に、かつ冷静に待った。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。さぁ前半は決意を新たに、後半は遂に戦争開始直前の描写となりました。

グリーフィア「グランツおじいちゃん大変ねぇ。MSに乗らなきゃいけないって」

ネイ「MSの操縦は大丈夫なんですか?」

描写はしていないけどグランツのMSは艦からの遠隔アシストも含めて操縦しているから、安定はしてるよ。戦闘になったら危ないけれど、そうならないように作戦も展開していくはずです。

ネイ「はずって」

グリーフィア「無責任ねぇ。ジャンヌさんに言葉を送ったクリエさんは自分が背負えないことを悔やんでいるっていうのに」

まぁ、それはこの章の最後辺りで分かりますよ(;・∀・)さて、今回はここまでです。

ネイ「次回もよろしくお願いします」


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EPISODE68 戦嵐狂華3

どうも、皆様。サーガブレイヴ第2話が色んな意味で悶絶しました、藤和木 士です。最後の演出は反則だぁ(´ρ`)

レイ「もう裏でヒャッハーって感じに見てたもんね。アシスタントのレイだよー」

ジャンヌ「正直言ってうるさかったくらいです。アシスタントのジャンヌです」

さて、今回は久々の1話投稿。EPISODE68の公開です。

レイ「いよいよ出陣!ガンダムの装備のお披露目だね!」

ジャンヌ「ギリギリで調整が間に合ったと言っていましたが……果たして無事たどり着けるんでしょうか?」

それでは本編へ。


 

 

『格納庫、ガンダムの状況は?』

 

『武装全最終チェック完了!ケージに移動中です!』

 

 ディオン艦長とヴェールの声を聞きながら、元はジャンヌと共に出撃の時を待っていた。ガンダムの手を通して握るモビルブースター「ヘッジホッグ」のアームの動きを確かめる。予定されている機能は問題なく使えそうである。現在シュバルトゼロガンダムは最終決戦仕様[Last Battle Custom-A『NOVA』]通称『ノヴァ』装備状態で、右舷格納庫から艦底部の専用カタパルトケージに移動中だ。その移動もたった今終わり、ケージのアームに接続がなされる。接続の重低音がカタパルト内に響く。

 いよいよだ。出撃の時が迫り、オペレーターに対し、ガンダムのシステムチェックを口頭で行いながらジャンヌに状況を確かめる。

 

「シュバルトゼロガンダムLBC-A『ノヴァ』、パイロット側問題なし。お嬢様?」

 

『こちらもクリムゾン・ドラゴニアス含めて問題なしです。マリーさん』

 

「グシューン!」

 

 ジャンヌの声とブースター上部に接続されたGワイバーン・フルアーマメントの鳴き声が返答する。それらの声を受けて、オペレーターのマリー曹長がコールの準備をドラグディア軍全通信回線に言い渡す。

 

『了解です。SZG側からの出撃準備完了を確認。ダンドリアス専用ハッチ解放、射出タイミングおよび作戦開始の合図をSZGのパイロットに譲渡します』

 

 コールと共に正面のハッチが開く。ハッチの開いた先にはマキナ・ドランディアの空が広がる。蒼く広がる空の先には、展開されたマキナス軍艦艇の姿が見えた。

 ケージタイプのカタパルトに宙づりの状態で発進の時を待つシュバルトゼロ。元は一息吸って一気に一声を発した。

 

 

 

 

「シュバルトゼロガンダムLBC-A(ラストバトルカスタム エー)『ノヴァ』……ケージアウト!!」

 

 その一声と共に機体が一気に加速する。だが機体固定部は解除されたものの、エネルギー供給ケーブルは外れない。加速を付けるためのサイドブレーキとなっていた。同時に後方から熱量が順次大量に接近しているのがレーダーで分かった。全ドラグディア軍艦艇から長距離ミサイルが発射されたのだ。

ミサイル群がシュバルトゼロガンダムの母艦であるダンドリアスを追い抜かす直前、ガンダムを抑え込んでいた最後のブレーキであるケーブルが外れる。シュバルトゼロガンダムはスピードをそのままに艦から出撃した。ミサイルに負けない速度で、ケージアウトする。

 発艦したシュバルトゼロガンダムはまるで要塞とも言うべき様相を呈していた。2倍の大きさはあろうかというブースターを背負って……いや、搭乗していた。だが図体に反して圧倒的なスピードで鏑矢として突撃を開始する。前方からはミサイルを迎撃しようとMSの銃撃と艦砲、そして同じくミサイルが放たれていた。突如前へと出て来たシュバルトゼロガンダムに対しても、迎撃の銃火が放たれるが、シュバルトゼロガンダムは構わず突貫する。ミサイルを撃ち落とし、弾幕が展開されたシールドのDNウォールに打ち消される。スピードに翻弄された敵の中央を通過するシュバルトゼロガンダム。直後に後方からの危険警報が鳴る。ミサイルが爆発を起こして後方の空を火の海に染め上げたのだ。

 爆発に巻き込まれ、マキナスのMSや艦艇がいくつか落ちていく。ただそれも少数で、爆発が収まるとすぐさまドラグディア軍および元のガンダム迎撃に移った。全方向から艦艇の対空機銃とビームの雨あられがガンダムに襲い掛かった。

 それらの間隙を縫うように攻撃を回避していく元。更に敵地の奥深くへと進んでいく。だが立ち塞がる様にMSの一団が前方に展開した。ビームライフルを構えて迎撃する構えだったが、その動きが確認できた時点でこちらも既に行動を起こしていた。

 

「ビームマシンキャノン、ツイン・ヴァリアブル・キャノン照準。キャノンアーム、モードスピアブラスター……シュート!」

 

 肩部シールドを前面に向け、ビームマシンキャノン、バックパックのツイン・ヴァリアブル・キャノンに出力を回す。更に両腕部が掴むブースターのウエポンアーム「キャノンアーム」を前方でドッキングさせる。ダブルビームライフルから4門の砲身となった武器腕に光が収束する。

 前方の部隊が発砲する、それと同時にこちらも砲門から大火力を正面に放った。連弾と高収束ビーム、更に圧縮ビームが空を薙ぎ払う。迎撃に放たれたビームはそれに溶け込むように消失、正面部隊は1機残らずビームに呑みこまれた。ビームの中でいくつもの爆発が響く。シュバルトゼロガンダムが通り過ぎるころには既にそこにMSが存在していた形跡が消えてなくなっていた。

 正面から障害を打ち破り、空を翔けるシュバルトゼロガンダム[リペアツヴァイ LBC-A『ノヴァ』]。寄り道するような戦闘参加をすることなく、ただひたすらに前へと進み敵軍第1波を突破する。敵軍を突破した頃には、既にダンドリアスを含めた象徴防衛部隊が象徴の援護を受けてドラグディア軍と交戦状態に入っていた。ジャンヌから回線の内容を伝えられる。

 

『ダンドリアスから通達です。戦闘状態に突入。本機は引き続き敵軍突破と任務遂行をとのことです。それから……』

 

 だが報告の途中で、再び弾幕がガンダムを襲う。脅威を感知した勘のいい部隊が既にこちらに向けてMSを展開していた。スピードはそのままに回避行動優先で突破を試みる。ところがジャンヌの大声で方針は変わる。

 

『……!ハジメ、斜め上に緊急回避!!』

 

「っ!了解っ。……っぐ!!」

 

 ジャンヌの声に瞬時に反応し、機首を上へと向ける元。ガンダムとモビルブースターの推力を以って上への緊急回避を行う。すると、先程までいた場所を横薙ぎに超高出力ビームが放たれた。空を抉る様に放たれたそれは前方に展開しつつあった部隊の半数以上を壊滅させる。それだけに留まらない。その先の第3波、4波と呼べる部隊にまで伸び、一直線で障害を文字通り薙ぎ払ったのである。

 ガンダムのDNF以上の高出力砲撃。思い当たるのは1つしかない。続く通信回線からその正体が放った本人から明かされる。

 

『ハジメ、ジャンヌ。オールギガブラスターで道を切り開いた。先を行け!』

 

「助かる。そちらは任せた!」

 

 クリムゾン・ドラゴニアスからの大きな援護を受け、シュバルトゼロガンダム[リペアツヴァイ ノヴァ]は更に先へと突き進む。

 ここまでの道のりはかなり順調だ。DNウォールもシールドから展開し、機体本体への被弾は見受けられない。まだ本隊よりそれほど離れていないことも攻略を優しくしていた。このままの調子ならいける。

 だが、そう簡単には上手くはいかないのが戦いと言うものだ。撃沈寸前となった艦のカタパルトから出撃した白の狂鳥が、シュバルトゼロガンダムを狙って接近しつつあったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 元達がサークノ・レ・ファイ大陸中央にて戦闘を開始した頃、大陸北部と南部でも戦闘の火蓋が切って落とされていた。中央と同じく開戦と同時にミサイルの応酬と、砲撃、そしてMSによる白兵戦……協力する両国の友好国も戦火を交えていた。

 北部を指揮する三竜将のバァン、南部を指揮するシン・アーミーズのシンは座乗艦にて戦局をしっかり押さえて、部隊1つ1つに指示を出していく。両軍協力国の戦力も用いて積極的に対峙しているように見えた。だが実際の所、その様相は中央よりやや控えめだった。正確には、マキナス側の戦線がやや押され気味であると言った方が近いだろうか。マキナス本隊の攻撃は苛烈だが、それに加勢するドロス、アヴァル両国はあまり積極的な攻めを展開していなかったのである。

 なぜそのようなことが起きているのか。それはグランツ・フリード、並びに臨時大統領のダン・クロスの用意した「策」が理由にあった。彼らは既に、ドロス、アヴァル両国と交渉していた。

両国家は機人族主体の国ではあるものの、竜人族との交流を由とする機人族穏健派の国家である。しかしこれまで同盟国であるマキナスからの要請で交流に制限が掛けられていた。皇帝の復活によりさらに圧力が高まったことを諜報部からの情報で知ったグランツ達はすぐさま両国のトップと秘密裏に会談。その結果両国家の竜人族国家との交流補助を条件にマキナスへの戦力加勢を最小限にしてもらうこととなったのだ。

このままでは絶対的に戦力が足りないのは明らかだった。しかし、マキナスが味方に付けた国家にはマキナスとの不和があった。だからこそドラグディアはそこを突く形で戦略に組み込んだのであった。これにより戦力差は大きく逆転。さらに布陣の関係で相手の背後をいつでも取れる状態へと置き換えたのであった。

 とはいえここまで持ってくるのには時間が掛かってしまった。友好国のセントリルとギルンの仲介がなければ難しかっただろう。それにマキナス側が途中で気づき、何らかの策を打ってくる可能性もあった。いかにマキナス側に同盟を思わせないようにして戦力を削るか、それが前線で戦うすべてのドラグディア側MSパイロットに託されたのである。既にドラグディア側の部隊には、最終ブリーフィングにてこの事は伝えられている。しかしそれでも味方同士の撃墜が生まれる可能性があった。例えドラグディアの兵士がドロス、アヴァルの国の兵士に撃墜されても恨みは言わない。既に艦の配置はお互いに周知。後はそれを受け入れられるMSパイロットがこの戦闘に参加している。抜けた兵士の数はざっと100人。それでも押し切れる。

 戦場で兵士達の声が木魂する。

 

「勝利の為に!ジーク・マキナス!!」

 

「マキナスめ……勢いだけはある……!」

 

「うわぁあぁぁ!来るなっ、竜人族!!」

 

「このっ!ど、どれが敵だ!?」

 

「落ち着け、それは……ちぃ!!」

 

「乱戦だな……各機慎重に行動せよ」

 

 いくら作戦を知っているからとはいえ、必ずしも作戦通りというわけではない。寧ろ混乱が増してしまっていた。北部南部それぞれの指揮官であるバァンとシンはまとまった部隊配置で行動する様に呼びかける。入り乱れる戦場を数多のMSが激突し、爆散していく。

 大陸南北での激闘。当然中央の本隊の戦闘はそれ以上に苛烈なものであった。

 

 

 

 

『姿が見えない……グァッ!?』

 

「ちっ……数だけは本当に多いぜ……っと!!」

 

 マキナスのMSの弾幕を潜り抜け、ビームの刃を突き立てて撃墜する漆黒のステルスMS。だが直後に僚機の異変で隠れている機体に気づいたのか、放たれた弾幕に回避を選択する。漆黒のMSドラグーナ・ラプターで応戦するローレインは、叩いても叩いても減らないMSの数に苦戦を強いられていた。

 ローレインが戦っているのはマキナス艦隊の第1波。「母艦」であるダンドリアスやそれを援護するナイツ・ヴィーナスのMS部隊と共に、象徴クリムゾン・ドラゴニアスを防衛しながら進軍を行っていた。なぜ情報部所属のローレインが前線で戦っているのか。簡単に言えば「穴埋め」であった。

 本来ダンドリアスを母艦とするケルツァート隊は、チームBにハジメのシュバルトゼロガンダムを中核としたチームを有していた。だが今回シュバルトゼロガンダムは単機突撃という部隊運用から外れた運用を行うこととなっていた。必然的に作戦展開上チームBには1つの空きが生まれることとなる。その枠を埋めるためにローレインが選ばれたのであった。

 彼女が受領したドラグーナ・ラプターは元々旧政府の負の遺産である。だが性能は本来ガンダムと対等に張り合える程のものであり、戦力として活用しない訳がなかった。更に前線からの情報伝達は非常に重要である。そこでドラグディア軍の参謀達は彼女を前線情報員としての派遣という形でケルツァート隊に増員。戦力の増強と刻々と変わる戦況の把握要員として使うことに決めたのだ。ケルツァート隊側もハジメとの関係性と合わせて異論なく受け入れた。戦時中の取り決めであるため終結後はケルツァート隊から外される予定だ。しかしかつてはドラグディア軍の機体として登録されるはずだった機体。ある意味ではこれが初の実践投入となるわけだ。実戦データ取りとしてもこれ以上申し分ない舞台。ガンダムの試験部隊が、ラプターの試験部隊として丸々変わったのだ。

 

『本当にな……まったくハジメの野郎、エースの仲間入りじゃねぇか!』

 

『馬鹿が!カルマ、そんな事を言っている暇があったら撃墜する手を止めるな!』

 

 新たにラプターの試験部隊となったことで、単独で任務をこなすハジメに憧れを抱くカルマに敵を迎撃しながらフォウルが一喝する。いつの間にかカルマの方にマキナスのマキナート3機ほどが編隊を組んで襲撃を行っていた。

 一番前の機体がシールドを構えて突撃、時間差で後ろの2機が斜めに飛んでビームライフルとレールキャノンでカルマのドラグーナ・コアトルを攻撃する。カルマは機体のシールドで防御するも、動きを縛られる。そこに先頭の1機がビームサーベルで隙間を狙って突き出していく。喰らえば危険、だが間一髪の所でシールドを思い切り開いてカルマが反撃を行った。残る2機に対しローレインはけん制の射撃を放って追い払う。窮地に陥っていたことに冷や汗をかくローレイン。

 

『あっぶねぇ……』

 

「大丈夫か、カルマ曹長?」

 

『だから言ったんだ……それにいくら象徴が援護を送ったとはいえ、ハジメ軍曹……いや、今は少尉か。彼の行く先の方が危険な任務だ。俺達の働きが重要になってもくる。軽口を叩いて負担を増やすんじゃない……っ!』

 

 スナイパーライフルと大型レールライフルを同時に撃って2機を沈黙させるフォウル。フォウルの言う通り、ハジメの作戦の成功は意外にも自分達に掛かっている。戦力を公邸付近から引き離す。場合によってはマキナス軍を挟み込む形で現在配置しているドロス、アヴァル軍による誘導も考えられる。幸いそれらは象徴の放った一撃で果たし、現在こちらに戦力が集中していた。だからこそ油断は出来ない。ローレインも現状を呟く。

 

「……そうだな。フォウル軍曹の言う通り。なら、こっちも全力で行くッ!」

 

 ステルスシステムを最大起動させ、敵を翻弄しながら急接近してジェネレーターを一突きにする。1機を相手にしたらすかさず次の1機へ攻撃を仕掛ける。連続した動きで一気に3機を落とし、有言実行を果たしていく。その動きを見て、カルマも刺激を受ける。

 

『動きが見えねぇけど、すげぇ!俺もやってやるぜ!』

 

『っておい!待てって!』

 

 張り切って突撃していくカルマを、遅れてフォウルが追従する。なかなか破天荒なコンビだが、カルマが突撃してかき回し、フォウルが援護と追撃をするという悪くない組み合わせで敵を翻弄していく。

 それに負けられないと、即席チームメイトのティットとシレンに声を掛けて2人を追いかけることを伝える。

 

「さぁて、こっちもあの2人に追いつくぜ?ティット、シレン」

 

『了解~』

 

『オーライ。というか、フォウルもカルマの支援に集中しているから言えないけど、俺らでBチームだかんな?忘れてんだろ!』

 

象徴に近づけさせないようにしつつ、敵を殲滅していくケルツァート隊の者達。大空を翔る兵士達は、空に爆発と言う名の花火をいくつも咲かせて戦線を押し上げて行った。だが、それは敵のものだけではない。ケルツァート隊だけでも既に3人が撃破されていた。前線で戦いながら指揮するアレクのつぶやきが回線に漏れてくる。

 

『……すまない、リーヴォル、ガシュラ、トーリ……っ!』

 

「…………っ。その中に入んねぇようにしないとな」

 

返事の形でローレインも呟いて、更に目の前のMSを撃破した。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。ちなみにいつもより投稿が遅れた理由は先述のサーガブレイヴの視聴の他に土日が忙しくて、投稿する気が起きなかったからです(;・∀・)

レイ「サボってるー」

ジャンヌ「しっかりしてください。前日に投稿するとか……」

ごめんなさい(´・ω・`)まぁ少し執筆速度も遅くなっていたので、今回は1話の投稿になりました。

レイ「次回の時は2話更新になっているのかな?」

それはまだ何とも……。では今回はここまでです。

ジャンヌ「次回もよろしくお願いします」


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EPISODE69 戦嵐狂華4

どうも、皆様。11月に入っていよいよ年越しまで2か月。時間の速さに絶望している藤和木 士です。

ネイ「アシスタントのネイです。もうすぐ雪の季節ですね……雪楽しみだなぁ」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよぉ。そうねぇ、特にネイは雪好きよねぇ。ま、私もテンション上がるんだけどねぇ~♪」

ちなみに2人の雪好きは公式設定(^ω^)さて、そんなことはともかく、EPISODE69とEPISODE70の公開です。

グリーフィア「あらぁ、今回は2話連続なのねぇ」

ネイ「ストック有るんですね」

本当は節変わるから1話にしたかったんだけど……でも溜まってきてたからね。放出放出(;´・ω・)

グリーフィア「戦争本番で、ここからは気が抜けないわねぇ」

ネイ「でも早速元さん達に襲い掛かる魔の手が迫ってますよ?」

さぁ、襲い来る狂兵を振り切れるのか?それでは本編へ。


 

 

『機体正面4時の方向、MS接近です!……嘘っ、該当なし!?』

 

 それに気づいたのは、ジャンヌからの報告からだった。切迫した様子でこちらに1機、急速に近づく機体があるという。すぐにレーダーで確認するが、その方向にレーダーは感知していなかった。しかし、もう1つのレーダー……元のDNLの力が、存在がいることを告げる。

 

「このノイズ……敵っ!」

 

 すぐさま機体を全速力で振り切ろうとした。が、スピードを上げたにも関わらず敵との距離が開かない。寧ろ近づいてくるような感覚を感じ取る。それは必然的に恐怖へと変わる。この仕様は急造のものとはいえ、性能は今回の突撃戦仕様に加速能力には秀でている。速度は勝るはずにも関わらず追ってきている敵がいるということは、それだけの強敵であるということの証明であった。

 加えて先程のジャンヌの言葉。機体の該当データがないということは、新型機。ガンダムに追いつくほどの新型の登場はミッションの障害となりうる。そしてそれは既にこちらを距離に捉えていた。

 後方から放たれる大出力ビーム。アラートと感じ取ったノイズの乱れから、攻撃を察知して避ける。だがそれだけで終わりではなく、続いてビームが襲ってくる。いずれもかなりの出力を持っており、連射性能に舌を巻く。

 

「クソッ、どれだけ連射できるんだよ!」

 

『……!ハジメ、ビームが横から!』

 

 ジャンヌの言葉とほぼ同タイミングで機体をエンロンロールさせながら斜め上に向けて回避運動を取る。やや後方を横からビームが通り過ぎる。攻撃は回避できたが、元の顔は深刻さを感じた表情をしていた。

 一言でいえば、あり得ない、ということに尽きる。連射してくることもやや驚いたが、それ以上に先程のビーム。敵機はまだこちらを追い抜かしていないはずだったのに、攻撃は横から飛んできた。横に来たシュバルトゼロガンダムを他の機体が狙い撃とうとしたということも考えられるが、出力や相対スピードなどからもいってそんな神業的なビーム発射はないと言える。むしろ……。

 

「ビームが……曲がった?」

 

 そうとしか言えなかった。ジャンヌ側で確認してもらわなければ分からないかもしれないが、それくらいしか思えない。だがどうやってビームを曲げているのか。そんな疑問を考える間もなく、更にビームが襲い来る。ジャンヌが注意を呼びかける。

 

『ハジメ、まだ来るっ!』

 

「ちぃ!ジャンヌ、攻撃をモニター!状況を知らせて!!」

 

 監視を要請して元は再び攻撃の回避に入る。直線的なビームばかりが襲ってくる。違う、この攻撃ではない。機体のスラスターを全開にして何とか前へ前へと進もうとする中、再びそれが襲い来る。

 

『!ハジメっ、上!』

 

 ジャンヌの声が響いた。その時には既に思い切って機体に急制動を掛けてスライスバックを実行、攻撃を回避する。そしてスピードが殺されるのを覚悟して上を見上げて機影を確認した。

 寸胴な機影。機首正面にビーム砲のようなものを備えるそれは飛行機とは言い難いフォルムではあったが、腕と言った物は見当たらない。後方に伸びるブースターのようなものが異様さを際立たせていたが、すぐにその違和感が現実のものとなる。空中で静止した機体が、変化を起こす。ブースターが付け根の部分から回転を起こす。太ももから90度前方に開店してから下方に向けられたそれは人体の足と呼べるパーツに再構成され、足へと変形する。同じく上側を構成していた円盤のようなパーツは下方のカバーを開き、中にあった上半身と呼べる部分を解放して腰パーツと合体しその体を作り上げる。上半身を仕舞っていた機首パーツは前方が手持ち式キャノン砲、残りは背部にバックパックとして背負う形となる。

 現れたのは、キャノン砲を左手に、巨大な円盤を背負ったMS。可変MSといえば、アレクとの決闘後に現れた可変機を思い出させる。しかし、先程ジャンヌが言ったように該当する機体データはない。外見も可変機マキナート・エアレイダーとは大きく異なっていた。別物と呼べる機体を、ホバリング状態で対峙するシュバルトゼロガンダム[ノヴァ]。こちらを視認すると、敵機は背面から棒状のものを右腕に構える。棒の先からビームの刃を出現させると、こちらに向けて急加速、攻撃を仕掛けてくる。

 

「接近戦か……!」

 

 出来れば現状不得手な接近戦はしたくない。モビルブースター「ヘッジホッグ」のキャノン・アームを向けると、2門のビームライフルの光を放つ。1発ではない。連続して放って、更に距離を取る様に後退する。前進するときと比べて後退するスピードは平凡的だ。ガンダムの本来のスピードにすら劣ると言える。だからこそ射撃は狙いを定めて撃っていた。ところが敵は背部円盤の側面から展開したシールドを肩に構えて、その攻撃をすり抜けそのままこちらに突撃してくる構えだった。

 浅はか。そう思い体勢を崩すためにシールドに向けてビームライフルを放った。2発の弾丸がシールドのアームに向けて放つ。そのままなら撃ち抜いて爆発、爆風に煽られるか着弾の衝撃で体勢を崩す可能性が高い。そうでなくても防御兵装を潰せる。そのはずだった。

 しかし放たれた弾丸は貫くことはなかった。2発の弾丸はシールド付近でその軌道をずらした。敵機から離れるように、外側に逸れて行ったのだ。あり得ない挙動にガンダムの2人も動揺する。

 

『ビームが曲がりました!?』

 

「さっきのはこれが原因……?くっ!」

 

 先程の砲撃のメカニズムを理解する。やはりビームを曲げていたのだ。だがそれ以上に、攻撃を避けられないことに気を向けざるを得なく、元は応戦する。キャノン・アームの銃口からビームを収束・停滞、ビームサーベルへと機能を変えて敵のビームの槍、ビームジャベリンとでもいうべき刃と切り結ぶ。

 ぶつかり、機体を照らすDNで形成されたビームの火花。近距離からオープン回線が開かれる。声が、怒声が響いた。

 

 

 

 

『見つけたぞ、ガンダムッ!!』

 

 

 

 

 

 

 ガンダムへの通信回線が開かれ、飛んできた怒声はジャンヌにも当然聞こえていた。いきなりの大声は大分慣れたものの、敵からの怒声には緊張が高まる。ところがその怒声はジャンヌの予想をはるかに超える怒り、否、憎しみを乗せて来ていた。パイロットの男は吐き捨てる。

 

『色は違うが、白いガンダムの同類か!!ガンダムは俺が、このマキナート・エアクルセイドで焼き尽くしてやる!!死ねぇ!!』

 

「白いガンダム……ヴァイスインフィニットの事?」

 

『ちっ、エンドのヤツ、余計な置き土産を……!』

 

 槍に乗せられた怒りに何とか拮抗するシュバルトゼロガンダム。推力を加速状態に移行、機体を押し込む。だが先程までこちらと同等の推力で追従してきた機体、MS形態でありながら推力はほぼ互角であった。力で無理矢理あちらが弾き飛ばす。2人で機体制御を行い、姿勢を安定させるも敵は攻撃の手を緩めない。再度巡行形態に変形……と思えば、なにやら格好がおかしい。体の上半身は巡行形態へと移行していたが、下半身はMSの状態のままだ。その状態でこちらに砲の先を向けて攻撃を放ってきた。

 

『堕ちろ、ガンダム!』

 

『何っ!?』

 

 ハジメが叫ぶ。機体の脚部が変形し、前方に脚部ブースターを向けて全力後退を行う。ハジメの行動が功を成し、放たれるビームを後退状態で攻撃を回避する。

 こっちの回避行動は上手く行っている。これもハジメがDNLの力で分かっているからだろうか。でもそれにばかり頼るのは悪手。私も何かしないと……!

 ジャンヌはすぐに機体のカメラ映像を空間の中央に持ってくる。更に引き続きガンダムの機動制御を行う。何か自分で分かることがあれば、それでハジメが楽になるかもしれない。例えば、曲がるビームのタイミング。その時相手が再びあのビームを放ってくる。

 

『またか!』

 

 機体周辺の煌めきと共に放たれたビームを回避しようとするシュバルトゼロ。だが途中、ガンダムが動いた軌道の先に向けてビームが曲がり向かってくる。直撃コース、避けられない。その時にはシュバルトゼロはそれを使った。

 機体の背面上部から金属音が響く。同時に機体の動きが変化して足の方向に機体全体が動く。ビームはその軌道をもう一度切り替えることなくシュバルトゼロがいたはずの空を貫いた。

 咄嗟の振動もあって攻撃は回避することが出来た。しかしなぜ?ジャンヌの疑問はカメラに映った漆黒の竜により解決することとなる。映像の中で翼にブースターを取り付けた黒い竜の姿が見える。ガンダムの支援機Gワイバーン・フルアーマメントである。先程までモビルブースターの上面に接続されていたGワイバーンが分離したことで、その反動により機体の軌道が変わったのであった。

 ブースターからGワイバーンを分離させたスタートが2人に告げる。

 

「Gワイバーンを支援モードで援護させる。加速しながら迎え撃て」

 

『スタート……助かる』

 

 スタートの言葉に従い、ハジメがスラスターをまた一方向に集中させ、巡航状態で迎撃を開始。それに応える形で相手の新型可変機のマキナート・エアクルセイドは再び巡航形態へと移行して、シュバルトゼロと熾烈なドッグファイトを展開する。ターンやコブラで前へと追い出してのキャノン・アーム、ツイン・ヴァリアブル・キャノン、そしてGワイバーンのビームキャノンでの砲撃。対して足を展開したモードでスピードを殺してからの連射のビームキャノンと曲射ビームキャノンを織り交ぜた乱射。射撃戦を展開する2機は、器用に互いの攻撃を回避し続ける。

 ジャンヌも機体のスラスターに至る出力管理を行う。だが、それでもなお機体を捉えるに至らない。回線から敵パイロットの憎悪に満ちた罵声が飛ぶ。ハジメもあの力を使っているはずだというのに、気になったジャンヌはハジメに力の使用を確かめる。

 

「ハジメ、DNLで動きは見えないんですか!?」

 

『動きは見えてますよっ!でも……アイツ、直前で回避して……どんな反射神経しているんだ!』

 

 ジャンヌの問いにハジメが苛立ちに舌打ちするが如く返答する。戦闘に集中しているためにそのようになっているのだが、苦戦するハジメの焦りをジャンヌは感じて唾を呑む。

 このままじゃ駄目だ。そう判断し、ハジメの助けになることを探すため映像に注視する。今は分離行動するGワイバーンからの映像もある。それらを1つ1つ見て突破口を見出そうとする。もちろん、機体の制御は欠かさない。感覚で制御しながらカメラを確認するという並行作業を展開する。

 戦闘に関しては素人だった彼女だが、それでもガンダムやGワイバーンが映したものを1つ1つ手早く確認していく。その間にも機体は激しい動作で揺れていく。やや酔ってしまいそう。そんなことを考えたところで、ジャンヌはそれに気づいた。

 

「……?これ……スタート!」

 

「なんだ、ジャンヌ」

 

 すぐにスタートを呼び出し、彼に確認させる。素人のジャンヌだけでは判断が付かなかったからだ。スタートに映像の注目したい部分に指をさして見せる。リピート再生した部分を見て、スタートの気づきと呼べる言葉が漏れる。画面の紋章のようなウインドウを近づけて注目したスタートは、ウインドウを頷かせる様に動かしてからハジメに伝える。

 

「ハジメ、聞け。ジャンヌが対抗策を見出した。作戦を伝える」

 

『なんだって?お嬢様?』

 

 ハジメの問いにジャンヌは頷く動作をして気づいたことを伝えた。ジャンヌが気づいたのは機体の回避運動時の動きである。ハジメがあり得ない反射速度だと言って舌を巻いていた敵の回避行動。攻撃を回避していたため完璧と思われていたそれだが、ジャンヌがその動きに違和感を抱いた。回避行動の直後、特に攻撃に転じた際射撃の狙いが甘くなっているように感じたのだ。もっと言うなら、機体の挙動も安定していないように見えた。とはいえそれが、敵パイロットの感情によるものだと言えないわけではない。しかしどちらにせよそれはこちらにとって付け入る隙と言えた。

 とはいえそれでも問題は残る。どうやってその機動不安定をもたらすか。加えて決め手となる攻撃も吟味しなければならない。下手に武装を使い切ってしまって前線から後退するとなれば、ほぼ作戦は失敗。戻っている間に再び防衛線が展開されてしまう。戦場をかき乱し、素早く皇帝を討つ。そのために武器は温存しなければならない。ハジメが、そしてスタートがどのように判断するのか……。

 攻撃を回避しながら話を聞いていたハジメ。彼はスタートに曲射攻撃を発生させる肩のシールドの機能について訊く。

 

『……スタート、肩のあれが攻撃と防御の軸を担っているってことで間違いないな?』

 

「あぁ。手持ちのキャノンとバックパックのキャノン。いずれも強力だが、厄介なのはそれとあの回避性能だ。それさえ潰せれば……」

 

 2人の間に流れる沈黙。迎撃が続く中、ハジメが言った。

 

『スタート、作戦は?』

 

「分かった。作戦はこうだ」

 

「…………っ」

 

 ハジメからの声でスタートが作戦の概要を伝える。ジャンヌも話を聞いて自らの役目をしっかり頭に叩き込む。そうして2人の反撃が始まる。

 

 

 

 

「行くぞっ!」

 

 元の掛け声に合わせ、シュバルトゼロガンダムが加速を開始する。先程まで旋回しながら迎撃していた機体が、再びマキナス領土方面に向けて飛行を開始する。振り切るような姿を見せるガンダムに、マキナート・エアクルセイドも追跡するため飛行形態に変形、追撃に入る。

 

『逃がさねぇ!!マキナス軍の、みんなの仇だ!!』

 

 執心するマキナート・エアクルセイドのパイロットは元の機体に再度巡航形態による砲撃を開始する。直線ビームと曲射ビームの連撃。それらに構うことなくシュバルトゼロガンダムの機体は奥へと目指す。

 順調に回避する機体。エアクルセイドもまた必死に狙いを定めてはいたが、元のDNLの響きで攻撃を感知することが出来ていた。回避に専念した動きなら、まだ攻撃は対処しやすい。2機のデッドヒートが続く。しかし、狙っているはずの攻撃が容易く回避されていくことでマキナート・エアクルセイドの動きが変化した。攻撃を止め、推力にDNを回しさらに距離を詰める。砲撃の反動もない状態ならあちらはこちらの以上の加速力を誇る。こちらが加速しているにも関わらず、たちまち上方に追いつかれてしまった。

 やや追い抜かす形で飛行するエアクルセイドはガンダムを捕らえると変形を解除、MSへと変形しビームジャベリンを手に取る。射撃でダメなら近接攻撃で、と言わんばかりの行動。回線からパイロットの声が響き渡る。

 

『もらった!』

 

「……掛かった!」

 

 だが、それもこちらの予測通りだった。変形してこちらに向かって落下してくるタイミングで機体の機首を上げる。更に同じタイミングでブースター上部に備えられた近接防御用ビームクラスターポッドを放射、相手と距離を離す。

 前に押し出される形となったものの、前を取った敵機はビームジャベリンを構えたままこちらに向かって来ようとする。しかしそれも元は読んでいた。すぐさまツイン・ヴァリアブル・キャノンを文字通り変形させ、4つに分割、スパークを迸らせて拡散ビームを放つ。合計8つのビームが雷のように暴れ狂いながら、エアクルセイドに迫った。行動に会わせられた攻撃にエアクルセイドは慌てて再変形し逃げようと試みる。

 

『クソッ!生意気な……』

 

「逃がしはしない!」

 

 元の言葉に反応してブースター側面のコンテナの蓋が開く。中から覗くマイクロミサイルの弾頭。それが一斉に放たれ、エアクルセイドに迫る。掃射されたミサイルから逃れようと、エアクルセイドは逃げようと試みる。元も逃がさないという意志を前面に見せるかのように、ミサイルを続けて2回に渡って掃射する。

 空を覆うミサイルの軌跡。すべて回避しきるのは至難の業だ。ミサイルを誘導したところで再度MS形態に変形して一直線にミサイルを迎撃する。放たれた手持ちビームキャノンの光線がミサイルを爆発へと変えた。そこに間髪入れず、元が仕掛ける。ミサイルの爆発に隠れた状態でビームマシンキャノン、ツイン・ヴァリアブル・キャノンを連射して突撃した。圧倒的弾幕だったが、エアクルセイドはそれら攻撃を肩のシールドを構えて防ぐ。弾丸はシールドにあたるよりも早くビームの弾撃の軌道を逸らした。その状態で再びミドルレンジへと飛び込もうとしていた。

 接近する敵の攻撃を防げるのなら、常道とも呼べる戦術だ。だからこそ元も仕掛ける。両キャノン・アームを前方まで引き出し、合体させる。4門の高出力ビーム砲へと変形したキャノン・アームにエネルギーを注ぎ込む。狙いはただ1つ、目の前の新型可変MSマキナート・エアクルセイド。トリガーを引いた。

 

「行けぇぇぇぇぇ!!!」

 

 絶叫と共に最大火力「スピアブラスター」が放たれる。槍の穂先と見紛う高圧縮ビームは接近する敵機との距離を瞬く間に縮める。迫る大火力に一瞬ためらう様子を見せたエアクルセイドのパイロット。だが負けまいと肩のシールドを向けて防御を試みる。

 これまで多くのビームを防いできた肩の機能。機体の前方にまばゆい光のカーテンが展開される。防がれてしまうのか。いや、そんなことはない。スタートからの言葉が脳裏に蘇る。

 

『あれはビームの構成DNに反発するように形成するシールドだと思われる。高出力ビームでも防がれてしまう。だがスピアブラスターは単なる高出力ビームではない。DNを極限まで圧縮して貫通力に特化したビーム、直線への力が強い。これなら、逸らしきれないはず』

 

 スピアブラスターと敵の光のカーテンがぶつかり合う。攻撃を逸らそうとするカーテンとスピアブラスターが干渉しあう。しかし、勝ったのはスピアブラスターの方だった。

 カーテンを貫き、機体の半分が削り飛んだ。確実に大破と識別できる損傷具合だ。もしかすると、パイロットの保護システムごと破壊したのかもしれない。ビームキャノンが零れ落ちた敵機の手がこちらに手を伸ばしたように見える。だが通信回線から声が響く前に残ったミサイルが機体へと降り注ぎ機体が爆発する。撃破した機体のパーツが地表へ向けて落下する。それを見届けることなく元は再び機首をマキナス首都に向けて飛翔する。

時間を食い過ぎた。早く戦闘を終わらせなければ。全弾撃ち尽くしたミサイルコンテナを切り離し、Gワイバーンを再度ブースターにドッキングさせてエネルギーを注入しながら侵攻を再開するのであった。

 

 

NEXT EPISODE

 




EPISODE69はここまでとなります。

グリーフィア「ミサイル大放出ねぇ~。これで火器が1つ減ったわけだけど」

ネイ「こんな序盤から破棄していって大丈夫なのかな……」

まぁブースターの兵装は戦線を突破するための兵装なので、ここで使い切っても本体が目的地にたどり着けば問題ないですよ。まぁブースターが残っていることに越したことはないのですが(´・ω・`)

ネイ「そ、そうですか……」

グリーフィア「んーじゃあ次のジャンヌ達に任せましょうか」

それではEPISODE70に続きます、引き続き是非ご覧ください<(_ _)>


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EPISODE70 (レイ)(レイ)の交差1

どうも皆様。引き続きお読みの方は改めまして、蒼穹のファフナーEXODASを当時録画しなかったことを激しく後悔しながら毎日ファフナー限定配信を見ています、藤和木 士です。やべぇよ、クライマックスが何度もあるよぉ( ;∀;)

レイ「これは同化(どうか)してるね。アシスタントのレイだよー」

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです。はいはい、藤和木無の領域から戻ってきてください」

本当ファフナー心削るけどその分盛り上がりがすごい(´ρ`)では引き続いてEPISODE70の公開です。

レイ「無事に最初の刺客撃破―っ!このまま行っちゃえー!」

ジャンヌ「何事もなく上手く行けば本当にいいんですが……というか初めてじゃないです、サブタイトルにルビ振ったの」

そうっすね(*´ω`)さて、何が交差するのか?それでは本編へ


 

 

『マキナート・エアクルセイドのシグナルロスト。あれだけの事をやって、ガンダムは落とせなかったようです』

 

「そうか。やはり素養のあるものを改造すべきだったかな?それでも自ら進んでその実験体となったことには感服せねばなるまい」

 

 技術主任とのやり取りで、やや残念といった様子で肩を落とす。座乗艦「マギア・マキナス」の艦長席にて、ギルフォードは戦況の確認を行っていた。今、ドラグディアのガンダムと対決したマキナート・エアクルセイドがやられた報告を受けた。その報告を受けて次なる手を打つ必要があった。

 マキナート・エアクルセイドはマキナート・エアレイダーの改修機である。元々はとあるMSパイロットの熱望により生み出された。そのパイロットは最初に試作されたエアレイダー5機のうち1機のパイロットであり、ガンダムの撃墜から何とか逃げおおせた1人であった。

 敗走後は味方と合流し、前線基地となっていたエクセラ基地に撤退したが同基地は直後に白のガンダムの襲撃を受けて壊滅。2度のガンダム襲撃に幸運にも生き残ることが出来たものの、パイロットは味方をことごとく葬ったガンダムという存在を憎悪し、ガンダムを撃墜できるMSの製作を依頼した。普通ならマキナス軍の目にも止まらない要望だったかもしれないが、部隊壊滅を深刻とみたことと、その要望を聞いたものの中にあのワルトがいたことで状況は変貌した。

 かつてガンダムを救世主と崇め奉った歴史考古学者のワルト。彼はガンダムに斬られた後、何とか命を取り留めたものの自身を斬ったガンダムへ意趣返しをするかのようにMS開発の世界に戻ってきていた。「ガンダムを超えるMSの開発」を考えていたワルトは既に皇帝派に同調して活動していた。そんな中ワルトが彼に接触、マキナート・エアクルセイドの開発に至ったのだ。しかし完成間近になってマキナート・エアクルセイドがそのパイロットの技量では操作しきれないものであると判断された。

 せっかく機体が完成しようというところでこのアクシデント。お互いの意見をすべて取り入れた運用は不可能に思えた。しかし、1つの案がワルトによりもたらされた。それは脳改造。機人族の頭脳CPUを調整し、処理速度を上げるというものだった。調整と言えば聞こえはいいが事実上の人体改造。いかにガンダム打倒に燃えていたワルトも、非人道的な方法にパイロットを変えて運用、最悪機体の封印を考えた。今の時代ではいなくとも、先の時代で使いこなせるパイロットがいるかもしれない。彼がかつて考案した接近戦型MSマキナート・フラッシュがアルスのマキナート・レイとして運用される様になったように、と。しかし、開発を依頼したフリップ・プレインはそれを望んだ。死んででも復讐を果たしたい彼にとって、その手段は是が非でも叶えるための手段であったからだ。

 結果ワルトも覚悟を決めて彼の改造を決断、結果マキナート・エアクルセイドはフリップ・プレイン曹長、いや……少尉の機体となったのである。彼にとってガンダムと遭遇できたのは願ってもみないチャンス、ところが彼は撃墜されてしまった。艦のMS技術主任であり、彼のMSを製作したワルトが撃墜された理由の自己分析を回線で口にする。

 

『いかに改造で乗りこなせるようになったとはいえ、連続した機動で血中酸素の欠乏……そこをガンダムのパイロットに突かれてしまったようだ。しかも正面からエアクルセイドのノイズ・オーロラを破っている様子……まったく、流石救世主、とは言わざるを得ないだよ』

 

「ガンダムの側も、かなりの武装換装をしているようだな」

 

『送られてきた映像を解析するに、機体そのものもアレク少尉が戦った時より改装されているようや。それにこれはモビルブースター装備……突貫して戦線を切り開く気か?』

 

 ワルトの発言通り、ガンダムは先行する形でこちらに向かってきている。戦線を撹乱しつつ進軍という見方も出来るが、それにしてはあまりに急ぎ過ぎているように見える。ワルトの目からしてみれば突貫して戦線を切り開こうとしていても、反逆するために力を蓄え続けて来たギルフォードの目からしてみると、1つの考えが導き出せた。

 

「いや、確かに突貫に意味があるのは間違いないだろう。だが後方のためのというより、行動そのものに意味があると言える」

 

「行動そのものに……突貫すること自体が作戦の目的だと?」

 

 ギルフォードの考察に艦に乗船して護衛についていた機械騎士ランドが聞き返す。彼はマキナスの象徴とその担い手奏女官の護衛が任務だが、まだ出るまでではないと船内待機となっていた。それ以上に、彼のMSがまだ完成しきっていないというのが大きな理由だ。

 その彼にギルフォードなりの考えを、首肯して述べる。

 

「あぁ。これだけの戦力差で通常の総力戦はドラグディアにとって愚策。ならば逆転するための作戦を展開するはずだ。ガンダムの突貫……戦線を押し上げ、焦ったところをこちらが押し下げるのを狙っているのかとも思ったが、それにしてはガンダムが先に急ぎ過ぎているように感じる。もしかすると、この私の首を狙っているのかもしれん」

 

「なんですって?いくらガンダムといえど、この分厚い兵士達の壁を突破できるとでも……」

 

 ランドの言う通り、こちらの防衛線は分厚い。全戦力を投入しているといっても過言ではないのだ。しかしガンダムの性能が予測できない以上、考えは常に最悪も想定して動く必要があった。奇しくもこの考えは当たっており、シュバルトゼロガンダムはギルフォードの首を討ち取ろうと突撃を行っていた。

 戦力図を再度確認すると、ギルフォードは通信システムに向かって指示を送る。

 

「中央艦隊にはガンダムの迎撃を最優先。大陸北部、および南部の部隊には敵軍の動きが、不審な点を見つければ逐次報告させろ。……大尉の方はどうだ」

 

『現在、ガンダムの接近に伴い、出撃を開始。付近艦のMS部隊も展開を開始』

 

 マギア・マキナスの通信プログラムからの応答を聴き、中央モニターを見つめる。MS部隊の中に、あの男のMSが混ざって発進する。エアレイダーは撃墜されたが、続く彼が喰い止められるかどうか。それによっても戦況は左右される。

 

(ガンダムを仕留めろよ、大尉)

 

 ギルフォードは近づいてくるガンダムに対し、密かな苛立ちを胸に次なる刺客の戦果を待った。

 

 

 

 

 エアクルセイドとの戦闘から数分、シュバルトゼロガンダムは突撃を再開していた。更に圧の強まったMSの壁を、ビームの照射により切り崩していく。ビームの乱撃に対し、敵はシールドを掲げて防御していたがツイン・ヴァリアブル・キャノンの不規則な弾道に対応できていない。加えてGワイバーン側のミサイルも合体状態で発射して道を切り開く。しかし流石に敵軍近くへと向かっているだけに、切り開いた道もすぐに他のMSが塞いでいく。

 ブースター側の残存DNも注視しなければならない。いくら可能な限りタンクを追加していても、高純度DNが効率よくエネルギーに転換できたとしてもこの連続した高出力状態が続けばエネルギーが尽きる。

 苦戦を強いられる元とジャンヌ。だが、そこで敵の動きが変わる。こちらを集中して攻撃してきていた敵機が元の進む方向と反対側に向けて攻撃をするようになってきていた。後方を確認すると、ドラグディアのMSがこちらへと向かってきていた。前線部隊が追いついたのだ。戦力がそちらに流れだす。

 

『ハジメ、前線の部隊が……クリムゾン・ドラゴニアスも』

 

「あぁ。今のうちに突破しよう」

 

 クリムゾン・ドラゴニアスや母艦ダンドリアスの姿も見え、安堵と同時に心配を感じる。この展開はあまり考えたくない状況だった。前線部隊が追いつくということは、それだけ敵の防衛網が厚くなっているということ。防衛網すら混乱させて懐に飛び込む作戦が、停滞していることを意味していた。

 だが、逆に追いついたことで今の戦線はそちらに掛かりきりになると言える。そうなればこの戦線を突破できるかもしれない。ジャンヌにも伝えて、早急にこの戦線を突破することを試みる。ここを抜ければマキナス皇帝がいると思われる地点までもう少し……。

 加速を開始し、マキナス艦隊を突破したその時であった。前方から危険を知らせるアラートが響く。すぐさま反応して機体を左に向けてロールしながら回避する。通り過ぎた2本の光条。正面から敵MSが編隊を組んで接近しつつあった。放ったのは先頭にいたMSだ。サングラスのような形のバイザーをしており、マキナスのMSとは違う印象を感じる。そのバイザーの奥に2つの光が灯る。その光は他のマキナスMSのモノアイ2つではなく、まるでガンダムの瞳のようだ。

 その機体は背部から前方に向けた背負い式のビームライフルのようなものを戻し、代わりに見覚えのあるビームソードをサイドアーマーから構えてこちらに肉薄する。こちらもキャノン・アームからビームサーベルを発振させるとその光刃で受け止める。激突と同時に、聞き覚えのある声が回線から響いた。

 

『随分と重装備だな、ガンダム!今日こそその首、この星剣使いのアルスがもらい受ける!』

 

「アルス・ゲート……!」

 

 アルス・ゲート。国境付近で元がマキナスに引き渡されることになった時、激突したマキナスのエースパイロット。メレト遺跡上空での戦いでもぶつかり合った敵と、再び激突する。

 アルスは他のMSを4機引き連れていた。その銃口がこちらに向かっている。元は鍔迫り合いを避け、シールドのビームマシンキャノンを展開しつつあったアルスの部隊に向けて掃射し、けん制する。敵は一気に散り散りになるが、周囲に展開し、こちらに向かって攻撃を開始する。

 機体を下方に向けて飛行し、重力により加速させてから上へと向けて飛び上がる。加速を得たことで失速状態から復帰するも、すぐにアルスの機体が追撃を開始する。

 

『逃がすと思うか!』

 

「くっ!」

 

 進行方向を塞ぐアルスに向け、ビームマシンキャノンを放つ。それをアルスの機体は左腕を構える動作をする。直後に左腕から光の膜が形成する。何かと思う前にその光の膜にビームマシンキャノンの弾丸が直撃する。ところがビームの弾丸は光の膜にあたると、打ち消し合うように膜の表面で弾けて消えていく。

 いきなりの事に動揺を隠せない。何が起こったのか。それが仇となり、シュバルトゼロガンダムはとうとう被弾する。被弾の衝撃で機体が揺れる。

 

「ぐっ!……損傷は」

 

『ブースター右舷損傷、スラスターにもダメージが……』

 

 ジャンヌからの被害報告。スラスターの出力が低下したことを感覚でも感じ取る。目に見えてスピードが落ちている。更に連続してビームが周囲から襲い掛かり、機体の全スラスターを駆使して回避行動を行う。右舷だけ破損でも回避に支障は出る。量産機の攻撃は回避できても、アルスの機体の狙撃が辛かった。ビームマシンガンの弾丸が機体を掠め、揺らす。損傷が重なっていく。こちらも反撃をと、キャノン・アームとフェザー・フィンファンネル、更にGワイバーンのキャノン砲で応戦する。

 激しい攻防戦の中に、戦艦からの飽和攻撃も混ざって機体への損傷が重なっていく。このままではブースターは爆散してしまう。ブースターが途中で無くなることは計画の中で計算されてはいる。しかし、何もないまま敵に撃墜されるのは不味かった。破壊されるにしても「それだけの事」を成してから大破してもらわなければならない。早期にブースターを排除して行うプランBのために、元はジャンヌに叫ぶ。

 

「ジャンヌ!敵艦補足!皇帝座乗艦は!?」

 

『ま、まだ判別が……』

 

 当たり前だ。皇帝の姿すら見ることも叶っていない。しかし、直感では分かるはずだ。皇帝ほどの人物なら守りが硬いか、他の艦と違った装飾、異彩を放った外観をしているはず。元々シュバルトゼロガンダムが他のMS攻撃に対処しながら、その事をジャンヌに伝え再度の捜索を依頼する。

 

「皇帝ほどの人物なら何か他とは違う……艦隊が多いか、まったく違う外観の戦艦っていう違いがあるはずだ。それを知らせてくれればいい!Gワイバーンを索敵に回す。それで見つけて!」

 

 Gワイバーンが包囲の中から出て上空からマキナス側を望遠状態で映し出す。その間元はシュバルトゼロガンダムの武装を以ってこちらに注目を集める。自らを囮にして敵の総大将を見つける。小破状態のヘッジホッグでの無理は禁物だが、見つけるまでの辛抱、持ち堪えさせるしかない。

 ファンネルのDNプロテクションも展開して防戦一方なシュバルトゼロガンダム。だが守りを突破する様にアルスの機体は弾幕を潜り抜けてその格闘兵装を振りかざす。

 

『でぁ!!』

 

「ぐっ!!パージ!!」

 

 斬り裂かれたツイン・ヴァリアブル・キャノンをパージしてバックパックへの誘爆を避ける。何とか間に合ってものの爆風の影響を受ける。機体が揺れ、更に体勢を崩したところで周囲の機体のライフル攻撃を受けた。ビームクラスターポッドが大破したことを把握し、根元から自動パージ、被害を最小限に抑える。

 そこでようやく、ジャンヌから報告が飛んでくる。

 

『ハジメ、これは!?』

 

 映し出される画像。写真を拡大されてそれを理解した。マキナスの街の手前に並ぶ艦隊、その中央に謎の浮遊物体が確認できた。他のマキナスの艦艇とは違った、平たく言うなら亀のようなシルエットをした艦体。明らかに異彩を放つそれを皇帝の座乗艦と直感した元は、ブースターのコマンドを操作した。

 金属の重低音と共にシュバルトゼロガンダムがブースターから飛び出す。ブースターから続けて射出された改良型ビームライフル・ゼロ重装仕様改め、メガ・ビームライフル・ゼロをその手に握る。直後にブースターが変形を始める。脚部固定部は後部に合体し、加速方向を一点に集中。キャノン・アームはシュバルトゼロガンダムがいたスペースまでスライドして合体、スピアブラスター発射態勢に移行する。スピアブラスターで機体前方を覆うとスラスター全開で突進を開始する。前方にいたMSを突き削りながら突貫していくブースター。行き先は先程確認した艦艇に向けてだ。それは特攻であった。

 狙いに気づいたアルスが迎撃しようとしたが、それをもう片方のツイン・ヴァリアブル・キャノンもパージして身軽になったシュバルトゼロガンダムが妨害する。

 

「邪魔させるかよ!」

 

『ちぃ!身軽になった途端に……チームに通達!後方部隊に特攻するブースターの迎撃通達を!』

 

『りょ、了解!』

 

 元を相手にしながら、部隊員に迎撃の通達を行う素振りを見せるアルス。元も自身が狙われないようにフィンファンネルを操作して周囲の敵を追い払う。

 身軽になった以上、これまで以上に機動戦を行える。もっとも突貫して一気に撃破するという方策は取れないのだが。それでも当初の予定通り、アルスの相手をしながら皇帝座乗艦に向けて前進を続ける。艦を撃破出来たとしても、爆発する前に皇帝が退艦してしまえば制圧したとは言えない。戦争を仕掛けて来たあちらの態度からもそれでおとなしく引き下がる人間とは思えなかった。だからこそドラグディアの手でマキナス皇帝を捕らえなければ。

 一度宙返りしつつ後退するとシールドの側面に追加された新たな武装を展開する。シールドのビームマシンキャノンを挟みこむ形で突き出された開放型バレルのようなパーツ。そこにDNがスパークと共に収束する。放たれたビームはこれまでのような連射出力ではない、圧縮されたビームとなって伸びる。直線状にいたアルスのMS部隊は回避するが、その先にあった戦艦の艦砲を抉り爆発を引き起こす。爆炎を上げながら地表にゆっくりと落下していく艦を見下ろし、新装備の開放型増幅バレル「レイ・アクセラレーター」を収納しつつメガ・ビームライフル・ゼロを構える。

 

「機動戦、開始する!」

 

 作戦をセカンドプラン(次の段階)に移行させ、目の前の敵の排除に取り掛かった。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。

レイ「また君なのアルス君!」

ジャンヌ「ここまで来ると本当にガンダムに執心していると言いますか……前話のパイロットの事を踏まえると、こちらは好敵手と言った方が良いでしょうか?」

何かすごい武士口調になっちゃうんだよね……絶対あの人の影響出てるわ(;・∀・)って思う。ライバルといっても過言じゃないね。

レイ「でもここでブースター切り離しかぁ。というか特攻してるし」

どこぞの鋼鉄の7人の展開を参考にしているからね(^ω^)

ジャンヌ「でも割と仕方なしに切り離して飛ばしているので成功率が不安ですね」

さぁ、次回でブースター君どうなる?(どちらにせよ破壊されるのは確定)それでは今回はここまでです。

レイ「括弧の中が悲しいよぉ。次回もよろしくねっ」


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EPISODE71 (レイ)(レイ)の交差2

どうも、皆様。最近朝晩共に冷えるようになり、冬が到来してきたなぁと思う藤和木 士です。私はよく季節の移り変わりの時期に風邪とかひきやすいですが、皆様もくれぐれも体調を崩さないよう気を付けてください(T_T)

ネイ「アシスタントのネイです。北海道では既に雪が降っているということで、すごく行きたいです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよぉ。どうして作者君は北海道に住んでいないのかしらねぇ?」

(;・∀・)それを私に言わんといてください。それに私の住んでいる地域も雪は降りますから……もうちょい時期は遅いけど(´・ω・`)
さて、今回はEPISODE71と72の公開です。

グリーフィア「アルス・ゲートとの対決ねぇ。ブースター君は無事に任務を果たせるのかしらねぇ♪」

ネイ「姉さん、君付けしてるけどそれただのブースターだから。増速装置だよ。前回の作者さんも人扱いしていたけれど意志も持たないから」

グリーフィア「擬人法的なあれよ」

そうそう、擬人法擬人法(^ω^)

ネイ「絶対違うと思うなぁ……」

それでは本編をどうぞ!


 

 シュバルトゼロガンダム[リペアツヴァイ LBC-A『ノヴァ』]が分離させたモビルブースター「ヘッジホッグ」。アルスの部隊を振り切ったブースターはスピアブラスターをシールド代わりにして特攻し続けていた。スラスター破損でスピードは落ちていたが、それでも十分な加速力で戦線を突破する。元が行っていた突貫のおかげもあって既にマキナス皇帝ギルフォードの座乗艦にして、象徴マギア・マキナスの姿を捉える距離に至っていた。MS隊が喰い止めようと複数機が密集してシールドを構えて受け止めようと試みる。が、それを加速力と合わせてあっさり突破してしまう。

 この時元は知るよりもなかったが、この時形成したスピアブラスターがアルスの機体マキナート・シャイニングの形成するビームシールドと同等の防御性能を発揮していた。加えてブースターの加速力で止めることも撃ち落とすことも叶わない特攻兵器と化していた。プラン通りのこの攻撃法は、いかにビームシールドを開発したマキナス側でも瞬時に対応することは出来なかった。もしこれに真っ向から追いつけるマキナート・エアクルセイドが戦場にいれば、素早く仕留められただろうが既に後の祭り。

 皇帝座乗艦にして象徴マギア・マキナスに特攻兵器と化したブースターが迫る。艦内に緊張が走る中、皇帝だけが冷静だった。彼の手に合わせるかのようにマギア・マキナスが口部にあたる箇所からビームを放った。マキナスの他艦艇よりもかなり小さめの大きさから放たれるビームは、膨大な出力でブースターを飲み込んだ。数秒の間攻撃に耐えるブースターだったが、出力が違い過ぎた。マギア・マキナスの放つ超高出力ビームに焼かれ、爆発を起こす。

 マギア・マキナスを煙が覆う。煙が晴れた後にはマギア・マキナスの傷ひとつない姿だ。その姿に防衛網を築いていたマキナスのMSや艦隊の乗組員が安堵に落ち着く。中にいた皇帝の眉がやや歪んだことに気づかぬまま。

 

 

 

 

『損傷皆無。しかしまさかブースターの特攻とは……』

 

 危機を未然に防いだ艦内で、ワルトの被害報告を受ける。しかし当然だろう。マギア・マキナスがあの程度で支障が出るほどの被害が出るわけがないと自分の事ではないが自負できる。国を護り続けて来た象徴、簡単には傷つけさせはしない。国のトップとして当然のことだ。だがそれ以外は作戦の為なら可能性はあったが。そして今はそうしたいところではあった。被害報告を受けたギルフォードは奏女官のメル・オンと機械騎士のランド・オンに警戒を促す。

 

「あぁ。やはり私を狙ってきているようだ。目立つ艦を狙ってきたか……それはともかく敵は既に距離に入っている。奏女官メルはマギア・マキナスへの警戒厳重を指示、ランドは機体の準備をせよ」

 

「承知しました、カイザー」

 

「なるべく僕の機体が完成してから出たかったんですが……まぁいいか。まずは相手の技量測りです。ワルト、そっちへ向かう」

 

 各々言葉に従い行動に移す。2人の姿を見届けていると後方に控えていたエクスがこちらに聞く。

 

「俺はいいのかい?ガンダム相手にあの坊ちゃんの機体だけだと無謀だろ。子守りくらいは少しはやってやるぜ?ガンダムと戦わせろよ。そのための俺、だろ?」

 

 やや謙虚な言い方ではあったが、所々でガンダムとの戦いを求めていた。戦いへの貪欲さは既にギルフォードも知るところだ。呆れたようにエクスに決定を言い渡す。

 

「既に君にはこの艦のMS部隊の隊長を命じている。もっとも命じるモビルスーツは彼と例の機体達だけだが……出たいなら君自身の判断で出てくれ。もちろん君の仕事は」

 

「わーってるよ。アンタを護ること、それとガンダムを殺ること、だろ?仕事はやるさ。皇帝の護衛なんていう大層な仕事と地位をもらったんだからな。じゃ、いくぜ」

 

 任された仕事はするとエクスはギルフォードに返答し格納庫へと向かう。そしてギルフォードは艦の微調整を行う召使い達、メルに指示を送る。

 

「敵がこちらを狙っているのは明らかだ。反撃に出る。マギア・マキナスDNF「マキナ・ビフロスト」を使用する。照準はガンダム!しかし気取られてはならない。味方への勧告なしで砲撃を開始する」

 

「っ!正気ですか?味方の不評を買いますよ?」

 

 メルが驚いた様子で聞き返した。確かにメルの言う通り、味方からの抗議が飛んでくるのは明らかだ。しかしギルフォードの考えに二言はない。

 

「承知している。それにこれは味方への鼓舞でもある。恐怖による鼓舞だがね」

 

「……了解」

 

 一瞬躊躇いを見せたメル。しかし平静を装い了解する。その彼女に象徴への照準位置を伝える。狙う箇所は敵右翼艦隊方面。こちらの左翼に被害が出るものの、それでもかまわなかった。ガンダムを撃破出来るのであれば上場、それに討てなかったとしても敵の右翼に損害を与えられる。こちらの被害もすぐに後方に配置した艦隊を前に出して戦線を再構築できる。もとから相手の方が不利なのだ。こちらの最小の犠牲で大勢を決してしまえば、相手は撤退するしかない。逃げられたとしても圧倒的優位がこちらにはある。

 とはいえガンダムに当てることを最重要としなければならない。ギルフォードは艦の通信機能をサポートする召使いに命じ、ガンダムと戦っているアルス・ゲート中尉に味方を巻き込むことを伏せつつ攻撃の詳細を伝える。アルスからの返答が返る。

 

『了解っ』

 

 ガンダムとの戦闘に集中せざるを得ないためか、短く言葉を吐いて通信を切られる。彼のような人物に余計な詮索をされない分、ガンダムが手ごわいことに感謝しなくてはならない。それでも容赦なくその対象を落とすつもりではあった。

 照準を固定した報告を受けるとジッと戦場を移すカメラの映像を見つめる。敵右翼艦隊が移る照準の先に、横から2機の機体が紅と蒼の光を放出して激しくぶつかり合って向かってくる。自軍のアルスが駆るマキナート・シャイニングと、ドラグディアのガンダムだ。周囲にはガンダムを支援する竜型の機体とガンダムを追い込む形でアルスの部隊が展開していた。アルスと周囲の部隊は着実にガンダムを追い込んでいる。まもなく射線軸に乗ろうとしていた。

 これならいける。発射後の動きも予測してギルフォードはメルを通してマギア・マキナスに命じた。

 

「今だ」

 

『DNF、マキナ・ビフロスト照射』

 

 口部にチャージした高純度DNを圧縮した砲撃が、正面に展開する敵軍右翼に向けて放たれる。左翼に配置されていた味方を巻き込んだ砲撃は爆発を伴いながらガンダムへと延びていく。接近する砲撃に、先にマキナート・シャイニングが鍔迫り合いからガンダムを蹴りつけつつ回避する。いつの間にか支援機と合体していたガンダムはバランスを崩したと思ったが、ガンダムもまた機体を蒼く光らせ、その暴力的なまでのエネルギーを誇る攻撃から逃げ去っていた。

 やがて必殺の砲撃は敵軍左翼の艦隊を斜め一直線に飲み込み、その射線上にいた艦隊を壊滅させる。残った艦隊はダメージコントロールか艦隊の救援活動を開始する。直後艦内に味方からの多数の通信コールが響く。大方味方への「誤射」に関しての事だろう。味方艦隊を総大将の艦艇によって後ろから撃たれれば怒りと動揺で確認が入るのは分かっていた。だからこそ召使い達に速やかな「対応」をさせた。

 

「味方に伝えよ。これは象徴の国を護るための意志であるとな。小の犠牲が大の結果を生み出す。これは勝利のための、哀しい犠牲なのだ。これに反する意思を持つ者は裏切り者と見なす」

 

「はっ」

 

 召使い達はなんの疑いもなくその命令を忠実に従う。彼らの願いはただ一つ、マキナスの繁栄。しかし130年前から続く皇帝一族の復讐の過程で、ギルフォードも含めた者達の考え方は歪んでいた。かつての皇帝が反逆を察知できずに死んだことを教訓に、国民は皇帝の駒に過ぎないという考えを代々教え続けられた。駒を最大限生かすために、味方を後ろから撃つのも作戦の1つであること、それに対する理由づけまでみっちりと叩き込まれている。

 健全な人から見れば矛盾だらけの思想も、集団で思想を刷り込まれた者達同士の同意でねじ伏せられる。洗脳教育の典型的な例と言える。自分達だけの憶測による根拠を打ち立て、それを他人に強制的に浸透させる。今回の場合は恐怖で兵士達を洗脳しようとしていた。もっともギルフォード達は洗脳している自覚などない。国民に言うことを聞かせるための最適な方策を取って行動しているだけに過ぎないのである。メルやライドはまだ良心が残っているためかやや抵抗気味で命令を理解し、その行動に彼ら以外ではエクスがクレイジーと称していた。

 そんなギルフォードの席の回線へ強制的に割り込みが入る。ギルフォードへの直通となる回線はほとんどの機人族に知らせていない。この艦内の機人族、あるいは先程ガンダムを追い込んでくれていたあの男くらいのものだ。そして、それは的中した。回線からあの男の怒声が響き渡る。

 

 

『何をやっているんだ、あんたは!正気か!?』

 

星剣使いが、礼節を捨て去るほどの口調で訴えて来た。

 

 

 

 

 それは奇跡に等しかった。アルス・ゲートの機体と彼の部隊に包囲されながら、戦闘を行っていたシュバルトゼロガンダム。既に兵装仕様はブースターを外した[LBC-B『Dragknight』]へと移行し、機動戦を行う。ビームライフル・ゼロの上からカバーを付けて大型・大出力化を果たしたメガ・ビームライフル・ゼロの射撃が敵を翻弄し、孤立したところにブレードガン・ニューCで斬りかかる。単機で部隊を相手にするのは無謀だが、現状では仕方ない。相手に背後を取らせないようにしつつ激しく動き回った。

 それにしびれを切らしたアルスが飛び出してきた。機体を紅い残像が残るような動きで距離を詰めると、ビームソードでこちらに斬りかかる。一瞬反応が遅れたが、メガ・ビームライフル・ゼロを斬られる前に回避する。一度止まった敵機はもとの白・青・赤のトリコロールカラーへと戻るが、続く機動で再度赤く染め上げられる。まるでエラクスと見紛うその機動に機体側の照準器が残像をロックしてしまう。当然放っても攻撃は当たらない。迫る攻撃を蹴りで腕ごと叩いて防いだ元。

 このままでは押し切られる。まだ見ぬ未知の能力に警戒した元は高速機動を行いつつGワイバーンとの合体を開始した。フェザー・フィンファンネルによるけん制を挟み、分離したGワイバーンのパーツに向かっていくようにドッキングを完了させる元。合体を完了させてビームライフルを構えた状態でアルスの機体に拳でぶつかり合う。ビームと拳に停滞する高純度DNがぶつかり火花を散らす。ほぼ互角の出力。しかし唐突に相手が動いた。

 

「っ!!」

 

「ぐっ!?」

 

『きゃあ!?』

 

 切り払いと放たれた蹴り込み。それにより大きく吹き飛ばされる。体勢を立て直そうとした瞬間、ノイズが響いた。ノイズの方向の先で煌めく光。危機を察知した時には既に機体に命令が行き届いていた。

 

『ELACSSystem、Stand by GO』

 

 蒼い光を纏うシュバルトゼロガンダム・イグナイト。通常時でさえも圧倒的な機動性能を誇る機体が、更なる機動性を得てその場を急速回避する。直後光がマキナス陣営側から戦場を貫く。

 マキュラ級のスパイラルキャノンではない。しかしそれ以上と断定できる砲撃がこちらの中央戦力の右翼を飲み込んで過ぎ去る。飲み込まれた右翼艦隊は爆発の煙だけを残して消失する。シュバルトゼロガンダムは何とかその攻撃から避けられたものの、知らず知らずのうちにその射線上に追い込まれていたのである。

 

『今の射撃……普通とは違いますよね?』

 

「えぇ。おそらく皇帝の……」

 

 先程確認した亀のような形をした戦艦。あれくらいしか今の攻撃を放てそうなものはいない。しかしあのサイズでマキュラ級以上の砲撃をするとは一体何なのか。正体を知らない2人は警戒を強める。

 が、敵軍の様子がおかしい。アルスはこちらに再度積極的な攻撃を仕掛けることなく、ビームマシンガンをばら撒き後退していく。アルスの部隊員もアルスを護る様に弾幕を形成してこちらの接近を避けているようだった。不審な動きを見てジャンヌも違和感に気づく。

 

『敵が退いていく……?進むなら今ですよ!』

 

「え、えぇ……」

 

 ジャンヌの言う通り、相手の射撃は狙いが付いていない。気になりはするが目的はアルスと戦うことではなく、敵指揮官の拘束。隙が出来たのなら突破すべき。シュバルトゼロガンダム・イグナイトはELACSシステムを解除して、通常稼働状態になってからその弾幕から逃れて離脱する。

 再び前を見据えて皇帝座乗艦へ進路を取るシュバルトゼロガンダム。後方のカメラ映像で後方の追撃を確認する。が、アルスはこちらを追いかけてこなかった。追いかけてこずに、先程まで味方のはずだったマキナスのMS部隊の攻撃を、受けていた。

 思わぬ光景が後方に広がる。しかもアルスと味方だったはずのMSが激突しているにも関わらず、周囲のMSは射撃を集中させる。アルスは回避するが、周囲のMSの弾撃を受けて鍔迫り合いを行っていた機体は大破・撃墜されていく。単なる裏切りとは思えない行動には流石に元も機体を振り返って状況を理解しようとする。

 

「なんだ……何をやっている?」

 

『え……同士討ち、なのではないんですか?』

 

 ジャンヌはそのように指摘する。だがそれなら先程の巻き込み攻撃はやや不整合だった。スタートも元と同じことを感じたと伝えてくる。

 

『単なる同士討ち、とは言えないな。それにしては攻撃が過剰すぎる。いや、なりふり構わずという所か。いずれにしろ普通じゃない』

 

 普通ではない。裏切り者を始末するのに戦っている最中の味方ごと葬ろうとする戦い方は、先程までの彼らの動き方ではなかった。元とアルスが鍔迫り合いをしている時には、彼らは武器だけを構えてけん制。離れたところで発砲を行っていた。決して味方を巻き込むような攻撃をするようには見えない。明らかに今の状況が異常であった。

 元は思索する。今取るべき行動を。得られるもの、失うもの、様々なものを加味して考えた。自身の判断を信じ、行動した。元が取った選択は―――――

 

 

 

 

「はぁ!」

 

『グァッ!?』

 

『………………何!?』

 

 

 

 

 シュバルトゼロガンダム・イグナイトのブレードガン・ニューCが、敵を貫いた。首と頭部を分断する様に放たれた一撃。頭部を失った機体が斬られた衝撃で後退する。突き出す構えをしたままのシュバルトゼロガンダムに、アルスの声が困惑を呟く。

 元の選んだ答えは、アルスの救援を優先したのであった。

 

 

NEXT EPISODE

 




EPISODE71はここまでとなります。

ネイ「元さん、まさかアルスさんを助けることになるなんて、ですね」

グリーフィア「なんでそうなったのかは次のEPISODE72で分かる感じかしら?けど味方諸共撃つって皇帝さんも過激ねぇ」

今絶賛限定配信中の蒼穹のファフナーEXODUSでもそうだけど、味方撃つやつに禄なのはいないから( ゚Д゚)おのれ人類軍!アルゴス小隊ぜってぇ許さねぇ!交戦規定αをぶっ潰す!

ネイ「残り2話まで来てますからね、蒼穹のファフナー限定配信。けどネタは一つに絞りましょう」

グリーフィア「思いっきりその作品も同胞殺ししているからねぇ。ところで作者君はBEYOND見るのかしら?」

いや……そもそもうちの近くの映画館あんまりそれ関連をやらないから……( ;∀;)見たいんだけどね。それではEPISODE72に続きます。


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EPISODE72 (レイ)(レイ)の交差3

どうも、皆様。引き続きご覧の方は改めまして。作者の藤和木 士です。

レイ「アシスタントのレイだよー」

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです」

EPISODE72も公開していきます。

ジャンヌ「随分と質素な説明ですね……」

ネタが……少ないんだ( ;∀;)

レイ「リアルすぎる問題だねー。話題ないの?」

私個人の話題としては……バトスピの造兵が勝てないってこと愚痴りたいけど(´・ω・`)

ジャンヌ「それはいいです」

ですよね(;´・ω・)

レイ「んーと、本編じゃアルス君と共闘開始したってところかな?」

ジャンヌ「どうでしょう。あくまで元さんが助けに入っただけで、相手がどう思っているかにもよりますが……」

共闘という道を歩めるのか?それでは本編へ!


 

 

アルス・ゲートは激怒した。激怒した理由は無論、皇帝の座乗艦「マギア・マキナス」から放たれた攻撃にある。アルスは皇帝の指示に従いガンダムを誘導した。その時にはガンダムのみをピンポイントに狙うとだけ言われて、動いていたが実際は味方艦隊すらも巻き込んだ砲撃が放たれた。退避勧告を受けて移動していた動きもみられない。アルスの母艦であるマキュラ級「スルト」も小さくない損傷を受けたと報告を受けた。その際に一切の勧告がなかったことも知らされた。

 マギア・マキナスの攻撃がどういうものなのかを把握しなかった自分にも責任はある

だが味方ごと撃ったギルフォードを許すわけにはいかない。すぐさまアルスはガンダムの相手を部下に任せて、ギルフォードに抗議した。

 

「なぜ味方ごと撃った!?退避勧告を出さずに!自国の兵士を……俺達をなんだと思っているんだ!」

 

 兵士は戦う者であって道具ではない。まだ日の浅かったアルスが教官から教わった言葉だった。機人族は機械の力を受けて進化した種族であったため、昔から自分の事は棚に上げて身分の低いものを道具扱いする風潮があった。アルスもそういった身分の出身だったが故にその言葉を重んじた。それこそネオエースへと彼を押し上げた動力源だった。

 ガンダムのパイロットに対しても、最初は覇気もない府抜けたやつでそれが救世主だと崇められていることが気に喰わなかった。一念発起してからの攻めも今さらという感覚を覚えた。が、再度あのMSへと、増加装甲を纏ってからの動きは違った。ネオエースである自分の居合切りに勝ち、機体の腕を持っていった。あの一閃で彼は確信した。ガンダムとそれに選ばれた者の力こそ、自身の敵に相応しいと。

 そのガンダムとの一戦の中で、穢すかのような一撃。しかも味方を巻き込んだ攻撃はアルスの堪忍袋の緒を切るには十分すぎる。皇帝だろうが容赦なく貶す。が、皇帝から返ってきたのはそれら全てを踏みにじる最悪の言葉だった。

 

『皇帝に歯向かうか。ならば皇帝の判決を与えよう。もっとも最悪な形で死に至れ!』

 

「なんだと!?」

 

 疑惑の声を上げると、皇帝の策が発動した。周囲に展開するアルスの部隊が動きを停止し、振動する。

 

『な、何だ……コントロールが……あぁ!?』

 

『なんだ……これ……意識が……う』

 

「どうした!?何をした、ギルフォード・F・マキナリアス!!」

 

 部隊員に起こる異変にアルスの問いただす声が響く。その変化は目に見えて、異常さをすぐに現した。

 顔を俯かせていた部隊員のMSが顔を上げる。しかしそのMSのメインカメラは通常の発光から真紅の色に変わっていた。通信回線に、変わり果てた味方の声が聞こえてくる。

 

『………………マギア・マキナ・コントロール、接続。本機人族はマギア・マキナスのコントロールに置かれた……』

 

「何!?」

 

『これよりターゲットを抹殺する』

 

 突如襲い掛かってくるアルスのMS部隊。自我を持つ機人族であるはずなのに喋り方から何まで皇帝の言うことだけをただただ聞く機械へと変わり果てる。

 アルスは何とかして止めようとするが、鍔迫り合いしている中で、周囲のマギア・マキナスのコントロール下にあるMSが射撃を行ってくる。可変ウイングを兼ねたウイングエッジに被弾し、すぐさまその場を退避する。鍔迫り合いを行っていた機体にも弾丸は被弾し、爆発を起こす。なりふり構わず、味方ごと撃ってくるその考えは先程の皇帝の行動に通じる。

 マギア・マキナスのコントロールということは、象徴がそれを許可したということに他ならない。皇帝が何かしたのか、それとも象徴は皇帝と同じ考えを持っていたから、その声に応じたのか。いずれにせよ信じがたい状況の中、味方との戦闘に身を投じる。何か助け出す方法はないか。だが攻撃の苛烈さに防戦一方となる。止まっていたドラグディアのMSからの攻撃再開も重なり、いよいよとなったところでアルスの部隊が動く。2機のマキナートがビームサーベルを振りかざす。1機は回避する。だがもう1機の攻撃を回避する直前、周囲の機体からビームの弾撃を受けて動きが止まる。

 

「しま…………」

 

『粛清』

 

 マギア・マキナスに操られた味方の声が耳に入る。どうにもならない。こんなこと許されない。絶対に。だがその攻撃は届かなかった。

 

『グァッ!?』

 

「………………何!?」

 

 2機の間に割って入る様に現れたのは、先程部隊員が侵攻を止めようとして抜けられたはずのガンダムの姿だった。直前で大型化していたその機体に握られた銃剣が、マキナートの頭部と体を分断する。

 

『………………どういうことだよ、これは』

 

 苛立ちを吐き捨てるように響くガンダムのパイロットの声。頭部を分断されたマキナートは狙いをガンダムに変え、襲い掛かろうとする。が、その前にガンダムが蒼い残像を残して消える。

 後ろに回ったガンダムはその銃剣で背部を斬り裂くと、地面へ向けて蹴りつけた。浮力を失ったマキナートが、地面へと墜落していく。アルスは助けに入ったガンダムのパイロットに剣を向けつつ問いかける。

 

「なぜだ、なぜ敵である俺を助ける?」

 

『敵だったら、何で味方から攻撃を受けていた。それって裏切りとか裏切られたとかいうんじゃないのか?』

 

「…………そうだな。俺は裏切り者で、裏切られてしまった」

 

 ガンダムのパイロットに自虐を返す。そうとしか言いようがない。もはや今のマキナス軍に居場所はない。ならばどうするのか。決まっている。

 

「だから!」

 

『っ!!』

 

『きゃあ!?』

 

 ガンダムへと加速し、思い切り激突する。咄嗟にガンダムは機体の腕部で防御する。接触回線からガンダムのパイロットともう1人の声が響くが、直後2人のいた場所をビームが過ぎ去る。放ったのはアルスの元部隊のMS。ガンダムに対し、アルスは叫ぶ。

 

「まずはこれを切り抜けてからだ。俺の部隊員を全員地表に落とす!」

 

『そうかよ……。けど全員生かして地表に落とすって、少し面倒な……』

 

「好きにすればいい。俺はやるっ」

 

 ビームセイバーⅡを構え、元味方に剣を向け突撃するアルス。そう、敵となってしまったのなら、味方に戻すしかない。そのためにすべきことのために、彼は、アルス・ゲートは「ガンダムとの共闘」を選んだのだ。

 皮肉にも助けに入ったガンダムのパイロットである黒和元と同じ考えであったが、それは知る由もない。裏切り者となるのは辛い選択ではあったがそれ以上に彼の心に到来したのは、自らの信じる考えの下行動しようという決意と好敵手と認めた相手を背中にする心強さであった。

 

 

 

 

『もう……滅茶苦茶じゃないですか、あの男!』

 

「まぁ、そう言わずに。それよりこちらも行きます!」

 

『ふぇ?っ!!』

 

 文句を言うジャンヌをほどほどなだめて元も交戦に入る。先程と同じようにエラクスのスピードで翻弄して敵のバックパックを斬り裂く。バックパックのゴーストが外れた直後に更にブレードを背部に突き立ててから、踏みつけて下方へと吹き飛ばす。踏みつけた反動で更に別の操られたMSに対して強襲する。流石にエラクスのスピードについて来れていないようで、ガンダムを捉えることなく相手にした全員を地表送りとした。ガンダムの機体が再び漆黒へと戻る。

 

『……破壊した敵MSは全員地表に墜ちた様子です。それより、もう少し気遣って飛べないんですか!』

 

「なるべく気遣ってはいますが、全部が全部は無理ですよ……アルス・ゲートの方は」

 

 乱暴な機動に少し怒り気味のジャンヌへ再び謝罪する。元の要請に従ってジャンヌもまだご機嫌ナナメながらもそちらのモニター状況を確認する。

 

『そちらも問題なくですね。……それでその本人が来ていらっしゃっていますけど?』

 

「あぁ」

 

 ジャンヌの発言通り、元の前にアルス・ゲートの機体がやってくる。背部ウイングがやや損傷しているようだったが、それ以外の被害は少なく見える。それでも無事裏切られた味方を全員地表へと物理的に避難させることには成功していた。

 静止するこちらに接触して、接触回線からアルスが礼を簡単に述べる。

 

『助かった、ガンダム。既に通信回線はマキナスの指揮系統から完全に外してある』

 

「礼は今いい。それよりどういうことだ。何でああなった」

 

 速やかな状況説明を要求すると、苦い経験を話すように重い口を開いた。

 

『皇帝は味方を犠牲にして、お前を討とうとした。味方を初めから撃とうとするなど、指揮官としてあってはならないことだというのに……。それだけに留まらず、指摘した俺を裏切り者として俺の部隊を象徴に乗っ取らせ、始末させようとしてきたんだ』

 

『象徴って……あれがマギア・マキナス!?』

 

「…………」

 

 明かされた事実に動揺が浮かぶ。皇帝座乗艦、あれこそがマキナスの、機人族の神とも呼べる象徴だったのだ。

 驚くべき情報とはいえ、これは攻略するにあたって重要な情報だ。すぐさま情報共有を伝える。

 

「ジャンヌ、とりあえずダンドリアス経由で後方部隊に報告を」

 

『わ、分かりました』

 

『っ!来るっ!!』

 

 アルスの声に反射的に動く。直後先程と同じ高火力の極太ビームが突き抜けた。今度はイグナイトの機動力だけで回避しきる。しかし狙いは確実にこちらであるのは間違いない。敵艦隊側と、味方右翼艦隊の一部が巻き込まれて溶解して墜落していく。MSの爆発も多数みられた。

 このままでは戦線がズタボロにされてしまう。あの砲撃をやめさせる必要があった。そこでスタートが提案を出す。

 

『ハジメ、EDNFで叩くぞ』

 

「やれるのか?」

 

『EDNFなら、その気になればあのDNFも跳ね返せる。大きさなど関係ない!』

 

 スタートの断言に不安さを感じるもやるしかないと元は前に出る。こちらをロックする敵軍象徴。再びその口を開き、ビームを放とうと試みていた。スタートの指示に従い、エラクスを始動させる。そして放つ。蒼き光がもたらす膨大なDNFを。

 

『Ready set GO!EDNF、「スクラッシュ・スパイク」!』

 

「いっけぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 咆哮と共に、シュバルトゼロガンダム・イグナイトの光を放つ脚部で放たれたビームを蹴りつける。ガンダムを飲み込むはずだったビームはその蹴りに受け止められる。拮抗する力。だが軍配はこちらに上がった。徐々に押されたビームは進行方向とは真逆に押し返され、反射される。当然向かう先は皇帝座乗艦マギア・マキナス。敵艦隊が破壊された後を、再度引き返していく光景だ。

 マギア・マキナス側も流石に危険と感じたのか、甲羅の面を向けてDNウォールに似た防御領域を展開して防ぐ。防壁にぶつかって弾かれるビームの余剰エネルギーが周囲の艦隊や機体に雨あられとなって降り注ぐ。マギア・マキナス本体にはダメージは入らなかったが、それでも防衛線を切り開けた形となる。

 

『すごい……本当に返した……』

 

「…………」

 

 改めてガンダムの性能に嘆息する。直撃コースを防がれはしたが、それでも被害はゼロだ。が、機体のコンソールに「出力不安定」の文字が見える。いかに強力なEDNFとはいえ、あれだけの攻撃を跳ね返すのに問題が出ないというわけではなかったようだ。それに関してはスタートに文句の1つも言いたくなる。

 驚きは見ていたアルスだけではなく、後方から追いついて来たアレクとリリーの部隊もまた、目の前で起こった出来事と、それを起こした機体と共にいる者に驚きと警戒の声を発した。

 

『う、撃ち返した!?』

 

『おいおい……スーパーロボットかよ……』

 

『改めてガンダムが恐ろしい段階にいると言える……が、もっと驚くべきは』

 

『ハジメ軍曹、そこにいるマキナスのネオエースは?』

 

 リリーの言葉が指すのは無論、アルスのMS。リリーの部隊やアルスのチームの何人かが警戒態勢に入っている。しかしアルスは抵抗を見せない。空中で静止したまま彼らを見つめ返す。

 一触即発の状態を解くべく、元が説明に入る。

 

「簡単に言えば、裏切られたそうです。味方をマキナスの象徴、マギア・マキナスと皇帝に操られて」

 

『マキナスの象徴!?』

 

『さっき通信で流れてた象徴って、本当だったんだ……』

 

『裏切られた……信用していいものかな』

 

 疑いの目を向けるアレク。この2人の因縁は一応元も聞いていた。何でも元が現れるまでは対決の多い組み合わせだったという。どちらも本来なら先に仕掛けようとするはずだった。

 そんな中でリリーだけは冷静にこれまでの流れから元の話に予想を立てていく。

 

『なるほど。マキナス軍の艦艇も攻撃に巻き込まれていたように見えたが、あれは本当に、巻き込んでいたのだな。そして君はそれに反抗して……かな?』

 

『すごい……リリーさんその通りです!』

 

『別に褒められたものじゃない。前線指揮官として、様々な事象を見つつ判断する能力は必要だ。とはいえ、腑に落ちない点も見られるがな』

 

「腑に落ちない……というと?」

 

 どういうことかと内容を聞くと、リリーは答える。

 

『裏切り者であるアルスを、なぜ味方に始末させようとしたかだ。アルスほどの男の駆る機体をそのまま撃破させるよりも、乗っ取らせた方が戦力になるはずなのに』

 

『それは俺も感じた。あれはどうも機人族のメモリーから洗脳するようだった。自分が言うのもなんだが、俺を洗脳した方が戦力になるはずなのに……まるで気に入らないものはネチネチと始末する子供っぽさがあった』

 

 単にアルスが邪魔だと判断したのか、それとも操るために必要なものがあったのか。どちらにせよその判断に至るのにも表面上の数の有利があればこそだが。

 念のためマキナス側の動向をチェックしていたが、先程の後から敵艦の目立った攻撃はない。先程の攻撃に対し警戒しているのだろう。前を向き直り、元はリリーとアレクに彼の臨時処遇について問う。

 

「それで、どうします?」

 

『………………正直言って、手が不足しているのはある。アレク少佐が良ければ、ハジメ少尉の直援に回すのが一番だと思うが』

 

『要のガンダムの直援か。不安だがまぁ、対処のしやすさで言えばハジメが適任か。星剣使い、ハジメを落としたらお前を地獄の果てまで追うぞ?』

 

『ガンダムには借りがある。落とさせはしない。早く行こう。いつまでも皇帝が何もしないはずがない』

 

 アレクが訝しみつつもアルスの配置を容認する。元の直援として緊急配置されたアルスが前方を指す。周囲の艦が離れていく中、マギア・マキナスが変わらず待ち構えていた。クリムゾン・ドラゴニアスよりも3回りは大きい巨体が、空で迎え撃とうと待っている。後方のカメラにはクリムゾン・ドラゴニアスが見える位置まで来ていた。

 決戦の時はすぐそこまで来ている。回線を開いて自らの覚悟を確かめるように言った。

 

「行きましょう。1400年の戦いを終わらせるために」

 

 両者共に流した血は多すぎる。ここで打ち止めにしなければならない。その想いでシュバルトゼロガンダム・イグナイトを決戦の場まで向かわせる。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。

レイ「これで名実共闘って感じだね!戦い続けてきた2人がどんな連携をしていくのかな?」

ジャンヌ「少なくともアルスさんは嬉しさを感じているようなので、問題は実際に戦ってどうなるかってところでしょうか?それより作中に出たマギア・マキナスのコントロールがどうしてアルスさんに掛けられなかったかが問題ですが……」

レイ「んー……条件があるとか?作中で言ってた通りに」

ジャンヌ「条件……何でしょうね?」

まーそこら辺は追々わかるでしょう。では今回はここまでです。次の投稿ではファフナーEXODUSの感想とか言ってそうです(^ω^)

ジャンヌ「暴走しすぎないようにしてくださいね?ではまた次回」


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EPISODE73 激突、象徴VS象徴1

どうも、皆様。冬の寒さが近づいて来たなぁと思う藤和木 士です。お布団とか変えないと本当に夜も眠れないっていうね( ;∀;)

ネイ「アシスタントのネイです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよ~。雪は好きだけどちゃんと防寒対策はしてるわぁ。早く雪にならないかしらぁ?」

今の時期だとまだですね(;´・ω・)さて、今回もEPISODE73と74、2話同時投稿です。

グリーフィア「アルス・ゲートも加わって、更に戦いが激化するみたいねぇ」

ネイ「アルスさんの腕を信じないわけではないですが、果たしてどう戦っていくのでしょう?」

それでは本編へ。


 

「敵軍、前進を再開。象徴の姿を確認」

 

『ほほう、ガンダムが象徴を率いて向かってくるってかぁ。夢のような光景だべ。こっちとしちゃあ悪夢かもしれんがねぇ』

 

「そうだな。アルス大尉を落とせなかったのは不本意だが、いずれにせよ大尉は裏切り者のまま、このまま始末するのが得策だ。艦隊に通達。中央部隊は敵艦隊を相手に。ガンダムの相手は本艦のMS隊が務める」

 

 ワルトの言葉に口惜しさを返しつつ命令を指示する。命令を聞かないという可能性もあったが、その時はマギア・マキナスの「マギア・マキナ・コントロール」を使えば一部の機人族以外のほとんどを味方に出来る。味方というよりは操り人形と言った方が正しかった。

 マギア・マキナ・コントロールとは、機人族のメモリーにMSのシステムを介して洗脳、操作するシステムである。マギア・マキナスの電脳によりコントロールされ、事実上象徴を掌握する奏女官、並びに皇帝の忠実な兵士へと変える。そのシステムにおいて重要なのは、対象者の精神に左右されること。精神力が強ければ強いほどこの洗脳は効かない。アルスの場合は確固たる信念を持っていた。前もって洗脳が効かないことをデータで把握していたからこそ、ギルフォードは味方機を利用してアルスを撃墜しようと試みたのである。

 

(だがしかし、大尉を落とせなかったか。しかも助けたのはガンダム……恨めしいな。ガンダム)

 

 こちらの戦力としては大きい者を敵に取られたことに苛立ちを感じる。操れればよかったのだが、出来ない以上どうしようもない。本来ならばこうならないよう慎重に行動すべきであるが、ギルフォードに妥協という考えはない。覇道のために頭を下げるなどということはあってはならない。

 こうなった以上、全ての戦力を投じて障害を排除する必要がある。そのための足止めなどを要請すべく、格納庫にて待機していたエクスとランドに回線を繋いだ。

 

「2人共、出番だ」

 

『へへっ、だろうねぇ。味方援護は期待できないが、格納庫のあれでどうにかなるだろ!エクス・サイズ出るぜ!パワードスーツも出せよ』

 

『了解。メル、味方が襲ってきたら忌憚なくマギア・マキナスの力を使うんだぞ?……ランド・オン、偽りの救世主を討つ!』

 

 2機とエクスの機体の後ろを4基の大型ユニットが追従して発艦する。それを見届けてギルフォードも席を立つ。

 

「ワルト、防衛用機の展開準備。私も「エンペラー」で出る」

 

『皇帝が出るだか。了解だ、既に機能は問題ない。いつでも出せるって』

 

 ワルトのなまりのある返答を受けたのち、ギルフォードは玉座から立つ。格納庫へ向かう。後ろ姿に召使い達が勝利を祈る声を掛けてくる。負けなど許されない。勝った者が全てを得られる。

 300年前以上に強敵であるドラグディアであろうと、それは変わらない。本来象徴を従えるというガンダムだろうが倒して見せる。むしろ救世主などという大げさすぎる名を冠した敵を討てば、自身の名は間違いなく世界に轟くことだろう。そうなればもう皇帝を暗殺しようなどという輩もいなくなる。自身の血筋は安泰となるだろう。MS出撃デッキへ向かうギルフォードの口からも皇帝としての欲が漏れる。

 

「もうすぐだ。我が一族、私の望んだ世界のために……!」

 

 その眼に、野心と復讐を備えて戦場へと向かう。

 

 

 

 

 マキナス艦隊に向けて2本の光が伸びる。ビームにも似た紅と蒼の光はビームでは出来ない連続した直角カーブでマキナスの軍勢に迫る。通り過ぎる刹那、爆発が散発して発生する。武器が、あるいは機体が爆発を起こして撤退、あるいは撃墜されていく機体。光はやがて2隻の艦のエンジンに向けビームを放つ。放ったビームにエンジンが貫通され、爆発を起こして落下していく。光が停滞するとそこにいたのは2機のMSの姿であった。

 1機はドラグディアの救世主改め竜騎士たるMS「シュバルトゼロガンダム・イグナイトFA(フルアーマメント)」。そしてもう1機はマキナスの星剣使いのMS「マキナート・シャイニング」。本来敵対するはずだった2機は同じ方向を向いてマキナスの軍勢に切り込んでいた。これまで戦い合ったことはあっても、共闘は今まで一切ない。だがエラクスとマキナート・シャイニングの紅い残像機能からなる高速戦闘は、確実に敵の戦意を削ぐほどの攻勢を見せる。2人、否、3人の生み出す戦果に回線から味方の声が響く。

 

『な、なんて動きだ……目で追うのが精一杯だ』

 

『あぁ……!ハジメが、俺達のガンダムが、星剣使いのアルス・ゲートとここまで息ピッタシの連携をするなんて。くぅぅ!美味しいところ持ってかれちまう!』

 

 カルマとフォウルのやり取りに耳を傾け、空中に機体を浮遊させる。元も同じことを感じていた。初めてにしてはかなり連携が上手く行っているように思える。ジャンヌからも操縦している2人に向けて称賛の言葉を送る。

 

『本当、驚くほど連携が取れていますね』

 

「正直言って、エラクス状態のイグナイトのスピードに置いていかれるんじゃないかって思っていましたね」

 

『イグナイトだか何だか知らないが、こっちは最大加速で追従できている状態だ。お前の蒼い輝きを参考にしたマキシマイズがなければ、とっくに根を上げているところだぞ……』

 

 荒い息と共に元の言葉に返すアルス。マキシマイズというのが紅い輝きの事を指しているのは分かった。それに加えて機体の性能でガンダムの動きに追従できるのは、やはり驚異的なものだ。

 無理をさせるわけにもいかないのでエラクスを解除して歩調を合わせることにする。

 

「少し性能を落とす。皇帝にたどり着く前にエネルギー切れになりたくもないしな」

 

『気遣い感謝する。だが、まだ先は長い……?』

 

 気を引き締めようとしたアルスが異変に気づく。元もすぐにその違和感に気づいた。戦場から撤退しようとしていた艦艇が再び戦線に展開、周囲のMSも不自然な痙攣の後こちらや後方の艦隊に向けて突撃を開始した。

 

『!ハジメ、ジャンヌ!』

 

「っ!これがアルスの言ってた……アレク隊長!艦長!」

 

 すぐに回線を開いて注意を呼びかける。アルスから既にMS部隊が操られたという報告は艦隊には伝わっている。もしそんなことができるのであれば、敵は容赦ない攻めを展開してくるはずだ。その兆候を確認した象徴と元はそれぞれ動く。クリムゾン・ドラゴニアスが周囲にウォールを展開し、元とアルスはその間に一気に戦線を突破しようとする。操られたと思われるMSも、それに気づいて進撃を阻止しようとする。だがそれをアレクが率いるMS部隊が阻止する。

 

『こっちの相手は俺達に任せろ!』

 

『ハジメ少尉とアルス臨時大尉は先に行って皇帝を止めろ!』

 

『さぁて、操り人形にもステルスは通じるのかなぁ!』

 

 アレクやリリー、ローレインが戦闘を開始する。彼らの言う通り先を行くべく、確認の声をアルスに飛ばして2機で先を行く。

 

「行くぞ」

 

『分かっている』

 

 両機体は最短ルートで皇帝座乗艦マギア・マキナスを目指す。マギア・マキナス周辺は前に見た時よりも周囲の艦艇が減って、というよりほぼなくなっていた。先程の砲撃で艦を失ったか、あるいは横暴さに呆れて撤退、または皇帝に操られて前線に駆り出されたのだろう。

 目視できる距離になって、アルスがこちらに心の準備を聞いてくる。

 

『もうすぐマギア・マキナスだ。機体の損傷は』

 

「問題ない。イグナイトの戦闘性能は100%発揮できる」

 

『ジェネレーター、粒子残量共に戦闘可能領域。いつでも行けます!』

 

 ジャンヌからも了解の声。が、それを遮って2人の声。

 

『そこまでだ、救世主気取りのガンダム!』

 

『おうおう威勢のいいことで……これは狩り甲斐があるな……!』

 

『この声……あのMSは!』

 

 前方から向かってくる機影。1機はマキナスのMSの特徴を色濃く受け継いだようなMS。対してもう1機はマキナスどころか他のMSとは違う、4機のユニットを従えるかのように飛来した機体。立ち塞がる様に現れた2機と4つのユニットはガンダムと相対した。

 機体の該当データはない。また新型だった。マキナスのMSの総決算とも呼べる機体のパイロットが、こちらにライフルを向けてオープン回線で名乗り出る。

 

『俺はランド・オン!マキナスの象徴、マギア・マキナスの騎士こと機械騎士(マキナイト)だ!ドラグディアの竜人族は俺が全員滅ぼす。ガンダム!お前だろうとな!』

 

 名乗ると同時にバックパックから実体剣を抜いてこちらに斬りかかってくる。アルスが迎撃しようとしたが、そちらには目もくれず一直線にガンダムを狙ってきた。元もブレードガン・ニューCを左手に構えてその刃を受け止める。

 

『ガンダム!』

 

「大丈夫。そっちは任せた!」

 

 アルスが叫ぶ。が元は問題ないと伝えてもう1人の相手を頼む。鍔迫り合いで固まる2機。接触回線から機械騎士と名乗るランドの殺意を込めた発言が吐かれる。

 

『ガンダム!その名前で星剣使いを魅了したようだが……ならば裏切り者諸共、ここでマキナス繁栄の犠牲に変えてやる!』

 

『魅了って……そっちがそうなるような攻撃をしたからでしょう!』

 

 ジャンヌの言葉に元も心の中で同じことを考える。アルスは皇帝の船が放った攻撃に対し反論を行って、皇帝が裏切り者と判断した。最高指導者に歯向かったとはいえ、犠牲を生みだして戦果を勝ち取ろうとした皇帝側に非がある。

 元も剣を交わらせた状態でそれを指摘する。だが相手の言い分は極端なものであった。

 

「あんた達の自業自得だろ。味方殺しが」

 

『味方殺しだと?違う!皇帝の采配は常に完璧だ!皇帝のやっていることは全て国の為になる……つまり、俺達は正しい!!』

 

 無茶苦茶な自己中心的考えを展開するランド。切り払いから距離を取ってライフルからビームの連弾をばら撒いてくる。シュバルトゼロガンダム・イグナイトFAのスラスターを噴かせ、上方向に向けて回避する。上へと逃げるガンダムを、ランドが追撃に向かってくる。

 その考えは非常に危険だ。皇帝が自己中心的な考えを持ち、下に付く者は盲信となってそれに従う。典型的な洗脳である。そんなもので国が、人が動かされていいわけがない。味方を巻き込むことに違和感を持たないランドに、元は怒る。

 

「そこに、皇帝の正しさがどこにある!」

 

『何を……っ!!』

 

 容易に追撃してきたランドに振り下ろしによるカウンターを行う。剣を構えて防御されるが、元の怒りを含めた振りが勝って弾き返す。空中で姿勢制御を行うランドの機体に間髪入れずメガ・ビームライフル・ゼロとビームマシンキャノンによる飽和砲撃を行う。手を抜いてはいけない。味方だけではない、敵であるマキナス軍の兵士の命をも弄ぶ彼らを1人たりとも逃してはいけない。ガンダムの出力が自然と上がっていった。

 

 

 

 

 ガンダムが機械騎士ランドとぶつあり合う頃、アルス・ゲートもまたもう1人の皇帝座乗艦直属の騎士と対峙していた。ガンダムに気を取られた直後に攻撃を仕掛けてくるという、正々堂々としたイメージを持つ騎士には程遠い相手。アルスはこれまで顔を何度か会わせても戦い合うことのなかった処刑人の二つ名を持つ男性と、刃を交えながら言葉を発する。

 

「相変わらず、こういう手は得意とする男だなエクス・サイズ。今は大佐か」

 

『へっ、お前も大尉になって正直さが増したんじゃないか?えぇ、アルス君!』

 

「俺を君付けするな、気持ち悪い!」

 

 互いに切り払って距離を取ってから、再度激突する。ビームセイバーⅡの光刃が、ビームライフルから形成された鎌状の刃と競り合う中、再び2人の会話が起こる。

 

「正直さのどこがおかしい?異常さを指摘できなければ、世界は変わらない!」

 

『分かってないねぇ。正直さが味方を殺していく一番の原因だよ!安心して背中を任せられると思ったやつらが、さっきの砲撃で巻き込まれた』

 

「屁理屈を!」

 

『だが正しい物の見方だっ』

 

 言葉を交わし合うごとに攻撃は激しさを増す。近接戦闘での有利はこちらがあるはずにも関わらず、エクスはその剣戟をすべて受け止め、捌いていた。ビームライフルにビームサイズを取り付けるという、若干扱いづらそうな構成でこちらの攻撃に対応される様にアルスも決めに行けない。

 そこに側面から接近警報が鳴り響く。素早くその場を避けると、横からビームがいくつも通過していく。マシンガンのような連弾と、レーザーの一斉照射に近い砲撃。エクスの機体を周回する4基のユニットの内2基から放たれたものだ。支援機の様に展開するそれらの3基がこちらに射撃と放ってけん制する。

 

「くっ!」

 

 マキシマイズを作動させて、攻撃を回避するアルス。だが問題はそれだけではない。ユニットの1基がエクスの下部に移動する。阻止しようと試みるが他の攻撃が激しく、逆に妨害されてしまう。

 アルスは知っていた。エクス・サイズの機体がどういった特性を持っているのか。マギア・マキナスの技術主任のワルトから、戦術を聞いたのだ。エクス・G(ジー)と支援ユニットに見えるそれらの生み出す力を。エクスは回避に専念するアルスに勝ち誇る様に言う。

 

『さぁ、こいつの力お前にも見せてやるよ。フェイズ・チェンジ!「ヨルムンガンド」!』

 

 エクスの声に反応してエクス・Gと黒・赤に塗装された機体が変形する。頭のない人型の支援ユニットは、胸部にスペースを作り出す。その中に収まる様にエクス・Gは脚部から入っていく。エクス・Gの脚部はリアスカート部に抜けるように挿入される。腕部は胸部の装甲側面に隠れるように固定されて、胸部が機体を固定する様にロックが掛かる。たちまちエクスの機体はその姿を変えた。先程よりも大きな身体を得て、背後にマントと剣を携えたようなシルエットを作り出す機体。エクスが機体名を示しつける。

 

『エクス・G ヨルムンガンド・フェイズ、換装完了ォ!』

 

「ぐっ!」

 

 背面のマントパーツから引き抜いた柄に、幅広いビームソードを出現させて斬りかかってくる。あっという間に距離を詰められ、振り抜かれた剣を何とか防御する。しかし加速の乗った剣を押し留めることは出来ず、後方に弾かれる。弾かれた衝撃を利用して後方に加速して強襲に利用しようとするが、相手も倍増したスラスターで距離を瞬時に詰めてくる。

 人格的に腐ってもネオ・エース。同じネオ・エースであるアルスでも苦戦は必至だった。その上ネオ・エースのキャリアとしてはあちらの方に分がある。勇敢でも1年そこらの経験値のアルスが技量で勝てる見込みはほぼないと言ってもいいだろう。しかし、それで諦めるアルスではなかった。攻撃を受けつつも敵の動きを冷静に分析する。巨体とスピードにおる猛攻を繰り出すエクスの機体だが、動きは直線的だ。攻撃を受け止め、剣を滑らせて腹部に切っ先を向ける。

 

「っえい!」

 

『っと!』

 

 不意を突いた一撃。マキシマイズの使用により間一髪避けられてしまうが、若干ながら装甲に火花が散る。マキシマイズの機動を終了したエクスの機体の腹部に、浅い切り傷が生まれていた。

 

『へぇ、やるねぇ』

 

「っ!浅いか……」

 

 次はもっと深く切り込む。そこにドラグディアの回線からようやく合流を果たしてきたアレク・ケルツァートの声が耳に入る。

 

『アルス、援護する』

 

「助かる」

 

 短く言葉を交わす。支援がやって来たことにエクスが一言。

 

『おっと、援軍か?数押しとは実に卑怯だ。けど、それは否定しないぜ』

 

「なんとでも言えばいい。お前がそうでなくても、皇帝がそれに値するのならば、容赦はしない」

 

『言ってくれるね。だけど、増援はお前達だけじゃないぜぇ!』

 

 挑発的に叫んだエクスの言葉通り、アラートが鳴る。周囲に目を向けて、瞬時に回避する。アルスのいた箇所と、援護に向かってきていたアレク達を迎撃する様にビームが放たれる。アレクの部隊の何機かが攻撃を受けて爆散、あるいは墜落していった。何が起こったのか、回線で困惑が生まれる。

 

『なんだ?何処から……』

 

『っ!高速飛翔体、周囲に展開している!』

 

「あれは……!」

 

 リリー・バレナーの言葉通り、空を高速移動する物体が何機もいるのがわずかながらに感じられる。レーダーには反応しない、レーダーステルスの機影。それらがエクスの周囲に展開し、一斉に銃を構えた。

 手持ちのキャノン砲を構えるその姿。それはハジメが遭遇した高速重砲撃可変機、マキナート・エアクルセイド。その姿が10機、確かにこちらに交戦する構えを見せていた。エースクラスの機体の増殖に、ドラグディア、そしてアルスも動揺せざるを得なかった。彼らに、エクスの余裕にも似た嘲笑が向けられる。

 

『皇帝防衛のための無人型マキナート・エアクルセイド、その力をたっぷりと受け取りな!』

 

『ちっ、こんなものを隠していたのか』

 

『全機構え!ガンダムを苦戦させた相手だ。心して掛かれ』

 

「支援は期待できない……なら俺がぶった切る!エクス・サイズ!」

 

 エアクルセイドの相手をアレク達に任せ、再度エクスとの斬り合いを開始した。

 

 

 マギア・マキナスから遅れて発進した、皇帝の操るMSに気づかぬまま。

 

 

NEXT EPISODE

 




EPISODE73はここまでとなります。引き続きEPISODE74もよろしくお願いします。

ネイ「最後、不穏な終わりですね」

グリーフィア「まぁそれも続けて投稿するEPISODE74ですぐに分かりそうだけどね。こうして楽しみな部分をすぐにみられると結構いいわねぇ」

ちなみにEPISODE75は1話投稿になります(´・ω・`)では続くEPISODE74もお楽しみください。


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EPISODE74 激突、象徴VS象徴2

どうも、皆様。引き続きご覧の方は改めまして。蒼穹のファフナー限定配信すべて見終えて、BEYONDが滅茶苦茶見たくなりました、藤和木 士です。( ;∀;)もう最終回まで何度泣いたか……

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです。はいはい、良かったですね」

レイ「アシスタントのレイだよー。今もまた見直しているくらいだしね」

さて、引き続いてEPISODE74の公開です。

ジャンヌ「エアクルセイド無人機……生身の人間では操縦不可なMSを有効活用ならこういう形が妥当なんでしょうね」

レイ「だねー。けどそれだと改造したあの人がなんかかわいそうな感じだね」

ジャンヌ「そして元さんは機械騎士と交戦……パワードスーツと合体するエクス・サイズのMSもあれですが、こちらも苦戦しそうですね」

レイ「なんてったって機械騎士っていうくらいだもんね!苦戦は必至だ!」

さ、さてそれでは本編へ……(゚∀゚)


 

『っう!こいつ!!』

 

『………………』

 

 アルス達がエクス・サイズ、それに無人機との戦闘を開始した頃、ジャンヌはガンダムのシステム内からその様子を確認していた。早く助けにいかなければ。その思いでガンダムのジェネレーターの安定領域を保つ。対してガンダムを操縦するハジメは無言で機械騎士を名乗るランドと対峙していた。

 威勢はあちらの方があり、攻めているように見えたがハジメは的確に防御し、カウンターを決めていく。左手のブレードガン・ニューCとテイル・バスターの打撃が、敵の装甲と武装を砕いていた。敵はジャンヌでも分かるほどに中・遠距離戦が得意と思える機体だった。だが射撃攻撃よりも近接攻撃で攻めて来た。些細な違和感、たどり着いたのは不慣れという言葉。それにハジメも気付いていた。

 

『機体は良くても、パイロットがまだまだって感じだな』

 

『なんだと……?お前も落ちこぼれだと言うのかっ!!』

 

 ハジメの指摘にランドが怒りを露わにする。出力を上げてランドの機体が再び実体剣を振りかざす。ハジメは再びブレードガンの剣で受け止める。火花を散らしながら、徐々に押し込まれる。剣先がこちらを捉えると同時に二股に分かれた間にビームサーベルが形成。ガンダムの胸部を突き刺そうとした。が、出力する瞬間力の弱まった剣を押し上げてビームサーベルの位置を横にずらした。攻撃を躱されて隙だらけの敵に続けて蹴りを腹に打ち込んで飛ばす。

 

『ぐぅ!?』

 

『おまけだ』

 

 ハジメがシュバルトゼロガンダム・イグナイトのメガ・ビームライフル・ゼロを向ける。放たれた高出力ビームがランドの機体を呑みこもうとしたが、瞬時に回避したランドに避けられる。それでも表面を破壊したシールドと二股の実体剣を焼き尽くす。

 ジャンヌの眼から見ても、この勝負は圧倒的にこちらが有利だった。だからこそ早く救援にいかなければと逸る気持ちがあった。もし象徴が攻撃を受けたらという不安がハジメに早急な撃破を要求した。

 

「ハジメ、早く目の前の敵を倒して、アレクさん達の救援に!」

 

『分かっています!イグナイトモードの機動性で圧倒します、ジェネレーター制御!』

 

 ハジメからの返答にすぐさま従ってジェネレーターの各部エネルギー伝達を調整する。制御は安定している。GOサインをハジメに送る。

 

「行けます。ハジメっ!」

 

『イグナイトの機動性なら!』

 

 宣言と共にシュバルトゼロガンダム・イグナイトが翔ける。射撃戦を展開して近づけさせまいとするランド・オン。ライフルからの連弾と背部ゴーストからのマイクロミサイル、ビーム砲。それらのギリギリの距離で攻撃を避けて接近する。一つでも多くの弾幕で近づけさせまいと、銃身の下からコードに繋がれたパーツを射出してくる。電撃を帯びてガンダムに伸びるパーツ。だがそれも一回転しながら持ち前の機動力で回避、再び距離を縮める。

 メガ・ビームライフル・ゼロを腰背部に仕舞い、その両手にブレードガン・ニューCを構える。少し上に飛び上がると、それぞれのブレードガンの刀身からビームサーベルを形成して振りかざす。

 

『はぁっ!』

 

『ぐあぁっ!?レンジが伸びた!?』

 

全長5mに及ぶ剣を力いっぱい振り下ろした。ビームサーベルはそのままライフルとキャノン砲、ウイングを斬り裂き攻撃、機動性を一気に奪う。姿勢を崩すランドの機体に追撃を仕掛けるハジメ。

 

『やるっ!』

 

 ところが突き出したブレードガンのビームサーベルは手ごたえを得ることはなかった。理由は剣を突き出しきれなかったからだ。機体アラートが鳴り響く。それとほぼ同時にハジメが機体に急制動を掛けてその場を引く。先程の地点にビームの弾幕が形成される。急激なGに呻く。

 

「くぅぅぅっ……!何?」

 

『っ……あれは』

 

 ハジメが機体のカメラ映像を送る。送られてきた映像に亀形の戦艦と先程撃破したはずのマキナート・エアクルセイドの姿が見えた。先程とは違い、落ち着いた様子のエアクルセイドでまるで別人、機械が入っているかのような落ち着きを見せる。回線でそれが既に無人機であることはジャンヌも知っていた。

 攻撃を回避したシュバルトゼロ・イグナイトに対して突然、回線から知らない少女の声が敵意と共に飛んでくる。

 

『お兄さんをよくも!私がやっつけてやる!マギア・マキナス、砲撃っ!』

 

「ちょっ……きゃあ!?」

 

 言っていることと命じたことが合致しない声と共に再度ビームがシュバルトゼロに放たれる。弾幕の嵐を潜り抜けていくシュバルトゼロ。だが接近は困難を極め、エアクルセイドの変形中間体による曲がるビームと合わせて圧倒的な弾幕に圧される。

 さらにマギア・マキナスに顔を向けたランドは、その場を離れてマギア・マキナスへと向かおうとする。撤退という言葉が思い浮かぶが、母艦に戻れば何が次に来るか分からない。ハジメがシュバルトゼロ・イグナイトをそちらに向かわせようとする。

 

『待ちやがれ……っく!』

 

 離れていくランドの機体。オープン回線からランドの捨て台詞が投げられた。

 

『俺の力は、こんなもんじゃない……こんなもんじゃないんだ!すぐにそれを証明してやる。覚えていろ!ガンダム!!』

 

 そのままランドの機体はマギア・マキナスへと回収されていく。マギア・マキナスへの接近もしたいところだが、先に展開するエアクルセイド部隊を何とかしなければならない。しかしマギア・マキナスからの攻撃も合わせて、イグナイトで機動性が上がっているガンダムでも同時に相手にするのは困難を極める。そこに援軍が現れた。

 接近を知らせる警報。更にジャンヌの詩巫女としての感覚が研ぎ澄まされる。開かれた回線から響いたのは、彼女達の希望だった。

 

『ハジメ、ジャンヌ。援護する!』

 

『クリムゾン・ドラゴニアス!』

 

「象徴!?どうして!?」

 

 本来ならアレク達に護られて進軍しているはずの象徴、クリムゾン・ドラゴニアス。それが援護をするということなら、前に出るということだ。本来の作戦の流れとは、違う。撃墜の危機が生まれる行動に疑問を持つジャンヌ。だがそれは必然とも呼べる、簡単な理由だった。クリムゾン・ドラゴニアスが答える。

 

『どうして?象徴と象徴は同じ力を持つ者。これまでの戦いでも象徴同士がぶつかり合ってきた。当然の事さ』

 

「あ……」

 

 象徴と象徴のぶつかり合いという、本来当たり前とも呼べるこれまでの戦いの流れを聞かされ、納得せざるを得なかった。そう、本来象徴とはそう言ったものであると。前には出したくないのはあったが、それでもこうなった以上、象徴が象徴を止めるのが当然であった。むしろそれがこれまでの歴史での常であった。

 しかしジャンヌの気持ちを察していたクリムゾン・ドラゴニアスは、ジャンヌとハジメに言葉を掛ける。

 

『君の、私を傷つけたくないという気持ちも分かる。だが、君達を、詩巫女と竜騎士を失う危機になることも、私は嫌なのだ。こちらは任せよ。ハジメ達は傀儡のMSと!』

 

『……分かった』

 

 ハジメが重い口を開いて承知する。右腕部を変形させてビームサーベルを、左腕にはブレードガンを引き続き装備してエアクルセイドと相対する。そして後方から飛び出してきた紅い機械竜、クリムゾン・ドラゴニアスが砲撃を放ちながらマギア・マキナスへと攻撃を仕掛ける。マギア・マキナスの注意がそちらに逸れる。飛び掛かる様に爪を振るうクリムゾン・ドラゴニアスと甲羅で防御するマギア・マキナス。エアクルセイドの視線もそちらへと向いて撃退しようと銃を向けたが、こちらに注意散漫となった。ハジメが距離を詰めてビームサーベルを振るう。

 

『もらった!』

 

 虚を突かれたように瞬時に対応しようとしたエアクルセイドだったが、振り抜いた光剣が背部のバックパックベースごと左腕部を斬り裂く。爆発で下がるエアクルセイド。追撃を仕掛けていくシュバルトゼロガンダム・イグナイト。ブレードガン・ニューCにビームサーベルを形成し、サーベル部分をガンモードで放つ。放たれた光刃は敵の胸部に突き刺さって機体を爆散させた。

 残る機体がこちらに斬りかかってくるが、所詮は1機だけ。更に身軽となった機体に敵はいないと、ハジメは攻撃を受け止めてから切り抜けた。刹那の一閃。敵の腕部が斬り裂かれ、宙を舞う。更にその胸部にはブレードガンの傷が生まれていた。小爆発の後空に爆発と共に消えていく。敵を排除してハジメがジャンヌに呼びかけた。

 

『ジャンヌ、行くぞ』

 

「はいっ!」

 

 このままアレク達の救援に、そう思った2人の目と耳にとんでもない光景と叫びが聞こえてきた。

 

『ぐっ!あぁぁぁぁぁ!?』

 

『アレク隊長?』

 

『くっ……こんな……』

 

「リリーさん!?何、あの雷は……」

 

 雷と表現できる光の点滅。空中に広がる高エネルギーの通り道で、幾つもの爆発が空を彩った。しかし爆発から落ちていく中には、ドラグーナが数十機確認できた。その中にアレクのアレキサンドルと、リリーのリリィ、そしてローレインのラプターもいた。味方が大量に落とされていった状況に、戦々恐々とする。

 何が起こっているのか。ジャンヌはハジメに雷の落ちていた方向に向かうことを提案する。

 

「ハジメ、あの雷の方向に!」

 

『分かっています。加速する!』

 

 イグナイトの加速力が全開となり、現場へと急行する。既にその空域に味方機体はほぼいない。唯一雷を回避していたと思われるアルスが、先程より大型化していたもう1機のMSと剣を交えているだけであった。アレク達と相手にしていたエアクルセイド無人型は、空に停滞する。そこで気づく。それらが中央に出迎えるように整列していたことに。中央に、他と違うMSがいた。

 ケープのようなパーツを羽織り、如何にも荘厳としたいで立ちを見せる機体。その手に錫杖を携えてこちらを見る機体に見覚えはない。しかし、ハジメの唾液を飲む音が聞こえた。そこに星剣使いの声がその正体を告げた。

 

『ガンダム、気を付けろ!そいつは皇帝だ!』

 

「えっ」

 

『…………やっぱり』

 

 改めて機体を見る。よくよく見て考えると、確かにその機体の構成はどことなく身分の高い者を感じさせる。いきなり出くわした目標に、ジャンヌに緊張感が生まれる。

 一方こちらを視認した皇帝は、通信回線を開くことなく、こちらをただただ見返す。何もしてこないのが不気味だったが、ハジメがその沈黙を破る。

 

『マキナス皇帝ギルフォード・F・マキナリアス。お前の野望はここまでだ。味方を撃墜して得られる勝利なんて、何も得るものはない!』

 

『……野望……違うな。これは覇道だ。我が皇帝の覇道。立ち塞がる者は味方であろうとためらいはない。我が覇道の為の贄とする。貴様もまた、我が覇道の肥やしとなる』

 

 ハジメの言葉に皇帝はそう返す。話し合いは通じないことはよく分かった。もっともこちらもそれで解決するとは思っていない。ジャンヌも機体出力を調整してハジメがいつでも行けるようにスタンバイする。

 ところが先に仕掛けたのは皇帝だった。錫杖を掲げると、静かに天罰を下すかのように告げる。

 

『ディメンションノイズフルバースト』

 

『何っ?』

 

「あれはハジメの……!?」

 

 本来ハジメのガンダムが使用する必殺の一撃「ディメンションノイズフルバースト」。その名を聞いた時まさかと思った。その恐れは現実となった。皇帝の声に反応して錫杖は名称を読み上げた。

 

『ディメンションノイズフルバースト 皇帝の雷霆(エンペラー・ボルテックス)

 

 錫杖の先から高エネルギー体が形成されて、それが雷へと姿を変えて辺りに降り注ぐ。先程見たそれを、ハジメが瞬時に対応して回避する。回避したそこに電気が通過し、更に追跡する様にこちらに迫ってくる。

 

「避けられない!?」

 

『ならっ!!』

 

 回避しきれないと悲鳴を上げたジャンヌであったが、それを文字通り拳で打ち消そうとするハジメ。だが周囲を余剰電気が巡る。電脳空間にいるジャンヌにもそれが伝わり苦痛を受ける。

 

「あぁっ!痺れる……っ!?」

 

『ぐっ……パイロットを狙った攻撃?触れるのもアウトか。にしても持続時間が!』

 

 ハジメが舌打ちする通り、確かにそのDNFの持続時間が長い。空域一帯をカバーするほどの雷撃は周囲のMSを敵味方関係なく落としていく。そしてそれは象徴も例外ではなかった。

 

『ぐぅ!?この高純度DNの波形……皇帝か』

 

「分かるの?」

 

『あぁ。かつてそれに命を奪われた。あるはずのない傷口が痛む。だが、まだ私は!』

 

 体にまとわりつく電気を払って、マギア・マキナスの底部から攻撃を仕掛けるクリムゾン・ドラゴニアス。爪と密着した状態からの射撃でマギア・マキナスの船体が大きく揺れていた。怒涛の攻めだ。

 すると皇帝の動きが変わった。攻めを展開するクリムゾン・ドラゴニアスに視線を向けると、錫杖を振るう。すると、更に出力が上がり、クリムゾン・ドラゴニアスへと攻撃を集中させた。集中攻撃。象徴に迫る危機に、ジャンヌは叫んだ。

 

「ハジメ!」

 

『分かっています!』

 

 すぐにやめさせようとガンダムの機体を向かわせようとする。そうさせまいとエアクルセイドが行く手を阻む。更にそこに後方から迫る機体があった。

 

『おっと、皇帝には触れさせねぇぜ!!』

 

『ッ!!』

 

 機体を反転させて攻撃を止めるハジメ。シュバルトゼロガンダムの剣に、もう1機の敵の刃が交わる。寸前で防いだことに安堵するも、映像を見てジャンヌは絶句した。

 

 

 

 

「…………………え?」

 

『どうし……なんだ、こいつ!』

 

『おやおや、動きがとろいぜ?なぁ!!』

 

 

 

 

 2人の動揺に気づいた敵パイロットが出力を上げてこちらを弾き飛ばす。体勢を立て直すガンダム。それでも心の動揺までは立て直しきれていなかった。アルスと戦っていたMS、その顔が自分達の良く知る、ガンダムと同じ物だったのだ。

 マキナスのガンダム、その単語が脳裏に浮かび攻撃を中断した皇帝も同じことを口にする。

 

『ガンダムはドラグディアだけのものではない。これが我らの生み出した、マキナスガンダムだ』

 

『その一号機・エクス・Gことエクスガンダムだ。さぁて、ドラグディアのガンダムにはご退場願おうか!』

 

「マキナスの……ガンダム……」

 

『ちぃ!』

 

 エクスガンダムのビームソードとシュバルトゼロガンダム・イグナイトの腕部ビームサーベルが激突する。立ち塞がった強敵はガンダム。その名が示す力に、ジャンヌは知らず知らずのうちに委縮してしまう。それがマキナス皇帝の手の内だとも知らずに。そして皇帝の狙いは次なる障害へと向かうのであった。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。機械騎士、撤退!(゚∀゚)

レイ「よ、弱いよ!?」

ジャンヌ「元さんが強いにしても、これは……」

まー、そこは後々の解説でも理由は明記しますが、簡単に言うと本領発揮はこれから、という感じです。

レイ「つまり、乞うご期待!ってことだね。敵にガンダムも登場しているし、これはまさか他にもガンダムが?」

ジャンヌ「それだといいんですけど……そう言えば今回は珍しく視点がジャンヌ・Fさんだけなんですね」

それ私も直前に気づいたんですよね……(;´・ω・)このままでもいいかということでそのままやっています。次回は皇帝一派とガンダムが正面から対決します!というわけで今回はここまでです。

レイ「次回もよろしくねーっ」


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EPISODE75 激突、象徴VS象徴3

どうも、皆様。現在絶賛ビルドダイバーズリライズライブ配信中です、作者の藤和木 士です。

ネイ「アシスタントのネイです。でもライブ配信見ながらの投稿ではないんですね」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよぉ~。むしろ何でファフナーのOPファ○コン音源版聴いているのかしらねぇ♪」

普通の聴くよりええやん……?(^ω^)良くない?(´・ω・`)まぁ実際の所私はあんまりライブ配信の文字見るのが好きじゃないんだからなんですけどね。あとでしっかり見ますよ。さて今回はEPISODE75の公開です。久々の1話だけ公開になります。

グリーフィア「にしても前回の投稿の後の反響が良くないみたい?まぁ感想なんてほとんどないのは承知だけど、数値が少ないわねぇ。やっぱりせっかく仲間になった星剣使いがいきなり落とされたのが原因かしらね~」

ネイ「たぶんそうだね。いきなり落とされちゃこうなりますって作者さん」

(;´・ω・)ネタバレしない程度でいうならまだ彼今章出番ありますので。安心してください。さて、それでは本編へ。


 

 

 アルスは激しい怒りを覚えた状態で、爆炎を上げる機体と共に地表へ向けて落下していた。先程までエクス・サイズと斬り合っていた彼であったが、とあることが原因で不覚を取ってしまったのだ。

 その原因とは、無論エクス・Gの顔である。ガンダムのパイロットに対面したMSが皇帝機であることを告げた後、剣戟の最中にアルスの光剣が頭部を斬り裂いた。視覚を奪ったと判断し、このまま押し切ろうとしたが正確に剣を受け止められ、更に頭部の変貌を間近で見せられる。噴射音と共に外れた頭部装甲。中から見えた好敵手と同じ顔を見て、アルスもまた絶句した。

 

「なんだと……ガンダム!?」

 

『そういやお前は知らなかったな。そうさ、俺の機体は、ガンダムだ!』

 

「ガン……ダム?なぜお前がっ!!」

 

 瞬間、アルスの怒りが爆発する。好敵手と認めた者と同じ顔を持つそれは、アルスにとって侮辱以外の何物でもなかった。許せなかった。自身が強者と認める物を紛い物で汚されることに。頭に血の上ったアルスはビームセイバーⅡを叩き付けるように振るった。

 

「づぅぅ!!」

 

『怒り心頭ってか?小さいプライドだな!』

 

「黙れ!機人族の誇りを、軍人の心を捨てた貴様に分かるか!!」

 

 挑発を仕掛けるエクスを無我夢中に攻め立てる。攻撃を受け止められても押し切ろうとするその気迫は、猪突猛進を思わせた。今になって思えば、それが最悪手だった。攻撃を止めた状態でエクス・Gは宙に体を放り出した。攻撃をパワードスーツが受け止めた状態で、装着を解除したのだ。それに気づいた時には遅かった。

 

「!何?」

 

『おせぇんだよ!フゥゥゥ!!』

 

 ビームサイズモードに切り替えたビームライフルの刃が、マキナート・シャイニングの胸部を斬り裂いた。ジェネレーターを狙った攻撃を、致命傷に近い形で受ける。ジェネレーターへの直撃は避けたが、深く刻まれた斬撃跡から爆発が起こる。機体制御が利かず、そのまま落下していったのであった。

 あのような輩に負けたと怒りが沸き上がる。だが今はこの状況を打開しなければならない。機体の制御に努めるアルス。すると下から金属音と共に持ち上げられるような感覚を覚える。

 

『大丈夫か、星剣使い』

 

「っ、無事だったのか。アレク・ケルツァート」

 

 落下中のアルスを助けたのは、ドラグディアのエース「速烈の剣士」ことアレク・ケルツァートだった。先程の落雷で落下していったとばかり思っていたが、無事ではあったらしい。

 機体制御を安定させたところで、アレクが状況を伝える。

 

『何とかな。だが戦闘は今無理だ。リリー准将も意識が戻っていないし、一度艦に戻らないと……』

 

「こちらのダメージコントロールは済んでいる。しかしこちらも戦闘機動は無理だ」

 

『そうか……歯痒いな。ハジメだけに任せることになるなんて……応援はまだか』

 

 アレクの歯ぎしりが聞こえると、通信を呼びかけていた黒いドラグーナのパイロットが首を振る。

 

『回収チームを他艦隊から回してくれているみたいですけど、時間かかりそうだってさ。俺達も移動しないと』

 

『そうか……何にせよ、ここの留まるのも余計な負担になるか。よし残っているメンバーに後退を呼びかける。お前も来い』

 

「分かった。ただ、少し通信をさせてくれ。大丈夫、皇帝の息が掛かっていない人達だ」

 

 指示に従いながらも、とある人物へと通信を送る。それはアルスにとって最後の味方と言える人物に対してであった。通信をしながらドラグディア側の空に向かう途中で、マキナス側の空域を見る。彼らの眼にとんでもない光景が映る。それは、希望の墜落だった。

 

 

 

 

 交錯する光と刃。高出力化したガンダムと、再度大型化して迎え撃つ処刑人のMSの対決の中、ギルフォードは次なる標的を見据える。

 視線の先にいるのは、竜人族の象徴たる機械竜クリムゾン・ドラゴニアス。かつては紅に輝くドラゴンであったが、今ではマキナスの技術を用いられて作られた機械のドラゴンである。この事実を公表された直後、国内でドラグディアとマキナスの未来の姿であると言われたが、それは戯言に過ぎない。当時のドラグディアはただマキナスの技術を盗用して作り上げたものであり、そんな事は考えていない。皇帝からしてみてもその存在は邪魔でしかない。ならばどうするか。そんなものは決まっていた。

 

「DNF、使用する」

 

『DNF 皇帝の剣(エンペラー・ソード)

 

 高く掲げた錫杖「皇帝の心杖(エンペラースタッフ)」の先端、エネルギー開放炉から高純度DNによるエネルギーソードが出現した。その大きさは遠くの戦場からも光が確認できるほどであり、膨大なエネルギーであることが容易に想像できた。マギア・マキナスと戦闘を行うクリムゾン・ドラゴニアスが振り向いてこちらを確認する。クリムゾン・ドラゴニアスに対し、宣告の如くギルフォードの声が冷たく響く。

 

「消えろ、醜きドラグディアの象徴よ」

 

 力いっぱい光剣を柄となった錫杖ごと振り下ろす。当たれば象徴もただでは済まない。危険性を察知したガンダムが蒼い輝きを放って妨害しようとするが、限界機動「マキシマイズ」の光を纏ったエクスガンダムに装依する処刑人、エクス・サイズにより阻まれる。

 

『行かせねぇぜ?象徴を倒される瞬間を味わいな!』

 

 クリムゾン・ドラゴニアスが迎撃しようと試みたが、我らが象徴のマギア・マキナスがそれを妨害する。皇帝の繰り出す斬撃が、クリムゾン・ドラゴニアスの首元から胸部にかけて斬り裂いた。

 

『グガァァアアン!!?』

 

「………………」

 

 皇帝渾身の斬撃を受けて墜ちていくドラグディアの象徴。落下していく様をただ見下ろす。

 墜落していく象徴に、更に追撃をマギア・マキナスに命じる。

 

「マギア・マキナス、追撃を」

 

『了解しました。我らが象徴』

 

『あぁ。DNF……』

 

 が、まさに攻撃態勢に入ろうとその口部を開いた時だった。

 

 

 

 

『やめろぉぉぉぉぉぉ!!!!』

 

『野郎!皇帝……』

 

「っ。この声」

 

 

 

 

 皇帝が気づいた時には、既に蒼い輝きを纏ったガンダムがその鋭利な手を伸ばしていた。光を滾らせ、掴もうとして来る手をマキシマイズにより寸前に回避してケープウイングユニット前面のビーム砲で反撃する。周囲に展開していたエアクルセイド無人型も遅れてだが追い払おうとする。ところがガンダムはその軌道を分かっているかのような鋭い軌道で緊急回避、包囲を突破する。

 危機こそあれどこちらに実害はなかったと安堵する。が、続いて向かった先がマギア・マキナスであることに気づき、危機が終わっていないことを理解する。

 

「不味い、マギア・マキナス」

 

『きゃっ!こっちに、来る!』

 

『ぬっ』

 

 マギア・マキナス側でもそれを確認して迎撃態勢に入っていたが、それより前にガンダムは左手に握った剣から巨大な光剣を作り出す。作り出した光剣で周囲を一回転するとマギア・マキナスの口部装甲が両断される。攻撃は口部内部の砲門にまで及び、頭部が爆発を起こした。

 トドメにガンダムは再度こちらに急加速して強襲する。間に割って入ろうとしたエクス・サイズを剣圧で吹き飛ばして光剣を力任せに振るってくる。対してこちらもエンペラースタッフのサーベルモードを起動させて剣が刹那の間一閃する。直後にエンペラースタッフが中程から両断される。

 

「ぐっ!?」

 

『皇帝!?大丈夫だっぺか!?』

 

 ワルトの声に答える前に振り返って追撃に備える。が、ガンダムは墜落していった象徴に向けて加速を行っており、その場には居なかった。

 機体にダメージはない。が、武器を1つ失った。ワルトに対し告げる。

 

「持っていかれたのは武装だけだ。私に実害はない」

 

『そうだってか。ならいいが……』」

 

「良くない!」

 

 通信回線に向かって怒声をぶつける。象徴を墜とし武装を破壊されただけだとしても、この不覚はあり得なかった。しかもそのガンダムは追撃を行いもせず、象徴の救援を優先した。狙いはこの皇帝だというのに、それを放り出したのだ。

 無論ギルフォードは元達ドラグディアの狙いが皇帝自身であることは知らない。勝手な想像である。だが予測したからこそ、目の前の最重要目標を放り出して既に過ぎた者に手を伸ばした行動は、彼にとっては一番の侮辱と感じたのだ。怒れる皇帝はマギア・マキナスと一度帰還した機械騎士に指示を飛ばす。

 

「マギア・マキナス、追撃するぞ!エンペラースタッフの補充!ランド・オンはまだかぁ!!」

 

『は、はい!今機体が完全にロールアウト出来ました!いつでも!!』

 

『エンペラースタッフ、ランドに持たせるっぺ』

 

『マギア・マキナス、降下します!』

 

 威圧感に怖気づくランドとメルの兄妹は慌てて反応し、マギア・マキナスが降下していく。このような屈辱をそのままにしてはおけない。すぐに粛清せねばならない。エクスにも命令して皇帝一派は落下したドラグディアの象徴への追撃を開始する。

 

 

 

 

「ハジメっ!早く象徴を助けてっ!!」

 

『分かっています!!』

 

 ジャンヌの絶叫の嘆願に、ハジメが従い落下していく象徴のもとへと向かう。ガンダムだとしても落下するのを止めたり、破損個所を直したりすることなども出来ない。だがそれでも駆けつけなければという詩巫女としての使命感から、そうさせたのだ。

 ハジメもそれに従ってクリムゾン・ドラゴニアスの近くまで機体を寄せる。そこで脳裏に響くようにクリムゾン・ドラゴニアスの声が回線から聞こえる。

 

『ジャンヌ……ハジメ……』

 

「!クリムゾン・ドラゴニアスっ!!」

 

『ダメだ、落下する!!』

 

 ガンダムが逆制動を掛ける。直後地表から地響きが鳴り、砂埃と遅れて小爆発が起こる。姿の隠されたクリムゾン・ドラゴニアスにジャンヌは呼びかける。

 

「どこっ、どこなのっ!!?」

 

 必死に呼びかける。先程の爆発で死んでしまったのではという不安が脳裏を支配する。また300年前と同じことにと嫌な想像をするジャンヌの耳に、彼女の声が届く。

 

『大丈夫だ……私はここにいる』

 

「あ…………よかった……」

 

 声を聞き一安心する。だが砂埃が晴れて見えたクリムゾン・ドラゴニアスの状態を見て、再び気持ちは底へと落下していく。

 クリムゾン・ドラゴニアスの胸部装甲は右肩にあたる部分から斜めに斬られていた。内部のメカニックまで見えており、傷口からはショートした機械部品、それから改造時に埋め込まれた本来の肉体の骨が生々しく見えていた。

 

「え……あ……あぁ」

 

『…………機動性に、問題は?』

 

『まだ飛行はでき……づぅ!……いや、それも無理か……』

 

 ハジメとクリムゾン・ドラゴニアスの間で行動できるかどうかの話が交わされるが、ジャンヌの耳には入ってこない。目の前の出来事を脳が正常に呑みこもうとしなかった。悪い夢だと。

 

『――――、ジャンヌ!』

 

「は、はいぃっ!?」

 

 ようやく耳に入ってきた呼びかけに、ジャンヌは酷く怯えてしまう。その弊害でガンダムのツインジェネレーターシステムの安定が揺らぐ。機体バランスが大幅に崩れかける。

 

『っ!機体が……!?』

 

『ジャンヌ、落ち着け!……まだ戦わなければいけない』

 

「……っ!はい……」

 

 何とかエネルギーの乱れを収める。だがその眼には大粒の涙が浮かび、感情の揺れは明らかだと言える。それでも自分なりに必死に感情を抑えようとした。そこに通信が入ってくる。通信相手はジャンヌ達の母艦ダンドリアスからだ。

 

『シュバルトゼロガンダム、応答してください!状況は!』

 

『こちらシュバルトゼロ、俺達はイグナイトに換装して無事だ。だけど象徴が移動不可のダメージを……』

 

「お願いマリーさん、艦長でも総司令にでもいい。クリムゾン・ドラゴニアスを護って!」

 

『……いや、それは少し難しそうだ……』

 

 クリムゾン・ドラゴニアスの達観したような声がジャンヌの要請を下げる。それはすぐに分かった。

 

「え…………」

 

『………………』

 

 空から降りて来た皇帝達の機影。更にマギア・マキナスが咆哮と共に背中のビーム砲を一斉射し、その射線上にいた艦隊を撃墜する。ダンドリアスの回線からも悲鳴が響く。

 皇帝の戦列にはガンダムが更に加わっていた。皇帝機に似たマントパーツを纏う白と金のガンダムからは、先程戦列を離脱したランドの声が聞こえてくる。

 

『ここまでだな、ガンダム。ドラグディアの醜悪な象徴と共に、この俺のマキナガンダムで終わらせてやる!』

 

 向けられる銃口。クリムゾン・ドラゴニアスが痛みを抑えて迎撃の構えを取ろうとする。その光景にジャンヌは回線をオープンにして嘆願を口にした。

 

「――――やめてよ!もう、これ以上象徴を……クリムゾン・ドラゴニアスを傷つけないで!!」

 

『ジャンヌ!?』

 

『………………』

 

 ジャンヌの発現に、クリムゾン・ドラゴニアスは絶句する。言うなればこれは命乞いとも呼べる行動だ。動揺するのは当然だ。しかし制止できるもう1人のハジメは何も言わずただその言葉を聞いていた。

 

「なんで種族の象徴が、戦争なんてものに協力しなきゃいけないのよ!創世記で救世主が象徴をそれぞれの種族で誕生させたのは戦争をするためなの!?違うでしょう!もう戦争をしないためのシンボルとして作った。それが象徴なのに、どうして戦争に使うのよ!」

 

 やりきれない怒り。象徴と心を通わしたからこそのジャンヌなりの考えだった。最初は恐れ多いと思っていたが、そんなことはない。クリムゾン・ドラゴニアスはいつだって自分の、詩巫女の事を考えていたというのを感じ取れた。戦う力は本当に危機に陥った時の為であり、決してそれで争い合うための力ではないと。

 一度グランツにも自身の考えを伝えたことがある。グランツは難しい顔をした。しかし彼も象徴が戦うことはないはずだと答えた。それでも今回の戦いはと言うことで纏まった。象徴を失えば、竜人族はどれだけの悲しみ、怒りを持つか。そしてそれがまた戦争となるに違いない。その繰り返しを、見たくなかった。

 相手に通じるとは思っていない。それでも叫ばずにはいられなかった。自身の気持ちを。だがジャンヌの言葉は、想像していたものが生易しいほどの冷たい言葉で拒絶された。

 

『馬鹿が。象徴は種族の象徴。ならば、その発展の為に力を振るうべきだ。力があるのにそれを振るわないなど、宝の持ち腐れであろう?』

 

『そうだ。負けそうだからって、綺麗事で逃げようとするな!!卑怯者!』

 

 卑怯者、宝の持ち腐れという言葉で貶されていく。仕舞いにはもう1機のガンダムのパイロットからも心を砕く発言をされる。

 

『あーあー、理想ってのは本当にクソくらえだねぇ……。そういうの持ってるやつが、一番先に戦場で死んでいくんだよ!兵士は敵を殺して英雄になる。それ以外のやつは出しゃばんな!』

 

「っ……う……」

 

 受け入れられないことに苦悩する。どうあっても象徴を護ることはもう出来ない。自分の無力さを思い知った。

 そんな中、1人が口を開いた。

 

『そうだな。今ジャンヌが言ったことは理想で綺麗事、宝の持ち腐れかもしれない』

 

『ん?』

 

「ハジメ……」

 

 先程の発現に肯定するような口ぶりを見せるハジメに、不安を抱く。ハジメも自分の事を笑うのだろうかと、もしそんなことをされたらこの場で死んでしまいたい。しかし彼はそうではなかった。

 

『だけど、世界には理想も綺麗事も言えずに、宝の持ち腐れか判断されずに消えたやつだっている。その分ジャンヌはこんな戦争の場でそういうことが言えた。そんなことが許されないような中でも、自分だけが出来ることをやって生きている。それを、お前達みたいな理想も綺麗事もない、宝の持ち腐れか判断もされないようなやつらに言われる筋合いはない!』

 

「ハジメ……っ!」 

 

 ハジメが言ったのは、それを言えたことの誉れだった。かつて自身が失った想い人の事と照らし合わせて、励ました。それが自身にとっても辛いことであるにも関わらずに。心がすっと軽くなる。

 一方皇帝達はその言葉に苛立ちを返す。ハジメもそれに対抗する。

 

『理想がないだと!?我らには竜人族を滅ぼし、機人族を繁栄させるという大義がある!それは理想と同じで……』

 

『味方を巻き込んで繁栄もあったものじゃねぇだろ。犠牲の上に成り立つ繁栄なんて、大義じゃない。狭義だ』

 

『なんだよ、お前!』

 

 言い負かされたランドに代わるように、もう1人のガンダムパイロットが質問を投げかける。

 

『それが綺麗事なんだよ。戦争で戦って殺すこと以外考える奴はノロマだ。戦わなきゃ自分が死ぬんだよ』

 

『兵士は戦って殺すのが仕事じゃない。国を護るために戦うんだろ。目的と行動をはき違えるな』

 

『へっ、心がけはいいけどねぇ!だけど人は死にたかないんだよ!』

 

 正論を受けつつも冷静に斬りかかる赤と黒のガンダムのパイロット。それをハジメも的確にブレードガンで受け止め、蹴りをボディに入れて帰す冷静な対応で返した。再び突っかかろうとするが、皇帝が制す。

 

『愚かな……理想を……いや覇道を目指す者に、そんな有象無象が通じるとでも』

 

『だったら周りを見てみろよ。降りて来たお前達に追従した他の部隊のやつはいるのかよ。寧ろ単独行動するお前らが、他人にとっての有象無象だろ』

 

 ハジメの言葉通り、地上へ向かってマギア・マキナスに砲撃する者も、皇帝にわざわざついて来た別部隊もいなかった。完全に皇帝だけがマキナスの領土の地表近くまで来ているだけだ。それに対して首を振って呆れるように振る舞う皇帝。

 

『それは周りの者が愚かだからだ。愚かなものは頂きに立つ者が指示せねば動かん』

 

『少なくとも相手にしてきた俺からは、そんな馬鹿なやつばかりじゃないと思うけどな』

 

『もういい。おしゃべりはここまでだ。潰せ!』

 

 皇帝の一声で武装を構える皇帝一派。それに対してハジメも臨戦態勢を取る。ジャンヌにも声が掛けられる。

 

『ジャンヌ、象徴を護るぞ』

 

「はいっ!」

 

 その声に既に迷いはない。護ると決めたのだ。絶対に護り切る。ガンダムのエラクスシステムを起動させ、ガンダムは象徴を護るバリアをファンネルから形成して突撃した。例え無謀でも、やるしかない。護らなければいけないものがあるから。

 そして2人の姿に、象徴もまた奮起していた。闘志を漲らせ光球を生みだして自衛する準備を整えていた。希望はまだ、潰えていない。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。次回は黒の館DNの投稿になります。

ネイ「象徴が……でも元さん達は負けじと応戦するようですね」

グリーフィア「けど皇帝も皇帝ねぇ。国のトップなのに目先の敵に目が行っちゃダメね。それ以上にジャンヌが素直すぎるのも問題かしらね」

指揮官はいかに戦場を見る目を持っているか、が重要になりますからね。スポーツとかでも優れたコーチ、リーダーが勝利に導くという。ジャンヌのあれは状況によるんじゃないかな。昔の戦争じゃ敵対する国の前線の兵士がクリスマスにみんなでパーティーしたこともあるって聞くし(´-ω-`)

ネイ「特に今回のビルドダイバーズリライズなんて、そういうリーダーシップが求められる回みたいでしたよね」

グリーフィア「すぐに長を務める大事さが分かりそうねぇ。丁度今頃がリライズのライブ配信終わったから、作者君も見に行くんでしょ?」

どうなんのかなっ(゚∀゚)さて、今回はここまでです。

グリーフィア「次回もよろしくねぇ~♪」


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黒の館DN 異世界戦争編 第9回 前編

どうも、皆様。先日バトスピ公式から公開された推しキャラの情報公開でテンションマックスな藤和木 士です。(゚∀゚)とんでもねぇ、待ってたんだ(コマンドー並感)

前回の投稿後の数値がなんかやたらと多くて、コメ稼ぎみたいになっちゃったかなと思いつつも、きっとアルス君の活躍が楽しみなのだと受け取りました。もしくは一緒に取り上げたビルドダイバーズリライズの話題のおかげですかね。あの後ちゃんと私も見ましたよ、えぇ。( ゚Д゚)

さて今回は黒の館DN。これまでに登場した人物、機体を2話に渡って紹介していきます。

ただ今回は前回の黒の館DNと比べて反対勢力の紹介が多いようで……どうなったのかは内容を見て、どうぞということで。今回も開館していきます。どうぞ。


士「今回も始まります、黒の館DN!司会はいつもの、作者の藤和木 士です(^ω^)」

 

レイ「アシスタントのレイ・オーバでーす!」

 

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌ・ドラニエスです。果たしてこの黒の館DN公開時にはバトルスピリッツディーバコラボブースターは販売されているのでしょうか?」

 

士「分からん( ゚Д゚)だから今回特に言及はしない。今はGジェネクロスレイズのPVの曲流しながら書いてることが多いけどそれについても言及しないよっ!それより今回の紹介ラインナップは驚きのマキナススペシャルです」

 

レイ「単純にマキナスのMSとか人物が多いって感じなんだけどねー。でも前章とか今章前半ではドラグディアの紹介が多かったから、その反動って感じだと思うね」

 

ジャンヌ「でもこれまでのマキナスMS紹介というと、今の時点で出ている全部、ですか?」

 

士「あ、皇帝機とランド君が乗ってきたマキナ・ガンダムだけは第10回に回します(;´・ω・)あれはまだ出たばっかしだからね。まずは人物紹介と行こう!」

 

レイ「えーと、じゃあまずはマキナスの象徴を操る機械騎士(マキナイト)奏女官(シアル)のオン兄妹から~!」

 

 

 

ランド・オン

性別 男

機人族

身長 167cm

髪色 紺色

出身地 マキナス デクスキナ州 アイロン市 旧シアル村

年齢 17歳

誕生日 10月6日

血液型 A

好きなもの 妹、自分の国、使命

嫌いなもの 妹に危害を加える物、姑息な手、ロシアンルーレット方式のお菓子

愛称 機械騎士ランド

 

 マキナスの象徴である「マギア・マキナス」を守護する(正確には象徴とその使い手奏女官(シアル)機械騎士(マキナイト)の少年。

 古くから奏女官を輩出してきた家の出身であり、妹のメルの事を溺愛している。皇帝一族ともかかわりが深く、ギルフォードの即位に伴いメルが奏女官になったことを受けて彼が機械騎士へと就任する。

 MSの操縦は中の上といったくらいであり、機体の性能、技術力含めて元とシュバルトゼロガンダムに大きく差を付けられる実力となっている。それをコンプレックスとしており、皇帝への協力の際には妹以外の一族の者を虐殺して必然的に自分が選ばれる様に仕向けた。メルを護る一心と数の差でシュバルトゼロガンダムに喰らい付く。

人物モデルはポケットモンスターサン・ムーンシリーズのグラジオ。妹がリーリエモチーフとなっており、その点からも兄妹キャラのモチーフとして選ばれた。

 

 

メル・オン

性別 女

身長 150cm

髪色 紺

出身地 マキナス デクスキナ州 アイロン市 旧シアル村

年齢 14歳

誕生日 12月7日

血液型 A

好きなもの 兄、使命、焼き芋

嫌いなもの 兄をいじめる物、他人のしつこい行動、酢の物

愛称 奏女官メル

 

・マキナスの象徴「マギア・マキナス」を制御する奏女官(シアル)の少女。ランドの妹である。

 家は代々マキナスの奏女官を輩出してきた家であったが、ドラグディアのクリムゾン・ドラゴニアスが死亡・機械に蘇生後マギア・マキナスも異常が発生。その影響で家の信頼度が下がり衰退。皇帝一族衰退後は皇帝一族と縁の深かった一族の暮らす村は排斥されて行ってしまう。村も排斥されるのを嫌がり、関係を断ち切っていった住人が作った表向きのシアル村に越していってしまう。彼女達は元々の村に残り、使命を果たすことを重視していった家の後継者である。その影響もあり、閉鎖的な性格に育ってしまっている。兄妹同士を求める依存症。兄の行動については一族が政府に身を売ろうとしたため粛清したと嘘を吹き込まれている。

 しかし兄と違い奏女官としての実力は高く、DNFを彼女の意志で使用することも出来る。皇帝が復権したことも含めて彼女達の村の最後の希望と呼べる少女。必然的にジャンヌと争う立場にある。ただし兄の危機にマギア・マキナスを動かしてしまうなど国への忠誠度は高いものの、戦闘においては劣る部分も持つ。またマギア・マキナスの制御にワルトも加わっているため、その分のタイムラグが生まれる。

 人物モデルはポケットモンスターサン・ムーンのリーリエ。兄と合わせてエーテル兄妹がモデルとなっている。ただし仲の度合いなどはかなり調整している。身長なども年齢相応となっている。

 

 

エクス・サイズ

性別 男

機人族

身長 183cm

髪色 黒と赤のメッシュ

出身地 マキナス トランド州 グレイヴ・タウン

年齢 31歳

誕生日 4月1日

血液型 AB

好きなもの 血、命の駆け引きをする戦闘、ゲーム(賭け事系)、ミートパイ

嫌いなもの 新兵の青臭い理想、退屈な時間、ファンネル系武装(使われる側)

愛称 処刑人、皆殺しの死神

 

・マキナス皇帝ギルフォードに味方する軍人。階級は中佐。ただしギルフォードが元首となってからは大佐に昇格した。処刑人と呼ばれるネオ・エース。

 幼い頃誘拐事件に遭うが、誘拐した相手を犯人のものである銃で殺害、救出された際に笑みを浮かべていたという異常者。かつて従事した任務で命令違反を犯して民間人を助けた兵を殺しており、その事で一度軍事裁判に掛けられる。しかし任務自体が重大を有したことと、エクス自身が「軍人は使命を全うすべきである。だが任務完遂こそが民間人の犠牲を更に減らす」と言ったことから不問とされる。以降は正式任務から離れた汚れ仕事を受け持つようになる。

 そう言った戦闘勘を養われるような現場を経験していくことで彼の思考は更に成長し、冷酷に対象を殺害していく。やがて処刑人と呼ばれ敵からも味方からも恐れられるようになった。現在ではそんな自分に歯向かうような強敵を切望し、戦闘を愉しんでいる。皇帝からスカウトされた理由としては、味方を冷酷に始末できるため。皇帝の配下の中では彼の思考を深くまで知った上で協力しているため、様々な作戦の概要について把握している。

 戦闘では鎌型の専用兵装を用いて戦うことが多く、開発された専用機エクス・Gにも鎌とライフルがセットとなった武装を装備する。本人は素のエクス・Gが本来の戦闘スタイルであり、その武器だけは気に入るも追加兵装群を煩わしくも思っている。

 人物外見モデルは絶対可憐チルドレンのギリアム。わかめヘアーも受け継いでいるが、色はメタリックブルーに近い色。ちなみに髪色の理由は「赤い血が見やすくなるから」とのこと。

 

 

レイ「以上が、オン兄妹、それから本編でかなり暴れまくっている、エクス・サイズの紹介だよっ!」

 

ジャンヌ「どの方々も本編で語られていない部分があって、闇を抱えていますね……。でも、エクス・サイズと、搭乗機のエクス・Gって、旧作で似た人物というか機体がいませんでしたか?」

 

士「あ、そうですね。エクストリィムとエクスだね」

 

レイ「言い切ったね……というか何で今回もまたエクストリームモチーフの機体とキャラ……」

 

士「キャラは大分性格変えていると思うんだけどなぁ(;・∀・)簡単に言うとまだあっちでミスティックとか出してないし、こっちで改めて対決させたい意図があります」

 

ジャンヌ「まぁ、そこは藤和木の裁量なので特に言いませんが……次は機体紹介ですね?」

 

士「そうだね。ジャンヌお願い」

 

ジャンヌ「わ、わたくしですか?じゃあ……前半はマキナート・エアクルセイド、そしてマキナート・シャイニングの紹介となります」

 

 

 

 

マキナート・エアクルセイド

形式番号 MS-MM08VMC

 

機体解説

・マキナスの可変MS「マキナート・エアレイダー」を発展させた後継機にしてオンオフ前提の量産機である。

 ワンオフと量産という相反した2つの要素をなぜ持つのかということについてだが、これにはパイロットが関係している。まず本機の開発に至った理由は、ガンダムに敗れ、更に別のガンダムに基地を破壊されたパイロット「フリップ・プレイン」からの要望がある。彼は絶対にガンダムを殺したいという要望からエアレイダーの改造を要求した。一度敗れた機体で復讐を果たすという彼の要望を叶えたのが、ガンダムに胴を両断されつつも何とか生還した考古学者からMS開発者に転換したワルトだった。彼もガンダム打倒に燃え、最高峰のMSを作ろうとしていた。そのための素体にエアレイダーは最適でありすぐに開発を開始。だが完成した機体はマキナスの機人族にも到底扱うことすら難しい機体となってしまった。そこでワルトはフリップの脳を改造することを決断。本人の意思の下脳のメインコンピューターの処理能力を外科的に強化する手術を行った。結果本機を無事制御できるようになった。そのタイミングで成果を知ったギルフォードが本機の量産化を打診する。強力とはいえ非人道的な機体を量産化するのは難しいと考えるも、彼が提案した無人機による編隊という案を受けて機体を無人機化、そして量産化に成功した。それゆえのワンオフと量産という要素を併せ持つ機体となったのである。

 本機の特徴はやはり可変機構にある。エアレイダーから発展した可変機構は機体背部のバックパックベースに上半身を格納し、下半身を前後逆転して変形するという特殊なものへと変更。巡行形態・MS形態の他に、機体の下半身のみを展開した逆足状態の獣脚形態への移行も可能とした。この獣脚形態ではスピードを可能な限り維持しつつの近接戦闘も可能としており、バックパックベース正面のビームキャノンを向けた射撃戦を行う。この機構を盛り込むために、本機の腹部は引き出して後部に倒すことが可能。

 機体性能は主に加速性能と攻撃能力の強化を行っている。推力を集中させたバックパックベースと高火力ビーム砲の搭載によりガンダムを撃墜できるだけの火力を実現しているという話。防御性能も装甲をアイオン・カーボンとしていることで耐久性も確保しているが、その重量からGの掛かる機動ではパイロットが気絶しかねない。普段の加速でもかなりの負担がかかり、強化措置とDNのG軽減能力でも負担を軽減しきれていない。そのため連続機動を強いられるとパイロットが失神する場合がある(無人機ではこの問題は起きない。それでも高速演算処理が追いつかなくなるという問題はある)。

 名称はエアレイダーのエアと十字軍を表すクルセイド。ただし今回の場合「狂う」という言葉と掛け合わせて「空の狂人」という意味合いを持たせている。

 機体のコンセプトとしてはガンダムグリープ×強化人間専用機(特にSEEDにおけるエクステンデット機のフォビドゥンガンダム)。元々グリープが持つPXシステムにも強化人間とは違う欠点として精神崩壊が見られるが、今回の場合機体の構造にグリープ(とウイングゼロの下半身の変形)を、無人操縦やパイロットの改造を強化人間専用機の要素を強く持つ。機体カラーリングは白にアメジストとなっている。

 

【機能】

・カメラ切り換え機構

 エアレイダーから継承された機能。ゴーグル時が遠距離、ダブルモノアイが近距離用となっている。ただしゴーグルの形状がチューブからサングラスのような形状に変更され、その収納法も頭部内部にスライドして格納される様になった。加えて可変時にはバックパックベースの飛行用カメラに切り替わる。なお飛行用カメラはガンダムグリープの物に類似したものとなっている。

 

・電子ステルス装甲

 名称が若干違うが、マキナート・エアレイダーと同じレーダーに対するステルス装甲。本機の場合圧倒的な飛行速度と合わさって近距離の機体すらも翻弄することが可能。

 

・変形機構

 エアクルセイド専用の変形機構。エアレイダーから引き継がれた巡行形態、MS形態の他に新たに獣脚形態が実装された。獣脚形態では脚部による格闘攻撃を行えるが、リーチの関係上扱うのは難しい。だが巡行形態とは違い、砲撃性能に特化している。

 可変機構はガンダムグリープの物をベースに下半身と腹部をそれぞれウイングゼロ、ガンダムAGE-2の物を流用。更に獣脚形態はマクロスシリーズのガウォーク形態とフォビドゥンガンダムの強襲形態を参考にしている。

 

・ビーム偏向フィールド「ノイズ・オーロラ」

 本機の隠された機能。獣脚形態および巡行形態で使用できるが、主に獣脚形態での使用がメインとなる。

 バックパックベースのサイドに装備されたシールドが発生器となっており、起動すると、両シールドに挟まれたビームを偏向、所謂ビームの曲射が可能となる。この技術は光刃防盾とビームシールドの技術過程で生み出された技術であり、どちらかと言えばDNウォールに近い。粒子制御にあたるため出力を外側に放射してシールドを構えるとビームを逸らすことも出来る。

 攻防に応用できる技術だが、弱点としてビームを狙って偏向することが難しい(軌道の計算が難しい)ことと、ビームを逸らすのにも限界があることである。現状発生器の技術も発展途上な部分もあるため、使用後は一定時間の冷却が必要である上、貫通力の高いビームは逸らしきれず機体にダメージが及ぶ。マキナス側ならマキナート・シャイニングのヴァルスビー、ドラグディア側だとガンダムのDNFや[ヘッジホッグ]のスピアブラスターが脅威となる。そのほか実弾に関しても装甲が硬いとはいえダメージを負いかねない。機動力で回避するにしてもミサイルの連続発射などは脅威となる。

 モデルは機動戦士ガンダムSEEDのフォビドゥンガンダムが運用する「ゲシュマイデッヒ・パンツァー」。名称に関してはノイズのオーロラという意味合いを持たせ、反射をオーロラのような膜で行っているという点で名付けられた。

 

 

【武装】

・ビームカノンライフル

 通常のライフルより大型の口径を持つ、重ビームライフル。エアレイダーの試作ビームライフルの発展型。MS形態では腰背部に銃口を下に向けて懸架、巡行形態・獣脚形態では機首下部に装備される。

 銃口からビームサーベルを形成することは出来ないものの、銃底部に手元を護るように設置されたシールドを装備。更にシールド裏にはビームガン兼用のビームサーベル端末が装備されている。攻撃のためというより接近時のフェイルセーフの意味合いが強い。

 武装モデルはウイングガンダム(EW版)のバスターライフル、およびアクセルレイトジンクスのシールドサーベル。大元となるモデルにガンダムグリープのハイパーメガ粒子ランチャーを持つ。

 

・ビームサブマシンガン

 両腕部装甲内部に装備された2連ビーム砲。速射性が高く、MS形態における弾幕形成を行う。

 武装モデルはアリオスガンダムのビームサブマシンガン。

 

・ビームジャベリン

 棒状の端末を伸ばして先端から刃渡りの短いビームサーベルを形成する格闘用兵装。1本を装備する。投げ槍の通り、投擲することを目的として使用される。武装自体は背部バックパックの右側背面に固定されて装備される。

 武装モデルはブラストインパルスガンダムのデファイアントビームジャベリン。

 

・バックパックベース

 機体の背部に装備されるバックパックユニット。この機体における最重要兵装でもある。大型のシールドとその基部バーニア、機首で構成されており、巡行形態・獣脚形態では上半身をこのユニットに格納して変形を完了させる。

 ウイングの先端にノイズ・オーロラ発生器付シールドを装備しており、その先には通常出力のビームライフルを装備する。また機首にはビームカノンライフルを装備可能な他、機首先端には高出力バスタービームキャノンを装備する。巡行形態・獣脚形態ではこれら武装を以って空域を制圧する。ビームカノンライフルと高出力バスタービームキャノンは連動させるとフルバーストモードで放つことが可能。

 武装モデルはガンダムグリープの背部バックパック。フォビドゥンガンダムのバックパックも盛り込んでいる。バックパック自体の可変機構がなくなり、フォビドゥンガンダムのバックパックと同じく被る方式で変形する。なお被る際腕部はガンダムグリープと同じくバックパックに格納される。

 

・ノイズ・オーロラシールド

 機体のバックパック両サイドに折りたたみアームで保持されたシールド。シールド裏にノイズ・オーロラ発生器を持つ。シールド自体の防御性能は平凡的であり、集中砲火されると破壊、もしくはノイズ・オーロラ発生器が損傷する恐れがある。そのため非常時における防御手段としての使用が求められる。

 武装モデルはフォビドゥンガンダムのシールド。あちらはトランスフェイズ装甲とゲシュマイデッヒ・パンツァーで隙がほぼない。

 

・高出力バスタービームキャノン

 バックパック正面に装備された、高出力のビームキャノン。MS形態では使えないものの、火力はお墨付きで更にノイズ・オーロラと相まって凄まじい性能を誇る。

 武装モデルはガンダムグリープのバスターメガ粒子砲。フォビドゥンガンダムのフレズベルグもイメージとして入っている。

 

 

 

マキナート・シャイニング

形式番号 MS-MM07ACⅡ

 

 

・マキナス軍のネオ・エースであり、マキナス皇帝に味方したアルス・ゲート大尉が新たに操るMS。マキナート・レイの後継機である。

 アルスが得意とする接近戦を重視して更に強化が行われており、強力な格闘兵装の搭載と新技術が投入されている。特に対ガンダム用としてエラクスシステムを参考にした強化機動システム「マキシマイズ」を搭載。更にイージス・エリアを昇華させたビームによる盾「ビームシールド」を技術再生に成功している。

 頭部のデュアルアイや構成などから、元のガンダムを思わせる構成をしており、マキナス側の救世主ガンダムに対する考えが垣間見える。なおゴーストではないバックパックを背部装備するマキナートとなっている。

 機体コンセプトは「F91×エクストリームガンダム タキオンフェイズの小型版」。遠近バランスよく整った性能を誇る。機体カラーは白と青、そして赤のトリコロールと我々が良く知るガンダムのトリコロールカラーとなっている。

 

【機能】

・センサーバイザー

 機体の四角形の頭部に装備されるバイザー。デュアルアイを保護する他、遠距離の望遠機能や赤外線センサーの機能も持つ。

 

・光波防刃

 機体のスラスターから噴射されるDNがビームサーベルとして噴射する機能。別名イージス・エリア。

 強化され、発展させた技術があるにも関わらず、スラスターの形状を光刃防盾が形成できるようにして搭載された理由としては、後述するマキシマイズの発動のために実装される。なお発動がしやすくなっており、積極的に不意打ちを行うことも可能。

 DNウォールの技術のベースとなる技術であるが、これをビームの状態にしてから盾へと変化させるとビームシールドの技術へと派生する。

 

・ビームシールド

 光波防刃を発展させて防御性能を高めた、ビームで形成される盾。発生器からビームを発振させてその熱量で防御を行う。DNウォールとの違いについては攻撃能力があるかどうかが最初に挙げられる。ビームシールドという名の通り、攻撃に使用されるビーム化したDNを防御に使用するので触れればその表面が焼ける。人体に悪影響を及ぼすので市街地戦での使用はかなり限られる。敵機体との衝突時には敵機の装甲を焼ける。

 通常の耐ビームコーティングシールドとの違いとして耐久性が段違いである点が挙げられる。ビームで向かってくる攻撃を焼き弾くこと、そして盾そのものがビームで出来ているため破損と言う概念が盾自体にないことで、機体の残存DNが尽きぬ限り無限に張ることが出来る。この点は更に実体ではないことから機体の軽量化にも一役買っている。対して欠点はやはり近くに生身の人間がいると使えないこと、そして発生器を破壊されると使えなくなるという点である。発生器を覆う形で更にビームが展開されるため外部からの攻撃でも破壊されるとは考えづらいものの、ビーム圧を超える大出力の攻撃で貫通される、またはビームコーティングされた物体で透過されると破損する確率が高くなる。またDNウォールよりも発光しやすいため的になる(なお創世記時代にはそれすらも活用して敵を引きつけ一網打尽にするパイロットもいたと語られている)。

 創世記時代のMSにはその性能からDNウォールよりも量産されて機体に装備されていた。DNウォールよりも扱いやすいことから装備されていたものの、性能的に一長一短であったため一概に有利とはいえない。またDNプロテクションも性質が違うため比較対象にはしがたい。しかし現代の実体シールドでの防御が前提となるMSとの対決では機動面並びに防御力で有利に立てる装備である。

 

・強化機動システム「マキシマイズ」

 ガンダムの強化システム「エラクスシステム」をベースに、光波防刃のスラスターから噴射する機能でそれを再現した機能。エラクスと違いジェネレーターのフル稼働ではなく、スラスターパーツの全力噴射が行われる様になっており、必要時に噴射して機動性を高める仕様となっている。機動時にのみ機体が紅く輝き残像が生まれるのだが、これは噴射時の光刃防盾が全力噴射直後は機体を覆っているために起こっている現象である。これにより若干パイロット側の視界が光でふさがってしまう点がこのシステムの欠点の1つである。

 機能モデルとしてはエラクスのモデル元であるトランザムに加えて、ガンダムF91が行うM.E.P.Eが主なモデルとなっている。

 

 

【武装】

・ビームサブマシンガン

 銃口を2門備えた、小型のビーム銃。リアアーマーに2丁銃口を下に向けて装備される。弾幕を重視したセッティングでありレイにて装備されていたビームマシンガンの単発火力を落とし、総合火力を高めている。ビームライフルを装備するという案もあったが、手持ちのライフルで火力増強をするくらいならと、バックパックにビームキャノンに近いビームライフル「ヴァルスビー」を装備する形となった。

 武装外見モデルはガンダムキュリオスのGNビームサブマシンガン。

 

・ランサーガン

 機体の胸部両側面に装備される実体杭射出装置。2発分を装備している。以前のレイではサイドアーマーに装備していたが、胸部へと変更されている。それに合わせて長さの延長、DNジェネレーターからの直接出力で更に速度が上がっており、威力および貫通性も比例して向上する。

 装備位置はブルーディスティニーシリーズの有線ミサイルの位置と同じ。

 

・ビームセイバーⅡ

 マキナート・シャイニングのメインウエポンにしてマキナート・レイのビームセイバーの改良型。サイドアーマーに2本装備する。

 柄の部分を展開することで出力部を露出、発振させる方式。柄同士を合体させることで双刃のツインビームセイバーとして使用できる。そのほかサイドアーマーに装備した状態で前方に向けて出力部を開けばビームガンとしても使用可能である。

 ガンダムとの近接格闘戦でも十分通用する兵装であり、並みのビームサーベルでは簡単に叩き切られてしまう出力を誇る。

 

・ビームシールド発生器

 機体の左腕部に装備される、ビームシールドを発生させる兵装。現状ではビームシールドとしてしか機能しないものの、光波防刃の特性を生かしてビームサーベルを発振させることも理論上は可能である(ただしこのバージョンではシールドとしての機能しか持たない)。

 外見モデルはガンダムF91のビームシールドをベースとしている。

 

・マニューバ・キャノンバックパック

 姿勢制御用多構造ウイングと可変速ビームライフル「ヴァルスビー」で構成される、バックパック。中央メインスラスター2基上下にウイングとビームライフルが装備される。メインスラスターに繋がるウイングブースターごと傾けることで機動性、あるいは加速力に秀でた形態に移行する。またウイングの上部外縁は取り外し式ブレードとなっており、加速形態においてはウイングで駆け抜けるついでに切り裂くことが出来る。

 武装外見モデルはガンダムビルドファイターズのビルドストライクガンダム フルパッケージのビルドブースター。ブースターの分離行動は出来なくなった他、ウイング収納時にはウイング・エッジとの兼ね合いで内羽の収納ギミックが追加されている。

 

・ウイング・エッジ

 マニューバ・キャノンバックパックの上部ウイングパーツを構成する武装。メインとなるウイングに上から重なる形で装備されており、左右合わせて2振りを装備する。

 必要時にウイングからパージして持ち手を展開、使用する。ウイングの収納時は小羽収納部の上から、小羽が少し見える形で沿わせて固定される。

 

・可変速ビームライフル「ヴァルスビー」

 マニューバ・キャノンバックパックの中央スラスター下部に装備される機体接続式ビームライフル。2門を備える。発射時は脇に抱える形で使用する。

 機体の動力とバックパックを介して直結しており、その出力は凄まじい。更にパイロットからの操作でそのビーム発射速度を自由に変えられ、これが可変速ビームライフル、ヴァルスビー(ヴァリアブルスピードビームライフル)と名付けられる一因となった。貫通性のある速射タイプ、破壊力のある重速ビームと変えられるが、専ら本機では接近戦でも素早く構えられるビームライフルとして使用される。

 モデルはガンダムF91のヴェスバー(V.S.B.R)。ヴァルスビーもヴェスバーの当て字から作った造語である。

 

 

ジャンヌ「以上がエアクルセイドとシャイニングの紹介になります」

 

レイ「エアクルセイド……ガンダムシリーズでいう所の強化人間機なんだね……というか機人族って所謂アンドロイドだけど改造したら強化人間って区分なの?」

 

士「ま、まぁアンドロイドが人類の進化先ってなっている世界観だから……けど本編中じゃ強化人間って言葉はたぶん使わないとは思うよ。改造した、あるいは機械化したとか」

 

ジャンヌ「そういえば裏ネタとして、エアクルセイドは変形機構の設定が固まった後でGジェネクロスレイズのPVを見て、作者は初めてガンダムグリープの変形機構を理解したんでしたっけ」

 

士「やめて!( ;∀;)変形機構をいじるのはもうやめて!ずっとフォビドゥンガンダムのそれを根底にあったからそうなったの!というかガンダムグリープ初めて見たのオーバーワールドが初めてで変形機構もあんまり見れなかったから……」

 

ジャンヌ「はいはい言い訳言い訳」

 

士「くそぅ……(´Д⊂ヽ)

 

レイ「でもシャイニングのウイングエッジとか使ってないけど、どうやって武器にしているの?」

 

士「主翼に付いているウイングカバーが剣になります。持ち手は付け根付近に来るようになってる。早い話がノワールストライカーのフラガラッハです」

 

レイ「機体名言われてもすぐには出てこないっ!」

 

士「(´・ω・`)すまない……」

 

ジャンヌ「まぁそれは調べて想像してもらうこととして。前半はここまでですか?」

 

士「だね。もう10000字超えちゃってるからね。次も10000字超えそう……( ;∀;)」

 

ジャンヌ「それでは後半に続きます」

 




前半はここまでとなります。冒頭でも申した通り、マキナス陣営の紹介が多い内容となっています。

地味にオン兄妹の設定は本編で明かしていないものも多く、もしかするとまた深堀りするかもしれません。

機体に関してはシャイニングの機体名はプロット当初は「スターブレード」とという名前だったのですが、私がプロットで確認するのを忘れて気づいたらこの名前になっていました……(゚Д゚;)やっちゃった。

さて、後半ではわずかな登場となった機械騎士の機体と、怒涛の換装MSの紹介となりますので、引き続きよろしくお願いします。


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黒の館DN 異世界戦争編 第9回 後編

どうも、皆様。引き続きご覧の方は改めまして。作者の藤和木 士です。

黒の館DN後半は本来の機械騎士の機体マキナズ・ファイターとエクス・サイズが装依するマキナスのガンダム「エクス・G(ガンダム)」の紹介となります。

マキナズ・ファイター、エクス・ガンダム。共にLEVEL1にて重要な位置にあたる機体でありますので、是非目を通してください。

それでは後半スタートです。


 

 

士「はい、では後半も始めて行きます。作者の藤和木 士です」

 

ネイ「アシスタントのネイです」

 

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよぉ~。後半も始めて行きましょーか」

 

士「そうだね(;・∀・)特にエクス・Gの説明が長いし……」

 

グリーフィア「メタいわねぇ♪」

 

ネイ「え、えと……じゃあ早速。後半の紹介はランドが最初に乗っていた機械騎士機マキナズ・ファイターとエクス・Gことエクスガンダムとその支援パワードスーツの紹介になります」

 

 

マキナズ・ファイター

形式番号 MS-MM00XMKCⅡ

 

機体解説

・マキナスの象徴「マギア・マキナス」を護衛する機械騎士のために制作されたMS。機械騎士専用のMSではあるものの、当代の機械騎士であるランド・オン専用機ではない。

 本機の冠する機体番号は00であり、マキナートはおろか新世代機の機体であるマキルナやマギアリアとも違う系列機である。更に専用機を示す単語にもⅡが付いており、なぜこの機体番号なのかというと、この機体はその時代のあらゆるMS技術を用いて作られる機体であり、ナンバリングに属さない機体だからである。

 故に本機は世代ごとにその姿を変える。またこの機体は政権が皇帝一族から大統領に変わった時に一度「本来の機械騎士の為の機体」から変わっている。それこそ機体番号が順番を示さない00であるのと、Ⅱと付いている理由である。なお「本来の機械騎士の為の機体」は既にギルフォードが確保しているが、調整がギリギリ追いつかなかったため本機が駆り出されることとなった。

 機体構成としてはシンプルな歩兵兵器としての先端を行くものとなっている。マキナスのMSのあらゆる武装を装備し、機体もそれに付いて行けるように調整された。その結果本機はマキナスに珍しい限定的なダブルジェネレーター仕様となっている。非常に高い性能を誇る本機だが、惜しむらくはこれをもっとも扱える人物に出会えなかったことで、出会うことなく本機は機械騎士ランドの「本当の」機体にバトンタッチすることとなる。

 機体コンセプトとしては文字通り「マキナスのMSの総集編」。このコンセプトは他の第4章に登場する機体にも当てはまる。細かく言うなら「大統領の機械騎士が扱うマキナスMSの総集編」というべきか。

 

【機能】

・カメラ切り替え機構

 他のマキナス機体と同じ機能。カメラ形状も機能もほぼ他の機体と同様。違うのはゴーグルが頭部の五角形状ユニットの内部に格納される様になっていること。

 

・パック換装システム「ゴーストシステム」

 他の量産型機と同じ武装換装機能。本機には専用ゴーストが存在しているので使われるのは補給時のみ。

 

・アンチステルスセンサー

 ステルス機の居場所を判別するセンサーシステム。マキナート・レイにて運用されたシステムであり、センサーはカメラ切り替え機構とセットになっている。

 

 

【武装】

・専用ビームアサルトカービン

 マキナート・アンチドラグにて採用されたビームアサルトカービンをマキナズ・ファイター専用に調整したもの。サイドアーマーに2丁装備する。

 中距離での弾幕形成に用いられる他、銃身下部にユニット化したアンカーを装備されており、アンカーで捕らえた敵に電撃を流し込むことが出来る。

 形状モデルはハイぺリオンガンダムのザスバタ・スティグマト。ビームはエネルギーカートリッジ方式ではなく本体供給式となっている。

 

・ボックスビームサーベル

 機体両腕部に格納されるビームサーベルユニット。マキナート系列機に採用される汎用タイプの兵装。緊急時に発振されるようにされたビームサーベルであり、主に迎撃用。ただし攻撃用としても考えられており、突きの一撃を拳と共に見舞わせることは容易。

 さらにマキナート・エアレイダーで採用されたビームガンとしての機能も有しており、射撃兵装としても使える優れもの。

 武装モデルはジム・スナイパーカスタムのボックスタイプビームサーベル。

 

・可変型シールド改

 左腕に装備されるシールド。マキナート・コマンダーの物を改修したもの。やや大型化したが、収納する機能は変わらず搭載。またエッジが付いて攻撃性能を若干だが持つ。

 モデルはインパルスガンダムのシールド。形状はブルーディスティニー3号機のシールドに似せている。

 

・スペシャルゴースト

 本機専用に開発されたゴーストパック。機首変形式の自立行動可能タイプ。全領域対応・射撃寄りのバックパックである。

 ベースとなっているのはマキナート・コマンダーのスーパーゴースト。近接格闘兵装持ちだが、それ以上に火力がウリであり、タンクゴーストを超える破壊係数を生み出す。

 武装はマルチビームランチャー2門、アンチシップブレード2振り、マイクロミサイルランチャー2基、ロングビームランチャーを1本、エネルギータンク1基にプロペラントブースターを4本も装備する。またゴースト自体にDNジェネレーターを搭載しており、実質的にマキナスのダブルジェネレーター仕様となる。同国のゴーストパックの中でもかなりの費用が掛かっているゴーストである。

 武装モデルとしてはガンダムSEEDのIWSPまたはSEEDDestinyのオオトリパック。

 

・マルチビームランチャー

 ゴーストの上部から肩に掛ける形で装備されるビーム砲。2門装備される。カノンゴーストの武装を流用している。長距離砲から銃身を短くしているが、威力はほぼ変わらず、連射性を高めた。

 武装モデルはIWSPのレールガン。銃身やサイズ比を小さくしてデッドウェイト化をさけているイメージ。

 

・アンチシップブレードⅡ

 ゴーストの下部、丁度脇の下付近に持ち手が来るように装備された対艦刀。2振りを装備する。スーパーゴーストの武装を改良した。

 本機でも格闘戦に対応した兵装が装備されているが、本兵装もそのうちの1つである。ただし以前のような剣の中央にビームを形成するのではなく、二股のブレードの先にビームサーベルを形成するようになり両刃の剣へと変更された。使用感が変更されているが、それでも以前のものより使いやすさを重視している。

 武装モデルは機動戦士ガンダムSEEDシリーズの対艦刀。剣の形状モデルはバトルスピリッツのブレイヴ「クラウン・ソーラー」。

 

・マイクロミサイルランチャー

 ゴーストのウイング下に装備された実弾兵装。カノンゴーストの武装を流用している。8門の発射口を持ち、ランチャー1基に2回掃射分の弾数を掃射できる。

 形状モデルはガンダムSEEDに登場するロングダガーフォルテストラ装備のミサイルポッド。

 

・ロングビームランチャー

 右側のアンチシップブレードⅡの下方に装備される手持ち式長距離ビーム砲。タンクゴーストの武装を流用した兵装。

 出力はマキナート・バスターで示された通り、十分な威力を誇る。本機の場合ミサイルや副砲としてマルチビームランチャーを備えているため、撃つまでの誘い込みがしやすくなった。またダブルジェネレーター仕様なのでエネルギー切れもチャージにも多少余裕がある。

 武装モデルはガンダム4号機のメガビームランチャー。

 

・エネルギータンク

 左側のアンチシップブレードⅡの下方に装備される、ロングビームランチャー用エネルギーキープ用タンク。同じくタンクゴーストから流用。

 ダブルジェネレーターとはいえ急なエネルギーの消費は機体の制御に問題をきたす。そのためのフェイルセーフティを兼ねた装備となっている。チューブで繋がっており、最悪左腕で撃つことも考えられる。

 

 

 

 

エクス・G(ガンダム)

形式番号 MS-MG01X

 

機体解説

・マキナスで開発されたエクス・サイズ大佐専用の新型MS。ここで示されている通り、本機はマキナスが開発した「ガンダム」である。

 本機が開発された要因としては、やはりこの世界のガンダムという存在が持つ圧倒的な存在感にあやかるという狙いがある。ガンダムという存在の有効性はマキナスでも認識しており、これまでガンダム奪回作戦が行われてきたことからも見て取れる。最初はガンダムを取り返そうと躍起になっていたマキナスだったが、メレト遺跡での敗戦後から考え方を180度改める。ガンダムが手に入らないのであるなら、ガンダムを作ってしまえばいい。そう考えたマキナス側はネオエースの1人で、専用機を切り替える段階であったエクス・サイズの専用機としてガンダムの製造「プロジェクト・マキナスガンダム」を始動させた。この時既にギルフォードの息が掛かったワルトも本計画に参加し、様々なガンダムの案が出された。

 その中で本機の仕様として採用されたのが、中核となる機体に対し、外装式のパワードスーツを更に装着して戦うというスタイルだった。四肢と体の一部を構成する外装に機体を合体させ、戦うというパワーのごり押しとパーツの切り替えによるダメージの速やかな回復を狙った戦法は、多くの支持者を集め本ガンダムの基本戦術として成立させた。外装式となるパワードスーツにはDNジェネレーターを個別に積んでダブルジェネレーター仕様になるようにし、タイプも接近型、遠距離砲撃型、遠隔操作端末型(コンピューターコントロール)、そして全領域高機動型の4つが制作された。対決するMSに対し外装を換装、残りのパワードスーツも個別搭載されたDNジェネレーターで追従して援護を自立稼働AIで支援を行う。

 パワードスーツが基本となる関係上、本体の武装は少ないが、それでも最低限の武装を持っており、性能も引けを取らない。頭部をガンダムにしただけでも十分効果があるだろう発想に対し、これほどまでの性能を付けたのはひとえに苦汁をなめさせ続けられたマキナス技術者たちの執念と呼べるものだろう。開発チームにワルトが居たことからも頑なに想像できる。ただし開発側の誤算としてはパイロットのエクス自身が追加兵装群を嫌っている点、そして開発を要請した大統領ではなく開発を横取りして使うこととなった皇帝によって本機が使われる点だっただろう。ちなみに開発チームは皇帝に賛同する者以外は殺害されている。

 なお頭部はガンダムだが、当初はマキナートのパーツを用いて偽装している。これはガンダムの前でバラすことで精神的動揺を誘う狙いがあったためである。更にこれまで触れられていなかったが、本機は国家元首機や皇帝機以外でDNフェイズカーボンを採用する機体の1機であり、ビームシールドが使えなくなったとしても機体の素の防御力も並み以上を持つ。

 コンセプトとしては「エクストリームガンダムを死神っぽいキャラクターが使うとしたら?」である。これまでのコンセプトと違い、やや崩れた説明の仕方であるが、これが一番作者としてはしっくりと来たためこのようになった。ちなみにパワードスーツ群の名称モデルが北欧神話のロキの子ども達に関係することから、それらに関係した名称の武装を持つジェニオン・ガイの要素も併せ持つ。そこから転じてそれをベースとして設定されたシュバルトゼロガンダム・イグナイトの影の姿と言える機体でもある。なおベースとなる北欧神話はマキナ・ドランディアの世界でも同じようなものが伝わっている。機体カラーリングは黒と白のラインが多数入っている。なおデュアルアイカメラの色は黄色となっている。

 

 

【機能】

・カメラ切り替え機構

 マキナート系列機と同型の機能。ただし本機の場合偽装時の頭部から本来のガンダムヘッドに切り替えた際のカメラ切り替えに留まっており、実際の所はそれほど機能として盛り込まれてはいない。

 

・DNフェイズカーボン

 ドラグディア、マキナス両国家の国家元首機や総司令官専用機に採用される特殊DN装甲。本機においてはパワードスーツにも採用されている。

 

・ビームシールド

 機体の両腕部に装備されたビームによる防御兵装。マキナート・シャイニングのデータを流用して装備される。余分なパーツを本体に装備させられない本機に対して非常にありがたい機能となっている。

 

・強化機動システム「マキシマイズ」

 マキナート・シャイニングにも採用された機動性能強化システム。ガンダムと対抗するための切り札の1つである。

 本機のスラスターはシャイニングと違い光波防刃が起きないようになっている。しかし、本システムで重要なのは圧縮したDNを瞬間的に機体外へ放出することであり、本機ではマキシマイズ機能のみに絞ったセッティングが行われている。素の機動性の強化につながるだけではなく、パワードスーツでもこれら機能が引き継がれるため、全形態で機動性を可能な限り維持している。視界不良は改善を行ったものの、若干視界がざらついてしまう。

 

・パワードスーツ合着

 本機におけるもっとも重要なシステムであり、特殊な武装換装システムを指した機能。正式名称はフェイズ・チェンジ。

 装着するスーツにより4つの形態へと移行する。その際機体の四肢はスーツに固定される。なお使われないスーツはコンピューターによるスタンドアローン操作で本体に追従して支援を行うことが出来る。

 モデルはエクストリームガンダムTypeイクスの換装。パワードスーツ群の名称はいずれも北欧神話における巨人ロキの子ども達、それから子どもの1体であるフェンリルと同一視もされることがあるガルムを含めた4体がモデルとなっている。

 

 

【武装】

・サイズビームライフル

 ビームライフルとビームの鎌「ビームサイズ」を合体させた武装。背中に1つを装備する。

 ビームライフルの銃口の下にサイズ用の持ち手が縮小して格納されており、ライフルのストック部分が開くことでサイズ用の発振器が展開される。

武装イメージとしてはガンダムビルドファイターズAのナドレ・パルティータのビームライフル。

 

・ビームシールド発生器

 機体の両腕部に装備される防御兵装。本機における生身の状態での防御兵装。実体シールドが場合によってはパワードスーツ換装に邪魔になることから本兵装が実装された。だがもっと正確に言うなら、ビームシールドを使用できるようになったからこそ本機の増加パワードスーツの採用に踏み切れたというのが近い。

 

 

<ヨルムンガンド・フェイズ>

・エクス・Gに合体するユニットの1つ。カラーリングは黒と赤。

 格闘戦を重視したパワードスーツであり、機動力も確保している。射撃兵装に乏しいものの、使い手次第で遠距離への攻撃も可能な他そもそも距離を余裕で詰められることからも対応が出来る。

 名称はロキの子どもの1体、大蛇の「ヨルムンガンド」。別名ミドガルズオルム。エクストリームガンダムのタキオンフェイズに相当する。

 

【追加武装】

・ビームセイバーⅡL

 マキナート・シャイニングのビームセイバーⅡをベースに、更に発生器を大型にしたモデル。背部のバックパックの鞘に装着されている。1本装備。Lとは「Large」の略。

 シャイニングの物より大型化したことで近接攻撃距離が伸びている。また出力の増強で光剣の面を用いて攻撃を防御(というより攻撃を焼き落とす、あるいは弾く)が可能となった。その分取り回しが悪くなっており、そのせいで1本だけの装備となっている。取り回しを悪くしてでも本兵装を新たに開発・装備した理由としては、マキナート・シャイニングの物だとパワードスーツ側の腕とサイズが合わないという、シュバルトゼロガンダム・イグナイトでも見られた欠点が判明したことによる弊害である。ちなみに大型化に際してビーム射撃機能が消されている。

 武装モデルはエクストリームガンダムタキオンフェイズのタキオンスライサー。

 

・クロークウイング・バックパック

 機体背部に装備される、バックパックユニット。中央の剣の鞘をモチーフとした主推進部と、マント型のウイングをアームでそれぞれ接続して出来上がっている。

 主推進部はビームセイバーⅡLの文字通り鞘として機能しており、鞘を傾けることで機体バランスをコントロールする。一方クロークウイングはウイングとしての機能を持つが、アームで前方に向けることで機体正面を護るシールドとして機能する。このウイングには対ビームコーティングが厳重に施されており、装甲自体も多重構造により堅牢さを誇る。スラスターもマイクロタイプを3重で構成されており、機動性を担う。

 

 

<フェンリル・フェイズ>

・エクス・Gに合体するユニットの1つ。カラーは黒と青。

射撃・砲撃戦用のパワードスーツ。シールドを持たないが、パワードスーツの装甲自体がヨルムンガンドで採用されたクロークウイングと同じ対ビームコーティング+多重構造装甲で構成されており、装甲で攻撃を受け止めるタイプとなっている。ちなみに格闘武装はなく、その特異な腕部もあって格闘戦は考えられていない。それでも殴りつけなどの手段はある。

名称はロキの子どもの1体、大型の狼のフェンリル。エクストリームガンダムのカルネージフェイズに相当。

 

【追加武装】

・折り畳みバスターキャノン「スコル」

 機体背部バックパックから伸びる折り畳み式のビームキャノン。本機の主兵装となる。

 砲身を展開することで長距離砲撃用の「ハイメガモード」へと移行し、砲撃行動に入る。折りたたまれた状態でも通常出力・連射出力の「ノーマルモード」で使用が可能。その性質上非常に近距離に入られるともっとも狙われやすい武装となる。ただしそれも織り込み済みであり、折り畳み時にはキャノンの割れた砲身からDNを放出して推進力を生み出せる。

 武装モデルはエクストリームガンダムカルネージフェイズの大型2連装キャノン。ミサイルコンテナを内装する技術までは持っていなかったため、推進器とビーム砲としての機能しかない。名称はフェンリルの子スコルから

 

・大型ビームライフル「ハティ」

 マキナートのビームライフルを大型化したような形状をした手持ち武装。バレルストックはない。

 形状こそマキナートのライフルに近いが、大型化では考えられないほどの出力アップを果たしている。キャノン砲の隙をカバーするため、エネルギー供給は機体本体からとライフル自体のエネルギーコンデンサーチャージ式の2種類を採用している。

 武装モデルはエクストリームガンダムカルネージフェイズのビームライフル。形状はマキナートの物と同じ形状ではある。名称はフェンリルの子ハティから。スコルとハティはそれぞれ北欧神話にて太陽と月を飲み込んだ。

 

・バルカンフィンガー

 機体両手を構成する武器腕。指の数だけあるため全部で10門備える。

 指の1つ1つがビームバルカンの砲身となっており、構えることで発射態勢を取る。ビームの威力はバルカンと言う名前ながらも、1つ1つがマキナートのビームライフルに匹敵する出力であり、それで弾幕を形成するとなると驚異的なのが明らかである。

 武装モデルはエクストリームガンダムカルネージフェイズの両手から放たれる火炎弾。ただし発射するのはビームとなっており、これも技術力の違いからくるものである。当初はビームクローを出力させることも考えたが、今回はなしとした。

 

 

<ヘル・フェイズ>

・エクスGと合体するユニットの1つ。カラーリングは黒と濃い目の紫。

 遠隔操作端末を運用するための形態で、多数のファンネルを操作する。ただしパイロットのエクスはファンネルを操作できる人物ではなく、搭載されるファンネルはいずれも機体あるいはパワードスーツ側のコンピューターで自動的に的確な操作を行う。それらを考慮して腕部には遠近両方に使用できる武装を搭載している。

 名称はロキの子どもの1体、死者の国を支配する女神「ヘル」から。基となるイグニスフェイズが女性モチーフということで、女神であるヘルがファンネル操作のパワードスーツの名称となった。

 

【追加機能】

・変形機構

 機体を簡易的な巡行形態へと移行させる。肩装甲を折り畳み、推力を一方向に片寄せることで変形は完了する。

 変形時のフォルムは機動戦士Zガンダムのキュベレイを参考にしている。

 

 

【追加武装】

・ヘル・ファンネル

 本パワードスーツ最大の武装。背部ウイングを構成し、機体の腰部アーマーにも内蔵される。中央のビーム砲とメインスラスター、X字に展開した姿勢制御用サブウイングスラスターで構成される。所謂雪の結晶状。背部に6基と腰部スカートアーマーに8基、計14基を装備。

 パワードスーツのことも考えるとかなり大型のファンネルだが、サブウイングスラスターを正確に操作することで一般的な遠隔操作端末と謙遜ない高機動性能で相手を包囲、殲滅する。加えて複数基を合わせることで高出力ビーム砲撃を行うことが出来る。

 武装モデルはエクストリームガンダムイグニスフェイズのファンネル。形状も踏襲している。格闘兵装にも出来たが、ヘル・フェイズのファンネルではその機能は有していない。

 

・スリーブビームサーベル

 機体の袖状腕部装甲に発振器を外側に向けたビームサーベルを格納した兵装。2基装備する。

 ビームサーベルを取り出すことは出来ないが、そのまま発振させて攻撃に使える他にビームガンとしても使用できる。わざわざ手荷物必要がない為、使用にタイムラグがない武装となっている。

 武装モデルはキュベレイのビームガン兼ビームサーベル。イグニスフェイズにはない武装だが、イグニスフェイズの外観がキュベレイに似ていることから採用に至る。なおスリーブとは「袖」の事である。

 

・コンテナスカート

 腰部スカートアーマーを構成するコンテナユニット。全部で8枚装備される。

 1枚1枚にヘル・ファンネルを1基内蔵する。コンテナ自体が多重構造の装甲となっているため、被弾時のシールドにもなる。当初はこのアーマーもファンネルとして機能する予定だったが、複数の系統のファンネルをすべてコンピューター制御するのは困難を極めるため、不採用となった。多重構造となっているのはその名残。

 武装モデルはガンダムサバーニャのホルスタービット。それをイグニスフェイズのイメージの様に女性的なデザインにしている設定。

 

 

<ガルム・フェイズ>

・エクス・Gと合体するユニットの1つ。カラーリングは黒と緑。このユニットのみ人型ではなく、大型の狼型のモビルウエポン「エクストラ・ガルム」と合体する。本モビルウエポンは特に狼を改造したなどというものではなく、狼の形状に似せただけ。ただし支援機としての扱いや、悪路の走行など役目は多い。

 全領域対応型の機体で、苦手なレンジはない。ただし他のフェイズとは違い、四脚形態なので他のMSの運用に慣れていると操縦が難しく感じられる。慣れた時にはその四つの足から生み出される機動性から相手にするのは非常に難しいだろう。合体する際は頭部と首、背中の翼状パーツが変形し、頭部は胸部に合体してアーマー化、外れた部分は高出力ビーム砲、首付近は陥没してエクス・Gの下半身を格納。そして背中の翼状パーツは起き上がりエクスGのバックパックと合体し、ガルム・フェイズの上半身を構成する。

 名称は冥界の番犬「ガルム」から。武装モデルはエクストリームガンダムの機動神話形態ミスティックフェイズ。月光蝶などのチートスペックはないものの、類似した機能を持つ全領域対応機である。モビルホースと同じようにエクス・Gをその背に乗せることも可能。なお色と狼の形状をしていることからか、先のヨルムンガンド・フェンリル・ヘルがモチーフとなっていると言われるポケモンのジガルデ(特に10%フォーム)に似ている。

 

【追加機能】

・ビーム偏向フィールド「ノイズ・オーロラ」

 機体のシールドが持つ機能。エアクルセイドで実装されたものを、本機も使用する。

 

 

【追加武装】

・サイズボウライフル

 合体前は右前足側面、合体後は右腰部に1つ装備する変形武装。

 通常時は斧に似た短い鎌だが実は2枚刃であり、中央ビーム発射口を軸対象に展開することで弓型のビームライフルへと変形する。変形後は中央軸に備えられたトリガーを引くことで通常弾、トリガー部を後ろに引いてからもとに戻すことで矢状の強化弾を放つことが出来る。変形させた鎌の部分はDNA時のビームボウ形成に役立つ。

 武装モデルは原型機ミスティックフェイズの弓。ただし形状は「仮面ライダージオウ」のライダー、仮面ライダーゲイツの武器「ジカンザックス」がモデルとなっている。

 

・ミストラルツインランス

 合体前は左前足側面、合体後は左腰部に装備する双槍。1本を装備する。

 槍の側面がビームバルカンの銃口を有しており、射撃戦を行える。しかも槍は持ち手中央で分割でき、両手に持って弾幕を形成、あるいは叩き付けることが出来る。

 武装モデルはエクストリームガンダムミスティックフェイズが持つランス。側面にバルカンを備えるのは、機動戦士ガンダムF91のクロスボーン・バンガードMSが持つショットランサーから。

 

・ガルムシールド

 合体前と不使用時には背中の後部、合体後の使用時には左腕に装備されるシールド。狼の意匠が施されている。

 外縁部に3つのビーム砲を、そして中央にはビーム偏向フィールド「ノイズ・オーロラ」の発生器を内蔵しており、更にそれらを作動させるために個別のDNジェネレーターを備えている。これにより事実上本機はこの形態に限りトリプルジェネレーターという他のMSが到達していない領域に到達している(もっとも、シールドのジェネレーターは他の通常DNジェネレーターより出力が半分程度のものであり、それに本体のDNを上乗せするという方式。なので正確にはツインハーフジェネレーターである)。

 3つのビーム砲は個別発射が可能な他、ノイズ・オーロラと合わせることで収束させて放つフルバーストが使用可能。

 武装モデルはエクストリームガンダムのミスティックフェイズの改修機にあたるりリフェイザー・ミスティックのシールド。この武装のみ発展型の武装をモデルに持ってきている。

 

・ヘッドレス・メガキャノン

 ミストラル・ガルムの頭部で隠されていた部分に存在する、高出力ビームキャノン。1門を装備する。

 正面にしか放てないものの、不意の一撃として使われればかなり効果的な兵装であると言える。

 装着位置などを含めて使い勝手はナラティブガンダム・A装備のハイメガキャノンと似ている。

 

 

ネイ「以上が、マキナズ・ファイターとエクス・Gの紹介になります。エクス・Gまだ本編ではヨルムンガンド・フェイズしか出ていませんが、他のフェイズも活躍の場は与えられるのでしょうか?」

 

士「一応次でまずフェンリル・フェイズが登場しますね」

 

グリーフィア「フェンリルってことは砲戦型かしら。でもフェンリルとガルムって確か同じ狼の事を指すんじゃないの?」

 

士「一応、同じとされる場合もある、という感じですね(;´・ω・)今回は別のものとして扱いました。けど途中説明に入ってたジガルデの事を考えるとガルムとフェンリルは逆になるかもしれないね」

 

グリーフィア「ふぅん。ま、でもマキナスのガンダムってなっているくらいだもの。ガンダムを追い込んでもらわないとね」

 

ネイ「数的に圧倒的不利だと思うんだけどね……」

 

士「そこはDNLを持つ者持たざる者の差がどこまで出てくるかに掛かってますね。一応言っておくとランド・オンは元のようなDNL能力に目覚めてはいません」

 

ネイ「あ、そうなんですね」

 

グリーフィア「竜騎士が元君みたいなのを本来想定しているっていうのに機械騎士はそんな程度なのねぇ。そこは機体性能がゴリ押すことを期待するわぁ」

 

士「そ、それって負けて欲しいみたいにいってるんじゃ……(;・∀・)さて、それでは黒の館DN、そろそろお開きとします。LEVEL1最後の黒の館DNで何を見ることになるのか?」

 




今回もお読みいただきありがとうございます。

マキナズ・ファイターはマキナート・バスターを直系とした後継機となります。マキナートバスターとはなんぞや?(´・ω・`)という方はEPISODE2にて登場しておりますので、見返してみるとよいかもしれません。解説は黒の館DNは第1回の方になります。

エクス・Gについては本文中に申した通り、旧作SSRと言う名のGに登場したエクストリームガンダムとイクスモチーフのキャラ「エクス」と同じモチーフとなる機体です。今回ではミスティック・フェイズなども最初からフル登場となり、前作よりも更に脅威度を増している様相となっております。

果たして、シュバルトゼロガンダムはこれらに含めて襲い掛かるマキナス皇帝を討ち果たすことが出来るのか?いよいよ佳境となる機動戦士ガンダムDNLEVEL1も最後までよろしくお願いいたします。

それではまた次回、本編をお楽しみください。


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EPISODE76 変わる明日への希望1

どうも、皆様。今日11月21日はイーブイの日だそうで、連日DMにて他の人がやるポ○モン剣盾のブイズの写真に癒しを感じる藤和木 士です。ちなみに好きなブイズはエーフィとブラッキー、サンダースです(^ω^)

ジャンヌ「はいはいポ○モンもいいですけど、今は小説ですよー。アシスタントのジャンヌです」

レイ「アシスタントのレイだよー。ついでに言うとバトスピプレバンのディーバボックスとディーバ画集も情報公開だよっ!」

どっちも予約しなきゃ(´ρ`)さて、今回はEPISODE76と77、いよいよ皇帝達とガンダムによる激突が熾烈を極めてまいります(゚∀゚)

レイ「皇帝のせいで大ダメージを負っちゃったクリムゾン・ドラゴニアスを護らなくちゃ!」

ジャンヌ「ですが皇帝側にはまだ数機のMSと象徴が……逆転できるんです?」

さぁ、それは見てのお楽しみ。では本編をどうぞ!」


 

 不味いな。それがグランツの心の中で思った現在の戦況に対する一言だった。象徴が叩き落され、象徴の防衛部隊はほぼ半数以上が撃墜。残っているフォーンの部隊も、周囲の敵を象徴に向けさせないように注意を引くのに精一杯だった。

北部と南部の部隊は徐々に制圧しているため問題ないが、それでも戦力を向けるというのは時間的にも戦力的にも出来そうにない。こちらの守備部隊も向かわせてはいたが、間に合うかどうか……。ダンドリアスも落とされた現状、収容されたアレク達が助けに向かうというのも厳しい。それでも単独で象徴を護り続けるガンダムに支援を送らなければならない。ガンダムだからではない。覚悟を決めてくれた者達へ、その思いに報いるために。1人の大人として。

 

「誰でもいい。ガンダムの救援に向かえる者は?」

 

「周囲の部隊に救援を呼びかけていますが、ガンダムの近くのどの部隊も抑えられています」

 

「くぅ……打つ手なしというのか……」

 

 今すぐにでも艦を動かしたいという逸る気持ちを作戦指揮官の義務で必死に抑え込むも、口調にはしっかりと焦りが出る。誰か、ガンダムと共に戦ってくれる者は……、と願った時だった。

 

『その役目、我らに任せてもらえないか』

 

「!誰だ?」

 

「マキナスの回線から……艦艇名、マキュラ級「アルザッヘル」のものです」

 

 オペレーターの声にブリッジがどよめく。だがグランツはわずかな望みを信じて会話に応じる。

 

「その真意は?」

 

『単にマキナス皇帝が気に入らない、というのもあるが元々マキナス軍に根付く使い潰し戦略が私は嫌いでね。うちの隊員はほとんどマキナス軍で上からの圧力によって行き場を失った奴らを受け入れているんだ。皇帝のやり方は許容できないから、なるべく戦闘を避けていたんだが……かつて見たガンダムの雄姿に感銘を受けたってところかな』

 

「かつて、見た?」

 

『5月にガンダムがあらゆる小競り合いに対し武力介入した時、だね。あの時は暴れ狂う狂獣だったが、それが今となってはあれほどの力を制御し、皇帝と真っ向から戦っている。だからそれに便乗したいのさ』

 

 相手からの話は、こちらとしても受け入れたいところだ。しかし、信じていいものか。それにダンドリアスからの情報では、敵象徴は周囲のマキナス兵を操るという情報を既に聞いていた。効果範囲が詳しく分かっていない以上、却ってガンダムを不利にしかねない。ハイリスクな提案に、グランツは答える。

 

「貴君からの要請、感謝する。しかし、君達の象徴の能力の関係上、それを受けて君達が無事でいられる保証はない。申し訳ないが……」

 

 選んだのは断りだった。苦肉の決断だったが、それでも敵を増やさないことを選んだ。それを伝えると、相手も理解を示す。

 

『それもそうだな……。全く、この時ほど機人族として生まれたことを呪ったことはないな』

 

「だが、君達のような存在がいるということを知れた。貴官の名は?」

 

『リヴィル。リヴィル・ゲート大佐だ。そっちの艦に今世話になってる星剣使い、アルス・ゲートの兄だよ』

 

 そう言ってリヴィルからの通信が切れる。問題は解決できなかったが、おかげで頭は冷やせた。威厳のある声でオペレーターにガンダムの状況を求める。

 

「ガンダムは?」

 

「依然皇帝機を含めた11機のMSと交戦中」

 

 スクリーンにガンダムが奮戦する姿が映される。それをじっと見つめ、無事を祈り続ける。

 

 

 

 

「断られてしまいましたね、艦長?」

 

「そうだね。まぁ、普通ならそれは当然だ。いくらメカニズムが分かったとはいえ、実際に受けて誰が裏切る結果になるかも分からないからな」

 

 副長の言葉にリヴィルはため息を漏らす。救援を持ちかけるも、敵を増やしたくないという相手司令官の言葉は理解できる。だがこちらも対抗策はあった。象徴のそれは、全軍を統率するための管制システムと直結して操作するものである。ならばその管制システムを切り離してしまえばいい。機人族の兵士と直結するものを含めてだ。本当なら妨害電波などを使えればいいが、この戦況の中で作り出すというのは不可能に近い。

 しかし、それで黙っているわけにはいかない。もう1つ、この艦にはその問題をどうにか出来る手段があった。MS格納庫の方の回線を開いて、とあるパイロットに指示を出す。

 

「けれど、何もしないことはないけどね。出番だ、ハイド」

 

『了解。出る』

 

 そのやり取りの後、艦から1機のMSが発艦する。背部ゴーストから繋がるキャノン砲を脇に携えたマキナートは、一直線にマギア・マキナスがいる地表に向けて飛翔する。この艦が内包するネオ・エースの1人の機体だが、それ以上にその人物には秘密があった。マギア・マキナスに対抗できる秘密が。

 それを偶然ながらも自隊に編入できていたのは奇跡としか言いようがない。それをついさっき知ったからこそ、総司令官に回線を繋いだのだから。通信を繋いでくれたアルスには感謝するほかない。

 表立った手助けは出来ないが、それでも彼ならばガンダムに力になってくれるはず。副長にかつての事を思い出して話す。

 

「ガンダムと共闘するのが、まさか彼とはね」

 

「ガンダムとはある意味因縁を持ちます。ですが、彼は違う」

 

「そうだ。敵対する運命でも、彼にはガンダムと共闘する理由がある。それをさっきも確かめた。まさか、それに俺の弟も同調するなんて思わなかったけどね。さぁ、我が隊も動くぞ」

 

「了解。乗員に通達。これより我が隊は部隊を2つに分ける。1つは首都制圧に、もう1つは星剣使いの支援に向かう。皇帝派を一掃する!」

 

 艦艇はそのまま後方に転進し、マキナスの首都ユグトラン市へと向かう。更に艦からいくつかのMSとコンテナフローターがドラグディアの方角へと向かっていく。戦闘後の情勢を決めるために、そして少しでもドラグディア総司令官とそれを仲介してくれた弟の想いに報いるために。

 もう変わらなくてはならない。この世界は、無駄な争いではなく、意味のある交わりで拮抗する世界でなければ。

 

 

 

 

『堕ちろ墜ちろ墜ちろ!ガンダム!!』

 

「ぐぅぅぅぅ!!」

 

 地表では既にシュバルトゼロとマキナスMSによる戦闘が続けられていた。ランド・オンのマギア・ガンダムから繰り出される弾幕を回避しながら、メガ・ビームライフル・ゼロで反撃する元。だが、直後装備を換装したエクスガンダムが背中に新たに装備したキャノン砲を展開し、随伴する2機のエアクルセイドと共に砲撃する構えを取る。対象はフェザー・フィンファンネルに護られた象徴。それに気づいたジャンヌが叫ぶ。

 

『ハジメ、象徴が!』

 

「させるかッ!!」

 

Gワイバーンに取り付けられたブースターを全開にして、すかさず射線上に飛び出て放たれた高出力ビームを受け止める。シールドから形成されたDNウォールが高圧縮ビームに削られていく。攻撃を受け止めた背後を、別のエアクルセイドが狙うが瞬時にファンネルを呼び戻して攻撃を防ぐ。

 攻撃を防ぎきったところに、続く攻撃が象徴から放たれる。対空砲による攻撃は地面を抉りながらシュバルトゼロガンダム・イグナイトを狙う。メガ・ビームライフル・ゼロを向けるが、直後に銃身上面を横から撃ち抜かれる。

 

「何っ!?」

 

 瞬時に増加パーツを分離させ、ライフル本体を守る。爆発した増加パーツを撃ち抜いたのはエアクルセイドの手甲に装備されたビーム機関砲だった。数機で弾幕を形成し、ガンダムと象徴に向けて放たれる。ガンダムは回避するが、象徴は弾幕の雨に晒される。

 

『ぐぅ……』

 

『クリムゾン・ドラゴニアス!』

 

 ジャンヌの悲痛な声が向けられる。だが攻撃を受けきったクリムゾン・ドラゴニアスは問題ないと返す。

 

『大丈夫だ……この程度の弾丸なら……まだ!』

 

「っ!ファンネル再展開!」

 

 DNを再充填したファンネルを再び飛ばして防御壁を作り出す。しかし防御壁の仕組みを理解したエクスガンダムが攻撃をファンネルに集中させた。

 

『おらっ、ちょろちょろ動かしやがって!!』

 

『ファンネルが!!』

 

 指から放たれたビーム弾でファンネルの1機が破壊される。更に一時的に防壁が消失したところに、マギア・マキナスからの砲撃がクリムゾン・ドラゴニアスを襲う。翼が貫かれ、火花が血の様に飛び散る。

 攻撃を止めさせるべく、ビームマシンキャノンを放つ。レイ・アクセラレーターを通したビームがマギア・マキナス外縁のキャノン砲を焼いていく。すると今度は砲撃がガンダムに集中する。砲撃を中断させ、回避行動に切り替えるシュバルトゼロガンダムを追い続ける。

完全にこちらが劣勢だった。このままでは押し切られる。皇帝が積極的に攻撃に参戦していない分、まだ余裕があるが、いつこの均衡が崩れるか。そう思った時には既に遅かった。両脇からエアクルセイドが2機こちらの動きを抑える。

 

「何っ!?」

 

『きゃぁ!う、動きが……』

 

『よし、そのまま捕まえていろ!この攻撃で……』

 

 指示を送ったのであろうランドがマギア・ガンダムのライフルからサーベルを形成する。振りほどこうとするが、エアクルセイドの腕はガンダムを逃さないようにしっかりと抑え込んでいた。ビームサーベルを形成させてランドが突っこんでくる。

 

『終わりだァ!』

 

『死ぬっ……』

 

『ジャンヌ、ハジメ!!』

 

「くっ……」

 

 まだ終われないと強く願う。その声が届いたのか、3本の光がライフルとエアクルセイドの胸部を貫いた。拘束が弱まり、素早く離脱する。ライフルの爆発をもろに受けたランドの困惑した声が聞こえてくる。

 

『なんだ、どこから……』

 

 周囲を見回すランドの機体に1機のマキナートが斬りかかる。ピストルの銃身から形成したビームサーベルはランドのマギア・ガンダムの肩部を斬りおとす。斬りおとされたミサイルが爆発を起こし、再びランドの機体の体勢を崩す。更なる追撃が構えたビームランチャーから放たれようとするが、直前にエクスガンダムが指部ビームでそれを遮る。

 エクスガンダムの攻撃を避けて後退したマキナートはこちらに回線を開いて話しかけてくる。

 

『ガンダム、援護する』

 

「お前は」

 

『ハイド・エルセウルス。敢えて言うなら、お前やランドと同じ存在、と言ったところか』

 

 言葉のニュアンスになんとなく察しがつく。ダメージコントロールを果たしたランドはエクスの介助を払って乱入者の名を問う。

 

『クソッ、また裏切り者か!お前は何なんだ!?』

 

『お前や皇帝なら分かるだろう。俺は、政府が選んだマギア・マキナスのパートナー、マキナズ・ファイターの本来の機械騎士(パイロット)だ』

 

『っ!俺の座に居座ってたやつか!』

 

 機械騎士という言葉でやはりと思う。元とランドの共通する要素と言えば象徴を護る者という立場。話からして元々あった政府によって選ばれていた本来の機械騎士だと見える。

 なぜその彼がガンダムを助けるのか。理由を皇帝が推察した。

 

『なるほど、政府が最後の望みとしてお前を別部隊に匿い、今復讐を果たさせるか。機械騎士が腐敗に墜ちた、いい例だな』

 

『別に政府は関係ない。だが、政府襲撃時にお前達によって本来の奏女官、フェルナは意識不明の重体になった。俺の怒りは、彼女を傷つけられたことに対する怒りだ!』

 

 しかしその推察は全く違った。彼もまた皇帝らの行動によって奪われた者だった。皇帝のわずかな舌打ちにも聞こえる微音がオープン回線から響く。

 

『愚かな……機械騎士ランドよ、偽りの機械騎士を葬れ』

 

『直ちに!』

 

『ガンダム、力を借りるぞ』

 

「それはこっちの台詞だ。来るぞ!」

 

 2機が同時に飛び立つ。ファンネルによるDNプロテクションが再度形成される。ドラグディアの象徴を守りながら、再びエクスや追従するエアクルセイドとぶつかり合う。先程とは違いエクスガンダムの砲撃を容易く避けてその攻撃を封じるように先手を打つ。

 一方ハイドのマキナート、マキナート・バスターもランドのマギア・ガンダムと互角の対決を演じていた。射撃型にも関わらず、近接戦でマギア・ガンダムを圧倒する。唯一追従していたエアクルセイドの弾幕が攻撃を妨害されていたという感じだった。

 奮戦する2人に再びマギア・マキナスからの砲撃が注ぐ。飽和攻撃で地上が焼き払われていく。

 

『兄さんの邪魔をするな、ガンダム!偽りの機械騎士!』

 

『ぐっ!やはりマキナート・バスターでは……』

 

「偽物は、どっちだ!」

 

 奮起する元がDNFを繰り出す。他のモビルスーツを右腕部からのビームでけん制しながら左手に光が灯る。その光をマギア・マキナスに向けて放射する。

 

『Ready set GO!DNF、ディメンションブレイカー』

 

 高圧縮DNの光が放射状に広がる。エネルギーの雨が避ける敵を通過してマギア・マキナスの頭部に次々と着弾していく。着弾の爆発が収まった後には、煤で黒くなりながらも一切のダメージを受けた様子のないマギア・マキナスが姿を見せる。

 圧倒的な破壊力を誇るDNFでもダメージを受けた様子がない。ガンダムの一撃を容易く跳ね返す象徴に、敵は居ないように思える。

 

『来ますっ!っ!?』

 

「……!」

 

 象徴のその口が開く。瞬間ビームが撃ちこまれる。わずかに空いた隙間にハイドのマキナート・バスターがランチャーの弾丸を撃ちこんだのだ。

 先程もシュバルトゼロに攻撃を喰らったそこは既に煙が上がっており、更なる砲撃で爆発を連鎖的に引き起こす。上手い追撃だ。怯んだ象徴に今度は目の部分を狙ってシュバルトゼロのビームライフルを最大出力で放った。

 

『っ!これ以上メルと象徴を好き勝手やらせるか!』

 

 しかしその攻撃はギリギリ割って入ったランドの機体に阻まれる。更にエクスガンダムとマキナート・エアクルセイドが弾幕を作り2機を遠ざける。

 

『………………ふん?』

 

『はぁっ、はぁっ!』

 

「………………っ」

 

 先程と同じように皇帝機はあまり動きを見せない。部下がいたぶって、それを眺めているだけ。非常に腹が立つが、それが戦況に影響を与えているのが事実だ。こちらを疲れ切りさせようとしていた。

 次はどうする?機動と攻撃を繰り返し、何度も繰り返す自問自答の中での攻防。エアクルセイドも数が少なくなったからか、それともシステムが最適化されたのか撃破を中々許さない。

 しかし、ハイドが支援してくれているおかげで大分戦闘が楽になったのは事実だ。ハイドも初対面だとはいえよく合わせてくれている。機械騎士の本領発揮とでもいうべきだろうか。とにかくまだ持たせられると思った。

 皇帝が動き出すまでは。

 

『エクス、ヘルフェイズへ移行。我のDNFとで一網打尽にする』

 

『へへっ、了解!』

 

「なんだ、装備を変える?」

 

 再びエクスガンダムが姿を変える。黒と青の砲撃仕様の機体が、中身だけが黒と赤で構成されたユニットに収まる。

 新たな体に作り替えたマキナスのガンダムは女性的なシルエットの体から端末を展開する。端末はこちらを包囲しつつある。その動きはガンダムが使うファンネルに近い動きだ。

 

『行きな、ファンネル!!』

 

「っ!」

 

展開された端末がビームを発砲する。オールレンジ攻撃が2機を、そして象徴にも襲い掛かった。回避に専念するハイドに、回避しながらも象徴へ降り注ぐビームを可能な限り打ち消す元。2人ともファンネルの攻撃は捌くことが出来ていた。だが、皇帝が攻撃に加わった。

 

『DNF、皇帝の雷霆』

 

『DNF 皇帝の雷霆(エンペラー・ボルテックス)

 

「不味い!」

 

 振り上げた皇帝機が持つ杖に高エネルギー状の雷が放たれる。空に向かって放たれたそれが、地表に向けて不規則な弾道で元達に降り注いだ。

 流石に象徴の攻撃を防ぎきれないと判断した元はイグナイトの機動性能を回避に振り切る。マキナート・バスターも攻撃を回避しようと試みたが、ファンネルと織り交ぜた攻撃に機体が次々と被弾していく。雷撃に似たDNFに、象徴も苦しむ。

 

『ぐっ!!』

 

『ハジメ、象徴がぁ!!』

 

「無茶言うな……!」

 

『ぐぁっ!!……ジャンヌ、私は大丈夫……だ!このぉぉ!!』

 

 クリムゾン・ドラゴニアスが咆哮する。同時に放った攻撃が皇帝に向かって放たれた。光弾が敵のファンネル数機を薙ぎ払って皇帝に襲い掛かるが、割って入った獣がそれを弾いた。

 皇帝を守った黒と緑の獣。それを操る処刑人は反撃の一射をそれぞれに向かって放つ。

 

『トドメだっ!』

 

『ぐぁっ!?』

 

『なにっ!?』

 

 ファンネルがマキナート・バスターを、そして中身が空っぽになった黒と青の機体のキャノン砲が象徴を損傷させた。シュバルトゼロにはランドと近接型の赤と黒の抜け殻が両側から襲い掛かった。

 

『堕ちろよ!』

 

「この……っ」

 

 それぞれの光剣をビームライフル・ゼロの光の銃剣と手から形成する光剣で受け止める。動きが止まったところにランドが胸部砲門からビームを放つ。近接距離での発射をシールドが表面を融解させながらも押し留める。

 

「ってぇい!!」

 

『なっ!?』

 

 発砲後すぐに両機体を弾き飛ばす。バランスの崩れた両機にビームマシンキャノンを連発。どちらも機体背面に装備したマントパーツを前面に展開して攻撃を防ぐ。

 ハイドがほぼ行動不能、象徴のダメージも先程の攻撃で深刻だ。エラクスシステムも多々連発していたのとDNFの多用でジェネレーターに負荷がかかりつつある。武装にも影響が出始めている中で、どれだけ維持できるか分からない。

 再び劣勢へと追い込まれていく元達。その様に皇帝は嘲る。

 

『お前達ドラグディアの歴史もここまでだ。無駄な徒労が無に帰る時を座して見よ』

 

「まだだ……まだ終わらないッ!」

 

 皇帝の言葉を否定して、元は再び蒼い光を機体に纏わせて、空へと飛ぶ。

 

 

NEXT EPISODE

 




EPISODE76はここまでとなります。同日公開のEPISODE77も是非ご覧ください。

レイ「な、なんかここに来て新手の援軍が来たよ!?」

ジャンヌ「また新キャラですか……新キャラの出し過ぎは良くないですよ?」

あ、2人とも。実は今回出てきた新キャラっぽい人達、EPISODE1、2に出てるんですよ(^ω^)

レイ「……え?」

ジャンヌ「え!?名前出てないでしょ!?」

いや、既にリヴィルさんは名前だけ出してて、マキナート・バスターも機体だけ出てる。その時のパイロットと同じ。

レイ「うわぁ、前の庭師と同じポジション!」

ジャンヌ「しかも今回は第1話からの伏線なんですね……」

とはいえ戦力的にはまだまだきついことでして……次でどうなってしまうのでしょうか(゚Д゚;)

レイ「元君はまだ諦めてない!」

ジャンヌ「本当、どうやって切り抜けるのか、そもそも切り抜けられるんでしょうか」

それも含めて次へ続きますっ。


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EPISODE77 変わる明日への希望2

どうも皆様。引き続きご覧の方は改めまして。投稿中の今気づいたのですが今日もまたビルドダイバーズリライズのネット配信日だということに気づきました、藤和木 士です。いや、ホント今回は書いてる途中に公開5分前に気づいてびっくりですよ(゚Д゚;)

ネイ「アシスタントのネイです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよぉ。クール系の娘が今回の主軸だったかしらぁ?」

そうですね。今回はメイさんのエピソードになりそうです。前作のアヤメと容姿が似ていてマギーさんと話すこと多いのもあって関係あるのかな?(゚∀゚)って毎週思っていましたが、今回でどうなるかな?私は以前と同じように予約投稿して風呂入ってから時間を空けてみる予定ですね(´Д`)
さてそれも大事ですが引き続きEPISODE77の公開になりますよー。

グリーフィア「象徴の体力があとどれくらいか、気になるわねぇ」

ネイ「前話でも更に大きな攻撃を受けたみたいですし、これは一瞬で決めないと時間の問題ですよ」

さぁ、元達の護るという意志は果たされるのか?それでは本編へ。


 

 このままではダメだ。クリムゾン・ドラゴニアスは、目の前で繰り広げられる激突を見て、予感する。

 ガンダムの獅子奮迅ぶりは凄まじいものであったが、同時にパイロットとそのパートナーを激しく消耗させる。2人の取り巻くDNが疲弊で弱まっていくことを感じ取る。

 かつて古のガンダムの装依者も、その圧倒的な出力によって文字通り機体に喰われた者がいた。記憶はおぼろげだが、戦争最終盤では同じ機体が何度もパイロット交代をさせられていたのを覚えている。

 

(このままでは、彼らも……)

 

 そんなことはあってはならない。自分が無事でも、それはあまりに残酷な未来だ。自身が竜人族にとって大切なものであるのなら、その逆も然りである。数の多さなどで見捨てられるものではない。自分の為に尽くす者達を、自分が護らなくてはいけないのだ。

 

「もういい。2人とも、マキナスの戦士を連れてこの場を引いてくれ。この戦いの犠牲は、私だけで十分だ」

 

 単機で奮戦するジャンヌ、そしてハジメにこの場からの撤退を呼びかける。しかし返ってきたのはそれを拒絶する言葉だった。

 

『嫌です!!もう失うのなんて嫌なの!』

 

「戦うさ。俺だって、もう誰もお嬢様の前で失わせたくない!」

 

 2人の意志を感じさせるかのようにシュバルトゼロガンダム・イグナイトはさらに激しく空を動き回る。蒼い光の尾はいくつもの残像を残して消える。その度にシールドや腕部装甲と言ったパーツが砕けていく。いつたどり着くともしれない応援を信じて戦い続けている。

 自分がこうでなければと傷口となる損傷箇所を見て思う。今や自分は彼らの足手まとい。何も出来ることはない。それでも彼らが戦うのは、失わせたくないからという気持ちからだ。今何も出来ない象徴()を、自分達の身を犠牲にしてでも護りぬこうとしている。

 

(私自身の残存エネルギーは少ない……DNコンバーター装甲もほぼ機能を失っている……出来るのは、せいぜい最後に一矢報いることぐらい。後は、全てを任せる!)

 

 覚悟を決めてクリムゾン・ドラゴニアスはジャンヌ達に言った。

 

「……ありがとうジャンヌ、ハジメ……」

 

『クリムゾン・ドラゴニアス……?』

 

「私が切り開く。明日への道を、だからお前達は、その先にある希望を……私の最後の望みを守ってくれ」

 

『何を言って……ぐっ!』

 

 真意を問おうとしたハジメの言葉が、敵の攻撃で遮られる。だが、もう決めたことだ。思い続け、自分の中に生まれた最後の希望。それを託すのにふさわしいのは、彼等しかいない。そのための最後の道を作るべく、この第2の命を使おうと決めた。

 マギア・マキナスを見上げる。もとは同じ種族だった竜人族、機人族の象徴として生まれた存在。そもそも自分達が生まれたことがそもそもの間違いだったのではと思ってしまう。それでも間違っていないと信じて、クリムゾン・ドラゴニアスは最後の力を振り絞った。

 

「フゥゥゥゥ……ッ!DNF!」

 

 力を込める動作。それに呼応して体の紅が更なる光を放ち始める。最後の輝きを見せるための行動。止めようとエアクルセイドが攻撃を仕掛けてくるが、光がビームを分解して更なる光のエネルギーへと変える。

 

『待って……駄目!』

 

『クソッ、エラクスが……ぐぁっ!?』

 

 エラクスシステムの輝きを失い、砲火に晒されるガンダム。それを救うために、象徴は吠える。

 

「マキナス、これが私の命の輝きだ。ボルカニック・バイオレンス!!」

 

 

 

 

 瞬間、光が戦場を支配した。クリムゾン・ドラゴニアスを中心として、高純度DNの膨大なエネルギーが解放される。熱線として放射されたそれはまるで魔法の様に敵だけを射貫く。

 皇帝機や機械騎士のMSはマントパーツを展開して防御しようとする。しかし攻撃そのものは防御出来ても、それに付与されたMSのシステムへのフリーズまでは防げず攻撃を弾いた直後にそれら機体は機能を停止して地表へと落下する。マキナート・エアクルセイドの1機を撃墜しながら、元達が相手にしていた10機前後のMSと周辺MS隊を沈黙させた。

だがそれだけではない。マギア・マキナスもまたコントロールを失って大きく後方に落下していった。旗艦が遂に地面へと墜ちたのである。

 

「はぁっ、はぁっ……ぐっ!」

 

 最大火力を放って、体力の限界となるクリムゾン・ドラゴニアス。力尽きてもたげていた首が地面へと金属音を立てて落下する。これ以上攻撃も、生きる力も残されていなかった。命を賭した攻撃は、撃墜の危機に遭ったガンダム達を守った。その身を犠牲にして。

 薄れゆく意識。そんな彼女に、ガンダムが駆けつける。

 

『何で、何で!どうして……!』

 

『まだ生きているのか?返事をしてくれ』

 

 2人の声にクリムゾン・ドラゴニアスはこれまでの気持ちを明かす。

 

 

 

 

「ガンダム交戦エリアにて、超高エネルギー反応!周囲に拡散していきます」

 

「周囲の敵MS軍の80%が撃墜、あるいは機能停止を確認。味方MSへの被害はほとんどありません」

 

「…………何だ、これは?」

 

 オペレーターからの報告に、ただそう言うしかなかった。戦場に瞬いた光をグランツも見ていたが、あまりに遠すぎて何が起こっているのかは分からなかった。しかし、続く前線部隊からの報告で徐々に分かってきていた。

 象徴が見せた光。その行動に嫌な予感を感じるがそれよりもまずは被害確認と、そのための行動に思考を巡らせる。

 

「前線部隊には周囲の残存戦力を討伐後、皇帝勢力の鎮圧へ向かわせろ。北部・南部の部隊はプランBを発令。ドロスとアヴァルの部隊との連携を」

 

「了解しました」

 

 想定外の事態だが、攻めるならここしかない。北部・南部のマキナス部隊を、こちらと同盟国ギルン、セントリル、更にマキナスの同盟国ドロス・アヴァル両国の軍で鎮圧する。一気に戦力を瓦解させるのだ。

 発令後、ドロスとアヴァル両軍の部隊が大きく動く。後方からマキナスの軍を襲い、次々と制圧していくのがレーダーで見て取れる。マキナスはその行動を理解できないまま制圧されているようだった。

 

「敵軍南北共に戦力を減らしていきます」

 

「うむ。ドロスとアヴァルの攻撃がよく効いていると見える。各部隊はこのまま継続」

 

「了解」

 

味方から攻撃されれば当然、しかも既にマキナス側が自分達で自分達の軍を攻撃していることが伝わっていれば、更に混乱は必至だろう。結果的にマキナスの行動が自分達の首を絞めたこととなった。因果応報だろう。

 利はこちらにある。この優勢を保ったまま、各地の戦況を終わらせる。戦況が崩れれば、流石に皇帝でもただ見ているだけにはならないはずだ。もっともそれを理解していれば、このような事態に陥ってはいないはずだが。

 

「ハジメ少尉、ジャンヌ君……」

 

 光の先で何が起こったのか。今は2人の無事と戦闘の終結を祈るしかなかった。

 

 

 

 

『……帝、皇帝!大変です。南北の艦隊の半数が制圧!ドロスとアヴァルが敵に通じていたようです!』

 

「っ!ドラグディアめ……我ら種族に泥を付けさせるとはどこまでも汚らしい!」

 

 回復した通信回線。だがそこから聞こえて来た、各地の戦況。自分達の種族を戦力として使われたことに激高する。もっともそれは建前で本心は自分達より敵を選んだドロス・アヴァル両国に対する怒りであったが。

 

『どうしますか?』

 

「決まっている!南北軍には敵対するすべての者を殲滅せよと伝えよ。撃ってくるのなら、同じ機人族でも敵だ。それを討たねば機人族の真なる未来はないとな」

 

『了解』

 

 回線が切れ、ギルフォードは機体を動かそうと試みる。だが先程までと同じく、機体は何にも反応することはない。体が岩の様に硬い。MSのパイロットコントロールが効いていなかった。重量がそのまま体に加わり、機体を動かすことも叶わない。このまま攻撃されれば危険だが、何故かガンダムは攻撃してこなかった。

 

(何故だ……なぜ攻撃してこない?まさか、また象徴に目を向けているのか……?)

 

 先程の様に、また象徴に目を向けているのだとすれば、また自分達が低くみられているように感じる。これほど圧倒的な状況であるにも関わらず、それ以上に大切なものがあるとするのは、それしかない自分達を嘲るようだった。まだ生きているカメラの映像で敵の様子を確認する。

 見えたのは敵のガンダムが象徴に向かって何か話しかけている姿だった。決定的だ。彼らには目先の勝利よりも象徴が大切だったのだ。

 

「……お前らは……お前らはそんなに象徴が大切かぁ!!」

 

 矛盾を孕んだ発言。しかしギルフォードにとっては象徴の無事よりも勝利が何よりも優先される。象徴を失って竜人族が殲滅できるのなら迷わずその道を取る男だった。それが両親達から教わった事をもとにギルフォードが導き出した結論だった。

 許さない。誰であろうと悲願を遂行する自分の考えを否定するそれを、生かしておくわけにはいかない。それが自分の存在理由なのだから。その怒りに応えるように、機体のフリーズが徐々に解除されていく。

 

「エクスッ!ランドォ!奴らを殺せェ!!マギア・マキナスも、エアクルセイド隊も……奴らを灰塵に帰せ!!」

 

『ヘッ、了解!』

 

『我らが皇帝の名の下に!』

 

『は、はい!!』

 

 皇帝の言葉にそれぞれ従い、徐々に地に落ちた機体を起こしていく。マギア・マキナスも亀のような四肢を動かし、再度浮上状態に移行しようとしている。

 舐め腐った平和など必要ない。竜人族を滅ぼし、機人族を従わせる。そうすればもう皇帝を追い落とそうとするものなど現れない。それが本当の平和なのだから。

 視界に見える竜の首が力尽きようとしていた。それを残さず消し去る勢いでギルフォードは呪詛を吐く。

 

「ガンダム……我が平和の贄とする!」

 

 すべては停滞と言う名の平和の為に。憎悪が皇帝を立ち上がらせた。

 

 

 

 

 クリムゾン・ドラゴニアスに駆け寄ったガンダム。ハジメと共にジャンヌは彼女に呼びかける。どうしてあのようなことをしたのか。結果的に助かったとはいえ、あの威力の攻撃に体が耐えられるのか。ジャンヌの心配は図らずも的中してしまった。

 

『もう、私は持たない。いくら機械の体でも、私の命は一度尽きた。命の火を無理矢理燃やし続けられた状態に更に負荷を掛ければ、壊れてしまう。それが今、来たんだ』

 

「そんな……嘘です!まだあなたは生きて……生きて!こんな簡単に死んだら、お母様に……オルレリアン様にだって顔向けできない……っ!」

 

 クリムゾン・ドラゴニアスの言葉を否定する。全力で。出ないと、消えてしまいそうだったから。約束した。母と。だがそれだけではない。遥かな昔から先祖にこのバトンを託されたのだ。それをこんなところで潰えさせることなど出来なかった。

 消えないように必死に呼びかける。ジャンヌから護る様に言われたハジメも、言葉を紡ぐ。

 

『そうだ、俺だってジャンヌに言われた。あなたを守れと』

 

『例えそうだったとしても、竜騎士、いや、男が護らねばいけないのは、傍にいる女性だろう?』

 

『………………』

 

 クリムゾン・ドラゴニアスからの問いかけに、ハジメは沈黙する。ただガンダムの手をただ象徴に付けたままで。その鼓動を確かめるように。ジャンヌも言葉の意味を理解する。それでも自身の気持ちを伝えた。彼女を呼び止める。

 

「でも……でもっ!」

 

 すると、慰めるように彼女はジャンヌに応じる。

 

『ジャンヌ、私は、君がこうして心配してくれることを感謝している。一度絶望に堕ちて、憎んだというのにもう一度私の事を信じた。本当は私も怖かったんだ。もしかしたら、どこかで誰かが諦めてしまうのではないかと』

 

「う……うぅ……っ!」

 

『だけど、君は来てくれた。君だけじゃない。君のお母さんや、お婆さん、300年もの間ファーフニル家を繋いでくれた者達の強い意志が、どういう想いであれ来てくれた。それが、私の象徴としての誇りだ』

 

 首を曲げてガンダムにこすりよせる。同時にガンダムの電子空間に巨竜が現れる。会ったことはなかったが、それが本来の彼女の姿だと直感する。その竜もまた同じようにジャンヌの体に首をこすりつける。ジャンヌもそれに応え、身体を寄せる。

 そして彼女は言った。

 

『だから、私の最後の望みを託させてくれ。この国の、君達の支えになる小さき希望を』

 

「希望……?」

 

『あぁ。機械の体になってからずっと造り続けて来たもの。生前の時も別の形で夢見た、それを……護ってほしい。頼めるかな?』

 

 言葉の示すものをはっきりとは理解できなかったが、それだけ大事なものなのだろう。返答に躊躇う。拒絶したかったが、すれば悲しむ。今際の彼女に対し、ジャンヌは涙を堪え、言った。

 

「………………はいっ」

 

『お嬢様……』

 

『…………ありがとう』

 

 返事を受けて、安堵の声が聞こえた。微笑んだような息遣いと共に、彼女が電子空間から消えていく。顔を上げる。ガンダムのメインカメラが見せる映像には、彼女が見下ろす姿が映る。首をジャンヌ達から遠ざけている。

 ハジメもガンダムを離す。何かを察していた。止めたい。これから象徴が行うことを。だが言えなかった。約束したから。そして回線から最後の言葉が届けられる。

 

『今行くよ、オルレリアン、ジード』

 

「待……」

 

 思わず言葉に出かけた、待っての言葉を聞くことなくクリムゾン・ドラゴニアスの首が爆発する。敵の攻撃ではない。クリムゾン・ドラゴニアス自身が自らの首を爆砕ボルトで分離したのだ。

 首が取れると、身体から光が失われていく。紅の装甲は黒ずみ、機械の駆動音が消えて行った。理解したくなかった。だが理解せざるを得ない。象徴、クリムゾン・ドラゴニアスの命が消えていく。

 覚悟したはずなのに心が苦しい。機械でも確かにいたはずの命が消えていく。様々な記憶が呼び起こされる。会ったことのないはずの象徴に憎しみを抱いていた時から、共に戦場を駆け抜けた時まで。走馬灯のように思い出される。どれだけ願っても、もう戻ってこない。父の時と同じように。

 しかし悲しみに暮れる暇も、彼女らにはなかった。

 

『象徴が死んだか。もはやドラグディアに、国の理念はない!』

 

「ジャンヌ、ハジメ」

 

 スタートが注意喚起を呼びかける。ガンダムが振り向いた先に、皇帝達が再び立っていた。ほぼ無傷の状態で立つ皇帝とマキナガンダム、エクスガンダム、そして6機のエアクルセイドとマキナスの象徴。

 彼女の命を奪った者達。それがそこにいた。今すぐにでも掴みかかりたい衝動が生まれる。だがしなかった。怒りに任せて戦えば、彼らと同じになってしまう気がしたから。きっと彼女もそれを望まないはずだ。戦いを止めるための戦いを、しなければいけない。

 

『国の、理念?象徴が?……バカだろ。象徴がいなかったら、お前らは生きていけないのか』

 

「象徴が消えても、いたという記憶は残ります。記憶があれば、彼女はいる。例えいなくなっても、それが私達の力の源になる!」

 

『どうやら頭が沸いているようだ。幻覚を見るほどとはな!』

 

 皇帝が否定する。だが事実だ。象徴が消えても自分達はまだここにいる。300年前の人間たちが選べなかった答え。答えから逃げた結果生まれたものが、()()()()()。クリムゾン・ドラゴニアスの最後の希望が。

 

 

 

 

『俺達の答えは、これだ―――――』

 

「希望はまだ、生きています!!」

 

 

 

 

 瞬間、後方から爆発が起こる。クリムゾン・ドラゴニアスの亡骸が爆発したのだ。覚悟を決めた2人は爆炎を背に振り向かない。しかし燃え上がる残骸の中から、それは飛び出した。

 白い体に、紅いラインが刻まれた機械の竜。クリムゾン・ドラゴニアスの面影を残す、1m弱の鋼鉄のドラゴン。姿形で言うならGワイバーンに似ていたそれを後方カメラで確認する。

 胸が熱い。あれを見た時から心のどこかで高まりを感じる。それが「安堵」にも似た別の感情であるということに気づいたのはすぐだった。少し前ならちゃんと思えなかっただろう気持ち。それは「感謝」だった。

 

「ありがとう、生まれてくれて」

 

 新たに生まれた希望に、生まれてくれたことへの感謝の言葉を向ける。ドラグディアの新たなる希望が、ここに誕生したのである。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。新たに生まれた希望、まさに爆誕!となりました( ゚Д゚)

ネイ「象徴さん、最後の力を振り絞って、次の希望に託したんですね」

グリーフィア「タイトルの変わる明日への希望はこれの事を指すみたいね。でも生まれ変わってもまだまだきっつい展開そうよねぇ?」

生まれ変わりし明日への希望、クリムゾン・ファフニールは一体どのような力を見せてくれるのでしょう?では今回はここまでです。

グリーフィア「次回もーよっろしくー!」

ネイ「あ、ちなみに次回からまたアシスタントの順番が変わるみたいです」


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EPISODE78 変わる明日への希望3

どうも、皆様。先日のビルダイリライズを見て、あ、予告でヒロトの過去明かされそうになるシーン忘れてた(;・∀・)と思った藤和木 士です。予告ちゃんと覚えておけよ……。

ネイ「アシスタントのネイです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよー。今回からアシスタントの順番変更ね」

さて、今回も2話投稿、EPISODE78と79の公開です。

ネイ「誕生したクリムゾン・ファフニールは、どのような力を行使するんでしょう?」

グリーフィア「流れ的には圧倒的な破壊力を誇る攻撃発射!って感じだろうけど、それを発射できるのかしらねぇ」

ふっふっふ……それを超えたビックリな力、解放されちゃいますよ今回は!(゚∀゚)それでは本編へ!


 

 

 爆誕、その言葉が似合うような光景だった。大破したクリムゾン・ドラゴニアスの燃え上がる体から飛び出したそれは、包み込む炎を翼で振り払った。クリムゾン・ドラゴニアスと同じ、機械の体を持つドラゴンが姿を現した。

 母の体の中から生まれる子ども、機械的な意味では後継機が射出されたというべきか。いずれにせよ、それがクリムゾン・ドラゴニアスの示した「希望」であることは間違いない。突如現れたそのドラゴンに動揺が敵方に生まれた。

 

『なんだ、あのドラゴンは!?』

 

『象徴の中から生まれた。ってことはあれが新しい象徴?ちっせぇなぁ!』

 

『構わん。あれが希望などとほざくなら、我らが象徴の力で消し去ってくれる!』

 

 皇帝が手を上げ、マギア・マキナスに攻撃指令を飛ばす。マギア・マキナスは破損状態からやや復旧した口部を開き、ビーム砲の発射態勢に入る。スパークを迸らせながらエネルギーを充填させていく。

 マキナスの象徴に合わせる形で皇帝の配下のMSも攻撃態勢に入る。銃口が次々と向けられてなお、新たに生まれたドラゴンは何も対応しない。だが元は動く。機体を浮上させてそれらの前に立ちはだかる。そのドラゴンを護るのは自分達の役目だからだ。

 

「消せるもんなら……消してみろよ!」

 

 元の挑発と同時に銃火が放たれた。圧倒的熱量を伴った攻撃が正面カメラの映すあらゆる箇所から放たれた。光で映像が埋め尽くされる。すると元の意志に呼応するようにガンダムの機体に変化が生じる。

 機体を構成するユグドラシルフレームが光を放ち、周囲に球状のバリアが展開される。バリアに触れた攻撃は突破しようとするも、バリアは一切の貫通を許さない。遅れて発射されたマギア・マキナスの攻撃がバリアを飲み込む。しかしバリアは消えなかった。

 DNウォールでもDNプロテクションでもない。未知の障壁であったが、それを元は自分がやっているのだと知覚出来た。攻撃を防いだ元に、声が掛けられた。

 

『おまえが、わたしのドラグナイトか』

 

「お前は、象徴か」

 

 あどけなさの残る、しかし医師のはっきりした声音。聞き返すと、頷いて返答する。

 

『そうよばれているものだ。個体名はクリムゾン・ファフニール。クリムゾン・ドラゴニアスがわたしをこう名付けた。へんか?』

 

「いいんじゃないか。よろしくな、クリムゾン・ファフニール」

 

 突発的な状況ではあったが、すぐに理解し挨拶する。ファフニール。ジャンヌの家名とルーツを同じとした名前だろう。象徴の思い入れを感じる。ジャンヌも新たな象徴に対し、決意表明をする。

 

『詩巫女のジャンヌ・ファーフニルです。あなたを護ります、』

 

『あぁ。そのために、わたしも母から託されたものを渡そう』

 

「託す……?」

 

 言葉の意味を理解しようとしたところでクリムゾン・ファフニールが行動を開始する。とは言っても始めたのは呼吸、息吹だった。青みがかった息吹がガンダムに降りかかる。

 息吹が託すものと判断すると、少しばかり奇妙さを感じる。しかし、本当に託されたものは、それだけではなかった。ガンダムのシステムに変化が生じる。

 

「なんだ、これは」

 

 視覚に投影される、システム「エボリュート・アップ」の文字。ジャンヌもシステムの更新を確認していた。

 

『新しいシステム……?え、何これ!?ハジメ!?』

 

 ジャンヌの声が上がった時には既に機体に異変が起こっていた。機体を蒼白い結晶が覆い尽くす。身動きの取れない中で、ガンダムに何かが起こっている事だけを知る。まるで体を造り替えているとでもいうべき、未知の感覚だ。

 結晶が完全に機体を覆い尽くして数秒。周囲に展開したバリアと共に結晶は砕かれた。結晶から出ると、元達のガンダムはその姿を変化していた。機体の各所が大型化し、手には爪のようなものをいつの間にか手にしていた。悪魔か魔術師のようなシルエットを作り出すマントパーツは、皇帝達の機体に似たイメージを持たせていた。元の目に更に機体の名前が映る。

 シュバルトゼロガンダム・フルイグナイト。イグナイトと似て異なる名前。更なる情報を出そうとした時、機体からもう1人の声がオープン回線で周囲にしろ示された。

 

『今こそ、歓迎の時だ』

 

「スタート……?」

 

『かつての戦争でシュバルトゼロガンダムがたどり着くはずだった力の1つ。それが象徴から新たな希望に託し、ガンダムに授けられた!マキナス、そしてドラグディアよ。これがガンダムの新たなる領域にして取り戻した力、機械の進化「エボリュート・アップ」で生み出された、全てを圧倒するガンダム「シュバルトゼロガンダム・フルイグナイト」だ!』

 

 元の声も気に留めることなく、スタートは全領域に対しての回線で祝辞の如く伝達した。回線が鎮まり返る。唖然としているのか、はたまた理解が追いついていないのか。

 しかしシュバルトゼロが更なる力を得たことは元には分かった。機体のエネルギー数値や滞空する状態でのパワーゲインが今までとは違う。力を秘めていた。それを理解できていない皇帝一派がその宣言を拒絶する。

 

『新たなる領域?ハッタリを!』

 

『やんぞ、機械騎士!!』

 

『分かっている!俺達のガンダムは何者にも負けない!』

 

 マギア・ガンダム、そして赤の近接仕様に再換装したエクス・ガンダムがサーベルとソードを引き抜いて斬りかかる。それを見て元は機体を動かそうとした。だがガンダムは自動で肩の大型ユニットを展開する。展開したユニットは2機のガンダムの腹部を突く。貫きこそしないが機体バランスを崩す。そこにマントパーツ前部からレーザーを放った。自動追尾式のホーミングレーザーを2機のガンダムは回避に専念せざるを得なかった。

 更に追撃の如く杖から球体を周囲に放出、エアクルセイドに襲い掛かる。エアクルセイド部隊も迎撃を行うが、無理だと判断して回避に専念する。襲い掛かってきたマキナスのMSを、新たなシュバルトゼロはパイロットが動くどころか指示することなく、追い払おうとした意志だけで追い払ってしまう。完全に圧倒していた。

 

『嘘……私、何もやっていないのに』

 

『動かずに迎撃だと……これが1400年前のMSが到達しようとした領域?』

 

 自動で迎撃する姿にジャンヌはたじろぐ。皇帝の声にも余裕がなくなっていた。一方で攻撃に追われていたガンダムとエアクルセイド隊は何とか振り切り、再度攻撃を仕掛けようとしていた。

 

『ふざけやがって!パイロットが動かさずに自動で迎撃するなんて、この卑怯者!』

 

『圧倒的な力だな……だが、オートならいくらでもやり様は!』

 

 圧倒的な力。元もそれは認めていた。パイロットに負担を掛けることなく圧倒的な力を行使する。さながら神が人間に力を見せつけるかのような状況だ。だがしかし、だからこそ元は自らの意志を口にした。

 

「…………違う」

 

『ハジメ……?』

 

『ふん?』

 

「例え、全てを退けられる力だとしても、これは俺が望んだものじゃない。」

 

 先程のスタートの言葉を否定する言葉を発する。力を振るうなら、自分がそれをきちんと手にしたい。元の要望に、スタートもまた答える。

 

『フッ、そうだ。これはあくまで「俺」が「かつて」望んだもの。クロワ・ハジメ。お前はこの力を、どうあってほしいんだ?』

 

 スタートのかつての望み、それがこのフルイグナイト。もし変化できるというのなら、元の答えは1つだった。スタートの問いに元は返答した。

 

「……俺は、今までと変わらない。俺が護りたいと思った人を護る。俺が、この手で、自ら切り開く。圧倒的な力で支配するだけじゃない。みんなと共に行く……。だから、俺が望むのは!」

 

 前へと手を伸ばす。それに呼応して再びガンダムが結晶に呑みこまれる。機体から生えるのではなく、周囲の空気から生まれるように発生した結晶に、機体が埋め尽くされる。その中で結晶をガンダムが吸収していく。結晶を取り込んでガンダムが再び生まれ変わっていく。

ものの数秒もかからぬ一瞬で結晶が装甲の中に消えていく。結晶の集合から解放されたガンダムは、再びその姿を変えていた。先程のマントパーツに杖といったファンタジー風の恰好から一転、これまでのシュバルトゼロガンダムを踏襲した構成。杖もライフルへと変わり、翼はより大型化してファンネルが根元の可動部ごとコウモリの膜の骨のように動く。頭部、腕部、脚部にはイグナイトの竜の意匠を施されていた。

 総じて先程よりも本来のシュバルトゼロガンダムが「正統進化」したような姿になった。後継機といっても違和感のない機体。機体に起こった超常的な変化に、困惑しながらも事実を受け止めるジャンヌの声が響く。

 

『これが、ハジメの選んだ答え……』

 

『そう、そしてあなたが選んだ答えでもある、ジャンヌ・ファーフニル』

 

『私が……?』

 

 生まれ変わった機体を見届け、クリムゾン・ファフニールが語る。そしてそのまま空域から撤退していく。逃げる機体に反応し、エクス・ガンダムとマギア・ガンダム、エアクルセイドが後を追う。

 

『逃げるなよ、ドラグディアの象徴がァ!!』

 

『あっちも沈めりゃ、勲章もの!』

 

 落とそうとする意志を感じる。だがそうはさせない。変容を完了したガンダムが目にもとまらぬ速さで彼らの間に割って入る。

 

「お前達の相手は、俺達だ!」

 

『邪魔すんなぁぁぁー!!』

 

 ランドの絶叫に合わせて、エアクルセイドがガンダムを包囲する。包囲したエアクルセイド6機とマギア・ガンダムは各々の武器で攻撃する。圧倒的な弾幕の量。ところがシュバルトゼロガンダムはその攻撃を次々と回避する。回避した直後にライフルを構えてエアクルセイドの1機のシールドごと貫く。同時に腰に装備されたブレードガンを投擲、反対側に来たもう1機の胸部に突き刺さる。

 

『2機撃破!?』

 

「2機じゃない、3機だ」

 

 ランドの驚愕に満ちた言葉を訂正する。距離を詰めて突き刺さったブレードガンを握ると、そのまま振り回して剣を引き抜く。武器を引き抜かれた機体は空中を飛ぶ別のエアクルセイドと衝突する。衝突された側は引きはがそうとするが、その前に瞬時に突撃したシュバルトゼロガンダムのブレードガンに2機ごと貫かれて爆散する。

 爆発から瞬時に逃れたシュバルトゼロガンダムは止まることなく、更に次のエアクルセイドに向かう。そうはさせまいとエクス・ガンダムとその支援機らしき黒と緑の獣型ユニットが行く手を阻む。

 

「無駄だ」

 

 2機の剣と爪による連携攻撃。それを回転しながら掻い潜って先にいたエアクルセイドに向けて頭部に新たに生まれたバルカンを放つ。けん制に気を取られるうちに本命のライフルを構え、放たれたビームが敵機を貫く。

 最後に残りの2機をシールドのビームマシンキャノンで撃ち貫く。レイ・アクセラレーターで収束したビームは、またもシールドを貫く。あれほどガンダムを苦戦させたエアクルセイドの部隊は、あっという間に稼働機ゼロへと追い込まれてしまったのである。

 

『すごい…………機体のパワーが……ううん、反応性が違う』

 

 出力をコントロールするジャンヌからは機体の性能の段違いぶりに驚かれる。今までのシュバルトゼロを超える性能がここにあった。

 一方自軍の最高峰の戦力の一角を潰された皇帝達の動きが鈍っていた。残っていたエアクルセイド部隊をものの1分弱の時間で殲滅されてしまったのだ。ランドの絶望に満ちた声が漏れてくる。

 

『なんだよ、これ。これがガンダム……?こんなの!』

 

『………………認めない。これが正しき力などと、我らは認めない!あれを何としても阻止せよ!』

 

『化け物がぁ!俺も本気で行かせてもらうぜぇ!!』

 

 皇帝の檄を受けてエクス・ガンダムも奥の手を繰り出す。先程まで支援し続けていた黒と緑の獣型支援機が変形、開いたスペースにエクス・ガンダムの素体が挿入される。合体したエクス・ガンダムは人馬、いや、人獣とでもいうべき4足歩行に両腕という異形の姿へと合体を完了させる。

 合体したエクス・ガンダムに残りのパワードスーツが集結する。戦力を惜しみなく投入する気だ。マギア・ガンダムも、そしてマギア・マキナスがこちらを砲撃態勢に入った。圧倒的な戦力差。しかしもう負ける気がしなかった。今度こそ象徴の託したものを護るために、2人の意志が重なる。

 

「行くぞ、ジャンヌ。準備はいいか」

 

『いつでも。その力、思う存分使って!私も付いて行くから!』

 

 確認の後ビームライフルを構えなおした元は、新生したシュバルトゼロガンダムの名を示す。

 

「シュバルトゼロガンダム・イグナイター、全てを(ゼロ)に戻す!!」

 

 

 

 

「なんだべ、これは……!?」

 

 戦闘を映すモニターを見て、マギア・マキナスのMS整備長であるワルトは愕然とする。理由は当然、ガンダムの戦闘にあった。確かにマキナート・エアクルセイドは有人・無人共にガンダムと互角以上に展開していたはずだ。モニターしていたワルトもそれを見ていたはずだった。

 ならば今見ているこの光景は何なのか。6機のマキナート・エアクルセイドはものの数十秒でたった1機のガンダムにすべてが撃破されてしまったのである。攻撃を掠めることなく、防御手段が有効に働いた形跡もない。あまりの事に解析に対する思考が追いつかない。愕然としていた。

 更にガンダムはマキナスの技術の粋を集めて作り上げたMS達、そして今ワルトが乗るマギア・マキナスと交戦する。艦内に響き渡る振動がその証拠だ。全機がガンダムを撃墜しようと追いすがるが、放たれる攻撃を軽々とガンダムは避けて反撃する。逆にこちらの戦力が圧倒されていた。

 

「所詮、造り物は本物に勝てねぇ、ってか?これが、本当のガンダムの力だってぇのか……」

 

 自分なら作れると思っていた。伝説の機体「ガンダム」を。顔を真似て、ガンダムのこれまでに見せた機能を可能な限り再現して作り上げたエクス・サイズとランド・オンの機体。

その完成度は自分が良く知っている。先程も数的有利を取っているとはいえガンダムを圧倒していた。ところが今彼らは新生したガンダムを相手に苦戦を強いられている。エクス・サイズも奥の手であるガルム・フェイズに換装して何とか対決できているが、翻弄される動きが多い。ランドに至ってはいいように弄ばれているように感じる。戦闘に通じていなくてもそれが分かるほどに差が生まれている。機械騎士を圧倒するほどの性能だ。

 

(性能だけ、なんか?中身もまるであの時とは違ぇ)

 

 腹部の修理箇所を擦る。ガンダムのパイロットを奪還しようと試みた時、上下に斬られたワルトは以来その仕返しの如くMS開発に打ち込んだ。その賜物がエクス達のガンダムだが、もしかするとパイロットもまた特別だったのかもしれない。

 竜人族でも機人族でもない、かつての自分達に近しい人間。それに回線からもう1人、少女のものと思われる声も聞こえた。パイロット2人だからこそ成せる技。想像は膨らむが、納得できる答えは見つからない。

 ワルトは呟く。あまりにも圧倒的な漆黒のMSに、畏怖と敬意を込めた言葉を。

 

 

「どうあっても、救世主には手が届かんのやってな」

 

 

 そのままモニターの前で椅子に座り込んで、立場も忘れてその戦いに魅入ってしまう。

 

 

NEXT EPISODE

 




EPISODE78はここまでになります。

ネイ「が、ガンダムが変わりましたよ!?」

グリーフィア「旧作じゃああり得そうだったけど、今作だと流石に驚くわね……エボリュート・アップ、だったかしら?あれって何をどうしたらあぁ出来たの?」

簡単に言うと第3次スパロボZのジェミニオン・レイです(`・ω・´)高純度DNに働きかけて機体を一時的にDNに分解・再構成させています。

グリーフィア「うん、私達には全くさっぱりだわ」

ネイ「と、とりあえず他作品でもやられていることと……でも性能が既にやばい気がするんですが……」

その性能の恐ろしさは後半から更に発揮だよ☆(゚∀゚)それではEPISODE79に続きます。


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EPISODE79 変わる明日への希望4

どうも、皆様。引き続きご覧の方は改めまして。遂に来たバトスピガンダムコラボに手放しで喜んでいる藤和木 士です。実質この作品ガンダムとバトスピのコラボじゃない?あ、違うと(;・∀・)ですよねー。

レイ「あはは……アシスタントのレイだよー」

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです。もう、公式に消されても知りませんよ?」

一体どっちの公式からお咎めもらうんだろうね、そうなった場合(´・ω・`)さて、そんなことは置いておくとして、引き続きEPISODE79の公開です。

レイ「ガンダム、覚・醒!スタートもどことなく喜んでいるね!」

ジャンヌ「地味に決め台詞も言っていて、一気に流れが変わりました。果たしてこの勢いが最後まで続くんでしょうか?」

今ガンダムが全てをゼロへと戻す!それでは本編をどうぞ。


 ガンダムの奇跡の瞬間はガンダムの母艦であるダンドリアスでも確認されていた。偵察ポッドから映し出される映像に、アレクやローレイン、アルスと言ったエースパイロット達も湧き上がる。

 

「ハジメのヤツ、こんな姿を隠してたのか」

 

「隠してたっていうより、覚醒したって言い方の方が正しいっすけどね。象徴もどうなるかと思ったけど、世代交代だ」

 

「危機は脱した。それでも援軍は必要だろう」

 

 アルスの視線がMS格納庫に入るマキナスの整備員に注がれる。マギア・マキナスによる不時着後、アルス達は艦のダメージコントロールと破損した機体の応急処置に追われていた。

 特にアルスの機体はパーツがドラグディアに無く、出撃は不能だと思われていた。だが彼の兄リヴィル・ゲートが手配した艦のメカニックが救援に駆け付けたことで状況が変わった。アルスからの通信を受けたリヴィルはドラグディアに味方するアルスの為に、艦のMS整備士をダンドリアスへ派遣した。当初はやって来たマキナスの整備員にドラグディア側が忌諱したが、MS隊隊長のアレクの一声で暴動に至る前に収められた。

 不時着の衝撃でパーツが散乱したドラグディア機よりも、先に修理できる見通しが立つほどになっていた。完全でなくても、救援に入れるなら問題ない。アレクはアルスに自分達の仲間の救援を要請する。

 

「アルス・ゲート、俺達の仲間を、ハジメとジャンヌを頼む」

 

「任された。それにあの場には、兄の部下も助太刀に入っている。彼の救援のためにも、ガンダムのためにも行かせてもらう」

 

「あぁ、任せた」

 

 前までの敵とそう言葉を交えて愛機の下へと向かう。既に機体は目立った損傷のない使える状態まで応急処置が施されていた。修復に協力してくれた、ガンダムの技師だと言っていた女性が現状の簡単な説明を行う。

 

「強化システムの起動に問題ない位の状態までは持ってこれたよ。マキナスのエース君」

 

「協力感謝する。ヴェール技術大尉。流石、ガンダムの技師と言うべきか」

 

「ガンダムの整備をしていると色々と勉強になるからね。その話は追々君の技師さんに話すとして、ガンダムの救援頑張ってきて」

 

「了解。さぁ、もう一度やれるな、シャイニング」

 

 背中を軽く押される。ドラグディアとマキナスの平和への想いを背負い、アルスは愛機マキナート・シャイニングを纏う。上部出撃口が開くと機体を浮遊させる。そのまま一気に艦外へと飛び立つ。

 

「マキナート・シャイニング、ガンダムの救援へと向かう」

 

 ダンドリアスの管制官に伝えてアルスは再び戦場へと向かった。

 

 

 

 

 エアクルセイドの編隊を片付けたシュバルトゼロガンダム・イグナイターは、続いてマギア・ガンダムに狙いを絞る。エクス・ガンダムとマギア・マキナス、それに皇帝機からの砲撃を軽々と躱し、ジグザグ機動で距離を詰める。

 

『来るっ!何っ!?』

 

「遅い」

 

 マントパーツのレールガンとミサイルコンテナで迎撃するランド。だがマギア・ガンダムの攻撃はイグナイターの機動に翻弄されて弾丸は掠めもしない。マントを閉じて防御態勢に入るが、悪手だった。

 機体を翻すように振り上げた肩部シールドのビームマシンキャノン、レイ・アクセラレーターによるビームソードがマントごと機体を切り上げた。マントパーツの一部が宙を舞い、覆われていない胸部装甲に傷が入る。

 

「もう一撃!」

 

『う、うわっ!?』

 

 直後に後方へ回転して退きながらビームライフルを放つ。放たれた弾丸はマントと脚部を損壊させる。エクス・ガンダムとマギア・マキナスの妨害が入るが、滑る様に機動し弾幕と剣戟の嵐から逃れる。

 マギア・マキナスからの砲撃が激しい。マギア・マキナスを動かす奏女官が兄を護るために全砲門を向けていたのだ。

 

『兄さんをこれ以上いじめるな!』

 

『象徴を傷つけていたくせに、よく言います!』

 

 ジャンヌの言い返しと共に皇帝達の弾幕を掻い潜り、マギア・マキナスに向けて最大の一撃を繰り出す。

 

『Ready set GO!DNF、「シュバルト・ホロウ・フィーバー」!!』

 

「これで墜ちろ!」

 

 シュバルトゼロガンダム・イグナイターが手を正面にかざしながら後方に退く。先程までいた場所に高純度DNによる薄い膜のような領域が作られる。そこに向かってライフル、マシンキャノン、そしてレイ・アクセラレーターのビームを注ぎ込む。ビームを飲みこんだDNの膜は直後幾千もの光の束へ分かれて、マギア・マキナスを襲う。

これまで完全にガンダムの攻撃を凌いできたマギア・マキナスの装甲だが、放たれた高エネルギービームは亀のようなマギア・マキナスの背中をとうとう貫いた。いくつもの光の束がマギア・マキナスの内部を食い荒らす。

 

「グゥァーン……」

 

たちまち爆炎を上げていくマギア・マキナスは、先程までのクリムゾン・ドラゴニアスと同じように叫び声にも似た声を上げて墜落、沈黙する。

 象徴が倒れ、その護り手でもあるランドもこれには動揺する。しかし彼の心配はその中にいる妹に向けてである。

 

『メルッ!!こんの……!』

 

「ッ!!」

 

 突き出されたビームサーベル。頭部を貫こうとしたそれを、横に頭を傾けて回避して腕を掴む。手首を動かす前に逆関節に向けるように腕部ごと砕くと、その顔面に右拳を殴りつける。

 

『ブッ!?』

 

「はぁっ!」

 

 殴った衝撃でそのまま地上へと墜ちる機体に、トドメのブレードガン・X(ザン)で頭部を貫く。貫いた衝撃と自重で首が外れ機体は落下、残った頭部も振って斬り捨てる。

 返り討ちにした直後ビームが左方向から襲う。シールドを構えて防御に意識を向ける。攻撃をしてきたのはエクス・ガンダム。ビームを放った弓状のライフルを変形させ、斧にして斬りかかってきた。

 

「っぇい!」

 

『今だ、皇帝さんよぉ!』

 

『ハジメ、右ッ!』

 

 ジャンヌが声を上げた時には、皇帝の機体が手にした錫杖の先にビームサーベルを発振させて叩き付けて来ていた。両手で思い切りシュバルトゼロの背部を狙ってくる。

 

「させないっ」

 

 宣言と同時にウイングが高純度DNで覆われる。ウイングのDNと皇帝の錫杖がぶつかり合ってお互いを相殺する。

 受け止めた状態から更にDNを解放して両機体を遠ざける。バランスを無理矢理崩したところにビームライフル、ブレードガンで射撃する。両機体共にオーロラとマントによる防御を敢行するが、それぞれオーロラ、ビームシールドを貫通して本体とマントに着弾する。

 位置をずらして被害を抑えたエクス・ガンダムは、斧を再び弓へと変形させてビームを放つ。DNAの力を込めた弾丸が放たれる。

 

『DNA バイオレンス・メテオ』

 

『全弾撃ちこんだらぁ!!』

 

 エクスの全力を込めた矢の一斉発射がイグナイターに襲い掛かる。その場から退避して攻撃を回避するが、構わずエクスは連続してDNAを撃ちまくる。明らかに過剰な連発量で、DNジェネレーターの負荷を無視してガンダム撃墜に全てを注いでいた。

 そんな攻撃にあたるわけにもいかず、シュバルトゼロガンダム・イグナイターは回避行動を取る。スラスターを巧みに操り、自在に空を翔けていく。矢を順調に躱していく元だったが、前方のアラートが響く。

 

「っ!砲撃型か」

 

 弾幕を形成しながらエクス・ガンダムの黒と青の砲撃用アーマーが襲い掛かる。すぐさま方向転換して避ける。本体の攻撃と合わせしつこくこちらを狙ってくる。まだ回避できる。そう思った直後に更に周囲から攻撃が襲う。

 エクス・ガンダムの拡張ユニット、黒と赤の遠隔操作型のファンネルがこちらを取り囲む。三重による攻撃は流石に困難と思われた。だがシュバルトゼロガンダム・イグナイターと元の限界はまだだった。

 

「っ!フッ!!」

 

 あらゆる方向からの攻撃に反応する元。DNLの示す敵意がはっきりと分かる。それにシュバルトゼロガンダム・イグナイターは完全に反応しきれていた。圧倒的な機動性を以てして、エクス・ガンダムの攻撃をすべて回避する。

 このまま突撃を掛ける。反転を仕掛けた元に、更なる攻撃が襲い掛かる。皇帝機が放つ雷が伸びてくる。皇帝陣営の何が何でも撃墜するという意志が見て取れる。ギリギリのところで体を捻らせる様に回転してその攻撃も避ける。だが、エクス・ガンダムの本体から放たれた大火力のビームまでは、予測できなかった。

 

「ッ―――――」

 

 死角から抉り込むように放たれたビームの砲弾。反応しきれず砲撃が直撃する。爆炎がガンダムの周囲を包み込む。だがそれだけで終わりではなく、ファンネル、キャノン砲、そして雷撃が襲い掛かり、追い打ちを叩き込む。これでもかといわんばかりに皇帝の持つ錫杖から巨大なビームサーベルが形成され叩き付けられる。

 オーバーキルにも近い攻撃を受けるガンダム。すべて受ければ確実にやられる――――そう、全て受けていれば。

 

『消えろ、ガンダム―――!?』

 

 皇帝の振り下ろした巨大な光剣。しかしそれは爆炎をすべて叩き切る前に止まる。煙の中から現れたのは、まったく無傷の状態で機体全体から高純度DNを鎧の様に纏ったガンダムがその手で光剣を受け止める姿だった。

 正直油断したと思った元だった。しかしあの時咄嗟に腕をクロスさせた直後、機体の装甲からDNが放出されて気付いた時には機体全体がDNウォールで包まれ、攻撃を防いでいた。流石に光剣を仁王立ちのような状態で受け止めるわけにはいかず、手で受け止めたが、見事白羽取りの形で皇帝のDNFを受け止められた。

 

「よく分からないが、今更言っておく。俺達は簡単には消えない!」

 

 攻撃を受け止めた元は、皇帝に対しそのように言い放つと剣を横へと弾く。更に腰の後ろに新たに装着されたスタビライザーを展開して、停止状態から一気に加速し上方へ向かう。攻撃を振り切れる位置から下方に向けて銃口を向けた。ライフル、マシンキャノン、更にはファンネルとあらゆる火器を展開し、マルチロックオンを完了させた直後にすべてのトリガーを引く。

 

「いっけぇぇぇぇぇ!!」

 

 全砲門からの一斉射撃。下方の地面が一気に火の海となる。狙いは正確で、既に戦闘不能状態で動けずにいるハイドの機体を巻き込まないようにして皇帝達を襲う。

 完全にマントを締め切って防御に集中する皇帝機、何とか拡張機体の機能で防御しながら接近しようとするエクス・ガンダム。しかし残りの弾丸が拡張機体3機と機能をショートさせたマギア・マキナスにも降りかかる。マギア・マキナスの損傷に連動し、拡張機体3機の動きが変調をきたす。コントロール元がダメージを受けているのだ。

 全門一斉発射(フルバースト)をし終えたイグナイターがウイングを高純度DNで包み込む。光の翼となったウイングを羽搏かせてエクス・ガンダムと3機の拡張機との戦闘に入る。

 

『さぁ、いい加減墜ちな、ガンダム!!』

 

 一斉に襲い掛かってくる拡張機3機。その後方からビームボウを連発するエクス。隙のなさそうに見える弾幕と突撃。だが、やたらめったらに撃つおかげで見えなくても狙いが分かる。ならばと元は目の前の障害から立ち向かう。

 

「いくぞ、ジャンヌ!」

 

『はいっ!』

 

 機体が蒼く輝く。エラクスの光だ。光の翼が一層大きくなった次の瞬間、一気に行動する。まず近接型の剣をブレードガン・Xで受け止める。勢いの増した機体はそのまま剣を滑らせ敵機の右腕を切り飛ばす。次いで周囲にファンネルが展開されるが、それに狙いを定められる前に上へと逃げる。

 逃げると後方から砲撃が放たれる。砲撃型のビームライフルとキャノン砲だ。前からの弾幕と合わせて逃げ場はほぼない。だがガンダムは砲撃を寸前で砲撃の内一射に沿って後ろ向きで回転して回避すると、光の矢に狙い定められる前に反転してブレードガン・Xを投擲する。真っすぐ進んだブレードガン・Xが砲撃型の腹部に突き刺さる。同時に後方にもブレードガン・Xを投げており、格闘型の胸部に突き立てられる。

 

「―――――」

 

 流れる動きで遠隔端末型のファンネルを避けて、砲撃型に肉薄する。腹部に突き刺さったブレードガン・Xを引き抜こうとせず、そのまま迎撃しようとしていた。痛みがない、無人機だからこその行動の利点だが、むしろそれが付け入る隙となる。弾幕を抜けて腹部に刺さったブレードガンを握ると、エネルギーを注ぐ。ブレードガンからビームサーベルが形成し、内部メカニックを背面にかけて貫く。

 

「せぇい!!」

 

 再出力した銃剣を出力の増した腕部で勢いよく上へと振り上げる。機体挿入口ごと切り裂いて破壊していく。最後の抵抗の様にキャノン砲を向けるが、発射される前にビームマシンキャノンのビームソードで根元とキャノン砲本体をそれぞれ両断して破壊する。

 破壊した直後を狙ってファンネル型、そして本体がシールドのビーム砲を連射して襲い掛かってくる。シールドのビームは連弾と照射ビームを使い分けていた。照射もエアクルセイドが放った曲がるビームを放ってきており、回避をけん制する動きだ。

 弾幕の圧にこれまでなら押されていただろうが、今は違う。エラクスで蒼く染め上げられた機体は弾幕の勢いに負けることなく、的確に攻撃を連続して回避、距離を詰めていく。

 

「フィンファンネル」

 

 ウイングからフェザー・フィンファンネルが分離される。光の翼の残滓を帯びて分離されたそれは、すぐに分散してターゲット……紫のファンネル特化型を包囲する。ファンネル特化型はすぐさま迎撃に転じようとしたが、既に時遅くフェザー・フィンファンネルから放たれる一斉射撃に貫かれ爆散する。

 残るはエクスの駆る本体、あの人馬型の機体のみ。両手にブレードガン・Xを携え、最後の1機に肉薄する。距離を詰めて両者武器を振るう。

 

『この戦争、生き残るのは俺だ!』

 

「いいや、お前は俺が殺す!」

 

 刹那のぶつかり合いの中で言葉を交わす。斧に変形した弓と銃剣が何度も打ち合う。何度目かの激突の後、敵が距離を取る。左の腰から槍を掴みだすとその槍を掲げてDNAの発動を宣言する。

 

『DNA アンチェインド・ガルム・フレイム』

 

 槍を軸としてさらに巨大な槍を形成する。切り札とも呼べる最大火力を繰り出してくる。こちらもファンネルを呼び戻すと、持ち替えたX・ビームライフル・ゼロの銃身にファンネル4基を合体させる。ファンネルの砲門に光を灯し、そのエネルギーを一気に解放する。

 

「こっちも!」

 

『Ready set GO!EDNF、「フルバスターブレイド」!』

 

 ファンネルとライフルの銃口からビームが照射される。それを剣に見立ててエクスのDNAとぶつかり合う。拮抗しつつも徐々に押し込む。だが均衡は横合いにより潰される。イグナイターに向けてビーム弾が放たれる。放ったのは皇帝機。杖を変形させて先端のビームデバイスから放ったのである。

 ライフルが直撃弾を受けて爆散する。ファンネルも巻き込んで大幅にガンダムの武装が削がれる。おそらく狙ってやって来たのだろう。しかしガンダム本体は爆発を皇帝機からの隠れ蓑にしてエクス・ガンダムへ突撃する。大出力DNAを使用して、出力負荷で機体にスパークが散る機体に再度接近戦を仕掛ける。

 

「せいっ!」

 

『野郎ッ!!』

 

 出力負荷の影響で鈍る機体だが、イグナイターの剣と斧で鍔迫り合いを起こす。更にもう一方の銃剣を振るうが、それも槍に阻まれ両手がお互いふさがる結果となる。敵にはまだ股関節部に見える砲門がある。おそらくビーム砲だ。攻撃のタイミングを見計らってのカウンターに狙いを絞る。

 しかし、ここで大きく読み違える。後方からの接近警報が突如響き渡る。

 

「何?」

 

『ハジメ、後ろッ!?』

 

 振り向いた先に右腕を失いつつも反対の手にビームソードを構えなおした赤の格闘型が今にも剣を振り下ろそうとしていた。攻撃に加わらなかったことから墜ちたものだとばかり思っていたが、ここまで敵意を隠してこの時を待っていたのである。

 絶好のタイミングと言わんばかりにエクスが両手に力を込める。不意に力で弾かれた機体はそのまま格闘型の剣の餌食となる。かに思われた。

 

 

 

 

『やらせはしない!!』

 

 

 

 

 剣を振り下ろした直後、紅い残像と共に割って入った機体が剣の軌道をずらしつつこちらの姿勢を補助した。加速が解け紅い輝きを失ったその機体は、この大戦の最中ドラグディアに味方したマキナスのネオ・エースの機体。その機体は星剣使いという異名通り、剣でエクス・ガンダムに従う無人の機人の剣を防いだのだ。

 星剣使いの檄が飛ぶ。

 

『ガンダム!奴を潰せ!!』

 

「アルス!あぁ、分かった!!」

 

 命令された元は再度エクス・ガンダムへアタックを仕掛ける。決着の一撃を止められ、エクスは荒れ狂う。

 

『邪魔してんじゃねぇ!わんこが!!』

 

 アルスへの蔑みと共に両手の武装からビームを乱射する。狙いもない、数の暴力で怒りのままに撃ち続ける。そんな攻撃にあたるはずもなく瞬時に肩のシールド、ビームマシンキャノン・Xのビームソードを起動させて宙返りと共に両腕ごと切り飛ばす。

 両腕を失った機体。しかしまだ最後の足掻きと言わんばかりに股関節の砲を発射する。咄嗟の判断で左手を突き出し、腕部のビーム砲でその出力とぶつかり合う。いかにガンダムの攻撃といえども、その勢いを後出しで抑えきれはせず、左腕部が徐々に溶け始める。

 

(防御はした、けどどうする?)

 

エラクスの限界が近い。最大出力で張り合うわけにもいかない。元は直感的にブレードガン・Xを取り出す。ビームサーベルを形成させ、照射ビームの横合いから勢いよく突き出して直接ビーム砲を潰しに掛かる。

 無理矢理の策ではあったが効果はあった。キャノン砲が爆発し、ビームの勢いが弱まっていく。同時に左腕部から火花が散り始め、左腕を右手から形成したビームサーベルで強制排除する。そこでエラクスが限界時間を超える。ビームは左腕を飲み込みつつイグナイターを通り過ぎ、アルスによって足止めされた格闘型に直撃。格闘型を戦闘不能に追い込む。

 砲を潰され、武装のなくなったエクス・ガンダムはとうとう分離する。素体のシンプルな、無傷のガンダムがビームライフルからビームサイズを形成して単身襲い掛かる。

 

『こいつで終わりだ!!』

 

「なら、こいつで」

 

 エラクスが切れたと見て一気に向かってくる敵機に対し、こちらもバックパックから翼として運用していた実体剣を掴んだ。剣を構え、勢いよく突き出す。だがしかし剣はエクスに届かない。早く出し過ぎてしまったのだ。その惨状に笑い声を上げるエクス。

 

『リーチ考えろ!!』

 

 そのツッコミはまさしく的を射ていた。もう少し遅く出せば届いていただろう。もしくは、もう少し長ければ……。

 

「なら、伸ばせばいい」

 

『Lancer mode』

 

 音声と共に、実体剣はその姿を槍へと変えた。距離は縮まり、剣先から穂先となった刃がエクス・ガンダムを貫いた。

 

『ガフッ!?』

 

 胸部を貫かれ、吐血したような声を出すエクス。文字通りMSの中心となるDNジェネレーター、コアを貫いた。その事実にエクスは驚愕する。

 

『あ、あり得ねぇ……俺が、俺がこんな!』

 

「これは事実だ。お前は、ここで死ぬ」

 

 穂先を抜き、再度剣へと変える。剣の柄は全く変形機構を持っているとは思えない形である。まるで柄を「作り上げている」かのような感覚だ。

 DNジェネレーターが停止し、落下していく機体。エクスは最期に錯乱したかのように自身の死を嗤う。

 

『は、はは……ハーハハハハハハ――――』

 

 空に爆炎が上がり、エクス・サイズはこの世界から消えた。残るはただ1人、皇帝本人だけとなった。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。

レイ「処刑人撃破っ!残るは皇帝ただ1人っ!」

ジャンヌ「そして最高のタイミングで救援に入るアルスさんでしたね。見事にガンダムの窮地を救ってくださいましたっ」

どんな作品にも言えますけど、こういう展開いいですよね(`・ω・´)私は大好きだ(*´ω`)

レイ「次からはもう最後の激突だね!」

ジャンヌ「左腕を失いこそしましたが、圧倒的な性能を誇るイグナイターと皇帝機の激突。それが次話からのクライマックスの内容ですね」

それでは今回はここまでです。

レイ「次回もよろしくねっ!」


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EPISODE80 変わる明日への希望5

どうも、皆様。先日配信されたビルドダイバーズリライズの最後は流石に予想できませんでした(´ρ`)藤和木 士です。確かにあれはプラモ情報出せませんね。

ネイ「はいはい、予想しなくていいですから。アシスタントのネイです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよぉ。ジージェネクロスレイズも発売して、ガンダムの話題には事欠かないわねぇ」

クロスレイズ私も余裕が出来たら買うつもりです。さて、今回はEPISODE80と81の公開です。まずはEPISODE80から。

グリーフィア「いよいよ最後の決戦って感じね。皇帝を討ち果たすだけねぇ~。それだけで済めばいいんだけど」

ネイ「姉さん……変なこと言うのはやめようよ……これで最後になるはずだろうし」

それはどうかな?(゚∀゚)

ネイ「その顔やめてください」

グリーフィア「まー作者君が簡単に終わらせることはないだろうと思っていたけど、どんなことになるのか。今回も見ていきましょう♪」

それでは本編をどうぞ(*´ω`)


 

 

 ガンダムが「処刑人」エクス・サイズを葬った。助太刀に入ったアルスはしっかりとその眼で、その功績を焼き付けた。既にマギア・マキナスは地表へと墜ち、残る敵は皇帝だけとなった。

 あまりにも圧倒的な性能。だが不思議とアルスは恐怖を感じなかった。これが心強さというものであると理解すると、ガンダムのパイロットが先程の助太刀に関して礼を述べる。

 

『助かった、アルス』

 

「構わない。アレク・ケルツァート……お前の仲間達に救援を託されたのだからな」

 

『アレクさん達が……』

 

 援護をアレク達に託されたことに驚きを見せるガンダムのパートナー。やはり竜人族からは少しばかり驚かれるのだろう。しかしガンダムのパイロットは忌憚なく、アルスが来たことに感謝した。

 

「それでもお前が来てくれなかったら、やられていた。感謝の言葉もない」

 

『……世辞はいい。それよりまだ敵が残っている』

 

 話半分で切って残る敵と対峙する。従者のすべてが撃墜され、彼の周囲には誰もいない。指揮するマキナス軍兵士も、皇帝の事より自分達が生き残るために独自の行動を取りつつあった。

 しかし皇帝の頭にあったのは、兵士達よりも目の前で自らの部隊を蹂躙した悪魔のガンダムに対する怒りであった。

 

『何故だ、何故貴様らは私の完璧な戦術の邪魔をするッ!!』

 

 怒り心頭の皇帝に、アルスは事実を述べる。

 

「完璧?味方を巻き込むこと、そして支配するのを前提とする作戦の、どこが完璧だ!」

 

『黙れ下級民!!兵士はただ私の指示に従っていれば良かったのだ!それを自分達の勝手な意思を持つからァ!!』

 

 個人の意思を否定し自らの意志を最上とする皇帝。おまけに下級民とまで呼んだ。その自覚はあっても、それを面と向かって言った皇帝をアルスは許せなかった。もはや国のトップに彼は相応しくはない。ここで倒さねばこの世界に未来はない。

 皇帝に対し剣を向けようとする。ところが機体は不安定な挙動を見せた。小爆発と共にコンソールから機体負荷増大を知らされる。先程のマキシマイズで負荷がかかり過ぎたのだった。

 

「ッ、機体の負荷が……だが、まだ……!」

 

 皇帝だけは自分が、という気持ちに反してこの不具合。ダメージを押して戦線に立とうとするもすかさずガンダムが前に立ち、後退を呼びかける。

 

『下がれ、俺がやる』

 

「ガンダム!しかし、こいつはマキナスの兵士がやらねば……」

 

 食い下がろうとするアルス。だが続くガンダムの言葉に反論は止まった。

 

『その機体じゃ無理だ。それに下にいるハイドも気がかりなんだ。まだ戦えるのなら、お前の仲間を護ってくれ』

 

 ハイドは兄リヴィルの部下だ。そして今のアルスの機体はその兄が出してくれた救援のおかげで再び戦場に立てている。もし何らかのアクシデントでハイドを失えば後味が悪い。顔向けできないだろう。

 討たねばならないという気持ちを抑え込み、最終的にガンダムの言葉に従った。

 

「っ……分かった」

 

『ありがとう』

 

 言葉を交わして機体を下降させていく。レーダーでハイドの居場所を確認しつつ向かっていく機体。

 悔しいが今は出来ることをやらねばならない。あの無茶な助太刀がなければ、とも思ったがそれではガンダムに甚大な被害が出てアレク達に申し訳が立たなかっただろう。それを必然だと思うことにして、アルスは意識をハイドと合流することへと向けた。

 

 

 

 

 遂にここまで来た。向かい合うはマキナス皇帝、ギルフォード・F・マキナリアス。この作戦における最重要ターゲット。

 既に周囲の空域に彼ら以外は居ない。味方を失い苛立ちを隠せない皇帝は、ハイド救出のために後退させたアルスの姿を見て、余裕であるように振る舞う。

 

『アルス・ゲートを下げたか。どうしてもお前自身の手で、私を討ちたいようだな。欲が出ているぞ、ガンダム』

 

 こちらの怒りを買わせようとする発言だった。冷静さを失わせて、その隙を突こうというのだろう。乗る気はなかったが発言の内容自体には当てはまるものがあった。それを踏まえて元も頷く。

 

「そうだな。お前を俺が討たなくちゃっていうのは当たっている。けど俺が討つのは自分の欲でじゃない。人の意志を、自分の勝手な思い込みで統制しようとすることを否定するためだ。マキナス国民は、マキナスの象徴はお前の操り人形じゃない!」

 

『それが欲なのだろう!正義感に思い上がった小童共に、私の完璧な計画をかき回されるはずがないのだから。良い物を見せてやろう』

 

 すると皇帝は杖を空に突きあげる。すると地表に落下していたマギア・マキナスが再び浮上しようとしていた。

 

「なんだ……何をした?」

 

 ダメージが大きいにも関わらずの再動に悪寒を感じる。すると皇帝が言い放つ。

 

『今マギア・マキナスに自爆プログラムをインストールさせた!ドラグディア国内まで向かった象徴は、そこで大将と首都を巻き込んでこの世界から丸ごと消えるのだ!』

 

『そんなっ!?』

 

 象徴の自爆というとんでもない手段を選択してきたのだ。仮にもその国のトップである人間が。とても正気だとは思えない。だが確実にマギア・マキナスは体にスパークを散らせながらもドラグディアへと侵攻している。

 今すぐやめさせようと説得を試みる。

 

「そんなこと止めさせろ!中にまだ人がいるんじゃないのか!?」

 

『知った事か!犠牲を生んで得られる勝利こそ、もっとも尊ぶべきなのだ』

 

「この屑野郎が!」

 

 怒りを露わにする。だが皇帝はそれを意に介さず皇帝機の持つ錫杖の先をシュモクザメの頭のように幅広の刃にビームを形成させる。もう言葉では解決など不可能だ。ドラグディアにも、マキナスにも被害を受けさせない為に、今目の前にいる敵を討たなければならない。

 元の想いに前線から避難していたクリムゾン・ファフニールも同様の意見を回線から指摘する。

 

『ハジメ、そんなことをぜったいにさせてはいけない』

 

「分かってる」

 

『なら、お前たちのすべての力で、やつをうて!』

 

クリムゾン・ファフニールが激励する。その言葉通り、シュバルトゼロガンダム・イグナイターは切り札を使うことにした。残る最後のブレードガン・Xを右手に構え、肩部シールドを機体両サイドに翼の様に広げる。サイドアーマー、そしてウイングから光の翼が形成された。

 討つべき敵を倒し、自爆を阻止する。出し惜しみはしない。元はDNLを介した脳波コントロールで機体にすべてのリミッターを解除するように命じた。機体のフレームが蒼から白に近い、水色に変色する。周囲に空気の振動と共に高純度DNの輪が広がった。

 

『っ……!』

 

 機体のコントロールを管理するジャンヌが小さく呻く。ジャンヌにも負担が掛かるが、短期決戦でやるしかない。ジャンヌに負担を掛けることを謝罪する。

 

「ジャンヌ、少しの間だけ我慢してくれ」

 

『大丈夫……やらせて。私達の象徴を、希望を消し去って今また全てを破壊しようとしているあいつにきつい一発を浴びせなきゃすまないもの!』

 

「あぁ……!」

 

 元の応答と共に機体が最終リミッター解除の確認を行う。

 

『ZERO Over mode, Full drive!』

 

 湧き上がる高純度DNの力。皇帝が身構える。顔を正面に向けたガンダムの双眼が光る。

 

「―――行くぞ!」

 

 掛け声と共に、2機が動く。しかしそれはあまりにも一方的な開始に近かった。一瞬で距離を詰めたイグナイターが加速段階にあった皇帝機を不意打ちする。

 

『なっ――――!?』

 

「遅いっ!!」

 

 振り下ろした一撃は直前にビームシールドに阻まれる。だがビームシールドを引き裂き、対応しきれない皇帝機の腹部に蹴りを入れた。

 蹴り飛ばされる皇帝機。しかしそれを利用して皇帝も腰部のビーム砲を展開し、蹴り飛ばされる勢いのままそのビームを二射放つ。対応は早い。が、ガンダムには今一歩届かない。一旦後ろに下がった直後に体を前に倒して、急加速で距離を詰める。再び近接距離に入ってブレードガン・Xでの切り上げを実行する。皇帝機はマントを閉じて防御しようとするが、振り上げた勢いにマント沿って発生させたビームシールドが半分破れて吹き飛ばされていく。

 

『ぐっ……!ビームシールドを破るか』

 

 圧倒的な性能を見せつけるイグナイター。だがそれを扱いきれているかと言われれば、そうではなかった。急制動と噴射による無謀とも取れる機動性に、元とジャンヌは体力を大幅に削っていた。

 

『はぁっ、はぁっ!!』

 

「このスピード……桁違いだ!どれだけ持つか……」

 

 すると、スタートが2人にアドバイスを送る。

 

『ハジメ、いつもより少し弱めに踏み込むようにしろ。ジャンヌは周囲DNを操作して耐Gフィールドの強化再構築を!』

 

「スタート?」

 

『わ、分かりました……っ!』

 

 スタートの指示のままにそれぞれ機体の操作に変化を生じさせる。直後皇帝機の杖から再度DNFが展開される。いくつもの球体が追尾弾として襲い掛かってくる。それを先程のような瞬間移動に近い機動よりは遅い、しかしエラクス下での動きに引けを取らないスピードで回避し、ブレードガン・Xで追尾弾を撃ち落としていく。

 先程よりも負荷が軽い。これならまだ戦える。ブレードガン・X構えなおし、皇帝機に突撃する。先端を向けて突撃するガンダムに、皇帝機もマントを閉じて露わになったビーム砲を放射、近づけないようにしてくる。

 

『弾幕、でも……!』

 

「この機体なら、行ける!」

 

 ジャンヌの言葉に肯定して、イグナイターを突撃させる。ブレードガン・Xを向けての突撃で、剣に纏ったDNの膜が敵のビームをかき消して突き進む。そのままブレードガン・Xがマントパーツと激突し、拮抗する。

 互いの兵装がぶつかり合う中、マントを貫こうと機体の出力を上げる。徐々にビームシールドを押し切り、刃が内側に侵入していく。だが皇帝はそこで機転を利かせる。防御状態のマントをビームシールドが発生したまま開放、機体を外側にはじき出す。

 

「っ!?」

 

『調子にのるな、ガンダムッ!!』

 

 受け流された背後に、皇帝の杖によるビームの連弾が飛ぶ。加速の勢いを修正して回避運動を取る。連弾を回避しながらブレードガン・Xをガンモードに切り替え、射撃戦に移行する。どちらの機体も並み以上の機動性と防御力で決定打にはならない。どちらかと言えば回避に割り振れるこちらに優位があった。

 機動性でこのまま撹乱すれば……そう思った元の考えは皇帝機に起こった1つの変化で覆されることとなる。皇帝機が紅く光を放ち始めると、跳ね上がった機動性でこちらに距離を詰めてくる。リミッター解除状態のこちらに追いすがるほどの機動性向上に危機感を抱く。

 

「動きが変わった?」

 

『ハジメ、気を付けて!』

 

 ジャンヌからの警戒の言葉通り、皇帝機は錫杖にビームの両刃斧を形成させて斬りかかってくる。

 

『ぬあっ!!』

 

「っ!くっ!」

 

 エラクスとも勝負できるほどのスピードでの斬撃を、こちらもブレードガン・Xで捌く。だが相手の勢いが乗っており、押されつつあった。

 いきなりあのような性能強化を果たすなど、普通あり得ない。アルスから聞いていたマキナスのMSの新たな機能「マキシマイズ」は機動運動時のみの機動性能強化機能のはずで、その時のみの紅い残像が生まれると聞いていた。だが皇帝機は赤く光を放ってから機動している。あべこべの状況に理解が追いつかない。

 しかし否が応でもそれが現実であることをブレードガン・Xの破壊により理解させられる。返す刀の如く戦斧状の錫杖を逆袈裟切りに踏み込まれる。

 

『死ねッ!』

 

「誰が!」

 

 右シールドに戦斧の一撃が突き刺さる。ビームマシンキャノンがスパークを散らせる。だがタダではやらせない。

 

「お返しだ!」

 

『ちぃ!!』

 

 反撃に反対のビームマシンキャノンのビームソードを展開して切り上げる。攻撃は敵の肩部装甲を斬り裂くが、ビームマシンキャノンの損傷でこちらは右のシールドをパージせざるを得なくなった。

 主兵装が次々と削られていく現状はかなり厳しい。しかしこちらは遂に敵の機体に損害を与えることに成功する。肩という影響に少ない箇所だが、削れたことに意味がある。先程の驚愕でやや削がれた勢いをここから取り返して行けるというモチベーションに持っていく。

 

「まだだ、ファンネル、マキナ・エリミネイター!!」

 

 更にガンダムの反撃は続く。フェザー・フィンファンネル2機、そしてウイング下部スラスターの実体剣「マキナ・エリミネイター」を空中に放った。ファンネルが水を得た魚の如く空中を飛び回る。

 マキナ・エリミネイターも推進機構がない外見にも関わらず、ファンネルと同じように空を飛ぶ。射撃のファンネル、斬撃のエリミネイターが皇帝に襲い掛かった。

 

『っ!おのれっ!!』

 

 皇帝の機体は杖をライフル形態に移行させて迎撃する。ビームマシンガンとしての弾丸で両兵装の動きを封じてくる。こちらは右腕部掌のD・フィストイレイザーとビームマシンキャノンの連弾でそれを妨害する動きを展開する。

 ファンネルからの弾幕とマキナ・エリミネイターの突撃で相手を撹乱していく。しかし皇帝も攻撃を耐え忍びながら、反撃の一撃を繰り出す。

 

『喰らうがいい。皇帝の裁きの鞭を!』

 

『DNA 皇帝の断罪鞭(エンペラー・ジャッジウィップ)

 

 錫杖の先から形成した紅いビームの鞭が周囲の空気を振動した。唐突な範囲攻撃は正確で、ファンネルが撃墜される。マキナ・エリミネイターだけは剣の部分で受け流し、破損を防ぐ。

 

『ファンネルが……』

 

 ファンネルを失ったイグナイター。攻め手を1つ失ったことになったが、負けじと元も渾身のDNFを繰り出した。

 

「ディメンションノイズフルバースト!!」

 

『Ready set GO! DNF、「ディメンション・ブレイカー」!』

 

「行けよ!!」

 

 右手に高純度DNが集中し、手を開く。かつてアレクを打ち破った必殺の一撃。距離を急速に詰めた上での攻撃で避けるのは難しいと思われた。が、皇帝機は紅き輝きで攻撃を避ける。

 

「っ!!」

 

『もらった!』

 

 空を切った掌。伸ばされた手を皇帝も逃さない。すかさず錫杖の先を剣へと変化させて斬り上げた。だがしかしその攻撃は飛び回る機械殺しの剣が防いだ。元の危機察知の意志に反応したのであった。突発的な防御に、皇帝が困惑する。

 

『くっ!?うろちょろと……』

 

「隙だらけなんだよ!」

 

 再び使用するDNF。今度は脚部のビームブレイドが展開し、右足に高純度DNが集中する。空中を蹴る様に飛び、身体を傾けた状態から回転蹴りを上からたたき入れる。

 

『Ready set GO!DNF、「ディメンション・スパイク」!』

 

「いけぇ!!」

 

 二度目のDNF。それを皇帝は避けきれないと判断しウイングを閉じマントで防ぐ。ビームシールドとDNFが激突する。どちらも最大出力で拮抗し合う。このままでは抜けない。だがシュバルトゼロガンダムには、まだ切り札がある。

 どれだけの負荷がジャンヌにも掛かるか分からない。しかし使うなら今しかないとガンダムのコンピューターに、躊躇いなく切り札の使用を宣言する。

 

「エラクス、リスタート!」

 

『なんだと!?』

 

 制限リミッター解除状態ではあったが、エラクスのクールタイムは稼げている。再びガンダムが蒼く染め上げられる。機体のジェネレーターからは既にレッドゾーン到達がけたたましく告げられるも、もとよりこの一瞬しか使う気はない。跳ね上がった出力で皇帝機をマントごと蹴り砕く。同時に敵の左腕も斬り裂いた。

 直後にエラクスが再び強制解除された。連続負荷により機体の性能が更に低下する。その隙に容赦なく皇帝の反撃が始まる。

 

『小癪な真似を。もう動けまい!』

 

「づぅ!!あぁ!?」

 

『うぐっ!?っ~!!』

 

 残る右腕に握った錫杖からビームウィップを展開し、ガンダムの機体を砕いていく。何とか致命傷を避けるようにするが、それでも限界があった。2人にも徐々にフィードバックダメージが積み重なっていく。

 まだ終われない。元は強く心に言い聞かせる。目の前の敵を倒さなければ、もっと多くの犠牲が出る。強く意識を持って攻撃を耐え忍ぶ。逆転のその時が来るまで、何としてでも生き残るのだ。2人で。

 

 

NEXT EPISODE

 




EPISODE80はここまでとなります。さて、いよいよ次が最後のEPISODEですよ(゚∀゚)

ネイ「あれ、次が最後なんです!?」

あ、正確にはLEVEL1のEPISODEと区切る話が最後になるって話です(´・ω・`)まだEPILOUGUと黒の館DNも残っていますので。

グリーフィア「でも次で最後なのね。どっちも満身創痍、元君は皇帝の野望を止めて、平和をもたらすことが出来るのかしら~」

ネイ「つ、次が気になるよ……」

さて、この後どうなるのか?EPISODE81も是非その眼で見て、結末を見届けてください!

グリーフィア「じゃあ、ジャンヌ達にバトンターッチね!」


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EPISODE81 変わる明日への希望6

どうも、皆様。引き続きご覧の方は改めまして、遂にこのガンダムDNも第1部ことLEVEL1の最後まで迎えます、作者の藤和木 士です。

レイ「エピローグを抜いての最後の話!アシスタントのレイだよっ!」

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです。いよいよここまで来ましたね」

本当はもう少し早く終わりそうかなって思っていたんですけどね……2話連続投稿でも短くならなかったよ……(´・ω・`)さて、EPISODE81、公開です。

レイ「元君達大ピンチだよ!!でもきっと逆転できるって信じてる!」

ジャンヌ「既に満身創痍ですが、それを乗り切ってこそ物語の主人公と言うべき存在です。頑張ってもらいたいです」

さぁ、最後の激闘を制し、明日への希望は繋がるのか?それでは本編をどうぞ!(`・ω・´)


 

 

「うぐっ!?っ~!?」

 

 体に痛みが走る。実際に戦っているハジメが受けたダメージが、サポートであるジャンヌの身にも返ってくる。軍人ではないジャンヌにはフィードバックダメージでも大きい一撃となる。

 今すぐ泣きたかった。しかしジャンヌは涙を必死にこらえた。ハジメに余計な心配を掛けさせたくない。機体のコントロールの方に意識を向けて紛らわす。ジャンヌへのダメージに気づいたハジメが攻撃を受けながら呼びかける。

 

『ジャンヌっ、大丈夫か?』

 

「大……丈夫っ!だから、早くあいつを……皇帝を!」

 

『…………分かった。もう少しだけ耐えてくれ』

 

 ジャンヌの自棄にも似た請願を了承するハジメ。機体のあらゆる箇所が既にビームウィップの熱で溶解しつつある。急所を逸らしつつ反撃の時をジッと待つ。

 その時は遂に来た。皇帝のビームウィップをシールドで弾いた直後、イグナイターのスラスターが噴かされる。皇帝がその進撃を防ぐべく杖を細かく操作してビームウィップで突きを放つ。

 

『甘いっ!!』

 

 直刀へと変化したビームの塊がガンダムの左のシールドを貫く。ビームマシンキャノンも貫通されていたが間一髪でシールドをパージし、内側へのダメージは防がれる。シールドを身代わりにマキナ・エリミネイターを長槍へと変形させて、ハジメが仕掛けた。

 

『行けっ!』

 

『ぐっ!?この程度ォ!!でぇい!!』

 

 突き出された槍の一撃を、皇帝はギリギリ回避する。左の腕がなくなった箇所で空振りさせると錫杖のビームを解除する。貫かれていたシールドが落下していく。そして杖からビームの斧を形成させて追い払うように振り上げた。瞬時にガンダムが身を引くが、マキナ・エリミネイターが接触し、宙を舞う。

 完全に逆転された。弾かれて安定しない機体に皇帝が追い打ちを行う。

 

『これで、終わりだ!!』

 

『ハジメっ!!』

 

 杖の先にビームサーベルが展開される。その刃は真っ直ぐとイグナイターの胸部動力、DNジェネレーターを狙ってきている。貫かれれば死が訪れる。その恐怖にジャンヌは思わず叫んだ。

 

(ここまで、なの?)

 

 諦めが脳裏をよぎる。どうあっても何らかの被害が及ぶ状況。ガンダムでも避けるのが無理なのではと思ってしまう。しかし、ジャンヌは信じた。ハジメなら、出来る。護ると言ってくれたパートナーをジャンヌは信じて、機体の出力を安定させた。

 

(お願い、ハジメ……っ)

 

 祈りを込める。その祈りは、届いた。

 

『ジャンヌ、目を閉じてっ!!』

 

『終わりだっ!!……ちぃ!』

 

 ハジメの声が飛ぶ。直後機体に衝撃が走る。同時にフィードバックダメージが体に襲い掛かる。左胸近くと背中へのダメージ。痛みに堪えつつ損傷箇所を確認する。破壊されたのは左胸部の一部と左ウイング。皇帝機の突き出された一撃をその位置にずらして回避したのであった。

 機体へのダメージは避けられなかったが、それでも危機を回避した。そして、それが一気に戦局を決することとなる。

 

『終わるのは、あんただ!』

 

 死刑宣告とも取れる言葉を発するハジメ。その手にはビームサーベルが握られていた。一瞬の出来事だった。腕部から取り出したビームサーベルの柄は既に皇帝機の胸部に突きつけられていたのだ。その事実に皇帝も気付いた。

 

『しまっ……』

 

 だが、皇帝が動く前にハジメも行動していた。ガンダムのシステムが、最後の一撃となるその技の名を告げた。

 

 

 

 

『Ready set GO! DNF、「アッシュ・ヴァルスラッシュ」!!』

 

 

 

 

 今までのガンダムのDNFの名で聞いたことのなかった名前だ。しかしジャンヌの記憶の片隅にその名前があった。それは彼女の父が使っていた、必殺の一撃の名前だった。創世記の古い文献から得てDNAへと生まれ変わらせた技。ジャンヌは幼い時に父からその名を聞かされたのである。

 その時、父は言った。

 

『この技は大昔の英雄が使っていた技なんだ』

 

『おおむかしの、えいゆう?』

 

『そう、その名はガンダム。この世界を誕生させ、ドラグディアにもいたとされる最強のMSなんだよ』

 

『へー、パパすごーい!』

 

 幼き日々が蘇る。果たしてハジメはこの事を知っていたのだろうか。だが感慨にふける間もなく、ジャンヌの意識は目の前の皇帝機に再び向けられる。

 ビームサーベルより発振された蒼き光刃が、皇帝機を貫く。胸部を貫き、バックパックを弾き飛ばすほどの威力だ。貫かれた皇帝の苦痛の声が響く。

 

『ぐ、ぐぉぁ!?』

 

 機体が苦痛に震えるかのように振動する。だが皇帝もまだ諦めておらず、錫杖の先を鎌の形に変化させてガンダムの背中を狙おうとする。警報が危機を知らせる。

 

「ハジメ、後ろっ!」

 

『分かってる!』

 

 声に応えて一度剣ごと機体を引かせるハジメ。その勢いのままぐるっと回り、剣を振るった。光剣は皇帝の手に握られていた錫杖を持ち手ごと両断した。象徴を二度にわたって死に至らしめた元凶を今一度破壊する。

 

『これで、終われよ!!』

 

 そしてDNF状態の光剣で皇帝の機体を切り刻んでいく。繰り出される斬撃が、たちまち皇帝機を解体していった。トドメに再びジェネレーターを首の根元から差し入れて貫通させた。無惨なるダルマ状態になった機体。皇帝の苦悶に満ちた声が途切れ途切れになって流れる。

 

『……馬鹿な……こんな平和ボケしたようなやつに……我の、野望が……私の、望みが……』

 

『望み、か。望むのは自由だ。だけど、仲間の事を捨て駒に使うようなやつの望みなんて、たかが知れてる。それを平和ボケっていうなら、俺はその平和に惚気たやつでいたい。そのために俺は、お前の野望を全て(ゼロ)に戻す!』

 

『……あああああぁぁぁぁあああぁぁぁあぁ!!!!』

 

 背を向けた直後、皇帝機は爆発を起こす。DNジェネレーターにも引火して、空をDNが埋め尽くす。

 

「やった……やりましたよ、ハジメっ!!」

 

 皇帝を討った。作戦目標の達成に思わず喜びの声が漏れる。だがまだ終わりではなかった。ハジメが進撃を続けるマギア・マキナスにガンダムの視線を向けて告げる。

 

『いいえ、お嬢様。まだです。まだ、あれが残っている』

 

「っ……そうですね」

 

 満身創痍状態の機体。しかし止めなければいけない。次なる目標に目を向けた。

 

 

 

 

 皇帝は止めた。しかしまだ止めなければいけないものがある。砲撃を受けようが侵攻を止めないマギア・マキナスを見つめる。皇帝による強制操作は皇帝が死んでも止まらない。撮るべき行動は2つ。制御プログラムを書き換えるか、動力を破壊するか。

 マギア・マキナスの周囲は激しい射撃戦が展開されていた。マギア・マキナスの対空砲火でドラグディアの機体は近づけずにいた。突破できるとすればガンダムだけかもしれない。すると、そのタイミングで撤退していたアレク達が合流を果たした。

 

『ハジメ、ジャンヌ、無事か!』

 

『アレク隊長!ローレインさんも』

 

 激突には間に合わなかったが、援軍に来てくれたことは感謝しなければいけない。文句を垂れ流しながらも合流した面々に指示を要請する。

 

「遅いですよ、隊長。既に皇帝は撃墜しました。機体の回収をお願いします。お嬢様、皇帝機の撃墜地点とアルス達のいる地点を送ってあげてください」

 

『は、はいっ』

 

『俺が行こう。ティット、シレン、来い』

 

 元の声に上ずってしまうも素早くアレク達にそれぞれの居場所のデータを送信するジャンヌ。データを受け取ったB班隊長のエルドがティット、シレンのコンビを連れて落下地点へと向かう。アレクは元からの指摘に謝罪しつつも、送り込んだ助っ人について訊く。

 

『すまない。しかし、皇帝をやったのか……アルスは間に合ったか?』

 

「えぇ、彼がいなければ危なかったです。彼らの救助を」

 

『分かった。……それで、お前はどうする』

 

 どうするのかと問われると元は視線を侵攻するマギア・マキナスに向けて答える。

 

「あれを止めます」

 

『あれって、マギア・マキナスかよ!?』

 

『流石にアレを今のお前が止めるのは無茶だろ!』

 

『そうです。皇帝を撃破しただけでももう十分のはずだ。ジャンヌ・ファーフニルもいるというのに……これ以上の無茶は……』

 

 動揺が応援に来たローレインやカルマ達に走る。既に機体は左腕と左ウイングが喪失。残る右腕や脚部も損害が多数出ており、まともに戦闘できる状況ではないだろう。

 しかし、誰かがやらなければいけないことだ。それに皇帝の所業を止めるとジャンヌに誓った。ジャンヌも元と共に行くことをローレイン達に告げる。

 

『すみません。でも私が元と約束しましたから。希望を消し去ろうとする皇帝の行いを許せないって』

 

『ジャンヌ・ファーフニル……』

 

『だけど武装が……』

 

 武器もないのにと言おうとするカルマ。しかしアレクがカルマの言葉を遮り、口を開く。

 

『ハジメ、こいつを持っていけ』

 

『隊長さん!?』

 

 アレクは自機が臨時で装備していたライフルを差し出す。これには突撃反対派のローレインも驚く。元は突き出されたライフルを掴んで詳細を聞く。

 

「アレク隊長、これは……」

 

『ドラグーナ・コマンド用のライフルだ。対した戦力にもならないかもしれないが、射撃武装があるだけでも十分だろう』

 

 そう言うアレク。つまりそれは元があれと立ち向かうことを許可するということだった。行くことを決めたとはいえ、その行動に躊躇いを感じて元は聞き返す。

 

「いいんですか?」

 

『いいも悪いも、お前らが決めたことなんだろう?なら今の俺がどうこういうことじゃない。だが1つだけ言っておく。俺の彼女やその妹さん、お前のクラスメイト達を泣かせるような結末だけは見せるな。いいな?』

 

「!……はい!」

 

 アレクなりの気前のいい激励に元ははっきりと応答する。ライフルを受け取ると機体のシステムが展開する。自動的にプログラムが自立起動していく。そしてそれは起こった。

 破損した左ウイングが「再生」する。そう、ウイングがもとに戻ったのである。周囲からDNが集中し、再びウイングだけを作り上げたのであった。急な再生にカルマやフォウルが驚きの声を上げた。

 

『さ、再生したっ!?』

 

『な、何で!?』

 

 どうやってかという疑問は元やジャンヌも答えは見つからなかった。しかしこれもまたガンダムの機能なのだろう。更にライフルが一度DNに分解されると、今度はブレードガン・Xへと再構成される。アレクもその挙動を見て驚く。

 

『これは……お前がやったのか、ハジメ?』

 

「……いや、俺も分からないです。スタート」

 

 すぐにスタートを呼び出す。するとそのOSは自信満々に肯定した。

 

『あぁ。機体に残っていた変換していない武装と今のビームライフルを、シュバルトゼロガンダム・イグナイターの武装へと変換した。これでまだまともに動けるだろう?』

 

 再構成という言葉にため息が出る。相変わらずガンダムはとんでもない機能を持っている。しかしそれも今はありがたい。推進機能を回復させたイグナイターのウイングを立たせて、コールする。

 

「まったく……。シュバルトゼロガンダム・イグナイター、マギア・マキナスの侵攻を阻止する!」

 

 ウイングから高純度DNが放出され、シュバルトゼロガンダム・イグナイターが飛翔する。仲間に見送られ、最後の戦場へと向かう。

 

 

 

 

 マギア・マキナスへ接近するイグナイターに対し、対空砲火が襲ってくる。先程戦闘した時と同様の激しさでガンダムを近づけさせまいとしていた。あの時とは違いこちらも満身創痍で一歩誤れば撃墜されかねない。

 

「ふっ、はっ!」

 

 慎重に、かつ迅速に回避していくイグナイターはDNFで貫いた穴へと飛び込む。何とか無事艦内に入ることは出来た。しかし問題はここからだった。動力炉を止めに行くか、あるいはコントロールを奪取しに行くか。そして動力炉がどこにあるのかという問題だった。

 皇帝に協力していたアルスも動力炉がどこにあるかは知らない。一番なのは大元の艦首へ向かい、そこで艦内見取り図をダウンロードすることだ。しかし艦首にはまだ多くの皇帝派がいる可能性がある。生身であれ、MSであれダウンロードする間に狙われれば厄介だ。アレクが司令部に頼んで応援が来るとは言っていたが、どれほどでたどり着けるか怪しい。

 取るべき判断に迷う元。するとオープン回線から何者かが話しかけてくる。

 

『ガンダム!動力炉ならそのまま左へ行くッぺ!』

 

「?この声……」

 

 声の感じに聞き覚えがあった。しかし思い出す前に声の主は簡単に自己紹介する。

 

『お前さんに熱烈すぎて暴走したファンだっぺ。けど今はもうどうでもいい。動力炉までのルートをナビゲートすんべ。中にはまだ生きてる迎撃プログラムもあっからな』

 

『ハジメ……どうします?』

 

 訛りの混じった口調にジャンヌが対応に困る。誰なのか分からないというのも理由だろう。しかし元はそれが誰なのか分かった。そしてこれまでの敵のMSを誰が開発したのかも、納得した。

 おそらくその人物もこの中にいるのだろう。だからこそナビゲートが出来る。元はそれとなく正体にさわりを入れる。

 

「いいのか。一度斬ったような相手に」

 

『フン。今も傷口は痛むさ。だからこそ皇帝達の機体を作った。けど、それを全部お前さんは超えて来た。怒りを通り越して脱帽しただよ。艦首には皇帝派がまだいる。さぁ、どうするっぺ?』

 

 元の言葉に自嘲気味に返すその人物。完全に相手が分かった。それでもなお信じるのは難しかったが、彼が置かされている状況を察すると、元はその賭けに乗った。

 

「……分かった。アンタを信じる」

 

『ハジメ!?』

 

『ははっ、信じるだなんて、わての昔じゃ聞くことのなかった言葉じゃて。なるべく迎撃システムの少ないルートを教える。大半は壊れとるが気ぃ付けい』

 

「了解」

 

 ジャンヌの反対に等しい呼びかけを振り切って、声の主に従う。声の主も呆れを返すも元に進行ルートを伝えていく。イグナイターはその人物の声を頼りに、動力炉を目指した。

 曲がって直進、エレベーターのルートで降下、迎撃システムを突破しながらガンダムは動力炉を目指す。ジャンヌも疑いを持っていたが正確なルート提示に何も言わなかった。そして何度目かの迎撃しシステム突破後、潜り抜けたドアの先で広い大きな部屋へと到着した。

 

『動力炉だっぺ!』

 

『じゃあ、あれを壊せば……!』

 

 遂に到達した動力炉部屋に、希望が見えてくる。すかさずブレードガン・Xを構えて発砲する。が、ジェネレーターから発生した粒子の壁に妨害を受ける。

 

「DNウォールか!」

 

『そんだけじゃない、迎撃システムがある!』

 

 ナビゲーターの声に合わせるかのように迎撃システムに発砲される。ビームにより最後のブレードガン・Xが貫かれ爆散する。更に迎撃システムの弾丸が襲い掛かるが、間一髪死角となる裏に隠れて危機を脱する。

 しかしブレードガンを失って武装はわずか。応援を待つにしてもこの状況を伝えなければならない。それ以上にそれまでの間にマギア・マキナスが自爆を行うかもしれない。決断しなければならない。

 

『ブレードガンが……』

 

『迎撃システムをやっても、フィールドをどう突破する気じゃ……』

 

 元は考える。どうにかしてあの迎撃システムを同時に撃墜して、あのフィールドを超えた上で一撃を叩き込む必要があった。それをこなせる武装が、今この機体にあるのか。考えを巡らせる。

 そこで1つの戦いが脳裏に呼び起こされた。それはガンダムの敗北の記憶。だが同時にこの状況を打破できるかもしれない、1つの考えであった。元は2人に告げる。

 

「……行くぞ」

 

『ハジメ?』

 

『なんか思い付いたようやな。……身勝手かもしれんが、頼む、わてらの象徴を止めてくれ!』

 

「あぁ。ドラグディアもマキナスも、救ってやるさ!!」

 

 宣言と共にガンダムは再び飛び出す。迎撃システムが一斉に反応する。攻撃態勢に移る、その前にDNFを起動させた。

 

『Ready set GO!DNF』

 

 拳に黒い竜巻が展開される。それを地面へと打ち付けると、黒い4つの竜巻が清々された。しかしそれらは竜巻と言ってもいずれも高純度DNの変化体。高威力の粒の塊が防衛システムをそれぞれ壊していく。すべての防衛システムを破壊すると、続いて竜巻はジェネレーター前部に集合、1つの竜巻へと変化させた。

 そこにシュバルトゼロガンダム・イグナイターも前部に飛び出す。前に位置取ると蒼く輝き竜巻に向けてジャンプする。そして竜巻に向かって蹴りを放った。かつてヴァイスインフィニットに負けた時、最後の一撃として喰らわせようとした目くらましの竜巻と本命の蹴り。それらを1つの攻撃に合成したものをエラクスの光と合わせて必殺の一撃へと昇華させる。

 

『「ドラゴニックストーム・クロスハザード」!!』

 

「壊れろぉぉぉぉ!!」

 

 ジェネレーターが生みだす防壁に対し、最大火力が打ち込まれる。拮抗するもガンダムのDNのウイングが形成され、一気に突破する。ジェネレーターの見える内側にたどり着く。

 既に押し返そうとDNが再生成される。押し返される前に、イグナイターが最後の一撃を繰り出した。

 

『Ready set GO!DNF、「ディメンション・ナックル」!』

 

 それはジャンヌを救い出した一撃。初めてガンダムとして自らの意志で戦った証とも呼べる技。それをジェネレーターに対し、勢いよく叩き付けた。

 鈍い金属音が響く。同時にジェネレーターがへこみ、周囲のDNがはじけ飛ぶ。漏れ出すDN。ガンダムが距離を取った直後、ジェネレーターが、マギア・マキナスの動力炉室が爆発を引き起こした。

 瞬時に部屋の外へ逃げて難を逃れる元達。爆発が収まると、次第に降下していくような感覚を覚える。艦も斜めになっていく。そしてその数十秒後、地面へと不時着した。それから回線に歓声が沸き立つ。その声に2人も口を開く。

 

『これって……もしかして』

 

「やった……のか?」

 

『あぁ、やったで、お二人さん!』

 

 ナビゲーターの声にようやく安堵した2人。マギア・マキナスは停止したのである。

 

 

 

 

 M.D.1428、7月9日16時51分。この日、マキナ・ドランディアの2大国家「マキナス」と「ドラグディア」の大戦争は終結した。圧倒的劣勢と思われたドラグディア軍はマキナス側の策謀により北と南を制圧、中央も戦争を引き起こした皇帝一派の戦術の杜撰さと信頼関係の薄さを突いて勝利。対してマキナスは北と南の戦力差逆転により降伏、中央も皇帝一派の壊滅と皇帝ギルフォード・F・マキナリアスの戦死により瓦解。都心に残っていた皇帝一派も戦線を離脱し、戻ってきたマキナス軍の精鋭により捕縛、マギア・マキナスの生存者と合わせて戦犯として拘束された。

 皇帝を失ったマキナスはドラグディアに和解を申し入れる。ドラグディアもこれに応じ、翌日10日、1000年以上にわたって続いた竜人族・機人族の長きに渡る大戦争は終わりを迎える。これを成したのは、ドラグディアの竜騎士、漆黒のガンダム「シュバルトゼロガンダム・イグナイター」とそのパイロットによるものが大きい。後年、この大戦は「機竜大戦」と呼ばれ、ガンダムのパイロット2人はこう呼ばれることとなった。

 

「ドラグディアの両雄」、あるいはそれぞれを「黒き竜騎士(ブラック・ドラグナイト)」「銀の詩巫女(シルヴァー・キャーヴァ)」と。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。LEVEL1の戦い、それを制したのはシュバルトゼロガンダムとドラグディア軍でした(´-ω-`)

レイ「大勝利!だねっ」

ジャンヌ「最後は敵味方関係なく、災害を止めるべく両軍が協力して止めることが出来ました。けど名前は出ていませんが、まさかあの人が元さんに協力するとは思いませんでした……」

レイ「ほんとだよー、ガンダムを倒すってことでガンダム作ったけど、最後は本当のガンダムの力に感服したんだね!」

どういう経緯であれ、シュバルトゼロガンダム・イグナイターは新たな時代の火付け役となったということです(*´ω`)異世界戦争の結末と次なる戦いには次回投稿するEPILOUGE3つで語っていくつもりですので、EPILOUGUをお楽しみに。それでは多くは語らず、今回はここで終わりとします。

ジャンヌ「次回のEPILOUGEも是非ご覧くださいっ。それではまた次回」


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LEVEL1 EPILOUGE1 勝ち取りし平和、世界を超えて1

どうも、皆様。エピローグは初です、藤和木 士です。と言ってもまだ物語は続くんですがね(´Д`)

ネイ「アシスタントのネイです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよ~。エピローグなんて大層なものを用意するだなんて、何を考えているのかしらね~この作者君」

いや……ふとガ○エアの文庫読んでたんだよね。そしたら毎巻エピローグで締めくくっていたから、この作品でEPILOGUE入れるとしたら部の終了当たりかなぁって(´・ω・`)
というわけで今回はEPILOGUE3話分の投稿です(`・ω・´)

グリーフィア「ふぅん。例に倣ってことね」

ネイ「でも確かに前作は章の終わりがあっけなかったような気もしましたからね。黒の館とかもあくまで設定集に私達が声入れているようなものですし」

あ、とはいえ黒の館DNはいつも通りやるよ(´-ω-`)イグナイターとか解説しないとだからね。

グリーフィア「つまり、いつもの〆方ね」

ネイ「それが私達ってことなんですね。作者さんの中では」

というわけで感動と次へと続く第1部ことLEVEL1エピローグをどうぞ(´Д`)


 

 7月10日、マキナス首都の政府臨時公館にマキナス、そしてドラグディアの多くの政府関係者、あるいは軍高官が集まっていた。その席に並ぶのはいずれも高齢の如何にもお偉いさんと言ったような顔ぶればかり。そんな中に紛れて並ぶ元とジャンヌは一番目立つステージ脇の席にいた。

 この戦争でもっとも大きな働きをしたということで、2人はグランツの補助を兼ねてその隣に並んで座っていた。しかし緊張感が凄まじい。着ている服はドラグディアの軍服。身だしなみはきっちりとしている。いくら以前ドラグディア国会議事堂に入ったことがあると言っても、その時とはわけが違う。しかもその時は攻め入るという別の目的であったが故に、こういった場所に正装に身を包んで迎え入れられるというのは重荷となっていた。

 

『では両国家代表、前へ』

 

 ドラグディア、マキナスの代表が前に出る。ドラグディアの代表はダン・クロス。今回の戦争終結を受けて、多くの国民からの信任を得た臨時から次期大統領と目される様になった。

 ダン達は条約締結のための書類にサインを始める。一秒でも早く、この時間が終わることを願った。ダン、そしてマキナスの代表が書類に目を通し、書き終わると司会の人物がアナウンスする。

 

『それでは皆様ご起立願います』

 

「っ」

 

「っと……!」

 

 要請に従い、起立する参加者。元とジャンヌも遅れないように素早く立ち上がる。全員が起立すると、国の代表者同士が向かい合う。司会が呼びかける。

 

『では両国家代表方の握手と共に、大きな拍手をお願いします』

 

 声に合わせて代表同士が握手を交わす。見ている側はそれを祝福する様に拍手を送った。早く終われと思っていた元ではあったが、この光景を見てようやく戦争が終わったと実感できたことは、とても良いことだった。それに自分が関われたことも。

 拍手する中、グランツが元達だけに聞こえるように言う。

 

「まさか自分の代で、ここまで大きく事が動くとは思わなかった。ファーフニル家とフリード家の呪いからの解放、1000年以上に渡って続いた戦争の終結……完全な平和にはまだ先は長いだろうが、それでも私の代でそれを迎えられたことを、誇りに思う。ありがとう、2人とも」

 

「グランツ総司令……」

 

「それは私達も同じです。グランツ司令がいなかったら、どこかで躓いていたかもしれません。でも、やっぱり一番大事だったのは、元がいてくれたことです。ありがとう、ハジメ」

 

「ジャンヌまで……はぁ」

 

 2人揃って元を称賛する。そう言われてしまうとこそばゆさを感じてしまう。感謝するのは、こちらの方なのだから。元は2人の言葉に返答する。

 

「感謝するのはこっちですよ。記憶のない、おまけに竜人族・機人族でもない自分をここまで信じて。ガンダムの力がどれほど偉大だったのか……」

 

「それは違うよ、ハジメ少尉」

 

 元の言葉にグランツは否定を一旦入れてから言う。

 

「確かにガンダムの力は凄まじかった。だが君をファーフニル家へと入れたのは、ガンダムがあったからかな?」

 

「あ、あぁ……」

 

 事実そうだった。ファーフニル家へ入れたのは、ジャンヌの一声があったからこそだった。その時の事を、ジャンヌはため息交じりに振り返る。

 

「恥ずかしい話、あの時はレイアさんの事で頭がいっぱいになっていて上の空でOK出していましたから……それがここまで大きな話になったなんて、信じられません」

 

「あはは……本当にその判断をしてくれたお嬢様には、頭が上がりませんよ」

 

「忘れてくださいっ。もう……」

 

 恥ずかしさでジャンヌが顔を背ける。そうこうしている内に拍手も鳴りやむ。たかれていたカメラのフラッシュも止み、条約締結は終了の方向へと向かっていく。この世界の新たな時代の始まりであった。

 

 

 

 

 条約締結会議終了後、外に出た元は首元のネクタイを緩め、大きく息を吸う。ため息のように息を吐いて、これまでの息苦しい感覚から解放される。

 

「すぅぅ……はぁぁぁぁー……あー、ようやく解放された」

 

「緊張しました……」

 

「お疲れ様。とても戦争を終結させた両雄には見えないね」

 

 2人の反応にグランツはそのように言う。元自身は年齢の事もあって多少問題だろうが、ジャンヌの方はまだ仮にも学生。緊張したというのは仕方ないのかもしれない。それでも元もまだこういった儀礼の場に出るということは少ない為、息が詰まるというものだ。

 

「両雄とは言いますが、英雄って本当はそんなプレッシャーに弱かったりする人もいるんじゃないですかね」

 

「おやおや。謙遜されるとは……」

 

「おだてないでください……。さて、この後は待たせている人たちと合流ですか?」

 

 これ以上英雄の話題に触れられるのも嫌なので、話題を変える。実はこの後、ジャンヌの母クリエやグリューネ、それにレヴ達といった面々と共にマキナスのとある場所を訪れることになっていた。ファーフニル家とフリード家に関係する場所らしい。

 条約締結をしたとはいえ、まだマキナス側の不穏分子がいる可能性も含めて、マキナスとドラグディアの護衛隊に護られての訪問となる。イグナイターから戻ったシュバルトゼロガンダムもほぼ全損状態で出られない為、元も流石に今回ばかりは護られる側となる。

 

「そうだね。さて、では行こうか」

 

「はい」

 

「分かりました、総司令」

 

 迎えに来たアレク、リリー、フォーンを含めたドラグディアの護衛隊に護られて、元達は目的地へと向かうための公用バスに乗った。

 

 

 

 

 バスに揺られること5分弱、ジャンヌ達は目的地である「ラグナ・リーン国立美術館」へと到着する。美術館の敷地内にはドラグディア、マキナスの軍人が合同で警備に当たっており、貸し切り状態にあった。

 バスが停車し、護衛の軍人に先導されて降りていくと同じように護衛に護られて到着していた2日ぶりとなる待ち人の顔が見えた。ジャンヌはその人物目がけて駆け出していく。

 

「お母様っ!」

 

「ジャンヌっ!」

 

 護衛人の制止も聞くことなく、母の胸に飛び込む。一番会いたかった家族の顔を見られて、思わず飛び出したのである。母も人目をはばかることなく、娘の無事に歓喜して抱きしめる。

 2日しか経っていないのに、こんなにも母と会えたことが嬉しいのは初めてだった。やり遂げたこと、果たせなかったこと。色んなことを話そうと思うジャンヌだったが、上手く言葉に出てこない。そうしてやっと言葉に出来たのは、涙声だった。

 

「お母様、私、私……!」

 

「えぇ。あなたはちゃんとやり遂げた……いつだってあなたはお父さんとお母さんにとって、誇れる娘よ」

 

「う、うわあぁぁぁぁぁん!お母さんっ!!」

 

抱き合う2人に周囲の者達も敢えて口を出さなかった。2人の為に、今はそれが一番だったから。本当の意味で、ようやくジャンヌの呪いが解けた瞬間でもあった。

しばらくして涙声が収まると、ネアもジャンヌにおかえりの言葉を掛けてきた。

 

「お嬢様、無事でよかったです……」

 

「ネア……うん。帰ってきた、私……」

 

「まったく、本当の姉の私よりも仲のいい姉妹だこと」

 

 ネアとのやり取りに嫉妬を見せるグリューネ。そんなグリューネにアレクがフォローする。

 

「俺としてはグリューネを独り占めできると思うと、嬉しいかな」

 

「あらあら、妹をぞんざいな扱いされちゃうと怒るわよ~」

 

「今日くらいは許してくれよ」

 

「も~♪」

 

 バカップルという言葉が似合う絡みを見せる2人。とはいえそれを邪魔する者もいないのが事実だった。そしてジャンヌをネアに任せたクリエが、涙を拭いながらもハジメとフォーンの2人にも労いの言葉を掛ける。

 

「ハジメとフォーンもお疲れ様」

 

「いえ、奥様もお嬢様を任せて頂き、ありがとうございます」

 

「ハジメの戦い、しかとこの目で確認しました。危なっかしいところはまだありますが、こいつはちゃんと仕事を果たしました」

 

「フォーン様……そう言っていただけると、感謝の次第です」

 

 フォーンの思わぬ言葉に、ハジメが驚きを見せながらも喜んでその言葉を受け入れた。フォーンもハジメの救援(というよりジャンヌへの救援)に向かうべく、周囲のモビルスーツ掃討を行っていたそうだが間に合うことなく終戦を迎えたらしい。

 ハジメの戦果をグランツもまた評価する。

 

「そうだね。おそらくハジメ少尉はこの大戦でもっとも戦果を挙げたパイロットになるだろう。ジャンヌ君も含めて、エースパイロットの仲間入りだね」

 

「そ、そうですか?」

 

「あらあら、これはフォーンの後を継いで、うちの執事長にでもなってもらおうかしらねぇ」

 

 母はそのように言っておどけて見せる。果たしてどこまでが本当なのか。だがハジメが考えを口にする間もなく、レヴとリッドの2人が友人として無事を祝う。

 

「とにかく、お前が無事でよかったよ!」

 

「学園も無事を知ったら噂だらけね。少し前の騒動以上になりそうで」

 

「ま、英雄お二人さんより、恋人お二人さんって呼ばれるかもな」

 

「おいおい……」

 

 前の騒動、立てこもり事件直後はハジメとの間に噂が色々と流れ、2人とも対応に追われた結果無視ということになった。今回もそれで通しきれるとは思えない。何せ、本当にあったことで、大々的に報じられてしまうことになるのだから。人の噂も七十五日では収まらないだろう。

 しかもローレインが言った恋人二人というのもあり得た話だ。以前の学校での対決の話題もある。ジャンヌは自然と考え込んでしまう。

 

「…………」

 

「お嬢様?」

 

「え?ううん、何でもないです」

 

 ネアに尋ねられたが、その場では何でもないと返す。再会を喜ぶ中、グランツが本来の目的の方に話を戻した。

 

「さて、再会を喜びたいのもあるが、せっかくマキナスの方々にお願いしているんだ。目的の場所へ行こうか」

 

「分かりました」

 

「はい」

 

 グランツの言葉に皆従い、マキナス最大の美術館へと足を進める。国立というだけあって敷地がかなり広く、美術館の建物入り口までは長い。長い道のりを歩いて建物の中に入るとしっかりとした大理石の建物となっており、迎え入れるという表現が似合うつくりとなっていた。

 館内入場口から中に入ると、目に入る絵画の数々が出迎える。機械の人類とはいえ、絵画に興味がないわけではなく、展示品はいずれも紙に書かれていた。その展示数にレヴやリッドが周囲を見回す。しかしまだここが到達点ではなく、更に奥へと進んでいく。

 いくつか興味の惹く展示品がある中、先頭が立ち止まる。そしてグランツが到着したことを告げた。

 

「さぁ、見てもらいたいのはこれだよ」

 

「これは……」

 

 ハジメやレヴ達が小さく言葉を漏らしていく。そこに映るのは1つの油彩の絵画だった。左右に人、そして白と黒のMSが映っているのが分かる。そしてその間には翼を広げて空を仰ぐ、天使のような機人。しかしここにいる者なら機人が何なのか分かった。それはガンダム。中心の天使のようなガンダムを線対称に、黒と白の機体が対立するかのような絵だった。

 

「これって、確か……」

 

 戦争画にも歴史画にも見える絵画にジャンヌは心当たりがあった。美術の教科書でちらっと見たことがあったのだ。そしてその絵画の名前をグランツが口にする。

 

「『終誕の日』と呼ばれる絵画だ。マキナ・ドランディアの歴史を象徴する歴史画の1つ。ガンドが死の間際に見たいと言っていた絵でもある」

 

「終誕の、日……」

 

 そう、終誕の日。かつて救世主ガンダムが現れた後、ドラグディアとマキナスの民を導いたものの、再び戦争を起こした両国家に嫌気が差し、救世主は空へと帰ったその絵を描いたとされる絵の事だ。

様々な推測がなされているが、ほとんどが今も教科書に書かれている両国家の対立と天への帰還だった。向かい合う機体はドラグディアとマキナスの伝説的なエースであるとされているが、詳細はまだ分かっていなかったはずだ。

 現代まで続いていた戦争の始まりを示す絵。確かに父も死ぬ直前、この絵の事について言及していた気がする。父が見たかった絵をグランツ司令は自分達に見せたかったのだろう。するとグランツはこれを見る自分達に問いを投げかけてきた。

 

「君達は、この絵をどのように感じるかね」

 

「えっ……」

 

「どのように、ですか?」

 

 リヴァイ兄妹が頭を捻った。他の者達も違いはあれ同様に質問の意味に苦しんだ。グランツは助け舟として分かりやすく言い直した。

 

「簡単に言えば、これはどのような場面の絵だと思うか、と言いたいね。君達の感性のままに言ってくれて構わない。アレクやリリー君も答えてもらえるかい?フォーンとクリエ君は、少し待ってくれ」

 

「場面、ですか……」

 

「お……じゃない、自分も、ですか」

 

「……特に何もなければ、これはドラグディアとマキナスの再度の戦争に、愛想を尽かした救世主ガンダムが天へと帰っていくという場面を描いたもの、と記憶していますが……」

 

「わ、私もリリーさんと同じだと思います。学校の美術の教科書でそう説明されていたのを覚えていますから、おそらく……」

 

「ふむ……」

 

 リリーの考えにジャンヌも同意する。やがてネアやリヴァイ兄妹、アレク、ローレインも同じ答えを出す。全員同じ答えにたどり着いたと思われたが、2人だけ答えを出していない人物がいた。

 グランツは答えていない2人に答えを聞く。

 

「……君達はどう思う?グリューネ・サランディーネ、そしてクロワ・ハジメ」

 

「ハジメ?」

 

「グリューネも……何か引っかかることが?」

 

 ジャンヌとアレクはそれぞれのパートナーに問いかける。するとグリューネはグランツにこう提案した。

 

「んー……ハジメさんがそれなら、私はグランツ司令にだけ自分の考えを言ってもいいですか?」

 

「ほう?なぜだい?」

 

「えーとですね。ハジメさんに譲ろうかなと。まぁ私の答えが正解だったらちょっと驚きが半減しちゃうでしょうし。どうです?」

 

 グリューネからの提案の真意をジャンヌ達は理解できない。だがグランツ司令は分かったのかそれを許可した。

 

「いいだろう。では私の耳元で答えを呟いてくれるかい?」

 

「分かりましたー」

 

 そう言ってグリューネは自身の答えを明かした。グランツは特に何も言うことなく、頷くだけだった。そして残るハジメに問う。

 

「さて、ハジメ少尉。君の意見を聞かせてくれ」

 

 ハジメは体をグランツの方へと向き直らせる。やがて彼は自らの口から驚くべき考えを口にした。

 

 

 

 

「……これは、救世主にドラグディアとマキナスが立ち向かう絵、ですか?」

 

『!?』

 

 

 

 

 あまりにもとんでもない発想だった。恩人である救世主に対し、ドラグディアとマキナスが歯向かうなど、それは裏切りにも等しい。両国家の人物からしてみれば、それは冒涜にも取れる言葉だ。警戒していたマキナス、ドラグディアの護衛達も目を見張る。

 だがこれで終わりではなかった。続けてハジメは更に衝撃的な発言をする。

 

「それに、この黒い機体と白い機体……これってシュバルトゼロとヴァイスインフィニット……だったりします?」

 

「シュバルトゼロと、ヴァイスインフィニットだぁ!?」

 

「確かに、色は同じだが……」

 

 シュバルトゼロとヴァイスインフィニットとは、無論ハジメのガンダム、そしてレイアを連れて次元世界のどこかに消え去った白銀のガンダムのことである。そのカラーは黒と白。終誕の日に描かれた機体のカラーが一致していた。

 こじつけに近いが言われてみれば偶然にしては出来過ぎている理屈。それを聞いたグランツが納得したように頷くと先程のグリューネの事も話し始める。

 

「うむ。まさか2人とも同じ答えを出してくれるとは」

 

「え、姉さんも同じこと思っていたの!?」

 

「えぇ。概ねハジメさんと同じ内容。これを見て私は真っ先にそれが思い浮かんだわ。アレ君がそのまま同じ意見に流されると思わなかったけど」

 

「うぐっ!」

 

 恋人からの指摘に撃沈するアレク。とはいえ直接戦ったジャンヌもそれを連想できなかったことは少し気落ちしてしまう。

 グランツは話を続ける。

 

「昔この絵を見て、それに近い回答をした男がいた。ハジメ少尉のガンダムの欠片もなかった昔、ガンドがこの絵を見て、そう言ったんだよ」

 

「お父様が……!?」

 

 父の名前に驚愕する。父もハジメと同じ答えを出していたというのか。黙っていたフォーンもその時の事を語る。

 

「そうだな。あの時俺も一緒にいたから覚えている。あの時は馬鹿なことをと思ったが、今なら納得できる」

 

「そう。そして今ドラグディアの歴史研究家は、その多くがこの絵画の機体を現れた2機のガンダムに当てはめているのだ。救世主の件も含めてね」

 

 グランツから告げられる事実にジャンヌ達は言葉を失う。歴史が丸ごと覆されていくようで、もっと知るのが怖く思えてくる。

 空気が重くなる。だがクリエの一言が話題を転換させる。

 

「でもあの人は言っていたわ。救世主が自分達を害するのなら、その時は全力で戦うって。だけどそれが今は分からないから、今はただ明日の為に戦うんだって。要するに明日は明日の風が吹くってことよ」

 

「そうだね。そしてそれを今この場ですぐに出来るのは、ハジメ君だろう。だから私は君の意見が気になったんだ」

 

「そういうことでしたか……」

 

 質問の真意に納得するハジメ。困惑していた面々もクリエの言葉で気持ちをリセットする。難しいことは今考えても仕方がないのだろう。今は忘れることにしよう。

 

「さて、ではここでの用は済んだから、外に行こうか。そろそろ彼らも着いた頃だろう」

 

「彼ら、ですか……?」

 

 やがてグランツはここを出ることを伝えた。待ち人がいるということを伝えて。気になりつつもジャンヌ達は再び護衛に引率されて美術館の外へと向かった。

 

 

NEXT EPISODE

 




エピローグ1はここまでです。エピローグ2も引き続き是非ご覧ください。

ネイ「ガンダムが……敵」

グリーフィア「まぁこれは今後の布石って感じかしらねぇ。絵の詳細とかは出せないからまだどうとは言えないけれど」

あ、ちなみに終誕の日の絵は大体宗教画の最後の審判とかみたいな感じに描かれているイメージです。あの中央に審判者が立ってて周りに色んな人達がいるっていう。審判者が救世主ガンダムでその両側下方にガンダムが向き合ってるよって話です(´・ω・`)分からないかもですが。

ネイ「なんとなくは……」

グリーフィア「作者君イメージ画像描けないの?」

イメージですら酷いと思うから出せないんだよ……_(:3 」∠)_さてこの後誰が待っているのか?続きます。


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LEVEL1 EPILOUGE2 勝ち取りし平和、世界を超えて2

どうも皆様。引き続きご覧の方は改めまして、先週の投稿から挟んでディーバコラボブースター発売で一喜一憂した藤和木 士です。ジャンヌパラレルが当たらねぇ;つД`)

レイ「アシスタントのレイだよ!」

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです。それで珍しく行きつけの店で売られていたパラレルイラストのわたくしのカード買ってましたね」

だって!友人が言うんだもん!「これ逃がしたら買えないかもなぁ(煽り)(イメージです)」って!( ;∀;)幸い余裕はあったけどさ……。
さて、そんなことは置いて、エピローグ2です(`・ω・´)

レイ「絵を見て終わり!じゃないみたいだね。誰かと会うのかな?」

ジャンヌ「いくつか候補はありますが……誰と会うんでしょう?」

それではエピローグ2、始まります。


 

「やぁ、ドラグディアの皆様方。我がマキナスの美術館の展示、お気に召しましたでしょうか」

 

 美術館を出た直後、出迎えるように前に出てきた男性がそう言った。マキナス軍の制服を身に纏う男性と、その後方には3人の男女が待機していた。

 元達はまったくその人物の事を知らなかったが、グランツがその人物に向けて中での事を話し始める。

 

「あぁ、目的の物は拝見させてもらった。ガンダムのパイロットからの貴重な意見も聞けたことだしね」

 

「それはそれは。ドラグディア軍最高指揮官殿のお役に立てて光栄です」

 

 グランツとその人物は数年来の友人の様に語り合う。当然元達はその理由を知らない。話に夢中になるグランツにリリーがこちらを示す。

 

「総司令。彼らがまだ分かっていないようです」

 

 指摘を受けてグランツは思い出したように紹介をする

 

「おおっと、失礼。紹介しよう。彼はマキナス軍の最高指揮官である……」

 

「リヴィル・ゲート、階級はもちろん元帥だ」

 

「ま、マキナスの最高指揮官!?あ、さん……?」

 

 レヴが大きな声で真っ先に反応する。レヴほどではないものの、元も無論驚いていた。最高司令官がこんなところに来るなんて。こちらも最高司令官がいるものの、終戦直後にこんなことが実現するのは極めて異例なのではと思った。

 叫んだレヴの言葉遣いをリッドが慌てて窘める。

 

「ちょ、ちょっとレヴ!最高指揮官さんにいきなりそんな大声で……」

 

「ははっ、構わないさお嬢さん。何せ自分もいきなりこの座に収まることになったからね」

 

「と、言いますと……?」

 

 元が聞くと、ここまでの経緯を簡単にだが説明してくれた。実は戦争当時のマキナスの最高指揮官はマキナス皇帝ギルフォードの部隊に殺害されており、ギルフォードがその座を兼任する形になっていたという。皇帝の死亡により再び軍のトップ選出が必要になった。そこで彼が選出されたのであった。

 そこまでの経緯に肩を竦めて呆れ気味に語るリヴィル。

 

「まったく、穏健派の代表格とされていて気にしないことにしていたら、まさか自分がマキナス軍のトップになろうとは……」

 

「しかし、君の戦果はこの大戦において大きい。皇帝に反旗を翻し、ガンダムの救援を打診、こちらは断りこそしたが皇帝派に影響されない援軍出してくれた上、首都の皇帝派制圧……。皇帝派のほとんどを狩ってくれた君の功績は、今後のマキナスにとっても明るいもののはずだ。私はその功績をほんの少しばかり証明しただけに過ぎない」

 

「いや、私としてはあまり組織のトップに立ちたくないというのが本音でしてね。早く別の人に任せてしまいたい気分ですよ」

 

 話を聞く限り、どうもリヴィルという人物はこの件をあまり快く思っていないらしい。というより、面倒なようだ。それは英雄と呼ばれることを僻辞している元とも通じる考えであり、やはり上に立ちたくない、目立ちたくない人は一定数いるものなのだ。

 そんな会話の中でジャンヌがとあることに気づいて、それを指摘した。

 

「ガンダムの援軍……ひょっとして」

 

「あぁ、そろそろ彼らの事も紹介しないといけないかな。もっともそちらにいるガンダムのパイロット君は、1人は知っているだろうけど」

 

 最高指揮官の手招きに後ろで控えていた三人が前へと出る。その内1人はリヴィルの言う通り、元も十分面識のある人物であった。

 まず先に2人が挨拶していく。

 

「ハイド・エルセウルス。あの時も言ったがマキナスの象徴と共に戦う機械騎士だ」

 

「私は初めてだったわよね。フェルナ・ローリエ、そのパートナーの奏女官をやってます!ちょっとあの時は怪我をしていたんだけどね」

 

「怪我、ですか?もう大丈夫なんです?」

 

 怪我という言葉に合わせて、フェルナは服のわずかな隙間から包帯を覗かせていた。男性が見るにはきわどい位置に施されていたが、フェルナは恥じらうことなく胸元の包帯だけを少し見せて平気なことと事情を語ろうとした。

 

「大丈夫大丈夫。ちょっと皇帝派の人達に撃たれただけ。痛っ!?」

 

「馬鹿が……大丈夫でも何でもないだろ。起き上がるのだって大変でさっきまで車いすに座っていたっていうのに」

 

 しかし途中で傷と思われる胸元抑えて倒れそうになる。間一髪ハイドが支えて倒れはしなかったが、ハイドから心配とも取れる悪態をつかれるフェルナは恥ずかしそうに傷の具合を言わないよう懇願する。

 

「ちょ……人が傷隠して会いに来たんだから、言わないでよー!」

 

「恥を掻きたくないなら出なければいいのに……」

 

「あらあら、仲の良いことで♪」

 

 口喧嘩になるが、見ている側からすれば微笑ましさがあり、グリューネがすかさず指摘する。するとそれを足掛かりにフェルナは意地の悪い笑みを浮かべてハイドに反撃しようと試みる。

 

「えぇ、ハイドは私の事昔から気にしてたからね~」

 

「はぁ……単に幼馴染って言えばいいだろう。昔っから心配だったから、お前が奏女官候補になった時に機械騎士の採用試験に申し込んだっていうのに」

 

「それで、受かったんですね。竜騎士の採用試験も結構難しいとは言われているんですが、

きっと難しかったんでしょうね」

 

 ネアが気苦労を察する。リヴィルもそれを認めて、同時に彼がそれに見合った戦士であると絶賛する。

 

「そうだね。奏女官を護り、かつ象徴も護る。ドラグディアの竜騎士とやることは変わらない。彼も与えられた機体でこれまでに何度も戦場を乗り越えてきたエースだ。ガンダムとも対峙したこともある」

 

「ガンダムと!?」

 

「止してください。ガンダムのいた戦場で動いていたというだけです」

 

 ガンダムと対峙したという言葉にジャンヌが驚く。元も初耳の事実で興味を持つも、即座にハイドの言葉でそれが先程の戦闘かと思い、納得しようとした。が、ハイドの言葉を更にリヴィルは訂正する。

 

「何を言う。5月初旬、いや、中旬だったか。ガンダムが最後に紛争へ無差別介入した戦場で、ガンダムの動きを偵察してくれていたじゃないか。おまけにガンダムをドラグディアのMSが撤退させた直後に、命令違反を起こした我が艦隊も落としてくれた」

 

「リ、リヴィル隊長!それは言わない約束で……」

 

「あら……それってひょっとすると」

 

 すると、その話にクリエが反応した。思わぬところからの反応だった。

 

「どうしたの、お母さん」

 

「えぇ。そういえばうちの旦那がガンダムと戦った日にマキナスの艦艇にやられそうになったけど、マキナスのMSに助けられたって言ってたなぁ、って」

 

「!まさか……」

 

 クリエの話にもしやとハッとする。元自身は全くその時の事を覚えていない為、事実かどうかは分からない。だが話題を持ち出したリヴィルはその予想を肯定した。

 

「あぁ、その時のMSはマキナスにおいて驚異的とされたマキナ・ブレイカーと呼ばれる武器を2本携えていたという。グランツ司令にも確認を取ったよ」

 

 その話を聞いてジャンヌはハイドに顔を向ける。

 

「じゃあ、お父さんはあなたに助けられたんですね」

 

「そういうことに、なるか」

 

「それだけじゃない。俺もある意味それのおかげで救われた。感謝しきれないですよ」

 

 ジャンヌに続いて元もハイドに礼を言う。ハイドも先の大戦での礼と共にそれに返答する。

 

「それを言うなら、俺やフェルナもだ。ありがとう」

 

「もうマキナスもドラグディアも、戦争しなくていいからね。詩巫女ちゃんもこれからよろしくっ!」

 

「あ、は、はいっ」

 

 ハイドとフェルナ、それぞれが元とジャンヌへ握手を求める。2人もそれぞれ握手に応じ、これからの両国の未来を願う。その姿にどちらの国の者達も暖かく見守る。

 握手を終えると、リヴィルが残りの1人の紹介へと入る。が、その灰色の髪を前に向けて跳ねさせている本人は2人との握手で出づらくなっていた。

 

「さ、出番だぞ」

 

「俺はいいよ、兄さん」

 

「兄さん?リヴィルさんの弟さんですか?」

 

 その人物の事をほぼ知らないでいるジャンヌはそう訊いてしまう。それを聞いてリヴィルの弟は肩をがっくりとさせて項垂れる。見るからに分かる落胆に言った本人は戸惑う。

 

「……はぁ」

 

「え、えぇ!?」

 

「そういえばお嬢様は彼の顔を見ていませんでしたね。声で分かりませんか?」

 

 ジャンヌの戸惑いにアレクが笑いをこらえている。元は彼にフォローを掛けつつもジャンヌへヒントを出す。その言葉にジャンヌもしばしの間考え、答えにたどり着く。

 

「声?……そういえばどっかで……って、あ!もしかして、アルス・ゲート!?」

 

「……あぁ、そうだ。ガンダムのパイロットの方は顔合わせしていたから分かったようだな」

 

 ジャンヌの回答に頷く。そう、これまで幾度も元、ガンダムと戦い続けこの戦争で共に戦ったマキナート・シャイニングの搭乗者である、あのアルスである。

 5月下旬での対決以来の顔合わせではあったが、元としては何度も激突したこと、そして何より初めて元が自らの意志でMSを装依して戦い、そして負けた相手でもあったことも合わさって記憶に焼き付いていた。元もその時の事を話題に挙げる。

 

「まぁな。でもそれ以上に、あんたは特別だ。初めて戦った相手で、負けた相手だからな」

 

「えっ」

 

 ジャンヌが驚く。彼女以外にもレヴとリッドが大きく驚きを見せていた。アルスも当時の事を回想する。

 

「そうだったな。ガンダムじゃなかったが、アーマーの付いた機体で、一度負けていたな」

 

「あぁ。だから余計に覚えていた。戦場でも、知らずに熱くなってた」

 

 これまでの戦闘でアルスがガンダムにこだわっていたように、元も知らずの内にアルスとの対決に夢中になっていた。つい先日理解したことであり、元自身そこまで執着していたとは思っていなかったが、先日の共闘で相性の良さを実感して同時に理解したのだ。

 数々の激闘を繰り広げ、再び生身で相見える2人。先程のハイド達の様にこれからの未来を共に歩むように見えたが、アルスの口から繰り出されたのは、2人とは違う答えであった。

 

「だがそこの2人とは違って、俺はこれからもドラグディアと戦うつもりだ」

 

「っ!?」

 

「まだ戦争を続けるっていうのかよ……お前」

 

 その言葉にジャンヌやアレクが警戒心を露わにする。ローレインやリリーも普段の調子は崩すことなく、その眼をわずかに細くする。クリエやネアも不安がる中、ただリヴィルとリヴィルを見たグランツだけは表情を一切崩さない。

 元はどういうことなのか問う。すると彼の言った言葉の意味を理解することとなる。

 

「……本当に、戦うのか?」

 

「あぁ。マキナスを討とうとするのなら、また戦う。それがマキナスの、そして、ドラグディアの平和を望む者達の希望となるはずだ。お前達が、俺達の汚点たる皇帝と同じ道を取った時は、その時は俺達が討てるようにこれからも鍛錬は惜しまない」

 

「はぁ……相変わらず、真っすぐだ。そこがお前の良いところだがな」

 

 リヴィルがようやく口を開く。手の掛かる弟、と言ったところであろうか。元自身も妹がいるが、アルスのような立派な理想を持つわけではなく、兄に関心すら持たない可愛くない性格である。それでも大切な家族の一人であり、2人の間に同じ物があることを感じさせた。

 アルスの真意を知り、元は前へと歩み出る。そしてその手を向けた。

 

「なら、俺も協力しないとな。俺に勝てるくらいじゃなきゃ、今のドラグディアには勝てないだろうから」

 

 大見得切ったような発言。もちろん元もそれを理解していた。とはいえ今のガンダムの力にそれだけの力を元が感じているのも事実である。同時にそれはアルスへの挑発でもあった。

 これには元々言うつもりだったアルスも、目を丸くする。だが口元を緩めると、その手を払うように叩いてから思い切り握ってくる。腕相撲の時の握り方でアルスは宣言する。

 

「なら、そのための協力本気でお願いしようか?」

 

「あぁ……!」

 

 固く握った互いの手。好敵手との絆は今更なる高みへと至ったのであった。

 

 

 

 

 ハジメとアルスの交わした握手に、見ていたジャンヌ達の表情がほころんでいく。アルスの真意も決して戦乱を望むものでないことが分かり、むしろ心強さを感じられる物であったことも理由の1つだった。その光景にジャンヌとネイ、グリューネは口々に感想を言う。

 

「戦争で出会った二人が、分かり合ったんだ」

 

「暑苦しい男の友情ねー。これは演習に付き合わされるジャンヌが大変そう」

 

「確かに大変ですね……。ハジメにはこちらの気配りに目を向けて欲しいです」

 

 演習にやや消極的なジャンヌ。しかし忘れていたとはいえ自身もこの戦争で窮地を救われており、彼の性格や技量は信じている。その彼の理想の為に協力しないこともない。

 一方で2人の関係性に似たようなものを経験した身近な者達はその当時の事を思い返す。

 

「青春ねぇ。あなたとガンドもなんだかんだで決闘した後はあんな感じで主と従者って感じになったわね」

 

「クリエ、本当にあの時の事をいじるのはやめてくれ……お願いします」

 

 母の方は楽しく語っているが、フォーンの方は必死に懇願している。どれだけフォーンが当時の事を思い出したくないかが分かる。

 そして自分達の上司でもあるアレクとリリーは近いうちに彼らの模擬戦が実現することを予測していた。

 

「彼らの模擬戦は、今後の和平路線の象徴として組み込まれる可能性がある。その時には少佐も因縁の相手として戦うことになるかもな」

 

「それは冗談キツイですよ。ガンダムと渡り合った機体とやり合うなら、俺の機体も対ガンダム戦も考慮した新型機用意してもらいたいくらいです。そうじゃなくても、今後はガンダムを指揮する立場になりそうだから軍団指揮を勉強しないと」

 

「そうだな。これからは英雄を指揮する名指揮官として活躍しなければな」

 

「ゆくゆくは三竜将、いや、私の跡を継いでくれるのかな?ははっ」

 

 2人の話にグランツも今後を楽しみにする発言を行う。新しい時代が作られていくのだ。これから、私達の手で。

 握手を交わしこれからどうするかが楽しみなジャンヌ達であったが、それを邪魔する様に電子音が響く。場所は二か所からで1つはアレクの通信端末、そしてもう1つはハジメが携帯していたゼロ・スターターから発せられていた。

 

「ん?艦からの通信か」

 

「……?スタート、どうした」

 

 すぐに2人はそれぞれの声が邪魔にならないように離れて通信に出る。スターターからの通信で、スタートの声が聞こえてきた。

 

『ハジメ、ジャンヌ。マキナスから借りているマギア・マキナスの電脳で現状報告がしたい。いいか』

 

 スタートの言うマギア・マキナスの電脳は文字通り象徴であり空中戦艦であるあの艦の頭脳である。マギア・マキナス撃破後、しばしの間ドラグディアが賠償金代わりにその電脳を借り受ける約束を取り付けていたのだ。

 ただ、それを最初に指示したのはグランツではなかった。ガンダムのOSスタートが、グランツに要請したのである。借りて調べたいことがあるのだと。その内容についてはジャンヌ達も知らされてはいない。パイロット達にも秘密にする内容が気にならないはずがなかった。

 マギア・マキナスの電脳という単語を聞いて、マキナスの少年少女達も通信機となったハジメのスターターに集まってくる。

 

「へー、それがガンダムのOSなんだー」

 

「OSというAIか。マギア・マキナスのよりすごいな」

 

「実質的にこいつとも戦っていたわけか。それよりマギア・マキナスの電脳を借り受けていた理由は、こいつにあるのか?」

 

「そうそう!どうなの?」

 

「何か、皇帝のせいで問題があったのか?」

 

「まぁまぁ落ち着いて……こっちにも隠してたんだ。目的くらいは聞かせてほしいな、スタート?」

 

 マキナス勢の興奮を抑えながらも、ハジメがスターターに向かってスタートの真意を問う。そこから聞こえたのは、ジャンヌにとっては予想だにしていない朗報であった。

 

『あぁ。簡潔に結論から言おう。ヴァイスインフィニット……レイア・スターライトの居場所が分かった』

 

「………………え」

 

 レイア・スターライトの居場所。確かにスタートはそう言った。その報告にジャンヌが待ち望んでいないはずがない。茫然から一転、ジャンヌはハジメの手を掴んでスタートにレイアの居場所を聞き出そうとする。

 

「どこなのっ!レイアさんはどこなの!?」

 

「わわっ!ジャンヌ、落ち着いて……」

 

 距離を詰められたハジメが落ち着くよう説得してくるが、そんな言葉を冷静に聞いていられない。大切な友人の無事をこの戦争の間に気にしなかったジャンヌではない。

 

「どうしたの、彼女?」

 

「あー……簡単に言うと、大切な親友が、ヴァイスインフィニットっていう白いガンダムに乗せられたまま別の世界に飛ばされちゃってね……」

 

「白いガンダム……確かマキナス軍も一時期追っていた機体だ。友達がパイロットだったのか?」

 

「無理矢理、ですね。私達の学校の詩巫女候補で、私の友人でもある女の子をお嬢様達は救い出そうと戦ったんですが、不慮の事故で開いた超次元現象に呑みこまれて、そのまま……」

 

 事情を説明したグリューネ達の声が暗くトーンが落ちる。誰もが彼女の消失に影を落としていた。

 早く知りたい。レイアの居場所を。だがジャンヌの逸る気持ちをスタートが強制的に断ち切らせる。スターターを介して2人に電流が流れる。

 

「いづっ!?」

 

「ぐあっ!?っ~痛ってぇ……」

 

『ほら、これで落ち着いたろ。少しくらい話聞け。面倒くさい。お前らの為にわざわざ動いてたのによ』

 

 痛がる2人にため息を漏らすスタート。自分にまで流したことに元は悪態をつく。

 

「そりゃありがとよ……だからって俺まで流す必要なかっただろ」

 

『悪いな。電流はスターターからしか流れねぇ。今度からお前がジャンヌを止めな』

 

「スタート~……!」

 

「ううっ……それで、レイアさんはっ」

 

 痛みを堪えつつ涙目でレイアの事を訊く。するとスタートは答える。

 

『あぁ。レイア・スターライトの居場所だが、マギア・マキナスの電脳で行き先をトレースした結果、次元世界第10番にいることが分かった』

 

「次元世界、第10番」

 

「それは一体……」

 

 その名を、スタートは告げた。

 

『アース。またの名を、地球』

 

「!?」

 

「地球……?」

 

 ジャンヌは首をかしげる。聞いたことのない名前の世界。といってもジャンヌ達マキナ・ドランディアの人間でも、この次元世界にある世界の名前を知っているわけではない。だがその名前をただ1人だけが息を飲んで聞いていた。

 そして、スタートが明かす。

 

『そう。地球。MSの歴史が生まれつつある世界にして、ハジメ。お前の故郷、だな』

 

『!?』

 

 一斉にハジメに視線が向けられる。ハジメの顔は俯いたままだった。しかし、息を吸って覚悟を決めたようにハジメは話し始める。

 

「あぁ。俺は、地球で生まれた人間だ」

 

「ハジメ……!」

 

「なんと……ハジメ少尉の世界に転移していたとは」

 

 偶然なのだろうかと思うような運命の巡り合わせ。やがてハジメはこれからについて訊く。

 

「それで、どうやって俺の世界に行くんだ」

 

『それについては心配ない。シュバルトゼロとGワイバーン。この2機なら、世界の壁を越えられる』

 

「分かった、ありがとう。艦からの連絡はその2機の修理に関しての事みたいだ。すぐに始めていいか?」

 

「はい、お願いします」

 

 ガンダムの修理に関する確認に、ハジメがOKサインを出した。ガンダムの装備で世界を超えられる。それはジャンヌ達にとって朗報だ。ガンダムが直ればすぐにレイアを助けに向かえる。それどころかガンダムの力を解析したら、もっと多くの人を送り込める。そうすれば、すぐにレイアを探し出すことだってできる。

 提示された希望に笑みが零れる。すぐに行けるように準備を整えることを提案する。

 

「だったら早くガンダムを修理してその地球に行く準備をしなきゃ!それか、もっとみんなで行けるように―――」

 

「駄目だ」

 

「え……」

 

 ジャンヌの意見を、ハジメが否定した。振り返ったハジメは悲しそうに、だが冷徹にそれを告げた。

 

「お嬢様は、いや、この世界の人は、連れてはいけない」

 

 

NEXT EPISODE

 




エピローグ2はここまでです。続く最後のエピローグ3も引き続きお楽しみください。

レイ「新たな縁が結ばれたっ!でも元君また一人で背負おうとしているなぁ……」

ジャンヌ「次回ではわたくしとは違うジャンヌさんがどう言うのでしょうね」

次がLEVEL1最後の話っ!最後までフルスロットルです(*´ω`)

レイ「何がフルスロットルなの?」

ジャンヌ「何がなんです?」

それは……エピローグ3にて!


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LEVEL1 EPILOUGE3 勝ち取りし平和、世界を超えて3

どうも、皆様。エピローグを読み進めて頂いている方はありがとうございます。作者の藤和木 士です。

レイ(以下R)「アシスタントのレイ!」

ジャンヌ(以下J)「アシスタントのジャンヌです」

ネイ(以下N)「アシスタントのネイです」

グリーフィア(以下G)「アシスタントのグリーフィアよぉ。って、四人全員なのね」

そうっ!今回の投稿は3話分だから、4人全員入ってもらったよ( ゚Д゚)めっちゃ書くの辛いっ(なら書くなよ(セルフツッコミ))

R「あはは、私達の名前の所も省略されてるね」

N「でもみんな出られていいですね」

さぁ、そんなこんなでLEVEL1の最後の話、エピローグ3だ!( ゚Д゚)

G「作品の方のジャンヌが、拒む元に対してなんていうのかしらねぇ~♪」

J「これまでの話の中でジャンヌ・Fさんの気持ちが正しいのなら、言うのはきっと……」

さぁ、これでLEVEL1は決まりです(*´ω`)本編をどうぞ!


 

 

「なんで……なんでなんです!?」

 

 必死に、ハジメが拒絶する理由を問う。周りの者も困惑していたがハジメは落ち着いて、自身の考えを口にする。

 

「まず俺の世界ではまだMSが誕生した直後のような世界でした。ガンダムの性能を見ればきっと今より多くの者達が我欲のために狙ってくるはずです。もし大勢で行けばその力を巡って戦争が起きる。かつてのこの世界の様に。そんな世界に平和を勝ち取ったこの世界の人達を、お嬢様を連れて行きたくない」

 

「そんな危険な世界なの?だったら余計にレイアさんを放っておけないじゃない!」

 

「だったらこっちの気持ちも分かってください!俺の世界の醜悪さを、あなたまで無理に感じる必要は、ない……!」

 

「っ……!何よ、それ……」

 

 ハジメは声を荒げる。勝手すぎる言い分だ。だがジャンヌは知らなかった。ハジメがいた世界で、家族に起こりつつあった悲劇、この世界に来るまでの出来事を。

 さらにハジメは言う。

 

「それに、お嬢様はまだこの世界の、聖トゥインクル学園の生徒なんだ。せめて最後まで学校を卒業してほしいんです。俺は高校時代通って卒業したといっても、満足のいくような思い出もなく卒業しましたから……。平和な間に、俺がレイアを救い出します。だから!」

 

 自分が果たせなかったことを果たしてほしい。彼の言葉はそう聞こえた。それを言い訳にして、ジャンヌを戦闘から遠ざけようとしている。ハジメの懇願なのだ。しかしジャンヌは否定する。

 

「なんでよ。何でそんな自分で勝手に決めるのよ!失うことに臆病になって、知られたくないから本当の事を隠して!これじゃドラグディア政府の人と同じじゃない!!」

 

「そ、そんなこと……」

 

 すかさず否定しようとするハジメ。だがその前に言葉を遮る様にハジメの体に自身の体を押し付けた。押し付けて、離れないように両手をハジメの服を硬く握る。その行為にグリューネやフェルナが色めき立つが、今のジャンヌには関係ない。

 今の元の言葉はこれまでのジャンヌに対しての対応だ。これまで接してきた自分が怒らないようにするための。だけどもうそんなのは嫌だ。今までの自分とは違う。変わった事を自らの行動と言葉で証明する。

 

「私は!あなたと一緒に居たいの!レイアさんの事を愛していた時の私じゃない、今はあなたと一緒が良いの。でもそれはレイアさんの事が嫌いになったからじゃない。もちろんレイアさんがいることは必要よ。でも、レイアさんがいて、それにあなたがいなきゃダメなの!2人もいなくなるなんて……そんなの耐えられないっ!」

 

「お、お嬢様!離れ……」

 

「呼んでよ……名前で呼んでよ!この大戦で呼んだように!私の事を必要だって!お願いぃ…………私を、一人にしないでよ……うっ」

 

 離そうとするハジメに逆らって、その胸元で泣き付く。こんな気持ちを異性に向けたのは初めてだった。でも後悔なんてない。言わなければいけなかった。ヴァイスインフィニットとの戦いで芽生えたこの気持ちを伝えなければ。でないと彼は離れて行ってしまうから。そんなのは嫌だ。本音を吐露したジャンヌを擁護するレヴやリッドの声がハジメに向けられる。

 

「これはハジメ、お前の判断が悪い」

 

「責任取らなくちゃねぇ」

 

「図らずもレヴ君の発言が現実になった件について」

 

「うぐっ!?」

 

 グリューネの指摘通り、かつてのレヴが放った失言通りの展開だ。ハジメは助けを求めるようにローレイン、そしてフォーンへと言う。

 

「お、おいローレインかフォーン様も何か……」

 

 しかし、返ってきたのは予想通りの、そして意外な言葉であった。

 

「ノーコメント」

 

「招いたことはお前が処理しろ。お嬢様を泣かせることだけはするな」

 

「お嬢様とくっつくことはいいんですか!?」

 

「俺はふしだらなことや泣かせることはするなと言っていた。お嬢様が望むのなら、それは当てはまらない」

 

「うぐっ!……」

 

 思わぬ発言にハジメの言葉が止まる。それでもハジメは考えていたようだが、その前に母のクリエがトドメとも言うべき言葉を連続させた。

 

「ハジメ、ジャンヌを連れて行ってあげられないかしら。私からもお願いしたいの」

 

「お母さん……!」

 

「いくら、奥様の言葉でも……」

 

「ジャンヌは使命を背負ってから、ずっと心を閉ざしてきたの。でもレイアちゃん、そしてあなたと交流する様になってから、少しずつ変わっていった。特に男の人にそんな事言えるようになったのなんて、昔から比べたら大きな変化よ。あなたのおかげで成長できた。そしてまだ見たことのない世界に行こうとしている。どれだけの危険があろうともあなたの隣に居ようとしている。それを親として応援したい」

 

 ジャンヌの背中を後押しする発言。ちゃんと自分を見ていてくれて、今前へ出る娘に助力してくれる母の姿がそこにあった。母の言葉はやがて1つの提案をハジメに出した。

 

「でも、あなたの言い分は分かる。高等教育を出て欲しいっていう気持ちは、私にもある。だからね、待っていてあげられないかしら?ジャンヌが、そしてあなたが聖トゥインクル学園を卒業するまで1年半近く、この世界を出るのを待つ。そうしたらその問題は解決できるわ」

 

 時が来るのを待つ。時間は前に進み続けるからこそ慌てずにその日が来るのを待つ方策を、クリエは提示する。卒業を待って行くのであればあらかじめ準備が出来る。だがそれにより露見する欠点もある。ハジメはそれについて指摘した。

 

「でも、それじゃあレイアの両親に申し訳が……」

 

「それは私達大人の仕事よ。第一あなたも行くにしても危険がいっぱいって言っていたじゃない。なら丹念な準備のために時間は必要でしょう?何とかなるわ」

 

 が、それも母は完全に抑えていた。クリエの発言にグランツも頷く。ジャンヌは改めてハジメにお願いした。

 

「ハジメ、お願い。一緒に連れてって。私の事を待ってて」

 

 顔を見上げる。涙で視界は悪いが、ハジメの躊躇う顔が見えた。そこから藁にも縋る思いで再び顔をうずめた。

 懇願にハジメの口が動いた。

 

「ジャンヌ――――――」

 

 続いた言葉に、ハッと顔を上げた。

 

 

 

 

「……はぁ~答辞の言葉面倒だったわねぇ……」

 

「お疲れ様、姉さん。生徒会長ってことで選ばれて大変だったね」

 

 M.D.1430、3月3日、日曜日。この日の聖トゥインクル学園は高等部の卒業式を迎えた。この年の卒業生はネアを含めて全学科258名。その代表に自身の姉グリューネは選ばれたのだ。

 妹からの言葉に全面的に同意するグリューネは不満を漏らす。

 

「そーよ。別に生徒会長よりもっとすごい人が今回の卒業生にはいるわけだし~」

 

「あはは……それって多分ハジメさんとジャンヌ様だよね」

 

 ネアからの指摘にグリューネは大きく頷く。

 

「普通そうでしょ!戦争を終わらせたドラグディアの両雄のどっちかがした方が、学園のプロモーションとしても十分なのに。きっとハジメ君が裏工作したのよぉ~!」

 

「裏工作って、何……」

 

 姉の被害妄想(と言いきれなくないかもしれないが)に笑いがこみ上げる。けれど、本当にあの後の2人は色々な意味ですごかった。ドラグディア、マキナスの両国家における小競り合いなどに参戦し、瞬時に制圧。「ドラグディアの両雄」としてその実力を余すことなく発揮した。ハジメは昇進して現在は大尉となり士官学校への入学も検討されている。ジャンヌも今年度に行われた詩竜双極祭では最優秀者としてその栄冠に輝くほどの詩巫女に成長し、今年前年度に引き続いて名誉詩巫女としてノミネートされるなど立派に成長を見せた。

 そんな2人を差し置いて生徒会長である自分が選ばれたことに、姉は納得がいかないのだろう。けれど、それにも事情があるのだ。2人の今後の「ミッション」のために、時間がなかったことが姉の選ばれた理由だろう。学園の廊下を歩く2人の先に、学園中央の広場が見えてくる。

 

「あ、もうみんないるよ」

 

「そうね。主役もまだなのに……それにしてもここもすっかり綺麗になったわね」

 

 広場に集まる集団に向けて足を進める。ヴァイスインフィニットガンダムとの激突後、オベリスクは一応修復され以降の詩竜双極祭のために使われる様になった。その新製造後の第1回目の双極祭にジャンヌが参加し、最優秀者となったのである。

 そしてその場所は整備されて新たな名称を追加された。ガンダムによる激闘の地という、学園には似つかわしくない名称。廊下には当時の激闘の跡の写真が飾られている。そんな廊下を通って2人は広場に出る。広場にはオベリスク前で作業をする者とその護衛、更に離れたところで在校生と卒業生が観客の様に作業を見守っていた。グリューネらの登場で観客の生徒達が騒ぎ出す。

 

「グリューネ会長とネア書記だぁ!」

 

「会長ー、ネア書記ー!ご卒業おめでとうございまーす!!」

 

「あーはいはいありがとーありがとー」

 

「姉さん、もう少し感情込めよう?」

 

「いいのよー。それより……よっ」

 

 ツッコミをスルーしてグリューネは護衛の1人に抱き付く。抱き付いたのはもちろん姉の彼氏であるアレク・ケルツァートだ。アレク以外にもリリーそしてマキナスのアルスと言った面々が揃っている。それらの視線を気にすることなくグリューネは抱き付いたまま卒業を祝うようにせがむ。

 

「アレくーん♪卒業よー。ねぇねぇ、祝ってー」

 

「あぁ、グリューネ。おめでとう。ネアさんもおめでとう」

 

「いえいえ、ありがとうございますアレクさん。あ、もう義兄さんと呼んだ方がいいですか?」

 

「まだ結婚には早いよ……グリューネもここを出てから詩巫女歴史学を学ぶようだから、それからかな。とはいえ、そう言われると悪い気はしない……いや過去の事もあって複雑だぞこれ……」

 

 投げかけた冗談にタジタジとなり、悪い気はしないとしつつもかつての事が呼び起こされて反応に困るアレク。忘れがちになるが、2人の初対面時は容疑者と治安部隊という状況で、まったく義兄妹という感じではないのだ。

 ネア自身もそれを思い出すときはないわけではない。しかしそれも過去の話とグリューネがあっさりと言葉で切って捨て、話題を変える。

 

「もう、過去の事なんだから気にしない!それよりメインの2人は?」

 

「あぁ。もう来るとは思うんだが……」

 

 メインの2人が来ないことに不信感を抱いていると、空から嘶きが飛んでくる。

 

「グルゥゥゥゥゥゥン!!」

 

「ふぇ?」

 

「この鳴き声って……」

 

 空を見上げる。すると空から白銀の装甲と紅いラインの走った金属のドラゴンがこちらに向かって降りてきていた。その背中に待っていた2人を乗せて。ドラゴンが着地すると、その2人はこちらに遅れたことに対する謝罪を送る。

 

「すみません、遅れました」

 

「は、ハジメさん!?ジャンヌ様も……って、どうしてクリムゾン・ファフニール様が!?」

 

 ネアの困惑は他の者も抱いたものだった。象徴は現在、厳重な軍の庇護の下そうそう表に出るものではない。それがハジメとジャンヌを乗せて来たのはもっと混乱を呼ぶ。

 

「さ、流石竜騎士……!」

 

「詩巫女のジャンヌさんも乗せて颯爽搭乗なんて、すごい演出……」

 

 ギャラリーから絶賛される一方、アレクやリリー、そしてマキナス陣営のアルスから怒声とため息が漏れる。

 

「ハジメェ!!お前勝手に連れ出したのか!?」

 

「学園の外に待機させて見送りの際に来てもらう予定だったが……どうして貴君が?」

 

「いや、こっちに来るのも難しかったので、せっかくならと警備の人達にお願いして一緒に来ることにしたんです」

 

「お前ら……余計な話題を付けてくるのが好きだな、ガンダムは」

 

「でもクリムゾン・ファフニールも大分飛行するのが上手くなったんですっ。ね、ファフナー?」

 

 事情を話し、ジャンヌが象徴を愛称で呼ぶ。クリムゾン・ファフニールは首を振って払う動作をしてテレパシーで応答する。

 

『あぁ。当然だろう。もう1年以上経つ。2人のバランスはちゃんと私の中で記憶しているからな。ジャンヌがまだ飛んでいる間ギュッと太ももで必死に体勢を固定させているのも、以前の空を飛ぶのすら怖がっていた時よりはマシになったな』

 

「あうぅ……言わないでください……詩巫女なのにまだ竜に一人で乗れないの恥なんですから……ひゃあぁ!?ハジメッ!?」

 

 竜の騎乗に恐怖心を持っていると話すジャンヌを、ハジメはクリムゾン・ファフニールの背に立って手を引く。そして持ち上げてお姫様抱っこの姿勢にすると象徴の上から飛び降りた。遮ったジャンヌの言葉を、ハジメが擁護する。

 

「ジャンヌをまだ一人に出来ないからな。一人で乗れるようになるまでは、俺が傍にいないと」

 

「も、もぅ……は、恥ずかしいから、下ろしてっ」」

 

 2人の距離感の近さに羨望の目を向けてしまう。姉やジャンヌがそれぞれ彼氏持ちで、自分だけまだなのが少しだけ悔しかった。でも2人ともそれぞれ苦難の末にくっついたのだから、文句を言うのもおかしい。特に自身が関わったとなれば当然だ。

 ジャンヌの羞恥を露わにした声にハジメも優しく労わるように地面へと足を付けさせる。とはいえこれで役者は揃った。ハジメの作業を行う人物達への準備の確認が取られる。

 

「それより、ガンダムとGワイバーンの調整は終わりました?」

 

 すると準備に参加していたヴェールと機人族の機械っぽさが全体に残る老人が答えた。

 

「うん、テストは問題なし。ワルトさんのデータ通りだよ」

 

「うんうん、おまんさんがこの世界に来た時の超次元現象の数値と対応した値に設定できとる。このデータが残っておってよかったって」

 

「ありがとう、ワルトじいさん」

 

 グーサインを出す機人族の老人と、腕を打ち合わせるハジメ。話によるとあの老人は初めてハジメをこの世界で見つけた人物であり、これまでに色々確執がありつつも機竜大戦にて協力した仲だという。皇帝にも協力していたことから当初は投獄されかけたものの、ハジメと協力して達成した功績とガンダムの次元移動協力を取り付けて監視の下解放されたらしい。

 これから行うのはその次元移動の実践。次元世界第10番「地球」への移動だ。その見送りのためにネアや様々な人物達がこうしてここに集まってきたのである。出発前にリヴァイ兄妹やローレイン、更にジャンヌの姉であるジーナとその夫テュートがそれぞれに言葉を送る。

 

「じゃあなハジメ、ジャンヌ。お前らが行ってる間に、俺も軍の学校で頑張ってるぜ」

 

「レヴが心配だろうけど、それより自分達の身を考えるのよ?いい、ハジメ君?」

 

「一応荷物には竜人族の体調管理マニュアルを用意しておいた。ジャンヌの体調不良とかレイア救出後の治療に役立ててくれ」

 

「分かってる。ありがとうローレイン。レヴも頑張れよ」

 

「何かあったらハジメ君に頼りなさい。無理は禁物よ?お姉ちゃんとの約束だからね?」

 

「ジーナ、心配しすぎだよ。ハジメ君ならきっとやり遂げる。僕が言えた義理じゃないけど、そう信じている。きっと君をレイア君のもとへと導いてくれるはずだ。そのために君がハジメ君を支える。助け合いの精神だよ」

 

「はい、姉さん。ありがとうございます」

 

 2人の関係者達が別れの挨拶を交わしていく。みんな2人の無事を心から願っていた。しかし、その中に1人、納得の出来ていない者もいた。

 

「姉様……」

 

「エターナ、あなたも……」

 

「考え直してください、姉様!姉様がこんな男と一緒に行く必要なんて……」

 

「こらっ、エターナ!」

 

 エターナの暴言をクリエが咄嗟に止めさせる。ジャンヌもその言葉に反論を口にする。

 

「エターナ、まだ分かってくれないんですか?私はハジメがいいって……」

 

「違うっ!姉様はおかしくなってる!異性を好きになった姉様なんて、姉さまじゃない!別れなきゃいけない!」

 

「っ!エターナっ……!」

 

「ジャンヌ様、待って……」

 

 なだめようとしたジャンヌも妹の罵声で反射的に手が動く。平手打ちをしようとするもそれをハジメが手首を掴んで止めた。

 

「ハジメっ!?」

 

「くっ、姉様を奪ったクソ男が……」

 

 ジャンヌが動揺し、エターナが舌打ちをする。それに動ずることなくハジメは言う。

 

「喧嘩をするのは別に構いはしない。でも自分の妹にはどんな事があっても手を出しちゃいけない。手を上げるくらいなら、俺はその矢面に立つ」

 

「ハジメ……」

 

「クソ男が……なら姉様を連れていくのを止めなさいよ!」

 

「それも出来ない」

 

「!?このっ……」

 

 返答したハジメの言葉に逆上するエターナ。だがハジメは更に返答した。

 

「決めたから。俺は、彼女と共に行くと。そのためにみんなここに来てくれた。それを無駄にはしない。君がどう思っていたって良い。だけどジャンヌの無事だけは祈っていてくれ」

 

「っ……」

 

 言いたげな様子であったものの、彼女は口を閉ざす。そんな彼女に一礼してから、2人は揃って準備の終わった広場中央へと向かった。ヴェールが案内する先に見えたのは、ハジメとジャンヌの機体「シュバルトゼロガンダム[Repair-Ⅱ FafnirⅡ]と修復されたGワイバーン、それらを挟んで機器に設置されたゼロ・スターターだ。

 スターターを手に取り、コードの接続を解除するとハジメは腰にスターターを当てる。スターターから名称と共にベルトが展開する。ベルトが接続されて腰に巻き付くと続いてロックリリーサー、そしてセレクトスーツカードを装填していく。最後にスターターのボタンを押し込み、装依を宣言する。

 

「装依」

 

『ガンダム・ザ・ネクストジェネレーション! シュバルトゼロガンダム[Repair-Ⅱ FafnirⅡ]!』

 

 光の扉が2人を挟み込む。1人の影へと集約されて上へと移動した光の壁がガンダムを接続していた危機の前からその場に移動させた。現れたドラグディアの英雄の機体に、周囲の観客の興奮が高まる。そのままガンダムは機器から外れたGワイバーンの背中にまたがる。

 

「では……開始します!」

 

『Dトラベルコントローラー、アクティブ。次元空間への干渉開始』

 

 両機体の力が発揮されていく。オベリスク前の空間が徐々に歪み、やがてかつてレイアを飲み込んだものと同じ次元世界への入り口が生成される。

 以前のような吸い込みはない。だが各警備が周囲を見張っている。不意の事故を防ぐためにだ。ヴェール達も空間をモニターする。入り口が安定したのを確認して、Gワイバーンが飛び立つ。

 

『では行きます!』

 

「二人とも、気を付けてね!」

 

『はい、お母さん!ネア、グリューネ!』

 

「お嬢様も、お元気で!!」

 

「絶対、連れて帰ってくるのよーっ!!」

 

 見送りの声を受けて2人のガンダムは次元空間の穴へと飛び込んでいく。だが、そこでエターナが叫ぶ。

 

「姉様っ!!」

 

 既に機体が飛び込もうとする中で届くとは思えない叫び。しかし、直前に機器を通してジャンヌの声が聞こえてくる。

 

『……エターナ、私がいなくても、強く生きてね』

 

 それはエターナの未来を願っての言葉。姉としての言葉だった。その言葉を残して、ハジメとジャンヌは次元世界の穴へと姿を消した。異次元の穴が閉じた。

 

 

 

 

 次元世界の狭間へと突入した2人の視界の前に、光の世界が広がった。まるで宝石箱の中身を解放したように高純度DNがあちこちに放出されている。それだけではなく、天体のような球体がその面に別世界の風景を映し出していた。

 

「これが、次元世界」

 

『すごい……ハジメはこの中を飛んできたんだ』

 

 ジャンヌもため息を漏らす。覚えてはいないが、間違いなくハジメはこの中を通って来たのだ。

 幻想的な世界に見惚れつつもルート通りに進むGワイバーンの背で、2人は会話する。

 

『ハジメ、ありがとう。私の事を選んでくれて』

 

「いや、まだ悩んでいるよ。連れてきて良かったのかって。でもこの2年で分かったんだ。ジャンヌとなら、いいって」

 

 思い出すこの2年間。様々なことを経験して理解した。自分のパートナーはジャンヌしかいない。ジャンヌとならこれから来るだろう激戦を乗り切れる。そう思えるのだ。

 その言葉にジャンヌは気分を躍らせて返答する。

 

『ふふっ。でしたらもっとその先を言って欲しいですっ』

 

「……それは流石に、ちゃんと任務を終わらせてから、かな」

 

『むー……変なところで真面目なんですから……もう付き合って1年半なのに……』

 

 煮え切らない態度にジャンヌは不満を口にする。しかしハジメも、そこだけはまだ迷っているのだ。その答えが、この使命を終わらせた先にあるのだと信じて、もとの世界へ向かう。

 Gワイバーンの背の上で様々な会話をする内に、目的地が近づく。ジャンヌにその事実を伝える。

 

「ジャンヌ、そろそろだ」

 

『機体各部正常。問題なしです』

 

 機体を次元世界突入状態へと移行させる。と、その時だった。

 

 

 

 

「――――――え」

 

 

 

 

 視界の端に映る機影。それに目を奪われた。漆黒のMSが横をすうっと横切っていく。ジャンヌもそれに気づき、絶句する。

 

『え……何です、あれ』

 

 すぐさまその機体に頭部の視界を向けた。こちらの機体と似ているが、背後には3対の大きな天使の翼のようなものを背負っていた。その機体がこちらに気づき振り向く。姿を確認したその機体はこちらに対し親指を立てる。まるで旅路を祝うように。

 通信回線を開こうとする。だがその前に視界が暗転する。光と共に現れたのは、漆黒の夜の帳が下りた風景。下には元も見覚えのある、しかし知っている土地ではない街が見えた。

 

「っ……着いたのか」

 

『ここが、ハジメの世界……』

 

 懐かしさのある風景にため息が出る。もう直前の機体の事は頭の隅に仕舞い、眼下の風景を焼き付ける。確かに元は地球に帰ってきたのだ。

 もとの世界への帰還に感心していると、下の異変に気づく。街の中の街灯とは別に光が瞬く。爆音なども聞こえてきており、異常さが伝わってくる。ジャンヌがすぐに情報を出す。

 

『下方にて戦闘です。……未確認のMS数機と、これは、ガンダム!?』

 

「ガンダム、か。俺の世界にも、生まれたんだな。ジャンヌ、行けるか?」

 

『ふぅ。いきなり大変ですね。いつでも行けますっ』

 

 行動開始にジャンヌも頷く。ガンダムはGワイバーンから降り一気に地上へと降下する。迫る地面。やがて着地体勢に入り、ビームライフル・ゼロでけん制しつつその地に降り立つ。

 頭巾をかぶったように頭頂部の尖ったパーツにゴーグル、モノアイを1基配置した機体数機とガンダム顔をした赤と蒼の機体2機、更にそれに味方する目元をゴーグルセンサーで覆った灰色のMS達の視線が一気に降り立った元達へ注がれる。そんな中で元はオープン回線で告げた。

 

 

 

 

「シュバルトゼロガンダム[Repair-Ⅱ FafnirⅡ]、これよりこの戦闘に武力を以って介入する!」

 

 

 

 

 これは次元を超えた英雄の物語である。

 

 

LEVEL1 END

 

NEXT LEVEL……Standby OK?

 




今回も最後までお読みいただきありがとうございます。ガンダムDN、LEVEL1完結であります!

R「元君と遂に結ばれたんだぁ!」

G「んーいやいや、まだゴールインしてないから」

N「でも実質それって感じは……あ、でも元さんが迷いそう」

J「元さんがまたジャンヌ・Fさんを困らせそうですよね」

(´・ω・`)元君そんなに心配されるんか……

N「なんていうか、捨てるっていうより護るためにとかで自分を犠牲に先に死にそうです」

G「未亡人にしそうよねぇ」

J「それでまた病んでいきそうです」

R「原因はレイアちゃんを救うために、とかね」

(´・ω・`)元君、憐れ。とまぁ異世界マキナ・ドランディアの戦いはひとまず終わり、黒の館DNを挟んだ次回からは元君の世界での戦いです。

R「あ、そういえばさ、元君あの世界から事実上消えたけどどうなってるの?」

それは……まぁ、関わってきますよ?(;・∀・)

N「これそれなりに深いから詳しく言えないやつですね」

G「死亡扱いになってそう」

J「お金とかに苦労しそうですね……」

まぁ、そこは元君が頭を働かせますよ(;・∀・)というわけで今回はここまでです。

R「次回は黒の館DN!」

J「異世界戦争編の最終回になりますね」

G「最後を飾るのはやっぱりあの機体よね!」

N「そのほか第3章と合わせた設定用語集も出てくるそうです」

R.J.G.N『次回もよろしく(お願いします)!』


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黒の館DN 異世界戦争編 第10回 前編

どうも、皆様。黒の館DN、異世界戦争編も最終回となりました。作者の藤和木 士です。

今回の黒の館DNは紹介していない人物と残りのマキナスのMS、そしてシュバルトゼロガンダム・イグナイターの紹介となっております。

まず前半は人物とマキナスのMSの紹介です。最後を彩ったあの機体達の設定を是非ご覧ください。


 

 

士「さぁ、遂に第1部ことLEVEL1の完結です!今回も黒の館DN始めて参りますよ~、作者の藤和木 士です」

 

ネイ「アシスタントのネイです。LEVEL1完結ですか……異世界戦争編ということで最初はどうなることかと思われましたが、無事それらも乗り切れましたね」

 

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよぉ。話数的には旧作と比べてどうなの?」

 

士「驚け、何とこっちがちょっとだけ長いです(´・ω・`)あれれーおっかしいなぁ」

 

ネイ「おまけにEPILOUGE3は全部入れ込むためとはいえ、かなりの文字数になっていると聞いていますよ?」

 

士「そうなんだよねー……どうしてこうなった(´・ω・`)」

 

グリーフィア「ま、仕方ないんじゃないかしらぁ?作者君が必要だって思ったんだから。それより今回も紹介やっていきましょー」

 

士「そうですね。じゃあネイさんお願いします(´っ・ω・)っ」

 

ネイ「分かりました。前半の紹介は人物紹介、そしてマキナスの本当の機械騎士機体と豪語するマキナスのガンダム「マギア・ガンダム」とラスボスを務めた皇帝機「マギナリアス・エンペラー」の紹介になります」

 

グリーフィア「まずは人物紹介からよ♪」

 

 

リヴィル・ゲート

性別 男

機人族

身長 182cm

髪色 灰

出身地 マキナス ラグナ・リーン州 ユグトラン市

年齢 28

誕生日 6月2日

血液型 B

好きなもの バイオリン演奏、射的、ブラウニー

嫌いなもの 成果に固執する者、タコ、ギャンブル

愛称 星雷の銃撃者

 

・マキナス軍の軍人の1人。階級は大佐である。かつてはMSに乗っていたが、現在はマキュラ級「アルザッヘル」の艦長を務める。

 アルス・ゲートの兄であり、弟の事は面倒見がいい。家が貧乏だったため軍に入り、アルスの養育費として提供していた。兄弟そろって軍人であるが、両親としては成り行き上での申し訳なさから彼に頭が上がらず、本人も自身を育ててもらった恩から負担を掛けないようにあまり会わないようにしている。

 第1章のガンダム出現時のマキナス軍の指揮官であり、ガンダムに対し直属の上官からの勝手な命令で突貫せざるを得ない自軍の機体との性能差を図ろうとしていた。ガンダム撤退後にはハイドに命じて勝手な行動を起こした軍人の乗る艦艇を沈めさせ、自軍への代価の払わせた(その関係上、結果的にガンドを助けている)。劇中ではマキナス軍の穏健派寄りであり、強硬派の指揮官の下にいる不当な扱いを受ける兵士をスカウトしたりしている。第4章ではグランツ・フリードに協力を打診、断られるが秘密裏にハイドを出撃させ、自らは首都に残る皇帝派の拘束と自隊の撤退による戦力半減を行った。戦争終結後はマキナス軍総司令官の座に収まる。

 兄弟でガンダムに因縁があるということだが、リヴィル自身はガンダムに熱くなるアルスをよく窘めていたりする。また彼自身も元モビルスーツパイロットであり、かつては星雷の銃撃手と呼ばれる射撃MSの使い手であった。その経験から近接型であるアルスに銃撃者の観点から接近戦における剣術を指導した。ハイドが預けられた理由もこの射撃MS使いだった点からである。

 人物モデルは機動戦士ガンダムの一年戦争におけるシャア・アズナブル。外見も仮面を外した彼に似ている。

 

ハイド・エルセウルス

性別 男

機人族

身長 168cm

髪色 茶色

出身地 マキナス ラグナ・リーン州 コントレイル市

年齢 21

誕生日 10月10日

血液型 A

好きなもの 空、フェルナ、オムライス

嫌いなもの 命令を強制する者、嘘、ソース

愛称 機械騎士ハイド

 

・リヴィルの指揮する部隊の部隊員で、ネオ・エース。その正体はマキナスの象徴「マギア・マキナス」の本来の機械騎士の筆頭候補。

 マキナス政府としての本来の機械騎士であるが、訓練としてリヴィルの部隊に身分を隠して預けられる。以後マキナス軍の一兵士として経験を積んでいた。これを知っていたのはマキナス政府と指揮官のリヴィルだけであった。機械騎士の家系に生まれたわけではないが、学校の後輩で幼馴染の「フェルナ・ローリエ」が奏女官に選ばれた際、彼も機械騎士として候補に選ばれた。機械騎士候補として選ばれただけあって、戦闘力は高い。特に集中力と危機感知能力が高く、マキナート・バスターを専用機として運用していた。マキナズ・ファイターも彼の射撃戦を重視してマキナート・バスターの能力を順当に強化していた。

 第1章序盤でのガンダム暴走の際には無断行動した味方艦をリヴィルの指示の下撃墜。ガンドを救出している。再登場した第4章にて、本来機械騎士が戦うはずのガンダムと共闘する形となった。途中機械騎士の座を奪ったランド達に物量で撃墜されるが元に助けられる。戦争終結後は皇帝派によって重傷を負っていたが快復したフェルナと共に、ガンダムの装依者である元とジャンヌに顔合わせして握手を交わした。

 人物モデルはポケットモンスターブラック・ホワイトの男主人公。フェルナはその女主人公がモデル。

 

フェルナ・ローリエ

性別 女

機人族

身長 158cm

髪色 ピンク

出身地 マキナス ラグナ・リーン州 コントレイル市

年齢 21

誕生日 9月2日

血液型 A

好きなもの カラオケ、シュークリーム、ハイド

嫌いなもの 銃、マナーを守らない人、お酒

愛称 奏女官フェルナ、鎮魂歌奏し歌い手

 

 マキナスの政府が選んだ奏女官候補の1人。ハイドとタッグを組んでいる。

 ハイドとは幼馴染であり、幼少期から交流を持つ。国が1年おきに行う奏女官適性検査で高い数値を記録したことで奏女官候補として選ばれた。候補の中でも適性はずば抜けて高く、メル・オンと同等以上の力を持っていた。それゆえに皇帝派の反抗において腹部に銃弾を撃ち込まれ、意識不明の重体となった。

 その後彼女は穏健派の救出後治療を受けて快復。戦争に関わることはなかったものの無事パートナーであるハイドと再会する。快復後はハジメやジャンヌと顔を合わせ、今後の両国の未来を願った。

 パートナーであるハイドの事はからかうものの、非常に頼りにしており好意も向けている。

 人物モデルはポケットモンスターブラック・ホワイトの女主人公。帽子を被らず髪を後ろで括っている。

 

 

ネイ「これが人物紹介になります。マキナスの機械騎士はみなさんポケモンのキャラクターがベースとなっているんですね」

 

士「皇帝のデザインにダイパのボスを採用したからね(;・∀・)そこから色々と連想してこうなってます。エクス・サイズもポケモンからもらおうとしたんですけど、思いつかなかった」

 

グリーフィア「でも作者君のポケモンもそもそもXYで止まっているから、もっと先じゃあ思いついたかもしれないわね~。さて、それじゃあ次はMS紹介ね。マキナス陣営をここで紹介するってことは、「あの機体」はジャンヌ達が紹介する形になるのかしらね?」

 

士「そういうこと。じゃ、お願いしまーす」

 

ネイ「承知しました。ではご覧ください」

 

 

マギア・ガンダム

形式番号 MS-MG00X

 

・マキナスによるガンダム製造計画「プロジェクト・マキナスガンダム」のフラグシップ機として考案されたガンダム。カラーリングは白を基調として金色と顎部分を赤色となっている。

 形式番号からも分かるが、本機こそがプロジェクト・マキナガンダム最初のガンダムである。あちらがエクスの搭乗を想定した、大統領政府の管轄にある軍のガンダムであるのに対し、こちらは皇帝派がそれら技術を盗用しつつ、プロジェクトの中心人物であるワルトの主導の下、皇帝配下の技術者が考案した機械騎士ランドのためのガンダムである。

 武装はオーソドックスかつヒロイックなものを選択。それでも本機用のクロークウイング・バックパックや、ゴースト方式の専用兵装など新技術がふんだんに取り入れられた設計となっている。

 コンセプトは「騎士ガンダムの重武装化」。本機の頭部も甲冑のパーツが点在しており、騎士らしさを生んでいる。

 

【機能】

・ビームシールド

 シールドに装備される、ビームで形成されるシールド機能。ほぼ量産可能な域まで達しており、出力も安定している。

 

・強化機動システム「マキシマイズ」

 機体の緊急的な高機動を実現するガンダムの「エラクス」をマキナスなりに解釈・可能な限り再現した特殊機能。瞬発的な高機動に限られ、その際機体が紅く光る。

 マキナート・シャイニング、エクス・Gと重ねて改良を加えられ、視界不良はほぼなくなっている。

 

・DNフェイズカーボン

 国家元首機やエクス・Gなどにも採用される、DNを浸透させて防御力を向上・運用する装甲システム。

 本機もダブルジェネレーター仕様であるため、発色にやや問題のある白を使用することが出来ている。ただし負荷の掛かり過ぎを避けるために、他の色を混ぜて負荷を軽減している。

 

・ダブルジェネレーター

 機体の動力機関の仕様。ジェネレーターの2個積みである。本機のDNジェネレーターはかねてから開発されていた現行のものから1段階性能を向上させたもの。この結果DNフェイズカーボンの運用を安定化させた。搭載位置は胸部とバックパックである。

 

 

【武装】

・ビームソードライフル

 本機の主兵装となるビームライフル。左腰サイドアーマーに懸架される。エアレイダーのビームライフルをベースに開発された。1丁装備。

ビームライフルの銃身に上下から挟み込んでビームサーベル用パーツが合体しており、ビームサーベルの発振を可能としている。ここまではエアレイダーのビームライフルでも可能としていたことだが、銃のストック部分が持ち手として運用可能となっており、近接時の振り感覚が改善された。加えてストック部、銃底部に近接用耐ビームコーティング済み実体ブレードが設置されており、銃としての使用時にも不測の事態から機体の腕部を守る。

 他にもビームサーベルはライフル時にビームマシンガンとしても使用可能で、弾幕の形成をサポートする。あまり戦闘を得意としない者でも扱いやすい武装となっている。

 武装モデルはガンダムSEEDASTRAYシリーズのガンダムアストレイグリーンフレームの同名武装。

 

・胸部メガキャノン

 機体の胸部中央に装備されるビーム砲。正面の敵を討つ。ドラグディアのMS、ドラグーナ・ガンドヴァルの武装に通じる兵装だが、こちらの方が完成度は上。

 武装モデルはストライクフリーダムのカリドゥス。腹部から胸部に搭載位置を変更している。

 

・肩部マント型ミサイルコンテナ

 肩部装甲を兼ねた、マント風のミサイルコンテナ。両肩にそれぞれ1基ずつ装備される。下部にはスラスターも設置されている。

 表面は耐ビームコーティングがされており、シールドとしても使用できる。マイクロミサイルの弾数は8発×2。左右合わせて32発を有する。

 

・可変型シールド改・改

 マキナズ・ファイターにも採用されていたシールドを、本機用に再調整した兵装。左腕に1枚を装備する。

 シールドの展開時に限り、ビームシールドを展開可能で、素のシールドと合わせて攻撃を防御することで防御性能を高めている。

 形状はマキナズ・ファイターの物から据え置きのためそちらを参照。

 

・クロークウイング・バックパック改

 多重構造の装甲と耐ビームコーティング、それにスラスターが施された防御翼「クロークウイング」を備えるバックパックユニット。

 エクス・Gヨルムンガンド・フェイズにも同名武器が装備されていたが、本兵装はその通常MS用。最初に考案されていたのはこちらの方である。ただし完成したのはあちらが先のためにこちらが改となった。変更点は大きさ以外にクロークの形状と防御態勢である。ウイング状態では2対のウイングとなっており、外側のウイングが上に跳ね上がる形となっている。クローク使用時にはこの外側のウイングが内側のウイングとの接続アームごと前方に倒れ込み、腕部に掛かるようになる。これはクローク使用時にウイング全てを前方に受ける必要があったヨルムンガンド・フェイズと違い、背部にウイングが残ることで全方位をカバーできるようになった点で優れている(ただしバックパック中央はがら空きのため、完全というわけではない)。

 武装の形状モデルは新機動戦士ガンダムWのガンダムデスサイズ・ヘルのアクティブクローク。肩部ミサイルポッドと合わせて、そのシルエットが非常に似ている。

 

・ビームサーベル

 クロークウイング・バックパック改の上部に2本刺さる形で装備される平均的な格闘兵装。

 本機用に調整されているわけではないが、ガンダムを構成するうえで欠かせない兵装と言える。柄形状は四角柱のタイプを採用。

 初代ガンダムのような装備方法となっている。

 

・レールガン

 上部クロークウイングの裏面に装備される実体弾兵装。2丁装備する。弾数は1丁につき4発。

 マキナートのノーマルゴーストの装備を流用している。上位互換のレールキャノンを装備しなかった理由としては、装置が大きくなりすぎて機動性に支障が出ると判断されたため。連射性能を重視している。取り外しは出来ないが持ち手は用意されている。

 武装外見は砲門を蒼穹のファフナーのレールガンをモデルに、運用法などはストライクノワールのリニアガンに近い。

 

・ランチャーゴースト

 自立支援機として運用される、マギア・ガンダムの兵装の1つ。普段は羽の付いた支援型ゴーストだが、変形して両手持ちのビームランチャーへと変形して装備することが可能。

 

 

 

MS-ME00GFMC

マギナリアス・エンペラー(ギルフォードカスタム)

 

機体解説

・マキナスのかつての国家元首機、皇帝機であるマギナリアス・エンペラー。その設計をもとに現皇帝ギルフォード専用機として新たに開発した機体が本機マギナリアス・エンペラー(ギルフォードカスタム)である。機体カラーは白と金。

 系統的にはマキナート系列機の系譜にあたる外観を持つ機体だが、その機能はエクス・G、マギア・ガンダムなどのマキナス製ガンダム達の技術の粋を集めたものであり、実質的にガンダムと言っても差し支えない程の性能を誇る。装依者であるギルフォードもおかれた立場が非常に波乱なものであり、本来国の代表として立つことを目的としていた皇帝統治時代に求められた戦闘力では足りないことから、凄まじいまでの特訓を受けて本機の実力を最大限引き出せるようになった。それにより本機はガンダムとも渡り合えるほどの性能を誇る。

 特徴的なのはクロークウイングを発展させた「ケープウイング・バックパック」とその手に握る代々マギナリアス・エンペラーに装備されるエンペラースタッフ「皇帝の心杖」である。ケープウイング・バックパックはクロークウイングの構造を簡易化、肩口を覆うことで攻撃性能を落としつつも簡易巡行形態への移行、防御性能の向上を成功させた武装であり、守りに特化させている。これは皇帝という要を容易に失わせないための施しである。そしてエンペラースタッフはこれまで皇帝機に採用され続けた武装であり、DN収束端末を兼ねている。その先にはDNを高圧縮・開放する機構が施されており、その力を最大限用いれば高純度DNを用いなくてもDNFを使用することすらも可能とする。またこの武装はプロトタイプ時代にクリムゾン・ドラゴニアスを死亡させた直接的な原因を持つ兵装となっており、ドラグディアに対する挑発的な意味を必然と持つ。

 だがそれら主兵装以外にも本機の兵装はかなりのレベルを維持しており、マキシマイズも備える。ほぼ無敵の本機に勝てる機体はいないとされる。ただ唯一超えられたのはシュバルトゼロガンダム・イグナイターのみであった。

 機体コンセプトは「クロスボーンガンダムのミダス×ダンボール戦機のファントムの要素を持った、マキナスMSの集大成」。どちらもその圧倒的な性能で主人公を追い詰めた機体であり、マントと長い得物を使用する機体でもある。頭部形状とクロークの機能はファントムを意識、エンペラースタッフやビームシールドはミダスのものをベースとしている。

 

【機能】

・ビームシールド

 ケープウイングと手甲部発生器から形成されるビームの盾。出力は他を圧倒しており、高出力ビームキャノンも受け流すことが出来る。

 

・DNフェイズカーボン

 国家元首機などには必ず採用される、DNを利用して剛性を高める変色装甲。本機にはダブルジェネレーター(新型仕様)が搭載されており、その中でももっとも完成度の高いものを選んでいるため色の安定化がなされている。

 機動性能を重視したカラーリングである白をベースとしており、その姿は天使の様にも見える。

 

・ダブルジェネレーター

 DNジェネレーターを2個搭載し、エネルギー供給を完備した仕様。本機においてはDNジェネレーターも最適化させた新型が装備されているため、通常のMSを凌駕する出力を得ている。ジェネレーター搭載位置は胸部とバックパックである。

 

・簡易変形機構

 機体のケープウイングを閉じて防御形態、または巡行形態となる機構。マントを閉じるように変形するだけだが、ケープウイングの持つ防御性能を全体に適用できるほか、外側のウイングに備えられたビームキャノン砲が使用可能になるなど、攻撃性能が変化する。そのため正確に言うなら本機能は「モードチェンジ」という言い方が正しい。

 変形機構などはダンボール戦機のファントムのマント変形法を参考にしている。

 

・強化機動システム「マキシマイズ」

 ガンダムの出力強化システム「エラクス」をベースにマキナスが開発した機動力強化システム。機動時に紅い残像を残して動く。

 これまで視界不良に悩まされていた機能だったが、マギア・ガンダム、そして本機では遂にその弱点を克服している。機能面では寸簡的な機動性はガンダムのエラクスに匹敵するが、高機動の持続やシステム使用時のビーム出力などの向上はマキシマイズにはない、エラクスのみの機能となっているため性能を開けられている。しかしそれはリミッター下における制限であり、皇帝はリミッターを解除したことでエラクスと同じ高機動の持続を実現した(なお一度ジェネレーターを暴走させると停止手段がなく収まるまで待つしかない。レッドゾーンを超えたら死はほぼ確定する)。

 

 

【武装】

・エンペラースタッフ「皇帝の心杖」

 機体の右腕で保持する本機の主兵装。1本のみを装備する。先端部はDN制御端末となっており、ここで圧縮・解放したエネルギーを扱う。解放したエネルギーは形状を変化させることが可能で、槍、剣、ハンマーなど多種多様。柄部分は変形機構が持ち込まれており、射撃攻撃時には先端部を正面に向けた心銃形態へと移行する。

 DN制御端末はDNA発動時にそのエネルギーとなるDNを高純度DNへ再昇華させることが可能で、DNFを扱うことが出来る。ガンダムや象徴以外では創世記以後初となるDNF使用機であり、ドラグディアはこの兵装を非常に危険視していた。そこで当時のドラグディアは皇帝機の居場所を最初に確認してからけん制砲撃と狙撃、ステルス機による暗殺で皇帝機を足止めするというのが戦場での常であった。

 マキナスの政府が大統領政府へと変わるとき、大統領達は本兵装を捜索したものの、既に皇帝派残党が持ち去った後であり、何十年もの間捜索を続けていた。本兵装はそのオリジナルであり、皇帝が表舞台へと再び現すと同時に、この兵装も日の目を浴びることとなった。

 武装モデルはミダスのカイザースタッフ(皇帝の錫杖)。先端部が開放型デバイスとなっているが、機能的にはほぼ同じことが出来るようになっている。名称もそれをイメージしている。心とついているのはかつてこの武器がマキナス皇帝の心臓から出来たものという伝説があるため。実際には亡くなった皇帝の心臓部をパーツとして使っているものの、全てがそれから出来ているわけではない加工品である。なお内部パーツは今回の戦闘に合わせてオーバーホールされている。予備が2本あるが、それらは最初に作られた「オリジナル」を模した模造品である。当初持っていた模造品を破壊された後、オリジナルを持ち出して戦闘。その後それも叩き折られる。

 

・ケープウイング・バックパック

 機体背面に装備される、クロークウイング・バックパックの発展型兵装。シールドとウイングスラスター、そして攻撃武装としての機能を有している。

 バックパック基部は通常のバーニアとDNジェネレーター搭載部があるのみだが、それを覆う形で頭部保護のためのケープウイングが装着されている。そしてケープウイングはバックパック側面にアームで接続される方式を採っている。よってバックパックそのものを狙うことは難しい。

 ケープウイングの変形法は単純なものとなり、横から機体を覆うように折りたたむ方式となった。これにより腕部武装を扱うことは不可能となったが、この単純な方式により接続部の負担が減ってビーム砲やウイング自体にビームシールドの搭載が可能となった。またこの簡易変形により空気抵抗が減るため、機動能力にも差が出ている。あちらが攻防一体なら、こちらは防御寄りの兵装と言えるだろう。

 武装モデルはLBXファントムのウイング。あちらと同じく折りたたんだウイングのスラスター付近がビーム砲となっており、性能もそちらを強く意識している。

 

・ケープスラスタービームキャノン

 ケープウイングの折りたたんだ前部スラスターを兼ねるビームキャノン。設置位置から簡易変形時にしか使用が出来ない(一応使用は可能だが、背面から狙い撃てなければならない)。

 背部にジェネレーターの1基が内包されているため、出力は充分。更に浮遊姿勢が安定する簡易変形時の正面を撃てる為、狙撃精度が非常に高い。難点はその部分の装甲が薄い為、その一瞬を狙い撃たれると大ダメージを負いかねないことだが、ギルフォードの腕と本機の性能からそれは不可能だと考えられ、カバーなどは施されていない。

 武装モデルはLBXファントムのウイング部ビームキャノン。使用方法も似通っている。

 

・可変速ビームライフル「ヴァルスビー」

 腰部に2基装備される、速度変更可能なビームライフル。展開してからトリガーが引き出される。

 マキナート・シャイニングの武装を改良して装備されており、シャイニングの物より反動が減っている。にも関わらず威力などは据え置きと、皇帝に負担を掛けないように調整されている。なおヴァルスビーはその貫通性能からビームシールドを撃ち抜きやすい兵装となっている。皇帝機に装備させたのは、ある意味ではビームシールドを使用する敵=裏切者を断罪するという意志を持った兵装だと言える。

 武装モデルはシャイニングの時と同じくガンダムF91の「ヴェスバー」。形状はF91のガンプラを改造した「M91」のヴェスバーをベースとしているイメージ。

 

 

ネイ「以上が、マギア・ガンダムとマギナリアス・エンペラーの紹介になります。エンペラーの方は皇帝機としか元さん達からは呼ばれていませんね」

 

士「何せ名乗ってないからね(;・∀・)皇帝機としか呼べない。その点マギア・ガンダムはパイロットが馬鹿正直だったからね。名乗ってくれたし。ただエクス・Gに関しては言わせてくれ、彼の機体の名前だけは台詞外で言ってる設定です(`・ω・´)」

 

グリーフィア「メタいわねぇ。でもラスボスってわりに随分武装があっさりしてるわね。その分洗練されているって感じはするけど」

 

士「マントを羽織っている都合で色々武装を乗っけられないんですよね……マギア・ガンダムとはマントの開き方の違いで、裏面に武装を入れることも出来ないですし。まぁグリーフィアさんの言う通り、エンペラーは錫杖の万能さから他の武装に頼らない構成が出来ていたのも、武装が少ない理由ではあるんですけどね」

 

ネイ「ごっちゃごちゃにならないっていうのはいいことですよね」

 

グリーフィア「ま、ごっちゃごちゃにならないようにって言ってたシュバルトゼロガンダムは、前ほどじゃないけどそれなりにごった煮してる気もするけどね~」

 

士「(´・ω・`)言わないで……さて、そろそろ後半に移りますか」

 

ネイ「お嬢様達とバトンタッチです」

 




前半はここまでとなります。引き続き後半を読んで頂ければ幸いです。また館に続き、用語設定集も公開する予定ですので、気になる方はそちらもご覧ください。

では短いですが、後半へ続きます。


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黒の館DN 異世界戦争編 第10回 後編

どうも、皆様。引き続きご覧の方は改めまして。作者の藤和木 士です。

黒の館DN後半は元達の切り札的MS「シュバルトゼロガンダム・イグナイター」の紹介となります。

これでLEVEL1MSはのちに投稿するかもしれない番外編の機体以外ほぼすべて紹介したことになります。ただし最後に登場したシュバルトゼロガンダム[Repair-Ⅱ FafnirⅡ]だけはLEVEL2で紹介する予定になっております。

最後の黒の館DN異世界戦争編の解説、シュバルトゼロガンダム・イグナイターの明かされていない設定など堪能していただければ幸いです。

それでは後半をどうぞ。


 

 

士「さぁ、後半も始めていきましょう。作者の藤和木 士です」

 

レイ「いよいよだねー!アシスタントのレイだよっ」

 

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです。黒の館DNも異世界戦争編の最後の回となりますね」

 

士「その通り!そして、最後を飾るのは!」

 

レイ「新たに生まれた、全てを制圧するガンダムから、全てを切り開くガンダムへと変わったシュバルトゼロガンダム、シュバルトゼロガンダム・イグナイター!」

 

ジャンヌ「そのただ1機、ですね。語る物はそれ以外ないと」

 

士「いやー、もっと言えばそのお前段階のフルイグナイトも解説するべきなんだろうけど、武器を杖とホーミングレーザー発射機以外ほぼ設定してないんだよね(´・ω・`)」

 

ジャンヌ「締まらない言い方ですね……」

 

レイ「でもそれも今回はなしにしたんでしょ?ならもう元君達のガンダム紹介だけだよ!」

 

士「そうだね。なおこれ書いた後はLEVEL2のための新量産型MSの設定考えないといけないっていう(´・ω・`)量産機の顔次どうしよう……」

 

ジャンヌ「あぁ、そうですか……。それじゃあ、紹介に入りますね。紹介するのはシュバルトゼロガンダム・イグナイターです」

 

 

 

形式番号 なし(変容前と同じ)

シュバルトゼロガンダム・イグナイター

 

機体解説

・シュバルトゼロガンダムとGワイバーン。この2機の合体の先には、まだ先がある。ドラグディアの新たなる象徴、クリムゾン・ファフニールが母体であるクリムゾン・ドラゴニアスから授かった力、機械の進化を司る「エヴォリュート・アップ」により合体状態のシュバルトゼロガンダム・イグナイトを変化、もとい「変容」させた姿、「フルイグナイト」。それが更に元の願いで生まれ変わった姿がこのシュバルトゼロガンダム・イグナイターである。

 その変容はまさに進化そのものであり、既存の武装を構成する素材全てから作り変える。機体すらも丸ごと作り上げられたその機体は、シュバルトゼロガンダムを元の意のままに、かつジャンヌの手が隅々まで届くように最適化される。武装もその装備状態で変わる。追加武装を装備しているなら、それすらもその場で新たな武装へと進化させることも可能であり、無限の可能性すら秘めている。

 と、ここまで大仰に語ってきたが、簡単に言うと「機体と武装をイグナイターと呼ばれる形態に進化させた状態」である。武装の作り変えは単純な例だとブレードガンをファンネルに作り替えられるといったもの。しかもその場で追加兵装分を新たな武装へと作り変えることも出来る。存在そのものを作り変えるそれは神の御業にも近しい。ただし素材が無ければその分を作り出せず、追加兵装をイグナイターの固定兵装へと生まれ変わらせる可能性もある。その影響で正式な形式番号は存在しない。

 いずれにせよ、クリムゾン・ファフニールとの協力で生み出された本機は、圧倒的な力を持ち合わせる。それは今回の戦争でも明らかであり、元とジャンヌがこの機体の性能を理解した戦争終結後なら一切ダメージを受けずに制圧できたとの見方もある機体だ。なお本機の姿は元が望んだ姿であるため、元の思い描くガンダム像が反映されている。とはいえエンゲージシステムの影響でジャンヌの願いも反映されているらしい。

 戦争終結後のスタートによれば、本状態はこれまでのシュバルトゼロガンダムが到達していない力である。が、想定はされていたらしく、その際は象徴との連携で到達する予定だったという。その際の姿がフルイグナイトであった。

 機体コンセプトは「ジェミニオン・レイ×エクストリームガンダムTypeレオスⅡヴァリアント・サーフェイス」。このコンセプトは旧作のシュバルトゼロガンダム・ゴッドクロスの最終形態「レイ」でも考えられていた形態であり、本機はその「リベンジ」というべき機体となっている。なお変容前と同じくドラゴンの意匠があちこちにみられる。またイグナイターへの変容前にあたるフルイグナイトのモデルは「第三次スーパーロボット大戦Z」のジェミニオン・レイの前身機「ジェミニオン」をベースとしている。

 機体カラーは黒と灰色、それに緑のライン。ユグドラシルフレームの色は蒼となっている。変容後は機体サイズが素のシュバルトゼロガンダム程度に縮まる。

 

【機能】

本形態においては機能が武装次第で変わってくるため、ベース状態の機能を記していく。

 

・DNフェイズカーボン

 機体を構成する、DN浸透型装甲の名称。ガンダムにおける標準的装甲にあたる。発色は黒と灰、緑のラインであり、機動力重視のカラーリングとされている。

 エヴォリュート・アップに伴い、機体の剛性などは変容前より高まっている。更に装甲形状も尖った形状となり、ドラゴンを意識しているのが分かる。もっとも特徴的なのは装甲そのものからDNを放出できることであり、機動性能向上、そしてDNウォールといった兵装の使用制限がほぼない強化を受けている。

 

・ツインジェネレーターシステム

 機体のDNジェネレーターの仕様の1つ。高純度DNを多量に生産するための専用動力システムである。出力が4割増しとなっており、最大スペック時には通常の2倍の出力を誇る。

 

・DNLコントロールシステム

 パイロットのDNL能力を機体へと伝播させるためのシステム。本機能はエヴォリュート・アップに伴い強化され、元の能力を更に拡大させている。

 

・ユグドラシルフレーム

 機体を構成するDNLシステム直結フレームの名称。世界樹の名を冠したガンダム専用の機体フレームである。

 機体の変容によりDNL能力の感応が強化。また機体の剛性と反応性が強化されている。またこの形態移行前に見せた、ユグドラシルフレームによる物理的防御結界の形成も通常使用可能となっている。

 

・ハードポイントシステム

 ドラグディア軍により取り付けられた武装換装システム。本機でも継続して使用する。ただし装着位置は肩のアーム、あるいはシールドのみと更に集約されている。

 

・ELACSシステム

 機体の出力を増大させて、性能を飛躍的に向上させるシステム。使用中は蒼く輝くのが特徴。

 変容後は機体全体がDN放出機構となっていることから、その性能強化の量はかなり大きくなっており、マキナスの同型システムであるマキシマイズでは付いて行くことも困難。ただしその分制御は難しくなっている。

 

・エンゲージシステム

 機体の機能をサポートするサブパイロットとリンクする、ガンダム専用のサブパイロット同乗システム。

 変容時にこのシステムを通してジャンヌの願いも反映されている可能性もあるが、確認のしようがないため今回は触れない。

 

・DNウォール

 DNを空中で集中させて防御壁として使用する防御兵装。

 肩部のシールドから展開するのがメインだが、本機においては機体全体からウォールを発生可能となっており、機体の装甲が単なるDNフェイズカーボンではないことを示している。

 

・DNプロテクション

 ビームの防壁を展開して攻撃を防ぐ、DNウォールの互換兵装。ビームシールドの近縁種である。

 本機能に関して注目したいのは、プロテクションがエネルギー増幅機能を持たせられるようになったことで、透過した物体を加速させたり、出力を増大させたりできるようになった。

 エネルギー増幅機能に関してはガンダムビルドファイターズシリーズにおける「プラフスキーパワーゲート」の性質に近い。

 

・マルチロックオンシステム

 【ノヴァ】より本機のシステムに搭載された多重ロックオンシステム。システムの内容に変化はない。

 

・ゼロオーバーモード

 機体の制限リミッターを解除し、性能を向上させるモード。本機は変容によりあまりある性能を誇るが、その状態でずっと戦闘を続けることはパイロットとパートナーに負荷をかけてしまう。そこで機体側で出せる出力に限界を掛けたのが現状のシュバルトゼロガンダム・イグナイターである。この状態では機体全性能が開放される。その証にユグドラシルフレームが水色(正確には普段の蒼が白に近くなる)へと変化する。

 その制限解除状態は凄まじく、瞬間移動と見間違うほどのスピードを出し、DNFなどの高火力技を更に際限ない出力で繰り出すことが出来るようになる。その上周囲の物質を変容させて機体のパーツへ還元することすらも可能としており、エラクスの状態でならさらにその性能は凄まじいものとなる。が、その分制御が難しく、また機体・パイロット共に負担も大きくなる。その状態は本機にとっての最後の切り札であり、破られれば勝ち目はないと言っていい。とはいえ現状それだけの機体は単機ではほぼ存在しない。

 

 

【武装】

本形態時には武装状態によって装備が変動する。よってここでは基本となる武装群について紹介する。

 

X(ザン)・ビームライフル・ゼロ

 ビームライフル・ゼロ系統のライフルが変容した姿。腰背部に装備される。

 エネルギー変換率が向上し、非常に少ないエネルギーで通常の出力に達することが出来る。高純度DNはガンダムの武装でも最大限の効率化が出来ていなかったため、これにより必要エネルギーが大幅に下がった。この武装以外でもかなりの武装、またはシステムが省エネ化している。

 モードに関しては通常出力、連射出力、バーストモード、そして最大出力のフルバーストが使用可能。更にファンネルと組み合わせて更なる威力増加も見込める。またこの武器に限った事ではないが、放たれるビームはいずれも螺旋発射されることによる破壊強化の恩恵を受けられる。簡単に言えば【NOVA】のスピアブラスターと同じ性質を備えていることになる。ただしその分エネルギーも要する。

 形状はビームライフル・ゼロをベースにパーツがやや増えたようなもの。内部のメカニックは運用に適した高レベルなものと変わる。他兵装も同様。

 

・ブレードガン・X

 ブレードガン系武装が変容した武装。装備状態によって2本か4本装備となる。

 変容前と比べて、刃の色が透明から薄い青色に変わっている。材質がユグドラシルフレーム由来のものとなっており、単体での切れ味、DNの定着率、耐久性が増している。更に柄尻同士で合体させて運用することも出来るようになった。

 モードはブレード、ガン、ビームサーベル以外に両刃運用のツインが追加された程度。ただし出力は変容前とはケタ違いであり、ビームサーベルの最大発振はDNFなしで最長20メートルとなっている(一部のDNF時には更に展開可能)。銃としての機能も遠距離キャノン砲と渡り合えるほど。ただしこの武器の真髄は速射であり、スナイパーライフルよりも速い速度で単射が出来ることだろう。

 形状は通常のブレードガン・ニューCから刀身の変更、センサーの大型化と言った程度。ただし銃内部のメカニックはかなり変質している。

 

・ホルダーバインダー・X

 機体サイドアーマーが変容した姿。ホルダーの数は装備により変動する。形状としては以前の物にスラスター噴射口が増えた程度。しかし性能は大きく変わり、光の翼によるチャフを攻撃用兵装とした「DNフェザーショット」として使用可能となった。

 DNフェザーショットのモデルはコードギアスのランスロット・アルビオンのエナジーウイングによる攻撃。

 

・ドラグメイル・バルカン

 機体頭部のGワイバーン頭部形状が変形し、出現したバルカン砲。目の部分の横に形成された。

 放たれる弾はビーム弾であり、連射速度は非常に速い。カメラや関節などの装甲が薄い部分を狙うべきだが、場合によっては通常のシールドを取りこぼさせるほどの連射性を誇る。

 

・ニューオーダーシールド・X

 肩部ポールアームに装備される、ニューオーダーシールド系武装が変化したシールド。2枚を変わらず装備する。更にその裏面も、これまでの系列武装を装備する形となっている。

 形状は大型化に加え、DNウォール展開部がスラスターへと昇華したことにより機動性の向上に一役買っている。防御性能も向上しており、単なるデッドウェイト化ではないことは明らか。

 

・ビームマシンキャノン・X

 シールド下部裏面に装備される、ビームマシンキャノン系装備が変容したもの。2丁を装備する。

 形状は銃身が排熱部分の展開が可能になったような程度。排熱部展開が必要となると若干劣化したように思えるが、これは全ての力を解放したゼロオーバーでの最大火力時のみ必要な処置であり、通常の最大火力などでは排熱はほぼ必要ない(連続した運用では流石に必要になる場合はある)。それに排熱しない=優秀というわけではない。

 【ノヴァ】や【ドラグナイト】にて装備されたレイ・アクセラレーター系統の武装との連動も引き続き行われる。

 

・レイ・アクセラレーター・X

 シールド裏面上部から下部に向けて装備される、レイ・アクセラレーターが変容した武装。引き続き粒子加速装置として運用される。

 以前と引き続いてビームアックスや長大なビームサーベルの形成、ビームマシンキャノンの出力強化を担う。ただしその出力強化度合いは以前より向上しており、ビームを槍の状態に形成してから放つといった芸当も可能。

 なおレイ・アクセラレーターは戦争終結後リペアツヴァイの基本兵装の1つとなった。

 

・ビームサーベル・X

 機体腕部と背部ウイング付け根に装備されたビームサーベルが変容したもの。4本を装備する。

 腕部の側は特に変更はないが、ウイング側の2本は前方に向けてビームキャノンとして使用できるようになった。

 キャノンのモデルはジェミニオン・レイのニトロハーケンから。

 

・Dフィスト・クラッシャー

 Dフィストイレイザー・ネクストとGワイバーンのドラゴン・クローが合体して変容した兵装。大元は機体腕部そのままのため、Dフィストイレイザー・ネクストがベース。

 腕部に籠手状のドラゴン・クローが装備されており、必要時に展開してガントレット、あるいはクローとして使用可能になる。クロー時にはビーム発射口からビームサーベルを形成することが可能で、イレイザーと同じくビームの発射も威力が強化されて使用できる。

 

・ビームエッジ

 ビームスパイカーとイグナイト脚部が変容して形成される武装。膝から足の付け根に渡ってビームの刃を形成する。

 丸々武装が変更される形となったが、使いやすさなどはこちらの方が蹴りに合わせて攻撃しやすい為、最適化という形になった。

 武装モデルはインフィニットジャスティスガンダムのグリフォン ビームブレイド。

 

・ウエポンウイングユニット「WINGν-FULL-X(フル エクシーダ)

 機体背部のウイングを構成するバックパックユニットが、Gワイバーンのウイングごと再構成された兵装。

 一番変化したのがこの兵装であり、ウイングはファンネル着脱部がそれぞれで可動出来るようになっている。更にウイング基部の形状も飛行に適した形状になり、ファンネルの推進器化と合わせて圧倒的なスピードを生み出せるようになっている。一方姿勢制御用エアバインダーは小型化してジェットスラスターの発展技術である創世記の推進器「エクス・ジェットスラスター」へ、Gワイバーン・フルアーマメントのジェットパック、ミサイルは失っている。

 形状はWINGν-Hi-AとGワイバーンのウイングを融合したようなイメージ。ファンネル装着部をそのまま大型化、コウモリの翼のように可動部が生まれ、ファンネルを膜に見立てている。

 

・マキナ・エリミネイター

 背部のスラスター部に装着する、マキナ・ブレイカー系武装を変容させた兵装。片刃の剣から両刃の先が分かれた剣へと形状が変更されている。

 今までのマキナ・ブレイカーとの違いは柄の伸縮機能を持っていることで、柄を展開することで槍のサイズのマキナ・ブレイカーとして扱える。この伸縮機能にも変容の技術が用いられており、必要に応じて長さを「生み出す」、あるいは「消失」させて長さを調整する。

 先の別れた剣先もバックパック装着時にはブースターとして機能。使用時には剣先を変容により形成し、他のMSとの違いを見せつける。その上遠隔誘導端末としても使用可能。

 武装モデルはマキナ・ブレイカーⅡAにジェミニオン・レイのバルムンクの機能を一部追加、オリジナルとしてブースター機能、そして剣先を生成できるようになった。素の剣形状はバトスピのブレイヴ「天空の光剣クラウン・ソーラー」に近い。

 

・フェザー・フィンファンネル・X

 機体ウイングに接続される遠隔操作端末フェザー・フィンファンネル系武装が変容を起こした姿。

 機能としては分離時の機能にDNプロテクションの面を通したエネルギーの増加機能が付いたこと。そして非分離時でもファンネルから光の翼を展開出来るようになったことである。光の翼の生成法としてはファンネルのバレル部分からDNを放出するという方法で形成しており、これはファンネル自体も変容したDNフェイズカーボンで形成されたことによる副時効果となっている。イグナイターで形成された光の翼はDNLコントロールシステムによりそれ自体が武器となり、敵の捕縛、防御が可能となる。

 光の翼の物体干渉は「銀河機攻隊マジェスティックプリンス」のレッド5の最終決戦におけるものがイメージ元。

 

・テイル・スタビライザー

 Gワイバーンの尾部と首が合体したテイル・バスターが変容により変化した武装。バックパック下部からフル・ビームライフル・ゼロの接続部を兼ねる腰背部へと装備位置が変更になった。

 通常は細長いスラスターユニットとなっているが、必要時に横に扇状に展開する。このユニット自体はバックパックの姿勢制御用バインダーと同じ、エクス・ジェットスラスターで構成されており、展開時にはそちらよりも大きな推力で、かつ機動性に優れた操作性を生み出す。

 武装モデルは鉄のラインバレルのマキナ「ラインバレル」のスタビライザー。ビーム砲であるエグゼキューターは装備しない。代わりにビームライフルの接続部も兼ねているので、見方を変えればビームライフルがエグゼキューターの代わりを兼ねている。

 

 

レイ「以上が、シュバルトゼロガンダム・イグナイターの、黒の館DN異世界戦争編の紹介になるよー。これが、ガンダムのたどり着いた極地!」

 

ジャンヌ「これでもう元さんの機体は変わることはないのでしょうか?藤和木」

 

士「んーネタバレになるけど、まだこれで終わりじゃないよ。追加兵装による新たなシュバルトゼロの登場もあるからね。そして、新たな機体も……おっと、これは未来の話です(゚∀゚)」

 

ジャンヌ「無理にウ○ズネタ入れなくていいです」

 

レイ「もう平成は、終わったんだよ」

 

士「まだだ、まだ終わらんよ!( ゚Д゚)あの曲が流れるたびに、平成は何度でも終わるんだ!……まぁ元君の世界では平成は平成のままじゃないんだけどね。歴史改変の1つだ」

 

レイ「あ、うん。でも、次から全く違うキャラクターたちが多く登場するんだぁ」

 

ジャンヌ「そうですね。また最初の時は多く紹介することになりそうです」

 

士「その時はよろしくね、2人とも。後ネアやグリーフィアにもお世話になるね」

 

レイ「オッケー!」

 

ジャンヌ「はい。それでは、今回で黒の館DN異世界戦争編は終了です。以降は黒の館DN神騒乱勃発編をよろしくお願いします」

 

士「元とジャンヌが次に戦うのは……神の狂信者達。神に憑りつかれた者達を、討てMSオーダーズ!」

 

 




LEVEL1黒の館DNこれにて終幕となります。

感想としてはようやく初めて1部が終わった……という感じですね。前作SSRではあの時点で章は何度か終わっていても部は一つも終わっていなかったので……(明かされる衝撃の事実っ!)

LEVEL2からは舞台も私達のリアルに近い世界観の地球で、カルト集団との戦いを描いていきます。用語や名称、更にはもの自体も変えているのが多く登場すると思いますが、描写上ややこしい部分を避けるためにやっているので、温かい目で見てもらえると幸いです。

この後用語集も公開されますが、実質用語を並べているだけになりますのでここでLEVEL1最後のまとめとさせていただきます。

機動戦士ガンダムDN、LEVEL1を最後までご覧いただきありがとうございます。引き続きLEVEL2もよろしくお願いします!

それでは次回投稿は設定などの時間もあり遅れると思いますが、また次回。


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機動戦士ガンダムDN 用語設定集2

LEVEL1 第4章までの細かな用語、およびMSの使用などに関する設定となります。

何か分からないというものがあれば、前回と同じく設定を追加するつもりではありますので、遠慮なくどうぞ。


 

 

・MSの武装操作について

 主にMSの武装の機能変更については、2パターンが存在する。1つは武器側を手動で操作して変更する方式。もう1つがファンネルなどの脳波コントロールを応用して出力を切り替える方式である。

 この脳波での切り替えはオールレンジ端末のコントロールと異なり、コンピューターの補助によって特殊な能力を持たない者でも簡単に念じることで切り替えることが出来る。逆にこのコンピューター側はパイロットの微弱な脳波を電子空間で受け取りやすくすることで、操作を円滑なものに出来ている。このコンピューター補助脳波コントロールはシールドのアーム操作など多くの場面で活用されており、MSの電子取り込み技術のその最たるものの1つである。

 現在は更なる発展を見据え、将来的には全MSにこのシステムを応用したオールレンジ端末実装を考えている(コンピューター制御なら問題ないものの、脳波も踏まえたものだと未だ実現不可能。理由としてはこのコンピューター制御は近距離、もしくはワイヤーで繋がれたものしか出来ない為である。ワイヤーでも同時操作はコンピューター側の負担が激しく、技術も未成熟なためである)。

 なおガンダムなどの高純度DN使用機は、高純度DNの持つDNによる脳波伝達能力拡張により脳波コントロールを行いやすい。DNL能力に覚醒すればよりスムーズな武装切り替え、操作が可能となる。ガンダムのコンピューターはそれを見越したセッティングとなっている。

 

・本作MSにおける装依者の体力強化の重要性

 本作ではMSを電子化して憑依する方法で搭乗し運用しているが、にも関わらず身体能力の強化が描かれている。これはいくらMSの装依時に体を電子にして取り込んでいるとはいえ、元々の体の動きに合わせてMSを動かしているために体を鍛えなければMSが十分に力を発揮できない為である。

 この解説において参考になるのは機動武闘伝Gガンダムのモビルトレースシステムである。モビルトレースシステムは搭乗者の動きに合わせてMSを操作する技術である。それに当たるのが電子動作フィードバックである。電子動作フィードバックは電子空間での動きをMSでの実際の動きに反映させるものであり、フィードバックダメージを受ける点も含めて概ねモビルトレースシステムに近い。違うのはコスチュームがこの電子動作フィードバックに含まれる電子化で済まされる点で、これにより搭乗者を選ぶモビルスーツとレースシステムと違い、装依自体は誰でも行える。

 問題なのは機体の重さを受けやすいということ。流石にMSの重さそのものが体に掛かってくるわけではないものの、MSの重量を人間に置き換えた重さが電子空間上の装依者に掛かってくる(この時Gも相応のものが掛かってくる)。これを克服し、更にMSの動作を素早くするためにパイロットそのものの身体強化が必要となるのである。

 ガンダムに関しては優秀な高純度DNによる重量・G軽減システムが取り入れられているため、初めて装依した元にもあれだけの機動が出来たのである。ただしガンダムそのものの高性能から軽減していても性能を引き出すごとに相応の負荷がかかってしまっている。

 他にもMSが使用不可となって生き残った際に、サバイバルをしなければならない場合には体力は必ず必要となるためである。これほど人サイズのMSが普遍的になっても生身での戦闘は充分あり得る。なおMSには脱出直前の状況によって装依者に自動的にパイロットスーツが装着される仕組みとなっている。

 

・MSの格納について

 MSの格納法としてはいくつか存在する。もっともメジャーなのはスターターの中にデータとして変換して格納する方法、あるいはMSを格納する出力用ハンガーへの格納である。

 データ変換にはMSに装依者を取り込む際に使用する電子体変換が用いられている。出力用ハンガーはスターターから実体化させるためのハンガーであり、登録されたスターターの装依に合わせ格納した機体を転送して装依可能とする転送装置として運用される。

 出力用ハンガーは簡易用のものも存在し、そちらは野戦での整備などに重宝される。なおガンダムの装依の為にはセレクトスーツカードが必要とされるが、セレクトスーツはあくまで装備の選択の為に必要なのであり、セレクトスーツカードの中にMSデータが入っているわけではない。

 

・詩竜双極祭

 詩巫女を擁するドラグディアの聖トゥインクル学園が主に執り行う、詩巫女によるイベント。

 元々は象徴たるクリムゾン・ドラゴニアスとの誓いの契約を、学園の場で練習する形で行われる様になった。誓いの詩も実際に誓いの契約で歌われる歌であり、その対象は学園高等部にある中央広場にそびえ立つ石柱「ドラグーン・オベリスク」へと向けられる。

 このイベントで最もオベリスクに反応を示すことの出来た詩巫女は、優先的に象徴への契約相手として優遇される。ただし近年は反応を示すことが出来たからと言って、クリムゾン・ドラゴニアスと契約できるわけではなく、クリムゾン・ドラゴニアス側から拒絶されるケースも多くみられた。

 

・ドラグーン・オベリスク

 聖トゥインクル学園高等部の中央広場にそびえ立つ、黒い石柱。ただし歌に反応して蒼く光を放つ性質を持つ。

 学園が建つ前から存在しており、創世記時代のものとされていた。更に本編ではガンダム達の激突でも大きく破損することなく現存するほどの耐久性を見せていた。

 実際は内部に封印されていたGワイバーンの継承相手見定めを行うためのモノであり、歌に反応していたのはガンダムと必然的にペアとなる象徴と契約する詩巫女判別機能もついていたため。元とジャンヌに反応してシュバルトゼロガンダムを更なる高み、イグナイトへと覚醒させた。なお元が作中で言った同じようなものがモチーフの巨人の兵とは言わずもがな某カードゲームの巨神兵。ゴッドハンドクラッシャーである。

 

・セントリル、ギルン

 サークノ・レ・ファイ大陸のそれぞれ北東、南東の大陸に構える竜人族の国家。両国はいくつかの小国を挟んで繋がっている。

 ドラグディアの主要同盟国であるが、機人族との交流も盛んな中立国家であり、ドラグディアもそれを認めていた(とはいえ外交にいたのが革命会派側の人間であったことが多かったが故の結果であり、当時のドラグディア政府からしてみればマキナスへの攻勢にやや出てもらいたいものだったと思われる)。

 機竜大戦ではドラグディアの味方陣営として活躍する。

 なお名称のモデルとしてセントリルは角竜に分類されるセントロサウルスをもじったもの、ギルンはデジモンシリーズの「ギルモン」から名付けている。

 

・ドロス・アヴァル

 サークノ・レ・ファイ大陸の北西、南西の大陸に構える機人族の国家。セントリル、ギルンの関係と同じく、両国はいくつかの小国を挟んで大陸で繋がっている。

 マキナスの主要同盟国であり、マキナスの要請にはある程度従ってはいるものの竜人族との交流が多い穏健派の国として知られる。マキナス政府がドラグディア政府以上に敵対種族との交流を嫌悪しているため、竜人族国家との交流は大陸を大きく西へ回って反対側から竜人族国家に入っていくか、ドラグディアの主要部隊に護衛してもらうのがほとんどだった。

 機竜大戦においては竜人族国家との自由な交流を条件にドラグディア側に協力、マキナス側の戦力を文字通り四面楚歌、弱体化(というより裏切って制圧)している。

 名称のモデルはドロスが機動戦士ガンダムにおいてア・バオア・クーにてジオンの最大母艦として活躍した空母「ドロス」、アヴァルは特にこれと決まった特定のモデルはない。

 

・DNA、DNF

 本作のMSが使用する、DNを集中させた必殺技。高純度DNを用いていないMSが使用するのがディメンションノイズアタック(以下DNA)、高純度DNを用いるMSが使用するのがディメンションノイズフルバースト(以下DNF)である。使用する種類によって単発、コンボ、複合、全体に種別が別れる。

 主な違いはそこだが、他にもDNFは単純に威力が大きい。また元が使用するDNF「ディメンションナックル」はDNAとしても使用可能な汎用技であるが、DNFの場合スタンに似た特性を与える。加えてディメンションナックルは相手の装甲に直接DNの衝撃波を与える技であるが、特にガンダムの使用時には対装甲性能が高くむしろ防御兵装に使用されるDNに作用してダメージが高まる仕様となっている。別作品でいう所のFateにおける起源弾であると言える。他のDNFでもシャドウストーム系列は闇の竜巻に斬撃の特性が追加されており、装甲にその系統のダメージが出やすい。

 またDNA、DNF双方使い手によって性質を変化させることもある。シュバルトゼロガンダムが使用した「アッシュ・ヴァルスラッシュ」は本来ドラグーナ・ガンドヴァルが使用する単発体系のDNAであるが、本編シュバルトゼロガンダム使用時には高純度DNを収束させた剣を連続して斬りつけるコンボ体系となっている。これは単純にガンドヴァル使用者であるガンドが単発での一撃に特化させたことと、元の素の筋力だけでは十分な威力とならないと判断した2つの要因があるためと思われる。

 

・ディメンションノイズ・リーダー

 ディメンションノイズ(次元粒子)の力を感知し、それを操る能力の総称。発現できるのは人種を問わず、また人間以外でも行使できる能力である。

 創世記からの伝承では象徴が有していた能力であり、並びに象徴と心を通い合わせた詩巫女、奏女官も象徴と言葉を交わしあう中で会得する。またそれぞれの守護者たる竜騎士、機械騎士が操ったガンダムなどのパイロットは高純度DNと比較的多く接する機会のある戦いの中で覚醒していく。

 能力の一例としては空間にて揺れ動くDNの変動を読み取る、敵意の感知、想いを発信する、DNを通して脳波コントロールすると様々。能力も象徴、詩巫女および奏女官、そしてパイロットなど高純度DNと触れ合う機会で違う。詩巫女と奏女官は感応能力とDNの性質を理解、そして想いを発信することに優れ、ガンダムは敵意の感知や脳波による遠隔兵装コントロール、そして象徴はそれらをほぼすべて有する。

 ガンダム世界におけるニュータイプ的能力とほぼ同質の能力であるが、違いとして本作の世界では世界そのものが全てDNで構成されているという設定に基づいており、理論上世界を構成する物すべての意志、敵意どころか物の動きすらも感知できるものとなっている。創世記時代には世界構成にも干渉できたとされるが、詳細は不明。もし本当なら、万物創造が可能であるということになる。

 

・クリムゾン・ドラゴニアス

 ドラグディアにおける、国の象徴。かつては紅い体表を持つ巨龍であった。現在は紅の光の粒子を装甲から放つ機械の龍である。全長40メートル。雌のドラゴンである。テレパシーで話す。

 攻撃方法は口部ビーム砲から放つビーム及び火炎、更に爪と尻尾による格闘攻撃。機械としての戦闘能力では幾分か足りないものが多いものの、特徴的なのはその機動力。マギア・マキナスより機動力は高く、更に光の粒子が事実上DNプロテクションと同質のバリアとなっているため並みの射撃攻撃では沈まない。他にも体内には小型の生産プラントを内包しており、MSの修復も可能。生前の時もその紅い体表および鱗はビーム耐性とユグドラシルフレームに近い性質と剛性を持っていた。生前、死後共にDNFを放つことが可能であり、口部からの一点砲撃「オールギガ・ブラスター」と周囲の粒子を攻撃に転化する周囲殲滅「ボルカニック・バイオレンス」を持つ。生前の時は体を覆う光の粒子の浮遊能力を翼と合わせて飛行していた。

 機械化前はパートナーであるオルレリアン・ファーフニルととても仲が良く、当時の彼女のパートナーであるジード・フリードとも友としてオルレリアンを大事にするように言っていた。だが機械化後は呪いを施されたオルレリアンを見て激高。彼女を戦争から遠ざけ、ジードに対し自身を復活させた愚かな竜人族達への復讐を請願。自身は何度も送られてくる詩巫女達を同じ目に遭わせないために拒み続けていた。

 ドラグディア・マキナスの最終戦争にて2度目の戦死をするものの、腹部にひそかに製造していた「自身の最初で最後の子」たるクリムゾン・ファフニールを発射させ、戦局を変えた。

 

・マギア・マキナス

 マキナスの機人族が崇拝する、国の象徴。モビルシップと呼ばれる機動戦艦である。全体的に亀に近い形状と収納、展開式艦橋を持つ。意志を持った機械であり、性別は男。全長110メートル。搭載MSは14機ほど。

 武装は亀の頭部型艦橋の口部から放つビームと各所に装備されたビームガン(とはいえ出力、大きさ的にビームキャノンとした方が良いレベル)、ビームバルカン砲。それに両腕脚部の爪による格闘攻撃と両腕脚部と頭部をひっこめた体当たり攻撃。甲羅の部分はDNウォールと同質のバリアを展開出来る。更にこちらもDNFを使用可能で口部の殲滅砲撃「マキナ・ビフロスト」と甲羅のビーム砲を全開にして全体に砲撃した「フルバースト・エンパイア」を使う。

 マキュラ級よりもはるかに小さい戦艦ではあるものの、これは皇帝専用の戦艦として誕生した旨があるためであり、皇帝と少数の召使で運用できる上に戦闘力はマキュラ級8隻とも渡り合える戦力を持つ。そこにMSが合わさりマキナス軍最強の戦艦として君臨する。

 両国の最終戦争にてイグナイターによる大逆襲を受け一時戦闘不能に陥るもマキナス皇帝ギルフォードにより強制再起動し時限爆弾となって再浮上しドラグディアを滅ぼそうとするが、皇帝撃破後に乗り込んだイグナイターのDNFでジェネレーターを停止させ、機能停止となる。その後マギア・マキナスのコンピューターはドラグディアに接収されてガンダムに運用されたのちマキナスへと返還された。

 

・クリムゾン・ファフニール

 クリムゾン・ドラゴニアスが死の折りに出現した、ドラゴニアスの後継機。ドラグディアの新たな象徴。

 クリムゾン・ドラゴニアスの中から誕生したということで、大きさはMSサイズ。クリムゾン・ドラゴニアスは生前より肉体の老化による死を克服していたが、子どもというものに非常に関心を持っていた。それは機械化後も存在しており、政府にも秘密で自身のパーツを用いつつ内部に子どもと言える後継機を作り上げた。それがこのクリムゾン・ファフニールである。

 名称に関しては彼女がとても思いを入れる詩巫女の家系ファーフニル家から頂いた。性別は雌メスが設定されている。生まれたばかりで言葉も相応に幼いが威厳さを兼ね備えている。特徴として母クリムゾン・ドラゴニアスから受け継いだ機械の進化プログラム「エボリュート・アップ」を行使できることで、ガンダムなどの高純度DN使用機の限界を超えた運用を可能とする。

 更にまだまだ力を隠しているとのことで、ドラグディアの新たな象徴として厳重な警備が敷かれることとなる。戦争終結後は元達と空の散歩に行くのが楽しみなご様子。また同じサイズの機械竜であるGワイバーンにも懐いている。

 

・次元移動

 創世記時代の秘匿技術とされた次元世界を渡り歩く能力。本技術に関しては創世記以後も模索が進められていたが、その一切が試行すらできなかった。

 理由は次元空間を開き、通り抜ける技術がなかったため。DNジェネレーターは開いてもこちら側にDNを引き込むだけであり、こちら側からその穴を通り抜けるといったことが出来なかった。そのためガンダム出現前のマキナ・ドランディアでは超次元現象による観測、あるいは自殺覚悟の突入しか出来なかったとされる。だがガンダム出現を以ってこの状況が好転。

 シュバルトゼロガンダムの装依者である黒和元が、こちら側に来た事、黒と白のガンダム交戦後にDNFの激突により生じた超次元現象により徐々にそのメカニズムを解析できるようになった。そして、ガンダムとその支援機、Gワイバーンの登場により一変。Gワイバーンの保有する次元世界移動機構「Dトラベルコントローラー」が次元世界移動を可能とすることが判明し解析。ガンダムの次元世界移動までにその機構を完全に把握してから、シュバルトゼロガンダムを次元世界移動第1号として元の世界に送り返すこととなった。以後はその研究を進めていることになっている。

 次元世界移動に際しては、高純度DNを機体表面に散布して次元世界の生のDNに耐えられるようにする必要がある。これなしでも超えることは可能だが、スピードを出し過ぎると次元世界の高純度DNに機体が傷つく場合や、最悪機能停止する場合がある。現状高純度DNを扱えるガンダムのみ移動できることになるが、次元移動のためにDNから高純度DNに戻す技術をドラグディア、マキナス両国が開発に着手している。なお、この段階になっても未だ元が生身で次元間移動出来た理由は不明(爆発したとされるグレネードが高純度DNの膜として形成されたため、次元世界を通り抜けられたともされるが、それではシュバルトゼロガンダムのスターターを手に入れられた理由や、なぜグレネード1つでそれが出来たかの説明がつかない)。

 



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番外編1 ドラグディアとマキナスのクリスマスパーティー

どうも、皆様。クリスマスイブは予定通り番外編と予定通りではなかった黒の館DN神騒乱勃発編の投稿となりました(´・ω・`)藤和木 士です。

レイ「メリークリスマスっ!アシスタントのレイだよっ」

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです。聖夜の夜に番外編という名のクリスマスプレゼントです」

番外編1はクリスマス回!(゚∀゚)元とジャンヌはどんなクリスマスイブを過ごすのでしょうか?それでは早速本編へ!


 

 

 戦争の終わったマキナ・ドランディア。その後は慌ただしくも平和な時が流れた。積極的に両国交流の場が設けられ、共同研究が進み、創世記以前の歴史が回復していった。それも全て戦争を終結へと導いたガンダムのおかげ。だがガンダムは同時に新たな争いの火種ともなった。ガンダムを否定し、根絶を目論む竜人族・機人族の垣根を超えた武装集団「ノット・ア・ジー」が誕生し、ドラグディア、マキナスを無差別で報復攻撃を行っていた。

 この制圧にガンダムもまた出撃し、戦っていた。終わらない戦い。垣根を超えた結果がガンダムの否定になってしまったことにガンダムのパイロット黒和元とジャンヌ・ファーフニルも苦悩する。その運動参加者にヴァイスインフィニットガンダムの被害者「レイア・スターライト」の母「シャイナ・スターライト」が含まれていたことも関係していた。それでも人が死んでいくのを止めるべく、2人は戦線に立ち続ける。

 そんな2人の、そして兵士達の苦労を労うようにその年の冬ドラグディアとマキナスの両政府が関連組織を集めてとある「企画」を打ち立てた。これは12月の年末に近い、クリスマスイブの出来事である……。

 

 

 

 

『それじゃあ、皆様!かんぱーい!!』

 

『かんぱーい!!』

 

「すごい盛り上がり……」

 

「ですね……」

 

 元とジャンヌは各々感想を漏らす。ここはドラグディアの政府管轄の舞踏ホール。ここには今、ドラグディアとマキナスの前線兵士のうちエースパイロットとその関係者達を集め、クリスマスパーティーを開いていた。

 なんでも今年を素晴らしい年にしてくれた者達への感謝の気持ちとして、忘年会を兼ねた催し物としてらしい。そんな場であることもあって2人ともパーティーの正装に身を包んでいる。元は亡きガンドのお古の黒スーツを新調・拝借、そしてジャンヌは先日ネアやグリューネ、そしてわだかまりの解けたノーヴェとディーナ、そして誘われたリッドとわざわざ隣国から訪問したフェルナの大人数で選んだ肩を見せつける紺色の落ち着いたパーティードレスとなっている。

 パーティードレスと聞くと、この世界にやってきた直前の事を思い出す。あの時深絵のドレス姿が綺麗だと思っていた。しかし今目の前にいるジャンヌのその姿も決して劣る様子はない。むしろ上ではないだろうかと思う。その姿に釘付けになる。

 

「………………」

 

「?どうしました、ハジメ?」

 

「あらージャンヌに見惚れているみたいね、これはー」

 

「っ!?」

 

 図星を突かれ、危うくグラスを落としかける。そんな声を掛けてきたのはグリューネ・サランディーネ。彼女の傍には妹のネア、そして彼女達を招待した参加者で上官のアレクがいた。

 グリューネの発言をネアも姉程ではないものの肯定する。

 

「姉さん容赦ないね……でもジャンヌお嬢様も去年と見違えてます。表情とか」

 

「ありがとうネア。みんなと選んだから、当然よ」

 

「本当、お嬢様って感じでハジメにはもったいないな。で、本当にどこを見てたんだ?」

 

「はぁ、それはどうも……単純に服見てましたよ。ジャンヌの髪色にもあってる色遣いだなと感心してました」

 

 アレクからの冷やかしに動じることなくそう語る。嘘はなく、実際ジャンヌの薄い色素の髪と肌はドレスの色味を殺すことなくマッチしていた。専門学校でそういったものをたまたま学んでいたのだから自信はある。

 上官とそれぞれの連れの自慢に付き合っていると、そこにマキナスのあの人物もやってくる。

 

「やれやれ。ドラグディアの英雄とその指揮官は相当女に惚気ているようだな」

 

「まー無理もないでしょうよ。ここ最近僕らもノット・ア・ジーに対応手こずらされていたから、休息は必要だとアルスさんの兄さんも送り出してくれたわけだし」

 

「あ、アルス、それにハイドとフェルナさんもか」

 

 アルス、ハイド、フェルナのマキナスエースパイロット、機械騎士、奏女官の3人衆だ。

 

「やっ、ドラグディアの黒の竜騎士君!それから竜騎士の指揮官さんも」

 

「任務以外での顔合わせは3か月前の合同演習以来ですね、お二人は」

 

「そういやそんなに経つか。今度の時はガンダムの性能に助けられたってことにはなんねーぞ?」

 

 3か月前の合同訓練演習の話題について触れるアレクとハイド。その一方元は情けなさにため息を吐くアルスに礼を言う。

 

「助かった、アレク隊長ののろけ話に付き合うと長いからな」

 

「馬鹿が。お前も対抗するから長くなっているんだろ。適度な距離維持しろよ」

 

「適度な距離ねぇ。でもまぁ、割と今は好きでジャンヌと関わっているからな」

 

「はぁ、バカップル」

 

「否定はしない」

 

 アルスからの皮肉たっぷりの蔑みに苦笑いする。そんなジャンヌの方にはフェルナ、そして彼女を見つけた元の招待客のリッドとジャンヌの招待客であるリントヴルン姉妹が集まっていく。

 

「ジャンヌさーん!皆さんも!」

 

「あーリッドちゃーん!」

 

「似合ってるじゃないジャンヌ」

 

「は、はい……すごく、似合っていますっ」

 

「ありがとう。2人も来てくれてありがとう」

 

 今もまだディーナが緊張というか強張っているが、それでも以前と比べれば大きな進歩だ。女性陣が女性陣で会話に弾んでいく。

 そんな一方でこちらは男子勢が顔を合わせる。リッドと共に来たレヴが辺りを見回して言う。

 

「ひゃああ……ここにいるほとんどが軍人とその関係者かよ……。俺やリッドなんかがいていいのか?」

 

「いいも何も、俺が招待しているんだ。俺も軍人以外の話し相手欲しかったし」

 

 そんなに緊張しない様にと声を掛ける。ハイドも緊張をほぐすように話題を出す。

 

「まぁせっかくパーティーってことだし。それよりかレヴはどうなんだ、MS教練の方とか」

 

「あ、あぁ。最近ハジメに影響されてちらほら同じようにMS教練受ける奴が出てきてる。でもそんな奴らに負けてられないですよ」

 

 腕に手を当てるレヴ。確かにMS教練を受けたいと志願する生徒が多くなっているが、学校もそう簡単に受けさせているわけではない。ちゃんとした理由を持っているか。それを重視している。元もその面接官として参加したことがある。しかしレヴは災害復興チームへの志願の強さから、追加の面接試験から外されていた。

 この数か月の間に災害復興のためのチームが両軍再結成される様になった。レヴがMSに乗る日も近いのかもしれない。そんな事を思っていると、ウェイトレス姿に扮した彼女がこちらに声を掛けてきた。

 

「よっ、男子組」

 

「ローレイン。ってその恰好は?」

 

 ドラグディアの諜報員ローレイン。彼女もまたエースの一人、のはずだが服装が参加者を迎える側の服装に見える。するとローレインは肩を竦めて笑って語る。

 

「いやー俺も参加したいところだったんだけど、人数足らなくなったらしくてさ。その補充要員ってことだ」

 

「そういえば、朝それで少し混乱していたな」

 

「なんというか、運がなかったな諜報員」

 

 アレクが納得する。その一方アルスは運のなさを憐れむ。だがローレインもそれに甘んじるつもりはなかった。4人に対し話を持ち掛けた。

 

「ふっ、その運、どちらが尽きているか試さないか?」

 

 そう言って取り出したのはトランプ。彼女はこう持ち掛ける。

 

「勝負しようや、ポーカーでなっ!」

 

 

 

 

「……って言った割にはお前がディーラーかよ」

 

 ツッコミを入れる元。そう、勝負と言った割に、彼女はカードを配る役、ディーラー役であった。賭けは特になし。机の1つを借りて行う、強運が誰かを決める対決。両国エースパイロットWithレヴという組み合わせにギャラリーが集まる。

 

「いやー、俺仮にも今回はパーティーの提供側だからさ。一緒に参加するとかやるとどやされるからねー。エースパイロットとレヴ含めた5人、誰が強運持ってるか!」

 

「はぁ……」

 

 呆れ気味ながらもその勝負に乗ることにした。他の皆も同じように席に付く。着席したメンバーにローレインがシャッフルしたカードを配っていく。カードを見て各々考える。

 

『………………』

 

(あー……これワンチャンフルハウス期待できるけどどうしよう)

 

 元はカードの数字に戸惑う。カードは♠7♡7♦6♧3♡2である。7を保持するのは確定だったが、他の数字のどれを残すか。それにこの並びは3から7までのストレートも期待できる。

 モバイルゲームでポーカーをやったことのある元も、この並びはグッジョブと自身を褒めたかった。しかし油断してはならない。この場に居るメンバーがどれだけ幸運を持っているのか、所謂強運・轟運の持ち主がいるかどうか分からない。何かの間違いでロイヤルストレートフラッシュになっていたとしたら、それはもう勝ち目がない。そしてもう一つの気掛かりがカードから伝わる危機感の知らせだ。

 カードが危険を知らせている。DNLの影響か、はたまたただの自分の悪寒か。本当にこのままフルハウスを狙いに行っていいのかと問いかけてしまいたいほどの緊張感だ。戦いのような重い緊張感がのしかかる。

 

「ほーいじゃあハジメ、カード交換どうするー?」

 

 既にアレク、アルスの2人がカードを交換し終えていた。アレクは3枚、アルスは1枚だけ交換。アルスはかなり手札が良いのかもしれない。交換した後も一切の動揺を見せていない。

 待て元、と自身に問いかける。ここで下手に動揺して交換を伸ばしていると、こちらの考えを見透かされないと。直感を信じ、元はフルハウスを願って7のペアと♧3以外のカードと交換を宣言する。

 

「2枚で」

 

「ほいほーい」

 

 配られるカード、手札が確定しその手札の内容を見て確信した。行ける、と。表情に出さないようしながら最後の確定まで待つ。

 ハイドが強気の4枚交換、最後のレヴが1枚のみの交換を終えたところで、ローレインが公開の合図を行う。

 

「さぁ、どいつが一番強いか!運命のジャッジターイム!まずはアレク隊長から!」

 

 そうしてカードを順に見せていく。

 

「……2ペア」

 

「フラッシュだ」

 

「フルハウス!」

 

 7のペアが2枚と3のペアが2枚のフルハウス。元の結果にギャラリーから歓声が上がる。しかしフラッシュのアルスもなかなか強い。♧の2、6、7、9、10と数字が違えばストレートフラッシュになっていただろう。

 今のところは元が一番上だ。しかしまだ2人残っている。先に4枚交換という大胆な手を使ったハイドの結果は……。

 

「スリー、カードです」

 

 スリーカードだった。ローレインがこれまでの結果を確認する。

 

「スリーカード……ってことは、今んところ元が上か」

 

「分かんないぜ?レヴが1枚だけ交換していたから、相当強い手札かもしれないし」

 

 アレクの言う通り、レヴの結果がまだ出ていない。1枚だけの交換ということならそれだけ変える必要がなかったと思われるからだ。

 しかしレヴは自身なさげにカードを見せずに結果を語る。

 

「あー、いや、俺もフラッシュだぜ。一枚繋がらなかったからさ」

 

「フラッシュ……てことは元が一番かぁ」

 

「マジか……」

 

 結果に驚く。ギャラリーから流石という声が聞こえてくるが、とはいえ危なかっただろう。4枚手札入れ替えのハイドが4枚揃っていればフォーカードだったわけだし。

 そんなこんなで結果は元の勝利……になるかと思われた。だが回収の為にカードを提出したところで、レヴの手札の異変にローレインが気づいた。

 

「ん?……おいおいおい!」

 

「どうした?」

 

 ローレインに何があったのかと問う。隣のハイドも尋ねながらレヴの手札を見る。

 

「どうしました?……っ!?」

 

 えらく動揺するハイドに反対側にいたアレクとアルスとも顔を見合わせる。3人でその手札を見て、ようやくそのやらかしの度合いに絶句する。

 

『っ!!』

 

「……え?どしたしみなさん?」

 

 1人分かってない様子のレヴ。元としてはレヴの場合、こういうのはちゃんと考えている、むしろ得意な部類だと思っていた。しかしやったことの派手さと反応に恐ろしく落胆してしまう。

 そこでリッドが騒がしさから様子を見に来る。ギャラリーの前列からで目を凝らすもその原因をちゃんと口にしてくれた。

 

「……!兄ぃそれロイヤルストレートフラッシュじゃん!?」

 

「えぇ!?なわけ……あ゛」

 

 再度確認したレヴの顔が真っ青に染まる。そうポーカーでもっとも強い役、スペードのロイヤルストレートフラッシュがそこにはあったのだ。観客に動揺が生まれる。これにより順位も変動し……。

 

「え、えーとじゃあ一番の強運持ちは……レヴか」

 

「……だな。ハジメ、ドンマイ」

 

「嘘だ、そんな事……何がどうしてああ言った……?」

 

 結果に信じられないと思いつつも、偽装発言についての真意について問い詰める。何か理由があったのか。しかしその理由と言うものはあまりにうっかりな理由だった。

 

「……緊張でスペードのAがキングとストレートになるルール忘れてました」

 

『………………』

 

 笑いも起きない。以前自分を説得した時の爆弾発言もそうだが、どうもレヴは1つの事に意識を集中させるとミスを誘発するようだ。だがだからと言って今この状況をどうにか出来るわけでもなく、またどうにかするつもりもない。逃げたい。この場から今すぐに。

 元の願いがどこかに届いたのか、ネアが慌てた様子で人混みをかき分けて元を呼びに来る。

 

「は、ハジメさーん!すみませんちょっとー!」

 

「どうした、ネアさん?」

 

「じ、実はお嬢様が……ジャンヌさんが」

 

 ジャンヌという名詞に嫌な予感を感じさせる。だがそれは別の意味での大変だった。

 

「もぉ~ハジメェ!わたひをおいて、なにしてるのよぉ~ヒック!」

 

「じゃ、ジャンヌ!?」

 

 呂律の回っていないジャンヌをグリューネとフェルナが脇を支えて向かってきていた。わけの分からない状況にどう反応していいか分からない。支える傍らでグリューネとフェルナの2人が言い争い……というよりグリューネが呆れて文句を言っていた。

 

「あーもう、ホント何してくれてるのよこの奏女官さんは~!」

 

「ごめんごめん!まさか一発でこうなるなんて……てへっ☆」

 

 笑ってごまかそうとするフェルナ。状況を分からずにいるとネアが謝罪してくる。

 

「すみません、ハジメさん」

 

「いや、で、これは一体……」

 

 理解しがたい状況に黙っていた観客達もどよめいていた。するとネアが事情を説明する。

 

「実はフェルナさんがジャンヌお嬢様のグラスの中身をお酒にしてしまって……それでグイッと一気に……。クラクラっとなった後は既にあの状況に」

 

「えぇ……フェルナさん何やってるんです。というか未成年に飲酒ってダメでしょ」

 

「いやーごめん。てっきり途中で気づいて吐き出すと思ったんだけど、ホント一気にいっちゃったから止められなかった」

 

 どこかの漫画の話かと言いたくなる経緯。困惑のため息しか出ない。当の本人は元に目がけて千鳥足で抱き付いて、というより絡んでくる。

 

「ウェヘヘヘ……み~つけたぁ♪」

 

「あー、もう本当にどうする……ん?」

 

 その時元はとある事実に気づく。そしてわずかばかりほくそ笑むといつもの平静でローレインにとある要請を出した。

 

「ごめんローレイン。舞踏ホールの休憩室か何か借りられないか?ジャンヌを休ませる」

 

「!分かった。すぐに案内するぜ」

 

「というわけですので、後はレヴによろしくお願いしますっ」

 

「え、あ!ちょ……」

 

 酔っぱらい状態のジャンヌをお姫様抱っこしてその場をレヴに任せる。そう、先程の空気の悪い状況から逃げるべく、利用したのである。それを察したローレインもまた協力してその場からの撤退を行う。

 卑怯とでも何とでも言え。悪いのはあんな最強の手札を故意ではないにしても隠していたレヴなのだ。レヴの待っての声も聞かず、2人は酔っぱらい状態のジャンヌを運び出す形でデッドゾーンとも呼べるあの場からの撤退に成功したのであった。

 

 

 

 

「わぁぁふかふかのソファ~」

 

「と、何とかあそこからの撤退には成功したな」

 

「マジで助かった。よく俺の考えを察してくれたよ」

 

 ジャンヌをソファーに座らせて、脱出に成功したことを2人で喜びを分かち合う。あんな居心地の悪い場所、当事者なら一目散に抜け出したいはずだ。アイコンタクトでその場の動きに合わせたローレインには感謝の言葉しかない。

 なし崩し的にそれぞれのその場から逃げたい気持ちを叶えてこうなった。しかし元が酔ってしまったジャンヌの介抱をしたかったのは紛れもない事実だ。ジャンヌの方に顔を向けると、ローレインに頼みこむ。

 

「けど、ローレインは先に戻っていてくれないか。俺はジャンヌの様子見ているからさ」

 

「ん?……あー、いいけどやりすぎんなよ?」

 

 何を想像したのかにやけるローレイン。呆れながらローレインが想像していることはやらないと否定する。しかしローレインはご機嫌で部屋を出ていく。

 

「やりすぎってなんだ。普通にいてやるだけだからな?あとレヴに任せたがすげー心配だから、そのガード役」

 

「いいってことよ。他のやつらには上手い感じに言っておくからさっ♪じゃ、ごゆっくりー」

 

 ローレインが出て行き、部屋に残ったのは元とジャンヌの2人だけだ。しかし外には警備員もいるためローレインが言っていたようなことが出来るわけがない。そもそもそんな気はさらさらない。まだ酔いの冷めていないジャンヌを労わる様に撫でた。

 

「今回は助かったよ、ジャンヌ」

 

「ふぃ?ほめられた~!えへへー、むぎゅー」

 

 ジャンヌが本能のままに甘えてくる。なんかもう可愛すぎて本当に出会ったころのあのトゲトゲ満載なあの人と同一人物かと思う。それどころか最近のジャンヌとも甘えぶりが違い過ぎる。文字通りこれが理性で抑えられていた本能だとしたら、どれだけ抑えていたのやら。

 だがそんな元の考えも知らずジャンヌ本人は解放された欲求のままに甘える。

 

「うわー、ハジメがいっぱいいる~」

 

「酔ってる酔ってる」

 

「よってないですよぉ~」

 

「……まったく」

 

 わずかに口元を笑わせると惚けているジャンヌの頭の上に手を乗せる。銀髪にいつものリボンを両側に付けたその姿が愛しい。元の中で記憶が蘇る。

 もとの世界でのクリスマス。妹の華穂や幼馴染の柚羽とはしゃいでいたなと思い返す。今回はそんな楽しいクリスマスを久々に過ごすことが出来た。

 

「ありがとな、ジャンヌ」

 

「んへへ~♡」

 

 この1年の感謝を込めて、ジャンヌの頭を撫でた。ジャンヌもご満悦にその行為に頭を押し付けて目いっぱい受けたのであった。

 

 

Merry Christmas!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【余談】

 

 

~パーティー終了後~

 

「そういや、あの後どうだったんだ?ローレイン」

 

「あー、グリューネとかに「今頃ジャンヌは貪欲な黒狼に食べられちゃってるわねぇ」って言われてたぞ」

 

「あの生徒会長……と後は大体想像できるな」

 

「あとレヴがあの後ギャラリーからの提案で急遽始まった勝ち抜けポーカー対決で負けまくってた」

 

「アイツの運あれで全部使いきったんだな……乙」

 

 その後出口で敗北に打ちひしがれていたレヴと、迎えに駆け付けたフォーンからジャンヌの件で大目玉を受けたフェルナと謝罪するハイドの姿を見たのは、言うまでもない。

 

 

EX-EPISODE END

 




番外編1はここまでとなります。同日公開の黒の館DN神騒乱勃発編の第1回もお楽しみください。

レイ「いやぁ、最後はラブラブな2人だねっ!」

ジャンヌ「あれから半年、2人も仲を深めていらっしゃるようで。これがLEVEL2に繋がっていくかと思うと、面白いですねっ」

光樹君の方は全く番外編も出せなかったからね。その反動分甘くしましたよ!( ゚Д゚)ただ…それ以上にこの前のビルダイリライズが想像以上に重かったから反動でこうなった節がある……/(^o^)\ナンテコッタイデジタルハザードですやん。

レイ「藤和木それはデ○モンだよ……」

ジャンヌ「これ書いている間ずっと楽しい系のアニソンとかボカロ曲とか聞きっぱなしでしたからね……。ですが元さん達も序盤の方に大変だということが示されましたね」

レイ「うんうん!何さ、ノット・ア・ジーって!」

簡単に言うとガンダム被害者によるガンダム反対運動ですね(;・∀・)今後触れる場面も出てくると思われますので……」

ジャンヌ「そうですか……。でもジャンヌ・Fさんは複雑ですよね」

何せレイアの母親が参加しちゃってるって情報出しちゃってますからね(;・∀・)これがどうなるのか……さて、では他にも色々と触れたいですが、番外編はここまでとなります。

レイ「レヴ君ドンマイっ!黒の館DNもよっろしくねー!」


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番外編2 バレンタインの狂想曲

どうも、皆様。お久しぶりです。ガンチャンのバレンタインセレクトが予想通りのセレクトで安心した藤和木 士です(´-ω-`)

ネイ「アシスタントのネイです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよ~。ってあら、今回って黒の館DNじゃなかったかしら?」

それがですね、前にバレンタイン回作るとか言ってたの忘れて今の今まで作成してたんですよ(;´・ω・)というわけで番外編のバレンタイン回です(゚∀゚)

ネイ「すっごいタイムリーな話ですね」

グリーフィア「前回のクリスマスの番外編もクリスマスだったからまぁねぇ」

というわけで、マキナ・ドランディア、というかドラグディアのバレンタインデーはどうなるのか?本編どうぞ(*´ω`)


 

 

 2月14日。マキナ・ドランディアにもバレンタインの日がやってきていた。好きな異性にチョコを贈る風習。戦争が終わって初めてのバレンタインはその影響を少なからず受けていた。ドラグディア・マキナス両国家間交流で思いを寄せていた異種族への求婚という形で、だ。長年そう言った例はそれらの国以外の、両種族中立を表明した外国家に住んで暮らすしかなかったが、戦争の終結によりもう人目を気にすることなく異種族間で愛をはぐくめるようになったのだ。

 それを果たしたドラグディアの両雄、彼らもまた今や互いを気に掛けるパートナー。この日の為に詩巫女の少女はパートナーたるガンダムパイロットに、これまでの感謝も込めて手作りのチョコを作っていた。

 

 

 

 

「……ふぅ。出来ましたぁ」

 

 オーブンから取り出した角皿の上に乗せられたパウンドケーキを見てほっと一安心する。焦げは少なく、チョコレートの匂いがキッチンに広がる。

 完成したのを見て同じく厨房にいたネアも出来を称賛する。

 

「上手くできてますね。味の方はどうです?」

 

「えぇ。今切り分けます」

 

 ケーキ用のナイフでパウンドケーキの内1つを切り分ける。ネア、そしてグリューネと「見張り」の使用人達の分を切り分けると皆厨房の席に着く。席に着くと皿に取り置かれたケーキをフォークで欠片として各々口に入れていく。緊張の一瞬だ。

 

「……うん、ちゃんと出来てますね」

 

「本当に!?良かった……」

 

 ネアの評価、そして使用人達の頷きで憑き物が取れたように安堵する。何とか間に合った。明日のバレンタインでハジメに渡すチョコは完成できた。丁度同じくパートナーにチョコを渡すグリューネと、元うちの使用人だったネアにも来てもらい買い出しから手伝ってもらった甲斐があったものだ。

 改めて2人に感謝の言葉を贈る。

 

「ありがとう2人とも。メイドさん達も」

 

「気になさらないでください。お嬢様がバレンタインのチョコを贈る、それを見届けたかったので」

 

「私としてはアレ君と同じ勤め先だったから、丁度いいと思っただけに過ぎないわぁ♪こういう広い厨房を使わせていただけたわけだし。監視役の方たちもお疲れ様っ」

 

「いえいえ。お三方の楽しい秘め事、何人たりとも邪魔させるわけにはいきませんから」

 

 3人の企みに喜んで乗った使用人達。彼女達には男性陣もといハジメがこちら方面に来ないかどうか見張る役目を帯びていた。サプライズの為、決して悟られてはいけない。

 その本人であるハジメだが今日は基地にて自主トレと次の作戦確認のために基地へと出向いている。一応今日はネア達と予定があると断ったが、気づかれていないだろうか……。ハジメの場合気を使ってと言うこともあり得る。グリューネの方もアレクには今日の用件は伝えていない、誤魔化していると言っていた。その筋からバレる可能性は少ないはず。

 大丈夫だと自身に言い聞かせて、明日への意気込みを語る。

 

「明日はしっかり、ハジメに受け取ってもらいます!」

 

「受け取ってもらうだけじゃあダメね。2人には思いっきり鼻の下伸ばしてもらわなくちゃ!」

 

「ハジメさん、滅多にそういうデレた顔見せませんから見てみたいです。お嬢様がどこで渡すかにもよりますが……」

 

 明日はバレンタイン。乙女の勝負所だ。

 

 

 

 

 迎えたバレンタイン当日。いつもより男女ともに活気が溢れる通学路を元はジャンヌと共に歩いていた。ネアも既にサランディーネ家に引き取られ、通学路で会うか学校で会うくらいになった。少し寂しくも思うのはやはり数か月程度でも家族のように接したからか。それに加え季節は春先に近づいているとはいえ寒さが厳しい。マフラーとコートは外せない。早く春が来てほしいと思う。

 それを同じく感じているのかと思えば、そうではないジャンヌ。カバンを大事そうに抱えての登校。大体は見当がついているが、敢えて気づいていないふりをして周囲の色めき立つ様子について話題を振る。

 

「そういえば、今日はみんな活気づいていますね」

 

「え、えぇ。なにせ今日はバレンタインですから。みんな意中の相手に早くチョコを贈りたいと思っているのでしょうから」

 

 笑顔でそう答えるジャンヌ。声音などはやや抑えているが表情が隠せていない。にやけている。おそらくジャンヌもまたその中の1人なのだろう。もう半年にもなるこの関係、未だにむず痒さが残るがそれでも悪い気はしない。

 そうして通学路を過ぎていき、学校の校門をくぐっていく。道中もそうだったが女子生徒の視線がやたら熱い。とはいえ今までなかったわけではない。戦争終結直後の学園通学時から元とジャンヌの2人が学園で注目されるようになった。理由は無論ドラグディアの両雄である2人への人気だ。男女問わず、憧れ嫉妬含めた注目を2人は学園中から受けていたのだ。最初の内は特に酷く、休み時間にドラグディア軍が出動して規制を掛けるほどだった。今は大分落ち着きを見せていたが、今日のこれは普段よりも注目は多いと思う。

 

(やっぱりジャンヌからチョコを、それか俺に対しての……まったく、英雄なんて気が楽じゃねぇ)

 

 何度目かの英雄扱いへのため息を心の中で吐く。だが、それが2人で成した証。厄介と思っても失くしたくはない。隣で歩くジャンヌが訊いてくる。

 

「ねぇハジメ。今日の放課後……その、いつもの場所に来てくれる?」

 

「あぁ。あそこだな」

 

 いつもの場所、という単語で理解する。2人にとって忘れられない場所、あそこなら邪魔が入るのも少ないだろうと考えたのだ。

 放課後の約束を取り決め、昇降口へと入っていく。が、そこで妙なざわつきが起こっていた。中心にいたローレインがこちらに気づく。

 

「あ、ハジメ!と、ジャンヌ……」

 

 2人、特にジャンヌを見て声のしまりが早かったように感じる。いつも飄々としているローレインがそんなあからさまに声の調子を落とすなど軍関連以外ではあり得ない。それに思い当たる出来事があった。

 

「どうした?まさか下駄箱にまた……」

 

 また、というのはこの戦争終結後、活動を開始したガンダム排斥団体「ノット・ア・ジー」による嫌がらせ。ガンダムパイロットとそのパートナーが学生なのをいいことに学校に侵入して威力妨害をここ最近行っていた。教員の1人がそれらに参加していたことで一度ジャンヌが標的にされた。寸前でハジメが異変に気づき事なきを得たが、もしあのままだったらジャンヌは大けがを負っていた。最悪……。

 ともかくそれを予感させる空気をローレインの表情から察したハジメはすぐに意識を下駄箱方面へと向けた。DNLとしての感覚を研ぎ澄ませる。敵意はどこからか、どのような仕掛けを施したのか。見た目では一見普通でも、物に残ったDNまではそうごまかせない……。ところがローレインは首を振って制止する。

 

「あーいや、前のケースじゃないんだ。てか予想できたけど忘れてたっつーかさ……」

 

「忘れていた?前にもあっただろう?」

 

「いや、その可能性もあるんだけど、場合によっちゃジャンヌは見ない方がいいっていうか……」

 

「私が?何を言って……」

 

 制止するローレインをよそ眼に2人で人混みへと入っていく。一体何を言っているのか。その答えは意外な、いや、困惑するものだった。

 

「―――――あぁ」

 

 人だかりの中心は元のクラスの下駄箱、というより元の下駄箱の前が異変の中心だ。その真ん前に床から積み上げられた包装物の数々……。その裏の下駄箱自体にもラッピングされた箱がいくつか散見できる。

 このような光景をテレビで見たことがある。平次に勧められて見たアニメ、丁度今の時期の話でそのような事態に陥ったキャラクターの数々。所謂アニメのお約束、と言うものだった。

 

「おーうすげぇ人だかり……っと、ハジメ……って何だこれ!?」

 

「うはっ、ハジメ君凄い量だねぇこれ全部チョコ?」

 

  丁度やってきたリヴァイ兄妹が事態に気づく。流石に全部を見たわけではないが、信じるならこのすべてがバレンタインのチョコだろう。

 

「みたい……だな」

 

 ちらりとローレインの方を向く。だが彼女の方も全てを把握しきれていない為、直ぐには返答が来ない。その一方レヴはありきたりな反応を示す。

 

「おいおい……英雄だからってこんなにかよ!?女子のハート鷲掴みにしてぇ!」

 

「変な誤解作るな。そんなに欲しいなら少し分けるし」

 

「余裕ぶりやがって!畜生!」

 

「お約束をどうも。というか本当にこれ全部食べ切れないし……」

 

 冗談抜きでこれ全部は無理だ。誰かに協力してもらわないことには……。一つ一つ最低でもひとかけらは食べるつもりだ。もしかするとドラグディア軍の人にも協力してもらう必要が……。そう思ったところでローレインが言いづらそうに声を掛けてくる。

 

「あ、あのハジメさん?ちょっといいかな?」

 

「どうした、急に改まって」

 

「あー、そのですね……後ろ」

 

「ん?ってあ」

 

 言われて振り向く。そして気付く。というより気づかされる。それらのチョコを見て何やらいけないオーラを漂わせているパートナーの姿に。

 

「……あらぁ」

 

「お、おいジャンヌ?」

 

 呼びかける。するとジャンヌはオーラをそのままに笑みを向けて答える。

 

「大丈夫、ハジメは悪くないんです。仕方のないことですから……」

 

「え、あ、そう……」

 

「ハジメは何もしなくていいですから……私が、こんなものを送ってきた娘全員始末して」

 

「駄目です」

 

 流石に不味い。狂うほどにこちらを想うジャンヌを外へと連れていく。最終的にチョコは毒物混入がないかどうか調べるためローレイン達に基地へと引き取られた。ついでに処理もとい食べるかどうか聞いたが、その答えは苦笑いで済まされた。

 

 

 

 

 放課後になりようやく一息つく。朝っぱらから疲れてしまったが、今日もまた学生の日々は終わった。後は基地の方へ、と思ったところで思い出す。

 

(そういやジャンヌに言われていたんだった。「あそこ」だったよな)

 

 約束を思い出し、一緒に帰るかどうか聴いたレヴに外せない用事があると断り教室を出る。途中朝の返事を聞きたいのだろう女子生徒達が何人かこっそり付いて来ていたが、階段でそれらを撒いた。来る途中教員室を見たが既に目的地のカギはないのを確認している。既にいるのだろうと真っ直ぐ目的地まで向かった。そこは学園の校舎隅に近い、ほとんど近づかないような一角。熱心な詩巫女候補生位しか知らないと思われた場所だ。

 その部屋の入口を開ける。予想通り鍵はかかっていない。室内にはやはり彼女がいた。パートナーにして主、ジャンヌ・ファーフニルが。

 

「遅いですよ。何していたんです?」

 

 やや不機嫌そうに訊いてくる。朝の件もあって疑惑を向けられるのは仕方がない。何か言われるのは覚悟で理由を話す。

 

「ごめん、少し厄介ごとを撒いてた」

 

「厄介ごと……まぁいいです。来てくれたので」

 

「当り前だろ、ここの部屋使うのはそういう大事な時なんだから」

 

 言って辺りを見渡す。2人がいるのは学園の詩巫女資料室。かつて元がジャンヌに詩竜双極祭に参加しない理由を問い詰めた場所である。2人にとっては思い出したくない記憶だ。

 そんな場所を大事な集合場所にしたのは戒めも込めてだった。もうお互いを傷つけないよう、いつでも大事なことを思い出せるように。

 しばしの沈黙が2人の間に流れる。先に沈黙を破ったのはジャンヌだ。後ろに回していた手をこちらに向けた。その手には朝方見たような綺麗にラッピングされた箱状の物体。

 

「……こういうの異性に渡すの、初めてなんですからね?」

 

「あぁ、だろうと思った」

 

「だろうと思ったって……何です?その言い方っ」

 

「フフッ、悪い。来る途中やけに嬉しそうにしてたから」

 

 嬉しそうにしていたと言われ、視線をずらす。分かりやすい反応だ。自分では気づいていなかったようだ。けれどその恥じらいのまま元が一歩前に出て抱きしめる。

 

「は、ハジメっ」

 

「ありがとう。ここ数年、異性からのチョコなんて身内の残り物位だった。凄く嬉しいよ」

 

「ぅぅ……///」

 

 抱きしめられ、嬉しいと言われた恥ずかしさからか顔を埋めてくる。だがその言葉は同時に居なくなってしまった幼馴染とのやり取りも意味していた。抱き合う2人は呟く。

 

「もう、朝みたいな気持ちにさせないでくださいね?」

 

「努力する」

 

 やはり、朝のあれはまだ気にしているようだった。何か考えなくてはと思いつつ、抱き合っていた。

 

 

 

 

 後程、基地にて……

 

 

「おーう、ハジメ……って何、このチョコ!?」

 

「あぁ、アレク隊長。学校でもらったんですが食べきれなくて……もらいます?」

 

「いや俺だってグリューネからもらった分あるし!なんで学校の友人とかにあげなかったんだよ。もしくは家の人に」

 

「あーその手がありましたね。というかちょっといいです」

 

「なんだ?」

 

「異性からの注目を浴びている人間が、バレンタインで目的の1人だけからチョコを偶然もらえる方法ありませんか。できれば来年の今頃までに」

 

「どういう状況だよ、それ!」

 

 

EX EPISODE END

 

AND

 

FOLLOWING THE NEXT VALENTINE DAY…?

 




今回もお読みいただきありがとうございます。

グリーフィア「なんというか、予想通りの甘々回ねぇ」

ネイ「作者さんの欲望も出てそうですよね」

(;´・ω・)そもそもバレンタインというとSEEDの血のバレンタインが思い付いてしまうんですけどね私。一応SEEDとか00の世代なので。

グリューネ「そこらへんはちょっとわかんないわねぇ~。だけど……最後の終わり方って何ー?」

ネイ「ANDで区切られていましたが……どういう意味で?」

次のバレンタインデーに続く(゚∀゚)(意訳)

ネイ「あっ」

グリューネ「まさかの最後の方の発言のことね~。来年書くの?」

その通りだよ(゚∀゚)その前に今回の分のホワイトデーまた来月書くんですけどね。というわけで今回はここまでです。

ネイ「次回の黒の館DNよろしくお願いします」


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番外編3 義理でも感謝の気持ちは絶やさない

どうも、皆様。本日はホワイトデー&バトスピガンダムコラボスターター発売日だ。藤和木 士です(´-ω-`)早速回してますよ、見事な出来栄えだ、バン○イ。

レイ「グラハムさん乙。どうも、アシスタントのレイだよ~」

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです」

さぁ、本日はガンダムDN番外編だ。内容はズバリホワイトデー。

ジャンヌ「先日の投稿から二日しか空いていないのに投稿ですからね。後でどうなっても知りませんよ?」

レイ「でも、この流れだとまた元君とジャンヌちゃんのイチャラブかな?」

フフフ……元とジャンヌのイチャラブと言ったな……なら、その希望を絶つ……!

レイ「え、何この流れ」

ジャンヌ「えーと引用元はエグ○イドのあのシーンに入る直前と」

今回は違うんだなぁ!これが!(゚∀゚)というわけで番外編どうぞ。


 

 

 3月14日。バレンタインから約1か月後のこの日。異性へとチョコを渡した乙女たちが男性からお返しを楽しみに待つ日だ。

 バレンタイン前に女性達が集まったスーパー、専門店には逆に男性がそれなりにお返しの品物を買い求めに来ていた。

女性の数より少ないのはご愛敬と言ったところだろう。いずれにせよチョコをくれた女性にお返ししようと男性達も試行錯誤していた。

 その中にあの二人もいた。黒き竜騎士黒和元と速烈の剣士アレク・ケルツァート。それぞれのパートナーからチョコを頂いた二人も彼女達に応えようとレヴをお供に買い物にやってきていた。

 想い人の為に作る。彼らは材料を買い終えると、とある場所へと向かった。

 

 

 

 

「と、これくらいで大丈夫か」

 

「だと思いますよ。悪いな、レヴ。場所借りて」

 

「いいってことよ。むしろこっちが感謝だぜ」

 

 ホワイトデーの一日前、それぞれ準備をしていく。現在元達はレヴの家、セント・ニーベリュング市の隣、グラム市にあるリヴァイ家の調理場にいた。

 調理場という名前からも気づくと思うが、レヴの家は特殊だ。簡単に言うと飲食業、パン屋である。彼の実家「ベーカリーリヴァイ」の調理場を借りて作っていく予定だ。

 基地の食堂の厨房を借りるというのを最初は考えたが、基地の方では生憎一週間前から改装工事を行っていた。

 下手な場所はサプライズに使えない以上どうしたものかと二人で考えていたところ、レヴがホワイトデー直前に実家のパン屋が臨時休業すると聞いてその間に借りることとなった。

 レヴがここまでの流れについて振り返った。

 

「何せ結婚記念日ってことで忙しい明日の前倒しに毎年ホワイトデーのお出かけに行っているからな。リッドも今日は学校の友達と遊んでから夜に帰ってくるって言うし」

 

「まぁ、それはこちらとしては嬉しい誤算だ。それまでに作ろう」

 

 今日は月曜日。とはいえ元達は学期末テスト終了後の時間割で早く帰り、アレクも半休を取って時間を作ってきた。時間は充分あるだろう。

 買ってきた材料を並べて各自作る物の再確認を行う。

 

「さて、二人とも作るのは分かってるよな」

 

「あぁ。俺はロールケーキだな」

 

「こっちはドーナツ。ホワイトチョコ掛けてだな」

 

 元の方はロールケーキ、アレクはドーナツというセレクトだった。

こちらはいつもジャンヌがアップルパイを作ってくれているので、それとは違ったものをと考えた結果、ロールケーキが簡単で時間も早いとなった。

 一方アレクの方はグリューネがドーナツ好きだからと単純な考え。申し訳程度のホワイトチョコのアレンジを加えているが、アレク曰くグリューネは自身が作ってくれるだけで嬉しいのだとか。

 確認してレヴは二人に行程を一から話す。

 

「じゃあハジメは生地作りからだな。オーブンの方は使えるようにしておくから。アレクさんは作り方分かります?」

 

「あぁ。分かった」

 

「問題ない。暇があれば作ってやってたからな。慣れさせられたよ」

 

「じゃあ器具はそっちの方に入っているので、必要に応じて出してくれて構いません。洗い物はそっちの方に出しておいてもらえばこちらで片付けます」

 

 こうして男三人によるクッキングタイムが始まった。レヴに教わりながら元はロールケーキの生地作りから、アレクは手慣れた様子でドーナツの生地を作っていく。

 

「生地が出来たらオーブンに入れて、その間に生クリームづくりだな」

 

「あぁ。泡だて器借りるぞ」

 

「こっちの方は形取れたから揚げに入るぜ」

 

「早いですね。そっちは心配なさそうだ」

 

 特にトラブルもなく進めていく。そうして一時間近く経った。既に最後の行程に入っていた。

 

「…………っ」

 

「そうそうペーパーで潰さないように……よし、OK」

 

「出来た……」

 

 無事元のロールケーキが完成する。一足先にドーナツ(ホワイトチョコ掛け)を完成させたアレクもその出来を称賛する。

 

「おお、ちゃんと出来ているじゃないか。後は箱に入れてラッピングだな」

 

「えぇ。レヴもありがとう」

 

「いやぁ、ちゃんと作れたならそれでよかったって。仮にも食品作る人の子どもだからな。こういう時に本領発揮しないと」

 

 袖をめくって魅せつけるレヴ。食品を取り扱うのもあって実際アドバイスは的確だった。今回は本当に感謝しなければならない。

 一通り明日の準備を完了した二人。しかし心配なことがあった。レヴだ。彼も返す分があると言っていたにも関わらず、今まで作っていた様子が全く感じられなかった。

 

「そういえば、レヴは自分の分はどうするんだ?というか、誰に返すんだ」

 

 疑問をぶつけてみる。すると答えはすぐに分かった。

 

「あぁ、俺にくれたのは妹の残り分だったからな。昨日作ってもう冷蔵庫に入れてあるよ」

 

「なるほど。身内か」

 

「フッ」

 

「な、何だよアレクさん!ハジメも笑ってんじゃねぇって!」

 

 レヴが怒る。だが確かに納得な答えだ。身内が家にいるのなら、何か用意してもすぐにバレてしまう。それくらいなら前もって用意しても何の問題もない。周知の事と割り切ったのだ。

 その証拠にレヴはラッピングした瓶を見せてくる。中にはマシュマロが入っていた。

 

「ほれ、これがその証拠。アイツ家じゃスマホばっかり見てるから片手間に食えるようにってチョイスしたんだよ!」

 

「別に疑ってない。やっぱり兄っぽいんだなって」

 

「そうだな。しかし前に聞いたがレヴは元々MSパイロット志望だったのを妹と同じ進学先に変えたと言っていたな。何でも妹の体が弱いとか」

 

 アレクが話題に挙げたレヴの妹、リッドは病弱である。そう元も聞いていたのだが、これまで全くそんな様子を見た覚えがない。

 正直言って本当かと眉唾ものに感じていたのは認める。この際聞いておくのもいいかもしれない。

 元の狙いを聞くことなく、アレクからの問いにレヴは真面目に答えていく。

 

「あぁ。気管支と肺の魔力回路がちょっとね。それに引っ張られてそれらそのものも弱いんだけど」

 

「気管支と肺が?」

 

「というと……あぁ、詩巫女がたまに回路の酷使で引退せざるを得なくなる呼吸器官魔力回路損傷か」

 

 呼吸器官魔力回路損傷。元はまったく聞き覚えのない病気だったが、レヴはそれに対し肯定する。

 

「そう。魔力回路がダメージを受けて、上手く魔力を練れなくなる病気。ただ妹の場合はそれの先天性。昔は単なる喘息かと思ったんだけど、小学生でたまたま魔術込みの詩の演奏で重症化して分かったんだ」

 

 レヴによれば幼少期から詩巫女、歌の仕事を目指していたがその時に症状が重篤化、中学まで早退を繰り返していたそうだ。

 一時は中学進学も諦めていたそうだが、兄が吹っ切れて妹の面倒を学校で見ると親に直談判して同じ学校に通うことになったという。

 

「中学も最初の頃は欠席とか多かった。でもその学校が詩巫女養成にも力を入れてたのが幸いしたんだろうな。学校で活動していた詩巫女部から響く周囲の詩の魔力に多く触れて、たちまち回復していったんだ」

 

「詩で……詩巫女の詩にそんな力が?」

 

 訊くとアレクも自らの知る知識を語る。

 

「そういった治療があるっていうのは俺も聞いたことがある。詩巫女の集めた高純度DNが傷ついた竜人族の魔力回路を癒すんだろうな。っていうかそれはお前の方が詳しくなきゃいけないだろ」

 

「言われてみればそうですね。まぁまた教科書とか読み返しますので」

 

 厳しいツッコミに対し軽く返答して顎に手を当てる。元の世界でも歌を動植物に聞かせて味を良くするといった製法がなされている。きっとそれと同じようなものなのだろう。

 

「ともあれ、それもあって高校まで行けるようになったんだ。今の学園になってからはもっと詩が溢れているからな。中学の時よりも急な欠席もなくなって、俺としては嬉しい限りだよ。まぁ元気過ぎて俺に当たりが強いけどな」

 

 日頃振るわれる罵倒や態度などに呆れてため息を漏らすレヴ。しかし元には分かった。決して嫌がってはいない。リッドも同じくちゃんと手加減しているのだろうなと。わざわざバレンタインに「余ったチョコ」を渡すのだ。うちの妹との関係にも似たものを感じる。

 なるほどとアレクが納得して笑いかける。

 

「なるほどな。案外ちゃんとお兄ちゃんやってるってわけだ」

 

「案外ってなんですか!」

 

「いやすまない。けどこんな兄を持ってリッドは幸せ者だろうな」

 

「いや、そんなわけ……」

 

「それは俺も思うよ。俺にも妹が居るから分かるけど、どれだけ憎まれ口叩かれても放っておけないからな」

 

「ハジメ……このっ!」

 

 元の指摘に恥ずかしがって絡んでくるレヴ。なんだかんだ言って、レヴも色々苦労してここまで来ていると知った。そんなレヴだったからこそ、あの時の俺を止められたのかもしれない。

 ヴァイスインフィニットに敗北して現実から逃げていた自分。それに体を張って止めてくれた学友。感謝してもしきれない。

 和やかなムードとなる調理場。そこに一本の電話が入ってくる。掛かってきたのはレヴの携帯だ。

 

「あ、ちょい失礼」

 

 じゃれ合っていたのを止めてレヴが電話に出る。一瞬その顔が曇ったのを確認する。

 

「…………?」

 

 何だろうと話す様子をアレクと二人で観察する。

 

「はい、レヴ・リヴァイですが……はい。え、あ、はい!すぐ行きます!」

 

 慌てた様子で電話を切るレヴ。ただ事ではなかった。元は事情を問う。

 

「どうした?」

 

「悪い。病院から電話があって、さっきリッドが緊急搬送されたって……」

 

「さっき言ってた妹さんがか……」

 

 先程話していたリッドの緊急搬送。不安が募る。レヴはエプロンを脱いでこちらに言う。

 

「父さんと母さんも電話をもらったらしい。けど俺もちょっと様子を見てくる」

 

「待った。それなら俺も行くよ。用事は終わった」

 

「俺もだ。このままじゃ時間開けてくれた妹さんに申し訳ないからな」

 

 あの話を聞いて、放っておく二人ではない。付き添いを願い出た二人にほおを緩めてその申し出をありがたくレヴは受けた。

 

「……ありがとう。じゃあ準備して行こう。片付けはまた後だ」

 

 

 

 

 大急ぎでリッドが搬送されたという聖セント・ニーベリュング総合病院へと駆けつけたレヴ達。

 アレクが緊急事態ということで許可をもらったMSによる移動でものの十分でたどり着いた。突然のMSの来訪に騒ぎが起きるが、それをMSの装依を解除したアレクとハジメが制する。

 

「はい、退いて退いてー!」

 

「すみませんね。ちょっと急ぎなので!」

 

 二人のおかげですぐに病院受付までたどり着く。病室を聞いてエレベーターに飛び乗る。

 

「ここの6階らしい」

 

「んーやっぱりMSで降りるのはもう少し見られにくい場所の方が良かったか?」

 

「いや、それやるとMSが潜伏中ってテレビが大騒ぎして余計な騒ぎを起こしますって」

 

 MSの降りる場所で問答を続ける二人。それに構わず到着するとすぐにエレベーターを降りた。駆け足で病室まで向かう。目的の部屋の扉を開けた。

 

「リッド!」

 

「うわっ!レヴ兄そんなに慌ててどうしたの!」

 

 リッドはベッドに体を半分起こして友人と話している中だった。遅れてハジメとアレクが病室に入ってくる。

 

「はえぇよレヴ」

 

「あーすみませんね。ちょっと知人が」

 

「ハジメ君!?と、アレクさんも……ってレヴ二人にも来てもらったの!?」

 

「馬鹿!二人の用事に協力していた時にお前が倒れて運ばれたって電話が来たんだろうが!」

 

 リッドの質問に、叱るようにレヴが答える。一方リッドと話していた友人はレヴに席を譲り、代わりにハジメ達に気を取られる。

 

「え、ハジメ君だ!」

 

「本当にハジメ君だぁ。そちらの方は……」

 

「あぁ、レヴ君の知り合いだ。グリューネがお世話になっているよ」

 

「あ!もしかして生徒会長の!」

 

「そうだ彼氏さん!」

 

 後ろの方でワイワイと話が膨らむ。その間にレヴは症状を訊く。

 

「それで、どこも異常はないのか?」

 

「心配し過ぎだって!今はね。ちょっと耐久カラオケやってたら息が詰まっちゃって、意識失ったってだけ。別に大慌てしてくることじゃ」

 

「アホ!軽いと思ってどれだけそれで苦しんだのかお前忘れたのか!父さんと母さんもすぐに戻ってくるって言ってたから、安静にしてろ」

 

「うー……またそんなことばっかり……聞き飽きたっての。こんな大人数じゃ病院にも迷惑だよ」

 

 釘を刺して言う。久々に焦らせるような事をして、こちらも気が気でない。昔のように生死をさまよったなどとならなかっただけどれだけマシだろうか。

 そんな感じで心配をし続ける。だが後ろでそれを見ていた付添人達はそんな心配も知らずに変な気を利かせてきた。ハジメが先程のリッドの言葉に反応する。

 

「じゃあ、人数多すぎても申し訳ないから俺らは先に帰ってるか」

 

「え?」

 

「そうですね。二人もそれでいいかな」

 

「だねだねぇ」

 

「いたらお邪魔虫みたいですから~」

 

「ちょっと、ミア?リノ!?」

 

「待て待て二人とも!?別に変な気を起こさなくていいからな!?」

 

 慌てて退室を引き留めようとするも、ハジメが心配ないと告げる。

 

「大丈夫だ問題ない。明日の学校でまた会えるんだから」

 

「そうじゃねぇ!」

 

「というわけで、退散するぜ」

 

「ま、待てェ!?」

 

 引き留めても聞かずに、四人はその場から退散する。部屋に残ったのはレヴとリッドのみだ。頭を抱えつつリッドの座るベッドの横の椅子に腰かける。

 

「はぁ~……ハジメのやろぉ……場所貸した恩を仇で返しやがって……!」

 

「ハジメ君本当に最初の頃から変わったよね。変わらないところもあるけど」

 

 拳を震わせるほどに怒りを奮い立たせるレヴ。対照的にリッドはクスクスと笑っていた。もう大丈夫そうなのはレヴの目からしても明らかだ。それに安心してイスに深く座った。

 思えば小学校のころからしばらく、リッドはずっと病院に通う生活だった。本人もいつ倒れるかもしれない自身の体に怯えていたのを覚えている。

 久々に病院に来たことについて話題に触れる

 

「けど久しぶりだな。こうして病院に駆けつけるっていうの」

 

「そうだね。もう大丈夫だと思ってたんだけどな……お母さん達に悪いことしちゃったなぁ」

 

 本当に大丈夫だと思っていた。けれど実際そうではなかった。今回もかなり驚かされてしまった。

 だがそれが悪いことばかりでもない。レヴは言う。

 

「……それでもそれくらい元気にはしゃげるようになったってだけでも、母さん達も喜んでるぞ?俺もそんなに付き添わなくてもよくなったのは今じゃありがたいし」

 

「へぇ~レヴ兄私が巣立ちしても泣かないんだぁ?知らないよ~私が結婚して泣いちゃうことになっても」

 

 結婚したら。そんな事微塵も思っていなかったが、せっかくそう言ってくるのだ。張り合わせてもらう。レヴは言い返す。

 

「へっ、なら呼んで来いよ。俺よりメンタル脆かったら隣は務まんねぇっての」

 

「言うねー。それは楽しみだ」

 

 お互いに強がって見せる。昔が病弱だったからか、いつのころからかこうして兄妹で言い合うようになった。だがそれでもいい。昔はそんな言い合うだけでもリッドが体力を消耗してしまったので、むしろ今は気兼ねなく言えてありがたかった。

が、あまり言い過ぎて体力を使わせてもあれなのでここまでにしておく。そこで思い出したようにカバンから瓶を取り出す。

 

「はぁ。まぁとりあえず元気そうで安心したよ。っと、そうだ。とりあえずハイコレ」

 

 渡したのはマシュマロが詰まった瓶。リッドは受け取ってどこかで買ってきたのかと聞く。

 

「ん?あマシュマロだ。わざわざ買ってきたの?」

 

「馬鹿。明日お前に渡そうと思ってたやつだ。病院に搬送されたって聞いたから、その見舞いも兼ねてのヤツ」

 

「なんだ。てっきり買ってきてくれたのかと……っていうか見舞いの品とホワイトデーの品物まとめるの?」

 

「別にいいだろ」

 

 文句に対し投げやり気味に答える。不満そうにしていたものの、少し笑って見せるリッド。そして言った。

 

「ねぇ、レヴ」

 

「なんだ?」

 

「ありがとっ、今日来てくれて。それと、これからもよろしくっ」

 

 唐突に告げられた感謝の気持ち。思わず目を丸くした。がすぐにいつもの調子でからかってくる。

 

「あはは、鳩が豆鉄砲くらった顔してる!」

 

「っ!……まったく、調子乗るとすぐこれだ……。また倒れてくれなきゃそれでいいから」

 

「はいはーい」

 

 結局レヴは病院で両親が来るまで待って、もう問題ないと医者からOKをもらった妹と共に、久々の家族四人揃っての帰宅となった。その日はリッドの好きな焼きそば(オムレツ乗せ)になった。

 後日ハジメとアレクから無事にパートナーに渡せて喜ばれたという二人の報告に、送ってくれた感謝と気を利かせた報いにキャラメル食パン、竜足入りのマシュマロを作って渡したのだった。

 

 

EX EPISODE END

 




今回もお読みいただきありがとうございます。あとがきです(^ω^)

レイ「まさかのレヴ君リッドちゃん兄妹のお話だった件」

ジャンヌ「番外編ということであるなら、確かにそういった本編でスポットが当たらなかった人の話を紹介というのはあり得ますね。しかもレヴさんは本編でも少し重要な役どころの人物でしたし」

まぁぶっちゃけて言うと最初の内はレイさんも言及している通り、元君とジャンヌのイチャラブにしようと思ったんですよ。ただ、そればっかりの話でも面白くないだろうなぁと考えたのと、丁度リヴァイ兄妹の実家の職業について語ってなかったなぁってことで色々とリヴァイ兄妹の設定詰めてたらこうなりました(´Д`)

ジャンヌ「つまり、偶然の結果と」

そう言うことだね。ただ結果としてマンネリ化しなくてよかったし、今後の方針も決まってよかったよ。

レイ「へぇ~じゃあ今度からはもっと面白くなると!」

やめて……私に過度な期待をしないでっ( ;∀;)

ジャンヌ「ヘタレ」

レイ「エイプリルフールのアリスギア×ゼロワン小説もまだ書くかどうか悩んでいるんだもんね」

アリスギア始めてまだ半年も経ってないから設定とか読みこめてないの……( ;∀;)しかも今のタイミング第3章の大まかな機体の武器設定始めちゃってて難しいし。
あ、ちなみに竜足のマシュマロには元ネタが存在します。分かるかな?そんなこんなで今回はここまでです_(:3 」∠)_

レイ「それじゃあまた次回っ!」


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番外編4 詩竜双極祭、再び

どうも、皆様。本日は七夕……なんですが、九州を中心に雨模様ですね。作者の藤和木 士です。天の川から水が零れてきているんですかね?

レイ「アシスタントのレイだよ~」

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです。こちらでは七夕ですが、本作品ではもう一つ重要な意味合いを持ちますね」

その通り!LEVEL1第3章でヴァイスインフィニットと戦ったあの日、聖トゥインクル学園で行われるはずだった詩巫女の祭り「詩竜双極祭」!今回はその一年後を描いた番外編4の公開です。

レイ「あれから一年か~まぁ最新話は大分経ってるから、ずいぶん昔の話になっちゃうんだけどね」

ジャンヌ「でもその模様はまだ詳細は語られていませんでしたよね、卒業式にちょっとだけ語られているだけで」

というわけで、その日どういう話があったのか、重要な場面だけを抜粋してお届けします(゚∀゚)ジャンヌと元のこのイベントに対する思い、そして、かつて参加したあの人の想いを乗せて、番外編始まります。


 

 

 7月7日。マキナ・ドランディアの建国日。この日はこの星の、この世界にとって最初の新たな始まりが生まれた日。機人族の国マキナス、そして竜人族の国ドラグディアの建国の日。

 戦争を終えて初の両国家建国の日、これを記念して両国家は盛大な二か国挙げての祭典「ニューワールドデイズ」を開催した。建国の日となる7月7日を始まりとして、7月10日の終戦記念日までの間、両国家でイベントを開催するのだ。

 元々7月7日は両国家で停戦状態であってもお祭り騒ぎとなっており、都合が良かった。そこに10日の停戦記念日とも相まって両国家で何かしようとなったのだ。丁度その期間は国民の休日となる。軍も動員してイベントの警備管理を行う。

 その要員にもちろん両雄こと黒和元とジャンヌ・ファーフニルも駆り出される。の、だが、実は7日だけは片割れの元のみが招集されることとなった。

 なぜそのようになったのか。それはこの日のイベントがジャンヌ・ファーフニルに関わる重要なイベントだったからだ。これはその前日、7月6日の出来事である。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんで、今日の見回りハジメだけなんです?私だって」

 

「……いや、明日ジャンヌは予定あるだろ」

 

「詩竜双極祭でしたらちゃんと今まで準備してきました!優遇なんてしなくていい。今日も問題なく行けます!」

 

 言い合いをするジャンヌとハジメ。ジャンヌが怒っているのは今日の見回りの担当についてだった。ジャンヌはハジメと一緒に行くと言っているのだが、ハジメはそれを認めない。

 理由として挙げているのは明日の詩竜双極祭の参加だ。前年度は様々な事情から参加しなかったジャンヌ。だが今年は参加を申請し、練習を続けてきた。今年が詩竜双極祭に出られる最後のチャンス。今まで断り続けてきた分まで全力で臨むつもりだった。

 なのだが、ジャンヌとしては今までの任務をこなしたままでこの大一番を迎えたかった。英雄だから特別に、なんてしてもらいたくない。

 そんな言い合いをファーフニル家のリビングで行っていた。その様子を困った顔で聞くクリエと腕を組んで聴き入るフォーン。ハジメはため息を吐く。

 

「はぁ……まったく、随分余裕だな」

 

「な、なにが」

 

「さっき優遇するなって言っていたけど、それこそ優遇じゃないか?」

 

「えっ」

 

「何でも出来て、明日も行ける。なんて、相当入れ込んでいないと任せられないと思うけど」

 

 思わぬ言葉だった。それは必然的にジャンヌがそれだけの力はないと言っているに等しかった。

 優遇してほしくないとは言った。けれどそれはそれで傷つく。自分なら出来ると、言ってほしかった。そう言われたら、明日がすごく心配になって……。

 目を伏せるジャンヌ。するとハジメが顔に手を当てて自身に向けさせた。

 

「でも、俺はジャンヌならいい結果を出せると思っている。他の皆と同じ条件で、それでも一番になれると。その方がきっとみんなも納得する。それに兵士なんて、普通の学生がなれるわけじゃないんだからな」

 

「う……うん」

 

「じゃあ、後はお願いしますクリエ様、フォーン様。自分は夜の偵察へ」

 

「えぇ、お仕事頑張って」

 

「あぁ」

 

 ハジメが見回りへと出発する。同じ条件……簡単だけど、すごく難しいことのように思える。悩んだ私にお母さんが声を掛けた。

 

「難しいことを言われたわね、ジャンヌ」

 

「お母さん……お母さんは昔の詩竜双極祭、どういうことをして参加していたの?」

 

 以前から気になっていたこと、母の詩竜双極祭は果たしてどういう気持ちで参加していたのだろうか。

 前に話を聞いた時には、父との出会いや、それに影響して詩を諦めなかったことだけは聞いていた。けれど母自身が詩竜双極祭に参加した時の事についてはこれまでも聞くことがなかった。

 かつての参加者として、母に聞きたい。そんな気持ちで尋ねたジャンヌ。娘の言葉に一度目を丸くすると首を傾げてから母は笑って見せる。

 

「んー、そうね。まずはグランツおじさんとお父さん、それにフォーンに聞かせたわ」

 

「フォーンも……?」

 

「えぇ。あの時はまだガンドといがみ合っていた時期だからな」

 

 フォーンも頷く。その時期の話を、母は話した。

 

「私の詩竜双極祭初参加は14歳の時ね。あなたのお父さんから言われたの。詩巫女なのに歌っているところを見ていないなって。正直驚いたわ。あの人にはちゃんと、詩巫女になるのが嫌だって言っていたのに、そんなこと言うんだって」

 

「それには流石に、俺、いや、私も苦言を申したな。けど父さんが、グランツ司令が言ったんだ。面白そうだとね。それで一度、試しにさっきの三人でクリエの詩を聴いた」

 

 フォーンもかつての事を語り出す。表情はどこか暗い。やはりかつての事を思い出したくないのだろうか。

 それでどうなったのかを母に尋ねる。

 

「それで、感想は?」

 

「みんなよかったって……」

 

「酷かった」

 

 が、母の声を遮って答えたのはフォーン。母は「あ、あらら~?」と少し冷や汗を浮かべている。口をパクパクとさせている間に、フォーンは疲れ切った声でその時の事を聞かせてくる。

 

「真面目に詩の練習をしていなかったうえに、内側に暗く暗く閉じ込めていたせいで耳にも心にも耳障りだった」

 

「ちょ、ちょっとぉ!あの時はあなたいい曲だって言っていたじゃない!ちょっと表情はおかしかったけど」

 

「あれはやせ我慢してたんだ……!」

 

 な、なるほど……。やっぱりお母さんも練習していないと力は出せないんだ……。でもフォーンがそこまで言う位酷いのって、どれくらい?あぁ、変に気になります・

 当時の母の歌声も気になったが、それがどう詩竜双極祭に繋がってくるのか。そこに至る道筋までを尋ねた。

 

「え、えっと、それがどう詩竜双極祭に……?」

 

 娘の質問にクリエのほおが緩む。

 

「その歌声を聞いたお父さんが言ったの。よく分からないって」

 

「えっ?分からない……」

 

 言葉の意味に戸惑う。意味を理解しかねた自身に、母はそのままの意味であると言ってくる。

 

「そう。詩の上手い下手が聞いても分からなかったんだって。それで当時は私もムキになったものだわ」

 

「そ、そうなんだ……」

 

「でもね。こうも言ってくれたわ。私の歌声は出せているって」

 

「歌声……」

 

「私だけの歌を聴くことが出来たってね。酷い歌声でも、私の声がちゃんと乗っているってことだったんだと思うわ。それで思ったの。せめて歌声だけは磨こうってそれが私の歌うわけ」

 

 詩巫女は詩の力でDNの力を引き出す。重要なのは上手い下手よりもDNに働きかけられるかどうか。詩は働きかけるための一つの方法なのだ。

 そして自分の歌声を自分だけの物、歌う理由と認識することは、ある意味詩巫女にとって大事な要素の一つ。固有の領域を持って、他者へと働きかけやすくなる指針となり得る。母はその心を父の言葉から学んだのだった。

 フォーンもそれからのクリエについて言及した。

 

「それからはクリエも学校の授業で詩の勉強についてした。詩竜双極祭も参加する様になったな」

 

「えぇ。でも最初の内は最下位とかばっかりね。だけど私は諦めなかった。あの人に褒められた私の詩を信じ続けた。それで迎えた最後の詩竜双極祭で、私は優勝したの」

 

「そう、だったんだ」

 

「あ、もちろん象徴には認められなかったからね?だけどお父さんはその時すごく褒めてくれたわ。フォーンも驚いていたようだし」

 

「正直、まさかと思った。ますます嫉妬したよ、クリエをそこまで本気にさせたのかって」

 

 母も躓いた。それでも自分を信じて必死に目指した。何度もトライし、優勝を手に入れた。私はどうだろう?クリムゾン・ドラゴニアスに認められたとはいえ、それは象徴の考えが変わったから。もしあんな悲劇が無く、それまで通りの契約だったとしたら……私は。

 あり得たかもしれない、もしかして。自分は果たして両雄の片割れにあるべき存在、詩巫女として十分な才能を持っているのだろうか。ジャンヌの不安を見透かして、クリエは話す。

 

「ともあれ、私はようやっと手に入れた。ジャンヌ、あなただってそう。あなたはそんなお母さんでも成し得なかった可能性を開いてくれた。戦争終結という未来を導いてくれた。初参加で不安になってもいい。だけど、気負わないで。自分は何でもできるって思わなくていいの」

 

「お母さん……」

 

「ただ歌えればいい。他の人と同じように、だけど心だけはあなただけが大切に思うものを背負って」

 

 そう言われて脳裏に浮かぶ一人の人物。きっと母もそれが誰なのかすぐに分かるはずだ。

 彼がいてくれたから自分は諦めずにいられた。呪われていても立ち止まらなかった。私の胸にあるのは、大切な(ハジメ)への絶えることのない感謝の気持ち。

 パートナーである彼の為に、全力で応えたい。これが私の歌う理由。原点になる。

 教えてくれた母に、フォーンに礼を述べる。

 

「うん。ありがとう、お母さん、フォーン。私、明日頑張る」

 

「えぇ、お母さんも丁度行くから、忖度はしないけど応援するわ♪」

 

「お嬢様なら出来ます。元にもちゃんと見るように言っておきますので」

 

 

 

 

 

 

 

 

 7月7日、夜。遂に詩竜双極祭が始まった。修復・改装されたドラグーンオベリスクの前に司会者と多くの参加者達が並ぶ。観客やテレビ局も大勢詰めかけていた。

 そんな彼らの安全を守るべく、ドラグディア軍は警察と共に警戒態勢を敷いていた。学校敷地内の警備にはアレク・ケルツァート、そして黒和元もいた。

 警備を行う二人は任務に従事しながら舞台を見る。

 

「あれから一年、か」

 

「ですね。まぁ前年はあんなことになってしまったので、優勝者はいませんでしたが」

 

「だよなぁ。ドラグーンオベリスクは完全に壊れて、機能を発揮していた中のワイバーンはお前の所持物に。急いで直すより、一年かけて機能再現した方が万全ってもんだ」

 

 一年前の詩竜双極祭はヴァイスインフィニットとの交戦で完全に潰れてしまった。とても開催できる状況ではなかった。広場は戦闘の後で酷く、肝心のオベリスクもGワイバーン覚醒と共に砕けた。

 この一年はそのオベリスク再建のための時間だ。オベリスクが元来持っていた機能を取り戻し、例年通りのイベントとする。伝統と言うものだ。

 それでよかったかどうか、今日決まる。もっともこの二人にとっては重要なのはそこではない。参加している二人の想い人の結果こそが重要だった。

 司会者のやり取りを聞きつつ、参加者を見通してアレクがため息を漏らす。

 

「しっかし、今年は参加者多いな」

 

「前年の卒業していない参加者も出ているそうですから。今年の分と合わせて、多くなっていますよ」

 

「あぁ、グリューネとかか」

 

「だから、今回は最大規模の双極祭になっていますよ。マキナス側のも含めて、ね」

 

 視線の先に大型スクリーンが。マキナス側の詩竜双極祭「奏機双天祭」の一つの会場の模様が表示されていた。マキナスの有名な奏女官の学校で、司会役はあのフェルナが務めていた。今はそれぞれの詩巫女と奏女官の応援者の言葉を訊いているところだ。

 

『姉妹揃っての参加、頑張ってくださいね~グリューネさんネアさん!さて、次はジャンヌ・ファーフニルさんの応援者、なんとこの学校のOBにして名誉詩巫女、ジャンヌさんのお母様のクリエさんからのコメントです!』

 

「おっ、やっぱお前も代役立ててたのか」

 

 アレクの言う代役。アレクも本来ならグリューネの応援役として壇上に上がる予定だったらしいが、仕事の為に代役を立てていた。ちなみに代役はグリューネの母親ノルンだった。

 一方のネアの方は同じ参加者のグリューネが応援役として兼ね、先程コメントを言っていた。

 俺は頷くが、しかしと付ける。

 

「えぇ、でもまぁ大まかなものはクリエ様に任せていますからね。俺の言葉は頑張れ、としか伝えてないですよ」

 

「何だよ。味気ねぇな」

 

「それ以上に、ファーフニル家としてはこの参加は非常に意味が大きいんですよ」

 

 呪いによって左右されることのない詩竜双極祭。それを親子で迎えさせたい。それが元のささやかな願いであり、今回のイベントでの贈り物だった。

 ファーフニル家の娘達は去年のこの日までずっと、呪いから逃げるためにこのイベントに参加してきたといっても過言ではない。そのせいでジャンヌはずっと参加しないといけないにも関わらず避けてきた。だけどそれはもうない。そしてジャンヌは今年の詩竜双極祭に参加したいと言った。なら俺はそれを全力でサポートする。かつてジャンヌを追い込んでしまったことへの贖罪をするために。

 その言葉でアレクも事情を察してくれた。

 

「ふぅん。ま、殊勝なことだ」

 

 と、いよいよクリエの応援メッセージが送られる。

 

『私達はこの日を待ち望んできました。まっさらな気持ちで、この詩竜双極祭を迎えられる。家族として願ってもいないことです。それに参加できる私の娘には、ぜひとも優勝してもらいたい。だけど、優勝できなくてもいいとも思っています。だってこれが、娘にとって最初で最後の詩竜双極祭。どんな結果でもきっと娘は成長できると信じていますから。だからここでもう一人、ジャンヌを応援したかった人の事について紹介します』

 

「ん?」

 

 首を傾げる。予定ではもっとジャンヌに対しての言葉が続くはずだ。しかし彼女は別の人物について紹介しようとしていた。一体誰が、と思っていると、その名が明かされる。

 

『それは娘の従者にしてパートナー、ファーフニル家の使用人の一人クロワ・ハジメです』

 

「何だよ、ちゃんと代役頼んでいたんじゃねーか」

 

「い、いや、俺知らないんだけど」

 

 アレクに肩を叩かれるが、もちろんこんな流れは知らない。元の知るところではない。分からぬままコメントはそのまま進行していく。

 

『一年前のこの日、彼はこの場所で戦いました。そしてこのニューワールドデイズはその彼が戦った軌跡そのもの。その最初の日となるこの7月7日の詩竜双極祭を彼はとても楽しみにしていました。ですがこの場に本来、パートナーとして立つべきにも関わらず、彼は参加者を守る側に付いてくれた。ここで私に預けてくれた応援の言葉は「頑張れ」の一言だけですが、それだけ娘の、そしてこのイベントに思い入れを掛けてくれた彼の想いは推し量ることが出来ます』

 

 ……何か、恥ずかしいな。その通り過ぎて……。

 自然と顔を背けてしまう。それに気づいて面白おかしく指摘するアレク。

 

「おいおい~恥ずかしいのか?本心言われて」

 

「分かっているんだったら、言わないでください」

 

 ため息で返答する。が、それでも受けはいいようで観客からも声が上がる。

 

『だからこそ、この場に立つことを譲ってくれた彼の為にも娘には優勝してもらいたいものです。自分の詩を信じて、ね?』

 

 軽くウインクすると歓声が上がる。人の波間に見えるジャンヌの姿はどこか恥ずかし気に思える。だがその顔は昔では考えられない位、詩に関わることで良い表情で……。

 見ていた元の緩んだ顔をアレクに指摘される。

 

「にやけてんぞ?」

 

「ん?そう、ですね。なんていうか、笑えてよかったなって」

 

「笑えて?」

 

「えぇ。ジャンヌが、詩の事で、笑えるようになって」

 

 思い出すかつての記憶。資料室で現実を突きつけてしまった時の彼女が、今この場で笑えている。それだけで元の心が沸き上がる。

 きっと大丈夫。そう信じて、警備に戻る。

 

 

 

 

 ニューワールドデイズ最初の詩竜双極祭、その勝負は苛烈さを極めた。サランディーネ家、リントヴルン家、そしてファーフニル家と言った名家による競演。オベリスクは今世紀最大の輝きを見せた。

 一体誰が優勝か、審査員もそして観客すらも分からなかった結果は、機械による判定も困難を極めた。

 固唾を呑んで見守る一同。そして決まった瞬間、大歓声が爆発する。沸き立つ喜びの嵐、壇上に立ったのは、

 

 

 

 

「ありがとう、ございますっ」

 

 

 

 

 ファーフニル家の少女だった。すべての呪縛を振り払い見せた笑顔は、しっかりと学園の優勝者記念撮影に収まった。屈託のない笑顔がまぶしく映る。その笑顔は、未来永劫、学園へと刻まれた。その脇で、黒き竜騎士もわずかに笑顔を浮かべて。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。今回は7月7日に合わせるために一日だけ投稿間隔をずらさせてもらいました。

レイ「んー、七夕の日に代わるイベントが詩竜双極祭だけども、十分関連のあるイベントになったみたいだねぇ♪」

ジャンヌ「クリエさんとガンドさんの思い出、そこにジャンヌさんと元さんの新たな思い出が積み重なる……。その思いは10年近く経っても変わらないということが分かります」

まぁその10数年後が、今まさに激闘の真っただ中なわけなんですがね(;´・ω・)そんな本編は二日後に更新予定ですっ。

レイ「でも作者頑張ったね~これ書き始めたの確か3日前だよ?」

それで本編滞ったのもあって昨日本筋投稿できなかったんです(´ρ`)

ジャンヌ「本当は昨日投稿したかったんですね」

3日前に「あ、もうすぐ七夕……ってそれつまり詩竜双極祭じゃん!やっべ番外編投稿する予定だったのに時間ない!」ってなったんですよねぇ(´・ω・`)元々は2話構成にしたかったんですが、今回は断念して一話構成です;つД`)

レイ「残念だねぇ」

ジャンヌ「予定を確認しておいて動いてくださいね?」

はぁい(T_T)次の時は多分ジャンヌ・ファーフニルの誕生日、8月21日くらいですかね……その時にはまた忘れたなんてしたくない。
というわけで今回はここまでです。

レイ「次回は二日後!またね~」


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番外編6 前編 一年越しの難題

どうも、今回はバレンタイン番外編です。

レイ「バレンタイン番外編とか懐かしいね。二年ぶりだっけ」

ジャンヌ「そう言えばバレンタインの話は続きがあったように感じますが」

実際その続きです。難題とは何だったか。それを思い出すためにも番外編2を読むのでも、今回の話を見て思い出すもよしです。それではどうぞ。


 

 

 M.D.1430二月某日。この日ドラグディアの作戦会議室に人員が集められていた。黒和元を中心に、ローレイン、フォーン、テュート、ケルツァート小隊、そしてグランツが席に座り、彼のサポートにリリーが付き添うという構成だ。

 集まった面々に元は礼を告げる。

 

「本日は急な呼びかけに応えて頂き、ありがとうございます」

 

「まぁお前の相談事だったら、応じない訳にいかないだろ。とはいえグランツ総司令までいるのは、驚きましたけどね」

 

「いやはや、ファーフニル家に関わること、と言われれば断るわけにもいかんよ」

 

 ローレインの指摘にグランツ総司令はそう答える。少し大事になってしまう印象は少なからず与えていたようで、ジャンヌの姉ジーナの婚約相手であるテュートは完全に緊張してしまっていた。

 

「あ、わわ……こ、今回は、ハジメ大尉のお声がけ、に!答えさせていただき!」

 

「テュート中尉、そんなに緊張することはないだろう。君は彼の恋人の姉を妻にしているんだから」

 

「だからと言っても、階級は上なんですから!まぁ、頼りにしてもらえる以上、しっかりと義兄として妹さんの彼氏さんの力にはなりたいと思っています」

 

 アレクの言葉に本音を告げながら力になってくれることを言ってくれるテュート。その言葉は今の元に心強いものだ。

 テュートに感謝の言葉を一足先に告げる。

 

「そう言ってもらえると助かります。今回は特に、テュートさんとフォーン様に期待していますから」

 

「俺もか」

 

「そ、そうなのかい!?それは……ちゃんとしなくてはな!」

 

 その言葉を聞いて心なしか喜びを見せるテュート。頼られるというのが余程嬉しいらしい。

 そこでアレクから、未だ言っていない今回の議題について明かすように言われる。

 

「そういうのはいいから、俺達も暇じゃない。なるべく早く教えてくれ。お前の問題を」

 

「そうですね。では今回の議題は、これです」

 

 ホワイトボードにサラサラと議題を書いていく。数秒の間書き続けて書き終わるとその議題を見せる。

 そこには「ジャンヌからだけバレンタインデーのチョコをもらう方法」と書かれていた。それを見て、アレクがいの一番に言った。

 

「はい。では皆様お疲れ様でした」

 

「待てやアレク隊長」

 

 返る支度をしようとするアレクの肩をがっしりと掴み、抑え込む。無理にそれを引き剥がそうとするアレクは抵抗する。

 

「離せ!なんでこんなくだらない事を総司令呼んでまでしようとした!お前自身で考えろ!」

 

「考えてこれなんですよ!とりあえず話聞いてください。それがどれだけ重大なのか分かるので!」

 

 下らないと言われながらもなんとか席につかせ直す。他の面々もグランツ司令が微笑ましく笑っているが、ケルツァート小隊の同僚からは呆れられ、リリーとフォーンからはしらーという視線、テュートも肩透かしを食らったように肩を落としている。

 唯一事前に事情を知っているローレインもこの結果に予想通りと笑う。

 

「ほら言ったろ!いくらあれ解決したいと思っても、相談したら呆れられるって」

 

「それは予測してた。けどアレク隊長は去年の時点でそれ相談しているんだよ」

 

「あー……何か言ってた気がする。というか本気で考えてたのかよあれ……」

 

 ようやく思い出したという様子を見せるアレク。そう、去年のバレンタインデー、それが全ての始まりだ。

 その日、学校登校時に下駄箱の前で野次馬が集まっていた。そこにあったのは自分宛てに送られたバレンタインのチョコの山。DNLによる選別で、全てが女生徒からの送られたものだと分かった。

 それはいい。いや、この後の事を考えればよくはない。それをどうするかと悩んでいる時、それを見せつけられたジャンヌが嫉妬に狂った目と声でハジメは悪くないと言いながら、送ってきた相手全員を始末するなどと言ったのだ。

 恋人と言わせてもらっている以上、流石にそんなことをさせるわけにはいかない。そこで昨年のチョコをもらってから、時折それの解決策を考えていたのだが、答えが出なかったために今回こうして集まってもらったのである。

 これだけ人数がいれば何かいい案が生まれる。そう思ったその期待は今裏切られようとしている。正直言って下らないのは認める。ジャンヌの想いまで下らないとは一切思っていないが、故に真剣だった。

 それら事情を話し、なんとか話を聞いてもらう。が、回答はあまりよいものではなかった。

 

「はぁ……事情は分かったけど、何しても無理だと思うぞ、お前の場合。もう英雄なんだし」

 

「英雄ならば、それくらいの事は誠心誠意ジャンヌお嬢様に気持ちを伝えて許してもらうべきだ」

 

「そうそう。僕もジーナに申し訳ないことをしたときは謝っているし」

 

 アレク、フォーン、テュートを筆頭に謝ればいいと大人の対応を返す面々。それはもちろん元自身も考えた。とにかく謝る。ジャンヌに誠意を見せることが何より大切なのは分かっていた。

 けれどもそれでも限界と言うものがある。ジャンヌに不快な思いをさせ続けることに元はつっかえを感じていた。

 それにお互い疲れていてはせっかくのバレンタインデーが楽しめない。ならば障害は取り除いておきたいというのが元の考えだった。それも踏まえて一同に伝える。

 

「それが一番なんですが……でもせっかくのバレンタインデーをお嬢様に満足してもらえないのはちょっと……」

 

「なるほどな……けどそれは流石に無理だぞ。わざわざドラグディア軍人入れて規制するわけにも……ねぇ?」

 

 アレクがリリー、そしてグランツ総司令に尋ねる。上への判断を仰いだアレクの言葉に、二人も難色を示すが、それでも協力の意志を見せる。

 

「今の時期にそれでは街の警戒が疎かになる。ノット・ア・ジーを抑える為にも枠は避けないだろう。もっとも、ハジメ大尉の思う理想は、叶えてあげるべきだとも思うがね」

 

「リリー君の言う通りだな。ファーフニル家はせっかく呪いから解放されたのだ。当たり前を過ごしてもらいたい。その為なら、当日以外なら何かしら協力はしたいところだ」

 

「ありがとうございます。自分のそのつもりなんですけど、案が思いつかないのでとりあえず意見を求めてるわけなんですが……というか、気になったんですけど、テュートさん妙に冷静ですよね」

 

 二人への礼を述べつつふとテュートに聞き尋ねる。するとテュートは知らないと言った様子で聞き返してくる。

 

「え?冷静って、何で」

 

「いやだって、ローレインの情報で知っているんですけど、去年俺の影響でテュートさん職場の同僚さんからチョコもらってますよね。それでジーナさんに知られて三日間ほど自宅に帰れなかったとか」

 

「何でそれを知っているんだ!?」

 

 隠していたことを暴かれたように驚くテュート。その反応にケルツァート小隊のシレンとティットコンビが人の目も憚らず爆笑する。

 

「ちょっ!テュートさんそんなことあったんだ!笑う~」

 

「うわ、これは恥ずかしい。俺だったら隠居してますよ。というか忘れたいから忘れてたのかそれは」

 

「やめないか、的確なツッコミを入れるのは!……これ、今年もあり得るのか?」

 

「でしょうね。ていうかもうハジメが有名になった以上関係者は結構人気出ますよ?」

 

 悠長に構えていられないとのローレインの言葉に頭を抱えだすテュート。彼もまた困難に立ち向かうものとなった。

 そんな様子を見て情けないとこぼすのはフォーンだ。

 

「まったく、たるんでいるぞ二人とも。ファーフニル家の息女を預かっているという自覚が足りん。ガンドもそうだったが、ファーフニル家の女性の不満を受け止める覚悟をだな……」

 

「とか言ってますけどフォーンさんも今回大分ヤバいですよね?」

 

「ちょっと待て。何を言っているローレイン女史」

 

 そこでローレインが割って入るのをフォーンが訝しむ。どうやらフォーンもまた、あの事を知らないらしい。

 これもまた元はローレインからの知らせで知っている話だ。ローレインはフォーンの為に言ってやる。

 

「いや実はですね、ファーフニル家にフォーンさん宛てにチョコ送られてたんですよ。まぁそこは知っているかな?」

 

「あぁ、その事か。下らないから危険物の類がないかどうか調べて処理したが」

 

「それですね、クリエ様見てたらしくてその時からフォーンさんの婚活を真剣に考えていらっしゃるらしいですよ?古い友人とか頼ってて」

 

「排除しようとしているではないか、貴様!もっと早くに言え!」

 

 完全に寝耳に水という知らせに珍しく焦りを見せるフォーン。独身ではある彼だがそれでもずっとクリエの傍にいるという使命の為に結婚は考えていないらしい。もっともこの年齢から結婚というのも難しい話ではある。若々しいとはいえそこまで元気ではないのだから。

 三者三様に悩みだすファーフニル家の男面々。その様子を見かねてグランツが助け舟を出した。

 

「これは、ファーフニル家の女性達の為に共に歩むことを選んだ、男達の苦悩だな」

 

「父さ……グランツ司令、茶化さないでください。というか、その口ぶりもしや……」

 

「エルダには苦労させられたよ。もちろんクリエ君も、ガンドから泣きつかれたこともあったな、ははっ」

 

 どうやら、グランツ司令もその経験はあったようだ。こんなにもファーフニル家の女性に悩まされるというのも、もはや遺伝の問題と言ってしまってもいいかもしれない。嫉妬深さが遺伝するのはアニメや漫画の中だけにしてもらいたいものだ。とはいえ、そこもまた彼女のかわいらしさと思っている自分がいるのは、なんとも言い難いのだろうが。

 ともかく、このファーフニル家女性の嫉妬深さに頭を抱える者が何人もいる。その発端が自分というのは何とかしたいところでもあった。だが考えはそう簡単に思いつくものでもない。沈黙が部屋を支配する。

 

「うーん……アイデア出なさそうですね」

 

「ファーフニル家どんだけ厄介なんだよ。まぁ詩竜の呪印のせいで、跡継ぎ女性しか生まれなかったというのもあるでしょうが」

 

「んん?あぁ、そう言えば」

 

 と、そこで思い出したようにグランツ司令が名案を出してくる。

 

「何か閃きましたか?」

 

「いや、そもそもファーフニル家が嫉妬深いのは、機竜創世記時代からの名物だったなぁ、と」

 

 一瞬何を言っているのだろうと思った。失礼ながらボケたのかと思ったが、そこでそうじゃないということをリリーさんが気づいた。

 

「なるほど。ファーフニル家でバレンタインと言えば、血のバレンタイン事変がありましたね」

 

「血のバレンタインって……何ですかその物騒な単語は。大量殺人でも起きたんですか。というかファーフニル家が関係あるんですねそれ?」

 

 思わずツッコミを入れる。それを軽く受け流してリリーは詳細を語っていく。

 

「歴史の事件の一つだ。まだファーフニル家が出来る前、その当主となる男が、やがて妻となる恋人と過ごしていた時、同じように武勲につられて贈り物をした女性がいた。それに対し、その恋人は大層怒り、まるで古竜人族のような形相で男を市中引きずり回して、背中をすりむかせて町中血だらけにしたという話だ。あぁちなみに、ハジメ大尉は知らないだろうが、古竜人族は創世記の時代の時点では未成竜人族と呼ばれている。力のあったものだけが今の私達と変わらぬ姿をしているわけだ」

 

「あぁ、なるほど。っていうか市中引きずり回しとか怖いですね。ジャンヌのご先祖様そんなことしたのか……」

 

「そんなの初めて聞きましたよ!それが、ジーナの……じ、ジーナも、やったり?」

 

「はぁ……」

 

 男連中はそれだけでため息が出てくる。しかしその話を出した元々の人物であるグランツ司令はそこに一筋の救いの道がある可能性を見出してくれた。

 

「そうだったね。この話はかつてドラグディアの恋人のあるべき姿と紹介されていたこともあるらしい。それでこの初代ファーフニル卿は同じ過ちを毎年繰り返さないよう背中の傷に誓ったらしい」

 

「それが……何の関係が?」

 

「忘れていないかい?ハジメ大尉。君がどこに使えている身か」

 

 言われて気付く。そうだ。自分はファーフニル家に仕える存在。気付いた様子を見て、グランツは提案をした。

 

「ファーフニル家書庫には、昨年ドラグディア政府から返還してもらったファーフニル家の古い文献がある。それにそもそも、初代ファーフニル卿とまでなると元々保管してある可能性もあるから、この機に調べてみるといい。もしかすると、それを乗り越えた策、得られるかもしれないな」

 

「なるほど。先人の知恵に頼るというわけですか。けど、ありかもしれませんね。そもそも俺自身初代の事をあまり知らないですし」

 

 書庫の捜索、そこで手記なんかを見つけられれば打開策になるかもしれない。もちろん1400年前なので残っているとも限らない。だがここはマキナ・ドランディア。こちらの世界の1400年前と違い、記録はデータになっているためかすれて読めないなんてことはなさそうだ。

 テュートとフォーンもその案に賛成する。

 

「それに賭けるしか……ないですね……流石にまた家追い出しは嫌だ……」

 

「書庫の鍵なら俺が何とか出来る。このバレンタイン、乗り切るにはそれしかあるまい」

 

「ありがとうございます、グランツ司令。ローレイン、多分情報部のお前の方が探すの得意だろうから手伝ってくれないか?」

 

「ま、元々手伝うって言ってたからな。手伝うか」

 

「ははっ、貴君らの武運、期待している」

 

 話はまとまり、次なる場所へと元達は向かった。各々の未来の為に。

 

 

NEXT EPISODE

 




番外編前編はここまでです。

レイ「今初めて前編だということを知ったんだけど……ちなみにどれくらい続くの?」

中後編あります(;´∀`)

ジャンヌ「うーん、番外編にしては今回読み応えありますね。というか作者少し平気になりました?」

ちょっとだけ、感覚はまぁ戻ってきたかと。まだ鬱ってるけど。

レイ「まー少しでも戻ってきたならいいんじゃないかな。それにしてもファーフニル家の男子は大変だねぇ」

ジャンヌ「嫉妬は愛の裏返しとは思いますけど、テュートさんと元さん辺りへの被害が今回の問題でしたか……」

レイ「そのためにも、初代ファーフニル卿に御知恵を借りるっていうのが、今回の話ってわけだ!」

ジャンヌ「初代ファーフニル卿、ここでフォーカスする意味があるということ、ですよね?」

実際その通り。近いうちにこのファーフニル卿に絡んだことが起きるので、そこらへんは注目して頂ければと。またその時にはこの話読んでいるかの注意書きするし。

レイ「そんなに重要なんだ、初代ファーフニル卿」

ジャンヌ「本編はあんなことになっているのに、どう絡んでくるのか……」

それではそろそろ同日公開の中編、後編へ。

レイ「そうだねっ。続くよ~!」


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番外編6 中編 1400年の誤解

それでは番外編6、中編を始めていきます。

ネイ「バレンタインデー当日の更新って久々ですね。確か番外編は話数更新に変化はないんでしたっけ?」

グリーフィア「けど中編まで入ってるのに今回それ守れるの?そのペース」

実はこのバレンタイン話本編より書くの楽しすぎて空いている時間はずっとこれ書いてました。加えてストックもあるので意外と大丈夫です(´-ω-`)

グリーフィア「本編より楽しいとか(笑)」

ネイ「本編は鬱展開続いてますからね……リフレッシュになったというわけですか」

それでは番外編中編どうぞ。


 

 

 そうして場所をファーフニル家書庫へと移す。大量の資料が山積みし、壁には初代ファーフニル卿のMSを書いたと思われる絵画が飾られている。元、テュート、フォーン、そしてローレインの4人は書庫の中に入ると鍵を閉める。

 フォーンが4人に向けて情報共有をする。

 

「現在邸宅にはクリエ、ジャンヌ両名がいる。この二人に悟られぬよう、今回は昨年の際に戻された資料の確認作業となっている」

 

「了解です。とりあえず、今日中に見つけたいところですね」

 

「僕は多分手伝えるの今日くらいなので……すみません」

 

「私も手伝えるとしたら今日除くと学園の帰りだからなぁ。しかも何回もだとジャンヌに目を付けられるわ絶対……」

 

 各々今日中になるべく見つかることを祈るが、資料はかなり多い。部屋中にあるそれらを全て確認するのは時間がかかる。果たして初代ファーフニル卿の記録を見つけられるのか。

 緊張しながらも資料へと触れていく。

 

 

 

 

 捜索からわずか10分。それは見つかった。

 

「あ、これそうじゃないです?」

 

「もう見つけたのか!?」

 

「はやい!?」

 

「えっ、どれどれ?」

 

 探していた3人がこちらに集まってくる。見つけたのは紙の日記。その表紙には初代ファーフニル卿の名前、「オーヴェロン」という名前があった。

 それを確認してもらい、それで間違いないことを告げられる。

 

「これだな。初代ファーフニル卿の日記」

 

「よく見つけたな、ハジメ」

 

「DNLの能力でやけに古そうな音が聞こえてきたんです。それでこれかなと。けど、初代ファーフニル卿の名前、オーヴェロンってなんかなぁ」

 

「?それがどうしたんだい?」

 

 テュートに尋ねられる。というのも元の知る限り、この名前はもとの世界ではとある存在を指す。確か、英国の方の昔の話で、妖精王と呼ばれている存在がそんな名前だったように記憶している。

 そんな名前と同じ人物が、こちらでは英雄となっている。まぁそんなことを言ってしまえば、ジャンヌはあの革命を起こした乙女と同じ名前なのだが。気にするだけ無駄と元は問題ないことを告げる。

 

「いえ、こちらの話です。それよりこれ読みましょうよ。俺らの運命左右するわけなんですから」

 

「そ、そうだった……お願いします、初代ファーフニル卿……!我らに知恵をお貸しください!」

 

「そんなベタなお祈りするくらい追い詰められてんですか……」

 

「まぁ、それを抜きにしても興味はある。何せこれは失われた機竜創世記の重要な資料でもあるわけだからな。読むぞ」

 

 緊張しながらもそのページを開く。最初は当たり障りのない日常。書き始めたのはどうやら国の立て直しを競争すると決めた時かららしい。所謂12名家誕生のきっかけともなった時のことだ。

 それらも興味深いものだったが、残念ながら今回はそれが目的ではない。ページを飛ばしていく。何枚か捲っていって最初に止まったのは恋人の登場の場面だった。

 

「あ、ここ、この名前」

 

「確か、これは」

 

「記憶違いでなければ、このオルテンシア・ダルクスという名前は初代ファーフニル卿、オーヴェロン・ファーフニルの妻、オルテンシア・ファーフニルで間違いないだろう」

 

 遂に見つける。恋人の登場だ。この人物こそが自分達を困らせる特性を与えてしまった女性。一体どれだけ嫉妬深かったのだろう。

 そこから重点的に月日を見ながら件の項目を探していく。

 

「オーヴェロン、いや、初代ファーフニル卿は凄くオルテンシアのことを愛していたんですね」

 

「確かに。詩巫女の祖の娘、それがオルテンシア。詩を軸にドラグディアを変えていこうとした彼はオルテンシアを協力者として徴用した。だけど、一緒に働いていくうちに、惹かれあっていったんだ」

 

 文章には最初は仕事での関係だったオルテンシアについての話が、いつの間にか彼女といると心が和らぐ、競争心の癒しとなるといったものに変わっており、日に日に惹かれていく様子が描かれている。

 それがいつの間にか恋心になり、とあるページで彼は告白していた。オルテンシアの反応も書かれており、大層驚いた様子で、唖然とした、倒れそうになった彼女の身体を支えたと書かれている。

 

「うわぁ……これべたぼれですやん」

 

「人の恋に難癖はつけん。だが、これは初代ファーフニル卿も俺達と同じ竜人族だったということだな」

 

「俺は人間ですけどね。でも、なんていうか、初代ファーフニル卿も必死だったんだなと思います。立て直しも、彼女への愛も」

 

 彼の告白が成功し、恋人として過ごしていくこととなった二人。そんな記録から程なくして、遂に目的の箇所が登場する。

 そのページは若干血で汚れている。面々の空気が重くなる。テュートが聞く。

 

「多分、ここですよね」

 

「あぁ、だろうな」

 

「ここに、あの血のバレンタイン事変の真実が……努力が」

 

「とりあえず見ましょう。ここにヒントがあるかもしれない」

 

 そう言ってページに目を凝らしていく。バレンタインデー、その日オーヴェロンはオルテンシアと大きな案件の成功を祝ってのディナーの約束をしていたらしい。

 その途中同じようにカップルで食事に行こうとしていた男女のペアが困っている現場に遭遇する。彼らはどうやら落とし物をしてしまったらしく、困っていたようだ。そこでオーヴェロンはその落とし物探しに協力、DNLの力で落とし物を素早く見つけるとそれを渡した。

 恋人たちはいたく感謝し、謝礼としてチョコをもらったようだ。それを見て受け取れないとするが、どうやら恋人たちは元々パティシエだったらしく、そのチョコは店で売れ残った残りだったらしい。それをありがたく受け取り、お互い気持ちよく別れた。

 そのチョコを手に待たせてしまったことを謝罪するオーヴェロン。ところが、その光景を見ていたオルテンシアの様子はわなわなと震えていた。そして……。

 

「……それを見るだけになっていたオルテンシアは、自分も手伝いたかったと訴え、その勢いのまま私を張り倒した、と」

 

「張り倒すって、そんなことでかよ」

 

「なんというか、ファーフニル家らしいと言いますか」

 

「でも……なんていうかまだ可愛い?そんな気がします」

 

 それぞれの感想が続いていく。元本人としてはテュートの言うように確かにファーフニル家の女性らしい、理不尽な怒りではある。だがその理由がかわいらしく、まだあそこまでこじれるほどのものではないように思える。

 片鱗こそあれど少女らしいものがまだ歪む理由があったのではないだろうか。そんなことを思いながらまだ文章は続く。

 その後は後世に伝わるように張り倒されたまま市中引きずり回しのシーンだった。ただその様子もちょっとやりすぎでありながらも予想とは違った様子であった。

 

「張り倒したまま、オルテンシアはそのまま私の足を引っ張り、街中を引きずり回した。途中背中がすりむけ、街の道路が血に染まった。だがそれ以上に私がその程度は軽いものだと言ってしまったばかりに、彼女のプライドを傷つけ、大粒の涙をこぼさせてしまった、と」

 

「いやいや、大怪我なのにそれよりも恋人の事を心配するって……やっぱりすごいな初代様」

 

「まるでどっかの使用人みてぇだわ」

 

「そうか」

 

「反応薄っ!?」

 

 ローレインからの掛け合いを軽く無視する形で文章を見る。ローレインの言葉は一応聞いており、言われてみると割と自分とジャンヌに当てはまるようなところもないわけではない。

 ただ、自分はそこまで高潔ではない。ジャンヌと付き合っているのも、やはり欠けた穴を埋める為。告白を受けたとはいえレイアを無下にする真似を、ジャンヌから奪わせる真似はしたくない。

 それでもジャンヌを大切にしたいという気持ちは、矛盾していると思っていた。無責任な気持ち。故にローレインの言葉を認められなかった。自分と英雄と呼ばれるであろう存在が、同格と見られることが。自分なんて、遥か下だというのに。

 とはいえ今はそれに気にしていられる場合ではない。おそらくこの後がもっとも自分達の知りたいこと。

 その先に、再びフォーカスされる。

 

「その勢いのまま、家に帰ってからオルテンシアは謝罪と号泣の嵐となった。彼女も私のすりむきに気づいていなかったらしく、謝り続けていた。その姿に私は心が痛んだ。同時に不安も感じた。私がいなくなったとき、彼女は自分を保っていられるのか。故に私は決意と共に彼女に約束をした」

 

「おっ、ここじゃないですか!僕達の見たいところ!」

 

 フォーンの読み上げにテュートが反応する。如何にもそのような前置きに注目する。その先に、望む答えはあった。

 

「オルテンシアを抱きしめ、迂闊に人助けをしてしまったことの謝罪、そう言った時には必ず彼女がいる時には確認を取ることを約束した。代わりに彼女には、それを忘れないようにするために……不機嫌であるという気持ちを隠さずに見せてほしい、とお願いした」

 

「……不機嫌な、気持ち?」

 

「彼女はよく分かっていない様子だったが、こう伝えた。嫉妬、その気持ちを如何にも分かる顔を作ってほしいと。出来れば許せないという気持ちまで表に出してほしいと……」

 

 そこまで読んで気づく。違う、何かが違う。望んでいたことと、出された回答の齟齬。寧ろ回答の回答こそが議題に繋がるような……。

 テュート、フォーンもまた気づいていた。

 

「……すみませんみなさん、これって、まさか……」

 

「……まさか、そういう、ことか」

 

「ハハッ、原因はそもそもここにあったってわけだ」

 

 ローレインがクスリと笑う。まさしくその通りで、ファーフニル家女性の嫉妬深さは、そもそも初代ファーフニル卿、オーヴェロンの願いから始まっていたのだ。

 その事実に、慟哭したテュートが机を叩く。

 

「クソッ!そもそも、初代が原因だったなんて!」

 

「原因、なのかは置いておくとして……いや、原因以外の何者でもないか」

 

 フォーンも頭を抱える。認めたくはないだろうが、これが事実であった。フォーンの手から日記を借り、先を読み進める。

 

「まぁ理由が理由ですけどね。後の方でも……割とそういう描写が多いですね。オルテンシアが不満な時は、決まって虚ろとも言える目で、威圧感を持たせて伝えてくるようになった。そのおかげで彼女の事をもっとよく分かるようになった。とありますね」

 

「いや初代ファーフニル卿メンタル強すぎだろ」

 

 ローレインのツッコミに同感する。だがそれでも、そうなってでも彼女の気持ちを分かりたいという初代ファーフニル卿に、人の器の違いを見ていた。

 きっと、そんな人だからこそ、このオルテンシアは約束通りその振る舞いをするようになったに違いない。文章には最初は戸惑っていたオルテンシアの様子や、そう言った反応をした後、微笑むという反応が見られる。

 決して今の彼女達のように心から病み切っていたわけではないのではと思う。約束を律儀にこなしていた。もし彼女の日記があったなら、もしかしたら書いてあるのかもしれない。この事に対する彼女の想いが。それを見たさがあった。

 だが自分達の求めていた答えが得られなかったのも事実である。本末転倒だと漏らすテュートが悲壮感を漂わせる。

 

「終わりだ……僕らはファーフニル家の仕掛けた罠に呑みこまれていく……また家追い出しかぁ」

 

「そんなことにならないよう努力はしないのか。俺は何とか言うつもりだぞ」

 

「それは、勿論しますけど……でも、前の時点で話聞いてくれなかったので……ううぅ」

 

 得られるものはなく、逆に残酷な事実を告げられたと言ったような様子。それでも何とかしなければならない。自分は、そういった女性に好意を寄せられた、テュートはその女性に恋したのだから。フォーンも仕える以上はしっかりと向き合い、説得する覚悟を決める。

 ともあれ捜索はほぼ終わったと言える。自然と片付ける動きになっていく。が、元だけはまだ日記を読み進める。まだ何か書いていないだろうかと思ったのだ。その様子を見てローレインが声を掛けてくる。

 

「ハジメー?まだ読むのか?」

 

「あぁ、ちょっと続きが……あっ」

 

 とあるページで視線が止まる。そのページにはオーヴェロンが新型MSを受領したことが書かれている。それによるとその機体は救世主を真似た物であり、詩でDNの力を操る者と共に戦う機構を有していると書かれていた。

 その機構は元のよく知る物だった。それを指してフォーンとローレインに意見を求める。

 

「フォーン様、ローレイン、これ」

 

「ん?これは……」

 

「うわっ、これガンダムか?」

 

「えっ、ガンダム!?見せてくださいよ!」

 

蚊帳の外になる形だったテュートも顔を寄せてくる。その文面を見て彼らも気付いた。

 

「この機能は……確かにガンダムと合致するな、ハジメ」

 

「初代当主が……ガンダムのパイロット?」

 

「それつまり、ハジメ君のガンダムは元々初代ファーフニル卿の機体だったってことですか!?」

 

 それら言葉を聞いて、改めて初代ファーフニル卿のMSの絵画を見る。その機体色は黒く、周囲に蒼か緑の細かな点々が散っているように見える。頭部は劣化のせいかツインアイかどうかまでは確認できないが、耳と言える部分には特徴的とも言える突起物が見られる。

 今のシュバルトゼロとはかけ離れているが、可能性はあるのだろうか。気になってスターターのスタートに問いかける。

 

「なぁ、スタート。この絵はシュバルトゼロなのか?」

 

『んん?何だよ暇っぽいと思ったら……あー?どうだろうな。分からん』

 

「分からんってお前……」

 

 聞いたにも関わらずスタートは眠そうな態度で知らないと答える。ここで頼りになるのはスタート位のものだというのに、まったくもってマイペースな奴だ。

 しかしそれには理由があることをスタートは告げる。

 

『仕方ないだろう。ガンダムはあの時期大量に生産されている。その中にエンゲージシステムを盛り込んだ機体もいくつかあったはずだ。そこらへんの記憶を俺が曖昧なのは、お前も知っているだろう』

 

「それはそうだが……」

 

 前から聞いていたのだが、スタートは機竜創世記の英雄である。しかしその記憶は不完全で、継ぎ接ぎの物となっていた。エンドとの因縁も、終焉となった終誕の日の出来事もおぼろげにしか覚えていないらしい。

 もし記憶が思い出せれば、当時の事も色々分かるというのにこの英雄AIは。無理に思い出させるのもあれなので嘆願という形に留めている。

 それに、スタートが違うのではという指摘をする。

 

『それに、その機体には頭部にユニットがある。牙と言うか、そのようなパーツが。これは俺の覚えているシュバルトゼロには、かつてのシュバルトゼロガンダムタイプ0にはない。追加オプションのGワイバーンにはそんなパーツもないしな』

 

「それも……そうか」

 

 言われて妙に納得する。思い出せないだけだろ、と言おうとしたが言っても仕方がないと思い、留める。

 そうして読み終わろうとしたのだが、パラパラとめくった中でとあるページが目に留まる。それは最後に描かれたであろうページ。

 

「?」

 

 そのページの文だけオーヴェロンの字とは違った気がした。見るとそれはオーヴェロンではない。最後のページを書いていたのは、意外な人物。その文を見て息が止まる。

 

「……」

 

 書いた人がすぐにわかる。オーヴェロンに向けられた言葉。直前の文面からしてこれはきっと、オーヴェロンが死んだ後に書かれている。その死に対する彼女、オルテンシアの伝えたかった言葉だ。

 その言葉に引き込まれる。彼女が何をオーヴェロンに思ったのか、亡くなったオーヴェロンへの気持ちを綴っている。それを見て、ため息を吐く。

 

「はぁ。やっぱり、ちゃんと向き合うべきか」

 

「どうした、ハジメ?何かあったか?」

 

「いや、ただちょっとさ。あらかじめ面倒事を避けるのも大事だけど、瞬間々々の時間も大切なんだなと」

 

「なんだそれ。結局対策らしい対策見つからなかったのにな。何悟った顔してんだか」

 

 ローレインから呆れとも呼べる返答が帰ってくる。とはいえ何か見つけたことは分かってくれたらしい。

 そのままテュートの耳にも届き、策を見つけたことに驚く。

 

「対策を見つけたのか。流石英雄だ……教えてくれても?」

 

「だから、もう受け入れるんですよ。誠心誠意謝る、くらいじゃないです?」

 

「僕じゃ……無理だね。ハハッ」

 

 教えを請われそう返すとテュートは諦めたような顔で項垂れる。まぁこれはテュートの段階だとダメなのかもしれない。けれどもありだとは思うのだが。

 一方でフォーンにはそのアドバイスは利いたようで頷いていた。

 

「そうだな。頭を下げるしかなさそうだ。結婚なんて、勘弁だ」

 

「それ昔ガンド・ファーフニルとクリエ様争った人が言う台詞じゃないんだよなぁ」

 

「あれを見て勘弁してくれと思ったんだ。あいつの苦労を知っている身としてはな」

 

 ともあれそれぞれの回答は見つけた。名残惜しいが資料をケースに仕舞い、大切に保管すると一同は部屋を出て解散となった。

 

 

NEXT EPISODE

 




中編はここまでです。

ネイ「初代ファーフニル卿、名前は、オーヴェロン、と」

グリーフィア「この作品系でオーヴェロンと言えば、やっぱりガンダムヴァルプルギスのオーヴェロンよねぇ。あっちは機体だけど」

まぁそうですね。元君の外見モデルのマシロ・オークスの搭乗する機体、白のグリモア。それに合わせて劇中では妖精王の名前も出てますね。

ネイ「けど妖精王ってそれF○Oだけの話みたいなんじゃないんですか?」

元君の世界での歴史はそうなってるってことだから。

グリーフィア「でた、この作品限定設定。それを持ちだすってことは、そこらへんも絡んできそうよねぇ」

それはどうだろうね。ともあれこのファーフニル卿、オーヴェロンとオルテンシア、後々でも割と重要な位置にあるので、今後とも注目するべき点です。

ネイ「それはそうですよね。ジャンヌさんのご先祖様なわけですし」

グリーフィア「スタートは否定していたけど、まだ可能性有りそうよね。記憶喪失なわけだし」

それでは、後編へと続けていきたいところですが、どうです?

ネイ「問題ないです」

グリーフィア「次はまたジャンヌ達にバトンタッチね~」


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番外編6 後編 今の大切さ

それでは後半の更新です。

レイ「オーヴェロンの経験を生かして、元君はどうするのか?」

ジャンヌ「無事、ジャンヌ・Fさんを納得させて、バレンタインを乗り切れるのでしょうか?」

ちなみにですが、ここの話書いてるときが一番楽しかった気がします。それではどうぞ。


 

 

 そして来るべき2月14日。バレンタイン当日、元は朝早くから起きていた。忘れていたのだが実は聖トゥインクル学園の高等部3年はこの時期既に自由登校の時期となっていた。

 迫る卒業に向け、次なる進路の為の準備をする人物も多く、学校に用事のあるもの以外は学校にあまり行かないというのがほとんどだった。元はその事を完全に忘れていたのだ。

 かくいう元とジャンヌも迫った異世界転移の準備の為に自宅かあるいは基地で準備を進めている。となれば、バレンタインのチョコレートが届くのは当然ファーフニルの邸宅あてとなっていた。

 ファーフニル邸前に朝早くというのに学園の女子が点々とやってくる。それに対応していたのは、他ならぬ元だった。

 

「すみませんが、そういったものを俺は受け取れないので……」

 

 一人一人に事情を説明し、帰ってもらう。家への迷惑を考えて自分自身で応対し、チョコが無駄にならないようにする選択を取った。

 これがほぼ追い返しというのは分かっている。故に当たり障りのない回答で応対し、納得して帰ってもらう。もちろん中には聞き分けの悪い人物もいる。それでも精一杯対応して周りの他の女子達に助けてもらいながら切り抜けていく。

 そんな作業を繰り返してようやく学園の登校時間になったころ、一息ついていると人の流れが落ち着いた辺りで、家の方からやってくる人影を見て、姿勢を整える。やってきたのは自身の主にして恋人、ジャンヌ・ファーフニル。その姿は既に寝間着から普段着の白ベースのワンピーススタイルと羽織り物という着こなし。しかし問題はそこではなく、表情にある。

 予想していた通り彼女の瞳は濁って、というより光が感じられない。それでいて笑みを浮かべており、同時に怒りを感じさせる、叱りつけると言ったような言い方が正しいだろうか。

 そんな複雑な表情で彼女は朝の挨拶をしてくる。

 

「おはよう」

 

「おはようございます。もう支度出来ているんだな」

 

「それはそうでしょう?だって外で、あの五月蝿い女達があなたの事を奪おうとしていたんだから。そんなのにわざわざ構うなんて……あなたはいいの、私が、やるべきことなんだから……」

 

 言って先程までいた女子達を追おうとするジャンヌ。朝がそれなりに弱いというのに、その執念だけは有り余っている。

 とはいえ、これは予想通りだ。そのジャンヌへと向けて行動を起こした。

 

「そうですか。とはいえ、今日は基地の方お休み頂いているんで、出る必要ないんですが」

 

「あなたが出る必要はないもの。私は出る」

 

「そうですね、それじゃあ……だぁ……」

 

 そのまま疲れに突っ伏す様子でジャンヌへと抱き付いた。外で、玄関先でいきなりそのような形となったジャンヌは奇声を上げながら呼びかけてきた。

 

「ひょえぇ!?あ、ありぇ、は、ハジメ!?どどど、どうしたの!?」

 

「朝4時起きなんだ……その時間くらいから来るだろうと思って……チョコをポストに入れられるのも返すのが面倒だったから」

 

 その言葉通り、今日はかなりの早起きで眠気は絶好調。それを先程まで栄養ドリンクを飲んで起こしていたのだ。

 とはいえそれでもまだドリンクの効果は限界を迎えているわけではない。疲れはもちろんあるが、ちゃんと思考があってこうしている。

 戸惑っているジャンヌに対し、外へと出ないように身体を絶妙な力で支えながら言う。

 

「けど、丁度良かった。頼めるか、もう眠い」

 

「だ、だけど、チョコ渡そうとしたあの女達を!」

 

「寝てる間、ジャンヌの好きにしていいから、ジャンヌと今日は一緒に居たい」

 

「っっ~~~~~!?!?」

 

 ジャンヌの羞恥からの声が聞こえてくる。このまま家へとUターンしてくれればいい。後はフォーン様や庭師などに任せれば対応はできるはずだ。流石に一日中は体力的にも無理だし、本心としてはジャンヌに構ってやりたい。これならジャンヌの機嫌を取れる。

 そう確信していた。しかし悶えていたジャンヌがふとスンと静かになる。こちらの背中に手を当て、言ってくる。

 

「……ねぇ、ハジメ……まだ随分余裕ありそうだけど?ちゃんと立ててますよね?」

 

 トーンが落ちる。完全に気づかれたと言っていい。見透かした発言に誤魔化そうとする。

 

「気のせい、では?」

 

「そう言うんですね。ならこのまま倒しても追いませんよね?そんな体力ないでしょうから」

 

 もう流石に無理だなと思う。そこで茶番の謝罪をする。

 

「すみません。それは勘弁してください」

 

「認めるんですね。騙したのはムカつきますけど、認めてくれるのならいいです」

 

「けど、疲れているのは本当だし、今日はジャンヌの好きにしていいのも事実だ。今日はバレンタインだ。少しでも一緒に長く居てやりたい」

 

「っむぅ……でも、チョコ渡してくる輩は、五月蝿いですし、それにその度に居なくなるのは……」

 

 ありのままの気持ちを告げ、なんとか留めようと試みる。そうやっている内に次の訪問者が訪れる。

 

「あっ、あれ!ハジメさんだ!」

 

「ジャンヌさんとイチャついてる!?」

 

「っ、またっ」

 

「じゃ、ジャンヌ、抑えて」

 

 何とか行かないようにするがジャンヌの力が強い。ここに来て本当に疲労が身体を襲う。更に渡し手側も焦って行動に出る。

 

「受け取ってください!私のチョコっ!」

 

「ちょま、投げるってそれ!」

 

「っっ!!渡させないっ!」

 

 薙げたら意味がないのでは、ということを言う間もなく振りかぶったその時、手刀が投げようとした女子の手を掠めた。女生徒の持っていたチョコが地面へと落ちる。

 落としたのは他ならぬ女生徒の付き添い。思わぬ妨害にチョコを渡そうとした女生徒が狼狽した。

 

「な、何で邪魔するの!」

 

「黙れぇ!邪魔してるのはお前だろう!」

 

『えっ?』

 

 一瞬全員の反応が重なる。どういうことか、と思う前にその付き添いはこの場における感情を矢継ぎ早に語っていく。

 

「私はあんたがチョコをハジメさんに渡したいというからそれに協力した。しかし、今彼は恋人とこんな外で大胆な行動に出ているんだぞ!それを邪魔するとは何事かぁ!」

 

「えっ、いや、でも……チョコ」

 

「私は認めんぞ!この尊い空間にチョコと言う名の爆弾を投げ込む不届き者は!」

 

 なんか、すごく熱心に尊さを語っていた。昔SNSで見たことがある。エモい、尊い、そんな光景に対し、熱心に語るアカウントが多くあったことを。その光景に近い。

 その光景にただただ相手側もこちらも圧される。一方でそれらの発言で状況に気づいたジャンヌは顔を赤くして身悶える。

 

「あうぅ……ちょっ、こ、声……小さくぅ……」

 

 肝心なところで怯えるその性格に何とも言えない気持ちになる。が、それよりもこの言い合いだ。女生徒はチョコを渡すことへの想いを語る。

 

「そ、それでも伝えたい気持ちがあるんだから、っていうかさっきまで気持ちが届くのはあれだけど渡すの上手くいくといいねって言って」

 

「そんな言葉、さっきゴミ箱に包めて捨てて来たわ!」

 

「速いよ!?そんな程度の気持ちだったの!?」

 

 もう一人の付き添いの同級生も驚く。何という変わり身の早さ。友人関係が心配だ。

 だが冷めぬ興奮のまま彼女は自分達の仲について昂る想いを明かしていく。

 

「見ろ!ハジメさんの目を!目の下に出来た隈、あれはお前達不届き者を下手に傷つけないようにしつつもジャンヌさんとの時間を邪魔されないようにした証だ!」

 

「あぁ、うん、まぁそう言えますね。ただ言われると恥ずかしい、かな?」

 

「その努力を貴様は今踏みにじろうとした!!万死に値する!」

 

「うん落ち着こうか?よくそんな言葉知ってたな」

 

 興奮する付き添いを言葉で抑えようとする。何というか、凄い熱心な人だと思う。人の、恋愛を応援する姿勢は何とも嬉しいのだが、しかしその応援のされ方は気恥ずかしいというか、やりすぎと言うか。

 とにかくそのやり取りで友人関係を壊さないことだけがハジメの不安だった。しかしそんなのは杞憂のようで女生徒と連れ添いの同級生が呆れながら呟く。

 

「ダ、ダメだ、こいつ……早く何とかしないと」

 

「そんなに、このカップリング尊い?」

 

「笑止千万!この尊さが分からんかぁ!だからお前達は阿保なのだぁーー!!」

 

「何か憑りついてるのかこの子……」

 

 思わずそんな感想が漏れる。なおジャンヌは未だ先程の言葉に悶える始末だ。ともかく、このヤバい状況、早く何とかしないと近所迷惑なのは確かだった。

 何とか付き添いの子にもう少し声のトーンを落とすように要請する。

 

「あの……そんなに騒がれると家の者も寝ている方が……」

 

「あぁあぁああ!失礼しました。ほら、帰るぞお前達!」

 

「ちょ、私チョコ渡しに……」

 

「多分ダメだと思う。私も流石に投げて渡すのは危ないと思うし」

 

「そ、そんなぁ」

 

 付き添いの子を中心に(というかほぼ独断で)帰ろうとする一同。こうなってもなおチョコを渡して来ようとする女生徒だったが、その同級生が正論を告げる。

 実際それは危険ではあった。自分に当たるのはまだいいが、いや、それだとジャンヌが制御不能になってしまう。しかしジャンヌにもし当たれば流石に自身の堪忍袋の緒が切れる。そこまでしてもらったチョコをちゃんと処理できる自信はない。乱雑に扱いそうで怖い。

 それに、ないとは思うがそれがもし爆発物に偽装されている場合もあり得る。投げられた瞬間、ジャンヌを抱えて逃げていた、というかさっきはジャンヌを抱えようとしていたくらいだ。そう言った意味で、危険ではあるもののあの付き添いの尊さを推す人の行動は助かったと言える。

 そういう意味で、やや焦り過ぎではあるものの、付き添いの人が行った行動は模範的な対応であった。度合いは激しいが、出来れば不干渉であってほしい。その行いが出来る人は好印象だ。

 その流れのまま二人を、というかチョコを渡そうとした女生徒を連れて帰ろうとする付き添いの女性。ともあれここは乗り切ったと思う。後はジャンヌへの謝罪を、と思ったところで付き添いの人がこちらに再度向き直る。

 

「あっ、私達もう帰りますので、お幸せに!」

 

「えっ、あぁ……はい」

 

「あと、学園とか、学内のSNSとかでも言っておきます。あなた達の邪魔するなって!」

 

「えぇ!?いや、まぁそれはありがたいんだけど……いや、大丈夫?それ」

 

 いきなりそんなことを言われれば周章くらいはする。そんなの個人で出来るものなのだろうか。そういうのはドラグディア軍を頼るくらいしか考え付かなかった。

 しかし付き添いの女性は意欲的な返事を返した。

 

「大丈夫!世界敵に回してもこの尊さは邪魔させぬ!それじゃあ!!」

 

 言って返事をする前に彼女は連れと共に走り去っていく。嵐のような出来事。置いてけぼり感が半端ではない。

 そこでようやくジャンヌが平静を取り戻す。先程の女性に対し複雑な感情を口にする。

 

「何なんですかあの人……勝手に、私達のことを、あーだ、こーだ言って……」

 

 不機嫌ではあるものの、戸惑いを隠せない顔だ。ああいうタイプの人物に応援されたことが少ない為に、反応に戸惑っていると見えた。

 正直に言って自分もリアルでああいうタイプを見たのは初めてだ。当惑せざるを得ないし、あの対応が正しかったのかは分からない。

 だが、悪意があってあんなことはしないのではないかと思う。狂喜乱舞するあの光景は見ていて引きはするが言われていること自体は悪いことではない。もっとも迷惑をかけるようならそうではないのだが。

 一応ローレインの方に連絡を入れようとする。だがそこで体がふらつく。

 

「うっ……」

 

「ハジメっ!?えっ、本当に大丈夫!?」

 

 ジャンヌに身体を支えられて何とか立ちくらみに耐える。疲労がピークだ。ジャンヌに家に入ろうと提案する。

 

「ごめん、流石に本当に無理だ……」

 

「もうっ、そんなことになるかもしれないから、無茶しないでほしかったのに……。あれだってどうするか……」

 

 ジャンヌはこちらを介助しながら立ち去った女性についてしきりに心配をする。余計なことをされて事態が悪くなることを望んでいない。ノット・ア・ジーの活動が続いている今の周囲への影響を気にしての発言、それに自分との間を邪魔されることを嫌がっての事だろう。

 もちろんそれに対して考えていると告げる。

 

「それに関しては、ローレインに頼むさ。けど、眠い……」

 

「分かった、分かったからぁ!もう無理しないでっ、私も、いるから……」

 

 ジャンヌが追わないことを約束して共に屋敷へと戻っていく。何とか目的は果たすことが出来たようだ。肩を貸されながら歩いていくうちに、元はつい先日の事を思い出す。

 フォーンたちと書庫を調べた時に出たオーヴェロンの日記。その最後のページに書かれていたオルテンシア・ファーフニルの言葉が思い起こされる。

 

『この言葉は、あなたには届かない。だけど届くと信じて、残します。私は、あなたと居られて心から幸せでした。いつも、私の事を一番に考えてくれる。詩巫女というたった一人しか選ばれないという役割に、多様な未来を与えてくれた。きっと後世の子ども達は様々な未来を掴んでくれることでしょう。そして、私もそれに救われた。あなたというかけがえのない人に出会えたから。だけど、これを見て、悲しく思います。あなたは我慢をしてしまう人です。私には我慢をせずに、気持ちを表してほしいと言ってくれた。そんな気持ちに、私は甘えてしまった。だから、あなたの気持ちに気づけなかった。救世主様が舞い降りても終わらない争いに、心を痛めていたのに、私にはそれを見せなかった。ここでだけ、その弱音をこぼしていた』

 

 事実、日記の過去の文面には目を凝らすと確かにオーヴェロンの苦悩とも呼べる弱音が散乱していた。形を変えての戦争の継続、騙し合いの国交、身内同士での権力争いもあり、ファーフニル家の地位確立も当代のフリード家当主との連携があったからこその物だったと書かれていた。

 彼はずっとフリード家を継ごうとしていた。それでも最終的にはファーフニル家という新たな家を継ぐことを決めたのだ。もっとも、それは数年の短い間だったようだが。

 そんなことを知った彼女は最後にこう残していた。

 

『だから、私はもっと理解してあげたかった。慰めてあげたかった。無理に我慢する必要なんてないことを、私があなたに教えたかった。それでもあなたは、悲しい顔をしてほしくないっていうんだろうけど。けれど、私はあなたと同じ気持ちを味わいたい。それが、私の最後の我儘です。もう叶わないけれど、いつかの未来、子ども達が、同じことに直面した時、分かってあげられる子が、困っている人に寄り添える子がいてくれることを私は願います。いつかの子達がこれを見て、愛する誰かに寄り添える未来であって欲しいな。君が望んだ未来も、そうだよね、オーヴェロン君』

 

 そんな言葉を思い出しながら、ジャンヌの顔を盗み見る。彼女の顔は先程までの嫉妬に満ちた顔でも、かつての希望を見失った偽りの笑顔ではない。今を生きると前を見ている姿だ。

 この顔を、守っていきたい。例え、元の本来いるべき世界に行ったとしても、この表情を守りたい。もう絶対に曇らせてはいけない。それが、レイアが救われるまでの自分の使命だ。

 オーヴェロンとオルテンシア、二人のすれ違いを悲しく思う。けれども、自分はその二人のように、ジャンヌを愛せるのだろうか。違う世界の自分が、そんなことをしていいのか。同じ種族である二人でさえ、そんなすれ違いを起こしたというのに。

 そんな事を考えて、ふと我に返る。今日はそんなことを考える日ではない。ジャンヌの想いを精一杯受け止めてやらねばならない。ジャンヌには無理を心配されている事を謝罪しなければいけない。肩を貸されながらジャンヌに尋ねる。

 

「ジャンヌ、こんなんでごめん。けど、やりたいってことはやるから……」

 

「そんなこと、今言わなくていいからっ!……強いて言うなら……無理しないで。一緒に……ねて、あげたい……」

 

「……分かったよ。常識の範囲内で、な」

 

「うん……」

 

 その返事を聞いて安堵する。そして心の中で思う。

 

(オーヴェロン、オルテンシア、これで、よかったのかな……あなた達の大切な子どもへの贈り物は)

 

 この時、元達はまだ知らない。元はもとの世界で、大切な仲間を、家族を失い、心を閉ざしていくことを。ジャンヌはそれを見て、何も出来ないことをずっと心の中で悔やみ続けることを。二人の仲は最悪の形で砕け散りそうになることを、まだ知らない。

 それでも今は、今だけは平和に過ごす。

 この日は昼過ぎまでずっと二人で眠っていた。それを、無事婚活を回避したフォーンも目撃し、気を利かせて休ませてやった。同じくその光景を目撃し、写真に収めようとしたクリエを諫めながら。

 そうして昼からは邸宅でゆっくりとジャンヌの作ってくれたブラウニーを紅茶で頂きながら、戦いのひと時を忘れる日々を過ごせたのであった。

 ちなみに、その後の知らせでテュートも何とか追い出しは免れたという。

 

 

 

◆おまけ

 

 

「おーハジメ。ちょっといいか?」

 

「ローレイン。どうした」

 

「この前のバレンタインの時の頼み事なんだけどさ、あれでちょっと事態が動いてな?」

 

 ローレインから告げられる頼み事の件、と言われて思い出すのはあの付き添いの少女の発した言葉。あれの進展は確かに気になるところだった。

 しかしその事態は思わぬ動きとなっていることを知る。ローレインが告げた。

 

「あれな、聖トゥインクル学園側が竜騎士詩巫女研究会として発足したわ」

 

「は?どういうこと」

 

「端的言うと竜騎士と詩巫女をもっと知り、その歴史を復活させていこうって流れになった。まぁ内容はお前達のファンクラブだけどな」

 

「ファンクラブ!?何だそれ……まさか、そのクラブ……」

 

「そいつらの最初の活動で、お前宛にチョコ渡さないようにってなったぞ。良かったな」

 

「やってる事過激すぎる!?いや、助かるけども……それは」

 

 思わぬ副産物。正直言って望むところではある。また同じ事をされては迷惑だ。もっともこれから別世界に行くことになるので、ほぼ見る機会はないのだが。

 それでも後顧の憂いがなくなったことはいいことだ。それをやってのけた付き添いの彼女には頭が上がらない。何かお礼をした方がいいだろうか。もちろんジャンヌと相談してだが。

 そこで彼女の名前を聞いておこうと思い、尋ねる。

 

「それで、多分その中心になった女生徒の名前って、分かるか?」

 

「あぁ。名前はデジタンス・アウネス。っていうかお前も多分近いうちに会うぞ」

 

「えっ、何で」

 

「彼女な、学園卒業後ドラグディア軍の広報担当になるんだよ。で、そこで竜騎士詩巫女の宣伝部長をやる」

 

「えぇ……彼女が?」

 

 当惑する。なぜそうなったと問いたくなる。しかしその前にローレインはそのまま役どころについて語る。

 

「急な進路変更だけど、元々そういう類の、雑誌担当目指していたらしくてな、今回の経歴とか含めて、うちが引き抜いた」

 

「お前が噛んでるのか……」

 

「だって行動力としては百点満点だぜ?トレノ先輩も当人がいない間の竜騎士詩巫女のイメージアップ担当としてはまず間違いないって太鼓判押してるし。ちなみに彼女の面接時の採用決定資料これな」

 

 言われて渡されたのは一つの本。やけに薄い。表紙には大分美化された自分とジャンヌのイラストが描かれている。

 めくっていくと二人の関係がいい感じに脚色されたイラストが複数載せられている。思いきりツッコミたい内容も多数みられる。所謂同人誌、薄い本と言われる部類の本だ。

 しかし素人がただ書きたい内容を書いただけかと言われれば、そうではないように思う。メディアリテラシーに合わせ、過激な物は抑えている。というかイラストに関しては彼女が実際に目で見たであろうこちらの実際の風景をアレンジして描かれているように思える。構図には覚えがあった。

 この世界に転移する前はメディア系を目指していた自分でも、広報としては理想とする嘘は書かない、はっきりと目立つ見栄えを重視しているようにも思える。それにイラストに添えられたコラムも、やや気恥ずかしい内容だが見守る信条の物が多かった。

 そういった部分も含めて正直に感想を述べる。

 

「んー……こうして見るのは恥ずかしい、けど、メディアとしてはいいと思うな。彼女はそういった経験が?」

 

「元々はアニメとかのカップリングイラストとかをオリジナルで描いてコミックランドで販売する小さめのサークル主だったらしい。学園でも言われればどんなカップリングでも描く人らしくてな。レイジャン……あぁ、レイアとジャンヌのカップリングとか、ネアとグリューネ、それに前の時点でお前とジャンヌの絵も描いてたらしい。その一部をこっちにも持ってきてるらしいしな」

 

「すご。そういうサークル主とか初めて会うな。もとの世界含めて」

 

「そういうの知ってるお前にも驚くけどな。でも当人からそう言ってもらえたなら大丈夫そうだな」

 

「あぁ……でもジャンヌには一回話通しておいた方がいいかも」

 

「なるほど。また嫉妬するかもしんねぇしな。伝えておく。けどいい子だと思う。俺も情報屋として何度か依頼されてたし、信用できる」

 

 それらを聞いて、その日早速ジャンヌに話を通した。かなり恥ずかしがってた上にやや不満げな彼女だったが、後日実際に会った彼女は、圧倒的なまでの馬鹿デカい感情を再び披露し、ジャンヌを黙らせた。

 そうして彼女、デジタンスは広報担当に採用が決定したのだった。その後の活躍を、まだ元達は知らない……。

 

 

END

 




はい、バレンタインデー番外編、これにて終了です。

レイ「うーんオタクの反応結構あったなぁ……って感じだね」

ジャンヌ「デジタンスさん、途中00とかGガンダムのキャラクタ―乗り移ってませんでした……?」

けど私のバレンタイン絵とか見た時の反応とか考えてみるとそうなるのかなって思った次第ですよ。

レイ「反応のモデルは作者かい!」

ジャンヌ「何か最近はわたくしのカードイラスト見た時よく公式のツイートに「ありがとうございます」ってだけ付けてることが多いんですけど、実際そういうこと言いたい感じです?」

この気持ち、まさしく愛だと叫びたい気分だわ。今回のイラストもどれもいいんですよね。

レイ「ほ、本気だこの作者。でも、そんな暴走から生まれたこのデジタンスちゃん、行動力は凄いね……薄い本作るとか」

ジャンヌ「作者としてはこのキャラはどういう立ち位置で作成したんです?」

今回用のキャラとしつつも、後々出せるような感じだね。本編での登場も予定しているので、待っていただければ現在の元君達への反応をみられるかもです。

レイ「や、やめといた方がいいと思うな!?」

ジャンヌ「今の元さんとジャンヌ・Fさんの仲を見たら、色々愕然としそうですよね」

多分「つら……マジ無理……死ぬ」とか言ってそうですね(;´・ω・)

レイ「書く気満々だぁ」

ジャンヌ「そのまま反応で書くんです?」

もう少しショック受けさせた反応書きたいところです。とまぁ、こんな感じでしたが、いかがだったでしょうか。

レイ「この頃はまだ元君も、ジャンヌ・Fちゃんを大事にしてたのに本編と来たら……」

ジャンヌ「大事に、というより、過保護になり過ぎている感じですよね。もっと壁を作らずに触れ合えるようになってほしい。いえ、今度こそですね、すれ違いのない遠慮とか、申し訳なさのない関係を築いてほしいと思います、二人には」

というわけで今回はここまでです。次回本編もよろしくお願いします、大体本編投稿の6日後あたりですね。

ジャンヌ「それでは、よいバレンタインをお過ごしください」

レイ「それ危険な香りがするなぁ……」

ジャンヌ「ですよね。まぁでもこれが台本ですし」

それ以外思いつかなかったです。また次回。


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LEVEL2 神騒乱勃発編 第1章 破壊者の到来
EPISODE1 黒き悪魔は舞い降りた1


どうも、皆様。第2部ことLEVEL2開幕です。作者の藤和木 士です。

ネイ「アシスタントのネイです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアね。さぁて、少し間が空いての第2部開幕ね」

今回も2話分投稿です。まずはその一つEPISODE1からです。

ネイ「あ、エピソード数リセットなんですね」

ぶっちゃけ別で投稿しても良かったんだけど、それだとなんかと思ったのでこうなりました(^o^)

グリーフィア「元さんとジャンヌがあの後どうなったのか。気になる感じだから早速行きましょ」

そうだね。それでは本編開始です。


西暦2025年。この世界「地球」は戦乱の世にあった。世界とその外側を構成するという「次元粒子」の発見と、それを動力として起動する次世代作業用スーツ「モバイルスーツ」。この2つの発見が世界を大きく変えた。

 この世界以外の、同じ次元粒子で作られた世界があることを知った人類。だがその中に悪しき考えを持つ者が現れた。次元粒子を用いて次元世界を作った何者かがいると考えた者達が、まだいるかどうかも知らないその存在を神であるとし、その考えに至った自分達は神の使いであると自称し出したのだ。そういったカルト集団は、古今現在に至るまでにいくつも存在した。しかし彼らはそれらとは違った強みを持つ。それがモバイルスーツ改め、モビルスーツの運用だった。彼らはMSを神が与えた使徒であると解釈し、その力でたちまちに都市を制圧、教えを広めていった。

 教えを広めると言っても、それは結局のところ武力による併合である。それらカルト集団は西日本を中心として多くの民間人を殺戮した。やがて散発的だった集団は1つの教団を作り上げた。「次元覇院」。それが次元粒子を神からの贈り物と称し、自分達の身勝手な考えを押し付ける者達の名前だった。次元覇院設立後はその勢いを増して日本は争いで満ちていく。だが、それらの動きは設立後にとある集団により阻まれるようになった。

 MSによる警備・犯罪の取り締まり・大規模災害救援を主とした、民間軍事組織「MSオーダーズ」の設立が、次元覇院を押しとどめた。彼らは元々MSを開発していた企業が母体となっており、政府との協力の下次元覇院を含めたMS犯罪者達を取り締まるべく活動する。日本のMSの生産トップシェアを誇っており、日本の自衛隊、そして警察などのMS部隊設立にも携わるほどだ。MSを正しき使い方、モバイルスーツで提唱された「災害から人々を救い出す力へと戻す」ために、東日本を拠点に次元覇院や他の新興カルト教団に立ち向かっていた。

 2020年に起こったモバイルスーツ暴走事件から5年の間に、世界はモビルスーツの存在をそれぞれの形で受け入れていた。兵器として、人々の命を救うため。日本は今、かつての戦国時代のように東と西で戦っていた。神という「理想」を押し通すか、人という「現実」で抗うか。2つの異なる思想がぶつかり合っていく。

 そして今宵もまた現実が理想を駆逐していく。紅き鉄の輝きで包まれた双眼のモビルスーツ率いる部隊が、東響の街を駆け抜けていく。

 

 

 

 

『MSオーダーズめっ、我らが神の布教を邪魔するな……グァッ!?』

 

『次元覇院の勢いに負けるなっ!奴らを残らず殲滅だっ』

 

 MSオーダーズの部隊が東響の街を蹂躙する次元覇院のMS「マキイン」との戦闘に入る。実戦経験豊富なMSオーダーズの精鋭たちは、機体性能でこちらを上回りながらも練度の低い次元覇院のMSを制圧していく。だが次元覇院のパイロット達も無様にやられまいと抵抗を続けていく。

 この5年の間、正確には4年程前からこのような光景を見続けていた。「彼」が爆発の先に消え、事件の責任にあの人が追われ、それを超えてようやく生まれた夢のマシーン「モビルスーツ」。だけど懸念されていた通り、希望は「兵器」として世界中に悲劇をまき散らした。奇しくもあの事件が、MSの兵器の有用性を見出してしまった。それ以外にも様々な派閥が生まれ、MSオーダーズは、私達は四苦八苦しながら戦い続けている。

 

「……マルチロック、シュート」

 

 肩から展開した誘導レーザーが、多数の次元覇院のマキインの機体を貫く。腕部、脚部を貫かれて恐怖で撤退していく者、バックパックを破損し、逃げられないと自棄になって攻撃を繰り返す者……。それらの光景を見るたび、胸の奥が苦しくなる。本当に自分達が選んだのは正しいことなのか。

 そのせいか注意力が鈍る。弾幕を抜けて来たビームが迫る。

 

「しまっ……」

 

 だが、その攻撃を1機のソルジアが防ぐ。専用カラーの紫で塗装されたソルジアのパイロットが呼びかけてくる。

 

『大丈夫ですか、光姫さん』

 

「うん。ごめんなさい、華穂ちゃん。助けられたね」

 

 私――――次元光姫は、ソルジアのパイロットである「黒和華穂」に礼を述べる。彼女はあの暴走事件で亡くなった「黒和元」の妹だ。わけあって自分達の組織に所属する様になったパイロット。そして先程の悩みの種の1つでもある。

 更に次元覇院のMSがアサルトライフルを向けてくるが、別方向から放たれたビームがそれを貫く。突然の狙撃に慌ててマキインは下がるが、追い打ちをかけるが如く放たれた2本のビームと、光姫の機体「ロートケーニギンガンダム」が放ったビームライフルの弾撃が機体を葬る。回線に狙撃を行ったパイロットからの声が届く。

 

『駄目だよ~、紅き砲手と呼ばれるほどの光姫ちゃんがそんなんじゃ。やっぱりそろそろ引退した方がいいんじゃないかな?』

 

「私が引退するのはまだよ、深絵。まだ私は戦場に立ち続けなきゃいけないから。ふと昔の事を思い出しちゃっただけだから、安心して」

 

 MSオーダーズのエースパイロット、蒼梨深絵。彼女もまたあの事件を経験した被害者だ。MSオーダーズ発足当時からの古参で、光姫と共に何度も戦場に立っている。昔は内気な性格で自分から話すことも少なかったが、それが嘘だったかのように今は明るい。その理由はとても彼女らしい、哀しいものだったが。

 そうこうしている内にMSオーダーズ側が優位に立っていた。自らも敵の攻撃を肩と膝のアーマーから形成した防壁で実弾の威力を落としながら、ホーミングレーザーと下腕部パイルガンで敵を近づけさせずに後退させる。このまま東響外側に逃げるように誘導していく。民間人には被害は出させない。

 

『次元覇院のMS、勢いを落としていきます』

 

「このまま制圧、あるいは街から追い出す。敵の逃走先のトレースの準備を……」

 

 

 このままいつも通り一網打尽にするように告げようとした、その時、回線に割り込みが入った。割り込み相手は自分がもっともよく知り、そして心を許した相手。MSオーダーズの総司令官である自身の夫からの緊急を要するものだった。

 

『光姫、戦闘中すまない。たった今戦闘エリアの上空で次元障害が発生した』

 

「次元障害が?」

 

 次元障害。世界を構成する次元粒子が何らかの原因で崩壊、空気中に次元世界への穴が開く現象のことだ。次元世界の自然現象の1つでもあり、神隠しがそれではないかとも言われる。そして、光姫の友人でもあった黒和元が暴走事故に巻き込まれた際にも、次元障害が起こった。死体がないまま死亡扱いになったのは、それが原因だった。

 今この状況で次元障害が起こるのは非常に危うい。しかし、それで撤退すれば次元覇院の連中を野放しにすることになる。光姫は戦闘継続を打診する。

 

「それでも戦闘は継続するわ。ここで次元覇院を逃がすわけにはいかない。東響に攻め込む連中はなるべく潰しておかなくちゃ!」

 

『無論だ。だが問題なのはその次元崩壊は既に収まった事なんだ。……同時に、その宙域にMSと思われるエネルギー反応が出現した』

 

「……黎人、それってどういう………………まさか」

 

 その言葉が意味することを光姫が指摘する前に、戦線に変化が生じた。上空から連続したビームが降り注ぐ。それらはマキイン、ソルジア、そして光姫のロートケーニギンガンダムや離れた場所にいた深絵のブラウジーベンガンダムの周囲に着弾する。

 当たることはない、むしろけん制と呼べる弾撃の後上空からの接近警報が響く。両軍ともに後退して空からの何者かの着地に備える。丁度両軍の真ん中に、1機のMSが降り立つ。

 

『―――――――』

 

 降り立ったのは、漆黒のMSだった。両肩にシールドを備え、右手にはライフルを備えていた。その背には膜のないコウモリの羽のような、突起物が両側3つずつ装着したウイングを持っている。そして注目すべきは顔。4本のブレードアンテナの下に輝く2つの蒼い双眼は、光姫と深絵が乗りこなすカラーシリーズ、別名ガンダムシリーズと呼ばれるMSの顔にそっくりだった。

 MSオーダーズしか現状開発していない、MSの一種の登場にMSオーダーズ側で困惑が生まれる。

 

『が、ガンダム!?』

 

『機体カラーが黒……カラーシリーズの1機か?』

 

『ううん。黒はカラーシリーズの開発プランにはない。今稼働してる光姫さんの(ロート)と深絵さんの(ブラウ)しか今は……!』

 

 他の隊員達の言葉を華穂が否定する。黒のガンダムは運用プランにない。未知のガンダムの登場に光姫達の緊張が高まる。

 

 

 

 

「敵……?それとも味方?」

 

 機体のデュアルアイセンサーから見える黒い機体に深絵もフォーカスを合わせる。先程のビームはあの機体のビームライフルだろう。しかし、なぜいきなり発砲したのか。ビーム兵器と言えば現在の技術では連射が効かず、実弾兵器などで体勢を崩したところに放つトドメの一撃としての運用がほとんど。そんな貴重な武器をけん制程度に使うなど、あり得ない。

 

(……まさか、本当に別世界から来たの?)

 

 異世界のMS。先程の通信で生まれた可能性。それならばビーム兵器の運用を確立してけん制弾として使用するのはおかしくない。

 だがもし本当なら目的は何なのか。いきなり戦闘に介入してきた以上、こちらも無視できない。光姫へと対応を協議する。

 

「どうする、光姫ちゃん」

 

『こちらとしては事情を聴きたいところだけど、問題はあっち……』

 

 光姫が示したのは当然次元覇院の連中だ。あの連中は短絡的な思考の者達が多い。敵として襲ってきたと見るか、はたまた天からの授かり物と判断するか。選ばれたのは後者だった。

 

「ガンダムだ!遂に我らの神が争いに怒られてガンダムを遣わした!」

 

「これでMSオーダーズも怖くねぇ!やっちまえ!」

 

「私達も加勢するのよ!私達の神に続くのよ!」

 

 機体外部スピーカーから発せられた敵の声。勢いを取り戻してこちらに武器を構えて向かってくる次元覇院のMS達。確かな事実もなく、自分達の妄想で物事を決める。やはり次元覇院は次元覇院だ。スナイパーライフルを構えて応戦許可を求める。

 

「光姫ちゃん、華穂ちゃん、あのモビルスーツは気になるけどっ」

 

『そうね。今は次元覇院を止めないと!』

 

『……?待ってください、あの機体が』

 

 華穂からの指摘の直後、漆黒のMSが動いた。右手に構えたライフルから再度ビームが放たれる。2発のビームは真っ直ぐと次元覇院のマキインの1機の頭部と右腕部を撃ち抜いた。反動で地面へと倒れるマキイン。仲間に対する突然の事態に次元覇院に混乱が生まれた。

 

「な、何故だッ!?まさか敵か!?」

 

 次元覇院の敵意は瞬く間にそのMSへ注がれた。そもそもの話突然割り込んできた機体を味方だと判断する方がおかしいのだが、次元覇院のこれまでを見ている深絵達にとっては日常的なものだった。

 その矛先を向けられた漆黒のガンダムは両陣営に対し、オープン回線で呼びかけた。ため息と宣言を交えた、その声に深絵は見開く。

 

 

 

 

『――――シュバルトゼロガンダム リペアツヴァイ ファーフニルツヴァイ、これよりこの戦闘に武力を以って介入する!まずはそっちの神だとどうだのほざく方からだ!』

 

「えっ……?」

 

 

 

 

 深絵の驚きは、言葉に対してではない。驚いたのは発言した声に対してだ。聞き覚えがあった。しかしあり得ない。なぜならその声の主は既にこの世にはいないはずだからだ。遺体も残さず消えた、自分が密かに想っていた青年の声を、確かに聞いたのだ。

 深絵が思索に耽る中、漆黒のガンダム「シュバルトゼロガンダム」はマキインとの戦闘に入る。敵のマシンガンとビームの混成弾を回避してビームライフルの弾丸を放つ。弾丸は頭部、腕部、脚部、シールドをたちまち奪っていく。圧倒的な性能にMSオーダーズは手出しが出来なかった。自分達が標的になるのではと危機感を抱いて。

 

『ぐふっ!?』

 

『畜生!MSオーダーズめ、こんな兵器を隠していたのかっ!うわぁ!?』

 

『って言われてますけど?』

 

『あんなの司令夫人の私でも知らないわよ。それより……気づいた?』

 

「気づくって、声の事?」

 

 光姫からの問いに深絵は聞き返す。もしかすると光姫も声の主に気づいたのかもしれないと思った。だが光姫が指摘していたのはもう1つの問題の方だった。

 

『声?誰か分かったってこと?私が気づいたのはビーム兵器の事だったんだけど……』

 

「あ……そっちか。うん。私もおかしいって思ってた」

 

 光姫の指摘に相槌を打つように同意する。光姫もそれに真っ先に気づいていたようだ。もっと気づくべきことが他にあったが、とりあえず話に合わせる。話を聞いていた華穂はその話の内容に疑問符を浮かべて質問する。

 

『おかしい?どういうことです?ビーム兵器使うなんて今は珍しくもなんとも……』

 

「華穂ちゃん、私達のビーム兵器ってどういうの?」

 

 分かっていない華穂に質疑応答形式で答えを誘う。戸惑いつつも華穂は深絵の出したビーム兵器の特徴について答える。

 

『え?そりゃあ威力は高いけど、弾数がないから必殺の一撃にしか使えないでしたよね?』

 

「……じゃあ、あのMS同じ武器から何回攻撃している?」

 

『え……あっ!』

 

 ようやく華穂も深絵の指摘で気づく。そうしている間に更なる衝撃の光景が目の前で繰り広げられる。漆黒のMSは武器を腰の銃剣に変更する。するとその刀身に合わせてビームサーベルを展開した。身の丈以上の光剣を構えて突撃したガンダムは、次々と敵機を斬り裂いていく。

 

『な、なんですか、あのバカでかい……ビームソード?ですよ!?』

 

『技術力がまるで違う……私達の機体でも勝てるの……?』

 

「分からない。それより、もう……」

 

 あまりにも長大なビームソードの出現に驚く間に、漆黒のMSは次元覇院が展開したマキイン18機を制圧してしまっていた。銃剣のビームソードは未だ煌々と輝いており、まだ戦えることを伺わせる。

 あまりにも強大な敵の出現にMSオーダーズ所属機17機は硬直する。そんな中で深絵は味方への合流を開始する。ここからでは声が届かないからだ。

 

(元君……!)

 

 もしかするといるのかもしれない。消えたはずの彼が、MSに乗って再びこの世界に。だが声をかける前にその機体は空へと浮上する。警戒状態で対峙するMSオーダーズを一瞥するシュバルトゼロと言う名の機体。それを迎えるように黒いドラゴンが夜の空より舞い降りる。

 舞い降りた黒いドラゴンにまたがると、黒いガンダムはその場を去っていく。まだ行ってもらっては困ると、深絵は自機の手を伸ばす。

 

「待って!」

 

『深絵!?』

 

『深絵さんどうしたんですかっ?』

 

 その後を光姫と華穂が制止しようとする。だがそうするまでもなくシュバルトゼロと言ったガンダムは夜の闇へと消えて行った。

 残されたのは壊滅状態となった次元覇院のMSと、茫然と立ち尽くすMSオーダーズの者達。MSオーダーズの切り札とも呼べる2機のガンダムもその戦闘に介入することも叶わなかった。そして深絵の確かめたかったことも、確かめられなかった。

 静寂となった東響の街。通信で黎人が状況報告を要求した。

 

『どうした、光姫、深絵、華穂。どうなった?』

 

『こちらロート。次元覇院のMSは全員撃破。これから生存者確認に入るわ。けど、ごめん。乱入してきた黒いガンダムは捕まえられなかった』

 

『そうか……』

 

 光姫の落ち込んだテンションに周りのMSオーダーズの者達も同じく項垂れる。結局次元覇院を倒したのは、あの黒いMSだったのだ。圧倒的な性能にこうなるのも無理はない。

 それに光姫も気付いてフォローを入れる。

 

『単純に技術が違い過ぎたわ。後で映像を見てくれる?多分あなたからしてみればとんでもないの一言に尽きるだろうけど』

 

『そんなにか』

 

『そうですよ!もう私達の機体じゃ誰も立ち向かえそうにない位、別次元のMSでした!』

 

 華穂の誇張した表現も今は的を射ている。けれどもっと重要なことを深絵は気づいた。深絵は回線を通してそれを報告する。

 

「うん。確かにすごかった。……でも私はあのMSに乗っている人が、誰なのか分かったも知れない」

 

『何だって?』

 

『深絵さん分かったんです!?まさか次元覇院の連中?』

 

「ううん、それは違う。それよりも光姫ちゃんや、華穂ちゃんもよく知っている人の声を、私は聞いた」

 

『私や、華穂ちゃんが?』

 

 注目が集まる。だが確かにあの声は間違いない。その人物の名前を、2人の前で明かした。

 

 

 

 

「あれは、華穂ちゃんのお兄さん……元君の声だよ」

 

 

NEXT EPISODE

 




EPISODE1はここまでとなります。同日公開のEPISODE2も合わせて是非ご覧ください。

ネイ「……まさかプロローグの光姫さんや深絵さんがガンダムのパイロットになっていらっしゃるとは……」

グリーフィア「それに元君の妹ちゃんも登場ね。旧作のSSRでも義妹は登場していたけど、今回は本当の血のつながった妹なのねっ」

そうですね。いずれも5年前の事件、プロローグでのことが関係しています。華穂ちゃんがMSオーダーズに所属しているのもそれが理由なので、あの事件はこちらで相当傷跡を様々な人物に残しているという感じです。

ネイ「そうなんですね……けどかなりMSの性能差があるようですが……」

グリーフィア「ビーム兵器の使用に制限出ているっていうのは第1部じゃまったく見られなかったことね。これはかなり戦闘で重要になってきそうっ」

それと同時にシュバルトゼロガンダムの性能の高さが顕著に出ますがね(;´・ω・)それではそろそろEPISODE2へ続きますということで。


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EPISODE2 黒き悪魔は舞い降りた2

どうも、皆様。引き続きご覧の方は改めまして。次のビルドダイバーズリライズが気になり過ぎる藤和木 士です(`・ω・´)

レイ「アシスタントのレイだよー」

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです。あちらは前半の最終戦と言った感じで、予告で不穏さがありましたよね……」

本当だよ(゚Д゚;)カザミさんの涙の訳は何っ!?
さて、では引き続き残りのEPISODE2の公開です。

ジャンヌ「シュバルトゼロガンダムのパイロットが元さんだと深絵さんが気づいたところで終わりましたね……」

レイ「複雑だろうねぇ……何せ元君こっちじゃ死んだって言われていたみたいだし」

遺体が見つからなかったから試作グレネードで消えたことで処理されていますからね。けどそれ以上に生きていたということにどう感じているのか。誰が一番衝撃を受けたのか。そんなEPISODE2をどうぞ!


「……んあ」

 

 部屋に鳴る目覚ましの音で目が覚める。すっかり見慣れた寮の天井が目に入り、起床する。昨日の出来事はまるで夢の様に感じられる。まだ眠くなっていく頭を目覚めさせるべく、黒和華穂は洗面所へ向かった。

 

「……っと」

 

 顔を洗い、歯ブラシを口に入れて昨日の事を思い出す。いつも通りだと思っていた次元覇院のMS殲滅に出た華穂達MSオーダーズ主力チーム「SABER」は、とんでもない機体と遭遇した。

 その機体は全身が黒いガンダム。フレームを蒼く輝かせ自分達の知る次元粒子の赤とは違う蒼い粒子を纏うその姿は、幻想的でありながらあらゆるものを寄せ付けない強さを見せ付けて夜の闇に消えて行った。MSオーダーズも予定していた次元覇院のMS追跡からその機体の追跡に切り替えたが、まったく追えなかったという。

 

「…………凄く強いMS……でも……まさか」

 

 歯を磨き終え、着ていたパジャマと下着を洗濯籠に入れてバスルームでシャワーを浴びる。黒みがかった紺色の髪からしずくを滴らせて体の汗を落とす中、視線が落ちていく。目の前には鏡に映る自身の姿。しかし別に自分を見ているわけではない。彼女の意識は別にある。

 彼女の頭の中にあったのは、上司であり恩人でもある蒼梨深絵の言葉だった。そうして思い返した、漆黒のMSのパイロットの声。

 

『シュバルトゼロガンダム リペアツヴァイ ファーフニルツヴァイ、これよりこの戦闘に武力を以って介入する!』

 

 手を鏡に付ける。そこにいるはずのない人物、口では適当に相手をしていても血の繋がった最愛の肉親に手を伸ばしたかった。なぜ真っ先に気づけなかったのか。シャワーを止め、その人物の、兄の名を呼ぶ。

 

「元にぃ……どうして……生きてたなら、もっと早く……」

 

 水滴に交じって、涙がこぼれ落ちる。

 

 

 

 

 1時間後、華穂はMSオーダーズの制服を身に纏ってブリーフィングルームにいた。髪にお古のヘアピンを付けて、作戦会議もとい昨晩の戦闘において出現した黒いガンダムについて話し合っていた。

 先輩である次元光姫、蒼梨深絵、そして司令官である次元黎人も混ざっての協議。光姫達は昨日までに調べて分かったことを共有していく。

 

「昨日のあのガンダムの戦果は次元覇院のMS18機。そのいずれも武装、腕部、脚部といった攻撃しうる箇所のみを損害させただけに留まるわ」

 

「パイロットも全員生存。だけどうち半数以上が口の中に含んでいた毒薬で死亡。残っていた人達も全員精神病院に搬送だね。これだけの戦果を見るとあの機体のパイロットは狙ってやってたってことで間違いなさそうかな」

 

「君達の送ってくれた戦闘データは拝見した。確かに兵器としてのレベルがあまりにも違い過ぎる。連射性能の高いビームライフル、次元粒子を実体剣に纏わせる技術、多数対単機でも一切不利を感じさせない機動性……最後に現れたあの機械の竜も、何か秘密があるんだろう。それで深絵君が言っていたパイロットの事だが……死んだ人間が生き返るなど、あり得ない」

 

「っ!黎人さん何でそんな事!」

 

 まだ兄は死んだわけじゃないと声を荒らげる。あの時は気づかなかったが、音声記録を聴き返して、確かに自分も確信した。あれが兄の声だと。死んだと聞かされていた華穂にはそれがどれだけ希望を持っていたか。そんな華穂をなだめるようにして光姫が夫に結論を言うように伝える。

 

「……で、わざわざ華穂ちゃんが御守りの様に大事に記録していた映像データとの照合結果は?」

 

「変に言わないでくれ。確かに死んだ人間が生き返るのはあり得ないと言った。だが華穂君から借りた黒和元の音声データと、昨日のMSパイロットのものと比較したのがこれだ」

 

 渡されたデータ。そこにあったのは兄の声と黒いガンダムのパイロットの音声データが高い確率で一致したことを示すものだった。

 

「これって……!」

 

「90パーセント以上の一致……てことは、あれは元君なんだ!」

 

 深絵と喜びを分かち合う。黎人もデータの一致を認める。

 

「確かにデータは一致した。だがこれが黒和元本人かはまだ疑問が残る。何せ彼は5年前の暴走事故の、試作グレネード「シード」の爆発で命を……」

 

「でも実際のところ死体もないってことからの行方不明でしょ?あの後そこでたまたま次元崩壊が起きてたって話だし、死んだっていうのもそれを隠すための方便だったわけでしょ」

 

 あの場で起きていたことは華穂もMSオーダーズに参加した時に知らされていた。現状次元崩壊に呑みこまれた際に人がどうなるかも分かっていなかったことから、元の所在は不明のままだった。遺体のない棺桶を燃やして、虚しさを当時感じた。

 以来華穂はきっとどこかで兄が生きているのだと信じていた。兄が誕生日にくれた髪飾りに手を当てる。

 

「それで、私達はどうするんですか?」

 

「そうだな。MSを扱い、管理する組織のトップとして、MS所持法を有していない、組織に属していないMSを見逃すわけにはいかない。ましてそれが戦闘に関わったんだ。拘束する必要がある。その為の捜索チームを結成する。リーダーは深絵君、頼めるかな」

 

「私がね。了解だよ」

 

 黎人からの指示に深絵が頷く。拘束と聞き華穂の中で兄が酷い目に遭うことを想像してしまう。昔から兄に生意気な態度を取って、時にはいたずらをすることもあった華穂だが本気で傷つけようと思ったことはもちろんない。兄への好意からのものである。だから本当に他人に兄が傷つけられるのは嫌だった。

 しかしそんな気は毛頭ないことが黎人の口からも語られた。

 

「それと、拘束とは言ったがあくまでも生きた状態で確保することを忘れないでほしい。抵抗した場合はこちらも武力行使はやむを得ないが、周辺地域、機体とパイロット、そしてこちら側への被害を避けて欲しい。機体の技術、パイロットの情報、そして敵か味方かを判明させる。これらの事を君が指揮する部隊でやってくれ。頼めるかな?」

 

 技術者と司令官としての本音を盛り込みながらも、華穂の望む条件を提示した黎人。それに対し、深絵は快く承諾し、華穂へ手を伸ばす。

 

「分かりました。すぐにメンバーを編成して、漆黒のガンダム捜索を開始します。メンバー第1号は華穂ちゃん、いいかな?」

 

「はいっ!よろしくお願いしますっ!」

 

 辞令に返事よく応える。これで兄に会える。まだ兄の無事を確認していなくとも、華穂の気持ちは昂った。

 やる気を見せる華穂の顔に安堵した様子の深絵は、続けて光姫と黎人に確認を取る。

 

「あ、それと確保の段階の時に光姫ちゃん借りてもいいですか?」

 

「私を?確保の段階でって……最初からじゃないの?」

 

「ほう……その理由は?」

 

 光姫を借りたいとわざわざ言うのは少し妙な気もした。だがそこで深絵の的確な読みが展開される。

 

「これほどの重要な任務を光姫ちゃんに最初から任せないってことは、多分光姫ちゃんは普段と同じスクランブルに出すってことだよね。そしてそれは私達の調査の時間を稼ぐため……。でも確保するときは最悪戦闘になるかもしれない。ならその時は光姫ちゃんも、カラーシリーズの現状稼働機を全機出して、本気でぶつかり合う必要があるときも、考えて」

 

「本気でって……戦うってことですか!?そんな……」

 

 深絵の予想だにしていない発言に華穂は戸惑う。兄と戦うなんてありえない。そう思っていたというのに。

 しかし深絵の考えは他にあった。

 

「確かに戦うための戦力だよ。でもそうじゃなくなっても、彼を護送するための戦力がいる。確保した彼を護るのも私達の仕事。それに対して全力で当たる。ダメかな?」

 

「あ…………」

 

 兄を護るための戦力。護衛も今回の重要な任務だ。後の事を深絵はちゃんと考えてくれているのだ。明かした理由に黎人は頷き要求の可否を告げる。

 

「なるほどね。大体その指摘は正解だ。まぁそれ以上にメインメンバーから戦力を引き出したくないというのが本音だけどね。だが君の意見ももっともだ。いいだろう。その段階になったら報告後光姫も連れてMSオーダーズ最大戦力で事にあたってくれ。光姫もいいかな?」

 

「了解。司令に従うわ」

 

「ありがとうございます、じゃ、そう言うことで」

 

「深絵さん……黎人さん……!」

 

 華穂は思い出す。昔家を出て途方に暮れた時も、彼女達によって救われた。感謝の使用がない。そのおかげで、兄とようやく再会できるのだから。

こうして漆黒のガンダム捜索隊が結成された。

 

 

 

 

 ガンダム捜索隊の結成から1週間。その間にもシュバルトゼロガンダムは東響の区内あちこちに出現していた。MSオーダーズと次元覇院の戦いに現れては攻撃する側に無差別に攻撃した。だがそれでも圧倒的に攻撃されていたのは次元覇院の方である。

 次元覇院が好戦的過ぎる、というのもあったが、それ以外にもシュバルトゼロガンダムはMSオーダーズにあまり積極的な攻撃をしていないというのがあった。まるでMSオーダーズとは事を交えたくないかのように攻撃は威嚇程度の被害で収まっていた。

 何が目的なのか、と思うだろう攻撃。それはガンダムの装依者であるハジメにしか分からない。そしてハジメには考えがあったことをジャンヌは知っていた。そんな2人は今、都内のホテルの1室にいた。

 

 

 

 

「ふぅ、何とか資金は稼げそうですね……不本意ですが」

 

「そんなことないだろ?時間がない俺達にとっては堅実な策だとは思うけどね。まぁ、多少は法に触れるかもだけど、そもそも今の俺達、MSを持っている時点で犯罪のようですから」

 

「もぅ……それを知った時には、後の祭りでしたね」

 

 部屋の外の自動販売機から買った紅茶と緑茶にそれぞれ口を付けて、部屋に備え付けのパソコンを見て話す2人。パソコンにはここ最近のニュースと5年の間のMS史、ニュース、そしてなぜか都内と周辺の競馬場を示したマップが開かれていた。

 ニュースを調べるのは分かるだろうが、なぜ競馬場なのか。それは元が取った資金調達の話になる。簡単に言うとギャンブルで稼いだという話だ。しかも裏技とも呼べる方法で。呆れ気味にハジメから聞いたそのカラクリを口にする。

 

「DNL能力によって世界を構成する要素のうち、「運」や「当たり」を構成する要素に関するものを知覚してそれを実際に選ぶ……だなんて。DNL能力者でしか出来ないですって」

 

「しかも敵意察知をマスターして世界構成物資の動き・変化を読むところまでレベルを上げてようやくだ。正直言って真面目に短期バイトで稼ぐって手段もあったけど、ジャンヌを1人に出来なかったし出現時間で居場所を特定されても困るからな。けど三枝での活動資金は稼げた。もうしないけど」

 

「あら、どうしてです?いやもちろん、そんなことしてほしくないですけど」

 

 問題があるとはいえちゃんと目的資金まで達成したというのに浮かない顔だ。疲れていると言えばいいだろうか。ギャンブルは想像以上に神経をすり減らすという話もある。したことの後ろめたさからくる疲れか、もしかすると能力の使い過ぎなどのせいかもしれない。だがハジメの辛さは斜め上の物であることを知る。

 

「単純に集中力を使うっていうのと、あと構成要素から物欲……人の欲望の気持ちみたいなのが溢れてくるんだ。ギャンブルを提供する側の。負のオーラたっぷりで来るからそれ防ぐのにメンタルすり減ってきてた」

 

 メンタルがすり減るという単語にジャンヌは首をかしげる。ハジメの言葉が分かりづらく感じたのだ。だがこれでも名誉詩巫女の1人。ハジメと同じ敵意察知のDNL能力を会得したジャンヌは自身の中で答えに近いのではと思った感覚を伝える。

 

「メンタル……精神攻撃を受けていた、という感じでしょうか?」

 

 メンタルとすり減るといった単語から連想した感覚だ。当たっているか不安になるが、そんな心配をよそに元はそれが当たっていることを告げた。

 

「そう。そんな感じ。気を抜くと欲望に心が侵食されていくんだ。ギャンブル依存症になっていくみたいに」

 

「あ、そうなんですか。なんか嫌ですね、ハジメがそうなっていってしまうのは……」

 

 世界だと言われ嬉しさと共に悲しさを感じる。MSで戦いもするのにそんな心理的負担によるハンデを背負っていたのを気づけなかった。誤れば今ハジメが無事でいられたかどうかも分からない。知らない世界でハジメが変貌してしまったら怖くて仕方がない。

ハジメだけに背負わせてはいけない。姉の夫であるテュートの言葉を思い出したジャンヌは、自分が出来うる限りのサポートをしたいとハジメに申し出る。失言と共に。

 

「何か私が出来ることはありませんか?MSのサポートだけじゃなくて、何かあなたのメンタルを回復させられる何か……。出来ることなら私、何でもしますから!」

 

「ゲフン!……いや、あの……なんでもって、あの」

 

「え?……あっ!いや、あのね!何でもはするって言ったけど、その心の準備とかねっ!ま、まだ昼だし、それにあの、えっとその……はうぅ……」

 

 ハジメの反応を聞いて、ジャンヌも気付いて挙動不審に言葉の訂正をした。まだ日も落ちていないのにそんなことを言って、もしハジメが本気になったらどうしよう。今まで甘えることも多かったとはいえ、いざ誘うとなると胸が苦しくなる。

 落ち着いて感情を整理できずに妄想するジャンヌに対し、その姿を見てやれやれといった態度でジャンヌへ助け舟を出した。

 

「ジャンヌの力になりたいって気持ちは分かったよ。でも前も言ったから。全部終わってから、ちゃんとするって」

 

「あう……ごめんなさい……少し気が動転してしまって」

 

「いいさ。なら、せっかくだし少しだけお願いしようかな」

 

 そのおかげでジャンヌも冷静さを取り戻した。続くお願いという単語にジャンヌは少しドキッとしてしまうが、そのお願いというのは実に互いの意見を反映したものだった。

 ハジメの出した要求に従い、まずジャンヌはベッドに座る。そしてハジメが座ったジャンヌの太ももに頭を乗せて寝転がる姿勢になった。所謂膝枕である。ジャンヌの膝枕に頭を預けたハジメはその感想を感嘆のため息と共に述べる。

 

「はぁ……初めてやってもらうけど、意外といい物なんだな、膝枕って」

 

「なんですかその感想。でも、そうですね。あなたの顔をこうして眺めていられるっていうのは」

 

 苦笑しながらもハジメの顔を覗き込む姿勢で膝枕をする。膝枕をされているハジメの顔はリラックスしており、見ていて安心する。彼の頭を撫でる。

 

「ゆっくりと、休んでくださいね」

 

「あぁ。今日の夜から三枝に移動するからな。親とか、妹が心配だ」

 

 今日までに資金をためたのはハジメの家族と接触を取るためだ。ハジメの家族は次元覇院の勢力下、というよりそのホームとも呼べる東日本・西日本の境目近くの地域「三枝県」にある。既に彼らはこれまでの間に起こったことを知った。ハジメの事件以降、この国「日本」が変わってしまったこと、そしてMSが実用配備されて争いの道具となっていることも。

 ハジメは確かめたかったのだ。家族の生存を。そしてあわよくば東日本の、次元覇院と対立する組織にして、今の日本の良心たるMSオーダーズに預けたい。ハジメのこの世界に来てから次元覇院の事を知った時の言葉が思い浮かぶ。

 

『一先ず、俺達の当面の敵は次元覇院だ。神なんていう不確かなものに心酔して、人の考えを否定していくやつに碌なやつはいない。今までも、そしてこれからも、俺は妄想の神を許さない。人を傷つけるような神を、信じる価値なんてないからな』

 

 戦争の終わった後マキナ・ドランディアにて起きた事件で、ハジメが語った過去。幼少期にカルト集団に妹と共に受けた恐怖。それが今、最悪の形でこの国に蔓延していた。ハジメがそれに対して怒り以上の気持ちを持っていることをジャンヌも分かっていた。だからレイアを探す準備を立てるためにも、まずハジメの家族の安否を確かめる方向に行動の指針を決めたのだ。

 

「レイアの捜索の為に来たのにこっちの事を優先してごめん」

 

 自身の事を優先してしまうことをハジメが謝罪する。しかしジャンヌも無事ハジメの家族と再会できることを願っていた。だから気にしないように伝える

 

「いいですよ。私だって昔とは違います。あなたが家族の事を心配する気持ちも分かりますから。不安なままのあなたを私も見たくないですから……。そのために、今は休んでください」

 

「……ありがとう。じゃあ少し……」

 

 そうして2人は夜を待った。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。

レイ「あー、やっぱり妹が一番お兄ちゃんの死を重く受け止めていたよね……」

ジャンヌ「そんなに気にしていないように見えて、華穂さんが辛かったんですね」

私自身は一人っ子だからあれだけど、やっぱり兄弟とか姉妹って仲が悪くても喧嘩するほど仲がいいだと思うんですよね。まー周囲の話ではそうでもなかったりするけど(´・ω・`)(どっちなんだ)

レイ「まー十人十色だよ、そこは。それより元君の能力ヤバくない?」

ジャンヌ「そうですよね……まさか当たりを算出するだなんて……。言っちゃアレですが、ギャンブルに持ってこいですよね」

けどDNLでの使用時にはそれ相応に敵意感知とは別ベクトルでの精神的負荷も掛かるというデメリットも付けて、多用出来ないようになっていますがね(;´・ω・)敵意はシンプルに攻撃するという意志、あるいは動きを感知していますが、今回の場合は確立に関わるあらゆる人の思惟を受け止めるわけですから。

レイ「ニュータイプとかもそういうことできるの?」

ジオリジンだとララァがやってましたね(´Д`)というかそこから得て来た。

ジャンヌ「そ、そうですか……」

というわけで今回はここまで!

レイ「LEVEL2もよろしくねー!」


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EPISODE3 再会の兄妹1

どうも、皆様。本日もまた3度目くらいのビルダイリライズ配信視聴前の投稿準備中になります、藤和木 士です。( ゚Д゚)今回は見逃せないぞっ。

ネイ「アシスタントのネイです。ビルドダイバーズリライズは山場ですかねこれは」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよぉ~。そうねぇ。2クールならそのはずよねぇ」

もうね、予告の時点で嫌な感じしかしないね(゚Д゚;)ビルドダイバーズの前に広がる光景とはって感じでね!
さてこちらはEPISODE3と4の公開です。再会の兄妹だぜ(^ω^)

グリーフィア「あらあら、これは元君とその妹ちゃんかしらねぇ~」

ネイ「姉さん、まだ分かってないよ……」

さぁ、感動的な再会となるのか?それでは本編へ!


 

 

 その夜、元達は行動を開始した。荷物を揃え、ホテルのロビーでチェックアウトを行う。無事チェックアウトが済むと、2人で揃ってホテルを出た。人気はまだ8時の為かまばらだと思っていたが、やけに少ないように感じた。

 

「さて、では装依出来そうなところまで行きますか?」

 

「ですね。空いているうちに良さげなところで装依して、三枝まで移動です」

 

 装依する場所としてはどこかのビルの屋上が良さげだ。本当はホテルの屋上に行くというのもあったが、チェックアウトしたのにホテルで行動するというのもおかしいだろうし、それにここのホテルは屋上を開放していなかったため無理だった。一個前までのホテルは屋上が使えたのだが、こればかりはサーチ不足だった。

 だがそうでなくても問題はない。最悪姿が見られなければいいのだ。幸いこの地区は港というおあつらえ向きな場所もある。気を付けていればまだ安心だ。

 2人で場所を探すために移動する。が、それを止める声が響いた。

 

「そこの2人」

 

「ん?……なんです?」

 

「おやおや……そんなに大人数で、どうしました?」

 

 2人に声を掛けたのはスーツ姿の男性。が、その人物の後ろには同じスーツ姿の男性が数人構えている。ただ事ではない光景であり、普通ならまずありえない。人気が少なくなければ人だかりがたちまちできていただろう。

 なんとなく彼らが話しかけてきた理由には見当が付く。しかし元はまず一般人を装って用件を確認する。彼らがどちら側の人間かを把握する為である。するとその男性は手帳のようなものを見せて所属を名乗った。

 

「MSオーダーズの者です。あなた達2人にMS所持法違反の容疑があります」

 

「MSオーダーズ……」

 

 MSオーダーズの人間だった。まだ次元覇院の人間が嘘を付いて接近してきたというのも少なくない。だが手帳は確かにMSオーダーズの物であると確認できた。元は頷いて話を理解する。

 

「ほう。MSオーダーズとは……MS所持法違反、ということは私達が許可なくMSを持っているということで間違いなく?」

 

「そうだ。話を聞きたいから本部まで来ていただきたい。抵抗はしてほしくないかな。こちらとしても無駄に戦闘を起こしたくないんだ」

 

「そうですか……。戦闘をしたくない、か。流石は次元覇院のような戦火をまき散らす者を許さない方々ですね。けど、生憎ながらこちらは戦火を起こしてでも今捕まるわけにはいかないんだ。あんた達にも、もちろん次元覇院にも!」

 

「グシュゥゥゥン!」

 

 拒絶の意志を告げると共に空よりGワイバーンが着地して登場する。元達の上方で新たに装備されたステルスシステムにより警戒していたGワイバーンの登場にスーツの男性達の注意が逸れる。

 

「な、このドラゴンいつの間に!」

 

「行くぞ、ジャンヌ」

 

「えぇ!」

 

 ジャンヌに呼びかけ、ゼロ・スターターを起動させる。装填シークエンスをGワイバーンに保護してもらい、装依ボタンを押した。

 

『Standby OK?』

 

「ま、待て!」

 

「待たないさ。装依!」

 

 制止も聞くことなく、元とジャンヌの体は1機の機動兵器「シュバルトゼロガンダム[RepairⅡ FafnirⅡ]へと集約された。黒い機体に蒼いフレームが輝きを放っていた。

 MSオーダーズの捜査官達もMSを纏って応戦しようとするが、その前に機体を飛び上がらせ、足止めする。

 

『Ready set GO!DNF、「ディメンションスプラッシュ」』

 

『拡散弾へ切り替え、どうぞ!』

 

「行けッ!」

 

 ビームライフル・ゼロの先端にエネルギーボールが形成され、トリガーを引くと共に炸裂して捜査官らに襲い掛かった。いずれも小規模な損傷であり、傷つけるつもりはない。目くらましとして放って、その場を離脱する算段だ。

 飛行体勢を取り、その場から離脱。するはずだった。ところが後方上からの攻撃の意志を察知する。

 

「っ!」

 

『熱源、来ますってハジメ!?』

 

 ジャンヌも報告するが、それよりも早く元が反応した。機体を回転する様にステップを踏むと、その近傍をビームの高速弾が駆け抜けた。

 通常のビーム弾よりも速い。おそらくスナイパーライフルからの狙撃だろう。ハジメの予想は当たった。ジャンヌが攻撃方向から予測したカメラの映像から敵を特定した。

 

『ハジメ、あの機体です!』

 

 ジャンヌが示した機体。先程まで元達が泊まっていたホテルの屋上に狙撃手はいた。蒼い機体装甲と背面には飛行用と思われるブースター一体型のウイングバックパックを抱えている。そしてこちらに向けている頭部。額部分は展開しガンカメラのようなものを見せていたが、その顔立ちは元達の機体と似たブレードアンテナにデュアルアイというガンダムそのものであった。更に周辺にはMSオーダーズの量産型MSソルジアが1機、そして紅い砲撃型と思われるガンダムが護衛の様に付いていた。

 紅と蒼のガンダムに、元は見覚えがあった。最初にこの世界で戦った時にいた機体だ。その機体達を空中で見つめ返す。その頃にはMSオーダーズの捜査官達もMSソルジアに装依してこちらに向かいつつあった。

 直感で把握する。あの機体達を黙らせないと安全に三枝まで向かうことは出来ない。先程の狙撃がこちらのウイングを正確に狙っていたことを理解していた元は、完全に戦闘体勢へと思考を切り替えていた。

 

「行くぞ、ジャンヌ」

 

『はいっ!』

 

 ビームサーベルを抜き放ち、機体を3機のMS達へと加速させた。捜査官達のソルジアが弾幕を形成するが、所詮は実弾。ビームさえ避けるシュバルトゼロガンダムと、元のDNLには当たらない。

 距離を詰めてくるシュバルトゼロガンダムへ向かって、赤いガンダムは肩の円盤状ユニットからホーミングレーザーを放ってきた。ガンダムは引きつけて回避するが、回避した先に狙いを澄ました青の狙撃型のスナイプが襲い掛かる。

 

「っ!この狙撃精度……」

 

『今のかなり……また来ます!』

 

 二度目の狙撃に機体を傾けて突撃姿勢で回避した。スピードを高めて一気に距離を詰める。狙撃機との対決は敵を如何に早く見つけるかと、自身のレンジから先手を打てるかに掛かっている。ビームライフル・ゼロで狙い撃つことも可能だったが、元は接近戦を選んだ。これは敵機にダメージを与えた後、一気に急速離脱してそのまま三枝への進路を取るためのプランだ。

 直援に付くソルジアもマシンガンとバズーカの散弾という回避が困難な兵装で弾幕を作り上げる。適切な使い方だ。素早いシュバルトゼロの機動性を殺しに来ている。考えうる限り最善の手だろう。だがシュバルトゼロと成長した元の実力はこんなものではない。

 

「っ!!」

 

 散弾と連弾の雨をノーマル状態で潜り抜けていく。織り交ぜられるホーミングレーザーもギリギリで回避した。そこに再び放たれる狙い澄ました弾丸。それに対して機体を蒼い輝きに纏わせて弾丸の周囲を飛ぶように回避した。ガンダムの最大稼働状態「エラクスシステム」。最小の動きで回避した機体は、跳ね上がったスピードで一気にミドルレンジへと詰めた。

 接近されたことで狙撃に集中できるわけではなくなった青いガンダム。ライフルの持つ手を下げ、シールドを前面に出す。いかに攻撃を防ぐとはいえ、今現在の技術でエラクス状態のガンダムの攻撃を止めるのは難しい。このまま斬り裂くと思われた。だが割って入った直援のソルジアがビームサーベルで果敢にも近接戦を挑んできた。

 

「狙撃型の支援か。面白い!」

 

 青い機体はそれを止めようとしていたが、目の前に立ちはだかり、邪魔してきた以上容赦はしない。ビームサーベルを一気に振りかざす。振りかざした光剣が目の前のソルジアが構えた光剣とクロスする。

 ぶつかり合う光刃。だが出力はこちらの方が上だ。一気に押し込んでいく。負けじとソルジアの機体のビームサーベルと馬力が上がる。瞬間サーベルを通して感情が流れ込んでくる。困惑、そして必死さが伝わる。その感覚はこれまでもあった事のある現象だ。だがそれとは別に元の心に胸騒ぎが生まれた。

 

(なんだ……不思議と力が……こんなところで、止まっているわけにはいかないってのに……!)

 

 自然と弱まる力。生まれた迷いを断ち切るべく、こちらも出力を上げる。エラクスの出力なら造作もない。徐々に光刃を敵の光刃に侵食させていった。

 

「断ち切る!」

 

 気合を入れ直す発破を自らに掛けて、一気に斬り裂く。はずだった。元の耳に思いもよらない声が聞こえた。

 

『元にぃ!』

 

「!?」

 

 唐突な呼びかけ。ジャンヌからではない。接触回線からだ。それにジャンヌは元に「にぃ」などと付けない。だが確実に自身の名前を呼ばれた。その間にビームサーベルが目の前のビームサーベルを斬り裂く。MSオーダーズのMS、ソルジアの胸部装甲を斬り裂く。DNジェネレーターもとい次元粒子発生器までは達していない。だが同時に先程の声で悲鳴が響く。

 

『っあぅ!?』

 

「っ……この声……まさか」

 

 声の主を予測しようとする。だがそれを許さない一撃が前方の蒼いガンダムと後方の紅いガンダムにより阻まれた。

 

『元、前!後ろも!』

 

「っ!!」

 

 狙撃とホーミングレーザーがソルジアに対しての支援攻撃の如く飛んでくる。スナイパーライフルの弾撃をギリギリ回避して、ノールックで行った宙返りでホーミングレーザーも避けるシュバルトゼロ。ファンネルを展開し、後方の紅いガンダムを取り囲む。前方のガンダムにはビームマシンキャノンを向けた。

 だがすぐには撃たない。追いかけてきていた捜査官達のソルジアが発砲しようとするが、誰かに命令されたのか銃を向けたまま空中で静止した。互いに動かない。動くことが最善ではなかった。

 

「今の声……っ」

 

 その静止状態の中で機体のシステムに脳波による命令を出す。内容は機体通信回線の開放。接触回線オンリーの状態から回線を受けられるようにする。更にジャンヌへ口出し無用の指示を出した。

 

「ジャンヌ、しばらく聞いているだけにしてくれ」

 

『え、あ、はい……』

 

 ジャンヌから了解を得たところで元は周波数をオープンにする。間違いでなければ、先程の声、前方にいるソルジアのパイロットは……。緊張を胸に、声を発した。

 

「……お前なのか、華穂」

 

 口にした人名。自身が三枝に行こうとしていた理由に挙げていた、妹の名前だ。2年近く聞いていない声で、間違っていた可能性もあった。だがあの声で、自分の事をあの呼び方で呼ぶのは妹しかいない。

 問いかけに続く数秒の沈黙。その後聞こえた回線接続の音の後、再び声が響いた。

 

『やっぱり、元にぃ、なんだ……』

 

 声とともに機体コンソール端に通信相手の顔がウインドウで表示される。最後に会った時よりも大人びた、女性らしくなった妹の顔があった。兄妹は今、想定していたものとは違った形でようやく再会したのだった。

 

 

 

 

 ようやく見ることの出来た兄の顔。懐かしさがあるものの、一際変わった部分もある代わり映えした兄の姿に戸惑いを口にする。

 

「……元にぃ、どうしたの、その髪……」

 

『……色々あったんだよ。それより、何でお前がMSオーダーズに』

 

「私も……色々あったの。それより、深絵さんと光姫さんから銃口下ろして。2人とも迂闊に動けないよ」

 

 互いに今の現状の理由を出し渋る。とはいえ今の状況では話し合いも出来ないと兄に先輩2人への銃口を下ろすよう要求する。出した名前に兄も反応する。

 

『深絵……光姫?まさか……』

 

 ビームライフルと浮遊する遠隔操作端末をウイングに戻すと、2人のガンダムパイロットもようやく元へと話しかけた。

 

『はぁ……緊張したぁ。やっぱり元君なんだ。そうだよ、蒼梨深絵。元君の友人』

 

『まったくよ。私は次元光姫。あなたには鈴川光姫の方が慣れているかしら。ようやく見つけたと思ったらこれはないわよ』

 

『あぁ、覚えている。というか、蒼梨さんも性格変わったな』

 

 2人の紹介に返答する兄。兄も5年ぶりとなる深絵の変わり様に驚きを隠せていない。深絵は遠慮がちに否定する。

 

『えーそんな事、ないかな』

 

「それはないですよ。深絵さんにぃがいなくなってから無理に明るくなろうとしてましたし」

 

『か、華穂ちゃん~!!』

 

 回線で無邪気な言い合いをする華穂と深絵。そんな会話の傍らで、兄は光姫へ真面目にここにいる理由について問う。

 

『それより光姫。お前達が俺達を追っていたのは……』

 

『理由は単純にあなたが使っているガンダムの確保ね。もちろんあなたが本物かどうかとかを知るためでもあったけど』

 

 華穂達は死んだと思っていた元の捜索のために黒いMSを追っていた。その事は紛れもない事実だ。華穂達の存在を知り、兄も納得した様子を見せる。

 

『あぁ、やっぱり……っと、お疲れ様Gワイバーン』

 

『グゥゥゥ……』

 

 漆黒のガンダムと漆黒の機械のドラゴン。兄のゲームで見た「竜騎士」とでもいうべき姿だ。そうこうしている内に捜査官達からもう1つの聞くべきこと、本来の目的について聞くことを深絵に申して彼女も準じた。

 

『蒼梨隊長、そろそろ本題に……』

 

『あ、うん。そうだね。元君はMS所持法とかは知ってる?』

 

 MS所持法の事について知っているかと元に対して質問する。元はすぐに質問の内容に対して肯定した。

 

『あぁ。といっても最初の戦闘の時は知らなかったけどな。その確保のためか?』

 

『そうだね。MSオーダーズはMSによる犯罪を許さない。MS所持法のライセンスを持っていない人のMS操縦も取り締まっているから。でも私達隊長クラスや司令官の次元黎人は違う考えで動いてる。その黒いガンダムの性能は私達の機体よりも数段上のものだって分かる。だからそれを扱う人に対して、お願いしたい。私達に力を貸してほしい。もし貸してくれるのならMS所持法違反も何とかするし、最悪MS所持法のライセンスを特例で取れるかもしれない。……どうかな?』

 

 深絵の提案は総司令の黎人とも議論して決定した内容だ。犯罪者扱いしたくない華穂達が必死に色々なところに掛け合ってその申請が許可できるようにした。多少の上積みも問題ないが、限度はある。果たして兄がそこまで強欲かどうか……。

 元はしばらくの間考える。やがて元は口を開いて質問した。

 

『それは1人だけに対してのか?』

 

『1人だけって……もしかしてさっき一緒にガンダムに装依した娘の事?』

 

 頷く兄。深絵の言うように、先程兄は1人の少女を巻き込んで装依した。その少女にも先程提示したMS所持法違反回避などが適用されるのかと聞いているのだろう。

 念のためドラゴンのMSに人がいた時の事を考えて余裕は作ってきてはいる。兄に適用されることを伝える。

 

「うん。深絵さん達の尽力で、もう1人分は違反回避できるようにはしてあるよ。それならいい?」

 

『それもそうだが……俺としては更に2つ、少女……ジャンヌについてお願いがあるんだ』

 

『お願いって?』

 

 光姫が聞く。利けるかどうかは分からないが、聞かないことには話にならない。元は真剣な表情で言う。

 

『彼女を実験台にしない。それは絶対に約束してもらいたい。お前達の組織、それから日本政府、如何なる研究機関にもだ』

 

 それは少しだけおかしな質問の様に思えた。たった1人の少女を解剖するような秘密を抱えているのだろうか。それとも、彼女にはそれほどまでに何かが違うのか。漠然としていて分からないが、そんな非人道的なことをMSオーダーズがするわけがない。犯罪者でも法の裁きを重視するのだ。深絵がそんなことをさせないと断言する。

 

『そんなことしないよ。させない。どんな子かは分からないけど、例えとんでもない事情を抱えた子でも私達は護ってみせる』

 

 深絵の言葉に華穂や光姫も頷く。見渡して確認した元の決断は曖昧なものであった。同時に、迫る何かを感じ取るような発言を聞かせた。

 

『……そうか。とりあえずそっちの方で詳しい話をするよ。それでもう1つだけど……話し合いをするにも、まず下からだな』

 

「下から……?」

 

 兄の言葉を理解しきる前に、答えが訪れた。地上の方から銃撃音が響く。光姫達は軒並みビルの上へと退避するが、上空で待機していた捜査官達のMSが銃撃に晒されて損傷、落下していった。

 襲撃者だ。一体誰が。その答えはすぐに分かった。下方からスピーカー音量最大で、それらは名乗った。

 

『我らは次元覇院!この世界の創造主に選ばれた使徒なり!!』

 

 次元覇院の襲撃が開始された。

 

 

NEXT EPISODE

 




EPISODE3はここまでとなります。続くEPISODE4も是非ご覧ください。

ネイ「中々危ない再会シーンでしたね……紙一重と言いますか」

グリーフィア「これは元君DNL能力の意味ないんじゃないの~?」

まぁ、戦闘中の一瞬にそこまで判別できなかったってことで(;・∀・)とはいえ本当に危なっかしいなぁ元君(´・ω・`)身内殺ししかけたよこの主人公。

グリーフィア「なおそれを設定したのは作者君の模様」

止めないか(゚Д゚;)

ネイ「続くEPISODE4で、乱入してきた次元覇院と戦闘ですね……共闘と行くのでしょうか?」

さぁ、そうなってくれるのか?(´Д`)EPISODE4へ続きます。


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EPISODE4 再会の兄妹2

どうも皆様。引き続きご覧の肩は改めまして。早くリライズ最新話見たい( ゚Д゚)ってなっている藤和木 士です。今約10分前だよ(゚Д゚;)今回はライブ配信で見るかもだよ!

レイ「アシスタントのレイだよー。でもコメントしないんでしょ?」

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです。まぁ、作者の事ですしね」

(´・ω・`)まーそうだけどさぁ……さて、引き続きEPISODE4になります。

レイ「次元覇院を前に、異世界のガンダムとの共闘が始まるって感じだね!」

ジャンヌ「でもどうなんでしょう?MS所持法とか言ってますし……」

さぁ、兄妹の再会を邪魔した敵に、MSオーダーズの裁きはどうなるのか?それでは本編です。


 

 

『さぁ、我らが神の為に、この土地を次元の粉と弾丸で清めるのだ!撃てぇ!!』

 

 発破と共に次元覇院のパイロット達は銃撃を開始した。あらかじめ人払いを行っていたのが幸いして、最初の犠牲者は捜査官達のMSだけとなった。だが銃撃音で馬鹿な野次馬が集まり、次元覇院は彼らにも銃を向けた。

 

『次元覇院の神を称えよ!称えぬものはこの聖弾で地に伏せ!!』

 

 響く銃撃音。野次馬の悲鳴が響く。光姫達が何度も見てきた光景だ。自分達の思想を押し付け、従わないなら殺す。他人を自分達の都合のいい人形としか思っていない。一体どれだけの構成員を相手にしてきたのだろうか。

 地上で行われる大虐殺に、指示を仰がれる。

 

『あ、蒼梨隊長、次元隊長!支援を』

 

『りょ、了解!光姫ちゃん!』

 

「えぇ。前線に出て支援するわ。華穂」

 

『はい!』

 

 華穂からの返事を聞いてから下の戦闘へと介入しようとした。が、もう1人戦闘参加に名乗りを上げた。

 

『俺も行く』

 

『に、にぃ……』

 

 元が戦闘参加を申し出る。だが光姫はその申し出を断ろうとする。

 

「駄目よ。あなたは一応罪人。それを戦闘参加させるなんて」

 

『それを気にしてる場合かよ。あんなテロリスト相手に黙っていられるか』

 

『あ、あの……2人とも?』

 

 対立する2人の意見。深絵が両者を制しようとするが、構わず持論を展開する。

 

「あのねぇ、この国は法治国家よ?ゲリラみたいにそう簡単に救援するって言って武器を振り回せる国じゃないの!」

 

『馬鹿が。それ言うなら法治国家じゃなく日本人が他の国の人より臆病って話なだけだろ。状況に応じて支援を受けるっていう臨機応変さをこの国の人は身に着けた方がいい。向こうの世界で心底そう思ったぞ』

 

「ここは向こうじゃないっ!」

 

『じゃあ向こうでMS手に入れた俺はその法の対象外だな』

 

 無茶苦茶な理論を展開する元に対して徐々に苛立ちが募っていく。確かに彼の言うことは一理ある。あの力を貸してくれるのならこれほど心強いことはない。しかし元々の目的から外れたことはしたくない。

 例え古い体制だと言われても、今までそれで通してきたものを変えることは難しいことを光姫は知っている。こんな状況で、しかも向こうでなどと意味の分からない発言をしている。十分理解する時間もないなら、こちらの判断に従って欲しい。

 

「あぁ、もう!頼むから今はこっちに従いなさいよ!」

 

『はぁ……分かったよ。指示には従う』

 

 光姫の本音が漏れる。だがしかし従わないような発言をしていたものの、元も了解する素振りを見せた。これで戦闘に集中できると思った矢先、元は策を弄してきた。

 

『だけどお前達の上司……上の指示も仰いでほしいな、それは』

 

「っ!?今この状況で!?」

 

 上への指示確認要求に目を見開く。現場での判断が優先される現状、そんな悠長なことをしている暇はない。ところが元はそれを踏まえたうえで発言をしていた。

 

『時間が惜しいと思うだろうな。でも急な戦闘はどっちにしろ報告しなきゃいけないだろ。現在の任務がどうなっているのかとかの報告も含めて。それをしないっていうのか?』

 

「うぐ……」

 

『一理あるね。私達本来なら元君の確保の為に来ていたわけだから、目的変わっちゃってるし。私支援射撃やらなきゃだから、光姫ちゃんお願いできる?』

 

 元の発言に同意した深絵が報告を要請して戦闘に加わる。スナイパーライフルからの狙撃が着実に次元覇院の動きを制限していく。深絵の支援を受けて捜査官達も態勢を立て直す。

 こうなると深絵は完全に狙撃に集中してしまっている。呆れ気味になっているそこに、狙い澄ましたかのように本部からの通信が入った。回線を開くと狙ったと言わんばかりに総司令であり夫の黎人が映った。

 

『光姫、君達の作戦行動範囲の付近で次元覇院が現れたようだ』

 

「あー知ってる。今絶賛戦闘中ってところ」

 

『そうだったか。作戦の方は』

 

 今すぐに戦闘に突入したい気持ちを抑えながらこれまでの流れを説明する。シュバルトゼロガンダムのパイロットこと黒和元を無事確保したこと、元が出した条件、そして先程の戦闘介入要求について伝えた。それらを聞いて黎人は難しい表情をする。

 

『ふぅむ……そればかりはありがたいとはいえ、許可できないな』

 

「そうよね。まったく元にも困ったもの……」

 

 返答に肯定する。やはりそんなことは認められるわけがない。ここは自分達に任せて、元には音なくしてもらうのが一番だ。

 と考えて早速戦闘参加を告げようとする光姫。だが黎人はしばしの間待つように告げた。

 

『ん?光姫、ちょっと待ってくれ』

 

「何?どうしたの?」

 

 黎人が通信回線から席を外す。回線からわずかに聞こえてくる話し声。誰かと話しているのだろうか。そしてものの1分で戻ってきた黎人から思わぬ発言撤回が告げられた。

 

『すまない光姫。状況が変わった。彼にも戦闘参加してもらえないか』

 

「はぁ!?何で……」

 

 思わず声を大にして反論する。黎人も光姫の気持ちを知って、そうなった経緯について簡単に説明する。

 

『どうも政府でそのガンダム1機に対して、そんな特例を発令させていいものかという声が多いらしい』

 

「そんな……じゃあどうするのよ!?」

 

『だからもう一度、見せてやるのさ。そのガンダムがどれだけ今後の戦いに大きな影響をもたらすのかを。その力をMSオーダーズが手にするために』

 

 黎人から告げられた今後の事。あの力を手に出来ればきっと情勢はMSオーダーズに傾くだろう。だが元をそんなプロパガンダに使っていいのだろうか。華穂の方を見て躊躇いを口にする。

 

「そうだけど……でも道具にしちゃだめよ?」

 

『分かってる。お前はもちろん彼は華穂君や深絵君の知人だ。そんなことをすれば君達を敵に回すことになる。だが戦闘から少し時間が立ち過ぎている。すぐに制圧出来ないと、こちらの評価も下がって下に見られる。お偉いさんの手出しが容易に出来ないようにするために、そして他の次元覇院の動きを抑えるためにも、ここはそのガンダムの力を改めて見せてもらう。もっとも、今来ている僕の恩師がそれを見たいと申されているのもあるけれど』

 

 黎人の発言を聞いて先程のわずかな間を理解する。あれは「あの人」と話しをしていたのだ。政府の一部がという話ももしかするとその人経由かもしれない。「あの人」は政府とのコネも強い。そういった話を伝えに来てくれた可能性がある。

 不服ではあるが結果的にその方がいいという判断に至った光姫は、元に改めて協力要請を依頼する。

 

「分かった。……話が変わったわ。あのMS、全員ぶっ飛ばして頂戴!」

 

『随分とさっきと言ってることが変わったな。けどそう言ったからには存分に行かせてもらう!』

 

 ようやく出た許可に待ってましたと言わんばかりにビルから飛んで地上へと向かっていく元。飛び出していった兄に対し、華穂が戦って大丈夫なのかと聞いてくる。

 

『え!?よかったんですか!?』

 

「上の事情とか色々とあるのよ。今はその方がいいって感じ。悪いけど華穂、あなたはここから地上の戦闘をカメラで基地の方に中継して」

 

『わ、分かりました!お気を付けて』

 

 投げやり気味に説明すると同時に華穂に戦闘映像の中継を指示する。そしてそのまま黒いガンダムの後を追う形で地上へと飛び降りた。

 この戦闘で撃墜されてしまわないだろうか。一抹の不安を持つ光姫。だがそんなものは全くの無用の長物であることを、目の前で見せつけられることになる。

 

 

 

 

「ジャンヌ、準備はいいか?」

 

『もう……あの方達に言いたいこと沢山あったのに、元がしゃべらせないから……!』

 

 ようやく呼ばれたジャンヌは少々ご立腹の様子だった。自分の役に立てなかったことや、光姫達の言い振る舞いについて、裏で愚痴を吐いていたのだ。もっとも彼女がそう言うのは見えていたので、話がややこしくならないように彼女を会話の場から外していた。同時に彼女の意を汲んで大分柔らかい言い方で、先程の発言に盛り込んでいた。

 とはいえ元も下で行われている虐殺に抑えが効かなかったのも事実。ようやく駆けつけられる彼の気持ちは、まるで鎖から解き放たれた番犬の如く昂っていた。

 

「悪い。それよりジャンヌ、いつも通り行けるな?」

 

『もちろん。この1週間でこちらの地形や環境状況などは読み込みました。都会だろうと問題なしです!』

 

 機体のレーダーを確認する。以前の時は次元覇院側のMS照合の結果がバグってしまっていて困惑したが、今はマキインの名前で登録されている。なぜあの時、「マキナート」の名前が表示されたのか。ともかく今はパーツの類似による誤認証は今回起きていない。おそらく大丈夫だろう。

 

「今回は味方もいる。そっちにも注意を配ってくれ……。よし」

 

 地表へと着地するシュバルトゼロガンダム。前方に見えるMSオーダーズのMSとその先の次元覇院のMS達。次元覇院はこちらに気づくと、猛りを上げる。

 

『来たな悪魔の使いガンダム!我らをだましたツケ、払ってもらう!』

 

「やれやれ……まだあの時の事を誤解している。いや、自分達を正当化するためなら、平然と嘘を付く連中だったな。なら容赦なしだ。嘘をばら撒いてるツケを逆に払ってもらう!」

 

 ビームライフル・ゼロを構え、突撃姿勢を作る。後方に気づいたMSオーダーズの機体が狼狽える様子を見せる。オープン回線で周囲に呼びかける。

 

「シュバルトゼロガンダム[Repair-Ⅱ FafnirⅡ]、黒和元。これよりMSオーダーズの支援に入る!誤射だけはやめてくれよッ!」

 

 一気に加速し、展開するMSオーダーズの前へと出る。途中地面に倒れていたMSオーダーズの機体の武器と思われる回転式鋸内蔵の剣を握り、突貫する。

 

『武装ロック、解除しました!』

 

 ジャンヌから武器のロック機構解除の報告を受ける。武装データを見通し、剣にエネルギーを送り込む。注がれた高純度DNのエネルギーを受けて剣の鋸が高速回転、鋸の部分に光の刃を生みだした。

 

『撃てっ!奴を殺せっ!』

 

 前方から銃弾が飛ぶ。それをDNLの力で危なげなく回避しつつ、剣を振るう。高速回転する光の刃はたちまち敵の腕を両断する。

 

『ぐあっ!?』

 

「……いい剣だ。もう一撃!!」

 

 剣の切れ味に確かな力を感じ取る。踏み込んでの振り下ろしが敵機の左肩を斬り裂く。攻撃手段を失ったマキインが残った右肩のシールドを向けて引いていく。続いて元は銃弾を掻い潜り更に奥へと向かった。その先にはカップルらしき民間人が次元覇院に絡まれていた。

 

『さぁ、神を賛美するのです!』

 

「誰が賛美するか!」

 

「そーよ、あんたらみたいな胡散臭い連中!」

 

『何を!愚か者に鉄槌を……うわっ!?』

 

 勧誘を拒否したカップルに銃口を向けるマキイン。その機体の腕部を横から斬り裂いて蹴り飛ばす。その悪質さに苦言を告げる。

 

「下種だよ、お前。はぁ!」

 

『貴様……ぐっ!?これでは……がぁ!!』

 

 即座に頭部を切り飛ばす。トドメに剣を胸部に突き立ててその機能を停止させるとカップル、そして周囲に残る人間に対し離れるよう通告する。

 

「とっとと逃げてくれ。写真撮ろうなんて思うなよ?」

 

「は、はい!」

 

「ヤバいってヤバいー!」

 

 カップルは一目散に逃げる。残っていた民間人も触発されて退避していく。それをさせまいとマキイン数機が銃を向けたが、ビームの一発を敵のライフルに直撃させて注目集めさせる。

 

「相手はこっちだろうが!」

 

 スラスターを噴かせ、距離を詰めて乱戦に入る。敵は飛び立つことなく地表でアサルトライフルの実弾を放つだけで、飛んで追いかける機体は少数だ。そんな機体を制圧するなど容易かった。周囲を動き回り三次元の戦いを魅せつける。

 

『くそっ!当たらない!ガフッ!?』

 

『どんな動きしてやがる!ぁあ!!』

 

『このっ、このぉ!!被弾した!?あぁ!!』

 

 連続して撃墜を重ねていく。更に別方向からマキイン数機を撃ち抜く多数のビームが到来する。その発振元には光姫の紅いガンダムがいた。光姫は次元覇院のMSに投降を呼びかける。

 

『無駄よ。どれほど暴れようが、私達MSオーダーズがあなた達を制圧する!武装解除して降伏しなさい!』

 

『誰が!!ぐぁっ!?』

 

 光姫の言葉を聞かず、ビームライフルを撃とうとするマキインが斜め上方からのビームで撃ち貫かれる。ビルの上から狙撃する深絵の蒼いガンダムの狙撃が一撃で敵のジェネレーターを貫き爆散させる。超長距離射撃の正確さも合わさり、敵の動揺が動きに出た。

 投降か、それとも継戦か。だが彼らが選んだのは第3の選択肢。その場から一斉に逃走し出す。

 

『くそっ!退却だ!逃げるぞ!!』

 

『覚えていろ、MSオーダーズ!必ずすぐに報いを受けさせてやる!』

 

『違うだろ!神が彼らに報いを与えるんだ!我らは祈るのだ!』

 

 ぐちゃぐちゃの統制状態で逃走していく次元覇院。逃げるという意志だけが共通してい敗走していく彼らの後ろ姿を光姫達は見つめている。

 

「追撃しなくていいのか?」

 

 追撃の必要性について問う。だが光姫は首を横に振ってそれを否定する。

 

『あくまで今の私達の任務はあなたの保護よ。それに強すぎる力を下手に行使しないことが私達には求められるから』

 

「そうか。それでこの後どうする」

 

 追撃しない判断を受け入れた元は今後について訊く。周囲には負傷、あるいは死体となった者達が少数だがいた。叫び声も木魂している。光姫達も承知しており、後の対応が行われることを伝えてくる。

 

『もう本部からの要請で警察と救急が来るわ。でも私達に出来るのはそれくらい……まだ任務が残っているから』

 

「……そうか。いつもこうなのか」

 

『いつもって、こうして被害対応しているのがってこと?』

 

 光姫からの言葉に被害者の方を見たまま否定する。

 

「それもだけど、この国の人達は一度怖い目を見ない限り興味本位で飛び込んでいくのかってことだ」

 

『!それは……』

 

 光姫を含めMSオーダーズ隊員は言葉に詰まる。ビルから降りてこちらに向かってきていた深絵や華穂も、発言の意味することを理解して暗く沈む。

 

『元君……』

 

『ごめん、にぃ……』

 

「別に華穂が謝ることはない。ただ俺が夢を見ていただけだ。結局MSが生まれてもこの世界の人はまだ自分達の無知に気づいていないんだなってこの1週間で痛感してたよ」

 

 諦め。自分が事故に巻き込まれてもその対策よりもMSに関する技術すべての封印を求める声の方が多かった。結局この世界、いやこの国の人は前に進むことに怯え、現状を維持したがるのだと、感じ取った。

 ため息をつく元。ジャンヌも何も言わない。長い沈黙を破ったのは光姫だ。

 

『なら、私達に協力してよ。この世界の人達にあなたが知っているMSの怖さを、そして頼もしさを教えなさいよ!』

 

 挑発にも似た請願だった。相変わらずの対応だ。昔から何か指摘され続けると、カッとなってしまう性遇だ。柚羽が死んで自分が落ち込んでいた時、深絵と一緒によく家に来て出て来いと言われたものだ。

 しかし悪いところはきちんと認める性格なのを元も知っていた。だから敢えてその挑発に乗った。

 

「あぁ、たっぷりと教えてやるよ。俺が学んできた平和と争い、その両方をな。代わりにお前達にも協力してもらいたいことがいくつかあるんだけどな」

 

 互いを見やる2人。その後元はMSの状態で彼らの本部へと共に向かうのであった。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。

ジャンヌ「紆余曲折ありましたが、MSオーダーズへ行くことになりそうですね」

レイ「だねー。元君の目的は妹ちゃんの無事確かめるためだもん!」

(;・∀・)それだとただのシスコンになりますね……家族も含めてなのですが、とりあえず今は妹から話を聞く方向にシフトしたということにしておいてください。

レイ「でもでも、どうして次元覇院はあのタイミングで現れたんだろー?」

ジャンヌ「何も言っていませんが、もしかするとガンダムを探していた、とか?」

まーそれは追々明らかになっていくかも?というところで今回はここまでです。次回はクリスマス回と普通の話の同時投稿になる予定です(*´ω`)

レイ「おークリスマス!」

ジャンヌ「季節に合わせた番外編は初めてですね。それでは次回もお楽しみに」


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黒の館DN 神騒乱勃発編 第1回 前編

どうも、皆様。クリスマス番外編と同時公開は予告とは違って黒の館DNと同日投稿に鳴りました藤和木 士です。間違えてしまい大変申し訳ありませんm(__)m

第1回前編は主人公黒和元とジャンヌ・ファーフニル、そしてシュバルトゼロガンダムの新たな仕様とLEVEL2の基本となる情報の公開となります。

それでは第1回も早速開館です。


 

 

士「黒の館DN神騒乱勃発編の第1回始まるぞー(*´ω`)作者の藤和木 士です(`・ω・´)」

 

レイ「アシスタントのレイだよー」

 

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです。物語も第2部へと突入ですね」

 

士「その通り!( ゚Д゚)というわけで今回の紹介なんだけど、まずは主人公とヒロインの元とジャンヌのLEVEL2設定と新しいシュバルトゼロガンダムの武装設定について紹介していくぞ!」

 

レイ「あ、そこからなんだ」

 

ジャンヌ「まとめて人物紹介するのかと思いましたね……」

 

士「それが第1回目からなんと設定解説3部構成というね(´・ω・`)」

 

レイ「そんなに紹介すること多いんだ……」

 

士「ということでまずは主人公達の紹介からしちゃってー_(:3 )∠」_」

 

ジャンヌ「もうちょっとシャキッとしてください。それではまずは元さんとジャンヌ・Fさん2人の設定からどうぞ」

 

 

黒和 元(L2)

性別 男

身長 171cm

髪色 銀

出身地 地球 日本 三枝県 四河市

年齢 22歳(経験肉体年齢)

誕生日 6月15日

血液型 O

好きなもの ボーリング、カードゲーム、パズル、特訓、アップルパイ、特撮(特にマックスマンとマスクライダー)、ジャンヌ

嫌いなもの 納豆、甲殻類、ハヴィナス、争いをもたらす者

愛称 ハッジー、和氏、黒き竜騎士

 

・本作主人公である男性。異世界マキナ・ドランディアからもとの世界である地球へと戻ってきた。マキナ・ドランディアのドラグディア軍での階級は大尉。

 機竜大戦後いくつかの戦場での経験を通してMSありなしで速やかな制圧が可能なほどの戦闘能力を得ている。DNL能力も更に成長を遂げており、ユグドラシルフレームから形成する特殊フィールド「ユグドラルフィールド」を自由に行使できるようになっている他、あらゆる物体の動きを感知、実質的に神羅万象この世のすべての動きに反応するレーダーと化している。本編中ではこの能力を生かしたギャンブルの荒稼ぎを行ったが、負担が大きいことを愚痴ってやらないことを決意したという。

 ジャンヌと付き合っているものの、かなり奥手であり結婚や事に及ぶのはレイアを救い出してジャンヌの母に報告してからと決めている。またここ最近はガンダムの放出する高純度DNの影響で2人とも肉体の老化がかなり遅くなっている。

 人物モデルは以前と変わらず機動戦士ガンダムヴァルプルギスの主人公「マシロ・オークス」。顔つきが若干変わり、以前よりも柔らかな表情を見せる。ただし戦闘においては冷静沈着にMSを撃破していく。

 

ジャンヌ・ファーフニル(L2)

性別 女

竜人族

身長 160cm

髪色 銀

出身地 マキナ・ドランディア ドラグディア フリュウ州 セント・ニーベリュング市

年齢 18歳

誕生日 8月21日

血液型 O

好きなもの レイア、元、紅茶、パイ系のお菓子、歌

嫌いなもの 熱い物、甲殻類系、平和を踏みにじる者

愛称 銀の詩巫女、裁きの詩巫女、銀月の竜姫

 

・本作のヒロイン。異世界マキナ・ドランディアの一国「ドラグディア」の名家の次女の少女。元と2人合わせて「ドラグディアの両雄」と呼ばれる。ドラグディア軍での階級は少尉。

 機竜大戦後は本来の無邪気で優しさのある性格を取り戻しており、名実共にお嬢様と呼んでおかしくない人物となった。象徴と交信するDNL能力も健在で、元と同じ敵意の感知と象徴以外の親しい人物との交信も可能となった。高等部最後の年に行われた詩竜双極祭においても抜群の成績を収め最優秀者としてその名を刻む。加えて軍においての訓練で不慣れなところはあるものの実戦においての戦闘力も有している。自身の持つ拳銃は亡き父の遺品を使用する。

 LEVEL1EPILOUGEから元と交際しており、本人曰く「いつの間にか好いていた」とのこと。主従、そしてパートナーとしての間柄でバッチリなコンビネーションを見せる。人前や任務などでは清楚かつ冷静に振る舞うが、オフの時などは本来の無邪気さで元にべったり甘えることも。転移後は孤独さからか更に甘えるようになったという。なお2人とも高純度DNの影響で肉体の老化が遅くなっているが、ジャンヌは胸部の発育について非常に不安になっている(とはいえDに届かない程度でそれほど問題なさそうな上に、元からもそれでも十分と言われている)。

 地球へ転移後は当初は都内のホテルを転々としていたが、資金などの面もあり元と共にMSオーダーズの預かりとなる。

 人物モデルは引き続きバトルスピリッツの詩姫スピリット「ジャンヌ・ドラニエス」。ただし性格は以前から好印象のあるものになったため行動原理など大きく違いを見せる。とはいえレイアから元に好意の対象が変わったことで、元の行動によっては以前と同じ病みの反応を見せる。

 

 

ジャンヌ「以上が第2部における元さん達の設定になります」

 

レイ「いやー、あの1年半の間に何があったのかとか気になっちゃうねー」

 

士「あ、今のところの予定では番外編でそこらへんにも少しずつ触れていく予定ではありますよ(´・ω・`)まずクリスマスの番外編が入る予定ですね」

 

レイ「おおーっ!クリスマス!」

 

ジャンヌ「もうすぐクリスマスですものね。それに合わせる形なんでしょう」

 

士「構想自体はもう考え付いているからクリスマスをお待ちくださいませ。あ、ちなみにLEVEL1に組み込むかLEVEL2の最新話近くに入れるかは考え中です(´・ω・`)」

 

ジャンヌ「さて、次はあの機体ですね」

 

レイ「元君のシュバルトゼロガンダム、その新たな基本スタイル![FafnirⅡ]!だね。それじゃあ設定はこちらだよっ!」

 

 

 

シュバルトゼロガンダム[Repair-Ⅱ FafnirⅡ]

 

機体解説

 大戦終結後、修復がなされたシュバルトゼロガンダム[Repair-Ⅱ]から兵装を整理して新たな基本体として構成した装備形態。

 特に目新しい兵装はないものの、兵装は[NOVA]で導入されたイグナイト仕様の機構が導入。加えてイグナイター時にスムーズな換装が行えるようにイグナイターの武装の大元となる兵装がほとんどで構成されている。Gワイバーンもその形態に合わせて追加兵装を廃止、装甲を本来の要求値に合うように変更して負担が掛からないようにした。

 そのほかシステム類も調整がなされ、機体の反応性やエンゲージシステムの負担が2割ほど軽くなっている。次元世界への移動機能もGワイバーンと合わせて行えるようになっており、単独での活動範囲は極めて広い。控えめに言って大戦時のシュバルトゼロガンダム[Repair-Ⅱ LBCA『NOVA』]よりも洗練された最強のシュバルトゼロガンダムと言える。だがそれでも元の進化し続ける反応性について来れていない面が存在し、帰還後に大幅な機体改修が検討、あるいは新たな素体を用いた新専用機の開発が元英雄スタートから進言されている。

 なお次元世界「地球」へと帰還時には以前シュバルトゼロガンダムTYPE-0を内包していた修復用アーマー「ビレフト」をベースとして開発した武装格納コンテナ「ゼロ・ベース」をスターター内にデータとして格納。シュバルトゼロガンダム本体もその内部に格納されている状態である。

 機体のコンセプトとしては以前と変わらずHI-νガンダムヴレイブにストライクフリーダム、デスティニーガンダムの掛け合わせ。そこに今回は機動戦士ガンダム00のダブルオーライザーの戦闘スタイルも盛り込んだ形となった。

 

【機能】

・DNフェイズカーボン

 機体の装甲材であるDN浸透による変色剛性装甲。機体カラーはこれまで通りの黒と灰。

 

・ツインジェネレーターシステム

 機体に高純度DNをもたらす、DN生成量乗化システム。大戦後システム量産化のためにオーバーホールが並行して行われ、出力が1割ほど向上。ブラックボックスのエラクスシステムは解析できなかったものの、製作のための1つの足掛かりとなった。

 

・DNLコントロールユニット

 DNL能力のサポートを行うシステム。元のDNL能力成長によりほぼ飾りとなった。それでもスタートの意向により搭載され続ける。

 

・ユグドラシルフレーム

 機体の全フレームを構成する結晶体フレーム。高純度DNとDNL能力に呼応してフレームが蒼白く輝く。

 これまでのシュバルトゼロガンダムではイグナイター時以外は発動しきっていなかったが、元の成長によりイグナイターではない時も蒼白く輝き、フレームから特殊力場フィールド「ユグドラルフィールド」を作り出せる。

 大戦後の機体修復時には以前と同じくクリムゾン・ドラゴニアスが最初に死んだ時の残りと、2度目の死亡後に残骸から取り出された生体ユニットである骨から形成した物を使用している。

 

・ハードポイントシステム

 機体の武装固定用ハードポイントを備えたシステム。搭載位置は以前と同じ肩部シールド裏とウイング外側。

 

・ELACSシステム

 機体のジェネレーター稼働率を強制的に引き上げ、反暴走状態で機体性能を急上昇させるシステム。大戦後は「蒼炎の力」とも称されるようになった。

 元は何度も使用するうちにコツを掴み、反暴走状態の機体を制御できるようになった。ドラグディアもマキナスの「マキシマイズ」を参考に本システムの解析を行ったが、完全に解析することは叶わなかった。それでもこれまでの観測情報や運用データからエラクスシステムの模倣を作り出そうとしている。

 

・エンゲージシステム

 ガンダムに備えられた専用サブパイロット管制システム。機体の出力制御などを行うのはこれまで通りだったが、システムを更にジャンヌに最適化するようにしたことで負担が軽くなっている。

 

・DNウォール

 DNを防御壁として集中散布、形成する防御兵装。イグナイターのような機体全体からの放出は未だこの状態では出来ていない。

 

・DNプロテクション

 DNを膜の様に形成して周囲の攻撃から内側を護る機能。フェザー・フィンファンネルから形成する。

 マキナスMSのビームシールドに互換のある兵装であるが、本機は引き続きこちらを採用する。採用理由がこちらの方は攻撃性が少ないことや粒子圧縮に使いやすいこと、そして視認性が悪いために敵から発見されにくい為だ。

 

・イグナイトモード

 Gワイバーンと合わせてシュバルトゼロガンダム・イグナイトへと移行する。

 

・エボリュート・アップ

 機体に機械の進化を起こすシステム。クリムゾン・ファフニールからの授かりもので、イグナイターへ機体を変容させる。

 ファフニールがいなくともGワイバーンさえあれば変容が可能で、更に別の形態になる可能性も秘めている。

 

・次元世界移動機構「Dトラベルコントローラー」

 Gワイバーンと合わせて使用可能となる次元世界移動システム。2機の力で高純度DNが充満する次元世界を自由に移動できる。

 これによりシュバルトゼロガンダムはあらゆる世界に介入することが出来るが、単機で行うことが出来ない理由は不明。Gワイバーンとの運用が必須の点から、本機が無暗に侵略することを避けた開発者の意図が垣間見える。

 

・マルチロックオンシステム

 『NOVA』から引き続き搭載される多数同時攻撃管制システム。

 

 

【武装】

・ビームライフル・ゼロ

 機体腰背部に装備される主力ビーム兵装の1つ。イグナイト用のグリップ調整がなされたモデル。

 

・ブレードガン・ニューC

 機体のサイドアーマーに装備された銃剣。基本的に2丁装備する。イグナイト用に調整が施されたモデル。

 

・ホルダーバインダー

 サイドアーマーを構成するブレードガンプラットフォーム。特に変更はない。

 

・ビームサーベル

 背部ウイングと腕部に強化型と標準型を備える、主兵装の1つ。仕様変更はない。

 

・Dフィストイレイザー・ネクスト

 機体腕部を構成するビームデバイス。手甲ユニットのギミックも健在である。

 

・ボールアーム・ハードポイント

 機体の肩部に備えられた、シールドを保持するためのボールアーム。大戦時と変わらない仕様で装備される。

 

・ニューオーダーシールドC

 『NOVA』で採用されていたニューオーダーシールドの改修型。レイ・アクセラレーターを備えたモデル。大戦時と変わらない仕様である。

 

・ビームマシンキャノン

 シールド裏に装備されるビーム砲。砲門の両側にレイ・アクセラレーターが装着されている。

 

・レイ・アクセラレーター

 ビームマシンキャノンの両側を挟み込むように装着される粒子加速装置。これまでと変わらずビームマシンキャノンの出力増加などに使われる。

 

・ビームスパイカー

 機体膝部に搭載されるビームサーベルユニット。

 

・ウエポンウイングユニット「WINGν-Hi-A」

 機体のバックパックを構成する。ファンネル・ウエポンプラットフォーム。仕様は『NOVA』との折衷である。

 

・フェザー・フィンファンネルA

 機体のウイングで「羽」をイメージした遠隔操作端末。シュバルトゼロの主兵装の1つとして機能する。

 

・マキナ・ブレイカーⅡA

 バックパック下部に伸びる実体剣兼姿勢制御サブウイングスラスター。イグナイト用の持ち手改造がなされた『NOVA』仕様である。

 

 

 

レイ「以上がシュバルトゼロガンダム[Repair-Ⅱ FafnirⅡ]だよ!……名前長いね」

 

士「(´・ω・`)それはツッコんではいけない。多分今後はFafnirⅡって表記になるかもだけど」

 

ジャンヌ「けど紹介にしては短いですね」

 

士「そりゃあ新しい機体とはいえ、武装はこれまでに紹介したRepair-Ⅱ系統の武装を組み合わせただけだからね。詳細は以前の物をチェックしてほしいです(´Д`)」

 

レイ「ふーん。で、前編はここまでかな?」

 

士「そうだね。前編はここまでです」

 

ジャンヌ「次は中編、人物紹介の残りとこの世界のMSの量産型の紹介になりますね。では中編もよろしくお願いします」

 




前編はここまでとなります。なお途中のクリスマス回については同日更新が果たされました。ちゃんと前から考えていたんですよ(´Д`)
設定の変更点としては元とジャンヌは年齢や好き嫌い、そして詳細。シュバルトゼロガンダムはLBCA『NOVA』で設定されたイグナイト用改良を全武装に施した状態+シールドの換装などを除けばほぼ前身のFafnirから順当に発展した仕様となります。

ここからどのような変化を遂げるのか。それに注目してLEVEL2も楽しんで頂けると幸いです。

では中編へ続きます。


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黒の館DN 神騒乱勃発編 第1回 中編

どうも皆様。引き続きご覧の方は改めまして。作者の藤和木 士です。

中編は人物紹介と量産型MS達の設定となります。ソルジアとマキイン。この2機が本世界でのMSの基になっていきます。

それでは中編をどうぞ。


 

士「というわけで中編も始めて参りましょう(´Д`)作者の藤和木 士です」

 

ネイ「アシスタントのネイです」

 

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよぉ。さて、いきなり中編が出来ちゃったわねぇ、作者君」

 

士「(´・ω・`)止めてくれ、そんなこと言うのは……前はそんな事なかったんだけどなぁ……」

 

ネイ「元さん達の紹介なくせば収まりそう、ですが紹介しない訳にもいきませんからね……」

 

士「そうなんだよぉ……。番外編で補完はするつもりだけど、やっぱ最初は紹介しないと;つД`)」

 

グリーフィア「ま、第2部の黒の館DNもいつも通り解説していきましょ♪」

 

士「(´・ω・`)そうっすね。じゃあネイさんよろしく」

 

ネイ「ではまず人物紹介から参ります。次元光姫さん、その夫の黎人さん、そして蒼梨深絵さんに元さんの妹華穂さんの紹介です」

 

 

 

次元 光姫

性別 女

身長 167cm

髪色 茶髪

出身地 地球 日本 三枝県 四河市

年齢 24

誕生日 12月19日

血液型 O

好きなもの モンブラン、雪、登山、黎人、光巴

嫌いなもの もやし、ネズミ、次元覇院

愛称 みつ姫、紅き砲手、破壊の女王

 

・MSオーダーズの主要メンバーの1人でチーム「SABER」の隊長を務める女性。MSオーダーズの司令である黎人の妻でもある。

 元とは小・中学校での友人で、元の幼馴染である間宮 柚羽とは親友の間柄だった。彼女もまた柚羽の死にショックを受けた者だが、既にその傷からは再起している。また元のことも気にかけていたようだが、高校以降は別の学校となったため記憶が薄れている。

 黎人とは趣味の登山で知り合い、そのまま交際。四河グランドホテルでの成人式後の四河中央中学校卒業生のパーティー会場にて結婚を発表した。加えて黎人の手伝いとしてその場でのモバイルスーツの世界最速公開の司会を行った。

 パーティー会場にて、以前から自身へのストーカーを行っていた沢下判の行動により暴走したガン・ファイターの停止に尽力したものの、偶然搭載されていたグレネード「シード」の暴発で元を死亡(遺体が見つからなかったため死亡扱い)させてしまう。以後は黎人と共にその対応に追われる。やがてモバイルスーツ改めモビルスーツの開発が軌道に乗るとそれを犯罪に使った事件が発生する様になり、その罪滅ぼしとしてMSによる犯罪取り締まりと被災地等の復興部隊としてのMS管理組織「MSオーダーズ」の設立に関わり、彼女もその初期メンバーとして試作MS「カラーシリーズ」こと「ロートケーニギン(赤き女王)ガンダム」のパイロットとなる。

 事件後黎人との間に長女の光巴を儲けており、1人の母親として戦線に立ち続ける。MSオーダーズの活動安定後は周囲の人物からは引退を勧められているものの、自身の罪滅ぼしはまだ終わっていないとして前線を退くつもりはないことを語っている。

 元の世界帰還後は謎の黒いモビルスーツを追ううちに元と再会。生きていたことに衝撃を受けるも、彼側の事情を聴きMSオーダーズに協力してもらうことを条件に元達を組織に加入させた。

 人物モデルは新次元ゲイムネプテューヌVⅡの天皇星うずめ。髪を下ろし、大人びたイメージとなっている。なおこのイメージモデルは旧作SSRという名のGの「光木鈴」と同じモデル元となっている。つまりリメイクキャラである。

 

 

次元 黎人

性別 男

身長 174cm

髪色 黒と白のメッシュ

出身地 地球 日本 神名川県 横海市

年齢 28歳

誕生日 3月21日

血液型 AB

好きなもの 研究、猫、登山、SF小説、鈴、光巴

嫌いなもの 病的に熱心な人物、魔法的ファンタジー小説、次元覇院

愛称 プロフェッサー010、オーダーズマスター

 

・次世代型作業スーツ「モバイルスーツ」を開発、運用を提唱した科学者にして、自らもMS警備・制圧・救援部隊であるMSオーダーズの総司令官を務める男性。光姫を妻とする1児の父でもある。

 光姫とは趣味の登山にて彼女がガイドのバイトを務めていた時に一目ぼれした。かつて島北地方で起こった大震災にて弟を失っており、その時の救助隊の光景から被災地支援のための次世代作業スーツとしてモバイルスーツの開発に着工。その後動力源の問題を解決する為に恩師であるツィーラン・パック博士の開発した次元粒子運用機関「次元粒子発生器」ことDNジェネレーターを搭載。無事完成へとこぎつけ妻の成人式パーティーにてそれを公開する。しかし前々から妻をストーカーしていた沢下判の仕掛けでモバイルスーツ第1号ガン・ファイターが暴走。何とか収めることに成功するもその騒ぎで判は逃走、更に妻の友人であった元の死亡やその他参加者にも重軽傷を負わせたことでモバイルスーツ開発の危機に陥ってしまう。だが共同研究者であるツィーラン博士の尽力もありモバイルスーツはモビルスーツと名前を変えて研究を続行、MSの生産にこぎつける。

 そしてMSがテロの武器になることを防ぐために暴走の件の尻拭いということでMSオーダーズを設立。自らその司令官としてMS犯罪に対して警鐘を鳴らす立場となった。なお自身はMSに装依することはなく、代わりに武装の開発などメカニック系の仕事で戦う技術屋である。

 元の世界帰還後、深絵達に命令して漆黒のMSの捜索を行わせる。

 人物モデルは特撮「仮面ライダーエグゼイド」の自称神こと檀黎斗。本当に初期の黎斗をベースとしており、新や神のような異様なテンション状態はない。

 

 

蒼梨 深絵

性別 女

身長 151cm

髪色 黒

出身地 地球 日本 三枝県 四河市

年齢 24

誕生日 10月29日

血液型 O

好きなもの スケッチ、動物園通い、アイスクリーム

嫌いなもの 騒音、人前で話すこと、射的

愛称 なっしー、蒼き狙撃手、蒼い死神

 

・MSオーダーズにて鈴と共に主力制圧部隊「SABER」の隊長を務める呑気な性格の女性。

 元の中学校での友人であり、間宮柚羽とも深く関わりがある。当時美術部で絵を描いていた際に上級生からからかいを受けていたところを2人に助けられ、以来昼食を一緒に食べたり、絵の評価を受けたりしていた。元に想いを寄せていたが、当時の元は柚羽に想いを寄せていたこともあって身を退いていた。柚羽の死亡後もあくまで友人として元を立ち直らせようとしていた。

 件の事件では親から勧められたパーティードレスに恥じらいながらも、元との久々の再会に喜びを感じていた。しかしモバイルスーツ暴走時にこけて歩けなくなってしまったところに元が駆け寄り、何とか自分は補助により逃げられたが代わりに元が死んでしまったことに悲嘆に暮れる。その後柚羽を通して友人であった光姫からの誘いでMSオーダーズに就職、その後の適正でカラーシリーズの1機で狙撃戦仕様のブラウジーベンガンダムへと搭乗、装依することになった。また性格もこのころから明るさのあるものに変わっている。これは元の分まで笑いたいという彼女なりの贖罪である。

 元帰還直後の戦闘で、謎のMSの搭乗者の声が死んだはずの元であることを最初に気づく。彼女を中心に漆黒のMS追跡部隊が組織され、捜索の末に元を発見。逃走した元を狙撃で止めて邂逅する。直後に起こった戦闘でも共同戦線を展開し、元を自身の所属するMSオーダーズに引き入れた。

 人物モデルは恋愛シュミレーションゲーム「ストロベリーノーツ」の青兎みかも。ただし旧作の福内絵里奈もイメージモデルとしているため、リメイクキャラとなる。

 

 

黒和 華穂

性別 女

身長 159cm

髪色 黒に近い紺色

出身地 地球 日本 三枝県 四河市

年齢 19

誕生日 1月24日

血液型 A型

好きなもの 兄をいじること、メロンパン、ウインドウショッピング

嫌いなもの 細かい作業、シイタケ、虫、宗教

愛称 かほちん、ヴァルキリー、悪魔の一番槍

 

・MSオーダーズに所属する、エースパイロットの1人。主力のSABERに配属されている。

 これまで地の文で語られていた、元の妹であり兄妹仲はほどほどと言った感じ。彼女自身は兄の事を煙たがっている、あるいは生意気な素振りを見せるが、実際の所兄の事は頼れる存在と照れ隠ししている。

 成人式当日の朝に兄に成人したことをいつも通りの愚痴と共に祝いの言葉を贈る。その後暴走事故に兄が巻き込まれ、死亡したという知らせに失意の底に落ちる。以来学校でも以前のような明るさを見せることなく過ごしていたが、両親が母方の親戚の信奉する宗教に取り込まれていき、自身もその宗教(次元覇院と繋がっている)繁栄の為に勝手に嫁がされそうになったことで家を出奔する。行き先の当てなどがない中、たまたま帰省していた深絵の誘いでMSオーダーズに仮参加。その後はMSオーダーズでバイトをこなしながらその補助を受けて東響都の学校に転校する。

 バイトの過程でMS適性検査にて適正値を確認し、兄を殺されたことや両親を助けるために大元である次元覇院の殲滅に名乗りを上げる。カラーシリーズに搭乗こそしないが、それでも量産型で既に多くの戦歴を上げていることから味方からはヴァルキリー、敵からは悪魔の一番槍と称される。

 元の帰還後、深絵と共に兄の足取りを追い、遂に兄と再会する。が、元からは当初妹を戦争に巻き込んだと深絵達を非難され、それを否定して兄を怒っている。兄の変貌やジャンヌの事に関しても信じられないとしつつも以前のトラウマを払拭したことに安心している。

 人物外見モデルはカードゲーム「Z/X」の上柚木八千代。モデル元は姉の立場だが、こちらでは反対に妹となっている。髪色は近いが、こちらの方がより黒に見える。

 

 

ネイ「人物紹介は以上です。前作のキャラクターはあまり分かりませんが、それでもきっと作者さんは活躍させたいという気持ちがあったからこそなんでしょうね」

 

士「(;・∀・)まさしくその通りなんだよなぁ……華穂ちゃんの名前も前作SSRの光樹君の義妹の華南ちゃんから一文字頂いているし」

 

グリーフィア「何?華って字好きなの?」

 

士「めっちゃ個人的なこと言わせてもらうと使いたいって感じです(´・ω・`)」

 

グリーフィア「感じと漢字を掛けた高度なギャグ?」

 

士「違う(゚Д゚;)と言いたい。さてじゃあ次は量産型になるんだけど」

 

ネイ「じゃあ次は姉さんよろしくね」

 

グリーフィア「はいはーい。じゃあ次はMSオーダーズのMSソルジアと次元覇院のMSマキインの紹介よ♪」

 

 

 

OMS-01

ソルジア(soldier)

 

・MSオーダーズが運用する対MS戦用量産型MSの第1号。頭部形状は目元を横一線のゴーグルセンサーで覆い、頭部後方に1本のロッドアンテナを装備するというスタイル。隊長機の場合ロッドアンテナを2本装備する。胸部にDNジェネレーターこと次元粒子発生器を搭載する。

特徴として背部と腰背部のウエポンキャリアーアームに武装を懸架し、それらを使って戦闘を行う「エディットウエポンシステム」を採用する。既存の武装なども取り付けられるようになっており、また同組織が民間に提供している作業用・救助用MSの「ワクス(works)」、「レスキュ(rescue)」が使用する作業用アームに換装することも可能など拡張性が高い。ただしこれはその反対も言えることであり、システムに厳重なロックが掛かっているものの、作業用MSの軍事転用というMSオーダーズが掲げる理念に反する使い方をされる可能性もはらんでいる。

 また本世界のMS技術が未熟なため、ビームライフルなどビーム兵器の使用にクールタイムを挟む必要が存在する。そのため実弾兵器が多く搭載される傾向にあり、ビームライフルやビームサーベルといった兵装はトドメとしてわずかな時間に使用する場合がほとんど(シュバルトゼロガンダムなどはもちろんこの制限に囚われることはなく、その圧倒的な性能を行使することが可能)。

 しかしそれでも既存兵器に対してこのサイズで戦闘機と1対4という戦力差を見せ、MSの基本性能はこの時点で完成していると言える。なおこの世界のMS装着も、マキナ・ドランディアと同じベルトユニットの「セットバックル」で行われる。通称バックル。

機体のイメージモデルは「ペイルライダー」と「ガンダム・バルバトス」の掛け合わせ。背部のウエポンキャリアーアームをバルバトスから、頭部デザインをペイルライダーの物から採用している。基本機体カラーは灰色を基調としている。名称は兵士を意味するsoldierの発音を改変したもの。

 

【機能】

・エディットウエポンシステム

 本機における武装換装システム。MSオーダーズのMSのほとんどに採用されており、アームの規格に合う武装を装備し、必要に応じて背部、腰背部から前面に展開して使用する。アーム自体にはスラスターも備えられており、ある程度の自重をカバーできる。

 システム元としては鉄血のオルフェンズのガンダム・バルバトスの背部バックパックがベース。同世界観の量産機であるグレイズのブースター付け替えや機体そのもののモデルの1つであるペイルライダーなども参考にして、腰背部にもアームを接続して武装搭載量を増やしている。

 

【武装】

・MSマシンガン

 モビルスーツ用に威力増大させた弾丸に対応する実弾式マシンガン。弾倉はボックスタイプ(バナナ型)。基本装備ではあるが、場合によっては装備されない。装備位置は右利きの場合は右サイドアーマー、左利きの場合左サイドアーマー。弾数は50発。予備弾倉はマシンガンを装備する側のアーマー下部に2本装備する。

 大きさは人が使用するマシンガンと同じだが、MS用に威力向上した弾丸を放つように改造されており、生身で発砲すると凄まじい振動を誇る。マシンガンそのものも反動に耐えられるよう改造されて、かなりの重さを誇る。そのためMSにしか扱えない。

 MSに対しては構造的に弱い部分や姿勢を崩すための発砲が主となる。しかし当たり所によってはMSに致命傷を負わせることも可能な武器となっている。この武器とエディットウエポン側のビーム兵器はほぼセットで運用され、MS撃破を盤石なものとする。

 

・ビームライフル

 本機の基本装備であると同時に必殺兵装の側面を持つ兵装。次元粒子ことDNを高圧縮ビームへと変換し、射撃を行う。MSマシンガンと逆のサイドアーマーに装備する。

 機体本体からエネルギーを供給するタイプで、次元粒子発生器の性質もありエネルギー切れはほぼない。ただし現在の地球の技術力ではエネルギー効率が悪く、数度の連続発射でオーバーヒートしてしまう。そのため実弾兵装で敵の動きを止めてから敵を確実に屠るという運用がなされている。

 武装外見モデルはガンダムF91のビームライフル。排熱機構が追加されている。

 

・ビームサーベル

 本機の基本装備にして主な撃墜兵装の1つ。柄に次元粒子ことDNを使用して光剣を形成し、敵を斬り裂く。バックパックに2本左右に突き刺す形で装備される。

 現状モビルスーツの装甲を一撃で貫ける兵装となっており、基本的には実弾兵装で体勢を崩したところにこの兵装で近接戦を仕掛けるというのが基本戦術となっている。威力は概ねマキナ・ドランディアのビームサーベルと同じだが、デバイスのエネルギー変換量が未成熟で、1.5倍のエネルギーを使う上にデバイスがビームの発振に耐えられるのは連続時間にして30秒(マキナ・ドランディアではこの制約はないに等しい)だけ。再使用に1分かかる。迅速な撃墜・制圧が求められる。

 

・チョバムシールド

 左腕部に装備する、装甲部材を重ね合わせて防御性能を向上させた積層シールド。左利きの場合は左右反転する。

 上から順に実弾耐性特化、ビーム耐性特化、衝撃耐性特化となっており、開発初期の戦闘用MSながら防御性能には事欠かない。というのもシールド自体に武装がないこともあり、ワクスやレスキュの兵装としても採用されているためであり、非戦闘用でも戦闘に巻き込まれた際の防衛用兵装として普及しているためである。

 武装外見モデルは「機動戦士ガンダムポケットの中の戦争」のアレックスのシールド。MGプラモにて設定された開閉機能はない。機能モデルは「ガンダムビルドファイターズ」のビルドストライクガンダムの同名武器から。

 

・アームバックパック

 エディットウエポンアームの2本とビームサーベルを装備するバックパックユニット。ノズルスラスターとバーニアをそれぞれ備える。

 MSの飛行のために補助システムなどを内包するなど、次元覇院のマキインよりもパイロットのサポートが豊富。

 

・エディットウエポンアーム

 本機最大の特徴たる武装。背部バックパックと腰部後方に接続された2基4本のアームで、アームのジョイントに武装を固定し敵に合わせて変更・使用する。アームにはスラスターが併設されており、機動力の補助を行っている。

 元々この部分にはブースターポッドとプロペラントタンクを装備する予定だったが、主力兵装となるはずだったビームライフルが連続使用時に短時間で使用不可になることから他の装備の必要性から採用された。

 

<アーム選択装備>

・ガトリングガン

 アームに接続される実弾火砲。4門の銃身を束ねて、回転させながら弾丸を放つ。マガジン方式であり、1つの弾倉につき60発を放つ。予備弾倉を2つ装備できる。

 弾丸は無論MS用弾丸であり、破壊力は更に向上している。アームの制御システムにより反動も抑えられており集弾率もよい。なお弾倉は左右どちらかに予備弾倉装備する方式で弾切れになり次第弾倉を自動排除し、次の弾倉をレールで装填する。

 武装形状モデルは機動戦士ガンダムUCのジェスタ・キャノンのマルチランチャー。あれの砲門を長くし、ガトリングとしての仕様に変更している。

 

・ビームキャノン

 長い砲身を持つ高出力ビーム砲。基本的に1門のみを装備する。貫通性の高い高出力ビームを放つ。

 必殺の威力を誇るビーム兵器の中でも、敵MSのシールドを貫通するほどの威力とこの世界では脅威に値する武装。ただし前述する通りビーム兵器の技術が未成熟のため1発発射後は1分半のクールタイムが必要。更に一戦闘において最大4発しか放つことが出来ないなど、主兵装として使うには欠点が多すぎる。その上マキナ・ドランディアの機体の兵装に比べてもビームキャノンというには威力に対して使い勝手が悪い。ドラグディアでのビームキャノンの連射出力程度の火力である。これは量産を前提にしたことも多く影響しているという。華穂機は本兵装を基本エディット設定にしている。

 

・レールガン

 アームに接続される、実弾加速電磁投射砲。銃身後部に弾倉を装填する。なお電磁加速用エネルギーは次元粒子が代用される。

 手持ちの実弾兵装としても扱われるが、本兵装は実弾でもMS装甲にダメージを与えられることと、弾速と威力が高いことが利点で運が良ければこの兵装で撃墜することも可能。そうでなくても直撃の衝撃で何らかの障害が起こる可能性が高く、ビーム兵器につなげられる。

 不使用時にはコンパクトに格納されて装着されるので、取り回しが良い。アーム接続状態でも放てるなど非常に使い勝手のいい兵装となっており、ほぼ固定兵装の1つとなっている。華穂機の基本兵装の1つ。

 武装外見モデルは蒼穹のファフナーのレールガン。変形機構をほぼ踏襲しているイメージ。

 

・エリミネイターブレード

 アームに選択装備されるチェーンソーの刃を有した実体剣。次元粒子のエネルギーにより稼働する。最大稼働時には高速回転により光刃を生みだす。

 刃の部分に次元粒子を流し込むことで切れ味を増強、回転により破壊力を向上させている。フレームなどを切ることが可能だが、刃のパーツに対するDN浸透による構造強化が不十分で高純度DNである真次元粒子の恩恵無しでは装甲を切るまでには至らない。劇中ではシュバルトゼロガンダムが戦闘不能状態となった機体から拝借し、その真価を発揮した。華穂機の基本兵装の1つでもある。

 武装モデルはアーマードコアシリーズに登場するオーバードウエポン「グラインドブレード」の剣部分と、蒼穹のファフナーシリーズの武器の1つ「レヴィンソード」。シュバルトゼロ使用時以外はグラインドブレードのブレード1つ分の性能、そしてシュバルトゼロ使用時にレヴィンソードの性能を発揮できる。

 

・ミサイルポッド

 選択装備として装備される誘導実弾兵器。コンテナ格納式で3×4の12本を装備する。対MS用に開発された弾頭を使用しているが、マキナ・ドランディアの物と違い、DNによる破壊力向上を行っていないため威力、追従速度等が劣る。なお同仕様の物は世界で開発され艦艇の兵装に試験的に運用されている。

 

・キャノンライフル

 選択装備として装備される手持ちキャノン砲。ボックスタイプの弾倉で装弾数は6発。不使用時には砲身を分割して折りたたむ。

 支援兵器として運用される兵装で、アームと機体の腕で保持して使用する。肩の上から使用する場合と下腕に持ってきて装備する場合の2種類の持ち手を備えて、砲撃に支障が出ないようになっている。また弾種は豊富で榴弾、徹甲弾から散弾、焼夷弾も運用可能。レイアウトを変更して遠距離支援機として運用される場合もある。華穂機はビームキャノンと戦況に応じて使い分ける傾向にある。

 

・エクストラシールド

 アーム用に開発された選択式増加シールド。1枚装備か2枚装備かを選択できる。耐ビームコーティング塗料を有する。形状はひし形。

 左腕のシールドと合わせて装備可能なシールドで、チョバムシールドよりも軽量。その分防御力は低いがそれでも十分敵の攻撃を防御可能。

 

・MSバズーカ

 MS用に威力増大、そして発射速度を向上させた弾を放つバズーカ砲。アーム用ジョイントパーツで接続される。手持ちでの使用も可能。装弾数は4発。

 弾種は通常弾に加え散弾を使用可能。更に弾倉による連射を可能としている。支援火器としてマシンガンに代わって手持ち武器としても使用される場合もある。華穂機の基本兵装。

 

 

 

ZHMS-P01

マキイン

 

・次元世界の中に世界を作り出した神がいると信じ、その考えを広めるカルト教団「次元覇院」が生みだした独立治安維持用MS。ツボのように頭頂部の尖った頭部にゴーグル、モノアイが備えられ、機体の胴体形状は角張の多い形状となっている。また肩部にはシールド兼用の可動式飛行安定翼が取り付けられている。

 治安維持と名付けられているが、警備用などではなく敵地侵攻用のれっきとした戦闘用MSである。これはMS開発を担っているMSオーダーズから外れた、非正規のMSであるためであり、MS所持法を独自に解釈、改変して自分達を正義として見せるための勝手な行いである(この点からもMSオーダーズが彼らを取り締まる要因の1つとなっている)。

 武器換装機能などはないが、その分コストが安く済んでいる。またビーム兵器の技術はこちらが進んでおり、クールタイムなどが必要な点は変わらないが、ソルジアと比べ50パーセントほどのエネルギー効率を達成している。この点について次元覇院の宣伝によると、次元世界の神からの贈り物だと言われている。MSオーダーズ側は信じていないが、シュバルトゼロガンダムの解析によれば機体構造の7割ほどのパーツがマキナートと共通、あるいはそれをグレードダウンさせたものだと判明。機体の謎が深まっている。なおそのためかバックパックはなく、機体胸部後方のアタッチメントスラスターが主推進器を兼ねている。

 なぜ独自にMSを開発できたのか、どこが開発しているのか。いくつかの謎を持つ中、確実に本機はMSオーダーズや次元覇院を信仰しない民間人を苦しめている。

 機体外見モデルは頭部を「機動戦士ガンダム」のMS「ギャン」、胴体をMS「ザクⅡ」の右半身を左右対称にしたものとマキナートの胴体モデルであるジムとの掛け合わせである。機体カラーは次元覇院の象徴であるオレンジが採用されている。

 

【機能】

・簡易飛行形態

 機体の肩部シールドを変形させて飛行用の安定翼として運用する。空適正の低いパイロットでも空を飛んでの移動に支障を来さなくなる。戦闘機動には使えないため、専ら移動用である。

 

 

【武装】

・ビームライフル

 モビルスーツの基本兵装として挙げられる、ビーム射撃兵装。腰背部に装備される。

 ソルジアの物よりも技術が発展しており、オーバーヒートまでの時間が伸びている他、精密射撃のためのバレルストック付き、大きさも2割ほど小さいなど決定的な差を付けられている。

 武装形状モデルは機動戦士ガンダム00の「GN-X」が持つGNビームライフル。スナイパーライフルへの切り替えは行っていない。

 

・MSアサルトライフル

 MSマシンガンと同じ、MS用に攻撃力を増した弾丸を装填するMS戦用実弾銃。右腰サイドアーマーに装備。ボックスタイプの弾倉を採用している。全40発の弾倉を3本装備し、予備弾倉はシールド内部に装備する。

 MSマシンガンと同じく、体勢を崩すなどするための武器だが次元覇院においては確実に非戦闘員を殺すための対人兵器としての使用も多い(MSオーダーズは滅多なことでは人に向けて威力が過剰なMS用武装を向けない)。これも非合法な組織が使う故の都合と言えよう。

 

・ビームサーベル

 機体の下腕部のボックスユニット内に格納した柄から光剣を形成する、MSにおける基本兵装の1つ。2本両腕部に装備する。マキナートと共通する要素の1つである。

 こちらにおいても必殺の兵装として機能し、更に引き抜く動作も必要ないことから奇襲性に優れる。

 

・グレネード

 左腰に3基1組で装備される爆発武器。敵のいる方向に向けて投擲、時間差で爆発する。

 グレネード自体にはDNが火薬と共に混ぜ込まれており、通常のグレネードよりも破壊力が増している。この技術はまだMSオーダーズが模索中の技術であり、非正規のMS開発組織が容易にたどり着ける技術ではないとしている。一方でガンダムのコンピューターはこの武装がマキナスの新第3世代のMSマキナートの武装に似ているとしている。

 

・ヴァリアブルシールド

 機体両肩に固定装備する、L字型の可変シールド。飛行時に変形して人型での飛行補助を担う。

 元々は変形機構のない、シンプルなシールドの予定だった。しかし非正規の部隊で大量に扱うために十分な訓練無しで実戦に出るパイロットが多く、飛行もままならないパイロットが続出。MSという飛行に不適切な人型の物体を飛ばす関係上仕方のない問題だが、それをカバーするべく移動の飛行に安定感を持たせるためシールドを本仕様に改装したのが経緯となっている。その結果飛行安定には繋がったが防御精度がやや落ちる結果となった。

 武装外見モデルは機動戦士ガンダムのザクⅡのシールド。

 

 

 

グリーフィア「以上がそれぞれの量産機の紹介になるわぁ。にしてもマキインとマキナートの類似ってそんなに似ているの?」

 

士「うん。頭部は丸々変わっているからあれなんだけど、バックパック接続部とか備えていてマキナートのバックパック不装着状態に似ているって設定だね」

 

ネイ「でも何でそんな類似しているんでしょうか……マキナスの設計とたまたま似たにしては偶然と言いますか」

 

グリーフィア「偶然じゃない、だったりしてね」

 

士「さてさてそれはどうなんでしょうか(^ω^)といったところで中編はここまでです」

 

ネイ「後編はお嬢様とレイ達が担当します」

 




中編はここまでとなります。ちなみに前回の投稿日が次元光姫さんの誕生日だったりします。( ;∀;)忘れてました……

ソルジアはワークスモデルの同型機も存在することもあって、非常に作者的にも扱いやすい機体になっています(*´ω`)もしかしたら作業型が後々活躍するかも……?
一方マキインは戦闘は素人な者達でも最低限の運用が出来るようにしていますが、それでもソルジアよりもスペックが高いです。ビームライフルの冷却機能もソルジアよりはちゃんとしていてMSオーダーズが苦戦する理由となっています。ベースは設定で既に明かされている通り第1部のマキナートがベースです。果たしてその意味は何なんでしょうか?

では同日公開の後編もお楽しみください。


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黒の館DN 神騒乱勃発編 第1回 後編

どうも、皆様。引き続きご覧の方は改めまして。作者の藤和木 士です。

黒の館DN、神騒乱勃発編も第1回の後編となります。最後の紹介はシュバルトゼロガンダムと同じガンダムの名を冠した赤と青のMS、ロートケーニギンガンダムとブラウジーベンガンダムです。
この2機は旧作SSRにて登場する予定だったSSRシリーズの1機、ロートクウィーンガンダム・クロスとブラウォジーベンガンダム・クロスのリメイク機となっています。コンセプトの砲撃型、狙撃型はそのままに、性能を本時代に合わせたデチューン、武装変更になっていますが、いずれはその2機のような高性能機を目指していく試作機となっています。

それでは後編もどうぞ。


 

 

士「さて黒の館DN第1回も後半になります。作者の藤和木 士です」

 

レイ「アシスタントのレイ、再び登場!」

 

ジャンヌ「同じくジャンヌです」

 

士「後編では元の世界で誕生したガンダム「カラーシリーズ」と呼ばれる機体の紹介だ」

 

レイ「まんま前作SSRのSSRシリーズの残り機体をベースにしているんだね」

 

士「そうだね(;・∀・)でも今回の部の特徴に合わせて、性能とかは結構グレードダウンしていたりするよ」

 

ジャンヌ「まだMSの技術が完成していないんですね。ソルジアやマキインと同じように」

 

士「その通り!シュバルトゼロガンダムを解析して技術が発展していく予定だけどね。さて、では紹介に移ろうか」

 

レイ「じゃあ後編はカラーシリーズの2機、ロートケーニギンガンダムとブラウジーベンガンダムの紹介だよっ」

 

 

 

 

COMS-G001RⅫ

ロートケーニギン(赤き女王の)ガンダム

 

機体解説

・MSオーダーズはMS開発の最大手であると同時に、そのMSの犯罪を取り締まる組織である。自分達が開発した物の後始末は自分達で付ける精神の下、非正規のMS運用組織やMS犯罪への対応、あるいは大災害から民間人を救出することが責務となる。そのため如何なる状況下において目標達成できる性能が求められた。そこで開発されたのが、このカラーシリーズである。

 カラーシリーズはその名称通り、特定の色系統1色で機体を染め上げることから名付けられた。そしてその機体の顔は、次元粒子発生器をこの世界で初めて誕生させた天才科学者ツィーラン・パックの意向で、マキナ・ドランディアの救世主「ガンダム」を模した形状を取ることとなった。そのためガンダムシリーズとも呼ばれる。

 その1号機であるロートケーニギンガンダムはMSにおける砲撃支援型MSとして設計された赤色のガンダム。肩部後方に設置される円盤型の試作遠隔操作アクセラレータドローン「ヴァルプルギス」を、さらに機体の肩・膝部の装甲には実弾ビームを問わない射撃攻撃減衰・防御機構である「女王の加護」を装備。後方にて万全の防御性能を保ちながらその火力を放つ様はその姿から異名通り「クイーン(女王)」と呼称される。

 砲撃以外にも黎明期故に格闘戦も考慮。腕部のパイルガンなど試行された様々な試作装備を装備している。最先端を行くためか、機体のビーム兵器も量産型MSのソルジアより使い勝手の良さを秘めている。

 機体のコンセプトは「流星のロックマン3のロックマンファイナライズ形態レッドジョーカーへ砲撃MSの性能を反映させる」というもの。旧作「SSRという名のG」にてわずかながら登場した赤き砲撃型ガンダム「ロートクウィーンガンダム」を本機はベースとしつつ、その性能を大きく落とした仕様になっている。名称も赤を意味するロートと女王を意味するケーニギンでロートクウィーンの名前をドイツ語で統一している。

 

【機能】

・次元装甲

 次元粒子を機体の装甲に浸透させて、防御性能を向上させた特殊装甲。浸透時に機体色を変更させられる。シュバルトゼロガンダムにおける「DNフェイズカーボン」と同質の装甲である。

 ガンダム開発過程において導入された新機構であり、ある程度の実体弾にも耐えうる防御性能を機体に与え、ビームにも若干の耐性が付く。性能はDNフェイズカーボンとは天地の差で、これの強化が今後の課題。カラーシリーズには全機この装甲が採用される手筈となっている。

 

・射撃減衰防御機構「女王の加護(クウィーンズ・ブレッシング)(以下QB)」

 本機における重要な機能の1つ。機体肩部、膝部から一定濃度のDNを放出して機体を包み込む。それにより機体の不測の事態から守護・危機回避を行う防御機能。

 粒子で壁を作るという発想はDNウォールに近い発想で、シュバルトゼロガンダム・イグナイターが機竜大戦終盤にて見せた機体を覆うDNウォールの初期段階と呼べる。イグナイターのそれに遠く及ばない性能だが、ビーム兵器が安定稼働できず、マシンガンなどの実体弾に多く頼る現在のMS事情では非常に有効な機能となっている。

 

・エディットウエポンシステム

 MSオーダーズのモビルスーツに搭載される武装運用システム。本機においては背部に装備する。

 

・マルチロックオン

 本機に試験的に装備された多重目標ロックオンシステム。AIが自動的に敵を標的し、同時に目標を撃破する。ホーミングレーザー使用時に主に発揮される。

 

【武装】

・ケーニギン・ビームライフル

 ロートケーニギンガンダム専用のビームライフル。腰部に装備する。赤と黒で塗装される。

 MSオーダーズ機の物より銃身の拡張、変形機構を盛り込み砲撃用のブラスターモードに出力の切り替えが可能となっている。オーバーヒートまでの時間も伸びており、次元覇院のMSのビームライフル並、それ以上の使用が可能となっている。

 

・パイルガン

 機体両下腕部に装備される、パイルバンカーと実弾砲の機能を併せ持つマルチウエポン。実弾の弾数は20発ずつ。

 敵装甲を貫き、破壊した装甲下の内部メカニックにダメージを与える兵装の1種として試験開発された。通常のMSに対してなら必殺の威力を誇るものの、本機と同質の次元装甲の機体の場合、杭部分が折れる可能性が高い。それでも実弾を使ってビーム兵装で攻撃する隙を作り出せるため腐りづらい。

 武装モデルはスーパーロボット大戦OGシリーズの「アルトアイゼン」のリボルビングステーク。

 

・ビームサーベル

 モビルスーツの基本兵装として設定される格闘兵装。肩部QBユニットの装甲内部に格納される。

 ソルジアのものと比べて連続使用時間が片側1分30秒、冷却に1分45秒を要する。交代で使う仕様となっているものの、15秒間だけはサーベルを使うことが出来ないようになっている。これに関しては背部のエディットウエポンに代用の格闘兵装を付けることで解決可能。しかし光姫はその間の攻撃を仲間との連携でカバーする戦略を取っている。

 連続運用時間の設定元は機動戦士クロスボーンガンダムのクロスボーンガンダムX3のIフィールドハンドから。

 

・QBアーマーユニット

 機体の肩部・膝部装甲を構成する、「女王の加護」発生器。QB発生時には機体装甲が若干スライドして防御用次元粒子を放出する。

 敵機のビームを軽減し、実弾に至っては機体に届かせないという性能を本機に与える。本兵装を装備するにあたってシールドの有無について議論されたが、本兵装が完全に防御しきれるのは実弾に留まること、緊急時のフェイルセーフティは必要ということで肩部ユニット側面にシールド用ラッチを増設し、防御性能を高めるという方策が取られた。

 武装外見モデルは流星のロックマン3のファイナライズ形態「レッドジョーカー」のクラウドオブクリムゾンがベース。

 

・バーニアシールド

 機体両肩部ラッチに装備される曲面形状のシールド。QBの発生有無に関わらず、機体の防御を担う。

 QB使用時のフェイルセーフティとして用いられる兵装だが、使用者の光姫からは普段の防御として役立ち、また砲撃時の防御を任せられると好評。加えて機体の機動性を損なわないようシールド裏面にはバーニアを備えている。バーニアの出力は脚部の推進器と合わせてホバー移動が可能となっている。このバーニアユニットは分離させてシールドとの間にスペースを作ることで武装収納にも使用でき、余程の戦闘時にはここにMSマシンガンを携行することが多い。

 シールドの形状モデルは機動戦士ガンダム0083のジム・カスタムなどの持つシールド。

 

・エディットウエポンアームバックパック・ロート

 ロートケーニギンガンダム専用に調整された武装携行アームシステム搭載のバックパック。2つのアームを備える。

 砲撃戦を重視するロートケーニギンの為にアームそのものにビーム兵装用冷却材装填スペース、そしてバックパックには高容量の次元粒子貯蔵タンクと下部ブースター兼用の増加プロペラントタンクを2本装備する。

 これらの装備によって本機は量産型のソルジア以上の火力を誇る兵装を装備することが可能となった。

 

・ビームキャノン・ロート

 ソルジアのエディットウエポンにも採用されている長射程ビーム砲。そのロートケーニギンガンダム用となる。特徴となるのはエネルギー転換効率の向上、そして2門同時装備を前提とした性能。連射感覚は1分に1発ずつ放てるようになり、十分ではないもののその他兵装と合わせて砲撃支援を絶やさない。

 

・試作遠隔操作アクセラレータドローン「ヴァルプルギス」

 機体の肩後方に接続される粒子加速装置と偵察ドローンユニットの機能を備えた円形の端末。外縁部にスリット状のフロート発生器、その内側に沿ってホーミングレーザーを6門備える。本機の機能を担う重要な兵装の1つである。

 ファンネルの一種であり、機械制御で遠隔操作される。浮遊状態、あるいは接続部を引き出して肩の外側からホーミングレーザーで砲撃し、味方を支援する。最大出力ではレーザーをすべて束ね大出力ビームへと転換し、正面敵をすべて消滅させる(なお本来レーザーとビームは違うものだが、本作のMS兵装においてはいずれもDNでそれぞれを作り出して撃ちわけられるようになっている)。ドローン時にも砲撃は可能だが、極端に分離運用時間が限られてしまう。フロート発生器が放熱フィンの役割も兼ねているため連射性が高く本機における主兵装としても扱われる。

 将来的には完全浮遊でエネルギー供給の可能な、「ビット」として運用できるように開発を進めているが芳しくない。しかしシュバルトゼロガンダムの技術に触れて開発進捗が進みつつある。

 武装モデルは流星のロックマン3のレッドジョーカーのクリムゾンジェネレーター。浮遊やその状態でのエネルギー供給などの完成した先がこのパーツとなっている。ただしジェネレーターをここに内蔵するという考えには至っていない。

 

 

COMS-003BⅦ

ブラウジーベン(蒼き七番目の)ガンダム

 

機体解説

・MSオーダーズが開発した、カラーシリーズの1機。色は青をベースとしている。ガンカメラに対応した変形機構を頭部に持つ。

 狙撃戦をメインとした機体で、速やかな移動の為にバックパックに可変式ブースターウイングを装備、腰背部にエディットウエポンアームを備える。本機体は本来空戦遊撃を前提とした機体だったが、パイロットの深絵がスナイパーとしての才能が高かったこと、遊撃の為のビーム多数搭載とその同時使用、それらを加えての高い機動性の両立が現時点では困難だったことからこの仕様に変更された経緯がある。

 本機の主な運用として後方からの支援狙撃と位置を素早く変えてのカウンタースナイプの危険性回避が重視される。が、パイロットの深絵の適性により本来の遊撃の如く移動しながらの精密射撃も可能としている。その精密すぎる射撃で次元覇院からは蒼い死神とも呼称される。劇中でもシュバルトゼロガンダムを制止させるなどの活躍を見せている。

 頭部のガンカメラ展開時には2本のV字アンテナの内、内側のアンテナ部が額のパーツごと上部にスライドさせる。その際自動AIが起動して精密射撃時の防御・回避を担う。この自動AIはロートケーニギンにもドローン操作用として搭載されており、共通の装備になると思われる。

 背部バックパックの可変ブースターウイングはソルジアの次世代バックパックとして考案されたものであり、ビームライフルなどビーム兵器の技術確立後の機体開発を視野に入れている。

 機体コンセプトは「ガンダム00のガンダムデュナメス×スパロボZシリーズのブラスタ系列機」。どちらも射撃寄りの機体であり(ブラスタは選択次第)、バックパックはブラスタ系列のバックパックを意識している。この構成は旧作にて登場した「ブラウォジーベンガンダム・クロス」と同様であり、本機はそのリメイクとなる。名称はドイツ語で青を意味する「ブラウ」から、ジーベンは7のドイツ語読みである。なお空戦機で狙撃戦というのはジーベンというつながりから「蒼穹のファフナー」シリーズの「マークジーベン」の戦闘スタイルを意識している。

 

【機能】

・次元装甲

 カラーシリーズに採用される次元粒子浸透装甲。DNフェイズカーボンとほぼ同質の装甲。

 本機のカラーリングは青がベースだが、作戦によっては機体色変更機能を用いて装甲をより暗い色などに変えることがある。詰まるところのステルス機能として用いている。今後はレーダーステルス機能等を持ち合わせた次元装甲の開発を目標としている。

 

・エディットウエポンシステム

 MSオーダーズ機共通のシステム。本機においては腰背部接続のアームに武装を装備し、それを運用する。

 大型のバックパックを背負うためにあまり大型の兵装を積めないが、積んだ場合も重量で機動性が落ちるため大した欠点ではない。

 

・スナイプモード

 頭部の内側ブレードアンテナを額部分から上部に移動させ、露出したガンカメラを用いて狙撃を行う形態。狙撃時に展開するが、深絵の場合より高度な精密射撃時、あるいは超長距離狙撃時のみ展開される。

 このモード起動時にはAIが起動して狙撃に集中するパイロットに代わり、防御・回避を担う。

 変形に関してはガンダムデュナメスやその後継機ケルディムガンダムなどを参考に、ブレードアンテナの分割は現時点での最新作「ビルドダイバーズリライズ」の主役機「コアガンダム」とその周辺パーツ「プラネッツシステム」の頭部パーツの分割法を採用する(特にアースリィガンダムのブレードアンテナ分割が近い)。

 

 

【武装】

・ビームスナイパーライフル

 量産前提で試作開発された長距離射撃用ビーム兵装。本機における主兵装に位置づけられる。不使用時には右肩にマウントされる。

 後方から敵を狙い撃つための兵装であり、支援武器として開発された。その限界性能を探るべく狙撃戦用の機体である本機が試験的に装備し、運用することとなった。本機の運用で得られたデータをもとに後継機、そして量産機用のスナイパーライフル開発に役立てられる予定。

 オーバーヒート問題は解決できていないが、本兵装の熱量管理は銃後端のアイスボックスパックの冷却材で行われており、これの交換で継続戦闘が可能となっている。なおアイスボックスパックの予備はシールドの裏に装備されており、個数は2個。

 形状モデルは前部をガンダムデュナメスのGNスナイパーライフル、後部のアイスボックスパック系列を機動戦士ガンダム0083のガーベラ・テトラのビームマシンガンをベースとしている。

 

・ビームサーベル

 MSに基本的に装備される格闘兵装。仕様はロートケーニギンとほぼ同じ仕様で1分30秒の連続使用に1分45秒のクールタイムが存在する。サイドアーマーに装備する。

 接近された時の兵装として装備しているが、深絵本人の技量や機体の性質からそれは非常に少なく、また前線に出ても射撃武器で対応することから不要な装備と進言。そのため現在彼女専用の銃剣型小銃兵装の開発が進められている。

 

・アンカーシールド

 機体左腕に装備される、耐ビームコーティングの施された武装シールド。腕部のラッチで保持される。

 下方の先鋭部分が分離してアンカーとして用いることが出来る。そのまま近接武器としても使用可能かつ、地面に突き立ててビームスナイパーライフルのバイポットとしても使用する。高機動時においては邪魔となるものの、アイスボックスパックの予備を内包する関係で外すことは滅多にない。

 今後の後継機プランではスナイパーライフルの安定稼働に加え、シールドを無線誘導防御兵装に取り換えることを考えられている。

 武装外見モデルはブラスタのシールド。今後の後継機プランはケルディムガンダム、ガンダムサバーニャのビットから。

 

・ブースターウイング・バックパック

 背部に装備される、可変式ウイングを備える大型バックパック。本機へ空戦における高い機動性を与える。

 ブースター側面にウイングを備え、AMBACを担当。さらにブースター自体も可動して高機動形態とブースターの推力を後部に集中させた巡航形態へと移行が可能。シュバルトゼロガンダムのスピードには追いつけないものの、地球の現行モビルスーツの中でもっとも高いスピードを持ち合わせている。

 武装としてはブースター先端の固定式レールガンがあるが、側面にラッチを増設可能で必要時にはMSマシンガンなどを装備する。

 武装外見モデルはブラスタのバックパック、ガンダム00のユニオンフラッグのバックパック、そして蒼穹のファフナーの「ノートゥングモデル」、その空戦仕様である「マークゼクス」系列のバックパックを参考にしているイメージ。

 

・ブースターレールガン

 バックパックのブースターウイング前方に内蔵され、使用時に展開する電磁加速投射砲。弾数は片側8発。

 ブラウジーベンの主兵装の1つであるが、巡航形態状態でしか使用できない兵装。ただし深絵は本兵装で敵の動きを縛り、空中でのスナイパーライフルの精密射撃に繋げる武装として使用する。威力はソルジアのレールガンと同程度でこれによるMS撃墜も視野に入る。しかし深絵の場合やはりけん制に使われることがほとんど。味方への支援に使われる場合もある。

 

・エディットウエポンアーム・ブラウ

 機体腰背部のコネクターに接続される、MSオーダーズ共通の武装換装システム。そのブラウジーベンガンダム版である。

 通常版やロートケーニギン版との違いとして、アーム内部にパイルバンカーを装備することが挙げられる。これは狙撃時の地面接地用であり不安定な足場でも狙撃を可能とするための兵装である。そのほか緊急時には敵機を貫くことも可能だが非常に難易度が高い。またスラスターも備えており背部と合わせて高度なAMBACシステムを形成する。

 

・ビームライフル・アサルト

 エディットアームに接続されるビームライフル。折り畳みの持ち手が存在するが、基本的にアームに保持された状態で使用する。

 両手がスナイパーライフルでふさがってしまうために第3、第4の手としての兵装となっている。またビームライフルの銃口下にはアンカーガンが併設されており緊急時の回避行動や敵の捕縛にも使える。一応本機専用のエディットウエポンではあるが、出力調整で量産型用にも転用可能。

 武装モデルは機動戦士ガンダムSEEDシリーズのデュエルガンダムのビームライフル。こちらの銃口下にはグレネードが装備されているが、今回はアンカーガンとなった。

 

 

 

レイ「以上がカラーシリーズの紹介になるよ」

 

ジャンヌ「前作では力を見せられなかった赤と青のガンダムの力、本作では是非見せてもらいたいものですね」

 

士「本当にね(;´・ω・)名前も一部変わっているけど前作のロートクウィーンとブラウォジーベンのリメイク機を兼ねているから。でも最初に言った通り性能を落としているから、プロトタイプ考えてるみたいで書いている分には楽しかったよ」

 

レイ「それは良かったね!さて次からはMSオーダーズの総司令さんとのご対面かな」

 

ジャンヌ「元さんと黎人さん。どういう話を展開するのでしょうか」

 

士「というところで黒の館DN第1回は閉館となります。(´-ω-`)第1章後編もよろしくお願いします」

 

 

 




最後までご覧いただきありがとうございます。第1部最後には同日公開の番外編1も更新されていますので、まだご覧になっていない方は是非。

赤と青のガンダム、その命名法は奇しくもマキナ・ドランディアのガンダム「シュバルトゼロガンダム」と「ヴァイスインフィニットガンダム」に似たもの。旧作では同型機であるからという理由が付くそれは、本作ではどういう関係性があるのか?

そんな感じで今回はここまでとなります。次回EPISODE5以降もよろしくお願いします。なお、次回の投稿は年明け前になりそうです。年末で忙しいかもですので、全てが終わっているであろう年越し直前になるかもしれません。ではまた次回。


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EPISODE5 オーダーズ・ネスト1

どうも皆様。今年も残すところあと数時間。この話で今年の投稿収めとなります、作者の藤和木 士です。

ネイ「アシスタントのネイです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよ。随分更新が空いたわねー。どうしたの?」

単純に言うと投稿しようと思った時にはもう時間が遅かったっていうのがあります(´・ω・`)ネットなので投稿時間に限りがあるわけではないのですが、最近は8時~9時の間に投稿したい気分でしたので……。

ネイ「メタいです。それより今回も2話投稿ですね」

そうです。EPISODE5と6の公開です。

グリーフィア「あの戦闘の後、元君らはMSオーダーズの基地に向かうことになったのよねー。お互い良い関係を築けるといいんだけどねぇ」

それでは本編へ。


 

 

「やはり凄まじいな、この力」

 

 黒和華穂が送ってきた戦闘中継映像に黎人はため息を漏らす。パソコンに映った日本政府直属の自衛軍高官たちも各々難しい表情でその性能に驚嘆して見ていた。

 

『これが同じMSの性能だとは……到底思えんな』

 

『あの武器、確かオーダーズの武器だったな……』

 

『定格出力を超えてビームソードとして扱うか。何とも』

 

『うむ。こんなものが敵になれば恐ろしいぞ』

 

 MSオーダーズが威信を掛けて開発したカラーシリーズ。その性能は随一だと黎人の中で自負していた。しかし映像のガンダムは単機で稼働中である2機以上の戦闘能力を発揮している。完全にそのプライドを叩き折られてしまった。

 あまりにも高すぎる性能に、見ていた高官が匙を投げて処遇について進言する。

 

『こんなものあっていいのか?確保してデータを抜いてから封印処置を』

 

「それは契約違反ですよ。もしそれで被害が発生したらあなたは責任を負えると?」

 

『ぐっ!』

 

 高官の発言を思い切り却下する黎人。元々話し合っていた罪の取り消しを無駄にするような事を許すような馬鹿さは持ち合わせていない。もしそうなれば黎人は光姫などの関係者に大目玉を喰らうことになる。軍の未だ腐敗の残る老害達などそれに比べれば些細なものだった。

 高官の1人も黎人の発言を擁護しつつ、具体的な解決案の提示を要求する。

 

『そうだな。わざわざ所持法違反の特例を使って罪を帳消しにするんだ。あれ程のMSの性能を引き出せるパイロットを、無下にしてはそれこそ無駄だろう』

 

「仰る通りです」

 

『……して、協力してくれる見込みはあるのかね?』

 

 罪を帳消しにするといっても、それは協力してくれたらの話。協力を得られるようにあらゆる手筈は整えたが、果たしてそれを受け入れてくれる人物か。既に光姫からは更に追加で2つほど要求があることを知っていた。1つはもう1人の同伴者に対しての詮索なしという願い。もう1つは判明していないが、おそらくのちに分かることだ。

 ともかく一度会って話してみる必要がある。光姫の友人だった1人にして、あの事件の被害者。今でも非難される覚悟はあるが、果たしてどうなるか。高官からの問いにいつも通りの返答をする。

 

「ありますよ。ないなら敵になるだけですから」

 

『非情な男だ。では吉報を期待している』

 

 その言葉を最後に通信は終了する。通信を終えた黎人に、指令室のソファーに座る人物が仕事ぶりを評する。

 

「高官達の相手、お疲れ様だね黎人君」

 

「冗談。まだあなたのような無茶を出来るほど、僕は地位を手に入れていませんよツィーラン先生」

 

 賛辞の言葉を遠慮して逆にその人物の偉業を称える。先生とされたその人物はいつも通り顔に付けた仮面を少しばかり持ち上げると、そうでもないと返答する。

 

「そうでもないさ。私のおかげで続いているMS開発継続も、結局は私自身が日本を追い出される結果になった。日本に住めなくなったのは少々辛いものがあるよ」

 

「本当にそれは申し訳ないですツィーラン博士。恩師であるあなたにそんな仕打ちを負わせることになってしまって……。でもそのおかげでMSの歴史を止めずに済んだ。もっとも今はそれが悪い方向に向かってしまっている」

 

「うむ。その通りだ。だが責任を感じすぎることはない。人を助けると思って作られたダイナマイトが兵器として扱われる様になったように、道具は兵器へと変貌しかねない側面を持ち合わせる。人はそれを受け入れ、それと付き合っていかなければならない。MSにはMS。その為にあのガンダムのパイロットに協力を仰がねばな」

 

 ツィーラン博士はいつものように兵器の扱い方について述べる。博士は5年前のあの事件、「モバイルスーツ暴走事件」で世間から非難の的となったモバイルスーツの研究を存続させた恩人だ。モバイルスーツの共同開発者にして黎人の大学時代の恩師。この人の尽力が無ければ改名されたモバイルスーツ、モビルスーツの今はない。

 恩師はその責任として日本の住民権を失った。今では出先の仕事場だった海外で暮らしている。それだけの代償を払ってモビルスーツを守ってくれた恩師に報いるためにも、この交渉成立させなければならない。

 

「やりますよ、僕は。あなたに報いるために」

 

「その事なんだが黎人君。私も同席しても構わないかね?」

 

「それは……僕としては構いませんが、どうして」

 

 理由を訊くと恩師はそれに応じて質問を投げかける。

 

「黎人君、私がなぜカラーシリーズの頭部デザインを指示したか覚えているかい?」

 

「あぁ……確か博士がこちらの方がいいとおっしゃっていましたね。同時にガンダムという名前も」

 

 カラーシリーズ開発開始の報告の際、設計を見たツィーラン博士から頭部デザインの変更を提案された。その頭部はまるで人のような物であり、当時は名称にちなんだデザインだった物をそちらに変更した。また名称もこの時ガンダムが付け足された。

 あの時やたらとガンダムという存在に固持していたのをよく覚えている。博士はこれと言ったら絶対という人だったため一度試してみるとしたが、その結果良好なデータが取れたのには感服した。博士は常人には測れない感性を持った人物なのだ。

 博士は語る。

 

「そうだ。だがそもそもなぜ私がその存在に至ったのか。それを説明していなかった。もしかすると彼は……」

 

 深い事情を感じさせる博士の言動に注目する。と、そこで回線から連絡が入った。

 

「失礼、少しだけ……」

 

「あぁ、構わないよ」

 

 博士に断りを入れて、回線に応じた。

 

「どうした」

 

『光姫隊長、深絵隊長以下シュバルトゼロガンダム捜索隊帰還しました。この後はそちらに?』

 

 基地オペレーターから光姫達の帰還が報告される。予定通りオペレーターには連れてくるということを伝える。

 

「あぁ。頼む」

 

 いよいよご対面だ。この対面で今後のMSオーダーズの運命が決まると言っても過言ではない。総司令の責を果たさねばならない。気を引き締める。

 

 

 

 

 MSオーダーズの基地、オーダーズ・ネストに到着し、元とジャンヌは光姫らに連れられて施設内を歩く。オーダーズ・ネストは東響湾の中に浮かぶ人工島で、東響の街まで一本の橋でつながっている。施設内部は警戒状態で自分達に警戒の目が向けられているのは分かっていた。そんな警戒の中で1つの部屋の前まで案内される。

 

「失礼します。次元光姫以下2名、シュバルトゼロガンダムのパイロットと同行者を連れて参りました」

 

 光姫の室内にいる人物に対しての声掛け。直後に返答が返る。

 

「入ってくれ」

 

「失礼します」

 

 許可をもらって部屋の扉を開ける。その後に続いて元とジャンヌも入っていく。すると部屋のソファーに2人の人物がいた。

 1人は白と黒のメッシュにMSオーダーズ隊員の制服を豪華にしたような服を着ている男性。もう1人は白衣を着ているのと顔の目元を覆うマスクが特徴的な男性だ。出で立ちの激しい2人だが、幸いにも元は2人の存在をうろ覚えではあるが覚えていた。

 部屋に入り、光姫達に誘導されるままにソファーの前まで向かう。腰かけていたソファーから立ち上がった黒と白のメッシュの男性が自己紹介を行う。

 

「ご足労掛けたね。私がMSオーダーズ総司令官にしてMSの開発担当の責任者を務める次元黎人だ」

 

 差し出された手にこちらも握手を交わす。ジャンヌも元に倣い握手に応じる。もう1人も同じように名乗る。

 

「私はツィーラン・パック。黎人君の元共同研究者の1人だ。黒和元君は知っているんじゃないかな」

 

「えぇ、モバイルスーツの開発者でしたね、お二人は」

 

 この2人こそこの世界におけるMSの始祖「モバイルスーツ」の開発者だ。髪とマスクが印象的で2年の歳月でも顔と名前を憶えていた。

 元が握手に応じる傍らで、ジャンヌはその外見に体を震わせた。

 

「!……」

 

「どうした、ジャンヌ」

 

「す、すみません……。何だか身震いをしてしまって……」

 

 身震いという言葉に違和感を覚えるが、すぐに察したツィーランがマスクを指してジャンヌに謝罪する。

 

「あぁ、これの事かな。すまないね、昔の研究で怪我をして以来こうなんだ。どうも初対面の人には驚かせてしまう」

 

「あ、いえ……。事情があるのでしたら仕方ないことです」

 

 やはりあのマスクは誰もがツッコんでしまうことなのだろう。ジャンヌが頭を下げて握手に応じると、両者共に席へと座る。腰を下ろした黎人は早速今回の目的について話す。

 

「それで今回同行を要請した理由だが、既に聞いているかもしれないが表向きはMS所持法の違反通告、しかし実際は私達の組織への協力要請だ。だがそれ以上に聞かなくてはいけないことがある。―――君は本当に、黒和元なのか?」

 

 早速飛んできた質問。簡単に言えば死んだはずの黒和元本人なのかという話だ。髪色まで変わっていることでより疑わしいのだろう。だから元はありのままの事を話す。

 

「あぁ。あの時爆発に巻き込まれ、この世界から消えた黒和元だ」

 

「……そうなのか」

 

 爆発に巻き込まれ、消えた。それはこの世界の者達も知っている情報だ。事実と差異のない答えに黎人が難しい顔をする。

 消えたはずの人間。それが目の前にいる。どういった経緯があったのかと思うのは必然で、黎人はそれについて問う。

 

「なら、この5年の間君はどこでどう生きていたんだ?」

 

 この世界から元がいなくなっていた5年間。だが元にとってはその半分以下の2年の間の出来事の説明要求だ。不用意な発言は禁物だろうが、経験したことを偽りなく話すつもりであった元は、ジャンヌの方に顔を向けてからそれに応じた。

 

「そうですね……この世界で5年、俺にとっては2年ですか。2年の間俺は次元世界の1つ、龍の力を宿した人類「竜人族」と機械の力を宿した人類「機人族」の暮らす「マキナ・ドランディア」で、名家の1つを出身に持つこのジャンヌ・ファーフニル様に拾われ、以来ファーフニル家で使用人として働いて来ました」

 

「マキナ・ドランディア……竜人族と機人族?」

 

「っ……」

 

「にぃ……」

 

 元は話す。マキナ・ドランディアで記憶を失っていたこと、とある事件の最中であのガンダムを手に入れたこと。戦争を終結させたこと……そしてもちろん白きガンダムが別世界に流れ、その場所が地球だということも。

 

「戦争終結後、ヴァイスインフィニットガンダムが転移した先を追って、俺はこの世界に戻ってきた。俺が戻ってきたのはそのガンダムを確保するためだ。ここにいるジャンヌの大切な友人、レイア・スターライトを奪還するために」

 

 これまでの経緯をすべて話したところで、恐る恐る華穂が元に確かめてくる。

 

「えっと……それどこの異世界転生モノ?」

 

 妹から疑いの目を向けられる。同じく話を聞いていた黎人、そして光姫も同じように信じられないと返す。

 

「バカげている。竜だの機械だの、おまけに象徴だのと。ホラ吹きの言うことだな」

 

「んー……ちょっと流石に精神科に行くことをお勧めするわ……理解が追いつかない」

 

 まぁ予想通りの反応だ。ジャンヌ達の例でも知っているが、今自分達が知っている常識と外れたことを言う人間は高確率でその認識がおかしいと判断しがちだ。ジャンヌもこの世界に来て魔術が存在しないことに大変驚いていたのを見ている。

 一方でそのマキナ・ドランディア現地民代表であるジャンヌは、信じようとしない黎人達の事を非難する。

 

「なんですか。元は本当の事を言っているまでです!なのに信じようとしないだなんて、それでもDNでMSを動かす方々なんですか!」

 

「え、えっと……そう言われても、ジャンヌちゃん?は普通に人間っぽいし……」

 

「そんなに竜の力を持っているというのなら、証拠を見せてみろ。竜の姿にでもなってみてから言ってほしいな」

 

 深絵がやんわりと外見について論じる中、黎人が心のない言葉と無理難題を押し付けてくる。それにジャンヌがキレた。

 

「もう一度その汚らしく無礼な言葉、吐いてみなさいよこの鼠色!」

 

「混ざった状態で言うな。それを言うなら君の方が鼠色に近いだろう」

 

「なっ……!愚弄しますかこの分からず屋っ!!」

 

 醜い言い争いに発展する。このままでは話が進まないと元は2人をなだめようとした。

 

「はぁ……お嬢様落ち着いてください本音が出ていますよ。あとあなたそれでもMSオーダーズの総司令官ですか。もう少し冷静になってくれ」

 

「いいえ、止めないでくださいハジメ!この男はマキナ・ドランディアの威信にかけて処刑します!」

 

「下らん嘘を付くからこうなっている!発言を撤回して本当はどこであの機体を作っていたのか吐けば収まる」

 

「駄目だこりゃ……」

 

 しかし2人の気持ちは収まらずにらみ合う。ジャンヌがこうなると手も付けられない。呆れてお手上げとなる。見ていた華穂が遠慮がちに真偽を問う。

 

「えっとさ……にぃ本当のこと言ったらどう?」

 

「本当も何も、あれが事実だ。誇張一切なく」

 

「んー……いや、確かに別世界から来ているかもとは思ったけど、竜だの言われると信憑性がねぇ……。しかもその世界ではガンダムが救世主って、そんな馬鹿な話」

 

 手詰まりとなってしまう。本当であると言ってるにも関わらず信じてもらえないという辛さと、この国の人間の想像力のなさにあきれる。自分もこの国、この世界出身だが。

 ところがそれを解消する者がこの場に現れる。先程から黙っていたツィーラン氏が口を開いた。

 

「いや、私は信じるよ。彼の話を」

 

「ツィーラン博士!?なぜです?こんな突拍子もない話を……」

 

 ツィーランの発言に耳を疑う黎人。彼だけではなく、光姫や深絵も驚きを露わにする。

 

「ツィーラン博士?正気ですか?」

 

「失礼だよ光姫ちゃん。でも、どうして本当だと思うんですか?」

 

 本当だと思った理由を訊く深絵。元もこんなバカげた話を理解し、本当だと信じる根拠は聞いてみたいところだ。光姫の発言に構わずツィーランは本当だと思った根拠について述べる。

 

「先程元君はマキナ・ドランディアという世界に救世主ガンダムがいると言ったね。実は私は救世主と名乗ったガンダムを以前夢の中で見たことがあるのだよ」

 

「なんですって?」

 

「ガンダムを見たことがあるんですか!?」

 

 元とジャンヌは驚く。未だ元達も救世主ガンダムを絵画でしか見たことがない。それを夢という意識が曖昧な領域でありながら見たという話は注目せざるを得ない。

 博士の話に黎人達もまたどういうことかと言葉の真偽を問いただす。

 

「夢の中で、ですか?」

 

「どういう内容だったんですか?」

 

「うむ。夢の中で、その者は自分が救世主ガンダムだと名乗った。その夢の中でこの世界が次元世界という空間に浮かぶ世界の1つであること、そして私にその次元世界に触れる方法を授けた。その方法を用い、私は次元粒子をこの世界で初めて誕生させたのだ」

 

 この世界で初めて次元粒子、DNに触れたツィーラン・パック博士。その方法もまた救世主ガンダムに教授されたものだった。その点はマキナ・ドランディアの創世記でも語られる話と酷似しており、創世記を知る者達からしてみれば信憑性が高かった。ジャンヌもそれを指摘する。

 

「ガンダムが……私達の世界でも、戦争状態となった竜人族、機人族の先祖たちが救世主ガンダムの導きで竜と機械の力と、ディメンションノイズの力を授かりました」

 

 ジャンヌの話にツィーランが頷く。

 

「そこから私はその救世主に近い姿を作ろうと考えた。そこで教え子の黎人が打ち立てた次世代作業用スーツの開発なら、それに近いものが作れると考えて私はモバイルスーツ開発に協力したのだ」

 

「そのような考えがあったのですね……。ということはもしや」

 

 黎人が言いかけたところでツィーランは2つの事について謝罪する。

 

「そうだ、カラーシリーズはその救世主を模してもらった。そしてすまない。試作グレネード「シード」の搭載は私も半ば容認していた。モバイルスーツがやがて兵器になることは予想できた。だがまさかあのような事態を引き起こしてしまうとは……その謝罪をしたかったんだ。申し訳ない、黒和元君」

 

 ツィーランの謝罪は、カラーシリーズと呼ばれたあの機体達の顔の造形元にしたこと、そして元を事故に巻き込んでしまったことへのものだった。黎人は納得しつつ唸り、元の表情はそのままツィーランを見つめたままだ。華穂とジャンヌが顔を覗き込む。

 分かっている。もし事故に巻き込まれなければと思う気持ちがあるのは承知だ。事故がなければ、華穂とつまらなくも寂しい思いをさせない生活を家族と共に過ごせたかもしれない。だがそれを否定するのはこの2年間の間に過ごしたジャンヌへの想いを裏切ることになる。

 謝罪するツィーランへ、元は語る。

 

「確かに、あの事件がなかったら華穂もこんな危険なMS操縦に手を出すことはなかったかもしれない」

 

「にぃ……」

 

「そうだね。華穂君は君が死んだと聞いて……」

 

「だけど、俺もこのいなかった2年、いや、こっちじゃ5年か。その間に手に入れたものがある。その5年で俺は俺であることを取り戻した。だから何も言わないよ。華穂を巻き込んだことも」

 

 いなくなっている間に得た絆。それは元にとってかけがえのないものだ。その上で怒ることは出来ない。故の不問だった。ジャンヌも覗き込んでいた顔に笑みを作り下がる。元の言葉にツィーランは感謝を述べる。

 

「ありがとう。話を戻そう。それらの経緯から私は彼の話が本当だと信じるよ」

 

 同時に元の話に補強を持たせたツィーラン。恩師からの言葉に流石の黎人も無下にできない様子だ。

 

「うむむ……ですが」

 

 すると先程まで疑っていた華穂が意見を変えて元を擁護する。

 

「私もにぃ、あ、兄さんの言うこと、もしかしたら本当かもしれないと思います。だって兄さんは柚羽さんを亡くしてから彼女なんて作りませんでしたから!」

 

「っ!?」

 

 思わぬ発言にぎょっとする。場違いすぎる発言だがもう遅い。

 

「あらあらっ♪妹さんから彼女だなんて、実質家族からの公認ですねっ」

 

 聞いたジャンヌは先程のあれが嘘だったかのようにご機嫌に。更に深絵も変に視線を向ける。

 

「あ……やっぱり、その子……」

 

「え、あ……いや、うん……まぁ」

 

 なんて爆弾発言しやがる、妹よ。よりにもよって柚羽の事と掛けてジャンヌとの関係を指摘するとは……というか蒼梨さんはなぜそこまで気にするんだ。

 などという心の声を抑えて彼女であるということを濁す中で、光姫が呆れてため息を漏らす。そして進言した。

 

「その反応からして間違いないわね。監視中の時点で随分ご親密だったようだし、柚羽の事をトラウマにしていないとなれば納得だわ。多分本当よ、元の話」

 

「いや、何で彼が付き合っていたらそんな……」

 

 黎人のツッコミがもっともだが、3人は過去の出来事についても知っている。そう言われれば隣に寄り添うパートナーの説明が付かない。それ以上にそれでこの場を乗り切れるのならもういいやと諦めた。とはいえ監視中のという話はどこまで聞いていたのか、どこを聞いていたのかと気になるところだが。最悪口止めしたい。

 そのやり取りを見てツィーランが笑いを掛ける。

 

「ふふふ。これは決まってしまったかな。MSオーダーズの隊長格が信用しているし」

 

「い、いえ、まだ深絵君が……」

 

「いや、私も信じる。……信じざるを得ないかな」

 

「…………バカげている……はぁ」

 

 流れは完全にこちらにあった。やがて黎人は決定を口にした。

 

「分かった。君の言うことを信じよう」

 

「あ、あぁ。ありがとう……?」

 

 それを交わしたお互い、微妙な雰囲気ではあったが。

 

 

NEXT EPISODE

 




EPISODE5はここまでです。続くEPISODE6で今年は締めたいと思います。

ネイ「元さんと黎人さん……なんか不憫ですよね」

グリーフィア「んー、まぁ私達グラン・ロロの世界の人達は割とすんなり別世界の話は受け入れられるけど、でもこうして納得されたからいいんじゃないのー?」

グラン・ロロは……うん、本当にあれ最終的にどんな終わり方迎えるんでしょうね、バトスピ背景世界(´・ω・`)とはいえツィーラン博士の言葉もなければ信じてもらえず、互いに後味の悪い別れ方になっていたでしょう。

ネイ「確かに。でもガンダムが夢の中に現れるって……偶然にしては凄いですね」

グリーフィア「偶然じゃなかったりしてね♪救世主ガンダムが一体どんな存在なのか、まだ完全に分かってはいないことだし」

といったところでEPISODE6へ続きます。


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EPISODE6 オーダーズ・ネスト2

どうも皆様。引き続きご覧の方は改めまして、作者の藤和木 士です。

レイ「アシスタントのレイだよー。いよいよ2019年も最後!」

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです。ガンダムDN、二回目の年越しですね」

流石にまた番外編盛り込む気はなかったよ……(´・ω・`)バレンタイン辺りにまた番外編投稿するつもりだけども。さて続くEPISODE6も更新です。

レイ「無事話を信じてもらえたね。てことは後は……」

ジャンヌ「協力の取り付け、でしょうかね?」

そうです。お互い条件を呑んで協力態勢を取れるのでしょうか?それでは本編へ!


 

 

 何とか事情を理解してもらうことが出来たことで。話し合いは次に移る。MSオーダーズの総司令、レイトからハジメに要請される。

 

「それじゃあ本題に入ろう。君達の力、君達のMS、シュバルトゼロガンダムの力を我々に貸してもらいたい。技術的なものに加えて、そのMSを扱う君達の腕を見込んでの事だ」

 

 頼み込まれたのはこの世界の戦いに協力してほしいとのことだった。シュバルトゼロガンダムの性能を高く買っている証拠だ。ミツキが協力に関する詳細、レイトの補足を行う。

 

「協力してくれる見返りとしては、ここに連れてこられた理由の1つ、MS所持法違反の特例による取り消しね。でもさっきの話で、そっちは白いガンダム、ヴァイスインフィニットだったかしら。その機体を探して、人質を救出したいってことだったわね?」

 

「あぁ、そうだ」

 

 ミツキからの問いにハジメは頷く。自分達は宿敵ヴァイスインフィニットを追いかけてここまで来た。最愛の友人レイアを取り戻すために、ジャンヌはハジメにせがんで1年半待ってもらったのだ。レイアの両親には悪いことをしてしまった。あぁなってしまったことを、レイアは怒るかもしれない。

 それを表に出さず、ジャンヌはミツキ達の決定を聞く。

 

「おそらく次元崩壊が絡んでいるのは間違いない。この5年で次元崩壊の発生が多数検知されている。そのうちの1つがヴァイスインフィニットを招き入れたというのは充分にあり得る」

 

「それで、協力して頂けますか?」

 

 レイア捜索への協力、果たして取り付けることが出来るだろうか。不安が過る中、レイトとミツキは見合って頷く。

 

「あぁ、協力しよう。いや、協力させてほしい」

 

「本当ですか!ありがとうございます!!」

 

 待望にしていた言葉を聞き、飛び跳ねるように喜ぶジャンヌ。先程の流れとは随分違う即決が少しばかり気になったが、それでも今は喜びの方が重要だ。目的を果たせることに歓喜する一方、ハジメはその理由について問う。

 

「随分さっきまでとは違うな。何か理由があるのか?」

 

 するとミツキ達が答える。

 

「先程までの話を信じると、そうならざるを得ない」

 

「ヴァイスインフィニットってガンダムが本当にいるなら、あなたのガンダムと同じ力を持つ。もし次元覇院に取られていたら……いいえ、最悪取られていることを考慮しなければいけないから」

 

「!」

 

 その発言を耳にして、ジャンヌも気付いた。次元覇院がその力を手にしていたら、敵になっていたとしたら最悪の事態になる。それを回避するにも、あるいは突破する為にはガンダムとMSオーダーズ両方が協力しなければならない。それを想定して彼らは自分達の要求を呑むというのだ。

 信じたくない予感。だがそんな可能性がわずかにあることをハジメが過去の事例と照らし合わせて語る。

 

「そうか。そういうことか」

 

「にぃ、どうしたの?」

 

「ハジメ?」

 

 カホとジャンヌ、2人が注目する。ハジメはレイト達にスターターからとあるデータを見せながらそれを語った。

 

「次元覇院のMS、マキインと言ったか。あの機体をこっちのガンダムが捕捉した時、俺達の世界にいたとあるMSと間違えて認識していた。マキナートと呼ばれる、機人族の国家が使用する機体だ」

 

「……!そうです。マキナートと間違えて認識していました!顔が全く違うのにおかしいなってことで一から登録し直しています」

 

 ジャンヌも思い出す。最初は故障かそもそも次元を超えれていないのかと思ったが、そんなこともなく機体データをインプットする羽目になった。

 

「それで、これがどういうことを示すんだ?」

 

 データを指して言葉を返すレイト。ハジメはその驚くべき結論を説明する。

 

「観測したところ、マキインってあの機体は、パーツの7割がマキナートと同じ機体だったんだ。ヴァイスインフィニットは一度マキナートの開発国マキナスの軍事施設を襲っている。その時に機体データと武装が盗まれていた」

 

「そうか。つまりもう、ヴァイスインフィニットは次元覇院の手にある可能性が高いと」

 

 ツィーラン博士が気づく。ハジメも頷いた。ヴァイスインフィニットが既に敵の手に落ちていたとしたら、データの誤認識も納得できる。聴いていたミツキ達の表情が苦しいものとなる。ジャンヌも初めて聞いた可能性に緊張感が高まる。本当なら次元覇院との対決は避けられない。

 重くなる空気の中でレイトが結論を出す。

 

「つまりだ。僕らは君達の力が何としても必要だ。君達はどうだ?」

 

「……いくらシュバルトゼロガンダムが救世主と同一視されていたとはいえ、探し出すのは難しいし、何度も戦闘を繰り返すことを考えると持ってきた武装でも足りない」

 

「じゃあ、道は互いに1つね」

 

 ミツキの指摘はもっともだ。ハジメもレイトも頷きその手を交わす。

 

「君達の事は全力でサポートしよう」

 

「俺達も協力できることには答える」

 

 互いの利害が一致した。ミエが言った。

 

「うん、これで2人はMSオーダーズ所属決定だね!」

 

「そういうことになるな。よろしく頼む」

 

「この世界に来て、まだよく分からないことも多いので、よろしくお願いします」

 

 ハジメに続いてジャンヌも頭を下げる。協力体制が決定したところでレイトが立ち上がる。協力することを決めた2人にこの後について告げる。

 

「よし、なら今日はここまでだ。君達2人の部屋を用意させよう。それから明日、2人には身体検査を受けてもらう」

 

「し、身体検査って?」

 

 ジャンヌの表情が強張る。反応を見てレイトは首をかしげる。

 

「体調に異常がないかと、後は竜人族の体組織について調べるためだが……それがどうし」

 

「っ!!」

 

 咄嗟にハジメに抱き付く。ハジメはすぐにジャンヌの気持ちを察し、もう1つの条件について明示する。

 

「一応、もう1つ条件としてジャンヌに対しての被検体扱いはやめてほしいと言ったはずだが?」

 

「それは承知している。だが政府へ上げる特例許可のための報告書と今後疾患を患った時の対策を考慮せねばならん。大丈夫だ、実験体なんて胸糞悪い事はさせない。それにあくまでサンプルを採取するだけだ」

 

 レイトは心配ないと語る。おそらくそれに偽りはないのだろう。だがジャンヌはそれを由としない理由を明かす。

 

「でも……ハジメ以外の男の人に、身体の隅々まで見られるなんて!」

 

「え?」

 

「あーそういうことね」

 

 ジャンヌの嫌悪する理由にレイトが呆然とする。対してミツキ以下女性陣はその意図を理解していた。ジャンヌも乙女であり、好意を抱く男性以外に自分の体を見て欲しくなかった。故に体を弄られるのも嫌なため、それを条件に出したのだった。

 そんなジャンヌの気持ちを思ってか、ミツキやミエもレイトにサンプル採取に意見する。

 

「レイト、いくら科学者のあなたでも他の女の子に熱心になるのはどうかと思うんだけど?」

 

「い、いや、そんなやましいことは何も……」

 

「それでも多少は考えた方がいいかな。仮にも君は光姫ちゃんの……」

 

「だぁぁ!……分かった。検診は女性に、あと光姫と深絵君が付き添う形で行ってもらう。ただしデータのまとめは僕がやる。それでいいか!?」

 

 2人の圧に負ける形でそう提案するレイト。それならばまだ多少は気恥ずかしさもない。頷き、了解を行うジャンヌ。

 

「えぇ。それなら構いませんよ」

 

 ようやく得られた了解にレイトは疲れ気味にため息を吐く。どれだけ迷惑が掛かっても、これは自身の気持ちだ。自分の身は自身を変えてしまったハジメにだけ真っすぐ見てもらいたい。それがまだいざとなると凄んでしまう、少女のポリシーなのであった。

 

 

 

 

「ママー、おわったー?」

 

 取り決めが終わり、施設案内をしてもらうべく席を立ったところで部屋に1人の少女が入ってくる。まだ小学生にも満たないような身長の少女で、母親を探しに来たようだった。続けて入ってきた世話係と思われる女性隊員が呼び止める。

 

「こら、光巴ちゃん勝手に入っちゃダメよ?」

 

「あぁ、もう大丈夫だから気にしないで」

 

 光姫が構わないと言い、その少女を抱く。おそらく基地の隊員の子どもだろう。一体誰の子どもだろうかと元が思っていると、思わぬ事実が判明する。

 

「はいはい、終わったわよ光巴~。もう寝なきゃダメでしょ?」

 

「えへへ~、パパとママのことまってたのー」

 

「…………は?」

 

 呆ける元。ジャンヌはその状況を飲み込み、光姫にその事実を確かめた。

 

「あら、もしかしてミツキさんとレイトさんのお子さんですか?」

 

「えぇ。そうよ」

 

「光巴という。僕らの第1子だよ」

 

 唐突に判明する事実。あまりにも衝撃的で元は叫ぶ。

 

「はぁ!?結婚してるのは分かるけど、子ども出来てたのか!?いつ!?」

 

「にぃ、落ち着いて。驚くのも無理ないけど」

 

 妹に驚きを宥められる。だがこんな事実驚かないという方が無理な話だ。声に驚く愛娘を抱き抱えながら、光姫が元の質問に答えた。

 

「実は成人式の時点で妊娠はしてたみたいなの。あなたの事件でばたばたしている間に分かって、すぐに結婚式挙げたのよ」

 

「あの時点でか……。大体いつ行為に及んだのかは想像できるが……何というかその……お熱いことで」

 

 元の本音が漏れる。直球な感想に光姫も嫌悪感を示す。

 

「ちょっと、どういう意味よ?」

 

「いやごめん。ちょっと冷静に判断できていなかった。ともかく子どもいるのに前線出ないといけないのって大変じゃないか?」

 

 話を逸らす意味で疑問をぶつける。すると深絵がそれを凄い勢いで肯定する。

 

「そうだよそうだよ!最近光姫ちゃんも光巴ちゃんが心配なのか集中力切れることあるし、MSオーダーズも安定軌道に乗ってきたんだから引退して子育てに集中してもらいたいんだけどね」

 

「まだ降りないわよ、私は。安定するようになってもまだ平和じゃない。光巴達の世代が安心して暮らせるように、戦い続けなきゃ。それより光巴がMSに興味を持つようになってるのが気掛かりよ……」

 

 深絵の言葉を否定し、我が子の頭を撫でる光姫。抱えているものがある限り、光姫の戦いは終わらないようだ。深絵の心配も納得できる。

 そんなことも知らず、光巴は目に入った新しい者達に声を掛けていた。

 

「ねー、おねーちゃんとおにーちゃんはパパとママのあたらしいおなかまさんなのー?」

 

「こら、光巴!」

 

「え?えぇ。ジャンヌ・ファーフニルと言います。よろしくお願いします」

 

 唐突な声掛けに戸惑うも、以前から随分と様変わりした素直な笑みで自己紹介するジャンヌ。出会ったころとは大きく違うと思いながらも元も光姫の娘に挨拶する。

 

「黒和元。そこにいる黒和華穂のお兄ちゃんだ」

 

「あーかほおねーちゃんのおにーさんなんだ!わたしはじげんみつはだよ。じゃんぬおねーちゃん、はじめおにーちゃん!」

 

 幼いながらも律義に挨拶をする光巴。しっかりとした子どもという印象を感じる。親が司令官ということで躾がきちんとされているのかもしれない。光姫も我が子を褒める。

 

「よしよし、ちゃんと挨拶してえらいわよ。でももう寝ましょうね?話すのはまた明日」

 

「うー、はーいママ」

 

「じゃ、私は寝かしつけてくるから。深絵と華穂は2人の部屋の案内よろしくね」

 

「了解~」

 

「任せておいてください」

 

 そう言って光姫は世話係と共に部屋を出る。同じタイミングでツィーラン博士も帰ることを伝える。

 

「それじゃあ、私も帰ることにしよう飛行機がそろそろなのでな」

 

「でしたら護衛を付けましょう。先生は次元覇院に狙われかねない人物ですから」

 

「そうかい?すまないね。では元君、ジャンヌ君。また会う時に」

 

 元達に別れを告げてツィーランもその場を後にした。そして元達もまた部屋を出ることになる。黎人が深絵と華穂に、光姫が言っていたように2人の案内を要請する。

 

「それじゃあ、深絵君、華穂君。彼らの案内を頼んだ」

 

「了解です」

 

「分かりました。にぃ、ジャンヌさん行くよ」

 

「あぁ」

 

「はい」

 

 深絵達の後に続いて元達は司令官室から退室する。どっとため息が出る。ようやくこの世界での足掛かりは出来たと言えるだろう。当初の予定とは違ったが、いい流れであることには違いない。むしろその当初の流れよりスムーズかもしれない。だがいずれにせよ考えなければならないことはあった。

 それでも安心したのは華穂が元気にやっているということだ。MSのパイロットとなっていたことには思う所はあるが。華穂の後ろ姿を見て呟く。

 

「……大人になったな」

 

「ん?何か言った?」

 

「いや、何でも」

 

「?何かセクハラっぽいこと言われたような気もするけど……」

 

 疑い深く睨む妹。これも懐かしい。それに決してそんなやましさを前面に出したわけではなく、簡単に言うと綺麗になったという意味だった。昔の面影を残しつつも女性らしい魅力を持つようになった。昔から思っていたが華穂は美少女という部類にあたった。ある一部分を除いても十分だろう。元自身は気にしない。

 そんな妹に感づかれないよう、元は先を行くように言う。

 

「さ、そんなこと思ってないで部屋に案内頼むよ。華穂に聞きたいこととかもあるからな」

 

「むー……なんか怪しい」

 

「怪しくない」

 

 2年以来となるやり取りに懐かしさを感じながら部屋へと向かった。

 

 

 

 

 最悪だ。東響の街の廃ビルでデータを見ていた男は思う。先程の戦闘で男の抱える部隊の半数が壊滅した。原因は無論、あの黒いガンダムだ。MSオーダーズより先に手に入れろと本部から通達され、上手く行けば東日本支部代表に上り詰められる大きな仕事に男は全力で当たった。だが結果はどうだろうか。半数を失い、大損害を受けた。このままでは男の組織における評価が落ちるのは目に見えている。

 

(そもそも私の部隊だけでやること自体バカげているのだ……!もっと早くあの場所に黒のガンダムのパイロットが居ることをスパイが伝えていれば!)

 

 MSオーダーズに潜入させていたスパイからの情報で黒のガンダムを捕らえようとしていた男は、既に展開するMSオーダーズのMSを確認して殲滅へと切り替えた。その結果があの惨状だ。

 作戦を達成できなかった自身の不甲斐なさを部隊の情けなさに転嫁し、自棄になってアルコール類に手を伸ばす。するとそのタイミングで通信が入る。通話画面に映ったのは話していたスパイの女だった。

 

『支部長』

 

「貴様……よく顔を出せるな、ええ?おかげで私の支部の戦力はズタボロだ!貴様のせいだぞ!どう責任を取るつもりだ」

 

 怒りのままにスパイへ罪を着せる。がスパイは動じることなく冷徹な口調で支部長に命令する。

 

『責任?貴方が指揮する貴方の部隊の失態を、なぜ本部からの指示で直々に入り込んでいる私が取らねばならない。下請けの組織末端風情が調子に乗るな。それよりも機体を出せ』

 

「生意気なことを言うんじゃない!そんなバカげた話があるか!私は……」

 

『ほう、その挽回のチャンスがあると聞いてもか?』

 

 降りることを伝えようとした矢先、スパイは気になることを口にした。どういうことかと冷静さを戻して問い詰める。

 

「……どのような用件だ」

 

『簡単だ。オーダーズの要人を1人「護送」する。派手にやるつもりだが迎えが欲しい』

 

「要人?一体誰だ」

 

 作戦目標を聞く。スパイは笑みと共に目標を語る。

 

 

 

 

『―――――ターゲットはMSオーダーズ司令官夫妻の息女、次元光巴だ。彼女を人質にして、ガンダムを明け渡してもらう。人質交換、というわけさ』

 

 スパイの悪魔的考えに、次元覇院の男はほくそ笑む。まさにそれは神が与えた大逆転劇、というものだったと感じ、すぐさま準備に取り掛かるのであった。

 

 

NEXT EPISODE

 




今年も最後までお読みいただきありがとうございます。来年も引き続き投稿できるといいなと思っております。

レイ「ジャンヌ・Fちゃん率直だねー」

ジャンヌ「モデル元のわたくしも、同じですからっ」

あはは、アシスタント設定の際に少し変更しているけどね……。

ジャンヌ「ふふっ。でもここで初登場の光姫さん達のお子さんの光巴さん、いきなり狙われそうですね」

レイ「そうだよそうだよー!まだ騒ぎは終わりにならなさそう!次元覇院に対して、元君の怒りもマックスになること間違いなし!だろうし」

そんな気になる展開を残して、今年はこれにて終了となります。

ジャンヌ「次回も、そして来年もよろしくお願いしますっ」


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EPISODE7 オーダーズ・ネスト3

どうも、皆様。あけましておめでとうございます。作者の藤和木 士です。

ネイ「アシスタントのネイです。あけましておめでとうございます」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよぉ。今年もよろしく~」

さて、では今回はEPISODE7の公開となります。

グリーフィア「随分と空いた気がするわねぇ。前は次元覇院が変な企み事してる場面で終わったのよねぇ」

ネイ「なんか心配です。新年からそんな展開で」

さぁ企みがどんな形で現実となってしまうのか?それでは本編へ!


 

 

 元とジャンヌの2人はMSオーダーズの宿舎まで案内される。宿舎の3階、階段を出てすぐ左右の部屋に2人はそれぞれ案内された。深絵が部屋の説明を行う。

 

「ここの2つが2人の部屋。右が男子寮の端で左が女子寮の端。って言っても一応行き来は制限されていないよ。それでこっちの広い場所が休憩スペース兼コミュニティスペース。階の仲間達と話したりとかできるよ。もっとも、この最上階の方は主力チーム隊長の私と華穂ちゃん、それから各分野の大隊長クラスくらいしかいないんだけどね」

 

 部屋の扉を開く。すると1人用にしては割と広い部屋がそこにはあった。奥にシングルベッド、手前にテーブル、デスク、イス、更にテレビとエアコン完備とかなり豪勢な設備が整っていた。それらを含めてもまだ部屋には余裕がある。その広さにジャンヌが驚く。

 

「わっ、すごい設備です」

 

「一人暮らしの学生がうらやむ理想の部屋って感じだな。それを貸してもらえるなんて」

 

 元も部屋の設備を素晴らしいと称する。暮らしている本人である華穂も太鼓判を押す。

 

「そうそう!にぃ達は今後のMSオーダーズに必要な人材だからね!これくらいサービスしないと!」

 

「華穂ちゃんは色々家具とかも置いて満喫しているね。私達以外にもこの階の部屋を使っている人もいるから、挨拶とかは追々ね。まずは荷物を置いて、休憩スペースまで来てくれるかな?」

 

「分かりました。ではハジメ、また後程」

 

 ジャンヌは言って部屋を出る。元も簡単に身支度だけを済ませて部屋を出ようとカバンの中をひっかき出す。すると、重いものがカバンから出た。

 

「…………あ」

 

 見て、硬直する。それは札束。2つの一定数集まった物を束ねたその塊は、この1週間元がDNL能力を使用し稼いだものだった。

 MSオーダーズに引き取られることで使わなくてもよさそうな大金は、今非常に使い勝手に困る塊へと変貌した。固まる元に気づき、部屋を出ようとしていた華穂が声を掛ける。

 

「ん?にぃどうしたの?あ、まさかエロほ……」

 

「アホ!ちゃうわ!それよりもっと露骨で、扱いに困るものだ!見ろ!」

 

 思わず出てしまった訛りと共に札束を見せる。それを見て華穂と騒ぎに気づいた深絵が首をかしげる。

 

「えーと、お金だね。しかもこんなに」

 

「あー……そういえばギャンブルして稼いでいたんだよね。それがどうしたの?あ、私達に引き取られたから使わないってことかな?」

 

「んー別にそのままでいいと思うんだけど……というか、にぃってそんな轟運の持ち主だっけ?」

 

 華穂が疑いの目を向ける。そうある意味では法の1つに抵触しかねないことをやっている。とはいえ説明がまた問題だった。元は大雑把に適切な説明をする。

 

「あー、まー簡単に言うと、俺の能力の1つ?」

 

「能力ぅ?轟運が?」

 

「えっと……ごめん、さっきのマキナ・なんとかの話と同じで、何言ってるか分かんない……」

 

 2人とも理解が追いついていない。信じていない。こればっかりは実際に見せないといけないが、今やるより明日まとめて行った方が早いと判断し、2人には簡潔に要点だけ伝えて明日詳細を語るとした。

 

「簡単に言うとDN、次元粒子に関わる力だ。詳しいことは明日の検査で言う」

 

「そ、そう?ごめん、私達の理解が足らなくて……」

 

「なんていうか、にぃが色々滅茶苦茶すごい高校生デビューしたみたい……」

 

「いや、大丈夫だ。俺もこの力を手に入れたのは偶然、いや、ある意味必然か。ともかく明日詳しく話すよ。さ、行こう行こう」

 

 そう言って2人を部屋の外へと出す。スターターだけを懐に入れた状態で、元も外に出て休憩スペースへ向かう。すると、スペースに見覚えのある男性を見つける。

 

「ん?あ」

 

「これは深絵隊長、華穂君。と、あの時の彼か」

 

 休憩スペースにいたのは、先程の連行時、元達を確保しようとしたあの捜査官だった。飲み物を入れた紙コップを持って軽く挨拶をする。

 

「紹介するね。捜査部の「葉隠 閃」さん。元君みたいな人を探し出したり、いろんな情報を集めたりする諜報部担当の隊長だよ。彼もここの住人なんだ」

 

 深絵の紹介を受けて閃という人物の顔を見る。先程のやり取りをした直後の為、お互いに気まずさを漂わせる。それに深絵も首を傾げた。

 

「………………」

 

「………………」

 

「あー、あれ?」

 

「いや、深絵さん。さっきこの2人戦ったから」

 

 華穂のツッコミにポンと手を叩く深絵。葉隠 閃はため息を吐く。

 

「相変わらずですね、深絵さんは。楽観的と言いますか……」

 

「あはは……ごめんなさい。でも葉隠さんすごいんだよ?忍者さんなんだから!」

 

「忍者?」

 

 深絵の言葉にジャンヌが首をかしげる。そういえばドラグディアには忍者の文化はなかったのだったか。元はジャンヌに分かる様に説明する。

 

「日本の昔にいた、スパイのようなものです。暗殺や護衛もやっていたらしいですが」

 

「なるほど、ローレインさんのような人ということですね」

 

「ま、そう言うことです」

 

 言われて気付く。確かにローレインの仕事は忍者に近かっただろう。事情を知らない深絵達はそんな人物がいたのだと理解し、話を続ける。

 

「閃さん以外にも開発部とかの人もいるから、そういった人達は会った時にまた紹介するね」

 

「というか閃さんはこれから休みですか?」

 

「そうだ。まったく、同行を要請して暴れられたら敵わないというのに……こんなやつと戦うなんて、司令も何を考えているのやら……」

 

 言って閃はその場を離れる。感じの悪い後ろ姿にジャンヌは文句を呟く。

 

「もう……!なんですか、あれは!」

 

「そう言わない。事情を知らなかったとはいえ、こっちが先に手を出したようなもんだからな」

 

 ジャンヌを叱る。あまり元もこういった時に先に言うのは得意でない。だが元はその後ろ姿に向けて言う。

 

「でもこっちも悪かったですよ。こっちは自分達の事を優先してしまっていた。事情を知らなかったとはいえね」

 

「ふん」

 

 だが答えることもしないまま閃は自室へ戻る。その姿を見て頭を抱える深絵と不満げな華穂。2人とも元への態度に不平を漏らす。

 

「あぁ……閃さんすごい真面目だから……。本当は面倒見もいい人なんだけど」

 

「もう!お互いやろうとしていたことがあったんだから、仕方ないって割り切ればいいのに!……そういえば、にぃのやろうとしていたことって何だったの?」

 

 ふと華穂がその事について訊いてくる。そういえば、まだあの頃の行動目的について明かしていない部分があった。華穂の問いかけに説明することを了承した。

 

「あぁ、話すよ。あの時の事」

 

 自販機から飲み物を買って、休憩スペースにてジャンヌを交えてその時の考えを語った。故郷の三枝がカルト集団の本拠点的な立場にあり、華穂や家族が心配となったこと、確認次第可能ならMSオーダーズに身柄を任せて自身も可能ならMSオーダーズに付くことを。

 元の話を聞いて、華穂が項垂れる。気付いて声を掛けた。

 

「………………」

 

「華穂?」

 

「……ごめん。父さんと母さんは、多分もうこっち側には来れないと思う」

 

 華穂の口から呟かれた、謝罪の言葉。両親達は来られないという話にまさかと思う元。すぐにその真偽を問う。

 

「来られないって、まさか2人とも……」

 

「違うの。死んではいない、と思う。母さんは少なくとも」

 

 華穂は首を振って両親が死んでいないことを発現する。ならば一体どういうことなのか。華穂の重い口からその根拠となる、華穂がMSオーダーズ入隊までの経緯が語られた。

 元が消えた後、母が宗教に傾倒した。それも母方の家が信仰していた宗教であり、次元覇院設立の礎ともなった宗教だ。母は母の妹が行った洗脳により変貌。しばらく家を出てから変わり果てた精神状態で家へと帰って来たのだという。母は激しいテンションと沈静状態を繰り返し、神を信仰しなければ家族全体に神からの災いが降り注ぐと連呼した。父が止めようと試みたが、まったく言葉を聞く気配がなかったという。

 

「父さんは母さんを元に戻そうとしてたんだけど、精神病院でも手に負えない位だったんだ。そこに母さんの家の人が教団の人と一緒に来て、病院の人達の言葉も聞かずに父さんを非難したんだ」

 

 教団の人間は父が母を苦しめているとして病院の者達に言ったという。無茶苦茶だが教団の支部長と名乗る人物は多人数で担当医を威圧し、診断を取り消させた。そして支部長は父と華穂に言ったという。華穂が教団の跡継ぎと結婚しろと。華穂はその時の状況を思い返した。

 

「怖かった……好きでもない人と結婚しろって言ってきて、しかもそうしないと不幸が降りかかるなんて言ってきたんだよ……。相手の顔を見て更にぞっとした。だから私は家から出たんだ。行く先はなかった。でも逃げなきゃって」

 

「それが丁度、私がMSオーダーズ入隊のために家に帰ってきた時と被ってね。話を聞いて、光姫ちゃんと相談して私が華穂ちゃんを東響まで連れて来たんだ。あの時の華穂ちゃん、本当に恐怖で縮こまっててかわいそうだって思ったよ」

 

 深絵からもその時の状況を語られる。話す華穂の表情を見て分かる。5年近く経っていても、まだ恐怖を感じる。恐かっただろうに。もし深絵がいなかったらと思うとぞっとする。隣で聞いていたジャンヌも怒りを堪えていた。

 もう離してもらうのをやめさせようと思ったが、華穂は続けた。

 

「華穂、もう」

 

「でも、深絵さんの、MSオーダーズの人が私を救ってくれた。高校の転校手続きとか居場所をくれた。MSの操縦も教わった。いつか父さんたちを助けられるようにっていうのと、にぃが喜んでくれるかなって思って」

 

 恐怖を振り払うように言った華穂。その顔には涙を浮かべていたが、笑顔を形作っていた。彼女にとって、彼女自身を作り上げたこともまた事実だった。あの頃の生意気だった妹からは思いもしない志に元も感慨に至る。

 

「そうか。そう思ってくれていたんだな」

 

「そうだよ。だから少しだけ、黙っていて―――――」

 

 立った妹はそのままノータイムで元の胸に顔をうずめた。いきなりの行動にジャンヌの視線がショックを受けた痛いものになり、元も困惑する。

 

「え、か、華穂!?」

 

 どうしたんだと聞こうとする前に胸元からくぐもった声が聞こえる。

 

「にぃ……にぃ!生きてるなら、もっと早く会いに来てよ……!」

 

 聞こえてくる愁傷の声。それは居なくなったと思っていた元への悲しみを堪え続けて来た妹の叫びだった。周りに血のつながった家族が誰もいない。それが20歳になった今でもずっと心の中で縋りたくても縋れなかった妹の願いでもあったのだろう。

 元はギュッと抱きしめる。そして謝罪した。

 

「……ごめんな、一人にして。もうここにいるからな」

 

「う……うぅぅ……!」

 

 妹はただただ泣く。これまでの悲哀の気持ちをすべて吐き出すように。それを受け止める元は思う。いつもからかっていた妹もいない間に頑張ってきたのだと。今はただ、その悲しみを受け止めていた。

 

 

 

 

 その光景を見て、ジャンヌの心はあまり良い気はしなかった。ハジメの妹が人目もはばからず泣きつく姿に対してだ。しかしだからといって彼女の悲しみが分からないわけではまったくない。

 自分も政府という巨大な存在と戦った。彼らは自分達の権益を国の権益だと謳い、ファーフニル家とフリード家を苦しめ続けた。自分もその運命から逃れられないと諦めた。だがハジメの想いと過去に触れて再起した。だけどもしそこで諦めていたら?呪いは妹に移ったのではと一度思ったことがあった。出発直前で喧嘩こそしたが妹の事は大切だ。移ってしまっていたら、きっと激しい後悔をしただろう。同じ妹を持つ者、妹である者として、ハジメやカホの気持ちが痛いほど分かった。

 だからこそ芽生えた気持ちに罪悪感を抱きつつも、ハジメに伝えた。

 

「ハジメ?何しているんですかぁ?」

 

 ねっとりと、恐怖と羨望を込めた声。ハジメもそれに気づいて弁明する。

 

「っ!?ジャンヌ、すまない。その」

 

「なぁにを謝っているんですかぁ?妹を泣かせるなんて、兄としていけないことですよぉ?」

 

「え」

 

 ハジメの疑問を聞く前にジャンヌはカホへと手を伸ばす。頭と腰にそれぞれ手を回し、大切に扱うように擦る。

 

「ごめんなさい、ハジメを待たせてしまって。でもハジメはもうあなたのもとにいるから」

 

「うぅ……はい」

 

 少しだけ胸が痛い。でも言わなければならないと思ったから言った。遅らせてしまった原因は自分にあると自覚したから。助けてもらったことへの恩返しだ。

 自分の独占欲を抑えて言葉を掛けるジャンヌへハジメは礼を言う。

 

「ジャンヌ、ありがとう」

 

「後で私も甘えますから、覚悟しておいてくださいよ?」

 

「……分かった」

 

「うー……私だけ仲間はずれ感がすごい……私も華穂ちゃんを助けたし、これからも助けるよー!」

 

 仲間はずれは嫌だとミエも抱き付いてくる。カホだけではなくハジメやジャンヌもまとめてのハグだ。百合とも呼べるかもしれない光景となっていた。

 すると、階段の方から声が掛けられた。

 

「あ、深絵さん。ってその人達ってもしや?」

 

 顔を向けると、そこにはミエたちが着る制服を油か何かで所々汚したポニーテールの女性がいた。ジャンヌは無論、ハジメも名前を発さない女性だがミエとカホはその人物に親しい様子で返答する。

 

「っとと、真希ちゃん整備お疲れ様でーす」

 

「お疲れ様です真希さん。あ、にぃとジャンヌさんは初めてだったよね。うちのMS整備長の来馬 真希さん。真希さん、こちら私の兄でガンダムパイロットの……」

 

「どーもー。来馬でっす。真希って呼んでもいいよ。君らがあのガンダムのパイロットかぁ。よろしくね」

 

 マキと名乗った女性は進んで手を差し出す。驚いたものの、ハジメの後にジャンヌもその握手を交わす。

 

「黒和元です。華穂の兄です」

 

「ジャンヌ・ファーフニル、シュバルトゼロのサブパイロットですっ」

 

 2人の紹介にうんうんと頷くマキ。こちらの気持ちを察し、その感想を述べた。

 

「流石華穂ちゃんのお兄さん、クールだねぇ。ジャンヌちゃんは少し力入っちゃってるのかな。でもすごい可愛い~」

 

 マキは躊躇うことなくジャンヌに対し両腕を大きく広げて思い切り抱き込んでくる。唐突なスキンシップにジャンヌも戸惑いを通り越して混乱して絶叫する。

 

「へ!?ちょっ……や、やだ!ハジメェ!!」

 

「やーこんなアルビノ色の髪色珍しいよぉ~。しかもこの感じ元君とお揃い?え、何元君わざわざ寄せたの?ラブラブねー!」

 

 凄まじいまでの髪への押しを見せるマキ。その手から逃れようとしても離せない。その上ハジメもジャンヌを助けることなく、マキからの質問に平然と答える始末だ。

 

「いや、俺の髪色変わったのは事実ですが、こっちが突然変異しちゃった感じですね。とはいえ、色はほぼ同色と言われているんですが」

 

「あーそうなんだぁ。でもそれでお揃って運命的じゃん~♡」

 

「あうぅ……は、ハジメっ!助けてよッ!」

 

 押し付けられる豊満な胸元に怒りがこもり助けを求める。見ていたハジメも流石にとマキにそろそろやめるようにと申し伝えた。

 

「あー、すみませんそろそろ……ジャンヌがブチ切れます」

 

「そっか。ごめんごめん。ちょっと久々に綺麗なプラチナブロンド寄りの銀髪見たから、つい♪」

 

 舌をペロッと出して茶化すマキ。しかしジャンヌもいきなり抱きしめられて少々どころかかなり腹を立てていた。

 

「だからってあんなに抱きしめなくていいじゃないですか!後ハジメ!なんで助けなかったの!」

 

「すみません。ですが少々ジャンヌもこちらの世界の人達に慣れてもらう方がいいかと思いまして。色々な種類の人間がこちらにもいるというのを知っておくほうがいいかなと」

 

「もうっ!せっかくのセットが……」

 

 もっともらしい言い訳をするハジメを髪がやや乱れた状態で睨む。顔を背けて髪を手で梳く。ウェーブは元々の髪質なため問題ないが、それでも髪が痛むというもの。止められなかった者と止めなかった者の二人に苛立ちを募らせる。

 髪を整える傍ら、マキが機体について話す。

 

「そういえば機体は?まだこっちに来てなかったみたいだけど……」

 

「あ、そうだった!にぃ、機体を装依するためのバックルはあるの?」

 

「バックル?あぁ、スターターの事か。一応預かってもらった方がいいって感じか?」

 

 元はスターターを見せて確認を取る。よく考えればMS所持法違反は解けそうとはいえまだ特例試行前。それにいち早いMS解析もしたいのだろう。それを見てマキは顎に手を当て、見立てを立てる。

 

「うぅん……結構違うタイプのセットバックルだね」

 

「というより、こことは別世界の、そのセットバックルというものとも違う装依装置ですからね。システムが機能してくれるかどうか……」

 

「あーそんな事情もあるのか……。もしかすると解析に時間かかるかもだね……」

 

 もしかすると解析に時間が掛かるかもしれないと語るマキ。システム的な違いがあるというのはジャンヌにも分かった。でも最悪そういったシステム合わせを「スタート」ならやってくれるかもしれない。

最近はジャンヌの機体制御の慣れもあってか表に出てこない「元英雄」。その存在が出てくるのはいつになるか。だがそんな呑気な考えを崩す自体が訪れた。

 

 

 

 突如建物全体に警報が響き渡る。更に基地内からと思われる爆発のような音が聞こえ、建物をわずかに振動させた。緊急を感じさせる事態にジャンヌ達も何事かと騒ぐ。

 

「な、何です今の!?」

 

「爆発……?」

 

 顔を見合わせるマキとカホは状況を予測する。

 

「ただ事じゃあないね……この警報も」

 

「はい。多分事故とかじゃないかと……」

 

 事故ではない。となれば想定できる事情は限られる。続いて放送によって流れた内容に彼女達は絶句する。

 

 

『緊急事態発生!オーダーズ・ネスト内に潜入していた次元覇院と思われるスパイに、次元光巴様が誘拐されました!全部隊アラート!緊急発進(スクランブル)を要請します!』

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。さぁ、次回は戦闘回だぞっ( ゚Д゚)

ネイ「誘拐……護衛とはよく言ったものですね」

グリーフィア「でも信念っていうものに囚われた人ってそういう風に自分すらだましていくからねぇ。ある意味正しい描写よねぇ」

まー本当にね(´-ω-`)そう言う人ほど話し合いが難しいですよ。だからこそこういう敵にしているんですけど。

ネイ「それにしても……お金どうするんですかね」

(´・ω・`)それ考えてないんだよね……今後の資金になるかって感じです。

グリーフィア「まぁ下手に触れない方がいいかもね。作者君の場合、それを後々持ってきてって展開もあり得るから」

(;・∀・)心読まないでください。さて今回はここまでです。

グリーフィア「新年最初は単独更新でした~」

ネイ「次回もまたよろしくお願いします」


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EPISODE8 闇夜翔ける蒼炎の流星1

どうも、皆様。令和は本当に大事件が多いなぁと毎回のニュース見てて思います、作者の藤和木です。

ネイ「アシスタントのネイです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよぉ~。言ってもこっちも大事件勃発じゃない?」

そっすね(´Д`)今回はEPISODE8と9の公開になります。まずEPISODE8からです。

ネイ「光巴ちゃんが誘拐された前回……MSオーダーズはどのような手を打つのでしょうか」

グリーフィア「んー、せっかくなんだし、元君のガンダム使えばあっという間のような気もするけどねぇ」

そんな「もうあいつ1人でいいんじゃないかな」的な発言止めましょうよ(;・∀・)この作品それになりがちな一面もありますが……
ともかく、そんなEPISODE8本編をどうぞ!


 

 

「光巴ちゃんが!?」

 

 施設内放送から流れた内容に、深絵は驚きを隠せなかった。いや、その知らせにMSオーダーズの人間は隠せないだろう。なぜならそれは想定されうる状況でありながら、そうさせまいと徹底して注意を払っていたはずの事案だったのだから。

 起こってしまった事態、それに対し光姫と黎人も気付いているのか。緊急放送が今起きている現状と、要請を告げた。

 

『現在光姫隊長が一部基地隊員と共に先行して逃走中の次元覇院スパイのMSを追跡中。蒼梨 深絵、および黒和 華穂両名はMS射出デッキへ!他隊長格はそれぞれの持ち場へ――――』

 

「深絵さん、私達も!」

 

「そうだね……光姫ちゃんに追いつかなきゃ!」

 

 2人は示し合わせると元達に一言断ってから向かおうとする。

 

「それじゃあ、2人は部屋で待機を……」

 

『え?……すみません、1件訂正です。深絵、華穂両名は、黒和元、ジャンヌ

・ファーフニル両名を作戦指揮室まで連れてきてください!」

 

 放送から告げられる命令訂正。待機を指示しようとしていた2人に作戦指令室へと連れてくるようにと伝えられる。深絵は一瞬戸惑う。今彼らを呼ぶ理由は何なのか。しかし彼らもMSパイロットであることを考慮すると、現場を見せておいた方がいいのだと解釈した。

 元達がこちらに言ってくる。

 

「だそうだが?」

 

「……みたいだね。とりあえず付いて来て」

 

「分かりました」

 

 一足早く部屋を出た閃の後を追うように深絵達も宿舎を出る。前の時だって救出できた。だから今回も救出して見せる。そんな意気込みを心の中で強く誓った。

 

 

 

 

「失礼します。蒼梨深絵、黒和華穂。黒和元とジャンヌ・ファーフニル両名を連れて参りました!」

 

 作戦指令室へと入り、指揮官席にて映像とにらめっこしていた黎人へと到着したことを報告する。4人の到着に、閃と話していた黎人が向き直り応答する。

 

「あぁ、ありがとう」

 

「それより、状況は?」

 

 すぐに状況の把握のための情報提供を要求する。黎人は首を縦に振り、指揮官席前方に現状の情報を投影させて犯人について話す。

 

「やられた。まさか世話係がスパイだったとは……光姫が後を頼んだ直後に、連れ去られた」

 

「世話係……経歴は確認したんだよね?」

 

「あぁ。だが社会へと出るまでの経歴を調べたら……こうだ」

 

 黎人の出した資料に見えた身辺調査。確かに彼女の名前がある。だが横には同じ顔、そして同じ苗字の人物が映る。黎人は推測を打ち立てる。

 

「今も調べているが、彼女達は双子だ。だが片方が死んでいる。そのもう片方、姉が今回の世話係だった。姉は宗教などには一切関わっていなかったが、妹は次元覇院に入信していた。妹はうちの突撃隊との戦闘で死亡している。だがその死後直後から周囲の話によれば姉の様子が以前と変わったという。この意味わかるか?」

 

「まさか……姉と妹が入れ替わったってこと!?潜入を怪しまれないように、姉を妹自身ってことにして?手が込んでる……」

 

 妹と姉のすり替わり。双子という点を利用し、工作員を送り込んできたのだ。今までそんな素振りを見せても来なかった彼女に、深絵は苦虫を潰したように気づけなかった自身に対し落ち込む。

 深絵が失態を重く受け止める傍らで、華穂は現状について訊き出す。

 

「それも一大事ですけど、光姫さんは追跡中なんですよね?どっち方面に行っているんです?」

 

 MSオーダーズの基地は人工島を1つの橋とで本土に繋がっている。次元覇院の逃げ場所としては東響都のどこか、あるいは次元覇院の本拠点である三枝となる。とはいえ流石に三枝は遠く、MS単独で向かうのには厳しいだろう。おそらく東響都方面だ。黎人もその見方を示す。

 

「光姫達の追跡報告からして、東響方面だ。だが、気になる報告が都の警察庁から上がっている」

 

 気になる報告というものに違和感を抱く。すぐにその違和感が重大な事態へと結びつく。

 

「東響湾上空に次元覇院と思われるMS部隊が出現したらしい。その部隊は真っ直ぐこちら方向に向かっている。そしてその延長線上に光姫達と逃走するスパイがいる。つまり」

 

「それって、まさか!?」

 

 たどり着いた考え。そして管制官達から報告が飛ぶ。

 

「通達、光姫さんの追っていたスパイが次元覇院MSと接触!停止しました!」

 

「停止?」

 

 閃が次元覇院の動きを怪しむ。華穂、そしてもちろん深絵も同じだ。止まったところでいったい何をする気なのか。更にオペレーターが叫んだ。

 

「敵機体から声明です!」

 

「犯行声明……回せ」

 

 黎人の要請で回線が回される。声の主はあの世話係、しかしこれまでのそれとはまったく違う口調で話す。

 

『我々次元覇院は要求する!逆賊の娘次元光巴の命を返してほしくば、漆黒のガンダムを我らに引き渡せ!でなければ次元光巴の命は保証できない!これは悪ではない。神の慈悲なのだ!』

 

「っ!あいつら~!!」

 

 華穂が怒りを露わにした。深絵も同じだ。人質を取っておきながら、それを神の善性などに置き換えるそれは慈悲ではない。ただのテロリズムだ。

 それを否定するのは黎人や光姫も同じだった。しかし、人質を取られていては手出しが出来ない。

 

「こんな要求、呑めるわけがない」

 

 黎人が硬く口を閉ざす。回線から光姫の対応を乞う声が届く。

 

『分かってる。でも!光巴をどうやって助ければ……!』

 

 光姫のロートケーニギンから映されたカメラ映像では、光巴がマキインの性能向上型「マキイン・魁」の持つアサルトナイフを頬に突きつけられていた。光巴は死の恐怖か、それとも世話係の変貌の為か泣き叫ぶ。

 

『パパー!ママー!』

 

 その光景を見せつけられる形で、深絵達は沈黙する。機体を渡すべきなのか否か。それを更に迫るかのように別のところから回線が接続される。

 

「司令!晴宮防衛大臣と斉田自衛軍東響湾防衛基地司令からです」

 

 晴宮冬馬。政府の防衛大臣を務める人物で、MSオーダーズ結成の後ろ盾となった人物だ。そして斉田明は東響都の自衛軍を取りまとめる司令官である。晴宮防衛大臣は私達MSオーダーズに親身になって対応してくれる人達の1人で、しっかりと話を聞いてくれる人格者だ。一方の斉田司令官はかなり自己中心的な人物で、それを指摘しても危険な人物だ。華穂は一度その逆ギレとも呼べる逆鱗に触れて、以来嫌っている。

 そんな対照的な人物が黎人へ事態の対応を協議する。

 

『黎人君、大変な事態になったようだね』

 

『やはり余計なものまで引き連れて、飛んだ疫病神だな』

 

「っ!」

 

 華穂がわずかに苛立ちを募らせる。いつもは穏やかながらも冷静な晴宮防衛大臣も、真剣さを含ませた表情で黎人に聞いていた。

 娘を人質に取られていて、精細さを欠いていた黎人も顔を引き締めて対応にあたる。

 

「はい。ですがMSオーダーズの威信にかけて、私達のMSで人質を救出して敵を撃滅します」

 

 以前の様に取り返す。深絵達もその気でいた。しかし斉田司令はそれを撃ち砕いた。

 

『何を得意気になっておるか、この甘ちゃんどもが!そんな言葉上は信用せんわ!』

 

「っ!何であんたがそんな事言えんのよ!」

 

『喚き散らすな、口を慎めこの下賤兵もどきが!そうでしょう?晴宮防衛大臣殿?』

 

 食って掛かった華穂を必要以上に口撃する斉田司令。上が信用しないというのを信じたくはなかった深絵達だったが、しかし彼の言葉が事実であることを晴宮防衛大臣は言った。

 

『そうだ。この件を受けて政府は特例の無理な対応をするよりも、機体データをコピーして外装のみを与えて自爆させるべきではという考えが出ている』

 

「そんなっ!?」

 

「っ!」

 

「………………」

 

 あまりにも非情すぎる、かつ自分勝手な考えだ。自分達に何の実害もないと思っての発言に深絵の中で憤りが生まれる。

 到底呑めない判断。黎人も考え込んでしまう。しかし話を聞いていた閃が同意の反応を見せた。

 

「いいんじゃないか?」

 

「閃さん!」

 

 閃の発言に叫ぶ華穂。黎人が慎重にその意見を聞く。

 

「……閃君、正気か?」

 

「正気も何も、こいつは犯罪者だ。それを無下にすることくらい」

 

 どうでもいい。そう言い切る前に深絵は言い放った。

 

「どうして……どうしてそんなこと言うの!」

 

 元々はモバイルスーツの暴走事故で死亡扱いとなってしまった被害者、それ以上に深絵にとっては命の恩人でもある元を何も知らない人に推し量ってほしくない。

 深絵はその気持ちを人目もはばからず涙ながらに露わにした。

 

「元君はモバイルスーツの暴走事件でいなくなって、それが無事に帰ってきたっていうのにみんなして一緒に来たMSが危険だとかそんな話ばっかりで!5年間の事何も知らないのに自分なりに調べたっていうのに、私達がその努力を無に帰してどうするの!」

 

「華穂さん……」

 

『………………』

 

 作戦指令室に声が響く。きっとみっともないと思っている人もいるだろう。それでも言わずにはいられなかった。あの時の事件でどれだけ後悔しても叶わなかった元への感謝、それに報いたい。

 深絵の渾身の叫びに閃は気圧される。見ていた晴宮防衛大臣も表情を崩さず、見返していた。ただ1人斉田司令だけはその発言に無礼であると指摘する。

 

『恥ずかしくないのか、そんな犯罪者の男を庇って!貴君なぞすぐに除隊させてやる!』

 

「っ!!」

 

 除隊という脅しに屈する様子は見せない。その眼に力を入れて対抗する。その眼を気に入らなかった斉田は晴宮防衛大臣に進言する。

 

『防衛大臣、このような危険な輩を置いておくのは危険です!今すぐに除隊しましょう、いえ、除隊させてやりま……』

 

「そんな必要、ねぇよアホ司令」

 

 突如響いたのは元の声。壁にもたれかけて怒りを爆発させようとしていたジャンヌと共に静観していた元が、その口を開いた。そんな彼から出たのは自分達の不甲斐なさを嘲笑う毒舌であった。

 

「お前ら全員バカだろ」

 

 

 

 

『バカ、だと……?バカは貴様だろう!特例でもそんな名誉棄損ですぐに犯罪者へ逆戻りだわ!』

 

「本当のこと言うのもダメってか?言論統制も過ぎるぞ。まぁもっとも、先に他人を貶めてるあんたが言えることじゃ、絶対にないけどな」

 

『どこが名誉棄損だ!本当の事だろうが!』

 

「あーそういう無駄な話いいから」

 

 名誉棄損と言う斉田とやらの話を軽く受け流す。この男は次元覇院と同じ、自分がすることは何をしても正しいと思っている人物の範疇だ。名誉棄損はあるとはいえ、今それにかまけている暇はない。それでも彼の言葉に付き合ったのは、大事な妹を蔑んだことに対する報復だが。

 そんな元に対し、礼節さを持って話すようにと晴宮防衛大臣は戒める。

 

『元君だったね。もう少し言葉遣いをきちんとしてほしい』

 

「あぁ、すみませんね。先程どこかの自己中心的な司令が妹を恫喝していたので、つい力が入りまして」

 

『ど、恫喝など私はしていない!』

 

 元の言葉を真っ先に否定する斉田。しかしそれが仇となる。

 

「おや、自分は誰も斉田司令とは言っていませんが?ここには黎人司令もいらっしゃるというのに、恫喝したという自覚がおありで?」

 

『グッ!』

 

 与えてしまった隙を歯ぎしりする鬼の形相で睨み付ける斉田を気に留めず、先程の話を続けた。

 

「なんでお前らだけで解決しようとしているんだよ。最大戦力がここにあるっていうのに」

 

 自分を指さして示す。そう、彼らの頭からはすっかり元のガンダムの力を使うという発想が抜け落ちている。それもMS所持法という特例で控除すると言っていたにも関わらず、既に決まったことを解除しようというのだ。むしろ決定を解除する方が無理な対応だろう。それを同じく指摘した。

 

「それにMS所持法の特例控除も、決定はしても施行はされていない。なら今回のも特例に入れちまえばいい」

 

「簡単に言ってくれる。そんな考えが」

 

「通らないって?今までならそうだろう。でも別世界の圧倒的な性能を持つMSがいる。しかしそのMSパイロットは法律のせいで力を発揮できない。これは今までにあったことか?あり得なかったことに柔軟に対応しろよ」

 

 元が言いたかったのは思考の柔軟さだ。こんな危機的状況で体裁を大事にしている場合ではないのは明らか。使えるものは全て使う。汚い手以外は。それがドラグディアの戦い方だ。そしてドラグディアで学んだことはもう1つある。

 柔軟性という元の発言を晴宮防衛大臣は肯定した。

 

『確かに、今までにない事態にはその現場での迅速な対応変更が求められる。だが君を信じて成功するという保証はあるのかね?』

 

 成功する保証という言葉に斉田が反応した。

 

『そうだ!素人にそんな保証……』

 

「素人じゃないさ。向こうで戦い続けて来た」

 

 素人ではない。元は確かに戦い続けて来たのだ。あの戦争以降も様々な敵と戦った。ジャンヌと共に、そしてドラグディア、マキナスのMS部隊と共に。

 そんなことを知る余地もない斉田は意にも介さず妄想であると中傷する。

 

『妄想のことを言うんじゃない!』

 

「じゃあ俺の機体は妄想か?あんた達の世界のMSは1機でも俺の機体を止められたか?この世界よりMS技術の進んだ世界の機体とそれを経験したパイロットが今ここにいる。それが証明できる時代にある。それを何の根拠で妄想だと否定できる?自分が知らないから妄想だとか別世界だからなんていう言い訳こそむしろ時代遅れだ」

 

『ぐっ!生意気な!!』

 

 今ここにいる人間を一体どうして否定できるのかと問う。既に次元粒子、DNの力を知り、別世界の存在を知っている人々が外の可能性を否定する。それが通じる時代ではない、そんな事では時代遅れな世界であると認識しなければならない。

 そしてこの状況におけるもっともなことについて触れた。

 

「第一、テロリスト相手に交渉なんてするなよ。強力な機体やその情報を得体のしれない武力しか持たないやつらに渡す。その考え方自体がおかしいだろ」

 

『ぬぅぅぅ!!』

 

 正論を返され、なお食い下がろうとする斉田だったが、その斉田に対し晴宮は咎める。

 

『斉田君、君は下がっていてくれ』

 

『晴宮防衛大臣!?なぜこんな不敬の塊のような……』

 

『それだけかどうかを確かめたい。それとも君は彼の言う通りの人物像の人物だと自覚が?』

 

『なっ!クソッ!』

 

 図星を突かれ、斉田は大臣相手に舌打ちをして通信を切った。残った晴宮は斉田の発言に謝罪すると共に発言通り元に対し質疑の言葉を掛ける。

 

『……すまないね。あの司令官は頭が固い』

 

「でしょうね。苦労察します」

 

『だが、君もまた扱いづらい人材ではあると思う。この状況を突破できると、そう思う根拠、あるいは勝算は何だね』

 

 当然の問いだろう。救い出せる確かな力を証明する、こちらに作戦成功をもたらせる絶対的なものを見せてほしいというのだ。無論元も勝算はある。頭の中に浮かぶ作戦成功のビジョンがあった。それを告げる。

 

「まだ俺のガンダムには隠された姿がある。その力とMSオーダーズと対峙した時に見た青のガンダムの狙撃があれば、行ける」

 

「元君……」

 

『ほう』

 

「けどそれ以上に、今のただ手をこまねいている状況で、何も動かないのはもっとも最悪の一手でしかない。動かなきゃ勝算なんて初めからゼロだ。それを前提に動いて初めて勝算が生まれる。作戦はこうだ」

 

 そうして元は作戦プランを提示した。指揮官席のコンピューターにスターターを通して画面に表示したその内容に、大小のどよめきが生まれていった。

 

 

NEXT EPISODE

 




EPISODE8はここまでとなります。

グリーフィア「元君大胆ねぇ~。絶対現実でやったらダメなやつでしょ」

(^ω^)そっすね。みんなは目上の人とかにこういう言い方しちゃだめだぞ?ちゃんと筋を通した言い方しようね!

ネイ「じゃあ何で作者さんこういう流れにしたんですか……」

前も言った気がするけど作中時間が足りねぇ!あとは現場判断優先でいくとこうなる気はする(´・ω・`)元君もそもそも言ってるけど、まずテロリストに甘えだったり交渉したりするのは最悪手だからね。それをあの分からず屋に説明するのも面倒だと判断した結果となります。

ネイ「この作品そういう分からず屋キャラクターが多いですよね」

そんなことないですよ(´ρ`)多分。そもそも末端はそういうキャラも多めでしょうし。

グリーフィア「んーけど別作品で言う所のル○ーシュみたいなキャラ欲しいわよねぇー」

それはめっちゃ考えてる(´ρ`)けど出せない理由とかもあるからねぇ。さてでは次のEPISODE9に続きます。


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EPISODE9 闇夜翔ける蒼炎の流星2

どうも皆様。引き続きご覧の方は改めまして。2周年を迎えたアリスギアのキャンペーンに没頭中な作者の藤和木 士です。

レイ「アシスタントのレイだよーっ」

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです。プレイ中の作者の声がうるさいです」

そんな喋ってないけど!?(゚Д゚;)あ、お気に入りのキャラはすぐみちゃんです(^ω^)さてEPISODE9の公開です。

レイ「元君はどんな作戦を提案したのかな?」

ジャンヌ「元さんの事ですから、それなりに理は叶っている……とは信じたいです」

さぁ、そもそも作戦が認証されるのかも分かっていないEPISODE9をどうぞ!

レイ「そういえばそうだね……」


 

 

『……なるほど。ならばその性能、見せてもらおう』

 

「防衛大臣!?正気ですか?こんな作戦!」

 

 晴宮防衛大臣の決定に黎人から反対の声が上がる。華穂も同じように思っていた。普通なら絶対に不可能な作戦だ。しかし兄はどこから湧き上がっているのか分からない自信を持って、成功すると語る。

 

「正直ミスすれば失敗は明らかだ。けどこれ以上にベストな作戦は今のあんた達にはないと思うが」

 

「馬鹿を言え!下手をすれば光巴の命に関わる!」

 

 そう、もし失敗すれば光巴の命が危機にさらされる。そうでなくても、腕に抱えられた光巴が怪我をする可能性が高かった。あまりにもリスキーな作戦に、本当にそれしかないのかと問う。

 

「ねぇ、にぃ。本当にこれしかないの?……こんなリスクの高いのより、一旦見逃してから敵基地を襲撃した方が……」

 

 東響湾での救出ではなく、地上でやったらどうか。華穂としてはその方が同じ作戦でも危険度が少ないと考えた。

 だが兄は妹の考えを否定する。

 

「それは最悪手だ。作戦開始時に光巴ちゃんの無事が確かめられない。次元覇院はあんた達MSオーダーズを目の敵にしている。隠密作戦を展開しようが、少しの異変でも殺しかねない」

 

「で、でもそれなら今だって同じだよ!余計に刺激する今の方が、あいつらなら殺しかねない」

 

 正面モニターに現状が映し出されている。次元覇院は光巴にナイフを突きつけながら後退する。それを光姫達がじりじりと距離を詰めている状況だ。モニターから声が漏れる。

 

『さぁ、さっさとガンダムを渡せ、それとも娘の死か?選べ!』

 

『ママぁー!』

 

『光巴ッ!お願い、光巴を返して!』

 

 悲痛なやり取りが行われる。もう聞いているのも辛い。だが兄は顔色を変えず、固い意志を口にする。

 

「だから、やるんだよ」

 

「だからって……!」

 

「早く、こんなやり取りを終わらせるために、今やらなきゃいけない」

 

 兄は強くモニターを睨み付ける。華穂も気付く。兄が決して非情になっているのではなく、華穂達と同じように早く救出したいのだと。その眼には怒りと憤りを込めていた。

 元を後押しする様に、ジャンヌが実例を挙げた。

 

「それに、これは無謀な作戦じゃありません。これと似た要領の救出作戦を元は成功させています。その時よりも機体はアップグレードされている。助けられた私が、それを証明します」

 

「ジャンヌさんが?」

 

『……となっている。蒼梨深絵君、この作戦は君にも掛かっているが、出来るか?』

 

 この作戦において重要な要因である深絵に作戦成功を問う晴宮防衛大臣。いくら狙撃精度抜群の彼女でも無理と思えたが、深絵は首を縦に振った。

 

「はい。やれます」

 

「深絵君!考え直したまえ、失敗すれば君にだって責任が……」

 

 許可できないと言おうとする黎人だが、晴宮防衛大臣はそれを咎める。

 

『私語は慎みたまえ黎人君。私は彼女の意志を聞いている』

 

「しかし大臣!」

 

『司令官なら、部下を信じるべきだ。そして彼らもまたその1人になりうる人材……。それでは不服かね?』

 

「っ……」

 

 晴宮大臣からの言葉に黎人は口を閉ざす。やがて黎人は苦渋の選択の如く命令した。

 

「なら、やればいい!」

 

「黎人君……うん、やるよ!」

 

 深絵が選択をした黎人に元に代わって感謝の言葉を口にする。一方元は残る配役について決めようとしていた。

 

「決まりだな。じゃあ後はサポーターと失敗時の保険だが……」

 

「俺がやろう」

 

 その配役に手を上げたのは閃だった。意外な作戦志願に立案者の兄とそのパートナーも揃えて驚きを見せる。

 

「あなたが?」

 

「意外ですね。どういう風の吹き回しで?」

 

 理由を訊くと閃は深い意味はないとしつつ、先程までの元の行動を言葉で並べた。

 

「作戦自体の内容もそうだが、敵に一切の猶予を与えないというのは俺も同意だ。それに物怖じしない度胸、それが気に入った。撹乱と精密射撃を必要としない汚れ仕事なら、簡単だしな」

 

「葉隠閃……」

 

 黎人の目つきが険しくなる。失敗した時の始末で一番後味の悪いところを行く閃の考えに不満があるのだろう。しかしながらそれで作戦の要員はすべて揃う。出揃ったところで晴宮防衛大臣が命令する。

 

『では貴官らに本案件を一任する。作戦内容に従い、行動せよ』

 

『了解』

 

 敬礼を行う。作戦が承認され、元やジャンヌも同じように交わし、通信が終わり次第指示を出していく。

 

「じゃあ行くぞ、3人とも」

 

「えぇ!」

 

「了解!」

 

「命令するな。試させてもらうぞ、お前の腕を」

 

 4人が指令室を出ていくのを華穂は見届けた。最悪兄の特例が消されるかもしれない。それでも兄は出撃を要請した。まだ出会ったばっかりの、友人の子どものために。その姿はまさに兄が向こうの世界で呼ばれていたという「英雄」という単語に相応しい。だけども華穂は祈った。光巴の無事と、兄が作戦を失敗しないことを。

 

「にぃ……!」

 

「………………っ」

 

『さて、どうなるか』

 

 固唾を飲んで見守る黎人と晴宮大臣と共に、作戦動向を待った。

 

 

 

 

「機体滑走路確認急げっ!深絵ちゃんと閃君、それに元君が出るよ!!」

 

 機体のチェックを行っていた真希の声が飛ぶ。既に3機用の地上発射口は準備が整っており、元を除いた各々の機体と、Gワイバーンが待機していた。深絵と閃はそれぞれのMSの装依を開始した。

 

『ブラウジーベン、装依完了!』

 

『ソルジア、装依完了』

 

 慣れた様子でバックルによる転送装依を完了させ、発射用カタパルトで構える2人。元もジャンヌ、そしてGワイバーンと見合わせ機体装依を行う。

 

「装依!」

 

『ガンダム ネクスト ジェネレーション シュバルトゼロガンダム[Repair-Ⅱ FafnirⅡ]!』

 

 再び姿を現す漆黒のMS。間近で見た整備員達は今一度驚きの声を上げた。2人と同じようにカタパルトへ機体足底部を接続し、ジャンヌがコールを管制へと伝える。

 

『シュバルトゼロ、装依完了です。GワイバーンもOKです!』

 

「グラゥ!」

 

 飛び立つ姿勢を見せるGワイバーン。元は機体に先程の作戦データを表示させる。作戦の為に、まずこちらは準備をしなければならない。先に行くよう僚機の2人へ指示を送る。

 

「作戦の為にこっちは準備がいる。出撃したら先に作戦位置に向かってくれ。すぐ追いつく」

 

『了解!』

 

『遅れるなよ?ソルジア、閃機出る!』

 

 まず先に出撃していくソルジア。カタパルトから射出された機体は大型キャノン砲をアームに接続した状態で橋とは逆の海へと向かっていった。続く深絵も発進シークエンスに突入する。

 

「ブラウジーベン、蒼梨深絵行きます!」

 

 隣のレーンから深絵の蒼いガンダムが射出される。一度回転を加えてから持ち前の高機動可変ウイングで制御し、空へと飛び立っていく。それを見届け、管制から射出タイミングの譲渡が行われる。

 

『カタパルト出力固定。射出タイミングをシュバルトゼロへと譲渡します』

 

それを確認してから元はコールサインを送る。

 

「シュバルトゼロ[FafnirⅡ]、黒和元出るぞ!」

 

 機体と電子化した体にGが掛かる。射出されるとウイングを大きく開いて制御を行う。遅れてGワイバーンが駆けだしてから飛翔する。

 機体各部問題なし。ジャンヌがいつでも行けるとタイミングを任せてくる。

 

『両機システム問題なし。『イグナイト』いつでも行けます!』

 

 Gワイバーンが周囲を飛び回る。元は満を持して、その姿を開放した。

 

 

 

 

「イグナイトシークエンス、スタート!」

 

『アーマードシークエンス、Standby』

 

 

 

 

 音声と共にGワイバーンが分解していく。各部パーツがシュバルトゼロの周囲に展開すると、シュバルトゼロの各部へ分解したパーツが合体を始める。漆黒の機動戦士が竜の外装を覆った機械の大男へと変貌する。

 

『シュバルトゼロガンダム・イグナイト、アクティブ』

 

「イグナイト移行完了。イグナイターなしで移動を行う」

 

『了解です』

 

 イグナイターへの変身は温存する。イグナイターはイグナイト以上に両パイロットの体力を削る。そこでここぞという時以外にはイグナイターは使わないというのが、あの戦い以降2人で決めた運用方針だった。移動は通常時とイグナイターの中間出力を出せるイグナイトでも十分なスピードが出る。

 一方管制の方では、機体の変貌に驚きの声が続出していた。

 

『が、合体だと!?』

 

『本当に合体している……にぃ、なにそれ』

 

『ヒュー、そんな機能盛り込んでんだーあのドラゴン!分解したい!』

 

『いや、既にしてます整備長』

 

 今はこの緊急事態。一つ一つに返答する前に、元は空を見上げて目的地を見据える。翼を羽搏かせるようにウイングを稼働させ、短く言葉を切る。

 

「行くッ」

 

 イグナイトのスピードで敵上空へと目がけて飛ぶ。たちまち基地が離れていく。イグナイトも不調なく動いてくれているようだ。

 レーダーを呼び出すと、先に出た2機の位置を確認する。どちらも少し先でそれぞれポイントを目指して向かっていた。このままなら先にこちらが目的地にたどり着くかと言ったところだ。

 こちらがスピード加速のタイミングを見計らうためにも、丁度いいと言ったところだろう。だが事がうまく運ぶかと思われたその時、回線から緊急が要される。

 

『深絵さんの方にMS出現!機影3……これは……東響都自衛軍のソルジアです!』

 

『東響都の自衛軍機だと?こちらの作戦コードを……』

 

『自衛軍機受け付けません!深絵機に攻撃開始!』

 

『くっ、どうして自衛軍が……』

 

 深絵が攻撃を受けているという知らせに危機感を感じる。なぜ東響都の自衛軍が邪魔してくるのか。なんとなくは分かっていたが今は非常事態。作戦進行中のこちらを邪魔されるわけにはいかない。すぐに管制と閃に作戦の一部変更を通達する。

 

「作戦変更。俺が深絵の支援に向かう。閃はそのまま予定地点まで行って待機」

 

『りょ、了解』

 

『了解した。だがやり過ぎるなよ』

 

 それぞれから了解の意を受ける。シュバルトゼロ・イグナイトの進行方向を深絵の現在地へと向けた。回線から黎人の謝罪と困惑が漏れる。

 

『すまない……だが、どうして……』

 

『それはおそらく、斉田司令の差し金、だろうね』

 

 晴宮大臣の回線とも接続される。元も同じことを思っていた。あの司令官の人柄ならやりかねないのはすぐに分かる。

 

「自分も同意見です。とはいえ、落とすのも気が退ける」

 

『私も同意見だ。元君、どれだけなら持たせられる?』

 

 晴宮からそのように訊かれる。機体の性能に関してでか、それとも作戦達成可能時間も含めたことを言っているのか。元は両方での見込みを話す。

 

「機体自体なら、あの程度いくらでも。だけど作戦の事を考えるなら、なるべく早く」

 

『こちらに自由度があるか。よし、3分待て。私の方で何とかする。3分持たせてくれ』

 

「3分……余裕だ」

 

 強く応えると回線を切って前方を見据える。深絵のブラウジーベンが敵機の弾幕から必死に宙を逃れていた。スナイパーライフルを構えているが撃とうにも仮にも味方と言える機体。回避に専念していた。

 既に回線で応戦する様にと言われていたが、何かあったのだろう。オープン回線へ切り替えて、その戦闘に割って入る。

 

「おらっ!退いてろ!!」

 

『元君!?』

 

 機体の強化された脚部で蹴りを浴びせる。頭部を蹴りつけられた機体は後退し、他の僚機2機がマシンガンを放つが、実弾の武装ではそう簡単にDNウォールの壁を破れない。

 護る形で対峙するシュバルトゼロガンダムと銃を向けた状態のソルジア。自衛軍のパイロットが回線を開いて恫喝を込めた警告を放つ。

 

『邪魔するな、黒のMS。貴様には捕縛命令が出ている。そうでなくともMSオーダーズの作戦展開は、司令部が禁止を出した!』

 

「司令部ってあの斉田とかいうやつか?あいつは作戦に口出すなって今回の作戦じゃあ蚊帳の外だが?」

 

 警告に対しそう返答する。意味合い的には大まかだが合っている。だが事実を言ってなお、彼らは攻撃の意志を止めない。というより信じなかった。

 

『フン、嘘が下手だな。奴らを足止めだ』

 

『了解!』

 

『元君……!』

 

「深絵は先に。俺が持たせる!先にポジションを!」

 

 そう言って元は3機のソルジアとの交戦に入る。敵を引き付けて回避、あるいはビームコーティングされた巨大な腕で敵を捕らえ、放り投げる。殺傷兵装を使わない様にしながら、晴宮が出した3分の時間稼ぎを開始する。

 元の戦いを見ていた深絵も、その意味を理解して背を向ける。ソルジアの1機が深絵の動きに気づいて妨害しようとする。

 

『あの野郎!』

 

『逃がすな、翼を……』

 

 リーダー格の男がウイングを撃てと命じる。だがさせない。

 

「まだ尻尾がある!!」

 

『なっ!?』

 

 2機がこちらの相手をして1機がフリーに、というはずの状況を元はエラクスシステムを起動させて大きく後退する。そして後方にいた敵機にテイルバスターを引っ掛けて大きく前方へと引き回す。後方に投げ出される形となったソルジアへ、シュバルトゼロガンダム・イグナイトの拳が直撃する。

 

『がぁぁ!!』

 

『2番機!ちぃ。この機体だけでも足止めを……』

 

 マシンガンをばら撒いて注意を引き付ける。元を作戦の中心と判断し、その足止めへと切り替えたのだ。

 確かにその考えは当てはまる。現実問題、ここを離れれば一番距離の近い深絵に向かわれるのが見えている。いくら狙撃精度の良い深絵でも、他の機体が迫っていると言って集中できるのか。そうこうしてMS隊と交戦している間にジャンヌから約束の時間が来たことを告げられた。

 

『元、今3分経過しました!機体も何も来ません!』

 

「落ち着け。何かが来るとは言っていない。変化が起こるまで続けるっ!!」

 

 3分経っても何も来ないのは、援軍ではなく大本の司令官の方を切り崩すための時間が3分なのかもしれない。それか援軍の発進が遅れているのか。いずれにせよ、まだ持たせている必要がある。

 

「ジャンヌ、まだ行けるか?」

 

 ジャンヌへ、まだ戦闘継続が可能かと問いかける。心配の声に自信満々の声で返す。

 

『えぇ。まだ行けますよっ!』

 

 戦闘体勢を改め、時間無制限の耐久戦を開始する。と思ったところで、戦局に変化が生じた。

 

『?待ってください。海面付近から熱源接近!』

 

「っ。これは……来たのか」

 

 待ち望んでいたものか、それとも更なる招かれざる者か。答えは前者だった。ブースターを切り離し、上昇してきた白銀と黄色の肩アーマーが特徴のソルジアが間に割って入った。晴宮からの通信が再度接続される。

 

『元君、後は彼女に任せて君は作戦へ』

 

「あれが……援軍」

 

 見た目はただのソルジアだ。しかし元のDNLが彼女から発せられている強者のオーラというべきものを確かに感じ取っている。ここは任せてもよさそうだ。

 だが事態は予断を許さない。管制からの通信と深絵の悲鳴が届く。

 

『次元覇院機、こちらの動きに気づきました!』

 

『ダメ、あいつら光巴ちゃんを!』

 

 どうなっているのかは分からない。しかしもう時間はない。救えるか救えないかの一か八かの賭け。元は通信回線に目いっぱい声を張り上げた。

 

「深絵撃て!俺が合わせるっ!!閃は煙幕形成!!」

 

『元君!?』

 

『命令するな!深絵隊長、やるぞ!』

 

『……分かった!』

 

 命令するなと拒絶しながらも閃が撹乱の準備に入った。深絵も迷いを振り払い、元の行動に合わせてくれると返す。

 後は自分がしくじらないだけ。全てを無に帰さないため、命を散らせないために元は言葉を紡ぎ出す。

 

「進化しろ、俺の、俺達のガンダムッ!!」

 

『エボリュート・アップ、フルドライブ!覚醒ッ!!』

 

 ジャンヌも合わせる。加速状態となった機体を空中から形成された高純度DNの結晶体が覆い尽くす。だが2人の意志は消えていない。ここからその先へ行くために、2人のガンダムがこの世界に、生まれる。

 

 

 

 

『来い、イグナイター!』

 

 

 

 

 元とジャンヌの声が重なる。砕けた結晶の中から新たな漆黒のMSが誕生する。サイズダウンを果たし、より竜と人が同化したような形状の装甲を持つ機体にソルジア3機がライフルを向ける。だが白と黄色のソルジアはそれを阻む。

 新生した機体は蒼い輝きと共に夜空を翔けた。一瞬のビームの煌めきと爆発、そして煙幕の張られた戦場へと飛び込んでいくのであった。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。

レイ「まさかのイグナイターの性能に任せた作戦だったよ!?けど妨害入ってこれ間に合うの!?」

ジャンヌ「かなりの負荷が掛かるイグナイターに加えてエラクスシステムですから間に合わせようとしている感じは間違いないですね……。しかし元さんに救援に参った機体……あれは誰なのでしょう?ソルジア1機で大丈夫なんですか?」

それは次回お楽しみにというしかないです(´・ω・`)さて、次回の2話連続投稿で第1章も終わりを迎えます。

レイ「早いね」

ジャンヌ「もうですか……第1章はどのように終わりを迎えるのでしょう?光巴ちゃんは無事救出されるのでしょうか?」

そんなわけで今回はここまでです。

レイ「次回もよろしくねっ!」


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EPISODE10 闇夜翔ける蒼炎の流星3

どうも皆様。先日言っていたアリスギアの要所がひと段落し、これでこちらに力を入れることが出来ます(´Д`)作者の藤和木 士です。

ネイ「アシスタントのネイです。作者さんずっと調査宙域にこもりっぱなしでしたよね」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよぉ~。「全然冷撃の調査エリア来ない(゚Д゚;)」って言ってた割に、ストーリー4章は攻略出来たのよねぇ。寧ろ強化しすぎたくらいみたいだし」

(^o^)おかげでキャラの装備やら結構そろったけどね。すぐみちゃんのギア揃ったし。さて今回はEPISODE10と11、第2部第1章を締める話となります。

グリーフィア「元君突貫!果たして間に合うのかしらねぇ~」

ネイ「間に合わなかったら大惨事だよ……姉さん」

それでは本編をどうぞ!(`・ω・´)


 

 

『さぁ、ガンダムを出すか、娘の命を差し出すか。いい加減に答えを出してもらいましょうか、次元光姫?』

 

「っく……!」

 

 愛娘に躊躇なく銃を突きつける世話係のスパイに、光姫は歯ぎしりする。東響湾上空でにらみ合う両部隊。光姫の率いる緊急発進部隊は光巴を人質に取る次元覇院MS部隊に対し、何の対抗策を打てていなかった。

 この場に深絵がいれば、一瞬の狙撃でどうにかなったかもしれない。だがそんなあり得ないことを考えても、どうにもならなかった。光姫の機体でその一瞬に行動できたとは思えなかったのもある。

 どうすれば、と思った時黎人から連絡があった。秘匿回線による『作戦を開始する』という知らせだった。

 

『シュバルトゼロガンダムとブラウジーベン、閃のソルジアによる作戦だ。光姫、お前は相手の注意を刺激しないように引いていてくれ』

 

『元が……?……分かった』

 

 そう言って光姫は逃走しようとする次元覇院達をけん制し続けた。光巴に大丈夫だ、すぐに助けるからと励ましの声を掛けて。

 そうしてから5分以上が経っていた。回線から深絵を自衛軍の機体が襲っていることも分かっていた。元もその支援に向かったと聞いた。このまま作戦が瓦解してしまうのかと不安が胸をよぎる。いつまでも相手も待っている保証はない。

 

『さぁ、いい加減にそろそろ答えを出しなさい!私がこの子を殺してもいいんですよ?私は神に選ばれた使徒、罪など神が赦してくれるのですから!』

 

 ふざけた言い分だ。神なんてものは存在しえない。一部の人にだけ見えるものなど、それは幻覚と言って差し支えない。そんなものに縋って罪から逃れられるわけがない。そう言いたかったが、そんな狂気を平然と人に向ける彼女らを刺激することも言えず、ただ黙っているままだ。

 

「ママぁー!!」

 

「光巴……!」

 

(お願い、早く、誰か光巴を……っ!)

 

 光姫は願う。この状況を打破する一筋の光明を。神にも祈りたい。決して彼らのような都合のいい神ではない。人の道の非道を許さない助けを。

 だがそんな思いも、彼女らの盲信する神の力に遠く及ばなかった。次元覇院の使徒の1人がそれに気づいた。

 

『……なんだ、あの光……戦闘?』

 

『ほう……どうやらあなた達は神の選択を踏みにじることを選んだようだ。神の怒りを受けるがいい!』

 

『隊長!』

 

「っく!?」

 

 次元覇院がこちらの動きに気づいてしまう。自分達に歯向かう姿勢を見せた光姫達を非難すると、彼女は光巴の頭に銃を突きつけている。このままでは光巴は……。母親としての叫びと手が伸びた。

 

「光巴ッ!!」

 

「終わりだッ!」

 

 躊躇することなく、マキイン・魁のトリガーが引き絞られた―――――――

 

 

 

 

 その前に、その腕部が宙を舞った。

 

『ぐぅ!?』

 

「狙撃!?深絵!?」

 

 丁度橋方向からだろうか。斜めに走った光の一射がスパイのソルジア・魁の銃を持っていた腕部を撃ち抜いた。撃ち抜かれた腕部が宙を舞い、銃ごと爆散した。スパイのソルジア・魁が体勢を崩した。

 更に展開は続いた。上方で炸裂音が響くと煙幕が展開して次元覇院のMSを包み込んだ。一切の状況が分からなくなり、光姫も前に出かけた機体を踏みとどまらせる。これでは中がどうなっているのか分からない。もし光巴がこの中で撃たれてしまったら……。意を決し光巴を奪還できるようにと煙の中へと突っこもうとした。その時、

 

『俺がやる』

 

 聞こえたのは元の声。直後蒼い光が煙幕の中へと突撃した。風圧で機体がバランスを崩した。急ぎ体勢を整える。

 

「くぅぅ!?何が……!」

 

 瞬間、煙幕が晴れた。光の刃が煙と共にスパイの両側に展開していたソルジアを両断した。そして中央スパイのいた箇所で響き渡る刺突音。煙幕が晴れたその先で見えた光景―――――その背中に光姫は声にならない喜びを喉から絞り出した。

 

「光巴っ!」

 

 蒼い輝きを身に纏った漆黒の竜騎士(シュバルトゼロガンダム)が、敵機の肩口を左手で貫いた上でその右腕に光巴を抱きしめていた。傷のない無事な娘の姿を確かにその眼で確認した。両肩シールドには先程の機体を両断したビームソードが展開している。

 両腕を潰されたソルジア・魁のスパイの女が姿を捉えたことに驚愕する。

 

『バカな……視界は塞がれていたはず!?』

 

 彼女の言う通り、あの状況では一切の視界情報は得られなかった。あのガンダムは視界不良の状態でも見分けることのできるカメラを持っていたとしか思えなかった。

 だがしかし、元は2人の間で抱いた疑問に対し、一言で済ませた。

 

「俺に視界は必要ない。動いたという証拠、動くという意志があった時点で、俺はその先を行くっ!」

 

『これがハジメの、ドラグディアが誇る竜騎士(ドラグナイト)の力ですっ!』

 

 2人は宣言すると同時に相手の左腕を完全に断ち切った。そのままこちらへと後退するのであった。

 

 

 

 

『クソッ!突破された!』

 

『慌てるな、蒼のガンダムを抑える。それと本部に応援を……』

 

 漆黒のガンダムを逃し、なおも追撃を掛けようとする斉田司令配下のMS部隊。だが私は、その彼らに対しそれが愚策であることを明かす。

 

「その必要はない。そもそも、貴様達は防衛大臣を含めた政府の決定に反している。軍法会議ものだ」

 

『軍法会議だと!?ふざけた嘘を……』

 

「ほう?では私の機体を、知らないとでも?」

 

 機体の腰部の鞘から、剣を抜き放つ。剣と言っても西洋のものではない。東洋、この国日本がかつて戦国の世にあったころから使われる日本刀をMS用に打ったMS刀「村金(むらかね)」。ソルジアのカラーとこの機体が揃った機体を、自衛軍の兵士が知らないはずがない。

 MS刀を見て、ソルジアのパイロットも憎々し気にその名を呟く。

 

『……新堂沙織……自衛軍最強のMS剣士!』

 

「ご名答。なら、私が防衛大臣直属の護衛であることも知っているだろう?」

 

『……っく!!』

 

 ようやくソルジアが交戦の意志を失う。これに専用ソルジアのパイロット、沙織も安堵のため息を漏らす。とはいえパイロットの様子を見るに、仕事が増えたという認識が強いと認識する。

 漆黒のガンダムの方はどうなったかと思い、後方カメラを確認する。間に合っただろうかと不安になっていたが、そんなものは無用な光景が展開されていた。

 

「空が、光っている」

 

 夜空を照らす無数の光が一か所から放射状に展開していた。暗いのもあって光の線が流れ星の様に空を照らしていた。同時に灯る爆発の光は次元覇院の機体か。

後は彼らの仕事。沙織は遅れて到着した自衛軍治安部隊に3機のソルジアを任せて、その様子を橋から見物することとした。今後の見定めのためにも。

 

 

 

 

『光巴っ!』

 

「ママー!!ごわ゛がっだよ゛ー」

 

 無事再会を果たす親子。元は光姫が離さないようにしっかりと掴んだのを確認してから、部隊を下がらせろと告げた。

 

「光姫と部隊は下がっていろ。後は俺がやる」

 

『分かった。ありがとう』

 

「ありがとーガンダムさん!」

 

 光巴が手を振って礼を言う。その間も次元覇院からの射線を自機で覆うように位置取る。その一方で人質を取られた次元覇院は許しがたい怒りを爆発させる。

 

『おのれおのれおのれぇぇえ!!全使徒撃てェェ!!』

 

 実弾とビームの弾丸をばら撒く。後ろで後退を行おうとする光姫達にも向けた弾丸の雨を、ウイングから分離したファンネルから形成した六角のDNプロテクションで防いだ。自機への弾丸も黒い機体装甲全体から放出されたDNウォールで防ぐ。

 一切の攻撃を受け付けない防壁。光姫達が安全圏へ後退したのを見計らい、ファンネルを戻した。余裕を見せるシュバルトゼロ・イグナイターへ、機体の力をまったくと言っていいほど知らない次元覇院側の指揮官、そしてスパイで姉殺しの妹は言葉を並べる。

 

『攻撃が効かない……やはりその機体、我ら次元覇院のためにあるべきだ!』

 

『私と来ないですか?私と来れば、この日本、いや世界を次元覇院の教義で平和に出来る』

 

 先程までとは打って変わってこの反応。二枚舌が過ぎる。三枚はあるのではと思うこの性根の悪さ。何が教義だ。狭義の間違いだろうと元は意にも介さず彼らの言葉を否定した。

 

「平和?違うだろ。アンタたちのそれは洗脳と脅迫だ。従わないやつは消す、自分のエゴの為に無関係の人を殺す。そんな平和、誰も求めちゃいない」

 

『洗脳?違います。神の言葉です。浄化出来ないものへの慈悲として、私達は神へとその命を返して差し上げている。寧ろ断罪していることに、死した者達は感謝しているはずです!』

 

「そうか。なら俺がお前達も断罪してやるよ。もっとも、俺の場合は地獄以上の場所だがな!」

 

 Xビームライフル・ゼロを構える。戦う姿勢を見せるシュバルトゼロ・イグナイターに次元覇院のMSがライフルを構えて応戦体勢を取る。

 

『地獄などには送られない!神に歯向かうのなら、貴様もっ!』

 

『撃てぇえぇえ!!』

 

 もう1人の指揮官の男が叫ぶと使徒たちはシュバルトゼロに攻撃を集中させた。自らの信じるもののため、無我夢中に攻撃を行う。それを元は容易く回避していく。勢いはあっても技術力がない。当てる為の努力を行わない彼らの弾丸にあたるほど元も愚かではなかった。

 大きく宙返りで弾丸から距離を取ったシュバルトゼロ・イグナイターは全砲門を展開する。ファンネルを展開し、ウイングとサイドアーマーからはまばゆい高純度DNが光の翼を作り出す。幻想と差し支えない光景を魅せ付け、ガンダムの最大火力を撃ち出す。

 

『Ready set GO!DNF、「ゼロ・フルバースト」!』

 

『ターゲット、ロック!』

 

「行けよっ!!」

 

 ジャンヌからのロック確認を受けて全兵装から高純度DNによる高エネルギービームを発射した。ビームライフル、腰部ブレードガン、ファンネル、ウイングのビームサーベル兼用のビームキャノンやビームマシンキャノンと言ったあらゆるビームが前方へと放たれる。

 ビームに貫かれ、爆散していくマキイン達。一斉射を終えて残ったのは指揮官機2機のマキインの強化モデルと思われる機体だけだった。周りの機体の全滅に愕然とする2人。

 

『ば、馬鹿なッ!?』

 

『ま、またしても私の部隊が……どうしてくれる!これでは私に責任が!』

 

『えぇい、そんなもの知るか!それより私を逃がせ!戦うんだよ!』

 

 逃げたい一心で両腕大破状態のマキインは残ったマキインに命令して闘争を開始する。しかし、それを逃しはしない。

 

「お前らは3つ罪を犯した。1つ、子どもに銃を向けたこと。1つ、家族を身代わりにしたこと。そして3つ、その罪を認識できなかったことだ」

 

『フン、たかがその程度の罪で、人を殺していいのか!!』

 

 足掻きと言わんばかりに屁理屈をぶつけるスパイ。そんなスパイに元は現実を突きつけた。

 

「あぁ。その3つに収まらない程の罪を、既にお前達は繰り返しているからな。お前達の居場所はただ1つ……」

 

 迎撃する指揮官の攻撃をかわしながらその手にブレードガン・Xを構える。銃剣にビームサーベルを形成し、彼らに狙いを定めた。

 救いを求める彼らに、元は無慈悲を与える。

 

「神も何もいない、(ゼロ)の世界だ!!」

 

『Ready set GO!DNF、「アッシュ・ヴァルスラッシュ・デュアルクロスコンビネーション」!』

 

 光の翼を形成し、一気に距離を詰めた。ビームサーベルで防御しようとするが、それも一方的に叩き斬りまず一刀を入れる。更に続く攻撃を回り込みながら反対の銃剣で斬りつける。切っては回り込み、また切っては回り込む。高速の斬撃による拘束が男の指揮官機のマキインを蹂躙する。

最後に両方のブレードガン・X・ビームサーベルモードでX字に斬りぬける。だがまだ終わりではない。逃げるスパイ機に対し、後ろから追いつく。

 

『ひっ!!』

 

「お前も、逃がさないっ!!」

 

 抵抗できない機体に対し、再び連続切りによる拘束で痛めつける。光巴が受けた恐怖はこんなものではないと、強く、激しい傷が刻み込まれてゆく。

 同じくトドメにX字に斬り裂いて後ろに回るシュバルトゼロ・イグナイター。完全に機体を大破状態へと変貌させられたスパイは、身動きの取れないまま元の行いを非難する。

 

『おろ、かな……罪は消えず、裁きが……神の怒りの裁きが、お前を殺すぞ……』

 

 憎しみを込めた最後の叫び。それを元は淡々と返答する。

 

「俺が裁かれるとしたら、それは人によるものだ。神でもなく、そして使徒と自称する人を外れたお前達でもなく、同じ人の明日を、他人を傷つけずに願える、な。その時が来るまで、俺はお前達人を捨てた者達を倒し続ける」

 

『……ぐ、あああぁぁぁぁぁああぁぁあぁ!!!』

 

 断末魔と共に機体が爆散を形成する。空域に残ったモビルスーツは元のシュバルトゼロ・イグナイターのみ。ジャンヌが周辺サーチを行い、反応が消えたことを報告する。

 

『敵機反応、ありません』

 

「了解。久々のイグナイター運用、問題ないみたいだな」

 

『はい、私も鍛えましたから』

 

 負荷を感じる様子を見せないジャンヌが笑いかける。イグナイターの強い負荷を耐えられるようになった彼女の様子を見て、機体のエンゲージシステムの調整も上手く行っているということを実感する。

 敵もいなくなったことを確認すると、司令部へと回線を繋ぐ。

 

「敵すべて沈黙。これより帰投する。念のため周辺海域に生き残りの残党がいないかのチェックも怠らないでくれ」

 

『了解です!』

 

 管制官のバックで喜びに沸き立つ声が聞こえてくる。それに対し安心感を抱き機体を翻す。友人の子を護ることが出来た、その達成感に満ちて。

 

 

NEXT EPISODE

 




EPISODE10はここまでとなります。

グリーフィア「現実の慣性の問題やら含めてこれは成功できるのかしら?」

(^o^)多分出来ない気もする。けどここじゃ触れていないけどDNの粒子コントロールで光巴ちゃんは保護している設定ですから問題ない。

ネイ「そ、そうですか……けど元さんのDNL能力が無かったら危なかったですよね?」

間違いないですねそれは。逆に言えば元君はあれを信じて今回の作戦を提言したことにもなります。もっともあれ考えたのは別の人(?)なんですけどね。

グリーフィア「あースターターってことは、彼よねっ」

ネイ「久しく出ていませんよね。やはり出てくるんですね」

実は次で出てきたりします(´Д`)

グリーフィア「あら、そんなすぐになのね。ところでシュバルトゼロも新しいDNFを使っていたわねぇ」

ネイ「アッシュ・ヴァルスラッシュの強化版だよね。後フルバーストとだね」

グリーフィア「デュアルクロスコンビネーション……前作のネプテューヌの」

はいクロスコンビネーションからアイデアいただきました(´-ω-`)

ネイ「早い。認めるの早いですって」

ま、名前とか他に影響されやすいものですから。少し捻って命名させていただきましたが。さてではEPISODE11に続きます。


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EPISODE11 闇夜翔ける蒼炎の流星4

どうも、皆様。引き続きご覧の方は改めまして。作者の藤和木 士です。

レイ「アシスタントのレイだよっ」

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです。こちらは全く話題もなしなんですね」

そりゃあ毎回毎回あるかと言われたら……ねぇ(´・ω・`)さてではEPISODE11も公開していきます。

レイ「相変わらずイグナイター強かったね。しかも新しい技まで手に入れて」

ジャンヌ「ここまでの活躍も出来ることなら見てみたいものですねっ」

まぁ全部は見れるわけではないですが、余裕があれば書いてみたいですね。ということで第2部第1章最終話をどうぞ。


 

 

 基地へと帰った深絵。基地には既に黎人が光姫に抱きかかえられた光巴を預かり、その無事に喜びをかみしめていた。

 

「光巴、良かった……!」

 

「パパぁー!こわかったよぉ……」

 

 泣きつく光巴。世話係に突然さらわれた恐怖もあって、恐怖はかなりの物だっただろう。精神的なケアがいるかもしれない。

 しかし本当にあれは凄かったと思う。深絵もガンカメラで奪還と戦闘を確認していたが、あの一瞬であれだけの事を成し遂げた元と、変貌を遂げたガンダムの力が全てを変えた。変えてしまった。自身と対峙した時に見せたあの蒼い光を纏った機体は、流星と呼ぶにふさわしい。

 そしてその当の本人が今基地へと降り立った。姿をまたもとの大型MSに戻すと強化パーツとなっていたドラゴンを分離、素の姿になってから装依を解除した。

 

「……ふぅ」

 

「っと」

 

 役割を果たし、安堵のため息を吐く2人。深絵もMSの装依を解除して2人に作戦達成を称賛する。

 

「おめでとう、元君、ジャンヌちゃん」

 

「あ、い、いえ!」

 

「それなら深絵や閃さんもだ。急だったのに2人とも合わせてくれて……」

 

 元は自分だけの戦果ではないとサポートの2人を称える。深絵は謙遜しながら感謝を伝えた。

 

「そんな……私はただ狙撃で隙を作っただけだよ」

 

「謙遜なさらないでください。ドラグディアでもあの距離からの狙撃を一発で成功させる人は少ないです」

 

「そ、そぉ?」

 

 緊張が解けてすっかりタジタジになっていく。それに対して閃の方は無茶な突撃だと指摘した。

 

「まったく……あのような一か八かの煙幕突撃、無謀にもほどがある」

 

「閃さん……」

 

「あんな中で今回はたまたま上手く敵だけを突破できたが、最悪光巴様に怪我でも付けていたら……」

 

「―――――いや、そうはならなかったと私は思うな」

 

 閃の言葉を1人の女性の声が遮った。声の方を向くと、自衛軍の士官制服を着た黒髪ストレートの女性が向かってきた。その女性に気づいた華穂が兄に声を掛けようとしていたところでその人物に目がけて突撃するかの勢いで駆け付けた。

 

「沙織師匠!」

 

「師匠?」

 

 元が首を傾げた。元は知らなくても無理はないが、深絵達はその人物の事を良く知っていた。沙織と呼ばれたその人物は華穂の手をしっかりと握って今回の作戦成功を喜ぶ。

 

「あぁ、華穂君。今回は君の兄が大活躍だったね」

 

「あ、紹介するね。新堂沙織さん。自衛軍のMS部隊「極」の隊長さんで、私達のMSオーダーズ監査役」

 

「新堂だ。今回は防衛大臣からの指名で助力させてもらった。初めまして、黒和元、それとジャンヌ・ファーフニル」

 

「あ、どうも」

 

 2人と握手を交わす沙織。そこで新堂は先程の話に話題を戻す。

 

「元、君はあの煙の中でも動きが分かっていたんじゃないか?」

 

「!」

 

 新堂の言葉に、元が少し目を見開く。あの煙の中で見えていたというあり得ない話を受けて閃が買いかぶり過ぎだと否定する。

 

「は?そんなわけ……」

 

 だが元はそれに対し頷いた。

 

「あぁ。正確には聞こえていた、だけどな」

 

「なんだと!?」

 

 動きが分かっていたと答える元に閃が驚く。一体どうしてそんなことが彼女に分かったのか。師匠と慕う華穂も根拠を聞く。

 

「ど、どうして沙織師匠は兄が分かったって思うんですか?」

 

「愚問だな、華穂。機体の一挙動を見ていれば、決して偶然ではないと分かる。もっともそれがどういったものかは私にも分からないな。出来ることなら、私も学びたいものだ」

 

 歴戦の感、というべきものだった。MSだけでなく、戦士としても卓越した技能を持つ沙織だからこそ、元の持つ何かに気づいたのだ。果たして沙織の望む通り、それが学べるものなのか。元が沙織の言葉に回答する。

 

「学びたい、ですか。困りましたね。自分もこれは偶発的なものですから。けど言えるのはガンダム……蒼いDNを放出する機体なら、この領域にたどり着けるといったところでしょうね」

 

「蒼い……次元粒子か」

 

「えぇ。けど、本当に助けられてよかった」

 

 光巴の方に顔を向けると安心の笑みを浮かべた元。その顔は喪失を経験し、それでも前へと歩み続けたような戦士の顔だ。彼女の親である光姫と黎人も気付いて、向かってきて感謝の言葉を述べた。

 

「まさか、本当にやってのけるとはな」

 

「やると決めた。全力で事にあたったまでだ」

 

「ありがとう、はじめおにーちゃん、ジャンヌおねーちゃん!」

 

「いえいえ、無事でよかったですっ」

 

「作戦の内容、断片的にしか聞かされなかったから、どうなるかと思ったわ。でも、あの姿は……」

 

 光姫の言う「あの姿」。深絵にもあのメカニズムは分かっていない。真希でも果たして解明できるのかと思ってしまうあの姿を、元は話す。

 

「イグナイター。シュバルトゼロガンダムの最終形態にして、俺とジャンヌでたどり着いた境地だ」

 

 境地という漠然とした言葉に大きなものを感じる。それに補足してジャンヌが口を開く。

 

「正確に言うとDN……次元粒子で機体を再構成した姿です」

 

「次元粒子で、再構成……」

 

「なるほど、確かに私達からしてみればとてもではないがたどり着けない境地だな」

 

 説明を受けて黎人が考え込む。今の技術では信じがたい発言だが、奇跡を成し遂げてしまった以上、信じる方に傾いていた。沙織もその表現に納得した。

 ともあれ、無事に光巴が戻ってきた。黎人は集まってきていた者達にこの後の指示を送る。

 

「ともかく、もう流石にこれ以上の騒動はない……と思いたい。全員警戒レベルを2まで解除。隊長達も休息を取ってくれ。明日、また報告書を出してくれ。それから、元、ジャンヌ両名は始末書だ」

 

「うん、わかった」

 

「始末書か……流石にそれは書かないとな」

 

 元も肩を竦めて了解した。そうして解散していくかと思われたが、そこで沙織が呼び止めた。

 

「あぁ、元君伝えておきたいことがある」

 

「ん?どうしました?」

 

「伝えておきたいって……政府関連ですか?」

 

 深絵がそう訊くと沙織は頷いて詳細を告げた。

 

「私が出る時点で、日本政府は君のMS所持法の特例恩赦を確定した。よって明日、MS所持法のライセンス特例授与を実施する」

 

「……というと」

 

「それって、元君が今後MSを持ってもいいってことですか!?」

 

 そうだと頷く沙織。思わぬ躍進に黎人や光姫も驚く。今まで決まっていたのはあくまで違反を取り消すだけ。所持法はまた別途取ってもらう話だった。それが携帯まで特例で許可されたというのは異例も異例だ。

 話を聞いていた華穂も喜びを全身で表す。

 

「やった、やった!にぃ良かったじゃん!」

 

「あぁ、そうだな」

 

 妹の大はしゃぎに頷きを返した元。沙織は元とジャンヌ、そして黎人へ確認要綱を伝える。

 

「喜ぶのはまだ早い。それに携帯が許可されても内容は読み込んでおいてもらわないと。作戦成功の暁にとのことだったから、これで問題はないはずだ。また明日、こちらに伺うが構わないか?」

 

「分かりました。今回はありがとうございます、新堂隊長」

 

 背を向けて再び専用ソルジアを装依すると、沙織は帰還していく。その後ろ姿を見送って、深絵達も各々帰るべき場所へと帰っていくのであった。

 

 

 

 

 光巴誘拐から翌日。元とジャンヌはMSオーダーズのオーダーズ・ネストの会議室にいた。正装に身を包んでおり、前には同じく正装の自衛軍軍人新堂沙織、後方には次元黎人、次元光姫、蒼梨深絵に妹の華穂が席に座っている。

 緊張の中、沙織が2人の名前を呼ぶ。

 

「黒和元、ジャンヌ・ファーフニル、前へ」

 

「はい」

 

「はいっ」

 

 2人は前に出る。沙織が連れてきたアシスタントの隊員から免許証サイズの物を受け取り、それを向き直ってから2人へ渡ししていく。

 

「これが、あなた達のMS所持法のライセンスとなります。今回は特例として2人の分を用意させていただきました。今後はMSの所持・運用が許可されます。ですがくれぐれも違反行動は控えるように」

 

「分かりました」

 

「ありがとうございます」

 

 その手にしっかりとライセンスを受け取ると、後ろから拍手が起こる。華穂が祝いの言葉を贈る。

 

「やったね、にぃ!これで晴れてMSオーダーズ隊員になれるねっ」

 

「あぁ。よろしく頼むな、華穂」

 

 華穂とハイタッチする。ジャンヌの方にも深絵が声を掛けた。

 

「一応ジャンヌちゃんもライセンス取れたから、もしもの時は単独でも装依出来るからね」

 

「はい。もっともハジメに任せることが多いと思いますが、それでもありがとうございます、ミツキさん、レイトさん、サオリさん」

 

 ライセンス取得に尽力してくれた者達へ感謝を述べたジャンヌ。感謝の言葉を受けた黎人は実情を口にする。

 

「まぁサブパイロットが専任となる機体は初めてだから、このケースで法も改正される可能性はある。良いケースになっただろう」

 

 その言葉通り、サブパイロット専任のMSパイロットはこれまでにいなかったらしい。同じにしていいものかもあって、再び法が改正される場合もあるのだろう。沙織もそれに言及する。

 

「そちらも今、晴宮防衛大臣が他の大臣や議員と共に協議している。だがとりあえずは2人とも現在のMSライセンス獲得とした。安心してくれ」

 

「分かりました」

 

 返事をしてライセンスを仕舞う。そこで話は自衛軍の話となる。

 

「それで、MSオーダーズにかなり関係するのだが……この度、自衛軍東響湾防衛基地司令が変わることとなった」

 

「東京湾防衛基地の……というと?」

 

「斉田司令のところね。ま、あんなことしたんだから当然よね」

 

 斉田司令と言われた時点で、察しがついた。あの後分かった話によると、あれは斉田司令の差し金で間違いなかったようだ。もっとも出撃に出した部下には自分より上の司令が命令し、こちらの話は出鱈目であると事前情報を偽造していた。

 そこまでならまだ処罰は司令だけに留まっていたが、問題は更にあった。光姫はため息を吐く。

 

「まさかその後、出撃した隊員達も問題を起こしていたとはね。罪状は……次元覇院のスパイ行為と基地隊員への暴行、地域住民への暴動だっけ?」

 

「だねー。あの司令官と一緒にあの基地じゃ相当悪く活動してたみたいだし」

 

 深絵も言う東響湾防衛基地の治安は相当悪く、またMSオーダーズの悪評も広めていたらしい。完全に嫌味なダメ上司の典型的な行動をなぞるかの行為をしていた彼らはまるごと不名誉除隊処分、今後自衛軍やMSオーダーズといった関連施設への就職を禁じたという。

 当然の結果と呼べる。あのような利敵行為、マキナ・ドランディアでガンダムに対してやれば、一発で死刑になっていたかもしれない。そういう連中はどこであれ処罰される運命にある。元の世界でもその考えは変わらなかったようだ。

 

「でもこれで大分私達も動きやすくなったねー」

 

「次の司令次第、といったところだ。ちなみに誰が次の司令なんですか」

 

 黎人がそう訊くと、手帳を見て確認してから沙織が答える。

 

「えぇと……藤谷努ね。自衛軍でもMS戦術に可能性を見出していて、MSオーダーズの旗揚げの1人よ。知っているかしら?」

 

「あー……なんとなくそんな人がいたような気がする……。でも前任者みたいに極端じゃなければいいわ」

 

「そうだねー。ありがとう、沙織ちゃん♪」

 

「気にしないで、これも仕事だから。じゃあこれで私達は戻るけど、元君」

 

 元を名指しすると、沙織は指差しと共に言った。

 

「あの時は非常事態だったから仕方ないけど、目上の人には敬意を払うように。晴宮防衛大臣が寛容だったからいいものを、見ている私も冷や冷やものだったぞ?」

 

「あー……いや本当にすみませんでした。なんかもどかしいの耐えられなくって……自分がいるのにって」

 

 目上の人に敬意をという、昨日散々聴かされた指摘に激しく謝罪する。あの時は本当に後々振り返ってもよくないと痛感していた。だがあそこで言わなければ状況を打破できないと思ってああ強く出てしまった。罰をもらってもしょうがないことだろう。

 そんな元の言葉を見透かしたかのように、沙織が言い渡す。

 

「ということで、元君には今度うちの新人たちにMSオーダーズが行ってくれるMS所持法試験に参加してもらう。補習の意味合いが強いが、結果次第では剥奪も考えなくもないから、しっかり勉強しておいてくれ」

 

「あー……分かりました。全力で臨みます」

 

 まさかの発言で驚いたが、受けると返す。それでどうにかなるなら充分。真面目に試験を受けることにしよう。ジャンヌから失敗は厳禁だと釘を刺される。

 

「そうですよ?失敗したらガンダムの運用も出来なくなるんですから!私も働けないんです」

 

「分かってるって」

 

『―――――まぁそん時は考えるさ』

 

『……ん?』

 

 唐突に響いた機械音声。知らない声に光姫や華穂、沙織らが戸惑った。だが元とジャンヌはその声を知っている。とはいえ、この世界に来てからはほぼ全く聞いていなかったので忘れてしまいそうになっていた感はぬぐえない。

 声の大元であるゼロ・スターターを見せて紹介する。

 

「あー忘れてた。紹介するよ。俺の機体の元持ち主で機体OSを務める」

 

『スタートだ、以後、お見知りおきを』

 

「あ、あぁ……OSが、持ち主?」

 

 説明を聞いた黎人が納得しようとしたが先日の異世界マキナ・ドランディアの話の時と同じように捻った。沙織はそれらも一切知らなかったため説明を要求する。

 

「少し分からないな。どういうことだい?」

 

 マキナ・ドランディアでも初対面の人からは割と説明要求されることもままあった問題。いつも通り元が説明する。

 

「あー、少し長くなりますが……」

 

『いや、俺が説明しよう』

 

「スタート?」

 

 珍しい。スタートが説明すると語ったのだ。するとスタートは愚痴交じりでその理由を語る。

 

『お前の説明へたくそなんだよ。昨日だって俺が作戦の概要説明調整してやったし、俺が話した方が早い』

 

「あぁ……そう。じゃあ頼むわ」

 

 若干残念そうに思いつつもスタートに説明を任せた。張本人からの解説からか、割と事実を率直に話しつつも、分かりやすいように解説して知らなかった彼らに話していくスタート。やはりあの作戦のプランをこっそり作る様に言っておいて正解だったと思う。

 説明を聞き終えて沙織が一言。

 

「なんというか、よくこれで黎人君が信じたものだ」

 

「えぇ。ツィーラン先生の言葉がなければ信じていませんよ……」

 

 黎人はため息交じりにそう呟く。黎人が信じたことに対しての意外の言葉であったが、それはツィーラン博士の言葉、そして光姫達(特に華穂と深絵)の影響が大きかった。さりげなく視線が彼女らに向いており、不本意さが窺えた。

 説明を終えるとスタートは先程の話に内容を戻した。

 

『話を戻すが、まぁ最悪俺がパイロットとして操縦してやる。そのまま降りてもらって構わない位にな』

 

「そうかい。けど降りる気はないぜ?」

 

 降りる気はない。それは何が何でも試験で引っかからないことと、この戦いを降りない、その2つの意味でだ。妹、そしてジャンヌの為に戦わない理由がないことをスタートにもう一度言った。

 

「護るものがある限り、俺は戦う。戦いの火が焼こうというのなら俺は戦ってその火の粉を払う。それに今のお前だけで動かしきれるとは思えないっての」

 

『そうかい。なら落ちんじゃねぇぞ!』

 

 そう言ってスタートの声は止まる。いつものようにまた閉じこもったのだろう。ジャンヌと見合わせて黎人達に改めて意思表示する。

 

「だから、これからはよろしく頼むよ。次元黎人司令官」

 

「……なら、最初に機体の技術提供はしてくれ」

 

「分かったよ。だけどスタートを怒らせんなよ?」

 

「整備員達に、厳命する」

 

 共闘の握手を交わした2人。こうして、シュバルトゼロのパイロットとそのパートナーは、アースでの戦いを始めるのであった。

 

 

 そして数日後、行われたMS所持法試験にて、別世界での経験を活かし、元は難なく突破することが出来たのであった。

 

 

第1章 END

 

NEXT CHAPTER AND NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。次回の黒の館DNの後、第2章へと突入していきます。

レイ「無事元君達も行動の土台が出来たね」

ジャンヌ「はい。これで元さんも無茶を言わなければいいのですが……」

それは……うん、ここでは言わないようにしよう(´・ω・`)

ジャンヌ「そうなるってことですか」

レイ「うわぁ……それ確定ってことじゃん」

ま、まだ分からないさ(´-ω-`)……多分。

ジャンヌ「そうですか。でもこれ話数は第1部第1章より少ないんですね」

レイ「むしろ第1部が長くなりがちだったって感じって今では思うよね」

まさにその通り(;・∀・)台詞多くしてテンポよく行くことを意識し始めているからね。おかげで1話当たりの文字数も減って個人的に嬉しい限り(*´ω`)
と、では今回はここまでとなります。

レイ「次回黒の館DNもよろしくね~!」


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黒の館DN 神騒乱勃発編 第2回

どうも、皆様。年末に片付けた部屋がまた徐々に散らかってきていることに恐ろしさを感じます、作者の藤和木 士です。やっぱり私片付け下手なんだなぁ(;・∀・)きっと半年後にはもとに戻るんだろうなぁ。

さて、今回は黒の館DNの神騒乱勃発編第2回の公開になります。何と今回は珍しく前後編ないんです。理由はまた本文の方で話します。

それでは黒の館DN、開館です。


 

 

士「さぁ今回の黒の館DNは珍しく単体!作者の藤和木 士です!」

 

レイ「単独ってことでアシスタントはレイと」

 

ジャンヌ「わたくしジャンヌでお送りいたしますっ。でも今回は珍しいですね。紹介するものそんなに少ないんですか?」

 

士「そうなんですよね……人物紹介は細かい詳細がほぼないし、MSはソルジアの隊長機みたいな性能向上型、それから新堂さんが使ってた専用MS刀「村金」くらいだし」

 

ジャンヌ「あら、第1回と違って凄い落差ですね」

 

レイ「それじゃあ仕方ないねー。そういえば武装だけの紹介になるの?そのMS刀って」

 

士「そうなります。いくらチューンナップされた機体とはいえ、武装関連の違いがそれしかないからね(´・ω・`)なので武装単体の解説として出す予定です。ちなみにその形式またやる予定が現時点であります」

 

レイ「そっか。じゃあ始めていくね。人物紹介はまずは次元光姫ちゃんと次元黎人さんのお子さん光巴ちゃんから~!」

 

 

次元 光巴(みつは)

性別 女

身長 109cm

髪色 黒

出身地 日本 東響都 中都区

年齢 4歳

誕生日 10月3日

血液型 A

好きなもの パパ、ママ、ムービーチュウのぬいぐるみ

嫌いなもの ニンジン、パパとママの怒った顔、

愛称 みっちゃん

 

・次元黎人と次元光姫の間に生まれた長女。MSオーダーズと提携している幼稚園に通う年中。

 年相応に幼く、基地を散策してしまうことが両親の悩みの種となっている。MSに興味を示しており、現場のパイロット達からは将来のエースパイロット候補と茶化されている。無論両親達はそうさせたくないものの、成長しても変わらず思うならその時は考えるという。

 光姫の子どもということで元も当初驚く。一方彼女の方は母の友人ということで特になく元気に挨拶をしていた。またジャンヌに対しても印象はよい。次元覇院側からは最重要警戒人物達の子どもということで誘拐、人質の候補として狙われることが多い。実際劇中でも誘拐事件が勃発してしまった。

 

ツィーラン・パック

性別 男

身長 185cm

髪色 白

出身地 不明(現時点では中華連国に住んでいるが、それ以前は不明)

年齢 53

誕生日 6月6日

血液型 AB

好きなもの チェス、将棋、箱庭ゲーム、ホットケーキ、ディメンションノイズの研究

嫌いなもの ペンギン、トカゲ、カボチャスープ、FPS、TPS系のシューティングゲーム

愛称 ミスターDN、プロフェッサーツィーラン

 

・地球の外側に広がる宇宙の世界を更に包み込んでいるという次元世界の存在と、この世界を含めた次元世界を構成する塵である「次元粒子」を発見した天才科学者。次元黎人の学生時代の恩師でもある。

 仮面を付けており、それによると昔の実験による影響とのこと。本人自体は日本人ではあるものの、居は日本海を挟んだ中華連国という国に構えている。黎人が学生の時には東響に住んでおり、気分次第で住処を変える人物。ただしこれは後述する理由もあるとのこと。

 光姫達の成人式後のパーティーでのお披露目で、モバイルスーツの共同開発者として参席。その場で出たモバイルスーツの軍事転用について肯定し、更にモバイルスーツガン・ファイターにも当時にも試作武装のグレネード「シード」が搭載されていることを明かす。しかし武器はそのものが悪ではなく、使う人間の心次第であると持論を語った。その後の暴走事故においては武装搭載を許可してしまった自身の責任としつつも、ここでモバイルスーツの開発停止は人類の発展を遅らせるとして中断しないと断言。モバイルスーツをモビルスーツと改名させ、更にモビルスーツを所持できる「MS使用法」の制定を発表。そしてモビルスーツの犯罪を取り締まる民間軍事組織を今後作ることを発表し、のちに黎人がMSオーダーズを作ることの足掛かりなど、MSの民間普及のための土台作りを行った。そして自身は事件の責任として国外追放の形で中華連国へ渡ったという。

 元帰還時にはたまたまMSオーダーズの黎人に会いに日本に来ており、かつての話をする。それによれば彼に次元粒子の存在を諭したのはカラーシリーズの顔ともなっているガンダムであり、夢の中の時の名乗りからカラーシリーズの名称にガンダムを用いるように指示したのだという。元の話もその経験から信じ、黎人にも信じるように諭す。また事故に巻き込んでしまったことを元に謝罪した。

 とても温厚な人物ではあるが、黎人が学生時代に怒らせたときは物凄い剣幕で怒ってきて以後怒らせないようにしている。また仮面をする理由を聴いてもジャンヌは何か警戒心が生まれてしまって苦手な様子である。

 人物のモデルには機動戦士Zガンダムのパプテマス・シロッコがベース。仮面のモデルは機動戦士ガンダムSEEDのラウ・ル・クルーゼのものがモデルとなっている。

 

葉隠 閃(はがくれ せん)

 MSオーダーズの情報部にあたる「捜査部」の指揮を執る男性。年齢は38。身長178cm。元々政府ご用達の諜報機関出身で、先祖が忍者という歴史ある情報専門家系の出。深絵や光姫と同じく初期メンバーの1人である。その割に性格は現代の参謀といったような冷静沈着さの目立つ人物。

 元を捕らえようとした者であり、その力を間近で見ることになる。元の事は華穂の兄とはいえあまり信用に足りないとしていた。だが基地での邂逅直後に起こった光巴誘拐事件で元が立てた作戦プランと、政府関係者だろうと物怖じせず情報の漏えいと敵に先手を与えるとして迅速な一手を打つべきとする姿勢にはわずかながら肯定し、失敗時の後始末などを請け負った。

 

来馬 真希(くるば まき)

 MSオーダーズのMS整備主任を務めるポニーテールで髪を括る女性。24歳。身長164cm。胸のサイズはEとFの中間あたりとなっている。元々次元黎人のモバイルスーツ開発計画に学生ながら参加していた人物で、モビルスーツへ名称改変後もその仕事に携わっていた。その縁からMSオーダーズの初期メンバーとして名を連ねる。

 軽快で陽気な性格の持ち主で、髪の色フェチな側面を持つ。その性格を生かしてMS整備班に活気を与えながら指揮を執る。分からないことは自身より人生経験豊富な先輩整備士に聞こうとするなど技術向上のための努力は惜しまない。ガンダムの整備もほとんどを担当し、シュバルトゼロガンダム加入後はその機体性能解析と共にガンダム用の新兵装も考案する。

 

晴宮 冬馬(はれみや とうま)

 日本の防衛大臣を務める男性。MSオーダーズの設立に対し、その監督官として名乗りを上げた男性。

 MSの実用性に早くから着目し、いずれは自衛軍や警察部隊の主装備を転換するための教育部隊として彼らの組織設立の後ろ盾となった。彼自身も新進気鋭の黎人達に期待しており、お互い良い信頼関係を持つ。

 光巴誘拐時には結果的に黎人達へ苦渋の選択を強いてしまう立場となるが、元の発言を肯定し、作戦成功を信じて元とジャンヌに一時的な作戦参加権利を与えた。

 人物外見モデルは機動戦士ガンダムSEEDのウズミ・ナラ・アスハ。

 

斉田 明(さいだ あきら)

 日本の防衛軍たる自衛軍の東京都湾岸防衛基地の司令官。黎人達MSオーダーズは彼の部隊との連携が基本となる。

 晴宮とは違って黎人達の事を毛嫌いしており、戦闘の素人と嘲る。地位に固執し、自らのMS隊への扱いもぞんざいである。早く黎人達が失態で解散することを目論み、次元覇院ではないものの、元のガンダムを封印処置にしようと言うなど、次元覇院の活動に加担するような対応を迫っている。

 光巴誘拐時には余計なものを招いたとしてガンダムをさっさと渡すようにと言ったが、その考えに元が彼をテロリストに加担する馬鹿と称し激高。作戦時には元を軍紀違反として自身のMS部隊に襲撃させるが、晴宮の説得により部隊は撤退。更に晴宮が派遣した部隊の問い詰めを受け、挙句の果てに逆に軍紀違反として逮捕、軍を不名誉除隊させられた。

 

 

新堂 沙織(しんどう さおり)

性別 女

身長 163cm

髪色 黒

出身地 日本 東響都 新祷区

年齢 25

誕生日 4月12日

血液型 B

好きなもの 刀剣鑑賞、剣道、みたらし団子、芯のある人間

嫌いなもの 湿気(刀がさびる為)、肝試し、ぬれせんべい、芯のない人間

愛称 自衛軍最強のMS剣士

 

 

 自衛軍のMS部隊「極」の部隊を率いる若きエリート士官。晴宮の懐刀にして「自衛軍最強のMS剣士」。女性で光姫、深絵と同い年かつ友人でもある。

 MSオーダーズが発足直後から出向し、その操縦技術を直に学ぶ。オーダーズの任務にも従事し、また実質的に彼女が視察官となりその評価を行っていた。現在ではMSオーダーズの自衛軍MS隊に対する早熟訓練の際の共同訓練官としても立つ。MSはソルジアではあるが、彼女用にチューンナップされており、機体カラーは鏡のような白銀に肩を黄色にペイントしている。主兵装も対MS戦を想定した日本刀「村金」を装備。彼女自身の戦闘技術により光姫や深絵も苦戦するほど。華穂の師匠でもある。

 斉田の妨害時に元とMS部隊の間に割って入って元を先に行かせ、MS部隊に真実を告げて撤退させた。後日彼女が晴宮に代わり元達へMS所持法のライセンスを授与した。

 人物外見モデルはマブラヴシリーズの篁唯依。

 

 

レイ「以上が、人物紹介になるよー。個人的に真希ちゃんがどんな風にガンダムの装備作っちゃうんだろーっておもうねっ」

 

ジャンヌ「第1部ではヴェールさんがそのポジションにいましたね。なんでしょう、この整備員が女性というつながりは」

 

士「(´・ω・`)個人的に整備員は男の人もいいんだけど、女性の機付長?さんを推していきたい。もちろん男性の整備員もいるのでご安心を」

 

ジャンヌ「そうですか……。では次はマキインの改良型、マキイン……サキガケ?」

 

士「あ、かいです(´Д`)サキガケって意味も込めていますが、基本的にかいです」

 

ジャンヌ「で、ではマキイン・魁と新堂沙織機のソルジアの武装、MS刀「村金」をどうぞ!」

 

 

ZHMS-P01C

マキイン・(かい)

 

・次元覇院のMSマキインの性能向上モデル。カラーリングは同じオレンジ色だが、装備を追加し、各種機能も向上している。頭頂部にロッドアンテナを追加している。また本機は実質的にエースパイロット専用機としての側面も持ち合わせる。

 特徴的なのが背部増設バックパックに接続されたウイングスラスターであり、大型の翼の内部にスラスターを搭載し、空中機動性を向上させている。武装もミサイルポッドを増設するなど火力を中心に強化される。

 次元覇院のMSにおける司令官機として期待されており、名称の魁は改良の「改」と先頭を行く者を意味する「(さきがけ)」を込めたネーミング。

 

 

【機能】

・高性能通信システム

 頭部にロッドアンテナを追加されたことによる通信強度が向上。回線不良地域でも各機体との通信を維持可能となっている。

 

・簡易飛行形態

 マキインから継承された飛行支援形態。ただし本機は実質的にエースパイロット機としての側面も持ち合わせることとウイング追加から、使用される頻度は非常に少ない。

 

 

【武装】

・ビームライフル

 マキインと同型のビームライフル。威力は変わらず、連射感覚も同程度。腰背部に装備される。

 

・MSアサルトライフル

 マキインと同型の対MS、対人用兵器。右腰に装備され、予備弾倉を2本、シールド内部に内包する点も同じ。

 

・ビームサーベル

 両下腕部に装備するボックスユニット内包式のビームサーベル。マキインと同型。

 

・グレネード

 左腰に3個装備する爆裂兵装。マキインと同型の兵装で性能も準じる。

 

・ヴァリアブルシールド改

 マキインの装備するヴァリアブルシールドに改良を加えた兵装。変更点は上面部分であり、この部分にミサイルランチャー固定用箇所が増設された程度。ただし将来的な武装増加もあり得、MSオーダーズのエディットウエポンシステムに準じた追加兵装運用システムも搭載される可能性がある。

 

・ミサイルランチャー

 シールド上面に装備する3連装ミサイルランチャー。中距離支援用火器であり、対艦用・対要塞用兵装としての意味合いが強い。

 武装モデルは機動戦士ガンダムミッシングリンクにおけるペイルライダー陸戦重層型の脚部ミサイルランチャー。

 

・ウイングスラスターバックパック

 背部に接続されたバックパックとそれに接続されたウイングスラスターで構成された兵装。可動域がウイングとバックパック接続部に存在する。

 カバーされた間にスラスターを内蔵しており、そこから次元粒子を噴射して浮力を生みだす。可動域を用いることで高速飛行・高機動が可能であり、マキインよりも高度な戦闘を展開出来る。ただしシュバルトゼロガンダムはもちろんこの時代における高性能を突き詰めているカラーシリーズのブラウジーベンほどではなく、あくまで量産機の範囲内での話となってしまっている。

 形状としてはデスティニーガンダムの背部ウイングの内、主翼となる大型部から副翼用スリットをなくし、スラスターのみを内包して単純構造可したような物。

 

・アサルトナイフ

 機体シールド内部に内包される実体剣。ナイフの名前通り短い刃で、投擲あるいは対人武装としての使用が多い。銃器以外での人質確保を想定しており、無暗に量産型で素人が使用しないように扱われている。それ以外にも本兵装がMS用武装として扱うには軍に所属したようなエースパイロットくらいしか使用できないと判断された故の仕様でもある。

 

 

 

MS刀「村金」

【武装解説】

 新堂沙織のソルジアが使用する、対MS戦を想定した実体剣。右腰にマシンガンと入れ替わりで装備する。

従来の刀が持つ、斬る・打撃といった使い方をMSに合わせ強化しており、切れ味はMSの装甲に覆われていない箇所を両断出来るほどに抜群。また鞘部分は鈍器としての運用が可能で収めた刀のメンテナンスも簡単にだが行う。

 ビームサーベルではしっくりこなかった沙織のためのオーダーメイドウエポンである。名称は村雨といった有名な刀剣の村に金を組み合わせた造語である。当初はヒート剣にしようとしたものの、ヒートでは沙織にしっくりと来なかったため実体剣のままとなった。今後は元の機体の技術を用いて装甲を斬り裂ける刀を製作予定。

 

 

ジャンヌ「以上が機体および武器解説になります」

 

レイ「あれだね。マキイン・魁がいるんだからソルジアも改良型がないと!」

 

士「それも考慮して第2章からはソルジアのSZガンダム技術反映の改良型に華穂ちゃん含めた一部部隊に配備されるよー。どのような改良がされるか、楽しみにしていてくださいねー」

 

レイ「楽しみだねー。シュバルトゼロも新装備が採用されたり?」

 

士「(´・ω・`)それは……まぁ、追々と」

 

ジャンヌ「まだ決めていないんですね」

 

士「というか言えない。てことで今回の黒の館DNはここまでです」

 

レイ「LEVEL2第2章もよろしくねーっ」

 




今回の黒の館DN、閉館となります。

MS刀は年越し前に始めたアリスギアから触発された兵装ですが、それ以上にそれを用いる新堂沙織のモデル元、そして部屋に飾っている某キセキを記念して作成したMGアストレイレッドフレーム改を見ていて「これは入れたい」と思い設定しました。
また第1部のドラグディアが西洋剣をベースとした実体剣マキナ・ブレイカーを使用しているのと対比させたいのもあって、元の世界、出身地を象徴するものとして本兵装が選ばれたのも背景にあります。単純にマキナ・ブレイカーと違いを付けたいのもありますが(´・ω・`)

これで第1章は終わりとなりますが、続く第2章も波乱ある物語となっています。第3章、そして第4章、第3部へと続く、元の重要なターニングポイントともなってまいりますので、第2章もよろしくお願いいたします。

長文となりましたが、これにて第2部第1章は終了となります。次章もよろしくお願いいたしますm(__)m


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第2章 消える命、消えない想い
EPISODE12 燃ゆる戦場、滾る苛立ち1


どうも、皆様。2周年を迎えたアリス・ギア・アイギスがここから本番だ( ゚Д゚)とでも言われたかのようにストーリーが重くなってきた気がします、作者の藤和木 士です。

ネイ「アシスタントのネイです。またアプリの話ですか」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよぉ~。ついでにその元凶のキャラクター今日当てたのよねー?」

そうっすね(´ρ`)村尾未羅ちゃん、重力属性の最高レアリティキャラは一緒に来た人と合わせて初めてだったんで今後安定的に運用できますね(*´ω`)
さて、ガンダムDNはEPISODE12から第2部2章へと入っていきます!ちなみに章のタイトルは「消える命、消えない想い」です( ゚Д゚)

ネイ「これまで以上に不吉極まりない気がするんですが気のせいでしょうか?」

グリーフィア「まぁ、でもガンダムだったらあり得そうなタイトルよねぇ。誰の命が消えるのか、今から予想してみるのも面白いかもねぇ♪」

ネイ「不謹慎だよ、姉さん……」

さぁ、そんなわけでまずはEPISODE12からです、どうぞ!


 

 

「さぁ、では定例会を始めよう」

 

 薄暗い部屋の中に円卓の机とセットになった椅子に座る男性達が浮かび上がる。いずれの男性達もオレンジ一色のローブ姿で、顔などははっきりとは分からない。老若の幅ある、しかし妙な統一感ある姿は真面目さ、あるいは異質さを感じさせた。

 一人の男の促しで、男達は順に話すべきことを話していく。

 

「我らの教団は現在、西側に2万人ほど、東側に4000人弱の信者を抱えます」

 

「戦闘員はそれぞれ6000人と500人前後。西側東側それぞれで信者は増やしており、特に西は安泰と言えるでしょう」

 

 彼らの言う我らの教団、それは次元覇院だった。纏うローブの色も次元覇院が運用するMSマキインのカラーと同じオレンジであり、これは教団を象徴する色でもあったのだ。そして彼等こそ、次元覇院の中核、他宗教で言う所の教祖にあたる教柱(きょうちゅう)なのである。

 続いて眼鏡を掛けた男性が端末を操作して円卓中央と教柱それぞれの正面にホログラムの画面を表示させる。そこにはいくつかの機体が表示されていた。男性は説明していく。

 

「MSに関しては、プロトタイプを改造した技術試験機「刃」がロールアウト。西側の他宗派の勢力や、レジスタンス、そして東との境目となっている「ウォーライン」のMSオーダーズとの戦闘に投入。良好な試験結果を見せています。刃のデータを用いて、まもなく次世代機「MAXIMUM」もロールアウトできるかと」

 

「ふむ……これが正式にロールアウト、量産化されれば……」

 

「MSオーダーズの若輩共も終わりだな。それにもうあの機体達も完成していると聞く。既に1機が東響方面軍の基地に搬送されたとか」

 

 自分達の部隊の増強に勝ちを確信した様子の教柱達。彼らにとってMSは自分達の神の贈り物とはしているものの、本気でそう信じてはいない。MSは兵器でしかない。その前提で彼らは使徒達に命じ、自分達の邪魔者を殺し続けてきたのである。

 そんな使徒たちも彼らにとっては戦いの駒に過ぎない。こうして自分達は安全な場所から高みの見物でその利益を得る。それは彼らがMSという力を得る前から、信者達を使って行ってきた活動だった。すべては順調に見えた。しかし教柱の1人が東側の状況に対し、だが、と述べる。

 

「確かに東の攻略は近いだろう。だが、1か月前に現れたとある機体が、我らの敵MSオーダーズに向かい風となった」

 

 男は端末を操作する。すると先程まで機体を映していたウインドウが変わり、新たに漆黒のガンダムが表示された。次元覇院がもっとも敵視する「ガンダム」と同じ顔の機体。その姿に教柱の何人かがため息をつく。

 

「こいつか……」

 

「漆黒のガンダム……」

 

「そう。シュバルトゼロガンダムと呼ばれるこの機体が、我らの次元覇院東響使徒を圧倒的な暴力と呼べる力でねじ伏せている。ガンダム達はこれまでにもことごとく我らの邪魔をしてきたが、この機体は圧倒的に性能が違い過ぎだ」

 

 この1か月、次元覇院の東響支部の機体は次元光巴()()作戦の直後から次元覇院の東響都民使徒化をこの機体とMSオーダーズにより邪魔され続けていた。こちらの方が暴力でねじ伏せるはずが、その圧倒的な性能と言う名の暴力で逆に戦線を押し返されつつあったのだ。

 圧倒的な機動性、高出力兵装の際限ない使用、多彩な戦法……。パイロットの技術である反射速度と攻撃の精確性が合わさり、次元覇院は思うように攻められていなかった。前月には5000人いたはずの東側使徒も、1か月で他地域での損害を含めて1000人も減ってしまっている。この間にも人は増やしているはずなのにだ。東響の、シュバルトゼロガンダムによる損害が酷すぎるのである。

 教柱の1人がMS開発の教柱に質問する。

 

「MAXIMUMや例の機体では勝てんのか?」

 

「どちらも未知数です。いくら対抗策があるとはいえ、MAXIMUMでもあの出鱈目な性能を超えられるとは思えません。いずれの我が軍の機体でも優れたパイロットによる適切な運用、そして数の利があってようやくと互角かといったところでしょう」

 

「なんということか。兵の質を上げねばどうともならんか」

 

 最新鋭機でも勝てない結論に教柱達はため息を吐く。全部隊投入の考えもあったが、それで落とせてもその隙に背後から他宗派の機体に殲滅させられかねない。誰もがこの時、東響までの距離を呪ったことはなかっただろう。

 手詰まりと呼べる状況。誰もが今後の対応に苦悩する中、1人の男性が彼らに言ってやった。

 

「―――――なら、俺がやってやるさ」

 

「!沢下戦神官……君ならこの機体を倒せると?」

 

教柱の者達が一斉に沢下と呼ばれた彼の方向を向いた。その人物はオレンジ色のフードを取ると、昔風情のあるおかっぱを崩した白髪を見せて漆黒のガンダムへの意気込みを語る。

 

「倒せる?違うな。倒すのさ。MSオーダーズだろうがその漆黒のガンダムだろうが、次元覇院はその覇の時の如く、全てを制覇する。従わないものは我らの糧になってもらう。それが教義のはず。そのための戦闘のプロ、戦神官だ」

 

 男の自信に満ち溢れた発言を教柱の1人は称賛する。

 

「大した自信だな。ならば貴官にこのガンダム、ひいてはMSオーダーズの対処を任せる。現在このガンダムのパイロットはMSオーダーズの部隊と共に、この三枝の隣「愛智」の基地、これまでに何度か攻撃している「四ツ田基地」に向かうとのことだ。まずはその基地の最終攻略がてら、そのMSと接触。戦闘能力収集せよ」

 

「分かった。だが、殺しても文句は言わないだろう?少なくとも、既にあった機体達を倒すことは出来る」

 

「それならばどれほどいいことか。こちらの「プロジェクト・ホルン」もある。いたずらに兵を消費するなよ」

 

「了解。あの基地もようやく落とせる。どれだけ泳がせていたことか……MSオーダーズ、そして次元光姫!あの女を地獄へ落すのは、俺だ」

 

 ほくそ笑む男、「沢下判」。次元覇院の次なる一手が今起ころうとしていた。

 

 

 

 

「………………愛智か」

 

「ん?どったのにぃ」

 

 橋を走る車の窓から日本の丁度中央近くにある県「愛智県」の街並みを眺めて一言呟く元。何かと思った華穂の発言に、元は思いにふけった理由を語る。

 

「いや、通っていた短期学校が愛智にあったからな。あの事件で巻き込まれていなかったら、ちゃんと卒業していたのになって」

 

「あー、そういえば元君卒業間近の時に巻き込まれたから卒業出来ていないんだよね」

 

「そうそう。就職も内定していたんだけどな……流石にパァだ」

 

 同じく聴いていた深絵がポンと手を打つ。卒業を控えていたにも関わらず超次元現象……この世界では次元障害と呼ばれるそれに巻き込まれたことで、元は短期学校を退学する形となっていた。就職先も決まっていたことからそこばかりは残念だったと気を落とす。就職活動の履歴書も何度も書き直した故にそれを無に帰してしまったことは残念に思う。

 華穂はそれを聞くと確かにと頷きつつもそのあとこの事について話してくれた。

 

「そういうことか。でもにぃよかったかもしれないよ?あの企業ブラック企業だったみたいで、あの後3年くらいで労基の監査入って経営陣逮捕されたって聞くし」

 

「あー……マジか」

 

「それなら良かったかもしれませんね、事故に巻き込まれて」

 

 ジャンヌからもその企業に入らなくてよかったと言われてしまう。身もふたもないことだが、それが事実なら確かに入らなくて正解だっただろう。

 そもそも彼らはなぜ愛智に来ているのか。それは向かう先に理由があった。元達が向かっているのは愛智県のMSオーダーズとの戦いの中でもっとも重要な場所に位置する、名護屋港内に位置する自衛軍基地「四ツ田基地」。この基地の主力は未だ戦闘機といった旧式兵器であり、MSオーダーズは自衛軍本部からの要請を受けてMSの導入促しを行っていたのだ。それも1回2回の話ではない。これまでに5回も促しを行っているにも関わらずMSを配備しないのだという。

 

「それで、今回は導入できるようにして来たのか?MS」

 

「一応今までもそうなるようには話してきたよ。でも昔からの変な考えで頭から否定する人にはなかなか声は届かないから。何度も声をかけるしかない」

 

「もうっ。次元覇院とおんなじだよ!なんで分からないかなぁ……」

 

 見込みを聞くと2人の表情が曇る。彼女達も何度目かになる訪問に嫌気が差しているようだった。そんな説得組に元やジャンヌも同行することになったのは、それを打開してくれるかもと思ったからなのかもしれない。

 確かに元はMSを効率的に扱える世界でMSについて学んだ。MSの利点も把握している。とはいえ説得まで待ちこめるかが問題だった。こちらの常識をその常識を知らない人間に納得させるというのは難しいと、既に実感している。それでもしなければならないのが悲しいところだろう。

 苦難の連続である華穂達にわずかながらエールを送る。

 

「分からないやつには分かるまで根気よく行くしかない。そこに不正があるのならそれを突けばいいけどな。絶対じゃないが、俺も何か言えたら言うよ」

 

「ありがとう~元君。説明は私達がやっていくけど、多分今回は元君の話が主軸になるかも」

 

「だね。私達の世界よりMSを扱える人がいる。これが前と一番違うことだから」

 

 返答した華穂達もその違いを今回の強みとして押し出していくつもりのようだ。いずれにせよ、ここを落とされるようなことはあってはならないのだ。落ちればこの街も、自分の街と同じことになる。自分や華穂、そして深絵といったような人間が生まれない様ここが正念場だ。

 こちらの観光本を眺めていたジャンヌが言う。

 

「大変ですが上手く行くといいですね」

 

「うん、頑張るー。最終手段を使わないといいけど……」

 

 肯定しながらも大きくため息を吐いた深絵。すると運転手から知らせが来る。

 

「まもなく基地到着です」

 

「分かったよ。さぁ、こっからが私達の戦場だよっ!」

 

 意気込む深絵。華穂も続く。

 

「これ終わったら、私名護屋の街で服見るんだ……」

 

「華穂、それ死亡フラグ」

 

 華穂のあからさまなフラグにツッコミを入れる。早々にそんなフラグを立てて死んでもらっては困る。だが意図を知らずにジャンヌもこの後の予定について口にする。

 

「いいですね。東響のお菓子と西に近い街のお菓子とでは味付けも異なるそうなので、私もそういったものを買い込みたいですっ」

 

「ジャンヌ。もう少しスラングは勉強しような?」

 

「あはは。終わった後の事もいいけど、まずは目の前の事に集中しようねっ」

 

 これから軍事関係の大事な話をしに行くメンバーとは思えない、朗らかな雰囲気を保ったまま車は件の四ツ田基地へと入っていくのであった。

 

 

 

 

 この時代において、MSに対する考え方は3つに分かれる。1つは作業用のパワードスーツとして扱う平和的な考え。これが本来モバイルスーツ開発者である次元黎人らが求めたもので、今現在そういった作業用MSとして形が残されている。続く考えが戦闘用パワードスーツとして、武器として戦術・戦略に用いる考え。MSオーダーズ、自衛軍、そして次元覇院といったMSを運用組織は主にこちらの考え方で、MSを運用している。そして最後の1つ、それがMSに頼らない、既存の兵器だけで対抗するという考え方であった。

 

 頼らないと聞くと聞こえがいいかもしれないが、実際のところは「MSなど戦闘機に比べれば小さい、力のない兵器だ」といった時代遅れの既存兵器へ固執する意地から来る考え方であった。既に多くの国と地域でMSの有効性は実証されており、戦力差は戦闘機とで1対7と大きく突き放している。この先MSの性能が上がればこの差は更に大きくなる見方だ。

 過去の栄光に縋りがちな、日本人だからこその考えは古い考え方の軍人が上層部にいる基地で多くみられる。晴宮防衛大臣を含む自衛軍トップもMS導入を促してなおこれを受け入れない基地に対して、予算削減といった手段で圧力を掛けてMS導入を強制させている。だがそういったことを地理的理由から出来ない基地も少なくない。そのうちの1つこそ、名護屋最大の自衛軍基地で次元覇院含めた官西とMSオーダーズ側、官東との境目にある「四ツ田基地」なのだ。

 

 既にこの5年の間、何十回にも渡り次元覇院を含めたMS部隊がこの基地や境にある基地を襲撃していた。それらはほぼすべてMSソルジアのおかげで食い止めることに成功していたが、四ツ田基地の古い人間たちはいずれも自分達の戦力があればこそと慢心しきってしまっていた。

基地の隊員達にもその考えを強制しており、それら行動は軍内部でも問題となっていた。MSオーダーズはそれを解消すべく、何度も説得を続けて来ていた。そして今日もまた上層部への理解を求める。が、彼らの考えは今日もまた変わるところを知らなかった。

 

 

NEXT EPISODE

 




EPISODE12はここまでです。同日公開のEPISODE13も公開です。

グリーフィア「次元覇院もいよいよ動き出してきたわけね。前哨戦って言ってたけど、果たしてシュバルトゼロ相手に生き残れるのかしらねぇ♪」

ネイ「確かに元さんは強いけど、まさかってこともあるよ。相手には秘密兵器があるみたいだし」

グリーフィア「んーそうねぇ。それもだし元君達が今回訪れる基地も色々と複雑な事情みたいだし、何が起こるか分かんないわねぇ~」

(;・∀・)あと描写が入るけど今回シュバルトゼロのサポート機のGワイバーンは同行していないからね。戦闘になったらイグナイターはおろかイグナイトにもなれんよ。

ネイ「あ、弱体化してるんですね。それは戦闘にならないことを祈りたいですね……」

そうですねぇ。というわけでEPISODE13に続きます(゚∀゚)


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EPISODE13 燃ゆる戦場、滾る苛立ち2

どうも、皆様。引き続きご覧の方は改めまして。先日ガンダムVSシリーズのマキブON家庭版発売決定にようやくヴァリアントサーフェイス触れる(´Д`)と喜んでおりました、作者の藤和木 士です。

レイ「アシスタントのレイだよー」

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです。ヴァリアントサーフェイスって旧シュバルトゼロの武装モデルの1つにもなっていた機体ですよね。ここまでその機体触ってもいなかったんですね……」

うん、だから今までのはほぼ漫画と対戦動画で見てって感じだよ(゚Д゚;)ちなみにV.sは今のシュバルトゼロにもある程度イメージとして落とし込んではいるよ。ウイングの光の翼とかね。
さぁEPISODE13も公開です。

レイ「MS導入かぁ。反対する人もいるんだねぇ」

ジャンヌ「一体何がどうして、MS導入を反対しているのか。事情がありそうですね」

では本編をどうぞ。


 

 

「はぁ。何度も言ったはずだ。この基地にモビルスーツなどと言った、科学者の妄言で実現したものはいらないと」

 

「同感ですな。戦力比がなんだ。次元粒子などという得体のしれないもので動く人形に命を預けられるわけがないだろう」

 

「おまけに異世界でもMSがなどと……それはお前達の頭の中の世界での話だろうが。お前達だけの世界の話なら、どうとでも言える」

 

 説得のための資料を提示して、話し終わったところで深絵達に向けられたのは今までと同じくだらないとの言葉だった。四ツ田基地の上層部メンバーは皆自ずとMSへの理解を示さない。誰も深絵達の言葉に耳を貸さなかった。基地を預かる司令もだんまりを決め込んでいた。

 正直に言って、今までも同じだったのでそれほど期待してはいなかった。今までも根拠のない持論で突っぱねられていたため今回もほぼやけくそ気味だ。それでもMSに運用について詳しい元の経験を聞いて、戦術に取り入れたMSオーダーズはこれまで以上に着実に成果を上げている。今までより20パーセント近い戦果向上に現場では驚きの声が上がっている。そのおかげでソルジアも改良型が誕生。量産化が進められている状況で、彼の話を信用できるはずなのに彼らはなおも嘲笑い、決めつけ、そして怠慢していた。

 

(……正直言って、もう駄目だなぁ。晴宮防衛大臣には申し訳ないけど、やっぱり予算削減を無理にでもしてもらった方がいいかな)

 

 心の中で思う深絵。MS導入に賛成しない基地への最終手段。導入しなかった場合でも予算の削減によって防衛能力が落ちるそれは、敵部隊侵攻を許す諸刃の剣。だからこそ基地が落ちるよりも先に先手を打って、一刻も早いMS導入へ誘導する。元が提案したもう1つの案と合わせてこれが最後の策だった。

 友人の夫である黎人も含め良くしてもらっている晴宮に手間を掛けさせたくない。だがこれしかないだろう。そう思った深絵の耳に華穂の提案が入った。

 

「もうっ!そんなに言うんだったら、実際の人の話を聞けばいいですよっ!にぃ、出番だよ!」

 

「か、華穂ちゃん今は仕事中……」

 

 元への期待感に溢れる華穂を言い咎めるも、深絵も同じ気持ちだった。元が向こうの世界で得た考え方なら、この停滞状況を打ち破ってくれるかもという淡い期待があった。本当なら今回は全て元に説明を任せてみても良かったが、以前の晴宮防衛大臣がいる場での言動もあって黎人達との打ち合わせでこちらがメインとなった。

 目線を合わせると、元が頷く。交代することを伝え、話のバトンを元に託す。

 

「じゃあ元君、お願いします。くれぐれも言い過ぎないように」

 

「善処はする。けど率直に言わせてもらうぞ」

 

 期待に沿えるかは分からないとしつつも元は台に立つ。基地上層部からの視線が更にきつくなる。だが元はそれを物ともせず切り込んで言った。

 

「じゃあまず言わせてもらいますけど、既存兵器がMSより優れている点ってなんですか?」

 

「はぁ?お前は分からんのか?」

 

「えぇ。正直既存兵器、例えば戦闘機がMSに勝っていると思うのは移動距離、大きさ、重さ、直線スピード、実弾の破壊力、あとは1機当たりの値段の高さ。そのいずれもMSとの対決では何の影響ももたらさない。むしろ弱点となりえる」

 

 元が語るのは今までも深絵達が再三伝えてきたMSの利点と既存兵器の欠点。MSは非常にそれら兵器と小回りが全く違う。深絵と華穂は顔を見合わせてしまう。

 どういうことだろうか。それらは散々伝えてきたはず。相手も聞き飽きた指摘に声を荒げる。

 

「そんなことは今までにも飽きるほど聞いて来た!そんな程度の問題、歯牙にも掛からん!」

 

「けどそれは、あなた達だけが見ている世界の話ですよね」

 

 しかし元は上から更に指摘して反対の意見を押し留める。先程深絵達が言われた自分だけの世界であると。的を射た発言に上層部の連中が騒ぐ。

 

「何!?貴様不敬にもほどがあるぞ!」

 

「実際に戦果を挙げておる!これは現実の話だ!」

 

「は、元君……!」

 

 怒り心頭の彼らを見て、流石に不味いと制止に入ろうとした。だがそれに対し正面から対抗する元。

 

「MSの戦果だって事実だ。むしろ、あなた達の戦果もMS無しでは実現していない。でなきゃ、こういうデータも取れていないんだからな」

 

 スクリーンに映し出されている戦果のまとめに指をさす。元の言う通り、これまでこの基地が関わった防衛戦にはMSが投入されていた。最初はこの基地の戦力だけだったが徐々に制圧されていき、MSの合流でようやく立て直せたことになっている。だが彼らはその結果を「自分達だけの力」でどうにかなったと思っていた。今も彼らは言う。

 

「フン。それはお前らの目が節穴だ。それは自衛軍の意地で、逆転を得た結果」

 

「そうだな。それは自衛軍の成果だ。でもあんた達じゃない」

 

「なんだと……?」

 

 彼らの戦果ではないと否定した元の口から、今回用意した最後の手段が語られる。

 

「仲間意識の必要な軍隊で、個人の考えや戦果に固執するのはいただけない。それを続けるのならこちらも非常手段を取らせてもらう」

 

「ほう?非常手段?」

 

「今後一切、あなた達の基地の作戦、および救援にMSは送らない」

 

 それは今回の説得において自衛軍トップとの会議で決定したこと。というよりは元が提案した案だった。MSを必要としないというのなら、それを叶えさせてやればいい。ただし、やるなら徹底的に。未だ既存兵器の活躍はあるものの、いずれもその数を減らしている。MSへと置き換わりつつあった。そんな状況で、まともに支援を寄越す基地があると言えば、そうはないだろう。その現実を思い知らせるのがこの非常手段であった。

 最悪基地を失いかねないハイリスクな提案。それでも最初に深絵が考えていた予算削減よりは……。これに対しどう出るかと思われたが、ここまでしても彼らは彼ら。その提案に二つ返事で答えた。

 

「いいだろう。MSなど絵空事の珍兵器だということ、他の基地の兵力と共に思い知らせてくれる!」

 

「そうですか。けどあんまり期待しない方がいいですよ。周囲の基地はいずれも戦闘機を主戦力としない、MSを軸としています。少数を残していてもいずれも自軍MSとの連携、あるいは非常戦力としてしか使わないでしょうから。正式な通達が本部から来ると思われます。では僕からの話は以上です」

 

 両者共に余裕を見せる。だが深絵は分かっている。これは悪い流れであると。それに怖気づいてくれることが第一だったのだ。だがそれでもやるしかない。最悪この基地が壊滅してでも、基地上層部がいなくなってMSを配備できるようにしなければならないのだから。

 お互い言うべきことは言った。最後に完全に口を閉ざしていた基地司令の男性が言った。

 

「では、今回の会談はここまでとしよう」

 

 そうして今回の説得はまたしても失敗することとなったのである。

 

 

 

 

 基地を出て、帰りの車の中。ジャンヌは説得とその反応を納得できていなかった。どうしてあれほどの利点を持つMSの事を訊いても、旧来の兵器が一番だというのか。それを思い切って口にした。

 

「どうして、あの人たちはこうもMSの利点を理解できていないんでしょう」

 

「ん?……あぁ、あれは理解できていないんじゃないよ。理解したくないんだと思う」

 

「理解したくない……?」

 

 カホからの言葉に首を傾げる。DN……次元粒子を用いた旧来の兵器を上回る力を発揮できるMSを遠ざける理由をジャンヌはまだ分かっていなかった。するとハジメがこの国の人について簡単に説明する。

 

「日本人は昔から過去の物に縋りがちなんだよ。昔からある物を崇めて、それを絶対の価値観にしてしまう。それが自分の中で変わらない不変の常識だって決めつける。少し違うかもだけど俺も柚羽のこと引きずってただろ?過去がああだったからこれからはもう誰の手も離さないって」

 

「あぁ、ハジメの幼馴染の……。えぇとつまり……」

 

 頭の中で基地上層部の者達の言葉を整理する。彼らはMSが出来損ない、言い換えれば既存兵器が全てだと言っていた。だがそれはMSの性能を認めたくない気持ちから起因するもの。言ってしまえばMSの性能は認めていること。認めないのはプライドだろうか。

 考えるジャンヌに対し、対角線上の席に座るカホが簡単に彼らの考えを語った。

 

「つまり、あの人達は昔の兵器大好きなのよ。MSが普及した後も戦闘機とかそういう昔の兵器が良いって人もいるくらいだし。それが重症化して、あんな旧式に平気で命を預けているんだからいい迷惑だよっ!」

 

「それは……いい迷惑ですね。でも、本当にそうなんでしょうか……?」

 

「華穂、それは意味が少し違う……って、ジャンヌどうした?」

 

 カホを諫めながらもジャンヌの言葉に気づくハジメ。ミエも何が引っかかっているのかと問う。

 

「さっきの会談でどこか気になる点でもあった?」

 

「あ、はい。……あの基地司令の方、他の士官の方と違って、ほぼ喋らなかったなぁと思いまして……。それにあまり悪い印象を感じなかったといいますか……あ、もちろんMS導入に賛成していないことにはよくは思っていなかったですよ?」

 

 ジャンヌは感じ取っていた。彼から伝わる感情のDNを、詩巫女としての感性によって。あれは苛立ちや失望のように思える。しかしそんな負の感情でもジャンヌ自身の心の中では放っておけないと感じた。

 まるで正反対の感情であるそれらがどうしてもジャンヌは腑に落ちなかった。カホはそんなことはないとジャンヌの考え方を否定した。

 

「いやいや、それはないって。あの司令も同じ上層部の士官達と一緒で怖い顔してましたよ~。嫌味も言ってた気がするし!」

 

 カホの表情からは一刻も早く今日の事を忘れたいと言いたいくらい、印象を悪く思われていた。だがその一方でミエ、そしてハジメは少し考えて気づく。

 

「まぁすごい怖い顔していたのは私もよく覚えてるよ。……けど、確かにあの人、最初と最後の挨拶以外、まったく喋ってなかったかも。全然気づかなかったけど」

 

「確かにジャンヌの言う通り、俺もあの司令には顔を合わせた時から少し引っかかっていた感じはあったな。喋っていなかったっていうのも今気づいた。それ以上に他の喧嘩腰の士官達に意識取られてたけど。今思えば俺の通告に返答していたのも基地の司令じゃないやつだったんだな」

 

 先程までの会談を振り返り、自己分析する2人。さっきまでは他の士官との言い合いもあって気づけなかったことに、段々と気づいていく。更に話を聞いていた運転手もまた彼らに気になる話題を持ちかけた。

 

「あ、そういえば今日待っている間に面白いことを基地隊員から聞いたんですよ」

 

「面白いこと?」

 

「はい。何でもあの司令さん、昔凄いスナイパーの師匠に師事されていたんだとか」

 

 発言にジャンヌ達の注目が集まる。凄いスナイパーとはどれほどのものなのだろうか。基地の隊員達から聞いた凄いスナイパーの師匠の話を運転手は聞かせる。

 

「自衛軍がまだ軍隊化されるずっと前に、特殊部隊に所属していたらしいんです。日本で起こったデモ隊の主導者を暗殺したり、海からの密入国者達を夜間に全滅させたりしたらしいです。でももっとすごいのが1987年に起こった武装集団テロに対する武力戦。ラウル神聖教ってみなさんはご存知です?」

 

「あぁ。確か昔のニュースを振り返るって感じの番組で見ましたね。ニュースになるくらい日本のメディアとかに浸透した新興宗教で、でも裏では洗脳とか毒ガス分布、それに最後くらいには戦車による首都進攻もやらかしたんでしたっけ?」

 

「あの事件学校の教科書とかにも載ってたから覚えてるよー。その年に指導者とか全員捕まってその後も指名手配犯がたまに捕まっていたんだよね~」

 

 ハジメ達は頷きそれを思い返していた。生まれてはいなくともニュースで伝え聞いていたようだ。ジャンヌには全くだが、それでも今の次元覇院のような恐ろしいカルト集団がいたのだと分かる。

 そこでカホが何かに気づいて運転手にそれを聞いた。

 

「え、まさかそのスナイパーさんって……」

 

 カホの指摘に運転手は頷く。

 

「そう。そのスナイパー、「三滝 境二郎」さんがその武装テロの戦車を止めたんです。戦車の装甲を対物ライフルで戦車の装甲を撃ち抜いて」

 

『うそぉ!?』

 

 運転手が明かした事実に驚きを隠せない女性陣達。ハジメも鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている。

 続いて運転手はスナイパーのキョウジロウと、基地司令との関わりを話す。

 

「基地司令の人は、その成果を当時テレビのリアルタイムで見ていたそうです。そしてその人が後年所属した名護屋の四ツ田基地に入隊して、狙撃のイロハを教わったんだそうです。とても仲が良かったそうで、5年前に亡くなったんですが、それ以前に本人から直々に基地司令の座を頂いたらしいです」

 

「なるほどねー。けどそれがどうして……」

 

 納得するもどうしてと言葉を続けたミエに同じ感想をジャンヌも抱く。それだけの人物なら人格者として育っていてもおかしくない。運転手もそれは分からないとしつつも関係したもう1つの事柄について話す。

 

「それは自分にも分かりませんが、でも基地司令は四ツ田基地のとある一角にその人を称えた特別な対物ライフルを開発。基地内に保存しているそうです」

 

「特別な対物ライフル……」

 

 深絵が単語に注目する。特別と言うからには何かしら突出した性能があるのかもしれない。幸運にも運転手はその情報を隊員から聞いていた。

 

「曰く、狙い撃てれば洋上の巡洋艦、あるいはMSも撃破可能なのではと言われるほどのシロモノらしいです。その恩師専用に作り上げて、でも扱える人間が完成当時にはもういなくて倉庫番らしいんですが」

 

「MS開発以前の武装で!?」

 

「それは興味深いですね……」

 

 ジャンヌは驚く。通常兵器の枠を超えているとしか言えない。それだけの兵器をこの世界の人間は開発してしまったのだ。果たしてドラグディアやマキナスにその銃を扱える人間がいるのかどうか。

 その話を聞き、カホが納得して彼らがMS導入を拒む理由を予測した。

 

「そうか!つまり基地のみんなそのライフルが最強で、それをMSに脅かされたくないってことなんだ!嫌だねぇ、そんな旧兵器に固執しちゃって~」

 

「まぁ、その線が妥当っぽいが……そんな単純なものではない気も」

 

「そうなんです。この後がちょっと気になりまして……話によるとその司令さんはよく周囲に自慢していたそうです。初めてMS導入の勧告をうちがしたときも、基地隊員の皆さんにその事を紹介すると言っていたそうで……」

 

「……ん?ちょっと待って」

 

 違和感を覚えたミエは顎に手を当てて、自らの知っていることと違うことを明かす。

 

「ライフルの話って私達聞いてない……っていうか第1回は私達とは別の人がしてて、しかもその人達が担当辞めるってことで代わりにやる様になったんだけど」

 

「あーそうですよ!前任者の人達からの情報ほとんどなくて、ただひたすらに「頭硬い連中」って話を聞いて、実際そうで……」

 

 カホもまた仕事を引き継いだ時の話を思い返す。それらの話はここまでに至った経緯として自然なように思える。だがわずかに違和感を抱く。それは前任者の対応。ジャンヌは思い至った予測を話してみる。

 

「もしかして、その前任者の方に粗相があったのではないでしょうか。それが司令や他の方たちの中でまだ解消しきれていなくて、私達にもあまり快く思っていらっしゃらないとか?」

 

「えー!?そんなこと……うぅーん……」

 

 カホは否定しようとしたが、言おうとしても言いよどむ。ジャンヌの発言には一考する価値があった。これまでぶつかり続けた双方の意見を繋ぐかもしれないからだ。ミエもそれを前提に情報を集める旨を発言する。

 

「そうだね。今まで私達は先入観に囚われすぎていた。絶対とは言えないけど、確かめてみる価値はあるかも。名護屋散策の後に私の方で確認してみるよ」

 

「その方がいいな。本当ならすぐに戻って確認だろうけど、とりあえずはこのまま散策に行こう。各々行きたい場所もあるだろうしな」

 

 すぐに確認したい気持ちはあっても、今はもうアポイントメントを取って会った後の話。また次の機会にとするハジメ。カホはもう既にこの後の事で頭を切り替えていた。こちらの手を取り、名護屋の街への飛び出しに胸を躍らせる。

 

「やった!久々の名護屋だっ!ジャンヌちゃんもちゃーんと案内してあげるねっ」

 

「え、えぇ。色々とこちらの文化に触れられること、楽しみにしています」

 

(でも、いいんでしょうか……胸騒ぎがします……)

 

 カホに対し同感であるとしつつもジャンヌの意識は基地の方に向けられる。何か嫌な予感がする。詩巫女の直感として、世界を構成するDNがジャンヌに告げていた。戻るべきだと。ハジメにそれをやんわりと伝えようとしたところで遠くからの爆発とわずかな鳴動が乗っていた車に起こった。

 

「えっ?」

 

「何、今の」

 

「車の振動……にしては少し後ろの方に……!?」

 

「あれは……!止めてください!」

 

 ハジメが運転手に車を止めるようにと言う。運転手は慌てて車を橋の端に停めた。一同一斉に車の外に出た。そして瞳に映る。四ツ田基地に爆発の炎が上がっていた。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。

レイ「最初はただの意地の張りって思ったけど、最後の方で前提が違ってたっていうのを示唆されると気になるなぁ。って言ってもまた次は戦闘みたいだけど」

ジャンヌ「EPISODE12の序盤でのこともあり、まさかこれは……となってしまいますね」

次元覇院の指していた基地は果たして本当に四ツ田基地なのか?(´-ω-`)

レイ「と、後EPISODE12と言えば、華穂ちゃんふざけて言ってたけど、まさか第2章のタイトルのあれって……」

何の事かなっ(゚∀゚)

ジャンヌ「……判断付きにくいですね」

いやーでも妹が死んだら元君は止まらないだろうねぇ(^ω^)

ジャンヌ「ただのクソッたれですね」

(´・ω・`)じゃあ色々と話すのもあれ何で今回はここまでです。

レイ「混乱を避けたね……じゃあ次回もよろしくねっ!」


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EPISODE14 燃ゆる戦場、滾る苛立ち3

どうも、皆様。バトスピサーガブレイヴ第3話は次が気になり過ぎる、藤和木 士です。翌日発売の最新弾では遊精組みました(´ρ`)セフィロ高い……

ネイ「アシスタントのネイです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよ~。当てればタダよ?」

その理屈は危険すぎるのでなしで(;・∀・)さて今回はEPISODE14の公開です。

グリーフィア「珍しい。一話だけなのね」

次でサブタイトルも変わるので(´っ・ω・)っ

ネイ「四ツ田基地襲撃を受けて、元さん達はどう行動するのでしょうか?基地にMSによる支援は送らないと言っていますが……」

元君達の決断や如何に?それでは本編です。


 

 

 昇り立つ煙と燃え上がる基地施設。それらは華穂達に異常事態を認識させるのに十分だった。橋の上からも分かる異常事態、そして基地の現状が運転手より伝えられた。

 

「救援回線からです。襲撃者は次元覇院!MS数機が基地を襲撃している模様!」

 

「次元覇院……!」

 

「やはり彼等でしたか……」

 

 次元覇院は西日本に拠点を置く武装カルト集団だ。しかもその総本山はあろうことか華穂と元の故郷三枝県にある。ここ愛智はその三枝の目と鼻の先。戦力も申し分ないものが予想された。幸いなのはMSの襲撃が数機と言ったところだろう。兄のガンダムもあって突破は容易だろう。

 しかし問題は救援に向かうかどうか。先程基地での兄の発言が蘇る。

 

(今後一切、あなた達の基地の作戦、および救援にMSは送らない)

 

 基地上層部と交わした取り決め。正式なものはまだ本部に結果を話していない為まだだが、それでも言った手前今からそれを順守するのも考えられる。

 だがそれを判断するのは上司の深絵、そして一応特権地位にいる兄だ。その2人は顔を見合わせて、対応を決める。

 

「深絵。まだ本部には言ってなかったよな?」

 

「うん。これから言うつもりだったよ」

 

 深絵からの返答に元は即座に返す。

 

「じゃあ救援に向かうぞ。決定が決まってない今なら、どうとでも言える」

 

 2人が下したのは援軍に向かう決断だった。深絵は頷くと、こちらに本部への詳細を任せてくる。

 

「じゃあ、私と元君、ジャンヌちゃんとで先に行くよ。華穂ちゃんは水戸君と向かいながら本部にこれまでの事を」

 

「わ、分かりました!」

 

 華穂は了解し、MS装依態勢に入る。セットバックルで新たに出現したのは、シュバルトゼロの解析により機能が洗練されたソルジアの改修機「ソルジアV2」。鎖骨部にアンテナが新たに追加された機体の通信回線で本部との連絡を確立させる。

 その間に兄達もスターター、バックルを巻き付け装依開始する。

 

『Standby OK?』

 

「装依」

 

「装依っ!」

 

 元、ジャンヌ、そして深絵の3人が2機のMSへと姿を変える。漆黒のシュバルトゼロガンダムと蒼のブラウジーベン。2機は飛び上がるとそのまま基地へと急行する。

 こちらも追いつく必要がある。通信回線を待機しながら、水戸の運転する車の上面に機体を固定、共に基地へと急いだ。

 

 

 

 

 基地へと急行すると、既にその惨状が見て取れた。海上と基地内部には戦闘機が落着、戦車や自走砲も爆破されており、基地内部をMSが蹂躙していた。

 生身の兵士達が逃げる。武器を持った兵士がライフルを放つがいずれもMSには小程度のダメージ。逆にMSのアサルトライフルに貫かれる。

 

「ぐふっ!?」

 

「脆い脆い!神が与えたMSに、生身では向かおうとなど!」

 

 兵士を殺し、更に武器を持たない者に対しても発砲しようとするマキイン。だが撃たせる前にブラウジーベンのスナイパーライフルのトリガーを引く。

 

「っ!」

 

 狙い澄ましたライフルの弾撃は敵機のライフルを貫き爆発。爆炎を振り払う敵機にシュバルトゼロが近接戦を仕掛ける。

 

『遅いっ!』

 

 迎撃しようとしたマキインのサーベルを躱してその胸倉にビームサーベルを突き立てる。更に僚機にあたる機体にはバックパックのソード「マキナ・ブレイカーⅡA」を射出、同じように突き立てる。敵機に突き刺した剣を引き抜く形で二刀流となった漆黒のガンダムが、爆発を背に残りの機体にも襲い掛かった。

 まるで鬼神のようなスピードで基地内部の敵を駆逐していくシュバルトゼロ。深絵も分かる。ここまでいいようにやられて怒らないはずがない。ブラウジーベンもまたそのスナイパーライフルとレールガンで敵の足を止めていく。

 

「これで……最後っ!」

 

 基地敷地内に侵入した最後のマキインをビームスナイパーライフルで沈黙させる。爆発を起こしたのち、元とジャンヌからも殲滅を確認したと報告を受ける。

 

『基地敷地内に入ったMS、反応全て消失(ロスト)

 

『シュバルトゼロの損傷率5パーセント以下、残りの上の機体を叩けば終わりですね』

 

「うん。けど油断しないで」

 

 上空の戦闘機を落とした3機のマキイン型を落とせば増援がない限りは制圧できる。しかし残った相手が一筋縄ではいかないことを同時に意味していた。次元覇院のMSパイロットは数を揃えるために大半が軍かオーダーズのMS操縦訓練を受けていない。特に飛行状態において顕著に表れる弱点で、そういったパイロットはシールドを簡易変形させた状態でなければ長距離飛行は困難。そんな機体が空中戦を満足に展開出来るはずもない。よって上にいる機体はいずれも補助機能に頼らないパイロットであると相場が決まっていた。

 深絵の予想は瞬く間に的中した。すべての戦闘機を落として地上の異変に気づいた次元覇院のMSが下りてくる。3機の内2機はマキイン・魁。マキインの性能向上型で下っ端が受け取れる機体ではない。間違いなくエースだろう。だが問題はもう1機。中央に位置する機体はマキインに似た、まったく新しいタイプの機体だった。特徴的だった肩のシールドが空力特性を考慮したと思われるエッジに置き換えられ、左腕に鏡のように周囲の風景を反射するシールドをマウント。バックパックには剣の持ち手とブースターを合わせたようなウイングを備え、各所にも近接戦用とみられる武装が散見される。

 ブラウジーベンとは全く逆のアプローチを施されたオレンジ色に灰色のラインが入った機体から威圧感を感じる深絵。それが深絵、ひいてはMSオーダーズに類するものだとすぐに気づかされる。

 

『青のガンダム、蒼梨深絵か。悪魔を体現したあの女の付き添いがっ!』

 

「っ!この声!!」

 

 声と息遣いが自然と怒気のこもった物へと変わる。あの声と口調、そして彼女をああ言う者に深絵は心当たりが1つしかなかった。モバイルスーツを、そして元の運命を狂わせた、深絵にとっては仇敵と呼べる存在。深絵の豹変に元も気付いて問いかけようとする。

 

『どうした、あいつを知っているのか?』

 

 しかし、答える前にその男は動いた。

 

『まずは、青のガンダムを落とす!』

 

 アサルトライフルを放ち、迫りくる新型マキイン。深絵も軽くバク宙をして空中に身を預けるとスナイパーライフルを構える。マキイン・魁もそれに追従する動きだったが、元のシュバルトゼロがそれを遮る。

 

『何だが知らねぇが、お前たちまで行かせるかよっ!』

 

 ウイングの付け根からビームサーベルを取り出し、二刀流で阻む。目の前の敵に深絵も集中するがその集中が仇となる。トリガーを引いた直後機体にエラー表示が発生した。

 

「っ!?オーバーヒート!?嘘でしょ!っ!?」

 

 銃身のオーバーヒート表示を受けて銃身後部のアイスパック排出の操作をする。しかしそれにより新型マキインの接近を許す。

 

『隙だらけなんだよ!!壊れやがれ!』

 

 叩き付けられるライフル。その銃口下にはアサルトナイフが光る。回避できずにビームスナイパーライフルで防御してしまう形となる。アサルトナイフの切れ味にライフルは真ん中から亀裂が発生、爆発を起こす。

 

「ぐぅぅ!っく!」

 

 爆発に機体が揺れる。その爆発を突き破ってその機影が迫った。こちらを確認していたジャンヌが叫んだ。

 

『深絵さん!防御を!』

 

「!」

 

 それに反応して咄嗟にビームサーベルを引き抜く。サイドアーマーからの横薙ぎが前から突貫しつつあったアサルトライフルの銃剣部分を弾く。シールドを構えながら敵の出方を伺う。

 一度落ち着こう。深絵は思考を整理する。目の前の「アイツ」がいることには驚きだが、それに気を取られていたら新型の性能に圧されてしまう。そのせいでライフルも破壊されてしまったのだ。ここで冷静さを欠けばいくらブラウジーベンでも撃墜されかねない。既に敵はこちらの得意なレンジを潰した。それで戦えなくなる機体ではなくとも、苦戦には違いない。

 そのために目の前の敵へと言葉を吐いた。これまでもMSで戦ったこともわずかにある、次元覇院の要注意人物、エースパイロットに向けて、今まで怒りを込めた。

 

 

 

 

「まだ次元君達を……光姫ちゃんを狙うの、沢下判!!」

 

 

 

 

『サワシタ、バン?』

 

 深絵の声を聞いてジャンヌが首を傾げた。ビームサーベルによる鍔迫り合いを演じながら聞いていた元も知らない名前だ。いつもは狙撃に関しては凄まじく目配りの利く深絵が動揺でライフルを失ったことから、ただ事ではない相手だ。光姫が関係しているようだが、一体何が彼女を乱したのか。

 するとその相手が回線で声に応えた。

 

『府抜けたことを。当たり前ではないか。俺の妹に手にかけ、にも関わらずのうのうと生きて挙句の果てに俺の仲間達を悪に仕立て上げようとしているあの女とそれに隷属するお前達は、裁きを受けなければならない!』

 

 妹を殺されたと語る男に違和感を覚える。光姫が殺した、となればおそらく次元覇院との戦いで撃墜したのを意味しているのだろうと思った。にしては深絵の動揺が変だ。すると深絵が反論する。

 

『よく言うよ!従わない人は殺して、光姫ちゃんにもしつこく付きまとって!あなたのせいで起こったモバイルスーツ暴走で、元君だってこの前までいなくなって、華穂ちゃんを悲しませたんだよ!』

 

「……!まさか」

 

 そこで彼らの話が見えてくる。確信を持って深絵にその人物の正体を訊く。

 

「まさか、5年前の」

 

『そうだよ。沢下判、こいつが5年前、あのパーティーで乱入した男!』

 

 深絵と対峙するMSのパイロット、それは元が異世界マキナ・ドランディアへ転移することとなった暴走事件を引き起こした人物だったのである。まさに元にとっては因縁の相手。そんな相手に背を向けている状況ながらも、その相手の方に怒りの感情が沸いてくる。

 そんなことも知らず、沢下判は欺瞞の言葉であると否定する。

 

『バカバカしい。罪人を容赦なく潰すことは善だ。正義の前には如何なる犠牲も致し方ないものとなる。漆黒のガンダム、お前もその糧だ!!』

 

『っ!ハジメっ!!』

 

 後ろからの殺気。ジャンヌの声が飛ぶ。すぐさま切り結びを中止して弾き飛ばす。そして機体を宙返りさせて後方へと退く。空中に身をゆだねる間、判の新型機がビームサーベルを先程まで元がいた場所を貫く。

 地球の重力に従い、緩やかに下降していくシュバルトゼロ。深絵のブラウジーベンの前に護るように着地すると、回線を開く。

 

「まさかな。あの時のやつが目の前に現れるとは……どうやら運命は俺の方に利があったようだぜ?」

 

『運命だと?悪に運命などない!』

 

「そうだな。悪のテメェに、運なんかねぇ。運があったのは、俺の方だっ!」

 

 右のサーベルを戻し、腰背部のビームライフル・ゼロを向ける。ゼロコンマですぐさまライフルのトリガーを引く。こちらの世界の機体と違ってビーム兵器の使用に制限はほぼない。連弾が3機に襲い掛かる。

 ソルジア・魁は大きく避ける。だが中央の沢下が駆る新型はシールドを構えた。余程シールドの防御性能に自信があると見えた。が、その後の現象に驚きを隠せなくなる。

 

『フン!』

 

 掲げたシールド。その表面にビームが直撃した。だがビームの光条はシールドのコーティングに吸収されたかと思うと再び出現する。なぜ消えたビームが?直後に機体の接近警報が響く。そこでビームがこちらに向かってきていることに気づく。

 

「!!深絵、回避!」

 

『え、きゃあ!?』

 

 短く喚起して横へステップを踏む。深絵も不意の攻撃にギリギリで避けた。文字通り反射されたビームが後方の基地建物の一部に直撃する。

 起こった事象に困惑する。ジャンヌが解析を始める。

 

『ビームが跳ね返った!?ま、まさかノイズ・オーロラ!?』

 

 ノイズ・オーロラ。MSのシールドなどに搭載された機器からビーム偏向フィールドを生成、そのフィールドを用いてビーム攻撃の防御、あるいはビーム攻撃への曲射機能を付与する「マキナス」のMS技術だ。

 直線にしか攻撃性能を持たないビームに攻撃のバリエーションを増やすこの兵装は機竜大戦に投入、シュバルトゼロを苦しめた。イグナイターに対してはそれほどで対抗策も増えてきていたがそれでも今のシュバルトゼロには辛い。

 その類縁技術か。ところが元はその予測を否定した。

 

「いや、違う」

 

 ノイズ・オーロラはビームを防ぐとき、あくまで軌道を逸らすだけ。真っすぐそのまま跳ね返ってくることはほぼあり得なかった。加えて先程の反射時、シールドに吸収されてから跳ね返ってきていた。機器がシールド内蔵だとしてもあのような跳ね返り方はしない。シールドそのものが反射している目の前のそれとは違った。

 起こった現象を誇らしげに判が語る。

 

『ガンダムだとしても所詮はビーム。このマキイン・刃のリフレクトシールドには通用せん!すべて跳ね返すのさ』

 

『ビームが通用しないって……そんな!』

 

 愕然とする深絵。ブラウジーベンは遠距離ビーム型の機体。ビームサーベルはセーフティーとして保持するとはいえまともな格闘戦は不利だった。予備でエディットアームに装備するビームライフルもほぼ無用の長物と化していた。

 深絵の不利を察した元は後退、もとい気にかけていた方への確認を指示した。

 

「深絵、お前は基地の生存者探索に向かってくれ」

 

『元君!』

 

「その機体で、格闘戦は不利だ。それより増援が来た時に備えて全員を避難させるんだ。いいな?」

 

 残ろうとする深絵に言う。この愛智は海と陸を挟んで次元覇院の総本山のある三枝と隣り合わせ。またこのような機体が来る可能性は非常に高い。絶対的な性能を誇るシュバルトゼロでも継戦を強いられれば基地全体を破壊しないで戦闘継続を行える自信はない。生存者を逃すべく、深絵にその確認をしてもらった方が早い。

 言いたげな深絵だったが、諦めたのかそれに従う。

 

『……分かった。けど無茶はしないで』

 

「無茶、か。無茶をしようとしたのはどっちなんだか。頼む」

 

 交わしたのち深絵が基地建物内へと離脱していく。ソルジア・魁の1機が追撃しようとしたが沢下のマキイン・刃はそれを手で止めた。

 

『あんな雑魚、すぐに片付けられる。それより目の前のこいつに背中を向けてみろ。お前達では一瞬でやられるぞ』

 

『了解』

 

 よく分かっている。実際こちらも気を抜いた相手を先に落としていこうと思ったが、それを考慮されては無理に動けない。

 ビームサーベルを両手に構えなおして表情が緩む。5年前のすべての元凶。その相手を直接叩けることに元は高揚感が生まれていた。深絵にはああ言ったがそれ以上に元はあの時の借りを返してもらう気でいた。ジャンヌと会えたこととは別に、見知らぬ世界へと転移させられたことの苛立ちをぶつけに掛かる。

 

「5年前の借り、すべて返してやる。まとめて叩き斬る!」

 

 シュバルトゼロのバーニアを全開に、次元覇院の沢下の部隊との戦闘が開始された。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。元君の次元転移のすべての元凶が登場です。

ネイ「でも元さん最初からやる気ですね……」

グリーフィア「そりゃあジャンヌとは会えて、トラウマも消えたって言っても自分をもとの世界から追放して、あまつさえ華穂ちゃんを泣かせた責任は重いでしょうよ。私がそうされたら泣いちゃったネイの復讐は喜んでやるわぁ」

ネイ「ね、姉さん過激……本当でもやらないでね?」

グリーフィア「大丈夫♪経済的な制裁に留めるわぁ」

(;´・ω・)それでも制裁はするんだ。さぁ次回は深絵さんが主軸となっていきます。

ネイ「深絵さんスナイパーライフルを喪失しましたが……やることって救援だけですか?」

グリーフィア「武器を失っても、やるべきことはある!か、もしくは武器が見つかったりとか?それじゃあまた次回~」


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EPISODE15 貫く一撃とこれから1

どうも、皆様。本日は友人とバトスピ関連で買い出しに行っていました、作者の藤和木 士です。

レイ「アシスタントのレイですっ。界放祭に向けての調達だねー」

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです。ようやく藤和木のデッキが回るようになりそうですね」

ホントそうだよ。とはいえセフィロはないんだけど_(:3 」∠)_高い

レイ「でも今日行われたCSでセフィロ入ってなかったよ?」」

代わりに私が崩したくないデッキのパーツがかなり入ってたんだよ( ゚Д゚)

ジャンヌ「デッキ構築悩みどころですね」

そんな問題は置いて、EPISODE15公開です。

レイ「最近1話ずつだねぇ」

ストックなくなってきてるからね(;´・ω・)後話数が2話ずつやるとキリが悪い話もあるから……

ジャンヌ「前回は宿命の敵との対決が始まったんでしたね。深絵さんが主軸と言っていましたが、果たしてどのようになっていくのでしょう?」

それでは本編です。


 

 

 離れた直後、後方から戦闘の爆音が響き始めたのを深絵は機体スピーカーから聞き取った。1対3という不利な状況。せめて自分がいれば数の不利は少しでも収められると思ったのだが、それでも元は協力を拒んだ。

 分かっている。元も自身を別世界へと飛ばした相手が赦せないのは。きっと自分だけで彼を倒したいと思ったのだろう。それに深絵は足手まといになってしまう。だから生存者の捜索とまともな理由を付けたのだろう。断りづらい用件で離れさせるために。

 

(元君のあの機体なら、反射する盾でも何とかなるはず。でも……私は)

 

 1対3でも大丈夫と思いつつも、深絵の中に悔しさが生まれる。自分だって何度も次元覇院のMSと戦ってきたエースパイロットの1人だ。それが動揺のせいで主兵装を失い、味方から近接戦闘では発揮できないから生存者確認と事実上の戦力外通告。元が心からそう思っていないのだとしても頼られなかったのはショックだった。

 基地建物に入っても、外の戦闘音が耳に入ってくる。ビームサーベルの振る音とシールドで弾く音、そしてスラスター音だけが戦闘の密度を表していた。どれだけの高速戦闘と近接戦を展開しているのか。否が応でも想像できる。ジャンヌもそれについていけている。そう思うと少しでも役に立とうと基地生存者の確認に入った。

 

「……酷い」

 

 基地の中は至る所が崩壊していた。先程までいたはずの場所がこの短時間で戦場へと変わった。まずは司令部のある階へと向かう。基地の人がいそうな場所を把握する為に中枢で確認するためだ。

 司令部に入った深絵は、そこで息を飲む。

 

「これは……っ」

 

 部屋に入ってすぐに見えた赤い室内。司令部は既に襲撃を受けて兵達は皆MSに蹂躙された後だったのである。血しぶきが壁・床、そして机の端末にも飛んでいて耐えがたい光景。その中にはこれまで深絵達が何度も顔を合わせ、MS導入に断固反対していた上層部の士官達も死体として体に風穴を開け、血をまき散らして倒れていた。

 いずれも彼らの自業自得、と言えるものだがそれで片付けられるほど深絵は薄情ではない。もし自分達がちゃんとこれまでの経緯を理解し、謝罪といった本来するべきことを言っていればこんなことにはならなかったのではと思ってしまう。もちろんそれは既に過ぎてしまったことで、後悔するくらいならと深絵は別の場所の探索に切り替えた。

 とはいえ先程の探索で収穫が何もなかったわけではない。基地司令があの場のどこにもいなかったのである。死体もなかったことからどこか別のところにいる。悪い見方をすれば敵のスパイだったのかもしれない。

 

(そんな可能性信じたくはないけど……でももしかしたら基地のどこかに)

 

 見つけなければ何も分からない。深絵は階を変更して捜索する。上も下も探しても見当たらない。機体をわずかに浮かせて滑るように基地通路を飛行して移動していると、とある一角で違和感を覚え停止する。

 

「何、この隙間……?」

 

 基地の通路を形成する壁の1つがわずかに奥へへこんでいる。しかも崩れた天井に下敷きとなった兵士が何人か散見できる。既に息絶えてはいるが、不自然さを感じずにはいられない。その予測を裏付けるかのように、へこんだ壁の奥からうめき声が響いた。

 

「うぅ……」

 

「!人がいる」

 

 壁の奥からの声で深絵は周囲を調べる。すると壁の一部の装飾が押し込めるのを発見する。すぐにそれを押し込むと壁がスライドして道が出現した。隠し扉だ。隠し扉の先にも瓦礫が入り込んでいる。そして少量の瓦礫の下にあの基地司令が倒れていた。すぐに駆け寄り、MSの馬力で瓦礫を退ける。ゆっくりと司令が目を覚ました。

 

「っ……MS……ガンダムか」

 

「先程失礼させていただいた蒼梨深絵です」

 

「……MSで援護には来ないのではなかったのか?」

 

 救助するとそう聞かれる。やはり先程の事はしっかりと覚えているようだった。やはり彼もMS導入を反対する者。だが深絵は口走ろうとする呟きを抑え、理的に現状を伝える。

 

「あの後、情報共有でこちらの不手際の可能性が生まれたので。私達が担当する前の担当者の不手際が」

 

「……フン。そんな事が分かっても、もうこの基地はおしまいだ。基地が壊滅すれば別の司令官が着任するだろう。私のような堅物ではない、MS導入を快く承諾する司令官がな」

 

 自嘲気味に基地の惨状を呟く司令。その発言通り基地の騒動終結後はMS導入を徹底するのは目に見えている。深絵達MSオーダーズが元々依頼されていたことだ。だがだからと言ってこのような形は求めていない。そして司令が変わるとは限らない。深絵は言った。

 

「MS導入は願ったりかなったりですよ。でも、だからといって司令官が変わるわけじゃないです」

 

 その発言に基地司令はため息を吐く。あり得ないことだと深絵の言葉を否定する。

 

「面白いことを言う。私がMS導入を認めるとでも?」

 

「……本当にあなたはMSを頭ごなしに否定しているんですか?」

 

「………………」

 

 いつも光姫や華穂に聞かせている声とは違った声音で問いかける。深絵には基地司令の本心は分からない。だが聞いてみたいのだ。同じスナイパーとして、MS導入に反対する彼の言葉を。

 深絵の問いかけを耳にして、司令は口を閉ざす。聞いてはみたいが、それを周囲の様子が許しはしない。火災の煙がこちらにも流れ込んできた。

 

「ごほっ、ごほっ!」

 

「煙が……話は後です。今は基地の外へ避難を……」

 

 言って深絵は彼の肩を担ぐ。すると司令は狼狽してそれを拒絶した。

 

「ま、待ってくれ。まだ……ライフルが……私の、師匠のためのダンガンが……ごほ!」

 

「ライフルって……もしかして」

 

 深絵は思い出す。直前にドライバーの水戸から、現基地司令が先代司令のために作った専用ライフルの話をされたのを。一度通路の奥を見てから司令に提言した。

 

「なら行きましょう。しっかり掴んで」

 

「何を……っ!」

 

 基地司令の問いも切って、通路の奥へと向かう。煙の充満具合からしてまだ余裕があると見てライフルの回収を優先した。バックパックを噴かせて、基地司令の体を支えながら低空飛行で奥へと向かった。

 通路を抜けると、火の気のない一室へとたどり着く。電気が通っておらず薄暗いが換気口のおかげか煙っぽさはない。部屋に着いて司令が言った。

 

「入口横のパネルを……裏の操作で非常電源が入る」

 

「裏の……これか!」

 

 指示に従いパネル裏のスイッチを操作する。するとわずかに電気が灯り、中央に鎮座された大型の対物狙撃ライフルが姿を現す。

 

「……大きい」

 

 それが深絵の最初に思った感想だった。通常の対物ライフルよりも全体的にサイズが大きい。各部パーツが頑丈化されており発射の衝撃に耐えられるように設計されていると見た。とても生身では持ちきれそうにないライフルだというのがすぐに分かる。MSでも持って機動戦闘が出来るかどうか……。

 見惚れているのを感じてか、司令は話す。

 

「ダンガン。私の師三滝境二郎司令を称え、私が命じて作らせた彼の為のライフルだ」

 

「これが、ダンガン……」

 

 しばらく目をくぎ付けにされる深絵。だが非常事態であることを思い出し、運び出しを伝える。

 

「とにかく、これも運び出さないとですね。ケース割りますよ?」」

 

「あぁ。だが、これを背負ってなど……」

 

「MSの馬力なら、これくらいっ!」

 

 ガラスを割ってから機体の駆動系を最大負荷許容状態にしてライフルを持ち上げた。MSの機体腕部でもずしりと来る重さ。片手では無理だと判断し、機体の肩も使って左側に固定する。後は司令を左側に抱え直して外へと目指した。

 更なる建物の崩壊で基地の道筋が変わっている。だがそれでも無事抱えて出口までたどり着いた。直後華穂のソルジアV2との合流に成功する。

 

『深絵さん!その人は……』

 

「基地司令だよ。避難状況は?」

 

 答えて、退避した兵士達の状況を訊く。華穂はデータリンクを行って、状況を伝えた。

 

『今のところ退避できたのは300人前後。脱出した戦闘機のパイロットとかもほとんどが……』

 

「そう……」

 

 顔を俯かせる。突入時にも見たが、やはり次元覇院は誰一人も逃さないつもりなのだろう。更に華穂は周辺からの援軍の状況を伝える。

 

『それから周辺基地からMS部隊を中心とした支援部隊を呼んでいます。基地の人達も橋で待機と傷の手当てをしてもらっていると思います』

 

「分かった」

 

 簡単に答える。すると華穂は兄の姿がどこかを聞いてくる。

 

『あの……それでにぃは?』

 

「元君は、向こうの方でMSと戦闘してる。気を付けて。相手は沢下判だよ」

 

『沢下と!?すぐに救援に向かいます!ではっ』

 

 すぐさま機体を元の方へと向かわせた華穂。その後を見届けると、抱えていた基地司令が言った。

 

「貴官は行かないのか?」

 

「……私はあなたを送らないといけませんから」

 

 援軍に行かないのかという問いに返答をする。少しばかり驚いたが言われる範疇であったため返す深絵。だがその司令は更に指摘した。

 

「ふむ。機体性能で言えばガンダムの方が高いと聞いたが。あのパイロットに私を任せて貴官が向かえば戦力には申し分ないだろう」

 

「……よく知っていますね」

 

「君が説得の際にも言っていたこと。聞く側なら覚えていて損はない。敵対した時にも役立つ。だがそうしなかった。他に訳があると見た」

 

 しつこいと思った。だけど正確に状況を見ている。本来あの場では深絵が元の救援にあたるべき場面であったのは間違いない。ライフルを失っていなければ言っていただろう。とはいえ外部の人間に言うべきことではないと思い、退避を優先させた。

 

「行きますよ。ここも危ない」

 

「そうか」

 

 強く言うと基地司令は大人しく引き下がってくれた。これ以上追及されたら深絵も起こっていただろう。深絵は基地司令の肩を担ぎ、反対に「ダンガン」を抱えて橋の方へと向かった。華穂は大丈夫だろうか。そう思いつつも基地の入り口を抜けようとした時、回線から華穂の声が響いた。

 

『きゃあ!?』

 

『華穂、下がれ』

 

「華穂ちゃん!」

 

 回線から聞こえる仲間の危機。思わず声が出る。その様子を見て基地司令がため息を漏らす。

 

「言っただろう。お前が向かえばよかったんじゃないかと」

 

「で、でも……私……武器が」

 

 そう言って自然と右に抱えたライフルに目が行く。武器が残っていれば戦っている、と言いたいが果たして本当にあの敵に対してビームスナイパーライフルが効いたのかどうか。

 言いよどむ深絵に対し呆れを表すように顔を振った基地司令が言った。

 

「武器がない、と言いながら視線はうちのダンガンか」

 

「す、すみません」

 

「別に構わんさ。貴官もスナイパーなんだろう?ライフルを見る目が子供のようなそれだ」

 

 深絵の動作をしっかり見られていたようだ。恥ずかしさを感じる深絵だったが司令は更に続けた。

 

「スナイパーなら普通は救援任務なんざやるわけがない。だがそれをやっている。大方ライフルを失ったか、それが通用しない相手と遭遇したんだろう」

 

「……それは」

 

 思わず言い当てられる。そのタイミングで丁度基地外へと出る。橋に待機していた水戸や基地の生き残りと合流を果たす。

 

「深絵さん!」

 

「水戸君待機ありがとう」

 

「司令!ご無事でしたか!!」

 

「あぁ。彼女に助けられたよ。それよりここにいる皆、聞いてくれ」

 

 基地の隊員を可能な限り集める基地司令。深絵達も何だろうと耳を傾けると司令から驚くべき発言が飛んできた。

 

「我らの意地を、ダンガンを彼女に今この時だけ預けさせてくれないか」

 

「えっ」

 

 耳に入ってきたのは重対物ライフルを与えるとの発言。なぜ、と深絵が思う間もなく、隊員達からも狼狽、そして反対の声が上がった。

 

「預けるって、あのガンダムに?」

 

「なんでですか!MSは俺達の戦闘機を、空を奪おうとした……」

 

 反対意見は各所で上がる。若者も交じっており、本当に基地全体がMSを嫌っているのが見て取れた。だが基地司令はそれらに真っ向から向かい合った。

 

「確かに、彼らは戦闘機を時代遅れの骨董品だと言った。だが彼女が言ったわけではない。あのようなことを言った彼らと同じなら、ダンガンをこうも丁寧に扱うはずがないからな」

 

 司令はライフルを指し示す。深絵はただ持っていただけだが、その持ち方は下手にライフルが傷つかないよういつも配慮した持ち方だ。それを見て隊員達が閉口する。反対意見を抑え、司令が続ける。

 

「それにな、同じスナイパーとして戦えずにいる若輩を放ってはおけない性分だ。皆も知っているだろう?」

 

「司令……」

 

 全員の総意を確認すると、司令はこちらに顔を向けた。

 

「深絵、と言ったな。そのライフルは私が師を敬愛し、その功績を称え作らせたもの。この世に一点しかない。だが兵器は使われるべくしてある。整備は万全だ。それを君に、託す」

 

「はい。ありがとうございます」

 

 託されたライフルを今一度見直す。大型の実体弾狙撃銃。訓練では扱いはしたものの、上手く使いこなせるか。緊張を抱えるも基地方角を見て意を決する。水戸に基地内部へと戻ることを告げる。

 

「水戸君、ここはお願い」

 

「了解!」

 

「蒼梨深絵、ブラウジーベン再度狙撃支援に入ります!」

 

 バックパックから粒子を放出して基地内部へと突入する。未だ消火活動が行われず燃え続ける基地内。その建物の中で燃え広がっていない施設屋上に位置取った。屋上から元と別れた地点をカメラで拡大すると、やはりまだ戦闘が続いていた。1機は既に沈黙、だがマキイン・魁の1機と沢下が駆るマキイン・刃はビームサーベルを構えるシュバルトゼロとライフルで支援する華穂のソルジアV2との交戦状態にあった。

 まだ2人とも戦っている。無事に安堵したもののそれでも近接戦闘だけなのは辛いところがあるようだ。2人のために、出来ることをやらなければ。深絵は機体に重対物ライフルを構えさせた。

 

「っ……重量バランス再設定、ライフルとの連携はないから……狙いは手動か」

 

 重対物ライフルはその名の通り、かなりの重量を誇る。MSでようやく持てるといっても、狙いに支障が出ていた。機体腕部の設定を変更し、ライフルの重量に耐えられるように調整が必要だ。更にライフルはMSとの連動センサーがない。本来なら銃側のセンサーを機体狙撃カメラと連動して狙いを定めている。本来使っているライフルは使い慣れているからかほとんど狙撃用カメラを使っていないが、今回ばかりは狙撃カメラによる外部補助が必要だ。

 

「狙撃用カメラ、展開!」

 

 デュアルアイが光る。と同時に機体のブレードアンテナが額のセンサーアレイごと上部に分割される。その下からはカメラが露出し、稼働を始める。深絵の見る画面にもそれが表示される。

 狙撃カメラでMSセンサーを搭載していないライフルの照準を合わせられるのは大体500メートルが限度だ。そのギリギリの距離を機体が高速で移動している。いかに機動狙撃を行える深絵でも難しいと言えた。

 

「…………っ」

 

 慎重に、敵機体との予測標準を合わせる。狙いを定め、深絵は2人との回線を開く。

 

「元君、華穂ちゃん、避けて!」

 

『深絵さん!?』

 

『っ!華穂!!』

 

 華穂が驚く声が聞こえる。だが元が察して注意を促す。機体が大幅に後退したのに対し、チャンスと見た敵機が一斉に向かっていく。それは位置取ったスナイパーにとって格好の餌食だった。

 

「行けッ!ッッ!!?」

 

 トリガーを引く。直後轟音と共に、機体を激しい衝撃が襲った。ブラウジーベンの機体が宙を舞って地面へと叩き付けられた。同時に深絵の意識が飛ぶ。暗い意識の海に沈んでいく……。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。どうでもいいけど今日ガンチャンでMSIGLOOの公式配信だっ。

レイ「何?藤和木にとって特別な作品だっけ?」

いや、そんなことはない。けどやっぱイグルーはストーリーがなぁ(´ρ`)みんな戦ってるって感じがしていいのよ。

ジャンヌ「丁度ジェネシスで予習はしていますから、私達でも付いていけますね。というか今回の話では試作兵装が深絵さんの手によって運用されていますが、もしかして?」

だったらよかったんだろうけどね(´・ω・`)多分この時イグルーの事はほとんど考えていない時に書いた奴だと思う。

ジャンヌ「ですよね」

レイ「でも、深絵ちゃんもほんわかな性格でも意地を張るときは張るんだね!」

まぁ、意地よりも他に気持ちがあるようですがね(´-ω-`)さて今回はここまでです。

レイ「次回もよろしくねーっ」


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EPISODE16 貫く一撃とこれから2

どうも、皆様。ガンダムビルドダイバーズリライズ2期登場予定の敵機コンセプト予想を見て、ちょっと震えた藤和木 士です。

ネイ「アシスタントのネイです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよ~。震えたって何?」

いや、まぁ今は特に関係ない。とりあえずEPISODE16、17の投稿になります(;´・ω・)

ネイ「何か気になりますが、今はお話の方ですね。前話最終場面では深絵さんが意識を失ったようですが……」

グリーフィア「なぁんでこういうロボット作品で、みんな扱いにくい大型武装出すのかしらねぇ」

ロマンだから( ゚Д゚)

グリーフィア「あーハイハイ」

ネイ「なんでそんなロマン持つんですか」

それが男の性ってもんですよ……というわけで本編をどうぞ


 

 

 遠くからでも分かる轟音が基地内に響き渡った。退避させた深絵からの通信に訊く間もなく従った元はその轟音と共に伝わったDNの思惟から、それが深絵によるものだと察する。

 轟音と共に戦域に弾丸が到達する。実弾だったが、音に相応しい速度を持って到来したそれがマキイン・刃――――を庇った魁に直撃した。

 

『ガフッ!!』

 

『づぅ!?何だ、今の攻撃は!実弾……?』

 

 マキイン・刃の沢下はその方角に目を向けた。だがそれは命取りだ。隙を見逃さず強襲する。

 

「隙だらけなんだよ!」

 

『ちぃ!!』

 

 ビームサーベルを振り下ろす。一撃目は回避されたが、続く二連撃目がシールドの表面に火花を散らせる。妹の華穂もアームに接続したガンアサルトをレールガンモードに切り替え放つ。

 

『そこっ!』

 

 狙い澄ました実弾が敵機アサルトライフルを貫く。瞬時にサイドアーマーから切り離したことで被害を免れる機体。深絵の作り出した状況にジャンヌも驚きを露わにする。

 

『すごい……凄いです!深絵さん一体何の武器を使ったんですか!?』

 

「分からない。深絵、何をしたんだ?……深絵?」

 

 確認を取るが、反応がない。呼びかけても応答がないのを不審に思い、華穂に告げる。

 

「華穂、深絵の様子がおかしい。確認に向かってくれ」

 

『え、えぇ!?深絵さんが!?何があったって』

 

「分からないから確認すると言っている。ここは俺がやる。ジャンヌ、予想位置の送信を」

 

『了解』

 

 あわあわとしている華穂を一喝しすぐに深絵の無事を確認に行かせた。一方僚機を失い怒りに震える沢下。

 

『俺の仲間(でし)をっ!許さんぞ、蒼梨深絵!』

 

「おっと、行かせねぇよ!」

 

 真っ直ぐ深絵の方へと向かおうとしていた沢下の進路を塞ぐ。振り下ろしたサーベルをシールドで受け止められる。だが受け止めたのを逆手に取り、地上へと押し込み戻す。まだ敵が残っているのだ。それを無視して向かおうとするなど許しはしない。

 機体の出力に任せて再度地表へと戦闘の舞台を戻した両者。一騎打ちとしゃれこもうとするも、それを邪魔する一射が向けられた。

 

「っ!」

 

『新手のMS!1機だけ……?新型がもう1機!』

 

 機体カメラに映るのは、前にいる機体と同じ機体。リフレクトシールドなるものを装備した増援のパイロットが沢下に言った。

 

『沢下戦神官、何を手こずっていると思えばガンダムを相手にしていたのか』

 

『フン、誰かと思えば。そういうくらいなら支援してくれるのだろうな?』

 

『無論だ。漆黒のガンダムは何としてでも排除か確保しなければならない。時間を長引かせていれば包囲される。一気に決めるぞ』

 

 2機は両手にバックパックから引き抜いた実体剣を抜き放つ。抜き放つと同時に剣の刀身が赤く染まる。ヒートソードとなった剣を構える機体に元もまた武器を切り替える。

 

「実体剣なら、こいつで!」

 

 ブレードガン・ニューCに切り替えて両者との戦闘を再開させる。ビームサーベルを纏った剣と赤熱化した実体剣。3機が入り乱れ、戦う。

 加わったもう1機のマキイン・刃もかなりの腕前だ。こちらの機体で劣る性能を、腕前と数で抑え込もうとしている。ビームを放つがそれを加勢に入った1機もシールドでこちらへと跳ね返す。もう1機と同等の性能を持っている。先程と同じように力だけで圧倒するのは難しいだろう。回避して両者の剣を受け止め鍔競り合う。

 

『効きませんよ、ビームは。最新機が2機。いい加減墜ちてもらいましょうか!』

 

『このまま斬る!』

 

「ふっ、生憎、あんたら程度で落ちるような機体じゃない!!」

 

 出力を上げ、一気に吹き飛ばす漆黒のガンダム。ブレードガンで振り払い、まずは増援に来た1機に狙いを定めたのだった。

 

 

 

 

(……さ……深……ん!)

 

(誰か、呼んでる?)

 

 朦朧とする意識の中、深絵は声を聞いた。誰かは分からない。けれど自身を呼んでいるのだけは分かる。

 どうして自分はこうなっているのか。思い出せずにいたが分かることがあった。今すぐ目覚めなければならない。それだけを思い出して、深絵は意識を呼び起こす。目覚めると機体カメラにソルジアV2の頭部と炎の赤と煙の黒に染まっている。ようやく意識をはっきりさせて、深絵は機体を起こす。

 

「っ!華穂ちゃん、状況はっ」

 

『はうっ!?だ、大丈夫ですか深絵さん』

 

 いきなり起き上がったのを見て華穂は心配の声を上げる。体のあちこちが痛む。機体が反動に耐えられず、地面へとぶつけられたのがフィードバックされたのだろう。しかし今はそれにかまけている場合ではない。すぐにあの後どうなったのかと聞いた。

 

「それより、私の撃った弾は?撃墜できた!?」

 

『えっ、あぁ……沢下の機体は外しましたが、庇った僚機を撃墜しましたよ。でも今増援が入って2機でにぃと戦ってます』

 

 外した!深絵は動揺する。本当なら沢下の機体を撃墜するはずだったのに。しかも今は増援が来たと言うではないか。痛む体を無理矢理起こし、戦況を実際に確認する。

 元の機体が確かに2機のMSと戦っている。しかも2機は同じ機体であり、元は銃剣の兵装に切り替えて戦っていた。先程よりも悪化した状況を歯ぎしりする。

 

「っく!」

 

『深絵さん、無理は……』

 

「もう一度、狙撃を敢行する」

 

『深絵さん!?』

 

 フラフラの体でもう一度攻撃を行うとの発言に、華穂が狼狽える。確かに先程の射撃で機体各部にも不具合が出ている。恐ろしい威力だ。それでももう1発は放てるだけの強度はある。それを華穂にも告げる。

 

「まだやれるよ。私も、ブラウジーベンも!」

 

『深絵さん……』

 

 華穂は言いたげだったが諦めて何も言わなかった。これは意地だ。スナイパーとしての、そしてMSパイロットとしての……。

 奮起する深絵にシュバルトゼロのサブパイロットであるジャンヌから回線で伝えられる。

 

『ミエさん。ハジメからの通達です。「華穂を戻せ。2機で機体を抑え込む」とのことです』

 

 元からの遠回しの援軍要請。これで決まった。

 

「任務、了解っ!」

 

 機体を立ち上がらせる。地面に激突して変形してしまった左ブースターウイングをパージする。機体バランスを再入力し始める。華穂へと先程のジャンヌの、元からの伝言を言った。

 

「華穂ちゃん、元君の支援を」

 

『あっ、ハイ!深絵さんも気を付けて』

 

 すぐに建物から降りて、元の下へと向かっていく。二度目の発射、これが実質的に最後になるだろう。出来る限り負荷を抑えこめるよう各部を調整する。

 

「エディットアーム、パイルバンカー展開」

 

 エディットアーム内部のパイルバンカーユニットを地面に向けて展開、建物との固定を行う。しっかりと反動に耐えられる態勢を整え、再び狙撃カメラを展開した。が、カメラ自体の破損が目立ち、とても精密射撃には使えない。狙撃カメラを切って、照準を壊れていないデュアルアイカメラに切り替えた。

 実弾で狙撃カメラを使わない狙撃はほとんどない。MSで銃自体のスコープを覗いて狙うには衝撃が強すぎることが分かっている。なら、直感で、感覚で当てるしかない。

 

「……」

 

 1発だけの制約が重くのしかかる。例えこれまで数多くの狙撃を成功させてきた深絵でも、対物ライフルで動く人型の的に当てるのは至難の業だった。しかし、当てなければならない。当てなければ一気に劣勢になる。落ち着いて狙いを合わせる。

 敵の動きは非常に速い。先程の狙撃で警戒されているのだろう。そこで丁度華穂のソルジアV2が戦線に再突入した。ガンアサルトとMS刀「タチカゲ」で敵と機動戦を行っている。支援に入ってくれたとはいえそのせいで余計に狙いがつけづらくなったとも感じる。だがそれでも深絵はやると決めた。元に敵の動きを縛るよう呟く。

 

「元君、敵を抑えて。一瞬だけでいいから」

 

『了解』

 

 直後元が敵へ向けて飛び込む。振り切った銃剣の刃から逃れるべく2機は距離を取る。が、直後元は銃剣の1本を敵へと向けて投げつけた。投げつけた武器が敵の頭部を直撃、機体バランスが崩れる。それを深絵は見逃さなかった。

 

「……今っ」

 

 今度はしくじらない。しっかりと機体を地面に踏ん張らせ、トリガーを引く。直後轟音と共に最速の実弾が敵MSに向けて放たれた。衝撃が機体を襲う。電子化された体に更なる痛みが刻まれていく。それでもしっかりと機体を地面へと着けて衝撃を抑え込もうとする。機体の腕部からもスパーク、そして小爆発が起こるが機体は耐えて深絵も意識を保つ。

駆動系に問題が生じたのか、重対物ライフルが手から滑り落ちる。だがライフルよりも先に深絵の意識が標的となった敵機に向けられた。当たったのかどうか。それだけが満身創痍の深絵の体を突き動かす。そしてその先に結果があった。

 

 

 

 

 思えば、それは一瞬の事だった。深絵からの指示に従い、敵機のうち1機を足止めさせた。とはいっても逃げる敵機にブレードガンを投げつけて態勢を崩したくらいだ。しかし、その一瞬を深絵は狙い、撃った。先程と同じ轟音が戦場を突き抜けた。

 一瞬しかない発射タイミング。しかしそのわずかな隙が敵にとっての命取りとなった。轟音の直後マキイン・刃が咄嗟にシールドを構えた。そのシールドを貫いて実弾が敵機の左腕を奪い去ったのだ。

 

『ぐっ、ぐぉぁあああ!?』

 

『なんだと!?』

 

 左腕を穿った衝撃で、マキイン・刃が凄まじい勢いで回転、吹っ飛ばされていく。仲間に起きた異常事態に増援に来た男の声が震える。深絵が撃ったのは沢下の方だったのだ。

 

『ハジメっ!』

 

「分かってる」

 

 ジャンヌからの呼びかけに元はブレードガン・ニューCのビームサーベルを最大発振で応える。狙うは沢下の機体。された仕打ちの仕返しを込めて、ブレードガン・ニューCからビームサーベルを最大発振して振り下ろす。

 シールドがない今、ビームライフルに切り替えるのも手だったが、そうしないのは無論敵の僚機の存在があったからだった。予想通りもう1機のマキイン・刃がシールドを構えて割って入ってくる。

 

『今やらせるわけには!』

 

「上等!」

 

『Ready set GO! DNF「ディメンションブレイド」』

 

 銃剣に高純度DNから形成した高エネルギー刃をシールドに向けて叩き付ける。片方が動けない今、この高出力であのシールドも押し切れる。シールドを表面から斬り裂いていき、完全に両断した。

 

『シールドがっ!?』

 

「このまま……斬り裂くっ!」

 

 踏み込んで加速、狼狽するマキイン・刃の構えたヒートソードを両断する。そしてそのままブレードガンを敵機胸部へと差し入れた。首筋付近からジェネレーター付近へと入れた一撃で、機体が痙攣をおこす。

 

『グォッ!?』

 

「このまま……墜ち!?」

 

 撃墜を狙おうとした元の耳に警報が鳴り響く。機体カメラを向けると衝撃から回復した沢下のマキイン・刃が右腕部のビームピストルをこちらに向けていた。狙い撃ってくると思い、機体を陰に隠したがそれがいけなかった。

 

『フン!』

 

 ビームが放たれる。しかしあろうことか、沢下は味方機体を撃ったのだ。次元粒子発生器を直撃しブレードガンを突き立てた機体から火の手が上がる。予想していなかった攻撃に元は緊急退避を行う。

 

「っく!あの野郎……!」

 

『ブレードガン喪失。敵機、そのまま上空に!』

 

 煙を振り払って敵を視界に捉えようとする。だが既に沢下はこちらに背を向け撤退行動に入っていた。仲間を撃って自分が逃げるために利用するなど、言語道断だ。逃げる敵を追撃しようとした元だが、深絵から追撃は不要との指示を受ける。

 

『待って。追撃は危険だよ』

 

「深絵!だけど……」

 

 言い返そうとした元だったが、深絵の発言で頭を冷やしていく。

 

『下手に追撃して、次元覇院を刺激すれば愛智が戦火に包まれる。愛智の防衛の要だったここを失った今、勢いで向かってくる可能性も考えればここは行っちゃダメ』

 

 東響とは事情が違う。それに気づいて機体を苦々しくも見逃す。突出しすぎた考えを謝罪する。

 

「そうか。悪い」

 

『ううん。元君の考えは至って普通だよ。けど沢下はいつも僚機や増援に来た味方すらも利用し逃走してる。追撃に出た味方は全機撃墜、とんだバケモノだよ』

 

『それほど、MSオーダーズも苦戦させられる相手、なのですね。あの沢下という男は』

 

『ですね。にぃや深絵さんの人生を滅茶苦茶にした男ですから!それより深絵さん、機体は大丈夫ですか?』

 

 華穂は沢下の所業に云々言いつつも、狙撃支援を完了した深絵の機体状況について訊いた。ジャンヌから片手間に訊いた限りでは、機体の各所が既に限界状態だと言っていたが……。

 華穂の心配は的中していた。深絵がやや力ない笑いで現在の状況を語る。

 

『あ、あはは……機体肩部含めて、腕の関節部がショートしてるね……腕が動かない。エディットアームのパイルも衝撃で屋上のコンクリートに完全に埋まっちゃってるし。……助けに来て~』

 

 憐れな声で助けを求める深絵。あれだけの弾速で問題が出ないはずがないとは思ったが、よもやそこまでギリギリの状況で狙撃を行ったとは。だが先月の光巴救出作戦の時も思ったが、やはり深絵は狙撃のセンスは非常に高いようだ。撃てる状況なら可能な限り撃つ。味方として最大限の援護を行う狙撃手はとても心強いが、同時に無理をし過ぎないか不安になる。自分にとってのガンド、フォーンのようなお手本となる人物がいればもっと伸びるのかもしれないが。

 それにしても、援護に使用した兵装は何だったのだろうか。それが気になる元は華穂に深絵の救援に向かうことを伝える。

 

「なら、助けに行くか」

 

『そうだね。っと、消火部隊もようやく到着だ!』

 

 空と地上からMSと消防による消火活動が開始される。炎が弱まっていく中で、2人は深絵のもとへと向かうのであった。

 

 

 

 

「…………ガンダムは追ってこなかったか。日和ったな」

 

 追手が来ないのを見て、聖戦の跡地を振り返る判。否定しようものなら全力で否定しなければ反抗の意志は消えない。もっとも追ってくるのなら本拠地の部隊が一斉に敵を殲滅に掛かるだろう。

 初めから負ける戦いに意味はない。自分達の戦いは勝ちが確定した戦いなのだ。負けることなどあり得ない。特に判は妹の復讐を持ち合わせた悪魔たる次元光姫の討伐に、一切の余念もない。妹の復讐の為ならなんだってするのがモットーだ。味方も利用する。もっとも先程のあれは「予定されていた調和」だったのだが。総本山たる基地への着陸態勢に入ると、回線から男の声が発せられる。

 

『無事逃げおおせたか、沢下』

 

「逃げおおせた?違う。俺は悠々と帰還したのだ。それに比べ、貴様は二階級特進したというのにここにいる。矛盾だぞ第2戦神官」

 

『減らず口を』

 

 言葉を交わしているのは、先程判と共にシュバルトゼロと戦った戦神官の1人。だがその機体はシュバルトゼロと背後から撃ったはず。既にこの世にいないはずの人間だった。しかしその姿は確かに回線に映っている。

 死んだはずの兵士の生存。それは次元覇院がMSオーダーズを超える、神からの贈り物を賜った者達だからこそ出来た「罪を許された者だけの特別な方法」を得ているからだった。回線から通信官が対立する2人を宥めながらその成功を祝う。

 

『まぁまぁ戦神官のトップであるお二人もそこまでで……それより今回の聖戦で、あれは問題なく機能出来ることが確認できました』

 

『フン、ようやくか』

 

「つまり、東響のMSオーダーズもこれまでと言うことだな……!」

 

『えぇ!』

 

 滑走路に着地し、その報告を受けて拳を握りしめて喜びに震える。長い間この時を待っていた。これでMSオーダーズを亡き者とし、世界は次元覇院の教義に、「あの方」の望む世界となるだろう。

 その喜びを回線にはっきりと告げた。

 

「聖戦の勝利は近い!その先の未来の為に、俺も最期の時まで戦うぞ!」

 

 歓声が響く。判の脳裏に妹の喜ぶ姿が思い浮かぶ。

 

(待っていろ、ユズ!お前の復讐、俺が果たす!)

 

 既に采は投げられている。どちらが滅ぼすか。もっとも、勝敗は既に決まっている。真なる正義を謳う、我らの勝ちなのだ。

 

 

NEXT EPISODE

 




EPISODE16はここまでです。

ネイ「無事、追い返せましたね」

グリーフィア「みたいねぇ。大分損害は出たけど、よしってところでしょ」

ネイ「うん。でも最後……」

グリーフィア「不吉よねぇ。何で生きてたのか。まさか生き返る技術を生みだしたとか言ってクローン培養だったり?」

さぁ、それはどうでしょう……?というわけで続くEPISODE17にてこの戦いの幕を下ろします。続くEPISODE17もよろしくお願いします。


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EPISODE17 貫く一撃とこれから3

どうも、皆様。引き続きご覧の方は改めまして。今週末にあるバトスピ界放祭に向けてのデッキ構築でこっちがあまり進んでおりません(;・∀・)作者の藤和木 士です。

レイ「アシスタントのレイですっ」

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです。……いや、今回藤和木CS出ませんよね?」

出ないよ。だから界放祭にって言ったじゃん(;´・ω・)

ジャンヌ「たかだかお祭りのデッキにそこまで……」

レイ「あーでも作者って年々勝ち星下がってるんだよねー。去年はCS一本だけだからあれだけどおととしその前は14勝から12勝に」

もうやめてくれ( ;∀;)とまぁそれもあるけど今はEPISODE17の公開です。

ジャンヌ「無事基地の人達は助けられましたが、この先どうなるのでしょう?」

レイ「司令が生きているのは幸いだけど、どうなるんだろう?」

というわけで本編をどうぞ。


 

 

 四ツ田基地襲撃から1日。元と深絵は名護屋市内の総合病院を訪れていた。大学と併設して建てられた病棟のとある一室を目指す。

 途中、深絵と会話をする。話題はこれから話すことだ。

 

「……大丈夫かな?」

 

「大丈夫って、何が?」

 

「いや……事実を話すことと、あと後ろのあれ」

 

 深絵が振り返って見つめる視線。元もそれらを振り返って一瞥し、頭を振りつつも何とかなると答える。

 

「事実は事実。話しておかなきゃならない。それがどんな結果を生むとしてもな」

 

「それは分かってるよ。けどあんなことがあって、それでいて今もだなんて……」

 

「死人に鞭打つような所業ってか?けど軍人は腐れば野良犬以下だが、腐らなければどれだけ傷ついても任務を遂行する忠犬だ。大丈夫、何とかなるだろ」

 

「羨ましいな。そういう風に考えられるの。と、ここだね」

 

 この先の不安を吐露しながらも目的の場所へたどり着く。特別病棟の関係者以外立ち入り禁止区域。そこにやってきた元と深絵―――――それから軍服の男性と彼に連れられた少人数の子ども達。元は軍服の男性に待機を言ってノックをしてから深絵と共に病室へと入室した。

 

「失礼します」

 

「失礼します」

 

 病室特有の臭いを鼻に感じる。ベッドには一人の男性が寝ていた。2人の来訪にその男性は顔を向けた。

 沈黙の中、先に口を開いたのは元だった。

 

「改めまして、MSオーダーズの黒和元です。体調はいかがですか、須藤 千(すどう ぜん)四ツ田基地司令」

 

 先の戦闘で襲撃を受けた基地の司令、須藤千の病室を彼らは訪れた。

 

 

 

 

「……つまり、あの時まで貴官らの組織ではあの担当官達の不敬を把握していなかったと」

 

「はい……。担当変更もほぼ一方的でしたし、その担当官達も変更後は自衛軍に編入、こちらとの接触を避けていたようで……現在自衛軍本部にて彼らの処遇を私達の上とで決めているようです」

 

 深絵は暗い表情で四ツ田基地司令の須藤へと告げる。あの戦闘後、すぐに深絵は本部と連絡を取り、基地を出た後に話していた可能性の調査を依頼していた。捜査部の葉隠がすぐに動き、集めてくれた情報で元担当官達の所業は明らかとなった。

 なんでもダンガンの情報を聞いた彼らは、性能を見るまでもなく四ツ田基地の隊員らを骨董品に縋る古い者達だと早合点。話を聞くことなく否定から入って基地の者達の逆鱗に触れたのが原因だった。またMS導入の説得についてもとんでもないミスがあった。そもそもの話最初は「MS導入を聞き入れていない」のではなく、「MS導入に関しての相談」を基地からの要請で自衛軍本部が依頼したのだ。導入に際しての説明であるにも関わらず、話をよく聞いていなかった担当者の怠慢。それが今回の悲劇を生んでしまった遠縁だった。

 思えば担当者もあまり真面目そうな印象がなかった。失礼だが社会に出てはしゃいでいる若者のような2人だ。しかも今回以前の彼らへの追及も間に入っていた者が適当に誤魔化していたのもまた良くない。結局のところ、古い古いと言って貶していた側が、一番古い体制そのものだったと証明されてしまったわけだ。そのせいでどれだけの人間が死んだのか。それを今後しっかりと突きつける必要がある。あやふやにしたツケは重いだろう。

 だからと言って深絵達に責任がないわけではない。はっきりと自分達の責任だと千に弁明する。

 

「でも、気づけなかった責任が私達にはあります。申し訳ありません」

 

「そうだな。それが無かったら、謝罪さえあれば回避できたのかもしれない。だがもう起きてしまった。どれだけ言っても、失った仲間は取り戻せない。私も、謝罪を要求しなかったのだからな」

 

 謝罪に対し過ぎた出来事だとし、また自身の判断が不適切だったと語る須藤。どこか諦めを感じさせる彼の言動は続く言葉で更に補強される。

 

「これはまだ承認されていないが、退院後私は軍を離れる。こんな結果を起こした責任は取らなければな」

 

「そんな、それは……」

 

 軍を辞める。原因はこちらにもあるが、彼にとってそれは決定事項のように語られた。そんな必要はない、責任だって自分達MSオーダーズにあると言おうとした深絵の言葉を遮って、元が必要ないと言い切った。

 

「それは責任を取るっていうのと違うんじゃないですか」

 

「ほう、ならばどう責任を取る?私に何が出来ると」

 

「決まってる。もう二度と同じことが起きないように対策を作る。それは実際に経験して後悔をしたあなたが一番適任のはずだ」

 

 須藤の問いに即答する元。こういった場面で責任を取って辞任の流れが日本では普通。須藤もそれを取る流れだった。だが、元はそれを否定する考えを持ちかけた。それは責任に対する考えの違いからくるものだろう。

 元の言う勝手な考えと思われたかもしれないが、実際はそうではない。これはそこまでの経緯を聞いた晴宮防衛大臣が提案したもので、元がそれに同調したに過ぎなかった。そこに至る経緯も伝える。

 

「何でもかんでも、辞めて責任を取ったと思うなよ。ちゃんと責任を取るっていうなら、失敗した時迅速な対応をするのが筋を通すってものだ。晴宮防衛大臣も、あんたを辞めさせるには惜しいと言っていたしな。上の異存はない」

 

「晴宮防衛大臣が……そうだな。確かにそれが本来あるべき責任の取り方だ。それを許してくれるのはありがたい。しかし、私にそこまでの実力があるとは自分自身、思えない。こんな結果を起こした自分に」

 

 起こした被害に、自信をなくしたと語る。護ってきたものを失った事実に呆然自失となる須藤の姿に、深絵も引きずられて俯く。実は2人は自衛軍に須藤の退役申請を撤回してほしいと言われ、来ていた。もちろん2人、少なくとも深絵は彼に退役をしてほしくはなかった。ライフルの借りがあるし、責任の一端を感じていたからだ。

 それを聞いて元も一緒に行くと言ってくれた。多くの人の声を聞いて、ここにいる。隣にいた元が諦めに入っていた須藤にその声を届ける。

 

「謙遜する余裕があるうちは、まだやれるさ。あの戦いでもあんたの判断は間違ってないんだからな」

 

「謙遜など……私は」

 

「まぁ、それはこいつらの声も聴いてからにしてほしい。入ってきていいぞ」

 

「はっ、失礼いたします」

 

 入ってきたのは先程まで共に来ていた軍人の男性、と数名の子どもたちだった。軍人の方は四ツ田基地所属の軍人だったが、子どもの方はそんな素振りも見せない男女混合、身長も疎らな子たち。深絵も最初はどうしてこの子どもたちが関係しているのかと思った。だが話を聞いて、彼の力、心を奮起させてくれると思い連れてきた。

 子供たちの顔を見て、目を見開く須藤。体を起こし、声を発する。

 

「お前達……どうして」

 

「おじちゃん、ダメだよやめちゃ!」

 

「おっちゃんがいなくなったらだれがおれたちを守ってくれるんだ!」

 

「すみません、千さん。でも、基地が燃えていたのを見て、この人たちから辞めるかもしれないって言われて、心配で」

 

 我先にと話す年下の子ども達の言葉を、年上のお姉さんがまとめて事情を伝える。この子どもたちは四ツ田基地の防衛範囲にある学校の子ども達だった。学校の避難訓練や学校行事等で基地から人手を出したりして関わりを持っていた。だがそれ以上に、司令が子どもたち、基地周辺の住民から非常に好かれていた。その子どもたちが学校からの帰りに基地が燃えているのを見て心配して基地手前の橋まで来ていたのである。

 その時の話を無事だった基地所属の兵士から水戸が聞き、元の方まで話が届いて基地司令のお見舞いがしたいと彼らの願いを聞き入れ、こうして連れてきたのだった。子どもたちの言葉にタジタジになりながらも優しく言葉を返していく須藤、その姿はまるで近所のおじさんと言った様子だ。

 

「まぁまぁ落ち着け落ち着け。いいかい?おじちゃんは基地を守れなかった。おじちゃんより偉い人はそれでもやってほしいと言ってくれちゃいるけど、おじちゃんはそれじゃあダメだと思ってる」

 

「そんなの知らないやい!おれだって先生にじゅぎょうちゅうあそぶなっておこられるけど、それでも学校にはいるんだっ」

 

「いや、それは君達には学校に通う義務があるから……」

 

「でもおじちゃんだってわたしたちを守るのがぐむ?ぎむだって言ってたよ!ならおなじだよ!」

 

「いや、それは意味が違う。それはね―――」

 

 須藤は何とか子どもたちを納得させようと様々なことを教える。だが相手は子ども。すべてがすべて納得できるわけではない。特に親しい人がいなくなるともなればそれだけ納得しがたいものがあるのだ。

 

「やだー!おじちゃんいなくなっちゃー!」

 

「そうだそうだー!おっちゃんおれたちのこときらいかよー!」

 

「そういうわけじゃない。辞めても死んだわけじゃ……」

 

「はいはい、後は俺達に任せてくれ」

 

 駄々をこねる子どもたちに手を焼いていた須藤。彼らの間に元が制すると同時に割って入った。そして須藤に指し示す。

 

「彼らや町に住む人たちをあんたは家族のように接していた。それにあんた、戦闘機のパイロットに街が機関砲の照準に重ならないように指示してただろ。基地の残っていたレコーダーで聞いたぜ?」

 

「それは……」

 

「戦闘に民間人を巻き込まない。流れ弾まで考慮して、MS相手にその指示を出したあんたなら、いや、あんたしかあの基地の司令官は出来ないと思う。住民からの信頼も得るのが自衛軍、その前身から続く主義でしょう?」

 

 元の言う通り、自衛軍の前身たる組織は日本を守るという主義で古い大戦の後作られた。今は軍隊となっているが、その実災害で被災した民間人を助けたり、地域活性化にも協力たりした。基本を疎かにして得るものはない。それを踏まえて深絵も自衛軍上層部が決定した処遇を伝えた。

 

「ですから、自衛軍上層部はあなたの除隊申請を棄却。代わって新たに四ツ田基地復旧監督と改めてMS導入を要求します。これらに関しては、私達MSオーダーズも全面的にバックアップを行います。……お願いできますでしょうか?」

 

 申し訳程度の要請。実質的にはやれという命令形になってしまっていた。それを理解して滅茶苦茶だと語る須藤。しかし、答えは発言とは逆の方向性を持つものだった。

 

「はぁ、とどのつまり、退役は認めず復旧作業をしろと」

 

「そうなりますね……すみません」

 

「いや、こっちの不覚を許してくれたのならもう何も言わないさ。そうだな……その旨よしとする。退院後それらを進めていくと伝えてくれ。もちろん、MSを使ってだ。残った兵士達のMS転換訓練、よろしく頼む」

 

「本当ですか!ありがとうございます!もちろん、その時はこちらからちゃんとした訓練指導官を送らせていただきます。……あの、もう1ついいですか?」

 

 須藤がその命令を受け入れてくれたことに感謝を述べる。同時にもう1つ用件をお願いする。それは自衛軍上層部やMSオーダーズに直接関係するものではない、深絵が「個人的」にお願いしたいものだった。

 

「お願い、とは?」

 

 内容を訊く須藤。深絵ははっきりと自身のお願いを口にする。

 

「あのライフル……ダンガンの設計データだけでも分けてもらえませんかっ!」

 

 深く頭を下げる。あの時使った重対物ライフルは反動こそ凄まじかったが、撃った時の感覚、そして威力は深絵も納得するものだった。それらの製造技術を用いたライフルを使ってみたいと思ったのだ。

 話を聞いた須藤は思ってもいなかった発言に目を丸くした。だが願いの内容を理解すると苦笑とともにそれを快く承諾する。

 

「……フッ、分かった。そう手配しよう。ついでにスナイパーとしていくつか手ほどきを教えようか?」

 

「それは……はい、ぜひお願いしますっ」

 

 須藤からの誘いに感謝の気持ちを返答する。世代は引き継がれていく。兵器が変わっても技術は受け継がれていく。いや、兵器もまた姿形を変えて、受け継がれていくのだろう。

 数度言葉を交わして、深絵と元は子ども達と共に病室を後にしたのだった。

 

 

 

 

 病院を出て、子ども達を四ツ田基地の隊員に任せた2人は病院の敷地を出て周囲を歩く。どことなく明るい様子の深絵に元は語りかけた。

 

「良かったな、基地と銃の事」

 

「あ、うん。本当に良かった……辞めるって聞いて、私もそれだけは止めたかったから」

 

 優し気な顔を深絵は見せる。彼女はこちらへ協力してくれたことへの感謝を伝えてきた。

 

「元君もありがとう。いろんな人達の話をかき集めて、あの子たちを連れて来てくれて」

 

「同級生の頼みだ。それに実際に調べたりしてくれたのは四ツ田基地の人や東響の自衛軍の人達だ。俺はアイデアを利かせただけだ」

 

 実際自分が手を出せたのは子ども達の声をこうして届かせただけ。それ以上の事は出来なかった。もしあの場で須藤が断っていたら、無意味に終わったのだろうから。だが子ども達の言葉を聴いて、行けると判断したのは間違いない。だから元は言う。

 

「それ以上に、あの子達が自分の意志をしっかりと伝えたのが一番だ。正直なのが人を動かす一番の方法だからな」

 

「元君……うん、そうだねっ」

 

 深絵も納得した様子を見せる。ここでの行動はこれで終わり。この後は華穂達と合流して、

東響へと帰らなければならない。あちらではやはり連日続く次元覇院との戦闘が続いているようだから、手助けに向かわねばならないだろう。

 そこでポケットから着信音が鳴り響く。ポケットから取り出した最新型の携帯端末には妹の名前が出ている。電話に出る。

 

「もしもし。こっちは終わったぜ?」

 

『あ、もう終わったんだ。なら早くこっち来なよ~。今日には東響に帰らなきゃなんだからさ~』

 

 無邪気に名護屋散策を満喫しているご様子の華穂。脇からはジャンヌとドライバーの水戸の声も響いている。緊張感のない様子と思いつつそれに了解と応える。

 

「分かった分かった。俺の目当てもあるからな。すぐ行く」

 

『うん、りょーかい!じーっとしてたら、にぃが欲しがってたムック本がドーなっても……』

 

 言いかけたところで携帯を切る。昔もだが妹は柚羽の事件以来、特撮を封印した自分を奮い立たせようと特撮関連の台詞を会話に混ぜてくることがあった。よく知らないのにネタで使ってくるものだからか、自然と怒りが溜まってくる。ネタはあっても乱用は避けるべき、特撮に限らず作品やファンに対する配慮が欲しい。

 電話を切って、深絵に華穂達と合流することを伝える。

 

「じゃあ、早くあいつらと合流しようか」

 

「フフッ、華穂ちゃん楽しそうにしてたね」

 

「あれははしゃぎ過ぎだと思うけどな」

 

 そんな会話をしながら、2人で、そして合流したジャンヌ達とで名護屋の街を満喫していくのであった。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。

レイ「これで愛智の事件は収束、って感じかな?」

ジャンヌ「そうですね。MS導入も決定しましたし、被害は甚大になってしまいましたが、良かったと思います」

いや、良くはないと思うけどね。それに至らないうちに解決すべきだった。そうすれば戦闘機のパイロットっていう戦闘要員を失わずに済んだわけだし。

レイ「って言ってるけどその流れを考えたのは藤和木だよね?」

そ、それは話の流れがそういうものだからでしてね(゚Д゚;)

ジャンヌ「今は何も言いませんよ。それより次回投稿遅れるそうですね?」

はいそうです(^o^)大体4日5日置きに今投稿なんですが、ここ最近はあんまり時間もなくてですね……その他したいこともあるわけで。次回の黒の館DNとその次の投稿が若干遅れそうになります。ご容赦ください。バトスピ界放祭もあるので。
では今回はここまでです。

レイ「次回もよろしくねっ。藤和木の今年の界放祭はどうなるっ!?」

ジャンヌ「まぁせめて12勝以上は上げてもらいたいものです」

厳しい;つД`)


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黒の館DN 神騒乱勃発編 第3回

どうも、皆様。作者の藤和木 士です。

今回は黒の館DN、その第3回となります。前話はバレンタインの内容でしたが、それとはガラリと舞台も変わっていますので前々回の投稿話なども思い出していただけると幸いです。

LEVEL2第2章までの登場機、および紹介を是非ご覧ください。それではどうぞ。


 

 

士「黒の館DN、今回も始めて参りましょー!作者の藤和木です」

 

レイ「アシスタントのレイだよーっ!ここまでの話はMSと既存兵器のあり方って感じだったねー」

 

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです。そうですね。バトスピのようなカードゲームも一見古いカードでも後々の環境で結果を残すこともあるみたいで、温故知新という言葉もあるくらいですからね」

 

士「ちなみに今現在の作中情勢では既存兵器はMSの補助が主になっているね。船とかはこれまでのものにMS運用の運用能力を付け足していて、今後紹介する予定もありますよー。さぁ、今回は人物紹介、それからMS、武器紹介です」

 

ジャンヌ「珍しく1話に収まるんですね。前回も同じでしたが」

 

レイ「あれー、割と初めての人とか多かった気が……」

 

士「そうでもないんだなー。沢下判の援軍の騎士っぽい喋り方の人は名前まだ出してないし」

 

レイ「まーた名前付けてないんだ……」

 

ジャンヌ「理由聞いた方がいいですか?」

 

士「正直言うと黒の館をコンパクトにしたいなぁ、って話(;・∀・)」

 

レイ「メタい理由だったよ!?」

 

ジャンヌ「そうですか……色々と言いたいことはありますが、とりあえず紹介します?」

 

士「お願いしますm(__)m」

 

レイ「じゃあ、まずは人物紹介から、どうぞ!」

 

 

沢下 判(さわした ばん)

性別 男

身長 174cm

髪色 白髪

出身地 日本 三枝県 四河市

年齢 26歳

誕生日 11月11日

血液型 O

好きなもの 詳細不明

嫌いなもの 次元家、次元光巴

愛称

 

 次元覇院のMS部隊を率いる、戦神官と呼ばれる男性。白髪の髪を古いおかっぱをアレンジした髪型をしている。

 5年前の元達が参加していた成人式後のパーティーに乱入してきた男であり、元にとっては因縁の相手となる。その当時から次元覇院を設立した旧教団の信者らしく、モバイルスーツ暴走計画は彼が発案者の模様。モバイルスーツのお披露目にて会場に潜入し起動と同時にステージに乱入。警備員たちの妨害を突破し、光姫を襲おうとするも黎人に阻止。しかし隙をついて機材に謎のディスクを挿入、プログラムによりモバイルスーツを暴走させる。直後に拘束されるも、騒動に乗じて逃げたとされる。

 異様に次元家、というより光姫を敵視しており、悪魔の女として彼女とその親族・仲間達を抹殺しようとしている。元もその一人だが、元もまた彼の存在はいくらジャンヌとの出会いのきっかけとはいえ許さず、全力で撃墜を狙う。

 人物外見モデルは絶対可憐チルドレンの兵部京介。モデル元の髪は銀に近い白だが、こちらはストレスなどによる髪の色素抜けでこうなってしまっているらしい。

 

三滝 境二郎(みたき きょうじろう)

 自衛軍が軍隊化される前に活躍していた伝説的と言われる特殊部隊のスナイパー。享年83歳。かつて日本で起こった次元粒子に関係しないカルト集団「ラウル神聖教」による武力テロにおいて教団が持ち出した軍用戦車3台を対物ライフルですべて沈黙、確保した。別名「装甲の貫通王(アーマー・ストライカー)」。

 その後は故郷の愛智の四ツ田基地にて司令兼教官を務めており、のちの四ツ田基地司令である須藤千司令を鍛え上げた。彼の人生に影響を与えた人物であるが、厳しく指導しながらも関係は非常に良好で、四ツ田基地においては名司令官とされた。基地にはその健闘を称えた記念の重対物ライフル「ダンガン」が安置され、基地の象徴として扱われている。

 

須藤 千(すどう ぜん)

性別 男

身長 178cm

髪色 白髪交じりの黒

出身地 日本 岐敷県 各務谷市(現在は愛智県 名護屋市 仲村区)

年齢 47

誕生日 6月11日

血液型 A

好きなもの 射的、鷹山ラーメン、凄腕スナイパーの登場する映画

嫌いなもの 尊敬する人物を馬鹿にする者、金魚すくい、コンピューター系の仕事(視力の低下が主原因)

愛称 装甲の貫通王(2代目)

 

 四ツ田基地司令を務める男性。既婚者。落ち着いた態度を崩さない、威圧感を携えている。基地のMS導入反対派である。

その中ではただ反対として明言するだけで特に口出しすることはないが、のちにこれが最初のMSオーダーズからの使者の不手際によるものだと判明する。根は真面目であり基地隊員からもMSを導入しないこと以外は非常に評判がいい。かつては伝説の狙撃手三滝境二郎の弟子であり、小学生の時に見たラウル神聖教の武装テロ阻止のニュースを見て彼に憧れ、近隣の四ツ田基地司令に就いた後に自衛軍の前身に入隊・師事。その教えもあって自衛軍設立以前からの作戦でも重宝されていた。

 境二郎から四ツ田基地司令の座を頂いた後も度々狙撃手として、またある時は被災地復興支援部隊として近隣の作戦・被災地に参加。市民からの人望は厚い。基地内部には境二郎を称えて彼の全盛期を象徴する重対物ライフル「ダンガン」を作り、安置しているほど境二郎を偉大な人物として称賛している。

 元達の会談時にはほぼ無言で開始と終了のみを告げていた。やがて基地が次元覇院に襲撃された際には部隊指示と近隣への支援を要請していたがものの数分で基地の戦闘機、自走砲部隊を壊滅、基地上官らを含めた部隊を惨殺される。自身も「ダンガン」を移動させようとしたところで基地の倒壊に巻き込まれてしまう。幸い軽症で基地の生存者と使えそうな武器を探しに来た深絵に救助、恩師のための「ダンガン」を彼女に貸し与えた。基地壊滅後病院に入院していたが見舞いに来た元と深絵からこれまでの非礼の謝罪と基地の復興援助を受け、更に深絵の熱望から「ダンガン」開発の技術提供を行った。

 

 

水戸 晴太(みと はるた)

 MSオーダーズの隊員の1人。男性。主に遠出の際に同行するオペレーターであり、ドライバーや現地案内人を務める。元々雑誌編集を志していたこともあり、聞き込みで現場の声を収集、問題解決の糸口を探ることも。もっとも彼からしてみれば趣味の範疇である。

劇中では四ツ田基地のMS導入反対の理由を結果的に見つけ出した。

 

 

レイ「人物紹介は以上だね。水戸君は下の名前あるんだ」

 

士「あぁ、今回下の名前は出ていませんが、彼もMSオーダーズ側で多く登場しそうなので設定はしておきました」

 

ジャンヌ「にしても沢下判……彼は何があって光姫さんを、MSオーダーズを狙うのでしょう」

 

レイ「だよねぇ。気になる単語はあるけど。っていうか、次からの話が中々ヤバそうな展開醸し出してるよね?あの騎士みたいなの生き残ってたり、なんか計画も進んでいて」

 

士「さぁ、そこら辺の話は次に回すとして」

 

レイ「流した……」

 

士「ここで言っても面白くないでしょうからね。じゃあ次はMSと武器紹介で」

 

ジャンヌ「かしこまりました。では続いてMS紹介です。まずはMSオーダーズの新型ソルジアV2から参ります」

 

 

OMS-01V2

ソルジアV2(ヴァージョンセカンド)

 

 MSオーダーズがシュバルトゼロガンダムより提供されたデータをもとに改良を行ったソルジアのカスタム機。機体そのものの外見の変更としては粒子安定コントロール装置としての機能を持つ、鎖骨部から伸びた「パラセイルアンテナ」が増えたこと。

 パラセイルアンテナはシュバルトゼロのブレードアンテナ、ホルダーバインダーが行っていたDN制御技術を基に開発。頭部ロッドアンテナと合わせて機体各部の次元粒子の運動に寄与し省エネルギー化を実現する。またこの恩恵で機動性能も向上、チューンナップの施された新堂沙織専用ソルジアの機動性に追いつくほどの結果を見せている。

 武装も強化され、ビーム兵装は使用制限が緩和。冷却性能や耐熱性が向上し、ビームライフルの連続使用も視野に入る様になった。戦闘スタイルはこれまで通りエディットウエポンシステムを主軸とする。とはいえ武装に今まで試作段階だった武装などを加えており、バリエーションが更に豊富となった。

 機体カラーは通常機はこれまで通り灰色。ただし華穂の機体は灰色に白の肩、沙織が受け取っている機体は白銀に黄色の肩となっている。パラセイルアンテナは機動戦士ガンダム00のグラビカルアンテナがモデル。

 

【機能】

・エディットウエポンシステム

 機体の背部、腰背部に接続されるアームの武装換装システム。改修前のソルジアとほぼ同一性能。

 

・パラセイルアンテナ

 機体鎖骨部に備えられたアンテナユニット。機体の粒子制御の他、レーダーの通信性能を向上させる。実はこの世界においてもガンダムの高純度DNによりレーダーに支障が出ており、それらを解消するべく本アンテナが搭載された側面も持ち合わせる(なお第1部のEPISODE1にて高純度DNが録画妨害効果を持っていたが、EPISODE4やそれ以前にて華穂がシュバルトゼロガンダムの戦闘記録を録画出来たのはあくまで録画妨害が機体のフレームが紅くなっていた暴走状態の時のみ、機器に異常なエラーを起こしたため)。

 機能等のモデルは機動戦士ガンダム00のGN粒子制御アンテナ「グラビカルアンテナ」より。本機のものはガンダムアストレアの物が形状的に近い。

 

 

【武装】

・MSマシンガン

 本機の主兵装の1つ。ソルジアと同一の兵装で、本機においても原型機と同じくビーム攻撃の為の布石として用いられる。弾数も50発で予備弾倉が右腰のライフル装着箇所のサイドアーマー下部に備える点も同じ。

 

・ビームライフルV2

 本機の主兵装の1つ。ソルジアの物からシュバルトゼロガンダムの技術を用いて改造、開発された新型のビームライフル。

発展元が抱えていた連射性能・冷却性能の問題をある程度克服し、連射性が向上している。パラセイルアンテナの機能もあって消費エネルギーも減少し、それでいて威力は変わらない為ようやくマキインと武器性能で張り合える力を得たことになる。

 武装外見モデルは以前と同じガンダムF91のビームライフル。

 

・ビームサーベルV2

 機体背面バックパックの両側に差す格闘兵装。ビームライフルと同じくこちらもシュバルトゼロガンダムの技術で改良されており、量産型の兵装でありながら最大連続運転が2分に延長されている。ここまでくれば余程の事がない限りサーベルが時間経過で使用不可になる可能性は低く、ようやく実戦モデルとなったと言える。

 

・チョバムシールド

 機体左腕部に装備する装甲積載型実体シールド。ソルジアの物と同じである。

 

・アームセミウイングバックパック

 機体背部を構成するバックパックユニット。改修前と同じくエディットウエポンアームを背部に備える点は同じだが、下部ノズルスラスターに並行して小型の偏向ウイングが備えられ、機動力向上に寄与している。

 

・エディットウエポンアーム

 機体背部と腰背部に備える武装換装アーム。ソルジアと同じ兵装だが、腰背部のアームには増加プロペラントタンクを兼ねた追加スラスターがアームに沿って装備されており、稼働時間と機動力向上に貢献する。

 

<アーム接続兵装>

 基本的にソルジアと同型の兵装を備えるため、詳しくはそちらも参照。本項目では新型オプションについて記載する。なお華穂機はいずれも試験運用のためにこちらの最新兵装をすべて装備する。

 

・ガンアサルト

 アームに接続する実体弾兵装。電磁小銃であり、手持ちに切り替えることも可能。電磁加速した弾丸を連射して敵機の姿勢を崩す他、バレルを展開して出力の向上したレールガンとしても使用できる。ガトリングガンとレールガンを兼ねた兵装となっている。なお弾丸は後部カートリッジを通して供給される。

 武装モデルはマクロスシリーズの射撃兵装「ガンポッド」。

 

・MS刀「タチカゲ」

 専用のホルダーに入れて運用する、実体剣。刀と付いているが、刀程細くない、幅広で透明の剣となっている。刀身そのものは最新素材のクリア・エッジ。

 シュバルトゼロのブレードガン・ニューCを参考に、本来開発を進めていた実体剣兵装に刀身への次元粒子定着技術を落とし込んだ兵装。よって本来なら刀の名称通り、すらっとした刀身だったが技術投入の折、性能再現の結果こうなった。

 だが剣としては想定以上の切れ味を誇っており、沙織機の持つ村金が刃こぼれするほど。ただし本兵装を使った新堂沙織曰く「刀としては使えない」兵装であり、使い勝手が全く違う兵装となってしまっている(それでも威力に関しては太鼓判を押す)。

 ホルダーは収納時に刀身の粒子コーティングを行うためのメンテナンスユニットであると共に、根元付近の実体剣で非常時の近接防御にも対応する。

 武装モデルはガンダムビルドダイバーズのオーガ刃-XのGNオーガソード。ホルダーギミックはアリス・ギア・アイギスのキャラ「吾妻楓(皆伝)」のSPスキル「千本桜[四ノ切]」から。

 

・ポッドランチャー

 中央にビームランチャーの砲身とエネルギータンク、周囲に六角状のミサイルポッドを備えた中距離兵装。

 シュバルトゼロのビーム兵装技術により砲身冷却が洗礼され、連射感覚が従来の物より短縮。およそ20秒に1発撃てる計算で一出撃に10発は撃てるようになった。火力はそのままでも使い勝手が向上したことでその連射間隔を補う兵装として、ビームランチャーの砲身を包む形でミサイルポッドを増設した。ミサイルポッドは使用後パージ可能、また予備のポッドに換装することで再使用が容易な設計となっている。

 武装モデルは漫画機動戦士ガンダムミッシングリンクのペイルライダー・キャバルリーの複合武装「シェキナー」。

 

・エリミネイターブレード改

 エリミネイターブレードを改良した実体鋸兼ビームソード発生器。シュバルトゼロ使用時に観測されたビームソード機能を改良により通常機でも使用できるようになった。

 ビームソード使用可能時間は1分と回転と次元粒子の刃への浸透を行っていたエリミネイターソードよりも使用可能時間が減少したものの、実体鋸とその内部への次元粒子浸透は健在であり、また使用可能なビーム兵装が増えたことにより負担とはなりづらい。

 

 

ZHMS-P02S

マキイン・刃

 

 

・四ツ田基地襲撃時から投入されたマキインの次世代型モデルの1つ。近接格闘戦を意識した試作モデルであり、後述する兵装と合わせた「近接戦に移行せざるを得ない状況に持ち込ませて撃破する」ことを目的とする。

 特徴的なのが腕部に装備された対エネルギー反射シールド「リフレクトシールド」の存在であり、ビーム兵器をほぼ無効化して攻め立てるといった本時代における強みを殺して自分が圧倒する。

 少数生産された本機はそのうち1機を次元覇院の筆頭教団員である沢下判によって運用、対峙したシュバルトゼロとブラウジーベンを翻弄した。

 頭部の額部分から頭頂部に沿って増設のブレードアンテナを装備しており、また肩にはシールドの代わりに空力特性を考慮したエッジが追加されており、それが本体をマキイン、および魁との見分け方となっている。またカラーリングもオレンジに灰色のラインが入ることも違いである。

 

【機能】

・リフレクトパネル

 リフレクトシールド正面に張られたビーム反射装甲。ビームなどのエネルギー弾を受けると反射して防御・攻撃を同時に担う。反射の際には装甲の排熱の為の冷却装置が必要であり、シールド裏にはその冷却装置と排熱口が存在する。

 ビームに対して絶大な防御性能を誇るが、欠点としてパネルそのものが脆く、衝撃1つでひび割れてしまうことが難点。

 簡単に言ってしまえば機動戦士ガンダムSEEDDestinyのアカツキが持つヤタノカガミであるが、そちらと違って装甲の冷却が必要な点で劣化兵装となっている。とはいえマキナ・ドランディアにはない装甲そのものがビームを反射する機能はガンダムの兵装に対しても有効なほど性能が高い。攻略としては近接格闘戦か実弾兵装、または排熱で対応できる出力を超える高出力ビームによるごり押しが前提となる。

 

 

 

【武装】

・MSアサルトライフル刃

 マキインと同型の対MS、対人用アサルトライフル。右腰に装備される。近接戦を主軸とするマキイン・刃用に銃身下部に取り外し式のアサルトナイフを装備した銃剣として用いられる。

 

・アサルトナイフ

 MSアサルトライフル刃の銃口下部に装備される、近接戦用ナイフ。機能としてはマキイン・魁のアサルトナイフと同等。本機においては近接戦闘時の不測の事態から護るために装備される。

 

・ビームデュアルガン

 両腕下部に装備される小型ビームガン。ストラップユニットで手元まで運び、保持して使用する。

ビームの威力はビームライフル以下の性能だが、ビームライフルよりエネルギー量が少なく、また熱量も少ないため使用限界時間が延び、けん制弾としては充分すぎる性能を持つ。

 武装モデルは機動戦士ガンダムSEEDC.E.73STARGEZERのブルデュエルが持つリトラクタブルビームガン。

 

・ビームサーベル

 マキインシリーズと同じ格闘戦兵装。本機においては他機種が装備する位置にビームデュアルガンを備えるため、両肩部装甲に差す形で装備される。

 

・ライオットブレイド

 バックパックのホルダーブースターに2本差される実体剣。刀身を赤熱化させたヒート剣として用いられる。

 当初はビームソードを装備する予定だったが、技術が追いつかなかったことと、ビームに対して効果的なリフレクトパネルを搭載した敵機を想定して本兵装をカウンターウエポンとして本兵装を実装した。

 次元粒子により赤熱化した刃は機体装甲にも十分通用し、またビームサーベルなどよりも負荷が軽いため主兵装としては申し分ない性能を誇る。

 武装モデルは漫画機動戦士ガンダムブルーディスティニー版イフリート改のヒートソード。

 

・ホルダーブースターバックパック

 ライオットブレイドのソードホルダーを兼ねた推進器を備える背部バックパック。収納されるライオットブレイドは刀身自体が露出しており、鍔部分を固定するのみとなっている。また上部と下部でスラスターの系統が異なる。

 まず下部はノズルスラスターを採用し、追加で専用のスラスター付きプロペラントタンクを装備可能なものとなっている。その一方上部はソードホルダーを兼ねたスラスターということで剣を挿入するホルダー側面に細身のバーニアを設置。更にホルダー外側のパーツにもノズルスラスターを備えて機動性を強化。ブレイドの刀身そのものをウイングとし、AMBACが機能する様にしている。

武装懸架ユニットそのものをスラスターの複合体にするという画期的な機動力強化システムだが、機体そのものの技術がまだまだ未成熟なためかシュバルトゼロほどの性能を得ていない点が難点(とはいえブラウジーベンとほぼ同等の機動性を持ち合わせ、リフレクトパネルなどのシステムも合わせて本機をエース級に足らしめているのは間違いない)。

 武装モデルは漫画版機動戦士ガンダムブルーディスティニーのイフリート改のバックパック+ジムナイトシーカーのバックパック。

 

 リフレクトシールド

 機体左腕に装備される、ビーム反射シールド。先述したリフレクトパネルを表面に施したシールドで、シールド裏に反射制御用冷却装置と排熱口を備える。

 重量自体は普通のシールドより少し重い、大きさもやや大きい程度であり取り回しは悪くない。欠点を上げるなら衝撃に脆い為万全な防御性能を保つために実弾などは可能な限り回避したいところである。

 形状モデルは機動戦士ガンダム00のOガンダムのシールド。フィールド発生装置を外板で覆っているような形状。

 

重対物ライフル「ダンガン」

 

解説

・四ツ田基地司令須藤千が恩師にして自衛軍伝説のスナイパー「三滝境二郎」を称えて司令就任と共に開発させた大型対物ライフル。弾数は4発。

 普通の対物ライフルよりも更に大型で、まず人が携行するのは不可能。通常はクレーンで運んだ本兵装を固定銃座として設置し使用される。威力は大型な分破格の威力で耐弾性能の高い巡洋艦はもちろん、MSすらも当たれば盾ごと腕を破損させるほどである。

 素早いMSに対して当てるのは至難の業だが、弾種には散弾やクラスター爆弾もあり抜け目はない。そしてこれはMSで携帯することが可能となっている。もちろん機動性低下や取り回しが悪いと言った欠点が付属するが、むしろMSの登場で本兵装が機動戦で放てるという大きなリターンを得られるようになった。ただし弱点として手持ちの場合反動が凄まじく、カラーシリーズのブラウジーベンですら2発の発射で肩部が駆動停止となった。深絵の反動コントロール技術がなければ1発でお釈迦だったとされる。

 本兵装は深絵のブラウジーベンが使用後、その設計データを須藤から受け取った。今後はその運用データとシュバルトゼロのデータを合わせた新型スナイパーライフルの開発に役立てられることとなる。

 

 

ジャンヌ「以上がMSと武器の紹介になります。ソルジアV2は元さんのシュバルトゼロのデータを用いて改良された機体ですね」

 

レイ「実体剣!MS刀のバリエーションが出て来たね。次元覇院の方はヒートソードかぁ」

 

士「ちなみにヒートソードの過熱はDNを用いております。ビームサーベルとも短時間の打ち合いが可能です。何回も打ち合ってると斬られちゃいますけど」

 

ジャンヌ「あら、でしたら元さんが戦っている時、ビームサーベルで戦っていれば良かったのでは……?」

 

士「ジャンヌさん、それは言ってはいけない(^ω^)」

 

ジャンヌ「あっはい」

 

レイ「あらら……けどダンガン大活躍だったねっ。MSの武装化されたらどんな風になるんだろう?」

 

ジャンヌ「おそらくブラウジーベンの武装になりますよね」

 

士「流れ的にそうだね。でも後々のMS開発に生かされていくので、どんな兵装になるかはその時まで。それでは今回はここまでです」

 

レイ「次回からMSオーダーズも作戦を展開していくみたい!次回もよろしくねーっ」

 




今回もお読みいただきありがとうございます。次回からの内容としてはかなり大規模な作戦が展開される予定、とだけ言っておきます。とはいえその作戦終了後は続く第3章へと続く流れとなります。

今回紹介した沢下判、彼と元君の間には、まだ明かされていない繋がりが存在しています。察しの良い方はもう気づいているかもしれません。それもこのLEVEL2第2章で明かされていく……?

ということで今回はここまでです。もう少し投稿ペースを速められたらなぁ(;´・ω・)と思ってはいます。
ではまた次回。


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EPISODE18 東響掃討戦1

どうも、皆様。この頃は新型コロナウイルスのせいで様々なイベントに支障が出てますね、作者の藤和木 士です。今日はいつもより遅めの投稿です。

ネイ「アシスタントのネイです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよ~。そうねぇ。かくいうバトルスピリッツの公認大会とかも、大型のものから店舗大会まで影響受けちゃってるものね~。商品展開にまで影響したら、ね~」

_(:3 」∠)_まぁ病気だから仕方がないんだけどさ。それでもガンダムコラボの方に支障が出たら……あ、無論ディーバ関連もね。
さて、今回も2話投稿でお送りいたしますよ~。

ネイ「第2部に来てなかなか壮大そうなタイトルですね……掃討って」

グリーフィア「これは東響の次元覇院をぜーんぶ叩く!みたいな作戦かしらねぇ」

掃討戦、一体何を叩くのか。それでは本編へ!


 

 

 5月最終週、元はMSオーダーズのオーダーズ・ネストにある会議室、その指揮官担当席にいた。元の隣にはジャンヌが座り、同じ側には深絵も座る。華穂は居ない。彼女はMSオーダーズ主要メンバーに近いとはいえ、今回のような大掛かりな作戦会議には呼ばれない立場。隊員として隊長である光姫か深絵から聞くだけだ。

 大掛かりな作戦とは、次元覇院に対する作戦だった。既にプロジェクターの前で、各セッションの小隊長達に黎人が作戦の前段階、これまでの次元覇院の行動についての説明を行っていた。

 

「今月で次元覇院のMS撃破数は東側全体で400機を突破。うち200機前後が東響のエリアとなっている。MSの東側輸入量なども考えると、東響の次元覇院使徒の使える機体は、相当限られていると思われる。そこでオーダーズは6月初旬、この東響、最低でも23区の次元覇院の殲滅作戦の展開を決定した」

 

 黎人の後ろのスクリーンに作戦の概要が映し出される。作戦名は東響掃討戦、次元覇院を東響から追い出し、東響の安全圏を作り出すのが狙いだ。資料にはこれまで何度か同じ作戦が試行されていた。しかし真っ向からやり合うにはMSオーダーズだけでは戦力が足りない。いや、実際数は足りても防衛も含めた戦線維持が困難になると予想されたのだ。

 それを今一度計画したのは、無論それが解消されたということ。それには少なからずシュバルトゼロガンダムの技術流用が背景にあった。そのおかげでこれまで互角だった情勢はこちらの圧倒が目立つようになっている。これなら守りながら掃討出来ると判断したのだ。

 スクリーンへと作戦における目的、それに部隊配置が表示される。

 

「今回の作戦で都内における次元覇院の一掃、加えて23区外縁北西にあるとされる次元覇院東響侵攻拠点とされる地区を破壊。その為にネストと都内の間、都内、そして23区外縁それぞれに臨時前線基地を作成、そこから総指揮官の指示に従って部隊は行動してもらう」

 

 要するに3チームに分かれ、それぞれの担当地域に根付く次元覇院使徒達を殲滅するのだ。担当指揮官についてMS部隊全総指揮官、主力チームSABER隊長の光姫が発表する。

 

「距離がネストより近いチームより、A、B、Cと付けていきます。作戦全体のバックアップおよび基地周辺防衛のAチームは私、次元光姫が指揮を。都内殲滅とCチームから抜けてきた敵MS撃退を行うBチームはSABER副隊長の蒼梨深絵が担当」

 

「はいっ」

 

 深絵が返事をする。そして最前線を担当するCチーム、その指揮担当は……。

 

「そして敵侵攻拠点の攻略を行うCチーム指揮官は、黒和元に担当を要請します」

 

 担当の名を聞き、室内から動揺が生まれる。対して元は静かにそれを見ていた。どよめく会議室を、黎人がすかさず制した。

 

「静粛に。彼を今回Cチームの指揮官としたのはいくつか理由がある」

 

 そう、元が今回指揮官を受けたのにはわけがあった。その理由が1つ1つ提示されていく。

 

「1つに、彼は後々オーダーズにて設立予定となる遊撃部隊「CROZE(クローズ)」の隊長を務めてもらうため、その指揮能力を見ることにある。そしてもう1つ」

 

 リモコンを操作するとスクリーンに映ったスライドが変わる。そこにはいくつかの写真が写っている。何かの運搬状況。何かと目を凝らす隊長達。だが元はそれを知らされている。元をCチーム指揮官とした理由、それを黎人とメカニック担当の来馬が写真の正体と共に明かした。

 

「これは侵攻予定の拠点を映したものだ。このコンテナ、中身は分からないが、「MSではない何か大型のパーツ」であると思われる」

 

「おそらく敵拠点も同じく、私達を壊滅させる計画を立てているものと推定されます。何かは断定できませんが、これが本当ならMSオーダーズは「最大戦力」でこれと渡り合わなければなりません」

 

「それもあって黒和元を、シュバルトゼロガンダムを最前線に配置した。Cチームにはこれの制圧、あるいは破壊を要請する。敵基地周辺には住宅街もあるが、こちらに関しては既に内偵で次元覇院使徒が大半を占めているのが分かっている。そうでない者達は既に避難させた。存分に戦ってほしい。なおこの作戦は自衛軍とも連携する」

 

 理由を聞いて隊長達は声を収める。最悪の事態にならないために、最大限の力をぶつけるとなれば誰も反論はしない。反対の言葉がなくなった時点で、黎人が作戦会議を終了させる。

 

「では今回はここまでとする。後にチーム担当などを通達するので、それまではこれまで通りに。それでは解散」

 

 一斉に立ち上がり、敬礼する。そうして隊長達、そして元達は部屋を出ていく。

 

 

 

「大規模作戦……東響が戦火に包まれるのは、避けられませんよね?」

 

 会議室を出たジャンヌが一言、そう言った。先程の作戦、ほぼ民間人にも被害が出かねないのは明らかだった。それは光姫達ももちろん承知しており、ため息と共に語る。

 

「そうね……出来れば民間人を巻き込まない作戦を採りたかったけれど、でも基地と隠れ家からの動きがある以上、最大限の部隊展開は避けられないわ。それが結果的に一番被害を減らせる策だから」

 

 仮にもしCチームだけで作戦展開した場合、攻め込む部隊の背後、都内側から次元覇院のバックアタックを受けて部隊が崩壊する可能性がある。それを防ぐために都内警戒のBチーム、全体を見通し、ネスト防衛にあたるAチームと作ったのである。

 それを実現する為に数は自衛軍への協力要請で取り付けた。それでも推定数はほぼ互角。その為に光姫達は各地に点在するMSオーダーズ支部にも協力を仰いだのだという。それに言及する深絵。

 

「最大展開ってわけだから、支部にも協力を仰いでるからね~。光姫ちゃんの妹の夢乃ちゃんもこのタイミングで東響の本部配属で来るんだよ!」

 

「私としては、あの子に来てもらうのはどうかなって思ったんだけどね。でも人手が足りないし、何よりあの子が来たいって言うから」

 

 自らの妹の参戦に光姫は頭を軽く抑える。光姫の妹と聞いて元も思い出す。確か華穂と同い年の、姉よりも元気さが取り得の少女だったはずだ。

 

「光姫の妹……華穂とは同級生なんだったか?」

 

「うん、華穂ちゃんと同い年だよー」

 

「本当なら三枝の中学校卒業してから、地元の高校通うって予定だったんだけど……華穂ちゃんのこと聞いて、自分も責任取りたいってオーダーズまで来たのよ」

 

「責任?」

 

 光姫の言葉に首を傾げる。何だろう、同級生の悲しみを受け止められなかったからと自責の念に駆られてしまったのか。それとも同級生以上に親友として?しかし思わぬところで華穂に、そして元自身に関係していることを深絵から教えられる。

 

「あーひょっとして忘れてる?夢乃ちゃん、5年前のモバイルスーツ「ガン・ファイター」のパイロットだったの」

 

「……!あぁ、思い出した」

 

 言われて気付く。あの場で光姫が確かに試作モバイルスーツガン・ファイターのパイロットが自身の妹であると言っていた。彼女も、5年前のあの場に居たのだ。関係者として。

 思いだした元に、光姫達が彼女の当時の心境を語って見せた。

 

「あの事件でモバイルスーツのパイロットだった夢乃は、あなたを含め数名を怪我させたとして逮捕。ウイルスによる不可抗力ってのもあって不起訴にはなった。けど友人の華穂ちゃんのお兄さんであるあなたを殺してしまったって思い込んで……華穂ちゃんと同じようにしばらく引きこもってたわ。まぁ、当時は中学最後の冬だったから、支障が出たのはほんのわずかね」

 

「それから華穂ちゃんの家出があって、私が華穂ちゃんを東響に連れてきた。それを光姫ちゃんから又聞きした夢乃ちゃんが頼み込んでこっちに来たんだよね。以来夢乃ちゃんはモバイルスーツだけじゃなく、MSにも関わったってわけ」

 

 事情は把握した。予想は的を射ていたようだ。納得して元は手を打つ。

 

「なるほどね。それで2人は仲いいのか?」

 

「うん、すごくね。人員配置の時に夢乃ちゃんは支部に配属されたんだけど、今でも結構な頻度で連絡取り合ってたんだって。元君のことも話したらしいよ」

 

 2人の関係も良好と聞き、兄としては嬉しいことこの上ない。そこでジャンヌが話を戻した。

 

「でしたら、何か問題が?ミツキさんは関わらせたくないようでしたけど……」

 

 ジャンヌの疑問に光姫が首を振って質問に答えた。

 

「まぁ、単純に妹まで戦いに巻き込んじゃったなってのがあるわね。それと元のことは妹のいる支部には知らせていなかったんだけど、やたらと元の話題に食いついていたから、もしかするとまた……」

 

「あぁ……そういうことですか」

 

 光姫は頷く。姉としては妹の無事と、必要以上に責任を感じすぎてはいまいかと気にしていた。同じ妹を持つジャンヌにもすぐに分かったのだろう。もっともジャンヌとしてはその妹にも当てはまるため、双方の立場を理解していたようだった。ジャンヌは言う。

 

「ミツキさんの心配は分かります。でも、妹さんは妹さんで通したい筋があるのかも知れませんよ?」

 

 通したい筋、ジャンヌにとってのそれはやはりこの世界に来ると言ったあれだろう。あの時はせがまれ、なかなか大変だった。しかも親族は約1名を除いてジャンヌの意向を尊重した。そして彼女の妹もまた、面倒な通したい筋があった。

 光姫の心配に元もまた気にすることはないと答える。

 

「俺は構わないぜ。言いたいっていうなら聞く」

 

「元」

 

「けど必要以上に謝るって言うなら話は別だ。あれは事故、彼女には不可抗力なんだから」

 

 同時に謝られ過ぎても困ると回答しておく。事故は事故。それも不本意なものならその程度が一番だ。光姫にも確認を取る。

 

「それでいいか?」

 

「まぁ、それなら伝えておく。ちゃんと聞いてあげてね」

 

「了解だ」

 

 言葉を交わし、休憩所へと入っていく。待機中の隊員の中に、華穂もいた。

 

「あ、光姫隊長、深絵隊長お疲れ様です。にぃ達もお疲れー」

 

「お疲れ様、華穂もお昼休憩に入るところかしら?」

 

「はい。そちらも作戦の概要を伝えたって感じですね。お昼行きます?」

 

 敬礼を交えて、この後の予定について訊く。丁度昼に入ったところ、少し考えて賛成する光姫。

 

「そうね。色々と話すこともあるし」

 

「分かりました。じゃあ早速行きましょう!」

 

 華穂が加わり、一同は食堂へと向かった。

 

 

 

 

「じゃあ、にぃはCチーム……前線部隊の指揮担当で決定したんですね」

 

「そうだね。みんな最初はちょっと驚いちゃってたけど、作戦成功の為に必要だって示したら分かってくれたよ」

 

 カホとミエの会話を聞きながら、ジャンヌ達はランチを食していた。今日のランチはAがショウガ焼き、Bがエビフライのメインとなっている。ジャンヌはBのエビフライとサラダ、ごはん、そして味噌汁がセットになったものを食べていた。箸でエビフライを挟み、サクッとかじる。やはりこちらの昼食も手製込めて作られていると思う。

 昼食に舌鼓を打つ。口の中のエビフライを呑みこんでから話題となっている作戦についてジャンヌも言及する。

 

「必然的に私もCチームですね」

 

「そういえばまだ言ってなかったけど、ジャンヌにはCチームの通信管理もやってもらうわ。元の補助としてね」

 

「あら、そうなるんですね。情報量は多くなりますが、それくらいなら任せてください」

 

 いつもの仕事に+αされるのは初めて知った。もっともドラグディアにいた頃も似たような事をやっている。問題ないと返答した。

 既に昼食スペースでは多くのネスト所属の隊員達が昼食を取っている。そして聞こえてくる会話にも作戦についての話題がほとんどを占めていた。東響全域での作戦展開に驚く者、ついに次元覇院を追い出せると息を巻く者など多彩だ。それに惹かれるようにミツキもチーム配属の話をする。

 

「ここだけの話、チームの分け方なんだけどいつもの主力攻撃チーム1のSABER、攻撃チーム2のRIOT、基地防衛チームのGUARDIAN、を3つに分けてそれぞれに配置するわ」

 

「つまり、混成チームになるということですか?」

 

「そう言うことよ」

 

 ミツキの言ったRAIOT、GARDMANはMSオーダーズ本部オーダーズ・ネストの任務よって行動する主力チームだ。いくつかの小隊が集まって出来上がったチームであり、代表小隊の隊長がチームのトップとなる。SABERだけはミツキとミエの2人制を取っているのだが。

 チーム分けは気になる。まんべんなく、かつ問題が起きないようにどうチームを組ませるのか。だがミツキの口から語られたのは簡潔なものだけだった。

 

「それで華穂なんだけど、今回華穂には元のチームに参加してもらうわ」

 

「あら……」

 

「え……そうなんですか?」

 

 カホの顔が、鳩が豆鉄砲を喰らったように口を開いて訊き返す。予想していなかった配置にジャンヌ自身も知らずと声が漏れていた。意外だ。カホはミツキやミエと行動することが多いから、てっきりそうなると思っていたのだが。

 一方配置変更に関してミツキはそれが妥当である理由を話す。

 

「元が部隊長を務める予定の試作遊撃部隊「CROZE」、その運用試験としての活動もCチームには課せられている。そのための人員ね。元も知ってる隊員がいてくれた方がいいだろうから」

 

 カホを相談役としてチームへ編入させる。それがミツキの考えだった。確かに組むチームの中に知り合いがいれば些か指揮にも余裕が生まれる。パートナーとしてのジャンヌとは別で、同じ戦場で戦う仲間に安心できる相手がいるのは大事だと思う。ジャンヌはそれを肯定した。

 

「なるほど……確かに知り合いは多い方がいいですね」

 

「ジャンヌがいてくれるのもいいんだけど、やっぱり他の隊員と繋ぐ相手も考えるとしたら華穂以外に適任は居ないわ。もしかすると華穂にはそのままCROZEのメンバーに残ってもらうかもだけどね。そうなっても異存はないかしら?」

 

「はい。光姫さんも深絵さんも他のチームの指揮官としての任があるのでしたら仕方ないでしょうし。私もにぃと同じチームなら多分やって行けそうです」

 

 カホも頷いて見せる。双方了解したのを見てハジメがAランチのショウガ焼きを食しつつその決定に安心して見せた。

 

「それは良かった。昔なら色々ごねて、貶されて一緒には行かなかっただろうしな」

 

「むー、にぃがそう言うんならいかないけど?」

 

「元君、華穂ちゃん」

 

 2人の冗談めいたやり取りにミエが怒の感情を見せる。今にも叱りそうな勢いであったが、2人はすぐに掌を返すように、そのようなことはしないと約束する。

 

「やらないさ。昔はそうでも、今は違う」

 

「やったら深絵さん達に迷惑も掛かっちゃいますから。心配しないでください」

 

「もう……2人ともお茶目なんだから~」

 

 ため息交じりに笑って見せたミエ。段々と食事を終えていく。最後の一口を食べ終えたところでハジメが立ち上がる。

 

「さて、じゃあ午後からは新メンバーとのご対面、ってか?」

 

「そうなるわね。くれぐれも不和なんて起こさないでよ?」

 

 ミツキが釘をさす。それが作戦成功のカギの1つとなるのだ。気は抜けない。ジャンヌもそのサポートはすると答える。

 

「大丈夫です。私もアシストはしますから」

 

「うぅん……ジャンヌもしっかり常識のある行動を、ね」

 

 ミツキの不安げな顔に苦笑して、ジャンヌ達は昼食を終えた。

 

 

NEXT EPISODE

 




EPISODE18はここまでです。グリーフィアさんの予想大当たりでした(゚∀゚)

グリーフィア「やったぁ♪賞品は何かしら~」

無いよ(;´・ω・)

グリーフィア「それはがっかりねー」

ネイ「あ、あはは……ですが元さんもようやくここに来て隊長という役回りを拝命することになるわけですね」

マキナ・ドランディアでも士官学校に行くような話は出ていましたが、結局すべてが終わってからという話でしたからね。とはいえその大きな理由としては謎の機動兵器の相手というエースパイロットらしいものとの対決なのですが。

ネイ「MSではない何か、でしたね……」

グリーフィア「何かしらねぇ……やっぱりガンダムといえば、それって」

はーい口閉じましょうね(^ω^)

グリーフィア「残念ね~」

ネイ「もうほぼ答えになっている気が……」

さて、ではEPISODE19へ続きます。


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EPISODE19 東響掃討戦2

どうも、皆様。引き続きご覧の方は改めまして。作者の藤和木 士です。

レイ「アシスタントのレイだよ~」

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです。引き続きEPISODE19の投稿ですね」

その通り。前話にて明かされた東響掃討戦に向けて、元君も隊長として動いてきます。

レイ「初めての指揮官のお仕事、上手く行くのかな~」

ジャンヌ「戦闘勘はよい元さんですが、どうなのでしょう。今までを見ているとかなり不安が……」

では本編をどうぞ。


 

 

 昼食から20分後、元とジャンヌ、そして華穂はCチーム選抜メンバーの集合場所である第3大ブリーフィングルームに来ていた。昼に配布されたチーム分けを見て、各部隊から選出された隊員達は入ってきた元達の方に視線を向けた。

 

「全員集まっているな」

 

 誰も答えない。だが静かにしたということは、そう言うことだ。周囲を見渡し、それでも誰かがいないと報告が来ないのを見て第1次ブリーフィングの開始を告げた。

 

「じゃあ、東響掃討戦Cチーム第1次ブリーフィングを始める」

 

 そう言って、元はスターターを置き、上層部より受け取ったデータを表示させていく。作戦概要、部隊配置などだ。ジャンヌと華穂に資料配布を任せ、資料が行き届いたところで自己紹介に入る。

 

「今回のCチーム作戦指揮官を務める、黒和元だ。部隊指揮は初めてになるため、至らない点があるかもしれない。その時は指摘してくれて構わない。だけどその時は要点をしっかり言ってくれ。それでは早速今回の説明に入る」

 

 最初にスクリーンに表示されたのは作戦におけるチームの役割。それらを確認していく。

 

「まず本作戦の目的は東響都に潜伏する次元覇院の掃討だ。MSオーダーズ以外にも自衛軍東響防衛部隊が参加する。その中でも俺達Cチームは敵の東響戦線を支える一大拠点、住宅街の並ぶ地区を丸ごと要塞化したとされる「西東響ガーデンタウン」を攻略する」

 

 表示される地区情報、タウンの規模。口頭で更に住んでいる住人兼次元覇院使徒とそれ以外の住人についても説明を行う。

 

「住宅街はそうでない箇所との境目を橋で囲われている。都会から離れた別世界の実現のために、江渡(えど)時代の水路を復活させたと言われているがここが地下に埋まった基地との境目。物資搬入も見られる。住人に関しては既に無関係の住人を範囲外で説得、外へと逃がしている。作戦開始までには中にいる全員次元覇院の使徒達だけ、となる予定らしい」

 

 なるべく民間人を巻き込まないのを前提としている。これで敵に気取られるのは避けたいところだが、どうも敵は迎え撃つ算段であると付け加えた。

 

「敵もこの動きをどの程度かは知らないが察知している。だが敵は更なる戦力で迎え撃つようだ。待ち構えられている以上、こちらは警戒を厳にして攻略に望んでほしい。では続いて担当を発表する」

 

 担当と言っても、簡単に言えばどのエリアに入ってきた敵を迎撃するか、だ。小隊の属する機体の武器、そして隣接する小隊同士、カバーできる部分を作戦会議以前に作成させられていた。

 あまり柄ではなかったが、ちゃんと考えた。しっかりとそのポジションが想定した通り動いてくれるかどうかに掛かっている。

 

「追撃のC-1は第1、第2、第4小隊、背後の東響都内方面からの敵を迎え撃つC-2は第3と第6が担当。基地本体の攻略を担うC-3は俺を含めた第10を上空に配置して残りの第5、第7、第8、第9が担当する。また追撃のC-1グループは追撃までの間こちらの第10の護衛・サポートをしてもらう。ここまでで何か不明点があれば」

 

 そこで真っ先に手が上がったのは玄人さを醸し出す中年男性だ。元は頷いて発言を許可、男性は聞く。

 

「第2の隊長、間島(まじま)だ。追撃というが、本作戦の趣旨はこの東響からの追い出しなんだよな?なら追撃は不適切なんじゃないか」

 

 追撃とは逃げる相手に更に手を加えるということ。説明と言葉の意味合いが違うのではと指摘をもらった。それは元も理解しており、答える。

 

「そうだな。とはいえ追撃部隊はその追い出しが基本だ。逃げていく途中で人質を取られても困るから、その妨害にあたるのも任務に入っている」

 

「それならそれで防衛部隊ってすりゃあいいんじゃないか?あんたを守るのも任務に入っているし、その方が」

 

 それはもっともだ。元も話を聞いた時に指摘した。だがそうせざるを得ない状況が裏にある。元は明確にはせず、密にそれを示した。

 

「それは同意見だ。だが上がそうすると決めたから、何も言えない。全く、現場の都合を考えちゃくれない。俺も司令も困ってるよ」

 

「大変だね、上と相手をする方は……って司令が?」

 

「そっすね。その上の人の命令ですよ」

 

 それを聞いて口々に呟く周囲。そう、これは黎人達MSオーダーズの上の人、ではない。もっと上の意見が影響していた。

 追及されないように、結論だけを素早く押し込む。

 

「まぁ最終的に、民間人への被害を出さずに敵を外に追い出せればいい。執拗に迫ってくるなら遠慮なく落とせ。あと追撃部隊に限らないが、基地の偵察ドローンが状況の撮影を行う。基本的に作戦状況の記録だが、不審な動きがあれば2機ほどが隊長機からコントロールして記録させられる。上手く使ってくれ」

 

「はぁ、分かったよ。これはまた大変だ」

 

 掌を上にお手上げと言ったように首を振る。はっきりと言わずにだが、理解はしてもらえたようだ。他の者達もこれ以上の追及はしなかった。

 一方で別の質問が飛んでくる。今度は女性、真面目な表情で所属まできっちりと名乗る。

 

「すみません。第3部隊、基地防衛チームGUARDIAN第2部隊隊長の羽鳥(はとり)です。基地攻略に関してですが、戦力はどれほどなのですか?また、我々だけで足りる概算ですか?」

 

「戦力か……一応、Cチームは全部で120機のMSがある。対して敵の推定MS数は……500だ」

 

「無茶苦茶です!それではこちらが飲み込まれます」

 

 無茶苦茶、間違いないだろう。動揺が広がる。だがそれは決して戦う数とイコールではない。言葉の綾であるのを弁明する。

 

「まぁ普通はそうだな。けどこれはあくまで「基地にあるMSの数」だ。「実稼働数」じゃない」

 

「実稼働……数?」

 

「基地に勤める全員が全員、MSを運用できると思うか?」

 

 組織と言うものは構成員に役割を与える者である。何でもできる人員が欲しいと思うのが組織のトップに立つ者が思う所だが、実際は何らかの役割を果たせる人間を別々に採用するのがほとんどだ。今なおこの国には何でもできる人間を求め、過酷な労働を強いる所謂ブラック企業が存在するが、それはむしろ非効率である。数を多く必要とする新興宗教ならばやってしまえば更に顕著に出かねない。いや、むしろもう出ているからこそあのような奴らばかりなのかもしれないが。

 ともあれ基地にいる全員が、あるいは基地にあるMSすべてが丸々戦闘員になるとは限らない。特にこの基地は東響都内に潜伏する次元覇院へのMS供給所にもなっている。稼働できる数以上のMSとそのセットバックルをため込んでいても、動ける数はそれ以下。それだけでも数は少なくなる。更にもう1つ。作戦を進める上で考えられた案があった。

 

「それにまともに1機ずつ戦う気は毛頭ない」

 

「それは……」

 

 スライドを操作する。2枚ほど先に送ったところで止める。そこには試作型の大型ミサイルが映し出される。その正体を告げる。

 

「試作型の対地下要塞攻略用大型ミサイル「アースシェイカー」。これを水路から地下へと打ち込む。こいつは一定距離進むと爆発する。これで基地直下の地盤を弱くして、基地を崩壊させるのさ」

 

「つまり……基地の人間やMSを生き埋めにすると?」

 

 その指摘にそうだと頷く。もともとはガスを打ち込んでMS装依前に制圧するという作戦だったが、それではMSに装依されたら意味がないと打診した結果、生まれた案だ。自衛軍から借りるものの、借りる先の自衛軍からも試験運用を兼ねてと二つ返事で許可された。

 口々に騒いでいた隊員達も騒ぎを小さくしていく。質問をした羽鳥はやや不服そうだったが、諦めたのか認める。

 

「分かりました。ですが周囲の地域には作戦決行時の余波がなかったことの確認などはしていただけるのですよね?」

 

「そのはずだな。自衛軍からも釘は刺されているらしいから」

 

「ならいいです。私からは以上です」

 

 席に座り直す羽鳥。以降は誰も手を上げなかった。確認して元は備考について話す。

 

「では最後に備考となるが、民間人の被害はゼロを目指せ。周囲の街にはカモフラージュも兼ねて本日より夜間の出入り禁止を徹底するが、それでも外に出ないという保証はない。火器の使用には十分気を付けるように。分かったな」

 

『了解』

 

「じゃあ今日はここで解散!戻ったら再度当日使用するMSと武装チェックを提出な」

 

 そう言って第1次会議は終了する。各々部隊に戻っていく中、ジャンヌと華穂が来る。

 

「第1次会議お疲れ様ですっ」

 

「あぁ、ありがとう」

 

「にぃも大変だねぇ。色々伝えなきゃならないのに制限があるって」

 

 先程の発言について華穂が苦労を察してくる。隊員達に下手な危険を与えるわけにはいかない。それでもはっきりと事実は伝えたいからこそ、あのようにぼかした言い方しか出来ないのは正直辛い。このあたりの事情はドラグディア、アレク隊長などはどう思っていたのか。

 だからと言って今帰還して訊くなんてことは出来ない。自分で何とかする。元は頷いて華穂にも釘をさしておく。

 

「気遣いどうも。けどお前も下手なことを言うなよ?どうなっても俺はお前自身の責任まで取りきれるか分からないんだから」

 

「分かってる。自重するし、にぃに余計な迷惑はかけないよ。ちょっかいは掛けるけど」

 

「ちょっかいもやめろ」

 

 舌を出す妹を軽く小突く。調子づかせると妹は際限がない。この後も何度か面白がる妹に手を焼かされるのであった。

 基地攻略まで、残り9日。

 

 

 

 

 東響掃討戦の作戦発動に向けた動きは着々と進められていた。基地上層部の各方面への通達、作戦参加部隊の打ち合わせ、そして整備部のMSチェック……。MSオーダーズのあらゆる部署が通常業務と合わせて動いていた。

 光姫もまた例外ではない。特に彼女はパイロットでオーダーズ主要メンバー。自衛軍側との連携や自らが指揮するAチームの配備状況確認など、やることが多い。幸いなのは基地方面を防衛するだけの為、護ることを第一に考えればいいことだろうか。しかしそれでも全体の動きを見て、必要によっては指示しなければならない。おそらくMSオーダーズ始まって以来の大作戦だろう。

 失敗は許されない。ここで東響の次元覇院は全て駆逐する。もう光巴が怖い目に遭わない、平和な街で元気よく暮らせるように。その為に今自分が出来ることを精一杯やる。それが親の役目だ。そんなことを考えながら、彼女は整備ハンガーまで来ていた。どうやらガンンダム3機種の追加兵装が完成したらしい。その確認に来たのだ。整備主任の真希がこちらに手を振る。

 

「あ、光姫さんいらっしゃーい。もう出来上がってますよ」

 

「うん。みんなの分、完成させてくれてありがとう」

 

「それが私達、技術者の仕事です。それに支部からこっちに来てくれた人達が優秀でしたから」

 

 そう言って彼女は仲間の技術者に目を向ける。その中にいた黒髪と茶髪の、眼鏡を掛けた2人組が頭を下げる。

光姫もまた同じように頭を下げた。彼らには頭が上がらない。元のことを知り、わざわざこちらに来てくれたのだ。彼らを見て、元も驚くに違いない。そんな彼らを傍らに据え、真希が順にガンダムの装備について紹介する。

 

「まずはこちら、光姫さんのロートケーニギンの追加兵装、多目的ランチャー「紋章の盾(ヴァッペン・シルト)です」

 

 赤色を主体に、ファンタジックな文様を表面に施した大型の盾。だがその裏には大砲門が接続されており、腕をその後部から入れて保持する形が見て取れた。その兵装の解説を茶髪の男性が行う。

 

「ヴァッペン・シルトは大型シールドを多構造式冷却フィン搭載の冷却器としても扱えるように改造した、大出力ビーム砲装備のマルチウエポンプラットフォームです。事前に光姫さんから要求されていたロートケーニギンの火力増加と非常時の主力格闘兵装を両立させるため、ビーム砲の冷却機能をシールドに付与。更に非常時の格闘兵装を基部に取り入れた多機能兵装に仕上がりました」

 

 自身の為に用意された、ロートケーニギンの火力を底上げするための兵装だ。盾とセットにしたそれはまさしく光姫が求めていたものに間違いない。光姫もうんうんと頷き、満足を示す。

 

「うん、これで肩のドローンに頼らない長距離射撃が出来る。元々のビームキャノンよりも効率よく運用できそう」

 

「あのビームキャノンもシュバルトゼロの技術で改良はしているんだけどね。やっぱり構造から見直さないとあれ以上の性能強化は無理だね」

 

 既にあるビームキャノン・ロートはエディットアームの恩恵でフレキシブルな可動域を実現するが、いかんせん出力が低い。加えて連射間隔もやや悪かったため、使いづらかった。しかしこの兵装のおかげでそれもきっと解消されるだろう。

 続いて紺に塗装されたコンテナの前に案内される。黒髪の男性が今度は説明を行う。

 

「続いて、蒼梨深絵さんのブラウジーベンガンダム専用装備、ライフルコンテナ「バルミザン」です。本来深絵さんからは実弾・ビーム双方を放てるスナイパーライフルが要望書に出さていましたが、今現在の技術では東響掃討戦に間に合わない為、このような形になってしまいました。ご容赦を」

 

「あの子は本当、無茶が多いわね。ブラウも本当なら高機動遊撃型だったのを狙撃型にして、それでもほぼ遊撃と同じことやってるんだから」

 

「深絵ちゃんは本当に規格外だよ。でもなるべく要望に沿えるセッティングはしたよ」

 

「えぇ。こちらです」

 

 男性が端末を操作する。するとコンテナが動く。内側と思われる部分が開閉する。その中には名前通り、深絵が普段使用するスナイパーライフルがそれぞれ格納している。内部はいくつものメカニックが内包されており、順に説明を受ける。

 

「ライフルはこれまで通りのスナイパーライフルを2丁。アイスボックス仕様ですが、コンテナ内部にもアイスボックスを内蔵します。またライフル格納時にはアイスボックス交換を自動で行い、連続狙撃をサポート。また下部ミサイルランチャーで実弾攻撃を実現しています」

 

「ミサイルか……これだけ多いと、機動力は落ちるわよね?」

 

「それに関してはマイクロスラスターで可能な限り相殺しています。ですが、多少の低下は目をつぶるしかないです。仮に高機動戦闘に突入する際は、任意で切り離しは可能ですので」

 

 これまでの売りだった機動性は低下するが、そもそもの話深絵はスナイパーだ。無理に動かされることがあれば狙撃どころの話ではない為、さほど問題ではないだろう。了解を伝える。

 

「分かったわ。深絵にもそれは伝えておいて」

 

「はい。無論です」

 

「じゃあ、最後は私が、元君の追加兵装について説明しちゃおうかな?」

 

 ブラウジーベンの追加兵装の説明を終えたところで、満を持して真希が最後の説明に入る。隣へ移動すると先程までとは明らかにサイズの違う、何かの端のような小さい爪に似たパーツが鎮座されていた。

 

「これがシュバルトゼロの追加兵装」

 

「追加スカートユニット「フェザー・ブレイズ」。元々シュバルトゼロガンダムに装備されている腰部ホルダーバインダーのスラスター部に追加で装備する兵装。イグナイターが使うDNフェザーショットを私たちなりにアレンジして作ったんだ」

 

 そう言ってイメージ映像を見せられる。映像ではノーマルのシュバルトゼロがこのユニットから光線をいくつも放ち、多数の敵を撃破しているのが見える。データでは更に機動性のパラメータが表示されており、機動性にも寄与しているのが分かる。

 

「ホーミングレーザーによるマルチロック射撃。機動性も5パーセント向上。もとがハイスペックだから、下手にはいじれなかったけど、余計なものを付け足すよりはいいと思う。元君を招いての変容テストでもイグナイターのフェザーショットが強化されているのが確認できたしね」

 

「最小限の武装増加でイグナイターの武装まで強化、なら十分成功って言えるわね」

 

 完成度の度合いに納得する。東響中の次元覇院をすべて駆逐する為に、持てる戦力は投入する。東響の戦いを終わらせ、次なるステージに行くために。

 

「じゃあ、作戦当日までにパイロットとの最終チェック、終わらせてね。私もその時に」

 

「了解でーす。あ、2人も今から休憩に上がっていいよ」

 

「分かりました。ちょうどいいですね」

 

「ありがとうございます。光姫さん、もう今からで会いに行っても?」

 

 休憩を頂いた2人は光姫に訊く。2人の会いに行く相手は無論彼のことだろう。長年の友人となれば彼もまた会いたいに違いない。光姫は二つ返事で許可する。

 

「もちろん。あっちも休憩スペースで休んでいる頃だろうし」

 

「2人のおかげで準備がこれだけ早く済んだんだから、久しぶりの話に花を咲かせてきてね~」

 

 真希の声を背に受け、2人を連れて整備ハンガーを後にした。元の驚く顔が目に浮かぶ。5年前あの場にいた関係者の2人に、元は何というのだろうか。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。

レイ「地下を落とすんだ……なかなか豪快っていうか」

ジャンヌ「少数で攻めるなら、地形を利用するというのは必然ですね。というかなぜ次元覇院はそんな形で基地を」

何で作ったのか(;´・ω・)それは次元覇院にしか分かりません。大方カモフラージュも兼ねてだったんでしょうね。あとは周囲の民間人を盾にする狙いもあります。

レイ「次元覇院(作者)」

中の人発言はやめましょう(^ω^)そんなに過激派思想じゃないですから。

ジャンヌ「作戦に合わせて新装備も登場するみたいですね。これは黒の館DNをまた挟みそうです?」

そうだね。紹介する人も多いし、一度挟む予定です。今回登場した整備員の男性達もそれなりに重要人物ではあるので紹介します。
では今回はここまでということで。

レイ「次回もよろしくね~」


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EPISODE20 東響掃討戦3

どうも、皆様。コロナウイルスによるデマの影響で怒り心頭の藤和木 士です。トイレットペーパーないってどういうこっちゃゴルァ(# ゚Д゚)

ネイ「落ち着いてくださいみっともない。アシスタントのネイです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよ~。まぁしょっちゅうお腹下してる作者君には心配な話よね~」

これは転売滅○迅雷.n○tに接続しなければ……(#^ω^)さてではEPISODE20を投稿してまいります。今回は1話だけだよ。

ネイ「結局、無理に2話ずつ投稿するより速いペースで1話1話出していく方がいいってなりましたね」

グリーフィア「それでも余裕は生まれつつあるみたいねぇ。で今回はどんな話だっけ?」

光姫さんと合流したとある2人が元君と会う話ですね。正しくは再会ですが。加えてもう1人先に会うようで……?それでは本編をどうぞ。


 

 

 昼までの仕事を片付けて、休憩に入った元とジャンヌ。仕事の途中で休憩時間に少し街に出てリフレッシュを、とジャンヌに提案したもののその直後の連絡でそれはお流れとなってしまった。

 華穂と光姫、双方が同じ案件で元を呼び出したからだ。会わせたい人がいる、と言われてしまい、同じ休憩スペースで待っていると言われたからには行かなければならない。渋々、そちらに向かうことにした。付いてくるジャンヌに申し訳ないと謝罪した。

 

「ごめん、なんかうちの妹とかのせいで」

 

「別に構いませんよ。何やら元のお知り合いの方がお見えになるんでしょう?」

 

「光姫の方はな。華穂の方も、紹介したい人とか言ってた。まぁ話し方からして結婚相手だとかそんな繊細な人物ではないとは思うけど……」

 

 妹もいい年ではあるけれど、結婚にはまだ早い。そんな親のような感想を持ちつつもその妹が指定した休憩所に到着する。すると席に座る華穂ともう1人の姿が。

 

「あ、にぃこっちー」

 

 手を振る華穂と共に座るのは同じ年くらいの女性。どうやら結婚相手という線は完全に消えたと言っていいだろう。そっち方面だった場合は完全に当てが外れるが、少なくとも妹はそんな例に当てはまらないはず。とはいえその女性もジャンヌや華穂に劣らない乙女だと遠目で認識できる。

 やってきてまず呼び出した華穂へ文句を呟く。

 

「来てやったぞ?まったく、こっちは街へ行こうとしていたのに」

 

「ごめんごめん。前話してたっていう私の親友が今日ようやくこっちに着任したから」

 

「かほちーに親友って言われると何だか恥ずかしいな。私、全然そんな誇れるほどの友達じゃないっていうのに」

 

「またそんなこと言ってー。にぃだって生きてたんだし、それにゆめのんが自ら進んであれをやったわけじゃない。誰も責めないよ」

 

「で、でもさ……」

 

 2人のやり取りでなんとなくこの場に呼ばれた理由が分かる。妹がどれだけ楽しみにしていたのか、電話口で話す妹の姿が浮かんだ。

 善意の押し付け合いに終止符を打つべく、話に加わる。

 

「やれやれ……華穂がどうこう言う問題じゃないだろ」

 

「ちょっ!にぃ!!」

 

「どうも、こうして面と向かっては10年以上前になるのかな。黒和元、華穂がこの5年、大変お世話になったようだ、鈴川……夢乃さん?」

 

 名を呼ぶとその人物はかしこまって身だしなみを整えてから挨拶に返す。

 

「そ、そんな、恐縮です!あんな事故に遭わせてしまった自分には、華穂さんのお役にちゃんと立てたかどうか……」

 

 感謝を伝えると、恐縮そうに頭を下げられる。やはり間違いない。彼女が光姫の妹鈴川夢乃だ。おぼろげながら確かに5年前の面影があるのが分かる。話し方などは5年前と違うようだが、緊張しているせいだろう。

 夢乃だと分かった兄に対し、華穂は知っていたのかと問う。

 

「え、にぃ知ってたの?」

 

「光姫から彼女が近いうちに来るとは聞いていたからな。それに5年前の時、パイロットのコックピット映像で顔は見てたからよく見れば分かるさ」

 

 そう話して彼女の着任を祝う。

 

「ここに来てまだ1か月の俺が言うのもなんだけど、来てくれてありがとう。世界最初のモバイルスーツ装依者と会えて光栄だよ」

 

「そ、そんな!その世界初のモバイルスーツパイロットで、私は取り返しのつかないことを」

 

 茶化した冗談だったのだが、彼女は大分事件の事を重く受け止めているようで再び自分が悪いと言及する。そのやり取りが不服と思ったのか、華穂が夢乃の事を庇う。

 

「ちょっとにぃ?あんまりからかうのも止めてあげなよね?ゆめのんにぃのことすっごく怖がってるんだから!」

 

「か、かほちーそんなこと思ってないって!」

 

「悪い、そんなつもりはなかったんだけどな。だけど、それなら一つ言っておく。あんまり謝られ過ぎてもこっちが困るだけだ」

 

 謝罪を受けるのはいいが、それにも限度がある。ずっとそれを気負っていて本番の戦闘で動きが鈍れば冗談ではない。光姫にも言ったそれを夢乃にも言った。

 

「う……それは、その……で、でも」

 

「でも?」

 

 言いづらそうに反論しようとする夢乃に訊き返す。

 

「あ……いえ、その、すみません」

 

「んー……なんていうか、謝られて終わるっていうのもあれだな。ここは感謝を言わないか?」

 

 このままではお互い辛い。そう思って元は提案をした。こうしてまた出会えたことへの感謝。感謝の言葉ならお互い気持ちよく終われるだろう。

 

「感謝、ですか。分かりました。ありがとう、ございます?」

 

「そうそう。こうして顔を合わせて、作戦協力してくれること感謝するよ。ありがとう」

 

 互いに礼を言う。完全にわだかまりが消えたかどうかは少し分からないが、それでも言って損はないはずだ。

 わだかまりが消えたのを見てジャンヌも喜ぶ。

 

「お互い、言うべきことは言えたみたいですね」

 

「まぁ私としては、本当にゆめのんが納得してくれて本当に良かったよ」

 

「かほちー……。そういえば、そちらの方は?」

 

 夢乃がジャンヌについて訊いてくる。ジャンヌは顔を向けて紹介をする。

 

「申し遅れました。私はジャンヌ・ファーフニル。ハジメのMS、シュバルトゼロガンダムのサブパイロット、パートナーです」

 

「パートナー……あぁ、光姫お姉ちゃんが言ってた、MS所持法の例外の。よろしくお願いします」

 

 夢乃の発言からしてやはりその面で自分達は注目を集めているようだ。MSオーダーズ、自衛軍双方で元のガンダムのエンゲージシステムを基に二人乗り前提のMSを開発中との話もある。二人乗れば強さも二倍、の考え方は分かるがそれは同時に諸刃の剣。相性が良くなければどちらかに負担が掛かっていく。エンゲージシステムを運用し始めたうちは、元達もシステム的な相性が良くても息を合わせるのに苦労した。

 ともあれ、華穂の用件は済んだ。華穂の用件はこの紹介なのだろうし。まさか光姫も同じ人物の紹介というのはないと思いたい。すると丁度そのタイミングで光姫がやってきた。

 

「遅くなったわ。って、夢乃もう来てたのね」

 

「あ、お姉ちゃん」

 

 こうしてみると姉妹似ていないようで似ている面影がある。光姫はストレート、夢乃はツーサイドに髪型をセットしていて雰囲気も違う。しかし目元などはそっくりだ。ジャンヌもそれを指摘する。

 

「お疲れ様ですミツキさん。お二方とも雰囲気は違いますが、よく見ると似ていらっしゃいますね」

 

「まぁ、妹だからね。個性もあるし」

 

「昔はお姉ちゃんみたいになりたいって思ってたけど、今は別にそう言うわけじゃないですからね。やっぱり好みも生まれますし」

 

 ジャンヌも三姉妹の真ん中。元も3人が揃った時には姉妹だということをつくづく知らされる。性格もまるで違う。もっとも次女と三女は割と似ている時期もあったのだが。

 姉妹話も良かったが、元が気になったのは光姫が連れ立った2人の男性。その彼らについて尋ねた。

 

「そういえば、そっちの2人は?光姫が呼び出したのは彼らが関係しているっぽいけど」

 

「えぇ、紹介、と言ってもあなたなら簡単に分かると思っていたんだけど。5年もあると分からないかしら」

 

 5年という単語と聞くと元の頭の中で思いつくのはあの事件だけだ。男性達は声を発する。

 

「久しぶりだ、元。髪は大分変わってるけど他は昔のままか」

 

「うん、5年前の、あのパーティーの時と変わらないや。元氏」

 

 茶髪の男性の呼び方でハッとする。すぐさま2人の名前を呼んだ。

 

「もしかして……平氏と海氏!?」

 

 忘れもしない。5年前共に成人式、その後のパーティーに参加し、モバイルスーツ登場を観覧していた元の友人。平氏こと星北平次と海氏こと佐倉海斗の2人だ。2人も頷く。

 

「そう。その平氏だ」

 

「ホント、懐かしい呼び方だよね。道治が考えたそのあだ名」

 

「あぁ、けど、どうして2人がここに」

 

 2人の顔を見て心が熱くなる。学生時代の友人とまた会えたのが予想外で、普段と調子が違うことも気にしない。なぜここにいるのかの問いに2人を連れてきた光姫が答える。

 

「2人もまたオーダーズの一員なのよ。千馬の方にいたんだけど東響掃討戦に合わせてこっちに来てもらったの」

 

「けどそれ以前からガンダムの武装開発には携わっていたんだけどな。今度元のガンダムに装備される武装は、俺が考えたんだ」

 

「そうか。平氏、いや、平次が考案してくれた武装なら使うのが楽しみだ」

 

 平次に対し発言する。平次はロボット系列のモデラーだった。独創的な武装を作り出す彼の発想には驚かされた。それが実際に使われるのだとしたら、楽しみで仕方がない。

 

「はは、そう言われると緊張するよ。それに今回は時間がなかったから、元の方は基本性能の強化がメイン。全く新しいのはロートとブラウだけさ」

 

「その機体達の兵装ももとから考えられていたけど実現できなかった、あるいは投入が遅れていた兵装ばっかりだからね。調整とか苦労したよ」

 

「そう言うなって。海斗のおかげで完成までこぎつけたんだから」

 

 謙遜を口にしながらも仕上げたと言う二人。光姫もそれに太鼓判を押す。

 

「えぇ、二人とも確実な仕事をやってくれたわ。後は作戦を実行するだけ!」

 

「ゆめのん来てくれたんだから、勝つに決まってますよ!」

 

「かほちー早すぎるよ……」

 

 既に勝った気でいる妹、その妹にツッコミを入れる夢乃。早いのは同感だが勝つと思うことは重要だ。そこで光姫は午後の終業後の予定について通達する。

 

「ってなわけで、ちょっと気が早いけど三枝25歳組は今日再会を祝した親睦会を開くわ。構わないかしら?」

 

 唐突に告げられた親睦会。流石に驚く。こんな状況でやらなくともと海斗からも指摘される。

 

「い、いや別に今の忙しい時期にやらなくても……」

 

「って言っても準備はほぼ完了して後は当日の運搬とシミュレーターでの計算くらいしかやることないのよ。それに縁起悪いかもしれないけど、誰が死ぬか、分からないから今回の作戦は」

 

 光姫の言葉に空気が重くなる。今回の作戦は万全を期している。しかし何分大きな作戦、不測の事態が起きないこともない。もちろんそれをさせない配置を行っている。それでももしかしたらなんて事態が起きない保証はない。

 今やろうと言うのだ。無事でいる今の内に。縁起が悪くとも生きている内にしか話せない。皮肉にもそれが元の件で思い知らされたから。言わずとも分かる。だからこそ本人の元が音頭を取る。

 

「分かった。やろうぜ。5年前の続きだ」

 

「元……うん、やろう」

 

「だな。深絵さんには伝えてるのか?」

 

「これからね。料理は食堂の人に頼んで作ってもらうわ。戦いの前祝いと行きましょう」

 

 満場一致で親睦会兼前祝いを決定した元達。一方でその話を聞いていた華穂達も動く。

 

「あ、じゃあ私達は女子会しよ!ジャンヌちゃんも一緒で!」

 

「えっ、女子会、ですか?」

 

「かほちーアグレッシブだね。でも久々にこうして会えたから、やるのもいいね。是非ジャンヌさんも」

 

 あちらはあちらで女子会をする流れだ。元もそれならそれでジャンヌの為だと思いそれを許可した。

 

「俺としては構わないぜ。ジャンヌにこの世界の知らないこと、教えてやってくれ」

 

「元……えぇ、ぜひお願いします」

 

 戸惑いつつもジャンヌは華穂に参加をお願いする。華穂もまた二つ返事でOKした。

 

「了解!まぁにぃが許可くれなくてもいない間に連れ出すけどね~♪」

 

「お前それは違う。まぁ羽目外し過ぎるなよ?」

 

「大丈夫です。かほちーの事はちゃんと見ておきますので」

 

「あぁ、頼む」

 

 監視役を申し出てくれた夢乃を見て本当によくできた子だと感じる。しっかりと妹の舵をこの5年間取ってくれたこと、感謝せずにはいられない。彼女なら妹も安心して任せられる、と娘の恋人を見る親のような感想を抱く。

 その一方でジャンヌとのやり取りを見ていた海斗達が確認を取ってくる。

 

「話では聞いていたけど、ジャンヌさん?本当にお互いを尊重しているんだね」

 

「本当にパートナーだよなぁ。なんだ、彼女か?」

 

 茶化してくる平次。やれやれと思いつつも彼らに苦笑しながらも答える。

 

「まぁ、そんなところだ」

 

「マジか……」

 

「へぇ~。それはお熱いことで。道治が聞いたら「この幸せ者めっ!」って言われてただろうなぁ」

 

 昔と変わらない会話。4人が再び集まるのも遠い話ではないかもしれない。道治が生きていればの話だが。道治の安否確認は後にして早速告げる。

 

「じゃあ、お互い今日の夜までにやること終わらせますか」

 

「ですねっ」

 

 ジャンヌの返答と他多数の頷きを確認したところで、休憩時間終了のチャイムが鳴り、それぞれの業務へと戻っていくのであった。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。本当にね、デマとかくだらない発言で世界引っ掻きまわすのやめて頂きたいね(;´・ω・)

ネイ「まだ怒ってる……。でも元さんの友人2人が、MSオーダーズ側だと何だか心強いですね」

グリーフィア「その2人はプロローグの時点でもしかしたらMSに携わるかもってよく見ていたものね。それがこうして協力するんだから、驚きよ。それよりもう1人、どうしたの」

もう1人は……どうしたんだろうね(゚∀゚)

ネイ「悪い顔してます。まさか敵とか……」

グリーフィア「十分あり得るわねぇ。事情通が閉鎖的な側に立っていたとしたらショックが大きすぎるわぁ」

それはまだまだ先の話だよ。あとちなみになんだけど夢乃ちゃんのプロフィール作成時、少し前まで華穂ちゃんのプロフィール間違っていました(^ω^)年齢1歳下がってます。

グリーフィア「おい作者君」

ネイ「作者さん算数できます?」

文系だけど算数は出来るよっ!?裏では本当によく数字関連間違うからなぁ……反省しても何でかなぁ。

グリーフィア「文系でも文章が稚拙な件は?」

もうやめてくれ……( ;∀;)

ネイ「あ、あはは」

グリーフィア「じゃあ作者君のボロが出る前に今回はここまでね~。次回もよろしく~っ」


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EPISODE21 東響掃討戦4

どうも皆様。トイレットペーパー不足と共にマスク不足が深刻です。作者の藤和木 士です。

レイ「アシスタントのレイだよー」

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです」

EPISODE21公開です。

レイ「短いね。いつもより紹介が」

まあ前話からの続きだと分かっていますからね。親睦会というか、再会祝いと言いますか。

ジャンヌ「並行して行われている女子会もどんな話をしているのか気になりますね」

さぁ久々の再会で、彼らは何を語らうのか?それでは本編へ。


 

 

「というわけで、再会を祝して乾杯!」

 

『かんぱーい!』

 

 午後の仕事も終わったこの日、予定通り7時から25歳組(1人体感年齢22歳)による親睦会が開かれた。あの時と同じく光姫が先導し、それに深絵、平次が続く。元と海斗も彼らほどではないが乾杯の声を上げた。

 

「乾杯。やれやれ、テンション高いな」

 

「とか言ってるけど元も元々はやろうって言って賛成した1人だと思うけど」

 

「賛成するのと思いっきり楽しむのは別問題なんでね」

 

 ツッコミを入れた海斗にそう切り返す。光姫と深絵が食堂の人が用意してくれた料理を絶賛する。

 

「ほら、そこの盛り上がりのない2人!食堂の人達がせっかく用意してくれたんだから食べる!」

 

「ん~鳥の軟骨のから揚げ美味しいよ~。ビールと合う!」

 

「まだ日にちがあるとはいえ遠慮なしにアルコール呑むのはちょっと……な」

 

 コップにはノンアルを入れてある。男性組は全員ノンアルだ。女性陣は遠慮なくアルコール入りの飲み物を飲んでいる。何か言われかねない状況にため息しか出ない。

 だがだからと言って料理を楽しまないわけではない。元もつまみの1つとして用意されたローストビーフを頂く。

 

「……あ、旨いな、これ」

 

「あら、それ深絵が作った奴よ」

 

「み、光姫ちゃん!」

 

 光姫の発言を慌てて止めようとする深絵。だがそんな恥じらい必要ない程に味がしみこみ柔らかく、ソースも程よい甘辛さを感じさせる。狼狽える深絵に訊く。

 

「本当に、深絵が?」

 

「え、えーと……うん。せっかくだし何か作ろうかなって。おつまみだとこれかなって思って」

 

 顔を赤らめ、笑いかける深絵。意外な才能だ。昔は絵が上手いことしか知らなかった。もし柚羽が生きていれば驚いたのだろうか。今はもういない柚羽の分まで絶賛する。

 

「そっか。うん、すごく美味しいよ」

 

「ありがとうっ。けど、ジャンヌちゃんがいないからって羽目外し過ぎはダメだよ~?」

 

 調子を取り戻してこちらをからかってくる。それに光姫と平次の2人が悪乗りしてくる。

 

「あらあら、昔を思い出すわねぇ」

 

「形を変えて、今もまた三角関係って笑えるね」

 

「別にそんな気はないし、聞かれてたらジャンヌにはっ倒される。彼女の嫉妬は筋金入りだからな」

 

「あはは、私もそんなつもりはないよ~。それよりもっと楽しんでいこう♪」

 

 言われてそうだなと思い、歓談を愉しむ。1時間、2時間と、5年前のあの時の分まで騒いでいった。

 

 

 

 

 親睦会をキリのいいところで終え、片付けに入った光姫達。ゴミ出しや貸し出された食器の返却などを男性陣に任せたのち、光姫と深絵の2人は一足先に一服する。酔い覚ましの水をグラスから飲み、感想を口にする。

 

「思ったより楽しめたわね」

 

「だね~。やっぱり元君がいるだけで変わるもんだねっ」

 

「……フッ、そうね」

 

 深絵の言う通りだ。今までの活動は元を死なせてしまったと思ったことに起因していた。そのせいで私達は心のどこかで元の死を抱えて生きてきていた。まるであいつが幼馴染の死に影響されていたように。

 だけど、私達はその彼の生存で苦しみから解放された。普通ならあり得ないが、奇跡が起こった。それだけではなく彼は今の混迷を極めるこの世界を打ち破る力を携えてきた。その第1歩が今回の東響掃討戦だ。失敗は許されない。

 2人の視線は空へと注がれる。月を見て深絵は提案を行う。

 

「……ねぇ、今回の作戦だけど」

 

「うん?どうかした?」

 

 聞き返すと深絵は真剣な声音で言った。

 

「この作戦を最後にして、光姫ちゃんはMSパイロットを引退しない?」

 

 これまでにも何度も言われた勧め。戦いから離れる選択だった。これまで頑なに光姫が否定した道。しかし光姫は首を縦に振った。

 

「そうね……そうしよう、かな」

 

「やっぱり」

 

「気付いてたんだ」

 

「うん。作戦立案時の時点でね。でも確信に変わったのは今回の部隊メンバー最終発表を見て」

 

 部隊メンバー。それはおそらく華穂と夢乃を指している。華穂はCチーム、そして自身の妹夢乃は深絵の指揮するBチーム配属だ。深絵は自らの考えを話す。

 

「いつもなら前線で指揮する光姫ちゃんが後方で防衛に徹するなんて、あんまり見なかったからね。元君の機体が前衛向きだとしても、光姫ちゃんの事だからCチームの隊長を自ら務めて、元君には小隊長枠で動いてもらうのかと思ったらいきなり指揮官になっちゃったし。それにいくら後方指揮とはいえ、華穂ちゃんも夢乃ちゃんも連れ添わないなんておかしかったから」

 

「そこまで気づかれてちゃ、私もダメね。私が戦闘に極力関わらない状態でのみんなの力を試そうとしたのに。深絵はやっぱりSABERの総指揮官ね」

 

 肩を落とし、自らの失態を嗤う。考えていたことをほぼすべて言い当てられていた。隠し事はもう少し上手いと思っていただけに少しショックだ。

 

「なにそれー。でも、そうだね。光姫ちゃんと一緒に戦って、5年目に入ろうとしている。それだけ一緒にいたから分かったのかも」

 

 言われて気付く。元が事故に巻き込まれて意気消沈してしまっていた深絵。自らのせいだと責める彼女にあの時、光姫から声を掛けた。責任はパーティーにお披露目を提案した自分にある、と。共に参加したMSオーダーズでエースと評されるまでの訓練期間で、2人で未完成なMSシステムを作る手伝いをしてきた。

 比較的相性の良かった夢乃や天性の武の才能を持つ新堂さん、2人に追いつくまで必死だった。頑張った。特に自分は途中出産を控える身で、その間は知識面でカバーした。消えてしまった友人を弔うために、そして光巴が生まれてからは娘を守るために、戦い続けてきた。

 

「そっか。そうよね。あなたと一緒に戦ってきて、この街の平和を守ってきた。ううん、守ろうと戦ってきた。明日を東響の人達が迎えられるように、機械の翼を背負ってきた」

 

 けれども今がその羽を畳むときなのかもしれないと思った。1か月前のあの時、光巴誘拐事件の時、夜空を翔けた蒼い流星の軌跡がそう感じさせた。どれだけの絶望の中でも希望を信じて駆け抜ける漆黒の機人、蘇った男が異世界の少女と共に得た翼。今こそ代替わりの時なのだろう。深絵も同じように思って発言する。

 

「うんうん。でも今は元君がいる。華穂ちゃんや夢乃ちゃんも、他の新人達も成長した。どこかで代替わりしなきゃ」

 

「えぇ。あなたはまだ、飛び続けるの?」

 

「ん~……そうだねっ。まだ相手とか見つからないし」

 

 相手、という単語を聞き光姫は心の中で呟く。見つからない、なのではない。きっとそれは「いなくなり」、そして「連れ添って戻ってきた」のだろう、と。だが敢えて言わない。それが彼女の為だと思ったからだ。いつか言えるようになるまで、それを見届ける。共に戦った戦友として。それが最後の仕事だと思う。

 などと話している内に、片付けから戻ってきた男性陣が来た。

 

「どうした、2人揃って」

 

「あらおかえり。ちょっと酔い覚ましをね。おばちゃん何か言ってた?」

 

 質問に軽く返し、貸出元の様子を聞いた。食堂の担当者からの話を友人達と共に語り聞かせる。

 

「あぁ、楽しめましたって言ったらそれはなによりだとさ。後深絵に今度の作戦終わったらまた手作りアイス作ってあげるってさ」

 

「ホント!?おばちゃんのアイスクリーム楽しみなんだ~。今度皆にも分けてもらえるように言っておくね」

 

 その時を楽しみに待つ深絵。そのために作戦を成功させる。光姫は意気込みを口にする。

 

「そのために、次の作戦絶対に成功させるわよ」

 

「もちろんだ」

 

「だねー」

 

「整備士として、最高のチューンナップ施しますよ」

 

「みんなで、また会えるように」

 

 

 

 

「それでさー、久々に電話したら、むっちゃん「よかったね」だけだよ!?薄情じゃない?」

 

「まぁ、むっちゃんは感情希薄なところあるから……よかったって言ってくれただけでも安心しているんだと思うよ?」

 

 一方華穂が主催した女子会もまた賑わいを見せていた。と言っても華穂自身が騒いでいるというのが正しいだろう。それに相槌を打つジャンヌと適切に返していく夢乃。

 今頃にぃ達は何を話しているのだろう。楽しく話せているだろうか。そんな心配を感じるたび気にすることではないと忘れるべく話題を吹っ掛けていた。ジャンヌがその話にまた相槌を打つ。

 

「ふふっ、なかなかかまってちゃんですね。カホさんは」

 

「そんなことないよ。にぃが帰ってきて、心配してくれてたみんなに知らせなきゃって思ったからしただけ」

 

「その気持ちは分かりますけど、でも私達がオーダーズ所属になった日に一斉に電話を掛けるって行動力は素直に凄いです。その最初の相手が夢乃さんだっていうのも」

 

「私も驚いたよ。かほちーからお兄さんが帰って来たって聞いた時。何かの冗談かと思ったら本当に別の次元から帰って来たって今でも信じられない」

 

 信じられなかったのは華穂も同じ。だからこそ早く知らせなければと思った。もう気負わなくていいと。

 今日こうして女子会、そしてにぃ達の親睦会が開けたのもにぃが帰ってきてくれたおかげ。その意味では帰るために必要だった次元世界を渡る術を解放したというジャンヌの協力なしでは実現できなかった。華穂はこれまでも言ってきた感謝を改めて伝える。

 

「次元世界を飛び越えられたのはジャンヌちゃんがいたからだって聞いてる。家族として、本当にありがとう」

 

「い、いえっ!そんな滅相もないです。助けられたのは私の方ですから……呪いも嫌な思いも、全部カホさんのお兄さん、ハジメのおかげです」

 

 そんなことはないと手を振り、自分も助けられたと語るジャンヌ。見ていて分かる。ジャンヌも本当に兄にお世話になったのだと。昔からそうだ。怪しい宗教勧誘の人が詰め寄ってきた時も、妹である自分に手を出させまいと必死に立ち向かっていった。父さんが気づいて追っ払った後に堪えていた涙をこぼしていたのを覚えている。兄はそうやって誰かの為に力と勇気を奮える人だ。

 それを詳しく聞いてみたい。女子会には似合わないかもしれないが、失礼を承知で頼み込む。

 

「……ねぇ、良かったら聞かせてくれない?向こうの方でどんなことがあったのか」

 

「向こうの……私の世界でのハジメの事、ですか?」

 

 ジャンヌの訊き返しに頷く。夢乃も訊きたいのか視線を注目させている。華穂もあの場で聞いたとはいえ兄の口からでは必要最低限のことだけを話していただけに過ぎない。もっとしっかりと聞いてみたかった。

 華穂の気持ちを察したのか、ジャンヌは微笑むとそれを了承した。

 

「分かりました。夢乃さんには初めてになりますから、私の口から話しますね」

 

「うん、お願いします」

 

 頭を下げる。そうしてジャンヌから異世界へ行った後の話をしてくれた。酷いけがをして記憶を失った兄を偶然保護したこと、誘拐事件で初めて兄がMSを纏ったこと、ガンダムの姿を露わにしたこと。初めの内はジャンヌも兄の事をすごく警戒していたと聞いて理由を聞いてみる。

 

「にぃが怖かったんですか?目つきとか?」

 

「というより、あの頃は一定の人を除いて人間不信、特に男性の事を嫌っていたんです。それを不覚にも家に置くことをOKしてしまったんです」

 

「そうだったんですね。というか、ジャンヌちゃんいいとこの出なんですね」

 

 答えて続く話を聞かせてもらう。使用人の1人の冤罪を晴らすべく決闘に巻き込まれた事件と、それにおいて発動した機体機動強化システム「エラクスシステム」。光巴を救い出したあの光はジャンヌが生みだした結晶を入れて完全制御に至ったという。それまでは暴走システムだったあのシステムを手懐けた結晶に注目するゆめのん。

 

「エラクスシステム……制御に必要なリム・クリスタルですが、それってどうやって?」

 

「え、えぇと……そのですね」

 

 何やら言い難い様子。だがそれも必要なこととジャンヌは思い切って話してくれた。

 

「実はリム・クリスタルは別名龍の愛と呼ばれていて、恋愛感情の高まりで竜人族の女性から形成される結晶体なんです……」

 

「恋愛感情の高まり……え、手を繋いでってこと?そ、それとも……」

 

 もっと深いもの、と言いかけてジャンヌが微妙な視線を向ける。やがて諦めてため息を吐いて言った。

 

「現代では、本当にそういうハレンチな段階でしか出来なかった物質です」

 

「え!じゃあまさかにぃとあのその、つながっ!」

 

「おお落ち着いてかほちー!」

 

 先を想像し、取り乱してしまう自身を夢乃が止める。ジャンヌもすぐにそれを否定した。

 

「最初は私もそうなっちゃうって思っちゃいましたけど、スタートにキス程度で問題ないと分かって、ハジメが手の甲にキスして偶然出来たんです。まぁ、それも当時の私からしてみれば、耐えがたいものでしたが」

 

 表情が複雑な物を感じさせる。最後の段階まで行かなかったとはいえ、キスでも華穂の精神を乱すほどだ。それだけ兄の行動が衝撃的であったのだが。

 しばらく沈黙が支配した後、ジャンヌは再び話す。詩竜双極祭という詩巫女候補生の祭典、それを拒絶し続けていたことと元がそれを問い詰めた件、直後に起こった白のガンダムとの激闘。この件でジャンヌは父親を亡くし、兄とも不和が続いたという。

 

「あの時は一番辛かったです。こんな道に引き込んだと逆恨みしていても、父が死んだことはショックでした。自分がいなかったら、そんなことにはならなかったんだって思い込んで、そのせいで呪いも起動状態になってしまった」

 

「ジャンヌさん辛いですね……それは」

 

「はい。ハジメも昔のトラウマを呼び起こして逃避して」

 

 聞いていて華穂の頭の中で苛立ちが募る。こんな可愛い娘が危険だったのに何そこで昔のトラウマを引き起こしてヒステリックなったのだと、その時の兄に言いたくなるほどの怒りを脳裏で浮かべていた。過ぎてしまっても今聞いていてこの後どうしたんだとことと次第によっては今からでも追及する勢いであった。

 だがそれが杞憂となったことをジャンヌは語る。

 

「でも、それを彼の友人が止めてくれました。記憶を失って、取り戻した後も学ぶために入った学園で得た学友の叱咤激励を受けて、再起したんですっ」

 

「にぃ学校卒業したのにまた入ったんだ……」

 

「でも、それでハジメさんは白のガンダムと再戦したと」

 

「はいっ。この時から私もハジメのガンダムのサブパイロットとして同乗する様になりました。この時はレイアさん……私のかけがえのない友人を救うために、ですね」

 

 少しぎこちないながらも柔らかにほほ笑む。結局その友人を救うことは出来なかったこと、それでも旧政府を打ち破り新たな時代を切り開きかけたと言う。

 

「そうして長年の硬直状態の戦争も解決に……と思ったらまた戦争。それを終わらせてレイアさんを追うために私達はマキナ・ドランディア最後の大戦と呼ばれた機竜大戦に身を投じました。その最中で新たな象徴の力でイグナイターを目覚めさせ、戦争の主犯たるマキナス皇帝ギルフォードを撃ち果たして、平和を勝ち取ったのです!」

 

「へぇ~。で、その後は……確かコンピューターで私達の世界にそのレイアって娘がいることが分かったんだよね?」

 

 その後の流れで分かっていることを確認する。ジャンヌは頷き、元の話していない小さな話題まで話す。

 

「そうです。それから私がハジメに学園を卒業するまでこちらの世界に来るのを待ってもらいました。その間に色んな思い出も作りました。クリスマスやバレンタイン、ホワイトデー……最後の詩竜双極祭には私自身の意志で出て、優勝もしました!」

 

「そうなんですね。何だか元さんも聞いてた話と違って明るく過ごせていたんですね」

 

「違うよゆめのん。こんな可愛い娘に暗い思いなんてさせられないって気を使ってたんだよ。まったく、にぃも隅にもおけないなぁ」

 

 兄の行動を誇らしくも憎らしい表情を露わにする華穂。ジャンヌも察して同意する。

 

「えぇ。元は私の世界を変えてくれた最高のパートナーです。そんなハジメの妹さんであるカホさんには頭が上がりません」

 

「フフッ照れるなぁ。でもそんなに気を使わなくていいよ。ジャンヌちゃんがいてくれなかったら、にぃも戻ってこられなかったんだし。また会わせてくれてありがとう。それから話を聞かせてくれてっ」

 

話を聞かせてくれたジャンヌへ感謝を込めて抱き寄せる。ジャンヌは驚くが照れて改めて不安だったことを明かす。

 

「いいえっ。こちらこそ話を聞いてくださってありがとうございます。信じてもらえないかとドキドキして……」

 

「確かに色々とスケールが大きい話だったよね。でもそれが今はあり得る世界だし」

 

 夢乃が頷きつつも理解したことを伝える。そう、この世界は今や次元世界を知った世界。この先どのような出来事が起こっても不思議ではないのだ。

 

「そうそう!じゃあ、次はジャンヌちゃんがにぃにどこまで俺色に染め上げられちゃってるのか訊かなくちゃ~」

 

 気分を上げて話題は兄との距離感について問う。まるで酒の入った親父のようなテンションだ。様子の豹変に戸惑うジャンヌ。

 

「え、えぇ!?」

 

「かほちー、やりすぎもほどほどにねーってあ」

 

「大丈夫大丈夫!鬼の居ぬ間にならぬにぃ居ぬ間に!ぜぇんぶ色々と――――」

 

「全部聞いとるわ、このエロ妹!」

 

 いつの間にか迎えに来た兄に特撮台詞改変ネタとジャンヌに聞き入った事をしばかれて、今日の女子会は終わりを告げたのでした。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。女子会?って言われると何も言い返せませんはい( ;∀;)

レイ「まぁ女子会の方はこれまでのおさらいを夢乃ちゃんに教えるって感じだったね。それ以上に光姫ちゃんと深絵ちゃんが真剣な話について」

ジャンヌ「パイロットの引退。その為の前準備として掃討戦を立案したんですね」

元とジャンヌ、シュバルトゼロガンダムという戦力が生まれたからこそ、そう決断したということですな。計画が早まったことで敵の目算も総崩れ!になるのかどうか……。
というわけで今回はここまでです。

レイ「次回は再び黒の館!ねぇ、早くない?」

早いですね。まぁその次の黒の館DNが1話に収まるかどうかと言った具合なので、こちらで先に紹介しようって感じです。

ジャンヌ「それでは次回もよろしくお願いします」


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黒の館DN 神騒乱勃発編 第4回

どうも皆様。作者の藤和木 士です。

今回は黒の館DNの公開となります。
前回の黒の館からさほど期間も経っていませんが、今回は先にガンダムの追加装備について記しておきたかったのでここに挟み込むこととなりました。

ガンダムの新装備、そして元君の旧友の設定などご覧くださると幸いです。

それでは開館です。


 

 

士「また始まります黒の館DN!」

 

ネイ「あれ、早くないです?」

 

士「いやぁ、実は次の黒の館DNがかなり大量に紹介しそうな雰囲気だったので今回また挟みこもうかと」

 

グリーフィア「なるほどねぇ。あ、アシスタントのグリーフィアよ~」

 

ネイ「アシスタントのネイです」

 

士「今回は4話分の間に登場したキャラクター達と新兵装の紹介になります」

 

グリーフィア「光姫の妹ちゃんと元君の旧友二人、その二人が開発に携わったガンダムの新兵器ねー」

 

士「後元君担当のCチームの隊長さんの一部もね(;´・ω・)」

 

ネイ「そう言われると結構いますよね。では人物紹介から行きますね」

 

士「お願いします(´っ・ω・)っ」

 

 

間島 耕太(まじま こうた)

 MSオーダーズの攻撃チーム2「RIOT」の第2隊の隊長を務める男性。35歳。

 東響掃討戦において元の指揮するCチームの追撃部隊C-1の隊長に割り当てられる。光姫のサポーター的役割の男性で、指揮官としての腕も確か。またある程度の事情については理解が届くため、指揮官として不慣れな元のチームに編入された。

 

 

羽鳥 綺亜(はとり きあ)

 MSオーダーズの防衛チーム「GUARDIAN」の第3隊の隊長を務める女性。22歳。

 東響掃討戦において元の指揮するCチームの迎撃部隊C-2の隊長に割り当てられた。実力はいいが若く、正々堂々戦うことを重視しすぎており、不意を突かれると弱い。加えて自らの標榜する信念を重視するため清濁併せて飲み込むことに躊躇いが見られる。それでも作戦にはしっかり従うために元のチームへと編入された。

 

 

鈴川 夢乃(すずかわ ゆめの)

性別 女

身長 163cm

髪色 こげ茶色

出身地 日本 三枝県 四河市

年齢 19

誕生日 9月7日

血液型 B

好きなもの ライブ巡り(ドーム、ハウス関係なく)、エアホッケー、クレープ

嫌いなもの ガム、座学、病院

愛称 ゆめのん、

 

 MSオーダーズ神名川支部所属の隊員。次元光姫の妹であり、同時に世界最初のMS兼モバイルスーツの「ガン・ファイター」のパイロットだった女性。

 運動、音楽と言った分野に長け、反対に座学と言った頭を使うことは苦手。MSの操縦と姉の口利きでMSオーダーズに居られていると言っていい。その関係からか姉とは関係は良いが、両親とはあまりよくないとされる(主に彼女が心配なため、両親が心配しているという意味で)。

 元の妹の華穂とは親友で、元の事も華穂と姉を通してよく知っており、何度か顔を合わせたこともある。中学の時に姉の婚約者である黎人の研究を見て、その直感的操縦センスを買われてモバイルスーツのパイロットに抜擢。以後はお披露目までバイト感覚でモバイルスーツの研究に協力した。姉の成人式後のパーティーにモバイルスーツのお披露目時の装依者として呼ばれ、モバイルスーツ第1号「ガン・ファイター」を装依し、姉の友人達やを驚かせる。しかし、判の乱入によってディスクのプログラムを、機材を通して入れられ機体が暴走。自身が望まない破壊を繰り返しつつも、必死に制御しようとする。最終的に黎人によって暴走は止まるも、最後に投げてしまった試作グレネード「シード」によって元を異次元に飛ばしてしまう。

 以後親友であった華穂に暗い影を落としてしまったことで彼女も同様にふさぎ込んでしまう。華穂が次元覇院のもとの宗教団体に無理矢理婚約させられそうになったことも知らずにいたが、深絵が家出した華穂を保護して東響に行ったことを姉から聞き、自分も両親と姉に頼み込んで卒業間際に東響へと追っていく。何といえばいいかも分からぬまま華穂と同じ学校に転校し、言えずにいた後悔を暴露。謝罪をしてギクシャクとしていた関係を元に戻した(なおこの話は2人の高校の語り草となった)。

 それから2人は共にMSオーダーズにバイトとして参加、高校卒業後は正式にメンバーとして参加する。訓練時代は同じ東響湾本部のオーダーズ・ネストにいたが、1年後の訓練期間後は神名川支部に配属された。これは姉との関係の近さもあった模様。東響掃討戦にて再びオーダーズ・ネスト所属となり、深絵の部隊に配属されることになった。

 使用するMSはソルジアV2。姉のような戦い方ではなく、近接戦を優先した武装チョイスとなっており、自らの運動センスを合わせた独特な格闘攻撃を繰り出す。カラーシリーズの1機「グリュン」パイロット候補にも設定されている。

 人物外見モデルはセガハードガールズのドリームキャスト。ツインテールが位置を耳下まで落として結ぶという髪型に変更し、ボリュームもほどほどとなっているイメージ。姉である光姫のモデルである天王星うずめとはモチーフが同じドリームキャストの擬人化というテーマであり、とあるネプテューヌシリーズでは共演している。

 

星北 平次(ほしきた へいじ)

性別 男

身長 175cm

髪色 黒

出身地 日本 三枝県 四河市

年齢 24

誕生日 1月25日

血液型 O

好きなもの プラモ製作、機械いじり、猫、ハンバーグ

嫌いなもの 上司の愚痴、ブロッコリー

愛称 平氏

 

 MSオーダーズ千馬支部所属だった男性。オーダーズでは整備士として働く。元の中学時代の友人でもある。

 小学校高学年からの友人で、元とは昔からプラモデルの改造案で相談に乗ってもらっていた。代わりに元の悩みなどよく話す仲だった。機械系の職場についていたが暴走事件から2年でMSオーダーズに参加、以後武装開発の技術者兼MS整備士として働く。

 元や桐谷 道治と共に成人式後のパーティーに出席する。パーティーの余興として公開されたモバイルスーツことモビルスーツに興味を示すも、直後の暴走騒動で元と離れ離れになってしまった。

 千馬ではパイロット1人1人に合わせたセッティングを行う名整備士と絶賛されており、特に言わずともMSの戦闘データを見て合わせてしまうほど。またロボットアニメなどにも精通しており、それらのアイデアを生かした武装案を提出するなどアイデアマンな一面も見られる。東響掃討戦に合わせて本部オーダーズ・ネスト勤務となった。以後はガンダムを中心としたメカニック担当となり、前述の知識と合わせて整備主任の真希をサポートする。

 人物外見モデルはガンダムビルドファイターズトライのコウサカ・ユウマ。もう少し大人びさせたようなイメージ。

 

 

佐倉 海斗(さくら かいと)

性別 男

身長 174cm

髪色 茶

出身地 日本 三枝県 四河市

年齢 24

誕生日 9月27日

血液型 A

好きなもの 小説執筆、海苔、カードゲーム

嫌いなもの 勢いだけの人間、人混み、紅茶

愛称 海氏、黒丸法師

 

 MSオーダーズ千馬支部所属だった男性。オーダーズにて整備士として働く。元の中学時代の友人である。

 中学時代からの友人であり、当時は基本的に暗めのテンションの人物だったが、仕事をして以来は平凡な人物となった。コミュ障な面があるものの、ライトノベルの賞を取るなどの優れた文才を持つ。元には書いたストーリーの感想などを聞いていた。また元とカードゲームの相手をしたりもする。ネットでのペンネームは「黒丸法師」。機械部品工場で働いていた。

 元らと共に成人式後のパーティーに参加。モバイルスーツのお披露目を見て、もしかしたら自分達がモバイルスーツの部品製造に関わるのではと言った矢先に暴走騒動が起き、同級生を助けに行こうとする元を止めようとしたが、見失ってしまう。

 その後は三枝の部品工場でいつも通り働いていたが、次元覇院の活動で務めていた部品製造会社が宗教寄りとなってしまったため退職。先にMSオーダーズに参加していた平次に誘われる形でオーダーズへと参加した。技術などは平凡だが仕事は確実にやって見せる人物。

 人物外見モデルは遊戯王VRAINSの穂村尊。Soulburnerのような性格は見せないが、服装などを整えるとそれに近い印象が見られることもあるイメージ。

 

 

グリーフィア「人物紹介はここまでねー。次は武装紹介ってわけで、シュバルトゼロガンダム、ロートケーニギンガンダム、そしてブラウォジーベンガンダムの追加装備3種よ~」

 

 

 

追加スカートユニット「フェザー・ブレイズ」

 

解説

・元の世界、アースにて作られた最初のシュバルトゼロガンダム用追加兵装。腰部のホルダーバインダースラスター部にかぶせて装備される。

 機動性増強に加え、イグナイターにて使用が可能となるDNフェザーショットの母体として運用するべく、指向性レーザー発振器を内蔵。これによる弾幕形成を行う。このレーザーは当初ホルダーバインダーそのものを前方に向けた全発振のフルバーストモードも考案されていたが、シュバルトゼロ自体の出力性能に耐えられず、結局のところはイグナイターにならなければ意味がないとなってしまった。

 だが結果的にイグナイターへの変容試験において本兵装がイグナイターのDNフェザーショットを強化する働きを見せたことで、本兵装が東響掃討戦における追加兵装に無事合格した。

 

 

多目的ランチャー「紋章の盾(ヴァッペン・シルト)

 

解説

・東響掃討戦においてロートケーニギンに用意された、シールド兼冷却器併設のビームランチャー。右腕にパイルガンを外して突っこむ形で装備される。

 右腕を覆うほどの大きさを誇るビームランチャーで、側面をシールドがカバーする。またシールド自体はビームランチャーの冷却器を兼ねており、かなりの防御性能を誇りながら冷却機能も十分。これによる遠距離戦闘をメインとする。また近接戦に関してはシールド後部の強化ビームソードと、非常時にはビームランチャーを排除してガントレット方式のビームソードを露出、二刀流による格闘戦を展開する。なおこれらは全て光姫のオーダーを可能な限り詰め込んだ結果の兵装である。

 

【構成武装】

・アタッチメントビームランチャー

 武装正面を構成するビームランチャー。出力はこれまでのビーム砲の比ではなく、最大出力ではロートケーニギンの兵装をいずれも超える威力を誇る。専用シールドが無ければ熱量問題を解決できない為、ラジエーターシールドとセット運用が前提となる。これはシュバルトゼロでも解決できない、武装側の問題である。

 武装モデルは機動戦士ガンダムUCMSVのガンダムデルタカイのハイメガキャノン。

 

・ラジエーターシールド

 機体外側をカバーするシールド。冷却機能を備え、ビームランチャーの運用を円滑にしている。シールド自体の強度もこれまでの運用とシュバルトゼロの技術を用いて高性能化しており、ビームに耐えられる上に重量も極限まで抑えられた。

 

・強化ビームソード「シオン」

 シールド後部に装備されたビームデバイス。近接格闘戦を不得手とするロートケーニギンのための兵装。ビーム刃は幅広のタイプを採用しており、これとガントレットビームソードによる二刀流で懐まで接近した敵を迎撃する。

 柄形状は円柱に鍔のようなものが2方向に広がっている形状。

 

・ガントレットビームソード

 武装保持を行う基部そのものを構成するビームデバイス。これをベースに他の武装

が取り付けられている。腕部の動きに合わせて剣を振るうことになり、「シオン」と比べて扱いは難しい。

 使用には必然的にビームランチャーを外さねばならず、状況が意味するのは追い詰められているということ。可能な限りこの状況は避けたいが、その為の兵装が本兵装であるため、これらで切り抜ける。

 

ライフルコンテナ「バルザミン」

 

・解説

・東響掃討戦に際してブラウジーベン用に開発された追加兵装。長方形状のコンテナで機体両肩に装備する。

 その名の通り、これまで右肩に直に装備していたスナイパーライフルをそれぞれ内蔵する。単純に2丁装備できるようになったことに加え、オーバーヒート後はコンテナに仕舞うと自動でアイスボックスの交換を行うメンテナンス機能を有する。

 コンテナ自体もシールドの機能を兼ね備え、また下方には使い捨ての8連装ミサイルランチャーを装備。マイクロスラスターも各所に装備し、機動力を維持したまま火力の底上げが行われた。

 名称のバルミザンは「ホウセンカ」のドイツ語読みから。コンテナからライフルを取り出す姿と、ミサイル発射が種を飛ばすホウセンカと合致したため。なお深絵からのオーダーは「実弾・ビーム双方が使用可能なカスタムスナイパーライフル」だったが、それの実現が現状困難を極めたため実弾で攻撃可能な面で本兵装が考案された。

 武装モデルはガンダムビルドファイターズのケンプファーアメイジングのアメイジングウエポンコンテナ。装備したままのビーム砲攻撃は不可能となっている。

 

 

ネイ「以上で今回の紹介は終了みたいですね。あれ、この時点でまだ5000字くらいですが?」

 

士「別に文字数多いのが全てじゃないから!( ;∀;)まぁ私昔から文字数多すぎてるのがあったからね、今回はこの辺でという感じですよ」

 

グリーフィア「あらあら殊勝ねぇ。にしてもどの機体も装備追加して、動きよりも火力を高めていくのを優先したみたいねぇ」

 

士「一番支障が出ているのはブラウジーベンだろうね(;´・ω・)ロートケーニギンは本来の戦闘スタイルを強化しているので機動性はそんなに気にしなくていいですし、シュバルトゼロガンダムも特に大型ってわけじゃあない」

 

ネイ「でもそうしたのにはやっぱり前回の戦闘での弱点が露出したのが原因でしょうか」

 

士「そうだね。スナイパーとはいえ主兵装失った時の弱点露出が一番大きい機体だって分かったし、とはいえ今までもその可能性があったから、これもまた元君の機体から技術を得て、追加できるだけの負荷軽減を出来たとみるべきです」

 

グリーフィア「で作者君の考えとしては?」

 

士「(´ρ`)決戦装備とかカッコいいやろ?」

 

ネイ「欲望丸出しですね」

 

士「でもどちらかというとこの装備群はいずれも予定はされていたから、決戦がなくともいずれは開発、装備されていただろうね。シュバルトゼロガンダムの兵装は除くけど。とりあえず、今回はここで閉館です」

 

グリーフィア「それじゃあ、また次回ね~ばいばーい」

 




今回の黒の館DNはここまでとなります。

いよいよ次回からMSオーダーズの大作戦「東響掃討戦」の中身へと入っていきます。果たして元達は目標を迅速に落とすことが出来るのでしょうか?そして作戦の結果が第3章へどう影響していくのか?それらをお楽しみにしていてくださるとうれしいです。

それでは短いですが今回はこれで終わりです。次回もよろしくお願いします。


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EPISODE22 決行、墜ちる砦1

どうも、皆様。現在pi○ivがサーバーダウンしているようでちょっと混乱起きてて大丈夫かなと思っている藤和木 士です。一応私も登録しておりますよー。

ネイ「アシスタントのネイです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよー。いいじゃない、こっちは落ちていないからそっちに行くはずだった人がこっち来るかもよ~?」

ゲスい上に打算的な考えはやめようよ(゚Д゚;)私流石に思って……うん、ない。

ネイ「ちょっと、歯切れが悪いですよ」

そそそんなことより、EPISODE22公開ですよ!

グリーフィア「決行!ってところがいい感じよねぇ。うんうん!」

ネイ「堕ちる砦……確かにこれから次元覇院の東響における砦を破壊しようとしていますから、珍しくタイトル通りな予定ですよね」

さぁ、次元覇院との東響における決戦、どのような開始となるのか。本編をどうぞ。


 

 遂にこの日が来た。6月6日、MSオーダーズによる次元覇院掃討作戦「東響掃討戦」当日。空中からの急襲に向けて飛空艇には多くの隊員達が乗り込んだ。その中に元もいた。

 襲撃まであと30分。ここまでの間に基地の大きな動きはないと報告は受けている。まだ気づいていないのか、それとも気づいていて敢えて出方を伺っているのか。不安がぬぐえない。しかし今から作戦変更などとは出来ない。既に深絵と光姫の率いる部隊は配置についている。潜伏場所への強襲と、基地方面への逃走を防ぐ構えだ。

 

(二人もいつでも動けるようにスタンバイしている。こっちの動きに掛かってるわけだ……)

 

 生まれる緊張感。こちらの動き次第だった。基地を撃って、同時に潜伏地点を襲撃する。混乱の間に全てを終わらせる。その狼煙こそこちらのチームの基地陥没作戦だった。アースシェイカーを搭載する戦闘機は自衛軍がパイロットと共に提供してくれる。新堂沙織の手配だ。失敗しないよう護衛も用意して追従するとのことだ。

 この作戦には多くの人物の協力が得られている。ここで東響の次元覇院を殲滅する。その為の重要任務がこの肩に掛かっていると思うと不安で仕方がない。ふと隣のジャンヌに目を向ける。ジャンヌは各部隊からの準備状況を承っていた。自衛軍基地のオペレーターとも連絡を取り、作戦決行までの準備を整える。

 凄いと思う。前まで全く戦いに関係なかった少女が、パートナーがしっかりと仕事をする。1年半前には考え付かなかった光景だ。その姿に負けてはいられない。戦闘一辺倒ではいつまでもいられない。その最初の一歩が今回の作戦なのだ。気持ちを切り替えたところで、インカムの回線からそれぞれの状況について報告が入る。

 

『C-1、全部隊準備完了だ』

 

『C-2異常なし』

 

『こちら自衛軍アースシェイカー隊、発進準備完了』

 

「AならびにBチームから総指揮官らのGOサイン出ました。ハジメ」

 

 全部隊からの発進完了の報告を受けて元はインカムに向けて呼びかける。

 

「よし、じゃあCチーム輸送部隊発進。パイロットは空域到着まで飛空艇内にて装備と小隊内作戦の再確認を怠るなよ」

 

『了解』

 

 号令と共に飛行艇のエンジンの火が入る。重低音を響かせながらCチームを乗せた飛行艇は空へと飛びあがった。その後を追従する形で自衛軍の戦闘機とMS部隊が飛ぶ。

 

 

 

 

 20分足らずで空域に到着する。現在はガーデンタウン上空1500メートルにてホバリング中の飛行艇内で地上の状況を他チームと共有していた。

 

「こちらCチーム。目的地上空まで到着。時間まで様子を見る」

 

『了解。Bチームの方も特にこれといって変わった様子は見られないよ』

 

『ありがとう。……にしても、これがベストとはいえこうも何もないと不安になるわね』

 

 報告を受けて光姫が呟く。元も同じことは考えていた。そして深絵もそうだと言葉にする。

 

『だね。いつの間にか囲まれていた、なんてことには陥りたくないねぇ』

 

「深絵の方は市街地だ。隠れられそうな場所は多い。油断するなよ」

 

『それを言うなら元君の方だって。飛行艇から出る前に全滅とかやめてよね~』

 

 深絵の心配に本当にそうなるのではと辺りを見渡す仕草をする。通信を聞いていた飛空艇のパイロットが笑ってそんなことは今のところないと語る。

 

「今のところ、そんな怪しい物体は見えませんぜ。気になって確認しようと思うのは納得できますが」

 

『あー元君~』

 

「笑うなよ……まだこの世界じゃいないかもしれないが、完全ステルス機が開発されている可能性もある。それに気づけなかったら笑いごとで済まないんだから」

 

 からかってくる彼らに対しそのように言い訳する。だが考えられなくもない話だ。次元覇院は既にビーム兵器に対し、あのシールドという回答を出している。原理は未だ不明だが現状対策は実弾攻撃あるいは近接格闘戦しかない。

それだけの技術を保有する敵がステルス機を作っていないとは保証できない。マキナ・ドランディアでの経験がどれだけ驚異的で偶然にも乗り越えられたのかを知っている元だからこその発言だ。

 元の指摘にジャンヌも同意した。

 

「そうですね……以前遭遇したステルス機は元でなければ対処できなかった機体ばかりでしたから」

 

『そ、そうなんだ……でもどうやって?』

 

「それは前に話してるDNLの力でだ。今のところそんな感覚はないが……まぁ、考え過ぎってのは認めるよ。とりあえず、そっちも気を配ってくれ」

 

『分かったわ。けど今のところ基地の方も特に異変はないみたいだし、何かあれば私が行くから』

 

 今は作戦決行の時を待つ。そう結論して元もスターターからシュバルトゼロガンダムの武装について確認し直す。以前四ツ田基地での戦いでブレードガン・ニューC1本を喪失した。この戦いでも何かを失うかもしれない。ライフルなどの汎用兵装はMSオーダーズ側に頼んでいるため最悪何とかなるが、問題は機体そのもののパーツとGワイバーン。特に機体の根幹を成すユグドラシルフレームが破損したら、予備のストックが無くなれば修理が現状不可能となる。いち早いユグドラシルフレーム錬成の技術を解析してくれると助かるのだが……。

 だがそれも破壊されなければいい話。あの戦争を生き残った自分の力を、そしてサポートしてくれるジャンヌを信じる。隣で華穂と話すジャンヌをちらりと見る。

 

「カホさん、くれぐれも無茶はしないでくださいね」

 

「大丈夫ですよ!飛空艇からの降下訓練とかちゃんと出来ていますし」

 

「訓練じゃどうにもならない事態も起こり得る。お前はもう少し緊張感持て」

 

「あだっ!?ぐぬぬ……自分の方が経験豊富だからってぇ!」

 

 妹からの逆恨みをもろに受ける。妹も心配だが、他のメンバーも死傷者がなるべく出ないように指示する必要も今回ある。隊長として動けるように、周りに目を配らねばならない。それでも一番心配な妹へ釘を刺すように言った。

 

「それで結構。死ななきゃまた言い争えるから、これで最後とか嫌だからな」

 

「……はぁい」

 

 不満を見せつつも了承した華穂。一度肉親を失った側だからこそ妹も分かっている。その事実に安堵しながら飛空艇周囲の警戒を続けた。

 

 

 

 

 ガーデンタウン周辺は静かなものだった。住宅地には明かりがついておりとてもここが戦場になるとは思えない風景だ。しかし暗闇に紛れ既にタウン内には非日常的な状況が展開していた。死角となる位置に警備として展開するMS部隊、隠し監視カメラによる監視など、いつ敵が来ても問題ないようにガーデンタウン側、次元覇院は整えていた。

 防備は完璧、そのはずだった。だが直後次元覇院のMSの動きが一変する。死角から飛び出す機体達。その機体はすぐさま上空に向けて飛び、発砲する。空からは黒い柱のような飛翔体――――ミサイルがタウンに目がけ降り注いできていた。

 全部で8基。次元覇院のMSは迎撃を開始した。

 

『クソッ、ミサイル!?』

 

『あんなもの、すぐに撃ち落として……!』

 

 弾幕を形成するMS。しかし撃ち落とすには時遅く、ミサイルは勢いよくガーデンタウン、の水路へと飛び込んだ。

 

『墜ちた……?』

 

『へっ、不良品かよ』

 

 街を焼き払うつもりと思っていたパイロット達は迎撃する必要がなかったと思い込む。だが直後わずかな振動と共に通信回線から自分達のしでかしたミスを思い知らされる。

 

『ミサイル、そのまま地面を進んでいます!これは……』

 

『ミサイルが進む!?』

 

『いかん、全部隊基地から緊急退避―――』

 

 司令が叫んだ時には時遅く、地面が轟音と共に崩落を起こす。地面が爆発した。そうとしか思えない。それが先程打ち込まれたミサイルが原因であるのは間違いなく、回線に多くの悲鳴と土砂崩れの音が流れる。

 

『おい、司令部!応答し―――』

 

 何があったのかと呼び続ける者。空中で静止したその機体に空から放たれた光の矢に貫かれ、爆発を起こす。

 錯綜する事態にガーデンタウンの部隊は狼狽する。だがそれも許さないほどの軍勢が既に空からガーデンタウンに向けて降りかかっていた。帰る場所を失った部隊に追い打ちをかけるべく迫るオーダーズ。東響掃討戦が始まっていた。

 

 

 

 

 飛行艇から次々と隊員達が降下していく。彼らは瞬時にMSへと装依を完了させて決戦の地である西東響ガーデンタウンへ向けて進撃を開始した。最後の1人が下りたのを確認して元もジャンヌの手を取り、相槌を打つ。

 

「行くぞ、ジャンヌ!」

 

「はいっ!」

 

 2人同時に飛行艇から飛び出していく。スタンバイ状態のスターターのボタンを押し込み、ゲートを潜り抜ける。漆黒のガンダムシュバルトゼロガンダム。腰に新たな装備を取り付けた機体が空中で姿勢を整えた。飛行艇から更に追ってGワイバーンが飛び出してくる。元は機体をその背に機体を預け、騎乗状態で地上へと向かう。既に地上ではいくつもの爆発が散見できる。敵も迎撃してきていたが、その数も想定戦力500よりも明らかに少ない人数だ。作戦が上手く行ったことが目に見えて分かる。

 同じくそれぞれのチームの隊長達からも順調に進行中であることの報告を受ける。

 

『こちらC-1配置に着いた。やかましいのを撃ち落と……じゃなかったな。追い払うぜ』

 

『こちらC-2。これより東響都心方面から向かってくる敵機および都心方面へ逃げる敵機の迎撃を開始』

 

 既に敵が沈黙したのもあってC-1の間島が追撃兼市民の防衛活動に部隊を向かわせていた。崩落作戦は予想以上に成功した証拠だ。

 基地周囲を前後から挟み込むフォーメーションで、敵はたちまち撃破されていく。まだ逃げる敵は居ないものの、外にいた敵機は順調に数を減らしていた。直後水路の方で爆発が起きる。爆発と共に飛び出るMS達。咄嗟に装依して難を逃れたか、それとも水路近くにいたため被害が少なかったか。その機体達が地上制圧を行おうとしていたこちらに襲い掛かる。

 

『にぃには手を出させないっ!』

 

 迎え撃ったのは華穂とC-3チームのメンバー。ソルジアV2、ソルジアの編隊が攻撃を受け止めてから弾き返す。すぐさま包囲を敷いて敵機の殲滅を開始する。

 

『さぁさぁ、数は少ないとはいえ一気にやっちゃうよ~!せいっ』

 

 味方機の援護を受けつつMS刀「タチカゲ」による近接戦でマキイン2機と交戦する華穂。その様子にオペレートするジャンヌも傍らでその覇気に驚嘆している。

 

『カホさん、前よりも動きが良いですね。機体に慣れて来ていらっしゃるみたいで』

 

「勢いは良くなった。けど重視するのはこっちだろっ」

 

 否定を告げると共に機体を下方に向けてから上昇させる。下方から急加速して襲い掛かってきたソルジアの剣を躱す。

 

『っ……不意打ち!?』

 

「みたいだな。だが甘い!」

 

 言って元はバックパックからビームサーベルを抜き放ち、競り合う。敵機は瓦礫の中から飛び出した。華穂も向かおうとするが目の前の敵に掛かりっきりのようだ。代わりに周囲に展開していたソルジアがビームサーベルで斬りかかる。

 

『こいつっ!』

 

 すぐにこちらとの競り合いを止めてソルジアに応戦する敵機体。部隊の2機ほどを直援に回して任せて、元は華穂に語りかける。

 

「っと、任務は優先だが、こっちにも気を配ってくれるといいんだけどな。華穂」

 

 戦闘で指揮官が落ちれば統率が取れなくなる。ドラグディアとマキナスの演習で気を付けてかつ心がけていた点だ。もし誰も気付いていなければ、反応が遅れていれば元は落とされていただろう。

 それを間一髪逃れた元は、それに注意すべき周囲に聞かせた。真っ先に華穂が返答する。

 

『そうだ……ねっと!』

 

 力を込めて敵の刃を弾き返すと、続く二連切りで敵MSを両断する。続いて襲い掛かろうと左右から襲い掛かった2機に対してはガンアサルトの掃射で寄せ付けないままライフルに持ち替えて味方機に支援を要請する。

 

『行くよ、みなさん!』

 

『了解』

 

 味方機がそれに応えて集中砲火。残る敵機も落とした。周囲の敵影が消えたのを確認してから、こちらに背を向けた状態で戻ってきた華穂は先程の元が発した言葉に口をとがらせて言った。

 

『けどそう言うんだったら、にぃだって私達を上手く使ってよね?』

 

 使われる側のもっともらしい言い分だ。確かに作戦前にこう動けとは通達してはいたものの、今現状では降下して状況にその場その場で対応する動きだった。特に今華穂達に指示を送れるのは元だ。いくら独断専行を言ってもそう言われてしまえば返す言葉もない。謝罪ともう一つ付け加えて返した。

 

「それは悪かった。あと今は隊長だ」

 

『……失礼しました隊長殿。で、どうするの?』

 

「第5、第7が北東部、第8、第9が南西部から建物の中を捜索する。残った敵をあぶりだす。C-1とC-2の方におびき出せ。第10はこのまま上空待機」

 

『了解』

 

 短い号令の後それぞれの持ち場へと向かっていく。華穂は先程までのようにシュバルトゼロガンダムの周囲を他の隊員の機体5機と囲う。警戒態勢を整えたところでジャンヌの方から作戦進行状況を確認する。

 敵の指揮系統はほぼ滅茶苦茶で、今は個別に反撃している状況のようだ。追撃のC-1、壁を形成するC-2共に迎撃は出来ているようだ。そろそろBチームの方から敵機が逃げて向かってくる頃だろうか。先程華穂に言った言葉が嘘にならないよう周辺警戒を行いつつ、情勢に注意を配った。

 

 

 

 

 同時刻、Bチームでも作戦が発令した。

 

『基地へのミサイル着弾確認』

 

「よし、じゃあ総員突入!次元覇院を一人残らず、追い出して!」

 

『了解!!』

 

 都心でもっとも高いビルから全周波数で呼びかける。敵をビビらせ、味方を鼓舞する叫びと共に、オーダーズの精鋭たちが突入する。

 街の各所から煙が立ち並んでいく。戦闘が開始された合図だ。通信回線から響く爆音と見渡す限りの煙で奮戦しているのは見えている。まだ敵機はこちらには見えない。建物の中で抵抗している証拠だ。

 いつでも狙い撃つ準備は整っている。新たに装備した両肩のコンテナより取り出したスナイパーライフルを構え、敵の姿を伺う。一際大きな爆音と共にMSが数機飛び出した。

 

『敵拠点No.11、敵機です』

 

「よし……まずは」

 

 早期警戒装備の機体からの報告を受けて深絵はその地点に狙いを定める。機体の狙撃カメラを通しての狙撃。かなり遠かったが見えると同時にトリガーを引いた。放たれたビームがまるで吸い込まれるかのように敵機の頭部を貫き、爆散させた。だが確認するより前に続けざまにビームを放ち、飛び出した機体の内2機を更に沈める。驚きこちらにカメラを向けた敵機もいたが直後距離を詰めた自軍のソルジアV2がそれを撃墜していく。撃破したソルジアV2のパイロット、その地区担当の隊長が報告する。

 

『こちら拠点11、全員拘束並びに撃墜を確認』

 

「確認しました。続く拠点攻略に回ってもらえますか」

 

『了解。これより33に向かいます』

 

 報告を受けて別の拠点攻略の支援に回す。直後また機体出現の報告を受ける。

 

『敵拠点No.34より南方向に敵MSが移動中。No7の拠点攻略の妨害またはエリアAに向かうと予測』

 

「ここから狙えるかな……見えた!」

 

 すぐさま敵機の方角を見据える。射程距離へと近づいた敵機を迷わず撃ち抜く。狙撃を受けた敵機がすかさずビル街の影に隠れる。狙撃は出来ないが警戒機より報告を受ける。

 

『第7部隊の支援が先程の部隊と交戦に入りました』

 

「よし。直進は避けられたね」

 

 あくまでも足止めがメインとなる深絵の仕事。30ある部隊のうち自身の部隊を除く全29個の部隊には、拠点制圧を任せ自部隊はその広範囲支援を行う。狙撃手である深絵なら高い位置からの狙撃で大抵の敵は潰せるが故の狙撃支援と指示出しだ。東響都心の隠れ家すべては既に把握している。しらみつぶしに全てを潰していく算段だった。

 敵をあぶりだすと同時に深絵の部隊に課せられた役目はもう1つある。それはエリアA、光姫のいる方面への敵進出を止めること。非常事態に備えて光姫達は構えてこそいるが、あくまで予備兵力。深絵達が喰い止め、なるべく出番がないことが一番なのだ。

 作戦は順調だった。元のチームが拠点を強襲した混乱がこちらにも来ている証拠だ。しかし徐々にこちらが押されているのが実情でもある。

 

『No.16、No.18より敵機逃走!No.39の敵部隊と共にエリアAへ南下!』

 

「っ。いよいよ敵も動いて来た……!」

 

 徐々に戦線が破られていく。更に地上部隊からの報告が続く。

 

『こちら第14部隊、民間人への被害多数!救護班を!』

 

『第18!クソッ、思うように突破できない!支援を』

 

 時間が経つにつれて多く聞こえてくる悲鳴にも似た声。もう予想第1ラインを越えてきたことに驚きは隠せない。

 

「もう第1段階は持たないね……仕方ない。第2段階始めるよ。自衛軍に援軍打診!」

 

『了解!』

 

「光姫ちゃん、そっちの部隊2部隊ほど借りるよっ!」

 

『そうね。そろそろ第2に入らないとキツイわね。すぐに送るわ。喰い止めて』

 

 光姫から了解の声を受けて作戦が第2段階へと移行する。同時に周囲の防衛を担っていた第1部隊の半数に発進を伝える。

 

「第1部隊もBチーム戦線投入だよ。準備はいい?」

 

 訊いてBチームと呼ばれた分隊のリーダー、夢乃が返答する。

 

『任せてください!Bチーム、支えますよ!』

 

 夢乃が部隊員と共に戦場へと飛び込んだ。作戦は第2段階へと進む。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。

グリーフィア「流石に上手く行ったとはいえ、抵抗は激しいわねぇ」

ネイ「元さんも対応できたとはいえ不意打ちは多発しそうだよね」

グリーフィア「それ以上に大変な深絵ちゃんを応援したいわぁ」

高い位置からの狙撃と指示をやっているからね。スナイパーとしての地の利を生かしてならこれが一番です。

ネイ「次は夢乃さんも活躍しそうですね。前に言われていたのでは姉の光姫さんより適性が上だそうですが」

一応予定では彼女もガンダム用意される予定ではあるね。その時をお楽しみに。それでは今回はここまでです。次回は14日、そう、あの日の番外編だ。

ネイ「次回もよろしくお願いします」


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EPISODE23 決行、墜ちる砦2

どうも、皆様。バトスピガンダム楽しい(´Д`)な藤和木 士です。ダブルオーのデッキだけど、SEEDとかも面白そうでした。

レイ「アシスタントのレイだよーって今日投稿日なの?」

ジャンヌ「みたいですね。まだ1日2日くらいしか空いていませんが……アシスタントのジャンヌです」

あぁ、番外編はいつもの投稿間隔に数えないようにしました(;´・ω・)だから4日位本筋の方は空いているの。

レイ「トンデモ発言だぁ。でも早いのはいいことだねっ」

ジャンヌ「地獄見ないといいですね」

あっはい。では今回はEPISODE23ということで。

レイ「いよいよ東響掃討戦スタート!最初は元君達の奇襲が上手く行ったところだね。押せ押せ―!」

ジャンヌ「何事もなく、とはいかなそうですよね。前から何かがあることは分かっていますし」

さぁ、元君達の快進撃はどこまで続くのか?それでは本編です。


 

 

 作戦の第2段階は戦力の追加投入。完全に部隊が潰れる前に戦力を投入して包囲・撃滅する。自衛軍にも協力を依頼しての挟み撃ちだった。

各所に飛来した自衛軍のソルジアが攻撃に参加する。更に南部からは光姫の部隊が移動して南下しつつあった敵部隊と交戦を開始した。戦況が再び互角になる。だが南下する部隊、その眼前へ満を持して夢乃が率いる第1部隊が躍り出た。

 

『鈴川夢乃、推参!次元覇院はまとめてぶった切る!他の人は前進させないように弾幕を!』

 

 元気よく名乗りを上げた夢乃のソルジアV2が両手に武器を構えて突貫した。右手にビームサーベル、左手にエリミネイターブレード改を装備した夢乃は次々と敵機を切り刻んでいく。斬った直後に反転して敵の刃を抑え、反対の剣で腕や胴を斬りおとす。一見一人無双のように見えるがいずれも味方部隊が他の邪魔が入らないようにお膳立てを行い、かつ自身の機動性を熟知しての技だった。

 流石は夢乃ちゃん。伊達に世界初のモバイルスーツ、モビルスーツパイロットの経験は伊達じゃない。私や光姫ちゃんよりも機動プログラムを熟知しての動きだ。

僚機との連携の邪魔にならないようにも立ち回ってもいる。若いながらも歴戦の勇士並みの活躍を見せる彼女にこちらも負けてはいられない。そう思い再びライフルを構えた。

 

『敵部隊、南下開始確認!』

 

「そっちには、行かせないよっ!」

 

 南へと向かおうとしていた部隊を狙撃する。確実に機体の一部分を貫き、続く一射で敵を完全粉砕する。再び隠れて移動しようとする部隊だったがそうはいかない。すぐさま部隊配置を呼び出し、指示を送る。

 

『第23部隊、支援部隊でもいい。近くを敵MSが南下するよ!』

 

『敵が……来た!迎撃開始!!』

 

 敵予測通路付近で戦闘の光が見える。無事接敵したようだ。他の担当も制圧が完了しつつある。そして敵の動きにも変化が、こちらが想定した方向に向かいつつあった。

 

『敵部隊再び移動確認。ただし方角は東響外縁、北、および西方面です』

 

「ようやく分かってきたみたいだね。抵抗するのが愚策だって」

 

 立ち向かうのではなく、逃げるという選択。東響の全拠点が攻撃を受けた以上、この地に留まるのは最善ではない。それを理解した彼らはようやくこの地を離れるという選択を取ったのだ。逃げる方面には元のいるCチームもいるが、対策はとっている。背後から襲われて撃破、なんてことにはならないだろう。

 だがそれに交じって自棄を起こした者も少なからずいた。接近警報、同時にビームがこちら方向に向けて放たれる。

 

『敵機体、こちらを狙っています!』

 

「おっと、やっぱり狙われるよね……でも行くべきはこっちじゃないよ!」

 

 滅茶苦茶に放たれるビーム。大方特攻だろう。しかしそれも深絵は落ち着いて狙いを定めると、正面からその敵を撃ち抜く。頭から打ち抜かれた敵機は爆散、それでも追従する敵たちは止まらない。

 今まではかなり面倒な対面だった多数機の撃墜。だが今のブラウにはそれに対する答えがある。機体のコンテナ下方を前方に向ける。コンテナの蓋が開き、中から覗くミサイルの弾頭。それらが一斉に放たれる。

 ミサイルの接近に敵機が下がる動きを見せる。ミサイルの追撃に逃れることが出来ず4機ほどが爆散する。残りの機体も逃げ切ったところで放たれた狙撃に機体が爆散、沈黙していく。

 

(あと、どれだけ戦えば……)

 

 落ちていく機体と共に、視界に眼下の街の姿が見える。作戦直後から東響の街には緊急事態宣言として外出禁止を呼びかけていた。しかし報告では一部都民がパニックで建物から飛び出す事案が報告されている。完全には制御できないとはいえ、これ以上の混乱を起こさせないためにいち早く敵を追い出さなければならない。回線で味方機に向かって鼓舞を行う。

 

「時間を掛けたら敵に押し返される!人々の不安を取り除くためにも、いち早く決着付けるよ!」

 

『了解!』

 

 応答と共に各地での戦闘が大きくなる。一気に敵が外へ外へと逃げていく数が増えてきているように感じた。この勢いを崩させない。夢乃の部隊への指示と、自らも前に出ることを告げる。

 

「夢乃ちゃん達はこちらに追随して。私も前に出る!」

 

『了解しました!』

 

 ガンダムの性能で相手を焦らせる。これが何かの引き金となればいい。奥の手が無ければ逃走へ、そして何かあるのならいち早く誘い出して手早く敵を挫く。元の攻略するガーデンタウンも先制の一撃で戦線崩壊状態という知らせが来ている。後はここを制圧しきれば、もう抵抗はないはず。

 そんな思いで前に出た深絵。敵MSを数機撃ち抜いたところで後方部隊から緊急通信が入った。

 

『…………え?深絵さん!Cチームにて動きあり!敵地下基地より、巨大飛行物体……これは!』

 

「!?」

 

 不安が過る。一体、元の前に何が現れたというのか。

 

 

 

 

 Cチームの侵攻状況はそれなりに順調なものだった。瓦礫の中から飛び出してくる装依状態のMSの不意打ち、あるいはまだ潰していなかった水路出入り口からの出撃などを除いて想定外はなく、着実にガーデンタウン内を制圧していた。

 都心方面へ、あるいは都心方面から来る敵もこちらとC-2の羽鳥率いる部隊が遮っていた。

 

『このぉ!!』

 

 遠目で羽鳥のソルジアV2が敵マキイン相手に奮戦する姿が見える。右手にマシンガン、左手にガンアサルトを構えて発砲するその姿は、彼女の異名である「羽舞姫(はねまいひめ)」に相応しい。

 それに負けじと奮戦するのが元の妹華穂だった。元の言いつけに従いながらも、不意打ちを仕掛けてくる敵機と切り結び合う。

 

『ぐっ、戦乙女め……!』

 

『こんのぉ!あたしの邪魔をするんじゃないっての!』

 

対峙する敵に対し、怒気を交えて圧倒する華穂。その怒りは目の前の敵への敵意か、それとも先程の言葉に対する不平の八つ当たりか。しかし怒りをぶつけながらも彼女は冷静に立ち回っていた。後方に位置する元への攻撃を遮り、的確に敵の武装を潰す。その動きは機体性能こそ違っても光姫達と張り合えそうだ。

 おかげで元も考えられる時間が生まれる。刻々と変わる戦況をジャンヌから伝えられ、全部隊に細かく指示を送る。

 

「分かった。そちらに支援送る。第5、C-2の支援に向かえ。C-1間島!敵の様子に変化は」

 

『こちらC-1間島。敵さんはほとんどこっちに向かって来て玉砕してるぜ。まったく、なるべく追い出せって指示なんだけどな。とはいえ命優先で行かせてもらうぜ。文句ないだろう?』

 

「それは当然だ。動きに変化があれば、教えてくれ」

 

『逃げるようになったら、もしくはおかしな動きをするようになったらだな。了解だ』

 

 間島の言葉で通信が切られる。このままいけば、殲滅という形で戦いが終わるのは間違いない。上の、政府からの指示が出来れば外への追い出しであったことにはまだ違和感が残るが、晴宮防衛相には出来ればでいいと言われた。こちらの行動に同調する者もいれば、そうではないものもいる証拠。現在この戦いをドローンで撮影しているのもそれの為。戦いが終われば、それは分かる。

 すべてが順調に思えた。この場も、そして深絵達の戦場も。だがしかし、異変が起こったのは、元の担当するこの場所からだった。唐突に響く警報。危急をジャンヌが告げた。

 

『高エネルギー反応、上昇中!どこ……真下!?』

 

「っ!全員、緊急離脱!街の外側方向へ回避!!」

 

 同じくDNの動きで感じ取った元も回線へ叫ぶ。離脱する機体達。地面が揺れ出し、直後地面から空へと向けて光の一閃が放たれた。

 光の正体はビームだった。しかしそれほどのビームを放てる機体は、MSはまだこの世界に登場していない。マキナ・ドランディアでもシュバルトゼロのDNFくらいのものだ。

 元の脳裏に最初に思いついたのは同型機の存在。既に次元覇院の手によってヴァイスインフィニットが修復、起動したのかと。だがそれは様々な予想を裏切って出現した機体により一つの形へと帰結する。

 

「こいつは……!」

 

 瓦礫を吹き飛ばし、地面より現れたのは巨大な蟹だった。蟹と言っても生きているものではない。蟹の姿を模した機械の塊が空へと浮上していく。とてもMSとは言いようのない姿で、蟹の形をした戦闘機とでも言うべきだ。

 その姿にCチームの面々は言葉を失う。大きさ、形共にMSとは違う。それはMSではない。元もこれまでに同じ分類に属する機体と数度戦闘したことがあった。MSの動力を用いて戦う大型兵器。人型ではない機動兵器の名をジャンヌが呟く。

 

『モビル……アーマー!?』

 

 モビルアーマー。その姿を見て、作戦前の資材の写真が思い浮かぶ。間違いない。あれはこの機体のパーツだったのだ。目の前の機体は目の部分にあたる部分を光らせて、こちらに腕を変形、ハサミにして襲い掛かってきた。

 

『元にぃ!』

 

「!」

 

 元はすぐさま回避運動を行う。加速して襲い掛かってきたMAのハサミから何とか逃れる。しかし周囲にいた機体の1機がハサミに囚われる。

 

『う、うわぁあぁああ!!た、助け』

 

「っ!」

 

 救出しようとするが、加速性能に秀でたその形状にノーマルでは追いつけない。後方ブースターで加速したそのMAは推力でこちらを振り切る。大きく弧を描いてこちらに向き直ったMAは途中そのハサミでソルジアを握り潰した。

 

『あぁあぁ!!』

 

『慎二ー!!』

 

 味方の悲鳴。敵はこちらに悲しむ暇を与えずに再び向かって来ていた。再度の来襲に指示を飛ばす。

 

「また来るぞ、退避!」

 

『あんなもん出してきやがって!落としてやる!』

 

『待て!早まるな!』

 

 隊員のほとんどが退避に従うが、一部隊員達がMAを迎撃する構えに入った。果敢にもビームライフルを斉射する彼ら。しかし敵機は機体を前のめりにして背中をソルジア達の眼前に向けた。

 直後背中に直撃したビームが一斉に跳ね返る。以前にも見た光景。跳ね返ったビームに立ち向かったソルジアの大半が撃墜される。残った機体もいたが、体勢を戻したMAが交差した刹那、貫かれる。蟹の胴体には似合わない、尾の槍に。

 

『ガフッ!?』

 

『尻尾が付いてる!?蟹じゃなくてカブトガニだっていうの』

 

 華穂の指摘には同意できる。ハサミばかりに気を取られていたが、蟹と言うよりはカブトガニに近い性質。まるでその2つを合体させたキメラ。そんな機会の塊は残骸となって爆散したソルジアの欠片を振り払うと、こちらに再び向かってきた。

 分かっている。狙いは自分だ。基地を半壊させた恨みを感じ取る。だがそれに押しつぶされるつもりはない。寧ろ押しつぶすのはこちら。回線で味方機に再度指示を出す。

 

「C-1、C-2共にこちらへの介入は不要だ。引き続き敵の撃退に集中!」

 

『了解した!』

 

『あれを野放しにしろと!?』

 

「こっちでやるってことだ。あんまり多すぎてもMA戦じゃ不利だからな。持ち場で不意打ちを喰らわないようにしてくれ」

 

『……分かりました』

 

 間島と羽鳥はそれぞれ了承する。次に自らのC-3へと指示。

 

「C-3はMAをやる。全機距離を取って応戦しろ。まだ敵MSもいるかもしれない。お互いカバーし合え。いいな」

 

『了解』

 

 華穂を筆頭に距離を取っていく。一方元は敵MAの前方に位置取る。真っすぐこちらに向かってくるMA。そう、迎え撃つのだ。正面から。ジャンヌから気を引き締めるように忠告される。

 

『ハジメ、突進には気を付けてください。加速性能だけなら今までのどんな敵よりも……』

 

「分かってるさ。けど、やるしかねぇ!」

 

 ビームライフルからブレードガン・ニューCへと武器を切り替えたシュバルトゼロ。その機体がMAと交差する。出現したMAと戦闘を開始する。

 ブレードガンをガンモードに切り替えて敵の後方に回り込んだ直後、放つ。しかし加速性能に負けて弾はあらぬ方向へと飛んでいく。C-3の部隊が放ったマシンガンの弾の雨を掻い潜ったカブトガニもどきのMAはハサミを折りたたむ、と同時に露出したビーム砲を発射した。放たれたビームを回避する。だがそれを予測していたかのように砲弾が迫ってきた。

 

「っ」

 

 ギリギリで回避する機体。Gで押しつぶされそうになるが、意識を失うことなくそれを回避。交差する刹那に再びビームを放つ。はずだった。しかし下方に回った機体に突然4本の足の間から光が走る。すぐにブレードを立てて光を受け止めた。光が拡散する。ビームではない。

 

「レーザー……!」

 

 レーザーとはまた珍しかった。レーザーはビームよりも威力は低いが、速度が非常に速い。受け止められたのはほぼ偶然と言って差し支えないだろう。

 下方までカバーされた機体。速度も相俟って攻略は困難を極める。ブレードガンのガンも受け付けず、跳ね返されるだけ。味方機が対応して実弾マシンガンに武器を切り替えて発砲するも、雀の涙ほどのダメージしか与えられていないように見える。主力となるシュバルトゼロがどうにかしなければならない。再びの交差で、ブレードガン・ニューCの刃にビームサーベルを形成して受け止める。

 

「くっ……のぉ!!」

 

 敵の振りかぶったハサミとビームサーベルが交差する。受け止めたものの、機体はその場に留まれずに勢いそのままに押し返される。ガーデンタウンから引き離されていく機体。このままではいけないとサーベルを解除。再び下方へ。だが今回は過ぎる刹那ブレードガンを振りかざす。

 振り抜いた光刃が敵の装甲を斬り裂く。同時にレーザーを放ってきていた足の間、小さな足を斬り裂いて爆発させる。爆発で機体はわずかに遅くなる。だがダメージコントロールを働かせたのか、再び旋回してこちらに向かってきた。先程よりも激しい攻撃を加えながらの突撃で、容易に近づけずに退避せざるを得ない。C-3の隊員達も華穂を筆頭に散らされ、苦言を口にする。

 

『これじゃあ近づけない!にぃ!』

 

『市街地にも被弾しています。避難勧告も発令されたようです!このままでは……』

 

「っく、こうなったらこっちも本気で行くしかない。Gワイバーン!」

 

「グァウ!!」

 

 呼びかけに応じてGワイバーンが空中から舞い降りる。既にアーマードシークエンスを実行中だ。だがそれをさせまいとMAが砲撃と共に突っこんでくる。

 

『ハジメ、敵MA接近!』

 

『元にぃをやらせるかっての!砲撃集中!!』

 

 華穂を中心にC-3の小隊らが迎撃を開始する。それでも間に合わないと判断して元は前に出る。

 

「いや、回避と同時に合体する!」

 

『アーマードシークエンス、マニューバスタイル・レディ』

 

 機竜大戦にてアルス相手に行った機動中換装。こちらに追従する形でアーマーが分割・飛来する。敵MAに向かいながら、寸前で機体を回避させる。パーツもまた砲撃をすり抜ける。回避した直後に右腕を突き出しパーツと合体。続いて脚部を回し蹴りの要領で尻尾と共に接続する。

 ウイングが背面に回ってから装着され、同時に頭部ヘルメットパーツがドッキング。最後に胸部とフロントアーマーがかぶさり左腕のパーツを装着すると同時にイグナイトへと換装完了となる。

 換装が正常に行われたことをジャンヌがアナウンスする。

 

『シュバルトゼロガンダム・イグナイト、アクティブ!』

 

「さぁ、ここからは少々手荒いぞっ!」

 

Gワイバーンのパーツで肥大化した左手を開いてMAへ加速する。敵も正面機関砲と尻尾から分裂した誘導兵器を放って迫りくる。

 開いた腕に、DNの光が灯る。砲火を潜り抜けてその手を蟹のハサミへとぶつけた。

 

「――――っ!!」

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。さぁ、今現状では初のMA戦となります。

レイ「MAかぁ。って蟹みたいだけど似たようなのいなかったっけ?」

あ、ザムザザー元ネタです(´・ω・`)あとア○スギアのリムルインバス種も掛け合わせてます。

ジャンヌ「お得意の掛け合わせ……というか作者、ア○スギアからも要素持ってきているんですね」

そりゃあねぇ。特にあのゲーム人外タイプの敵がよく出るのでMAのデザインにはうってつけなんですわぁ(´ρ`)後カブトガニってのでアルヴァアロンも考えたけどちょっと今回は組み込めなかったうん。

レイ「あんまり多すぎるのもあれだからね……いいと思うよ」

ジャンヌ「次回はMAとの対決が主軸になりそうですね」

というわけで今回はここまでです。

レイ「次回もよろしくね~」


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EPISODE24 決行、墜ちる砦3

どうも、皆様。作者の藤和木 士です。

ネイ「アシスタントのネイです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよ~」

今回はEPISODE24の投稿です。

ネイ「巨大MAの出現……元さんもイグナイトで本気モードとなっていますね」

グリーフィア「イグナイターなら一瞬だと思うけれど、まぁ他に何かあったら大変だからねぇ。使うに越したことはないけど、イグナイターで決めて欲しいわねっ、この戦い」

それでは早速本編をどうぞ。


 

 

 Cチームに出現したMA、それを作戦の総指揮官にあたる光姫も把握していた。同時にBチームの深絵の方も、更に熾烈を極めていた。あのMAの出現直後、各地の敵攻勢が強まり、互角まで押し戻されたのだという。深絵は現在夢乃に各地支援を任せ、再び高所からの狙撃支援と囮役を務める。

 両者の苦戦に光姫は顔をしかめる。何かあるのは予測していた。写真で見たパーツ。あれが今元と戦闘しているあのMAのものであるのは頑なに想像できる。大火力で敵を返り討ちにする、あるいは基地に攻め込もうとしていたのかもしれないその兵器は、登場しただけで確実にこちらの勢いを削いでいた。深絵のチームが担当する隠れ家の敵の士気すらも高揚させるほどの性能を秘めているのか。

 

『Cチームより、シュバルトゼロガンダム・イグナイトへと換装との報告。撃墜には至っていませんが交戦中』

 

『Bチームの深絵隊長より入電。現在22か所の敵小拠点の制圧を完了とのこと。残り17か所』

 

「元の方はおそらく詰めの段階……と思いたいわね。深絵の方にはいつでも支援は送れると伝えておいて」

 

『了解です』

 

 言って光姫は考える。苦戦は強いられるが撃破出来ないわけではない。MAが強敵なのは分かる。だがそれでもそれが彼らの戦意をそこまで上昇させうるものなのか。それと同時に、各地の次元覇院MSパイロット達は如何にしてこのMA出現を察知したのか。疑惑だった。

 作戦の最初の段階で既に基地は崩落させた。司令塔は潰したはずである。混乱は起きても、同調は出来るはずがない。そもそもなぜMAという兵器が格納されていたにも関わらず、こちらに攻めてこなかったのか。パーツを組み上げればすぐにでもこちらに攻め込んでくるような連中だと思っていたのに、来なかったから完成していないと判断していたのに……考えが狂わされる。

 

(何で次元覇院は防衛用にMAを残しているのかしら。あれだけの性能なら突っ込ませて少しでも被害を与えるってした方がいい。加速力のある機体ならなおさら強襲して基地を損壊させるべきだわ)

 

 疑念。どうしてそうしなかったのか、どうしてそうなっているのか。光姫は推測を立てる。完成が基地強襲とほぼほぼ同時だった。MAには基地の回線とは別の総合的な通信環境が整っていた。等々2つの疑問に考えられるものはあったが、どれも今のこの状況の説明には一押し足りなかった。

 漠然とした予想に悶々となり総指揮官としての采配が鈍る。考え込んでいる中とある知らせがCチームから舞い込んだ。

 

『……?光姫総隊長、Cチームの間島隊長からカメラ映像の提供です』

 

「カメラ映像?」

 

 間島と言えば元々RIOTのチーム担当のリーダー。元のCチーム配属の彼がこちらに映像付きで知らせてくるものに、何かを感じ、すぐに映像を回してもらう。そこに映ったのは、Cチームの戦闘……より少し外れた街の外側付近の映像。おそらく撮影しているのはチームにそれぞれ貸し出している記録用ドローンだ。そこに映る機人の影がわずかに見える。MSだ。しかし不審さを感じた。

 戦闘を避けているように見える。MAがいるのになぜ?Bチームの市街地の部隊は特攻覚悟で突っこんできている機体も多いというのに、間近で見ているのにどうしてこうも真逆なのか。そんな疑問の答えは装備にあった。

 

「……!これは」

 

 機種はマキインの最新モデルとされるマキイン・刃。しかしその背中にはこれまでに確認されているソードではなく、大型のアンテナが備わっていた。明らかに直接戦闘を考えていないデザインの装備。しかしこれではっきりしたことがある。

 

(そうか。BチームのMA出現後の異様な士気高揚はこれが原因)

 

 通信混乱状況で出現したMA。それを戦闘中のBチームがしっかりと把握できた一因がこれにあったのだと認識する。秘匿回線でも何でもいい。通信範囲拡張した上で通信役がいたから混乱はすぐに平定出来た。

 1つの疑問は解決出来た。だがそれでもMAが積極的な侵攻をしなかったのと、新たに通信役のMSが用意されていたのかの疑問には答えが見つからずにいた。

 

(通信役の機体。基地が崩落してからじゃ装備整備は出来るわけない。なら通信装備の機体が既に外に出ていた?早期警戒機ってことなら納得は出来る。でもこんなMA以外ほぼ稼働機が消えている状況で、なぜ非戦闘機がまだ残っているの?自分の命を顧みずに、この場に残る理由なんて……)

 

 そこまで考えたところで、一つの考えが思い浮かぶ。残る理由があるとすれば?こちらの想定する流れに意味はなくとも、残ることに意味があったのだとしたら。MAの動きも、関係があるのだとしたら……。

 脳裏に1つの考えが思い浮かぶ。だがそれを口にする前に、敵の動きが早かった。

 

『!!ネストより緊急入電!』

 

「どうしたの!?」

 

『現在、ネスト海上沖よりMS反応接近とのこと!MS隊が緊急発進したそうですが、敵には見慣れない新型機があるとのことで……』

 

 やられた!ようやく考え付いた意図に気づいたにも関わらず、敵に先手を許した。敵は既にこの作戦を察知していた。おそらく前々から考えていたあのルートのどれかで把握していたのだろう。攻め込んでくるタイミングで、同時にオーダーズ・ネストを攻め込んできたのだ。

 それならこれまでの疑問にも納得がいく。MAの登場と各地隠れ家の抵抗増大は戦力を集めるため、通信役は逐次状況を知らせるために離れた地点で待機し続けていた。的中はしていないかもしれないが、的を大きく外しているわけでもないだろう。現に元と深絵の2人の機体はそちらに掛かりっきりだった。

 

『ちょ、ちょっと!基地が攻撃を受けてるって本当なの!?』

 

「残念だけど、今まさに危機に陥ろうとしている……」

 

『クッ……だとしたら、これは囮かッ!』

 

 2人は動揺、あるいは舌打ちをして現状に苦戦する。動けるのは自分のチームだけ。だがすべて動かして他が崩れてしまえば大損失になる。ここは自らも動くほかない。すぐさまAチーム全体へと指示を出した。

 

「基地防衛にはAチームを分けて当たります。第6から第9はここに残ってBにいつでも加勢できるように。残りでここにいる第1から第3は私と基地防衛に回る」

 

『了解!』

 

「ここの指揮は加野に任せます。頼めるわね?」

 

『お任せを!』

 

 すべての隊員に指示を出した光姫は部隊の先頭に立ちロートケーニギンの飛行体勢に入る。遠目からでも戦闘の光が見える。爆発も起こっている。だが何としても黎人と光巴を、家族を守らなければいけない。

 覚悟を以って、呼びかける。

 

「ロートケーニギン、次元光巴、行くわよ!」

 

 紅のガンダムが飛翔する。その後を追って飛び立つソルジアの隊列。危急を告げるオーダーズ・ネストへ、光姫は機体を加速する。

 

 

 

 

『ミツキさん、オーダーズ・ネストへの移動を確認!指揮がAチーム第6部隊のカノさんに譲渡されました!』

 

 ジャンヌから告げられる指揮移譲の通達。しかしそれに関わる暇がないほどに元のシュバルトゼロガンダム・イグナイトはMAとの激突に集中していた。

 高加速状態の敵機に向けての拳の殴りつけ。それらを敵に受け止められ、あるいは弾幕で退散させられる現状。撃墜したくても出来ない状況が続いていた。

 

(埒が明かない……光姫に加勢したいけども、ここでエラクスを使うわけには……)

 

 ガンダムに圧倒的な性能向上を齎す蒼の輝き「エラクスシステム」。戦闘スキルを向上させた元でもある程度敵の動きを見切らなければ適切には使いこなせなかった。DNLで動きの先読みは出来たが、敵の速度が違う。直線速度ならエラクスにも匹敵する敵を相手に、ただ出力を増大させても負荷がかかり過ぎる。決定的な隙を見つけるまではエラクスを使わないのが得策だった。

 だがそれでは間に合わない。先程から感じる空気の流れの悪さ、光姫の顔が何度もちらついて、嫌な予感を感じさせている。世界を構成するDNが、まるで光姫の危機を知らせているかのようだ。

 

「こんなところで時間を喰ってられないんだよ……!」

 

 ファンネルも展開して敵の動きを縛る。フェザー・ブレイズからもレーザーを放った。

だが敵も機体を左右に揺らして回避しながら、尻尾のパーツを分離させて対抗してくる。敵意はあるが、生の感じではない。おそらくコンピューター入力式の遠隔操作システムだ。

 回避は容易い。だが一気に攻め込むタイミングがずらされる。一気に攻め込むタイミングを作るために、エラクスの使用は避けられないかもしれない。

 直後敵の動きが変わる。機体の前後を反転させた機体が、尾を先端にしてこちらに突っこんできた。

 

『攻撃パターンが変わった!?』

 

『にぃ、回避して!!』

 

 叫ぶ華穂。だがこちらとしては願ってもいないチャンスだった。

 

「今しか、ない!!」

 

 感覚を研ぎ澄ませる。そのまま敵の尾がシュバルトゼロの機体と交差した。金属のこすれる音がする。その光景に一瞬息を飲んだ華穂。

 

『にぃ……っ!』

 

 貫かれた。そう思ったのだろうが、実際は違う。肥大化・強化されたイグナイトの腕部が敵のランスを捕らえ、穂先を機体の左わき腹へと逃がしていた。

攻撃を間一髪回避され、そのまま慣性で押し進むMA。その後ろ姿に元は容赦しない。

 

「テイルバスター!!」

 

 バックパックに装備した尻尾の砲で敵の後ろ脚を兼ねたブースターを砲撃する。ビームは真っ直ぐブースターパーツを貫いた。火花が散り、誘爆を起こした。

すぐさまMAはブースターを切り離し、なおも掴むこちらをドローンの射撃が襲ってくる。槍を離す間際、こちらもフェザー・ブレイズを掃射してドローンを迎撃。被弾のショックでコントロールが乱れたのもありドローンは1機を残して全滅したのだった。

 態勢を立て直そうと急速離脱を開始する敵機。だがブースターを喪失した今、あの加速力はない。

そんな敵機に後れを取るようなシュバルトゼロガンダム・イグナイトではなかった。

 

「DNF!!」

 

『Ready set GO!DNF、「ディメンション・スティンガー」!』

 

 構えた腕にDNが収束していく。形成されたのは爪。Gワイバーンのパーツに似合う、高純度DNが爪の形を成した。

それは破壊をもたらす威力を秘めたもの。迷うことなく距離を詰めて見えた敵の背に向けて振るった。

 ビームに対しては恐ろしく厄介な性能を見せた敵の装甲。しかしそれも長くその場に留まり続ける光の爪の前では意味などない。甲羅を担った装甲は容易く引き裂かれる。連鎖した爆発の後沈黙するMA。重力に従って回転を加えながら既に廃墟となった住宅地へと落ちてゆく。

 カブトガニもどきは墜ちた。しかしまだ終わりではない。MAを撃墜して歓声に沸く回線から、隊長クラスと華穂に対してだけ回線を接続させる。

 

「蟹は落とした。後のこの場の進行は間島に任せる。俺はネスト救援に急行する」

 

『ここから、ですか……!?』

 

『持ち場離れるなよ、とは言いたいがここまで手の込んだことをやっているんだ。何があるか分からない』

 

 羽鳥も間島も懐疑的な意見を口にするも、急行に賛同した。距離の問題も、この機体なら解決できる。いや、この機体だからこそ解決できる。

 

「大丈夫、この機体の最高速度なら……!」

 

『イグナイターとエラクスシステム……。にぃ、私も行く!』

 

 顔を向けて同行を希望する華穂。一瞬戸惑った元だったが、その視線に気づいてそれを立てに頷いた。

 

『分かった』

 

最後の一人も二人と同じ考えだ。

 

『エヴォリュート・アップ、エンゲージシステム問題なし。行きますよ、ハジメ!』

 

 パートナーのジャンヌからの呼びかけに答える。

 

「あぁ!エヴォリュート・アップ、フルドライブッ!!」

 

 宣言するとすぐさま機体がDNの結晶に覆われていく。結晶に呑みこまれて割れた中から姿を現す、黒き竜騎士。

機体のウイングを動作させて機首をネスト方向に向けた。バックパックのエクス・ジェットスラスターには華穂のソルジアV2が両手でつかみ、しっかりと機体を固定させる。

機体の全スラスターを展開。更にエラクスシステムの作動を開始する。蒼く染め上げられる漆黒の機体。

 

「シュバルトゼロガンダム・イグナイター」

 

『ソルジアV2っ!』

 

『これより、オーダーズ・ネストへ緊急加速を開始する!』

 

 掛け声に合わせて機体はガーデンタウンを飛び去った。夜空の下を駆け抜けていく2機。後ろでしがみつく華穂の苦悶の声が聞こえてくる。

 

『ぐ、ぐぅ……!』

 

苦しいかもしれないが、今は我慢してもらうしかない。眼下の街が、空の雲、星が高速で移り変わっていった。

 基地へと急行する三人と二機。その中でただ一人、元は祈った。一足先に基地へと駆けつけた光姫が手遅れにならないように。

 

(頼む、間に合ってくれ……!)

 

 光姫の無事、そしてネストに残った者達の無事を願う。戦闘の火は更に燃え上がる。

 

 

 

 

 海上にて迎撃を開始したMSオーダーズの機体。しかしソルジアV2も含めた防衛部隊は先頭を担う次元覇院のMSに圧倒されつつあった。

 その機体を見て、敵パイロットが戦慄する。

 

『ど、ドラゴン!?』

 

 戦場には似合わない言葉。ファンタジックな単語を口にした敵を背部バックパックに装備された大型マニピュレーターが引き裂く。

 爆発の中から姿を現す機影。その姿は偽りなく、機械のドラゴンと言うべき異形の姿をしていた。

ドラゴンの頭を模した頭部。

バックパックの肥大化・鋭利な大型腕部。

 そしてパイロットの戦闘スタイル。

 

「さぁて、逃がさんぞ!!」

 

 咆哮するパイロット。その声の主は先日元と敵対した次元覇院の戦神官の1人、沢下判だ。

 新たなMS「マキシマム」を身に纏い、敵を一体一体握り潰す。味方はそれに合わせて進撃する。

 一方的な展開で追い込む。マキシマムの力は想像以上だ。ガンダムがいないのが残念だったが、それでも自分達が進み続ける限り、必ずガンダムは向かってくる。

 中でも次元光姫は格好の餌だ。これまでの鬱憤を晴らすほどの勢いを今こちらは持っている。「秘策」も用意した判に抜かりはなかった。

 そうして判の率いる次元覇院MS部隊はオーダーズの基地「オーダーズ・ネスト」まで侵攻する。忌々しい敵の本拠点、それを落とすことは「正義」である。沢下は信者達に命じる。

 

「信者達よ、我らの神に今まで楯突いた敵の総本山、残らず焼き払え!!」

 

『次元の灰塵に!』

 

 喜々として従い、攻撃を開始する信者のMS。爆発を立て続けに起こす敵拠点。建物から逃げ出す者達にも狙いを定める。

 これは報いだ。平和を謳ってきた自分達に歯向かい、それどころか否定した者達への最後の慈悲。それを自身の妹を殺した女が率いているのならなおの事。犯罪者を庇い立てする者達に正義などありはしない。

 ただひたすらに逃げる者達の中を見続ける判。人の間の隅々まで目を凝らし、遂に動く。

 視線の先には子を抱える者とそれらを囲う形で移動する隊員、MSの混成護衛部隊。その中に目的の人物がいた。

 MSオーダーズの全てを仕切る敵司令官、その敵司令官と悪魔の女の間に生まれた悪魔の血を引く魔女の卵。

 彼らを根絶やしにすべく、その手を伸ばす。

 

「その命、もらい受ける!」

 

『このっ。やらせるかよ!』

 

 護衛に付いていたソルジアV2が迎撃を開始。放たれたビームの弾丸が迫る。正面から喰らえば終わりだが、このマキシマムには問題ない。バックパックのアームが前方に掌を開いた。

 掌がビームを受け止めると、反射する様に敵へビームが返っていく。次元覇院が誇るビーム反射技術をこの機体もまた装備していた。

 反射したビームを避けきれず、被弾する敵機。距離を詰めて背部の腕部で敵の腕をシールドごと握り潰す。

 

「正義の前では、悪は無力!」

 

『づぁ!?』

 

「閃!っく、君もつくづく、しつこいな」

 

 司令の次元黎人は悪態を吐く。だが何と言われようと、これは正しき事。暴力的であっても否定するのに必要なら容赦なく与えるのが本来の裁きだ。それを再度告げる。

 

「悪を潰す、それは正義だ。特に何の罪もない俺の妹、柚羽を親の再婚相手に殺させた次元光姫は許しては置けん!神の代行人である我らが、貴様らの悪事を裁く」

 

 親の離婚で別れたかけがえのない妹。それを失った気持ちが分かるものか。妹を失って、失意の中にいた俺を救ってくれた「あの人」が教えてくれた真実。それを聞いて今ここにいる。

もう手が届くところまで復讐の達成は来ている。誰にも邪魔はさせない。腕部のクローを開く。

 しかし、それを邪魔する者が寸前で到着した。

 

『勝手な妄想で、私達家族を犯罪者にしないでよ!!』

 

「この声!」

 

 反射的に体が動く。大きく退避した直後、上空から目がけてビームキャノンが炸裂する。噴き上がる粉塵。視界が狭まる。

 ようやく来たか。判は昂る気持ちをそのままに戦闘態勢を維持する。煙が晴れて見えたのは救援に駆け付けた赤のガンダム。

 次元覇院の活動を幾度も邪魔した。

 そして柚羽を死に追いやった黒幕と聞かされた罪深き女。

 立ちはだかった敵に判の声が猛り狂う。

 

「待っていたぞ、悪魔の女、次元光姫!!」

 

『誰が悪魔よ。この狂信者の頭!!』

 

 MAXIMUMと赤の女王。次元覇院とMSオーダーズを象徴する二人が合見える。神と悪魔の決戦。今始まる。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。

ネイ「あのMA囮だったんですか」

そうだね。そういうことになるわけだ。

グリーフィア「まぁ大きいものほど人はそれに釘付けになるものよねぇ。ある意味人の欲とか危機管理能力に働くから」

ネイ「うん。でも沢下の言ってた、柚羽って……」

グリーフィア「おやおや~、これはどういうことかしら~作者君?」

それは……次回の投稿で明らかになるよッ( ゚Д゚)ということで今回はここまで!

グリーフィア「あらら残念。次回もよろしく~♪」


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EPISODE25 決行、墜ちる砦4

どうも、皆様。某森のゲームの様々な人のセンスに笑いつつ、今年夏に発売のエクストリームバーサスシリーズ家庭版最新作に釘付けの藤和木 士です。早くヴァリアント・サーフェイス触りてぇ(´ρ`)あとエクリプスフェース立体化おめでとう。

レイ「アシスタントのレイだよ~」

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです」

さぁ今回はEPISODE25の公開です。光姫、沢下の対決だ( ゚Д゚)

レイ「本当だよー。これまでにも散々辛酸なめさせられ続けてきた敵だもんね。光姫ちゃんがこの戦いを終わらせないと!MSオーダーズの最後の砦なんだからっ!」

ジャンヌ「ですね。是非ともこの戦いで沢下との因縁を終わらせてもらいたいものです」

それでは本編をどうぞ。


レイ「ねぇ、なんで今回台本キツめなの?砦って言葉をちゃんと使うとか」

それが重要だからだよ(^ω^)

ジャンヌ「……あれ、え、まさか」


 

 

「ママぁ!」

 

「もう大丈夫だからね、光巴」

 

 娘の呼び声にそう答える。黎人もその到着にホッと胸をなでおろしている。しかし事態はそれを許さない。

 

『赤の女王だ、撃てぇ!!』

 

 ロートケーニギンを視認して敵部隊が我先にと迫ってくる。光姫は肩部シールドを前方に向け、装着されたマシンガンを掃射して対応した。

 実弾に対し大きく回避を行う敵MS達。その間に右腕部に装備した盾と一体化した大型ビームランチャー「紋章の盾」を前方にいた沢下の機体へ向ける。

沢下の機体は逃げずに仁王立ちのまま、バックパックのアームユニットを開いてみせる。こちらを映すほどの鏡面を持った掌。敵の能力を光姫もある程度知っていた。だが構わず紋章の盾に装備されたアタッチメントビームランチャーを放つ。

 

「ぐぅっ!」

 

 反動が機体を襲う。直進したビームは敵のアームユニットを直撃。予想通り反射を行い返ってくるビーム。それに対し再度ビームランチャーを放つ。二度目の弾撃に跳ね返った弾丸が相殺される。

 その光景を見て確信する。どうやら跳ね返ってくるビームは特別強化されたわけではないようだ。それに見た限りではむしろ弱くなっているようにも見て取れる。打消しの後を見てそう思う。

 連射出力での試運転の一発を放ったのが功を成した。対して攻撃を軽々と跳ね返した沢下はその判断を中傷する。

 

『おいおい、まさか隊長を名乗っていて我らの力を把握していないのか?』

 

「何言っているのかしら。充分収穫はあったわよ?迎撃だってちゃんとしている」

 

『ふん、突発的な対応はエースの必須条件。そんなものは大した自慢にもならない』

 

「それはそれは大した自信なことで。けど、さっきの言葉、どういうこと?」

 

 挑発に対して挑発で対抗する。しかし光姫の気になったのはそれ以前に奴が放った言葉だった。

 指摘に対し、分かっていないのか訊き返す沢下。

 

『さっきの言葉?』

 

「とぼけんじゃないわよ。柚羽って、あなたまさか……」

 

 否が応でも気づくその名前。苛立った声音でその考えを肯定された。

 

『あぁそうさ。俺はお前に謀殺された間宮柚羽の兄だ!』

 

 思いもよらない関係が暴露された。柚羽の兄。生前聞いたことがある。柚羽には離婚した父親に引き取られた兄がいると。

 兄は別れる最後まで妹といると言ったが、両親の意向でそれぞれに引き取られたという。彼は柚羽の葬式にも参列したらしい。だが顔を知らなかった光姫は今ここでようやくその顔を知ることとなった。

 あまりに衝撃的な事実に動揺を隠せない。しかしそれ以上に光姫を混乱させたのは自分が柚羽の死を仕組んだという彼の言い分だった。

 

「兄って……けど、どうして私が柚羽を殺さなきゃいけないのよ!」

 

『しらばっくれるな!俺は柚羽が死んだあと、悲嘆に暮れる中で出会ったあの方に真実を告げられた……鈴川光姫、お前があの男を母にけしかけて柚羽を殺させたのだと!』

 

「言われたって、そいつがおかしいわよ!第一まだ二十歳にも満たない子どもが、どうしたってそんな手の込んだことを」

 

 あまりに飛躍した考えだ。普通そう言われたとしても信じる方がどうかしている。

ところがそれを沢下は信じた。こちらの言葉を意にも介さず信じるまでの流れを話し出す。

 

『あの方は予言した。お前がとある兵器に関わるということを。それがやがて大きな争いを呼ぶと!私はそれを防ぐため、あの方に従いモバイルスーツを暴走させた。これでモバイルスーツは開発中止になるはずだった!だがお前達は懲りずにモビルスーツと名前を変えて研究を続行した。愚かなことだ』

 

「愚か?なら今そのMSを使っているあなた達はどうなのよ!」

 

 MSの開発を愚かだというのなら、それを使わずに自分達の考えを主張するべきだ。今の彼らは口だけの存在。都合のいいことばかりを並べる人間だ。

 ところが彼は否定する。そしてあまりにも身勝手な言い分を主張する。

 

『それは神のお告げさ。モバイルスーツからモビルスーツへと名を変えたそれは、神の意向を受けて変わった。俺の行動が、世界を正しき方向へと姿を変えたのだと、あの方はおっしゃったのだ。だから何も問題ない!』

 

 自己中心的だ。自分が関わった。それだけで世界を動かしたなどと考える彼に、光姫は言いようのない嫌悪感を示す。

 その言葉に開発者である黎人も感情を露わにする。

 

「馬鹿げている……お前達のせいで、どれだけの人間が迷惑したと!」

 

 これまでに何度も武力行使を受けた側の怒りは計り知れない。それでもそれらを歯牙にもかけないと沢下は語る。

 

『迷惑?我らは神から授かった正しき平和の教えを説いているに過ぎない。迷惑だと言う方がおかしい。それにその流れに横入りする貴様らの、どこが正しい!殺人犯の者達の言葉ならなおさらだ』

 

「……言っても聞かない、いいえ。聞けないなら容赦する必要はないわね」

 

 これ以上の言葉は無意味だ。こうしている間にも基地は攻撃を受け、逃げる隊員達に被害が出続けている。

 間違った認識を正すには時間がなく、そして遅すぎた。ならばもう戦い自分達の身を守るしかない。例え親友の兄だったとしても、聞き分け出来ない彼を野放しに出来ない。

 黎人達に下がるよう伝える。

 

「黎人。先に行って」

 

「光姫!分かった。彼を生かしておいては危険すぎる」

 

「ママ……」

 

「大丈夫。ママは負けないから」

 

「……うん!」

 

 光巴も納得して黎人達はその場を離れる。直後沢下のサインで待機していたマキインが一斉に前へ躍り出る。黎人達を襲わせまいとロートケーニギンのドローンからレーザーを放射して阻む。

 

『ぐっ』

 

「Aチーム、量産型の相手は任せた!」

 

『了解です』

 

 雑魚をAチームの追従した部隊に任せ、自らは沢下と対峙する。紋章の盾後部からビームソードの柄を抜いて斬りかかった。

 

「はぁっ!」

 

『フン!』

 

 斬りこみを回避して逆にバックパックから取り出したビームソードで斬りかかった沢下。それを光姫も光剣を振り上げ受け止める。

 ビームとビームのぶつかり合いで火花が散る。振り払って一度距離を取る。シールドのマシンガンが狙いを定め弾幕を形成した。

 弾幕の雨あられを器用に避けていく沢下の新型。左手に構えたライフルで反撃してくる。こちらは大きく回避運動を行いつつも、避けきれない弾丸は機体の肩・膝に装着したQBユニットの防壁で防御する。

 何度も戦い合っているからか、お互いの動きはそれなりに分かっている。沢下の機体だけが強化されているわけではないのだ。

 そう考える光姫。しかし現実としては光姫に不利な状況だ。アタッチメントビームランチャーから放つビームは、いずれも相手のアームユニットで無効化。むしろこちらに向いて牙を立ててくる。強化装備が実質仇となる状況に陥っていた。

 

(一応、対抗策はある。でも今ランチャーを破棄するべき……?)

 

 紋章の盾に施された緊急時対策。それなら攻勢に出られる。だが使えば引き換えに性能が相対的にダウンする。

使わないに越したことはない諸刃の剣。だが今の光姫を直接カバーできる味方がいないのも事実。ならば、使うにしても最大限使ってから……!

 光姫はコンピューターに指示を出す。

 

「ドローンレーザー弾着位置変更、アタッチメントビームランチャー出力マキシマイズ、時間差射撃……開始!」

 

 ドローンが肩上部にせり出す。レーザー発振部を煌めかせるといくつものレーザーが沢下の機体に向けて伸びる。

 

『愚かな……自身の攻撃で散れ!』

 

 余裕を見せる沢下はバックパックのアームを開く。先程と同じく、掌に仕込まれたリフレクトシールドで跳ね返す気でいるのだろう。

 しかしそうはならなかった。ロートケーニギンの放ったレーザーはどれも沢下が駆る機体に着弾しなかったのだ。

 跳ね返す気でいた沢下も、光姫の狙いが掴めないでいた。

 

『何?どういうつもりで……!』

 

「こういうことよ!」

 

 動きの止まった機体。その一瞬が更に時間を生んで右腕部に装着された紋章の盾のチャージは完了した。最大出力を放出する。

 放たれた膨大なビームの量。真っすぐと敵機体へと伸びた。沢下はアームの掌を向けて防御する姿勢を崩さない。ビームはそのまま直撃した。

 拮抗するビームと機体。だが先程までとは違いビームは放ち続けている。敵の機体の周囲を蒸気が覆い出す。

 

『ぐっ……えぇい!』

 

 舌打ちをした沢下が機体を横へと逃がす。受け止めながらの緊急回避。ビームの圧に耐えられずに右アームユニットが接続部を半壊させてビームの奔流に呑みこまれる。

 残った左アームからビームが跳ね返る。しかしその威力は放出したビーム量よりも圧倒的に少ない光弾となっていた。放出直後の為相殺は出来ずシールドで防御する。着弾の爆発で視界が覆われる。

 

「くうっ……!さっきのあれは」

 

 先程の反射状況で理解した。あの反射性能には限界がある。周りに吹き出ていた蒸気のようなものも何か関係があるのかもしれない。

 いずれにせよこれは重要だ。すぐさま全機体のデータベースに映像を記録させた。しかし敵の勢いはまだ衰えていなかった。

 

『調子に乗らせはしない!この程度で収まる怒りであるものか!』

 

「まずっ!」

 

 煙を突っ切ってこちらを襲う斬撃。間一髪のところでシールドを構えて凌いだ。しかし想定外の事態も起こった。シールドに突き立てられたビームソードの切っ先がわずかにアタッチメントビームランチャーを裂いたのである。

 当初よりも完成度が高くなったことで搭載可能になったビーム砲。それでも多少の損傷で誘爆の危険性が生まれる。

 完全にダメになったわけではなかったものの、光姫はすぐに損傷したアタッチメントビームランチャーの破棄を行う。シールドのアタッチメントが外れ、ランチャーが地面へと落ちる。

 

「……このッ!!」

 

『ん?っ!?』

 

 パージと共にシールドで光剣を押し返す。すぐさまシールドを振り回す動作を行った。シールドを振り回す動作に見えるが、何かに気づいた沢下は瞬間的に避ける。同時に何かが熱で切断される音が聞こえてくる。

 落ちる金属片。斬られたのは沢下の機体の胸部装甲パーツだった。ダクト部分が小爆発を起こし、現実を知らせた。

 

『……よくも、俺のマキシマムをっ!!』

 

 機体名を挙げて怒りを沸き立たせる沢下。ロートケーニギンの振り回したシールドからはビームランチャーがあった根元から光の剣が出現していた。

 これこそ紋章の盾に装備された隠し装備、ガントレットビームソードだ。持ち手部分が端末となったこの兵装は近接戦に持ち込まれたことを想定して、光姫が要請した格闘兵装だった。攻撃を受けた直後の不意打ち、シールドを装備したままでの剣術を行うために。

 光剣を展開した状態で接近を開始する光姫。左手のビームソードも発振させて二刀流で攻める。

 

「はぁっ、このっ!」

 

『づっ!えぇい!!』

 

 沢下の駆るマキシマムも剣戟に応じた。ビームソード同士の激突が火花を散らす。

 本来光姫の駆るロートケーニギンは砲撃戦を想定した機体。接近戦は全く考えられていない。それは紋章の盾を装備した本形態でも同じだった。

 しかし光姫は劣る機体の性能差を抑え込んでいた。織り交ぜられるアームユニットの一撃も正確に回避して、大振りの一撃に合わせて的確に繰り出す反撃。さながら近接型同士の激突に謙遜ない激しさだった。

 光姫自身も近接戦闘訓練は受けていたが、それ以上に背負っているものの違いがあった。ここを抜けられれば夫と娘に危険が及ぶ。他の機体への迎撃を考えても、ここで立ち止まっては居られない。

 護るのだ。自分が、家族を。戦う力を持っている自分にしか出来ない。声を張り上げ戦意を高揚させる。

 

「はあああぁぁぁ!!」

 

『ぐっ!何っ!?』

 

 一気に弾いた敵。その手からビームソードの柄を弾き飛ばす。相打ちに機体頭部アンテナを斬り裂かれるが、構わずそのまま光姫はロートケーニギンの左手に握るビームソードを逆手に構えて振り下ろした。

 狙うのは発生器。素早く振り下ろした一撃だったが、敵の防御が間に合う。右手を犠牲にしつつも敵は致命傷を避けた。フィードバックの苦痛を受ける沢下。

 

『おのれぇ……!』

 

「まだ、もう一撃!」

 

『そうはいくか!』

 

 残る右手のガントレットビームソードも振り下ろす。ところがそれも、根元付近を先に抑えられて刃を外側にずらされる。

 双方動きが止まる。しかしまだ敵には右のアームユニットが残っていた。その右アームユニットがこちらの肩部を抑えにかかった。

 

『これでお前は逃げられんぞ!』

 

 逃げられないと豪語する沢下。機体の肩が握力で握り潰されていく。しかしそれはこちらとしても同じだった。

 

「それはあんたもよ!」

 

 機体肩部のドローンが分離して周囲に展開する。レーザーでも十分な威力は誇る。敵の体のみを捉えて撃ち抜ける。

 勝った。光姫は確信する。敵のアームはこちらの肩を捕らえている。敵の敗因は間違いなくこちらにもう反撃の兵装がないと考えてしまったことだ。こちらには自立式の射撃ドローンがある。

 もう敵にこの状況でまともに使える武装はない。左手もこちらのガントレットビームソードを止めている。肩のアームで握り潰そうがドローンは確実に敵を貫ける。もう反撃の手段などない。

 

 

 

 

 

 

 

 

はずだった。

 

『愚か者!』

 

 罵りと同時に衝撃が機体を襲った。何が起こったのか分からなかった。だが視界の下方から響いた振動だ。顔を向ける。そこに映った敵胸部から伸びたパーツ。

 砲身のように伸びて出現したそれがこちらの胸部に押し付けられた。背筋が凍る。咄嗟に後退しようとしたがそこで自分が逃げられないことに改めて気づく。

 

「しまっ」

 

 もう遅かった。

 押し付けられた砲身から放たれた光がロートケーニギンの機体を貫く。意識が、途絶え、痛みが生まれる。

 

 

 

 

 隊員達に護られながら基地から離れつつあった黎人達。その途中光巴が気になることを口にした。

 

「パパ、ママがしんじゃう……」

 

 自らの母親の死を予言するかのような発言。耳を疑った。

 なぜそんなことを考えたのか。不安から来る妄想だと娘を諭す。

 

「光巴、不安だからってそんなことを言ってはいけない。ママは絶対帰ってくる」

 

「でも……やっぱりこころがざわざわするの。ママがとおくにいっちゃう!」

 

 だが娘は心配だと言う。これまでにもこんなことがあった。以前基地が少数部隊に襲撃された時、直前に光巴が当時世話係だった女性に早く帰るように言ったことがあった。

その世話係は子どもの言うことだと思って笑って流していたが、襲撃時に避難した際流れ弾に当たって戦死した。光姫が当時の事を予知していたように思って不安になっていたのを覚えている。

 まるで死を予知したかのような発言。だが娘は更に驚くべきことを声に出す。

 

「くる、はじめおにいちゃん!」

 

「何だって?」

 

 半信半疑となりながら空を見上げる。すると蒼い光を解除しながら基地へと向かうシュバルトゼロガンダムとその背に捕まるもう一機の機体。その二機が基地方角へと突入する。

 本当に来た。光巴の予言としか思えないほどに的中する言葉。当の本人である光巴は抱えていた隊員の手を振り払って同じく基地の方へと駆けだす。

 

「あっ、こら!待って!」

 

「光巴!?」

 

「はじめおにいちゃん、おねがい、ママを……!ママ、ダメェ!!」

 

 駆けだした光巴が一際大きく叫んだ。悲鳴と取れる叫びと共に、基地に大爆発の音が響いた。あまりにもタイミングが良すぎる光景に黎人も青ざめる。

 

「なんだ……まさか!くっ!」

 

「し、司令!」

 

 まさか本当に……光巴を追いかけて黎人も隊員達の制止を振り切って向かう。隊員達も後を追った。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございました。砦は、墜ちた。

ジャンヌ「……あぁ。嫌な予感はしていました」

レイ「光姫ちゃん……こんなやられ方って……」

……まぁこれはある種の油断ですね。こちらを捕らえてきた時点でドローンによる射撃ではなく、ガントレットを分離させてかビームソードをいち早く手放すかしないと。

ジャンヌ「そんなこと言っても、黎人さんや光巴さんを残して逝ってしまわれるなんて……」

レイ「光巴ちゃんもそうだけど、これ元君また激おこ案件なんじゃ……」

それは次の投稿で分かるぞ~(゚∀゚)

レイ「その顔!止めなよ!?」

ジャンヌ「縁起でもない」

というわけで今回はここまでです。

ジャンヌ「次回、LEVEL2第2章最終話です。最後に何が……」


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EPISODE26 決行、墜ちる砦5

どうも、皆様。年度の締めも残すところ2日ですね。作者の藤和木 士です。

ネイ「アシスタントのネイです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィア~って先週中々ショッキングな内容だったんだけども」

先週の悲劇、今話であの後どうなったのかの結末が公開ですよ(゚∀゚)

ネイ「第2部のメインキャラクターが死んで何言ってんですかこの作者」

グリーフィア「鬼畜よねぇ。死んでその顔文字が本当に人の心があるのかどうか」

( ;∀;)なんていえばいいんだい……さぁ、急行した元とジャンヌ、華穂が見たものは、そして東響掃討戦の行方は?それではEPISODE26、LEVEL2第2章最終話をどうぞ!


 

 信じたくなかった。その光景を。

 エラクスによる急加速を終えて基地の戦闘へと介入した元。たちまちに数機撃破していく中で発生した爆発に気づいてその方向へと向かった。

 そこで見た。見てしまった最悪の光景。見慣れないドラゴンの意匠を持った機体。転がる武器の数々。そして爆心地にいた胸を焼き貫かれた見慣れた女性の姿。

 

『あ……嘘』

 

『光姫……さん!?』

 

 ジャンヌ、華穂も見て絶句する。空に浮遊して立ち尽くす一同。

 光姫が負けた。いや、負けただけならどれほど良かっただろうか。生きていたならまた会える。希望が残っていたから。

 だがしかし、眼下の基地地面に倒れる光姫にその可能性はわずかにもなかった。貫かれた胸からは既に大量の血が地面に広がっている。手もわずかさえ動いていない。心臓を撃ち抜かれたことが嫌でも理解させられる。

 まざまざと見せつけられるその一方、勝利した敵MSは正体と共に勝利を高らかに宣言した。

 

『聞け!今悪魔の女次元光姫はここに死んだ!この俺、沢下判が成し遂げた!』

 

『あの機体……沢下!』

 

 華穂の怒気に満ちた声が響く。そのまま沢下は続ける。

 

『だがこれは俺だけの勝利ではない。この作戦に参加したすべての使徒達諸君、そして我らが神の与えてくださった勝利だ!今こそ全ての悪を掃除するとき!ガンダムを破壊するのだ!!』

 

『おおおおぉぉぉぉ!!』

 

 回線、そして基地全体に響き渡る次元覇院のパイロット達の咆哮。一斉にこちらに向けて進撃してくる。

 

『にぃ!来るよ!』

 

『ハジメ、迎撃を!ハジメッ!?』

 

 敵を迎撃する華穂に対し、ただ立ち尽くすのみだったシュバルトゼロ。それをいいことに敵は次々とこちらに向かって発砲を繰り返す。

 異変に気付いて華穂がカバーしようとする。そんな様子を見て沢下は嘲笑い自身の成果を自負する。

 

『茫然自失となったか。まぁいい。これで柚羽も、私の妹も思い浮かばれるもの……』

 

 ビームが機体に着弾した、と思われた次の瞬間。

 

「―――――!!」

 

 蒼の閃光が軌跡を描く。ビームを回避してこちらに向かいつつあったマキイン、魁、刃の混成部隊を突破して地上にいた沢下の機体に肉薄する。

 

『な……』

 

 突破した敵機はいずれも胸部、次元粒子発生器の箇所に穴をあけられている。一瞬の接触で半数以上の敵機体を沈黙させた。

 肉薄したゼロオーバーモード状態のシュバルトゼロガンダム・イグナイターが沢下に迫る。

 

「うおおぉぉ!!」

 

『速い!?こいつっ!!』

 

 不意を突かれた沢下は機体を退かせて回避。しかし完全には回避できない。既に使い潰していたと思われる右腕を肘から下から両断した。

 ビームサーベルの軌跡はまだ終わらない。一歩踏み込み両手で振り下ろしたビームサーベルが背部より展開されたアームユニットの手の甲で受け止められる。

 両者激突した状態。元は問いかける。

 

「なんで、何で殺した!なんで柚羽の名前が出る!!」

 

『あぁ?決まっている。俺の妹間宮柚羽は次元光姫がけしかけた母親の再婚相手に殺されたからだ!』

 

「光姫がけしかけた……?ふざけるな!!」

 

 そんな馬鹿な話があるわけがない。相手の妄言にはっきりと否定して弾き飛ばす。

DNフェザーショットを放ち、追撃。狙いは雑に行ったため何発かが地面へと着弾する。

 否定する元。だが沢下はなおも光姫が黒幕だと語る。

 

『ふざけているのは貴様らの方だ!あの女にいつまでも踊らされて!あの方の偉大さも知らぬ愚か者が!理解できぬのならば散れ!!』

 

「!!」

 

 腰部からビームライフルを取り出し、左手で狙いを付けて撃ってくる。通常状態ならまだ張り合えただろうが今はイグナイター。それもゼロオーバーモード下にある機体は完全に攻撃を回避する。

 攻撃を回避しながら元は怒りを滾らせる。何が踊らされているだ。そう言った奴の言葉を真に受けて、都合のいいように解釈している男にそんなことが言えたものか。

 そんな奴に同級生を殺された。その怒りは遂に爆発する。

 

「お前が、ふざけているんだろうがぁ!!」

 

『ELACSSystem、Ignition!』

 

 怒りを込めたエラクスの蒼い炎が燃え上がる。更なる機動性を以って敵を圧倒、叩き潰していく。

 何度も、何度も斬り、蹴り、殴る。その性能はもはや圧倒的を超えて暴力的。かつて機竜大戦でも一度発揮した力の重ね合わせはそれ以上の苛烈さを持ち合わせていた。

だがそれは高負荷の連続を意味する。ジャンヌの方に既に影響が出つつあった。

 

『ぐ、ぐぅ……っ!はぁっ、はぁっ!』

 

 先程から続く連続機動も余計に負荷を高めていた。ところがその声は元には届いていなかった。目の前にいる最底辺の輩を殺すことしか考えていない。

 流石に不味いと見たスタートからも制止が呼びかけられる。

 

『おいハジメ!落ち着け!』

 

 ところがそれすらも今の元には鬱陶しく思えた。元はその忠告を無視する。

 

「お前に、お前なんかに、お前の心酔する奴なんかに、偉大さも正しさもあるものか!!」

 

『Ready set GO!DNF、「アッシュ・ヴァルスラッシュ・ハザードコンビネーション」!』

 

 振り上げた光剣に黒い竜巻が纏う。敵はここまでの攻撃で両腕部を失いアームユニットもほぼ半壊状態だ。しかし容赦などはしない。

 エラクスとゼロオーバーの加速を合わせて詰めると竜巻の光剣を斬りつける。何度も、何度も、何度でも斬って装甲を飛び散らせる。

 最後に光剣を敵の胸部へと突き立てる。竜巻ごと突き刺した機体が中から次元の竜巻に斬り裂かれていく。全方位に刃を飛び散らせて、機体は細切れにされた。爆発が機体を包む。

 

「フッー!フッー!」

 

 爆炎から姿を現したシュバルトゼロガンダム・イグナイター。息を荒くする元。撃破したものの、彼の怒りはまだ収まらない。

 狙いを華穂と交戦するマキイン達に向けようとした。が、次の瞬間機体のバランスが崩れる。

 

「っ!?何で」

 

 怒りのままに疑問を呈した。まだこの程度で、と思った元はようやく気付く。

 

『げほっ、がふっ!』

 

 回線から聞こえた嘔吐音。混ざって聞こえる声の主は同乗するパートナーの物だった。我に返る。

 

「ジャンヌッ!お、俺は……」

 

 イグナイターはパートナー、ジャンヌへの負担が非常に大きい。それだけでも負担なのに元は更にゼロオーバーモード、そしてエラクスの使用を行った。

 負荷の掛かるモードの多重使用とそれらの無断使用。いくらエンゲージシステムが改良されたとは言っても無茶だった。

 当然ジャンヌからも息も絶え絶えの状態で叱責を受ける。

 

『ようやく、気づきましたか……ハジメ……ッ』

 

「すまない、俺は……」

 

『本当、ですよ……?いくらミツキさんが、殺されたからって……私の事を無視してあんな無茶な連続機動。必死に制御してるこっちの身に、なってください。げほっ!』

 

 どれだけ罵られても仕方がない。そう思っていた元とは裏腹に、ジャンヌは厳しくもしっかりしろと激励を送る。

 

『それより今は、基地の敵を殲滅してください……ッ。敵は、まだ……』

 

「ジャンヌ……」

 

 叱咤激励を受けるが、それでも今のジャンヌに無理をさせるべきかと躊躇う。するとため息を漏らしたスタートからも同じく迎撃を優先された。

 

『ジャンヌの言う通りだ。今は迎撃に集中しろ』

 

「スタート」

 

『フン、何とでも言えばいい。だがお前の言葉も、今は説得力もない。これ以上パートナーを傷つけたくないならとっとと終わらせろ』

 

 ストレートな意見に反論も出ない。今の元自身が何を言おうと無意味。ならばすべてが終わってから、反省するしかないとスタートは言っている。

 納得しがたかったが、言葉を呑みこんで元は迎撃へと移る。とはいえ他味方機の奮戦で機体は少ない。華穂の支援にフェザー・フィンファンネルを飛ばした。

 

『くぅ!にぃ!?』

 

「任せてすまなかった。支援する」

 

 支援と言いつつも立ち位置は地上のまま。だがその背後に死体となった光姫を庇う姿勢を維持する。

 二機であらかた撃墜したところで、華穂が下りてくる。同じタイミングでこちらに駆け出してくる光巴、黎人の次元親子も見える。

 

「ママ、ママ!!」

 

「光姫……?光姫!!」

 

 すかさず光姫の下へと駆け寄る二人。華穂も元も、逸る気持ちを抑えて周辺警戒を行いつつ様子を聞き取る。

 どれだけ呼び続けても光姫は答えることはない。死んだという事実に黎人は震える声を抑えて現実を受け入れられずにいた。

 

「嘘だと言ってくれ……君が、こんな!こんなことになるために私はMSを作ったんじゃ、ないのに……!うああ、ぁぁぁ!!」

 

 悲しく響く叫び。何も言葉が出なかった。間に合わなかった事実が胸を抉る。取り乱す父親の黎人とは対照的に、幼い光巴はただ母の亡骸に顔を当てていた。

 しばらくして光巴は顔を上げて言葉を紡ぐ。

 

「……うん、分かったよママ。はじめおにいちゃん、まだおわってないよ」

 

「終わって、いない?」

 

 唐突に告げられた戦いが終わっていないという発言。確かにまだ少数の次元覇院の部隊が散り散りに残っているが、それでも隊長機、あの沢下判は間違いなく殺したはず。機体の残骸だってある。

 それ以上に幼い子どもがまだ終わっていないとはっきりと呟く現状に、気味の悪さを感じる。全てを見透かされているような、歳不相応な冷静さに。

 しかし、誰もこれ以上は起きないと思っていた矢先、それは起こった。海上方面から光が放たれる。それは上空で戦っていたマキイン、ソルジアをすべて呑みこんだ。爆発が空を瞬かせる。

 

「なんだ!?」

 

『き、基地南西海上!海の上に、三つ首の竜が!』

 

『三つ首の竜って……。え、何あれ!?』

 

 馬鹿な話を、と言いかけていた華穂が絶句する。元もそちらに目を向けて目を見張る。

 

「あれも……MA、なのか?」

 

 海上に現れた三つ首の竜。それは機械で体が作られていた。クリムゾン・ドラゴニアスよりも小柄ながら、それ以上に異質さを備えたそれは明らかにこちらに敵意を向けていると言えるほどに、その眼でこちらを捉えていた。

 そしてその竜の中にあると思われるスピーカーからあの男の声が響き渡る。

 

『どうだ!これが我らの決戦兵器、オウ・ヒュドラだ!』

 

「沢下、判!?」

 

『何で、あいつは死んだはずだよね!?』

 

 黎人と華穂がその生存を訝しんだ。元も確かに奴は殺したはずと機体の残骸を再度見る。

 あるのは機体の残骸のみ。だがそこで何かが引っかかる。あるはずの物がない。MSを装依したなら撃墜した時に必ずわずかに残るはずの物が、そこにはないことに気づく。

 死体だ。光姫が死体となったのなら、同じく敵も死体が残るはずなのに、その死体はどこにも見当たらなかった。

 普段は気にもしなかった瞬間の異変。敵もそのカラクリを自慢げに明かす。

 

『我らは得た!MSを操りながら、決して死ぬことのない神の御業を!ドローン操作を応用した、コントロールポッドからのMS運用を可能とする「マリオネッターシステム」。それを得た我らは、死ぬことなく、世界の敵をただ葬ることが出来る。貴様ら正道を阻む悪魔には到達することのできない高みに、我らは達したのだ!!』

 

 MSの遠隔操作。理屈などをかっ飛ばしても、それが本当なら敵は死ぬことなくMSを操れるということ。これまでMSに装依して戦い続けてきた自分達とは圧倒的に違う強さ。死を克服したとも取れるその宣言はさながら勝利宣言のようだった。

 自分達も成しえていない技術を得た次元覇院の成果に黎人は愕然と地面に手を突く。

 

「そんな……MSを遠隔操作など。これでは、死んだ光姫はどれほど愚かだったと……」

 

「……お前がそんなこと言うのかよ」

 

『にぃ』

 

 勝手に失望する黎人を叱責する。まだ負けていない。ここで諦めればたちまち彼らのような戦争をゲーム感覚とする危険な思想が誕生する。

 

「何が死なない兵士だ。前線で命を賭して戦う者達を嘲笑って、得た勝利なんて中身はない。あるのはそんな形だけの勝利に酔いしれた狂人たちの自己満足だ」

 

 これまでに散っていった命への冒涜ともなりかねない彼らのシステムを否定する。敵のMAオウ・ヒュドラは最後の抵抗者であるこちらに向けてその大口を三つ開く。

光が瞬く。シュバルトゼロガンダム・イグナイターはスラスターを噴かせて前へと出た。基地丸ごと吹き飛ばすつもりなのだろうが、そんなことはさせない。

 

『果てろ。悪よ!!』

 

「っ!!」

 

 光が放出される。それに合わせ、シュバルトゼロガンダム・イグナイターもDNFを繰り出す。

 

『Ready set GO!DNF、『ダブルディメンション・ブレイカー』!』

 

 両手から繰り出す高エネルギー砲撃が、敵の砲撃と真っ向から撃ち合った。衝撃と共にエネルギーの放射が辺りに散った。

 

 

 

 

 シュバルトゼロガンダム・イグナイターと敵の砲撃は互角の勝負と言えた。敵は三門のビーム砲で、こちらは二門の腕部ビーム砲からのDNF。むしろ出力だけならこちらの方が上。

 のはずだった。しかし競り合うビームは徐々にこちらが押されつつある。なぜ。

 

「ハッ!ハァッ!」

 

 既に、ジャンヌ自身が限界だった。ハジメにああ言ったものの、負荷が体を蝕んでいる。朦朧とする意識の中、無我夢中にイグナイターの全出力管理を行っていた。

 

(持たせなきゃ……あれを、潰すまで……は!)

 

 出力に波が生じるのを抑え込む。機体側から多数のエラーが検出される。

 

『ジャンヌ……!このぉ!!』

 

 ジャンヌの限界にハジメも気付いて早期に決着させる様に出力を上げる。ぶつかり合うビーム。同時にそれぞれのビームの放出が終了した。

 被害算出、しようとしたがその前に機体のエヴォリュート・アップが解除される。同時にイグナイトパーツが強制的に分離される。

 

「あぅ!そんな……」

 

『イグナイター……強制解除か』

 

 システムがパイロットの保護を優先した。分離して再度機竜形態へと組み直されたGワイバーン。

 一方で敵の機竜オウ・ヒュドラは口部を閉じて冷却態勢へと入る。代わりに尻尾を前方に向けて光を収束させていた。

 

「高エネルギー反応……まだ来るぞハジメ、ジャンヌ!」

 

 スタートに言われハジメが機体を立たせた。ジャンヌも制御に入ろうとした。だが出来なかった。

 

「あっ……」

 

「ジャンヌ!」

 

『ジャンヌ?どうした、おい!』

 

 電子空間で倒れる。もう体中が耐えられなかった。それでも意識だけは保とうとする。敵の砲撃は待たずして発射された。

 放たれた一撃は先程よりも弱いながら、こちらを呑みこまんとする。シュバルトゼロガンダムでは間に合わない。ハジメも機体制御に努めるが、動作は重い。

間に合わない。そう思われた、はずだった。

 Gワイバーンがこちらのカメラに顔を向けた。

 

『グァウ』

 

「ワイバーン……?」

 

 まるで別れを言うかのような顔の見せ方。倒れながらも視界の先まで移動したコンソールに映ったその顔。次の瞬間Gワイバーンは収束されたレーザーに向かって飛び込んだ。

 

『Gワイバーン!?』

 

 ハジメが叫ぶ。直後Gワイバーンから球体のエネルギー場が形成された。球状のフィールドはDNウォールではない。周囲の歪み方は以前次元移動をした際に見た次元空間に近い。

 Dトラベルシステムを用いての次元領域形成による防御。この時点でそれに気づく者はスタートを除いて誰もいない。それがどれほどの負荷を掛けるのかも。次元世界そのものを防御に使用してレーザーから二人とその後ろにいた三人と遺体一つを護る。

 拡散したレーザーの束が周囲を焼き焦がしていく。それでもGワイバーンが作り出したフィールドによりレーザーは全て拡散した。

 しかし代償は大きかった。

 

『グ、グアグ……!』

 

 フィールドを展開し終えたGワイバーンから爆発が起こる。大きな爆発の後、小爆発が連鎖していく。

 

「ワイバーンが……」

 

「Gワイバーン、すまないな」

 

 爆発を起こして機能を停止した機竜。もうイグナイターにはなれない。なるにしても再製造が必要で今の戦いでは出来ない。

 それ以上にジャンヌ達の中で、共に戦い続けてきた相棒とも呼べる存在の喪失に悲しみが生まれないはずがなかった。

 

『クソッ、クッソぉぉぉぉ!!』

 

 ハジメが機体を起こす。反撃を見せる構えだ。しかしながら既にこちらは満身創痍。シュバルトゼロガンダムでさえも今は突破が困難のように思えた。

 ジャンヌは祈る。

 

(お願い……どうかハジメに力を……)

 

 これまで幾度となく絶望的な状況に遭遇してきた。それでもハジメとシュバルトゼロガンダムはそれを超えてきた。ジャンヌは信じる。きっと超えられると。今の自分にはそれしか出来ないから。

 そんな思いが一つの軌跡を呼び込んだ。

 

『え?な、何?』

 

 カホの戸惑いに満ちた声。続いて機体に何かが接続される音が響いた。機体のモニターにはバックパックの側面に何かが接続されたとの表示。そして機体DNフェイズカーボンの変色開始が行われる。

 機体外部でこの時起こっていたのはミツキのロートケーニギンが装備していたアクセラレータドローンが背部ハードポイントに接続され、変容を起こしていたこと。機体のカラーリングが黒に加えて赤色が入っていく。

 まるでロートケーニギンを取り込んだかのような姿へと変化していく機体。ジャンヌはその様子を機体の名称変更でわずかに感じ取っていた。

 

「機体コード……Crimson ZERO?」

 

 クリムゾンゼロ(真紅の零)。そう読み取れる名前を冠した機体が攻撃態勢に入る。

 

『Ready set GO!DNF「クリムゾン・イレイザー」!』

 

 機体の前方に変容したアクセラレータドローンが各部を展開、前方に向け砲身を晒す。シュバルトゼロ改めクリムゾンゼロも腕部をドローンにかざしてエネルギー供給を行う。

 ドローンのエネルギー制御回路が稼働していく。溜めの後それを膨大な粒子ビームへと転換して解放した。

 解放されたビームは基地壁面、海上を抉りながらオウ・ヒュドラに向かって伸びる。オウ・ヒュドラ側も再度使用可能になった三つの口部ビームキャノンを束ねて発射、激突する。

 互角に競り合うビーム。しかしそれも一瞬の話。勢いのままクリムゾンゼロのDNFが敵MAのビームを負かしてその巨体の半分を呑みこんだ。

 ビームにより焼かれた三つ首の機械竜。爆発を灯してその巨体が海へと沈んでいった。発射終了と共に変容したアクセラレータドローンは排気して再びバックパック側面へと戻る。

 MA撃墜により戦闘は終了した。したが、結果は決して良いものではない。ハジメの後悔の声が火の収まらない基地で響いた。

 

「クソォ……畜生!!」

 

 拳を地面へと打ち付ける。

 

 

 結果として東響掃討戦の目的は果たした。ガーデンタウンの地下施設は完全に沈黙。東京都心の隠れ家も全てを暴き、一掃もされた。

 それでもオーダーズ・ネストの壊滅は決して目を逸らせない損失だった。同時にSABER隊長である次元光姫の死も、小さくない損失だった。

 参加した隊員達はこの日を忘れなかった。屈辱を受けたこの日を。それでもまだ終わりではない。

 反撃の灯はまだ消えていない。

 

 

第2章 END

 

NEXT CHAPTER AND NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。怒りの感情に、シュバルトゼロは紅く染まったっ!

ネイ「やっぱり元さんやりきれない思いが……っていうか光姫さんの機体の武器が付いて色が変わっただけですよね?」

いや、武器もGワイバーンから受け継いだエヴォリュート・アップで変容を起こして少し変わっているよ。ビーム量とかも全然違うし。

グリーフィア「明らかあのバケモノと互角に張り合える出力出していたものねぇ。けどGワイバーンがこれでお役御免とはね……フォーンさんにバレたらどうなることか」

ネイ「帰れなくなっているよね、マキナ・ドランディアに」

まぁ壊れていることも再び世界超えない限りはばれないから、バレナイカラ(;・∀・)

グリーフィア「まぁいいわ。けどこれは第3章どうなるのか見えた気もするわねぇ。かたき討ちというか、逆襲というか」

その決戦の舞台はいかに!ってところから次章は始まるね。意外とすぐだけども。それでは今回はここまでですっ。

ネイ「次回は黒の館DNです」

グリーフィア「それと用語設定集も第2部用の物を公開する予定みたいねぇ。所謂作者のメモ帳だけども」

やめないかっ(;・∀・)

ネイ「次回もよろしくお願いします」


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黒の館DN 神騒乱勃発編 第5回

どうも、皆様。藤和木 士です。

今回は黒の館DNの神騒乱勃発編第5回と用語設定集3の投稿になります。
まずは黒の館DNの投稿です。
本作では初登場となるMA2機、そして沢下判の駆ったあの機体の紹介です。クリムゾンゼロに関しましては後々の紹介に回しましたので楽しみにお待ちいただけると幸いです。

それでは黒の館DN、どうぞ。


 

 

士「さぁ今回も始まります黒の館DN!波乱と怒涛の展開となったLEVEL2第2章の締めくくりを今回もやっていきますよー!作者の藤和木 士です!」

 

レイ「波乱っていうか……うん、光姫ちゃん頑張ったのにね……アシスタントのレイだよ……」

 

士「あ、あれー(;´・ω・)」

 

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです。……作者。ガンドさんの時もそうですが、なかなかメインキャラクターの死は心に来ますよ……」

 

士「あ、うん。ですよね(;・∀・)」

 

レイ「光巴ちゃんっていう子供にショッキングな結末を見せてさぁ……これ後々トラウマにならない!?」

 

士「そ、そこは何とも言えないなぁ。でも見てて分かるかもだけど、光巴ちゃんの感性って割と特殊というか、環境が環境だったから考え方も違うから割とダメージ少ないですよ」

 

ジャンヌ「確かに……やけに落ち着いているって言いますか」

 

士「ちなみに光巴ちゃんは蒼穹のファフナーシリーズの美羽ちゃん的なイメージで書いてます。元君の到着とか光姫の死を感じ取ったりっていうのはそこからアイデア得て流れ作りましたし」

 

レイ「その内元君の機体を受け継いだりしないよね?ザインの如く」

 

士「んーそれはどうだろう(´-ω-`)さてでは前置きもここまでに、今回は機体紹介だ!紹介するのは無論あのMA達とMS!」

 

ジャンヌ「リムル・ファイターとオウ・ヒュドラ、それにマキシマムですね。LEVEL2で多々言及されていたMAXIMAMという単語はマキシマムそのものを指していると見て間違いなさそうですよね」

 

レイ「まさかそのまま機体名だとはねー。ってあれ?元君のあの機体は?」

 

士「文字数_(:3 )∠」_」

 

レイ「あっ(察し)」

 

ジャンヌ「それではMAリムル・ファイターから紹介です。どうぞ」

 

 

ZHMA-R01

リムル・ファイター

 

・東響掃討戦において西東響ガーデンタウン地下基地に次元覇院側が用意した大型試作MA。パッと見はカニのハサミが付いたカブトガニである。全高およそ7メートル。基本的にMAは大型となればなるほど操縦人数が必要で、本機においては3名での搭乗が基本。メインの第1パイロットが機体制御、第2パイロットが火器管制、そして第3が後述するドローン操作を担当する。機体カラーは焦げ茶色と橙。

 戦闘機にあたるMAであるが、その性能は戦闘機を凌駕しており、次元粒子発生器を複数搭載したことで高出力ビームの使用を実現。更に甲羅部分は次元覇院の防御技術であるリフレクトシールドとなっており、防御は完璧。衝撃にもある程度強くなっている。

 ハサミのパーツはヒート素材となっており、近接攻撃に使用可能。内側に折りたたむことで高出力ビーム砲兼ブースター「スティング・バスター」に切り替えられる。近接戦はこれと周囲の機銃で行う。

 もう1つの特徴である尾を模したテールユニットには射撃用ドローン「シェル」が4基付属した大型可動ランスが備えられている。

 モデルとしては機動戦士ガンダムSEEDDestinyのザムザザー、その大元である機動戦士ガンダムのビグロであるが、同時にカブトガニの要素をアプリゲーム「アリス・ギア・アイギス」の大型ヴァイス「リムルインバス」より掛け合わせて設定している。作者曰く「こいつら意外と似てるから合いそう」とのこと。

 

 

【機能】

・次元粒子発生器×3

 機体内部にはMS用次元粒子発生器を複数内蔵する。これらによる高出力化で機体の機動性、高出力を実現している。

 

・リフレクトシールド

 機体甲羅部分を構成するビーム反射素材。マキイン・刃の物は衝撃に弱かったが、本機の物はそれを踏まえて重厚に作られ、更に元々のMAの装甲厚から割れてもビームをある程度凌げるようになっている。

 

 

【武装】

・高出力ビーム砲「スティング・バスター」

 機体前腕を構成する大型ビーム砲。ハサミ型のヒート兵装である「クラブ・ハンマー」と併設された兵装である。前方に向けた際の出力はさることながら、下方へ向けることで死角をある程度カバーする。接近戦時もその大きさから敵MSを簡単にひねりつぶせるほどのパワーを持つ。また後方テールランス使用の為ビーム砲状態ではブースターとしても使用が可能。

 モデルはザムザザーの4脚ある脚部ビーム砲兼クロー。ただし本機の後方にあたるパーツはブースターとしての機能のみとなっている。これは大型化による冷却装置搭載が可能となっても4脚分はカバーできないための弊害。

 

・キャノン砲

 機体前腕上面に搭載される実砲。弾数はそれぞれ20発ほど。可動域は上下にわずかのみなので実質スティング・バスターの上方をカバーする形となる。

 

・レーザーアーム

 機体の前腕と後ろ足の間に設置されたレーザー砲。カブトガニの足というには比率が小さすぎる大きさ。主に下方に回られた際の迎撃という側面が強く、スティング・バスターで狙いきれない敵を撃つ。また甲羅の面に向けての発砲も可能で、防御しつつ攻撃を行える。

 前後脚部4基はザムザザーをベースにしたものだが、本兵装はリムルインバス側の兵装をモデルとしている。

 

・フレキシブル・ブースター

 機体後方脚部を構成するブースターユニット。次元粒子発生器の内2基をそれぞれ内包する。4発のノズルスラスターをまとめており、計8基のブースターの最大加速力はシュバルトゼロガンダム・イグナイトとほぼ同等。

 

・マシンキャノン

 機体各部に備えられた実弾兵器。対空砲火を担当する。全部で合計8門備える。MA基準の対空機銃の為、MSのマシンガン並の火力を誇る。

 

・テールランサー

機体後部に伸びた尾を構成する可動式実体槍。後述する射撃ドローン「シェル」のプラットフォームも兼ねる。

 可動域があるものの、実際は尾を敵正面に向けての突撃・刺突がメインとなる。本来なら突撃時に防御用フィールドが形成されるはずだったが技術不足により不可能となってしまっている。それでも威力は充分で、代わりに搭載されたランスの可動部完全固定状態でその弱点もカバーしている。

 

・射撃ドローン「シェル」

 テールランサーの根元側面に接続される遠隔操作端末。4基を装備する。シェルの名の通り貝、特に巻き貝をモデルとしており、先端部がレーザー砲、後部の広い部分がバーニアである。

次元覇院側で初となるオールレンジウエポンとなっているが、操作方法はDNを通信に用いたコンピューターと手動コントロール併用型のオールレンジシステムとなっている。第3パイロットが操作を担当する。

 レーザーの出力はMSのビームライフルと同程度で、それが本体の弾幕と合わせて襲い掛かってくると言えばかなりの脅威。実際加速性能と合わせてMSオーダーズ側で互角以上に対抗出来たのはシュバルトゼロガンダムだけである。

 

 

ZHMS-03MX

マキシマム【MAXIMUM】

 

 

・東響掃討戦と同時並行して行われた次元覇院の侵攻作戦「プロジェクト・ゴッドリトリビューション(神の天罰計画)」にて投入された新型機。これまでのマキインタイプとは違う、竜の頭部に似た形状にゴーグルセンサーを搭載したヘッドと、バックパックに接続された巨大な腕部が特徴的な機体。曰く「次世代を作り出す次元覇院の傑作機」である。マキイン・刃は本機のテストベッドを兼ねて作成された(主にリフレクトシールドの)。名称は極限を意味するマキシマムより。マキインよりも高性能性を表すために名付けられた。機体カラーは黒にオレンジのラインとこれまでの次元覇院機とは真逆の色の配置。

 特徴的なバックパックの腕部は手の甲部分が重装耐ビームコーティングの施されたシールド、そして掌がリフレクトシールドを張り巡らせた大型クローとなっている。加えて本機の兵装はビームライフルなどに様々な技術を加えており、原型となったマキイン・刃を超える性能を持ち合わせて実際赤のガンダムことロートケーニギンを撃破した。

 本機の性能を以ってMSオーダーズ側を制圧すべく、本機は150機近い数が本拠地で量産、続くプロジェクト・ホリンの為の兵となった。また頭部のパーツ形状は全く同じではないもののドラグディアのMSドラグーナと同じ竜型モチーフであることをのちに元は違和感を抱いている。

 機体コンセプトは「機動戦士ガンダムSEEDDestinyのアカツキとGのレコンギスタのジャイオーンの掛け合わせ」。これに竜の要素を加えたのは先述した通りのドラグディアとの関連性と、同じく背中に巨大な腕部を持つ、カードゲーム「デュエルマスターズ」の機竜型クリーチャー「超竜ラセツ」の要素も加えたため。

 

 

【機能】

・リフレクトアーマー

 バックパックのアームユニットの内側に張り込まれたビーム反射装甲。リフレクトシールドを装甲化した。元来リフレクトシールドは機体の増加装甲として開発された節があり、最終的には機体全体をこの装甲で覆った鏡のように全てを映し出す機体を作ろうとしているらしい。

 

 

【武装】

・ビームライフル

 銃口の側面に板状のバレルパーツが取り付けられたビームライフル。右腰部に装備される。

 いたって普通のビームライフルだが出力最大のマキシマムモードはこの世界のMS相手には驚異的な威力でシールドも貫通するほど。ただしバレルに出力制御を依存しており、最大出力は3発までが限界。

 

・MS刀「光臨(こうりん)

 機体左腰に装備されるMS刀。次元覇院の機体では本機が初の帯刀機体となる。立ち位置としては刃におけるライオットブレイドと同じ対リフレクトシールドシステム対応機となるが、そちらよりも主兵装としての主軸から外している。これはバックパックの兵装であるリフレクトパワーアームにその役目を大きく委ねたことが起因しており、その分こちらが使い難い兵装として特化した形となった。

 名称モデルは他者の来訪を敬う形の言葉に神の降臨を掛け合わせたもの。

 

・ビームガン

 左腕部に装備されるビーム兵装。籠手のように装備されている。威力はかなり低く、せいぜいけん制程度。ただし強度の弱い関節あるいはセンサーに当てることが出来れば隙を作ることも。

 

・アームバックパック

 本機における主兵装にして防御兵装リフレクトパワーアームを装備したバックパック。側面にパワーアーム、中央下部にバーニア、中央上部にセンサーとそれを挟み込む形でビームソードの柄を差している。

 本機の機動力をこのバックパックが平凡的な機動性を保っているので推力はかなりのものを誇る。アームユニット喪失時には倍以上の推力が得られるとも。

 中央ブロックの外見モデルはガンダムビルドファイターズのビルドガンダムMK-ⅡのビルドブースターMK-Ⅱ(元来のバックパック含めて)。意外とアームユニットなしだと平凡的なガンダムのバックパックに近い外見にもなる。

 

・リフレクトパワーアーム

 バックパックの両サイドを構成する、多目的アームユニット。本機の主兵装である。手の甲は耐ビームコーティングの施された多重装甲、掌には受け止めたビームを跳ね返すリフレクトパネルを張り巡らせている。防御重視の装備に見えるが腕部自体も巨大な質量兵器であり、殴りつけるだけでも脅威。加えてその名の通り掴むことも出来、そのためにアームの指部分は先端にヒートブレードが取り付けられている。なお本来ならブレードはビームクローとする予定だったが、ジェネレーター出力が割り振れなかったためこちらとなった。

 威圧的な効果も併せ持つ兵装だが、それを生かして他兵装で闇討ちすることも本機の戦法の一つである。本兵装と後述する兵装によりロートケーニギンが撃墜、次元光姫が戦死する。その後シュバルトゼロガンダム・イグナイターの猛攻を本兵装で防ぐが、怒りの感情に呼応して出力を向上させたシュバルトゼロには無意味だった。

 武装モデルはジャイオーンのビッグアーム。

 

・ビームソード

 バックパックに2本差すビームデバイス。通常のビームサーベルより高出力の光剣を形成が可能。ただしビームサーベル以上にエネルギーを喰い、また使用制限も厳しい。本機において連続使用は2分程度が良いところ。冷却に同じ時間が掛かる。

 

・メガ・バスター

 胸部装甲を開放・砲身展開して放つ高火力ビームキャノン。本機における隠し武装。ジェネレーター直結式で威力は本機の中で最大。位置の関係上正面にしか放てないが威力も考えれば十分である。

 胸部装甲にカバーが取り付けられていること、バックパックのアームユニットによる威圧感からして本兵装に気づくのは至難の業であり、奇襲性は想像以上に高い。何よりアームユニットにより敵を拘束してから本兵装で貫くという必中とも呼べる攻撃法が強烈。この戦術によりロートケーニギンが撃墜された点からしても納得だろう。なお本兵装がかなりのエネルギーを喰うため、一時期は次元粒子発生器を2基搭載する所謂ダブルジェネレーター仕様を考案されたものの、量産機であることを優先して仕様は破棄。ただし続く決戦用ハイスペック機にはその仕様を部分的に採用する結果となった。

 

 

ZHMA-R02

オウ・ヒュドラ

 

・東響掃討戦と同時に次元覇院が起こした「プロジェクト・ゴッドリトリビューション」において、マキシマム撃墜後に出現した対要塞用決戦兵器。三つの首を持つ、四足歩行の竜型MAである。操縦は4人で第1パイロットが指揮と中央頭部のターゲット、第2が右頭部の操作と機体制御、第3が左頭部の操作と対空監視、第4が出力制御と機体制御を担当する。全高は20メートル近くとかなり大型。

 リムル・ファイターと違い完全に砲撃特化したMAで機体には多数のビーム兵器を備える。搭載する次元粒子発生器も胴体に3基、首それぞれに1基ずつの計6基。単純な出力ではシュバルトゼロガンダムにも迫るほど。移動の為に水中航行が可能で襲撃時もレーダーを掻い潜って現れた。

 見た目が怪獣っぽいがそれと謙遜ないほどに強力なMAである。だがマキシマム撃墜後の後詰としてオーダーズ・ネストに砲撃を仕掛けたが一度目はイグナイターがパーツを消耗させながらも拡散・消失、二度目の砲撃時には怒りに呼応してロートケーニギンの武装であった「ヴァルプルギス」を取り込んだ黒と赤のシュバルトゼロガンダムが放ったDNF「クリムゾンイレイザー」で相殺、呑みこまれて撃破されてしまっている。大型兵器でありながらあっけなく撃墜された本機に、果たして救いはあるのだろうか。

 機体コンセプトは「キングギ○ラのMA化」。怪獣っぽさはここからきている。元々メカ化もしているものの、こちらは完全に機械となっており、機械の竜を纏うシュバルトゼロガンダムと機械の竜そのものである本機とで対比させている。またイメージにはヤマタノオロチも取り入れており、メカニックにはアプリゲーム「アリス・ギア・アイギス」よりヤマタノオロチモチーフの四つ首の大型ヴァイス「ヒュドラ級」からも参考にしている。再生こそしないものの、戦力はかなりのもの。

 

 

【機能】

・次元粒子発生器×6

 本機稼働の為、次元粒子発生器は胴体に3基、頭部にそれぞれ1基ずつ搭載する。この高出力により砲撃戦でもエネルギー切れは少ない。

 

 

【武装】

・ビームバルカン

 機体各部に備えられた対空機銃。ビームライフル大の連弾を周囲にばら撒き弾幕とする。

 

・口部メガビームキャノン

 口の中に格納された強化型ビーム砲。三つ首のそれぞれに内蔵されている。長距離砲撃が行え、なおかつ冷却機能も大きさに任せて詰め込んだシステムにより制御。ただしそれでも完全ではなく、改良が望まれる。

 

・レーザーポッド・ウイング

 レーザーポッドと飛行用ウイングを兼ねたユニット。翼の中部をレーザーポッドが構成し、それらをコウモリの羽のようなウイングおよびウイングスラスターが繋がっている。ただしウイングとはいえ機体自体の自重もあり、専ら移動の為のもので戦闘機動には適さない。その為予測される反撃を防ぐ意味で弾幕代わりのレーザーポッドが取り付けられた。ウイング自体にはマキシマムで取り入れられたリフレクトパネルを張り込むという案も考案されたが、マキシマム量産が優先されたためこうなった。

 

・クローユニット

 機体の足の先にそれぞれ装備された近接戦用クロー。3枚ずつを4本の足に装備する。巨体から繰り出される一撃は重い。ただし本機が遠距離戦を主眼としているため専ら地上での接地強化に用いられている他、併設されたフロータースクリューユニットのガードも兼ねている。

 

・フロータースクリューユニット

 本機の脚部底部に備わった浮遊・水中推進用ユニット。通常時は地上移動の為の次元粒子による浮力発生器となるが、真価を発揮するのは水中。次元粒子とスクリューを用いて水中の移動を可能とする。水中移動時には全体に次元粒子を膜として形成し抵抗を減らすため、移動はスムーズとなる。

 

・テイルレーザーポッド

 機体の尾を構成する武装。対空弾幕を形成する。ただし先端部のエネルギーチャージャーにレーザーを収束させることで極太レーザーを放つことが可能で頭部を使えない非常時の砲撃、あるいは回り込んだ敵への不意打ちがメインとなる。

 なお基地を襲撃したのは試作1号機だが、その1号機の本兵装には内部にとあるスペースが存在する。それはマキシマムをベースに更に開発で誕生した機体の兵装で、その兵装は「神器」として本機にも格納できるようにしていたという。これはヤマタノオロチの登場する話においてヤマタノオロチの尾を切った時に出現したと語られる「天叢雲剣」の話を再現した物。本世界においてもそれは同じだが、少々違う点も存在する。いずれにせよ国のトップを象徴する神器という仕様から、次元覇院はその剣を持ち、それを倒しても剣は手に入らない=主導権は自分達にあるとする意味合いを持つものと思われる。

 

 

 

ジャンヌ「以上が紹介となります」

 

レイ「オウ・ヒュドラのオウって……」

 

士「王ですね」

 

レイ「そうですねみたいに言わないで」

 

士「すまぬ」

 

ジャンヌ「ていうか作者が明確なMA設定するのこれが初めてだったり?」

 

士「そうだよ。ネプ小説でアプサラスもどきは出してるけどそれでも大きさの設定がばがばになりそうです。絵描かないから意味ないけど」

 

レイ「あはは……。でもこれだけ戦力を投入してきたってことは次元覇院も作戦は完全に知ってたってことだよね」

 

士「その通り。情報が筒抜けている可能性を作中でもちらちらっと出ているから、第3章ではまずその摘発から始まります」

 

ジャンヌ「怪しいのは政府関係者……ドラグディアの時もそうでしたが、どうしてこう政府関係者がそんな国民を欺くようなことを」

 

士「まぁ、ね。そこは置いておくとして、それでも次元覇院も怪しい事は進めているわけですよ」

 

レイ「というと?」

 

士「ほら第2章始まった直後の円卓の会議」

 

レイ「…………あ、プロジェクト・ホリンって何!?」

 

ジャンヌ「思い出しました。確かにそんな単語が……」

 

士「プロジェクト・ホリンとは一体何なのか?果たして元達はそれを食い止めることが出来るのか?第3章はそれが軸となっていく予定です」

 

レイ「次元覇院なんかやっちゃえー!」

 

ジャンヌ「光姫さんとネストをやられたんです。このまま黙っているはずがありませんよね。元さんならなおさら!」

 

士「というわけで第3章「決戦 ホリン・ダウン作戦」もよろしくお願いします。ではまた次回の黒の館DNで~」

 




今回もお読みいただきありがとうございます。

次章にて次元覇院との対決が大詰めを迎える予定です。とはいえLEVEL2最後の章である第4章も控えています。どうなるのかは第3章を引き続き読んでいただけると幸いです。

それでは短いですが黒の館DN神騒乱勃発編第5回はここまでです。同日投稿の設定資料集3も合わせて、またこれまでの振り返りも是非。

では次章は私の都合でいつもよりやや遅れるかもしれませんが、よろしくお願いします。


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機動戦士ガンダムDN 用語設定集3

機動戦士ガンダムDNの用語設定集3となります。

今回はLEVEL2の用語を中心に設定を公開します。MSオーダーズや次元覇院の成り立ちなどこれまでの話と合わせてご覧いただけると幸いです。
もし作中の不都合などあれば言及して頂けるとありがたいです。これを書いていてもたまに間違えて設定してしまうこともあり得るので。

それではどうぞ。


 

 

・次元粒子

 次元世界第10番「地球」においてのディメンションノイズの呼び方。DNジェネレーターである「次元粒子発生器」から生み出される。

 技術的にはマキナ・ドランディアのものよりも粒子生成能力は劣っているが、それでも同レベルの赤色の粒子を放出する。元のMSオーダーズ加入後はディメンションノイズとも呼ばれる。

 

・MSオーダーズ

 モビルスーツを開発する最大手にして、MS犯罪の取り締まり・被災地救助・復興支援を行う民間軍事・軍需組織。

 主要メンバーに次元黎人と言ったMSの前身「モバイルスーツ」開発者とその関係者がおり、モバイルスーツ暴走事件後、同じことが繰り返されないようにするべく設立された。

 民間・軍事用MSの開発をそれぞれ行っており、様々な場での活躍を支援している。またMSの軍事運用サポートも行っており、日本の自衛軍はオーダーズの指導の下MSの軍用配備を整えつつある。政府とも連携しており、いわば政府直属の民間軍事組織といった位置づけ。国と共にMS犯罪を行う、あるいはMSを武器に使う組織に立ち向かう。

 

・次元覇院

 次元粒子により解明された外の世界「次元世界」の存在により誕生した新興カルト集団。次元粒子をもたらしたとする神を信仰する「次元覇教」を広めるべく、次元粒子により稼働するMSで武力による布教を行う。

 発祥は西日本であり広まった背景には、近紀地方の悪質なカルト集団がかねてから行っていた「周りの者達による嘘での意見の抑え込み」を合理的かつ強制力を持たせるべく、次代の流れを考えた結果、MSを次なる武器として目を付けたところにある。

 西日本を中心に日本各地で悪質な勧誘を行っていたカルト集団が融資し、組織化・MSの開発を行った。次元覇院の教義によるとMSは神からの贈り物であり、その製造工程は秘密となっている。

 

・教柱

 次元覇院における「教祖」のようなもの。それぞれ役割に特化した立場の人物であり、今のところ確認できるのは統括、MS開発、戦闘指揮官となっている。

 

戦神官(いくさしんかん)

 戦闘における小隊長を務める者に贈られる称号のような物。二つ名に該当する。この称号を持つものは優れた戦闘才能を持っているということの裏打ちであり、必然的に強敵となる。

 作中では沢下判や大型MAのパイロット、そしてスパイの女性などがこれに該当する。

 

・自衛軍

 本作における日本政府の軍。現実における自衛隊にあたる。

 軍と付いている通り軍事的な行動が可能となっている。だが自衛の姿勢は変わっておらず、主に友好国の支援が主となる。

 軍へと変えることに一部政党は紛糾したが、軍化反対派のほとんどが他国のシンパであることが分かり国への背信行為から国外追放。軍化が新たな野党との協議で決まった。

 現在ではMSの導入も決定し、教練もMSオーダーズ主導の下行われている。だが古い兵器に固執しMS導入を認めようとしない部隊もそれなりにあり、次元覇院との小競り合いの多い近紀と忠部付近のそれらの部隊へのMS配備勧告が度々行われている。

 

・MS所持法

 MSの民間運用等に合わせて制定された、MSを正しく扱うための法。免許としての側面も持つ。

 全50条からなる法律で、基本となるものが10条、非戦闘用MSのものが20条、戦闘用MSのものが20条となっている。またMSは基本的に20歳以上の免許を持つ者に限定されていたが、のちの改正で18歳からとなり、更なる改定によるMS装依年齢下降も視野に入っている。

 

・モバイルスーツ暴走事件

 2020年に三枝県四河市の四河グランドホテルで起こった世界初のモビルスーツ事故に数えられる事件。プロローグでの出来事である。

 四河グランドホテルにて行われていた市立四河中央中学校の成人式後のパーティーにて、本邦初お披露目となったモバイルスーツを乱入者の男がハッキングで暴走させた事件で数十名がモバイルスーツの暴走、あるいは男の取り押さえなどで負傷し、1人が死亡扱いの行方不明となった。

 この事件でモバイルスーツの信用性が落ちるも、モバイルスーツ共同開発者のツィーラン・パック博士の尽力でモビルスーツと名称を変えて存続、現在のMS技術を安全なものへと確立させた。

 この時モバイルスーツ「ガン・ファイター」に装備されていた試作グレネード「シード」を搭載させた開発チームは投獄されている。

 

・次元障害

 この世界における超次元現象の事。この世界においては神隠しもその一種とされている。ただし明確に次元障害の被害者となったのは元が第1号である。

 

・カラーシリーズ

 MSの種類の1つ。MSオーダーズが開発したモビルスーツである。別名ガンダムシリーズ。

 MSオーダーズの技術の粋を集めて製作する機体群で、今後の量産機のための試作機の位置づけである。特徴として機体カラーが特定色系統で染め上げられていること、そして頭部が額にV字ブレードアンテナと2つのデュアルアイセンサーを備えていることである。

 なぜマキナ・ドランディアの救世主たるガンダムと同じ顔をしているのかは全くもって不明だったが、開発に携わったツィーランからの話によって、それが夢の中に現れた救世主ガンダムによるものだったと判明する。

 

DNL(ディメンションノイズリーダー)[2]

 元とジャンヌの持つDNLの力は以前よりも増している。元の敵意察知能力は世界を構成する物質・現象の動きを正確に把握することが可能なレーダーシステムに匹敵するほどで、向かうところ敵なしと言える。作中では戦闘時以外にギャンブルの当たり確率の算出を出して、稼ぎに使用していた。またジャンヌは元と同じ敵意察知の他テレパシーによる親しい者達との意志疎通を可能にできるようになっている。

 元の世界ではまだこの能力覚醒者は現れていないものの、光姫と黎人の娘「次元光巴」がこれの影響と思われる殺意に関係した心理的圧迫を伴った敵意感知、味方の察知、死者の声を聞く(と思われる)精神感応を発揮しつつある。この例からのちに本世界では次元感応者と元達の世界での呼び名であるDNLで本能力者を呼ぶようになった。

 

・四ツ田基地

 愛智県の大型湾である名護屋港に浮かぶ基地。自衛軍の西側からの防衛における重要な基地となっている。司令官は須藤千。

 この基地のトップはいずれも優れた指揮能力を持つが、その高さ故にMSの性能を過小評価しがちでありMSの配備を行っていない。そのせいで何度も危機に陥っているものの、いずれも撃退できていたことからまったく周囲の耳を貸さなかった。故に第2章にて本気を出した次元覇院により壊滅。基地上層部は惨殺されたものの、司令官を含め基地隊員は半数程度が無事。今後はMS運用を前提とした基地へと改革していくことになった。

 

・ラウル神聖教

 作中から40年程前に活動していた新興集団。次元覇院以前の宗教団体であり、活動はメディアまで支配していた。表向きは経済に安泰をと非常に良かったが、裏では脅迫、暴行、恫喝、殺人等々次元覇院と大差ないことを行っていたカルト集団だった。

 最終的に都心に教団保有の軍用戦車を侵入。政府への恫喝に向かったが装甲の貫通王の二つ名を持ったスナイパー三滝境二郎の活躍で対物ライフルによる狙撃で戦車すべてを沈黙、中にいた信者達を拘束。やがて教祖たちも恫喝の罪などで逮捕、死刑となって10年以上前に執行されている。

 

・東響掃討戦

 第2章中盤にて発令された作戦。簡単に言えば東響都に潜む次元覇院使徒をすべて外へと追い出すというもの。自衛軍とも追い出しを行う。

 作戦は3つに分かれており、東響都内の潜伏する次元覇院の追い出しとオーダーズ・ネスト方面の封鎖・防衛、そしてそれらに武器となるMSなどを供給する東響23区外縁、西東響ガーデンタウンの攻略を行う。オーダーズ・ネスト防衛を担当するAチーム隊長が次元光姫、追い出しのBチームを蒼梨深絵、そしてガーデンタウン攻略のCチームを黒和元が指揮した。

 MSオーダーズのほぼ全戦力を投入した本作戦は、相当数の次元覇院使徒を殲滅、あるいは追い出した。しかしMSオーダーズも同時進行していた敵のネスト攻略作戦によりオーダーズ・ネストを陥落一歩手前まで追い込まれ、更に次元光姫が死亡する。なお本作戦の主目的には司令次元黎人と次元光姫の娘次元光巴の安全を確保することも目的となっていた。

 

・西東響ガーデンタウン

 東響23区北西外縁に位置する大型住宅地の名称。江渡時代に作られたという水路を復活させて作り出した辺りが水路に囲まれた住宅地となっている。しかしその実態は次元覇院の東響侵攻前線基地である。

 水路に囲まれた一帯が基地であり見える部分は通常の住宅地だが、地下には次元覇院のMS整備・管理ファクトリーとなっている。500機近いMSがバックル待機状態であり、使徒も相当数存在したが、東響掃討戦の第1段階である地下陥落によりその8割が戦闘前に機能損傷、圧死した。その後はMA「リムル・ファイター」の出現により住宅地諸共完全崩壊している。

 

・モビルアーマー

 モビルスーツの技術を基に、戦闘機に次元粒子発生器などを搭載した大型機動兵器。名称が出てこないが、マキナ・ドランディアでも同様の兵器は存在した。

 基本的に人型ではなく、異形の姿をしている。またMSより大きく、大きさと破壊力で敵を圧倒する。操縦などは複雑化しており、複数人が電子化して操縦する。バックルも必要人数が集まって複数機で現実化させたり、そもそも機体待機状態の隣接した装置で装依を行う必要がある。

 略称はガンダムシリーズでもおなじみMA。

 

・モビルスーツ遠隔操作システム「マリオネッター」

 モビルスーツの装依システムをベースに次元覇院が作り出したモビルスーツ遠隔操作システム。次元覇院曰く「神の赦しを得た証」。

 元来MSに憑依する形で人間が入って操作する装依システムを採用する本世界だが、これはMSをコントロールするコアユニットを外部コントロールポッドから信号を送って操作する。このコントロールポッドはMS装依状態の電子空間と同じ空間を形成し、MSに装依している時と変わらないような操作性で、安全な場所からMSを操作する。これにより遠隔地での戦闘が可能になっただけではなく、元来考えなくてはならない死を恐れずに作戦遂行を可能とする。

 MSの安全性の意味では非常に理想的なシステムだが、元などはこれを「倫理観を欠如させる、戦闘・戦争を遊びと捉えた危険な考え方を助長するもの」であると非難している。またメタ的には本システムが同じような非難をキャラクターより受けた新機動戦記ガンダムWのモビルドールシステムを参考にしており、人の意志が介在するとしても扱う人間が死を恐れなければ平和はあり得ないことを意味している。名称のマリオネッターも劇などで使用される糸繰り人形から取っており、本システムが平和を考える上で危険なものであることを密に示している。

 

・プロジェクト・ゴッドリトリビューション

 次元覇院がMSオーダーズ側の作戦である「東響掃討戦」と同時に展開した作戦。簡単に言ってしまえばオーダーズ・ネスト攻略である。名称は「神の天罰計画」の英訳。

 「協力者」による情報漏えいで次元覇院の前線基地並びに東響中の隠れ家を急襲されることを知った次元覇院。しかしそれは同時にネストの直接的な戦力が短時間ながら不足することを意味するのを理解した彼らは、前線基地を犠牲に本丸を落とすことを決定。自軍の守りを万全としながら敵地へと戦力を送り込めるモビルスーツ遠隔操作システム「マリオネッター」を利用して大型MA「オウ・ヒュドラ」と共に専用潜水艦にMSを詰め込んで送り込む。結果として無防備にも近いネストを急襲、大半を完全撃破されるがパイロットの死傷者はオウ・ヒュドラのパイロット達のみで作戦を完遂した。

 



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第3章 決戦 ホリン・ダウン作戦
EPISODE27 反撃の狼煙1


どうも、皆様。作者の藤和木 士です。緊急事態宣言って本当にあるんですね……(;・∀・)

ネイ「アシスタントのネイです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよ~。もうどこも深刻な事態ねぇ。私達グラン・ロロの世界もついこの間大きな事件が終わったっていうのに」

アニメの中だけの話と思っていたらねぇ。まぁ実際にそういった対応があるからこそアニメとか小説でも宣言がされたりするわけなんですが。ともあれガンダムDNLEVEL2第3章、始めていきますよ~。

ネイ「基地陥落、からの再起になりますね」

グリーフィア「反撃の狼煙ってタイトルもシンプルねぇ。まぁそれ以外に相応しいのもないと言えるけども」

失ったリーダー。それでも元君達は立ち上がる!( ゚Д゚)新たなガンダムと共にね!というわけで本編をどうぞ。


 

 

 オーダーズ・ネスト陥落と光姫の死は瞬く間にMSオーダーズ全体へと広まった。

 Bチームの深絵と夢乃は回線口で聞いて愕然とその場にへたり込む。

 

「嘘……だよね……そんな…………光姫ちゃん、これ終わったらパイロット引退するってっ、言って!うぁぁぁぁ」

 

「お姉ちゃん……っ。まだ光巴ちゃんもいるんだよ……なのに」

 

 Cチームの後を任された間島と羽鳥も、状況に苦い思いを吐く。

 

「次元覇院を倒しても、私達は負けた」

 

「まさか、基地襲撃を相手も企てていたとはな……。しょうがなかったと言っても、これでは何も言えないな」

 

 悲しさ、くやしさ。オーダーズの面々は敗戦ムードだった。だがそれをもっとも強く受けていたのは間違いなく夫の黎人だった。

 愛する者を失い、また敵との技術差も思い知らされた。その上で彼は政府官邸へと招集された。

 傷心の状態。それでも彼は断らなかった。彼が止まれば、また多くの犠牲者が出てしまう。

 それに戦ってくれた者達の帰る場所を新しく提供しなければならない。政府に仮拠点の要請を行う。妻と共に戦った彼らに最低限それだけは絶対に果たさなければならない。

 司令官が鞭打って責務を果たしに行く中、変わり果てたネストで元と華穂も自分達の成すべきことを行っていた。

 

 

 

 

「じゃあ、ジャンヌを頼みます。ジャンヌ、無理させてごめん」

 

「むぅ……今度、あんな勝手なことしたらアップルパイ作ってあげませんからね?」

 

「……あぁ、本当にごめんな」

 

 オーダーズの救護部隊の用意した担架に乗せられたジャンヌに謝罪を行う。

 幸い、ジャンヌは少量の吐血のみで重傷はなかった。装依解除後に倒れ込んだ彼女に元も息が詰まったが、無事で一安心だ。

 しかしそんな状況を引き起こしたのは元の不注意が原因だ。もう怒りや悲しみに呑まれないと決めたはずだったのに。これではフォーンに示しがつかない。

 ジャンヌだってパートナーを辞める、あるいは口を利かないと言っても不思議ではなかった。

 それでも彼女がそうではなく、アップルパイの件で許したのはその怒りに理解を示していたからだろう。

 犯してしまった仕打ちに許してくれた彼女には頭が上がらない。改めて感謝を告げる。

 

「でも頑張ってくれてありがとう。今は少しだけ休んでいてくれ」

 

「ん……今はそうさせてもらいます。後で色々と言いますけど」

 

 その体を軽く抱く。感謝の抱擁。後はオーダーズと自衛軍の救護班に任せた。

 ジャンヌを見送ってからネストの跡地を改めて見渡す。酷い惨状だ。戦闘の激しさがすぐに分かる。

 変貌したシュバルトゼロガンダムがMAオウ・ヒュドラを撃ち抜いた先は大きく下がえぐり取られている。波が起こるたび、海水が徐々に入り込んできていた。

 改めて思う。あの砲撃は普通の火力ではない。ジャンヌの制御に頼らず、あそこまでの出力を出せたあのシュバルトゼロガンダムは一体何なのだろうか。

 どちらにせよ、今後はあのガンダムを使っていかなければならない。もうイグナイターはないのだから。

 ネストの被害を確認していくと、見知った顔がこちらに来る。華穂だ。自衛軍の者と話し終えた華穂はこちらに気づいて向かってくる。

 

「にぃ、ジャンヌさんはどうだった?」

 

 ジャンヌの容体を聞いてくる華穂。元は大事には至っていないことを伝える。

 

「あぁ、今医療班の人達に運ばれていった。負荷の影響は少ないみたいだ」

 

「そう。でもにぃももうあんな無茶なことやっちゃダメだからね?昔からにぃは誰かが死ぬと周りが見えなくなるんだから」

 

「そうだな。またやっちまった……もうやらないって決めたのに」

 

 華穂からもきつい言葉が飛んでくる。しかし言われても仕方のないこと。むしろそう言ってもらわなければこちらが辛く感じる。

 今だけは遠慮なく毒舌を吐いてくれる妹に感謝している。

兄への誹りを終えると華穂はネストの被害状況について言及する。

 

「それはそれとして、やっぱり基地の施設も、人員にも結構な被害が出てるよ……」

 

「あぁ、今見てきたところだ。格納庫もかなりやられているな」

 

 格納庫には出撃できなかったMSの残骸がいくつも見られた。予備の兵装やパーツもあり、いずれも使えそうには思えない。

 完全な大打撃。満足に動くには他基地からの補給が必要だ。

 もっともそれ以上に今の自分達にはそれを確保しておくための基地がない有様だったが。

 

「ネストはほぼ使えない。幸いなのはこの機に乗じて急襲してくる東響の次元覇院部隊がいないってことだよ」

 

「まぁ俺達が追い払ったり撃破したりしたからな。それでも隠れているって可能性も少なくない。引き締めないと」

 

「うん。早く黎人さんが仮拠点もらってくるといいんだけれど」

 

 拠点がなければ再び活動することも困難だ。一刻も早い黎人の仮拠点確保が望まれる。

 するとそこに基地に残っていた葉隠が新堂沙織と共にやってくる。彼らは二人を見つけてすぐにやってくる。

 

「華穂、元。こんなところに」

 

「葉隠閃?どうしたんだ、そんな慌てて」

 

「新堂さんまで来て……何かあったんですか?」

 

「あぁ、華穂。次元覇院がらみで少々厄介なことになった。深絵達には既に集まってもらっている。詳しくはそちらで」

 

 新堂に言われ、共に付いていく。

 付いて行った先の仮設テントには既に深絵、夢乃を含め、間島といった今回の作戦で部隊指揮にあたった各部隊の隊長達が集められていた。

 揃ったところで、新堂は深刻な事態を告げた。

 

「集まってもらって申し訳ない。先程次元覇院から以下の発表があった」

 

「次元覇院が……?」

 

 次元覇院の発表、と聞けばおそらくはオーダーズ・ネスト陥落についてだろう。

 その大方の人物達が予想した通り、新堂が内容を話す。

 

「『我々次元覇院は東響の使徒達の犠牲のもとに遂にMSオーダーズの拠点を討ち取った。悪魔を撃ち取った我々は、今後の世界平和のためにプロジェクト・ホリンを決行する』と言った」

 

「プロジェクト、ホリン……?何なの、それ」

 

 深絵が尋ねる。

 深絵だけではない。

 その場にいたオーダーズメンバーは多くが頭の上に疑問符を浮かべているようだった。

 すると葉隠がそれを明かす。

 

「簡単に言えば、人工衛星の打ち上げだ。だがただの人工衛星じゃない。次元粒子を動力にした攻撃性能を持った宇宙基地。これを用いて、あいつらは地上を支配するようだ」

 

「宇宙基地……!?」

 

 人工衛星による制宙圏制圧。それが次元覇院の狙いだった。

地球の軌道を回る人工衛星ならば、現状地球上のどこからでも攻略は困難だ。逆に次元覇院の人工衛星からは下に向けて放てばいつでも簡単に、無差別にも攻撃が出来る。

 古くからの宇宙開発競争も、こういったことの独占を防ぐために各国がにらみを利かせていた。MSによる宇宙開発計画が始まっている現在も同じだったが、次元覇院のそれはその膠着状態を大きく打ち破るものだった。

 

「人工衛星ホリン、MS運用も視野に入れた次世代人工衛星。おそらく、報告に上がっていたマリオネッターシステムはこのための物だろう」

 

「マリオネッターシステムが?」

 

 華穂が聞き返す。

 

「あぁ、MSの遠隔操作技術、それが宇宙からも利用可能だとすれば、MSだけを地球に降下させて戦闘地帯を制圧できる。あるいは地上のMSにアクセスして、自分達は宇宙に居ながら地上の防衛拠点を護ったりすることだってできるかもしれない」

 

 新堂は苦い顔をして返答した。

 MSの遠隔操作技術。その為の計画。その実現した時のビジョンを新堂は語る。

 

「もしこれが実現すれば、確かに世界は平和なのだろう。だがそれは上空からの恐怖を突きつけられ、反逆を許さない、彼らの思想を強制された世界となる」

 

「そんな……そんなのダメだよ!」

 

 深絵は強く叫ぶ。そんな事をさせてはならない。彼女はその悪夢のビジョンを否定する。

 

「それって、つまり華穂ちゃんと同じ思いをする人が生まれるってことだよ!それが嫌だって言って、それだけで光姫ちゃんみたいに殺される?そんなのって、ないよ……!」

 

「深絵さん……っ」

 

「かほちーと同じことに……私も、それは許せない!それだけじゃない。お姉ちゃんを勝手な思い込みで殺して、それでそんな勝手なことを言うのも!」

 

「同感だな。やつらの好きなように、させてたまるかっての」

 

「言うまでもない。奴らには報いを受けさせなければ」

 

 華穂、夢乃、間島、羽鳥……その他メンバーも同意していく。

 元もまた、心に決まっていた。

 

「俺も同じだ。あいつらの行っている平和は、停滞させるのと同じことだ。前へと進歩し続ける人の流れを、愚かと言うのなら俺がそれを否定する。そんなものは打ち上げさせない、絶対に」

 

 拳を強く握りしめて、言う。そうと決まれば今からでも動かなければならない。全員へ提案する。

 

「黎人を待っては居られない。俺達も今から出来ることをやろう」

 

「にぃ……そうだね」

 

「だけど、動くと言ってもどうするの?MSの補充をしないといけないし、代わりの拠点だって必要だよ。そのためには黎人君に頑張ってもらわないと」

 

 今の内から動く、というのは理想であって出来るわけではない。だが出来ることならあるはず。

 すると葉隠がもう一つの案件に述べる。

 

「ならこれを黎人、いや政府のもとに届けに行こう」

 

「これは?」

 

 葉隠の差し出した書類を見る。

 書かれていたのはこの原因となったとある事実だった。

 それに気づいて深絵達にも渡して確認させる。

 

「これ……!」

 

「そういう、こと」

 

「あぁ。早くこの事実を告げなければ、また動かれる、あるいはもう動いているのかもしれない。まだ戻らないのも奴らの妨害だとすれば……」

 

 次元覇院の手の上かもしれない。となれば早く伝えなければいけない。すぐに向かうことを告げる。

 

「なら行こう。これ以上かき回されてたまるか」

 

「だね、にぃ」

 

「分かった。じゃあ残りの人達はいつでも移動が出来るように準備させて。水戸君、車の手配を」

 

『了解!』

 

 すぐさま各々、行動へと取り掛かった。

 

 

 

 

「本作戦によって、次元覇院の東響侵攻の拠点はほぼすべて制圧しました。しかし、同タイミングで起こったオーダーズ・ネスト襲撃。決して小さくない反撃を受けたことから、次元覇院側も何らかの行動を起こすつもりであることが考えられると思われます」

 

 政府官邸に多くの政府官僚が集まる中で、黎人は作戦結果を報告する。作戦開始から作戦終了までの全行程、動員数、MS数、被害状況などまとめてだ。

 黎人自身、これほどの被害を受けたことに未だ立ち直れてはいない。

 それでもこうして立ち上がり、官僚たちの前で話すのは光姫の死があったからだ。

 

(光姫……君が護ってくれたものを、僕が受け継ぐ……!)

 

 支えてくれた妻はもういない。残った隊員達の為、光巴に心配させない為に自分だけはしっかりしなければ。

 司令官と親の二枚ばさみとなりながらも目の前の責務と向き合う。一方それを聞いていた官僚たちも様々な意見を交わし合っていた。

 

「ふむ、防衛大臣の言っていた通りの流れだな。基地の戦力を裂きすぎたというのもあるが、もし戦力を配分できていなかったとあれば、逆に制圧部隊が壊滅していたと考えれば妥当な結果か」

 

「総崩れにならなかっただけマシ、とはよく言ったものです。ともかくこれで都内全域の警戒も解除してよいでしょう」

 

「ですな。まったく、武装勢力を排除しても民間人の被害があったのでは話にならない」

 

 被害の大きさに苦言を口にする者。

 

「まだ、彼らが何か動くのであるのならそれに対する対抗策も考えなければならないのでは」

 

「だがどこでだ?そしていつ?分からないのなら容易には動けんぞ」

 

「そもそも、MSオーダーズという民間企業にそれらへの対応をほぼすべて任せるのが限界なのでは?今回自衛軍と連携したのであれば、そろそろ合流させた方が……」

 

 今後の動向と、対応。オーダーズの合併も耳に入ってくるが、今黎人に発言権はない。

 静かに見守る中、新堂幸地総理大臣が晴宮防衛大臣に意見を聞く。

 

「晴宮防衛大臣、自衛軍からオーダーズ立て直しの人員は出せるか?」

 

「丁度新堂沙織二佐がオーダーズ・ネストにて救助活動を指揮しています。オーダーズ側からの要請があれば、すぐに彼女に用意させます」

 

「そうか……次元黎人君、どうするかね」

 

 首相からの問いかけを受けて黎人はその口を開いた。

 

「それは、お願いしたいところです。ですが、立て続けに合併と言った大事が来られると、こちらの隊員達も受け止めきれないところもあるかと。制度の違いなどもあるでしょうし」

 

「はっきりしないな。受けるのか受けないのかで話をしてくれ」

 

「厚生労働大臣」

 

 はっきりとした回答をと言う厚生労働大臣を諫める晴宮防衛大臣。だが他の大臣からもそれに呼応して答えを出すよう迫られる。

 

「そうですよ。ただでさえ民間武装組織としての側面も持つ今のオーダーズは歪な体制です。いっそのこと防衛大臣の管轄下に入れるなどして、人員も防衛省か自衛軍からの選抜で構成してしまえばいいのでは?」

 

「それはいい。だがオーダーズの人員にも優秀な人材がいると聞く。そこからも引き入れるというのも悪くない」

 

「まぁ、どちらにせよ民間レベルの人材を排除すればいい。そうすれば今後以前のような不祥事もなくなるわけですからね」

 

「!」

 

 以前の不祥事とは光巴の誘拐事件の事だろう。二件含めてのそれを話題に出されて、いい気分ではない。

 オーダーズのメンバーは5年前からの家族のような者達だ。共にMSの普及の為に過ごしてきた。

 手腕なら決して自衛軍の精鋭にも劣らないと自負できる。定期的に行っている自衛軍へのMS教習でも教導出来るだけの練度を誇っている。

 それだけの成果を見せているのに実際に見ていないからそんなことが言える。これはオーダーズの隊員達全員の成果だ。黎人は官僚たちの言葉に怒りを覚えた。それでも何とか堪えていた。

 だが一部官僚達の誹りは続く。

 

「それに丁度いい機会だ。異世界のガンダムを持ちこんでいるという男、この際除名してしまおう。何でもこちらに恩赦させたりと好き勝手しているじゃないか」

 

「それは……!」

 

「厚生労働大臣、それはもう既に過ぎたことだが?」

 

 声を上げた黎人を抑える形で声を上げる晴宮防衛大臣。他の大臣からも今はその話ではないとの声も上がるが彼に同調する者もいた。

 

「そうですね。ですが今こうして議題に上がり直す機会ではあります。あのような驚異的な戦果を挙げる機体を、個人所有とするのはいかがなものかと。取り上げてこちらで管理した方がよろしいかと」

 

「国土交通大臣まで……」

 

「いい機会なんですよ。彼らMSオーダーズの付き合い方を決めるのにはね。さぁ、これまで通りの何が起こるか分からないままの組織か、それとも律された新しい体制か、選びましょうか?」

 

 二者選択を迫る大臣ら。

 それらに怒りを感じないはずはない。我慢してきたがもう限界だ。妻を失い、平静を欠いた司令は怒りを爆発させる―――――はずだった。

 

 

 

 

「―――――はい、邪魔しますよ」

 

 

 

 

 その場違いすぎる口調での乱入。一斉に視線がそちらに向く。黎人もその顔を見て一気に怒りが別の感情へと置き換わる。

 なぜ?困惑と茫然とする黎人へと乱入者の先頭の人物は言った。

 

「司令、それから大臣さん達。悪いが話を本筋に戻させてもらいますよ」

 

 黒和元はそう言って見せた。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。LEVEL1でも第3章でやった政府殴り込みですが、今回は主旨が違うよー(´っ・ω・)っ

ネイ「なんだかまた動かれる、とか言っていましたね」

グリーフィア「次元覇院に、ってことなんだろうけど、まさかスパイ?」

さて、それは次回のお楽しみということで。次回更新も大体同じ感覚だと思いますが、ちょっと遅れるかもです。やりたいこととかもあるのでね。

ネイ「そういえばアリスギア×ゼロワンは」

無理だったですはい_(:3 」∠)_スケジュールもだし内容もちょっとまとまらなかった……。それに冒頭も言ってたようにあの時の時点でコロナがどうこう言ってたからね。下手に話題出せなかったってのもある。

グリーフィア「こっちに支障が出ない分よかったじゃないの~。それじゃあLEVEL2第3章もよろしくお願いね~」


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EPISODE28 反撃の狼煙2

どうも、皆様。マスクの争奪戦に初めて出たものの、どこも朝からの販売はなさそうというのが最初の感想でした。作者の藤和木 士です。

レイ「アシスタントのレイだよ~」

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです。朝早い時間から出ていましたね」

朝飯購入がてら途中の薬局で空くの待ってたんだけど、年配の人が一目散に入っていって2個しかない消毒ジェルを先入ったから全部買うだの小規模の言い争いしてたのを見て若者がーとかが当てにならないのをよくよく理解しましたよえぇ(;・∀・)それが今の品薄生んでいるんだろうがと。以前のトイレットペーパー品薄もきっとそれが原因なんだろう、うん許せん( ゚Д゚)

ジャンヌ「はいはい過去はもう忘れてください。今は別に大丈夫でしょう。それより今日の更新です」

今日はEPISODE28の更新だ。投稿遅れる発言はなかった。

レイ「あぁ、そんなこと言ってたねぇ。で話の内容は確か元君が政府の会議に突入したところかな」

そうです。伝えに来た用件とは何なのか。それでは本編をどうぞ。


「元君ではないか。それに深絵君に、妹さんまで……ネストの方で被害状況を確認していたのでは?」

 

 晴宮大臣の問いに深絵が前へと歩み出て今の状況について伝達する。

 

「急な訪問申し訳ありません。ですが、次元覇院について、次の行動が判明したので報告に上がった次第です」

 

「次元覇院の動きが?」

 

 首相と思われる人物が聞き返す。しかし重要な話題ながらも、先程までの話を邪魔するなと大臣の一部が反論する。

 

「騒々しいぞ、君達。今は君達の処遇についての判断を……」

 

「ハッ、危険な武装勢力の逐一の動向よりも、自分達の勝手な主観で決めつけた思い込みを優先するのか?」

 

「話し方がなっていないのか!警備員、つまみだせ!」

 

 警備員が慌ててこちらを取り押さえようとする、がそれを首相が止める。

 

「待ちたまえ」

 

「首相!?なぜです?こんな国を運営する者に不遜な態度を取る輩は……」

 

「彼の言うことには一理ある。それに次元覇院の動向がすぐにあるようにも聞こえた。こちらも彼らの動きは把握しなければならない。いいね」

 

「……失礼しました。して、その動向とは?」

 

 首相の視線か、それとも言葉に圧倒されたのか大臣は謝罪の後に本題を訊く。元は頷いて黎人の席からスターターによる操作を始める。

 傍らで黎人と小声で言葉を交わす。

 

(色々と危なかったな)

 

(……余計なお世話、とは言わない。今回は助かった)

 

(そうか。じゃあもう一回辛酸を飲んでもらうぜ)

 

(何?)

 

「と、繋がった。こちらを」

 

 辛酸の二文字に反応する黎人。だがこの後の流れを言わず、これまでで分かっている状況の説明を開始した。

 

「次元覇院は先程声明を発表しました。二日後、三枝県沖にて人工衛星ホリンを打ち上げるとのことです」

 

「人工衛星?カルト団体がか?」

 

「はい。表向きには平和のためのシンボルとは言っています。ですが既にこちらと自衛軍の諜報の結果、これが宇宙軍事基地としての機能を持つことが分かっています」

 

「宇宙軍事基地だと!?」

 

 話しながら資料(スタート作成)をスクリーンで次々と映していく。多数の推進器、機関砲などがあることや、MSなどの格納、製作ブロックに居住ブロックも存在することが見て分かる。

 手元のタブレットで読んで戦慄する大臣達。元は言う。

 

「宇宙軍事基地は各国が現在も進めているプロジェクト。一番実用開始に近いのはアメリアでしょうか。ですが、次元覇院のこれはそれよりもレベルの高い、実用的なものです」

 

「そんなものを彼らが保有しているとなれば……脅威だな」

 

「でしたらすぐに止めなければ!もしこんなものが打ち上がればアメリア、いえ、他国からも何と言われるか……」

 

 他国からの指摘。それを先に恐れることかとツッコミを入れたくなるのを抑えて、言葉を続けた。

 

「他国だけで済めばいいけどな。これはこの星に生きるすべての人の脅威となり得るものだ。撃ち上がればあいつらは悠々とこちらを攻撃し続けるんだから」

 

「……なら、自衛軍の全戦力を以ってこれを全力で阻止しなければならないぞ」

 

「ですね」

 

 首相の言葉に大臣の一人が同意する。しかしそれではだめだ。二人の言葉に大臣らが賛同していく中で晴宮が首を横に振る。

 

「いや、全戦力投入は危険です」

 

「晴宮君?」

 

「防衛大臣!あなたは何を……」

 

「忘れたのですか、彼らMSオーダーズが奇襲を受けた最大の要員を」

 

 オーダーズ・ネストが被った被害の元凶。マリオネッターシステムの存在。

 資料にも確かに記されているそれは人工衛星ホリンの地上攻撃方法のひとつとしても挙げられている。

 それが意味する事実を防衛大臣に頷いて語る。

 

「そうです。私達の基地は彼らの運用する遠隔操作MSによって甚大な被害を受けました。もし自衛軍がこちらを手薄にして、同じようにここが制圧されたら?それはもっとも最悪のシナリオです」

 

「……自衛軍を下手に動かせませんね、それは」

 

 頼みの自衛軍を動かせないことに大臣達も頭を抱える。

 しかし打破する方法は充分にある。それは大臣達が消極的に考えていた者達の存在。

 

「なら、その為の者達を使えばいい」

 

「そのための……?」

 

「俺達MSオーダーズは、MSによる暴動を防ぐための組織でもあるはずですが?」

 

 MSオーダーズはMS開発を行うと共に、そのMSによる犯罪を抑止するための存在だ。MS所持法に照らし合わせて違反者を確保する。教習もその一環だ。

 これまでと同じように、オーダーズが中心となって事態を解決する。それだけの話だったが大臣らの一部はそれに対し渋る。

 

「これまではそうだ。だがこれからは自衛軍に含めて円滑な運用を……」

 

「だからさっきも言ったでしょう。思い込みのそれが重要なのかって」

 

「何が思い込みですか!歪な組織体系で上手く行くと?また同じ被害に遭ってもいいと言いますか?」

 

「歪、ね。確かにあなたから見て俺達MSオーダーズは歪でしょう。でも、だからこそ出来るものもある」

 

 怒鳴る大臣の一人に冷静に真っ向から反論する。

 

「人間完璧に全てをこなす、なんて不可能だ。同じ人間が集まっているのなら、なおさらな。だけど特色のある人間が集まればへこんだ箇所に上手く収まるように調整が出来る。難しい状況にも、適材適所で当たれる。MSだって同じだ。便利であっても既存兵器と比べると操縦が難しいし、装備によって不得意になる戦闘もある。だけどそういうのを他のMSがカバーして、戦っていくんだ。今のあんた達には、人材を大事にするってのが欠けているんじゃないか?」

 

 隊員同士でカバーする。光姫が心がけていると言っていたものだ。

 仲間は沢山いてもその人物はたった一人しかいない。だからこそ他で代わりが出来るなどとは思わない。ナンバーワンよりもオンリーワンの方がいい。

だからと言って他から手を借りないというわけではない。こちらの意向を改めて伝える。

 

「それでも今のオーダーズには補給と部隊再編が必要だ。その為の拠点と、補充要員だけは回していただかないと」

 

「フン、偉そうなことを言っておきながら人頼みですか。そんなに他人の厚意を突っぱねておきながら、偉そうに!」

 

「自衛軍に無理矢理入れるのが厚意だとは思わない」

 

「だからそれを!」

 

「もういい、国土交通大臣」

 

 二人の話を切ったのはまとめ役の首相だった。国土交通大臣に一瞥してから、こちらに向けて返答をする。

 

「オーダーズの戦力補充は防衛大臣に任せる。ただし首都周辺を防衛できるだけの戦力は残しておくように」

 

「了解しました」

 

「首相……」

 

「ただし、それを行うのはMSオーダーズの責任者問題を解決してからだ」

 

 要求を呑むための条件として、首相が提示した責任者問題。今回の作戦の損失に対する落とし前を要求してきた。

 

「緊急を要するのは分かっている。だが私達もその説明を野党はもちろん、国民にも伝えなければならない。それらに対する対応の為に、誰がその責務を背負ってくれるか、どう責任を負うのかをはっきりさせてくれ」

 

「……それなら、既に答えは決まってますよ」

 

 予想できた、とは違う。だがどちらにせよ頼みこもうとしていた案件が状況とマッチしていた。

 その目的を達しつつ、なおかつ彼らが納得するであろう答えを回答する。

 

「次元黎人をMSオーダーズ司令から解任する、というのでどうでしょうか?」

 

 

 

 

「次元黎人を、オーダーズ司令官から解任……」

 

「っ」

 

「黒和元!何を言って……」

 

 元の唐突な解任通告。それは黎人を困惑させるのには十分すぎた。黎人を解任させれば、また大きな動揺を生みかねない。

 深絵も少し虚を突かれる。が、すぐにこちらに目線を送った元の顔を見て様子を見ることにした。

 元は黎人、そして大臣達に語る。

 

「いくら緊急を要するとはいえ、先の件に責任を負う必要があるのは事実。しかし現場の総指揮に当たっていた次元光姫隊長は殉職した。ならそれらの全てを総括していた彼が適役でしょう」

 

「だ、だが私は司令なんだぞ!こんな状況で組織の長がいなくなれば」

 

「それに関しては現場のこちらが繋ぐ。それに基地に居ながらこれだけの損害を出す事態を招いたんだ。手薄になるのを分かっていながらな」

 

「そ、それは……だがそのためのAチームだった!」

 

 元の指摘に歯ぎしりして反論を行う黎人。Aチームの存在は確かに基地に何かあった時の為の急行出来る部隊というのは間違いない。

 それを元も分かっている。分かった上で、彼の言葉を否定した。

 

「だけど、間に合わなかった」

 

「ぐぅ……」

 

「今のあなたで、こちらも含めた防衛手段構築が出来るとは思えない。だから外す。その代打としては、自衛軍の新堂沙織さんにお任せしたいところです。以前から交流もありましたし。もちろんその決定は防衛大臣か自衛軍のしかるべき人に委ねますが」

 

 戦力外通告を受けて黎人が拳を硬く握る。見ていて辛い。元の狙いは何なのだろうか。隣の華穂も心配そうに見つめる。

 そう思い始めた矢先、元は大臣達に向けて提案する。

 

「いずれにせよ、次元黎人をこの作戦には参加させられない。つきましては、彼の身柄を拘束して頂くことは可能でしょうか?」

 

「拘束!?」

 

「ふむ。その意図は?」

 

 首相が聞き返す。意図について彼は語る。

 

「彼はこれでもオーダーズの中心人物です。監視を付ける程度では周囲の人物の助けによって脱走する恐れがあります。まして今の次元覇院は彼にとっては縁者の仇。正直MSを装依して戦闘に入ってくる可能性も否定はできません」

 

「に、にぃ……」

 

「そ、そこまでなのか、彼は……」

 

「可能性を追及すればどこまでも広がりますよ。それに責任を負う前に万が一襲撃を受けた時に死なれても困るでしょう?ならばいっそ中に収めておいた方がいい。と、俺は思います」

 

 そう言って見せる元。だが深絵達は分かっている。彼がそこまで無鉄砲な人間ではないと。

 そこまで聞いても元の言葉は黎人に対しての嫌がらせのようにしか思えなかった。悪印象を与えるだけだ。実際大臣の何人かが小声で本当かと疑っていた。

しかし首相はその訴えに首を縦に振る。

 

「分かった。では、敵による誘拐も想定して彼を拘束させよう」

 

「ありがとうございます。っと、忘れていました」

 

 すると思い出したかのようにリアクションをした元。彼は更に加えてもう一つ要求を行った。

 

「彼には娘がいます。彼女も同じく拘束、というより彼の下に置いておくことは可能でしょうか?」

 

「娘?」

 

「あぁ、光巴さんの事だね。まさか彼女までMSに装依すると?」

 

 晴宮の表情が怪訝なものに変わる。まさかと深絵達も思ったが元の回答はやや違った。

 

「流石にあの年でMSには装依出来ませんよ。ただ彼女は思った以上に突発的な行動が多いようですから。急に両親がいなくなれば不安になることは否めません。父親の下にいた方がいい、というだけですよ」

 

 苦笑する元。だがそれで元の意図が見えた。その表情と言葉で納得した様子を浮かべた晴宮が頷いた。

 

「なるほど。それなら彼女は彼と共に保護した方がいい。首相」

 

「そうだな。二人まとめて自衛軍の管轄する施設で頼めるか」

 

「分かりました。すぐに手配を」

 

 晴宮は側近に指示してすぐさま二人の身柄確保の準備を進める。華穂がこちらに顔を向けて小声で話を整理する。

 

(深絵さん、これって……)

 

(多分、そういうこと)

 

(やっぱり……)

 

 元の考えたそれに気づいた。元が黎人を司令官から解任した理由は1つだ。

 一方拳を机に付けて俯いたままの黎人。光巴も拘束されるという事実に失意となっている。黎人はまだ気づいていないようだ。

だが分かる人にはその意図は分かっていた。その証拠に新堂首相は元に対し言う。

 

「……もう少し、君も素直でもいいのではないか?」

 

「ん?」

 

「言葉が届くべき人物に届いていないようだ」

 

「……それは、まぁ後ですね。まだお話しておかなければならないので」

 

 まだ話すことがあるとして、元は更にもう一つ、由々しき事態があることを大臣達に告げた。

 

「失礼ですが、まだ話は終わっていません」

 

「まだ何かあるというのかね?」

 

「えぇ。特に各省庁を監督する大臣方にはとても関係のある内容です」

 

「私達に関係が……?」

 

 動揺を見せる官僚達。身に覚えがないという様子の彼らに対し、元は言い放つ。

 

「一部の大臣直下の部下が先程、情報漏えいと利敵行為の罪で拘束されました。もちろん次元覇院のスパイです。現状確認できるのは厚生労働大臣、国土交通大臣、環境大臣、外務大臣の方が確認できます」

 

「馬鹿な!そんな事があるわけがない。ふざけるのも大概にしろ!」

 

 役職を呼ばれた大臣達は騒ぎ出す。自分の所から裏切り者が出たと認めたくない故の反論だった。

 そんな彼らを収める声が後方から響いた。

 

「彼はふざけてなどいません。自衛軍諜報部でもそれは確認できたことです」

 

「あ、あなたは!?」

 

「新堂沙織二佐……それは本当かね」

 

 「新堂」沙織二佐に、首相の「新堂」幸地が問う。彼女は頷いて、更に発展した状況を告げる。

 

「現在スパイ行為に走った各省庁職員の内19名を確保。うち5名が隠し持っていたMSで逃走中。その中に厚生労働大臣と国土交通省直属の補佐がいます」

 

「そ、そんな……!?」

 

「わ、私はそのような輩の仲間ではない!」

 

「それは今から、明らかにすることです。後程官僚方には事情聴取を受けてもらいます。もちろん、首相にも」

 

「分かった。皆も抵抗せず受けるように」

 

 首相命令で一様に表情を重くする。自分の省庁の職員が裏切り者だとすれば、そうなるのも仕方がないのかもしれない。

 最後に首相は最終確認を行う。

 

「それではMSオーダーズにはプロジェクト・ホリン阻止に向けて行動してもらう。自衛軍はそのサポート、万が一の首都防衛と私も含めた周辺調査を頼む。それから次元黎人とその家族の拘束・保護も」

 

「了解」

 

「分かりました。そのように」

 

「うむ、健闘を祈る」

 

 そうして政府官邸における会議は終了を迎えた。

 

 

 

 

 終了して大臣達の多くが重い足取りで去る中、黎人が元へと詰め寄った。

 

「何故だ、何故私を解任した!」

 

「ん?」

 

「れ、黎人さん……」

 

 落ち着きを失い、乱暴にその襟元を握り問いただす黎人。その姿はとても冷静にはほど遠く、華穂も狼狽える。

 やれやれと思い深絵は間に割って入り、その怒りを取り除くように話す。

 

「黎人君落ち着いて。何も元君はただ勢いに任せて黎人君を解任したんじゃないよ」

 

「深絵君まで……!何を根拠にして、そんな無責任なことを!オーダーズは私が設立してこれまで戦ってきたんだ!それを私抜きでなど……」

 

「黎人君だけで戦ってきたわけじゃない。今そんな事をして、一番寂しく思うのが誰なのか、分からないの?」

 

「寂しく……?」

 

 場違いとも思える言葉に黎人が首を傾げる。深絵はそんな黎人にはっきりと告げた。

 

「光巴ちゃんだよ。あの子がお母さんを亡くして、平静でいられると思うの?」

 

 正直に言って、光巴が本当に悲しんでいるのかは分からない。極端に怯える時もあれば今回元に見せた時のように穏やかに語って見せることもある。

 それでも彼女は4歳の、年相応に幼い子どもだ。このまま一人にしておくなど出来るはずがない。考えればわかることだった。

 深絵の言葉に同意見であると元も伝える。

 

「あの子は強い子だって思う。だけどそれで放っておいていいなんて考えるんじゃない。そう思い続けている内に、あの子の闇が大きくなっていく未来があるかもしれない。それを見守って、導いていくのが本来のお前や光姫の役目だ」

 

「……それはそうだ。だけど、これは仕事で」

 

「仕事を優先しないと、なんてただの強迫観念だ。自分でなければ出来ない、自分が抜けたら成り立たないって思い込みで家族を殺すくらいなら、仕事なんか犠牲にしたっていい。出なくても他でカバーするだけだ。例え司令だとしても今のお前はそれが許される状況なんだからな」

 

「……待て、まさかお前の目的は最初から……」

 

 そこでようやく黎人も気付く。元は頷いて答える。

 

「ま、今回は休暇と思って政府の下でのんびりしてるんだな。一応責任取りとしての側面もあるし」

 

「ちょっと最初は驚いたけどね。にぃが今までの鬱憤晴らしに来たのかと」

 

「普通はそう思うだろう……だが、そうだな。光巴には気を掛けてやらないといけないかもしれない。今日もあの子は少しおかしかったから」

 

 ため息を吐いて受け入れる黎人の言葉。光巴が変、という単語を気にしつつも掛かった声に意識を向ける。

 

「やはり、君の狙いはそれだったか」

 

「あなたは、首相でしたっけ?」

 

 訊き返す元。まだあまりなじみのない元でも役職だけは覚えていたようだ。首相は名乗る。

 

「新堂幸地だ。そこにいる自衛軍二佐、新堂沙織の父親でもある」

 

「そうなんです?」

 

「そうなのよ」

 

 肯定を行う沙織。そう、彼女は首相の娘だった。もっともその首相もかつては防衛大臣であり、この数年の間に首相へとなり上がったわけなのだが。

 深絵も最初聞いた時は驚いた。今ではMSオーダーズに便宜を図ってもらっている人物の1人だ。首相は元の本心に対し評価した。

 

「司令の心情を図り、ストレスから放つために職を剥奪する。乱暴だが間違ってはいない。黎人君が冷静沈着に見えてメンタルが脆いことは晴宮君からも聞いていた。実際ここで話している時も集中できていなかったからな」

 

「も、申し訳ありません……」

 

「謝る必要はない。血縁者を失って、冷静さを失うのはそれだけその人物の事を想っていたという裏返しでもある。それで無暗に飛び込まれるのは厄介だが、止めてくれる仲間がいたことは幸運だよ」

 

 謝罪に対しても寛容に認める首相の姿勢。人生経験が豊富なだけあって頼りになる。

 そんな首相は元の行動を評価する一方で、同時に忠告も行った。

 

「だが君も注意した方がいいと思う。黒和元君」

 

「え?」

 

「大丈夫そうに見えるが、黎人君が見せてくれた戦闘状況の映像。最後の大出力砲撃はこれまでに聞いていたガンダムの物とは明らかに違った。怒りの箍が外れて沸き立つままに放ったように見える」

 

 その発言に元が視線を逸らす。この時深絵はまだ詳しく知らなかったが、あの時のシュバルトゼロガンダムは元の怒りによって光姫のロートケーニギンのドローンを追加パーツとして取り込んでいた。

 怒りのままにという発言と違わぬ状況。指摘に対し、丁度その場に居合わせていた華穂も頷く。

 

「確かに……まるで元にぃの感情に引き寄せられるみたいにパーツが引き寄せられました」

 

「華穂」

 

 勝手に言ったことを咎める元。まるで言われてほしくないように。

 それでも首相は助言を行う。

 

「どういった原理かは分からないが、あのガンダムは君の想いに応える。望み、そして感情によっても。君の望むままの力、決して悪意に呑まれないように。とはいえ今は君の力が必要だろうから、それだけは承知してくれ」

 

「……承知していますよ。これまでもそうでしたから」

 

 重い声で了承した元。その表情に何かを感じたが今は聞かないでおくことにした。返事を聞いて首相は後の事を晴宮防衛大臣と娘の沙織へと任せる。

 

「では後は任せたぞ沙織。晴宮君もおとなしく聴取を受けよう」

 

「ですな。沙織君が全てしっかり洗い出してくれているとは思いますが」

 

「期待しすぎですよ防衛大臣。身内とはいえ容赦は致しませんので」

 

「それはそれは」

 

 彼らも次の行動の為離脱する。こちらも残る後始末と明日への準備のため、まずは光巴護送について話す。

 

「じゃあ、こっちも行こう。光巴ちゃん連れてくるからね」

 

「あぁ、頼む」

 

「あ、ごめんそれについて先に行っておきたいところがあるんだけど」

 

 行っておきたい場所があると発言した元。行き先を自然と聞く。

 

「行くって?」

 

「ジャンヌの所だ。ちょっと意見を伺いたくてな」

 

 ジャンヌの所に、というのであれば自衛軍の医療施設に行くということだ。丁度黎人達の保護場所も自衛軍の基地敷地内の為通り道ということになる。

 それだけなら見舞いに行きたいということなのだろうが、気になったのは意見を伺いたいということ。言葉の意味を尋ねる。

 

「意見って?」

 

 すると元は自らの考えを述べた。

 

「次元光巴、彼女はディメンションノイズ・リーダーなのかもしれない」

 

 

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今回もお読みいただきありがとうございます。前回グリーフィアが言ってたように、しパイがいましたね(;´・ω・)

レイ「次元覇院はそんなところにまで情報網を伸ばしていたんだねぇ。これは職を狙って入り込んだのかな?それともなってから勧誘?」

全部が全部判明してはいないけれども、MSで逃げた人達は割と前者の設定の人物が多いですね。

ジャンヌ「まぁ勝手にMSを持っていたら、その線が大きいですよね」

レイ「うんうん。それにしても沙織さんのお父さん、幸地さんだっけ?首相だからかよく見えているんだねぇ」

ジャンヌ「元さんの状態を見透かしているようでしたね。歴戦の勘で気づいた、ということなのでしょうか?」

まぁ人の細かな動きを見ているという点ではそうなのかもしれませんね。そして最後の元君の発言、次回はジャンヌの見舞い+αとなります。

レイ「DNLって分かるのそんなに重要?」

あんまり情報出てないけども重要だよ(´っ・ω・)っ歴史の大戦争においてDNLの戦術勘で不利な状況を一変させたっていうのがある設定。

ジャンヌ「なるほど。元さんはそれに賭けていると」

そうなるね。それでは今回はここまでです。

ジャンヌ「それでは次回もよろしくお願いします」


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EPISODE29 反撃の狼煙3

どうも、皆様。作者の藤和木 士です。

ネイ「アシスタントのネイです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよ~。今日も投稿ね」

コロナで外出自粛、ハーメルンなどのネットサイトを見る人も多いだろうね。ではEPISODE29公開です。

ネイ「前回の最後の方でジャンヌさんに会いに行くと言っていた元さんは、光巴ちゃんがDNLであるのかどうか気になっていましたね」

グリーフィア「そうよね~。DNLって詩巫女とかの能力の事を指してもいるみたいだったけど、象徴操る以外に使い道ってあったかしら~?」

(;´・ω・)あの、元君の能力……。

グリーフィア「あぁ、ニュータイプ的感応能力?」

ネイ「だけど今すぐ光巴ちゃんに求められるってわけではないのでは?」

そこら辺は後々補強していきますよ。それでは本編をどうぞ。


 

 

 作戦終了から4時間弱。もう日を跨ぐのもわずかと言った時間に元達は自衛軍基地へとやってきていた。

 一度ネストの方まで戻り、光巴を連れての来訪。普段は起きているはずのない遅い時間帯の行動に光巴が目をこする。

 

「……はじめおにーちゃん、ここどこー……」

 

「自衛軍がやっている病院、かな。ジャンヌが搬送されたから向かっているんだ」

 

「……ジャンヌおねーちゃんが……?」

 

 深絵に抱きかかえられて薄く応答する光巴。流石に健康上よろしくないと深絵は愚痴る。

 

「んー……今日は光巴ちゃんを黎人君と一緒に自衛軍に預けるだけして、寝かせてあげた方がいいんじゃないかなぁ?」

 

「それ私も思いました。もう光巴ちゃん寝る時間だし」

 

「ただでさえ私達も仮眠取り始める時間だもんね……」

 

 華穂、そして夢乃も同意見であると口にする。

 時計の針を見ても子供にもよろしくない時間なのは分かっている。元だって早く寝かせてあげたいのはある。ただそこまでして急いだのはやはり時間の問題だった。

 

「その意見は間違いない。だけどどうしても明らかにしておきたい。この子……光巴が本当にDNLに目覚めているのかどうか」

 

「そのDNL、だっけ?にぃが会得したってスキルらしいけど、そんな重要なものなの?」

 

 DNLの力に疑問を抱く華穂に他の二人も頷きを見せる。センスの部類に入る能力の有無が戦闘に役立つのかどうか。

 しかしたかがと侮ってはいけない。これまでのマキナ・ドランディアの歴史の端々で、その能力を持ったものが老若男女問わず奇跡を起こしてきた。自慢ではないが元自身もその一人なのだ。

 DNで構成された世界の動きを読むことのできるこの能力が、次元世界で暮らすのに重要でないはずがない。能力によっては戦局を大きく変えるかもしれない。

 そのために一刻も早く彼女が本当にDNLなのかを知る必要がある。彼女達にも短く要点を告げる。

 

「次元粒子で構成されたこの世界だからこその力なんだ。場合によっては戦局を動かしかねない」

 

「んー……そこまで言うなら分かったよ。でもあまり長くならないように」

 

「了解だ。と、ここだな」

 

 深絵からの忠告に頷いた直後、目的の病室に到着する。確認の為に病室の表札を見て、ジャンヌの部屋であることを確認するとノックして反応を待つ。

 

『……はい』

 

「ジャンヌ、元だ。入るぞ」

 

 言って扉を開ける。部屋ではベッドを起こして体を預けるジャンヌの姿が。服を患者用の服に着替えて安静にしていた。

 やってきた元達に挨拶をする。

 

「すみません、こんな状態で出迎えて。でもみなさんで来て頂くなんて」

 

「ジャンヌさん、もうお体の方は大丈夫なんですか?」

 

「えぇ。幸い後遺症などもないだろうとのことです」

 

 胸に手を当てて微笑んで見せる彼女の姿に、元も一安心する。

とはいえ無事だったからと言っても全てがなかったことになるわけではない。華穂も指摘する。

 

「本当に良かったぁ。これで支障が出てたらにぃもうジャンヌさんに足向けて寝れなかったじゃん」

 

「それはもう分かってるって」

 

「分かっている、ですか。本当に分かっているのなら、そういう状態に陥らないのが普通だと思いますが?」

 

「……はい、その通りです」

 

 ムッと口を閉じてご立腹であることを示してくる主人の言葉に、一切の反論なくその通りだと認めざるを得なかった。

 あの時の自身の失態が無ければジャンヌがこうならなかったのはもちろん、Gワイバーンを失うこともなかった。Gワイバーンは整備班が回収してくれたが直せるかどうかは分からないと言われた。

 これでマキナ・ドランディアに戻ることは現状出来なくなってしまった。故郷に帰れなくなったことをジャンヌにはどう言い訳しても許されることはないだろう。

 罵詈雑言も覚悟した元だったがジャンヌはため息を吐くとここに来た用件を聞いてくる。

 

「はぁ。それで、何の用です?」

 

「え?」

 

「こんな夜遅くにミツハちゃんまで連れてきたんです。単なる見舞いとは思えませんが?」

 

 細かいところまでしっかりと見ていた。もう昔のただのお嬢様だったころとは違う。呑みこみが早いことに感謝して、早速用件を伝える。

 

「……そうだな。詩巫女として頼みがある。光巴がDNLに目覚めている兆候がある。詩巫女としての力で判別してもらえないか」

 

「彼女が……レベルにも依りますが一先ず持っているかどうかの判別だけでいいですか?」

 

「今はそれで。今後の指針にもなる」

 

「分かりました。では深絵さん、ミツハちゃんをこちらに」

 

「あ、うん」

 

 ジャンヌは了承し光巴のDNL能力判別に取りかかる。これから何をするのか分かっていない華穂が詳細を聞いてくる。

 

「ねぇにぃ。ジャンヌさんはこれから何するの?」

 

「さっきも言っただろ。DNLの判別だって」

 

「それは分かる!具体的にどうするのって話」

 

「あぁ。簡単に言うとジャンヌの側からDNの動きに働きを掛ける。と言っても目に見えないエネルギーの波動を放出して跳ね返りを確かめるんだ。簡単に言うとレーダーで敵を探知する動きみたいな。反応ぶつけて反応を待つ」

 

「へ、へぇ……」

 

 分かっていないようだったが元も具体的な説明をこの世界の人間にするには難しい。ただ大雑把に言うとそう言うことになる。

 そういった作業に長ける詩巫女タイプのジャンヌでなければ現状出来ない役回り。だからこそジャンヌの下を訪れたのだ。

 光巴の手を取り、静かに目を閉じるジャンヌ。

 

「………………」

 

「……んゆ」

 

 今にも眠り込んでしまいそうな光巴。このまま反応がないかと思われたが、数秒して反応が見られる。

 

「……!ジャンヌおねえちゃん!いまわたしにはなしかけたっ!?」

 

「光巴ちゃん?」

 

「えぇ。あなたの心に、届くように。その反応だと無事聞こえたみたいですね」

 

 光巴はビクッと体を動かし、驚きを露わにして騒ぎ出す。抱えている深絵が落とさないようジャンヌも脇を抱えて安定させる。

 思わぬ反応を見て華穂と夢乃が半信半疑で成否を問う。

 

「え、これそう言うことなの?」

 

「成功、ってことでいいんですか?」

 

 二人に、そして深絵と元に対してもジャンヌは言った。

 

「はい。彼女はDNLのようです」

 

「はえぇ……」

 

「光巴ちゃんが、元君達と同じ……」

 

 呆気にとられる三人。ただ気になる発言があったのを元は気づいていた。

 すぐにジャンヌにその確認を取る。

 

「のようです、ってことは少し違うのか?」

 

「はい。あまり判別はしたことがないので曖昧になるのですが、詩巫女同士の共鳴や元とのエンゲージで感じたような感覚とは若干違いました」

 

 ジャンヌや元とは違う、と聞いて真っ先に元はスターターのスタートに意見を求める。

 

「スタート、何か知っているか?」

 

『ん~いや?あんまりDNLについては俺もその能力を使うばっかしで詳しいことはさっぱりだな』

 

 知らないと答えるスタート。これ以上は分からないと思いそのままスターターを仕舞いかける。

 すると何かを思い出したかのようにスタートが呟く。

 

『ただ』

 

「ただ?」

 

『DNLで目覚める能力は前にクリムゾン・ドラゴニアスが言っていたようにまちまちだ。その型の一つというのは間違いないだろうな』

 

「つまりDNLであることは間違いないと?」

 

『そう言うことだ』

 

 DNLであることは分かると、補足だけはしてくれた。タイプが違うことは予想外だったが、これはこれで例がまた一つ生まれたということだ。

 これまでにないタイプの能力発現で戸惑ったが、それでも当初の目的は達した。今の自分達にとって必要な物を判別できるかなどもう少し調べたいところだったが、そうもいかなかった。

 

「あ……ふぁぁ……」

 

「流石にもう寝なきゃね、光巴ちゃん」

 

 既に光巴が眠気に負けつつあった。元もそこまで無理をさせるつもりではなかったので、今回はここまでにする旨を伝える。

 

「そうだな。とりあえずDNLであることは分かったからこのまま光巴は黎人の下に送って大丈夫だ。悪いけど深絵達だけで頼めるか?」

 

「私達で?」

 

「いいですけど、どうして……」

 

 自分達だけで連れて行ってほしいと告げられ首を傾げる深絵と夢乃。そんな二人をよそに華穂はすぐにその狙いに気づいて呆れる。

 

「ハハーン。大方ジャンヌさんの下にもう少し居たいってことでしょ?」

 

「……分かってるなら言わない努力をしてもらいたいな」

 

「大丈夫大丈夫。黎人君とか自衛軍の人にも言っておくって」

 

 一言余計だ、と言いたくなるのを抑える。しかし理由を聞いて深絵もそれを了承してくれた。

 

「そう言うことなら分かったよ。じゃあ送ったら連絡するね」

 

「あぁ。頼む」

 

「それじゃあ、ごゆっくり~。光巴ちゃん、もうすぐだからねー」

 

「んゆぅ~……」

 

「いくら二人っきりだからって一目はばからないことするんじゃないよ?にぃ!」

 

「さ、流石にしないと思うな、かほちー」

 

 そんなこんなで深絵達が退室していった。

 

 

 

 

ミエ達が退室していったのを見送って、静けさを取り戻す病室。視線を細めてジャンヌは早速一番に言いたかった事に言及する。

 

「……まったく、今日は散々でした」

 

「悪い。俺のミスだ」

 

 謝罪するハジメ。すまないという気持ちは充分伝わっている。表情を見ればすぐに分かった。

 けれどもそんな謝罪だけ押し付けられてもジャンヌは満足しない。きちんと不満をぶつけた。

 

「ミスじゃないでしょう。あれは感情に任せて突っこんだ結果。判断すら介在していません。ミスは判断した結果で生まれる物なんですから」

 

「……そうだな」

 

 バツの悪そうに視線を外す従者。それでもジャンヌは説教を続けた。

 

「同級生が殺されて、あなたが怒らないはずがないのは分かります。でも、だからって感情を爆発させてはダメ。それで以前はヴァイスインフィニットに手ひどく負けたっていうんですから」

 

 ヴァイスインフィニットガンダムとの対決の話は、快復後ジャンヌも機体整備担当のヴェールや救援に駆け付けたアレクから聞かせてもらっていた。

 出撃時に装備換装も行わずに飛び出したこと、自身を含めた人質三人に雷撃を放たれた直後、逆上したこと、被害を無視して大火力兵装を使用したこと……。そして逆転を期して放ったDNFを見事にカウンターされたことも。

 意識を失っていた間に起こったことを知り、あまりにも酷いと思った。まだ盲目的だったとしても、独断専行、被害無視の戦闘、避難誘導の有無……。後々事情を聞いた時にもハジメはしばらく頭を床から外さずに謝罪し続けていた。

 ジャンヌからの毒舌染みた指摘。それに対しハジメは近くの椅子に座り、額に手を当てて小さく頷いた。

 

「はい……そうですね……何も進歩していない……」

 

「まぁ、わたくしもまだまだオペレーターとして不慣れなところはあります。だからこそ歩調は合わせて欲しいと何度も言ってきました。それでも無茶を掛けてくるんですから!皇帝との決戦時も!」

 

「う゛!」

 

 忘れもしない。マキナス皇帝ギルフォードとの対決時、ハジメは自身に無許可でエラクスシステムの再始動を行った。その時も今回と同じゼロオーバーモード発動中の出来事であり、無茶の一つであった。

 あの時はそうしなければ到底勝てなかったのもあり、戦闘後文句としての発言に留めていた。もう無茶はさせないと誓ったから。

 以降はそれほど大きな戦闘もなかったり、イグナイターの仕様に制限を持たせたりで無茶はそれほどなかった。が、今回またこういう問題を起こした。

 正直に言ってジャンヌ自身も今回のGワイバーン大破をショックに感じている。もう母の下に帰れないかもしれないという不安も感じている。

 しかし、それを抑え込みジャンヌはまだ伝えたいことを受け止めきれていない彼へと告げる。

 

「でも、それ以上に私はハジメの事が心配です……。もし私が制御に失敗して、機体に不調が出たら、ハジメの想いに応えることが出来なかったらって。それで怪我を負うのはハジメも同じなんですからっ」

 

 パートナーとして最初に心がけたこと。ハジメの邪魔にならないように、ハジメが思うように動かせる様にとヴァイスインフィニットとの再対決までの短い期間でエンゲージシステムに対応した。

 けれどもそれ以上にまた傷ついてほしくないと、ジャンヌは願っていた。最初に出会った時のような、ボロボロの彼の姿を見たくはない。

 そんな思いでずっとハジメを支え続けてきた。これからも支えていきたい。だからこそ言わなければいけないこともある。ジャンヌは言う。

 

「もう自分を見失わないで。それで傷つくのはそれに巻き込まれた人だけじゃない。あなただってそうなんだから」

 

「あぁ、わかっ……」

 

「それと」

 

「ん?」

 

「もう、一人で背負わないでいいんですよ」

 

 ハジメの返事を遮って、言葉を掛ける。虚を突かれたようなハジメの表情。その意図を、手を取ってはっきりと告げた。

 

「今だってずっと悲しみを我慢している。無念と、嘆き、自責、そして怒り……近くにいれば、私なら分かっちゃいますよ?まだ体は辛いですが……精一杯受け止めます。―――もう、我慢しないで」

 

「…………―――――っ」

 

 手を広げて受け止めるように手を動かした。直後ハジメがこちらの膝元に頭をうずめた。普通なら驚いて叫んでしまうような状況だったが、ジャンヌは落ち着いていた。

 うずめると同時にハジメの声が零れだす。

 

「うぅっ……うっ!柚羽……光姫……!俺は、俺はっ!!」

 

 涙声と共に繰り出された二人の名前。ジャンヌはずっと自身のDNLで感じ取っていた。最初に失った初恋の少女と、その親友の喪失に対する感情を。

 対峙した敵がその少女の兄だったことにハジメも衝撃を受けていた。認めたくなかったのだ、そんな現実を。だから怒りで塗りつぶしていた。

それを戦いの中でジャンヌも感じ取っていた。このまま残しておけば、またハジメにとってのトラウマになるのも。それをさせないためにジャンヌは今彼に吐き出させた。

 弱さをさらけ出したハジメにジャンヌは頭を撫でて諭す。

 

「やっぱり無理していました。でも、大丈夫。あなたには私だけじゃない、ミエさんやカホさん、ユメノさん達がいる。この蒼穹(そら)の下で、一人で戦ってなんかいない」

 

「……ジャンヌ」

 

「もう一人で戦っちゃダメですよ、ハジメ」

 

 ハジメに対し微笑む。そして上から覆いかぶさるように抱きしめる。かつてハジメがしてくれた時は違った形で、しかし同じ気持ちで彼を癒す。

 それにハジメも逆らわず、彼女の抱擁を受け入れる。

 もう一度立ち上がれるように、共に戦えるように。再び誓い合った。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。

ネイ「結局、光巴ちゃんはDNLだったと」

グリーフィア「元君の独白からして、DNL能力を持つ人は詩巫女以外に居て、所々で活躍してたってことなのかしらね」

大まかにいえばそうですね。原点のニュータイプにもパプテマス・シロッコのようにMS開発のアイデアに生かす人もいましたから。

グリーフィア「果たして光巴ちゃんは後々どんなことに生かすのやら。けど元君も、ジャンヌに骨抜きにされちゃってまぁ」

骨抜きて(´・ω・`)

ネイ「骨抜き、かどうかはともかく……ジャンヌさんが元さんの為に献身的になっているのはよく分かりますよね。最初の頃無視ばっかりでしたし」

ははは、本当に最初のころだね。後々だとツンデレみたいになってたからちょっと書き直すべきかと考えたことも。

グリーフィア「書き直すの?」

細かい修正は今でも最新話とかにやっているけど間違いとかが主だから多分やらない。やるとするとかなり書き換え必要だし_(:3 」∠)_

グリーフィア「外出自粛中なんだしやれば~?」

それよりか最新話を更新したい派っす(´Д`)それでは今回はここまでです。

ネイ「やるべきところはやった方がいいとは思いますが……次回もよろしくお願いします」


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EPISODE30 反撃の狼煙4

どうも、皆様。友人からの誘い(もとい巻き込み)でバトスピオンライン対戦の環境を最低限整えて対戦していました藤和木 士です。楽しいけど太ももとか背中とかが痛いぜっ( ゚Д゚)

レイ「アシスタントのレイだよ~。昨日撮影台作ろうと思って失敗したの見てたよ~」

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです。プラモデルのパーツ外し終わったランナーで代用しようとして重力の問題に負けて、結局今日素早く百均でワイヤーネット買っていましたね」

百均様様ですわ!けど安いのだとバトスピのプレイマットに若干サイズが合わない仕打ち……_(:3 」∠)_ と、それでは今回はEPISODE30公開です。

ジャンヌ「あぁ、元さんがジャンヌ・Fさんに骨抜きにされたところでしたね」

いや前も言ったけど言い方(´・ω・`)

レイ「でもジャンヌ・Fちゃんもいいこと言うよねぇ。流石元君のパートナーって感じ!DNLも役立ってる!」

それではそこにまつわるもう一つの話と、次元覇院の動き、そして反撃の狼煙の上がるその時を、どうぞ!


 元とジャンヌが次元覇院との対決に向けて和解、決意した時、それを部屋の外でわずかながらに聞く者が一人いた。

 蒼梨深絵。元のかつての同級生にして、同じく柚羽と光姫の死を重く受け止めた一人だった。

 本来なら彼女は華穂達と共に自衛軍の人に光巴を預けに行くはずだった。しかし離れる直前、彼女は光巴を預け、言った。

 

『ごめん、もう少しだけここで元君を待ってるね』

 

 何気ない一言。理由として挙げた元の行動が気になるということは間違ってはいない。ただしその言葉に込められたものは複雑だった。

 ジャンヌが気にかけていた元の気負い、それを深絵も予測していた。だがそれ以上に彼女も光姫の死を重く受け止めていたのだ。

 光姫と共に戦って五年。戦友である以上に、深絵にとっては元を失い失意にいた自分に目標を導いてくれた恩人だ。

その痛みを元と共有し、乗り越えたい。そんな淡い気持ちを元に抱いていた。元にジャンヌがいるのも分かっていた。それでもジャンヌと話し終わったら明かそうと思っていた。

 そのはずだった。けれども壁から聞こえてきた話に、深絵の気持ちは変わった。

 

(……なんだか、恥ずかしいな。私も隊長だっていうのに。こんなことして)

 

 自分のやろうとしたことがとても卑怯に思えてくる。再会した時にもう諦めたはずだった想いを呼び起こして、もしかしたらと思ってしまった自分が卑しい。ジャンヌの純粋な想いが深絵の胸を抉る。

 だけどそうだ。光姫が護ろうとしたものを、みんなで護りぬく。それが今の自分達にとって一番の目標なのだ。

光姫もかつて言っていた。チームでカバーして戦う。彼女が心がけていたことで沢下達に勝って見せる。深絵は決意する。

 元をジャンヌに任せる形でその場を後にする。いつまでも後悔や未練で顔を下に向けていてはいけない。上を向いて、歩いて行かなければ。死んでいってしまった光姫に顔向けできない。成すべきことを、成す。

 MSオーダーズを率いていく隊長二人の決意は決まった。その場を後にした深絵と遅れて部屋から出た元は無事光巴を送り届けてきた華穂達とオーダーズの仮拠点、自衛軍旧東響湾基地へと向かった。

 

 

 

 

 マリオネッターシステムによるオーダーズ強襲を成し遂げた次元覇院。その一報が告げられ、本山たる三枝県では使徒達は歓喜に打ち震えていた。

 遂に我らは勝った!我らの覇道を邪魔し続けた憎き敵MSオーダーズを!湧き上がる使徒達の猛り声。そこに教柱達も現れて今後を語った。

 

『MSオーダーズの拠点を戦神官沢下判が率いた『憤怒の裁きの部隊』が崩壊させてくれた。これでMSオーダーズもしばらくは動けない。だがまだ終わりではない。性懲りもなく彼らは足掻いている。それを無駄と分からせるべく、かねてから計画していた人類救済の最後の策「プロジェクト・ホリン」を実行する!』

 

 使徒達に見せられるプロジェクト・ホリンの全容。自分達が平和のための戦士となる。その事だけで教義に心酔した彼らは疑いもなく、高揚する。

 プロジェクトの始動に脇で観覧していた沢下も内心喜びを強く感じていた。

ようやくここまで来た。五年前のあの時からようやく次元覇院が、「あの方」が思い描こうとしていた世界が実現する。正しい教えに則り、力を振るう自分達が世界を担っていく。

 MSオーダーズではない。自衛軍でもない。平和を実現できるのは自分達だけ。

その為の「最後の楽園(ホリン)」は間もなく空に誕生する。

 沢下にとっては妹を弔う天国だ。もう妹のように理不尽な死などない世界が実現するのだと天に召された妹に向けて心の中で語る。

 

(柚羽、お前が幸せに眠れるまで、あと少しだぞ)

 

 そこでふと思い出す。敵の漆黒のガンダム、そのパイロットの言葉。

 

『なんで柚羽の名前が出る!!』

 

 奴もまた柚羽の事を知っていた。なぜ異世界のガンダムのパイロットが妹の事を知っていたのかは知らないが、いずれにせよ敵の言葉に耳を貸す必要などない。

 おそらくあの女が教えていたのだろう。自身が殺してやったのだと自慢したに違いない。そう思うとやはりあのガンダムも抹殺しなければ柚羽も安心できないはずだ。

 次なるターゲットは決まった。その思いで発表を終えた教柱らと共に盛り上がるホールの場を後にする。

 その途中、沢下は教柱の一人から声を掛けられる。

 

「沢下戦神官」

 

「何でしょう?」

 

 訊き返すと教柱は次なる指令、プロジェクト・ホリンの進行について指示する。

 

「二日後早朝、ホリンの打ち上げを開始する。おそらくMSオーダーズ、自衛軍の妨害が予想されるだろう」

 

「でしょうね。ですが、奴らの思い通りにはさせない」

 

「心強いな。貴君にはホリンに搭乗し、今後指揮を執ってもらう。貴君の為の最高のMSも用意した。その機体で必ずやホリン打ち上げを成功させてくれ」

 

「我らの正義に掛けて!」

 

 敬礼代わりに右腕を左胸に当てる。その姿を見届けて教柱は他の教柱達と共に去っていく。

 自身の為のMS。おそらく話に聞いていたマキシマムの強化型とされていたものだろう。それならばきっと、ガンダムすらも超えられる。

 自身を胸に、沢下は迫る打ち上げの日を夢見るのだった。その日、世界は本当に平和になるのだと信じて。

 

 

 

 

 夜が明ける。MSオーダーズにとっては敗北の、次元覇院にとっては勝利の夜の翌日。

 次元覇院はこの流れを無駄にすることなく、朝から行動を起こしていた。ホリンの打ち上げの為、最終チェックと移動の準備だ。

 それに対し、MSオーダーズも負けていない。オーダーズ・ネストからの物資移送を終え、整備員達も夜通しMSの整備を行っていた。自衛軍と協力し、交代で見張りにも付いた。

 そうして迎えた翌日。朝早くから隊長クラスが仮拠点の旧自衛軍東響湾基地の会議室に集まる。着任する部隊総司令官を待っていた。

 会議室のドアが開かれる。入ってきたのは初老の男性、後ろには自衛軍の新堂沙織も同行していた。

 男性の到着にオーダーズ隊長が一斉に立ち敬礼する。男性は軽く手を上げ、敬礼を解除すると自己紹介する。

 

「初めましての方も多いかな。今回防衛大臣の指示で君達の指揮を取らせていただく、自衛軍東響湾基地司令の藤谷 努(ふじや つとむ)だ。今回はよろしく頼むよ」

 

 紹介をした藤谷にオーダーズMS隊総隊長となった深絵が挨拶する。

 

「MSオーダーズMS部隊総隊長代理の蒼梨深絵です。今回は急な対応に感謝します」

 

「おお、君が光姫君の後任になるとはね。五年前が懐かしい」

 

 深絵に対し握手に応じる司令。彼女はこれまでにも何度か彼とは言葉を交わしていた。

過去を懐かしみつつ、続いて司令は後ろに控えていたもう一人の隊長にも声を掛ける。

 

「そして、君もこの短期間でよく立場が変わる。MS所持法の特異違反者から、今やオーダーズの要とは」

 

「MSオーダーズ試作遊撃MS部隊隊長、黒和元です。一か月ぶり、ですかね、藤谷さん」

 

 黒和元も藤谷努とは一か月前の光巴誘拐事件後のMS所持法試験の補講にて顔を合わせていた。元の補講強制参加の場所が藤谷の務める東響湾基地であった。

 この時二人は言葉を交わしており、藤谷の人柄を元は知っていた。彼ならMSオーダーズの意見を尊重しつつ、公平に接してくれる。そう思った。だからこそあの場で黎人の後釜として彼を指名したのだ。

 

「そうだねぇ。しかし私で良かったのかな?こんな老兵で」

 

「藤谷さんは海上戦・艦隊戦にも長けているとお聞きしていましたので。今回はその腕を見込んで頼みたい」

 

「やれやれ……そう言われては私も振るわねばな。とはいえ、MSの指揮もかじっているとはいえ、経験は君らが豊富だ。そちらは君達に一任するよ」

 

「承知しました」

 

 互いに指揮の領分を取り決める。揃ったところで各々席へと座り、深絵が作戦内容について説明を始めた。

 

「ではこれより次元覇院の人工衛星ホリン打ち上げ作戦「プロジェクト・ホリン」に対する破壊作戦「ホリン・ダウン作戦」について説明します」

 

 部屋の明かりを落とし、全員がスクリーンに注目する。スクリーンに作戦概要が順に表示されていく。

 

「本作戦では人工衛星ホリンの足止めと周辺戦力の掃討、そして中枢に構えるであろう次元覇院幹部達の拘束を目的とします。最低でも人工衛星ホリンは打ち上げさせてはなりません」

 

 人工衛星ホリンの打ち上げは阻止する。それが本作戦での最低条件だ。

 もし打ち上がればこの星の危機となる。一応今朝の時点で首相が各国に対し連絡し、アメリカからは既に打ち上がった際の迎撃ミサイル発射準備を日本在留軍に対し指示したという。

 だがそれも最悪のシナリオだ。それに至る前に解決することがベストである。

 続いて戦力の配置について深絵が語る。

 

「本作戦に参加するのはMSオーダーズ東響本部363名、それから自衛軍新堂沙織二佐直轄の東響都本部第3大部隊50名、それから四ツ田新基地を中心とした自衛軍名護屋方面軍の部隊209名とで作戦を行います」

 

 スクリーンが切り替わり、戦力配分に内容が変わる。オーダーズ東響本部所属隊員は部隊を二つに分け、半分を太平洋海上側、もう片方を打ち上げ場所となる伊世湾に向かえる愛智県名護屋港から出撃する形となっていた。

 海上と港からの二面攻撃。その作戦に藤谷が提言する。

 

「ふむ。これだと海上軍の戦力がやや不安と言った感じかな。三枝県はほぼ彼らの手中にあると聞くが」

 

 三枝県全土からの攻撃の想定はもちろんされていた。その可能性ももちろんあると深絵は語った。

 

「それに関してですが、おそらく敵も追加戦力を三枝県全土から送るでしょう。ですが、それは最初からというわけではない」

 

「ほう?その根拠は」

 

「彼らは本作戦に全力を投じている。人工衛星なんてものを大々的に報じているんです。失敗は考えていない。その為に彼らがマリオネッターシステムを使ってMSを配備してくるのは必然です。ですがそれにも弱点は存在する。マリオネッターシステムの配備がどこまで進んでいるかは分かりませんが、それでも普及させているのならなおの事、操作場所の安全確保の為にMSを残していると思うんです」

 

 人工衛星は並大抵な財源で出来るものではない。ましてやそれが軍事基地的な機能を持ち合わせるのであれば、なおさらだ。

 それを全力で護ってくるのだとすれば、遠い三枝南部から派兵するよりも人工衛星付近に戦力を固めるのが定石だ。しかしここでネックとなってくるのがマリオネッターシステムだ。

 マリオネッターシステムの有効範囲は今のところはっきりとは分かっていない。しかし三枝に拠点を置く彼らが東響のオーダーズ・ネストを襲撃したということは、少なくともそれだけの範囲でMSを操作することは可能と考えるのが自然である。

 三枝周辺ならどこでも使える。となると三枝各地にマリオネッターシステムを配置しておけば全域から打ち上げ場所のMSにアクセスして防衛行動が行える。それならそちらのMSが撃破された後でもそちらからMSを発進させるということも出来る。

 正に完璧なMS運用システムと言えるマリオネッターシステム。ところが欠点もある。先程の深絵の発言だ。

 

『弱点は存在する』

 

確かにMSの遠隔操作はMSの撃破による死を克服している。彼らも死を克服したと大きく発言した。が、それはあくまでMSの撃破による死なのだ。

 MSの最大の利点、MSとの一体化。それはMSの撃破による死と同時に、自らを護る最大の武器ともなる。

 対してマリオネッターシステムは離れた箇所にもMSを送り込める画期的なシステムだが、元達はこう考えていた。「MS操作中はポッドが無防備になるのでは?」と。

 

「糸繰人形、とはよく言った物です。安全なところから操る。だけどそれは安全が確保されて初めて威力を発揮する」

 

「……そうか、つまり」

 

「遠くから動かしているのなら、現地に配備されているMSに再度接続して戦闘に入った方が素早く戦力を補充できる。遠隔操作の場所の守りよりも優先して現地にMSを送って、遠くから悠々と攻めてくると思います」

 

 それが結論だった。もちろん本当にマリオネッターシステムが普遍的に普及できる状態かは分からないし、もしそうならもっと確実な方法はある。

 だが憶測で戦力を分散するのは悪手として元と深絵は判断した。そのアシストも含めてアメリアの駐留軍が背後を護ってくれる算段にはなっている。本当ならもっと戦力がいるのだろうが、下手に戦力を増加させても却って現場が混乱する可能性もあったため要請できなかった。

 しかしながら藤谷もそれを理解して、二人の判断を尊重する。

 

「なるほど。後方のアメリア駐留軍の援護も考えれば危機的状況には陥りづらいな。万が一急襲されても愛智方面に逃げれば援軍も見込める」

 

「そう言うことです。それにホリン制圧には海上部隊の一部と自分のガンダムで当たりますので、戦力は充分に残しておきます」

 

「行動は確定しているわけか。なら余計な心配は無用か。パワーアップしたという君のガンダム、戦果を期待しておるよ」

 

 元のガンダム、クリムゾンゼロガンダムが今回の要となる。初動となる行動次第、と言ったところか。深絵も頷いて初動となる動きを再現したスライドを表示させた。

 

「本作戦にてシュバルトゼロガンダム改めクリムゾンゼロガンダムは作戦の初動を握る重要な機体となります。ガンダムの座乗艦「こてつ」の乗員は第一段階ではクリムゾンゼロとこてつのサポートに全てを注いでください」

 

 概要に合わせて説明する深絵。浮上阻止のための作戦内容は非常に荒唐無稽な考え方で、隊員からも本気でやるのかと声が漏れる。しかし呆気に取られていた藤谷は笑って見せるとその作戦を支持した。

 

「ハハッ、これは一本取られた。確かにこれはMSにしか、いや、君にしか任せられない。その他の分野を私が補強しなければな」

 

「藤谷さん、出来ると思いますか?」

 

「分からんよ。だが、MSという未知の部分も存在する兵器に出来ないと決めつけるのは可能性を閉ざすことだ。かつて不可能と言われた空を飛ぶことが今や簡単に出来る時代なのだからね。それをサポートするのが私の役目だろう」

 

 確認を取った沙織に対し、そう言って見せる藤谷司令。歴戦の軍人にそう言われると深絵達の気が引き締まる。

 自分達が歴史を作る。それはきっと光姫も成し遂げたかったことだから。その実行者となる元も同じ気持ちだった。

 

「藤谷さん……」

 

「だが、いずれも君達の働きに作戦の成否は掛かっている。やるからには全力でだ」

 

「はい!」

 

 力強く応答して作戦への意気込みとする。その声にオーダーズメンバーの表情も少なからず引き締まる。

 作戦の大まかな通達を終えたところで、藤谷は最後にオーダーズ全隊員に激励を送る。

 

「MSオーダーズの諸君!今回は私という本来の形ではない司令による作戦遂行に不安となる者もいるだろう。無論私もだ。MSという兵器の兵法を、初めて指揮する君達で使いこなさなければならないプレッシャーもある。だが君達は君達の技量を信じて、行動してほしい。MSのスペシャリストたる君達が、彼らに劣る道理はないのだから。私もベストを尽くそう。とはいえ、この場を締めるのはこちらにいる君達の隊長達の言葉なのだろうが」

 

 視線を送る藤谷。元と深絵は目を丸くするも顔を合わせ、深絵が目配せする。ため息をついた元がその言葉を引き継ぐ。

 

「やれやれ……こういうのやりたくないんだけどな……。この作戦はある意味では意趣返し、悪く言えば復讐だ。先の作戦で俺達は多くの犠牲を生む結果となった。光姫ももういない。だけど、俺達にはまだ残っている。光姫が護った希望が残っている」

 

 希望とは無論光巴の事だった。結果として彼女は元達と同じ世界の命運を視る者、DNLだった。今後DNLの事は次元感応者と呼ばれるようだ。

 しかし彼女だけに限らない。今後彼女が出会うだろう友人達、同級生達もまたこの先の時代を切り開いていく存在だ。もしかしたらその中からDNLも生まれるかもしれない。そんな彼らを護るためにこれから戦うのだということを元は語る。

 

「彼女の残した希望、子ども達が明日も見上げることのできる(そら)を護るために、俺達は戦う。死なない兵士が何だ。命を燃やして戦う。それが本来の形だ。見せつけてやるぞ、俺達の本気を。俺達が信じた未来で、奴らの妄想をぶっ潰してやれ!」

 

『ハイ!』

 

 力強く言って見せた言葉にオーダーズ隊員達も応える。それを見届け、作戦司令改めMSオーダーズ臨時総司令の藤谷努が作戦開始を告げた。

 

「ではこれより、ホリン・ダウン作戦を発令する。総員直ちに持ち場へ急行されたし」

 

 ホリン・ダウン作戦が発令された。ここからそれぞれ2つのルートから作戦予定地へと向かうのであった。

 反撃の狼煙が、今上がる。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。さぁ、元君達はどのような戦略で人工衛星を打ち上がる前に制圧するのでしょう?

レイ「ん~……分かった!アメリカにも協力してもらう!」

いや、クイズじゃないんで(;´・ω・)

ジャンヌ「かなり奇想天外な方法のようですが……まぁ、それはその時を待てばいいですね。次元覇院も迎撃の為に何か用意している様子。また元さんと沢下判との対決は避けられないでしょうね」

そうだねぇ(´-ω-`)秘密兵器、沢下はどのような手で来るのかもお待ちいただけると幸いです。
それでは早いですが今回はここまでです。

レイ「次回もお楽しみに~っ」


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EPISODE31 静かな決戦前夜1

どうも、皆様。前回の投稿が諸事情で遅れたため今日の投稿となります、作者の藤和木 士です。

ネイ「アシスタントのネイです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよ~。決戦前夜、ねぇ。嵐の前の静けさ、でも良かったんじゃない?」

あ、それ私も少し考えたよ(;´・ω・)ただ今回はこっち。そのタイトルはまたの機会に。

ネイ「EPISODE31ですか。LEVEL1だとここから第3章の始まりだったんですよね」

そうなんだよねぇ。さて、いよいよ発令されたホリン・ダウン作戦。挟み撃ちの為に元達に自衛軍から提供されたMS運用試験空母が譲渡されます。4隻の艦に付けられた名前にはちょっと気になるものも。そして新たな機体も提供(?)されます。それではどうぞ。


 

 

 作戦実行と共にオーダーズ仮拠点から続々と飛行艇と軍用車が出発する。飛行艇は全機そのまま名護屋まで、軍用車は港へと向かっていた。

 軍用車が休みの都内を走っていく。その行く先に見えた港には巨大な空母が確認できた。自衛軍が前身の組織から運用してきた空母のいずれとも似て非なる空母。それは自衛軍がMSオーダーズと共に秘密裏に開発を続けていたMS空母だった。

 中には既にMSが搬入されており、その中には新たな装備のシュバルトゼロガンダムことクリムゾンゼロガンダム、そしてMSオーダーズがかねてより開発していたソルジアの決戦仕様が搬入されていた。

 ソルジアの決戦仕様は飛行艇の方にも搬入されている。隊長クラスにのみ許された機体だ。とはいえ本来ならおかしな点も存在した。

 なぜオーダーズの基地が襲撃されたにも関わらず、本機は無事だったのか、だ。あらかじめ作戦に投入されていたわけでも、別のMSオーダーズ基地から無事だった本機を譲渡されたわけでもない。

 しかしそれは非常に単純な、そして聡明な理由だった。自衛軍に一任していたのだ。本機の製造・管理を。

 それは機体の出自・開発経緯故の特別な処置。そのおかげで本機は先の作戦での被害を免れていたのだった。

 その特別な理由とは、何なのか。艦に乗り込んだ元達が会話の中でそれに触れていた。

 

 

 

 

「もう大丈夫なんだな、ジャンヌ」

 

「えぇ。まだ痛みますが、それでも元だけでは機体を十分に生かせませんから」

 

「そ、そうだな……」

 

 オーダーズの制服を着て、胸を張る動作をしたジャンヌ。彼女もまた自衛軍東響本部基地から先に到着していた。

 服の下の包帯を少しだけ見せて、まだ本調子でないことを告げるもジャンヌは心配ないと言って見せる。少しだけ顔を逸らして見せるも、元もその通りであることを認める。

 ため息を吐いて、並ぶ機体に目を向ける。

 多数のソルジアタイプの中に一際異彩を放つ赤と黒のガンダム。これまでなら元と光姫のガンダムであることを示すように見えた文が、今では元の機体だけを指す言葉となっていた。

 元のガンダムに対し同行する夢乃も変わり様に一言。

 

「なんていうか……本当にお姉ちゃんの機体が乗り移ったみたい」

 

「機体形式番号はなし……とりあえずもとのシュバルトゼロガンダムのやつにCZとでも後で設定しておいてもらうか」

 

 形式番号がないというのはイグナイターでも経験したことだ。ただしあれは戦闘中の進化と言うことで受け入れていた。今のこれは完全に一体化して機体を変容させている。

 変容ということでかかる負担の増加を危惧したが、整備主任の来馬とスタートの調べによると、イグナイターのモニターで見られた搭乗者への負荷は極力なくなっているとのことだった。

 負荷の掛からない変容。それは最後の砲撃でも感じていた。ジャンヌもあの時は自分が意識を朦朧としていながら制御がされていたという。

 一体何がそうさせているのか。まさか光姫の思念が乗り移ったとでも……。そんな疑念を抱える。

 そう考えている間にジャンヌの興味はソルジアタイプのMSの内、ウイングバックパックの装備されている機体へと向けられた。

 

「にしても、これがソルジア・エースですか」

 

「そう。君達MSオーダーズが新たに開発した決戦を見据えたMSだったな」

 

「新堂さん。今回はこの機体を貸与して頂き、ありがとうございます」

 

 やってきた新堂に対し、夢乃が深々と頭を下げた。しかし新堂は首を振ってその認識が誤りだと指摘する。

 

「それは違うよ、夢乃。この機体は元々、君達が開発しようとしていたものを自衛軍が制限を設けてこちらで開発・管理していたものだ。本来君達が最初から運用しても、何らおかしくなかった機体だよ」

 

「そうですね。V2と違ってシュバルトゼロガンダムの外見的模倣も取り入れた結果、なんか知らんが危険だってことで性能実証まで自衛軍で開発を進めるってことになったんだよな……」

 

 沙織の言葉に続いて元は文句を付ける。二人の言う通り、本機はシュバルトゼロガンダムの性能を模倣する形で開発が行われた機体。いわば量産型シュバルトゼロガンダムに位置する機体となっていた。

 性能はオーダーズ開発時点でも申し分ない機体性能となっていた。ところが機体量産計画を申し出たところ、自衛軍から謎の圧力とでもいうべき通達で機体の量産計画を持っていかれてしまったのだ。

 あまりにおかしな話だったので沙織や藤谷司令、それに晴宮防衛大臣にもコンタクトを取り確認を取ったのだが、それによれば政府が確認の時点で様子見の形で自衛軍に機体を預けさせた方がいいとの通達を受けてのことだった。もっともそれも、今ではもう一つの思惑が絡んでいたことが判明している。

 

「けれど、今明らかにしている最中だが、まさかこの機体の実戦配備の遅延も次元覇院が絡んでいたとはね」

 

「あ、それも次元覇院の仕業なんですか?」

 

「あぁ。昨日取り押さえたスパイたちが色々やっていたらしい。その主犯だった厚生労働大臣もね」

 

 結果的に、昨日のスパイ騒動は無事解決した。最後の逃げたMSを沙織が捕らえ、更なる調査の結果政府の重要人物だった厚生労働大臣もスパイの一人だったことも判明した。

 厚生労働大臣は昨日MSオーダーズの取り扱いに自衛軍への吸収合併を強く求めていた者の一人だ。おそらく吸収合併してから自衛軍に更なるスパイを送り込んで、その機体を掌握しようとしていたのだろう。同じく厚生労働大臣の意見に賛成していた国土交通大臣に関しては、裏で厚生労働大臣からの要請で動いていただけで彼がまさか次元覇院に通じているとは思ってもいなかったらしい。

 ともかく彼らはMSオーダーズの戦力増強を嫌い、圧力を掛けたのは間違いない。現在そのデータ流出がないかどうかの調査が葉隠を中心として行われているとのことだ。

 情報に関してはそちらに任せ、元はようやく配備された決戦用の機体達を見て安堵する。

 

「けど、結果的にこの大事な局面で戦力を温存できたと思えばこれはこれでって感じだな」

 

「そうだな。ま、こっちはいきなりぶっつけ本番で新しい機体の整備させられるから、負担かなり大きいんだけども」

 

「あら、ホシキタさんもこちらだったんですね」

 

「そうだよ。あと海斗も一緒だな。今は別の機体の方を見てる」

 

 ジャンヌにそう返した平次。彼が一応海上側のメカニックのまとめ役となっている。来馬は深絵達の側に回っている。

 そんな彼らにも念のため現状のシュバルトゼロについて訊いてみる。

 

「それで、こっちのメカニック主任は何か俺の機体で分かったことは?」

 

「あー……それな。聞いた限りでも全く分からん。というかこれから見るからもう少し待ってくれそれは」

 

 質問に対し、さっぱりだと答える平次。昨日から今日の話の為か、まだ手付かずのようだった。

 仕方ないと思いつつもやはりそれは作戦に必要な情報。なるべく早い解析を頼み込む。

 

「そうか。こっちも使い勝手の再確認とかしなきゃいけないから、なるべく早く頼む。実質主役だし」

 

「主役ねぇ。実際そうだから、ご期待に沿えるようにしておくよ。あ、そうそう。光姫さんからの最後の頼み事、検証とかが済んだ。こっちも確認しておいてくれ。じゃあ」

 

 代わりに資料を渡して整備の方に戻っていく平次。その後ろ姿を見届け、早速資料の内容をジャンヌ達と共に見ていこうとする。するとそのタイミングで艦長の藤谷の声が響いた。

 

『積荷、並びに全員の搭乗を確認した。これより「こてつ」は同型2番艦「ふうと」、3番艦「あきなみ」、4番艦「せいなん」と共に出港する。この航海が明日の宙を良きものになるよう、総員その場で港方向に敬礼!』

 

 艦長の声に合わせ、その方角に向けて敬礼する。同時に機関が指導し、船がゆっくりと動いていく感覚を覚えた。

 いよいよ出港だ。目指すは伊世湾沖。おそらく三枝、四河市も見えるかもしれない。久々の故郷、そしてすべての始まりの地。

縁と因縁が交わる地を前に、元の胸中は複雑だった。

 

 

 

 

 航海は順調に進み、夜が訪れる。夜となっても空母は変わらず三枝県伊世湾沖を目指して進む。

 元々時間がない。夜中に敵地へ向けての進軍は多少のリスクはあるが、それでも作戦時間には間に合わせなければ。

 その事もありパイロットの夕食は個別に取って残りは周辺警戒に当たるようにしていた。夢乃も既に夕食を頂き、交代で見張りを行っていた。

 

(……次元覇院はどこまで私達の動きを把握しているんだろう)

 

 先日の作戦。その動きは彼らに察知されていた。そのせいでオーダーズ・ネストは崩壊し、自身の姉である光姫は死んでしまった。

 その原因でもあったスパイはいずれも沙織達自衛軍の方々のおかげで取り払われた。けれどもまだいるのではないかという不安が夢乃にはあった。

 これだけの規模の軍を編成しての侵攻。彼らが黙って見過ごしているとは簡単には思えない。マリオネッターシステムシステムによる遠隔地派遣を行える彼等ならなおさらそう思える。

 不安で不安で仕方がない。今乗っている機体も新型とはいえ、操作に不安が残る。自然と周辺への警戒が強まる。

そんな夢乃はふと、付近で同じく警戒に当たっていたシュバルトゼロのパイロット、自分にとっては未だ申し訳なさを引きずる相手黒和元へ敵の動きについて訊いてみることにした。

 

「あの、元さん」

 

『ん?どうした』

 

「……元さんは、敵が既にこちらの動きに気づいて行動している、と思いませんか?」

 

『んー……追跡、という意味ではまだないだろうな』

 

 気になる言い方で返答した元。夢乃もその意味を理解しきれていない。なので詳細を要求する。

 

「追跡だけに関して、ですか?どうしてそう言い切れると」

 

『夢乃ちゃんにはまだ話していなかったな。俺はDNL、次元粒子の動きを読む。世界の動きを音として捉えて把握する』

 

「それって、光巴ちゃんの……」

 

『そうだ。これまでの間に、その追跡の動きを知らせるような音は聞こえていない。だから追跡はないと言える』

 

 憶測、そう言っても差し支えない内容。眉唾ものと言えなくもないが、そうではないと言える点もある。それを裏付けるように「こてつ」に乗艦する新堂沙織からレーダーの索敵報告が入った。

 

『今現状、この海域にこちら以外のMS反応はない。ついでに味方の艦隊の動向もおかしなものは見られない。裏切り、という線も今はないだろう』

 

「沙織さん……」

 

 上官二人の言葉に、夢乃も黙るしかなかった。きっと自分の考えは心配のし過ぎなのだろうと。

 そんな彼女の気持ちを察してか、元は話しかけてくる。

 

『夢乃ちゃんが心配するのも無理はない。前にあんな形で奇襲されたら、疑い深くなるのは当然だからな』

 

「……いえ、それだけじゃないですから。私は」

 

 夢乃の表情は暗くなる。今回のことだけじゃない。夢乃が戦ってきたMSオーダーズ神名川基地では彼らの卑劣とも呼べる手を何回も経験していた。

 その一端を語り聞かせる。

 

「神名川でのあいつらは最低だった。人質は当たり前のように取るし、こっちの味方を盾にして戦闘を進めてくる。爆発寸前の機体を敵味方問わずこっちに投げ込んで、市街地への被害もお構いなし……。そこまでやってくるあいつらだから、私も掃討戦には全力で臨んだ。同じことをお姉ちゃんがいる東響の街で起こしたくないから」

 

 東響掃討戦に臨んだ理由。夢乃はそれを神名川支部の司令に進言して東響本部オーダーズ・ネストにやってきたのだった。

 姉が死んだことにはショックを受けた。けれどもやることは変わらない。死んでいった姉の為にも、ここで失敗することは許されないのだ。

 それを元達にも分かってほしかった。あいつらは卑劣な輩なのだと。しかし、元、そして沙織の反応は違った。

 

『爆発寸前の機体を……凄いな。あいつらにしては』

 

「え?」

 

『確かに。不本意だが最悪自爆しかねない危険な策を思い切ってやってくる。それは並大抵の技術では不可能だ』

 

「な、なんでっ!?」

 

 批判は少なく、代わりにその卑劣な行為を褒める言動をした二人。正気とは思えないと思わず声が出てしまう。

 二人も当然聞いていた。すると二人は誤解であると夢乃に言った。

 

『あぁ、いや、もちろんあいつらは許せないさ。だけどそれとは別にそいつは強いってことを言いたかったんだ』

 

 強い。それは一理ある。その証拠に夢乃は神名川の次元覇院を殲滅しきれなかった。いつも逃げられてしまっていた。

 だからと言って強いだなんて思いたくない。そう思ってしまえば自分が一生叶わない気がした。それを砕くように沙織は意見を述べる。

 

『そうだね。敵を許せないと思うのは自然だ。だが敵の強さ、それを認めなければ負ける戦いもある』

 

「強さを認めないと、負ける……」

 

『そうだ。世の中、何でもかんでも一方的に正しいなんてことはない。私達自衛軍や、MSオーダーズだって、相手が罪を罰していたとしても人を殺したことは誇れるものではないだろう。次元覇院も言っていることや、やっていることは滅茶苦茶だが全員が全員、そうではないかもしれない。だが、非情さは必要だ。そんな敵への情けを排除しなければ、味方の誰かが死ぬ。どんなことをしてでも勝つ。彼らには葛藤することなく実行できるメンタルがある。それを覚悟してそれ以上の心の強さで挑まなければな』

 

「元さん……沙織さん……」

 

 そんなこと、考えたこともなかった。今まで自分は5年前の失態からずっと次元覇院の事を嫌っていた。奴らは最低、人を操り、愉悦に浸っている屑共だと思っていた。価値なんてないんだと、思い続けてきた。

 けれども二人は嫌いつつもその強さを認めていた。一人は自らを別の世界へと飛ばしたはずだというのにだ。

 とてもではないが叶わない。いくらMS開発においてテストパイロットを務めた自分でも、パイロットセンスがどれだけあっても敵わない志を持ったパイロット達の言葉。座学が苦手な夢乃でも差を歴然と感じさせられる。

 気落ちする夢乃。それを察してか、沙織の近くにいたと思われる艦長の藤谷が言葉を掛ける。

 

『二人の考えは兵士としてもっともだ。だが君の嫌な物を嫌だと思う姿勢、分からないことをなぜと言うこと、はっきりと拒絶することも人生では大事だ。場面を考え、そのうえで適切な言葉を使うんだ』

 

「……はい」

 

 その言葉に肯定する。会話が終わると元や沙織もそれぞれの持ち場に戻った。

 敵の強さを認める。今まで思いもしなかった考え方。姉もそういう気持ちを持って戦ってきたのだろうか。

 今まで直感で戦ってきた自分が恥ずかしい。考えるよりも先に動くことを信条として来た自分が、果たしてこの先生きのこれるのかと。

 パイロットのままではいけない。これからも生き残るために出来ることを、夢乃は模索し始めるのであった。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。新型機ソルジア・エース、シュバルトゼロガンダムの性能を模した強化機体です。

グリーフィア「とどのつまり、量産機ってこと?」

みたいな感じだけど、正式に量産ってわけじゃない。劇場版マク○スFのトル○ードパックみたいなものと読者には思っていただければ。

ネイ「つまり正式な量産機を出すつもりはあるんですね」

そうだね。ストライク→ウィンダムみたいな流れにしたいなぁ(´ρ`)

グリーフィア「それやるとインフレ凄まじいけれど?」

流石に性能そのままには出来ないよ(;´・ω・)DNL関連の装備は省くし。

ネイ「量産機まで変容し出したらもう、ね」

設定がややこしくなるからね。次回は深絵達の視点に変わりますよ~あと黎人の動向も明らかになります。

グリーフィア「あの元司令さん、こっちの動向気にしすぎてそうよねぇ」

ネイ「そうだね。それではみなさん、次回もよろしくお願いしますね」


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EPISODE32 静かな決戦前夜2

どうも、皆様。今日は良いお風呂の日ということでガンダムチャンネルで良いお風呂の日セレクションが公開されているようです。外出自粛の今なら是非ご覧になっては。作者の藤和木 士です。

レイ「アシスタントのレイだよ~」

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです。外出自粛ということで今日は藤和木もご友人とリモートバトスピをしていらっしゃいましたね」

今日は全く勝てなかったけどね、ハハッ。さて今回はEPISODE32の公開です。前夜ということであまり動きがありませんが次回の話からもいよいよ動いてくるので今回もそれに向けた深絵達の側の動きをご覧いただければ。

レイ「深絵ちゃんや華穂ちゃんはどんな新しい装備を構えるのかな?」

ジャンヌ「前回名前の挙がったソルジア・エース、華穂さんにも配備されているのでしょうか?」

それでは本編をどうぞ。


 

 こてつを含めた海上艦隊が伊世湾を目指し航行する頃、深絵達地上部隊は自分達の部隊受け入れ先である四ツ田基地へと到着を果たしていた。

 四ツ田基地では既に海上作戦に向けての準備・監視が行われていた。それだけではない。愛智の自衛軍並びにオーダーズ支部の戦力も四ツ田基地へと少数ながらも集結していた。

 自分達の防衛圏内を守備する戦力を保ちながらも助力してくれている。そこには四ツ田基地の未だMS戦力が充実しきっていない点も背景にあった。

前回の惨状から回復しつつある四ツ田基地の戦力は決して多くはない。だが最前線として彼らも本作戦に臨んでいた。

 

「作戦へのご協力、感謝します須藤千司令」

 

「構わないさ。上からの命令でもあるし、この作戦は人類すべてに影響がある。いかんせん最前線の我らだけでは解決できない事態だ。こちらこそ、今回は頼らせてもらう」

 

 部隊の受け入れに礼を述べる深絵に、頼ると明言した四ツ田基地司令の須藤。握手に応じたのち、須藤は後方に控えていた隊員達に号令する。

 

「四ツ田基地はこれより、全力を以ってオーダーズをサポートする!総員、配置に着け!」

 

『了解!』

 

 司令の一声に一斉に動き出す基地隊員達。深絵も後方に付いていた隊員達に同じく作戦準備に取り掛かるよう伝える。

 

「私達も始めるよ。ホリン・ダウン作戦成功の為に!」

 

『了解!』

 

 隊員達は共に手を取り合い、明朝に向けた最終チェックを行っていく。

 

 

 

 

 現地入りした夕方から数時間。辺りは既に夜の帳が降りて、静かな夜の街並みを見せる中、名護屋港海上に再建された四ツ田基地は反対に活気を見せていた。

 作戦まで時間がない以上、突貫で送り込まれたMSの整備を行わないといけない。MSオーダーズの主任整備士である来馬を中心に、四ツ田基地整備士達がまとまっていく。

 隊長格の者達も明日の作戦の為の戦術シミュレーションに没頭していた。部隊員達をどのように展開するか。大まかな作戦の流れは出来ていても、細かな設定に皆四苦八苦する。加えて隊長格と一部の隊員には新型MSのソルジア・エースの慣熟訓練も言い渡されていた。最新型かつ後継機。似ているようで違う機体の感触に、シミュレーターからは多くの悲鳴が上がっていた。

 

『っ、くぅ!!』

 

 その中の一人である華穂も今シミュレーターの中にいた。敵機レベル5。現状の最高ランクで戦っていた。その様子を深絵が外から観測する。

 

「あれは確かガンダムのパイロットの妹だったか。新型とはいえ中々慣れようとしている」

 

「須藤司令」

 

 声を掛けてきた須藤に敬礼を行う。須藤は手を軽く上げて返すとその動きに対して見解を尋ねる。

 

「君から見て彼女はどうだ?彼女だけではなく、他の新型搭乗者もだが」

 

「はい。華穂は今現状新型機に慣れつつあるパイロットだと思います。他の隊長達より、順応性は高い方かと」

 

「ほう。して他の搭乗者達は?」

 

「他の方達も差はありますが適応はしています。ただ、高性能化しすぎたせいで付いて行けない人もちらほらと」

 

「うん、それは私にもそう見えるな」

 

 頭を抱える。本機はソルジアのハイスペック機を謳ったもの。高性能と引き換えに操縦性は今までの物よりピーキーなものへと変わってしまっていた。

 それは既に分かり切っていた。しかしそれでもMSオーダーズのメンバーなら時間を掛けて乗りこなしてくれると判断して開発が進められていた。そう、「時間」が今回の最大の障害だった。

 深絵はその問題について触れる。

 

「やはり、時間がどうしても足りません。敵の新型が投入された場合、どうなるか……」

 

「それだけは、どうしようもないな。機体の性能にセーフティを掛けるというのは?」

 

「並行して、というより、今行っている慣熟訓練はその目安としてですね。あまりにひどい場合は現段階で制限を掛けて訓練してもらっています」

 

「そうか。にしても凄いな。新型の性能は。君も試乗はしたのか?」

 

 ふと質問を投げてきた須藤。突発的だったが、答えられる質問だったので答える。

 

「えぇ。一応高機動型のブラウの経験もありましたから。けど華穂の操縦を見ているとまだまだかなと」

 

「ほう?」

 

 不思議そうに言葉を紡ぐ須藤。深絵自身の持論を持ち出す。

 

「やっぱりMSって靴とかと同じように人それぞれに最適なものが存在するんです。私の高機動狙撃型、はマニアックすぎるんですが、新堂沙織さんや夢乃が近接重視っていう感じに」

 

「ふむ。装備によっても得意距離は変わるようだしな」

 

「えぇ。それに関していうと、今回のソルジア・エースは高機動さを売りにした機体です。特別遠距離にも近距離にも秀でていない。機敏さで勝負する機体。だけどその機動性は今までの機体とかなり勝手が違う。素のままだと多分誰にも使えない上、下手に抑え込むと特性を生かしづらくなってしまう。器用貧乏、文字通り最上級と言うべき機体……」

 

 シュバルトゼロガンダムの性能を再現する為に開発された量産機ということもあってか、使いづらさもある程度継承した機体となった。もちろん、エヴォリュート・アップなどという特異性機能も再現できていないが、それ以前に使いこなせる人間が現状少ないという問題に直面した。

 せっかくハイエンドモデルとして製造されたにも関わらず、使える人間を更に絞ってしまったような機体。これを量産してしまったのは間違いではないかと思える。

 話を聞いて須藤も疑問に思って質問を掛ける。

 

「だが、あの機体はソルジアの性能向上機体としても開発したのだろう?多少リミッターを掛けて運用できるようになれば、それでいいだろう」

 

 その言葉はもっともだ。扱えないなら抑え込む。扱える人間がいない以上、扱えるようにするべきである。それは話を聞いた元司令の黎人も同見解だった。

 

「うちの元司令の黎人君もそれでいいと言っていました。だけど、あの機体を扱える人間がいるとしたら、他の人達も躍起になりますよ」

 

「ふむ?それは元々のガンダムのパイロットである……?」

 

 頷く。だがそれだけではなかった。

 

「それと、今シミュレーターを動かしている華穂ちゃんです」

 

「なんと」

 

「他の同じ機体を動かしている人達は短時間に連続してシミュレーター入っている人達です。撃墜判定を受けて、ミスを繰り返している。でも華穂ちゃんは挙動こそ安定していないけれど入っている時間に比例せず、撃墜判定は少ない」

 

 正直言って、深絵はこの結果に予想外だった。華穂は今年から本格的にオーダーズの警邏活動に参加している。これまではアルバイトとしての扱いの彼女が乗りこなせるなどとは普通は考えられない。

 何かの不調かとも思ったが、違う。深絵の出した結論はこうだった。

 

「おそらく、彼女のMS操作適性は元君と同じ形なんだと思います。高機動・万能型MSに適性がある。流石に元君ほどの高いMS適性ではないでしょうが、兄妹ゆえにMSのクセが似通ったというべきか」

 

 華穂は元の妹。MSが存在していない世代の子どもでも、そういった潜在的能力が形としてあっていたのだろう。

 華穂と元はお互い兄妹でも似ても似つかないと学生時代のころから聞いたことがあったが、MSという兵器が実用化した結果、そういった共通点が生まれる結果となった。無論本当かどうかは分からないが、兄の機体の量産検討機で妹が結果を出すというのは何かの縁だろう。

 深絵の推測に須藤も相槌を打った。

 

「なるほどな。ならある意味この機体は成功だろう。たった一人だけとはいえ性能を引き出せたのだから」

 

「まぁ、量産の意味では軽く失敗なんですけどね。これは性能低下させないとかな」

 

「ふむ。それで君の方はいいのかい?あの時よりも装備が変わっている……いや、前に作戦配置の助言を私に請うた時よりも更に変わっているようだが」

 

 言って須藤は近くに見える深絵のガンダムに目を向けた。須藤の言う通り、深絵の機体は東響掃討戦の時よりも更に兵装が変更されていた。具体的には左コンテナが形状をやや変更していた。

 東響掃討戦に当たり、深絵は以前救助した須藤に戦術指南を乞うていた。スナイパーということで高い位置からの援護狙撃を提案され実行した。途中途中で位置を変えたことで敵からの狙撃予測ポイントも絞らせなかった。

 話は戻るがその作戦御教授の時間はわずかに十分足らず。両者共に時間があまりなかった故だが、深絵もそのわずかな間に自身の機体の装備を図面表示させた程度。わずかながらの変化に気づくのは流石歴戦の兵士と言ったところか。深絵も肯定してそのギミックを明かす。

 

「はい。左肩のコンテナの武装は新型の実弾専用大型ライフル「リボルビング・ガンランチャー」に変更。次元覇院の隊長機に多く見られるビーム反射装甲に対するカウンターとして用意させました。これには須藤司令から頂いたダンガンの設計図を基に開発してもらっています。その節は本当にありがとうございます」

 

 四ツ田基地救援の際に司令より頂いた試作重対物ライフル「ダンガン」の設計図。それを反映させた武装の開発は残念ながら掃討戦には間に合わなかったが、今回ようやく完成にこぎつけた。

 威力と射程重視だったダンガンに対し、こちらは弾種を優先させた兵装。それでも通常の実弾兵装以上の破壊力を実現したダンガン譲りの砲身設計と弾丸を装備した本兵装はダンガンの後継種と言って過言ではない。

 これなら沢下ともやり合えると確かな自身を持つ深絵。ガンランチャーの資料を見ていた須藤は一つ助言を送る。

 

「そうでもないさ。ただ一つだけ言わせてもらうなら、ガンランチャーとしたことで弾種切り替えが頻発するだろう」

 

「?」

 

「ダンガンは本来威力の為にある程度の汎用性を切り離した銃。弾倉の切り替えと衝撃による弾詰まりには気を付けたまえ」

 

「それって……」

 

『あーっ!墜ちたぁ!!』

 

 訊き返そうとしたところで華穂の無念の叫びが響く。どうやら撃墜判定をもらったらしい。終わったのを見て須藤が勧める。

 

「どうだ。それを踏まえて動かしてみるというのは」

 

「そう、ですね。やってみます!華穂ちゃん、私もやらせて~」

 

 意気込んで深絵はシミュレーターに入る。明日までの間に出来ることはやっておかなければ。

 

 

 

 

 黎人のいないMSオーダーズは着実と来る決戦に向けて動いていた。そんな様子をわずかしか知らぬまま、黎人は光巴と共に自衛軍の施設にて幽閉という名の保護を受けていた。

 作戦の段階ごとの動きも知らない。分かっているのは海上と地上から攻撃する為に部隊が分かれて現地へと向かっているということ。食事を届けに来る自衛軍の担当に訊いても、知らないと答えられるだけだった。

 

(クソ……本当に隔離するつもりなんだな……。余計な心配をさせないつもりなんだろうが……)

 

 黒和元が仕組んだ彼ら二人の保護。戦いから遠ざけるための処置は、却って彼に味方を心配させていた。

 時計は10時を示そうとしている。光巴を寝かしつける時間だったが、どうにもその気になれなかった。気付けなかった。光巴が時計の時間に気づいておどおどと尋ねてくる。

 

「ねぇ、パパ。わたし、もうおやすみしなくていいの?」

 

「ん?あぁ……もうそんな時間か……」

 

「……はじめおにーちゃんたちがきになるの?」

 

 図星を突かれる。娘でも分かるほどに表情に出ていたらしい。すぐに黎人は否定して執心の準備に入ろうとする。

 

「そんなことはないよ。それよりそうだね。もうおやすみの準備をしようか」

 

「……うん」

 

 頷く光巴。しかしその様子は遠慮がちだ。子どもには似つかわしくない反応。我慢しているような反応だった。

 気にしないようにしたが、布団を準備する途中、思い切って聞いてみる。

 

「…………光巴、どうしてパパが元達の事を気になると言ったんだい?」

 

 なぜ気になったのかと問う。思えば変な質問だ。子どもに対し、そんな疑い深い質問は。しかし光巴は父親である自分の質問に素直に答えてくれた。

 

「だって、パパいつもおしごとのときそういうかおしてるし、もやもやしてるってわかるの」

 

 思わぬ発言。いつもの表情をしていると言われて衝撃を受ける。まさか自分はそんなに分かりやすい表情をしていたというのか。

 動揺する黎人。何とか動揺を抑え込みつつも黎人は気になるもう一つについて更に深く聞き入る。

 

「顔に出ていたか……。だけど、もやもやしてるっていうのは……」

 

「こころでわかるのっ。よくわかんないけど、あたまのなかでじめじめしたのといっしょにパパのかんがえてることとかママのしんじゃうえいぞうがみえるのっ!あっ」

 

 そこまで言って、光巴は怯えた様子で頭を抱える。言ってはいけないことを話してしまったかのように。

 これが元の言っていたDNLの力なのだろう。娘は自分の母の死を予言したことに、罪悪感があったのかもしれない。確かに黎人もそれを聞いてあの時の光景が蘇る。娘が母が死ぬと言ったこと、その後すぐに基地へ戻って、実際に妻がビームに貫かれて死亡した姿を見たこと。

 思い出して改めて思う。光巴は確実に自分の知らない次元粒子の力に気づいている。娘の分かる物が分からないことに畏怖のようなものを感じつつあった黎人。そこで気づく。

 

(この子は次元粒子を理解している。私でも気づけない領域を……どこまで知っているというんだ?……待てよ。さっきのこの子の反応)

 

 黎人は若干の思索の後、娘へと聞いてみる。

 

「光巴。光巴は間違ったことをしていると思っているのかい」

 

「え……?」

 

「パパが光巴の事を怖がっていたりして、それで遠慮しているのならはっきりと言って欲しい。パパは光巴の感じる心のもやもやをまだ分からない。だけど、光巴がどう世界を見ているのか知りたい。親として、光巴の助けになってあげたい」

 

「パパ」

 

「だから、もし間違ったことをしたと思うなら、謝らせてくれ、光巴」

 

 頭を下げる。自分の娘に対し、格好のつかない行動ではあったが、それでも自分の娘に抱いた感情がそれ以上に情けなく思ったのだ。

 元に言われたように、自分が娘の支えになってやらなければいけない。その為に娘に寄り添ってやらねばならない。彼の言う通り、今娘を支えてやれるのは自分だけなのだから。それにその方がまだ決戦に臨む部隊員達への心配を紛らわせることが出来る。

 頭を下げる父親に狼狽えているであろう光巴。けれどもしばらくして光巴は話し出す。

 

「……いまのパパのこころ、あのときのはじめおにーちゃんとおんなじだ」

 

「あの時……?」

 

「うん、みつはをたすけてくれたとき、はじめおにーちゃんもいまのパパみたいにだれかをたすけたいってきもちになってた。あったかい!」

 

「そうか……なら今日は是非目いっぱい聞かせてくれ」

 

「うん!」

 

 そんな話を皮切りに、光巴は自身が感じ取った動きを無邪気に語り出してくれた。どれくらいぶりだろうか。娘と語らうなどという時間は。

今までずっと司令官として戦い続けてきた黎人が久しく忘れていた家族と過ごす時間。それは、夜遅くまで続いて光巴が眠るまで黎人は熱心に娘の話を聴き入るのだった。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。

レイ「深絵ちゃんと須藤司令さん師弟って感じだね。須藤さんは無事MSを受け入れて居られてるみたいだし、ちゃんと支援を受けられたみたい」

そうしないと今回の前線基地としての提供が出来ないからね。急ピッチで再建されたんです。

ジャンヌ「そうですね。でも華穂さんがソルジア・エースを一番うまく扱えているとは」

私が一番ソルジア・エースを上手く扱えるんだ!( ゚Д゚)って感じだね。

レイ「そこガンダム」

ジャンヌ「フフッ。是非とも一番の活躍を見せてもらいたいものです」

レイ「黎人さんも黎人さんで、光巴ちゃんと向き合っていくみたいだし、親子はこのまま無事でいて欲しいね」

自衛軍を奇襲!なんてことがないといいですね(^ω^)

ジャンヌ「はいはい、止めてくださいよ?」

それでは今回はここまでということで。次回、いよいよホリン・ダウン作戦が始動する!仕上げに向けた元とジャンヌは最後のピースを確信する……?

レイ「それじゃあ次回もよろしくねーっ」


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EPISODE33 静かな決戦前夜3

どうも、皆様。先程友人からGW中のリモートバトスピについて諸連絡を受けた藤和木 士です。大丈夫かなぁ(;´・ω・)

ネイ「アシスタントのネイです。ここで詳細を言えないのが苦しいところですね」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよ~。まぁ本人が言うべきことだし、私達は無事を祈るだけ。それより作者君、こっちはこっちの話よぉ」

そうだね。リライズ配信延期が辛すぎる……18話までは配信されるみたいだけども(T_T)仕方ないよね。そんな今日はリライズ17話配信日です(;´・ω・)あの竜何者なんやぁ……サブフライトシステムぽかったけど。
それではEPISODE33、公開です。

ネイ「今回はまずは……元さん達の会話みたいですね」

グリーフィア「元君まだ何か不安があるのかしらねぇ?」

それも今回で終わり。後半でいよいよホリン・ダウン作戦が展開スタートです!一体どのような手で、ホリンの浮上を阻止するのか?それでは本編をどうぞ。


 定期警警戒を終えてジャンヌとハジメはこてつの艦内へと戻った。機体の最終調整をヘイジとカイトに任せたハジメと共に、今は艦内の居住スペースに割り当てられた自室に待機している。

 ジャンヌの淹れたコーヒーを啜り、ハジメが資料に目を通す。資料は午前中にヘイジが渡した物で、この作戦において重要とされるある物に対する整備部の見解だった。

 それに何度も目を通すハジメの熱心さ。それだけこの作戦に対する意識は高いようだ。だが、それは当然なのかもしれない。ジャンヌは広げたお茶菓子のクッキーと自分用の紅茶を含みながら、その横顔をちらっと見る。

 

(もう失いたくない。そんな決意と、戒めの眼差し……)

 

 昨日もう一人で背負わなくていいと言ったにも関わらず、未だ無我夢中になる元の目。と思ったものの、そんな彼の意識はこちらにもあったようだ。

 

「……ジャンヌ、ちょっといいか?」

 

「はいっ、何でしょう?」

 

「この資料のやつ、該当シーンがスターターに記録されていたと思うんだけど、調べてくれないか?」

 

「分かりました。えぇと、これですね」

 

 ハジメに言われ、すぐにスターターから映像を選択する。選択された映像が部屋に備え付けの端末へと転送される。

 映像は以前シュバルトゼロガンダムが沢下の機体、ソルジア・刃と交戦した時の物だ。ハジメは確認すると映像の再生を始めた。

 

「そう。っと、もう少し進めて……ここだな」

 

 そう言ってハジメが止めたのは初めて敵のビーム反射装甲の力を見せつけられた場面。その映像を停止した。

 ハジメの示した映像に、ジャンヌは目を凝らす。だが何かが見えるわけではない。分からず、何に注視すべきかを尋ねた。

 

「あの、これどこを見れば……」

 

「装甲、いや正確にはその周辺だな。俺達の知っているノイズ・オーロラとは違う技術。その違いがもう一つあった」

 

「違い……」

 

 言われてどこかと探す。だが中々見つからない。画面に顔を近づけたり離したりしているところで、ハジメが正解を告げた。

 

「装甲、その周辺に蒸気とでも言うべき熱気がわずかに放出されている。単純に言えば排熱機構が装甲自体にあると言える」

 

「蒸気……排熱……つまりビームの反射の際にそれらが関係していると?」

 

 そうだ、と言って資料にマーカーを引いて提示する。そこにはメカニックの見解として、装甲が排熱によりビーム反射をコントロールしている旨を示す内容が書かれていた。

 ビーム反射の原理、それが判明してハジメは改めて作戦の内容について言及する。

 

「その装甲は、事前情報によればホリンにも搭載されているって話だ。本当なら伊世湾を蒸発させられるんじゃないかってくらいのミサイルか、核ミサイルでもなけりゃどうにもならない」

 

「か、核って!この世界にも核が存在するんですか、そんな前時代の禁忌の兵器が……」

 

 ジャンヌの世界にも核は存在した。竜人族・機人族が生まれる前、旧来の戦争の主軸であった環境破壊・大量破壊兵器だ。

 MS登場後も度々MSの携行サイズにして製作されたこともあったようだが、撃てば非難の対象となる兵装。威嚇程度で収まっていた。

 機竜大戦で自領へと後退した皇帝の軍が、地下に秘匿されていたそれを持ち出そうとしていたらしいのだが、幸いそれは歴史が証明する通りリヴィル・ゲートの部隊が阻む結果となった。

 歴史に存在だけでも甚大な爪痕を残しかねない禁断の兵装。しかしハジメもそれが叶わないことを述べる。

 

「そんなもんこんな緊急事態でも使えないし、そもそもこの国は非核三原則っていうので持つことも制限されてるって」

 

「あ、あぁ……持つことすら禁止されているんですね。それは私の世界よりも安心かも」

 

 持つことすらできないことに安心感を覚える。ただそれはこの国に限った話であったこととハジメは伝えた。

 

「けど他の国は割と持ってるところはある。俺らに今回味方してくれるアメリアもそうだし、何ならツィーラン博士の移住している中華連国は半島にあった国を吸収して保有数がかなりヤバいとか噂もある」

 

「……あぁ、頭痛くなってきました」

 

 へなへなとヘタってしまう。これから戦争に匹敵する戦いに参戦しようとしているのに、周囲の国から間違って攻撃されないかという不安が生まれる。

 そうでなくても、何かしらのきっかけで戦争になってしまいそう。そんなジャンヌの考えは少なからず的を射ていたが、それが触れられることは今なかった。

 脱線しかける話をハジメが本題へと戻す。

 

「まぁそれは今どうでもいいことだ。MS以前の戦術ではそれが必要だった、それだけだ。今のMS技術、特にあのクリムゾンゼロガンダムなら、そんなのに頼らず単機で撃破できるかもしれない。それがこれで確信を持てそうなんだ」

 

「クリムゾンゼロガンダム……ミツキさんのロートを取り込んだ、私達に残された最期の希望ですね」

 

 赤く変色したシュバルトゼロガンダム。あの機体が秘める力が果たしてどれだけか。少なくともあの時放ったビームはハジメ単体でも出せることを考えれば、自分の制御も合わせてあれ以上のビームを放つことは容易だろう。

 けれどそれだけではあの装甲に阻まれてしまうと考える。それを指摘した。

 

「だけど、ただビームを放つだけでは、跳ね返されるのがオチでは?」

 

「確かにな。データによると面積が多くなればより強力なビームを跳ね返せる見立てが付いてる」

 

「ならなおの事撃つのに抵抗ある気もするんですが……」

 

 ジャンヌの指摘に頷くハジメ。けどと言葉を続けた。

 

「けど、同時にそれは装甲自体に跳ね返せるビーム出力が存在することも意味している」

 

「えっ、それって……」

 

「光姫の最後に残した戦闘データ。それが証明してくれた」

 

 ミツキの戦闘データをハジメは見せた。そこには確かに、ミツキの機体の放ったビームが反射され切れずに沢下の機体の腕部をシールド代わりの巨大な手ごと削り取った映像が映っている。

 行けるかもしれない。そんな自信が生まれる。けれどそれはハジメと二人で力を合わせなければ到達できそうにない威力。

 ハジメは言う。

 

「ジャンヌ、失敗すれば死ぬかもしれない。けど、パートナーとして一緒に戦ってくれるか?」

 

 真剣な表情で聞いてくる。これまでにも何度か聞いて来た確認事項。けれどジャンヌの気持ちは決まっていた。

 

「何度訊くんですか。これまでもこれからも、私の気持ちは変わりません。むしろ置いて行ったらMSを装依してでもはたきに行きますからね?」

 

「ジャンヌが、か。それはさせたくないな。では、今回もよろしくお願いします」

 

 苦笑してハジメは従者としての口調で協力を依頼する。

 これまでもどれだけの敵が相手でも乗り越えてきた二人。その二人の決意を固めたところで二人は艦長へと作戦の細部調整を報告した。

 二人の決意を聞き、藤谷は力強く了承するとすぐに通信担当に暗号電文を四ツ田基地、そして周辺艦隊へと伝えた。

 内容はただ一つ。「作戦内容に変更なし」と。

 

 

 

 

 夜は更けて、やがて朝日が昇る時刻。伊世湾は深い霧に包まれていた。

 伊世湾はもとから霧が特別深いわけではなかった。無論これは自然現象ではない。次元覇院が作り出した人工物だ。

 霧が立ち込める中に浮かぶ、次元覇院MSの眼光の光。そしてその奥底の海面に、次元覇院のプロジェクト・ホリンの要、人工衛星ホリンがあった。

 人工衛星、といっても実態は宇宙ステーション、もっと言えば宇宙軍事基地だ。全長1kmのこれが上がれば、攻略は困難だ。逆に、これだけの物を次元覇院は死守しなければならなかった。

 それをカバーするための濃霧と早朝の打ち上げだった。既に海域には敵空母が展開していることを次元覇院も確認していた。MSも展開しつつある。が、発生していた濃霧を前に敵は攻めあぐねていた。

 その様子をMSからの映像で見て教柱の一人がほくそ笑む。

 

「どうやら、敵はこの我々の作戦の前に怖気づいているようですね」

 

「奴らも戦力だけは揃えたようだが、それでもこのフィールドと展開状態のMSの防衛網では突破は無理でしょうな」

 

「とはいえ彼らも激戦を潜り抜け、大打撃を与えてもなお立ち向かってくる。油断は出来ないでしょう」

 

 教柱達の言葉に共感はしないものの、警戒すべきことではあると認識を持つ沢下。通信で教柱の長、大教柱から計画の進行状況を求められる。

 

『筆頭戦神官、状況は』

 

「現在フェイズ2への立ち上げに進行中。打ち上げのフェイズ3までまもなくかと」

 

『そうか。この作戦の成功は、地上に残る者達だけで完遂させたいところだが、万一の時にはマリオネッターシステムで援軍を頼みたい』

 

「はい。その時は我らに何なりとお申し付けを」

 

『あぁ。頼んだぞ。沢下筆頭戦神官、ゲルツ戦神官。他の教柱達も頼んだ』

 

「ハッ」

 

 自衛軍式の敬礼の後、通信が切れる。通信が終わったところでゲルツ・ルーダ戦神官から呼びかけられた。

 

「沢下」

 

「なんですルーダ戦神官」

 

「フン、筆頭戦神官や新型をもらって、己惚れているようだが貴様如き、僕の足元にも及ばないこと、空に上がればはっきりとさせてやる。精々最新鋭機を壊さんようにしてくれよ?それはゆくゆく私の物になるんだからな」

 

 一触即発の空気を出すゲルツ。この二人は何かと反発し合う仲だった。それだけではなく他の使徒達を手ごまとして扱う問題に余る人物でもあった。

 MSの腕前だけは一流で、海外からの貴重な戦力ということで教柱達も戦力としては信を置いていたが、沢下は自分以上に危険な抜き身のナイフと思っていた。そんな男に機体を渡したくなかったが、沢下は機転を利かせて反撃する。

 

「ほう、貴様は俺のお古で十分だと?」

 

「なんだと?」

 

「沢下戦神官」

 

「俺が新しい機体に乗れば、貴様はその乗り捨てた機体を乗るのだろう?良いではないですか。余計な戦力を生まず、資源を有効活用してくれると言ってくれるのだから」

 

「ほざけ!そのようなこざかしい言葉!すぐに言えんようにしてくれる!」

 

 掴みかかるゲルツ。だが教柱がすぐに割って入った。

 

「落ち着けゲルツ戦神官。今は仲間割れしている時ではない。これが失敗すればこれまでの使徒達の努力が水の泡となる。沢下戦神官も挑発はするのではない」

 

「クッ!宙で覚えていろ……」

 

 口惜しそうに渋々言葉に従い後にするゲルツ。沢下は服を払って、止めてくれた教柱に礼を言う。

 

「すみません。少々面倒だったものでつい」

 

「まぁ君の抱く感情は分からんでもない。だが彼ほどの逸材の協力なくして打ち上げとその後の制圧は無いと言える。宙でも君は冷静にな」

 

「えぇ、分かっています」

 

 約束をする。フェイズ2が終わったのは丁度その時だった。衛星内の全使徒にアナウンスがされる。

 

『これより、フェイズ3に移行。全乗組員は座席に固定の上待機』

 

「さて、では我らはここで。戦神官沢下よ、君はポッドに」

 

「了解いたしました。では」

 

 言葉に従いすぐにMSコントロールポッドへと向かった。自身のポッドは既に起動待機状態にあり、素早く乗り込んでポッドを閉める。

 衛星の状況がポッドのモニターに表示される。外の様子も衛星、並びに上空から偵察するMSの映像で把握できる。

 名護屋港沿岸、そして太平洋側にどう攻めるのか待機状態の機体達。

 もう遅い。既に衛星は浮上秒読みに入った。このまま上昇して、衛星軌道上で見下ろし続けるのだ。

 ポッドに管制官の声が入る。

 

『これよりホリンは浮上を開始する。海上離脱後、加速形態に入る。注意されたし』

 

 周囲に鳴動が響く。敵MS達が少なからずこちらに向かおうとする動きがあったが、間に合うものではない。

 鳴動と共に遂に衛星が打ち上げ、もとい浮上を始めた。濃霧を連れだってその姿を外に見せることなくホリンは上へ上へと上昇を続ける。

 

『よし敵は動かない!』

 

『どうやら私達は彼らを買いかぶっていたようですね』

 

 教柱達が作戦成功を確信する。沢下も一安心だと思った。

 しかし、その安泰は唐突に崩れ去る。

 

『!!太平洋側海上、船の上から超高エネルギー反応!!』

 

『なんだと?』

 

『来ます!!衝撃に……』

 

 備えてと言う前に衝撃が衛星を襲う。カメラも船体備え付けの物は砂嵐だけを映す。状況をすぐさま管制官に状況を問い合わせた。

 

「管制、一体何が起きた!」

 

 沢下の問いかけに通信不良状態で管制官は必死に何が起こったかの状況を伝える。

 

『敵艦艇より、大出力ビームによる砲撃です!幸い直撃を逸らしてこちらへの甚大な被害はありませんが、装甲のビーム反射が不可能なほどの超高出力砲撃のようです』

 

 馬鹿か、と言いたくなる知らせだ。こちらが仕入れている情報ではビーム砲搭載のMS母艦は敵に存在していない。ましてこちらの人工衛星ホリン用大型リフレクトパネルのビーム反射許容量を超えての砲撃など、あり得ないはずだった。

 あり得ない高威力のビーム砲撃を受けて教柱、並びにホリンのクルーは混乱し錯綜する。

 

『ホリンで返しきれないほどのビームだと!?』

 

『馬鹿げている……!濃霧の影響だってあるはずなんだぞ』

 

『しかし事実です!砲撃による妨害で、ホリンの上昇スピードが減少。動力機関とイフレクトパネルの冷却装置への負荷増大!』

 

『砲撃、再度来ます!!』

 

 唐突に響く二度目の砲撃が再び人工衛星を揺らした。今度も破壊までは免れたようだったが、先程よりも揺れが激しい。着実と不安が乗組員の間に広がっていく。

 

『ま、まさか、本当に奴ら、撃墜する気なんじゃ……』

 

『クソッ!MSは出せないのかよ!!』

 

「今の状況で出せば、砲撃の巻き添えを喰らう!それより防衛隊の動きは!」

 

 沢下は周囲を落ち着かせる様に防衛隊の支援を当てにする発言を行う。管制官らはそれに従い支援を地上に打診する。

 

『こちらホリン!現在敵艦からのビーム砲撃による攻撃を受けている。リフレクトパネルが機能していない!繰り返す、敵艦からの攻撃を受けている!』

 

 その声に反応して濃霧に隠れていたMS部隊が抜けて海上へと向かう動きとなった。砲撃を止めなければ先に本当にこちらが沈みかねない。

 だがなぜそこまで連続攻撃が続くのか。確かにリフレクトパネルにはビーム反射限界出力が存在する。しかしこれほどまでに大きなリフレクトパネルの反射を無効化できるほどの出力はそう何発も撃つことが今の技術で出来るのか。

 一体誰が、どうやってそれを撃っているのか。そしてまだ砲撃が続くのか。そんな悪い予感は、意味不明な大出力ビーム砲撃を放つ者の正体と共に程なく的中した。

 

『敵艦甲板にガンダム確認!』

 

『ガンダムが!?』

 

「……まさか!」

 

 ガンダムと聞いて沢下の脳裏にあの機体が思い浮かぶ。

 オウ・ヒュドラを撃墜したあの紅と黒のガンダム。その機体もMSではありえない程の大出力の砲撃を放っていた。

 まさかあのガンダムがこれまでの砲撃を?あり得ない考え。例えガンダムでもエネルギーが持たないはずだ。

 認めたくない考え。それが現実のものであることを、三度目のビーム砲撃で示されることになる。管制官から砲撃の発射が告げられた。

 

『砲撃三度目、ガンダムから来ますっ!!』

 

『リフレクトパネル、排熱限界値までわずか!』

 

 三度起こった衝撃。衝撃と共に振動が衛星を揺らす。

 その砲撃もホリンは耐えている様子だったが、やがて耐えられる限界値を超えたホリンの外装が崩壊する音が空気を振動した。

 直後爆発と思われる音と衝撃が体を襲った。

 

『グァッ!!』

 

『じ、人工衛星ホリン、表面装甲並びに下部スラスター損傷……粒子発生器オーバーロード!被害甚大、不時着コースへ!』

 

『馬鹿な……馬鹿な、馬鹿なっ!?』

 

 信じられない事実を喉元に突きつけられた。無事宙へと浮上するはずだったホリンは海へと落下していく。

 それもたった一機のMS、憎むべき敵ガンダムによる常識外の砲撃で。各セクションで爆発や不調が起こっていることが告げられる中、未だ無事なコントロールポッドにてMSから提供される拡大映像に映る機体を見て歯を食いしばる。

 なぜ我らの邪魔をするのか。まるで自分が世界のルールだとでも言うかのごとき圧倒的な力を見せつけられ、沢下の感情を逆撫でする。

 あまりにも理不尽すぎる性能。だがそれで終わってしまえば自分達の負けだ。まだ終わりではない。修理できればまた宙に打ち上げられる。その為に、憂いをここで断つ。

 沢下は憎むべき敵をカメラに映る視線の先に据え、呪詛の如く呟いた。

 

 

「俺達が作ろうとした平和の世界……それをも砕くとするか、ガンダムッ!!」

 

 

 ホリンMS部隊に、出撃命令が下った。すべてはホリンに群がろうとする敵を害虫の如く潰すために。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。反射出来ないほどのビームをぶつければいいのよ!( ゚Д゚)でした。

グリーフィア「ざっつ!雑過ぎない?いや、排熱とかの問題で反射できないならある意味正解なんだろうけども」

ネイ「実弾兵器で突破すれば、とも思いましたが前半の時点でありったけのミサイルが必要な可能性が示唆されていましたね……あるいは核」

この世界でも核をそんな簡単にぶっ放せるわけでもないのでこうなりました(^ω^)砲撃が強化されたクリムゾンゼロだからこその戦法。ただ言っておくとそのままだと2発目あたりでDNのチャージが切れるんですけどね。

ネイ「え?三発撃っていませんでした?」

グリーフィア「これは……また何かありそうよねぇ♪」

次回、そのカラクリは明らかに!というわけで今回はここまでです。

グリーフィア「それじゃあ、次回もよろしくねぇ」


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EPISODE34 楽園の落日1

どうも皆様。ゴールデンウィークとなりましたが自粛でどこも閑散のようですね。作者の藤和木 士です。

レイ「アシスタントのレイだよ~」

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです。藤和木も今のところは携帯ゲームのイベント走りばかりですね」

そろそろ友人とリモートバトスピやろうかなとも思ってます_(:3 」∠)_退屈じゃあ。そういえばガンダムチャンネルではゴールデンウィーク配信やってますね。金ピカ機体ばっかり(´-ω-`)今日はアカツキかなあのサムネは。
ではEPISODE34公開です。

レイ「ホリン・ダウン作戦が始まったね。いきなりあんな大砲撃放つなんてさっすが元君!」

ジャンヌ「一体どのようにしてあれだけの砲撃を放てたのでしょうね?」

さぁ、あの三連射のカラクリは一体?それでは本編へ。


 

 

 超過出力とも呼べる砲撃を放ったMS試験空母「こてつ」の甲板に立つクリムゾンゼロガンダム。

 その機体の背部にはいつものマキナ・ブレイカーⅡAではなく、コードがいくつも接続されていた。そのコードは新たに追加されたドローンユニットにも接続されており、コードを辿っていくと接続されていたのは大型のタンクであった。

 それはこの作戦の為にこてつに積まれていた機材。先程の連続砲撃はこの多量の次元粒子供給源が実現したものだった。その中にはクリムゾンゼロがここまでの道中で供給し続けてきた高純度DNが多量に保存し続けていた。

 出力制御を行っていたジャンヌが状況をアナウンスする。

 

『DNF「クリムゾン・イレイザー」発射終了。敵人工衛星、高度を下げていきます。粒子貯蔵タンクいずれもエンプティ、クリムゾンゼロとの接続を解除』

 

 粒子供給元となるタンクとの接続が解除される。エネルギー残量はわずか。その直後からツインジェネレーターシステムのDN生成が再開され、急速に機体本体へ再チャージされていく。

 その間に本来の装備であるマキナ・ブレイカーⅡAが控えていた夢乃のソルジア・エースの手により再度接続される。

 回線をオープンにして海域の全オーダーズパイロットに呼びかける。

 

「第一段階完了。第二段階へ移行する」

 

『了解。名古屋港部隊、みんな行くよッ!』

 

 深絵の掛け声と共に名護屋港の部隊が一斉に飛び立っていく。濃霧は徐々に消えていき、その中から展開していた敵部隊も迎撃のために飛び出し、応戦に向かう様子が見られる。

 一方こちらに向けても部隊が発進しつつあった。視認して応戦を新堂に任せることを伝える。

 

「こちらの迎撃は沙織さんに任せます。粒子再チャージまで時間を稼いでください。指揮はお任せします」

 

『分かった。自衛軍第3大隊、並びにオーダーズMS部隊、迎撃に入るぞ!』

 

 新堂の指揮の下、ソルジア混成部隊が応戦に入る。正面海域で新堂の自衛軍部隊を中心に周囲へオーダーズの部隊が戦闘に備える。

 しばらくクリムゾンゼロガンダムは動けない。それまではホリン突撃部隊も艦隊と共に待機する流れとなる。元とジャンヌは夢乃も含めた彼らと共に突撃までのタイミングを待つ。

 

「頼んだぞ……深絵、華穂」

 

 先に敵と交戦する名護屋港の部隊。その主軸となる二人の活躍を祈りながら、クリムゾンゼロガンダムのDNリチャージ完了まで待った。人工衛星ホリンはその間徐々にその高度を落としていく。

 

 

 

 

「右翼と左翼はそれぞれ敵機の包囲抑え込みを優先して。中央は敵陣突破を優先!」

 

『了解!』

 

 隊員達に指示を送って早速深絵も敵陣へと切りこんだ。スナイパーライフルのビームを敵機へと直撃させ、進撃する。

 いつもの感覚とは違う。けれども左のコンテナの重量には対応できている。迷いなく敵を撃ち貫いていく。

 その視線の端にソルジア・エースが映った。あの機体は華穂の機体だ。

 

『このっ、せあっ!』

 

 新装備のイミテーションウイング・SZの生み出す機動性で敵を翻弄しながらビームライフルで撃ち抜いていく。その圧倒的な性能に敵が怯む。

 それを支援する形で深絵もスナイパーライフルで横から撃つ。灯った爆炎で支援に気づいた華穂。

 

『深絵さん!』

 

「華穂ちゃん調子良いみたいだね。でも気を抜かないで」

 

『はい!』

 

 元気よく返答した彼女は再び敵へと向かって攻め込んでいく。出来れば全員が華穂のようにソルジア・エースを使いこなしてくれることを祈るばかりだが、流石にそうまでは行かない。

 それでもソルジア・エースの性能は凄まじい。先頭に立って敵と渡り合う姿が確認できた。

 

(機動性が今までとは段違いだ。あっちが防御性能に振っているのなら、こっちは機動性で翻弄する。それが私達の戦い方。だけど、私は違うっ!)

 

 向かってくる機体にライフルを向ける。そこで気づく。敵機が沢下の乗っていたあの機体、背部にアームを装備したリフレクトパネル搭載機であることに。

 光姫を葬った自分達にとって忌まわしきMS。深絵の機体では非常に相手が困難な機体。それが2機。

 面倒な相手だ。けれど今の自分にやれないわけじゃない。素早く深絵は先手を打つ。まず周囲の敵機を狙撃で頭部、あるいは発生器を撃って沈黙させる。

 数を先に減らしたうえで交戦に入る。マキシマム二機はアームユニットを前面に出して隙間から銃撃を行う。合理的な攻撃法だ。その銃弾に当たらぬようブラウジーベンは回避していく。

 銃弾の間を縫って、スナイパーライフルを一射。敵機のライフルを撃ち抜く。更にブースターウイングを噴かせて敵機直上を取ってもう一機の頭部から撃ち抜く。敵機は派手に爆散する。

 

「まずは一機……次」

 

 リフレクトパネルの隙間を狙った射撃ならビームでも通じる。僚機を撃墜され残る機体はMS刀を構えて挑んできた。振り下ろされる斬撃。それを回避して深絵は銃口を向けて撃つ。ギリギリでそれを避けるマキシマム。

 

「っ!」

 

 切り払いでビームスナイパーライフルが両断された。主兵装を失う形だがそのビームスナイパーライフルはあらかじめ手持ちとして装備していたもの。右コンテナに予備はある。

 だが深絵は逆のコンテナから銃を取り出した。スナイパーライフルとは違う砲撃を狙ったデザインの銃身。リボルビングユニットに目が行く大型のライフルを構える深絵。

 敵は待っていたと言わんばかりにアームユニットを前面に向けて防御態勢を取る。ところがそれを深絵も待っていた。

 

「さぁ、勝負だよ!」

 

 トリガーを引く。銃口から火花が散る。放たれた弾丸がアームユニットを貫き敵機に着弾した。放たれたのはビームではない。実弾だった。

 実弾を防御しきれなかったアームユニットが爆発・崩壊する。トドメの弾撃はエディットアームのビームライフル・アサルトで締める。

 実弾を放ったライフル、リボルビング・ガンランチャーの徹甲弾の使い勝手に手ごたえを感じる深絵。

 

「うん、問題なさそうだね。リボルビング・ガンランチャー」

 

 対次元覇院MSに調整された新兵器の調子は絶好調だ。リボルビングユニットを回転させて弾倉を切り替えると続く敵機にクラスター爆弾を放った。空が爆発で覆われる。

 燃え上がる爆炎から抜けた敵機をビームライフル・アサルトとブースターレールガンの弾丸が貫く。再び深絵は進軍を行う。その後をオーダーズの機体も続いた。

 

『深絵隊長、太平洋側の部隊が交戦に入ったとことです』

 

「クリムゾンゼロガンダムは?」

 

『現在、再チャージまで20パーセントとのこと』

 

「そう。ならこのまま進撃。クリムゾンゼロガンダムのチャージ完了までに取り付けるくらいの速度で侵攻行くよ!」

 

『了解!』

 

 元の機体の粒子チャージと同タイミングで取り付ければスムーズに元達にバトンを渡せる。要となるクリムゾンゼロの、元達の為に侵攻を急ぐ。

 しかし事はそううまく運びはしない。それを阻むように海面から浮上する機影が三つ。機体が敵機を照合する。

 

「あれはMA!」

 

『リムルタイプ2、ヒドラタイプ1!こちらに向かってきます』

 

 敵はこちらを脅威と捉え、襲い掛かってくる。向かってくるのならばこちらも容赦しない。深絵はライフルを構え対峙する。

 

「迎撃!行けッ!」

 

 ガンランチャーから放たれる弾丸。散弾がカブトガニ型MAを襲う。ところが装甲厚に阻まれてほぼ無傷で向かってくる。

 散弾では抜けないと弾種を切り替えさせる。敵MAがハサミを展開して迫りくるのを側面に回って回避。後方から弾種を切り替え終わったガンランチャーから弾を発射した。徹甲弾が敵ブースターユニットを穿つ。

 速度が目に見えて墜ちる。深絵に追従していた機体達が一斉に襲い掛かる。残るリムルタイプにも徹甲弾を放った。正面からカメラ部分と思われる箇所を貫き、火災を発生させる。機体が海上へと墜落していく。

 

「一機沈黙、もう一機は任せたよ」

 

『了解です。全機包囲して叩け!』

 

 指示を出してすぐ、ヒドラタイプのMAが弾幕を形成し始める。回転して回避したブラウジーベンが正面から撃破に向かう。

 深絵の機体に触発して敵機が敵MAの直援に付く。撃破させまいとしているのだろう。だがその敵機の隙を突く形でビームが空より狙撃した。

 

『深絵さん、手を貸しますよ!』

 

「華穂ちゃん!うん、行くよ!」

 

 新兵器のガンアサルトⅡの長距離ビーム用砲身を閉じた華穂のソルジア・エース。更に他の近くにいた味方も少数だが囮となって飛行する。彼女達と共にヒドラ型の駆逐を開始した。

 尾から放たれるレーザーが空を彩る。早朝だというのにも関わらず、伊世湾は花火大会を思わせる光の連続だ。

光の間隙を縫って深絵と華穂の機体が攻撃する。いかに巨体とはいえ弾幕は多い。慎重に、かつ大胆に接近していく。

 十分な距離まで接近したところでガンランチャーが再び火を噴いた。

 

「このっ!!」

 

 散弾に切り替えた一撃が敵頭部に降り注ぐ。回避を挟んで続くクラスター爆弾もヒドラの頭の一つに爆発を引き起こさせた。

 爆炎でふさがれる敵の視界。煙が晴れたと同時に敵が大口を開く。露出した方針は真っ直ぐこちらを狙っている。しかしその時点で深絵も右ライフルコンテナから二丁目のビームスナイパーライフルを構えており空いた大口へと撃った。中央の頭部が爆発と共に落下していった。

 残る頭部も口を開いて応戦を始める。ライフルをケースへと仕舞い、再度ガンランチャーを構えて気を引いていく。二つの頭が完全にこちらに気が向いたところで華穂が仕掛けた。

 

『こっちを忘れた?喰らえ!』

 

 左シールドエディットアームへ備えられたMS刀「カゲロウ」。より太刀へと近づいた刀が敵の首を斬り落とした。一刀両断されて露出する機械の断面。そこに追い打ちの如くビームライフルの弾丸が撃ちこまれた。

 爆発を起こしていくヒドラタイプ。それでも最後の頭が負けじとビームを放つ。狙いは深絵達ではない。深絵達のやってきた名護屋港だ。せめて敵の本陣に一矢報いようというのだろう。

 ビームが港に着弾し、四ツ田基地オペレーターから被害報告が届けられる。

 

『敵攻撃港に停泊中の民間船に着弾!その他軍用車にも被弾』

 

「まったく、面倒くさいことをやってくれるよ。念のため乗組員がいないか確認を!」

 

 救助活動を後方に任せて深絵は最後の首を落としにかかった。迎撃すべく敵の尾から誘導式レーザーが飛ぶ。スピードを上げてそれを回避するとガンランチャーを再度放つ。

 放たれた弾丸は着弾後に爆発。撃ちこまれたのはクラスター爆弾。着弾後潜り込むように設定した。抉られたように破損した首の根元が見える。そのままレーザーの有効範囲の内側に潜り込んだ深絵。ビームサーベルを両手に構えて突き刺す。

 

「くぅ!」

 

 内部に突き刺した状態から無理矢理引き裂こうと試みる。しかしそうさせまいと近くのビームバルカンがこちらに銃口を向け放たれる。

 サーベルから手を離して間一髪回避する。そこにサーベルが刺さったままの箇所目がけて膝蹴りを華穂が打ち込んだ。

 

『こんの!!』

 

 打ち込んだビームサーベルが内部構造を破壊する。エネルギー回路に引火したのか華穂が離脱した直後、最後の首がその箇所から爆発、落下する。

 頭部が無くなりやたら滅多に攻撃を行うヒドラタイプのMA。これ以上暴れさせても良くない。深絵は一気にその懐に飛び込んだ。

 

「…………っ」

 

 ビームバルカンもレーザーも捉えられない至近距離。胸部付近に密着させた状態からガンランチャーを発砲。徹甲弾を三発連続して放って内部から爆散させた。

 動きを止め、海中へと爆発を灯しながらMAが没していく。やはり大一番の作戦。敵も本気のようだ。

 

『何とかMAはやりましたね、深絵さん』

 

「そうだね。でもまだ敵衛星まで取り付けない……それにMAをやったからって油断しちゃダメだよ」

 

 深絵の言葉を体現するかのように、右翼、左翼に再び大型反応が現れる。海中から姿を現すヒドラ型が2機。右翼、左翼の部隊がすぐさま交戦へと入る。

 今の内に中央突破をしたいところだったが、あのMAを見逃していいものかとも考えてしまう。しかしそんな心配を須藤が払う。

 

『深絵隊長、君は中央を突破することだけを考えろ』

 

「須藤さん」

 

『君はそうなることも考慮して戦陣を組んだはずだ。任せることもまた隊長の仕事だ』

 

 彼の言葉はもっともだった。時には味方に任せて自分は振り返らずに進む。華穂のソルジア・エースは右翼、そして左翼にも均等に配備されていた。あの機体ならMAとも対等に渡り合える。そう判断して配備したのは他ならぬ自分だ。

 味方を信じる。それもまた光姫が掲げていた仲間と共に戦うことと同義の考え方だ。今の彼等なら、あのMA達も倒せると深絵は信じることにした。

 

「……はい。右翼左翼部隊、そっちのMA、任せたよ!」

 

『了解!』

 

『お任せを!』

 

 深絵はブラウジーベンを正面海上に見える落下状態の人工衛星ホリンへと急行する。クリムゾンゼロのDNFを受けて遂に海上へと墜落した人工衛星が津波を発生させる。

 海面付近にいた機体が突如発生した津波に対応しきれず呑みこまれる。巻き込まれたのは比較的次元覇院の機体が多い。特に海上にいた敵MAはその一撃をもろに受けてバランスを崩し、出来た隙を逃さず味方が攻め立てる。

 こうなればもう心配も少ない。残った敵の迎撃を悠々とすり抜けていく。一度ケースにガンランチャーを戻してメンテナンス状態にすると、代わりにビームライフル・アサルトを一丁右手に構える。

 既にゴール地点は見えた。だが敵の圧が凄まじい。近づくにつれて攻撃は激しくなる。海面に不時着した人工衛星からもMSが続々と出撃してきていた。こうなると高機動戦を視野に入れたブラウでも突破は厳しい。

 

「簡単に突破はさせてくれないか……けどそれで退きはしないよ!」

 

 深絵は叫ぶ。コンテナ下部を前面に向けてミサイルランチャーを一斉射する。放たれた16本の煙の弾道が空に爆発の炎を作り出す。敵が中破、撃墜していく中で更にビームスナイパーライフルを再度取り出して撃ち漏らした敵も残らず掃討する。

 道が開けるも再びそれを塞ぐように展開した敵MS。そこで味方も追いついて応戦に入った。

 

『撃て!ここを崩せば人工衛星はもうすぐだ!』

 

『深絵隊長達の道を拓け!近づけさせるなっ』

 

 味方の頼もしいまでの援護。次元覇院のMS達は数で劣るこちらの機体達の決死の猛撃に集中せざるを得なかった。味方の応戦する姿を見て華穂が驚嘆した。

 

『凄い。みんな、深絵さんの為に、戦ってくれてる』

 

「私だけじゃない。主力の華穂ちゃんや他の人達の為にも戦ってくれてる。ここを抜けられると信じて、みんなが戦ってくれている」

 

『そうですね。なら止まってなんかいられない!』

 

 意気込む華穂。深絵も同じだ。戦ってくれる皆の為に、何としてでも突破する。

 二人の強き意志の前に更なる脅威が姿を現す。海面から浮き上がるヒドラ型MAが咆哮する。

 

『グァァァアアン!!』

 

 こちらを威嚇する様にして、弾幕を形成する機体。けれどそれを前にしても二人の意志は削がれない。顔を見合わせ、お互いの決意を確かめると臆せず敵へと突撃する。

 二機のバックパックが生みだす機動力で、敵の弾幕を突破する。狙い澄ました砲撃をも躱し、深絵と華穂が敵MAに銃口を向けた。

 

『立ち塞がるなら、容赦しないよ!』

 

「大きさだけで勝てると思わないで!」

 

 MSオーダーズの戦乙女達は三つ首の竜に立ち向かう。翻弄し、朝焼けの海上で宙を踊るのであった。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。大容量エネルギータンクを多数取り付けての砲撃だった!というわけで。

レイ「まぁ、あり得る話だったのかなっ。でもDNジェネレーターから直接ってわけじゃないんだね」

その辺は高純度DNとの掛け合わせでは無理だった、と思っていただければ。あとまだ話には出していないけど普段の赤色のDNは発生器とかからの供給だとあまりに多すぎると精神汚染とか来ちゃうからね(;´・ω・)

ジャンヌ「せ、精神汚染!?」

レイ「そんな聞いてない」

そりゃ今回初めて出すからね。でも第一部とかもダブルジェネレーター仕様とかはエースくらいしか使えなかったっていう伏線はあったからね。タンクとかからの供給は問題ないし、高純度DNならどれだけ使っても「悪影響」はない。

ジャンヌ「「悪影響」と区切っているのは第二部の元さん達の紹介で示されている肉体老化速度の停滞のことでしょうかね」

それと元君のDNL覚醒とかね。ここはオリジナルの00のGN粒子からの影響もある。ただDNの悪性は疑似の方のGN粒子のものより薬物中毒とかを参考にしてる。使い過ぎると呑まれていくよって。

レイ「ふぅん。マキナ・ドランディアの人達はそれを分かっていたからそういう悪影響を避ける機体を作成してたんだね」

そういうことです。

ジャンヌ「それにしても、深絵さんも華穂さんも凄いですね。MA相手にあそこまで……」

そこら辺に関してだけど元君の機体からの技術付与もあるし、何なら深絵のブラウジーベンはアップデートが繰り返されているからね。それに元君の戦闘データとかで対策が生まれているのもあるし。

レイ「元君の活躍でみんな楽になっているんだね!」

ジャンヌ「この調子ならMAは変なのが出ない限りは問題なさそうです。新装備もあることですし」

とはいえそこにたどり着くまでに切り捨てられた装備もあるし、それらを失うと活躍が出てくるかも?
ということで今回はここまでです。

ジャンヌ「次回もよろしくお願いします」


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EPISODE35 楽園の落日2

どうも、皆様。先日のビルドダイバーズリライズのスタイリッシュ零距離射撃が印象的過ぎる作者の藤和木 士です。

ネイ「なんですかその単語……アシスタントのネイです」

グリーフィア「ネーミングが雑すぎるわねぇ。まぁあれは流れるようにいいタイミングでぶつけたから、ある意味間違っていないんだけども。アシスタントのグリーフィアよぉ」

スタイリッシュ以外にはダイナミックしか思いつかんかったからこっちにしたんだけど(;´・ω・)まぁこっちでも狙撃手がヤバいこと近々やるんですけどね。それではEPISODE35公開です。

ネイ「四ツ田基地側の侵攻は順調ですね。海上の方も進んでいるといいんですが」

グリーフィア「でもあの自衛軍最強のMS剣士って言われてる沙織ちゃんがいるから、そっちも順調になるでしょ♪それに夢乃ちゃんに元君までいるんだからねぇ、余程の事がない限り安泰よ♪」

そこまで言うとフラグが恐ろしいと思うんだけども(;´・ω・)

グリーフィア「なんのことかしらねぇ♪」

ネイ(あっこれ姉さん完全にこの後の展開が読めてる反応だ)

そ、それでは本編をどうぞ(´ρ`)


 

 

 MSオーダーズの猛攻に苦境に立たされる次元覇院側。MAを発進させたものの、それらが短時間の間に撃破されたことは彼らに衝撃を与えていた。

 

『リムル・ファイター二機、オウ・ヒュドラ沈黙!現在海中待機となっていたオウ・ヒュドラが三機、敵右翼と左翼、並びに正面ガンダムに向けて発進しました』

 

『な、なんという……』

 

『えぇいガンダム……一機失ったというのにこの惨状だと!?』

 

『敵機体の中に見慣れない機体があります。漆黒のガンダムに似た機体……まさか量産した?』

 

 教柱達の声に焦りが生まれていた。コントロールポッドからそれを見て聞いていた沢下は歯ぎしりをして現状を静観していた。

 今攻めているのは名護屋港から来た敵軍。海上からの軍は攻めが遅いようにも見える。戦力がやや少ないための持久戦に持ち込むためだろう。

 よもや蒼のガンダムがここまで恐ろしい性能を発揮するとは思っていなかった。東響掃討戦でも東響の街に潜んでいた我らが同志達の拠点を残らず掃討しただけはある。だがそれで止まるほど自分達は甘くない。

 大型のMAをぶつけていれば、どこかのタイミングでエネルギーが切れるはず。だがMA全てをぶつけて太平洋側が瓦解することは避けなければならない。

 なぜならホリンを落としたあのガンダム、漆黒から真紅の赤を混ぜ込んだ機体は未だ母艦甲板から動くことがなかったからだ。

流石にリフレクトパネルを無力化するほどの大出力。三発も放ったことでエネルギーの再チャージに時間が掛かるのだろう。とはいえどのタイミングで再度動き出すか分からない。以前の時に圧倒的な機動力で詰めてきた時の事を思えば、沢下の警戒は解けなかった。

 砲撃特化と思えるあの性能。引き換えに機動性が落ちていればいいが。しかしいずれにせよ先に長を潰してしまえば大勢は決する。MAの手に掛かれば終わりだ。問題はすぐそこまで近づいている蒼のガンダム達の攻撃をしのぎ切れるか。流石に自分が出なければ耐えられないかと思い始めたところで、奴が動いた。

 

『司令部、私を出せ!』

 

 ゲルツが敵と交戦する意思を告げた。申し出に対し、管制官が戸惑いを見せる。

 

『ゲルツ戦神官!?ですが、あなたは』

 

『私はMSのパイロットだ!作戦と言えども今はもうここの死守が優先だ。このままコントロールポッドで死ぬなんてのはごめんだからな!』

 

 珍しく正論を語るゲルツ。しかし彼もまた自論がないわけではなかった。沢下に対し言う。

 

『怖気づいて未だに動かない筆頭戦神官とは俺は違うんだ。奴らを蹴散らし、私が次元覇院の一機無双のエースであるということを証明してくれる!』

 

 無論沢下は怖気づいているわけではない。冷静に敵の動きを見て判断をしていた。行くべきか待つべきか。しかしそれが他人から見てそうであるというわけではない。寧ろ沢下はゲルツのように今すぐにでも舐めた真似をしたMSオーダーズを潰しに行きたかった。

 筆頭という名前を背負っていないから言える。意気込むゲルツに対しそのような感情を抱きつつも彼を利用する方向に話を持っていく。

 

「そうか。ならその力を証明してもらおう」

 

『沢下筆頭戦神官』

 

『フン、貴様との格の違い、見せてくれる!』

 

「あぁ、見せてもらおうか。貴様の力を。蒼のガンダムを討ち取れよ」

 

『私に命令するな!』

 

 焚き付けるとゲルツはすぐさまポッドを戦闘状態へと移行させた。MSへの装依を開始した。

 ゲルツが蒼のガンダムの方に行ってくれるのなら自分は漆黒と真紅のガンダムに目を向けられる。戦闘能力の高い奴なら時間稼ぎは十分できる。この時だけは奴の戦闘力の高さだけには感謝する。

 蒼のガンダム達の相手をゲルツに一任すると、再び黒と赤のガンダムの動向に目を向けた。

 

 

 

 

 名護屋港からの部隊がMAとの連戦を繰り広げる中、海上の自衛軍・オーダーズ連合部隊も敵防衛線力と戦闘を繰り広げていた。

 その中核となる自衛軍最強のMS剣士新堂沙織の太刀筋が、次々とMSを落としていく。

 

「はぁっ、遅いっ」

 

 敵の光剣を受け止め、弾いた瞬間に一閃。敵の胴体を真っ二つに斬り裂く。切り伏せた背後から敵が迫るが、それに対しても逆手に構えたMS刀「白金」で機体を滑り込ませて胸部を貫いた。

 貫いた中央が爆発する。素早くMS刀を引き抜いて続く敵へと相手を移す。

 今現状をキープする、という当初の目的は果たせそうだ。しかし続く段階、クリムゾンゼロガンダム投入の為の足掛かりとなるもう一つの目的は達成しきってはいない。

 敵と戦闘を繰り返しながら、機体を確認していく。

 

(マキシマムは大量にいるが……どれもあの沢下という男の物と思われるものではない。他の隊員達からも報告はない……)

 

 沢下判。おそらく彼もまたこの作戦に参加しているはず。自衛軍からして見ても彼は警戒人物だ。

新堂の部隊は彼の前線の有無を確認するための斥候。クリムゾンゼロガンダムがスムーズに作戦へと参加できるようにするのが目的だった。

 殲滅戦でこちらが勝つのは難しく時間が掛かる。なれば素早く敵の中核を制圧して、抵抗が無駄であることを示して終戦させるのが正しい。その突破役が黒和元のガンダムだ。一応深絵達も突撃を掛けるようになっているが、本命はこちらだ。

 だったがどうやら名護屋港側の方も本気で作戦に臨んでいるようだ。MAが大量に出ていることも理由だろう。深絵達の進行が早い。こちらもいち早くすべての空域状況を確認し、報告しなければならない。

 敵機体の確認を終えた報告がこのタイミングで徐々に上がり出した。

 

『エリアC、沢下の姿確認できず』

 

『エリアD、奴の姿は確認できない』

 

『エリアAも特異な機体、あるいは沢下判の機体と断定できる機体は居ません!』

 

「そうか。こちらも一通り戦ってはいるが……っ、せい!ターゲットは確認できない。いつでもセカンドステップには移行出来る体制です、司令」

 

 敵機体を撃墜しながら回線で作戦総指揮担当の藤谷に伝えた。報告を受けた総指揮の藤谷はしばらく考えるように沈黙してから、了解を行う。

 

『了解した。ジャンヌ君、そちらの状況は』

 

『ジャストタイミング、とでも言うべきでしょうか。クリムゾンゼロガンダムのDN再チャージ完了です』

 

 チャージ完了の知らせを受けて、ようやくここから動き出すと思われた。しかしその勢いを折るように元が違和感を口にした。

 

『けどそれは前方から聞こえるノイズの発生元をどうにかしてからですかね』

 

『ノイズ?』

 

『もう新堂さんの展開した部隊を抜けてる』

 

「抜けた?……まさかっ」

 

 言葉の意味に気づいた時には既に後方の海が水しぶきを上げていた。海中から姿を現したのはカブトガニ型のMA。それが三機、艦隊の前へと姿を現していた。

 すぐさま援軍に駆け付けようとするが、敵がそれを阻む。やむを得ず切り結んだ。しかし敵MAは確実に艦隊へとその砲身を向けていた。

 

「不味い。早くあれを止めて―――――」

 

『問題ない。こちらで対処する』

 

 響いた元の声。ハッとさせられた沙織はその眼でまたも凄まじいその力を見せられることになる。

 ガンダムが動く。甲板で三つの砲門を敵に向けて。

 

 

 

 

 敵が近づきつつあるのはDNLで既に気づいていた。こちらにも姿を現したMA三機は狙いを自身の機体が乗る「こてつ」へと向けていた。

 ガンダムを潰すというあまりにも魂胆が丸見えな狙いにため息が出る。いくらガンダムとはいえ三機もそんな大型兵器を向けてこようとは。もっともこちらはそれ以上の敵と渡り合ったこともある。役者が足りないとまで言ってしまえる。

 とはいえそれを見て何もしないわけではない。寧ろ適切に処理すべく、既に行動していた。DNLコントロールによりドローンが変容した「ジェネレーターファンネル」がウイングバックパックから分離する。二機のファンネルは正面を両サイドに展開する敵MAに向ける。

 本体も左腕部に装備された盾と槍を合体させた兵装を真正面のMAへ向ける。槍の穂先が二つに割れて、砲身を形成する。

 

『ジェネレーターファンネル、秩序の盾(オルトヌング・シルト)、ボウゲン・ランツェ出力正常!』

 

 ジャンヌから両兵装の状態を伝えられる。射線軸状に展開する味方機なし。狙いを定め、三機のMAを迎え撃つ。

 

「全砲門、発射!!」

 

 二つのファンネルと槍から光線が放たれる。先程までの砲撃とはやや細いビーム。それが三本、敵の機体を捉えた。

 敵機体からもビームが放たれた。それらをもガンダムの放ったビームは押し退けて直進する。両端の二機は反応が遅れてビームに貫かれた。だが中央はこちらが見えていたのかビームを撃った直後回避行動を取る。それでもバランスを崩すことに成功した。

 残り一機。元は機体のスラスターを溜めて味方に命令する。

 

「このまま敵機撃墜を兼ねてセカンドステップを開始する。クリムゾンゼロガンダム、黒和元、出る!」

 

『ジャンヌ・ファーフニル、行きます!』

 

 ジャンヌもそれに続いてコールした。甲板から黒と赤の機体が飛び出す。その後を追って夢乃達残りの突撃部隊と称されるチームが発進する。

加速の乗った機体は攻撃を回避したMAまで素早く接近する。体勢を立て直す前に槍へと戻した腕の兵装を突き立てた。

 槍を突き立てられたリムルタイプは抵抗しようとするが、同時に起こった爆発で動きを止める。槍を引き抜いてサイドアーマーから放ったフェザーブレイズの連撃を喰らわせるとそのまま抜ける。後方で機体が爆散した。

 同時発射の三射と五秒に満たない交戦で敵MAをすべて沈黙させた。その戦果に自衛軍のパイロットが驚く声が聞こえてくる。しかしそれにかまけている暇はなく、元は目的地であるホリンまで突き抜ける。

 

「っ!邪魔だ」

 

 進路上の邪魔となる敵機だけを素早く秩序の盾に装備されたボウゲン・ランツェで捌いていく。猪突猛進と言ってもいいほどの突撃スピードを敵は止めることが出来ていない。

 しかしそれは味方も追従が困難であることを意味していた。しかしそれでも問題はなかった。突破を試みて戦闘をしていた夢乃が対峙する状態でこちらに呼びかけた。

 

『元さんは気にせず先に行ってください。自分も後で追い付きます!』

 

「もとよりそのつもりだ。寧ろ急ぎ過ぎて撃墜されるなよ」

 

 心配の言葉を手短に掛けて元はクリムゾンゼロのスピードを上げた。

 並み程度のMSでは機動性能が落ち込んだとはいえこの機体を止めることは叶わない。イグナイターとは違った強みであるジェネレーターファンネルの砲撃を絡めて、元は敵防衛線を駆け抜ける。

 周囲から包囲して襲い掛かる敵機は、両端に位置させたファンネルが周囲を薙ぎ払って近づく前に落とす。真正面からの迎撃に対しても秩序の盾とファンネルの一斉射で貫き、強引に押し通っていく。

 この性能に元は確かな力を感じ取っていた。二つの武器はいずれも元々は光姫の機体に装備されていたもの。ロートケーニギンの力が、シュバルトゼロガンダムの性能を高めていた。移動中に夢乃が言っていたようにまるで光姫が乗り移ったようだ。

 後方を気にすることなく順調に突き進んだクリムゾンゼロガンダムの前方が徐々に開けていく。目的地が見えてきたことをジャンヌも報告した。

 

『周囲の敵反応減少。正面抜けられます!』

 

「よし、エラクス始動!」

 

 ジャンヌに対し明言する形でエラクスを使用する。赤の部分も蒼く染め上げられるクリムゾンゼロガンダムの装甲。跳ね上がったスピードで一気に敵陣を突破した。

 突破して機体はそのまま加速状態を維持、ホリンに目がけて着地体勢に入る。一直線上に入る邪魔は全てボウゲン・ランツェとビームマシンキャノンで撃ち落とす。着地寸前で機体の蒼い輝きが解かれて機体は金属の円盤の上へと着地した。

 着地と同時に機体バランスとスピード相殺を試みる。

 

「く……このっ」

 

 少々苦戦しながらも無事スピードを殺すことに成功した。同時に人工衛星ホリンへの一番乗りにも成功する。

 防衛対象に取りつかれたことで敵MSが一斉にこちらに向けて襲い掛かってきた。こちらも迎撃を開始する。

 

「いけっ、ファンネル達」

 

 フェザー・フィンファンネルとジェネレーターファンネルの混合弾幕。機体が小刻みに動いて回避して、遠隔操作端末の兵装たちが攻撃直後の敵を追い詰める。

 ハリネズミの如き弾幕を形成する機体。近づいて来ようものならば左手の槍で突き放す。圧倒的な戦闘能力を展開しながら元は目的の人物を探す。光姫を殺した狂信者、沢下を。

 

「どこだ……どこにいる、沢下判ッ!!」

 

 周囲をジェネレーターファンネルで怒りのままに薙ぎ払う。奴はここで止める。ここで、討つ。

 

 

 

 

 ガンダムに上陸されたことを沢下もコントロールポッドの中で知る。これ以上は出ない訳に行かない。沢下は管制官に向けて出撃を指示する。

 

「ガンダムに乗られたか……よくもヅケヅケと私達の楽園に土足で入ってくれる……!俺も出るぞ!」

 

『沢下戦神官!』

 

『これ以上好き勝手させるわけにはいかないな。出来れば君には今後のために離脱してもらいたかったが……これを失っても次元覇院の未来はない。頼む』

 

 教柱も出撃を承認した。今背中を見せて逃げるなど出来なかった。勝利を得た次元覇院はこのまま快進撃を続けるのだ。

 「あの方」の為、沢下は自身に与えられた最高峰の機体への装依を開始する。

 

「マキシマム・ホーリー、スタンバイ!」

 

『アクセス開始。装依電子システム起動確認』

 

 コントロールポッドの中で電子化が行われる。沢下の意識は格納庫に収まっていた一機の機体へと取り込まれる。

 その機体が目を覚ました。管制官達はすぐさま彼の機体発進の為のプロセスを行う。

 

『マキシマム・ホーリー、発進スタンバイ!』

 

『装備はノーマルを選択。中央射出カタパルトへ移動!』

 

 機体ケージごと移動が行われる。移動先は中央のブロック。ハンガーが開放されると発進体勢に入る。

 

『上空の進路クリア、発進どうぞ!』

 

 管制官に対し、コールした。

 

「マキシマム・ホーリー、沢下判だ。歯向かう奴らに、次元の裁きを!」

 

 機体が一気に上方向へと加速する。開いた射出口から巨大なシールドを構えた白とオレンジが混じった機体が飛び出す。

 次元覇院が世界を制する為に作り上げた最高傑作機。次元覇院の象徴とも呼べる機体で、この戦闘に勝利する。そして再び空を目指すのだ。

 次元覇院の全MSパイロットに奮起せよと呼びかけた。

 

「次元覇院パイロット達よ、見よ!これが次元覇院の理念の結晶、マキシマム・ホーリーだ。この戦闘に勝利をもたらし、そして世界に真の平和を諭す機体でもある!この機体がいる限り、次元覇院は負けない!ガンダムが何だ、我らの意志の前には、無力でしかない!粋がる奴らを殲滅する、そして再びホリンを宙へ上げるのだ!!」

 

『ホーリー……私達の希望!』

 

『そうだ、ホーリーに、沢下戦神官に続け!』

 

『うぉぉぉぉぉ!!』

 

 士気高揚を果たし、使徒達が次第に押し返し始める。これだ。どれほど機体性能があろうとも、正しさの力の前では押されていく運命にある。それを沢下は信じて疑わない。

 逆境こそ力。ここからは自分達の流れである。だが奴は否定した。

 

『たかが一機のMSが、希望なわけがないだろう』

 

 下方より放たれたビーム。それを首傾げるようにして回避した。放たれた元にいたのは、このホリンを海上へと叩き落した忌々しき黒と赤のガンダムだった。

 悪魔の女次元光姫の機体を思わせる赤を交えた機体に憎しみを吐き捨てる沢下。

 

「汚らしいな、ガンダム。そんな赤を纏って、まだ次元光姫を称えようなどとは」

 

『称えるねぇ。そうかもしれないな。俺は光姫の死を悲しんだ。復讐したいと、思った。だからエヴォリュート・アップが反応して、シュバルトゼロガンダムはこうなった』

 

「フン、認めたなら、潔く散れ!我らの邪魔など無駄と知れ!」

 

 言ってビームライフルを連射する。真っすぐと伸びたビームは、しかし敵のバックパックより射出した円盤の遠隔操作端末により弾かれた。

 ビームを弾いたガンダムが、言葉を続ける。

 

『俺の機体は別次元の世界で救世主と呼ばれた。だけど、そんなことはどうだっていい。今のこいつは、俺にとっての力だ。俺の望む未来を体現するためのな』

 

「力だと?笑わせる。象徴という力の概念を超えた物に、ただの力が敵うものか!」

 

『そうだ。力だけでは何も成せない。俺という意志、そしてパートナーのジャンヌの願いと共に、俺は戦っている。それがシュバルトゼロガンダムという「機体」だ。それが俺の求める形』

 

「戯言を!」

 

 何が意志だ、願いだ、パートナーだ!MSなど次元覇院の物以外は全て兵器の範疇を超えることなどない。俺達の言葉は絶対だ。それになぜ従わない!

 ガンダムパイロットの言葉を批判して沢下の駆るマキシマム・ホーリーは右手にビームサーベルを抜き放って急加速、襲い掛かった。

 敵も左腕の槍盾を振ってこちらに向けて加速する。両者が激突する。直後マキシマム・ホーリーのバックパックが変形する。サブアームを展開したその手にビームサーベルが握られる。ガンダム目がけて振り下ろす。が、奴も肩部シールドの先から展開したビームサーベルで受け止める。

 火花を散らす切り結びの中で、両者叫ぶ。

 

『お前が救世主を語るなら、俺は破壊者だ!お前の語る歪んだ平和への理想を、この俺が、俺達が、破壊する!』

 

「破壊するだと?なら平和を破壊する貴様らは、悪だ!」

 

『親を殺す正義が、あるかよ!!』

 

「それは貴様らも同じだぁ!!」

 

 譲らぬ主張。刃が激突した。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。次回から沢下の新たな機体マキシマム・ホーリーと元君のクリムゾンゼロガンダムが激突するぞ~(゚∀゚)

グリーフィア「んーでもこれ沢下がガン不利じゃない?出力とかその他諸々で」

ネイ「MAすら簡単に葬れる時点で、相手にするのは結構不利な気がします。それこそマリオネッターシステムによる物量戦くらいでしょうか?」

確かに普通ならそうかもね(;´・ω・)でもそれが互角になる展開を考えているよっ( ゚Д゚)

グリーフィア「あらあら~それは楽しみねぇ」

ネイ「相応に理由があるのでしたらありかもですね」

さて、それでは今回はここまでです。今日はダンボール戦機の一挙公開のアーカイブととあるゼル伝実況見ないといけないからねっ(´-ω-`)

グリーフィア「どれもガンダム関係なさすぎねぇ。あれ、でも今日ってガンチャンの何かの公開じゃなかったかしらぁ?」

いま見たら初代ガンダムの最終話だったよ(゚Д゚;)こっちも見なきゃ!

ネイ「はいはいほどほどに。次回もよろしくお願いします」


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EPISODE36 楽園の落日3

どうも、皆様。ダン戦一挙放送見て装甲娘の世界観がよく分かった藤和木 士です(´ρ`)ミゼルゥ、お前の生きてた世界線かよぉ。

レイ「アシスタントのレイだよー」

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです。さて、以前は言っていませんでしたが今日と次回の投稿は最近とは少し違うんですよね?」

その通り。実は次回の投稿予定日の5月16日が私の活動開始5周年なんですよね。時が経つのは早いわ(;´・ω・)
ということで特別篇を考えていたんですが……ネタが思いつかなかったので2話連投することになりました( ゚Д゚)

レイ「何にも思いつかなかったの?」

別にこの作品に関係なくだったら考えていたのはあったんだけど、それも自問自答してたらあんまりかなぁと思ったんでなくなりました(;・∀・)

ジャンヌ「というわけで申し訳程度に話を進めようということですね」

そうなりますねぇ( ;∀;)とはいえ第3章終盤、次元覇院との最終決戦なので盛り上げていきますよ。
それでは本編をどうぞ。


 

 

「元君が沢下判との交戦に入ったようだね。はてさて……」

 

 通信士から報告を受けた藤谷は動向を見守るように前方を見つめていた。流石にMA三機が飛び出してきた時にはいきなり終わったのではと思ったが、それも邪魔な虫とでも言わんばかりに元の駆るガンダムの手により事なきを得た。

 イグナイターと呼ばれる形態よりも弱体化したとの報告を受けていたが、火力に関していうならそのイグナイターを超えているようにも見えた。もっとも機動性重視の機体であるのなら機動力低下は小さくない欠点なのだろう。観測班には引き続きその戦闘状況を伝えるように告げる。

 作戦開始からもうすぐ一時間が経とうとしていた。ガンダム投入がおよそ40分ごろ。兵士達の疲労もピークに達しつつある。こちら側の撃墜も少々目立ち始めていた。

 

「名護屋港側のMS撃墜18機、こちら側の撃墜も7機ほど……現在弾薬補給と損傷の為に帰還が23機です」

 

「うん。これは少々救援が欲しいところか……」

 

 そう言って藤谷はとある場所へと通信を開いた。通信相手は東響。防衛大臣のと首相の新堂幸地が映った。

 彼等へと現状の報告を行う。

 

「現在黒和元のクリムゾンゼロガンダムがホリンに到達。敵主力のMSとの交戦に入りました」

 

『ふむ。交戦に入ったということは、作戦の初動は無事成功したようだな』

 

「えぇ。名護屋湾の方も順調に進軍中です」

 

『ふむ。作戦は順調のようだ。しかし連絡をくれたということは……』

 

「はい。敵勢力に押されつつあります。よってプランBの発令を願います」

 

 プランB、それは簡単に言うと増援。海上側にはアメリア軍から、そして名護屋湾の部隊には愛智の周辺基地からの支援部隊投入の事を指している。戦力の逐次投入は愚策ではあるが、そうしなければならない理由もあった。主に外交の話だ。

 なるべく要請はしづらいものだったが、首相はその要求を承認した。

 

『承知した。自衛軍基地への要請は晴宮君が頼む。私は大統領に伝える』

 

『分かりました。では』

 

『藤谷君、上手く兵達を使っておくれ。頼んだよ』

 

「ハッ」

 

 晴宮大臣、そして新堂首相が通信を切る。ここまでカードを切るのだ。何としてでもここで流れを絶つ。

 要請の結果はすぐに出ることとなる。通信士が後方の様子を伝える。

 

「司令。後方よりアメリア駐屯軍の船が接近。増援要請承諾したとの連絡です」

 

「そうか。では通達。こちらの補給で薄くなる前線のカバーに入ってくれと伝えてくれ」

 

「分かりました」

 

 続けて名護屋港側の様子も別の通信士が告げた。

 

「名護屋港の四ツ田基地に愛智本部の自衛軍部隊が参戦。名護屋港へと向かっています」

 

「よし、彼等にも同じく前線の補給の間カバーに回るようにと連絡を」

 

「了解」

 

「……これで安泰、と言いたいところだがな。奴らはどこまであきらめないつもりなのか……」

 

 奴ら、次元覇院の作戦は既に失敗に近い。修理するにも時間が掛かるはず。まさかもう修復を開始しているのだろうか。

 それでも戦闘中に修理を行うなど危険すぎる。人工衛星の修復とMS操縦を同時に行える人物が、果たしてどれだけいるのか。

 そうでないにしても沢下判が言ったホリンを再び空へと打ち上げる。その目的の為に彼らは向かってくる。ならば完全にこちらが接収、あるいは破壊して最高指導者を捕らえるしかこの戦いを終える方法はない。

 最悪投降も望めない敵の思考に頭を抱える。だが何よりパイロット達が極力欠けないことだけを願って指揮を続ける。

 

 

 

 

 元がホリンに到着した頃、MAを再度撃破した深絵達の前にも障害と呼べる強敵が姿を現す。

 

『ここから先、貴様らのような平民風情に行かせるわけにはいかないな。平民のガンダムはここで散れ!でぇい!!』

 

「くぅ!?」

 

 貴族のような喋り方をした男のマキシマムが切りかかってきた。ライフルを構えるが瞬時に回避されて接近を許す。

 ビームソードを振り抜こうとしていたが咄嗟に出た蹴りで手元を弾く。剣の切っ先を何とか回避することに成功した。距離を取りながらビームライフル・アサルトの弾幕で防衛に徹する。

 強い。発言はいつもの次元覇院の奴らと大差ないが、こちらの狙撃を紙一重とも呼べる機動で避けている。並みの敵ではない。

 さっきのもまぐれで蹴りつけることが出来たに過ぎない。弾幕を形成しつつビームスナイパーライフルでは倒せない敵だと判断してガンランチャーへと銃を切り替えた。弾幕を反射装甲のシールドで弾きながら敵が追従する。

 

『逃がさん。貴様を落として私が英雄となる!』

 

「英雄だなんて、そんな世迷言!」

 

 ビームサーベルを引き抜き、敵の光剣と結び合う。相手はマキシマム。光姫をやった機体だ。情報は読み込んでいるとはいえ、光姫の時のように何が隠し玉で来てもおかしくない機体。気が抜けない。

 切り結ぶその敵は剣を持つ姿を見て憐れむ。

 

『狙撃機体が格闘戦とは、無様だなぁ!おらぁ!』

 

「きゃあ!?」

 

 男の罵声と共に光剣が弾かれる。連続して敵がアームユニットで殴りつけてきた。咄嗟に左肩のシールドを構えるが、衝撃と共に大きく吹っ飛ばされた。

 あまりの衝撃に平衡感覚が狂う。どうにかコントロールしてもとの体勢に戻した。しかしその彼女を狙うように敵は銃口を向けていた。

 

「……!!」

 

『消えろ、私の栄光の前に!!』

 

 緊急回避も間に合わない。万事休すと思われた。だが割って入った影が彼女を生かす。

 

『深絵さんまでやらせない!!』

 

「華穂ちゃん!?」

 

『えぇい!邪魔が!!平民の癖に図が高いぞ!』

 

 華穂のソルジア・エースだ。彼女はカゲロウを手にけん制する。敵と向き合ったまま、華穂が安否を尋ねる。

 

『大丈夫ですか、深絵さん!』

 

「うん、ありがとう。それより」

 

 平気であると答え、視線を奴へと向ける。貴族口調の男は光剣をレイピアの如く構えて華穂の行動を非難する。

 

『おい、貴様……私の狩りを邪魔したな?以前の時もそうだ』

 

『以前の時……?』

 

『そうだ。沢下を渋々救援しに行った時、黒のガンダムと共に私を邪魔した……!あいつを救援せざるを得なくなり、私は沢下に撃墜されたのだ!もっとも、私もその時には死ななかったがな?』

 

「それって……四ツ田基地の時の……じゃあ元君が自爆攻撃を受けた時に自爆させられた機体に装依していたのがあなた!?」

 

 思い出した。遠くから弾丸で狙撃した後、一度気絶してから再度構えていた時に増えていた機体。その内の一機で沢下を庇う形で元にトドメを刺されかけたところを沢下銃撃されて爆発したのが彼だったのだ。

 機体が爆発しながら生きているということは、おそらくマリオネッターシステムを使っていたためなのだろう。

それほど前から既にMS遠隔操作システムを実用化していたのなら相当数が導入されている恐れがある。元達が予測していた敵全員がマリオネッターシステム仕様というのもあり得ない話ではなかった。

 

『あの時死んでいればよかったのに……!』

 

『私が死ぬ?この次元覇院本当の筆頭指揮官たるこのゲルツ・ルーダがか?あり得ないなそんなことは。死ぬのは、お前達だ!』

 

 光剣を向けたゲルツと名乗る男は狙いを華穂へと変えて襲う。華穂もカゲロウを構えて相対する。

 こうなると深絵は支援に回るしかない。隙を伺いつつ、周囲の敵からの不意打ちがないかを警戒へと回った。

 華穂とゲルツの太刀筋は互角だった。だが完全な互角ではない。カゲロウの剣を弾き、ゲルツの光剣が突きを繰り出す。それを華穂は咄嗟に後方へと退いて避ける。そして間髪入れずに空中を蹴るように再度加速して距離を詰める。

 

『ふっ、はぁ!!』

 

『っ!?まだまだぁ!!』

 

 瞬間の動きで分かる。技量のゲルツ、そして性能の華穂。両者は機体性能差により何とか互角となっていたのだ。

 おそらく華穂が適性なしなら今の一撃でやられていた。この対決近接だけに限ればこちらの戦力では華穂しか奴と互角には渡り合えない。

 下手な支援は帰って邪魔となるだろう。しかしこのまま見ているわけにはいかない。これは「決闘」ではない。「戦争」だ。華穂を殺させないために深絵はその戦いに手を出した。

 

「華穂ちゃん、右回避!」

 

『っ!!はいっ』

 

 敵が華穂目がけて突撃してきたタイミングで指示を出す。華穂はギリギリで回避する。ゲルツのマキシマムは先程まで華穂の機体の胸部があった箇所目がけて光剣を振るった。

 すぐさま横に避けた華穂に更なる攻撃を加えようとしているところに、ガンランチャーから散弾が降り注ぐ。

 

『っ!?貴族の攻撃に邪魔をするとは、愚か者が!』

 

「そんなこと言ったって、私達はあなたを倒すだけだよ!」

 

 愚か者と指摘したゲルツに対し否定する深絵。華穂の前へと出て距離を取るゲルツに対し弾種を切り替えて空中クラスター爆弾を放った。はじけてから爆発を起こしたそれにマキシマムは大きく後退する。

 窮地を救われた華穂へと協力して撃破することを呼びかけた。

 

「行くよ、華穂ちゃん。あいつを倒すよ」

 

『はい。私が前に出ます。いつも通り、支援を』

 

「了解だよ!」

 

 ガンランチャーを構えて了承したことを示す。二人は自称最強の貴族と対峙する。

 

 

 

 

 沢下との対決に挑む元とジャンヌ。ビームサーベルとボウゲン・ランツェの二刀流で元は戦っていた。

 沢下の操る新型機マキシマム・ホーリーは体に似合わない大型の盾を左腕に装備した機体。しかしバックパックのサブアームユニットを巧みに利用してこちらに攻めを継続させない。

 

(武装は至ってシンプルな構成……だが、奴も流石にエースの地位にいる男。サブアームの使い方が上手い……っ!)

 

 ビームサーベルの三刀流でこちらのビームサーベルと槍、そしてビームマシンキャノンのビームサーベルとぶつかり合う。だが大振りとなるこちらのビームマシンキャノンのサーベルを沢下は確実に回避する。

 大振りの攻撃直後、沢下は生じた隙にサーベルを突き出す。

 

『せぇあ!!』

 

「ぐっ!!」

 

 振り上げた直後の肩部アームユニットを掠める。すぐさま横方向に回転して振り払うように斬り裂きを放つ。放った斬撃に掠めることなく後方に降り立ったマキシマム・ホーリー。

 右手に構えたビームサーベルを一旦収納し直すと、シールドから何やら取り出してくる。それは折りたたまれた実体剣。更にシールドから銃のような斧を射出して左手に構える。

 シールドも腰背部へと位置を変えて戦闘スタイルを変えてくる。両手の武器で連携攻撃を繰り出してくる。

 

『まだまだ行くぞ!耐えられるものか!』

 

「誰が耐えられないと!」

 

 ビームサーベルで初撃を受け止める。流れるような動きで光剣を外へとずらされた。そのまま銃斧を振りかざして手元を叩かれる。

サーベル端末を取りこぼした直後、再びビームマシンキャノンをサーベルに見立てる。飛び上がってからの振り下ろしを行うがその下に敵の姿はない。

 右側に機体をずらした沢下はそのままシールドに銃斧を叩き付ける。シールドが攻撃を受け止めたがすぐに銃撃音が響く。シールドに叩き付けた状態から銃撃を受ける。

 

『アレ、斧に銃を付けているんですか!?』

 

 武器の発想にジャンヌが面を喰らう。ブレードガンと同じ発想の武装だった。元は動揺を見せることなく盾で弾く。弾かれた敵機に対し、ビームマシンキャノンの連弾を放った。

 体勢を崩したところへのビーム攻撃。リフレクトパネルがあろうとも無理だと思われた攻撃だったが、沢下は対応する。

 

『その程度で、俺達の希望が墜ちるか!!』

 

 体勢を崩した反動を利用し、怒りのままに機体を回転させた。そしてその途中でシールドの保持が外れた。宙に放り出されるそれを左腕でキャッチするとそのままビームを防御。リフレクト素材でビームが跳ね返ってきた。

 避けられない攻撃と思い繰り出した一撃が跳ね返ってきたことに動揺は隠せない。反応が遅れて右ウイングのファンネル一基に被弾。パージせざるを得なくなる。爆発を背に構えなおすクリムゾンゼロ。沢下に対し先程の話を再び繰り返す。

 

「なぜこんな悲劇を繰り返す!自分達だけの考え、事実を押し付けて、本当のこと全てを拒絶するのか!」

 

『それはどっちの話だ!貴様らは柚羽の死を隠蔽した!』

 

「柚羽は再婚相手の父親に殺された!それは隠蔽もされていない事実で、それ以上の事は一切ない!」

 

『黙れ!その再婚相手を囃したのがあの女だ!私はそれを恩人である「あの方」から聞いた!柚羽の葬式を終えた場で聞いた、それは事実だ!嘘偽りのない事実だ!それ以外正しいものはない!!』

 

 間宮柚羽の死。二人に共通する事柄。だが彼らの認識はまるで違った。その差異に関わるもの、それは間違いなく沢下が呼ぶ「あの方」だ。

 元はあの時の事を思い出して、剣を交えながら叫ぶ。

 

「フン」

 

『何がおかしい!』

 

「おかしいさ。俺の知る光姫じゃ、そんなことはしない。だって柚羽と光姫は小学校以来の親友なんだ。それを間近で見ていた俺には光姫の動機が全くない。それは今も同じだ」

 

『ふざけるな!俺は兄なんだ。柚羽の気持ちを家族の中で誰よりも分かっている!離婚した父さんや、母さん達とは違う!今も柚羽は泣いている!あの女の計画が止まらないことに!』

 

 元の話に対しあり得ないと自身の思い込みでぶった切る沢下。まるで家族だからこそその全てを知っているとでも言わんばかりの発言だ。

しかしその姿を見て、ジャンヌが回線を開いて事実を言い放つ。

 

『なんですか、それ。それはあなたの妄言、被害妄想です!』

 

『貴様……!』

 

『だってそうでしょう?妹の事は自分が分かっているだなんて、そんな言葉本当に大切に想っているのなら実の弟妹に対して言えることなんかじゃない!あなたのそれは、拗らせたただのシスコンの考えです!』

 

『えぇい、黙れ黙れ!!

 

 ジャンヌは沢下の行動を強く否定する。妹を持つ者、そして自ら妹でもあるからこその彼女の言葉。シスコンとまで言われた沢下の怒りを確実に買った。

 怒りを沸き立たせる沢下は四本すべての武器を一斉に振り下ろした。それをまとめてDNウォールで防いだ元はジャンヌの言葉を支持する。

 

「そう、それはお前の妄想。葬式の場で絶望したお前が、現実を認めたくないために逸らし続け、失意にいた中で出会ったそいつに都合のいいことを言われて拗らせた結果だ。お前はいつまでも柚羽の死を受け入れられない、かつての俺と同じだ!」

 

『お前如きが!柚羽を理解しているなどとぉ!!俺がいつ、失望していたと!』

 

 力を込めるマキシマム・ホーリー。否定の意志を強く感じる。拒絶も交じっているようだ。

 沢下の質問に対し、元は言って見せた。

 

「柚羽の葬式の時、お前は離婚した父親と共に葬儀場に来ていた。その場でお前は離婚した両親の喧嘩すら耳に入っていなかったように無関心だったさ」

 

 今でも覚えている。確かに柚羽の兄と両親に示された奴が、喧嘩もまるで耳に入らない程にショックを受けていたのを。

 反対に光姫はあの時涙を必死にこらえて、それでも涙声になっていた。葬儀場を出てから思いっきり泣いていた。それを元は覚えている。親友を失った悲しみだ。現場にいた証人の確かな記憶だ。

 

『嘘だ、黙れ、貴様は来なかったのだ!居たならどうして、柚羽の死をずっと悲しんでいないんだ!柚羽の死を悲しみ、その為に動く俺の行動を、なぜ否定する!!』

 

 しかしそれすらも作り話だと否定した沢下は、自身の勝手な言い分を繰り出す。勝手な言い分と共に繰り出す刃がこちらを捉える、はずだった。

 刃が届く寸前で元のクリムゾンゼロとの間に円盤が割って入る。ジェネレーターファンネルが発生させたDNの放射で受け止められる。

 身勝手な沢下に、もう一度言い放つ。

 

「嘘なんかじゃない。お前が起きたことを全く覚えていないこと、それが何より、お前の失意のどん底にいたことを証明する証拠だ!」

 

『詭弁だ……そんな言い訳、何とだって言える!』

 

「詭弁か。なら一ついいことを教えてやる」

 

 何を言っても認めない彼に一つ話をすることにした。なぜ元が柚羽の死を経験したにも関わらず、平気でいられるのか。なぜ妹の為だと語る沢下の言葉を真っ向からすべて否定できるのか。その根本の考えを奴に語る。

 

「俺も前までは柚羽の死を引き摺っていた。被害を受けて悩んでいた柚羽に適当な言葉を掛けてしまった。もっとよく聞いていれば良かったと。その後悔は成人式を迎えても、自分はまだあの頃のままだと喜ぶ気にもなれなかった。そんな中で、俺は次元世界マキナ・ドランディアへと転移した。その世界で、記憶を失っていた俺を暖かく迎えてくれた人達。主を得た俺は護ることを学んだ。だけど俺が実践しようとした護るっていうのは只の自己満足の入った形だけの物だった」

 

『あぁ?』

 

『ハジメ……』

 

「そんな中で俺は負けた。主を守れなかった。主だけじゃない。主の父親も結果的に殺してしまった。それでも俺は敗北を味合わせた敵に追いすがることだけを考えようとした。主の少女が苦しんでいる状況にも関わらず。そんな時、俺を止めてくれた奴がいた。そしてそいつは言った。俺は本当の問題から逃げているって。そして、身体を張って教えてくれた。今見なきゃいけない人の顔を見ることを、現実に目を向けることを」

 

 教えてくれた友。異世界で得たものが元の重荷を取り払ってくれた。今もそれを忘れずにここに立っている。原動力となっている。

 それらを以てして、元は問いに応える。

 

「だから俺は柚羽の死を過去の物とした。過去はいつだって思い出せる。だから俺は明日を求める。柚羽が迎えられなかったモノ、俺は求め続ける。それは柚羽が本当に求めたものだと知っている。俺がつかみ取るのは、今日よりいい明日。それを今はジャンヌと共につかみ取る!」

 

 右手の人差し指を天に掲げる。自分の憧れる英雄の行動をなぞる仕草だ。元の言葉にジャンヌが照れながらも同意する。

 

『フフッ。そうですね。今日傍にいない人とも繋がれる明日、それを私も望みますよ、ハジメっ』

 

 ジャンヌが微笑む一方で元の言葉に果てしないほどの怒りを覚え、吠える沢下。

 

『何が……何が明日だッ!その明日を奪った貴様らに、その資格は、ないッ!!』

 

 二人に明日を求める資格はないと言い切って、武器四本をまとめて叩き付ける。ところがその叩き付けた跡にクリムゾンゼロは居ない。

 蒼い残光と共に空中へと飛び上がった明日を求めるガンダムパイロットは告げた。

 

「罪は無にはならない。だが肉体は無に出来る。俺が、お前を(ゼロ)に戻してやる!柚羽が安心して眠れるために!」

 

 真紅のガンダムから受け継いだ力を、解放する。

 

 

NEXT EPISODE

 




EPISODE36はここまでとなります。同日公開のEPISODE36も是非。

レイ「久々の2話連投だね。結構話のストックは進んでるの?」

実はもう第3章最後に着手出来てます(´-ω-`)

ジャンヌ「ならばこそ、ですね。それにしても元さんも大分言うようになりましたね」

レイ「だねだね~♪ジャンヌ・Fちゃんを戦闘中に照れさせるなんてっ」

それだけ余裕が生まれているということですね(゚∀゚)気抜きすぎないといいけど。それではEPISODE37に続きます。


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EPISODE37 楽園の落日4

どうも、皆様。引き続きご覧の方は改めまして。先日アリスギアにて始めるきっかけとなったキャラクターの最高レアリティゲットで友人に勝利宣言した藤和木 士です。すっかりアリスギア沼に引き込まれたぜ(^ω^)

ネイ「アシスタントのネイです。ツイッターにも上がっていましたね。夜中の2時に」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよぉ。もう舞い上がってたわねぇ」

さて、それは置いておいて、引き続きEPISODE37の公開です。

グリーフィア「作者君がストック溜めれているからこその公開ねぇ。けど知ってる?次回の投稿って、黒の館DNよ?」

……え、マジ?(゚Д゚;)

ネイ「確かに、そう言う風に収録してますよね?」

(゚∀゚;)あ、アハハハハハ……ウソダドンドコドーン!(゚Д゚;)てことは3話連投になりますね。

グリーフィア「あ、そうなるのね」

ネイ「別に1話だけでもいいと思いますけどね」

ただ3話を当日30分くらい前から続けて投稿は難しいので次回の投稿までの間のどこかで夜に予約投稿はしておきますね……;つД`)つらたん
ではEPISODE37どうぞ。


 

 

 元が実質的な処刑宣告をした頃、名護屋湾側の華穂もゲルツとの対決を激化させていた。両者の実体剣が交錯し、弾き合う。

 華穂は刃を交えながら己の覚悟を吐露する。

 

「もうあんた達なんかに私の知っている人は殺させない!深絵さんまで死んだら、またにぃや色んな人達が悲しむ!」

 

『フン、それがどうした。戦いに死は当たり前。貴様や貴様らの知人など、私にとっては贄でしかない!貴族の前に平民はひれ伏せ!』

 

「生まれだけで人に命令するな!」

 

 華穂にとって光姫は上司である以上に兄の友人、そして恩人である深絵の恩人だった。その二人が悲しむ姿を、もう誰であっても見たくない。

 二人の為に自分は戦う。それがこの作戦に賭けた想い。それを生まれが良かったくらいで他人全てを犠牲としか思わない目の前の男に奪われたくない。

 倒す、絶対に。二人に危害が及ぶ前に。華穂の斬撃が振り抜かれる。

 

「二人だけは護るんだからぁ!!」

 

「なら、貴様は死ね!!」

 

 渾身の斬撃をリフレクトアームで防がれる。同時に敵の胸部が展開した。形成される砲身、光姫を葬ったあのビーム砲だった。

 突然の事に動揺するも、冷静になる。チャージ完了する前に離れれば……。しかしその思惑は崩れ去る。

 後退しようとした瞬間動きが止まる。敵のアームユニットがこちらの肩部シールドを抑え込んだ。

 

「しまっ」

 

『散れ、雑兵。奴と同じようにな!』

 

 死ぬ――――。死の恐怖に目を閉じてしまう。志半ばで、自分は。後悔が過った。

 ところがそうはならなかった。目の前で爆発が起こった。

 

「きゃっ!?」

 

『ぐぅ!?何だと!?』

 

 驚愕する敵の声。目を開ける。開けた視界の中には、敵の砲身は融解してしまっていた。

 一体どうして。答えにたどり着くよりも先に深絵からの指示が飛ぶ。

 

『華穂ちゃん!そこから離れて!』

 

「っ!!このっ」

 

 MS刀で叩く形で敵のアームユニットの指の拘束を外す。退避を優先して敵との距離を開けた。

 間一髪命を救われた華穂。よく見ると深絵がビームスナイパーライフルに武装を切り替えていた。アームと華穂の機体で隠される中、スナイプで敵の武装のみを削いだのだ。

 いつもながら見事な狙撃だった。けれどもその深絵は華穂の行動に怒った。

 

『ダメだよ、華穂ちゃん!私達だけが無事なんて、そんなのダメ』

 

「深、深絵さん……」

 

 思わず叫んでいた言葉だ。叱りを受けて華穂は縮こまる。その様子を見て立て続けに深絵は叱咤する。

 

『まだだよ』

 

「え」

 

『まだ戦っている最中!全部終わってから怒るから、生きてよ。でないと元君に怒られるんだから!』

 

 言われて茫然となる。だけれども確かにそうだ。深絵にとっては兄から妹を託されたようなもの。なのに勝手に犠牲になろうとした華穂を怒るのは至極当然だ。

 失敗だったと自分でも思う。だが今は彼女の言う通り、目の前の敵機に集中すべき時だ。反省を心の中でして、深絵に言う。

 

「はい」

 

 剣を構えなおす。敵の方は破損した胸部前面を見て怒りに震えていた。

 

『私を……私の機体を、傷つけたなっ!!愚民がぁ』

 

 怒りを爆発させて両手に武器を構えた。動いたのは同時だった。

 刀と刀がぶつかり合う。怒りのままにもう片方のビームソードを振り上げてきたが、それを深絵が迷わず撃ち抜く。

 

『づぅ!?』

 

『華穂ちゃん!』

 

「このまま、押し切る!!」

 

 バックパックの出力を上げる。スラスターからの噴射でゲルツのマキシマムを押し返した。

 ホリンへと近づいていく機体。これ以上好きにやらせないとゲルツもまた機体の動力の出力を振り切った。

 

『えぇい……調子に乗るな!!』

 

 弾かれる機体。距離を取ったと同時にマキシマムが腕のビームガンを連射した。暴れ狂うように放たれた弾丸を回避する。深絵がビームスナイパーライフル、ビームライフル・アサルトで応戦する。

 

『このっ!』

 

『その程度で!!』

 

 だが奴の思考は冷静だった。しっかりとアームユニットを向けて受け止め、深絵に跳ね返してきた。

 深絵も咄嗟に回避行動を取る。やはり奴を倒すには接近戦か実弾兵装しかない。全弾避け切った深絵に対し、提案した。

 

「深絵さん、もう一度あいつと展開します。隙を作ったところをガンランチャーで!」

 

『華穂ちゃん!?何を……』

 

「大丈夫です。死にはしません!」

 

 恐れはしない。深絵が撃ってくれるから。その精度を信じて華穂は囮としてマキシマムの前に立ち塞がる。剣を再びぶつかり合わせ、ゲルツ・ルーダはその戦い方を罵った。

 

『一人では何も出来ん出来損ないが!完璧たる私を崩せるとでも!』

 

 まるで一人で全て解決できるとでも思っているかのような物言いだ。いや、実際彼はこれまで味方を呼んで戦っていない。四ツ田基地でも兄と沢下が戦う所に一人だけで来ている。もしやと思い、深絵は口角を緩める。

 そして挑発した。

 

「一人で全部できる人間が、絶対に賢いんじゃない!けどあんたは違う」

 

『何?』

 

「あんたはただ、自分が貴族だと思って粋がってるだけのガキよ!仲間を引き連れていないのは、みんなあんたの子どもっぽい言動についていけなかったからでしょ!」

 

『ガキ……?私を、私を子ども扱いするとは、不敬極まりないぞ女ァ!!』

 

 狙い通り挑発に乗って怒りを爆発させた。図星だったのだろうが、それ以上にガキという表現が随分と効いたようだ。

 貴族の誇りを穢されたとゲルツの剣技は激しく乱舞する。その動きに華穂も追従した。剣の振りは速いが、やはり精細さを失った分まだ先程よりは捌きやすい。

 深絵の狙撃の為にその瞬間を見定める。幾度かの斬撃の交わりの後、その時は来た。

 

『でぇいぁ!!』

 

「今っ!!」

 

 剣を絡める。力を外へと逃がすように刀身を滑らせる。そして外側へと敵の剣を弾いた。

 

「深絵さん!」

 

 叫ぶ。相手は体勢を崩している。大きな隙だ。すべては深絵へと委ねる。

 

 

 

 

 華穂の声より早く、深絵は動いていた。これまでの戦闘経験でこれくらいは分かる。あのタイミングで華穂なら仕掛けると思った。わざわざ言葉で挑発してまで敵の隙を晒してくれた。

 外しはしない。ガンランチャーで狙いは付けている。外しはしない。徹甲弾ですべて決める。弾種を切り替えたリボルビング・ガンランチャーのトリガーを引き絞る。

 

「っっ!!」

 

 反動が伝わると共に弾が発射する。実弾は真っ直ぐ敵の左のアームユニットの付け根目がけて進み、そのパーツを砕いた。

 

『ぢぃ!!小癪な……』

 

 舌打ちを吐き捨てたゲルツ。深絵の攻撃に間髪入れず華穂も仕掛けた。

 

『てぇぇぇい!!』

 

『このっ!!』

 

 バックパックからビームサーベルの引き抜きが間に合う。ソルジア・エースの斬撃を間一髪受け止められてしまう。再び支援を行おうとするが、それよりも前に華穂が動いていた。

 

『このッ!』

 

『何だ、こいつ……!?』

 

 突如右手を敵の左肩に乗せる華穂。ゲルツも首を傾げる。何をする気なのかと戸惑ううちに、彼女は機体のスラスターを噴かせて、手を置いた部分を支点に機体の上下を「入れ替えた」。

 それはかつて元が訓練でも使用した技術。MSならば反転した後の制御は容易かった。

 剣を交えたまま上へと上がった華穂の機体。剣を弾き、わずかな瞬間に横薙ぎに振るう。その一太刀が晒されていたマキシマムの最後のアームユニットの付け根を切り裂いた。

 咄嗟の事で深絵も理解が追いつかない。だが彼女が敵の防御手段を落としたことに変わりはない。ソルジア・エースを振り払うようにビームソードを振るい、敵は後退する動きを見せた。

 

「させない!」

 

 ビーム攻撃に躊躇いがなくなったことで迷いなくビームライフル・アサルトを選択する。ウイングのレールガンも展開して一斉発射する。弾幕の雨あられに敵が呑まれる。

 

『クソッ!あんなまぐれで俺が落とされるなど!!』

 

 一人称が変わるほどの苛立ちを見せるゲルツ。このまま仕留められる。そう思った。

 しかし思わぬ救援が敵に入る。ホリン方面からアラートが響いた。直後ビームの弾雨が二人に降り注ぐ。

 

「何!?」

 

『嘘、こいつに援軍来るの!?』

 

 予想だにしていなかった攻撃に思惑を外される。とはいえ先程の華穂の発言はあくまで予想に過ぎない。奴が決して味方に避けられるパイロットと決まったわけではないのだ。

 ともかく援軍がどの程度かと警戒を強めたが機影を見てその思考は更に不可解さを伴った。

 向かってきたのは、車。銀色に塗装された車に似た何かだ。それが飛行している。機体の至る箇所から次元粒子を放出しており、それがあってその物体が兵器であると言えるような外見。よく見ると銃口が見えており、先程の銃撃がそれによるものだと分かった。

 更に装甲もよく見るとただの銀ではない。鏡のような艶と反射度を持っていた。すぐにそれがビーム反射装甲と同じ部材であることに直感で気づく。

 とても援軍とは思えない機体の姿に二人は疑念を抱く。

 

『な、何です、あれ。兵器?』

 

「よくは分からない。だけどあれがあいつにとっての援軍だとしたら……」

 

 どのみち相手をせざるを得ない。だが当然そのまま逃がすわけではない。戦闘しながら、隙を突いて背後から撃つ。卑怯かもしれないが、どのみち彼が死なない可能性の方が高かった。一旦撃墜して戦力を減らすことは悪くない判断だ。

 銃を構え、戦闘体勢を再度取る。ところがやってきた援軍を見てゲルツは意外にも笑い声を上げた。

 

『く、ふふふ、くははははは!!そうか、私は、まだ戦える!!いや、ここからが本当の私の実力だ!』

 

『何、あいつ。もう武器はほとんどないっていうのに……』

 

 華穂の困惑を深絵も感じていた。一体あの機体の何が彼をそこまで自信満々にさせているのか。あの一機は二人を相手に出来るのか、それとも人数的な意味で言っているのか。

 困惑の二人に対し不敵な発言を行うゲルツ。彼は思いもしない方法で、彼女達の予想を超えてきた。

 

『見るがいい。我が高貴の満ちたる姿を!』

 

「――――え?」

 

『ちょ、えぇ!?』

 

 起こった「それ」に二人は反応できない。慌ててライフルを放つがそれを無効化される。二人の前に立つ一機の巨体。巨体から奴の声が響いた。

 

『――――さぁ、せいぜい私を愉しませてくれよ?愚民共!!』

 

 

 

 

 沢下のマキシマム・ホーリーとの戦闘を続ける元。しかし勢いは先程までとは違う、一方的なものへと変わりつつあった。

 押されつつあった沢下は舌打ちと共に仲間を招集する。

 

『くっ、直近部隊、こちらを援護せよ!』

 

『了解!沢下戦神官を守れ!』

 

「増援か」

 

『敵機体10に増加!注意を』

 

 数が増えてもやることは変わらない。横に薙ぎ払う形で放ったジェネレーターファンネルのビームが周囲に展開する沢下の直援ごと攻撃する。沢下自身はシールドで防御するが、周りの味方は回避しきれずに焼かれ爆散する。

 飛び上がった沢下達は自機に搭載されたビーム兵器を乱射して応戦する。それを元は下手に動かず、DNウォールで防ぐ。ジャンヌが優先ターゲットを提示した。

 

『ハジメ、右方向より近接格闘!』

 

「了解」

 

 ブレードガン・ニューCを右手に構え、接近戦を仕掛けてきた敵を迎撃する。鍔迫り合いを行うと同時にファンネルをコントロール、抑え込んだまま敵の背部を貫き、爆散させた。

 爆炎から逃れる機体。そこに立て続けに敵は群がってくる。

 

「数が多い!」

 

『沢下機、接近!』

 

 ジャンヌの声に反応しDNLで位置を把握。上空から斬りかかってきた沢下の機体を左腕の盾で受け止めた。

 力任せの攻撃、そして感情の波。まだ先程の事に怒りを持って向かって来ている。沢下は接触回線で再び叫ぶ。

 

『柚羽の死を簡単に片づけて、何が思い出だ!思い出は永遠に、刻み付けられ人は無心にそれを求めるものだ!』

 

「それは人の受け取る考え方次第だ。少なくとも、俺は抱えたままじゃ前に進めなかった。昔が良かったと思い込み続ける!今のお前もただ駄々をこねているだけだ!」

 

『駄々ではない!これは、柚羽の最後の意志だ!それを俺はただ遂行している。断じてそのような自分勝手な欲求ではない!』

 

 弾き合う機体。それに乗じて敵が両側から攻撃を仕掛けた。元は両腕部の武装でそれぞれ受け止める。続いて後方からタイミングをずらしてビームライフルを向けられるのを感じとる。

 

『ハジメ!』

 

 注意を呼びかけるジャンヌの声。即座にシールドユニットを向け、ビームマシンキャノンを連射。敵をハチの巣にして撃墜する。

 受け止めた敵機もその状態から滑る様に後方に下がって切り結びを解除。沢下の機体が切り替えた右腕のビームライフルの射撃を避けて素早く展開したビームソードで斬り裂く。

 順調に敵を減らしていた。敵機残り五機。関係ない機体を一気に葬るべく、元はジャンヌにエラクスの使用を宣言する。

 

「ジャンヌ、エラクスを使う」

 

『了解。DNコントロール、オールグリーン。DNジェネレーター正常稼働!』

 

「エラクス、始動!」

 

 蒼き蒼炎の光を身に纏うクリムゾンゼロ。ジェネレーターファンネルからも凄まじい炎のエフェクトを生みだしている。ファンネルを呼び戻した機体は加速装置として用いて高速化を補助して敵兵へと襲い掛かる。

 敵も蒼い炎を見て警戒を強めた。だが対応するよりも速く、クリムゾンゼロは敵機体を両断、貫通させていく。

 

『グァッ!?』

 

 ジェネレーターファンネルの拡散砲撃も絡めて邪魔となる敵機を排除した蒼炎のクリムゾンゼロは一直線に聖なる名前を冠した極限の機体へと斬りかかった。ブレードガンとビームサーベルがぶつかり合う。

 沢下は変わらぬ妹の悲願を口にする。

 

『あぁ、妹は嘆いている!平和への最短となる道のりを否定し、争いを求める貴様を!死に何も動かされなかった貴様の愚鈍さを呪っている!』

 

「そうかよ。許されなくたっていいさ。俺は結局アイツを救えなかった。だがそれ以上に、お前は、お前達の思想は柚羽の意志に反して、この世界に生きる人間に弊害を与えている!」

 

 エラクスによる高機動で素早く距離を取ると、ホリンの地面を利用して蹴って加速。更にDNで空間装着したジェネレーターファンネルからもブースターの要領でDNを放出、斬り抜ける。一度ではない。何度も、何度も、縦横無尽に奴の周囲を駆け巡る。

 連続斬撃が作り出す戦闘領域を前に沢下のマキシマム・ホーリーは動けなくなる。反撃しようにもできない、一方的な戦闘領域。決してその刃からは逃さない意志で斬り続ける。

 腕部を、ウイングを、腹部を斬り裂き、箇所を失っていくマキシマム・ホーリー。とうとう片足を失って膝をついた。クリムゾンゼロの機体を減速させた元。DNLの力を解放する。

 

「行け、ファンネル!」

 

 フェザー・フィンファンネルが分離して敵周囲を囲う。沢下はビーム射撃を見越してシールドを前面に構える。

 後ろが丸見えではあるが、そこは狙わない。代わりにファンネルを円形になるように配置した。今までなら意味のない配置。そこに意味を持たせる。

 

『DNプロテクション変質形成!』

 

 ジャンヌの声を合図にファンネルからDNプロテクションが展開する。

その形状は沢下を囲う檻のようだ。そう、これは沢下をその場から動かさないための檻だ。かつてヴァイスインフィニットが生身のジャンヌ達相手に使った捕縛フィールドから発想を得た使用法だった。

 ジャンヌにとってはトラウマとも呼べる使い方。その束縛は見事沢下の動きをそのままの状態で縛った。動けないことに沢下が気づく。

 

『何だ、身体が動かん!?』

 

 抵抗のできない次元覇院の希望。その希望を折るために、元はクリムゾンゼロガンダムの全性能を解放した。

 

「ジェネレーターファンネル、最大出力形態!」

 

『ジェネレーターファンネル、最大出力形態(マキシマムドライブ)移行(チェンジ)

 

 円盤のファンネルが内部の機器を展開する。それは円を描きながらも、面積を大きく広げていく。魔法陣のような形状へと姿を変えていく。

 二枚の円盤は変形を終えると回転を開始した。回転に合わせて電撃が迸る。円盤へ向け左手の秩序の盾のボウゲン・ランツェを向ける。槍の本体が分割され、射撃形態を形作る。

 

『ボウゲン・ランツェ、射撃態勢へと出力移行。射線上の敵MS、全て照準(ロック)!』

 

 機体の照準は沢下の機体だけではなくその後ろ、三枝県側の沿岸からこちらに向かいつつあった敵MS、海中から近づきつつあるMAも全て捉えていた。このガンダムなら、そのすべてを打ち漏らさない。

 上昇していく出力に対し、怒りを忘れた沢下が声を絞り出してその性能に怯える。

 

『……何だ?まさか、私達の後方部隊までも狙って……?』

 

「………………そうだよ」

 

『ま、まてっ!!民間人だっているんだぞ!戦う力のない者達が……』

 

 制止を呼びかけた沢下。だが元は冷たく反論する。

 

「お前達はそうやって、何人の無関係な人達を傷つけた?どれだけの人を悲しませた?子どもの親を殺して、それを誇りに晒すお前達がそんな事を言えるのかよ」

 

『き、貴様……!それで許されると!』

 

「第一、民間施設を背にして部隊展開している時点で擁護できないだろ。まぁ安心しな。撃ち落とすのは全部、機動兵器を操る奴だけさ。お前達に出来ない、俺の力だ」

 

 DNL能力を最大にする。敵意を向ける、DNの力を放出する者に意識を集中させた。出力はどんどん上がり続ける。回転が最大まで回ったところで元は言う。

 

「だけど、言っておく。そんなに俺達に非があるというのなら、前に出て戦うようになってから言えよ。この卑怯者」

 

 同時にDNFが放たれる。

 

『Ready set GO! DNF、「クリムゾン・イレイザー・ラスト・シューティング・スター」!!』

 

 クリムゾンゼロガンダムが誇る最大出力が解き放たれた。その直径はクリムゾンゼロのゆうに5、6倍の大きさ。

圧倒的な熱量を持ったビームの奔流がフェザー・フィンファンネル、そして沢下の機体を軽く呑みこんだ。まずフェザー・フィンファンネルが熱量に耐え切れず自壊する形となる。続く沢下のマキシマム・ホーリー自体もシールドで防御するが、その熱量に耐えることなく蒸発していった。

 ビームは止まらずホリンの上面を削りながら三枝県方面へと海上を直進する。敵MSが空中を、そしてMAが海中を進行する前方でビームは分散した。

 分散したビームは展開する敵へ襲い掛かる。MS、MA関係なくだ。降り注ぐビームの雨はまるで流れ星のようだった。しかし暴力的な光が空域・海域を蹂躙する。

 まだ足りないと言わんばかりに発射元である円盤からもビームが次々と撃ち出され続ける。撃っていく間徐々に円盤が蒸発する様にパーツを消していく。自らのパーツを削って破壊の雨を降らしていった。

 やがて全てを出し切ってボウゲン・ランツェからのビーム照射を中止する。役割を終えてジェネレーターファンネルだった円盤パーツが地面へと落下、パーツ単位で煙へと姿を変えていく。

 目の前に映るのは上面が削られ、中身がやや露出しつつあるホリンの上面と燃え上がる前方海域。爆発の煙が至る箇所で昇る。

 

『すべて、出し切りましたね』

 

「あぁ。だけどまだ終わりじゃない」

 

 まだ終わっていない。沢下の機体を消したとき、奴の討ち取った手ごたえを感じ取れなかった。間違いなく、奴はまだマリオネッターシステムで生き残っている。

 それを駆逐するまではまだ作戦は終われない。そう思いつつも元は地面に転がったファンネルの残骸を見てひとり呟いた。

 

「光姫、ありがとうな。力を貸してくれて。俺は、奴を討つ」

 

 決意を胸に、コントロール元にいるターゲットの確認へと任務を切り替える。後は主犯を捕まえるだけ。それだけで済めばいいが。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。

ネイ「本当にすべて出し切ったといいますか……」

グリーフィア「怒りを全部ぶつけたって感じよねぇ。まだマリオネッターシステム使っているんだから、出力抑えた方がいいでしょうに」

でも同時にあれは「本気でやったら簡単にお前らを殺せるぞ」っていう元君のメッセージもこもっていますよ(´-ω-`)敢えてすべて出し切って、後がないことを突きつける。

グリーフィア「あー、それで実際の体で直接装依させるのを誘ってトドメを刺すってことね」

ネイ「なるほど。それは分かりました。でも深絵さん達と戦っているゲルツという男のあれは……」

あれこそ次元覇院の切り札よ(゚∀゚)さぁ黒の館DNを挟んで最後の対決の幕が上がるぞっ!人類の未来となるのはどっちだ?
それでは今回はここまでです。

グリーフィア「それじゃあ次回もよろしく~」


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黒の館DN 神騒乱勃発編 第6回

どうも皆様。予約投稿設定では現在16日の0時ほどより、作者の藤和木 士です。撃ち終わったら寝ます;つД`)

前回から引き続き、活動5周年記念の連続投稿。今回はまず黒の館DNからです。人物紹介は敵味方両方より、そしてMSはあの新型機ソルジア・エースと深絵の武器リボルビング・ガンランチャーの紹介です。

残念ながらホーリーとクリムゾンゼロは次回への持ち越しです。理由はあとがきにでも……。
それではどうぞ。


 

士「どうも皆様。クリムゾンゼロガンダムがチート級の砲撃を放って第3章も大詰め、と言ったところでいつもの黒の館DNです。作者の藤和木 士ですよ~」

 

ネイ「なんというか、うん。イグナイターが霞む砲撃だった気がするんですが、あれ。アシスタントのネイです」

 

グリーフィア「同意ねぇ。けどイグナイターとは違った強みを持ってるって感じだったわねぇ。アシスタントのグリーフィアよ~」

 

ネイ「っていうと?」

 

グリーフィア「単純に言えば、砲撃性能特化って感じね。イグナイターもフルバスターブレイドってDNFがあったけれど、今回のDNFほど直径はなかったことだし。それにジェネレーターファンネルをブースターみたいに使うなんて、よっぽどスピードがないのを無理矢理補ってる感じがするわぁ」

 

士「今グリーフィアさんに紹介してもらった通りだわ(;´・ω・)今までのイグナイターが高機動全領域対応型なら、クリムゾンゼロは乱戦の中で輝く砲撃型って感じだ」

 

グリーフィア「そりゃあ台本に書いてあるもの☆」

 

ネイ「あ、はは……。それで今回も紹介ですが、人物紹介は藤谷さんと現在の日本の首相で新堂さんのお父さん、新堂幸地さん。そして敵側から外国の貴族さんことゲルツ・ルーダさんですね」

 

グリーフィア「そしてMSはソルジア・エースと深絵のブラウの追加装備「リボルビング・ガンランチャー」ね。マキシマム・ホーリーもクリムゾンゼロも紹介しないのはえっ、って思うかもだけど、理由があるのよねぇ、作者君?」

 

士「単純にネタバレ含んでるって話なんですよね(;´・ω・)前のシュバルトゼロ・ビレフトみたいに解説を切るっていうのもありなんだけれども、それはあんまりやりたくないから」

 

ネイ「それじゃあまずは人物紹介からです。どうぞ」

 

 

 

 

新堂 幸地(しんどう ゆきじ)

 現日本政府の首相にして自衛軍最強のMS剣士新堂沙織の父親。49歳。身長173cm。

 家は代々武人家系であるが、その中でも首相にまで上り詰めたのは彼だけである(防衛大臣クラスは少数だがいた)。

 娘の剣術指南役であり、彼女の太刀筋は彼譲りのもの。今はMSに乗ることはないが整備士の真希の見立てでは娘と同じ剣術特化のMSに乗れたと見ている。

 一国の首相として物事を平等に見て判断、助言を行ったり意見を交わし合う。防衛大臣だった経験から自衛軍の兵士や防衛大臣の晴宮の相談相手となるなど気配りもあり、また本人は親しい間柄とはジョークなども交える。

 作中にて黎人からの報告を受けて対応を検討していたが、元と自身の娘の話を聞き総合的に判断してMSオーダーズ再活動の拠点提供に加えMS試験空母の補充を許可、国を超えた脅威に対し、オーダーズに全てをゆだねる結果となった。

 

 

藤谷 努(ふじや つとむ)

 自衛軍東響湾基地に新たに配属された司令。前司令だった斉田の後任である。61歳。

 元々東響湾基地に勤めていたことがあり、それもあっての人選であった。所謂再任用である。

 次世代の兵器であるMSに非常に興味を抱いており、その関係で黎人達MSオーダーズの面々とは晴宮により対面させてもらっている。以来しばらくの間MSの戦法などを研究していた。

 ホリン・ダウン作戦では前回の作戦瓦解の責任で辞任させられた黎人に代わって出向の形で臨時司令として作戦司令を兼任する。敢えて自分が研究した戦法ではなく、元達の戦法を採用し、現場の力がどれだけ自分の想像を超えているかを試している。

 ちなみに新堂首相とはかつて同じ部隊で先輩だった。

 

 

ゲルツ・ルーダ

 次元覇院に所属する、戦神官の一人。EU系の諸国出身の男性。24歳。

 貴族階級だった家の子どもであり、貴族純血の世界の為の足掛かりとして留学先だった日本の次元覇院へと協力する。

 沢下と同じ戦神官であり、最新鋭機マキイン・刃やマキシマムをそつなく使いこなす。ただし連携を重んじることは少なく、自分は純血であり高潔だとして常に部下など人を使役することを好む。

 特にMSパイロットとして沢下とはライバル関係にあって、沢下に最新鋭機マキシマム・ホーリーが譲渡された時には後々自分の物になると言って見せたほど。最初の増援の時も本人は嫌々参加していたとのこと。

 人物モデルは機動戦士ガンダムSEEDDestinyASTRAYに登場したマーレ・ストロード。

 

 

ネイ「以上が人物紹介になります」

 

グリーフィア「新堂首相はあれね。LEVEL1で言う所のバァンさんみたいな人って位置付けらしいわね」

 

士「考え方は似ているようなイメージで作ってますね。グランツさんとかとも被っているところはあるんだけど、明確な違いとしてグランツさんはおじいさんな分孫みたいな人に甘い感じでキャラ付けしてます。頼まれたらおじいちゃん頑張っちゃうぞみたいな。けど若い頃は年相応にちょっと闇を抱えていたみたいな」

 

ネイ「おじいちゃん……」

 

グリーフィア「そう訊くと何か可愛く見えてくる。首相は?」

 

士「対して新堂首相は沙織さんみたいな真面目さを持ち合わせる。だけど娘とは物事に冷徹で、知り合いが何か事件に巻き込まれたら沙織さんは使命と迷いながら知り合いを匿って事件を捜査するタイプ。首相の方は迷いなく知り合いを警察に渡しちゃう。だけど事件の真相を調べて真実を訴えていくっていうタイプを考えてる」

 

ネイ「分かるような、分からないような」

 

士「あう;つД`」つまり二人とも使命に忠実だけど沙織さんは意外と脆い。だけど首相は心の中では動揺するんだけど、表情に出さないでいられる。だけどしっかりと物事を見て行動できるって感じ。私の言葉足らずだけど!」

 

グリーフィア「まぁそこら辺にして。藤谷さんはタイプとしてはグランツさんみたいな話し方よね。元君とかに任せているし」

 

ネイ「そうだね。いい人って感じだし」

 

グリーフィア「だけどまさか新堂首相の先輩ってねぇ。何も言ってないじゃない作中で」

 

士「ごめん、入れ忘れた(;´・ω・)」

 

ネイ「にしても、ゲルツさんはやっぱり連携が下手、というより考えていないんですね」

 

グリーフィア「うーんなんか絵にかいたような問題児って感じ。拗らせてるっていうか」

 

士「裏設定じゃ家から追い出されたような形で留学、渡来しているからね。厄介者扱いだから、決してその家は悪くない」

 

グリーフィア「ま、それならいいわ。次の話で深絵ちゃん達が討ち取ってくれればそれで」

 

ネイ「でも、変な表現入っていたよね、深絵さん視点の最後」

 

グリーフィア「さぁ、なんのことかしらね~♪でも何が起こったか大体は予想出来るから、登場人物に任せるしかないわ。じゃあそろそろここまでにしてMS紹介に入ろうかしら?」

 

士「あ、お願いします(`・ω・´)」

 

グリーフィア「それじゃあMS見ていくわよ~」

 

 

OMS-01AC

ソルジア・エース

 

機体解説

・ソルジアV2をベースに東響掃討戦後にロールアウトを目途に開発されていたソルジアのハイエンドモデル。形式番号のACは「エースカスタム」の略。

 シュバルトゼロガンダムRⅡFⅡをベースに開発されており、特に背部フィンスラスターユニットやサイドアーマースラスター、肩部シールドに面影を残す。

 これまで通りエディットアームユニットを装備するが、本機ではシュバルトゼロガンダムに倣って肩部にシールド装着してその裏に更にアームを接続して装備させるという手法を取る。

 ただし高機動化を主眼においたこのカスタムの為に粒子消費量が増大。バックパック下部にプロペラントタンクを装備して対応させている。武装搭載量もエディットアームの減少でソルジアV2よりも少なくなって継戦能力が下がった。

 そのほか粒子制御のパラセイルアンテナは名称を「ディメンションアンテナ」へと改名。個々の仕様に合わせた武器も搭載するなど決戦に向けて万全の体制を取っていた。

 次元覇院によるネスト奇襲時に多くのMSが破壊されたものの、本機はベースにシュバルトゼロガンダムのデータを用いたことで、安全上の観点から自衛軍MS生産基地にて開発されていたためほぼ無傷でそれぞれの使用者に渡る。劇中では華穂機、夢乃機、沙織機の他にも間島機、羽鳥機などが配備。逆襲となるホリン・ダウン作戦にて猛威を振るうことになる。ただし高性能機体に慣れない人員もそれなりに多く、一部機体はスペックをセーブした状態で運用もされた。

 コンセプトとしてはソルジアに「量産型νガンダムのHi-ν版」を落とし込んだイメージ。劇中ではシュバルトゼロガンダムに寄せる形となっている。機体カラーはソルジアV2の灰色から一転して黒。華穂機は肩を白に、夢乃機は緑、そして沙織機は機体カラーを紺にして肩も黄色へと変更している。

 

 

【機能】

・エディットウエポンシステム

 武器換装・運用サブアームシステム。本機では肩部に装備する形を取っている。

 

・ディメンションアンテナ

 機体の鎖骨部分から伸びる次元粒子制御アンテナ。V2ではパラセイルアンテナと呼ばれていた。

 性能はマキナ・ドランディア機とほぼ同等の粒子制御能力を得ている。

 

 

【武装】

・MSライフル

 MSマシンガンを大型化させた兵装。弾数は60発。背部ウイングの側面に1丁装備される。

 全体的に大型化させた性能で、連射性は据え置き。マシンガンがなくともビームライフルの運用に支障は出なかったのだが、次元覇院の開発した排熱式ビーム反射装甲リフレクトパネルへの有効打として依然装備が必要なため装備された。

 

・ビームライフルV2+

 ソルジアV2のビームライフルにリボルガンユニットを銃口下部に装備した仕様。

 リボルガンユニットにはナパーム、徹甲弾、アンカー、パイルが内蔵されていて、用途に合わせて使用が可能。加えてリボルガンユニット排除後は根元からビームソードが形成可能となっている。

 武装モデルはRX-78ガンダムのスーパーナパーム装備ビームライフル。もっともこれはその発展型であるユニコーンガンダム2号機バンシィ・ノルンのリボルビングランチャー装備ビームマグナムがモデル元である。

 

・ビームサーベルV2

 ソルジアV2と同じ仕様のビームサーベル。装備位置はシュバルトゼロガンダムと同じくウイングカバー内になった。

 

・バインダーシールド

 機体両肩部に装備される、アーム付属のシールド。

 シュバルトゼロガンダムのニューオーダーシールドをベースとして開発。DNウォール発生まではこぎつけなかったものの、エディットウエポンシステムのアームを搭載して汎用性を得ている。

 表面には強力な耐ビームコーティングを施してあり、シールド自体もかなり頑丈。重量も側面に設置された2基のバーニアで補っている。

 

・イミテーションウイング・SZ

 背部を構成するウイングバックパック。本機の機動性を大きく担う重要兵装。

 模造品(イミテーション)の名の通り、シュバルトゼロガンダムのバックパックをベースに開発され、ソルジアV2よりも機動性が60%近く向上している。

 オリジナルと比べると7割に抑えられているものの、それでも量産機としては破格の性能を得ている。

 ファンネルなどの特殊装備はなく、機動性に純粋に特化させたセッティングだが、付け根のビームサーベル収納や側面ハードポイントシステムの再現なども行われており、近い性能を持たせた。

 またバックパック下部にはプロペラントタンクが備わっており、必然的に発生したエネルギー不足を補う役割を持たせた。

 モデルはシュバルトゼロガンダムのものと同じくHI-νガンダム系統のバックパックだが、こちらは特殊装備のファンネルをなくし、更に本家のようにプロペラントタンクを備えるなど逆算した量産仕様をイメージした。

 

 

<アーム選択武装>

 これまでの武装を装備可能だが、新たに開発された兵装群はそれらをまとめた兵装であるため、ほぼ使われないと言ってよい。はずだったがホリン・ダウン作戦ではまともな転換訓練がなかったため多くの機体が既存兵装と合わせたり、既存選択兵装のみを使用したりした。

 新堂沙織機はソルジアの段階で使われていたMS刀「村金」を引き続き使用する。

 

・ガンアサルトⅡ

 ガンアサルトを改良した兵装。これまでは電磁小銃としての兵装だったが、本兵装にてレールガンを廃止し、代わりにポッドランチャーの機能であった高出力ビームショットを銃身分割により実現。

 ビームと実弾を併せ持つ兵装だが、ビーム機構の為に実弾装填部が少なく電磁小銃としての弾数が7割近く減少した。

 羽鳥機は旧ガンアサルトと合わせて弾幕形成に本兵装を選択している他、華穂機も本兵装を装備する。

 

・エリミネイターブレードⅡ

 エリミネイターブレードの発展型。十字状のパーツとなっており、一見して発展型とは思えない。

 それもそのはずで鋸部分が省略され、柄を展開してそこから直接ビーム刃を発振させられるようになった。

 出力が上がっただけでなく、コンパクトになったことで携行も簡単となった。パイロットの中には本兵装を2本装備するものもいる。

 使用者は夢乃。2本装備で彼女の高い格闘戦技能を余すことなく発揮する。

 

・MS刀「カゲロウ」

 タチカゲの技術と村金の技術を掛け合わせて誕生した新型MS刀。透明な刀身の日本刀。

 タチカゲが本来目指した形であり次元粒子の定着、切れ味の増加を実現した。発案者である沙織が納得の物となっている。

 その分製造コストが高い兵装ではあるものの、使い手も少ない為問題にはなりづらい。沙織機が右に本兵装、左に村金を装備。華穂機も左側に本兵装を装備した。

 

 

 

リボルビング・ガンランチャー

 

解説

 重対物ライフル「ダンガン」のデータをもとに、深絵専用に開発された新型試作ライフル。バルミザンの左コンテナを改造して内部に収められている。

 実弾特化の銃で内部のリボルビングユニットに様々な種類の弾丸を込める。弾種の切り替えはリボルビングユニットごとの交換となり、手順が多いもののコンテナ内での自動交換も対応する。

 深絵のセッティングとしては対戦車砲弾、徹甲弾、焼夷弾を基本にクラスター爆弾、散弾、杭を好みで使い分ける方式にしている。

 ホリン・ダウン作戦では徹甲弾とクラスター爆弾、散弾で作戦に臨んだ。

 武装モデルは機動戦士ガンダム00外伝シリーズのガンダムサダルスードのGNリボルバーバズーカ。ガンランチャーの名称から機動戦士ガンダムSEEDのバスターガンダムの兵装も参考とした。

 

 

グリーフィア「以上がソルジア・エースとリボルビング・ガンランチャーの紹介になるわね。シュバルトゼロガンダムの技術解析用の機体、とは言われていたけれど、コンセプトとしては量産型モデル機をベースとしてそのモデル機の発展機の量産型イメージとはまた手間なイメージ像ねぇ」

 

士「量産型Hi-νとかまだ公式で出てないからね。ガンブレとかじゃそういうの作っている人もいるんだけども、シュバルトゼロガンダムの量産イメージとなるとやっぱりそこらへんを推したくなる」

 

ネイ「でも完全に量産ってわけじゃないんですよね、この機体」

 

士「そう。あくまでも性能模倣。模倣しての技術革新を促すための物だ。だから量産っぽいけど量産じゃない。他で言う所の……何だろう、性能比は違うけれどガンダムSEEDのイージスとリジェネレイト、みたいな?完全に量産を目指した機体は今後出す」

 

グリーフィア「それはそれは、今後が楽しみね。それでガンランチャーは一応あのダンガンを基にした兵装なのよねぇ?」

 

士「そう。ただこっちは一発が全てってわけじゃなく、前も言ったように手数で圧倒するって感じ」

 

ネイ「いずれにせよ、まだまだガンランチャーは活躍しそうですね」

 

士「さて、今回はここまでとしておこうか」

 

グリーフィア「久々みたいよね、黒の館で一個一個に解説していくのって」

 

ネイ「前作の黒の館では毎回毎回ゲストの人と感想を言ってもらっていたようですけど、今作はほぼないと言っていいんですよね。最後にまとめで少し言うって感じで」

 

士「今回は割と文字数に余裕があったからね。たまにはいいかなと。さぁ黒の館DNは閉館です。そして次回より第3章は佳境を迎えます最後に笑うのは神か、それとも……?」

 

ネイ「次回もよろしくお願いします」

 




黒の館DNはここまでです。同日公開のEPISODE38、39もよろしくお願いします。

ホーリーとクリムゾンゼロの紹介に至っては、本編で申し上げた通り、まだギミックと本編後でないと紹介できない部分もあったため次回に持ち越しとなりました。以前みたいにその部分だけ説明省くのも良かったのですが、それやると少々投稿で面倒くさくなるのでやめました(;´・ω・)

代わりに今回から一人ひとり、一機一機ずつの総評を復活させています。文字数余るときもあったので余裕があればまた入れていきたいと思いましたので。

それでは同日公開の本編も改めてよろしくお願いします。


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EPISODE38 魔王の生まれた日1

どうも、皆様。ビルダイリライズが放送休止となって寂しいですが、リライズセレクト楽しく見せてもらっています、作者の藤和木 士です。

ネイ「アシスタントのネイです。コロナの方は収まってきた、という所でしょうか?」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよ~。気を付けなきゃいけないのは変わらないけど、経済はちゃんと動かさないとねぇ」

と、まぁEPISODE38と39、同時公開のうちの38です。

ネイ「5周年、ですか。5年前にネプテューヌの方の二次創作を投稿し始めたんですよね?」

そうだよ。そっちは凍結しちゃったけど、その時の縁でネプ作者とかとは仲良くさせてもらっている人もいたり。

グリーフィア「まぁ、投稿頻度は」

止めよう!?その話題あの中じゃ禁句だから!(゚Д゚;)それでは本編をどうぞ。


 

 遂に倒した。敵の隊長格たるあの男を。乱戦状態の最中、その知らせが敵の耳に入れば、士気が下がるのは頑なに想像できる。

 マリオネッターシステムで死なないのは分かっている。それが敵をここまで増長させるきっかけともなるシステムなのだ。だがあれほど喧伝した機体。例え死ななくとも文字通り希望を折ったことにショックを受けざるを得ないはず。

 砲撃の反動でクリムゾンゼロはもとのシュバルトゼロガンダムへと戻っていた。出力の再調整を行いながら、ジャンヌは近づく味方の機影を照合する。

 

「機体照合。新堂沙織さんのソルジア・エース、並びに自衛軍第3大隊「極」所属機です」

 

 サオリの機体に追従してソルジアの機体がこちらに向けて飛行する。サオリからの通信回線が開かれる。

 

『元、ジャンヌ。沢下は片付いたのか』

 

『あぁ、さっきな。けど手ごたえがない。おそらく予想通り……』

 

 まだやれていないと語るハジメ。ジャンヌも一瞬の感覚だったがサワシタの機体から彼の意識が変に途切れるような感覚を感じ取っていた。

 あれがマリオネッターシステムの接続が切れる感覚なのか。意識しなければ分かりづらいそれを判断材料とするのは難しいが、用心するに越したことはない。

 ジャンヌもそれをサオリへと提言した。

 

「私もまだ終わっていないと思います。確実に敵を葬るため、後方の敵を巻き込んでの全力砲撃でしたが、もしかしたら取っておくべきだったかもしれませんね」

 

『流石に、あれはやりすぎな気もするがな……。海上から見ていたが、都市部に津波の余波が届いていた。多少三枝県から被害責任追及が来るかもな』

 

 被害の余波に少し俯く。ハジメは民間人の方への被害は抑えるとは言ったが、あくまで抑える。弾道は制御できてもその後までは予測は出来なかった。

 津波を起こしたのはおそらくMA撃破の時の爆発。しかし仕方のないこととハジメは語った。

 

『それを言ったって仕方がない。作戦経過中に人工衛星の落着で津波は起きていたし、何ならその時海中で波によるMAの爆発があったみたいだ。やったのは俺達だろうが、その基となるものを勝手に仕掛けたのはアイツらだ。被害はアイツらの自業自得だ』

 

『ハジメ、君は』

 

『無論、いたずらに被害が出るのは良くないことだ。けど三枝はもう大半が使徒達だと聞く。それに残った人達への言論統制の為に使徒以外のインターネット規制が行われている。使徒以外はメディア視聴を著しく制限する。あからさまな言論統制を容認している時点で、この結果を作り出した三枝県の責任の方が重い』

 

 ハジメは三枝の街を見渡して、呟く。

 

『故郷がこんなになるくらいなら、いっそ破壊してやりたいさ、何も残らない程に』

 

 何もかも壊したい。それはあまりにも悲しすぎる本音だった。けれどもそれを最小限の被害で留めたのは、間違いなくハジメの歯止めだった。

 怒りを堪えて、自身の自我を抑え込んでの行動。

 それよりもとハジメはサオリに人工衛星の中央を指さし、情報を共有する。

 

『それより、沙織さん達は予定通り衛星内の探索に入ってください。沢下のMSはあそこから発進していました。おそらく、MSの発進口か搭載部だと』

 

『……そうか。MSなら装依される前に破壊、衛星内に入り込めるようなら入り込んで彼らの長、教柱の確保だな』

 

 敵のトップの確保。それしかこの争いは終わらない。彼らの確保はサオリ達に委ね、自分達はここに残るのだ。

 残る理由はただ一つ。沢下を迎え撃つためだ。あの男はまだ向かってくるはず。ハジメはそれを相手にするために敢えて待ち構えることになっていた。

 サオリ達が追い出し、こちらが追い込む。役割を再確認してサオリは後の海上部隊の指揮について詳細を告げる。

 

『海上部隊の指揮は花村に任せている。回線はB9を使え』

 

「確認しました」

 

『それから、夢乃にはこちらと深絵、双方の間に隊を配置してもらっている。どうも深絵達が戦神官と戦っているらしい』

 

『戦神官……沢下じゃなさそうですね』

 

 戦神官は言うなればエース。彼らの戦術の要の一つでもある。これを潰せば戦力は少なからず削ぐことが出来る。

 少なからずというのは無論マリオネッターシステムが関係する。隊長クラスに優先してマリオネッターシステムが配備されていれば、隊長を撃破してもすぐにまた別の機体で戦線を再構築し直す。

 しかしそれでもしばしの間その場の戦力が半減する。外の部隊で撃破し、その間に中を精鋭で制圧する。中にいるのが全てのシステム使用者ではないだろうが、それでもここを制圧しきればもう守る意味もなくなる。

 そのためにもミエ達に今敵対する戦神官を突破してもらわねば。

 

『そちらの方も、十分気を付けろよ』

 

『了解した。制圧は任せます』

 

『うん、では』

 

 頷いてサオリは数十機から成る制圧部隊と共に中央射出口へと向かう。ハジメはこちらにサワシタの機体が出ていないかを聞いて来た。

 

『ジャンヌ、さっきの機体と同じ機体は?』

 

「出ていません。おそらく彼らの言った通り、希望だとすればあの機体だけという可能性も……」

 

 ダウングレードして向かってくるはずはない。同じ機体か、はたまた更なる新型を投入してくるはず。

 と、そこで緊急通信が入る。しかも同時に二つ。一人はユメノから。

 

『す、すみません元さん!なんか、深絵達の方に……え?敵が変身した!?』

 

『変身だと?どういうことだ』

 

 ハジメは訝しんだ。変身と言われて、まさか敵はイグナイターと同じ変容を起こしたのかとジャンヌも戸惑う。

 だが、それ以上の驚きが、もう一つの回線から……サオリの機体から響いた。

 

『くっ!?全機一旦離脱!』

 

「どうしたんですか、サオリさん!?」

 

『ジャンヌ、元に伝えてくれ!奴が……沢下が!』

 

「!ハジメ!!」

 

 サワシタ、という単語を聞いてすぐにハジメへと伝える。ハジメは素早くユメノに指示を送る。

 

『夢乃、深絵達のフォローに。部隊はその空域で敵を太平洋方面に出さないように指示を』

 

『分かりました!』

 

 すぐさまサオリの向かった中央へと機体を急行させる。急行する途中でその異変が見えた。

 

『何だ……?』

 

「あ、あれは……!?」

 

 周囲に展開するソルジアを一機のMSが圧倒していた。

普通のMSよりも一回りも大きな機体。銀色一色に翼を広げるその機体は、悪魔のような巨腕でサオリの部隊を薙ぎ払って中央からこちらに向けて進撃してきていた。

 隊員達は応戦するが、その中でビームだけが敵の機体を直撃するとそのまま跳ね返ってきて機体を襲っていた。

 隊員の一人が叫ぶ。

 

『こ、こいつ、全身がビーム反射装甲で出来てるのか!?』

 

『その通りだ、カスども!!』

 

『この声!!』

 

 声の主に気づく。間違いない。この声はアイツだ。

 こちらの機体を蹴散らしていた敵大型MSも顔をこちらに向け、視認するとその憎悪に満ちた得物を見つけたような声で咆哮した。

 

『見つけたぞ、ガンダムゥ!!もはやマリオネッターなどどうでもいい、この手で、直接殺してくれる!!』

 

 サワシタだ。どうやらマリオネッターシステムではもうどうにもならないと、直接装依しているようだった。ハジメは容赦なくその機体に剣を向ける。

 

『沢下ァ!!』

 

 ビームサーベルで斬りつけるシュバルトゼロガンダム。ところがぶつかり合うと同時に巨体の持つパワーで逆に弾き飛ばされてしまう。

 あり得ない。シュバルトゼロガンダムのスピードを乗せたビームサーベルの一撃を損壊なくただの拳で殴り返すなんて。

 すぐに分析を開始する。コンソールにデータを表示させながら、ハジメに解析することを伝える。

 

「強い……!敵機体の分析を開始します!」

 

『あぁ、同時にこちらに引き付ける。沙織さんはもう一度部隊を率いて先へ!』

 

『分かった。極第一部隊、再度制圧に向かうぞ!』

 

 部隊員と共に再度中央からの制圧に向かったサオリ達。それに目をくれることなくサワシタはこちらとの戦闘に集中……ではなく、執着していた。

 サワシタが再びユズハのためという我欲をぶつけてくる。

 

『ホリンは墜ちた。しかし、ガンダムは討ち取る!!ガンダムを倒して、再び東響を攻め落とす!!』

 

『そんなふざけたことさせるかよ!もう二度と、お前達に東響の街を戦火にさせるような真似は!』

 

『フン、喚いてろ!この純粋な力にただ圧倒されるだけの存在が!』

 

 サワシタが咆える。純粋な力という言葉通り、巨大な拳の力と堅牢さを前にハジメの手が、シュバルトゼロガンダムが圧倒される。

 巨大だからというわけではない。そうでなければツインジェネレーターシステムに張り合える出力が出せるはずがなかった。

スピードだってそうだ。距離を取ろうとするハジメに、サワシタの機体が詰め寄る。巨腕を振り抜き、こちらは防御せざるを得なかった。

 

『ぐぅっ!』

 

「ハジメ……!何、何が奴の力の源なんです!?」

 

 ハジメの苦戦に焦りを浮かべる。このままでは負けてしまう。死にたくない、そして死なせたくない想いで機体から来るデータを見比べる。

 機体の出力が異常値を示している。シュバルトゼロガンダムでもこんなことは起きたことはない。まるで無理矢理力を引き出して、引き出し過ぎているせいでオーバーロードしているようだ。

どうやってあれだけの出力を……まさか!?そう思ってDNLコントロールユニットに自身と同期させる。

 ジャンヌのDNL能力、エネルギーの流れを知り、詩でそれを操る力。その力を増幅させ、敵のDNの流れる元を探った。

 そして、それに気づいた。

 

「!ハジメ、こいつDNの発生源を四つ持っています!」

 

『DNの発生源が……ってそれって!』

 

 ビームサーベルが弾かれて腹部に内蔵されていたビームの連弾を喰らってしまう。シールドで防御したが、一部が機体の脚部、頭部アンテナの一部を焼いた。

 地面を滑りながら膝立ちするシュバルトゼロ。ハジメがサワシタに発覚した事実をぶつける。

 

『まさか、多重DNジェネレーター装備機か!』

 

『多重……そうだな。俺の機体、このマキシマム・タイラントはホーリー分も合わせた次元粒子発生器を四基、装備したパーフェクトモビルスーツだ!』

 

 高らかに肯定するサワシタ。まさか本当に多重ジェネレーター仕様の機体だったとは。だがまさか四つも保有しているのは予想外だった。マキナ・ドランディアの機体でも父の機体がダブルジェネレーター、機竜大戦でぶつかったエクス・ガンダムの四脚形態がトリプルジェネレーターまでだ。

 MSの技術がそこまで発達していないはずのこの世界で、四つのジェネレーターを装備出来たのは恐るべき事実。だがジャンヌは気づいていた。その四つの動力がもたらしている危うさを指摘する。

 

「そんな……機体もそうですが、内部のパイロットデータにもそんな通常レベルのDNを多量に内部に循環させていたら、パイロットにも影響が!」

 

『ごちゃごちゃと!むしろ体は軽い……!お前達を打倒せと、柚羽が言っているぞ!!』

 

 多重ジェネレーターの運用。それにはリスクが存在する。必要以上の動力を搭載すると、中にいるパイロットが赤いDNの毒に汚染され、身体・精神的に悪影響を及ぼすのだ。

マリオネッターシステムがどうかは知らないが、通常ならまず四つ搭載など危険すぎる。ところが忠告を聞こうともせずサワシタは機体を突撃させてくる。

 遅かった。おそらく彼は既に次元粒子、DNに毒されている。元々体にDNの毒性に対する免疫がなかったのか、あるいはあんな出鱈目な機体に乗ったからか。個人的には後者だと推測する。

 こうなっては言葉も通用しない。もとからそうではあるが。ハジメにもそれを忠言する。

 

「ハジメ、あの男は危険すぎます。ここで逃せば、あいつは躊躇いなく戦場で虐殺する!」

 

『……みたいだな。なら、ここで止めるぞ、ジャンヌ!』

 

「えぇ!シュバルトゼロガンダム、オールウエポンズフリー!」

 

 敵脅威測定、最大と判定したシュバルトゼロガンダムが極大の暴君との対決に挑む。

 

 

 

 

 元達が沢下との対決に再び投じる頃、華穂と深絵もまた再び力を得た強敵との対決を演じていた。

 

『ハーハハハハハハッ!どうしたぁ?どうしたぁ!』

 

「くっ、そぉ!?」

 

『ビームが全然通じない……体のどこも反射される!』

 

 しかし、それは先程までのマキシマムではない。マキシマムを中へと取り込んだあの空飛ぶ車体が、MSへと変形を果たしたのだ。

 MSが合体というのは兄のガンダムでも見ていた。しかしそれはパーツを四肢に装着して鎧のようなものだったのに対し、こちらは文字通り車の中に生まれたコックピットに搭乗するかのような合体。そして車に付いた不自然なブースターのようなパーツが腕部、脚部へと形を成していた。

 マキシマムよりも非常に大柄な巨体。しかしさっきよりも鋭く、重い一撃が繰り出される。その攻撃をもろに受けて華穂は吹き飛ばされる。直後襲い掛かる指からのビーム連弾。吹き飛ばされながらシールドを構えて防御する。

 その隙に深絵がビームライフル・アサルトで連弾を浴びせたがどれも機体全体を覆う反射装甲に跳ね返された。

 二人の苦戦ぶりに調子づくマキシマムのパイロット、ゲルツ・ルーダ。

 

『フハハハハハ!鈍い!そして貧弱ゥ!!』

 

『っぅ!!』

 

 ビームスパイクを発生させた敵の拳を間一髪シールドで受けた深絵。シールドに四隅のビーム跡が生々しく残った。

 まともな防御兵装では受けきれない。それを頭に入れて再度華穂は大型化した敵MSへと華穂は再度突撃を敢行する。

 タチカゲで斬りかかる。狙うは関節部。

 

「でぇぇぇい!!」

 

 左腕の関節目がけて振り下ろした一撃。ところがそれを容易く回避した敵の大型マキシマム。回避からの回し蹴りが腹部に刺さった。

 

『遅いと言っているだろうがぁ、三下ァ!!』

 

「がっ!?」

 

 蹴りの衝撃をもろに喰らう。痛みに意識が遠のかないよう堪え、姿勢を立て直す。襲い掛かったビームの連弾をシールドとMS刀で耐え忍ぶ。

 勢いを落とさないゲルツ。そこに味方MSが苦戦を察して援護に向かってくる。先頭には隊長の一人羽鳥がガンアサルト二種を構えて応戦の姿勢を示した。

 

『援護します、深絵隊長!』

 

『綺亜ちゃん!』

 

 彼女の率いる部隊が一斉に実弾の雨を降らせた。いくらビームに対して無傷の硬さを誇る敵でも、これだけの実弾を喰らえばひとたまりもない。はずだった。

 しかし敵は掌を広げて対応した。咆哮と共に光の壁が築かれる。

 

『効かねぇんだよ、カスがぁ!!』

 

『何……!?』

 

 手のひらから形成した光の壁、あるいは盾とでも言うべきそれに実弾がかき消されていった。光の壁を避けて着弾してもそれらも大したダメージを与えている様子がない。

 壁を展開したまま、敵は綺亜の部隊へと接近を行う。引き続き撃ち続ける綺亜の部隊だが、攻撃が通じず接近を許していく。

 一か八か、綺亜が自身のガンアサルトを変形させてレールガンを放った。しかし強化された実弾攻撃もまた光の壁に霧散した。

 

『くっ!』

 

『オラァ!!』

 

 後退が遅れた綺亜のソルジア・エースを挟み込むように敵が光の壁を左右の腕で押しあてた。咄嗟に受け止めたガンアサルトが熱量で爆発を起こす。爆炎とビームのような熱に彼女の機体が焼き尽くされていく。

 

『ぐ、機体が……焼けて!?』

 

「不味い!」

 

 生半可な実弾、ビームではどうにもならない。MS刀を構えて突撃するしかない。構えて機体を向かわせようとしたところで敵の背後が突如爆発する。

 

『ぐぅ!?……貴様かぁ!!』

 

「深絵さん!」

 

『これも……効かないか!』

 

 ブラウジーベンのガンランチャー、その徹甲弾が敵の背後に着弾した。しかし煙が掛かった程度でその装甲には傷はつかない。だが敵の意識がそちらに向いた。

 挟み込んだ羽鳥の機体を放り出して深絵へと向かっていく。深絵も距離を保つように下がりつつレールガンとガンランチャーで応戦する。

 弾種を切り替えてクラスター爆弾の爆発も通用せずに深絵へと向かっていく機体。助太刀の為に華穂は横から攻め入った。だが敵が反応して見せる。

 

「相手は深絵さんだけじゃ……!?」

 

『邪魔だ!まずは貴様から!』

 

 伸びた腕が剣を捕らえる。そしてそのままソルジア・エースの腕を掴んだ。全く動けない機体。その機体を引きちぎりろうと試みる敵。

 このままだと引き裂かれる!既に機体のコンピューターが負荷の増加を伝えてきている。拘束を解こうとシールドのガンアサルトⅡを向けて放った。至近距離から放たれるがそれでも敵は機体を離さない。

 メキメキと音を立てる腕部。痛みのフィードバックが伝わってくる。

 

「う、ぁ……!」

 

 涙が出そうになる。そして敵が一気に力を入れた。

 

『はぁぁぁぁぁ!!』

 

 機体の腕が、身体が引きちぎられる。そう覚悟した。しかしそうはならなかった。

 

『かほちーに、手を出さないで!』

 

『何、ィ!?』

 

 響いた声。同時に敵の背中が爆発する。次いで左腕を掴んでいた敵の右手を外すように手首付近に煌めいた斬撃。両断こそしなかったものの、続く攻撃を防ぐためにゲルツの機体の手が離れた。

 手助けに入ったのは緑色の肩のソルジア・エース。出発前に基地で見た夢乃の機体だった。

 振り下ろしたエリミネイターソードⅡが敵に鷲掴みにされる。だが彼女は離すことなく逆に蹴りつける。蹴りつける直前に深絵からの援護射撃も重なり、相手の手が離れる。

 間に合った援軍。夢乃に感謝を告げた二人。

 

「ありがとう、ゆめのん」

 

『ううん。私も何とか間に合っただけだから』

 

『来てくれたってことは、一緒に戦えるんだね?』

 

『はい。私も戦いますよ。援護お願いします深絵さん』

 

 夢乃が剣を構える。三人に増えたがそれも有象無象と敵ではないことを語るゲルツ・ルーダ。

 

『フン、有象無象が、増えたところで!!』

 

「そんなの、やってみなきゃ、分かんない!」

 

 夢乃と二人で、前衛として突撃していく。

 

 

NEXT EPISODE

 




EPISODE38はここまでです。次元覇院の真の切り札登場です(´-ω-`)

ネイ「これ……元さんと深絵さんの双方で相手している機体は同じなんです?」

そうだね。同じアーマーをそれぞれ着込んで戦闘しています。もっとも本来ならマキシマム・ホーリー用のパーツで、マキシマムはバックパック壊れたからこそそのまま着こなせるわけなんですが(´・ω・`)

グリーフィア「壊れたから遠慮なく乗りこなせるってわけね。にしても本編でようやくDNの汚染の話が来たわねぇ」

この汚染割と今回の戦闘で重要なので( ゚Д゚)元君は汚染されたパイロットの動きについて来られるかな~?

ネイ「暴れまわる思考のせいで余計にパターンを読みづらくなっているようですからね。出力も先程とはケタ違いで」

グリーフィア「まぁそれも気になるけど、やっぱり気になるのはタイトルよねぇ。魔王、とは直球な。一体誰が、魔王で生まれるのやら」

それは最後まで見れば明らかになりますよ(^ω^)それでは39へと続きます。


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EPISODE39 魔王の生まれた日2

どうも、皆様。引き続きご覧の方は改めまして。作者の藤和木 士です。

レイ「アシスタントのレイだよー。藤和木、あとこれだけ打ち込めば終了!」

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです。これだけでも最後に打って明日を迎えましょう」

うん、眠気マックスだけど明日投稿なら今くらいしかないし;つД`)
それでは5周年を記念した連続投稿、その最後のEPISODE39の公開です。

レイ「魔王……って聞くと最高最善のあの王様だよね」

ジャンヌ「作品発表時期も丁度その期間でしたもんね」

正直言ってそこからもアイデアもらったけど私としては今後の展開としてその要素は必要だと思ったから取り入れた。でもどちらかと言えばこの日本でかの第六天魔王名乗った織田信長の話から取り入れているんだけどね。

レイ「でもその作品も織田信長関係あるじゃん?」

私まだオバクウォ見てません!( ;∀;)

ジャンヌ「平成に取り残された憐れな作者」

まぁこの自粛期間で見れればなぁとも。まぁ今回はその魔王はあんまり関係しないんだけどね。あと今回の途中からちょっと書き方変わってます。前に取り入れていたものを戻したって感じですが。というわけで本編をどうぞ。


 

「く、うぅ……」

 

『大丈夫か、羽鳥隊長』

 

 機体のフィードバックダメージに呻く。大型化したマキシマムに放り出された羽鳥。それを助けたのは間島だった。

 挟み込みを受けた機体はシールドで防御したものの、いくつかのスラスターが使えなくなっていた。だがまだ飛行は辛うじて可能なレベルだ。すぐに立て直して飛び立とうとする。

 

「くっ!」

 

『無茶すんな。圧迫されたせいで電子空間に影響が出ている。武器もろくにないんだ』

 

 制止する間島。彼の言う通り機体の電子空間が破損している。機体の反応も悪い。武器もサーベルくらいしかない。

 しかしまだ戦っている者達がいる。戦闘は続いたままだ。一人で撤退することを告げる。

 

「私一人で帰れる……っ!」

 

『お前なぁ……。おい、3番と5番機で彼女を後方まで下げさせろ』

 

『了解しました、間島隊長』

 

彼の部隊員が隊長からの指示に従い、こちらの機体を抱える。その時に見える。あの機体と機動戦を繰り広げる深絵隊長達の姿が。

 華穂の機体と、海上方面軍にいたはずの夢乃の機体。慣れない機体なのに、自分よりも上手く扱えていた。

 

(私、こんなところで……くっ)

 

 悔しさを噛みしめる。悔しいがどうにもできない。後退させられる中で、アラートが響く。

 

『ちっ、こっちの方に感けていられるのかよ、敵さんは!』

 

『隊長!』

 

『俺がやる!羽鳥を下げろ!』

 

 こちらを狙ってくる敵機が二機。応戦する構えを見せた間島がビームサーベルで斬りかかっていった。

 機体を担がれているため後ろの詳しい状況は分からない。回線だけで状況を探る。今のところ彼は上手く立ち回っているようだ。

 その中で爆発音が響く。敵機を撃破したのだ。

 

『まずは一つ!後は……って、そっちに一機行ったか!』

 

 間島の発言通り敵の一機がこちらに銃撃を放ってきていた。後方からの襲撃に対し、部隊員の一人が応戦しようとした。

 

『クソッ、ってあれじゃビームが効かない』

 

 敵はマキシマム。リフレクトアームの展開によりビーム兵器を無効化されてしまう。部隊員達のソルジアV2程度では応戦の難しい機体だ。

 敵はそれを分かっているのか、悠々とその牙を向けてくる。

 

『へっ、この機体に貴様ら程度のモビルスーツが敵うもんかよ!死ねっ!』

 

「くっ……私を離せ!囮になって……」

 

 囮になることを提案する。そうでもしなければ不利のままだ。ところがそれを止めるように間島の声が響いた。

 

『そんなこと、やらせるかよ!!』

 

『何!こいつッ』

 

 後方から追ってきた間島のソルジア・エース。右肩のシールドと左腕の肘から下を失った機体が突撃を敢行した。

 迎撃するマキシマム。それに立ち止まることなく一気に駆け抜ける。ビームの一撃がシールドアームを貫く。彼は止まらない―――そして。

 

『でぇぇぇい!!』

 

 敵のアームを躱して、その胸部にビームサーベルを突き立てた。完全な一撃。間違いなく討ち取った。

 不安定ながらも体を向き直った彼女も、それを見届けた。助かった。もう敵もいないはず……。安堵したその時、それは突然訪れた。

 

『この野郎!!』

 

『こいつ、自爆を!?』

 

「離れろ、間島!」

 

 貫かれたにも関わらず敵は未だ動いた。アームユニットで間島の機体を捕らえる。自爆に巻き込もうというのか。そうはなるまいと間島ももがく。

 

『クソッ、流石に訊いてねぇぞ!』

 

『た、隊長!』

 

 部隊員が助けようと試みるが、ライフルでは自爆に巻き込みかねない。じれったく思い、羽鳥はライフルを奪って放つ。

 

「貸せっ。……撃つ!」

 

 狙った一撃が敵のアームの一つを後ろから撃ち抜く。拘束が一つ外れたことで間島ももう一つのアームを引きはがした。

 

『よしこれで抜け出せ……』

 

 抜け出せた。だがその瞬間、悪夢は訪れた。拘束から抜け出したソルジア・エースの機体を、背後からビームの一射が撃ち抜く。

 一瞬、時が止まったかのように思考が止まる。なぜ?どうして撃ち抜かれたのか。羽鳥は知らなかった。間島が彼女達を助けるべく、迫ってきていたMSの一機に背を向けて向かってきたことを。

 

『……あ』

 

 間島は何か話そうとした。しかしそれよりも先に機体が爆散した。辺りを次元粒子がまき散らされる。その光景が目に焼き付けられた。

 何も言えなかった。自分を助けようとしたために、彼は死んでしまった。自身の身を顧みずに。いつもはやる気のなさそうにしていながらも任務だけはこなしていた。話口調や考え方から相容れることはなかった。

 そう、本来なら彼にだって自分を気に掛ける理由などないはずだったのだ。それなのに彼は……。

 隊長達をやられて部隊員達が放心する。

 

『た、隊長……』

 

『誰が……アイツか!』

 

 部隊員が指さす先には、空中姿勢に慣れていない様子のマキインが放ったばかりのライフルを向けてその戦果に舞い上がっていた。

 

『や、やった!素人が出てくるなとか偉そうなこと言ってたけど、簡単に倒せんじゃん!』

 

 あんなやつに、間島がやられたのか?この程度の事で子どものように無邪気に笑い、人を殺す戦闘の素人が……。

 沸き立つ怒り。敵はこちらを見つけ、愚かにもこちらに向けて近づいてくる。

 

『へっ、その機体も、火花挙げてんじゃんか!おらっ、嬲ってやるぜ!』

 

『くっ、羽鳥さんは下がって……』

 

「―――いや、私が、やる!!」

 

 ビームサーベルを抜き放つ。そしてスラスターが壊れているにも関わらず、距離を詰めた。近づけさせまいとビームライフルを放ってきてはいたが、先程の時のような鋭さはない。向かってくる敵に手が震えて、狙いは甘かった。容易く近づいた羽鳥は間島を失った悲しみをぶつけた。

 

「お前がっ、お前がぁぁぁ!!」

 

『なっ、このや……』

 

 逃げようとした時にはもう遅く、羽鳥の繰り出したサーベルの突き出しで貫かれていた。もだえ苦しんだのち、サーベルを抜く。だが続けて別の個所を貫く。何度も、何度も。

 

『がふっ!?ぐぅ!?』

 

「苦しんで、死ねっ!!」

 

 とても機体が限界とは思えない動き。間島の部隊員達も慄いていた。それに構わず羽鳥は続ける。

 何度目かの突き刺しで機体が負荷に耐えられずに爆発する。爆炎を耐えたボロボロのソルジア・エース。それでも彼女の怒りは収まらなかった。

 許さない。あんな不意打ちで彼を殺すなど、兵士の隅に置けない。ルールのない戦い、戦争だとしても、その行動を羽鳥は許せなかった。やはり次元覇院は、人の道を外れた外道はMSを持つべきではない。彼の無念は私が晴らす。その為に彼女は決意した。

 この世界に争いを齎すもの、そのすべてを駆逐する、あるいは「支配する」と。それはまさに彼女の正義が暴走した時だった。

 

 

 

 

 夢乃も含んだMSオーダーズ最高戦力の三人が大型マキシマムを抑え込む。だが抑え込むのが精一杯。ゲルツの攻撃は更に苛烈さを増していた。

 

『愚か、愚か愚か!貴き者の前にこれっぽっちの力で、超えられる物かぁ!!』

 

 肩に装備していたアーマーが外れる。装甲が分離して、砲塔をこちらに向けた。

 

「遠隔操作端末……!?」

 

『あんなものまで……距離を取るよ、華穂!』

 

『了解っ!』

 

 空中を動き回るそれに対応する三人。それらもビーム反射装甲で構成されており、ビームの使用は厳禁だった。対して遠隔操作端末からはビームが遠慮なく放たれる。

 少しでも動きを阻害しなければ。華穂はガンランチャーの弾倉をクラスター爆弾へと切り替える。クラスターの爆発範囲ならまとめて態勢を崩せる。残り弾倉が少ないが、それでもやるしかない。

 

「っ!!」

 

 クラスター爆弾が放たれる。空中で分散して空域を爆発で埋め尽くす。迫りつつあった空飛ぶ装甲が爆風を受けて乱れる。予定通りだ、今なら当てられる。ガンランチャーの弾倉を、切り替えるはずだった。ところが。

 金属音と共に弾倉の回転が停止した。トリガーを引いても弾丸が出なかった。おかしい。異変を訝しむ。

 

「なんでっ……」

 

 そこで思い出した。作戦前に須藤司令に言われたこと。

 

(弾倉の切り替えと衝撃による弾詰まりには気を付けたまえ)

 

 弾倉の切り替え、そして発射の衝撃。これまで何度も放ち続けてきた、そのツケが回ってきたのだ。

それに最初の頃こそ慎重に扱っていたが、徐々に銃の扱いの方に気が回らなくなっていた。なるべくしてなった結果。だがそれがこんなところでとは。それを逃さず敵の端末が狙ってくる。

 

「っ!!」

 

『深絵さん!?』

 

『弾切れ?それとも……』

 

「ごめん、二人とも。これ以上手助けは……きゃあ!?」

 

 謝罪しようとしたのもつかの間、敵の射撃が機体を襲う。コンテナで防御する。コンテナの表面がビームで焼かれる。シールドの耐熱処理をしていなければ貫かれていただろう。

 残念だけどこれ以上の戦闘は私ではどうにもならない。せめて格闘に移行出来る兵装さえあれば……。

 

(私、射撃だけじゃあいつらに何にも出来ないよ……!)

 

 防御しながら距離を取る間、二人が果敢にも近接兵装で立ち向かっていた。二人に任せきりなのが悔しい。隊長なのにそんな嫉妬を感じるのはおかしいと思う。だけども無力な自分を呪っていた。

 せめてダンガンがあるのなら……そんな時、通信が開く。回線相手は須藤司令。須藤司令は待っていたと言わんばかりの言葉を掛ける。

 

『深絵隊長、苦戦しているようだな』

 

「須藤さん!すみません、一度撤退します。ダンガンの準備を」

 

『いや、その必要はない。それよりもいいものを、君のエンジニアから届けさせてもらっている』

 

「エンジニア……真希さんが?」

 

 真希からの配達に予想外な反応を示す。だって、もうそんな新兵装なんて聞かされていない。何を送ってくるのかと思う中、接近警報が近づく機体を示した。

 近づいてくるのは……自衛軍が採用する戦闘機「F-22改」。その機体がミサイルを発射する。そのコースに乗れとの機体コンピューターからの指示。既に敵の端末はこちらの追跡をやめて華穂達の迎撃に戻っていた。

 深絵は機体をミサイルのコースに近づける。相対速度を合わせて、ミサイルが分解した。中から出てきたのは、手持ちのライフルだ。戸惑いながらもそれを掴んだ。

 

「これは?」

 

『それは試作ブレードガン、「ブルー・ジョーカー」。元君の機体から技術を使用して、あなたの後継機開発に役立てようとしていた武器!』

 

 武器の経緯について話す真希。コンピューターにはその使い方が表示される。深絵はそれに従い、武器のストック部分を引き出し、持ち手を出現させる。握ると、銃の先の二つの穴から光剣が形成される。

 

『ビームサーベルなんかより、よっぽどあなたらしい武器だと思うよ』

 

「真希ちゃん」

 

『言いたいことは分かる。でも、これは光姫さんからの遺言でもある。自分がいなくなって、深絵がどうしようもならなくなった時も考えて、気を回してあげてって。自分はそれに気づかずに負けただろうから。深絵ちゃん、それであいつを、ぶった切っちゃえ!』

 

 背中を押される発言。今まで避けてきた近接戦重視の兵装。ずっと味方に、光姫ちゃんと一緒に乗り越えてきた。だけどもう光姫ちゃんは居ない。華穂ちゃん達はいても、味方を守れる隊長は、SABERの隊長は私だけなんだ。

 それを理解して、前を向く。華穂も夢乃も剣を手に戦っているが、押し切れない。実弾で強力な援護がいるのかもしれない。だけどそれではこれまでの戦術と変わらない。あの敵に挑むには予想外の戦法、今までとは違う攻め方が必要だ。

 それを光姫ちゃんは予期してた。私は空を見上げる。もう朝日が昇り、空からは星が消えている。だけど感じる。光姫ちゃんの視線を、光姫ちゃんの願いを、感じる気がする。

 

(ありがとう、光姫ちゃん)

 

 そんな独り言を心の中で呟いて、それを用意し、手回ししてくれた真希ちゃんと須藤さんにも感謝を伝えた。

 

「ありがとう、真希ちゃん、須藤さん。私、行くよ」

 

『うん、深絵ちゃん!またその綺麗な髪、触らせてね!』

 

『憑き物が取れたようだな。行け、深絵。スナイパーに剣を抜かせたこと、逆に後悔させてやれ!』

 

「はい!」

 

 掛け声とともに、重りとなっていたコンテナを外す。ビームスナイパーライフルがあろうが、お構いなしだ。そして腰のエディットアームも外す。

 速さに不要な物をすべて外して機体出力をすべて背部ブースターユニットに回す。チャージの後、私は解放させた。

 

「いっくよぉぉぉぉぉ!!」

 

 突貫した。

 鋭く、圧倒的な速度を伴った突撃。真っすぐに敵大型MSへとその矛先を向ける。

 敵が気づく。しかし遅い。

 

「もらったぁぁぁ!!」

 

『何っ!?』

 

 確信を持って振り切った一閃。銃槍の光刃の一撃。その軌跡が敵の左腕を肩口から切り裂いた。蒼の一閃、それが戦況を変える。

 

 

 

 

 速かった。そうとしか形容できない一撃。夢乃も何が起こったのか分からなかった。敵が華穂へと狙いを集中し、殴り続けていた。こちらには端末を飛ばしてけん制。近づこうにも近づけない。

 攻撃を喰らい続けていた華穂は徐々に態勢を崩していった。それを見逃さず、敵は腕部にいビームのスパイクを形成した。確実に華穂を殴り貫こうとしていた。

 そんなのされたら華穂は……!私はすぐに向かおうとする。しかし遠隔操作されたアーマーがそれを許さなかった。

 

「この、邪魔よ!かほちー!」

 

 叫んだ。もう駄目だ。そのはずだった。だけども突然響いた深絵隊長の声に意識が向けられた。

 何で、深絵隊長の声が?私の疑問は続く一閃で吹き飛ばされた。蒼の狙撃戦仕様のはずだった機体が圧倒的な加速を以って突撃、あの巨大な敵MSの腕を斬り裂いてしまったんだ。

 あまりにもこれまでからは予想の付かない攻撃。第一狙撃機体が前に出ることなんて、普通は考え付かない。けれども、それは敵も同じ。予想だにしなかった一撃が敵の勢いを削いだ。

 突飛な行動に華穂からも困惑の声が漏れる。

 

『えっ……深絵さん!?』

 

 蒼の機体はそのままのスピードで直進し続けてからブレーキ、急転換する。その手に握るのはスナイパーライフルともガンランチャーとも違う、光剣を煌めかせる銃。

 その銃剣を構えたまま、隊長である深絵さんは私達へ指示を送った。

 

『華穂ちゃん、一旦距離取って!夢乃ちゃんは私に合わせる形で、近接戦を!』

 

『え、ぁ、はい!』

 

「で、でも深絵さん近接戦は不得手じゃ」

 

『うん。そうだった。でもやるよ。私のやり方で!』

 

 私のやり方、そう言われて察するのは難しかった。それでも考える。さっきの言い方から夢乃自身が主軸となれば、深絵がカバーしてくれるのだと。

 これまでとは違うやり方だが、考えを持って動いてくれるという彼女の確かな自身を感じた夢乃。エリミネイターソードⅡを二刀流で構え、それに応えた。

 

「了解っ!」

 

 応答してエリミネイターソードⅡで仕掛ける。片腕を失って敵は避ける方向に動きを変えてきていた。それに残った遠隔操作端末を直接ぶつけてこようとしていた。

 

『このッ、まぐれの一発くらいで……!』

 

 まぐれの一発、確かにそうかもしれなかった。だけど戦いではそれが左右することだってざらにある。

 これまで神名川支部で戦い続けてきた夢乃はそれを見てきた。そして気づいた。昨日の元達の言葉で。今まで戦ってきた味方、そして敵もそのまぐれの一発で生き残り、また死んだことを。

 敵も味方も、生き残ることに必死だった。生きるために相手を殺す。偶然かもしれない一撃も、裏返せば生き残るための博打の一撃なのだ。

 そしてそれを深絵さんは掴んだに過ぎない。それでもそれが確実にあの人の戦闘技術に磨きを掛けた。その証拠に。

 

『このっ!!』

 

『ぐぅ!この野郎、狙撃機が前出てきて、トチ狂ったか!!』

 

 深絵さんが機体の背部スラスターを用いて繰り出す瞬発の一撃は、確かにあのMSを攻め立てていた。攻撃は大振りなものが多かったけれど、これまで左手に装備していたシールドで隙を小さくして攻めている。

 相手の言うことも分かる。だけど今のこの状況に限っては正しい選択だ。相手自身がそれについていくのに後れを取っていた。それを生かすために、私も剣戟を絶やさない!

 

「このっ!遅いっての!」

 

『ぐぅ!?この……小癪な……ぐぉ!?』

 

 二人の斬撃に圧されていくゲルツ。反撃しようにもそれを許さない二人の剣戟が機体に次々と傷を付けていく。鏡のような機体が今や裂傷が醜く残る機体に。再び機体を突貫させて振り上げた深絵の一撃が、肩のアーマーユニット接続部を斬り裂いた。

 左腕の分と合わせて端末のマウント部分は封じた。回転効率の更なる低下を受けて、ゲルツが怒りに声を震わせる。

 

『おのれ、MSオーダーズの素人どもめ……!前線に出たスナイパーに負けるなど、あっていいわけねぇだろうが!!』

 

 エネルギーの残りに気に掛けることなく遠隔操作端末を差し向ける。そして敵は残った右腕からビームを放ってくる。

 こんなの簡単に避けられる。そう思って右に避けた。けれど反対へ避けた深絵さんが何かに気づいてこっちに叫んだ。

 

『!ダメ、後ろ夢乃ちゃん!』

 

「え……うわぁ!?」

 

 着弾と思われる爆発。嘘、避けたのに!?そう思った私は機体状況を疑わしく確認する。イミテーションウイングに着弾したという事実をコンピューターは告げた。一体、どうやって?

 続く砲撃を一旦後方に注意しながら避けてみる。すると後ろに回っていた敵の遠隔操作端末がその輝く表面で敵の放ったビームを受け止め、こちらに弾き返しているではないか。

 

「端末で反射してこっちに!?」

 

『その通り!お前らをこのままこのビームの檻に閉じ込めてくれる!』

 

 ビームの檻、とはいささか言い過ぎだとは思う。既に左腕を無くしている時点で、ビームの放つ本体の箇所は途切れている。

 しかし、それでも周囲の端末がどれだけビームを残しているのかは分からない。迂闊に敵に飛び込んで、後ろからビームでも喰らえば……。

 動けない二人。そんな二人を嘲笑うゲルツ。

 

『ハハハハハッ!狙撃に徹していれば、道はあった物を!』

 

 こいつ、さっきまで押されてたくらいで!怒るもその通りどうしようもできない。だけども奴は忘れていた。もう一人の存在を。

 そしてその存在、彼女は思い切り後ろから奇襲した。

 

『私を忘れてなーい!?』

 

『ぐぅ!?』

 

「かほちー!」

 

 かほちーナイス!心の中で華穂の奇襲にグッと称賛した。思い切っての後頭部への斬りつけで敵の頭部半分にMS刀の刃が刺さった。

 本来もっとも対策すべき奇襲。ところが彼は先程までのこちらの怒涛の攻めと呼べる攻撃に華穂の存在を忘れていたらしい。非常に滑稽だが、しょうがないのかもしれない。

 訪れた好機。深絵さんにも叫んだ。

 

「深絵さん!」

 

『うん!』

 

 二人で武器を構えて周囲に展開する端末に攻撃を仕掛ける。こちらへの初動対応の遅れた遠隔操作端末は、あっという間に光剣、そしてシールドのバンカー部分で貫かれて破壊される。

 不覚を取った間に武装のほとんどを撃破されたゲルツが、華穂を小バエのように振り払いながらわなわなと拳を握る。

 

『貴様ら……こんな小細工しか出来んのかぁ!!』

 

 小細工とは、笑わせる。もともと味方を呼ばなかったのはそっちなのに。

どうであれこのチャンスを逃しはしない。深絵さんが銃槍を腰だめに構えて再び突撃の体勢を作ってこちらに叫んだ。

 

『夢乃ちゃん!あいつを抑えて!』

 

「はい!」

 

 エリミネイターソードⅡを両手に突撃する。ビームライフルを撃ってくるがその程度かすりもしない。かほちーも撹乱に徹してくれていた。

 

『ほら、ほらぁ!!こっちだって!』

 

『くぉの~……!!』

 

 二人に警戒しなければならない敵は素早く手を動かして弾幕を散らす。うち一発が私の目の前に。だけどそれを右手の剣で切り捨てて、反対の剣を一気に振るう。

 

『いっけぇ!!』

 

『づあっ!?』

 

 敵の機体の腕部、その中でも一際脆いであろうビームライフルの銃口になっていた指部分を手甲に向けて斬り裂く。

 ビームスパイクまで潰す一撃で敵の攻撃の手をほぼ完全に排除した。私は深絵さんにトドメの一撃を託した。

 

「今です!!」

 

『これで、終わりだよ!』

 

 溢れんばかりの叫びと共に、ブラウジーベンが加速する。再び蒼き閃光となってマキシマムへ向けて突き進む。

 妨害などない。敵は機体のスラスターを噴かせて必死に逃れようとする。けれども深絵のブラウジーベンもスラスターで位置を調整する。

 

 

 

 そして、その一突きが敵を貫く。敵の装甲を真正面から、中央を貫いた。間違いなく、敵の息の根を止めた刃の入り方だった。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。

レイ「羽鳥さんに変なフラグが立った件について」

ジャンヌ「これもう裏切る奴じゃないですか?え、大丈夫です?」

それは今後の展開に注目しよう(´-ω-`)

レイ「流した……って書き方変わったって深絵ちゃんとかの心情の言葉を()表記しないで地の文に加えたってところ?」

そうそう。まぁこれからも()使っていくんですけどね(´Д`)

ジャンヌ「昔はそういう使い方していたんですか?」

ネプの方見てた方なら覚えているかもですが、途中からなくなっていますね。どうしてその書き方やめたのか未だに謎ですが(´・ω・`)そういう書き方好きだったんだけどなぁ。

レイ「けど改めてそういう書き方に戻すのもいいんじゃないかな。それよりも語彙力増やすのが重要だけども」

はぁい(T_T)

ジャンヌ「まぁそれはそれとして。深絵さんの格闘戦、ブースターの加速力に任せたヒット&アウェイでしたが、それが見事にはまりましたね」

隙を見て重い一撃で一閃の華穂、連撃の夢乃、一撃離脱の深絵。急造チームだったとはいえ、それで見事に撃破ですからね。ただこれもうちょっとだけ続くんじゃ(゚∀゚)

ジャンヌ「いや、どうやって続くんですか」

それはのちのお楽しみに。

レイ「まぁでもこれで深絵ちゃんの方は敵陣地に取りつけそう♪後は元君の方。沢下をやっちゃえ~!」

それでは今回はここまでです。ようやく寝れるよ……( ;∀;)まぁ1時間程度だったけどもここまで。

ジャンヌ「お疲れ様です。それでは次回からはまた一話ずつの投稿、お楽しみに」

最後に、5年間の間に作った作品を見てくださっている方々本当にありがとうございます。これからも続く限り書いていきますので改めてよろしくお願いします。


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EPISODE40 魔王の生まれた日3

どうも、皆様。先日までの活動5周年の連続投稿お付き合いいただきありがとうございます。作者の藤和木 士です。

ネイ「アシスタントのネイです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよ~」

今回からはまた1話投稿です。それではEPISODE40の公開です。

ネイ「深絵さん達の戦いが終わった、となれば、後は元さんと沢下との対決ですね」

グリーフィア「理性的になれば何事にも臆することはないって聞くけど、果たしてそれが通じる相手かしらねぇ」

DNによる汚染状態が最大のイレギュラーとなる戦いです。おまけにシュバルトゼロガンダムは基本形態とエラクスのみ。元君に勝ち目はあるのでしょうか?と言った具合で本編をどうぞ。


 

 元の駆るシュバルトゼロガンダムと沢下の駆るマキシマム・タイラントの激闘は今なお続いていた。いや、その激しさは徐々に苛烈さを増す。

 

「このっ!はぁ!!」

 

『ふぅ!!その程度か!』

 

 沢下の煽りに何度目かの舌打ちをする。こっちも機体性能は最大限出している。出しているはずだ。だが、相手の出力を上回れない……っ!

 右手のブレードガンにビームサーベルを纏わせる。リーチの伸びた斬撃を一回転して振り回す。が、それを大きく宙返りして回避した沢下の機体。回避と同時に手を銃の形にしてビームライフルを乱射する。

 

「クソッ、ジャンヌ!」

 

『DNウォール、再度展開!機体駆動系にエネルギー優先供給!』

 

 ジャンヌの声と共にガンダムをDNの障壁が覆った。敵の攻撃をDNウォールで受け止める。

 弾丸が逸れて周囲の地面へと着弾する。DNウォールを解除すると同時に、再度攻撃を仕掛ける。今度はボウゲン・ランツェの斬撃からのビームスパイカーで攻める流れだ。

 自身の考えたように機体を動かす。ボウゲン・ランツェの槍部分は沢下の機体の振りかざす大型大剣に受け止められる。

 

『この程度、ぬるいんだよ!』

 

「そうかよ!」

 

 沢下に言葉を吐き捨てる。戦闘になって10分。どうにも押し切れない。シュバルトゼロガンダムがこれまでに会得した進化形態を失ったのは分かっている。だから俺自身、機体の操縦速度を上げて補っているつもりだった。

 ところが戦局は互角。それどころか相手の方が余裕の見られる状況。攻撃を裁き合い、一向に攻めきれない。

 おかしい。いくら機体性能が落ちていても、こうまで圧倒出来ないのは予想外だ。思い当たるのは機体性能の低下に加えてジャンヌの精密さが欠けているからか、と思うもすぐに否定した。

 

(いや、ジャンヌはやってくれている。これは俺自身の問題か!)

 

 まだシュバルトゼロガンダムの性能を生かし切れていない、自身の未熟さ。まだシュバルトゼロガンダムはこんなものではない。自身を奮い立たせ、大きくジャンプするような上昇で上から攻め入る。

 

「レイ・アクセラレーター、ビームソード補助出力へ!」

 

 シールドの下部から形成された光剣。ビームスパイクを放った直後、とんぼ返りの姿勢で空中回転して斬撃を行った。

 敵腕部を斬り裂く。そう思った斬撃は確実に捕らえていたコースを敵のビームスパイクを形成させた拳で狂わされる。

 逸らされたことで機体が不安定になる。その機体へマキシマム・タイラントの両拳合わせた振り下ろしが炸裂した。

 

『砕けろォ!!』

 

『きゃん!?』

 

「グァッ!?っ!!」

 

 確実に腹部へと刺さる一撃。それを、シールドで防御した。だが機体はそのまま地面へと叩き付けられ、地面を跳ね返る。

 追撃のストレートを何とか回避して、反撃を行う。反撃のブレードガンによる一閃は敵の手首を掠めただけに留まる。

 出力で負けている。たかが赤のDNでも四つもの膨大なエネルギー供給もあれば、ツインジェネレーターシステム機を圧倒できるとでも言われそうな戦力の差だった。

 だけど、それだけじゃない。俺は沢下から発せられる、狂っているが、狂っているからこその柚羽への想い。柚羽の為となる俺達への殺意の大きさが、執念が奴の機体に奴が付いていかせていた。

 こちらがその妄執に呑みこまれそうなほどの感情を抱いている……。これがプレッシャーとでも言うべきものか。そのせいか機体も重く感じる。DNLだからこその負荷が翔けられていた。

 元の苦戦の理由を知っているはずもなく、沢下は変わらず柚羽の望んだという理想を無心続ける。

 

『さぁ、もうすぐだ、柚羽……。お前と共に、お兄ちゃんは楽園へと行く。この世界が楽園となる。その邪魔となるガンダムも、今ここで排除してやるからなぁ!!』

 

「そんな思い通りに!」

 

 消えはしない。この世界は死者の為の世界なんかじゃない。奴の考えを否定し、ボウゲン・ランツェを構えてシュバルトゼロガンダムで襲い掛かった。

 敵は対応を変えて腹部からマキシマム・ホーリーも構えていた銃斧と剣を取り出した。取り出した武装は一つになり、より大きな大剣へと形を変える。

 大剣を武器に沢下はこちらと切り結んだ。質量の重さと機体の出力で徐々にこちらが押されていく。

 

「くっ……ジャンヌ、パワーを上げろ!」

 

『やってます!でも、どうしたってシュバルトゼロガンダムだけじゃ……』

 

 当たりたくなくてもジャンヌに当たってしまう現状。こんなところで食いしばれなくてどうする?こんなところで終われない。俺も、そして、こいつも!

 元は確かめるようにシュバルトゼロに向けて語りかける。

 

「本気見せろよ、シュバルトゼロ!!」

 

 機体の瞳、そしてユグドラシルフレームが輝く。渾身の力を振り絞って敵の大剣を弾き返す。

 敵は後方に少しだけ下がる。その間に元はガンダムを懐に潜り込ませる。敵も払おうとしたが、それより前にガンダムの左腕、秩序の盾の先で一気に腹部を刺し貫いた。

 

『がっ!?タイラントの腹を!?』

 

 予想だにしない事態に沢下の動揺が声に聞こえた。

 確かに中央装甲、おそらく先程戦ったホーリーとかいう機体のシールドが形状的にそのまま使われているのだろう。かなりの硬さを誇っているのは見て分かった。だが構造的なもろさを既に看破していた。そこを一点収集して思い切り貫いた。

 内部に攻撃が通った。後は中で放つのみ。ボウゲン・ランツェの機構を操作した。金属の槍が徐々に縦に開こうと装甲を押し開く。

 

『くっ!離れろォ!!』

 

 当然沢下はこちらを振り払おうとした。だがその巨腕にこちらもビームマシンキャノンとレイ・アクセラレーターから形成したビームソードで応戦する。敵の大剣、そして腕部と競り合う。

 これしかない。全身があの反射装甲で構成されている以上、その内部に剣を突き立てて内側から砲撃する。刀身を開いて砲撃するこのボウゲン・ランツェなら、出来る。

 もうすぐ射撃態勢を取れる。敵の手を抑え込んでいる内に、と砲身の展開を心の中で急かす。しかし。鈍い金属の音が唐突に響いた。

 

「なっ……」

 

『嘘……っ?』

 

 折れた。敵の体に突き刺さっていたボウゲン・ランツェの槍が、根元からぽっきりと。刀身の展開が敵の装甲の強度に耐えられなかったのである。

 生まれる困惑。確かに刀身の強度が不安だとは聞いていた。けれどもまさかこのタイミングで、こんな重要な局面で折れるとは。

心理的不安定による隙を沢下も見逃さなかった。

 

『ぬうあぁ!!』

 

「ぐっ!?」

 

 大剣でこちらを弾き飛ばす。左腕で握っていたシールドが右肩のアームから引きちぎられた。

こちらが態勢を立て直そうとするよりも早く、沢下の機体が肉薄して剣を振り下ろす。剣の一撃がシールドごと左肩のアームを切り離される。

 たちまちシュバルトゼロの防御手段、そして攻撃手段が削られた。シールドを投げ捨て、得意気になる沢下の声。

 

『ハハッ……俺の、俺達の希望に傷をつけた罪、この程度で済むと思うなぁ!!』

 

 折れた剣に触れた後、大剣を構えて再度接近戦を挑んでくる。

 こうなった意地でも貫き通す。ブレードガンを構えて、その接近戦に応じる。ジャンヌからは警戒するように指示が。

 

『ちょっとハジメ!不味いですよ、接近戦は!』

 

「だけど、突破するにはこれしかない!」

 

 なるべく距離を取るべくブレードガンにビームサーベルを形成する。秩序の盾も今ではもはや無用の長物。左腕から排除して両手にブレードガン・ニューCを構えて挑む。

 こちらのスピードを生かしての斬撃も、今の沢下相手には通じない。これまで以上のあり得ない程の反応速度でこちらを止めてくる。

 DNの汚染は搭乗者を狂わせる代わりにDNの力に対し非常に敏感になるという。おそらくその感知能力がこちらの機体を捉えている。

 こちらにも敵意を察知できるDNL能力があるにも関わらず押し込まれているのも、DNの汚染による狂化で機動の負荷が鈍くなっているのだ。動きは読めても、機体の速度が鈍い。

 せめてイグナイターなら……。機動性だけでも追従すべく、エラクスの起動をジャンヌに宣言する。

 

「ジャンヌ、エラクスだ!」

 

『機体ジェネレーター、各部エネルギータンクに負荷がかかりつつありますが……仕方ありませんね、了解!』

 

 気を付けるように言われたのち、エラクスの起動を行う。蒼く輝くと同時に敵の拳が機体を襲う。

 

『青くなったくらいでェ!』

 

「ぐっ、はぁ!」

 

 ブレードガンで受け止める。スパイク部分が剣の防御を抜けてこちらに刺さろうとするが、その前にエラクスの機動力で逃れる。

 急速離脱の後、すぐさま敵との斬り合いに発展する。スピードも出力も上がっている。その面では互角に渡り合える。だが、奴の動きはそれでも留められない。いや、むしろ奴は更な速さを伴ってきた。

 こちらの剣を受け止めたと同時に殴りかかってくる。反射速度とそれに対する行動が早すぎる。それに出力も押し切れるものではない。引き上げられる出力に、今のシュバルトゼロではエラクスを使っても不十分だったのである。

 何度目かの攻撃でブレードガンを弾き飛ばされる。

 

「ぐっ!?」

 

『お前に世界は救えない!』

 

 続くビームバルカンでビームスパイカー内蔵の膝ユニットが爆発する。

 

『お前に神は味方しない!』

 

『ハジメッ!』

 

 繰り出した蹴りが頭部を揺らす。頭を振って意識を覚ます。敵の肩部パーツが分離して遠隔操作端末としてこちらに砲を向けた。

 反射的にユグドラルフィールドで防御壁を張る。ビームを防ぐ。

 防御を張らせたまま、マキシマム・タイラントが迫る。

 

『お前は、悪だ!!』

 

「どっちが!!」

 

 横薙ぎに振るわれた一撃がユグドラルフィールドの防御壁を斬り裂く。直後不意打ちするが、それもビームシールドの前に防がれる。

 沢下がシールドを発生させた腕を振るった。放り出される機体を立て直し、右手にマキナ・ブレイカーⅡを抜き放つ。

 悪なんて、それはあいつらの事でしかない。それに気づかず、今彼らは武力を持ち出している。それに奴に限って言うならあいつは世界の平和と言いながら、個人の気持ちを優先させた。平和なんかじゃない、自分の都合のいい事実、世界を欲しているだけだ。

 こんなバカバカしいこと、早く終わらせる。そう思った俺に回線で沙織さんから内部状況が伝えられる。

 

『元君、今敵のマリオネッターシステム制御エリアに到達!敵の武装を解除させている』

 

「了解」

 

 マリオネッターシステムの操作停止は大きい。すべての敵ではないにしても動きは止まる。厄介な隊長クラスだけでもいなくなればその間に混乱する敵部隊を止められるはずだ。

 抵抗が無駄であることを今の話と共に沢下に告げた。

 

「聞こえただろ、お前達の希望だとか言っていたマリオネッターシステムは停止させた。各地の戦闘だって収まりつつある!柚羽の名前を盾にして、お前が戦う意味なんてもうない!」

 

『盾になどしていない!俺の妹の願いは、人類に対する慈悲だ!それにマリオネッターシステムを解除させても、我らの軍は、止まりはしない!』

 

 沢下はなおも妹のものだと主張する理念を掲げ、更に終わっていないことを語る。それを証拠に回線から爆発と声が響く。

 

『なっ、こいつら、捨て身で……!』

 

「沙織さん!……くっ、MSを纏ったのか」

 

 状況は分からない。けれどもそう判断せざるを得なかった。自分が死んででも武装を辞めない彼らに舌打ちする。

想定通りにならなかったことに、沢下はほくそ笑む。

 

『そうだ、お前達の考えは浅はか!我らの戦士は死を選んででも正道を行く!』

 

「正道だと!?」

 

『そうだ!そして、それに応えるべくお前を、お前達を殺す!』

 

「自ら死に行くような選択の、どこが正道だ!」

 

 怒りを露わに、剣を振る。死んでいった人達が当然など、そんな世界を許さない。

 元の怒りにシュバルトゼロの出力も上がっていく。だが敵の出力が未だに上。力任せの攻撃でマキナ・ブレイカーⅡAが飛ばされる。

 元は叫んだ。

 

「認めない!」

 

 人の死を勝手に決めつける彼らを。どんな願いを背負って戦い、死んでいった者達にそれが宿命などと、勝手に理由を決めつけてそれが無駄であるとする行いを元は許さなかった。

 例え夢乃に到着前に言ったような、戦うための力、技術を認めようとも彼らの思想は認めない。認めればここまで生き残った自分を、関わり散っていった人達に申し訳ない。

 

「絶対に認めない!」

 

 柚羽、ガンド様、光姫……。彼等のおかげで今の俺が出来ている。

 生者が死者の願いを背負って生きていくことは、別におかしいことじゃない。だけどそれを曲解することは違う。柚羽も、ガンド様も、そして光姫も、世界を憎んでいなかった。愛する人達へ最期に笑っていたから。

 そして残された者達も笑っている。深絵、ジャンヌ、光巴……。彼らの笑顔を守り続ける。それが俺の使命。俺の願い。

 もう片方のブレードガンも拳と打ち合った衝撃で手元から零れる。だが死者の気持ちを勝手に代弁するんじゃないと、元は残るビームスパイカーで回し蹴りを行う。

 

「俺の護りたかった人達は、生き残った人を泣かせる人達じゃない!」

 

 渾身の一撃をやり過ごしたマキシマム・タイラント。その機体は素早くこちらの背後を取る。

 元の語った言葉にうんざりとするように沢下は冷たく反論する。

 

『喚いてろ、一生。死んでも!人を殺した悪魔が!運命に屈しろ!』

 

 黙らせるために大剣が振り下ろされる。避けられない。エラクスでも間に合わない。完全い背を見せていた。

 終わる。それでも諦めない。諦めてしまえば一緒にジャンヌが死ぬ。ガンド様から託された敬愛する彼女を死なせない。

 まだ何も成していない。彼らを阻止することも、レイアを救い出すことも。

終われない、終われないんだ。動け、動け動け、動け!戦う意味はまだ残っている!生きているんだ!何の為にあの時絶望した?何の為に絶望から這い上がった?立ち上がり続けなきゃ意味はない。

死んでいった人達と選んでくれた彼女の願いの為に、今立たなきゃいけない!例え悪魔でもいい。本物の神様を敵にしたっていい!だけど、今は、だから!

 

「動けよ、ガンダァム!!」

 

 怒りと願いのこもった声、それが電気と炎と共に周囲へと響いた。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。危・機・的・状・況( ゚Д゚)

ネイ「いや、ふざけてる場合じゃないです」

グリーフィア「んーいけないわねぇ。これは。元君まったく太刀打ちできていないし」

それだけ汚染状態のパイロットと四個乗せがヤバいんだよ(´・ω・`)ツインジェネレーターシステム機も出力はあるけどそれが直接戦闘能力に影響されるわけじゃない。むりやり出力を上げて性能を上回っていく。それが今回の敵なわけだ。

ネイ「はい。けど元さんも要所要所で対応はしてますよね」

元君もついつい機体に対して本気見せろと言ってる辺り、割と熱血なんだよね(´-ω-`)

グリーフィア「そうねぇ。ただその直後に刀身割れるのは……お約束?」

これのモデル元も大概折れたり焼き尽くされたりしたからねぇ。流石に再生はまだ出来んよ。

ネイ「モデルと言えば、元さんと沢下との掛け合い、後半ちょっと見たような気が」

(´・ω・`)まぁ、似たり寄ったりよ

グリーフィア「そうねぇ。それは言わないでおくけど、元君もちゃんと言う所は言うのねぇ。守りたかった人達は生き残った人たちを泣かせる人じゃないだなんて」

ネイ「護りたかったけど護れなかった。だからこそ、残った人たちの幸せを護るっていう元さんの気持ちはLEVEL1から変わらない、元さんを形作るものなのかもね。でも危機的状況なんだよね……」

それこそ「人類は、変わらなければならない」ってカットイン来ないとね( ゚Д゚)気になる続きはまた次回!

グリーフィア「それじゃあ、次回もよろしく~」


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EPISODE41 魔王の生まれた日4

どうも、皆様。世間的に暗かったり、胸糞悪かったりするニュースが多くなってきたところで、新型コロナの規制が緩和されるとの知らせは大きいのではないでしょうか。作者の藤和木 士です。

レイ「アシスタントのレイだよー。近所のカードショップとかでも大会再開の知らせが出てきて、自粛もそろそろ終わりっぽいねー」

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです。作者も近くで開かれるガンダムコラボブースター記念のBOX争奪戦に行こうとしていますね」

そらそうよ!( ゚Д゚)しかも私何気にBOX争奪戦とかって初めてよ?心が躍らないわけがないっての!(゚∀゚)まぁ油断したらまたぶわっと広がるかもだから、細心の注意は払うけども。
と、話はそこまでとして、EPISODE41の公開です。

レイ「元君ピーンチ!魔王とか言ってる場合じゃないって!?」

ジャンヌ「前回で叫んだ元さん……その声は誰かに届くのでしょうか?いえ、届かなければどうにもなりませんよね……これ」

絶体絶命のピンチ( ゚Д゚)さぁ、ここが正念場だ元君!というわけで本編をどうぞ。


 

 

 この世界は争いで満ちている。かつて自身が経験したと「記憶」する歴史に、この世界は近づきつつあった。

 かつて戦いの神と呼ばれた私は、眠りについたこの世界の土地で人の歩む歴史を見続けてきた。だが人はまたしても剣を取った。

 しかも人は愚かにも世界の雫を神の贈り物と称し、神を信奉してしまった。

 あれはそんなものではない。この世界の人間にとっては贈り物でも、私達、少なくとも私にとっては世界を満たしてしまった元凶が放出した物。残された者が振り撒いた争いの源の一つだった。

 しかしそれは私も同じ。同じ力を用いて他の神と争った。そうして世界は滅び、世界が生まれた。もう新しき人々に同じ苦しみを味合わせたくない。その為に私は、我々は眠りについたのだ。同じ神と崇められた者達を説得するのには時間を有した。それも全ては「奴」の野心を砕くためだ。

 けれどもこうなってしまった。更には異世界で「奴」が生みださせた救世主の機動戦士達までこの世界に流れ込んだ。

 もうどうにもならない。どうしようもない。所詮私は争いの神。争いを呼び込んでしまうのか。

 止めたい衝動に駆られる。だが既にこの身は世界の為に封じた。自身の勝手な願いで封印を外せば、他の奴らも目覚めようとするだろう。

 無力さを呪う。意志はなくとも、せめて力の一端なら送っても……。そんな時、外からの強い力を感じ取った。

 

(この力……救世主の機動戦士か。あの強くも危うい心を持ちし子の)

 

 その存在は力を使う。外で今起こっている状況を見通した。漆黒の救世主は私達ではない妄想の神を信望する者の一人と戦っている。

 だがここまでに得た力はすべて手放し、鏡の巨人と対峙している。その差は決して容易に埋められるものではなく、残った力では世界の雫に狂った狂信者を止めるには足りない。

 今までは只傍観するだけに徹していた存在。しかし、その彼の声が、想いが、徐々に届いて来ていた。

 

(認めない!絶対に認めない!)

 

 狂信者が抱く思想を、死者から汲み取ったメッセージを否定する彼の言葉に賛同できるものはある。それでもその存在の心は動かない。

 それではいけない。自分と同じではいけないのだ。同じであればやがて結局は同じ結果しか生まない。これまでの歴史もそれを証明した。

 だからこそこの戦いを見てきた。どちらに世界が転ぶのかを見るために。しかし内心では機人使い達の方の勝利を願っていた。敵対する者が停滞を望む者だったから。

人は変わらなければいけない。変わらなければ……、例え争いを生んだとしても。否、争わなければ人は変わらない。争いを否定してはいけない。争い歴史を、物語を作り出してきた。私自身も、その一部なのだ。

 争いを望む存在。しかし望むのは決して暴力を呼び込むものではない。よりよい者へと変わるためのステップとしての争い。そんな存在は再び救世主の装依者の声を聞く。

 

(俺の護りたかった人達は、そんな生き残った人を泣かせるような人達じゃない!)

 

(死者が生者に望むもの。幸せ、願い、遺恨……様々だが、私が言えるのは、「未来」。未来を、生者に託す)

 

 未来と運命は相反する物。故に私は彼らを、次元覇院を否定する。だが、それで手を貸すほどの存在では……。

 しかし流れ込んできた思考が存在の意識を閉じさせなかった。

 

(悪魔だとしても、神を敵にしても、戦う……か)

 

 彼が深層心理で願った物。それに反応する。

 どこまで私と同じなのだろうか。私もまた、他の者達から非常に嫌われていた。人類からも嫌われていたとも思う。当然だ。争いという人々が嫌うものを象徴としたから。

 だがそんな私だったからこそ、他の神と争った。人と神は相容れない。相容れることがあってはならない。それが人類にとっての最良の選択であり、神の役割だったから。忘れ去られても、その真なる平和がもたらされるのなら、それでよかった。

 今の世界、人と神の境界は曖昧となった。神の意志と奢った卑しい人類によって。彼ならばその者達と真っ向から対立できる。しかし簡単に力を貸し与えることなど……。

 

(いいと思う。あなたの力を、あいつは正しく受け止められると思う)

 

 唐突に声を掛けられる。私が向くと、そこには救世主の機動戦士の使い手と瓜二つな青年がいた。

 唐突だったとはいえ、私は彼をすぐに理解する。その根拠を求めた。

 

(そう思うのはなぜだ?)

 

(根拠と言えるかは分からない。だけど、あいつは俺の願いを叶えてくれている。俺があいつの中に溶け込んだ後、彼女を支えてくれた。一度は見捨てようとした、でもあいつはあいつの意志で、彼女を護ると心に決めた。だから俺も信じるんだ)

 

(…………)

 

(それにさ、あいつはあなたが護った世界で生まれたんだ。あなたが信じて護ったものを、信じられなくなってどうするのさ)

 

 言われて納得する。そうだ。私は何を迷っていたのだ。自分に重ねて無理だと勝手に諦めた。けれども私はやって見せた。そうして生まれた私達の可能性を託した者。その子らを信じなくて、何が神か。

 私は決断する。迷いはない。だが封印を維持する為に力は抑える。私の力の一側面を異世界の救世主へと向けて飛ばした。

 その姿を見て、その青年は安堵して見せた。

 

(ありがとう、こんな俺の願いを聞いてくれて)

 

(感謝するのは私だ。まさか、偶然生まれた者に私が説教を受けるとはな)

 

 青年は笑って姿を消した。世界の純真を体現したような彼を信じて、彼の信じた者に力を託した。

 我が名は×××。その権能は「破壊」。神にも悪魔にも成れる力。

 さぁ、お前は、その力で何を「破壊」する?何を、「創造」する?

 

 

 

 

 勝った!俺は遂にガンダムに勝った!そう確信する。

 確実な一撃を振りかぶった。マキシマム・タイラント、その絶大な力に、相手は何も出来なかった。無防備な背後、避けることは出来まい。

 ここまで長かった。本当に。あの方が教えてくれた真実。それがなければ俺はここまで来られなかった。大事なところで失敗してしまったのは悔やまれるが、それでもこいつを殺せれば何ら問題はない。それを糧に次元覇院は再び舞い上がれる。

 人が立ち上がるために必要なもの、それはきっかけだ。沢下という男にとっては妹の四の真実を知り復讐を糧に立ち上がってきた。

 次元覇院の者達もまた、同じく立ち上がってきた者達が多い。他者に奪われ、否定され、晒されてきた者達。その仲間達で彼らは酷い者達だと掛け合い、いつか復讐してやろうと決意してきた。この作戦こそその集大成であり、多くの使徒達が、自分達を悔しそうに見上げるこれまで虐げてきた者達の姿を夢見てきた。そのはずだった。

 それを壊した彼らを許すわけがない。夢を奪うことは悪だ。だからこそ私達は裁きを下す。神はそれを認めてくれる。私達の神は裏切らない。神域たるこの三枝県の中で、私達は唯一の正義なのだから。

 

「終わりだ!!」

 

 だからこその一撃、それが振り下ろされた。大剣の一撃、それでこの悪夢は晴れ渡る。

 

 そのはずだったのに。

 

 

 

 

「……何っ!?」

 

 

 

 

 違和感と認めがたい事実。切り捨てたはずの漆黒のガンダムは居らず、そして起こるはずだった爆発が起こらない。代わりに奴がいた場所には赤い残光と粒子の波紋が残るのみ。

 いったいどこに……!?俺の疑問はすぐに答えが示された。

 

「き、貴様ぁ……!!」

 

 視線の先に確認した敵の姿。だが敵の姿はまたしても変わっていた。機体のフレームをまるでマグマのように赤く輝かせている。

 忌々しい輝きを放つヤツの機体は確かにその場に立っている。神々しさすら感じさせるそれに吐き気を催す。

そんな神の如き奇跡を認めはしない。あんなものを残しては置けないッ!今度こそ破壊することを宣言する。

 

「その光は、何だァ!!」

 

 ユナイト・ガン・ソードが振るわれる。すべては目の前の不浄なる神擬きを殺すために。

 

 

 

 

 その一瞬を元は理解しきれていなかった。死にたくない一心で動かそうとしていた機体。確実にやられると思っていたはずのガンダムは先程までとは違う感覚で敵の攻撃を滑る形で距離を取ることに成功した。

 思わぬ機動にジャンヌからも困惑の声が伝えられる。

 

『え、えぇ!?ハジメ、今、何して……!?』

 

「分からない。けど、これは……?」

 

 何をしたはこっちの台詞だ。しかし俺は機体の状況を知らせるモニターにその答えと思われる文字列を発見した。

 その文字を見て、呟く。

 

「ARES……アレス、モード?」

 

 アレス、という単語に思い当たるものはほとんどない。だが今のこの状態はこのアレスモードが引き起こしていることに違いはない。

 もう少し考えていたかったが警報が現実へと引き戻す。敵が再度大剣を振るって殺そうとしに来ていた。

 

『その光は、何だァ!!』

 

「っ!」

 

 攻撃の回避を選択、アレスモードとなったシュバルトゼロは大振りの攻撃を余裕で回避した。だが敵もその後を詰めるように肩の端末を飛ばし、射撃を放ってくる。

 もっと早く、その思いにアレスモードは応える。続く連弾も赤くフレームを輝かせるシュバルトゼロは回避する。手を地面に付いて、一回転。機動性だけではなく反応性、運動性が向上している。

 今までよりも機体が軽い……。スラスターで無理に動かしていた感覚ではない。イグナイト、イグナイターのように自然な機動を感じられる。それでいてそれらのような緊張感を感じることなく、機体が動いてくれる。

 ジャンヌには負荷がないのだろうかと、ジャンヌに問う。

 

「ジャンヌ、機体が軽いぞ。そっちは」

 

『これ……凄い。私の力が前よりも伝わりやすい……!』

 

 ジャンヌも機体の秘めるポテンシャルに舌を巻いていた。扱いやすさが二人の感じた感想だ。

 機体の動きに慣れてきたところで反撃に転じる。残っている武器でまともなダメージを与えられるのはビームサーベルと拳のDフィストイレイザー・ネクストのみ。ビームサーベルを展開可能なビームライフルもあるが、使い勝手で勝ることはない。

 ビームサーベルを抜き放ち、斬りかかる。

 

「今の俺達は、負ける気がしない!」

 

『生意気な!お前達は負け続けるんだ!これから先、ずっとなぁ!!』

 

 元の言葉に負け続けろと吐き捨てた沢下が対抗する。拮抗する両者の刃。しかしその勢いは確実にガンダムが押していた。

 さっきまでの出力ではない。これなら……!力を込め、ビームサーベルで押し切る。

 

「このッ!!」

 

『なっ!?ユナイト・ガン・ソードがッ!?』

 

 合体していた大剣が真ん中から溶断される。大剣を思わせる刃へと変質したビームサーベルの光刃で敵の肩へと攻撃、端末の一つを破壊する。

 出力も大幅に強化されている。これなら敵の装甲もビームで貫けるのでは?そう思いビームライフル・ゼロを向けた。

 

「こいつで……!?」

 

 トリガーを引く。ところが銃口から放たれたビームはなぜか減衰して放たれた。敵に届かぬまま霧散する。起こった事象に首を傾げたジャンヌ。

 

『な、何でっ!?』

 

「クソッ、このタイミングで故障かよ!」

 

 壊れた?そんな予測が脳裏を過る。こんな大事な局面で……。と思ったものの、機体をチェックしたジャンヌが俺の予測に異を唱える。

 

『……いえ、これは……』

 

「ジャンヌ?」

 

『ハジメ、どうやら今のシュバルトゼロは射撃出力を著しく落とした状態のようです。決定打になるのは近接戦……!』

 

 回避に徹してジャンヌの導き出した結論に目を通す。

 なるほど、射撃の為の機能を著しく性能を落として、代わりにその分を機動性、運動性、機体の剛性、それに格闘武器へ出力させているのか。これまでのイグナイト、イグナイターとは違ってあらゆる戦闘で圧倒は出来ないが、その分近接戦に限って言えばそれに近しい性能を持つ。いや、余分な物を削ぎ落した分、近接性能にだけ限ってはそれらよりも上回る……!

 なぜユグドラシルフレームが紅く染まっているのかは分からない。赤ということで未だに光姫の影響が出ているのかと言われても答えられない。だが分かることは一つ。今はアイツを、沢下判を叩き潰せと機体が言っている!

 不要となったビームライフル・ゼロを地面に叩き付けて、拳を握った元は叫ぶ。

 

「ならライフルなんて必要ねぇ!全部でこの手で叩き潰す!」

 

『生意気なぁ!!』

 

 拳だけで向かってくるシュバルトゼロに同じく拳と遠隔操作端末で沢下は迎え撃った。

接近するこちらの動きを縛ろうとする端末の射撃を、構わず素早くすり抜ける。すり抜けた機体に向けて敵の拳が迫るも、それも回避して遠隔操作端末の一つを掴んで叩き割った。

 

『グッ!?』

 

「一つ……次!」

 

 背後から迫りくる拳を宙返りして回避すると、丁度前に見えた二つ目の端末を掴む。掴んだそれを三つ目となる端末と激突させる。そして姿勢制御を行うそれらに向けてDNF「ディメンションスパイク」を放って、どちらも蹴り砕く。

 DNL、DNFも問題なく機能する。ジャンヌの負担も軽減された。エラクスが使えなくても、今は戦える!

 

「端末はすべて落とした!後はお前だけだ!」

 

『ちょろちょろと!小癪なァ!!』

 

 確かな力を感じ、なおも襲い掛かってくる沢下と拳を交える。しかし先程まで劣勢だったそれとは裏腹に、シュバルトゼロは敵の攻撃を容易くかわし、空いたボディにDNを込めた拳を殴りつける。

 殴った箇所がひび割れる。次々と場所を変えて、その鏡張りとなった体が見る見るうちに砕かれていった。

 あまりにも圧倒的な展開に困惑する沢下。

 

『何故だ!?なぜ攻撃が当たらない!?なぜ攻撃が当たる!?』

 

「……何でだろうな。力が漲る。今ならお前に悪魔と言われようが、そんな言葉も吹き飛ばせるくらいの力を感じる!」

 

『悪魔と認めたか!貴様はやはり悪……。人類の敵!』

 

 振り下ろした拳をしたから受け止める。押しつぶそうとする沢下の拳を堪えながら、元は返答した。

 

「いや、悪魔じゃない。むしろそれ以上の存在だと言えるッ」

 

『何だと!?』

 

 悪魔などではない。それ以上の存在。聞いたことがある。彼ら大抵の宗教者にとって一番の敵となる悪魔、それを従える最強の存在を。

 そして俺がかつて愛好した特撮モノでも、同じ異名を持ったヒーローがいた。彼は作中その異名で呼ばれ続け、そう呼ばれる未来の自分にならないよう必死に足掻いた。しかし最後にはそれを受け入れ、新たな世界を作り出す。

 そしてこの日本でかつて存在した戦国時代の大名も、打ち立てた戦果から同じ意味合いの異名を授かったという。

 その異名こそ、今の俺に相応しい。神と敵対するのならなおの事、それを背負って敵対する。それがどれだけ最悪なことでも、その先に未来があると信じて。俺は言った。

 

 

 

 

「魔王だ。俺は、お前達狂信者を許さず、現実に生きる人達……お前らが否定した人類を護る魔王になる!」

 

 

 

 

 この言葉にどれだけの意味があったのかは知らない。しかしこの言葉が結果としてこの後の時代の流れを作り出していった。

 敵対する者、そして味方も呼んだ。忌まわしき名前として、未来を切り開く存在として。偶像たる神を打ち滅ぼすため、神を信仰する者達の最後の敵としての魔王。あり方としては間違っていない彼をのちに人々は畏怖としてこう呼んだ。

 

 

 「神殺しの魔王」と。

 

 

 そして、この日は「魔王の生まれた日」として刻まれていく。それも知らず、元は沢下の感情を逆撫でした。

 

『……ッ!調子に乗るんじゃねぇっ!!』

 

 これは黒和元の、神殺しの魔王としての初めての戦いである。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます、魔王誕生!(´-ω-`)

レイ「うん、どっかで見たことあるけど、とりあえず危機は回避したっ!」

ジャンヌ「触れるのも億劫ですね。でも力を分け与えた存在はその神とも呼べる存在ですが……?」

あくまで神と呼べる存在だから、呼べるのであって呼ばれるわけじゃないってね( ゚Д゚)

レイ「屁理屈っ!」

まぁ、丁度同じ時期に開始してたかの作品と似通ってるのは間違いない。でもどっちかって言うとこっちは本来の宗教者に煩悩を齎すとされる魔王像に近いイメージでやってるんですわぁ。

ジャンヌ「かつての日本での第六天魔王こと、織田信長の事も作中でそれらしき人物について触れているようですね」

ゴッドゼクス!( ゚Д゚)

レイ「それはバトスピ」

ジャンヌ「え、あの作品掘り起こされたいです?(怒)」

ごめんなさい( ;∀;)でも元君はその信長のようであって、違う魔王として貫いて行ってもらう予定だから。ここから始まる魔王の物語(´-ω-`)

レイ「その最初の相手が次元覇院、そして沢下かぁ」

ジャンヌ「でも近接格闘戦一辺倒とは思い切りましたね」

この辺はLEVEL3への土台としての意味もあるからね。とまぁ話したいことはまた黒の館DNでということで。

レイ「次回、いよいよ沢下との決着だぁ!」


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EPISODE42 魔王の生まれた日5

どうも、皆様。今週末より近場の店でバトスピのショップバトルが再開しつつあるものあって、デッキ構築考えてます、藤和木 士です。

ネイ「アシスタントのネイです。なんかそれ関連で一つ作者さんの中ではかなり反響のあるツイートありますよね」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよ~。アルティメット・ウィステリア、バトスピが今季から取り入れた転醒と呼ばれるシステムを利用したギミックを完全に圧倒できるカードに注目したのよねぇ」

うん、そうなんだよね。元々別のカードで対策取ろうとしてたんだけど、しっくりこなかったんでカード眺めてたらこれどうだろって発言したらスゲー反応(゚Д゚;)あれで正解なのか(ガンダム戦記風)
さて、ガンダムDNはLEVEL2第3章の大詰め、EPISODE42の公開です。

グリーフィア「次元を超えし救世主、その象徴が今、魔王へと変わる!って感じよねぇ~」

あのそれ少しジ○ウのOPでの台詞改変ですよね(;・∀・)

ネイ「あぁ……時代をってところのですね。姉さん生き生きしてる」

グリーフィア「まぁ魔王になるのはなんとなく予想は出来たけど、ここからどうなっていくかはさっぱりだわ。魔王としての非情さを元君が持てるのか?ってところかしらね」

ネイ「でも作者さんは織田信長という人とは違う魔王として貫いて行ってもらうようなことを言っていたような」

ある程度は似通るけど一つ一つの判断は違うかもしれませんよ。それでは本編へ!


 

 

 遂に倒した!と深絵は確信する。

 大柄なアーマーを貫いた一撃。間違いなく中のMS諸共貫いている。敵もその一撃を受けて体を震わせている。

 

『あ、あが……グ!』

 

『やった……やったぁ!』

 

『間違いない、やったよかほちー!深絵さん!』

 

 武装はほぼ使い果たしてしまったけれど、それでも目の前の敵は落とせた。こいつを落とせれば、こっちの侵攻を抑えられるのはほぼいないはず。

 既に味方も続々と敵人工衛星内へと侵攻しつつある。沙織さんの支援に向かってくれているはず。後は武装が比較的無事な華穂ちゃん達も援軍に向かわせれば盤石なはず。

 深絵は銃槍を抜いて指示を出そうとした。

 

「うん。ここは終わった。後は二人にまか」

 

 だが機体を衝撃が襲った。機体が敵大型MSに体へと押し付けられる。敵が残った腕でこちらを押さえつけているのが原因だった。

 まだ動ける!?そんな驚きは現実のものであるということを敵パイロットにより知らされた。

 

『へ……まだだ……まだ、終わっていない!』

 

「こいつ!」

 

『機体を全損状態にまで追い込まれたのは癪だが……構わん。どのみち俺は生き残る!マリオネッターシステムでなぁ……!しかし、お前だけは殺す!』

 

 その言葉と共に機体の内部からの熱量センサーが反応した。

 

『分かるか?こいつの内部の機体はマキシマム……胸部ビーム砲を今、起動させた!』

 

「えっ」

 

『このまま発射すれば機体は爆発するが……どのみち爆発するなら、貴様の機体だけでも!』

 

『深絵さん!?』

 

 しまった、自爆!?思わぬ相打ちの宣告に拘束からの脱却を図る。

 しかしブラウジーベンの現在の出力ではその片腕だけの抑え込みも外すことは叶わない。深絵を助けようと華穂達が助けようと接近を試みる。

 

『深絵さん!』

 

「二人とも来ちゃダメ!」

 

『深絵さん!?』

 

 二人まで巻き込んだらダメだ。これ以上最悪な状況を作り出してしまってはいけない。まだこいつも生き残る可能性も考えれば自分だけで……!

 徐々に高まっていく熱量。もう逃げられない。諦め、死を受け入れようとする。

 

「……くっ!ごめん、光姫ちゃん……!」

 

『消えろ、私の最高の爆発と共に―――』

 

 直後、機体の力が抜ける。あまりに不自然な感覚。しかし深絵の反応は早かった。敵機体を蹴り離して拘束を解除、同時に距離を取る。

 トリガーを引かれず、チャージされたままだったビームが機体内部から放たれた。当然それは深絵を貫かず、空に放たれた。エネルギーを暴発させて機体は自爆する。

 一体何が起こったのか。分からないがとにかく助かった。生きていることに半信半疑な深絵。

 

「っ……あ、あれ、生きてる?」

 

『み、深絵さん!良かった!』

 

『けど、どうして……殺せると思って油断した……?』

 

 華穂の言葉が当てはまりそうだとは思ったものの、そうではない気もする。困惑する三人のもとへ、ホリン内部にいる沙織からの通信がそれを解決した。

 

『深絵、無事か』

 

「沙織さん。えぇ、何とか」

 

『沙織師匠!そっちで何かあったんですか?』

 

『先程マリオネッターシステムのコントロールポッドルームの戦闘で、ルーム自体が爆発したんだ。原因は迎撃した敵MSの爆発による誘爆。一応後方にもそれを伝えるが、その際にポッドにいた何人かが即死したようだ』

 

 ポッドにいた何人かが即死、それで先程の出来事と結びつく。力が弱まったあの時、ゲルツは爆発に巻き込まれてMSの接続が断裂したのだ。そしてゲルツも死亡した。

 偶然とはいえそれが深絵を助ける結果となった。深絵は命の恩人とも呼べる沙織に感謝の言葉を述べる。

 

「そうですか。でも助かりました。あのパイロットが死んでいなかったら、私」

 

『そうか。それは幸いだった。と、すまない。まだこちらも全てが終わったわけではない。君達も援護に来るときは気を付けてくれ』

 

「了解です。華穂ちゃんと夢乃ちゃんを向かわせます。ご武運を」

 

 そう言って通信が切れる。二人にも先程言ったように沙織への支援に向かうように伝える。

 

「じゃあ、後は二人にお任せするね。私は一旦下がる。いいね?」

 

『はい!師匠のお助け、行ってきます!』

 

『了解です!深絵さんも気を付けて』

 

 二人の機体が進路の開けたホリンへと向けて飛行していく。

 思わず光姫ちゃんに謝っちゃったなぁ。途中で生き残ることを諦めてしまったことに反省する。まだあの時、何かやれたかもしれないのに。

 冷静になればまだ「ブルー・ジョーカー」も残っていた。それで残った腕を斬り裂いて、もしくは最悪自分のウイングを爆発させてでも拘束を緩ませることも考えられた。

 冷静になりさえすれば。それは戦士が心がけるべき判断の考え方。至れなかったことはそれだけ光姫の死が脳裏に焼き付いていたからなのかもしれない。自分も同じように死ぬと、観念してしまったから。

 けれども深絵は生き残った。それは覆しようのない事実。また不意を突かれたら分からないが、そうならないためにも今は退くことだけを考える。

 

「さて、私も一旦出直さないと……本部、こちら深絵。一旦帰還し……!?」

 

 回線口で目を見張った。視線の先はホリンの円盤上、そこでは先程倒した大型マキシマムと似た機体が交戦していた。

 あれがもう一機存在したことにも驚いたが、それ以上に驚いたのは戦っているのがシュバルトゼロガンダムだということ。そのシュバルトゼロガンダムも機体フレームを紅く輝かせて互角の近接戦闘を演じていた。

 あの紅いシュバルトゼロガンダムは……?何かが起こっていることは理解できる。でもそれは今までに見たことのない姿。

 何かが憑依しているとでも言うべき切れの良い動きで大型マキシマムと戦っている。相手は沢下だろうか。回線をシュバルトゼロガンダムへと合わせる。すると元の声が聞こえてきた。

 

『いや、悪魔じゃない!むしろそれ以上の存在と言えるッ』

 

『何だと!?』

 

「元君……?」

 

 沢下の声も聞こえる。おそらく話し相手は沢下で間違いない。だが悪魔とは一体……?彼が言ったから反対した?それ以上とは悪魔以上の存在ということ?

 言葉の意味を判別しかねる。深絵は悪い予感を感じる。そしてそれはすぐに現実のものとなった。

 

『魔王だ。俺は、お前達狂信者を許さず、現実に生きる人達……お前らが否定した人類を護る魔王になる!』

 

「元君……何言って……!」

 

 嘘だ。そう思いたかった。魔王などと言う悪の頂点とでも言うべき名を名乗ると、彼は言った。

 一体どうしてそんなことを……言いたかったが、言えなかった。その言葉に激高した沢下と更に激化する戦闘。それに今のブラウで向かえばどうなるか、目に見えて分かる。

 今は抑えて、後でその真意を問いただそう。本当にそんな悪の道を通るというのなら、私は……。不安を抱えたまま、私はその場を後にして、後方へと撤退する。

 

 

 

 

 魔王を宣言したハジメにジャンヌもまた心を痛めていた。

 魔王になんてなってほしくない。ガンダムは救世主なんだから。でもハジメの言いたいことが分かる気もする。

 ハジメは現実の人間、彼らに攻撃される人間を護ると言った。ならそれは救世主と言って間違いではないのでは?そもそも、信じる者達だけを護ることが救世主ではない。そして彼ら信者達が如何に平和を求めようとも暴力を振るうのなら、それを止めることもまた正しい。その為にオーダーズも戦っているのだから。

 このガンダムも、そんなハジメに応えて力を引き出している。私にはそう思えた。DNLの力、心の動きを顕著に表現するというユグドラシルフレームが変色しているのもそれを表しているのかもしれない。

 ガンダムの制御に努めながら、ジャンヌは一人心の中で呟く。

 

(ハジメ、私はあなたのこと、信じます。例え魔王になっても、それが人々の未来を切り開くと信じて……!)

 

 ジャンヌの想いと同調する様に、ハジメはサワシタのマキシマム・タイラントを寄せ付けない。DNを内包した拳が全ての攻撃を砕く。

 近接戦闘特化という不安さも、いつの間にかなくなり、今はこの強さに心強さも覚える。あまりにも強すぎる力にサワシタも惨状に拳を地面に打ち付ける。

 

『ぐぅ!!何故だ!何故勝てない!!なぜ俺達の理想を否定するゥ!?』

 

 これまでの戦いも含めた問い掛け。しかしそれを導いたのはたった一つの答えだ。ハジメがそれを語った。

 

『簡単だ。お前達は自分達の考えることしか考えなかった。他者の意見を取り入れなかった。だから他の人の意志に反することを平然とやれる。それを人々が受け入れなかっただけ!それは、お前達のエゴだ!』

 

『貴様……貴様ぁ!』

 

 逆上するサワシタは距離を取り突撃の構えを見せる。その両手の甲にビームスパイクを形成する。一気に貫こうというのだろう。

 私もハジメの言葉に同じだ。仇を取りたい、平和を実現したいというエゴが、彼らを生みだした。その思いがあまりに強すぎたから、正義が暴走したからこそこのような結果を招いた。

 だからこそ彼らは罪を受けなければならない。平和を求めるなら、まずその平和を結果的に一番壊した責任を負う必要がある。ハジメはトドメを刺すことを告げる。

 

『ジャンヌ、DNFで終わらせるぞ』

 

「はい!……DNコンバーター出力フルバースト、DNF、行けます!」

 

 出力をDNFモードへと切り替えて準備を万全に整えた。ハジメは前方に手を開いて息を整える。まるで拳法の如く静かな呼吸。タイミングを見計らい、敵の突撃開始と同時にハジメが動いた。

 

『行くぞ!』

 

「はい!」

 

『Ready set GO!DNF』

 

 必殺の一撃を敵に向かって放つ。それはこの戦いを終わらせる、魔王として最初の、この戦いを終わらせる最後の技。魔王の一撃である。

 

 

 

 

 元の掛け声に続いてジャンヌが頷く。合わせてDNFの音声が響いた。待ち構えようとするこちらに沢下は果敢にも言って見せる。

 

『その程度の攻撃……マキシマム・タイラントは止まらない!』

 

「そうかよ。なら証明して見せろ!」

 

 手を開いて放ったエネルギー弾。エネルギー弾に対し勢いよく飛び込んでくるマキシマム・タイラント。ビームなら跳ね返せると思ったのだろう。しかしそのエネルギー弾は直撃すると同時にマキシマム・タイラントの動きを止めた。

 エネルギー攻撃であるにも関わらず跳ね返せないことに困惑する沢下。

 

『!?う、動けない……!?』

 

『今です、ハジメ!』

 

 ジャンヌからの指示。迷わず俺は高純度DNをありったけ込めて黄金に輝く拳でタイラントを殴りつける。

 

「これで、終わりだ!」

 

『DNF、「逢魔心火(おうまのしんか)」!!』

 

 マキシマム・タイラントの腹に拳を打ち込む。シンプルな一撃だった。しかし一撃は凄まじく、衝撃だけでタイラントの強固な装甲を完全に粉砕する。続けざまに拳から光の奔流が発生する。ビームと炎が混ざったかのような光は周囲の光の膜を反射しながら内部のマキシマム・タイラント、マキシマム・ホーリーを蹂躙する。

 ビーム反射装甲をも貫いて、爆発。腕部と腹の装甲が吹き飛んで内部のマキシマム・ホーリーが姿を現す。ところがその機体も先の衝撃の一発と光の影響で完全にスクラップ寸前となっていた。

 ボロボロになった沢下は光の拘束から解放され、身に受けた惨状に呆然と動けずにいた。

 

『あ……あぁ……』

 

 タイラントの腹部に固定されたホーリーの機体。残ったタイラントの足から煙が生じ、続く爆発によってタイラントの体が地面へと倒れ込んだ。

 マキシマム・ホーリーは既に全身が砕けており、いつ爆発してもおかしくはない。しかし残されたわずかな時間の中で沢下は自身が負けたことに絶句する。

 

『嘘だ……俺が、止まったら、一体、誰が……誰が柚羽の笑顔を護るというんだ……』

 

 柚羽の為に。その気持ちは元も痛いほどよく分かる。

 もう柚羽は居ない。だけど彼女には笑っていてほしいと思う。だがしかし、今の俺にはどうしようも出来ないとも分かっている。いつまでも彼女の想いを引き摺っていても何も変わらないから。

 俺は沢下へ自身が最後に柚羽と交わした会話の内容と、それに対する自身の気持ちを伝えた。

 

「柚羽と最後に会った時、あいつは、柚羽は言った。もし自分が助けを求めたら、真っ先に助けに来てくれるかって。俺は無責任にも行ってやるって答えた。でも結局、俺は助けに行けなかった。子どもじゃどうにもならない問題だった。あの時はずっと後悔してた。でも今は後悔していない」

 

 有言実行できなかったことは申し訳なさを残す。けれどもあの時言っていなければ柚羽は笑えていなかったかもしれない。そう思うとあの時答えたのは間違いではないと今は思っている。

 無暗に希望を持たせるなと言われても構わない。だけど、そんな難しいことをあの時考えられたかどうかは分からない。だってあの時俺達は、ただの中学生でしかないのだから。

今更考えてもどうにもならない。それは事件に興味を持ち無暗に真実を暴きたがるジャーナリストだけの話だ。

 そうして今、ここに立つ理由。それは他でもない、敬愛する彼女の為だ。

 

「今は彼女がいる。俺の悲しみを受け止めてくれた女性、ジャンヌがいるから、俺は迷わない。どれだけ柚羽の為と御託を並べても、それは妄想の産物でしかないって分かっているからな」

 

『………………最低だな、お前』

 

「あぁ、そうだよ。お前にとっては最低の魔王。俺は魔王として突き進む。でもそれでいい。もし道を間違えそうになっても、俺には仲間がいる。お前達みたいに思想を共有して他人にもそれを強制するんじゃない、目指す未来に向けてぶつかり合って、それでもよりいいものへと昇華させることのできる仲間。そいつらがきっと俺を止めてくれる。そんなみんなを俺は護る。魔王として、お前達との戦いで先陣に立つ」

 

 それは同じ魔王を目指したヒーローと同じ、仲間を信じること。仲間の為なら魔王になることも厭わない覚悟だった。ジャンヌ、華穂、深絵、夢乃、平次、海斗、黎人、来馬、間島、羽鳥……。みんながいざという時は止めてくれると信じている。

 だからこそ元は前を向く。柚羽との約束を思い出に、彼女の思い出がこれ以上穢されないために。常に対峙し続けてきた者へ向けてきた言葉を、新たな言葉と共に沢下にも向ける。

 

「さぁ、お前の野望も願望も全部(ゼロ)に戻す。神をも殺して、俺は人の頂点に立つ!上から襲い来るお前達と戦い続けるために」

 

『……あぁ、柚羽。今行くよ……だが言わせておくれ……クソッたれがぁあぁぁああああぁぁぁぁ!!』

 

 断末魔と共に沢下の機体が爆発する。命の消える感覚、今度こそ奴との宿命は終わりを告げた。終わりに呼応するように機体フレームの発色ももとの色へと戻っていった。

そしてこの戦いも、終焉へと誘われていく。多くの犠牲を払いながら、次元覇院という組織は終わりを迎える。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。最初深絵達の不意打ちとも呼べる一幕もありましたが、戦いは元君の繰り出したDNF「逢魔心火」で撃破!( ゚Д゚)

グリーフィア「逢魔○王必殺○ね」

言っておくと元君の世界にもジ○ウに当たる作品はあるよ(´・ω・`)そこからの出典ってね。

ネイ「これで戦いは終わり、となっていくんですかね」

そうだね。後はこの戦いの結末と、そこからMSオーダーズがどうなっていくのかが残る2話の内容です。内容短いのでもしかすると2話連投になるかもしれません。まだ投稿する日になってみないと分からないけど。
それでは今回はここまでです。

ネイ「次回もよろしくお願いします」


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EPISODE43 終わる作戦、新たな始まり1

どうも皆様。作者の藤和木 士です。

レイ「アシスタントのレイだよー」

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです」

先日はよいバトスピライフだった……久々の大会に心が躍ったわ;つД`)優勝できなかったけど。

レイ「それでも三位じゃん。デッキレシピも載ったし」

ジャンヌ「まさか詩姫で三位という。ですが調子が振るわなかったようですね」

だが問題ない。次回からは00が火を噴くのだ……(゚∀゚)ではEPISODE43の公開です。

レイ「作戦終了!でもまだ続きそうな感じなんだよね?」

ジャンヌ「以前のようなエピローグのような感じでしょうね」

その通り。魔王と名乗った元君に華穂ちゃんとかがどう思ったのか、そして次元覇院の長の最期です。それではどうぞ。


 

 

 作戦の大勢は完全に決まった。ホリンは浮上不可となった上にその防衛の為に出たMSも大半が破壊された。

 ここまで次元覇院を支えてくれた教柱達、そして戦神官も多くが拘束・戦死した。加えてMSオーダーズ側は知らないが、アメリア駐留軍の一部戦力が独自に三枝各地の次元覇院支部を襲撃しており、既に組織として瓦解状態にあった。

 いずれここも襲撃される。そう思い、次元覇院の総本山で、大教柱たる私は地下に来ていた。この場所は他の教柱すらもほとんど預かり知らぬ場所。そしてこの場所こそ次元覇院がこれまでに繰り出してきたMSの技術の中心たる場所だった。

 時間がない。私はすぐさまキーボードを走らせた。キーの操作で機械が作動。コンテナの一つの接続を切り離し、クレーンユニットで地下移動用列車に積み込んでいく。

 5年前のあの日、この組織の大元を作り上げた「あのお方」が予言した場所に現れた大破した人型の兵器。純白な姿に双眼を持った姿は奇しくもあのガンダムと同じだった。その機体を修復と同時に解析し、その機体にインプットされていた機体データを基に、マキイン達は生まれたのだ。

 素晴らしいものだった。神からの贈り物としては非常に説得力のあるものだ。時間はかかったがその性能を模倣してくれたMS製造担当の教柱には感謝してもしきれない。

 いつかは異世界にも出向き、その住人に次元覇院の考えを教えたい。そんな理想は残念ながら夢物語となりつつある。だがしかし、この機体だけは奴らに渡してはならない。そう仰せつかっているのだ。

 

「…………よし、積み込みは出来た。後は……」

 

 その時上の階から銃撃が起こる。おそらく襲撃を受けたのだろう。

 使徒達にはこの場所の死守を命令している。そう簡単に突破されることはない。だが時間がない。冷静にシークエンスを進行させる。

 駆動に問題ないことが確認できると、私は最後の行程を行う。液晶に表示されたボタンを押す。列車は起動し、発進する。

 地下通路を通り、遠くなっていく列車。これでいい。これなら例え次元覇院が無くなっても、意志は引き継がれる。漆黒のガンダムを、魔王を、真の救世主であるあのガンダムが倒してくれる。

 魔王を名乗った、その心構えに敵でありながら敬意すら覚える。敢えてその名を名乗ったのなら、神を信仰する私達は必ず奴を倒さなければならない。

 神の最大の敵たる魔王。魔王討伐という新たな目的を見つけ、「人類の進化」は新たなステージへと移行する。「あのお方」の言葉に殉じる。そして、私自身も奴を最大の敵と認識する……。

 見届けた後部屋の扉が銃撃される。入ってくるのはアメリア軍MS。隊長格の人物が声を上げる。

 

『ドンムーブ!貴様を拘束する!』

 

「ふふ、見つかったか。だが愚かだったな。この部屋を調べられるわけにはいかん!」

 

 不敵に笑い、振り向いた大教柱の男は同時にポケットに入っていた装置のボタンを押す。直後部屋は爆発に呑みこまれた。

 それは未来のための、いずれ復活する次元覇院の意志の為の、最後の足掻きだった。爆発は大教柱の男とアメリア軍MS一個小隊を呑みこんで部屋ごと瓦解させた。

 

 

 

 

 作戦は終わった。新堂沙織率いる第3大隊「極」のMS部隊と追って突入したMSオーダーズの部隊、彼らによりホリン内部は完全に制圧された。

 制圧されたホリンから管制官や打ち上げ後の管理人員、マリオネッターシステムのパイロット、そして使徒達をまとめ上げる教柱の何人かが船へと連行されていく。

 それを横目に元は三枝の街を眺望する。五年、いや、正確には二年ぶりとなる故郷の姿。その街からは至る場所で火災の煙が経つ。不時着とDNFの攻撃で撃破した敵MAの爆発による津波、それに加えてこちらのあずかり知らぬところでアメリア軍が突入部隊を次元覇院各支部と総本山を襲撃。あれはMSの戦闘の跡らしい。

 思わぬ横槍ではあるものの、これで次元覇院の活動はほぼ停止出来たと見れる。後は奴らの背後に誰が、そして「何が」あるか……。

 考え込む元。追っていた物にようやく辿りつけるのか、それとも……。その元に馴染みのある声が聞こえた。

 

『元君』

 

「深絵、それに華穂も夢乃も」

 

『二日ぶり。にぃも大分やられたね』

 

『よく勝てましたね、あれに。私達三人でようやく止められたのに……』

 

 三人の戦いは後方待機のこてつから伝えられていた。同型のMSと三人の連携で撃破したらしい。元も自身が戦ったからこそその苦戦ぶりは容易に想像できた。

 三人の戦績に対し素直に称賛を送った。

 

「みんなも十分凄いさ。特に深絵は近接戦であいつを圧倒したんだろう?予想外すぎてどうやったのか後で記録を見直したくなった」

 

『それは……うん、私も正直驚いてる。ありがとう。でも私は訊かなくちゃいけないことがある。元君、あれはどういうこと?魔王になるって、それは』

 

 魔王と発言したことに対する問い。それを深絵は聞きたがっていた。その発言を聞いていなかった華穂と夢乃は驚きながら訊き返した。

 

『ま、魔王!?何、中二病でも発症した!?』

 

『ちゅ、中二病って……で、でもどういうことです?そんなこと言うだなんて……』

 

 それぞれの反応に当然だとは思う。あんな発言、説明がなければ国家転覆罪とか言われそうだ。華穂だけは後でしっかり叱っておくとして、深絵の質問に回答する。

 

「魔王、今の世の中、悪いイメージしかないとは思う。でも魔王はそもそも、宗教者達が煩悩の象徴、あるいは悪の象徴、頂点としてあてはめたものだ」

 

『煩悩の、頂点……』

 

「今また、かつて過ぎ去ったはずの宗教の時代が呼び起こされようとしている。それで関係ない人達が巻き込まれる。ならせめて、奴らの、人を襲うことすら正当化しようとする外道の矛先を、少しでも俺自身に向けさせる。俺が奴らにとっての最大の敵であれば、絶対に無視できないはずだからな」

 

『そんな!?そんなこと言って、にぃが生身で襲われるかもしれないんだよ?私だって……たまにオーダーズ関係者ってことで騒ぎに巻き込まれかけたことあったし』

 

 華穂の心配をもちろん危惧してはいる。妹を危険には遭わせられないのはもちろんだ。だがやると決めた。俺はそれを覚悟していることを伝える。

 

「あぁ。だけど俺自身とジャンヌは俺が護る。華穂はもう戦いから離れろ」

 

『勝手なこと!』

 

「お前もいい年なんだ。相手見つけろ」

 

『はー?自分が相手見つけてるからって、人に偉そうなこと言ってんなっての!』

 

『ちょ……かほちーも元さんも落ち着いて!』

 

 二人の言い争いが過熱する。夢乃も止めようと間に入ってくる。しかしこれは兄妹の話だ。

 次元覇院が潰れた以上、もう華穂が戦う意味もないはずだ。だから俺は華穂にゆっくりと幸せに暮らしてほしい。その事を再度言う。

 

「もう次元覇院も潰れた。お前がオーダーズに所属する理由もないんだ!」

 

『そんなこと言っても決めるのは私だよ!このまま深絵さんやにぃ力になりたいもん!』

 

『ふ、二人とも~!』

 

 そんな二人を見かねてため息を吐いて見せる深絵。彼女はそれぞれの間を取り持つ。

 

『……はぁ、二人の言いたいこと分かるよ。元君の言うように華穂ちゃんが次元覇院を敵対することもないっちゃない。でもね、華穂ちゃんにとってはまだ決着つかないことも残っているんだよ』

 

「決着が着かないこと?」

 

『元君のお母さん、次元覇院が潰れても考えは同じかもよ?』

 

 深絵の言葉に息が詰まる。母が持ってきた話で華穂は危うく結婚されかけそうになった。なら母を説得しなければ、まだ華穂が三枝に戻れるわけでも、全ての問題が解決するわけでもないだろう。

 それが解決しなければ、華穂はまだ安心できない。それにまだ完全に潰れていないことが通信を入れてきた沙織の発言で明らかになる。

 

『話の途中すまない、私だ』

 

『あ、沙織ちゃん。どうしたの?』

 

『あぁ、深絵。先程こてつに報告が完了した。その時にアメリア軍の情報で、敵の親玉、大教柱が自決したらしい。しかも自決した場所が何かを研究・保管していたようなんだ。そしての一部が地下で別の場所に搬送されたらしい』

 

『研究……!ハジメ!』

 

 口を閉ざしていたジャンヌが反応する。研究していたとなればそれはおそらくMSの製造技術の秘密。元は確信する。

 

「間違いない、それはヴァイスインフィニットが……!」

 

『そうかは分かんないじゃん!』

 

『だが、その可能性は十分にあるとは思う。どうもこの区画はあまり知られていなかったらしい。自爆してでも守りたかった場所……後で自衛軍の部隊に調べてもらう』

 

 それだけ言って沙織は通信をカットした。

 捕らえられなかったとはいえ、ヴァイスインフィニットの手がかりになるかもしれない。もしそうなら出てこられなかったのは修復が間に合わなかった可能性が高い。今の内に補足出来れば……レイアを簡単に救出できるかも……。

 報告を聞いてジャンヌからも本音が漏れる。

 

『もし、それがヴァイスインフィニットなら……レイアさんも……』

 

「あぁ、助けられる日も遠くない。華穂、ヴァイスインフィニットが彼らに味方するのだとしたら、俺達は前に立ち続けなきゃいけない。それも含めて、俺は魔王に……」

 

『あぁ、もう!好きにすればいいよ!それで私があぶない目に遭ったら絶対に責任取ってもらうから!』

 

 完全にそっぽを向かれてしまうが、今はこれでいい。俺も戦いを止めた妹にまで危害を加え出したらその時は本気で叩き潰すだけだ。

 その危険性を踏まえたうえで進む。それを聞いた深絵は暗い声音で納得をする。

 

『そっか。二人はそのために戻ってきたもんね』

 

『で、でも深絵さん!』

 

『私もすっごく言いたいことはある。けどそれは二人で決めることだろうから。華穂ちゃんが納得したなら、私もそれでいい。サポートするだけだから』

 

『私は納得したわけじゃなくて呆れてるんですけどね……』

 

 深絵の言葉を華穂が訂正を入れる。そんな彼らにこてつで全部隊の動きをサポートしてくれていた藤谷司令から連絡が入る。

 

『さて、そろそろいいかな。君達』

 

『藤谷さん!』

 

『元君のこともいいが、どうやら作戦はここまでのようだ。帰還要請が出た。みんな、戻りたまえ』

 

「了解。帰投します」

 

 帰還命令を受けてそれぞれ戻るべき場所へと帰る。本当なら一度街に戻りたかった。父や母に会いたかった。無事なのか、そして華穂のことを後悔してくれているのか。けどそれは元自身の考え。今はそれを抑えて基地に戻る。

 元達は帰る。東響の、オーダーズ仮拠点へと。作戦は成功した。次元覇院は崩壊したのである。

 

 

 

 

 次元覇院の打ち立てた人類平和を謳ったプロジェクト・ホリン。しかしそれは結局のところ、人類を支配することを目的とした侵攻作戦に過ぎなかった。

 ホリン本体は作戦完了後日本政府へと接収された。日本政府、並びに援軍として派兵されたアメリア軍に技術的価値があるとして調査・研究される。他国からも技術供与を求める声が上がったが、次元覇院の他国とのつながりが見えるまでそれは保留とされた。それは続いて判明した事実が関係する。

 次元覇院の核となる存在、教柱達の取り調べによってプロジェクト・ホリン後の予定が判明した。

 彼らは打ち上げ完了後、妨害に繋がる各打ち上げ施設を襲撃、同時にホリンからは底部のビーム砲で各国軍隊を壊滅させるつもりだった。

 いずれも反逆を潰すための先手、しかし中にはターゲットとしない国がいくつか見られ、一部は教柱への尋問で協力者であったことが判明した。無論政府そのものがかは分からず、追及することは危険を伴うが、それだけでもその国への技術供与は認めがたく、国会でもそれら国家以外が承認した。

 それにより一部の軍の行動も確認されたが、それを他の国は許さず経済制裁を受けた。次元覇院の起こそうとした事態を重く受け止めていた証拠だった。

 やがて国内の次元覇院残党は次々と拘束されていく。総本山が制圧されたこと、そして教柱達が捕らえられたことで絶望し、自棄になって都市部へ侵攻したところをお縄となった。

そして一部は新たな目的を掲げて次元覇院も遺志を継ぐものとしても活動し出す。目的はただ一つ。次元覇院をこうした魔王、黒和元を処刑することを目指して。

 世界は変わる。敵対する者と、護る者を変えて。MSオーダーズもまた、新たな形へと変革する。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。次で第3章は最後なのです(´-ω-`)

レイ「ヴァイスインフィニットは、やっぱり次元覇院に居たんだね……」

ジャンヌ「あと少しの所まで迫れたのに……これからまた追っていくんですね、二人は」

まぁそのために世界を超えてきたんだから。ヴァイスインフィニットの追跡の為に、また組織を追っていく流れになりますね。

ジャンヌ「けど華穂さんも嫌なこと言われますよね。もう終わったから結婚しろって催促受けて」

でも元君もお兄さんだし、邪険に扱ってても大事なんですよ(´-ω-`)

レイ「それが嫌で家を出たのにね~」

けど元君も相手を見つけて無理矢理とはしないつもりですので。言ってても心配しての発言だと思いますよ。
それでは今回はここまでです。

レイ「次回、LEVEL3第三章の終わり!第四章はどうなるの?」

あ、四章は結構時間が飛んでいくので時代計算ミスしないか滅茶苦茶心配です( ;∀;)


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EPISODE44 終わる作戦、新たな始まり2

どうも、皆様。作者の藤和木 士です。今回はTwitterの予約ツイートで初めて投稿ツイートする予定です。

ネイ「アシスタントのネイです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよ~。ツイッターの投稿発言書く時にあれ、前と違うって思ったらまさかこっちも予約投稿出来るなんてねぇ」

おかげで前夜に投稿しても昼に宣伝の為にツイートが置けるってなると、割と嬉しい機能なんだよねぇ(´-ω-`)
そんな初めての予約ツイートの投稿はLEVEL2第3章の最後!EPISODE44となります。

ネイ「作戦は終わった、でもここからが始まりってことなんですね」

グリーフィア「新たな戦い、魔王としての戦いね」

元君達の、オーダーズの新たな始まりを見届けよ!( ゚Д゚)ってね。


 

 

 あの戦いから、2か月が経った。東響掃討戦、ホリン・ダウン作戦……立て続けに二度の大戦闘を経験したMSオーダーズ。彼らは復活の一途をたどっていた。

 新たな基地、「ベース・ネスト」の建築、支部の再構築、組織体系も自衛軍の管轄かつある程度の独自性を持ったものへと変わった。そして更なるMS、チームも誕生しつつあった。

 次世代型MS「ソルジアⅡ」。それらを優先的に配備されるSABER、RIOT、GARDMANに次ぐ第四のチーム「CROZE」。試作兵器運用、並びに遊撃を主軸に世界の争いを「閉ざす」ための部隊。

その隊長に選ばれたのは、無論。

 

 

 

 

「ハジメっ、新しい選抜者リスト、ここに置いておきますね」

 

「あぁ、ありがとうジャンヌ」

 

 ジャンヌからの声にそう返答する。自身の為に宛がわれた席、机。そこにジャンヌがいくつかの書類をポンと置いた。

 早速パソコンからその資料へと視線を変えて目を通していく。資料に載っているのはMSパイロットのデータ。自衛軍、それにオーダーズ各支部、更に一般で応募されたMS所持法取得者の物だ。

 俺は今、試作遊撃部隊「CROZE」の隊長となっている。副隊長は華穂。今、その試作部隊のメンバー選出を行っていた。

 MSのパイロットの選出など、初めての事だ。しかしこれもまた仕事の一つ。幸い事前に身元チェックで次元覇院やそれに連なる関係のある組織の人物はいないことが唯一の救いだ。戦闘経験、プロフィールから人選が出来る。

 元がこんな大役を仰せつかったことにジャンヌが驚きを示す。

 

「でもすごいですね。ハジメがここまで出世だなんて♪」

 

「出世、ねぇ。でも階級としては大尉待遇で前と同じなんだけどな」

 

 転移前のドラグディア軍の現階級は大尉。そして今のオーダーズ、もとい「現組織」の階級も大尉。同じ名前なのにやることが前よりも格段に増えている。どれだけアレク隊長達がこちらに負担を掛けないようにしてくれていたか、しみじみ分かる。

 今では転属してきた隊員達に改めてMSの動かし方を教えている。元々の教導部隊としての仕事を元も担当していた。

 不思議と昔を思い出す。マキナ・ドランディアに居た頃、MSのトレーニングをやっていた時の事を。俺は彼らに、自分の技能を教えることが出来るのだろうか。その為にもまずは採用したい人物をピックアップしているわけだ。

 ジャンヌもジャンヌで席に戻って自身の仕事を行う。最近は専ら、DNL能力者が今後更に発生した時の為の制度などを率先してひな形を作っている最中だ。それに今見ている資料をジャンヌも既に確認している。ジャンヌから見た人物採用も完了している。後々それぞれの意見をすり合わせていくのだ。

 夏も残暑に変わっていく中、二人は書類とにらめっこする。と、そこに席を外していた華穂が戻ってくる。

 

「今戻ったよー」

 

「おうお疲れー」

 

「お疲れ様です、カホさん。どうでしたか、新型MS、ソルジアⅡの触ってみた感触は」

 

「うんうん、全然違ったね。ソルジア・エースほどのピーキーさはないのに、性能はそれに追いつくくらいの性能だったよ!」

 

 華穂が行っていた新型MS「ソルジアⅡ」の試運転。それは見事に成功のようだ。確実にこの世界の技術はマキナ・ドランディアに近づいて行っている。いや、それ以上に進化しなければならない。

 次元覇院がヴァイスインフィニットからデータを受け取り、それを基に自分達のMSを作り上げたように。シュバルトゼロから生み出すのだ、新たなMSを、新たな力を。

 しかし彼女が来たのはその報告の為だけではない。華穂は少し顔をしかめて、今日の重要な約束事について言及した。

 

「って、それより二人とも仕事まだですか?今日はみんなで集まる約束ですよ?」

 

 

「急かすな。今終わる」

 

「私も丁度、ですね。行きましょうか、ハジメ」

 

 残っていた仕事を最低限終わらせて閉じる。そろそろ約束の時間だ。華穂と共に部屋を出る。

 今日は以前から決めていた日。すべての踏ん切りをつけて、改めて明日へ飛び立つための、俺達、そしてMSオーダーズにとっての大事な日だ。

 

 

 

 

「元君、ジャンヌちゃん、華穂ちゃんお疲れ様ー」

 

「二人も仕事に慣れて来たってところねー。そろそろ機体を動かす頃合いかしらねっ」

 

 途中で深絵と真希と合流する。深絵は光姫の跡を継いでSABER隊長、真希もガンダム専属の整備長として元と深絵、そして今は夢乃の機体を調整して今後の為に大忙しだ。

 ホリン・ダウン作戦でやられたシュバルトゼロも今はほとんど修復が完了している。これまでは現場まで動けなかったが、作戦復帰も近い。

 二人と共に目的地を目指す。外への自動扉を潜った先は庭園のような場所。中央には石碑が置かれていた。

 この場所の事に華穂が言及した。

 

「うん、ここもいい感じになってるね。休憩スペース兼、慰霊公園?庭園っていうの?」

 

「単に戦没者慰霊碑広場でいいだろうけどな」

 

「長い長い。けど、まさか光巴ちゃんが、作ってほしいって言うなんてね」

 

 ベース・ネスト南のスペースに建設された基地内庭園。隊員達の安らぎの場としての提供と同時に、これまでMSオーダーズに死力を尽くしてくれた兵士達の慰霊碑が建てられたこの場所は光巴からの懇願で作られた。

 子供がどうして、とも思ったが理由は実に単純かつ子供らしい、しかし論理的なものだった。

「みんなが忘れないように」。死んでいった者達の事を、自らの母親を後々組織に属する者達に忘れて行ってほしくない。そう彼女は俺達に要望した。もちろん、そのまま言ったわけではないが、彼女はその意味合いの言葉を言った。

 戦い続けることを優先する俺達大人では優先できないこと。しかしそれは大事なことだ。だから臨時司令として席を置き続けている藤谷司令も基地再建の際業者達に厳命した。それが今後のMSオーダーズ、組織の柱となり得る。象徴は団結の為に必要だと。

 子供っぽい意見で成立した仕様。基地の防衛性能は低下するが、それでも元はいいと思っていた。

 

「基地の中に作るってなった時はどうかと思ったが、そこも護らなきゃ意味がないって言われたからなぁ。まったくもってその通りだ」

 

「でもおかげで更なる防御機構の開発を考えるきっかけにもなったからね。公園としての機能を有しつつ、かつ防衛性能を落とさない。メカニックにも意見求められちゃって、まだそれは反映しきれていないけど」

 

 真希も今後の改装にため息と共に頭を振る。だがその表情は好奇心に満ち溢れていた。彼女ならきっと以前よりも強固な防衛システムを作り出してくれるに違いない。

 庭園を歩いていく、そして慰霊碑に着いた。中央には既に藤谷司令、沙織が佇んでいた。やってきた元達に藤谷達が挨拶する。

 

「やぁ、今日は記念すべき日、になるのかな?」

 

「そうですかね。うちの組織、MSオーダーズの新たな、そして本当の始まりっていう意味では」

 

「そのための力となる、元、ジャンヌ、そして深絵。光姫がいなくなった今、君達が新たに組織を引き継いでいく」

 

「はい。自衛軍のサポート組織として、サオリさん達をアシストしますっ」

 

「沙織ちゃんもこれからもよろしくねっ」

 

 これからも戦い続ける。そう確かめ合う。そして集まるべき最後の人物達も到着した。

 

「はじめおにーちゃん、ジャンヌおねーちゃん!」

 

「ミツハちゃん、久しぶりですね」

 

「遅れてすまない。私達が最後だったか」

 

「いや、俺達も今来たところだ」

 

「ゆめのん、二人の護衛ありがとう」

 

「かほちーも新型MSの性能テストから、すぐこれだから。後で何か食べにいこっ」

 

 黎人、光巴、そして夢乃。その三人が揃ってようやく本題に入れる。

 黎人の手には花束が握られていた。それは愛する妻光姫への、そして戦ってくれた仲間達への追悼のための物。それを持って慰霊碑の前に立つ。

 俺達は黎人の言葉を、後ろで静かに聴く。

 

「私達はもう一度立つ。この世界を、人々を、彼らと同じような正義に心酔した野獣から護るために、人の法を行使する。だが、そう思い続けること、生き残ることが出来たのは、君達が必死に戦ってくれたからこそだ。私達は忘れない。私達の道が君達によって生まれたことを、共に戦い、支えてくれたことを」

 

 死者への言葉。生き残れたのは彼らの犠牲の上で成り立っている。しかし忘れてはいけない。彼らがいなければ、俺たち自身が生き残れなかったかもしれない。いてくれたこと、そして共に戦ってくれたことの感謝は忘れることは出来ない。

 そんな彼らに恥じない俺達でいる。オーダーズメンバーは決意した。過去を乗り越える。黎人は言葉を続けた。

 

「君達の残した物を私達は護る。喜び、悲しみ、怒り……そして、希望を。だから、ゆっくりと眠っていてくれ、そして見ていてほしい。私達の作る明日を」

 

「ふっ、では私の役目もようやく終わりかな」

 

 花を手向けた黎人。それを無事見届け胸をなでおろした藤谷司令は黎人に歩み寄る。その手に握った司令証を彼に手渡した。

 驚きはしない。これは既に決まっていた。政府からも彼の責任追及は済んだとお達しがあった。今後はその「新たなる組織」運用の司令官へと就任する。それは、まさに今だった。

 藤谷司令は辞令を下した。

 

「では次元黎人君、MSオーダーズ、いや、Human Order to the World、HOW(ハウ)の司令官として君を任命する。次元覇院は壊滅した。しかしその同調者や同じMSによる武装集団が活動を活発化させている。それを許さないのが政府の決定だ。自衛軍、そしてHOW。君達が世界の守護者としてなることを願う」

 

「ハイ。必ず、人々を奴らの暴力から護ります」

 

 黎人はそれを受理した。彼の返答に反応して、元達もまた目を細くし、姿勢を改めた。

 MSオーダーズは生まれ変わる。HOWへと変わる。名前だけではない。これからは人類の未来の為に戦うのだ。

 HOWへの変わるその瞬間を見届けたオーダーズメンバー。そう、ここから始まる。俺達HOWの戦いが。

 人の意志による世界を、築くために。それが世界にとって一番平和でいられると、信じて。

 そして魔王の進撃もまた、ここから始まる。神と真反対の、存在する者の象徴としての戦い。次に黒和元の前に立つのは、誰か。

 

 

第3章 END

 

NEXT CHAPTER AND NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。後は黒の館DNだけですね(゚∀゚)

ネイ「HOW……どのくらいの、の英単語の意味でしたっけ?」

まぁそこらへんは今色々と問題になってる世界機構みたいに当て文字だよ(;・∀・)

グリーフィア「こっちはそんな忖度するようなこと起こさないといいわねぇ~」

あはは(´▽`*)それが一番だね。まぁそう言ってる時点で現実の方は終わってるんだろうけどな(゚Д゚;)
これからはHOWの成長に合わせて元君ととある少女を絡めた物語が始まっていきます(゚∀゚)

グリーフィア「おやおや~これはまた新しいメインキャラクターの登場かしらね?」

ネイ「どうなっていくんでしょう……これからの戦い……」

それでは今回はここまでです。

ネイ「次回は黒の館DN二本立てです。是非、ご覧ください」


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黒の館DN 神騒乱勃発編 第7回 前編

どうも、皆様。前回はツイッターの予約ツイートが発信できておらず、嘘となってしまい申し訳ありませんでした。作者の藤和木 士です。あれなんで送れないのか、私にも分からんのですよ(ユニコーンEP3)

今回は黒の館DNの第7回、その前後編となります。前編では前回紹介し損ねた輸送船こてつと、マキシマム・ホーリー、並びにタイラントの紹介になります。

それでは黒の館DN、開館です。


 

 

士「LEVEL2も第3章まで終了!作者の藤和木 士です(゚∀゚)」

 

レイ「アシスタントのレイだよー!今回は久々の前編後編構成!」

 

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです。ここまで引っ張ってきた機体の紹介がようやくできますね、藤和木」

 

士「マキシマム・ホーリー、クリムゾンゼロガンダムの性能とか前回の時に明かせない部分が多かったからね。あとこてつ紹介するの忘れてたよ(´ρ`)今回紹介するね」

 

レイ「あー忘れちゃダメだよ。艦艇とかも大事なデータなんだから」

 

ジャンヌ「まぁ、それも今回紹介すればいいだけです。そうですよね?」

 

士「面目ない(´・ω・`)」

 

レイ「じゃあまず前半はこてつから、どうぞ!」

 

 

MS運用試験艦「こてつ」

型式番号 37AMS

全長220メートル

最大MS搭載数30機

 

・かねてから開発されていたMS運用母艦。その試作型として完成したのがこの「こてつ」である。名称は「虎鉄」から。艦長は藤谷努。

 既存の航空空母を改造した艦であり、マキナ・ドランディアのようなDNジェネレーターもとい次元粒子発生器搭載型ではない。当然ながらビーム砲も搭載されていない。

 MSの輸送・運用に特化させた艦で、MSの発進のための甲板には昇降機とカタパルトが常備されている。またホリン・ダウン作戦ではクリムゾンゼロガンダム用に艦に用いない予備の次元粒子発生器を積載してエネルギー供給に役立てたなど汎用性は高い。元々が戦闘機の母艦として開発されていたためかMSの搭載量も多めになっている(とはいえ現状のMS運用空母はこれと同型として建造された自衛軍の試作艦のみのため、比べられるものはほとんどない)。

本艦はホリン・ダウン作戦にて黒和元とジャンヌ・ファーフニルの駆るクリムゾンゼロガンダムの母艦として運用された。また同型2番艦から4番艦「ふうと」「あきなみ」「せいなん」が参加。これらを基にMS運用艦開発を進めていく予定である。なお型式番号は自衛軍の命名法にのっとっていて、AMSの記号で試作MS運用母艦を指す。本来なら空中母艦ではなく普通の艦艇となる予定だったのだが、マキナ・ドランディアの技術を知った黎人は方針を変更して空中浮遊可能な母艦作成に乗り出している。

 

 

【武装】

・近接防御火器システム

 艦の最低限の防御の為に搭載されるバルカン砲。本来ならMSが艦の護衛にあたるため武装は最低限のものとなっている。

 

 

レイ「以上が艦艇の紹介になるのかな?あれ、次元覇院のは?」

 

ジャンヌ「確かに……ありませんでしたっけ?」

 

士「ありはしたんだけどもう既存兵器の艦艇を小改造したやつってことで設定起こしませんでした_(:3 )∠」_こてつも現実の艦艇からあんまり変わっていないけどね。コンテナ部分の量を増加させたりとかくらいだし」

 

レイ「ふーん。ていうかビーム兵器すらもないんだね」

 

士「ないよ(´・ω・`)防御手段も有効なのもない、完全に船にMSを乗せるための機能を取り付けただけの輸送船程度の能力しかない。マキナ・ドランディアみたいな空中艦艇とか戦艦はまだ早い」

 

ジャンヌ「じゃあ、いつ出るんです?」

 

士「それは……LEVEL3で分かる!( ゚Д゚)」

 

レイ「つまりLEVEL3までは出ないってことだね」

 

ジャンヌ「そう言うことですね。じゃあ次は……マキシマム・ホーリーとマキシマム・タイラント、でしょうか?」

 

士「そうですね。じゃあ解説お願い」

 

ジャンヌ「了解しました。では本章における最大の敵、マキシマム・ホーリーとその強化ユニット、タイラントアーマーことマキシマム・タイラントの紹介になります。それでは、どうぞ」

 

 

ZHMS-03MXH

マキシマム・ホーリー

 

機体解説

 本時代におけるハイスペック機に位置しながらも、量産性を兼ね備えた新型MSマキシマム。その機体を人工衛星ホリン守護用に改修したのがこのマキシマム・ホーリーである。

 マキシマムとの違いとしてバックパックが大型のバーニア内蔵ウイングバインダーへと変更されており、機動力をより重視した設定となっている。そのほかに変形機構を施したクローシールドを装備しており、それにも次元覇院お得意のリフレクトパネルが施されている。機体カラーは白にオレンジ。

 武装こそ少ないがどれも一級品の性能を誇る。だが本機最大の特徴は専用大型アーマー「タイラントアーマー」への合体であり、合体することで次元覇院の対MSオーダーズ最終決戦用MS「マキシマム・タイラント」へと換装する。

 機体そのものは2機製造されて、どちらも戦神官沢下判により運用。クリムゾンゼロガンダムおよびシュバルトゼロガンダムRⅡFⅡと交戦。1号機はクリムゾンゼロにやられ、2号機もタイラントへと換装して猛攻撃を仕掛けるも「ARES MODE」を発現したシュバルトゼロガンダムに完膚無きままに叩き潰された。

 コンセプトとしては「ダハック・ダーマ×ガンダムダンタリオン・パーフェクトカウル+サイズダウン化」。ダハックはGのレコンギスタにて登場した機体で、MAダーマの内部に格納される機体。シールドはその蓋を兼ねており、この点に関してダンタリオンの特徴を持っていると言える。なお本機の前身にあたるマキシマムのモデルであるジャイオーンと本機のモデルであるダハックは同じ開発元、そして前身機、発展機の関係にあたる。

 

 

【機能】

・リフレクトシールド

 機体のシールドに張り込まれたビーム反射シールド装甲材。マキシマムで得られた技術を更に改良して実弾に対しても十分な防御力、そして衝撃耐性を得られている。

 

・合体機能

 本機専用のアーマーユニット「タイラントアーマー」を装着して「マキシマム・タイラント」へと移行する。

 合体時には機体を格納、格納部をシールドで覆って蓋、および頭部として運用する。また背部のウイングユニットは翼を立ててアーマー後方にスライド分離・合体を行ってタイラントの推進器として機能させる(バックパックそのものは中の機体に残るが、ウイングだけ機体外に露出させる構造)。

 なお合体時には機体の四肢を内部で固定させて衝撃に備える。

 

 

【武装】

・ビームライフル

 これまでの運用で起きていた問題点を解決、主力兵装として十分な性能を持ち合わせた次元覇院機体の完成モデル。腰背部に一丁装備する。

 通常射撃出力に加え高出力弾、連射出力などを放てる万能兵器で、現時点でこれだけの性能を盛り込める次元覇院の技術力の高さがうかがえる。

 

・ビームサーベル

 近接戦対応の標準的な兵装。サイドアーマー、そしてウイングパーツにそれぞれ装備・内蔵する。

 

・アサルトエッジ/バレットアックス

 シールド裏面に横から格納される実体剣および複合アックス。

 アサルトエッジは実体剣の兵装で取り回しが利く。バレットアックスの方は持ち手部分が銃となっていて、ビームガンを放てる。またバレットアックスの銃口下部には挿入口が備えられており、後述する機能にて使用される。

 これら兵装は柄と銃口下部のスリットを合体させて大振りの大剣「ユナイト・ガン・ソード」へと換装が可能となっている。本兵装こそオウ・ヒュドラの尾部内部に収められるべき兵装である。オリジナルは1号機に装備されていたが2号機およびタイラント出現時には1号機の本兵装を合わせて二刀流で攻めかかった。

 

・アーマー・リフレクトシールド

 機体の左腕に装備されるビーム反射素材で出来たシールド。不使用時にはリアアーマーに装備される。

 これまで通りビームを跳ね返す他、下部を展開してのクローアーム、アサルトエッジ、バレットアックスの内包、追加のスラスター、更にタイラントの前面装甲形成など本機になくてはならない機能を数多く備える。

 また下部クローには近接弾幕形成のビームマシンガンを2門備え、弾幕形成も担う。リアアーマー装着時にはスラスターとしても機能させる。

 武装モデルはガンダムダンタリオンのアイギス。

 

・アーム内蔵ウイングユニット「ホリン・ウイング」

 機体のバックパックを構成するウイングユニット。1対の翼であり、機動性を担う。内部にはサブアームユニットとビームサーベルを備え、両手の武装も合わせた四刀流なども可能となっている。

 タイラントアーマー合体時にはアーマー後方からウイングパーツのみバックパック基部から分離して展開。タイラントのスラスターを兼ねる。この時にはアームユニットはほぼ機能しない。

 

 

 

ZHMS-03MXT

マキシマム・タイラント

 

機体解説

 マキシマム・ホーリーが増加アーマーユニット「タイラントアーマー」を装着した姿。全身にリフレクトパネルを採用した白銀のMSとなっている。

 タイラントアーマー自体は空飛ぶ車と言ったイメージのサブフライトシステムであり、変形して装着形態へと移行する。2機が製造、運用された。

装着というより格納が正しく、マキシマム・ホーリーは動力兼制御ユニットとなる。通常のMSよりも一回り大きく、増加装甲を付けていたシュバルトゼロガンダム・イグナイトも大きい。

 次元粒子発生器は機体側の1基とアーマーの背部・脚部に1基ずつ、計4基を搭載しており、出力でシュバルトゼロガンダムRⅡFⅡと互角の戦闘を行える。更に全パーツをフル稼働させた「最大稼働形態」ではMSオーダーズのエース三人とも渡り合え、エラクスシステムにも劣らない性能を見せる。

 戦闘スタイルとしては巨腕とユナイト・ガン・ソードによる格闘戦、射撃戦を主体とする。加えてタイラントアーマー肩部には遠隔操作端末「アーマーシェルユニット」が4基増加装甲として搭載されており、合体中の防衛や敵への追撃に使用される。

 しかし多重ジェネレーター仕様によりパイロットの次元粒子汚染が深刻なものとなっており、本形態へと換装を行った沢下とゲルツは暴走状態となってしまっていた。

 次元覇院のMS技術の集大成とも呼べる機体の1機で、ホリン打ち上げ後は更に量産化される予定だったが、最終的に次元覇院のほとんどのメンバーがホリン・ダウン作戦にて拘束されて計画は凍結した。

 また本作戦で投入されたタイラントアーマーは試作型で、試作型だけの特殊な機能としてバックパックを外したマキシマムとのドッキングが可能。この機能はゲルツ搭乗時に使用され、前面装甲は折りたたまれていた内部パーツを展開して形成された。その関係上こちらは中央装甲がホーリーの時より脆い。加えて武装もその関係上少なく、ウイングユニットの内部が空洞になっている。

 モデルはGのレコンギスタのダハック+ダーマ、そして鉄血のオルフェンズ黒鋼のガンダムダンタリオンパーフェクトカウル。ただし体形的にはアッガイなどにも見える。ちなみに変則的な多重DNジェネレーター仕様機である。

 

【機能】

・リフレクト装甲

 機体全体を構成したリフレクトパネル機能搭載の装甲。機体全体がビーム反射機能を持っており、ビーム反射許容量も必然的に向上。排熱機能は洗練された。ビーム兵器で本機を撃破することは非常に困難を極める。

 ここに来てようやくモデル元のアカツキの性能に近いものとなった。

 

・巡航形態

 機体を更に変形させて高速移動用の簡易巡航形態になれる。あくまで長距離飛行を優先しているためスピードはさほどない。

 

・最大稼働形態

 機体の各部性能リミッターを解除した形態。粒子発生器をオーバードライブさせて出力が2.5倍に跳ね上がっている。理屈としてはエラクスに近いが、ジェネレーターの完成度の違いから「マキシマイズ」に似たようなもの。

 発生器を暴走させているため使用後に粒子発生器はほぼ全損状態となる。

 

 

【武装】

・マルチウエポンアーム

 機体の腕部を構成する武器腕。腕部の指はビームライフル、掌がビームシールド、そして手の甲がビームスパイクとなる多機能構造。

 体前面を形成するシールド内部に収められたユナイト・ガン・ソードも扱うが、この武器腕もまた強力な兵装であることに間違いない。

 武装モデルは機動戦士ガンダムのジオングの有線アーム内蔵ビーム砲、革命機ヴァルヴレイヴのキルシュバオムの腕部ビーム砲。

 

・ユナイト・ガン・ソード

 体前面の装甲となったアーマー・リフレクトシールドから取り出されるアサルトエッジ・バレットアックスが合体して完成する大剣。

 アックス側の持ち手が更に展開してこちら用の持ち手が出現して用いる仕組み。バレットアックスのビーム弾も強化されており、遠近どちらも脅威。

 モデルとしてはよくある合体兵装。

 

・アーマー・ビームマシンガン

 シールド部分に内蔵されていたビームマシンガンが合体時には前方に向けて砲身を切り替えて発射することが可能となっている。

 弾幕を形成して敵機の動きを封じたり、機体からの負荷を抑えながらミサイルなどの誘導兵器の撃墜を主眼としている。

 

・射撃ドローン「アーマーシェルユニット」

 機体肩部に4基装備されるアーマーユニット兼遠隔操作端末。ビーム射撃と浮遊盾として用いられる。

 このユニットにもリフレクトパネルが採用されており、防御性能は高い。またシェル同士を集合させた高出力砲撃も可能で、本機を遠近隙のない攻めを実現している。

アーマー合体時に自動でけん制が行われる。

 

・アーマードウイングユニット「ネオホリン・ウイング」

 マキシマム・ホーリーの背部から本機の背部へとスライド分離したホリン・ウイングにアーマーを通して内側からドッキングすることで完全に機能を解放する追加スラスター装置。

通常でもホリン・ウイングとの合体で内部機関の小羽のパーツが展開しており、機動性が向上している。アームユニットは本形態では使用不可能となっている。

 マキシマムが装備する場合は本兵装がそのままウイングとなる。内部が若干空洞となるが、そのスペースにもスラスターが装備されているため推進性能は誤差の範囲である。

 なお名称のホリンは人工衛星ホリンの名称と同じ次元覇院における「最後の楽園」を示す言葉である。

 

 

ジャンヌ「以上マキシマム・ホーリーとタイラントアーマー、マキシマム・タイラントの紹介になります。マキシマム・ホーリー、単体では普通のシュバルトゼロと同等に戦える程度の性能ですが、タイラントアーマーとの合体でより強力な力を引き出せるとのことですね」

 

士「その通り。シュバルトゼロガンダムにおけるGワイバーンのようにね。ただその引き出し方は少し違う」

 

レイ「本編中じゃあDNジェネレーター複数積みで無理矢理出力を上げていたんだっけ。でも紅い粒子を放出するタイプのジェネレーター複数装備は危険だってジャンヌ・Fちゃんも言ってたんだよね?」

 

士「DNによる身体・精神汚染。これは前からダブルジェネレーター仕様の機体がエースしか許可されていないっていう時点から決めていた設定で、ドラグディア・マキナスでも自然と守られていた法則でした。ただMSのDNジェネレーターに課せられる最低ラインってことで、MAとか空中戦艦はそうなりにくい。これは充分なDNシャットアウト技術が盛り込まれているってことと単純に機体の大きさが大きいから粒子が溜まりにくいってことでね」

 

ジャンヌ「それを知らずにいた次元覇院はこの機体の危険性を顧みず採用して、結果沢下がああなったと。いえ、ゲルツもでしょうか?」

 

士「実は次元覇院も精神異常を起こすことは知ってたりする(´・ω・`)けどむしろそれを次元覇院側のメリット、言葉と合わせて一種の「洗脳」として使徒増加に使っていたって設定なんだよね」

 

レイ「敗北は必然だった、ってこと?」

 

士「言ってしまえばそうなるね(´・ω・`)後々出す用語設定集でも言うけど、この効果は一種の麻薬。現実の麻薬も医療用として使われる国もあるみたいな話を聞くけど、使い方を誤れば危険だ。通常のDNジェネレーター、あるいは次元粒子発生器も用法を守って正しく扱いましょう(´-ω-`)」

 

ジャンヌ「ですが、それでガンダムと対等以上に渡り合えたっていうのは脅威的ですよね。イグナイターだとどうなっていたんです?」

 

士「(´・ω・`)難しい質問だねぇ。考えていなかったけど考察すると、僅差でイグナイターが勝っていたと思うね」

 

レイ「ほうほう」

 

士「まずイグナイターは射撃と近接のバランスが取れている。そしてそれを十分生かせる機動性を持っている。タイラントも機動性能は高い。でもジェネレーターの量に任せた無理矢理な出力で賄ってるから初速度が遅い。ただDN汚染によるパイロットの感覚鋭敏、それが当時の元では対応しきれていない。これは元の同じ能力者との対決が少なかった故に起こった後れを取ったってこと。その点でマイナスだね」

 

ジャンヌ「ふぅん、宇宙世紀にガンダムの、対ニュータイプ戦が確立できていなかったようなものと?」

 

士「そんな感じ。ただアレスモード移行後は慣れてきてるから、その時は途中から慣れてきていたかもしれない。いずれにせよ苦戦していたのには変わりない。やっぱりまだまだ戦闘経験が足りてないから、これからっていうのが元君に対する総評だね」

 

レイ「あらら……残念」

 

士「それにかかる負荷が全然違うって言ってるからね。アレスモードじゃジャンヌ・Fへの負担なく強化出来てるから、動きもだいぶ良くなる。だからマキシマム・タイラントに勝てたわけだし」

 

ジャンヌ「そうなんですね」

 

レイ「だからイグナイターだと僅差で勝てるってことなんだね」

 

士「そういうこと。まぁ他にも言いたいことはあるけど、前半はここらへんで区切りを付けるかな」

 

レイ「後半も私とジャンヌちゃんだよ!」

 

ジャンヌ「レイさんと一緒に、今度はガンダムの武装紹介ですっ」

 




前編はここまでです。

最後の方でイグナイターがマキシマム・タイラントと戦っていたら優勢、みたいに書いていますが、補足すると要はパイロットの差です。
マキシマム・タイラント自体もスペックでは第一部のラスボス、マギナリアス・エンペラーとは大差ない性能、というよりそもそも裏設定では設計段階だったマギナリアス・エンペラーのデータをあらかじめヴァイスインフィニットが盗み、こちらの世界に持ち込んでいた物です。

それを次元覇院が性能を限りなく似せたのがマキシマム・タイラント。そこにDN汚染もあって元君の不利は限りなく確定していたわけです。
しかしそれを乗り越えた新たな姿「アレス」。その詳細は後編へと続きます。


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黒の館DN 神騒乱勃発編 第7回 後編

黒の館DN後編始まります。作者の藤和木 士です。

第7回を締めるのはシュバルトゼロガンダムが転身した二つの形態、クリムゾンゼロとアレスモードです。……すみません嘘です。加えてブラウジーベンの追加兵装、試作ビームブレードガンも紹介します。

どちらも今後を左右する性能を誇る物達です。是非ご覧ください。

それではどうぞ。


 

 

士「さて、後半も始めて参ります、作者の藤和木 士です(´っ・ω・)っ」

 

レイ「引き続き、アシスタントのレイだよー」

 

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです。後半の紹介はシュバルトゼロガンダムが変化した二種類の強化形態、そして作中で追加された深絵さんのブラウジーベン専用試作兵装試作ビームブレードガン「ブルー・ジョーカー」です」

 

レイ「いやぁ、にしても深絵ちゃんにまさかもう一種類装備がふえるなんてね」

 

ジャンヌ「ガンランチャーで終わりかと思ってましたよね」

 

士「いや、私もふとアイデアが降りてきたんだよね。ブラウジーベンの後継機の専用ライフル、いきなり出して大丈夫か?って。だからそのための前置きってことで、即興で追加しました(゚∀゚)」

 

レイ「思い付きかい!」

 

士「そうだよ( ゚Д゚)だから試作なんだよ」

 

ジャンヌ「便利な言葉ですね、試作って」

 

士「否定しない(*´ω`)さて、では紹介よろしくっ」

 

レイ「じゃあまずはその試作ビームブレードガンから~」

 

 

試作ビームブレードガン「ブルー・ジョーカー」

 

解説

 碌な近接戦兵装を持たないブラウジーベン、そして深絵のために真希が突貫で組み上げた実験兵装。

 名前の通りシュバルトゼロガンダムの装備するブレードガンをベース元としている。違いとして中央の銃口からは近距離での発砲を前提とした杭発砲のレールガンとなっていることと、ブレードが文字通りビームブレードとなっている事である。

 発振元は銃口上下に取りつけたユニットから二つを同時に使用することで、もとのブレードガンに似た形状の非常に高出力のビーム刃を形成する。このビームユニットはビーム刃を展開しない場合は連装ビームガンとしても扱え、多機能性を有している。

 また接近戦を不得手とする深絵のために距離の取れる槍として銃のストックがスライド、持ち手となるようにしている。

 実は本兵装は後々開発される予定のビットからのビームによる突撃槍形成を行うビームスナイパーライフルの技術検証用として作られたもので、今回の作戦での実戦投入はなかった(深絵からのオーダーでガンランチャーを作ったため、装備スペースがなかった)。

 ところが作戦途中でガンランチャーが弾詰まりを起こし、それ以前に深絵達の苦戦を知った真希が須藤司令に運搬を要請。結果四ツ田基地戦闘機「F-22改」の兵装コンテナミサイルを介して戦場にいた深絵のブラウジーベンへと届けた。

 初使用だったが華穂達のアシストもありマキシマム・タイラント(マキシマム仕様)を撃破。その際邪魔だった両肩コンテナをパージしての機動戦を行い、今後の深絵搭乗機開発の指針となった。

 

 

レイ「以上が試作ビームブレードガンの紹介になるよ。……試作っていうけど、ブレードガンはもう元君のがあるよね?」

 

ジャンヌ「何に対する試作、なんです?」

 

士「MSオーダーズが作るブレードガンの試作、それからビーム刃のみを形成するブレードガンは今回が初めてになるからって意味だね。さっき言ったようにブラウジーベンの今後開発される後継機の装備としての試作品でもあるわけだし」

 

レイ「槍の形成……スナイパーライフルに?」

 

士「どう作るの?って言いたそうだね(;・∀・)」

 

ジャンヌ「ライフルの側面にビーム口を作るってやり方くらいですけど。思いつくのって」

 

士「フフフ、そこは考えてますよ。まぁその話はLEVEL3辺りででも出ますよ。もしかすると彼女の機体は第4章で紹介するかも?」

 

レイ「こうご期待って感じだね。じゃあ次は」

 

ジャンヌ「元さんの機体ですね。クリムゾンゼロガンダムと、シュバルトゼロガンダムの新たな形態「アレスモード」の詳細です。是非どうぞ」

 

 

クリムゾンゼロガンダム

形式番号 なし

 

機体解説

Gワイバーンを失ったシュバルトゼロガンダム【Repair-ⅡFafnirⅡ】に機体本体へと転送されていたエヴォリュート・アッププログラムが自動判断してロートケーニギンガンダムの装備だった試作遠隔操作アクセラレータドローン「ヴァルプルギス」をウイングユニット側面に装着し、変化した機体。

 機体色が黒・灰に加え赤色となっている他、アクセラレータドローンが大容量コンデンサ搭載円盤型ファンネル「ジェネレーター・ファンネル」へと変貌を遂げている。またホリン・ダウン作戦においてはロートケーニギンの専用兵装だった「紋章の盾」を改造して装備、主兵装の一つとして活用した。

 この形態に至った原因としては元が再び親しい友人を失ったことによる「怒り」が作用したとみられる。またこれまでと一転して射撃戦重視の追加装備のセッティングもロートケーニギンを意識した物であり、元が彼女の分も背負って戦うことを決意した形態であると言える。また本形態は非常に限定的でホリン・ダウン作戦途中でジェネレーター・ファンネル自壊後に自動的にもとのシュバルトゼロガンダムへと戻ってしまい、また同じパーツで再度変容を起こそうとしても変わることはなかった。

 モデルは「流星のロックマン3 ブラックエース/レッドジョーカー」のそれぞれのファイナライズ形態「ブラックエース」と「レッドジョーカー」を融合させたもの。

 二次創作の産物だがプレイした人なら誰もが考えたと思われる形態であり、今回それぞれをベースの1つとしているシュバルトゼロガンダム・ロートケーニギンガンダムの合わさった姿として偶然的に誕生した形で登場させることとなった。

 

【追加機能】

・ジェネレーター・コンデンサ

 ロートケーニギンのパーツだったアクセラレータドローンの変容したジェネレーター・ファンネル内部には貯蔵タンクと言うにはあまりに大容量のエネルギー貯蔵量を誇る。

分離状態でも大出力砲撃を放てるほどとなったそれは、コンデンサ自体がDNジェネレーターを内蔵したのと同じほどの運用が可能となった。シュバルトゼロガンダムに残っていたデータによれば、コンデンサの内部が一種の異空間となっていたことが判明。次元空間とも違うそれにツインジェネレーターシステムから生み出される高純度DNが大量に補充、結果として分離稼働状態でもあり得ない程の粒子ビームを放つことが出来たとされる。

 エヴォリュート・アップによる進化の結果とされるが、これに近い技術に本作品におけるMS格納システムが該当。戦後は本機能を研究して次世代ハイスペック機の運用システムに搭載できるよう再現に苦心している。

 

 

【追加武装】

・ジェネレーター・ファンネル

 ウイングユニット側面のハードポイントシステムに装備される、円盤型ファンネル。

 ロートケーニギンの武装であったアクセラレータドローンが変容したもので、機能はそれの据え置き。

 しかし規模が明らかにおかしい。分離状態での連続稼働時間はもちろん、高出力ビームを何度撃ってもエネルギー切れにならず、本兵装を介した高出力DNFを3発撃ってもファンネル側のエネルギーが少量残るなどこれまでのシュバルトゼロガンダムと同じく規格外の性能を誇る。

 他にもDNウォールが展開可能など高性能さを見せたが、最終的にマキシマム・ホーリーとの対決で自壊、喪失してしまう。データのみシュバルトゼロガンダムの機体ログに残っており、本システムを今後生かせるように再現中。

 

・多目的ランチャー「秩序の盾(オルトヌング・シルト)

 ロートケーニギンの専用追加兵装だった「紋章の盾」を改造して左腕用にしたシールド併設型ビームランチャー。

 変更点としてアタッチメント式ビームランチャーを廃止して両刃の突撃槍「ボウゲン・ランツェ」を装備。刃を分割して砲身にしてビームを撃てる。本来なら突き刺した後に砲身を無理矢理開いてビームを装甲の内側に撃ちこむという対リフレクトパネル用戦法も取れるはずだったが、突貫作業だったためか実戦にて刃が折れてしまうアクシデントに見舞われた。

 紋章の盾ではビームランチャー部と持ち手から分離可能だったが今回は腕部のシールド接続部からその先が分離可能。シールドを携行したまま他の武器の切り替えが可能となっている。

 紋章の盾の改良型であるためその部分のモデルは省くが、ボウゲン・ランツェのモデルは「蒼穹のファフナー」にて登場する武器「ルガーランス」。ファフナーシリーズにおける主兵装の一つであり、突き刺した後に防御機能のない中身へ向けての攻撃は本作でもビームを無効化する敵機への有効手段となる、はずだった。

 

 

 

シュバルトゼロガンダム(アレスモード)

 

 

解説

・シュバルトゼロガンダムが突如発動させたモード。具体的な原理は不明だが機体のユグドラシルフレームだけが赤く染まる。

 このモード起動中には機体の機動性、特に運動性が上がり、エラクス使用時と似た赤い残光を残して移動する。またMSによる肉弾戦性能も異常なまでに向上しており、機体フレーム・装甲がそれに耐えられるよう剛性も上がる。更にこのモード発動中は火の粉のように飛び散るDNが敵の射撃攻撃を減衰させており、防御性能まで持ち合わせる。

元来シュバルトゼロガンダムではディメンションナックルなどで近接戦を仕掛ける場面が多かったが、これによりその性能が飛躍的に高まっている。

 その引き換えに射撃性能は出力がカットされてしまっている。それに準じてファンネルもコントロール能力が落ちてしまう。ただしDNFを用いる際は別で、その圧倒的な出力で射撃攻撃を交えたDNFを放てる(とはいえそのDNFも射撃するとはいえゼロ距離から撃ちこむことが前提。もしくは逢魔心火のように攻撃力のない磁場形成くらい)。

 ホリン・ダウン作戦の最終場面でマキシマム・タイラントからのトドメの一撃をもらう直前に本形態へ変貌、攻撃を回避した。機能の発現について理解は出来なかったものの、本機の持つ圧倒的性能でタイラントを圧倒、MSオーダーズを勝利へと導いた。

 このモード発動には元もスタートすら知らない「何か」が関与していることが現時点で判明している。ホリン・ダウン作戦後も本機能は詳細不明のままシュバルトゼロの切り札として使用が続けられている。本形態使用後は沢下との会話で言及された「神殺しの魔王」という呼称を使うようにもなった。アレスと言えばオリンポス十二神の軍神アレスだが、果たして……。

 

 

ジャンヌ「以上がクリムゾンゼロガンダムとアレスモードについての詳細です」

 

レイ「順に見てくと、クリムゾンゼロガンダムは光姫ちゃんのロートケーニギンのパーツを取り込んだ機体なんだよね」

 

士「ドローンユニットを取り込んだだけでこれに変貌して、作戦時には紋章の盾を改造した秩序の盾を装備している機体だね。なお秩序の盾は本当に対次元覇院MS用に調整されたはずだったんですけどね……;つД`)」

 

レイ「なんで折れちゃったかなぁ」

 

士「原作のファフナーじゃルガーランスは多々折れるんだよぉ!」

 

ジャンヌ「それを見事に受け継いだと。でもジェネレーター・ファンネルの解説思い切っていますね。異空間が中にあるって」

 

士「ここら辺はLEVEL3の元君の機体のある装備の為に設定してるから。単なるエネルギータンクとしての機能を超えた、ちょっとガンダムらしくないシステムを考え中なのでお楽しみを」

 

レイ「ふむふむ~。じゃあアレスの方になるけど……思いっきりこれ、神様の名前だよね?」

 

士「うん、オリンポスのアレスだね。ただし私は決してFG○の第2部5章のあれから発想得たわけじゃないです、決してそれが発端でこの名前を考えたわけじゃないです。起きたことは把握してるけどな!( ゚Д゚)」

 

ジャンヌ「それ発想得たのと同義では?」

 

士「私の発想元はギガン○ィック・フォーミュラだよ!( ゚Д゚)スサノヲだよ!……とまぁ、確かに神の名は関しているけど、今のところ明確にアレスの力かどうかは分かっていない設定だからね」

 

レイ「でも伏字三文字」

 

士「???みたいなもんだから」

 

ジャンヌ「戦争を司る神だそうですが?」

 

士「そういうの割と神話じゃ多いよ!ま、神ってことは分かってるけどね。でもそれに関しても「神として崇め奉られた」って書き方だから、本当の意味で神かどうかは分からない。それこそFG○の時みたいな「あれ」って感じかもしれないわけだし」

 

ジャンヌ「説明があれとかそういうのとかばかりですが、ネタバレ避けるためです。ご了承を」

 

士「私も全部見たってわけじゃないけど、たまたま見かけてさ。まじかってなったわ。とりあえずそれは置いておこう」

 

レイ「けどこっちも性能思い切ってるね。射撃に関する性能を排除するって。これはジャンヌ・Fちゃんが制御担当している射撃機能も省いてるってことだよね?」

 

士「そうなるよ。ファンネルとかも射撃性能が落ちるし何よりもプロテクション形成が不可能になるからね(;・∀・)」

 

ジャンヌ「一応作中ではほぼ防御兵装無くしたうえでの覚醒だったので、困りませんでしたが以降の発動では肩のシールドの存在が重要になりそうですね」

 

士「まぁ抜け道として作中でもちらっと使用されたガンダムお得意の謎力場的なユグドラルフィールドは防御可能。防御のための兵装じゃないからカウントされていないという」

 

レイ「ユグドラルフィールドォ……。ってか今更だけどユグドラシルフィールドではないんだね」

 

士「まんま同じでも面白くないからね。バトスピでも同じものを指す名称を別名で出して別のスピリット出すとかやってるし」

 

ジャンヌ「オーディンとかヴォーダンとかいますもんね」

 

士「それに元君のシュバルトゼロガンダムのフレームは全部その素材で構成されているから「ユグドラシルフレーム」なのであって、部分的に採用した機体も登場させる予定だからそれとの違いをね。ある意味サイコフレームとフルサイコフレームの違いみたいなものだ」

 

レイ「あ、これ完璧版なんだ。どんな機体がこの素材使うんだろうねぇ~」

 

ジャンヌ「そもそもこれ地球で生成できるんです……?」

 

士「LEVEL3までの……えーとひぃふぅ……11年間くらいの間には出来てるよ」

 

ジャンヌ「じゅっ、11年!?」

 

レイ「思い切って年代飛ぶねぇ……え、その年代の理由は?」

 

士「大きな要因としては光巴ちゃんが高校生になるから。LEVEL3の時代ではMSは高校生からMS所持法の為に学校での作業用MS操作の授業とかがあるようにするからね。彼女もMSに乗せられるように。あと、次の第4章からのキャラと、LEVEL3からの新キャラもとい新主人公も高校生でMSパイロットになる(´Д`)」

 

ジャンヌ「うわっ、まさかの主人公追加ですか?」

 

士「元君がその新主人公と第4章からのキャラを指導しながらって感じだね。まぁどうやってMSに乗るかは……今の段階で言ってしまえば初代ガンダムっぽいです( ゚Д゚)」

 

レイ「コロニーに落ちてたガンダム!」

 

ジャンヌ「マニュアルあるんですね」

 

士「まぁ流石に全部同じじゃないけどね(;´・ω・)オマージュとして、だ。シュバルトゼロガンダムの初使用があれだったから、オーソドックスを考えてる」

 

レイ「初戦闘は……あぁ、暴走……乗っ取られてた?」

 

士「そんな感じそんな感じ」

 

ジャンヌ「思えばそこからよくここまで戦い抜いたものですよ元さんも。周りから教えられてきた元さんがこのLEVEL2から教える側になってきていますし」

 

士「第4章では多々年代が変わっていきます。一つの事件が過ぎたら2、3年経ってたり。まぁ最初の話は第3章最後からわずかな時間なんですが、衝撃がちと大きいというか(;´・ω・)と、そろそろ締めますか」

 

レイ「第4章タイトルは……「新世代(ニュージェネレーション) 二人の少女」!!……あれ、新キャラ二人来るの!?」

 




黒の館DN閉館です。次章タイトルは「新世代 二人の少女」となっている通り、二人の女性新キャラクターを中心にLEVEL3に向けた事件を追っていくことになります。

あと何度も言っておきますが、作者はFG○やってません( ゚Д゚)やってないけどpi○iv辞典とか見てると最新項目とか気になるタイプなんです。それで知りました。いや、やっておけば良かったと思ってます。

クリムゾンゼロは書いている通り、流星3のブラックエース、レッドジョーカーのオリジナル融合体がベースです。前作をお読みの方は勘づくかもしれませんが、実はそれも前作時点で考えていました。

ただ出せなかった。すまないです(;・∀・)それを踏まえてアレスモードに関しましてですが、これに関しては前作で一切考えていない形態、というか今後の形態に関してはほぼ前作SSRにて考えていた設定とつながりのないものとなっています。またオリンポス12神という、神殺しの魔王を標榜するようになった元君には相応しくない名称の選定かもしれませんが、色々と事情があるのです。

もっともアレスとシュバルトゼロガンダム、もっと言えばアレスと私の考える黒のガンダムにはつながりはあります。それには申しているとおり、機神大戦と関わりがあります。

それでは今回はここまでと言うことで。第4章は目まぐるしく作中時間帯が変わりますので、お付き合いいただけると幸いです。またお会いしましょう。


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第4章 新世代(ニュージェネレーション) 二人の少女
EPISODE45 止まらない悲しみ1


ど、どうも皆様。バトスピSBでダブルオー優勝だぁと報告しながら駄弁るシーン書こうとしたら、いつもの次話投稿画面が何か新しくなっていることに驚いてしまった藤和木 士です……え、何が追加されたの(゚Д゚;)

レイ「アシスタントのレイだよーっ。00ライザーさっすがぁ!一発で戦況が変わったよ!」

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです。流石ダブルオーライザー。ガンダムの名称を得られなかった分、性能は折り紙付きでしたね」

まぁね、本当にガンダム00強いですよ。組むだけならかなり安く組めて、なおかつ強いんですからコラボスターター内ではSEEDと並んで最優秀だと思います。
とその話は置いてEPISODE45の公開です。LEVEL2第4章の始まりです。

ジャンヌ「LEVEL2最後の章になりますか……」

レイ「魔王と名乗るようになった元君だけど、タイトルからしていきなり悲しいことになりそう……」

さぁ、一体どんな悲しみが止まらないのか?それでは本編をどうぞ。


 

 

 HOWの活動開始から1か月も経たない頃、黒和元とジャンヌ・ファーフニル、黒和華穂は三枝県を訪れていた。

 未だ次元覇院の残党、檀家が残るこの街は感謝する人間もいるが、多くの人間が教化され、憎むものが多かった。MSオーダーズに関係した組織の人間が訪れるには、非常に危険な土地のままだ。

 にもかかわらず三人が訪れたのには訳があった。会わなければいけない人がいる。会って、説得しなければいけない人が。HOWの黎人達にも許可を取り、危険を冒して彼らはその人物と会った。

 しかし、予感は的中した。夜の雨の中を、彼らは走る。

 

 

「はっ、はっ!」

 

「いたぞ!絶対に逃がすな!」

 

 ジャンヌ達を連れて、夏用のジャケットを濡らしながら路地を走る。三人は一人の初老の男性を連れて走る。

 MSならどうにでもなるだろうが、なるべく表立ってMSを使いたくはなかった。もし使えば、戦場になりかねない。目的の為でも、住んでいたこの街を傷つけるなど……。

 走り続けるうちに初老の男性が足を止めて元達に言った。

 

「も、もういい……お前達だけで行けッ」

 

「父さん!?」

 

「親父、何言って……」

 

「もういいんだ。母さんを置いて父さんだけがお前達の所に行くなんて……出来はしない」

 

 初老の男性は二人の父だった。父のここを離れないという言葉に二人は諦めず説得を続ける。

 父の言うように、本当は母も連れ出すはずだった。しかし母は俺達と会うことを聞いて、あろうことか次元覇院の残党に伝えた。子どもの事を売ったのだ。二人を三枝県から連れ出す予定だった元達は見事に次元覇院の残党と密会現場で鉢合わせ。銃を持ち出した彼らを蹴散らし、何とか父だけでもと連れ出してここまでの逃走劇を演じてきた。

 父は次元覇院のやり方に異を唱え続け、母を戻そうとしていた。華穂の事も心配して、死んだと思われた元の事も忘れずにいてくれたというのだ。昔から父は家族の事を護ってくれていた。そんな父を置いて行けるわけがない。

 二人の気持ちを尊重しながらも、ジャンヌはここをMS無しで切り抜けるのは難しいと進言した。MSを使うべきだと。

 

「ですが、このままでは私達が捕まります。……最悪、死んでしまうかも」

 

「確かにそうだ。もうここはお袋を置いて親父だけでも」

 

 母を見捨てて、父だけでもと言いかけた元。しかしその発言に父の一喝が飛んだ。

 

「元、母さんをそんな風に言うな」

 

「親父」

 

「お前達の言いたいことは分かる。だけどな、母さんはお前達の母さんなんだ。父さんは母さんと一生を誓い合った。裏切ることは出来ない」

 

 父の言葉は分かるつもりだ。結婚した時の誓いを果たす。それが夫婦の務めだということも。

 だが納得しがたい。子どもだって親の無事を願う時はある。鬱陶しく思う時があっても、重い病気の時は嫌がる親を病院へと連れて行くときのように。今父にだけでも彼らの魔の手から逃れて欲しかった。父自身のためでもあるし、同時に元達の今後の為にも、だ。

 人質に取られて動けない、なんてことになるのはごめんだ。俺は何とかしてこの場を潜り抜けられる方法を考えながら、走る。だがMSを使う以上に理想的なプランが見つからない。何とか港まで抜けられれば……。

 直後残党に見つかる。

 

「見つけた!撃てェ!」

 

「きゃっ!」

 

「ちぃ!」

 

 物陰にジャンヌを引き寄せ銃でけん制する。華穂達は来た道を一部引き返して逃げ道を探る。ところが途中で元達の父がその足を止めた。

 

「親父?」

 

「もういい」

 

「父さん!」

 

 諦めを口にした父。華穂は認められずその手を引こうとするが、ジャンヌが静かにその手を抑える。

 

「お二人のお父様の言う通りです。既に、囲まれています。逃げ場は……もう」

 

「そんな……」

 

 ジャンヌの言う通り、周囲を何人かが囲みつつあった。この状況で全員脱出するにはMSしかない。ならばMSで、とも思ったが父は二人に頼み込む。

 

「最後に、二人に会えてよかった」

 

「親父……」

 

「嫌だよ……お父さん!」

 

 泣きつく華穂。涙がすぐに雨で同化して分からなくなる。父は息子である元に最後の願いを言う。

 

「元、最後の頼みだ。俺を殺せ」

 

「何を……!」

 

「俺だけじゃない。母さんもだ。明日俺と母さんは、母さんの連れてきた養子の息子と共に、桑南(くわな)の永島スパランドに行く。お前達ともよく行った場所だ。そこで殺してくれ」

 

「ふざけんな!」

 

 何かの悪い冗談だ。殺してくれだなんて。そんなことをするためにここまで来たんじゃない!父に殴りかかるように胸倉を掴んだ、父はそれでも屈せずに俺に叱ってくる。

 

「今のお前は仲間を背負っている!海上での戦いも見た。お前が魔王と名乗ったことも!」

 

「!」

 

「人類の未来を背負って戦う魔王……結構なことだ。何であれ、お前があそこから立ち直ってくれたんだからな。それを俺や母さんの事で立ち止まらせるのは親として恥ずかしいんだよ!」

 

 両親はもちろん柚羽の事で意気消沈した元のことを知っていた。将来が不安視されてカウンセリングを受けさせようとしていたことを元は知っている。

 どうやってもやる気を持てずにいた元の未来を心配してくれていた両親。母親はどうか怪しいが、それでも一定以上の気は掛けていてくれていた。元が消えたと知った時には号泣していたと華穂から聞いている。

 そんな彼ら、少なくとも父からしてみれば、今の元は非常に希望に満ちていたのだ。魔王と名乗っても人の為に、護りたい人の為に戦う元を応援してくれていた。

 

「こんな可愛い彼女さんだっているんだ。そんな彼女さんに恥ずかしいと思わないのか」

 

「か、彼女っ!」

 

「そんなんじゃ……」

 

「何を躊躇っている。魔王と名乗って、この程度の覚悟だったのか、お前は!」

 

 父の叱責を受ける元の心が揺れる。その名詞に嘘偽りはない。魔王であると言い続けなければならない。

 父はそれを分かって厳しく声を掛けてくれている。父の言葉に、裏切りたくない。意を決し、元は縦に頷いた。

 

「………………分かった」

 

「にぃ!?」

 

「元」

 

「昔よく行ったあのテーマパークのレストランでやるよ。外の席にいて……!」

 

 父に狙撃地点を教えてすぐに元はジャンヌと華穂の腰を抱える。次の瞬間には父を置いて素早く壁を蹴って廃ビルのベランダ部分に逃げ込んだ。直後数人の足音と共に会話が聞こえる。

 

「おい、HOWの奴らはどうした!」

 

「あいつらなら私を置いて逃げ去ったよ。ここを離れたくないとごねたらもういい、とね」

 

 父は事実を含めつつも適度にぼやかしてくれていた。これなら逃げられる。二人に対し静かに行動することをハンドサインで伝え、俺達はその場を離れる。これが父と直接言葉を交わした、最後の時間だった。

 

 

 

 

 翌日、華穂達は父元時(もととき)の言葉に従い、永島スパランドの遊園地近くまで来ていた。

 永島スパランドは温泉施設と遊園地部分の存在する複合型テーマパーク。遊園地部分には大型プールも併設されていて、夏と年末の時期には多くの人でにぎわう。そうでなくても花火なども見られて閑静な地方でも県外からも人が来る場所だった。

 今いる建物からも遊園地の外観が良く見える。昔はにぃやお父さん、お母さんと一緒に色んなのに乗ったなぁ。けど歳が重なるにつれて、にぃとお父さんはスパの方に良く行くようになって、私は母さんと遊園地の方に行くようになったけど。

 双眼鏡で狙撃地点を確認していたジャンヌが施設に対し感想を口にする。

 

「ここがお二人もよく行っていた思い出の地、なんですね」

 

「そう。にぃが向こうの世界に渡ってからは、全然来てなかったけど」

 

「そりゃそうだろ。あの後お前深絵に泣きついて東響まで行ったんだからな」

 

 兄の発言にうるさい、と一言釘を刺す。実際それが事実なのは否めないが。それほど行ったわけでもない場所だが、それでもここには家族の思い出がある。

 そんな場所が両親の死に場所になるなんて。しかも殺そうとしているのは他でもない子どもの私とにぃの二人。いや、ジャンヌさんも合わせて三人だ。狙撃地点を改めて双眼鏡で確認する。狙撃地点となるレストランにはターゲット以外にも多くの家族連れ、恋人達が食事をとっていた。

 母と父は小さな子供と共に食事を取っていた。あの子どもこそ、華穂が東響へ逃げた後、次元覇院から育ててほしいと言われ育てたという子どもだろう。

 話によればオーダーズとの戦いで親を失った子どもだったらしいが、そんなのは知らない。父さんと母さんの子どもは私とにぃだけなんだ。よりにもよって、あいつらの思想に従った親の子どもなんて。

 それを受け入れた母を殴りたいと思っていた。母だけでも自分が、と言ったのだが兄には聞き入れてもらえなかった。

 

『私怨だけで動くな。それこそ奴らとどこが違う』

 

 にぃに正論言われたのは悔しいが、大人しく従う。ここで勝手に動いて、深絵さんとかに迷惑が掛かるのも嫌だし。逃走に力を貸してくれる四ツ田基地の面々は大丈夫だろうか。最新MS「エアフォース」は中々扱いの難しい機体だが……まぁ須藤司令の事だから、上手くやってくれるだろう。

 狙撃銃を組み立てが終わると、兄は早速銃を構える。スコープ越しに覗く兄の視線が鋭くなるのを見る。

 

「………………」

 

 静かだ。実に静かに目標を狙い定めている。感覚だけでほぼ狙撃を成功させている深絵さんとは違うけど、集中しているのは明らかだ。

 兄の集中を邪魔するわけにはいかない。最初の狙撃が失敗すればターゲットが騒いでこちらが捕まりかねないから。しかし邪魔にならないように離れようとした時、それに気づく。

 

「……!」

 

 兄の手が震えている。口元もわずかに動いていた。覚悟なんて出来ていないのだ。

 

「ハジメ、手が」

 

「大丈夫だ。まだ……!」

 

 ジャンヌも気付いて指摘する。だが元は問題ないとスコープを覗き続ける。覗いた先に見えているであろう父と母の姿。その最期を最初に見るのは兄なのだ。

 私がやる。そう言いたかった。憎しみで母だけでも撃てれば……にぃがこれ以上背負う必要なんてない。

 しかし元はそう言う前に、行動に移した。

 

「っ、今!」

 

 トリガーが引き絞られる。直後銃撃音が鳴る。慌てて華穂とジャンヌは双眼鏡を覗いた。双眼鏡で見える景色。確かに母が頭を打ち抜かれて血を流しているのが見えた。

 狙撃の成功で第一段階はクリアした。異変に気づいて周囲の客がパニックを起こす。人が狙撃の当たらない場所へと駆けだしていき、二度目の狙撃は難しいように思えた。しかし、父はそれを分かって行動した。

 

「父さんが、前に!」

 

「ハジメっ」

 

 父は一歩前に歩み出た。狙撃が通りやすくなるように、あるいは後ろに逃がした養子と死んだ母を庇うように。

 それを見てからの兄の行動は早かった。構えなおしてすぐに二射目を放つ。弾は狂いなく父の眉間を撃った。父は少量の出血と共に地面へと倒れ込んだ。

 やったんだ、本当に。自然と呼吸が過度に行われる。やってしまったこと重大さを改めて感じ取る。けれどそれはにぃもまた感じ、いや、私以上のショックを受けていた。

 

「……くぅ……なんで、なんでこんな……っ」

 

「にぃ……」

 

「ハジメ、気持ちは分かりますが行きましょう。敵に補足されます」

 

 ジャンヌの言う通り、これだけの騒ぎに次元覇院の残党が動かないとは思えない。警察もまだ次元覇院に毒されたままで正常化がなされていない。今は涙を堪えて県外へ出なければ。

 

「あぁ、分かってる!」

 

 兄も分かっていると言って荒々しくスターターを装着する。それは両親を撃ってしまったことのやるせなさか。乱暴にスターターの装依ボタンを押してシュバルトゼロガンダムへと装依した。

 ライフルを持ってその場を離れる。兄の機体と手を繋いで、エラクスで急速離脱。そのまま愛智へと飛び去った。

 もう父と母は居ない。この事件の後、にぃは恨んでくれと言った。でもそんなこと出来なかった。しょうがなかった。それが父の願いでもあったんだ。それからにぃは早く結婚しろと言うようになった。最初はそれとなく拒絶していたけど、だんだんそれを聴き入れて、三年後私はMSオーダーズ訓練学校時代の同級生で、HOWのRIOT部隊の隊員と結婚した。まぁ、ひと悶着はあったけど、良かったと思う。

 だけど、忘れちゃいけない。あの時の事を。そしていつか向き合わなくちゃいけない。にぃと、その罪を。

 

 

 

 

 その時の事件は犯人不明の狙撃事件として警察、そして軍によって処理された。のちに次元覇院の残党が、次元覇院の未来を担う子どもの芽を摘み取ろうとした事件だと暴動を起こしたが、それも愛智県の四ツ田基地自衛軍部隊のMSエアフォースの部隊によって制圧させられた。

 実際には事実その通りだが、事実は完全に闇に葬られることになった。これはシュバルトゼロガンダムを戦線に立たせるための苦肉の策であった。魔王に注目を集め、日本を宗教から切り離し、再編するための。

 しかし皮肉にもこの事件を発端として各地のカルト集団の活動は活発・多様化していくこととなる。

 時は四年後に飛ぶ。これはとあるカルト組織の戦闘から始まる、魔王と一人の少女との出会いだ。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。今日00を使ってきたからか知らないけど滅茶苦茶刹那と重なってしまう元君……

レイ「いや、重ならないよ!?元君の場合はやるしかなかったって感じで、むしろアレルヤさんじゃない!?」

生憎、私のデッキはアレルヤ入ってないんだ(゚∀゚)

レイ「まさかのここでハブラレルヤ……ってそんなことじゃない!本当にああするしかなかったの?」

けどお父さんも言ってたでしょ。子どもの邪魔になりたくないって。元君も父親の覚悟に応えて、そうしたんだよ。もっとも今回の行動は隠密行動が優先だったから、救出の時もMSを表立って使えなかったわけだけども。

ジャンヌ「……その隠密行動厳守の理由とは?」

ヘタに刺激して残党の過激派に口実を与えないためってところかな。過激派の中にまだ元君の家族をどうにもならなくした元凶の母方の叔母が残ってたし、元君もその人とは面識を避けたかったっていうのがある設定だし。

レイ「でも……やっぱりお父さんだけでも助けた方が良かったんじゃ」

けどお父さん自身も次元覇院の情報、特に周辺の人間情報を知っていたから残党からしてみれば情報が渡るのは阻止したかったってのがある。余計な追撃をもらうよりは、組織にも負担がない。これ以上ない、最適な結末って感じなんだよ(´・ω・`)悲しいけど。

ジャンヌ「そう、なんですかね……」

それにもっと言うとシュバルトゼロガンダムをこの時点で動かすのはあまりベストではなかったし。

レイ「それって?」

クリムゾンゼロガンダムのデータ解析とか、アレスモードの処遇についてとか混乱していたんだよ。特にアレスモードは出所不明なもんだから、使うべきかってことで上が悩んでいたの。そのせいでシュバルトゼロガンダムは実質アレスモードなしで運用しなきゃいけなかった。その状態だと戦力も恐ろしく減少するし。

ジャンヌ「それは……確かに、戦闘は避けたかったというのはありますね」

レイ「華穂ちゃんもいたから下手に撃墜なんてされるよりは……良かったのかな……」

けどこの事件は兄妹にとって無視できない物ではある。結果的に華穂ちゃんは結婚して戦線離脱したから、これからどうなることか……。
というところで今回はここまでです。

ジャンヌ「次回、もタイトル続くってことは、悲しみがまた続くってことですよね……」

まぁ誰のって書いてないけどね(;・∀・)

ジャンヌ「じゃあ、次回もよろしくお願いします」


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番外編5 リマインド・メモリー

どうも皆様。好きなコアガンダムの換装パーツはユーラヴェンガンダムです、作者の藤和木 士です。エクバとかに参戦するときアーマーどうなるんだろ……主力のアースリィとジュピターヴくらいしか換装候補に入らないのかな、かな。ユーラヴェン出せ?;つД`)

レイ「あはは……アシスタントのレイだよー。私はやっぱりネプテイトかなぁ。マーズフォーも剣で好きだけど」

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです。今日8月21日は本作ヒロインにしてわたくしモチーフのキャラ「ジャンヌ・ファーフニル」の誕生日。ということで番外編5はそれに関連したお話です。え、私は……とりあえずジュピターヴで」

ジャンヌ・Fの誕生日がテーマだけども、中身としてはそれが半々となっています。もう半分は投稿時最新話のLEVEL3EPISODE2時点でも登場していないシュバルトゼロガンダムの後継機のお話が混ざっております。
もちろん関係があるんです。それは気づかなければいけない現実、そしてこれからの目標。というわけで番外編をどうぞ。


 

 

 2025年、8月某日。HOWの活動が始まって間もない頃の事。黒和元達は忙しい日々を送っていた。新組織の活動となると人員の増員などやることも多い。加えてこの人工島「ピースランド」の開発も並行し、人の往来が激しくなる中この一か月間はまともに休息も取れない者達も多かっただろう。

 そんな時、元はふと、とある場所を訪れていた。それはHOWの試作兵器開発ガレージ。そこに安置された、ある兵器の亡骸を見るために。

 

 

 

 

 ガレージの扉を認証キーで開く。中に入ると、そこにあったのはとある機械の残骸。爆発によりひしゃげた装甲。しかしその外見は特殊なためか、面影がすぐに判別できる。

 西洋の竜のような頭部装甲。これはかつてシュバルトゼロガンダムの強化パーツとなっていた機械竜、Gワイバーンの残骸であった。東響掃討戦で無理な負荷で外れ、その後元達をビームから庇って大破した。

 その残骸はもはや機能する見込みはない。あれから二か月も経てば残っている電力もないだろう。そんな残骸に近づき、その頭部を撫でる。

 

「………………」

 

 過去の過ちを正すことはできない。それでもあの時に戻れたらと思う。犯した二つの罪。それぞれで失ってしまった二つの希望。

 傍に座り込んだまま、しばらく経つ。不意に扉が開かれる。振り向くと、扉を開けた人物と目が合う。

 

「あぁ、元君か」

 

「来馬さん。どうしました」

 

「いや、一応ここの管理は私だからね。ドアが開いたのを知って、慌ててきたんだよ」

 

 来馬はそう語る。ガンダムの整備主任ということもあり、彼女もまたHOWの主要メンバーの一人となる。異変を察知してこっちに来たのだという。

 その手間に申し訳なさを感じ、ついつい開けてしまったことを謝罪する。

 

「すみません。わざわざ手間を掛けさせて」

 

「いいよいいよ。元々これの所有者は元君なんだし。気になるのも無理はないからねぇ」

 

「……すいません」

 

 ため息を漏らす。仕事の手が空いたのでふらっと立ち寄ったのが裏目に出てしまった。すぐに出ようとした矢先にふと元は話題を振った。

 

「……あの、来馬さん。今時間ありますか?」

 

「ん?あぁ……作れるとは思うけど」

 

「手間を掛けさせて申し訳ないんですが、世間話というか、こいつの事で話したいことが」

 

 残骸を指して言う。二人は一旦この部屋を後にする。やってきたのは開発施設の一室。そこで元は話題を切り出した。

 

「……Gワイバーンのパーツを使った、新兵器?」

 

「って言ってもレストアってわけじゃない。Gワイバーンの性能を受け継いだ、ガンダムの新たな兵装の開発をお願いしたいんだ」

 

 新兵器の開発。それは開発者でもある来馬相手だからこその頼みだった。それを来馬も分かっており、了承しつつも気になった件を尋ねてくる。

 

「それはいいんだけど……どうしてGワイバーンに固執するの?」

 

「……まぁ、固執っていうか、愛着だな」

 

「愛着……あぁ、そう言うの分かるかも」

 

 その一言を聞いてなんとなく事情を察せられる。Gワイバーンに関する話を持ち出す。

 

「Gワイバーンは元々シュバルトゼロガンダムと同系統のガンダムの強化兵装として大昔に開発された支援兵器だ。そしてそれはガンダムとの同時運用で真価を発揮するようになっていた」

 

「うん。合体機構による戦闘能力向上と、次元世界の移動だったよね?」

 

「そう。……実は、本当なら今日、本来なら一旦あっちに戻ろうと思っていたんだ。報告がてら、それと、ジャンヌの誕生日だから」

 

「あぁ、なるほど……えっ、でも壊れて……」

 

 壊れてしまえばマキナ・ドランディアには戻れない。それに頷く。

 

「壊れちまったから、大分算段が狂った。次元世界移動機構は向こうで研究されてもらっているとはいえ、こっちの実運用データも欲しいと言われていた。こっちに来られるのはだいぶ先だろう」

 

「うわぁ……じゃあこっちで直した方が早いわけだ。ジャンヌちゃんも災難だねぇ」

 

 来馬の指摘に頷いて見せる。この失態が果たしてどこまで尾を引いて来るのか。それをこちら側でも解決したい。しかし、それ以上に去来する想いがあった。

 それに来馬もまた気づいていた。先程の言葉に言及する。

 

「……って、そういえばそうじゃん!今日ジャンヌちゃんの誕生日!プレゼント用意したの?」

 

「一応は。でもメインはそのGワイバーン再生プログラム「プロジェクト・リ・ワイバーン」ですよ」

 

「うわぁ……こっちに押し付けですか……いい御身分で」

 

「まさしくそうだ。だから、通った時の設計案は既に出来ている」

 

 そう言ってメモリーカードに入れていたプロジェクトの概要、所謂要求性能の概算を見せる。

 その内容に頷く来馬。

 

「ふんふん……まぁ出来ないことはないと思う。上の方でも次元世界移動っていうのには大分関心持ってもらえてるし」

 

「それなら」

 

「でも出来るとは大きな違いだよ。やっぱり次元世界移動の機能がネックになってくると思う。それにこの設計だと大分シュバルトゼロガンダムそのものも改造が必要になると思う。これを出すってことは、つまり?」

 

 問いかけに頷く。流石、整備主任だ。こちらの考えていることをすべて想定してくれている。その通りだと俺は語る。

 

「あぁ。少し早いかもしれないが、シュバルトゼロガンダムの後継機開発もお願いしたい」

 

 シュバルトゼロガンダムの後継機開発。それ自体はマキナ・ドランディアでも考えられていた。シュバルトゼロガンダムに匹敵するMSが開発出来た時点で、シュバルトゼロガンダムは旧式と言っても過言ではなくなってしまう。MS戦において、操縦技術も重要だがやはりもっとも大事なのは「性能差」なのだ。

 もし技術で上回れない相手が現れた時に備えて、機体の開発は前々から計画しておく必要がある。Gワイバーンをそのまま直しているだけでは足りないかもしれない。その為のGワイバーンのパーツを用いた「新兵器」の開発なのだ。その新兵器は新造されたシュバルトゼロガンダムの後継機とセットで運用する。これが元の考えだった。

 全貌を聞かされた来馬は疲れ切ったように大きくため息をつく。わしゃわしゃと髪をかき分け、その道がとても遠足であると伝える。

 

「はぁ~……それ、すっごく負担になるって分かってる?」

 

「開発に時間がかかるのは覚悟している。その間旧式のシュバルトゼロガンダムで挑まないといけないのも。だけど、そのうえで頼みたい。まだ白のガンダム、ヴァイスインフィニットがいるのなら、シュバルトゼロガンダムはそれに追いつけないといけない」

 

 まだ再会していないあの強敵との対峙のために。そこに込められた強い願いを言葉に感じ取った彼女がその首を縦に振った。

 

「……分かった。この事黎人君には?」

 

「まだだ。今の今まで、俺自身の中で考えていただけだからな」

 

「じゃあ、私から提言しておくよ。元君がそう言ってたからって。それより、今日のジャンヌちゃんの誕生日、ちゃんと祝ってあげなさいな。ほら、行った行った!これから資料まとめるから!」

 

 彼女に背中を押される形で厄介払いを受ける。自分の事を気にかけているくらいなら、そんな必要はないとでもいうのだろうか。

 しかしその好意をありがたく受け、小さくその場に言葉を残す。

 

「……ありがとう」

 

 

 

 

 8月21日の仕事が終わり、ジャンヌはハジメに連れられ、食堂まで来ていた。その理由は無論、誕生日のお祝いだった。

 

「誕生日おめでとうございます、ジャンヌさん!」

 

「わわ、カホさん、みなさんも知っていらしたんですか?」

 

 抱き付いて来たカホに驚きつつ、訊き返す。自分の誕生日は出会った時辺りに限られた人物しか知らなかったと思ったのだが、それ以上の人間が祝いに来ていた。

 ミエがここに至るまでの経緯を話す。

 

「知ってたっていうか、教えてたっていうのが正解だね。華穂ちゃん夢乃ちゃんが中心になってジャンヌちゃんの知り合いに知らせてもらって、今に至るってこと」

 

「あんまり大事になっても迷惑だと言ったんだが……ま、しばらく根詰めていたからたまにはいいかもな」

 

「迷惑だなんて、とんでもない。ありがとうございますっ♪」

 

 ハジメにそう返す。カホとユメノはそれを聞いて集まった全員に今日は花を咲かせる様にと伝える。

 

「それじゃあ今日は楽しみましょう!」

 

「まずはプレゼント……は、元さんが一番最初の方がいいです?」

 

「そうしてくれるのなら、そうさせてもらおう。最初に話しておきたいこともあるからな」

 

 ハジメは言って全員に聞かせるように、「プロジェクト」を話し出す。

 

「今日来馬さんとも話したが、さっき黎人から正式にシュバルトゼロガンダムの後継機開発計画が発足することが決定した」

 

「シュバルトゼロガンダムの!」

 

 思わぬ知らせに私は目を丸くした。マキナ・ドランディアでも触れられていたシュバルトゼロガンダムの後継機開発がこちらでもスタートする。それは驚きと共に期待を寄せる。

 しかしその必要性に疑問視する声もあった。カホなどはその一人だった。

 

「え、もう後継機?別にまだ大丈夫なんじゃ……」

 

「それに至るのは、やはりイグナイターが使えないためですか?」

 

 イグナイターへの変化がない、その重大性はジャンヌも理解していた。それに代わるアレスモードも緊急的に発現したためにまだ信頼性が薄かった。使い方もこれから吟味していかないといけない。それに頼り切らなくていいように、新たな高性能機は欲しいと思っていたのだ。

 指摘に対しハジメは頷く。が、それ以外の理由についてもハジメは触れた。

 

「あぁ。だがそれ以上に俺がどうにかしたいと思っているものがある」

 

「どうにかしたい?」

 

「次元世界移動機能、「Dトラベルコントローラー」の修復だ」

 

 その言葉に声を詰まらせる。忘れていた。Gワイバーンが消えたということは、つまりそれも意味することに。

 機能の意味に分からずにいる数名。だが私はそれを事実として改めて重く受け止める。

 

「……そう、ですね。今次元世界を移動することは出来ない。それは、私の世界に帰ることが出来ないって……」

 

「えっ、ジャンヌさん?」

 

「忘れてました、今日、本当なら報告の為にマキナ・ドランディアに帰るってこと。お母さんに怒られちゃうな……でも、当日に戻れるわけでもないから、気に、しなくても……」

 

 気にしないで。そう言った私自身の視界が霞む。いや、違う。目元をこするとその手に水滴が付着した。自分の涙、我慢しきれなかった分が目から零れる。

 途端に室内の空気が重くなる。ミツハもいるのに悪いことをしてしまった。謝罪しようとした時、彼女が言う。

 

「おねえちゃん、さびしいの?」

 

「ぇ?」

 

「おかあさんにあいたいって、きこえてくるよ?」

 

 ミツハの言うようなことは口に出していない。きっとDNLとしての力だろう。彼女の力の発達に驚く間に彼女は行動に移した。

 

「じゃあおうたをうたってあげる!ずっとれんしゅうしてたの!」

 

「歌……」

 

 おそらく誕生日の為に練習してくれたのだろう。まさか歌い手の自分が歌を聴かされる時が来るなんて。ハジメに支えられながら席に座り、その歌を聴く姿勢になる。そして彼女が歌う。

 

 

「♪~~♪~♪~~~」

 

 

 その歌はこの世界でチャートに並ぶ曲だった。小さな子ども達が歌う曲で、巷で流行っていると聞く。何気ない日常を歌った曲は自分の歌う世界への感謝を込めた歌とは違う、無邪気さを感じさせる。

 そんな自分とは方向性の違う歌だったが、ジャンヌは思い出す。MSに乗ってからよく聞くようになった授業での先生の言葉、「歌に込めるのは想い。大切に思う者への気持ち。それをいつでも思い返して、どこでも歌えるようになればもう一人前の歌い手である」と。

 

「……フフッ」

 

 笑みが零れる。涙も気にしない笑顔。その横顔に安心した様子のハジメを見た。

 

「ジャンヌ?」

 

「ハジメ……もう大丈夫です。私はどこでだって立てる。戦場でもあなたの横で立ち続ける。そして生きる。生き続ける。だから、護ってくださいね。私の事、私が護りたいもの」

 

 ハジメに何度も問いかけ続けた問い。言って私は視線を戻す。小さな歌い手の精一杯の歌声。それにかつての自分を見出して。

 この歌声を、歌に込めた想いを護っていく。それが私の使命。詩巫女として誓うこの世界での使命。ハジメは横でそっと答えてくれた。

 

「あぁ。分かってる」

 

「うん。ありがとう」

 

 そこで歌が終わる。見事に歌い上げたミツハにカホ達が称賛する。

 

「あーすごいすごい!今話題のあの曲だよね?あの子達に負けず劣らずだったー!」

 

「そうだね。歌の才能あるかも」

 

「ありがとー、かほおねえちゃん、ゆめのおばちゃん」

 

「おばちゃんは早いって!?」

 

「あっはっは!言われてるー」

 

「むぅぅ……華穂?」

 

 好評な娘の歌の感想を黎人がこちらにも求めてくる。

 

「少し前から練習していてな。どうだった?詩巫女と呼ばれる君には指摘されることも多いだろうが、あの子なりに頑張ったと思う」

 

 遠慮しがちな黎人にそんな心配はないと私は言った。

 

「そんなことないです。私の先生がおっしゃっていた歌の基本をちゃんと捉えています。文句なしですよ」

 

「な、なんかそう言われると照れるな」

 

「照れるのは普通言われた本人だろう?」

 

「お、親としての喜びだ」

 

「ハジメもきっと分かるときが来ますって」

 

 そんなこんなでミツハの歌で場の雰囲気は和やかさを取り戻す。ミツハ本人もこちらに感想を求めた。

 

「どう?じょーずにうたえてた?」

 

「えぇ。ありがとうミツハちゃん」

 

「えへへ♪」

 

 その頭をよしよしと撫でる。気持ちよさそうにほほ笑むミツハの顔にレイアの面影を思い起こす。

 

(きっと連れ戻しますから、レイアさん)

 

 そんな決意を秘めて、ハジメへと本題を投げかける。

 

「それで、その新型機の開発は嬉しいんですが、本題のプレゼントは?」

 

 いたずらのような笑みを浮かべる。これだけで用意していないの?と言う気満々で。だけどその予想は裏切られる。もちろん、いい意味で。

 

「まさか、これだけと思うか?」

 

「そうじゃないと嬉しいですよ?」

 

「ならちょうどいい。コレだ」

 

 手渡された箱。ラッピングされているが、軽いものだ。ゆっくりとほどいて開けていくと中にはダークカラーのドレスが入っていた。

 

「一応、こっちでの衣装を。仕事関係で着るかもしれないからな。スリーサイズは悪いけどスタートに測定をやってもらった」

 

「私のパーティー衣装……そっか、一応予備は持ってきたけど、基地襲撃の時に焼けちゃったから……」

 

 二か月前の基地襲撃。それらでこちらに持ってきていた生活用品も焼かれてしまっていた。日常の服も最初の間HOWの制服を着用していたくらいだ。

 ハジメの用意してくれたドレスはジャンヌの雰囲気にぴったりだった。かつての暗いイメージと思わせつつも、シュバルトゼロガンダムに合うようなイメージ。ハジメはその選択について話す。

 

「マキナ・ドランディアに転移する前、専門学校で色合わせに関する資格を取っていたからな。基地の制服デザイン担当の人とデザイン詰めて作ってもらったんだ」

 

「元君そんなデザイン出来たんだ」

 

「つっても本職には叶わなかったけどな」

 

 肩をすくめたハジメ。だけどそれでもいい。自分の為に精一杯作ってくれた。その気持ちに感謝しないわけがない。人前に立っても恥ずかしくないものを作ってくれたのだから、大切にしたい。

 服の入った箱を抱きしめ、感謝の気持ちを面と向かい合って伝える。

 

「ありがとうございます、これで人前に出ても大丈夫ですね」

 

「……そう言ってもらえると、作った側も報われる。さ、華穂達も」

 

 少し笑って見せたハジメは妹たちに後を譲る。そうしてジャンヌは誕生日の祝福を受けていく。

 この日からシュバルトゼロガンダムの次世代機の開発が開始されていったのである。二人で一機のガンダム、その名前に「ふたご座(ジェミニ)」の名を冠して。

 

 

EX EPISODE END

 




今回もお読みいただきありがとうございます。番外編としては初めて第一部以外での製作となります。

レイ「番外編は話数の通し番号リセットされないんだね」

最初の番外編の活動4周年の話は色々と本筋に絡みづらかったからその法則から外しているんだけどね。あの話もある意味伏線ではあるんだけども(´Д⊂ヽ

ジャンヌ「それにしてもGワイバーンの機能、Dトラベルコントローラー再生のための新機体開発計画ですか」

まぁ言ってしまえば「新しく作り直すならシュバルトゼロガンダムも一緒に作り直しちゃえ」って発想ですよ。元々シュバルトゼロガンダムも後継機がマキナ・ドランディアでも考えられていたくらいですし。戻るまでにどれだけ時間がかかるか分からない。その間に向こうの情勢、特にMSの性能がどれだけ革新しているかも分からないわけだから、こっちでの最新技術を扱えるようにはしたいって話。

レイ「でも、やっぱり一番はジャンヌちゃんをお母さんに会わせてあげたいっていう元君の気持ちなんだね」

ジャンヌ「ちゃんと主の事を考えてあげてる点は素晴らしいです。でもそれならいっそ横に居て安心してあげられるように、身を固めるのがよろしいかと」

それはまた……別の機会にね(´・ω・`)

ジャンヌ「これでいいです?」

うん、いいけどばらすのやめようか( ;∀;)

レイ「でもでも、そんな想いを胸に、元君はこのLEVEL2最後の戦場を駆けていったわけなんだぁ。これを読んでから見るとまた違った見方も見えるかもねっ」

それで設定違いが露見しないといいんですけどね;つД`)マジでミスやめてよ私。
それでは今回はここまでです。同日公開のLEVEL3EPISODE2、そしてこの第4章もよろしくお願いします。

ジャンヌ「それでは、また次回」


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EPISODE46 止まらない悲しみ2

どうも、皆様。先日6月15日はこの作品の主人公黒和元君の誕生日でした、藤和木 士です。誕生日回とか作ろうかとも思いましたがアイデアが出てこず、連投も出来る状況ではないので特に特別やることはありませんでした(´・ω・`)申し訳ないです。

ネイ「アシスタントのネイです。最近はアイデアに煮詰まっているようですね」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよ~。というか、設定集の量がここ数日増えているみたいだけど」

そうです。設定起こしていたりしたせいで考える時間もなかったんですねぇ。あっちの兵器だったりこっちの兵器だったりで忙しかった……。

グリーフィア「まぁそれは運が悪かったわねぇ」

ネイ「無理しない範囲でお願いします」

はい。ではEPISODE46、公開です。

ネイ「悲しみが止まらない地球の現状。次は一体誰の悲しみが」

グリーフィア「HOWの仕事はなくなる様子がないわねぇ。次の元君の仕事はどうなることやら~」

それではどうぞ。


 

 

 2029年の秋。この時点で次元覇院の衰退から始まったカルト集団の侵攻が激しさを増した。自分達の作り出した様々な神を人々に信仰させて、日本の覇権を巡る。国外の者による日本侵略も噂された、騒動の数々にHOWも勢力を拡大して臨んでいた。

 この時期の一番活発だったのは夫婦神カーナスを信仰する「夫婦聖院」である。主にカップル、家族連れを狙って勧誘し、もし断れば男の方だけを殺害し、女、あるいは子供を無理矢理信者として迎え入れて洗脳する。彼らの活動は休日のショッピングモールを狙って多発し、非常に迷惑な行為を繰り返し続けていた。使うMSがこの時点では壊滅した次元覇院が使用していたMSが多いことから、次元覇院の残党とも受け取られる。

 もっとも厄介なのは一部の主義者からの擁護が多かったこと。彼らの行動を邪魔することは差別につながると勝手な非難を行ったのである。そんな彼らもMSとまでは行かないものの暴動を起こしており、それらの鎮圧は警察組織へと委ねられた。

 いずれにせよ彼らが次の敵であることに変わりなく、SABER、そしてCROZE共々東響やその周辺を飛び回ることになった。この時期から空中母艦の開発が進められることになる。

 戦いは終わらない。それぞれの主張が続く限り。この日も戦闘の火がとある街のモールから上がった。

 

 

 

「元隊長、神名川のHOW支部から応援要請です。市内のモール二箇所で夫婦聖院のMSによる悪質な勧誘行為が起こっているとのこと。東響側の制圧をお願いしたいと言ってきています」

 

 通信担当からの報告を受ける。元は回線で回された市内状況を確認する。敵人数と周辺状況を読み取る。把握を終えて元は通信担当に出撃指示を掛けるように言った。

 

「把握した。至急出撃すると返答、基地のメンバーにスクランブルを掛けろ。出るのは第1と第3、バックアップに第4部隊を置く」

 

「了解。CROZE部隊に告ぐ。現在神名川県市内にて暴動が発生、暴れているのは夫婦聖院MS……」

 

 呼びかけている間に元も指揮所を出る。ジャンヌも後に続いて出撃に関して話す。

 

「また夫婦聖院ですか……」

 

「そうだな。ここ最近の活動はあいつらが多い。この前潰した武神覇教がいなくなって、ますます勢力を伸ばしてる」

 

「戦いは、終わりませんね」

 

 ジャンヌの言葉に重いものを感じる。四年間戦い続けながら未だに人は歴史を繰り返し続けている。終わりの見えない戦い。それでも元達は戦い続ける。選択がそれしかない。彼らが平和を求めながら、一番平和から遠い選択をする以上戦わなければ終わらないから。

 同時に戦うことだけが、今一番レイアを探せる近道なのだ。これまでの戦いでヴァイスインフィニットに関する情報はわずか。それでもこの日本に彼らがいるということに違いない。見えない探し人を探すため、まずは目の前の戦いに集中する。

 

「今日も行くぞ、ジャンヌ」

 

「えぇ、()

 

 こちらの言葉に慣れたパートナーが名を呼んだ。出撃デッキで既に準備を終えた隊員達と共に、MSで神名川の目標地点へと急ぐ。

 

 

 

 

 神名川県河崎市のショッピングモールは地獄となっていた。

 

『さぁ、神に認められ結ばれし者達よ、私達の神のもとで是非愛を誓ってくださいな!』

 

「だ、誰がっ!」

 

 MSからの問いかけに女性を庇いながら否定する男性。問いかけをしたMSはそれを訊くと黙って右手の銃を向けてトリガーを引く。男性の脳髄が撒き散らされ、怯える女性。

 

「ひっ!ユウくん!?」

 

『いけませんいけませんねぇ、えぇ、彼は我らが神のもとで結ばれることを拒絶した。それは如何なる神のもとで結ばれるとしても万死に値することです。ですがご安心を、聖なるあなたは私達の見出した相応しいお方とお結びさせていただきましょうさぁ』

 

「いやぁ!ユウくん!!」

 

 夫婦聖院の行動に、民間人の阿鼻叫喚が響く。もはや誰の目から見て異常だ。父親を殺され、泣きじゃくる子どもの叫び声も聞こえる。

 

「パパ、パパ!」

 

『君達のパパがいけないんだよ?君達はこうなっちゃいけない。こんないけない大人に。私達のような素晴らしい人間になるんだ!』

 

 そう言って子ども達を抱きかかえ、連れ出す。それを見ながら一人の少女が燃え上がるモールの中を走る。

 うそだ、うそだうそだ、うそだっ!わたしのお父さんを殺して、お母さんとくあを連れて行ったこいつらが正しいなんて。

 少女は逃げる。後ろから追いかける彼らのMSに捕まらない様に。

 

『おやおやぁ、逃げるなんていけない子ですねぇ。ちょっとお仕置きが必要ですかねぇ、止まらないと~』

 

「っ!」

 

 一瞬睨み付けて角を曲がる。だがその先は行き止まりだった。無我夢中に走っていて、いつも訪れるモールの形を忘れてしまっていたのだ。

 

「そんな……うっ!」

 

 即座に来た道を戻ろうとした。だが振り向いた直後に夫婦聖院のMSが仁王立ちで待ち構えていた。ショックで足を滑らせて尻餅をついてしまう。そんな彼女の姿を、使徒は憐れだと嗤う。

 

『おやおや可愛らしい。残念でしたぁ、逃げることなんて出来ないんですよぉ、私達夫婦聖院の運命の審判からはぁ』

 

「……うるさいっ、あんた達なんか、あくまだっ!っぅ!?」

 

 彼らの行いを否定した少女。だがそれを聞いた途端MSは弾丸を彼女の足元に放ってヒステリーを起こす。

 

『おだまりなさい!悪魔などと簡単に言って、私達を穢すとどうなるか教えて差し上げましょうか!?』

 

「う、うぅ……!」

 

 恫喝される少女。敬う言葉を使いながら内容は乱暴な言葉。大人のくせに、と思った。けれどもそれ以上に恐怖で泣きそうになる。

 いやだ、早くこんなところから逃げ出したい。母さんとくあと一緒に帰るんだ。父さんだって、父さん、だって……。

 既にもういない人の事を思い出す。彼女の声を聞く気のない夫婦聖院のパイロットは鎮まると少女を改めて諭そうとする。その手に銃を構え、手を伸ばす。

 

『さぁ、行きましょう。私達の聖地へ。あなたのお母さんや片割れが待っているんですよ?一緒に居なくていいんですかねぇ』

 

「……っ」

 

 行きたくない。でも離れたくない。その人の言葉に惑わされて、手を伸ばしかける。だけど。

 

 

 

 

『黙ってろよ、ロリコン』

 

『あ゛ぁ!?がっ!?』

 

 

 

 

 聞こえる声。それに対し声を荒げるMSのパイロットだったが、直後に蹴り飛ばされて無様な姿を晒した。

 蹴り飛ばしたのは一機のMS。その姿はペンキをぶちまけたような黒と蒼く光る関節と異色だ。しかしその姿を見て彼女は思った。綺麗だと。機体から発せられる蒼い粒子が、雪のように火事の炎に照らされる。その姿に見惚れていた。

 自身を救ったMSに尋ねるようにして呟く。

 

「天使様……?」

 

『……いいや?魔王だ』

 

 黒のMSのパイロットが少女の言葉を訂正する。やり取りを見て夫婦聖院のMSパイロットは怒り狂う。

 

『……ぁぁぁあああ!!ガンダムゥ!!魔王がぁ!』

 

「きゃっ!」

 

 銃撃が放たれる。流れ弾に当たる、と思った時には既に黒のMSが張った防壁に囲まれていた。

 銃撃を防ぎ、無関係な者に危害を加えたことにガンダムと呼ばれた機体のパイロットが詰め寄る。

 

『黙ってろよ、クズ』

 

『がぁ!?』

 

 次の瞬間にはMSの胸部をガンダムの光の剣が貫いていた。剣を引き抜いて後退する機体。直後あのMSが爆発を起こした。爆風が襲ってくるが、それもガンダムの防壁で護られる。

 次に目を開けると防壁は解除されていた。防壁を作り出していた羽を機体に戻したパイロットは女性の声に変わって呼びかける。

 

『そこの子、大丈夫ですか?』

 

「へぇ!?は、はい」

 

『でしたらこれを持って走っていってください。私達の仲間があなたを助けてくれます』

 

 黒いMSから手渡された機械のようなもの。それを受け取ったのを確認すると、機体は逃げ去るようにして悲鳴の続くモールの中へと向かっていった。

 理解しきれない。今の自分の頭で、何が起こっているのかも。分かるのはここから逃げなくちゃいけないこと。あの人の言うことを今は聞かないと。あの中をまた走るのは怖い、でも行かなくちゃ。

 

「……っ!」

 

 少女は信じて再び駆けだした。しばらく建物の中を突っ切ると、夫婦聖院とは違うMSが現れた。最初は逃げようとした。ところがパイロットは落ち着いて装依を解除して所属を教える姿を見てそれに従った。

 HOWと呼ばれる人に従ってモールを出た少女。すぐさま到着していた救急隊に預けられる。

 

「よし、もう大丈夫だからね?お願いします」

 

 それだけ言って、またその人はモールへと突入する。私は救急隊の人に手当てを受ける。怖かった。救急の人が怖かったよね、と聞いて思わずナミダがこぼれた。

 今お母さんとくあがどうなっているのかは分からない。早く会いたかった。未だ煙が昇るモールを見て、不安しかない。

 

「お母さん、くあ……」

 

 

 

 

 この惨事を鎮めながらシュバルトゼロガンダムは率いていた長の部隊を発見した。マキシマムの改造機に守られながら夫婦聖院のMS「メオト」を操る長。

 

『来たな魔王めっ、貴様の墓場はここです!』

 

『……!』

 

 部隊員の射撃を回避しながらシュバルトゼロガンダムは冷静に距離を詰めている。周囲を旋回するような動きで、外側から順に敵を沈黙させる。

 

『ぐぉっ!?』

 

『なぁ!?』

 

『容易いな、墓場と言っておきながら、防戦一方か……?』

 

 元の煽りはまさしく的を射る。動きに翻弄されていて、こちらを捉えるには至らない。正直言って楽な方だ。

 もう少し骨が欲しいですね。相手に聞こえるようにして、元の意見に私も同意する。

 

「そうですね。これではあくびが出てしまいそうです」

 

『な、あにぃ!?この程度で終わるとお思いで!』

 

 長の号令に合わせて残っていたMS部隊が襲い掛かる。接近戦に切り替えたのは正しい。この流れを断ち切れる、かもしれないから。

 けれどあくまでもそれは可能性に過ぎなかった。元が機体を動かして攻撃を避けていく。過ぎ去る直前に胸部付近をブレードガンで切り抜けた。撃墜された機体に目も暮れず、次の敵が襲い掛かる。

 

『死ねっ!』

 

 その言葉と共に勢いよく突き出された槍。だがシュバルトゼロガンダムを捉えるには至らない。逆に背後に回ったシュバルトゼロのブレードガンを背中に突き立てられ、撃ち抜かれる機体。

 もはや見るまでもない。私達のDNLの前に並みの相手ではもう敵いはしない。エラクスすら使用せずに周辺MSを殲滅する。

 残ったのはあの長が操るMSのみ。メオトが銃剣からビームサーベルを生成して切り結ぶ。

 

『魔王よ、貴様は悪だ、滅びなければならない!』

 

『お前達にとってはそうだ。俺は魔王、人の世界に外れた貴様らを狩るもの!』

 

 言葉を交わしながら剣を押し込む。シュバルトゼロガンダムから生まれる高純度DNのもたらす圧倒的出力が、ダブルジェネレーター仕様の機体をも押し切る。銃剣を失い、指の一つ一つから形成したビームサーベルを束ねて斬りかかる。

 

『外道は、どっちだァ!!』

 

『!!』

 

 斬られる、と思われた時には既にフレームが紅く輝いたシュバルトゼロガンダムが背後を取る。こちらを見失った敵機の首筋へビームサーベルを突き立てる。

 

『ぐぉっ!!?』

 

 もだえ苦しむ敵パイロット。確実にジェネレーターを貫いた。素早く機体から離れてガンダムが姿勢を下げる。直後あの機体は爆発を起こしてこの世から消失する。

 長を倒して、各隊からの報告が届いた。どうやらあれで最後らしい。今回の戦いも楽に終わりました。元へと戦闘が終結したことを伝えた。

 

「元、どうやらあれで最後のようです」

 

『そうか。で、どれくらい救い出せた?』

 

 救い出せた、というのは生存者を示した物だけではない。私はその救出者を算出した。

 

「……およそ50人、後は連れ去られたか……もしくは」

 

『……分かった。外に出よう。後の仕事は消防隊の仕事だ』

 

「はい……」

 

 既に何人もの生存者が、夫婦聖院に捕まって外へと連れ出された。無論彼らの新しい信者、あるいは道具として……。もっと早かったら、助けられたかもしれないのに。そんな後悔を何度もした今も少なからず心は痛む。

 もっと強い機体があれば……。決してシュバルトゼロガンダムを馬鹿にしたいわけではない。けれども敵の侵攻速度に、抑止力としては機体そのものの力不足が出始めていた。それをDNL能力とアレスモードで悟らせないようにしているに過ぎない。イグナイターが無くなったことも大きい。後継機の申請は出しておかなければ。

 そんなことを考えながら施設内を捜索する。生存者がいないかどうかだ。救急隊とも合流し、探した場所の共有を行う。

 

「ここからここまでは生存者の確認はしました。残りの捜索を」

 

『了解しました。マップ更新……行くぞ』

 

『はい!』

 

 救急隊員の纏った専用作業MS「レスキュⅡ」が低空ホバーで消火活動を行いながら奥へと生存者の確認に向かう。反対にジャンヌ達はモールの外を目指す。

 出入り口から出ると既に戦闘を終えた隊員達が隊長である元の到着を待っていた。元は変わったことがなかったか訊く。

 

『そちらは無事終わったな?』

 

『はい。周辺で夫婦聖院に関係した動きもみられません』

 

『よし、なら帰投する。お疲れ様』

 

「あ、あの!」

 

 帰ろうとしたところを呼び止められる。ガンダムが振り向くと、そこにいたのは救急隊員の女性。と、肩を抑える形で少女の姿があった。

 救急隊員に呼び止められるのは特段珍しいことではない。伝えるべきことを忘れていたか、あるいは隊員の方から気になるものがあったため伝えるかだ。

 何だろうと思いつつも視線は自然と少女の方に向いた。あの少女は、確か襲われそうになっていた子。無事救急隊員に救助されたみたいだ。良かったと心の中で胸をなでおろした。

 隊員に肩を支えられて少女は頭を下げた。

 

「あの、ありがとう、ございます。お兄さん、お姉さん?」

 

『ん?あぁ、無事でいてくれてよかった』

 

「二人で動かしていたので、ちょっと困りますよね。その認識で大丈夫ですよ」

 

 少女が混乱しない様に装依を解いて姿を明かす。少女はまじまじとこちらを見る。

 

「そ、そうなんだ……いや、そうなんですね」

 

「別に無理に警護を使わなくていい。自分を見失わず、よく立ち向かった。えらいぞ」

 

 元の手が少女の頭を撫でた。少しだけ嫉妬を感じる。けど少女があの中でよく走ったものだ。煙があまりたまらなかったのと、背が小さかったから影響を受けなかったのかもしれない。

 幸運が重なって生き残った少女。彼女は褒められたにも関わらず顔は暗いままだった。

 

「でも、でも……っ」

 

「?」

 

「実はこの子、父親を殺されて、母親と双子の妹さんも連れ去られたらしいんです」

 

「っ!そんな……」

 

 胸がギュッと苦しくなった。また私達は護れなかった。護り切れなかった。仕方なくとも少女に突きつけられた現実の辛さを痛感する。

 少女はその時の事を語ってくれた。

 

「あいつらが、とつぜん神を信じなさいって言って来て、父さんは私達と逃げようとしたんんだけど、後ろからあいつらに撃たれて……母さんとくあは捕まって……!」

 

「ぁ……う」

 

「………………あいつら」

 

 隣にいた元の声が曇る。苛立ちを隠せずにいた。

 こんな子どもの家族を平気で引き離す行為をする。夫婦聖院も次元覇院と同じだ。あの時ちゃんと残党を残さずに捕まえていれば、こんなことにはならなかったんじゃないだろうか。

 どう声を掛けていいか分からない。きっと少女はもっと早く来てくれていればと私達にぶつけてくるんだろう。そういうことは今までにも少なからずあったから。でもその子はそれとはまったく違った方向からお願いをしてきた。

 

「おねがいします、私をあなたの軍隊に、ハウに入れてください!」

 

「えっ、えぇ!?」

 

 まさかの入隊志望だった。虚を突かれて思わず変な声が出てしまった。

 入れて欲しいって、HOWは孤児院とかじゃないんですから……。そんなツッコミが出そうになるのを堪えて、どう説得しようかと考えた。しかしその時には既に元が動いてくれていた。

 少女の目線まで姿勢を落とし、肩に手を置き話す。

 

「……悪いが、それは出来ない」

 

「私、母さん達を連れもどしたいんです!」

 

「それでもだ。君みたいな子を戦場に立たせるのは、君の家族を奪ったあいつらと何も変わらない。彼らと同じ考えで行動するのは危険だ」

 

「うっ……~!」

 

 正論を言われて口ごもる。元の言う通り、それでは彼らと変わりない存在だ。

それにMS所持法の取得年齢がこの数年で15歳までに引き下げられていても、今の彼女では到底取れない。二重の意味で参加は出来なかった。

 事実を告げた上で元は助けることを約束するとともに今日の事はなるべく忘れるように伝える。

 

「君の家族は俺達が助け出して見せる。それまで君は、彼等や俺達とはかかわりのない平穏な世界で暮らすんだ。いいね?」

 

「で、でも」

 

「今はそれが大切なんだ。すまないが、後は頼む。彼女をなるべく、戦いから離れたところに引き取ってもらえるようにしてください」

 

「はい」

 

 救急隊員に少女を任せて再びMSへと装依する。振り返ることなく、隊員達に帰投の指示を送る。

 

『全員、直ちに帰還する』

 

 少女と魔王の最初の出会いは、この時だった。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただき、ありがとうございます。

ネイ「相変わらず元さんは魔王を名乗っていますね。そして今回助けた女の子……彼女が今章、そしてLEVEL3からのキーパーソンみたいですね」

その通り。家族をカルト集団のテロで失った少女。彼女が如何にしてHOWと関わっていくのかが展開されていきます。

グリーフィア「にしてもまさかあの年齢でHOWに入りたいだなんて、ねぇ?」

(;・∀・)まぁ普通に年齢制限でアウトですよ。とはいえ彼女の本心としては元君の傍にいたい、まぁある意味初恋ですわ。相手は既にいるけども。

ネイ「そういえば元さんってジャンヌ・Fさんとはどこまで……」

恋のABCのAも行ってねぇよ(゚Д゚;)どんだけ奥手だぁ!

グリーフィア「あぁ、キスも厳密には手の甲へだけで、まだ唇同士は描写されてなかったわね。っていうか関係そこまで進んでない?」

進んでないよ( ゚Д゚)この6年で!まだキスもしてないんだよぉ!

ネイ「まぁ……大体その理由が思い浮かびますけどね。ジャンヌ・Fさんが痺れ切らさないといいなぁ」

グリーフィア「まぁでもこういう奥手ってやるとなると案外がっつくかもだけどねぇ♪その時が描かれる時はくるのかしらぁ」

その時は私にとって初のR-18になるから、多分、うん絶対こっちでは書かない(´・ω・`)さて今回はここまでです。

グリーフィア「次回もまたよろしく~」


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EPISODE47 憧れは病にも似て1

どうも、皆様。仮面ライダーやらの新作放送が再開し、ビルドダイバーズリライズの再開はまだかとそわそわする藤和木 士です。サタニクスまだー?( ゚Д゚)

レイ「アシスタントのレイだよー」

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです」

今回はEPISODE47の公開です。憧れは病にもにて、です。

ジャンヌ「憧れ、ですか」

レイ「だねぇ。ここ最近で憧れって言う言葉が合う人物って言ったら、前回のあの子かな?」

まぁ最初に浮かぶのは彼女でしょうねぇ。ただもう一人の事についても触れていくので、今回はその前半を見るということですね。

レイ「憧れるっていうのは誰の心にもあるものだよねー。私もノアちゃんに憧れてたし!」

ジャンヌ「私の憧れはいつでもレイさんですよっ」

うーんレイジャン(´ρ`)てか久しぶりにこのネタしたね(´・ω・`)

ジャンヌ「SSRでやった事柄こっちに反映されていないものもありますからね」

レイ「うんうん!まぁ今それは置いておくことにする?」

そうだね。では本編をどうぞ。


 

 

 地獄を見た。2029年に起こった神名川の夫婦聖院襲撃事件で、私は家族を失った。家を離れて、私は東響都内のとある老夫婦の家に引き取られた。父さんや母さん、玖亜と一緒に暮らしたあの家を捨てるのは嫌だったけど、そうするしかあの時の私には出来なかった。

 東響での暮らしに不便はなかった。強いて言うならクラスメイトの視線が少しだけ痛かった。夫婦聖院の被害を受けたということで、腫れもののように見られていた。でもそんな私に声を掛けてくれた友人は私を庇ってくれた。感謝の言葉しかない。

 そうして新しい生活に溶け込んでいった。でも私の中で変わらないものがあった。ショッピングモールでMSの暴力から私を助けてくれた、漆黒のガンダムが所属する組織「HOW」。あの後調べて、そのガンダムの名前がシュバルトゼロガンダムであることを知った。

 そう、私はまだHOWに入ることを諦めてなんかいない。MS所持法の制限でMSに乗れなくたっていい。私は、あの人の下で働きたいんだ。あの頃よりももっと強くそれを思うようになった。母さん達を助けたいだけじゃない。私は、あの人達に憧れていたんだ。

 その転換期が、小学校六年生の時に起こった。あの時の事件を私は忘れない。

 

 

 2032年、秋。この日も平穏な日々がここ東響の都立港内湾岸小学校にも訪れていた。先日の夫婦聖院壊滅に伴って校区も一安心となりつつある。残党もそれほど戦力はないだろうと、緩んでいるところもあった。

 教室で生徒達はいつも通り授業を受ける。その中にかの少女もいた。少女はこのニュースを嬉しく思う傍らで、同時に悲しく思っていた。HOWからの連絡で、夫婦聖院によって誘拐されていた母と玖亜の身柄を確保できなかったことを告げられていたのだ。

 現在HOWは身元の把握を行っているそうだが、もしかしたら兵士として駆り出されていて……。生存が著しく低いことを前置きしていた。仕方のないことかもしれない。それでも本当にそうだと思うとこのニュースを手放しに喜べるわけではなかった。

 

「……?」

 

 ノートを書く手を止めていると、横から紙くずが回ってきた。向くと隣の男子が友人の方を指さす。それで事情を把握してその紙くずを開いた。手紙だ。友人は「どうしたの?なんかあった?」と記していた。

 後ろの席にいた友人から心配されるほど顔に出ていたらしい。事情を今回すのは少々迷惑だろうから別の紙に「今は大丈夫、休み時間にでも話すよ」と書いてクシャっと丸める。それをまた隣の男子に小さく謝罪して回してもらう。友人は小さく頷いてまた授業に戻った。

 今は授業が大事だ。余計なことを振り払って、ノートを書く手を再開させた。その時だった。小さな破裂音のようなものが廊下から響く。それに気づいた生徒の何人かがざわついた。

 

「こら、静かに―――」

 

 生徒に口を慎むように言った先生の言葉を、放送からの声が遮った。

 

『―――――聞け!我々は夫婦聖院!夫婦神カーナスを讃えし者!これよりここを夫婦聖院の新たな聖地とする。この学校の生徒は、皆使徒となる!永遠の夫婦となるのだ!』

 

 いきなりの宣言に全員が動揺した。壊滅したはずの組織を名乗っての占拠。不安を煽るには十分すぎた。

 

「先生、夫婦聖院って」

 

「落ち着いて、みなさん。私が状況を見てきますから、みなさんは教室で静かにしていてください。何があっても不用意に騒がないこと、いいですね?」

 

 あわてず騒がず、と言って先生は教室を出た。妥当だろうが、それでもベストな選択とは少女は思えなかった。アイツらは大人しくしていればどこまでもつけあがる。HOWや他の警察部隊はまだなのだろうか。

 私は席を移動してきた友人と今の心境を共有する。

 

「ね、ねぇ大丈夫かな先生」

 

「分からない。もしかすると、出会った時点で殺されてるかも……」

 

「うそっ!?」

 

「こういうの言うのもなんだけど、あんたが言うと急に説得力が出てくるわ……。前も襲われたんでしょ?」

 

「うん。あの時はガンダムに助けてもらった……忘れられないよ」

 

 今回もきっと助けてくれる。そう思えたのはやはりガンダムのおかげだろう。希望を失わずに済む。だから諦めないでと親友の二人に言う。

 

「きっとHOWも警察だって動いてくれている」

 

「そ、そうだよね!」

 

「……動いてくれていても、全員無事で逃げられるの……?これ」

 

 学校にはおそらく何体ものMSが入ってきているに違いない。校庭を見ても何機かのMSが見られていた。周辺の人が異変に気付いて知らせてくれていればいいのだが……。

 何か今のままでも出来ることはないかと思い、少女は教室を見回す。そこで気づいた。教室の隅に設置された緊急のスライダー設置装置があることに。

 

「……」

 

「ちょ、どしたし?」

 

「それ……火事の時とかに使うやつだよね」

 

 今までは下に投げて受け取った人が滑り台のように引っ張って上から滑り降りて逃げるための装置だった。今はMSの装依技術を使って、窓に設置後即席の金属製滑り台を現実化させる。

 これなら教室を直接移動するより素早く校庭から逃げられる。校庭のMSがいなくなれば……。みんなにも伝えようとした。けど見上げた瞬間、夫婦聖院のMSと目が合った。

 

「あっ……」

 

 教室内で企みが起こっていないか、調べに来たのだろう。自分のような頭のキレた者がいないかどうか。銃口が向けられる。間違いなく死んだ。

 後ろから親友の声が響く。だけど何を言っているのか分からない。目の前のMSに殺されるという恐怖心で聞こえない。

 死を覚悟する。だけどその銃弾は放たれなかった。機体の背後から放たれたビームが頭部を貫く。遅れて爆発が起こり、反射的に頭を床に付けた。振動する窓、教室にいたクラスメイトも悲鳴を上げた。

 伏せている間にも音が激しく鳴り続ける。音が鎮まると窓が唐突に割られた。教室内に入ってくるMS。顔を見上げて、それがHOWのMSであると認識する。

 

「落ち着いて、私はHOWです。あなた達を助けに来ました」

 

 HOWのMSパイロット達は次々と学校の教室へと入っていく。廊下側の警戒をしながら生徒を落ち着かせるHOW。落ち着かせたところで彼らは避難する様に呼びかける。

 

「これから誘導に従って外へ逃げてもらいます。脱出ルートを確保次第、ここから」

 

「あ、あの!ちょっといいですか」

 

 私はみんなの前へと歩み出る。先程思いついた案をHOWの人に提案した。少し考えてHOWは緊急展開式のスライダーの装置を見る。

 

「…………その方が早い、か」

 

「ですがこれ認証の必要な奴ですよ。教員じゃないと」

 

「なら教員の奪還優先。こっちでもセキュリティが破れないか試す。全部隊にこの事を共有、教室に敵を入れるなよ?」

 

「了解」

 

 少女の考えを採用する形でプランを作成した隊長格のパイロット。パイロットはこの考えを立案した少女に礼を述べる。

 

「ありがとう。けどまさかそんな考えを思いつくとはな」

 

「いえ、それほどでも」

 

「みんなももう少し待っていて。すぐにここから逃げられるから」

 

 聞いて安堵の声をもらすクラスメイト。それからしばらく避難装置の前で四苦八苦するMS。

 私はその人にあの機体について訊いてみる。

 

「そういえば、シュバルトゼロガンダムは来ないんですか?」

 

「え?あぁ、本部のスーパーエース様か。悪いけど私達は港内区の防衛支部の部隊なんだ。あっちは中央区の湾内。近い距離だから来るかもしれないけど今スクランブルで来たのは私達だけよ」

 

「そう、ですか。変なこと聞いてすみません」

 

 来ていないことに落胆する。また救ってもらえる、なんてそううまい話はない。それにそう思う方が不謹慎だと言われるかもしれない。助けに来てもらったのにそう思ってはあんまりだ。

 しかしそのパイロットの人もやり取りで分かったのか、言葉を続ける。

 

「まぁ彼は凄いからね。MSだけじゃない。パイロットとしての質が違う。背負ってるものが違うんだろうね、あれは」

 

「いえ!別にそんなこと……」

 

「私でもパイロットとして彼には嫉妬するよ。でも彼がいるからこそ私達がこうして前線で戦える。だから君の抱くような感情も理解できるよ。っとどうした?」

 

 そうこうしている内にパイロットは通信を受ける。しばらくして装置を操作すると装置が起動する。パスワードの入力に成功したのだ。

 

「よし、離れて。すぐに出る」

 

 後ろに下がるように言ってすぐに装置は緊急用スライダーへと変化した。校庭に装置が次々と展開されていく。校舎の一階から既に逃げていた生徒達を避けて出来上がった脱出装置。

 HOWはすぐに生徒達へ避難誘導を行う。

 

「さぁ、みんな!」

 

 隣の教室から次々と聞こえてくるスライダー使用の音。クラスメイト達も同じく我先にとスライダーを利用する。校庭には既にHOWのMSが付いてくれている。汎用型と、可変型の二機種だ。校内からはまだ戦いの音が響いていた。少女も友人と共に最後に並んだ。

 最後の順番になった時、廊下側のMSが交戦を開始する。パイロットの人が急かす。

 

「気にしないで、今は降りることだけを考えて!」

 

「分かりました。行こう二人とも」

 

「は、はい!」

 

「私から行くよぉ!」

 

 友人2人が先に降りる。最後は私。躊躇わず滑り始めた。これでもう安心だ。そのはずだった。

 突然後方から爆発音が響く。次いでスライダーが傾斜を始め、背中側に重力を感じていく。

 落ちてる?そう思った時には反射的に頭を両腕で覆った。地面へと落下した衝撃が体に襲い掛かる。

 

「だっ!っ~……」

 

 痛い。背中も腕も……。頭に直接衝撃があったら、死んでいたかもしれない……。何とか足を動かして、近い出口からスライダーを脱出する。光が目を照らす。目を開けるとそこにあいつらのモビルスーツが空に立ち並んでいた。

 

「何、で……」

 

「やれやれ……まさか備え付けの災害用スライダーで逃げるとは……。報告を聞いた時には焦りましたが、まぁ一人でも人質には十分でしょう」

 

 言って躊躇いなく銃口を向けた夫婦聖院のMS。校舎で外で戦っていた先程の女性パイロットが叫ぶ。

 

『逃げてー!』

 

「っ」

 

 逃げたい。銃口を突きつけられたら誰だって思う。けどそうしなかったのは体の痛さと、もう一つ、個人的な理由があったから。

 夫婦聖院に対し睨み付けるように視線を細める。

 

「何が夫婦神よ……あんた達の考えは、やってることは、夫婦が一番やっちゃいけない事でしょ!」

 

「フン。強がりを。教えを広めるのに、これは致し方ない犠牲さ」

 

「何が致し方ない、よ。子どもの親を殺して!家族を引き裂いて!立派な犯罪じゃない!」

 

「貴様!!」

 

『ダメ、刺激しちゃ!ぐぅ!』

 

 逃げない。絶対に逃げない。こいつらなんかに屈したりしない。私は今までの苦しみを吐き捨てる。

 

「私はあんた達を許さない!母さんと玖亜を攫って、殺したお前達を!」

 

「いいでしょうなら慈悲だ!あなたの家族の下へ、送ってくれる!」

 

「ダメェ!」

 

「いいわよ。私の犠牲でみんなが逃げられるんなら!」

 

 銃の狙いが向けられる。私の意志は変わらない。あいつらに命乞いするくらいなら、あいつらの思惑を壊して、みんなを助ける方がいい!

 唯一心残りだったのは養父母だった。こんなことしたら親不孝だろうな、と。ところが運は彼女の味方をした。空からビームが敵の銃口を貫いた。同時に声が響く。

 

『―――――暴力に屈しない、それはいい。けど助かった命を投げ捨てることを簡単に口にするなっ』

 

「この声……」

 

「まさかっ」

 

 空を蒼い流星が翔ける。瞬く間に銃を向けていたMSの僚機を切り裂いて、本体へと斬りかかった。

 蒼い光が解除されると、彼女の求めた黒いガンンダムが姿を現す。忘れもしないあの時のMS。その人は彼女を褒めながらも叱る。そして目の前の敵に容赦する素振りを見せない。

 夫婦聖院のパイロットは恨み言を口にする。

 

「おのれ……魔王!」

 

 対して黒のガンダムパイロットは不敵に応えて見せる。

 

「正解。俺は、お前達の存在を否定する、神を殺す魔王だ!」

 

 光剣を交える両者。共に距離を取る。その姿に少女は立ち尽くす。

 来てくれた。あの人は、ううん、あの人達が来てくれた。私は言いようのない喜びとしてそのMSの名を呟いた。

 

 

「シュバルトゼロ、ガンダム」

 

 

 神を殺す魔王、その力に敵は屈する。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。この時点で7年経過ですよ(゚∀゚)時がたつのは早いなー。

レイ「でも元君とジャンヌちゃんは全く変わってないんだよね?DNLの覚醒で」

そうだね。と言ってもDNLの覚醒はジャンヌ・Fのお母さんのクリエもそうだけど、歳を取らなくなるにはもう一つ条件があるんですけどね(;・∀・)

ジャンヌ「あら、その条件って?」

簡単に言うとエンゲージシステムが関わってくる。エンゲージシステムでパートナーと繋がって初めて老加速度低下が起こるって感じ。これに関してはまたいつかの用語集で説明するよ。
まぁ話は戻すとして。

レイ「うーん、まだHOWに入るのを諦めていないって、すごい執念というか……っていうかこの女の子元君のこと好きなの?」

ジャンヌ「なんだか好意を持っているような感じもしますよね……いや、これは敬愛ですか?」

まぁ敬愛に近いね。助けられた恩からその人の事をずっと追いかけているって感じ。とはいえそれを元君が認めるわけでもないんだなぁ。それは次の話で明らかにしていくよ。
ということで今回はここまでで。

レイ「次回もよろしくねー」


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EPISODE48 憧れは病にも似て2

どうも、皆様。携帯の画面が時折止まり、いつの間にか別の変なサイトにアクセスしてしまうことが間々あって苛立ちを隠せない藤和木 士です。( ゚Д゚)マジで止めてくれ……。

ネイ「知りませんよ……アシスタントのネイです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよ~。そういえば作者君、噂で聞いたけど君次のバトスピSBで剣獣使うそうじゃない」

どんな噂だ(;・∀・)まぁね。ダブルオー強いんだけど、やっぱたまに別のを使いたくなってね……。ただ今の最新デッキになる起幻系が高すぎるんで、丁度パストが出てなおかつ昔組んでいた剣獣にしようかなと。
あと読み繋がりで話すけど、魔法科高校完結ですか。達也君のデバイス?の拳銃、SSR時代のシュバルトゼロガンダムの武器モデルに使わせてもらいましたねぇ。

ネイ「その武装はDNのシュバルトゼロガンダムには継承されていないんでしたっけ」

グリーフィア「なんで受け継がなかったの?」

あれガワを被せて大型化もするから高速機動戦闘するシュバルトゼロガンダムに不要かなって思った。あと今の銃剣の方が個人的に好きなの(´・ω・`)とはいえDNでもどこかで出したいとは思ってる。あと原作が完結したとなると、ハーメルンの二次創作の方も基本となるゴールが見えて作りやすくなるんじゃないかな。
さて、それではガンダムDNEPISODE48、公開です。

ネイ「シュバルトゼロガンダムが介入、残党を蹴散らしていく流れでしょうね」

グリーフィア「それも大事だけど、再び出会った少女は憧れるその気持ちを抑えられないでしょうねぇ~。どうするのかしら?」

それでは本編をどうぞ。


 

 

「ほざけ!夫婦聖院は不滅!ここから再び這い上がる!ビクトリーロードなのだよ!」

 

 そう言って夫婦聖院のMSメオトを操るパイロットが光剣を振るう。シュバルトゼロガンダムの模造機として製造されたソルジア・エース。それを更に模倣して造られた機体が勢いを持って襲い掛かる。

 シュバルトゼロガンダムは対抗してビームサーベルで受け止めた。ダブルジェネレーターとなった機体の攻撃、受け止めて跳ね返すには出力がいる。受け止めた状態から一気に蹴り飛ばす。

 

『元、ファンネルによる支援攻撃が可能です』

 

 ファンネルの使用を進言するジャンヌ。彼女の言う通り、フェザー・フィンファンネルを分離させる。だが敵に対しての使用ではなく、後方で戦いを見ていた少女の周りにフィールドを展開した。

 動けないのか動きたくないのか。どちらにしてもあのままは危険すぎるためにそうした。ビームサーベルと言葉によるぶつかり合いが続く。

 

「お前達は既に壊滅した。夫婦聖院の聖地はもう1か月前に陥落しているからな」

 

「笑わせる。私達の思想はその程度で消えない!夫婦の関係が続く限り、我々も不滅だ!」

 

『夫婦の関係って……夫婦という関係にあなた達の存在意義を押し付けないでくださいっ!』

 

 ジャンヌの怒りはもっともである。結婚したら夫婦聖院の活動に貢献するなどと。自分達の進退を勝手に押し付けられては、互いを愛し合って結婚した者達に失礼だ。

 

「お前達は、他人に考えを強制することでしか組織を発展できなかった。控えめに言ってクズだ」

 

「黙れ!魔王と名乗って人を殺す貴様にそれを言える義理はない!」

 

「魔王は止まらない……それに俺が殺すのは神に心を売った外道だ。人の道を自ら外れておいて、都合のいいように人を名乗るな」

 

「魔王だって同じだろう!?」

 

「いいや、王は人だ!」

 

 ビームサーベルを踏み込みの姿勢から振り下ろす。右肩のアームから先、シールドが地面へと落下した。続けざまに右のシールドで敵を押し込んで、反撃を封じる。

 本当なら右腕をやるつもりだった。それでも敵の戦力を削る。ふらふらになりながら後退するメオト。校舎側の戦いも徐々にHOW港内支部の機体がこちらのCROZE部隊との連携で収まっていく。

 

「見ろ、お前達の反乱もここまでだ」

 

「ここまで、だと?言っただろう。私達は不滅と!私が滅びようとも、私達以外の使徒が我らの行動に続いて同じことを計画する。同時に私達の清浄なる行動に、人々も神の素晴らしさに気づくはずだ!」

 

「……お前の生存は入っていないんだな。命を使い捨てる広告戦略なんて」

 

「私の命で世界が変わる!」

 

 吠えて敵MSが攻撃を仕掛ける。左ウイングから取り出した展開式のビームソード。シールドを前方に構えて開放型バレルからビームを放ってくる。

 一直線に加速力で仕留める気なのだろう。加速性能を生かした突撃。それは決して間違いではない。だがすべてが遅く、そして浅はかだった。

 

「―――――アレス」

 

 呟きに呼応してシュバルトゼロガンダムのフレームが紅く染まる。突き出されたビームソードの一撃を最小限の動きで側面に回って回避する。間髪入れずに拳がシールドを潜り抜けて、敵のボディーに刺さる。

 

「ぐぅ!?」

 

「遅い……!」

 

 打撃と蹴撃。全身を使った攻撃の連発が敵の機体を砕いていく。シールドすら一発で粉砕する一撃はどうあっても止まらない。

 背を向けたMSを後ろから掴んでウイングをむしり取る。まるで天使の翼を削ぐかのようなその姿は、魔王と言うべきに相応しかった。だが抵抗されて片翼を残した。残ったウイングを開いて急速離脱したメオト。むしり取られたウイングを見て、その所業を非難する。

 

「使徒の翼を折るか!魔王!」

 

 怒りを向けられる。だがそんなものは俺にとっては何も思わない。機動力が落ちたことに言及すべきだろうと思いつつ、その表現に合わせる。

 

「片翼だけで、何が出来る?天使擬き」

 

「ぅああああああ!!」

 

 残ったウイングからビームサーベルを引き抜く。だがその一つの動作の間にシュバルトゼロガンダム・アレスは距離を詰めてしまう。

 

「DNF」

 

 冷たく言い放つ。DNFの音声が機体から読み上げられる。

 

『Ready set GO!DNF、「爆火翔焦(ばっかしょうしょう)」』

 

 敵の腹を強く手の甲で打つ。すると敵の体が球体に包み込まれた。動けない敵、球体に向けてアッパーカットをかます。球体に拳が接触すると、球体は瞬く間に拳へと収束していく。そしてそのまま敵のノーガード状態となっている胸部を強く突き上げた。同時にため込まれていたエネルギーが解放されて内側からエネルギーが散弾のように後ろ、打ち上げる形の為に斜め上空へと放たれた。

 

「がぁっ!?」

 

 アッパーカットの勢いのまま、機体が宙に放り投げられる機体。DNジェネレーターへと引火して機体は爆散する。瞬間学校の敷地内外から生徒達の歓声が沸き上がる。

 上空の戦いも収まって、隊員の一人がこちらに状況を報告してくる。

 

『黒和元隊長、学校内の戦闘は全て終結しました。救援に来て頂き、ありがとうございます』

 

「構わない。夫婦聖院は壊滅させたとはいえ、まだその動向を見張る理由があるようだからな」

 

『今後その対応について上層部も決めると思われますので、追って来る連絡をお待ちください。この場は港内支部の皆さまにお任せいたします』

 

『分かりました。あと、()()()の方がお待ちですよ?』

 

 隊員が後ろの方を指さす。向くとそこには先程の少女がこちらを物恋しそうに見つめていた。

 既にファンネルの防御壁は解除されている。少女は歩み出て元達に助けてくれたことに感謝を述べる。

 

「あのっ、ありがとう、ございます」

 

「そうか。無事でよかった」

 

 言ってその場を後にしようとするが、少女は引き留める。

 

「私、あなたに助けられたのは二度目です!三年前の神名川で起こった夫婦聖院のショッピングモール襲撃……あそこで助けられて以来、私はあなた達に憧れていたんです!」

 

 知っている。覚えている。あの幼さながらHOWへと入隊したいと言った少女のインパクトは非常に大きい。話を聞いた黎人達も呆気に取られていた程なのだから。

 その少女を再び助けたのは運命なのだろうか。その後に続く言葉もまたあの時と同じだった。

 

 

 

 

「お願いします、私を、入嶋 千恵里(いりじま ちえり)をHOWに入隊させてくださいっ!」

 

 

 

 

 変わらなかった彼女の決意。それを一喝する声が一つ。

 

「ダメだ」

 

 

 

 

「なんで……なんでですかっ!」

 

 再び断られたことに感情を露わに問いただす。自分はただ、あなたの力になりたい……共にMSを悪事に利用する奴らと戦いたいのに。

 そんな千恵里の考えを見透かすように、漆黒のガンダムのパイロットは理由を例に挙げた。

 

「前にも言ったはずだ。MS所持法の年齢未満の子どもを、戦わせるわけにはいかない」

 

「で、でもそうじゃないことを手伝うことくらいは」

 

「そう思うってことは、君の目的は市民を護ることじゃなく、敵と戦うことを第一に考えているんじゃないのか?」

 

「そんなこと、ない……そんなこと!」

 

 違うと首を横に振る。しかし内心は動揺していた。そうじゃないはずなのに、指摘されると自分が本当は戦いしか望んでいないのでは、と。

 そんなはずはない。そんなこと……。答えに戸惑う私にその人は後ろを指して言う。

 

「お前には、まだやるべきことがある。友と学校に通うという大切な時間が。それがどれだけ幸福なのかを噛みしめろ。それを分からなきゃHOWには入れられない」

 

 振り向くと自分の友人、クラスメイトと言った者達が不安そうに見つめていた。みんなのおかげで今日まで生きてこられた自覚はある。けれども千恵里にも通したいものがある。あの時の本音を、本当の望みを暴露する。

 

「……私、私は……あなた達に助けられて、それで憧れたんです……。本当なら、あなたに引き取ってほしかった!」

 

「……憧れは憧れのままでいい。俺の事を追いかけるな。同じ道を辿るしかなくなる」

 

 それでも目の前の人には届かない。涙で視界が霞む。目の前の人を必死に追いかけ続けていたのに、追いかけるなと言われたら、この先何を目的にして生きて行けばいいのか。

 涙が零れ続ける。するとその涙の理由を問い掛ける声が空から聞こえた。

 

「あれあれ、どうしたの元君」

 

「深絵。いや、ちょっとな」

 

 声につられて見上げる。空からこちらに向かって蒼い機人がゆっくりと近くに着地してきた。

 黒のガンダムの人の話し方から、親しい人物であることが分かる。二人の会話が耳に入ってくる。

 

「前にも話したろ、救出した子がHOWに入りたいって言った話」

 

「あぁ、あったねぇ。あ、もしかしてこの子も入りたいって話?」

 

「というかその本人だ。まだ諦めていないらしくてな……」

 

「へぇ、凄い偶然。いや、これは悪運と言った方がいいのかな。ふむふむ」

 

 まじまじとこちらを見てくる蒼いガンダムのパイロットの人。同性とはいえ、じっくりと見られるのは恥ずかしい。

 その人はこちらに対しいくつか聞いてくる。

 

「ね、あなた元君に憧れてHOWに入りたいって話だったよね?」

 

「え、は、はい」

 

「うん、じゃあ自分の力で入るって気持ちはもちろんあるわけだよね?」

 

「それは、はい」

 

「そっか。じゃあ簡単だよ。15歳になったら入ればいい」

 

「え……」

 

 虚を突かれてしまう。当たり前の入り方。自分は今すぐにでも入りたいのだ。それでは意味はない。

 それを改めて伝えようとするが、その人はそのまま当たり前の、本来の入隊方式について話す。

 

「自分の力で入りたい、ならちゃんと他の人と同じように規則は守って入らないと。憧れているのならその人に迷惑が掛からない様にするのは当たり前じゃない?」

 

「そ、そうだけど」

 

「何か?」

 

「……いえ」

 

 言葉に威圧感を覚え、何も言えなかった。そうするしかない。でなければどうなるか。そんな恐怖心にも似たものを感じた。

 千恵里の返答を聞いて、蒼のガンダムのパイロットは振り返って同僚であろう黒のガンダムの人にも言葉を交わす。

 

「ってことだから、元君。彼女がもし入隊を希望して来たら邪険に扱っちゃダメだよ?」

 

「いや、彼女をHOWに入れるのは難し……」

 

「いやいや、ちゃんと彼女の考え方とかは見なきゃダメだよ?でも戦わせたくないって自分の感情を押し付けたりとかしちゃダメって話。前もその事で愚痴ってたからね元君」

 

 ん?と思った。話の内容が聞こえてくるのだが、その内容は自分に可能性を広げてくれるようなものだった。

 蒼のガンダムのパイロットの話を静観して聴き入る。

 

「元君だって彼らに因縁を感じて戦っているんだから、それに関して文句は言えないよね?助けられて憧れちゃってるんだからその分元君もしっかり見てあげなくちゃ」

 

「だけどな」

 

「何か問題ある?」

 

「……ないです」

 

 言い返そうとしたものの、その眼光でため息を漏らす黒のガンダムのパイロット。よく分からないが、先程抱いていた不安は解消された、といっていいのかもしれない。

 蒼のガンダムの人は話が終わったことを告げる。

 

「じゃ、そういうことだから。15歳になって、高校入れる時になったら来てね。あ、あともう一つ」

 

「なんでしょう……」

 

「元君の言ったことは忘れないように」

 

 先程から何度も言われていた元という名詞。おそらく黒のガンダムのパイロットの名前だろう。その人の言った言葉、憧れは憧れのままでいい、俺を追いかけるな、だったか。

 

「憧れはいいけど、それを現場に持ち込んじゃだめ。私達は市民の人達を護ることを優先しなきゃいけない。その為ならたとえ、昨日までの味方を撃たなきゃいけない時だってあるんだ。もしかしたら、君の憧れの人を撃たなきゃいけない時だってある」

 

「……!」

 

 憧れの人を撃つ。思ってもいなかった発言に動揺が隠せない。

 そんなことあるわけない。あの人が敵になるなんて。しかしそれを見透かすように蒼のガンダムは言う。

 

「その程度で驚いていたら、HOWには到底入れない。それだけの覚悟、そして裏切られるかもしれないと思っていても誰かを助けられる心を持って。それがあなたの、15歳になるまでに身に着けること」

 

 告げられるやるべきこと。それがHOWの隊員に求められる条件だった。示された道は険しい。けれども不思議と千恵里のやる気は沸いてくる。

 女性の声に頷く。千恵里の決断を見て女性はMSの姿のまま激を送る。

 

「じゃ、私達はそろそろ退散かな。もがいて、自分の気持ちと向き合ってね」

 

「は、はいっ!」

 

「帰還する。後は港内支部に任せます」

 

「了解しました、ありがとうございます」

 

 二機のガンダムは他のMSと共に去っていく。途端に体の力が抜けて倒れかける。慌てて友人達が駆け寄って体を支えてくれた。

 

「ちょ、大丈夫か千恵里!?」

 

「千恵里さん大丈夫ですかっ」

 

「うん、ありがとう二人とも……ちょっと力抜けて……今になって背中も痛いし」

 

「とりあえず病院搬送ね。連れて行くわ」

 

 先程教室に駆け付けてくれたパイロットの人によって私は救急車に乗せられて今日の学校は早退となった。病院では知らせを聞いて飛んできた養父母の人に泣かれてしまった。でも無事でよかったと。

 この日から私はあの人の言葉を胸に刻んでHOWへの入隊を目指すことにしたんだ。

 

 

 

 

 帰投する傍ら、話に割って入ってきた深絵に元が苦言を申す。

 

「おい、深絵。あれはどういうことだ」

 

「ん?何?」

 

 とぼける深絵の反応。心の中で舌打ちしつつ、元は言った。

 

「何もあったもんじゃない。こっちの考えも考えて物を言ってくれ」

 

「えー、あの時元君、あの子に諦めろって言おうとしたじゃん。それに君が親しい人を戦闘から遠ざけるせいで、戦力整え直さなきゃダメなんだから~」

 

 叱ろうとするものの、代わりにあまり触れてほしくないところを逆に彼女に指摘されてしまった。戦闘から遠ざけた親しい人物とは他でもない俺の妹の華穂だ。今は結婚して名を「戌原 華穂」と名を変えている。

 妹とその夫は今現在「育児休暇」と称してHOWの監視下に置かれている。いくらHOWの活動していなくても、二人が、二人の「家族」が狙われることは明白だった。護るためには手元に置いておかなくてはいけない。

 ただそのせいでCROZEの戦力が落ちてしまったのは事実。その為に元が直接現場に赴くことは珍しくない。ジャンヌもそれについて言及した。

 

『深絵さんの言うことも事実ですね。私達CROZEには隊長である元にとって、扱いやすくて強力な直属の部下とも呼べる人員が欲しいところですし』

 

「言い方、な。それもこれもまだ「新型機」が開発できてくれればだいぶ楽にはなるんだが」

 

 新型機、それが意味するのは「黒和元専用機」の事である。シュバルトゼロガンダムの後継機であり、CROZEを象徴する機体として君臨する予定の技術の粋を集めて製作される機体だ。

 しかし技術の粋を集めるだけあって製造は難航。後から製作を開始した深絵の「後継機」の方が完成間近だという。

 自身の機体の方が完成の早いことについて深絵も喜々として言及する。

 

「そうだねぇ。私の機体は既存兵器に付け足しなのが多いから早く完成するんだけど……やっぱりあんな機能付けるから時間かかるんだよ」

 

「それはそうだが……」

 

『でもあれが、今一番私達のDNL能力を生かせると踏んでの機能ですから。外すことはできません。もう一つの機能もそれを前提に開発されていますから』

 

「うーん。アレスモード、それを応用したモードシフトシステムかぁ。着想を得たのはいいけど、やっぱりアレスモードの出自を探ってから採用した方がいいんじゃないかな」

 

 7年前の事件で発現したアレスモード。それに関しては謎が多い。一体どうしてそんなシステムが発動したのか、スタートすらも把握できていないモードの使用に黎人達が封印を検討したこともあった。

 しかし元の進言もあって引き続き運用が検討された。むしろこちらには有益であると推した。そうして開発は継続され、それを基にシステムが構築されていった。

 それらのすべてが実現すれば、理論上シュバルトゼロガンダムが戦闘区域全てを支配することも可能となる戦術運用システム。それらが完成するまでの間、元はロートルになりつつあったシュバルトゼロガンダムRⅡFⅡで対応していかなければならなかった。

 嫌味のように指摘した深絵には、ならその分頑張ってくれとエールを送った。

 

「不安に思うなら誤作動ないように最新鋭機の実戦データこっちに流してくれ。反応しなくてもユグドラルフレーム載せているから、それくらいは貢献できるだろうし」

 

「何それ。まぁアレスモードはユグドラシルフレームに依存した機能みたいだからね。完全版じゃないとはいえユグドラルでもテストは出来るからデータは送ってもらうよ。けどそれはそれ。ジャンヌちゃんの言う通り、気軽に任務を任せられる子作りなよ?」

 

「分かってる。最悪アイツが器に相応しいのならな」

 

 言って沈黙が生まれる。元の意識が再度彼女の、入嶋千恵里の顔を思い起こす。

 

(憧れ、か)

 

 果たして自分は、そんな憧れを抱いてもらえるような人間になれたのだろうか。瞬間を切り取った部分だけで判断されているのでは?

 CROZE隊長になってから、何度も思い続けている疑問に答えは未だに見つからない。あの少女に向けられる視線が痛く感じてしまう。ガンドはこんな気持ちを抱いたことはあったのだろうか。もっとも彼は生きていないし、生きていたとしても答えを得られるかどうか。

 見つけるしかない。自分なりの答えを。そして納得しなければ。迷いを捨てるために機体の速度を少しだけ上げた。そうして時は再び流れていく。ガンダムと少女が三度出会う、あの事件。それこそ、決断の時だった。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。深絵さんのO☆HA☆NA☆SHIで綺麗に纏まりましたね(^ω^)

グリーフィア「お話というより、威圧ね(笑)」

ネイ「あはは……け、けど深絵さんの言うことも正しいですよね。規則に従う、変に優遇、冷遇しないって」

そうだね。どっかの黒いガンダム継承者は色々優遇されていますけど!まぁ今のところは元君もそんな荒っぽくなく、隊長として立場に収まっているんですが。
この約束がこのあとの黒の館DNを挟んだEPISODE49以降からどうなっていくかが注目です。

ネイ「あ、黒の館DN挟むんですね」

グリーフィア「あらあら、随分早いわねぇ」

だって、短さの割りに出てくるキャラクターとか機体が多いもん(´・ω・`)今現在は黒の館DN三回分ほど挟む予定です。

グリーフィア「その三回、も前後編を一回として数える場合もあるってことね」

ネイ「それだけ新しい機体が出るってことですね」

そういうこと。それでは今回はここまでです。

グリーフィア「次回もよろしく~」


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黒の館DN 神騒乱勃発編 第8回

どうも、皆様。先日バトスピのショップバトルに行ったにも関わらず、参加受付せずにフリーで回していた結果参加出来なかった作者の藤和木 士です。いやね、皆様も何かに参加する時には受付済ませてから遊びましょうね(T_T)

今回は黒の館DNの公開です。元君達の父親とかの少女「入嶋 千恵里」、そしてMSはソルジアⅡと文面のみ登場の地球で初の量産可変MSエアフォース、そして夫婦聖院のメオトです。

それでは本編をどうぞ。


 

 

士「黒の館DN、神騒乱勃発編の第8回です。作者の藤和木 士です( ゚Д゚)」

 

ネイ「アシスタントのネイです」

 

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよ~。さてさて、いよいよLEVEL2も残すはこの第4章というわけね。色々とスピード振り切ってるわけだけど」

 

ネイ「だよね……元さん達の両親を殺してしまったこととか……それから千恵里さんだっけ。その子のHOW入隊志願とかでもうこの時点で7年経ってるみたいだし」

 

グリーフィア「そうねぇ。でも本番はここからみたいだから、ここまでの紹介はしておかないとってわけね」

 

士「その通り。というわけでまずは登場人物の紹介です。第4章からのキーキャラクター入嶋千恵里と、元君と華穂ちゃんのお父さん、元時さんですね」

 

ネイ「それでは順に紹介していきます」

 

 

黒和 元時(くろわ もととき)

 黒和元と黒和華穂の父親。64歳。

 厳格な性格だが息子と娘の事は非常に大事にしている。元が5年前の事件で行方不明になった時も涙を堪えて、家族の大黒柱として妻と娘を支えた。しかし宗教へと傾いた妻の暴走までは止められず、結果として華穂が家を出て、妻が妹夫婦の紹介で連れてきた子どもを養子に取る結果となってしまった。

 元が生きていたことを非常に喜んでいたが、今後息子の邪魔とならないために敢えて連れ出されるのではなく、殺すことを依頼。翌日桑南のテーマパーク永島スパランドで妻と共に狙撃により射殺された。

 元は自身が父親似であり、もし自分が父親だったら父と同じことをしたかもしれないとのちに回想する。

 

 

入嶋 千恵里(いりじま ちえり)

性別 女

身長 129cm→150cm→154cm

髪色 黒

出身地 神名川県 河崎市→東響都 港内市

年齢 9歳→12歳→15歳

誕生日 9月 9日

血液型 A

好きなもの ぬいぐるみ、炭酸飲料、つけもの(12歳以降)、人助け(15歳時)

嫌いなもの カルト集団、炎、料理(つけものづくり以外、12歳以降)

愛称 ちえり、ちぇりー

 

 第四章から登場する、神名川県河崎市在住の小学生、あるいは東響都港内市在住の小学生・中学生。

 9歳の時に次元覇院の残党が作り出したカルト集団、夫婦聖院の破壊活動に家族と巻き込まれる。父親が死に、母と双子の妹の玖亜が拉致され自身も捕まりかけるも間一髪元達に救助された。その時の姿に憧れて元の所属するHOWに所属することを希望した。

 12歳の時には壊滅したばかりの夫婦聖院残党に通っていた学校を襲撃される。その際には咄嗟に災害用スライダーを利用した避難を提案し、脱出するが脱出中のスライダーを破壊され、夫婦聖院MSの前に出て危機に陥る。無謀にも夫婦聖院を批判し、殺されかけるがまたしても元に助けられる結果となった。その際に再びHOW入隊を志願したが、再度元に拒否される。ところが間に割って入った深絵の進言もあって15歳になった時にまた改めて公平に見るという形に収まった。

 15歳の時間軸では新たなカルト武装集団「ゼロン」に関係したMSパイロットを巡って深絵の言葉をしっかりと守っていた彼女が再び関わっていく。

 人物外見モデルは小説「この素晴らしい世界に祝福を!」の女神エリス。年齢相応に幼い姿となっているイメージ。また髪も銀色ではなく黒となっており、イメージは少々異なる。とはいえ15歳時には学校内からの注目の的となっており、ヒロインとしての素養を持つ。また人助けを性分としている点は彼女のもう一つの側面に通じるものがある。容姿も大分近くなっている。

 

 

ネイ「以上がここまでの登場人物で、紹介するのが必要な方たちですね」

 

グリーフィア「うーん、まぁ元君達のお父さんは紹介するにしてもお母さんの紹介はしないのねぇ」

 

士「(´・ω・`)あぁ、うん。ちょっとあまりにも遠目でしか出てないから紹介するのはどうかなぁと思った。あと養子の子もだし」

 

ネイ「養子の子を殺さなかったのは……元さんの気遣いなんでしょうか?」

 

士「気遣いっていうか、甘さだね。子どもまでは撃てなかったって話。さて、その甘さがどこで牙をむいてくるか(゚∀゚)」

 

グリーフィア「顔、笑ってるわよ~」

 

ネイ「それでもう一人の紹介した人物、千恵里さんはサブタイトルにもある二人の少女の片割れなんですか?」

 

士「そうですね。彼女こそがLEVEL3でも重要になっていく少女の方です。もう片方もすぐに登場する予定ですよ」

 

グリーフィア「もう一人も楽しみだけど、この子はなんていうか……元君に盲信してるって感じよね~」

 

ネイ「けどその方が却って良いみたいに深絵さんも言っているし……。元さんはあまり戦わせたくないようですが、どうするんですかね」

 

士「どうするんだろうね(;・∀・)まぁそれも全て第4章が終われば分かりますよ」

 

グリーフィア「当り前~ね。さ、次はMSの紹介よね?」

 

士「そうそう。今回は3機紹介です。HOWの新型MSソルジアⅡと可変機エアフォース、そして夫婦聖院のMSメオトです」

 

グリーフィア「まずはソルジアⅡから~」

 

 

HMS-02

ソルジアⅡ

 

機体解説

 ソルジア・エースをベースにしつつ、量産に向いた調整を施した機体。それがソルジアⅡである。

 型式番号はオーダーズを示すOからHOWのHへと変更。ただしソルジアⅠからの通し番号であり、02となっている。

 ソルジア・エースで問題となっていたピーキーな操縦性を抑え込み、扱いやすさを重点にした。また武装の拡張性については本機では一度リセット。代わりにそれぞれの戦法が求められるタイプ別MSが新たに開発される方針へと変わった。その為機体パイロットに対する操縦難度が多少下がる結果となった。

 万能からは離れたものの、普遍的でありながらその使いやすさは超えており、量産機として文句のない機体となった。

 外見モデルは百式を参考にソルジアのベースであるペイルライダー、その量産型であるキャバルリーとなっている。頭部にも小型のブレードアンテナが付き、目元を覆うバイザーもキャバルリーらしさが出ているイメージ。ただし武装の多くは百式がベース。なおカメラアイはジム・ブルーディスティニーのようなモノアイ二つが両眼となっている。

 

【機能】

・ディメンションアンテナ

 機体頭部ブレードアンテナとロッドアンテナ、および胸部ダクトユニットが持つ次元粒子およびDN制御アンテナ。エースにおいては鎖骨部分から伸びたアンテナが主に役目を担ったが、鎖骨部分で担う部分はダクトユニットの方へと移動した。

 

・ビームシールド

 地球のMSの防御兵装としてスタートが提案したビーム防壁。元々はマキナ・ドランディアの、元が所属するドラグディアのかつての敵対国であったマキナスの技術だが、元やジャンヌもこの技術は非常に有効と判断。また次元覇院も最終局面で使用されたMSが使用していたことで本技術を開示し、普遍的な防御手段の一つとして運用することを決めた。

 ソルジアⅡにおいては通常のシールドから形成するものと、非常時用の手甲から展開するものの2パターンを搭載。シールドのものは縁部分の溝からシールドに沿って展開、手甲側のシールドもパーツを隆起させて溝から形成する。防御性能もジェネレーターからの粒子供給効率のアップによりマキナスの物よりも向上している。

 発生のモデルはシールドがシルエットガンダムの物を、手甲はデスティニーガンダム、レジェンドガンダムの物から。

 

 

【武装】

・ビームライフル

 オーソドックスな主兵装の一つ。腰背部に装備される。

 名称は以前のものと同じとなったが、エネルギー効率はV2+よりも向上。ブレも少なくなった。ただしエースのものと比べると威力は控えめ。なお更なる後継機では新開発のエネルギーパックとの混成銃を提案されており、採用されれば本体に大出力の兵装を盛り込めることになる。

 モデルは百式のビームライフル。

 

・ビームサーベル

 こちらもオーソドックスな主兵装の一つ。右腰に二基装備する。

 消費DNを抑えつつ性能を維持したモデルで、初代ソルジア程度のシールドなら容易く斬り裂ける。

 モデルは百式のビームサーベル。ただし装着の仕方はシャイニングガンダムのビームサーベルから。

 

・スカイウイング・バックパック

 機体背部に搭載されたウイングバインダーとセットになったバックパックユニット。ウイングバインダーは可変型ウイングとスラスターのセットとなっており、扱いやすい機動性能となっている。

 可変ウイング側面にはブレードホルダーを備えており、後述するエリミネイターWソードを二本装備する。総合的な機動性能などはエースに劣るものの、安定した機動性でこれでもシュバルトゼロガンダムの50パーセントほどの機動性をキープする。

 なお本来は可変MS用のバックパックとして開発されたが、肝心の機体本体が開発途中で量産に向かないことが判明。よって最初から設計のし直しになった。ただバックパックのみ性能が良かったことからそのまま本機のバックパックに流用された。よって本機には本来のオリジナルバックパックが存在する。そちらはエースの同型バックパックから可動バーニアユニットを取り除いた仕様だった。

 モデルは百式のバックパック。可動ギミックも概ね準拠するが、パイプパーツがダクトパーツで覆われたような見た目に。そして側面にブレードホルダーを備えている。また装備経緯も百式の物を改変させてもらっている。

 

・エリミネイターW(ダブル)ソード

 バックパックのウイング側面に装備されたエリミネイターソードの新型。一見すると片刃の実体剣である。

 しかし反対側からはビーム刃が形成される。峰に沿って形成され、相手に応じて使用できる。

 ⅠとⅡのいいとこ取りのような兵装となった。

 

・シールド

 機体のシールド。左腕に装備される。

 付属武装のないシンプルな構成だが、前述した通りビームシールド発生器が埋め込まれており、縁の溝から形成可能。

 モデルはシルエットガンダムのシールド。

 

・ビーム・ガン・ポッド

 機体肩部に設置されたマルチガンユニット。中央にビームガトリング、側面に3連装マイクロミサイルポッドを二基ずつ計四基備える。

 遠距離用ユニットであるが、どちらかと言えば小隊で運用する際の支援兵装。その為不要時には排除が簡単に行えるようになっている。

 実はこれ、MSオーダーズと敵対していた次元覇院のマキインの装備、肩部ミサイルポッドを参考にした兵装であり、それをアップデートした兵装。

 モデルはヘイルバスターガンダムの肩部ウエポンラック。

 

 

 

 

 

HMS-04V

エアフォース

 

機体解説

 MSオーダーズからHOWへと組織の体系が変わって、次元黎人は新たなMS開発を着手した。

 その一号機にしてソルジアⅡは普遍的な機体として完成。しかし結果としてはこれまでのソルジアからの発展型でしかなく、更にソルジアⅡは以前よりも汎用性をなくしてしまっていた。

 ソルジアⅡは優秀だが、その失った万能性をカバーする必要がある。そこでHOWのメンバーからアイデアを抽出した結果、黒和元のアイデアと同時期に自衛軍四ツ田基地からの要望にあった「可変機」の開発に乗り出した。

 ソルジアⅡ開発時に同時開発していた可変機だが、主翼となるウイングを含むバックパックユニットは良好だったものの、機体本体が変形に耐えられるものではなかった。

 どうにもならずバックパックのみ開発中だったソルジアⅡに流用したものの、黎人は可変機が出来ないはずがないと信じていた。そこで黎人は可変ロボットという点を抽出するため、日本の戦闘機型可変ロボットのアニメを視聴。そしてその原作者を可能な限り訪ね、可変機構についてアイデアをもらった。

 その結果「モリカワ」という男性が原作のアニメ「マリアス」の可変戦闘機のデザインをベースに、シュバルトゼロガンダムのデータベースにあったマキナスの可変MS「マキナート・エアレイダー」を掛け合わせて、ようやくHOWの手で地球最初の可変MS「エアフォース」が製作された。

 初の可変機というだけあって、その性能はやや抑えめな部分も多い。しかしMSに求められる性能、そして安全な可変機構だけは実現した。

 戦法としてはヒット&アウェイ。DNのもたらす姿勢制御なども含めて変形は1秒に満たない。連続変形も可能だが、フレームに負担が掛かりやすい。

 試験機として自衛軍早期警戒部隊「疾風」に10機、そしてオーダーした四ツ田基地に12機配備された。オーダー元の四ツ田基地からの評判は良く、主力としてソルジアⅡを含めて14機の追加配備を要請。疾風もその機動性には評価するものの、やはり火力が足りないとのことで既存パーツを利用した増槽パーツを開発。のちにそれが逆輸入されてHOWから専用増槽パーツ「プラスパック」として正式採用される。

 モデルはマクロスシリーズのVF。Z系をベースとしているエアレイダーを参考にしてはいるものの、どちらかといえばVF系のみを抽出して戦闘機のスタイルに特化させているようなイメージ。なお黎人がモチーフとした作品と原作者は「マクロス」と監督の河森氏の名前から。

 

 

【機能】

・変形

 本機最大の特徴。機体を変形させて飛行形態で敵を追跡、あるいは目的地へ向かう。

 変形法としては胸部から機首ユニットを展開(この時下半身とは側面パーツが繋がっている)、その後バックパックと接続、腕部を後方へ折りたたんでフライトユニットとなったバックパックへと合体する。そして下半身を後方へと向けて可動させて脚部をフライトユニットと合体させて完了する。

 マクロス系列機を参考とした変形である。中間形態のガウォークも存在するが、今現状扱うには相当の手練れでなければいけない為、一部機体はロックが掛かっている。

 

・ディメンションアンテナ

 次元粒子、DNを制御するアンテナ。

 本機では変形前の胸部に二本、変形後のファイター上面に三本設置される。飛行時に形成する空力抵抗を減らすフィールドを作り出す。

 

・DNウォール

 ビームシールドよりもこちらの方が都合はいいだろうということで搭載。ドラグディアで量産されているものをベースにシュバルトゼロガンダムのデータから開発した。

 腕部のシールドユニットから形成する。またファイター形態では機体を低出力のDNウォールで覆い、飛行速度を上げている。

 

 

【武装】

・レーザーバルカン

 機体頭部側面に装備される対空機銃。マリアスから影響を受けた武装。

 無論モデルはマクロスシリーズのVFが装備するレーザー機銃。

 

・ガンアサルトF(ファイター)

 ガンアサルトを可変機用に調整したもの。腕部側面、機体下部に装備する。

 実弾仕様であり、戦闘機におけるバルカン砲の役目を担う。手持ちの際はマシンガンとして用いる。

 弾倉は機体腰背部にカートリッジとして携行する。

 イメージとしていたガンポッドに更に近づいた使用感となっている。

 

・ビームサーベル

 標準的なビームサーベル。腕部内部に一本ずつ格納している。

 

・レールガン

 サイドアーマーに装備される実体弾兵装。DNによる電磁加速で実弾を飛ばす。

 実質ガンアサルトの強化出力の代わりであり、ガンアサルトとは別に使用できるため弾幕を形成できる。

 形状は機動戦士ガンダムSEEDDestinyのゲイツRのレールガンがベース。

 

・ガンシールド

 機体左腕部に装備される小型シールド。DNウォール展開機能を持ち、本機の重要な機能を持つ。

 また先端部には三連装ビームガンを備えており、それぞれがビームサーベルを形成可能。攻撃にも転用できるものとなっている。変形時には後方へと放てる。

 

 

<プラスパック>

 自衛軍が独自に開発した本機の追加パーツをHOWが改めて作成したもの。ウイングにブースター付きのプロペラントタンク兼ビーム砲(増槽)、そして機体フライトユニット上部(変形時背部)にミサイルポッドを備える。

 

・ミサイルポッド

 九連装のマイクロミサイルポッド。後部にはブースターも備わっている。

 火力強化のための装備。ビームではないものの、リフレクト装甲機体との交戦データを基に改良され、リフレクトパネルを貫けるかつDNを破壊に利用した爆裂方式を採用しており、遅れは取らない。

 

・ブースタープロペラントタンク

 翼部に装備される増槽ユニット。翼を挟む形で装備する。

 先端部にはビームキャノンが内蔵されていてなおかつ可動式。人型でも敵機へ向けて砲撃が可能となっている。当初は大型ビームサーベルとしても取り外して用いれるはずだったが、現時点では試行錯誤中。

 

 

 

 

MSMS-02

メオト

 

機体解説

夫婦聖院が開発したMS。フラグシップ機としての側面を持ち合わせる。

 設計としてはソルジアを盗用、それもエースの物を盗用しており、各部形状はそれに似る。ただし性能はそれよりも向上しており、その原動力にダブルジェネレーター仕様となっている点がソルジア・エースとの大きな違いである。

 シュバルトゼロガンダムとも互角に渡り合えるカタログスペックを誇るが、元々がシュバルトゼロガンダムのコピー機としての側面があった事、そして元達の成長により劇中の描写では簡単に撃破されてしまっている。またダブルジェネレーター仕様としたことで生産コストが大幅に増加、よって本機はエース専用機となり、他の使徒は次元覇院が使用していたマキインなどを使用することになってしまった。

 形状としてはソルジア・エースとほぼ同等。ただし頭部は三本線の入ったマスクの奥に四角形のカメラユニットが内蔵された姿。口に当たる部分は突起となっている。

 

【機能】

・ディメンションアンテナ

 原型機から盗用された次元粒子制御アンテナ。ダブルジェネレーターの粒子をより活かせるようになっている。

 

・ダブルジェネレーター

 次元粒子発生器を二基搭載する。胸部と背部バックパックに分割されて装備される。

 

 

【武装】

・フィンガービームサーベル

 機体の指先から展開する格闘兵装。モデルとなったソルジア・エースから引き継がれていない、オリジナルの兵装。

 五本ものサーベルとして使用可能な他、束ねて強力なビームサーベルとして使用が可能。

 モデルは機動戦士ガンダム00のガラッゾのGNビームクロー。

 

・MSライフル

 原型機から盗用された実弾兵装。60発装備する。不使用時にはウイング側面に装備する。

 

・ビームライフル

 名称としては普通のビームライフルだが、ソルジア・エースのビームライフルV2+を改装したもの。

 バレル下部のユニット交換も生きているが、こちらではグレネードランチャーに変わり、そのグレネードランチャーも分離させて手持ちが可能。引き続きビームサーベルを銃下から発生させられる。

 

・ビームサーベル

 普遍的な格闘兵装。同じくバックパックのウイングカバーに収納される。

 

・スラストバインダー

 肩部に装備される防御兵装。バインダーシールドを盗用して、かつ改良を加えた兵装。

 シールドのバーニアノズルが多層スラスターに変更。また裏面にはアームを装備しない。代わりにシュバルトゼロガンダムのレイ・アクセラレータに似たビーム発生器「スラスト・スマッシャー」を装備。高出力砲撃に絞った運用を可能としている。

 

・シン・イミテーションウイング

 高機動ウイングを備えたバックパック。イミテーションウイング・SZの設計をコピーして製作された。

 夫婦聖院のカスタマイズとしてウイングの元ファンネル着脱部であるスラスターユニットが、大きく下方に展開してスラスターとなる「シン・モード」を搭載。直線加速力を向上させている。ただしその分バックパック下部のプロペラントタンクが無く、機体自体もDNジェネレーターを二基も装備するため生産数が少なくなっている原因にもなっている。

 シン・モードのモデルはダンボール戦機WARSのドッドブラスライザーのラグナロクフェイズにおけるウイング展開機構。名称のシンは「神」と罪を意味する「Sin」である。

 

・サタン・エリミネーターソード

 機体の左ウイング側面に装備される大剣。エリミネイターソードⅡの色替えである。

 名称は魔王と名乗った元を討伐する為にサタン(魔王)を駆逐するという意味合いが込められている。

 

 

グリーフィア「以上がMSの解説になるわね。順を追っていつもの解説していきましょうか」

 

ネイ「ソルジアⅡ、シンプルですね」

 

士「ジンクスⅡとかもシンプルに命名されているからね。とはいえこの次の発展型はちょっと名前が変わるんだけども」

 

グリーフィア「どんな名前になるのかしらぁ?」

 

士「それは言えんよ(´・ω・`)」

 

ネイ「でも可変機登場ですか。これ作ってほしいっていうのはあの四ツ田基地の皆さんなんですね」

 

士「あそこは元々自衛軍でも戦闘機に力を入れていた基地だからね。前と同じように空を飛び回りたいってことで可変機の開発と運用を任せているって感じです」

 

グリーフィア「任せている、ということは可変機の運用のテストをやるってことでいいのよね?」

 

士「そういうこと。だからカラーシリーズの可変型も彼らの周辺で行われているよ」

 

ネイ「へぇ、カラーシリーズの可変型ですか。どんな機体になるんでしょうね」

 

グリーフィア「狙撃、砲撃……そういえば夢乃ちゃんも一応格闘型のカラーシリーズ乗るのよね?」

 

士「よく覚えてるね(;´・ω・)一応緑のガンダムだ。いつかの登場をお楽しみに」

 

グリーフィア「それで、夫婦聖院のMSだけども……え、ソルジア・エースの盗用機なの?」

 

士「盗用して作った機体です(´-ω-`)」

 

ネイ「盗用……」

 

士「何か?(´・ω・`)」

 

グリーフィア「ぶっちゃけ、流よ」

 

士「;つД`)何もかもオリジナルって言うのも難しいんですよぉ。たまには装甲とかは変えて似たような機体でつなぎたい」

 

グリーフィア「でも前にもドラグーナ・レドルのカモフラージュ機にコアトルいたじゃない」

 

士「(゚Д゚;)なぜ知っている……」

 

ネイ「いや紹介したじゃないですか」

 

士「だよねぇ(´・ω・`)ま、このLEVEL2第4章はLEVEL3の為の繋ぎとしての役割が強いのでね。そんなに新型を出せるほど余裕がないんだ」

 

グリーフィア「ふぅん。まぁここで目立つ新型出したら、後々でデザインに行き詰るものね」

 

士「あっハイそうですね(´・ω・`)ただでさえモデルとかが多いから」

 

ネイ「ですが敢えて言うならエアフォースの活躍をもっと見たいと思いますね。名前だけだったりちらっと登場しただけだったりですし」

 

士「けどそれ以上に更なる可変型が登場するのでお楽しみに(´ρ`)と今回はここまでとさせてもらいます」

 

グリーフィア「次回の黒の館DNは……LEVEL2最後になるのかしら?」

 

士「それはまだ分からないね。一回だけ最後の前に挟むか考えていますので」

 

ネイ「次回もよろしくお願いします、ということで」

 




今回もお読みいただきありがとうございます。

元君の父親のみの紹介ですが、こちらは母親の直接的な登場がなかったため、父親の身の紹介となります。
そして入嶋千恵里は本章、そして次のLEVEL3にてのメインキャラクター。彼女の紹介はLEVEL3でも行います。ちなみに千恵里の名前、外見などは何回か変更しています。ついでに言うと第四章自体も何度か変えています。最初のシナリオでは少々都合が悪かったためですね。

MSに関してはソルジアⅡ、エアフォース、そしてメオト三機共にこれでも簡易的な設定にしてあります。メオトでも触れているように全部が全部組合わせて作れるものでもないので、後継機、あるいはデッドコピー機で手間を減らしています。
ですがこれも全て第四章のここからの為。第四章ではソルジアの第三世代機の登場、そして元君と敵対する「戦慄の騎士」が登場します。その機体のデザインコンセプトはLEVEL3でも反映していくので、LEVEL3の機体を予想してみるのもいいかもしれません。

それでは今回はここまでです。次回もよろしくお願いします。


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EPISODE49 戦慄の騎士1

どうも、皆様。またコロナの被害が高まってきて、緊急事態宣言発令される勢いですね。作者の藤和木 士です(´・ω・`)まぁ私はその件の都に住んでいるわけではないんですが。

ネイ「アシスタントのネイです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよ~。けどまぁ作者君も大会とかちゃんとマスク付けているわよね~」

とはいえ薄着で寒さから風邪ひきかけたんですけどね( ;∀;)暑いけど冷房の事とか考えて服装調整しましょうね。
ではEPISODE49、公開です。LEVEL2最後の事件の始まりだ!( ゚Д゚)

ネイ「戦慄の騎士……なんだかガンダムでも似たようなタイトルだったり異名だったりする機体がいましたよね」

グリーフィア「戦慄のブルー、第四の騎士、かしらね。どっちかに関係する機体かしら?」

いや、どっちもだ(゚∀゚)というわけで本編をどうぞ!


 

 

「来たぞ、黎人」

 

 2035年、冬。年越しも間近となったある日、元は黎人に呼び出しを受けていた。聞いた時には何かやらかしたのかと自身の行動を思い出していたが、どうやらそうではないらしい。

 指示された部屋に入ると、そこには黎人、そして向かい合わせに自衛軍の制服を着た、年の離れた二人の男性が座っていた。一人は中年の髭を生やした親父系、そしてもう一人はその男性に似た新兵にも見える生真面目さを備えた青年だ。

 やってきた元に黎人が席を立って出迎える。

 

「待っていたぞ、元。忙しい中すまないな」

 

「まぁな。一年前の輸送艦襲撃事件のせいで大破した俺の新型機になるはずだった機体のデータ修正で、何度か呼び出されている。本当なら新型機で受けるはずだった任務も、旧式になったシュバルトゼロガンダムでやるしかない。そんな俺を呼び出して何の用だ。自衛軍の軍人さんまで呼んで」

 

 皮肉たっぷりに愚痴りつつ軍人について尋ねると、黎人は二人を指して用件を語った。

 

「あぁ、実はな……今回自衛軍からの依頼だ。こちらは依頼してきた特殊MS部隊「スレイブレイス」の隊長、会島 虎治郎(かいじま とらじろう)中尉。それから彼の息子さんで第二部隊「マルコシアス」の隊長の会島 正人(かいじま まさと)少尉だ」

 

「紹介に預かった、虎治郎だ。悪かったな、忙しい時期に依頼なんかして」

 

「会島正人少尉であります。この度は突然のことになってしまい、申し訳ありません」

 

「いや、まぁいいよ。でその依頼の内容は?」

 

 二人の紹介に軽く手を上げて返す。早速本題を、と詳細を求めて会島親子は依頼の内容について話し出す。

 

「実は今、俺達はとある任務を遂行中だ。いや、遂行中だった、が正しいか。ゼロン、は知っているか」

 

「あぁ。次元覇院の直系の後継組織を名乗る、今この日本でもっとも脅威となるテロリストだ」

 

 ゼロン。2032年頃から活動を始めたカルト組織。先にも言及した通り、あの次元覇院の残党が作り上げた組織だ。

 残党ということで脅威度は低い、かに見えたが彼らの起こした騒動によりその判断は覆される。各地の同系組織、MS運用施設を徐々に手中に収め、仲間を増やしていく。それによって得た戦力によって西日本と東日本を分断する境を作り上げた。三枝県は再び、あの宗教者を騙るテロリストに支配されてしまったのである。

 次元覇院の時点で西日本に信者が多かったことは分かっていた。だからこそHOWも西日本の残党狩りは徹底して行っていたはずだった。しかしそれでもここまで大きな占拠を許してしまっていた。これも全て、彼らの策にしてやられた。

 日本にとって由々しき事態。その名前が出るということは、彼らが元々受けていた任務はそれに関係する。その詳細を彼は語る。

 

「そうだ。以前自衛軍のとある高官によって発令された「ラプラス計画」。その残り香を使って、ゼロンが対DNL用MSを開発中であると情報を掴んだ。自衛軍は俺達にその機体の破壊、あるいは捕獲することを命令した。しかし……」

 

「その機体と交戦した、俺の部隊が壊滅したんです」

 

 苦々しく事実を告げたのは正人少尉。彼はその時の様子を端末に映して見せてくる。端末に映る機体、その機体が目の部分を赤く光らせて彼の部隊と思われる機体に襲い掛かっていた。

 

「……速いな」

 

「えぇ。何とか追従できた俺と数名の隊員は生き残りましたが、それ以外は……」

 

「俺がもう少し早く、救援に駆け付けられれば良かったんだがな。一か月前に隊長を失ったばかりだっていうのに、情けないぜ」

 

 虎治郎は自身の不甲斐なさに顔を覆う。隊長にしては若いと思ったが、それなら仕方ないのかもしれない。それにこの動きはDNLでも付いて行けるかどうか怪しいと思える。

 動画を見終わった元は机に端末を置く。既に以来の内容は察していた。これは今の彼らには荷が重い。虎治郎からそれが申し入れされた。

 

「依頼は他でもない。HOWにこの作戦を協力してもらいたいんだ。襲撃した後、この機体は都内の民間施設に偽装した研究施設に移送されていることが判明している。住宅が近くにあるために御宅の蒼のガンダムの大火力は使えない。頼めるかな?」

 

 予想された言葉だ。やはりこれに立ち向かうにはエースパイロットが必要だ。それもガンダムの力が。作戦に適しているのは稼働中のシュバルトゼロガンダムくらいだろう。

 元も奴らに余計な手を温存されたくはないと思った。消去法でも必要とされているのなら協力しない道理はない。元はその声に応える。

 

「了解した。俺が出よう」

 

「ありがたい」

 

 虎治郎の手に握手で応じる。その様子を見て安堵した黎人は忠告を兼ねた愚痴を口にする。

 

「あまりこちらとしては旧式になったシュバルトゼロで迂闊に危険な任務に飛び込んでもらいたくはないのだがな」

 

「だったら自衛軍の方に根回ししてくれ。新機体の再開発も大分また協力したんだから、そろそろ出来てもいいだろ」

 

「それに関してだが、上層部からは翌年の4月にロールアウトすると報告を受けている。受け取る前にこの任務で死ぬなんてないように」

 

 愚痴に対して愚痴で返す。しかし今回は割といい返事ではあった。4月。それまで待てば、ようやく待ちに待った新型に乗り換えられる。

 そうなれば今の機体はジェネレーター以外使わない。とはいえ機体そのものはセレクトカードを介してHOWの内部に厳重保存される。元たっての希望でもある。やはりマキナ・ドランディアでの思い出の詰まった機体、簡単にお払い箱とはやりたくない。何らかの場合の予備機としての保管だ。

 乗り換えるまでの最後の仕事、それがこの任務になるかもしれない。それだけの価値がこの任務にはあると元は確信した。

 任務に必要な資料の提示を要請して元は部屋を後にした。やる以上全力で臨む。あの機動性と武装、こちらも心して掛からなければ被害が出かねないからだ。

 

 

 

 

 翌日の深夜、CROZEはスレイブレイズ、マルコシアスと共に目標の「浦賀製作所」を包囲しつつあった。部隊を展開し、一斉に襲撃するその時を待っていた。

 元が目標施設の様子を双眼鏡で覗き込む。ジャンヌは各部隊の配置状況を把握する。

 

『スレイブレイス、配置までまもなくだ』

 

『マルコシアス、配置完了です』

 

「了解です。スレイブレイスとCROZEの配置完了後、黒和元の合図で作戦を開始しますので、全部隊はそれまで待機」

 

 インカムと端末で状況を管理する。既に慣れた手つきでジャンヌは部隊管理を行っていく。11年前から変わらない、いや、少しだけ大人びた銀の長い髪を揺らす女性の姿。

 自衛軍との共同作戦と聞いた時にはまた厄介な案件を、と思った。元もため息を吐いていて、黎人司令に押し付けられたのかと判断していた。だけど呼び出しから戻ってきた元が部隊員を集めて行った会議、その場で重大性を教えられて考えを変える。

 対DNL用MS。DNLに対して特化していると言っても、性能は非DNL機体で抑えられるようなものじゃない。対策されたDNLでなければその力に真正面から立ち向かうことは難しい。壊滅したマルコシアスの状況を訊いて私もこれは他の部隊には任せられないと思ったのだ。

 これまでにもジャンヌ達はDNLとの戦闘を考慮したMSと対決したことがある。シュバルトゼロが旧式となってきてからはDNLの能力を最大限に活用したうえで性能を解放しなければならない程、強い。それだけこの世界のMS技術は発展し、性能も向上している。

 量産型MSも技術は発展し、連携しなければならない程今のシュバルトゼロガンダムでは圧倒しきることは難しい。それほどの性能となった量産機でもあの機体は抑えられない。

 元はここまでの間に製作所の構造把握と共に両部隊のMSの兵装を頭に入れていた。監視を続けながらこちらに再度連携について言及する。

 

「ジャンヌ、両部隊の機体はソルジアスとはいえ、スレイブレイスの機体は癖が強い。間違って敵と認識するなよ?」

 

「分かってます。偽装装置、一応マニュアルは受けているので、それの設定も済んでいますから」

 

 スレイブレイスの機体の中でも、隊長機のソルジアスは撹乱用の機体。敵機体のレーダーに自機が味方機として映るようになっている。敵を混乱させたり、不意打ちしたりするための装備は既に戦果を挙げている。

 とはいえ不具合があると味方の側が装置搭載機を敵機として見てしまう場合もある。それを防ぐためにチェックは欠かせない。誤認防止用のシステムの設定を確認し直す。

 システムに問題なし。確認したところで、元が暗視スコープから目を離した。彼は全体回線で言った。

 

「時間だ。これよりオペレーション・BD01を開始する」

 

『了解、スレイブレイス隊装依開始』

 

『マルコシアス隊、MS装依開始!』

 

 回線からそれぞれMSを装依する様子が伝えられる。こちらもMS隊が装依を開始する。

 

「行くぞ、ジャンヌ」

 

「えぇ」

 

 私も元と装依を開始した。アクセスゲートが重なり、お互いの体が一機のMS、シュバルトゼロガンダムへと装依する。まだ現役、と言いたいけど、やっぱり早く新しい機体が欲しい。4月が早く来ないでしょうかね……。

 それでも今は目の前の任務に集中だ。レーダーにはスレイブレイス隊のMSが全て味方機として映っている。不具合は見られない。

 作戦開始と共に機体は一斉に目的施設へと侵攻を始める。施設からはけたたましいほどの警報が響く。敵もこちらを補足しているらしい。MSが発進してくる。

 浦賀製作所……表向きは民間工業として振る舞っていますが……やはりMSが出てくるということは、そういうことでしょうね。MSも、あれはザジン。間違いない、彼らは……。

 

「元、敵照合。ザジンで間違いないです」

 

 ザジンはゼロンが開発した初期のMSの一つだ。その機体はゼロンの笠下組織以外には提供されていない。となれば浦賀製作所は間違いなくゼロンの手先。MS開発の拠点の一つ。

 ジャンヌからの知らせに元は頷き、指示を出す。

 

『出てきた敵MSは撃破。製作所の人間は可能な限り無傷で拘束しろ。特に開発チームは逃すな』

 

『了解だ』

 

『了解です』

 

『よし、行くぞ』

 

 いよいよ敵と交戦に入る。ザジンはこちらに向けて発砲を開始する。使用制限のないビーム兵器。今ではどの機体も自由にビーム兵器が使用可能だ。対抗してこちらのソルジアス部隊も迎撃する。

 ソルジアタイプの新型機「ソルジアス」は自衛軍にも配備されているHOWの最新鋭量産機だ。バックパックと機体各部を換装して、あらゆる戦闘に対応できる万能機。これまでの集大成と呼べる。

 ソルジアス部隊がゼロンのザジンと交戦していく。だが完成した時代の違いからか、ザジンが次々とソルジアスの前に落ちていく。

 

『悪魔どもめ!がぁ!?』

 

『このっ!』

 

 手斧で斬りかかってきたザジンに対し、ソルジアスは背中に背負った大剣で斬り裂いた。あれは近接戦型のSRカスタム。他にも空戦型のARカスタム、そして遠距離型のBSカスタムがいる。特にマルコシアスの隊長正人の機体は地上戦闘特化のRRカスタム、ローラーを装備して地上を走行する。その機体は、既に目標の製作所の敷地内へと侵入を果たしていた。

 侵入した正人にザジンの機体達が襲い掛かる。

 

『お前達なんかに!』

 

 正人の機体が加速する。地面を滑って攻撃を回避すると背部の大剣「バスタースラッシャーA」の先端からビームを放つ。連弾がザジンを襲う。足の止まったザジンを正人はそのままスラッシャーで両断した。

 爆発が起こる。正人はそのまま敵の後方に回ってビームでけん制する。そちらにザジンの視線は向けられ、ビームを放とうと構えた。だが正人が製作所の人間を背にする姿でザジンの部隊は発砲を躊躇した。

 卑怯、とも取られるだろうがこれも作戦。そして止まってくれるだけでよかったのだろう。別方向から発砲されたビームの弾丸にザジンの機体が撃ち抜かれていく。慌てて攻撃の来る方角を向いた敵、しかしその動きは鈍い。たちまち撃ち抜かれていく。

 攻撃を行ったのはスレイブレイスのソルジアス。隊長の虎治郎が駆るソルジアスと直援のソルジアスBSカスタムが武器を構え終わる。

 

『ハハッ、内側には入れたな。リッパー!正人の支援!ボマーはこのまま俺と砲撃支援だ!』

 

 虎治郎は部隊員に命じながらライフルを撃つ。彼の部隊は役割を明確にすることを重視して、隊員達を役割で呼ぶ。切り裂き魔(リッパー)爆弾犯(ボマー)運び屋(ハイヤー)潜水士(ダイバー)……それ以外にも本作戦では追跡者(チェイサー)が敵研究者を捉える手はずだ。

 彼らの働きは良さげだ。マルコシアス隊も思ったより動けている。報告にあったように、まだあの機体に恐怖心があるはずですが、それも隊長である正人さんが前に立って感じさせないようにしているのが窺える。若いとはいえ、やはり自衛軍の隊長ですね。

 心の中で正人の奮戦ぶりに称賛する。それを支える父親の虎治郎。ならばこちらも全力で答えようとガンダムの戦いぶりに意識を向けた。ブレードガンで敵を撃つ元。射撃は防御されるが、未だに劣らない機動力で距離を詰めて敵を切り裂く。上手く不意を突けた形だ。

 

『出遅れているな。やはり機体の性能差か』

 

 最新鋭の量産機にすら性能の劣るシュバルトゼロガンダムの惨状は深刻だった。しかしそれでも元は機体を巧みに操り、ザジンの防衛網を突破する。

 シュバルトゼロガンダムが敷地内に着地する。追い払おうとするザジンの弾撃を防ぎ、躱して先に到着した部隊員達に戦況を報告させた。

 

『状況は、どうなっている』

 

『CROZE・B班、敵格納庫と思われる地点にて交戦中!』

 

 B班小隊長は交戦しながら状況を伝えてくる。格納庫という単語に虎治郎、正人両名が反応した。

 

『おい、B班!そっちにあの機体は』

 

『格納庫ならあの機体がある可能性も!』

 

 二人の危惧は容易に想像できる。あの惨劇を味わった当事者なのだから、こちらの部隊に気を掛けてくれているのだろう。

 ジャンヌも彼らに倣ってB班に確認を取った。

 

「どうです、B班?作戦目標は?」

 

『ちょっと待って……はい、やはりありません』

 

『ないって……馬鹿な!ここにあるはずなのに』

 

 機体がいないことに正人は焦りを隠せない。いるはずの機体がいないとなるとこちらも確認ミスを起こしたのかと思ってしまう。あの機体のいない、別のゼロンの隠れ家を襲撃してしまったとなれば始末書ものだ。

 考えられる結論。しかしまだ可能性はある。あの機体はここにいる。しかし格納庫に居ない理由。

 別の場所にいる。試験機体ならばもっと建物の奥、あるいは地下に格納されているかもしれない。11年前のあの事件でも、ヴァイスインフィニットが管理されていた地下施設が存在していたことを確認している。

 そしてもう一つ。それはもっとも危惧すべき状態。誰か犠牲が出る可能性。一刻も早く合流した方がいい。そう元に進言しようとした時である。

 

『何だ、早―――』

 

「B班?応答してくださいっ!」

 

 途絶える通信。すぐに呼びかけ直す。直後爆発が連鎖的に敷地内に響く。悪寒を感じるジャンヌ達。

 

「まさか、今の」

 

『クソッ、ジャンヌ通信の途絶えた位置を捜索。急げ!』

 

「はいっ」

 

 すぐに通信の切れた位置を特定し、部隊に発信した。元がすぐさま機体をそちらに向かわせる。

 すぐに通信の途絶えた地点へと到着する。マルコシアスとスレイブレイスとも合流する。そこで彼らは目にした。

 

『!あれは……っ』

 

 

 

 

 赤い目に青い機体カラーが爆炎で闇夜に照らされる。その機体は初代ソルジアに似た顔で、こちらに首を傾げているかのポーズを取っていた。その手には機体から引きちぎったと思われるソルジアスの頭部が握られている。

 背筋が冷たくなるほどのプレッシャー。その仕草がおぞましい。何よりもその眼が、血走ったかのように見えるからか、機体から発せられる殺意をDNLの力で強く感じ取る。

 

「は、元……」

 

『…………!』

 

 元もその殺意を感じて武器を構えた。目の前の機体は、その眼を光らせて戦闘態勢を取るこちらに飛び掛かるように襲い掛かってくる。

 

『!』

 

 血を求める戦慄の悪魔が、HOWと自衛軍に対し襲い掛かってきた。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。蒼いMSって言ったら、やっぱり暴走だよね!(^ω^)

ネイ「本作には深絵さんのブラウジーベンがいるんですが……」

グリーフィア「まぁあっちは暴走しないから、ガンダムのお約束を叶えた機体って感じよね~」

ネイ「でも名前出てない……」

名前は……次回明らかにっ

グリーフィア「あらぁ?出すの忘れてた?」

けど元君達も機体が開発されているって情報を掴んでいるだけなので、名前やコードネームまでは分からなかったのでしょう(;´・ω・)

グリーフィア「そ。でも地味に重要なのが、元君の新機体がもうすぐ来るって話よね~」

ネイ「あ、うんやっぱりそうだよね」

元君の機体がようやくアップデートじゃ!(゚∀゚)LEVEL3に当たる時期に登場するので是非お楽しみに。
というわけで今回はここまでです。

ネイ「次回は戦慄の騎士との対決ですね」

グリーフィア「勝てるのかしらねぇ~また次回~」


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EPISODE50 戦慄の騎士2

どうも、皆様。今日は何の日か、それはビルドダイバーズリライズ配信再開の日です(゚∀゚)作者の藤和木 士です。

レイ「アシスタントのレイだよー。配信停止からおよそ2か月、ようやくだねぇ」

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです。もっともこの投稿はその終わった後辺りに更新される予定なんですがね」

やっぱり今回は直で配信見たいからね;つД`)どれだけ配信再開PV見たことか……。その歓喜を表しつつ、EPISODE50公開ですっ。

レイ「戦慄の騎士との直接対峙!」

ジャンヌ「どれほどの力を持っているのか……果たして旧式のシュバルトゼロガンダムで敵うのでしょうか?」

それでは本編をどうぞ!


 

「全機、予定通り行動しろ。俺とマルコシアス、スレイブレイス第一部隊でこいつを抑える」

 

『了解!』

 

 隊員達に指示を飛ばし、目の前の敵との対峙に入る。敵は物凄いスピードでこちらに迫ってきた。資料でも見ていたが、それを実際に目の前で見るのとではやはり違うか。

 ブレードガンを立ててこちらも距離を詰め寄る。近接距離で叩く。

 

「はぁっ!」

 

 近づく敵機に剣を振り下ろす。しかし手ごたえはない。敵は瞬時にスラスターを噴かして横に回ったのである。

 予想していたよりも速い。だがまだ対応できる。機体を宙で横回転させて蹴りを放った。

 

「……速いっ」

 

 ところがそれも敵MSは回避して見せる。回避の直後を狙って、読んだはずの攻撃の回避に目を見張った。地に着いた直後を狙って敵がマシンガンを構えて発砲する。スラスターを噴かせるが、機体のコントロールが乱れる。

 

「ぢぃ!」

 

『っ!着弾、左ウイングにダメージ』

 

 機体状況を知らせるジャンヌ。実弾とはいえ今のは効いた。続く弾撃をシールドで防御する。

 それを救うべくソルジアスRRカスタムがライフルを発砲した。赤目の機体はその圧倒的なスピードで攻撃を回避するが、弾撃は止まる。

 

『大丈夫ですか、元さん』

 

「あぁ。しかしあのスピード……予測はしていたとはいえ、ここまでか」

 

 先程の攻撃は軽いジャブのつもりでも当てるつもりで放った。しかしそれを軽々と避ける。腕で防御されることは考えてもまさか回避全振りで避けられるとは。

 ブレードガンをガンモードに切り替えて射撃戦で隙を伺う。あちらもマシンガンでこちらにけん制を掛ける。スレイブレイスも射撃兵装で援護に加わる。

 

『クソッ、あいつやっぱりはえぇ!ボマー』

 

『やってる!やってるが……速すぎてこいつでも予測標準が……来たぁ!?』

 

 赤目のMSは狙いをスレイブレイスのボマー、ソルジアスBSカスタムに狙いを絞った。左脇に抱えたレールガンで動きを止めると、距離を詰めて向かっていく。

 サーベルを構えていないまま突っこむ姿に違和感を覚える。ボマーと呼ばれたパイロットが手甲に内蔵したビームシールドを展開しても体を前にして突撃する。狙いに気づいて、元は叫んだ。

 

「ダメだ、ボマー、回避を!」

 

『え?』

 

『っ!ボマー!!』

 

 その時には虎治郎、フィクサーがボマーの機体を引く。敵MSの脇が火を噴いた。高速で射出された何かが、ボマーの機体を貫く。

 

『ぐぅ!?』

 

『ボマー!』

 

「あれは……ヒートランスか」

 

 ボマーの機体を貫いたものの正体は赤熱化した投げ槍のようなものだ。しかし槍にしては少々短い。咄嗟にヒートランスと言ったが、パイルの方が正しいかもしれない。

 いずれにせよボマーの被ったダメージが大きいように見えた。だがボマーはフィクサーにより事なきを得ていた。

 

『だ、大丈夫だ。生命活動には問題ない』

 

『冷や冷やさせるぜ……ボマー』

 

『あぁ。だがこれ以上の戦闘は無理だ』

 

「了解した。こちらで抑える」

 

 安否を確認してそのままシュバルトゼロガンダムは戦闘を続ける。正人、そしてリッパーのソルジアスSRカスタムがフィクサーたちの空いた穴を埋める。

 敵の攻撃は苛烈だ。一機しかいないにも関わらず、こちらは格納庫周辺を使って戦闘せざるを得ない程だ。

 

『こいつ、まるで殺意の塊だ!』

 

 リッパーのすぐ脇を敵の弾丸が通り過ぎる。正人のRRカスタムが割って入ると、すぐさま敵はそちらに狙いを変えて容赦ない反撃お弾雨を浴びせる。その正確さに苦戦を強いられる正人。

 

『あの時と同じだ……こいつの攻撃一つ一つは、確実にこちらを仕留めようとして来ている……っ!』

 

 元もそれを痛感しつつあった。狙って放っているはずの弾丸は全て避けられる。DNLでの先読みも使っているにも関わらずだ。ブレードガンよりも射撃性能の高いビームライフルにしても同じである。

 ここまでして捉えないことに憤りを感じ始めた。ジャンヌからもしっかりしてと声が飛んでくる。

 

『元、当てられないんですか!?』

 

「当てようとしている……だがその前に避けられる。こんな末端まで……っ」

 

 これまでにもゼロンと対峙したことはある。いずれもシュバルトゼロガンダム単体では超えられないほど力を増幅しつつある。それがこんな末端の、民間に偽装した施設にまで配備されているのは脅威としか言えない。

 発砲を続けるが敵は止まらない。接近を許して近接距離まで近づかれる。背部から回してきた折り畳み式の剣を展開して振りかざしてくる。

 

『元っ!』

 

「ぐっ!」

 

 後方へと滑りながらビームマシンキャノンから形成した大型ビームサーベルを振るった。体操の時のように腕を回して距離を取るようにして。

攻撃を回避されるがそれでも敵の進撃から距離を離した。しかし敵は一度退いただけで再びその剣を振るいに来た。再度光剣が振るわれたが敵が姿を消す。

 

「っ!回り込まれたっ」

 

 感じる殺気。敵はシールドの隙間を潜り抜けて攻撃範囲内の内側に入ってきた。ここからでは他からのサポートは期待できない。

 

『元さん、逃げて!』

 

 正人が全速力で向かって来る。彼の助太刀でも間に合うまい。動きは読まれている。ならば―――。

 

「シールドくらい、くれてやる!」

 

 機体を無理矢理スラスターで動かす。機体を回転させるような動き。それは振り上げられつつあった敵のソードをシールドで受け止める形となった。

 ソードの威力に負けてシールドは真ん中から真っ二つになる。シールドの裏に装備されていたビームマシンキャノン、レイ・アクセラレータが爆発を起こした。

 凄まじい切れ味だ。シールドをこうも容易く破壊されるとは。しかし。

 

『……!』

 

「おら!」

 

 ブレードガンをビームサーベルモードで切り払う。伸びた光剣から敵機体は逃れる。攻撃が読まれる。だがそれでもいい。

 攻撃を続けた。避けられ、回り込まれる。だが攻撃を更に読んで動きに反応する。展開したファンネルを撃破されても相手に主導権を握らせない。

 上がった反応速度に敵も困惑するかのように攻撃の手が弱まる。だが押し切ろうとしたところで敵も再びスピードを上がり、互角に展開する。

 DNLの力を強めると、やはりあちらも呼応する形でスピードを上げる。間違いなくこちらのDNLに反応している証拠だ。

 

「この速度、射撃戦ではどうにもならない。ジャンヌ!」

 

『近接格闘戦への出力シフトに問題なし。リッパーさん、正人さん。こちらはアレスを起動させます』

 

『アレス……あんたの機体に搭載されてるっていう、戦神の力か』

 

『了解です。射撃攻撃で支援します!』

 

『こちらフィクサー、ボマーはアグレッサーに任せた。再度援軍に加わるぜ!』

 

 リッパー、正人に加えフィクサーも戻ってきた。支援攻撃は充分、ならばこちらは最高戦力で渡り合う。

 元はシステムを起動させる。相手の土俵へと飛び込んで、それを上回る一撃を放つために。

 

「アレスモード、始動!」

 

『ARES MODE ACTIVE!』

 

 機体のフレームが紅く染まる。燃え滾るマグマのような紅だ。敵はそれに便乗して手甲部分から赤熱化したソードを伸ばしてこちらに突き立てようとした。だがそれをこちらは腕の側面で滑らせて一撃を逃がした。

 

「はぁっ!」

 

 距離を詰めて敵機体へと殴りかかる。これまでとは違う拳での近接戦に動きが鈍る敵機。胸部を強くこちらの拳に打たれた。

 動揺するかのようにこちらとの距離を取ろうとする。だがそれを逃がしはしない。再度距離を詰めていく。まるでボクサーのように相手を逃がさない動き。小ジャンプしてスラスターを噴かせることで急襲した。

 それでも敵は主導権を一方的に握らせることなく、反撃に転じる。ソードを振るい、回避したところに折りたたんでビームガンで射撃を放つ。ところがこちらのフレームから発せられる粒子でそれを無効化する。それだけではない。

 

『おっと、相手はこっちにもいるんだぜ!』

 

 フィクサー達が間隙を縫って支援攻撃に入る。バズーカの弾を避けたところにリッパーがヒートカッターで敵に斬りこむ。通常のヒートカッターよりも刃を切り詰めてミドルレンジに対応した刃で距離を詰めていく。

 リッパーの攻撃に機体を退くしか出来ない敵。そこにRRカスタムの攻撃が加わった。

 

『このっ!』

 

 バスタースラッシャーAを振り下ろす正人。RRカスタムの一閃が敵のソードとかち合う。敵は切り結びを嫌がってすぐさま弾く。だが間髪入れずにこちらが殴りにかかる。

 連続した攻撃に対しても敵は一発も被弾しない。高性能な機体とそれを操るパイロットの腕。疲れを見せないと思われたが、その動きが突如止まる。

 

『止まった!?』

 

「大分疲れが溜まってきたようだな」

 

 敵は肩で息する様に機体を上下に揺らしていた。片手で構えていたはずの右の銃剣を今は左手を添えて狙い定めている。

 思った通りだ。威力の強いあの銃剣だが、やはり大きさゆえに疲労がたまりやすい。そもそもあれだけの武器を近接距離で振るうには適していない。もう少しモーションを取って、中距離から振りに行くのが正解だろう。

 間髪入れずに攻撃を加えることでその疲労は更に加速した。こうなればアレスモードのシュバルトゼロでも有利に運べる。休む暇を与えずに殴りかかった。

 

「行くッ!」

 

 飛び掛かって殴りつける。ガンユニット側面のシールドで攻撃は受け止められる。それでも勢いを落とさずそのまま殴り抜けてソードユニットを弾き飛ばした。敵は反撃にビームサーベルを抜き放って十字に斬りつけてくる。瞬時に放った閃撃が機体胸部を掠めた。

 それ以上攻め入られないようにカバーに入るフィクサー。遂にビームの一撃が敵に着弾した。

 

『当たったぁ!リッパー!』

 

『おうよ!』

 

 フィクサーの攻撃に合わせてリッパーの追撃がサーベルを叩き落した。だが反撃に敵は脚部側面に装備していたコンテナを開き、ミサイルを近距離から放つ。爆炎がリッパーの機体を包んだ。

 リッパーに対し叫ぶ。

 

「リッパー!」

 

『リッパーさんの機体を確認、無事です』

 

 ジャンヌがレーダーで安否を確認する。怯むリッパーの機体の傍を抜けて拳を敵の持つサーベルに向けて殴る。ビームの部分で受け止めようとする敵だったが、それよりも速くその手からもう一本のサーベルユニットを弾き落とした。

 武器を失い、弱体化すると思われたが素早く手甲のソードに切り替え応戦してくる。敵の刃をこちらも二本の腕でいなして近接距離を保つ。

 既に二機が戦闘継続不能となっている。それでもシュバルトゼロガンダムが対等に戦えるだけの弱体化には成功した。ここで負けるような事は彼らにも余計な負担を掛ける。逃がしはしないとアレスモードとより鋭く研ぎ澄ませたDNLの察知能力で目の前の敵と激突し続ける。

 

「っ!はぁっ!」

 

『……っ』

 

威嚇の声を重ねる元に対し、敵のパイロットは終始無言だ。しかし動きが機体に出ている。これまでのスピードは出せていない。しかもだ。

 

「そこっ!」

 

 機体がぐらついた瞬間を狙って踏み込みからの蹴り揚げが敵の胸部装甲を打つ。DNを纏った蹴りが敵機体を浮かび上がらせる。そこに足を地面に下ろして、その反動を利用して一気に飛び上がって距離を詰め、打ち込む拳。アレスの拳をもろに喰らって敵が吹っ飛ぶ。

 地面を跳ねて転がっていく機体。ようやく止まったその機体のバイザーは割れて中のモノアイの二つ目がわずかに見えるようになった。正人もそれに気づく

 

『奴のバイザーが』

 

『でも油断したらいけません。まだ奴の目からは殺意が』

 

 ジャンヌの言う通り、まだ油断は出来ない。戦う意志がある限り、油断するのは最大の隙だ。

 ところがそれに反して機体が下がっていく。こちらに腕部ビームガンの銃口を向けたまま後ろへとジャンプして後退していく姿に待ったを掛ける元。

 

「クソッ、待てよ!」

 

 危険を顧みず飛び込んでいく。それを待っていたかのように敵が後退を止めてヒートソードを構えた。剣先が迫る。起死回生の一撃。

 それを飛び込みながら剣そのものを左手で掴んだ。剣の刃と手の接触面が火花を散らし延長線上にあったウイングが破損する。それによって敵の動きを封じた。

 

『剣を掴んだ!?』

 

 正人も驚愕する。捨て身の策だ。左手が斬られる可能性もあったが、ここで捉える価値があると判断して行動した。予想通り敵がたじろぐ。その状態でDNFを使用した。

 

「今だ」

 

『Ready set GO!DNF、「烈破奏語(れっぱそうがたり)」!』

 

 拳を振り上げる右手。エネルギーの残像が四本の腕を形取る。その拳を一気に敵に対し一斉にぶつけた。寸前で敵は左手で攻撃を受け止める姿勢を見せたが、その手はたったの一本のみ。残りをそのまま機体本体が受ける。

 本体含めた五本の腕による乱打。それをもろに受けた蒼の機体は各所から煙を上げる。まだ稼働できる時点でただものではない。ところがその機体は最後の足掻きと言わんばかりに機動を開始した。

 

「っ!こいつ!」

 

 超機動でこちらに接近して、拾い上げたリッパー機のバスタースラッシャーで斬りかかってくる。それに反応したが間に合わず機体の左腕の肘から下が斬り飛ばされた。更なる一撃が来る、と思われた時には既に正人が動いていた。

 

『元さん!やらせるものかっ!』

 

 サブマシンガンの掃射が赤目の機体を襲う。撃破には至らないがバスタースラッシャーを落とし、不利と判断したその機体は逃走を選択して敷地内から急速離脱した。

 このまま逃がすのは不味い。追って被害を止めなければ。ところがそれをさせまいと施設に残っていたゼロンのMSがこちらを狙って一気呵成に襲ってきた。

 

『あの機体を負わせはせんぞぉ、ガンダムゥ!!』

 

「ちぃ!」

 

 相手をせざるを得なかった。だが同時にそれは証人を増やす行動にも繋がる。虎治郎、そして正人達と共に襲い来る残敵の鎮圧に乗り出す。

 

 

 

 

 それから数分で敵施設の占拠が完了した。MSパイロットの生存者はわずかに二人。残りは全てこちらのMS部隊に玉砕した。施設作業員の方も6名ほどと少ない。半数は死に、2割ほどは先にMSで脱出してしまったらしい。

 戦果が芳しくないことに正人からため息が漏れる。

 

『どうにか施設は制圧しました。が、こちらも相当の痛手を受けた上にあの機体の確保は……』

 

「そうでもない、と俺は思っているぞ正人少尉」

 

『と、言いますと?』

 

 正人がこちらに訊き返す。すると彼の父親である虎治郎がその答えを教える。

 

『施設の作業員の中にパイロットデータを持っている奴がいた。これでパイロットを確保できる』

 

「それに手傷は負わせた。すぐに本部に周辺捜索を要請。遠くには逃げられないだろうし、回収のために怪しい集団がまとまって行動すればそれだけ追いやすい」

 

 これまでこちらは機体を開発していたこと、そして機体の名前などしか把握していなかった。それが乗り手であるパイロットも分かったとなれば、人の出入りを監視するだけでも次の一手を打てる。これは作戦前よりも大きな進歩だ。

 それに万が一その機体が単独で行動しても破損した状態では万全のこちらに一歩劣るはずだ。DNLの先読み能力と反応速度、機体の高性能さがあっても次は遅れは取らない自信があった。それに元はあのパイロットの「癖」を感じ取っていた。機動の時に感じた殺意の変動。それを感じ取れれば、おそらく……。

 もっとも、また戦う羽目になるのなら、だが。何事もなく確保されてくれるのが一番だ。

 

『なるほど……では自衛軍にも応援を』

 

『もう俺が頼んだぜ。新堂さんが手練れの部隊を回してくれるそうだ』

 

『そうですか、新堂さんが……彼女も戦線復帰してから頑張っていらっしゃるようですね』

 

「みたいだな。まぁあの人に手間かけさせないようにはしたいところだな」

 

 言って元は機体のデータを引っ張り出す。敵機体のデータ、そこにあの機体の名前が表示される。

 その名を元は小さく呼んだ。

 

 

 

 

「ディスティニーライダー……運命の乗り手、か」

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。逃したけど何とか、と言った具合で(´・ω・`)

レイ「ソルジアスも強いんだけどね……戦いは数だって言われてるのに」

ジャンヌ「次はその追跡戦ですか……」

その通り。そこであの少女と再会する……と今回は多く語らず、ここまでとなります。もうすぐリライズ配信なんだ(゚Д゚;)

レイ「前もって投稿しようよ~」

ジャンヌ「ギリギリまでやって、何しているんですか」

ごめん(´・ω・`)けど今回は回想、しかもヒロト君ので、イヴ中心回の模様(゚∀゚)楽しみですわぁ~。

ジャンヌ「それでは皆様。また次回」


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EPISODE51 無垢なる少女1

どうも、皆様。リライズめっちゃ内容重かったっすね(^o^)思わずフェスト○ムの側に帰りたくなった藤和木 士でした。

ネイ「アシスタントのネイです。一期の裏側で、あんな事が起こっていたなんてですね」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよ~。でも彼女がやっていなかったら、きっと変則フラッグ戦より前にGBNが崩壊していたんでしょうねぇ。致し方ない犠牲、コラテラルダメージってやつね」

それを、分かってんだろうなぁリク君!( ゚Д゚)サラを救った代償!二期で真実知ってもらって重くなってほしいですわ(かつての手のひら返し)
さて、他にも話したいことはありますが、まずはEPISODE51、公開ということで。

ネイ「前話ではディスティニーライダーとの対決に何とか制した元さんでしたが……逃げられてしまったんですよね」

グリーフィア「逃げたパイロットはどこに、って感じねぇ。それが今回分かるわけだけども」

そうです。そして今話であの子も友達と共に再登場ですよ~(^ω^)それでは本編をどうぞ。


 頭、痛い。息……苦しい。いつものことだけど……今日のは特に辛い。前に襲われた時よりもそれが激しい。

 裏路地を歩くのは蒼いMS。パイロットは機体の動かした反動をもろに受けていた。赤い目はすでにもとの緑に戻っており、システムを切っている状態だ。

 何とか戦闘地帯からは逃げ出せていたが、いずれ捕まりかねない。いや、いっそのこと捕まってしまうのもいいかもしれない。これまでの「実験」が全部嘘になれば、もとの生活とまでは行かなくても、こんな頭の痛い、記憶が薄れていくような日常は消える。

 とはいえそれも自衛軍に生かされればの話。既に何人もの人を殺した私を生かす意味は、人体実験くらいのもの。そんなのは嫌だ。だったら逃げないと。

 レーダーに発見されるのを恐れてパイロットはMSの装依を解除する。機体から現れた銀髪の少女。少女はフィードバックによりボロボロになった私服姿でその場に倒れた。

 

「だ、め……」

 

 立ち上がろうともがく。早く逃げなくては。民間人のいる場所で戦いなんてやりたくない。

 少女の想いとは反対に体は眠っていく。意識が遠ざかる。そして記憶も消えていく。どうしてここにいるのか、ここまで来た理由が、消えていく。

 そうして少女は目を閉じた。夜は明けていく。少女に朝日が当たってもその眠りは目覚めさせぬままだ。

 

 

 

 

「よーしっと。提出物、ここに置いておきますね~」

 

「ご苦労様ー。あら、千恵里さんが手伝ってくれたの?」

 

「そうなんですよ~、いつもありがとうございます。千恵里先輩、いろんな人手伝ってますよね~」

 

「好きでやってるから。それに夢の為でもあるからね。それじゃあ、何かあればまた」

 

 帰る途中に後輩の仕事を手伝うと、私は職員室を後にした。

 入嶋千恵里。かつてシュバルトゼロガンダム、黒和元に二度助けられた少女だった。彼女は港内区の都立港内第三中学校に進学、現在中学三年生で進学先の高校の受験の真っただ中だった。

 受験勉強に追われながらも手伝いを済ませた千恵里は校門で待っていた友人と合流する。

 

「ごめん、今終わったよ」

 

「お疲れさまー。本当、こんな忙しい時に見ず知らずの後輩を手伝うとか、よくやるね~」

 

「見ず知らずじゃないよ、都美樹ちゃん。あの子それなりに千恵里ちゃんに手伝ってもらってる子」

 

「そうそう。命の言う通り、あの子を助けるのはこれが初めてじゃないから」

 

 待っていた二人は千恵里と話しながら共に校門を出る。後輩の手伝いに関して軽い口調で見ず知らずの子を助けたと思っているのが羽馬 都美樹(はば つみき)、対して事情を知っていた穏やかな話口調なのが西園寺 命(さいおんじ みこと)だ。

 二人とは小学校からの付き合いで、丁度同じ時期に港内湾岸小学校に転入してきた縁で友人となった。当然あの事件も同じクラスメイトとして経験し、危機に陥った自身に逃げるよう叫んでくれた。

 三人一緒に同じ学校に進学したが、高校からはどうか分からない。けど友人であることに変わりはないと私は信じてる。二人と話しながら下校の道を歩く。

 

「にしてもホント人助けが好きだよねぇ、ちぇりーは」

 

「だって、言われたから。あの時、蒼のガンダムのパイロットに。裏切られるかもしれない覚悟を持って、助けられるようにって。まぁあんまりにも内容が酷いと断っているけど」

 

 あの日以来千恵里は誰かの助けになるように行動していた。中学ではちょっとした話題となり、「何でも屋のちえり」と呼ばれるようになった。

 非常に不本意である。そんな誰かに呼ばれたくてやっているわけではないから、そんなに有名にもなりたくない。だけどそんな私の気持ちとは裏腹に、注目は集まった。理由はそれ以外にもう一つ。命がそれについて触れた。

 

「そうだね。何でも屋ってことで「付き合ってほしい」とかもあったよね」

 

「それ!まったく、私はそういうの好きじゃないって言ってるのに……」

 

「嬉しい悩みだねぇ。仕方ないって。だって千恵里、素で美人なんだから、校内の誰だって付き合いたいって思われるんだから~」

 

 茶化してくる都美樹はともかく、千恵里はどうやら男子にとっての憧れの的らしい。手伝いの合間によく男子に呼び出されて、告白を受けることがままあった。中には何でも屋としての仕事としても言われることもあり、その度に先生や都美樹達クラスメイトに追い返される日々だった。

 顔が綺麗なのは普通の人に取っていいことだとは思う。けれどこんなに迷惑ならそうでない方がよかったと私は思わされてしまう。そのせいで誰かを助けられなかったり勉強時間が減ったりするのだから。時間には限りがある。邪魔は極力してほしくない。

 それをいいことだとからかって来る都美樹に対し、千恵里はいつも言っている夢で返す。

 

「それでも私は人助けがしたい。そう約束したから」

 

「ま、そうだよね~。ちぇりーの想い人はあの黒のガンダムのパイロットさんだからねー」

 

「ちょ、そういうんじゃない!そんな邪な気持ちじゃないから!」

 

「あ、あはは……都美樹ちゃん本当に人をくっ付けたがるの好きだね」

 

「むぅ、みこっちも割と好かれるよね、男子に」

 

「私は私の家を背負えるくらいの人としか付き合わないですから、フフフッ」

 

 いつもの都美樹の悪ふざけも残すところあと3か月ほどだ。三人でいつも通り話していく。

 今日は近くの商店街を通っていくことにした。商店街の人達からはいつも手伝っているお礼として果物やらお菓子やらもらってしまう。お礼なんて、と言ってもみんな遠慮しなくていいとそのまま押し切られてしまう。

 重くなった荷物を抱えながら三人は商店街を進んだ。

 

「そういや聞いた?隣町でゼロンと自衛軍の衝突があったって」

 

「あ、聞いたよ。確か浦賀製作所だよね。お父様が怪しいってことで提携断っていたところだよ」

 

 命の家はかの有名な西園寺グループ。命はその令嬢だ。その西園寺グループの笠下に入ろうとした製作所がゼロンだとしたら、非常に危険なものだったに違いない。

 ゼロンについては特別嫌っているわけではない。だからといって認めているわけではない。それに噂では構成員の中には夫婦聖院に所属していたものもいるとネット上で言われ、千恵里の心中は複雑だった。

 もし夫婦聖院と同じことをやっているのだとしたら、私は許せない。彼らが壊滅しても、まだ悲しみが続いている。それを消すために、私はHOWに入るんだ。

 二人の話に私も加わる。

 

「命のお父さんなら大丈夫だね」

 

「はい。大分無茶な条件だったらしいので、怒りそうになったそうですが」

 

「みこっちのお父さんを怒らせるなんて、怖いもの知らずだねぇ~。というか、ちぇりーは大丈夫なの?カルト集団」

 

「……まぁ嫌いだよ?夫婦聖院の残党も流れているって話しだし。でもさ、最近思うんだ。いくら家族の仇とはいえ、全員が敵ってわけじゃないのかなって」

 

「ふぅん?」

 

 二人が首を傾げる。何と言ったらいいのだろう。いろんな手助けをしている内に、そう思えてきた。人は多種多様だ。手助けも千差万別で提出物を運んだり、店番をやったり、そして先程の付き合ってほしい旨や、逆に自分が誰かの恋路を手伝ったりと。

 手伝いひとつでこんなにも考え方がある。そしてその手伝いの理由も様々だった。困っていたというのがほとんどだったが、相手側が単に丁度そこにいたから声を掛けた、そして有名になってくると自分を目当てに手伝ってほしいと依頼が来ることもあった。

 そうしていくうちに夫婦聖院、いやカルト集団も全員が全員単に広めたいから入信しているわけではないのではと思うようになったのだ。あの時もし自分が捕まっていたら、嫌でも生き残るために活動に加わっていたとしたら。仕方ないからやった、など到底擁護出来ないとはいえその選択肢以外道はない。

 それが染みついて結果あのように堕ちていく。ならそうなる前に助け出せばいい。手遅れになる前に手を伸ばせば……あるいは。などと考えるようになった。

少し考えれば分かるはずの事。それが分からなかったことが、あの人達の言っていた裏切られるかもしれない中で誰かを助けられる心を持つ理由と関わりがあるように思えて仕方がない。本当にそれが正しいかは分からないが、だから聞いてみたい。そして二人にもそれを伝えてみる。

 

「みんながみんな、好きでカルトの活動に参加しているわけじゃない。私だって嫌なのに入れられそうになったから、もしかするとそうして嫌々従うしかなかった人達もいるのかなって。だから、一概にみんな悪いって言えないのかなって思って」

 

「あー……ってそれ今気づく?」

 

「えっ」

 

 思わぬ回答。都美樹の発言に命もこめかみに指を当てて指摘した。

 

「うーん……千恵里ちゃんって、時々天然入るよねぇ。私が言えることじゃないかもしれないけど」

 

「い、いや、思い始めたのはそこそこ前から……」

 

「あー、うん。いいって。気付いたことが大事なんだから」

 

 反論しようとする私を、都美樹が制する。変に優しく言われるからか、怒りが芽生えてくる。……いや、本当に前から思ってて、答え出せていないだけだから!それを二人にも言おうとする。

 

「何よ!二人して私を馬鹿にして……?」

 

「ん、どしたし?」

 

「千恵里ちゃん……?」

 

 千恵里の口から漏れる疑問符。二人もどうしたのかと聞いてくる。

 今、小さく声が聞こえたような気がする。誰かのうめき声が。すぐに周りを見る。だけど誰も苦しんでいる様子は見られない。

 空耳かとも思った。でも私の目に一つの道が映った。先程通った店の傍の脇道。そこまで戻る。奥は路地裏となっている。その道の途中に、人の手が見えた。

 

「!誰か倒れてる」

 

「えっ?」

 

「本当だ、人がいます」

 

 先行する千恵里に遅れて都美樹達も路地裏に入っていった。ごみ箱で丁度影になる位置、そこに白髪の少女がボロボロな状態で倒れていた。

 すぐに私は彼女を抱きかかえて呼びかけた。

 

「大丈夫?あなた」

 

「……う」

 

 呼びかけに小さく反応が返ってくる。息はあるようだ。一体なぜこれほどまでの怪我をしたのか。気になることは多いがまずは救急車だ。

 

「命、救急車!都美樹は商店街の人呼んで!」

 

「わ、分かりました!」

 

「おっけ!大人の人呼んでくる!」

 

 命達はすぐ各々行動してくれた。今のうちに私は怪我の具合を確かめる。擦り傷などもあるが、一番多いのは火傷のような跡。だけど昨日今日で火事があったなんて話はここじゃ聞かない。

 それに妙に体が痩せこけていた。肌も異常に白い。髪は白髪だが色素が抜けたような印象を与え、不健康さを感じる。

 

(誰かに監禁されてた……?人体実験とか……)

 

 変に勘ぐってしまう。そうとしか思えないほど、少女の体にはおかしな点が多かった。何か事件に巻き込まれたのではと思う中、命が救急車を呼んだことを告げてくる。

 

「千恵里ちゃん、救急車すぐにくるって!」

 

「ありがとう命」

 

「おーいちぇりー、薬局のおっちゃん連れてきたよ~」

 

 都美樹の連れてきた商店街に入る薬局の先生が怪我の度合いを診る。骨折などの確認をして、やってきた救急隊員に引き継ぎをしてくれた。

 第一発見者ということで私達も救急車に同乗する。彼女がどうしてあんなところに倒れていたのかも気になる。救急車は最寄りの病院、港内病院へと向かった。

 

 

 

 

 病院に運ばれた少女はすぐに手当てが行われた。来るまでの間に目覚めることはなく、手当ての間もずっと眠り続けていた。

 看護師の人からは傷は浅くもう間もなく目覚めるであろうとのことだった。三人で病室に残って、目覚めるのを待つ。

 

「いやー大事に至ってなくてよかったー」

 

「本当だね。あれ、千恵里ちゃんどうしたの?浮かない顔して」

 

「ん……ちょっと、気になること聞いたからさ」

 

 気になること、それは看護師の人が彼女の体を見て言ったことだ。千恵里の思った通り、病院の人も彼女の体の異変について言及していた。彼らは口々に言った。体の中までボロボロだと。念のための血液検査もしたらしいが、その時の色が異常な色をしていたという。

 気味が悪いという小声も聞こえ、私は心を痛めた。怪我人に対してそんなことを言って、いいんだろうか。けれど看護師さんも同じ人間だ。仕方のないことなんだと考えを押し留めて、頭を下げた。

 それを二人にも明らかにせず、千恵里は少女の事を気に掛ける。

 

「でもそれもいいよ。今は、目覚めてくれることを祈るだけ」

 

「そう、だね」

 

「んーけどこの子日本人じゃないよね?外国の子……がこれって、何か事件っぽい匂いがプンプンする」

 

 都美樹が悩ましい表情で少女を見ている。病人にあまりにも失礼だと彼女に言い咎めた。

 

「やめなよ、面白そうに見るの。私も思うけど……失礼だよ」

 

「事件は起こってるって思うんだ」

 

「うん……。じゃなきゃ、こんな状態じゃないと思うし」

 

 その時だった。少女が目を覚ます。

 

「……う、ん……?」

 

「あっ、二人とも起きたよ」

 

「おおっ」

 

「えぇと……は、ハロー?日本語、分かる?」

 

 たどたどしく少女と会話を行う。日本語が分かってくれればいいが……。そんな一抹の不安はすぐに去った。

 

「……ここは、どこ?」

 

「病院よ。港内区の病院。あなた、商店街の路地で倒れていたの。覚えてる?」

 

 千恵里の質問に少女は首を横に振った。どうやら倒れるまでの事も覚えていないらしい。彼女に対して都美樹が名前を訪ねた。

 

「じゃあ名前は?」

 

 少女は考え込む。考えるという動作に少し引っかかるが、すぐに少女は名乗った。

 

「クルス……クルス・クルーシア」

 

「クルス、ね。私は入嶋千恵里。こっちは私の友達の西園寺命と羽馬都美樹」

 

「西園寺命です」

 

「羽馬都美樹だよ~」

 

「ちえりとみこと、つみき……」

 

 名前を反復するクルス。状況を呑みこんだと思われる彼女に私はもう一度どうして倒れたのかを尋ねる。

 

「それで、もう一度聞きたいんだけど、どうして倒れてたの?結構服もボロボロだけど……」

 

「……うーん」

 

 少女は再び頭を抱える。言葉に困っている様子だ。けれどすぐにクルスは明かしてくれた。

 

「ごめんなさい、やっぱり思い出せない」

 

「そっか……」

 

「気にしないで。いつも、こうだから」

 

「いつも?」

 

 思わず訊き返す。するとクルスはその事を話してくれた。その話は千恵里達を驚愕とさせた。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。元に憧れた少女、入嶋千恵里が成長して登場です。

ネイ「それにご友人も登場と。ですがそのお三方が、まだはっきりとは分かっていませんが、多分、あれですよね?」

グリーフィア「そうねぇ。この流れは助けた子、大方元君が追ってる子よねぇ?」

それは次回明らかになるよ~(´ρ`)けど千恵里ちゃんも随分精神的に成長したと思わない?

グリーフィア「そうねぇ。カルト集団を何もかも憎まない、っていうのはいいかもしれないわね。正義って言葉に振り回されることなく、考えて動くわけだし」

ネイ「憎しみに囚われない考え方。結果的に今のところ深絵さん達が願っていたように成長出来たみたいですね。それを人助けから学んだっていうのはちょっと驚きですが」

でもそういうのって大事だから。昨今色んなメディアで言われてますが、暴走した正義がもっとも危険ですから。実は今回の章もその暴走した正義がキーポイントになっています。

ネイ「そもそもこの作品に出ているカルト集団が、その暴走した正義に当てはまっていますよね?」

んー、割とこの作品で出てるのは勝手に正義を盾に振り回している馬鹿だと思うんだけど(´・ω・`)

グリーフィア「そっちの言い方の方が正しいそうね~。でもそんな暴走するほどの正義が出てくるの?」

えぇ、既に種は蒔かれていますし(´-ω-`)

ネイ「蒔かれて、いる?」

グリーフィア「あらぁ、ひょっとしてそれってー」

今は内緒な(^ω^)それ以外にもブルーディスティニーでEXAMによって道を誤った博士みたいな人も今章では出てきますので。
それでは今回はここまでです。

ネイ「次回もお楽しみに、ですね」


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EPISODE52 無垢なる少女2

どうも皆様。先日のビルドダイバーズリライズ、滅茶苦茶重かったですね(^q^)作者の藤和木 士です。歌詞が……歌詞が重くのしかかる……。

レイ「あはは……アシスタントのレイだよ~」

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです。色々とこれまでのリライズ、そして無印ダイバーズに関係のあるお話しでしたね」

前作での喜びが、真綿のように締め付けてきやがるぜ……;つД`)前作と合わせてガンダムしている件。
さて、そんな勢いに負けることなく、今回は2話投稿です。と言ってもこの次は黒の館DNなんですがね。

レイ「理由はもうすぐ作者自身の誕生日なんだよね~」

ジャンヌ「しかも以前も触れたかもしれませんが、最近将棋界で最年少タイトルホルダーになった方と同じ誕生日なんですよね」

私も将棋かじってた時期あったけど、本当にあの人凄いですわ。年下とは思えない。同じ誕生日でここまで変わるんですね。と、そんなわけで今回と次回は二話投稿ということです。
さてEPISODE52、前回の続きで彼女の過去、そしていよいよこの時代での元と千恵里の再会です。

レイ「でも、元君その助けた子を追いかけてきているんだよね……大丈夫かなぁ」

ジャンヌ「助けたことをどう思うのか、ですね」

そんな身構えなくても……(´・ω・`)では本編をどうぞ。


 

 

 千恵里達はクルスと名乗った少女の話を聞く。彼女はとある施設で実験を受けていたのだという。オースラリアの出身らしい。彼女は大災害で被災し、家族を失った。それを今の施設が引き取ってくれたそうだ。

 その施設でMSの試験をするようになった。そこでは薬を飲んでMSを動かす。その薬を飲むと前後の記憶が飛ぶようになったという。

 素人の千恵里でも分かる。その薬は危険なものだと。記憶が飛ぶなんていくらなんでもおかしいし、MSの操縦に必要となれば怪しさ満々だ。

 恐る恐るクルスに施設の名前、いや、それを運営する組織の名前を訊く。

 

「ねぇ、クルス。あなたを引き取った施設って」

 

 その言葉に、クルスは顔を俯かせる。そして言いにくくもはっきりと言った。

 

「うん……ゼロンっていう、宗教の人」

 

「やっぱり……」

 

 返ってきたのは予想通りあの組織の名前。カルトの名前を聞いて荒立てない様にと言う都美樹。

 

「ちぇ、ちぇりー?分かるけど今は……」

 

「流石にこんなところで怒らないし、怒れないよ……」

 

 カルト集団に良い感情を抱かない千恵里でも流石に怒れない。先も思ったが、彼女が生きるにはそれしかなかった。組織に恨みこそあれ、彼女に恨みはない。

 当の本人は申し訳なさを感じて謝罪する。

 

「ごめんなさい。カルトになんて所属して……私なんかと関わったら、HOWとかに捕まっちゃうかも……」

 

「何言ってるのよ。人を助けてHOWに捕まるくらいなら私はHOWには入らない」

 

「ち、千恵里ちゃん!?」

 

 謝るクルスにその必要はないと胸を張って答えた。これは人助けだ。聴取されることはあっても、それで捕まるという可能性は少ない、はず。恩人のHOWに逆らうことになると思っている命の心配は稀有だろう。

 今は病人だ。いくら何でもHOWがそんな暴力的行為に及んでまで彼女を捕らえることはしないのではないだろうか。

 そう思って私は世間話のようにクルスに訊く。

 

「ねぇ、あなたはゼロンのために働きたいって思ってるの?」

 

「えっ」

 

「ちぇりー?」

 

「あなたがどう思っているか、知りたい。遠慮なんて無用よ。あなたが、ゼロンをどう思っているのか」

 

 二人の制止を聞かず、追及する。少しだけ逡巡する素振りを見せてから、答えるクルス。

 

「……私は、災害の時に助けてもらったことは凄く感謝、してる。だけど、戦闘の後は頭が痛くなるし、記憶もなくなった。その間何をしていたのとかも、よく、分からない……凄く機体を動かしていたことが、ぼんやり覚えてるだけ……」

 

「……」

 

「多分、いけないことをしていたんだと、思う。私は、そんなの、嫌だ」

 

「なら、HOWに保護を」

 

 そう言った千恵里の言葉に、首を横に振ったクルス。なぜ?という問いに彼女は応える。

 

「私が捕まれば、あの人達は追いかけてくる。みんなも襲われる。だから」

 

「そんなの、関係ない!あんな奴らの事……」

 

「私も、あんな奴らの仲間だよ?それにHOWも私の確保に、容赦なんてしない、と思う」

 

「そんなこと……」

 

 ない、と言い切ろうとしたその時部屋が開かれる。向くと軍服と制服を着た大人達が入ってくる。いきなりの事で取り乱しかける。しかしそれを制する様に声が響いた。

 

「急で申し訳ないが、下がっていてもらおう」

 

「この声……!」

 

 入ってきたのは千恵里憧れの人物。HOWの柱と呼べる黒和元その人だった。

 実際に顔を合わせるのは初めてだった。しかし忘れることの出来ない声ではっきりと分かる。銀の髪は日本人とは思えない幻想的な印象を与えてくる。隣に控えるような女性も銀髪で、お揃いにしているのだろうか。

 茫然とする千恵里に気づいた元。いることに疑問符を浮かべた。

 

「お前は……なぜ?」

 

「え、この人ってまさか……」

 

「千恵里ちゃんの……憧れの?」

 

 そう。私の憧れの人。もう一人の銀髪の女性がその名を私達に告げた。

 

「突然の訪問、申し訳ありません。私はHOWの試作遊撃部隊副隊長のジャンヌ・ファーフニルです。こちらは隊長の黒和元。そちらの入嶋千恵里さんとは三年ぶりですかね」

 

「覚えて、くれているんですね」

 

「それは、そうですよ。あんな子、忘れるわけはありません」

 

 女性も、あの時黒のガンダムから聞こえていた声の持ち主だ。突然の再会は千恵里の心を大きく動揺させる。けれど、続く言葉は更に動揺を生んだ。

 

「紹介はここまでだ。そちらの少女を引き渡してもらう。彼女はゼロンだ」

 

「っ」

 

「ま、待ってください!彼女は被害者ですよ!」

 

 元の前に立ち塞がる。彼女がゼロンに所属しているのは分かっている。だけど彼女もまた自身の行動を由としていない。事情を話してからでも遅くはないはず。

 しかし、彼は全てを知っていた。

 

「オースラリア、シドニーア出身、クルス・クルーシア」

 

「えっ」

 

「三年前に起こったオースラリア大地震と連鎖起こったガス貯蔵施設の大火災。それに巻き込まれたのが彼女」

 

「しって、いるの?」

 

「施設から資料は入手している。それによる被検体であることもな。彼女は危険だ。身柄は確保させてもらう」

 

 全てを知っていた。知った上で彼女を確保しにきていた。病院の先生たちも遅れてやってきた。

 

「すみませんが、彼女は……」

 

「すまないな。自衛軍からの要請なんだ」

 

「じ、自衛軍!?」

 

「自衛軍まで……」

 

 自衛軍の軍人も彼女の引き渡しに来た。先生達はその自衛軍の人に出された書類を見て渋々その引き渡しに応じていた。

 その流れをただ見ているしかない。それでも振り絞って言った。

 

「彼女は……クルスはどうなるんです?」

 

「彼女は既に自衛軍の特殊部隊の隊員を殺している。それが故意であれそうでなくとも、彼女は既に手を上げた。人を傷つけ、脅威となる存在を自衛軍もHOWも、そして世界も許さない」

 

「そんな!事情があるって分かって」

 

「それを決めるのは、君でも、ましてや俺でもない」

 

「っ」

 

「決めるのは、その立場にある者。俺はただ、指示に従ってそいつらを捕らえる、あるいは滅ぼすだけ。それに、ここに居れば、ここの人達がゼロンに襲われる」

 

 冷たく、突きつけられる現実。それは鋭いナイフのように、そうするしかないのだと言わんばかりに彼女に向けられた。例え魔王と呼ばれる彼でさえ、ルールに逆らわない。規則を守っている。そして民間人の安全を優先する。

 千恵里が知らない世界。知らなかった世界。だが当然なのだ。これが人、人の法だから。でなければ感情がまかり通ってしまう歪な世界になってしまうから。

 彼女を救いたかった。でもこれ以上自分が出来ることは、ない。顔を俯かせた。その脇を元さんに指示された先生たちが隊員の準備を始める。クルスに対して、背を向けたまま言う。

 

「……ごめん」

 

「……いいんだよ。私は、これで」

 

「ちぇりー……」

 

 何かしたかった。でも何も出来ない。無力な自分を呪いたい。

 そんな千恵里に、声を掛ける存在があった。

 

「―――すみません、お三方、ちょっとお時間をもらってもいいですか?」

 

「え?」

 

「ジャンヌ?」

 

 先程の紹介をした女性、ジャンヌ・ファーフニルが千恵里達を誘う。

 

 

 

 

「すみません。病院側の準備などもあるので、それまでの間、ということになるのですが、お話したくて」

 

「い、いえ……そんな、副隊長さんが私達なんかに話があるなんて……恐縮です」

 

 三人は病院の待合所の席に座り、ジャンヌと対談する形となっていた。彼女達以外にはHOWの女性隊員二人がガードに付いている。

 突然の誘いに当惑を隠せなかった千恵里達。緊張で縮こまる三人、いや、正確には命以外の二人にほぐすようにジャンヌが言った。

 

「恐縮なんてしなくていいですよ。命さんも言ってあげてくださいな」

 

「そうですね。千恵里ちゃんも都美樹ちゃんも、構えなくていいよ」

 

「え……命知り合いなの?」

 

 あまりにフレンドリーのように感じられて尋ねる。すると命はその理由を教えてくれた。

 

「はい。前にお父様の仕事関係でお会いしています。ジャンヌさんも異次元ではいいところのお嬢様ということで、結構気が合うんです」

 

「そ、そうなんだ……」

 

「みこっちのお父さんってことは……機械関係?あ、もしかしてMSの!?」

 

「ふふ。それは機密事項、ということで」

 

 都美樹の言葉にクスリと笑うジャンヌ。言葉に恐怖して思わず都美樹の頭を抑える。

 危うく地雷を踏み抜きかけたものの、それに気にすることなくジャンヌは三人に今回の件について、黒和元のことについて話す。

 

「先程はすみません。元も仕事のこともあって、あのような無礼を」

 

「ぶ、無礼だなんて!むしろ私の方が無礼ですよ……あんな食って掛かって」

 

 さっきのあれはよくよく考えればあまりにも失礼だったと反省している。気持ちがはやり過ぎたのではと思ってしまう。

 だがしかし、そうではないと銀色の髪を揺らして首を横に振るジャンヌさん。側頭部に結んだリボンが揺れる。

 

「いいえ。むしろあれくらい言われた方が気も楽です。元だって、全てが全て上の方針に納得がいっているわけではないんですから」

 

「……それって?」

 

 首を傾げた都美樹の反応と同じく私も唖然とする。ああ言っていたのに……本当は違うって……?

 ジャンヌさんはそれを話してくれた。

 

「今回の任務、資料を手に入れた時に私達は彼女の経歴を見ました。元はその時点で一度本部に処遇について確認を入れているんです」

 

「処遇について……」

 

 処遇と聞くと彼女のその後ということになる。決めるべき人の判断。彼女をどうするのかと尋ねたのだろう。

 

「結論としては彼女も機体も、重要参考人扱い。自由は限りなくないとのことでした」

 

「自由のない……生活」

 

「それに対して、元は苦言を述べていました。成長過程にある彼女にそれは酷だと。それでも上は考えを変えませんでしたが」

 

 ため息をつく。ジャンヌも上の決定にそのまま賛成というわけではなさそうだ。そのままジャンヌはもう一つ明かす。

 

「それに……先程みなさんとお話ししていた時も、彼はやるせなさを感じていましたから」

 

「それは……ジャンヌさんの見立てで、です?」

 

「いえ、私と元はDNL、次元感応者なんです」

 

「DNLって、あの心が読めるっていう?」

 

 頷くジャンヌ。ニュースなどで聞いている、次元世界に適応した新人類と称される人達の事だ。最近この世界でも適応者が出ているらしいが、元々は外の世界で能力を得た人がやってきたことが初めてらしい。

 とはいえ千恵里達も流石に目の前の彼らがその最初のDNLであるとは知らなかった。ジャンヌは頷き、先程の元の気持ちについて語る。

 

「元の心は、声は確かにやるせなさを伝えています。特に千恵里さん、あなたの言葉に対して元は申し訳なさを思っているようですよ」

 

「元さんが……」

 

 あの時の鋭い表情の裏で、そんなことを。憧れの人の考えは容易には読めない。もしかして、今までの会話の中でも、正反対の感情を抱いていたのかもしれないと思ってしまう。このまま入れたとしても私はあの人の下で働けるのだろうか心配になる。

 そんな千恵里の心も見透かすように、ジャンヌは語りかける。

 

「大丈夫ですよ。この三年で、あなたも考え方を充分変えられたようですから」

 

「い、いえ……三年前のあの日、蒼いガンダムのパイロットに言われましたから」

 

「ふふっ。……そろそろですかね。では失礼いたします。お時間を取らせていただき、申し訳ありませんでした」

 

 三人に向かって頭を下げたジャンヌ。その銀色の髪を翻して、ジャンヌは席を立つ。千恵里達も遅れて立ち上がって礼を述べる。

 

「いえ!ありがとうござます。教えてくださって」

 

「また何かあれば、西園寺グループをよろしくお願いしますね」

 

「いえいえ。その時はまた」

 

 ジャンヌと別れた千恵里達。千恵里のその表情はどこか不安ながらも安心を見せていた。

 きっとあの人達なら何とかしてくれる。難しくても精一杯やってくれる。それでだめだったとしても構わない。だけどやはりクルスが幸せになってくれる結末になってほしい。それを願いつつ三人で病院を出た。

 

 

「さて、じゃあ遅くなったけど帰ろっか」

 

「だね。お父様に怒られちゃうかも」

 

「あー、そうだねぇ。母さんに言わないと」

 

 早く帰らなければ、とそれぞれ急ぎ足になる。そんな彼らを止める声が一つ。

 

「すみません。そこのお三方」

 

「ん?誰」

 

 振り返ると、そこに男が立っていた。どこかの重役とも呼べるようなスーツを着こなす中年男性と言った風貌だ。しかし女子学生にそんな男が話しかけてくることに、危機感を感じないわけではない。しかも会ったことのないともなれば要注意だ。

 男性はそんなこちらの忌諱を無視して話してくる。

 

「先程クルスとお話ししていましたね?」

 

「クルスを……知ってる?」

 

「それにHOWの方々と随分親しく話しておられた。いいですねぇ、HOWに顔の利く人物というのは」

 

「何を言って……」

 

「ち、千恵里ちゃん!」

 

 命の悲鳴でようやく気付く。周囲を黒服の人物達に囲まれている。しかもその手には銃が握られていた。

 囲まれた……。動けない私達に、男は名乗る。

 

 

 

 

「私達はゼロン。世界の正常化のため、あなた達には協力してもらいます。嫌でもね……」

 

 

NEXT EPISODE

 




EPISODE51はここまでです。……最後のあれがどうなってしまうのか?(゚Д゚;)

レイ「絶対関わってくるよね……人質とか……」

ジャンヌ「ゼロンも基本的には次元覇院と同じ、ということでしょうか?」

今のところはそんな感じだね。ただ少し違うことだけは言っておくね。

レイ「心配だね。でも元君もちゃんと考えていてよかったー」

ジャンヌ「真意を明かさない、というのは少々もどかしさを感じますが、それも必要以上に人を巻き込まないため、と考えると今までの元さんと違いますね」

10年近い時間が彼を変えたんですよ。あの事件とかでね(´-ω-`)

レイ「魔王として……かぁ」

ジャンヌ「今後が気になりますね」

では同日公開の黒の館DNもよろしくお願いします。

レイ「よろしく~ねっ」


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黒の館DN 神騒乱勃発編 第9回

どうも皆様。引き続きご覧の方は改めまして、作者の藤和木 士です。

前話からの続きで今回は黒の館DN、その神騒乱勃発編第9回となります。紹介は自衛軍特殊部隊のフィクサーこと会島虎治郎とその息子会島正人、千恵里の友人である西園寺命と羽馬都美樹、そしてMSがHOW・自衛軍共通のソルジアスとゼロンのザジンです。

ディスティニーライダーはまだ紹介しません、理由は本編にて……。

それでは黒の館DN、開館です。


 

士「はいはいはーい、では今回も始めて参ります黒の館DNっ!神騒乱勃発編!」

 

ジャンヌ「アシスタントは私ジャンヌと」

 

レイ「レイのいつもの二人だよ~。今回は4話だけ挟んでの黒の館DN開館だね」

 

士「とはいえ内容はかなり詰め詰めなんですよねぇ(´・ω・`)早く紹介に移りたい」

 

レイ「あはは、ならいこっか。今回の紹介は千恵里ちゃんのお友達と自衛軍の特殊部隊、スレイブレイスとマルコシアスの隊長二人の人物紹介、それとMSはソルジアの最新型ソルジアスとゼロンのMSザジンの紹介だね」

 

ジャンヌ「あら……クルスさんとディスティニーライダーは紹介しないんですね」

 

士「クルスと戦慄の騎士はもう少し待って……まだ第二装備出てないから……( ;∀;)」

 

レイ「じゃあ、まずは人物紹介から~」

 

 

西園寺 命(さいおんじ みこと)

性別 女

身長 148cm→153cm

髪色 茶に近い金

出身地 東響都 中都区

年齢 11→15

誕生日 12月2日

血液型 O型

好きなもの 音楽、紅茶、クラシックコンサート観賞

嫌いなもの 騒々しい場所、梅干し 

愛称 みこっち

 

 東響へと引っ越した後の千恵里の友人。大人しい帰国子女。

 国内で有数の工業メーカー、西園寺グループの令嬢である。小学校での行き帰りは車だったが、中学からは友人達と共に歩きで登校する様になった。

 友人である千恵里とは同じ時期に海外から転校してきたためか非常に仲がいい。加えてMS襲撃事件に遭っても簡単には動じない精神の持ち主で、両親から転校を勧められても千恵里と都美樹と離れ離れになりたくないと断り、両親を説得した。

 中学時代では千恵里の目標については複雑に思いつつも憧れているということで応援している。千恵里と同じく学校の男子生徒から人気があるが、本人は家の重責を背負えるほどの人間性を備えた人でなければ付き合おうとは思わないとのこと。しかし告白に対しては真剣に向き合い、話すタイプ。

 なお彼女には生き別れた双子の兄がいた。原因は海外での誘拐。それによって彼女は再び日本へと戻ってきたのだった。

 人物モデルは「フルメタル・パニック」のテレサ・テスタロッサ。髪色は茶に近い金色で髪型は同じく後ろでポニーテールのように括ってから編み込む形を踏襲している。双子の兄という設定も無論彼女の原典における兄、レナード・テスタロッサがモデル。

 

 

羽馬 都美樹(はば つみき)

性別 女

身長 151cm→158cm

髪色 茶色

出身地 千馬県 神堂(しんどう)

年齢 12歳→15歳

誕生日 5月7日

血液型 AB

好きなもの UFOキャッチャー、海老、体育、恋バナ

嫌いなもの 英語、軽い男

愛称 ツミキ

 

 東響へ引っ越した後の千恵里の友人。活発で色恋沙汰に敏感な少女。

 いたって普通の家庭の子どもだが、両親の都合で東響に越してきたという。それが丁度千恵里や命と重なった。越してきた当初は警戒心が強く、クラスでも浮いていたが千恵里や命が来てからは二人と共にクラスメイトと交流を深めた。

 人の恋愛話に興味があり、千恵里の元への憧れをよく好意ではないのかと指摘している(そうではないと返すのが常)。

 中学でもその性格は変わらないが、その性格もあってか自身への恋沙汰が少ないこと(あくまで三人の中での話で、ないわけではない)に不平を言うこともある。

 人物外見モデルはとある科学の超電磁砲の佐天涙子。12歳時は原典よりも歳が下、15歳時は原典よりも歳が上になる。

 

 

会島 虎治郎(かいじま とらじろう)

 自衛軍の特殊MS部隊「スレイブレイス」の隊長。40歳。若さのあるおじさまといった風貌。階級は中尉。

 表沙汰には出来ない任務を遂行する「掃除屋」と呼ばれ、これまでにも違法研究を行うカルト集団の拠点を息子が率いる第二部隊「マルコシアス」と共に潰してきた。

 作中ではゼロンの新兵器「運命の乗り手」と呼ばれるMSディスティニーライダーの破壊、あるいは捕獲任務を遂行していたが、起動したディスティニーライダーと交戦したマルコシアスが壊滅的被害を受ける。彼等だけではどうしようもないと判断して、HOWのエース黒和元へと協力を依頼した。

 使用MSはソルジアスのカスタム仕様。レーダー偽装システムを搭載する。

 人物モデルは機動戦士ガンダムMISSING LINKのトラヴィス・カークランド。所属部隊の名称やソルジアスの仕様も原典が反映されている。

 

会島 正人(かいじま まさと)

 自衛軍特殊MS部隊「マルコシアス」の若き隊長。19歳。階級は少尉。

 虎治郎の息子であり、本来はマルコシアスの小隊長に過ぎなかった。しかし一か月前の戦闘で隊長が死亡して、以来新米隊長として第一部隊の隊長で父である虎治郎に師事しながら部隊をまとめてきた。

 本編にて自身の指揮するマルコシアスが、ゼロンの開発した新型機「ディスティニーライダー」により壊滅。残った部隊員と父の部隊を含めてでも追撃戦は困難と判断されて元の部隊CROZEとの合同作戦を依頼する。

 MSはソルジアスの陸戦高機動型。脚部にローラーを装備する。

 人物モデルは機動戦士ガンダム MISSING LINKのヴィンセント・グライスナー。部隊名も原作ゲームから採用する。ソルジアスの仕様も乗機であった陸戦高機動型ザクⅡがモデルだが、ローラーに関しては中の人の関連作であるコードギアスのナイトメアフレーム・ランスロットより。

 

 

レイ「以上が、人物紹介だね」

 

ジャンヌ「千恵里さんの友人二人は、丁度事件に巻き込まれた後引っ越した先で出会ったんですね」

 

士「そう。名前の出てない港内小学校の事件の時点でも、発言しているのは彼女達だね」

 

レイ「あぁ、逃げてとか言ってたね」

 

ジャンヌ「西園寺さんの実家の西園寺グループは、本編ではHOWと顔合わせしているのですね」

 

士「前に話が出ている元君の新型機開発で一部協力してもらっているって設定だね。西園寺グループは国内有数の工業メーカー、特に最近のMS駆動部開発にはほぼ関わっているメーカーの一つになってるね」

 

ジャンヌ「そう思うと……ゼロンが人質に取ったのもその技術を対価として交換するって狙いがあるのかもですね」

 

レイ「あー……でも今回はどっちかって言うと元君達に確保されちゃったクルスちゃんを奪還するためっていうのが主張強そうだね」

 

士「とはいえそれがどうHOWの側に響いてくるのか……(´-ω-`)」

 

レイ「それで……会島親子?は珍しくガンダムのキャラがモチーフっていうか、結構意識してるよね?」

 

ジャンヌ「敵のディスティニーライダー……名前とカラーリングを含めて、モデルの機体を考えるとこれは狙って設定してますよね?」

 

士「そう!( ゚Д゚)実は今まで意図的にガンダムシリーズのキャラモデルのキャラクターを減らしていたのさ(´-ω-`)これも全てここから始まる流れの為……」

 

レイ「てことは、まさかLEVEL3はガンダムシリーズの歴史を辿る……?」

 

ジャンヌ「元さんが魔王ですので、ジ○ウの如く……」

 

士「どっちかって言うと、ディ○イドみたいなリ・イマジネーションなストーリーとシュバルトゼロガンダム軸のストーリーを展開していきます(´っ・ω・)っ」

 

レイ「ファイナルカメンライドォ!」

 

ジャンヌ「ディケーイ、ですか」

 

士「あぁ、歌詞言いたいけどそれやると設定がめんどいっ;つД`)」

 

レイ「それは置いておくとして、本当にそれやるの?」

 

士「やるよ(´・ω・`)それを含めてこの世界に「機動戦士ガンダム」という作品が存在しなかったことが関わってくるんだから」

 

ジャンヌ「作品としてのガンダムが誕生しなかったのに、関わってくるんですね……どういう風に関わってくるのやら……」

 

士「さ、次行きましょう。MSの紹介」

 

ジャンヌ「はいはい……文字数ですね。では次はMSの紹介です。ソルジアの最新型、「ソルジアス」と、ゼロンの量産型MS、「ザジン」の紹介です。どうぞ」

 

 

HMS-08

ソルジアス

 

機体解説

ソルジアⅡの設計・データを流用しつつ、昇華した次世代型MS、それがソルジアスである。実戦配備は2034年

 機体カラーは白に青。青の部分はカスタムが可能で様々なタイプが存在する。

 大きな特徴として機体の背部が換装システム「エディットバックパックシステム」を搭載する。また各部はユニット方式となっており、様々な用途の装備を換装可能となった。

 武装面もソルジアⅡから発展し、ビーム兵器の運用は今では全く問題なく、かつ安定的に運用できるようになった。更にDNFを解析して独自のDNA、「ディメンション・ブレイク(DB)」を使用可能となった。威力相応に使うエネルギーも多く、自衛軍側はあまり使い手がいないものの、HOWでは積極的に用いられる傾向にある。

 まさに次世代の担い手とも呼べる主力機体として注目を浴びる機体。現在本機をベースとしてシュバルトゼロガンダムの性能に近づける機体を開発中であり、改造の範囲も広く対応できる対応力の高いMSである。

 モデルはガンダムAGE系統とビルドストライク系統。頭部は電脳戦機バーチャロンのテムジン系列をベースとしている。

 

 

【機能】

・ビームシールド

 機体の防御を担う防御兵装。機体の両手甲の発振器から形成される。

 Ⅱの時から更に技術を積み重ねて性能が高くなっている。発生器もビームシールドが上から形成されて弱点を克服している。だが中央を的確に攻撃されるとシールドを突き抜けて破損する率が高い。

 

・エディットバックパックシステム

 機体背部に搭載されるバックパック換装システム。

 マキナートで採用されていたゴーストシステムをベースとしている機構。ただしそちらと違って既存バックパックがアームを介して腰背部に移動してコネクターを構成する仕組み。

 エディットウエポンシステムから発展させた技術であり、各部の換装システムと合わせて本機の汎用性を向上させている。

 本機能はブラウォジーベンガンダム・ライブラにも採用されているが、そちらはまだ試験タイプだったことから名称は冠していない。

 

・エディットアーマーシステム

 機体各部に追加パーツを取りつけ、あるいはそのものを換装可能なシステム。

 こちらもエディットウエポンシステムから発展した技術で、ドラグディアのハードポイントシステムを参考にした。

 整備性が悪化してしまったものの、短時間でユニットさえあれば換装可能な点が評価されている。また専用機を作ることが容易になったのも高評価。

 

 

【武装】

 本機は二種類の換装システムにより形状が安定しない。まずは基本タイプから紹介する。

 

・ビームライフル

 標準的なビームライフル。技術革新により既に安定的な運用が可能となったモデル。右腰に装備される。

 外装式の強化パーツを被せて高出力型に換装することも可能で、戦闘中に外すこともできる。

 モデルはビルドストライクガンダムのビームライフル。外装式の強化パーツは強化型ビームライフルがベース。

 

・ビームサーベル

 バックパック側面に装備される格闘兵装。

 この時代においては普遍的となった兵装で、出力は標準。エディットバックパックシステムの使用時には装備根元が内側に折りたたまれて可動を妨げないようにする。その際は逆手で抜き放つ形になる。

 

・ビーム・ガン・ポッドC(コンパクト)

 肘部から下腕部に賭けて装備される連装ビーム砲。

 ソルジアⅡにも装備されたビーム・ガン・ポッドの改修型。ビームガンとその外側に単発式のグレネードミサイルを装備する。小型化されたことで取り回しが良くなっている。

 

・バスタースラッシャー

 左腰に装備される手持ちの槍型マルチウエポン。

 槍の穂に当たる部分が大剣の面のように幅広く、中央から左右に分割が可能。そのまま使用するスラッシャーモード、穂の先端部分のみを開いたバスターモード、武器全体を二分割して両手にトンファーのように持つトンファーモードを持つ。また穂の側面にはビームガンを備え、スラッシャーモードのまま射撃も可能としている。

 本来ならビームサーベルを形成可能なモードも取り付ける予定だったが、高コストになるためか量産機には標準装備されない。こちらは簡易型となっている。

 モデルは電脳戦機バーチャロンのラジカルザッパー。ただしかなり小型化されており、白兵戦重視となっている。また構造も変化している。

 

・アクティブバックパック

 機体のバックパック。背中中腹のアームによって支えられている。これを腰部付近までずらすとエディットバックパックシステムのパック接続部が露出する。またDNジェネレーターとの接続部も兼ねている。

 

 

<ARカスタム>

 高機動型のカスタム。カスタムパーツの色は水色。エア・ライドカスタムの略称である。バックパックをエア・ライドブースターに換装し、各部に高機動ユニットを装備した状態。機動性能は通常のシュバルトゼロガンダムに匹敵するほど。もっとも運用率の高い装備となっている。

 モデルはビルドストライクガンダム・フルパッケージ×スタービルドストライクガンダム。

 

【追加武装】

・エア・ライドブースター

 エディットバックパックシステムの一つ。戦闘機型のユニットで機首を下に折りたたんで合体する。自立稼働には内蔵した大型コンデンサーのDNで稼働する。

 運動性能を引き出す上部大型可変ウイングとウイングから分離した戦闘機形態のメインエンジンを下部に備える。可変機の変形を参考にしており、非常に各部は小さいながらも十分に機体を動かせる。

 鎖骨部分から突き出たビームサブバルカンは戦闘機形態での主兵装であるが、合体時にはより強力な弾幕を形成可能となっている。

 モデルはビルドストライクのビルドブースター。ただし前述した通り形状はより現実の戦闘機、本世界の可変MSエアフォースの変形機構をベースに格納していたブースターユニットと翼を展開する方式。

 

・ビームサブバルカン

 機体とブースターの接続部、鎖骨部分に装備されるビーム兵装。

 ブースターの戦闘機形態における機銃として機能していたが、この状態では小型ビームキャノンとしても機能する。

 

・高機動ユニット

 機体の肩部、膝部側面に装備された、全方位放射スラスターを搭載したユニット。ひし形のユニットが特徴的。

 スラスター自体はシュバルトゼロガンダムにも採用されたジェットスラスターを応用して製作された「アクセルスラスター」を採用。機動時の反動が凄まじいが、性能はシュバルトゼロガンダムの機動力と同等。

 

 

<SRカスタム>

 近接型のカスタム。カスタムパーツの色は橙。別名ストライク・ラッシュカスタム。背部に装備された近接特化のバスタースラッシャーとエリミネイトカッター、各部のアーマースラスターユニットが特徴。

 モデルはガンダムビルドダイバーズリライズのマーズフォーガンダム。

 

【追加武装】

・アサルトスラッシャー

 追加されるバックパック中央に装備される、大型のバスタースラッシャー。分割機能は健在。ただし分割した際のビーム砲は排除されており、合体状態の大剣、分離状態の片刃剣、トンファーとしての使用に重きを置いている。

 

・エリミネイトカッター

 追加されたバックパック側面に装備されるヒートカッター。

 ヒートカッターと言ってもただの赤熱兵装ではなく、赤熱にDNを用いることで対DN防御兵装、ビームシールドやDNウォールを少ないエネルギーで突破可能とする。とはいえ高純度DN機に対しては本機では未だに不安は残る。あくまでも量産機の範囲で突破が可能と思えばいい。

 なおスレイブレイス所属のリッパー機はこの剣を切り詰めてダガーとして使用している。

 形状モデルは進撃の巨人にて使用される立体機動装置とセットで用いられる剣。装備全体のモデルに合わせるならマーズフォーのソード。

 

・アーマースラスター

 肩部、脚部膝部分からふくらはぎ側面、そしてフロント・リアアーマーに装備された増加装甲兼スラスターユニット。

 それぞれのアーマーはリアクティブアーマーとなっており、防御性能はある。だがスラスター自体にも小範囲だがDNウォールを形成可能となっており、二重の防御機構でダメージを受けやすい本機をカバーする。

 

 

<BSカスタム>

 砲撃型のカスタム。カスタムパーツのメインカラーはミリタリーグリーン。別名ブラスト・スマッシュカスタム。

 ロートケーニギンで得られた砲撃戦データを流用して製作されており、ビーム砲撃以外にもミサイルなどの実弾兵装も織り交ぜる。

 モデルはフルアーマーガンダム、ランチャーストライクガンダムなど。

 

【追加武装】

・ビームカノン

 追加バックパックの左側面に装備されるビーム兵装。アームで固定されており、本機の主砲を担う。発射時には腕部下方から前に回される。

 砲形状モデルは魔法戦記リリカルなのはFORCEのストライクカノン。

 

・レールガン

追加バックパックの右側面に装備される実弾兵装。アームで固定されており、こちらは上から肩にかけて副砲として用いられる。

 弾倉はおよそ10発分。

 

・ミサイルポッド

 機体の脚部膝装甲、フロントアーマーに増加装甲として装備されるミサイルポッド。弾数は膝装甲が4発ずつの8発、フロントアーマーが6発ずつの12発。

 ミサイル発射後は自動的にパージ。耐ビームコーティングが施され、異常な圧力が検出された場合は自動パージされて誘爆を防ぐ。

 モデルは機動戦士VガンダムのV2バスターガンダムのミサイルポッド。

 

 

<LLカスタム>

 陸戦高機動型のカスタム。追加装備のメインカラーは黄色。別名ランド・ローダーカスタム。

 現状MSは基本的に空中戦がメインとなるが、地上戦も想定される。その為に地上で戦闘する際は不要となる空中戦用大型装備の排除などが行われる。しかし大抵の場合は性能の低下につながるため、予想外の事態に対応が難しくなるのが常だった。

 それに対し本機は機体の各部換装システムを用いた装甲の換装も含めての組み換えによって可能な限り性能低下を抑制。加えて独自の戦闘スタイルを編み出すことになった。

 モデルは陸戦高機動型ザク、コードギアスのランスロットなど。

 

【追加武装】

・バスタースラッシャーA(オール)

 左腰に装備していたバスタースラッシャーの完全版。バックパック背面に装備する。スラッシャー、ビームサーベル、ビームガン、バスター、シールドのモードを持つ。トンファーのみ消失している。

 可変機構が複雑化したことで、バスターモードは左右に分割してから両手でそれぞれの持ち手を構える方式に変更。砲身自体も展開式で薄く、一見脆弱に見えても強力なビームを放てる。無論これは普段は使わず、連射出力と第一強化出力での使用に留める。

 また刀身をビームサーベルで包み込むことも可能で、非常に有用な兵装。

 モデルは電脳戦機バーチャロンのテムジン系列が使用するラジカルザッパー。簡易版よりもよりバスターモードの変形など機能が原典に近い。

 

・ランドローダー

 機体の脚部に追加される地走用のローラー。本機の最大の特徴である。

 脚部そのものを換装しており、足底部にも内蔵式のローラーを装備している。これらを用いることで本機は地上を高速で移動することが可能となっている。脚部もスラスターを使用することなく大きなジャンプが可能なだけの出力を持ち、ローラーで壁を挟んで上ることも可能なほど。

 モデルはKMFランスロットのランドスピナー。

 

・アサルトサブマシンガン

 機体の両腰を換装して装備する実弾兵装。2丁合わせて120発の弾丸を有する。マガジンはボックス。下から入れる方式。ビームライフルでは威力が強すぎるため、そしてバスタースラッシャーは小型版でもエネルギーをかなり食うためこちらに変更された。

 

 

ZAMP-01P

ザジン

 

機体解説

 LEVEL2にて活動する次元覇院直系の後継組織を自称するカルト組織「ゼロン」が量産するMS。モノアイに口にはパイプと口、頭部には鶏冠のようなスラスターパーツが一本伸びる、灰色とマスカットグリーン、それに白色にペイントされた機体。型式番号は「ZERON ARMY MASS PRODACTION」の略。

 次元覇院の時点で得られた技術に加え、10年近くのMS技術の発展が反映されており、性能はかのマキシマム・ホーリーと同等。

 武装面は実弾兵器とビーム兵器のハイブリット。通常のDNジェネレーターな分ビーム兵装にはエネルギーパック方式を採用して消費DNを抑える。

 本機は主力量産機として開発からゼロンを支えた。だが最近では後継機の誕生、急襲した他勢力のMSも取り込んでいて旧式化が訪れている。

 モデルは機動戦士ガンダムのザクⅡ、そして機動戦士ガンダムSEEDのジンである。パイプやシールドなどはザクから、カラーリングや頭部鶏冠などはジンから影響を受けている。またザクがエネルギーパック方式のビーム兵器を使うという点では機動戦士ガンダムSEEDDestinyのザクのリメイク、ザクウォーリアも意識している。

 

【機能】

・飛行アシストプログラム

 飛行時に姿勢制御などを担当するAIユニットを内蔵する。マキインにて問題視された飛行に不慣れなパイロットに対する対応策であり、これによって以前ほどの酷い事態にはなっていないという。

 

【武装】

・ビームアサルトライフル

 腰背部に装備する手持ちのビーム兵器。ドラムマガジンタイプのエネルギーパックからエネルギーを補給する。

 予備の弾倉は右肩のシールド裏に2つ分装備する。エネルギーが空になった場合、換装する。ただし予備の弾倉が無くなった場合でも機体本体からのエネルギー供給に切り替えて継戦は可能。

 モデルはザクウォーリアのビーム突撃銃。

 

・ビームアサルトアックス

 シールド内部に格納された兵装。2本を内蔵する。

ビームのハンドアックスの刃を形成することが出来る他、非発振状態では刃渡りの短い実体剣としても使用が可能。赤熱化も出来る為切れ味は抜群。マキシマム・ホーリーに採用されたアサルトエッジがベースとなっている。

 モデルはザクⅡのヒートホークとザクウォーリアのビームトマホークとジンの重斬刀。

 

・シールド

 機体の右肩に装備した実体盾。表面に耐ビームコーティングが施されている他に攻撃用のスパイクが装備されている。

 防御を兼ねるが、装備の一部を格納する関係上攻撃の要とも言えるため本機に置いて非常に重要な兵装となっている。

 モデルはザクⅡのシールドとザクウォーリアのシールド。右肩に装備される点は前者、アームで制御されるのは後者から。

 

・ウイングタイププロペラントバインダー

 機体の背部に装備される、大型のウイングバインダー。大型のスラスター口を備える。

 本機の機動性を支える兵装であり、支援AIなしで運用するのには少々難しい。だが抜群のスピードを本機に与える。

 とはいえソルジアスなどと比べるといくらか遅く、LEVEL2のシュバルトゼロガンダムでも簡単に対処が可能となっている。

 

・シュツルム・ファウスト

 シールド側面に内蔵される誘導ミサイル兵器。使用時に取り出す。二本装備。

 DNの炸裂技術を応用しており、コンクリートなども簡単に破壊する。ガンダムなどに当てられるほどではないが、至近距離から叩き付けて破壊するなどといったイレギュラーな運用も可能なほど。

 

ジャンヌ「以上がMSの紹介になります」

 

レイ「ソルジアス!なんかスが追加されてる!意味は」

 

士「意味はない!ことはない(´・ω・`)」

 

ジャンヌ「どっちなんですか」

 

士「まぁスって付いた方がかっこよくならね?って感じです。それ以外にもソルジアのアと合わせて「明日」になるネーミングですね。ちなみにこれ、後にも出ます( ゚Д゚)」

 

レイ「明日……前向きなイメージってことだね。装備も結構多いし、先祖のソルジアに帰ったって感じだね」

 

ジャンヌ「二つの換装ギミックは、元さんが経験したマキナ・ドランディアの戦いで戦った機体達の力をベースにしていらっしゃるんですね」

 

士「その通り。それらの換装次第でソルジアを超えて更に多くの派生機が作り出せる。それこそ後々水中型とか出そうとも思えるよ。もっとも浅い深度限定だけど」

 

レイ「そっかー。で、陸戦高機動型のLLカスタムとそのパイロットとの組み合わせについて何か一言」

 

士「ランスロット!( ゚Д゚)」

 

ジャンヌ「某ブリタニアの白き死神さん」

 

士「まぁでもパイロットのモデルが陸戦で高機動って機体だったからさ、割と共通点あるのでは?と思って(´・ω・`)とはいえあっちはあっちで最新技術搭載する上に地上で三次元機動するんですがね」

 

ジャンヌ「それも出来るよという感じでいいのでは?」

 

レイ「そうそう!」

 

士「そうですね。で、ザジンの方は」

 

レイ「うん……量産機って感じではある。けど武装が弱くない?」

 

士「あ、これゼロンの初期の量産機なので、今はもっと強い量産機体バリバリにあります(´っ・ω・)っ」

 

レイ「ならいいねっ」

 

ジャンヌ「ではどうしてそちらを……あぁ出したくないんですね」

 

士「まだ温存です(´ρ`)ゼロンは色々な組織を取り込んで作られているからね。ライダーの大ショ○カー然り、ガンダムで言うならネオジオンやらレジオンみたいにね。どんな機体が出るかはその時まで。というわけで今回はここまでです」

 

レイ「次の時は、いよいよディスティニーライダーの紹介だね!」

 

ジャンヌ「LEVEL2の終わり。その時紹介するのはどれだけになることか」

 

士「ということで次回もよろしくお願いしますm(__)m」

 




今回もお読みいただきありがとうございます。

会島親子の件については本文中でも上げている通り、機動戦士ガンダムの作品の一つ、ゲームサイドストーリーズのミッシングリンクを意識しています。ただし正人に関しては中の人が同じコードギアスの枢木スザクの要素を機体にちりばめており、もしかすると再登場時に「彼」も登場するやもしれません。

ソルジアスはソルジアの最新型で自衛軍・HOWの共通機動兵器となっています。ただし自衛軍は本機の一部仕様に不満を抱いており、LEVEL3では自衛軍の独自の機体が登場する予定です。言ってしまえば、前にも言ったように様々な新型を現段階では出せないのが理由です。
そして同じ理由でザジンもまたゼロンMSの中では性能の低い機体となっています。本機直系の後継機や、別勢力のMSも登場する予定です。ザジンの後継機、モデルから考えれば、なんとなくわかるやもしれません。

次回の黒の館DNが神騒乱勃発編最後の黒の館DNとなります。異世界へ行き、現代へと戻ってきた黒和元の物語はここからが本番です。是非、括目を。
それでは今回はここまでです。次回もよろしくお願いします。


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EPISODE53 変わらぬ思想と変わらない意志1

どうも、皆様。作者誕生日週間の二回目の投稿となります、作者の藤和木 士です。

ネイ「アシスタントのネイです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアっ」

今回はEPISODE53と54の投稿になります。

ネイ「前話でクルスさんがHOWに引き取られましたが……でも千恵里さん達もゼロンに捕まってしまったようですね」

グリーフィア「これは人質確定ねぇ~奴ら絶対人質を示して自分達が正義とか言い出すわよ~?それがこの作品だし」

メタいネタバレの言い方やめようか(;・∀・)さぁ、無事クルスを送り届けられるのでしょうか?それでは本編をどうぞ。


 

 

 水戸が運転する車で市内を護送する元達CROZEと自衛軍部隊。スレイブレイスとマルコシアスの部隊員が乗る車がこちらの車を挟み込む形だ。

 ターゲットの少女は確保できた。だが本当に子どもだったとはな……。資料を見た時は半信半疑だった。しかも、あの入嶋千恵里と同い年と来た。こんな少女が戦場に、と思わされる。

 自身のパートナーであるジャンヌは十六歳からパートナーとなっているので、人の事は言えない。ただそれでも他の子ども、ジャンヌ以下の年齢で戦場に出ることが出来る現状に不安を感じえない。こんなことマキナ・ドランディアでは思わなかったが、それはやはり立場からくる感情だろう。

 ディスティニーライダーのパイロット、クルス・クルーシア。抵抗しても無駄と分かっているのか、静かに座席に座っていた。時折頭を押さえていたが、急変すると言った様子はない。

 クルスに対し、千恵里達の事について訊く。

 

「なぁ、お前を助けてくれたあの子達を、お前はどう思う?」

 

「……えっ」

 

「何だ、庇ってくれていたのに、何も思わないのか」

 

 聞き返した彼女に対し、言い方を変えて再度問いかける。少女は少し考えて、恐る恐る元に対し返答する。

 

「……すごく、嬉しかった。ゼロンは、みんなに嫌われてる。酷い組織だから。でも私は、それに従うしか、ない。ないのに、あの子は……ちえりちゃんは関係ないって、言ってくれた。無責任だけど、こんな私でも、いいんだって」

 

「……お前のスターターは回収した。機体の方は厳重に隔離されるだろう。だが、お前自身がどうなるかは、お前次第だ。自衛軍に協力するなら、相応に情状酌量は求められるかもしれない。人を殺したことを、償う気があるのならまた彼女達に会える」

 

「そう、ですか……」

 

 今回の件について、元は機体のみが危険視されるべきものだと考えていた。パイロットはいずれも被験者、被害者だ。システムによる無理矢理な命令に突き動かされてしまう存在。

 本人の意志でないのなら、それは考慮されるべきだ。かつて俺自身がマキナス・ドラグディア双方を襲ってしまった時も、戦争終結後に問われた際にそれが証明されて不問となった。出来れば彼女もそうであってもらいたい。

 そんな願望をわずかに伝えた元は外を見る。外からは中の景色が見えない特殊なつくりのガラスからは外の景色がわずかに見える。既に自衛軍東響基地まで続く道まで差し掛かっていた。

 

「ここまで来れば、もう邪魔はなさそうですね」

 

「どうかな。ゼロンが自衛軍の研究施設から強奪した技術を用いて作った機体と、それに合わせて調整したパイロットだ。使い捨てにする気はあっても、そう簡単に敵の手に手放すとは思えない。それに……今回の主犯はそういう人物じゃない」

 

「あぁ……確か……グレイブ・モセスでしたっけ。DNLが人類を滅ぼす人種だと主張している」

 

 グレイブ・モセス。それが今回の事件の首謀者と目される男。

 人類進化について研究する学者だった彼は、世界を構成する次元粒子の流れを読み、操る人種「DNL」についても研究していた。その過程で彼は何を誤ったのかDNLが現在の人類を排斥する危険な存在であるとしたのだ。

 そんな彼はDNLを利用する自衛軍とHOWを信用できないとしてゼロンへと所属した。今や西日本では一部でDNLが次元世界を侵す悪魔の象徴とされるほどに彼の思想は広まりつつあるという話だ。

 ディスティニーライダーもその思想を色濃く受け継ぐ機体。DNLを駆逐するために作られた。元々のシステムは自衛軍がDNLを持つ犯罪者が出た時の為の防衛策としてで、当初は決してDNLを根絶やしにするためではない。が、以前の事件でそれが十分可能なほどの性能を見せられた。

 グレイブは現在数多の罪状で指名手配中。そして今回の事件の裏に、その彼が動いている節があった。MSを悪事に使う彼らを、HOWが許す旨はない。発見次第、優先的に確保することが命じられていた。もっとも今はこの護送が優先だ。護衛の重要性を語る。

 

「自衛軍の基地に着くまでの間に仕掛けてくるとしたらここだ。全員気を抜くな」

 

「分かりました」

 

『了解』

 

 気を集中する。あと少しで任務が完了する。ところが、その予感は的中してしまった。

 前方で爆発が起こった。先導車が急停止し、こちらも慌てて停止。振動が車を揺らす。ジャンヌの悲鳴が響く。

 

「きゃっ!?」

 

「っ、大丈夫か、ジャンヌ」

 

 元は咄嗟に護送対象であるクルスを庇った。幸いクルスの方は頭を強打などはしていない。ジャンヌの方には無事を確かめるのみに留まった。

 やはり仕掛けてきた。既に前後の車両からはスレイブレイス、マルコシアスの部隊が応戦を開始している。ならばこちらは護送しつつ迎撃に出る必要があるか。クルスを別の隊員に任せ、ジャンヌと共に外へ出ることを告げる。

 

「ターゲットの護送は頼んだ。行くぞジャンヌ」

 

「えぇ!」

 

 二人で車を出る。出た直後すぐに護送車は前の車を抜いて発進する。動く車に敵のザジン部隊の何機かが反応する。だがこちらもすぐに装依する。

 

『ガンダム ネクストジェネレーション!シュバルトゼロガンダムリペアツヴァイ』

 

「そちらには行かせない」

 

 ブレードガンの連弾で進行を妨害する。距離を詰めてソードモードで斬りかかった。敵も反応して機体を傾斜させて攻撃を回避、こちらにライフルを向けた。

 やはり性能差が……けどそれは読めている!

 

「ビームマシンキャノン」

 

 ビームマシンキャノンの砲身がザジンに向けられた。直後サーベルが形成されてザジンの頭部を貫く。反動で敵の機体が痙攣し、狙っていたライフルの弾丸は空へと逸れた。

 別の機体がライフルで狙いを定めてくる。弾丸は空を切り、姿勢を低くした状態から距離を詰めてもう一機の右腕をブレードガンで刺し貫く。

 空はシュバルトゼロガンダムが抑える。そして地上では正人少尉のソルジアスLLカスタムが、縦横無尽に地上を駆け巡っていた。

 

『はぁ!!』

 

 限りなくその性能を引き出している。空から見ていても分かるほどの殲滅速度。こちらが嫉妬しかねない程に、彼は機体を使いこなしている。

 その正人をサポートする形でスレイブレイスの機体も展開する。ここは抑えて早く車が辿りついてくれることを信じる。

 

「はっ」

 

 両サイドから来た敵の攻撃をブレードガンで止める。残る一機が正面から迫ってくる。攻撃を受け流して対応する中で、ジャンヌが車の状況を知らせる。

 

『敵別働部隊、護送車に向けて進撃の模様!』

 

「まだいたのか」

 

『俺が行きます!』

 

 地上部隊をあらかた片付けた正人が地上を疾走する形で車両を追いかけていく。スレイブレイス部隊もリッパーのソルジアスSRカスタムと二機を残して追従する。

 こちらにこの場を任せる形だ。心配だがこれがベストだろう。もしここに半端な戦力を置いて瓦解すれば挟み撃ちになる。それだけこちらを頼られてもいる。

 

「なら、ここは抑え込む!」

 

ブレードガン・ビームサーベルモードで一機、二機と落としていく。素早い身のこなしで空の敵を掃討すると、地上の部隊にも襲い掛かった。リッパーの部隊と交戦する敵機を背後から強襲、叩き斬っていく。

 そして、最後の一機。

 

「これで最後!」

 

『がっ!』

 

 素早く背後を取ると、ザジンの胸部ジェネレーターをバックパックごと背後から貫く。迎撃しようと構えていたアサルトライフルの弾丸が空に向けて放たれ、機体が爆発を起こした。

 この場は収拾に成功した。リッパーから隊長達との合流を要請される。

 

『この場は俺達が待機する。アンタは隊長達の所へ』

 

「了解した」

 

『ん?……ちょっと待って!これは……?元、回線を』

 

 取り乱した様子のジャンヌ。彼女から回された通信回線で、元は信じがたい発言を耳にする。

 

『心して聞け。我らはゼロン。有害人種DNLを滅ぼす者。貴様らに鹵獲されたディスティニーライダーとそのパイロットを引き渡せ、さもなくば……』

 

『―――いやっ!離しなさいよこのカルト集団!』

 

「この声……さっきの!」

 

 回線に映る、三人の少女達。それは先程病院で会った入嶋千恵里達の姿だった。三人はどこかの建物に大人達に捕まっているようだ。

 なぜ彼女達が……。しかし相手の狙いはまさしくそれだ。HOWの、そして自衛軍の動揺を誘うための人質。

 戦闘の音がない。回線では向かったはずの正人達も思うように手が出せない状況だった。

 

『くっ、何て卑劣な……』

 

『やれやれ……まったく面倒なことをやってくれるぜ』

 

 虎治郎、フィクサーの言う通りだ。普段なら突っ込んでいた。テロリストに対して交渉など出来ないから。だが今回人質に取られた者の中には、国内有数の工業メーカー「西園寺グループ」の令嬢がいる。もし傷つければ、こちらはその信用を失う。地位による優遇などしたくはないが、それを除いてもこの状況では動けない。

 手出しのできないこちらに対しゼロン側の通信者、グレイブ・モセスは好き勝手に話す。

 

『これは正義だ。有害なDNLを駆逐するためなら、どれだけの犠牲を払っても価値がある!私達が目指すのは70億もの人類の明日を背負うのだから!故に!』

 

 再び出現するゼロンのMS。こちらを包囲し狙いを定める。

 

「伏兵……」

 

 これだけの数をまた相手にしないといけないとは。いや、今は容易に反撃することすらも控える必要がある。人質の無事を優先する為に。

 そうしている間に、敵は目標の奪還に成功していた。離脱していく機体の中にクルス・クルーシアの反応が確認される。

 

「奪還されたか……」

 

『クソッ、人質さえいなければ……こんな!』

 

『おい、どうする元』

 

『このままやられるのはごめんだぜ!』

 

 どうにかしたいのはある。だが今の状況では更に悪化する場合もある。下手に動けない。それを良いことにゼロンの構成員達が仕掛けた。

 

『さぁ、やってしまえ!あわよくば有害なガンダムの駆逐を!』

 

「くっ!」

 

『―――有害なのは……どっちさ!』

 

 澄み渡る声、同調する形で空から光の矢が敵機体を貫く。撃ち抜かれて一斉に爆散する機体達。

 こんな大部隊が、一斉狙撃を?と思ったもつかの間すぐにその理由が分かった。空に浮かぶ、蒼い機影が目に入った。

 

「あの機体は……深絵か」

 

 蒼梨深絵のガンダム、ブラウジーベンの最新型「ブラウジーベンガンダム・ライブラ」の姿。機体周囲に展開する盾形の誘導兵器に守られた状態で、狙撃用の大型ライフルを向けた。その先には撤退していく機体の数機があった。

 彼女の機体は迷うことなくトリガーを引く。放たれたビーム。距離は非常にあったが、敵の内一機のウイング部分を貫く。

 

『あの距離で……!?』

 

『何て狙撃性能だ』

 

 驚くフィクサー達。機体の性能だけではない。彼女の成長した技能が成せる技だ。ジャンヌも共感し感嘆を漏らす。

 

『そうです。あれがブラウジーベンガンダム・ライブラ、今のHOWを支える最強のガンダムとそのパイロットの力……!』

 

「あぁ、だがやり過ぎたら……」

 

 当然、反撃を受けたゼロン側から回線で制止、いや、恫喝が行われる。

 

『お前、この映像が見えないのか!この娘たちがどうなっても……』

 

「だから何?」

 

『な、何だと……!?』

 

「人質って、使わないと後がない人がやる手口だよ。逃げるための一手。でもあなたは撤退だけじゃなくこちらに危害を加えようとした。ちょっとイキリすぎ、じゃないかな」

 

 冷たく指摘する口調の深絵。あの戦いから10年、深絵は大きく変わった。冷徹に戦況を見て狙い穿つスナイパー。須藤司令の教えも彼女を更に戦場を支配するスナイパーとして精神的に成長させた。

 強気に狙いを崩さない深絵に再度の恫喝が放たれた。

 

『それがなんだ。勝つために手段は選ばない!』

 

「二兎追う者は一兎も得ず。手段を択ばないとしても、欲深に求めようとするのならこっちも相応の手段をやるよ」

 

『ならなぜ撤退中の我らを撃って……』

 

「ただの威圧。いつでも狙えること、忘れちゃダメだよ?」

 

『ぐっ……今に見ていろ。ディスティニーライダーの力が、東響にはびこる人類悪たるお前達を撃ち滅ぼす!』

 

 しかしそれに負けることなく、むしろ逆に脅しを掛けて敵を撤退に追い込んだ。先程の一斉射撃と狙撃が相まって、彼女の威圧を高めたのだ。

 結果的に深絵によりこの場を助けられることになった。救援にやってきたSABERと基地側の戦力と合流を果たす。

 

「助かった、深絵。機体の調子もよさそうだな」

 

「まぁね。そっちは大分性能が詰められて苦労してるね。前の報告の時にも聞いていたけど」

 

『正直、深絵さん達SABERにこの任務任せたいくらいですね』

 

 あれだけの性能なら深絵に任せた方がいい気もする。いくら高速で動くディスティニーライダーでもあの弾幕なら動きも鈍る。そこにスナイパーライフルを差せば対処も容易。

 その意見は深絵の方も同意だった。が、首を横に振った。

 

「それは私も思ったよ。でも今回は立地が悪い」

 

「立地が……まさか、もうあいつらの拠点が割れたのか?」

 

 問いかけに頷く。深絵はこちらにデータを提示した。それはかつての西東響ガーデンタウン近くにポツンと立つ、廃棄された施設のものだった。

 

「この施設はつい先日個人の手によって買い取られた廃棄された実験場。ここにいくつもの実験資材が搬入されている。それにこの施設は丁度東響掃討戦の後に廃棄されているの。それまでの間にはガーデンタウンの研究員がここを訪れていたとの情報も判明している」

 

「東響掃討戦で……まさか」

 

 続くデータにはその地下施設がかつて潰したガーデンタウン地下基地と繋がっているマップが表示されていた。

 今の今になってそれが判明するなど……とはいえ潰した後西東響ガーデンタウンは再開発が行われず、再利用を防ぐためにそのまま埋め立てられた。故にそのような通路もMSが出てきた時の物以外は封鎖されていなかったのだ。

 資料によるとここ数日で付近に不可解な地震が起きるようになり、通路が判明したらしい。そしてその施設が通路の出入り口となっていた。深絵達はそれを伝えに来たのだ。

 

「ここはかつて実験用MSの搬入口だったみたい。あの時のMAのパーツは大きすぎたから基地で直接搬入した。だから気づけなかった。さっきの通信でもこの施設からの電波をキャッチしてる」

 

「地下施設……てことは、深絵の機体は無理だな」

 

「そういうこと」

 

 深絵の機体は新規製作した際に多重武装を施した。ホルスタービットなどの遠隔操作武器も、とてもではないが地下などで使うには無理がある。それを考えれば羽の大きさはあれども近接戦を得手とする元達が継続して作戦に参加する方がいいというものだ。

 状況は理解した。まずは人質の奪還作戦の展開が必要だ。スレイブレイス、そしてマルコシアスと相談する。

 

「なら継続してこちらは作戦を行う。フィクサー、あんたの機体で人質の救出作戦の展開は可能か」

 

『人質救出か。確かに俺のソルジアスなら敵地侵入もやりやすいかもな。だがあの機能はあくまで撹乱だ。専用のステルスはシーカー達に任せる』

 

「そうか」

 

『だがそれをやるにも戦力が必要だ。厳密には真っ向からやり合う側のスレイブレイスの戦力が減る』

 

「だったらRIOTを使って。丁度羽鳥ちゃんの部隊が参戦できる。彼女も自分を使って欲しいって言ってるし」

 

「……そうか。では各所に通達する。自衛軍基地にて機体の点検後、フタマルにて作戦を開始。RIOTとは現地で合流する。人質の奪還と、ディスティニーライダーを再度捕獲する!」

 

『了解!』

 

 少女達を救うための作戦が、始まる。

 

 

NEXT EPISODE

 




EPISODE53はここまでです。遂に深絵の次世代型ガンダムお披露目ということで(゚∀゚)

ネイ「すごいですね……あれだけのビットで一斉射、しかも寸分たがわずほぼ全滅とは」

グリーフィア「人質が取られてさえいなければ全滅確定ね~。人質にそれがどうした?って言っても、やっぱりちゃんと厚かけて撤退に追い込んでいるし、やる子なのよね深絵ちゃんって♪」

まぁそうだね(´Д`)深絵さんはこれまでの間にスナイパーのお師匠様として須藤司令に師事を受けていたし、彼の狙撃技術も合わさってHOWの狙撃手として最高になっているよ。とはいえビットは全部機械制御なんだけどね。

ネイ「それでも凄いですよ。けどここでまさか東響掃討戦の話題が掘り起こされるなんて……」

グリーフィア「でも納得ね~。抜け道がどこかとか言っていた時期もあったし、あれだけ叩いたにも関わらずまだ次元覇院の元メンバーが動ける理由もわかったことだし」

さぁ、人質奪還の為に次話で元君達が動きます。主にスレイブレイスのメンバーが!では次話に続きます。

グリーフィア「次もよろしくね~」


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EPISODE54 変わらぬ思想と変わらない意志2

どうも、皆様。引き続きご覧の方は改めまして。ちなみに今日がここのアシスタントとしてのジャンヌの誕生日です。作者の藤和木 士です。

レイ「アシスタントのレイだよ~」

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです。懐かしいですねその設定」

設定言うなし(´Д⊂ヽ引き続きEPISODE53と54の公開です。今回は54です。

レイ「奪還作戦!ガンダムの性能は心配だけど、元君頑張れー!」

ジャンヌ「性能の勝る深絵さんでは果たせない大役、元さんならきっと成し遂げてくれますね」

ま、まぁ人質自体の奪還はフィクサーの率いる部隊がやるので、元君は襲撃の側ね(´・ω・`)
さぁ、施設で起こっているのはどんなことなのか?潜入部隊がどのように入ってくるのか注目です(´-ω-`)それではどうぞ。


 

 

 ゼロンの人達に連れられて、やってきた廃棄施設。その地下で、私はあの男と再会した。

 

「やぁ、待っていたよ?人類の救世主(クルス)

 

「……ドクター」

 

 ドクターグレイブ・モセス。彼こそディスティニーライダーの開発者にして、私クルス・クルーシアを引き抜いた張本人だった。

 ドクターの側には、人質として捕らえられた千恵里達の姿が。三人の扱いに対し、苦言を呈する。

 

「彼女達を、離してください。人質はもう必要ないはず、です」

 

「ん?いやぁ、彼女達は使わせてもらう。人質の中にはかの西園寺グループの令嬢がいる。彼女さえいれば、かのグループの協力も引き出せる。それにだ、もしかすればディスティニーライダーの量産型のパイロットにも……」

 

「ふざけないでっ!」

 

 激高する。そんなの、ダメだ。あんな機体のパイロットなんて。あれはいけないんだ。記憶を、失うだけじゃない。命を、奪う。敵も、味方も、関係なしに。

 博士の考えは間違ってる。例えDNLが、万が一に滅ぼさなくちゃいけないのだとしても、こんなのは間違ってる。

 

「人質を、マシンに乗せるなんて、そんなの人として……」

 

「人として、何だ?」

 

「人として最低」

 

「黙れぇ!!」

 

 グレイブの手がクルスの胸倉を掴む。そのまま彼女の体が施設の壁へと押し付けられた。彼は凄まじい剣幕の後、穏やかさを装って言う。

 

「人の進化は守られなければならない。これまでの歴史で、人類は進化し続けてきた。その中で争いも起こった。だがそれらの中で生き残ってきた者はいずれもその争いに勝利してきた!今もそうだ。力のある者こそが、生き残る!」

 

「それが、DNLじゃ」

 

「私もそう思ったさ、最初はな!だが、DNLの能力を知るうちに私は恐ろしくなった。DNLの次元粒子を操る力。奴らの力が、もし私達の体を構成するDNLまで操作できるのだとしたら?それは旧人類を簡単に滅ぼしうる!しかもその力は適応した者にしか目覚めないときた。それでは旧人類は滅ぼされるしかない。だが今は人の時代、不浄なるDNLは旧人類、いや、今を生きる普通の者達にとって、悪でしかない!」

 

「そんな……」

 

 そんなの、傲慢すぎる。DNLだって今を生きているはずなのに。自分達がそうじゃないからって、今確かな力を持っている人を滅ぼすなんて。

 クルスに己の思想を押し付けたグレイブは手を離すと人質となった千恵里達に言う。

 

「君達にだって言える。もし友人のどちらかがDNLになったとしたら?DNLになってしまえば?君達はたちまち、普通の人間ではなくなる!普通でいられなくなる!」

 

「普通って……それをあんたが決めるの!?」

 

「そうです。人は進化し続けてきた、変わり続けてきた!DNLだってそれなのに、優劣を付けられるからって嫉妬して消そうだなんて」

 

「さっさと私達を解放しろー!」

 

 千恵里達は各々の言葉でグレイブの行いを否定する。しかしグレイブはその言葉を聴かず、逆に押し付けた。

 

「決めるさ!私が、私達が人類を導ける!DNLなどという人類の偽物を駆逐して!君達は、その贄となる!人類の為の贄だ、これは致し方ない犠牲……」

 

「止めて!」

 

 ドクターに対して、私は再度呼びかけた。

 

「やるなら、私だけで良い。どれだけいじられたって良い。だけど千恵里達には、手を出さないで」

 

 懇願。その言葉に鼻で笑うグレイブ。

 

「フン、随分と口ごたえするようになった。ならその減らず口も聞けなくしてやろう日検体K03」

 

「………………」

 

「クルス……!」

 

 どうなったってかまわない。護るんだ、私が、千恵里ちゃん達を。それが私にとっての、最後の恩返し……。

 最後の言葉を三人に伝える。

 

「大丈夫だよ、みんなは、私が守るから」

 

 それを残して、クルスはドクターの用意した「処置室」へと入る。武骨な手術台といくつもの実験器具が並べられた部屋。隅にはこれまで犠牲になった同期達の……「パーツ」があった。

 見たくなかったもの、そしてこれから自分がなるかもしれない果て。それを目に焼き付けて手術台へと寝る。従順に従う姿を見て、気味悪く微笑むグレイブ。

 

「大丈夫だ。次に目覚めた時には、余計なことも考えず、ただ人類の為に戦う戦士となる。きっと彼女達も君の姿を見れば考えを改める。君と真の意味で友情を築けるはずだ」

 

「……」

 

 何も答えず、目を閉じる。その流れで麻酔を打たれる。考えが徐々に失われていく。次に目覚めた時はきっと、この感覚がずっと続くのだろう。目覚めたのかも分からない、永遠の静寂。DIENDに適した身体に。

 私の意識は、そうして消えた。

 

 

 

「……クルスッ」

 

 歯ぎしりして壁を叩く。救えなかった。クルスを。それどころか自分達が助けられてしまった。

 私だって、勝手に体を改造されるなんて、嫌だ。でも彼女に背負わせてしまったことに何も思わないはずがない。それでも自分には何も出来なかった。

 千恵里の苦しさを察しつつも、命は言う。

 

「でも、私達にはどうにも出来なかったよ……。こんなこと、言いたくないけど」

 

「命……」

 

「みこっちの言う通りだよ。ゼロンは誰も容赦しない。味方すらも時には利用する。むしろこうして殺されずに監禁されているだけでもありがたく思うべきだよ」

 

「……そう、だね」

 

 三人はあの後地下室の奥にある独房に閉じ込められていた。クルスの処置が完了次第、出してやると言われた。

 出られる喜びはない。クルスが心配だから。それにここを出られても、何をされるかなど分かったものではない。殺されなくても、生き地獄なんてまっぴらごめんだ。

 お父さん達心配していないかな……。でも、人質として連れられたときに、元さんが戦っていたみたいだし、連絡はしてくれているよね……?命は家の方で既に事件を知っているかもしれない。

 どのみち、千恵里達は助けが来ることを祈ることしか出来ない。抜け出そうと最初は試みたが、どこからも抜け出すことは難しかった。

 

「助け、来るかな」

 

「来るよ、きっと。元さんがいたみたいだし」

 

「でも、私達が人質のままだったら、あの人でも難しいと思う」

 

「だよね……」

 

 命の言葉に沈黙せざるを得ない。捕まっていなかったら、きっと既に解決しているはず。対応が遅くなっているのはきっと私達のせいだ。

 けれど聞いたことがある。HOWはテロリストの要求に従わないと。人質がいても構わず事件解決を優先する。だけどあの時、HOWと自衛軍は動けずにいた。

 何で……。私達は助かった。でもそれが本当に良いことなのか。

 

「………………」

 

 何か、しなくちゃ。捕まったままじゃ、どうにもならない。そう思って再び部屋のあちこちを調べる。ポケットにも何かないか。ケータイも全て取り上げられた。けれど何かないかと。

 

「千恵里ちゃん、下手に動かない方が」

 

「そうだよ。変に見つかって、怪我でもしたら」

 

 友人二人は動かない様にと言う。だがそれでも止めはしない。そんな時、外の方で会話が聞こえてくる。

 

「おい、配置変更だ」

 

「配置変更?聞いていないぞ」

 

 配置変更、という単語でまさかと思う。やってきた側の人物が言った。

 

「何でも、裏の方面で怪しげな電波が確認されているらしい。MSの影も見えたとか」

 

「裏?確か第3部隊がいたはず」

 

「……その第3部隊も様子がおかしい。もしかすると第3部隊とすり替わったのかも……」

 

「何だと?」

 

 すり替わった、という発言。助けが来た?でもバレてしまったら意味がないだろう。その考え通り、ゼロンの兵士達は対応を行う。

 

「現在第3部隊はこちらに向かいつつあります。表向きは帰還ですが……おそらく」

 

「むぅぅ……この事を上の部隊は」

 

「まだであります。見張り部隊を含めたMS部隊は至急外で迎撃せよと。ここは我々が」

 

「よぅし!分かった。行くぞ!」

 

 一目散に駆け出していく音が響いた。もし外の部隊がHOWだとしたら、このままでは危ない。

 咄嗟に扉を叩いた。

 

「っ!元さん……」

 

「ち、千恵里ちゃん!」

 

「ちぇりー、今騒いだって……」

 

 分かってる。でもやらずにはいられない……っ。どうにか、この声を届けて……。

 何度か扉を叩く。それでもこの扉は開くことはなかった。しばらくして銃撃音がわずかに聞こえてきた。戦闘が始まったのだろう。

 

「戦闘が……」

 

「始まったね」

 

「うぅ……うぇ!?」

 

 止められなかった。またきっと、元さん達が余計な戦闘を……と思った瞬間、後悔が途切れた。

 突然千恵里の体が前へと倒れる。あり得ない。彼女の前は扉なのだ。鍵が開かなければそんな事にはならない。

 移動させるために開けた?けどこれはまたとないチャンス。前の敵を倒せば……。思い切り前へとタックルする姿勢、それを前からしっかりと受け止められる。

 

「きゃっ!?」

 

「おっと、下手に攻撃してくれないでくれよ?俺達は君らを助けに来たんだ」

 

「……えっ?」

 

 思わぬ言葉に顔を上げる。見上げた先でバイザーを上げて露出させた顔に、千恵里は見覚えがあった。

 

「あなたは……確か病院で先生と話していた」

 

「お、分かってくれたか。そうだ。あの時の自衛軍の人だぜ」

 

 クルスの病室に入ってきた自衛軍の中で、先生達と状況を話していた人だ。髭を生やしたその男性は服を完全にゼロンの物へと変えていた。

 状況に困惑する千恵里に、彼は現状の理由を説明した。

 

「俺達は君達を救いに来たんだ。黒和元も、既に周囲に展開している」

 

「あ、……てことは、今戦っているのは……」

 

「いや、予定では戦ってるのはあいつらの部隊だ」

 

「ゼロンと?それって」

 

 ゼロンと戦っている。それはつまり同士討ちということ。だけどさっき聞こえてきた話では、確かに第3部隊がHOWの部隊だと言っていたはず。

 普通ならあり得ないはずの出来事。千恵里の考えの予想を、彼らは余裕で超えていた。

 

「ま、簡単に言えばあれはフェイクだよ。帰ってくる部隊が敵の侵入部隊だと思えば、敵だって必死になってそれを止めようとするだろ?けどその時には既に敵は入り込んでいる。俺達みたいなのがな」

 

 合点がいく。つまり先程のあれが全て芝居だったのだ。ここまで入り込んだのも凄いが、敵の同士討ちまで仕込んでいた。そこまで出来るとは、思っていなかった。

 

「ありゃりゃ、見事に騙されたってわけだ、ゼロンは」

 

「でも、すぐにバレませんか?」

 

 欺いたのは凄い。だがしかしそれは同時にギリギリの賭けと言えた。いつまでも敵が現状におかしさを感じないわけではない。撃たれた側の敵が白状してしまえば、この発想にたどり着いて兵が戻ってくるかもしれない。それどころか監視カメラなどがあったら終わりだ。

 ところがそこは自衛軍の特殊部隊。その対策は既に取っていたのだった。

 

「それについては問題ない。既に施設のシステムにハッキングしてここの情報は欺いている。上の部隊も……フン、丁度か。今シュバルトゼロガンダムが始末してくれた」

 

「始末……」

 

 その単語に唾を飲んだ。きっとそう言うことなのだろう。仕方ないとはいえ、やるべきことだ。これで囮の敵が本当の事を話すということもなくなったわけだ。

 

「さぁて、行くぞ嬢ちゃん達。上はシュバルトゼロガンダムと俺の息子の部隊がやってくれてる。裏口から脱出だ」

 

 取り仕切る自衛軍の男性を先頭に千恵里達は牢から脱出を開始した。

先導役の人は見た目と話し方に反して非常に注意深く進む。可能な限り敵との接触を避け、千恵里達に細かく指示を出す。

施設全体が混乱状態にあったためか、接触は少ない。だが「少ない」であってゼロではなかった。逃げ出す職員と鉢合わせし、職員が千恵里達の姿を見て破れかぶれで襲い掛かってくる。

 

「こ、こいつら捕虜だ!」

 

「おっと!」

 

 銃を向けてくる。それを庇うように前に出た先導役が先に銃撃する。発砲音と水滴音が響く。すぐに先導役と後ろの殿が先へと急がせる。民間人に銃撃した敵を見せない為か。そのおかげで千恵里達もわずかしかその残されたものを見ることはなかった。

 どれだけ走ったのだろうか。二度ほどの銃撃戦を経て千恵里達は広間へと出る。見覚えがあった。クルスと別れたあの部屋だ。

 

「よし、この脇の通路を行けば外へ出られっぞ!もう少しの辛抱だ」

 

「やっと出口~」

 

「これでこんなところからおさらばですね。あれ、千恵里ちゃん?」

 

 千恵里の体は自然とクルスの入っていった部屋を向いた。

 あの奥にクルスが……。今行っちゃいけないのは分かってる。でも……。

 

「……悪いが、今は寄り道厳禁だ。逃げることだけ考えな」

 

「はい……」

 

 自衛軍の人にも言われ、千恵里も断腸の思いで足を動かす。そんな時だった。

 

 

 

 

『―――寄り道厳禁?ハハッ。寄り道はしてもらうよ。嫌でも、ね!』

 

「この声……!」

 

「ちっ、見つかったか。嬢ちゃん達、下がってろ!」

 

 

 

 

 ここに捕らえた男の声。グレイブと名乗った男性がこちらを見つけた。自衛軍の隊長は千恵里達に下がるように命じてMSを纏う。

 MSを纏うほど……やっぱり想定されているのは、MS戦。私が見つめていた扉が開く。

 光をバックに姿を現したのは蒼いMS。腕に大きな装甲を纏い、背中には歪な翼のようなものを備えていた。

 蒼い機体に紅いDN、その機体を見て真っ先に気づく。

 

「クル……ス?」

 

「えっ?」

 

「まさか、あれが!?」

 

 続いて都美樹、命も気付く。その横から姿を現したMSからグレイブの声が響いた。

 

『その通り!彼女のこそ、不浄なるDNLも、それを是とする者達を滅ぼす救世主!』

 

『冗談!』

 

『さぁ、存分に暴れなさい、ディスティニーライダー……運命を突き詰める者よ!そいつらから消してしまいなさい!』

 

 蒼いクリアブルーのバイザーが真っ赤に染まる。血のような赤だ。手の装甲も展開して、まるで獣のような爪を展開する。

 クルスは何も答えずに、展開する自衛軍との戦いを、いや、虐殺を始めた。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。さぁいよいよ次からディスティニーライダーとの対決、そして怒涛のクライマックスの節へ!( ゚Д゚)

レイ「クズだ……あの博士クズだっ」

ジャンヌ「とてもではありませんが……悪趣味ですね」

大体君達が言いたいシーンは分かった(´・ω・`)

レイ「何も考えられない様にするなんて……あたい許せへん!」

まてその先は言うな(゚Д゚;)カオスになる。

ジャンヌ「レイさんがあたいって言う時点でカオスだと思いますが……」

うー☆……はいまぁ、それは元君に任せることにしましょう。

レイ「だねー♪けど本当に止められるのかな?何かヤバい雰囲気出してるし」

ジャンヌ「クローユニットを擡げてって、かなり獣っぽい戦闘スタイルのような気も」

頭空白にしたらそうなるって何なんだろうねっ。その戦いの行方はまた次回ということでっ。それでは今回はここまでです。

レイ「次回もよろしくねーっ」


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EPISODE55 運命の乗り手1

どうも皆様。リライズショックとも呼べる話から平静を取り戻しつつある藤和木 士です。ヒロト君も仕方なかったよね……イヴがああしてくれなかったら、GBNの方がダメになってしまったかもなのだから……。けど苦しいなぁ;つД`)

ネイ「あ、そうですか。アシスタントのネイです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィア~」

反応薄い(^q^)さて、今回はEPISODE55の公開です。人質奪還に並行して、MS隊の侵攻作戦です!

ネイ「人質側の動向は既に分かっている状況ですが……果たして元さん達は間に合うんでしょうか?」

グリーフィア「間に合わないと、あの強化されちゃったディスティニーライダーに、クルスに全員やられちゃうものね~。シュバルトゼロガンダムは間に合うのやら……」

それでは本編をどうぞ。


 

 

 作戦開始前、施設のおよそ500メートル後方の山中に元達は身を潜めていた。その山中から暗視ゴーグルを用いて敵施設の動向を見る。

 さっきフィクサーから施設の侵入に成功したと連絡があった。彼ら自身の偽装は強襲してきた敵部隊から拝借した物、そう簡単に見抜くことは難しいだろう。

 施設へのハッキング作業も引き続きダイバーの電子戦特化型ソルジアスが担当してくれている。護衛はボマーとハイヤーに任せ、突入は俺と正人、リッパー、それに……。

 考えていたそこに通信が入る。それは周囲を警戒していた機体からの増援到着の知らせだ。

 

『待たせたな、黒和元』

 

「あぁ、来たかRIOT」

 

 制圧部隊「RIOT」、その隊長である羽鳥綺亜だ。かつては防衛部隊GUARDIANに所属していた彼女が、今は真逆の敵施設制圧部隊のRIOTへと鞍替えだ。

 彼女専用のソルジアスとその部隊がやってきて、準備は整った。改めて作戦内容を伝える。

 

「これより俺達は、ゼロン秘密施設に対する制圧戦を開始する。既に自衛軍スレイブレイスのフィクサーを先頭として人質奪還部隊が動いている。俺達はそのカモフラージュ、および施設の制圧、もとい救援として向かう」

 

『救援?隠密行動が失敗すると読んでいるのですか?』

 

 正人から上がった疑問。他の隊員からも同じ声が上がる。その問いに対し答える。

 

「あぁ。これまでの行動、どうも敵に先手を打たれ過ぎている。余程勘がいいんだろう。もしかすると、敵には俺達と同じ、未来を見通せるほどのDNLがいるかも」

 

『そんな!奴らはDNLを否定して……』

 

「否定していても、奴らが力を借りていないと言えるか?奴らは己のエゴの為ならなんだってする。事実を欺く。かつて次元覇院がしたようにな」

 

『確かに、な。アイツらは勝利のためになら、何だってする連中だ』

 

 苛立ちを込めて、同意する綺亜。あの戦いを経験したからこその発言だろうか。ともかく油断ならない。早く行かなければ人質奪還部隊がどうなるか分からない。最初から全力で、敵の予想に正面からぶつかり合う。

 時間を見て、合図する。

 

「まもなく囮に使っている敵部隊が施設に戻る頃合いだ。交戦後、すぐさま出撃して混乱に乗じて囮機体を潰して施設へと突入する。先頭は会島正人少尉、その後ろに俺とマルコシアス部隊、リッパーで。綺亜は敵施設の最新の見取り図を各所の制圧をしながら捜索してくれ。突入チームのバックアップ、それと緊急事態の為の最後の要員として、頼めるか」

 

『バックアップ……最後の、要員か。分かった。任されよう』

 

「よし、いくぞ」

 

 綺亜の同意を得て元達はミッションを開始する。機体が夜の空へと飛び立っていく。

 

 

 

 

 施設周辺へと到着する頃には既に戦端が開かれていた。未だに施設側の部隊が囮として使われている味方部隊と乱戦状態にある。

 まだ混乱状態にはあるようだ。予定通り、まずは施設側の部隊への一斉攻撃を開始する。

 

「全部隊、施設防衛部隊への攻撃を開始せよ」

 

 一斉に空からの弾幕を放つ。突然の弾幕の雨に敵は混乱状態となり、こちらに目を向けだす。

 注意がこちらに向いた。続いて地上から近づいていた正人の部隊が囮となっていた部隊に向けて進撃する。

 

『悪いが、このまま落とす!』

 

 バスタースラッシャーAで横薙ぎに両断する。まず一機、続いて二機目をLLカスタムが落とす。後に続いたリッパーが残る二機を落とす。誰が落とされたのかを分かりにくくすべく、こちらも当てる気のないカモフラージュの弾幕で撹乱し続ける。

 囮部隊の反応が全てなくなったのを確認して、空中部隊は一気に地上の部隊へと襲い掛かった。急降下したシュバルトゼロガンダムも着地と同時にシールドからの光剣を振り回して周囲を排除する。

 

「敵地侵入成功。予定通り、敵内部へと潜入した奪還部隊との合流を図る。各員戦術通りに対応しろ」

 

『了解!』

 

 隊員達に指示を出し、機体を施設入口へと向かわせる。立ち塞がる敵を蹴散らして、敵施設へと侵入を果たす。

 施設内では既に警報が鳴り響く。MSを纏った研究員相手に銃を向ける。

 

「抵抗は無駄だ。大人しく投降しろ」

 

『はっ!そんな旧式!』

 

「……テメーの機体も、旧式だろうが!」

 

 ザジンの弾道をすり抜けてその両腕を両断する。そのまま蹴って後ろに構えていた機体にぶつけて、ライフルで撃ち抜き爆発を浴びせる。

 やはり旧式機体ばかり……以前戦ったことのある機体はない。余程戦力を回したくないのか……。DNLを排斥する彼の意向を、ゼロンの上層部が煙たがっているのか?

 ゼロンのこれまでの行動ではDNLを排斥よりも、むしろ利用している側面を感じられた。上層部との乖離、それも視野に入れつつ敵を掃討していく。

 

『下へ降りる階段を発見。下へと向かいます』

 

「待て。先にドローンを向かわせろ」

 

『?了解しました……』

 

 疑問を感じながらも正人が手持ちのドローンユニットを発進させた。ドローンは自動操縦で階段をゆっくりと降りていく。わずかなローター音、それが爆音により途中で途切れた。その原因を正人が叫ぶ。

 

『トラップ!?』

 

「やはりか」

 

 ピアノ線によるグレネードトラップ。もし気づいていなかったら機体が大破していただろう。

 

『気持ち悪い感じがしましたからね。正人さん、細心の注意を払って進んでくださいね?』

 

『わ、分かりました』

 

 トラップを回避しながら突入隊は施設を進む。幾度かのMS戦も行われ、戦闘困難になった機体が一機、二機と下がっていく。

 戦力を削られてはいるが、それも想定通り。奥に着くまでに、あるいは合流するまでにどれだけ残せるかが勝負だ。最悪援軍を待って立ち止まることも想定しなければならない。

 とはいえそんな想定をしなくて済む被害で、事前情報の合流地点である地下5階までたどり着く。到着すると、銃声と金属音が響いていた。

 

『戦闘の音……まさか』

 

 勘づく正人。元も同じことを思った。

 既にこの地点で戦闘が行われている、というのは本来あってほしくなかった出来事だ。この地点までたどり着いたのは元達か、あるいは先に潜入したフィクサーの部隊。戦っているのは、おそらく。

 元はチームに伝える。

 

「急ごう。もう動き出しているのかもしれない。間に合わなくなる前に」

 

 装備を確認して先を進む。いくつもの通路を戦闘音に導かれて進んでいく。そして開けた部屋にたどり着く。その大部屋で目の当たりとなる。

 

 

「これは……」

 

 

 潜入したフィクサーの率いていたはずのソルジアスが二機沈黙する。まだフィクサーのソルジアスは健在だが、既に右腕を失っていた。

 その彼が見つめる先に、いた。もう一機のソルジアスを、腹から真っ二つに引き裂いた、あの蒼いMSが。

 悪魔を思わせる光景。その場にいたザジンを纏った男がこちらに気づく。

 

『おやおや?来たな、DNLを持ち込んだウジ虫が』

 

「その声……グレイブ・モセスだな」

 

『如何にも!私こそ、人類の救世主。DNLを排する者!』

 

 首謀者を確認した。その脇を別のザジンが護衛する形だ。しかし確保には向かえない。蒼いMSがこちらを見る。

 

(ディスティニーライダー……装備が変わっている。だが、乗っているのはおそらく……)

 

 睨み返すシュバルトゼロガンダム。フィクサー達の背後にいた千恵里が叫んだ。

 

「クルス……!どうして、クルスッ!」

 

『やはり、あのMSを纏っている、いいえ、纏わされているのは』

 

 クルス・クルーシア。彼女はまた戦いを選んだ、選ばされてしまったのだ。グレイブがクルスへと命令する。

 

「さぁ、ディスティニーライダーよ!狩りの時間だ。目の前の漆黒の、魔王のガンダムを殺せ!正義のままに!」

 

 目を光らせてディスティニーライダーが襲い掛かる。こちらも瞬時に戦闘体勢へと移行する。

 

「全機展開。03はフィクサーの直援に回れ。俺と残りのソルジアスと正人、リッパーは……ディスティニーライダーを止める!」

 

『了解しました!』

 

『了解した。さぁ、今度こそ俺が狩ってやる!』

 

 勢いよく飛び出すリッパー。ビーム・ガン・ポッドCでけん制しつつアサルトスラッシャーを振るう。が、それを容易く回避して見せるディスティニーライダー。その速さに驚く正人。

 

『速い?こいつ、前よりも……』

 

『だが対応できない程じゃねぇ!』

 

 まだだと素早く体の向きを変えると、そのままもう片方の手に握ったバスタースラッシャーを横薙ぎに振る。

 ところがそれも敵を捉えるに至らない。普通の機体ならあり得ない機動性。それに一切の苦悶を見せない。

 攻撃から逃れたクルスの機体は両腕を広げた。閉じていたアームガードが展開する。それはまるで獣の牙のような爪。爪の部分が赤く光り輝く。無言でそれがリッパーに対して振るわれた。

 

『ググッ!』

 

「下がれ、リッパー。援護する」

 

 リッパーの後退に合わせてライフル射撃を行う。ビームライフルの弾丸を素早く躱す身のこなし。スラスターの噴射が連続した。その間にリッパーは後退に成功する。

 あれだけ動かして動きに支障が出ていない。MSの機動には少なからずGが掛かる。それは今のシュバルトゼロガンダムも例外ではない。負荷がかかっているはずなのに、あそこまで動ける理由、作戦資料にあった耐G処理されたパイロットの確保。だからこそゼロン、グレイブは彼女にこだわった。

 続いてLLカスタムの正人が突撃する。ローラーによる高速移動で距離を詰める。

 

『俺が行く。支援を』

 

 アサルトサブマシンガンの乱射で動きを止めつつの接近。考えとしては悪くない。しかし敵の動きはそれを上回る。

 

「っ。こちらの弾幕も避けて……」

 

『速すぎる!?っ、パイロットが潰れるはずだろ?』

 

 弾幕を縫って回避する蒼い機体。バケモノだ。あの機動性。圧倒的機動性で撹乱する機体を見て、見学に徹するグレイブが答える。

 

『普通ならな。だが彼女は以前よりもシステムに特化した!記憶に必要な部分を消して、その脳領域すらも戦闘に使えるようにだ』

 

「記憶を……それでも人間か」

 

『魔王を名乗る男が、何を焦る?』

 

「その傲慢さ、償えよ!」

 

 ライフルでは捉えきれないと、こちらもブレードガンに切り替えてディスティニーライダーへ向けて斬りかかる。怒りを爆発させての斬り下ろしは、しかし敵を捉えるに至らない。圧倒的な運動性に乱れることなく、機械的な動きで確実にこちらと渡り合う。

 相変わらず、こちらの先読みを更に上回ってくる。上回るたびに紅いゴーグルパーツが煌々と輝く。話に聞くDNL殲滅システム「DIEND(ディエンド)システム」はかつて元が戦った機体と同等に動いていた。

 

「この性能……やはりアンネイムドシリーズと同等か」

 

『いいえ、元』

 

 ふと呟いた元の言葉にジャンヌがノーと答える。彼女は言う。

 

『あちらはユグドラシルフレーム搭載機。でもこいつは違う。爪のあれも、ユグドラルフレームじゃない、もっと別の……』

 

 言われてみて確かに感じる。DNLの直感で、あれがこちらを吸い込みそうな感覚を覚える。決してユグドラシルフレームのような感覚ではないと。

 背部のバインダーを展開し、距離を詰めるクルス。無言のままその手を向けた。こちらはその手に向けてブレードガンを振るう。

 機械音が響く。ブレードガンの刃がクローユニットに掴まれた。直後機体がぐらつく。

 

「機体が……重い?」

 

 変に重くなる機体。力を失ったように機体の出力が下がる。剣が押し込まれていく。出力を上げようとするが、その上がった出力すらもすぐになくなっていく。

 一体何が……。押し切られないように持ち堪える元の視線は再びアームユニットに向けられる。そして気づく。光る牙のパーツの光の流れが内向きに、剣からわずかにDNが漏れ出てその牙に吸い込まれていた。

 見間違いとも思ったがDNLの感覚でそれが間違いないことを悟る。そこで思い当たる。自衛軍が開発した素材を。

 

「この爪……ANDメタルか」

 

『ほう、気づいたか。その忌まわしい力で』

 

 正解と煽るように称賛するグレイブ。ANDメタル、正式名称「アンチディメンションメタル」。その名の通り、DNに対する特殊金属で接触した機体からDNを吸収する能力を持つ。

 DN稼働機にとっては脅威な能力だが、接触しないと吸収できない性能から扱いが難しいこと、そして武器としての加工が難しい為その生産は少数にとどまると聞いていた。しかもその製法は自衛軍しか知らないはずだった。だが目の前の機体は確かに使っている。

 すぐさま元は機体の腕からブレードガンを離す。素早く後退して距離を取った。ブレードガンはそのまま敵のクローに粉砕される。自軍の技術を使っていることを聞いて、正人は驚きを隠せない。

 

『馬鹿な!?ANDメタルは僕達自衛軍の技術だ。その製法は秘匿で……』

 

「盗んだんだろうな」

 

『……そんな』

 

 裏切り者。自衛軍のデータベースに精通した何者かが、その精製技術を横流しにしたのだ。それでようやく繋がる。スレイブレイスが動いたのは、DIENDのプロトモデル、あるいはANDメタルの流出を察知してのことだと。

 それを手負いのフィクサー、虎治郎が頷く。

 

『残念だが事実だ。DIEND、そしてANDメタルに関係するデータが何者かによって盗まれていたことを、俺は上官に告げられた。裏切り者がいると。それによって作戦を進行していた』

 

『そんな……裏切り者は一体誰が!』

 

『その上官が、その一人だよ』

 

『えっ』

 

『最初の作戦の後、俺はおかしいと思った。わざわざ新型機の対応を、マルコシアスに頼んだんだ。いくら数が少ないとはいえ、そんなことを指示した。気になって俺は新堂中佐にこの作戦について知らせた。そこで分かったんだ。今回の作戦を、自衛軍本部は一切周知していないと』

 

 抱いた違和感。それを怪しんだ彼の行動で、今回の事件が明るみに出たのだ。更にフィクサーは驚くべき事実を、元達に関わる情報を明かす。

 

『奴はすぐに新堂中佐の率いる部隊に御用となった。そして奴の私物が押収されて調べられた。それによって、奴の共犯者が自衛軍、そしてHOWにもいる可能性が浮上した』

 

『HOW……私達の組織に!?』

 

「…………」

 

 自衛軍、そしてHOWの中に裏切り者がいる―――。そう考えれば今までの作戦で、敵に先手を打たれていたことにも一応の納得がいく。

 しかしこの一概に不利な状況を逆転するわけではない。敵との近接戦は絶対に行えない。アレスモードは実質封じられたにも等しい。手をこまねく元達にグレイブの嘲笑が響く。

 

『愚かなお前達だが、礼を言わせてもらう。わしらにこれほどまでの力を明け渡してくれたことになぁ!』

 

「それでも、俺達はその機体を、操り人形を破壊する」

 

 ライフルを向ける。敵は背後のバインダーを展開、バレルとしてこちらに向けた。両者放ったビームが周囲に雨のように拡散する。

 一室が地獄のように思われた。それほどまでに、この戦闘は激しい。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。DNを吸収してしまう強敵ディスティニーライダーを攻略できるのか( ゚Д゚)

ネイ「それもですがその技術を提供したのが自衛軍、並びにHOWの裏切り者、ですか」

グリーフィア「自衛軍側の裏切り者は分かってるし、あとはHOWの裏切り者ってわけね。でもこの裏切り者、前にもどこかで言ったけどなんとなーく思い当たる節があるのよねー」

ネイ「そういえば姉さん前にもそんなこと言ってたね」

そして私が口止めしてる(´・ω・`)まだ言わないでよ?

グリーフィア「さて、それは触れないでおくにしても聞きなれない単語が聞こえたわね。アンネイムドシリーズ?」

あ、それに関してですがL3で登場するMSが属するカテゴリですね。実は既にその機体に関する事件が起こっており、その機体は既に自衛軍の手で封印されているのです。

ネイ「封印……そんなに危険なものだったんですか」

シュバルトゼロガンダムに匹敵するDNLの感応力を引き出すくらいだからね。それをデータ盗んで作り上げたのがディスティニーライダーなわけだ。ちなみに第二装備もその機体のデータの片方をベースに作り上げてるよ。

グリーフィア「元君は戦ったことがあるようだし、ある意味リベンジマッチなのかしら?」

まぁ、そうとも言える。その時は同型機が解決してくれたわけなんですが、果たして今回はどう処理するのか……というわけで今回はここまでです。

グリーフィア「次回、ディスティニーライダーとの戦いに決着が……?次回もよっろしくー」


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EPISODE56 運命の乗り手2

どうも、皆様。明日はかのガンダムゲームバーサスシリーズの家庭版最新作、待望のマキブONの発売と、ビルドダイバーズリライズの最新話公開日です、作者の藤和木 士です( ゚Д゚)刻限のゼルトザーム……どうなるっ?あ、ちなみにマキブONは様子見です。ネット対戦もあんまりやりたくないしなぁ……

レイ「アシスタントのレイだよー」

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです。囚われたシドウ・マサキさんを救う……奇しくも今回の話も、機体の暴走に囚われたあのパイロットとの対決なっていますね」

その通り(´-ω-`)というわけでEPISODE56、公開です。戦慄の騎士に取り込まれたクルスを、元達は解放できるのか。

レイ「解放って聞くと、無事に救出って意味もあるし、単に暴走から解き放つためにこれ以上苦しまないように楽にするって意味合いもあるよねー」

ジャンヌ「そうですよね。無事に、だといいんですが……」

ガンダムシリーズでは大抵ヒロインが暴走すると救えないジンクスがありますが……(゚∀゚)本当にどうなるんだろうね!それでは本編をどうぞ。


 

 

 髭の人の背後からそのMS戦を見る千恵里達。

 戦っている。元さんと、クルスが。いくつもの光線が飛び、機体が動く。これが、戦い。子どもの時とでは考え方は違う。最初の頃は恐怖心で目の前しか、あの時は元さんしか見えなかった。でも今は……違う。戦っている二人が誰なのかを知っている。あの二人が戦うなんて、考えるだけで怖くなる。

 これが本当の戦い。相手も思想がバケモノでも、同じ人間なのだと嫌でも自覚させられる。こんな状況で、みんな戦っているんだ。人を、撃っている。

 それでも私はその眼を離さない。命と都美樹は早く逃げ出したいと口々に言う。

 

「こ、こんなに激しいと……私達死んじゃうかも!」

 

「それもだけど……ガンダムも思い切って戦えないかもだよ」

 

『そうだな。俺達としては君達にはこの場から逃げてもらいたいところだ。だが……』

 

 髭の人はそれが山々と渋る。出口近くにいる敵MSが邪魔だった。最初の戦力でなら突破できたかもしれない。が、今の彼だけではどうにもならないようだ。

 それもこれも、私が移動を躊躇ったから……。責任を強く感じる。そうすれば、こんな悲しい現実を見なくても良かったかもしれないのに。

 その時、深絵の言葉が蘇る。

 

(裏切られるかもしれなくても、誰かを助けられる心を持つ……)

 

 そうだ。見たくないもの、それを見せられても助けられる心を持てと、あの人は言った。なら私がすべきことは……。

 意を決して、私は髭の人にお願いした。

 

「すみません、髭の人、少しだけ前に立ってもいいですか?」

 

『髭って……って、そんなこと出来るわけ』

 

「お願いします。声を届けなきゃ……クルスならきっと!」

 

 そう言って千恵里はクルスに向けて、大きく呼びかけた。

 

「お願い、クルスッ!!もうやめて!!」

 

 

 

 

 続くディスティニーライダーとの戦闘。だが数で勝るはずの元達はその力に圧されていた。

 ソルジアスの一機が腕部をもぎ取られる。そのまま胸部を掴まれ、痙攣する機体を盾にディスティニーライダーが迫る。

 

「くっ、盾にしてきた……」

 

 咄嗟に言うが、頭の中で訂正する。果たして今の彼女に、盾などという概念が存在するだろうか。かつて同じように暴走状態にあった元が取った行動を思い返して、元は動いた。

 

「っ!」

 

 捕まえた機体を引き裂きながら放り投げてくる。それを回避してビームマシンキャノンを連射するも、連弾を苦も無く回避されていく。

 あのような大胆な戦法を使う以上、投げてくるのは読めていた。しかし敵の反応速度が速すぎる。敵意の感応は読めてきたが、徐々に対応しつつある。

 人の修正では不可能だ。やはりシステムによる操縦の強制。DIENDシステムは操縦者に行動を強制する。中の人間が果たして今、ちゃんと呼吸が出来ているのか。

 格闘の為に寄って来る戦慄の騎士を追い払う、少女の声が響き渡る。

 

「お願い、クルスッ!もうやめて!!」

 

「あいつ……下手に前に出たら!」

 

 狙われる。そう思った直後別方向からライフルの弾丸が彼女を襲う。咄嗟に前へと出たフィクサーの機体が防ぐ。放ったのはグレイブの護衛だ。

 高みから見ているくせに、と言わんばかりにビームライフルを放つ。はずだったが瞬時に敵意を読み取ったディスティニーライダーがライフルを掴みかかる。エネルギーを取られるのを避けるべく、ライフルを離す。だが同時にビームマシンキャノンをライフルに直撃させて爆発させた。

 至近距離の爆発でならダメージはあるはず。そう思っていたが、煙の中から現したのは無傷のディスティニーライダー。直後背後から仕掛けたLLカスタムの攻撃も避けてこちらに銃撃が浴びせられる。

 

『す、すみません!こいつの速度……何なんだ!?』

 

「気にするな。それより奴の目を向けろ。おいフィクサー!人質を下げろ!」

 

 気にするなとしつつフィクサーに対して怒声を上げる。人質に怪我などさせられない。しかしフィクサーが言った。

 

『だが、嬢ちゃんが勝手に前に出やがるんだ。声を届けるって』

 

 声を届けると言われて目を見張る。正気かと。今のパイロットには声に応えられるような状態ではない。記憶に関する脳領域を消去されていては、応えるものもないというのに。

 しかし彼女はそれを聴き入れず、諦めていなかった。

 

「私は信じる。守るってクルスは言ってくれた。なら私は、そう言ったクルスを信じる!」

 

『フン、滑稽な!今や彼女は私の命令のみを遂行する純粋なDNLを滅ぼす人形、貴様程度の声は!』

 

 グレイブが嗤う。あまり言いたくないが、彼の言葉には同意できる。声だけでどうにかなるような相手じゃない。耳を塞いだ相手に届く言葉などない。

 元も小さく、それを肯定した。

 

「……聞こえないさ。心を排除した兵士に、その純粋無垢な声は!」

 

 少女の声を否定して、元は前へと機体を動かす。敵もこちらに向かって来て腕を伸ばしていた。

 真正面に向かって来てくれるのは丁度いい。ビームマシンガンでけん制しながらファンネルを展開する。

 本来なら狭い空間で使うべき兵装ではない。だがファンネルは敵を包囲するのではなく、シールドのビームマシンキャノン側面に集中する。それを本体と共に一斉発射、正面に圧倒的な弾幕を形成する。

 ディスティニーライダー、そしてグレイブ達を正面に捉えた位置取り。ディスティニーライダーは攻撃を回避するが避けて襲い掛かってきたビームの弾雨にグレイブ達は晒されて被弾する。

 撃破までは至らない。心の中で舌打ちをする。が、それをしている場合ではなかった。

 

『来るっ!』

 

「っ!」

 

 天井ギリギリまで飛び上がった蒼の機体は背後のバインダーを前へと向ける。正面に向いた四本のバインダーが間に電気を迸らせる。電撃がビームとなり、こちらに放出された。開放バレルから放たれたビームがこちらを薙ぎ払って来る。

 元はギリギリで回避する。正人とリッパーも避けてそのままの体勢から機体のローラーで加速する。いつまでも手をこまねいていられる状況ではないと前に出たのだ。

 

『この機体を作り出したのは、俺達の組織が原因……ならばこの手で!』

 

 ランチャーモードでけん制しながら、バスタースラッシャーAを叩きつけに行く。普通の相手ならとてもではないが受け止めるのに四苦八苦する一撃は、全てが見えているように敵に掴まれる。そのクロー部分で正確に、バスタースラッシャーを白羽取り、機体と繋がる。

 

『ぐぁ!?……き、機体の出力が……落ちて、いく!』

 

「武器を離せ、でないとお前も」

 

 離すように指示する。敵のもう片方の腕が擡げられる。その腕が振り下ろされる寸前で力を振り絞って正人のソルジアスが逃れる。

 砕いた地面の塵が巻き上がる。それにも気に留めずディスティニーライダーは受け止めたバスタースラッシャーAを軽々と握り潰して投げ捨てる。腕の形状から使えないと判断したのか、それとも使おうという考えすらも飛んでいるのか。おそらく後者だろうがそれが却って不気味さを助長させる。

 遠距離は躱され、近距離はむしろこちらが不利。場所が違っていて深絵が投入できたとしても対応できたか怪しい。それでもやらねばならないと、そのどちらとも言える距離で攻めていくことを軸として決めた元は残ったブレードガンにビームを纏わせる。

 ロングビームサーベル、これなら敵との接触を可能な限り避けつつ、あの爪にもダメージを与えられる。接近された時の保険のビームサーベルをもう片方に、再び接近する。

 接近に応じ、構える蒼の機体。開いた爪へと向けて光剣を振り下ろした。

 

「これは防げまい……!」

 

 勢いよくアームパーツごと両断する、はずだった。だが光剣はその振りを止めた。何によって?それは溶断するはずだったあの爪パーツによってだ。

 爪によって止められた光刃。それだけではなく、更に不可思議なことが起こる。再び機体が重くなる。先程の接触時と同じ感覚だ。

 

『き、機体出力、再び低下中……!?』

 

「接近していないぞ。なんで……」

 

 ビームサーベルはANDメタルの影響範囲外のはずだった。素材本体に耐ビームコーティングが施せず、その為に汎用性が皆無と開発が頓挫したのだから。

 一体何が……。そこであることに気づいた。DNの流れがわずかに違う。アームを覆うように別のDNの流れが通う。その質はガンダムでも感じたことがあった。

 

「……そうか、そう言うことか!」

 

『元?』

 

 ジャンヌの声に答える前に、一先ずブレードガンのビームサーベルを解除する。空中を掴む形となったクローを閉じて、こちらを睨み付けてくる。なぜビームサーベルを受け止め、エネルギーを奪い取れたのか、そのカラクリに答えを出す。

 

「そのアームユニット、DNウォール発生器を内蔵している」

 

『えっ?』

 

『ほぅ?』

 

「DNウォールはDNによる防壁だ。DNは人の意識を通すように、物質とも疑似的に接触する」

『接触……まさか!?』

 

 ジャンヌも気付く。グレイブは喜んでその種明かしを行う。

 

『気づいたか。そうだ、DNウォールの持つ物質との空中接触性質を使って、貴様らの諦めた技術、ANDメタルの機能を拡張したのだ!』

 

 やはりか。簡単に言ってしまえばDNウォールを介してビームサーベルからエネルギーを略奪していたのである。同じDNで出来た物質だからこそ、ANDメタルとの接触を補助し、そのエネルギー強奪範囲を拡張したのだ。

 ANDメタルの影響でおそらく覆ったDNウォールもすぐに機体自身のANDメタルに吸収されるだろう。だがそれをすぐに再びDNウォールの発生器に流すことで繰り返し使用する。上手い造りだ。

 DNLを嫌っていてもDNの事は良く精通していると言える。自衛軍も、HOWすらもたどり着けなかった発想で兵器の弱点をカバーされた。ある意味成功作と呼べるだろう。だからといって許されるわけではない。

 

「上手くできた兵装だ。DNLを排斥するという機体に搭載されていなければ、表彰ものだっただろうな」

 

『いいや?称賛されるさ。DNLを消し去ることが合法となり、その立役者としてね!』

 

「冗談!」

 

 ファンネルを展開し、再度突撃を掛ける。ビームサーベルによる連撃は回避され、掴まれれば再度ビームサーベルを解除して逃れる。

 ビームのエネルギーも半永久とはいえいつまでも続くわけではない。使用・吸収された分は戻らない。いつまでもこのままというわけにはいかない。

 戦力も大分消耗している。倒せないのか……。その元の耳に再びあの声が入った。

 

「クルス……お願い、目を覚まして!」

 

 未だに呼びかけ続ける少女。どれだけ助けたいと思っても届かぬ声であるはずなのに。無駄だと言うべきだった。だがスピーカーを開こうとした時、とある考えが思い浮かぶ。

 

(……ANDメタルを使用している。その影響で、DNに関係するエネルギーは一切機体に吸収される。だがそれはDNLの脳波もまた吸収される。それも()()して)

 

 突飛な考えだ。先程まで彼女の考えを否定していて、こんな考えにたどり着くなんて。しかし、勝算もある。かつてクリムゾン・ドラゴニアスからついでの形で教わったDNLの使い方。それを思い出した今なら。もし成功するのなら、今一番多く犠牲を減らせる方法だ。

 一か八かの賭け。それに出るためにジャンヌに確認を取る。

 

「……ジャンヌ、これは賭けだ。これから敵の攻撃に当たる。俺の行動に合わせてDNL能力を使用しろ」

 

『元?』

 

「フィードバックダメージが掛かる。でも今奴を止められるのはこれしかない。傷つく覚悟を背負ってもらう。頼む」

 

 許可ではなく、宣言だった。そうでなければ勝てないと頼み込む。

 パートナーとして、そしてジャンヌを任された身としては最低だと分かっていた。しかし当の本人はそれを受け入れた。

 

『……分かりました。それはきっと、彼女を助けることに繋がるのでしょう?』

 

「察しがいい」

 

『なら行きますよっ!』

 

「あぁ」

 

 咆哮と共に機体をエラクスの蒼炎に染め上げる。DN放出量の上がった機体が高速で敵に突撃する。

 

『愚かな!エラクスシステムの速度でも、私のディスティニーライダーは翻弄出来ん!捉えよ、そして思い知らせてやれ!』

 

 グレイブの命じるままにディスティニーライダーが動く。ガスを流し込むような機体駆動音を中央より激しく鳴らし、展開したアームアーマーで掴みかかる。

 エラクスによる高速突撃で強襲、しかしその宣言通りシュバルトゼロガンダムはディスティニーライダーに腕を掴まれてしまう。腕からDNを吸収しながら握り潰そうとして来る。

 フィードバックダメージにジャンヌが涙声を漏らす。

 

『くぅっ……』

 

 機体出力も見る見るうちに落ちていく。エラクスのDN放出最大出力も含めて急激に機体が重くなっていく。その姿を見て嘲笑うグレイブ。

 

『しくじったなぁ、ガンダム!』

 

「それは……どうかな!」

 

 しかし元はその言葉を否定する。そしてもう片方の手も掴んできている手に添える。接触面が広がり、更にDNが吸われていく。そのタイミングでジャンヌに指示する。

 

「やるぞ、ジャンヌ」

 

『目を覚まして……クルス・クルーシア!』

 

 二人のDNL能力を全開にした。機体から溢れんばかりの高純度DNが機体外へ、両者を包み込むほどに放出される。

 放出した粒子量にゼロン・自衛軍双方が困惑する。そんな彼らを置き去りに叫ぶ。

 

「入嶋千恵里!」

 

「は、はい!?」

 

「呼びかけろ、こいつに。お前の言葉を叫べ!」

 

「……分かりましたっ」

 

 入嶋千恵里に命令する。それはある意味、初めて彼女を認めた瞬間だった。未だ心を失くしたままの運命の乗り手の心を押し叩く。

 

 

「お前にまだ意志があるのなら……その力を拒絶する覚悟があるのなら、あいつの声に、応えて見せろよっ!」

 

 

 光が部屋を包み込んだ。

 

 

 

 

 くらい、つめたい、みえない。そんな世界にわたしはいた。

 護ると誓ったのに、私は外の世界すら見ることも敵わない。きっと今、あのガンダムとまた戦っているのだろう。

 今までよりもずっと強く、深い眠り。生の実感すらないが、意識がまだあるということは、そういうことなのだろう。

 おかしな話だ。心が消えたのに、未だに考えられるなんて。きっと他のみんなもこうして心と体が分離して、知らずの内に体が死んだのだろう。そして自分も、遠からず……。

 そう、思っていた。思っていたはずなのに。

 

(……ルス、クルスッ!)

 

(声……?)

 

 自分を呼ぶ声。不思議だ、どうしてあの子の声が聞こえるのか。分からずにいるクルスに呼びかけるもう一つの声が。

 

(それは、あなたを思ってくれている人の声。私とパートナーが繋いでいる、大切な人の声)

 

(あなたと、パートナーが繋いで……?)

 

(そう。システムに最適化されたあなたを、今呼び戻している。後はあなたが目覚めるだけ……)

 

 呼び戻す、そんなことが出来るなんて……。自身では到底想像できなかった可能性。けれどもその為にどうすればいいのか。目覚めるために必要なことは……そう思った彼女に再びあの子の声が響く。

 

(クルスッ!)

 

(声が、聞こえる……あっち?)

 

 声の聞こえてくる方向、その先に光が差し込んでいた。なんとなく、それが出口であると認識した私はそこへ向かおうとする。

 けれど、後ろからそれを止める声が。

 

(ダメだ。それは人類のためにならない)

 

 何度も聞き続けた声。私を縛り続ける声はここに残るように言う。それは様々な声で私をそちら側へかどわかそうとする。

 

(奴らは人類の敵)

 

(君の家族死んだのは、彼らのせいだ)

 

(君と私でしか、世界は救えない)

 

 響き続ける声。ずっとこの声に縛り続けられていた。もう聞きたくない。聞きたくないのに……。

 足が止まる。声がこっちに来いと急かす。

 

(さぁ)

 

(さぁ)

 

(さぁ!)

 

「……嫌だ」

 

 声を拒絶する。そして振り返る。その先に居たのは、影に染まった人影。いくつもの手のような影にがんじがらめにされた者。

 気味の悪い存在。だけど目をそらさずにその者へと歩み寄る。

 

(そうだ、そのまま近づいて来い!そうすれば……)

 

(あなた……?)

 

「私は、逃げない。あなたが抱え続けてきた、みんなの憎しみから」

 

 分かっていた。それの正体が。自分が抱えて行かなきゃいけないもの、解放するべきもの。彼女の声に応える為に必要な、手段。それに触れて力を込める。

 

(な、なにを……)

 

「もう、苦しまなくていいから……みんなの思いは、私が背負うから」

 

(やめろ……やめろやめろ!)

 

 拒絶する闇を、無理矢理払う。そして見る。瞬間、周囲の闇が、出口の光を中心に広がった。

 そこで明かされる姿。それはまさしく自分の姿。だけど知っている。これが何なのか。いろんなものが集まって生まれたその誰かに、声を掛ける。

 

 

「もう、いいんだよ、DIEND……」

 

 

 それは私達を縛り続けたもの、縛り続けて、影響されたシステムの姿。最初に犠牲になった子どもの意識を中心に再構成された被験者たちの心そのものだ。その化身が涙する。

 

「だって、だって、みんな殺さなきゃいけないって、命令されて……!」

 

 そうだ。この子だって、好きでやっているわけじゃなかった。それを最初に知ったはずなのに、忘れていた。この子もまた博士の傲慢に狂わされたというのに。

 その子に私は語りかける。

 

「もういいよ。もう、いいの」

 

「あ……う……」

 

「一緒に目覚めよう?あの子が待つ世界に……」

 

 そうして光に包まれた。

 

 

 

 

 暗い眠りから目を覚ました。目の前には自身の機体の腕に粉砕されようとしていた漆黒のガンダムの姿が映る。すぐにその状態を解除し、腕を下ろした。

 その姿を見て、彼女が声を掛ける。

 

「…………クルス?」

 

「……うん、私は、ここにいるよ」

 

「クルスッ!」

 

 その声にしっかりと応えた。ディスティニーライダーの瞳は、血走った紅ではなく、澄んだ蒼に変わっていた。彼女は確かに戻ってきたのだった。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。無事救出な上に+αな展開となりました!

レイ「おおーっ、おぉ?え、えっと、エンゲージシステム自体の開発の為にも、一人犠牲者がいたってことでいいのこれは?」

そうだね。ある意味DIENDのモデルになったEXAMシステムのマリオンみたいな感じだね。とはいえもういない人物の意識がシステムの自我のモデルになっているだけだよ。

ジャンヌ「もういない……。でも元さんも、思い切りましたね。肉を切らせて骨を断つ、と言いますか」

敢えて攻撃を喰らうことでユグドラシルフレームとの接触面を増加させて、DNの流れに合わせて感応波で呼びかける……ちょっとやってみたかったことではあるんですよね。後々の展開にまた使えたらいいんですけどね(´Д`)

レイ「でも元君だけじゃ出来なかったことだよね?最後まで意識が残っているって信じた千恵里ちゃんの呼びかけがなかったら」

ジャンヌ「彼女の呼びかけもあって初めて呼び戻せたという感じですし、システムそのものの暴走も解除できなかったかもしれませんね」

そんな入嶋千恵里の「強さ」、元君はもう無視することは出来ないでしょう(´-ω-`)とまぁ解決に向かっているように思えますが……まだだ、まだ終わらんよ(^ω^)

レイ「えっ、まだあるの?」

ジャンヌ「もうシュバルトゼロガンダム左腕使えないじゃないですか……」

終わらぬ!最後の黒幕との対峙を、次回君は目撃する!

レイ「黒幕って……」

ジャンヌ「まさか……」

LEVEL2最後の戦闘、エピローグまであと三話!お付き合いください(´Д`)というわけで今回はここまでです。

レイ「次回も、よっろしく~!」


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EPISODE57 運命の乗り手3

どうも皆様、ビルダイリライズ最新話の終盤のHATENAの入りは反則でした( ;∀;)作者の藤和木 士です。歌の意味が、裏返ったぁ!

ネイ「アシスタントのネイです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよ~。そうねぇ、最高潮に盛り上がっていたようだしね、身に来てた人達みんな」

いや、もうね、19話くらいから歌詞が全部ヒロト君の過去をほじくり返してきたと思ってたら、今回の話で全部、これ以上繰り返さないために戦うんだって感じですごい良かったよ!なんでビルドシリーズそんなに終盤でいい感じの歌の使い方するんだよぉ!ビルドファイターズのニブンノイチ思い出したよ!(´Д⊂ヽ
さて、とはいえこちらもいよいよLEVEL2終盤!EPISODE57の始まりだぁ!

ネイ「無事にクルスさんが救い出された場面でしたね。抜け出したと言った方が正しいでしょうか?」

グリーフィア「けれど、まだまだ敵はいるわよ~。グレイブ、そして……いよいよ黒幕登場かしらっ!」

さぁ、何がどうして奴は狂ってしまったのか!?本編をどうぞ。


 

 

 元の一か八かの賭けは無事成功した。クルス・クルーシアは正気と記憶を取り戻し、暴走は停止する。

 機体の腕を犠牲にしたものの、十分お釣りが出る結果に文句はない。あれだけの力を持った敵を無力化することには成功したのだ。

 少女達は状況も忘れてクルスに駆け寄った。

 

「クルス!よかった……本当に、よかった……!」

 

「うん、もう、大丈夫だから……」

 

 少女達が喜びに溢れる一方、仕掛け人だったあの博士は何が起こったのか理解できずに怒り狂う。

 

『なぁぜだ!何故DIENDが解除された!?記憶の空白処置も完璧だったはずなのにッ、何故っ!?』

 

「……お前には分からないだろうな。ANDメタルはDNのエネルギーを自らに還元する力を持つ。だがそれに併せたエネルギー、与える形で吸われたエネルギーはより増幅されて機体に、そしてパイロットに伝わるようになる」

 

『それはつまり、あなたが忌み嫌うDNLの力を増幅して取り込むということ』

 

『な、何だと……!?』

 

 DNLの力は脳波を空気中に放出したDNを介して伝播する。その為のツールの一つが詩であり、DNを放出する機関を持つMSであった。ならばDNを用いるMSは、いかにガードを施していてもDNLの力が及ぶ。

 加えてANDメタルが今回運命を左右した。ANDメタルはそのDNを発生したエネルギーごと分解吸収する。しかしDNLがDNに込めた意志までは防ぐどころか逆に機体に取り込んでしまうのだ。

 そこを狙って元達は出来る限り接触してDNLの力で千恵里の声を届けた。少々手こずったものの、エラクスの最大放出も相俟って成功率は格段に上がった。

 しかしこれは諸刃の剣だった。機体は片膝をついたまま動かない、いや、動けなかった。エラクスの最大放出で貯蔵DNが一旦底をついてしまっていたのだ。

 

「結果、こうしてクルス・クルーシアの解放に成功した。もっとも、俺達の機体はしばらくまともに動けないがな……」

 

『くっ……ククククク……ディスティニーライダーの件は非常に残念だ。だが動けないのなら今が好機!ザジン部隊よ、今こそ奴を葬るのだ!ゼロンの、人類の為に!』

 

 グレイブは自機の手を振り上げて、控えていたザジンの護衛に元の抹殺を命じる。一気に襲い掛かってくるザジンの機体。しかしそれを止めたのは後退していた正人、そしてリッパーのソルジアスだった。

 

『やらせない!』

 

『ここからは俺達の仕事だっ!』

 

 二機は護衛との対決を開始した。護衛の射撃がこちらにも襲い掛かる。だがその間隙を縫って両機は距離を詰めると、ザジンもそちらに集中せざるを得なくなる。

 やがて二人のソルジアスが近接戦を行う。弾幕を潜り抜ければ二人の距離。残った武装のビームサーベルと通常サイズのバスタースラッシャーで的確に撃破した。これで残ったのはグレイブの機体のみ。

 グレイブは最後の悪あがきをする。

 

『ならばこうだ!』

 

 直後撃破したはずのザジンが二人の機体に組み付く。自動操縦による起動、その直後機体からアラートが響き渡る。意味を察して元は無事な者達に叫ぶ。

 

「みんな伏せろ!」

 

『リッパー、正人ぉ!!』

 

 フィクサーの声が木魂した直後、二人の機体を爆発が包む。味方機体を自爆して攻撃に使用したのだ。巻き込まれた二人の無事が分からない。グレイブは機嫌をよくする。

 

『ハッハッハ!私の考えが分からぬ凡人はこうなる!思い知ったか……』

 

 しかし、その言葉が止まる。噴射音の後聞こえてくるビームの出力音。煙が晴れるとその出来事すべてが判明する。

 自爆攻撃でボロボロになったリッパーのソルジアス、そして左腕を失ったものの右腕に構えたビームサーベルでグレイブのザジンを貫いた正人の姿を見る。胸部を貫かれたグレイブが途切れ途切れに喘ぐ。

 

『あ゛……あぁ?ここ、で、終わり、だと』

 

『……貴様の野望は、俺が断つ!』

 

 刺し貫いたサーベルを引き抜き、離脱。グレイブの機体が爆発し、遺体が炎に焼かれていく。

 爆発の火が近くの機材に引火して部屋を炎が包んでいく。長居していられない状況。そこにやっと、援軍が到着した。

 

『大丈夫か、黒和隊長、自衛軍の隊長方』

 

 援軍に駆け付けたのはRIOTの隊長羽鳥綺亜。ソルジアスの空戦仕様でただ一人駆けつけてきたようだった。

 

「綺亜か……俺は片腕失ったが問題ない。それより他の奴を頼む。味方はどうした?」

 

『私以外は上の階で撤退した。だがすぐに近くの部隊が来るだろう。その前にやるべきことはやる』

 

『分かりました。では……』

 

『俺らの部隊の介助を手伝ってくれ。大分やられたからな、そこの嬢ちゃんに。だが生きてはいるはずだ』

 

 フィクサーが自部隊の補助を頼んだ。綺亜は無言で従い、彼の倒れている部隊員の方へと向かっていく。

 一人だけとはいえ、援軍が来た。ここから逃げ出すのには充分だろう。フィクサーもそれに加わり、リッパーと正人は元達と共に来たメンバーの救助に当たる。

 そして残る元は人質とディスティニーライダーの少女達の護衛に付く。千恵里が尽くしてくれたことへの礼を口にする。

 

「元さん……その、ありがとうございます。私の我儘なんかに応えてくれて」

 

「勘違いするな。あくまでも俺は軍人、被害を最小限に抑えるために行動したに過ぎない。他の者達の危険を見ずに行動することは称賛できない。だが、今回の突破口を作ったのは他でもない入嶋千恵里、お前だ」

 

 自身は最初彼女を捕獲すると考えていたが、平和的にはどうしてもならないだろうと先に考えていた。何らかの方法で気絶、行動不能にさせられるのがベストだったが、最悪機体だけでも撃破してパーツを回収、というシナリオも想定出来た。

 しかし損傷はあったものの、搭乗者が自力で暴走から抜け出すという結果はこれ以上ない成功と言っていいだろう。パイロットからの協力も期待でき、機体もほぼ完璧な状態で確保した。これで文句は言われることはないはずだ。

 改めて彼女に礼を言った。

 

「よく頑張ったよ、お前は。諦めずによく呼びかけた」

 

「あ、そ、そんな……」

 

「だが、いたずらに前に出るな。本当なら一発や二発攻撃を受けていてもおかしくない。というか流れ弾をフィクサーが守っていただろう。負担を掛けさせるな」

 

「す、すみません……」

 

「やっぱり怒られたね、千恵里ちゃん」

 

「ホント、無茶するっての!」

 

 彼女の友人達も笑いながらそうだと言った。その傍らで、MSを装依したままのクルスが今の自身の処遇について尋ねた。

 

「あ、あの。私、このままで、いいんでしょうか?MS、渡した方が……」

 

 MSを渡すと言った彼女の声はもどかしさを感じる。おそらく、今までの自身の行動に罪の意識があるのだろう。しかし元はこう返した。

 

「お前の罪は今裁かれるべきではない。無事に脱出してから、改めて公平に裁かれる。抵抗する意思がもうないなら、今は好きにしていろ。逃げる時は俺が捕まえてやる」

 

 規範を守りつつも、自身の言葉で好きにしろと言った。それが今の自分に言える範囲での気遣いだ。クルスはそれに頷き、千恵里達と共に笑いかける。

 これでもうおしまいだ。後はここを抜けるだけ。千恵里達に自身の後をついて行くように指示する。

 

「さぁ、とっと出るぞ。はぐれるなよ」

 

『はいっ』

 

 そうして部屋を出ようとする。後方でそれは起こった。

 

『……テメェ、何して!』

 

『!父さん!?』

 

 フィクサーの咎める声の後、ビームライフルの銃声が二度響いた。すぐに振り返ると、フィクサーの部下の機体が貫かれ、フィクサー自身のソルジアスも脚部を撃ち抜かれていた。

 思わぬ伏兵だ。しかしその撃った機体は、思いもしなかったであろう機体だった。

 

『……綺亜、さん?』

 

 羽鳥綺亜。ジャンヌが唖然と名前を口にしたその彼女が操るソルジアスが、確かに銃を向けていた。

 

 

 

 

 理解できなかった、彼女が私達に銃を向けた理由を。だって彼女は制圧チームRIOTの隊長なんだ。次元覇院との戦いのときから戦い続けてきた「仲間」なのに……。

 けれども元は分かっていた。彼の口から、予測が語られる。

 

『やはり、裏切り者はお前だったか、羽鳥綺亜』

 

「えっ」

 

『フン、気づいていたのか……いつから』

 

 気づいていたのか、と問う綺亜。それは裏切り者であることを認めた瞬間だった。それに至った経緯について元は話す。

 

『一年前の新型ガンダム移送中の事件、宇宙で開発されていたはずの俺の新型は極秘裏に移送されるはずだった。俺が地上にいて注目を集めている間に運ぶ手筈のその機体が、何がどうしてゼロンに察知されていた。しかも腕利きのパイロット、真紅の彗星の再現によってテストパイロットごと宇宙に葬られたんだ。その時から、俺は組織に裏切り者が入り込んでいると考えていた』

 

 一年前のガンダム移送襲撃事件。忘れもしない。本当ならあの時に既にガンダムは新たな姿となっていたはずだった。ここまで苦戦することもなかったはず。

 それに関わっていたというのか、彼女が。そして元はこの件における不審点でも彼女を疑っていたことを話す。

 

『襲撃時、既にディスティニーライダーが起動、千恵里達人質の確保。この作戦で、俺達は何度かゼロンに先手を打たれていた。特に人質は明らかに俺に対して有効な一手だった。特に千恵里の事はHOWでも知られていたからな。そして自衛軍にクルスを送り届ける途中で奪還された直後、自ら協力を申し出てきた。あまりにも出来過ぎている。このタイミングでの増援なんて、普通は邪魔者を潰しに来るっていうのが筋だからな。秘匿回線で深絵と連絡して、今掛かってきたよ』

 

 元の言う通り、秘匿回線で深絵のメッセージが届いている。内容は「緊急!逃げて!」。メッセージは「綺亜ちゃんが3年前からゼロンと関係があった!彼女と一緒に増援に向かった味方機は全部通信が途切れてる!」と。

 ジャンヌはあり得ない、となぜそんな事をしたのかを問う。

 

「そんな……どうして、なんでゼロンなんかと!」

 

 問いかけに彼女は苛立ちを露わにこちらを責める。

 

『貴様ら無能な指揮官のせいだろうが!』

 

「!?」

 

『11年前、ホリンダウン作戦の最中、次元覇院の構成員によって一人の男が死んだ。間島耕太、本来私のいる立場にいるべき人物で、ホリンダウン作戦で私を助け、死んでいった男の名だ!』

 

 間島と聞いて思い浮かぶ。かつて東響掃討戦で元の率いるCチームで共に戦った隊長の一人だ。

 掃討戦、そしてホリンダウン作戦で共に戦ったが、のちにそのホリンダウン作戦で味方を支援する途中で撃ち抜かれ戦死したと聞いていた。その助けられた者こそ、今目の前にいる綺亜だった。

 その時抱いた気持ちを昨日の事のように回想する綺亜。

 

『あの時の間島は、とても勇敢だった。量産型MSのソルジア・エースを彼なりに使いこなしていた。だが次元覇院はその彼の背を撃った!遊び半分で出撃している素人にだ!』

 

『自業自得だろ。それに後ろから撃たれるなんてこと、この世界じゃざらにある』

 

『それもお前達の指揮が完璧なら、起きなかったはずだ!』

 

 自業自得と言った元の言葉を真っ向から否定する綺亜の声は怒りに満ちていた。この世の理不尽全てを叩き切るように、自身の考えを語る。

 

『あの時的確にすべての指示を出せていたなら、必要以上の犠牲は出さなかった!しかしお前達はその犠牲の上で、何の反省もせずに笑っていた!あいつは何のための犠牲だったんだ!だから、私は決意した。無能なお前達を、HOWのトップから下し、私が作り変えると。完璧で、完全で、本当の笑顔を取り戻すために』

 

 怖い。彼女の言葉はとても私達の事をきちんと理解していない。彼女自身が作り出した世界で完結してしまっていた。私も、元も、深絵さんも新堂さんだって、あの作戦での犠牲を悼み、その上での経験を反映している。

 何よりベース・ネストはその犠牲を忘れないために新たに作られた。忘れないための証だ。それは組織を新たにしたときにも話したはずだったのに。

 元は彼女に自分達のしてきたことについて問う。

 

『つまり、お前は俺達のこれまでの行動を認めていない、と?』

 

『お前達のやったことなど、ただのなれ合いだろうが』

 

『……そう言うことか』

 

 言って元はこちらに声を掛けてくる。もう駄目だ、と。

 

『どうやら、あいつは壊れちまったようだ。死者への思いが強すぎて』

 

「……そう、ですね」

 

『あぁ。だから、お前はあいつらに情報を、魂を売ったのか』

 

 再び元の声は綺亜へと向けられる。その言葉に彼女は首を振る。

 

『いいや?違うよ』

 

『何?』

 

『あいつらもまた滅ぼすべき敵だ。だが、敵の敵は味方でもある。アイツらに餌をやって、私は両方を始末する。完璧な計画。あの時もそうだった』

 

『あの時……っ』

 

 その言葉が意味するもの、それはきっと輸送襲撃のことだ。あの事件すらも、彼女が仕組んで……。

 燃え上がる部屋の中で、彼女は最後の仕上げを始める。

 

『そして、今から私は、正義の断罪を始める!間島耕太を見殺しに、いや、殺害したお前達CROZE隊長副隊長を、この場に居るもの諸共処刑する!』

 

『ほざけよ!』

 

 元はビームサーベルを抜き放ち、機体を突貫させた。その間に正人が父親のもとに駆け寄り、救助する。

 こんなところで私も元も死にはしない。人質もみんな助けて、ここを出る。私は機体の制御を行いながら施設内の反応を確かめる。

 残っている機体はほとんどいない。残っている反応もわずかに電波が出ているくらい。特に一つの部屋に集中していて、動きを見せない。味方は直前で撤退したと言っていたが、もしかするとだまし討ちで全員機能停止まで追い込んだのかもしれない。

 いずれにせよ味方の救援を今は見込めない。だが気づいてくれている部隊はいるかもしれない。どのみちこの状況を突破しないことには先はない。

 元と綺亜の剣戟が続く。

 

『MSの性能なら、このソルジアスが上だ!』

 

『ぐっ!右手だけでは……クソッ!』

 

 元も頑張ってくれている。左腕をカバーする形でシールドも駆使しての攻防。しかしそれでは足りない。いかにマキナ・ドランディア、次元覇院との対決で伝説的な性能を見せたシュバルトゼロガンダムでもそれを基に誕生したソルジアスには及ばない。

 元の苦戦を察して、リッパーが戦闘に加わる。

 

『こんなやつなんざ、同じ機体なら俺の方が!』

 

 同じ機体。そうソルジアスなら……しかし勢いよく振り下ろされた一撃は綺亜の機体を掠めもしない。その時妙な感覚を感じ取る。

 

『当たらない……?』

 

『貴様らとは、天と地ほど違う!』

 

 ビームサーベルを振り上げ腕を両断すると鎖骨部のビームバルカンを発射、たちまちリッパーのソルジアスをハチの巣にする。

 桁違いの実力。そんな中で先程感じた違和感をジャンヌは疑問視していた。

 

(あの感覚……もしかして)

 

 その可能性に触れる前に、敵が動く。元の攻撃を回避してから一気に加速した綺亜のソルジアスは炎を駆け抜けて人質だった千恵里達の下へ向かう。

 

『人質を!?』

 

「エラクスチャージ出来てない……間に合いません!」

 

『クソッ!』

 

 向かおうとする正人。どちらも距離はとてもではないが届かない。その間にも敵となった綺亜は銃を千恵里達へと向けた。

 

「えっ……」

 

「こ、こっちに来たぁ!?」

 

「に、逃げなきゃ!」

 

 逃げようとする彼女達。しかし、MSとビームの速度には到底間に合わない――――

 

『まずは、希望を絶つ!』

 

 銃からビームを放つ。光が、彼女達を貫く、前に、

 

 

 

 

『させるもんかぁぁぁ!!』

 

 

 

 

 絶叫と共に割り込んだ機体。その機体は撃破されたザジンのシールドを手に持って彼女らへの攻撃を防いだ。

 綺亜の前に立ち塞がる蒼の機体。それは先程までジャンヌ達に牙をむいていた機体、この事件の中心の機体だった。

 事件を仕組んだ綺亜は、彼女へ向けて言った。

 

『邪魔をするのか、クズ』

 

『私は、クルス・クルーシアだっ!』

 

 蒼の機体が動いた。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。さぁ、裏切り者は羽鳥綺亜さんだったということで。

ネイ「やはり、理由はあのホリン・ダウン作戦の……」

グリーフィア「救えなかったのは上が無能だったから、自分なら救えたのに、なんていう思い上がりとはね」

まぁちょっとそこらへんで融通が利かないところがそれまでにもあったからね。東響掃討戦で基地地下にミサイルを撃ち込んで崩落させるっていうのに正々堂々としていないってことで反対しようとしていたくらいだし(´-ω-`)

グリーフィア「自分の中の正義感が強かったからこそ、目の前で起こった不運を受け入れられずに、自分が制御しようって思い立ったわけか」

ネイ「なんというか……かわいそうですよね。せっかく命が助かったのに……でもそうなっちゃうのも納得と言いますか」

この地球の現状は異常だからね(´Д`)MSを神の使いと崇めてる時点でお察し。

ネイ「それ作者が言いますか」

グリーフィア「お前が言うな☆」

えぇ(´・ω・`)まぁ例え復讐でも元君は、HOWは味方でも倒さなければならない……。それが人々を護るためだから。というわけで、次回がLEVEL2最終話!あ、いつものようにエピローグと黒の館DNはあります(´っ・ω・)というわけで

ネイ「次回もお楽しみに」


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EPISODE58 運命の乗り手4

どうも、皆様。ビルダイリライズ最終回(?)から一週間、感動がまだまだ残っています作者の藤和木 士です;つД`)いい最終回ダッタナー

レイ「堂々と嘘を付かないでね。まだリライズ続くから。アシスタントのレイだよーっ」

ジャンヌ「そうですね。今日も普通にリライズの更新日ですし。アシスタントのジャンヌです」

いやもうあれ最終回でしょ!?(゚Д゚;)あの盛り上がりの更に上を行くっていうんですか、ねぇサンライズさん!?って言いたい(突然の平静)
さて、リライズの最新話公開の前に、こちらはLEVEL2最後の戦闘、EPISODE58の更新です。更新されるのは放送後だけどね

レイ「いやぁ、まさか58話で第二部完結なんてね」

ジャンヌ「以前も作者が言っていましたが、やはり第一部途中で書き方を変えたのが大分違っているんでしょうね」

スムーズに進めるようにしたからね。話のボリュームも大分コンパクトにしているからそうなるんだよ。
話の方は……千恵里達を護るように立ちふさがったクルスの戦いだっ。

レイ「正気に戻ったクルスちゃんの実力、見せてもらうよっ!」

ジャンヌ「裏切り者へと落ちてしまった羽鳥さんを、元さんは止められるのでしょうか?」

先週のリライズ放送でちょっと意識している部分もあるからね。さぁ、最後の戦い、裁かれるのは果たして……?


 

 

 どうして体が動いたのか。昔だったら分からなかった。ゼロン以外の人を護るなんて。でも今なら分かる。これは、私の意志だから。

 ディスティニーライダーを動かし、千恵里達の前に立ったクルス。クルスは事件の首謀者とも呼べるHOWの裏切り者に対し、その拳を振り下ろした。

 

「えぇい!」

 

『ぐっ!質量兵器か……舐めるか!』

 

 避けきれないと判断されて攻撃は受け止められる。受け止められたその拳にありったけの力を込めてその機体を押し込む。今までの冷酷さはない。今は自分の、精一杯の力で機体を動かしている。

 拳を押し付ける中で私は訊く。

 

「どうして、博士たちを利用したの?DNLを、黒和元を殺したかったから?」

 

『操られた者如きが、だが教えてやる。その通りだよ。いくらMSを強化しても、奴のDNLの力は未知数。だから奴に力をくれてやった。ゼロンからも厄介払いされていたDNL否定者に、DNLを滅ぼせる力をな!』

 

 肯定した裏切り者の女。話は聞いていた。自分を助けてくれた人を思って、いや、愛していたからここまでやった。

 だけどそのために同期のみんなは、DIENDに取り込まれた彼女は死んだ。残っているのは、彼女や博士が憎しみを持って育てた戦慄の騎士の魂(DIENDシステム)だけ。そして私は理解していた。彼女もまた、その魂を持つ者だと。

 弾き飛ばされ、距離が離れると背部の開放型バレルからビームを放つ。敵はそれを避け、肘からグレネードを放つ。

 

「その機体……私の機体と同じ!」

 

『ん?あぁ、その通りだ。私の機体には、DIENDシステムが搭載されている。外付けのプログラムで機体ログにも残らない、お前の持つ本家をベースに改良されたプログラムだよ。もっとも弱くなったところもある、しかし!』

 

 グレネードを躱した直後、ビームサーベルで斬りかかってくる女の機体。腕のクローを稼働させようとしたとところで声が響く。

 

(駄目っ!それはまたあなたを、現実から、痛みから遠ざける!)

 

「くぅ!」

 

 DIENDに囚われた少女の声。声に従い、クローユニットを腕から排除。そのパーツを敵に向けて投げつけた。

 敵は流れる動きでユニットを両断する。その行動に不可解であると示す。

 

『なぜその機体最大の武器を捨てた?それで勝てるとでも?』

 

 最大の武器であることは分かっている。だけどそんな理屈は今のクルスに通用しない。

 

「思い上がった正義にこだわるあなたには、DIENDに呑みこまれたあなたには分からない!」

 

 言って狙いを付けたビームライフルの弾丸が放たれる。ビームを躱した敵機に、続けざまに喰らわせた蹴りが頭部を強打した。

 DIENDシステムを上回る動きだ。それも当然、彼女自身がそのオリジナルを動かし、そして目の前の敵はその劣化版を用いている。癖はよく分かっていた。

 それでも互角に展開する両者。裏切り者の女は負けじとビームサーベルの格闘戦を仕掛ける。

 

『フン、所詮今の貴様にDIENDはない。ならばこちらが有利!』

 

『そうかよ!』

 

 割って入ったシュバルトゼロガンダムがその光刃を止めた。同じビームサーベルで止めたところにクルスが頭部に狙いを定めて撃つ。ビームが敵の側面アンテナを削り取る。

 二機がかりでその機体を食い止める。人質を撃たせはしない。止めて見せる。二人の意見が一致した結果だ。そこにあの地走型も加わった。

 

『元さん!』

 

『三人同時に行く。いいな』

 

「うん。みんなを護るために!」

 

 息を合わせて、三方向からそれぞれの武器を構えて攻める。クルスの射撃で動きをけん制、そこに地走型がビームサーベルを振り上げた。

 

『これなら!』

 

 一気呵成の攻撃。併せて反対側からガンダムもビームサーベルで襲い掛かった。しかし敵はその瞬間を待っていた。

 

『ディメンション・ブレイク!』

 

『DB!「レイド・スライサー」!』

 

 叫ぶと共に機体から凄まじい量のDNが放出された。女は機体の腰から取り出した銃剣にそのDNを纏わせると、襲い掛かったこちらに向けて光の刃を飛ばして迎撃する。突然の反撃、光の刃に各々が寸前で防御態勢に入った。

 

「くぁっ!」

 

『ちぃ!』

 

『ぐあっ!?』

 

 地走型だけが防御しきれずに残った右腕を飛ばされ、地面へと倒れ込む。クルスとガンダムの二人は武器を犠牲に凌いだ。

 急な高出力攻撃、ガンダムがその名を呟く。

 

『ディメンション・ブレイクか……』

 

『そうだ。お前の機体から学び、そしてお前達を滅ぼす力!はぁっ!』

 

 再び繰り出される飛ぶ斬撃。咄嗟に腰に装備されていたサーベルを起動させた。ビームサーベルは光刃を受け止める、が出力に負けて刃が両断され本体を掠めた。普通のビームサーベルでは受け止めきれない出力だ。

 ガンダムから学んだ力、とはおそらくあの時受けた攻撃がモデルなのだろう。だがそれとは似つかわしくない剣の攻撃は確実にこちらを追い詰める。ガンダムのシールドが両断されて爆風で後退していく。

 

『ぐっ!』

 

『きゃあ!?』

 

『まずは……!』

 

 ガンダムに向けて光刃が襲い掛かった。寸前でガンダムはDNを壁として形成して防御したが、防御に使用した遠隔操作端末が撃ち落とされる。

 その間にこちらは一気に接近して攻撃を止めさせる。光剣と光剣とがぶつかり合い火花を散らす。

 

『邪魔をするな!』

 

 こちらに構う気のない女が吐き捨てる。だけど退きはしない。

 

「私があなたを……DIENDを終わらせる!」

 

 DIENDシステムを彼らには使わせない。また悲劇を生むような使い方は、してはいけないんだ。私はその手に力を込めて荒ぶる出力の光の剣を止める。

 両者互角の切り結び。気は抜けない場面で唐突に敵が嗤う。

 

『ふふ』

 

「何がおかしいの?」

 

『DIENDを終わらせる……システムは所詮システム!使われるだけにある無機物の存在だ!』

 

「そんなこと!」

 

 DIENDを嗤った。許さない。DIENDは犠牲になったみんなの、私達の命で誕生した存在。それを道具としてしか見ない者に、負けたりなんか……。

 そんな想いに気を取られていたのか、手元が疎かになる。その瞬間敵が手元目がけて蹴り上げる。

 

『フン!』

 

「あっ!?」

 

 取りこぼした出力端末。続けざまに放たれた至近距離からの斬撃ももう片方のビームサーベルを取りこぼさせる。

 まだだ、まだふくらはぎのサーベルが。そんな希望を撃ち砕くように、目の前の敵は時間を与えない。

 

『先にお前を消してやる!』

 

「―――――あ」

 

「クルスッ!?」

 

 千恵里の声が聞こえる。しかしクルスにはどうにも出来なかった。繰り出される必殺の突き。その一撃が胸部近くを貫く。無意識かそれとも偶然か、素早く蹴り飛ばすが同じタイミングで光剣がゼロ距離で射出された。

 貫かれる機体。爆発と共に意識が途絶えた。

 

 

 

 

「クルスゥ!!」

 

 悲鳴が響く。既に室内の炎は激しさを増しており、民間人でしかない千恵里達では限界の状態であるはずだった。

 しかし彼女は叫ぶ。その様子を機体を立て直しながら見る元。

 

「クルス!クルスッ!」

 

「……ち、えり……ちゃん。みんなも、にげ、て」

 

「駄目!あなたも逃げるの!あなたは頑張った。だから……」

 

 意識の消えようとするクルスを必死に呼びかける。スターターは破損しており、体中ボロボロに見える。そんな彼女達の前に傲慢な正義を振りかざす羽鳥が降り立つ。

 

『さぁ、貴様も消えるがいい。私の正義の前に、悪に手を伸ばす正義など!』

 

「させるかよ!」

 

 ようやく再発動可能となったエラクスで割って入ると、彼女達に振り下ろそうとしていたバスタースラッシャーを受け止める。怒れる意志のままに羽鳥を抑える。

 その間に彼女達は言葉を交わす。

 

「私、嬉しかった。あなたが信じてくれたから、また、こうして話せる。少しだけど、それでも私にとっては……」

 

「少しじゃない!げほっ、また、話せるから、きっと!」

 

「そう、です!諦めないで……」

 

「みんなで、帰るのよ!」

 

「……みんな、ありが、とう……」

 

 その言葉を最後に彼女の声が途絶えた。必死に呼びかける千恵里達。

 

「クルス……クルスッ!クルスゥ!!」

 

 涙が木魂する。別れの前で羽鳥は気を良くした。

 

『んっふふ……協力したとしても、奴は死んで当然!』

 

「死んで……当然だと……?」

 

『分からないか!奴は悪だ。悪は利用して、そして捨てられる!正義の為に。それこそ、この世界のあるべき真理!貴様こそそれを信じて疑わない、人の心を捨てた魔王だろうが!』

 

 再び羽鳥がDBを発動させる。光を纏ったスラッシャーで繰り出す剣戟。それをビームサーベルでいなしていく。

 死んで当然……悪を利用して、捨てる……?それは果たして、本当に必要なことか?それが、そんなのが、人々を護る魔王の、自分が目指すべき者のするべきことなのか?

 自身に問いかける。そして思い出す。これまでに出会ってきた人達、共闘した者達の事を。既に分かっていた。決まっていた。俺の、俺の目指す道は……。

 ビームサーベルがDBの出力に競り負けて弾かれる。徒手空拳の状態に、羽鳥は剣を再び突き出す。トドメを刺すために。

 

『消えろ、ガンダム!』

 

『黒和元!』

 

『元さん!』

 

 フィクサーと正人の声が響く。それでも動かない。そして、彼女の声が喝を入れる。

 

 

 

 

『ハジメッ!!』

 

 

 

 

 動いた。ガンダムの双眼が光に満ちる。突き出された剣にこちらも手を伸ばす。その手にDNが覆い、突き出された剣を掴み、止めた。

 ビームを押し退けて実体の部分をしっかりと握りしめた。反発するビームとDN、片手一本で止められたことに焦る羽鳥。

 

『なっ!?これを止めるだと!?』

 

 DB中の攻撃を止められるとは思いもしなかったのだろう。だがそれに気を止めることなく、反論した。

 

「違う」

 

『何?』

 

「俺は……お前の考えているような、人の痛みを踏みにじる魔王じゃない!」

 

 強く言った直後思い切り握りしめて、掴んでいたスラッシャーを破壊する。そのままの勢いで拳を羽鳥のソルジアスの顔を殴打する。

 DNの力のこもっていない、元の力をありったけ込めた拳で羽鳥のソルジアスが後ろへと転がり倒れる。

 

『がぁっ!?き、貴様……よくも……!』

 

 憎しみを糧に再度立ち上がる羽鳥。対して元もまた拳を持ち上げて語る。

 

「俺が魔王を名乗るのは、人々を護るためだ。それは敵味方問わず、手を差し伸べられる者も、そしてそれに応えた者も例外じゃない。そんな俺の敵は神に心を売った者、そしてお前のような人の命を弄ぶ者を、人の道を外した外道だ!そのお前に、神を都合よく利用しようとするお前にとっての悪魔が、俺だ!」

 

『この……死にぞこないがぁぁ!!』

 

 吠える羽鳥。ガンダムのコンピューターがARESを宣言した。

 

『ARES MODE Active!』

 

「うぉぉぉぉぉ!!」

 

 近接格闘戦形態へと移行して拳を構えて突撃する。ソルジアスARカスタムはブースターのビームバルカンと肘のビーム・ガン・ポッド、そしてビームライフルを斉射する。だがフレームから紅く迸る粒子が全てのビームをかき消した。

 素早く懐に飛び込むと素早く攻撃を繰り出した。拳と蹴りのラッシュ。片腕のみのはずなのに、圧倒的優勢で羽鳥のソルジアスを蹂躙する。しかし羽鳥も負けじとサーベルを振るい、こちらの装甲を削り取っていく。ウイングユニットが片翼捥がれた。肩を斬られる。それでもアレスの進撃は止まらない。

 

「っ!!」

 

『くっ!行って、元ェ!』

 

負けじと拳を突き出して距離を離す。それから自身の機体の腕を肩から引っこ抜いた。もう使えない腕を即席の殴打武器代わりに羽鳥のソルジアスを乱打する。あまりにも型から外れた攻撃に羽鳥は対応しきれない。

 

『ぐぅ!がぁっ!?』

 

「おらぁ!!」

 

 上から下、右から左へと振った。最後に思い切りバットを振るように腕をスイングした。その衝撃でソルジアスが吹っ飛んでいく。

武器にされた腕部は見るも無残な姿となる。腕を投げ捨て拳を再度構えた。息絶え絶えの状態で、羽鳥が毒づく。

 

『腕を武器にするなど……なんて野蛮な……』

 

「帰ったら真希さんに、いや、今もジャンヌに怒られても不思議じゃない」

 

 先程の攻撃でジャンヌにフィードバックダメージがないわけがない。ところがそのジャンヌは、元の意志を後押し、いや、命じた。

 

『そんなの気にするなら、叩き潰しなさい、元ェ!』

 

「了解!」

 

『ほざけ!』

 

 その言葉と共に、彼女はDBを発動させた。中心となるのはビームライフル、スパークが先に帯びる。

 

『DB!『ハイパービームバスター』!』

 

「お前を(ゼロ)に……10年前から今に戻す!」

 

『Ready set GO!DNF「神心挙奪(しんしんきょだつ)」!』

 

 元もまたDNFを繰り出す。右手を中心に拳の幻影が形作られた。まるで何かがその身に宿っているかのようだ。

 その拳を右手に纏って、ガンダムが飛び込む。羽鳥のソルジアスからDB「ハイパービームバスター」が放たれる。真正面から向かって来る攻撃に対してその拳を打ち付けた。

 部屋に広がる衝撃波と互角に競り合う両者の必殺技。しかし、元の方が動いた。

 

「吹き飛ばせ、ガンダム!」

 

 一声と共に拳が振動した。振動は敵のDBに浸透し、ビームが文字通りひび割れていく。実体を持たないビームは拳の幻影から放たれた衝撃波により粉砕される。その光景に羽鳥が驚愕した。

 

『ば、馬鹿な!?ビームが』

 

 足が止まった羽鳥に一気に距離を詰めたガンダム。元は叫び、そして拳を振り上げる。拳の幻影が本体へと収束していく。その手が紅く輝く。

 

「貫けェッ!」

 

 貫手の形で突き出す右手。その手が彼女の腕を、胸元を貫通した。貫いた箇所がパリパリと電気を発生させる。

 貫かれた本人は体を痙攣させる。声が漏れる。

 

『あぁ……嘘だ。私は、ただ、間島を、あいつを忘れたくなくて……横に居て欲しかっただけ、なの、に……』

 

 それは抱いていた恋心だろうか。彼を目の前で失った彼女の後悔なのだろう。それをそう簡単に、頭から認めるわけではない。だが決して足蹴にするべきものでもない。彼女を狂わせてしまったのはおそらく、しっかりと見ていなかった俺達自身なのだろうから。

 そんな彼女に、最期の労いの言葉を掛ける。

 

「もういい、休め。アイツの下で……」

 

『…………あ』

 

 機体から腕を引き抜く。機体が光を失って座り込む。スパークの走る機体から爆発が起き、その爆風から千恵里達を庇う。黒幕は遂に討ち果たされた。

 戦闘の収まった室内は既に煙が充満しつつあった。元は千恵里達、そしてフィクサー達と脱出する旨を伝える。

 

「戦いは終わった。外に出る。もう少しの辛抱だ」

 

「げほっ……はい」

 

「フィクサー、行けるか?」

 

『あぁ。っと、もう出てきていいぞ』

 

 フィクサーが呼ぶと、通路から隊員達が出てくる。嫌な予感がしたが、それは杞憂だった。

 

『あの裏切り者に撃破されたMSに乗っていた俺の部隊員だ。本性を探るために、どさくさに紛れてあえて機体外に出てもらっていた』

 

「そうか。なら人質達の先導を頼めますか。俺は……彼女を連れだします」

 

 言って元は千恵里達の抱える少女、クルスの体を持ち上げる。彼女はあまりに運命に翻弄され過ぎた。彼女がいなければこの作戦は失敗に終わっただろう。そして人質となった千恵里達も頑張ってくれた。

 

「元さん……っ」

 

 涙をグッと堪える千恵里。彼女達も流石に限界が近い。全員の準備を確認してから、上へと目指そうとした時、ジャンヌが気づく。

 

『……!元、彼女、まだ息があります!』

 

「何?」

 

「!それって……」

 

「フィクサー、先に上がる。後を頼む」

 

 まだ間に合う。元は先に外へ向かう旨を伝えて施設の出入り口へと速攻で向かった。彼女は死なせない。功労者として、証人として、そして何よりも事件の被害者として救わなければ。

 外へと出た元を遅れて到着した深絵が率いるSABER部隊が迎える。すぐさま事の子細を伝え、彼女を搬送してもらう。こうして情報漏えいに端を発した事件、「運命の乗り手事件」は幕を閉じた。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。次回、第二部エピローグです(´Д`)

レイ「いやぁ……元君の魔王像が決まったって感じだね」

ジャンヌ「本来の魔王の意味合いとはやはり外れていますが……でも元さんらしい言い方だと思います。でも戦い方は何というか、ヤンキーと言いますか……」

腕を引っこ抜いて殴るのは既にガンダムでも確立された戦法ですからね(´-ω-`)Ez8、いいよね……。とはいえそれもパートナーへの負担が大きいわけですから、他のガンダム世界のMSより難しいですよ。

レイ「でもNT用MS、ユニコーンとかでも痛そうだよね」

ジャンヌ「けどあちらは普通に殴りかかったりしていますから、どっちもどっちですよね」

レイ「うんうん。でも最後どうなっちゃったんだろ、クルスちゃん」

ジャンヌ「息がある、とのことでしたが……でも無事だったとしてどのような処置になるか」

ふふん、それはエピローグを楽しみにしていただけると幸いです(´-ω-`)というわけで今回はここまでだっ。

ジャンヌ「次回も」

レイ「欠かさず見てねっ!」


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EPILOUGE そして次代は動き出す

どうも皆様。バトスピ最新アニメ赫盟のガレットPVがガンダム思わせるほどのドロドロの片鱗見せていて最近のバンダイはどうしたんだ(゚Д゚;)やけにリアリティじゃねぇか(゚∀゚)と喜んでいる藤和木 士です。リライズも次回いよいよヒロト君と悲しい因縁があるリクサラ来るしよぉ!( ゚Д゚)

ネイ「はいはい。そこまでにしてくださいね。けどガレットのOPも流れていて、今までのバトスピアニメとは違った雰囲気を見せていましたね。アシスタントのネイです」

グリーフィア「次の主人公君は紫主体みたいねぇ。私アメジストって好きよ?何でもできそうな気がするから、なアシスタントのグリーフィアよ~。ちなみにこれは公式設定♪」

元ネタ的に紫関係してるからね。しかし系統は魔影か……いよいよ毒刃復活の時( ゚Д゚)

ネイ「ないです」

グリーフィア「リバイバルでも毒刃主体はなさそうよねぇ。諦めなさい」

いいもん、ソーディアス使うもん!;つД`)さて、LEVEL2も最後のお話、EPILOUGEの公開です。

グリーフィア「今回はエピローグ1話だけなのね」

毎回何話もエピローグ作ったりはしたくないよ……(´・ω・`)あの後、どうなったのか、そしてLEVEL3への橋渡しはどのようになるのか?そんな焦点を当てたエピローグです。

ネイ「タイトルも時代と掛けているみたいですね」

というわけでLEVEL2エピローグをどうぞ。


 

 

 運命の乗り手事件から1か月、年を越してしばらくしたその日千恵里はHOWの本部ベース・ネストへと招かれていた。

 あの事件の謝罪などを含めてとのことで、命や都美樹も招かれていた。共に応接室で元、深絵、そして総司令を務めているという次元黎人と対面する。

 

「私がHOWの責任者兼総司令を務めさせてもらっています、次元黎人です。今回は私達と自衛軍の不手際で巻き込んでしまったこと、改めてお詫び申し上げます」

 

 頭を下げられる総司令に対し、慌てて謝罪した。

 

「い、いえいえ!私達が勝手に捕まったのが悪いんですしっ!」

 

「ま、私達がどうこうできたわけでもないし……でも謝られても困るっていうか」

 

「謝罪も十分、事件直後にしていただいたわけですし、ね」

 

「いや、しかし……」

 

 遠慮する姿勢に腰を低くする総司令。それを見て呆れた様子の深絵が注意した。

 

「それならそれでいいんじゃない、黎人君。ご厚意はありがたく受け取らなきゃ」

 

「……深絵、君は少し甘いというか」

 

「でもあんまりしつこいのも良くないでしょ?それに彼女達にはこの後の事の方が気になって仕方がないでしょうし」

 

「……分かったよ。謝罪はここまでにしておこう」

 

 指摘を受けて諦めた総司令。深絵の言う通り今回の目的は他がメインだ。

 頃合いと見た元がドアの向こう側のノックに返答した。

 

「いいぞ。入って来い」

 

「失礼します。呼んできましたよ」

 

 ドアを開けて入ってきたのはジャンヌさん。だけどその隣にいた人物を見て私は席を立って叫んだ。

 

「クルス!」

 

「千恵里ちゃん!」

 

 思わず駆け出す二人。HOWからの連絡でクルスの外出が認められたと受けて、会いに来たのだった。

 あの地下施設での会話を最後に会えなかったのだが、この度ようやく会えることになった。その知らせに千恵里達は二つ返事で承諾して足を運んだのだ。

 しっかりと感じる。クルスを、彼女の生きている証を。前よりも顔色も良く、献身的に介護を受けたんだと予想した。お互いしっかりと抱き合い確かめ合う。

 

「よかった……生きててくれて……」

 

「うん……また会えてよかった……自衛軍の人と、HOWの人のおかげだよ」

 

 自衛軍とHOWへの感謝を口にする。そんな彼女達の姿を見て、彼女の現在の処遇について話す。

 

「彼女については本事件での重要参考人として、今後取り調べがある。が、状況も加味して更生の余地が十分あること、事態の収束に尽力したことなどを受けて刑は軽くなる」

 

「そして、彼女の後見人兼親代わりとしてHOWが面倒を見ることになった。快復次第、彼女はHOW管轄の学園「私立東響湾ピースランド学園」に通うことになるだろう」

 

「ピースランド……ここの人工島の一つになっている、学園ですね」

 

 命の言う通りこのベース・ネストに繋がる人工島の一つで、HOWが企業として運営する学園だった。近々創立十周年となる学園で、HOWとつながりがあるということでパイロット専攻学科もある。そして何より、千恵里が受験している学校の一つでもある。

 その学校にクルスが通うということならおそらくMSパイロットの学科になるのだろう。もし進学出来たら……と思っていると、元から言われる。

 

「入嶋千恵里、確かにお前はこの学校への進学を希望していたな?」

 

「はいっ。受かるかどうかは……分かんないですけど」

 

 受験は厳しいものだ。この前受けた試験もギリギリ受かったような、受かっていないような手ごたえで結果がまだ返ってきていなかった。

 もし受かっていたならここで言えるのに……ところが続く元さんの言葉は意外なものだった。

 

「お前、受かってるぞ」

 

「えっ、そうなんで……」

 

「それとこっちの権限でお前とクルスを同じクラスにしておいた」

 

「えぇ!?」

 

 いきなりすぎた。合格を発表されただけではなく、クルスと同じクラスだなんて。あまりにも突飛な内容でそんなことをしてもいいのかと命からも言われた。

 

「そんな……学校のクラス割りに介入しちゃっていいんです?いくら自組織とはいえ……しかも私達なんかに話したりして」

 

 すると、元さんが言った。

 

「問題ない。というよりクルスのお目付け役を用意したい、というのが自衛軍と揃っての意見だ。同じクラスなら、何かと彼女の不便さをフォローしやすいだろう?」

 

「お目付け役って言っちゃってるけど、要は彼女を支えてあげて欲しいの。まだ体調もすぐれていないみたいだし、お願いしたいって感じかな。前に迷惑かけちゃったのに、ごめんね」

 

 おそらくHOWの人達もどうするべきかと考えたのだろう。考えた結果が千恵里に任せるということだった。

 話を聞いて首を縦に振る。放っておけない、彼女を。

 

「分かりました。そう言うことでしたら是非」

 

「千恵里ちゃん、いいの?」

 

「うん。学校に入れるのは願ってもないことだし、それに私だってクルスを放っておけないよ」

 

「ありがとう、千恵里ちゃん」

 

 クルスからも了承を受けてよし、と司令の黎人が頷く。早速合格通知書と入学要項などが渡される。

 願っていたことの一つが叶った。そして叶ったものはもう一つ。

 

「それから、もう一つ。君をスカウトしたい」

 

「スカウト……?」

 

 スカウトという単語を聞いて首をひねった。その意味を黎人から元へとバトンが渡された。

 

「そう。Human Order of the World、HOWの一員、俺の部隊CROZEの隊員として迎え入れたい。まぁ、黎人が是非にと言うからな」

 

 それは救ってもらったあの日から願い続けてきたこと、ここまで頑張ってきた理由だった。

 言われて嬉しくないはずがない。内心歓喜するが、同時に不安も生まれた。本当に自分は戦えるのだろうか。敵を、人間を前にして撃てるのかと。元や、クルスのように。

 返事に戸惑う。その不安を看破した元からこう言われる。

 

「CROZEに入るかはお前次第だ。MSでも戦闘だけが全てじゃない。むしろこの次元黎人は、それ以外のMSの道を信じる者だからな」

 

「あぁ。MSの操縦を学ぶだけでも、十分価値はあると思っている。本当は争いのための道具として開発したわけじゃない。災害救助のための作業スーツだったんだからね」

 

「まぁそれは黎人君の願いとして、千恵里ちゃん、あなたはどうしたい?」

 

 問われて私は悩んだ。私が最初に目指したのは戦いで、でも人助けしていくうちにそうじゃないって分かった。そして今回の事件を経て、敵にも手を伸ばせば救えることを知った。私が目指すのは……。

 千恵里はその口を開く。

 

「私は……私も、護りたい。命や都美樹、ううん、今までみたいに助けを求める人達に手を伸ばしたい。そうすればきっと、クルスのように助けられるかもしれないから」

 

「……手を伸ばしても、その手が斬られるかもと分かっていても?」

 

「はい。手を伸ばさなきゃ、始まらない。それに、そうならない為の技術を、目を養うのが学園で、そして元さん達の教えなんだと思います。だから、私は」

 

「……どうやらちゃんとあの頃から成長したようだな」

 

 元のそんな声を聞いてしっかりと頷いた。意志の表示を受け取り、元が承諾した。

 

「なら決まりだ。親御さんに伝えてから、こっちに連絡してくれ。春休みは特別教練をこっちで行う。ちゃんと準備しておけよ?」

 

「はいっ!」

 

「ちぇりー……!」

 

「ようやく、叶ったね」

 

 二人から祝いの言葉を受ける。ここから、始まる。私、入嶋千恵里の戦いが。

 

 

 

 

 

 

 西暦2036年4月7日。春の入学・新入シーズンの始まりを知らせる風が、ここ東響にも流れ込む。

 街には真新しい制服・スーツに袖を通した新参者たちがせわしなく街を過ぎていく。それはここ東響湾に建設された人工島「ピースランド」に建てられたHOW本部のベース・ネスト、そして私立東響湾ピースランド学園にも、人の波はあった。

 

「っはー……これが、全員学園に入学するんだ……」

 

「高等学科はな。別の日に中等学部、初等部の入学式が行われている。とはいえパイロット専攻学科は高等学部からだから、それ目当てで入学する人数は多くはなっているだろう」

 

 ため息を吐く千恵里に元はそう言ってやる。学園は都の中でも最大のMSパイロット育成校。緊張するのは当たり前だが、それだけレベルの高い適性者がいるということの裏返しでもある。クルスは大丈夫だろうが、千恵里はこれから苦労するのが目に見える。

 だからこそこの程度で怖気づくな、と言おうとするのだがそれはクルスの言葉で遮られる。

 

「けれど、それを考えても一貫校でこの規模って日本では珍しいですよねぇ」

 

「ん、まぁな」

 

「実はこの学校、私の故郷の聖トゥインクル学園を参考に作られているんです」

 

 ジャンヌがクルスの言葉に答える。その回答通り、この学園は元も過ごしたドラグディアの学園、聖トゥインクル学園を参考に創立された。詩巫女ではなくDNLを育てることも考えられた学校で、もとの学園では衰退しつつあったパイロットの育成に重きを置く。

 学園の形などもシュバルトゼロガンダムに記録されたそれを基にしており、形なども似る部分が多い。学園中央広場にはオベリスクの代わりにMSオーダーズの為に戦い、散った伝説的パイロットとして光姫のロートケーニギンガンダムの銅像が建つ。ある意味黎人が彼女を弔って作った学園だった。

 そしてその学園に通う生徒が、もう一人いた。

 

「お待たせです~元お兄さん」

 

「え、お兄さん!?」

 

 やってきた黒髪の制服姿の少女。蒼い瞳の少女は元に対し、お兄ちゃんと呼ぶ。がもちろん元の妹は華穂だけだ。しかしそれを知らない千恵里は本物の元の妹かと誤認する。

 そう言えば彼女とはまだ会っていなかったな。彼女自身は立場上一応HOWに仮所属している身なのだが、会う機会がなかったというか、千恵里が訓練に手いっぱいだったのもあったが、俺はそうじゃないと言って彼女の紹介をする。

 

「確かに俺は兄だが残念ながらこの子は俺の妹じゃない。次元黎人の一人娘だ」

 

「名前は次元光巴!あなた達と同じ学年だよ。まぁ私は中等部から上がってきた内部進学組だけどね。私もパイロット専攻なんだぁ」

 

「そ、そうなんだ……」

 

「よろしくお願いします」

 

 光姫の忘れ形見、光巴も今年で高校生。小学生からずっと進学をし続けてきた彼女もまた彼女達の同級生だった。

 母親に似て友人想いの明るい子に育った。黎人も今朝存分に子どもの成長を妻の仏壇の前で喜んでいたようだ。

 独特のツーテールで髪を結ぶ光巴は返事をしながらも未だ自身に残る不満点を漏らした。

 

「うん、よろしくー。でもさ、お父さんも元お兄さんも心配しすぎだよ?CROZEに所属することになったっていうのに、私はオペレーター担当?DNLなんだから戦場に出たいよっ」

 

「別に戦うことだけがDNLじゃない。特にお前のDNL能力は未知数なんだ」

 

「そうですよ。それにお父さんのお気持ちを分かってあげてください」

 

 元もジャンヌも、幼い彼女を知る者は皆喜びと共に不安を感じていた。彼女が前線に出て母親と同じことにならないか、と。未だに彼女が次元光姫と黎人の娘であることは旧次元覇院メンバーに目の敵にされている。だからこそ黎人は目の届きやすいこの学園に入学させた。

 ここなら元達もすぐに駆けつけられる。しかし光巴は、それも鬱陶しいとやっかむ。所謂反抗期というやつだった。二人の心配にも光巴は不満の感情を示す。

 

「もー。元お兄さんもジャンヌお姉さんも、あんまり私を子ども扱いしないでください!絶対私、お母さんみたいなMSパイロットになるんですから!」

 

「はいはい……そう言っている間はまだMSには乗せられないよ」

 

 やれやれと言った具合で話半分に彼女の愚痴に付き合う。だがそろそろ彼女達も校内に入らないと入学式に遅れてしまう。彼女達を見送る前に、元は千恵里とクルスに「あの事」を話す。

 

「……千恵里、クルス。これからの高校生活、最初の内は大変だろう。勉学にはきっちりと励んでほしい。だがそれとは別でもう一つ、お前達に頼みがある」

 

「頼み、です?」

 

「頼み、というより任務に近いだろうな。お前達のファーストミッションだ」

 

 ファーストミッション。その単語を聞いて二人がハッとする。横で不満げに見る光巴を横目にそのファーストミッションについて告げる。

 

「千恵里にはHOWが開発した最新鋭MS「DNシリーズ」のうちの一機のパイロットを務めてもらう。クルスにはHOWが独自改修したディスティニーライダーに装依をお願いしたい」

 

「最新鋭モビルスーツ!」

 

「ディスティニーライダーを……?DIENDは……」

 

「DIENDに関しては、君からの情報提供で既に深層部分にあった自我をサルベージして専用オペレーティングシステム「マリア」として起動できる。共に戦えるだろう」

 

「一緒に……!」

 

 二人は配備される自身の機体に心を躍らせる。千恵里にとっては初めての専用機で、クルスはかつて自身を苦しめる結果となったDIENDと本当の意味で共に戦えるのだ。

 そんな彼らに提示する任務。それは今後のHOWを左右するかもしれないものだ。

 

「そして、二人にはこのスターターに収められたとあるMSのパイロットを探してもらいたい」

 

「とあるMS?」

 

「千恵里の機体の初号機。しかしこいつはある特定の条件を満たさなければ最大限機能を発揮しない、実験機だ」

 

「特定の条件って……」

 

「DNLを使えるサブパイロット、異世界で詩巫女と呼ばれる女性に値する人物と、それと共鳴できるパイロット。機体に搭載されたエンゲージシステムを動かせる、俺達シュバルトゼロガンダムのコンビの追従者だ」

 

 

 

 

 西暦2036年。この年、日本の元号が「光明」から「令巴(れいわ)」へと変わった。そしてこの時代はのちにこう呼ばれることとなる。

 「救世主と魔王、世界を終わらせる二つの力の大戦の年」と。

 

 時代は新たなガンダムとその乗り手、そして異世界の新たな詩巫女を交え、より混沌を極めていく……。黒き魔王は白き救世主と最後の激闘を繰り広げる。

 

 

LEVEL2 END

 

 

NEXT LEVEL……Standby OK?

 




今回もお読みいただきありがとうございます。さぁ、遂に新たなガンダムの登場が発表となりました(^ω^)

ネイ「千恵里さんのガンダムと同型機……でもまた違った仕様、それも」

グリーフィア「元君とジャンヌ、二人のガンダムを参考にしているとは。んーこれはまた新たなヒロイン登場かしらねぇ?」

ネイ「そうだね。でも、異世界の新たな巫女……誰が来るのかな?」

グリーフィア「今までの登場人物で来るのか、それとも全くの新キャラか、ってとこよねー?作者君」

あ、それに関してはもう今までに出ている人です(´・ω・`)誰か、まではその時まで秘密ですが。

ネイ「あ、そうなんですね。……まさか私達がアシスタントしているのってそういう」

そういうわけではない(´・ω・`)

グリーフィア「ならグリューネとネアの線は消えるわね」

いや、あくまでそのつもりでキャスティングしているわけではないだけ。

ネイ「??」

グリーフィア「え、ってことは私達のモデルの?」

可能性はまだある。まぁ決まってるからその時までのお楽しみってことだ。

グリーフィア「何よそれー」

ネイ「ヒント、もなさそうですね」

ヒントはこれまでにフラグは立たせているって点。分かる人はすぐに分かる。

ネイ「フラグ、ですか」

グリーフィア「まぁ分かるのは、詩巫女って点で女の子がくるっていうのは分かるわね。それも詩巫女の地位にある子。それを登場までに振り返ってみましょ。ってことで作者君?」

おお、返ってきた。では次回は黒の館DN、そして区切りの締めくくり、用語設定集をお送りします。それでは。

グリーフィア「LEVEL2最後の更新、見逃さないでね~」


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黒の館DN 神騒乱勃発編 第10回 前編

どうも、皆様。いよいよ今日はガンダムビルドダイバーズリライズ、待望の24話公開、前作キャラクターも多くが登場するお祭り回です。作者の藤和木 士です。この話をしている頃には、おそらく見た後の方がいるのではないでしょうか。

今回は黒の館DN、神騒乱勃発編の第10回、その前後編と設定用語集の公開です。

前編ではブラウジーベンガンダム・ライブラの紹介がメインです。この機体一機だけで大部分が埋まったんですね。
ライブラの性能、とくとご覧あれ。ということで黒の館開館です。


 

士「どうも皆様!いよいよLEVEL2も完結!本番はここからですよ~作者の藤和木 士です(゚∀゚)」

 

ネイ「LEVEL2は意外と短く完結出来た感じですよね。アシスタントのネイです」

 

グリーフィア「ま、LEVEL1の途中から書き方も変えていたし、1が長すぎたってのもあってそう感じられるのかもしれないわね~。アシスタントのグリーフィアよ~」

 

士「まぁそれ以外にもLEVEL2は内容短めな感じでやってたからね。元君がもとの世界に戻って、ヴァイスインフィニット探すための準備期間って位置づけにしてたし。それでも東響掃討戦とかホリン・ダウン作戦とか運命の乗り手事件もあったからそれなりにボリュームあったんだけどね。さて、今回はその総括!」

 

ネイ「これまでで紹介していなかったディスティニーライダーとそのパイロットクルス・クルーシアさん、それに主犯の一人グレイブ・モセス、そしてカラーシリーズの最新作「蒼のガンダム」蒼梨深絵さんの新型機ブラウォジーベンガンダム・ライブラを前後編で紹介していきます」

 

グリーフィア「まずはライブラね。蒼の最新鋭ガンダムはシュバルトゼロガンダムの影響でどう変わったのか、注目~」

 

士「どこぞの乱れ撃ちガンダムと似た兵装が目立つライブラ。しかしその着想は別の機体も交じっている!」

 

ネイ「ということで、早速紹介です」

 

 

 

 

CGMS-003BⅦL

ブラウジーベンガンダム・ライブラ

 

機体解説

・MSオーダーズのハイエンドモデル「ブラウジーベンガンダム」をベースに新たに作り出された機体。開発組織がオーダーズからHOWに変わったため、形式番号をCO(カラー・オーダーズ)からCG(カラー・ガンダム)に変更となった。

 これまでと同じ機動狙撃戦をメインとした機体ではあるが、これまでの運用で浮かび上がった欠点とその対抗策、そしてシュバルトゼロガンダムの技術を取り込んで最新技術を盛り込んだHOWの主力チーム「SABER」隊長である蒼梨深絵に相応しい機体へと変わった。

 スナイパーライフルの近接機能および遠隔操作ユニットの搭載、肩と腰部、膝への遠隔操作端末の配備、背部バックパックは換装・自立飛行型バックパックへと換装、そして動力源に実用化に至ったツインジェネレーターシステムの試作型を搭載。これによりスペック上ではシュバルトゼロガンダムに肩を並べる機体となった。またDNFを解析して独自の高出力技「ディメンション・ブレイク(DB)」を使用可能となった。

 機体コンセプトは「ガンダムサバーニャ×リ・ブラスタ系統」。以前のコンセプトから一歩進んだ機体となっている。ビットの大増設はサバーニャと同じで、光姫がいなくなったことで下がった総火力を補うための手数と火力と奇しくも装備理由が似る。そしてリ・ブラスタは狙撃と格闘戦の両立がなされた機体である。元のシュバルトゼロガンダムのコンセプトの一つであったジェニオンとは同じシリーズの同勢力の機体であった。

 機体カラーはこれまでと同じ蒼、それに深い藍色。また部分的にユグドラシルフレームの同性質の「ユグドラルフレーム」を採用しているが、その部分は現在灰色となっている。

 なお名称のライブラはてんびん座を意味する「リブラ」から。この点はリ・ブラスタと密接に関係している。

 

 

【機能】

・次元装甲

 カラーシリーズのガンダムの装甲を構成する装甲部材。DNフェイズカーボンの技術を取り込み、無事同等に強化された。

 レーダーステルスの次元装甲までは開発できなかったものの、それらは他の兵装で賄うこととなった。

 

・ツインジェネレーターシステム

 機体胸部に搭載された直結のDN生成量乗化システム。

 本機によりようやく実用化の目途が付いた機構。黎人のアイデアで実現しているが、単機では性能が安定せず、バックパックのユニットと合わせて出力を安定化させられるようになっている。

 しかもジェネレーター自体も安定した開発は出来ておらず、量産化には未だ遠い。ワンオフ機となってしまうが、これに対する回答も黎人は考えており、量産に適した仕様のガンダムを開発中である。

 

・ユグドラルフレーム

 シュバルトゼロガンダムのフレーム全てを構築していたユグドラシルフレーム。その部分的採用した仕様がユグドラルフレームである。ユグドラルフレームは元々高純度のDNが集まり、結晶化したもの。

マキナ・ドランディアではクリムゾン・ドラゴニアスなどの竜の骨などを軸に形成させていたが、地球ではシュバルトゼロガンダムに残されていた「保険用のドラゴンの骨成分」から核となる物質を生成、それに高純度DNを放出して完成させている。

 深絵がDNLに目覚めていない為、能力は使えず、実質飾りとなっている。これはDNLの覚醒条件を見極めるためのものである。

 

・ELACSシステム

 シュバルトゼロガンダムにも搭載されていた動力暴走による機体性能向上システム。

 黎人がシュバルトゼロガンダムに記録されているシステムをコピーし、本機にも搭載した。しかし搭載しただけであり、システムとしては機能しない。

理由はリム・クリスタルが存在していないことによる暴走抑制が出来なかったためであり、未だその代替となる結晶が開発できていないことを意味する。ツインジェネレーターの制御はバックパックでは可能だったが、こればかりは直接ジェネレーターの暴走を停止させるリム・クリスタルの反応がなければ不可能だった。

 

・DNウォール

 DNを空中に散布展開することで形成される防御壁。本機においては遠隔操作端末で形成する。また端末を集合させて大出力のビームに束ねるのも兼ねている。

 

・DNプロテクション

 銃の遠隔操作端末から形成するビーム防御領域。これを通しての超ピンポイント狙撃や、反射板に見立てた誘導端末としても使用が可能。

 

・エディットウエポンシステム

 腰背部のアームで武装換装が可能なシステム。ブラウジーベンから引き継がれたシステム。

 ただし本機においては専用のホルスタービットを装備するのがほとんどで、組み換えの機能はほぼなくなった、ただのアームとしての機能に特化してしまっている。これは重量バランスなども関係しており、汎用性はなくなってしまった。

 

・スナイプモード

ブラウジーベンから引き継がれた頭部ガンカメラ展開機能。やはり本機でも深絵はあまり使用しない傾向にある。

 

 

【武装】

・ライブラスナイパーライフル

 本機専用のビームスナイパーライフル。バックパック中央に不使用時は装備できる。

 これまでのオーソドックスなスナイパーライフルとは違い、逆手持ち、そして銃口を潜る形でドーナツ状の遠隔操作端末「SPIRIT」を搭載する。

 これまでの狙撃戦に加え、SPIRITとの連携で格闘戦、変則狙撃、大出力砲撃を行えるようになり、通常兵装においても火力をカバーする。

 

SPIRIT(スピリット)

 本機にて新たに採用される遠隔操作端末。スナイパーライフルのマズルに4基収まっている。

 DNプロテクションを発生させられる兵装で、それを用いてライブラスナイパーライフルの機能を拡張する。一機のみ起動させて銃口付近で停滞、ビームサーベルを槍状に展開したスパイカーモード、銃口で四基を用いてDNを圧縮して放つブラスターモード、プロテクションを展開したSPIRITにビームの銃弾を当てて反射、あるいは収束させるリフレクションモードを実行可能。これら兵装を深絵自身が脳波で操作することは出来ない為、専用のAIユニットを機体本体とバックパックに搭載して対応している。また単機でビームブレードを発生させることも可能で、遠隔格闘攻撃も可能。

 スナイパーライフルと合わせてモデルはリ・ブラスタTのAX-99 RAPTERとSPIGOT。サブグリップも含めての類似。違いはパックユニットを使わずに射撃できることと、原型機の戦闘力を高めていた他SPIGOTへの攻撃転移能力がないこと。これによりビームスパイカーなども原型機程の威力を持たせられていない。射撃能力に関しても制圧能力が落ちており、万能兵器の面では一歩劣る。

 

・ブレイドガン

 サイドアーマーのホルダーに装備される近接銃器。二丁装備する。

 トリガーガードが近接用ブレードとなっていて、非常時の防御を兼ねる。また変形させて投擲用ダガーとしても用いることが可能。

 以前から深絵が進言していたビームサーベルの撤廃要請に応じた上で、可能な限り近接能力を落とさない兵装になった。

 武装外見モデルはダブルオークアンタフルセイバーのGNガンブレイド。形状はほぼそのままだが、ブレードとなるトリガーガードユニットは透明の素材ではなく、通常の実体剣。

 

・ホルスタービット

 機体の肩部に二基ずつ計四基、腰背部のエディットウエポンアーム改に五基ずつの計十基、合計十四基を装備した、ドローンに変わる遠隔操作ユニット。

 ビットそのものに攻撃性能はないが、DNウォール形成機能があり、攻撃を防ぐシールドとしての機能を持つ。だがその名の通り銃のホルスターとしての機能として内部にライフルビットと呼ばれる兵装を内蔵。それらと組み合わせたフルバースト時には出力収束と一斉砲撃時の本体への攻撃防御を行う。

 またホルスタービットは腕部のアタッチメントに装着が可能で、シールドとしても使用が可能。

 武装モデルはガンダム00のガンダムサバーニャが使用するGNホルスタービット。機能なども据え置きで、数も最終決戦仕様と同等である。

 

・ライフルビット

 ホルスタービットに格納される、遠隔操作ユニット。ビットの数は同数の十四基。攻撃用のユニットとなる。

 ライフルの名前の通り、銃器を浮遊させて動かす。その為に内蔵コンデンサは大容量となっている。しかし高純度DNを使用できること、そしてスラスターユニットの小型化・効率化で大気圏内でも長時間の使用が可能となっている。

 またトリガー部分も格納されているため、手持ちの武器としても使用可能。ただし深絵本人は狙撃重視のためビットとしての使用がほとんどである。数機合わせてのフルバーストは光姫のロートケーニギンを超える火力を誇り、彼女の欠員を感じさせない。

 武装モデルはガンダムサバーニャのGNライフルビットⅡ。

 

SPIRIT・R(スピリット・ラージ)

 機体膝部に分割装備される遠隔操作・エネルギー増幅装置。

 銃のSPIRITの大型タイプであり、機能としてはほぼ同じ。ただし機体加速用の発射機としても使用可能で、ビットをすべて取り外してからスパイカーによる単身突撃に用いられる。

 砲狙撃能力も高められ、こちらを使用することで大型スパイカーも発生させられる。

 武装モデルはリ・ブラスタTの大型SPIGOT。

 

・ストライクブースター・T(トライアル)

 バックパックとして装備される、自立変形飛行ユニット。

 主翼とメインスラスター、中央バインダー、ライブラスナイパーライフルが上半分を、ブースターで下半分を構成する。

 マキナ・ドランディアにおけるゴーストから発想を得たブースターユニットであり、互換性がある(なおデータはもちろんシュバルトゼロガンダムのデータベースから)。非常に大出力なものであり、直線加速性能はシュバルトゼロガンダムRⅡを上回る。MSの世代的に仕方のないことだが、この点は大きな躍進であり、地球の世界の人々によってシュバルトゼロガンダムに追いつく機体が初めて誕生したことの影響は大きい。無論性能を詰められたシュバルトゼロガンダムもスタートの指示の下、マキナ・ドランディアで作られる予定だった後継機の設計図を用いて更に発展させた新型機の製作が行われている。

 なおブースター本体は通常のフライトモードの加速形態の「アクセルモード」が搭載。前述している通りブースターには全身に装備されたビット兵器のコントロールAIも本体とは別に搭載、独自のレーダーステルスシステムをも搭載して深絵をサポートする。

 武装モデルはリ・ブラスタTのバックパック。ただしゴーストのモデル、ビルドストライクガンダム・フルパッケージのビルドブースターなどもイメージ元。

 

 

ネイ「以上がブラウォジーベンガンダム・ライブラの解説になります。狙撃型ガンダムということでガンダム00のガンダムデュナメス系統、そしてその機体ともゲーム中で関係が深いスパロボシリーズのリ・ブラスタシリーズも混ぜ込んでいると」

 

士「そうなるね」

 

グリーフィア「バリバリのビット兵装機体ねぇ。それだけパイロットに負担掛かると思うんだけど?」

 

士「あ、このビット達、全部コンピューター操作です(´-ω-`)」

 

グリーフィア「って、書いてあるわねぇ。バックパックに積まれているコンピューターで制御してるって」

 

ネイ「でもこれだけの量をすべてコンピューターで制御できるのも凄い処理能力っていうか……」

 

士「普通のMSの武装選択にも使われている脳波制御もあるから、ギリギリ全部制御が可能なんだよね。とはいえ腰のライフル・ホルスタービットかSPIRITのどちらかを使うって制約を掛けて使っているから、そんな最大稼働している場面は多くないって感じだね」

 

ネイ「それにしても……本当にスナイパーライフルをビームサーベル代わりに使っているとは」

 

グリーフィア「資料で見る限り、これはリ・ブラスタのライフルがベースみたいね。試作ビームブレードガンの技術がどうこうなったかは置いておくとして、また突撃が見られるのかしらねぇ~?」

 

士「その内出すだろうけど、でもLEVEL3からは深絵さんも出番減るからね(´・ω・`)深絵さんの所属はSABER、LEVEL3の主軸は元君のCROZEだから」

 

ネイ「元さんもチームを持ちましたからね。でも今回の深絵さんの機体、リーダーとして相応しい気もします」

 

グリーフィア「スナイパーによる広範囲の支援攻撃、ビットで攻撃を庇える。確かに役割的には全員の面倒を見られるかもねぇ」

 

士「とはいえ、元君のシュバルトゼロガンダムに現状で劣る部分もありますがね」

 

グリーフィア「あぁ~、エラクスシステムが使えないってところかしら?」

 

ネイ「それと……バックパックがないとツインジェネレーターシステムも安定させられないところ、とかもですか?」

 

士「それもあるけど、なによりユグドラシルフレームの不完全版のユグドラルフレームを発光させられないのもある。ユグドラルフレームはユグドラシルフレームと同じでDNLの力に反応する。まだDNLじゃない深絵では性能を発揮させられないんだよ」

 

ネイ「そうなんですね」

 

グリーフィア「ちなみに元君以外でユグドラルフレームを稼働させられる人っているの?」

 

士「一応居はする。LEVEL3ではそんな人物達が多く登場するだろうから、深絵にも頑張ってほしいものです」

 

ネイ「DNLへの覚醒……深絵さんが到達できるといいですね」

 

グリーフィア「ニュータイプみたいに難しいと大変ねぇ。でも高純度DNに触れてれば嫌でも覚醒出来るんでしょ?」

 

士「とは言っても時間が掛かる場合もある。元君の場合は偶然覚醒が早かっただけで、深絵はどれだけで覚醒できるかどうか……エラクスの発動有無でも高純度DNの影響が左右されるし」

 

グリーフィア「とりあえず今後に期待ね。そろそろ前半はここまでかしら?」

 

士「そうだね。そろそろ後半に渡そうか」

 

ネイ「それでは後半に続きます」

 




前編はここまでです。

ライブラはカラーシリーズの第二世代MSとしての位置づけ、このシリーズからはシュバルトゼロガンダムの技術を基に開発されているため、非常にスペックが高いのが特徴です。
おまけにツインジェネレーターシステム量産という何気に今の公開段階でマキナ・ドランディアですら成しえていない技術に到達しています。果たして、これを聞いたらマキナ・ドランディアの技術者、ヴェールさんとかはどんな反応をするか……(´-ω-`)

とはいえ、まだまだ未成熟な機体。この機体もベースにして果たしてどのような技術革新を遂げていくのかが見ものとなっていく予定です。

では同日公開の後編もお楽しみください


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黒の館DN 神騒乱勃発編 第10回 後編

どうも、皆様。引き続きご覧の方は改めまして。作者の藤和木 士です。

黒の館DN、いよいよ神騒乱勃発編の最後、後編はDIENDの関係者グレイブ・モセスとクルス・クルーシア、そしてディスティニーライダーの公開です。

いずれもブルーディスティニーとペイルライダーの作品の影響が多いですが、いずれもアレンジさせて出してもらっています。出す人数を減らすために役割を被せた人物もいますが……。

それでは黒の館DN、後半の再開です。


士「それでは後半も始めてきましょう。作者の藤和木 士です」

 

レイ「アシスタントのレイだよ~。いよいよ神騒乱編勃発編の最後、黒の館DN!」

 

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです。ここまで来たって感じですよねぇ」

 

士「旧作のSSRは第一部で終わってしまったからね……規模が違うとはいえ、二部分終わらせられたのは中々の達成感ですよ(´-ω-`)そんな黒の館DN、最後を締めくくるのはこれ( ゚Д゚)」

 

レイ「運命の乗り手のパイロットクルス・クルーシアちゃんと、その仕掛け人グレイブ・モセス!そして関係する騎士にして担い手「ディスティニーライダー」をいよいよ紹介だよー!」

 

ジャンヌ「ようやくディスティニーライダーの紹介が出来ますね」

 

士「理由はもちろん、追加パーツが色々とネタバレになってしまうからだね。さて、そんな紹介はまず人物紹介から!」

 

レイ「じゃあ紹介していくね~」

 

 

 

 

クルス・クルーシア

性別 女

身長 149cm

髪色 オレンジに近い赤

出身地 オースラリア シドニーア

年齢 15歳

誕生日 7月3日

血液型 B

好きなもの プリン、文鳥、MSを動かすこと

嫌いなもの 薬、地震

愛称(別称) 被検体K03 

 

 ゼロンの試作機体「ディスティニーライダー」のパイロットにして被検体の少女。

 12歳まではオースラリアのシドニーアに住んでいたが、シドニーアにて起こった大地震とそれに誘発して起こったガス爆発に巻き込まれて街が壊滅、家族を失い孤児となる。その際丁度被災地復興を装ったゼロンが彼女を含めた少年少女4人を攫い、MS開発のための被検体として扱われるようになる。

 彼女は自衛軍の機体から盗用して造られた対DNL用プログラムを搭載されたディスティニーライダーに適応させるべく、薬を投薬されて痛覚を鈍くされ副作用で記憶が曖昧になるようになった。彼女自身はそれしか生きる道がなかったため従い、記憶がなくなることもいつもの事だと諦めていた。

 元との初戦闘時、システムを使ってもなおシュバルトゼロガンダムを抑えられずに撤退、その途中で装依が解けて路地裏にて倒れる。その後千恵里達に助けられて病院にて手当てを受けたところを元が率いるCROZEに確保された。その後再度奪還され、博士によって完全なDIENDシステムにするために記憶の削除処理をされ、無感情な兵士へと改造される。再度シュバルトゼロガンダムと戦い、有利に進めるが千恵里の呼びかけで記憶が戻る。

 記憶が戻った後は千恵里を護って裏切り者の綺亜と戦うが、彼女に貫かれて装依解除する。その後今際の言葉を千恵里に呟いて死亡、したかに見えたがかすかに息があり生存してその後はHOWに保護された。

 保護後は医療施設で療養して引き取り先を探す予定だったが、本人たっての希望でそのままHOWの支援を受けて治療しながら雇われパイロットとして修復した機体と共に入隊。私立東響湾ピースランド学園にも編入している。

 モデルは機動戦士ガンダムミッシングリンクのクロエ・クローチェ。機体と合わせてのチョイスとなった。

 

グレイブ・モセス

 ゼロンの研究者にしてMSディスティニーライダー、およびそれに搭載されたDIENDシステムの開発者。47歳。

 かつては東側でDNLの研究を行っていた科学者で、DNLと世界の関係について迫ろうとしていた。しかし研究していくうちにDNLが現在の人類を絶滅させるための「新人類」であるとの考えに至り、それをさせないためにDNLを保有するHOWと敵対する形でゼロンへと付いた。以降は極秘裏にDNL絶滅のための研究を進めていた。

 その研究成果としてディスティニーライダーの研究が成就したことでゼロン本部より運用試験を兼ねて東響へと派遣され、その性能実験を行っていた。しかしその途中で自衛軍にかぎつけられ、更にHOWとも交戦することになる。交戦後クルス奪還に合わせてディスティニーライダーを改装、最強のDNLハンターとして元達に差し向けるも無力化され、自身も犠牲を顧みず突貫した正人の攻撃を受けて死亡する。

 しかしゼロンもまたDNL利用は考えており、むしろ彼の研究は邪魔だったために厄介払いに東響支部への転属をさせた模様。それでも十分な活動が出来たのはひとえに裏切り者であった羽鳥綺亜執念の支援によるものだった。

 人物モデルは機動戦士ガンダムブルーディスティニーのクルスト・モーゼス。ただし名前には機動戦士ガンダムミッシングリンクのスレイヴレイスの首魁「グレイブ」も混ざっている。

 

 

レイ「以上が人物紹介になるよ~」

 

ジャンヌ「クルス・クルーシア……結局二人の少女の片割れは彼女となりましたね」

 

士「しかもCROZEメンバーにもなっちゃいました(゚∀゚)」

 

レイ「でも味方になってよかったよ~機体はディスティニーライダーの改修機になるみたいだし」

 

ジャンヌ「千恵里さんとは今後いいパートナーになりそう。そう思いたいです、綺亜さんの事を思うと……」

 

士「裏切り者は彼女もまたそうだった……グレイブを利用しようとしたのが、彼女の失策だったね」

 

レイ「うん、グレイブがまさか切り捨ての対象だったのも驚きだよね……」

 

士「ニュータイプを否定した連邦もニュータイプの研究はしていたしね。絶滅させるくらいなら利用してやろうって判断ですよ」

 

レイ「でもやっぱり、綺亜さんの裏切りが一番驚いたよ~。まぁ前の時に嫌な予感はしていたけどね……」

 

ジャンヌ「第3章の終盤で怒り狂った綺亜さんが、その悲しみを背負ったまま……いいことだと思って、自分の考えならあの運命を変えられたと思ってしまったのは悲しいです……」

 

士「人の思いは残酷だよ……時としてこうして暴走する。元君だってこうなる可能性があのヴァイスインフィニットとの敗北後にあったかもしれないんだから( ˘ω˘ )」

 

レイ「そういう意味では、本当にレヴ君に感謝感謝~だね!」

 

ジャンヌ「相談できる友がいたかどうか、それが二人の違いですね」

 

士「さぁ、そろそろそんな3人に関係した、呪われしMSの紹介と行きましょうか(´Д`)」

 

ジャンヌ「呪われって……まぁ行きましょう。MSディスティニーライダーの紹介です、どうぞ」

 

 

 

 

ZASP-DR01X

ディスティニーライダー(Dライダー)

 

機体解説

 ゼロンが対シュバルトゼロガンダム用、そして対DNL用に開発した新型MS。機体全体が青系統のカラーリングとなっている。頭部はソルジアタイプに近いゴーグルタイプでなおかつガンダムタイプに顔立ちが似ている。

 特筆すべきは機体頭部に搭載された対DNL用戦闘プログラム「DIEND(DNL Instinct END)システムであり、起動すると全身の出力リミッターを解除して全力でターゲットに襲い掛かってくる。特にその反射性能、スピードはDNLの先読み能力でも捉えるのが難しく、元も能力を高めた上でアレスモードを使用しなければ太刀打ちできない程。

 システム起動中は機体各部が金色に染まり、またカメラゴーグルが紅くなる。これはコンピューターがオーバーロード状態であるため。

 それ以外では装備に実弾・実体剣兵装が多い。とはいえこれらもDNコーティングが施されており、DNウォールなどを突破、DNフェイズカーボンに対してダメージを与えられるようになっている。

 モデルは機動戦士ガンダムの舞台、一年戦争時代における青のモビルスーツの代名詞「ブルーディスティニー」シリーズと、それにルーツを持つ「ペイルライダー」。二機は共にニュータイプに関連したシステム「EXAMシステム」と「HADES」システムを搭載しており、これがDIENDシステムの原型となっている。

 

【機能】

・ダブルジェネレーター

 機体は膨大なDNを消費するため、ダブルジェネレーターとなっている。システムを稼働する関係上それでも足りない上に、増やせば増やすほど消費粒子が増えるために武装の多くが実弾、あるいは外付けのエネルギーパック、チャージ式の兵装となっている。この仕様はダブルジェネレーター仕様の機体でも珍しい。

 

・DIENDシステム

 機体の頭部に搭載されたブラックボックスクラスの特殊システム。

 対DNL能力者との戦闘を考慮されたセッティングが施されている。その内容はDNLの発する次元波と呼ばれる特殊な脳波を察知し、先読みの更に先を読むと言うもの。これは自衛軍にて開発された対DNL能力者・DN汚染者用の戦闘システムがベースであり、漏えいしたその技術を勝手に利用しているに過ぎない。しかしその過程でシステム開発の犠牲者の少女と、パイロット候補の思念が結集してシステムの自我のようなものが誕生。その影響で本来のDIENDシステムよりも更に敵の敵意を察知しやすくなっている。しかしその自我との交流を経て、システムは暴走状態から復帰し、クルスが帰ってこられた。

 しかしその性能は折り紙付きで、自衛軍のMS特殊部隊「マルコシアス」を全滅させ、シュバルトゼロガンダムとの二度の対決でも互角に戦闘を運んでいた。

 システム起動時、パイロットは凄まじいGとシステムからの負荷に晒されるため、身体に薬物を使わされてシステムに耐えられるようにしている。この使用される薬物には麻薬や国際条約にて使用が禁止されているものもあり、部分的な記憶喪失などDN汚染以上の悪影響を及ぼす。その為LEVEL2の終わりでHOWでの運用が決まった際に本機は頭部のオリジナルシステムに厳重なロックを掛けて「封印」することとなった。

 モデルはEXAMシステムとHADESシステム。システムの目的はEXAMに似るが、その性質はHADESに近い。

 

・換装

 機体の各部は換装を前提としたものであり、本編では一回目と二回目とで武装が変更されている。一回目はテスト用兵装で、二回目は明確に実戦用兵装となっている。

 LEVEL2の終わりでは本機がHOWで運用されることが決まったため、HOWの兵装を装備する為に活用される。

 

・DNウォール

 二回目の装備に採用される防御兵装。ただし本機においては応用することで攻撃兵装の範囲拡張を果たし、より本機の性能を向上させている。

 

【武装】

<一回目の装備>

 モデルはペイルライダー陸戦重装備。

 

・バルカン砲

 頭部に装備された近接防御機関砲。MS相手には非力だが、ミサイルに対する迎撃や対人兵器としては充分な威力を誇る。本兵装は換装されることはほぼない。

 

・ブルパップマシンガン

 右手に装備する実弾兵装。弾数は50発。この時点では本体のエネルギー供給が不安定の為実弾兵器をメインの射撃兵装としていた。

 通常時は豆鉄砲程度の兵装だが、本機の場合これだけでも自衛軍のソルジアスを撃墜できるほどの戦果を見せる。とはいえ流石にガンダムのDNフェイズカーボンは抜けない。

 モデルはペイルライダーの同名兵装。

 

・ビームサーベル

 機体の腰部と脚部スラスター内部に装備された格闘兵装。他の同名兵装とは違い機体供給式ではなく、あらかじめ端末内部にチャージされたエネルギーで稼働するため、時間制限が存在する。時間は連続運転でおよそ5分。本兵装も固定装備となる。

 装備位置はペイルライダーとブルーディスティニーシリーズの折衷。

 

・ビームガン/ヒートソード

 機体の腕部に装備されるユニット式のビーム兵装。内部にはヒート式の実体剣が内蔵されており、伸ばすことで使用が可能。

 運用の為に武装はチャージ式となっておりそのエネルギーは共有。とはいえ剣の方はそのままでも十分切れ味はあるため滅多に赤熱化はされない。

 

・射出式ヒートパイル

 腹部側面に装備される、火薬式の射出杭。非常に貫通力が高く、至近距離ならDNフェイズカーボンすらも貫ける。ただし正面一方向にしか撃てない為、扱いはかなり難しい。

 モデルは機動戦士クロスボーンガンダムDUSTのミキシングMSアンカーのヒートセラミック弾。ブルーディスティニーの有線式ミサイルを意識した位置づけである。

 

・脚部ミサイルポッド

 脚部スラスターユニットの側面に装備される外付け式のミサイルポッド。3×2連装の6連装。

 ミサイルの威力は平凡だが、本機の機動性から繰り出されるこれは非常に回避が困難。

 モデルはペイルライダーの三連ミサイルポッド。

 

・強化レールガン

バックパックの左側面アタッチメントにアームを介して接続される兵装。

 装備に外付けされた発電機を用いて弾丸を加速させる。威力は他機で採用されるものより高く、反動も大きいがDIENDならば対応が可能となっている。

 モデルは鉄血のオルフェンズのレールガン。鉄華団側の装備である。大型実弾兵装を装備するのはペイルライダーでも行われていたためそれの再現とも言える。

 

・ガンソード

 バックパックの右側面に装備される銃剣。銃と剣、そしてシールドを備えている。

 HOW側の戦力であるシュバルトゼロガンダムの武装、ブレードガンに対抗して造られた兵装。右腕を覆う形で装備することを前提にレイアウトされている。剣を下に折りたたんだビームガンモード、ソードを展開したソードモードを持つ。

 とても大振りな装備となっているが、DIENDシステムとダブルジェネレーターの高出力なら充分扱える。

 モデルは機動戦士ガンダム00のガンダムエクシアが使用するGNソード。

 

 

<二回目の装備>

 モデルはペイルライダーの空間戦装備。だがモチーフには更にユニコーンガンダム2号機バンシィ(アームドアーマー装備)がある。

 

・ビームライフル

 エネルギーパックから弾を供給するタイプのビームライフル。ザジンのものとは違い、ボックスマガジンに近い形状のエネルギーパック。本機体の物は「Eマガジン」と呼ばれる。

 腰背部に不使用時は装備される。メインウエポンの一つだが、本機はその仕様から使われることは稀。

 劇中ではDIENDシステムからの解放後、主兵装として短期間の間使用した。

 

・ペインキャンセラー・クロー

 機体の両腕部装着される追加装甲とも呼べるナックルガード。重い質量兵器として敵を殴りつけるのに有効で、表面は耐ビームコーティングが施されている。また後部にはブースターが備わっており、距離を詰めるために用いられる。

 だが真価を発揮するのはクローモードを発現させたとき。展開すると特殊金属ANDメタルで形成された爪が展開される。この素材は接触した機体からDNを吸収することが可能で、本機の稼働時間の短さを克服することが可能となっている。本来は接触が必要な本兵装でビームサーベルに対しては無力だったが、グレイブはDNウォールに目を付けて本兵装に搭載。するとウォールを通して接触したビームサーベルからも分解してエネルギーが取れる上に防御兵装としても使用が可能となり、本兵装の弱点を克服した。

 弱点をフォローしつつ本来の戦闘スタイルを確立できる装備だが、稼働時間が伸びるということはパイロットへの負担も大きくなるということでもあり、加えて本装備使用時にはパイロットの痛覚を無視して稼働させる。装備解除後はフィードバックダメージが凄まじく、パイロットを完全に捨てた判断をゼロンがしていることが明白となっている。更にDNのエネルギーを一切分解して機体に吸収するとしても、オカルティックなエネルギー、DNLの乗せた意志までは分解できず、むしろ増幅して機体に吸収してしまう。DNLの脳波を読み取って先読みの上を行く本機においては、これも機体の動きを上げるための利点であるはずだった。しかしこの仕様が災いして、本編では元に逆利用。わざと接触してクルスの意識に呼びかけたことで彼女の手術による記憶を呼び覚まさせ、更にDIENDの呪縛も増幅したDNLの能力で停止に追い込んでいる。パイロットの開放後はDIENDに繋がる兵装ということでこれを外して戦闘を行った。

 モデルはバンシィのアームドアーマーVN。

 

・フィンスタビライザーキャノン

 バックパックの側面に折りたたまれて装備されるスタビライザーユニット。本機の機動性向上に一役買う。

 だがそれは通常時の話であり、完全展開すると肩部上から前方に向けられる開放式バレル持ちのビームキャノンとして使用される。この兵装のビームは特殊で貫通性の高い、不規則な弾道で放たれる。その為地下などの狭い場所で使うと自分が危険になりかねない。

 エネルギー消費も激しい為ペインキャンセラー・クローとの併用が好ましい。キャノンとしての使用時にはスタビライザーとしての機能は失われるため、空中戦は好ましくない。

 モデルはバンシィのアームドアーマーBS。背中に背負う、という形になった。ペイルライダーのジャイアントガトリングもイメージ元になっている。

 

・ジェネレーターアクセラレータ

 腹部側面に換装装備される特殊ユニット。DNジェネレーターと繋がっており、内部に内包された特殊物質「アーダー・ゲル」を投入する役割を持つ。

 アーダー・ゲルとはこの世界におけるエラクス解析の途中で得られた物質で、これをDNジェネレーターに付与すると、ゲルが完全に蒸発するまでの間ジェネレーターの稼働率をエラクス状態と同様のレベルまで引き上げる。

 人間の体に例えていうなら飲酒で、ゲルの効力はアルコールに例えて「酔っぱらっている」状態である。無理矢理稼働率をアーダー・ゲルというお酒で引き上げて、ゲルが消失すると酔いがさめると言った具合。

 ゲルの開発元はHOWであるが、HOWはこれを失敗作として使用は封印している。とはいえ性能は折り紙付きで、非常に厄介な装備となっている。本編においては暴走中のみ常時使用して、その後はゲル自体が切れて使用していない。

 

 

ジャンヌ「以上がディスティニーライダーの紹介ですね」

 

レイ「うーん第一形態から~。ペイルライダーの武装を参考にしているんだよね」

 

士「そう、GNソードモチーフの兵装もあるけど、あくまでバックパック右サイドの空きを埋める為ってのと、ビームサーベル以外の有用な格闘兵装も考えていたからね」

 

ジャンヌ「実弾兵装も多い……にも関わらずシュバルトゼロガンダムや最新鋭MSのソルジアスも圧倒出来たのはやはりDIENDのおかげですかね」

 

士「その通り」

 

レイ「ねぇ、DIENDって略称は出てるけどその綴りって、もしかして……」

 

士「ディ、エーンド!(゚∀゚)」

 

レイ「やっぱり」

 

ジャンヌ「なんでHADES系統にディエンドが……」

 

士「まぁENDって付いてて、DNL何とかって付けられるかなぁって(´・ω・`)思いついたのがそれだった」

 

レイ「あはは……。それで、第二種装備はこれバンシィ?」

 

士「いや、ペイルライダー空間戦仕様を下地にアニメ版バンシィを盛り込んでる。ペイルライダーのHADESも後々NT-Dの下地になっただろうし、ちょっと関係性を作っておきたかった。LEVEL3のストーリーにバンシィモチーフの機体も出すし」

 

レイ「へーその時はユニコーンみたいなストーリーになるのかな?」

 

士「ユニコーンガンダム……その三機の競演が見られる……かも?」

 

ジャンヌ「それにしたってかなり厄介だったと思いますよね今回。DNの攻撃が通用しないって。元さんはその性質を逆利用してDNLの力で敵対状況を解除しましたが、それが無かったらどうなっていたことか……」

 

レイ「うんうん、少なくともシュバルトゼロガンダムだけじゃどうなってたかわかんないよねー。アレスでも無理だった?」

 

士「そうだね。この時のディスティニーライダーは以前アレスモードと戦った時よりも機動性能に制限がない。しかもクローの部分に触れれば一気にDNを削り取られていくから、拳に対して正確に受け止められればDNの拳でも貫けずに劣勢を強いられていただろう。だからこそこの一か八かの賭けは最善だったってわけですよ」

 

レイ「おまけにDNLの力を見せていって、可能性を見せてくれたねーっ」

 

ジャンヌ「その身を張って、DIENDを止めるのは流石隊長という感じですね元さん」

 

士「その元君の物語も、いよいよ佳境!LEVEL3から新機体でヴァイスインフィニットとの最後の対決を繰り広げていくわけです!」

 

レイ「ヴァイスインフィニットと遂に決着かぁ。LEVEL1から元君も成長した!」

 

ジャンヌ「ですがヴァイスインフィニットの側もおそらく準備は万全でしょう。10年近くの時間を与えてますし……」

 

士「その戦いは果たしていつになるのやら……さて、LEVEL2もここまでです」

 

レイ「さぁ、LEVEL3は新主人公も交えた展開!千恵里ちゃんもレギュラーキャラに!」

 

ジャンヌ「これは少年と、異世界の少女が織りなす新たな物語……。LEVEL3「双翼英雄譚(そうよくえいゆうたん)編」第1章「新たなる契約のガンダム」」

 

士「久々にあれやるか……神を殺すのはただ一人!」

 

レイ「その象徴!」

 

ジャンヌ「その名は」

 

レイ・ジャンヌ・ネイ・グリーフィア『ガンダム!』

 




今回もお読みいただきありがとうございます。

ディスティニーライダーという名称は無論、ブルーディスティニーとペイルライダーの名前をつぎはぎした名前です。
二機の特徴を得ていることから、ペイルライダーという名称の変形、ブルーライダーというのも考えましたが、それだとひねりがないということでディスティニーライダーにさせていただきました。

そしてDIENDシステムの自我、これに関しては物語構成の途中から追加されました。どうにかブルーディスティニーのマリオンの要素を加えたい、となった時、追加できそうだったのがその考えでした。
結果としてある意味その流れから外れた、この作品としてのアプローチが出来たと思っています。まぁ、自分の中の考えなんですが。

人物に関しては、クルスは次回以降もサブとして続投、グレイブに関しても、彼の盗んだ負の遺産にて、また触れられる機会も多いことでしょう。

ということで、次回投稿からLEVEL3、双翼英雄譚編の始まりです。譚と編が意味同じじゃって突っ込まないでください(´・ω・`)
それでは黒の館DN、神騒乱勃発編はここまでです。同日公開の用語設定集もここまでの重要用語を補完しているのでお楽しみいただけると幸いです。


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機動戦士ガンダムDN 用語設定集4

機動戦士ガンダムDNの神騒乱勃発編第3章から第4章までの用語設定集となります。

なお今回の物は途中設定を変更してこちらの改変を忘れている可能性があります。ご注意を。

それではどうぞ。


 

 

・プロジェクト・ホリン

 次元覇院が進めるプロジェクトの一つ。人工衛星「ホリン」を打ち上げるための作戦である。

 表向きには世界平和のための象徴としての打ち上げとしているが、実態は人工衛星からの戦力投入、強襲作戦の足掛かり。ポッドにより大気圏突入したマリオネッターシステム接続の機体で目的に送り込まれ、反抗勢力を制圧する。

 攻撃能力を持った人工衛星で打ち上がれば現状阻止する方法がなく、宇宙基地にも等しいこれを黙って見ているはずもなく第3章にて判明と同時にオーダーズによる破壊ミッションが遂行。作戦初期段階にて浮上途中の衛星をクリムゾンゼロガンダムの砲撃で墜落させ、途中で衛星の上半分4分の1がクリムゾンゼロガンダムのDNFで消失した。最終的に自衛軍が接収してその後技術吸い取りの後撃沈処分される。

 名称のホリンは次元覇院における最後の楽園を意味する単語。

 

・人工衛星ホリン

 次元覇院が開発した人工衛星……としている宇宙基地。動力に次元粒子発生器を採用した地球初の人工衛星である。

 外装は多数の砲門に加えて次元覇院MSが採用するビーム反射装甲「リフレクトパネル」を張り巡らせており、規模と合わせてほとんどのMSオーダーズ機ビームを無効化できた。

 底面部には地上攻撃用の大型ビーム砲「ガグ・レイバ」を装備。それに合わせて中央は動力ブロックと重力制御ブロックを組み合わせている。

 居住ブロックも中には存在しており、野菜を育てたり等の自給自足も可能としているほどの居住性を兼ね備えていた。

 作中では打ち上げ作戦を展開されて人工霧で姿を隠しながら打ち上げをするという策を取ったが、最大出力のDNF「クリムゾン・イレイザー」三連射を放ったクリムゾンゼロガンダムの攻撃にリフレクトパネルが耐えられず海上へ不時着。その後も防衛行動が続けられたが最終的に沈黙して中にいた教柱達を拘束、本衛星は技術接収後に沈没処理させられた。

 

・ホリン・ダウン作戦

 次元覇院が計画した人工衛星ホリン打ち上げ計画「プロジェクト・ホリン」阻止の為にMSオーダーズが主導となって展開した作戦。作戦責任者は自衛軍東響湾基地司令の藤谷努一佐が担当する。

 作戦の段階としては第1段階でまず人工衛星を上昇不能に追い込む。第2段階で投入されるであろうMSを迎撃、制圧。最後の第3段階で敵中枢を沈黙させることを目的とする。

 作戦にはMSオーダーズの東響戦力に加え、名護屋支部を中心とした周辺支部、そして自衛軍の新堂沙織を含めた自衛軍部隊を入れてMS全341機が参加。敵MSの450機近い数と数機のMAとの戦闘を交えて作戦を完遂した。なおチームの振り分けとしては名護屋港から進軍のAチームに深絵、華穂、間島、羽鳥などの隊長格と四ツ田基地所属機が、海上侵攻のBチームに元(とジャンヌ)、夢乃、新堂を含めた自衛軍第3大部隊が所属する。

 作戦名は機動戦士ガンダムSEEDDestinyのエンジェル・ダウン作戦より。

 

DNL(ディメンション・ノイズ・リーダー)[3]

 ジャンヌとの感応により光巴が本能力に目覚めていることが第3章にて判明する。ただしジャンヌのような感応特化の詩巫女型とも、元のような敵意・物質動作察知特化のパイロット型の能力ではない、第3の発現タイプとなっている。

 彼女の場合だと死に関わる次元粒子の流れを察知することに長けており、死に関係するのなら敵意察知が可能でかつ、死んだ直後の人物の残留次元粒子との精神感応が可能となっている。

 こうなった理由としては彼女が光姫のお腹にいるころから母親を通してDNに触れ、なおかつ生まれた後もDNが普遍的に放出される環境にいたために目覚めたと判断される。死者の声を聞くというところからこのタイプを元達は仮称で「ネクロマンサータイプ」と呼ぶことになった。

 

・赤色のDN(次元粒子)による毒性について

 ディメンションノイズ、また次元粒子にはいくつかレベルが存在する。

 現状の最大レベルは元のシュバルトゼロガンダムとヴァイスインフィニットが生みだす高純度DN、所謂蒼い粒子であるがこれらは次元世界から取り出したDNそのものを運用している。対して本世界で現状ガンダム以外のエース機、量産機に使われているのが赤色のDN。通常のDNと言われているが実はこれには意外な欠点が存在する。

 それは「過剰なDNによる中毒症状・精神異常」。このレベルのDNを過剰に機体に循環させると内部のパイロットに異変をきたすというもの。

 DNは機体そのもの以外にも戦闘起動中のMS運用電子空間の形成・維持やシステム類にも運用されている。万が一DNが途切れる事態に陥った際は平時に発電している電力でシステム最深部に搭乗者を保護、安全が確認されるまで生命維持に回される。

 その際は問題ないのだがダブルジェネレーターなどに分類される「多重ジェネレーター搭載機」、これらの運用時には機体を循環するDN、およびビーム発射後などの圧縮粒子の一部が機体、電子空間内に溢れ出す。ジェネレーターの数が多くなるたびにパイロットへの粒子放射量は多くなる。そしてこれらが多量になっていくとパイロットの肉体・精神に支障が出始める。

 簡単に言うとその様子は麻薬中毒。劣化したDNを浴びて肉体はDNをより求めるようにMS、戦場へと向かうように精神も攻撃的になる。特に未だDNもとい次元粒子生成技術が完全でない地球の機体が、多重ジェネレーター仕様にするとこの危険性は高まる。

 なおこの問題は機体そのものの大きさも左右される。大雑把に言えばMAならばこの問題は起こりにくくなる(起こらないわけではない)。

 この症状誘発はパイロットのDNに対しての免疫力などにより左右され、高ければそれだけ多量のDNジェネレーターにも耐えられる。ただしパイロットがそれだけの高出力機を操れる必要ももちろんあり、その為マキナ・ドランディアでも多重ジェネレーター仕様の機体は適性検査を受けて判定される。またドラグディア軍総司令機「グラン・ドラグ・フリーディア」はダブルジェネレーター機ではあるものの、非常時を除く機体の電子空間流入数を抑え込んでいる。

 この症状に掛かった人物にはマキナ・ドランディアではエクス・ガンダムのパイロットであるエクス・サイズ(エクス・ガンダム ガルムフェイズ時)、ランド・オンが該当。地球でも沢下判が最終決戦にて、そしてゲルツ・ルーダもタイラントアーマー装着のマキシマムにて発症していたデータが残っている。それ以外にも次元覇院製機体のパイロットはこの「精神異常」を抱えた人間も少なからずいた、あるいは「洗脳」の為に実験中の多重ジェネレーター仕様の機体に乗せられてしまい、戦場に飛び込んだ者もいたようだ。

 こうなる原因として赤色のDNが元々次元世界内部に来るまでの間に所謂「酸化」を起こしてしまい、原因となる毒性物質がごく少量混じってしまうためである。

対して高純度DNはそのもととなる酸化がまったく起こっていないため、どれほど高出力になろうとも身体に影響する悪性は存在せず、逆にDNLに目覚めさせるきっかけの一つともなっている。ただし高純度DNも世界の海たる次元空間においては浴びすぎると文字通り世界に溶け込んでしまうため、その名残を受けているとも取れる。

 

 

HOW(ハウ)

 第3章最後に設立された、MSオーダーズを継ぐ新たなMS管理組織。本部司令は次元黎人。名称はHuman Order to the world(人の意志による世界)の頭文字。

 オーダーズ・ネストをベースとした「ベース・ネスト」を拠点とし、これまでと同じようにMS犯罪に対し介入する。だが以前と違い政府の管轄する組織となっており、自衛軍との連携がより高度に可能となっている。

 チームもSABER、RIOT、GARDMANに加え、黒和元の率いる試作遊撃部隊「CROZE」が誕生。SABERに次ぐ主力チームとして第4章以降は活躍する。

 第4章時点では夫婦神なるものを信仰する夫婦聖院、次元覇院の後継を自称する「ゼロン」と主に対峙する。

 

・CROZE

 HOWにて設立された、試作兵器運用・遊撃部隊の名称。隊長は黒和元、副隊長はジャンヌ・ファーフニルが務める。

 MSオーダーズの時点で設立が予定されていた部隊で、文字通り試作兵器の運用と敵に対する遊撃行動が主任務となる。だが実際は主力チームのSABERの第2部隊と言った趣が強いチームで、SABERが出られない、もしくは別の作戦中に本チームがそれを担当する。

 試作兵器としては現状ソルジアⅡ、ソルジアス、エアフォースといった最新兵器に加え、第3部に向けて最新型MSとしてガンダムの新機種が配備予定であり、元のシュバルトゼロガンダムをベースとした元専用機も近々配備されるとのこと。

 なお名称については閉じるという意味のクローズ(CLOSS)から。SがZになっているが、これはZの方が戦争を終わらせる、終焉の意味を持たせられるためこうなった。なお裏モチーフには仮面ライダービルドの2号ライダー仮面ライダークローズの名称が含まれる。あちらはCROOZで、こちらはCROZE。

 

・永島スパランド狙撃事件

 次元覇院壊滅後の2025年の7月に三枝県の桑南にあるアミューズメント施設「永島スパランド」で親子連れの家族が狙撃された事件。

 親子は次元覇院の使徒であり、犯人は母親の殺害後、子どもを庇った父親を撃つ。後年で次元覇院の関係者はこの事件が次元覇院の使徒であることを分かった上で殺害したのだと断言。

 次元覇院の残党はこの事件に関しての情報開示を要求。しかし自衛軍やHOW、日本政府は認めず、武装衝突を起こした。この時四ツ田基地の運用する可変MS「エアフォース」が初お披露目となった。

 

・夫婦聖院

 次元覇院の影響を受けて誕生したカルト組織。夫婦を教義にしており夫婦神カーナスを信仰対象とする。無論このカーナスも次元覇院の時と同様に次元世界の狭間のどこかにいると喧伝している。

 使用するMSはメオト以外が次元覇院のMSをリペイントしたのがほとんどで、MS操縦技術も据え置き。だが一部の過激慈善組織が味方に付いていたことで摘発が遅くなり、次元覇院よりも壊滅させるのに時間が掛かった。

 夫婦神を信仰しながら、勧誘の中で暴力的な行動でその夫婦の関係を物理的に引き裂いていたこと、誘拐を行ってショッピングモールなどに壊滅的な被害を与えたことから2032年に遂に政府から悪質テロ組織と認定。HOWにより壊滅した。しかし残党がその後も事件を起こしたため残党も全て狩り、末端を含んで活動に従事した者、そして過激慈善組織の構成員も含めて死刑が2034年に執行された。

 

・ゼロン

 2030年頃からひっそりと活動を始めていたカルト組織。次元覇院の正統な後継組織を名乗っている。

 夫婦聖院活動中はその影にひっそりと隠れて活動しており、夫婦聖院のMS提供に一役買っていた。そしてその壊滅後に本格的に活動が開始された。これまでの時点で蒼穹島接収、ラプラス計画への関与、種命島の創生事件などに関わり、何よりも西日本へ繋がる経路の完全占拠を行って西日本全体の教化を進行中である。

 所有するMSも取り込んだ組織のものを使い、更には自衛軍などが開発した技術なども運用しているなど技術力がかなり高い。この点から元を含めた一部関係者はこの組織がヴァイスインフィニットを秘匿している組織として動向を窺っている。

 作中ではディスティニーライダーの事件「運命の乗り手事件」の主犯格。そのままLEVEL3にてHOWと激闘を繰り広げていくこととなる。

 

・MS所持法[2]

 2029年5月にMS所持法が改憲される。変更内容は主にMS所持法の取得可能年齢の偏向で、15歳から取得可能、そして特例で15歳になる三か月前から所持法の検定受験の勉強、検定受験が可能となった。

 

・運命の乗り手事件

 2035年に起こった一機のMS「ディスティニーライダー」を巡って起こった事件。ゼロンが開発した当機を危険視した自衛軍がこれの奪取を試みたが失敗、そこでHOWのCROZEも参加して秘匿していた浦賀製作所を襲撃した。

 そこから逃げ出したディスティニーライダーのパイロットは気絶後、民間人の少女3人に助けられ病院へと搬送。そこをHOWのCROZEに身柄を拘束される。それから自衛軍基地へと搬送されるが、搬送途中にゼロンの襲撃を受けパイロットを奪還される。その後HOWはCROZEとRIOTの部隊で潜伏する地下施設へと乗り込んだ。その中で再度ディスティニーライダーと交戦。結果的にディスティニーライダーは撃墜、パイロットは重傷だが確保し、事件を裏で引いていた裏切り者を含めてディスティニーライダーに関わったゼロンを殲滅した。

 

・オースラリア大震災

 2032年に南半球の島国「オースラリア」のシドニーアと呼ばれる年を中心に発生した大地震とそれに付属した火災を示す記録。

 大地震でまず都市機能が半壊した直後、その地区にあったガス工場が爆発、都市部へと火災が広がっていき、結果的に死傷者1万人という被害を出した。

 この大災害に対し各国は救援部隊などを派遣、現在は復興しつつある。だがそのどさくさに紛れて誘拐や人身売買が起きており、新たな問題としても持ち上がっていた。本編中ではクルス・クルーシアが被災者で、その被災地へゼロンの関係者達を迎え入れさせたのが当時自衛軍で救援指示を行っていたスレイブレイスの上官だった。

 

・私立東響湾ピースランド学園

 2026年に東響湾に作られた人工島「ピースランド」に建てられた学校施設。運営はピースランドに同じく建つベース・ネストと同じくHOWの学業部門が担当する。

 教育理念は「MSのある世界で活躍できる人材を育てる」。その名の通りMSの操縦を重視しており、専門のパイロット専攻学科を備える。高等学科の全学科生徒は最初にMS所持法試験を受け、所持法を獲得させてから授業を行う(試験勉強に関して外部受験者は受験時の科目として設定、内部進学者は中等部三年から勉強を行う)。

 初等部・中等部・高等部の三つに分かれ、高等部は普通学科、パイロット専攻学科、MS工学学科に分かれている。さらにパイロット専攻学科はDNL覚醒者のみが受けられるDNL教練科目があり、これは本学校が初かつ現在唯一の科目となっている。

 高等部以降は大抵の生徒は自衛軍の防衛大、MSを用いる仕事、もしくはHOWへの就学が進路として多い。また臨時教員にはHOWの隊長もおり、黒和元とジャンヌ・ファーフニルもごくまれに要請で教壇に立つことも。

 



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LEVEL3 双翼英雄譚編 第1章 新たなる契約のガンダム
EPISODE1 犯したマイ・クライム・メモリー1


どうも、皆様。第三部ことLEVEL3です、作者の藤和木 士です。あ、リライズ今回も色々盛り上がりましたが、次のタイトルがエモすぎる(゚∀゚)僕が描く未来へぇぇぇ!

レイ「アシスタントのレイだよっ。いよいよ最終部となるLEVEL3まで来たね」

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです。第1章のタイトルが変わっているのは見間違いではありません、投稿する直前で変えていました」

やめて( ;∀;)本当はこっちが今のが正しいのっ。とまぁLEVEL3最初のお話は新たなガンダムパイロットの登場、もっともまだ民間人だけどね。とある少年の回想と今起こりつつある問題に焦点当てていきます。

レイ「新たなガンダムパイロットはどんな子なのかなっ」

ジャンヌ「回想って……この流れ前にも見たような」

さぁ、それでは本編をどうぞっ( ゚Д゚)


 

 2030年、その時代は平穏にして騒乱の時代だった。数年前に災害救助の為に開発された次世代型作業用スーツ「モビルスーツ」。しかしそれらは人の命を救うのではなく、他者の命を奪う「兵器」として用いられるようになっていた。

 これまでMSの争いを止めてきたMSオーダーズ改め、政府直轄のMS開発・運用企業「HOW(ハウ)」。彼らは争いの種となりうる存在、MSを神からの贈り物と称して民間人に牙をむくカルト集団達を相手に戦っていた。しかしこの年、それらを凌駕するほどの大きな組織が誕生していた。

 かつてのカルト集団「次元覇院」を母体に改めて次元世界からの神の到来とその意志の執行を目指す組織を、彼らは「ゼロン」と名乗る。この年ではわずかな力しか持たないと考えられていたゼロンは、首魁にして教祖「零崎 秀夫(れいさき ひでお)」の手腕で、徐々に勢力を強めていく。西日本を中心に活動していたカルト集団と交渉し、協力を取り付けたのだ。それによる2034年の一斉蜂起によりゼロン一派は西日本を、三枝県より西側の地方をすべて制御下に置いた。

 かつての次元覇院でも成し得なかった西日本の完全制圧。事態を重く見た自衛軍とHOWはここに緊急事態宣言を発令し、彼等との対決を開始した。しかしゼロンは協力を得た組織とのつながりで得た多彩なMSを以てこれに応戦する。

 HOWも組織を象徴する高性能MS「ガンダム」を用いて対抗するが、多量の敵と、戦術を前に停滞が続く。そうして2年の月日が経とうとしていた。

 ゼロンと戦うHOW、自衛軍、そこに新たに警察組織も加わるようになった今年、最強のMSガンダムはもはや特別なものではなくなっていた。

 

 

 

 

 春先になった今年、幾度目かの登校を前に俺は過去を思い出していた。

 あまり思い出したくない過去、今世間を悪い意味で話題にしているカルト集団「ゼロン」とも関わりのある悪い記憶。ここ最近は朝になってからよく思い浮かぶ。これも全部、彼らのせいだ。

 かつて自分が犯した罪とも呼べる。昔住んでいた街、そこでよく遊んでいた幼馴染の少女。今はもうよく顔を思い出せないが、何があったのかは覚えている。

 一言に言って、彼女とその家族はカルト集団の信奉者、信者だった。あの頃もっとも有名だったカルト集団次元覇院の信者だ。

 それを俺が知ったのは偶然だった。学校でも先生たちが注意を呼びかける危険な集団。思わず少女に言った。すると彼女は詰め寄った。

 

『あなたも、わたしのてき?』

 

 詰め寄った彼女の顔が怖かった。アニメで悪役くらいしか言わないような単語を彼女の口から聞いた時、頭の中が滅茶苦茶になった。

 怖くなってその場から逃げだした俺を、母さんは心配して父さんと一緒に街を離れた近くの警察署で相談した。その警察を通じて当時次元覇院と敵対していたHOW、MSオーダーズと呼ばれた組織が用意した住宅地への避難を受け入れた。

 一時的な避難、学校にもちゃんと連絡が言ったと聞き、これ以上ない安心感を得ていた。それからしばらくして、警察の人から避難の必要がなくなったと言われて家へと戻った俺はそこで二度目の衝撃を受ける。興味本位で訪れた彼女の家族の家、それが全て瓦礫の山と化していた。近くを通った仲のいいおばさんから聞いた。彼女を含めたガーデンタウン敷地内の家族ほとんどが、次元覇院の構成員だったのだと。

 後々知ったが西東響ガーデンタウンは次元覇院の前線基地で、俺の密告が理由でMSオーダーズはそれを知った。その情報を基に次元覇院の掃討戦「東響掃討戦」と呼ばれる作戦が決行された。

 結果として俺と両親は難を逃れた。けれども同時に俺のせいで死んだ人が生まれたということも意味する。少なくとも俺はそう考えた。怖くとも好意を抱いていた少女の殺害、それが今でも脳裏に焼き付く。あの時の選択は正しかったのだろうか。そう思うと胸が締め付けられる。

 

「っ……終わったんだ、もう、俺のあの時間は」

 

 馬鹿げている。あの時言わなければまたどれだけ凄惨なことになったのか。もしかしたら自分の家族が死んでいたかもしれないのに。

あの時の選択は間違っていない、と言い聞かせる。生まれた後悔を必死に遠ざけようとする。その時、下の方から呼ぶ声がする。

 

「宗司ー、まだー?朝ごはん早く食べないと遅刻するよー」

 

 母からの声。時間もそろそろ出ないと間に合わなくなる時間だ。すぐに行くと伝えて部屋を出る。

 相模 宗司(さがみ そうじ)の日常が始まる。変わらない日々の繰り返し、繰り返す彼の自問自答。消えない罪との葛藤とそれを知らぬ友とのかかわり合いだ。

 

 

 

 

 私立陣泰高校、東響都中央区にある今年で創立80年の高校は今年からMS教練を取り入れたことで有名となっていた。現在MSの操縦はあらゆる仕事で重宝される資格であり、バイトでもその資格があるかないかで時給が変わるところもあるほどだ。その傾向は年々強くなっていく。

 都内でも旧式化しつつあった陣泰高校は校舎の改築に合わせ、時代の主流となりつつあったMS教練を取り入れる選択をした。民間のMSライセンス取得者を教員に募集し、資格保持者の教員志望者を優先的に採用する姿勢だ。その甲斐あって例年下がりつつあった受験者数は1.7倍にまで上がり、施策としては大成功を収めた。

 宗司としては一番近い学校を選んだうえ、まだMS教練を取り入れていないと思い込んでいた。しかし結果はMS教練を今年から取り込んでいて、うっかり受かってしまった。

しかし嫌な記憶こそあれど、MS自体に悪い印象はない。それにここで受かっておけば大学以降の人生に大きな影響を与えるかもしれない。そう考えて、宗司はそのまま陣泰高校へと通うことにした。授業は都の高校の中で中の上くらいの偏差値、何とか必死に追いすがっていた。だがここで問題となるのはMS教練の授業。その授業にて、宗司は。

 

 

 

 

「っ!」

 

『クソッ、やっぱあいつはえぇ!』

 

 

 

 

 抜群の成績を収めていた。

 学校でのMS教練といっても、基本はシミュレーターの使用、そして所謂障害物競走と言った趣の強い遊びの範疇だった。仮想空間での活動とはいえ、ちゃんと現実での感覚が反映され、ミスして事故すればフィードバックダメージも発生する。

 最初はあくまでゲーム感覚でMSに慣れつつ、知識を学んで資格を取るというのが基本だ。学内にはちゃんと練習用のMSも保管されていて、所持法に合格した者から担当の教師の指導の下実地訓練が行われる構成になる。

 そんなシミュレーターの中で、宗司はスムーズに障害を突破していく。同じく仮想空間にて操る同級生のMSを抜き去る勢いで、他を圧倒する。

 案外MSの操縦は苦にならない。先生は非常にMS操縦の適性が高いと言われた。皮肉なものだ。もし自分があの時戦えていたら、どちらかの勢力で戦っていたのだろうか。そんなことをぼんやり考えながら関門を突破していく。同じチームの友人が通信チャンネルでエールを送る。

 

『よし!いいぜ宗司!』

 

『このまままた一位だよ!』

 

 二人の言う通り、それは固いと思われた。が、それをかき消すように追い縋るMSから通信が入った。

 

『おっと、流石に連勝記録、ここで止めるって!』

 

「っ、やはりお前が来るか、羽馬」

 

 仮想空間のレースコースでこちらを追走するパイロット。羽馬都美樹。港内区から通っているクラスメイトの少女だ。

 彼女もまたMSの操縦に長けている生徒だった。最初の時から宗司と障害物競走で張り合う仲で、追い上げ追い抜く。彼女との対決は三戦三勝で未だ負けたことはないが、いつ負けてもおかしくない相手と認識している。

 たかが学校の授業ではあるが、彼女には負けたくない。そんな思いで機体の出力を自分が制御できるギリギリまで上げる。

 

『いけー!』

 

『負けるなツミキー!』

 

「っ!」

 

『くぉのぉぉぉー!!』

 

 最終コーナーに入る。両者並んだ。どちらが先に付くかの緊張、しかしそこで彼女の機体が揺らいだ。

 

『えっ、ええちょっ……!』

 

 機体のバックパックから煙が上がる。バランスを崩した都美樹の機体が前のめりになりながらクラッシュしていく。その間に宗司はゴールのラインを切っていく。担任が呼びかける。

 

『一位、相模宗司!羽馬都美樹はクラッシュ、失格だ。両者あまりデッドヒートし過ぎるな。成績下がるぞ?』

 

「はいっ」

 

『す、すみませ~ん……いつつ……フィードバックでも痛い~』

 

 全員がゴールしてからシミュレーターが解除される。ポッドから出ると、同じチームのクラスメイト「小野寺 小太郎(おのでら こたろう)」と「風島 舞人(かざしま まいと)」に賛辞を受ける。

 

「やったね、相模君」

 

「これで俺らの王座守護記録更新だぜ!」

 

「あぁ、そうだな」

 

 比較的この学校で中学生時代の友人がいない中で、最初に話したのが二人だった。モビルスーツ授業でチームを組んで以来の縁で以来よく話す仲だ。そんな二人との会話で、悔しそうに歯ぎしりする羽馬の姿が目に入る。

 

「くぅぅ~、また負けたぁ!」

 

「おう、惜しかったなツミキ。ま、うちの宗司を追い抜かそうだなんて、無理だな」

 

「あ゛?そういうオノコーだって今日は調子乗ってクラッシュでしょうが」

 

「そうだそうだー」

 

「なっ、誰が調子に乗ってただ!」

 

「いや、でも思いっきりコース外れてぶつかってたかな……」

 

「風島おまっ!言わなくていいんだよっ」

 

「そこ、静かに!これで今日の授業は終わりだ」

 

 そんな感じで騒ぎながら、授業が終わっていく。他のクラスメイト達もポッドから自身の席へと戻っていく。

 こんな時間が愛おしく感じる。まさしく平和とでもいう感覚。しかし担任の教師は今日の授業の総括と共に、最近の街の治安について述べる。

 

「大分MSには慣れてきたようだな。一部の生徒はもう問題ないほどの操縦技術を持っている。しかし中には高い技術を持ちながら、危うさを備えた者もいる。最初に習っただろうが、MSは兵器の延長線に位置する技術だ。だが今教えているのはあくまでも作業用スーツとしてのMSの扱い方。最近またゼロンというカルト集団が活発化しているニュースがあるが、間違っても上手く操れるからとそこらへんにある作業用MSで立ち向かうなんて無謀な真似は絶対にしないこと。軍用MSとじゃ、パワーも装甲も全然違うんだ。それは軍用MSを扱う立場になった時もそう。力があるからと言って暴れまわれば、それはカルト集団と同じだ。MSの開発者の一人ツィーラン・パック博士の言葉にもある通り、兵器は一側面ではなく様々な使い方がある、その兵器といかに向き合っていくかだ」

 

 長い話が続く。MS座学でも最初に聞いた言葉の繰り返しだ。その内容に呆れてオノコーが小さく呟く。

 

「いかに向き合ってくかって、普通MSなんて授業位しか触らないんだしよぉ」

 

「そうだよな。武器もまともに持ってないし、武装だって今はセーフティロックが掛かってて、軍事機体じゃないと解除できないらしいし、何より軍の機体はバイオメトリクス登録で民間人じゃ容易に触れないんだろ」

 

 MSの突発的軍事利用を避けるために施されたセーフティ機構、それが数年前のMS所持法改正で追加されたMSの新たな制限である。容易に民間人がMS所持法を違反しないためのいわば防衛策らしい。

セキュリティの種類は多種多様で、場合によってはIDカード、それどころかタイムカードなどがその解除方法に割り当てられたりもする。その為担任が語るような事態にはそうそう陥りにくい。

 なので自分達には関係ない、と宗司と小太郎は思っていたが、ただ一人舞人は例外を小声で述べる。

 

「普通はそうだけどね。でも軍のまだ登録者のいないスターターとかは、装着できるかもしれないから」

 

「そうなのか」

 

「うん。噂ではシステムが確立していなかったときに、軍の機密級MSのスターターを偶然手に入れて装依しちゃったって人もいるってお父さんが言っていたんだ」

 

「なんだよそれ。そいつは災難だな……って痛っ!?」

 

 憐れみを感じていた小太郎の額にに近くまで来ていた担任の手刀が直撃する。失笑が響き、担任は注意する。

 

「こら、いくら成績がよかったからと、おしゃべりを許可した覚えはないぞ?」

 

「すみません」

 

「そ、そうでした」

 

「まったく……とはいえ、今話にもあった通り、今のMSには厳重、かつ多種多様なセキュリティが施されている。偶然手に入れたスターターが適合するなんて話は滅多にない。が、その例外、特に旧所持法下で製造されたスターターにはそのセキュリティが施されていない場合もある」

 

 例外。旧所持法の影響下と言えば、それはつまり次元覇院が活動していた頃のような機体の事を指すのだろう。それだけ昔のMSなら、簡単に装依出来るかもしれない。そしてそれを用いたテロも容易に……。

 チャイムが鳴り、担任は最後にこう締めくくる。

 

「とにかく、如何なる状況でもまだお前達が戦う必要はない。そういうことは大人に任せて自分の身を第一に考えろ。間違っても自分から武器を取ろうなんて思うなよ?そういう仕事に就きたかったとしても、学生の身で戦闘になんか突っこんだらその夢にだって届かなくなるかもしれないんだからな。それじゃあ遠坂」

 

「起立、礼」

 

 クラス委員長の号令で、その日のMS操縦の授業は終了した。

 

 

 

 

 その日の帰り道、小野寺達と一緒にいつもの帰り道を歩く。まだ始まって一か月も経たない学校の道も、ほぼ毎日通っていれば嫌でも愛着が付く。

 話の内容は男子高校生の会話だ。授業がだるかったり、バイトはどこにしようかだったり、その他色々……。そんな会話の中で、ふと宗司は風島に昼間の事を聞いた。

 

「そういえば風島、昼間軍のMSのスターターについて言ってたけど、何でそんなこと知っていたんだ?」

 

 軍のMS事情なんて、そうそう知る機会などない。何かの機会があって知ったのだろうが、宗司の予想の斜め上を超えて風島は答える。

 

「あぁ、僕のお父さんが自衛軍の人なんだ。MSパイロットに転向してるし、それで昔訊いたことがあったんだ」

 

「そうなのか」

 

 初耳だった。となれば風島がなぜこの高校を受験したのかなんとなく想像が付く。がそれならそれで別の疑問が残る。

 この中央区にはもう一つMS授業を受けられる高校、いや学園がある。それは「私立東響湾ピースランド学園」。かつて次元覇院と戦った企業「HOW」が運営する学園だ。そこならMSパイロットなどより専門的な職に就くことだってできる。もしかすれば防衛大への受験もそちらが有利かもしれない。

 それなのに風島が専門性を捨ててまでこの学園に来た理由は何なのか。その疑問に風島は言及した。

 

「この地区だとピースランド学園も通学の圏内なんだけどね。でもあそこはHOWとのつながりが強すぎるから、こっちにしたんだ」

 

「強すぎると何かダメなのか?」

 

「駄目ってわけじゃないけど、でも僕としては新しく始めたこっちのほうが面白そうかなってことで無理を言ってこっちにしたんだ。父さんはピースランドに通ってもらいたかったみたいだけども」

 

「ふぅん」

 

 首を傾げる小野寺。風島の考えが珍しいのは分かる。だが風島としてはそれが自分にとって一番だと考えたのだから、特に指摘する必要もない。突然訊いたことを謝罪する。

 

「そうか。悪かった、変なこと聞いて」

 

「いいって。そう言ったら絶対聞かれる内容だから、気にしてないよ」

 

「ま、それならそれで頑張んなきゃな。結構どんくさいしな風島」

 

「そ、そんなこと言わないでよオノコー」

 

 二人のやり取りにクスリと笑う。こんな日常でいられることを、切に願う。ゼロンなんかと出会わないでいられる日常で。

 その時だった。

 

「あなた達、陣泰高校の生徒?」

 

「ん?」

 

 掛けられた声に振り向く。その先にいたのは整った髪と真新しい制服を着た二人の女子学。陣泰高校のものではない。それは先程話に出ていた私立東響湾ピースランド学園のものだった。

 やがて知る。これが運命を左右する出会いだったことを。

 

 

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今回もお読みいただきありがとうございます。今回の節の名称はあの作品からの影響受けています。

レイ「また重い過去背負ったパイロットだったよ!?しかもこれ丁度元君達のLEVEL2第2章くらいの話じゃないの!?」

そうだね。あの裏で起こっていた事柄に関わっていた青年相模宗司。彼は過去とどう向き合い、そして今を乗り越えていくのか?(´-ω-`)

ジャンヌ「元さんは元さんで幼馴染亡くして、こっちも幼馴染死んで、同じですね」

違うのはその立場だね。巻き込まれたか、なるべくしてなったかの違い。

レイ「うわぁ……またその死んだヒロインが新主人公苦しめるよ絶対」

ジャンヌ「この作者ならやりかねない」

ま、まぁそれは置いておくとして。そんな彼と友人に話しかけた千恵里達も、なぜ話しかけたのか、次回のお話で明らかにしていきます。
そして、最終部となるLEVEL3、もう一人の主人公の元君は一体いつ登場するのか?

ジャンヌ「元さんもこの時は30才くらい超えてますよね」

レイ「30才超える現役ガンダムパイロットかぁ。AGEみたいに世代変わっていく展開だぁ」

そんな感じですね。では今回はここまでとなります。

レイ「次回も、よろしくねっ」


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EPISODE2 犯したマイ・クライム・メモリー2

どうも皆様。昨日のビルドダイバーズリライズのリライジングガンダムの変形機構無茶苦茶だけど憧れます、作者の藤和木 士です。ビーム手で弾くシーンがまんまスーパーロボットとかデストロイガンダムとかの描写ってね。チームメンバーの全機体で合体はダンボール戦機思い出させましたが(´-ω-`)

レイ「第三部初登場!アシスタントのレイだよっ。今部もよろしくねーっ」

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです。本日8月21日は本作のヒロインにして私をイメージしたキャラ「ジャンヌ・ファーフニル」さんの誕生日です。同日公開の番外編5も見て頂けると今後がより楽しめると思います」

今回の番外編は未だ陽の目を見ていないシュバルトゼロガンダムの後継機のコンセプトについてちょびっと触れているからね(´-ω-`)性能を求めつつも、とある一つの機能の為に奔走するお話もよろしくお願いします。
と、こちらはEPISODE2の公開です。宗司に話しかけた私立東響湾ピースランド学園の学生。それはあの子たちだったっ!

レイ「それ、前回でばらしてたよね?」

リライズの事考えてたらやっちゃった☆(゚∀゚)

ジャンヌ「こういうミスが」

分かってるからこれ以上言わないで、豆腐になっちゃう( ;∀;)

ジャンヌ「豆腐メンタルどころか、そもそも豆腐ですか」

レイ「あはは、豆腐メンタルの話懐かしいね」

そんなわけでどうなるEPISODE2!( ゚Д゚)


 

 

 東響の中央区の街で少女はため息を吐く。

 

「はぁ……。簡単じゃないとは分かっていたけど、やっぱり適合者はいないな……」

 

 ため息が手にもっていた携帯端末に掛かる。携帯に示されるのは自身の上司を経由してもらった特殊なセンサーアプリ。だがその反応はゼロに等しい。

 このセンサーに反応する人物を探さなければならない。とはいえそのセンサーも合致する人間の選別にかなり厳しいところがある。この作業を学園入学してからずっと、訓練のない空いた時間に行っていた。同じ任務に従事してくれるパートナーの少女も手を上げて苦笑いする。

 

「そうだね……私のDNLに対する感覚でもこれだけいるとそうそう掴めない。でもまだ初めて2週間くらいだし、あくまでも私達は見つかる可能性を少しでも高める為の存在。本当の狙いはちゃんと任務に従事できるかが見られているんだと思うから」

 

「そう言ってくれると嬉しいけど……私としては自分の手で見つけたいなぁ……」

 

 パートナーの励ましが辛い。せっかくあの人の役に立てると喜んでいた自分はどこへ行ってしまったのか。

 そんな二人の気落ちを更に加速させる知らせが携帯端末に入る。

 

「あっ、メールだ。本部から」

 

「本当だ。何々……あ、これは」

 

「別の任務……学校への襲撃予測。こっちを優先しろ、か」

 

 メールには明日とある高校をゼロンが襲撃するという情報が入ったと書いてある。二人にはすぐに帰還して明日の戦闘に備えてほしいとのことだ。

 先の任務を果たせていないことは残念だが、今必要とされているのなら行った方がいい。パートナーの少女と示し合わせる。

 

「緊急案件だよね。すぐ戻ろうか、クルス」

 

「そうだね千恵里ちゃん。こっちはまだ緊急ってわけじゃないし、それ以上にまた誰かが傷つくのを見るのは嫌だよね」

 

 入嶋千恵里とクルス・クルーシアの二人は本部へと戻ろうとした。そんな時、彼女の視界に男性学生の集団が目に入る。何の偶然かその学生たちはメールに同封されていた陣泰高校の制服姿で、その高校の生徒であることが一目瞭然で分かった。

 さっきのメールの内容が思い浮かぶ。

 

(陣泰高校の襲撃……彼らが事件に巻き込まれる……)

 

 作戦前の勝手な行動は許されない。それはHOWの教習で散々言われてきたことだ。もし勝手に行動して、敵に情報をばらすようなことがあれば……。

 余計な迷惑を掛けたくない。だけど私は……動いた。

 

「あなた達、陣泰高校の生徒?」

 

「ん?」

 

 反応したざんばら頭の男子。それに続いて少しチャラい感じの茶髪の男子がヒューっと息を噴く。

 

「おっ、もしかしてナンパ!」

 

「いや、それは……あれ、その制服は」

 

「ちょ、千恵里ちゃ」

 

 もう一人がこちらの制服に気づいたようだったが、それに構うことなく、クルスの制止も無視して彼らに忠告を行う。

 

「明日の学校、あまり行かない方がいいよ」

 

「は?何言って……」

 

「危険なの。もし行けばあなた達の身が保証できない」

 

「何だよ……それ」

 

 明言は避け、危険であることを知らせる。少しでも防衛を楽にするために。犠牲者が減るように。

 最後にクルスが渋々と言った形で念押しする。

 

「これだけは言える。明日は注意して。私の直感が告げている」

 

「直感って……えと、新しい口説き文句?」

 

「だったらいいんだけどね。それじゃあね」

 

 そう言って千恵里達はその場を後にする。十分離れたところでクルスが苦言を申した。

 

「千恵里ちゃん、気持ちは分かるけど、そういうの良くないよ?」

 

「ごめん、分かってはいたんだけど……でも目の前にいるなら、せめて知らせたかった……」

 

「うん」

 

 勝手なことをして、怒られる予感がしている。けれどやってしまったことは仕方がない。クルスには決して庇うことはしないでほしいと頼む。

 

「これは私の責任だから、変に庇わなくていいよ」

 

「庇いはしないけど、止めなかったことは言うよ。それが事実だから」

 

「そ、そうだったね……ごめん」

 

「謝るくらいなら、言わなければよかったんだから」

 

「返す言葉も、ないね。はぁ」

 

 ため息が漏れる。基地に戻って報告した千恵里達は、上司からの呆れとため息を吐かれるのであった。

 

 

 

 

「何だったんだ、あいつら」

 

 家に帰ってきて、食事を済ませ一人机で宿題を済ませていた宗司は、夕方の事を思い出す。二人組の女子高生。急に話しかけてきたかと思えば、明日の学校には行くなとの意味合いの警告。突然の事に彼女達が去ったあと、小野寺達と顔を寄せた。

 誰だったのか、なぜピースランドの学生が警告したのだろうか、湧き上がる疑問の中で、風島が一つの予測をしていた。

 

『ひょっとしたら、彼女達はHOWの人達なのかも』

 

 Human Order to the World、通称HOW。MSによる犯罪抑止のための国営組織だと聞いている。他ならぬ私立東響湾ピースランド学園の運営も行っており、MSの開発者が指揮する部隊だと聞く。

 その学園ならHOWに所属する学園生がいても不思議ではない。そう思ったのだが、風島は不可解だと言った。HOWのような部隊が敵の襲撃情報を漏らすなんて余程の事だと。相方が止めようとしていたことからも、独断行動ではないかと言う。

 もしそれが本当なら下手な行動はしない方がいい。いつも通りの行動の方が上の人間が想定した通りに事は運ぶはずだと言われた。

 

(まぁ、行かなかったら普通に欠席だし、サボりたい気持ちはあるけど学業優先でいいか。……とはいえ明日は手放しで行けるわけじゃないな)

 

 帰り際、風島からは念のためみんなには話さない方がいいと言われた。却ってみんなの不安を煽るのは止した方がいいと。それもそうだ。

 

「っと、終わった。そろそろ風呂かな」

 

 宿題を終えて時計を見る。いい頃合いだ。下へと降りて行き母に風呂に入ることを告げる。明日に疲れは残したくなかった。さっぱりすれば余計な不安も忘れるだろう。

 風呂に入り、その日は寝床に付いた。

 

 

 

 

 翌日、登校して最初に風島たちと昨日の話をする。

 

「結局、今日が来てしまったわけだが」

 

「だよなぁ。結構美人だったのに、された話があんなんじゃ、ねぇ」

 

 昨日の出会いが別の時だったならと惜しく感じる小野寺。見ているだけで幸せな奴だと思う。

 反対に風島はそんな話をしている暇ではないと小声で律する。

 

「美人ってそんな。それであの後、帰って父さんにそれとなく聞いてみたけど、自衛軍でもそういうのは管轄する部隊にしか分からないことだって言われたんだ。少なくとも父さんは知らずにいた」

 

「つまり、あれは……」

 

「うん、独断ってことになる。理由は分からないけど」

 

「でも結局のところ、今日はヤバいってことになるんだよな?」

 

「そうだね。父さんは今日確認してみるとは言っていた。でもHOWは基本的に自衛軍より先にそう言ったMS犯罪に関しては鼻が利くらしいし、それであの子たちが知っていたのかもしれない」

 

 昨日の女生徒たち。彼女達が本当にHOWの……。しかしなぜそれを俺達に教えたのか。まさか本気で被害を抑えようと……。

 いずれにせよ、と風島は今日のことについて相談する。

 

「今日はとにかく、何かあっても落ち着いて行動しよう。父さんにも言ってあるから、きっと……」

 

「おっはよー。って、お、早速ミーティングですかなーソージ君達は」

 

 そこに羽馬が登校してくる。到着と同時に話し合っていた宗司達に声を掛ける。

 

「は、羽馬さん、いや、作戦会議ってわけじゃ……」

 

「ん?じゃあ何深刻そうに話してたの?」

 

「え、えっと、それは……」

 

 返しに困る風島。それに代わって咄嗟に機転を利かせたのは小野寺だった。

 

「あぁ、それがさ、俺ら昨日すっげー美人の高校生二人組見てさ。しかも向こうから声掛けてくれたのよ」

 

「お、オノコー!?」

 

 思わず声を荒げる風島だったが、その心配は無用であるとすぐに知る。

 

「へぇ、あんたが、珍しい」

 

「珍しいってなんだ!まぁ、知り合いと見間違えたらしくてそれでもいいからって、ナンパに誘おうとしたら来るな変態ってなったよ。まったく、災難だったぜ」

 

「あ……」

 

 小野寺は本当と嘘、半々で話していた。しかもその内容も小野寺らしい。上手い誤魔化し方だと思う。

 それに便乗する形で俺も作り話に加わる。

 

「あぁ。オノコーのせいで連れの一人を怒らせてたな」

 

「そうそう、静かな怒りってああいうの言うんだな。あの外人子ちゃん日本語上手だったんだけど、あれは上手すぎでしょー。制服も確かピースランドのだったから、当たりだと思ったのに……」

 

「ふぅん、へぇ……あれ、外人?ピースランド?」

 

 そのまま話が終わる、と思われたがふと何かに気づいたように羽馬は尋ねる。

 

「ねぇ、その外人の子、オレンジというか、赤いというか、そんな感じの髪色してなかった?」

 

「髪色?」

 

 言われてみて、思い出す。確かに外人っぽい雰囲気の子は髪色が比較的明るい、言われた通りの色に近かったと思う。

 なぜ分かるのだろうか。気になりつつも答える。

 

「……あぁ、確かにそうだったと思うけど」

 

 すると、顔を寄せて言ってくる。

 

「それ、多分私の中学時代の友達だ!あ、いや、その外人の子の隣にいた子が、多分私の友達だよ」

 

「そうなのか?」

 

 思わぬ繋がりで驚く。羽馬はその友人とその外人の子について話す。

 

「外人の子はクルス・クルーシア、海外の子でHOWに預かってもらってる子だよ。それでその隣にいたのが入嶋千恵里。小学校で同じ時期に県外から越してきた、親友の一人なんだよ」

 

「お、お知り合いだったんですか……それは何とも……」

 

「そっかー、千恵里達と会ってたんだー。まぁ二人のこと誘うオノコーの気持ち分かるよ。でもオノコー災難だったねぇ」

 

「えっ、それってどういう」

 

 災難という言葉にぎょっとする小野寺。宗司もまさかウソがばれた、と思ったが、彼女は別の事について言っていた。

 

「千恵里は、色恋沙汰よりも、お人よしがぶっちしてるから!中学でも後輩先輩、先生問わず、人助けして回るのが趣味だったからね」

 

「あ……そういう……いや、どうりで」

 

 ホッと胸をなでおろした小野寺の気持ちに心の中で同意する。と同時に、昨日までの疑問に一つの答えが出た。

 あの時の声かけ、あれはやはりこちらの事を気遣っての……。人助けの為なら、そう言った危険から人を離したくなる性分なのかもしれない。とても優しい子なんだろうな。

 一人納得していると、ニヤニヤと羽馬が顔を覗き込んでくる。

 

「な、なんだ?」

 

「んーいや、何か考え事?珍しく、ぼーっとしてる」

 

「別にお前が好きな話題じゃない。ただ、正義感に溢れた子だと思ってて、納得していただけだ」

 

 咄嗟に当たり障りのないことを言う。嘘ではない。その誤魔化しに深入りされることなく、納得した羽馬は残念そうに呟く。

 

「あー言えてる。でも残念だなー。ちぇりーこっちに来てたんなら私にも会いに来ればよかったのに。あ、ひょっとして仕事か?」

 

「仕事って?」

 

「ん?あぁ、言ってなかった。あの二人、今HOWに参加してるの」

 

 HOWという単語に顔が硬直する。やはりあの二人は、HOWの人間だったのだ。驚きと納得を同時に感じる三人。その中で風島がその事について言及する。

 

「で、でも高校生がそんなHOWの一員だなんて……羽馬さんと同い年なら、なおさら現場に出るのは早いような」

 

「もちろん、あの二人は今年からの参加よ。え、何か二人任務に?」

 

「あ、いや、その……」

 

 失言したな。一番注意しなければいけないと言った風島本人がやってしまった。何をやっているのやら。とはいえそのままではまずい為、何か妙案はと考える。

 そこに助け船の如く、チャイムが響く。それを合図に担任も入ってくる。席に着くよう声が飛ぶ。

 

「こらー、朝の会始めるぞー」

 

「やばっ、それじゃ」

 

「あぁ」

 

「ぼ、僕たちも」

 

「だな」

 

 みんな席へと着いて行く。そうしてこの日の授業も始まった。

 

 

 

 

 3時間目の授業、苦手な古文の授業中に宗司は窓の外を思う。

 

(今日襲撃するっていうのに、静かだ)

 

 平穏な時間。これが突然壊れるだなんて、想像がつかない。一体いつ、奴らは来るのか。気にしないつもりだったのに、既に頭の中は来ることばかり考えている。

 これが不安なのが普通なのだろうが、今宗司が思っているのはじれったさだった。 襲って来るなら早く襲って来い。とっとと済んでくれ。そんな勝手な要望を心の中で思いながら授業に目を向け直す、と丁度古文担当の先生にあ当てられる。

 

「じゃあ、ここ、相模。訳してくれ」

 

「あ、……あぁ、はい。っと……」

 

 苦手な古文、何がどうして昔の言葉はこう解読しづらいのだろうか。集中して聞いていなかったことを後悔する。だが今さら後悔しても遅いと、解こうとした。意識が完全に授業に向けられた時、

 

「!?」

 

 突如として響く窓ガラスの割れる音。その直後銃弾のような音が校庭側から響く。校舎の振動が伝わる。

 異常事態にクラスメイト達が何事かと先生の制止を振り切って窓の方へと群がる。宗司も同じことを思っていた小野寺達と外を見た。

 

「あれって……」

 

「間違いない。あれはゼロンの……それと、HOWのMSだ!」

 

 校庭で争うように宙を舞う白一色の機体と白と青に塗られた機体。ライフルの応酬を見せる。

 これがMS同士の戦い。初めて見る光景に息を呑む。小野寺も目の前で起こっていることに驚きを露わにした。

 

「ほ、ホントに戦って……いや、殺し合ってんのか?」

 

「こんな学校敷地内で銃撃戦なんて……みんな窓から離れて!」

 

 風島の声はクラスメイト達の声にかき消されて届かない。しかし窓付近への被弾で声が途切れ、古文の先生が一喝する。

 

「お前ら、窓から離れろ!死ぬぞ!」

 

「し、死ぬ!?」

 

 死という単語にみんなパニック状態となる。突然突きつけられた事実が好奇心に勝ってしまった。

 だがこれもまた普通なのかもしれない。俺自身も、それを言われて心臓がバクバクしている。訪れるかもしれない死の恐怖。

 その気持ちを吹き飛ばすように窓にMSが現れる。いきなりの近距離での出現に教室に悲鳴が木魂する。だがそれは決して恐怖の対象ではないことを知る。

 

「落ち着きなさい、私達は、敵じゃない」

 

 声を発せられて目を向ける。女の声。しかも聞き覚えがあった。声を発したMSの顔を見て言葉に詰まる。

 人の顔のような双眸、口元を覆うマスク、額に伸びる二本の角のようなパーツ。MSを良くは知らない宗司でも分かる。これは、MSの中でも最上位に位置する種類の機体。HOWから「英雄」として扱われるほどの機体、「魔王」と呼ばれる人物が使用するMSと同じ存在。

 その名は……。

 

 

 

 

「ガン、ダム……」

 

 

 白とオレンジ、赤に塗装されたガンダムが、そのパイロットが窓越しにこちらを向く。

 

 

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今回もお読みいただきありがとうございます。MSの襲撃はこの世界では割と日常です(´・ω・`)

レイ「日常なんだ……と、さりげなく千恵里ちゃんのガンダムが出て来たね」

ジャンヌ「オレンジと赤と白……イメージはアリオスガンダムみたいな感じですか?」

カラーリングはそれっぽいね。全体的な構成はガンダムMK-Ⅱモチーフだけども。この機体の詳細については多分LEVEL2最後まで見た人は少し分かっているよね。こちらはあくまで二号機。

レイ「冒頭で二人が探していた機体のパイロットこそ、その一号機のパイロットなんだねぇ。あれ、でも主人公の宗司君と会ってもセンサー働かなかったよ?」

ジャンヌ「確かに……」

あぁ、あれはあくまで「DNL」に反応するものだからね。DNLを必要とする機体なんですよ一号機は( ˘ω˘ )

レイ「へぇー。じゃあ宗司君の覚醒はもっと後?で乗るのもその時?」

それはこの話見続けていれば分かるよ(´Д`)

ジャンヌ「何かもどかしいですね」

レイ「それにしても……小野寺君の誤魔化し方が……ちょっとお茶目」

ジャンヌ「こういう性格だから、そうした方がいいって気の使い方ですね。そのせいで女の子も離れていくと」

良い性格なんだけどなー(´・ω・`)憐れオノコー。と、今回はここまで。最初の方でも話したけど、同日公開の番外編5もよろしく。

レイ「それじゃあ、また次回~」


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EPISODE3 犯したマイ・クライム・メモリー3

どうも皆様。リライズ最終話まで今日を入れてあと三日。ワクワクが止まんねぇぞ!な藤和木 士です(゚∀゚)最後どうなるんだろうね。イヴ復活とかするのかな?あとメイがヒロトの所に居た理由はっ?

ネイ「それに気になるのはいいですが、こちらに集中してください。LVELE3では初登場、アシスタントのネイです」

グリーフィア「同じく、LEVEL3初登場のアシスタントのグリーフィアよ~。で、作者君、作者君、なんで前回と前々回全部ジャンヌ達がアシスタントだったの?(ミサトさん風)」

ぶっちゃけて言うと、管理ミスです(;・∀・)前々回君達がやったと思ってたのよ。

ネイ「だから先週のレイたちのコメントにおかしなところがあったわけですね」

グリーフィア「ま、そのままアシスタント終わっても良かったのだけれども~」

そんなこと言うなよ(´・ω・`)泣くよ?と、今回はEPISODE3の更新です。

ネイ「救出に現れたガンダム、パイロットはやはりHOWに入ったあの子ですかね」

グリーフィア「大目玉喰らったみたいだけど、出撃停止なんてことにはならなかったみたいねぇ。その彼女がここでどう魅せてくれるのかしら~」

というわけで本編をどうぞ。


 

 

 初めて目の前にしたガンダムの姿に言葉を失う宗司。英雄と称される機体が目の前にいる。衝撃が走った。

 その機体は窓から離れるように言う。

 

「ちょっと、窓から離れて!」

 

「あ、あぁ」

 

 言われて宗司と小野寺、それに数人の残っていた生徒が彼女の近くの窓から離れる。するとガンダムは窓を破る。伸ばした手で鍵を開け、教室の方に入ってくる。

 教室内に入ると、その女パイロットは先生に事情を説明する。

 

「授業中のところ、申し訳ありません。私達はHOW。この陣泰高校をゼロンが襲撃するとの情報を受けて、出動しました。直ちに避難行動をお願いします」

 

「ゼロンが……分かった。みんな、避難訓練の通り、迅速に行動しろ。ただし行き先は学校の外だ。いいな?」

 

 先生も事情を把握して指示を出す。そのガンダムは敵がやってこないように外へと目を向ける。だが彼女に対し都美樹が恐る恐る近づいた。

 

「ねぇ……ひょっとして、千恵里?」

 

「……都美樹、このクラスに……」

 

 朝のやり取りを思い出す。このガンダムのパイロットは昨日会った少女の一人だった。顔は明かさないが、千恵里という少女は再会した友人に避難するよう告げる。

 

「悪いけど、今は逃げて。小学校の時みたいに、早く逃げないと」

 

「うん、そうだよね。護衛に付いてくれるの?」

 

「うん。昔みたいに、避難用スライダーを使う。準備が出来たら動いてもらうよ」

 

 避難スライダー、MS犯罪が起きるようになってから、生徒達を安全に校外へと避難させるために取りつけが必須となった滑り台型の脱出設備だ。

 今では滑り台だけではなく、地下通路への直通出入り口にもなりうる。準備とはおそらく現実化させるまでの時間を指すのだろう。入嶋千恵里の要請に先生が慌てて設備の前で現実化を始めた。

 本当に逃げるのか……そう思っていると、隣の教室のスライダーが起動する。実体化するスライダーに次々と生徒達が乗り込む音がする。だがそれはやたら目立つ巨大なもの。ゼロンが見逃すはずがなくライフル射撃がスライダーを襲う。

 

「あっ!隣の奴らが!」

 

「大丈夫」

 

 小野寺の悲鳴を否定した千恵里。彼女の言葉通り、スライダーは破壊されなかった。ビームの着弾と同時にそのビームが周囲へと拡散されていく。そのカラクリを明かした。

 

「スライダーには多重装甲、そして耐ビームコーティングが施されている。前に私が提案したのを教訓にしてね」

 

「へぇ……」

 

攻撃に対抗できる設備が施されている、というのは初めて知った。てっきり何の対策も取られていないものだと。攻撃が効かないことで手が止まった敵機を、HOWのMSが隙を突いて落とす。

 とはいえ学校の校舎まではそれらは施されていないようだ。そしてそれを狙おうとした敵機が一機、校舎に狙いを定める。

 

「て、敵がこっちを!」

 

「どいて!」

 

 風島を横へと着き飛ばし、千恵里のガンダムが応戦体勢を取る。が銃は放たない。その前にした方向から急襲したMSが敵を止めた。

 ビームの光剣を敵機体から抜き、爆発を背に向き直る機体。ガンダムに似ている。しかしゴーグルパーツやV字アンテナがない。おそらくは違うのだろう。その機体のパイロットと千恵里が会話する。

 

「ごめんクルス、助かった」

 

「クルスも戦っているんだ……あれをDIENDなしで」

 

 クルスは朝の話で聞いたあの外人の子だろう。あまり戦闘を見たことはないが、手慣れている、と印象を受けた。

 危機が去ったことに安堵する一同。だが一方でその事に若干の不服を持つ者がいた。

 

「そ、それより、突き飛ばす勢い強すぎです……」

 

「あ、ごめんなさい。つい……」

 

 突き飛ばされた風島が頭を痛めていた。机の角にでもあたったのだろう。あざが額に出来ていた。それをやった千恵里が、MS姿のまま謝罪する。

 咄嗟の事とはいえ、急に押されれば満足に受け身も取れないだろう。だが助かったことにこれ以上の結果はなく、突き飛ばされた本人も気にしていないことを伝える。

 

「ま、まぁでも、MSも減ってきているようですし、このままいけば何とか……」

 

「そうね……ってごめん、はい……はい。了解です。生憎ね。敵増援を確認。悪いけれど、まだもうちょっと時間かかるわ」

 

 誰かとの話の後、千恵里が言う。まだまだこの戦闘は終わらないらしい。それを聞いて落胆が起こる。

 

「そ、そんなぁ……」

 

「自衛軍は!自衛軍は増援に来てくれないんですか」

 

「自衛軍?いいえ、これは今HOW主導の作戦だから、余程の緊急事態にならない限りはそんな援軍には来てもらえないと思うけど……」

 

「そ、そうですか……」

 

 風島の表情が曇る。父親が来てくれることを期待していたらしい。まだそれほどではないというのは安心かそれとも不安か。

 だがそうしているうちにその時がやってきた。千恵里はクラスにいた生徒先生に指示する。

 

「よし、今から皆さんに避難を行ってもらいます。先生を先頭に行ってください。そして下で待機している隊員と一緒に敷地外への移動を。ここは私が受け持ちます」

 

「分かりました。よし、みんな私の後に続くんだぞ」

 

 そう言ってスライダーを実体化させた。校庭の手前側に出来たスライダー。それを先生が最初に下る。先生に言われた通り、その後をクラスメイト達が次々に滑っていく。

 千恵里は生徒が避難する間廊下側から敵が来ないか警戒を行う。そんな彼女に宗司は声を掛ける。

 

「なぁお前、昨日の子か?」

 

「ん?あなた昨日の……さっきの子もそういえば昨日いたね」

 

 宗司の方にちらりと顔を向けた後千恵里はそのまま警戒を続ける。まだ気は抜けないと仕事に熱を入れている。

 

「悪いけど、今は避難することだけを考えて。邪魔になるようなことも今はごめんだし」

 

「分かってる。でも聞きたいんだ。何で昨日、俺達に声を掛けたのか」

 

「あぁ……そういう」

 

 こちらの言葉に掻くような動作をして言葉を詰まらせる。訊いてはいけないことだったのだろうか。少しして彼女は答える。

 

「……単純に私の気持ちよ」

 

「え?」

 

「目の前にいた人間が事件に巻き込まれる。分かっていて何も出来ないのが嫌だったから、私は言った。それだけ。でも後でこっぴどく怒られちゃったけどね」

 

 肩を竦めて見せる。宗司達の思っていた通り、あれは独断の行動によるものだったらしい。

 理由は分かった。一方で自身の行いを恥じつつも、ここに来ていることに対して千恵里は咎める。

 

「にしても、何で注意したのに来てるのかな」

 

「怒るなよ。俺だって授業出てないと後々成績に響くし、何より知らないヤツから言われても信憑性もないだろ」

 

「うっ、それはそうだけど……死ぬかもしれないって、思ったことないの?」

 

「それは……まぁ」

 

 唐突に言われた問い掛け。死ぬかもしれない。今日ここに来る前に何度も考えたことだ。

 考えたさ。そう言えばいい。しかし言葉に戸惑った。死への恐怖、それを最初に自覚したのはあの時だった。それから今まで平穏だったからこそ忘れた死の恐怖。今言われて、あの時の恐怖が今と同じだということを思い出す。

 なぜ忘れていたのだろうか。あの時あれだけ怖がっていたのに。あの事をずっと引きずっていたのに、怖さを忘れるなんて。そんな事を考え込む宗司に、呆れを見せる千恵里は現実問題へと引き戻す。

 

「今考えるのは良くない。今は逃げることだけ考えて。悩むのはそれからよ」

 

「そうだったな……って、俺らが最後かよ……」

 

 見ると辺りには既に宗司、風島、小野寺、そして今行こうとしている都美樹とその友人達のみとなっていた。滑ろうとする都美樹が、こちらに呼びかける。

 

「ほら、遅れると千恵里の邪魔になるぞー」

 

「は、はい!行こう、相模君」

 

「分かったからお前はもう先逃げてろって!」

 

「言われんでも逃げるわっ!オノコーこそ!」

 

 言って都美樹の姿がスライダーに消えた。俺達三人も続いてスライダーへと向かう。まず先に風島が、続いて小野寺が滑っていく。

 

「た、高い……っで、でも確かこのスライダーには速度調整デバイスが……って!」

 

「おら、風島遅いんだって!相模も早く!」

 

「あぁ、だからと言って、スライダーのランプが変わるまでスライダー潜るのは禁止だぞ」

 

「あーもう、まだかよ……よっしゃ、変わった、行く!」

 

 後は宗司を残すのみとなった。千恵里はおそらくMSで窓から出るだろう。ここから滑れば、彼女がここに残る理由はない。

 スライダーのランプが切り替わる。同時に廊下側から銃声が響く。

 

「っ!敵がここまで!?」

 

「なっ」

 

「行って!ここは食い止める!」

 

 構わず行けと言われ、宗司は断腸の思いでスライダーへと入り込んだ。スライダーの高さからかなりの速度が出そうだが、途中で浮力のように速度が緩む。これなら尻が異常な摩擦熱を持たずに済むわけだ。

 そう納得しかけた時、不意の衝撃が後方から響く。何の音が、と思った時には異変が体に起こる。重力が背中側に傾く、いや、身体の傾きが背中と地面に水平になりつつあった。まるで落ちていく、いや、まさしくそれだ。悪寒がしたが、何をすればいいのか分からず、そのまま続く轟音が体全体を襲った。

 

「がっ!?」

 

 地面への着地と同時に肺の空気が絞り出される。衝撃が背中を打ち、頭もぐわんぐわんと揺れる。しばらくの間動けなくなる。

 くっ……動けない。早く、動け……っ。痛む体でもがいて、とにかく近い出口へと向かう。戦闘の音も思うように聞こえず、キーンと耳鳴りがする。鼓膜もやられてしまったのだろうか。だが徐々にそれらは快復していく。

 光の差す出入り口から外へと出る。だがすぐにそれが入り口、いや、入り口だったはずの部分から出たことに気づく。

 

「っ、入り口……上に行くんだから、当然か……」

 

 スライダーの根元には溶断されたような跡が見える。ビームが直撃したのだろうか。その時校門の方から風島達の声が響いた。

 

「相模君!こっちに来るんだ!」

 

「何入り口の方に戻ってんだよ!」

 

 二人は逆戻りしたことを指摘する。言いたいことはあるが、彼らの言う通り向かわなければ。その頃には感覚も戻ってきて痛みも楽になってきた。走ろうとした時、上からガラスの割れる音と爆発音が聞こえた。

 

「……ぁぁぁあああ!」

 

 地面へと落下する物体。砂煙を巻き上げたそれは金属音から打ち据えたような音へと変わりながら宗司の傍を転がった。

 砂煙の隙間から見えた姿に、目を見開く。それは昨日宗司達に声を掛けたあの少女の姿だ。

 彼女は先程の時に生まれた擦り傷を体の至る箇所に作っていた。制服もボロボロの状態だった。迷わず駆け出す。

 

「おい、大丈夫か!」

 

「っ……ダメ、逃げ、て」

 

 怪我を推して逃げろと言った彼女の言葉を証明するかのように上空より飛来した真っ白のMS。そのパイロットが憐れむようにこちらに声を掛ける。

 

「おやおや、迷い込んだ子羊が、悪魔に見惚れてしまいますか」

 

「っ……あんた……」

 

MSを前に無理に起き上がろうとする少女。だがスターターからは煙が上がり、とても装依には使えそうにない。

 傷ついた体を支えてやる。しかし彼女は離れるよう言った。

 

「離れて……あいつらは、危険……」

 

「だけど……」

 

 心配する俺に向かって、敵の側からも提案が投げかけられた。

 

「その雌の言うように、逃げるべきだ」

 

「何だと……」

 

「君は子羊。子羊は神と悪魔の戦いに巻き込むわけにはいかない。そんなものを助ける価値などはない。戦いに巻き込まれるのなんて、嫌だろう?」

 

 ゼロンの信者の提案に揺れる。あいつの言う通り、俺は只の巻き込まれた人間でしかない。元々逃げるためにこのスライダーを使っていたのだ。逃してくれるというのなら迷わず選ぶべきだろう。

 

「あなたは、関係ない。せめて、あなたは」

 

 千恵里もボロボロの状態で自分の事を後回しに言ってくる。かつての自分が選んだ道、それを選びさえすれば、自分は助かる。しかし今それを選ぼうとは思わない。なぜならそれはあまりにも傲慢な考えだったから。

逃げるように言っているが、それを邪魔したのは誰か。目の前にいる信者に言うことは一つ。今さら何を言っている。学校を襲撃して、逃げる生徒に襲い掛かって最初から殺す気で向かって来て、挙句の果てに出たのがその言葉とは。

 厚かましさすら覚える。挑発などは柄じゃない。だがそれでも言わずにはいられなかった。

 

「あぁ、逃げたいな」

 

「フフン、でしたら」

 

「けど、それを今まで襲っていたお前が言う資格なんて、あるわけないだろう」

 

「あなた……っ」

 

 困惑する千恵里の腕を回して立ち上がる。それが宗司の意志だった。その姿を見て、嘆くゼロンの男。

 

「そうですか。なら仕方ないですね」

 

 エイリアンのような腕が構えたビームライフル。その銃口がこちらを向いた。その射線に割って入ろうとしたクルスの青いMS。

 

「千恵里!っ、邪魔!」

 

「そこで見ていなさい、裏切り者。なぁに、すぐにあなたも行きますよ。ガンダムの、魔王の居ぬ間に、裁きは果たす」

 

「……!」

 

「くっ!」

 

 万事休す、もはやこれまで……その時彼女がいた場所に何か転がってくるのに気づいた。球体の形をしたボールのようなもの。そのボールは白、黒、赤の三色で模様を描くように色が付いていた。

 そのボールが跳ねる。そして喋った。

 

『HALLO、HALLO、ハロハロ』

 

「な……なんだ、こいつ」

 

 よく分からない球体は、挨拶のような単語を繰り返す。放心となるが、その時声が頭の中に響いてくる。

 

(……がい、お願い、私を、呼んで!)

 

「っ……声が……」

 

「なんで、ハロが……?声……?」

 

 分からないと言った様子の千恵里の反応から分かる通り、声は俺自身の頭の中に響く。一体何が……。

 理解が追いつかない宗司の不意を突く形で、ビームライフルの弾丸が放たれる。

 

「死して悔い改めたまえ!」

 

「まずっ!」

 

『!ハロ、マモル!』

 

 ハロと自称した機械の球は跳ねてその身を盾にする。ハロに直撃したビームは周囲に拡散していく。

 盾となったハロは表面が焼き付きながらも無事その機能を維持していた。再び頭の中に声が響いた。

 

(私はいかなくちゃいけない、この世界に。あの人が待ってる。私の到着を!)

 

(この、世界……?)

 

(誰か、この声が届いているのなら、お願い、私を、呼んで……!)

 

 声の主は何者なのか、何の事を言っているのか分からない。だがそれは間違いなくハロの中から響いているように感じた。ハロがその人物を呼ぶ何かを持っているのか。数度の直撃を受けたハロがボロボロになりつつ、こちらに口を開ける。

 

『コレ、コレ』

 

「……スターター……?」

 

 ハロの口から覗いたのは何かのMS用スターターだった。開閉された直後から更に声が強く響く。

 

(ねぇ、本当に誰も応えてくれないの?誰もいないの?)

 

「は、ハロ!それは出しちゃ―――」

 

 ハロのやったことを咎めようとする千恵里。だがその声が届く前にハロは後ろからの攻撃で爆発を起こす。爆風の反動でスターターが飛んでくる。

 千恵里を支える手とは逆の手で飛んできたスターターをキャッチした。同時に自身を呼ぶ声が確かな、はっきりとした声となって聞こえる。

 

(誰か、答えなさいよぉ!)

 

「っ……なら、どうすればいい!」

 

 虚空に向かって叫んだ。その時頭の中に閃く。もしかしたら、しかしそれは……。だがこれ以上思いつく方法はない。このまま何もしないで終わるよりは、可能性に賭けてみたい。

 そう思ってその手に握ったスターターを自らの腰へ当てた。瞬時にスターターのベルトユニットが装着される。

 

「ほぅ、向かってくると?ですが……」

 

「あなた、何を!」

 

 装着したことに反応を見せるゼロンと千恵里。だが問題はここから装依出来るかどうか。だったのだが、不可思議なことがここで起こった。

 

「っ……?何だ」

 

 頭上の空間が揺らいだ。突如として空間が割れて、覗き出す異空間を感じさせる穴が出現した。

 次元崩壊。宗司が今まで見たことのない、次元粒子、DNが引き起こす次元世界との接触を生みだす自然現象だ。

 その空間は宗司を吸い込もうとはしなかった。だがそこから人型のシルエットが舞い降りてくる。降りてきたのは、一人の少女だった。

 

「………………」

 

 一言で綺麗だと形容できる少女。銀髪長い髪に、どこかの制服を身に纏っていた。おしとやかなお嬢様かつ外人を思わせる身なりの少女が宗司の前へと舞い降りた。

 時が止まったとさえ認識できる静寂が辺りを支配する。そして、少女は目を開く。

 

「…………やっと、来られた。この世界に」

 

 新たな邂逅が、この世界の運命を左右する。

 

 

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今回もお読みいただきありがとうございます。何気に今回、注目する点がハロです。

ネイ「なんで、って言いたいところですけど前作含めてハロが明確に登場したことないんですよね作者さんの作品に」

グリーフィア「ガンダム作品なのに登場するの鳥とか龍ばっかりだったものねぇ~。ようやくガンダムのメインキャラクターとも呼べるハロの登場は、この作品じゃ中々驚きがあるわね♪しかもスターターのホルダーみたいな役割なのね~」

このハロも歴代ガンダム作品のようにHOWの至る箇所で働いていく予定なので、注目して頂けると幸いです。そしてメインは異世界の少女召喚( ゚Д゚)

グリーフィア「ここはLEVEL1と対比する感じかしら。異世界に訪れた元君、今回は異世界からやってきた少女。で、これもう予想が付くのよね~」

ネイ「銀髪で、LEVEL2のヒントと照らし合わせると……一人だよね、多分」

さぁさぁ、それはどうなることか(´-ω-`)次回は遂に主役機登場!今回はここまでです。

グリーフィア「次回も、よーろしく~」


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EPISODE4 犯したマイ・クライム・メモリー4

どうも、皆様。お久しぶりです作者の藤和木 士です。いやぁ、リライズ最終回良かったですね(^ω^)エクストラリミテッドチェンジはてっきりアーマーの連続換装で撃破するのかと思いましたが、全部乗せもロマン;つД`)そして生まれ変わりが……ううっ、今でも感動で涙が

レイ「ねぇねぇ、作者君。前からどんだけ時間たっていると思っているのかな?アシスタントのレイだよ?」

(-_-;)ナ、ナンノコトカナー

ジャンヌ「まぁ一歩譲って、バトスピの最新アニメ後の更新は認めます。ですが、今日何曜日?アシスタントのジャンヌです」

( ;∀;)ごめんなさい。ちょっと投稿する気が起こらなかったです。後まだゼロワンの最終回見てないからそれも見ないと。

レイ「今はこっちしようね?」

ジャンヌ「ガンダムはガンダムで、また感想総括ですね」

うん、でもあの最終回、というかリライズ全体で見ても初代ビルドファイターズ並みの良作だと個人的に思いますね。途中の感じも重たさあっても次が見たくなる、見返したくなる。それにつられて初代ダイバーズもまた見たくなりますし。
さて、そんなわけで今回は後れを取り戻すEPISODE4と5の公開です。まずはEPISODE4から。

レイ「今度は異世界召喚と……ジャンヌ・Fちゃん驚くだろうなぁ」

ジャンヌ「まさかあの子が、となりそうですよね。そんなシュバルトゼロガンダム組はまだ影も形も出ていないのですが」

さて、彼らの登場も気になるけど、あの子の召喚でこれからどうなるEPISODE4。白のMSシシャを突破できるのか?本編をどうぞ。


 

 

 その言葉は待望と思える内容だった。ようやく来られたという積年の思い、こんな少女がそれほどに待ち焦がれていたなど想像しがたい。

 目を開いた少女にこちらの姿は入った。放心した状態のこちらに、少女は問いを行う。

 

「あんたが、私を呼んでくれたのね」

 

「みたい、だな」

 

「何それ。はっきりしなさいよね」

 

 こちらの曖昧な回答に少女は嘆息する。確かに外見はとても清楚なイメージを与えるのだが、その性格や目つき、口調は別の意味で軽さを感じさせない。生意気、とでも言えばいいだろうか。

 そんな彼女が振り向く。そこに見えるのは無論ゼロンのMS。起きた現象を予想だにしていない様子だった。

 

「おやおや、次元崩壊の先から人が来るとは……かつてのガンダムを思い出す……しかし、邪魔はさせない!」

 

「え」

 

「っ!不味い、避けて!」

 

 千恵里の危険を呼びかける叫び、無慈悲な不意打ちが少女を襲う。

 このままでは危ない。そう思った時、スターターが反応する。

 

「っ!?」

 

『アナライズ終了、最適格者をそれぞれ確認。緊急事態と判断、MS装依システム起動を開始します』

 

 勝手に起動するスターターのシステム。二人を挟むようにして装依の為のゲートが発生する。発生したゲートは物理的なエネルギー干渉で腕から放たれたビームを弾く。

 突発的な装依システムの起動で窮地に一生を得た。だが本番はここからだったのだ。前後に展開したゲートがこちらへと迫りくる。このままだと目の前の少女もMSに巻き込む形となる。慌てて突き放そうとする。

 

「は、離れていろ!」

 

「は?何、MSに?ちょっと、やめ……」

 

 だが彼女の声よりも先に、ゲートが閉じられる。瞬間不思議な感覚に満たされる。体がほどけていくような、だがすぐに元に結ばれていくような、そんな感覚。それがMSの装依の感覚だった。

 光で満ち溢れる視界。その中で、脳裏に記憶が流れ込む。見たことのない世界。竜のいる世界。誰かの記憶が、流れ込む。涙の記憶も共有していく。

光が収まっていくとその視界が開けていく。目の前に広がる機体インターフェース。宗司の体は、MSと一体化を果たした。視界に直接表示された文字に目が行く。

 

「ガンダム……DN……」

 

 それがこの機体の名前。全体表示画面でも、確かにガンダムの顔を表示させていた。しかしそれ以上に問題なのは、先程から耳元にうるさく聞こえてくる、少女の声だ。

 

『ちょっと、何でこんなトロイやつと一緒に装依させられてんのよ!しかもガンダムって、なんで私が……私なんかが』

 

 状況を呑みこみ切れていない、困惑する少女。だが今それはどうでもよいことだった。姿を現した新たなガンダムに静かに怒りを表す。

 

「驚いた、まさかまだガンダムがあったとは……しかし、所詮素人が扱うだけなら、赤子の手を捻る様な物!」

 

「来るっ!」

 

 このままだとやられる。宗司は今までの授業と同じ感覚で動かそうとした。

 ところが、機体はスラスターを不自然に吹かせただけで地面へと倒れ込んだ。移動するはずだった先をビームが通っていく。

 

「何、だっ、機体が思うように……」

 

「外した!?いや、思うように動くことすらも出来ないほど、未熟なだけか。ならばっ」

 

 こちらの動きの不調に勘付き、サーベルに切り替えてくる。このままではやられる。一体何が原因なのか。手当たり次第に動かすが、動きは重い。

 

「クソッ、このポンコツが!」

 

『―――なんだ、そういうこと』

 

 分からずにいた宗司の耳元で一人納得をした少女。諦めかけた宗司に対して喝を入れてくる。

 

『あんた、動かすわよ』

 

「はぁ?だから、動かないと言って……」

 

『馬鹿ね。あんた一人じゃ動かせないわよ。私が詩巫女だったのを、感謝するのね。合図で行くわよ、せーのっ』

 

「何言って……クソッ、とにかく動けェ!っ!?」

 

 ダメ元で力を込める。すると、先程のようなスカではなく、圧倒的な馬力と共にDNが放出された。横薙ぎに振るわれたビームサーベルの光剣が空を切る。明らかに違う推力でその光剣から逃れて後退した。

 

「……何が……!」

 

 地面に砂煙を起こしながら着地する。本当に、避けられた。一体何がどうして……と考えに耽りかけるも、目の前の光景を見て我に返る。逃げたこちらに目も暮れず、地面に尻餅をついていた千恵里に刃を向けるゼロンのMS。

 

「ちっ、だが、こちらががら空きだ!」

 

「っ!」

 

「いけない」

 

 再びスラスターの出力を上げた。俺達を助けてくれた彼女を護るために、バックパックからDNの粒が放出される。

 爆発的な加速力で両者の間に割って入る。咄嗟に振り上げた右手にバックパックのシールドが自動的に装着される。そのシールドでサーベルを受け止めた。

 

「ぐっ!」

 

『ちょっと、これ耐え切れない!離れなさい!』

 

 腕に熱を感じる。少女が警告を促す。シールドパーツに接続されていたビームライフルを溶断しながら、宗司は片手に千恵里の体を抱いて離れる。離れるタイミングでシールドが切り離されて爆発を引き起こす。

 千恵里を抱きかかえて、距離を取ったところで下ろす。

 

「っ……私、生きてる……で、でも」

 

「入嶋、大丈夫か。君も」

 

「はぁ……はぁ……これが……ガンダム」

 

 肩で息をする宗司。幸いにも右腕は無事だった。自身の安否を確認してからゼロンの方を見る。

 ライフルの爆発を振り払い、姿を現す純白のMS。機体に掛かった煤を払い、こちらに睨み付ける。

 

「……何なんだ。さっきから動けなかったり、よく動いたり。私をコケにしているのか」

 

『コケにしてる、ねぇ。それはあなたじゃなくて?』

 

「何だと?」

 

 機体のスピーカーでゼロンのパイロットと話す少女。勝手な言い振る舞いだが、それを気にしていないのか、自身の事を声高々に紹介する。

 

『えぇ。だって私は、ドラグディアの名誉ある十二名家、ファーフニル家の女だもの!』

 

「何だ、ファーフニルって」

 

 いきなり何を言いだしているのか。思わず問いかけてしまう。その一方HOWの面々は何か気づいていた。

 

「えっ……まさかあの子……」

 

「ファーフニルって、そういう……」

 

 HOWの間隙を縫うように空から新たなMSが飛来した。それはゼロンのMS。両腕をこちらに向けて無差別攻撃を開始する。

 

「きゃっ!」

 

「ち……新しいMS……」

 

『うるっさいハエね。ならこいつを使いなさい!』

 

 少女の声と共に、機体のバックパックに懸架されたもう一つのシールドユニットが腕に装着される。こちらにもライフルが装着されている。今度はそれで狙い撃てと言うのだろう。

 戦闘なんて初めてだった。やったことはない。精々シミュレーターの的当てゲームくらいのもの。ビームなんて扱ったことはない。

 HOWの人にやってもらえばいい。その考えが過るが、煽るように少女の声が響く。

 

『早くやんなさいよ!撃たなきゃ死ぬわよ!』

 

「っ!」

 

 どこまでも指示してくる。どうなっても知らないぞ!そんな苛立ちを裏に俺は狙いを上空のMSの一機に絞って、狙い撃つ。

 太くも細くもない一射が放たれる。それに反応して敵は散開して回避した。余裕を見せた敵の一人がスピーカーでこちらを侮辱した。

 

「へっ、へたくそ!」

 

『二度目は、ないわよ!』

 

「喰らえ!」

 

 少女の声と共にこちらもトリガーを再度引く。二度目のビームは煽りを行った方のパイロットに伸びる。そのパイロットは余裕を持って射線上から逃れる……はずだった。

 途中でビームの軌道が正面を逸れていく。それは避けたはずのゼロンのMSに吸い込まれるように向かっていく。

 外したはずのビームは予定通り敵を撃ち抜いた。爆発を起こした機体に理解が追いついていない様子のゼロン。

 

「ば、馬鹿な……確かに避けていたはず」

 

 空中へ手を伸ばしたもう一機の増援は、その間に別のHOWのMSにより貫かれる。残っているのは、目の前の敵一機のみとなる。

 

「残り一機」

 

「くっ、こんな子羊如きに……?」

 

 対峙する両者。HOWのMSが手を出そうとしたが、その助太刀を少女が断りを入れる。

 

『助太刀無用よ。こんなやつ、私の支援を受けて倒せないとでも?』

 

「この女!」

 

 ゼロンのパイロットが逆上して背部の武装を展開してくる。バックパックのキャノン砲を前に向け、銃剣を背後から手元に持ってきてこちらに弾雨を降らせて来る。

 その挑発を行った当の本人が宗司に迎撃を命じる。

 

『迎え撃ちなさい。脇下、ビームサーベルで』

 

「命令するなよ。勝手に言って!」

 

『来るっ!タイミングを合わせる』

 

 ウイングパーツを開いてスラスターを全開にする。光の軌跡と共に弾雨の隙間を縫って接近する。

 障害物競争の延長線上、動く物体を避けるというのは宗司にとっては余裕を感じさせる。ただ違うのは当たれば死ぬかもしれないということ、そしてまたあの不安定さが来ないかどうか。いつも以上に意識を高めて襲い来る物体を避ける。

 その動きにゼロンのパイロットは舌を巻いた様子を見せる。

 

「速い!素人がこんな動きを!?えぇい!」

 

 銃撃では捉えられないと銃剣を振るい、突撃に切り替えてくる。ブレードユニットを横薙ぎに振るって来る。その剣を受け止める形で宗司もサーベルを振り下ろした。

 火花散らす両者の剣。押し切ろうとするゼロンのMSだが、それを許さない。出力を上げて逆にはじき出す。

 

「ぐぅ!?」

 

「このっ!」

 

 二連撃が左手の銃剣を弾き飛ばす。続けざまに振るった攻撃を受け止められ、逆にこちらの光剣を取りこぼしてしまう。

 好機と捉えた眼前のMSが突きの構えを繰り出す。

 

「貫けっ」

 

「っ!!」

 

 突き出された銃剣の切っ先を寸前で姿勢を落として避けた。肩の上すれすれを銃剣の刃が通り過ぎた。

 懐へと飛び込む形となったガンダムDN。宗司は機体側から指示された腰の武装を迷わず引き抜く。ブレードの付いた銃。あちらよりも小型の銃剣を敵の腹部に圧し割いた。斬りこみを入れて露出した内部。そこに銃口を押し付ける。その行動に気づくパイロット。

 

「なっ……」

 

「っ!」

 

 無我夢中にトリガーを引く。押し当てた銃口からビームが連射される。それは切り裂かれた装甲内を蹂躙していく。

 やがて反対側からもビームが飛び出していく。力の抜けたMSの体が後方へ向けて倒れ出す。そして、爆発を引き起こした。

 至近距離からの爆発をもろに受けて、身体を焼かれるような痛みをわずかに感じる。MSのフィードバックダメージだ。

 爆炎が晴れていき、徐々に立てるようになる。眼下に見える敵MS、いや、パイロットの死体。その姿に後ずさる。

 

「あ……ぐ……」

 

『フン、楯突いたんだから、当然ね』

 

 少女の方は死体を見ても何も恐怖を抱かず、むしろ当然といったように淡々と言葉を吐く。

 とはいえ、何とか敵は退けた。もう戦闘の音も聞こえず、空からまた来るという気配も見せない。ようやく終わったんだという安心感に浸ろうとした。しかし後ろから複数の金属音と声がする。

 

「動かないで、あなたは重罪を侵している」

 

「え……あっ!?」

 

 ぎょっと振り向く。そこには既に先程の戦闘に加わっていたガンダムに似た青い機体とHOWのMS数機がこちらに向けて銃を構えていた。

 いきなりの事に驚き、銃を手放し、両手を上げる。その反動で思わず言い訳を口にした。

 

「ち、違うんです。さっきまで頭の中に声が響いてて、それで付けたらこのMSの中にいる女の子が出てきて、それがその声の主でだから……っ!?」

 

 しどろもどろになっていると、その間に再び光が視界を覆う。次に視界が開けると、MSではなく、人の体に戻る。少女も分離して、それぞれの体に戻っていた。

 少女は銃を向けたままの彼らに反目した。

 

「何よ何よ、私に銃なんか向けて、分かっているのかしら?」

 

「……あなたも、MS所持法違反の同乗者なんだけど」

 

 重い空気が両者に流れる。その対立をほぐしたのは、それぞれの理解者たる少女、千恵里だった。

 

「待って、クルス。先輩たちも」

 

「千恵里ちゃん!」

 

 横腹を抑えながら、彼女は間に入る。大分動けるようになったようだ。彼女は今の状況を踏まえた上で銃を下ろすように指示する。

 

「彼らのしたことは、確かに重罪だと思います。それに機密のMSまで纏った」

 

「そうだな。勝手にMSを扱った。いかなる理由でもそれは罰せられ……」

 

「なら、その纏ったMSは何ですか?」

 

 その言葉を聞き、一同はこちらを見る。先程宗司が装依したガンダムDN、それに意味があるように思える。

 その読みは当たっていたようで、クルスと呼ばれていた少女が口にする。

 

「ガンダムDN一号機、詩巫女と称されるDNL使いとその共鳴者でなければ装依出来ない機体……つまり」

 

「そう、つまり彼は、私達が探していた人物」

 

 探していた、と言われ壮大な話のように思えた。わざわざ探していたなんて、自分はそんな大層な人物などではという遠慮が思い浮かぶ。

 唐突な発言。ところがそれでも自分が全ての免除を受けられるわけではなかったようで、千恵里は俺達に向かってその身柄の同行を依頼した。

 

「いずれにせよ、あなた達には私達の組織、HOWの本部「ベース・ネスト」に来てもらいます。すべてはそこで、私達のトップの話を聞いて決める。それと、さっきはありがとう」

 

「え、あ、あぁ」

 

「来てくれる?拒否すると、また面倒なことになるから、来た方がいいんだけど」

 

 脅しも加わった要請に首を縦に振るしかなかった。その日の学校はここで休校となり、重要参考人として宗司といずこかより現れたファーフニル家の少女はHOWの本部へと連れていかれることになるのだった。

 

 

 

 

 同時刻、HOWの本部ベース・ネストにもその知らせが入っていた。総司令官である次元黎人は、回線で報告を受けていた。

 

『陣泰高校のゼロンMS部隊はいずれも沈黙。敵生存者はなし。またこの戦闘でガンダムDN二号機が中破しましたが、代わりに一号機が奇跡的に起動に成功。陣泰高校の生徒が異世界の住人と共に起動させたとのことです』

 

「……民間人が……その言い方だと、民間人は戦ったのか」

 

『はい、残念ながら。所持法違反の件も含め、こちらへの同行に同意してくれたそうです』

 

「そうか……迷惑を掛けてしまったな、また」

 

 ため息を吐く。MSの所持法違反者を出さない。それは黎人が常々心がけてきたことだ。異世界からMSを持ち込んだ「魔王」黒和元とジャンヌ・ファーフニルは仕方ないとはいえ、これまでにも何度か、事故で所持法をクリアせずにMSを装依してしまったものがいた。

 その者達も戦い、生か死を選んだ。生きてものちの人生に暗い影を落とした者も少なくない。陰でしか生きられなくなった者もいる。明確な存在を維持し続けている元もまた、魔王という立場に立たざるを得なくなった。

 まるでMSが人の命運を分けてしまう道具に思えて仕方がない。それを作り上げてしまった自分は……悪魔か。かつて愛する妻を失ったあの時を思い出す。何も出来なかった自分。妻が護った一人娘もまたMSの力を欲するようになった。

 自分が作らなければよかったのか。だがそんな後悔を奥にしまい、司令官としての責務を果たす。

 

「彼らは到着次第、こちらに通してくれ。案内役は……そうだな。入嶋千恵里君とクルス・クルーシア君にさせてくれ。ガンダムDN二号機の修復受け入れも忘れずに」

 

『分かりました。そのように手配を』

 

「それから……黒和元の方はどうだ?」

 

 本来CROZEのメンバーを率いるはずの彼がいないのは、理由があった。彼は最愛のパートナーと未だ古き愛機と共に、宙へと上がっていた。とある任務の為に。

 

『先程、連絡がありました。マスドライバーの使用でたった今、静止軌道上へと到着。戦闘宙域にて交戦するターゲットと、それを追う自衛軍部隊、並びに「違法機体」を確認したとのことです』

 

「そうか……無理はするな、と伝えてくれ。彼の機体も、かつての全盛期ほど圧倒できるわけじゃない」

 

『了解』

 

 通信を終えて、席を立つ。窓の外に広がる人工島「ピースランド」の風景。黒和元や蒼梨深絵、その他大勢で作り上げてきた島。ここに新たな仲間が加わるかどうか。

 

「なぁ、光姫、僕はちゃんと向き合えているかな」

 

 いるはずのない愛すべき妻に、そっと呼びかけた。いや、きっとそばで見てくれている。DNLでなくとも、そう信じている。相互理解の難しい今の時代を切り開く、それが自分という存在だと、強く自己暗示した。

 

 

NEXT EPISODE

 




EPISODE4はここまでとなります。

レイ「ガンダムDN……入嶋ちゃんの機体と、同じ機体だけど……」

ジャンヌ「まったく性能が違いますね……あちらは言ってしまうのが申し訳ないですけど、あまり活躍していなくて。でもこちらはピーキーで、でも才能が高く映りました」

エンゲージシステム搭載機とそうでない機体ってのもあるけど、本機はもう一つ明かされていない情報として動力源の違いっていうのもあるからね。とはいえ今のところ注視すべきはエンゲージシステムの有無っていう点。

レイ「シュバルトゼロガンダム以外のエンゲージシステム搭載機かぁ。パートナーと呼吸を合わせるって、この世界じゃとても大事なことなんだね!」

ジャンヌ「ですが……今のところ、あの二人はなし崩し的にって感じが強く感じますけれど……」

(´-ω-`)まー最初っから息の合ったバディなんて中々いないですよ。元とジャンヌ然り。その点ではこの二人は全く違う関係として成長させていくつもりではありますね。

レイ「そっかー。それまで楽しみだね」

さて、話したいことはもっとある。けどやはり触れたいのは今日地球を去るニパ子だ( ゚Д゚)

ジャンヌ「えぇ……(困惑)」

前半でも話したビルドダイバーズリライズ最終回で、まさかあんなメッセージを送るとか、しかもあれ配信一週間前に言ったらしいですね。ちょっと本気を見ましたわ。達者でな、ニパ子(´-ω-`)

レイ「それ以外にもあの最終回色々凄かったよね。ファイターズトライのミナト君似の人とか、外伝作品の活躍が半端じゃない!」

ジャンヌ「ZA-AZがここまで優遇されるなんて、驚きですよね。無印のダイバーズ時点でも出られている点でも凄いですし、今回に至ってはアルスの艦隊の一つを落とす本編レギュラーキャラ並みの活躍ですし」

後個人的な喜びとしては機動戦士ガンダムヴァルプルギスのオーヴェロンが味方増援に出てたっていうね。元君の外見モデルに使っているんだけど、まさか最近の作品から出してくれるとは思わなかった。作者さんも知らされていたらしいし、ファンサービスで言えば本当今回凄かった。
と、いつまでも語りたいけど、EPISODE4のあとがきはここで区切りです。

レイ「EPISODE5には、ようやく「彼ら」が登場だよ!」


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EPISODE5 HOW1

どうも、皆様。引き続きご覧の方は改めまして。作者の藤和木 士です。バトスピの新しいネットアニメ、「赫盟のガレット」一話から飛ばしてる展開ですわぁ(゚∀゚)重さならリライズにも負けない勢い、あとバトル演出の変更が凄い良かった!分かりやすい!

ネイ「アシスタントのネイです。でも今回は本当に今までのバトスピアニメとは色々と違いますよね。デッキ構成が現実並にガチに寄ったと言いますか」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよ~。ソーディアス・アーサーの投入も、超炎魔神の多重投入も今までは切り札の役目で一枚だけしか登場していなかったものねぇ。その上最新Xレアのソーディアス・アーサーも複数枚投入って言うんだから、これは今後が楽しみね~」

そのソーディアス・ドラグーンもう少し安くなってくれないかな!( ゚Д゚)高いわ!お前ちょっと扱いづらさもあるからもう少し安くなってもいいだろ!?というか最近バトスピ高いよ!?誰かに勧められるものじゃない。

ネイ「はいはい愚痴はその辺にしてください」

グリーフィア「今はぁ、こっちね~」

はぁい(´・ω・`)さて、続いてEPISODE5の公開です。

ネイ「いよいよ、彼のLEVEL3での初登場ですね」

グリーフィア「前の方で古き機体みたいなこと言っていたから、まだ新型機じゃないって感じよね。果たして敵はそれでどうにかなる相手なのかしら~?」

一体何を追っているのか。自衛軍、そしてもう一つの勢力は一体?そこに介入する黒のガンダムの意志はどこにある?というわけで本編をどうぞ。


 

 

 宇宙。MSの開発から十六年。人々はようやく宙へと進出を果たした。赤道付近に建てられた、宇宙エレベーターを中心に開発はこの数年で進み、実験的にコロニーが地球周囲の各所で作られつつある。

 その活動の為に、MSは非常に大きな力となった。元来の作業用スーツとして、宇宙開発は加速度的に進みつつあった。しかし、それは同時にMSが宇宙戦を想定する必要も生まれたということ。様々な宇宙用MSが生まれ、テロ組織にもそれらが運用されるようになった。

 だがそれはHOWなど各国防衛隊も同じ。そしてガンダムもまた、宇宙へと繰り出せるように改修が施されていった。それぞれの国が宇宙へと舞い上がっていく。もう宙は人類の新たなフィールドとなっていた。

 

 

 地球の宇宙エレベーター同士を空でつなぐリング「オービタルリング」からほど近い空域で、MSが展開されていた。

 漆黒のカラーリングに近いソルジアス達はとある物を追いかけていた。それは全身が金色一色に輝く一角のMS。背中に生える一対の翼のような盾を背負う機体は、青い輝きを放出しながら追いかけるMS達から逃げ続けていた。

 追いかける側のMSパイロット達は、そのスピードに苦戦を強いられていた。

 

『クソッ、相変わらず、なんて速さだ!』

 

『こんなもん、何で上はこんな装備で任せてきているんだ!』

 

「無駄口を叩くな!こいつは俺達自衛軍の汚点……何としてもこいつを捕らえろ。三番機、メガ・ビーム・バズーカスタンバイ!当てる気で撃て!」

 

 彼らは自衛軍の部隊だった。しかも極秘部隊。その目的は金色のMSを捕獲することだった。

 尋常じゃない速さだ。流石、二年前のラプラス計画の遺産……!「アンネイムド(名前のない)シリーズ」の兄弟の最後の一機、あの異常事態を引き起こした機体は必ず俺達が捕らえる。

 味方機の放ったメガ・ビーム・バズーカの一撃が宙域を照らす。敵に何とか追い縋りながら撹乱しつつの一撃、しかしそれを容易く回避する金色のMS。続けざまにサブフライトシステム「アメンボ」に乗った二機が捕獲用ネットを挟み込む形で放つが、それすらも躱していく。

 

『外れた!?』

 

『上手く行ったと思ったのに!残弾残り2、貯蔵粒子も少ない!』

 

「くっ……」

 

 引き際を悟る。これまでにも何度も捕獲作戦は行われてきた。月方面での捕獲作戦など、何度も経験してきた彼らにとって宇宙戦闘はもはやお手の物。にも関わらず奴を捉えるには至っていない。

 ここまで武装を消費すると警戒をしなければならない。同じくあのMSを狙う日本内部の敵、ゼロン。これまでの任務でも何度か交戦することがあり、パイロットを少数失っていた。その上、最近は別の勢力まで介入してくる。その介入してくるMSはあり得ない程の要塞戦仕様の機体で、圧倒的推力でこちらを吹き飛ばしてターゲットに肉薄するほどだ。

 そんな奴と毎回ギリギリで渡り合うなどまっぴらごめんだ。撤退を考慮し始めた時、奴はやってきた。

 

『……!隊長、接近する高速飛行体を確認。奴です!』

 

「クソッ、もう来たのか」

 

 舌打ちする各々。オープン回線よりあの女の声が呼びかけられた。

 

『展開する自衛軍MSに告ぐ、あのMSは我々が接収する。引け。警告を聞かなかった場合の安全は保障しない』

 

『あの女、また横取りかよ!』

 

「クッ……」

 

 ボイスチェンジャーで変更された声。宙域に侵攻してくる白色の大型飛行体が見える。両脇に装備された長射程ビーム砲と後部の大型プロペラントブースター。アームドベース(武器庫)を彷彿とさせる構成の中心に、申し訳程度の制御用と思われるガンダムタイプのMSが装着される。それは何が何でも追いつき、交戦することを考えられたものに見える。

 あまりにも違い過ぎる機体。しかもガンダムだ。苦戦は必至に違いない。ここは彼女の言う通り、撤退するしか……。

 ところがその進撃を突如として阻害する存在があった。地球方向から光が瞬く。光の線は高速巡行中だったアームドベースのガンダムの武器である長射程ビーム砲の一つを撃ち貫く。

 

『なっ!あの速度で当てた!?誰が』

 

「あれは……まさか!」

 

 撃たれた方向を見て唖然とする。まさか、あの機体が宇宙に。地球を背に映る姿。一対の翼に六枚の羽、宇宙に溶け込むような漆黒の機体、そして人の顔のようなフェイスインテリアとブレードアンテナ。

 その機体のパイロットが回線を繋ぐ。

 

 

 

 

『こちらはHOWだ、所属不明機、自衛軍作戦部隊への恫喝および、違法MS活動により処罰対象と認定する』

 

 

 

 

 HOWの魔王。シュバルトゼロガンダムのご登場だ。

 

 

 

 

「自衛軍部隊、作戦はこちらが引き継ぐ。貴官らは本宙域からの撤退、ポイントT49にて待機を」

 

 作戦宙域に到達後、乱入MSを逆に乱入して撃った元は自衛軍部隊へとそう呼びかける。隊長格の男性がそれに応答する。

 

『支援に感謝する。だが、これは我々の作戦で』

 

「分かっている。しかし貴官らの弾薬も限界だろう。それにMSの不始末は、俺達にとっても問題だ。上への許可は取っている。それに、まだ貴君らに役割はある。今はポイントへの移動と補給を」

 

『……分かった』

 

 やり取りの後、自衛軍部隊が撤退を始める。だが同タイミングで金色のMSが逃走を再開する。それに呼応してまたあのベース付きのガンダムが動こうとしたので、もう一度右腕部に装備されたビームスマートガンを撃って足止めする。今度はアームの根元を撃って破壊した。

 片方だけの砲身となった機体から、パイロットの怒声が浴びせられる。

 

『お前、何で邪魔をする!あの中には……』

 

「邪魔しているのはどっちだ。自衛軍の活動妨害、それに加えて宇宙におけるMSの違法活動をしているくせに、犯罪者が」

 

 反論を投げかけながら、黄金のMSの追跡に向かう。その後をベース付きガンダムが追いすがる。

 あの機体……アンネイムド・フェネクス、かつて自衛軍が実験的に開発したユグドラシルフレーム搭載機はパイロットと試験チームを壊滅させて宙へと消えた。のちに封印が施された一号機と二号機と同じく、最後の三号機もまた封印されなければいけない。特にあの機体は、危険な領域へと踏み入れた可能性があるのだから。

 可変した脚部スラスターユニットと追加サイドバインダーのおかげで目標との距離を詰めていく。逃げる金色の機体は不規則に揺れてデブリを躱しながら超高速で逃げる。ビームスマートガンの一射を放った。

 放った一撃はフェネクスを狙っていない。狙撃したのはデブリの一つ、廃棄されたタンクだ。誰かのごみに直撃すると爆発を起こした。それがビームマシンキャノンで誘導されたフェネクスを焼き尽くす。

 フェネクスは爆発から瞬時に抜け出すが、その一瞬の隙をこちらも狙い撃った。瞬間機体に張られていた青色のフィールドによりビームが拡散、金色の機体は受け止めた衝撃でバランスを失い吹っ飛ばされていく。

 

「DNウォールか」

 

 咄嗟にその名を呟く。それにこの機体のもう一人の同乗者が報告する。

 

『そのようです、やはり宇宙だからと本兵装を持ち出したのは失敗だったかもしれませんね、元』

 

 パートナーのジャンヌ・ファーフニルの発言通り、確かにDNウォールなら貫けるかもしれないために持ってきたが、その方向ではダメなようだ。

 もっとも、今回は「そのつもり」でこの兵装を持ち出したわけではない。別の目的の為にこの兵装が適任だと考えたのだ。

 ジャンヌに対し、このまま追跡することを伝える。

 

「それでも、目的には十分のはずだ。このまま追い込む」

 

『了か……後方ミサイル来ます!』

 

 その喚起に反応する。ノールックで回避運動を行うとマイクロミサイルの集団が周囲のデブリにぶち当たっていく。ミサイルの一斉射を行ったのは他でもない、追走するベース付きのガンダムだ。

 そこに回線で割り込みが入る。ボイスチェンジャーで声を変えた女の声がこちらを非難する。

 

『魔王、手を引きなさい』

 

「断る」

 

『神の如き力を発揮したアンネイムド……それに系譜するあの機体を、破壊することは人類の進化を阻む行為よ。それを分からないだなんて』

 

 神の如き力、とは「あれ」の事を指すのだろう。確かにあり得ない出来事ではある。しかしあれが人の進化を、ましてや神の力とは到底思わない。だからこそ言ってやる。

 

「神だとは……笑わせる」

 

『何ですって?貴方のガンダムこそ、その力の恩恵を』

 

「あぁ、受けているさ。だが俺は、こいつの力を神だとは思ったことはない。兵器は、兵器でしかないっ」

 

 機体を反転させる。慣性をそのままにこちらに向かって来ていたガンダムのもう片方のアームに向けて素早くビームスマートガンを放つ。完全に不意打ちだったのか、それとも注意散漫だったのか、避ける素振りを見せる前に撃ち抜き、機体から分離させた。

 

『ぐあっ!?』

 

『サーガ!あんた……魔王の癖にそれは』

 

「あぁ、俺は魔王だ。お前のような、神に憧れて目指す者の敵。だがシュバルトゼロガンダムは、魔王の駆るMSでしかない。強いて言うなら俺達の剣だ!」

 

 再び反転させて速度を上げる。残存DNの量としてはこれが最後の追走となるだろう。それ以上はじり貧になる。その前に打てる手を打つ。

 最大加速で再びフェネクスの後ろに付く。フェネクスはそれを嫌がって速度を落とす。そしてその手に光を灯す。ジャンヌが叫ぶ。

 

『高エネルギーのユグドラル反応確認、来ます!』

 

「っ!」

 

 光が放たれる。絹のようなオーラがシュバルトゼロガンダムに向かって来る。攻撃ともつかないオーラを避ける。オーラが投棄されていた何かの機械に接触すると、機械が分解される。

 やはりこの攻撃が来たか。その攻撃はユグドラシルフレームの力によるもの。俺達は「(とき)戻し」と名付けていた。物の時間を戻す、これもまたDNを用いた想像を絶する力。

 しかし対抗できないわけではない。それに何より、当たらなければどうにでもなる。放たれるオーラを的確に避けていく。

 

『元、ポイントまで距離残りマルマルサンゼロ』

 

「ターゲットロック、DNF!」

 

 DNFの発射へと移行する。その間にも敵は刻戻しを放ってくるが、それらはファンネルから形成したユグドラルフィールドで防ぐ。

 わずかな防御時間。その間にチャージは終わる。

 

『Ready set GO!DNF「ディスチャージ・ショット」!』

 

「喰らえよ!」

 

 ライフルの照射ビーム、それがプロテクションのエネルギーフィールドで増幅して大出力のビームとなって金色のフェネクス目がけて迫った。

 フェネクスは地球とは反対側に避けようとしたが、ビームの雨あられがそれを防ぐ。それは元が後退を命令していた自衛軍の部隊によるものだった。

 

『借りは返すぞ、魔王。撃て、奴を逃がすな!』

 

 弾雨の猛撃でフェネクスはフィールドを再展開する他なかった。DNウォールに加え、ユグドラルフィールドによる防御で攻撃を防いだ。しかし攻撃の余波で吹き飛んでいく。

 攻撃は奴には届かない。だがこれでいい。吹き飛ばされたフェネクスは地球の重力に捕まり、落下していった。その姿を見て、自衛軍の隊長が呟く。

 

『これが……あんたの狙い……』

 

「そうだ。宇宙空間では何分、相性が悪すぎる」

 

 これまでの作戦経過を聞いて、宇宙での勝ち目は今のところない。ならば、最初の段階まで戻すしかない。あのオーラの被害は大きくなるが、どうにも奴は人、特にライフラインに対してその光を使うことを極端に嫌っているようだった。

 もっともそれは即、死に繋がるコロニー付近での戦闘の話。地上でも同じかどうかまでは分からない。もしそうだとしてもあの常識外れの機動性は幾分か落ちるに違いない。地球の重力で縛れれば。

 それは同時に、もう一つの力も奪うことに繋がる。後方から追いついたあのベース付きのガンダムのパイロットが落ちていく光景を悲観する。

 

『そんな……リアを、フェネクスをよくも!』

 

 ガンダムはベースのスラスターを噴かせて、こちらに立ち向かおうとする。しかしそれに見向きすることなく、こちらは地球方面へと向かおうとした。

 

『待て!逃げるのか?』

 

「その方がありがたいんじゃないか?」

 

 指摘する。その機体にはほとんどの武装が切れていた。メインアームの長射程ビーム砲も失い、あるのは股間部の増加装甲に取り付けられたハイメガキャノンのみ。それでどうやって立ち向かおうとするのか。

 余裕を見せるのは危険だが、ある程度の余裕は見せつけなければ威嚇にも使えない。元は機体の増加パーツを排除して軽装状態となると翻して背を向けて地球へと向かう。

 

「俺は先に地上へと戻る」

 

『了解』

 

『クソッ、待てよ!』

 

 背後からの圧を感じるが、構わず大気圏突破を試みる。コース的には今がベスト、シールドを前方に向けて大気圏に突入する。

 熱されるシールド。シールドからは粒子が放出され、DNウォールが突入体となって加熱と加速を抑える。MSによる大気圏突入、これまでにも何度か行われている。シュバルトゼロガンダムでも十分可能なデータは取れていた。

 突入は順調だった。しかし背後からの殺気は収まらない。まだ狙っているのだろうか。突入角は決まっている。とはいえまだ移動はギリギリ出来る。回避が必要なら最悪……が、その必要はなかった。機体の振動が収まっていき、代わりに空気の振動が始まる。

 

『大気圏突破を確認、目標座標との誤差、プラス2』

 

「奴は撃ってこなかったか」

 

『みたいですね。冷や冷やしました』

 

 ジャンヌがホッと一息つく。DNLの感知にも反応はない。こちらの言葉に大人しく従ったか。

 しかし起こったことは報告しなければならない。奴らの足取りが追えればいい。あんなものに手を出す以上、碌な組織ではない。その時、回線が繋がった。回線元はHOWの秘匿回線。おそらくは、彼だろう。

 元は回線に出る。

 

「俺だ。作戦は終了、予定通り、アンネイムド3を地球重力圏内へと叩き落した」

 

『了解した。ご苦労だ、二人とも』

 

『これで捕獲に役立てばいいんですが……。でも案外今のシュバルトゼロガンダムでも戦えそうな感じでしたよ、黎人司令』

 

 ジャンヌが名を呼ぶ。彼らに自衛軍の任務支援を要請した黎人はその結果に頷いた。

 

『ふむ、やはり宇宙戦装備は正解だったな』

 

 成果にご満足のようだ。もっともそれは無事帰ってきたことにも言えるのだろうが。しかし元本人としては、まだ不満が残っていた。それを提言する。

 

「とはいえ、やはり加速性能に割り振ったせいで、武装が減っている。今回はなかったからいいが、格闘戦はやりたくないな」

 

『はは、それは今後の参考にさせてもらうよ。もっとも、君がその機体で戦うことも、ほとんどないだろうが』

 

「まったくだ」

 

 というのもようやくシュバルトゼロガンダムの後継機がロールアウト目前となったと知らせが入ったのだ。

 二年前の機体輸送の時もこれでようやく、と思ったが、受け取り直前で真紅の流星の再現によりその話はお預けとなってしまった。その分あれから更に時間を重ね、機体の完成度も上がっている。完成したことを喜ぼう。

 そしてもう一つ、喜ばしいことが黎人から報告を受ける。

 

『あぁ、それと君がいない間のCROZEの任務にあった陣泰高校防衛戦だが、作戦は無事成功。千恵里君も少々けがを負ったが、無事だ』

 

「そうか」

 

『それと、偶然にだがガンダムDN一号機の起動に成功した』

 

「起動に成功したのか。……待て、そのタイミングということは……」

 

『ご名答、民間人がMSを纏って戦った』

 

『民間人が……』

 

 思わぬ収穫だが、それは同時に懸念していたことだった。もしMSとの戦闘状態で適合者が見つかったら。任務地でも適合者を捜索する関係で、それも考えられていたが、こんな早くに見つかったのはある意味想定外だ。

 こればかりはその采配をした元の責任でもある。黎人に対し謝罪する。

 

「……すまない。俺のミスだ」

 

『いや、僕も考えが浅はかだった。君も、君の部隊も責任はない。その件について来てもらう手筈だ。それより、君にそれで報告しておきたいことがある』

 

「まだ何かあるのか?」

 

 尋ねると、黎人は更なる事実を明かす。

 

『それが……適合者のパートナーが、ファーフニル家の娘を、名乗っているらしい』

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みありがとうございます。

ネイ「何気に初めてですね。今作における宇宙戦」

グリーフィア「何かうちの作品宇宙戦が少ないのよねぇ。もうちょっと多くした方がいいんじゃないの?」

それはちょっと考えてるけど、何気に今考えている最終決戦も地上なんだよなぁ(´・ω・`)ま、でも地上が最終決戦の地だったガンダム割と多いよ。Vガンダムとか、ターンAとかGレコとか!あと鉄血も地球と火星の地上だ!

グリーフィア「……ねぇ、今あげたやつのうちの前半の共通点、分かる?」

止めろ!(゚Д゚;)なんかの偶然だから!そらあの御方だって地上で決着付けたいさ!どれも闇見えてる作品だけども!

ネイ「それ以上は、止めましょうね?あとVは宇宙から地球に降りたので微妙ですね」

せやな(´・ω・`)と話がずれた。

ネイ「シュバルトゼロガンダムの前に現れたアンネイムド・フェネクスとサーガと呼ばれたガンダムタイプ……これは、あの作品の?」

そうですね。LEVEL2でもミッシングリンクのアナザーみたいな物語で展開したけど、後々こいつらとも決着を付ける時は来ますので(´っ・ω・)っ

グリーフィア「にしても「名前のない」なんて言って、名前あるじゃない(笑)」

違うんや……またその時に話すけど、それペットネームなんですわ……( ;∀;)

ネイ「まだ明かせないというわけですか」

グリーフィア「いずれにせよ、元君はそいつを地上に叩き落すために宇宙に出たわけね。そして作戦は成功と」

(´-ω-`)現時点でシュバルトゼロガンダムではあれを抑え込む力がありませんからね。ちなみにアンネイムドシリーズと元君とは縁のある機体です。因縁もあるんですがね(´・ω・`)

ネイ「縁と因縁、ですか」

グリーフィア「作者の癖から逆算するに今までにも言われていたあれかしらねぇ」

そんなところです。さぁてと、今回はここまでです。次の投稿は後れを取り戻す意味でもいつもよりも短い間隔で投稿する予定です。

グリーフィア「次回はまた宗司君達の視点になるかしらね。MS所持法違反の件、どうなることかしら~、また次回~」


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EPISODE6 HOW2

どうも、皆様。リライズが終わってしまって木曜日が寂しい、藤和木 士です。一応バトルローグはあるけど、なんだか少し悲しいね……(´・ω・`)

レイ「アシスタントのレイだよ。まぁまぁ、11月にはダイバーズのバトルローグ配信が始まるし、しばらくはファイターズのバトルローグが始まるから、それを見ればいいんだよ」

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです。でも新作がないというのは少し物足りないかもしれませんね」

ダイバーズ一挙配信とかまたしませんかね。もしくはリライズのぶっ続け配信とか。さて今回も二話連投で、EPISODE6と7の投稿です。まずはEPISODE6から。

レイ「エターナちゃんの事を知ったジャンヌ・Fちゃんはどういう気持ちだったんだろう……。でも今回は宗司君達の視点に戻るみたいだね」

ジャンヌ「HOWといえば、他の人達はどうなんでしょう。深絵さんとか夢乃さんとか」

今回はそんな懐かしの一人が登場するね。もっとも時系列的にはつい最近登場した子なんですが。その現状と共に、宗司君はMSの開発者を前にどう思うのか?それでは本編をどうぞ。


 

 

 陣泰高校の襲撃騒動後、宗司とあの少女は千恵里などを含めたHOWの隊員達と共に車でどこかへと向かおうとしていた。

 とはいえそのどこかは分かっている。HOWの本部「ベース・ネスト」と呼ばれる場所。その所在地は確か、私立東響湾ピースランド学園も位置する人工島「ピースランド」の一つにあるはず。

 窓からの景色はやや薄暗い。もしかしなくもないが、よくテレビで見る外から中の様子が見えないガラスなのだろう。

 

「………………」

 

 静かに到着を待つが、やはり中は重々しい空気ばかりだ。対面に座る少女はむすっとした表情でこちらと目を合わそうとしない。千恵里達も護衛に徹しているため、あまり声を掛けるのも億劫だった。

 とはいえ何か話題で緊張をほぐしたい気も落ちもあり、宗司は思い切って車内にいたHOWの人、隣に座る眼鏡を掛けた男性に口を開く。

 

「あの」

 

「何だ」

 

「あ……昨日この二人と街で会ったんですけど、その時から襲撃があるって分かっていたんですか?」

 

「千恵里達が……あぁ、そう言うことか。いや、少なくとも、彼女達が街に出ていたのは別件だ。もっとも、君に関係ない話ではない」

 

 そう言ってその人が出したのはスターター。しかも宗司が咄嗟に装依したあのガンダムの物だ。

 その男性が言う。

 

「細かな説明は後程俺達の司令が言ってくださるだろうが、君が装依した機体はとある条件を満たした者でなければ装依が出来ないものだった」

 

「条件?」

 

「そうだ。その条件を満たす人物の捜索のため、彼女達は空いた時間に街に出て確認していた。ハロはその測定器としての機能も持ち合わせていた」

 

 ハロという単語を聞いて視線をクルスの手元に向ける。彼女の持つ箱にはビームを受け止めて破損したハロの残骸が収められている。

 宗司の視線に気づいたクルスがその箱を少しだけこちらに見せる。

 

「大丈夫だよ。ハロは案外頑丈に出来ているし、もっと言ってしまえば機械だから」

 

「あ……でも壊しちゃったのはちょっと……」

 

「そういう気持ちも分からないでもないよ。私も似たようなものを持っているから。この子のおかげで二人は助かったから、私は凄く感謝してるし」

 

 彼女の顔が意味深な笑みを浮かべる。何かあることを感じたが、それを指摘するより先に千恵里のうつろな声が反省の言葉を紡ぐ。

 

「命が助かってもあんまり嬉しくない……度重なる命令違反の上に、民間人をMS所持法違反にしてしまって……クビって言われてもおかしくない……」

 

 力なく笑うその姿。見ていてこちらが申し訳なくなってしまう。そうさせてしまったのが自分も一因だというのだから。

 落ち込みの激しい千恵里。そんな彼女を横目に見ていた少女が重いため息と共に文句を言う。

 

「ちょっと、私の横でそんなグチグチ言わないでよ。私が悪いみたいに言ってさ」

 

「言ってないって!?……いや、ちょっと卑屈になってたけど」

 

「そうだな。入嶋、確かに命令違反の件に言い逃れは出来ん。だが命が助かって嬉しくないと思っている方が今回の場合多くの者を不快にさせる。隊長の言葉、忘れたか?」

 

「うう……忘れていません呉川小隊長。生き残ることを考えろ、生きていればまだ負けていない」

 

 眼鏡の人、呉川にその隊長の言葉を反復する。軍の隊長の人の言葉だから、もう少し強めの言葉と思っていたが、案外優しい人なのかもしれない。

 そこで少女の口が開いたので、宗司は気になっていたことについて尋ねる。

 

「それで気になっていたんだが、君の名前は?」

 

 少女の名前を聞いていなかったため、何と呼べばいいのか。しかしその質問は逆に跳ね返ってくる結果となる。

 

「は?何で私が先に名乗らなきゃいけないのよ?名乗るのなら聞いた方が先に名乗りなさいよ」

 

「……はぁ」

 

 屁理屈、という言葉が頭に思い浮かぶ。生意気と言ってもいいだろう。初めてその姿を見た時にも思ったことだ。

 とはいえ、確かに先に名乗るべきというのも納得できる話だ。少女の不満を受け、名乗ることにする。

 

「何よそのため息」

 

「いや、分かったよ。俺は相模宗司。15歳だ」

 

「ふぅん、ってか、やっぱり漢字なのね、名前」

 

「えっ」

 

「こっちの話。私はエターナ、エターナ・ファーフニル。同い年なのがちょっと癪だけど」

 

 少女はそう名乗った。見立て通り、外人のようだ。もっとも異世界の住人が外人としての部類で合っているのか不明だが。

 一応宗司もこの世界が次元世界と呼ばれる構造で作られているのは知っている。この世界の外側、宇宙の更に向こう側には種族の違う知的生命体がいることも学校に新しく取り入れられた科目で学んだ。

 そんな存在が目の前にいる。ただし外見はエイリアンのような全く違う存在というわけではなく、ちゃんとこちら側の人間の姿をした少女。しかも世間一般的には美人の部類だ。行く前に小野寺が何か言いたそうにしていたが、彼の気持ちも分からないでもない。

 その彼女に興味を持ったのは宗司だけではない。千恵里とクルスもまたそれに便乗して自己紹介する。

 

「宗司と、エターナね。一応言っておくと、私は入嶋千恵里、15歳」

 

「私はクルス・クルーシア。オースラリア出身で、あなた達と同じ15歳だよ。同い年だなんて奇遇だねー」

 

「何が奇遇なのよ……」

 

 クルスの行動を煩わしいように払いのけるエターナ。そのエターナだったが、その表情が一転して変わる発言が千恵里の口から発せられる。

 

「にしても……ファーフニルって名前から思っていたけど、あなたひょっとしてジャンヌさんの親戚」

 

「!姉さんを知っているの!?」

 

「わわっ、お、落ち着いて」

 

 千恵里にがっついたエターナの言葉。姉という単語、確かあの人が待っていると、言っていたような。その人物こそ彼女が探していた人物なのか。

その人物についてエターナは話し出す。

 

「私の姉は、ジャンヌ姉様は最高の姉様だった。自身の困難に立ち向かって、戦争を収めた英雄……。そんなお姉様が、この世界から迷い込んだ、あのクソ男に騙されて連れていかれなかったら、私達の世界は……」

 

「ちょちょ、ちょっと待って!クソ男ってひょっとして……」

 

「知っているなら早いわ……クロワ・ハジメ!あの間男!」

 

 その名前に聞き覚えがあった。MSがモバイルスーツと呼ばれていた頃、そのお披露目の場で暴走したMSにより生死不明となった人物、そしてその数年後、突如として再び現れた彼は、漆黒のガンダムを駆るようになったという。

 そしてその異名が、「魔王」。この話は非常に有名だった。まさに現世の英雄と言えるほどらしい。しかしその異名に反感を抱く者は多く、特にカルト集団、ゼロンなどからは目の敵にされているとか。

 その異名を持つほどの人間が、間男と呼ばれるとは。やはり人によってその人物の評価は変わるらしい。一体エターナにどういう印象を与えて行ったのか。というかそれだとその姉には夫がいるように聞こえるのだが。だがそれはないと千恵里達は反論する。

 

「えっ……いや、確かに元さんジャンヌさんとまだくっついていないけど、でもそんな浮気してるって感じないし……」

 

「あぁ?」

 

「そうだね。あの二人の純粋な仲だからこそ、エンゲージシステムがあの高レベルで稼働できているわけだし」

 

「そんなわけない!姉様は……」

 

「はいはい。とりあえず、積もる話は後にしてもらおう。そろそろ着くぞ」

 

 取っ組み合いに入ろうとしたエターナを仲裁して外に視線を向けさせる。海上に浮かぶ人工島、いくつも建てられた施設の数々。ここがあのHOWの本拠点、ピースランドの一つ「ベース・ネスト」であったのだ。

 

 

 

 

 到着して車を出ると、眼鏡の男が自己紹介する。

 

「紹介が遅れた。俺は呉川 鈴児(くれかわ れいじ)。HOWの部隊の一つ、黒和元の指揮する試作遊撃部隊「CROZE」の小部隊「Gチーム」の部隊長を務めている」

 

「クロワ・ハジメの指揮する部隊!?」

 

「そうだ。GチームはガンダムDN主体の部隊、必然的に入嶋、クルーシアも所属する」

 

 ガンダムDN、宗司の使ったあの機体。千恵里とも同じ機体だというが、なぜその機体だけ、適合者がいるほど特別なのだろうか。

 再び掘り起こされた疑問だったが、その前に千恵里が着いてからの行動に入ろうとするところに声が掛かる。

 

「要は私達の直接の上司ってこと。それで今からだけど……」

 

「あっ、千恵里ちゃーんクルスちゃんお待たせー」

 

 呼びかけたのは特徴的なツインテールを見せた少女。歳は同じくらいのように思えるが、そんな彼女の声に親しく千恵里達が返事をする。

 

「あ、みっちゃん」

 

「みーちゃんだぁ。お迎え?」

 

「そう言いたいけど、どっちかっていうと私はちぇりーのMS回収がメイン。私が話に混ぜてもらえるわけないでしょー。あ、CROZEのメンバーは呉川さん以外事後報告に向かってとのことです」

 

「了解した。CROZEメンバー、今日の任務は終了とする。各自いつも通り報告書をまとめておけ。解散」

 

 それぞれ解散していく、あるいは車を駐車場まで戻していく隊員達。出迎えた少女はこちらを一瞥すると声を掛けてくる。

 

「あなたがガンダムDN一号機を起動させたパイロットねー?んー……そんなに感じないなぁ……」

 

「か、感じる?」

 

「それで、こっちがジャンヌお姉さんの妹さんかぁ~やっぱ銀色の髪もだけど、感じ方も似てる!」

 

「お、お姉……!?姉様は渡さないんだから!」

 

 気になる言葉を発しながら二人をまじまじと見る彼女は、そんなこちらの事を置いていくほどに話を勝手に広げていく。

 

「あはは、流石に取らないって。でも昔から言われてたけど可愛いねぇ。あ、でも私より年上になる?いや、でも見た目とか服装的に……」

 

「ちょ、ちょっと!?」

 

「ま、詳しいことは父さんにまーかせよっと。じゃね、私はこれを送り届けていかなければならないので!」

 

 そして、彼女はその場を立ち去っていく。嵐のような印象を与える少女だ。こちらは何が何だか分かっていない。

 

「な、何だったんだ、あの子は」

 

「うー……あのクソ男……お姉様を何だと……」

 

 二人はそれぞれの感想を口にする。彼女の振る舞いに対し千恵里が謝罪した。

 

「ごめん、二人とも。あの子、割と普通と違うから」

 

「あぁ……それは分かる」

 

「まぁでも彼女のことはすぐわかると思うから、早速案内するね」

 

 クルスの言葉を通り、宗司達はベース・ネストの中へと招かれる。

 施設の中は意外と軍を感じさせない作りだった。機械が大量に配置されていて、まるで研究施設を思わせる。

 そうして奥へと進んでいった先で、一つの部屋の前へとたどり着く。その端末の前で呉川さんが対応する。

 

「司令、呉川以下二名、ガンダムDN一号機を起動させたパイロット達を連れて参りました」

 

 そう告げたのち、部屋のロックが開錠される音が鳴る。部屋の扉がスライドして中へと招かれる。部屋に待機していた男性が席を立ってこちらに歩み寄る。

 

「やぁ、初めましてだね」

 

 黒と白のメッシュの髪型。その男性が名乗る。

 

「私が次元黎人、このHOWにおいて総司令を務めさせてもらっている」

 

 かの有名なMS開発における父、この世界のMSのすべての始まりを作った人物に緊張が高まる。

 

「初めまして、相模宗司ですっ。MSの開発者に会えて、感激であります」

 

「ははは、そうかしこまらなくて構わないよ。どちらかと言えば僕は裏方、MSが普遍化したのは扱っている者達の努力だからね。それでも僕も助力させてもらっているから、その言葉は素直にありがとうと言わせてもらおう」

 

「はい……!」

 

「ではこちらに座ってもらえるかな。話したいことがある」

 

 挨拶を終えて席へと座ることを促される。宗司達は部屋のソファーに座り応じる。

 席に座ったことを確認して、早速次元司令から今回の件に対する謝罪が行われた。

 

「今回の所持法違反、せざるを得ない状況へとしてしまい、申し訳なかった。すまない」

 

「いえ!」

 

「所持法違反?あぁ、MSのか。言われてみれば」

 

「MSの所持法違反、宗司君ならよく分かっていると思う。これに関しては私が全身全霊を以って違反とならないように各部署に掛け合うつもりだ」

 

 宗司も気になっていた所持法違反。千恵里達からどうにかなるとは言われていたが、直接司令からの言葉を聞いて現実問題として受け止めた。

 この年で前科が、と思ってもしまう。だが司令のそうさせないという言葉に安心を感じた。MSの開発者なら、融通が利くのだろう。それには感謝しなければいけない。

 だが話はこれで終わりではなかった。むしろここからが本題であった。司令は宗司達二人に持ちかける。

 

「しかし、それだけではない。君達はガンダムDNを起動させた、そうだね?」

 

「ガンダムDN?」

 

「あのMSですね。それが何か」

 

 聞き返すと黎人は単刀直入に言った。

 

「君達を、HOWの戦力に加えたい」

 

「はぁ!?」

 

「戦力って……俺達が、HOWのMSパイロットに!?」

 

 戦力に加えたい、というのはおそらくそう言うことなのだろう。もしかすると「機密を知ったからには生かしておけない」面も存在しているやもしれない。しかし次元司令は機体が抱える問題点について触れる。

 

「実はあの機体はエンゲージシステムと呼ばれるサブパイロットコントロールシステムが備わっている」

 

「え、エンゲージ……」

 

「あぁ、やっぱりか」

 

 宗司は分からなかったが、エターナにはそれが何か分かったようだ。そのまま次元司令が続ける。

 

「エンゲージシステムはパイロットと適合したDNL使いとの同時運用が不可欠なシステム。その解析のための実験機だ。その観点からガンダムDNにはパートナーを含めたマトリクス登録が最初に行われる。言ってしまえば今のあの機体は君達でしか使用できない」

 

「セキュリティ……」

 

 パートナーとなるDNLとの共鳴。つまり宗司はエターナと適合したことになる。反目し合っているのに相性がいいとは、皮肉な……。

 しかしそれならそのマトリクスを消してしまえばいい話なのでは。そう思った宗司の言葉を否定する様に、次元司令は本音を漏らす。

 

「正直、システムの認証を解除することも出来る。だがあのシステムに適合した君達を、そうそう諦めるというのもしたくない。まして君のMS操縦技能とそれに併せられた異世界の彼女の力は絶大だ。だからこそ、私は君達をスカウトしたい」

 

 真面目に言われてしまい、反応に困る。MSの操縦が上手いのと、パートナーがいるから採用したいだなんて、思ってもみなかった。まだMSについて学びだしたばかりなのに、こんな実質オファーが来る事実。自身の実力を低く見積もっていたのだろうか。

 宗司は悩んだ。果たしてこれにOKすべきか。もし縦に頷けば実質HOWで働くことを意味する。学校がまだあるのかは分からないが、それでも職には困らないだろう。それは良いことだ。

 しかし同時に死の危険にも晒されることになる。あの時は感じなかった死への考えが呼び起こされる。

 本当に受けるべきなのだろうか。悩む宗司を気遣って二人に返答はまだで良いと答える。

 

「私としては強制しない。しかし、これは卑怯と思うかもしれないが、もしノーの場合、先の所持法違反取り消しが難しくなる可能性もある」

 

 罪の減刑が難しくなるという答えにエターナから非難の声が上がった。

 

「ちょっと、それずるいじゃない!拒否権ないってこと?」

 

 彼女の言う通りだ。協力する他ない選択肢。それに関してもまた次元司令は謝罪する。

 

「すまない。だが機密保持という観点から何らかの理由で監視が付く。それに異世界から来た君……えぇと、名前は」

 

「エターナ」

 

「エターナ君にはこちらでの保護も加わる。その上で回答をもらいたい」

 

 回答した次元司令の表情は明るくない。テレビの中の話と思っていたものが現実に目の前にある。

 答えに迷う。しかしこれはどのみち入る他ないのではと思った時、部屋の電話が鳴る。

 

「あぁ、失礼」

 

 断りを入れて次元司令が電話を取る。その間エターナにどうするのか意見を求める。

 

「……どうする?」

 

「何がよ。こんなの人権侵害じゃない」

 

「流石にそれは……機密に触ったのは事実だし」

 

「そもそも私はその先にそんなヤバいものがあるなんて知らなかったし、それで呼んだのはあんたなんだからあんたが一人で責任取りなさいよ」

 

「呼んでって言ったのお前だろ」

 

「ぐっ……私は被害者よ」

 

 頑なに自身の非を認めず、宗司に押し付けようとする。当事者だろうがと言おうとしたところで次元司令が戻る。

 

「お待たせ。返答に関してはこれから来る人物も交えて話そう」

 

「何よ、まだ懐柔しようっていうの?」

 

「そうなるね。まぁ君に縁がないわけではない」

 

 エターナの舌打ちに落胆のようなため息をつく次元博士。だけどもその表情は穏やかだ。

 そしてその理由をすぐに知る。ドアのノックがされると、次元司令が端末を操作して呼びかける。

 

「開いているよ」

 

 その声と共に扉が開く。扉の奥から入ってきたのは、銀髪の男女一組。丈の長い上着を羽織った男性と、エターナに似た雰囲気の女性。その二人を見てエターナが不意に立ち上がった。

 

「あんた……!」

 

 次元司令が言及する。

 

 

「紹介しよう。我が組織のスーパーエース、「魔王」の異名を持つ「黒和元」だ」

 

 

 鋭い眼光がこちらを一瞥した。

 

 

NEXT EPISODE

 




EPISODE6はここまでです。

レイ「登場するのって光巴ちゃんかぁ。フルネームではないけど、あの感じはそうかな」

ジャンヌ「司令の事をお父さんと言っていられたので、間違いないでしょうね。でもMSに触れない、というのが気になりましたね」

まぁそれは父親としての過保護さを表してますよ。いずれ分かることでしょう(´-ω-`)

レイ「そしていよいよ元君とご対面!だけど……ま、間男って」

ジャンヌ「んー……厳密には、違いますよね。ある意味間男、でしたけども」

昔のジャンヌだったら間男って表現肯定していただろうね(;´・ω・)今のジャンヌが聞いたら……ね。

レイ「その反応は次で見られるのかな?」

ですね。というわけで続くEPISODE7も宜しくお願いします。

ジャンヌ「それではバトンタッチです」


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EPISODE7 HOW3

どうも、皆様。引き続きご覧の方は改めまして。作者の藤和木 士です。

ネイ「アシスタントのネイです」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよ~」

それでは引き続き、EPISODE7の公開です。

グリーフィア「変わらず元君に対して嫌悪感丸出しなエターナちゃんねぇ。LEVEL1最後のまま、ここまできちゃったって感じね」

ネイ「すぐに襲い掛かりそうな気がしているんですが、どうなるんでしょうか……」

すぐにわかるさ(´-ω-`)ということで早速本編をどうぞ。


 

 

 黎人に呼ばれて訪れた司令室。そこで懐かしい顔を見た。

 ジャンヌと同じ、母親遺伝の美しい銀色の髪。昔のジャンヌよりも鋭くこちらをやっかむような瞳。それはかつてあの世界を出る時に文句を付けてきた彼女の妹の姿だ。

 あの頃よりも少しだけ背の大きくなった彼女はこちらを一目見ると立ち上がって詰め寄ってくる。

 

「クロワハジメ!あんたが姉様を……姉様を奪ったせいでぇ!」

 

 飛び掛かって首に爪を立てようとする彼女の手を、躱しながら手首を掴み上げる。そしてすぐに背中に回してその動きを地面へと押さえる。

 

「あぐっ!?」

 

「なっ……」

 

「元さん!?」

 

「元!そこまでにして」

 

 狼狽する千恵里を宥める形で、ジャンヌが制止する。これ以上はしないが、それでもまだ暴れる彼女を抑えざるを得ない。

 ジャンヌがエターナのもとに腰を下ろしたのを確認して、その拘束を解く。腕を庇いながらエターナは駆け寄ったジャンヌに恍惚の表情で想いを吐露する。

 

「姉様……やっと会えた……」

 

「エターナ……何でこっちに?」

 

「そんなの、姉様を連れ戻すためです!」

 

 なぜエターナがここにいるのか。話に聞いている限りでは呼ばれたような意味合いをしていた。質問するジャンヌを置いていく勢いでエターナが次々と今のマキナ・ドランディアの状況を語る。

 

「姉様がこの間男に連れられて一年が経った……その間にノット・ア・ジーの奴らはその抵抗を激しくさせてる。お母様も心配しているから、姉様は早く!」

 

「ちょ、ちょ、ちょっと待って!一年?一年しかたっていないの?」

 

 はい?とジャンヌの質問に返すエターナ。その言動にジャンヌの口が止まる。元自身もそれが意味していた事実に驚きを隠せていない。

 話がよく分かっていないまま聞いていた千恵里達。ただ一人、黎人と呉島だけが総合的に見てふむ、とこちらに確かめてくる。

 

「隊長、話を聞いていると、どうもおかしな点がありますが」

 

「俺も同感だ」

 

「は、はぁ?あんた何言って」

 

「ふむ……エターナ君、知らないだろうが、元とジャンヌ、二人はこちらの世界に来て、もう11年目に入ろうとしている」

 

「……どういう、こと」

 

 エターナは絶句した。そこで千恵里達の方も状況を理解した。

 

「つ、つまり、彼女はタイムスリップしてきた、ってことです?」

 

「タイムスリップというよりは、流れている時間が違う、というのが正しいな。俺の時と同じだ」

 

「確かに、君が戻ってきたのは5年後だったな」

 

 時間の違いが、このパラドックスを生んだようだ。道理で小さいと思ったが、納得がいく。

 そこで話を大きく脱線してしまっていることに気づいた黎人が話を戻す。

 

「っと、今はそんなことでごたごたしている場合ではないな。元、気づいていると思うが、こちらがガンダムDN一号機を起動させた陣泰高校の相模宗司君」

 

「相模です。その……緊急事態だったとはいえ、本当に申し訳ありません」

 

 黎人に紹介を受けた相模という青年がMSを使用したことを謝罪する。学生でありながら戦ったというところにジャンヌの事を思い出す。勝つためには仕方なかったとはいえ、あんなことを頼み込んでしまった自分はエターナに怒られてしまっても仕方がない。それどころかエターナまで今回巻き込んで、気づいたフォーンや最悪この後ジャンヌに怒られかねない。

 それでも目の前の青年は自分の意志でスターターを手に取った。適合者を見つけたハロの導きで纏った彼によって千恵里も助けられたのだから、その礼は言っておく。

 

「いや、こちらの隊員を助けてくれたこと、感謝する。やった内容には驚きだけどな」

 

「驚いた……?」

 

「無我夢中だったとはいえ、同じ人間を殺したんだ」

 

 その言葉に相模の息が詰まる。それに気づいて言葉を訂正する。

 

「すまない。それも考えていなかったか。無理もない」

 

「い、いえ……」

 

「いや、俺も同じ経験をしている」

 

 同じ経験。かつて暴走した時、誘拐されたジャンヌ達を助けるために無意識化で動いた時、そして記憶を取り戻して戦った時。意図せずして殺してしまった命を、忘れることは出来ない。

 そんな経験をした元だからこそ彼に言う。

 

「だからこそ分かる。お前はHOWに入るべきだ」

 

「えっ」

 

「は、元」

 

 黎人が咎めようとする。言われた相模もまた戸惑いを見せるがそれを押し切って語る。

 

「今のお前では、どこかで躓く。いや、お前の場合もう躓いているんじゃないか?」

 

「な、何を……」

 

「お前の過ごした時間を構成するDNが俺に告げている。過去を引き摺っている。エンゲージシステムで繋がったのなら、エターナも彼の躓きに気づいているんじゃないか?」

 

 DNLとしての直感が彼のトラウマをおぼろげに感じ取る。こちらを見る目もどこか怯えてなおかつ言いよどんでいるような感覚だ。

 どうやら言い当てられたようで、相模は視線を外した。エターナもそれを示すように顔を背けた。そんな彼らに本筋に戻す意味でこれ以上は詮索しないと伝える。

 

「まぁ、話したいなら話せばいい。今はそれが問題じゃない。お前達はガンダムDNに、エンゲージシステムに導かれた。そしてその剣を一度取った。先に進むも、退くも地獄。それを受け入れる覚悟があるかどうかだ」

 

「は、元……流石に……」

 

「事実だろう、黎人。答えに三日やる。それまでに、答えを出せ。千恵里達も、分かっているな」

 

「……はい」

 

 そう言ってジャンヌと共に外へと出た。すべての答えは俺達が決めるのではない。剣を手に取った彼らにのみ、決定権があるのだから。

 

 

 

 

「何よ……何でもかんでも、自分で決めて!」

 

 あのクソ男の横暴さに腹が立つ。マキナ・ドランディアでも英雄とおだて挙げられていたからって、調子に乗って……!

 エターナの声がクロワの消えた司令部の部屋に広がる。それに誰も沈黙していた。その沈黙を破ったのは司令と名乗ったジゲンという男だ。

 

「彼は芯を貫き通すタイプだからね。あながち、間違いではない」

 

「何よ、あんたもあいつに肩を貸すっての?」

 

 庇う姿勢を見せるジゲンにかみつく。その返しにふと考え込んでから答える。

 

「イエスかノーで言えば、イエスだね」

 

「どこがいいのよ!」

 

「じゃあ君は、その嫌な彼にすべての処罰を決められたいかい?」

 

「そ、それは……」

 

 言葉に言いよどむ。あんな奴に自分の命運を預けるのなんて嫌だ。首を横に振る。それを見届けてジゲンの言葉が続く。

 

「彼は周りの者達の事を最大限考える。上からの命令があろうとも、当事者の言葉を聞き、その意見を反映させられるようにしてきた。もっとも、それが全て、思い通りというわけも行かないがね」

 

「聞きました、それ。私の処遇とかも大分融通させたって」

 

 クルスがその通りだと事実を証明していく。例えそうだったとしても、エターナ自身の認識は違う。

 姉様を勝手に連れて行った最低な奴。お母様はいつもお姉様が生きているか心配しているというのに連絡の一つも寄越さないようだった。Gワイバーンを連れているのだから、いつだって戻れるはずなのに。

 

「それでも、あいつはあたしの世界に何の定時連絡も……」

 

「定時連絡……あぁ、そのものずばり、言い忘れていた」

 

 何かを思い出したようなジゲン。その口からとんでもない事実が語られた。

 

「残念ながら、Gワイバーンという機体、今はない」

 

「はぁ!?どういうことよ!?」

 

 Gワイバーンがないという事実に平静が揺らぐ。ないとはどういうことなのか。真相を訊きだそうと詰め寄るエターナを制止する声が開閉音と共に投げかけられる。

 

「その言葉どーりよっ、Gワイバーンは壊れちゃったの」

 

「みっちゃん!じゃなかった、光巴さん」

 

 あだ名を呼んだイリジマが訂正して名を呼ぶ。それは先程も来る途中で出会ったあの意味が分からない程に話を展開する少女だった。

 その姿に頭を抱えるジゲン。

 

「光巴……お前なぁ」

 

「だって、事実隠してもしょうがないじゃん。昔ここにあったMSオーダーズ、父さんと母さんの組織が壊滅しかけた時の戦いで消滅させざるを得なかったんだし」

 

「何……あなた知ってるの?」

 

 気になる単語は置いておくとして、事実を知る少女に尋ねる。すると少女は軽く応える。

 

「そだよー。だって目の前で、ビーム無理矢理拡散させたイグナイターから強制分離させられちゃって、そのまま元さん達と私達の盾になって消えちゃったし」

 

「盾に……でも、あれがなかったら」

 

「うん、帰れないって。でもGワイバーンはそうしなければならないって思った。だから行動したんでしょ」

 

「は、話が見えない……」

 

 二人の展開する話についていけていない人間が何人かいる。その疑問に答える形で、少女は自己紹介をした。

 

「紹介遅れたね。私は次元光巴。こっちにいる次元黎人の娘。そして元さんの機体の支援機、Gワイバーンに命を助けられた者の一人だよ」

 

ミツハは名乗ると、これまでの流れをイリジマに尋ねる。

 

「それでそれで、今話どうなってるの?」

 

「え、えっと」

 

「黒和隊長から二人に覚悟を問いただしていた」

 

「あー、やっぱり元さんはそうするよねー。でもそれが筋だよね。私だって自分の意志聞かずに決められるの嫌だもん。私の場合言っても聞き入れてくれないけど」

 

 言いよどむイリジマに代わり、応えたクレシマの言葉から事情を察した何やら自身の事を愚痴り出す。そんな事を知らないと言う前にミツハは父親とこちらに言う。

 

「とりあえず、回線で流されたエターナちゃんの客室は用意できたから、そこに案内するのでとりあえずはいいよね?」

 

「あぁ。それで問題ない」

 

「それじゃあ、二人は言われた通りに三日後までに答えを出して。戦うか必死に逃げるか」

 

「ちょっと、勝手に決めないで……」

 

「決めなかったらお役所さんに勝手に決められちゃうんだって。それをどうにかするためにも、君達が決めるんだよ。宗司君の方も分かったかな?」

 

「あ……まぁ、考えてはみます」

 

「ちょっと!?」

 

 エターナの言葉を無視して話は進む。もう何が何だか、分からない。

 結局返答は当初の予定通り、三日後までに自当事者たる自分達が決める形になった。あの男の働いている施設で泊まるなど、最悪だったがそれでも姉様と一緒に居られるのは悪くない。

 そうして私はHOWの預かりになるのであった。

 

 

 

 

 HOWの人に送ってもらって、家の前まで着く。一応今日から三日間、周辺にHOWの人が護衛に付いてくれるらしい。

 何かあったら渡した特殊警報通信装置を使って、と言われたが、それはまさに小学生が使う防犯ブザー。形としてはそれが最適なのだろうから仕方がない。HOWの人はこちらの返事の対応者でもあり、覚悟が決まったのなら言えばすぐに本部の方に送り届けられ、その決定に関する書類を書くことになるらしい。

 用意が良いと思う。同じ立場のエターナはHOWの方で客人として扱われると言うし。しかし問題はここからだろう。父と母に何と言おうか。正直に話すのが良いと思うが。

 悩んでいても仕方がない。家に入る。帰宅の挨拶をする。

 

「ただいま」

 

「あら、宗司。おかえりなさい。聞いたわよ。今日学校大変だったんだってねぇ」

 

「あ、うん。父さんは」

 

「父さんもあんたが心配だって早めに帰ってきてる。早くご飯にしましょ、荷物置いてきなさい」

 

 母は気遣ってご飯に来るよう言ってくれる。今はその方がいい。話すのをご飯を食べてからにすることにして、すぐに用意をした。

 

 

 

 

 ご飯を食べ終わってから、宗司は両親と向かい合って今日の事を話した。学校がゼロンに襲われたことや俺が事情聴取として呼ばれていたのは二人も知っていた。しかしその時点では明かされていなかった事実、俺がMSに装依して戦闘をしたことと、それに関してHOWからの要請があったこと、そしてHOWに入るかもしれないこと……。HOW側から伝えておいた方がいいことを明かす。

 

「……ふむ」

 

「あらあら……」

 

 二人は軽く驚いたような表情を見せる。そんなことが裏であったことは知らないから当然だ。

 宗司は今の自分の考えを二人に言う。

 

「俺、MSなんて生活のためのスキルにしたいだけだった。先生達からは凄いって言われてたけど、いざ戦闘なんて……って。でも今日、本当にそれだけの力があるって、実感した。ゼロンも恐ろしい奴らだ。でも、俺なんかに、本当に出来るのかなって。次元覇院にも、あいつから逃げた俺に」

 

 吐露した想い。ゼロンを許せない気持ちと自身にそれが本当に出来るのか。以前の経験が苛む。

 そんな宗司の言葉に、父が言った。

 

「まったく、やっぱり父さんの息子だな、宗司」

 

「父さん?」

 

 呆れにも似た反応。だが父は優しく語りかける。

 

「常日頃から、お酒が苦手な父さんが仕事では飲んでいるっていうの、聞いたことあったかな」

 

「あぁ、うん。仕事先の人への社交辞令、だっけ」

 

「そうだね。正直言って、僕のそれは無謀だ。でも僕は好きでやってる。けどそれを宗司にまで強制するつもりはない。無理はしてほしくない。断って僕らに影響が出てもいい。でも、宗司が行きたいっていうのなら、僕らは止めないよ」

 

 止めないという父の言葉。母も自身の本音を明かしながらもその背中を押すように言った。

 

「あんまり死に急ぐようなことされるのはお母さん嫌だけどね。でもあなたが戦うって言うのなら、それはきっと昔の事を乗り越えられるいい機会かもしれないから」

 

「父さん……母さん」

 

「だから、僕らでは何とも言えないね。今の世の中、どちらに付くのも地獄というのは、そのHOWの人の言う通りだと思うから。まだ三日あるのなら、時間いっぱい考えればいい。でも答えは出さなきゃダメだよ。それはお互いの為でもあるんだから」

 

 両親からの言葉。また自分に決定を委ねられる。そしてその日から約束の日まで、宗司は眠るまで悩み続けるのだった。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。

グリーフィア「元君、アウト」

暴漢に対して最低限反撃するのはアウトではないはずなんですが(;´・ω・)

ネイ「うぅん……合ってるんですけど……何か受け入れられないといいますか」

グリーフィア「やってることは正しいんだけどね。けど知っている女の子を抑え込むって、最近だとねぇ」

ネイ「ああいう過激な意見に肩持つわけじゃないけど、でもってなっちゃうよね」

ここである人の言葉を一つ。「撃て!撃たなければ撃たれるぞぉ!」( ゚Д゚)

グリーフィア「それ撃ってるの核でしょ!」

ネイ「ガンダムSEED、ムルタ・アズラエルの言葉ですね。そもそもその人も過激派」

まぁそうなんだけどさ(´・ω・`)でも現実でも言えることだし。ま、それは今どうでもいいんだ。向かって来る力に、身体が反応しちゃったんだろうねぇ。

グリーフィア「まーいきなりあんな口走って向かって来ちゃ、ね」

ネイ「総括としては、抑え込んだだけマシ、なんでしょうね」

そゆこと。

ネイ「そして元さん、やっぱり割とフリーダムに動いているんですね」

グリーフィア「政府に融通利かせるって、大分やっちゃってるけどねぇ。これでもまだマシっていうのが怖いわぁ」

元君としては極力不幸が起きないように色々動いているので。その為に機体の情報の横流しとかもあるみたいですし。近々言及される「黄のガンダム」もそれが関係してたりしますし(´-ω-`)

ネイ「黄のガンダム、ですか」

グリーフィア「それはちょっと楽しみねぇ。それで結局、宗司君は決断しなきゃいけない訳か。エターナちゃんもそうだけど、宗司君はどうするのかしら?」

ネイ「イエスかノー、そのどちらも地獄なんて。宗司さんのお父さんお母さんも辛いでしょうに」

グリーフィア「けどそれが最低限元君の用意した選択なんだって思うと、酷よね~。ちょっとHOWの要望も入り込んでいるけど」

HOWもあの機体のパイロットを欲してますからね。とりあえず、今回はここまでとしますか。文字数もいいところだし。

ネイ「次回は黒の館DNですね。ガンダムDNの性能、明らかにしていくみたいです」

グリーフィア「次は三部構成みたいねー。またまた長い!」

とはいえ黒の館は基本一回分で一話って認識ですのでね(;´・ω・)

ネイ「それでは次回もよろしくお願いします」


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黒の館DN 双翼英雄譚編 第1回 前編

どうも皆様。台風凄まじい影響でしたね。作者の藤和木 士です。

今回は黒の館DN、双翼英雄譚編の第一回となります。三部構成の内のまずは前半です。新たな主人公達とその機体達の紹介です。

それでは、どうぞ。


 

士「さぁ、みなさん(゚∀゚)双翼英雄譚編の黒の館DNも始めて参ります。作者の藤和木 士です」

 

ネイ「アシスタントのネイです。双翼英雄譚、双翼とは宗司さんとエターナさんの事をいうのか、それとも二機のガンダムDNのこと言うのか、気になるところですね」

 

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよ~。もしかすると元々の主人公の元君達のシュバルトゼロガンダムと宗司君達のガンダムDNを合わせて双翼なのかもしれないわねぇ」

 

士「始まったばかりなのでそれはまだまだ分からないぞー(´-ω-`)さて、今回はいきなり三本立て!紹介すること多すぎィ!」

 

ネイ「ってことで早速紹介ですね。まずは今部からの主人公、ヒロイン、そしてレギュラーの相模宗司さん、エターナ・ファーフニルさん、そして入嶋千恵里さんの三人の紹介になります。どうぞ」

 

 

相模 宗司(さがみ そうじ)

性別 男

身長 160cm

髪色 黒

出身地 日本 東響都 西東響市→中都区

年齢 15歳

誕生日 8月6日

血液型 B

好きなもの 剣道、旅、味噌系料理

嫌いなもの 古文、浅漬け、たくあん

愛称 ソージ

 

・L3からの主人公の一人。陣泰高校に通う高校一年生。父と母との三人暮らし。無愛想で寡黙な性格をしている。

 元々は西東響市に住んでおり、幼馴染の少女と仲良く遊ぶ仲だった。しかしその少女が次元覇院の信者の家族であり、彼女自身も次元覇院を信仰しておりそれを注意する。それに癇癪を起こした彼女の脅迫で恐怖して両親に相談。結果警察にも知らせて家族ともども一度西東響市を離れることになり、この知らせで次元覇院の地下基地が判明し、東響掃討戦が行われた。幼馴染の家族はこの作戦で行方不明となり、この事にかなりの負い目を感じて11年を過ごしていた。

 11年後、陣泰高校の普通科に入学。シミュレーターの練習用MSを用いた授業で抜群の成績を収めるほどのMS操縦センスを見せるが、事件の事について脳裏にちらつくことがあった。ある日の帰り道で入嶋千恵里と出会い、翌日の学校に向かうことを止めるように伝えられるがそのまま登校。ゼロンの襲撃に遭遇することになる。

 HOWの人に誘導されてクラスメイトと避難していたが、装依解除された千恵里を庇った時に、飛び出してきた汎用AIロボハロの中にあるスターターからの声(実際はスターターを媒介にした次元世界越しのエターナの声)でスターターを装着。同時に開いた次元崩壊でやってきたエターナと二人で新型ガンダム「ガンダムDN」へと装依する。その力と彼の技量でゼロンのMSを退けた。

 人物モデルはフルメタル・パニック!の相良宗介。彼のような孤児ではないものの、過去の出来事から性格が変わった後の印象は近いものを感じさせる。

 

エターナ・ファーフニル

性別 女

竜人族

身長 153cm

髪色 銀

出身地 マキナ・ドランディア ドラグディア フリュウ州 セント・ニーベリュング市

年齢 15歳

誕生日 5月3日

血液型 B

好きなもの ジャンヌお姉様、アイスクリーム、編み物

嫌いなもの 黒和元、梅干し、ゲーム

愛称 エターナ、トワ子、銀狼の詩巫女

 

・L3からのヒロインの一人。異世界マキナ・ドランディアより現れた少女。早い話がジャンヌ・ファーフニルの妹である。詩巫女となっている。

 スターター越しにDNLの力で宗司へと呼びかけ、こちら側の世界に呼ぶよう懇願。スターターの装着と共に地球へと招かれた。

 彼女自身はマキナ・ドランディアで実用段階に入ったエンゲージシステムの訓練を受けており、初めての運用となりながらもパートナーとなった宗司と共にガンダムDNの性能を引き出して敵を退ける。

 なお口の悪さは未だに直っていない。というか、余計に拗らせてしまっている可能性がある。原因は言わずもがな彼、「黒和元」であろう。

 モデルはL@ve Onceの橘 和翠(なごみ)。ジャンヌに近くなった印象だが、身長やある部分など、やはりあまり成長していない。姉妹揃ってである(なお長女のジーナはそんなことはない)。

 

入嶋 千恵里(いりじま ちえり)(L3)

性別 女

身長 155cm

髪色 黒

出身地 日本 東響都 港内区

年齢 15歳

誕生日 9月9日

血液型 A

好きなもの ぬいぐるみ、炭酸飲料、つけもの、人助け

嫌いなもの カルト集団、炎、料理(つけもの以外)

愛称 ちえり、ちぇりー、G02

 

・HOWのモビルスーツパイロットで私立東響湾ピースランド学園の生徒。パイロット専攻学科のAクラス。黒和元に憧れた少女である。新型ガンダム「ガンダムDN」の二号機「アルヴ」のパイロットとなった。

 仲の良い友人だった命や都美樹と離れ、クルスト共にピースランド学園、並びにHOWに所属。学園に通いつつ4月に入ってから定期的にガンダムDNの一号機パイロット候補の探索を東響の街で探していた。しかしゼロンの襲撃情報が入り、その阻止のために帰還する途中その襲撃先である陣泰高校の生徒である宗司と邂逅。注意喚起を促して少しでも被害を減らそうとした。

 その後情報通りゼロンが襲撃し、その撃退にクルスと共に投入される。それが初実戦であるものの機体の性能を生かし、迎撃を行っていくが途中で敵MSの猛攻により校舎から校庭へと転落。殺害させられそうになるが割って入ったハロの行動と、宗司の行動により結果的にそれが自身の担っていたガンダムDN一号機のパイロット決定に一役買う。

 モデルは変わらず「この素晴らしい世界に祝福を!」の女神エリス。

 

 

ネイ「キャラクターの紹介となります。といってもまた中編と後編で紹介はするんですけどね」

 

グリーフィア「ここはガンダムDNの関係者って言う感じかしらね」

 

士「そうだね。この三人は新鋭機にして主役機「ガンダムDN」の搭乗者だ。シュバルトゼロガンダムとかのハイエンドモデルより低い、所謂後輩キャラ的な位置づけだね」

 

ネイ「宗司さんは……またこんな重い過去を……」

 

グリーフィア「まぁどんなガンダム世界でも、大抵最初に曇らせておけば何とかなるわよね」

 

士「おっ、それはヒロト君に対する当てつけかな(^ω^)それ言うならこのキャラ付けは割と最近の小説系に多い設定でしょ。ヒロト君は割と近年まれに見る重さだけど」

 

ネイ「でもそんな彼の成長を、今回は見守っていくわけですね。元さんもどう接していくのか……」

 

グリーフィア「でも早速彼の地雷踏み抜きかけてるみたいだけどね主人公」

 

士「フォローしてるから無問題( ˘ω˘ )」

 

ネイ「それで……まさか彼女が来るとはって感じですよね、エターナさん」

 

グリーフィア「ちゃんと第一部でフラグ置いてってくれたものね、ジャンヌちゃんが」

 

士「そうなんだよねぇ。そこから姉を追いかけてこの世界に来ちゃうんだから驚きだよ。その方法も驚きなわけだけども」

 

ネイ「呼んでって言ってましたけど、スターターが呼んだってことでいいんです?」

 

士「それっぽいけどあれはあくまで触媒。宗司という要素がスターターを装着して、スターターのエンゲージシステムがエターナ側で用意していた要因に反応して、二つの条件が合わさったことで次元崩壊を起こして彼女を呼び込んだって感じ」

 

グリーフィア「まぁなんとなくは分かったわぁ。つまり、二人じゃなきゃこの奇跡は起こらなかったってことね」

 

士「しょうゆうこと!(´-ω-`)」

 

ネイ「そんな現象を目の前で見せられた千恵里さんは、レギュラーキャラなのに印象薄くなりますね」

 

グリーフィア「そんなことないんじゃないー?命令違反と敗北、これでも十分目立ってるわよー(棒)」

 

士「それ悪目立ちというのではないかな(^ω^)やってるの突き詰めると私だけど」

 

ネイ「ハイハイメタいメタいです。ガンダムDNも負けているのを考えるとちょっと不遇かなとも」

 

士「けど後述するけど千恵里の仕様と宗司の仕様とで大きく異なってるからね、性能。そこら辺をグリーフィアさん( ゚Д゚)」

 

グリーフィア「じゃあ、ガンダムDN、一号機と二号機の紹介ねー。エンゲージシステム以外にどんなところが違うのかしら?」

 

 

HGX-01

ガンダムDN

 

・機体解説

 HOWがこれまでに開発したMSのノウハウを基にシュバルトゼロガンダムから得た技術を可能な限り再現するというプロジェクト「プロジェクトDN」により開発されたMS。それがガンダムDNである。

 一号機と二号機の再現する技術はそれぞれで異なっている。一号機は目玉となるエンゲージシステムとツインジェネレーターシステム採用の試作リム・クリスタル搭載型DNジェネレーター、二号機は通常DNジェネレーターでのエラクスシステム搭載(試作リムクリスタル装備済み)と意欲的なものばかり。しかも両機体共通でDNフェイズカーボンを採用しており、防御性能も並み以上を持つ。

 どちらも背部バックパックを換装できるエディットバックパックシステムを採用で、あらゆる状況に対応できるが、それぞれの専用バックパックの性能が高く、機体との親和性を考えても他が使われることは少ない。ただし専用の大型支援機とのドッキングは考えられており、その際の換装が主となる。

 武装に関してはオーソドックスなものが多い基本装備。ただし重火器・実体兵器をバランスよく配備しており、あらゆる敵と戦うことを想定されている。

 非常に強力な機体となっているが、欠点がどちらもあり、最適なパイロットが乗らなければ性能はがた落ちする。

 一号機は白と黒、二号機はオレンジと白と赤のトリコロールとなっている。二号機のカラーリングは後々建造予定のカラーガンダムに合わせたカラーとのこと。パイロットは一号機が相模 宗司とエターナ・ファーフニル、二号機が入嶋 千恵里となっている。のちにそれでは格好がつかないとペットネームとして一号機が「アーバレスト(大弓)」、二号機が「アルヴ(北欧神話における妖精)」となった。なお一号機のスターターはHOWにて運用されているペットロボット「ハロ」の一機に内蔵されており、戦闘能力の低い装着者の平時のサポートを行う。

 コンセプトは「ガンダムMK-Ⅱの現代風リファイン」。ビルドガンダムMK-Ⅱの着想も反映されていて、バックパックはビルドブースターMK-Ⅱを参考にしている。

 

【機能】

・DNフェイズカーボン

 機体に採用された変色DN装甲。次元装甲から既にこちらに名前を変えて統一予定。防御性能は二号機の方が安定するが、一号機の方が出力の関係で防御能力は高い。

 

・ツインジェネレーターシステム

 一号機の胸部に搭載されるDN生産量を二乗するシステム。次元空間接触用ゲートを二枚並べて、高純度DNを取り出す。

 高純度DNの恩恵を得られるようになっている。しかし本機の場合エンゲージシステムでも本機のジェネレーター制御を行っており、シュバルトゼロガンダムタイプのものも掛け合わせてようやく安定化している。これによって未完成なツインジェネレーターシステムでも試作人工リム・クリスタルでエラクスを発動させられる。

 本機の開発でも未だツインジェネレーターシステムは完成しきっていないが、このシステム構成でシュバルトゼロガンダムが安定的にツインジェネレーターシステムを用いることが出来る理由の一つが、エンゲージシステムにあることを突き止めることが出来ている。

 

・エラクスシステム

 ジェネレーターを高稼働状態にして一時的に機体全機能をスペックの三倍に引き上げるシステム。一号機二号機に標準搭載されている。

 ただし仕様が異なっており一号機は前述したツインジェネレーターシステムでのエラクスシステム、そして二号機は初となる通常DNジェネレーターによるエラクスシステム搭載機である。これは通常機体のエラクスの方が安定するのではという仮説に基づいた実験的なもの。結果としてエラクスは人工リム・クリスタルでも十分抑えられるものとなったが、同様にエラクスの出力も抑えられたものとなっている。これはツインジェネレーターシステムだからこその爆発的な出力増加であり、この仕様は別の名前にすべきだとの発案も成されている。

 

・エンゲージシステム

 一号機にのみ搭載されるサブパイロットオペレーティングシステム。パイロットのサブパイロットが息を合わせて機体を制御する。逆にこれがパイロットの認証機能の一つとなり、適正ではないパイロットの組み合わせでは機体機能を停止してしまう。

 試験的に一号機に搭載したシステムで、当初は元とジャンヌが、癖が付かない程度に試運転したのちDNLパイロット二人(エンゲージシステムのサブパイロット側は試験的に次元光巴を想定していた)を見出す予定だった。つまり簡単に言ってしまえば詩巫女を必要としないエンゲージシステムだった。しかし劇中では声を聞いた非DNLの宗司と次元接触を果たした詩巫女のエターナ・ファーフニルが装依、そのままマッチングクリアしてしまった。想定外とはいえ詩巫女を得られたことで問題はないとそのまま運用を行うこととなる。

 

・DNウォール

 機体のシールドから展開可能な防御兵装。ビームシールドを装備するという案もあったが、あくまでもガンダムの技術を再現する点を優先してこちらを採用する。DNウォール発生器は一見そう思えない箇所に装備されており、更に併設された兵装を強化するエネルギーフィールドとしても使用が可能。

 

・エディットバックパックシステム

 機体のバックパックを換装する武装システム。ソルジアスのそれと同システムであり互換性がある。

 本機においては専用のブースターを装備するだけに留まらず、専用の大型支援機との合体が想定される。大型支援機はバックパックと接続し、本機を格納する形で装備・運用されるとのこと。

 

・???

 本機、特に一号機にはいくつか明らかになっていない実験機能が存在しており、解禁されるにはパイロット達が機体性能を引き出せるようになってから解放されていく。

 

 

【武装】

 本機の武装は機体自体の武装が一号機二号機共通しているものが多い。しかし出力の違いで挙動が違う兵装も存在しているため、細かく解説していく。

 

・ビームライフル

 標準的なビーム兵器。右手で保持する他、不使用時には右肩に銃口を後方に向けて装備される。

 一号機の主兵装。機体直結式でツインジェネレーターの出力を優先した兵装となっている。威力も相応で扱いには慣れが必要。チャージモードも備わっており、威力はかつてのロートケーニギンガンダムのブラスターモードのケーニギン・ビームライフルと同等以上。高純度DNと技術革新のおかげでエネルギーのリチャージも早い。

 専任パイロットが確定する前に決められたため、初期兵装であり、今後はパイロットの宗司の適性を見て装備を換装する。

 

・ビームアサルトマシンガン

 連射式のビーム兵装。二号機の主兵装で不使用時には同じく右肩に装備される。

 エネルギーの供給方式も二号機に合わせてエネルギーパック方式となっており、予備の弾倉はリアスカートに四本装備する。マガジンはバナナタイプで下から入れる。

 連射タイプなのは千恵里の照準が甘い為。通常のビームライフルよりもこちらの方が生かせるだろうとのこと。慣れてくれば通常のエネルギーパックビームライフルの支給が予定されている。

 

・ビームサーベル

 背部のソケットに併設されたビーム兵器。両機体に同じ位置に装備される。バックパック装備時には上方向に向けられた装着部が脇下付近まで移動する。

 スラスターを兼ねた部分に装着されているため、可動範囲が広く取り出しやすい。出力は通常。それでもマキシマム・タイラントの装甲を切り裂けるだけの出力はある。

 

・ブレードザッパー/ガンザッパー

 機体の両サイドアーマーにそれぞれ装備する銃剣。右にガンザッパー、左にブレードザッパーを装備する。

 基部が同じ兵装でそれぞれ銃剣として使用が可能。しかしその名の通り、それぞれ銃、剣の機能に特化しており、同時にそれぞれの武器は合体が可能となっている。ガンザッパーを前に、ブレードザッパーを後ろに合体して大型狙撃銃「コンバートライフル」に。ブレードザッパーを前に、ガンザッパーを後方に合体して大型実体剣「コンバートセイバー」になる。この合体の際、基部が回転し、持ち手が側面に折りたたまれる。ライフルの際にはサブグリップにもなる。

 マキシマム・タイラントのアサルトエッジ/バレットアックスがベースとなっている。それをブラッシュアップし、効率化した装備となっている。

 合体法は機動戦士ガンダムSEEDDestinyのストライクフリーダムのビームライフルを参考に持ち手の変形などにアレンジを加えている。

 

・アームシールド

 左肩に装備される可変実体盾。折りたたみ式のサブアームが内蔵されており、シールドもそのアームに沿って装備されている。

 アームは武装の装備も可能で懸架アタッチメントとしても用いられる。

 武装モデルは機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ黒鋼のガンダムアスタロト・リナシメントのサブアームシールド。

 

 

<アーバレスト・パック>

 一号機専用のエディットバックパック。ファイタータイプではない、通常のバックパックタイプ。

 武装は下部アームに接続されたシールドビームライフル二丁と上部のマルチキャノンウイング。射撃戦重視と一見思われるが、隠しギミックも含めて高機動、かつ近接戦対応型など侮れない一面も。またバックパックそのものは通常型だが中央部分には自立稼働する牽引用ファイターの取り付けが可能。

 モデルはビルドガンダムMK-ⅡのビルドブースターMK-Ⅱ。

 

【武装】

・シールドビームライフル

 バックパック下部のアームに接続された盾に装着されるビームライフル。使用時に前へと向けられるか、下腕部に装備されて使用する。

 シールド自体がDNウォール発生器も兼ねており、これを射撃に用いることでより強力なビームを放てる他、エネルギーフィールドの変質でノイズ・オーロラのようなビーム湾曲も可能となっている。

 そのままの状態だとビームライフルが攻撃を受けることになってしまう。その為ライフル自体は取り外しが容易になっており、手持ちにすることも。そしてライフルパージ後はライフルの留め具を折りたたんでビームサーベル発振器として使用が可能。こちらはシュバルトゼロガンダムRⅡのビームマシンキャノン、レイ・アクセラレータを参考にした機能である。またシールドはスラスターとしても使用が可能で、アームを外した部分はノズルバーニアとして用いられる。

 このアームの武装は専用の別兵装に取り換えることも可能。本機専用のエディットウエポンシステムとも呼べる。

 モデルはビルドガンダムMK-Ⅱのムーバブルシールド+ビームライフルMK-Ⅱ。

 

・マルチキャノンウイング

 機体の上部に装備される、ウイングとしての機能を持ち合わせるビームキャノン。可動部により前方に砲身を向けられる。

 砲そのものは長距離用ビーム砲で砲撃戦を行う。しかし可変機構が施されており、変形することでスラスターが多段的に露出したスラスターウイングへと機能を変える。この状態では機動性・運動性などが向上しかつてのシュバルトゼロガンダム(アレス)に匹敵する性能が得られるようになる。これらはツインジェネレーターシステムによって初めて十全に使いこなせる。

 一号機の性能を引き出すための兵装として重要なものだが、本兵装にはまだまだ隠された秘密がある。この二つのモードでも使われない可変部分が存在しており、まだ変形機構が残されているものと推察される。

 武装自体はシュバルトゼロガンダムにてかつて採用されたハイマット・ブラスター・ウイングとハイブラスターが下地となっており、機能もその二つの性能を一つにまとめたもの。ただし二つの機能を同時に使うことは出来ない。

 形状自体のモデルは模型戦士ガンプラビルダーズビギニングGのフォーエバーガンダムのファンネル+プラットフォーム。

 

 

<アルヴブースター>

 二号機に装備されるエディットバックパック。中遠距離専用のブースタータイプのパックとなっている。

 武装は可変ウイングユニットとその可動部に装備されたガトリングランチャー二門と下部アームに接続されるヴァルスビーⅡ二門、そしてヴァルスビーⅡ下方に装備されたビームバルカン。キャノピーパーツは下部に折りたたまれる。

 射撃重視なのは千恵里の戦闘適性で、中距離からの支援が有効と判断されたためなのと、高出力火器のエネルギー効率テストの為。通常のDNジェネレーター単機でこれら二種の高火力兵装を扱えるかが課題となっている。その為本来のアルヴブースターも存在しており、またブースター自体にDNジェネレーターを装備したダブルジェネレーター仕様となる装備法も可能。

 

【武装】

・ガトリングランチャー

 機体のウイング付け根の可動部分に装備されたビーム砲。四門の四連装ビーム砲でそれぞれ連続して一分間に100発のビーム弾を浴びせられる。更に砲身一つ一つが可動可能で、四方に開くことで中央にDNをチャージした最大出力モードが使用可能となる。

 構造自体はガンダムビルドダイバーズリライズのエルドラドートレスのライフルに似る。

 

・ヴァルスビー

 可変速ビームライフルの名称を持つ、分離取り外し可能なビーム砲。下部アームユニットに装備される。

 マキナ・ドランディアのマキナス機に装備されていたヴァルスビーを参考に開発された。ヴァルスビー自体はシュバルトゼロガンダムの予備兵装として持ち込まれていたものをベースにしている。威力はこちらの機体に合わせて強化が果たされ、なおかつエネルギー消費量を抑え込んでいる。

 威力も申し分ない兵装だが、それでも連射性が厳しく策としてビームバルカンが併設して装備される。近接防御はこちらが担当する。

 モデルはやはりガンダムF91のヴェスバー。

 

 

グリーフィア「以上がガンダムDNの性能になるわねー」

 

ネイ「性能の違い……一号機の方が扱い難しいんですね」

 

士「初号機の方がオーバースペックっていうのはやっぱりロボット作品でのお決まりだよ(゚∀゚)」

 

グリーフィア「初代ガンダムは二号機でしょうが」

 

ネイ「ユニコーンガンダムもカタログスペックはバンシィの方が上ですよ」

 

士「だまらっしゃい!(゚Д゚;)私はEVAを想定したの!」

 

グリーフィア「それだと一号機は0号機になるんじゃ?」

 

ネイ「プロトタイプとテストタイプって関係でしたよね」

 

士「ややこしいからこの話は無し(;´・ω・)それよりも」

 

グリーフィア「はいはい。開発順序的には深絵のブラウよりも一号機……えぇとアーバレストの方がジェネレーターの完成度が高いのよね」

 

士「割とどっこいどっこいだけども、その認識で合ってる」

 

ネイ「エース機として、と量産機のためのデータ取りの機体……アーバレストとアルヴってペットネームは……この時点ではまだ?」

 

士「まだですね」

 

グリーフィア「えっ、書いちゃいけない部分じゃ?」

 

士「それ以上に今の時点で書いたらダメなこと多すぎるのでそこら辺はカットしてます(´Д`)」

 

ネイ「あ、これでも許容範囲なんですか今回」

 

士「そゆこと。今の時点で出てる機能を隠しているのもあるけど、とはいえアーバレストの方は本当に機密事項が多すぎる」

 

グリーフィア「エラクスを隠していない時点で察するわぁ」

 

ネイ「エラクス以上に謎が多いんですね」

 

士「というわけで前編はここまでです」

 

グリーフィア「後半はジャンヌ達にバトンタッチねー」

 




前編はここまでです。

新たな主人公達、宗司君が比較的落ち着いた印象ですが、彼も抱える問題は大きい。これがエンゲージシステムで繋がるエターナとどういう関係を築くのか、またHOWで戦う決断をどうするのかが第1章の焦点となります。

エターナに関しては第1部の時からこの第3部のメインキャラクターとして展開させるつもりでした。LEVEL1にて少ししか登場することのなかった彼女ですが、彼女の登場は非常に意味のあるものになる予定です。

入嶋千恵里はLEVEL2最終章からの続投です。前章から示している通り、同じく登場したクルスと共にHOWで自分の目指す明日へ四苦八苦しながら戦っていく予定です。そして彼女に関連して登場した友人羽馬都美樹や、まだLEVEL3には登場していないもう一人のあの子もLEVEL3に関わっていく予定ですので、再登場を是非期待してください。

そして主役機となるガンダムDNは、パイロットの成長によって封印された機能を開放する一号機、そして不確定要素に左右されずに全性能を発揮する二号機という対比です。
エース機の象徴と量産のためのテストモデル、それぞれの側面を二体の機体として設定しました。シュバルトゼロガンダムがエース機かつ後々開発されていくMSの礎となっていったので、どうせなら今度はそれぞれの目的に合わせた二機を主役機として設定してみようということでこうなりました。

この子達が黒和元という主人公の背中を見て、どう成長していくのか、描いていきたいです。
ということで前編はここまで、同日公開の中編、後編へとこの後続いて行きますのでそちらも是非よろしくお願いいたします。


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黒の館DN 双翼英雄譚編 第1回 中編

どうも、皆様。引き続きご覧の方は改めまして、作者の藤和木 士です。

中編はこれまでの主人公黒和元とジャンヌ・ファーフニルの改めての紹介とシュバルトゼロガンダムの換装兵装、そして入嶋千恵里のパートナークルス・クルーシアと前章の敵であり、修復されたディスティニーライダーの新仕様「シクサス・リッター」の紹介です。

どちらも前章にて激突した者同士。その新しい仕様が果たしてどのような傾向となっているのかにも注目です。

それでは本編をどうぞ。


 

 

士「さぁ中編も参りましょう、作者の藤和木 士です」

 

レイ「アシスタントのレイだよー。双翼英雄譚編、開始したねー。いよいよレイアちゃん救出の時も近い?」

 

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです。本来の目的を抱えたまま11年……そろそろ救出しないと、エターナさんの言葉通りなら色々と向こうも危ないようですし」

 

士「そんなに時間かけられないのに11年もかからざるを得ないこの状況は、相当ヴァイスインフィニット側が巧妙に逃げていたってことなんだよねぇ(´・ω・`)とはいえその関係も、第3部ではいよいよ終幕の予定ですよ。ということでね、中編の紹介です」

 

レイ「中編は我らが主人公!黒和元君とジャンヌ・ファーフニルちゃん!それにクルス・クルーシアちゃんも第3部仕様での紹介だよ。そしてMSはそれぞれに関係する新仕様のシュバルトゼロガンダムとディスティニーライダーだね。それじゃあまずは人物紹介から~!」

 

 

黒和 元(L3)

性別 男

身長 172cm

髪色 銀

出身地 地球 日本 三枝県 四河市

年齢 32歳(経験肉体年齢)

誕生日 6月15日

血液型 O

好きなもの ボーリング、カードゲーム、パズル、特訓、アップルパイ、特撮(特にマックスマンとマスクライダー)、ジャンヌ

嫌いなもの 納豆、甲殻類、ハヴィナス、争いをもたらす者

愛称 ハッジー、和氏、黒き竜騎士、神殺しの魔王

 

・本作における主人公。異世界に招かれ、帰還し、神殺しの魔王となった青年。

 11年の月日の間に戦闘スキルは飛躍的に高まっており、自衛軍からもエースパイロットとして認知されている。二つ名の神殺しの魔王も、カルト集団に対するけん制と民間人へのアピールの為に名乗る。

 L2まではシュバルトゼロガンダムRⅡが搭乗機だったが、ようやく新型機が完成。それまでの間にもシュバルトゼロガンダムは各戦闘区域特化型の仕様で運用されていた。

 劇中では数年前の事件で行方不明になっていた「アンネイムド・フェネクス」の捕獲・撃墜の為に宇宙空間で行われていた自衛軍と謎の勢力達が展開した作戦に高速空間戦仕様で介入。アンネイムドとの戦闘に入り、地球圏の重力に叩き落したのち大気圏突破して地上へと帰還する。

 帰還後はガンダムDN一号機のパイロットとなった宗司とエターナと顔合わせ。エターナがやってきたことには驚いていたが、彼女をもとの世界へと送り返すことを前提にパイロットになりたいかどうかを二人に問い掛け、時間を与える。

 モデルは引き続き機動戦士ガンダムヴァルプルギスのマシロ・オークス。11年経っているものの、ガンダムの放出する高純度DNとDNLの相乗効果で老化が非常に遅くなっていることから姿がほぼ変わっていない。しかし相応に威圧感などが増しているイメージ。

 

 

ジャンヌ・ファーフニル(L3)

性別 女

竜人族

身長 160cm

髪色 銀

出身地 マキナ・ドランディア ドラグディア フリュウ州 セント・ニーベリュング市

年齢 28歳

誕生日 8月21日

血液型 O

好きなもの レイア、元、紅茶、パイ系のお菓子、歌

嫌いなもの 熱い物、甲殻類系、平和を踏みにじる者

愛称 銀の詩巫女、裁きの詩巫女、断罪の魔女王

 

・本作のヒロインの一人。シュバルトゼロガンダムのエンゲージシステムのパートナーを務める女性。HOWのCROZE副隊長。エターナの姉である。

 マキナ・ドランディアを出て11年、高純度DNとDNLとしての相乗効果で彼女も老化が、そして成長が限りなく止まりつつある。それでも変化を付けるために髪は腰下まであった髪をへその位置まで短くしている。これは激しい動きのある任務に対応するためというのもある。ただし本人は髪を切ることに抵抗があり、元はそんな彼女も素敵だと機嫌を取り持っている(とはいえ元も長い方が好きと言っている)。

 こちらでの生活にも慣れ、料理などをパートナーで恋人の元に振る舞うことも多い。

 宇宙での戦闘では装備の細かな調整を行いつつアンネイムド・フェネクスと交戦、地球圏の重力に追い込んだ。そののちベース・ネストに帰還後自身とよく似た少女が別の次元世界、マキナ・ドランディアから来たという話にまさかと思い向かい、エターナと再会する。妹の来訪に驚きつつも、変わらず元を否定する姿勢に若干残念に思う。そして妹が戦場に足を踏み入れることに心を痛めるも、それは妹次第と戦う意志を確かめることになる。

 モデルは変わらずバトルスピリッツのスピリット「ジャンヌ・ドラニエス」。

 

クルス・クルーシア

性別 女

身長 151cm

髪色 オレンジに近い赤

出身地 オースラリア シドニーア

年齢 15歳

誕生日 7月3日

血液型 B

好きなもの プリン、ピザ、文鳥、MSを動かすこと

嫌いなもの 薬、地震、海産物

愛称 クルス、G03

 

・HOWの試作MS部隊CROZEのパイロットにして私立東響湾ピースランド学園の生徒。パイロット専攻学科のAクラス。千恵里とは運命の乗り手事件以来の友人にして作戦行動のバディ。

 MSパイロットとしての経験から小隊長を任せる考えもあったが、彼女自身が戦略を取れるわけではないとの表明から三番手としての地位になる。しかし戦闘慣れはしており、前衛として千恵里を引っ張っていく役目。

 学園入学後千恵里と共に授業を受ける傍らガンダムDN一号機のパイロット候補を探していた。迎撃作戦時には改修されたディスティニーライダー改「シクサス・リッター」で応戦、前衛で敵を翻弄し続けた。

 モデルは変わらず機動戦士ガンダムミッシングリンクのクロエ・クローチェ。

 

 

レイ「人物紹介は以上になるよー」

 

ジャンヌ「元さんとジャンヌさん、相変わらず仲はよろしいようですね」

 

士「11年も連れ添ってるわけだからね。ただ毎回思っているんだけど言わせろ、はよ結婚せい( ゚Д゚)」

 

レイ「いやいや、今二人が外れるのは不味いでしょ」

 

士「マジレスやめちくりー;つД`)まぁここら辺はそれに加えて「まだ」元君が覚悟決まっていないっていうね。何回言うんだろホント」

 

ジャンヌ「あはは……でもちゃんとフォローしてあげてますから、きっと戦いが終われば結婚する未来もありそうですよ」

 

士「そう信じよう(;´・ω・)クルスは……まぁ第二部で紹介したばかりなんだけどね。一部設定とか明かしておかないとね」

 

レイ「そんなに変わったところはないんだね。ただクラス設定とかは公開しないとってところかな?」

 

士「そゆこと」

 

ジャンヌ「そんな彼女の機体、シクサス・リッターと改名したディスティニーライダー改とシュバルトゼロガンダムRⅡの宇宙戦仕様「スペース・ストライク」を続いて紹介します。まずはシュバルトゼロガンダムから」

 

 

 

 

型式番号 DNGX-XX000-SZver2[Repair-Ⅱ Space Strike]

シュバルトゼロガンダム[リペアツヴァイ スペース・ストライク]

 

解説

・シュバルトゼロガンダム[リペアツヴァイ]の空間戦闘用に特化された換装プランの一つ。腰部バインダーと背部マキナ・ブレイカーを宇宙戦用パーツに換装して脚部に増加装甲を付ける形で換装する。

 脚部は増加装甲が可変式で大型のスラスターユニットとして運用される。換装した腰部スラスターバインダーも用いることで宇宙空間でも超高速で移動する敵機に追いすがる。また右腕部には全高以上の長さを誇るビームスマートガンを装備し、遠距離戦を意識した調整になる。

 バックパック下部には増加した消費DNをカバーすべくプロペラントタンクが接続される。主に増加兵装で戦う構成ではあるが、フェザー・フィンファンネルなども引き続き装備されているため、その運用も考えられている。

 このような仕様の背景には旧式になりつつあるシュバルトゼロガンダムRⅡにあまり予算が割けないこと、それを踏まえたうえで新型の到着まで持たせるための「急場しのぎ」としての面がある。パーツ換装によりこの形態での地上戦は不得手となるほど汎用性が落ちてしまっているが、宇宙空間での局地戦ならば十分に生かせる仕様なのである。なおパーツは全て任意のパージが可能で、それにより地上戦へ移行することは可能。

 コンセプトモデルは「Sガンダムブースター仕様のシュバルトゼロガンダム版」。あちらは脚部自体をブースターに換装していたが、こちらは増加装甲という形で再現する。

 

 

【追加機能】

・高速巡行形態

 脚部をブースターモードに移行して高速で宇宙空間を飛行するための形態。この高速巡行形態でユグドラシルフレーム活性状態での次元空間による斥力の飛行を行うアンネイムド・フェネクスに追従するほど。高純度DNだからこその膨大な出力の恩恵による加速を実現する。

 

・Dフィールド

 新開発された機体の防御フィールド。正式名称はドライバ・フィールド。胸部増加装甲内部に発生器を持つ。

 機体周囲にDNによる不可視の防御フィールドを形成し、デブリから身を護る。この技術は本来なら機体全身に神経のように浸透させ、機体性能を飛躍的に向上させることを前提とした技術、所謂エラクスのような機体性能向上システムの一つとして開発された機能である。本機にも当初はその形で搭載されるはずだったがシュバルトゼロガンダムは余剰システムである「アレスモード」と折り合いが悪く、機体全身に張り巡らせることが困難となったためバリア、そして飛行フィールドとしてのみ使用される。

 その為本来の使い方に関しては別の機体がテストに用いられている。表向きには警察のMS警備隊に配属された黄の可変型ガンダムに搭載。しかしHOWの機体にも搭載されているとのことで、未だその機体は判明していない。現状では本機のモードまで落とした仕様を通常MSの装備に転用することも考えられている。

 モデルは機動戦士ガンダムのIフィールド。ただし名称と力場の操作、機体への浸透はフルメタルパニック!のラムダ・ドライバがモデル。

 

 

【追加武装】

・ビームスマートガン

 機体のサイドアーマーのアームで保持される長距離ビーム砲。本機の主力兵装。

 機体の全高以上の長さを誇るビーム砲でDフィールドの影響外から敵を撃つために作られた。Dフィールドはバリアモード時に範囲内のビーム兵器の威力を削ってしまうために、その初速性能を落とさないための兵装として本兵装が採用される。

 元々はブラウジーベンガンダム・ライブラの換装兵装だったのだが、深絵がそれらを使うことが少なく、また余剰分が回るために採用された。

 モデルはSガンダム系列のビームスマートガン。

 

・スラスターアームバインダー

 両腰のホルダーバインダーを換装したアーム付きのスラスターユニット。ビームスマートガンの装備部分も兼ねる。

 これまでのホルダーバインダーは機動性を重視していたが、こちらは航行性能を重視したセッティングとなる。今までのバインダーよりも長い為、狭い場所で大きく動かすことには制限が付く。

 

・レッグブーストアーマー

 脚部に装着される増加装甲型のブースターユニット。

 宇宙空間での高速任務のための兵装で、変形すると足底部を大型のノズルスラスター二基がそれぞれ覆う形状。その速度はスペースシャトルを軽く上回り、全てのスラスターを合わせて共振状態のアンネイムド・フェネクスに追いすがる。

 モデルはSガンダムブースター装備。

 

・プロペラントタンク

 バックパック下部に取り付けられた増槽ユニット。ブースターとしても用いられる。

 本機は特に下半身ユニットにエネルギーを多く使うため、それらを満遍なく動かすために追加でエネルギーパックを装備する。これは増加したエネルギー消費量に機体そのもののエネルギー回路が追いついていないための弊害で、本兵装に合わせた回路整理で解決することが指摘されている。

 モデルは機動戦士ガンダムサンダーボルトのフルアーマーガンダムのバックパックプロペラントブースター。

 

 

HMS-DR01RX

ディスティニーライダー改「シクサス・リッター」

 

 

機体解説

 ゼロンで開発されたディスティニーライダーを修復・改修した機体。青と紺に加え、新たにオレンジの線が入る。パイロットはクルス・クルーシアが務める。

 これまではゼロン、特にグレイブ・モセスの意向が強かったディスティニーライダーから、悪影響の多いDIENDシステムや過剰とも呼べる部分を排除。代わりにソルジアスやガンダムDNのパーツを流用し、互換性のある仕様へと変わっている。更にクルス・クルーシアの要望を受けてDIENDシステムの中枢に囚われていたAI「マリア」をサポートAIとして切り離し、DIENDの代わりに運用できるように改良された。

 武装の傾向としてはやはり近接戦をベースとしているが、DIENDにエネルギーを回さなくなった分ビーム兵器を以前よりも多く搭載する構成となる。ビームサーベルも機体からのエネルギー供給式となっている。

 特化した性能から汎用性の高い仕様へと変わったため、以前よりも性能がバケモノと言うほどではなくなったが、それでも充分量産型機体を圧倒できるだけの性能をパイロット共々持ち合わせる。

 コンセプトは「ブルーディスティニーシリーズとペイルライダーシリーズの掛け合わせ」。漫画版ブルーディスティニーの装備や、ペイルライダーの最終機トーリスリッターなどの武器も掛け合わせて今後その総決算とでもいうべき機体となる予定である。

 

【機能】

・ダブルジェネレーター

 機体の高出力性を担うDNジェネレーターの二個積み仕様。

 この仕様はそもそもDIENDシステムで大量のエネルギーが必要となるために搭載されたが、現在ではシステムを封印したため出力に余剰が出てくる。それを生かす形で本機の武装はガンダムDNの物よりも高出力なものを採用している。それらを扱うために再度ダブルジェネレーターはHOW仕様の高品質なものに変更された。

 

・サポートAI「マリア」

 封印されたDIENDシステムの代わりに新たに本機をサポートするシステム。マリアとはシステムの人格AIの名前である(データ上の外見はデート・ア・ライブの或守鞠亜)。

 DIENDから解放された彼女のサポート技術はHOWも注目しており、ディスティニーライダーも元々が制御システムとしてのDIENDがあってこその機体。その為彼女を再びMSの制御システムとして盛り込んだ。彼女のアシストによりクルスは現状でも旧シュバルトゼロガンダムを運用していた元との訓練でも互角に渡り合えていた。

 

・換装

 原型機から引き継がれた各部換装システム。本機に置いても採用される。

 ただし原型機のままではHOWの規格に合わない為、その上からHOW規格のハードポイントを備えた増加アーマーを装着する形となる。背部の追加兵装に関してはアームが規格を合わせてくれる。

 それ以外にも新たに肩部が新造のハードポイントショルダーアーマーに変わり、性能が変わった。

 

・DNウォール

 シールドから展開する防御兵装。DNの防壁で敵の攻撃を防ぐ。

 

 

【武装】

・バルカン砲

 頭部に装備された実弾砲。弾種がHOWのものに変わり、威力が若干上がっている。

 

・ビームマシンガン

 右腕に装備される連射式ビーム銃。後部にエネルギーパックを装備する。不使用時には右ふくらはぎに固定される。予備の弾倉はフロントアーマー内部に格納される。

 ゼロンのビームアサルトライフルを参考に開発された。ビームは機体供給式のものとほぼ同等の威力。機体供給式にすることも出来たが、万が一の事を考えて本兵装はエネルギーパック方式となっている。

 モデルは機動戦士ガンダムのブルパップマシンガン。あちらは実弾式だが、こちらはビームになっている。

 

・ビームサーベル

 サイドアーマーに二本装備される格闘兵装。オーソドックスな仕様となっている。

 原型機の時とは違って機体供給式となっている。これは格闘機としてビームサーベルが時間制限のあるものは不味いと考えられたため。

 

・ビームガン/ビームウィップ

 腕部に装備されたマルチウエポン。ビームガン、そして砲口から生成されるビームウィップで攻撃する。

 ビームガンはこれまでとほぼ同等の威力。そしてビームウィップは掴んだ敵の箇所を焼き切り裂く威力を持つ。そうでなくてもウィップは短時間だが実体に干渉でき、金属を掴んで引き寄せたり、移動したりできる。

 モデルは以前と同じくペイルライダーのビームガン。ビームウィップはGのレコンギスタ系列の武器をイメージ。

 

・近接用ビームバルカン

 機体脇側面に内蔵された近接防御用ビーム兵器。

 元々はヒートパイル、ジェネレーターアクセラレータを装備されていたが、それらが扱いの難しい、または危険なためにこちらに換装された。近接での弾幕形成には非常によい性能を誇る。とはいえ可動域はない為正面のみの発砲となる。

 

・ビームブレードガンザッパー

 バックパック側面に装備されるビーム刃搭載の銃剣。二本装備される。

 ガンダムDNのガンザッパーとブレードザッパーの基部を流用している。銃身の下部にビーム刃を形成する様になっており、この刃で敵を切り裂く。ガンの方も射程と連射性が程よくなっており、向こうよりも特化運用出来ない分、合体せずとも性能は高い。

 

・ハードポイントショルダーアーマー

 機体の肩部を構成する、可動式のショルダーアーマー。武装懸架が可能なハードポイントが搭載されている。

 肩部アーマーが二段階の構成になっている。簡単に言えば根元から別にハードポイントの付いた肩部が根元とは別に動く。これにより変則的な機動が可能になる。そのほか盾装備時には側面へと盾が向けられるようになった。

 またハードポイントはアームが折りたたまれており、必要時に展開し、武装を扱うことが可能。

 モデルは機動戦士ガンダムSEEDDestinyMSVのプロヴィデンスザクの肩部。

 

・ラウンドアーミーシールド

 肩部ハードポイントに接続される曲面シールド。二枚装備する。

 DNウォール発生器を内蔵しており、使用時には白いカバーパーツが隆起して生成する。可動式のショルダーアーマーのおかげで側面に向けられるため、固定シールドながら自由度がある。加えてアームを展開すればその防御角度は上がる。

 モデルは機動戦士ガンダムブルーディスティニーのブルーディスティニー2号機などが使用する曲面シールド。アームに関してはトーリスリッターの物を参考にしている。

 

・ツインビームライフルデバイス

 左腕部に装備される二連装ビームライフル。側面にシールドの付いたマルチウエポンの側面も併せ持つ。

 エネルギーパック方式ではない兵装で、ビームマシンガンよりも射程、威力共に高い。組み替えることで右腕の兵装としても扱えるため、場合によってはビームマシンガンを装備せずこちらを右腕に装備するバリエーションも存在する。加えて肩部シールドにも先端部に装備する形態もある。

 モデルは漫画版機動戦士ガンダムブルーディスティニーのブルーディスティニー1号機フルアームド並びに3号機データの二連装ビームライフル。

 

・ブレードウイングバインダー

 機体のバックパック上部に接続された可変翼兼斬撃兵装。

 通常時は制御翼として機能するが、接続部から外すことで実体剣として機能する。残った部分はブースターユニットとしても機能して外れている間も性能維持に貢献する。ただしその時は加速性が向上するが、扱いやすさと共に機動性能が若干低下する。

 モデルはストライクノワールのノワールストライカー。レールガンと上の小型ウイングが無くなったイメージ。

 

 

ジャンヌ「以上が機体の紹介になりますね」

 

レイ「シュバルトゼロガンダムRⅡまだ出番あったねぇ、|д゚)チラッ」

 

士「な、何のことかなー(゚Д゚;)……いや、まぁね?一応そういう触れ込みで出しておいた方がいいじゃないですか……そう、これは言葉の綾というやつで(;´∀`)」

 

ジャンヌ「ふーん……そうですか。まぁでも今回のは主力というより間に合わせな面が多そうですね」

 

レイ「そうだねぇ。サイドアーマーとか換装しているせいでブレードガンとかも使えなくなってるみたいだから、性能を偏らせているっていう、これまでのシュバルトゼロガンダムRⅡみたいな万能的活躍は難しそうだよね。これは今までもあったの?追加パーツ」

 

士「あぁ、一応あったね。ただこれまでの描写した戦闘では通常型の方が対応力は高いってことで装備されていない。今回は宇宙みたいに極端な戦場が予想されたから装着しているからね。それらのデータも今章でいよいよ登場する後継機に引き継がれていく予定だよー」

 

ジャンヌ「いよいよ新型機ですか」

 

レイ「ドラグディアでの運用も含めると13年!量産型MSを除いたら専用機でこれだけ連続運用なんて初めてじゃない?」

 

士「何言っているんだ?(^ω^)テレビシリーズではガンダムAGE-1はフラットを介してバリバリの現役50年くらい運用しているし、漫画版含めてダブルゼータもそれくらい。ターンエーなんて時代分かんねぇぞ!」

 

レイ「うっわ、極端すぎる」

 

士「あっでもシュバルトゼロガンダムもよくよく考えるとタイプ0からの通算年数考えるとこっちも1000年単位か(゚Д゚;)」

 

ジャンヌ「えぇ……それもう実働稼働年数でいいのでは?それだとシュバルトゼロガンダムは1000年以上前の時の運用と、元さんの13年分でどうにかなりますし、それだと多分ダブルゼータもといあの機体がトップでしょう。そもそもこれはそこが問題じゃないです」

 

士「せやな(´・ω・`)」

 

ジャンヌ「それとシクサス・リッター……どういう意味です?」

 

士「正しくはシックザールで運命の騎士のドイツ語訳です」

 

レイ「えっ、まさかの読み間違い?」

 

士「そう聞こえたのもあるんだけどね、とはいえシックザールだと兵器の名前としては長すぎたんで聞こえた通りにシクサスと名付けています」

 

ジャンヌ「つまり造語と」

 

レイ「うーん前と意味は同じってわけだ」

 

士「そうなるね。とはいえこれは本質が以前のディスティニーライダーと変わらないことを意味している。システムによるサポートとで戦況を塗り替えていく機体、それがディスティニーライダーの本質だからね」

 

レイ「そっかー」

 

ジャンヌ「何はともあれ、シュバルトゼロガンダムRⅡの役目はここまで、次からはいよいよ最新鋭機の登場ですか」

 

士「それなんだけどさ?一つ言わせておくれ」

 

レイ「何?」

 

士「……最新鋭機、設定だけで15000字以上行ってるんだけど\(^o^)/」

 

ジャンヌ「はぁっ!?どんだけ武装入れ込んでいるんです!?」

 

士「あ、あへあへ(^q^)とあるシステム類を盛り込んだ結果、武装が滅茶苦茶膨らみました……ノーマルモードでも多量の形態備えた基本武装になってしまったし……」

 

レイ「うわぁ……何かそう聞くと最新鋭機なんか変な装備持ってそう」

 

士「これまでの総決算みたいな機体だからね。全部乗せが可愛く見える機体になる予定です」

 

ジャンヌ「それは楽しみにしておきましょう。ここで語るのには難しすぎます」

 

士「ということで中編はここまでです」

 

レイ「後編は再びネイ達にバトンターッチ!」

 




中編はここまでです。

黒和元とジャンヌ・ファーフニル。この作品を代表する二人も、既に30代に差し掛かっています。とはいえ外見は変わらず若いままですので、エターナが時間の違いを当初気づかない一幕もありました。

クルスは前章でも登場したキャラクターで、順調に回復に向かっている段階です。ですがまだ実験の後遺症なども残っていて、保健室に行くこともままあるなど、学校では割と厳しいところもある状況です。

シュバルトゼロガンダムRⅡの新仕様、スペース・ストライクはその名の通り宇宙戦用兵装。これまでのように換装していくことで現在まで前線を張っている機体となっています。とはいえ作中でも語られているようにここでようやくシュバルトゼロガンダムRⅡは役目を終了し、次回の戦闘から多々触れられていた新型機にバトンタッチです。ここまでありがとう。

そしてシクサス・リッター。ペイルライダーの発展機トーリスリッターがベースとなる機体であり、アナザートーリスリッターとして考えさせてもらいました。トーリスリッターにはない羽パーツなど、所々ブルーディスティニーおよびマリオンを意識した構成で、今後もしかするとそれが生かせる場面も来るかもしれません。

後語りはここまでとして、最後の後編も宜しくお願いします。


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黒の館DN 双翼英雄譚編 第1回 後編

どうも、皆様。引き続きご覧の方は改めまして、作者の藤和木 士です。

黒の館DN双翼英雄譚編第1回もいよいよ後編。後編は残りの人物とソルジアスの別仕様、量産機シトとシシャの紹介です。

それでは最後なので手早く行きます。どうぞ。


 

 

士「いよいよ解説も後半に突入!作者の藤和木 士です」

 

ネイ「アシスタントは再びのネイと」

 

グリーフィア「グリーフィアで、お送りしていくわね~」

 

士「部の最初の黒の館DNは前中後編ってジンクスになりつつある件(´・ω・`)」

 

グリーフィア「だったら早くしなさいよねーってことで、最初の人物紹介はまだ出ていないHOWの職員達。それに宗司の周辺人物ねーどうぞっ」

 

 

小野寺 小太郎(おのでら こたろう)

 陣泰高校での宗司のクラスメイト。活気づいているお調子者。

 オノコーと呼ばれており、クラスメイトからの認識はナンパ野郎。ただ面倒見は良く、宗司や風島とよくつるんでいる。

 モデルはフルメタル・パニック!の小野寺孝太郎。

 

風島 舞人(かざしま まいと)

 陣泰高校での宗司のクラスメイト。眼鏡を掛けた気弱なインテリ系。

 父親が自衛軍の軍人であり、MSの運用についても詳しい。進路としてMSパイロットの道を目指すために、新進気鋭のMSパイロット養成科のある陣泰高校を志す。たまたまチームを組んだ宗司と小太郎とは凸凹ながらも良いチームとなる。

 モデルはフルメタル・パニック!の風間信二。

 

呉川 鈴児(くれかわ れいじ)

・MS部隊CROZEのGチームの隊長。26歳独身。使用機体は青色のソルジアスARカスタム。

 千恵里達直接の上司であり、彼女達の指揮を執る。普段は静かで寡黙な男性だが、戦闘では容赦なく敵を追い詰める。ソルジアスの換装システムを最大限利用して攻める「フルドライブ」と呼ばれる戦法を使いこなし、ソルジアスでありながらその戦闘力はガンダムに劣らない程。

 目元に傷があるが、これは幼少期に負った傷で大事には至っていないものの、そのせいで女性からは避けられていると思っている(なお実際はそれ以上に普段のオーラが怖すぎるため)。

 モデルは鉄のラインバレルの森次玲二。フルドライブは「本気モード」である。ちなみに出先でお土産を買ってくるのが趣味(なお量)。

 

 

 

次元 黎人

性別 男

身長 174cm

髪色 黒と白のメッシュ

出身地 地球 日本 神名川県 横海市

年齢 38歳

誕生日 3月21日

血液型 AB

好きなもの 研究、猫、登山、SF小説、鈴、光巴

嫌いなもの 病的に熱心な人物、厄介なカルト武装組織、料理

愛称 プロフェッサー010、HOWアンサー

 

・MS運用・開発する政府組織「HOW」の司令官を務める男性。元MSオーダーズの司令。元達の上官に当たる。

 11年の歳月を経て司令官としての威厳を持ち合わせつつ、科学者としても前衛的な姿勢で取り組む。新機体の開発にも意欲的で、シュバルトゼロガンダムの後継機開発にも尽力した。

 政府にも名が知られるようになり、付いたあだ名がHOWアンサー。これは組織の名称と掛けたものである。しかしMSの事に関しては充分な対策を打ち立てられることのうっら返しでもあり、新任の総理大臣である「清井 譲(きよい ゆずる)」からも非常に信頼を受けている。

 ツィーラン博士との師弟関係は続いているが、ツィーラン博士の事情で最近は会う機会が少ないとのこと。

 娘の光巴についても最近はMSに乗りたいとの欲求を強くしており、早死にしてしまわないか不安になっている。後方部隊での支援に回そうとしたが、それならと元が自身の部隊の艦橋クルーとして回すことを提案。渋々承諾した。その件を巡って娘から不満を多々愚痴られてしまう。だが黎人自身は娘と向き合い、分かってもらうために日々努力している。なお料理も作るようになったが、娘からは不評でそれを自覚している。仕事のストレスマックスの日に作った日には塩と砂糖を間違えたり、大匙と小さじを間違えたりなど、最悪の場合お米を研がないなど致命的。

 モデルは変わらず仮面ライダーエグゼイドの壇黎斗。父親としての苦労に大分老けているイメージ。

 

 

次元光巴

性別 女

身長 152cm

髪色 黒

出身地 日本 東響都 中都区

年齢 15歳

誕生日 10月3日

血液型 A

好きなもの MS、MSパイロット、DGO(デスティニー・グラウンド・オーダーズ)、チキン南蛮

嫌いなもの ニンジン、人の死、父親の過保護なところ

愛称 みっちゃん、みーちゃん

 

・次元黎人と次元光姫の一人娘。11年の月日が流れ、高校生となった。HOWのCROZEのオペレーターとしての任務に就いている。

 今時の女子高生らしい身なりだが、趣味などは全くそうではない。MSの事が好きで、パイロットとして早く活躍したいと願うMS愛好家。両親が懸念していた通り、MSに執着してしまうほどになってしまった。

 しかもそれが極まり、何と中学生時点でMS所持法の模擬問題を合格点まで獲得。高等部進学と共にMS所持法試験を受けて合格している。

 スペックだけで見れば千恵里はおろかクルスも超えており、即戦力としては申し分ない。しかし元は精神面不足としてオペレータークルーとして採用し、留めている。その点に関して子どもじゃないと反抗している。

 DNLとしての能力も強く、現在では元とジャンヌに次ぐDNL能力者として登録されている。

 モデルは蒼穹のファフナーシリーズの日野美羽。外見は母親のモデルであった天王星うずめの女神化した姿「オレンジハート」がモデル。特徴的な髪型を強く引き継ぐ。

 

 

相模 紀明(さがみ のりあき)

 宗司の父親。眼鏡を掛けた、普通のサラリーマン。

 いたって普通のよい父親と言った風貌で、日々仕事にまい進する。お酒が苦手だが、社交辞令などを優先する性格。ただし息子には自身のように無理はしないようにと伝えている

 宗司のHOW入りに対し、自身が後悔しない選択をと伝える。

 

相模 里衣子(さがみ りいこ)

 宗司の母親。髪を後頭部に御団子にまとめた普通の専業主婦。

 幼少時から宗司を溺愛しており、宗司が泣きついてきた時にはそれを心配して西東響市を家族で離れた。

 宗司のHOW入りに、心配こそするが入るのならそれは自身の過去を乗り越えることだからと応援する。

 

 

グリーフィア「以上が人物紹介になるわね。っていうか人多すぎない?」

 

士「多いんでまとめられるところはまとめちゃってください(´・ω・`)」

 

ネイ「了解です」

 

グリーフィア「宗司のクラスメイト二人は、フルメタル・パニックモチーフで来たわね。陣泰高校も陣代高校がモデルみたいだし」

 

ネイ「あっちは流石にアームスレイブの操縦とかは習わないよね」

 

士「あー……初代は習わないはずだけど、アナザーどうだったか分かんない(;´・ω・)アナザーまでアニメ化するんかな?」

 

ネイ「そしてHOWの次元親子は相変わらずですね」

 

グリーフィア「でも苦労してるわねぇ黎人さん。仕事も娘の事も一人で面倒見ないといけないなんて」

 

士「一応HOWの人、来馬さんとかの往年組が面倒見てあげてる時もあるよ。食堂のおばちゃんとかもね」

 

ネイ「食堂のおばさん……まだ元気だったんですね」

 

グリーフィア「一度壊滅したっていうのに、無事だったのは幸いね」

 

ネイ「それと呉川さんは何だか今のところは冷徹なキャラって感じですよね?」

 

グリーフィア「これがお土産大量に買って来るって、思えないわねー」

 

士「原作に引かれている面があるから、どうなるかは分からんよ(´-ω-`)」

 

ネイ「そして宗司さんのお父さんお母さん。……何でしょう、すごく不安になります」

 

グリーフィア「そうねぇ。二人ともいい人だからこそこの作者は宗司君に殺させそう」

 

士「風評被害だっ!?(゚Д゚;)誤解だよっ!?」

 

ネイ「まぁ全てを決めるのは作者なので、ご自由にどうぞ」

 

グリーフィア「さぁ私達は何も出だししないわよー?」

 

士「(´・ω・`)どうして……いや、まだ分からんから。それより、次、機体っ」

 

ネイ「あーはい。次はゼロン側の敵MS、シトとシシャ。そしてソルジアスの新たな仕様「スペースアタッカー仕様」ですね。それではまずソルジアスの方から」

 

 

<SAカスタム>

 宇宙空間用の専用カスタム。別名スペースアタッカー仕様。メインカラーは白と水色だが、劇中登場した特殊部隊は黒と水色になっている。

 ソルジアスを宇宙戦に対応させるため、大型のサブフライトシステム用の追加プロペラントタンクをバックパックに直接接続することで長距離航行に対応している。

 武装に関しては専用の追加装備として宇宙での使用を前提とした長距離ビームライフル「ホークアイ」とメガ・ビーム・バズーカ、それに捕獲用スパークネット射出機を持つ。

 モデルは機動戦士ガンダムNTのジェスタシェザール隊仕様の兵装。ホークアイのみオリジナル。

 

【追加武装】

・長距離ビームライフル「ホークアイ」

 通常のビームライフルを換装して装備する狙撃用兵装。右腰に装備される。本仕様の基本的な装備。

 ブラウジーベンガンダムに採用されていたビームスナイパーライフルがベースで、アイスボックスにより連射機能を制御する。宇宙空間での運用が考えられ大型のレドームシールドが併設されているが、地上でも使用することは可能。

 

・メガ・ビーム・バズーカ

 宇宙空間で固定砲台としての使用を前提とした大型ビームバズーカユニット。不使用時には後述する変形機構で背部にバックパックとして装着される。選択装備。

 使用時に機体前部に展開されて使用する。両手でターゲットを捉えてから放つ。しかし宇宙空間での運用の為に、各部にスラスターを装備しており、姿勢制御を行う。更にバックパック時には推進用にも用いることが出来、エディットバックパックとしての運用も出来る。

 唯一の欠点は消費DNが激しく、本装備の機体は完全に砲撃を前提とした運用を強いられる。

 モデルは宇宙世紀シリーズのガンダムのメガ・バズーカ・ランチャー。宇宙空間でのサブフライトシステムとしての役割をバックパックとして再現する。

 

・捕獲用スパークネット射出機

 選択装備の一つで、捕獲後電撃を対象に流し込むネットを射出する。弾数は5発。

 モデルは機動戦士ガンダムNTのジェスタシェザール隊仕様の兵装。

 

・プロペラントブースター

 機体のバックパックバーニアに直接装着されるタンクユニット。DNが多量に詰まっている。

 本来はサブフライトシステムに装着するためのユニットだが、推進力が十分得られることから採用される。

 モデルは89式ベースジャバーのプロペラントタンク。フルアーマーユニコーンガンダムや、ジェスタシェザール隊仕様にも装備された。

 

 

ZAMP-03

シト

 

機体解説

 ゼロンがザジンと02「ザフル」を基に開発した新型MS。白一色のMSである。名称は「使徒」から取られている。

 機体カラーもそうだが、頭部も特異なデザイン。顔全体が青のクリアパーツで構成され、後部のマスクを前方に向かって閉じることでかろうじてクリアパーツが二つ目の瞳のように見える口のない奇妙なMSとなる。加えて腕が少々長く、四肢が曲面デザインを持つなど異形のエイリアンを思わせる。

 武装もオーソドックスなデザインから外れたものが多い、というより腕部に機能が集中する構成となっている。量産機だが、ゼロンも本機から新たにDBを発動可能となっており、総火力は以前のMS達よりも高い。

 コンセプトは「フレームアームズのフレズヴェルク×アルスコアガンダムにヴェイガン系MSの特徴追加」というもの。フレズヴェルクのような可変機構は持たないが、武装にはそれを意識したクリアパーツ兵装がある。

 

 

【機能】

・次元電磁装甲

 腕部に張り巡らされた防御用の兵装。リフレクトパネルから発展させた兵装。

 これまでのリフレクトパネルでは許容量に対して衝撃に対して壊れやすいなど物理面で弱い部分が存在した。MS開発黎明期だったからこその強みだったそれも、今やビーム兵器でも反射しきれない、受け止めるだけで受け流すくらいしか出来なくなりつつあった。更に使われる材質も非常に高価で、これ以上これを主力とすることは難しいとされた。

 そこでゼロンはビームに対する反射性能を失くし、拡散させる方向にシフト。加えて実体弾にも対抗できる電磁装甲を開発。それがこの次元電磁装甲である。DNを用いた電磁障壁を展開することで展開範囲周辺の実体弾を跳弾、更にビームは放出したDNの塵を用いて拡散させる。ビームサーベルなども腕部周辺までフィールドを圧縮させることで防御が可能。シールドを持たなくていいようになり機動性向上にも役立つ結果となった。

 モデルは機動戦士ガンダムAGEのヴェイガン系MSの電磁装甲。

 

 

【武装】

・マルチアームズ・アーム

 機体腕部を構成する多機能武器腕。四つの機能を装備する。

 まずはビームガン/ビームサーベル、手のひらから出力する兵装でオーソドックスな兵装。続いて実体クロー、指部分が完全に武器となり、敵の脆い部分、あるいは武器を破壊する為に装備される。三つめにビームバルカン、握りこぶし正面、指の付け根に内蔵されており、指を拳の形に折りたたまなければ使用できない。しかし連射性能は高く弾幕形成は容易い。最後に次元電磁装甲、腕部全体がこれで構成されており、シールドよりも防御しづらい面もあるが、なれれば非常に扱いやすいという面もある。

 多機能な武器腕だが、メンテナンスに時間が掛かり、その為に腕部を取り換えて整備するという形が取られている。

 モデルはヴェイガン系MSの腕部。

 

・タンクブースターバックパック

 背部に装備されるバックパック。通常のボックスタイプにアームで接続されたタンク機能持ちのブースターユニットが装備される。

 ブースターユニットは長距離移動用の兵装で、不要時にはパージが可能。とはいえ飛行性能はそれなりで貯蔵するDNも多いため、大抵が装備したままで戦闘する。

 タンクブースター自体の外見モデルは劇場版ガンダム00のブレイヴのウイングバインダー。

 

・ビームガン

 右腰に装備される手持ちの小型ビームガン。本機唯一の手持ち兵装である。

 本機の手に合わせて持ち手部分が長い。トリガーも引きやすいものとなっており、咄嗟の銃撃戦も可能。

 モデルはアルスコアガンダムのビームガン。

 

 

ZAMP-03S

シシャ

 

機体解説

・ゼロンの主力機シトの上位機種に当たる機体。隊長機として用いられる。名称のシシャとは「使者」から。カラーリングはシトと同じく白一色。鶏冠状のブレードアンテナが特徴

 シトのパーツを流用して造られているが、その性能は二倍にまで引き上げられている。武装もアームの武器の種類が一種類だけ増えている以外にも手持ち武装の増加、タンクブースターの形状変更と武器の追加などその変化は多岐にわたる。そして頭部もマスクパーツに改修が加えられ、真理を開いたものの証ということで額部分に第三の目とでもいうべき狙撃用カメラの穴が追加される。

 性能は高いが、シトよりも扱いが難しい。その為にシトが隊長機として率いることも珍しくない。

 

 

【機能】

・次元電磁装甲

 シトから用いられている最新の防御装甲。DNの粒子により引き起こされる電磁バリアで敵の攻撃を防ぐ。

 

 

【武装】

・マルチアームズ・アーム改

 シトが装備するものの改修型。後述する機能の為に腕部が大型化している。

 機能に新たにボルトアンカーが追加された。手首付近から射出される矢じりに付いた単分子ワイヤーが敵を捉える。このワイヤーからは電撃が走り、敵パイロットを直接攻撃する。

 

・タンクブースターバックパックⅡ

 背面に装備されるシトの物を発展・強化したバックパック。タンクに新たな武装が二種、バックパック下部に一種取り付けられた。

 新たな武装は上部に向けたビームキャノンと下部に向けて伸びるシシャブレードライフル、尻尾のように伸びたテールビームブラスターである。これら装備を装着する関係上、本機ではブースターの分離は滅多に行われない。

 

・ビームキャノン

 ブースタータンクの上部から伸びる可動式キャノン砲。タンクから直接エネルギーを供給する方式で、弾幕形成に一役買う。

 形状モデルは機動戦士ガンダムAGEのクロノスのクロノスキャノン。

 

・シシャブレードライフル

 ブースタータンクの下部に懸架する形で装備される銃剣兵装。新たな手持ち兵装である。銃剣、そして斧として用いることが出来る。

 持ち手が二箇所存在しており、ライフル用の持ち手、アックス用の持ち手として持つことでそれぞれの機能を発揮する。ライフルは長銃身のものでDB時には収束拡散したビームを放てる上、銃身に沿ってアックスのものと同じブレードが取り付けられているためそのまま斬りに行ける。一方アックスはそのまま使えるが、ライフルの銃身を敵に晒すことになるので扱いには注意が必要。いずれも刃にはDNを定着させて耐性を与えている。

 モデルはフレームアームズのフレズヴェルクのべリルショットライフル。

 

・ビームブラスター

 バックパック下部に増設されたアームで接続される長距離用ビーム砲。尻尾のように装備されるが、テールと武装にはつかない。

 アームから手元へと運ばれ、片手と肘の接続部で装備される。大型化した腕部に合うように内側に沿ってへこんでいる形でぴったり合うようになっている。

 モデルは機動戦士ガンダムAGEのガフランのビームライフル。

 

・ビームアサルトライフル

 右腰に装備されるビーム銃。エネルギーパック方式の連射性の高いビーム弾を放つ。

 モデルは機動戦士ガンダムAGEのゼイドラ系列が持つビームライフル。

 

 

ネイ「以上が機体紹介になります」

 

グリーフィア「ソルジアスの通常版とかはLEVEL2を参照ねー。航続性を優先した仕様で、色々オプションがある機体ってわけね」

 

士「まだ紹介していない武装とかもあるけど、それは流石に全部まとめられる自信ないのであこれ新兵装かって思っていただければ」

 

ネイ「この仕様のもととなったシェザール隊の仕様の再現が主になっていますが、バズーカのバックパックモードはオリジナルみたいですね」

 

士「つっても元々のメガ・バズーカ・ランチャーが百式の移動用にも使われてたところあったから、そこから今どきのバックパック仕様にしたんだけどね。あ、ちなみに百万式みたいな素直な形じゃなく、砲身が後ろ向いてます。もっと言うならダンボール戦機WARSのオーヴェインのバックパックみたいにバックパックから前部に砲身展開する形です」

 

グリーフィア「それは本文中で見せた方がいいんじゃなくて?」

 

士「それ思ったけど今さらなんでこちらに記しておきます(´っ・ω・)っ」

 

ネイ「そして……シト、シシャですか。ゼロンMSはザジンがいましたけど……モチーフからMSを大きく外れたデザインのものなんですね」

 

士「ほかにないデザインってなるとやっぱりアルスコアガンダムとかでも取り入れていたようにエイリアンっぽいデザイン取り入れた方がいいからね。頭部の変形機構はこの作品の量産機じゃほぼ当たり前だから取り入れているし」

 

グリーフィア「そうなのよねー。ドラグーナにマキナート、マキインもカメラ切り替えの為の頭部可変機構があったわけだし。この作品ではそういう変形が当たり前に取り入れられる運命にあるのね。にしたって全身白な上に本当の頭部がクリスタルでスケスケのその上からマスク被って二つ目、あるいは三つ目を作り出すって悪趣味じゃない?」

 

士「正直言って、デザインがちょっとあかんライン想像させてまずいかなって思ったりもしたけどそれ以上に奇抜なデザイン思いつかなかったせいでこうなった(´・ω・`)マジで指摘されないかどうか心配になるわ。まぁでもうちのとある機体との関係性をうかがわせるには白は欠かせなかったし、目の色は青だから問題なしでしょ」

 

ネイ「これ以上触れるのは不味そうですね。シシャに関しても同じようなデザインですが、こちらはよりエイリアンっぽいデザインですね」

 

グリーフィア「まぁ人間かどうか怪しがっていたヴェイガンのMSモデルだし、そこは参考にしたんでしょうね?」

 

士「そうだね。上の地位になるほど、強力になる。しかし人の姿からは外れていくっていう、イメージで作ってますから。ガンダムシリーズで言う所のザクⅡSをイメージした機体は、果たして最終生産機ゲルググポジションではどのように変貌するのか?(´-ω-`)さて、これで紹介は終了としましょう」

 

ネイ「本当に長かったですね」

 

グリーフィア「ねー。次回の黒の館DNも新シュバルトゼロガンダムの紹介で長くなりそう~」

 

士「最悪一機だけで普段の黒の館DN一回分使い潰してもお釣りが来るのでね……次の黒の館DNの時までは力をセーブした状態で戦ってもらいますよ;つД`)」

 

ネイ「なんだか大変ですね」

 

士「他人事みたいに言わないで( ;∀;)君達アシスタントなんだよ……?」

 

グリーフィア「けど書くのあなたじゃない。頑張ってとしか」

 

士「(´・ω・`)と、とりあえず、今回はここまでってことで」

 

グリーフィア「さぁ、次回からの展開もご括目あれ~」

 




ここまでお読みいただきありがとうございます。

宗司の友人達、並びに学校は小説フルメタル・パニック!の陣代高校周辺から取っており、作中にも多々同作品に登場する要素などが登場しています。後々これが意味を持ってくるのかもしれません。

HOWの周辺としては新登場した呉島隊長は普段はしっかりとした隊長、だけど決まって遠出の時は印象が変わる人物で、やはり原典の方をモチーフとした人物として作りました。
また次元親子も年を取って登場しており、特に光巴は今後どうなっていくかが注目のメインキャラクターの一人でもあります。このLEVEL3でMSに乗る機会があるのかどうか、またその機体が何になるのかも注目です。

MSに関してはソルジアスの追加仕様は文字通り、あのフェネクス捕獲の不死鳥狩りの部隊から。
そしてシトとシシャは大元のデザインにヴェイガン系統と最近の機体アルスコアガンダムからデザインを取らせていただきました。ヴェイガン系のMSはとても独特な形状ですし、アルスコアガンダムも同じく奇怪なデザインだったので、双方の特徴に加えて他作品の機体も含めて設定しました。正直なことを言いますとヴェイガン系は歴代ガンダムの量産機とも被りにくいので、違う味が出しやすいと考えております。
シトとシシャはゼロン本隊の主力MS。その姿から、あのMSを彷彿とさせますが……果たしてあの機体はいつ、登場することでしょうか?

ということで今回の黒の館DNのあとがきはここまでです。次回の黒の館DNでは、あの機体を紹介することになるでしょう。次回からの本編もお楽しみください。それではまた次回。


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EPISODE8 覚悟の契約1

どうも、皆様。いつの間にか前作の投稿話数超えていることに気づきました、作者の藤和木 士です。前作よりはペース結構いいと思っています(;´・ω・)

レイ「アシスタントのレイだよー。ってかそれってつまり前作はもっとスロースペースだったってこと?」

そういうこと。

ジャンヌ「ちょっと正気を疑いますね。もっとも今作も大分大丈夫か心配ですが。アシスタントのジャンヌです」

第3部まで進んだから、あらすじの文一新したいなぁとは思ってる。第1部の内容、第2部の内容、第3部の内容って大まかなのに。
というわけでEPISODE8公開です。

レイ「覚悟の契約ってエンゲージシステムのことだよね」

ジャンヌ「相模宗司とエターナ・ファーフニル、新たな契約は果たして結ばれるのかという内容でしょうか」

そんな感じでしょうね。というわけで早速本編をどうぞ。


 

 

「以上が、先日発生したMS所持法違反者の概要になります」

 

「ふむ……分かりました。まだ答えはもらえていないそうですが、HOWの見解としては?」

 

「おそらく、入ってくれるとは思いますが……とはいえ、残りは明日丸一日。一応接触を試みさせる予定です」

 

 日本の政治の中心となる東響都の首相官邸。そこに何人かの大臣達の前でHOWの総司令官次元黎人が報告に上がっていた。

 彼の隣には護衛として黒和元とジャンヌ・ファーフニルもいる。報告相手は今のこの国をまとめる首相、新堂幸地の後任となる清井 譲(きよい ゆずる)首相だ。

 その首相が黎人達に対して質問する。

 

「ふむ。ちなみに彼らの素性については?」

 

「それに関してはこちらに。ただエターナ・ファーフニルに関しては異世界の住人のために最新の情報については不明。こちらのジャンヌ・ファーフニルが証明者となります」

 

「君に次ぐ異世界訪問者か。その辺の法律についても、もっと詰めていく段階になりつつあるわけですか」

 

 首相は顎に手を当てる。若いながらもその采配は慎重にして豪胆。異世界からの訪問者に関しても深く考える。

 その首相に意見を申す大臣達の声。

 

「確かにその件に関しても重要ですが、今は所持法違反に関してでしょう。HOWがもし彼らを採用の場合、いくらかまたこちらに来てもらうことになりますが」

 

「もちろん、それは承知しております」

 

「民間人の採用。簡単に認可するのも中々難しい話だ」

 

「無論です。しかし、彼らは採用すべきだと私は考えております。いずれもガンダムDNへの適性が高い。それをゼロンに渡すことを避けるためにも彼らは確保すべきかと」

 

「ううむ……」

 

 大臣達の面倒くさいという気持ちを感じる。しかしそれが悪手であると黎人は遠回しに説明する。ゼロンに戦力を明け渡す事実に大臣達は難色を示す。

 首相もその話を聞いていた。首相は護衛として来ていた元に意見を求める。

 

「元隊長はどうするべきだと思う?HOWのパイロットとして、そしてDNLとして」

 

「……始めに言っておきますが、DNLはどんな困難も解決できる万能者ではありません。そのうえで申します」

 

 元は断りを入れて自身の意見を話す。

 

「まず、先にも次元司令が申し上げた通り、パイロットとして見るならエースの卵、と言うべき人間でしょう。戦力としては申し分ない」

 

「ふむ」

 

「しかし、所感で申し上げるなら、両名共に精神は年相応です」

 

「ふむ?」

 

 精神の幼さという単語に首を傾げる首相。大臣達もひそひそと囁く。黎人も何を以ってそう言っているのかは分からなかったが、いつもの事のためそのまま聞く。

 

「DNLによる感覚では両名にそれぞれトラウマ、自身への劣等感のようなものを感じ取りました。その理由も現在あり得るものが判明しています」

 

「トラウマ……して、それは」

 

「エターナに関しては姉への依存と僕個人への恨み、そして相模宗司は11年前のMSオーダーズによる作戦「東響掃討戦」においてその作戦が発令されるきっかけとなったガーデンタウン地下基地の発見に至る要因となった人物です」

 

 東響掃討戦。11年前のHOWの前身、MSオーダーズの大作戦だ。黎人もよく覚えている。忘れるわけがない。

 その作戦のきっかけとなった報告。当時はそれをありがたい程度にしか思っていなかったが、そのきっかけとなった人物が目の前にいた事実に後々気づいた自分も驚いたものだ。

 そんな驚きを上書きする形で元がDNLの読みを明かした。

 

「その彼に鎌をかけた時、感じ取りました。東響掃討戦の記事、そして一人の少女の姿。おぼろげで見えませんでしたが、調べてみるときっかけとなった警察の報告で近くに住む同い年の少女の家族が西東響ガーデンタウンの住人で彼を恫喝したとありました。そしてその家族は東響掃討戦で死亡、少女は行方不明」

 

「……大体話が読めて来たね。つまりその少女の家族は」

 

「相模宗司のトラウマ。思った以上に重いかもしれない。だからこそ、俺は強制することは難しいと考えます」

 

「馬鹿な……ならなおのこと、こちらで保護することが」

 

 強制しない元の考えを大臣がそれではいけないと批判する。確かにそれならなおさら、向こうに行かないようにするべきだ。MSの開発者として、間違った方向に使われるのは避けたい。

 ところが元は真っ向からその考えに反発する。彼なりの理由をもって。

 

「むしろそうしたいのはこちらだ。けどそっちの方が、むしろ危険だ」

 

「何だと?」

 

「強制し続ければ、彼の心は育たない。強制すれば、むしろ反骨心を誘発する。彼自身が選ばなければいけない。こちらのために、そして彼自身の為に今度は後悔のない選択をさせる」

 

 主張は対立する。しかしそれを諫めるように譲首相が彼らの間を取り持つ。

 

「まぁ、それぞれの主張は正しい。彼らが敵の手に落ちることは避けたい、しかしそれを急ぎ過ぎるのも却っていけない。この件に関してはHOWに任せます。決定次第、所持法の特例対象としますので」

 

「首相……」

 

「ですが、もし敵対するようなことがあれば、その時は容赦なく処罰を下すよう厳命します」

 

「了解しました。HOWの総司令として、その時には厳正に処理いたします」

 

 頭を下げて了解する。そうして黎人達はその場を去った。

 

 

 

 

 官邸から出る途中、黎人は元に尋ねる。

 

「これで良かったのかい?」

 

 これでいい、とは無論元が満足する結果だったかどうかだ。これまでにも何度か大臣達に噛みついている元だからこその心配だが、その心配の必要はないと、連れ添いのジャンヌが答える。

 

「大丈夫ですよ。ね、元」

 

「最低限はやった。あの総理を困らせるのも良くない。後は俺達の側でどうにかやる気にさせるだけだ」

 

 その言葉に安堵を浮かべる。総理への負担を掛けないことはゼロンへの対抗のためにも重要だ。かつてほどの強引さを潜めてくれた彼なりの引き際だ。

 そんな彼はCROZE隊長としての観点から先程の話で話題にならなかった彼女について言及する。

 

「エターナの件に関しては俺がやる。アイツの敵意は俺に向いている」

 

「報告は受けているが……ジャンヌ君との仲が裂けなければ無理なのでは?今の状態は……」

 

 あまり言いたくないが、エターナ・ファーフニルの異常な愛情は手に余る。しかしシュバルトゼロガンダムの稼働を停止させるのもまた今では難しい。つい先日完成した新型機の為にも、そして二人の為にも仲を裂くことは出来ない。

 最悪の場合エターナは拘束して軟禁状態にでもしなければ……。黎人の抱いた感情をジャンヌが否定する。

 

「いいえ。そんなことはしませんし、させませんよ」

 

「ジャンヌ君」

 

「これは私が選んだ道。それを邪魔するのなら妹だって例外じゃない。それにこれは私の罪です。ケジメは私が付けます」

 

「……」

 

 パートナーの言葉に元は口を閉ざす。そのまま彼らは夜の闇が降りた街を車で基地へと帰還する。

 

 

 

 

 約束の日の最終日。日曜日の穏やかな日中に宗司はベッドの上で寝転がる。

 とうとう来てしまった返答最終期日。それでも宗司はその答えにはっきりとしたものを出せずにいた。

 実際のところ、俺はHOWに参加した方がいいと考えた。その方が世界の為だろうから。けれどもそんな心持でいいのだろうか。世界の為なんて、そんなの言い訳のように思えたから。帰り際に入嶋が言っていたように、誰かを護りたいという気持ちを第一に考えなければならないのではないか。

 答えがあっても、言いに行ける勇気がない。そのせいで昨日は一日無駄にしてしまった。このまま回答をしなかったら、自分は責任を放棄したとみなされるのだろうか。

 

「………………」

 

 ゴロゴロとベッドの上を左右に転がる。そうしても何も思いつくはずもない。しかし携帯の着信が鳴った。机の上の携帯を手に取る。着信相手はその入嶋千恵里から。帰る途中でチャットアプリの連絡先を交換したのだ。

 その電話に出る。

 

「はい」

 

『はいじゃないが』

 

 突発的に返ってくる入嶋の不満そうな声。彼女の後ろで苦笑いするクルーシアの声が聞こえてくる。

 言い方の強さに思う所はあったが、その理由はなんとなくわかったので、本題となる話に突っこむ。

 

「えぇと、返答について、ですか」

 

『そう。元さんも答えを待ち遠しそうにしていたし、急かすなとは言われてるけど心配なのよ。あなたが答え決めきれずにいるんじゃないかって』

 

 また勝手に自分の考えで言っているんじゃ?と聞こうとしたが、それを言っても仕方がない。そういう状況にしているのは自分なのだから。言葉を飲み込んで、それが図星であると語る。

 

「まぁ、決められていないってなるな」

 

『だったら会おう。今日特に予定はないでしょ?』

 

 突然の誘い。話せば何か変わる、と言いたいのだろう。逡巡する。あんまり干渉されたくないのはある。しかし一人で答えが出し切れるのか不安があった。

 俺自身の問題。けれども答えがでない。それだったら、声を聞いてみるのも一つの手段か。入嶋の提案に乗る。

 

「分かった。どこで会う」

 

『中都区のハレルヤモールにしましょ。待ち合わせ場所は……サティアで。クルスと、それからエターナも行くから』

 

「じゃあ、現地で」

 

 言って通話を切る。となれば身支度をしなければ。軽く上着を羽織って、カバンを肩に掛ける。両親に言って外に出ると、自転車にまたがり目的地へと向かった。

 

 

 

 

 自転車を走らせて10分弱。目的地のハレルヤモールへと到着する。このあたりでは割と休日は賑わうショッピングモールだ。昨日も両親が買い物に行ったらしい。

 そのモールの中に構えられた喫茶店「サティア」が、待ち合わせの場所だ。古い雰囲気を醸し出す店内を覗き、目的の人物達のいる席へ向かう。

 

「お待たせ」

 

「あぁ、そんなに待ってないから。注文する?」

 

「そうだな。とりあえず、メロンソーダ」

 

 言って店員を呼びつけて注文をお願いした。注文を終えて、空いている席に座る。隣は入嶋だ。反対側にはクルーシアとエターナが座る。

 仏頂面のエターナについてこっそりと聞く。

 

「なぁ、これこっちがヤバいんじゃねぇの?」

 

「正直、それが一番あるかも。いや、昨日ジャンヌさんと話し合ったんだけどね、これでも」

 

 入嶋の表情の重さが如何に苦労だったかを物語っている。電話口での軽さが嘘のようだ。これはこちらがどれだけ覚悟を決めたかを確認しに来た感じもした。

 その確認がクルーシアの口から投げかけられる。

 

「それで相模君はどんな風に悩んでる?あぁ、言いたくないなら言わなくても……」

 

「いや、言うよ。言わせてくれ。……簡単に言えば、トラウマがあるんだ。そういうカルトと関わることに」

 

 来たのだから、話した方がいい。その気持ちで軽く大雑把に話す。カルト集団のせいで引っ越すことになったこと、そして一人の幼馴染が消えたこと。隠していることはあるが、それでも明かせる部分は明かす。

 その話に入嶋とクルーシアは共感したように閉口する。言いづらそうにしている二人に発言を促す。

 

「別に黙らなくてもいいぞ。むしろ言ってくれないと、こっちもまた迷う」

 

「あ、あぁ……そうだね。えぇっと」

 

「うん……私もゼロンに酷い目に遭ったけど……割と許せない気持ちはある」

 

 クルーシアからの返答。そして率先して、入嶋が自分の境遇を明かす。

 

「私も……さ。9歳の時父さんと母さん、妹と一緒に夫婦聖院に襲われて離れ離れになったの。って言っても、男だった父さんは殺されちゃったけどね。だから言うけど、そういう人ってHOWには結構多い。MSを兵器に、自己満足の為の道具に使う馬鹿に被害を受けた人が。そんな中で、みんな戦っている。復讐じゃない、誰かが同じ目に合わないように、繰り返さないように」

 

 両親と妹を……。それだけ多くを失っても、入嶋は戦いを選んだ。しかもそれが復讐ではない。羽馬も言っていたが、人助けを信条とするほどの彼女はとても強く見える。

 とはいえそれが空回りしているのを本人は深く反省もしていた。

 

「けど……それが高じて、この前の任務じゃ大目玉……私向いてないのかも」

 

「ち、千恵里ちゃん今自己反省はいいって。むしろまた余計なことをって大目玉喰らう……」

 

「あぁー!今の忘れて!いや、大事なことだから忘れちゃ……ぁぁああ!」

 

 失言に失言を重ねて入嶋が発狂し出す。冷静を失っていく様を見て、沈黙を守っていたエターナがキレた。

 

「っ、あんたパイロットならもうちょっと冷静になりなさいよ。だからやられたんでしょ?」

 

 傷口を抉るような一言。「う゛!」と入嶋の図星を突かれたような悲鳴を上げて、机に顔をうずめる。

 それなりの勢いで顔をぶつけたので心配になって気に掛ける。

 

「だ、大丈夫か」

 

「……ご心配なく。そ、そんなわけでさ。トラウマとかならだれでもある。そういうのとか、隊長とか先輩が聞いてくれるし、失敗もちゃんとフォローする。だから……」

 

 来てほしい。そう言う声が漏れかけたところで口を噤む。そのまま飲み物のストローに口を付ける。あくまで返事はこちらに、としたいのだろう。

 自分も一緒だから、と言われてもやはり俺は躊躇いがある。例えあの時退けられたとしても、これからまたなんて……。それに、自分は……。

 悩んだままの宗司。イラつきの収まらないエターナが、そのまま言葉で噛みつく。

 

「あーもう、そっちはうだうだして、こっちは奥手?暗い話ばっかりで、冗談じゃないわよ!」

 

「え、エターナちゃん!?」

 

 クルーシアの驚きもよそ目にエターナが言う。

 

「あたしはね、姉様を早くマキナ・ドランディアに帰してあげたいの!その原因になってるレイアさんを白のガンダムから連れ戻してね」

 

 言っている意味がよく分からない。が、彼女にも理由があることは分かった。そのうえで、なのか分からないが人目もはばからず彼女は語る。

 

「あたしの姉様を奪っていったくせに、あのクソ男はレイアさんを取り返せてない。ならあたしがやるしかない!あたしは戦う。姉様とレイアさんを戻して、もとの幸せな世界に帰るの!」

 

「……それなら、俺はいるのか?」

 

 ぽつりと呟く。そんなに戦いたいなら、エンゲージシステムとやらを起動できるお前だけでいいだろ。そう言おうとしたところで彼女の手が宗司の襟元を掴む。苦しいと言う前に、その口が紡ぐ。

 

「出来るなら、やってるわよ」

 

「えっ」

 

「……フン」

 

 しかし、彼女はそのまま何もせず、座り直す。何か言いたげだったが、それも言わずにこちらに選択を委ねる。

 

「いずれにせよ、あの機体はあたし抜きでも、あんた抜きでも動かない。あたしはあたしの目的で戦う。あんたも、理由くらいつけて戦いなさいよ」

 

 結局決定権をこちらに委ねてくる。しかし状況が変わった。少なくともエターナは目的の為に戦う気満々だ。

 入嶋達もそれに安堵し、残る宗司に意思を確認してくる。

 

「ってわけだけど、相模君は不満があるの?それとも―――」

 

 その言葉が終わる前に、建物内に異変が起こった。ガラスの割れる音。同時に、建物内にわずかに聞こえるMSの駆動音。血相を変えて入嶋とクルーシアが喫茶店の外に駆け出した。

 

「っ!ごめん代金お願い」

 

「ちょ、マジか!」

 

 持ち合わせが少ないというのに。とりあえず俺はエターナに声を掛ける。

 

「行くぞ、ファーフニルさん」

 

「馴れ馴れしいわね。それに騒々しい」

 

「代金払ってくれるなら、レシート置いてくけど」

 

「ちょ、それ反則!」

 

 言って身支度を急ぐエターナ。俺はレシートを出して手早く会計を済ませる。その後をエターナ、そしてあのハロが付いて行く。

 二人はどこに……。そう思った矢先、二人のMSがモールの空を翔ける。

 

「ちょ、こんなところにMS!?」

 

「ま、まさかゼロンとHOWじゃ」

 

 通行人の予測は図らずも当たる。ゆっくりと天井付近から降りてくるゼロンのものと思わしき局面装甲と平べったい頭部の機体。それに相対する姿勢の入嶋達のMS。

 ゼロン側がスピーカーで名乗る。

 

 

『僕らはゼロン。次元覇院の正統後継者なり』

 

 

 NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。本当にどこでも登場するゼロンとなっております(;´・ω・)ショッピングモールばっかり襲撃されて大丈夫なんですかねこの世界の買い物。

レイ「そこらへん気になるよね。けど総理大臣も変わったんだね」

ジャンヌ「11年の間に変わるのも当然でしょうね。現実では8年近く続いていたのが注目されるくらいですし」

ちなみに変わったのは6年前。つまり今の譲首相は6年目です。意外とこの時点でも長いっていうね。

レイ「ちなみに元君と首相の会話、どこかで聞いたことあるね」

ジャンヌ「確かに、ガンダム作品で」

あっちはエスパーではありませんって言ってたね。まさしくDNLはエスパーではないんだなぁ。

ジャンヌ「その元さんも相模さん達を確保したい気持ちはあるんですね。けれど本人たちとしては……」

レイ「でもエターナちゃんは入る気満々だね。やっぱりお姉さんの役に立ちたいって感じ。けどなんか引っかかるよね、あの時の」

そこら辺が彼女がこの世界に来る理由となった一つの「きっかけ」に繋がっていくことになります。今から想像しておいてくださいな。ま、割とよくある展開なのですが。

レイ「ゼロンの襲撃を見て、二人がどうするのかだね」

ジャンヌ「昔の元さんだったら立ち向かってそうですが……」

元君は……うん、無鉄砲な感じがあったよね(´・ω・`)

レイ「にしても二人の店を出るやり取り面白いね」

ジャンヌ「やられたらちょっとむかつくけど、今の状況を考えるとやむなしって言い方ですよね」

代金支払いに異世界人は逆らえないのである(´-ω-`)というわけで今回はここまで。

レイ「次回もよろしくねっ」


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EPISODE9 覚悟の契約2

どうも、皆様。昨日のトレンドにエクバ2の次回作の情報が入っていて、だからこそのマキオン発売か、と思っていました、作者の藤和木 士です。

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよ~」

ネイ「アシスタントのネイです。マキオンと言えば、作者さんオンライン対戦はしないんですか?」

あぁ、家庭版フルブのシャフが地獄だったのでやる気失せました(;´・ω・)あと今のままだと回線黄色なので、ツイッターのグループの人としかやれないっていうね。黄色はあかん、可能な限り青でね。
というわけでEPISODE8の公開です。

ネイ「ゼロンの襲撃……東響掃討戦から11年、それでもまだ東響への進出が止まっていないのを見ると、裏ルートとか多そうですよね」

グリーフィア「というより、これは掃討しきれてなかったっていうのが正しいのかもねー。あの前線基地と都心の敵を排除した位だし、もっと郊外の方に逃げていたのかも。途中でネストが襲撃受けてて出し切れていないんだとしたら」

そこら辺はまたどこかで言うとして、今話には更なる敵勢力、そしてあのシュバルトゼロガンダムの後継機の姿が遂に登場!(戦闘はまだです(´-ω-`))

ネイ「最後声ちっさいです」

グリーフィア「果たしてこの襲撃を解決するのは誰なのかしら~。千恵里達か、元君達、それとも~?」

それでは本編をどうぞ。


 

 店を出た私とクルス。支払いを任せてしまったことに胸は痛むが、そんなことを気にかけている場合ではない。非常事態を察して外へ出た二人の見上げた先に、機人の影が映る。

 

「あれってゼロンの……!」

 

「ゼロン本軍、それに、あれは蒼穹島勢力の機体だ」

 

 クルスの指摘するように、これまでに何度も見たことのあるゼロンの主力シトとシシャ以外に、曲面装甲を多用したダークブルーの機動兵器が背中からDNを放出させて降りてくる。

 こんな街中でMSが現れるなんてただ事じゃない。疑惑を強めて二人はスターターを起動させる。

 

『スターター装依開始。周囲の人は離れてください』

 

「装依!」

 

 スターターからの注意喚起が流れ、民間人が二人から離れる。それぞれの機体、シクサス・リッターとガンダムDN二号機に装依を完了した二人が機体を浮かせて彼らの前に対峙する。

 

『我らはゼロン。次元覇院の正統後継者なり』

 

「次元覇院の後継者?冗談じゃないわ。人に迷惑かけるあんた達は、犯罪者でしょう!」

 

 威勢よく言って見せる。反逆者となる千恵里の言葉を聞き、ゼロンのリーダーであろう、ダークブルーの機体の一機が鼻で笑う。

 

『犯罪者か。笑わせる』

 

「何がよ!」

 

『MSの運用、それを独占する君達もまた、悪ではないか。僕らもその可能性を押し広げているだけに過ぎない。自分達の足元も見ずに、勝手なことを言うな』

 

「勝手は、どっちよ!」

 

 ブレードザッパーを抜き放ち、斬りかかる。その機体もまた腰に携えた剣を展開して光刃で受け止める。

 銃剣と光剣が交わり火花を散らす。戦闘が開始されたことにモールを訪れていた人達が悲鳴を上げる。

 

『民間人の方は避難してください。急いで!』

 

 クルスが避難するように呼びかけながら、バックパックのウイングの剣を取り出す。その様子を見て、先程の男が指示を出す。

 

『シト、シシャは残りの敵と対峙、モール内の清浄化を。ワン部隊はこちらをやれ』

 

『了解です、晃司(こうじ)先輩!』

 

 先程の奴とは違う声。機体のパイロットの声と共に目の前の機体が出力を上げた。どうやら命令を出している者はこの場にはいないらしい。

 鍔迫り合いを弾き、都民に襲い掛かろうとするシト部隊を止めようとする。が、それをワンと呼称された機体達が阻む。

 

『お前の相手は、俺達だ!』

 

『ガンダムって機体の力、見せてみなさいよ』

 

『もっとも、僕らの足元にも及ばないだろうけど』

 

「上等よ。まずはあんた達を片付ける!」

 

 剣を向けて千恵里は周囲の敵の掃討に掛かる。ぶつかり合う剣と剣。そこに敵の銃撃が襲う。それらを回避して反撃のマシンガンの弾を浴びせようとする。ところがシトと交戦するクルスがそれを制止した。

 

『ダメだよ千恵里ちゃん!周囲の安全が確認できなきゃ、銃火器を使うのは危ない』

 

「ぐっ、そうだった……クソッ!」

 

 周囲にはまだ避難する民間人の姿が。それに手を伸ばすゼロンのMS達、そして取り囲むワン部隊がマシンガンと銃槍でこちらを攻め立てる。

 銃は使えない。それどころか、こっちは回避することも迂闊にできない。こんな卑怯な方法で……!

 ふと宗司達の事を思い出す。二人を置いて来てしまった。その失態に今さら気づいた。真っ先に護るべきは彼らのはずなのに。

 悔しさで奥歯を強く噛む。盾で防御し、斬りこめるチャンスを伺う。その間にも後方から関係のない人たちの絶叫が木魂する。

 

「きゃあああ!!」

 

「うわあぁぁ!」

 

『ゼロンの勝利の為に、あなた達には犠牲になってもらう。HOWを享受するあなた達自身が悪いのだ、自業自得なのだよ、これは!』

 

「勝手な言い分を……っ!」

 

 シト部隊のパイロットが銃弾と共に言葉を吐く。否定するが、自身のその言葉もまた虚勢だ。悲鳴する現状を打破できないまま、ただ見ているだけにしかならない。

 このままじゃ、本当に……。でも、あれならこれを突破できるかもしれない。元さんには考えて使うよう言われていた兵装。この機体の最後の切り札。

もう迷ってなんかいられない。私はそれに手を伸ばす。

 

「私は……使う!」

 

『千恵里ちゃん!?まさか』

 

 クルスは止めようとした。が、その前に千恵里は発動する。

 

 

「―――エラクス!」

 

 

 力強い一声。その声と共に、機体が蒼く輝く。残像を残してその場から消える。この事態にゼロン側が驚きを露わにする。

 

『き、消えた!?』

 

『ちょ、ちょっと、あれって!?』

 

『ワン・スリー!避けろォ!』

 

 声を上げる頃には既に時遅く、ワンの一機を切り裂いた。ブレードザッパーに腹部を切り裂かれた機体が爆発する。

 蒼炎の力は、もはやシュバルトゼロガンダムだけの物ではなかった。制御に苦戦しつつも、千恵里は残る機体達へと肉薄する。

 

「今までの同じだと思ったら、大間違いよ!」

 

『各機、エラクス機への戦法で対応!シト部隊も支援に……』

 

 敵がこちらへと引きつけられる。それでいい。私に注意を引ければ、それで。超高出力状態の機体で、私はゼロンの機体へと肉薄し、部隊と応戦を続ける。

 

「おおおおぉぉぉぉ!!」

 

 

 

 

 自衛軍の秘匿する開発施設。その中でももっとも秘匿性の高い、自衛軍第一開発局に黒和元とジャンヌ・ファーフニルの二人は訪れていた。

 案内する自衛軍開発担当の人物がその用件に触れる。

 

「ここまで遅くなってしまったこと、すみません」

 

「完成したから、文句はないさ。再開発のために尽力してくれた新堂幸地元首相にも感謝している」

 

 目的はただ一つ。シュバルトゼロガンダムの後継機、その受領の為だった。ロックの施された扉の前でカードキーを認証させる。扉が開放され、中に入るとその機体はあった。

 大きなパネルで構成されたウイングパーツ、肩に装備されるシールド、腰の銃剣、機体各所のユグドラシルフレーム……。かつてのシュバルトゼロガンダムを踏襲しながらも、今までとまるで違った構成をしていた。

 しかしその機体色はまだ黒くはない。むしろ鈍色の鋼の色で、それがまだ動力源となるDNジェネレーターを装備していないことを意味していた。開発担当はこちらにDNジェネレーターの提供を要請する。

 

「ではこれよりDNジェネレーターの換装作業を行います。スターターをハンガーモードでこちらに」

 

「分かった」

 

 言われてゼロ・スターターをハンガーモードで起動させる。起動したスターターをハンガー設置の台に置くとその出力ハンガーにシュバルトゼロガンダムが顕現する。

 顕現した機体に機械のアームが近づく。胸部装甲が開き、DNジェネレーターが露出する。アームはDNジェネレーターを掴む。DNジェネレーターが引き抜かれ、シュバルトゼロガンダムから光が失われた。

引き抜かれたジェネレーターの移動先は無論、新型のシュバルトゼロガンダム。こちらも胸部装甲が開き、その内部にジェネレーターが収められる。するとたちまちDNジェネレーターが起動し出す。その恩恵で鈍色の機体が、象徴とも言える黒へと染まっていった。

 黒、灰色、紺、そして各所に紫とと、これまでのシュバルトゼロガンダムよりも更に色が加わっていた。紫に関してはスタートからの要望だが、それ以外は元が全て調整してもらった。

 機体の起動状況を見て、開発担当が頷く。

 

「よし、出力問題なし。これよりカードに取り込みます」

 

 開発担当が端末を操作すると、機体が出力ハンガーより消失する。消失したのを確認して開発担当は接続していたカードと、スターターをそれぞれ手渡す。

 

「これで本体の行程は終了です。お待たせしました」

 

 十一年もの時間をかけて、ようやく完成した機体。感慨がないわけではない。しかし、これで終わりというわけでもなかった。本機を構成する最後のパーツ。その開発がまだ残っている。

 それでも、ここまで作り上げてくれたことに感謝する。

 

「ここまでの開発、感謝する」

 

「残りの支援機、武装各種も急ピッチで仕上げます。とはいえメインとなるあれはまだかかりそうですが」

 

「構わない。一番難航するのがそれなのは分かっていたさ。では、これにて帰還す……」

 

 機体の受け取りを終え、帰還しようとする二人。開発担当に通信が入って状況は一変する。

 

「ん?失礼。はい……えっ?黒和さん、司令部からの通信です」

 

「どうした?」

 

「東響中都区、ハレルヤモールをゼロンMSが襲撃。現在その場にいたCROZE隊員が交戦とのことです」

 

 CROZE隊員の交戦と聞き、すぐに元も仕事用の端末で黎人につないだ。

 

「俺だ。黎人司令、ハレルヤモールの件は知っているか」

 

『無論だ。今戦っているのは、入嶋とクルーシアだ。宗司君達もいる。そちらは護衛の隊員が外まで護衛している』

 

 入嶋達が戦闘に入っている。幸いと言えるか微妙な状況だ。あの二人がどこまで出来るか、不安が過る。

 黎人に他部隊の出撃状況を確かめる。

 

「CROZE部隊、出撃の状況は」

 

『現在チームCとRを出撃させた。現地のGチームと合流させれば何とかなろう』

 

「俺も出る」

 

『ま、待て。まさかそこからか?』

 

 そこから、というのは無論この開発施設から出るのかの意味だ。その通りだと俺は回答する。

 

「あぁ。試運転がてら、飛ばす」

 

『……あんまり推奨されないがな……。おまけにまだウエポンスペースは武装入れていないんじゃないか?』

 

「それでも十分だ。だろう?開発担当?」

 

 黎人の言葉を軽く受け答えして開発担当にこの状態での戦闘が可能か問う。開発担当は難しい顔でその問い掛けに応える。

 

「まぁ、一戦闘くらいなら大丈夫だとは思います。DNジェネレーターの最終調整もファーフニルさんに動かしながら調整してもらえるのでしたら」

 

「決まりだな。所長にこちらの出撃ハッチを使えるように通達を」

 

「はい」

 

『……途中で動けなくなったとか言わないでくれよ……』

 

 黎人の一抹の不安を残しながらも、緊急出撃シークエンスが始まる。元達は先程まで新型が置かれていたハンガーのあった位置に移動。ハンガーが格納され、上部天井が開放されていく。

 開発担当の操作で施設内に警報が響き渡る。スターターに、新型のデータが入ったセレクトスーツカードを装填する。

 

『|Gemini US《ジェミニアス』

 

 これまでの装填音とは違う音声。二人で手を繋ぎ、装依に備えた。

 

「行くぞ、ジャンヌ」

 

「えぇ」

 

 最後のハッチが開放し終わり、射出口から日が差した。吹き抜ける風、腰に付けたスターターの装依ボタンを押し込む。

 

『Standby OK?』

 

『装依』

 

 二人の声を合図に生成されたゲートが挟み込む。そうして顕現したシュバルトゼロガンダムの後継機。システム音声が機体名を読み上げた。

 

『ジェミニ・クロス・ディメンション シュバルトゼロガンダム・ジェミニアス』

 

「シュバルトゼロガンダム・ジェミニアス、装依完了」

 

 ジェミニアスへと装依を完了した元は、上を見上げる。開発担当が射出タイミングを譲渡する。

 

「発進いつでもどうぞ」

 

「シュバルトゼロガンダム・ジェミニアス、これより作戦地点ハレルヤモールへと飛翔する!」

 

 翼を広げ、勢いよく飛び立つ。射出口から飛び出た機体は、一回転の後速やかに目標地点への進行を開始する。

 スピード、出力。これまでのシュバルトゼロガンダムと段違いだ。あふれ出る機体のポテンシャルに感動すら覚えた。これなら戦える。

 ジャンヌにもそれを確認する。

 

「凄い機体パワーだな。そっちはどうだ」

 

『えぇ。上がった分ちょっと制御は難しいですが、事前のシュミレーターでの想定内です』

 

「テストがてら最大出力で飛ばす」

 

『了解。いつでも』

 

 準備が整うと同時に機体のスラスターを全力で噴射する。シュバルトゼロガンダム・ジェミニアスは、その限界性能で目的地であるハレルヤモールへと急行するのであった。

 

 

 

 

 ハレルヤモールから何とか脱出できた宗司とエターナ。入り口を見ると、他にも脱出してきた人は多い。そして人質として襲い掛かるゼロンのMSが銃を乱射しつつあった。

 それを阻むように空から数機、そして追う形でモールからもHOWの機体が一機出てくる。

 

『これ以上被害は出させん』

 

 聞き覚えのある声の機体が、敵と切り結ぶ。一度弾かれ、斬られたと思ったが、その機体はバックパックを分離して脇をすり抜け様に切り裂き、倒した。

 再度合着するバックパック。あれよあれよと切り倒していく機体は敵をせん滅するとこちらに歩み寄ってくる。

 

『大丈夫か、相模宗司、エターナ・ファーフニル』

 

「その声……呉川さん。はい、無事です」

 

 千恵里達の上司に当たる人物だ。呉川は装依状態のまま、この状況を整理する。

 

『全く、入嶋達もこちらを優先すべきだろうに。まぁ、あの場で食い止める選択が無ければ、中を思うがままにされていたのは間違いないが……。C隊は俺と共に中に突入。R隊は外の整理、並びに出てくるMSの対処、それからこいつらの護衛を頼む』

 

 宗司達をR隊と称した部隊に任せ、再び中へと向かう呉川。保護されながらも、外に広がる惨状を見つめる。

 

「……酷い」

 

 怪我をした人を駆けつけたHOWの人員が手当てする。しかし、中には助からず、命を落とした人も、機体が運んでいる。血の臭いが辺りに広がりつつある。

 学校での戦闘よりも酷い。モールの中がわずかに見えるが、中も血だまりが広がっていて見るに堪えない。もっと中は酷い惨状なのだろうか。

 視線を逸らす。逸らした視線の先に、俯いたエターナの顔が見える。恐る恐る、話しかける。

 

「お前も、怖いって思うか?」

 

「怖い?ううん……凄惨だとは思う。でもこんなの私の居た世界じゃ、少し前まで当たり前だったから」

 

 平気であると答えるエターナ。ところがその表情は浮かないものだ。何か思っている、と考えた時にはエターナは話し出す。

 

「私の居た世界は、種族の違う人間同士が殺し合っていた。種族戦争、みたいなものだった。中立国でも、そういった思想の強い人間が、平和に暮らしてた人々を殺して、感情を煽ってたくらいだし」

 

「だから、慣れてると?」

 

「慣れてる、のとは違うかも。日常茶飯事だから、それを受け止めて、そのうえで自分がそうならないように生きてきた。ただ、私の姉様はその凄惨な戦争を終わらせた。英雄の片割れとして。だから、それから私には期待されていた。姉妹だからって、ちやほやされていた」

 

 達観した表情で、呟き続ける少女。期待を受けた少女の辛さが、明かされる。

 

「でも、私には何の取り得もなかった。DNLとしての能力は平均的で、姉様みたいな奇跡の出会いもない。最初の内はそれも仕方ないって思ってたけど、周りの人達の声を聞いて変わっていった。所詮は妹、姉とは違うなんて言われて。だんだん私は、姉様に嫉妬していった。大好きだった人が、どんどん疎ましくなっていった」

 

 憧れから妬み。いきなり何かと思ったが、好意が消えていく様への鬱屈さを口にしたエターナは近くの車両に背中を預け、戦うに至った本音を語る。

 

「昨日、姉様と話した。でも言えなかった。怖かった。姉様はレイアさんを助け出そうと戦い続けている。頑張っている大切な人の邪魔なんて出来ない、出来るわけない。未完成の転送システムまで使って、やってきたのに、もし姉様にまで邪魔なんて言われたらって思ったら……もう居場所なんて……」

 

 役立たずであることを怖がるエターナ。正直に言って、その気持ちは分からない。今まで親戚や尊敬した人物に嫉妬したことなんてなかったから。それだけ思い入れもなかったからなのも影響しているのかもしれない。

 それもきっと、あの事件が影響しているのだろう。親交を深めれば、裏切られ牙をむかれた時にもっと傷つく。それを無意識に避けていた。だから小野寺達とも適度な距離で「クラスメイト」として接してきた。無関心でいるために。

 宗司に、彼女の「愛」は分からなかった。「信愛」に怯え、「親愛」を忘れた。ただそんな彼にも、共感できるものがあった。

 宗司はその口を開く。

 

 

「俺は、人を信じられなくなった」

 

「えっ」

 

「信じたら、また裏切られるんじゃないかって。そうしてまた失う位なら最初から信じなければいい。けど、だからって信じることが悪じゃない。愛することだって、同じだ」

 

 

 あくまでもこれは自分の問題。他人の誰かへの信頼まで否定なんて出来ない。そんなことをしたら、俺は彼女と同じになってしまう。愛で愛を潰すなんて、したくない。

 だからこそ、彼女に自分の言える限りの言葉を述べる。

 

「だから、お前は信じろよ。俺なんかとは違う。お前はまだ信じられる。信じるものがあれば、戦えるだろう?」

 

 その言葉に沈黙するエターナ。答えに悩んでいるのか。ところが、すぐに顔を向ける。彼女の口が動いた。

 

「なら、あんたはどうするのよ。これからも、ずっと信じないの?信じないから、戦わないの?」

 

 まっとうな指摘だ。人に信じろと言っておきながら、自分は信じない。今までのやり取りなら、そうなるだろう。

 楽が出来るなら、それがしたかった。そのつもりで返答しようと思った。背中を、ましてや命を仲間に預けたり預かったりなんて自分には出来ないと思っていた。はずなのに。

 

「―――――なら、君を信じさせてくれ」

 

 自分の中に生まれた感情。忘れたはずの感情で、彼女に提案した。

 

「俺はまだ、知りもしない誰かに背中を預けるなんて、難しい。でも、あの時、初めて装依した君なら……俺の記憶を見たのなら、俺は君の信じるモノを信じる」

 

 エンゲージシステム、その作動時に起こる記憶共有は次元博士から聞いていた。それを思い返したとき、最初は吐き気を覚えた。自分の気持ちを知られたことに。が、考え直した。それはエターナも同じだと。

 先程の話で、それを確認した。だから、俺は彼女から逃げることは出来ない。逃げるなんて出来ない。知った者同士、向き合わなければ。そう思ったから。

 

「………………」

 

 エターナは閉口する。その視線がきつくなる。彼女もまた理解をしたのだ。そして彼女も言った。

 

「なら、信じなさいよ。「私」が見る世界を、私の信じる世界を、見ていて」

 

「あぁ」

 

 二人の意志が重なった時、状況は一変していた。人質を取るゼロンのMSがモールの中から現れる。ハロが飛び上がり知らせた。

 

『テキ、テキ!』

 

 人質となっている人物に見覚えがあった。自身のクラスメイトの少女。飛び交う声。

どうすればいいのか、少しだけ戸惑う。けれども少女の怯えた表情を見て、決意する。

 

「行こう」

 

「無茶言ってくれるわね」

 

 悪態を吐かれながらも、揃ってそちらへと向かっていく。何かできる、根拠は分からないが、そう信じて。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。

グリーフィア「覚悟、決めたわね」

ネイ「だね」

けど確証ないままなんですよねぇ(´・ω・`)一体どうやって人質救う気なんでしょうか……。

ネイ「それは無論考えているんでしょう?」

メタいけど、まぁそうだね(;・∀・)

グリーフィア「じゃあそこら辺は大丈夫ね」

大丈夫じゃないが( ;∀;)

グリーフィア「それよりか、エターナも色々大変だったみたいねぇ。重責だっけ?」

ネイ「英雄の姉がいたからこそ、妹に過度な期待がかかる。そう言う物語って割とありますよね」

ガンダムとかでもAGEのフリット・アセム親子とか、ちょっと違うかもだけどダイバーズのオーガ、ドージ兄弟とかいたね。あとアルジェ兄弟も?

グリーフィア「別作品でここに関係あるとしたら、ウルトラマンタロウとかかしら?親としてのタロウに対するタイガ、それと友人としてのタロウに対する黒幕トレギアとか」

とはいえその発想に至ったのはもっと別の何かだったような気がする(;´・ω・)今思い出せないから仕方がないんだけど、まぁそういう身内と比較されての劣等感って割とダークサイド落ちる要因ですよね(´-ω-`)

ネイ「いつかそれが逆流してしまうんでしょうか?」

それは無いとは言い切れないね。

グリーフィア「それと、これにも触れておいた方がいいかしらね。新型のワンとそれを操るチーム、そしてシュバルトゼロガンダム・ジェミニアスの登場っ」

ネイ「ワンの方は随分とシト、シシャと外見が違うようですね。しかもチームでの行動を意識していますし」

ワンはそのモデルから本当にチーム戦重視の機体です。しかもガンダムおなじみのあの機能も持っていますよ。

ネイ「ガンダムおなじみの機能?」

グリーフィア「んー……マグネットコーティング?もしくは学習型コンピューター……あっ、コアファイターとか?」

正解は次回に分かるけど、そのやり取り見てればなんとなくゼロンに味方するこの勢力のモチーフが分かると思います。

ネイ「そうですか……そして満を持してシュバルトゼロガンダムの最新型、ジェミニアス、ですか」

その通り!( ゚Д゚)ふたご座っていう旧作SSRの要素に関わりのある要素なんだけどね、エンゲージシステムと親和性よさそうだから、あえてこの名前を用いさせていただきました!

グリーフィア「旧作とふたご座、関係性については明かしていないけど、割と推測はしやすいやつなのよねー。そこら辺の設定明かすときは?」

多分ない( ゚Д゚)(断言)

ネイ「前は旧作の総まとめで設定予定資料集みたいなの作るって言っていたのに」

うぐっ(T_T)……まぁ次回で宗司君達の現状打破の方法と、シュバルトゼロガンダム・ジェミニアスの性能の一端をお見せしますよ。とりあえず今回はここまで!

グリーフィア「次回もよろしく~。ちなみに現在作者君次章に向けた設定で忙しくて少し遅くなるかもらしいわ~」

遅くならなかったら順調or巻き返したと思ってください(´・ω・`)今回もタイミングずれたのそれが理由なんですわ……それでは。


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EPISODE10 覚悟の契約3

どうも皆様。とあるグループでの話題で駄菓子の話が出て、そこから展開したアイスの話も含めて変な風に盛り上がりました、作者の藤和木 士です。その話題のせいで今日う○い棒買ってきました(´Д`)私はコンポタ派。

レイ「アシスタントのレイだよーっお菓子かぁ……お菓子も好きだけど、私はアイス派かな?」

ジャンヌ「私もアイス派ですね。アシスタントのジャンヌです」

(´・ω・`)う○い棒……の。いや、止そう。とりあえず今回はEPISODE10、覚悟の契約の第3回です。

レイ「人質になったクラスメイトの救出!第一部に重なる展開だねっ!」

ジャンヌ「その流れを汲んでいますよね。とはいえジャンヌ・Fさんと元さん別のクラスですが」

ガンダムDN、それもまたガンダムの冠した機体……その予想外の性能を、見せちゃうんだなぁこれが!(゚∀゚)

レイ「ちょっと、SBの空気抜けてないよ!ゾ○タン入ってる!」

ジャンヌ「バト○ピが体に染みついている……いや、もうガンダムのネタフリーで口走るのやめましょうよ……」

まぁでも今回もう一つ見せ場があるんだけどね。そろそろ到着ですよっ(何が)というわけで本編をどうぞ。


 

 

「増援とは、中々迅速だ。しかし……これでも攻撃できるかな?」

 

「ぐぅぅ……」

 

 ゼロンMSの行動に、HOWのパイロット達は動けずにいた。モールに突入しようとした矢先に出てきた敵は、その手に少女を捕らえていたのだ。隠れた民間人を見つけたから、そうしたのか。

 この場に隊長が、シュバルトゼロガンダムがいればどうにかなったかもしれない現状。無傷でどうにか出来る確証を得られなかった者達が威嚇を行いながら、じりじりと距離を詰める。

 詰めてどうにか出来るか。しかしそれに気づいたゼロンのパイロットが再び人質を示して恫喝する。

 

「こいつが見えないかぁ!」

 

「いづぅ!?や、やめて……」

 

「くっ……!?」

 

 その彼らを横目に、前に歩み出る影が二つ。宗司とエターナの二人が前へと出た。

 

「そ、宗司っ……!?」

 

「相模君、エターナさん!?」

 

「フン、貴様、報告にあった……如何にMSを扱えようが、この状況を打破できるとでも」

 

 動揺する羽馬とHOWの隊員達。それを見てもなお余裕を見せるゼロンのパイロットも気にせず、俺はハロから取り出されたスターターを腰に装着する。

 昔見たヒーロー物のアイテムと同じ装着法。二度目となる現実世界での装依を行う。

 

『Standby OK?』

 

「覚悟、出来てるわね?」

 

 不意にエターナから確認の問いかけがされる。覚悟なんて、最初に装依したときからしていた。けれどこれはもう戻れない決定的なもの。彼女の言葉に、答えれば、それはもう一蓮托生となる。彼女をその気にさせた責任は果たさなければいけない。

 それを理解したうえで、答える。

 

「あぁ。これからは、そう決めた」

 

 スターターから真横に形成したゲートが二人の体を重ね合わせる。白と黒、赤のトリコロールの機体。二人のガンダムが顕現した。

 奇しくもそのやり取りは魔王、かつての元とジャンヌのやり取りと重なる。もっともその場にいる者達は気づくはずもなかったが。

 その機体を見て、ゼロンの機体はより一層人質の羽馬への突きつけを強める。はっきりとその銃を首元に付きつけ、少しでも発射へ移行すれば羽馬の首筋が粒子で焼き切れるだろう。

 何が出来るか分からない。むしろ最悪の方向に持っていきかねない自分達の行動。それでも何かできると信じた。二人は考える。

 

(サーベルでの接近戦でも、射撃での狙い撃ちでも相手の方が早い……)

 

(この機体存外素直な兵装しかない……ガンダムならもっと特殊な兵装が多いっていうのに……)

 

((どうしたら))

 

 エンゲージシステムでお互いの心の声が筒抜けになっていた。パートナーも考えが思い浮かばない事実に諦めかけるが、エターナは機体の知らせる変化に気づいた。

 

『……?これ』

 

 気づいたのとほぼ同時に宗司の頭の中に情報が送り込まれる。機体が見せる情報、それが示す対抗策をエターナとエンゲージシステムが生み出す深層意識下で同調する。

 

(これしか、ない)

 

『なら、いくわよ!』

 

 エターナの言葉に同調し、その手をおもむろに敵へと伸ばす。敵は体を震わせ銃をより強く羽馬へ押し当てる。何をするのか分からないHOWの隊員達がこちらを制止してくる。

 

「やめろ!迂闊なことをするのは……」

 

「……俺達が、やる」

 

 宗司自身のやるとの声、機体の各所が開いていく。開放されたカバー。何かをすると確信した敵がそのトリガーへ手を掛けた。

 

「貴様の思い上がりが、全てを殺す!」

 

「っ!!」

 

 強くなる抑圧と迫る死に目を塞ぐ羽馬。宗司はそれよりも前に手を閉じる。

 

 

 

 

「お前に、そいつは殺させない!」

 

 

 

 

 静寂が戦場を支配する。が、それは決して悪い意味ではなかった。銃撃音はおろか、焼き焦がす音すら聞こえないショッピングモール前。

 野次馬達すらももう助からないと、声を絞ったその場で、未だに銃を羽馬の首筋へと立てるゼロンMS。そう、何もせずに、そのままでいた。

 不自然な現象にパイロットが気づく。

 

「何だ……なぜ、動かない!?」

 

「へ……?」

 

「何が……」

 

「……お前の動き、止めたぞ!」

 

 拳を硬く握りしめる。これがガンダムDNの隠された力。宗司達の「意志」にガンダムDNが応え解放した力だった。

 敵機体は撃てる状況のはずなのに、全く動けない。対してこちらは拳を握りしめるだけ。起こっている現象にHOWは自軍の機体でありながら理解が追いつかない状況となっていた。戸惑いの声が漏れてくる。

 

「な、何だ……罠か?」

 

『罠なわけないでしょうがっ。口動かすならMSを動かしなさいっ。早く!』

 

「え?あ、あぁ……」

 

 早くしろとの言葉を受けたHOWの隊員達は恐る恐る、しかし手早く静止した敵機に近づいていく。エターナが言うように早くしてもらわないと困る。理由は当然、この力が何のデメリットもなく使えるわけではないからだ。

 意識を集中させて敵を「縛る」ことに特化させた力。頭の中に流れてきた説明では自らの思考を具現化するとしていた。だから宗司は銃を引けない様に、攻撃の全てを停止させることをイメージした。

当然抑え込む形の為動けなくとも反発する力はこちらに掛かってくる。外へ、トリガーを引こうとする指をその上から抑圧するためにより大きな力が求められた。力の負荷で頭が痛む。

 

「ぐっ……!」

 

 負荷に耐えつつ必死に敵を抑え込む。抑え込めなければ、羽馬が死ぬ。させまいと気合で押し込む。

 抑え込む間にようやく人質に触れたHOWの隊員は、素早く彼女を敵の腕の拘束から手際よく引き抜く。瞬時に離脱したところでこちらの限界がやってくる。ようやく動けた敵機体のライフルからビームがあらぬ方向へと飛んだ。

 ようやく動かせた機体を見つつ、起こった現象に非現実感を露わにしたパイロットの声。

 

「何だ……貴様がやったのか?この俺を、邪魔したと言うかぁぁ!!」

 

 怒り狂って光剣を抜き放つ敵。こちらも疲弊した状態で構えたが、そこはHOWの隊員達。こちらを庇いながら敵を包囲し殲滅にすぐさま切り替えていた。

 

「こいつら!」

 

「人質がいないのなら、容赦しない!」

 

 その言葉通り瞬時に敵の武装を無力化していく。包囲してのライフル連射の雨を、被弾しながらも抜け出そうとする敵機体。空へと上がったシシャの機体はこちらに狙いを定め、急降下してくる。

 

「貴様だけでも、落とす!」

 

「くっ!」

 

 残った腕部のビームサーベルを出力して斬りかかってくる。瞬時に構えた右手にバックパックから接続したシールドライフルが装備される。更にライフルが分離し、パーツが折りたたまれる。

 頭痛で視界が霞む。だがその状態で敵に向かって飛び立つ。迎え撃つためにその腕のシールドを振るう。瞬間光が輝く。

 

「うわぁぁぁぁ!!」

 

「おおおぉぉぉ!!」

 

 声を吐き出し、無理矢理意識を保つ。両者が交差した。瞬間斬撃音が走る。切り裂いた装甲。それは―――シシャの腹部に深く刻まれていた。

 切り裂いたのはガンダムDNの右腕のシールド、に出現したビームソード。ライフルの接続部が折りたたまれ、形成を可能としていたのである。

 残る敵の反撃の手段を完全に断った。だがまだ終わりではなかった。警報が鳴り響く。

 

「まだだっ、まだキャノンがある!」

 

『不味い、あいつ無差別に!』

 

 後方カメラで敵が背部と尾部のビーム兵装を周囲に向けているのが分かる。野次馬となっていた民間人に向けられた物。一瞬でそれらが恐怖で唖鼻叫喚となる。させまいとするも、身体が重く動けない。

 

「くっ、さっきの負荷が……」

 

 負荷で動けない体、間に合わない―――。はずだった。

 それを解決したのは空中からの一射。真っすぐと敵の中央を貫く。続けざまに各武装が撃ち抜かれていき、機体は爆散。爆炎とパーツの破片、肉片だけが辺りに細かく散っていく。

 呆然とその亡骸を黙視する。すると回線で名を呼ばれた。

 

『装依したのか、相模宗司、エターナ・ファーフニル』

 

「この声……」

 

『クロワハジメ!』

 

 見上げた先に漆黒のガンダムが見えた。しかしその姿は、宗司はおろかエターナすらも知らないシュバルトゼロガンダムの姿。むしろシュバルトゼロガンダムであるのかどうかも分からない未知の機体。

 見上げる二人に、今一度覚悟を問う黒和。

 

『それがどういうことか、分かっているんだな?』

 

「……はい。俺はエターナを信じる。エターナの信じるモノを信じると、決めましたから」

 

『私がいる限り、こいつをあんたみたいに変なふうには導かないわよ。今はそれがこいつの精一杯だから』

 

『……』

 

 宣言に閉口する黒和さん。流石にそれは許さないか……。ところが、同乗者であるエターナの姉、ジャンヌさんが場を円滑にした。

 

『今はそれでいいんじゃないですか?ノーよりはいい』

 

『……それを決めるのは、上だがな。今は構っていられん。ならしっかりと見ておけ。俺達のこれから戦う様を』

 

「黒和さん?」

 

『これが、新生シュバルトゼロガンダム……ジェミニアスの力だと、焼き付けろ!』

 

 漆黒のガンダムは空へと大きく飛び上がる。機体は加速して、一気にモール内部へと突き抜けて行った。

 機体の回線に一つの映像配信が繋がった。回線に映るシュバルトゼロガンダム・ジェミニアス。新たなる魔王の得た強さに、宗司達は圧倒されることとなる。

 

 

 

 

 モール内で戦い続けていた千恵里とクルス、9機もの敵相手にエラクスまで発動させての攻防。連携も合わせて敵を稼働数5機まで追い込んでいた。

 しかしそれだけの代償は大きい。エラクスは稼働限界を超え性能の下がった機体で防戦一方になりつつあった千恵里、そのカバーをするクルス。

 

「くうっ……あぁっ!」

 

「これ以上は……」

 

 増援が来ることを信じて時間稼ぎに徹する二人。ようやく呉島隊長からの通信が入る。

 

『入嶋、クルーシア、無事か』

 

「呉島隊長!」

 

「こっちはまだ……でも」

 

『すまない、だがこちらも、残りの部隊との交戦で迎えん』

 

 増援が来る、そんな期待もむなしく、呉島は増援には向かえないと明言する。増援が来てくれることを信じてのエラクス使用も仇となった。もう目の前の敵を倒すしか、道はない。

 

 

 

 

 はず、だった。

 

 

 

 

『問題ない。俺が、いる』

 

「えっ」

 

 

 

 

 彼女達にとっての希望が、まだ残っていた。再び天井からの降下音。降り立った機影は、これまでに見たことのない機体。だが、似た機体を千恵里は知っていた。

 自分達の隊長が駆る、かつては最強と呼ばれた漆黒のガンダム。シュバルトゼロガンダムの流派に類する機体であると察する。思い当たるのはただ一つ。

 

「完成……してたんだ。新型機」

 

「あれが……シュバルトゼロガンダムの現代対応型。ジェミニアス」

 

 これ以上ないほどの頼もしい救援だ。落ち着きながらも心の中で沸き立つ喜びの感情。に、対するゼロン側はやけに落ち着きを維持する。

 

「シュバルト、ゼロ?フン、装備が変わっても、対応は変わらない」

 

「前は真紅の流星の再現が潰したって聞くけど、今度は私達が潰す番ね」

 

『だが冷静に対応しろ。いくらお前達の機体が奴の能力を無効化できるとしても、パイロットはあの』

 

「大丈夫ですよ。機体性能が上がっていようと、この数なら!」

 

 過剰な余裕、数の多さでシュバルトゼロガンダム・ジェミニアスを圧倒しようというのだろう。そして残った機体はいずれも新生したシュバルトゼロガンダムを包囲し、襲い掛かる。

 

「さぁ、名声はいただきっ―――」

 

 女性パイロットのワンがロングブレードで斬りつける。瞬間、その腕が空へと舞い上がる。同様に斬りつけられ損壊する胸部装甲。

 既にシュバルトゼロガンダム・ジェミニアスは突破し、押しかけるシシャ、シトの攻撃をいなす。一瞬の出来事を認知しきれないワンのパイロット。

 

「え、何が……」

 

『クソッ、コアファイターしゃしゅ……』

 

 脱出装置を起動させたのか。しかしその前に機体は爆散する。ジェミニアスはその間に逆手に構えた二刀のビームサーベルで脇を潜って続く二機を両断、撃墜する。

 一瞬で三機を撃墜したジェミニアスに敵も味方も目をひきつけられる。ようやくゼロン側も自分達の認識が甘かったことを理解した。

 

「な、この性能差……まさか本当に!?」

 

「なんでだ、あいつはDNLだろ!?ならタイプ[ワン]で押し切れるだろう!?」

 

「そ、そのはずだ……一方的になんて。だが、どうして……!?」

 

 狼狽するタイプワンと呼ばれた機体を、元の駆るジェミニアスが距離を詰める。光速のビームサーベルの斬撃を飛びのいて回避した―――と思われた時には既にその胸部に握られていたはずのビームサーベルが突き立てられる。

 後ろから襲い掛かる残りのシト。ビームサーベルを両手に生成し、薙ぎ払う。

 

「このぉ!っ!?」

 

「……遅い」

 

 恐ろしい勢いで敵を撃墜していくシュバルトゼロガンダム・ジェミニアス。これまでの比ではない圧倒的な性能を、敵指揮官が分析する。

 

『……違う。これは完全に、シュバルトゼロガンダムとは違う力……撤退だ、お前まで死んでは、この先』

 

「晃司先輩……もう遅いですよ」

 

『何っ?』

 

「こんなやられ方……何かダメージでも与えなきゃ、僕が納得できない!」

 

『待て!命令違反だぞ!』

 

 指揮官の命令を無視するようなやり取りから、ワンはこちらに向けて突進してくる。動けない機体を狙っての攻撃。何かダメージとは、そう言うことなのだろう。

 機体を動かそうと試みる。しかしエラクスの負荷に加えてダメージで思うように足が動かない。逃げるのは難しかった。咄嗟にクルスに逃げるように言った。

 

「クルス、避けて!」

 

「千恵里ちゃん!」

 

「二人とも、動くな」

 

 それを制したのは元の声。命令となって二人は無意識に従う。言葉通り、彼女達を庇うようにシュバルトゼロガンダム・ジェミニアスが敵の前へと立ち塞がる。

 その姿を確認して、敵が咆える。

 

「魔王!!」

 

 伸縮式レーザー対艦刀が振り上げられる。元はその武器を残りのビームサーベルで受け止めた。

 立ち往生するようにぶつかり合う両者の機体。打ち破るようにジェミニアスが弾き飛ばしてビームサーベルを投擲する。ブーメランのような軌道で投げられたそれにタイプワンは腕部装甲で弾く。パリパリと次元電磁装甲の作用する音が鳴る。

 飛び上がって勢いを付けた対艦刀二振りが下ろされる。刹那の瞬間、ガンダムが腰から一閃した。

 

「……言われたろ。お前じゃ、勝てない」

 

「がっ……」

 

 頭部に突き刺さった銃剣の刃。刀身が開き、露出した砲口からビームが撃ちこまれる。銃剣は瞬時に元の形に戻り、引き抜かれる。爆発が機体を包んだ。

 爆炎をもろに喰らうジェミニアス。その影で免れた私は叫んだ。

 

「は、元さん!!」

 

 咄嗟に出た心配の声だったが、これはMS。金属の装甲で覆われた機体内部にはフィードバックによる少量程度の影響しかもたらさない。炎と煙の中から隊長の背が見える。

 背が物語る物、かつて自身を救ってくれた時のように力強いあのガンダムの姿が重なる。

 これだ。これが私の憧れたシュバルトゼロガンダム、あの時の黒和元さんだ。蘇った強さに、胸を強く打たれる。

 感動を胸に秘め、視線を固定する千恵里。いつの間にか自身の機体のカメラがジャンヌによってハッキングされて、見たまま景色が外の部隊、宗司達にも見られているとも知らずに。二人に対し、背の翼を見せたまま全部隊へと告げる。

 

 

「戦闘終結を確認。CROZE部隊に通達。シュバルトゼロガンダム・ジェミニアス、配備完了」

 

 

 CROZEの隊長、黒和元が再びトップエースとして返り咲いた瞬間でもあった。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。次回で第1章は終了です。

レイ「やっぱ一章は短くなるね。そして宗司君の機体、これまた凄い能力だね」

ジャンヌ「サイコフレーム関連?サイコフィールドで出来そうですが、これは……」

本世界におけるIフィールド的位置づけで、なおかつユグドラシルフレームに関わる技術、名称はドライバ・フィールドですね。まぁ演出の文字見て「ん?」ってなった人、あるいはこれでの設定と合わせて気づいた人、正解です(´-ω-`)

レイ「正解?」

黒の館DNで説明するよ( ˘ω˘ )

ジャンヌ「ってことはまた別作品とかからの輸入ってことですか」

まぁでも大分ガンダムに沿った理屈で実現させているけどね。これもユグドラシルフレームとDNLのおかげだよ。
そして、シュバルトゼロガンダム・ジェミニアスの初お披露目でした(゚∀゚)文字だけなのが悲しい!けど規格外な性能をこれ以上に予定しております。

レイ「そっちは設定見せてもらったけど……うん、ガンダムの法則が、乱れる」

ジャンヌ「黒の館DNでも言及するそうですが、∀級のバケモノ能力でしたね、文字通り」

それをフルにみられるのはまた第2章以降だね。第2章も今設定を起こしている最中だから、まだ何とも言えないんだけども。第2章登場人物多すぎィ( ;∀;)
何はともあれ、戦う覚悟を決めた宗司、手綱を引くことになったエターナ、何とか乗り切れた千恵里とクルス、そして新たなる力を手に入れた元とジャンヌ。彼らの物語の第一歩とこれからも宜しくお願いします。

レイ「というところで、また次回~!」


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EPISODE11 覚悟の契約4

どうも、皆様。今週のバトスピ赫盟のガレット第二話配信とライダーコラボにココロオドル藤和木 士です(゚∀゚)世界とか石とか知らねぇ!(現実逃避)

ネイ「えぇ……アシスタントのネイです。創界石はレアリティ低いものもありますし、それは集めたらいいのでは」

グリーフィア「アシスタントのグリーフィアよ~。まーでも大創界石がまだ一個しか出てないし、また暴騰ね~。それを考えると作者君のライダーコラボにつぎ込みたくなる気持ちは分からないでもないわねー」

アークの意志のままに!( ゚Д゚)世界ネクサスを駆逐する!……何も世界ネクサスに対抗策ないんですけどね……滅亡迅雷(´・ω・`)強いて言うなら今公開されてる大創界石の全体破壊を衛星アークで最小限に止められるくらいか。
さて、台風とかも近づいている中、EPISODE11の公開です。

ネイ「これが意外にも第1章最後のお話なんですよね」

グリーフィア「短いわよね~。その分次が更に多くなるとかなら、まぁ分かるんだけど」

まだ第2章設定にしか手を付けてませんからね(カミングアウト)。というわけで本編、黒和元の活躍の後、相模宗司とエターナ・ファーフニルはどうなってしまうのか?

ネイ「そういえば……またやってしまいましたね」

グリーフィア「所持法無しでの装依~。ってか主人公格くらいしか違反やってないから、そろそろ他のキャラクターでやってほしい感あるわね」

それな(´・ω・`)そろそろ他の違反者も出したい(おい)。それではどうぞ。


 

 

 戦闘が終わり、モールに一定の静けさが戻る。ざわつくのは野次馬、並びにメディアのキャスターたちの声。

 だがそれすらも今の宗司達の耳には入っていなかった。機体のカメラで見た、シュバルトゼロガンダムの戦闘に魅入られてしまっていた。

 圧倒的な強さ。自分達が直感で使用したシステムのように一切の特殊な兵装も用いずにあれだけの機体を制圧してしまった。己の必要性すら危うく感じた強さだ。

 

「これが……ガンダムの性能」

 

「何よ、あれ……。こっちの性能が霞むくらい……」

 

「それだけ、ガンダムには求められるということだ」

 

 耳に入った声に思わず振り向く。先程まで戦闘していたシュバルトゼロガンダムが、戦っていた部隊と共に訪れていた。

 入嶋も機体を破損させながらも生存しており、丁度装依を解除させた。

 

「っっ……今日も危なかった」

 

「入嶋、大丈夫か」

 

「私は大丈夫。それより二人は?私護衛もつけずに行かせちゃったけど……」

 

「まぁ、脱出は出来たわ。でも……なんていうか、また余計な手間を掛けさせた?っていうか」

 

「?どゆこと?」」

 

 エターナの言葉の意味を図りかねるように傾げる入嶋とクルーシアのペア。状況を知る黒和さんが簡潔に言った。

 

「またMSに装依した。空から確認した限りでは戦闘も行ったな」

 

「えぇっ!?そ、それって不味くないんですか!?」

 

 再びの所持法違反は宗司本人も重大であることを理解していた。衝動的にやってしまったそれを俺は謝罪した。

 

「すみません。勝手なことして」

 

 謝罪したところでどうにもならないかもしれない。そんな不安を抱えるが、後悔はない。黒和さんは頷き、こう答える。

 

「そうだな。だが非はこちらにある」

 

「えっ」

 

「民間人に民間人助けさせて、お前らは恥ずかしくないのかRチーム」

 

 言葉の矛先は宗司達ではなく、CROZEの部隊の一つに向けられたのだ。とはいえその通りであり、R部隊は申し開きのないことを返答した。

 

「はい……彼らがいなければ、人質の救出はありませんでした」

 

「フン。まぁいい、彼らの入隊は“既に上で決定していたこと”だ。表出していない控えの戦力で不測の事態に対応したに過ぎない。それを理解しておけ」

 

『はっ?』

 

 エターナと一緒に怪訝な声をもらす。しかし隊員達は了解と返答し、撤収作業に入っていく。同じく理解の追いついていない入嶋達を置いて、呉島さんが耳打ちした。

 

「……またですか」

 

「その方がどちらにも都合がいい……」

 

 わずかに聞こえた会話の内容。最後の方は聞き取れなかったが、会話を終えてため息を大きく吐いた呉島さんはそのまま同じく撤退行動へと移行する。

 分からずにいた四人に呉島さんが言った。

 

「お前達も早くMSに装依しろ。帰るぞ」

 

「え、あ、えと……はいっ」

 

「了解」

 

 どうするのか、決まっている。言葉通り装依をしようとしたところで、助け出された羽馬に呼び止められる。

 

「あ、ソージ!」

 

「ん……あぁ、羽馬、大丈夫だったろ」

 

「あー、うん。ありがと、助けてくれて。で、千恵里達と一緒に行くの?」

 

 礼を言われ、この後の事を聞かれる。今の宗司にはそれ以外にするべきことはない。行動に肯定する。

 

「そうするしかないからな」

 

「そっか。待たせるのも悪いか。ごめん、お礼を言いたかっただけだから」

 

 邪魔をしてはいけないと手早く礼を述べた羽馬の後ろ姿が救急隊の中に消える。まさか、学友を助けることになるとは思わなかった。MSに乗るかどうかの問いかけに対する気分転換のつもりが、一気に進展した。もう、決めたのだ。

 決意を新たに、宗司は機体を再度装依する。そして漆黒のガンダムを先頭に、ベース・ネストへと出向くのであった。

 

 

 

 

 システムのリンクを解除し、ポッドから外へと出る。完敗だ。投入したこちらの戦力は全て沈黙。コアファイターすらも機能しなかった。

 パイロット達は皆、僕らよりも若い世代の子達だ。きっと今頃、同期の者達が悔しさに震えているだろう。監督者でありながら、被害を出してしまった僕は避難されても仕方ない。

 

「お疲れ様、晃司君」

 

 項垂れたままの僕に、声が掛かる。彼はこの蒼穹島の最高責任者で、僕の上官に当たる人物だ。その男性に対し、気が進まないまま作戦報告を行う。

 

「今回の出撃で、パイロットを全員死なせました。僕の責任です」

 

 悔しさを噛みしめ勢いよく頭を下げる。が、最高責任者は首を横に振り、責任の所在が自身にあると告げる。

 

「いや、敵MSの追加投入時点で私が撤退行動を言い渡すべきだった。特にシュバルトゼロガンダム・ジェミニアス……しばらくは新人達を前線に出すことは控えた方がよさそうだ」

 

「同感です。ただ、そうなると例の機体……イグジストとディナイアル、最悪ゼロン本隊が所有するリズンが必要になるかと」

 

「ふむ……その件に関しては私が話を通しておこう。イグジストとディナイアル、いずれも強力なタイプシリーズのフルスペック機だ。当然負荷も考えて動かす必要がある」

 

「パイロットの二人には僕が話します」

 

 あの機体の過酷さは自分がよく知っている。自身と相棒がそれぞれ乗ったイグジストとディナイアル。性能なら決してガンダムに劣るものではないと自負しているあの機体を託す二人には、システム管理者としてアドバイスもいる。

 今度こそ犠牲は出させない。僕らが目指すのは天国(ヘブン)ではない。理想郷(シャングリラ)なのだから。その為の障害となるのなら、「魔王」とだって戦う。こちらの希望の片割れもまた、「魔王」なのだから。

 

「……今度は容赦しないぞ、黒和元……!」

 

 誓いをその場に残して、海凪 晃司(うみなぎ こうじ)は告げるべき者達の元へと向かった。

 

 

 

 

「それで……結論としては、味方ということでいいんだね?」

 

「それで問題ないはずです」

 

 再び訪れた首相官邸で、元は言って見せた。政府でも懸念されていたガンダムDN一号機のパイロット、処遇についての報告を行っていた。

 あの後の方針について報告に挙げる。

 

「偶発的なMS装依を再度行ったとはいえ、報告にも上げている通り致し方のない装依でありました。それに、直前の時点で本人の了解は取れていたようです」

 

「了解が取れていた、か。ならまずこちらに連絡が欲しかったところだったね」

 

「すみません。直後にすぐ戦闘が始まりましたので」

 

 報告の遅延に呆れる譲首相に対し、予定通りの言葉で返答していく元。返答の言葉にはある程度の「でっち上げ」はあれど、大筋は間違っていないものだ。伝えるべきことは正確に伝える。

 

「ただ、協力する理由が同搭乗者の意志に左右されるのはこちらでも不安材料としてあります」

 

「信頼関係の喪失……兵士としては、致命的なもの。いや、人間としても致命的、かな」

 

 譲首相に頷く。その重大性はかつて似て異なる経験に陥った元も同じ所感を抱いていた。かつての自身と同じように、依存する形となるこれがどうなるか。要となるエターナの状況を注視していくことと、自身が制御していくことを宣言する。

 

「その点に関しては、上官となる自分が何とかします。伸びしろはあると思いますので」

 

「うむ……ドライバ・フィールドを本来想定した形での実現……。これが今後、どう戦況に与えてくるか」

 

 偶発的に解放された一号機のシステム。解放の目途はもう少し先だと思っていたが、その段階に達するほど彼らの素養が高いのか否か。とはいえそれが今回の作戦を左右したわけだが。

 ここからは総司令である黎人の番だった。

 

「ドライバ・フィールドのテスト機体が増えるのはこちらとしても良いことです。現在警察の試作MS部隊の「黄」のガンダムだけでは、どうにも足りない部分がありましたから」

 

「その運用の為に、許可がいるわけだが……。まぁ、答えは決まっているね」

 

 譲首相が周囲の大臣と顔を目配せする。首相としてのHOWへの指示が送られる。

 

「HOWの要請に従い、相模宗司、並びにエターナ・ファーフニルのMS所持法違反でのMS操縦の違反二点を取り消す。HOWにはすぐさま彼らのMS所持法発行の為の手続きを行うように」

 

『了解』

 

 予想していた通りに指示を受け、黎人とジャンヌと共に命令を承諾した。そこで話は終わり……と思われたが、話題が元の物になる。

 

「ところで、順序は逆になってしまうが、シュバルトゼロガンダム・ジェミニアスの受領を行ったそうだが。この報告書にも最新鋭ガンダムの戦果が記録されている。パイロットとして、不足する点はないか?」

 

 最新鋭機体に関しての質問。大方防衛大臣へその感想を伝える為なのだろう。自衛軍を統括する彼にとっては共同開発した機体の感想は聞きたいはず。俺はその意志を汲み取り、簡潔に語る。

 

「いい機体だ。装備の充実に従って、機体性能は間違いなく拡張されるだろう。例の支援機と含めて、防衛大臣直下の自衛軍には今後もよろしく頼む」

 

「あぁ、伝えさせてもらうよ。こちらとしても、あの機体の開発は得るものも大きかった。今後も協力させてくれ」

 

「あぁ」

 

 ジャンヌも頷き、HOWの総意であることを示す。それから少しだけ、話を広げてから首相官邸を後にする。去る途中でジャンヌと話す。

 

「ジャンヌも特にあれに関して言うことはなかっただろう?」

 

「えぇ。とはいえ、まだ基本性能を発揮させただけですのであの機体の本領を発揮できたわけではありません。基本性能の時点でもよい機体なのは認めますが、まだ入り口……。今後の追加される兵装でも評価していかないと」

 

 ジャンヌの言うことはもっともだ。性能はいいとはいえ、まだジェミニアスは全性能の1割程度の性能しか発揮していない。エラクスすらも発揮していない機体で、全てを評価するわけにはいかない。

 先程も言ったが、自衛軍には追加兵装の開発に邁進してもらいたい。もちろん、こちら側でも十分協力するつもりだ。元達の総評に対し黎人が朗報とも呼べる情報を開示した。

 

「それなら、まずは5月の派兵任務だな。それの前にジェミニアスのウエポンズが届く。派兵先での運用が初となるだろうから、今の内にシステムの把握をしておけ」

 

「あぁ」

 

「実質それが、エターナ達の初めての任務になるんですよね……それまでに、あの子ももう少し柔らかくなってくれるといいんだけど……」

 

 それぞれの胸に去来するものは違う。しかし、共通することが一つ。全員で生きて帰る。その為の努力は惜しまない。隊長としての決意を果たして新人の彼らは理解してくれるだろうか。

 

 

 

 

 あれから二日後、相模宗司は三度HOWの所在するピースランドを訪れていた。以前二回とは違い、誰に送られたわけでもMSを纏っての訪問とも違う。後日自ら回収した自転車で、いくつかの荷物を持参して「お世話になる」ために。

 紹介状を警備の人に渡し、通行する。橋の向こう側に出迎えるようにあの人がいた。

 

「……来たか」

 

 黒衣のジャケットを服の上に羽織る、ガンダムのパイロット。ガンダムを扱う俺はこの人の部下として戦うことになるそうだ。

 上官となる人物にこれからお世話になることを伝える。

 

「両親にも伝えました。そしたら、二人とも背中を押してくれました。これから、よろしくお願い……」

 

「過剰な賛美はいい」

 

 言葉半分で隊長となる男性から言葉を切られる。戸惑いを覚えるが、彼にとって重要な、そして宗司にとって重要な問いを投げかけられる。

 

「お前は戦いを選んだ。なら、失う覚悟が求められる。仲間を、そしてお前にとっては、他者の信頼を預けたパートナーを失う瞬間があるかもしれない。二度目となる喪失を、お前はどう受け止める?」

 

 覚悟を問う、そんな内容だった。もう一度失う覚悟があるのか、その時どうするのかを目の前の男性は知りたがっていた。

 また大切な人が失われる。そんなのは嫌だ。けれど戦場では仕方のない部分もある。両親からの説得にもあった。今の宗司では到底答えの出ないであろう問い。だから宗司はこう答えた。

 

「死なない」

 

「ほう?」

 

「他の皆までは無理かもしれない。だけど俺は死なない。俺が死ねば、同じ機体に乗るエターナまで死ぬ。パートナーだけは、殺させない」

 

「……フン」

 

 青臭い理想かもしれない。現にエターナが鼻を鳴らした。でもそれだけは言っておかなければ、信頼もされないだろうとない頭で考えた結果がそれだった。

 エターナからは嘲笑された理想も、黒和さんはしばし考え込む様子だ。だが考えるのを止めて言った。

 

「俺の知る男が、そうだった。パートナーだけは殺させないと、強大な敵を相手に戦った男が。茨の道だが、それでも行くのなら、その方法を教えてやる」

 

「はい」

 

「もういいぞ、入嶋、クルーシア」

 

 許可を出すと駆けだしてくる入嶋とクルーシアの二人。彼女達に遅れてエターナも寄ってきた。二人は宗司の入隊を祝ってくる。

 

「おめでとう、これでHOW入隊決まりね」

 

「それからピースランド学園にも編入」

 

「ありがとう」

 

 ようやくスタートラインと言ったところだ。二人の言葉にもありがたみを感じる。もっともパートナーの方は嘆息交じりの辛辣な言葉がこちらに向けて襲い掛かる。

 

「まったく、私も何でかその学園に編入することになるし……私は聖トゥインクル学園の生徒だって言うのに」

 

「当然でしょう。あなたはまだ高等課程卒業していないんだから。それにこっちのことを学んでおくこともいい勉強になるから、姉としては受けて欲しいかな」

 

「ね、姉様がそこまで言うなら……」

 

 グチグチと言っていた彼女の口が収まる。流石は姉、と言ったところだろうか。二人揃っての編入。HOWの管轄の学校だからこそ出来る荒業だ。

 子細についてはもう一人の見届け人が説明する。

 

「ま、でも二人はそれぞれクラスが違うけどね。宗司君はちぇりーとクルクルのAクラスとは違うBクラス。そんでもってトワ子ちゃんは私と同じCクラス!けどDNL覚醒者と予備軍の集められたクラスだね」

 

「ちょっと、そのあだ名やめなさいよ。それ向こうでも呼ばれて嫌だったんだけど」

 

「えーいいじゃーん。向こうでも呼ばれてたってことは、お墨付きってわけだし♡」

 

「むーくっつくなぁ!?」

 

 姉とは反対側にくっつく光巴を嫌がって引きはがそうとするエターナ。エターナには光巴がいるからいいが、俺はそんな仲の良い友人が出来るか、また心配だ。

 いくつもの不安と緊張を重ねた今日、俺相模宗司の新たな生活が始まった。戦いと隣り合わせの生活だ。

 

 

 始まる新生活へ目の惹かれがちだった俺は知らなかった。黒和隊長と、ジャンヌ副隊長、その二人が目を合わせていたことに。それが「また似た者同士が惹かれた」という合図だったのを。

 新たなガンダムが織りなす、少年と少女の物語の幕が切って落とされた。

 

 

第1章 END

 

NEXT CHAPTER AND NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。ダイナミックすぎるごまかしでした(゚∀゚)

ネイ「ホント、これ大丈夫なんです?」

皆は嘘はダメだよっ!現実ではミスは許すが嘘はダメっていう言葉もあるくらいだからねっ。

グリーフィア「それなら何でこれ通っているのか」

何でだろうね(;・∀・)ははっ

ネイ「蒼穹島勢力の指揮官……これあれですよね。本作執筆中の無料配信とか、今も深夜に再放送やっているあの」

ファ○ナー!( ゚Д゚)

グリーフィア「やれやれ、今度はガンダム外からもかしら」

ただ蒼穹島は次の章で割と関わってくる勢力ですので、スパロボクロスオーバーは伊達じゃない!
それに今の時点でマク○スとかのVFも参考にしてるって機体のエアフォースいるし。

グリーフィア「ならいいのかしらねー」

ネイ「そして最後、ようやくHOWへの入隊。ここから本当に宗司さん達の戦いが始まるんですね」

そう、そしてシュバルトゼロガンダムとヴァイスインフィニットガンダムの最後の戦いもね( ˘ω˘ )ここまで長かった……。

グリーフィア「まだなーんにも出てないでしょうが」

ネイ「もう少し後で言いましょうね」

はぁい(´Д`)と、次回は黒の館DNです。そして……多分第2章開始後に作品紹介の文変えます。第3部の内容もやや含めた文章に!

ネイ「最初の文だけだと第2部第3部の内容が分かりづらかったりしますよね」

グリーフィア「どんな紹介分になるのかしらねー。分かりやすく、なおかつしっかり注目する点を宣伝しなきゃダメよ?」

ですね。今からもまた原文書いておかないと;つД`)というわけで今回はここまでです。

グリーフィア「次回もまたよろしく~っ」


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黒の館DN 双翼英雄譚編 第2回 前編

どうも、皆様。色々と苦しくて投稿が遅れました作者の藤和木 士です。次話が書けてなかったりとか、ね……。それもあってちょっと更新を遅らせていました。

本日は黒の館DNの双翼英雄譚編第2回となります。前編は残りの第1章のキャラクター、日本の新たな首相「清井 譲」と蒼穹島の指揮官「海凪 晃司」。機体解説がタイプワンとガンダムDNの機能の一つ「ドライバ・フィールド」についての解説となります。

なお本文ではすごく元気よくやっていますが、書き込み時期の関係上今とかなり乖離しておりますのでご注意を。それではどうぞ。


 

 

士「双翼英雄譚編第1章まずは完結!またまた黒の館DN始めて参ります、作者の藤和木 士です(゚∀゚)」

 

レイ「アシスタントのレイだよー。蒼穹島なんて新しい敵勢力も出てきてさー、ここからが本番だっていうね」

 

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです。今回は前中後編になる……と、思われたんですが、どうやらまとまったようですね。前編と後編の構成になります」

 

士「いやぁ。本編中にウイングの武装の登場を遅らせるようにしたら、前後編で収まりました(;´・ω・)それに第2回までの間に出たMSとか予想以上に少なかったのも大きいよ」

 

ジャンヌ「それでは早速今回の紹介と参りましょうか」

 

レイ「前編はまず清井譲さんと海凪晃司君の人物紹介だよー。どうぞっ」

 

 

清井 譲(きよい ゆずる)

 6年前に前任の新堂 幸地に代わり内閣総理大臣となった男性。41歳。

 若いながらも新堂の後を継いでしっかりと仕事を行う。またその時期にはHOWが設立、政権に少なからず携わっていることからその手腕を認めており、黒和元の言い回しにもある程度の信頼を寄せている(とはいえ首相としての立場の許す範囲でだが)。

 ゼロンに対しても彼らが戦争犯罪者であると見ており、国際社会に向けても援助の禁止促進を強く訴えている。

 

海凪 晃司(うみなぎ こうじ)

性別 男

身長 167cm

髪色 黒

出身地 蒼穹島 海道町

年齢 22歳

誕生日 10月4日

血液型 B

好きなもの 研究、カレーライス、戦術指揮、仲間達

嫌いなもの 命令違反を犯す者、鎮痛剤

愛称 晃司先輩、システム・ヴァルニールの管理者、蒼穹島の魔王

 

・蒼穹島のMS部隊を指揮する青年。目元に古い切り傷が存在しており、さらに右腕は肘から先の肌がやや変色しており、噂では再生治療を行った模様。

 蒼穹島のMSにおける重要システム「システム・ヴァルニール」の外部接続者として蒼穹島の機体の戦闘を指揮しており、前線には出ていない。が、システムの負荷でパイロットのダメージを共有しているため、負担が大きい。またかつては前線にも出ていたため戦闘勘はある。かつては「蒼穹島の魔王」と呼ばれるパイロットとしてとある機体を操作していた。

 蒼穹島のパイロットが若いことに苦難しているが、その理由を自らも良く知っており、板挟みとなっている。

 モデルは蒼穹のファフナーの皆城総士(一代目)。EXODASにおける彼がベースとなっているが、その時よりも歳を取っている。

 

 

レイ「以上が人物紹介!やっぱり短いね」

 

ジャンヌ「本当ですね。これなら第一回の解説を少しこちらに回しても良かったかもしれませんね」

 

士「それしたら意味なくなっちゃうよ……(´・ω・`)」

 

レイ「あはは。それで清井さんは結構若い首相さんだねぇ」

 

ジャンヌ「そうですね。現実世界の歴代首相と比べても、かなり若いように感じます」

 

士「確かに結構若いんだよね。首相になってから6年近く経ってるから当時は35歳くらい、だから本当に若い。ただ若いからこそ見えてくるものがある、ってことで前任の新堂幸地さんから引き継がれたんだ」

 

ジャンヌ「そして劇中ではここに書いてある通り、元さんの報告にそれなりに許可や了承しているイメージですね」

 

レイ「反対するってことが少なく感じるけど、でもちゃんと釘差しは行っているし、首相としてはやろうとしているのが分かるよね」

 

士「その事もあって元君も割と報告をしていない部分もあるわけですが……果たしてこのツケが払われる時が来るのだろうか(;´・ω・)みんなは報告しなきゃダメだぞ☆」

 

レイ「それこそ情報漏えいみたく処罰される恐れもあるもんね。まぁ守秘義務とかもあるわけなんだけども。そして蒼穹島勢力の指揮官登場かぁ」

 

ジャンヌ「他にも島の司令官もいるようですし……名前と島の名称から言って、あの方がベースなのでしょうね」

 

士「あの作品の影響を受けた部隊が、果たしてこのガンダムという世界でどう動いていくのか?また「あの機体達」もアレンジさせて登場する予定なのでお楽しみに(´ρ`)」

 

レイ「白と黒、そして金色の機体……ってことはあのアンネイムド達の機体と、遂に夢のコラボがっ!?」

 

ジャンヌ「同じカラーリングで、真似たんじゃないかって思われてる機体同士。しかも超常的な力を持つって意味でもかなり似てますよね、モデル元」

 

士「結晶まで生えるしね!(゚∀゚)直接対決させたいわ~、まぁ今のパイロットはBeyond準拠なところあるんだけどね。さて、そろそろ機体解説、に加えて、ガンダムDNのロック解除された新システムの解説も含めますよ」

 

レイ「機体は蒼穹島勢力のタイプワン。そしてドライバ・フィールドの解説、どうぞっ」

 

 

TP-01

タイプ[ワン]

 

機体解説

・ゼロンの勢力の一派「蒼穹島」と呼ばれる人工島で開発された量産型MS。曲面装甲を多用した汎用型。名称はそのまま仕様の一型と意味を持つ。

 頭部が平たく、また前後に長い形状で、ゴーグルセンサーを目のように二分割して装備する。これまでとは違うイメージを持つ。これは蒼穹島独自の設計思想で、あえてこの形状にすることでパイロットとの一体化を促進する働きを与えている。それ以外にも正面からの射撃武装弾着時に被弾する箇所を抑えるためにも考案されている。

 この仕様では近接戦を重視したものとなっており、運動性に重きを置く。また移動用に背面に畳まれたウイングを展開して飛行に役立てるが、戦闘機動に活用できるほどではないため、戦闘時には基本折りたたまれたまま。スタビライザーとしての運用がメインとなる。

 そして特筆すべきは母艦に設置されたサポート特化のマリオネッターシステムというべきシステム「システム・ヴァルニール」である。この機能によりタイプシリーズの機体は、DNLの持つ先読み能力にある程度の対策を講じることが可能となっている。なお本シリーズの機体のパイロットは全て蒼穹島のパイロットのみで構成される。理由は現時点では不明。

 モデルは「蒼穹のファフナー」のファフナー・マークアイン系列の近接タイプ。システム・ヴァルニールも同作のシステム「ジークフリードシステム」を逆用し、読心能力に近い能力を持つDNLに対象を置き換えて対抗可能な能力となっている。

 

【機能】

・次元電磁装甲

 ゼロンの量産型MSに採用されている防御用兵装。本機に置いてもその装備位置は腕部となる。

 機体の形状的に元来のシールドでは保持が難しいとされ、また回避性能が重要とされるシリーズの為に実体シールドは不適切と判断。よってゼロン側の技術で解決した。

 性能的には申し分なく、シト達からの技術流用も容易だった。

 

・コアファイター

 近年開発されるようになった脱出装置。バックパックの根元からDNジェネレーター、パイロットカプセルを折りたたみ、戦闘機形態となって空域より離脱する。

 本世界におけるMSは歩兵装備としての充実として開発された。よって撃破されても装依解除して歩兵として戦うことも考えられていたのだが、歩兵戦装備が充実していない点がかねてから指摘されており、戦場のど真ん中で解除しても生き残る時間が一、二秒延びるだけとなっていた。そこで開発されたのが本システムである。

 これにより機体本体は失ってもパイロットとDNジェネレーターを戦闘区域から迅速に離脱させることが可能となった。加えて他の同型機があれば瞬時にそちらとドッキングし、速やかな戦闘復帰も可。

 もっとも作中ではその機構を知っていたシュバルトゼロガンダム・ジェミニアスに脱出前に破壊されてしまった。

 機構モデルはガンダム00のガシリーズのコアファイター。ただし機体本体のモデルであるファフナーシリーズにも似た機構としてコクピットブロック射出があり、そちらと折衷させた。

 

・システム・ヴァルニール

 本機と母艦のシステム搭乗者とで行う、サポートシステム。マリオネッターシステムの発展形技術とされている。

 DNLとの対決において、勝敗を左右する要素の一つとして、DNLが持ち合わせる読心能力がある。相手の感情を読む敵に対してゼロンはこれまで同じDNLか、DNLの読みをさらに上回る暴走者、類するシステムで対処するしかなかったが、本システムは全く違うアプローチ、読心能力を防ぐという対処法で解決したのである。

 その方法はシステムに搭乗する人物の脳波を、機体側のパイロットと共有するというもの。これにより思考が絡まり、DNLの行動予測精度が落ちる仕組みになる。

 本当なら思考遮断を行う電波などを流すなどの対策が取られると思われるが、その場合リフレクトパネルのように特化しすぎたメタになってしまうことを危惧してこちらが採用された面を持つ。またそれ以外にも理由があるらしい。

 マリオネッターシステムがベースだが、パイロットのサポートという面ではDNLの代表格であるエンゲージシステムにも通じる面を持ち合わせる。なおシステム使用中はシステム搭乗者に機体のフィードバックダメージが及ぶようになる。

 モデルは蒼穹のファフナーシリーズのシステム「ジークフリードシステム」。

 

 

【武装】

・ビームナイフ

 機体の大腿部装甲に装備される格闘兵装。刃渡りの短いビームサーベルと言ったところ。通常では二本装備される。

 刃渡りは短いが、その分威力はビームサーベル以上で加えて後述するマシンガンに装着されて銃剣として運用することもできる上、射出して攻撃することも可能。

 モデルはファフナーの武装「マインブレード」。あちらは実体刃となっているがこちらはビーム刃となっている。射出出来るビーム刃の点ではハイぺリオンガンダムのビームナイフもモデル。

 

・レイジング・スパイク

 機体の手甲部分に格納される近接格闘戦用兵装。メリケンサックのように運用される。

 展開するとビーム放射機構が露出する。それを敵に当てて直後にビームを噴射することで敵の装甲を焼き貫く。

 名称はファフナーの武装「レージングカッター」からだが、機能はどちらかと言うとエネルギーナックルに近い。

 

・伸縮式レーザー対艦刀

 機体のサイドアーマーに選択装備される兵装。展開して両刃のレーザー対艦刀になる。

 これまでは艦艇が前面に出ることは少なかったが、技術革新で空中艦が出るようになり、機体側にもそういった対艦装備が必要となり装備されるようになった。本機の兵装は対艦刀と言っても対MS戦用にも調整されている。なお武装の系統としてはMSオーダーズのソルジアに採用されていた「エリミネイターブレード」の構造をベースとしている。独自の機構として先端部は実体剣で構成されているため、対DNウォール耐性に強い。

 モデルはやはりファフナーのロングソード並びにレヴィンソード。

 

・ガンブレードランス

 機体のサイドアーマーに選択装備される兵装。銃と槍、剣の機能を統合した兵装。

 MSオーダーズの戦力だったシュバルトゼロガンダムに装備されたことのあるボウゲン・ランツェを手持ちにしたような兵装で、あちらと同じように突き刺してからのゼロ距離射撃も行う。

 本兵装は蒼穹島勢力における主兵装で、非常に愛用者が多い。

 モデルはファフナーのルガーランス。

 

・A2ビームマシンガン

 機体腰背部に装備されるビームマシンガン。近接戦用の射撃武器。

 ビームアサルトライフルの設計をベースに、本機の用途の為に調整された。エネルギーパックも装備され、予備は肩部後部ソケットに装填される。

 モデルはハイぺリオンガンダムのビームマシンガン。

 

 

ガンダムDN

[システム解放ログ1]

・ドライバ・フィールド

 本作に置いてはシュバルトゼロガンダムRⅡSSの兵装として初登場したビーム防御用フィールド。

 ただし本機に置いては本来求められた機体性能向上と攻撃への転用を行う「高純度DNを機体・空間作用に用いた独自のエネルギーフィールド」としての運用に特化したつくりとなっている。一号機のみのシステムとなっている。

 初使用時には機体の動作と合わせることで敵の人質に対する「殺すという行動すべて」に対するロックとして活用された。DNウォールとは違ったものだが、理屈で言えばユグドラルフィールドに近い性質を持っているという。これらの発動にはエンゲージシステムのパイロットの補佐で発動できるため、搭乗者がDNLである必要がない。もちろんDNLであれば、この能力は強くなると思われる。

 モデルはIフィールドだが、こちらはよりフルメタル・パニック!におけるラムダ・ドライバに近い性質を持つ。

 

 

レイ「以上が機体解説になるよー」

 

ジャンヌ「様々な体系の組織が集合したゼロン、だからこそこのタイプワンのようにシトとは全く作りの違う機体がいるわけなんですね」

 

士「そういう色んな勢力が集まってできた部隊も、ガンダムじゃよくあるからね。とはいえ本機はモデル元の影響が大きくて、乗れるのが蒼穹島の人間位、しかも若い世代に限られる制約があって余計に蒼穹島固有の戦力になっちゃってるんだよね」

 

レイ「にしても近接戦タイプかぁ。流石に同型でも派生の頭突きは出来ないんだね」

 

士「頭突きのあの子の機体も同タイプなんだけど、流石にあれまで入れ込むのはちょっと考えました(;´・ω・)ついでに十三番機の装備も省略してます。あっちはエース機にしようかなと考えています」

 

ジャンヌ「きっと同型機として射撃戦仕様、防御戦仕様、高機動型が出るんでしょうね」

 

士「基本的に換装も視野に入れているので、それらを加えた混成型も出るかもしれません」

 

レイ「でもこれ量産型なのにDNLに対応できるの凄いよね」

 

ジャンヌ「元さんもRⅡの時に戦っているんです?」

 

士「戦ってますね。その時は性能差もあって大分苦戦した設定になっていますが、今となれば性能と戦闘経験で押し勝てる現状。おそらく、ワンオフ機として現在語られているイグナイト、ディナイアル、そしてゼロンのリズンがシュバルトゼロガンダム・ジェミニアスに対抗できる蒼穹島勢力になりそうです」

 

レイ「ふぅん、そうなんだー。その時が来るのを楽しみにしてるねー」

 

ジャンヌ「その頃にはあちらも第4のザルヴァートルモデルも登場する頃ですかね」

 

士「それだといいなぁ(´・ω・`)コロナさえ大丈夫なら……」

 

レイ「それで話はガンダムDNの方になるけど……これ完全にラムダ・ドライバだよね?」

 

士「せやな。人質救出とかそれのオマージュですし。あちらのように斥力のような力で現実に干渉している。こちらも同じようにパイロットのイメージに左右される。ただその実現の為にDNLの力が必要になる感じだね。いわば、エンゲージシステム搭乗者があちらでのウィスパード、あるいはアルのようなAIみたいな役割になっていると頂ければいいです」

 

ジャンヌ「……果たして、今どきの方ってフルメタル・パニックの用語分かるでしょうか?」

 

士「私も原作読んでなくてアニメとウィキとかからの知識だけなんだけども(;´・ω・)けど2年前にⅣもアニメになったから分かる人は分かるでしょ(´-ω-`)知りたいと思ったら検索!原作も見ようぜ!私も見たい」

 

レイ「後半、欲望」

 

士「欲望もまた想像力!イメージ!(゚∀゚)っと、個人的には後々デモリッションガンみたいな馬火力兵装付けたいって思ってるんだけどね」

 

ジャンヌ「馬火力ならいい兵装あるじゃないですか。ほら、旧作SSRのメガミブレイカー」

 

レイ「そうだね。あれもどえらい威力の実弾兵装で、しかも長大なビームサーベルになるから、ドライバ・フィールドで強化して大出力化とかできそう!」

 

士「ま、世界観違うから丸ごと同じ物出せるわけではないけどね。その詳細も今なら簡潔にまとめて黒の館として出したいところだけど、ま、いつか出すかもね。今はこっちだDNだ。というわけで前編はここまでです」

 

レイ「後半はいよいよシュバルトゼロガンダム・ジェミニアスの紹介!後編もよろしくっ!」

 




前編はここまでです。

首相の変更はまぁ時期的に変わっていてもおかしくないだろうとの考えから、変更ですね。所謂キャラの入れ替えです。若い首相となると現実ではあまりなじみがありませんが、フィクションですのでね。
そして蒼穹島の指揮官から分かる通り、あの作品のキャラクターも本作で色々と設定を変えての登場です。実際の機体だとサイコガンダムと同等の大きさを誇る機体がMSと並び立つ姿、対決する姿を今後も描けていけたらいいなと思っております。タイプワンについては残念ながら13機も別仕様で考えることは難しい為、量産型の分類を分けるという登場の仕方となります。ですが量産型でも性能はピカイチ。新人達との再度の激突、そしてエースタイプの機体とシュバルトゼロガンダム・ジェミニアスの対決をお待ちいただけると幸いです。

最後にラムダ・ドライバを思わせるドライバ・フィールドに関しましてですが、補足するとDNLでなくてもドライバ・フィールド自体は使用が可能です。ただしその場合ガンダムにおけるIフィールドと同等の性能しか発揮できないものであり、DNLのパイロット合わせて初めてラムダ・ドライバ並みの超常現象が起こせることとなります。
それぞれの機体の命名は未だなっていませんが、第2章で命名イベントを起こすつもりです。果たしてどうしてその因果とも呼べる名前となったのかを楽しみに気長にお待ちいただけると幸いです。

それでは後編へ続きます。


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黒の館DN 双翼英雄譚編 第2回 後編

どうも皆様。引き続きご覧の方は改めまして。まだ気持ちダウナーな藤和木 士です。多分1週間はこれですね……お付き合いいただけるとありがたいです。

後編は待ちに待ったと言えるシュバルトゼロガンダム・ジェミニアスの紹介となります。装備の説明に関しましてはシステムは公開しますが、武装に関しては一部非公開となります。やはり登場してから紹介したいという気持ちがある。というのは建前で、実際は武装を後で紹介しないと許容範囲に説明が収まりませんでした(´・ω・`)後回しですはい。

それでは後編もどうぞ。


 

 

士「後編始めて参りますよー作者の藤和木 士です(´-ω-`)」

 

ネイ「アシスタントのネイです」

 

グリーフィア「んーアシスタントのグリーフィアよ~。今回もやっぱり短めねぇ~」

 

ネイ「そうだね。1章で11話って割と短いと思う」

 

グリーフィア「そういう意味だと、第1部リメイクしてもいいんじゃなくて?作者君?」

 

士「(´・ω・`)いやぁ……削るとこあるけど、後々の方整合取れなくなるって……それより今回は大一番のところ回したんだから、そっちの紹介」

 

グリーフィア「そうだったわねぇ~。ってことで今回はようやく登場した、我らが主人公機、シュバルトゼロガンダムの後継機「シュバルトゼロガンダム・ジェミニアス」の設定一部公開よ」

 

ネイ「……一部、なんですか?」

 

士「い、いやぁ……(;・∀・)追加武装群まだ登場してないからさ。そこら辺はまず機体の設定見て、そこから説明していくので」

 

グリーフィア「そう言われたら紹介しないとねぇ~。じゃ、早速新時代のシュバルトゼロガンダムの力、とくとご覧あれ!」

 

 

型式番号 DNGX-XX000-SZGU

シュバルトゼロガンダム・ジェミニアス

 

 

機体解説

・マキナ・ドランディアの大戦終結後から二か月後の時点で計画されていた黒和元専用のシュバルトゼロガンダム開発プラン「プロジェクトSZG」を基に、地球で改めて計画された新シュバルトゼロガンダム開発計画「プロジェクトジェミニ」。11年の歳月を掛けて、開発までこぎつけたのがこの「シュバルトゼロガンダム・ジェミニアス」である。

 名称はふたご座の英訳「ジェミニ」に明日の文字の音を加えたもの。シュバルトゼロガンダムが元とジャンヌ、二人で稼働する機体である点も名称を後押しする。

 大元のコンセプトモデルは元が提出しており、そこにはGワイバーンの流れを引き継ぐ新兵器とのかみ合わせも記されていた。しかし本機は後述する機能の為に設計を変更した。

 本機の開発のために第一に挙げられたのはその時点での最高峰の性能を与えるということだった。DNジェネレーターは旧シュバルトゼロガンダムの物を流用するが、ユグドラシルフレームは完全新規で開発されたものの中でも最高級の物を採用。DNフェイズカーボンも可能な限り最高品質のものを選んだ。そして武装。これが一番の問題である。

 旧シュバルトゼロガンダムにおいて物語るのはその多彩な武装である。これを更にバリエーションを広げつつ、操縦を複雑化しないというのはとても難しいオーダーだった。加えて指揮官機が換装するとなるとそれだけでも戦線を外れることも多く、また空中換装もビットを用いたとしてもシュバルトゼロガンダムのこれまでの戦闘スタイルを崩しかねないと判断され、難航していた。またパイロットである元も手数の欲しさと操作簡略化と共にDNLの能力を生かせる機能を要求。

 素体となる元が描いた設計図を用いても、あまりにも完成形が見いだせず、開発陣も投げ出す始末だったが、そこでガンダム整備主任の来馬真希がひらめいた。ホリン・ダウン作戦においてわずかな期間ながらも運用され、大戦果を挙げた「クリムゾンゼロガンダム」。その根幹となるジェネレーター・コンデンサは超大容量のエネルギータンクであると同時に、異次元のポケットとも呼ぶべき代物であることが黎人とツィーラン博士の研究で分かっていた。それを用いてシュバルトゼロガンダム専用の異次元武器庫を製作し、DNLで機体側から呼び出すシステムを用いることを考え付いたのだ。

 その主幹として目を付けたのはバックパックユニット。これまでのファンネルユニットとウイングが分割したものではない、大型ビットとしても扱える武装懸架用ラックとしての機能を持つウイングパネルのプラットフォームユニットを採用することとなった。これによりバックパックに直接必要な武装を機体の保持する特殊空間「ウエポン・スペース」から転送・懸架するシステム「マルチ・スペースシステム」が開発される。

 それを中心に活かせるようにアレスモードを参考にHOWで機能を再現、それぞれ別の戦闘スタイルを確立する「エレメントブーストシステム」も搭載。これらを生かす全領域対応スーパーモビルスーツとしてシュバルトゼロガンダム・ジェミニアスは誕生した。

 なお本機はLEVEL3の二年前に一度完成していたが、その際は完成を察知したゼロンの真紅の流星の再現に襲撃を受けて大破。その際に発覚した欠点などを再度調整し直して再製造された二機目である。

 本体の武装も順当にシュバルトゼロガンダムから強化したものが多く、後継機としての側面を強く引き出したものとなっている。なお当初のプロジェクトSZGのシュバルトゼロガンダムは近接戦特化の予定だった。機体カラーリングはこれまでの黒と灰色、紺に加え、ブレードアンテナは金、スラスターなどの一部に紫のラインが入っている。

コンセプトは「元来のシュバルトゼロガンダムに仮面ライダーの全武器使用可能フォーム+フレームアームズのレイファルクス」。エレメントブーストと武装の転送をライダー側から、バックパックの形状と武装懸架をレイファルクスからオマージュしている。ガンダムらしからぬ能力で作者自身も一度どうしようかと考えたが、そもそもレイファルクスがぶっ飛んでいる設定の為特に変更はない。ただしエレメントブーストに関しては名称が当初仮で名付けたものが仮面ライダービルドの物に大分引っ張られてしまっていたため、改善が行われている。

 

【機能】

・DNフェイズカーボン

 機体の装甲を構成するDN変色装甲。これまで通りシュバルトゼロガンダムを象徴する黒を基調に紺に変色する他、各部に紫のラインが追加された。

 装甲自体もDNの伝達効率の良い最新型になっている。これにより出力のタイムラグが減少し、瞬間的に被弾部分の強度強化などを行える。

 

・ツインジェネレーターシステム

 機体のDN生成量を二乗するシステム。潤沢なエネルギーとなる高純度DNを大量に確保できる。

 本機においてはウエポン・スペースが保持する武装の同時運用とエレメントブーストを円滑にこなすために必須なシステムとなる。これまでの状態でもそれらは充分行えていたが、この機にとオーバーホールが再度行われた。それにより高純度DNの生産量が上がったようだ。

 

・DNLコントロールユニット

 パイロットのDNL能力を円滑に機体に反映させるシステム。これまではユグドラシルフレームの活性と元の能力の向上で無用の長物とかしていたが、マルチ・スペースシステムの武装管理に補助が必要となり、武装換装のサポートシステムとして活用する。

 

・ユグドラシルフレーム

 機体を構成するフレームとして搭載されるDNL感応フレーム。少数量産された中でも高品質の物を本機は採用している。

 通常時は蒼だが、エレメントブーストに合わせて色が変化する。その設定などはしておらず、ユグドラシルフレームが勝手に変色した。これまで通りユグドラルフィールドを形成できる。

 

・スペース・ハードポイント

 機体の肩部シールド裏と手甲に実装される新型ハードポイントシステム。

 これまでのハードポイントと違う点として、マルチ・スペースシステムを搭載する。これによりそれぞれの付近に瞬時に武装を設置することが可能となっている。

 

・ELACSシステム

 機体の放出DN量を三倍化して性能を引き上げる機能。機体が蒼い炎を纏ったかのように変色する。シュバルトゼロガンダムから続く切り札の一つ。

 ジェミニアスには様々なシステムが搭載されているが、やはりエラクスによる出力そのものの増大は大きく、エレメントブーストに出力を合わせてより強い力、専用DNFを使用可能となるほど。そのDNFの出力は非常に強力。

 

・エンゲージシステム

 機体のサブパイロット搭乗システム。本機の性能を最大限使用するための核となるシステムの一つ。

 元とジャンヌのシンクロ率は現状99.1%をキープ。これは当初のエンゲージシステムを超えているが、未だに100%というわけではない。これは完全にシンクロするのが難しいだけではなく、残りの0.09%が二人の間に生まれているすれ違いであること、特に恋人でありながら未だ線引きしている点が影響していると考えられている。加えて100%シンクロすると未だにどうなるか分かっておらず、容易に黎人達もシンクロ率100%のための指示出しが出来ないこととなっている。

 

・DNウォール

 空中にDNの粒子の壁を発生させる防御システム。武器への転用も可能なエネルギーフィールドとも呼べる。

 主にシールドからの発生がメインだが、背面のユニットからも展開して背後の防御を担当し、ウイング全てを射出している時は接続部から放出されるDNで全体展開も可能。

 

・DNプロテクション

 DNをビームとして膜上に展開して防御する兵装。ビームシールドの互換兵装である。

 本作においてDNウォールとの違いはこれまで近接攻撃に強いか否かだったが、加えて今部からはビーム砲と発生器が兼ね合っているか、スラスターユニットを兼ねた発振器から発生しているかも加わっている。

 

・マルチ・スペースシステム

 本機における最重要システム。機体のシステムに格納された特殊空間「ウエポン・スペース」から必要に応じて武装を転送、装備するシステム。

 使用に際してはあらかじめ整備の時点で、ウエポン・スペースにケージの状態で外部から格納、補充する。系列的には換装システム、エディットウエポンシステムの上位互換となるシステムだが、完全に武器庫と呼べるほど大規模なシステムとなっている。武装を選択し、システムの対応するハードポイント・プラットフォームに転送、ウエポン・スペースからの力場で接続し、保持する。力場による装備固定の為、接続部の規格は問わず、非常時の武装装着も可能。ただしなるべく専用のアタッチメントを取り付けて力場による固定が及びやすくしておくことが心がけられる。

 武装が切れれば終わりなMS戦において、この能力はチートとも呼べる力を誇る。しかし本システムにも弱点が存在する。それは複雑化した運用システムで、武装の選択に時間が掛かること。DNL能力の高い元でもシステムの助けやあらかじめジャンヌのピックアップが無ければ円滑に行えない。その解決の為にあらかじめ設定した武器装備パターンで呼び出せるようにしている。なお個別とパターンを組み合わせて戦況に対応する形も可能なため汎用性は高い。

 モデルは仮面ライダーの最終形態がよく持つ武器召喚、またはZ.O.Eのジェフティが持つベクタートラップ。武装を自在に呼び出す点で共通する。

 

・エレメントブーストシステム

 機体のユグドラシルフレーム、DNジェネレーターを核として機能するモード切替システム。

 ホリン・ダウン作戦終盤にて発現したアレスモードは、強化システムとしては画期的だった。出力配分の切り替えとその出力のブーストとセーブ。これを応用してHOWで独自のシステムを作れないかと考案されたのが、このエレメントブーストシステムである。

 モードとしてはこれまで通り、近接戦闘特化のアレスに加え、武器運用・装甲特化のキング、ファンネル・高機動特化のハルピュイア、そして全性能特化と引き換えに制御系統がスタートへと移譲するネクロの四つ。それぞれの効果の詳細は後述するモード時の解説にて。

 発想元は仮面ライダーなどのフォームチェンジ。元が仮面ライダーモチーフの特撮「マスクライダー」やウルトラマンモチーフの「マックスマン」などを推しているため、素直に受け入れている。

 

・マルチロックオンシステム

 敵機を多重ロックオンして、同時攻撃を行うためのロックオンシステム。本機の場合シュバルトゼロガンダムの時よりも更に武装が増えたため、より多くの敵機を一斉に攻撃が可能になった。

 

 

【武装】

(本体側)

・ゼロ・ビームライフルⅡ

 シュバルトゼロガンダムのゼロ・ビームライフルを発展させた兵装。腰部に装備される。

 もととなったMWBRの機能を踏まえつつも、ジェミニアスの性能に合わせて再調整が行われた。結果エネルギーパック方式が採用される。シュバルトゼロガンダム・ジェミニアスはマルチ・スペースシステムを採用しているがそれでもまだ出力に余剰がある。それでもエネルギーパック方式にしたのはガンダムが必要とされる戦場で、エネルギーパック方式が十分役割を果たせるかのテストとマルチ・スペースシステムが小規模でも通用するかの検証だった。ウエポン・スペースには当然このライフルのエネルギーパックも収納されており、手甲の部分から手元へ引っ張ってきてパックの換装を行える。空のパックも瞬時にスペースに収納可能で、これを量産機などにも応用できないが試される。

 パーツの換装などは行えなくなっており、以前よりも汎用性がない部分も多い。ただし銃身を伸ばしてバーストモードへの形態変化は行える。

 形状参考はスパロボOEのエグザートの武装「ウェーバー・ガン」。銃後部にパック換装機能を持つため、採用。

 

・ブレードガンⅡ

 ブレードガン・ニューCを経て開発された新型ブレードガン。見た目は金属製の刃を備えた銃剣となっている。腰部のホルダーバインダーに二丁装備される。

 刀身が金属に戻り、技術が後退したと思われがちだが、実際にはこの金属装甲そのものは鞘で、取るとこれまで通りのクリアブルーの刀身が露出する。鞘自体もDNを効率よく伝達できる特注品であり、鞘の状態での斬撃・分割が可能。突き刺して押し開く際に刀身が折れづらくなり、「ボウゲン・ランツェ」のような刀身が折れる事態を防ぐ意味合いの他、単純な防御兵装としても用いるために装着される。

 ガンモードでは安定したDN圧縮を行うためのデバイスともなり、火力よりも貫通性を高める。ホルダー自体には鞘のロック機構も用意され、抜き放った後の保持が行われる。

 可変機構があるが故にこのような機構になってしまっているが、可変機構を簡略化した最新モデルも別途開発中であり、場合によっては換装するかもしれない。

 

・ホルダーブレイズバインダー

 機体両サイドアーマーを構成するバインダーユニット。ブレードガンⅡを保持する。シュバルトゼロガンダムRⅡのフェザーブレイズ装着状態のバインダーの発展形。

 バインダーにスラスターが内蔵されている点も旧機体と同一。出力が2割増しとなり、AMBACとしての性能も向上している。加えてユグドラシルフレームを内蔵したことで搭載量も増加。よりユグドラシルフレーム機として完成している。またフェザーブレイズで用いられていたDNフェザーショットも健在。

 

・ビームサーベル

 基本的な格闘兵装の一つ。これまでと同じように通常出力と強化出力を装備する。ただしその装備位置は異なり、通常出力は膝装甲内にビームスパイクとして、そして強化出力は腕部内部と強化出力が通常出力の装備位置に代わっている。

 

・Dフィストスマッシャー

 掌部分にエネルギー放射機構を備えたDフィストイレイザー・ネクストの発展兵装。

 手甲部にスペース・ハードポイントを搭載したタイプであり、通常時はエネルギー増幅装置と非顕現状態で接続して通常火力を高めている。余分なパーツを付けずにこれまでの攻撃を1.5倍の出力で放てるため、旧シュバルトゼロガンダムのデータを取得している敵には奇襲性が高い。

 ハードポイント部分にはこれまでのようなスパイクユニットを転送・接続が可能。エネルギー放射機構も健在。このパーツには特殊タイプも存在し、元とジャンヌ、二人の考えている「ある作戦」において重要なものとなっている。

 

・マルチ・アサルトシールド

 機体肩部にアームを介して接続される多機能シールド。ニューオーダーシールドの改良型となる。

 機能としては盾・ビーム砲・ハードポイントの三つ。盾はこれまで通りそのままの防御とDNウォールを持つ。DNウォール発生時には正面のカバーと側面エッジが展開して放出口が露出する形となる。

 ビーム砲に関してはかつてシールド裏に取りつけられていたビームマシンキャノンの流れを汲んだ兵装「シールドカノン」で下部先端が開いて射撃・ビームサーベルの発振を行う。

 そしてハードポイントはこれまでから分かる通りマルチ・スペースシステム搭載のもの。状況に応じてシールド裏の兵装を切り替えられる。力場による武器接続なのであらゆる兵装を装備でき、シールドを突きつけての不意の攻撃なども可能。加えて機体から分離してもしばらくの間マルチ・スペースシステムは機能し、その間に爆弾を搭載して自爆させると言った使い方も。なお機密保持のため、機体から完全にパージされるとマルチ・スペースシステムは自動的にシールドから消滅する。

 武装のコンセプトモデルは魔法戦記リリカルなのはForceのAECウエポン「フォートレス」のシールド(中サイズ)。正面のカバーユニットは機動戦士ガンダム00のダブルオーライザーの肩部バインダーシールド。

 

・マルチプル・スペースシフター

 本機最大の機能「マルチ・スペースシステム」の根幹を成すバックパックユニット。左右六枚計十二枚のシフトパネルウイングから成る大型可変翼と中央のメインスラスターである。素材にはユグドラシルフレームが用いられる。

 常にウエポン・スペースからの力場が働き、瞬時に装備することが可能。ここにDNLの能力が加わり、ユグドラシルフィールドの力場も加わると武装の接合はより強固なものへと変わる。なお力場はDNの武器への伝達も行う。通常装備はジェミニ・アームズ。装備によってシフターに特殊効果が適用される。

 パネルウイング内部にはフェザー・フィンファンネルの発展形として「フェザービット」を搭載。加えてシフトパネルウイングも分離して遠隔操作端末として使用できる。しかも武装を顕現させた状態で飛ばせるため、様々な攻撃パターンを繰り出せる。ウイング自体にスラスターも付いているため、それらを駆使した機動性能も非常に高い。

 更にエレメントブーストシステムの時もパネルウイングは真価を発揮する。モード切替時にウイングが配列を変え、そのフォームに適した推力配分になるのだ。それらの配列変換に合わせて武装も調整されている。通常時は全領域対応高機動戦想定の「ノーマルモード」で翼のように配列される。

 モデルはフレームアームズのレイファルクスのマルチプルシフター。あちらはウイング固定式の武装懸架ウイングだが、こちらはそれを更にガンダムの世界観を取り入れつつ、レイファルクスの持つ別次元の性能を別方向で併せ持たせた構成となっている。

 

・フェザービット

 フェザー・フィンファンネルから発展させた地球製の遠隔操作端末。十二基をパネルウイング内部に装備する。

 これまでのフィンファンネルはマキナ・ドランディアの気候などに合わせたもので地球の、特に日本の環境では動きが緩慢となってしまう部分があった。これまでHOW、MSオーダーズが使用していたドローンも開発したビットに置き換わり、その波がジェミニアスの武装にもやってきた。このビットはこれまでのファンネルと変わらず、射撃攻撃を繰り出す他、DNプロテクションを形成できる。

 ファンネル系の操作は既に元の手に掛ければ何の不自由もないが、通常のファンネル操作に加え、マルチ・スペースシステムの武装操作、更にはパネルウイング自体のファンネル操作も加わると負担は非常に大きい。すべての武装を使う必要がないほどに現状のシュバルトゼロガンダムは性能が高いが、そうなることがないように祈りたいところである。

 武装外見モデルはケルディムガンダムのシールドビット。形状は似ているが、盾のような頑丈さが少ないデザインで、かつレイファルクスのウイングのピースに近い形状なのが相違点。

 

 

グリーフィア「なっが、概要時点でなっが!」

 

士「いつもの設定公開後の言葉も忘れるほどですか(;´・ω・)まぁ私も今驚いているけどさぁ」

 

ネイ「いや、あの……主人公機となると突然力入ってますよね、作者さん」

 

士「だ、だってぇ、ちゃんと設定織り込みたいでしょ?いや、他の機体にも言えるんだけどさ(´・ω・`)これでも短くしているはずなんだけど」

 

グリーフィア「ダウト」

 

ネイ「それは……擁護できませんね」

 

士「じゃ、じゃあそれ以外の感想!( ;∀;)」

 

グリーフィア「って言ってもねぇ……どこから言えばいいか。まぁ最大の特徴っていうか、今までの機体と明らかに違うのはマルチ・スペースシステムによる武装供給・換装システムよねぇ」

 

ネイ「武器を異次元に仕舞って運用って、すごい壮大な奴ですよね。本当に、ガンダムでそんな機体いるんです?」

 

士「まぁテレビで出るような機体にはほぼいないよね。現実世界に即しているし。漫画とかゲームまで広げると、まずエクストリームガンダムがデータの存在だから供給しやすいってのはある。あとGジェネジェネシスのホットスクランブルのライフルも確か転送方式だったような気がする。けど実はそれより前に、テレビで出ているターンAが設定ではどうにも空間跳躍で別の場所にあるアームドベースから武装を取り出してくる機体で、実はそこからこのアイデア膨らませている。流石あのお方のターンA、やることが違い過ぎる」

 

ネイ「どっちにしろテレビで出せない性能じゃないですか!」

 

士「大丈夫、まだ現実世界の空間跳躍は出来ないから(^ω^)」

 

グリーフィア「それ出来るようになるってことでは?」

 

士「(*´ω`)さっ、次」

 

ネイ「流した……。もう一つあるのはエレメントブーストと呼ばれる機能ですね。アレスモードを基に追加されたモードシフト、ですか」

 

グリーフィア「なんていうか、もう仮面ライダーの域ね」

 

士「そ、それは認める(;´・ω・)でも最近でもコアガンダムが形態をチェンジさせてたし、ガンダムで多種多様な形態変化もありではないかな」

 

グリーフィア「む、もっともらしい。けどエレメントブーストで武装も換装するっていうのに、武装無いわよね。そもそも最初っから背中に武装付けてない」

 

士「だって、劇中でまだ付けてないもん(´・ω・`)」

 

ネイ「あっ、そういえば劇中でも追加装備付けてないって言ってたような」

 

士「Gワイバーンの改修機のことかと思ったか!( ゚Д゚)基本装備すら未装備状態だったのさ!(゚∀゚)」

 

グリーフィア「あんまり自慢できることではないんじゃなくて?」

 

士「(´・ω・`)ごもっともです。けどそれ入れ込んでいると黒の館DNが初の文字数領域に届いちゃう。多分15000くらい行くんじゃないかな」

 

グリーフィア「えぇ……(困惑)」

 

ネイ「流石に詰め込み過ぎです」

 

士「だからそこで切ってるのよっ。というわけで追加武装もとい、真の性能公開は第2章にて(゚∀゚)」

 

ネイ「ではそろそろ締めますか?」

 

士「だね」

 

グリーフィア「というわけで、次回からのLEVEL3第2章もよろしく~」

 




今回もお読みいただきありがとうございます。

ジェミニアスは名称をふたご座、つまり旧作のゴッドクロスや本作のイグナイターのモデル「ジェニオン」を意匠とする名前です。あちらのような変形や変容は未だいたしていませんが、それらを受け継ぐ機体として考案しました。

武器に関しては本体の物しかありませんが、今後マルチスペース・システムにより武装は増加していきます。そしてGワイバーンを生まれ変わらせた新型支援機も登場します。その力の登場は既に決めてありますので、お待ちいただけると幸いです。

重ね重ねになりますが、今非常につらい現状となっておりますので、最新話の更新はお待ちいただけると幸いです。それでは次回より第2章、お楽しみに。


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第2章 運命の種の行方
EPISODE12 翔けるザ・ファースト・ミッション1


どうも皆様お久しぶりです、あけましておめでとうございます(遅い)。

3か月近く無更新続いてました。謝罪含めまして理由でもお話します。3つほどあります。
最初の原因を申し上げますとパソコンの不調です。軽く熱暴走起こす事態が最初におきまして、それが解決するまでパソコンの調子を見てました。投稿するにも文章書くにも安心して出来なかったので色々四苦八苦していました。パソコンの知識が少なくて申し訳ないです。
二つ目に、精神的不調です。これは今も継続中です。豆腐メンタルと言ってた頃からの付き合いです。許せ。
三つ目が、これ一番くだらないんですが単に他の物に目移りしてました。マキ○ンとか、ゆ○ソフトとか、後アリ○ギアとバ○スピですね。趣味・やりたいこと優先です。分かってくれ。

はい、というわけで以上がここまで更新が伸びた原因です。他にもこの前書きあとがきの仕様についても考えてたりしてました。今後は一々作者本人の名乗りやらは省いていきます。アシスタント使用もどうするか考えましたが、そちらは継続します。
……というわけで、行こうか。

レイ「ちなみにストックはあるからしばらく二話更新が続くらしいよ。今回も2話更新だし」

ジャンヌ「とりあえず作者には後で反省会ですね」

第2章もよろしくね(´・ω・`)


 

 HOWへと入隊した相模宗司は、今HOWの訓練場を他の隊員と共に走っていた。

 

「はっ、はっ」

 

 世間がゴールデンウィークでにぎわう中、宗司は入隊直後の強化訓練に参加していたのだ。この教化訓練で宗司はMS所持法を取ることになっている。今はその時のための体力づくりであった。

とは言っても列は最後尾。しかしそれが限界というわけではない。理由はその後ろにいるもう一人が理由だった。

 

「……ぜぇっ、ぜぇっ、かふっ!」

 

「……大丈夫か」

 

 後ろにいたパートナーに声を掛けた。美しい銀髪を今は荒々しく揺らすその少女、エターナは途切れ途切れの声で愚痴を漏らす。

 

「……大丈夫、な……わけない……でしょっ、うぇっ!なんで、サブパイロットやってる、私、まで……っ」

 

 今にも吐きそうな彼女の声。それを見かねて、前方からスピードを落としてきた同じCROZEチームのメンバーであり、訓練にも参加していた光巴が余裕そうに笑いかける。

 

「あはは、そりゃそうだよね。でもエンゲージシステムのパイロットはメインパイロットと行動を共にするわけだから、ある程度はついて来れる様にならないといけないんだよ」

 

「だからって……こん、なっ!あと、何周……」

 

「覚えている限りじゃ、後5周だな」

 

「なんでっ!」

 

 残り周回を告げられて慟哭するエターナ。体力も限界となっていた彼女だったが、それに光巴はいじわるな笑みを浮かべて仕掛ける。

 

「じゃあ~、またくすぐっちゃおうかなー?」

 

「ふひぃっ!?も、もうやめなさいよーっ!?」

 

「あはは、待て待てー♪」

 

 くすぐりという単語を聞いてエターナが速度を上げて光巴から逃走する。どこにそんな体力があったのか。くすぐりから逃れるための最後の力を振り絞る光景に、これが火事場の馬鹿力と言うものだろうと思った。

 そう思いながらも自身が最後尾になったことに危機感を抱かないはずはない。そろそろペースを上げるかと、力を入れかけたところで後ろから声が掛かる。

 

「別にあれに追いつこうという必要はないぞ」

 

「元さん。確か先頭に……」

 

 それは先頭を走っていたはずの隊長、黒和元だった。その後ろにはジャンヌ・ファーフニルの走る姿も見える。ここまで抜かしたという記憶はない。二人の体力の高さに内心驚きを感じる。

 元隊長はそれに触れることなく、先程の言葉の意味について触れる。

 

「確かに遅れているのは問題だ。だがペースの配分は充分出来ている。速い者が遅い者に合わせることは割と負荷になりやすい。むしろそれで焦ってペースを上げれば、余計に体力が消耗する。もちろんペースを上げられるのなら、速くすればいい」

 

「はぁ……けど、お二人とも凄いですね。特にジャンヌさん」

 

 返事をしつつ、ジャンヌの体力の多さに素直に驚く。宗司の言葉を聞いて、ジャンヌ少しだけ笑って見せる。

 

「結構きついですよ。元のペースに合わせるの。任務の間は割と合わせてくれていますが、訓練では割と私が無理に付いて行っている感じですし。最初の頃は、今のあの子……エターナと同じくらい体力がありませんでしたから」

 

 そこからここまで着いてこられる様になった、という事実を示しながらジャンヌはエンゲージシステムの先輩としてエターナに言及した。

 

「あの子も本当なら戦う必要なんてなかった。でも今はそうするしかない。だからあの子の姉として言わせて。あの子があなたに付いて行こうって思えるような隊員になって。それこそ、嫉妬してしまう位に」

 

「嫉妬、ですか……」

 

「案外、私も嫉妬深いですから。今もね」

 

「そうだな。じゃあ先行くぞ。周回遅れすぎるのもあまりよくないぞ」

 

 それを言って元隊長とジャンヌ副隊長は追い越していく。

 嫉妬させる、嫉妬深い……姉への愛が強いというのはこれまでも感じることが多くあったエターナが、果たして自分に嫉妬するのだろうか。

 疑問を新たに抱えつつも今は目の前の事に目を向ける。すると丁度良く先程全力疾走していったエターナが戻ってくるのが見えた。

 

「ぜぇっ…………ぜぇっ…………」

 

 完全に息が上がっている。光巴の姿は見当たらない。もう先で走っているのだろう。

 あまりにも体力がなさすぎるように思える。彼女も異世界の学校で体育の授業くらいはしているだろうに。ただあまり深入りしてもまた噛みつかれるだけだと言葉を仕舞い、先程と同じく彼女に並走する形でペースを合わせた。

 このまま最後まで行く、と思われた。ところが数秒走っている間にエターナがこちらに話しかけてくる。

 

「……ねぇ、あんた。わざわざ合わせなくていいわよ」

 

「?」

「ペース。アンタなら、もっと先に行けるでしょ」

 

 自分についてくるな、と取れる発言。確かにまだだいぶ余裕はある。ただなぜそう言ったのか気になった。もしかしてと思い、先程のやり取りについて触れた。

 

「それはつまり、俺に嫉妬していると?」

 

「はぁっ!?……何よ、馬鹿にしてるの……っ」

 

 一際大きい困惑の声と共にエターナが苛立つ。彼女の怒りを買ってしまったらしい。やはり、彼女がこちらに嫉妬する可能性はなさそうだ。ちらりと視線を返し、走りながら謝罪する。

 

「すまない。さっきお姉さんから嫉妬がどうの言われてな。まぁ言う必要もなかった」

 

「姉様、がっ?……もう、何変なこと言ってるの……とにかく、あんたに嫉妬なんてしてない、分かったら今後の為に、走れッ」

 

「分かった。あまり無理するなよ」

 

 言って宗司は走る速度を上げた。大分離されているが、落ち着いてペースを上げていく。それでも精鋭ぞろいなメンバーで、まったく追い付ける気配がなかった。

 結局宗司は最後から二番目にゴールした。最後は無論、エターナだった。

 

 

 

 

 強化訓練が始まって四日目。その休憩時間でエターナ達は問題集とにらめっこする。宗司とエターナの二人はMS所持法取得のための勉強、入嶋とクルーシア、光巴は学校からの提出課題をやっている。

 問題集とにらめっこしていたエターナはその中でひとり呟く。

 

「むー……この所持法って割とうちと近いところがあるわよね」

 

「近いって、エターナちゃんの所のMSを扱う法とってこと?」

 

「そう。ま、ちょっと細かいところで違う所はあるけれど、大筋は私の所と同じ。学校で学んどいたから、割と楽かも」

 

 クルーシアの言葉頷く。こちらの世界ではMS所持法ではなく、MSライセンスとされていたが、割とこちらと似通った取得法だ。

 問題もあっちと同じで○×回答を解いていくばかり。向こうでは取っていないが、この機会にここで腕試しするのは悪くはない話である。早いところ最終日の所持法試験を通パしたいものだ。

 

「エターナちゃんは割と大丈夫そうね。でも宗司君はどうなの?」

 

 うんうんと頷いていたイリジマはソウジの方に進捗を尋ねた。ソウジも問題を解く手を止めて進捗、もとい難易度について語る。

 

「俺も問題なさそうだ。漢文は苦手だけど、普通の文だったらちゃんと読めるし、割とこれも常識が問われるやつだからな。それより俺は学校からの提出物の方がこっちに食われないか心配だ」

 

「うっ……そう言えばなんか出てたわね……学力調査だったか」

 

 悪いことを思い出してしまう。編入した二人にはこれまでの学力を調査する為に提出物の用紙が配られていた。基本的な学力を問うものだったが、中でもエターナにとっての大問題はこの地球の歴史・社会についてだ。

 当然ながらエターナはこの世界の歴史は一切知らない。誰が何をしたかなんてわからないし、いつどんな戦争が起きたかも知らない。異世界の住人にそんなこの世界の常識を答えろなど無謀すぎる。

 もちろん言ったが、教師は承知した上で「間違うことでよく学べるから」と言われて押し切られてしまった。正直、無責任すぎる。

 

「この世界の歴史なんて、私知らないわよ……!こっちの問題文でも分からない単語も出てくるしっ!緊急脱出スライダーの心得?おせじもととかいかのおすしだとか!」

 

「あ、それ推せ地元(おせじもと)が正解。おさない、せかさない、じゃましない、もどらない、とりみださないの略称」

 

「分かるかっ!スライダー自体ないっての!」

 

 あぁ、もう!分からないことばっかりだ。こんなの姉様どうやって分かったんだろう……。頭をくしゃくしゃとしながら悶える。ふと思い浮かんだ疑問を、呟いてみる。

 

「……そういえば、姉様はこれを解いて所持法を手に入れたのよね?」

 

 よくよく考えれば、これよりも前に姉は所持法を手に入れていると分かる。同じ異世界からやってきて取れたのなら、その方法も知っているに違いない。

 きっと姉様ならその時のことを教えてくれる。それどころか学園の問題も直接的なことではなくとも、覚え方について知っているかも。そう思って問題集を持ち出そうとした。けれどそこでミツハが止めた。

 

「あっ、ごめん。ちょっとその認識は違う」

 

「えっ、認識が違うって?」

 

「ジャンヌお姉さんは特例の特例。それも考慮されて当時試験無しでMS所持法を習得しているから」

 

「な、なんですって!?」

 

 思わず訊き返す。聞くところによると、当時はまだ異世界からの来訪者も机上の空論、本当にいるかどうかも怪しかったためその法整備がされていなかったらしい。所持法もそれを前提として組まれ問題もベースが独自の物になっていた。

 しかし、元と共にジャンヌが転移した時の悶着で、最大戦力を一刻も早く扱う必要があった。そこで二人には特例として試験無しでのMS所持法の配布が認められたのだそうな。それから元だけは元々こちらの住人だったことから数日の勉強の後、確認のための試験が行われた、と光巴が語る。

 

「最初の内はジャンヌさんもこの世界に慣れていなかったからね。けど所持法が二人の意見を受けて変更されて、今エターナちゃんがそれなりに解けている。昔のままだとジャンヌさんも大分苦戦していたみたいだったから、専門用語も変更しているし」

 

「そう言えば、DNジェネレーターって元々は次元粒子発生器って名前でしたよね」

 

「そうそう。異世界の住人がやってきても混乱することがないように、可能な限り同じ技術は同じ名前に変えて、この日の為に備えた結果なんだから」

 

 言われて口を閉ざす。今の自分が恥ずかしく思えたからだ。

姉様がそこまでしてくれた。あり得る可能性に配慮して、自分がどうにか出来る分野を整えてくれた。それならこれ以上迷惑なんてかけられないな……。こっちは、頑張らなきゃ。

 

「そう、なんだ……」

 

「まぁ、学校の課題くらいは見てあげましょう。語呂合わせとか含めて」

 

「ほぅ、所持法の試験の勉強かぁ。熱心々々!」

 

 そこへ一人の男性が会話に入ってきた。ソウジやイリジマとは違う、どちらかといえば自身やクルーシアの雰囲気に近い。

 その男性を見た入嶋が男性の名前を呼んだ。

 

「クルツ先輩、どうも」

 

「へへっ、よう千恵里、クルス!お前らの方は……学校の課題か。ちゃんと勉強しろよ」

 

「分かってますよ、クルツさん。あ、紹介するね。こちらクルツ・ディランドルさん。私達と同じ、Gチームのスナイパーさん」

 

 同じチーム、そういえばまだチームメンバーの顔合わせは一人残っていると言われていた。ソウジが立って自己紹介する。

 

「初めまして、新人の相模宗司です」

 

「おう、ソージだな。クルツだ。先輩だがお前らの後ろで撃たせてもらう。背中はちゃんと見てやるから、前はよろしく頼むぜ、新人!」

 

 堂々とした態度で前は任せたと言って見せるクルツ。ややお調子者の感じがした。本当に背中を任せられるのだろうか、だからこそ私は敢えて斜めに構える。

 

「ふぅん。後ろから撃たれないことを祈りたいわね」

 

「そういう君は、エターナ・ファーフニルだな?大丈夫だって、命令違反さえしなきゃ、こっちの射線にあたることはないっての」

 

 だがクルツは不満に思うことなく、むしろ笑ってそれに返した。名を呼んだことに訊き返す。

 

「なんで名前知って……あぁ、チームメイトだから」

 

「まぁな。それ以上に、俺はカワイコちゃんの名前はちゃんと覚える主義なんでね」

 

 言われて幻滅する。チームメイトなら知って当然、と来るかと思いきや、見かけ通りの性格と反応。要するにこいつはただのナンパ野郎。姉様に集るゴミだ。

 エターナは冷たいまなざしをクルツに対し向ける。その表情を見て面白おかしくクルツが茶化す。

 

「おっと、そう言うのは癪に障ったかな。美人の顔が台無しだぜ?」

 

「ぬぅぅ……調子に乗ってからに……」

 

「調子というか……まぁこれがクルツさんだから。でも見た目で油断しちゃダメだよ?この人深絵さんに匹敵するくらいのスナイパーだから」

 

 クルスの発言を聞いて宗司が反応した。

 

「深絵って、確か青いガンダムのパイロットだっけ?」

 

 宗司の言葉にクルスを押し退けて千恵里が、その人物について話す。

 

「そう!蒼梨深絵さん。SABERの隊長さんで、HOWきってのスナイパー」

 

「ハハッ、気持ちはありがたいが、流石にあの人ほどの実力はないね。あの人の機体、ガンダムであることを差し引いてもあの人の実力は俺を超える。潜ってきた状況が違う。流石、東響掃討戦、ホリン・ダウン作戦を生き残った英雄だ」

 

 姉から話を聞いていた名前。転移当時から世話になった友人らしい。まだ顔合わせしたことはないが、姉の世話になった相手でガンダムのパイロット。是非会ってお礼は言いたいと思っていた。

 ただその人にこんなやつが匹敵するなんて疑わしい。本人が謙遜しているのだから、あまり気にしないでおこうと思う。間違ってもこんなやつに世話になるのは避けたい。命令には従わなきゃだけども……、姉様に心配かけたくないし。

 エターナは心の中で世話にならない様に決意する中で、宗司は彼、クルツの出身について尋ねる。

 

「そういえば、クルツさんって外国の方ですか?日本語がすごく上手いですけど、ハーフなんです?」

 

「ん?いや、ハーフじゃないね。ただ、外国人だってつもりもない」

 

 こちらの言葉をちゃんと理解していることに、何か特別な経験が?との意味合いで尋ねた宗司。ところがクルツはそのどちらでもないと答えた。言葉の意味を掴みかねる回答だ。その疑問はすぐに分かる。

 

「それって……?」

 

「俺の両親はドリツ人。だけど俺が生まれた時からずっと日本で暮らしてる。だから俺は日本人だ。もっとも、ドリツ語は勉強したり、親との生活で学んだりしたから話せないこともない。生かす機会はそんなにないけどな。日本語の方が使いやすいし」

 

 信じられなかった。別の国生まれなのに、今の国でずっと暮らしているからその国の人間だ、なんて。私には想像がつかない。

 ドラグディアでずっと、名家で育ち続けた自分はこれからもドラグディアの人間であると誇るつもりだった。けれども周りのクラスメイト達、聖トゥインクル学園の学友は平和になろうとする世界に夢を抱いていた。

 庶民だからこその考え、だと思う。血を重視して名乗るべきだと。でも姉様は違う。国どころか、世界を超えてあの男に添い遂げるつもりでいる。今まではあちらに居たから許容されていた考えも、使命を終えてからもしこちらの世界に残るのだとしたら?あの男の血筋に加わったとしたら……家の未来はどうなるのか。もし私が……ううん、あるわけないから。

 そんなのあるわけない。そう思いつつも、わずかに芽生えた気持ちを少しだけ口にした。

 

「……私は、どうなるんだろ」

 

「エターナ?」

 

「何でもない。それより話すくらいなら勉強教えるくらいはしていいんじゃないの?先輩さん?」

 

 宗司の言葉に何もないと言い、わざとらしくそう言って見せる。強がりではあるが、今は触れてほしくない。エターナのやや挑発めいた誘いをクルツは聞き入れる。

 

「そうかい?なら先輩として、仲良くなるためにもアドバイスさせてもらうぜっ!」

 

「仲良くなれるかは保証しないけど」

 

「そりゃないぜ……」

 

 肩を竦めつつそのお願いに応える先輩。それに便乗して入嶋達もお願いする。

 

「あ、じゃあこっちもお願いします」

 

「お願いしまーす、クルツせーんぱい♡後はよろしくっ」

 

「お前らは現役学生だろ!?あと、いくら可愛くてもそれは先輩許さねぇぞ光巴ちゃん!」

 

 クルツのツッコミが飛ぶ。そうして四日目は先輩風を吹かせる男に、意外と為になる教えを教わったのであった。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP12はここまでです。

レイ「結局ここの私達の文も削るって案は廃案になったんだね」

気まぐれで削るかもしれないっていうのはある。何でもかんでも話させるの面倒なんだよね。

ジャンヌ「まぁそれは良い傾向?なのかもしれませんけどもね。一人で話せるようにって確か黒の館かアシスタント追加時にも言っていたことですし」

ただ必要事項以外削っていく予定ですので。というわけで次に続きます。

レイ「本当に短いね」

ジャンヌ「もう無しでもいいので?」

そこらへんまた詰めていきます(´Д`)


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EPISODE13 翔けるザ・ファースト・ミッション2

EP13の更新です。

ネイ「面倒くささがにじみ出てますよ、作者さん……」

久々に書くから感覚忘れてるのよ……(;´Д`)

グリーフィア「感覚忘れているというより、目指す書き方を書いてないからなのでは?」

……せやな( ゚Д゚)そうかもしれない

ネイ「とりあえずEP13はゴールデンウィーク中の訓練の内容って感じですね」

グリーフィア「ガンダムDN2機の模擬戦ね。今までHOW単体ではやってきたんでしょうけど、専任パイロット同士での戦いはこれからってところかしら」

そうなるね。というわけで本編です。


 CROZE部隊強化訓練もいよいよ最終日を迎えた。最終日の目玉はガンダムDN同士の対決。そのためまず午前中はガンダムDNのパイロットである相模宗司とエターナ・ファーフニルのMS所持法試験が入っていた。

 試験に臨む二人に、千恵里達はエールを送る。

 

「強化訓練も今日が最後。午後からは私とあなたのガンダムDNで、模擬戦やるんだからちゃんと合格するのよ?」

 

「きっと大丈夫だよ、二人なら」

 

「そうそう、私も中学の時に取れてるから、取れる取れるー」

 

 3人以外にも元とジャンヌも見届けにやってきていた。気を抜くようにと言う三人の言葉は、試験前の集中を切らさない様にとエターナがしつこいと声を大にする。

 

「あぁもう、うっさいわね!変な心配するんじゃないわよ、こいつはどうか知らないけど、あたしの方はまだ楽なんだから!」

 

「そうだな。異世界の住人であるお前は、宗司よりも要求点数が低い。だがだからと言って気を緩めるのは感心できんぞ」

 

「分かってるわよ!このクソ男がっ」

 

 騒ぐエターナの方も心配だが、それよりも先程から黙っていた宗司の方に千恵里は声を掛ける。

 

「相模君の方は大丈夫?」

 

「問題ない、と言いたいところだがやっぱり緊張している。けどまぁ、入嶋さんが取れているのなら、心配ないかなって思っておくよ」

 

 何気ない一言は所持法試験を突破できた千恵里への無自覚な悪口として心に刺さった。光巴がクスクスとその様を見て笑う。

 

「言われちゃってるねぇ~千恵里ちゃーん?」

 

「ちょっと、私が受かったから大丈夫ってどういうこと!?」

 

 心外だ。まるで私が取れそうにないと言われているみたい、いや、そう言われているとしか思えない。

 確かに私は命令違反にドジも踏んで、元隊長達に迷惑もかけてしまっている。それでも精一杯やっているんだ。いくら緊張を和らげるためだからって……!

 だが千恵里の不服な様子を見て、宗司はすぐに発言を訂正する。

 

「いや、失敗しているっていつも言っていても今の俺よりもちゃんとしているんだなって再認識させられたんだ。だから負けられないって」

 

「ああ、そういう……別に負けるとかそういうのはどうだっていいから。いや、落ちてもらっちゃ困るんだけど」

 

 闘争心というのは無論ある。同じ種類の機体のパイロットとして、宗司よりも使いこなしたいと。けれども今はそれが現実となるかの問題なのだ。

先輩として後輩(少し入るのが後なだけだが)がちゃんと試験を突破してくれることが何より嬉しい。そのためなら闘争心も多少はいいかなと思ってしまうが。

 そう話している内に時間になったようだ。元隊長が二人に行って来いと言う。

 

「時間だ。ちゃんと持ち込めるものだけ持ったな」

 

「はい。ケータイの電源も切ってますし」

 

「あんたに心配されるようなもの、この世界に持ち込んでいるわけないでしょ。それじゃあ、姉様、行ってきますっ」

 

「行ってらっしゃい。また今度あなたの携帯も設定しないとね」

 

 二人が試験会場となる部屋へと入っていくのを見送った。

 

 

 

 

 待つこと1時間半。宗司達が帰ってきた。手ごたえは相応と言った感じの宗司と自信満々ながらも不安さを感じさせるエターナの反応に各々反応した。

 そこから更に1時間、結果が帰ってきた。結果の紙をもらってきた元により発表がされる。

 

「結果を発表する。相模宗司89点、エターナ・ファーフニル71点。まぁ合格だな」

 

「ふぅ」

 

「や、やったわ……」

 

 宗司とエターナから安堵のため息が漏れる。二人ともそれぞれの合格点は超えている。が、やはり心配していたエターナの方はかなりギリギリの点数だった。

 

「確かエターナちゃんの方は宗司君の点数より低くても合格だったよね」

 

「そのはずだけど……」

 

「そ、それでもちゃっ、ちゃんと超えてるから!」

 

 千恵里とクルスの指摘を受けてエターナの声が震える。その認識が正解であると姉のジャンヌがしっかりとその合格点数を明かす。

 

「エターナの場合は70点で合格。本当にギリギリですね」

 

「ううっ……ごめんなさい」

 

 いつもは強気な彼女も姉の前では委縮していた。敬愛する姉へ自信満々の報告が出来ずに謝罪以外何も言葉が出ない様子だ。

 一方エターナの点数に、そして宗司の点数にも特に目立った反応は見せない元。しかし隊長として掛けるべき言葉は掛ける。

 

「今はそれでいい。これから基本も、応用も叩き込んでいく。一先ずの憂いは無くなった」

 

「ですね、元隊長さんっ」

 

 その横で笑みを浮かべる光巴、彼女はいつものようにエターナに忍び寄り、喜びを分かち合う。

 

「でも合格したんだから、エターナちゃんも安心でしょっ?」

 

「むっ!くっつかないでよ!まぁ、それはそうだけど……」

 

 どこか不満、不足を感じるエターナに、姉のジャンヌは一息置いて流れに乗る。

 

「はぁ。エターナ、自信を持ったなら、その自信を最後まで持ち続けなさい。宣言通り受かってくれたことに私達は感謝してもしきれない。あなた達二人の所持法違反取り消しが無駄にならずに済んだんだから、ね?」

 

「は、はい……姉様」

 

「それ、元にも言ってくれると姉さんとしては嬉しいんだけど。じゃあ三人共、午後からの模擬戦、しっかり力を入れてね」

 

 そう、本番はここからだ。正式なパイロットによるガンダムDN同士の初の模擬戦闘が、始まるのである。

 千恵里は所持法ライセンスを取得したばかりの二人に言って見せる。

 

「さ、午後からが本番!先輩っていうところを見せてあげる!」

 

「胸を借りる気持ちで、臨もう」

 

「模擬戦だからって手加減しないわよ!」

 

 三人の誓い。それにクルス達が微笑ましそうに眺める。

 

「三人共、気合十分だね」

 

「これは見ものかもね~。あー早く私も機体触りたい~」

 

「光巴ちゃん……いつになるんだろうね、前線出られるの」

 

 午後からの模擬戦、絶対に私の力を見せつけるんだから!

 

 

 

 

 所持法取得の午後、HOWの第一模擬戦場観戦室にCROZE部隊、そして予定の空いていた者達がガンダムDNの模擬戦を見ようと集まっていた。

 模擬戦仮想空間を映すモニターの真ん前を陣取るのは、CROZE隊長の自身、黒和元とジャンヌ。各チームの隊長達、そしてクルスとクルツのGチームメンバー、それに光巴と黎人の次元親子も観戦に来ていた。

 黎人から二人の所持法取得に関する礼を告げられる。

 

「ご苦労だった、元、ジャンヌ。これで上の方も取り消しなんてことは言わないだろう」

 

「文句が出ないわけではないだろうが、それでも結果は残せた。感謝するクルツ隊員」

 

 元は黎人に問題ないだろうと言い、この結果の立役者となったクルツに礼を言う。目を丸くしてクルツは把握していたことに言及する。

 

「え、知ってたんすか、隊長」

 

「報告は光巴からもらっている。チャラチャラしているからと舐めるのも良くないぞ」

 

 案外光巴はしっかりしている。幼少期からDNL能力で周囲の人の感情を読んでいたからか、すべきことはきちんとするタイプだ。それが高じてか、幼少期からMSに乗るために必要な所持法の勉強を自ら進んでやる、その為に身の回りの手伝いをやってお小遣いなども稼いでいたようだ。

 計画的な勉強の甲斐もあって中学生で所持法獲得の点数を模擬テストで成した彼女は、今後の所持法年齢緩和のテストケースとして特別に所持が認められた。しかし制限としてこれまで戦場には出られない、予備兵としての扱いとなり、今も続いている。無論前線に出さないのは黎人、そして元達の不安から来る彼女にとっての「おせっかい」である。

 とはいえ当人にとってはおせっかいでもこちらとして彼女の適性を見誤るのは避けたかった。MSに乗りたいからと、欲をそう簡単に許可するわけではない。だからこそ彼女には今CROZE部隊のオペレーターとしての仕事を任せているのだ。

 行動を知らせられていたクルツへ、ひょこっと顔を向けて光巴が明かす。

 

「そうですよー。経過報告はちゃんとするのが私の仕事なわけでしたから。けど流石クルツさん。エターナちゃんに色々口説いていたにも関わらず、しっかり合格できるように教えてあげていましたもんねーっ」

 

「え、あ、いや!それは……」

 

「……クルツさん。一応言っておきますけど、仮にも向こうでは私達名家の出身ですので、もし何かあったら……分かってますよね?」

 

 クルツへと外面柔らかな表情と喋り方でジャンヌが釘を刺す。12年も戦い続けているからか、その言葉には非常に重みがあるように感じられる。姉として、ファーフニル家の人間としての注意にクルツもタジタジになり、肝に銘じることとなる。

 

「は、はい……」

 

 そう言っている間にモニターに変化が現れる。無人だった仮想空間に、二機のガンダムDNが出現する。

 

「あ、準備できたみたいですね」

 

 二機のガンダムDN、白と黒の機体が相模宗司とエターナ・ファーフニルの駆る一号機、そして白とオレンジ、赤に色づけられる入嶋千恵里が駆る二号機が相対する。

 両者の特性について、そして勝負の分かれ目について呉川が言及した。

 

「一号機はDNL能力者搭乗を前提とした、高出力タイプ。対して二号機は高性能機の量産を前提とした、安定型。一発逆転か、それとも制圧しきるか……」

 

「それもそうだが、俺としてはアイデアの勝利か、あるいは努力の勝利だと思う」

 

「というと?」

 

 訊き返されて、根拠を語る。

 

「ドライバ・フィールド、あれは未だこれといった活用法が確立していない。入嶋は予測外の動きに弱い傾向がある。それが出来れば、相模達に勝機がある」

 

「確かに」

 

「だが入嶋も1か月間の訓練期間があいつらよりもある。今後はどうか分からんが、それでも今のスタート地点はわずかに優位にある。ある程度には対抗できる。加えてさっき言った機体の差。必ずしも性能の高い方が強いわけではない。パイロットの力量が少しの差しかない時に、機体の安定感は限りなくアドバンテージではあるはずだ」

 

 それぞれに強みがある。それを生かすのがパイロットの仕事。今は二人に機体の強みを理解してもらえればいい。

 そうこう言っている内に試合が始まるようだ。光巴が注目を集める。

 

「おっ、始まるみたいですよー!」

 

「あいつらの特性を見る。今後の運用の為にも」

 

「分かっています」

 

 試合が始まった。想定試合フィールドはコロシアム。かつてドラグディアで決闘を行った時のフィールドに似た形状だ。先に仕掛けたのは入嶋の二号機だった。

 ビームアサルトマシンガンの連弾でけん制。それを一号機が避ける。そのまま連射し続け、同じく避け続ける。単調だが、見るべきところはある。例えば、二号機は「連射精度」。

 

「狙いはまぁいいな。ブレを抑えるように撃っている」

 

「前の訓練の時よりも移動しながらの射撃が上手くなっているな」

 

「当然です。私が手取り足取り基本は教えましたから」

 

 クルスが言う通り、確かに基本は出来ている動きだ。適性に合わせて武器を設定した時は、それでも酷いブレだったのが抑えられている。狙いも間違いなく正しい。

 それでも避けられているのはひとえに一号機の、相模宗司の操縦技能だ。クルツが口笛を吹いて称賛した。

 

「確かにね。けど、まだあの程度じゃあいつの、ソージの回避技術に追いついていないぜ」

 

「あぁ。報告で聞いていたが、やはり相模宗司の物体回避の練度は非常に高いと言える。これは間違いないな」

 

 陣泰高校のMSパイロット養成科から受け取った相模宗司のデータは興味深いものだ。遊びの範疇とはいえ、射撃、回避行動、高速巡行……いずれも一級品。それを今目の前で見せられている。

 これは入嶋に勝ち目はないか。そう思ったものの、予測を超えるように入嶋が追いすがる。

 

『まだまだッ!』

 

 背部ブースターのウイング付け根、展開したガトリングランチャーをビームアサルトマシンガンと合わせて掃射する。増した弾幕が宗司とエターナを更に追い詰める。

 

『ぐっ!』

 

『弾幕だけは多い……っ!ちょっと、左っ!』

 

 エターナの声と同時にコロシアムの壁が一号機に迫った。間一髪で壁を蹴って上へと逃れる宗司。

 

「あの子もちゃんとオペレートをやっていますね」

 

「DNLとしての感覚を使いこなしているとは言い難いですけどね。機体制御に手いっぱいだったところで、悪寒に気づいたって感じかな」

 

 光巴の言葉が辛辣に思えるが、元も、そして先程称賛したジャンヌも頷いて同意見だった。エンゲージシステムで互いの距離は縮まるはず。無意識に向かっているのだとすれば普通は共有感覚で気づいて早急に修正させるのがセオリーだ。にもかかわらず壁ギリギリで対応したのは甘かった。宗司がこういった戦闘状況にまだ慣れていないのもあるが、エターナはもう少し彼との意識共有を図るべきだろう。

 ここまでの流れは千恵里が優勢と言ったところ。だがここから宗司のエンジンも温まってきたようで、反撃を始める。攻撃を空中機動で回避した隙に地上から撃つ二号機に向けて、右に構えたビームライフルを放つ。放った一撃は攻撃を止めた千恵里が回避するが、掃射を一時的に止める。

 

「狙いは割としっかりしてんな」

 

「もう少し早ければ、どこか当たっていたかもな」

 

 宗司の射撃精度に言及するGチームの男性二人。二人にはそう見えるのだろうが、元としては違った感想を抱く。

 

「いや、これは宗司の問題ではないな」

 

「宗司の問題ではない……?ひょっとしてエンゲージシステムの」

 

「あぁ」

 

 頷き、エンゲージシステムの仕組みについて話す。

 

「エンゲージシステムは言うなれば二人三脚。息が合えば二人分の力を手に入れられるが、合わなければ一人分以下になる。今回の場合高すぎる宗司の操縦技術、戦闘技能にエターナが付いて行けずに足を引っ張っている」

 

「先程の射撃も少しだけエターナの感覚がずれて、発射直後に反動が大きくなっています。宗司君のこれまでの射撃技能を見ても、不自然だったと言えます」

 

「へぇ……」

 

 ジャンヌの補足も合わさる。このずれは心の通い合い、お互いの存在を受け入れることで無くなっていく。死の淵にあっても相棒となら大丈夫。力を合わせられる、信じられると思うことでその力は高まり合っていく。

もっともそこに加えてパイロット同士の脳波の相性なども重要なわけなのだが。例えば自身とジャンヌとの体での適合率は最初にスタートが調べた時点で97%。しかし信頼によるシンクロ率は当時の出来事もあって提案当初はわずか21%と驚くほど低い値だった。シンクロ率問題を解決したのは間違いなく二人の和解と決意であり、そこまでに至ったのはあの激突で自身を体張って止めてくれたレヴのおかげである。

 今回の場合は既に体の相性で導かれた二人は、心のシンクロで問題を抱えている。障害となるのは無論エターナが大きいだろう。しかし宗司側に問題がないわけでもなさそうだ。

 

「とはいえエターナが心を合わせようとしていないのもそうだが、宗司もエンゲージシステムでの操縦に慣れていないからか自分のペースで行き過ぎている」

 

「そうなんですか?」

 

「あぁ。機体の機動時、最初だけやたら放出している上にそれを抑え込もうとすると機体の姿勢がずれている。間違いないだろう。それでありながら相模が自身の腕で修正している」

 

「となると相模君の腕は想像以上のものだな。にしてもエンゲージシステムの欠点……よくそれをこの11年、いや、12年か?安定して使いこなせたものだな」

 

 黎人からも運用出来たことを改めて褒められる。が、それは過大評価だと俺は明かす。

 

「いや、そこまで上手く使いこなしているわけじゃない。どちらかと言えばジャンヌがよくついて来てくれている。俺の無茶に」

 

 勝ちを取った戦いで、いつも俺はジャンヌに無理をさせている。今はまだ大丈夫だが、今後何らかの悪影響が出ないかいつも機体が損傷を負うほどの任務の時はメディカルチェックを受けさせているほどだ。

 もっともそれらはジャンヌから不満を受けているが。ジャンヌは吐露する。

 

「私を大事にしてくれる気持ちはありがたいですが、だからって心配するくらいならそうならない様に戦ってほしいです」

 

「そうだな。いつも俺の力不足だ」

 

 自身の不甲斐なさを謝罪する。何度目ともなる謝罪だ。しかし今後はそんな必要はないと豪語する黎人達の言葉。

 

「力不足、ね。だが今後はそう言う必要もないだろうな。何せあの機体がある」

 

「そうですねっ、元お兄ちゃん待望のジェミニアス!」

 

 シュバルトゼロガンダム・ジェミニアス。新たな翼。その力は間違いなく絶大だ。

 とは言ってもまた新たに増えたことが多い。もっとあの機体を動かす必要がある。まだ今後も機能は拡張していくのなら、今の機能だけでも十全に扱い、敵を圧倒しうることを証明しなければならない。

 そして扱いこなすというのは今戦っている彼らにも言えた。これまでは通常兵装による戦闘。相手の癖を掴み、次なるステップに入るはず。予測は図らずも当たった。

 

「動いた!」

 

「さぁ、ここでどう、相手を潰す?」

 

 

NEXT EPISODE

 




EP13はここまでです。ちなみにこの話付近はまだ絶賛パソコン不調解明中でした。

ネイ「つまり?」

文章を練る時間あんまりありませんでした。多々スリープ状態にして熱こもらない様にしてました。

グリーフィア「まぁ雑さあるのは知っているけど、今回は特に多いってわけね」

そういうこと。
それとここまで読んでいる人は少ないかもしれませんが、次回投稿から不定期になりそうです。日程は最初に話していた通り、ストックがあるので詰めて早めに更新していきますが、ストック分消化していった場合今までよりもかなり更新遅くなります。
それから更新時間ですね。もう夜の内に予約投稿だけして朝に更新するという流れを考えております。前の時点で投稿しておけば時間配分的に楽だろうという考えです。必ずしも守るわけではないでしょうが。

ネイ「朝の投稿でも気分は深夜テンション、ということですか」

間違ってる気もするけどそれでいいわ。

グリーフィア「最新の話題を振れなくなるのは残念ねぇ」

その時はその時で更新時間また夜に回します。
それではまた次回更新をお待ちください。


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EPISODE14 翔けるザ・ファースト・ミッション3

EP14、15更新です。

レイ「まずはEP14からだね」

ジャンヌ「模擬戦を行うガンダムDN2機、勝つのは果たしてどちらか」

それではどうぞ。


 

 黒和元の予測通り、二機のガンダムDNのパイロット、千恵里と宗司は戦い方を変える。千恵里は左腕のシールドを変形させ、サブアームとしてマシンガンを握らせた。そして自身の右手には背部からビームライフルユニットを回す。

 マシンガンからは先程と同じように弾丸をばら撒く。狙いは甘いが、近づけさせないように弾をばら撒く。一方宗司の方はそれを狙い目としてビームサーベルを左手に握り、向かって来る。

 

「速いっ。スピードを維持したまま、ここまで安定するなんて……」

 

 ブレの少ない飛行にやや焦りが生まれる。射撃速度、照準。それらを調整し、当てるタイミングを見計らう。

 引きつけたところでトリガーを、引く。だがそれは本命ではない、併設されたもう一つのトリガー。ライフルの側面からビームの弾雨がばら撒かれる。

 ビームバルカン。ライフルの射撃を補うための補助兵装が接近する一号機を襲う。一号機はブレーキを掛けて大きく迂回した。そのタイミングが本命のトリガーを引く最大の機会。

 

「行けッ!」

 

 やや太めのビームが放たれる。それは弾幕を避けて行った一号機に吸い込まれる様に伸びていく。咄嗟にシールドを構える。だがそれこそこちらの狙いだ。

 シールドに着弾したビームが勢いをそのままに焼き貫く。間一髪肩との接続部を切り離して一号機は避ける。通常のシールドやビームシールドでは防御することは困難な高威力可変速ビームライフル「ヴァルスビー」の貫通力はいかんなく発揮される。

 

「まだまだ行くよっ」

 

 避けられたものの間髪入れずに左腕にも同じ兵装を回してビームを放つ。右からは先程と同じ太めのビームを、反対のヴァルスビーからはより早く、ビームの線が細い物が放たれる。放ちながら追い縋る。

 市街地では威力が高すぎて使えないこれも、今は存分に扱える。今の内に使い勝手は把握しておかなくちゃ!

 一号機も撃たせまいとビームライフルによる応射が飛んでくる。正確な射撃だが、避けられない程じゃない。その上弾幕にかき消される弾もあってこちらに来る弾は少ない。回避して、更に詰めていく。

 押し切れる、と思った千恵里だが宗司もまだ諦めていなかった。

 

「っ!」

 

「来るっ!?」

 

 反応して放った同時斉射をスラスター全開にして回避した宗司の一号機が突貫を行う。ビームライフルを構えて突撃するのに対し、こちらはビームバルカンで再び弾幕を形成した。

 形成した弾幕がライフルを掠める。被弾したライフルを投げ捨てた一号機は爆発を背に加速する。バックパックのスラスター推力でこちらの弾幕を迂回しながら肉薄してくる。

 

「くっ、飛行性能は向こうが上……じゃじゃ馬って聞いてるのに!」

 

 よくもこんなに安定を……と千恵里は思っていたが、実際のところは違う。確かに機体は安定しづらいが宗司はいつもの感覚でやっている。のだが、それに合わせるエターナが付いて来れず、不安定になった飛行を更に感覚で無理矢理飛ばしているのだった。

 不安定ながらも抜群の操縦感覚で動かされる一号機は瞬く間に射撃の内側へと入ってくる。バルカンはおろかヴァルスビーの時間差連射による狙撃も全て回避して向かって来る。シールドを失くしたことで機動性がより向上していたのだ。

 握られたビームサーベルが出力される。横薙ぎの一閃を間一髪回避した。

 

「はっ!外した!?」

 

「っと!危ない!」

 

 ヴァルスビーで対応できる距離ではない。側面のバルカンに切り替えて距離を取ろうとする。しかし、失念していた。敵が一号機であることを。

 

「させない!」

 

 宣言と共に向かっていたビームの弾丸が弾かれる。球体状に展開したドライバ・フィールドが、弾雨をはじき出す領域となったのだ。

 ドライバ・フィールドを展開した一号機は攻撃を物ともせず突っこんでくる。ビームバルカン程度では止まらない。ヴァルスビーとビームアサルトマシンガン、そしてガトリングランチャーという全砲門一斉射(フルバースト)の雨あられで迎え撃つ。

 流石にその圧にドライバ・フィールドの防御フィールドは突貫しきれない。こちらに進んでいた宗司の一号機は徐々にその進撃を止め、逆に押し返されていく。

 狙いは悪くなかった。けれどもこちらは銃火器運用も視野に入れた二号機。ヴァルスビーで貫けはしないけど受け止めるだけで手は出せない、避けるとしてもこの弾幕は避けきれない。この勝負もらった!

 勝ちを確信して誇る千恵里。

 

「これでこのまま……押し返して行動不能に!」

 

 しかし、勝ちの確信はまだ早かったのだ。

 

「このままで終わらない!」

 

 宗司が動く。その手に握り直したのはブレードザッパーとガンザッパー。合体してコンバートライフルへとまとめる。

 いくら長距離射撃兵装とはいえ、それで狙撃は現実的ではない。ところが彼らの狙いはそんなものではない。構えた状態からビームを圧縮し始める姿を隙間から見る。

 

「狙撃じゃ非現実的だって!」

 

 千恵里のこの発言は正確には間違いである。相手から攻撃されない防御フィールドがあるのなら、隙間から撃てる人材は存在した。数少ない例がSABERの深絵である。もっともそんな人材が多くないことは現実だが。

 発想を超える発想、それが今まさに行われていた。コンバートライフルにより圧縮されたビームの放射が始まった。もちろん狙撃の弾は飛んでこない。むしろ正面に向かって撃っているように見える。失敗も失敗、大失敗だ。

 

「残念!……って、え?」

 

 失敗を見て笑う、がようやく不自然さに気づく。弾丸の弾かれる距離が徐々に狭まっている。そして何かがこちらに向かって飛んできて―――。

 目を凝らして気づく。そして射撃を止めて回避行動を取った。

 

「ぐっ!?あっ!」

 

 こちらに向かって飛んできた「何か」がヴァルスビーの一本を潰す。着弾と同時に一瞬にして溶解されて二号機は機体バランスを崩した。

 当てられた?いや、それよりさっきのは。混乱する私は機体を立て直す。生まれた隙は宗司達も逃がそうとしなかった。コンバートライフルを前後入れ替えてコンバートセイバーにして斬りかかってくる。

 なぜ弾がこちらに届いたのか、分からずにいるままで咄嗟に抜き放ったビームサーベルでその剣と切り結んだ。

 

 

 

 

 惜しい。直撃を狙った渾身の弾丸が躱されたものの、生まれた隙を突いてコンバートセイバーで斬りかかる。

 何をしたのかというと先程の弾丸はドライバ・フィールドで包み込んだビーム弾。ドライバ・フィールドを形成したまま内側から透過させたのだ。

ビーム弾のままでは敵の弾丸にかき消される。先程相手の弾幕が激しく、どうすれば届くのか防ぎながら考えていた。

 

『ちょっと、防御しているだけじゃ勝てないって!?』

 

 エターナからも言われてドライバ・フィールドの維持もいよいよ難しくなった時、唐突にそのアイデアが浮かんだのだ。

 ドライバ・フィールドは弾丸を防ぐ。それを被せてビームを放ったらどうなるのか。物は試しということで比較的貫通力の高いコンバートライフルで放った。その結果見事に思い通りにいった。強烈なビームを放つバックパックの武器を一つ使用不能にした。

 今しかないとスラスターを噴かせてコンバートセイバーで斬りかかった。一号機の攻撃を二号機の入嶋はビームサーベルで受け止める。

 

「ぐうぅ……!」

 

 受け止めたものの、その力は咄嗟に構えたからか弱い。押し込んで弾き飛ばした。

 

『離れた、今!』

 

「分かってる!」

 

 エターナに応答し左腕にシールドビームライフルを向ける。体勢を崩した二号機への射撃は、身体を捻らせてシールドアーム部へ着弾する。これでサブアームは潰した。

 攻勢が逆転する。シールドビームライフルでけん制しながらコンバートセイバーで引き続き距離を詰める。入嶋もまたコンバートセイバーを形成してあのビームライフルを片手に切り結びに発展する。

 

「このっ、意外に食らいつくっ!」

 

「言っただろう、負けられないって」

 

「だからって、少しは先輩立てなさいよ!」

 

 何度も切り結びながら言葉を交わす。ピースランドの授業でも感じたが、やはり陣泰高校の時とは違う。互角に競える相手がごまんといる。今のままではいけないことを痛感させられる。どうすればいい、どうすれば勝てると、嫌でも思い知らされる。

 勝ちへの本能が開放される。勢いよく横薙ぎに振るった剣が入嶋のセイバーを弾いた。がら空きとなった胴にこちらのセイバーを突き出す。

 

「これで、決まりだっ」

 

「―――そうはいかないよっ!」

 

 瞬間目の前から二号機が消える。突き刺した感覚のなさに硬直した。どこへという疑問の前に背後から衝撃が襲う。左のマルチキャノンウイングが撃ち抜かれて爆発する。

 

「ぐぁつ!?」

 

『背後を取られたっ、エラクスシステム!』

 

「なんだ、それは」

 

 知っている素振りを見せるエターナに尋ねる。背後を向いても二号機の姿は見えない。二度目の攻撃がアラートで知らされ、反転してシールドビームライフルに纏わせたドライバ・フィールドで防ぐ。

 防いだ瞬間見える。青い輝きと共に高速で移動しながら攻撃する二号機の姿が。先程までの砲撃する姿からは想像できない速度にそれがエラクスと呼ばれたシステムの力だと直感する。

 圧倒的なスピードから再び射撃戦を展開する入嶋。

 

「さぁさぁ、これを使ったからには勝っちゃうから!」

 

 強気な発言通り一気に押される。ビームライフルで狙い撃とうにもあの速さを捕らえられない。逆に急接近されて左のシールドビームライフルを溶断された。

 

「ぐっ!」

 

『エラクスまで持ってるなんて……あぁ、もう!ならこっちだって』

 

 エターナが機体のシステムを探る。ウインドウに探し当てた機体のプログラム「ELACS」を表示させた。

 

『使いなさい、エラクスでなきゃあれは超えられない!』

 

「分かった……」

 

 了解してシステムを起動させる。ところが、エラー表示が現れる。

 

「エラー!?」

 

『はぁ!?何で……っ』

 

 システムが起動しないことに困惑する二人。すると回線から元の声が響く。

 

『エラクスが起動しない。それはジェネレーターがエラクスを使って安定できないという意味だ』

 

「元隊長……」

 

『どー言う意味よ!』

 

 苛立ちを露わにするエターナに、姉のジャンヌが聞かせる。

 

『エラクスシステムは本来、私達の世界で言う龍の愛、リム・クリスタルで暴走状態から復帰する。けれどその機体のリム・クリスタルは試作で量産したもの』

 

『りゅ、龍の愛って……でもなら何で』

 

『あなた達がお互いの事を考えて動かなければ、ジェネレーターも安定して稼働できません。無理に使えば短い時間での解除、最悪自爆です』

 

『じ、自爆……』

 

 自爆という単語に息を呑む。今は現実ではないにしろ、もし機体が爆発したら仮想空間でもどれだけのダメージが来るのか。

 茫然となる宗司。構わず入嶋が攻め立てる。

 

「ほらほら、どうしたのっ!」

 

「ぐっ!」

 

『千恵里さんのガンダムDNは通常ジェネレーターによるエラクス。暴走するリスクは限りなく少ない。けれどあなた達はエンゲージシステムと、それによって制御されるツインジェネレーターシステムのDNジェネレーターを持っている機体、ガンダムDN一号機を操っている。呼吸が上手く合わなければエラクスは使えない』

 

『そ、そんなぁ!?ちょっと、さっきからあんたが無茶するから』

 

『エターナも』

 

 理由は分かっても何の慰めにもならない。エターナの動揺に比例してまた機体が重くなる感覚を感じる。どうにかしなければならない。

 足が捕まりさえすれば……あるいは不意が撃てれば。と、思いつく。

 

「……そうか」

 

『ちょっと、何言って』

 

「突拍子な考えだが、行けるかもしれない」

 

『は、はぁ!?』

 

 行けるという単語にあり得ないといった反応を示すエターナにテレパシー機能で内容を伝えた。不安を感じたままだが、やるしかないことを知り自暴自棄気味に吐き捨てる。

 

『やれることなら、やるしかないか!』

 

「信じられないなら止めてもいい」

 

『……分かったわよ、あんたを信じる!やる!行けッ!』

 

 エターナの信じるというGOサインで、一か八かの反撃を開始した。

 

 

 

 

「エターナもこれで合わせようっていう気持ちになってくれるといいんですけど」

 

「それもそうだが、まだあいつらは諦めていないらしい。何か思いついたようだな」

 

 ジャンヌのため息に元はそう言って再度注目することを促す。絶望的な状況は変わっていないと他の者からも声が上がる。

 

「ガッツがあるのはいいが、これは無理じゃあねぇか?」

 

「確かに。エラクスの強さは隊長がよく知っているはずでは」

 

「二人の言う通りエラクスは俺達がよく知っているだろう。だからこそ、弱点も知っている。制御可能な時間などがそれに当たる。だが案外見えない有効策というのも存在する」

 

「見えない有効策、か」

 

 見えない有効策、何を考えたのか宗司への期待が高まる。果たして彼はどのような策を弄するのか。

 モニターに目を向ける元に、クスリと笑ってジャンヌが声を掛ける。

 

「楽しみなんですね、どう戦うかが」

 

「そうらしい。アレク隊長が俺と初めて決闘で戦った時も、そうだったのかもな」

 

 ふと昔を思い出す。そんな姿が宗司に肩入れしていると思ったのだろう。クルスが反論する。

 

「で、でも千恵里ちゃんだってエラクスを使いこなしてますよ!」

 

「無論それも認めている。だがまだあいつはエラクスの欠点を知らない。いや、知ってはいてもまだ扱い切れていない。エラクスにはただ出力を放出するだけじゃないってことを相模宗司が教えてくれることに賭けよう」

 

「あーあ……それ聞いたらちょっと落ち込みますよちぇりー」

 

 落ち込む。そうだな。入嶋は落ち込むかもしれない。だがこの仕事はいつも笑って一日を終えられるわけではない。憧れて入ったのなら教え込まねばならない。自分がそんな憧れを抱かれる人間ではないことを、そして見るべき人間がもっと沢山いることを俺は彼女に知ってもらいたい。

 モニターでは引き続き入嶋がエラクスの機動性で圧倒する姿が見えていた。次々と移動して砲撃の雨あられを降らせる姿はまるで踊る妖精のよう。かつて冬のドラグディアでの任務で見た景色を思わせる。対して相模達はドライバ・フィールドを用いてヴァルスビーによる攻撃を辛うじて凌ぐ。このまま時間稼ぎをしていくのかと思った。

 そこで一号機が動く。空中を高速移動する二号機に向けてコンバートライフルへと切り替えて発砲する。DNLの感覚であれがドライバ・フィールドによる弾丸であることは分かっている。入嶋も当たらない様に回避する。攻撃が仮想コロシアムの壁を穿っていく。

 

『さっきと同じ攻撃で、どうにかなるとでも!』

 

 しびれを切らして入嶋が突っこむ。大方エラクスの起動限界が近いのだろう。エラクスが切れればたちまち不利になるのは見えている。入嶋もそれは分かって突っこんだのだろう。判断としては正解だ。

 突っ込んでくる入嶋に相模は一発狙い澄ますようにして放った。本命の一発、だが入嶋は寸前でまたもや躱す。近接距離に入った。

 

『もらった!』

 

『……っ!』

 

 振り下ろされる一撃、一号機はコンバートライフルのまま刃の部分でビームサーベルの一撃を止める。

 鍔ぜりあう両機。がこれは入嶋の二号機の方が有利だ。押さえつけた状態からエラクスの出力を生かして機体を蹴って後方へと下がる。体勢を整える前に背部のガトリングランチャーを向ける。

 

『これで、終わり――――』

 

 終わり、それは間違いなくそうだっただろう。……もっともそれは後方から飛んでくるビーム弾が直撃しなかったら、だったが。

 後方からの攻撃をもろにバックパックに受ける入嶋。回線でその驚きようがすぐにわかった。

 

『え、えぇ!?なんで後ろから!?ファンネル!?』

 

 動揺は入嶋に留まらず、見ていたこちらもほとんど何が起こったのか分からずざわつく。

 

「なんだぁ、今の!?」

 

「ビーム弾……しかしあれは……」

 

「さっき避けたはずのドライバでコーティングされたの弾のはず……」

 

 Gチーム勢は分かっていないようだ。だが光巴は分かっていた。

 

「……なーるほどね。最後の一発だけ、そう言う仕様か」

 

「光巴、何か分かったのかい?」

 

「父さん開発者でしょうが……簡単に言うと最後の一発、あれはまだ攻撃が続いていたの。簡単言うと、あれだけ一定の周期で戻ってくる弾だったの」

 

 光巴の言う通りだ。ドライバ・フィールドの調整でブーメランのように戻ってくる弾を発射し、それを当てただけ。それだけだ。

 ドライバ・フィールドの調整による弾種の変化はこれまで黄色のガンダムの運用成果にも上がっている。先程まで一号機が使っていたコーティング弾はその初歩の初歩。威力強化を行ったものだ。

 もっとも今回に限ってはエラクスの稼働限界が近かったことが影響した。早く終わらせたいという心理に、今回の弾は不意を見事に突いていた。とはいえ、今回はそれに更なる付与を行っていたようだ。

 

『くぅ……け、けど、まだエラクスは残って……!?』

 

 まだエラクスの終了時間はギリギリ残っていると、確認してすぐさま距離を取ろうとした二号機。ところがその羽は着弾したドライバ・フィールドの残骸が網のように形取って半壊したバックパックから肩に掛けてを覆っていた。

 ドライバ・フィールドの弾が直撃した後、更なる変容をあらかじめイメージで浸透させていたのが起動したのだろう。これではエラクスのスピードを最大限生かすことは出来ない。

 それでも残ったスラスターで距離を取る入嶋の二号機。だがそれは先程と違い複雑な高速機動は出来ない。

 時間を与えられた一号機はトドメに入る。肩のマルチキャノンウイングをキャノンモードへと切り替えて狙いを定める。

 

『……』

 

「ここまで、かな」

 

 言って元は通信装置の端末のボタンを押す。同時にモニター内でフィニッシュ音が鳴った。マイクに向かって元は話す。

 

「そこまで!これにてガンダムDNによる模擬戦闘を終了とする。三人とも、よくやった」

 

 模擬戦はここで終了とした。決着はつかせない。そう、今はまだ、だ。

 

 

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EP14は以上です。

レイ「朝早くの投稿、だけど書いてるの夜なんだよねこれ」

ジャンヌ「不思議な感覚ですね。でも話すことは変わらないです。結果は宗司さん達の勝ちですね」

ドライバ・フィールドの使える幅は結構広いということの解説回になってますね。まぁ第1回みたいなものですから、これからもまたあると思っていてください。

レイ「それでも千恵里ちゃんも凄いよね。あのエラクスを使えるようになっているっていうのは」

まぁあの機体のエラクスは使うだけなら誰でも使えるよ。使いこなせるかって問題だ。

ジャンヌ「また元さんのように使いこなすための段階がある感じでしょうね」

レイ「まーでも元君は割とエラクスは使いこなすの早かったけどね。しかもエラクスの情報が全くない時に、独力っぽく?」

そうだね。とはいえエラクスに必要なのは主に高出力状態の機体の制御技術だから、それに近い訓練はあちらでやっていた、のかもしれない。けれど二回目の使用の時もぶっつけ本番なところあったから、センスがあったんでしょう。
と、話すことはここで区切って、次話に続きます。


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EPISODE15 翔けるザ・ファースト・ミッション4

EP14から引き続きEP15の更新です。

ネイ「決着が決まった、というより元さんの判断で中断したって感じですよね」

まぁそうなるね。これ以上は意味がない、今後に備えてとのことでした。

グリーフィア「けど前の話でもそうだったけど、案外元君も千恵里ちゃんのこと考えているのねー」

だからと言って、それがベストとは限らない、かもしれないんですけどね。今回は本編中でようやくあの名前が登場、そして宗司の学園での一コマです。それではどうぞ。


 

 仮想空間におけるガンダムDN同士の模擬戦が終了した直後、シミュレーターポッドから出た入嶋が起きた現象に驚愕を叫ぶ。

 

「何だったの今の!?後ろから攻撃は来るし、ビームが網みたいになるし!?」

 

 今までに喰らったことのない攻撃は入嶋に相当ショックだったようだ。彼女の不意を突けたことをエターナと顔を見合わせる。

 

「何とか上手くいけたな」

 

「あっちが大きく回避してたら私達が喰らってたけどね。後ろに下がる判断してくれて良かったわ」

 

 上手く行ったことにため息のようにホッと息を吐く。彼女の言う通りもし避けられていたら終わりだが、そんな後ろに目のついている敵がいるとは思えない。話に聞くDNLくらいの物ではないだろうか。

 とはいえドライバ・フィールドに頼るほかなかったが、思った以上にやれたと思う。最初はイメージを現実化させる力場と聞いて難しいと思った。もちろんこれも簡単ではなかったが、使いこなしたい気は起きてきた。

 予想外の戦果への称賛は来訪者からも上がった。

 

「そうだな。あれは入嶋の心理を突いたいいカウンターだった」

 

「元隊長」

 

「隊長!?あ、あうぅ……ごめんなさいぃ……不覚を取りました」

 

 後輩に負けたことを不覚と体を震わせて頭を下げる入嶋。後からクルーシアや光巴、Gチームの呉川隊長やディランドル先輩に黎人司令も入ってくる。

その一番前で隊長は首を縦に振り、そのうえでそれぞれの称賛点と課題点を提示する。

 

「そうだな。蹴り飛ばしたまではいいがエラクス状態で止まったのはそもそも間違いだ。エラクスによる高出力戦闘では特化される性能を生かして戦わないければならない。今回の場合二号機は射撃とスピード特化だったから、そもそも格闘を仕掛けたのが間違いだ」

 

「ううっ!」

 

「しかし、突発的な行動で敵の読みを狂わせることは大事だ。その点では相模とエターナの機転は素晴らしい」

 

 そう言われて悪い気はしない。あまり表情には豊かではないが、感謝の言葉を返す。

 

「恐縮です」

 

「フン、やってやったわよ!」

 

「……が、途中でも言われていた通り、お互いの呼吸を合わせることは大事だ。エターナだけじゃない、相模、お前もだ」

 

 呼吸を合わせるという単語に内心びくりとする。どうにも出力が安定しないと思っていたが、やはりエターナと呼吸が合っていなかったようだ。だがどう合わせようものか分からなかった。そこはちゃんと後でどう合わせるのか訊かなければ。

 エターナも気付いていたようで、もっとも彼女は責任が宗司にあると押し付ける。

 

「……フン、こいつが合わせづらい出力の出し方するからよ」

 

「エターナ、だったら後で相模さんと合わせる努力をしましょう?合わせ方は教えているんだから」

 

「うっ……でも……」

 

「……俺も、努力はします。全然今までの訓練用シミュレーターMSと違うのは慣れませんが」

 

 と、俺はフォローを入れる。それぞれの反省点を出したところで隊長が一つ提案を入れた。

 

「模擬戦は終了、相模達は体を休める、あるいは残っている課題を済ませろ。今週末にはお前達に実戦に出てもらう。概要は後程。それともう一つ。これは完全に俺の独断になるんだが、いいか黎人」

 

「僕に聞く?内容は……」

 

「一号機、二号機なんて呼び方言いづらいだろう。バックパックもエディットバックパックシステムでありながらまだ名前が付いていないと聞く。お前達の戦い方からそれぞれの名前を考え付いた」

 

「コードネームですか。確かにいずれは考えておきたかったことですね。いつまでもガンダムDNではどちらを指すのか分かりかねましたから」

 

 ガンダムDNの識別のための名前付けに面々は納得した様子を見せている。宗司としても問題はなく賛成する。

 

「いいですね」

 

「私達の機体にも、ジェミニアスみたいな名前が付くわけですね。私も構いません!」

 

 入嶋も喜んで賛成する命名についての多数決。問題は隊長を嫌うエターナの意見だが。

 

「……あんたが命名って言うのは嫌だけど、ま、今は良いわ。同じ名前だとこっちの手間もかかるわけだし」

 

 ところが珍しく、というわけでもないが嫌そうにしながらもエターナもまたそれに賛成だと返答した。返答の内容としては、エンゲージシステムにおけるオペレートに不便さを感じていたようだ。

 全員の賛同を得たのを確認して元は考え付いた名前を提示する。

 

「一号機は「アーバレスト」、二号機は「アルヴ」と今後呼称したい。バックパックもそれぞれにその名称を使う」

 

「アーバレスト……確か大弓を意味する言葉でしたっけ?でアルヴは」

 

「古い神話における「妖精」の一種だ。まぁ、神話から名付けるのはうちの理念に反していると思っていそうだが、特に既存の物語にケチ付けるつもりはさらさらないからな」

 

「アーバレスト……」

 

 何だろう。名前を聞いて妙に愛着を感じる。良い響きだ。初めて聞いたが異論はない。むしろこれが良いとさえ思える。

 その気持ちを告げる。

 

「俺は構いません」

 

「大弓ね。妖精と合ってそうで地味に対照的な名前で区別はしやすいわ」

 

「私も問題ないです!」

 

「ちなみに命名は二人の戦い方からだ。と、開発者の意見はどうだ、黎人」

 

「僕も構わない。むしろ名前に関しては困っていたところもあるからその理由づけも含めて採用させてもらおう」

 

 開発者の同意を得て自らの機体は「アーバレスト」とコードネームが振られた。スターターを入れているハロを見つめる。ハロは跳ねる。

 

『ハロ、ドウシタソウジ?』

 

「……せっかくだから、ハロにも名前とかどうですかね。ペットネームというか」

 

「ペットネームかぁ、ありなんじゃない?ペット用ロボットとしての側面も持ってるし」

 

「あまり愛着が付くのもどうかだがな。まぁ許可はしよう」

 

 唐突な意見に光巴が賛同する。隊長も好きにしろと言い出しっぺの法則で許可し、注目が集まる中、宗司はアーバレストから連想した名前を付けてみる。

 

「アーバレストを入れているハロ、短く、アロはどうだろうか」

 

「アロォ?ハロに引っ張られ過ぎでしょ」

 

「ちょっとそのネーミングセンスないかなぁ」

 

「あ、ならこれは?アルって」

 

 自身の命名に散々な意見が飛ぶ中入嶋の命名案に目を付ける。アル、確かに最初の名前に近くて、ハロに似合いそうな名前だ。

 入嶋の意見を採用して名付ける。

 

「アル、か。それで行こう。これからよろしく頼む、アーバレスト、アル」

 

「しっかり着いてきなさいよ、アル」

 

「私も、よろしくねアルヴ」

 

『ニンショウ、アル。ヨロシク、ソウジ、エターナ』

 

 なんだかんだでこうしてゴールデンウィークの強化合宿は終わりを告げたのだった。

 

 

 

 

 ゴールデンウィークも終わり、東響の街はまた忙しい日々を生み出す。私立東響湾ピースランド学園でも平凡な学園生活が展開されていた。

 相模宗司もエターナ・ファーフニルもそれぞれの新しい学園生活を忙しくも過ごす。彼らの編入は学園でもちょっとした噂となっていた。特にエターナが異世界の住人と聞いて人目会おうとクラスを訪れる。これには学園の教師や千恵里やクルス、特に同じクラスの光巴がそれを規制、もとい調整してパニックは避けている状態だった。

 それ以外は至って平穏な学園生活。それもそのはず、この学園はHOWの管轄下。何かあればHOWがすぐさま駆けつけて防衛体制を取る。本部付きの魔王の存在に加え、教師もHOW所属のメンバーが多数任についており、おまけに学園生の数名もHOWや他のMS運用集団(HOWや政府から認可を受けた者)の在籍者がいる。この学園は今の日本でもっとも安全な学園と言える。

 これもHOWというMSの平和的な活用を目指す組織が作った学校が故、学園生の安全だけはなによりも重視した結果である。もっとも学園生でその想い全てを知る者は少なく、知らぬままに学んでいるのだが。

 この日も学園は無事終業。各自が部活動か委員会活動、学習塾への移動か帰宅していく。それらの中で相模宗司も学園の友人と話しながら下校の準備を行う中だった。

 

 

 

 

 

「よーっす、宗司、今日暇か」

 

「ん、信也、それに牛原さんも」

 

「おつかれでごぜぇます!学校はなれましたでぇすか?」

 

 クラスメイトの二人に声を掛けられる宗司。声を掛けてきたのはこの学園で初めての友人、子尾 信也(ねお しんや)牛原 紗彩(うしはら さあや)の二人。二人は家のつながりによる幼馴染で、中都区近くの区の一つ、古くから日本の十二支に関係のあるとされる「十二支区」の名家出身だった。

 もっとも二人はそんな重い物に縛られずにMSという最先端の塊の使い手として学ぶべくこの学園に入ったらしい。少々絡み辛いところもあるが、編入当初から声を掛けてくれて助かっているところもある。何より本クラスでのMS教習におけるチームメイトだ。友人として二人に返答する。

 

「まぁ、ぼちぼち。それで今日は予定とかなかったはずだけど」

 

 今日の所は特に訓練もなかったはずだから、そう答えると手をポンと叩いて信也がこの後の予定を提案する。

 

「おっ、ならゲーセン行かね?俺の所の幼馴染の後輩にお前のこと紹介したいし、ちょっと実家に帰って不満溜まってるしさ」

 

「あー……なるほどな。そういえば言ってたな」

 

 信也の後輩、どうやら二人がこの学園の中等部に通っているらしい。特にその内の一人はつい最近自身と同じように編入した生徒だという。幼馴染の後輩が編入と少し気になっていたのでこれを機に聞いてみるのがいいだろう。

 

「分かった。ならエターナとかに連絡入れて」

 

「―――話は聞かせてもらったけど、生憎キャンセルしてもらうしかないわ」

 

 と予定をキャンセルする様に言ったのは隣のAクラスの入嶋。クルーシアやもう一つの別クラスの光巴にエターナまで勢ぞろいしてやってきた入嶋に用件を尋ねた。

 

「入嶋。キャンセルってどういうことだ?」

 

「忘れてない?今週金曜から私達の初任務。オースの種命島で軍事演習があるでしょ。それの確認とかを今日の午後からやるの」

 

 言われた出来事に思い当たりはある。夕べ確かに専用端末に来たメールで金曜日からのオース遠征についての知らせが来ていた。近日それについてのミーティングを行うとも書かれていた。

 とはいえそれが今日からとは聞いていなかった。いや、もしかすると端末の方に入っていたのかもしれない。いずれにせよ知らなかったことを謝罪、信也達にも断りを入れた。

 

「あぁ、日程は知らなかったな。すまない。信也達もごめん」

 

「いいって。仕事の事なら俺達が口出しできるわけでもないし」

 

「そうですそうです。しっかし金曜ってこたぁ夜中に出発ってことでぇすか?」

 

 気にするなと返答した二人。優しい、と思う。一方で牛原の疑問に対し光巴が答える。

 

「ううん、朝から行くよ」

 

「えぇ?だったら学校は……」

 

「この学園には「特別単位引き換えシステム」があるから」

 

「特別単位引き換えシステム?」

 

 首を傾げる一同。その仕組みを光巴が解説してくれた。

 

「この学園に通う生徒には私達のように外部のMS運用組織に所属している場合もあってね。なるべく学校のある時間に任務へ駆り出すなんてことはないようにしていても、緊急の用件で授業を抜ける時、代わりに任務を社会勉強って枠で授業を肩代わりできる制度なんだよね」

 

「へぇ、そんな制度が」

 

「あーあれの事っすね。あたしも一回使った奴ですねぇ」

 

 陣泰高校ではなかった制度。この学園だからこその特例か、はたまた今後の為のテストケースなのか。入嶋が言うには、その両方らしい。

 

「基になったのは元隊長が昔通っていたって言う職業学校の制度らしいわ。けど黎人司令も真面目に検討して今も試しているって感じね」

 

「でも、それが通っても良いことばっかりじゃないよね」

 

「そそ。元お兄ちゃんも言ってたけど、そもそもMSを扱えてもその技能を発揮するのは出来るだけ学校を卒業してからにさせたい。これはその道を目指す、あるいは宗司君みたいにせざるを得なかった人に対する救済措置ってわけ。学業を疎かにさせたくないっていうのが元さんのポリシーでもあるから」

 

 様々な人の想いを込めて作られた制度。そう言った物の積み重ねがこの学園にはある。案外最初からこっちを選んでも良かったかもしれない。

 それらを説明し終わると、待ちくたびれたようにエターナがこちらを急かす。

 

「あいつ個人の考えとかどーでもいいから。さっさと行くわよ」

 

「どうでもは良くないが、分かってる。それじゃ、信也、牛原」

 

「あぁ」

 

「また明日、あと顔合わせはまた機会みてっすね」

 

 友人と別れて宗司は入嶋達と共にHOWベース・ネストを目指した。ファースト・ミッションの概要を聞くためにだ。

 

 

 

 

 同時刻、CROZE部隊の隊長、黒和元とジャンヌ・ファーフニルは共にオース遠征の準備を行っていた。

 

「オース遠征、あれから3年か?」

 

 元はジャンヌに確認を取る。オースへの訪問はこれが二度目となる。前回の訪問では酷いものだった。あの時はよく旧式のシュバルトゼロガンダムで戦えたと思う。ジャンヌも返答して当時の事を思い出す。

 

「そうですね。今回の用件もまたその時と同じくらい厄介事でなければ良かったんですが」

 

 そう、これは厄介事。入嶋達にはまだ軍事演習としか伝えていないが、実際はもう一つ、今回任務が存在する。そちらこそがメインミッションとなる。

 前回もまた非常に厄介だった内容だが、今回も非常に厄介な内容。そんな任務に新人を駆り出すのは危険とも思えたが、あえて元は決断した。その方が彼らにとって成長になると。ジャンヌの言葉に頷いて、かつ切り替えろと言う。

 

「言っても仕方がない。俺達の仕事はそういう厄介事だ」

 

「ですねぇ。けど実は私今回の任務楽しみですよ。新型艦の配備もされますし」

 

「あぁ……そうだったな。艦長もいい人材が見つかってよかった」

 

 オースへの遠征に際し、今回からCROZE部隊を各地へ派遣させるための空中艦が配備されることとなった。初の空中艦にして量産艦であるフェアリーから発展したCROZE部隊などのエースチーム向けの艦の配備は、今後のHOW運用において重要となる出来事だ。

 艦長は元が兼任することも考えられたものの、前線で戦うことを考え専門職に当てることになり、ゴールデンウィークの強化訓練の合間にクルー選出も含めてHOWの職員から選んだのだ。少々癖はあるが、いい人材だと元は思っていた。

 その人物もこのミーティングで隊員達と初顔合わせとなる。その性格と外見に果たして何人が手を焼くことになるか。心配半分だが、変えるつもりもない。ジャンヌも言及する。

 

「私も彼女はあの年で逸材だと思います。けど……エターナは怒りそうだなぁ」

 

「ま、変えるつもりはないさ。これで合っていると分かってもらうまで付き合ってもらう」

 

「その前に、あの艦長が非難に耐えられない可能性考えてます……?」

 

 ジャンヌの言葉にノーコメントで資料をまとめる。あまり言いたくはないが、その可能性は十分にある。こちらからは頑張れとしか言えない。

そうこうしている内に時計はミーティング開始の十分前を示す。資料を端末に移し、ジャンヌに声を掛ける。

 

「行くぞ、ジャンヌ」

 

「はい」

 

 この作戦は失敗できない。この任務の裏には彼らが、ゼロンの意志があるのだから。

 

 

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今回もお読みいただきありがとうございます。

ネイ「アーバレスト、アルヴだけでなくハロの名称もですか……これ原作から引っ張ってきてますよね、アーバレストの」

あれです、何らかの収斂進化ですよきっと。

グリーフィア「何でもかんでもそんな言葉に頼るのはダメよ~」

それは置いておくべきこととして、今回は宗司君達のクラスメイトも紹介ですね。人物モデルには私の好きな作品から持ってきてますね。

ネイ「ちなみに作者のその作品での推しは?」

戌の後輩ちゃん

グリーフィア「んーこの白髪銀髪ブロンド髪好きめ」

性癖は語るに限る。けど今回この牛ちゃんの喋りやっぱ難しいです。標準語すら疎かな私に期待はするな。
とはいえ出しているから当然出番はそれなりにあるわけでして……随分後になっての大活躍を括目するつもりで待っててください。

ネイ「次回から初任務についてのお話ですか……」

グリーフィア「今章からは歴代ガンダム作品のオマージュというかリ・イマジネーションやるみたいだからね~。まぁ章ごとにリ・イマジネーションってどうやるのか疑問なんだけども」

ディ○イド並みに短くなるかと。それではまた次回、早いうちに更新したい。


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EPISODE16 翔けるザ・ファースト・ミッション5

EP16、17の更新です。まずはEP16から。

レイ「新しい任務の通達って感じだったよね。宗司君にとっては初任務ってわけだ!」

ジャンヌ「果たして、初めての任務はどこになるんでしょうか」

それではどうぞ。


 

 

 宗司達が到着した頃には既にミーティングルームにはCROZE部隊の全メンバーが揃っていた。だがそれだけではない。普段基地の方でCROZE部隊へのオペレーターをしていたり、部隊の機体整備をやっているという人もやってきていた。

 CROZE部隊のミーティングならこれは当たり前なのかと思った宗司。だが入嶋の反応もまたこの人数に少々驚いていた。

 

「あれ、割と多い……?」

 

「千恵里ちゃん、今回は遠征だからCROZE部隊に関わる人のほとんどは空中艦のクルーになるんだよ」

 

「あ、そっか」

 

「まぁ、これからはそれが基本形態になるんだけどねー。MS母艦があるだけで作戦展開とか楽になるから」

 

 どうやらこの人数の多さは空中艦とやらの配備故の多さだかららしい。現場に出る人数が多くなるから、これまで本部で活動していた人もこうしてブリーフィングに参加する。道理としては当然の事だった。

 故にこの人から声が掛かるのは当然だった。

 

「よう、今回はお邪魔させてもらってるぜ」

 

「やーやー、入嶋ちゃん達~」

 

「星北整備主任」

 

「あ……来馬整備主任……ど、どうも」

 

 星北平次と来馬真希。それぞれガンダムDNとシュバルトゼロガンダム・ジェミニアスの整備を中心に、CROZE部隊のMSを管理する二人とは面識があった。

 ガンダムDNを宗司用に修正してくれた星北さんは元隊長の友人であり、無論頭が上がらない。一方の来馬主任の方は……。

 

「どうした、どうした~乙女達よ~!もっと、もっと私にその髪見せてっ!」

 

「あ、あはは……」

 

「なんでこの髪フェチまでいるのよ……」

 

「当然だよー、だってこの人元さんのガンダムの機付長だしー」

 

 女子連中は微妙な態度を示す。来馬主任はどうも女性の髪に興奮を感じる人らしく、これまでにも多くの新人女性隊員がその被害に遭っていた。スキンシップの範囲ということで許されてはいるものの、エターナや入嶋、クルーシアは迷惑がっているのだ。光巴も声が棒読みになっていることから、初期メンバーと呼ばれる人たちは彼女の更生は諦めているとか。

 とはいえ後輩達の迷惑は見たくないようで、星北さんが止める。

 

「来馬さん落ち着いた方がいいですよ。これから元とジャンヌさん来るんだし」

 

「ジャンヌちゃん!やっぱジャンヌちゃんの髪もいいよねー。前の一番長い時もいいけど、今の長さも新鮮だし。色も妹のエターナちゃんと合わせて眼福っ!」

 

「聞いてねぇな、この人」

 

「もうやめてよ……」

 

 涙目になって引くエターナと苦笑いする女子一同。合間を見て宗司は星北に空中艦の事について尋ねる。

 

「空中艦の開発って確か5年前には出来てるって世間では言われている話でしたよね。これまでにもCROZEでは運用していなかったってことなんですか」

 

「ん?いや、どちらかと言えば今回は専用の母艦が初めて配備されるっていう話だな」

 

「専用の母艦」

 

 聞き返すと星北は整備員としてその違いを教えてくれた。

 

「量産艦だと特別な機体の整備に時間がかかってね。特に君のアーバレストや一番わかりやすいのは元のシュバルトゼロガンダム・ジェミニアス。特殊なシステムを外部への漏えい無しでやるなら、ちゃんと設備を整えておかないとね」

 

「あぁ……専用の奴を調整するのに機密性の高いやつがいると」

 

「そういうことだ。それ以外にもうちのエースは特に場所を取る構成でね。今回の艦じゃないと武装の整備も全部出来やしない。っと、言ってたら丁度か」

 

 星北の指す方向の扉から、指揮官である元が入ってくる。ジャンヌ副隊長、それにもう一人、青と紫の髪色をした女性が続いて入る。

 最後の一人は全く知らない人だ。むしろいたら気づきそうな人だから新人だろうか。元達が到着すると全員が合図で立つ。

 

「全員起立!」

 

「……集まっているな。ではこれより今週金曜日に行われるオース遠征について第一回ミーティングを行う」

 

 席へと着くと説明が始まる。まず向かおうとしている場所、オースとは日本の外縁に位置する島々を管理する「疑似国家」と呼ばれる組織を指す。観光施設である島々で、本土から年間2万人が訪れるほど、アメリアのワイハのような場所である。

 25年前に火山活動で出来たとされる島は四つから成り、その中核となる「種命島」にオースの運営疑似政権が置かれ、島を整備し疑似国家、特に観光面を充実させた観光国家として平穏を保っている。

 相模家でも一度旅行に行こうとなったことがあった。けれども何やらいざこざがあったらしく飛行機が全便欠航となってしまった。その時に何やらテロリストによる島の占拠があったらしいのだが……。今は復興して観光客も元通り。この機会に街を散策するのも悪くないかもしれない。

島の紹介が隊長からされて、続いて目的の確認となる。しかし、予想外の言葉がいきなり飛んでくる。

 

「まず今回の目的だが、表向きはオース軍との軍事演習。お互いの新人達の模擬演習だ。だがそれはカムフラージュ」

 

 確かに宗司はこのミッションが軍事演習であることを聞いていた。けれどもそれが表向き、カムフラージュだなんて初めて知った。

 動揺は話を持ってきた入嶋達にも及ぶ。

 

「えっ、軍事演習じゃないの?」

 

「やるみたいだけど、それとは別に問題があるってこと?」

 

「……何よ、はっきり話しなさいっての」

 

 エターナの言う事実の明らかにするようにとの進言に同意見だ。それを隊長達も当然であるとして話す。

 

「まぁ知らない者がほとんどだな。簡潔に言えば、もうすぐ行われるオース誕生25周年の式典を護衛する。それも対象はゼロンだ」

 

 ゼロンの単語を聞いてどよめきが引いていく。隊長は言葉を続ける。

 

「この式典で、オース野党に位置する派閥、美愛派がゼロンのとある人物と密会関係にあると情報が入った。そしてこの美愛派はオースをゼロン勢力に合流させようとする集団であることがオース政府からの情報で分かっている」

 

 難しい言葉ばかりだったが、言ってしまえばあのゼロンが島を占拠しようとしているかもしれないということ。そこで以前の出来事が思い浮かぶ。

 あの時の事件がもし、ゼロンによるものだとしたら?

 元も前回訪問時の状況を語った。

 

「前回の遠征に同行し、生き残った者達なら分かるだろう。あの時戦った、オース国内テロリスト「虚ろの零」。彼らはオース内で結託したゼロンの末端だった。その生き残りが、また今回もオースに悪しき種を蒔きに来た。これを何としても阻止、もとい確保することが本遠征の最重要任務となる」

 

「あの時の続きか……」

 

 呉川隊長の表情が言葉と共に厳しくなる。他の隊長格の者達も周囲への表情を硬くしていた。

 これはいきなりハードなミッションになりそうだった。そしてようやく、元隊長は新入りと思われる女性を紹介する。

 

「それと、知ってはいると思うがこの度俺達のチームに専用艦が配備される。こちらはその艦長を務める」

 

「紫音・プラネリアスです」

 

 耳を疑った。新入りと思われた女性はこれから自分たちの上官と思われる立場の女性だったのである。

 思わぬ事実に同じ予想をしていたと思われる入嶋も目を見開く。

 

「嘘……あの人艦長!?」

 

「声に出てるよ千恵里ちゃん……」

 

 驚かない者も少なくない中で、紫音と名乗った女性は自己紹介を軽くする。

 

「私も入って二年目だから、至らないところは申し訳ないけどカバーしてもらえると助かるわ。基本的には黒和さんの指揮のまま、追いつかないところを私がフォローする形ね」

 

「無論、艦の指揮自体は彼女に任せる。一々艦内の状況まで判断して指揮するのは非効率だからな。彼女自身の腕は選んだ俺が保証する。既に別の戦場で彼女はいくつかの戦果を挙げている。どんなことがあっても、命令違反でない限りは彼女を信じろ」

 

「……そう言われても、ちょっと責任過多で困りますけど、全力は尽くすわ」

 

 新しい上官、上司を得たCROZE部隊。元は今後の予定について全員に指示する。

 

「金曜日までにミーティングをいくつか挟み、出発とする」

 

「それまでに、各員は出発の準備を行ってください。隊員にはそれぞれ小さいですが自室が与えられます。持ち込んでおきたいものなど今週中に揃えてください」

 

「わぁ!自室だぁ!」

 

「へぇ、部屋までもらえるなんて待遇良いじゃない」

 

 思わぬ点に沸き立つ者もいる。宗司も一人でいられる時間があるのは少なくない利点と感じていた。

 金曜日からの遠征は不安と共に期待を寄せて、CROZE部隊の各隊員に活気を与えたのであった。

 

 

 

 

 西日本は現在ゼロンの支配下にある。その中心的存在となるのが台坂府(だいさかふ)の湾に浮かぶ人工基地島ゼロン・フロンティアだ。

 ゼロン・フロンティアの中、会議場で今ゼロンの幹部らが話し合う。

 

「まもなくか、オースの美愛派による革命は」

 

「はい。今週の日曜日に、オースの力は我らに合流します」

 

 内容は今週末のオースで起こす作戦。種命島制圧はゼロンにとって非常に意味のある出来事だ。ここを抑えて、いずれ日本全てをゼロンの意志に従属させるための檻として機能させる。

 それを任せられるのは美愛派とこれまでに何度も連携を取ってきた男性。男性は穏やかな面持ちで余裕を語る。

 

「オース政府はどうも、先月に反旗を再び翻したCROZE部隊を呼びよせるようですが、問題ありません」

 

「ほう。あの性能を持つ機体に、勝てると」

 

「負ける気はありません。美愛派の兵士は強い。加えて既に蒼穹島からこちらに増援を送ってもらう手筈です。そうだろう」

 

 言って確かめたのは蒼穹島の代表者。彼はオース掌握を指揮する男性からの協力に首を縦に振る。

 

「あぁ。その要請を受け、こちらもイグジストとディナイアルの運用を承認した」

 

「おお、あの機体を出すのか」

 

 わずかにどよめく。

会議に集まっていた者達は知っていた。その機体、イグジストとディナイアルと称される機体が凄まじい力を持つことを。

 

「それを出すのなら、もはや勝利は確定だろうな」

 

「正直、あれはいけすかん。だが勝てるのなら文句は言うまい」

 

 多くがその機体の投入に賛成をする。それだけ期待値の高い機体が投入されることを意味した。

 勝ちは確実。しかし油断するなと男に声が掛かる。

 

「そんな簡単なことなら、今までに落とせていると思うんですが」

 

「……君は、確か……代表の」

 

 蔑むような言動をしたのは少年。この場を取り仕切る代表の傍に仕える形で参加していた。

 その彼に乏しめられたオース制圧の指揮をする男性が平静を保って返す。

 

「確かに、君の言うことも一理ある。かつての次元覇院でも、勝てると思って足元をすくわれた。あのガンダムに」

 

「そうだ。その思い上がりで、どれだけ世界の正常化が遅れたのか。知らないわけではないでしょう?」

 

 若いながらも、事実を突きつける少年。隣に座る代表の関係者ともあってか、気迫は凄まじい。

 周囲の人間は小声で話す。厄介な、あるいは若造がと悪口をぼやく中、男性は彼の考えに頷く。

 

「君の考えは正しい。我々が正しい、だから何物にも負けないという意気込みがあったからこそ、私達を含めた各地の教信者達は彼ら悪魔に煮え湯を飲まされた」

 

「あんた達はそうだろ。それで」

 

「だが、私は知っている。彼らに勝るものはただ一つ。遺伝子。人を形作る運命は何者にも劣りはしない。私の見出した者達、優秀な遺伝子を持つ彼等なら、機体性能だけのガンダムなどおそるるに足らない。遺伝子は絶対だ。蒼穹島と種命島はそれを目指した島なのだからね」

 

 男は知っていた。遺伝子、それがこの世界のすべてを決めると。彼自身が極めた道こそ、ゼロンを大きく勝利へと躍進させる一手。

 蒼穹島、そして種命島のオースは彼の発言を強く後押しする勢力だ。

 二つが揃えば、如何にガンダムが強大だろうが有象無象。そう断言できる遺伝子という名の力を二つの島は持っている。だからこそ、彼は種命島、オースを獲得するための作戦を描いた。

 

「……それも、驕りだろうが」

 

「私は目的を果たす。君のように、ガンダムを殺すことだけに執着しない。組織を生かす選択をするさ。その選択は、やがてあらゆる人が従属するだろう」

 

「どっちが組織を生かす選択だ……」

 

「そこまでにしておけ、二人とも」

 

 制したのはこの会議の代表。我が子のように二人を宥める壮齢の男性は長としての決定を下す。

 

「オース攻略は君に任す。もっとも、先程の発言はしっかりと果たすこと。それがこやつや、他の者達からの信頼にも繋がろう」

 

「分かりました。信用は得ておかなければなりませんからね」

 

「うむ。これで今回は終わりとする。各々、それぞれの担当区域の不信活動には目を見張るように」

 

『ゼロンに誓って』

 

 

 会議は終了した。が、立ち上がろうとした代表を補助する形で少年は直談判する。

 

「代表。なぜ僕をオース襲撃に加えてくださらないのです。黒のガンダムが再び力を現した今、対抗できるのは僕の……」

 

 少年の熱い進言を、代表は冷静に説き伏せる。

 

「よいか。黒のガンダムは新たな力を得ている。その新たな力を見極めるまでは、私達は決して戦力を無駄にしてはいけない。今は、なるべく外の勢力か、末端の者を使うのだ」

 

「ですが……ただそれをただ、手をこまねいてなど」

 

 納得できないと言う少年に再び代表の男性は言い聞かせた。

 

「今は我慢の時。君の怒りは分かる。復讐は必ず果たされなければならない。だからこそ、最後の切り札は温存せねばならないのだ。君も、分かってくれ。君と君の機体こそが世界を変える。本当の姿に」

 

 誇張でも拡大解釈とも取れる言葉。しかし少年はそれをよく理解していた。

 その言葉でようやく少年は首を縦に振る。

 

「……分かりました。今回はあの男の手腕を見ます」

 

「そうしてくれるとありがたい。よく見るのだ。魔王の今の戦いぶりを。そして上回るのだ。奴の力を」

 

「はい!」

 

 親子を超えた二人の言葉。

 復讐が果たされる日は近い。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP16はここまでです。

レイ「オース……種命島……」

ジャンヌ「この章の名前は運命の種の行方……単純ですね」

単純って良いことだよ(適当)ある程度関係性は示していかないとですから。

レイ「うんまぁね。でもそれってことは、この章でのキーパーソンは彼かな」

ジャンヌ「島から、というより島国から出なかった彼、ということに、なるんでしょうか?」

なるかもね。そしてゼロンもまた次の動きを見せていますよと。

レイ「何か気になる面々はいくらか出てるけど、果たして全員名前が出るのはいつになるのやら。あと星北君と来馬ちゃん久々登場だね。味方陣営の新キャラもだし」

ジャンヌ「元さんも凄い敵を作っていて心配になります。けどそれ以上に来馬さんの暴走が重症な件について」

それは知らん。そこらへん黒の館DNで書いていきたいところ。ではEP17に続きます。


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EPISODE17 翔けるザ・ファースト・ミッション6

EP17となります。

ネイ「艦長さんキャラにしては……今回かなり若かったですよね」

グリーフィア「今まで艦長キャラってこの作品おじいちゃんとか年喰った人が多かったわよね~」

まぁ若い人が艦長の方がいいだろうし、何よりMSの歴史が大分出来上がってきているので余裕が出来たってのもあるかもです。若い人が戦場に出ているけど。

グリーフィア「うーん矛盾」

ネイ「まぁ経験を積んだと解釈した方がいいかもですね」

そういうこと。それではどうぞ。


 

 

 いくつかのミーティングを挟んで迎えた金曜日。宗司達はいよいよ出発の朝を迎えた。

 やってきたのはHOWの滑走路。いくつかの同型艦が並ぶ中で一際外観の違う船があった。

 

「これが、ヴァルプルギス」

 

 白い艦体に四本の突き出された可変翼。前方は三つのブロックが機首と格納庫を作り出し、後方は大型円錐型バーニアと尾翼が見える。

 船、というには海に浮かぶものより異様な姿だが、既存の知っている空中艦とさほどかけ離れた姿というわけではない。現代の宗司達には見慣れた姿と言える。

 

「まずは中に入って手荷物を入れろ。あらかじめ搬入してある者も、荷物は確認だ」

 

「分かりました」

 

「さってと、俺の秘蔵コレクションは入ってるかなぁ~」

 

「……変なの詰め込んで問題になる気しないのかしら……」

 

 Gチームの面々も取り付けられたタラップを使って船へと乗艦していく。

 

 

 船の個人ルームは艦中央ブロックから後方に掛けて配置されていた。部屋にはベッドと机、クローゼットまでが備え付けられている。

 部屋の開閉にはカードキーが使われており、ドア近くに差し込んでおくことで電気の管理も行っていた。

 広さは最低限のもの。だがストレッチくらいはでき、また何人か呼んでトランプやらは出来る広さだろうか。

 

「ここが俺の部屋」

 

 カバンを机の横に置き、ベッドに腰かける。すると近くの壁が自動でスライドする。展開するとそれは小型のパソコンとなり、自身の角度に合わせて可動した。

 

「すごいな……しかもこれ、Wi-Fi機能付きか」

 

 個人一人にここまで設備が充実しているのには驚いた。量産艦まで共通なのか、はたまたこの艦の設備が凄まじいのか。

 ゆっくりしていたくなるが、一通り部屋は見たので集合場所へと向かうことにする。クローゼットを開けると、HOWの隊員制服が入っていた。

 向かう前に袖を通しておけと言われていた。着替えるとサイズは合っている。鏡の前で確認する。

 

「行くか」

 

 カードキーを取って部屋を出る。と、丁度移動しようとしていた呉川隊長達が見える。

 駆け足でそれに追いつき、声を掛ける。

 

「隊長」

 

「相模、どうだった」

 

「結構いいですね。パソコンまであって凄い。服も丁度いいです」

 

「だろだろ?パソコンのおかげで俺の秘蔵コレクションも無駄にならずに済んだぜ~!」

 

「本艦の設備は他の量産艦よりも優れている。が、概ねの機能はほぼ同じだ。使い勝手は覚えておけ。これからブリッジに上がってもらう」

 

 呉川隊長の後を付いて艦内を進む。いくらか前方付近まで行って着いた部屋に入ると、そこは艦の先端。艦を動かすブリッジの光景が目に入る。

 遅れて入嶋達も後に続く形で入ってくる。Gチームパイロットが揃うと、艦長席に座っていた紫音・プラネリアスがややけだるげな眼をこちらに向ける。

 

「ん、あら、Gチームの人達ね。あなたが……」

 

「Gチームを預かる呉川だ。隊長、Gチーム一同を連れて参りました」

 

 呉川隊長が一礼する。艦長と共に黒和元隊長とジャンヌ・ファーフニル副隊長もいた。元隊長は呉川隊長とこちらに声を掛ける。

 

「来たか。Gチーム一同にはわざわざ来てもらってすまないな」

 

「わざわざ呼んだってことは、何か言いたいことでもあるんじゃないの?」

 

 エターナが面倒くさそうに早く用件を言えと急かす。元隊長は彼女の意見を汲んでか早速用件を言う。

 

「言いたい、というか伝えておくことがな。お前達のコールを行う管制官についてだ。よく知っている人物だからな」

 

「はいはーい、私が主にみんなの管制務める次元光巴でーすっ」

 

 響いた声は宗司達もよく知る彼女、光巴の物だった。耳にヘッドマイクを付けて手を振る。

 

「あぁ、いつもベースからやっていたけど、今後はここから指示出すんだ」

 

「指示っていうか状況伝達だね。仮にもみんなの機体の調整役もやるから、私の制止はちゃーんと聞くように!」

 

 胸を張ってそれを示す光巴。だが元隊長はやや納得いかない顔で本音を語る。

 

「まぁ実際のところは光巴の見張りでもあるんだがな」

 

「見張り?」

 

「酷いんだよ~、お父さんと元お兄ちゃん、それに基地の大人の人みーんな私にMS触らせてくれないもん。危険だからって。失礼しちゃう!」

 

 MSを触らせないという言葉に引っ掛かりを覚える。

 確か強化訓練期間の時に中学時代には試験を突破しているような事を聞いた覚えがある。だがまだMSに触っていないというのはどういうことなのか。

 するとジャンヌ副隊長が事情を教えてくれた。

 

「光巴さんは確かに中学時代で既にMS所持法の模擬問題と、本試験を突破して初めて中学生で所持法を獲得した人物です。ですが所持法の基本条件からその年齢でのMS搭乗を許可されていませんでした。そして高校生になった彼女ですが、彼女はHOW総司令次元黎人の一人娘。後継者として以前からも狙われていた彼女をMSで出すことは非常に危険との観点から現在MS搭乗は許可されていないんです」

 

「確かに、光巴ちゃん黎人総司令の娘さんだよね」

 

 クルーシアが納得する。よくよく考えてみれば、彼女は所謂ご令嬢。HOWの要人とも呼べる彼女がMSで出たら敵は間違いなくそちらを狙い撃ちしてくる。

 普通なら前線に出さない選択を、隊長達は苦肉の策として艦に乗船させているわけだ。如何に戦場に出たいと言われても、出すわけにはいかない。その苦肉の策がオペレーターなのだろう。

 光巴も十分分かった上でしかしと切り返す。

 

「そうだよ。けどさ、私ももう自分で護れる年齢になったんだもん。いつまでもMSを操縦できるままじゃ成長しないよ!」

 

「操縦できるだけじゃダメだ。お前はMSを管理する組織の代表の子ども。命を狙われている自覚を、もっと知ってからでないと許可は出せない」

 

「むー……!またそれだよっ」

 

 元の説教に何回目かと言うように顔を背ける光巴。ため息を吐いて元隊長は状況を改めて説明する。

 

「と言った具合に、本人が諦めきれないから総司令からしばらく面倒見てやってくれと言うことでこの部隊に配属されているわけだ。今までのGチームメンバーは知っているとは思うが」

 

「まぁ、ご苦労お察しします」

 

 呉川隊長が労いの言葉を掛ける。宗司も大体の事情は分かったと返答した。

 

「光巴って結構シビアな立ち位置にいるんですね」

 

「敵対勢力にとってはアキレウス腱。なんてあんた中々かわいそうね」

 

「それは分かっちゃいるけどさ……ってか、アキレウス健?」

 

 エターナからも憐れまれる。光巴もまだ何もかもを受け入れた様子でなくともその事実だけは受け止めていた。

 そんな様子を見て艦長のプラネリアスは言った。

 

「確かに彼女を前線に出すことは、艦長である私としてもかなりの負担ね。それを念頭に入れて艦も動かさなきゃいけないわけだから。だけどそれでもこのクルーという場所に配備した理由ってあるんでしょう隊長?」

 

「あぁ。彼女のDNL能力、俺達と違う意味で未知数だ。出来れば前線でその経過を見届けたい。いつまでも籠の鳥というわけにいかないから時々MSシミュレーターで模擬戦も行わせたいがな」

 

 DNL能力。エターナが目覚めているという異能の力。人類の進化とも呼ばれている力を持つ光巴の成長を見届けることに、何か意味があるのだろう。

 と話している内に発進準備が整ったようだ。クルーから艦長に対し報告が行われる。

 

「艦長、発進準備整いました」

 

「分かったわ。基地管制に連絡を。これより、ヴァルプルギス発進する」

 

 ブリッジが慌ただしくなっていく。宗司達はブリッジを後にしようとしたが、元隊長がそれを止める。

 

「いや、せっかくの機会だ。ヴァルプルギスの処女航海、最初の時くらいここで見ておけ」

 

「こんな機会滅多にねぇからな。新人達にはいい経験だなっ」

 

「クルツ先輩とかはそういう経験はもうしてそうですよね」

 

「あぁ。だが専用艦のブリッジから眺める機会は初めてだ」

 

 呉川隊長も心待ちにする中、遂に艦はその時を迎えた。

 響く轟音、徐々に景色が下がっていく。エンジンの唸り声がここまで感じる。

 艦長の声が響く。

 

「ヴァルプルギス、オース種命島へ向け、発進!」

 

「了解」

 

 ヴァルプルギスが空へと飛び立つ。雄大な巨大がオースへと進路を取って、空を進んでいく。

 

 

 

 

 ヴァルプルギスの発進後元はGチームを連れて格納庫を訪れた。

 

「お前達の使うのは右舷カタパルト、左舷との往来は俺のシュバルトゼロガンダム・ジェミニアスを格納する中央ブロックを挟んだ通路か、艦内通路を使え」

 

 構造の説明をしながら使う場所の確認を行う。他のチームはそれぞれに任せているが、Gチームは新人が多い。隊そのものを預かる隊長として、面倒は見る必要があった。

 格納庫は機体の出力ハンガーが縦に二段重ね、それらが横に並んでいる構成だ。上下への移動は基本備え付けのエレベーターで移動する形である。

 相模がその光景に率直な感想を述べる。

 

「結構狭いんですね」

 

「あぁ。最大搭載数まで今回入れているが、あまり全戦力投入もないから、今回みたいなことは滅多にない。とはいえ往来の邪魔になる可能性があるから、ここではあまり大人数で来ることが無いようにしてくれ。今回は特別だ」

 

 狭いというのは仕方がない。片側15機ずつはどうやっても場所を取ってしまう。なるべく中央のスペースは整備班のブリーフィングなどに使いたいということで側面への二段配置になっている。なるべく星北達の願いはかなえてやりたい。

 それを踏まえるとやはりこの形しかなかった。出力ハンガーまで端末で出現可能かどうかまでは気になったが、問題なく出来た。これで簡単にハンガーの増減が出来る。

 そして場所を移動して中央格納庫、元のシュバルトゼロガンダム・ジェミニアスが使用するブロックに移動した。

 

「そしてここが中央格納庫。シュバルトゼロガンダム・ジェミニアスの管理を行うブロックだ。もっとも機体が増えればここも他のMS格納ブロックとして使うがな」

 

「結構広い……って、なんかもう既にすごい数の格納ケージがあるんですけど!?」

 

 一目見て入嶋が驚く。シュバルトゼロガンダム・ジェミニアスの周囲には大量の武装が格納されたケージユニットが散見される。

 無論これらはジェミニアスに必要な武装群。それをGチームに明かす。

 

「これ全部を今回のジェミニアスは使う」

 

「えっ換装してですか?」

 

「普通そうでしょ。こんなのいつも付けっぱなしにしてたら、姉様死んじゃうし」

 

 クルスの言葉にエターナがツッコミを入れる。エターナの指摘通り流石にこれらを同時に装備は戦えない。

 だがクルスの表現も間違っているわけではない。付けているのに付けていない。それが本機の特徴。ジャンヌが端的に話す。

 

「確かに換装するのは間違っていません。ですが、その度にこちらに戻る必要はないですよ」

 

「船に戻る必要がない換装……」

 

「呉川隊長みたく、武装を射出して換装するとか?」

 

「それに近いが、船から射出してもらう必要もない。次世代の換装システムとなる」

 

「……それどうやって換装するんです?」

 

 宗司は首を傾げる。その他面々も困った表情を見せる。これまでとは全く違う換装システム、そう簡単には言っても分かるまい。

 今見せるのもいいが、それはそれで整備員達に負担を強いることになる。彼らにはとりあえず実戦で見せることを告げる。

 

「今はまだシステム調整中だ。見せるのは実戦の中で。だからと言ってそれに注目して目の前の戦いに疎かになったら怒るからな」

 

「了解です。Gチーム一同気は抜きません」

 

 呉川が先頭に立って言葉を飲んだ。

 これで格納庫の紹介は終了。続いてあまり入ることはないだろうがエンジンブロックとよく使うブリーフィングルームなどの紹介に移動しようとする。その時エターナがある点に気づく。

 

「……そう言えばこっちのスペースは何?」

 

 シュバルトゼロガンダム・ジェミニアスが安置されるその後方に、やや広いスペースが取られている。その部分には武装が置かれておらず、また地面にMS用ケージとは異なる固定パーツが存在した。

 もちろんそれには意味がある。現段階で使わないそれについても説明を加えた。

 

「それは……今後、ジェミニアスに追加されるサポートメカのメンテナンススペースだ」

 

「サポートメカ……Gワイバーン!?直せるの!?」

 

 エターナはその名を叫ぶ。シュバルトゼロガンダムのサポートメカと聞けば、やはりそれが真っ先に思いつくだろう。

 Gワイバーンが直れば次元世界移動も出来る。そんな期待が目に浮かぶ。だがとりあえず最初の誤解だけは解いておかねば。

 自身に代わってジャンヌが訂正を行う。

 

「いいえ。直すというよりは作り変えですね」

 

「作り変え……?」

 

「Gワイバーンそのものを直しても、今のジェミニアスに装備することは難しい。性能も据え置きです。だからシステム系列は移植してガワは全くの新規で生まれ変わらせる。Gワイバーンと同じくガンダムの性能を限界まで引き上げることは間違いありませんが」

 

 ジャンヌの言う通り、生まれ変わる。Gワイバーンをジェミニアスの新たな力として新生する。

 その力もまたシュバルトゼロガンダム・ジェミニアスを支える。Gワイバーンの持っていたあの次元移動も黎人達が苦心し続けてくれている。

 

「上手くいけば、次元移動も復活する。そこは黎人司令次第だがな」

 

「次元移動!」

 

「それって、エターナがこっちに来たっていう」

 

「隊長も副隊長もそれを使ってこちらに戻って、かつやってきている。もっとも最初に聞いた時は眉唾だったがな」

 

「あれ、でも次元移動って結構難しいとかいう話では……?」

 

 分かっている面々はすぐに理解する。が、分からない組もいた。次元移動について軽く話しておく必要があるかとも思ったが、そこにクルツが新入り組に言った。

 

「まぁ次元移動の専門的知識は今大抵カレッジの領分さ。ハイスクールのお前らが勝手を知らないのも仕方ねぇ。俺も知ってはいてもこの前まで見たことなかったしな」

 

「この前……あぁ、私の?」

 

「そういうことだ。昔は次元障害って呼ばれてたそれも、今は超次元現象って呼ばれるようになった。次元移動はその一つ、文字通り人が次元を行き来する。神隠しなんかがそうだって言われているな」

 

 神隠し。クルツのたとえはもっとも適した言い方だ。元自身もかつてはあの事件、モバイルスーツ暴走事件で別次元に飛ばされていたものの発見できずに行方不明扱いになっていたのだから。

 今の状況ではエターナもあちらの世界で行方不明になっているかもしれない。

あらかじめ行くことを周囲に伝えていたジャンヌはともかく、エターナはそういった示しを付けていると聞いていない。

 自分のよく知るファーフニル家執事のあの人が、今血眼になって軍と共に探している光景が目に浮かぶ……。

 出来れば早いところエターナを送り返す、あるいは無事を伝えたいところだ。もしかしたら初の運用テストが安否を明らかにするになるかもしれない。

 どちらにせよ今は使っていないスペースの紹介はこのくらいにしておく。元はGチームに残りの場所への案内を告げる。

 

「さて、次元障害の講座をやってもいいんだが、まだ艦内設備の案内は残っている。そこら辺はクルツに任せておいて、次に行くぞ」

 

「えっ、俺が!?」

 

「冗談だ。まぁ、果たせるのなら任せたいところではある。お前の講座、割と理解しやすいみたいだからな。期待している」

 

「良かったな。隊長に認められて」

 

「あ、はは……善処します」

 

 俺と呉川の言葉に苦笑いで返答するクルツ。案内はそのまま続いていく。オース到着までに済ませておかなければ。到着まで、まだそれなりに時間があった。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP17はここまでです。

ネイ「専用艦ヴァルプルギス……名称自体は既にこの作品でも出ていますよね」

ロートケーニギンの武装の一つ、だったかな。出してますね」

グリーフィア「その名前の艦を元君の乗艦に。色々勘ぐっちゃうわねぇ~」

大腿その読みは正解。まぁ詳しくはここでは言わんけど。そして今の時代MSケージすらも専用の始動機で呼び出す仕様です。

ネイ「あくまで機体のセッティング用、としての場所確保のためになんですね」

そういうこと。あと何か触れることある?

グリーフィア「光巴ちゃんの事かしらね。クルーにしても危なくないかしら?」

ネイ「そうだよね。艦が真っ先に狙われそう……」

グリーフィア「そこんところはどうなの?」

まぁ彼女自身がDNLだから、危機はすぐに知らせて艦長さんが考えるさ。

グリーフィア「じゃあまぁこんなものかしらね」

ネイ「次は……黒の館DNです?」

そうだね。あ、ちなみに当時のテンションのままですので、何が起こっていたのか見られます。というか今日更新しておくわ。

ネイ「もう一個更新ですか……」

グリーフィア「3話更新ねー」

では次は黒の館DNです。


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黒の館DN 双翼英雄譚編 第3回

黒の館DN双翼編のの第3回です。一々フルネーム出すの面倒くさいのでここでは略します。

解説はHOWの登場人物6人、それから空中艦ヴァルプルギスの情報です。ヴァルプルギスは本編中ではあまり描写書いていないことに気づいたので、ここでなるべく保管して頂けるのが嬉しいところですが、他人任せ過ぎで申し訳ない。

それではどうぞ。


 

 

士「えー……では黒の館DN双翼英雄譚編第3回も始めて参ります。作者の藤和木 士です……」

 

レイ「相変わらずテンション低っ。アシスタントのレイだよ」

 

ジャンヌ「アシスタントのジャンヌです。理由はあれですか」

 

士「多分話しているだろうけど、パソコンの不調が大要員です……。排熱めっちゃしてる……また使えなくなると今辛すぎる……」

 

レイ「あはは、前も熱暴走で使えなくなっていたもんね、旧作のSSRの投稿止まった要因だし」

 

ジャンヌ「前は音楽流していたら突然止まったんですよね」

 

士「そうなんだよn……あれ、何かアップデートしたら排熱音下がったんですが(´・ω・`)」

 

ジャンヌ「えぇ……」

 

レイ「なら一つ解決だけど何でテンション低いの?」

 

士「いや……直ったかなって調子乗ってると忘れた頃にボンッ!ってなりそうだから……気が抜けない」

 

レイ「臆病だねぇ」

 

ジャンヌ「最近の作者気が弱いです」

 

士「色々あるんだよ……というわけで紹介お願い」

 

レイ「はいはーい。まずは人物紹介っ、クルツさんに懐かしの整備員達、宗司君のクラスメイト、そして艦長紫音・プラネリアスさんの紹介だね。どうぞっ」

 

クルツ・ディランドル

・CROZEのGチームのメンバーで、凄腕のスナイパー。20歳。対外的な階級は曹長。性格はひょうきんでやや下品な面がある。しかし任務となると軽口をたたきながらも仕事はこなす人物。また後輩の面倒見はよく、入ったばかりの宗司達にアドバイスを送ったりもする。

 出身はドリツ。ただし本人は幼少期から日本に住んでおり、自分もドリツ語よりかは日本語が扱いやすいから日本人との談(とはいえドリツ語も謙遜ない流暢さで、敵のドリツ語による通信傍受を行えるほど)。

 HOWに所属したきっかけは中学時代に両親と恩師の女性がカルトに襲われて亡くなったため。生き残った恩師の妹の治療費の為に自衛軍へと入隊、その後HOWへと編入した。元からの評価としては申し分ない狙撃の腕で、深絵並のスナイパーとして活用できるとしたうえで、その復讐の相手たる人物「アリーヤル」なる人物の前で冷静でいられるかを不安視している。とはいえ本人によれば恩師の妹の治療費を稼ぐのが目的で、あわよくば討てればいいと思っているらしい。

なお彼には最後の家族として兄がいるのだが、その兄の行方は現在不明。そちらの動向をHOWの葉隠達が調査している。どうにもゼロンの関わる事件での目撃証言が得られているようで……?

 モデルはフルメタル・パニック!のクルツ・ウェーバー。外見や性格など、そして相良宗介モチーフの相模宗司の同僚という点でも共通する。ただし設定では兄は存在していないはずで、実はこれはもう一人とあるキャラクターの要素を盛り込んでいるためである。

 

子尾 信也(ねお しんや)

・私立東響湾ピースランド学園で宗司と同じ高等部一年パイロット育成科Bクラスに通う男子生徒。身長165cm、血液型O型、誕生日は9月9日。気楽な言い回しが多く、いい意味で素直な性格。

 同じクラスメイトの牛原 紗彩とは家の繋がりで親しい幼馴染。家も東響都の一部「十二支区」を古くから取り仕切る名家。ただし本人は家から出ており、今は援助を受けつつも基本は十二支区に借りたアパート住まいである。アパートでは同じく幼馴染で後輩の猫宮  夏香と隣の部屋で生活している。紗彩によれば実家の祖父と長い間折りが合わず、見返すためにMSのパイロットになろうとの寸法らしい。

 MSパイロットとしての適性はそれなりにあるもののいまいち開花しておらず、特殊な才覚があるのではと教師たちは考えているらしい。編入したばかりの宗司に対して声をかけており、紗彩も含めてピースランドにおける宗司の最初の学友として打ち解けている。ゴールデンウィークでは久々に実家に帰っていて、その時の悪態を吐き、気晴らしに今度後輩達と一緒にゲーセンにでも行こうと誘ったのだが、宗司が初任務に出ることになったため、お流れとなってしまった。それでも仕方がないとしっかり状況を理解できる人物。

 モデルは漫画「恨み来、恋、恨み恋」の子国恭也。家の家系や問題、そして住んでいる町の名前など共通する点が多い。周辺人物もそこから取られている。

 

牛原 紗彩(うしはら さあや)

・私立東響湾ピースランド学園の高等部一年の宗司と同じパイロット育成学科Bクラスに通う女子生徒。やや言葉の訛りがあり、少し敬語が下手。身長163cm、血液型O型、誕生日は7月9日。やや薄茶色の髪を持つ。前髪がやや牛の角のように跳ねてしまうくせ毛を持つ。

 信也とは幼馴染でなおかつ信也のボディーガードを務める。腕っぷしが強く、ビルの二回まで軽々飛び上がれるほどの身体能力をそのままでも持つ。MSの腕も確かで、専用MS「丑弐」のパイロットとしても既に活躍するMS所持法獲得者。実家通いでよく学校の帰りなど信也の家に訪れたりして食事をするなど信也にとって姉のような存在。家と縁を切りかけてる信也を心配している。

 信也と共に宗司に話しかけ友人となっている。宗司にとってはMSパイロットとして競争する相手として、また授業で同じチームで協力する仲となる。彼女自身も宗司の事は相手に取っても同じチームメンバー、クラスメイトとして不足ない人物であると称賛している。ゴールデンウィーク後信也の誘ったゲーセンに真っ先に参加を告げるも、宗司が出られないためお流れとなった後もまた改めてするとして信也とカラオケをしようと言っていた。

 モデルは「恨み来、恋、恨み恋」の丑蔵朱華。原典にある妖怪の力はないはずなのだが、元来の腕っぷしの強さやボディーガードである点は変わらない。髪型とMS丑弐は関係する牛の干支から来ている。

 

 

紫音(しおん)・プラネリアス

性別 女

身長 164cm

髪色 蒼と紫のグラデーション

出身地 日本 北開道 知常

年齢 23歳

誕生日 8月19日

血液型 A

好きなもの 妹、プリン、ぐうたら、人助け、ゲーム

嫌いなもの お仕事、ナス、ネット環境の悪いところ

愛称 紫音艦長、紫の戦女神

 

・CROZE部隊の新型母艦「ヴァルプルギス」の艦長を務める女性。日系とアメリア系のハーフの女性。必然的に後方指揮官となる。鈴川光姫の実家、鈴川家とは遠縁の親戚にあたる。

 HOWの入隊はわずか2年目でありながら、艦とMSの指揮は完璧でいくつもの作戦を成功させてきたHOWの名艦長に名を連ねている。CROZE部隊の艦長への配属はそういった戦果に対する元の期待があってのことの模様。

 任務などの平時は非常にクールな性格で、誠心誠意任務に取り組む。が、本質はオフの時。仕事がない時には自室に閉じこもってゲームをして、ぐーたらとお菓子や大好物のプリンをむさぼっている。艦長室も表向きの第一と、私生活全開の第二が存在する(しかもわざわざ自分からの要求で作らせてもらっており、隊長である元も直々に許可している)。

 このように落差の激しい人物だが、変わらない点として共通する人助けの精神があり、どちらの側であっても困っている人にはしっかりと歩み寄る(ぐーたらタイム時にはやや面倒くさがるが、子ども相手なら積極的に応える。もっともその面を見せることは少ない)。隊長である元からも評価を受けている……のだが、本人は愛称の一つから自身が消されないかと怯えている(無論元は女神と呼ばれていても彼女がそれを悪用していない為にそのつもりはない。今現在は)。

 また妹がいるのだが、妹は私生活も優秀。が、尖りが無くて個性のある姉程注目を浴びていない。

 HOWに所属した理由は「楽して稼げる仕事に就きたかったから」。矛盾かもしれないが、彼女にとっては艦の指揮の方が普通の仕事の諸々よりも楽らしい。それに任務以外は航海中でも自室でサボれるために適性をしっかりと判断して進路を決めている。その分仕事はきちんとやるため、元もある程度の容認を行っている(容認している理由の一つに隊の指揮官である自分も艦の指揮も行う必要がある程度あると認識しているというものがある)。

 ちなみにオフの時は元の友人である整備担当の星北平次や佐倉海斗と共にゲームをしたり限定商品の購入に街へ出ていたりする。

 モデルは超次元ゲイムネプテューヌシリーズのプラネテューヌの女神「ネプテューヌ」とその変身した姿「パープルハート」である。姿はパープルハートとしての姿を優先。性格は仕事のオンオフで両方の性格が切り替わるようになっている。妹は無論ネプギアがモデル。鈴川家の遠縁という設定は原作ゲームの本編4作目のVⅡでの設定が反映されている。なお旧作SSRの舞台は言わずもがなその新次元ゲイムネプテューヌVⅡであり、要素が引っ張って生まれたと言ってもいい。

 

星北平次

性別 男

身長 175cm

髪色 黒

出身地 日本 三枝県 四河市

年齢 34

誕生日 1月25日

血液型 O

好きなもの プラモ製作、機械いじり、猫、ハンバーグ

嫌いなもの 上司の愚痴、ブロッコリー

愛称 平氏

 

・HOWのCROZE部隊でMS整備主任の地位にある男性。黒和元の古くからの友人である。独身。

 11年の間にCROZEの整備主任として任命。SABERの整備主任になった海斗と共にそれぞれの部隊の隊長や隊員達のMSを仕上げる。ガンダムDN二種の機付長にも任命されており、現在はアーバレストの調整、アルヴの修正など整備の癖に四苦八苦している。

 元との交友も変わらずで、休日や休憩時間に食事や趣味のプラモ、そして整備の調整折り合わせなどをジャンヌや来馬、そして紫音などと共にやっている光景が多々見られるとのこと。

 人物モデルは変わらずコウサカ・ユウマ。大分年を取ったイメージ。

 

来馬真希

・MSオーダーズ時代から引き続きHOWのガンダムシリーズの整備主任を務める女性。現在34歳(一応誕生日は2月2日)。身長164cm。

 以前と変わらず、軽快で陽気な性格。女性の髪色フェチな点も変わらずとなっている。チームとしては元のCROZEに身を置いている。シュバルトゼロガンダム・ジェミニアスのHOW側の開発担当かつ機付長となっており、その性能を最大限引き出せるよう元達と開発段階からこまめに調整に四苦八苦する。

 ジャンヌの妹のエターナや入嶋と言った少女達の加入で本人は甘い汁が吸えているとの談。やり過ぎないようにと元に注意を喰らうことも。

 

 

レイ「以上が人物紹介ってことで」

 

ジャンヌ「クルツさんは相模さんと関連づけてキャラ作成されたみたいですね」

 

士「名前からしてね。ただもう一人キャラ付けしてるから、少し展開は違って来るかも?」

 

レイ「アリーヤル……何か聞いたことある」

 

ジャンヌ「宗司さんのクラスメイトは作者のお気に入りの作品からですね」

 

士「恨み恋めっちゃ好きでした数年後の咲直ちゃんのイラスト供給まだですかっ」

 

レイ「急に早口にならないで」

 

ジャンヌ「このブロンド系、あるいは白髪系好きが」

 

士「まぁそこらへんも出すつもりではあるんだけども……個人的にはここら辺の話は外伝出したいなぁって思ってる」

 

レイ「へぇ?何で?」

 

士「後々関係すること出すからね。まぁだいぶ先になるんだけども」

 

ジャンヌ「そこまで続くかですね」

 

士「それな」

 

レイ「それは置いておくとして、艦長さんはネプテューヌちゃんかぁ。表向きはパープルハート様みたいな感じだけど、これネプテューヌちゃんみたいな面いつ見せるの?」

 

士「その内だね。ちょっとこの航海中に見せようかなぁと思ったんだけど、もう少し先になりそうです。そもそも航海中の話を書く暇もなかった……あ、ちなみに第2章は20話くらいになりそうな予感」

 

ジャンヌ「まぁでも本人としてはそう言った姿を見せたくない感じですよね。コミュ障、というわけではなさそうなんですが」

 

レイ「というかハーフなのに光姫ちゃんの家の親戚なんだね!」

 

士「鈴川家はネプの血統ってわけだね(´Д`)」

 

ジャンヌ「それどこのジョ○スター家ですか」

 

レイ「その彼女の艦の整備主任を務める二人は久々の登場だね。……真希ちゃんの髪フェチが重症になってる気がするけど」

 

士「髪の綺麗な美少女が増えるたび、あの人は変態化します(´-ω-`)」

 

ジャンヌ「なんでそんなキャラ出したんですか……」

 

レイ「うわぁ……変態さんだぁ」

 

士「こういうキャラもいていいじゃない」

 

レイ「まぁ、それは……けどやり過ぎないようにね」

 

ジャンヌ「何か作者の性癖の権化みたい」

 

士「分かってるよ……何かそんな親近感この人に抱くこと書いてるときあるわ。暴走したら温かい目で見守ってねっ」

 

ジャンヌ「えぇ……にしても佐倉さんはSABERの方担当ですか」

 

士「そこは適性含めたり分散しないといけなかったりでそうなったんですよね。ガンダムを調整できる人が限られているので……」

 

レイ「あり得る話だよねー専用機は限られた人にしか調整できないって。でもMSの整備って一体どれくらい要るの?」

 

士「大きさ違うからあっちより人数は少ない。けど一機当たりに二人から三人、加えてハロを作業ロボットに取り付けたモードが荷物運びとかサポートするよ」

 

ジャンヌ「ハロのサポートロボットってそれ」

 

士「だってそうした方が自然に使うし……もう本家で出ているアイデアだけども採用しました。今作じゃ搭乗のためのアイテムとしても使うからね」

 

レイ「まぁそうだね。本家でも使うってことはそれだけ普及しているわけだし」

 

ジャンヌ「ハロが果たしてどこまでこの作品で見えることか」

 

レイ「っていうかハロが搭乗の為のアイテムって初?」

 

士「残念ながら一個実例があるのです。フリーダム再臨の場面」

 

ジャンヌ「鍵ですね」

 

レイ「カギだね」

 

士「かぎです(´・ω・`)さて人物紹介はここまでで、次は艦艇の紹介です」

 

レイ「地球で初紹介となる空中艦紹介!今回の紹介はヴァルプルギスだよっ!」

 

ジャンヌ「ガンダムシリーズの中で今作が非常に影響を受けたあの作品の艦がモデルのようですが……何か考えているようですね?」

 

士「そこら辺は後程ね」

 

 

ヴァルプルギス

HS-G01-1

全長275メートル

最大搭載MS 31機+α

 

解説

・MSの運用当初から考えられていたのが次元粒子を動力源としたMS運用母艦の開発。最初は次元粒子発生器の効率的な運用法が難航していて、大型化と戦艦ほどの大型かつ継続的な運用が出来ずにいた。形式番号はHowShip-Gandamsの略で、01はそのシリーズの1シリーズ、その後の1は一番艦を示す。

 苦肉の策として既存の空母を回収した「こてつ」などを次元覇院戦で投入したが、それでも満足のいくものではなかった。だがここでようやくHOWという組織体系になったことで次元黎人と自衛軍の開発部が密接に開発協力出来るようになる。自衛軍側は政府の協力で他国家の開発協力者の選別、参入をサポート。代わりに黎人は今までのノウハウと恩師ツィーラン博士からの次元粒子発生器の細かな情報、そしてシュバルトゼロガンダムがもたらした異世界の空中戦艦の断片的な情報を共有する。

 それにより次元粒子発生器改め、DNジェネレーターの大型化かつ大出力化と格段に効率化したDNフライトシステムと武装の充実、そしてMS運用を突き詰められると判断して、ようやく完成したのが初のMS空中艦「フェアリー」、そこから更に開発が行われ、HOWの主力チームの旗艦となる母艦、それがこの「ヴァルプルギス」である。

 全長はドラグディアのニーベルング級よりもやや大きい、主推進器を二基後方に伸ばし、カタパルトを五基(左右それぞれ二基ずつ上下並べて、中央は口を開くように展開する)装備、側面には艦艇周囲のDNコントロールを行う物理的鋭角を伴う板状のフライトシステムサポートユニットが四本伸びる。後方主推進器側面には追加用アタッチメントが備わっており、増速用ブースター、追加兵装ラックなどなど、装備の拡張が出来る。一応言っておくが艦船である。ちなみに艦長たちのいるブリッジは中央第5カタパルトの上部ブロックに存在する。ただしブリッジの遮蔽が可能で、装甲も対ビーム用ラミネート構造+フェイズカーボンと非常に硬い。

 本艦は特に主力となるガンダム達とチーム隊長機のシュバルトゼロガンダム・ジェミニアス格納艦として特化している。格納ブロックはジェミニアス周辺の作業スペースが非常に大きく取られ、同機が保有するマルチスペースシステムの武装を艦内で整備できるようになっている。その作業場も中央ブロックを専用化しているほどで、中央カタパルトは現状実質シュバルトゼロガンダム専用である。その中央ブロックに繋がる形で左右MS格納ブロックへ移動することが出来る。

 左右の艦載機配分としては右側にガンダムDN一号機二号機、Gチーム隊長の呉島のソルジアス関連とクルツのソルジアスのGチーム、さらにCROZEのチームCとZが。そして左側が残りのR、O、Eの部隊が入る。

 艦の中央ブロックは主に乗組員の私室。ブリッジに近い側は隊長達、および艦長たちの部屋がある。ブリーフィングルームはその中間あたりに位置する。後部ブロックはエンジンブロックで機関士たちの領域となっている。

 艦としての特殊機能として艦船には初のDNウォール搭載、かつエラクスシステムの搭載予定が挙げられる。DNウォールは単純に防御性能の拡大のため、そして大気圏離脱と大気圏再突入のための膜としての役割を果たす。重要となるエラクスシステムに関してシステムそのものは搭載しているものの、制御用のリム・クリスタルが完成できずに搭載見送りとなっている。その為現段階で大気圏突破は側面アタッチメントに大気圏突破用ブースター装備の上でマスドライバーが必要となる。

 また設計途中の段階でガンダムDNに対応させた面があり、その最たるものがアタッチメントの追加パーツ。予定ではここにガンダムDN用追加パーツ兼用の兵装が装着される予定で、それを以って本艦はようやく「完成」したと言える。

 艦長の紫音からの評価は「新進気鋭」。これまでの空中母艦と構造から違うことで、新しい運用形態が必要との判断を下している(本人曰く面倒)。ただしアタッチメントによる特性変化とMSのバックアップは「好み」としており、実装を心待ちにしている。

 コンセプトは「プトレマイオス2をベースに、制式軍の艦艇として再構成する」というもの。MSの格納性能が向上し、そのうえ人数の増加に対応して原型艦よりも艦体が伸びている。更に後部側面のアタッチメントはプトレマイオス2改の増加パーツから発想し、アークエンジェルの大気圏離脱用ブースターや、エターナルのミーティア、そして初代プトレマイオスの強襲用コンテナを思わせるパーツを考案中。総じてプトレマイオスという艦の総決算。なおここまでだとプトレマイオス2と変わらない外見だが、現時点でアタッチメントパーツ以外にこれに改造を考えており、そこで外観が大きく変わる予定である。

 

 

【機能】

・耐ビームラミネート構造体+DNフェイズカーボンVerS

 船体外装を構成する装甲材。ビームに対抗するためのラミネート構造と、DNフェイズカーボンの空中艦仕様の物を合わせている。これによりビームへの耐性が恐ろしく高いというリフレクトパネル顔負けの性能となっている。

 この構造の欠点として高温になりやすいことが挙げられる。これは艦艇ならば十分な冷却材を以って相殺できるが、MSにおいてはその冷却材に余裕がない為採用できないということになっている。機動性のない艦艇だからこその特権と呼べる。

 

・エラクスシステム

 システムのみ装備された出力強化システム。艦艇で初のエラクスシステム搭載となる。本艦に置いては大気圏離脱用の推力付与と緊急離脱の為に用いられる。大型のDNジェネレーターの反応停止の為に相応の人工リム・クリスタルの精製が必要だったのだが、それが間に合わないままロールアウトとなった。その為現在はシステム丸ごと凍結処理がされている。

 原型と同じく、エラクスシステム搭載のガンダムを乗せて使うことで時間を引き延ばせる。

 

・DNウォール

 艦の前部左右四方に広がる可変主翼でコントロールされる粒子防壁。艦艇で採用されるのは象徴以外ではドラグディア、マキナスなどを含めても初。

 防御性能も非常に高く、ガンダムの砲撃にも一極集中でなければ耐えられるほど。ただし実体兵装に関してはMSと同じで、貫通されやすい。

 

・潜水機能

 本艦にて採用される潜航機能。実はこちらも初機能なのだが、表向きには明かされていない。これはゼロン制圧地域への侵攻を目的とした機能で、敵の発見を可能な限り遅らせることを目的とする。

 また水中ではビーム兵器の減衰が見込め、非常時の緊急回避的な運用も考慮されている。だが本艦のこの機能は更なる秘密が隠されているらしく、その概要は艦長すら知らないらしい。

 

 

【武装】

・ビームバルカン

 船体各所に数多く配置された弾幕兵装。搭載数はおよそ30基に及ぶ。実弾ではなく、ビーム弾を用いるタイプ。フェアリーにも採用されたものの最新版で弾の追尾性能が向上している。

 

・ディメンションミサイル

 船体各所に射出口を備えるDN炸裂式のミサイル発射機構。MSに使われるものよりも大分大きいタイプで敵艦に対しても十分な威力を持つ。MSへの追尾性能も非常に高い。

 各部に装備されているため装弾数は軽く500発を備える。最大装備数はもう少し多いとのこと。水中潜航時でも水中から空中に向けて放てる(無論飛距離自体は落ちる。威力もやや減衰する模様)。

 

・ビームキャノン

 大小の種類に分かれる大出力ビーム砲。大型の物はMS格納コンテナ部の上部に格納され、正面の主砲を担当する。照準は砲手ルームで狙いを付けて放つことが出来る。小サイズの物は各所に配備されオートで操作、バルカンと共に弾幕で用いられる。

 水中潜航時には基本的に使用不可だが、上半分を露出させて砲撃を行うというやり方も出来ないわけではない。

 

・次元魚雷

 DNを破壊力に使うディメンションミサイルの水中版。水中にいる敵に対し効率的に推進、破壊を行う。

 基本的に船体下部に備わっており、ミサイル程の弾数はないが、水中戦の少なさを考慮しても十分な量は確保されているらしい。

 

・電磁投射式槍「ダーイン・スレイブ」

 船体の主翼に隠れる形で設置されたDN発電式の実体兵装。四基を装備する。実は本艦の兵装で一番の破壊力を誇る。通常時は使用不可。主翼を縦に配置転換した時のみ使用が可能。

 電磁投射砲、レールガンの種類に分別される本兵装が一番の破壊力と言うのはそれが最も広範囲に影響を及ぼすためである。射程はゆうに1キロを超え、ピンポイントながら直撃すればMSは分解、直撃した艦艇の装甲を貫き、更に衝撃波が周囲に影響を及ぼす。それがもし地上に直撃すれば半径1キロは甚大な被害を受ける。その為本兵装は国連から使用制限兵器に指定されている。本兵装の使用は民間地帯の存在しない、あるいは要塞軍事施設に対しての使用のみに絞られる。しかもいくつかの使用制限解除が必要で、まさに最後の切り札と言うべき兵器。加えて同時使用は二基までとされている。これは甚大な被害が起こると同時に、発射時に艦体そのものが耐えられないという使用限界が存在するためのセーフティでもある。

 絶大な戦闘能力を誇るガンダムの母艦だからこそ許された兵装で、使用制限解除までガンダムが防御し、ようやく放って戦況を一変させるという流れ。

 モデルは鉄血のオルフェンズにも登場した禁忌の兵装「ダインスレイヴ」。槍自体の形状からガンダムフラウロスが最後に使用した専用弾頭がベース。ソレスタルビーイングの艦艇には似合わない実弾兵装だが、実はこれは対DNウォール搭載艦との対決も見越してのものであるため。GNフィールドに対するGNソードに相応しい構図として、ダインスレイヴが選択された。

 

 

レイ「というわけでヴァルプルギスの紹介だね」

 

ジャンヌ「プトレマイオス2がベースとなったものみたいですね」

 

士「プトレマイオスの1、2、2改全てをひっくるめてってイメージですね。全体が2、追加装備は1、追加した姿は2改ってね」

 

レイ「けど、今の段階でプトレマイオスのデザインを使ってもいいの?」

 

ジャンヌ「ガンダム00のアナザーストーリーを考えていたはずですよね?」

 

士「それに関しては文章で書いてる改造がキーポイントになる。デザイナーの繋がりとしてとある作品の艦艇も合わせる形と、ガンダム00作品のとある兵装との組み合わせを考えてる」

 

レイ「とある作品?とある兵装?」

 

士「共通するのは遠隔操作端末っていう点。操作方法の原理は異なるんだけどね」

 

ジャンヌ「うーん……頭に浮かびませんね」

 

レイ「それはともかくとして、えげつない兵装を積んでいる件」

 

ジャンヌ「ダインスレイヴって藤和木嫌っていたんじゃないんですか……」

 

士「演出的に嫌いなだけ。ただ使いどころは間違ってないし、何より00関連の技術にダインスレイヴって結構いいと思うんだよね。フィールド系を貫けるのはミサイルとか実体兵器だから、矛としては効率よく敵を叩ける。ただ、便利品になるのは嫌だから、弾数制限と使用制限を設けてる」

 

レイ「それは当然の処置って感じだよね。もっともあれも「一応」使用制限はあったんだけどね……」

 

ジャンヌ「こっちでも事実上制限がなくなる、というのはやめてほしいですね」

 

士「当たればガンダムも沈黙させる威力だもんね。なるべく戦略破壊兵器じゃなく、対艦・対要塞用兵装として使いたいですわ。と、特筆すべきはここまでです」

 

レイ「次回からはいよいよアナザーSEEDDestiny編の本編が始まっていっくよーっ!」

 

ジャンヌ「SEEDDestinyの物語がどう改変されたのか、見ものですね」

 

士「それでは次回もよろしくお願いします」

 




黒の館DN双翼編第3回はここまでです。

文中で触れましたが、SEEDDestinyの世界観をモデル、リ・イマジネーションした章に今回なります。ゼロンとどうかかわっていくのかにも注目です。

ヴァルプルギスの改修に関してはまだ正確な時期は未定です。が、大体ダインスレイヴ擬きを使った後辺りでの改修を予定しています。最大火力は一度使ってからやりたいですので。

それでは次回から本格的にオース編スタートです。次回もお楽しみに。


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EPISODE18 衝動の新人パイロット演習1

どうも、藤和木 士です。EP18と19更新です。

レイ「作者だけ前書き名前言うようになったんだってね」

君達は地の文でも名前付けなきゃだけど俺は書き方的に名乗れないからね。作者の名前はね。

ジャンヌ「それより、オース編開始ですね」

最初の方になんか仰々しい触れ込みを入れてますが、まぁ雰囲気です。深く考えないで大丈夫です。というわけでどうぞ。


 

 

 日本本土から625キロメートル。25年前に誕生した新島「種命島」「花王島」「獅子王島」「種道島」などの6つの島々からなる観光疑似国家「オース」。

 船でおよそ12時間の距離にあるこの島にもMS誕生の余波が来ていた。既に就航した専用巡航空中艦「ガーデニア・オース」で時間は10時間に短縮。そして軍用艦ならばその更に半分まで時間を短縮できるほどだ。

 HOWに就航したヴァルプルギスも例外ではない。そのおよそ半分4時間、昼過ぎにヴァルプルギスはオースへと到着を果たしていた。

 (シード)の物語が再び始まる。運命(デスティニー)の少年は次元の力で変質する。憎悪は憧れに、だがやはり憎悪へと向いたその怒れる瞳は、何に激情するのか。そしてそれに対し、新たな契約者達は何をイメージするのか……。

 

 

 

 

『まもなく、オース到着です。主要員は持ち場についてください』

 

「ん……もう着くのか」

 

 自室で種命島の旅行雑誌に没入していた宗司は顔を上げる。時間はおよそ4時間。話に聞いていたガーデニア・オースの到着時間を大幅に下回る所要時間に少々驚いた。

 軍艦の速度がそれだけ早いことに改めて驚かされる。宗司はあの後言われていたことをなぞる形で集合場所に向かうべくベッドから立つ。

 カードキーをしっかりと持ち、部屋の外へと出た宗司。すると放送で人員の呼びかけが行われた。

 

『艦長、ブリッジまでお越しください。って艦長?』

 

 怪訝に紫音艦長へと呼びかける光巴の声。何かあったのだろうか。集合時間にはまだ余裕はあった。ここからも距離は近い。様子を見に行くくらいならとその足を艦長室へと向ける。

 艦長室に着くと既にドアの前に入嶋が呼びかけていた。

 

「艦長?入嶋です。どうかなさいましたか?」

 

「入嶋、どうだ」

 

「相模君。いや、全然出てこなくて……何かあったかな」

 

 ドアのインターホンを鳴らしても返事がないことに不安を感じる二人。と、そこでようやく何かの崩れる音と共に紫音艦長がインターホンに出る。

 

『……だ、大丈夫……よ』

 

「艦長」

 

「紫音艦長、何かありましたか?」

 

 聞き返すと紫音艦長は言いづらそうに話す。

 

『ちょ、ちょっと部屋の物が倒れ込んで来て、ね……』

 

 どうやらちょっとした事故のようだった。頭を打ったのか、それとも埋もれたのか。それにしてもかなりの物を持ち込んだようだ。入嶋は助けがいるかどうか尋ねた。

 

「え、手伝いましょうか?」

 

『え゛っ!?そ、それは止めて!?あ、いや、別に大したことじゃないから!』

 

 すると紫音艦長は慌ててその申し出を拒絶した。大したことじゃないと言うが、すぐに出てこれないあたり大したことではない気がする。

 入嶋も同じ考えで、それを指摘して入れてくれるように頼みこむ。

 

「大したことじゃないなら手伝いますよ!艦長が遅れたら示しがつかないですって」

 

『うぅ……で、でもぉ……』

 

 艦長の雰囲気がまるで違う。これまでなら落ち着いた女性と言った感じだったのに対し、今は弱々しい少女と言ったような声だ。そんなに部屋の中を見られたくない、ということなのだろうか。

 すると後ろから声を掛けられる。声の主は元隊長だった。

 

「相模、入嶋、こんなところに居たのか」

 

「元隊長」

 

「あ、隊長。艦長がなんかトラブルみたいで……手伝うって言っているんですが」

 

 事情を説明する入嶋。インターホーン越しに紫音艦長が元隊長に助けを求める。

 

『あ~、は、元さんこっちは何とかするから、二人を連れて行って……くれませんか?』

 

「……分かった。ブリッジには間に合わせると言っておけよ。相模、入嶋行くぞ」

 

「え、あぁはい」

 

「ほ、放っておくんですか!?」

 

 しばし考え、紫音の言葉を了承した元。その判断に異を唱える入嶋。宗司も頷きこそしたものの、納得しがたい部分がある。

 入嶋に元はその考えを述べる。

 

「何でもかんでも助けようとするのが正しいとは限らない。人には隠し事もあるわけだしな」

 

「で、でも軍で隠し事なんて……」

 

「なら、お前は自分の今日おやつに食べるものまで管理されたいか?あるいは、今日着る服全てをデザインまで俺、最悪他の上の人間に見られたいか?」

 

「うぐっ!……いいえ」

 

 極論と言えるが、要は管理社会がいいかという話だ。それは流石に嫌だと入嶋が答える。ある程度の隠し事、特にプライベートに関しては不干渉ということなのだろう。

 もちろんそれをフォローしていると隊長は続ける。

 

「まぁちゃんとそれが裏切り行為の物ではないかは調べてある。今回のは問題ない」

 

「そうなんですか。というかその言い方だと隊長は紫音艦長の部屋がどうなったかある程度分かっているんです?」

 

 気になって質問する。元隊長は頷く。

 

「まぁな。彼女の趣味に口出しは出来ん。理解はできるからな。出来れば、それを安心して明かせるくらい距離が縮まればいいとも思ってはいる」

 

「んん?趣味?」

 

「趣味の物どれだけ詰め込んだんですか……」

 

「大分詰め込んでいたはずだ。このために艦長室は2つあるからな。表向きのと、完全な私室。分ける判断をしてくれたのはありがたかった。紫音はこういうやつだ。もっとも完全に判断するのは戦闘指揮を見てからにしておけ。それより急ぐぞ」

 

 会話を交わして、共にブリーフィングルームへと向かった。

 

 

 

 

 集合を掛けてから20分、ヴァルプルギスがオースへと到着する。着艦したのはオース軍の基地の一つ、明日那派と呼ばれる者達が駐留する種命島大守新第1基地だ。

 元達がかつて降り立った第1基地の跡地に建てられたこの基地はまさに新生オース軍の象徴。ここならある程度安心して在留できる。

 展開されたステップで降りていく元以下CROZEメンバーと紫音艦長。それを迎えたのは、オース軍部隊員を率いる一人の男性士官だ。

 

「遠路はるばるご苦労様です黒和元さん、それにCROZE部隊の皆さん。自分は影義 明(かげよし あきら)、ステージツーシリーズ部隊「TG隊」の隊長です。今回の作戦現場責任者として任命されています」

 

「試作遊撃部隊CROZE隊長、黒和元だ。今回はよろしく頼む」

 

 それぞれの隊を預かる者同士で握手を交わす。続けて艦長の紫音が挨拶する。

 

「ヴァルプルギス艦長の紫音・プラネリアスです」

 

「こちらの艦の艦長ですね。影義です。在留中の艦の安全と補給はお任せください」

 

「助かります。とはいえ機密区画も存在するのでご不便をおかけすると思いますが……」

 

「それはもちろん重々承知しています。こちらは必要な物資の補給、並びに危険物が仕込まれていないかの確認を取ります。そちらでも重ねた検査等よろしくお願いします」

 

「えぇ」

 

 先程の動揺はもはやかけらもない。髪も整えて一目ではぼろは出ていなかった。これなら問題ないだろうと心の中で感心する。

 挨拶を終えたところでこの後の行程について影義に確認を取る。

 

「それで、この後についてだが……予定通りまずは隊員達の交流か?」

 

「あぁ……はい、そうですね」

 

 影義が頷いたところで、オース側の方から威勢のいい声が飛ぶ。

 

「グダグダやってる必要ないですよ、明……隊長!」

 

「ん?」

 

「こら、ススム!」

 

 ススムと呼ばれた隊員が影義隊長の言葉を聞かず、前へと出てくる。若い隊員だ。その隊員がこちらの隊員達を見て言ってくる。

 

「こんな学生の集まり、俺らの相手に務まらないって!HOWの魔王も、大したことないな!」

 

「んなっ!」

 

「あぁ!?」

 

「……」

 

 いきなり向けられた罵倒に千奈とエターナが反応する。簡単に挑発に乗った二人に呉川とクルツが呆れと苦笑の表情をそれぞれ浮かべる。

 それに対となる形でクルスと宗司は押し黙る。比較的落ち着いた二人だからこそ、パートナーの怒りに引きずられて安易な口出しをしないのは助かる。

 落ち着いた声音で彼について明に尋ねる。

 

「彼は?」

 

「あぁ……すみません。彼は大和 進(やまと すすむ)。今回の演習に最新鋭機オースインパルスで参加するうちの新人の一人です」

*

「あぁ、事前情報にあった、あの新型か。……いや、それより、大和……もしや」

 

 機体よりも苗字の方に注目する。その名前は元が知る男の苗字と同じだった。その予想は明から肯定される。

 

「彼は大和 輝(やまと ひかる)の家の養子です」

 

「養子か……まぁあいつに兄弟はいなかったしな」

 

「っ!」

 

 その名前に眉を顰める進。その名前に聞き覚えのない宗司達が首を傾げた。

 

「大和、輝……?」

 

「って誰よそいつ」

 

「クルス、知ってる?」

 

「うーん……分かんない」

 

 意外にもクルスが知らなかったのは驚きだ。しかしそんな彼らに3年前の戦いを知る呉川が説明をしてくれた。

 

「大和輝。オース軍最新鋭機オースストライクとその後継機オースフリーダムを操り、3年前の虚ろの零によるテロで壊滅したオース軍を逆転勝利に導いた英雄だ。元隊長のシュバルトゼロガンダムRⅡと共にな」

 

「へ、へぇ……」

 

「RⅡと、ね」

 

「そんな英雄の……養子、いや、義弟」

 

 あの男、大和輝の力は俺も認めている。DNLではなくとも、その素養がオースストライク、オースフリーダムによって引き出された力で、あの事件では助けられた。機体性能の縮まった今なら分からないが、以前ではおそらく模擬戦で白星を取ることは不可能だっただろう。

 義弟であってもあの男が認めた少年。最新鋭機を任せられるのは凄いだろう。だが本人はあまりそう言われるのは好きではない、いや、気に喰わないようだった。

 

「あいつの、あの人の事はどうだっていいだろ!あんな、軍から逃げた兄貴や、首長なんて……!」

 

「ちょっと、進」

 

「逃げた?」

 

 言い直しを何度か行う進という隊員の話に、逃げたという単語に訊き返す。すると明が事情を話してくれた。

 

「オースの英雄……大和輝は軍を除隊し、前首長であった大守 里奈(おおす りな)と共に隠居しています」

 

「……何だって?」

 

 除隊という単語に耳を疑う。ジャンヌとも顔を見合わせた。二人に明は紛れもなくそれが事実であると分かっていることを教えてくれた。

 

「丁度進がオース軍に入隊した時に、彼は突然軍からの除隊を申し出た。その時点では妹に首長の座を渡していた恋人の大守里奈と共に、平和なところで暮らしたい、戦いはもう嫌だとな」

 

「戦いが嫌って……そんなエースが?」

 

 怪訝な表情で行いに苦言を呈するエターナ。だがあり得る話だと元はフォローする。

 

「いや、あいつなら言いそうなことだ。不殺なんて器用な真似を行う、あいつなら、な」

 

「そうですね。今回の任務で力を借りれないのは残念ですが……」

 

「あぁ……強さは折り紙付きだからな。まぁ、あの時程自由にはさせないつもりだったが」

 

 オースの英雄の一人、「不殺の輝」が消えたオース軍は果たして今回の作戦で主導権を握れるのかどうか。もっとも目の前にいるこの男なら充分対抗してくるだろうが。

 話が脱線しそうになっていたので、話を戻す。威勢よく宣戦布告を出してきた新人、進とその後ろで彼のやり取りに苦笑していた同期達であろう者達に言う。

 

「まぁ、君達よりもうちの新人は未熟だ。民間人から抜いて来たやつがほとんどだしな」

 

「へぇ」

 

「は、元さん!?」

 

「だから、全力でこいつらの鼻を折ってくれ。今の内に折っておかないと、大事な場面でもっと大事なものを折ってしまうからな」

 

 もっと大事なもの、命を失うなんてことはさせたくない。それは自分達で護れるようになってもらわなければならない。何でもこちら任せにしてもらうわけにはいかない。自分の命を共有はしても他人に丸投げは許されない。

 そう語ったのち、明へ予定の変更を打診する。

 

「こういうわけだ。交流はもうMSを動かしてしてもらった方がこいつらにはいいんじゃないか、明隊長?」

 

「……そう、仰るのであれば。血の気が多いのはお互い様ですね」

 

「そうだな。俺も含めて、かな」

 

「……積もる話は後にしましょう。ではシミュレーションポッドへ」

 

 ため息をついて明が基地の方へとこちらを招き入れる。元達はそれに続く。元の隣でジャンヌが耳打ちする。

 

(言われてますよ、元の悪いところ。いつも言ってるじゃないですか)

 

(……まぁな。こういう話し方にしても俺は何も変わらないらしい)

 

 どうにも隊長らしい振る舞いが出来ない。いつもこちらの方から言って物事の方向性を決めてしまうのが悪い癖と黎人や周りの人間からよく言われる。昔のような罵倒を絡めたものは戒めているのだが、まだ癖が残っている。

 ある意味マキナ・ドランディアで決意を手に入れた代償と呼べる。話し方ではどうにもならないこの現状はどうにかしたい。もっともこれが終わったら早速その自戒も破ってしまいそうだが。

 予想外の衝撃を受けつつも、これから彼らが良い学びを得てくれればいいと思いながら案内に従っていく。

 

 

 

 

 通されたオース基地シミュレーションポッドルーム。模擬戦に挑むエターナは絶賛不機嫌であった。

 あんなクソガキに歯牙もかからないなんて言われて、頭に来ないわけない。兄がどれだけ有名だろうと、私の姉様には及ばない。姉様はガンダムのエンゲージ相手に選ばれた御方。その兄とやらに勝てないのはきっと、メインパイロットのアイツのせいなんだから。

 こっちの鼻を折ってほしいだなんて言うけど、むしろ逆にこっちがアイツの鼻を折ってやるんだから!

 そう意気込むエターナはエンジニアからの注意事項の説明を半分に、敵を潰すことだけに意識を向ける。と、そこであの男の声が掛かった。

 

「おい、エターナ」

 

「おいとは何よクソ男」

 

「お前話聞いていないようだから、わざわざ俺が来たんだ」

 

 ハジメはこちらが話を聞いていないと感じ、こちらに忠告に来たようだった。もっともそんなの知る由もない。話を区切ろうとするが、そうはさせないハジメ。重要な案件を2つ告げる。

 

「今回の戦いはガンダムDN二機によるタッグだ。試験的にお前には入嶋のサポートも行ってもらう」

 

「サポートぉ?なんで……」

 

「連携の為だ。メインパイロットよりもエンゲージ相手の方が色々な情報を知らせやすい。それから一応ドライバ・フィールドの再現は可能だが、あんまり飛躍したイメージをぶつける、あるいは補助するのは止めておけ。再現プログラムがまだ上手く整っていない。やり過ぎるとシミュレーターが強制停止する」

 

「ポンコツが……こっちの全性能引き出せない状況でなら勝てるに決まっているじゃない!」

 

 悪態づく。言い訳がましいかもしれないが、そんなの今知ったこっちゃない。その上オペレートしながらなんて、荷が重すぎる。

 エースパイロットだからと調子に乗っているのではないかと思ったエターナの言葉は、吐き捨てる前に接続状態へと入って阻まれる。

 

「まぁ難しく考えるな。無理だと思ったら入嶋へのオペレートは切っていい。テスト感覚でやってくれ。それより、相手の機体を見てビビるなよ」

 

「ビビるって今さら……ってもう!ソージ、イリジマ!油断して一発撃墜なんてやめてよ!?」

 

『分かっている』

 

『エターナちゃんもこっちに掛かりっきりにならないでね!』

 

 声を交わしてシミュレーターへと突入する。いつもの仮想空間用エンゲージ領域が構成されて、エターナはソージの機体を制御する。

 何度か触って感覚は掴みつつある。それをここで証明できれば……姉様だって。

 設定された仮想空間のフィールドを飛行していくガンダムDN。フィールドは島。海まで再現されているようだった。海上から島の一つを目指して索敵を兼ねて飛んでいく3人。

 

『モビルスーツ反応なし』

 

「こっちにも反応なし。ここまで含めて演習なの?」

 

 怪訝に思いながら目と口を動かす。索敵はやったことがないわけではない。けれどもガンダムDNは特別センサーシステムが良いわけではない。先に敵から見つかりそうだ。

 と、そんな予測が的中する。センサーよりも先に悪寒がエターナに危機を知らせる。

 

「!ソージ、避けろ!」

 

『っ!どっちに……ぐっ!?』

 

 ソージがツッコミながら右上方へと避ける。その場所をビームが通り過ぎた。ビームの飛んできた方向、島の砂浜付近の海上からこちらに向けて急接近する機体が見えた。

 あれが敵。ところがそれは異様を醸し出す光景を映像に出した。

 

『ちょっと!?あれって……』

 

「……冗談?」

 

 疑いの目を向ける私とイリジマ。こちらに向かって来るのは「5機」の編隊だった。それもMSじゃない、戦闘機だ。

数で圧倒する気?だから強気だった?と私の頭は考えた。けれど、それは大きな間違いだった。

 こちらに連続して射撃を行う5機から大きく離れるガンダムDN達。それを過ぎ去り、5機のうち4機がアクションする。

 1機の戦闘機が変形を開始する。その機体を挟み込むように2つの戦闘機が前後から合体、した。変形した3機は人型のシルエットを形成、そして最後の1機が先頭の機首部分を切り離して背部にバックパックとして合体する。

 わずか数舜の出来事の間に目まぐるしく変わった状況。最後の戦闘機も変形してMSへと姿を変える。3人と相対したのは2機のMS。ガンダムDNと同数の、ガンダム顔のMS2機がこちらを見下ろす。

 

 

『さぁ、俺の実力見せてやる!掛かって来い、ガキども!』

 

 

NEXT EPISODE

 




EP18はここまでです。

レイ「うん、素直なままにシン・アスカって感じだったね」

ジャンヌ「あとアスランさんモチーフのキャラと思われる方もいらっしゃったような」

SEEDDestinyと言えばその二人が序盤重要だからね。まぁ最初っから味方陣営なんでこの時点でシン・アスカとの前提大分崩れてますけどね。

レイ「そうだよね。なんかキラ君と義兄弟になってるみたいだし」

ジャンヌ「兄弟にした意味って、ありました?」

けど今回キラモチーフのキャラ姉弟設定ないからね。オースがオーブモチーフだけども。その帳尻合わせみたいなもの。その関係でとあるキャラが生存しているっていうトンデモ世界線なんですけども。これを歴史の修正力という()

ジャンヌ「いや、それだとそのキャラまた死ぬことになるのでは……?」

そうかもね(´-ω-`)

レイ「まぁでもインパルスも早速合体したことだし、次はインパルスとの模擬戦だっ」

というわけで同日公開です。次に続きます。


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EPISODE19 衝動の新人パイロット演習2

同日公開のEP19です。どうも藤和木 士です。

ネイ「EP19はガンダムDNタッグとオースのオースインパルス、それにもう1機との対決ですか」

グリーフィア「もう一機って言い方もうちょっと何とかならないのかしらねー。名前出しておきなさいよ」

正直やった方が良かったかも。残念ながら今話でも名前は出ない。次回までお預け。とはいえ名前は予想できるかもだけど。オーブモチーフで可変機と言えば。

グリーフィア「セイバー?」

名前出さないのはありがたいけど流石にそれはやめい。じゃあ本編をどうぞ。


 

 

『掛かって来い、ガキども!』

 

『こいつ……!』

 

 大和進と名乗った青年の声は、変形合体したMSの方から漏れてくる。明確な挑発にエターナが乗る。宗司も敢えて乗る形でビームライフルを構える。

 直後同時に放ったビームが、わずかに交差して両者の脇を抜ける。そこからそれぞれの僚機も交えた戦闘へと突入していく。

 

『イリジマ!あの合体野郎はこっちがやる!』

 

『ちょっと、勝手に決めないでよ!?私だってそっちを……』

 

「っ……どっちか妥協してくれ……!」

 

 味方回線が鬱陶しい。ガンダムDNのライフルを放ちながら相手の射撃を回避していく。

 正確な射撃でこちらを追い詰めてくる。射撃速度もゼロンのMSパイロットよりも速い。迷いがない。流石は軍人と言ったところだろうか。

 対してこちらはエターナのサポートが十全に受けられていない。なるべく早く打とうとすると狙いがずれて、狙い撃とうとすると先に相手に狙い撃たれる。単純な場慣れが歴然だ。

 正面から迎え撃つのは難しいと思った。だからこそ早々に宗司はエターナに協力を要請した。

 

「エターナ、入嶋。喧嘩してる場合じゃない!」

 

『うっさい!こっちがやるのよ!当てなさいよ!』

 

『流石にあんなこと言われちゃ、私も問屋が卸さないって!』

 

「……っ!」

 

 ダメだ。完全に2人とも頭に血が上っている。それを狙ってというわけではないのかもしれないが、これでは相手の思うつぼだ。

 近接戦が不得手な入嶋のアルヴがビームサーベルを相手の合体ガンダムに斬りかかっていく。それを進は同じくビームサーベルで受け止める。

 

『このっ!』

 

『弱い!』

 

 が、逆に入嶋のアルヴを押し返してビームライフルを撃ちこんだ。間一髪アルヴは防御したが、その機体が海へと落ちていく。

 

『きゃあああ!?』

 

「入嶋!」

 

『大した腕もない癖に!この俺のオースインパルスに敵うもんか!次はお前だっ!』

 

『やってやるわよ!』

 

 エターナの怒声に機体出力がつられて勝手に向上していく。出力が上がっても今ではない。無理に上がった出力から繰り出される機動は容易く相手に読まれる。

 

「ぐっ!」

 

『鈍い!』

 

ビームサーベルでの斬り合う両者。弾いたところで距離を取ろうとすれば、もう1機の狙撃に狙われる。が、そこで海の方面からのビームが狙撃を止めた。

 先程叩き落されたアルヴ、入嶋が鬼の形相の如く急上昇して向かって来ていた。

 

『よくもやってくれたわねぇえぇぇ!!』

 

「入嶋、大丈……」

 

『潰す!』

 

 が、完全に頭に血が上った入嶋は、普段は見せない粗暴な言葉と共に再度オースインパルスと呼ばれた進の機体と激突する。

 普段と全然違い過ぎる……。勢いにどう追い付いたらいいものか……。俺は対処に戸惑う。もっともこっちにそんな余裕もなかった。エターナが怒りに燃えて同じく向かおうとし、加えて進のタッグ相手の機体が隙だらけのこちらへ再度狙撃を行う。

 

『ほら、私達もとっととこいつを潰して、あいつを落とすわよ!』

 

『あたしに眼中ないって?舐めた真似を!』

 

「ちぃ!」

 

 宗司は何とか荒ぶる機体を抑え込みながら、射撃戦に対応する。オースインパルス、進ほどの気迫と射撃精度ではない。そう断言できるが、そもそもの威力がビームライフルより高いランチャーの射撃はライフルの時よりも回避を慎重にする必要があった。

 砲弾から十分な距離を取りつつ、稚拙ながらも弾幕で動きを縛る。が、やはりエターナの存在が鬱陶しくなっていた。

 

『いつまでもこんなやつ相手してんじゃないわよ!あのクソガキ言ったクソガキを私の手で!』

 

「…………っ」

 

 怒りが宗司の心に陰る。不慣れながらも戦っているのに、周りの者達はみんな自分勝手に動く。まるで動物園だ。

 最初に言われていた事を無視して動いて、そんなので勝てるのか?陣泰高校の時こそ、障害物リレーの順位を競い合ってはいたが、楽しみながらも冷静さを欠くことは出来なかった。冷静でなければ勝てるものも勝てないのだ。

 落ち着きは必要だ。なのに、それに至れずにいる。落ち着きがなければ想像なんて出来やしない。イメージなんかよりも先に、湧き上がる苛立ちの感情が抑えられなくなる。

 今までもエターナからの理不尽な言い分や厳しい訓練でも落ち着きという理性が働いてどうにかなっていた。普段は我慢できていたそれは、この戦いの中、セーフティのない暴走装置の中で滾り出す。

 何度かの射撃を繰り返して相手のパートナーが舌打ちする。

 

『いくら私に射撃センスがないからって、時間かかり過ぎよっ!もうチームワークなんてないんだから、さっさとやられちゃいなよ!』

 

 敵パイロットの挑発。それが怒りの引き金となった。

 

「――――うるさいっ!!」

 

『なぁ!?』

 

『っ!?な、何……うぐっ!?』

 

 瞬時に動いたガンダムDNの機体。狙い定めたビームライフルが射撃直後の敵機体のビームランチャー、並びにロングビームライフルを立て続けに撃ち抜く。

 目の前の敵が驚く間に機体の駆動系をフルスロットルに、アーバレスト・バックパックの推力を全開にしてその場を振り切る。その急加速は予期していなかったエターナの息を疑似的に詰まらせるほどだった。

 向かう先には無論オースインパルスとアルヴの姿が。近づく宗司の機体に入嶋が叫ぶ。

 

『アーバレスト!?こっちは手助け要らな……』

 

 だがそれに構わず割って入る形でオースインパルスとぶつかり合う。その衝撃が近くにいたアルヴの機体を弾き飛ばす。

 

『きゃあ!?』

 

『うぐっ!?』

 

 衝撃に入嶋とエターナの悲鳴が響く。攻撃を受け止めた進がその型破りな攻撃に毒づく。

 

『なりふり構わずかよ!味方ごと!やっぱりガキか!』

 

「ガキはどっちだ、遠足の幼稚園児みたいにはしゃいで!お前ら!」

 

 普段は見せない苛立ちを込めて宗司はオースインパルスと激突する。連続した斬撃は受け止められるが、無意識に発動させたドライバ・フィールドの機体性能強化で徐々に押し込んでいく。

 進も先程までとは違う宗司の積極的攻撃に苦戦していた。が、勢いまで飲まれないと感じてか叫ぶ。

 

『こんな、奴に!』

 

 閃撃が交差する。インパルスのビームボウガンがビームソードへと切り替わり、アーバレストのビームライフルを切り裂く。が、同時にこちらもまた左手のビームサーベルでインパルスの右腕を両断した。

 両者共に爆発から緊急退避する。退いていくオースインパルスはそのまま距離を置いていく。宗司はそれを追いかける選択を取った。

 

「逃がすか!」

 

 言葉通り加速しながらシールドビームライフルを放つ。ドライバ・フィールドも併用した追尾ビームがオースインパルスの進行方向を塞ぐように襲い掛かる。

 勝手に追撃していたアーバレストに弾かれていたアルヴの入嶋が呼び止めようとする。

 

『ちょっと、相模!そいつのあい、てぇ!?』

 

『よくもやってくれたわねぇ、当たれぇ!』

 

 だが背後から撃たれてそれどころではなくなってしまう入嶋。撃ったのは先程ライフルを撃ち抜いたインパルスの僚機。シールドに取り付けられたキャノンパーツからこちらを撃ってくる。

 後ろに意識を向けざるを得ない。一瞬だけ機体を上下反転させながら向き合う。その一瞬でシールドビームライフルを撃って伸ばしていたシールドを撃ち抜いて黙らせる。

 

『あぁっ!?このっ』

 

『だったら、先にこっちを!』

 

 ようやく他にも目を向けた入嶋が僚機に向かって攻撃する。ビームマシンガンとガトリングで敵の動きを制限する。

 回避してはいたものの、弾幕の雨に圧倒される敵機。その間に宗司は再びアーバレストをインパルス追撃に動かす。

 

「あいつは……どこだっ」

 

 気の立ったまま、インパルスの機体を探す。シールドライフルを根元から外し、目を凝らす。そこでようやく、インパルスの機体を発見する。同時に、エターナの息切れした声が聞こえる。

 

『こ、このっ!馬鹿っ!私が乗ってるってこと考えろっ!』

 

「なら、お前もこっちが戦ってるってことを分かれ。お互いさまだろ」

 

『何ですってぇ!?』

 

 言い合いする2人。それでも宗司はインパルスの動きを目で追う。そこで異変を察知する。

 

「……なんだ?」

 

『何よ……って、はぁ!?』

 

 困惑する2人の目に映る、その光景。オースインパルスが再び4つの戦闘機へと分離する。そして海上に出現していた戦闘空中艦から似たパーツたちが飛んでくる。

 それらのパーツとコアとなる戦闘機が再度合体する。右腕が復活し、蘇るオースインパルス。背部の兵装はランチャータイプへと変わり、低空飛行でこちらへと向かって来る。

 

「装備を変更した?」

 

『しゃれた真似を!』

 

 いきなりの装備変更に戸惑いが生まれる。空中艦まで出てきて本気かと思ったが、空中艦からの攻撃は無い。寧ろ換装したオースインパルスが早速こちらに向けて砲撃を開始する。

 

『そんな程度じゃ、このオースインパルスは止まらない!』

 

 ビームランチャーを展開し、こちらを襲う。先程相手にしていた僚機の方よりも狙いは甘くない。が、回避して射撃戦に入る。

 ドライバ・フィールドによる曲射を放つ。オースインパルスは海上を滑るように攻撃を回避する。ランチャーに加えてミサイルも放ってこちらの周囲を弾雨の雨あられに呑みこんだ。

 

「ぐうっ……!」

 

『火力が、たか……ああ、もう!酔うって!?』

 

 致命的な攻撃は受けないがそれでも押されていた。このままではやられる。その時だった。苦戦を見かねてか、それとも未だ沸き立つ闘争心か、いつの間にかこちらに来ていた入嶋が援護に駆け付けた。

 

『こっちにだっているって!』

 

『ちぃ!しつこい!』

 

 苛立ちを込めて進が叫ぶ。オースインパルスとアルヴの戦闘が繰り広げられる。

 

 

 

 

 こちらの攻撃を回避し、オースインパルスはビームランチャーに加えレールガン、そしてミサイルランチャーという一斉射撃の圧でこちらを、アルヴを沈黙させようとする。

 凄まじいまでの一斉射。このままでは撃墜判定は確実。今のままのアルヴでは避けきれないのは分かっていた。しかし入嶋もこのまま素直に負けるつもりはない。

私はあのシステムの名を叫ぶ。

 

「エラクス!」

 

 蒼い光に包まれたアルヴが超高速移動で光の軌跡を描く。先程までとは明らかに違う、アーバレストの比にならない速度でミサイルもビームも回避して一気に距離を詰めた。

 いつもと違うシミュレーターでもしっかりとエラクスの負荷は体に掛かってくる。使い勝手も同じだ。あれからエラクスの為の訓練も行った。高速機動も安定している。

 流石にあの最新型でも、エラクスには敵うまい。現にランチャーの火線はどれもこちらを捉えられない。このまま近づいて、連弾を浴びせる!あいつに私の力を見せつける!

 

「はぁぁぁぁ!」

 

 エラクスの高機動で距離が詰まる。近接距離から手にしたビームアサルトマシンガンを乱射した。敵をハチの巣に、するはずだった。

 

『―――――!』

 

「えっ!?」

 

 瞬間、敵が動く。後方へと退避しながら攻撃の回避を行ったのだ。

 普通なら避けられまい。しかし目の前の機体はそのまさかをやってみせる。不規則に放たれた弾幕全てを、一切被弾することなく完全回避してしまったのだ。

 まぐれかとも思ったが、回避してすぐに反撃に転じる様を見て違うと判断する。放たれたバルカンを回避し、続くビームをエラクスの機動で回避につなげる。迎撃がてら反射でビームマシンガンを放った。それすらもあの男は回避する。

 

『……っ!』

 

 先程のような暴言はやや鳴りを潜めて黙る時間が多くなった。その分狙いも鋭くなっている。集中したということか。しかし芯の方までは変わらないようだ。言葉にそれが現れる。

 

『いい加減、墜ちろよ』

 

「断るっ!エラクスの攻撃をまぐれで回避したからって!」

 

『……エラクスなんか、俺には通じない!SEEDの力に遠く及ばないんだ!』

 

 SEEDの力、と自身の力を称したオースインパルスの進はバックパックを分離してこちらに突撃させた。エラクスの機動力でそれを避ける、直後本体からのビームライフルによる射撃が襲う。

 攻撃は回避したがその間だけ意識をそちらに向けてしまった。その間にインパルスは空へと上がる。同時にいつの間にか飛来していた別のバックパックがオースインパルスの背中に合体する。

 背中に装備された二振りの対艦刀に武器を切り替え、こちらへと振りかかってくる。ビームの弾丸を放って応戦する。弾丸を敵は容易く回避し、間合いに入って切り払った。大剣の一撃が胸部を切り裂く。

 

「ぐぅぅっ!?」

 

『まだ!』

 

 切られた反動で距離を取る。オースインパルスが追撃する形で右背面に装備された翼、ブーメランを放った。ビームを形成し、円を描くように飛んできたブーメランがビームマシンガンを切り裂く。

 劣勢に追い込まれていく。エラクスを使っているのに、動きが読まれる。信じられない……。こいつは、一体!?

 逆転を期してヴァルスビーを展開する。

 

「このぉ!」

 

『!!』

 

 しかし放ったビームを大きく迂回する形で回避して、接近戦へと持ち込むオースインパルス。

 エラクスによってシークエンスの時間短縮も行われている。にもかかわらずその射撃を回避された。先程の言葉が嘘ではないと証明されてしまう。

 それでも千恵里は諦めない。ウイングのガトリングにエネルギーを配分する。ヴァルスビーのビームバルカンも機能させる。ところが、放つ前に後方からの爆発でガトリングのエネルギーが供給を停止した。

 

「なぁ!?な、何!?」

 

 機体状況を知らせるモニターに、バックパックが爆発したことを知らせるポップアップが表示されていた。すぐに後ろを振り返ると先程宗司達が沈黙させたはずのもう1機がその手にインパルスのビームランチャーを構えていた。

 先程の換装は仲間に武器を渡すことも考慮しての物だったのだ。もう1機はビームランチャーでこちらを狙う。

 

「くっ……!」

 

 インパルスまでもが近づく中、終わりを確信した。が、後ろの敵機に対し宗司が足止めする。

 

『お前の相手は俺だ』

 

『っ!しつこいわね!』

 

「宗司!くっ!」

 

 後ろの敵を宗司に任せる形にし、接近するオースインパルスを迎撃する。

 

「なめるなぁ!」

 

『っ!!』

 

 対艦刀とビームサーベルをそれぞれ振り抜く。刹那の交差。電撃が走ったのは千恵里の方だった。

 

「あぁあ!?」

 

『お前じゃ、勝てない!』

 

 吐き捨てられた言葉と共に蹴り落とされる。連鎖する爆発。海上へと叩き付けられると同時に景色がブラックアウトしていった。

 

 

 

 入嶋が落とされた。もう1機と対峙しながら撃墜されていく入嶋のアルヴを見るほかなかった宗司は小さく舌打ちする。

 

「くっ……」

 

 もっとうまくやっていれば。そんな後悔が起こる。もっともあの状況で説得に傾けていたら先にやられていたし、成功するとも限らなかった。

 今も入嶋の撃墜を見てエターナが毒づく。

 

『何よ、簡単にやられて。やっぱりこっちが相手した方が……』

 

「お前も、余計な一言が多い!」

 

 苛立ちをぶつけながら対峙する敵機を弾き飛ばす。同時にDBを発動させる。

 

『DB!『メテオドライバレッジ』!』

 

 ドライバ・フィールドで包み込んだ弾丸の発射。フィールドの干渉でビームが分裂して敵機へと襲い掛かった。

 攻撃の対処に敵の動きが鈍る。

 

『な、こ、これはっ!?』

 

 分かれたビームを撃ち落とそうとする機体。ただその努力も甲斐なく分かれたビームを撃ち落としきれずに貫かれ、爆散していった。

 続いて仲間を撃墜されたオースインパルスと一騎打ちの展開となる。装備を再び最初の形態へと戻してビームサーベルの閃撃が光る。

 

『月子をやったからって!』

 

「ぐっ!」

 

 機体を退かせる。シールドビームライフルの銃身が両断された。引火する前にライフルを分離し、続く斬撃をシールドからのビームサーベルで防御する。

 シールドからのビームサーベルは高出力だ。幅の広いビーム刃がオースインパルスのビームサーベルを折る。それでもオースインパルスはバックパック側面の剣を取り出し、ビームを纏わせて斬りかかる。

 両者ビームソードでぶつかり合う。気が抜けない。粗暴な口調とは裏腹にこの進というやつの攻撃は鋭さがある。最初の頃よりも正確に攻撃を行ってくる姿は別人を思わせる。ビームソードに加えてシールド本体も使わなかったら今頃やられているだろう。

 さっき言った言葉が過る。

 

(……エラクスなんか、俺には通じない!SEEDの力に遠く及ばないんだ!)

 

 あの言葉が確かなら、相手はエラクスを超える力、「SEED」を持っていることになる。それが意味するものは分からないがともかくそれが関係しているのは確かだ。

 動体視力で光剣を捌く。ドライバ・フィールドを機体出力に回そうと意識した時、エターナが一際大きく叫んだ。

 

『横!横避けなさい!』

 

「っ!?」

 

 直後横から衝撃が襲う。戦闘機のようなシルエットでまだ相手の僚機が生き残っていたのかと思った。が、正体を見て思わず二度見する。

 襲ってきたのは換装した近接戦バックパック。特攻を仕掛ける形で突撃されたのである。突撃の衝撃で態勢を崩すアーバレストの機体。

 

『きゃあああ!!』

 

「ぐぅ!っ!」

 

 まだ戦闘は終わっていない。すぐに敵の確認を行った。直後機体にビームブーメランが機体に突き刺さる。突撃したバックパックから取り外したビームブーメランだ。

 その勢いでオースインパルスもDBを発動する。

 

『DB 「エクスカリバー・アッシェ」』

 

「ちぃ!」

 

『これで、終わりだァァ!!』

 

 対艦刀が光り輝き、空戦形態の状態で突貫してくる。頭の回り切らない中、ドライバ・フィールドに無我夢中で働きかける。

 トドメの一撃が機体を貫いた。左肩口から両断されて、それが撃墜判定となってシミュレーターが機能を停止する。

 こうして宗司とエターナ、入嶋の模擬戦は終わったのである。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP19はここまでです。

ネイ「オースインパルス、圧倒的でしたね」

グリーフィア「っていうけど、まぁ途中で元君がブチ切れながら言ってたように連携が取れていないっていうのが大きそうだけどねー」

まぁそれは向こう側にも言えそうだけどもね。みんなその場その場でやってそう。

ネイ「唯一連携って言えたのはあの可変機の人の攻撃ですかね……インパルスの射撃装備を受け取ったところが」

グリーフィア「それももしかすると無理矢理外して使ったって可能性ありそうよね~今までの考察からして」

きっと相方の方はちゃんと連携を心掛けていたんだ、ってことにしておきましょう。それが今は一番。

グリーフィア「けどこれは元君雷落としそうな結果よねぇ」

ネイ「元さん……どういう怒り方するんでしょうね」

そこら辺は次回です。というわけで今回はここまで。次回をお楽しみに。


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EPISODE20 衝動の新人パイロット演習3

どうも、藤和木 士です。EP20、21、22の公開です。

レイ「3話かぁ。また多いね」

ジャンヌ「それで大丈夫なんです?」

ため込んでいるけど多分それだけやれるのは今回くらい。それでは早速どうぞ。


 

 

 シミュレーターが終わり、項垂れて出る宗司達。負けたことに対し入嶋とエターナが左右からこちらに言ってくる。

 

「ちょっと負けちゃったじゃない!まだ左腕持ってかれただけなのに!」

 

「ダメージ判定壊れてるでしょ!まだ戦える……いや、それよりもソージ!」

 

「……はぁ」

 

 間に挟まりため息を吐く。そんな3人の姿に蔑みを吐き捨てる大和進。

 

「分かったろ、お前らの機体なんて俺のインパルスの足元にも及ばないんだ。お前ら自体もな」

 

「ぐっ!こいつ……!」

 

「3体1でよく言う!」

 

「事実じゃない。まぁ……あたし落とされたのは誤差だろうけど」

 

『このっ!』

 

 もう1人の方からもそのように煽られて激怒する2人。

 

「ち、千恵里ちゃん落ち着いて……」

 

「エターナ、あなた達頭冷やしなさい」

 

 逆上する入嶋達を保護者のようにクルスとジャンヌ副隊長が抑える。やがて見かねた隊長2人が総評を含めて先程の終了について言及する。

 

「まぁ左腕しか撃墜判定を受けていないと怒る気持ちも分かる。だがこちらの判断で致命的な損傷をした場合戦闘を終了させることを、戦闘途中に決めた」

 

「あぁ、そうだ」

 

「あけざ……いや、影義隊長も、ですか?」

 

「はぁ!?なんで!」

 

「どっかの煽り耐性0のパイロット達の騒音が五月蝿すぎてな」

 

『うっ』

 

 それらを聞いて入嶋達が硬直する。それを見て笑う進達オース陣営。だが笑っている場合ではないと明隊長が咎める。

 

「お前達もだ進。それに月子」

 

「なんで俺まで……負けた月子はともかく」

 

「ちょっと、それどういうことよ進!」

 

 お互いに責任を押し付け合うオース陣営の2人に隊長である明は原因を示す。

 

「お前達は演習相手への誠意が足りない。これはこっちの練度を上げる目的もあるんだ」

 

「こんなやつらで練度が上がるかよ!」

 

「あたしだって連携はちゃんと出来てたし……」

 

「―――いや、そうとも言えないぞ、進、月子」

 

 もめる2人に1人がオースパイロットの中から歩み出る。男性とも女性とも取れる中性的な雰囲気を思わせる人物が言う。

 

「零まで……」

 

「少なくともあの白と黒のガンダム、アーバレストと呼ばれた機体のパイロットにはかなり押し込まれる場面があったように思う。月子も実際に落とされている。進はリヴァイバーシステムが無ければより不利に追い込まれていただろう。味方の支援なしでも、2対1で戦える素養が彼にはある。もしエンゲージシステムとやらでパートナーと完璧に息が合っていたのなら、彼1人に更にかき回されていただろう」

 

「紹介します。火葉 零(ひば れい)。インパルスと同じステージツーの機体、オースカオスガンダムのパイロットで、進達のチームメイトです」

 

 隊長からの紹介で一礼する両者。それが終わると再び零は進達に説く。

 

「それに早期に撃墜されこそしたもののアルヴと呼ばれた機体のパイロットも危機に陥ったアーバレストに支援し、更にエラクスシステムで注意を引いた。高出力の機体をあれだけ使いこなせるのは素直に賞賛すべきだろう。SEEDシステムが無かったら、お前は負けていた」

 

「ぐっ!そんな……こと……っ」

 

 反論しようとした進だが、自信がないのか苦い顔をする。名前が出たので、気になっていたSEEDシステムについて疑問を口にする。

 

「どうも。それで、SEEDシステムって?」

 

 その説明が明から行われた。

 

「SEEDシステム、我らの陣営で開発したパイロットに対するエラクスシステムと表現していいシステムになる。パイロットの脳をオーバードライブ状態、火事場の馬鹿力と同じ状態にして反射速度、攻撃精度などを格段に向上させる。君達も感じたんじゃないか、途中で宗司の動きがやけに鋭くなったことに」

 

「あー……確かに、あのビームマシンガンの弾丸をシールド無しで避けられました」

 

 ポンと手を叩いて納得する入嶋。が、それに進は否定の言葉を入れる。

 

「あんな下手なの、SEEDが無くたって避けれたっての」

 

「なぁ!」

 

「やれやれ……すまないね。話を戻すが、このシステムはインパルスが初めてというわけではない。寧ろインパルスで重要なのはパーツ換装システム「リヴァイバルシステム」だ」

 

「リヴァイバル……ってあの戦闘機にパーツが合体していくやつですか?」

 

「そうだ」

 

 一触即発になる2人を抑えながらこちらにその詳細を語っていく明。

 

「母艦から発進したコアユニット「コアストライカー」に上半身を構成する「トップフライヤー」、下半身を構成する「ボトムフライヤー」を合体。バックパックのこれによって母艦からパーツが供給され、コアストライカーがある限り理論上機体を母艦に返すことなく継戦することが可能となる。加えてバックパックのリヴァイバーの換装であらゆる戦場に投入できるモビルスーツ、それがオースインパルスなんだ」

 

「たった1機で、あらゆる戦場に」

 

「そのコンセプトはうちのエディットバックパックシステムと同じですね」

 

「あぁ。というより、うちの技術が発展元だ。以前のオースストライクの時のように」

 

 前例があると語る元隊長。エディットバックパックについては宗司も知っていた。HOWの機体に標準システムとして搭載される換装システム。かくいう宗司のガンダムDNもバックパックはそのシステムだ。

 戦っている時も片隅で関連性を疑っていたが、やはりそうだったらしい。オースストライクという単語も気になったが、それより前に元とジャンヌが触れられた2つのシステムとオース側の僚機について言及する。

 

「機体の構成を分割する。戦闘用MSの技術発展としては良い方向だ。うちの黎人総司令では辿りつかなかっただろう」

 

「SEEDシステムも十全に機能しているようですね。それに量産型MSのムラマサもステージツーとの連携はいい感じみたいです」

 

「ありがとうございます、これも黎人司令、HOWの皆さんからの技術提供あってこそのもの。開発部を代弁して礼を言わせてもらいます」

 

 感謝の気持ちを表す明隊長。技術供与があってこそ、あの機体が完成した。MSの技術はどこに繋がるのか本当に分からないものだ。

 元も言葉を受け取り、握手を行う。ただ、と元が言及する。

 

「ただ」

 

「うん?」

 

「言わせてもらうならパイロット本人達はあまり納得がいっていないようだ。連携に支障が出ないよう、早速こいつらにお灸は据えておこう」

 

「え゛っ!?」

 

「あぁ……そうですね。もし彼らの連携が取れていれば進達は負けていましたから、こちらも終わり次第反省会ですね」

 

「はぁ!?」

 

 両者から出たのはパイロットが未熟だという意見。再び感情の沸点が低い者達が抗議する。が、それも仕方ないと味方陣営から諭される。

 

「うん、千恵里ちゃん落ち着こう?宗司君怒らせるくらいだったんだし、仕方ないよ」

 

「クルスっ!ぬぅ~」

 

「トワ子ちゃんもあれは無いと思うなー」

 

「だから、トワ子って呼ぶな!私は悪くないっ!」

 

「進に煽られる方も大概だけど、今はダメだったねー。反省しな、シン?」

 

「シンもルナも、まだまだ子どもね」

 

「な、アルてめぇ!」

 

「……そんなに言うなら、お手本を見せてもらいたいものね、カコさん、アル?」

 

 オース陣営の進達の方から、月子の言い分にアルと呼ばれたパイロットが自信満々に名乗ってみせる。

 

「もっちろんさ!この俺新沢 或(にいさわ ある)の実力、次の模擬戦で見せてあげるよ。君達も、ぜひ参考にしなよ、立ち回りをね」

 

「或、あなたもそれじゃあシンと同じよ?」

 

「ははっ、大丈夫だってカコ、そんなに悪目立ちすることはしないからさ」

 

「はぁ……それでは明隊長、次は私、水無月 加子(みなづき かこ)と或、それに零の模擬戦開始で構いませんか?」

 

 隊長に確認を取る加子という女性。明がそれを承認する。

 

「あぁ。予定通りだからな。では元さん」

 

「こちらからも予定通りGチームの残りの呉川鈴児、クルス・クルーシア、クルツ・ディランドルが当たってもらう。チームCの加藤にはジャンヌと一緒に記録を頼む。俺は説教するから」

 

「了解」

 

「さて、行くぞ、お前らの反省会だ」

 

「は、はい……」

 

 元の言葉で俺達はシミュレーター室を退室した。

 

 

 

 

 最悪な気分と共にクロワハジメに連れられてやってきたのは、シミュレータールームの隣の部屋。壁に設置されたテレビ画面には既にシミュレーターに入ったクレシマ達の姿が映る。

 部屋に着くと、座るように言われて着席する一同。そこでどっとため息を吐くあの男。

 

「……はぁ。なんであんな醜態晒すかな」

 

「っ、醜態も何もあっちが馬鹿にする方がおかしいでしょ!」

 

「その挑発に直情的になる方が馬鹿だろ。やられているし」

 

 こっちの言い分も聞かず、好きに言って来るクロワ。それに対しまた苛立ちが募っていく。クロワは額に手を当て追及する。

 

「入嶋も俺が悪く言われたくらいで突っかかるな」

 

「はぁ?あんた如きが悪く言われたくらいで怒るなんて」

 

「……ごめんなさい。元さんのこと悪く言われたのが最初にむかつきました……」

 

「……あんたねぇ……」

 

 イリジマの失態に頭を抱える。別にこんなやつを気に掛ける必要なんてないだろうとエターナは心の中で思う。が、それを見透かしていたクロワが指摘する。

 

「エターナはエターナで、対人関係はしっかりしろ。俺じゃなかったらお前を速攻もとの世界に戻す手段考えてるぞ」

 

「くっ、読まないでよ!」

 

「まぁお前ら2人が足引っ張るのは見えていた。が、そのせいで相模も狂ったのは痛かったな」

 

「はぁ?狂った?」

 

 言葉の意味を理解しかねる。が、心当たりはある。戦闘の途中で突然起こり出したソージ。それを言っているのだろうと。

 怒ったのはそうだろうが、狂ったかと言われればそこまでではない様に思う。事実あの後のソージの動きは無茶苦茶とはいえ一気に戦況を押し込むほどだ。しかしクロワは言う。

 

「戦力的に押し込んでいたのを見れば、いいと思ってしまうかもしれない。だがそんな怒り任せの攻め方が、普段の相模の攻め方かと言われれば、断じて否だ。模擬戦はそういった普段の戦闘に生かすための場。あれをフォーマルにしてしまうのは違うだろう。怒ることは悪いことじゃないけどな」

 

「すみません……2人が五月蝿く思ってしまって」

 

「怒るのはいい。ただ、それで無茶するのは反省点だ。いかに冷静を保つか。どれだけ煽っても動かなければ、やがて崩れるのは煽っている側だからな。普通なら味方が邪魔になるなんてあっちゃいけないことなんだからな」

 

「……っ」

 

 味方が邪魔に、という言葉に舌打ちする。そんなことない。最初からこっちがあいつを狙っていれば良かったんだ。私はそれを主張する。

 

「何よ、こいつの潜在能力があるんだったら、こっちが最初っからあの変形合体するガキの機体を狙っている最初の考えで良かったじゃない!」

 

「そ、そんなのあの時点で分からなかったし!」

 

「はぁ……それだよ」

 

『えっ?』

 

 2人の言い合いを指摘してクロワは言った。

 

「それが相模のあの力を引き出させてしまった要因だろうが。そんな技能、いつも出すよりもいざという時の為に取っておくべきものだ。能ある鷹は爪を隠す。隠すための力が、連携なんだ。もっともその連携も疎かにしちゃいけない。で、お前らは連携と言える連携を今回どれだけやった?」

 

「ぐ、ぬぅ……」

 

「た、助けはしましたけど……あれじゃ足りない、と……」

 

「当り前だろ。その助けたも、隙見て加勢したに入る部類だぞ、相模も」

 

「……すみません、でした」

 

 全員、口をまとめて閉じさせられる。要求が多すぎると思うも、これ以上刺激するのは嫌だと私は我慢して何も言わなかった。

 反省、あるいは押し黙る面々を見つつ、クロワは今行われている試合の方に注目を変えた。

 

「その点、あいつらはちゃんとやってるよ」

 

「クルス達……」

 

 見ると既に戦闘は始まっていた。海の中からヒット&アウェイを繰り返す水中型の機体と戦うクルツの狙撃仕様ソルジアス、海の上、空気中を走る獣型のMAと戦うクレカワのソルジアス、そして空中で戦うのは背中に2つのブースターを背負った青色の機体と、クルスの操るシクサス・リッター。

 3人はそれぞれ別個に別れてそれぞれの機体と戦っている。1対1の対決、これをエターナもあの模擬戦で考えていた。自分達が分離合体のあいつを相手し、イリジマが可変機を相手すればこんなことには……と。だがクロワはそれだけではないことを伝える。

 

「一見して意見が綺麗に纏まったように見えるだろう。しかしお互いがそれぞれの適性を鑑みて理解して対峙している。主要因としてクルスは海中の敵に対してあまり経験がない。彼女を海中に近づけるのは得策ではないと他2人は海に近いところで戦う2機との交戦を選んでいる」

 

「あっ、確かにクルスはあんまり海で戦ったことはないって言ってました。機体も苦手だって」

 

「それを呉川隊長も、クルツ先輩も分かって……でもクルツ先輩もあの機体では厳しいんじゃ?」

 

 ソージのクルツを心配する発言に、クロワは首を縦に振りそれを承知のうえで動いていると予測する。

 

「確かに、狙撃機に急なヒット&アウェイを行うあの水中機を相手にするのは酷だ。だが同時に、出た瞬間を狙い撃てる狙撃手ならモグラたたきの要領で撃てる。もっとも当てるのには相当な技量を求められる」

 

 クロワの言う通り、海上から変形して出た黒いガンダムをすぐに狙い撃つクルツ。その機体は空中で戦闘するクルスに向かって放とうとしていたが、狙われたのを見て発射する前に再度変形して機体を海へと戻す。

 同じく会場で戦闘する四脚形態の緑色のMSもけん制しながらクルツの狙撃を邪魔しようとするが、ビームサーベルで突貫してきたクレカワに邪魔されていた。

 

「お互いが目の前に機体に、他を狙わせない様にしている。ターゲットを集中されない様に。先輩組は動き方が違う。クルーシアも其れに必死に合わせている。よくやっているよクルーシアは」

 

「……そんな完璧な動き、私達に出来るわけ……」

 

 出来ないと言い切ろうとする。それをもちろんと応えて、そのうえでクロワはエターナ達に言う。

 

「もちろんここまでじゃなくていい。やろうとする意識が重要だ。それすら出来てないようだから、今言っている」

 

 そしてクロワはこちらに向けて要点を述べた。

 

「重要なのは3つ、お互いの生かせる点を考えること、いかなる時も冷静に、そして口喧嘩しない。どれだけ単独の力が強い者が集まっても、チーム戦では協調性のない者がいる側が負ける。1人で何かを成せたとしても、それでは1人以上の事は成せない。それが一番響くのがエンゲージシステムでもある。今のままじゃ、俺を止めるなんて出来ないぞ、エターナ」

 

「っ!ぬぅぅぅ……!」

 

 事実を突きつけられて歯ぎしりしか出来ない。元々自分は姉を連れ戻したいがためにやってきた。けれども力が伴っていなければそれは敵わない。

 想っていても、それを実現できる力がなければ何も出来ないのと同じだ。言うならせめてエンゲージシステムを十全に回せるようにならなければ。この男の機体と張り合えるように、つまり、姉と同じだけの実力が伴わなければ言う資格などないと、こいつは言っている。

 重たくのしかかる事実に悔しい思いで顔を俯ける。そんな暇はないとクロワは言った。

 

「目を背けるな。アイツらの戦いを見るのも、連携を高めるのに重要だ」

 

「っ、分かってる……」

 

 モニターにはより苛烈にぶつかりあう両チームが見える。強行突破してくる黒の海戦機を先頭に緑の獣型、そして黒のガンダムが変形して奇怪な戦闘機形態になって無線誘導兵器を放って突撃する。

 それに対してこちらのチームも射撃による迎撃を展開する。それらの攻撃を一身に受け止める海戦型ガンダム。だがどれだけ攻撃を受けても撃破されず、前へと進み続ける。

 

「攻撃が効いてない?」

 

「DNウォールかも……あっ、落ちた」

 

 DNウォールと気づいたイリジマ、彼女の言葉通り海戦型ガンダムは攻撃を受け止めたところで海中へと没した。が、直後それを隠れ蓑に獣型の機体が上空のクルスに飛び掛かった。

 行かせまいとクレカワが前へと出て攻撃を防ぐ。が、直後海からの砲撃が弾かれたクレカワのソルジアスに襲い掛かった。海からの攻撃は無論先程の海戦機。しかし実弾などではなくビームが襲い掛かった。

 海からのビームという事実に驚かされる。

 

「海からビームっ!?」

 

「減衰無しで……」

 

「ちょ、何がどうなってんの!?」

 

 慌ててDNL能力で映像から探ろうとする。が、映像だったのもあってか何も感じられない。それら一部始終を見てクロワが言及する。

 

「DNウォールだ。ビームを包んで、コーティングした。流石オース、面白い技術を開発してくれる」

 

「DNウォールのコーティング……」

 

「コーティングで……なら」

 

 それぞれ思う所がある2人のパイロット。エターナもそのまま映像に目を凝らす。先程の攻撃、直撃したと思ったが、間一髪でクレカワは避けている。

 クレカワの意識が海中に向いたところで青の可変機が動いた。分離したブースターポッドが後方に待機していたクルツを襲う。何とか撃ち落とそうとするがブースターポッドは素早い動きで翻弄する。

 フォーメーションが崩れだすHOW。襲われているクルツを支援すべくクルスのシクサス・リッターが加勢しようとした。それを邪魔する青の可変機がMS形態に移行して防ぐ。

 マシンガンを切られ、格闘戦で対峙するシクサス・リッター。だが対峙する機体が唐突にその機体を押し退ける。と、同時にクレカワを越えた緑の獣型が青の可変機を足場に突貫した。

 交差した刹那、シクサス・リッターの右腕部が斬り飛ばされる。翼のように展開したビームブレイドに両断されたのだ。

 

「クルス!」

 

「決まったな」

 

 直後クロワの言葉を肯定する様にまた海中からビームが放たれる。放たれたビームにシクサス・リッターが反応した。が、残った右足とバックパックが飲み込まれ、海上へと落下、小爆発を起こす。

 そこでシミュレーター映像が終了を示した。モニターを消して、クロワは言った。

 

「少なくとも、今のままじゃあいつらには敵わないのは分かっただろう。あんな騒いでいても相手はちゃんと訓練積んでいる本職の軍人だ。こっちも国の組織、軍と連携している。いくらお前達が学生でも、それを言い訳に連携を疎かにしていいわけじゃない。それを念頭に、今度は大人数戦を挑め。くれぐれも、さっきの仕返しなんて考えるなよ」

 

「ぐっ……善処はする」

 

「善処じゃダメなんだが?」

 

「~!……分かった、了解!」

 

「め、迷惑にならない様に、ですね」

 

「気を付けます。人数多くなったら誤射が怖いですけど」

 

「誤射やったなら罰用意しておくからな」

 

『えっ!?』

 

 その後行われた軍団戦で、エターナ達は様々な辛酸と苦渋をなめさせられるのだった……。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP20はここまでです。

レイ「宗司君、千恵里ちゃん、エターナちゃんみんな反省会になっちゃったね」

ジャンヌ「双方の新人パイロットが、ですけれどね。強いのは分かりますが、どちらもまだ未熟と言うべきですか。隊長方の苦労が……」

元君の気苦労が増えますな。もっともその張本人がかなり曲者なんですがね。

レイ「まぁ今は割となり潜めているよねぇ。今は」

早速次の次で崩れるかもだけどね。

ジャンヌ「駄目じゃないですか……」

それでは次に続きます。


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EPISODE21 自由の剣1

どうも、藤和木 士です。続いてEP21です。

ネイ「サブタイトルが変わっていますね。自由の剣、ですか」

グリーフィア「自由で剣ってSEEDで言ったら、彼よねぇ?」

大方の予想通りです。それに関連したとある小ネタが今回メインですがね。それではどうぞ。


 

 

 模擬演習を終えて艦に戻った宗司達。彼らは疲れを癒すためそれぞれ艦の区画の1つ、大浴場「ハウDe湯」に駆けこんだ。

 ちょっとふざけたネーミングの大浴場だが、そこはHOWの最新鋭艦。疲労回復を主軸にストレス解消や美肌効果などを揃えた湯を特殊な機材で保管、運用していた。

 入った者達の声は様々だ。そして今日の振り返りを各々行っていた。

 

 

 

 

「……聞くんですけど、これ戦闘艦ですよね?」

 

「それがどうした?」

 

 湯船につかりながら宗司はふと、そんな質問を呉川にした。呉川はそっけなく返す。だがそれに込められた意味を同じく湯船を満喫していたクルツが指摘した。

 

「そういう意味じゃないでしょう隊長。こんな快適な施設が、本当に血みどろ混ざる戦闘母艦にあるのかってハナシ」

 

「まぁ、間違ってないからそれでいいです」

 

「あぁ、そういうことか。いや、他の艦はまだ取り入れられていないな。この温泉はまだこういった施設が必要か、という今後の為の調査も兼ねている。後々アンケートが実施されるだろうな」

 

 まだ開発段階にある施設。そう言われて納得がいく。珍しいのも当然だろう。

 温泉施設の感想についてクルツが問題なしと太鼓判を押す。

 

「まぁ俺としてはアリだと思いますけどね。ずーっと部屋の風呂で1日の汗流すばっかりじゃ、変化なくて狂いそうですしねっ!」

 

「おっ、クルツ分かってんねぇ!プロペラント圧迫するけども、やっぱこういうの無いとな!」

 

 クルツに同調して他の部隊の隊員達も同意する。そう言われると納得する点は多い。人に銃を向ける感覚にまだ慣れない宗司。どうにもストレスが掛かってしまっていた。なんとなく感じていたその不快感は、今日の出来事も含めてさっぱりさせたいところだ。

 ふと耳に女性陣の声が聞こえてくる。話の内容はあまり分からない。このHOWで湯の男湯・女湯は建てられた竹風の壁で仕切られていた。眺めていたこちらに、呉川が話す。

 

「念のため言っておくが、その竹の壁の間から隣を見ようとしてもダメだからな。その壁は中にDNフェイズカーボン製の板が仕込まれている。覗き対策にな」

 

「あ、なら良かったです。でも上は空いてますけど?」

 

「そんな奴は懲戒処分だ。それに壁には一定の圧力で電撃が流れるようになっている。くれぐれも気を付けろよ、特にクルツ」

 

「えぇ!?そ、そんなこと、しねぇって?」

 

 きっぱりと言った呉島の言葉をクルツはしどろもどろになって答える。もしそんな事があったら女性陣からの軽蔑は確実。特に宗司達のGチームは女性メンバーが多い。エターナが永遠に許さない光景が見えるようだ。

 エターナの存在を思い起こして、もう1つ覗きの可能性にたどり着く。それの対策について確認する。

 

「それなら多分クルツ先輩は大丈夫ですね。けど元隊長みたいなDNLとかの対策って、これあるんです?あ、もちろんそういった対策に関してちょっと興味を抱いたんですが」

 

「な、ソージお前……!」

 

「ほう」

 

 顎に手を当てて考え込む呉島。ゆっくりと返答を待つこちらに、彼は知る限りの事を教える。

 

「そもそもDNLの絶対数が少ないのはある。だがこの艦は特にDNLの配置人数が多いのは確かだ。今後のお前の成長も含めて一応話しておくと、ありはするな。この風呂のみにDNLの妨害電波が流れている」

 

「あ、やっぱりそういうのあるんですね」

 

 DNLの力を妨害する電波。やはりそれらは既に開発されているらしい。そのメカニズムについて呉川は語る。

 

「聞いている話ではかつてあったDNLへの対抗策として開発されたものが元となっているらしい。モビルスーツの兵装として使われたそれを出力を落としパイロットに不快とならないように調整しているらしい」

 

「モビルスーツの兵装から、ですか」

 

「あぁ。過去にはインターネットなども軍の運用から民間に開放された。その例は別に珍しいことはない」

 

「ま、兵器のお約束ってところだな。この機能が果たしていつ民間に移されることか」

 

「技術が、こうやって俺達の生活が変わっていくんですね」

 

 浴場を見渡す。戦場に似つかわしくない物は、やがて当たり前の日常の枠組みへと取り入れられるのだ。

 そんな現場にいると思うと、これも悪くなかった。と、唐突に話題は今回の模擬戦の反省へと移った。

 

「さて、この施設の充実さに満足したところで、うちの反省会だ」

 

「うっ……全然ガンダムの高性能を出し切れていなかったです……」

 

「ま、いいんじゃないの。無理に出して、味方撃墜なんてことはしてないんだし」

 

「そうだな。相模は少なくともそこに配慮していた。動きが多少悪くなっても今は仕方ない。ガンダムならもっとやってほしかったというのはもちろんあるがな。だがそれはあくまで欲だ。先の模擬戦でそれは見ていたから、それを踏まえてこちらは動かすことが出来た。活かしきれなかったのは俺の責任だがな」

 

 HOWとオースの遠征メンバー全員による部隊戦で、宗司達HOWチームは部隊半数が撃墜、全滅したことで敗北していた。ガンダムDNは両方とも大破判定を喰らっている。Gチームで最終的に生き残ったのは呉川とクルツ、それにクルスもだ。それはつまりガンダムDNを使っている2人だけがチームの中で落とされたことを示していた。

 戦力を十全に発揮させられなかったと反省を口にする呉川。もっとうまくやれていればという気持ちが募るが、呉川は早々に後悔をやめた。

 

「だが相手も最新鋭のガンダムを備えている。やや不安は残るが、彼らがいればこちらの動きもフォローしてくれる、と思う」

 

「フォロー、ですか……してくれると思います?」

 

 あまり言いたくないが、終わってからもオース、特に大和進からの誹りは多かった。隊長の明は協力する様にと言い聞かせていたが、こんなので協力し合えるとは思えない。他のメンバーもそうだ。

 そして何より、こちらにも自身を含めて共闘を嫌がりそうなメンバーがいる。無論それは入嶋とエターナの2人だ。

 それに関して同意見であることをクルツ、そして別部隊の人も示す。

 

「まぁ仕事としてはやってはくれるだろ。でも信用できるかって言われたら、ちょっと学生たちは納得いかねぇだろうな」

 

「そうだねぇ。腕が立つのは間違いない。けどあれだけ扱いづらいと俺達大人でも……」

 

「それに関しては我慢してもらうしかない。この仮想国家には既に敵がいる。今回の任務は、与党と敵対する野党側のオース軍なんだからな」

 

 味方がオース軍なら、敵もオース軍。今回の作戦はそういった特殊な状況だった。オース政府内部の対立派閥の戦争、その敵対側にゼロンが付いている。

 どうか作戦当日までに突っかかるなんてことは無いようにしたい。そう思いながら、宗司は肩まで湯船に浸からせた。

 

 

 

 

「ぁ~……ごっくらく極楽ぅ~」

 

「船にこんな風呂があるなんて、便利よねー」

 

 一方こちらは女風呂。Gチーム女子勢に加えブリッジ要員の光巴や整備主任の来馬もそのお湯で疲れを癒していた。

 

「あったかいお風呂……個室で入るより快適だね」

 

「天然温泉風の仕切りもいいかんじだよねー!」

 

「それより私は、長い髪の子がお湯でぬらさない様にまとめてる髪のうなじが見れて眼福だわー♡」

 

「ちょっ!裸で来るなっ!?」

 

 来馬の変態的行動の被害に遭うエターナ。苦笑いしてそれを眺める千恵里達。最初は艦に温泉とミスマッチを感じていたのだが、入ってみるとやはりいいものだ。疲労回復に加え美肌効果もあるらしい。もったいない位の湯加減を楽しむ。

ふとクルスが今日の結果について振り返る。

 

「けどこのお湯で今日の結果を流せるかと言われたら……」

 

「うっ!……言わないでよクルス……」

 

「あはは、外から見てたけどちぇりーちゃん大分悲惨だったねー。特にあの3可変機に襲撃された時、真っ先に狙われてたよね」

 

「そう、それよ!」

 

 力強く、水面を叩いて怒りを露わにする。あの可変機、青のオースカオスガンダム、緑のオースガイアガンダム、黒のオースアビスガンダムがこちらのGチームと当たった時に真っ先に3機が襲い掛かってきたのである。

 もちろん迎撃はしたし、宗司のアーバレストや呉川のソルジアスが防御に入った。けれどもそこにあの憎きオースインパルスが乱入、抜群のコンビネーションとまたしても放たれた煽りを受けてやけくそにエラクスを発動、突貫してしまった。

 一直線にオースインパルスへと向かって斬りこんだものの、それをなんとオースインパルスは合体を解除、上半身と下半身で別れてビームサーベルを回避されてしまった。

 あまりにも衝撃的でエラクス中にも関わらず千恵里は茫然、その間に囲う形となったオースチームが集中砲火して撃墜される結果となった。

 クルスが助けに入ろうとしてくれたのだが、呉川は放置。とはいえその理由も戦線が崩れるという至極真っ当なもので、模擬戦後謝罪された。

 その時の事をクルスも振り返って謝罪する。

 

「ごめん。でも呉川隊長の言うことも正しかったから……流石に実戦で見捨てたりなんてしたりはしないよ」

 

「うっ……いや、私のせいだから……謝らなくて、いい……」

 

 謝罪こそされたものの、呉川からも短絡的な行動は咎められている。あんな動きはカバーしきれないと。エラクスシステム欠点の1つが一般機との連携が取りづらいという点であると元からも言われていた。

 いつも元隊長が味方機と抜群の連携を見せていたように思っていたけど、あれは単純に他の相手を止めるくらいしか味方機が出来なかったことの裏返しだったんだ……。単純に強力な力は単機でぶつけるのが一番いい。シンプルな考え方だった。

 自身の思い上がりに落ち込む千恵里。と、そんな声を聞いて反応があった。

 

「随分手ひどくやられていたみたいね、あなた達」

 

「あっ、艦長さん」

 

 紫音艦長もまた、こちらの施設を利用していた。体を洗い終え、その大人らしい体を湯船へと浸からせる。

 自分達学生組では到底及ばない体に視線を泳がせる。戸惑いながらも紫音に言葉を返す。

 

「み、見たんですか、結果」

 

「まぁ、艦長としてパイロット達の動きを見るのは今後の戦術のためにも必要だからね。私だけの主観としてだけどまず千恵里、あなたは射撃機としての機体性能を念頭に入れた方がいいのは確かね」

 

「うぐっ!」

 

 自らも一番反省している点を指摘される。アーバレストもアルヴも強力な射撃兵装を備えたバックパックを装備している。特にアルヴはそれらの火力を生かした射撃戦をメインとしていて、エラクスも高機動射撃による圧倒を目指したものだと説明は何度も受けた。

 なのだが今までの戦闘でよく千恵里は格闘戦に持ち込む癖があった。機体特性と本人の適性が合ってないのではと言われることもよくあった。

 機体の采配について紫音もまた疑問を投げかける。

 

「……ねぇ、聞いている話じゃ、あなたの機体の決定は黒和隊長が決めているのよね?」

 

「えっ、あ、はい」

 

 確かめた紫音は顎に手を当て考える素振りを見せる。そして言う。

 

「あの人が適性を見誤る……っていうのは、まぁあり得る話か」

 

「ちょ!元隊長がそんなミスなんてするわけないじゃないですか!」

 

 思わずそう反論する。が、それを待っていたと言わんばかりにため息を吐いて紫音が指摘する。

 

「なるほど、それね」

 

「それって……?」

 

「あなた、大分元隊長に憧れちゃってるわよね。大方、あの動きを真似ようとしてるんでしょ」

 

「っ!」

 

 図星を突かれて言葉に詰まる。見ていたクルスや光巴もやっちゃったと同情していた。追いかけっこをしていたエターナと来馬がお互い頭をぶつけて止まる。紫音は続ける。

 

「悪いけど、あの人みたいな活躍はやめておいた方がいい。あの人の強さは単体のパイロットとしての資質だけじゃない。サポートに回っているジャンヌ・ファーフニル副隊長を交えたエンゲージシステムのおかげだから。普通のMSのパイロットは機体性能で鼻から上回っていなきゃ勝ちようがない相手よ」

 

「か、勝つって、そんなつもりは……」

 

 紫音の言葉を否定する。味方同士なのに、勝つなんてことは無くていいはず。それを言うなんて。

 けれども紫音はそのまま続ける。

 

「そうね。1人でその動きを出来たって、2人分の仕事を出来るわけじゃない。けれどその動きが出来れば、元隊長と敵対した敵を上回れるわけでしょ。過去の元隊長には勝てるかもしれない」

 

「でも、そんなことして意味あんの?」

 

「エターナさん正解」

 

 エターナの意味があるのかという指摘で待っていましたと言わんばかりに紫音は話した。

 

「それが一番言いたいの。動きを真似しても、それは過去の産物。自身に取り込むのは良いけど、慣れないうちから同じ動きをしようとしたらダメ。基礎の動きも出来ないうちからやっていたら変な癖が付いちゃう。射撃機なのに格闘ばっかりやる子を使いこなせる自信は私にはないわ。それにそこに行きつくまでの間に、元隊長だって経験を積んできた上で戦闘に組み込んでいる。基礎も出来ない子が疎かにして戦闘に生かせるものじゃない」

 

「……それは」

 

「それには私も賛成ね。元君機体の方の調整もピーキーなものを使ってるし、多分エンゲージ無しじゃ絶対出来ないと思う」

 

「流石は整備主任、ガンダムも担当しているから、よく分かっていらしゃる」

 

「まぁねー☆仮にも整備主任だし!」

 

「……こんな性格でも、ね。ホント、人は見かけによらない」

 

 重たくのしかかる言葉。確かにこれまでの元さんの動きをアーカイブで見たり、実戦に巻き込まれた時に体感したりした動きを見よう見まねでやってきた。きっとうまくなる方法だと信じて。けれどそれが間違っていたと突きつけられる。

 お湯に顔を半分浸からせて考え込む。その間に紫音はエターナに称賛を送った。

 

「それにしてもエターナ、あなた元隊長のこと嫌っているにしてはよく意味がないって分かったじゃない」

 

 それはきっとよく見ていると言いたいのだろう。しかしエターナは首を振ってそうではないことを言った。

 

「だって、あいつの言葉に大した意味もないじゃない。ちょっと英雄だっておだてられてるからって、調子乗り過ぎよ」

 

「あぁ、こっちはこっちで、単純に嫌いってだけでか。こっちも困ったわ」

 

「ど、どういう意味よ!」

 

 恥ずかしそうに水面を叩くエターナ。揺れた水面で目にまで湯が掛かり、反射的に目を閉じる。目をこするこちらにクルスが気を落とさない様にと話す。

 

「仕方ないと思うよ。戦った私としても、あの人の技量は恐ろしい。機体性能で勝っていたディスティニーライダーとわずかな時間でも互角に渡り合ってる。それで生き残っているんだから。真似しようと思っても自信はないかな」

 

「そう言えばそうだね……高望みしすぎなのかな……」

 

「今は目指さなくていい。元隊長も基礎をって言ってるから、ちゃんと言うことを聞いて前に出たい気持ちをぐっとこらえるのがいいと思うなー」

 

 光巴からもそう言われる。悔しいが、今はそうした方がいいのだろう。名残惜しさを残してそれらに従うことを宣誓する。

 

「うん、これからは射撃をベースにやっていきます」

 

「そうしなさい。と言っても担当は多分中距離射撃がメインになるだろうから、狙撃担当のクルツさんだと難しい……呉川隊長が適任でしょうね」

 

 今後の指導に適任な人物は誰かと考えを巡らせつつある紫音。やっぱり艦長と言うだけあって、そう言った目利きはしっかりしているのか。その中でクルスが紫音に尋ねた。

 

「あ、そう言えばジャンヌ副長ここに居ませんけど、今艦長さんの代わりに艦の指揮をやっていらっしゃるんですか?」

 

 素朴な疑問だった。艦長がここにいるなら、それに近い人物が艦の指示出しなどをやっているに違いない。そうなると適役は元かジャンヌになるのだろう。ところが紫音はそれを否定する。

 

「あぁ、ジャンヌ副長さんだけど、今は元隊長と共に種命島の街に出ているわ」

 

「街に、ですか?」

 

「姉様と2人でっ!?」

 

 それに大きく反応したのはやはり姉の事が心配なエターナだった。またいつものようにわなわなと手を震えさせている。が、そうではないと苦笑しながら制止した。

 

「デートとは違うわよ。ある意味そうだけど、同伴者にはあの影義明さんもいる。彼の案内でちょっと行きたい場所があるらしいわ」

 

「3人で、かぁ。まぁ前の事件の時に会っていたからってことで、その縁でってことかな?」

 

「そう言うことみたいね。ただ私も何の為かまでは聞いていないわね」

 

「あ、私も。なんかあけざ……じゃなかった、影義君とは会うけど、どこに行くのかは聞いてなかったなぁ」

 

「え、えぇ!?さ、三人でな、なな、何、するのっ!?」

 

 紫音と光巴、そして来馬3人がそう語る。それらを聞いてエターナが一気に謎の不安感に襲われる中、千恵里は1つだけ気になる点を見つけ、それを尋ねた。

 

「あけざ?影義さんってあれが本名じゃないんですか?」

 

「あっ、いや~……まぁ、そう、だね」

 

「えっ、言いづらいことなんですか。聞いちゃいけなかった……?」

 

 ギクッと体を震わせて言葉に詰まる来馬に申し訳なさそうに訊き返す。聞いてはいけないことを聞いたような反応で、こちらも困った。しかし来馬は考えてから観念する様に開き直って話し出す。

 

「あー、いや、まぁ別にいいか。後々嫌でも知らなくちゃいけないかもだし」

 

「嫌でもって、それ面倒なんじゃ」

 

「でも知っておいて損はないよ。これはあの事件、オース国内テロリスト「虚ろの零」によるオース解放事件に介入した、あるいは知っているなら他の隊員でも知っていることだね。―――影義明、彼の本名は「明沢 正(あけざわ ただし)」。オースの英雄、「正義の剣」と呼ばれたエースパイロットの1人だよ」

 

 

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EP21はここまでです。

ネイ「初っ端のネーミングセンスが壊滅的なんですがそれは」

グリーフィア「ハウDe湯って名前考えたの誰よ、ろくでもないわね」

命名は伏せさせておこう。メタ的には私だが。

グリーフィア「それだけ分かるだけでも作者がくだらないってことが分かるからいいわぁ」

ネイ「あはは……それで地味にお風呂回だったわけですが、前話に続いて反省会って感じでしたね。そして来馬さんの暴走が……」

また重ねていくのは良くないと思ったんですけどね。どうしてもこのシーンは入れておきたかった。紫音の考えと、あと元君達の行方とかね。来馬さんは、もうこの話の時点で察してください。

グリーフィア「それよそれ。影義君も名前明らかになったし、あの流れにそうとすれば……」

ネイ「会う、んでしょうか?」

それは次にて明らかに、それでは続きます。


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EPISODE22 自由の剣2

どうも、藤和木 士です。EP22の更新です。

レイ「影義明、明沢正。なんていうか、あの偽名と共通したネーミングだね」

ジャンヌ「アレックスとアスランで共通性持たせているっていうのが丸わかりですね」

それがすぐに分かるくらいがこの作品じゃ丁度いいと思ってる。それではどうぞ。


 

 

 影義明の運転する車で、種命島市内を往く元とジャンヌ。この遅い時間から車を出させてしまったことに謝罪する。

 

「すまないな、我儘を押し通させてしまって」

 

「いえ、昼間はこちらも大分迷惑を掛けてしまいましたし、それにお二人なら不用意に言いふらすことはないと信じての事です。くれぐれもご注意を」

 

「えぇ、もちろんです。外出するとは言いましたが、用件については別のやつ言っていますし、上への報告書に関しても私用としておきます」

 

 ジャンヌが言う通り、これから会う人物に関しては他言無用だった。これはオース政府、オース軍においても秘匿性SSの情報だと明から言われていた。だからこそ船の面々にはある程度想像を膨らませる程度、口約束で外へ出る形としていた。

 無論、私用とはいえ何もかも隠して会うというのは褒められたものではない。だがある意味これは私的な要件としてオース軍、影義明という一人の人間に頼んだものだ。個人的に気になった件に関しては一応主要メンバーかつDNL使いとしての権限で独自調査ができる。それも含めれば今回は不用意にそれ以上の情報が漏れはしないだろう。

 それを伝えて外を見る。まだ街灯が薄らと残る街。その光景を見て、3年前の時とは全く違うと言う。

 

「3年前を思い出す。もっともあの時は悲惨だったが、それを忘れるくらい町並みは良い」

 

「この島もこの3年でかつての賑わいを取り戻す勢いですから。観光国家、その姿に」

 

「そうだな。本当に隠すべきものを、隠すために」

 

 それを聞いて押し黙る明。あの事はあまり言われたくないことのようだ。会った時、いや、名前を聞いた時からなんとなく察していたが。

 ため息を吐いて空気を変えるように彼の名を呼んだ。

 

「そんなに昔の自分が嫌か、―――明沢正」

 

「っ!黒和さん、それは」

 

「別に今、聞かれたりしてはいないさ。DNLで分かる。外からは……少々注目されているような感じはあるがな」

 

「なんですって、っ……」

 

 スピードを落とし、周りを見る明。ジャンヌがその方角を教えた。

 

「大体5時の方角ですかね。あの黒コート。でもあれはちょっと違いますね」

 

「っ……違う?」

 

「あぁ。単に車が珍しいってだけなんだろうな」

 

「あぁ……まぁ親父のお古、だからな」

 

 付けられているということはなく、明はホッと胸をなでおろして車が動いていく。数秒して岬の道を走っていく中で先程の話題について明は触れた。

 

「……僕は嫌ですよ。かつて信じたものが、間違いだったと気づけず犯してしまった罪を見るのが」

 

「そうか」

 

 彼の本当の名、それは明沢正だ。かつてこのオースを救った英雄の1人、正義の剣「オースジャスティスガンダム」で最終破壊兵器「リ・ジェネレイション」を、機体を犠牲に破壊して世界を救った英雄。

 だが彼がそれを嫌う理由もまたその最終破壊兵器を巡る戦い、「虚無戦争」で背負った自らの罪が理由。理由を運転の傍ら自ら彼は語る。

 

「俺はかつて、虚ろの零に所属していた。それは決して褒められたものではないです。俺は恥じている。こんな過去を」

 

「そんなもんだろ、寝返った側の心境は。だが忘れちゃいけない。お前は間違いだって気づいたんだから、まだいい方だろう。潰されてもまだ思い上がるあの宗教論者共よりは」

 

 虚ろの零には当時のオースのタカ派、明沢 鳶丸(あけざわ とびまる)に同調したオース軍軍人が所属していた。軍学校に所属していた息子の正もまた父に賛同した。彼の父をその気にさせたのが裏でゼロンと結託していた狂真 嵐(きょうま らん)と呼ばれる男だ。

 鳶丸氏本人は島の発展を求めるべく革命を起こした形だ。正は父の命令でそれがオースの未来があると信じて参加した。無論そんなものは今の時代認められるわけがない。しかし動機は決して一蹴されるべきものではない。方法が間違っていただけ。そして正はそれを直の通り正した。ならいつまでもそれに縛られている場合じゃない。

 元の言葉に自身の考えを吐露する正。

 

「そう、なんですかね。まぁあの連中の考えていることは理解しがたいです。自ら争いを齎し、人を駆り立てるあれは許されない行為です」

 

「あぁ。アイツらは思想諸共、俺が根絶する。……とはいえ、俺達も争いで稼いでしまっているようなもんだがな」

 

 決意を口にしながらも自らの行動を自嘲する。そんな事を話している内に目的地へと到着する。

 やってきたのはやや寂れた様子のダイニングバー。車を止めて、正を先頭に入り口をくぐる。入って最初に思ったのは中の賑わい。外見からは想像しがたいが、人が入っていて活気もある。

 騒がしい客の手が当たらないよう、ジャンヌと順番を入れ替わって正もとい明の後を付いて行く。この賑わいについて明が説明する。

 

「ここは保守派のオース軍が懇意にしている店です。そうそう情報が漏れることはないはずです」

 

「そうなんですか」

 

「スパイでも紛れ込んでいなかったらな。ま、こんな状況だとこっちもDNLの探知が難しい。その面でもいいとは思う」

 

 明が事情を話すと店員が予約席の方へと案内する。バーの奥も奥、特等席に3人で座ると、店員がメニューを置いた後明が告げる。

 

「それでは呼んできます。メニューでも頼みながら少々お待ちください」

 

「分かった」

 

 明が席を外して二人でしばらくメニューを眺める。この状況にジャンヌが少し喜ぶ。

 

「こういうバーに来るのも久々ですね。デートで来れればいいのに」

 

「仕事ばっかりだったからな。二人で落ち着ける時間も少なかった。特にあの新人達の件で色々呼ばれることもあったし」

 

 新人達とは無論相模、入嶋、エターナの三人だ。三人のパイロット申請は大分無理があったのだが、現状報告を行って採用継続が出来ている。上からは早くも心配の声が上がっているので、どうにか心配されることのないレベルまで一刻も早く成長してもらいたいところだ。

 とはいえ筋がいいとしてもそれはあまりに無謀。今は上司である自分達がそれらから護らなくてはならない。色々夜遅くまで立ち回っているために二人でゆっくりと過ごす時間も少ないというわけだ。

 流石に酒は控えておくとしても、料理は観光国家の店。種類は豊富。元は地元の野菜や家畜を使用したチーズドリアセットとアップルジュースを、ジャンヌはペペロンチーノとレモネードを店員に頼んだ。

 注文を終えたところで、明が男を連れて戻ってきた。その男性が帽子を取って顔を見せる。

 

「―――ご無沙汰しています、黒和元さん、ジャンヌ・ファーフニルさん」

 

 やや前髪が立った髪型、優しさを持つ面持ち。黒のジャケットとモスグリーンのスラックスとあまり目立たない格好でやってきたその男性を、元は知っていた。

 三年ぶりとなるその顔に安堵を口にする。

 

「久しぶりだな、大和輝。まだ島を離れたわけじゃない、のか」

 

 大和輝。三年前のオースの英雄、「自由の剣」オースフリーダムガンダムのパイロットが、ここに現れた。

 彼と会うこと、それこそ元が明を頼ってお願いした用件だったのである。元の問いかけに申し訳なさそうにして輝は答える。

 

「はい、隠居と言っても目立つ軍の仕事を離れただけ。町はずれの孤児院で施設整備の仕事をさせてもらっています。里奈と一緒に」

 

「里奈さんも元気なんですね?」

 

「はい。残念ながら今回は来られないんですが代わりに僕が話せることは話したいと」

 

 輝の言い方に少しだけ引っ掛かりを覚える。ジャンヌとも見合わせるが、今は話が聞けることを優先して席に着く。

 机を挟んで座った両者。輝は最初に謝罪をした。

 

「まずは謝罪です。軍を抜けていたこと、そして今日正から聞きましたが、僕の義理の弟の進がご迷惑を掛けてしまったこと、本当に申し訳ありません」

 

「まぁ、そんなに謝るな。こっちも驚いたっちゃ驚いた。けどお前の性格から言えば、軍を抜けたのはあり得た話だ。お前の義理の弟も、こっちの反面教師としてはいい感じだ」

 

「仕方ないことだとは思います。特に輝さんは戦時中の民間人徴兵の形で急遽ストライクのパイロットに指名されてしまったわけなんですから」

 

 謝罪に対しこちらは早々に顔を上げるように言う。彼は元々軍人ではない。オースの工業学校の生徒だった彼が、たまたま学校の地下に隠されていたMSに乗って自身に秘められた才能を開花させた結果、戦いを終わらせる切り札となったに過ぎない。

 そういった意味では元もそれに当てはまる。だが自分はジャンヌと共に戦うことを選んだ。ならば彼が戦いを辞める理由も理解できた。だからこそ口惜しさもこぼしてしまう。

 

「しかし、戦力が落ちた、というのは小さくない事象だが」

 

「それは……本当に申し訳ないです」

 

「元さん、輝の選択は」

 

「あぁ、俺達が決めつけるわけにはいかない。お前と大守里奈の未来はお前達が決めていくべきこと。俺達がどうこう言うことじゃない。俺達が戦う選択をしたように」

 

 否定などしない。人の道はその人が決める。人生はそういうものであるべきだから。

 そのうえで今の島の危機についてどこまで知っているのかを尋ねる。

 

「それで、お前は知っているんだろうな。今回俺が来た理由は」

 

「はい。一応、当事者と言えますから……特に里奈が」

 

 かつてのオースの首長、大守里奈が関わる。今回の件に彼女の恋人である輝が無関係なはずもない。それについて輝も語る。

 

「一応、里奈とも相談してはいますが、今僕らが動いても却ってオースの人々の混乱をもたらすと思います。そこをゼロンに逆利用される可能性を考えるとなおさらです」

 

「当然か。軍にいたとしてもそもそも介入しづらかった。むしろいた方が軍の士気の混乱を招くわけだ」

 

「だからこそ、今回は俺が解決するんです。もっとも、味方陣営が信用しきれないので元さん達HOWに協力を依頼したわけですが」

 

 明の言葉に不甲斐なさを感じた。本当に今回は自分の手でどうにかしたかったようだ。味方を信じられないと話す明にジャンヌは訊き返す。

 

「味方を信じられない……ということは、今日戦った中に事前情報にあった美愛派がいると?」

 

 そう聞くと明はやや自信なく首を振る。

 

「確証はありません。ですが、そうとしか思えない出来事が、以前にあったんです」

 

「その出来事、というのは?」

 

 尋ねるもそれは明かせないと明は再び首を振った。

 

「それについては、明かせません。すみません」

 

「……そうか」

 

 気になる感覚を感じたものの、これ以上は彼らも触れてもらいたくないという意志から詮索は止める。

 でも、と輝は自身の義理の弟、昼に会った進に関する話題に触れた。

 

「進には本当に悪いことをしたと思っています。僕の選択自身を辞めるつもりはありませんが、まさか、そのせいであのSEEDシステムに関わることになるなんて……」

 

「SEEDか。お前達種命島で生まれた子ども達しか扱えない秘密の力」

 

 あの場で元も見た力は3年前の虚無戦争の行方を左右した力だ。出自としては問題ないが、問題はその機能の開発者。

 

「今回の件では完全に開発者、種田博士は美愛派にあると見て間違いないです」

 

「事前情報通り、か。あのじーさんなんかやらかすと思ってたが案の定だな」

 

 SEEDシステムの開発者が敵側に着いている。この事実は既存のSEEDシステム機の運用に不信感を抱かざるを得ない。未だに種田博士の国内での行方が掴めていないのは間違いなくあの美愛派に匿われているからだろう。

 輝は博士について述べる。

 

「あの人のやったことは、罪だ。僕や正、進がそれを証明してしまっている」

 

「止めるさ。俺が、お前の分まで博士の野望を終わらせる」

 

「……そんなに思うなら、戦えばいい」

 

「……そうですね。でも、今の僕にはどうしてもそれは叶わないんです。今の僕に出来るのは、ただ明や進、元さん達が無事に帰ってきてくれることだけです。卑怯ですよね、こんな僕は……」

 

 自嘲を交える輝。その口ぶりはまるで戦いたくとも戦えないことを示している。

 いずれにせよオース軍はこの限られた中でも国内で起ころうとする侵略に対し精一杯足掻こうとしている。それに協力することは変わらない。ともかく当初の目的は果たした。ここまでやってきてくれた輝に礼を言う。

 

「すまなかったな、輝。大守里奈と関係のあるお前が本当に今回の件に関わっていないのか気になってな」

 

「そうですか……。いえ、心配させてすみませんでした。今回の件の解決、お願いします」

 

「あぁ」

 

 事件の解決を改めてお願いされ再び握手を交わす。そのタイミングで頼んでいた料理が運ばれてくる。

 

「わぁ、やっぱり観光国家なだけあっていい見栄えですね」

 

 運ばれてきた料理にジャンヌの興味が向けられる。元の注文したチーズドリアもいい感じの焦げ目が食欲を沸き立たせる。

 それらの料理の評判と代金について輝が言及した。

 

「ここの店はかつての保守派の人が開業した店で、島の隠れた名店として評判良いですからね。あと代金は僕の方が払います」

 

「輝、代金は俺が払うと言っただろう?」

 

「僕がいなかったからここまで来てもらうことになったんだ。それくらいはさせてよ明。元さんもどうかここは払わせてください」

 

 明の反対も押し切って願い出る輝に、少しだけ考えるように顎を抑える。ジャンヌからの視線を感じつつも元はそれを了解した。

 

「分かった。そう言われるのなら、ありがたくそうさせてもらおう」

 

「ありがとうございます。僕たちも夕ご飯はまだだから、何か頼もっか、明」

 

「はぁ……分かったよ」

 

 

 

 

 料理を食べ終えて明の車でオース保守派の基地へと戻ってくるジャンヌ達。明と別れて元と二人で母艦へと歩く中で問いかける。

 

「ねぇ、元は気づきました?」

 

 何に、とは言わない。だが元はその続く言葉が分かっているように返答をする。

 

「なんとなくな。あいつらの隠し事、ジャマーで読みづらかったがこっちに知られたくないものがあるっぽいな」

 

「やっぱり……」

 

 ジャンヌもまた同じ感覚を感じていた。今回の件に関係していると思われる案件についてと、代金を払う時のやり取りの二つに何か隠していると感じたのだ。

 元と同じで何を隠しているのかは見えなかった。二人ともDNLの読心能力を防ぐジャマーを身に着けていたため読み取れなかった。ある程度弱いジャマーなら問題ないが、流石にあのオース軍に所属する、していた二人、機材は十分すぎた。

 

「あの二人だから裏切っているということはないだろう」

 

「高をくくるのは正直危ないと思うんですが……でも、その方が高いですよね」

 

「あぁ、問題はそこまでして隠さなければならないことを、二人の間で共有しているってことだ」

 

 あの二人は幼少期からの幼馴染だ。というより、この島の若者は大抵島という小さな大地で暮らしているために、同年代はほぼ顔見知りだと聞く。

 仲がいいのは良いことだ。もっともその友情も三年前の戦争で崩れかけたのだが。それはともかくもし隠しているのであれば大きいものだと二人は感じていた。この時期で隠さなければいけないとなると間違いなく今回の件に関わってくることだろう。

 元も先程の密会を振り返ってため息を漏らす。

 

「俺達にも明かせない情報。もう少しだけ訊きだすべきだったか?」

 

「正直聞きたい気持ちはありますね。でも明日からもまた忙しいです」

 

 明日からは明後日の任務当日に向けての準備をしなければならない。今日の夜をこの時間に当てたために余裕はない。

 気になりはするものの今は二人を信じて明日に備えるべきだった。元も明日からの予定について触れる。

 

「明日は関係各所の下見と謁見だ。あの妹様も大変な中で時間を作ってくれている。そっちに集中だ」

 

「えぇ。エターナと衝突しないといいんですけれど……」

 

「……あいつも今は首長だ。エターナとはそうぶつかることはないだろう」

 

 頭を抱えながらも何もないとお祈りする元。二人はそのまま艦へと戻っていくのであった。

 

 

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EP22はここまでです。

レイ「大和輝君は、やっぱりキラ・ヤマトって感じの人だったね」

ジャンヌ「戦いたくない、だから戦いの火種になることを拒んで表舞台から姿を消したわけですか。大守里奈という方と一緒に」

まぁやはり、キラ・ヤマトと言えばその不殺・平和主義なところですからね。それを自分なりに解釈するんでちょっと大変。アニメもっと見なきゃって思う。

レイ「でも藤和木ってシン君派だよね?」

ガンダム見始めた当初はキラ派けどね。やっぱシンの方が主人公のままストーリーを展開した方が良かったって思う。マジで変更になっていったの許さん。
とまぁそれは置いておく。

ジャンヌ「それはそうとして、元さんがその大和輝さんと会った理由は単に心配だったから、でしょうか?」

その解釈で合ってる。そこら辺はまた後々展開していくからね。という所で今回はここまでです。次回もお楽しみに。


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黒の館DN 双翼英雄譚編 第4回 前編

どうも、藤和木 士です。

黒の館DNの更新です。第4回前編はオース軍ステージツーシリーズメンバー並びに量産型MSムラマサの紹介です

それではどうぞ。


 

 

士「今回も始めて参ります黒の館DN」

 

ネイ「今回はオース勢の紹介がメインになりそうですね」

 

グリーフィア「今回から私達の紹介なくなってるしスマートに収まりそうよねー」

 

士「SSRじゃゲスト呼んでた関係で毎回言ってたけど、よくよく考えると大体今作はメンバー固定だから1、2回答えるだけで問題ないって発想にどうしていままで気づかなかったんでしょうねぇ(´・ω・`)」

 

ネイ「じゃあ早速行きましょうか。人物紹介からです、どうぞ」

 

 

大和 進(やまと すすむ)

性別 男

身長 168cm

髪色 黒に近い紺

出身地 日本 種命島 観光国家「オース」

年齢 17歳

誕生日 9月1日

血液型 O

好きなもの 読書、機械いじり、タコス

嫌いなもの 貝類、ナス、キノコ、酸っぱいもの系、戦争、スケート

愛称 OG2、シン

・日本国内に存在する観光の為の島「種命島」。それを管理する疑似国家「観光国家オース」で設立された防衛軍「オース軍」に所属するMSパイロット。オース軍の中でも明日那派に属する。エース用の機体「ステージツーシリーズ」の中でも汎用性に富んだ「オースインパルスガンダム」のパイロット。オースの英雄、大和 輝(やまと ひかる)の家族に引き取られた養子である。これでも新人。

 元々オースで両親と妹とで平和に暮らしていた。が、種命島全域で発生した虚無戦争でオースフリーダムとホロウカラミティの砲撃による激突で両親が蒸発。妹と二人だけで生きていくことになりかける。しかし戦闘後オース軍里奈派に保護、事情を聴いた輝から謝罪と大和家への養子縁組を提案され、戦後妹と共に大和家に養子入りする。

 その後軍学校を経てオース軍に入隊するが、それ以降も義兄を執拗に嫌っている様子を見せる。上官の影義も扱いに困るほど、感情に任せがち。命令違反、規律違反を犯してしまいがちで他の隊員とのもめ事も多い。ただしオフの時などはリラックスしており、純粋で穏やかな性格が素であると周囲も評価している。この辺りは相応に新人である。

 作中で表向きには合同軍事演習にやってきたCROZE部隊の新人を見て楽勝と舌を巻いて宣戦布告。その宣言通り宗司とエターナのペア、そして入嶋を月子と共に瞬殺した。

 モデルは機動戦士ガンダムSEEDDestinyの「主人公」のシン・アスカ。……もう一度言う、「主人公」である。コンセプトとして「彼がもし、そのままオーブに在留していたら」をベースに出会いを変更している。原作の仲間ポジションの人物もいる。原作は尊重していく予定である。原作との大きな違いとして、キラポジションの大和輝との出会いが早く、大和家の養子になっている。そして何より妹が生きている。ちなみに改名前は「飛鳥 進」である。なおこの名前、本作でも多々要素を取り入れている某ロボットシュミレーションゲームのシリーズの一つのネタとして存在する名前だったりする(読みはもちろん違う)。愛称は名前そのものである。

 

火葉 零(ひば れい)

性別 男

身長 168cm

髪色 琥珀色

出身地 日本 種命島観光国家「オース」

年齢 17歳

誕生日 8月29日

血液型 O

好きなもの 観葉植物、ピアノ

嫌いなもの お調子者

愛称 OG3

・オース軍の明日那派に属するパイロット。物静かで冷静に任務をこなす性格。

 進と同じくオース軍の新人、かつ優秀な成績を収めたエース候補生である。空間認識能力に優れ、ステージツーシリーズで改良されたファンネルシステム「ドラグーンシステム」を備えたオースカオスガンダムに搭乗する。

 主に進のブレーキ役として宥める側に回ることが多い。階級が上でも間違っている事には間違っていると言える人物で、学友時代の者達は彼のその性格を好いている。

 MS操縦技能でも素晴らしい技能で、戦闘経験のあるクルスと互角以上に渡り合うほど。

 本編で隊長である影義やチームメイトの進達とCROZEを出迎え、前述の通りクルスと戦って優勢のまま戦闘終了時間となった。

 モデルは機動戦士ガンダムSEEDDestinyのレイ・ザ・バレル。

 

影義 明(かげよし あきら)

・オース軍の明日那派を率いるMS隊隊長の男性。年齢21歳、身長173cm、血液型O、誕生日は10月21日。

 オース軍明日那派の癖の強いMSパイロット達に翻弄されているが、それでも若いながら彼らを取りまとめる。自身もステージツーシリーズのMSであるオースセイバーガンダムに搭乗し、実力が高いことを知らしめている。

 実は、この名前は偽名で正体はかつてオースを混乱に陥れた虚無戦争の発端、国内テロ組織「虚ろの零」(かつてのゼロンの協力団体の一つ)に所属し、しかしその理念に疑問を抱き、幼馴染である大和輝と共に戦争を終わらせたオースの英雄の一人「明沢 正(あけざわ ただし)」である。かつての搭乗機はオースジャスティスガンダム。

 本編ではCROZE部隊の出迎え時、久々の再会となった元とかすかにアイコンタクトを取る。その後の前倒しになったシミュレーター模擬戦では趣味のプログラミングで更新された機体データを素早く投入して可能な限り仕上げた。本人は模擬戦には参加しなかったものの、もし戦っていれば元とジャンヌのペアと戦っていただろうとされる。その後元達の願いを聞き、保守派である明日那派のたむろするバーで大和輝と会わせる。

 モデルはアスラン・ザラ。

 

 

鷹宮 月子(たかみや つきこ)

・オース軍明日那派に属する新人パイロット。進達の同期。18歳、身長157cm、血液型A、誕生日は7月27日。オレンジ髪のショートである。妹にオペレーターの鷹宮 芽衣(たかみや めい)がいる。

 ステージツーシリーズの援護部隊に所属しており、進と組むことが多い。ムラマサの砲撃戦仕様を使用して支援するが、本人自体が射撃は下手と公言するほど相性が悪い。ならなぜその装備なのかと言えば、これ以上前線に回すのは逆に後方の戦力を減らすことに繋がるためである。

 本編ではCROZEを出迎えた後、模擬戦にガンダムDNペアとの対峙に進とのタッグで参加する。

 モデルはSEEDDestinyのルナマリア・ホーク。妹の芽衣はメイリン・ホークがモデル。愛称にはよく呼ばれるルナも含まれる。

 

水無月 加子(みなづき かこ)

・オース軍のステージツーシリーズのパイロットを務める女性。23歳。茶髪の長い髪を持つ眼鏡の女性。

 オースガイアのパイロットを務める。オースガイアにはシステムの関係上非常に高い操縦技能が求められ、加子はこれまでの誰よりもそのシステムに対応できたパイロットであった。が、それでも完全に引き出せておらず、それに対し加子は今のままでも十分だと自信満々に応えている。

 模擬戦ではチーム戦で参加。CROZE部隊の連携を崩している。

 

新沢 或(にいさわ ある)

・オース軍のステージツーシリーズのパイロットを務める青年。17歳。海のような青と血のような赤のメッシュの入ったさばさばとした髪型。

 軽いノリのある気分屋な性格。進と別の意味で命令違反に近い危険行為違反をしかけている。が本人も仲間意識は強く、訓練では負けず嫌い。特に進とはその点で競争し、意気投合することもある。動きに制限の出やすい水中戦に関してはオースの明日那派の中でも非常に高い適性を持つ。しかも地上でも動きが重いオースアビスを軽く扱える腕を持ち、新人パイロットの中では火葉に匹敵する力を持ち合わせる。

 模擬戦に参加した際にはクルツと主に戦い、詳しい詳細は語られなかったものの、圧倒的な砲撃戦と水中機動を行った。

 モデルはSEEDDestinyのアウル・ニーダ。原典のアビスのパイロットであり、性格も引き継いでいる。ただし敵対していたシンモチーフの進とは馬が合っているなど違いはある。髪色の青も彼以上に青い。

 

 

ネイ「以上が人物紹介ですね」

 

グリーフィア「オース編はそのもの、機動戦士ガンダムSEEDDestinyのリ・イマジネーションな世界観なわけよね。前のディスティニーライダーみたく」

 

士「そうだね。私達の知っているガンダムの作品の別側面を描くっていうのが今回の第3部のコンセプトの1つだし」

 

ネイ「しかし……そちらと似て扱いづらいパイロット達が勢ぞろいしてますね……」

 

グリーフィア「シン・アスカをベースにした大和進、ルナマリア・ホークをベースにした鷹宮月子、そしておそらくレイ・ザ・バレルモチーフの火葉零か……。ま、そこは原作とも同じチームっぽいけど、アビスは奪われた後のパイロットと同じかぁ」

 

士「まぁそこら辺はちょっとね。外伝の方にアビスの制式パイロットさんいるけど、そっちにしなかった理由はこっちの方が強いだろうなぁ(´-ω-`)とかあったりするわけですよ」

 

ネイ「ディスられているマーレさん」

 

グリーフィア「そこらへんは作者のさじ加減ねぇ。ここらへんであと言うことと言えば大和輝の紹介がないってことなんだけど」

 

士「輝さんに関してちょっとここら辺での紹介は出来そうにないため、今回は無しとしました」

 

ネイ「そうなんですね」

 

グリーフィア「そうは言っても、文字数で紹介できないのか、それとも話的にまだ紹介するわけにいかないのかどっちとも取れる言い方だけどね」

 

士「はいはいどっちにしても言わないよ(´・ω・`)と次はMS紹介」

 

グリーフィア「MS紹介は前後に分けて紹介ねー。まず紹介するのはムラマサ。名前は出てきていないけど月子が模擬戦で使っている機体みたい。それではどうぞ~」

 

 

OAM-04

ムラマサ

 

機体解説

 オースが開発した最新鋭の量産型MS。可変機構搭載で、それを生かした高機動空中戦を得意とする。頭部は量産型に珍しいガンダム顔。

 変形機構はかつて可変機を開発したHOWのエアフォース方式ではなく、自衛軍のとあるMS部隊の開発した「アドバンスドZ方式」が採用されている。これは胸部変形させてその内部に腕部を折りたたみ、更にその上からシールドで蓋をする変形機構で、この方式によりDNジェネレーターは背部のフライトユニットに格納する。

 武装に関してもシンプルなものが多いが、シールドに換装ギミック「アーマードアタッチャー」を搭載する。シールドを軸としたエディットウエポンシステムであり、本機のシールドがほぼ変形の為だけにほぼ使用されることから採用された。またバックパックの装備も一部換装が可能。

 それ以外にも装甲は軽量金属カーボンを採用するなど、徹底した軽量化が行われ、ゼロンともHOWとも違うMS運用論がオースの理念である「兵器の正しい運用」を体現する。

 コンセプトは「SEEDDestinyのムラサメにZの系列機の要素詰め込みをする」。原型機をベースにしているムラサメだが、バリエーションは狙撃戦仕様のオオツキガタと早期警戒仕様しかなく、今回はそのアプローチ元としてZ関連の機体の中でも特に回避を優先する機体として「ガンダムデルタカイ」のシールドを参考にしたギミックを搭載する形となった。それ以外にも武装はZ関連に逆に影響を受けた構成となっている。

 

 

【機能】

・変形

 本機最大の特徴。オースは島国であり、航空戦力は必須となっていた。瞬時に攻め込んでくる敵のもとへと向かい、迎撃、素早く帰還し補給する。前回の事件で島を狙う勢力が判明したことでこの計画は加速度的に進められた。

 そこでこの要求にもっとも合うのが可変機であるとの結論に至り、元々あった「O1アストレアン」をベースに可変機構を搭載する方向で開発が開始。そこに舞い込む形で自衛軍の一部隊、自衛軍の中でも政府に直接牙をむく、あるいは国全体の危機に対抗するための特殊捜査権限を持つ「輪舞の鈴」が過去に開発した機体の没設計「アドバンスドZ方式」が手に入り、それをベースに本機の可変機構が構成された。

 変形機構のモデルはムラサメの物をそのまま採用する。なおアドバンスドZ方式は言ってしまえばZガンダムの仕様の一つ、ウェイブシューター装備の変形法の事であり、輪舞の鈴の開発予定だったMSとは本世界版ウェイブシューター式Zガンダムのことである。

 

・アーマードアタッチャー

 シールドのパーツによる武器換装システム。共通規格によるシールド下部のパーツをコネクタで接続、いくつかの武装に換装・装備される。

 参考元はガンダムデルタカイのシールドギミック。ただしあちらのシールドと同じわけではなく、ムラサメのシールドがベースの為搭載する武装規模は少ない。

 

 

【武装】

・CIWSバルカン

 頭部に搭載する実体バルカン砲。オースのMSには基本的に装備される。

 モデルはムラサメのCIWS。

 

・O2ビームライフル

 本機の主兵装となるビームライフル。不使用時には右腰に懸架される。組み替え可能なライフルとなる。

 変形時には機体の右側面に装備される形となり、副砲として機能する。銃口からはビームサーベルが形成可能で、MS形態時には緊急時の格闘兵装となる。

 組み換えでロングライフルにすることが可能で、その際の飛距離は旧ブラウジーベンガンダムの射程と同等と量産機の兵装としては充分なほど。

 モデルはムラサメのビームライフル。組み替え機構はオリジナルだが、ロングライフルのモデルもガンダムデルタカイのビームメガバスターとなっている。そちらよりはやや小さい構成になっている。

 

・ビームサーベル

 本機の左腰部に装備される格闘戦用兵装。本機においては珍しく一本のみの装備となっている。

 本機は格闘戦よりも変形を交えた射撃戦が想定されるため、あまり本兵装への依存度が少ない。加えてビームライフルもサーベルとしての機能を持ち合わせるため、本兵装は一つとなった。ただし威力は水準をキープしており、最新鋭のステージツーシリーズと切り結べるほど。

 

・フロントアーマー搭載ビームキャノン

 フロントアーマー内部に装備されたビームキャノン。フロントアーマーの先が砲口となっている。

 フロントアーマーは自律的に稼働し、敵へと狙いを定めて発射される。変形時には前方に向けては放てないものの、後方への発射が可能でこれを生かして離脱中に敵の地上部隊を撃つことも可能。

 この位置はムラサメにおける空対地ミサイルが存在するが、本機においてはゼータプラスの腰部ビームキャノンが発想元となっており、それを空対地ミサイルと置き換えた形となる。

 

・空対地ミサイルランチャー

 脚部装甲内に格納するDN仕様の空対地ミサイル。鏡開きに開いて発射する。

 MS形態でも使用は可能だがどちらかと言えば変形中に使用する兵装。変形中に使用すれば下を向いた状態なので重力も利用して着弾速度が上がる。

 ムラサメの空対地ミサイルはこちらに移動することとなった。

 

・エアシューターバックパック

 機体背部に装着される、ウイングとテールスラスターがセットになったバックパック。

 変形時の上面とバックパックを担っている。テールスラスターは根元部分にビームキャノンの砲身を備え、MS形態時には自動的にその部分は隠されるようになっている。ビームキャノンは突撃時にビームサーベルを形成可能で、突貫した後貫くという攻撃法も編み出されている。

 バックパックとしての機動性も高く、可変時はその空力特性から他機のサブフライトシステムとして運用されることも(もっとも、その大半は他勢力の機体か旧式のO1アストレアンになるが)。ウイングパーツには追加で対艦ミサイル、あるいはガトリングを装備でき、テールスラスターなどもレドームやロングビームランチャー装備に交換可能。総じて、本機の核を担うパーツである。

 モデルはムラサメのバックパック。機能もほぼそのまま受け継ぐ。

 

・レドームユニット

 テールスラスターと交換で装備される早期警戒ユニット。レーダー索敵の範囲が通常の5倍にまで拡張される。

 直接的な攻撃機能はないが、レドームによる電子攻撃が可能で敵のセンサーを狂わせるなどして応援の到着まで持ちこたえることが想定される。また現在では無人機の開発にも役立てられており、将来的に無人ドローンの管制機としての役割を持たせる予定。

 モデルはムラサメのレドーム。ただし無人機のコントロールはこちら側の設定である。

 

・ロングビームランチャー

 バックパックのテールスラスター横のスリットに選択装着される、長射程ビーム砲。最大で二門装備される。

 MS形態でも肩から掛ける方式で使用が可能で、支援砲撃に最適。ただし重量がそれなりにあるため扱いが難しく、一本装備だとバランスが更に崩れる為、エース用の装備として位置づけられる。そもそもこの装備自体コンセプトである高機動空中戦を阻害するという意見もある。とはいえ好むパイロットもいるため完全にパイロットの好みに左右される。

 モデルはリゼルのメガビームランチャー。装備法など同じ。

 

・アタッチャーシールド

 機体の左腕に装備される実体対ビームシールド。先端部を上に装備する方式である。

 本機の可変機構における最重要パーツで、これが下面に露出することになる機体胸部フレームを保護する。

 シールド下部は換装式の武装システム「アーマードアタッチャー」となっており、ここは丸ごと取り外して換装することが可能。通常はビームキャノンとミサイルランチャーである。

 モデルはムラサメのシールド。アーマードアタッチャーはガンダムデルタカイのシールド武装換装から。

 

 

グリーフィア「これがムラマサのデータね。ま、SEEDDestinyのムラサメと宇宙世紀シリーズのリゼル・デルタプラス系列機を融合させた感じの機体としてイメージしてるわけね」

 

士「そういうわけです。どっちもZガンダム系列をメタと作中それぞれからアプローチしている機体。この世界でもZ当たる機体が存在していて、その流派を広げていく途中でこんな感じの折衷型が出来上がったって感じです」

 

ネイ「折衷型……ということは、ここから洗練された形になっていくと?」

 

士「その可能性も十分ある。特に量産型なんて扱いやすさが重視される傾向に普通ならあるから、例えば換装機能を削るって方針も今後登場するかもしれないわけだ」

 

グリーフィア「けど作者君は割と盛っていく傾向しているわよね?」

 

士「そっすね(´・ω・`)」

 

ネイ「あんまり武装多すぎると前のSSRの時みたいな悩み抱えますよ?」

 

士「既にジェミニアスがあれ以上のバケモノ装備数誇っているんだよなぁ……ってそんな話じゃない」

 

グリーフィア「まぁでも大体モチーフになってるムラサメも同じくらい基本装備は多いのよね。換装した時の装備も合わせてもバリエーション機と合わせて同じくらいの武装数みたいだし」

 

ネイ「ここに紹介されている全部を全部装備しないので、多いと感じるのはこの紹介欄でだけですね」

 

士「それでも書いてるときにどの機体がどれ持ってるか分からなくなるんですがね(;´・ω・)」

 

グリーフィア「なるほど。つまりジェミニアスのマルチ・スペースシステムは数がずれても問題ないように……」

 

士「はいこの話はなし(^ω^)」

 

ネイ「すごい圧ですね。来ないでください」

 

士「(´・ω・`)とりあえず、前半はここまでかな。次がメインみたいなものだし」

 

グリーフィア「次はなんてったってあのインパルスのDN版だしね。紹介はジャンヌ達になっちゃうのよねー」

 

ネイ「インパルスとムラサメが共闘するっていうのは何だか新鮮ですね」

 

士「敵としてしか会わなかった機体のリメイク、設定合わせるの試してみたかったです。それでは後編に続きます」

 




前編はここまでです。

個性的、というか扱いづらいキャラが今までに輪をかけて多い気がしました。とはいえ第2章はしばらく彼ら、特に大和進と影義明もとい明沢正を軸に、SEEDDestinyのように混沌となっていくオース情勢を描いていきます。

それでは後編へと続きます。


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黒の館DN 双翼英雄譚編 第4回 後編

どうも、藤和木 士です。

黒の館第4回後半は本章における主役機、オースインパルスの紹介です。

ベースとなったインパルスよりも今だったらこうなる、オーブならこうしてそうをモットーに設定されています。
それではどうぞ。


 

 

士「後編始めて参ります」

 

レイ「私と同じ読みの名前の人が登場してたねオース編」

 

ジャンヌ「これでまたレイさん読みでこんがらがる名前が……あんまり被らない様にしてほしいものですね」

 

士「だ、だって他によさそうな名前思いつかなかったから。それに名前も作中に関しては被り過ぎないようにしてるから。こっちで被るのは仕方ない(´・ω・`)」

 

レイ「私は一向に構わないよっ!」

 

ジャンヌ「れ、レイさんネタをあまり複雑にしないでください……」

 

士「さて、後編はこのオース編にて主役となる機体、オースインパルスガンダムの解説だ」

 

ジャンヌ「原作においてはシン・アスカの最盛期と称されることもある機体ですね」

 

士「こっちはテクニック重視なだけであってデスティニーも決して弱いわけじゃないっ( ;∀;)」

 

レイ「デスティニーもこっち版が登場した時どうなるのか楽しみだねぇ。そんなわけで紹介いっくよー!」

 

 

オースインパルスガンダム

OUSG-X56T/α、β、γ

 

機体解説

・観光地として有名な諸島「種命島」の独立政府「オース」にて国防の為に開発された新型MS群「ステージツーシリーズ」の一機。オーソドックスなガンダムと言ったデザイン。基本カラーリングは白と青、オレンジである。オレンジはオースにおける象徴のイメージとされる。パイロットは大和進。

 同時期に開発された他の機体とは一線画す性能を持つ。理由は本機独自の換装システム「リヴァイバルシステム」と、パイロットの技能を格段に向上させる「SEEDシステム」にある。

 リヴァイバルシステムはHOWのエディットバックパックシステムの模倣だが、バックパックに加えて素体となるガンダム部分も上半身と下半身、中央が分離して三機の航空機、トップフライヤーとボトムフライヤー、そしてコアストライカーとして運用できる。破損時には破損パーツを分離して母艦からパーツを射出、再合体することでロスを減らして前戦復帰が可能となる。更にリヴァイバルシステムでバックパックを換装した時、装甲のフェイズカーボンの変色が発生し、その形態における最適なDN配分値を振り分ける。

 そしてSEEDシステムはパイロットの潜在能力の塊「SEEDホルダー」と呼ばれるものに介入して集中力などを伸ばして戦闘に有利にする。DNLとは違ったアプローチによるパイロット強化手段としてオースが開発した。

 それら二種を備える本機はまさに次世代のMSと言って過言ではなく、かつての英雄「フリーダム」を超える働きをパイロット共々期待されている。なおDNジェネレーターも高品質のものに換装されており、あらゆる兵装に対応が可能。

 なお本来ならインパルス一機であらゆる戦場に対応するはずだったが機体構造から断念。代わりにステージツーの他機種がインパルスに追従し、それぞれの得意分野でインパルスを支援する構成になった。他のステージツーシリーズが単一戦場に特化しているのはそれが原因。

 コンセプトは「インパルスガンダムがもしオーブ系列機として作られたら」、転じて「アナザーインパルスガンダム」。機動戦士ガンダムSEEDDestiny内ではザフト開発機として登場するインパルスだが、パイロットのシン・アスカはオーブ出身。そこでもしオーブに残留し、インパルスもオーブで開発されていたら、の考えを基に考案している。

 

【機能】

・DNフェイズカーボンVerV

 本機に採用されるDN浸透変色硬化装甲。同時期の機体にそれぞれ採用されているが、本機のものは特に性能をフル活用する。

 特徴的なのが本機はこの変色機能で多々機体を変色させること。バックパックの換装で基本となるオレンジが変色していく。これはそれぞれの戦闘で重視される防御機構を変化させる思惑があり、これによりインパルスは装備に適切な出力を自動で設定する。なおこの変色はそれ以外にも国民に受けがいいとされるお遊びの側面も持ち合わせる。曰く、「色が変わればカッコいいだろう(意訳)」とのこと。

 原型機インパルスのVPSと同じように換装による色彩変更を取り入れる。ある意味今回でDNフェイズカーボンは一つの先祖がえりを果たしている。

 

・リヴァイバルシステム

 本機を構成するMS運用システム。本体が三分割され、コアユニットのコアストライカー、上半身のトップフライヤー、脚部のボトムフライヤー、そしてバックパックのリヴァイバーを換装していく新機軸の換装機能。

 機体そのものも換装できるため、従来の機体で存在した、四肢を損壊すると換装に時間がかかる問題を解決した。ある意味ではセレクトスーツカードを超える汎用性であり、その発展が期待されている。なお分割構造にしたことで若干の耐久性に問題があるが、現状では問題ないとしている。

 またリヴァイバーに関しては外部世界からの技術を基に開発されたことから、悪魔の名前になぞらえた兵装を一種備える構成。

 モデルはインパルスの換装システム、シルエットシステム。悪魔の名前を名付けることについてはインパルスの後継機「デスティニーガンダム」が悪魔のように描かれることからの逆算。

 

・SEEDシステム

 本機のインターフェースに施されたオース独自の強化システム。ただし強化するのは機体そのものではなく、パイロットそのものである。

 本機のパイロットにはあらかじめ「SEEDホルダー」と称される人物を選出する。SEEDホルダーは脳の一部に存在する領域を扱える人物の事で、普段は使われていないが、このSEEDシステムによる刺激でその領域が覚醒。種割れと呼ばれる現象を引き起こすことで潜在能力を目覚めさせる。いわば火事場の馬鹿力のようなものである。

 その力はかつてトップのDNL使いである元とSEEDホルダーのシステム搭載機が模擬戦で戦って見事に下していることからも折り紙付きである。パイロットである進も相応の実力があるが、元の見立てでは「機体性能の差」とのこと。なおあくまでパイロットの資質を覚醒させるためのシステムであるため、資質のない者が乗っても本システムで覚醒することはない。

 モデルは機動戦士ガンダムSEEDの特殊技能「SEED」。ただしこちらは機体側からのアプローチを取る。

 

 

【武装】

<基本装備>

・CIWSバルカン

 頭部と胸部に装備されるバルカン砲。計四門を装備する。威力はそれぞれそれなりだが、圧倒的な数で一気に敵の装甲を削り取る。

 モデルはインパルスのCIWS。

 

・ビームライフル

 機体腰背部に装備される射撃兵装。飛行形態時には右腕で保持して機首砲として機能する。

 ステージツーシリーズのライフルはいずれもオースセイバーの物がベースとなっている。本機の物は、前身モデルよりも消費DNを抑えつつ威力の向上を狙ったシンプルなつくりとなっている。

 モデルはインパルスのビームライフル。

 

・対装甲用太刀「カゲヌイ」

 サイドアーマー側面に装備される実体対艦刀。後述する対艦刀よりも短いが、扱いやすい。ボトムフライヤー形態では補助翼として機能する。

 DNと合わせることでDNフェイズカーボンすら切り裂ける性能を持つ兵器の発展型であり、パイロット特性とも合わせて投擲にも用いられる。

 インパルスのフォールディングレイザー対装甲用ナイフに位置づけられる兵装。ただし大元はHGM1アストレイにて設定された試製対艦刀がベース。

 

・マルチフライトシールド

 機体の左腕部に装備する可変シールド。中央に十字型のパーツを装備する。

 可変して開いた部分はDNの放出機構になっている。これはシールドを投擲したのち、機体のコンピューター、あるいは搭乗者の脳波で遠隔操作端末として短時間の飛行が可能。

 そしてその変形機構と合わせて、背部にバックパックとして装着が可能。追加ブースターとしてある程度の機動力向上が見込める。が、主力のバックパックユニットと比べると微妙なので、あくまで非常事態用の装備。

 モデルはインパルスの機動防盾。シールドのファンネル化は劇中で行われたシールドによる反射撃ちより、ブースターとしての運用はガンダムXディバイダーのディバイダーユニットから取り入れられている。

 

 

<オースインパルス・ルフト>

 空戦能力を向上させたインパルスの形態の一つ、ルフト・リヴァイバーを装備した姿。名称のルフトは「空気」のドイツ語。パック自体のカラーは黒とオレンジとなっている。

追加装備は基本となるビームサーベル、そして下部スラスター側面に装備された二丁のボウガン「ボウガンセイバー」。またボウガンセイバーの接続部はスライド方式で内部のバーニアが露出する。

本バックパックは他の装備と組み合わせることも考慮されており、手持ち装備次第で様々な組み合わせで攻撃に行ける万能パックとしての側面も合わせ持つ。

 モデルはインパルスの形態の一つ、フォースインパルス。ボウガンセイバーによる射撃戦能力を追加している。下部スラスターの側面スラスターはRGフォースインパルスガンダムの構造から採用。

 

【追加武装】

・ビームサーベル

 バックパックの付け根部分に装備される格闘戦兵装。近接戦闘戦における基本的な装備である。

 出力は高く、ソルジアⅡなどの耐ビームシールド程度なら切り裂いてしまえるほど。シンプルな一撃はパイロットの直情的な性格とマッチしており、敵を追い詰める。

 モデルはインパルスのヴァジュラビームサーベル。

 

・ボウガンセイバー「フォカロル」

 バックパック下部に伸びたスラスターの側面に装着される射撃兵装。二丁装備する。名称は海と風を支配するソロモンの悪魔より。

 可変機構搭載で、通常時のボウガンモードでは横に並べられた多連装ビームガンによる射撃を、セイバーモードでは銃身を回転させることでビームガンをビーム刃として纏わせる方式。

 またボウガンモード時には連弾のランダムシュートモードと一斉放射のフルバーストモードが存在し、敵の数あるいは防御性能で切り替える。

 モデルはクロスボーンガンダムX0の兵装、クジャク。多連装ビームガンの構造もそちらを踏襲。ただし大きさはやや小型化し、ビーム口も片側4門。名称のフォカロルはフォースインパルスの最大の見せ場、フリーダム撃墜のシーンに重ねたもの。つまりはソードインパルスガンダムのエクスカリバーも取り込んだイメージで、単一シルエットで見せ場のワンシーンを再現できることになる。

 

 

<オースインパルス・アッシェ>

 オースインパルスの換装形態の一つ、アッシェ・リヴァイバーを装着した姿。近接格闘戦を担当する。アッシェは「灰」のドイツ語。パックもそれに合わせて灰色と赤なっている。機体本体のカラーはオレンジ部分が赤へと変色した。

 追加装備は背部の増速用スラスターユニットに装備されるレーザー対艦刀「ハルファス」とビームブーメラン、そしてナックルクローカバーを二つずつ装備する。

 モデルはインパルスの換装形態、ソードインパルス。対艦刀とビームブーメランは据え置きで、ナックルクローカバーは同じ近接格闘戦の機体、ガンダムビルドダイバーズリライズのマーズフォーのクローを参考にした。なお原典では飛行は不能だが、本作のMSはいずれも飛行が基本可能なため、空中戦も視野に入れた構成。

 

【追加武装】

・レーザー対艦刀「ハルファス」

 バックパックの増速用スラスターに装備される対艦用の実体・レーザー複合刀。二振り装備する。名称は戦争で力を発揮するソロモンの悪魔より。

 このままでも充分大きく、MS戦を意識した形態となっている。切れ味も鋭いが柄尻同士を合体させることで双刀のハルバードモードとなる。こちらは一撃の一振りをより優先させたモードで、対艦特化の質量を押し付けに行くためのもの。なお他機が運用することも可能。どちらのモードもディメンションブレイクで威力が強化可能で、その際は巨大な光剣を発する。

 モデルはインパルスの対艦刀「エクスカリバー」。なおDBの光剣はモデルと同じ読みのFateシリーズの宝具から。ハルファスはそのエクスカリバーがたたき出した戦果になぞらえての命名である。

 

・ビームブーメラン

 バックパックの増速用スラスターの側面に装備される補助翼兼投擲用兵装。二振りを装備する。

 ビットなどの系列に位置する兵装で、投擲後円を描きながらビーム回転による浮力とわずかなスラスター制御で戻ってくる。手持ちでビーム刃を発生させたままビームサーベルとして切り裂くことも出来る。バックパック装着時には飛行の補助を行うなど、意外にも本形態の生命線。

 モデルはソードインパルスのフラッシュエッジビームブーメラン。

 

・ナックルクローカバー

 増速用スラスターの側面下部に装備されるナックルガード。二つ装備される。

 敵機を切り裂くための実体高周波ブレードがクローとして取り付けられており、DNフェイズカーボンも傷つけられる威力を誇る。装備時には腕部が大型化し、パワーが上がる。ここからのエクスカリバーなどは非常に強力な威力を持つ。

 モデルはマーズフォーガンダムの腕部クロー。コアガンダムの機構である腕部の合体を取り入れており、大型のパワーアームとして機能させている。

 

 

<オースインパルス・シュトラール>

 オースインパルスの換装形態の一つ、シュトラール・リヴァイバーを装備した姿。射撃戦を対応する。名称のシュトラールは「光線」のドイツ語訳。パックは黄色と緑。機体本体はオレンジが黄緑となる。

 追加装備は増速用スラスターとそこに繋がるアームで懸架された展伸式ビームランチャー「ハーゲンティ」、ランチャーと反対部に備わったカバーコンテナに内蔵する9連装ミサイルランチャー、そして増速用スラスター後方に分割装備されるレールガンユニットである。

 モデルはインパルスの換装形態、ブラストインパルスより。武装構成は似ているが、それぞれの武装はアレンジが加わり、また増速用スラスターは基部がアッシェのものと同型と関連性を見出している。こちらも素の飛行が可能となったため、あちらよりも高高度で飛行が可能となったが、性質上同じホバー移動の方が戦いやすい。

 

【武装】

・展伸式ビームランチャー「ハーゲンティ」

 バックパック側面にアームで懸架される展伸式の長射程ビーム砲。両背部に二門を装備する。名称のハーゲンティは水をワインに変えるソロモンの悪魔の名前より。

使用時にわきの下を通して展開し、砲身が形成される。射程は大抵のビームキャノン以上を誇り、威力も次元覇院にて採用されていたリフレクトパネルはおろか、最新式の次元電磁装甲も貫通する。

またアームのカバーコンテナに装備されているため、外して手持ちが可能で味方機が使用することも出来る(ただし求められるDN消費量がネック。まず旧世代機では使用不可)。更に展開部分のスリットは近接格闘戦用のビームブレイドが発生可能で、近接に持ち込まれた際に対処できるようにしている。

モデルはブラストインパルスのケルベロス高エネルギー長距離ビーム砲。ただし変形機構など後継機のデスティニーガンダムの長射程ビーム砲、同型強化タイプのデスティニーインパルスのテレスコピックやDIRのウルフスベイン長射程ビーム砲に似るところがあり、特に近接戦能力を持つ点はウルフスベインがベースとなっている。名称に関しては……あのシーンより。

 

・カバーコンテナ(9連装ミサイルランチャー)

 ハーゲンティを保持するためのカバーを兼ねたユニット。コンテナ内にはDN仕様のミサイルを運用する9連装ミサイルランチャーを内蔵する。

 ミサイルは基本的にハーゲンティ使用時には後方を向くため使用不可となる兵装だが、手持ちにした際はレールガンと含めて両武装による圧倒的な弾幕で敵を近づけさせない運用を想定されている。カバー部分へのハーゲンティの接続ははめ込み式となっている。

 モデルはインパルスのケルベロス後方のミサイルランチャー。あちらはどうやっても同時運用が出来なかったが、こちらは接続を外すという方法で同時運用が可能となった。その特性から、同じSEED作品の外伝「SEEDDestinyASTRAY」から登場したドレッドノートイータのイータユニット同時運用時の姿が似る。

 

・レールガンユニット

 増速用スラスター中央に二丁装備される実弾兵装。アッシェにおけるハルファスの装備位置に格納される。

 手持ち式のレールガンだが、主に使われるのは固定状態の為あまりトリガー部分の使い勝手がない。その為この部分は換装してもいいのではという意見も見受けられる。

 モデルはブラストインパルスのレールガン。

 

 

レイ「以上がインパルスの本作版、オースインパルスの解説だよーっ」

 

ジャンヌ「まぁインパルスとほぼ一緒って感じはありますよね」

 

士「リ・イマジネーションだからね(´・ω・`)とはいえ本体は腰部の兵装とかシールド自体の機構、各局地戦兵装も機構や武器傾向を劇中の活躍を参考に自分なりに考えて変更している。オーブの意匠を取り入れるってコンセプトを含めるために、アストレイの試製対艦刀やらボウガンもといアローってことでレッドフレーム改の要素入れたりしたからね」

 

ジャンヌ「え、ボウガンってレッドフレーム改の要素なんです!?」

 

レイ「それジャンク屋の要素なんじゃ……」

 

士「アストレイ自体は開発元オーブだから……。どっちかって言うと、レッドフレームの要素でもある「和」がベースなんだけどね」

 

レイ「でもその割に名前が安定してないよね。日本語の所だったり、ドイツ語だったり。ソロモンの悪魔の名前もあるし」

 

士「ソロモンの悪夢……じゃない悪魔の名前に関してはデスティニーが多々悪魔みたいな姿と呼ばれる点からですね……その不穏な名前をデスティニーで打ち払えるか、ってかデスティニー出るのかってハナシ」

 

ジャンヌ「それ二重の意味掛かっていそうで怖いです。それでSEEDシステムって初めて聞きますけど、一応今までもあったシステムってことですよね?」

 

レイ「そう言えばそんな感じだよね。SEEDがシステムになっちゃうなんてねー」

 

士「まぁ原理としては同種の物なんだけど、こっちは機械が発現を促すってアプローチを取っているね。とはいえ働きかける元は遺伝子なんで実は大和輝はそれを出来たりする」

 

レイ「おー流石オースの英雄!」

 

ジャンヌ「原典と同じように使えるようになる。原作へとアプローチしていくのがこのLEVEL3の命題ですかね」

 

士「あの形が完成点なのか、それも考察できればいいなぁ。まぁつたないものになりそうですが」

 

レイ「あくまでこの世界での考察になるけどね。そういえば装備はフォース・ソード・ブラストの系列があるけど、デスティニーシルエットに当たるのは出るのかな?」

 

ジャンヌ「その時の名前も気になりますよね」

 

士「原作じゃ出ることのなかったデスティニーシルエット。出してみたい気持ちはある。どうなるかはのちのお楽しみですわ。じゃあそろそろ終わりとしますかね」

 

レイ「唐突だねー」

 

士「そろそろ切っておきたい感じなんだよね」

 

ジャンヌ「さてさて……ちょっと設定集の方見てきましたけど、これ次回の黒の館DN何本になります?」

 

士「……三本で収まらないかな?(;´Д`)」

 

ジャンヌ「多分三本で収まらないかと」

 

士「ですよねー。初めての四本かな」

 

レイ「それじゃあまた次回!」

 




黒の館第4回、以上となります。

インパルスだけの紹介となってますが、後々他も語っていく予定です。

それではまた次回。


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EPISODE23 遠き過去の日々1

どうも藤和木 士です。EP23と24の公開です。まずはEP23から。

ネイ「密会を経てからのこの話。どう進んでいくのでしょうか……」

グリーフィア「遠き過去ってことはそれを振り返る描写があるってことよね?」

まぁそんなところですね。じゃあ本編をどうぞ。


 

 

 オース滞在の2日目。宗司達はオース政府のある政庁にやってきていた。オース政府の首長にして、今回の依頼人大守明日那との面会の為だった。

 明を先頭に政庁を進んでいく。大仰な扉を潜ると一人の女性が出迎えた。

 

「首長、HOWの皆さんを連れて参りました」

 

「あぁ、ありがとう明。HOWの皆さん、初めまして、そしてお久しぶりです。オース首長を務める大守 明日那(おおす あすな)です」

 

 やや気の強そうな女性が首長らしい整ったスーツ姿で出迎える。その顔立ちとは裏腹に彼女、大守明日那は丁寧な言葉で応対した。

 やってきていたHOWのメンバーが揃ったところで明日那は今回の件について改めて説明した。

 

「我が国の現状は分かっていると思う。復興から3年、今この国の革命派、美愛派と呼ばれる私の政敵が貴君らの主敵とするゼロンと共謀して、此度のオース生誕25周年式典で動くらしい。今回はその摘発と確保をお願いする」

 

「あぁ理解している。会場にはCとR、それにGとシュバルトゼロが、そしてO、Z、Eが島外からの襲撃に備えてオース第1防衛基地で艦を守りながら待機する」

 

 元はそう告げる。チームを半分ずつ分ける判断はどちらかに厄介な敵が来ても耐えられるようにということなのだろう。

 しかし会場の方の護りが厚いのは一目瞭然だ。それだけ式典の方が崩れれば危険だということ。明も語る。

 

「もし式典で首長が逆に確保されれば、三年前の繰り返しになる」

 

「それを防ぐための戦力配置だ。そちらもそのつもりでいるだろう」

 

「あぁ」

 

「フリーダム、大和輝大尉がいないのはこちらも手痛いが頼む」

 

 明日那が語ったその名前に引率として付いて来ていた進が舌打ちと共に口を開く。

 

「ちっ、いなくなった奴の事を考えたってダメだろ」

 

「進、お前……」

 

「そうだろ!?明日那だって姉貴が退いて自分が首長になったこと今でも納得いってないくせに!」

 

「お前!もう一度言ってみろ!?」

 

 口喧嘩を始めた進と明日那。やり取りを見てこちらも動揺する。

 

「い、いいんですかあれ。首長なのに」

 

「首長と言っても割と同年代。あの二人は性格が似てるのもあって三年前から度々衝突してるのよ」

 

 入嶋の心配に月子が答える。元もそれは予測していたようで肩を落とす。

 

「割と衝突の多いやつだったからな。姉と違って」

 

「くっ、元隊長もそれは言わないでくれ……姉さんとは違うんだから」

 

「分かっている」

 

「姉……そういえば」

 

 姉という単語でクルスが反応する。

 

「明日那さんの姉って、多分大守里奈さんですよね?改革派の代表の。でも今回戦うのは美愛……これって」

 

「あぁ……これから説明しよう」

 

 クルスが抱いていた疑問、それは宗司も作戦要項を伝えられた時から感じていた。今まで感じていた疑問の答えは明の口から語られる。

 

「今里奈として表に出ている改革派の彼女は、里奈の影武者だ。その名前が歌峰美愛。これは政府関係者なら誰もが知っていること。本来なら影武者として活動して、表向きの大守里奈は政権から消えていくはずだった。しかし……」

 

「……彼女は改革派のトップとして表へと出続けている。私の姉の名前と姿を使ってな」

 

「つまり……影武者が本物に成り代わった状況、ということですか」

 

「そういうことだ」

 

 状況が読めてきた。反旗を翻したその美愛という人物が代表だから、そちらの名前の派閥で呼ばれていたのだ。ここまで情報を取っていた理由を元が語る。

 

「こっちに来るまでの間に言うと、どっかで情報が洩れてゴシップにかぎつけられる恐れがあったからな。直接聞いた方が分かりやすいだろうからな」

 

「ふぅん。でも、影武者が勝手なことしてるなら、それを罪状かなんかにして止められないの?」

 

 元の言葉にふとそのような考えを口にしたエターナ。だがそれは出来ないと明日那は返す。

 

「ダメだ。影武者を使っていたことはあまり褒められたものじゃない。無理に辞めさせることも出来るが、何らかの置き土産を喰らうことも考えられる。もっとも、今回はそれを明るみにする必要があるとこちらは思ってはいるが……」

 

「フン、結局はあんたらが責任をあの女に押し付けようとしたから、自分に帰ってきてるだけじゃないか。やましいことしなけりゃ、俺達だけですぐに解決できるっていうのに!」

 

「やめろ進!首長にそんなことを言っては……」

 

「うるさい!父さん達を見殺しにした大守なんて!」

 

 色々ともめてくるオース陣営にこちらもどうすればいいか戸惑いを隠せなくなっていく。

 その状況を無理矢理崩したのはこちらの隊長黒和元だった。

 

「相変わらず騒々しいなお前らは。自分の大切な志、仲間をどんなことでも穢されたくない。3年前と変わらない」

 

「っ、何だよ。魔王もあいつらのこと庇うのかよ!」

 

 口出しされて即座に噛みつく様子の進。

ところが彼の思惑とは全く真逆の言葉を元は告げた。

 

「まさか。お前もまだまだだが、事今回に当たっては代表と隊長に非があると考えている」

 

「えっ」

 

「元さん、それは……」

 

「何が言いたい」

 

 明日那代表の言葉が低い声音で発せられる。まるで元隊長の言動が気に入らずに処罰でもしようとする姿勢だ。

 が、それも意に介さず自らの考えを述べる。

 

「結局のところ、俺も前代表、大守里奈の取った方策には納得がいっていない。政界から去るにしてもなぜ影武者なんて回りくどいものを立てたのか。彼女の策は理解に苦しむ面がある。それをなぜ庇う?俺は、それを庇い立て、あるいは責任転嫁だと考えている。そもそも、政界を去るなんて真似を不用意にしなければ……」

 

「貴様っ!」

 

 怒りを露わに詰め寄ろうとした明日那。対立する両者に慌てて割って入った明とジャンヌ。

 豹変した明日那の姿に宗司達も動揺を隠せない。

 

「わわっ、明日那さんガチギレ?」

 

「ちょっと、代表って言うからには感情のコントロールくらい出来なきゃじゃないの?」

 

「いやぁ、代表さんちょっと昔っから感情的になりがちで、よくあったのよねぇ」

 

 入嶋とエターナの不安と疑問に月子がそう答える。オース陣営、それに3年前を知っている隊長達もやれやれと言った具合でそれを見ている。

 何を呟くか迷っている間に明が元に先程の指摘へ返答する。

 

「……実際のところ、あの時二人の父親の遺言で大守里奈は代表となりました。ですが彼女自身は妹がその役に適していると感じていました」

 

「妹って、今の明日那代表ですか」

 

「あぁ。しかし父親の言葉を裏切ることも出来なかった。そこで自身が覚悟を決めて戻ることを考えて表向きの大守里奈として彼女、歌峰美愛を自身の影武者として立てたんです」

 

 入嶋からの確認に明はそう答える。本来の意味での影武者、というよりかは代役と言った方が正しいだろうか。

 理由は示された。宗司に加え、入嶋やクルスは納得を見せるが、納得しない者がHOWの方で多数いた。

 その一人である呉川がそれは違うのではと指摘した。

 

「言いたいことは分かる。だが、やはりそれは間違いだろう」

 

「呉川さんまで……」

 

「姉さんの考えに間違いなんて……!」

 

「政治という人々の暮らしを支える人間が、優柔不断で良いわけがない。影武者と称して体の良い身代わりという逃げの姿勢、それを許したあなた達の判断もだ。戻るつもりなら影武者などと言うもどかしいものは使わなくていい。自分の力でまた上がればいい。オース政府に任せるという以前の選択は……」

 

「悪いが、その後は俺が引き継ごう」

 

 間違いだったと続くはずだった呉川の言葉を元は中断させた。その後を引き継いで元は語る。

 

「俺達はその判断は間違っていたと思う。力不足なのはもちろん分かっていた。だがそれを認めたうえで正当な手段で完全な引退をすべきだった。大守 重弦(おおす じゅうげん)の事を考えてなのだとしたら、影武者なんていうのは彼の顔に泥を塗る行為だと思う。しかし、それでもお前達に協力することは変わりない。それが依頼、任務だから。こちらの主義に逸脱しないのなら上からの任務は断らない」

 

「元さん」

 

「だが失策だったことは伝えさせてもらう。分かっていながら早急にその芽を摘み取らなかったことも。それがなかったらこの面倒な事態は起きなかったんだからな」

 

「ぐっ……そんなの……」

 

 自分は納得がいかないと、明日那代表は負け惜しみのように呟く。

宗司にも分かる。彼女は、彼女達はその点に関しては決して反論は出来ない。

 今回はその尻拭いのような形の任務だとこれまでの話から推測できる。むしろもっと早い段階で介入すべきだったのではと思わされる。

 これには明も頷くしかなかった。

 

「そう、ですね。それは申し訳ないです」

 

「今後悔や癇癪を起している暇があるなら前を向け。こいつの家族を失った怒りだって、当然の物なんだ。これでいいか、進」

 

「えっ……あぁ、はい」

 

 だが結果として進の怒りは発散されたようだった。進の怒りを容易く収めたことにオースの新人パイロット達も唸る。

 

「すっご、シンの逆ギレをああも見事に……」

 

「これも、あのDNLと呼ばれる読心能力あっての……いや、違うか」

 

「どっちかって言うと経験だろうねぇ~。昔の戦い知ってるからってこと」

 

「まぁ、10年は戦っているらしいからな、HOWの魔王は」

 

 HOWの魔王。そんな自分達の隊長は話題を本来の物に戻した。

 

「とにかくだ。今回の改革派の行動もまた、ゼロンの意志がある。その根拠は、改めて明日那代表からお願いしよう」

 

「……はぁ、分かったよ」

 

 頭を搔いて明日那代表は改めてゼロンの介入する根拠、もといその発端について語る。

 

「詳しい説明は省くが、明日行われるオース生誕25周年の式典の参加者は、あらかじめ私などのなじみ深い人物を呼ぶことになっている。島内、島外を含めた来賓には美愛派の人物も呼ばれる。その中の人物が……この、ギルボード・デュランザメスだ」

 

 落ち着きをすっかり取り戻して重い口調で端末を操作した明日那。部屋の照明が落とされ、スクリーンには一人の男性の写真が表示される。

 名前の通り、外国の人物だ。男の人には珍しい長髪の髪を肩より下まで伸ばしたその人物の詳細を明日那が語る。

 

「この男はかつてこの島の住民だった。虚無戦争の前後で島外へと出てその後科学者としてゼロンの勢力発展に貢献しているらしい」

 

「ゼロンの……科学者」

 

「クルス……」

 

 クルスが呟く。入嶋もややそれに反応していた。

 一方クルツの方がその男の専門分野について語った。

 

「こいつ、確か遺伝子工学で有名な奴だったよな。こっちでも遺伝子工学を?」

 

「そんなところだ。観光国家といっても、そういう科学を島の中でやらないわけじゃない。医者だって普通にいるんだから」

 

 一見して里帰りのように思える来賓の選択。しかしそこにゼロンが絡めば一段と怪しくもなった。

 とはいえ科学者がこの島を乗っ取ろうとするというのはあまりに飛躍しているように思えた。何が目的なのかが見えない。この島を我がものにしようとする思惑をもともと持っていたのだろうか。

 だがこの男が問題視される理由がもう一つあった。

 

「彼は既に美愛派に匿われている我が国の科学者、種田博士の弟子だ」

 

「あの爺さんと……」

 

 元隊長がすぐに何かに気づいたように反応した。分かっていない組の中でエターナが姉に尋ねる。

 

「種田博士って?」

 

「あなた達が戦ったオースインパルスに搭載されているSEEDシステムの開発者です」

 

「はぁ!?そんなシステム今も使ってるの!?」

 

 エターナが仰天する。彼女と同じことを宗司も思った。敵に渡った人物のシステムを継続して使うなど正気とは思えなかった。

 もっともこちらにもそう言う機体が存在している、などとは思ってもいない。加えて元隊長やジャンヌ副隊長はそれほど問題視していないようだった。

 

「まぁシステムを使うことには問題ないだろ。あの爺さんだし」

 

「そうですねー。あの方はむしろ使わせたい感じですし」

 

「いやいやいや!おかしいでしょ!?姉さんもどうしたっていうの!?」

 

 切羽詰まるように危険だと訴えるエターナに対して面倒そうな二人。その理由は明の方から語られる。

 

「二人のおっしゃる通りです。元々種田博士は研究に関しては敵味方問わず対象にする人物。出奔時SEEDシステム関連に一切手を付けることはありませんでした。寧ろ博士はSEEDシステムに関する試作段階の技術まで残していきました」

 

「な、何よそれ……けどそんなの絶対に使わない方がいいじゃない!」

 

 もっともなエターナの言葉。だが明は首を横に振った。

 

「現状、SEEDシステムは俺達の勢力でしか使うことは出来ない。それに何らかの事があった時の事を考え、現在ではSEEDシステムをベースにした疑似SEEDシステムを開発してそちらの開発を優先的に行っています。俺達にはSEEDを使うしか、この国を護れない」

 

「そこまで聞いておけば、あの爺さんはやらない。どれだけ自分に不都合になる可能性があろうともそれすらも自分の探求を満たそうとする。敵に有利になろうと。リ・ジェネレイションの弱点を教えてくれたのも博士だったしな」

 

「う……変な信頼のされ方ね」

 

 納得がいかないが、博士よりも今は弟子のギルボードについてだ。明がギルボードの動きについて話す。

 

「しかしギルボードに関しては別だ。事前情報によれば彼は今回、美愛派の外部特別顧問と称しての参加らしい。今回の訪問も、彼が主導している可能性が極めて高い。ここでどう動いてくるのか」

 

「ここで何としても3年前から続く悪夢を終わらせたい。それはきっと、本土の日本政府にとっても力になるはずだ」

 

「CROZE部隊、了解した」

 

 要請を受諾した元隊長。こちらへと向き直り、元隊長は今後の行動について通達した。

 

「本作戦での最重要ターゲットはギルボード・デュランザメス、歌峰美愛。この二人を確保すること。美愛派はオース政府に引き渡す。この後会場チームは明日那派オース軍と共に現地の下見を行う。残りの者は母艦にて第3種警戒態勢、いいな」

 

『了解』

 

 大守明日那の前で号令が行われる。気が抜けない。ここからは本当に小さな戦争の始まりだった。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP23はここまでです。

ネイ「明日那さんは雰囲気からあのカガリさんのモデルでしょうか」

グリーフィア「そしてギルボード、美愛ってのもなんとなく察しついちゃうわねぇ。ていうかEP22で元君大和輝の行動を擁護していたように見えたんだけど、これはどういうことかなー?」

まぁ彼の選択は否定しないけど、本来取るべきはこうだったって言いたいんですよ元君は。自分の気持ちと上からの命令とかで板挟みになっているわけでして。

グリーフィア「あー、なるほどね~真面目だからねぇ」

ネイ「それにこれは進さんの信任を得ようって見方も出来ますね」

そうそれ。じゃあそれを経てどうなっていくのかは次に続くというわけで。続きます。


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EPISODE24 遠き過去の日々2

どうも、藤和木 士です。EP24を続けて公開です。

レイ「カガリ、じゃない、明日那さんとの打ち合わせもとい熱弁を経て現地偵察って感じだったね前の最後は」

ジャンヌ「現地を確認してからサブタイトルの過去の日々を思い起こすって感じなんでしょうか」

そんなところかな。まぁどっちかっていうとEP23の明日那と進の会話もそれに当てはまってるんだけども。それじゃあどうぞ。


 

 

 政庁を後にした宗司達はそのまま予定通り会場となる「種命島グランドスタジアム」へと向かった。

 そこで元隊長から言い渡された当日の配置に沿ってオース軍の隊員に案内をしてもらいながら、場所の特性について確かめていった。

 

「俺達の配置場所は……ドーム内、ステージ付近の方か」

 

 予定されているセレモニーの舞台脇、そこが宗司とエターナ達Gチーム+元隊長達の立ち位置だ。反対側の脇には進達ステージツーシリーズのパイロットが立つ。

 オース側のリーダーを務める明は当日の予定されている状況について知らせる。

 

「HOWのCROZEGチームの皆さんにはこちらの右サイドを担当してもらいます。右サイドは美愛派の面々が位置する。そちらの方の確保は元さん達にお任せします」

 

「そしてそちらは明日那代表の護衛と、来賓ギルボード・デュランザメスの確保、か。まぁ悪くはない妥当な配置か」

 

 元隊長の言うように、自らの国のトップを自分達で守る構え。来賓も出来るだけ傷つけない為に慣れたメンバーで行動するというのが目的だ。

 明もそうだと答える。

 

「えぇ。昨日の戦闘を見る限り、直接的な連携を、というのは少々難しいかと」

 

「フン、俺は構わないですよ。こんなやつらと一緒に行動なんて」

 

「私の方も同じね。アンタみたいな色々飛んでくる機体とじゃ連携なんて出来ないし」

 

「何だと!?」

 

「何よ!?」

 

『……はぁ』

 

 宗司と明のため息が被る。こうも見せつけられると本当に連携は無理なように思える。

 ところが元隊長は考え込むようにして、明に提案を持ちかけた。

 

「確かに、この二人では少々相性が悪い。他の人員でも不安が残るだろう。だがこの宗司とエターナを含めて、そちらのステージツーの二人とを入れ替えてこちらの側に置いておく、というのは考えている」

 

「ちょ、元さん!?」

 

「ちょっと、何勝手に決めてんのよ!?私だってこいつの組むの嫌よ!?」

 

 隊長の選択に反対の意志を示す入嶋、そしてエターナ。明もその意図を掴めずに訊き返す。

 

「は、はぁ。ですが彼らの相性は既に分かっているはず」

 

 しかし、元は言う。

 

「一度ぶつかり合っているのなら、それだけ手の内は少なからず分かっているはずだ。そこから明日までの間に可能な限り連携を詰める。第一、こっちは訓練も兼ねてやってきているんだ。即席で組まざるを得ない状況の経験も積ませなきゃ意味がない。状況や相性が悪いのは目に見えている。だがそれでもやらなきゃいけないときはあるし、少なくともこいつらはやれると俺は思っているからな」

 

 本来の目的は確かにこの護衛任務だ。だが元隊長は同時にこの場を俺達新人組の訓練の場ともしていた。

 実戦投入も視野に入れての今回の行程で、隊長はなるべく経験を積ませようとしている。やや強引な気もしたが、向こうの隊長はその意向をくみ取った。

 

「……そう言えばそちらからも言われていましたね。分かりました。お力添えできるよう試してみましょう。その結果次第で、そちらの位置取りに変更するということでも?」

 

「構わない。出来れば当事者たち周辺だけでやっておきたい」

 

「ではこの後、基地のシミュレーターポッドの貸し切りを申請します」

 

 そうこう言っている内に予定に訓練が組まれた。明日の為にもやっておいて損はないが、まさかあのインパルスのパイロットとコンビを組むことになろうとは。

 もちろん不満が上がるのは当然だった。エターナが立場も忘れて元に物申す。

 

「おまっ!何勝手に決めてんのよ!」

 

「エターナ、目上の人にそんなこと」

 

「姉さんも止めてよ!?何呑気にこいつの独断許してるのっ!?」

 

「これが元ですから、もう慣れました」

 

「慣れたって……」

 

 姉から遠回しに諦めてと言われたエターナが膝から崩れ落ちる。それほど嫌だったのだろう。

 対する進も苦言を露わにしていた。

 

「俺も嫌ですよ、またこいつらと訓練なんて」

 

「進、この人に目を掛けてもらえるのはそうそうない。それにさっきも助けられただろう?」

 

「うっ、それ言われたら返せないじゃんか……」

 

 が、こちらも先程の官邸でのやり取りを引き合いに出され押し黙ることとなる。返されてしまったことに仲間達がからかいを掛ける。

 

「ふふっ、シンってば墓穴掘ってんのー」

 

「うるさいルナ!」

 

「でもルナの言ってること間違ってないって。ねーレイ?」

 

「……まぁ、諦めるんだな」

 

「こ、こらアル!レイもそんなこと言うなよ……」

 

 嫌だという声も結局抑え込まれることになった。こちらは不安を抱きつつも、隊長達はこの視察を進めることを優先した。

 

「さぁ、場所の把握はきっちりしておけ。どこから来ても自分が最大限生かせる立ち位置がどこか考えろよ?」

 

『はい』

 

「……あぁ、もう。最悪よ……」

 

「人の話を聞かない……まさに魔王だな」

 

「……はぁ」

 

 3人それぞれが悪態を吐く。こんなので上手くいくはずがないと。

 

 

 

 

 嫌々ながらも視察終了後エターナ達は基地へと戻り、貸し切られたシミュレーションポッドルームへとやってきていた。

 昨日借りた部屋よりも更に殺風景で、人員も堅苦しい人物が多そうだ。アキラが研究員と会話を交わしたのち、こちらに開始を告げる。

 

「では始めましょうか。相手に関してですが……」

 

「それについては、お前に頼みたい。影義隊長」

 

「えっ、隊長と!?」

 

 ハジメの要請にススムがびっくりして訊き返す。それが事実だとハジメは答えた。

 

「あぁ。おそらく、その方が準備は手早く済むだろう?」

 

「えぇ。それに元さんの機体は以前のシュバルトゼロガンダムRⅡしかデータがないですから、流石にこの最新鋭機2機との対決は辛いでしょうし」

 

「そういうことだ。とはいえこの影義明も決して俺に劣る者ではない」

 

「それって……こいつがこの国の英雄って言う?」

 

 エターナは昨日聞いていた話を思い出す。来馬から聞いた話。それによればこのカゲヨシアキラと呼ばれる男の本名は、アケザワタダシというのだ。

 その問いかけに姉のジャンヌが驚きつつも肯定した。

 

「えっ、えぇ、そうだけど……どうしてそれを」

 

「クルバから聞いたから。温泉で」

 

「来馬さんかぁ。けどそれなら話が早いですね。そうです。彼はかつて戦争を終わらせた英雄の一人、明沢正というエースパイロットです」

 

 ジャンヌが改めて紹介するとアキラ、もとい本人も答える。

 

「あぁ。とはいえ、元々はテロを起こした虚ろの零で事件を起こしてしまったんだがな。途中で寝返った形だ」

 

「寝返り……やっぱり、テロはダメだって思ったんですか?」

 

「そんなところだね。それをわざわざ明かさせた、ということは」

 

 ソージの言葉に応えてタダシがハジメに問いかけた。ハジメはその答えを告げた。

 

「かつての英雄としての実力で、こいつらと戦ってほしい」

 

「やはり、ですか」

 

「え、それってつまり……」

 

 何かを察したススムだったが、そうではないと先回りしてハジメが答える。

 

「流石にオースジャスティスで、とは言わない。だがオースセイバーでも当時の実力は引き出せる、だろう?」

 

「分かりました。ということだ進。お前にも見せていない本気で行く」

 

「ま、マジかよ!?あれよりもヤバいって?」

 

 挑発染みたハジメに余裕と達観を含めた表情で応えるタダシ。

 まだあの馬鹿が見たことのない本気をぶつけられるなんて、正直言って迷惑甚だしい。それをぶつけさせるこのクソハジメには恨み以外の何物もない。嫌がらせでしょ!

 そんなことを心の中で思うエターナ。それを気遣ってか姉はプラスに考えるようにと言う。

 

「正直言って嫌がらせみたいに思うかもしれないですけど、これもあなた達が成長する様にとの元の考えです。強引なのは否めませんが」

 

「姉様もそう思うなら止めてよ!パートナーでしょ!?」

 

 思わず反射的にそう返した。ところがそれは実にエターナ自身にとっての失言だった。

 

「あら、元が私のパートナーだって認めてくれるんですね?」

 

「あぐっ!?そ、それはそれで、でも……」

 

「うわぁ……」

 

 それはエターナ自身が最も認めたくない事実。姉がアイツのパートナーになっているなんてことは今までも散々否定してきていた。

 しかし今姉にパートナーとして止めるように求めたのは、パートナーであるという事実の肯定に他ならない。

 同じく失言であることを悟っていたソージもため息を漏らす。何も言えないままクロワハジメに準備の確認を問われる。

 

「そろそろ始めていくぞ。チームプレーを心掛けろよ」

 

「は、はい」

 

「ぬぅぅ~!……あんた、一発で終わらせるわよ!」

 

「命令すんなよ!ガキの癖に!」

 

「……これは、時間がかかりそうですね」

 

「だから予定を繰り上げているんだがな」

 

 上官達に心配される中で私達の訓練は始まった。

 

 

『ぐっ、避けられた!?』

 

『おいガキども、やられ……』

 

「ソージ!防御っ!!」

 

 結果は、敗北の連続だった。シミュレーターが停止し、何度目かの排出がされる。

 疲労感の溜まったまま、苛立ちを吐き出す。

 

「あぁっ、もう!これで何回負けてんのよ!」

 

「クッソ!こいつらがいなかったら、今頃俺なら勝てて……」

 

「一人で勝てるなんて、思い上がりも甚だしい!」

 

「何だとっ!」

 

「お前達!」

 

『がっ!?』

 

 責任の押し付け合いの中タダシの手刀がエターナとススムの頭を直撃した。窘めるタダシは先程までの戦闘のミスを指摘する。

 

「相変わらず連携がなっていない。しかもさっきは呼び出したリヴァイバーユニットで味方を突き飛ばすなんて……」

 

「フン、トロいだけだろ」

 

「なぁ!?」

 

 トロいと貶されて怒りのボルテージが加速する。だがまだ終わらない。

 

「そして、その時宗司君、いや、あれはエターナ君か。銃を向けかけていなかったかな」

 

「そ、そんなの何であたしに?あたしはあくまでパートナー……」

 

「あ、よく分かりましたね。エターナが操縦権奪ってました」

 

「おい!」

 

 勝手に自分の行動を肯定されて更に自分の怒りを沸騰させた。

 そんな勝手なことをやっていたと露見して姉のジャンヌから呆れの声が漏れる。

 

「エターナ、もしやとは思ってたけど……あの時やっぱり」

 

「ねね、姉様!違うの!ついカッとなって!」

 

 謝罪なんかしなければ、早々にハジメも諦めたかもしれない。けれどもそんな事をしたらまた姉に失望され、姉にすら見捨てられてしまうと思い言えなかった。

 何とかこの場を越えなくては。勝たなきゃ。そんな気持ちを高ぶらせる。

 そこで時計を見たハジメが戦闘再開前に告げる。

 

「そろそろまた訓練再開したいところだが、今のままだとダメだな」

 

「そんなの最初っから分かってたじゃない!」

 

「しっかりしてくれよ!魔王が!」

 

 ブーイングをぶつける不満組の二人。しかし圧されることも一切なく提案を行った。

 

「だから、少し休憩がてらの質問だ。お前達の戦う意味は何だ?」

 

「はぁ?」

 

 いきなり、そんなことを問われる。が、ハジメは至って真面目であることを語る。

 

「共通の敵と戦うのに、理由がバラバラなのか?別に呉越同舟で戦わざるを得ない状況ではないはず。お前達が真に、何の為に戦うのか。それを理解する」

 

「それが、連携とどういう関係が……」

 

「それが分かってないようだから、今言った。君自身も戦う理由が揺らいでいるように思えるからな」

 

「……それも、DNLだから、ですか?」

 

「どうかな。ともかく、お前ら全員で確かめ合え。開始はお前らに任せる」

 

 言って再びシミュレーションの準備が開始された。ポッドに戻ってポッド内回線が開く。

 

『って言ってたけど、二人は言う気は?』

 

「冗談じゃない。それだけで勝てるだなんて、そんなわけないじゃない」

 

『当り前だろ。俺が悪いだなんて、思わない。お前らが付いて来れないだけだ』

 

「お前……!」

 

 ソージからの意見を一蹴する。言って何になるのか。二人は皮肉にもその点では共通した意見を持ち合わせていることも気付かずに。

 そのまま試験空間に突入しようとした時、二人を抑えるようにソージは言う。

 

『協力しなくて、この訓練に意味があるのか?』

 

 思わず息が詰まる。が、頭を振って考えを否定しようとした。

 

「な、何よ!これはあくまであのオースの隊長を落とすのが……」

 

『でもそれはあくまでこの中でのターゲットとしてだろう。目的は明日の為の連携の為。今連携出来なかったら、何の意味もない』

 

「ぐっ……!それが間違ってるってことを証明してやるんじゃないの!連携なんて出来なくてもやれるってことを」

 

『それで何回負けた?明日は何回ミスできるんだよ』

 

「……それは」

 

 言葉に詰まる。明日は一度きり。やり直すなんて出来やしない。

 例えエターナの最終的な目的が姉の帰還でも、姉の仕事を邪魔すれば目的が遠のくのは違いない。

 今はこの世界の組織HOWの一員。姉に迷惑を掛けられない。こんなくだらないことを繰り返している暇なんてない。

 けれども、あの男の指示にやはり素直に従うことなんて……と嫌悪感がぬぐえない。もちろんこの島の危機を放っておくなんてことを出来もしない。今組んでいるこいつも嫌だがハジメ程じゃない。それならいっそ、なのかと考え始める。

 そんなタイミングでソージの意見に耳を傾けていたススムが言った。

 

『島外の人間が。偉そうに当たり前のこと言うなよ』

 

「偉そうにって!」

 

『……けど、事実だ。島外の、新人にそんなこと言われるなんてな』

 

 だが先程までとは違ってその発言を認める返答をした。これまでとは違う返しに続いて語り出す。

 

『俺は兄貴に言われたんだ。軍学校に入った時、一緒にオースの首長達を、この国の人達を護ろうって。本当の兄貴じゃなくっても、俺や妹を拾ってくれた。親を結果的に殺した人だとしても、付いて行こうって、それ以上の人になろうって思った』

 

「親を殺したって……」

 

『避難している時に、兄貴が避けた敵の流れ弾に当たって……。俺達は咄嗟に庇われたんだ』

 

『それが、大和輝さんとの出会い……』

 

 呑気にそんなことを話している場合か、と思ったもののこれ以上の時間のロスはよろしくないと自分の中に言葉を飲み込んだ。

 続けたススムの言葉が二人に掛けられる。

 

『俺は、兄貴に見せつけてやりたい。戦場から逃げた兄貴に、今の俺はあんたと違って使命を果たしてるって。それをまず、今回の作戦で示す。きっと、見ているはずだから』

 

 その言葉は奇しくもエターナの求める理想に酷似していた。クロワハジメに対する自分。姉を取り戻すときの姿に。

 まだ雲を掴むような力しかない自分には遠い道を、この男は見据えていた。彼の誓いを聞いて複雑に思いながらも平静を装って返す。

 

「そう。見てないかもしれないのに、希望的観測なんて」

 

『そもそも、作戦が成功しなきゃ見せても意味がないんだ。それで、お前らはどうなんだよ』

 

「私らの戦う理由……は」

 

 話を回されて戸惑う。がそれは全てソージが済ませる。

 

『少なくとも俺の戦う理由は、エターナの力になることだ。そして、エターナの戦う理由はお姉さんと一緒にもとの世界に帰ること』

 

「お、おいソージ!勝手に!」

 

『もとの世界?あぁ、お前確かあの魔王のパートナーの妹だったな、異世界出身とか』

 

「あぁ……もう!そうよ!私は姉様にもとの世界に帰ってきてほしいの!だからこの世界に来る羽目になった姉様の大切な人を探すの!取り返すの!」

 

 勝手に話されたことに十分腹を立てる暇もなく勢いで話す。だが、そのままでは癪なので仕返しにソージの付属する点についても暴露した。

 

「あと、こいつは見知らぬ誰かを信じる自信が今はないから、暫定的に私を信じて力を貸すようにしているって感じ。エンゲージシステムで覗かれたから」

 

『まぁ、そうだな』

 

『ふぅん。エンゲージシステムっていうのも大変なもんだな。SEEDならそんなことないってのに』

 

「ハッ、言ってなさい」

 

 タメ口を利いてさりげなく自賛が入る。だからエターナも同じく軽口をたたいた。だがそんなものはもうどうでも良かった。言いたいことはあるが、今すべきことはそうじゃない。

 感情が抑えられたこのタイミングで二人を先導する様に開始を予告する。

 

「行くわよ、あんた達」

 

『分かってる』

 

『ついて来いよっ!』

 

 シミュレーションが再開される。待ちかねた様子のタダシのオースセイバーに二機のガンダムが向かっていく。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP24はここまでです。

レイ「うーん元君の考えがよく分からないなぁ……」

そこまで言うかい。

ジャンヌ「考え合っての事で、練度を高めさせたいっていうのは納得できます。けどそれならなおさら連携の取れてない入嶋さんも入れた方がいいのではって思います」

そらそうだろうね。とはいえその答えはもう出してるよ。紫音さんが言っていたように千恵里は中距離戦闘の基本そのものがなっていない。慣れてきたとはいえ、それを補強する必要があったから他で訓練する必要がある。だからこのシミュレーションでは参加していないって感じなんだよ。まぁもっと言うと、流石に正相手でも3体1は辛すぎるだろうって判断なのだろうけども。

ジャンヌ「あ、そっかそもそもみんな最新鋭機ですもんね」

レイ「考えればそれも当然ってことかぁ。全員が元君じゃないんだからね……。あれ、元君化け物?」

気付いたか……まぁそれは今どうでもいいんだわ。もっと言うと元君はジャンヌもいるから。

ジャンヌ「果たして次回勝利まで行けるのか、という感じですね」

予想外の展開になる予定ですがね。とりあえず今回はここまで。

レイ「また次回!」


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EPISODE25 遠き過去の日々3

どうも、藤和木 士です。EP25、26の公開です。まずはEP25から。

グリーフィア「現実世界じゃこの章のモデルの機動戦士ガンダムSEEDDestinyがバトスピに登場してたわねぇ」

そうだね。私もSEEDDestiny組んだけど、構築がむっちゃ難しいというかインパルスが弱い。デスティニーが主体だってことを嫌でも分からされる。
とまぁその世間話はここで今やることじゃない。

ネイ「前はやっていらしたのに、ですね。話としては模擬戦が再開したってところですね」

グリーフィア「気合い入れ直しての再戦、オースセイバーに果たしてガンダムDNとオースインパルスは届くのかしらね~」

というわけでどうぞ。


 

 

 再度の模擬戦が開始された。やや時間を置いての再戦にジャンヌは戸惑っていたものの、その後の動きを見ていくうちに何があったのかを間接的に理解する。

 元と共にその動きについて語る。

 

「さっきまでと動きが違う。ちゃんとお互いの位置を把握してる」

 

「それだけじゃない。拙いが息を合わせて攻撃を行っている」

 

 二人の指摘通り、インパルスとアーバレストは連携を行って戦うようになっていた。練度などは比べるに値しないだろうが、先程までとは大きな進歩と呼べる。

 積極的に攻めるインパルス、それを隙が生まれ次第けん制を行う。大方インパルスの進が指示を出しているのだろう。

 とはいえ正のオースセイバーの壁は厚い。簡単には落ちないだろう。勝てないかもしれない。しかし二人の思惑は別にあった。

 

「果たして、あれの起動は出来るでしょうか?」

 

「さぁな。だがそれに値するだけの戦闘が出来れば、システムが認証して次なるステージに入れる。その力を手に入れられれば、そこまで成長できたならあいつらは……」

 

 正しき力の使い方。それを見定めるアーバレスト。秘めたる力を解放してこの戦闘を終わらせることが出来るか。

 そうでなくとも彼女は願っていた。妹が死ぬ可能性が一つでも減る、あの力の覚醒、そして二人が使いこなせることを。

 戦闘は続く。どのタイミングで覚醒までに至れるか。その時が来るのを待った。

 

 

 

「はぁ!」

 

『ぐっ!っ!?』

 

 光剣をぶつかり合わせる二機。インパルスの機体がそのまま出力を上げてはじき出すと、後衛のHOWのガンダム、アーバレストが背部のライフルユニットを展開して追撃する。

 これまでとは明らかに違う攻め方に、上官である正が驚嘆を漏らす。

 

『先程までとは違う……連携している?』

 

「俺にだって、これくらいできる。それより兄貴と一緒に戦った英雄がその程度かよっ!」

 

 挑発で返して斬りかかる。オースインパルス・ルフトの両手に握ったビームサーベルとボウガンセイバー「フォロカル」で攻め立てる。攻撃の勢いに押されオースセイバーは防戦一方だった。

 仕切り直そうとしたのか、突発的にキャノンユニット「フルフル」のビームスポットガンを放つ。こちらは回避せざるを得ない。

 今までならすぐさま距離を詰めていた場面。それを今回は大回りする様に動く。反対側からアーバレストが射撃するのと同時にこちらもボウガンで狙い定めた。

 

「一斉射!」

 

『了解!』

 

『なぁっ!』

 

 両機体の同時攻撃がオースセイバーを直撃した。シールドによって機体そのものからは逸らされたが、シールドは表面が融解し危険と判断した隊長自身の手で投棄される。

 ここまででもそう言った場面は多かったが今回は訳が違った。投棄せざるを無かった場面は今までにない。そしてそこからスムーズに次の行動に移ることも。

 

「リヴァイバー、チェンジ!」

 

 空戦機動形態のルフトから、高機動格闘戦のアッシェへとバックパックを換装させる。換装で生じた隙にオースセイバーもライフルを向けた。

 しかし放たれた光弾をアーバレストが割って入って止める。肩のシールドで弾丸を防ぐ。息の合った攻防。その間にこちらも無事アッシェへと換装を完了する。が、それだけにとどまらない。進は叫ぶ。

 

「アーバレスト、右に避けろ!」

 

『了解!』

 

「いっけぇ!!」

 

 回避指示を送った直後、換装したルフトリヴァイバーをオースセイバーに向けて射出する。初日の模擬戦で彼らに対して使用したリヴァイバーの突撃攻撃。進がよく使う戦法だ。

 それは何度も見てきた正には見飽きた戦法だっただろう。()()()()上へと逃げて撃墜しない。だがここからは違う。

 上へと飛翔したオースセイバーを追撃するいくつもの光条。アーバレストの砲撃だ。それらでけん制してから本命の一撃をビームライフルから放つ。

 

『圧縮率、84パー!』

 

『撃つ』

 

 DBによる圧縮弾が放たれた。シールドのないセイバーには避ける以外の選択肢はない。それも考慮してのDBは避ける寸前で破裂、散弾となって正隊長のオースセイバーに降り注ぐ。

 

『ぬぉっ!?』

 

 避けきれなかったビームライフルが破裂を起こす。だがその前にオースセイバーは変形し急速離脱を行う。

 それを追撃するこちらの両機体。だがそれらを巧みな変則機動で避けられていった。あまりにも圧倒的な機動にHOWの女子が困惑していた。

 

『何よあの機動力!変形のシールドが無いのにあの速度……』

 

 もちろんなぜそれが出来ているのか進は知っていた。オースセイバーにはインパルスのSEEDシステムの亜流と言うべきシステム、疑似SEEDシステムが搭載されている。今までも使われていたかもしれないが、それを今度ははっきりと話す。

 

「疑似SEEDシステムの機動だ。シールド無しであれだけの機動力はあり得ない。追いかけるぞ」

 

『分かった』

 

 アッシェ装備で高速で逃げるオースセイバーを追跡する。近接戦のアッシェに換装したものの、このままでは追いつけないかもしれない。ビームライフルを放ちながら装備変更を再び要請する。

 

「ミネルヴァ、シュトラールを……!?」

 

 言いかけた時、正が動いた。機体を翻し、ビームサーベルを両手に構えて突撃してきたのだ。

 反応しきれなかったのをカバーすべく寸前でアーバレストが割り込んだ。ビームライフルが斬られるがその後ろにあったシールドが機能して攻撃を防ぐ。

 

『ぐっ!』

 

『ぼーっとしてんじゃないわよ!?』

 

「わ、悪い」

 

 あの女から突っ込まれる。紛れもない事実だ。動揺しながらもそう返す。すると対面の正から回線越しに指摘を受ける。

 

『進。お前の悪い癖、出ているぞ。換装指示を送るときに射撃武装でけん制をするパターン』

 

「っ!そんなところ、今突いてくるのかよ!?」

 

 以前にも指摘されていたことのある進の癖だった。進としてはなるべく近づかれないための防衛策のつもりだったのだが、正からは狙いが適当すぎることからパターンを読まれてやられかねないと言われていたものだ。

 実際零や或には読まれることもあって最近では意識しているのだが、時たまこういうことを無意識にやっていた。

 歯噛みしながらも敵の足が止まっている好機。逃す手はないと死角からビームブーメランを放つ。

 両脇から迫るビームブーメラン。競り合っている今なら防御することも出来ない。そう思った。

 

『フン!』

 

『ぐっ!?』

 

 しかし勢いを込めてアーバレストを突き飛ばすと頭部のバルカンを乱射。ビームブーメランの実体部分に直撃させると、速度の落ちたそれらを実体部分のみを狙って蹴り技で次々に弾き飛ばしていった。

 

『ブーメランを蹴り飛ばした!?』

 

『これが、オースの両雄の一人』

 

「こんな力を隠してたのかよ……っ!」

 

 現実離れした実力に恐れを抱く。敵でなくて心から良かった。そんな彼らに時間を与えることなく、再びこちらに格闘戦を仕掛けてきた。

 もちろん迎撃はする。ところがその動きは先程までとは別物で、まるで捉えることが出来ない。それどころか次々とこちらの武装が潰されていった。

 エースの力を見せつけられて追い詰められていく此方。そのタイミングでようやくシュトラールリヴァイバーが接近してくる。

 

『あんたの装備が飛んでくるのを確認!』

 

「よし、シュトラールなら!」

 

 早速換装体制に入る。が、それを正隊長もそれを完全に読み切っていた。

 

『させない』

 

『!避けろ進!!』

 

 急速方向転換したオースセイバーが防衛行動に入ろうとしたアーバレストを抜けてキャノンユニットで狙撃を敢行した。宗司の声で気づいた進は間一髪機体を捻らせて避ける。だが無論自動操縦のシュトラールはビームに直撃し爆散した。

 換装に失敗し、更に劣勢に立たされる。カゲヌイで攻撃を凌ぎながら対抗策を練る。

 

(あっちがSEEDなら、こっちもSEEDでやるしかない。本流の力、見せてやる!)

 

 SEEDシステムの使用を決心し、相方である宗司達に知らせる。

 

「俺がSEEDシステムで押さえる。止まったところを行け!」

 

『分かった』

 

『あんたに任せるしかないかっ。行け!』

 

 直後SEEDシステムを発動させた。コンピューターの駆動音と共に頭の中が冴えわたる。

 集中力の高まった状態で、俺はオースインパルス・アッシェで格闘戦を仕掛ける。先程までは速度で圧倒されていたこの形態だが、今はSEEDシステムで機体も、俺自身も出力・思考速度共に上がっている。

 距離を詰めたオースインパルスでそのままオースセイバーに対艦刀を振り下ろす。回避されるも、即座に反対側を振るう。それもまた避けられた。返しと言わんばかりに反撃の一太刀が繰り出されるが、こちらも避けて反撃の対艦刀を振り回し鍔競り合う。

 鍔競り合いの後、両者は再び高速機動を行いつつ近寄っては離れてを繰り返す。劇の踊りのような激しくも精密さのあるそれに、見惚れた様子のアーバレスト。

 

『っ、割り込めない……』

 

「ついて来れないのか。なら俺が決めてやる!」

 

 そう吐いて両手の対艦刀を横薙ぎに振るった。攻撃は回避されるが、続けて片方の対艦刀を一振りそのままオースセイバーへと投げつけた。

 突発的な攻撃とも取りがたい行動に、反射的に光剣を振るった正隊長。精確な斬撃で投げ放ったハルファスを実体部分のみを斬ってしまう。

 

「くっ、英雄の力、ここまでなんて!」

 

『悪いが一旦終わらせるぞ!』

 

 死刑宣告をする正。このまま長引けば不利と判断して勝負を決めるつもりなのだ。

武装の減ったこちらへと狙いを絞って突撃を掛ける。進も討たれるわけにいくかとビームライフルを乱射する。とはいえ疑似とついていてもSEEDシステム、こちらの攻撃は避けられ、見る見るうちに迫られた。

 

「クッ!」

 

 ようやく、ここまで追い詰めたのに。そんな悔しさを感じてしまう。もっと力があれば、と諦めかけたその時。

 

『こっちを、向けぇ!!』

 

「!!?」

 

『何だと……』

 

 それを助けたのは、長大な銃剣を構えたアーバレストであった。

 

 

 

 

 間一髪だった。SEEDシステム同士の激闘に注視せざるを得なかった宗司達は機を伺って介入するタイミングを見計らっていた。

 両者共に隙の攻防で、入る余地がないと思いかけ本当に進に任せようとした矢先、急襲を掛けたオースセイバーの姿にすぐさま機体を動かしていた。

 爆発的な出力を得られるガンダムDN・アーバレスト。だがその初速段階で間に合わないということをエターナが見抜いていた。

 

「速い!」

 

『このままだとアイツ落とされるわよ?そうなったらここまでやった意味が!』

 

 ようやくここにきて勝てるかもしれない展開が生まれた。それを逃したくないというエターナの言葉には強く同感する。

 どうにか出来るのは自分自身。スラスター全開で間に入り込もうとする。しかし感覚で分かる。普通の武器では間に合わないと。

 

(間に入りきれない……ならっ)

 

 咄嗟に考え付いたのは武装の変更。腰部のブレードザッパー・ガンザッパーをコンバートセイバーへと換装させて、その刃を伸ばす。

 そうして間一髪で、オースインパルスへと伸びた光刃を受け止めることに成功したわけである。防がれたことに正が動揺を浮かべる。

 

『何……』

 

『お前ら……』

 

 助けられた進もまた唖然としている。だがそれに構うことなく機体出力を上げて押し返す。

 背を向けた状態でまだ戦えるのかと進に問う。

 

「まだ、やれるのか?」

 

『……もちろん!』

 

 確認して、再びオースセイバーへと向かっていく。今度は宗司達が前衛だ。コンバートセイバーを手に近接戦を開始する。

 もちろん相手はまだSEEDシステムの稼働中だ。攻撃は容易く回避され、どちらかと言えば後手に回る展開。防戦一方である。だがこれでいい。

 エターナに進の状況を伝えさせる。

 

「エターナ、進さんの方は」

 

『今換装体制に入った。空戦タイプに換装する!』

 

 これは武装の多くを失ったオースインパルスの戦力補充を狙ってのことだった。前に出て注意を引く。それによりオースインパルスは換装の時間が得られる。

 それまでの間にこちらは落ちない様にかつ引きつける。何とかオースセイバーはこちらを狙ってくれていた。

 空振りの後鍔迫り合いに持ち込んで正が通信越しに話しかける。

 

『インパルスの換装時間を稼ぐ。もっとも大事なことだ。だが……!』

 

 機体を弾かれると共に衝撃が襲う。脇の下から振り上げたキャノン砲本体がこちらを打ち上げた。吹き飛ばされる機体。

 

『きゃん!?』

 

「っ!なりふり構わずかっ!?」

 

 文句を放つが、直後アラートが鳴り響く。攻撃態勢に入っていることを知らせている。機体のカメラで姿を捉えきれない。避けようがない。

 一か八か、左右のどちらかに避けようとした宗司。だがそこで言いようのない感覚を感じる。

 

『させないっ』

 

「!?」

 

 左右から圧迫されるような感覚。精神的な疲労ではない。だがそれに類するような気がする。何を示すのか。短い時間で至ることは出来ない。エターナの声からそれを起こしているのは分かった。動かなければいけないことを思い出す。

 直感に従い、圧迫を感じた左右を除いた下方向への回避を選択する。機体を垂直きりもみ回転させながら動くと、その上方を四本の光の線が抜けていった。攻撃を回避できたことに驚きが漏れる。

 

「どうして……」

 

 そこでようやく、その理由が分かる。

 

『っ、あまりやりたくなかったんだけどね……脳波感覚共有』

 

「脳波感覚共有……」

 

『私の感じた敵の動きを、あんたでも感じられるようにする。さっき攻撃が来るの分かったでしょ?あれがDNLの感覚』

 

「あ、あぁ。あれが……っ」

 

 話を聞きながら回避を続ける。頭の中に次の攻撃の矛先が分かる。それは何とも言えない不気味さを感じる。先程までのように攻撃を当てられないことを正が憤る。

 

『クッ、動きが違う……これは』

 

「っ!これなら」

 

 だが今はそれもありがたい。感覚を信じて攻撃に転じる。防御の姿勢を崩して、連撃を浴びせる。

 DNLの力を体感しながらの攻防、間借りしたエターナのDNLの感応能力で優位に進めていく。そこに進も加わる。

 

『なんだか知らないけど、こっちが優勢だ!』

 

『この状態で二機は……!』

 

 同時攻撃でようやくSEED状態のオースセイバーを吹き飛ばす。逃げようとする機体に、宗司達も追いかける姿勢を取る。

 

「エターナ、距離を詰める!」

 

『もちろん!』

 

 二人でアーバレストの出力を上げるイメージを行った。もっと速く、逃がさない。そんな気持ちと共に出力を上昇させる。

 イメージの中で力を求める宗司達。だからこそだろう。勢いのまま「それ」を解除したのは必然だった。それに気づいたのは横を飛ぶ進だった。

 

『?おいお前ら……』

 

『おおおぉぉぉ!!!』

 

 が、それに気づくことなく見る見るうちに逃げる機体に距離を詰める。逃げきれないと判断したオースセイバーが機体を反転して急襲する。それでも止まらず沸き立つ勢いのまま切り裂こうと振り下ろす。

 

「これで、どうだ……っ!?」

 

 そこで唐突に視界がブラックアウトする。否、システムが落ち、もとのコントロールポッドの景色に戻ったのだった。

 

「シミュレーターが止まった!?」

 

 最初に出たその考え。何があったのか聞くため、すぐさま外へと出る宗司。見ると同じく慌ててポッドから出て状況を確かめに来たエターナと進、それに正隊長が担当技術者と元隊長達に確認を行っていた。

 

「ちょっと!システム落ちたんだけど!?」

 

「何だよ、せっかくもう少しで勝てたってのに!」

 

「そうだよな……もう少しだったのに」

 

 エターナ達の憤慨は無論宗司も感じていた。あの流れ、絶対ではないにしても惜しいところまで行ったのだ。

 そんな彼らの気持ちを尊重してか対戦相手であった正も原因究明を命じる。

 

「何があった?システムのハッキングか?」

 

「―――いや、それは違う」

 

 それを話したのは、他でもない自分達の隊長、黒和元であった。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP25はここまでです。

ネイ「シミュレーター止まったんですが、あの」

グリーフィア「止まったわねぇ。けどこれ元君が噛んでるみたいよねぇ?」

元君が何を考えてこの事態を予測していたのかを次話で明らかにしますよ。まぁこの模擬戦はあくまでステップの一つって捉えている感じです。

ネイ「ステップ、ですか」

グリーフィア「よく分かんないけど、まぁこれは昇れたってこと?」

今はそう形容することは出来る。というわけで次話へ。


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EPISODE26 遠き過去の日々4

どうも藤和木 士です。EP26の公開です。

レイ「模擬戦、あと少しで宗司君達勝ったんだけどなぁ。でも勝ちでいいのかな、これ」

ジャンヌ「そこら辺は今回の元さんの話で分かりそうですが、でもブラックアウトはオース側も想定外のようで果たして……」

というわけで本編です。どうぞ。


 

 

「違う……というと原因が分かっているんですか?」

 

「あぁ。もっともその認識は間違いだ。これは俺達があらかじめ機体のデータに仕組んでいた「フラグ」とでもいうべきものだ」

 

「フラグ……仕掛けた?」

 

 原因を探ろうとしていた正達に俺はそう言った。システムが落ちたのは他でもない、渡した機体のシミュレーション空間用データに盛り込んでいたものだ。

 発動条件について言及する。

 

「相模宗司とエターナ・ファーフニル、ガンダムDNアーバレストの二人が一定の練度に達した時に機能を拡張させる「フラグシステム」だ。ブラックボックスとして組み込ませる様にしていたから、それが起動すると同時に現行状態の機体情報を読みこんだシミュレーターでは目印と機密保持の為にフリーズするようになっている」

 

「な、なんてものを仕掛けているんですか!?こちらのシステムに障害が起きでもしたら……」

 

「そうならないようにはしている。ちゃんとデータは取れているはず」

 

「そうじゃないです!勝手にシステムの書き換えが行われるなんて……そんな」

 

 何かと怒りたい彼の気持ちには同情する。が、「そういうもの」なのだから仕方がない。もっともそのシステムを提案した本人は他でもない自分なのだが。

 正もそうだったが、それよりも宗司達からもこの結果に対して物申してくる。

 

「あの、それでこれはやり直しってことですか?勝ったわけじゃないでしょうに」

 

「そーよ!あんた最初っから勝たせる気なかったってこと!?」

 

「同感だな。そんな卑怯な手をあんたは使うのかよ!?」

 

 三人は憤慨する。だがそれに関しては最初から考慮していた。

 

「まさか。合格だよ」

 

「えっ……」

 

「合格だ。お前らはちゃんとそれぞれで連携を取った。そして宗司とエターナはお互いの連携を高めて、次のステージに進んだ。何ならシステムのシャットダウンになるほどの状況を引き出したイコール勝ちってことでもある」

 

 勝ちの判定をそのように解釈し、説明する。

 元々このタイミングでガンダムDNは次の段階へ行ってほしいとは思っていた。特にアーバレストは宗司とエターナ、二人の心の壁を取り払う必要があった。二人に、特にエターナに足りていないのは他者を認める気持ち。

 それを解消するために同じく他人との距離感を調整しづらい進を利用した。彼の問題は昨日の時点で正から聞いていた。壁もある程度取り払えれば連携にもつなぎやすい。そう考えた。

 結果はこの通り、予想的中となったわけだ。ジャンヌが元に代わり証拠を示す。

 

「モニターで見る限り、あなた達の連携は見事なまでに改善されています。戦った正さんも、そうですよね?」

 

「まぁ……そうですね。進がここまで初対面の人と連携が取れるようになっているのは、驚くべきことです」

 

 納得しがたい様子を見せるも、その成果に頷く正。面倒な事はなるべく一気に解決させたい、それが人の本能だろう。

 それ以上は正も追及するのをやめ、解放されたシステムの概要について訊いてくる。

 

「それで、解放されたのならそのシステムを含めた模擬戦が必要なのでは?」

 

「それも必要なのかよ!?」

 

「はぁ~?じゃあシステムシャットダウンするプログラム必要なかったじゃない!」

 

「いや、それはしない」

 

「はぁっ!?何でっ?」

 

 更なる訓練の必要性を俺は否定する。一番に反応したエターナに始まる驚きの伝播。俺はその理由を説く。

 

「フラグによって解放される機能は、いずれも他勢力のシミュレーターでは十全に機能しない。どの組織にも流通していない技術なんだからな。一昼夜ですべて再現は出来ない。出来るとしたら形状変化のみ。そもそもシステムが落ちるのもその変化を無理矢理受け入れようとした結果オーバーロードを起こして完全にお釈迦になる前にデータ側からシャットアウトしているに過ぎない」

 

「ある意味の技術漏えい、本当に最悪のシステムダウンを防ぐためのセーフティな意味合いもあると?」

 

「そういうことだ。最初からそう言っている。やるならうちの艦のシミュレーターだろうが……それでも今の模擬戦でその必要はないと判断している」

 

 先程までの戦闘とは違い、相手に動きを合わせるということを意識してから一発でフラグを達成した。それだけでなく先程の一戦では正を一方的に押す展開を見せた。実力は今のままでも十分。連携もやろうと思えば出来る。そしてそのわだかまりは既にない、はず。

 それらを加味して、やるべきことは一つ。元は模擬戦に参加した3人にすべきことを示す。

 

「お前達がこれからするのは、新しいシステムの体感と情報共有。船に戻ってからのコミュニケーションも欠かすな」

 

「まぁ、早い話がチームワーク、コミュニケーション能力を付けろ、というわけです」

 

「いや、姉様端折り過ぎ」

 

「これも訓練、ってことですか」

 

「何か子供っぽいな……」

 

「それ」

 

 各々からはあまりしっくりと来ていないようだが、重要であるということを重ねて示す。

 

「子どもっぽくて結構。子どもにも出来ることが原因で負けたら恥ずかしいのはお前達だがな。今後それで問題を起こされても困るし」

 

「元さんの意見は間違いないですね。進には日ごろから常々言っていると思うが」

 

「はいはい分かったよ、明隊長!」

 

 納得を得たのを確認してこの模擬戦終了を言い渡す。

 

「これでこの模擬戦を終了とする。協力してくれたオース技術部、並びにオース軍影義明隊長に礼」

 

「ありがとうございました」

 

「英雄って呼ばれるだけあったわね」

 

「こらエターナ」

 

 それらを受けて正から明へと戻った彼が発言する。

 

「あぁ。こちらの隊員の成長に一役買ってくれたことに感謝します。それとくれぐれももう一つの名前の方は内密に」

 

「分かりました」

 

「こちらでの報告書も、影義さん名義で報告を上げておきますね」

 

「助かります」

 

 こうして明日へと向けた主となる準備は終了したのだった。

 

 

 明と進達に見送られて艦へと戻った宗司達。艦の機体ハンガーへと顔を出す。先に戻っていた面々と挨拶を済ますとGチームの面々が集まってくる。

 

「あ、元隊長さんとジャンヌ副隊長さん、宗司君とエターナちゃんも」

 

「ただいま戻りましたクルスさん」

 

「あれ、あんたの相棒は?」

 

 エターナがクルスといるはずのもう一人について問う。するとクルスは遠慮しがちに指を整備ハンガーの脇を指す。

 

「あー……あそこでみっちりと、ですね」

 

「みっちり?って、あ」

 

 エターナと視線をその先に合わせて事情を察する声を出す宗司。目の先にはシミュレーターの傍でグロッキー状態になっている入嶋、それを見下げている呉川とクルツの姿がある。

 元達に気づいた呉川達が声を掛ける。

 

「元隊長、ジャンヌ副長お疲れ様です。宗司達の方は……」

 

「セカンドステージ突破、と言ったところだ。上出来だとは思っている。そっちは」

 

 元隊長はこちらの状況をそのように告げた。千恵里の方は何をしていたのか、呉川は返答する。

 

「中距離戦闘におけるイロハは教えてシミュレーター上で実践させました。やはり隊長よりも私の戦い方の方がまだよさそうですね」

 

「そうか。昨日の時点で紫音艦長から提案があったが、そうして正解だったわけだ」

 

「あぁ、昨日の話の奴か」

 

「昨日の?」

 

 エターナに対し訊き返す。そのエターナによれば、どうやら入嶋の育成方針の話らしい。艦長が昨日の模擬戦のデータを見たらしく、元隊長の動きをトレースして無理に再現しようとする彼女のやり方ではよくないと判断。そこで基本の戦闘スタイルが比較的近い呉川隊長に指南を付けてもらうことになったのだという。

 エターナはその時のことについて振り返る。

 

「まぁ最後の方でクレカワに指導してもらうってことはイリジマも了解してたし。けど私達のをやってる最中にこっちでやってたとはね」

 

「元隊長じゃなくて、呉川隊長が直接の指導者か。俺達と大体同じ時間やってたなら、これだけ疲れるのも納得かもしれないな。あれ、ならクルツさんは何をやっていたんです」

 

 疲労困憊した理由について理解すると共に、クルツに対する疑問を新たに口にする。その内容について入嶋が枯れた声で感想を語る。

 

「だからって……色々ぶっこみ過ぎ……クルツ先輩はクルツ先輩で、私が護る護衛対象として設定……されてたのっ!」

 

「一応予測照準無し、カーソルロックしたら即撃つってルールだったんだけどな。千恵里が中々隊長の足止められずにいて、撃つ暇ホントなかったぜ」

 

「ぜぇったい、嘘!!撃てる時ありましたよね!?」

 

「普段だったら、な!」

 

「……こっちはこっちで、大変だったんだな……」

 

 入嶋とクルツの揉めるのを眺める。その様子に呆れていた呉川隊長が宗司達に言ってくる。

 

「お前達も明日は本番だ。協力できることはやってやる。第2段階も発現したのなら訓練はここでしか今やれない。明日無事に帰還できるように、だ」

 

「呉川隊長は、あのシステムについて知っているんですか」

 

 尋ねると、呉川は頷く。

 

「もちろん、全てではないが上官として知りえることは知っている。基礎の段階は任せろ」

 

「分かりました。ならすぐに」

 

 やりましょう、と言おうとした時、エターナが待ったを掛ける。

 

「ちょちょ、ちょっと待ちなさいって!?さっき戦って帰ってきたばっかりなんだから、もう少し時間を置かせなさいよ!?」

 

「あぁ……確かに」

 

「流石に今すぐはな。なら20分後に開始する。シミュレーターのリミット解除の時間もあるだろうしな。構いませんか、隊長」

 

「お前に任せる」

 

 訓練は休憩を挟んで行うこととなった。一目散に休憩スペースへと向かうエターナと今なおグロッキーな千恵里を抱えて追うクルス。

 

「ティータイムティータイムゥゥゥ!!」

 

「ほらっ、行くよ千恵里ちゃん!」

 

「うぅ……うん……」

 

「……」

 

 そんな女子勢の背中を見つつゆっくりと追いかける宗司。閉ざした口、心の中で思案する。

 

(少し急ぎ過ぎているのか……俺)

 

 逸る気持ちを反省して、気持ちを落ち着けながら休憩スペースへと向かう。

 それもあってか、その後の訓練では落ち着いて動くことが出来た。もしそのままやっていたら、途中でギブアップしていたかもしれないと思うほど、DNアーバレストの新たな力は絶大だった。

 本当に明日上手く使いこなせるのか、心配になるほどに……。

 

 

 

 

 オース遠征の二日目の夜。

 既に未成年パイロット達がシミュレーターに疲れて眠りに就いたころ、艦の中央スペースでジャンヌと元は共にシミュレーターポッドを運用していた。

 既に仮想空間に入り込んでいた二人。そこにガンダム機付長となっている来馬が通信で話す。

 

『これで後は、あなた達の機体だけね』

 

「そうですね、間に合わないかと思いました」

 

『いやぁ、ごめんね~この最終日直前まで調整掛かっちゃって』

 

 来馬とそのようにやり取りをする。無論それは私達の機体、シュバルトゼロガンダム・ジェミニアスの調整の事。一日目でエターナに指摘されていた武装群の最終チェックと、同時に行われていたシミュレーターへのインストール時の反映の調整をずっと行ってくれていたのだ。

 大変さについて元も語る。

 

『以前までのシュバルトゼロガンダムRⅡと違って、武装数がケタ違いだ。汎用性を極限まで高めた仕様のマルチ・スペースシステムの構築、感謝する』

 

『いいってこと。私としては、ちゃんと二人が無事に戻ってきてくれることだけが大事なんだから。……もう、光姫みたいな事がないように』

 

 来馬の声が重くなる。ジャンヌも痛いほどよく分かる。誰もこの先欠けたくない。全員で生き残る。それがCROZE、もといHOWの第一目標に自然となっていた。

 達成する為に努力は惜しまない。もっともそれで来馬が過労死されては困るのだが、それでも明日の任務の為に出来ることを今からでもやらなければならない。元が早速始めるようにと来馬へと命令する。

 

『早速始めてくれ。レベルはEX、敵機はあの三機だ』

 

『了解!シミュレート、アクティブ』

 

 言ってシミュレーターの仮想空間が変化していく。フィールドは海岸線近く。空中で浮遊するシュバルトゼロガンダム・ジェミニアス。

 HOWの最強の機体と対峙することになる機体が再現されていく。現れたのは蒼穹島のマークシリーズ、だがこれまでの量産型タイプではない。

 これまでに幾度も対峙し続けた蒼穹島の最高戦力。超常の力を操り、RⅡが防戦に回らざるを得なかった機体。

 白銀、紫、えんび色の機体を前に息を呑む。

 

「仮想空間の再現モデルとはいえ……威圧感は相変わらずですね」

 

『これまでシミュレートでも苦戦を強いられてきた相手だからな。だが、今回は』

 

 三機が構える。こちらも戦闘態勢を取る。開始の合図を来馬が告げた。

 

『シミュレーション、スタート!』

 

『行くっ!』

 

 シュバルトゼロガンダム・ジェミニアスが突撃する。迎撃を開始した三機。囲うように展開する三機に対して、まとめて対峙するこちら。

 距離を詰めては離す。そして三機が一斉に砲撃して―――――

 

 

 

 

 20分が経ち、模擬戦終了の合図が響いた。

 

『こ、これは……』

 

「す、すごい……ですっ」

 

 驚嘆するジャンヌと来馬。シミュレーション空間には煙を上げて沈黙したあの三機の姿があった。

 RⅡを遥かに凌ぐ力はジャンヌも相応に疲労させられていた。それでもそれを吹っ飛ばすほどにこの結果は嬉しいものだった。

 ところが、元はそれに完全に満足したわけではなかった。

 

『いや、まだ満足できるものじゃない』

 

「元?」

 

『確かにあの三機を倒すことは出来た。だがそれはあくまで逃げることのない、ましてや機械で再現したモノ。本物かつ、本来のパイロット達を相手に出来るかどうか、不安が残る』

 

 言われてぐうの音も出ない。もしもではあっても、データを取った時よりも今は強くなっていることは違いない。今のシュバルトゼロガンダム・ジェミニアスはまだ彼らの「異常」な領域に達していない。

 異常な領域、かつてのシュバルトゼロガンダム、イグナイターが到達したあの領域。既存のMSを越えた物理現象を展開する機体、それをHOWでは「超次元領域機体」、「DMS」と呼んでいた。

 それが敵にある現状、シュバルトゼロガンダム・イグナイターが抜けた穴をどうにかする側面をジェミニアス開発計画は持っていた。今回勝てたと言っても所詮はシミュレーション。現実のあれに勝てなければ意味がないと元は思っているのだろう。

 

『まぁその気持ちは分からないでもないけどね。今のシュバルトゼロガンダム・ジェミニアスはまだ本気じゃない。だけど今はそれで我慢してよね?開発は進んでるから』

 

 そんな元に対し、来馬もその不満げな態度を窘める発言をする。来馬の意見に元もまた頷いた。

 

『そうだな。焦り過ぎ、か』

 

「そうですよっ。私としては、前の時よりも負担が軽い状態で勝てたのは嬉しいんですから」

 

『それは、よかった』

 

 私の言葉に元は少しだけ笑う。ともあれこれでこちらの準備は整ったわけだ。シミュレーターから出て、元は確認を取る。

 

「この後来馬達は実機の最終調整だな」

 

「そうだね。徹夜で仕上げるから、明日ちゃんとやってよ?」

 

「分かっている。この国家、そして日本政府の望む未来の為に。任務終了後にゆっくり休んでくれ。無理はし過ぎるなよ」

 

「その時はジャンヌちゃんの髪モフモフで!」

 

「はぁ。分かりました。考えておきます」

 

「やったぁ!」

 

 そんな子どものようなやり取りを経て、来馬は整備員達と共に最後の調整作業へと向かっていく。

 それを見送ってジャンヌ達もまた自室へと戻る。戻る中で元に聞いた。

 

「この任務の成功が、今後のこの国を左右する。それは分かっていますよね?」

 

「あぁ。そしてそれが、どちらにしても主権派にとっていいものではないこともな」

 

 返答に返事を曇らせる。最初に仕事をもらった時に聞いた「あれ」。二年前の戦闘に関わったジャンヌ達にとっては複雑なものだった。

 ところが元はそうでもなかった。

 

「だが俺としては、それは必要なことだ。この疑似国家が作られた意味。原点に還るだけのこと。それを聞いて、どう行動するかがあいつらに求められる。二年前、役割から逃げた「代償」を払ってもらう」

 

 「代償」は払うべきもの。それを払うのは……。

 ジャンヌは思う。元の、政府が言うことは間違っていない。どうするかは今のオース国家が決めること。

 なぜこの合同任務が受領されたのか。あの事件以後島の運営に政府が干渉しなかった訳。あくまで自分達は「使者」でしかないのだ。

 それは明日、作戦終了後に明らかになることだ。それを、「彼ら」はどう思うのか。薄情者と糾弾されるかもしれない。だけどそれは必要なことだと分かっている。だから私も彼と共に決めた。この作戦の遂行を。

 私は従者にしてパートナー、そして恋人である彼に呟く。

 

「それが例え、かつての戦友でも」

 

「あぁ。その道を、俺達は選んでいる。厄介事を招いたツケは、払ってもらうさ。俺達がそうさせる」

 

 私達はもうあの頃とは違う。仏の顔も三度まで。三度目が無いように、動くだけだから。

 部屋に帰ってシャワーを浴びたジャンヌは、明日の為にジェミニアスの追加事項を読みこんでから早めに就寝した。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP26はここまでです。

ジャンヌ「うぅーん……やや強引さは相変わらずですね、元さん」

レイ「ほんとだよ。情報漏えい防ぐ為っていうのでも、システムの管理者さん達には言っておいても、ねぇ?」

ぶっちゃけ言っても良かったんでしょうけど、元君はそれ以外の事で頭がいっぱいになっていたのかもしれないけどね。後半で言ってたでしょう。

レイ「あーなんかツケを払わせるとか。え、何か明日那さんとか元君達に貸しをしてるの?」

明日那さん、は三角かな。まだその理由は明かしていないから見ても分からないと思う
。とはいえ次回以降からその要素、この島で起こる事件の原因を明かしていくから、予想してもらえれば、読者さんもね。

ジャンヌ「まぁ、何かやらかしている程度に見てくださいってことです?」

端折るとそういうこと。というわけで次回へと続いていきます。いよいよ終盤、事件当日に時間が動いていきます。


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黒の館DN 双翼英雄譚編 第5回

どうも、藤和木 士です。黒の館DN 双翼英雄譚編の第5回です。

ここで挟む理由は本編冒頭で明らかにします。

それではどうぞ。


 

士「黒の館DN 第5回挟みまーす」

 

レイ「いや、唐突過ぎ」

 

ジャンヌ「そうですよ。ついこの間挟んだばかりじゃないですか……」

 

士「この次がどちゃくそ長くなっちゃうの!前中後編でもダメそうだからね……」

 

レイ「えぇー……」

 

ジャンヌ「今挟んで少なくするしかない、というわけですか。まず最初にやるのは?」

 

士「人物紹介。と言っても1人だけどね。あの人モチーフの首長」

 

レイ「じゃあ、早速行こうか。大守明日那の紹介だよっ」

 

 

・大守明日那

 観光疑似国家オースの代表を務める女性。20歳。芯のある性格で茶色の長い髪が特徴的。

 かつてオースで起こった虚無戦争でオースを率いて戦った者の一人で、姉である大守里奈と共に戦争を終わらせた。本来なら姉が国の代表となるはずだったが、姉が早々に辞退したことで彼女が引き継ぐことになった。

 やや未熟な面があり、姉の影武者としての役割だった歌峰美愛が増長していくのを抑えられず、歯がゆい思いをし続けている。影義は戦争後半からの恋人でその愚痴をよく聞いてもらっている。元達とも面識があった。また進とは彼女の父が結果的に種命島の被害を大きくして家族を奪ったこと、そして軍を抜けて行方不明になった義兄の指示で彼女を護るようにと言われたことで苛立ちを募らせながら奇妙な護衛関係を築くことになった。

 今回CROZEを招いたのも美愛とゼロンが島の誕生25周年の式典で動くと確信したため。CROZEにゼロンと同調する島の改革派を一掃するため依頼していた。

 人物モデルはSEEDシリーズのカガリ・ユラ・アスハ。原作におけるラクスモチーフのキャラの妹となり、キラモチーフの輝とは幼馴染という関係となった。

 

 

レイ「以上が大守明日那のプロフィールだね」

 

ジャンヌ「まぁ大体は原典と同じ立ち位置、でないところも多分にありますね」

 

士「書いてないけどあの家の人も出ていないことだしね」

 

レイ「けど劇中じゃちょっとあっちよりも厄介そうな場面見せてるね……」

 

士「お姉ちゃん大好きっ子だから……ね(´・ω・`)真面目に言うとシスコンの気がある感じで書いてます」

 

ジャンヌ「シスコン的描写、書けてると思います?」

 

士「自己肯定感ゼロですが、何か(´・ω・`)」

 

ジャンヌ「すみませんでした……」

 

士「それはさておいて、まぁ彼女はゼロンと内通する美愛派に危機感を抱いて本土のかつて救援してもらったHOWへと協力を要請したわけだ」

 

レイ「そうだったよね。でも、直近の話でなんか元君達別の思惑、というか目的持ってるみたい」

 

ジャンヌ「ツケだとか、代償だとか……オースは何かやってしまったんです?」

 

士「そこら辺はこれからの展開で明かしていきますので。では続いてMSの紹介をお願い」

 

ジャンヌ「MSも一機だけみたいですね。紹介するのはオースセイバーガンダムです、どうぞ」

 

 

OUSG-X23T

オースセイバーガンダム

 

機体解説

・オースの開発したステージツーシリーズの機体の内、影義明が駆る機体。機体カラーリングは水色と灰色。愛称は「セイバー」

 変形機構を併せ持ち、兵装も射撃寄りな部分が多い。またその基礎設計にはかつてステージワンと称される機体群に位置づけられる機体「オースジャスティスガンダム」がベースとなっている。加えてオースが開発したムラマサのデータも採用されており、変形時にシールドを機体下部に設置する構成などが同じである。

 宇宙と地上両方で使用が可能だが、どちらかと言えば地球上での戦闘が得意で、同じオースの開発した新型機「オースカオスガンダム」とは住み分けが出来ている。とはいえインパルスに次ぐ万能機としての趣が強く、場合によってはセイバーを主軸に他機が追従する場面も考えられる。

 コンセプトは「セイバーガンダムのオース版」。同じ可変機のムラサメをモデルにしたムラマサのデータを流用している点がポイントとなっている。またジャスティスの設計も流用し、武装の一部はジャスティスの後継機であるインフィニットジャスティスの武装に関連されるものも存在する。

 

【機能】

・DNフェイズカーボンVerV

 インパルスにも採用されていたDNフェイズカーボンの最新仕様。DNの流入量によって装甲色が変化する。

 本機は大出力ビーム砲を標準で搭載するため、場合によっては機体色が全身灰色になる可能性がある。ただし影義は上手く立ち回るためその危険性が少ない。

 灰色のカラーリングに関してはプロトセイバーの黒が反映されている。

 

・変形

 双胴機型の飛行形態に変形する。飛行速度もさるものながら、特徴的なのはその攻撃力。バックパックのビーム砲などが正面にすべて向くため攻撃性能が非常に高い。圧倒的な火力で正面の敵はほぼすべて殲滅する突撃機として運用される。

 変形時間も短い為、突撃した直後MSに戻って翻弄する使い方がなされやすい。

 変形のモデルはセイバーをそのまま踏襲する。

 

・疑似SEEDシステム

 インパルスに装備されたSEEDシステムをベースに量産機でも扱えるようにテスト開発されたシステム。

 パイロットに直接働きかけるSEEDシステムと違い、こちらは機体側でAI疑似人格を形成、その疑似人格にSEEDシステムで働きかけて種割れを起こし、そのAIが機体の操作を最大限サポートするというもの。

 パイロットに依存しないSEEDシステムであり、あちらの開発責任者が関与していないシステムということもあって注目を浴びている。しかし純粋型と性能は幾分か劣るようで、パイロットである影義もパワー不足と以前との違いが分かったように話している。

 

 

【武装】

・CIWSバルカン

 頭部と胸部、そして変形時の機首部分(頭部後方のでっぱり)に内蔵されるバルカン砲。ミサイルの迎撃に用いられる。

 

・ビームライフル

 腰背部、あるいは折りたたんだ右肩に懸架される基本的な射撃兵装。変形時には必ず右肩に装備され砲塔として用いられる。

 インパルスが装備する物の大元であり、設計にはオースジャスティスの物を活用された。ステージツーの機体のビームライフルはこれを参考に開発されている。インパルスの物と同じく威力の向上と消費DNの抑制、並びにMA形態における照準精度である。

 

・ビームサーベル

 肩部に装備される基本的な格闘兵装。インパルスのものと同タイプの物である。

 

・エアシールド

 左腕部に装備されるシールドユニット。内部にはDNウォール発生器、そして外縁部に沿ってビームブーメランとして使用可能なビームブレイドが1基、そして捕縛用のアンカーガンが先端に装備される。

 アンカーガンの先には先述したビームブレイドが取り付けられており、ブレイドの端末そのものがアンカーの引っ掛けとなっている形。またその接続部の関係から振り回せばそのままビームを出力したまま攻撃が可能なため、難易度は高くなるが敵への投擲後アンカーで掴んでそのまま敵を範囲攻撃するやり方も取れる。

 モデルはセイバーの空力防盾。兵装の構成としてはインフィニットジャスティスの物を踏襲している形で、後継機が出る場合どうなるかである。

 

・キャノンユニット「フルフル」

 バックパックに装備される主砲と副砲を備えた武装ユニット。名称はソロモンの悪魔の一体、稲妻や嵐を起こす。MS形態では下腕部の下から前へ展開する方法、もしくは肩部の上から展開する方法が選べる。

 主砲はハイビームランチャー、ハイブラスター系列の兵装で、エネルギー効率と威力が向上。DNウォールすら貫通が可能。変形時には貫通性と圧縮率が増す。副砲のビームスポットガンは連射性を重視しており、変形時には威力を維持したまま、連射性を向上させている。

 そしてこれらの武装は同時稼働でその性質を変化させる。MS形態では球体状のビームを発射して大質量で吹き飛ばす。そして変形時には備え付けられたウイング兼DN制御用ディメンションアンテナの制御で鳥型のビームエフェクトを展開、放射して広範囲にわたる翼のビームサーベルで切り裂いていく。

 モデルはセイバーの背部ビーム砲群。MS形態での展開は同型の改修機ヴァンセイバーより。球体エネルギーはセラヴィーガンダムのハイパーバースト、そして鳥型のビームエフェクトはライトニングZガンダムの演出より。

 

 

ジャンヌ「以上がオースセイバーガンダムのデータになります」

 

レイ「最初に文字数がみたいなこと言ってたけどさ、別に大丈夫なのでは?」

 

士「そうかもしれないけど、次回の紹介が多すぎるんだよ……!」

 

ジャンヌ「別にオースの青緑黒の三機を紹介しても良かったのでは?」

 

士「紹介できません。諸事情」

 

レイ「諸事情ってだけで分かる不思議」

 

士「まぁオースの3機とも結構説明とか短めって自覚はあるんだけどね。今回のオースセイバーも原型機と同じ武装が多いから割かしカットしている説明もありますから」

 

ジャンヌ「確かに?武装配置も同じなのがほとんどを占めてますよね」

 

レイ「違う武装ってシールドのビームブーメランとアンカー射出機構?それとフルフルユニットとかいうバックパックキャノンの特殊効果だよね?」

 

士「そこら辺が主な変更点だね。あと疑似SEEDシステムもオリジナルではある。本来のセイバーはそんな特殊機能ないし」

 

ジャンヌ「ちなみに疑似SEEDシステム設定の理由は何なんです?」

 

士「すでに言及されているけどSEEDシステム開発者の種田博士の裏切りを考慮しての搭載だね。博士は源流のSEEDシステムにしか興味ないし、安全だろうって。まぁ疑似SEEDシステムの考案にも博士は関わっているんだけども」

 

レイ「そっかー。でもたったそれだけでオースインパルスとガンダムDN・アーバレストの二機を連携取れてない状態で圧倒してたのは凄いね。全然その時のは見てないけど」

 

士「第2章ではそこらへんもちゃんと見せれたら……いや、他のメンツが活躍する予定しか見えてないわ。要所ではちゃんと動くだろうけど(;´・ω・)」

 

ジャンヌ「悲しいですが、レジェンドキャラモチーフの彼らもまたこの作品では一人のキャラクターでしかない、というわけです?」

 

士「決してぞんざいに扱う気はないけど、そうなってしまっている感は否めない気もする(どっちやねん)。とりあえず紹介はここまでです。次回からの話でもしますか」

 

レイ「次回はいよいよ美愛派との対決かな?それとギルボードって敵の幹部もか」

 

ジャンヌ「名前からして、SEEDDestinyにおけるあの重要人物がモチーフですよね……一体どんな事を考えてゼロンに付いたのか……」

 

士「彼らも単純な馬鹿ばかりではないですよ。詳しいことは言わないけど。そして章のタイトルである運命の種の行方も、この最終面で明らかにしていく予定です」

 

レイ「うむむ。何のことかさっぱり」

 

ジャンヌ「って程でもない気はしますけどね。何とも言えませんが」

 

士「果たしてゼロンにオースを奪取される事態は防げるのか、CROZE部隊は生き残れるのかという所でお開きです」

 

レイ「また次回もよろしくねー!」

 

ジャンヌ「よろしくお願いします」

 




今回もお読みいただきありがとうございます。今回は黒の館DN一話だけです。

ちなみにここ情報ですが、無論大守明日那も原典のキャラクターと同じようにパイロットでした。が、実は姉のMSも当時の時点で用意されていました。こちらは無論オースストライクと呼ばれる機体のコピー機なのですが、果たしてその姉のMSは何だったのか、Destiny準拠なら予想が付くかと思われますが、その話は覚えていればオース編終了後の黒の館DNででも話します。

オースセイバーに関しては今言っておくと達磨にはされません。良かったね

それでは次回からオース編最後まで、お楽しみください。では。


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EPISODE27 遺伝子が定めるモノ1

どうも、藤和木 士です。EP27と28公開です。まずEP27から。

ネイ「いよいよ作戦日当日というわけですが、はたして新人の皆さんは緊張していないでしょうか」

グリーフィア「そうよねー。宗司君はもっともだろうけど、案外千恵里ちゃんとかエターナちゃんとかが緊張してるってこともありえるかもだものねー」

というわけでどうぞ。


 

 夜が明け、いよいよ決戦の日が訪れた。朝食を済ませ、ブリーフィングルームへと集まった隊員達に元が良く通る声で通達を行う。

 

「今回の作戦では事前に準備していたので分かっていると思うが部隊を二方面に分けての作戦だ。一つはこの基地に残って基地そのもの、そして本艦ヴァルプルギスを護る部隊。もう一つは現場の記念式典会場で式典参加者の防衛とゼロン関係者、美愛派を拘束する部隊だ」

 

 初めはこれまでの振り返り。確認事項の再確認がメインだった。それらを聞いて続く元隊長の注意事項に耳を傾ける。

 

「分かっていると思うが作戦内容は厳守。つまり、美愛派とゼロン幹部の拘束は式典が始まってから、大守明日那氏が告発を行ってから動く。会場組は間違ってもその前の段階で動くなんてことするなよ、特に入嶋」

 

「な、何で私だけ名指しなんですか……やりそうなイメージあるかもですけど!」

 

 憤慨しながらも自分がやるイメージであることは認める入嶋。失笑が周りで漏れるが、笑い事ではないと元隊長は咎める。

 

「笑い話で済めばいい。だがもし途中で動いた場合、十分な配置でない状態のゲリラ戦になる可能性が高い。混乱した中で、果たして敵を撃てるのか?」

 

「無理です無理です!元隊長達じゃないんですし」

 

「いや、流石に私達でも被害ゼロは無いですよ……」

 

「うぅ……そんな状況にならない様にします……」

 

 無責任な発言だったと素直に反省し、縮こまる入嶋。

 今の話でも分かったように、これはもう訓練ではない。現場であり、社会が動いていくその瞬間に自身がいることを強く痛感させられる。

 果たして本番で自分の技量が生かせるのか。心配を感じながら続く隊長達の通達を聞く。

 

「それともう一つ。会場側と基地側双方ともに言えることだが、どんな事があっても狼狽えるな。新人達は特に、下手に動くことは禁じる。隊長達各位の指示に従え」

 

「私達の予測では敵はオース軍美愛派、それに島外からのゼロン部隊に加え、もう一つの勢力があると考えています」

 

「もう一つの、勢力……?」

 

 今まで明かされなかった勢力があるという知らせに隊員クラスの者達がざわめく。宗司自身もなぜこのタイミングで明かすのか、戸惑いを感じる。

 すると、それが今だからという理由を隊長達は語った。

 

「俺達が今まで接してきたオース軍明日那派、その中に、スパイがいると考えている」

 

「す、スパイっ!?」

 

「スパイが……」

 

 スパイがいるかもしれないという隊長の言葉に動揺が走った。

 あの中に、敵と内通しているスパイがいる。信じたくはない。もしかすると昨日行動を共にした大和輝も……。

 不安が高まる中、ジャンヌ副隊長が現時点での情報を上げる。

 

「もとから、オース政府からはその可能性もあると事前通達がありました。ただ、私達、そして光巴さんのDNL能力を以てしても、裏切り者が誰かまでは分かりませんでした」

 

「姉様の力でもダメなんて……」

 

「DNLの力はエスパーじゃないから。練度によってはこちらの感知する感情・思考をコントロールされることもあります。エターナもそれを学んでいく必要がありますよ」

 

「は、はい……」

 

 DNLは万能の力ではない。そう語るエターナの姉ジャンヌ。この短い間に宗司は機体の「あのシステム」を通してDNLを体感した。

 DNLの力、あの力は異次元と呼べるものだった。攻撃に対して肌がぞわっと感じるそれが、脳への刺激として来るような感覚。これまでとは違うものを感じられる。これまで言いようのなかった「悪寒」と呼べるものが、本当はその感覚を示すものではないかと思うほどに。そう言う意味では次元世界の「カミ」なんてものを信じ奉る彼らが、神の力と妄想するのも頷ける。戦闘において絶対の力だと思ってしまう。

 だからと言って、その彼らの行動を認めるなんてことは出来ない。宗司は昨日知った。シミュレーターから出てきたエターナが、いつもよりも疲弊していたことを。

 ジャンヌ副隊長によれば、それは自身と感覚共有したことによる疲れなのだという。その時、ジャンヌ副隊長から言われた。

 

(彼女をパートナーとして見るか、それともパーツとして見るか。それがアーバレストの力を引き出すのに重要な要素であり、私達HOWとゼロンの違いです)

 

(パートナーか、パーツ。そんなもの……)

 

 比べるまでもない。力を貸してくれている彼女を道具としてなんて見られない。

 と、思惟を巡らせたのち、元隊長が裏切り者関連でもう一つ情報を出した。

 

「確かに裏切り者はあぶりだせなかった。しかし、現状絶対にそうではないという人物は分かっている。一人は影義明、そして、もう一人は……大和進だ」

 

「あの二人は、敵じゃない」

 

 その二人はまさに昨日訓練を共に行った二人だ。あの二人が敵じゃないと分かっただけでも、宗司としては随分と安心感を覚える。

 同じくエターナも隣で胸をなでおろす。

 

「へぇ……分かってて昨日訓練したってわけね」

 

「でも、どうして彼らがそうでないと分かったんです?」

 

 素朴な疑問をクルスが投げかける。疑問に対しジャンヌ副隊長が答えた。

 

「それに関してはまさにDNLでですね」

 

「相模宗司、並びにエターナ・ファーフニル両名が彼らと模擬戦を行っている最中、探りを入れていた」

 

「あの時感じた不快感それか!」

 

 大きく声を上げたエターナ。どうやら彼女はその時の事を知っていたらしい。

 ところがそれは失言だった。特に彼女にとっては大きな。

 

「あらぁ、私のDNLを不快感と、ねぇ」

 

「あ、いや!違います、違うの姉様!あいつだけだから!」

 

 姉に対し必死に弁明するエターナ。それに対し反応を面白く観察するジャンヌ副隊長はからかいの後、元隊長と共に真面目な話に戻った。

 

「ただ、これも彼らの前では伏せておくこと。いつどこにスパイが聞いているとも限りませんから」

 

「不用意に確認はするな。最後に注意事項の確認としてこの事件の最重要ターゲット二人は生け捕りにする。オース側と日本政府側、双方からのオーダーだ。それでは、各員持ち場に付け」

 

『了解!』

 

 号令と共に各部隊は持ち場へと急ぐ。宗司は部隊長である呉川の下へと集まる。

 

「今回の任務、新人組はなるべく味方のアシストを優先しろ。アーバレストも解放した新機能はなるべく使うな。危険と思った時はすぐに使って危機回避に努めろ」

 

「使わないのか使うのか、どっちなのよ……」

 

「どっちもだ。それと今さらだが人を撃つことに嫌悪感があるならすぐ言え。足手まといは今回不要だ」

 

「そんなの、心配無用です!」

 

「私はもう何人も殺してきましたから……慣れてます」

 

「了解。今のところは大丈夫です」

 

 呉川隊長からの言葉にそのように応える。

 いよいよ持ち場への移動の開始、と言う所で元隊長に呼び止められる。

 

「チームG、悪いが時間をもらえるか」

 

「元隊長。私は構いませんが、何か特筆することが?」

 

「あぁ。特に新人組にな。知っておかなければ、致命的になるかもしれないことだ。」

 

 そのように話す元隊長。指示に従ってその話を聞く姿勢を保つ。元隊長が話し出す。

 

 

「オースという国の、25歳以下の人間はみな、普通の生まれではない」

 

 

 あまりに突飛な話題の始め方だった。

 

 

 

 

「普通の生まれ……って、どういうことです?」

 

「そのままの意味だ。彼らはとある部分を生まれる前に人為的操作をされて誕生している」

 

 聞き返しても千恵里の頭にはあまりピンと来ない。そもそも人為的操作がどういうことかも分からない。薬で何か変化させているということならとんでもないことなのだが、それなら最初からそう言えばいいのではと思う。

 だが感の鋭いクルスは、すぐにそれが何を指しているのか分かったようで、質問した。

 

「……まさか、遺伝子操作?」

 

「遺伝子操作?って穀物とかの遺伝子改良みたいな?」

 

「それの人間の赤ちゃん版だよ」

 

「人間の……って、それマッドサイエンティストの考え方じゃ!?」

 

 流石に気づく。その違法性について元隊長がクルスの問いに返す形で話す。

 

「そうだ。遺伝子改造による人類の誕生は本来国際法で禁止されている。クローンと並ぶ人類化学史のタブー。日本でもそれは例外ではない。

しかし、25年前、そのタブーは破られることとなった。日本だけじゃない。世界同時に、な」

 

「せ、世界同時に……!?」

 

 世界が一斉に破ったタブー。その言葉のスケールに戸惑いは隠せない。他の新人メンバーも目をキョロキョロと動かす。

 

「プロジェクト名、AS。人類の宇宙進出を目的に、宇宙空間に適応した新人類誕生を目的とした計画だ。それによって生まれたのが、彼ら、「コーディネイティア」なのさ」

 

「コーディネイティア……」

 

「人類の夢の為に、か。私達も宇宙開発が復活したけど、まだまだって言うのにね」

 

 宗司が復唱する。エターナは自身の世界の宇宙開発に関して話す。本当にそんな計画があるなんて、知りもしなかった。知っていなかったということは、それはただ一つ。

 私は二人の隊長に問いかけた。

 

「それを教えるって、いいんです?」

 

「これに関してはS級の情報統制がある。が、それを敵が知らないはずがない。突然それを敵の口から言われて、お前達は冷静でいられたか?」

 

「それは……」

 

「本番でお前達が驚きすぎないようにする。それだけお前達を目に掛けている、元隊長の考えだ」

 

 口を閉ざす。そんな自信、あるわけがない。沈黙を言葉として出し、助けを求めるようにクルスに視線を向ける。

 そんなクルスもまた謝罪と共に同意を示す。

 

「……すみません、でした」

 

「別に非難するのは勝手だ。ただ、この島は元々、そういう目的を持って作られた」

 

「ん?作られた?」

 

「この島は、いや、列島は地下で繋がっている。大きな船の上に今俺達は立っていることにもなる」

 

「はぁ!?」

 

 何気ない質問がとんでもないことを明かすことになって、声を大にして叫んだエターナ。もちろん千恵里達もそれにただただ驚く。

 

「島が、船……」

 

「要塞……ってことですか?」

 

「そうなるな。3年前の戦争では地下を制圧されて乗っ取られたようなものだったんだ。奪還する為にまず一部の島の地下を制圧することになったんだからな」

 

 そうして話すべきこと全てを明かした元隊長は四人を見渡して語る。

 

「もし、これで彼らに嫌悪感が生まれたのなら言え。そんな状況で作戦が上手くいく保証はないと思っている。そいつはこの艦で留守番だ。それでもそいつの感じた嫌という感情は決して間違いじゃない。けれど理解はしてほしい。彼らが生まれたのには、ちゃんと理由があるということを。彼らの役割を認め、共に立ち並ぶことを。お前達は、どうする」

 

 再びの通告だった。すべてに納得したうえでしかこの作戦には参加できない、ということだった。しかも、その中に敵がいるかもしれない。状況は最悪だ。

 私は……正直驚きはした。けれど思う。作った人が外道でも、作られた本人までもがそっくりそのまま外道なんかじゃない、かもしれない。進というあの生意気なパイロットも、ちゃんと宗司君達の力の解放に協力してくれたという。あの力を見て、ただならない力なのは分かる。それを解放するのに協力したパイロットの力を疑えはしない。なら自分も、認めていけるパイロットでありたい。

 そんな最悪な状況でも自分の考えを持って、私は返答する。

 

「私は、一緒に戦います。確かに生意気な奴とかもいますけど、今は同じ目的を持った味方です!それに、昔深絵さんに言われましたから。味方だった敵を撃つこともある。それを覚悟して、今ここにいます。今更あいつがどんな生まれでもいいです」

 

 千恵里に引き続き、宗司、エターナ、クルスも続く。

 

「俺もです。まだ敵が誰なのか分からなかったとしても、戦うべきはゼロンとそれに内通する敵ということでしょうから。それにその方が却って心強いって思います」

 

「敵意は私がすぐ知らせるわよ。私だってDNLなんだから、それをちょっとトロいあいつらに伝えることぐらいはしてやるっての。私だって生まれは違うようなもんだし」

 

「千恵里ちゃんだけだと心配ですから……二人で一緒にオース明日那派を支援します。同じ科学にいじられた者として立ちます」

 

 参加志願を返答する一同。それらを受けた元隊長は一瞥し、息を吐いて言った。

 

「……分かった。なら言うことはない。現場では俺も警備に付く。それでも油断するな。俺は行っている」

 

「では呉川さん、彼らの引率お願いします。クルツさんもしっかりしてくださいね」

 

「了解です」

 

「お任せあれ、ってね」

 

 元隊長達は先に部屋を出る。残った私達もそれに続いてブリーフィングルームを後にする。

 スターターを懐に入れ、HOWの制服姿が気を引き締めさせる。これが私の、セカンドミッションだ。

 

 

 

 

「本日はこの国の新たな一歩の為にお越しくださってありがとうございますわ、先生」

 

「先生とは……私は一科学者にしか過ぎないさ。ただ科学の面から人の最適な道を示すだけだ」

 

 オース25周年式典の来賓控室。そこで来賓の一人と話す女性の姿があった。

 その姿はかつてのオースの大事件、虚無戦争にて戦闘を終結に導いた大守里奈と同じ。しかし彼女は大守里奈ではない。

 大守里奈と全く同じ顔に整形し、大守里奈の影武者として今も動き続ける女性、歌峰美愛。その彼女は今本土からやってきたゼロンの幹部と話し合っていたのだ。

 美愛はその幹部、先生と称した人物へそんなことはないと語る。

 

「いえいえ、先生は先生ですわ。元々私達の学校の教員も兼任されていらっしゃった御方。そして、私の人生を示してくれたのですから」

 

「やれやれ……君の担任を受け持った覚えはないんだがね。それでもというのなら来るべき者拒まずだが」

 

 美愛の熱心さに心折れるようにして呼称を認める男性。やや硬めの質感の黒と白のメッシュの長髪は女性的な印象も与える。

 その男性はお茶請けに口を付けて、今日の予定について言及する。

 

「して、今日の式典。彼らは動くだろうね」

 

「えぇ。私という存在がありながら、「義妹(いもうと)」は私を反逆者として公表するつもりです。ですが、そんなものは今さらです」

 

 これまでにも対立を繰り返し続けてきた、偽りの妹の大守明日那。その彼女に何度裏で誹りを受けていたのか美愛は知っていた。

 辛かったそれも先生に会ってからは変わった。今日は逆にそれを示して、世界を「裏返させる」。先生が変えてくれる。

 先生に対し美愛は資料を手渡す。明日那派に偽装した美愛派のスパイが入手した情報だ。先生はそれを見て笑みをこぼす。

 

「フフッ、そうか。これは何が何でも成功させなくてはね」

 

「あなたなら出来ますわ。是非、私もあなたの笠下に加えてくださいな先生。……いいえ」

 

 美愛はその名を呼んだ。

 

「ゼロン化学部門最高幹部、「遺伝子の神官」ギルボード・デュランザメス様」

 

「あぁ。この国を変えて見せるさ。いや、変えなくては。私が、今度こそ、ね」

 

 男、ギルボード・デュランザメスが余裕の笑みをこぼす。遺伝子の神官は既に道筋を見通していた。

 

 

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EP27はここまでです。

ネイ「遺伝子改良された人間、っていう設定を、ここで言いますか……」

グリーフィア「唐突過ぎて宗司君達の理解追いついてるのか疑問なところだけど、どう、作者君?」

まぁ、前々から話しておくってのも手だったんでしょうね。それこそ作戦の通達があったあの時に言うべきかもしれません。けれどそれを言って彼らが疑いなく訓練を共に出来たかは分からない。それこそ宗司と進の二人の成功がなかったかもしれないとなると、ここかなと思ったわけです。

ネイ「あぁ……まぁなんとなくは」

グリーフィア「考え方次第ってわけね。それで相手方も黒幕来たわねぇ。ラスボスクラスの策士ってところかしら?」

現段階では小手調べと言ったところです。本気ならもっと大仰に攻め込んできてるんですから。

グリーフィア「ふぅん、でも正面からってのは色々異例よね」

ネイ「普通なら暗殺して混乱しているところをって感じもしますよね」

残念ながら暗殺のジョブはこの時点で別の人が回収しているんだよねぇ。暗殺イス位だけども、そこら辺はまた後々明かしていくってことで、次話に続きます。


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EPISODE28 遺伝子が定めるモノ2

どうも、藤和木 士です。EP27の更新です。

レイ「暴露もあったけど、ようやく任務のスタートってわけだね。宗司君達は生き残れるのかッ!」

ジャンヌ「初めからいきなりハードモード、であってほしくはないですよね。でもそれを許してくれるわけでは決してない、と」

いきなりレギュラーパイロットが死ぬかもしれないからね。ガンダムならあり得る話だから。というわけで本編どうぞ。


 

 

 10時。オース、HOWのMS群が厳戒態勢を敷く中、遂にオース生誕25周年の記念式典が開始となった。

 ステージの台上では既に大守明日那代表が観覧者と来賓に向け挨拶を行っていた。

 

『―――この日を迎えられたこと、とても嬉しく思っております。建国の父であり、我が父大守重玄もきっと空の上で喜んでいることでしょう』

 

「……今のところは、怪しい動きはないみたいだな」

 

『あぁ。美愛派も今のところは動かない』

 

 宗司は進とそのように話す。彼らはステージ台の下、昇降口でMSを纏って待機していた。

 両サイドに明日那派、そして美愛派が均等に配置されていた。敵の勢力が同じ側にいるというのは形式上仕方のないことらしい。もし美愛派をのけ者にした場合、始まる前にクーデターが起こりかねない。過去の繰り返しを極力繰り返さないためにこうなったのだ。

 来賓の様子は会場に配置された監視カメラからの映像を機体に呼び出して見ていた。こちらとは反対側の来賓の席に、ターゲットとなる男性がいた。

 ターゲット、ギルボード・デュランザメスの姿を見てエターナが呟く。

 

『いかにも、インテリって感じね。女っぽい髪がなんか余裕かましてそう』

 

「……偏見だろ。まぁ、言いたいことは分かるが……」

 

 偏見がたっぷり含まれているが、否定はしない。科学者らしい几帳面な性格が格好に出ている。

 それに偏見と思ったがよくよく考えるとそうではないのかもしれない。エターナのDNLが何かそれに値するものを感じ取って言葉に示したのだとしたら、納得が出来る。

 そんな会話をしていると、元隊長が回線を繋ぐ。

 

『科学者だと思っても油断するな。あれでもゼロンでは派閥の異なる旧教団をまとめる立役者となった人物の一人。策士だ』

 

『はいはい。……って、あんたのその機体も随分重装備ね。羽に色々付けてさ』

 

 隣に立つ元隊長達のシュバルトゼロガンダム・ジェミニアスはウイングにいくつもの銃器を取りつける格好となっていた。初出撃の際には見られなかった武装群は、いずれも調整が終わった換装式の専用装備であるとのことだった。

 まさに武器庫と言うべきほどに、いくつもの銃と実体剣を取りつける姿に進の仲間の零が訊ねる。

 

『その装備群……マルチギミックタイプですか?』

 

『そうだな。分かるか』

 

『えぇ。インパルスのビームボウガンと同じ機構が見られますから』

 

『マルチギミックウエポン……それをいくつも……』

 

 いくつもの武器に切り替えられる兵装。その圧倒的な数にオースのエース陣営は驚かされていた。ふとエターナに訊いてみる。

 

「なぁ、マルチギミックウエポンって、俺達の機体にもあったよな」

 

『ん?えぇ。コンバートライフルよね。あと、私達の機体はシールドライフルとマルチキャノン・ウイングもね。それがどうかした?』

 

「いや……確かに複数の機能を持った武器は難しいけど、そんなに注目することかと」

 

 生粋の軍人が、そんな驚くことなのか。そんな疑問に当人たちである進と零が答える。

 

『多機能武器の扱いはもちろん心得てるさ。けどこの人のは違う』

 

『あぁ。君達のは銃か剣、あるいは砲か翼かと言った二択ばかりだろう。対して魔王のガンダムのそれは、おそらく剣と言ってもいくつものバリエーションがあるもの。適切な距離で、いくつもの種類の武器を多用に組み替えて完成する武器。そうでしょう?』

 

 確認した零の言葉に元隊長は頷いた。

 

『そうだ。マルチギミックウエポンと言っても、かなり複雑化した部類の武器になる』

 

『おそらく、エターナをサポートに据えた宗司さんでも今使いこなすのは一つの武器でも無理でしょう』

 

「そんなに……」

 

 こんな時に聞くべき話ではなかっただろうか。それを元隊長も承知しており、目を向けるべき対象に俺達に知らせる。

 

『風呂敷を広げればいつまでもこの話は伸びる。今はそれよりもステージ上のだ』

 

『そうですね。そろそろ代表が動くでしょう』

 

『エターナ、緊張しすぎないように』

 

『分かってるって』

 

『しくじんなよ……あいつ』

 

「……」

 

 全員が緊張感を高める。ちなみにだが回線はオース軍明日那派のみの秘匿回線を使っている。それは美愛派も美愛派で同じ条件を用意できるということ。

 相対する美愛派も今にも飛び出そうとしているのか、姿勢が前に出かける。明日那代表が予定されていた台詞まで到達する。

 

『3年前、虚ろの零により私達は大きく疲弊しました。それでも、前代表である大守里奈元代表の尽力で立て直し、私もそれを引き継いで今日この日を迎えることが出来ます。それは紛れもない事実です。ですが、今この場でどうしても明かさなければならないことがあります』

 

 中継カメラの注目を集める明日那代表。そして遂に、その口から真実が明かされた。

 

『まだ虚ろの零の目論見は終わっていない。虚ろの零は、そのバックにある武装組織の援助を受けていました。その組織は日本本土で活動を活発化させる教団、ゼロン。その援助を受け、今もこのオースで勝手を行う者。その者は元々ある人物の影武者を引き受けたにも関わらず、役目を果たさずあろうことか立場を利用してこのオースをゼロンに渡そうとしている』

 

 後方に振り返り、指さす先にはオース政府官僚、その一派を率いる歌峰美愛の姿がある。指さされた彼女は困ったようにおどける。

 

「あらあら~姉を指さしするなんて、お父様に恥ずかしいと思わないですの明日那ちゃん?」

 

「黙れ、お前は私の姉ではない。姉の顔を借りた影武者が、勝手にこの国を売ろうとした証拠は挙がっている!」

 

『やれやれ……あんまり熱くなりすぎるなと……』

 

 明日那代表の言葉に頭を抱える様子の元隊長。

不安そうに見つめる中、流れはこちらの望む方向へと向かう。怒声を受けた歌峰美愛は肩を落としてやれやれとため息を吐く。そして事実もまた吐いた。

 

「ま、そうでしょうね。私はあなたの姉じゃあない」

 

「ようやく認めたか……」

 

「そこはね。でも後の二つは違うわ」

 

「何を……」

 

 意味不明な言葉を口走る歌峰美愛に、明日那派の勢力に動揺が走る。そして彼女の口から信じがたい言葉が飛んだ。

 

「今の私はもはや大守里奈の影武者じゃない。この3年間大守里奈として活動した私は、この国の未来を考えられる新たな大守里奈にして、真の大守里奈なのよ」

 

「何だと!?正気なのか?」

 

 影武者ではない、自分こそが本物の大守里奈であると、歌峰美愛は語った。無論宗司も明日那代表の言葉と同じ反応だった。

 

「何を……馬鹿なことを……」

 

『傲慢過ぎでしょ、それは』

 

『あの女……何言ってやがる!?』

 

 エターナと進も歌峰の言葉に絶句する。荒唐無稽な理屈に、壇上の関係者一同が引く中で歌峰美愛は気持ち悪いその持論を述べだす。

 

「だってそうでしょう?貴方の慕う大守里奈は最初のころだけ携わって、結局力がないからと私に責任を押し付けて逃げた。最初は私もそれでも良かった。みんなの憧れの同級生だったあの子の代わりが出来る。あの子の為になれる。その為の事は何だって勉強して、受け入れてきた。あなた達に目立つなと出る杭叩かれても我慢してきた。けどそんなの卑怯じゃない」

 

「卑怯だと……影武者を自分から志願しながら」

 

「それでも、人としては最低限扱って欲しかったわぁ」

 

「生活は保障していただろう!それでもダメだと言ったのは、貴様の考えが姉の物とは乖離するものだったから!」

 

「自分達の考えることが正しい、それ以外のあり得る選択肢は認めない。そうして起こったのが3年前のあの戦争だってのに、それをまるで反省もしないあなた達を馬鹿にしない理由があって?」

 

「そんなこと……ない!」

 

 歌峰の発言を負けずに否定し続ける代表。そうではないと必死になるのは分かるが、その必死さが却って怪しく思えてしまう。

 拍車をかけるように元隊長も何やら呟く。

 

『……図星か』

 

 小さく呟いた言葉をはっきりとは聞き取れなかった。しかし苛立ちを感じさせるような発言。その声音を維持したまま、元は宗司達に言った。

 

『ともあれ、もう少ししたら動くぞ。そのままで準備しておけ』

 

「りょ、了解」

 

 息を整え、再び話に耳を傾けた。

 

「それを私に教えてくれたのは、先生だった。先生は私に真実を教えてくれたの。そう、私こそが真にオースの平和を導けるって。それ示すモノが何か、分かるかしら?」

 

 何が彼女にそこまで自信を持たせているのか。先生という人物が誰なのかも気になる。それら二つの疑問について明日那代表は問おうとする。

 

「示すモノ?先生?……それは」

 

「それは、ここに居らせられるギルボード・デュランザメス様が教えてくれたもの、遺伝子よ!」

 

 まるで分かっていたかのように明日那の声を遮って名を呼んだ。この式典の参加者にして、事前情報でゼロン幹部と目されていた男の名前。視線が彼に集まる。

 視線を受けて不敵な笑みを崩さない彼が彼女の声に応えて立ち上がって紹介を行う。

 

「そう、彼女の正さ、遺伝子の適性を証明したのは、この私です」

 

「ギルボード・デュランザメス……かつてのこの国の科学者が、国家転覆を狙うのか」

 

「国家転覆とは、相変わらずお父様に似てお国に固執していらっしゃる。そんな妄想を……」

 

「国の代表が、国の為を考えなくて何になる!」

 

 敵の擁護をするわけではないが、明日那代表の言葉が強く出過ぎている気がする。強情に否定をしようとしていて、事実でも裏があるのかと思ってしまう。

 その点に隊長クラスも気付いていた。元隊長のシュバルトゼロガンダム・ジェミニアスが動こうとした矢先、敵の出方が変わる。

 

「理念は理解します。お父様の後を立派に継いでいらっしゃる。ですが、この島の目指すために必要なのはそれではない」

 

「それ……?」

 

「影義明、いや、明沢正。彼のお父上の理念。彼が掲げた理想こそ、私の望むモノ」

 

「何!?」

 

 段の下にいた明を、本名で的確に呼んだ。それだけではない。彼の父親について言及をした。かつてこの島にいた人物というのならあまりおかしくない話。だがそこに理念が絡めば疑念に変わる。

 当事者である明は壇上に出て問いただす。

 

「父の理念が……?ふざけるな!」

 

「ほう?」

 

「父は俺達を戦争の道具にしようとしていた。あのままだったら、俺達はこの国外で戦闘の日々を過ごしていた。それを代表たちは!」

 

「しかし、この島の本来の目的からはかけ離れるのではないかね?いや、本来の目的から逸れたのは他でもない大守代表達だろう」

 

 話に付いて行けない。本来の目的とは一体?観光国家の事ではない。つまり、遺伝子操作されて生まれた子ども達のことだろう。

 その本来の目的が違う。どういうことか。疑問にギルボードが答える形で彼らに反論する。

 

「元々オースの建国目的は、遺伝子操作されて生まれた子ども達を有効活用するというもの。軍事目的は外されていたが、MSの登場から一転してそれを批准した。それを決めたのは他でもない、日本政府だ」

 

「……マジかよ」

 

『ちょ、はぁ?聞いてる話と違うんだけど?』

 

 機体の中で話を聞いていたエターナまで動揺を口にする。宇宙進出の目的からかけ離れた事実に驚きを隠せない。

 それは決して自分達に限らない。進もまた困惑を叫ぶ。

 

『どういうことだよ……オースの代表は、嘘ついてたのかよ!?』

 

『……』

 

『おい、明日那!どういうことなんだよっ!』

 

 叫ぶ進。それに気を向ける間もなく、明日那代表はなおも否定し続ける。

 

「そんなものは関係ない!私達は戦いの道具ではない!」

 

「そうおっしゃるのであれば、彼に聞くのがいいのではないかな?」

 

 ギルボードはある人物を呼び寄せる。その人物は……。

 

「どうだろう、HOWの魔王。この国の要請を受けてやってきた日本政府の使者よ」

 

「………………」

 

 HOWの魔王。その名詞だけで分かる。こちらの隊長を呼んでいた。

 ここでどう答えるのか。それによって士気も変わってくる。ジェミニアスが壇上へと上がる。

 

「ゼロンの幹部に話すことなんてないと思うんだがな」

 

「それとこれとは別さ。君の考えは聞く必要があるだろう。この問題に対し、どう思っているのか。意思表示は大事なはずだが」

 

 話すことはないと断ろうとする元隊長。対してギルボードは否定する。にらみ合う中、元隊長は口を開く。

 

「愚問だな。だが言ってやるよ。確かに日本政府はMS登場後、この島の遺伝子改良された人間たち、コーディネイティアの戦争利用を定めた。が、正直に言ってこの島の判断は3年前の時から間違っていた」

 

「黒和元!」

 

「あらぁ」

 

「やはりか」

 

 それぞれの陣営がざわつく。そして元隊長は自身の考えを述べる。

 

「国の方針は大守重玄氏のそれとは異なる。遺伝子改良によって生まれた島民は日本の為に働いてもらうことを約束してもらっていた。だが明沢鳶丸氏のようなこの島で生まれた者全員を戦闘員にする気もなかった。MSという未知の存在が出現した時点で、計画もまた修正される。それで対立が起こるのは二人の考えはもっともだった。そうして意見はまとめられていくんだからな。にも関わらず、重玄氏と鳶丸氏の持論による1か0の異常な対立が、3年前の悲劇を起こした」

 

「そう、彼らの思想の違いが、3年前の悲劇を生んだ」

 

「そうだな。そうならざるを、得ない。むしろ当然だ」

 

 元隊長は敵の言うことを肯定した。心の中で息を飲む宗司。回線からも少数の息を飲んだような声が聞こえる。

 肯定した元に対し、明日那代表はなおも反論しようとする。

 

「黒和元大尉、それでも彼らは!」

 

「お前達ゼロンは、それに付け込んだ」

 

「ほう?」

 

 しかし元が言葉を遮る。代表の言葉を遮って、その中にある事実を知らせる。

 

「狂真 嵐、それをお前はよく知っているな」

 

「…………ほう」

 

「狂真……嵐!」

 

 聞いたことのない名前だ。だがそれがオースの陣営ではよく知られた名前であることをすぐに知る。

 

『狂真嵐って……それって!』

 

『進?あんたなんか知って……っておい!?』

 

 何かを知っているような進が反応する。エターナが理由を聞こうとするが、その前に進は前へと飛び出していく。

 壇上へと躍り出た進は三つ巴の状況の中声を上げる。

 

「狂真嵐って、3年前の事件の犯人じゃんか!?」

 

「進!」

 

 制止しようとする明日那代表だったが、代わりに元がその前に出る。

 

「どけよ!」

 

「まだ話は終わっていない」

 

 そう言って元隊長は再びギルボードに向き直る。

 

「狂真嵐、3年前の虚無戦争の黒幕。虚ろの零を、明沢鳶丸を裏から操り、凶行に及んだテロリスト。その男とお前が、8年前から交友があったことは既にHOWは知っている」

 

「知ってはいても、彼に私が何をしたと?」

 

 関係を宣告する元。余裕を崩さず、質問を返すギルボード。両者の間で空気がピリピリとする。

 ここを詰め時と見ただろう元隊長が一押しする。

 

「狂真嵐の最後の機体、オースプロヴィデンスの残骸からあんたが作成した薬が発見された。それは、テロメアの延長を目的とした違法薬物。そして奴の部屋から見つかった端末に、あんたとの通信履歴が残っていたよ。創生計画、種命島の最終兵器、リ・ジェネレイションを使った人類遺伝子管理システムの発案者、それを手土産にゼロンへと渡っていることも知っている」

 

「……フフフ。そうか。そこまで調べ上げていたとは。なら、もうこうして芝居するのもよそうか。美愛君」

 

「はい、先生♡」

 

 その暴露でギルボードは対応を変えた。大守里奈、否、歌峰美愛を呼び寄せ、元隊長に、明日那代表に、そしてオース、CROZEに対し宣戦布告を行った。

 

 

 

 

「ではゼロン幹部として君達に勧告する。―――――オースは我々ゼロンの使徒が接収する!」

 

「やっちゃいなさい!」

 

 

 直後、号令に合わせてオース美愛派が俺達に襲い掛かった。戦端が開かれた合図であった。

 

 

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EP28はここまでです。

レイ「うぅーん、日本政府も現実とは違って結構派手にやってる感じが出てるね」

ジャンヌ「戦争利用とか一部の人が反発起こしそうな……ですね」

けどいくら島の事は島の人達が決めていくとはいえ、その上に居る最終決定者、主は日本政府の関係者って構図だからね今回。周りの国も既に遺伝子改良した人種たちの利用を始めているわけだし、ゼロンと対抗するためにも有利なカードは持っておくに越したことはないですよ。それにこれ、あくまで戦争利用は志願者のみを募っている形ですよ。

レイ「志願者のみ?え、なら自由与えているじゃないの?」

そこだよ。ここで重要なのは反発しているのは人じゃなくてオース政府、それも明日那派、大守一家ってところ。原作と照らし合わせるとクライン派とかの周辺が近いです。国の決定をただやみくもに争いはダメっていう子どもの考えで頭ごなしに否定している感じです。

ジャンヌ「うわぁ、言ってることは分かるんですけどなんか私怨混ざってそうな言い方ですね……その通りなんですけど」

まぁこの話で言うならオース政府明日那派が騒ぎ過ぎてるって話です。それだけ拒絶しているからゼロンに付け居られる隙を与えているんですから、裏切りも当然おきますわ。みんながみんな兵士になりたくない送りたくないってわけじゃないんでしょうから、大和進みたいな憧れを抱いて入る人もいるかもですし。後の話で総括しますが意見の押しつけが今回の原因です。

ジャンヌ「まぁそれは置いておくとして、とはいえその付け入ったギルボードや美愛も随分考えがぶっ飛んでいるようで……」

まぁ間違った考えの反対がまともな考えとは限らないわけですし、元君としてはどっちも認められないって感じでしょうからね。てなわけで今回はここまでです。次回から遂に戦闘開始ですが、まだ何か展開があるようです。

レイ「え、どんでん返しでも起きるのっ?」

かもね。というわけでまた次回。


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EPISODE29 遺伝子が定めるモノ3

どうも、藤和木 士です。EP29と30の更新です。まずはEP29から。

ネイ「遺伝子で人の未来、国の未来を定めようとするギルボード・デュランザメス、ですか」

グリーフィア「いよいよ本性現して一戦交える感じねぇ。勝算あるみたいだけど、ひょっとして裏切り者かしらねぇ?誰が敵で、誰が味方か、何がそうさせるのか……ってところ?」

そこは見てからのお楽しみ。というわけで本編をどうぞ。


 

 

 デュランザメスと歌峰の号令で美愛派が一斉に行動を開始した。真っ先に美愛を狙おうとする美愛派のオース軍MS。そこに進は割って入る。

 

「進!」

 

「下がってろ!」

 

 光刃を受け止める。直後テレビ局がパニック状態へと陥り、会場の外へと逃走を始めていた。

 明日那を護らなくちゃいけないけど、騒ぎに他の人は巻き込めない……俺は目の前の敵をシールドのガンポートから狙撃すると、そのままビームサーベルで続く2体目、3体目を切り裂く。

 

「こいつら!」

 

「っ!進!」

 

 3体目を撃破したところでアイツ、相模の声が飛んだ。明日那の後方から狙撃する敵機が居たらしく、それを相模が迎え撃っていた。更に直援に月子と零が付いて明日那を護衛する。

 うかつだったとはいえ、自然と進が前衛となる構成だ。反対側の防衛も、或と加子、そしてHOWのチームGの残りが相手をしてくれている。そして何より、あの魔王がいる。

 

「いやはや、やはり君の力、圧倒的だね」

 

 襲い来る敵機を次々と落としていくジェミニアスを見て、そう称賛したデュランザメス。圧倒的な戦力に美愛派も徐々に後ずさる。

 ある程度を沈黙させたところで攻撃が止まる。圧倒的な状況に対し、降伏勧告を行う黒和元。

 

「ここまで、か?ギルボード・デュランザメス」

 

「ここまでか……それは私が判断するものではないよ」

 

「まだ、やる気か」

 

 未だ降伏の意志を見せないデュランザメスは余裕を崩さない。その余裕に苛立ちを覚える。こんな状況でまだ勝てるなど到底思えない。何がアイツの余裕を持たせているのか、疑問が尽きない。

 ならばと進も降伏を要求した。

 

「もうあんた達に勝てる見込みなんてないだろ!降伏しろ!大人しく捕まれ!」

 

「フン、君があの大和進……いや、飛鳥進と言った方がいいかな」

 

「……何で俺の昔の名前を……」

 

 デュランザメスの発言に動揺する。その名前は、自分のかつての名前。本当の両親達と暮らしていた時の名前だ。それをなぜ、目の前の男が知っているのか。

 進の疑問にデュランザメスが答える。

 

「当然さ。私はかつてこの島の研究者。しかも君は私が君の両親達から依頼され、遺伝子を調整した張本人なのだから」

 

「何だって……」

 

 信じられない。だがあり得る話だ。この島の科学者なら必ず一度は経験するという遺伝子調整訓練。島に生きる人間としての心構えとしてあった。

 デュランザメスもまたその考えを肯定する。同時に更なる事実を語った。

 

「君も知っているだろう。この島を生きる者として一環の作業。だが私はその中でも遺伝子調整作業を生業として来た専門だった。だからこそ言わせてもらおう。君は戦士として非常に類まれな才能を持っている。そう、調整した。君の兄、大和輝も含めて、ね」

 

「!?輝義兄さんと……?」

 

「……」

 

「私は君を良く知っている。君が目指すべき世界は、そちらじゃない。私の下へ来るんだ。それが君の遺伝子にとってもっとも幸福なことなんだよ」

 

 デュランザメスは懐柔を求めてきた。自分が作ったから従え。第三者からはそう思える言葉だ。

 無論進はそれを全力で否定した。

 

「何だよ、それ……ふざけんな!なんでそんなことを!」

 

「それは残念だ。だが猶予は与えよう。これを目にしても、まだ抗うかな」

 

「何を……」

 

 する気だ、とデュランザメスに問おうとした時、後方が騒ぐ。

 

「なっ!?」

 

「ちょっとレイ!?」

 

「火葉零、貴様!」

 

「え……」

 

 チームメイトである零の名前が呼ばれたのに気づいて見る。そこにあったのは、信じがたい光景だった。

 

「…………」

 

「零……何やってんだよ!?」

 

 零はビームライフルを構えていた。しかしその銃口は敵であるMSやデュランザメス、歌峰美愛にではなく、自分達が守るべき明日那に向けて向けられていた。

 動こうとした進に、零はシールドを向けて警告する。

 

「動くな。動けば彼女達の命はない」

 

「ちょっと、零!っあ!?」

 

「動くなと言った!」

 

「月子!」

 

 抵抗しようとした月子に対しビームを放つ零。明日那を守るように月子はシールドを構えて防御する。動こうとする進、しかしそれもまた別の声で遮られる。

 

『おおっと!こっちもいるんだけどねぇ!』

 

『抵抗するなら、容赦はしないわ。隊長』

 

「えっ!?」

 

「くっ、或、加子!?」

 

 或と加子もまた先程まで共に戦っていたにも関わらず、HOWのもう片方の部隊と敵対する構えを取っていた。

 頭に過るその言葉を、明が言った。

 

「裏切った……のか。いや、最初から……」

 

「えぇ、そうですよ明。いや、明沢正」

 

 裏切り者。それがこんな、身近にいたなんて。味方、仲間だったはずの零に憤りを訴える。

 

「なんで、どうしてだよ、レイ!」

 

「……シン、お前に話すことはない」

 

「ふざけんなよ!今までずっと一緒に戦ってきたのに、相談にも乗ってくれたお前が!何がどうして、だましたりなんかしてたんだよ!答えろ!」

 

 そう叫んでも零は銃を下ろさない。再び月子にビームを放ったオースカオスを見て、進もインパルスを動かそうとする。

 

「きゃっ!」

 

「ルナ!クソッ!うっ」

 

 だがシールドのバルカンが威嚇射撃として足元を撃つ。紛れもなく零のオースカオスのシールドから放たれた弾だ。

 意識が再び零に向けられる。その零が答える。

 

「俺は、お前達とは違う。生まれも、人種も」

 

「はぁ?何言って……」

 

「俺がその昔、蒼穹島から越してきたのはお前達も知っているだろう」

 

「それは……まぁ」

 

 零の言葉に頷く。確かに零は蒼穹島の出身であるとかつて話した。蒼穹島もまた自分達オースと同じように遺伝子改良で子孫を残していく人工島。零もその例外ではない。

 零が越してきたのは蒼穹島が明確にゼロンに付く前の話だ。ゼロンに与した島の出身で最初は疑われたが、それも俺達が払った。

 生まれた島も、遺伝子調整の目安も両島で違うのは承知している。それでも自分達は同じ国を守る仲間だと思ってきた。それを進も伝える。

 

「だけど、それだけで何に……」

 

 それに対して、零は否定する。そんな単純な話ではないのだと。

 

「いや、俺にとっては軽い問題じゃない。俺は遺伝子を操作されてはいない」

 

「は?じゃあ、お前は何で蒼穹島で……」

 

「俺は…………人間の「クローン」だ」

 

「え……えぇ!?」

 

 

 

 

 俺、火葉零が生まれたのは部屋に並べられた巨大な管に入った培養液の中だった。

 蒼穹島は元々、オースとは違う側面で宇宙、人と人を繋ぐ人種を作ろうと研究に取り組んでいた。その頃は既にテストケースが成功し、最初の子ども達が力を芽生えさせるのを待ちながら次なる子ども達を育てる頃だったという。

 だが、そんな彼らに、とある者が接触してきた。男は言った。

 

『蒼穹島の技術力で私に相応しい後継者を作る手助けをしてほしい』

 

 男は優れた才覚を持っていたが、子どもに恵まれなかった。不妊治療をしても出来る子どもに対し不安があったその男は、蒼穹島の遺伝子操作を以って完璧な後継者づくりを行おうとしていたのだ。

 蒼穹島も最初はなるべく期待に添えるように苦心した。ところが男の要求は非常に難題であり、多々求めた「完璧」に苦言を吐くようになった。

 中々後継者づくりが上手くいかないことに男も不満が募っていく。あらゆる分野で富と名誉を手に入れた男は自分の思い通りにならないことが大嫌いだった。自分の後を継げるのは物語によくある「転生」をした自分だけだと思うほどに。

 その考えに至った時、男にとある考えが思いつく。遺伝子に通じる蒼穹島に提案を持ちかける。

 

『私のクローンを作れ』

 

 それは禁断の考えだった。蒼穹島側は即座に反対を唱えていた。しかし科学に詳しくない男にとってはそんなものは既に有象無象。自分と同じ人間なら、きっと自分の後継者に相応しいと考えを曲げなかった。

 やがて島の秘密を世界に晒すと恫喝した男にノーと言えず、蒼穹島は禁忌のクローン製作を開始した。当時の政府からも何らかの圧力があり、蒼穹島は板挟みに遭いながら何人かの男のクローンを作り上げた。

 その中の一人こそ、火葉零だった。だが火葉は後継者としては選ばれず、代わりに最初に生まれた兄がその男の後継者として引き取られていった。

 

 

「生まれた残りの俺達は秘密裏に各地の孤児院へと移されていった。男には後継者が一人要るだけであとは用済みだったのさ。俺は只一人、蒼穹島の中で育てられた個体だった。それでも、人並みに生活できるようにしてもらったがな。罪滅ぼしのように」

 

 

 やがて蒼穹島で生活していた俺の耳に、クローンを作らせた男が火事で焼死したと知らせが届いた。

 不審火と処理された事件だが、どうやら男は後継者として選んだ兄が気に入らなかったらしい。同時にクローン体である俺にテロメアの不備が知らされた。クローニングの際に細胞が異常を起こし、俺達の寿命が常人より短いと言われた。それから島の科学者によってテロメアの寿命を伸ばす薬が作られ、服用するようになった。

 生きられる時間は長くなったが、薬が切れると激しい苦痛に襲われた。苦しむくらいなら死んだほうがましと思えた。引き取られた兄は寿命の短さに満足のいかなかった男に消されそうになって、火事を起こして消えたのだろうとその時思った。やがてそれは本当だったと証明された。

 

 

「そしてそれから幾年が過ぎた後、3年前の事件で雲隠れしていた兄が「虚ろの零」で活動していた。お前達英雄組がよく知る、狂真嵐が世界の復讐に乗り出したのさ」

 

「何だって!?」

 

「狂真嵐……あの人が、零の兄……」

 

 

 実際に見たわけではなかった。オースへと留学していた時期と重なってこそいたが、自分もまたその時は被害者として巻き込まれており当然その黒幕が自分の兄とは知らず、それどころかはた迷惑だと思っていた。

 しかし事件が終わって蒼穹島に一時帰国した俺は、製作者から事実を告げられた。今回の主犯は狂真嵐だったと。兄弟島かつテロリストの生みの親でもある蒼穹島にもその情報が回るのは当然だった。

 ショックだった。自分の兄があんな事件を起こしたなんて、ではなく、兄が志半ばで散ったことに。死ぬくらいならとこの世界に復讐しようとした兄に、心の中で敬意を覚えた。そんな中で、俺に転機が訪れた。

 

 

「兄はこの世界の不条理に反旗を翻した。その行動に俺も賛同した。そしてその時、島にゼロンがやってきた。やってきた者こそ、兄を支援し続けていたギルだった」

 

「ギル……あんたか」

 

「そう。彼は私の友人だった。彼の不運を救い、また私も彼に助けられた」

 

 

 ギルボード・デュランザメス、ギルもまた蒼穹島と種命島に恨みを抱いた者の一人だった。

 己の運命を歪められ、そしてそれは種命島では変えられないことを思い知った彼は虚無戦争よりも前に島を出ていた。

 島を出たギルは己の理論を証明できる場所を探して各地を転々とした。やがてそれを受け入れてもいい場所が見つかった。それこそゼロンだったのである。

 ゼロンの構成員となっていたギルに接触した人物こそ狂真嵐だった。遺伝子に弄ばれることに憎しみを抱いていた二人は意気投合し、やがて嵐の計画にギルが協力した。

 

 

「私は彼、狂真が行動を起こせるよう種命島への在留許可に力を貸した。結果的に彼は敗れたが、彼のおかげで今回の足掛かりが出来た。そして、美愛、或、加子、なにより零という協力者も得られた」

 

「あんた達……!」

 

「こっちに付いた方がもっと戦争を楽しめるみたいだしね♪」

 

「悪く思わないで月子。割りがいいのよ、私にとってこっちの方が」

 

 或と加子が歯噛みする月子に告げる。これが俺の、火葉零のこれまでの人生だった。ギルに会わなければ、俺はどこかでリタイアしていただろう。目標となる嵐、そして道を示してくれたギル……。彼らの願いを叶えることが、俺の使命!命の使い道だ。

 それをこれまで共に戦ってきた、形だけの戦友、もっとも敵視すべき男に告げる。

 

「俺の使命、ギルの願いの為に、お前達には消えてもらう!進、お前もだ」

 

 火葉零は、願いを果たすためオースのエースと魔王に立ちはだかる。

 

 

 

 

「零……くっ、何で、なんでなんだよ!?」

 

 零の話を聞いて、なおも問いかける。こんな状況、想像はしていても納得しがたかった。零は軍学校のルームメイト時代から、共に過ごしてきた仲間だった。或や加子が裏切った事よりもその衝撃は計り知れないほど大きい、義兄が軍を引退した並みだろうか。

 進の反応に零は再度言った。

 

「言っただろう。俺はクローン。人並みの幸せなど当にない存在……。生み出した蒼穹島と同種のこの種命島、それを推進した日本政府を、粛清する!ギルの下で!」

 

「ふざけんな!クローンだか何だか知らないけど、だからってそんな奴らの考えに従って!」

 

 裏切られたこと、それが一番の怒りの種となって進を激情に走らせていた。お前も輝義兄さんと同じなのかと、言いたかった。

 怒りをぶつける進に対し、ギルボード・デュランザメスが言う。

 

「友を想う、その気持ちは分かる。だからこそ君もまたゼロンに加わるべきだ」

 

「はぁ……?」

 

「デュランザメス、何を……」

 

「君もだよ正。君達は力を持っている。ゼロンにとって必要な力をね。不幸なのは君達が大守明日那、そして日本政府の為に振るおうとしていること。彼等では君達を生かせない。それは無論、そこにいるHOWの魔王もまた同じ」

 

 進と正に、勧誘を持ちかけるデュランザメス。同時に黒和元を乏しめる。デュランザメスはその根拠を語る。

 

「では君達の何を以って、私がそう言えるのか。簡単だ。遺伝子さ」

 

「遺伝子……?」

 

「そう。君達2人の遺伝子は、ゼロンの理想を体現するのに必要だ。君が明日那代表と反発し合っているのがその証拠さ。君は無意識に、遺伝子のままに彼女の考えに拒否反応を起こしている。私は遺伝子ですべてが統制された世界を求めている。それこそが平和を作り出せる方法、私にはそれを裁定する目がある。目覚めるんだ、君達自身の使命に。零と一緒に、この世界を変えるんだよ。君の本当に望む世界は、我らと共にある。平和を騙る悪である彼らに、鉄槌を与えよう。この世界の未来を、共に」

 

 デュランザメスの言葉が混乱を誘う。いつの間にか、観客席の方にはテレビ局員に化けて潜入していたゼロンの構成員の纏ったMSが会場の警備を行っていたオースMS群を制圧している。絶望的な状況に陥っていく中、進の頭が考えに呑まれていく。

 家族との思い出、輝義兄さんの家族との記憶、軍学校での騒がしくも楽しかった日々……。その中で俺が求めたのは……求めてたのはこの島の崩壊……?

 

「くぅ……うぅ……!」

 

「時間の問題か。なら……!」

 

 悩む進を見てそう言った零は今なお明日那を護衛する月子に勧告を行う。

 

「月子、潮時だ。そこを退け」

 

「誰が!」

 

「そうか。だが後ろからもお前達を狙い撃つ」

 

「っ!或……!」

 

 零の反対側に位置取っていた或が、砲門を展開して明日那と月子、HOWの狙撃手を狙い定める。陽気な声で味方殺しを喜々として話す或。

 

「まとめてやっちゃうよぉ!月子ォ?それに」

 

「或!止めろよ零!」

 

「止めたければ、お前がやれ」

 

「えっ?」

 

 零はこちらに、強く言って来る。

 

「お前が、大守明日那を撃つ。そうすれば被害はそれだけで済む。お前の意志を示せ」

 

「零!進聞くな、代表を撃つなんてこと」

 

「あなたは黙っていてください正。これは進の問題だ。さぁ進。選べ、お前の選択で、この国の未来を、明日を!」

 

「う……俺は、俺は……」

 

「シン!」

 

 仲間とそうだった者達の言葉が交錯していく。その様子を、ただ黙って見るだけのHOW陣営。流石に我慢が出来ずに相模達も隊長への指示を、要請を行う。

 

「元隊長、どうするんですっ?」

 

「さっき回線で、基地の方に向けて島外からの増援がって言ってましたよ!?」

 

「やっぱり、ゼロンには勝てない……そうなんですか?」

 

「ちっ、ここで終わりなんてまっぴらごめんですぜ、隊長!」

 

「元隊長……」

 

 Gチームからの呼びかけに黒和元は答えない。動きをほとんど行わず、ただデュランザメスとにらみ合うままだ。

 そんな様子を見かねてか、デュランザメスは話さないのかと問う。

 

「いつまで、そう黙り込んでいるのかな。いくら君が負けを認めたくないと思っていても、それでは示しが……」

 

「……フッ。負けを認めたくないのは、お前だろデュランザメス」

 

「何を言っているのかな?時間を与えた上でこの絶望的状況。もはやチェックメイトだ」

 

 デュランザメスの言葉はその通りだった。どうあっても勝てるわけがない。

 しかし、相対する元は言う。

 

「お前は島のルールに屈して、島を出た。だがそれが認められないから、こうして自分自ら島を自分の物にしようと戻って来た。それに今の状況はチェックを掛けられただけだ。対象が死なない限り、チェックメイトではない」

 

「負け惜しみを……」

 

「まだ負けていないからな。それと、お前は俺の遺伝子を見たようだが、どうだったんだ、その結果は」

 

 元の質問に対しほくそ笑むデュランザメス。要求通りその結果を明かす。

 

「実に情けなかったよ。君の遺伝子はどこをとっても平凡の域でしかない。恐ろしくただの人間でしかない。ただDNLの能力が強いだけの、つまらない人間だ」

 

 それを知って、どれだけデュランザメスは嬉しかったのだろうか。才能などない人間が組織の中核人物をやっている。彼にとってそのような人物は真っ先に下ろす対象だったからこそ。

 だからこそ、それに続く元の言葉は予想しなかっただろう。

 

「そんなの、当り前だろ」

 

「……ん?」

 

「え、認め……」

 

 キョトンとする歌峰。肯定されることを思ってもいなかったように。そんな彼らに黒和元は言葉を続ける。

 

「俺が今ここに居られるのは、ただの運。シュバルトゼロガンダムを手に入れたという幸運の下にある」

 

「フッ、確かに幸運だ。だがそれがなければただの」

 

「だが、俺は選択した」

 

 デュランザメスの肯定を遮って言い放つ元の声。その声にははっきりと意志を感じられた。

 

「護りたいと思ったモノがあった。その選択が正しいからじゃない。俺が正しいと思ったから、その力に手を伸ばした。それがたまたま、ガンダムだった。たったそれだけで、戦い続ける、それ以上を求めもしない!遺伝子なんか、俺には、俺達には関係ない!」

 

 そうして周囲のムラマサを一気に切り裂く。その攻撃にゼロン勢が動く。

 

「クッ、正気か!」

 

「ならやってやるってんだよぉ!」

 

 零が元の動きを止めようと駆ける。対照的に或は明日那を殺そうと砲門を光らせる。

 

「明日那代表っ!」

 

「あっ」

 

「零!」

 

「邪魔だっ!」

 

 動く戦局。だがこれは圧倒的にこちらが危険だった。砲火に晒され、明日那と月子が撃たれ――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

る、はずだった。

その流れを止めたのは、上空からのビームの連射だった。

 

「何っ!?」

 

「攻撃!?上から!?」

 

「っ、ようやくか」

 

 ビームの連弾はそれぞれオースカオス、オースアビス、シュバルトゼロガンダム・ジェミニアスを止めた。オースカオスのライフルが撃ち抜かれて爆散、零が辛うじて身を退く。攻撃態勢を止められたオースアビス、ジェミニアスは被弾こそしなかったがそれぞれ攻撃対象から離れる。

 何が起こったのか。攻撃をした上を向く。上空には何も見えなかった。超望遠カメラにでもしないと見えない距離なのか。ところがその考えは全く違っていた。突如空間が歪む。

 

「空間が歪んで……!?」

 

「あれは……!」

 

 進と正は気づく。その機体がステルスで身を隠していたこと、そしてその機体がどう言った物なのか。

 現れた機体は12枚の羽を広げる機動兵器。まるで騎士が舞い降りるかのような姿勢で降り立ってくる。巷で言われるガンダム顔の機体を、進は3年前から知っていた。

 その名を、その人物の名を呟く。

 

 

 

 

「……フリーダム……輝、義兄さん!?」

 

 

NEXT EPISODE

 




EP29はここまでです。

グリーフィア「んークローンねぇ、やっぱレイだからそうだろうとは思っていたんだけど……作った勢力が」

ネイ「蒼穹島って、確か多々触れられているゼロン側に渡った勢力……地の文では種命島と同じ遺伝子改良の子どもが生まれている島ですよね」

そう。ただその島は無茶難題に挑もうとしていた。それは結果的にシュバルトゼロをもしのぐと言われる機体と対抗できるパイロットを生みだしたけど、そういう表ざたに出来ないことをしたからって感じだ。

グリーフィア「ちなみに何で蒼穹島?」

劇中でも触れてるけど、大抵島の人間は生まれた時から幼馴染な感じだから、ここでクローンってことを明かして他の人を驚かせるためなら、別の同じような遺伝子改良を行う島から来たって方がいいかなって思いました。

ネイ「まぁ、確かに突発的だったから驚いてましたね。……それで元さんの強気は、最後のあれですか」

あれです。流石DNLだね。

グリーフィア「さぁ、原作じゃ「お前の力はただ戦場を混乱させるだけだ」って言われてたけど、彼はどうなのかしらね~」

それじゃ、次話に続きます。


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EPISODE30 運命を決めるもの1

どうも、藤和木 士です。引き続き本日分、EP30の更新です。

レイ「フリーダム煌臨!じゃなかった、降臨!」

ジャンヌ「どうしても作者のパソコンで打つとこっちが出ちゃうんですよね……バトスピの関係で」

ま、あっちでも煌臨は降臨、光臨を意味しているからね。まぁそんなことは今どうでもいいってことで。
EP30、本編どうぞ。


 

 

 突如現れたMSは双方の注目を集めた。圧倒的な力、懐かしい姿、見る者それぞれに様々な感情を抱かせる。

 宗司もまたその姿に魅せられた者の一人だった。

 

「な、何だ……あの機体」

 

 同じ機動兵器とは思えない佇まい。何もないところから現れるその姿はまだMSをよく知らない宗司には衝撃的だった。

 サポートのエターナも驚きながら冷静に状況を整理する。

 

『ステルス装甲……でも、味方?敵?』

 

「敵、なのか?」

 

『だって、姉様の機体に攻撃しようとしたし!』

 

 言われて気付く。確かにあの機体は攻撃を行おうとしたゼロン側だけでなく、こちらのジェミニアスにまで攻撃を行った。

 しかし、だからと言ってそう思えないと宗司は考えていた。やがてそれが図らずも当たっていることがオース陣営からの言葉で明らかになる。

 進がその機体のパイロットの名を呼びかける。

 

「輝義兄さん!輝義兄さんなんだろ!?」

 

「輝、義兄さんって、ひょっとして……」

 

 進の義兄である大和輝は宗司も知っている。この国、オースの英雄。だとするとあの機体が、多々聞いていた、オースフリーダムという機体。

 宗司の予想。その機体のパイロットが肯定を行う。

 

「久しぶり、だね。進。明日那と正も」

 

「輝義兄さん……!」

 

「輝、輝なのか?」

 

「輝……お前。いや、助かった」

 

「うん。僕だけじゃないよ」

 

 輝というパイロットの言う通り、それだけではない。空からは更に何体ものオースの主力機ムラマサが空から現れるようにステルスを解除、制圧を行ったゼロンMSを相手取っていく。

 現れたその機体に、デュランザメスもまた苦い顔でコメントする。

 

「オースフリーダム……やはり、まだ稼働していたのか」

 

「デュランザメス、歌峰さん。あなた達の野望もここまでです」

 

「フン、大和輝さん、あなたに私が止められて?」

 

「―――――あなたを止めるのは彼ではありませんわ、美愛さん」

 

「!?その声……」

 

 挑発を掛けようとした美愛を同じような声が否定する。声の聞こえた方を向くと、空から降りてきたMSの持ってきた箱から、一人の女性が明日那代表の横に降り立つ。

 その姿を見て驚愕する。髪型の違いこそあれど、その姿は歌峰美愛に瓜二つだった。考えに至る前に、進がその人物の名を呼んだ。

 

「大守里奈、本物の大守里奈だ……」

 

『大守里奈って、あの今回の事件を結果的に引き起こすことになった、影武者の対象の?』

 

「みたい、だな」

 

 現れた影武者の大元。影武者であり、自分こそが本物であると言っていた歌峰が混乱する。

 

「あ、あなた、いいえ、あなた様がどうして、今ここに……」

 

「決まっています。美愛さん、あなたが私の影武者として望まぬことを行おうとしているからです」

 

「わ、私はあなたの本当に望むことを遂行して……」

 

「私は、決して遺伝子で全てを決めることを許容しておりません」

 

「え、えぇ!?」

 

 目まぐるしく状況が好転していく。現れた本物の大守里奈にデュランザメスが語りかける。

 

「本物が今さら出てきて何かね。既に影が逆転したはずだが?」

 

 勝利を諦めないデュランザメスはそのように解釈を行う。(美愛)(里奈)と変わると言いたいその男の言葉を、光である里奈は首を横に振る。

 

「いいえ。私は光ではありません」

 

「ほう?」

 

「影武者を使った私も、逃げた時点で同じ存在です。だけど、それが罪なら向き合います。向き合うために、あなたの前にこうして立っているのです」

 

 影武者を使った戒めとして、今また立つ。大守里奈はここに来てようやく、その覚悟を示したということだったのだろう。

 とはいえ、その突然の登場に敵だけでなく味方も混乱していた。進は衝動のままに義兄に叫んでいた。

 

「輝義兄さん!どうして、どうして今になって……!」

 

「進、ごめん。本当にあの時の事は申し訳ないって思ってる。だけど、僕にはその選択を取るしかなかったんだ」

 

 謝罪を行い、輝はこれまでの自身の状況について進に語る。

 

「あの戦争が終わってから、裏でずっと虚ろの零の残党が僕たちの事を狙い続けていた。あのままだったら、父さんや母さん、進や真由ちゃんに危害が及びかねない」

 

「義兄さん達が、虚ろの零に狙われて……?」

 

「うん。今思えば、それはきっとデュランザメスの手引きだったんだと思う。だから僕らは、それに対し狙いを僕らだけに絞らせるために、また迎え撃てるように進達から離れた。政府にも極秘の軍部直轄部隊「ホロオース」に所属して、今日まで戦い続けてきた」

 

 戦い続けてきた。その言葉は本当なのだろう。けれども聞いている宗司としては、いまいち納得がいかなかった。

 進がどれだけ、義兄に会いたかったか。話したかったか昨日まででよく分かっていた。兄弟姉妹のいない自分でも、言いたいことを言えなかったならそうして問い詰めたいだろう。

 進が口を閉ざしている間に、大守里奈が影武者の歌峰美愛に自身の言葉を告げる。

 

「里奈さん。今まで影武者をしていただき、ありがとうございます。あなたの感じた疎外感、不満は私の責任でしょう。ですが、それを盾に国を売る行為は許されないことです」

 

「何よ、結局あなたも自分の思い通りにならなきゃ平気で排除するのね!」

 

「これは思い通りにという問題ではありません。影武者として動こうとして本人の意図を汲まない行動を咎めているのです。それは決して、私の代わりで言うべきことではなく、あなた自身が本来の自分で言うべきことです」

 

「間違っていることを指摘してそれなら、影武者のしている意味なんてないでしょうが!私はこの国の為にしているのよ!」

 

「それはこの国の為にならないと、私は言えます。争いを行うゼロンに与することは、許されません」

 

「勝手な理屈ばっかり!」

 

 主張を譲らず、対立する本物と影武者。そうして英雄大和輝はデュランザメスに言い放った。

 

「デュランザメスさん。あなたが僕たちを作ったとしても、僕らには意志がある。僕たちはこの島で生きていきたいんだ。平和なこの島で、争いたくない。それは進だって!」

 

「義兄さん……」

 

「ほう。それはまた随分義弟の事を分かっているような口を利く」

 

 進もまた同じだと言って輝はデュランザメスに反論する。進は自分の気持ちに迷っているようだったが、構わずデュランザメスと言葉を交わし続ける。

 

「僕たちが生まれたのは両親達が望んだからだ。命は何にだって一つ。作ったからと言って、あなた達の道具じゃない」

 

「だがその命の使い道を決めるのは作った者達、上に立つ者達だ。こうであってほしいと望み、作った。私も、そして計画の発案者である日本政府もその一人だ。それをどちらも否定するのかい?」

 

「あなたと他の人とでは、話が違う。あなたがやろうとしているのは、人類の管理だ」

 

「それが幸せになることもある。それを望む人がいるのも事実だ。君のエゴで苦しむ世界と、私の望む世界。どちらが幸せかな?」

 

「覚悟はある。僕は僕のやり方で戦う」

 

 戦うと言ってビームライフルを向ける輝。注目を集める中、必然的に火葉零がそれを妨害する。

 

「何が覚悟だ!」

 

「くっ!君は……」

 

「零!」

 

 ビームサーベルで斬りかかるオースカオスを、輝のオースフリーダムが避ける。避けられても構わず、オースカオスが背部のシールドポッドを乱射した。

 連弾をオースフリーダムは回避する。だがそのまま距離を詰めてオースカオスはフリーダムと近接戦へと持ち込んでいく。

 両者が激突する間に明日那代表の正面を守る位置に移動した元隊長がCROZE部隊に指示を送る。

 

「CROZE全部隊、体勢を立て直せ。基地に向かう敵機には俺が当たる」

 

『りょ、了解です!』

 

『了解』

 

 ようやく出た反撃の命令にCROZE部隊が歓喜に沸く。Gチームもそれぞれの敵と激突する。

 宗司達もムラマサ、ゼロンのシトと対峙しようとする。だがエターナと繋がって感じた悪寒が気づく。

 

「フリーダム!」

 

「うっ、進!」

 

 攻撃を回避したオースフリーダムに向けられたオースカオスの弾丸。それらがオースインパルスに向かって伸びていく。攻撃に対し反応しきれない進。

 

「……えっ」

 

「シンーーー!!」

 

 パートナーである月子の叫びが響く。だがそれを間一髪宗司がガンダムDN・アーバレストで反応して肩のシールドで受け止める。

 攻撃を防御した宗司に、進が呆然とする。

 

「お前……」

 

「進、大丈夫っ」

 

 輝がこちらに合流し、進に状態を聞く。それを見て零に守られる位置に立つデュランザメスが含み笑いを見せる。

 

「フフッ、やはりまだ迷っているようだ。進君は君の言葉を信じ切れていない。英雄の妄言を信じすぎてはいけないからね」

 

「あなたと言う人は!進を惑わせないで!」

 

「どっちも違うさ」

 

 その言い合いに入ったのは、元隊長だ。その位置を保ちながら否定する。

 

「大和進の意見を、どっちも引っ張ろうとして本質を見ていないのはお互い様だ。デュランザメス、そして大和輝、お前達どっちも、違う側から自分の意見を押し付けている」

 

「ほぅ」

 

「元さん、今そんなことを言って」

 

「今だからこそだ。デュランザメス、お前は言った。遺伝子で全てが統制された世界を求めていると。そして大和輝、お前は平和なこの島で生きていきたいと言っていた。だが、その二つとも、お前達は大和進の口から望んだことを聞いたのか?」

 

 味方であるはずの大和輝にも高圧的に話す元隊長。こちらも周囲の敵を追い払いながら聞いているが、必要以上に気が抜けなかった。

 続けて元隊長は進に問い掛ける。

 

「大和進、お前の理想は何だ。いや、こう言おう。お前の願いは何だ」

 

「お、俺の理想、願い……こ、この島が平和で……」

 

「それはお前の兄の理想だろう!部外者に威張り散らしてまで兄を嫌っていた、いや恨んでいたお前の気持ちとは違うだろう」

 

「元さん!」

 

 止めようとする大和輝。構わず元隊長は問う。

 

「今お前が言うべきこと、一番に言わなければいけないことを、願いを、果たせ!」

 

「元さん!!」

 

 怒りを込めてビームライフルを向けようとする輝。宗司も何をやっているんだと焦りを覚えた。同士討ちにデュランザメスが微笑もうとしようとしたその時である。進の声が木魂する。

 

 

 

 

「俺は!」

 

 

 

 

 その声に一瞬静かになる。すぐに戦闘の音は再開されるが、周囲は静かになっていた。そして進は「願い」を言った。

 

「俺は、義兄さんの事情なんかこれっぽっちも知らなかった。今聞いて、隠さなきゃいけなかったことだって言うのは分かった。今でも義兄さんの事は尊敬してる。でも、でも結局里奈さんと一緒に逃げて俺の前から消えていたのは同じだ!」

 

「進、君……」

 

「それなのに、軍に入ってからずっと離れていたってのに、俺の事を簡単に分かってるなんて言うなよ!」

 

 進もずっとそれが言いたかったんだろう。昨日も言っていた。兄に見せ付けてやりたいと。だがそれだけではなかったのだ。進は続ける。

 

「けどそれだけじゃない。零は俺の、軍で最初の友達だったんだ」

 

「っ……それも、ギルの命令だ」

 

「それでもいい。良くないけど、でも、だからこそ零をこんなふざけたやつの考えのままになんて、出来ない。俺が戦い続ける理由をくれた零と戦うのは、俺だ!決着は、俺が付ける!」

 

 零のオースカオスの前に、立ちはだかる進。オースインパルスの右手にビームサーベルを構えた。零も同じくビームサーベルを構える。

 それらをすべて予測していたように、元隊長は全回線で響き渡らせる。

 

『デュランザメス、お前の語った理想、遺伝子で役割を決め、全てを統制する。それは一つの平和を作ることに関してはある意味正しい選択の側面だろう』

 

「なんと、よもや君からそのような同意が得られるとはね」

 

『だが同時にそれは最大の悪手だ』

 

「ふむ?」

 

『そこには、夢がない。日を跨いでも今日と同じ日を繰り返すだけだ。夢は平和を壊す不確定要素の一つだ。しかし夢がなければ、明日も作られない。未来を作るのは、遺伝子でも、ましてや大和輝の言った争いの拒絶でもない。運命を決めるんじゃない、裏切られて、失意に落ちて行っても、争いの中で足掻いて作っていくのが運命なんだ。大和進はそれを選んだ。奴が未来を創る、運命そのものだ』

 

「そんな不安定なもの、何の意味が」

 

『不安定で結構。それが未来だ。未だ来るか分からないもの。オースのそれを作っていくのが、こいつだ!お前が決める必要なんて、ない!』

 

「魔王め、未来を黒く塗りつぶすか」

 

『あぁ、俺は魔王だ。神を信じ、あまつさえ自分が神と思い上がってるやつを滅ぼす、魔王だ!お前の未来が明るいと言うのなら、俺が証明してやる、その未来は既に真っ黒だとな』

 

 あまりに壮大すぎる物を背負わせてしまっているような気もした。ところがそれは進にだけ向けられているものでもなかった。

 

『Gチーム、ここは任せる。回線で再三こっちに来てほしいって言われているんでな。あのイグジストとディナイアルが来るみたいでな』

 

『気づいていましたか。早く行ってください隊長』

 

『あぁ。相模、入嶋、クルーシア、お前達も目の前の困難を突破して、突き進め!』

 

『わ、私達もっ!?』

 

『い、今言わなくてもっ、きゃっ!?』

 

 重いものは俺達にも背負わされた。だがいつまでもそんな事を気にしている場合じゃない。向かってきた敵機を切り裂いて、応答した。

 

「あんまり任せられるのは好きじゃないけど、しっかり頼むぞエターナ」

 

『私をアイツのテンションに巻き込ませるんじゃなぁいッ!!』

 

 そんなことを言いつつも機体の制御をしっかりと行ってくれる。相当巻き込まれるのが嫌なご様子だった。

 そして最後にオースフリーダム、大和輝たちに告げる。

 

『この場の指揮は任せたぞ、大和進。今まで表舞台から退いていた分、ここでしっかり役目を果たせ、それはお前の罪だろう?』

 

「……はい、分かりました」

 

「行かせるか!っ!!」

 

 ドームの上方向、晴天の空へと向けて飛び立つシュバルトゼロガンダム・ジェミニアスを行かせまいとする零。だがしかしそれを暴露した通りに進が遮る。

 

「どけっ、進!」

 

「どかない!お前がクローンだったとしても、お前は俺達の仲間だ。絶望したお前だけは俺が止める!お前が正しいって言うんなら、俺を倒して見せろっ!」

 

 オースカオスにオースインパルスが相対する。その様子をただ一人、わずかな苛立ちと共に、デュランザメスが見ていた。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP30はここまでです。

レイ「元君の発言、雰囲気がどっかの通りすがりと似ている件」

そらそこからリスペクトよ。結構文章考えるの大変だったんだから。

ジャンヌ「包み隠さず言いましたね……しかも輝さんの発言も原作からのパク……引用でしょうし」

まぁリ・イマジネーションって表題しているし、原作元の雰囲気を壊さない様にってやるとこうなるわけです。もっとも今回の元君はシン・アスカの苦悩に寄り添う形でイメージしているんですけどね。

レイ「あぁ、だから零君と戦う時、漫画版の台詞が掛けられているんだね」

ジャンヌ「ある意味あの発言ってテレビ版と明確に違うシンさんの決断をイメージしているみたいですし、そこはよかったかもしれませんね」

まぁそこに力入れすぎたせいで視点切り替え入れるの忘れたんですけどね。もうこの体で後の話書いちゃったから修正難しいし。

レイ「うわぁぶっちゃけ」

ま、そんなことはどうでもいいんだ。作者の問題。

ジャンヌ「どうでもいいのか気にしているのか」

というわけで、雰囲気からも分かるけど、アナザーSEEDDestiny編、クライマックス近いです。あとストックも残りわずかです。ではまた次回。


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EPISODE31 運命を決めるもの2

どうも、藤和木 士です。EP31と32の公開です。

ネイ「随分と投稿遅れてますけど、まぁ投稿間隔ずれるって言っていたので大体事情は分かりますね」

グリーフィア「そろそろストック切れてきたってことねー」

そういうこと。まぁ2話投稿はするんですけどね。

グリーフィア「さぁ物語はいよいよ佳境ってところね~」

ネイ「進さん達は零さん達を、ゼロンに与した者達を止められるのでしょうか」

というわけで本編どうぞ。


 

 

 記念式典ドーム会場を飛び出し、基地襲撃を行おうとしているゼロン・蒼穹島部隊への対処へと向かう道中。エンゲージシステムを通してジャンヌが声を掛けてくる。

 

『元、何かとっても臭い言葉を言っていたような気がしますけど?』

 

「……そうかい」

 

 ジャンヌからもそう言われたが、一番思っているのは他でもない元自身だった。あんなの言いたくて言ったわけじゃない。しかし言わなければいけないと思った。

 大和進の不満、今解消しなければ進も、そしてあの大和輝も変わらない。あの二人がこの島の新たな柱となっていくだろう。ならば今言っておくことがこの島にとっても、やがてはこちら側の為にもなる。

 それに、事が終わってからの「楔」でもあった。あの件を通すためにも、ここで言うべきだと思い、踏み切ったのだ。

 それに、ジャンヌにそうした自身の行動への考えを話す。

 

「まぁ色々考えることはあったが、ああしてパフォーマンスをするのは大事だ。俺は魔王。王は目立たなくちゃな」

 

『それでも、もっと言葉は現実的なものにしてくださいね。あれじゃあ詩人ですよ』

 

「生憎ながら、相手は夢想家だからその方が通じやすいと思ってる」

 

『ハハッ、相手の側に立ってあげるとは、と言っておきましょうか。それより、基地が見えてきましたよ』

 

「あぁ。もうあの機体達とやりあってるな……」

 

 ジャンヌが示すように基地が見えてくる。ヴァルプルギスは浮上せずに弾幕を張っていた。それを襲撃するのはオースのムラマサ、そして蒼穹島のタイプシリーズの2機種。

 そしてその中で2つほど圧倒的な力でこちらの明日那派の機体とCROZEの機体をはねのける機体があった。白と黒のタイプシリーズ2機が、圧倒する。

 それが危機的状況であることを元は知っていた。RⅡで勝てなかった相手。一気に加速し、ためらうことなくその機体達の前に躍り出た。

 

「そこまでだ、イグジスト、ディナイアル」

 

 

 

 

 黒和元が基地の方の迎撃に向かった後、進達はそれぞれの敵とぶつかり合っていた。オースインパルスの光刃とオースカオスの光刃が、火花を散らす。

 刃を向け合ったまま、零と話す。

 

「絶対に止める。お前にこの島は壊させない!」

 

「壊すのではない!生まれ変わらせる、悲劇を繰り返させないために。この島を、変わるために邪魔をするのなら今度こそ消えてもらう!」

 

 両者のビームサーベルによる剣戟は他者を介入させる隙を与えない。二人の気持ちのぶつかり合いを邪魔することは出来ない。

 それを分かってか他の者達も残ったオース美愛派と裏切り者たち、そして扮装していたゼロンMSと対峙する。CROZE部隊も残りの裏切り者であった或と加子を相手に取っていた。

 二人が裏切り者であったこともショックだった。しかし零の問題はそれとは別だった。性格的な相性もあったが、そうではない。こんな零を放っては置けないからこそ、自分が戦って止めたかった。

 しかし並大抵の実力で彼を止めることは難しかった。攻撃しているのに容易く躱され、逆にこちらを押し込まれる。

 

「クッ、疑似SEEDシステムか……!」

 

「それだけではない!これが本当の、俺自身の力だッ!」

 

 繰り出されるビームサーベル斬撃とシールドの打突。勢いに圧倒され、ビームサーベルを取りこぼす。

 それを見逃すことなくオースカオスが可変形態へと移行した。同時に前面に集中した火線を一斉砲火する。シールドを掲げるが、受け止めて防御した直後、シールドは爆散。リヴァイバーも上部ウイングが貫かれる。

 

「うわぁぁぁぁ!?」

 

「これでっ!」

 

 吹き飛ばされる機体。それに追い打ちを掛けるようにブーストするオースカオス。可変形態の脚部、展開したビームクローがオースインパルスの胴体を狙う。

 ところがその攻撃が間一髪防御される。防御したのは月子のムラマサだった。

 

「何!?」

 

「シン!」

 

「ルナ!くっ!」

 

 月子の押し返しに合わせてオースインパルスの機体を整える。小ジャンプのような動作をしてムラマサを飛び越えてボウガンセイバーで斬りかかる。

 攻撃はシールドで合わせられ、切り裂くには至らない。可変状態を解除してMSで地面を後ずさる。助けられこそしたもののなぜ月子が、と思った。しかし心配は無用だった。兄の連れてきたムラマサの特殊仕様が敵を迎撃するオースフリーダムに変わってその位置にいた。

 月子は進に対し檄を飛ばす。

 

「シンってば前に出過ぎなのよ!レイにまともに勝てたの数回なんだから無理しないでっ」

 

「フン、ルナは勝てたことないだろっ。それにルナだって持ち場離れてるじゃないか」

 

「それはいいのよ。それに忘れてた?あたしだってレイの戦友なんだから」

 

「……そうだなっ」

 

 月子もまた進と同じ気持ちだったのだ。零には申し訳ないと思いつつも2対1で向き合う。一方の零も状況を察したのか。本気を出す構えを取った。

 

「二人がかりだとしても、俺は倒せない!」

 

 背部のシールドポッドを分離させる。事実上三対一を展開する武装が本体と同時に一斉に攻撃を開始する。回避行動を展開しながら、二人は本体である零に攻撃を行う。ビット兵装の基本対処、コントロール元である本体を攻撃して、ビットのコントロールを甘くするためだ。

 零はそれすらも容易く回避し、正確な射撃を行っていく。攻撃に翻弄され小被弾を重ねていく月子。それをカバーする為に進は前へ前へと向かい、格闘戦距離で対峙する。

 

「はぁっ!」

 

「ちぃ!」

 

 再びビームの剣同士がぶつかり合う。ところがオースカオスの力は弱く、容易くその機体を吹き飛ばす。それにより動きの鈍ったシールドポッドを月子が狙撃して対処する。

 一基が撃ち落とされるが、もう一基は辛うじてコントロールを戻してこちらの迎撃に充てられた。

 

「当たれっ!」

 

「あたらないッ!」

 

 零が力を込めてポッドと本体のガンポッドシールドで攻撃を行う。弾幕の嵐に回避しながらも進は前へと突撃していく。突撃する進を月子も攻撃に晒されながらも援護する。

 

「シンっ!今っ」

 

「何っ!?」

 

「うぉぉぉぉぉ!!」

 

 月子のムラマサが放った空対地ミサイルが煙幕となって地面に起爆、二人を爆炎が包む。その爆炎の中を突っ切ってオースカオスに対しボウガンセイバー、ビームサーベルの二刀で斬りかかった。

 唐突な特攻に零は反応する。しかし完璧にとはいかず、シールドで防御するが機体が吹き飛ばされる。体勢を崩したところにボウガンセイバーをガンモードへと自動変形させる。オートロックした砲門から無秩序な放射ビームがオースカオスに向けて放たれた。それらはコクピットをいずれも狙わず、全て頭部や腕部を狙って放たれた。

 兄がよく行っていると聞いた武装解除の狙撃を、自分も出来ないかと思って自分でプログラムを組んで武装攻撃パターンに入れていた。それをまさか、練習相手であり、プログラムを組むのに協力してくれた零に対し使うことになるとは、何という巡り合わせだろうか。それでも絶大な力を誇る攻撃パターンはオースカオスのシールドと脚部ビームクローを破壊する。

 

「この攻撃パターン……あの武装撃破の奴か」

 

「そうだ。お前が一緒に手伝ってくれたあの攻撃だ!」

 

 肯定する進。しかし零は全てを振り払うように拒絶し、機動する。

 

「っ、そうだとしても、ギルの願いは!」

 

『DB、Standby「カオスキャノネード」』

 

 変形を行い突撃するオースカオスの突撃砲が光を帯びた。進は知っていた。それがオースカオス必殺の一撃、DBであると。

 進ももちろんその攻撃の攻撃性能は分かっていた。直線距離数メートルは離れなければいけない。月子が周囲に退避を促す。

 

「カオスがDBを使う!みんな逃げて!」

 

「里奈捕まって!」

 

「輝!」

 

「明日那!」

 

「正ッ」

 

 兄と正がすぐさま里奈と明日那代表を抱えて上空へと退避行動をとる。他の味方機も退避を優先するが、オースインパルスは動かない。動けなかった。

 さっきの一斉射と爆炎の特攻で機体の動力が一時的にオーバーヒートしていた。冷却に少しだけ時間がかかる。だが間違いなくこのままでは間に合わない……!

 月子が避けるように叫ぶ。

 

「シン!避けて!」

 

「進!」

 

「クッ……!」

 

「消えろ、シン!生まれ変わるこの世界の為に!」

 

 その時取れる行動はこれしかなかった。一か八かの賭けを実行する。

 

「バックパック、ボルトアウト!」

 

 まずバックパックをパージする。そのリヴァイバーにあらかじめ指示していた通り、加速させ、オースカオスに向け特攻させる。

 オースカオスはそのままDBを放つ圧倒的な破壊力を込めてらせん状に放たれた一撃は、ルフト・リヴァイバーを直撃し爆散する。だが一撃は止まらない。

 その時には既に冷却が完了した。しかしこのままではまだ逃れられない。ビームが止まらず向かってきた。それに対し進は更なる手を打つ。

 

「ボトムパージッ!」

 

 オースインパルスの胴体が上下に分断する。オースインパルスは機体を上半身、コア、下半身に分けられるリヴァイバルシステムの機体。上半身を射出して初速を上げて射線上から逃れる策を取ったのだ。

 物のついでで残った脚部もビームに突貫させる。それらが功を成してオースカオス必殺のDBから逃れることに成功する。そして、その後の事も既に手を打っていた。

 

「芽衣、トップフライヤー、ボトムフライヤー、シュトラールリヴァイバーを!」

 

『は、はい!』

 

 月子の妹、普段はオペレーターを行っている鷹宮 芽衣(たかみや めい)に指示する。オースインパルスのパーツ換装指示を出したのだ。そのオースインパルスは上半身のみの無防備な状態。換装できれば、また五体満足なオースインパルスで戦える。

それが行われてはいけないことを当然零は知っている。零も否応なしに好機と機体を向かわせてくる。

 

「避けたと言っても、所詮は間に合わせ!」

 

「っ!シン!」

 

 月子がカバーに入ろうとする。ところが零もそれは当然見越して疑似SEEDシステムの動きで煙に巻く。ビームサーベルがムラマサの右腕部を切り裂く。

 

「きゃあぁ!?」

 

「もらったぞ、シン!」

 

「っ!」

 

 そうはさせない。その意志の元SEEDシステムにアクセスする。研ぎ澄まされる集中、冴えわたる思考で零とぶつかる。

 

「ぬぅ、これはSEEDか」

 

「劣化版のSEEDシステムに、負けてたまるかっ!」

 

「何をッ!」

 

 光剣がぶつかり合う。弾かれた直後オースインパルスの胸部をオースカオスのビームサーベルが貫く。のだったが、既にオースインパルスの心臓部、コアストライカーはトップから分離されていた。

 戦闘機形態に移行したコアストライカーで残ったトップパーツを攻撃する。誘爆を起こして至近距離にいたオースカオスを吹き飛ばす。

 

「ぐぉぉ!?」

 

「コア・ドッキング・ゴー!」

 

 掛け声と共にコアストライカーが変形する。瞬時にトップ、ボトムに合体しインパルスの機体を再構成、シュトラールリヴァイバーと合体して砲撃戦形態インパルス・シュトラールへと換装を完了させた。

 オースカオスが体勢を立て直したところで進はインパルス・シュトラールで立ちはだかる。

 

「レイ、今でも俺は、お前の事仲間だって思ってる。だからこそ、これでお前の復讐の手を止める!」

 

「フン、簡単に言うな!」

 

「芽衣、HDB《ハイパーディメンションブレイク》を使う!」

 

『りょ、了解です!管理システム、HDBモードへ!』

 

 ハイパーディメンションブレイク。DBを越えた攻撃力を誇る一部機体しか有さない必殺を越えた超必殺とも呼べる攻撃パターン。インパルスの場合は換装管理を行う芽衣に合図を送り管理システムを専用モードに切り替える必要があった。

 換装許可が出され、HDBを発動させる。

 

『HDB、Standby「インパルス・フルコンビネーション」』

 

「行くぞっ!」

 

 発動と同時に脇下に抱えたビームランチャー「ハーゲンティ」を右、左、そして両方からビームを目標であるオースカオスに放つ。それらは簡単に回避されるがそれも予測済み、直後ミサイルランチャーをレールガンと共に発砲する。圧倒的弾幕が先行して放たれ、そこにチャージしたハーゲンティを放つ。

 怒涛の連射にオースカオスは対応しきろうとする。ところが弾幕の厚さには勝てず、ミサイルのいくつか、そしてハーゲンティの一撃で右サイドアーマーを溶解させられた。

 

「ぐぅぅ!?」

 

「ハーゲンティ、ビームブレイドモード、いっけぇ!!」

 

 動きが一瞬止まったのを見て、ハーゲンティの固定ロックを解除する。解除したハーゲンティの峯にビームブレイドを出現させるとそれをオースカオス目がけて放り投げる。

 あまりに雑な攻撃だったが、圧倒的弾幕の直後の事で、零は対応しきれずに受け止めたシールドを機体に打ち付け、肩部装甲を斬られる結果となった。

 その間に到着したアッシェリヴァイバーにオースインパルスは換装。赤と灰のオースインパルス・アッシェへと変わり、合体した双刀のレーザー対艦刀「ハルファス」を構え、怒涛の勢いで袈裟切りに振るう。一撃目はシールドで受け流されるが、返す二撃目でシールドごと左腕を切り裂く。

 劣勢に陥り、距離を取ろうとする零。だがそれを許さない構えで進は動く。

 

「ちぃ、このままでは」

 

「まだ終わらない!てぇい!」

 

 距離を取る零と軸を合わせてハルファスを投擲する。投げ槍の如く放たれたハルファスがオースカオスの左足を貫く。

 動きを押さえつけると再びリヴァイバーを換装、最後に換装したのは最初の形態、オースインパルス・ルフト。復活した機動力で零に猛進する。

 

「うぉぉぉぉぉ!!」

 

「えぇい!」

 

 ハルファスを抜こうと試みたものの、やむを得ず左足を根元から切り離したオースカオスがビームサーベルを構えて迎撃に出る。残ったシールドポッドが眼前に飛び出し、ビームを放とうとする。それに対しボウガンセイバー「フォロカル」を投擲して貫通、兵装を潰す。

 大出力を込めたもう一本のフォロカルがビーム刃を発振させる。オースカオスのビームサーベルと激突した。

 

「ぐっ!」

 

「はぁぁぁぁぁ!!」

 

 同じビームの光剣同士の激突。しかし出力はこちらの方が上だった。ビームサーベルを折り砕いて本体を切り裂く。連続して胴体の上下を真っ二つにした。

 そこでHDBが終了する。オースカオスが爆発前に装依解除され、相当のフィードバックダメージを抱えて疲弊した零が後ずさる。零は憎悪を込めた言葉を吐く。

 

「シン……!俺の、夢を……よくもっ」

 

「レイ……もう、止めよう。こんなこと……」

 

 HDBの余波で機体がオーバーヒートした状態で、零に投降を呼びかけたのだった。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP31はここまでです。

ネイ「ハイパーディメンションブレイク……圧倒的ですね」

グリーフィア「DBよりも強力って感じだけど、戦い方雑過ぎない?ブン投げて当ててるのこれ絶対SEEDシステムのおかげでしょ」

まぁそうだね。けどこのHDB、DNFと同等の力を得るために無理矢理ジェネレーターをオーバードライブモードにしているから、短時間しか維持できなかったりするんだよ。だから急いで決めないと先に動けなくなるっていう罠がある。だから大雑把でも攻撃の回数を多くするって必要がある。

ネイ「えぇ……それにしたってじゃないですか」

けど同時にインパルスのこれはスパロボシリーズのデスティニーガンダムのフルウエポンコンビネーションのインパルス版で考えたからね。雑なのはそこのプロトタイプって感じです。

グリーフィア「あぁ、あっちは十全に扱えるって話だけど、インパルスはフレームとかの問題で無理って話あったわねぇ。そことの帳尻合わせか」

そういうこと、さて、次へ行くけど、まだ進君達の戦いは終わっていないよ。

ネイ「オースガイアとオースアビスがいますからね」

グリーフィア「あいつらも倒さなきゃ、止まらないわよね~さぁ次話でどうなることやらっ」

同日公開のEP32へ続きます。


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EPISODE32 運命を決めるもの3

どうも、藤和木 士です。引き続きEP32の公開です。

レイ「零のオースカオスを間一髪撃破した進君!まさにSEEDを発動して逆転するシン君の初SEED覚醒の時みたいな感じだったね」

ジャンヌ「ルナポジションの妹さんに命令を飛ばすところとかも意識している感じでしたね」

章ごとにそれぞれのシリーズのアナザー化やるとどうしても他の所でオマージュ盛り込まないといけないからね。まぁアナザーSEEDDestinyはこの後も続けないといけないんですが。
というわけでそんな劇的な展開を見せた後の本編をどうぞ。


 

 

 進が零に勝利したことは、宗司もすぐに知ることとなった。インパルスの回線から二人の会話を聞いて、安堵を吐く。

 

「やったのか、進」

 

『オースカオスの識別反応消滅。だけどこれ、死んだわけじゃないわよ』

 

 まだ敵が抵抗するかもしれない、と遠回しに注意を喚起するエターナ。まだこちらの敵は落ちたわけではないし、そのつもりは毛頭ない。

 が、それでもこちらの優勢に変わりはなかった。

 

「くっ、動きが……のぉ!」

 

「させない!」

 

 水無月加子の操るオースガイアに対し中距離からの飽和射撃で接近を許さない入嶋のDN・アルヴ。ここへ来る前よりも射撃が洗練されており、距離の取り方を覚えているようだった。クルスが前衛となり、ガイアの動きを制限しているのもまた大きかった。

 そして残るオースアビスも、呉川隊長と宗司とで抑え込む。お得意の砲撃距離を保てず、新沢或が舌打ちする。

 

「このッ、数で押してるからって!」

 

「っ、流石にエース機体か」

 

『ソージ、ぶっ飛ばせ!』

 

「無茶言うなって!」

 

 だがお互いがお互いに踏み込むタイミングで迎撃されるという繰り返しだった。それでも時間は引き延ばして持久戦に持ち込みつつあった。

 持久戦は流石に想定していなかったのか、あちらも焦りが窺える。デュランザメスが味方兵に対し告げる。

 

「……やむを得ないな。零、加子君、或君。後退する」

 

「ギル!……分かりました」

 

「っ、逃げるんですか!」

 

 明日那代表と里奈を守護していた輝が前へ出ようとする。撤退はこちらとしては嬉しいところだろうが、確保が任務な以上深追いもやむを得ない。

 挑発交じりの輝の言葉にデュランザメスは言う。

 

「私の目的はこの島の接収だ。しかし、それは残念ながら達成できそうにない。君達の、勝ちだろう。しかし最低限の仕事は果たさねばならないからね。そう、この島の技術、そして大切な人材をゼロン本拠地へと連れ帰るという使命がある。それで私は「勝利」出来る」

 

「まさか、機体を!」

 

「さぁ、逃げさせてもらおうか」

 

 言った瞬間、オースフリーダムが正のオースセイバーに明日那代表を任せて飛び出す。が、瞬間的に現れた機体に阻まれる。それは蒼穹島の使うタイプシリーズの1機だった。

 空間をねじ切るようにして現れた近接型のタイプシリーズはオースフリーダムの攻撃を弾いて捌くとデュランザメスに指示される。

 

「撤収だ。頼む」

 

「了解した」

 

「ま、待て!」

 

 制止を呼びかける輝だったが、向こうは待つ気はさらさらない。機体を中心に展開した球状の超次元現象がデュランザメス達を包んでいくのが見える。そしてこちらで相手をしていたガイア、アビスがこちらの相手を無視してその球体へと突っこんでいく。

 

「悪いけど、こんなところで置いてけぼりは嫌だからね」

 

「バイバーイ、また戦場で遊ぼうよっ!」

 

「逃げられる!?クルツ!」

 

「応さ!」

 

 瞬時に呉川隊長がクルツに狙撃指示を出す。クルツのソルジアスSSカスタムがスナイパーライフルで阻止に入る。が、オースガイアはその特異な能力で空を蹴って回避。オースアビスは展開したDNウォールで防いで球体へと向かう。

 並大抵の攻撃では止められない。ダメかと思われた。

 

「クソッ、ダメかっ」

 

「おおおおおぉぉぉぉぉ!!」

 

 絶叫する声、明沢正の物だった。オースセイバーは可変形態へと移行し、特攻をかける。その相手はオースアビス。接近に気づき避けようとするが遅い。攻撃を受けながらもオースアビスの機体を直撃し、オースアビスが球体を逸れて吹き飛ばされる。

 

「うわぁぁぁぁ!?」

 

「或!?くっ、すまない!」

 

 加子もそれに気づいていたが、オースガイアの機体はそのまま球体へと入っていく。球体は消えていき、その場にデュランザメス達はいなくなっていた。オースアビスのみがこの場に残る形となった。

 特攻してまでオースアビスの逃走を阻んだセイバーが変形解除を行う。四つん這いの状態で頭を振る正に駆け寄る。

 

「正、大丈夫!」

 

「あ、あぁ。何とか……アビスは……」

 

「アビスは入り損ねた。お手柄だよ、正」

 

 称賛と労いの言葉を掛ける輝。だが無論、オースアビスのパイロットである、或はよろけながらもこちらを睨み付けるように恨み節を吐く。

 

「くっ、特攻してまで、僕を抑えたかった……?そんなこと」

 

「もう諦めろ。お前を国家反逆罪、並びに内乱罪で拘束する」

 

「ははっ、こんなにMSがいたら降参、

 

 

 

 

 

するわけないんだよねぇ!俺はぁ!!」

 

 一瞬諸手を上げようとしたオースアビスがシールド内のビームカノンを向けて乱照射を開始する。放たれた攻撃をGチーム、そして大和輝達がそれぞれ回避行動を行う。それらは油断していたホロオース、オース部隊を焼いた。

 側転するような形で避けるガンダムDNアーバレスト。その視界の中に、動こうとしない機影があった。進のオースインパルスだ。

 

「進?どうした」

 

「くっ、やっぱり機体が動かない!」

 

『何ですってぇ!?』

 

 先程大活躍を見せていたはずのオースインパルスが再び動けなくなってしまっていたのだ。その理由を進も理解していた。

 

「やっぱり、調整しきれてないHDBを撃ったから……くっ」

 

「シン、脱出を……」

 

「ハハッ、無様だなぁシン!!」

 

 それを或も見逃さない。背後をシールド下部の爆砕砲の弾幕に任せ、ビームランスでオースインパルスとムラマサに襲い掛かる。

月子のムラマサが立ちはだかろうとするが、オースアビスはそれを容易く押し退ける。

 

「っ、きゃぁ!?」

 

「ルナっ!」

 

「さぁ、終わり!――――」

 

 だけど、そんなことはさせない。

 

「くっ」

 

「なっ」

 

「お前ェ!」

 

 ガンダムDN・アーバレストを割り込ませ、ビームサーベルで凶悪な穂先を逸らす。その状態で或へ、そして進に対し言った。

 

「殺させはしない。運命を切り開くこいつを、この島の希望を殺させなんてしない!」

 

「なら、お前がっ!」

 

 狙いをこちらに切り替え、胸部のビーム砲を光らせる。こちらも反応して左肩シールドアームを展開しアームパンチを浴びせる。アームパンチによりアビスは体勢を崩し、ビームはシールドアームのみを焼いていった。

 両者距離を開ける。それでも或は諦めない。

 

「だったら、これでお前達だけでも!」

 

『DB、Standby「アビス・ディープ・クライシス」』

 

「あれは、不味い!」

 

 正が危険を呼びかける。その声を聞いてDBの発射を阻止しようとオースフリーダムを含めた稼働しているドーム内のMSが射撃する。が、それらは周囲に展開したDNウォールに阻まれる。

 それを見て或が嗤う。

 

「無駄無駄!発動すればこいつが放たれるのは絶対!まさに必殺技ァ!!」

 

「宗司君、進を抱えて離脱を!」

 

「宗司、回避を!」

 

「相模君!」

 

 仲間達から回避を叫ばれる。それでも動くわけにはいかない。もしあの状態で薙ぎ払うような動作をされたら?そしたら今度は逃げるように言ったみんなが危ない。

 前に立った以上、止めるしかない。ドライバ・フィールドでも止められるかどうか怪しい。

 それでも、最低な提案をパートナー、エターナへと行う。

 

「エターナ、()()()()

 

『……はっ、笑わせてくれる』

 

 一蹴するようなエターナの返答。だが彼女は既にこちらの考えを分かっていた。昨日散々練習したのだ。だからこそ、彼女は言葉を続ける。

 

『無理矢理一蓮托生にしてるのはあんたでしょうが、こっちは逃げられないんだから!』

 

「そうだなっ!行くぞ、「ドライバフォーム」ッ!!」

 

『フォームシフト!』

 

『フォームシフト。ドライバフォーム』

 

 その名を叫ぶと機体のシステムが認証する。同時アーバレストの機体が変貌していく。

 腕部アームガードがパーツ分離を起こし、ナックルガードのように展開する。ふくらはぎのスラスターも展開し、足底部がかかとを起こして身長を上げ、重心をずらしていく。バックパックもその大きさを一回り大きく各部をスライド展開、拡張させる。

 最後に頭部マスクパーツが左右にずらされる。マスクを解放したような排熱機構を露出させたガンダムは怒りを表すように排熱機構から熱気を吐く。そして周囲のドライバ・フィールドが一段と強くなる。

 変化を起こしたアーバレストに怖気づくことなく、オースアビスは最大の攻撃を放つ。

 

「消えなぁ、ガンダムッ!!」

 

「止めて見せるッ!!」

 

『ドライバ・フィールド、限界出力!!』

 

 放たれる全砲門射撃を束ねた超強化ビームが、限界まで展開したドライバ・フィールドと激突する。光の奔流がドライバ・フィールドを焼いていく。

 

「グッ!く、くぅぅぅぅぅ……!」

 

 イメージした防壁が焼かれていくような感覚を覚える。今まで以上に攻撃を受け止めた時の負荷の痛みが伝わっていく。それは無論、エターナも同じだった。

 

『あ、ぁぁぁあぁあああっ!!』

 

 エターナの気持ちが流れ込んでくる。痛い、苦しい。より高いレベルで繋がる必要があるからこそのこのフォーム。二人の無理に進と月子が心配の声を上げる。

 

「む、無理よっ!オースアビスの砲撃を受け止めるなんて!」

 

「民間人が死ぬ必要なんてない!お前達は逃げろ!」

 

「……そんなの、出来るかっ!」

 

 宗司は強く否定する。

 

「俺だって、成り行きでもCROZEのメンバーだっ。俺はもう、自分の都合で見捨てたりなんかしたくない!」

 

 繰り返さない。かつて怖くて逃げだしてしまった彼女の時のように、仕方ないということで見捨てたりはしたくない。だからこそ、前に立つ。大和進は、それに値する人間だと思うから。

 エターナもまた矜持で立っていることを叫ぶ。

 

『私だって、姉様が悲しむ顔なんて、見たくないんだからぁ!!』

 

 彼女らしい言葉だ。そして、それを支えるのが自分であると再認識させられる。行く道を示すと言ってくれた彼女を、こんなところで終わらせない。

 二人の思いが、言葉が重なる。

 

「『こんなところで、終われないっ!!』」

 

 その言葉に、意志に呼応して崩れかけていたドライバ・フィールドが再度持ち直す。放たれるビームの出力が落ちていくのを感じる。そこに全てを掛ける。

 

「何だ、この防御力!?」

 

「『はああああぁぁぁぁ!!』」

 

 やがてビーム全てが放出され切る。最後のビームをフィールドで包み込むと、それらを二つに割って後方へと投げ捨てる。フィールドが解除されたビームはエネルギーへと還って爆発を起こす。

 完全防御を果たしたことに見ていた輝が驚きの声を上げる。

 

「攻撃を止めた!?」

 

「馬鹿な!?オースアビス、いや、オースの機体の中でも最大を誇るDBなんだぞ!?」

 

「これが、相模君とエターナちゃんの力……?」

 

「相模、エターナ、まだっ」

 

 攻撃をすべて止められ、新沢或もまた動揺を隠せずにいる。機体を必死に動かそうと試みる。

 

「クソッ、今ならまだもう一発……グッ、オーバーロード!?」

 

 満足に動かない機体。その機体に最後の一撃を、絶対の一撃を行うべく動く。

 

「エラクス!」

 

『ELACS,Standby!』

 

 シュバルトゼロガンダムから受け継がれた蒼き閃光が機体を包み込む。ようやく使えるようになった兄弟機であるアルヴと同じ光を纏って更に力を上乗せする。

 それは次元を破壊すると言っても過言ではない技。それを機体が読み上げる。

 

 

 

 

『Authorize!DNF「ストライクドライバ」』

 

 

 

 

 DBを越えたHDBと同等以上の技、DNF。ドライバフォームへと至ったからこそ使えるこの力。

 ドライバ・フィールド全開によって切れかけていた出力を補うエラクス。二段階でブーストされたDNが右手に込められる。拳を構え、その足で地面を蹴ってオースアビスへと向けて跳んだ。

 

「HDB……いやDNFだって!?」

 

「ひっ!来るなっ!!」

 

 DNFに対し驚きの声を出す進、急速接近する敵に怯える或。その怯えに迷うことなく、拳を振るった。

 

「いっけぇぇぇぇぇ!!」

 

 拳がわずかにオースアビスの機体を押した。何もないかのような攻撃。一瞬の沈黙が流れる。

 ところがそれはまさに一瞬だけ、だった。

 

「え……ぐぉあばぁ!?」

 

 瞬間オースアビスの機体は遅れて飛んだ衝撃波、ソニックブームと共に胸部をひしゃげさせる。更に頭部、腕部、腰から下の脚部すべてがそれらによって胴体と繋がる根元から丸ごと吹き飛ばす。

 残った胸部は見えない何かで貫かれたような穴が一つ、ぽっかりと空いていた。オースアビスは火花を発しながら地面を転がっていく。小爆発が起こっていき、味方機体が合わせて距離を取っていく。

 そして、オースアビスの機体が爆発を起こした。

 爆発から離れるアーバレスト。敵を倒したと同時に、エラクスシステムが自動解除され、ドライバフォームが排熱すると同時に展開したすべての装備を収納、もとのガンダムDN・アーバレストへと戻っていく。

 終わらせた宗司達のもとにチームメンバー達が集まってくる。

 

「宗司ー宗司!やったな!」

 

「あっ、クルツ先輩」

 

「相模君凄い、昨日練習したばっかりのドライバフォーム、使いこなしてたよ!」

 

「エターナちゃんも頑張ってた。後でジャンヌ副隊長に報告しないとね」

 

「入嶋と模擬戦した甲斐があったよ」

 

『こいつが無茶するんだから、当然褒めてもらわなきゃ報われないっての!』

 

 クルツや入嶋、クルスが二人に労いの言葉を掛けてくる。それに返答しながら、遅れてきた呉川隊長に謝罪する。

 

「すみません呉川隊長。勝手な判断して」

 

「まったく、懲罰ものだぞ。しかし、そうでなければ彼らを救うことは出来なかった」

 

 呉川の視線が指すその先、大和輝と明沢正の機体に支えられたオースインパルス、大和進とムラマサの鷹宮月子の姿があった。

 こちらに気づいて、進は歩行もままならないながらも月子のムラマサと共に歩み寄ってくる。

 

「宗司。その……ありがとう。助けてくれて」

 

「進。よかったよ。お前がお兄さんにまた会えて」

 

「あぁ。お前が守ってくれなかったら兄さんに言いたいこと言えなくなってた。まだ言いたいことがあったから。思えば二回も助けられたな」

 

 進の言葉で気づく。確かにこの戦いで宗司は二度、進の危機を救っていた。

 気恥ずかしさからか黙って進は手を差し出す。それに宗司も頷き、手を合わせる。それは和解だった。今まで無礼を働いたことと、感謝の気持ちの表れだ。

 それらを見て隊長クラスもまた小さく安堵を浮かべていた。それが終わったところで、呉川隊長が残る戦地で戦う隊長について言及する。

 

「後は、元隊長だけか」

 

「あの人なら勝ちますよ。間違いなく」

 

 大和輝は既に勝ちを確信していた。空を見上げる。戦闘の音が、まだ終わらない。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP32はここまでです。

レイ「えっと……前から触れられてた新機構って、ドライバフォームってことで良いんだよね?」

そうです。

ジャンヌ「能力はドライバ・フィールドの拡大……とDNFの使用可能って感じです?」

大まかに言えばそうだけど実際の所は細かいところで違う。そこら辺はまた解説の方で言ってくよ。

ジャンヌ「そうですか。けれど、逃げられこそしましたが、宗司さん達は無事生き残りましたね」

レイ「そうだね!とりあえず味方陣営誰も死ななくて一安心って感じだね!」

まぁでもガンダムらしくないかなとは思ってたりしますけどね。

レイ「ちょっと!それはどうなの!?」

まぁそこは色んな人の意見あると思われますが、今までの時点でもそれなりに部ごとに戦死者出てはいるので多分考え過ぎなんでしょうね。とりあえずその話は私の中で煮詰めておきます。

ジャンヌ「そうですか……それで、後は元さんの戦闘だけになる感じでしょうかね」

せやな。因縁深い相手の一人と再会って感じです。その戦闘と今章のエピローグ的な話を挟んで今章終了の予定です。

ジャンヌ「そう考えると今回の第2章は長いですね」

レイ「今の時点で20話以上もあるもんね」

この長さが平均的になるとまた削る部分あるかな考え始めますね。オマージュを入れ込み過ぎると長くなったりするのかなと思い始めたり。
と今回はここまでです。

レイ「次回もお楽しみにっ!」


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EPISODE33 運命を決めるもの4

どうも皆様、藤和木 士です。EP33と34の公開です。まずはEP33から。

ネイ「前回は進さんと宗司さんが主な活躍で見事ゼロンを退けた、という感じでしたね」

グリーフィア「んーやっぱ逃したの痛そうねぇ。MSのデータ渡っちゃったし」

島の占拠に執着見せなかったあたり、それも視野に入れてそうだからね。だがまだ戦いは終わっていない。シュバルトゼロが遂にタイプシリーズの親玉との対決に入るぞ。

ネイ「タイプシリーズの親玉……あの機体達の模倣ですか」

グリーフィア「英雄と称された力と同等か、それとも、って感じねー」

というわけでどうぞ。


 

 時間は少し巻き戻って、オース明日那派基地にてゼロンが襲撃した頃。ゼロン一派である蒼穹島部隊はオース明日那派とHOWのCROZE部隊と接敵する。

 基地内の美愛派による乱戦もあって蒼穹島の乱入は大いに敵を混乱させる。だがそれ以上に、増援の中にいた2機が敵の動きを阻害していた。

 それこそ、蒼穹島最高戦力にして私達の機体、タイプ[イグジスト]とタイプ[ディナイアル]であった。

 

『クッ、こいつらイグジストとディナイアルだ!奴を倒そうとするな、足止めをっ、ぐぉあ!?』

 

「興司、倒すのはいいけど、やり過ぎると後が怖いよ?」

 

『うるさいなっ、こいつら全員俺達の敵だろ!銃なんか向けてる時点で!』

 

 私、タイプ[イグジスト]を駆る日和 美波(ひわ みなみ)はタイプ[ディナイアル]を駆る海凪 興司《うみなぎ きょうじ》にそう注意する。パイロットとしては日は浅かったが、それでも私は、冷静に状況を見ていた。

 力で一気に制圧することは簡単だ。けれどもそれでは私の思う力の使い方じゃない。せめて力をわずかしか持たない兵には、戦わずして勝つ力で止めたい。

 話に聞くDNLは意志を伝達し、危機を知らせたり共有できたりするらしい。それは素晴らしいことなのだろうが所詮は理想。それに対してこの機体は意志の画一。否が応でも、戦闘は意味がないと終わらせることも出来る。力と、私達の思いで、止められる。今の私には、それが出来る、気がする。

 そう思いながら最低限の自衛をしつつシャイニーガンブレードランスから光を流出させていく。そのやり取りであの人から二人に対し声が掛けられる。

 

『―――二人とも、集中は切らすなよ』

 

「一真さん」

 

『真藤、隊長。切らしてないって』

 

 私達の隊長、かつてイグジストを駆っていた真藤 一真(まとう かずま)は二人に対し注意を呼びかけた。

 

『本当か?ならお前もパイロットを殺さずにやれるだろう?』

 

『それとこれとは話が別、だろっ!』

 

『それから、美波もキリがいいところでそれは止めておけ。それよりも相手の武装解除をやった方が、今はいい』

 

「わ、分かってます。だけど、これが出来ればそれだって簡単に……」

 

『今はそれを優先するときじゃない。忘れたのか。今のこの島には、HOWの魔王がいる。それも、十全な状態で』

 

「うぅっ……はい、分かりました」

 

 一真おに……一真さんの言葉の圧に負けて、作業を中断する。なんていうか、一真さんの声はいつも穏やかなのにこういう時は棘がある。エースパイロットだからだろうか。けれどそれだけじゃないかもしれない。

 私達はまだ戦ったことが無いけれど、HOWの魔王はとてつもない強さらしい。旧式でありながらイグジストで倒すことが叶わなかったその人物に、危機感を抱いているのかもしれない。

 蒼穹島の救世主と呼ばれる一真さんの警戒に自然とプレッシャーがかかる。対照的に興司はHOWの魔王を鼻にかける発言をする。

 

『フン。機体が変わっていようがこのディナイアルに勝てるわけない!臆病なんだよ、アンタは!』

 

「ちょっと、興司!」

 

 言って再びオース、HOWのMSをその巨大な腕部による格闘戦と形成した超次元現象による斬撃で引き裂いていく興司のディナイアル。やれやれと言った具合で一真が美波に指示する。

 

『臆病、か。まぁでもそろそろここは終わらせたいところだ。美波、大砲撃でHOWの艦船を叩け。落とす出力じゃなくていい。だが射線上の敵機を薙ぎ払え』

 

「難しい注文ですけど、了解です。DB、始動!」

 

『DB「シャイニング・ライト・スマッシャー」』

 

 DBの発動を宣言する。すると武器を握った手が結晶に覆われる。武器と腕を完全に固定させるとシャイニーガンブレードランスの刀身を開いて銃身へと変えた。迸るスパーク、エネルギーを最大圧縮してビームとして放つ。

 放たれた一撃は直線状の敵機を巻き込んでHOWの母艦へと伸びる。DNウォールを展開したのが見えたが、それでも耐えられはしないだろう。

 そこに割って入る存在が見えるまでは。回線に響く。

 

『そこまでだ、イグジスト、ディナイアル』

 

「っ!?」

 

 間に入った黒い機体が砲撃を受け止めた。砲撃は押し留められて空へと霧散していく。

 唐突に割って入った機体。その機体は接近しつつあったディナイアルに素早く構えた銃剣から放ったビームを直撃させる。

 

『グァッ!?』

 

「興司!?」

 

『あの機体は……』

 

 興司が攻撃を受けたことに悲鳴を上げてしまう。機体そのものは大丈夫だったが、肩部装甲が融解していた。

 そこに遠隔オペレートをしていた晃司が一真に状況を知らせるように言って来る。

 

『どうした一真、何があった』

 

『晃司、奴だ。お前の言っていたHOWの』

 

 既に一真さんは敵の正体を分かっていた。煙を払って現れたのは、漆黒の、機械の翼を広げるガンダムだ。

 息を呑む。機体の特徴、それだけでもう分かってしまう。けれどそれだけじゃない、心理的に圧迫してくる敵意を晃司さんと共有する。

 その名を一真さんが呼ぶ。

 

「シュバルトゼロガンダム……黒和元かっ」

 

 瞬時に私の前に出て守るような構えを取った一真さんのタイプ[ツー]。蒼穹島の他の仲間達も銃をその機体へと向ける。黒和元と呼ばれたそのパイロットが言う。

 

「その声、真藤一真か。イグジストではないようだな」

 

「機体に固執して、そんなに勝つことが大事か」

 

「そりゃあ少しは、な。お前ら二人に勝ち逃げされたまんまなのは、俺の主義的に納得がいかない。もっとも、仕事だから関係ないが」

 

「お前……!」

 

 一真の声に怒りがこもるのを感じる。言葉からして余程一真と晃司の二人に因縁を抱いていると分かる。

 そんなわけで今のパイロット二人に興味がないように言われて、興司が怒らないはずもなく、怒りを爆発させる。

 

『お前ら二人って、兄貴の事かぁ!!』

 

「よせ、興司!美波、着いて来い。あれを止めるぞ!」

 

「う、うん!じゃなかった、はい!」

 

 急かされるままに美波はイグジストを飛翔させる。そんなに焦らなくてもいいのではと思ったが、すぐにその考えは打ち壊される。

 突貫しながら腕部のグンターアームに超次元現象の球体を出現させたディナイアル。普段なら敵を異次元に吹き飛ばされるという恐怖で、近づけさせないそれだったが、シュバルトゼロガンダムはそのセオリーを無視して急接近。

 その発想自体が狂っていると言え、更に続く動きはもっと難解だった。当たる直前で機体を下方に回避させ、銃剣から展開した長大なビームサーベルでディナイアルの両腕部を的確に、超次元現象部分に触れずに両断した。

 

『何っ!?』

 

「ディナイアルの超次元現象を越えた!?」

 

 衝撃が大きすぎて援護も忘れてしまう。その間にシュバルトゼロが急速上昇を行い、シールドの先をディナイアルへと突き立てる。可動した直後シールド先が爆破し、何らかの攻撃を受けたディナイアルが落下していく。

 

『うわあああぁぁ!?』

 

「ディナイアルが、こうも簡単に……」

 

「来るぞ美波!」

 

「えっ、きゃあ!?」

 

 斜め方向から落下しながら銃剣のビームでこちらを襲って来る漆黒のガンダム。咄嗟に肩の増加装甲「ノルン・ガーディアンユニット」で完全に防ぐ。

 一真のタイプツーが接近するシュバルトゼロガンダム・ジェミニアスを阻むが、出力で無理矢理弾くと左の銃剣を切り替え、こちらにまた襲ってくる。バックパックの翼に設置された大小の剣を合体させて一本の長剣として振るってくる。

 単純な攻撃、それでもノルン・ガーディアンは斬れない。そう思って防御した。ところが、触れた瞬間不安に襲われる。同時にノルン・ガーディアンユニットが防御した箇所から両断された。

 

「!!」

 

 斬られたという事実に驚く間もなく、シュバルトゼロガンダムから強烈な蹴りを受ける。咄嗟に腕で防御するが、勢いまでは殺せない。

 ノルン・ガーディアンユニットは次元電磁装甲付きの防御装甲。ただの実体剣で両断されるなどあり得ないことのはずなのに。

 落ちていく機体に対し、追撃を放とうとするガンダム。しかし背後に回った一真がガンブレードランスでそれを阻む。

 

『させないっ』

 

『っ』

 

 背後からの斬撃だったにも関わらず、シュバルトゼロガンダムはウイングのブレードユニットでガンブレードランスを受け止める。そこからウイングを跳ね上げて退けると、先程ユニットを斬った剣で叩き付ける。

 凄い、強い。何とか体勢を立て直した美波は思った。シュバルトゼロガンダムの力と、それに対抗する一真に。一真の言っていたことは決して間違っていなかったのだ。

 近接戦では自分は勝てないと判断しシャイニーガンブレードランスをランチャーとして固定、構える。そこで地面へと落ちていった興司が感情を露わにディナイアルで横を突き上がっていく。

 その中で機体が結晶を生やしていく。同化の力がディナイアルを包むと欠損したはずの腕部と胸部が再生する。これが、ディナイアルとイグジストの力の一端。再生したディナイアルが、興司が咆える。

 

「この、時代遅れがぁぁぁぁ!!もう貴様の時代は終わっている!!」

 

「ちょっと、興司!?」

 

『ダメだ興司、冷静に!』

 

 咆哮する興司は制止も聞かず真っ直ぐシュバルトゼロへと向かう。シュバルトゼロは一真さんのタイプツーと競り合っていたが、接近を察して力で弾き飛ばして離す。

 上がっていくディナイアルと向き合うシュバルトゼロ。しかし向き合った時には既にその距離はディナイアルの距離だった。対応できないと確信し、叫ぶ興司。

 

『もらった!』

 

 両腕の超次元領域で挟み込むようにするディナイアル。その時、シュバルトゼロが紅く輝く。

 超次元領域がシュバルトゼロを挟み込んだ。今までならこれは絶対的に回避できない攻撃だ。超次元現象によって削り取って消し飛んだに違いない。誰が見ても、そう思った。ところが挟み込んだ後、美波は悪寒を感じ、すぐに一真が叫ぶ。

 

「まだ終わっていないぞ、興司!」

 

「後ろっ!」

 

『はぁ?ガァッ!?』

 

 見回そうとした直後、その後頭部を抑え込まれるディナイアル。背後には先程消し飛ばしたはずのシュバルトゼロが紅い光をフレームに宿して浮遊していた。

 一体何が起こったのか?それを知る者は少なかった。

 

 

 

 

「は、離せこの、旧式……!!」

 

『旧式とは、随分生意気なことを言うガキですね!』

 

「な、にぃ!グァッ!?」

 

 ディナイアルの「新米」パイロットの言葉を言い切る前にその背中を蹴り飛ばす。しっかりと掴んだ頭部が機体からもぎ取れる。その頭部をそのまま投げ返す。豪速で飛んだ頭部が敵の首にめり込んで爆発を起こす。

 どんな悲惨な状況になっているか、今はそれも気にするところではない。燃え上がるような紅い粒子をフレームから放出するシュバルトゼロガンダム・ジェミニアス、その背中の装備状況が変わっていた。一枚ずつ接続していた6対の羽は今、2枚ずつ縦に接続され、3対の翼として背中に広がっていた。

 その状態のジェミニアスの状況を、ジャンヌが伝える。

 

『ジェミニアス、エレメントブースト安定状態。アレスモード各部正常に稼働中』

 

「実戦での発動は問題なし、か」

 

 これはあのアレスモードであった。ただし前のアレスモードと違い、それの使用を前提に機体が組まれている。今のジェミニアスはアレスモード専用の発動形態へと移行していたのだ。

 ウイングが可動し、3対の翼が広がる。ウイングには先程までの装備とは違い、増加装甲のようにパーツがかぶせられていた。それらの間にエネルギーリングが展開し、機体の稼働率を高める。リングはまるで、観音の後光のように見えることだろう。

 

「―――行くっ」

 

「っ!!」

 

 圧を飛ばしただけで真藤一真が身構える。しかしそれが意味を成すことなく、エネルギーリングにより向上した加速で距離を詰めると、そのまま拳を頭部目がけて右ストレートに振るった。

 

「ぐっ!?」

 

「っ!!」

 

 攻撃は防がれる。だが止めることはなく、連続ジャブの後、ダンクシュートの如く放ったジャンプからの打ち下ろしで真藤の機体を吹き飛ばす。

 上がった加速能力で下から狙い撃とうと構えるイグジストにもそのまま突貫を行う。こちらの接近に感づいていたイグジストは迎撃の構えを取った。ランチャータイプのガンブレードランスから拡散弾を放ち、接近を許さない。しかし今のジェミニアスにその程度の弾幕に果たして意味はあるだろうか。

 こちらの予想通り、ビームは機体から発せられる紅い粒子に拡散される。正式システムとして採用される(仕様上せざるを得なかった)エレメント・フレアが敵の弾丸を弾き続ける。

 その状態で近接距離まで持ち込んだジェミニアスは拳を振るった。が、それに対抗してイグジストも以前はなかった肩の増加装甲で防御する。それらは先程の合体剣「ディオスクロイ」は防げなかったが、今回のDNを込めた拳は真正面から防ぐに至った。

 

「拳では貫けない、か」

 

「くぅ!私は一人じゃないんだから!」

 

 その言葉が裏付けるように、勢いで後退したイグジストを援護する様に蒼穹島部隊がこちらを包囲した。

 その数、ざっと15体。更にイグジストの肩、サイドアーマーを構成していた増加装甲が分離し、小型MSとして包囲に加わる。

イグジストから発せられた海凪晃司の声が命令を下す。

 

『奴を葬れ、全機体砲撃!』

 

『おおぉぉぉぉぉ!!』

 

「っ!」

 

 ビーム、実弾を絡めた一斉射撃が襲い掛かる。が、その直前に再びジェミニアスのモードを切り替え対応する。

 

「シフト、キング!」

 

『キングモード!』

 

 フレームの赤の発色が黄色へと変わる。同時にウイングユニットが分離、ウイングとシールド裏から装甲が出現して瞬時にジェミニアスを覆っていく。重厚な騎士と見まがう巨大な槍とシールドを構える重装形態のガンダムが敵の攻撃を受ける。

 受けると同時に敵にとっては信じがたい光景が映る。実弾攻撃はその硬い増加装甲に阻まれる。それは良いものの、その中でビームだけが放った方向へと文字通り反射していった。

 

「う、うわぁ!?」

 

「ビームが、跳ね返った!?」

 

「何!?」

 

『まさか、ゼロンのリフレクトパネル!?』

 

「いいや、違う!」」

 

 戸惑う様子の海凪晃司に対し強く否定する。そのままシールド表面の砲門を光らせ、拡散レーザービームで周囲のMSに反撃していく。

 重装備形態のキングモードは射撃を受け付けない重装甲と、圧倒的な火力が売りの形態。そこらの機体のビームライフル程度ではこの機体を攻略することは叶わない。

 射撃が無理ならば、と接近戦を挑む機体も見える。それらを近づけさせないようにレーザービームを照射するが、それで全ての敵を倒せるわけではない。2機のタイプシリーズがレーザー対艦刀とビームナイフで切りかかってくる。

 

「このッ!」

 

「ここまで近づけば!」

 

 しかし、言い放つ。

 

「未熟!」

 

 先にビームナイフの機体をシールドで受け止め弾き飛ばす。その間にガンランスをもう一機の対艦刀装備の胸部に突き立てる。立てると同時にビーム口を露出させて撃破すると、返す刀ならぬ槍でもう一機。それらで大半の機体を落とした。

 既にその圧倒的性能を見てオース部隊、CROZEチームRとEが後退して防衛線を再構築していた。それでいい。戦線を立て直すことが出来た。

 その圧倒的性能を見て、機体を修復させたイグジストが唖然とする。

 

「な、何なの、この人……」

 

「こんな程度でェ!!」

 

 そのタイミングで頭を飛ばしたはずのディナイアルが合流し、再度攻撃を仕掛けてきた。破壊されたはずの頭部は結晶化して再度復活し、また五体満足な状態で向かって来る。

 同時にジャンヌが周囲の状況を知らせてくる。

 

『元、残りの敵機の内、真藤一真機とイグジスト、ディナイアル以外が撤退を開始。更に海上からこの基地に目がけてミサイル反応確認!』

 

 レーダーを見ると、確かに敵機が後退している。そして海上から熱源が接近しているのが見え、それが今多数の小型マイクロミサイルに分裂した。

 キングでは間に合わない。だからこそ再びジェミニアスのモードチェンジを叫ぶ。

 

「了解。シフトハルピュイア!はっ!」

 

『ハルピュイアモード』

 

「逃がさな……何っ!?」

 

 モードチェンジをすると瞬時にその場を離脱する。青い残光と共に更に上へと上がったジェミニアスは、円形に広がったウイングをバックパックから展開されたパーツに接続させた、より薄い青色、空の色とでも言うべき色をフレームに宿す形態へと移行していた。

 腰背部に鳥の尾羽と言うべきパーツが接続されたジェミニアスは、ミサイルを見据えると尾部から小さな端末を放出する。

 

「フェザービットC、アクティブ!」

 

 遠隔端末を放出したジェミニアスはすぐさま向かって来るミサイル群にそれらを向かわせた。羽のようなビット達はビームを纏って突撃、あるいはビームを放って次々とミサイルを落としていく。

 ビットを正確無比に操る。それだけではない。下から果敢に追いかけてきたディナイアルと真藤機がこちらを捉えて攻撃を仕掛けてくる。

 

「今度は逃がさない!」

 

「っ、避けたところを……何っ」

 

 突撃と待ち伏せでこちらを撃とうとする2機。だがハルピュイアは軽やかな動きで、踊る妖精の如くその立ち回りと弾幕を抜けていく。それも、ビットを操作したままだ。

 戯れるように両機体と渡り合う。追加でウイングからビットも展開して二機をオールレンジ攻撃する。その間に先に放ったビットが全てのミサイルを撃ち落とす。離れてそれらをすべて尾部とウイングへと仕舞う。直後ビームが襲って来る。イグジストもまた追いついて不意打ちを仕掛けてきたのである。

 

「何とか、追いついた!」

 

「ここまで振り回されるとは……美波、興司、連携で行くぞ」

 

「連携なんて、まどろっこしい!」

 

 連携を拒んだディナイアルが単身攻め込んでくる。止めようとした真藤だったが、やむを得ずそれに合わせる形を取る動きを行った。

 こちらも再びアレスで迎え撃つ、そのつもりがトラブルに見舞われる。機体のコントロールが手元を外れる。

 

「ぐっ、動かない、これは」

 

「今度こそ、もらう!」

 

 好機と見たディナイアルが再三以上に渡る特攻をかける。機体のコントロールが奪われた今、元にどうこうすることは出来ない。

 そう元には。フレームが紫を帯びる。超次元現象を帯びた敵の腕が迫る。円盤状に圧縮形成したそれがのこぎりのように押し付けられる。それをジェミニアスは右手で受け止めに掛かる。

 

「ハッ、ただの手で!」

 

 受け止められるはずがない。ディナイアルのパイロットの考えは間違いない。それが今のジェミニアスでなければ、だが。

 圧倒的な破壊力を持つそれをジェミニアスは受け止めた。表面を削りながらも受け止めた手は両断されない。それに怪訝な声を上げる敵。

 

「なっ、止めてる!?」

 

『……ぁあ、止めてる、ぜぇ!!』

 

 元とジャンヌではない第三者の声が返答と共にディナイアルの顔面に円盤を逆に叩き付ける。自身の攻撃で自分の頭を切り裂く結果となる。

 その状態でジェミニアスは三枚一組のX字となった翼に装備された銃とアサルトナイフでディナイアルを痛めつける。

 反撃は出来たものの、その光景に見かねて元は語りかける。

 

「やれやれ、やり過ぎるなよ……」

 

『スタート凄い生き生きしてらっしゃいますね……』

 

 苦笑いする二人の反応の通り、これは二人の操縦ではない。これはスタートが操る形態だったのだ。

 ネクロモードと呼ばれるそれは闘争本能を刺激されたスタートが、コントロールを奪って操作する。スタートがかつて英雄と呼ばれるほどの存在だというのは聞かされていたが、今まで眉唾物だった。しかし今こうして振るう力は、間違いなく英雄だったのだろう。こんな荒々しい戦い方かどうかは疑問だが。

 隙を与えることなくスタートがディナイアルを叩き潰す。繰り出される超次元現象の攻撃もフレームから放出される粒子エレメント・カオスでいなす。

 手も足も出ないディナイアルにスタートが指摘した。

 

『ディナイアルも所詮、機体だけが優秀か!』

 

「何、だとっ!!がっ」

 

「……っ」

 

 なおも反射的に噛みつこうとするディナイアルだったが、それすらもスタートの刺突で黙らせる。劣勢を悟り真藤がディナイアルを引き戻す。そのタイミングでスタートから操縦権限を戻して、通常形態へとジェミニアスを戻す。

 

「お疲れさん、もう流石に良い」

 

『あぁ?まだ!……いや、大丈夫だ』

 

 闘争心がまだ残りかけていたものの、すぐに落ち着きを戻す。あまり使いたくはないモードだ。

 モード解除を見て、まだやれると真藤に物申すディナイアル。

 

「真藤一真!まだ俺はやれるっ!」

 

「いや、もう限界だ。ギルボードも撤退した。この作戦は失敗だ」

 

 失敗という言葉に元は悟る。そして一真はこちらに対し述べる。

 

「新型は伊達じゃない、か」

 

「ごもっとも。そっちは宝の持ち腐れか。イグジストもディナイアルもお前達二人が乗るべきだった」

 

「っ!こいつ!」

 

 挑発に挑発で返す。ディナイアルのパイロットは食って掛かろうとするが、真藤一真は沈黙でそれを制する。

 沈黙の後、真藤はイグジストとディナイアルの二人に言った。

 

「美波、興司、撤退だ」

 

「一真お兄ちゃん!」

 

「撤退だ」

 

「あ、はい」

 

 イグジストの女性パイロットは渋々従った。ディナイアルも先程のがあってか何も言わず、超次元現象を発生、3人まとめて離脱していった。

 残ったのは超次元現象の風のみ。眼前の基地もまた争いが終結していく。ヴァルプルギスから通信が入る。

 

『全敵行動沈黙。救援感謝します元隊長』

 

「あぁ。紫音艦長も、よく持たせてくれた」

 

『いえ。ドームの方も収まったようです』

 

『それより元お兄さん、みんなを迎えに行ってあげたらどうですか?』

 

「仕事中だぞ、光巴オペレーター」

 

 光巴のやんちゃにため息を吐く。だがそのつもりだった元は否定しなかった。

 手ごたえとしては充分だ。イグジストとディナイアルとも戦える。ジャンヌもまた発言する。

 

『これで、憂いはないですね』

 

「何とかな。とはいえ、使いこなすのはかなり難しい」

 

『えぇ。でもそれは後にして、彼らを迎えに行ってあげましょう?』

 

「そうだな。行こう」

 

 そう言ってドームへと戻っていく。こうしてオース防衛戦は幕を閉じていくのであった。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP33はここまでです。

ネイ「なんというか……凄いオーバースペックと言いますか」

グリーフィア「武器を何でも持ってこれる、なんてマルチ・スペースシステムは恐ろしいわねぇ」

まぁもとがあんな機体達だからね。そこに戦闘スタイルを変えるエレメントブーストが入る。

ネイ「すべての武器を最適に扱える。今までの換装システムの最上位と言っていいですね」

グリーフィア「これは今後のこの世界の新たなフォーマットになりそうねぇ、MSの装備の」

ガンダムじゃよくあること。
あ、あと最近シンエヴァ見てきました。追告見る前に見られて良かったです、色々と驚きますわ。

ネイ「エヴァモチーフの機体とか、出るんです?」

それは今言わないでおく。

グリーフィア「あらあら。じゃあこの話はここまで?」

そういうこと、こんなところでネタバレするのはご法度だし、報告みたいなもん。
というわけでEP34、次回がLEVEL3第2章最後のお話です。続きます。


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EPISODE34 運命を決めるもの5

どうも、藤和木 士です。続いてEP34の公開です。

レイ「いよいよアナザーSEEDDestiny編完結かぁ。長いから種命島編で良い?」

別にそれでいいよ、長いのは私が言うし。

ジャンヌ「けれど今回本当に長かったですね。今までの第2章と比べると」

大体第1部の3章近い量あるのかな。ここ入れたいとかプロットから追加した話もあるからね、特に明沢正との模擬戦話。
そんなこんな長くなった第2章、その結末は如何に?というわけで本編どうぞ。


 

 種命島から間一髪脱出することの出来たギルボード達は潜水艦で本拠地ゼロン・フロンティアへの帰途にあった。

 島の征服を果たすことが出来なかった。表向きは勝ちを譲っても勝利はしたと言ったギルボードだったが、本心は違った。

 勝てる戦いを逃した。大和輝の介入さえなければ、HOWの魔王も動くことはなかったのに。

 いや、そうではない。蒼穹島のイグジスト達が退けられたのを見て、そう思うのは楽観的だろう。黒和元の反応からして、全て分かっていたのだとしたら?それは充分あり得る。全てわかった上で手を出さなかった。そうならすべて彼の手の上で踊らされていたことに。

 だからDNLは嫌いだ。人が生まれ持った、組み合わされた基盤を上書きして見下す彼らが。私の理想の邪魔となる存在。だからこそそれを滅ぼす可能性を持った正と進は手に入れたかったというのに。

 

「……先生……」

 

 口を閉ざして考え込むギルボードを心配そうにのぞき込む美愛にも気づかない。そこにMSを固定してきた零と彼の元同僚で呼びかけに応じてくれたスパイの水無月加子が報告に戻ってきた。

 

「ギル。カオスとガイアの固定、完了しました。追跡も無いようです」

 

「あぁ、ありがとう零」

 

「ギル……今回の件不覚を取りました。よもや、大和進に後れを取るとは……!」

 

 片膝を着き、申し訳なさを吐露する零。ギルボードは先程までの反省を振り払って零へと言葉を掛ける。

 

「いや、よくやってくれたさ。どのみち、今の黒和元がいる以上はゼロンの一派如きがどうこうできる問題ではない。イグジストやディナイアルがいても駄目だった。そしてCROZE部隊も例え新人でも精鋭ぞろい。改めてその認識をゼロン本隊に認識させることが出来たと思えばいい。それに、君達の機体はゼロンのMS技術向上に役立てられるのだから、無駄ではない。今はこうして合流できたことを喜ぼうじゃないか、零」

 

「ギル……はい。これからあなたの為に、この命尽くします」

 

 零は忠誠を誓った。その様子を見て嫌煙する加子がこれからについて問う。

 

「はいはい、零良かったわねー。それで、今後の私の待遇についてはどうなのかしら?スパイはやったし、機体だって持ってきた。失敗した或と違ってね」

 

「あぁ。君は確かに役目を果たしてくれた。流石だと言える。しかし、残念ながら君の願望はいずれも叶えられそうにない」

 

「はぁ!?話が違うじゃない!」

 

 声を荒げた加子が食って掛かろうとする。が、それをすぐに零が間に入って阻止する。

 やはり納得しなかったか、と思う。彼女がこちら側に来る条件として出したのは、ゼロン旗下に加わった際の現時点での階級以上の地位と、オースガイアの専属サポート付与。しかしそのどちらも彼女は満たせない。現状の階級並みの力も、オースガイアの適性も彼女の遺伝子にはないからだ。それは事前に提出されていたデータからも分かっていた。

 遺伝子の優れた者が多い種命島にも関わらず、彼女の力は中の上。貴重だが、だからと言って彼女のそれは文字通り「高望み」だ。それをはっきりと言う。

 

「君の持つ力はそれに見合ったものではない。幹部として組織を統制する者の意見では、期待に応えたい気持ちはあっても他の適した者達の不評を買う真似はしたくない。零が連れてきた者が分不相応だと言われたくないからね」

 

「言ってろ!そんなんだったら示してやるわよ、実力を!」

 

「なら、これからテストしよう。君が予定されているこちら側のパイロットとどちらが優れているか、生き残れるか」

 

 ならばと加子に対し最後のチャンスを与えることにした。誘うような言葉に加子は躊躇いなく食いつく。

 

「いいわよ。そんなに私を蹴落としたいならね」

 

「そうか。なら見せてくれ」

 

「えぇ、いくらでも見せて……」

 

 そこで加子の声が止まった。そう、止まった。彼女の胸元からナイフの先が貫通していた。

 その光景に美愛が悲鳴を上げる。

 

「きゃあ!?」

 

「ガフッ、な、なに、が……」

 

「……私は言ったはずだ。これからテストすると、オースガイア、いや、ゼロンガイアの候補パイロットと。その候補パイロットは既にこの部屋にいた。まさかそれにも気づけないとは」

 

 背後からの襲撃者は加子の体からナイフを抜くとその体を地面へと押し倒す。床へと血だまりを作っていく加子の体は痙攣の後、動かなくなった。

 それを見下ろすのはギルボードに仕える紺色の髪の少女。無感情の彼女がナイフの血液をふき取り、ギルボードへと尋ねた。

 

「うるさいネズミは排除しました、ギルボード」

 

「ご苦労、スリア。これであの機体は君の物だ」

 

 これでいい。ガイアのパイロットは彼女以外に居ないだろう。その顔を横目に見た零は呟く。

 

「……その顔でこの行動。今の俺には刺激が強すぎます」

 

「こいつも始末?」

 

「いや、それは仕方のないことだ。じきに慣れるだろう?」

 

「えぇ。それに、こいつほど簡単にやられるほど落ちぶれてはいない」

 

 零まで始末しようとするスリアと呼んだ少女に、説得して殺させるのを止めさせる。そんなやり取りは美愛には刺激が強すぎたのか、自分の後ろに隠れた。

 もっともこれからが本番だ。この程度で怖気づいてもらっては困る。美愛のこれからに期待しながらギルボードは席を立って彼らを連れて部屋を出ていく。本国にも通信を入れなくてはならない。

 

 

 

 

「さぁ、行こう。我らギルボード派、いやデスティニーズの躍進の為に」

 

 

 

 

 オース25周年式典の動乱から一夜が明けた。本来CROZE部隊は式典終了後すぐに帰投する手筈であった。

 しかし隊長の元がオースの事後処理についての対応を待ったこと、そして部隊員達にも休息が必要とのこともあって出発を一日遅らせたのだ。激闘を繰り広げた宗司達もそれは大歓迎であり、一日だけだが休暇としてオースで存分に羽を伸ばした。

 お土産などを買い、そして完全に打ち解けた進や月子にオースを案内してもらった。観光国家のオースを短いながらも楽しんだ。

 そして一日限りの休暇を終え、宗司達は東響へと帰る時が訪れた。基地の出発ゲートで宗司達Gチームと各チームの隊長、元隊長とジャンヌ副隊長、紫音艦長が大守明日那、明沢正、大和兄妹、本物の大守里奈と別れの挨拶の場に立つ。

 

「今回の事件解決、国の代表として感謝します。ありがとうございます」

 

「こちらとしてもゼロン侵攻を止められたことは大きい。それより、大和輝と大守里奈は表舞台に戻るのか」

 

「はい。国民に示しを付ける為にも、わたくしがまた出なければ。……いいえ、今度はもう甘えた手は使いません」

 

「表に出た以上は僕も戦います。進も守れるだけの力を持った。里奈を守らなくてはいけませんから」

 

「義兄さん……」

 

「そう、ですか」

 

 大和輝達も本来あるべき立場へと戻るようだった。これでようやく、進の理想も叶うはずだ。宗司としてもそれは自分の事のように嬉しい。

 その進も今回の戦いで戦死者、裏切り者含めて多く仲間を失ったが今後は進が後の後輩達の模範になっていくようだ。名前を元に戻した正さんが言っていた。

 未来のエースと進の事をGチームの女子達と光巴がもてはやす。

 

「けど進もいいわよねぇ。あっという間にエースまっしぐらだし」

 

「一応そうだね。だけど進さんもこれからが大変だろうから」

 

「でも大好きな義兄さんの下で働けるなら本望ってもんでしょ?」

 

「あはは、大和進さんと同じ道歩んでいくわけだからねー」

 

「おい、そこの女子共……!」

 

「ほらーシン怒らないって。訓練生見てる」

 

 訓練生の声を浴びて、怒りを下げる進。それに対して思う所があるのか輝やや苦笑いしていた。

 明日那代表が今後の指針について述べる。

 

「今後についてだが、私達もゼロン撲滅のために技術協力は積極的に行っていく。結果としてゼロンにMS技術が漏えいしてしまったんだ。その代償として、既に打診している通りだが」

 

「聞いている。二つ返事だとな。だが、一つだけ、この段階になって申し訳ないが言わなくてはいけないことがある」

 

「この段階で……?何か追加の条件が言い渡されたのか」

 

 ややもったいぶるような元隊長。エターナがそれを見て急かす。

 

「何よ、この綺麗に終わるタイミングで厄介事持ってくるの?」

 

「エターナ、静かに」

 

「エターナがまさしく言った通りなんだよな。残念だが、面倒事だ。お前達にとってもな」

 

「僕たちに……?それは」

 

 輝が訊ね返す。元隊長はそれを明かした。

 

「オース政府には、今回の事件の初動ミスとして、停滞していたプロジェクトASのフェーズを強制的に進めてもらう。この意味、分かるな」

 

「!!それは!」

 

 大守明日那の声が危急を要したものに変わった。それだけじゃない。大和進や、明沢正も動揺していた。大守里奈だけは厳しい顔で元へと問い掛ける。

 

「……元さん、あなたも知らないはずがないでしょう。私が代表の時、オースはこれ以上自国の人間、コーディネイティアの戦争利用を規制した。本来の宇宙開発の為に使うと」

 

「確かに、それは国で交わされた条約だ。この事件に至るまで、オースと日本との間でコーディネイティアの進出と実戦投入はなかった」

 

 二人とも声のトーンが重い。相手方である進と月子は分かっているのか顔を見合わせる。その間にこちらも情報を収集するため呉川隊長に尋ねる。

 

「あの、実戦投入って、実際にもう戦闘には」

 

「この島はカウントされていない。性格には島外派遣を意味しているのだろう」

 

「あぁ、そういう」

 

 二人の会話に光巴が事情を整理して話してくる。

 

「本当なら3年前の時点で段階的に開始していくはずだったんだけどね。大守里奈さん達の父親の重玄さんが頑なに拒んでいたんだって。お父さんも戦力になるって期待してたのに、仕方ないとはいえがっかりしたって言ってたし」

 

 さらっとその派遣先がHOWであったことを知らされる。こんな話さらっと聞く形で良いものなのだろうか。

 そうこうしている内に元隊長と里奈・明日那代表たちの会話はヒートアップしていく。

 

「しかし、この島の開発理由はMS登場時にそれに適したものへと変わった。軍事利用も他国の制度変更に合わせて変わっている。そして今回の事件が、戦闘用MSパイロット派遣制限の弊害で起きたと国は判断した」

 

「馬鹿な!それは過去の話だ!それが危険だと父は命を賭して改変した。それを許せば、今回のような事を繰り返すだけに」

 

「新沢或。彼は戦いを求めてゼロンへと寝返った。水無月加子もそれが疑われる」

 

「水無月さんに関していえばそれは推測です。そんなものだけでは、彼らと同じではありませんか?」

 

 話を聞いているだけなら、宗司としては代表たちの考えを推したかった。遺伝子改良された兵士。それが投入されるとしたら、どれだけ混沌とするか。

 しかし元隊長は彼女達に卑怯とも呼べる一手を繰り出した。

 

「まだ分からないのか、お前達大守一家があの戦争と、今回の事件を引き起こしたことを」

 

「ぐぅ!?」

 

「それは……ですが」

 

「二度、いや、蒼穹島の件を含めて三度の失態。日本政府は見逃していない。そもそも俺達が派遣されたのはオース政府の依頼じゃない」

 

「それは、どういう?」

 

 輝の疑問に元隊長は自分達にも知らせていない事実を述べる。

 

「依頼を受けた日本政府は、オース種命島の政府機関オースが島の資源流出を回避できないと判断した。そこでHOWに事態解決と共に凍結していたプロジェクトASの強制発動の代行を依頼してきた。次元黎人も了承し、俺もまた依頼を受けた。俺は、その派遣要員の見定めでもある」

 

「そんな!だったら何でこのタイミング……あっ」

 

「そうです、輝さん。だからこそ、このタイミングなんです」

 

 反論を言おうとした輝さんは何かに気づく。それをジャンヌ副隊長が頷く。

 宗司自身には分からない。エターナ達も何が何だかで狼狽えている。けれどこれだけは分かる。隊長達は大人として話し合いをしていたのだと。

 煮える感情を押し留めて、正が選抜者について尋ねる。

 

「それで、誰を連れていくなんです?」

 

 オース側が息を呑む。選ぶとしたらこの四日間で過ごした人物達だろう。しかし元隊長の口から語られたのは納得と、そして意外な人物だった。

 

「2人。大和進と、その妹」

 

「えぇ!?俺、と、真由!?」

 

 指名を受けて驚く進。動揺は同じだ。妹がいるというのは昨日までに聞いていた。兄である進が軽く溺愛しているようだったから忘れるはずがない。

 もう一人の選出理由、というより選出意図について義姉である里奈は問う。

 

「なぜ、真由さんを……報告では彼女と会うことは……進君が話したので?」

 

「い、いやいや、話してない、です。直接は。……宗司達?」

 

 こちらに尋ねる。が、無論宗司達もプライベートまで話していないから、首を横に振る。

 これ以上こちらに火の粉が掛けられるのを避けてか、その意図について元は述べる。

 

「妹さんはどうもこの島では有名な存在らしいな。情報処理技能あり、そして島内学校放送部の中で一番評判がいいと聞く」

 

「えっと……?確かに、そんな話は聞いたような……」

 

「そう、ですね。真由は確かに情報処理技能検定1級と、学校内のお知らせを読み上げたりするパーソナリティで一番声が通るっていうベテランです」

 

 それが一体何に元の目が留まったのか。疑問が尽きなかった。元隊長はすぐにその疑問に答える。

 

「確かに進はMSパイロットしてだが、妹の真由さんにはうちの艦のパーソナリティ、いや、オペレーターを任せたい。そう言ったケースも必要だと言われているのでね」

 

「なるほど……うん?」

 

 頷くも首をひねる。大方が納得しがたいながらも状況は飲み込んだ。飲み込んだところで認めるかは別。明日那代表が再び話を戻した。

 

「た、例えそう決めていても、私達には拒否する権利が!」

 

「大和進、お前はまだ火葉零の事、止めたいか?」

 

「それは……」

 

 だがそれには耳を傾けず、進へと問い掛ける元。元は言葉を紡ぐ。

 

「政府からは国の問題は国の手で付けさせたいと言われている。種命島の技術には種命島の技術で。そしてお前はあの場で零を止めると言った。俺はそれを叶えさせてやりたいと思っている」

 

「元さん!?進は、そんな、事は……」

 

 止めようとする輝。ところが進の顔を見てそれは途切れていく。話を聞く進の表情は真剣そのものだった。元は続ける。

 

「火葉零を止める。その言葉に、二言はないな?」

 

「……はい」

 

 頷く進。それを聞いて、なおも止めようとする明日那。

 

「そんなものは詭弁だ!勝手に自国民を他国の戦争に駆り出すなど!」

 

「それもまた、詭弁じゃなくて?」

 

 明日那へと意見する声、紫音艦長だ。紫音艦長は明日那の言葉に持論を語る。

 

「国の代表として、自国民を戦争へと駆り立てたくない気持ちは分かります。でも対価と落とし前っていうのは今回あなた達が払うべきです。それに駄々をこねれば却って不利になるのはあなた達ではなくて?」

 

「それは……」

 

「それにね。私も進君の願いを、ここで消化不良のまま残すのは嫌だって思うわ。敵でも戦友だった、いいえ、それ以上の信頼関係で結ばれた友達を今も止めたいって思っている彼の願い、ここで踏みにじると?」

 

「そんなものは!」

 

「おやめなさい、明日那」

 

 強い拒絶を放とうとした明日那を、里奈が強く制する。明日那は沈黙し、里奈は態度を崩さない姿勢で、紫音と元へ告げる。

 

「私達は決して今後も自国民を戦争の道具にするつもりはありません」

 

「そう思うのはいい。そうだとしても彼らには」

 

「だけど、それでもどうにもならないこと、止められないことがある。でしたら、これだけは約束してください。……どうか彼らを、生きてこの島に返してください」

 

 頭を下げる里奈。その言葉に紫音艦長が後ずさる。予期していなかったのか、しかし元隊長はすぐにそれに返答する。

 

「無論だ。それは任せられる隊長として最低限の義務。不当に扱われることも、させない」

 

「……分かりました。進君、いいえ、進さん」

 

「は、はいっ!」

 

 呼ばれて進は里奈の前に出た。里奈は彼の前に立ち言った。

 

「あなた達の島外派遣を、二日後に指定したいと思いますが、それでもいいですか?」

 

「里奈義姉さん……了解っ!しました!」

 

「元さん、彼らの家族周りと部隊への別れの挨拶の時間、それから仕度の準備くらいの時間はよろしいでしょう?」

 

「無論だ。すぐにでも連れていきたい気持ちはあるが、彼らの時間を俺は尊重する。機体のパーツなども持ってきてもらわないとな、設計図含めて」

 

「えぇ、ありがとう」

 

 それを受け取り、全ての仕事を完了したと判断した元隊長は、宗司達CROZEメンバーへと向けて号令する。

 

「以上を以って、オペレーションデスティニー、終了する。各員、直ちに艦へ乗艦。HOW本部へと戻る!」

 

『了解!』

 

 

 

 

 こうして、俺達の初任務は終わった。

 合わないこともたくさんあった。それでも俺は、この任務が最初の任務で良かったと思う。ここから学んだ、信じることと裏切られることの意味、信用と信念の大事さ、理想を追い求めることと真実を見つめる目を持つこと、それを信じることの脆さも。

 そうしてHOW本部へと戻ってから二日後。予定通り、彼らは俺達の仲間として迎え入れられた。

 

 

「大和進、ただ今を以ってHOWに現着しました、で、あります?」

 

「お兄ちゃん言葉遣いざっつ!よく今までオース軍に居られたね」

 

「な、何だよ真由!放送部入ってたからって!」

 

「はいはーい。私大和真由でーす♡お兄ちゃんがズボラなのが心配なのと、スカウト受けてやってきました♪」

 

 

 これから騒がしくなる。それは予感でもあり、真実でもあった。

 

 

第2章 END

 

NEXT CHAPTER AND NEXT EPISODE

 




EP34、LEVEL3第2章はここまでとなります。後は設定集関連ですね。

レイ「……まさかの加子さん死亡っていう……」

ジャンヌ「そんな上手い話はない、っていうのを見せつけてきましたね。因果応報、というべきか」

とはいえそのオースガイアがまた敵となるのは変わりませんからね。進君がどんな反応をするのか。

ジャンヌ「それと進さん達の引き入れ、政府はそのために今回元さん達を救援に出したというわけ、ですか」

まぁそうだね。3年前の続き、政府はいま進めるべきだと思ったわけだ。

レイ「うーん卑怯って言われれば卑怯だけど……これが本来の形、って言われちゃったら、ねぇ?」

とはいえ元君には別の思惑があるんですがね。それも後々明かしていくかもですね。というわけで今回はここまで。

レイ「次回の黒の館DN!は……何か初の領域に突入みたい!みんな、覚悟しててねっ!」


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黒の館DN 双翼英雄譚編 第6回 前編

どうも、藤和木 士です。今回は黒の館DNの双翼英雄譚編第6回と、設定用語集の公開となります。

今回久々に前書きがここだけで、黒の館DNが終了後のあとがきしかないんです。理由はですね、なんか今回5話同時投稿なんですよね。
何言ってるんだって思われるでしょうけど、私も言いたい。何がどうなってるんだと。こうなったのも毎回黒の館DNとかは全部一気に出しているのが原因なんでしょうね。今回投稿間隔空いたのはその判断の期間でした。結局こんな形になりましたが。

内容に関してはそれぞれの本文冒頭で言っていきますので、どうぞ。


 

 

士「はい、ようやくアナザーSEEDDestiny編終わりました」

 

レイ「アナザーSEEDDestiny、っていうか、デザイナー平○さん作品編って感じがしたんだけど」

 

ジャンヌ「そうですね。共通点そこですし」

 

士「馬鹿、そこはスパロボで関係のあるってハナシよ。まぁそれは忘れて。とっととキャラ紹介お願いしますよ。どんだけになるか分からないし」

 

レイ「はいはい。じゃあ人物紹介パパッと行こう!」

 

歌峰 美愛(うたみね みあ)

・表向きは虚無戦争終結の立役者、大守里奈の名前を名乗っている人物。24歳。

 元々は学生時代里奈に思いを寄せる女生徒の一人だった。しかし戦争後目立ちすぎた本物の里奈が表舞台から去るための影武者としての案が立案された際に、彼女の役に立つためにと彼女が名乗り出た。そして整形によって里奈そっくりに顔を変えた。

 その後美愛は順調に里奈の代わりとなり、徐々に表舞台から退いていく、あるいは本物の里奈と再び入れ替わるはずだった。しかしいつしか彼女の考えが、里奈の代わりではなく、自身が里奈であると錯誤。その発端こそギルボードとの出会いで、彼の言葉で「本物の里奈」として再びオースの政治へと介入・自分の思う正しいあり方を実現する考えを巡らせるようになった。

 本編では既に里奈の後継者、美愛として野党側として政権奪取を狙う。式典の場でこれまでの真実が明日那から明かされたものの、それを真っ向から否定。自分はオースの未来を考えて行動していたとしてギルボードの側に付いた。

 その後圧倒的有利な状況をオースフリーダムと本物の大守里奈に返され、更にシュバルトゼロガンダム・ジェミニアスとCROZE、明日那派の奮戦により増援部隊と裏切り者達も制圧され不利になったためギルボードと共に退却。ゼロン勢力に属することとなった。

 人物モデルはミーア・キャンベル。原典におけるラクス・クラインの偽物であり、こちらでも里奈の偽物として登場。しかし彼女への好意を超えた愛情・憎悪など異なる部分も多い。

 

ギルボード・デュランザメス

・種命島誕生25周年の式典に美愛派により呼ばれた外部来賓。正体は元種命島遺伝子工学研究員、現在はゼロンの幹部の一人の地位にある人物。40歳。

 人生並びに地位や仕事は全て遺伝子で定められるべきものとしている人物で、配下にあるゼロンに共感した者の遺伝子を調べてそれに相応しい役職に就かせている。遺伝子こそが平和を作り出せるただ一つの要素で自身がその裁定者であるとし、それに逆らう元達HOWを平和からもっとも離れた方法を取る、平和を騙る悪と語っている。

 最終的に美愛や零と共にゼロン勢力地へと帰還して、当初の目的であるオースの新型機の強奪には成功した。

 モデルはSEEDDestinyのギルバート・デュランダル。彼と同じく遺伝子による枠組みで人々を支配しようと画策する。

 

大和 輝(やまと ひかる)

・かつてオースの英雄「自由の剣」と呼ばれたエースパイロット。日常では機械いじりとプログラミングを趣味とする穏やかな男性。進と彼の妹の義兄である。21歳。

 元々は種命島内の工学系学校の生徒だったが、虚ろの零の襲撃で学校周囲が壊滅し、学校の地下に運び込まれていたステージゼロシリーズのオースストライクガンダムに装依。オース軍戦時パイロットとして徴兵されて戦う。実はSEEDホルダーの中でも最高能力者「スーパーSEEDホルダー」であり、戦闘能力は通常の種命島の遺伝子操作で生まれた者の中でも一番を誇る。その後の激戦でもオースフリーダムに乗り換えて虚ろの零の黒幕「狂真 嵐(きょうま らん)」の駆るホロウプロヴィデンスガンダムを撃破してもとの平穏な種命島を取り戻した。

 その後代表を辞退した恋人の大守里奈と共に実家で生活。大和家の養子となった進とその妹真由と平穏な時を過ごした。しかしオース軍から多々大和家周辺に怪しい動きがあったこと、そして襲撃未遂が発覚したことで家族を危機に晒さないため、そして家族を護るために軍の表向きの登録を抹消し、島の一つに隠居した扱いでオース軍特殊部隊「ホロオース」の隊長として密かに活動することとなった。その為進は一切事情を知らず、義兄が約束を破って軍を抜けたと思い込み恨み続ける結果となってしまった。

 本編では幼馴染にして同僚である影義のセッティングで明日那派のたむろするバーで元と再会。元からは軍を抜けたと聞いて驚いたと言われ、そうするしかなかったと本当の事を隠す結果となった。その後式典の場で絶体絶命の危機となった進達をステルス機能で救出。その際に進に激高されるが、護りたい人の為に向き合えなかったことを謝罪し、まだ戦いは終わっていないと発破をかけて、進と共に式典場でゼロン、美愛派と戦った。事件後進を元に預ける選択を取り、自身はオース軍に復隊した。

 モデルは機動戦士ガンダムSEEDのキラ・ヤマト。シンモチーフの進と家族を奪ってしまった直後に顔を合わせ和解している点とカガリモデルの明日那と兄妹ではない点が相違点。

 

大守 里奈(おおす りな)

 かつて起こった虚無戦争で種命島をテロリスト「虚ろの零」から取り返した立役者。23歳。茶色の髪を肩にかかるくらいまで伸ばしている。歌峰美愛がその名を騙る人物。

 明日那の姉であり、虚無戦争はこの二人が代表から追われたことに起因する。オース軍残党に救出されたのち、強襲揚陸艦「天大守(てんだいもり)」に乗り戦争の早期終結に尽力した。その際に輝とは恋人関係になり、終結後は彼と共に大和家で暮らしていた。そのため進の妹と仲が良かった。

 しかしその後虚ろの零残党に家を狙われていたことを知り、家族に、進達に危害を与えないために進の軍入隊を皮切りに二人でオース軍特殊部隊に参加。外出も変装しなければならない厳戒態勢となってしまう。

 ゼロンによるこの島の危機に再度表舞台に登場。美愛に影武者をしてくれたことの感謝と、だからと言ってその行いを許すわけにはいかないとし、オース特殊部隊「ホロオース」の裏司令として事態の終結を図る。結果として美愛は逃がしてしまうが、美愛派の拘束には成功し、今度は表舞台から逃げないと明日那と共にもう一人の代表としてその手腕を振るうことを輝と共に決めた。

 人物モデルはラクス・クライン。隠遁していた点やキラモデルのキャラと恋仲にある点で共通するが、同時に事後展開を疎かにした点もまた共通するか。

 

真藤 一真(まとう かずま)

 かつて「蒼穹島の英雄二人」、「蒼穹島の救世主」と呼ばれたエースパイロット。22歳、174cm、血液型O。蒼穹島の遺伝子操作により生まれた子供の一人で、蒼穹島勢力の今までで生きている同じ子ども達の中で最高齢の一人。

 元とも対決したことがあり、その際は圧倒的な機体性能で追い詰めたほど。現在はその時の乗機であったタイプイグジストは後進の美波に譲り、自身はタイプツーの専用機に搭乗する。

 穏やかな性格だが、戦闘時もその穏やかな物腰は残っており、それが逆に相対させるものに言い難い息苦しさを感じさせる。エースパイロットとしての余裕とも取れ、実際ジェミニアスとの対峙では機体ポテンシャルで劣りながら僚機であるイグジストとディナイアルと協力して渡り合っていた。

 人物モデルは蒼穹のファフナーの真壁一騎。Beyond準拠である。同化現象は無いはずだが……?

 

日和 美波(ひわ みなみ)

 現在のタイプイグジストを駆る蒼穹島の新たな英雄の一人。15歳、身長153cm、血液型O。蒼穹島パイロットの中で現在最年少。

 遺伝子操作された子ども達の中でも特にタイプシリーズと相性が良く、タイプイグジストを一真より任された。またDNLの思考を読めるなど対応力が違う。ただし本人の精神は年相応で任務外では少女らしい思考を持つ。

 しかし戦闘では確固たる信念を持ち合わせているようで、機体性能とも合わせて極力撃墜をさけている。また多々ガンブレードランスを開いて何かやっているようであり、その行動はHOWや自衛軍からも警戒を受けている。その機体の姿と生身の身なりから「蒼穹の魔法少女」と二つ名がついている。

 戦闘能力は前述した通りDNLの思考を軽く読めるほどだが、ジェミニアスに対しては思考読みが出来ても機体性能が付いて行かない上、思考読みをしてもなお瞬間々々で上回る元とジャンヌに対応できずにいる。

 人物モデルは蒼穹のファフナーの日野美羽。Beyond準拠の姿で、思考を読める点やザインに当たるイグジストに乗れるなど引き継いでいる。ただし魔法使いなどとの二つ名はなかった。

 

海凪 興司(うみなぎ きょうじ)

 海凪晃司の弟で、彼から引き継いでタイプディナイアルを操る新人パイロット。15歳、身長156cm、血液型A。美波と同じく最年少パイロット。

 晃司とほぼそっくりの顔つきで、違うのは身長くらい。性格はやや短気というか、純粋で感情に従う。周りからも指揮官向きではなくパイロット一筋と評価を受けている。

 しかし戦闘では更に過激になり、幼馴染の美波の注意などを受けてまともな戦術を取れるほど、力押しな面を持つ。半面美波との連携は非常に良いという。

 本編ではヴァルプルギスを襲撃するが、元のシュバルトゼロガンダム・ジェミニアスに間一髪阻止され戦闘を開始。しかし美波以上に相手にされず、むしろ兄の事を話題に出され単機突撃、がそれも間一髪の攻防でアレスの一撃を受けて機体が中破。軽傷を負い作戦が失敗したとみて全員で撤退することとなった。

 モデルはBeyondにおける皆城総士。いわゆる「こそうし」と称される存在。あちらでは本人の生まれ変わりだったが、こちらでは兄弟として描かれる。

 

大和 真由(やまと まゆ)

・大和家に養子入りした進の妹。今は島内の学校に通う。153cm、血液型O、15歳、中学生。情報処理技能1級かつ島内放送部一位の座を持つ。

 パイロットとなった進の事をとても心配している。兄と違って落ち着きといたずら心を使い分ける今どきの女学生。家族を失ったことは辛く感じているが、それ以上に英雄大和輝の義妹になれたことが嬉しい模様。里奈に関しても早く結婚をとよく茶化していた。

 本編では少し触れられていたものの大筋には登場せず、最終盤の別れの場で派遣もとい転属を言い渡された進に付いて行く形で、HOWの預かりとなった。なお引き抜かれた理由として、彼女の情報処理能力が評価された模様。

 モデルはマユ・アスカ。兄との関係が気になるところだったが、亡くなっていないためか溺愛ではなく、ちゃんとそれぞれの距離を保っているようだ。

 

 

レイ「人物紹介終了~!で、今回一言メモは陣営別なんだって」

 

ジャンヌ「オースはようやく、キラ・ヤマトとラクス・クラインポジションが表に登場でしたね。あまり本編では動くところは見られませんでしたが」

 

士「けどオース陣営の裏切りに対しカウンターし掛けましたし。表舞台に出てからは割と主体的に描いたつもりです」

 

レイ「そうだねぇ。原作と同じくらい平和が欲しいって口に出してたし。何なら発言も意識してるよね、他のキャラもそうだけど」

 

士「ははは、原作よく知ってるキャラに限るけどね」

 

ジャンヌ「そしてゼロン側のギルボード氏……加子さんの殺害は驚きましたが、それを平然と美愛さんに見せるのは……」

 

士「これはあくまでもギルボードにとって美愛もまた駒の一つでしかない、との現れですね。美愛は不満を言っていないだけ。そして最後に登場した少女は次章、は難しいけど次々章辺りで出すの確定してます」

 

レイ「そして蒼穹島勢はあの三人かぁ。これ書いてる最新情報時点で最後の3話情報の載ってるポスターに写った三人だよねー」

 

士「私も早くアレスの活躍とか見たいです(´-ω-`)」

 

レイ「そして最後は別枠で真由ちゃん!今回は死なないんだよね?死なないんだよね!?」

 

士「それフラグになりますけどそんなに言ってると。まぁ進だけだとシン君並みのメンタルでまた敵作っていって頼れなくなるかもってことで本来ポジションに収まるべき月子を外してますからね。いきなりパイロット2人外れるのもよろしくないと思いますし」

 

ジャンヌ「そうですか。では次はMSですね。今回紹介するのは?」

 

士「ズバリ、オースフリーダム。あんまり活躍していないけど、この世界ではインパルスの原型元にもなってますからね」

 

ジャンヌ「それではこちらです」

 

 

 

オースフリーダムガンダム

OUSG-X10A

 

機体解説

・人工研究島「種命島」の疑似国家「オース」にて開発されたガンダム。別名ステージワンシリーズと称される機体群の一機。大型の翼を備えたガンダムである。機体カラーはオレンジに白、黒、そして黄色である。

 動力源にオースが独自に開発したツインジェネレーターシステム搭載DNジェネレーター「クリアージェネレーター」を搭載し、出力はシュバルトゼロガンダムRⅡ以上を記録する。また高出力性からオースで開発されたパイロット進化システム「SEEDシステム」を搭載し、パイロットの腕とも合わせて無敵の性能を誇った。

 大型翼は本機の機動性を担うもので、本機の開発が三年前でありながら現役のMSに対抗できるほどの性能を維持しているほどの力を与える。またその性能から本機とそのベースとなったオースストライクガンダムを基にオースインパルスガンダムが作成された。よってインパルスは本機の発展機と言える。

 パイロットは大和 輝。三年前の事件から本機を扱うパイロットとなっている。この三年で改修が施され、本機の装甲にはDNフェイズカーボンに加え、特殊部隊用装備としてステルスビジョン「ミラージュコート」が実装され敵機からの発見を遅らせる。

 モデルは機動戦士ガンダムSEEDの主役機「フリーダムガンダム」。コンセプトは「アナザーフリーダムガンダム」。武装構成も同一に近いが、そこに更にフリーダムガンダムの派生改造ガンプラ「フリーダムガンダムフレイムフェーダー」系列の特性並びにカラーリングを併せ持つイメージ。愛称も同じ「フリーダム」である。

 

 

【機能】

・DNフェイズカーボンVerM

 DNフェイズカーボンをオース独自の技術で改良を加えたもの。

 装甲強度も高いが、本機に置いては更にステルス装甲として光学迷彩「ステルスビジョン」として「ミラージュコート」が採用されている。これは本来ブラウジーベン・ライブラで採用の為に提唱されていた装備であり、この三年間の間にオースが開発・実装した兵装となる。

 ミラージュコートは他機にも応用可能な技術であり、特殊部隊が運用するムラマサやO1アストレアンにも外装装備として実装される。が、このフェイズカーボン付きは本機のみである。

 モデルには機動戦士ガンダムSEEDシリーズのミラージュコロイドがある。

 

・クリアージェネレーター

 本機に採用される、特殊なツインジェネレーターシステム搭載のDNジェネレーター。

 内部の次元空間接触用ゲート生成器が主な変更点で、このリング自体を特殊合金「ニュークリアーDNメタル」で構成したことからより無限に近い莫大なエネルギーを得られるようになっている。

 この出力はシュバルトゼロガンダムRⅡよりも高い値だが、デメリットとして本機が破壊された場合、ニュークリアーDNメタルの異常反応で半径1キロに悪性DNが放出される災害が引き起こされる。この機構は三機種と呼ばれる他二機が起こしており、一機は大量破壊兵器「リ・ジェネレイション」の内部で爆発したため影響は少量だったが、その外で爆発した一機は多大なDN汚染を環境に引き起こした。これはニュークリアーDNメタルが核に関連した一物質が含まれ、DNと結合した金属であるために起こっていると推測される。なおこれは核に関係しているとはいえ、厳密には核兵器ではないためグレーゾーンの技術となっている。決定的な線付けとしては核由来の放射線物質を放出しない為である。

 付け加えると、それだけの事をしてもシュバルトゼロガンダム・ジェミニアスの搭載するDNジェネレーターには出力で負ける。これは元々RⅡの時点でパワーが抑えられているためであり、今までのオーバーホールは事実上出力制限の解除を行っているに過ぎないこと。そして何より、高純度DNの純度がより高い為。現時点でシュバルトゼロガンダム・ジェミニアスのツインジェネレーター、特に次元空間接触用ゲート生成器にはまだ彼らの知らない技術が施されていると考えられる。

 モデルはフリーダムの動力となっている技術「Nジャマーキャンセラー」。あちらはまごう事なき核動力の条約違反MSだが、こちらは核の物質の一つを使っているだけに過ぎない。しかし危険性は受け継いでおり、それを許さないようにオースインパルス達には本DNジェネレーターを搭載しない構成となっている。

 

・SEEDシステム

 本機に置いてのもう一つのキーシステム。搭乗者の潜在能力に働きかけるシステムである。

 オースインパルスにも採用されているシステムのひな形である。搭乗者である輝は遺伝子操作によりSEEDローダー、しかも素養の高いスーパーローダーであるため、このシステムにより飛躍的な能力向上を果たす。その力は凄まじく、データ上ではあるものの機体性能で劣るはずのステージツーのMS複数機相手でも余裕を持って対応できる。

 元々は改革派に付いた種田博士の技術だが、輝は自身の能力に合わせて自分でメンテナンスを行っている。

 モデルは機動戦士ガンダムSEEDにおけるSEEDだが、こちらは機体のサポートで強化状態に入るのが特徴。

 

・マルチロックシステム

 シュバルトゼロガンダムから地球に齎された多重ロックオンシステム。SEEDシステムとの掛け合わせで輝とオースフリーダムは鬼神の如き強さを見せる。

 

 

【武装】

・ヴァインシュトックバルカン

 頭部の3ミリバルカン砲。ヴァインシュトックとはドイツ語で「葡萄」の訳。本機に類する機体の武器はいずれも植物の名称がつけられる。

 威力はDNフェイズカーボン機どころか、量産型のカーボン装甲すら貫通できない。だが狙いが精確ならセンサーなどは破壊できる。寧ろ本機のパイロットである輝は武器やセンサーを狙い撃ってしまえるほど。

 モデルはフリーダムガンダムの頭部バルカン「ピクウス」。名称などもそこから転じさせている。

 

・ロベーアバオムビームライフル

 機体腰背部に装備される高出力タイプのビームライフル。機体から直接エネルギー供給される。ロベーアバオムとは「月桂樹」のドイツ語。

 出力が高いこと以外は通常のビームライフルだが、シンプルなために扱いこなせば十分に脅威であり、輝は確実に敵の反撃する手段を奪う。

 モデルはフリーダムのルプスビームライフル。

 

・アーホルンビームサーベル

 両サイドアーマーに二本取り付けられた近接格闘戦兵装。アーホルンは「楓」のドイツ語。

 基本に忠実な兵装で、出力も通常タイプよりも高い。ただしステージツーの機体よりもライフル、サーベル共にパワー負けする。代わりに本機のサーベルは柄同士を合体させた「ハルバード」を使用可能で、格闘戦に変化を持たせられる。

 モデルはフリーダムのラケルタビームサーベル。

 

・カクトゥスマルチアームズシールド

 左腕部で保持する、多機能シールド。名称のカクトゥスは「サボテン」のドイツ語読み。

 逆手持ちでビームライフルと実体剣に切り替えが可能なトンファーの側面にシールドを装備する兵装。本時代においてはやや不利だが、パーツの換装であらゆる局面に対応可能な兵装となる。

 シールド自体の形状はフリーダムガンダムのラミネートシールドと同形状。トンファーはフリーダムガンダムフレイムフェーダーのフェーダートンファーがモデル。

 

・フリーダーバーストスラスター

 機体の肩部・脚部に装備される可変スラスターユニット。名称は「ライラック」のドイツ語読み。

 主にSEEDシステム稼働時に使用されるスラスターで、これにより反応速度の増したパイロットの動きに付いて行く。これらは三年前の最終決戦にて装備された兵装であり、これによって主犯の操る兄弟機「オースプロヴィデンスガンダム」を撃破するに至った。

 モデルはフリーダムガンダムフレイムフェーダーの肩部増加スラスターパーツ。脚部への装着は同じフリーダム系列の改造機「アメイジングストライクフリーダム」に通じる部分がある。

 

・パルメレールガンユニット

 サイドアーマーを構成する兵装。パルメは椰子のドイツ語読みである。

 実弾を発射するレールガンとしての機能と、スラスターユニットとしての機能を併せ持つ。スラスター部は排熱機構も兼ねており、連射性は高い。

 モデルはフリーダムのクスフィアスレールガン。

 

・ハイマットブラスターウイングⅡ

 かつてシュバルトゼロガンダムの装備であった装備をベースに本機専用に一新させたバックパックユニット。翼の色はオレンジと黒である。

 原型となるハイマットブラスターウイングについては三年前の事件直前に元自らがデータを提供していたため、その構築を基に開発。より性能を突き詰め、SEEDホルダーに付いて行けるように専用の高機動モード「Sハイマット」を実現可能となった。その際には5枚羽が7枚羽へと変化し、マイクロスラスターの増加と姿勢制御系統の強化で重力圏であっても自由な飛翔が可能となる。

 モデルはフリーダムガンダムの背部ウイング、能動性空力弾性ウイング。ハイマットモードなども継続されている。Sハイマットに関してはガンプラ「RG フリーダムガンダム」において解釈されたウイングの変形機構がベースとなっており、7枚羽となる点も同じ。またハイマットブラスターウイング自体がフリーダムのウイングを参考にしているので、今回は逆にこの世界におけるフリーダムが、別の機体のウイングを参考に開発したことになっている。

 

・シュトゥルムフートハイプラズマブラスター

 ウイングに挟み込まれる高出力のプラズマビーム砲。シュトゥルムフートは「トリカブト」のドイツ語読み。本機において最も高火力な兵装である。

 DNの限界圧縮させたうえでプラズマを生成しながら放出されるビームは、射線上の敵を一気に破壊するほどの威力を秘めている。これは圧縮が短いほど広域に拡散する性質を持つため、適当に放ったビームが敵を掠めながら破壊するという事態を起こしやすい。もっともそれは味方機にも危険が及ぶということで、輝は戦い方から極力威力は高いが狙いが精確な限界圧縮を多用する。しかしフルバーストモードでも輝は影響も考慮して不殺出来るほど。

 また限界圧縮したDNは少なからず機体側に負担となり、特に砲身はおよそ三戦闘に一回は取り換えるかオーバーホールしなければフルスペックを維持できない。その負荷軽減の為に、外界へ逃がすための排熱用変形機構が施されてはいるが、今度はそれにより空気中をわずかに汚染してしまうために輝はそれも使用を避けている。

 モデルはフリーダムガンダムのバラエーナプラズマビーム砲。名称のトリカブトは本機の最大火力を示すと共に、そのデメリットも如実に示す名称となった。

 

 

ジャンヌ「以上がオースフリーダムの解説になりますね。機体自体はほんのちょっとしか登場してないのによく書いてますよね」

 

士「文中にもあるけどこれをベースにオースインパルスも設定しているんだよ。だから実はオースMSの設定は一番最初にこいつを書いている。ちゃんと書いてあって当然なんですわ」

 

レイ「あぁ、だから本編中の扱いと違ってこんなにしっかり書いてあるんだ。基本を作るために」

 

士「そういうこと」

 

ジャンヌ「設定としてはオースストライク、オースジャスティス、オースプロヴィデンスという機体も登場しているみたいですね。そちらも逆算して書いていくのでしょうかね」

 

士「書かないんじゃないかな。書かないから文字設定だけで登場させているようなもんだし。もちろん後継機はなるべく書いていきたいところ」

 

レイ「ふーん。あ、そういえばオースフリーダムって一応オースの特殊部隊所属機なんだよね。なんだか奇妙な縁だよね原作じゃ特殊部隊に襲撃されて再登場したのに」

 

ジャンヌ「そこも考えて設定を?」

 

士「そんな偶然ここで文字考えた時点で気づいたわ、天才か」

 

レイ「メタいね。じゃあそろそろ次行く?」

 

士「そうしよう。じゃ、続きます」

 



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黒の館DN 双翼英雄譚編 第6回 中編

 

 

士「中編始めていこうか」

 

ネイ「そういえば今回4話構成になるというのはどうなったんです?」

 

士「ギリギリ収まりそうなんですけどこの中編が一番詰め詰め」(この発言覚えておきましょう)

 

グリーフィア「あらら~じゃあ早速行きましょっか。オースの残りのステージツーシリーズね。行くわよ~」

 

 

OUSG-X24T(ZGX-01)

オースカオスガンダム(ゼロンカオスガンダム)

 

機体解説

・オースで開発されたステージツーシリーズの機体の一機。青と水色が特徴的なカラーリングの機体。パイロットは火葉零。オールレンジ攻撃と可変機構を有する宇宙戦を意識した機体。

 可変機構と共に背部とサイドアーマーに遠隔操作端末「シールドポッド」を装備する。空間戦闘特化型だが地上戦も十分こなせる。可変状態でもセイバーほどではないが加速性能は高い。

 また脚部が格闘戦を意識した変形を行い、クローとして使用が可能。変形時には強力な主砲が使用可能になるなど、セイバーと違う部分も多い。

 オールレンジ攻撃の技能が求められるか否か、それがセイバーとの大きな違いであり、零はオールレンジ攻撃の適性を持ったパイロットとして選出された。機体にはオールレンジ制御用支援AIも搭載されているが、零はそのサポートを必要最低限で扱っている。

 本来ならオース軍が運用するはずだったが、パイロットの零共々ゼロンへと寝返った。

 コンセプトは「カオスガンダムのオース版、指揮官機として意識した構成」、そして「もしレイ・ザ・バレルがカオスのパイロットだったら」である。元々のカオスは地球連合軍のスティング・オークレーがパイロットだった。生体CPU組三人の隊長のように振る舞っていたことが多かったことからそれを意識した構成。そしてレイ・ザ・バレルは後半ドラグーンシステム搭載のレジェンドガンダムに結果的に搭乗したパイロットで、元々空間把握能力も相応にあった点を踏まえ、もしパイロットに選ばれていればカオスに乗っていたのではないかという独自の考察から。なお劇中に置いてカオスのザフトにおけるパイロットはテストパイロットのコートニー・ヒエロニムス以外は分かっていない上、設定では正規パイロットが強奪によって殺されているためその可能性は否定されている。またカラーリングは本来のアビスの物を使用しており、これは運用される戦場での迷彩を優先したものとなっている。

 

【機能】

・DNフェイズカーボンVerV

 ステージツーシリーズに採用される最新型DNフェイズカーボン。設定により空間戦におけるデブリとの激突時に機体が傷つかないような強度となっている。カラーリングの水色は空、あるいは宙の色と合わせて視認性を低くするため。

 

・変形

 カオスの変形機構は脚部のクローを展開しサイドアーマーを後ろに向ける。機体上半身をお辞儀するように前へ傾倒、そしてバックパックを頭部に被せ、完成する。この時腕部はそのまま使用可能で、飛行機のシルエットにはとても見えない、MAらしい形状となる。

 変形は原典のカオスの物をそのまま採用。

 

・疑似SEEDシステム

 SEEDシステムをベースに機体側がパイロットをサポートし機体を動かすシステム。セイバーにも装備されるシステムである。

 カオスにも装備されている理由としては不明だが、一説によれば種田博士が本システムを欲したことから。何を考えているのかはいまだ不明である。

 

 

【武装】

・CIWSバルカン

 頭部搭載のバルカン砲。ステージツーシリーズにおける共通兵装。頭部に二門装備される。

 

・ビームライフル

 セイバーの物をベースとしつつ、カオス専用にカスタマイズされたビームライフル。一丁を腰背部に装備する。

 高速戦闘用にカスタマイズされ、MA形態時においても抜群の命中精度を誇る。側面には追加でシールドポッドが合体可能で、攻撃性能の追加も可能なほど。ただし可変時には必ず腕部で保持する必要があるため、腕部が非常に重要になる。

 モデルはカオスのビームライフル。シールド(ポッド)の追加合体はユーラヴェンガンダム(コアガンダム版)のセンサーユニット合体がモデル。

 

・ビームサーベル

 ステージツーシリーズと同型の出力強化型の基本的なビームサーベル。サイドアーマーのラッチに接続される。

 本機に置いてはMAでも使用が可能。よって高速巡行しながら切り裂くという攻撃が可能。

 

・メガ・フルバスター

 変形した際のバックパックメインカメラの窓内部に装備された高出力ビーム砲。一門の装備となる。

 ムラマサのバックパックのビームキャノンの発展形。もっとも基礎設計はドラグディアのエース機「ドラグーナ・ガンドヴァル」にて採用されたグラン・フルバスターがベース。後継機などにも装備されたものをこの世界で更に改修し、完成させた。拡散モードが高出力で使用可能となり、破壊力は抜群。

 モデルはカオスのカリドゥス改。

 

・ガンポッドシールド

 機体の左腕部に装備される多機能兵装。シールドとしての機能に加え、裏面にはガトリング砲「バルカンポッド」が装着されている。

 シールドそのものは耐ビームコーティングが施されているが、DNウォールなどはなく軽量化をそれなりに施している程度。シールドポッドとも形状は共通していない。

 カオスのシールドからギミックは据え置き。

 

・レッグクロー

 脚部に折りたたまれたユニットから展開する実体クロー。クローの先から更にビームサーベルを形成してビームクロ―としても用いることが出来る。

 主にMA形態で使用される。

 ベースのカオスと同じギミック。

 

・シールドポッド「サブナック」

 本機最大の特徴、バックパック両翼とサイドアーマーのプロペラントタンクに装着されるブースター兼武装ポッド。名称は武装騎士を配備するソロモンの悪魔の一体。

 装着している間は増速ブースターとして機能する武装ポッド。しかし分離することで遠隔操作可能なビット端末として使用が可能となる。ポッドにはマイクロミサイルが8発ずつ、そしてアサルトビームキャノンが一門ずつ備わり、必要時にカバーを開いてこれらで攻撃する。

 表面自体もシールドとして機能し、DNフェイズカーボンと合わせて防御性能は高い。DNのおかげで地上でも使用可能だが真価を発揮するのは宇宙。分離時の性能をフル発揮でき、更に推力面でも非常に有効となる。シールドのおかげでデブリなども問題ない。

 モデルはカオスの機動兵装ポット。シールドとしての機能付属と、サイドアーマーへの装備追加など、性能が拡張された。

 

 

OUSG-X88T(ZGX-02)

オースガイアガンダム(ゼロンガイアガンダム)

 

機体解説

・オースで開発された「ステージツーシリーズ」の一機。陸上戦での戦闘をメインに戦う。カラーリングは深緑など緑系統の色。オースでのパイロットは水無月 加子(みなづき かこ)

 ステージツーの機体にほとんど採用される可変機構で獣のような四足歩行形態に変形、不安定な陸上でも抜群の接地性を誇る。だが最大の特徴は足先にDNを集中展開して機体の変則機動に繋げる「ディメンションバウンサー」の搭載である。これにより変形形態では水上を忍者のように歩き、空、あるいは宙を空間ごと蹴るように飛びまわれる。総じて変形形態での運用を全領域で主軸に出来るような運用を求められる。それゆえパイロットもそう言った適性のあるものが選出された。ただし加子はその性能を引き出してはいても十二分にはまだ遠く及ばないとされている。

 しかし色合いから森林での戦闘が想定されており、森林での戦闘は迷彩効果も含めて他の追随を許さない。

 式典の場で零と同じようにパイロット諸共ゼロンへと寝返る。だが、どうもパイロット変更が考えられているようで……第2章最終盤にて加子が殺され、代わりにギルボードの育てたオースガイアの為の刺客が搭乗する模様。

 コンセプトは「ガイアガンダムのオース版」、かつ「ガイアを全領域で生かすためにどうするか」である。DNにより本作のガイアは飛行が出来、作中のような不憫な状況になりづらくなっている。しかしそれでも十分か空中戦が出来るかと言われると難があり、それを解決する為に何もない空中を足場に出来るようにディメンションバウンサーを設定した。とはいえ水中の敵への攻撃は武装傾向から苦手。兵装も変形形態での行動を生かすものが多め。

 

【機能】

・DNフェイズカーボンVerV

 ステージツーシリーズ全機に採用されるDNフェイズカーボンのオース最新版。カラーは緑系統で統一。

 

・変形

 ガイアは変形により獣をイメージした四脚の獣のMA形態へと変形する。これは足裏に設置されたディメンションバウンサーを効率的に運用するために、四基全てを制御に用いることが出るため。またMSが現在空中戦を主眼に置くために地上での高性能機があまり出ていない為、それを実現するために本機は獣というあまりMSに想定されない変形法を取った。

 変形モデルは原典のガイアの物を採用。

 

・ディメンションバウンサー

 本機の脚部に搭載されるMA形態の接地部分を兼ねたユニット。このユニット全体から足裏に向けてDNを放出局所的なDNウォールを形成、それを放出する形で文字通り「蹴って」MSの足場としては利用できない水上や空間をMAの足で移動が可能となる。

 本機ならではの機構で、MA形態の自由度を格段に向上させている。ただし使いこなすのにはウォールの放出タイミングの調整などを熟知していなければならず、DNLであっても制御には困難を有するとされる。

 本来は次世代の歩兵装備として開発され、服を濡らさずに海上に存在する敵施設への侵入を想定されていた。しかしDNジェネレーターを介する必要があったため、結局MS装備として改装された一面がある。

 

 

【武装】

・CIWSバルカン

 頭部に共通で装備される実弾バルカン砲。変形時は使用できない。

 

・ビームライフル

 機体の基本的な射撃を担う兵装。地上や水上での使用を想定して、塵に影響されない調整をされている。

 変形時の機体肩部に装備可能な調整だが、MS形態においてはシールド裏に格納される。射程は他の物より若干短く、近接戦闘戦を意識している。

 原典の物から据え置きに近い。

 

・ビームサーベル

 腰部ラッチに二本装備される基本兵装。ステージツーシリーズ共通のタイプである。本機は近接戦を意識した機体の為、出力が調整されておりそう簡単に打ち負けることはない。

 

・ファングシールド

 耐ビームコーティングを表面に施されたシールド。変形時の下面を防御する。

 ファングの名の通り、変形時に下の牙としてビームの牙を形成することが可能。通常時でもシールドの上下を反対にすることで使用でき、MSの格闘戦における絡め手としても十分有効。後述する頭部の兵装と合わせて本機のMA形態での格闘戦能力は非常に高い。

 原典のガイアのシールドがベースだが、シールド自体にも格闘戦能力を付与していることで、格闘能力が向上している。

 

・アサルトビームキャノン

 バックパックのウイング付け根、そして変形後の頭部の口を開いて使用する近接戦用ビーム砲。

 ビーム砲自体はオースカオスのシールドポッド搭載の物と同じで、あちらと同射程。しかしこちらは近接からの密着砲撃を重点に置いている。もちろん遠距離攻撃としても充分で連射性も高い為これで射撃戦を行うことも考えられる。バックパックの二門はそのままMS形態でも使用される。

 モデルは原典のビーム突撃砲。こちらは頭部にも同じ武装が設置され、攻撃性能が増している。

 

・ビームブレイド「アンドラス」

 ウイングユニットとして装備される、近接戦用ビームブレイド。三基が装備される。一基は背中正面に背びれのように装備される。名称は不仲を起こすソロモンの悪魔の一体より。

 MA形態で真価を発揮する兵装。MAでは高速機動により敵の脇を抜けながら切り裂くことが可能で、前述したディメンションバウンサーでその脅威は増す。峰部分には増加スラスターも搭載で、さながらマキナ・ブレイカーと同じように推力で敵を押し切る使い方も可能。そして何よりこのブレイド端末は基部からの取り外しが可能。手持ちのブレイドとして、マキナ・ブレイカーと同じ使い方が可能なわけである。

 モデルはガイアのグリフォンビームブレイド。大まかな使い方は同じだが、背中正面に装着した三本目の追加、そしてガイアインパルスを彷彿とさせるブレイドの手持ちが相違点。三本目の装着で機動性も原典機より向上している。

 

 

OUSG-X31T

オースアビスガンダム

 

機体解説

・オースで開発されたステージツーシリーズの機体の一機。機体カラーは黒系統と黄色、赤。パイロットは新沢 或(にいさわ ある)

 局地の中でも局地、水中戦を想定したMSで、変形後のMA形態で水中を自在に動き回る。本世界における水中戦機体は各組織に何機か配備されているが、本機はその中でも水中と地上で運用を柔軟に行える機体として製造。水中ではエース級の奮戦、そして地上と宇宙では火力の高い後方砲撃機の二面性を併せ持つ。

 本機の最新技術としては水中でのビームが使用可能なコーティング技術「フィールドストリーミング」である。DNウォールをビーム放出時に纏わせており、DNのコーティングで減衰を防止、更に弾丸のコーティングで貫通力を向上させている。これは地上でも砲撃の威力、有効距離の拡張に用いられているため、まったくの無駄というわけではない。更に変形時の機体周辺にも展開させて抵抗を減らして航行速度を向上させる機能を持つ。もちろん普通にDNウォールとしても使用可能である。

 式典の場では零や加子と共にゼロン側へと寝返った。しかし得意ではない地上戦な上に複数体相手、そして撤退を邪魔され悪あがきの如く攻撃直後の進を狙って前へ出たことが祟って、宗司の駆るガンダムDN・アーバレストが起動させたドライバフォームから繰り出したDB「ストライクドライバ」でコアブロックを直撃、撃破されてしまった。故に機体本体はゼロンには渡らず、オースで回収された。とはいえ同じステージツーシリーズにある程度の情報が共有され、更にデータも抜き取られていたためフィールドストリーミングの技術は吸収されてしまっている可能性が高い。今後本機の技術を用いた新型MSも出現するかもしれない。なお回収された機体はオース側で修復、新しいパイロットを選出する予定である。

 コンセプトは「アビスガンダムのオース版」、同時に「ガンダムDN・アーバレストの第2章における敵」。本機との対決でアーバレストはドライバフォームの初お披露目となった。それにふさわしくなるよう、かつ強すぎない敵として本機が設定された。原点のアビスはインパルスに破壊されたが、本作のインパルスはカオスのパイロットと因縁があったため、アーバレストの相手として抜擢された。カラーリングの黒はガイアの色を交換している。

 

 

【機能】

・DNフェイズカーボンVerV

 ステージツーシリーズの全機体に採用されるDN浸透装甲。カラーリングは黒と黄色。本機に置いては耐水圧用の装甲としても機能し、水圧で機体が破損しないようになっている。

 

・変形

 ステージツーシリーズに共通で盛り込まれた結果となった変形機能。本機は小型潜水艦のようなシルエットを肩部シールドなどで構成し、水中移動に備えている。もっとも本編中では実戦の水中戦は皆無であり、どれだけの影響があったのか分かっていない。

 変形方法としては原典のアビスと同様。

 

・フィールドストリーミング

 機体の肩部シールドから機能するDNコーティング技術の一つ。

 DNウォールが機体を覆うフィールドとして包み込み、水中での抵抗を減らす。これにより予定されていた速度の8パーセントほどの性能向上につなげている。それだけでなく攻撃にも転用が可能で、水中でのビーム兵器運用を可能とするなど潜在性は高い。この機能に限っては地上でも起動が可能で砲撃戦の機能を拡張させる。

 そもそもがDNウォールの形成を行えるため、普通にDNウォールとして防御兵装に用いることも出来る。本編中ではほぼ水中戦がなく、ビームの威力を高めるといった使用法しか用いられていない。

 

 

【武装】

・CIWSバルカン

 ステージツーシリーズ共通の実弾バルカン砲。頭部と胸部に計4門を備える。

 

・メガ・フルバスター

 オースカオスにも装備される長射程高出力ビーム砲。胸部に一門を装備する。本機の物は、耐ビームコーティングシールド程度はおろかDNウォールすらも貫ける。

 モデルは原典アビスのカリドゥス。

 

・シュトゥルムフート改ハイプラズマブラスター

 機体の背部に装備される高出力プラズマビーム砲。オースフリーダムの兵装の発展形。消費DNを抑えて威力を可能な限り維持している。

 変形状態では海上にこの部分を露出させることで空への攻撃が可能。瞬時に水の中に戻ることで一方的な攻撃を仕掛けられる。冷却も海水が使用可能なために連射性能はこちらが上。

 欠点となる汚染問題については解決できておらず、更に攻撃範囲も凄まじい。劇中でパイロットの性格も相俟って甚大な被害をもたらした設定となっている。

 原典のアビスと同位置の兵装。

 

・ビームガンランス

 手で保持する格闘兵装。変形時は股間部分で保持される。

 先端部のユニットから刃の短いビームサーベルを形成。ユニットには実体の斧も取り付けられているので水中でも使用できる。ビームサーベル出現部分がガンの名の通り銃口も兼ねており、大出力砲撃を行えるランチャーとしても機能する。柄部分もビームコーティングがなされており、ビームサーベルを受け止められる強度を持つ。

 モデルとなったアビスのランスと同じ機能に加え、砲撃戦能力を追加した形となる。

 

・ウェパルマルチヴァリアブルシールド

 機体肩部に備わる大型多目的武装シールド。本機の変形機構を担う最重要パーツである。名称のウェパルは水を支配して船を操るソロモンの悪魔の一体。

 武装となる魚雷ユニット、三連装ビームカノン、爆砕連装砲、そしてフィールドストリーミングの発生器など、火力の要を担う。魚雷ユニットはシールド上部、連装砲はその反対側のシールド下部、ビームカノンとフィールドストリーミング発生器が内側に入る構成。

 耐ビームコーティングとシールド、更にDNウォール系列と多種多様な兵装などと、その構成は奇しくもシュバルトゼロガンダムシリーズが装備する肩のマルチシールドと同じである。単純な総火力でならシュバルトゼロガンダムRⅡを超えているとのこと。

 更にメガ・フルバスター、シュトゥルムフート、ウェパルのビームカノンとフィールドストリーミングを併せることで本機最強の砲撃、DB「アビス・ディープ・クライシス」を放てる。この威力はDNウォールでは防御不可、通常のドライバ・フィールドでもわずかに逸らしてオーバーヒートするはずだったが、ドライバフォームのガンダムDN・アーバレストは防ぎ切られた上でパワーダウンした機体にDB「ストライクドライバ」を喰らって本機は撃破されてしまった。

 アビスの肩部シールドと形状は同型。

 

 

グリーフィア「以上がオース3トリオもとい敵になったステージツーシリーズの機体ね」

 

ネイ「それぞれ機体カラーリングを一個ずらしているみたいですね。カオスの色がガイアに、ガイアの色がアビスにって」

 

士「なんていうか、色で考えるとその方が敵機から視認されづらくね?って思ったんだよね戦う場所的に。まぁカオスに関しては、ニュータイプは宙が青に見える理論から取っているんですが」

 

グリーフィア「けどそれって逆に味方からも見えづらいってことじゃないの?」

 

士「……まぁね?」

 

グリーフィア「間に何か意味を感じる。さては考えてなかったな?」

 

士「レーダーあるから、レーダーあるから。まぁスナイパーにとってはめっちゃ迷惑なんだけど」

 

ネイ「にしても、カオスだけ疑似SEEDシステムなんですね。これは?」

 

士「単純に進と実力合わす、というより越えさせるためっていうのもあるけど、種田博士はゼロン版疑似SEEDシステムのテストベッドとして零を見込んでたってのもある。後半には疑似SEEDシステム量産型を積んで敵が強くなるかもね」

 

グリーフィア「うわぁ露骨な強化路線ってわけ?」

 

ネイ「それは、なんというか……嫌ですね」

 

士「まぁギルボード派、デスティニーズだけの強化になるかもだし、派閥分かれているからね」

 

ネイ「ここまでくるともう最後に派閥同士の争いで自滅してくれた方がいっそ楽ですね」

 

グリーフィア「あるあるー」

 

士「それどんなZZ……」

 

グリーフィア「しかし中々カオスよね。ガイアのパイロットは殺されて、アビスは宗司君達の成長の犠牲になって」

 

士「あ、アビスに関してはこの後挟むガンダムDN・アーバレストの追加システムログで話そうか」

 

グリーフィア「なるほどね。じゃあネイ?

 

ネイ「うん。それでは追加ログです」

 

ガンダムDN・アーバレスト

[解放ログ2]

・ドライバフォーム

 オースセイバーとの模擬戦で解放され、対オースアビス戦で発動した形態。アーバレストのみの仕様である。

 名称から分かる通り、ドライバ・フィールドを軸としたシステムである。解放条件はドライバ・フィールドをより効率よく使うために、エンゲージシステムを介しているパートナーとのリンク値の向上。

 パートナーのDNL能力を利用してドライバ・フィールドのコントロールを強化し、機体の駆動に対しドライバ・フィールドを作動させる。何がしたいのかというと、エラクス並みの機動性能向上を果たす、あるいはシュバルトゼロガンダム系統におけるアレスモードと同等の性能を持たせると言えば分かりやすいか。

 ドライバ・フィールドの強度も上がるために単純に防御性能の向上、そして近接格闘戦においても打撃力の強化とそれに対する防性が見込める。フォームということで機体各部も変形する。頭部がマスクパーツをずらし「フェイスオープン」。腕部には打突・フィールド取り扱い用のボクサーガードユニットが展開し、格闘戦をサポート。脚部はふくらはぎ側面のスラスターユニットが展開、また足底部も変形して重心を上げて踏み込みの速度向上と足底部のバーニアを使用可能にしている。そしてアーバレストバックパックも可変して隠されたマイクロスラスターが露出した拡張形態へと変形する。それどころか機体そのもののパワーが上がっていることで既存のMSでは出来なかったスラスターなしでの地面からの「跳躍」が出来るようになった。

 総じて近接戦を重視した形態となるわけだが、だからと言って射撃戦が不得手になっているわけではなく、むしろ拡大したドライバ・フィールドコントロール能力でこれまでのDB強化弾は更に破壊力・性能を向上させている。

 そして本形態からはそのDBがツインジェネレーターシステム機にはおなじみの超破壊力を誇る必殺技DNFへと昇華されていく。現状本機専用のDNF「ストライクドライバ」は向上した機動性能と近接格闘戦能力をつぎ込んで繰り出す一撃必殺の攻撃で、その攻撃は例えDNフェイズカーボンやDNウォールでも並大抵の機体の装甲・防御機構を貫通する。

 モデルとなったのは原型機のラムダ・ドライバ発動時の可変機構。アーバレストでは形態として数えられる。機体の駆動に対し運用できるようになった点が原型機におけるパイロットの成長と合わせている。

 

 

ネイ「以上がドライバフォーム?の解説ですね」

 

グリーフィア「フォームって言い方ライダーみたいよねぇ。シュバルトゼロの方はモードって言い方だけど、違いは?」

 

士「あっちは……まるっきり機能が変わってるから。こっちはベースとなる機能を拡張してってことだね。これは表向きの理由」

 

ネイ「……裏的には?」

 

士「何かシュバルトゼロガンダムとは違うってところを見せたかった、正直モードでもよかったと思っている」

 

グリーフィア「(笑)まぁ?開発元が違うというかそもそも大元の世界が違っているものね~。これ開発陣に元君もいるから彼の趣味だったり?」

 

士「それはアリかも。元君の理想としては心のどこかで兵器じゃなくてヒーローを目指してほしいって思ってとか。まぁいくらでもここら辺は想像できますよという枠です」

 

ネイ「大雑把じゃあないです?」

 

士「これって決めておくとたまに変えたくなる感情に駆られるから今はこれでいいのだ。というわけで後編に続くぞ」

 

グリーフィア「後編は、もう分かるわね。激闘、というより一方的な戦闘展開したあの組み合わせね~、どんな情報が漏れることやら♪」

 



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黒の館DN 双翼英雄譚編 第6回 後編

 

士「さぁ後編に収まったぞ」(ここからの言葉を覚えておきましょう)

 

レイ「4話構成にならなくてよかったねー」

 

ジャンヌ「ちなみに4話に収まらなかったらどうしてたんです、話数表示」

 

士「最後が続・後編になってた」

 

レイ「最近作者の見てた動画で見たことある」

 

ジャンヌ「違うカードゲームもちゃんと見てる辺り強欲ですね」

 

士「ま、そっちはアプリでやってる。そんな話は今どうでもいいんだ。紹介へ」

 

レイ「まずは、蒼穹島勢力~!射撃戦仕様のタイプ[ツー]、そして~?」

 

ジャンヌ「蒼穹島最高戦力、英雄二人、タイプ[イグジスト]とタイプ[ディナイアル]です。どうぞ」

 

TP-02

タイプ[ツー]

 

機体解説

・タイプワンをベースに射撃戦を意識したパーツへと置き換えて完成した機体。第二仕様の為、タイプツーである。

 形状もタイプワンとほぼ共通。ただし肩部に大型兵器運用の為のアタッチメントが装備され、これに装備された多種多様な射撃兵装を選択して装備、小隊で戦うことを想定されている。前衛のタイプワンを後方から支援する、と言った具合。

 反応速度がやや鈍く設定され、安定した射撃を行えるようになっている。また飛行は出来るものの、安定性はタイプワンよりも劣り、短距離の移動しか考えられていない。ただしエース「真藤 一真」の機体は例外で非常に安定した飛行性能を発揮しているが理由はその機体だけがツインジェネレーター仕様なため。

 モデルは蒼穹のファフナーのノートゥングモデルの射撃戦仕様「マークフィアー」系列機。肩部の武装換装ギミックも据え置きである。なお固定武装に関しては後発の改修型「エインヘリアル」に準じた仕様に近い。

 

【追加機能】

本機以降の同型機は基本機能が共通の為、基本となるワンから違う機能のみを書き記していく。

 

・換装システム「ワルキューレ」

 肩部の武装換装システムの名称。独自の接続機構で構成されており、敵の悪用を防ぐ島独自の換装機構。

 

・ツインジェネレーターシステム

 蒼穹島が独自に開発したツインジェネレーターシステム。真藤 一真の機体にのみ実装。

 高純度DNの出力により安定した飛行が可能。加えて本機の場合DNを翼や副腕、更には敵のDN干渉などジェミニアスのエレメントブーストに近い超常を超えた機能を有し、加えてエラクスと思われる機能強化も使用が可能。これらの現象については一切不明で考えられるのはシステム・ヴァルニールによる干渉が考えられる。

 

・エラクスシステム(仮)

 エラクスに近い機能強化状態。というのもその理由が、発動形態が異なるため。本機は蒼く発色してから、機体各部装甲を突き破るように青い結晶体が出現する。その結晶自体はユグドラルフレームに近い性質を持ち合わせ、超常現象の核となる。機体と武器を結晶で繋いで威力の増加など、他にも何らかの現象を引き起こしているらしい。

 劇中ではパイロットの腕も含めて現時点での全性能を開放したシュバルトゼロガンダム・ジェミニアスと単機で互角に渡り合い、後継機のイグジスト達が損傷する中唯一そういった描写が見受けられない。

 裏的な話ではこれはエラクスではない。しかしエラクスと同原理に近い機能であり、そのモデルはやはりファフナーシリーズを知る人ならば思い当たるあの力である。

 

【追加武装】

・レイジング・バルカン

 手甲部分に内蔵する実体バルカン砲。中近距離での迎撃に用いられる。ワンのレイジング・ナックルと置き換わる形で装備される。

 

・レールガン

 機体の腕部で保持する実体弾。DNフェイズカーボンにも十分な威力を示す。中距離での支援兵装としての選択がほとんどである。

 

・スパイラルガン

 肩部に装備される大出力ビーム砲。螺旋状に放たれるエネルギーで貫通性能が非常に高い。対艦戦闘を考慮されている。

 技術的にはマキナスのマキュラ級に装備されていたスパイラルキャノンに近い。あれの小型版のためガンという名前の模様。

 ただし蒼穹島にはそんな情報は与えていない。技術供与元はおそらくゼロン、間違いなくあの機体であろう。

 モデルはファフナーのメデューサ。

 

・ブラスターライフル

 腰背部に装備される中距離ビームライフル。そちらよりは威力の高い遠距離向きの兵装となっている。小型ながら威力は高く、初見殺しが多分に含まれる。

 名称から分かる通り、これは元のシュバルトゼロガンダムRで採用されたブラスターガンがベースである。こちらは情報が開示されているため、その発展型となっている。

 ファフナーにおけるサラマンダーに位置する兵装。

 

 

TP-EXIST

タイプ[イグジスト]

 

機体解説

 タイプシリーズを母体としつつ、「究極のタイプシリーズ」として開発したMS。蒼穹島の最高戦力の一つ。イグジストは「存在」を意味する。パイロットは日和 美波(ひわ みなみ)。かつては真藤一真の機体でもあった。純白の機体。カメラアイは緑色。

 シュバルトゼロガンダムがかつて見せた究極の姿「イグナイター」を目標として作成されており、奇しくも同型機「ディナイアル」という黒い機体が存在する。タイプシリーズを踏襲して平べったい頭部にゴーグルアイ、各部は曲面装甲となっている。

 本機はツインジェネレーターシステムを搭載し、出力はシュバルトゼロガンダムRⅡと同等以上、そして機体内部にはユグドラルフレームと同等の結晶体をフレームとして内蔵する。

 特筆するべきは武器を使用する際に機体外へと露出する結晶体。武器と機体を「同化」し、威力を各段に向上させられる。これについては全くHOWが詳細を掴めていない。同型機のディナイアル、そしてゼロンが主導で開発したリズンも同じ現象を発生させることから、共通機構と思われる。しかもかつてのイグナイターの如く、機体の再生まで行えるのである。事前情報ではこの究極のタイプシリーズの機体はいずれも同形状であるとされているのだが、にしては装甲や武装に違いがみられる。これについてもこの結晶が何か影響しているのではとされている。

 機体の機能は下地にタイプシリーズがあるためか共通する部分がいくつか存在する。だがツインジェネレーターシステムだけでここまで違いが出るかは疑わしく、まだ明かされていない理由が関係したものだと結論している。よってこの機体達はイグナイターと同種の機動兵器「超次元領域機体」、通称DMSとして双方共にカウントしている。

 モデルは蒼穹のファフナーの主役後継機「マークザイン」。名称も英語訳したもの。兵装も比例して運用される。が、搭乗者が女性なのに合わせてこちらでは所謂「魔法少女」的な要素を武器に盛り込んだ。

 

【追加機能】

 タイプシリーズの基本機能である「次元電磁装甲」「システム・ヴァルニール」「コアファイターシステム」が引き継がれている。それ以外を列挙する。

 

・ツインジェネレーターシステム

 DNの生産量を二乗するシステム。胸部のコアユニットに内蔵する。コアファイター時にはファイターパーツに接続されて離脱する。

 本機も莫大な高純度DNを扱えるが、それに反して基本兵装は一つしかない。とはいえその武器が凄まじい性能を持つうえ、機体のポテンシャルにも生かされる。

 

・リブートクリスタル

 機体の内側に内包された結晶体。名称は蒼穹島側のものより。ユグドラルフレームと類似した形成物質が含まれる。

 ユグドラシルフレームを活性化させたシュバルトゼロガンダム・イグナイターと同じく、再生を行える。更にエラクスに近い現象を機体の結晶化と共に引き起こし、機体性能を向上させてくる。この際ジェネレーターには負荷が掛かっていない様子で、どうやらジェネレーターに働きかけるのではなく、機体の各部への働きかけで性能を引き上げている模様。

 ユグドラシルフレームとDNLの力が「意志の伝達」なのに対し、こちらは「意志の画一」と称されている。これが違いなのだろうと思われる。この力でパイロットの美波は周辺の勢力に何かしようとした模様。

 なお真藤一真機のタイプツーのエラクスシステム(仮)はこれと同じである。

 

【武装】

・シャイニーガンブレードランス

美波の為に専用で装備されるガンブレードランス。柄の部分が長く、魔法少女の杖に見える構成となっている。

 砲撃戦用のトリガーが追加され、放たれる砲撃も通常でビームキャノン級の威力。更に刀身を開いた状態で金色の粒子を放出し、何らかの影響を与える端末としても機能している模様。

 パイロットの美波に合わせた仕様変更であり、一真の場合は通常のガンブレードランスが装備されていた。この兵装変更により遠距離戦を重視した仕様になっている。

 モデルはファフナーのルガーランス。ただしパイロットが女性になったことと、原典機のそれがほぼ魔法の槍とファンに形容されていたこと、そして作品のネタの一つである「シャイ☆ニー」から着想し、某白い魔法使いの杖をベースに構成しているイメージ。

 

・ノルン・ガーディアンユニット

 サイドアーマーと肩部に追加装甲として装備されるユニット。そのままでは本体よりも強力な次元電磁装甲とスラスターとして機能するが、パージすることで防御用のドローンユニット「タイプノルン」と呼ばれる小型のタイプシリーズに分割される(武器はガンブレードランスに類似した兵装、スライサーガンと左腕のビームシールド「アイギス」)。

 これらは機体装着時、そして分割時も本体をサポートする。まさに護衛の装備である。

 モデルはファフナーのBeyondにて原典の美羽を護衛するトルーパーモデル達より。機能としてはGジェネシリーズの一つ、「オーバーワールド」にて表のラスボスを務めた「クィーンアメリアス」と防御装甲兼MS「ガーディダンサー」が近い。あちらよりも更に小型だが、性能は引けを取らない。寧ろ元々のザインよりも凶悪になっている可能性もある。

 

 

TP-DINIAL

タイプ[ディナイアル]

 

機体解説

 海凪 晃司の弟、海凪 興司(うみなぎ きょうじ)が駆る究極のタイプシリーズの二番機。黒いカラーリングと紅いクリスタルパーツ、そして悪魔のようなファンネル兼用の翼が特徴的な機体。かつては晃司が搭乗していた。名称は「否定」の英訳。

 元は同じ姿だったいうタイプイグジストはこちらに近い形をしていた。しかしイグジストは変容で今の姿に変化。こちらもこの悪魔に近い姿に変わったという。比較的原型を保った本機では機体本体の武器をメインに、鋭利な腕部クローによる格闘を駆使して戦う。

 本機もツインジェネレーターシステム、そして結晶体を用いる。だがそれに加えて本機はガンブレードランスを手から出現させて武器として扱う。マルチスペース・システムを思わせるこの機能でHOWのジェミニアス開発部は情報漏えいが疑われたこともある。

 だがそれ以上に恐ろしいのは本機が次元崩壊を武器にして戦うこと。次元崩壊のエネルギーを球体や円盤状に圧縮して攻撃に用いる。次元障害の被害は既に周知の通りであり、これによる攻撃は通常機の装甲はおろか、次元電磁装甲やDNフェイズカーボンも超高出力状態でなければ防げない。このため現在の全次元電磁装甲、DNフェイズカーボン搭載機はこれらを感知すると自動的に防御態勢に入る。なおビームシールドやDNウォールなどはギリギリ防御が可能。

 これら機能をイグジストと共に二年前のラプラス事件で解放し、事件の中心となった「アンネイムドシリーズ」と渡り合った。その時のパイロットだった晃司の実力はそのうちの一機と渡り合い、「蒼穹の魔王」という異名をとどろかせるほど。晃司の見立てでは魔王の元も取るに足らない相手としていたが、今のジェミニアスで自身が復帰しても勝てるかどうか怪しいという力関係の模様。実際本編中では興司の駆る本機は数で勝るにも関わらず押されていた。そもそもがいくら超越的な力を持つ超次元領域機体と言っても旧世代機に分類されつつある点はかつてのシュバルトゼロガンダムに近い位置づけにイグジスト諸共みられる。

 モデルは蒼穹のファフナーのラスボスかつもう一機の主人公機「マークニヒト」。今回においては腕が異様に大きいという点からゼロンのMSモデルに採用するヴェイガン系の特徴、そして直近でラスボスに上り詰めそこなったものの、作者が歪さから気に入った「仮面ライダーゼロワン」の仮面ライダーアークゼロの機構が一部取り入れられている。

 

【追加機能】

・次元崩壊現象運用機構「ゼロ・ディメンション」

 本機が初めて使用する次元崩壊を攻撃に用いる機構。腕部そのものを中心に次元崩壊を操る。簡単に書き記すと次元世界の入り口を物質として用いており、直撃するとその機体を次元世界への入口へとブラックホールのように装甲を削り取っていく。

 DNを用いないと防御不可で、通常機装甲やビルの外壁程度なら削り取っていく。また削り取っていくと同時に吸い込みも若干発生しており、回避は困難。円盤状の物は特に攻撃能力が強く、早い為回避が重要となる。

 次元崩壊を扱えるために非常に強力。しかも話によれば次元崩壊を用いた空間転移も行ったことがあるらしく、元達の間では「次元転移が可能な機体が完成しているのでは」と考えられているほど。

 原典のワーム現象をベースとした機能。流石にこの世界にフェストゥムに類する生命体は存在しない為、機体の機能として搭載するにふさわしい威力の物は次元崩壊しかないと取り入れた。

 

【武装】

・ディメンションクラッシャーアーム「グンター・アーム」

 機体腕部そのものが質量、そして斬撃攻撃として使用が可能。名称はニーベルングの指環に出てくるグンターより。Dフィスト・イレイザーに近い兵装であり、この兵装こそが次元崩壊を攻撃に使用する機構の発生元となっている。腕部の先が次元崩壊を誘発させる特殊な仕掛けを施しており、それに耐える為腕部は次元崩壊に触れても影響を受けない材質。指の部分はブレードガンにも使われるクリアブレード材質の紅いバージョン。掴んでからの次元崩壊に敵を無理矢理巻き込む使い方が出来る。ただし機体も相応にダメージを受ける諸刃の剣とも取れる攻撃である。

 この機能を応用して腕部そのものを荷電粒子砲として運用することも可能で、シュバルトゼロガンダムと同じく掴んでからのビーム砲撃が可能。

 機能は順当にマークニヒトから受け継ぐ。ただし荷電粒子砲の形態は仮面ライダーアークゼロの機能から加えられている。

 

・ホーミングレーザー+ビームクラスターポッド

 機体の背部ウイング付け根を構成する円柱型のビーム・レーザー放射機構。円柱を伸ばすと溝からレーザーが、円柱をそのまま開くことでビームクラスター(ビームによる拡散弾)を放つ。

 本機のレーザーは非常に威力が高く、更に精度も十分なため通常兵装のみで量産型を蹴散らすことも容易い。逆にエース機との対決では弾幕のために放たれることが多くほとんどが足止め。ビームクラスターも同じで誘導するかしないか、あるいは近距離での速やかな迎撃か否かで使用が決まる。

 モデルのマークニヒトのホーミングレーザーにビームクラスター弾としての機能が備わったもの。

 

・スレイブファンネル「ブリュンヒルデ・シスターズ」

 機体のウイングに4基ずつ計8基が装備された遠隔操作端末。先が鋭く、刺さりやすい形状になっている。名称はジークフリートの妻ブリュンヒルデの妹たちから。

 最大の特徴として突き刺した相手をコントロールジャックする機能がある。所謂ハッキングで、その制御にはシステム・ヴァルニールが使われている。パイロットに特殊な資質を強いない仕様であり、離れた武器の同化強化も可能など汎用性は非常に高い本機の象徴となる兵装である。

 

・ガンブレードランス(TD)

 タイプディナイアル自身が作り出したガンブレードランス。機体と同じ黒色で構成されている。

 威力も通常のガンブレードランスより向上しており、これは機体自身が作り出したためであると思われる。ただし出現する位置が次元崩壊発生機構のある腕部からの為、次元崩壊で別の場所から取り出しているのでは、とも考えられる(それだと威力が高いことや折れた刀身を再生できることが証明できないため、可能性は低い)。

 

 

ジャンヌ「以上が蒼穹島の機体、ですか。って作者?」

 

士「ヤバい。今の時点でもう予定の半分食ってたわ」

 

レイ「文字数えぇ……」

 

士「ま、進めましょうやさっさと」

 

ジャンヌ「タイプツーはまぁ真藤一真機以外は平凡ってわけですね。キングモード相手に射撃で戦闘参加してたのは量産型のタイプツーなんです?」

 

士「そうだね。あと数機だけどタイプワンもいるし」

 

レイ「真藤一真のタイプツー、これきっとイグジスト達と同じになるんだろうなぁ」

 

士「まぁわざわざ特別な仕様にしてますからね。その頃にはファ○ナー完結してるでしょ。完結するか知らんけど」

 

ジャンヌ「そしてイグジスト、ディナイアルは新人パイロット達に譲渡されたという設定ですか。まぁ流石に初めてに近い機体でシュバルトゼロ相手に立ち回るのは厳しかったわけですか……」

 

士「というより元が気合入れて準備しすぎただけ。まぁそこは次で話そう。次、というか最後を飾るのはやっぱりシュバルトゼロ・ジェミニアスのモードシフト、エレメントブーストとそれによる武装変更一例です」

 

レイ「じゃあいっくよー!」

 

 

士「と思ったんですがね?」

 

レイ「あっ、まさか?」

 

士「ごめん、続・後編作るわ」

 

ジャンヌ「藤和木~?」

 

士「コピペしようとしたら9000字でした。じゃあ次ね」

 



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黒の館DN 双翼英雄譚編 第6回 続・後編

 

 

士「初の四本構成です」

 

グリーフィア「9000字は笑う」

 

ネイ「エ○ァや銀○の終わる終わる詐欺じゃあるまいし、ですが」

 

士「ま、サービスってことで」

 

グリーフィア「じゃーさっさと行くわね。喋る分あるかしら?」

 

士「流石に作る」

 

 

[シフトウイング通常装備]

<ジェミニ・アームズ>

 通常状態のシュバルトゼロガンダム・ジェミニアスに装備される専用武装セット。これが基本装備となる。

 装備されるのは内側から順にジェミニソード二組、ジェミニナイフ一組、ジェミニショットライフル一組、ジェミニブレードウイング一組、そして中央背面にパワーグリップとウエポンロッドを装着する。それぞれの武器は合体し、様々な武装へと組み替えられる。これらはジェミニアスの単一の仕様での汎用性を高めるために装備される。

 本兵装群をウイングに装着している間は力場の影響で機動性能、加速性能が向上し、背面への攻撃を増幅した力場が自動的に防御する。

 モデルはフレームアームズのレイファルクスが持つアーセナル・アームズ。モチーフ元からベリルダガーⅡに当たる武器のみ外されてしまっている。

 

【武装】

・ジェミニソード

 シフターに装備される実体剣。四本装備する。

 刃の材質はこれまで通りのDN伝達効率の良いクリアブルーのもの。しかしブレードガンのものよりも非可変式な分強度がある。DNを刃に定着させた一撃は、ブレードガンはおろかビームサーベルよりも高い切れ味を誇る。

 モデルはべリルソード。

 

・ジェミニナイフ

 シフターに装備される実体剣。二本装備する。ナイフという名前だが、十分な刃渡りはある。

 大きさの代わりにこちらはグリップ部分に可変機能が備わっている。持ち手を切り替えてトンファーとして用いることが可能。

 モデルはベリルナイフ

 

・ジェミニショットライフル

 シフターに装備される専用ビームライフル。ゼロ・ビームライフルⅡよりも薄い銃身とスリットの銃口を持つ。

 機体供給式であり、出力が自由に切り替えられる。銃口下部には接続口が存在し、他のジェミニ・アームズを装備することが可能である。

 モデルはBS-R04。

 

・ジェミニブレードウイング

 一番外縁部のパネルウイングに装備される武器翼。外側が刃となっている。

 これ単体では武装として機能はせず、他の武装と組み合わせた時にその威力を示す。とはいえウイング装着時にはすれ違いざまに斬りつけたり、機体の空戦能力を向上させたりするため、まったくの無駄パーツというわけではない。

 モデルはレイファルクスのウイングユニット。

 

・パワーグリップ

 機体の背面に装備されるエネルギー増幅器兼武器トリガー。

 他のジェミニ・アームズと合体するための基部として用いられる。合体するとその武器の性能を高めて大出力運用が可能な大型兵器として運用が可能になる。

 モデルはレイファルクスの中央ユニット。

 

・ウエポンロッド

 機体背面に装備される棍棒。実際には他の武器を接続してその持ち手となる兵装。

 とはいえ通常のままでもDNFを用いて兵装としても用いられる。本兵装の為の追加パーツも開発計画が上がっている。

 モデルはレイファルクスのオプションパーツA。

 

<組み換え一覧>

・ポルック・ハント

 ジェミニショットライフルにジェミニナイフを合体させた形態。銃剣型兵装。

 合体時にはビームソードを形成することも可能で、更に両者の特性を瞬時に切り替えて生かすことが出来る。

 モデルはレイファルクスのイーグルハント。名称のポルックはふたご座のモチーフとなった双子の一人ポルック。

 

・カスター・イーター

 ジェミニショットライフルにジェミニソードを合体させた形態。ポルック・ハントと同じ銃剣型兵装だが、こちらの方がリーチは長い。

 モデルはベオイーター。名称のカスターはふたご座のモチーフとなった双子の一人カスター。

 

・ディオスクロイ

 ジェミニソードとジェミニナイフを合体した強化剣。威力が二倍ほどに向上している。とはいえそれぞれの単体兵装でも威力は充分あり、小回りも利くためこちらが優先されることは少ない。

 モデルはシャレーネ。名称自体はカスターとポルックを合わせた言い方「ディオスクロイ」から。

 

・セントエルモ

 ジェミニソード二本をウエポンロッドと合体させて完成する槍。

 リーチが長く、また貫通力も高い。柄後部と合体部分根元のブースターと合わせて貫通力を高める。

 モデルはハルーン。ブースターに関してはもとのレイファルクスのハルーンにない機構。セントエルモはディオスクロイ達を当てはめた気象現象である聖エルモの火から。

 

・アルゴー・ローター

 ジェミニナイフ二本を基部と合体させた兵装。ツインブレードとして用いられる。しかし同時に防御用の盾としても用いることが可能で、その際には腕部に装備され、刃で的確に回転防御する。

 モデルはディフェンスローターⅡ。ツインブレードとしての機能はガンダム00のGNソードⅡツインランスモードから輸入。名称はディオスクロイが乗ったこともある船アルゴ号より。

 

・ジェミニ・フォトンランチャー

 パワーグリップにカスター・イーター二基を装備した大出力ビーム砲形態。パワーグリップのエネルギー増幅装置とカスター・イーターの刃がビームの威力を高めて貫通力を高める。

 モデルはフォトンランチャー。

 

・ディオスクロイ・スラッシャー

 ジェミニショットライフル、ジェミニソード、ジェミニナイフ一組ずつ、パワーグリップを合体させて完成する大剣形態。通常出力で主に使用される。

 通常出力で出せる中で、もっとも威力の高い兵装。DNフェイズカーボンすらも容易く切り裂ける威力を持つ。しかし相応に重く、扱いは難しい。

 モデルはフォートスラッシャー。

 

・ジェミニアス・マテリアル・デトネイター

 パワーグリップにジェミニショットライフル二丁とジェミニブレードウイングを合体させたもの。ノーマルモード時の最強兵装。

 ディオスクロイ・スラッシャーよりも小さい。しかし本兵装は最大稼働状態での使用、所謂DNF使用時にのみ使用可能な兵装である。その威力は名の通り、物質全てを原子へ、始原の次元世界にて流れるDNそのものへと還元させてしまうほど。

 その分扱いもディオスクロイ・スラッシャーよりも難しく、使用はシュバルトゼロガンダム・ジェミニアスのみに限られる。高純度DNを安全に用いることが可能なシュバルトゼロガンダムのみの兵装である。

 モデルはフォートデトネイター。威力がもっとも高い点も構成する兵装の種類も参考になっている。

 

 

<アレスモード>

 エレメントブーストシステムにより正式採用となったアレスモード。フレームの色は赤。格闘戦特化仕様のモードである。

 ジェミニアスになっても強化する点は変わらない。フレームから放出される光「エレメント・フレア」で一定の射撃攻撃を無効化する点も同様である。

 しかし最新鋭機となったシュバルトゼロガンダム・ジェミニアス準拠でモード変換を行っているためか性能はこちらが上。更にモード移行時にウイングが運動性向上のアレスモードに変更され、重なった二枚一組、三対のウイングへと変更される(簡単に言えば、ゴッドガンダムのバックパックに近い配置にパネルウイングが移動する)。追加装備装着時にはウイングにバランサーの精度が5パーセントほど向上する。

 アレスモードはエレメントブーストシステムの中核でもあり、旧シュバルトゼロガンダムのDNジェネレーターを移設して初めて機能するようになった。これまで以上に敵を寄せ付けない強さを発揮してくれることだろう。

 

【追加機能】

・エレメント・フレア

 機体のフレームから放出される紅い粒子。これには敵の射撃兵装の類を弾くバリアのような機能が持たされている。

 それほど強い攻撃までは防ぐことは叶わないが、近接戦に持ち込むには十分な補助機能となっている。

 

【追加武装】

・アレス・ヴィジョン

 パネルウイングに薄く重ねられる強化スラスター。12枚すべてに重ねられる。

 スラスター部分には残像発生装置が装備されていて、機動時に残像をわずかに発生させられる。この残像にはフレアの効果が備わっている以外にもシュバルトゼロガンダムのDNFの力を合わせて分身することが出来る。この分身は質量を持つ、ビームサーベルを纏った残像のようなもので、実体を持たせて攻撃することが可能。当たると消えるが当たらなければエネルギーを使い切るまで使用が可能となる。

残像起動中はエネルギーリングが発生し、本機の高い格闘性能・運動性能を更に引き上げる。残像をこのリングに吸収させたのち、大出力DNFに繋げることも可能。

 モデルはゴッドガンダムのバックパック。分身殺法ゴッドシャドーがベース。残像による攻撃はゴッドガンダムがアイデア元にもなっているトライバーニングガンダムの分身攻撃も参考にしている。

 

 

<キングモード>

 エレメントブーストシステムにて新たに追加されたシュバルトゼロガンダム・ジェミニアスのモード。フレームカラーは黄色、金色と言ってもいいかもしれない。

 格闘戦特化のアレスと正反対、というほどではないが、本機の特性は武装・装甲特化となる。モード変換時に機体各部に防御性能を向上させるアーマー「キングアーマー」を装着し、あらゆる攻撃を受け付けない。そのうえでこちらは強力な武装で動くことなく圧倒してしまうという、攻撃力と防御力に秀でた性能を見せつける仕様となっている。

 反対にこの形態では運動性ががた落ちする。格闘能力もアレスより落ちてしまっているが出来ない程ではない。加速性能は後述する仕様で一時的に高くなるが、それでも格闘戦に積極的に使用できるわけではない。まさに王のように後方でどっしりと構える運用が適しているということになる。しかし黒和元はその防御能力を生かして積極的に近接攻撃に向かうことも少なくない。寧ろ乱戦下に突入して内部から崩すやり方を主としている。

 パネルウイングの配置は三枚一組、二対のマントのような形の「キングモード」に配置変更している。装備装着時にはウイングの素の剛性が増す状態となる。

 モデルは仮面ライダーブレイドのブレイド キングフォーム。アーマーなどはそれに近い。なお直近のガンダムビルドダイバーズリライズのイージスナイトにも同名のモードが存在するが、断じてそこからではないことを明記する。

 

【追加機能】

・エレメント・スパーク

 機体のフレームから放出される金色の粒子。その粒子には力がある。キングアーマーの防御性能をより強固にする。具体的には滞留した粒子がビーム反射機能を持つのだ。

 この機能はノイズ・オーロラに非常に類似しておりその応用でビームに曲射を行うことも出来る。このような副産物は想定されていなかったが、それが大元であるアレスモードの持つ特異性なのだと認識し、他モードでも受け入れることになった。なお実弾はそもそもキングモードの際に追加される増加装甲で事足りる防御性能を持つ。

 

 

【追加武装】

・ガンランス「ガン・グニール」

 右背部のウイングパネルに転送される銃槍。いくつかのひし形のパーツで構成されている。キングモードにおける主兵装。

 ガンの名の通り銃としての機能を持つが、発射法はひし形パーツの一部を開放し、中から銃口が露出するというもの。更に先端部分も放出機構として機能する。

 それらの銃口を用いて連射、あるいは収束ビームで攻撃することが可能となる。槍としても大分質量があるので遠近相応の威力を出せる。槍の穂後端にはブースターも存在し、突進力も高い。欠点としては扱いづらく、なるべく高速機の相手は避けるべき点なことである。

 モデルはバトルスピリッツの「神機グングニル」の武器モード。名称はグングニルの名称に銃の意味合いを持たせるため、「ガン」を加えたもの。某歌う戦姫の主人公の纏うものもまた同じ名称。正直に言うとそれも発想元である。

 

・キングビットシールド

 左背部のウイングパネルに転送されるビット合体式のシールド。全体的な形状は巨大なひし形となっている。

 特徴的なのは真ん中から十字に分離して、三角形のシールドビットへと分割される点。動きの遅いキングモードの死角をこれにより防いでいく動きが基本となる。しかしこれは盾であると同時にエネルギーの増幅装置も兼ねている。ガン・グニールの周囲に展開して回転、ビームを収束させる。これによりただでさえ強力なガン・グニールの砲撃性能が高まる。また合体状態では拡散ビーム砲として使用が可能で、中央から放出して敵を薙ぎ払う使い方を行うことが多い。

 これでも十分強力な性能を誇るが、本来ならこのエネルギーフィールドは収束に加えて「拡散」も可能なフィールドとなる予定で、現状では収束のみしか働いていない。これについてはまだキングモードの全性能を出し切れていない為、その予定性能がロックされてしまっているものと推察。現在すべてのエレメントブーストシステムの全性能を引き出せるシュバルトゼロガンダム専用サポートユニットの開発が急がれている。

 なおシールドがパージされた後はビームシールドを展開可能。

 

・キングアーマー

 機体各部に増加装甲として装備される重装甲。装甲自体にはDN放出口を兼ねたスラスターが設置される。

 DNフェイズカーボン製ではないものの、実弾に対してはもちろんのこと、ビームに対しても多重剥離式ビームコーティング+DNウォール式積載コーティングによってビームサーベルさえも受け止める。その構造の為に重装甲でありながら質量は思った以上に軽く、平時の飛行にも支障は来さない。これらがキングモード時のビーム反射能力と相まって不落の要塞と化す要因となっている。

 モデルは各種フルアーマー装備。特に構造としてはフルクロスとGN複合装甲を意識している。形状自体は仮面ライダーブレイドのキングフォームを参考。

 

 

<ハルピュイアモード>

 エレメントブーストシステムにより追加されたシュバルトゼロガンダム・ジェミニアスの戦闘形態。フレームカラーは水色。本来の蒼よりも薄い色なのが特徴。

 本機の担当する戦闘領域は、高機動、かつ、オールレンジ攻撃である。追加される兵装もビットであり、現状のシュバルトゼロガンダム・ジェミニアスでもっとも負担が大きいように思える。しかし追加される尾部ユニットにはビット制御用の支援AIユニットが搭載され、その負荷を打ち消すため強化前と同程度の負担で戦うことが出来る。尾部ユニットはスラスターも兼ね、上がった機動性と絶え間ないオールレンジ攻撃で、敵を翻弄する。

 それらと引き換えに機体の性能は防御性能が低下している。これはビットの攻撃、機動性能にDNを割り振ることを優先としてしまっているために、防御用のDN供給が遅れて防御性能が低下してしまっていることが理由として挙げられる。

 パネルウイングの配列はバックパックを中心に円状に広がる形で装備される。この際バックパックから円形の専用接続部が展開される。追加装備装着時のウイングは質量の減少を引き起こし、機体をより軽くする性質を持たせる。

 モデルは仮面ライダーグリスブリザード。あちらはファンネルのような遠隔操作武器は存在していないが、あくまで全体像のモチーフということになる。ウイングの配置はアニメ遊戯王VRAINSのファイアウォールドラゴンの攻撃時の翼変形が配置的には一番近い。

 

【追加機能】

・エレメント・アイス

 機体のフレームから放出されるのは水色の粒子。ハルピュイアにおいてこの粒子は機体のエネルギー消費を抑える機能を持つ。これは一定空間中にも流れ、影響内のビットの稼働に必要な消費DNを抑える働きがある。

 これによりビットの稼働時間を延ばすことが出来る。ただし動かす時間を長くすることはそれだけパイロットの負担にもなり、一長一短ではない。

 

 

【追加武装】

・ハルピュイア・テイル・スラスター

 背面中央部から下方に伸びる鳥の尾羽のようなスラスターユニット。スラスター口の付近には内蔵したビットの射出口が併設される。

 武装の系列的にはGワイバーンのテイル・バスターが大元となっている。しかし性能はスラスターと武装のプラットフォームとなっており、内蔵した支援AIの命令で「フェザービットC」を計八基で攻撃を行う。スラスター自体は非常に強力で、パネルウイングをすべて展開した後でもモード変更前のジェミニアスと同等のスピードを授ける。

 

・フェザービットC

 ハルピュイア・テイル・スラスターの内部に格納される合計八基の遠隔操作端末。ウイングパネル自体のフェザービットの小型版。

 機能はDNプロテクション発生機能が消失した程度で射撃能力を継続して持つ。だが代わりにビームソードを纏った突撃が可能で、近接による切り裂きも行える。

 モデルは機動戦士クロスボーンガンダム鋼鉄の七人にて登場するインプルース・コルニグスのフェザーファンネルおよび機動戦士ガンダム00のGNファング。

 

 

<ネクロモード>

 エレメントブーストシステムにより新たに追加されたシュバルトゼロガンダム・ジェミニアスの新たなモード。フレームカラーは紫。機体のカラーリングに交じった紫とも合わせてある意味スタートのメインカラーである。

 本モードでは機体の性能が等しく全体的に向上する。追加武装もあらゆる場面を想定してジェミニ・アームズをベースに発展させた専用兵装群「ネクロ・アームズ」へと換装される。これまでのシュバルトゼロガンダム、元の戦い方よりも手荒な、というより戦い慣れた動きで敵に碌な抵抗を与えず迅速に制圧する。近接戦がどちらかと言えば得意な布陣。武器による近接武器戦闘戦重視と言えばいいだろうか。そう言う意味ではキングモードに似て非なる性能。

 それもそのはずで、このモード時のデメリットはズバリ「元とジャンヌの制御を離れる」。所謂暴走と言うべき性能となる。とはいっても厳密には暴走ではなく、スタートに操縦を預けると言ったもの。スタートがシュバルトゼロガンダム・ジェミニアスという体を持ち、現実世界に介入する。ただしスタート自体も次元覇院に代表されるカルト集団には嫌気が差しており、彼らを滅ぼせるならとそれ関係の目的自体には素直に従う傾向にある。だが逆にそれに関係なく、なおかつHOWの対処にそぐわない時には己の意志で行動する。なおこれはどうやらシステムがスタートの精神に干渉しているようで、スタート自体に悪意がない場合もある。それにより枷のない猛獣であるために万が一の時には無理矢理操縦権限を奪い返し、別のモードに切り替える機能が元達の側のシステムに存在する。

 またこのデメリットも元達が戦えない時は別で、彼らを守りながら敵地から脱出するという使い方も出来る。いずれにせよスタートの気まぐれに左右されるモードのために使用は推奨されていない。

 パネルウイングの配置は三枚一組で二等辺三角形を作るように接続し、四方に翼のように展開した形。

 モデルは仮面ライダーローグ、そして仮面ライダーオーズ・プトティラコンボ。武装の形状とエレメントの粒子の性質はローグに、そして暴走する点はプトティラコンボからの要素。

 

【追加機能】

・エレメント・カオス

 機体フレームから放出される紫の粒子。ネクロにおいてこの粒子が作用するのは機体の装甲である。装甲付近に作用したキングモードのエレメント・スパークとは違い、装甲自体に作用する。その能力は装甲の硬質化と攻撃時のスリップダメージである。

 能力が二つあるように聞こえるが、もっと細分化するなら「装甲の鮫肌化」。鮫肌のように固くざらついたものになるのだ。これにより敵の攻撃を受け止め、敵装甲を通じてMSの操縦系統に侵入して装依状態の人間に鮫肌に生身で触れた時のような傷を付ける。MS自体には傷はほぼ付かないが、大抵のMSは人が乗っている。それを利用し、パイロットに狙いを絞った機能になっているのだ。

 これは現在も続くマリオネッターシステムにも通用し、むしろそれに対し死の恐怖を与えられる方法の一つとしてこのメカニズムを利用しようとされているほど。

 モデルは仮面ライダーローグのライダーとしての装甲システム。加えてそこに鮫肌の性質を付与している。

 

【追加武装】

<ネクロ・アームズ>

 ネクロモードで使用される武器群。ビームピストルとブレイドエッジ、ナイトナイフ、ブラッドディスクで構成される。

 それぞれの武器はジェミニ・アームズと同じく組み換えが可能で、多様な攻め手を有する。この武装に限っては他の形態で使用することも出来るが、やはりもっとも有効に扱えるのはこのネクロモード、スタートのみである。

 武装モデルは仮面ライダービルドのトランスチームシステムを持つトランスチームガンとスチームブレード。ブラッドディスクはべリルダガーⅡをベースとする。

 

・ビームピストル

 右上方パネルウイング部に接続される小型ビーム銃。近接戦での取り回しを優先し、銃口を切り詰めた仕様。

 ビームも短射程だが、威力はむしろ通常のビームライフルよりも高め。そこにブレイドエッジを合体させて更なる威力を引き出す。

 モデルはトランスチームガン。

 

・ブレイドエッジ

 左上方パネルウイングに装備される分割短剣。

 素早く扱うために刃は短い。ビーム刃を発生させることは出来ないが、それでもDNフェイズカーボンにもある程度のダメージを与えられる強度と切れ味を持つ。だがやはり狙いはほとんどがフレームを狙う傾向にあり、なるべく脆い部分を狙っているものと思われる。

 また剣は柄部分から分割でき、ビームピストルとの合体機構を有する。

 モデルはスチームブレード。

 

・ナイトナイフ

 下方パネルウイングに一組ずつ装備される実体ナイフ。

 MS用のサバイバルナイフで、素早い連撃を生かした攻撃が主流になる。また柄付近がはめ込みパーツとなっており、もう一本のナイトナイフ、あるいはアサルトエッジと合わせることでハサミ型の武器「ナイトシザー」か「アサルトシザー」とすることが出来る。

 名称のナイトは仮面ライダービルドのナイトローグから取っている。

 

・ブラッドディスク

 下方パネルウイングに一枚ずつ装備される円形集合体兵装。三つのダガーユニットが合体して一枚のディスクを構成する。

 主にけん制の為に投げられる。投擲後はファンネル操作の応用で自動的に手元、あるいはウイングに戻る。それ以外にも小型の実体盾としても用いられ、更に耐ビームコーティングもあるため案外応用が利く。

 モデルはフレームアームズのレイファルクスのアーセナル・アームズの一つベリルダガーⅡ。三枚一組にしたシールドモードがある。

 

 

<組み換え一覧>

・ネクロブレイドライフル

 ビームピストルとブレイドエッジを合体させた銃剣形態。銃身の下部にはそのままブレイドエッジの刃が来る。

 ブレイドエッジの峯がライフルの銃口となり、収束率はなかなかの物。簡易的な狙撃もこなせる。予定では機体のDNを用いた特殊弾頭を使用可能なライフルになるはずだったが、精製が上手く行かず、外付けの特殊弾頭を装填してからとなっている。

 ブラッドディスクとも組み合わせることで特殊なサブセンサーとして扱え、見えない敵もロックオンが可能。

 モデルはトランスチームライフル。

 

・ナイトシザー・アサルトシザー

 ナイトナイフ二本、あるいはアサルトエッジとナイトナイフを合体させて完成するハサミ型兵装。

 挟み切るための兵装ではあるが、これで斬るものはライフルの銃口など比較的装甲の薄い箇所に限られる。それよりも刃を重ねた状態での突撃が貫通力を高めているためハサミにしては珍しい、閉じている方が強い。

 

 

グリーフィア「以上、何だけど、言わせて。何であんたの主役機はこうなるの」

 

士「こんなに多いならせめてジェミニ・アームズは第1章時点で基本装備として納めておくべきでした、まる」

 

ネイ「いや、入れたらあっちが後半になりますよね。あとそれでも多分こっちも後編に収まらないです」

 

士「まぁその分紹介はちゃんとしてるから感想」

 

グリーフィア「まぁ得意距離分けて対応できるようにしてるのはいいと思うわぁ。けど最後のネクロって必要だった?」

 

ネイ「どっちかっていうとまたビ○ドに引きずられている感が」

 

士「そうだけどもやっぱピーキーさは必要でしょ。あとスタートの存在が第2部辺りから薄れてたからね。それを補っていく意味もある」

 

グリーフィア「あーなるほど。それは言えてるわねぇ」

 

ネイ「スタートさんがいるってことを忘れないようにするための第4形態ですか」

 

士「そういうこと。あと4はDNジェネレーターの大元であるガンダム00で、あることを意味するから」

 

ネイ「4……ガンダムマイスターの人数?」

 

士「その初期人数。まぁそれぞれの世代が4機ずつ作られてたからね」

 

グリーフィア「そこをリスペクトってわけね」

 

士「まぁ予定されてる追加パーツと合体するともう1形態追加されるんですが」

 

ネイ「ガンアーチャー?それともダブルオーライザー……?」

 

士「ライザーライザー」

 

グリーフィア「まぁそう言うことで結構紹介する武装も多くなっちゃったわけね。けど今の時点でもチートなのにこれ以上あるって明言されているのは色々大丈夫って思うわねぇ」

 

ネイ「ゼロン勝ち目あるんですか……?」

 

士「まぁでも一人の英雄で全てを変えられないのはガンダムシリーズあるあるよイグジスト、ディナイアルが新人で助かったみたいなところあるし、それに未だに何でヴァイスインフィニットがいないのかのも伏線だ。この勢いのまま行くけど次回はアナザーUC・NT編だぞ」

 

グリーフィア「あんた今なんつった!?」

 

ネイ「ね、姉さん言葉遣いがっ」

 

グリーフィア「流石にビビるわぁ……だってUCとNT出るって言ったら、ラスボスはあれじゃない。は?あれを二機相手するっての?」

 

士「それは……その時までのお楽しみだ。それ級のファンサービスとしてオリジナル、というか原作の廃案を復活させるつもりだし」

 

ネイ「えぇ……?」

 

士「というわけで、次章、「名付けられしモノ」編をお楽しみに」

 




以上、黒の館DN第6回でした。今回もお読みいただきありがとうございます。まぁ設定用語集に続くんですがね。

で、とうとう危惧していた続・後編の登場なんですが、何でこんなことになったんでしょうね。分けても良かったんですけど、もう文章後半に差し掛かったあたりで諦めました。文章途中まで3話で収まるみたいなのはもう戒めです。

余分な物を付け足していくのはよろしくないからみなさんは注意してくださいね。というわけで続く用語設定集もよろしくお願いします。ではまた次回。


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機動戦士ガンダムDN 用語設定集5

用語設定集5となります。LEVEL3第1章から第2章までの用語の説明となります。それではどうぞ。


 

・東響掃討戦[2]

 LEVEL3にて明かされた事実として、この基地の発見に至ったのが相模宗司の幼馴染の一家が次元覇院だったことが発覚することに端を発するものだと判明する。

 警察へと情報が渡った際、すぐさまその所長が当時のHOW、MSオーダーズへと相談し、彼ら一家の隔離が決定。以後すぐさま周辺の調査が行われて、西東響ガーデンタウンの地下要塞化が判明した。

 作戦後、一家は他の家を含めて崩壊。その中から三人の遺体が発見された。ただしかなり損壊が酷く、両親は分かったが一人娘かどうかまでは分からなかった。

 

・私立陣泰高校

 第1章にて相模宗司が通っていた高校。創立80年近くになる高校で歴史ある学校だった。しかし校舎が相応に古くなってきていたため、入学者が減少。テコ入れも兼ねて一年前に大改装が開始され、それに乗じる形でMSパイロット育成を行える高校として一新された。

 全校生徒は450名前後。中には官僚の子息なども通っていたため、MS教練も含めて知名度が上がってきていたが、今回の襲撃事件を通してやや入学志望者が下がってきているとのこと。ちなみにLEVEL2の入嶋千恵里の第2志望の高校だったが、同級生の友人である羽馬都美樹の受験は知らなかった模様。

 もとはフルメタル・パニック!の陣代高校のパロディ。あちらの高校もASによる襲撃事件があったが……これは言わないでおこう

 

・ゼロン[2]

 2034年の一斉蜂起が彼らの表立った活動開始となっている。現在は蒼穹島、メテオリア、トライエイジスなどといった勢力と協力・行動を共にするようになり、中でも蒼穹島勢力が非常に重宝されている。

 またゼロン本隊も真紅の流星の再現や本人である真紅の流星が退いていないことから非常に厄介な相手となっている。中でもギルボード・デュランザスの一派は新進気鋭。

 

・ハロ

 HOWで採用されている、球体の汎用型ペットロボ。エネルギーは大型バッテリーで一回の充電でおよそ6時間稼働する。

球体状態で持ち主に付いて行き、癒しとして音楽の再生や、ゲームの運用などを行える。特にガンダムDN関係の個体は内部に専用スターターを格納しており、MS装依前のパイロットの護衛の為に非常に頑丈に出来ている。電源も内蔵されたスターターで装依する機体のDNジェネレーターによる発電で電池の切れる事態はまずない。

 それ以外の個体でもHOWの修理作業の個体は専用の作業用ベースと合体して補修点検などの支援を行ったりする。

 モデルは機動戦士ガンダムシリーズのハロ。ダブルオーのものが特にベースモデルだが、乗る前の生身の保護など、別シリーズからの流用も認められる。

 

・MS所持法[2]

 本世界の所持法は何度か改定されている。特に一番大きな改定が起こったのは黒和元とジャンヌ・ファーフニルがこの世界に舞い戻った後に多い。

 年齢制限の緩和や所持法の専門用語の変更があり、これらは全て異世界マキナ・ドランディアとこの世界が仮に繋がった際に、あちらとの齟齬を少なくする目的が主目的。第2章では特にジャンヌと同じ世界のエンゲージパートナー、エターナが現れたことでこの改訂は正しかったと言える。

 なお所持法取得のための問題には、かつて千恵里が使用した緊急脱出用スライダーの事も追加されており、使用のための心得、推せ地元はいかのおすしのような言葉遊びである。

 

・ドリツ

 本作における、ドイツに位置する国家。大体準じている。

 

・特別単位引き換えシステム

 私立東響湾ピースランド学園にて採用される、MSパイロット学生への特別な制度。MSパイロットとして既に働く学生が、どうしても外せない任務に駆り出される際、その授業の単位をそれらに参加することで修得できる。その際勤め先から任務に参加したとしてサインをもらって学校に提出する。

 この制度に当てはまる生徒は学園内で1割が当てはまっており、意外にも活用されることが多い。この制度は黒和元が本編以前に通っていた職業学校での制度をモデルとしている。

 

・疑似国家・観光国家オース

 現在日本の領海内に存在するいくつかの島に自治体を置いて日本の資源に役立てる動きがある。それが疑似国家である。

 日本だけではなく、世界中で取り組まれている国家制度で、いずれも既にある領海内の新島を疑似国家に選定する。

 観光国家の他に医療研究島、最先端技術研究島、果ては宇宙エレベーター保有島まであり、多種多様。

 しかしそれらは全て表向きの内容で、これらの島はいずれも極秘裏に作られた移動要塞型人工島となっている。目的は無論本土の防衛、機密兵器の開発の為で前線基地としての役割も持っている。

 その一つであるオースは観光国家であると同時に遺伝子研究と途中からMS開発を紐づけた研究島となる。種命島を中心に花王島、獅子王島、種道島の4つの島々からなるこの島は海中で繋がっており、地下研究スペースには多くのMS開発工場などがある。後述する虚無戦争においてはこの地下施設が制圧されてこれの奪回が第一目標となっていた。

 観光国家としても十分な見どころがあり、名産品の海産物や品種改良により生まれた新種の野菜などを使用するレストランなどが有名。また人工島ながら自然が良く、それらを見学するツアーなども見どころの一つ。宿泊施設の種類が多いことも魅力であり、洋風から和風までさまざま。どちらかと言えば宿泊地の制覇を目指す人間が地元の人達の楽しみの一つでもある。

 

・虚ろの零

 3年前にオース国内にてその主権を奪い取ろうとする一派が結成したテロリスト集団。首魁はオース政府のタカ派であった明沢 鳶丸(あけざわ とびまる)

 タカ派の主張としては軍事技術の積極的行使であり、自国の遺伝子技術で誕生した住民たちを日本政府に兵士として提供することを望んでいた。が対する派閥の大守 重玄(じゅうげん)は時期早計かつ人道的な判断ではないと反対され、議会もそれを重視して勧められずにいた。

 それを不服として鳶丸は自らの考えを証明すべく、武力によって政権を奪取することを画策。自身の息子正を含めたオース軍精鋭部隊の好戦派と同調した狂真 嵐(きょうま らん)の部隊を率いてクーデターを起こし、島を完全に占拠してしまう。

 その後動乱に乗じて種命島を脱出していた強襲揚陸艦天台守に避難した大守姉妹を狙って当時の新型MS「ファーストシリーズ」を駆って襲撃を掛けるも、同じくファーストシリーズで唯一奪還を免れていたオースストライクガンダムを中心としてMS部隊が迎撃しながら各地のハト派の軍と協力して島の施設を奪還。やがてファーストシリーズの最終機、オースフリーダムの奪回やオースジャスティスと正の脱走を経て最終兵器「リ・ジェネレイション」の起動まで行われたが、その過程で鳶丸は暗殺。裏で暗躍していた嵐によって主導権が握られて世界を滅ぼそうとするが、オースフリーダムの大和輝と、日本政府の使いとしてやってきたHOWの部隊、黒和元によって黒幕の嵐と各地の虚ろの零を制圧してクーデターは終結。

 結果として正を含めて奪還あるいは状況説明に協力したメンバーは猶予などを含めて早期に釈放。協力しなかった面々は本土に送られて戦争犯罪者として軍刑務所に入れられた。この時の調べで狂真嵐が頻繁に本土のゼロン関係者と連絡を取っていたこと、そして島民の何人かが嵐の独断で本土のゼロン本拠地に送られていたことからゼロンの事件としても処理されている。

 

・人工基地島ゼロン・フロンティア

 本世界の日本の西の中心、台坂府の湾に建設された要塞。外観は教会らしい装飾が施されているが、各所に対空兵器やMS発進口を備え、周囲には監視のMSが展開される。

 かつてのホリンのような移動基地ではないものの、防衛能力は同等以上であり、たどり着くのにも間に配置された防衛線力を突破しなければならない為以前の時よりも侵攻速度が下げられる形となる。が、逆も当てはまり、本拠点からHOW本部への侵攻はあまり向かない。

 ちなみにかつての本拠点三枝県には前線拠点が立てられているが、こちらのオマージュのような外観となっている。

 

・超次元現象

 地球において次元障害と呼ばれていた現象。名称がマキナ・ドランディアで呼ばれていたこちらに変更となった。こちらも名称などはMS所持法の基本知識として加えられている。

 

・虚無戦争

 3年前のクーデターから始まったオースの国内戦争のこと。戦争の経緯については前述した虚ろの零の項目にて。

 皮肉にもこの戦争によってオースの重要性を日本政府、ゼロン双方が理解し、日本政府は復興と兵器輸出についてなどの取り決めを慎重に行い、ゼロンは美愛派と密かに組むようになった。名称は黒幕狂真嵐が戦争を引き起こした目的を「自分を生んだ醜いこの世界を虚無へと帰す」ことを目的としていたことから。

 

・最終破壊兵器「リ・ジェネレイション」

 虚無戦争にて使用された大量破壊兵器。クリアージェネレーターから供給されるDNと空気中水素を使って強力な次元粒子レーザーで焼き払う。

 種命島の黒金山山頂に設置されていて、可動式のパラボラアンテナ型の発射装置から種命島周囲の敵を撃つ。更に上空に撃つことでエネルギーを周囲に展開、汚染領域として機能する防御壁としての役割を持たせる使い方も出来る。もっとも装置そのものが超強力なDNフェイズカーボンで構成されているため、破壊するには相当の威力が求められる。単機による通常のDNF、DBでも破ることは難しいと言われていた。

 元々はコードネーム「カミカゼ」と呼ばれており、使用法も座標を指定してその周囲に次元粒子レーザーで作り上げた交戦不能領域で防衛対象を護るというのが本来の使い方。決して破壊兵器として使うはずではなかったが、クーデターによる制圧後、虚ろの零側の関係者の手により制圧した直後から改造されて破壊兵器として完成してしまった。決戦では何物も寄せ付けない力を見せたが、同時展開していた施設開放に参加していたオースジャスティスの自爆で内部から爆破、東日本に向けようとしていたレーザーのエネルギーの暴発も含めて完全に消滅した。

 モデルは機動戦士ガンダムSEEDに登場した大量破壊兵器「ジェネシス」。あちらはガンマ線レーザー砲であり、こちらも核に由来していると思われるクリアージェネレーターから供給していることから共通点を見出せる。なお元々は戦略兵器などではない使い方を主軸にしていた点も同じである。

 

 

・プロジェクトAS(アズ)

 25年前に世界各国が認証した遺伝子改造計画の名称。

 当初は宇宙空間に適応し、作業を的確に行える人材を育成するための計画で、日本を含めた各国が一斉に新島に偽装した人工島で開始される。日本では種命島列島と蒼穹島列島で行われ、それぞれ自分達の遺伝子を用いて宇宙空間に適応した子どもを作っていた。

 15年前にMSが登場して以降は、MSのパイロットとなることも考慮して遺伝子の調整が開始されている。またそれ以前から種命島と蒼穹島の勢力は機械との連携を考慮して独自のインターフェイスとの連携を考慮し、それぞれのSEEDシステム、システム・ヴァルニールとの連携に特化した子どもを誕生させ、より練度の高い人材を揃える形を取った。これが両勢力のSEEDシステム、システム・ヴァルニールを核とする運用をしている理由でもある。

 これらのプロジェクトは元々兵器転用が禁止されていた。ところがMSのパイロット転用が検討された時点でこれは削除され、国の防衛線力の一部として提供できるようにもなっていく。

 これに対し、オース前々代表大守重玄と前代表大守里奈、現代表の大守明日那はあるべき形へと戻すことを提言し、遺伝子操作者、「コーディネイティア」の戦争投入禁止を呼びかける。が、各国の決定は変わらず、逆に前回と今回の事件の責任として大和進、並びに大和真由の実験的投入としてHOWへの派遣が行われることとなった。

 名称は「アフター・スペース」の略。メタ的には「アーカディアン・シード」である。

 

・蒼穹島

 オースを擁立する種命島と同じくプロジェクトASにより誕生した人工島。西日本側の人工島となっている。オースのような政権はなく、表向きは島としてひっそりとかつての日本のような生活を行っていた。

 システム・ヴァルニールを核として宇宙での活動に適した人類を遺伝子改良で誕生を目指した。しかし種命島側と違い子どもは母体からではなく、機械で子宮を再現した疑似子宮を用いて誕生させる。母体の生活が子どもの状態に影響しやすい種命島式とは違って思い通りの子どもが誕生させやすい。

 とはいえ最初からこれが成功したわけではなく、人工子宮の完成度が低い時は多く子供を死なせてしまったり、システム・ヴァルニールに適した人間を作るための遺伝子が暴走により子供を殺してしまったりして資金難に陥ることも多々あった。

 国からの援助もあったとはいえ、それが素直に通ることがないこともあって、その結果過去に狂真嵐と火葉零などのクローンを作る依頼を引き受けて援助金として秘密裏に融資を受けるなどしてきた。

 虚無戦争の後からゼロンと協力関係を結ぶことになり、1年後のゼロン決起時に三枝を含めた近紀地方を侵略。そこでシュバルトゼロガンダムRⅡの指揮する部隊と対峙し、同機と部隊を撤退へと追い込む大戦果を挙げたことで組織の中核メンバーとして名を上げている。

 モデルとなったのは蒼穹のファフナーの勢力、竜宮(たつみや)島。今作ではアニメーター繋がりのあるSEEDシリーズとのつながりで一部再現の役割を担っている他、同じ遺伝子改造をテーマにした競演を行う。

 

・HDB「ハイパーディメンションブレイク」について

 HDBとは通常のDBの派生技である。名称の通りDBをより強力にしたものであるが、その思想は「通常機で如何にDNFに近い性能を編み出すか」にある。

 ターゲットとしてはDNFでないと撃破出来ない機体、過去のMAやマキシマム・タイラントなどに比類する機体達に対してであり、また同時にDNFを使う機体に対するカウンターの意味も込められている。

 それだけの威力を通常のDNジェネレーター機で生み出すのにはかなり制限があり、特定状況下でしか発動できない。今回登場したHDB「インパルス・フルコンビネーション」は圧倒的な高出力状態を連続で維持する為にほぼエネルギーマックス状態の上3つの換装パーツを高速換装、エネルギーを利用している。あまりエネルギーを使う攻撃を使っていない上にこれまでシュバルトゼロガンダム系列が使用してきたDNFと比べて威力が低いように思えるが、これは機動に対しDNが振られているためであり、名称がコンビネーションとなっているのもそれが原因。あれだけの連続攻撃は通常インパルスの各部エネルギー負荷が高く維持できないのである。

 HDBはこれ以外にもいくつか存在している。なおガンダムDN・アーバレストのドライバフォームにおけるDNFがHDBと間違えられるがアーバレストのそれは間違いなくDNFである。

 



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第3章 名付けられしモノ
EPISODE35 出会うマイ・フェイト・ガール1


どうも、皆様二週間近くぶりです、藤和木 士です。ようやく第3章突入です。

レイ「今回は前より時間空かなかったね。それでも酷いんだけども」

ジャンヌ「理由は、私達としては推察できますね」

ごめん、バト○ピのCS権利戦もあったんだけど、今回はPCゲーやってたのもあります。あんまりそっちは進められなかったんですけどね。

レイ「言ってたねぇ。ツイッターで」

ジャンヌ「まーたお気に入りの声優さんの作品ですか」

まぁほどほどにしたおかげで権利戦は無事権利とれたんですけどね。というわけで本編再び2話連投で、まずはEP35から、どうぞ。


 

 

 観光国家として活動していた研究施設「オース」においての戦闘からおよそ1か月が経とうとしていた。

 予定していた日にちから一日遅れで帰還したのち、宗司達学生組はテレビで放映されていた事件のあらましについて質問攻めを受けた。同じ学校の生徒が事件の現場にいたともなれば、好奇心旺盛な学生だったなら当然の行為と言えるだろう。

 だがその好奇心の矛先はすぐに別の方向へと向けられることとなる。数日遅れでオースからの出向者、大和進とその妹真由が日本本土へと渡ってきた。真由は学生としても試験的にコーディネイティアの採用を行う手筈だったため、当然HOWの管轄である東響湾ピースランド学園にも転入したのだ。

 当然、島からやってきた彼女に注目が集まるのは当然で、宗司達の下にやってきていた人だかりはそちらに流れていった。既に慣れていた宗司達とは違って、来たばかりの真由が困惑するのは考えるまでもなく、HOWから指示を受けた教師たちがすぐさま規制を行った。

 今ではすっかりほとぼりも収まり、友人も出来ていた。そしてその兄であり、本命ともされる進も、慣れない街と味方との連携に四苦八苦しながら、オースインパルスでCROZE部隊の一員として戦場を駆け抜けていた。

 そうして彼らがHOWに順応し始めてきた頃、HOWの上層部はとある動きを行おうとしていた。かねてより行っていた作戦に、CROZEも参加させるために。

 

 

 

 

 HOWの大会議室の一室、そこに元とジャンヌは居た。部屋には次元黎人、情報部主任の葉隠閃、整備主任の来馬真希、そしてSABER部隊隊長にして、ブラウジーベン・ライブラのパイロットである蒼梨深絵が会する。

 なぜHOWの前身、MSオーダーズ時代からの重要人物達が集まっているのか。それはとある案件によるものだった。その発端である深絵が端末を操作しながら問題について報告する。

 

「現在私達SABER部隊は自衛軍から引き継いでアンネイムドシリーズ最後の1機、アンネイムド[フェネクス]の捕獲作戦を展開しています。ですが、その捕獲は困難を極めています」

 

 深絵の口から語られたアンネイムド[フェネクス]の名前。忘れもしない。4月に元自身が宇宙に上がり、地上へと叩き落したMSの名前だ。

 あの作戦の後、HOWと自衛軍の話し合いで任務をこちらが捕獲を引き継いで、それをSABERが実行していた。いくらDNLの超常の力を対策し、圧倒する性能を見せる機体でも地上で深絵には敵わないと思っていたのだが、そう上手くはいかなかったようだ。

 黎人がこちらに詳細について補足する。

 

「地上に落ちて、アンネイムドは確かに機動性の一部を損なっている。だが却って地上に戦場を変えたせいでこちらが無暗に発砲できなくなったのも事実だ」

 

「資料を見る限りでは、あのスピードも言うほど落ちてもいないみたいですしね。これはブラウジーベンでは厳しいかもです」

 

 ジャンヌが見る映像資料には確かに、今までとさほど謙遜のないスピードでブラウジーベン・ライブラのビット攻撃を避ける姿があった。味方他機の砲撃すらも回避していく姿はやはり圧倒的で、DNLでなければ、いやDNLでも相当の実力者でなければ対処は困難を極めるように思える。

 当時のシュバルトゼロRⅡでも不意討ちと自衛軍との協力による攻撃でしかダメージを与える場面がなかった。それをいくら後発機とはいえDNL専用機ではないブラウジーベン・ライブラが捕獲出来ないのは無理もなかった。

 そしてもう一つ、映像には捕獲できない理由が映っていた。それについて葉隠が触れる。

 

「フェネクス自体もそうだが、問題はそれだけじゃない。フェネクスを狙う勢力がいる。しかも二つ」

 

「二つ、ゼロンと、あの女か」

 

 葉隠の言葉に思い当たる節を見せる。かつてアンネイムドを狙っていたゼロンはもちろん、4月の時点でアンネイムドとそれを追いかけるこちらを狙ってきたあのガンダムに指示を送っているとみられた集団の頭。

 諜報部の葉隠は既にその正体を掴んでいた。それを報告してくる。

 

「あぁ。俺の方の調べで、女の身元は分かった。流 未緒(ながれ みお)。岐敷を拠点とする「ルウォ・エンタープライズ」で相談役に就いていた」

 

「就いていた……過去形か?」

 

 言葉の表現にツッコミを入れると、葉隠は縦に首を振ってため息を漏らす。

 

「残念ながらな。俺達が警察と共に動いた時には、彼女は雲隠れしていた。会社の資金の一部横領、並びに同社が保有していた艦船「ローズ・ポート」を奪っていた。現在はその行方を追っているが……間違いなく今後も仕掛けてくるだろう」

 

「ローズ・ポートの設計からして、そんなに長い間逃走は難しいと思うけどね」

 

「本来ならな。だが、彼女は流未緒。各政財界の面々が世話になることもある稀代の占い師、そのうえ、DNLである噂もある。確保もまた今は難しい」

 

 ある程度度を超えた捜査が可能なHOWでも、不用意に彼らを怒らせる行動は避けたい。ならばどうにかして対峙した時に足取りは掴んでおきたいだろう。そしてもう一つの勢力は言わずもがな殲滅する。

 それらを踏まえたうえで、深絵はこちらに本題を切り出す。

 

「以上の点を踏まえて、これ以上今のまま作戦を進めてもどうにもならない可能性が出てきました。そこでSABER部隊隊長として、CROZE部隊の協力を依頼します」

 

「ま、なんとなくそうだろうとは思ったよ」

 

 呼ばれた時点でなんとなく察してはいた。しかしこれらを見て、静観するというわけにもいかない。もっと言えばフェネクスを現在のフィールドに文字通り落としたのは自分なのだから。

 ジェミニアス配備以前なら断っていた協力依頼。だが今は違う。それに深絵にはジェミニアス配備までの間前線を張ってくれた恩がある。共に駆け抜けてきた戦友として断る理由もなく、来馬へと概算を要求する。

 

「来馬としては、メカニックの観点からして今でもやれると思うか。捕獲、そして戦闘の面で」

 

「んー、このカザノから受領する対ユグドラルフレーム機捕獲用兵装の性能次第だけど、少なくとも今のジェミニアスで後れを取ることはないよ。ガンダムDNもアーバレストならワンチャン」

 

「そうか。分かった、引き受けよう」

 

 了解の返事を受けて深絵は安堵して胸を撫で下ろすように感謝を告げる。

 

「ありがとう、元君」

 

「気にするな。ジェミニアスの配備が遅れた分、負担を掛けていたからな」

 

「ですね。私としても前線で頑張ってくださっていた深絵さんに借りを返さなきゃと思っていたところですし」

 

「もー二人共、別に借りだなんて。それを言ったら私達は今まで二人にどれだけ借りを作っているのさ」

 

 いつも通りの口調の会話が大会議室に響く。その姿に呆れを見せつつも変わらないと葉隠が語る。

 

「やれやれ、相変わらずだな。お前達のその態度は」

 

「あ、ごめんごめん。話しがずれちゃった」

 

「すみません葉隠さん。それで、葉隠さんがいるってことは葉隠さんも作戦に参加を?」

 

 ジャンヌが訊ねると、葉隠が自身の今回の目的について言及する。

 

「ゼロンの動向を探るのと、それから流未緒の部隊が出現した時の追尾だな。場所を確認すればどこかのタイミングで制圧部隊に任せる」

 

「もし奴らが出てきたらそちらの相手は深絵に任せたいところだな。あのパイロット、まだ未熟さがあるようだからな。もっともゼロンも来たら厄介だが」

 

「そのゼロンだが、来るとしたらあの部隊だろう。真紅の流星、その再現」

 

 葉隠の話したその名前に沈黙を表す。その名前はゼロンのとあるエースの名前を意味する異名だった。そしてその名前は元にとっても因縁深い相手のものでもあった。

 俺は呟く。

 

「真紅の流星の再現。確かにあの事件、ラプラス事件に関わった人間ならまた同じ人選で来る可能性は高い。そして何より、奴こそ一度ジェミニアスに勝ったことのある人物だ。当てつけとしては申し分ないだろう」

 

「元……」

 

 ジャンヌが心配の声をもらす。落ち着いた言葉だが、きっと今の自分の顔は怒りの表情をしている事だろう。それでもこの怒りを表さずにはいられない。一度は完成したジェミニアスを破壊、自爆に追い込まれたこと、そしてそのためにテストパイロットを犠牲にしてしまったことを、今でも忘れられない。

 黎人もそれを承知しており、そのうえで告げる。

 

「アンネイムドシリーズは今やシュバルトゼロ以上の危険性を秘めたモビルスーツだ。いずれの勢力にも渡すことは出来ない。自衛軍の下で解体処分させなければならない」

 

「そうだな」

 

「シュバルトゼロも同じユグドラシルフレーム搭載機だけど、何がどうしてそのフレームを複製したアンネイムドでだけそんなことが起きるのやら……」

 

 来馬の発言、それは技術者がもっとも気になる点だろう。いや、あの事件に関わったもの、そして何より大元になったシュバルトゼロを操る元ですらも気になる問題だった。付与されたL-DLaが原因なのか、それともパイロットの問題なのか。そのメカニズムさえ分かれば対策のしようがあるかもしれない。

 いずれにしても、フェネクスの確保がなければどうにもならないこと。黎人が作戦の変更について確認の承認を行う。

 

「それでは本件をSABERとCROZEによる合同作戦へと変更する。各隊長はそれらの部隊・整備部門への通達、そして出撃準備を行い、予定日までに準備を済ませてくれ。諜報部はバックアップの為の準備を頼む」

 

『了解』

 

 隊長達の声が響く。SABERとCROZE、HOWが設立されてからもあまりなかった二大部隊による共闘作戦の展開が決定した瞬間だった。

 

 

 

 

 今日も学校が終わり、宗司は帰宅しようとしていた。部活動も入っておらず、ただ基地へと戻って訓練をするくらい。他の人からは退屈と思われるだろうが、これでも悪くないと最近は思い始めていた。

 とはいえ他者との絡み合いが嫌いになったわけではない。そんな矢先に、同じく帰ろうとしていたクラスメイトの信也が教室の出口からこちらを呼ぶ。

 

「おい宗司。途中まで一緒に行こうぜ!」

 

「ん?いいけど……あぁ、入嶋達も来てたんだ」

 

 教室の出口には既に入嶋達HOW組が待っていた。どうやらこちらを迎えに来たらしい。宗司はカバンを持って向かう。

 そしてそんな彼女達に付随する様にやや制服の異なる少女達が顔を見せていた。学校指定ではない私物のハンチング帽をかぶった少女がこちらに挨拶してくる。

 

「あ、どもです相模先輩」

 

「戌村さん。後輩さん達もか」

 

「そういうこと。たまにはいいだろ」

 

 戌村 友直(いぬむら ゆな)、信也達の地元に住む後輩の少女だ。口調から分かるように礼儀正しい子で、とても生真面目な少女だ。それを証明するかのように彼女は既にMS所持法試験を突破し、自衛軍でMSを駆っていると聞いた時はあまりのハイスペックさに驚いた。

 もっともそれはその後に続いたもう一つの事実には更に驚かされたが。と、そこに友直の脇から顔を出す少女が一人声を掛けてくる。

 

「私もいますよ、相模セーンパイ!」

 

「あぁ、真由さんも今日は大丈夫そうだね」

 

 明るめの口調と長めの髪の先をゴムでまとめて肩に流す髪型。その顔は性格の全く違う新しい同僚である大和進の面影を持っていた。

 彼女こそ進の妹で最後の肉親、大和真由だ。その彼女に入嶋が呟く。

 

「注目を受けなくなって、ようやく自分らしい主張できるようになったって感じね」

 

「あ、あはは……流石に島でキャーキャー注目浴びてた私でも、この学園の人達からの興味には怯えますって。島だけだったのが急に都会の人の注目浴びるっていうのは、ね」

 

 入嶋の発言に辟易する真由。真由が転校してきた時は本当にすごい騒ぎで、中心になっていた真由が目を回してしまうほどだった。一度騒ぎを聞いた進が勝手にオースインパルスで助けにやってきた時は警報が鳴ったりもした。

 その後はクラスメイトとなっていた友直やもう二人、教師陣の尽力もあって終結していった。その縁もあって彼女達は真由の最初のこちらでの友達として仲良くなったのだ。

 そしてその二人の内の一人、ここにいる後輩組の最後の一人が声を発する。

 

「……いや、真由ちゃんは、凄いと思うよ。……だって私、い、今でも他の人と話すの、怖い、し……」

 

「……夏香、お前もう慣れただろ?」

 

 最後の一人は信也の後ろに引っ付くように隠れていた。やれやれといった具合の信也が無理矢理彼女を前に出す。

 

「あ、あ、あっ!し、信也やめろっ!」

 

「お前が隠れるからだろっ!ちゃんと俺の友達に挨拶しろッ!」

 

「別にいいよ信也。夏香さんはこういうのってもう知っているから」

 

 最後の一人、猫宮 夏香(ねこみや なつか)はとても人見知りな少女だった。今では親しくなっている信也達地元組とも、最初の頃はあまりしゃべれなかったそうだ。

 最初の内はあの入嶋とも話すことが難しかったのだが、今ではそんな事は無いらしい。が、やはり男が相手だと委縮してしまうらしい。もっとも女性相手でも委縮してしまう相手がいる。

 

「夏香ちゃんありがとう~!むぎゅーってしよー」

 

「あ、あうあう、あううっ!?」

 

「あ、家に逃げた」

 

「ちょっと真由さん言い方っ、ってか夏香!」

 

 真由の接近に対し一目散に信也の後ろに戻っていってしまう夏香。見ても分かるように夏香は真由の性格が苦手だったのだ。詳しい話は知らないが、騒動が収まったころに取られた過度なスキンシップに天敵意識を持ってしまうほどに、苦手意識を持ったらしい。その上真由の方はそれを良いことにいじりたい性格だったらしく、こうして弄る光景も珍しくない。

 その様子に光巴がコメントする。

 

「いやぁすっかりアツアツですねぇ。信也君?」

 

「むぅぅ……信也さん?」

 

「み、光巴さん変なことを言うなって!?紗彩も止めてくれよ!?」

 

 タジタジになる信也。何というか、平和を感じる風景だ。その様子を眺めているのも良かったがここでたむろしているのも迷惑だろうと、提案を持ちかける。

 

「いつまでもここで話しているのもいいけど、そろそろ行こうぜ。他の人にも迷惑だろうし」

 

「そ、宗司……!」

 

「そうですね。宗司先輩の言う通りで……」

 

「詳しい話は歩きながらで」

 

「宗司さん!?」

 

「宗司先輩!?」

 

 少々、いじりたくもなったところだ。概ねの友人達はそれに賛成した。渦中にある信也達と真面目な友直を除いて。

 

 

 

 

「そういえば、友直さんは自衛軍の活動は慣れてきたのか?」

 

「あ、はい。元々配属されたのがうちの地区と縁深いお方さんの部隊ですから、無理なく手伝わせてもらってますね」

 

 信也と夏香が真由ら恋沙汰勢に囲まれる中、宗司は友直の近況について尋ねていた。実は友直と夏香、それにここにはいないが彼女達の知人である「申々木 智夜(ささき ちや)」は光巴に続く最年少のMS所持法突破者。しかも友直と智夜は既に自衛軍で実際に働いてもいることから、光巴の記録を塗り替えて最年少MSパイロットとして活躍しているという。

 最初に聞いた時自分の後輩が既にMSパイロットになっている事実に色々と驚愕したものだ。しかし光巴はあり得ると話した。自分がパイロットとして参加していないのはあくまで標的になり得るからだと。なら狙われることのない友直が先に最年少で戦場に出てもおかしくない話だった。

 同じくこちら側で話を聞いていた光巴が羨ましそうに不平を漏らす。

 

「ほんっと、いいよね友直ちゃん。MSで前線出て大活躍だなんて。私は出たらだめってお預け喰らって、そのせいで最年少記録打ち立てられなかったし」

 

「で、でも光巴先輩って稀有な例が生まれたからこそ、私達だって試験が受けられたんですから。先駆者様様、ですよ」

 

「うー……そんなこと言っても私がMSを纏えるわけじゃないんだから……」

 

 光巴関連の事情に関しては、初めての顔合わせの時に友直達も聞いている。彼女としては複雑な気分なのだろう。

 そんな言葉では光巴の気持ちも晴れない。だからか光巴はむぅと頬を膨らませたのち、閃いたように笑って見せる。

 

「!フフッ」

 

「何なんだよ、いきなり笑いだして」

 

「いやぁ?あなた達が先輩後輩として結構理想的だなぁとね」

 

「理想的?」

 

 友直も首を傾げる。考えに思い至らない二人に話半分で聞いていたエターナが無関心な様子で教えた。

 

「ハッ、要するにお似合いのカップルってことでしょ?二人揃って気づいてないところとかまさしくそうだし」

 

「か、かかカップルです!?」

 

「エターナ、流石にないだろ」

 

「エターナちゃん正解!」

 

「マジで言ってるのか……」

 

 あり得ないと思ったものの、光巴は正解と彼女の横に移動して言った。

 

「無愛想な先輩と生真面目で礼儀正しい後輩。どっかのラノベとかで有りそうな組み合わせよね~」

 

「そーね。そういうの大衆は好んでそう」

 

 珍しくエターナが光巴に同意している。二人の言う通り、ラノベならあり得そうだがツッコミどころはある。俺は二人に反論する。

 

「いや、俺って無愛想ではないだろ。どっちかって言うと感情出す方だし。元隊長じゃないかそれ」

 

「っ!誰があのクソ男がラブコメ主人公ですってぇ!?姉様がアイツのヒロインですってぇ!?」

 

 言うとエターナが舌打ちする。鬼の形相だ。どうやら間接的にでも話題を出すのはアウトだったらしい。というか誰もそんなこと言っていないんだが。

 そんなやり取りがツボに入ったのか光巴は大爆笑でエターナに指摘を入れた。

 

「ちょっ、誰もそんなこと言ってないってぇ!」

 

「本当にそれな」

 

「何よ、アンタが自分は無愛想じゃないって言ったから言ったんでしょうが、自覚できない位朴念仁ってことよ」

 

「あ、それ言えてるかも」

 

 二人の発言に頭を抱える。気付かないのなら朴念仁などと、よくもまぁそんな無茶苦茶な道理を考え付く。

 宗司自身は思っていないのだが、これ以上二人の言い合いに付き合うのも面倒なので形状でやや納得しながら友直に声を掛けようとする。

 

「まさかの誘導かよ……ってか友直さんは……え」

 

「―――私が後輩で先輩が先輩で先輩が私は真面目で、真面目に、無愛想な先輩を好んで」

 

 しかし彼女の陥った状況に閉口する。またか、と思った。実は以前にも光巴のからかいでこの状態に陥ったことがあったのだ。

 所謂パニック状態なのだが、こうなると友直は妄想に耽ってしまう。変な単語も聞こえてくるので止めに入る。

 

「友直さん落ち着け。変なこと口走ってるぞ」

 

「そ、そですね。ととと、とりあえず検索サイトで私達の名前で登録された式場が無いかどうか調べましょうか!」

 

「いや、ないから!?」

 

 結局、調べて「ないですね」と平静を取り戻した友直さんが一言。学校でも剣道部に幽霊部員気味ながらも所属しているらしくて、近接距離はかなり強いらしいのだが今はそんな面影すらない。

 一度見てみたいものだ、という言葉を今は抑える。その頃になると信也と夏香への質問攻めは終わっていた。やつれた顔でこちらの様子を伺う信也。

 

「はぁ……毎度何なんだよコレ……。宗司はまた友直とお話してたのか」

 

「ホント、友直ちゃんと宗司、先輩仲いい」

 

「ホント、ラブラブですねぇセンパイ♡」

 

「ラブッ!」

 

「おいこら真由」

 

 そうこうしている内に学校の校門を抜ける。ここで別れてもいいのだが、どうせならもう少し一緒にと提案しようとしたところでそいつは現れた。

 

 

 

 

「―――なんだよ、こんなガキどもがあのCROZEのメンバーだって言うのか」

 

 

 見知らぬ男性が宗司達に向かってそう毒づいた。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP35はここまでです。

レイ「遂にL3第1章で触れられてたフェネクスと直接対決って感じだね!」

ジャンヌ「地球に落ちてからは深絵さんが追っていたんですね。でも名前からしてファンネル系統の武器を操れるであろうフェネクスを、よくビット装備ガン積みの深絵さんが追おうとしましたね」

あぁ、これなんだけど大体の原因、っていうのもあれだけどこうなったのは宗司君の加入とかの兼ね合いですね。いきなりフェネクスを追えっていうのも辛いだろうってことで、CROZEからSABERに任務が渡されてます。あとジェミニアスの試運転やら、何やらもあってね。

レイ「あぁ、何か作中でも任せちゃった的なこと言ってるもんね」

ジャンヌ「遂にリベンジというわけですか。そして宗司さんサイドは後輩の登場と……」

ようやく子尾君の地元の後輩組出せましたわ。特に友直ちゃん(*´ω`)

レイ「元ネタキャラ、作者の推しっていうね」

ジャンヌ「白髪系、というかブロンド系好きは相変わらずですね。でも今回はブロンド系ではないと」

元々がブロンド系だからそのままもしっくりこなかったんだよね。だから黒に染めさせてもらった。それでも私と来馬さんの性癖に来ますがね」

レイ「言い方!」

ジャンヌ「来馬さんがすっかりネタキャラに……最後には何やら怪しげな人もいらっしゃいましたが、あれは一体……」

あれは、敵だよ、僕らの。と、どっかの作品で言いそうなセリフと共に、次の話へ続きます。


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EPISODE36 出会うマイ・フェイト・ガール2

どうも、藤和木 士です。引き続きEP36の更新です。

ネイ「宗司さんの周り、本当に仲のいい女性さんがいますね。入嶋さんとエターナさん、それに前回からは友直さんですか」

グリーフィア「んー宗司君が誰を選ぶのか見どころねぇ♪」

第2主人公のヒロイン枠争奪戦も気になるところだけど、まぁそんな空気を邪魔する輩が登場ですよ。

グリーフィア「このタイミング、ってことは、フェネクス関連よねぇ!」

ネイ「ま、まだ分からないよ……姉さん」

グリーフィアの予想は当たるのか、というわけで本編をどうぞ。


 

 

 いきなり前からこちらを毒づいた赤毛の髪にコート姿の男、そいつは続けてこちらに向けて言う。

 

「呑気に学校なんて通ってるなら、戦場に出てくるなって言うんだ」

 

「……あの、失礼ですけど、あなたは?」

 

 何者か名乗るように告げる。クルスと紗彩は既に身構えており、宗司と友直も状況を理解して生身での臨戦態勢・エターナや信也達の護衛に入る。

 対して男はこちらの話など聞く気のない発言をする。

 

「聞こえなかったか?学校に通ってるなら、俺の相手なんてする暇ないだろ、HOWなんてクソッたれな組織の飼い犬、いやワンコが」

 

「っ!ゼロンだっていうの!?」

 

「千恵里ちゃん!」

 

 その言い方にカチンと来た私はカバンに仕込んでいた特殊警棒を取り出し飛び掛かる。危険なのは承知だったが、こんなところで銃なんか使えやしない。

 クルスは拳銃を構えてカバーに入った。が、男はそれをひらりと躱す。瞬間周囲が妙に歪む。

 

「きゃっ!?」

 

「千恵里ちゃん!?……これ、実体じゃない?」

 

「フン。血気盛んな奴だ。こんなのだからあの時だって……」

 

 クルスが男の正体を看破する。それにも気にせず何やらぶつくさとつぶやく男。その頃には既に周りの生徒達も異変に気づいていた。

好き勝手されるのは気に喰わない。だが取ってつけで構えていた竹刀を構えなおした友直の発言に、男が反応した。

 

「確かに、私達は組織に所属しているからと言っても、まだ未熟です。でもこれは分かりますです。こうしてカチコミに来てるあなたもその血気盛んな人ではないですか?」

 

「ちっ、生意気だな、お前。HOWの連中の癖に」

 

「私は自衛軍所属ですっ!」

 

「なんだ、元同僚か」

 

「えっ」

 

 耳を疑った。同僚という言葉に思わずクルスの方に視線を送った。クルスも同じことを思っていたようでこちらに視線を返してくる。

 つまり、この立体映像の男は元々自衛軍に所属していたということ。ところがその男は目の前に元同僚がいるにも関わらず、達観に似た言葉を吐く。

 

「けど、自衛軍も結局HOWと同じだった。お前達のせいで、「リア」は……フェネクスは渡さない。お前達HOWも自衛軍もゼロンと同じ、くだらない理想の追求者でしかない。そんなお前達に、もう邪魔はさせない」

 

「リア……?くだらない理想の追求って、あなたは一体、何を知って」

 

「フン、お前が知る必要は、ないっ」

 

 言った直後、男の立体像が友直に向かっていく。足を動かさずに動くその姿はまるで幽霊だった。直後男の映像が光を放ち始める。まるで危険を知らせるように。

 気づいた時には既に千恵里は叫んでいた。

 

「まさか、自爆っ!?みんな逃げて!」

 

「距離を取って!」

 

「ちょっ、マジぃ!?」

 

 放課後のひと時が一瞬で緊迫としたものに変わる。ほとんどの人間は声に従って離れた。が、友直は迎撃をしようとしたのか、それとも緊張したのかじっと睨みつけて動かない。

 

「……っ!」

 

「友直!」

 

 瞬間事態が動く。一瞬で友直の振った竹刀が映像を映し出していたドローンを弾く。同時に相模が友直に飛び掛かり緊急回避を行う。竹刀の直撃で制御を失ったドローンが突撃ルートを逸れ、回転していく。

 そして点滅が加速し、最終的に自爆する。幸い自爆は誰も傷つけることはなかった。その騒ぎで学園の教師陣、警備がようやく駆けつける。

 

「おいなんだこれは!?」

 

「遅いですよ!先生方も警備の人も!侵入者、ていうか侵入ドローン!」

 

 身を乗り出すようにいの一番に光巴が状況を知らせる。千恵里達もその状況報告に協力する。

 そのせいで帰途の時間が大幅に遅れてしまうことになった。しかしそれは意味のあるものであったと私たちは知る。よもやこの出来事が次の任務と繋がるなど、思いもしなかった。

 

 

 

 

 ゼロン本部にて、再び集まりが再び行われていた。議題について代表零崎秀夫が唱える。

 

「では、真紅の流星の再現、ハル・ハリヴァー君が追っているアンネイムド・フェネクスの捕獲作戦に、あの魔王が参加する予兆があると?」

 

「はい。とある組織からのリーク、と言っておきましょうか」

 

 零崎へと言葉を返す銀髪オールバックの男性。その後ろには目元を仮面で押さえた、同じ銀色の髪にカールを掛けた派手な男性を従えている。

 派手な格好、如何にもパフォーマンスと見ていた青年は思っていた。特に言及のあった仮面の男ハル・ハリヴァー。今話している真紅の流星のクローン、再現と言うだけあってそれだけ自慢したいらしい。もっとも失敗作もいくつもいるのだが。それが代表の進める計画の為に必要などと、思いたくはなかったが、今はうさん臭くとも力を使うしかない。

 しかしそれも今回で終わりになるかもしれない。その時を青年はずっと待つ。

 

「組織……か。裏ルートではないということは、本当にそんな組織があるとは」

 

「はい。ですが、その組織もまた妙なものを感じさせます。おそらく、こちらを利用しようとしているのかと」

 

「ふむ……?それでは、どうするのかな?」

 

「あえて、その作戦に乗ろう、というのが私の考えです」

 

「っ!あんた正気か!?」

 

 青年は思わず叫んだ。目立つのがすぐに分かる。しかしそれも気に留めず言葉を続ける。

 

「そんな奴ら、すぐにでも滅ぼせばいい。俺達を利用しようだなんて甘い考えをしている奴なんて!」

 

「落ち着け、まだ話は終わっていない」

 

「ですが!」

 

 代表の声にも反発しようとする。が銀髪の男性、「真紅の流星」本人が彼の言葉に答えた。

 

「私にもその考えはある。だからこそ、彼らに思い知らせるつもりだ。同時に彼らの目的を白日の下に晒す。何を以って行動しているのか。もしかすると協力者になるかもしれないからね」

 

「フン、そんなことで協力者になっても信じるに値するものか。ギルボードの所に入ったあの新人も、ギルボード個人に心酔しているだけではないか」

 

 青年はこれ以上よそ者が入ることを由としなかった。もちろん信者が増えることは嬉しい。しかし彼の基準ではその人物達は味方に値していない。恩人たる代表零崎の身を守る者として、見極めなければ。

 そんな青年に真紅の流星は諭す。

 

「ふむ、確かに代表の懐刀である君の不安はもっともだ。しかし、時には豪胆に突撃するのも必要なこと。君が一番嫌うHOWの魔王ですら、自身の身を表に晒しながらも我々と戦っているのだから」

 

「っ!知ったような口を!」

 

 例えゼロンのエースの一人であっても、青年は構わず反発しようとした。その時、代表の言葉が制止を告げた。

 

「彼の言う通りだ。冷静に、感情は爆発させるべき時を見る。いつも教えていることだ。そしてそれを学ぶ時が来たのだ」

 

「その時……?まさか」

 

 零崎代表の言葉に目を見開く。そしてその予感は的中する。

 

「あぁ、君のゼロン領域外での実戦活動を許可する。ハル・ハリヴァーの行う作戦に、同行してもらいたい」

 

「やった!遂に……!」

 

 待ちに待った時だった。これまで青年はゼロン領域内でしか活動することが出来なかった。それは年齢的にも未熟だったためであったから、代表からの言いつけであった。

 そのせいで青年は何度も魔王に対して苦虫を潰す気持ちを味わっていた。もうそんな想いをしなくてもいいと思うと、高まる気持ちを抑えられない。

 しかし、だからと言ってその条件には納得できないこともあったが。しかも先程まで黙っていたハル・ハリヴァーが青年の参戦に難色を示す。

 

「ふむ、よもやよもや、この私が御守りをさせられることになろうとは思っていませんでしたね」

 

「ほう」

 

「っ、ならお前が来なければいいだけのことだろう!」

 

 ハルに対し来なくていいと吐き捨てる。が、ハルは苦笑と共に現実を告げる。

 

「おやおや、これは元々我々の任務だ。それを君に決める権利があるのかな?同行させると言われて付いて来る君に」

 

「ぐっ、生意気な!クローンの癖に!」

 

「落ち着きたまえ、神治君」

 

 ぶつかり合いを制したのは真紅の流星その人だった。二人を咎め、共同で任務を遂行することを強く言った。

 

「クローンだからと、差別するのは良くない。望まぬ形であっても生まれた者に罪はない。罪があるのは作った者。だが今はそんな清濁も飲んでいかなければならない。代表がそうしているようにね」

 

「くぅ……!」

 

「ハルも、あまり彼に余計なちょっかいを掛けるのは止めてもらおうか。彼の機体が、本当の力を発揮した時、君が勝てると思っているのかな?」

 

「その力をちゃんと出してもらわなければ困るのはこちらだ。「救世主」などと言うからには、こちらを助けるだけの力、見せてもらう。無論それを見るまでは御守りはさせてもらう。だが頼るなよ、こちらも本気で挑まねばならないからね」

 

 青年、神治は言葉に詰まり、ハルは発破をかけるように言い訳を行った。これがこの11年の間戦い続けてきた男の貫禄か。その手腕に周りも評価する。

 

「流石だね真紅の流星。こちらの者達のフォローもしてくれて、次期代表と噂されることだけはある」

 

「私としては戦士として戦い続けたさはあるがねギルボード研究神官。貴官も最低限の仕事は果たしたとはいえ、前回の不始末、必ずつけろよ」

 

「分かっている」

 

 ギルボードへ釘を刺す真紅の流星。ギルボードは種命島制圧に失敗した。が、種命島のMSをこちらに持ち込むという「立案当初の目的」は達したため、不問となっていたのだ。

 こざかしい言い訳だったが、それでも文句の言える者は少なかった。もちろん、自分は文句を言った者の一人だ。

 それらを見て代表はここにいる者達に向けて言う。

 

「今回の作戦、一筋縄ではいかないと思う。だがかつてシュバルトゼロガンダムを倒したこともあるハル・ハリヴァーだからこそ、私は今回の作戦と、救世主神治の事を任せたい。真紅の流星、その再現の力、存分に発揮してほしい」

 

「……お任せを、代表」

 

 ゼロンの進撃は止まらない。救世主の活躍は間もなくだ。

 

 

 

 

「まったく……災難と言うか……」

 

 教師陣からの事情聴取から解放され、ようやくHOW本部へと帰宅を果たしたエターナ達。

 すぐにでもシャワーを浴びて一息着きたい、アイスでも食べたい気分だ。しかしその願いは叶えられそうになかった。本部の建物に入ると姉と部隊長のクソ男、そしてススムが集まっていた。

 こちらに気づくと、こちらに向かって来る。ススムが妹に駆け寄っていく。

 

「真由!大丈夫だったか?」

 

「あ、お兄ちゃん。まぁね、あたしの凄腕の友達と宗司君の活躍のおかげ」

 

「まぁどっちかって言うとその友達、俺の後輩のおかげって部分が大きいけど」

 

「そうか。ともかく良かったよお前達も無事で」

 

 マユの無事を確かめた後、事件に巻き込まれたソージ達にも声を掛けるススム。やはり身内が一番大事なのだろう。ちなみにその友人かつ後輩のユナ達は既に別れている。その直前までソージとユナが謝罪し合っていたのはらしいと思った。

もっともそれはエターナにも言えること、姉はこちらにも安否を確かめる。

 

「エターナも大丈夫でしたか?」

 

「うん、大丈夫です、姉様」

 

「そう。千恵里さんもクルスさんも光巴さんも災難でしたね。きゃっ」

 

「あ、元お兄ちゃ……って、どうしたの!?」

 

 女性陣の無事を確かめたジャンヌを押し退けて、黒和元が光巴に駆け寄る。姉の扱いの雑さに怒る。

 

「ちょっとあんた!姉様の扱いが雑じゃ」

 

 しかしこちらの言葉を聞かず、ミツハのことを凝視するハジメ。その様子にジャンヌがやれやれと言った具合に肩を竦めた。

 

「もう、元ったら光巴さんの事になると親みたいに見るんですから」

 

「当り前だ。総司令の娘を預かっている。それに今回はHOWの失態でもあるんだ。ドローンにいともたやすく侵入を許した時点でテロと監視対策を見直さないとな」

 

「あはは……それはあるかもね元お兄ちゃん。でも私は問題ないよ」

 

 ミツハ本人も心配しなくていいとその手を引かせた。無事を確認したハジメ達は戻ってきた私達に用件を言い渡す。

 

「お前達、次の任務のブリーフィングをこの後行う。すぐ支度しろ」

 

「はぁ!?今から!?」

 

「任務なら仕方ないですけど……でも急すぎませんか?」

 

 エターナは声を裏返らせて反発し、クルスも了解しつつもその理由を尋ねる。するとそれが今必要である理由を告げる。

 

「お前達が接触した男、そいつが次に予定していた任務に関連性があると思われる。作戦に参加させないために、今回戦力を削ろうとしたかもしれない」

 

「えっ、あいつが?」

 

 チエリの驚きはエターナも同じだった。他のメンバーも顔を見合わせる。驚きを隠せない私達にハジメはするべきことを示す。

 

「詳しい話をするためにも、まずは制服を着替えて来い。お前達が来ないと状況説明が出来ないからな」

 

「疲れているでしょうし、続けて同じ話をするのも億劫でしょうが頼みますね、みなさん」

 

『了解』

 

 疲労を残しながらもそう返す。本当にそうだが、また同じ話をするのは面倒だ。どうせ同じ管轄なら学園側から話を聞いてもいいだろうに。もっと言えば聴取に姉様やクソハジメが来てくれれば良かったのに。

 そのエターナの考えは残念ながら作戦の立案を行っていたために不可能であった。しかしそのおかげでスムーズにこの流れを作れていたことを彼らは知る余地もない。

 その言葉に従い、別れたのち宿舎で服を着替える。集まってブリーフィングルームへと向かった。そこで彼らは今回の作戦と男の関係性について知ることとなる。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回はここまでです。

ネイ「元さんも関係あると言っていた立体映像の男の方……姉さんの読みが当たりそうだね」

グリーフィア「そうねぇ♪目的も元ネタ的には分かるかもだけど、言わないでおこうかしら」

そうしてくれ。とはいえ今回注視すべきは間に挟まるゼロン、というべきかな。

ネイ「と、言いますと?」

グリーフィア「あ、分かった。あの妙に突っかかってた子でしょ!」

ご名答すぎるんですわ。あのキャラもいよいよ大筋に関わってきます。

ネイ「確かに気になりますよね。元さんとのつながりは、一体何なんでしょう……」

グリーフィア「復讐とは分かるけど、いつのことになるのやら……誰の関係者か。いずれにせよ、元君もまた命を狙われるわねぇ」

というわけで始まった第3章、割りをストック作れたので更新は前より気持ち少し早いかもです。三日に一回投稿したいところ。

グリーフィア「それも今後の書くペース次第かしらねぇ」

ネイ「気長にお待ちしていてください」

というわけでまた次回。


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EPISODE37 出会うマイ・フェイト・ガール3

どうも、藤和木 士です。今週の事については特に触れません。
EPISODE37、38の更新です。EP37から。

レイ「あはは触れないんだ。お話としてはこれからブリーフィングって感じだったね」

ジャンヌ「下校途中の宗司さん達を襲った人達が誰なのか、明かされそうですね」

一体奴は何者なのか、というわけで本編をどうぞ。


 

 

「来たな、それではブリーフィングを始める」

 

 宗司達が来たのを確認して元隊長がブリーフィングの開始を告げる。宗司達は空いている席の場所まで行き、周りと同じく敬礼を行ってから着席する。

 既に時刻は20時を過ぎている。普段ならスクランブルでもない限り宗司達学生組はこんな時間に活動などしないのだが。しかし気になる点がもう一つあった。今回使用するブリーフィングルームが、いつもの場所ではなく大型の物であること。そしてCROZE部隊以外にも人がいること。

 所属を示す部隊章には「SABER」と書かれている。その名前に入嶋が反応した。

 

「あれ、SABER部隊もいるんだ」

 

「セイバー、って主力部隊だったか?」

 

「そうそう。元々はSABERを主力に他のサポートチームが支援する形だったらしいんだけど、今はうちのCROZEも主力になってる」

 

 主力チームSABER、これまでの強化訓練などで話には聞いていた部隊だ。しかしその主力チーム二つがここにいるということは相当珍しいらしい。

 

「けどその主力2チームが同じブリーフィングって、まさか……」

 

 入嶋のそのまさかが、現実のものとなる。元隊長がジャンヌ副隊長ともう一人の女性と共に作戦の説明を開始した。

 

「今回行うのはSABER部隊より協力要請のあった「アンネイムド[フェネクス]」の捕獲作戦の概要についてだ」

 

「作戦指揮を務めるSABER部隊隊長の蒼梨深絵さん、お願いします」

 

「紹介に預かった蒼梨深絵です。CROZE部隊の中には初めて会う人もいらっしゃると思います。今回私達SABERはとあるモビルスーツの捕獲を自衛軍より依頼されました。それがアンネイムドシリーズと呼ばれる機体の一機、アンネイムド[フェネクス]です」

 

 蒼梨深絵と名乗った女性が端末を操作すると正面のプロジェクターに金色のMSの姿が映る。回ってきた資料には「ユグドラシルフレーム・L-DLa搭載機」と書かれている。

 それを見てクルーシアが一際大きく反応した。

 

「っ!?これって!」

 

「ちょ、クルスどうしたの!?」

 

「何々?知ってるのクルスちゃん」

 

 反応に驚きを示すクルスに入嶋と真由が訊ねる。周囲はひそひそと言葉を紡ぐ。この状況で聞くのはやや無礼かとも思ったが元隊長はそれを咎めることなく、言いたいことを言うように勧めた。

 

「言ってみろ、クルス」

 

 その彼女が頷き、恐る恐ると言った具合でその事実を話す。

 

「……このフェネクスに搭載されているL-DLa、これは、私の機体にかつて搭載されていた、いいえ、今も搭載している「DIENDシステム」の源流とも呼べるシステム、だと思います。違いますか」

 

「DIEND……?」

 

「DIENDって、あれが!?」

 

 入嶋が知っているような反応を示した。クルスの問いかけに元は頷き、深絵がその関連性について語る。

 

「クルス・クルーシアさんの言う通り、アンネイムドと搭載されているシステムL-DLaは彼女の機体ディスティニーライダー系列機とそのオペレーティングシステムDIENDシステムのプロトタイプとも呼べるものです。ですが、その大元は私のブラウジーベンガンダム・ライブラの性能を大きく発展させる結果となった、黒和元隊長のシュバルトゼロガンダムがベースとなった機体です。ユグドラシルフレーム、ツインジェネレーターシステム、その再現機」

 

 ツインジェネレーターシステムは自分達の機体にも搭載されているシステムだ。蒼い高純度DNを生み出すための機構、完成されたDNジェネレーターと聞いている。ユグドラシルフレームも確か元隊長達のガンダムのあの蒼いフレームがそうだと聞いた。

 蒼梨隊長がその機体の現在までの経緯についてCROZE部隊へ説明する。

 

「フェネクスは3年前に行われた同型機との合同性能評価試験にて、機体が暴走し、その後宇宙へと行方をくらませていました。暴走の原因はおそらく対DNLプログラムL-DLaとユグドラシルフレーム、その過剰適合と思われます」

 

 資料を見るとその関連性について書かれている。パイロットの制御を離れ、機体が無理矢理起動させられたL-DLaによって発動した「デストロイドモード」で暴れまわり、止めに入った2号機のパイロットを殺して空へと高速で逃げたと。その際に計測されたユグドラシルフレームの共振率はマイナス数値へと反転していたとされている。

 

「そのフェネクスは今年4月まで自衛軍が特殊部隊を組織して、捕獲に努めていました。ですが困難を極めたこと、そしてゼロンを含めた度重なる違法勢力からの妨害を受けて、あなた方CROZEの隊長黒和元に任務依頼が行われました」

 

「それに従い、フェネクスの捕獲を敢行することになった。だがあの当時のシュバルトゼロガンダムではアンネイムドとの追随は出来ても、機体の確保までは難しかった。だから地球重力へと叩き落すことにした」

 

「そうです。そこから私達SABER部隊に任務が引き継がれ、捕獲命令が下された。けれど今日に至るまでその命令を果たすことは出来なかった」

 

 そこでやや落胆する様子を見せる蒼梨隊長。捕らえられなかったことに相当責任を負っていると見える。が、やや考えがずれていたことを入嶋の言葉で知る。

 

「深絵さんが、そこまで苦戦するなんて……」

 

「まぁ私の機体の相性がアンネイムドと抜群に悪いのが問題なんだけどねー……遠距離戦特化、更にはビット兵器満載で、コントロールを奪われかねない。そもそもDNLでもないのに、DNL対応機を追えって地獄でしょ……」

 

「……随分砕け言い方になったわね。隊長って言うのに」

 

 エターナの言葉に同意見を心の中で思う。もしかして単に手を煩わせてしまうことが嫌だったのか。

 と、話がずれてしまいそうになるのに気づいて、蒼梨隊長は気を取り直してもとの調子で話を続ける。

 

「……失礼。妨害も続いてこのままでは捕獲の目途が立たない。いつまでも主力部隊のたかが一機の捕獲任務に充ててもいられない。だから私の方からCROZE部隊の協力を申し出た形です」

 

「もっともこちらも蒼梨隊長に丸投げする形にしてしまっていたからな。やり残した任務をやるつもりで行く。CROZE部隊一同にはその手助けを頼むぞ」

 

 やり残した理由はやはりシュバルトゼロ・ジェミニアスの配備が遅れたことに起因するのだろう。本来なら2年前には配備可能だったにも関わらず、今年の配備になったのにはゼロンの妨害があったかららしい。

 ゼロンと言えば、アンネイムドの妨害があったという話、その妨害はやはりゼロンなのだろうか。進がそれについて言及した。

 

「手助けって、捕獲と、その邪魔な奴ら、ってことか?」

 

「お兄ちゃん言葉遣い」

 

「……えぇ、けど意味は通って」

 

「一応、お前の行動が今後のオースの派兵プロジェクトの基盤となるがな。それで敵に関してだが、ゼロンは2年前からこの事件に関わっている。だがフェネクスの捕獲に自衛軍が動き出した辺り、ゼロンが関わったラプラス事件終結後からもう一つの勢力が動き出している。どうやら、民間企業の一派が動いているらしい」

 

 進の言葉遣いに軽く答えてから元隊長がそう答える。進は小さく「い、以後気を付け……ます」と反省していた。

 民間企業の名を蒼梨隊長が告げた。

 

「民間企業の名はルウォ・エンタープライズ」

 

「ルウォ……あの」

 

「呉川隊長知っているんですか?」

 

「あぁ。民間MS開発の大手の一つだ。ただ、メインはソフト開発で、MSパイロット育成校のOS基盤も担当している。それ以外にも電子機器の開発元だな」

 

「なるほど、ん?」

 

 呉川隊長の説明に納得しながらも疑問を浮かべる。なぜそんな民間のMSの、OSを開発する企業が軍事MSであるアンネイムドと呼ばれる機体の捕獲を邪魔するのか。どう考えても結びつかない様に思える。

 それについては元隊長達もつかめていないようだが、これまでで分かっている事だけを言及する。

 

「バックに付いているのはルウォだが、どうやら実際に行動を起こしているのはその相談役にして代表の養子である相談役「流 未緒(ながれ みお)」の一派によるものらしい。これはルウォ・エンタープライズ本社にも確認し、また彼女自身は会社から空中艦を一隻奪って一味と共に逃走したらしい」

 

「流……未緒。確か昔話題になった人だね。何でも、DNLだって言われてた、11年前の東響掃討戦で続くホリン・ダウン作戦までの結末を見通した「予言の子供達」って呼ばれてたっていう」

 

「予言の、子供達……?」

 

 その単語にエターナが首を傾げる。もちろんあの事件で色々な目に遭った宗司も、そんな話は聞いたことがなかった。が、光巴は当時の事について説明してくれた。

 

「東響掃討戦の最中、次元覇院のMSとHOWの前身「MSオーダーズ」のMSとの戦闘でビルが瓦解、オーダーズの支援に当たっていた自衛軍が両親達を失った3人の子ども達を保護したの。その後その結末までを予言して、当時の自衛軍は驚いたそうよ。シュバルトゼロのアレスモード発現まで予言しちゃったっていうし」

 

「アレスモードの発現……?え、エレメントブーストって機能じゃない……?」

 

 進と同じ疑問を抱く。奇跡の子ども達よりもそちらの方に目が向けられる。光巴はそちらを簡潔に話す。

 

「突然シュバルトゼロに目覚めた力、元さんからはそう言われてる。実際出所が分かっていないからね、スタートさんも知らないっていうし、ただDNジェネレーターとユグドラシルフレームが揃って初めて機能する力だってのは分かってる。それでその予言の子ども達だけど、有名なのはその1人で、後の2人は全く音沙汰ないんだよねぇ」

 

「へぇ……」

 

「その予言の子供達、お前達は既に関わっているかもしれない」

 

 光巴の言葉に耳を傾けていると、元隊長がそのように告げる。関わっているという表現に引っ掛かりを覚える。入嶋がその言葉が意味する物を尋ねた。

 

「関わっている、って私達予言の子供達なんて初めて聞いたんですけど、知っているって言うんですか?」

 

「そうだ。ごく最近変な奴に会わなかったか?」

 

「変な奴?」

 

 入嶋を始めとしてしばし考え込む学生一同。そこで勘の良い光巴とクルス、そしてエターナが同時に答えを上げた。

 

『あっ、さっきのあの赤毛コート男!』

 

「……あぁ」

 

「え、まさかそいつが?」

 

 自分達の納得に合わせ、元隊長が頷く。蒼梨隊長を始めとして事情を知らないSABER、CROZE両部隊の注目が集まる。

 

「それって今回この時間に呼び出す理由になったっていう?」

 

「そうだ。今日の出来事の説明、頼めるか」

 

「分かりました、今すぐ」

 

 入嶋を中心に光巴と真由が前へと出て今日の出来事について話す。学校を出たところで出会ったあの妙な男とのやり取り。奴が言っていた言葉まで覚えている限りの事を話す。

 部隊の中でそれとの関係性に気づく者はほとんどいない。しかしそれらの話を全て話し終えた後、元隊長が端末に何かを差し、操作する。操作が終わるとスクリーンには先程の宗司達と男とのやり取りの監視カメラ映像が表示される。エターナが反応する。

 

「あ、あの時の」

 

「隊長、本当にこの男が?」

 

 呉川小隊長の言葉に元隊長が端末を操作し、男の顔を拡大させた。

 

「自衛軍側に確認を取ったところ、この男の名前が分かった。名前は「及川 陽太」。11年前の予言の子供達の一人だということが分かった」

 

「なんと……」

 

 呉川小隊長の声が驚きに変わる。あの男が予言の子供達と呼ばれる、DNLの一人。そう思うとあれが立体映像で本当に良かったと思う。本物だったらもっと手玉に取られていたことだろう。

 それらの情報を基に元隊長の仮説が語られる。

 

「おそらく、彼経由で知り合いであった流未緒にアンネイムドの情報が渡ったと思われる。そしてこれまでの会話から彼らはアンネイムドの力を、神と崇め奉っているようだ」

 

「つまり、ゼロンと同じように人を惑わす可能性があると?」

 

「そう言うことだ」

 

 そこでいったん話を区切り、元隊長は本来すべきだったこの会議の本題について触れていく。

 

「アンネイムドを決して奴らに渡してはならない。ゼロンも動くだろうからな。その為もあって今回両チームによる共同作戦を執ることとなった。決行は元々今週末だったが、今回の学生達への接触を考慮して今週の木曜日へと変更する」

 

「と、唐突過ぎやしませんかね……」

 

「敵の動きに後れを取りたくない。実は、奴の潜伏場所は既にとある会社が突き止めている」

 

「とある会社?」

 

 クルツの疑問に深絵がその名前を告げた。

 

「フェネクスは今、石河県沖の無人島に潜伏中であると、カザノ・メカニクスから情報を頂きました」

 

「カザノ……ここに書いてある、フェネクスの開発会社の……!」

 

「開発元がもう特定できているのか……」

 

「しかもこれ、その開発元さんの会社の本社があるところなんですね」

 

 真由の言う通り、そこはフェネクスの開発元の一つ、カザノ・メカニクスが本拠を置く場所からほど近い場所にあった。それを聞いて部隊の者達も口々に話す。

 何を以って、そこにいようと思ったのか。パイロットの真意が気になる。元隊長とジャンヌ副隊長、そして蒼梨隊長達がそれぞれ通達する。

 

「本作戦に置いては既に蒼梨隊長がカザノ・メカニクスに対DNL用MS捕獲のための試作兵装の開発受注を行っている。まずはカザノに到着して資材を受け取ってから任務地へと向かう。あっちの状況としては、大体完成にはギリギリとのことだ。最悪完成していなくても行く」

 

「その際には戦闘中に完成することも考慮して戦力分散を行う必要があります。各チームの小隊長方はそれに合わせたパターンのフォーメーションを考えてください」

 

「それから、今回ここにはいませんが、当日は自衛軍とも協力を予定しています。それも地方部隊だけじゃない、東響都自衛軍本部付きの特出MS戦術部隊「極舞(ごくぶ)」と協力予定です」

 

 各隊長の指示、特に深絵隊長の言葉に部隊員の声が賑わう。ちらほらと聞こえてくる「マジか」などという驚愕の言葉。そんなにその部隊は有名なのだろうか。

 聞く間もなく、隊長達が今回のブリーフィング終了の挨拶を行う。

 

「それでは各自、今回はここまでとする。学生組は夜遅くにすまなかった。各員、夜のシフトは乱すなよ」

 

「解散!SABER部隊、見回りいくよ」

 

『了解!』

 

 それぞれの部隊が解散していく。ようやく自分達も一息つける。だがその前に宗司は手早くシフトへ向かおうとする呉川小隊長へと先程の疑問について尋ねた。

 

「あ、すみません呉川小隊長。ちょっと聞きたいことがあるんですが」

 

「宗司?内容によるが……何用だ」

 

 あまり時間を取らせるのも申し訳ないので、すぐに質問する。

 

「自衛軍の特出MS戦術部隊って何ですか」

 

「あぁ……先程のあれか。すまんがそれについてはクルツに聞いてくれ。頼めるか、クルツ」

 

「お安い御用で」

 

「すまんな、行く」

 

「あ、はい」

 

 相当急いでいた呉川小隊長が後をクルツに任せて見回りのシフトへと向かった。というわけでクルツにその説明をしてもらうこととなった。

 

「それで特出部隊についてだったな。けど多分他の奴らが驚いていたのはそっちの肩書じゃないと思うぜ」

 

「肩書?もしかして、あの極舞とかいう?」

 

 そう呟くとそうだ、とクルツが頷く。そこに光巴も話に入ってくる。

 

「特出MS戦術部隊は自衛軍でのMSによる事件解決、並びにMSによる国家紛争の解決を目的として設立された組織の事だね。そして極舞はかつて自衛軍MS部隊の中核を務めた「極」って部隊の後継部隊なんだ」

 

「おーおー、光巴ちゃん俺の役目取るのかよ……」

 

「いやだって極舞の隊長さん私も小さい時からお世話になったですし」

 

「……そういやそう言う話だったな。じゃあ俺も任せていい?やりたい作品……じゃなかった、事あるし」

 

「しょーがないなぁ、私が言ったことだからいいですよ~」

 

「よっしゃ!じゃあまたな!」

 

 後を光巴に任せてクルツも素早く自身の用件のためにこの場を後にした。説明を引き継いだ光巴が学生組で帰る傍らで極舞の隊長について語る。

 

「じゃあさっきの続きだけど、極舞部隊の隊長は新堂沙織。部隊の人達がみんな驚いていたのはその人の事なんだ」

 

「隊長の事……どんな人なんだ?」

 

「昔からHOW、ううん、MSオーダーズの時から色々と私達の事を目にかけてくれていたの。一部の元職員はお弟子さんでもあるし、何より元さんや深絵さんとも共同で作戦を進めたりもしたんだ。戦闘スタイルで言えば近接剣術特化型で、MS刀って武装を使っての居合切りが知られてるね」

 

「MS刀……MSが刀を」

 

 MS専用の刀などはあまり聞かない。やはり居合の名人だからこそ使いこなせるというのだろうか。

 ふとその感想について語った。

 

「やっぱり使い手は少ないのか、MS刀って」

 

「え?あぁ、まぁ……」

 

 光巴はキョトンとしながらもそう答える。

何故だろう、光巴の反応がどうも想定外のように思える。何か見落としている事があるのだろうか。

 その答えは意外にも進の妹、真由の口から語られた。

 

「え、まさか宗司センパイ友直ちゃん達の所属部隊をご存じで無い!?」

 

「え?……まさか」

 

「そのまさか。友直ちゃんと智夜ちゃんはその自衛軍特出MS戦術部隊の所属。前に私も友直ちゃん達から指揮官が新堂沙織さんだって聞いたよ。しかもMS剣術の指南らしいし」

 

 まさかのあの二人の所属部隊だったとは思っていなかった。しかもそのMS刀による剣術の使い手。関わりがあるにも関わらず知らなかったということに大和兄妹がひそひそと話す。

 

「友直って確かお前の同級生だったよな」

 

「同級生かつ、宗司センパイの後輩だよお兄ちゃん」

 

「いや、本当に知らなかったんだって……」

 

 恥ずかしい話、会う機会もまだ少なく、今日のように一緒に帰ることも少なかった。むしろ今日は珍しい状況だったのだ。

 しかしそれでもよく話す者が知らなかったというのは意外だったようで、入嶋とクルーシアもその事実に物珍しさを覚えていた。

 

「けれど意外ね。結構話しているから知ってるものかと」

 

「そうだね。聞こうと思わなかったの?」

 

「……まぁ自衛軍で働いてるっていうのは聞いてたけど、よくよく考えたら聞いたことなかった。ってかそうなるとき大抵お前達が面白おかしく弄ってきてるせいなんだけどな!?特に光巴と真由さん」

 

 聞かなかった元凶の二人の名前を上げる。その二人はその言葉通り、知らん顔で自然と話を逸らす。

 

「えー宗司君ダメだなぁ、そんな女の子に責任押し付けるなんて~」

 

「そうですよ~宗司センパ~イ!」

 

「……お前ら、なぁ」

 

 怒る気にもなれずため息を吐く。けれど、と心の中で思う。友直さんが自衛軍の極舞に所属している。それはつまり、次の戦闘で必然的に味方として共に行動することになる。

 先輩ならば、ちゃんと恥ずかしくない戦いをしなければならないだろうか。何だか今から緊張してきた。今日はとにかく疲れる。早く自室に戻った方がいいかもしれない。

 そうして途中で進と別れて宿舎へと戻っていくのであった。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP37はここまでです。

レイ「んー懐かしい面々勢ぞろいしそうな感じだねぇ♪」

ジャンヌ「SABERと蒼梨深絵さん、極の名を受け継いだ部隊に新堂沙織、MS刀まで。それを新キャラクタ―達にも紐づけてですか」

今後もあまり出てきていない者達を再び出していく予定ですからね。特にその二人は個人的に第2部の主要人物だったわけですし。

レイ「個人的には結婚したって触れられてる華穂ちゃんとか全く出てない夢乃ちゃんも出してほしいなぁ」

ジャンヌ「作者の事ですからまたその内出しそうですけどね」

その時は懐かしさを存分に覚えて欲しいですね。で、予言の子ども達と言うキーワードですが。

レイ「ナラティブの要素だね。けどどんどんあの東響掃討戦に設定が付け加えられていくねぇ」

ジャンヌ「実は東響掃討戦、この世界におけるターニングポイントだったり?」

そこら辺はまた話せる時に話すけど、確かに何人かの運命を変えていたりするわけだからね。第2部は諸事情で短くなったわけだけど、そこにもちゃんと意味はあったってことです。
と、あとがきはここまでで、続くEP38をよろしくお願いします。


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EPISODE38 神話の担い手1

どうも、藤和木 士です。引き続きEP38の更新です。

グリーフィア「さぁて、宗司君が朴念仁みたく言われて前の話は終わったわねぇ」

ネイ「聞いてなかった、っていうのも作中の話と合わせるためとはいえ、ちょっかいを掛け過ぎな光巴さん達にも問題あるような……」

まぁ後でいいか精神で先送りしていた宗司君にも問題ある。というわけで本編どうぞ。


 

 

 夜の帳がとうに落ちて、未明の頃。とある工場跡に人が集まっていた。

 いるのは一人の女と、その護衛。護衛の中には屈強な男共がほとんどで、その彼らは大抵が雇われの傭兵か女の私兵だった。そして工場の中にはいくつものMS、何か巨大な物を中に入れた開かずの間のような扉が見えた。

 それを見るように傭兵達の集団から距離を置いた男女が会話、否、言い合いをしていた。

 女は男の頬を叩く。乾いた音が建物内に響く。女性が男性の方を叱りつける。

 

「陽太、アンタ言ったわよね?下手にHOWを刺激するなって。顔まで出して……」

 

「……けど、予定通りだろ。HOWの目を引いてほしいって。HOWの敷地内を爆破するより、挑発させて騒ぎをちょっと起こせばそれで十分だ」

 

 女性、流未緒は及川陽太の行った陽動作戦に不満を感じていた。HOW側の作戦のデータダウンロード、その為にメインとなるドローンと、もう一つ陽太に任せた陽動の為のドローンでHOWの敷地内に侵入していたのだ。

 どうやってHOWの敷地内に入れたかというと、それは政財界のつながりを利用し、他社の荷物の中に潜り込ませたのが真相だ。データこそ手に入ったものの、騒ぎが騒ぎで大きすぎたのもあってそれによる作戦変更が懸念された。

 あの騒ぎをちょっと、で済ませようとする陽太に未緒は苛立ちを露わにする。

 

「アンタね……それでも他に方法があるでしょ!顔まで晒したら、どこの組織かバレるに決まってるでしょ!」

 

「もうバレてるようなものだろ……」

 

「行動してバレるのとバレるように行動するのじゃ、まったく違うでしょ!」

 

「バレないように行動しているとでも思ってるのかよ、嘘つきの癖に……」

 

「そうね。アンタは堂々とバレるように嘘を吐く。けど私は違う。大事にしても決して足取りが追えない様に」

 

 未緒が言っているのはルウォ本社から空中艦「ローズ・ポート」を奪取した時の事だった。表向きは誰の知らぬ間に、というものだったが、実際は社内で未緒の派閥に属する者達の手で、宇宙から地球へと下げられる途中で本物と張りぼての偽物と入れ替えていたのだった。

 張りぼてと言っても移動機能は確保しており、そちらは陽動として自衛軍の追跡に追われていた。過去形であり、現在は拿捕直後に跡形もなく自爆した。未緒達に偽装した別人の遺体と、必要のなくなったサーガガンダムα装備と共に、身代わりを果たしてくれることだろう、と思っているに違いない。

 そうまでしても陽太には陽動が成功するとは思っていなかった。HOWをああも馬鹿にこそしたものの、実力は確か。あの黒和元も今やエースに返り咲いていると聞く。本当にあの時、無駄に挑発に乗らないで撃っておくべきだったと後悔したものだ。

 その黒和元は自分達が追っているフェネクス……いや、梨亜と同じDNL。侵入すらも察知されていたら……。けれどもその言葉を飲み込んで未緒の言葉を聞くふりをする。

 

「フェネクスが手に入れば、HOWなんて敵じゃない。私の作戦は間違いない。だからこそ、今下手に刺激するんじゃないわよ」

 

「そうかよ」

 

「……やる気がないなら、とっとと出ていきなさいよ!そんなやつ今は必要ないのよ!」

 

 自分の言葉に感心を示そうとしないこちらに苛立ちと共に叫ぶ未緒。その声に傭兵達の声がざわつく。年配の傭兵が「おうおう、喧嘩とは仲いいねぇ」と茶化すのを未緒は無視する。

 彼女にはフェネクスが手段の為の道具としてしか見ていない。傭兵達も同じだ。けれど陽太は違う。

 フェネクスに選出されたパイロット、かつて見捨ててしまった友情を取り戻すために、陽太は今ここにいる。その考えを心に抱きながら、陽太は表向きの決意を呟く。

 

「俺には俺なりのやる気がある。未緒に分からなくても、俺はやるさ」

 

「……フン、そう言うからにはやりなさいよ。アンタの機体、それが切り札なんだから」

 

「あぁ」

 

 それぞれの思惑を抱いて、作戦に臨もうとしていた。神話の名を冠したガンダムで、望みをかなえるために。

 

 

 

 

作戦当日、既にCROZE部隊は目的地「石河県」のカザノメカニクス本社へ向けて飛行していた。

 ヴァルプルギスと並行して飛行する同型の空中艦「オーヴェロン」は同行させてもらうSABER部隊の母艦だった。その姿は、まさにヴァルプルギスの生き写しか。艦の休憩ルームに映される船外映像を宗司は眺めていた。

 その宗司に入嶋が話しかけてくる。

 

「宗司君、何見てるの?ってオーヴェロンか」

 

「あぁ。やっぱこっちと内装は同じなのかな、って」

 

「あー……まぁ多分そうでしょ。あぁ、でも……うちの艦長のことを考えると、艦長室の構造は、まぁ違うか」

 

 ふと艦長の事を思い出して落胆のため息を漏らす入嶋。実は5月の作戦の後、あの紫音艦長の部屋を見る機会があったのだ。その時もまたトラブルが起きて入らない様にと紫音が言った。その時も従おうとしたのだが、続く紫音の悲鳴で我慢が効かなくなった入嶋が部屋への突撃を敢行した。

 そこで見たのは、艦長室がもう一つあったこと、そしてもう一つの艦長室で紫音が棚から崩れ落ちた多数のアニメ・ゲーム関連のグッズに埋もれる姿だった。

 それらは紫音艦長の趣味の物であり、彼女が隠したいものはそれだったのだと理解した。が、入嶋は目にしたものの衝撃の大きさのあまり紫音艦長を叱ってしまったのだ。

 一応入嶋も趣味であることはのちに納得したのだが、それでも彼女の理想とする者のイメージの崩壊にやや引き摺る想いはあるようだ。

 そんな彼らの下に、件の人物、紫音艦長が休憩の為にやってくる。

 

「何かつまめるものは……げっ」

 

「……艦長、げって言うの止めてもらっていいです?」

 

 紫音艦長は完全に入嶋が天敵になってしまっていた。それくらいその時の彼女の叱りは衝撃的だったし、また入嶋も反省していたのだ。

 とはいえその声にはまだ苛立ちがどこか感じる。紫音艦長は返事に躊躇いつつも、指摘した。

 

「そ、それはそうだけど……あなたもそれ全然許してないでしょうに……」

 

「っ!そ、そんなこと……」

 

「宗司君はどう思う?」

 

「ノーコメントなんですが……まぁ入嶋もイラついてるって一目でわかりますけども」

 

「宗司君っ!」

 

 入嶋の追求もしつこいので、足早に去ろうかとも考えた。ところが一つ思い出したことがあった。それを話題逸らしも兼ねて二人に尋ねた。

 

「そういえば話変わりますけど今回うちの艦に、追加パーツありましたよね。船体の横にブースターみたいなの。あれってどんな奴なんです?」

 

「え、あぁ、あれね。と言っても、少しはあなた達にも関わることではあるのだけれど」

 

「俺にも?」

 

 首を捻る。すると詳細を知っている入嶋が紫音と共に説明する。

 

「あの追加装備、DNブースターはガンダムDNアルヴ用に追加される装備なの。だけど元々はエディットバックパックシステムの延長線に当たる技術。だからバックパックを外せばアーバレストも装着可能ってわけ」

 

「あぁ、なるほど」

 

「確かにそうなんだけど、そもそもアーバレストは今のバックパックを外す予定がほとんどないからね。とはいえ、何らかの緊急事態があれば換装指示を送れとは言われているわね。その時のコントロールは艦の方からコントロールする予定だから」

 

「そうなんですか。けど、どうしてこのタイミングで……やっぱりフェネクス対策、ってことですか」

 

 ふと浮かんだ疑問に対し紫音艦長が答えて見せた。

 

「それもある。けれどやっぱり今回で導入されたのはアルヴとアーバレストの性能差が開いて来たから、って話よ」

 

「え、何ですそれ、初めて聞いたんですけど!?」

 

 思わず身を乗り出す入嶋。その反応に一瞬ビクッとなる紫音艦長だったが、すぐに平静になると悩ましくも現実を語って見せた。

 

「ほら、最近の撃墜スコア、宗司君伸び始めているでしょ?見てない?」

 

「あぁ、確かに……」

 

「け、けどそれは私が中距離支援するのが多いからって……」

 

「それは仕方ないことよ。重要なことじゃない。問題なのはGチームの機体が宗司君に追いつけない可能性が出てきているってこと。宗司君、ドライバフォーム発動してから、すごく伸び始めているのよ。多分機体性能と合わせて今追い付けているのは大和進少尉くらいのものね。元々ガンダムDNは競争させながら強化させていくつもりだったそうなの。けれど宗司君の成長が思ったより早すぎてね。だからこれ結構前倒しの強化なのよ。両機体の後継機が急ピッチで進められているくらいにはね」

 

 紫音艦長の口から語られたように、確かに今まで以上にDNの力を発揮しているという感覚はあった。最近は訓練でもハードなものを行うようにもなったし、パートナーのエターナからは「加減しろ馬鹿!」と文句を言われたりもしている。何より、戦闘のスピードが速くなった。

 元隊長ほどではないにしても機体のスペックに不満さも感じるようになっていた。整備主任の星北さんからもそろそろ、と何かを感じさせるものを言われていた。

 紫音艦長からもその点について尋ねられる。

 

「宗司君も、そこら辺は思っていたはずよね?」

 

「はい。けど、新型の開発って間に合うんですか?」

 

 尋ねると、紫音艦長は首を横に振る。その口から思っていなかった言葉を告げられた。

 

「いいえ。というより、まだDNアーバレストはもう一つ、最後のエクストラロックを解除してから、君には不満を言って欲しいわよね」

 

「エクストラ、ロック……」

 

「まさか、アーバレストには、まだ隠された機能が?」

 

 入嶋のまさかという予想をしたたかに頷き、その断片的な情報を語った。

 

「そういうこと。隊長や艦長には伝えられているわよ。もっとも、それにたどり着くには大分険しい道のりだけども」

 

「険しい……?前みたいに、リンク値を上げるだけじゃダメってことですか」

 

「そうね。ヒントを挙げると今のままでも行けるだろうけど……その場合エターナちゃんが精神的に辛いかもね」

 

「精神的に?」

 

 何だろう、分かるような分からないような。ヒントと言ってはいるが、何を求められているのか分からない。簡単に教えられないことがトリガーになっているようには思うのだが、宗司には思い当たるものがない。いや、思い当たるものと言えば、先程言ったエンゲージシステムのリンク値だった。ところが先程の紫音艦長の否定でそれが消えた。

 特にエターナが精神的に辛いということ、今のままでも行けてもエターナが辛いこととはおそらくエンゲージシステム関連ではない、とは思う。それでも何がトリガーとなりうるのか掴めない。

 その発動トリガーの条件はもちろん入嶋にも分かるわけがなかったようで、難しく考え込んでいた。その様子に紫音艦長は笑って気にしすぎるなと声を掛ける。

 

「そんなに難しく考えても分からないものは分からないわよ。千恵里ちゃんも、今は自分の事を考えなさい」

 

「ぬぐっ!……そうですね。そんな能力があるなら、私も見くびられない様に頑張らないと!艦長みたいに情けないとこ見せられませんからね!ではっ」

 

「ぐぅっ!?そこまで言わなくてもいいじゃない!?」

 

 紫音艦長の古傷を抉る形で休憩スペースから去っていく入嶋。それを憐れに思いながら俺も断りを入れて自室へ戻ろうとする。

 

「じゃあ俺も戻ります。発動条件も気になりますけど、今回の任務が任務ですし」

 

「あ、あぁ、今回の任務気を付けてね、なんたってあの噂の……」

 

 艦長が言いかけたところで艦内放送が響く。この声は真由の声だ。

 

『紫音艦長、ブリッジへお越しください。まもなく、石河県に入ります』

 

 それは石河へとまもなくさしかかろうという知らせで合った。それを聞いて、せわしなく休憩のデザートであったアイスを口にかっこむと、冷たさに頭を抑えながらも準備をしておくように告げてくる。

 

「ん~……とりあえず、宗司君もうすぐだから整えておいてね。それじゃあ」

 

「あ、はい」

 

 艦長が去って、宗司も下船準備のために自室へと向かう。艦長が最後に言おうとしていたこと、おそらく警告だろう。

 昨日のブリーフィングで宗司達は本作戦における障害について知らされていた。今回敵対するであろう敵パイロットの情報。今回敵対するのはかつてのアンネイムドが関わった事件「ラプラス事件」においてCROZE部隊や自衛軍の部隊と対峙した、エースがやってくると。

 その名は、「真紅の流星の再現」。かつて、輸送中だったシュバルトゼロガンダム・ジェミニアス1号機を破壊したというパイロットだった。

 

 

 

 

 数十分後、両艦はカザノメカニクスへと到着する。カザノ本社の敷地内の着陸ポートに着陸し終え、CROZE、SABER部隊の隊員達がカザノからの出迎えを受ける。

 

「今回ははるばる遠路お疲れ様です。私は舞島 独(まいじま ひとり)。カザノメカニクスの開発主任担当、そしてかつてのアンネイムドのハードウェア、つまりMS本体の開発を担当させてもらいました」

 

 カザノ側の代表として挨拶するメカニックマンの舞島。その人物に蒼梨隊長と元隊長が返答する。

 

「SABER隊長の蒼梨です。ライバル会社でありながら今回のご協力感謝しますと、うちの代表の次元黎人と私からの言葉です」

 

「また世話になるな、舞島さん。もうアンネイムドの名前なんて、聞きたくはないだろうが」

 

「そう、ですね。もう既にすべての処遇は自衛軍さんにお任せしたつもりだったので。ですが最後の落とし前のために、これ以上振り回されない様に協力は惜しまないつもりです。もっとも、蒼梨さんから納期の繰り上げを言われた時には少々困りましたが……」

 

 苦笑して二人の言葉に返す舞島さん。おどおどした印象を与える人物で、星北さんより経験が少ないようにも見える。だがそんな人物でも主任を務めているだけあって余裕は併せ持っているようだ。

 そんな彼は早速本社の中へとこちらを案内する。

 

「それでは早速今回の装備の紹介について説明しますね。こちらへ」

 

「すみませんね、色々と」

 

「いえいえ」

 

 舞島さんの案内を先導に、宗司達は本社の中へとお邪魔する。一般的なイメージの工業会社、とは違って、明るい色彩の内装が目に入る。

 そしてやはりと言うべきか、社内のあちこちにはこれまでカザノが開発したと思われる量産型MSが軍用、民間を問わず展示されていた。その中には、宗司達のよく知るMSもあった。

 

「あ、これ陣泰高校で仮想MSとして使ってたやつだ」

 

「そうなの?」

 

「あぁ。実物もあったんだけど、結局授業で使うことはなかったけどな」

 

「珍しいね、東響の学校でHOWの民間機使わないのって」

 

「何でも東響のものよりもそっちの方が安かったんだとか」

 

 陣泰高校での日々は短いものだった。2か月も前の事なのに、それでもちゃんと使っていたMSの種類を覚えているあたり愛着があったのだろう。

 小野寺と風島、羽馬辺りが忙しくも平和な日々を送っていることを祈りたい。あそこはしばらく出動要請がなかったから、そうであってほしい。するとその話が聞こえていた舞島さんが話題に触れてくる。

 

「おや、君は陣泰高校の出身か」

 

「はい、今はHOWの学校に編入することになったんですが」

 

「そうか。あそこも大変ですね。前にMSのパイロット教習を授業に取り込みたいということでMSの格安提供が出来ないかと相談を受けたんですよ。本来なら無理だったんですが、丁度発注を受けていたクライアントの事情が変わって陣泰高校へ回すことが出来たんです」

 

「そうだったんですか……シミュレーターもこちらが?」

 

 知らなかった事情に少し興味を示す。その質問に舞島さんも穏やかな表情で答えてくれた。

 

「えぇ。今もMSの教習授業は続けていらっしゃるそうです。その事件を機に警備用MSの発注も受けているくらいだからね」

 

「それは……よかった」

 

 教習が続いていることに安堵する。舞島さんもそれに同意する様に語った。

 

「えぇ、その為にも私達も自衛軍への協力も惜しまないつもりです。今回のHOWからの協力も、ライバル会社とはいえそれなりに応えるつもりです。さて、こちらです」

 

 案内されてたどり着いたのは開発ラボの一つのようだった。カードキーでロックを外し、部屋の中へと隊員達を案内する。

 全員が入ると、数名の開発員が囲む中央にフェネクスへの対抗策があった。舞島さんがそれを指して話す。

 

 

 

 

「こちらが、アンネイムド・フェネクス捕獲のための試作対ユグドラシルフレーム機捕獲装備「ユグドラルストーカー」です」

 

 

NEXT EPISODE

 




EP38はここまでです。

ネイ「密会から始まった今回のお話。彼らはやはりフェネクスを追うためにそこにやってきたんでしょうね」

グリーフィア「密会というか潜伏ねー。まぁそこそこ頭回ってるようだから、ここら辺はそっちを追っているっていう葉隠さんの腕の見せ所でしょー。カザノメカニクスって、あれ?」

アナ○イムっすね。流石に○イムの名前を使うのはガン○レ3とかと被っちゃうんで没にしました。後々名前が重要になった時に扱いやすいしね。

グリーフィア「果たしてそのネタがいつ触れられることになるのやら~。でも新装備だけじゃなく、宗司君のMSを学ぶ授業のきっかけとはね」

ネイ「宗司さんにとってはある意味すべての発端であり、同時に命の恩人ってわけなんですよね。MSの操縦覚えられて良かったんですし」

まぁこの時点で死の商人要素を入れてあるってわけなんですが。

グリーフィア「死の商人は笑う」

ネイ「実際そう言われてるみたいですし……今回も新装備があるようですし」

その新装備の詳細についてはまた次回ってことで、今回はここまでです。

ネイ「次回もよろしくお願いします。


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EPISODE39 神話の担い手2

どうも、藤和木 士です。少々遅れた気もしますが、EPISODE39と40の公開です。まずはEP39から。

レイ「新装備、ユグドラルストーカー!名前からして追い掛けそうだね」

ジャンヌ「名称からして、ユグドラル関連の何かを追いそうですね。追って……どう捕まえるのか」

そこらへんを紹介しつつ、捕獲作戦が展開されていきます。というわけで本編をどうぞ。


 

 

 カザノメカニクスの開発部主任舞島が見せたのは、筒の先にコブのような何かをくっ付けた兵装だった。

 いくら宗司より先輩と呼べる入嶋も、その武装が何という種類の武装に当たるのか全く分からなかった。HOWでは全くと言っていいほど使われることのないタイプの兵装。もしかすると試作品で、まだ世の中に出回っていないものだろうか。

 ところが元隊長達はその武器の外見を見て名を言った。

 

「これは、シュトゥルム・ファウストか」

 

「外観は概ねそちらを参考にしました。そちらとは随分挙動が違いますがね」

 

「シュトゥルム……?」

 

 隊員の若い者の何人かが首を傾げる。そんなこちらにジャンヌ副隊長が軽く説明する。

 

「現地改修で生まれた使い捨ての実弾爆発兵装ですね。現在からみると大分昔の兵装なので、馴染みはないかもですが、一応現役の兵装ではあるんですよ」

 

「そうそう!手にもって直接相手にぶつけてぼかーん!とかしたりね!」

 

「そ、そうなんだ……」

 

 光巴のMS熱の入った解説が入る。余程この話をしてみたかったようだ。声が昂り、目がキラキラと輝いているように思える。

 更に話したがりそうな様子だったが、ここで光巴は周りの雰囲気に気づいて、自ら自己修正を行う。

 

「っと、これは失礼っ。お話の続きお願いしまっす!」

 

「はは、では続けますね。こちらの使用方法も概ねそのシュトゥルム・ファウストと同じ、この先端の弾頭部分を切り離して発射します」

 

 実物を見せながら暗くなった部屋のスクリーンに使用方法を映す。イメージ映像には切り離した弾頭がユグドラシルフレーム機を示す機体のシルエットの動きに追従する様に追っていくのが見えた。

 その部分について舞島さんは解説する。

 

「このユグドラルストーカーの推進力は内蔵したユグドラルフレームの共振作用の斥力です。ただこの共振に使われるのは使用者ではなく、ターゲットとなるユグドラルフレーム機のDNL音波によるもの。筒状のパーツは放った弾体にそのDNL音波を集めるための誘導装置としての機能を持ちます」

 

「ターゲットのDNL音波を利用しての共振……新しい発想の武器ですね。これならDNLではないパイロットでも扱える」

 

 ジャンヌ副隊長の言葉で期待が高まる。これまであらゆる手を尽くしてもDNLなしでは捕獲はおろか攻撃を当てることすらも叶わなかったというアンネイムドにも通るのではないか。

 舞島さんもジャンヌ副隊長の言葉を肯定し、その性能を宣伝する。

 

「はい。DNLに対抗するにはDNLしかいない。けれどもDNLは絶対数が少ない。だからこそ、相手を利用するという逆転の発想をしました。ストーカーという名前の通り、DNL、ユグドラシルフレーム機を理論上地の果てまで追いかけ続けて、着弾と同時に内部の強化トリモチを放って完全に動きを封じます」

 

「開発ありがとうございます。これならアンネイムドを捕らえられそうです」

 

「それだけじゃない。今後のMS開発において重要になってくる技術だ。対DNLとしても、今後開発される可能性のあるMSへの対抗策としても日の目を浴びるかもしれない」

 

「そう言っていただけると開発した甲斐があるというものです。急かされた側としては、それくらいの言葉は頂いておかないとと思いましたし」

 

「その件は本当に申し訳ないです」

 

 深絵隊長が深々と頭を下げる。納期短縮を迫る側として、それが申し訳ないものだったというのが感じられる。一番大変なのはその依頼側でもあるし、頼みこむ側も本来そうあるべきなのだろう。

 礼を述べて顔を上げた深絵隊長は元隊長達に顔を合わせ、頷き合うと隊員達一同に向けて命じる。

 

「では予定されていたように運搬係は武器の運搬を、使用者はラボから指導を受けてください。出発は40分後です」

 

「各員作業開始!」

 

『了解!』

 

 号令と共に各隊員達が動いていく。私もクルスと共に舞島さん、そしてラボの人からユグドラルストーカーの使用方法・扱う上での注意について教わる。

 ものの十分でそれらは終わり、私達は母艦ヴァルプルギスへと戻った。やがてすべての作業が終わり、艦長による発艦指示が通達される。

 

『現時刻を以って、本艦は石河県沖無人島の一つ、鳥島に潜伏中のアンネイムド[フェネクス]の捕獲任務に入ります。各員所定の持ち場へ』

 

 千恵里達MSパイロットは自機へと待機する。艦の加速の鳴動が機体を通じて体に伝わっていく。来る時よりもスピードは速めのように感じた

 それも仕方のないことだろう。フェネクスはとんでもないスピードでこれまで捕獲から逃れられていると聞く。今回の新装備でも捕獲できない可能性もあると舞島さん達も言っていた。

 不安はあれどもやるしかない。クルスと回線で意気込みを話す。

 

「フェネクス、絶対捕まえよう」

 

「うん……きっとそれが、私にとっての償いだと思うから」

 

 償いという言葉に重たさはあったが、それでも彼女の覚悟は分かった。DIENDシステムの原型、となれば気にもなる。果たしてその機体もまた、DIENDの呪いがあるのか。暴走がそれとも考えられる。

それを気にしつつも作戦地点への到着を今か今かと待った。

 

 

 HOWの作戦地点となった石河県沖の鳥島。そこは国の天然記念物の動物たちが少なくも存在する島だった。

 希少な天然記念動物たちを自然の中で復活させる。そのために島は駐留する県の職員の小屋以外人工物は存在せず、またその職員もこの日はいなかった。文字通りの無人島だ。

 その島の木々の中、自然には似つかわしくない黄金の機械があった。一角獣のような角を携え、鳥のような翼を広げる。そう言ってしまえば、古来から秘密裏に現存した想像上の動物がいると思ってしまうだろう。

 黄金の機械は森の中をステップする様に歩き回りながら、小鳥たちの囀りや動物たちとのワルツに興じているようだった。パイロットの趣味か、それにしては機械の体をそのまま自らの体として触れ合わせていた。

 そんな黄金の機械、黄金のMSは動物たちといつまでも触れ合うように思われた。ところが、黄金のMSは何かに気づいたように顔を上げた。

 その視線の先には森の木々ばかりで何も見えない。だがその視線の先には黄金のMS、フェネクスを捕らえようとするために東響からはるばるやってきたHOWの主力チームを乗せた空中艦2隻が確かにあった。

 危機を感じたフェネクスは動作で小鳥たちに離れるように促す。動物たちが離れたのを確認して、フェネクスは飛び立つ。島の木々を抜けて、すぐさま離脱に入る。そのはずだった。

 

 

 

 

「逃がすかよ」

 

 

 

 

 だがその直後、蒼い輝きを灯した飛行体がフェネクスの頭部を鷲掴みにした。それはHOWが誇る最強のDNL使いの機体。フェネクスはすぐさま振りほどこうとするが、その前に眼下の島の森の中へと再度降下させられ、地面へと取り押さえられる。

 HOWによるフェネクス捕獲作戦が開始されたのだった。

 

 

 元隊長の発艦直後のエラクスによる踏み込みで素早くフェネクスを抑え込む。その後を宗司達が遅れて発進していく。この流れについてエターナが繰り返すように呟く。

 

『まったく、動くぞ、って言われた時点で動けるのあのバカとお姉様だけでしょ!』

 

『あはは……元お兄ちゃんカタパルトロック強制解除して突っこんだからね……』

 

『そのせいでうちのお兄ちゃん出撃まだ出来てないっていうね……』

 

「あぁ、進は中央カタパルト使うから……」

 

 以上がその時起こったことの概要だ。現在回線で出撃が遅れていることに悲鳴を上げている進の声が聞こえたが、今は構っている暇はない。

 そんなトラブルがありながらもこちらも現場へと急行する。ふと右側を見ると見慣れないいくつもの盾を装備した蒼いガンダムが見える。

 

「あれって……」

 

「あれはブラウジーベンガンダム・ライブラ、SABER隊長の蒼梨深絵さんの機体だよ」

 

 その疑問に入嶋が答える。あれが、とその機体に視線を向ける。その機体について知っていることを入嶋が軽く説明する。

 

「HOWが本来主力に据えるはずだったカラーガンダム、その蒼を担当する機体。機動狙撃戦とビットによる多重の面射撃で押し切る機体。パイロットの深絵さんはそれだけで戦うわけじゃないけどね。私も久々に見るし、気になるのは分かる」

 

「へぇ、って入嶋ちゃんとしてくれよ。ユグドラルストーカー、元隊長がいつまでも抑えられるわけじゃないし」

 

「分かってる!気になってそうだから軽く言っただけ……」

 

 入嶋がそう答えた直後、その予感が的中した。空へ向けて緑色の光波が放たれる。それを回避する様にシュバルトゼロ・ジェミニアスが飛び上がっていたのが見えた。

 突然の事でこちらもすぐに意識を切り替えて突入する。

 

「元隊長、大丈夫ですか!?」

 

『入嶋、不用意に近づくな!』

 

「っ!入嶋っ」

 

 悪寒を感じ取り、すぐさまガンダムDNアルヴを抱えて緊急回避を行う。その横を再び緑の光波がえぐり取るかのような軌道で突き抜けていく。

 何とかそれには当たらずに済んだが、代わりにこちらに向かって来る機体を確認する。黄金色に染め上げられた一角のMS。ガンダムとは一見思えない顔だが間違いない、あれはアンネイムド[フェネクス]だ。

 抱きかかえられる形となった入嶋がすぐさまこの状態からの解放とフェネクスの追撃を指示する。

 

「ちょ!助かったけど恥ずかしい!後来てるから!」

 

「分かってるっ!」

 

 大丈夫な方向へとアルヴを突き飛ばすとビームライフルを構える。咄嗟の発砲の形になるが、既に2か月目、元隊長ではないにしても上々と言える狙いの速度で確実に撃ち抜けるはずだった。

 しかしその時、異常事態が発生した。

 

(……邪魔をしないでっ)

 

「!?」

 

 一瞬、エターナが言ったのかと思った。しかし声の主は彼女ではないとすぐに分かった。声の主は今までに聞いたことがない人物の物。一体、誰が。

 そんな考えをした一瞬の内にフェネクスに抜けられてしまった。入嶋とクルスに叱責を飛ばされる。

 

「そ、宗司君、何してるの!?」

 

「ちょっと!人を突き飛ばしておいてその様!?」

 

「え、あ、しまっ」

 

 いつの間にかフェネクスに背後を取られる形となる。が、フェネクスはその背後に見向きもせず、包囲網の脱出を試みていた。

 ところがそれらを遮るようにフェネクスを他方向からの銃撃が襲う。待機していたSABERとCROZE、そして対応して見せた蒼梨隊長のブラウジーベンガンダム・ライブラと、遅れてようやく到着した進のオースインパルスが相手取る。

 

『ここから先は、通さない!』

 

『宗司を越えても、俺を越えられるかっ!』

 

 インパルス・ルフトの格闘攻撃とボウガン一斉射がフェネクスを思うように進ませない。とはいえ網目のようなビームは抜けられない訳でなく、フェネクスは器用にその隙間を掻い潜ろうとする。

 それを阻むようにブラウジーベン・ライブラの一射が的確に放たれる。スナイパーライフルの一射はまるでその先が見えているかのようにフェネクスの機体の周囲に張られている謎のフィールドを掠め、留める。

 その姿はまるでDNLかのようだ。しかしエターナがそれを否定する。

 

『ううん、あれはDNLじゃない、全部直感でやってるとしか……』

 

「そう、なのか?」

 

『ええ、DNLの波音が感じられない。経験則、それに……』

 

 エターナの言葉を補足する様にうちの狙撃担当であるクルツが話す。

 

『あぁ、あの人、蒼梨隊長のあれは、俺達普通のパイロットがやっている狙撃じゃない』

 

「クルツさん?」

 

『あの人の予測射撃は、もはやDNLの域だ。風や大気状態、熱も全て瞬時に頭の中に入れて狙撃する。DNLですら対処できない狙撃を行う普通の人間、それがあの人だ。俺なんかじゃ絶対に到達できねぇ……』

 

 クルツの言葉に同感せざるを得ない。事実目の前で何度も逃走に移ろうとするフェネクスを何度も妨害していた。挙句の果てに放つビームまで曲げ始めて、なお正確に動きを問えて見せた。

 辛うじてビームを曲げる端末は確認できるが、それでも文字通り針に穴を通すような行動で、唖然とせざるを得ない。HOWの隊長はみんなこんなレベルのことを平然とやるのだろうか。

 そんな想いに耽っていると、元隊長からも集中しろと檄が飛ぶ。

 

『気を逸らすな!まだ捕獲できないぞ!』

 

「っ!そうだった、エターナ、俺達も」

 

『さっさと行くわよ!ドライバフォームっ!』

 

 息を合わせて機体をドライバフォームへと移行させる。各部を展開させ、ドライバ・フィールドの出力を強化する。

 本機のドライバフォームもまた本作戦の必要な要。予定通り、エラクスを解除したシュバルトゼロ・ジェミニアスと共にフェネクスを追撃する。

 フェネクスは苛烈な攻撃に晒されながらもいまだ健在だ。あり得ない速度で回避し続けており、本当にパイロットが生きているのか怪しい。パイロットが意識を失っているのに動いている、なんて怪奇現象、信じたくはない。

 もしや先程の声は、そのパイロットの……通信ではない声、まさか幽霊という考えを捨て、ビームライフルを放つ。

 

「行けッ、このっ!?」

 

 狙い澄ました射撃。だったがその射線はフェネクスを掠めることなく過ぎ去る。その間にシュバルトゼロ・ジェミニアスが斬りかかっていくが、掠めてフェネクスが回避し、代わりにあの光波を腕部に絡めて放ってきた。

 それらの攻撃を何とか回避する。が、その後方にいた味方機にその光波が触れる。途端にその機体が浮力を失って落下していく。

 

『う、うわぁあ!!?』

 

「っ、あれがアイツの攻撃……」

 

『聞いてた通り、動力源の反応が消失してるわ。当たったら機体分解されるわよ!』

 

 エターナの言うように、奴の攻撃は「分解」。正確に言えば物体の時を戻すと聞いていた。目の前で落ちていった機体は徐々に機体のパーツが分解していく。パイロットが緊急リアライズされ、パラシュートを使う。当たれば如何にガンダムであってもどうにもならない。

 話によればドライバ・フィールドで防御は出来るそうだが、正直心配しかない。だが嫌でもその時が来てしまう。続けざまに放たれた光波がこちらに伸びる。エターナが気づき、悲鳴を上げる。

 

『避けられないっ!?』

 

「くっ!一か八か!」

 

 咄嗟にドライバ・フィールドを発現させた。直後光波とドライバ・フィールドが激突する。光波の余剰エネルギーがドライバ・フィールドから蒸発していくように霧散していく。ドライバ・フィールドも削られていくが、それでも何とか全てを防御しきる。

 その様子を見てフェネクスが驚いたように見ていた。エターナは機体情報を知らせて、突撃を命じた。

 

『機体各部問題なし!やり返せ、ソージ!』

 

「言われなくてもっ!」

 

 ドライバフォームの機動性で突貫を仕掛ける。フェネクスとの追撃戦が再開されていく。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP39はここまでです。

レイ「作戦開始してる!ってことで、新装備は何か凄い性能持ってるね」

ジャンヌ「撃ち落とされなければどこまでも追っていくシュトゥルム・ファウスト、と設定にはありますね」

ナラティブではNT-Dを用いたファンネルで捕獲してましたからね。非DNLでもDNL専用機捕まえるならこうかなと思った次第。まぁどっちかと言えば攻撃を積極的に行わないフェネクス用に調整されていますし、攻撃来たら自動的に避けるようにプログラミングはされているのでなかなか厄介かと。

レイ「これひょっとしてシュバルトゼロにも対策として通ったり?」

それを見据えていないと思う?

ジャンヌ「兵器はやがて両軍で共通化していく。ガンダム作品じゃあり得る話ですものね」

そういうこと。否が応でも両軍に共有されていくでしょう。それをどう切り抜けていくのかも見せどころというわけで。
では同日公開の次話に続きます。


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EPISODE40 神話の担い手3

どうも、藤和木 士です。引き続きEP40の公開です。

ネイ「フェネクス捕獲作戦……宗司さんもドライバフォームを発動させて本気モードですね」

グリーフィア「新兵器のユグドラル・ストーカー、果たしてフェネクスを捕まえられるのかしら~。あとあの声は、きっとあそこから、ね?」

まぁ原作再現なら分かりやすそうですね。とはいえちょっとこの時点で隠しているものがあるわけなんですが。
というわけで早速本編をどうぞ。


 

 

 フェネクスがドライバフォーム状態のDNアーバレストを含めた機体達から逃走する。その様子を、ユグドラルストーカーを放つために待機しているクルスと千恵里は観察していた。

 HOW最強とも呼べる機体とオースの新型機、それに追いかけられてもなお逃げられ続けるフェネクスは確実に自身のシクサス・リッターもといかつてのディスティニーライダーよりも強いと分かる。

 それに気づいていた千恵里からも不安の声が漏れてくる。

 

「……一応、押してはいるけど……こんなにも逃げられる物なの?元さんだってシュバルトゼロ・ジェミニアスなのに……」

 

「……訂正しないといけないね」

 

「クルス?」

 

 不安げな彼女に、はっきりと事実を告げる。絶望も、希望も余すところなく。

 

「あのガンダムは、確実に私のシクサス、ディスティニーよりも強い。制限が掛かっている状態でも、はるかに」

 

「そんなっ」

 

「けど、それを追いかけているのはうちの精鋭ぞろいだよ。宗司君も進さんもGチームエースは伊達じゃない。元さんも一度は捕らえてる。私を止められたんだから、行けるはず。私達は、その時に動けるように、なるべく近くでいつでも発射できるように」

 

 確信ではないが、それでも希望は充分にある。私の言葉に千恵里ちゃんもいくらかやる気を取り戻し、前を向いた。

 

「そうだよね。元隊長達が追い込めた時の為に、ちゃんとやらないと!」

 

「他の人達も移動している、行こう千恵里ちゃん」

「うん!」

 

 クルス達、そしてGチームも先発する他チームへと追従してフェネクスを追う。

 フェネクスと現在交戦しているのは元隊長と進さんだった。ジェミニアスはハルピュイアへとエレメントシフトし、高速機動しながらビームライフルとシールドのカノンで動きを縛る。その間にインパルス・ルフトは先程と同じように近接格闘戦兵装で距離を詰める

 

『このっ、落ちろっ!』

 

『進少尉、こいつは落とすのが目的じゃないぞ』

 

『だぁぁ!落とす気でやらなきゃ、こんなのあたらないだろっ!ってうわぁっ!?』

 

 直情的に元隊長の言葉に返答した進に対し、フェネクスが光波を放ってきていた。時を戻すユグドラルの軌跡。

 間違いなく直撃だったそれだったが、そこはオースのエースパイロット、そして最新鋭機。対応して見せた。

 

『ぐっ、くっ!!』

 

 瞬時に機体を上下に分離させて光波を回避させる。オース戦でも多用した進の得意技だ。だが今回は回避だけに終わらない。分離した勢いで距離を詰めると、ビームサーベルを振り下ろす。

 思いがけない奇襲にフェネクスも反応が鈍る。それでも振りかざされたビームサーベルを回避し、逃走を再開する。

 進の言う通り、フェネクスを捕らえるには撃墜をしようとしなければ無理のように思える。それを可能な限り避け、なおかつギリギリを攻めている隊長達の技量が窺える。

 そして遂にそのタッグが実現する。元隊長のジェミニアスが紅いフレーム、アレスモードへと切り替わり前衛へ、蒼梨隊長がそのアシストをする構えだ。

 

『行くぞ、深絵』

 

『深絵さん、支援頼みますよ』

 

『任せて、相手は逃がさないっ!』

 

 直後ライブラの一斉射がフェネクスに向けて襲い掛かった。自動照準のビットと、狙い澄ました本体からの射撃、加えて背後に回ったジェミニアス・アレスの近接攻撃がフェネクスを翻弄する。

 本来ならその圧倒的な弾幕と格闘の連撃に対応しきるのは難しいだろう。しかし相手はこれまで何度もフェネクスと対峙し続けている。いくらガンダムで、なおかつ脅威の神眼を持ち合わせる蒼梨隊長でもパターンを読み切られていた。

 狙撃直後にカウンターの如く刻戻しの光波を放ってくる。ビットが回避行動を行うが、何基かが光波に巻き込まれて分解した。ライブラも回避しなければならないが、蒼梨隊長は動かない。何が、と思ったが違った。

 

『はぁっ!』

 

『っ!今っ!』

 

 ライブラの前に瞬時に移動したジェミニアスが移動した。その拳にユグドラルフィールドを発生させて、ジェミニアスが刻戻しの光波を吹き飛ばしたのだ。同じユグドラルフィールドによる現象の攻撃が、刻戻しの光波を相殺していく。それらは衝撃波となってフェネクスにも小規模の影響を与えた。

 結果として目くらましとなった隙にフェネクスは再び逃走を図るが、それすらも隊長達は見通していた。ジェミニアスが貸した肩の上にスナイパーライフルを構えたライブラが、狙い澄ました一射を進行方向先へと向けて放つ。ビットユニットSPIRITによる曲射。本来ならば直撃の難しいそれは不意を打つように移動中のフェネクスを横から叩くように当たった。

 ユグドラルフィールドによる軽減で機体へのダメージは少ないようだ。しかしなぜそんなことが出来たのか、DNLの機微に優れたクルスには分かった。スナイパーライフルと接触したジェミニアス、そのパイロットである元隊長とジャンヌ副隊長が攻撃にDNLを乗せて放った。これにより二人のDNL音波で敵の読心を撹乱、攻撃を直撃させていた。

 流石はディスティニーライダーと渡り合ったパイロット。ここまで読んでの事だったのだろうか。今ならチャンスかもしれないと、千恵里ちゃんに向けて更に接近することを告げる。

 

「千恵里ちゃん。そろそろチャンスかも」

 

「よっし、ターゲットを……」

 

『いや、待て捕獲部隊!』

 

 二人の行動を制止する様に元隊長が全部隊へと待機指示を出す。なぜ、と思ったが理由は明白になる。フェネクスは吹き飛ばされながらも無理に離脱軌道を取ろうとしていた。ところがその先を読むように移動方向にガンダムDNアーバレストと空戦タイプのルフトから砲撃戦仕様のシュトラールへと切り替えたオースインパルスが待ち伏せる。

 両機体がほぼ同時に火砲を一斉に放った。ミサイルとビームの雨あられがフェネクスの行く手を遮る。正面方向はその弾幕と周囲に展開していた他の機体が抑える。よってフェネクスの逃げる方向は後方、つまり今クルス達のいる方向へと逃げていく。

 元隊長はこの展開まで見越していたのだ。おそらく、宗司君達にもあの位置、あの装備で待機する様にと言っていたに違いない。何にしても絶好の機会だ。

 

「来たっ!千恵里ちゃん行くよ!」

 

「わ、分かった!」

 

 二人はユグドラルストーカーを構えた。位置的に一番近いのは自分達だ。よく狙いを絞ってフェネクスをストーカーの端末がターゲットロックするのを待つ。

 数秒でようやく端末側から追尾機能が有効になった知らせが届く。後は撃つだけ、そう思ってトリガーを引こうとした。

 

(どいてっ!)

 

「っ!今の」

 

「こ、声っ!?誰が……まさかあの?」

 

 二人は突然脳裏に響いた声に動揺する。だがクルスはすぐに思考を巡らせる。

 この感じ、DNLの精神感応だ。送ってきたのは……きっと目の前のMSから。それにこの反応、さっき宗司君が見せた反応と客観的に見て似ている。きっとさっきの時も宗司君はこの声を聞いたんだ。

 となれば、その隙にフェネクスは包囲網を突破するに違いない。クルスの予測は的中し、フェネクスは二人の視界から外れて回避しようとしていた。

 

「あぁ、しまっ」

 

「させないっ!」

 

 既にクルスの体が動いていた。ユグドラルストーカーを投げ捨てて、シクサス・リッターでフェネクスと交戦に入る。こちらの弾丸の雨あられをフェネクスは回避していく。クルスにはまだDNLの機微を感じられるのにも関わらず、フェネクスはその弾幕を避ける。

 このままでは逃げられる。元隊長達も追ってきて、なおかつこちら側のCROZE、SABER部隊も止めようとしていたが、止めるには戦力、実力が足りないのは明白だろう。

 だからこそ、クルスも決意した。

 

「―――マリア」

 

『うん、クルスどうしました?』

 

 私はシクサス・リッターのサポートAI「マリア」へと呼びかける。呼びかけに応じるマリアに、私はあれを告げた。

 

「DIENDを使う」

 

 それは禁断のシステムの名。既にシクサス・リッターからは外されたはずのシステムの名前だった。ターゲットのMSが運用するL-DLaから生み出された禁断のシステム。

 マリアもそのシステムがもう機体にはないことを告げる。

 

『お言葉だけど、DIENDは既にこの機体にはないシステムの名前。ないものは出来ないですよ』

 

 もちろんそれはクルスも知っている。だがそれは偽りでもあることも知っている。そのうえでもう一度言った。

 

「それは「書類上の話」でしょう?DIENDは嫌でもあなたに付随しているもの。封印されただけ。私はそれを解放してと、言っているの」

 

『……けど、それは私も、あなたも不幸にする』

 

 マリアは危険だと言う。しかし今の状態も十分危険だった。各部がフェネクスに追いつくためにオーバーヒートに近い状況となっている。渡り合えているのが奇跡なほどだ。もちろんDIENDを発動するのが危険なのも分かっていた。けれども、私はこの作戦に賭ける想いを告げた。

 

「それでも、あのシステムと同じもので不幸になった人を、これ以上見たくない!私が止めなきゃ、今度は、私が!」

 

 かつて千恵里と黒和元に救ってもらったからこそ、目の前のターゲットを捕らえたいと思った。退くように言われても退かない理由、やると思ったことはやる、それが今のクルス・クルーシアだった。

 その言葉に呆れたようなため息を吐くと、マリアはその考えに毒舌を吐く。

 

『全く、つい半年までゼロンなしでは生きてくのすらおぼつかなかった子が、偉そうに』

 

「うぐっ!そ、それは……」

 

『どこの子の影響を受けたんだか……けど、彼女に恩がないわけじゃありません。そして、あの私と同じような存在に興味がないわけでもない』

 

 毒を吐きながらも、やれやれと言った具合でまんざらでもないと示すマリア。彼女が言った。

 

『久々の機動です。念のためのセーブも掛けてありますが、制限時間は15秒です。準備無しの起動なんですから、文句ないですね?』

 

「!それだけあれば、十分!」

 

 マリアの言葉に希望を見出す。10秒だけでも、クルスにとってはありがたい。息を整え、フェネクスの動きに合わせてタイミングを計る。

 遂にその時が訪れた。

 

「DIEND-Limited、スタートッ!」

 

『DIEND-Limited、システムを一部書き換えます。搭乗者とAIへの反動にご注意を……』

 

 マリアとは違うAIがシステム発動を告げる。直後、機体が振動する。奇妙に動く機体の手足、一度頭を俯けると、機体のデュアルアイが紅く染め上げられる。

 これが久々のDIEND……!マリアの苦悶に満ちた声が聞こえてくる。

 

『う、うがぁっ!』

 

 それも当然だ。DIEND-Limitedは一時的にマリアのAI領域を「DIENDシステム」へと直結させる。そのせいでマリアはDIENDに侵食させられ、最悪マリアがDIENDに再度囚われてしまう可能性も少なからずあった。

 

「時間がない、突撃する……っ!」

 

 長くマリアを苦しめるわけにはいかない。素早く終わらせるために機体を一気に加速させる。その速度は斥力で飛行するフェネクスと同等だった。しかし同時にクルスへと多大なGを掛け、電子空間の体を押しつぶそうとしていた。

 これまでのDIENDではクルスが薬物を摂取することで装依システムでも緩和し切れないGを無視してきた。だがHOWに入った今では、そんなものは服用しないし身体も治療がされている。

 マリアと同じでクルスも今は身を削ってDIENDを発動させるしかない。まさに諸刃の剣。それでもクルスは体の負荷を堪えて10秒だけのデッドレースを開始する。

 

「はぁあぁ!!」

 

 一気に回り込んで前からフェネクスをを抑え込もうとする。普通なら抑え込めるはずのスピードをフェネクスは予見していたかのように体を捻らせ回避した。脇をすり抜けて直も逃走を続けようとする。

 ここまでして、逃がしはしない。覚悟を決めて決死の再チャレンジを行う。

 

「ぐ、このおぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 伸びきった腕をそのまま勢いを付けて、体への負担の高い回転機動へとつなげる。一度弧を描くような軌道で再度フェネクスへと肉薄する。フェネクスも気付くが、時すでに遅し。

 周囲のユグドラルフィールドをDIENDの出力向上と勢いのまま無理矢理突破する。その腕部を掴み上げる。

 

(そんな無理を!)

 

「無茶だっていうなら、大人しく捕まってよ!」

 

 あの声が聞こえてくるが、構わず元隊長達の方角へと投げ飛ばす。そこでとうとうDIEND-Limitedの使用限界時間に達する。強制的にDIENDシステムと切り離されたマリアが無事を確認してくる。

 

『……クルス、大丈夫ですかクルス!?』

 

「あ、うぅ……」

 

 大丈夫、と言いたかったが言葉が言えない。久しぶりのDIENDは想像以上に負荷が重すぎた。無茶な機動で体に痛みを抱えたまま落下していく。

 こんなところで終わるなんて……。諦めかけたその時、彼女の声が響いた。

 

「―――クルスッ!!」

 

「っ、あ」

 

 チームメイトである千恵里の声。直後重力で落下していく機体が支えられた。カメラが映す彼女の機体の顔。回線がつながり、涙ぐむ彼女の顔が映る。

 千恵里ちゃんは涙声で私を叱った。

 

「もう!なんて無茶するのよっ!」

 

「ぁ、ごめ、ん」

 

『やれやれ、無茶するもの同士がよく言います。まぁ今回は私もそのどっかのおせっかい焼きさんに影響されて、無茶を許可したんですが』

 

「え、何てマリア?」

 

『何でもないです。さ、まだ仕事が残ってます』

 

 マリアは千恵里にやるべき事をと告げる。その頃にはマリアが機体制御システムに干渉し、何とか飛行できる程度に機体を保っていた。

 見える先の空中では追いついたジェミニアス、ライブラ、アーバレストの3機がフェネクスを逃がすまいとしていた。

 自分が体を張ったからこそある状況。だからこそクルスは無二のチームメイトに発破をかける。

 

「そう、だよ。千恵里ちゃん、あれを、フェネクスを、捕まえて……!」

 

「うっ……でも」

 

『ほら!あれを捕まえなければ、私達も体を張った意味がありません。こちらのユグドラルストーカーも拾ったなら、とっとと捕まえてくださいな』

 

「は、はい!?すぐにっ」

 

 マリアのやや強めの発破にビビりながら千恵里ちゃんはフェネクスの捕獲任務へと戻った。これでいい。マリアに感謝の言葉を贈る。

 

「ありが、とう、マリア……」

 

『もう、死にかけじゃないですか。私もサポートしますから、とっとと迎えに来ているヴァルプルギスに戻りますよ』

 

「うん……」

 

 マリアの気遣いを受けながら、クルスは母艦へと戻っていった。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回もお読みいただきありがとうございます。

グリーフィア「えぇ……DIENDシステム残ってたの……?」

一応サポートAIマリアの根幹に残り香として残ってる。けどリミテッドの名の通り、限定的だし、疑似再現と言っていい。

ネイ「で、でもそのおかげで短時間ながら元さん達の救援を間に合わせたんですから、流石は第4章の強敵枠ですね」

グリーフィア「でもこれさぁ、彼女の後継機枠にまたDIEND装備来たりするんじゃないの~?」

それも面白いけど別の方向性で強化入れようと思ってるよ。それこそ今回の話がターニングポイントになるかもだし。

グリーフィア「あら、それは今から予想が楽しみってわけね」

ネイ「面白いものが見られるかも、だね」

さぁ捕獲作戦は次回がクライマックス。だけど、これで終わらないんだよねぇこれがぁ!

ネイ「まぁ前々から言ってますもんね。アナザーUC・ナラティブ編って。しかもまだ以前の話で出てきた彼らの出番がまだですし。ていうか語尾がもう示していますが」

というわけで次回もよろしくお願いします。

ネイ「次回はもうちょっと早く投稿したいそうです」


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EPISODE41 神話の担い手4

どうも、藤和木 士です。EPISODE41と42の公開です。まずはEP41から。

レイ「うーん世間では本当ならΞGの活躍を見られているはずなのに、こっちはそのひとつ前ですか」

ΞG言ってるけどそれ閃ハサな。ちなみに私は初めて名前を見た時、三ガンダムって呼んでました。初見読めた人いるですかねぇ。

ジャンヌ「さんは幼稚すぎますね。で、こちらでは本当に前のフェネクス捕獲作戦というわけで、丸ごとクルスさん回でしたが前回は」

今回は元君、そして宗司君達の活躍ですよ。敵も動く本編をどうぞ。


 

 

「クルスさん、ヴァルプルギスへと撤退していきました」

 

『了解っ。後は医療班に任せろ』

 

 クルスの状況を戦闘中の元へと通達する。元の言葉通り、ヴァルプルギスの医療班に向けてメッセージを送る。

 メッセージ送信後、元に先程のクルスの行動について言及する。

 

「クルスさんには負担を掛けてしまいましたね」

 

『彼女だけじゃない。サポートAIのマリアにも、嫌な思いをさせただろう。だが、このチャンス、逃がしはしないぞ!』

 

「えぇ!」

 

 元の言葉には同感だ。ターゲットも疲れ知らずとはいえもう籠の中に近い。ジェミニアスの出力を制御しながら、共にフェネクスへと向かっていく。

 再び捕まえるにしても、場所が場所だった。出来れば下が陸地であるのが望ましい。ジャンヌは事細かに最寄りの陸地がある場所を確認し、リアルタイムで元へと告げ続ける。それを元が機体を動かしながら深絵さんと宗司さんに指示を送る。

 

『深絵、曲射射撃2回、12時方向へ逃げるように』

 

『了解っ!』

 

『宗司、エターナ、次ポイントS3方面へ侵攻!』

 

『ちょっと、それ全く意味のないと思うんだけど!?』

 

「エターナ、従って!」

 

『了解です、行くぞエターナ』

 

『あぁ、もう!』

 

 逃げられつつもじりじりとこちらの想定する領域、ポジションへと機体を誘導していく。

 何度も交差した後、ようやくその時が来た。私は元達へと叫んだ。

 

「状況揃いました!今です!!」

 

『了解!!』

 

 元の一声と共に仕上げへと取り掛かる。最初に深絵のビットが所定の位置から一斉射を行う。放った射撃が空間中でぶつかり合い、拡散し、今までよりも細かい弾幕が完全に進行方向正面を扇状に覆った。

 流石のフェネクスも回避不能と判断し、急停止したのち、上へと超機動加速を行う。今までも見たMSの機動でも異常な加速力を誇るそれ、だがその癖を既に元とジャンヌは捉えきっていた。

 私は叫ぶ。

 

「元っ!」

 

 DNL能力全開でシュバルトゼロ・ジェミニアスの制御を行う。瞬時に瞬発力の高いアレスへと移行し空を跳躍。瞬間移動と形容できる速度で加速直後のフェネクスの首を抑え込んだ。

 その速度にフェネクスが驚き、声が漏れだす。

 

(嘘……っ!?)

 

「嘘だとお思いですか?」

 

『パターン読めてんだよッ!!』

 

 完全に手玉に取った元は、言葉の勢いと共にフェネクスを下方の島へと向けて投げ飛ばす。同時にDNF「ディメンションブレイカー」も放ち、フェネクスを防護用ユグドラルフィールドごと地表へと叩き付けた。

 エネルギー放射終了後、眼下の島を見る。と言っても砂煙ばかり。しかし二人ともにDNLの能力で地表状態を探っていた。落下の衝撃から立ち直り、何とか立ち上がろうとするフェネクスの姿が分かる。

 フェネクスが完全に立ち直ると、再び飛行体勢に入る。が、直後砂塵の中のフェネクスの動きが停止した。同時に砂煙が何かの力の影響を受けて晴れていく。砂塵の晴れたフェネクスは空中の壁か何かで完全に拘束される状況となっていた。機体を動かそうとするが、まったくびくともしない。

 そうなっているのはもちろん理由がある。それを行ったパイロット、うちの部隊のダークホースの片割れ達の声が回線から流れる。

 

『ぐっ……フェネクス、ドライバ・フィールドで固定完了……っ!』

 

 ガンダムDNアーバレストの形成したドライバ・フィールド、それらを空間に働きを掛けて、脳がイメージした通りに空間を固定。これによりフェネクスを遠隔で捕獲するに至ったのだ。

 これだけなら新装備無しでも作戦は成功だ。しかしそれでも欲したのには訳がある。理由はすぐに明白となる。

 

『ググッ!こいつ、抵抗激し、過ぎ……!』

 

「捕獲部隊、すぐに降下を。ユグドラルストーカーで完全に活動を停止させてください!」

 

 エターナの苦悶の声にすぐさま捕獲部隊に指示を飛ばす。これが理由だ。例え動きを縛れても、ドライバ・フィールドは人の意志により強度が変わる領域操作。永続ではない為、そのまま艦の捕獲設備まで持っていくということは厳しかった。

 だからこそのユグドラルストーカーだった。もっとも最初は独担当の言っていたように、距離を詰めてからのユグドラルストーカー発射でどこまでも追尾させて捕まえるというのがSABER部隊の想定だったのだが。ドライバ・フィールド使用機を持つCROZE部隊が来たからこそ、思いついた作戦だった。

 後は事前の打ち合わせ通り、フェネクスをユグドラルストーカーのロックオンに捉え、タイミングを調整する。すべての準備が整うと、深絵が号令を掛ける。

 

『ユグドラルストーカー隊、一斉射!』

 

 号令と同時にユグドラルストーカーが放たれる。シュトゥルムの弾頭状の追尾ユニットが固定状態のフェネクスへと進んでいく。着弾直前の数舜の前に元がドライバ・フィールドの解除を命じた。

 

『フィールド解除!』

 

『っあ!!』

 

 固定を解除するアーバレスト。直後、フェネクスが飛び立とうとするが、既にユグドラルストーカーの弾頭が四方を囲う状況。ユグドラルフィールド発生前に弾頭が破裂した。中から溢れ出す特製強力トリモチがたちまちフェネクスをからめとっていく。

 トリモチはユグドラルフィールドの発生すらも阻害していた。地面からも動くことは出来ない。完全に動けなくなったフェネクスはジェミニアスとライブラの前に首を垂れる。

 

『イチロクサンヨンセコンド、ターゲットの捕獲を確認した』

 

 深絵さんによる捕獲完了の合図に、回線が沸き立った。無事、ミッション達成の瞬間だった。

 

 

 

 

「やった、のか……」

 

 息を整え、陸地へと着地するDNアーバレスト。そのカメラで映し出される、白いトリモチにがんじがらめにされる黄金のMS。確かにフェネクスの確保に成功していた。

 大仕事を達成した宗司達に元隊長が労いの言葉を掛ける。

 

「よくやった、宗司、エターナ。抵抗されるのは分かっていたがよく抑え込んだ」

 

「あ、いえ……」

 

『エターナもお疲れ様です』

 

『ね、姉様の為ですもの!けど、大分こっちも疲れが……』

 

 エターナの言葉通り、ドライバ・フィールドの維持には精神的な体力を消耗する。最初に使った時よりもそのメンタルの耐久値は上がっている。それでも、先程のあれを抑え込むのにはその精神力の大半を使わなければ不可能だった。

 その証拠にドライバフォームが自動的に解除されている。それほどまでに宗司達の精神力が消耗していた。

 それを知っているからか、元隊長達の撤収の手際が良かった。ヴァルプルギスとオーヴェロンへと回収作業を進める。

 

「回収班は機器を使ってフェネクスの運搬を」

 

「トリモチに絡まれるなよ。他機は周辺警戒を……」

 

 

 

 

 これで作戦が終わる、はずだった。

 

 

 

 

 突然接近警報が鳴る。その音で何かが来るのを隊長、隊員達が気づく。

 

「何だ、ってこいつは!?」

 

 急接近する機影、放熱板のような端末が空中を駆け巡る。隊長達が迎撃を開始するが、その弾撃を避けて両部隊の隊長機を挟み込んだ。

 

「きゃあ!?」

 

「ぐっ……おっ?」

 

『あ、ぁ……機体が、身体が、重く……』

 

 挟まれた隊長達が途端に機体の調子を悪くする。唐突な事態に慌てて千恵里が対応しようとする。

 

「元隊長、深絵隊長どうしたんですか!すぐに助け……」

 

「駄目、千恵里ちゃん、来ないで!」

 

「このファンネル……対DNL・ユグドラル兵装だ……」

 

「えぇっ!?」

 

 隊長達の言葉に耳を疑う千恵里。宗司も聞き間違いかとも思ったが、呉川小隊長が中継した光巴の言葉が肯定した。

 

『うん、元お兄ちゃんの読み通りアンチユグドラル兵装だよ。それも取りついた後はその機体の機構を利用して防御までこなすタイプの、無理にはがそうとすると、外の機体も危険だと思う』

 

「と、光巴オペレーターの言葉だ。対処は」

 

『対処構築はやる。けどそれよりも敵来るよ!』

 

 光巴の言葉通り、敵機反応が海上より近づいて来る。続けざまに一際大きい反応も出現した。その出現の仕方に進が正体を言う。

 

「この感じ、空中艦か!」

 

『そうだよお兄ちゃん!敵MS多数……通信、入るっ!』

 

 真由の知らせからすぐに回線で女の声がこちらへと呼びかけが行われる。

 

 

 

 

『HOW部隊に告げる。フェネクスを置いて直ちにこのエリアから退け。でなければユグドラルキャプチャーで捕らえた2機のガンダムの無事は保証しかねる』

 

 

 

 

 恫喝する女の声。近づいて来るMSは自衛軍のソルジガンと機種が表示されている。そして艦の名は「ローズポート」。その名前はブリーフィングで聞いたルウォ・エンタープライズ、流未緒一派が奪った空中艦の名前だ。

 だとすればその女性は。元隊長が回線をオープンにしてその女に話しかける。

 

「流、未緒か」

 

『名前を知っているのなら都合がいいわ、魔王。あなたの思い通りにはさせない。ユグドラシルフレーム機の独占、神の力を自分だけのものにして!』

 

 流未緒は自分達、少なくとも元隊長がユグドラシルフレームとやらの独占をしていると思っているようだった。

 宗司も既にユグドラシルフレーム、構成するユグドラルフレームの事は知っている。ガンダムの各部に蒼く輝くDNLの力を増幅して力に変える基礎フレーム構造体。

 エレメントシフトもまたユグドラルフレームの力と以前に隊長はおぼろげながら言っていた。それが本当に神の力なのか。しかし元隊長は流未緒の言葉、神の力という発言に否定を行った。

 

「MSは神でも何でもない。神は人が心の拠り所として作り上げた創造物、それを現実に干渉させようとするお前達のやっていることは、ゼロンと同じだ」

 

『いいえ、私はあいつらとは違う。フェネクスの力を正しく扱い、人の世を、欲望と願望に満ちたこの世界を変革させるわ。あなたこそ、いつまでその余裕を保っているつもりかしら?既にその命は私が握っているのも当然なんだから』

 

 流未緒の言葉は事実で、拘束は未だにジェミニアスとライブラ、二機のガンダムを封じている。下手に刺激して撃墜でもされたらそれこそ終わりで、クローズ回線で紫音艦長から動かない様にと言われていた。

 フェネクスも地面に張り付きすぎていて、すぐには逃げられない。対応にこまねいたCROZE、SABER部隊だったが、緊張状態を破ったのは他でもない元隊長の一言だった。

 

「握っているとは、大きく出たものだ」

 

『何ですって?』

 

「こんな状況、昔のシュバルトゼロだったら絶望的だったが、今はジェミニアスだ。それに、深絵は俺の方よりもまだやれる、だろう?」

 

 元隊長の問いかけに深絵隊長もやや辛そうにしていた、機体状況の割りに余裕そうな声が聞こえてくる。

 

「そうだね。DNLじゃない分、身体の方は問題ないよ」

 

『……何ですって。DNLじゃない!?』

 

「そう、私はDNLじゃない。機体はユグドラルフレーム仕様だけどね!」

 

 流未緒の驚きは同じく味方側のこちらにも通じる驚きだった。元隊長も案外大丈夫そうに思える。ジャンヌ副隊長も案外大丈夫なのか。

 未だ不利とは思っていない元隊長達。しかし敵はそれが気に入らないようだった。回線に割り込みが入る。

 

『そんな強気が、何になるっていうんだ!』

 

「っ、この声……あの時の」

 

『これ敵のMSから、あの時の奴だよ!』

 

 その声に真っ先に反応する新人組。聞き覚えのある声、学園に突如現れた侵入者と同じ物だと認識できる。すなわち、あの男、及川陽太だ。

 声の大元は空中からこちらを見下ろすMS部隊の先頭、ソルジガンを従えているガンダムから発せられていた。そのガンダムが指さすようなジェスチャーと共に元隊長、HOWを貶す。

 

『今置かれてる状況を客観的に見ろよ!動けないお前に何が出来る!あの時と、東響掃討戦の時と同じだろ!』

 

「生憎ながら、掃討戦の時にはこんな手軽な対ユグドラル兵装なんて影も形もない。それに、東響掃討戦で、何もしてないなんてよくもまぁ言ってくれる。俺達が成功させなきゃ、お前も自衛軍に入れていないんだぞ、及川陽太」

 

『うるさい!お前達が勝ったところで、平和になんかなってない。俺は失ったんだ!お前達、HOWと自衛軍に、下らない権力争いの道具に彼女は変えられた!』

 

 意味不明なことを口にして怒る及川陽太。だが怒りに呼応するかのように及川のガンダムは淡く光を放つ。先程一瞬だけ見せたクルスのDIENDと呼ばれるシステムのような雰囲気と同じ物のように思える。

 そのシステムの名を及川が叫んだ。

 

『お前達HOWと自衛軍、カザノ・メカニクスが作ったこのサーガガンダムとL-DLa!自分達の作ったもので、滅べェェェェ!!』

 

 サーガガンダムの目がより強く赤へと発光した。その圧倒的速度で、元隊長達に襲い掛かった。

 

 

 

 

 サーガガンダム、その名前を聞いて元の心内は様々なものが到来していた。

 一つは、そのネーミングセンス。神話などとは滑稽だ。神の如きフェネクスを捕まえる物語、とでもいうべきだろうか。

 そしてもう一つは聞き覚えのない名前ということ。にも関わらず対峙する及川はそのガンダムを「HOW、自衛軍、カザノが作り上げたもの」として喧伝していた。元の記憶が正しければいずれの組織でもそのような名前のガンダム、機体が開発された記憶はないと思っている。アンネイムド事件の騒動で機体開発プランを確認した時にもないのだ。

 となれば、前述の予測から推察するとあのガンダムには別の名前がある、いやあったに違いない。類似する外見のMSはいくつか挙げられる。もしやすると、FRX-9「フォリウムガンダム」がベースだろうか。

 そんな予測をするほどなら、余裕があると思われるだろう。先程の発言もある。が、実際はハッタリが含まれている。その証拠が、エンゲージ回線にあった。

 

『っは、っはぁっ!』

 

 息の荒いジャンヌ。ユグドラルキャプチャーの影響を一番受けているのはジャンヌだった。

 このユグドラルキャプチャー、どうやら対フェネクス用に調整されているようだった。そして光巴も絡めたそれぞれの予測で、フェネクスのパイロットのDNLがジャンヌ、すなわち「詩巫女タイプ」に近い狙いを付けていた。その為奴の攻撃で一番ダメージを受けるのは、パイロットである元よりもジャンヌになる。

 加えてエンゲージシステムはパイロットの意識も繋げる。だがどちらかと言えば機体の制御系に干渉する為に、機体との電子的距離はパイロットよりも近くなるのだ。それもあってジャンヌはキャプチャーの結界に苦しめられていたのだ。

 今までエンゲージの回線を切ってあって他の隊員、特にエターナには知られていないはずだ。エンゲージシステムの恩恵を受けづらく、なおかつ両腕もふさがったこの状況では回避に専念するしかない。

 

「くっ」

 

『もらったぁ!』

 

 サーガガンダム、及川陽太が迫る。既に未緒派のソルジガンも動いている。が、そこに阻むのはやはり彼等だった。

 

「させるかっ!」

 

『ぐっ、こいつあの時のガキの!』

 

「宗司」

 

 サーガガンダムの突貫をガンダムDNアーバレストが止めた。ソルジガン部隊もSABER、CROZEの部隊が当たっていた。

 二機のガンダムの直援には呉川小隊長とSABER側のまとめ役のソルジアスが付く。同じく直援についた入嶋がこちらの様子を伺った。

 

「元隊長、動けますか」

 

「俺は大丈夫だ。ただ機体はそう芳しくない」

 

「飛べはしますか、深絵隊長」

 

「ありがとう橋本さん。私はまだ飛べるけど、元君達が満足に動けないと思う。元君のカバーに」

 

 深絵はこちらの事情を既に把握していたようで、こちらへのカバーをするように隊員達へと告げる。その時だった。強烈な心理的圧、プレッシャーを伴った音を感じる。

 その時には既に叫んでいた。

 

「離れろ、お前達!」

 

「っ!?」

 

「え、きゃあ!?」

 

「何っ!?」

 

 元達の周囲に展開していたMS達が一斉に散開する。直後集合地点を正確なビームの一射が貫く。

 間一髪奇跡的な回避で逃れるが、それでも嫌な予感が過る。先程のビーム、明らかにソルジガンや、未緒派の物ではない様に思える。サーガガンダムは今も宗司達と交戦していることからも違う。となれば誰が撃ったのか。正体はすぐに明らかとなった。

 

『―――――ほう、それを避けるか、ガンダム』

 

「っ!この声っ!」

 

「………………」

 

 声の主に沈黙を返す。視線の先に新たなMS部隊と艦船が出現していた。ゼロンMSのシシャ達、そしてゼロンが保有することを確認している戦艦の正面方向に、先導者の如く浮かぶ2機のMSがいた。片割れに強い衝動が呼び起こされた。

 間違いない。あの角付きの紅いカラーリング。忘れるはずがない。奴との直接的な最初の出会いであるラプラス事件、それ以前から俺は奴を知っていた。宙から送られるはずだったシュバルトゼロ・ジェミニアス一号機を葬ったと報告に受けた時の衝撃は、未だに覚えている。

 滅多に見せない、先程ですら見せなかった怒りの声音と苦悶の表情で、そいつの名を口にする。

 

 

 

 

「真紅の流星の再現……ハル・ハリヴァー……!」

 

 

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EP41はここまでです。

レイ「未緒一派に加えて、遂にあの仮面の偽物モデルも登場っと」

ジャンヌ「そう言えば閃光のハサウェイは今回逆襲のシャアの世界準拠だそうですが、ハサウェイさんはフル・フロンタルさんの事どう思っているんでしょうね」

そんなことはエクバで言ってた気がするから気になった人は調べよう。

ジャンヌ「フェネクスも参戦していますからね。でもそのフロンタルベースの人が、まさかジェミニアス一号機を破壊したとは……」

レイ「にわかに信じがたいよねー。やっぱりパイロットの問題?」

それもあるし、動力源が仮の物だったのも影響している。ちなみにその話、今章で重要な点ですので覚えておいておくといいかと。

レイ「それ言っちゃっていいやつ?」

せっかくだから今回は言っておく。

ジャンヌ「そう言う風に言ってると、足元救われますよ?」

まぁ気を付けますわ。ではEP42に続きます。


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EPISODE42 閉ざすための人の意志1

どうも、藤和木 士です。引き続きEP42の公開です。

グリーフィア「うちの作品あるある、タイトルが意味不な時点で内容とあんまり関係ない」

ぶっちゃけ言うとなんて表現すればいいか分からなかったわ。ちなみに候補には「不死鳥が閉ざすとき」、「閉ざす者」です。

ネイ「閉じる……というと、クローズ?CROZE部隊のことですか。というか今そんな話してもいいんです?こういうのって設定集で言うのじゃ」

ネタとして言ってもいいんだけど、もうこの話でなんとなく何を言いたいのか分かってもらえるかと。
というわけで本編をどうぞ。


 

 

「真紅の流星……の再現」

 

『前に聞いたけど長ったらしい名前ね。けど、その面が見えないっ!』

 

「くぅ!ゼロンまで現れたか!」

 

 宗司は及川と切り結びながら、元隊長達の様子を耳で聞いていた。声音の低い男の声、その再現と呼ばれ、ハル・ハリヴァーとされた男性が戦闘への介入の意志を見せた。

 

『隊長機自ら、やはり知っていたか。我らはゼロン所属真紅の流星の再現部隊、私は紹介に預かったハル・ハリヴァーだ。我らの用件は2つ、アンネイムド[フェネクス]の譲渡、並びにHOWの両部隊隊長の首、と言っておこうか?』

 

『っ!元隊長達は、討たせないッ!』

 

『待て入嶋!クソッ!』

 

 突撃した様子の入嶋に制止を呼びかけた呉川小隊長。ただ事ではない様子だ。その予感はすぐに的中する。

 

『そうか、ならっ!』

 

『ぐっ!?きゃあぁ!?』

 

 入嶋の悲鳴が回線に響く。反撃を受けたらしい。様子を見たかったが今は目の前の敵に集中するしかない。

 そう思われたのだが、鳴り響いた警報で鍔迫り合いが中断させられる。両者共に回避した直後、ビームの一射が先程までいた空間を貫通していった。

 ビームが森を焼いていく。回線でハリヴァーが呼びかけた。

 

『君達も、今は私の言葉に耳を傾けてもらいたいな』

 

「何っ?」

 

「ハル・ハリヴァー、お前達もくだらない争いを続ける権化だ!邪魔するなら……」

 

『陽太、アンタは黙ってて!』

 

 ゼロンにまで噛みつき出す及川を律し、流がハリヴァーに対しまるであらかじめ決めていたように交渉を行う。

 

『うちの狂犬が失礼したわ?ハル・ハリヴァー。でもあなた達にとってはHOWのガンダムはフェネクスを超えるほどの獲物のはず。フェネクスをわざわざ追ってきてもらって悪いけれど、こちらを手土産で手を打ちましょう?私達と協力して、ね?』

 

「なっ、お前達!」

 

『ゲスでしょ、アンタら!』

 

『っ、やっぱり非正規組織はこんなもんかよ!』

 

 捕まえた元隊長達をささげて、自分達もゼロンも得をする。こざかしいと心底思う。エターナや進などを含めた者達の感想を子どもの叫びだと流は語ってみせた。

 

『HOWなんてぬるま湯の正義の味方やっているような奴らの言葉なんて、何にも響かないのよ』

 

『諦めろ、お前達の負けだ』

 

 勝ちを確信した流陣営。宗司も武器を構えなおす。

 彼女達の言い分にゼロン側も同意を示して見せる。

 

『なるほど、君達の言う通り、HOWのガンダムは確かに討ちたい相手だ。我が軍にも彼を筆頭としてガンダムを討ちたいものは多い』

 

『………………』

 

『そうでしょう?なら』

 

 ハルの言葉に若干首肯したような動作を見せる白い重MS。ほくそ笑む流。ところがハルの会話に割って入った人物の言葉が状況を一変させる。

 

『おいおいハルさんよぉ?いいのかい?さっきこいつら、生意気なこと言ってたぜぇ?』

 

『……ゾルダー、何が言いたいのかな?』

 

 ハリヴァーの機体の隣にいた先程の白銀の重MSとは違う、ハリヴァーの機体に似たような形の白銀の機体からゾルダーと呼ばれた男性が声音をあげ、慈しみを演じるかのように平然と先程のやり取りについて意見を投げかけた。

 

『あいつら、いや、俺達と自分は違う、アンタをくだらない争いを生み出す権化だとかなぁ。だけど、もっと許せないのは……俺達をフェネクス捕獲のためのダシに使ってそのゼロンに接触して情報を渡してきた一派ってところなんだよなぁ!』

 

『っ!』

 

『情報を流した……?そうか、ゼロンがここに来たのも、全部お前達の』

 

 合点がいったように気づく呉川小隊長。一方流は開き直ってゾルダーの言葉にわざとらしく答えて見せる。

 

『そうね。でもあなた達にとっても決して損じゃないはずよ』

 

『んん?何か勘違いしていないか?俺達が、満足?円満に物事が解決したって?』

 

『……何が言いたいの?』

 

 怪訝な声の流。宗司達も冷や汗を垂らしながら出方を伺う。

 そして、奴は、弾けた。

 

 

 

 

『俺達ゼロンの目的は、戦争!敵の殲滅なんだよなぁ!!諸君!!』

 

 

 

 

 突如として響き渡るアラート音。向くと、ゾルダーの声に従ったMSの何機かが一斉にMSの密集部隊に向けてビームライフルでの発砲を行った。

 その標的はHOWだけに留まらず、協力関係を築こうとしていた流勢力のMSも巻き込んだ。また艦艇もHOW、流勢力の艦へと発砲し、周囲のMSも攻撃に加わる。

 無差別攻撃に憤りを隠せない流と及川。

 

『何よ、こっちは味方でしょう!?』

 

『クソッ、邪魔をするなよ!』

 

「あぶっ!?」

 

 宗司もサーガガンダムに弾かれた直後、流れ玉が襲い掛かり間一髪ドライバ・フィールドで逸らして避ける。

 辺りは既に混戦の状態を様相とさせた。ただ一機ゾルダーの機体が元隊長達に向けて襲い掛かる。

 

『ガンダムならば、申し分ない!その首もらい受ける、このシナンジュ・プロトゼロンがなぁ!!』

 

『ちぃ!』

 

『させないっ!』

 

 そこへ救援に入ったのは進のオースインパルスだ。換装した格闘戦形態「アッシェ」の対艦刀「ハルファス」を連結させ、正面から迎撃する。大振りでありながら先に行かせない様に振るう大剣がシナンジュ・プロトゼロンを弾く。

 その様子を静観した様子のシナンジュ・ゼロンが相槌を打つような様子を回線で行っていた。エターナが状況を知らせた。

 

『あぁ、頼む』

 

『っ、あの白いMSも姉様たちの方に行ってる。重そうな外見して、こいつ早い!』

 

「早く目の前のこいつを倒さないと……!」

 

 未だにこちらはサーガガンダムとかかりきりだった。ビームライフルの連射が飛び交う。

 敵対するサーガガンダムの性能、伸びは強いが攻め方はシンプルだった。強い出力でこちらの攻撃を圧倒する。しかし決してこちらの攻め手を潰す決定的な手は打ってこない。

 まだ十分この機体で張り合えるレベルの敵だ。それに、ようやくドライバフォームの安定稼働領域へと二人の体力も戻ってきていた。再び二人はドライバフォームの発動を行う。

 

「ドライバフォーム!」

 

『フォームシフト、ドライバフォーム』

 

 機体が変形する。ドライバ・フィールドの出力を高めた形態でサーガガンダムとぶつかる。サーガガンダムはバックパックのビームランチャーとシールドのライフルを武器に、その圧倒的性能で応じる。

 しかし、先程よりもこちらが押していた。互角以上に喰い付いて来るこちらに及川は疑問をぶつける。

 

「ちっ、なぜだ、なぜL-DLaで押し切れない!?相手は只の学生なんだぞ!?」

 

「学生学生って、そんなのでしか見れないのかよっ!」

 

 ツッコミを入れると同時にドライバ・フィールドの変質弾を放つ。発射後フィールドの炸裂により散弾へと変わり、避け切ろうとしたサーガガンダムのシールド表面が焼ける。

 入り乱れて戦っていく三軍。その間にハリヴァーが先程の話の続きを流と行っていた。

 

『やれやれ、困ったものだ。ゾルダーにも』

 

『困ったじゃないでしょう!?早く私達への攻撃を止めて……』

 

『すまないが、先程の交渉に応じることは私も出来ないな』

 

『何ですって……!?』

 

回線から聞こえてくる流の動揺に満ちた声。戦闘に意識を向けていた宗司もはっきりとハル・ハリヴァーの下した判断を聞いた。

 

『我々を利用しようなどとは、愚かにも甚だしい。だが、好機であることには変わりない。ならば、まずはHOW、そして次は君達だ、ルウォ・エンタープライズ。いいや、予言の子ども、その策略家流未緒君』

 

『ハル・ハリヴァー……!』

 

 その反応が動くことをエターナが知らせる。彼女の声に悲鳴が混じる。

 

『流星の再現が動いた!真っすぐ姉様を狙ってる!』

 

「クソッ、進、入嶋!」

 

 宗司は手が離せない。だから他のGチームメンバーへと対応を要請した。が、今言った二人にも、敵を対処しきることは出来なかった。

 

『こっちも無理だっ!こいつっ!』

 

『いやいや無理無理!ブースター破損してるのにこんなやつどうやって対処すればぁ!?あぁでも元さんが!』

 

『落ち着け入嶋!お前は元々後方支援だろう。クルツ、お前は白の重装型をやれ。俺が流星の再現を抑える!』

 

『オーライ!だから近接支援任せたぜ入嶋ちゃん!』

 

 二人の代わりに先輩二人が追加された敵に当たった。安堵はあるが、その言葉には所々不安感を覚える。あの二人でも抑えるのが難しいとでも言うような。

 そしてそれは図らずもすぐに実現してしまった。呉川小隊長とハル・ハリヴァーがクロスする。

 

『むっ』

 

『はぁぁぁ!』

 

 声を張り上げてバスタースラッシャーで斬りかかった。のだが、そのバスタースラッシャーを掴んでいた腕の影が宙を舞っていた。呉川小隊長が斬り負けたのだ。

 同時にクルツの側も劣勢に追いやられていた。狙撃に失敗したクルツの声が聞こえてくる。

 

『ぐっ、何だよこの防御力の要塞!?耐ビームコーティングじゃねぇ。抜けられる!』

 

 レーダーに二人を抜けてそのまま元隊長達の下へと向かう敵機。宗司もサーガガンダムを振り切ろうとするが敵はそれを許してくれない。

 

『姉様!』

 

『あ、あ、あぅぅ!?』

 

『元隊長、入嶋!』

 

 間に合わない―――そう思われた。

 

 

 

 

『―――――間に合いました、宗司先輩!』

 

 

 

 

 時が止まったかのような瞬間、聞こえた聞き覚えのある後輩の声。同時に当たりに機械音声が告げた。

 

『DB、雪花狼』

 

 響き渡る幾つもの刀同士が結び合うような斬撃音。今まさに斬りかかろうとしていたハル・ハリヴァーと白い重装型の侵攻を押し留めた。

 なおも近づこうとする重装型だったが、刃の嵐に混ざって繰り出された何かの突きによる衝撃波で距離を取らされていた。

 刃の嵐が収まる頃、レーダーが新たな反応を示す。嵐の中からMSが出現した。MSから参戦した者の名が告げられた。

 

 

 

 

『自衛軍特選MS戦術部隊「極舞」、戦線に加わる』

 

『支援に来ました、宗司先輩!』

 

『あたしもいるでー』

 

 見知った後輩達の声と共に、自衛軍が参戦したのであった。

 

 

 

 

 絶体絶命の危機にギリギリ間に合った自衛軍特選MS戦術部隊「極舞」。だがそろそろだろうとは元も当たりは付けていた。

 カザノメカニクスを出発する直前の極舞の位置はギリギリ石河県に差し掛かると報告を受けている。同時に「荷物」を届けるという情報も新堂から聞いていた。

 フェネクスの確保にある程度感触を掴んでいた元だったが、この時点で元はDNLの直感で嫌な感覚を覚えていた。それがサーガガンダムの放ったユグドラルキャプチャーの事だったのだが、不安感を覚えた元は極舞に迅速に行動する様に要請していた。

 沙織もそれを承知し、急行すると言ってくれた。その結果何とかこのタイミングで間に合ったというわけだ。真紅の流星の再現の前に立ちはだかった沙織が遅れたことへの謝罪とこちらの安否を確かめてくる。

 

『すまない、何とか間に合った。そちらは』

 

「死んではいないさ。ただ、あんまりこのままっていうのもな」

 

 未だにジャンヌへの負担は続く状況。早く艦へと引きたいところだったが沙織が来たのなら話は別だ。沙織に例の物について打診する。

 

「それより、ブツは」

 

『上だ。彼ら達が守ってくれている』

 

 上空を見上げる。すると確かに重装備のソルジスタ2機が何かを護るように戦場から離れた位置で待機していたのを確認する。

 こちらの動きを見てシナンジュ・ゼロンのハル・ハリヴァーが自らの存在を強調する。

 

『防がれたとはいえ、まだ終わりではない。自衛軍最強の剣士、新堂沙織でも私を止めるには役不足だよ』

 

『言ってくれる。だが使命は果たすさ!』

 

 沙織は自らの専用にチューンナップされたソルジスタでシナンジュ・ゼロンと激突する。新堂に連れ添われていた2機のソルジスタも白い重装MSと戦闘を開始する。

 各方面でも極舞部隊が増援として派遣されていく。これで問題はないだろうが、それでも一時しのぎに近い。

まず間違いなくシナンジュ・ゼロンが抜けてくるだろう。そして何よりこのままでは他の者達への負担が大きすぎる。

 どうにかするにはもはや道は一つしかない。上空を見上げて元はジャンヌの回線に絞った。

 

「ジャンヌ、まだ意識はあるか」

 

『え、えぇ……さっきの話も聞いてましたから。どうにかこの拘束を抜けられれば……っ!』

 

 ジャンヌの声が苦しい。これ以上は後遺症が残りかねない。だがこれから取ろうとしている策も非常にリスクが高かった。

 しかしその選択を選んだのは他でもないジャンヌだった。元へと彼女は代診する。

 

『元。クローズモードを……使いましょう。それでこの拘束を、外して……クローザーに……』

 

 クローズモード。まさに提案しようか迷っていたジェミニアス単体の最後のモード。

 エレメントブーストに属するモードの一つで、その性能は凄まじいものを誇る。が、これまで発動しておらず、しかもその理由こそ発動を躊躇う理由。単純に負担が激しすぎるのだ。

 しかもジェミニアス単体では御しきれない。発動も短時間しか望めない。それでも今のこの状況を脱するには効果的な一手と言える。ただ一つ、ジャンヌの負担が激しすぎるという点を除けば。

 発動に躊躇う。躊躇いを見透かしたジャンヌは強く言った。

 

『今の……この状況を突破できるのは、クローザーしかありません……』

 

「だが、それではお前が……」

 

『きっと、気絶してしまうでしょうね……だから、後の事は……元に任せます。クローザーで、……やるなら、早く……!』

 

 息を呑む。確かにジャンヌの言うことは正しい。やるなら早く。手遅れになる前に決断するしかない。

 ジャンヌの言葉を聞き、全てを賭ける決断をする。要求を呑みこむ。

 

「……分かった。行くぞ!」

 

『えぇ……!』

 

『クローズモード、アクティベーション!』

 

 二人が声を揃えた。同時にジェミニアスの停止されていたはずのフレーム効果が強制的に発動する。

 溢れ出すユグドラル反応を抑え込もうとユグドラルキャプチャーの抑圧が強まる。フィールドからダメージがジャンヌを痛めつける。

 

『うぐっ!あがぁっ!!』

 

「っ……はぁ!!」

 

 抑え込まれようとするシュバルトゼロ・ジェミニアスの出力を一気に最上限へと引き上げる。無理に上がった大出力に機体が悲鳴を上げる。が、その前にキャプチャー端末が屈し、遂にその拘束が解除された。

 

『キャプチャーが外された!?クッ』

 

 粉砕したキャプチャー端末から解放されて一度膝を着く。宗司と相対していた及川が歯ぎしりをしつつもこちらに対応する。深絵を縛っていたユグドラルキャプチャー端末が外れ、こちらへと向かって来る。

 しかし、それはもはや悪手であった。二基の端末が離れた直後から深絵は行動が可能となっている。離れたそれらをこちらに取りつく前に手に構えたライフルビットで撃ち抜いた。

 深絵が早く行くようにと呼びかけた。

 

「行って!ここは持たせる!」

 

「了解した」

 

 自由の身となったジェミニアスで上空へと向けて飛翔する。シュバルトゼロをフリーにするのは不味いと判断されたのか、両陣営から迎撃に向かって来るMSの何体かが見える。

 弾幕の中をジェミニアスが避けていく。更にブツの護衛に回っていた重装機達がジェミニアスの援護の為に弾を放った。

 ジャンヌは既に気を失っている。元自身でコンソールを思考操作し、自衛軍が運んできたそれをこちらへと誘導させた。

 それは鳥というには逸脱しすぎていた。機械の体はまだあり得るが、頭部に当たる部分はキツツキかあるいは古代の翼竜、ケツアルコアトルスにも似たくちばしを思わせる「巨大な剣」で構成されていた。

 奇抜な機械鳥はジェミニアスからの指示を受けて向かって来るジェミニアスの背後にやや先を行く形で並行方向に向け飛行する。敵の追撃を振り切ったわずかな瞬間に、行動を実行に移す。

 

 

 

 

「ドッキング開始!」

 

『クローズフェニックスドッキングモード、クローズフェニックスドッキングモード!』

 

 

 

 

 スタートが復唱すると共に、機械の鳥「クローズフェニックス」がドッキング態勢へと入る。首を後方に擡げ、脚部ユニットが背中へ着地する構えを取る。ジェミニアス側も背部マルチプルシフター付け根より脚部ユニット接続用のアームが伸びる。

 それらが金属音と共に接続されると一気に背中へと体もバックパックと密着させた。ロックが完了すると、次いでウイングパーツがジェミニアス肩部のマルチ・アサルトシールドにかぶさる形で合体を完了させる。

 最後に尾部から分離したパーツがそれぞれライフル、シールドとして両腕部に装備される。

 合体を終えたジェミニアスはツインアイを光らせる。合体した各部パーツから多量にDNが放出されていく。追いかけてきた敵機のビームが放出された光のカーテンにかき消される。

 振り返って敵と相対する。その姿に敵が震える。

 蛇に睨まれたように硬直する敵パイロットへ向けて機体の名を死刑宣告の如く告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「シュバルトゼロクローザー、お前達の先の未来を終わらせる魔王の名前だ」

 

 

 ガンダム、魔王の反撃が始まった。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP42はここまでです。

グリーフィア「うーんダブル○ーライザーね」

ネイ「それモチーフっぽいですし、その初登場回のサブタイトル踏襲で良かったのでは?」

それだと閉ざす者の声、とかになる。あんまりしっくりこなかったのでこれにしました。

グリーフィア「まぁそれならいいけども。で、ゾルダーさんあれ言ってないじゃない」

いやーご唱和させようかと思ったんだけど、いきなり言わせるのもあれだったんで。

ネイ「でも台詞はまんま劇中と同じですね」

だからその内言うよ。みんな大好きなあの言葉。その時を待っててね。

グリーフィア「あと、地味に自衛軍の新堂さん再登場ね。今章はL2のキャラがよく出るわねぇ」

ネイ「これで出尽くした感じだけどね」

いや、実を言うとまだ出る。そこら辺はお楽しみに頂けると。

グリーフィア「んー……あと誰かしらね」

ネイ「懐かしいところだと須藤さんかなぁ。深絵さんのお師匠さん」

グリーフィア「あぁ、あのじっちゃんね。生きてるの?」

生きてはいるよ(;´・ω・)もっと大事に扱いなさい。

ネイ「作者それ言えますか?」

変な感じに大事にし過ぎてると思うんだけどもなぁ。というわけで今回はこのくらいにしましょうか。

ネイ「また次回です」


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EPISODE43 閉ざすための人の意志2

どうも、藤和木 士です。EPISODE43と44の公開です。まずEP43から。

レイ「何かまた間空いたよね、少しだけど」

ちょっとストックが追いついて来てビビりました。まぁ原因分かったので引き続き2話更新にしましたが。ゲームも並行してやってるからね。

ジャンヌ「まぁこちらも息抜き程度ですからね」

申し訳ないけどそう言うことだ。というわけでクローザー大活躍の本編をどうぞ。


 

 

『が、合体した!?』

 

『構うな、やれ!』

 

 ゼロン、流勢力のMSが一斉にシュバルトゼロクローザーへと攻撃を開始する。手にしたライフル、腕部ウエポンアームからこちらに向けてビームを放つ。

 放たれた弾雨を見て、クローザーはその中へと飛び込んだ。

 本来なら自殺行為と取られてもおかしくない行動。しかし放たれる弾雨の雨あられをクローザーは苦も無く突き進む。

 ビームを回避、あるいは周囲に展開したDNウォールと化した放出粒子が被弾を防ぐ。猛進してくるクローザーに敵MSが狼狽えだす。

 

『う、うわぁ!?』

 

「邪魔だッ!」

 

 素早いジェミニナイフの一閃で前へと立ち塞がったMSを撃破する。続く一閃でもう一機、攻撃を物ともせず猛進する。

 武器を槍型のセントエルモへと切り替えるとその穂先にエネルギーを集中させる。そんな光景を見せられて敵機は決死の覚悟で阻止しようと向かって来る。エネルギーをチャージした穂先を敵に向かって振るった。

 

『DNF、セントエルモ・ファイア』

 

 炎のような刃が衝撃波として振るわれる。刃が敵機を切り裂く。

 続けざまに放って敵機をすべて全滅させる。殲滅確認後、シュバルトゼロクローザーを先程までいた無人島へと向かわせようとする。そこで強烈な抑圧の音が脳裏に鳴り響く。

 音の方角に目をやると先程ジェミニアスとライブラを捕らえていたファンネルタイプのアンチユグドラル兵装が向かって来ていた。それも二基どころの話ではない。ざっと見て十基以上はある。

 尋常ではない量のその兵装を送り込んだのは艦から指揮するあの女、流未緒によるものだった。

 

『さぁ、これだけあればどうにもならないでしょうっ!!』

 

 あっという間にクローザーを包囲してアンチユグドラル領域を作り出す。クローザーはピクリとも動かない。

 その様子を嘲笑う流の声が聞こえてくる。

 

『無様ね。まさか抜けられるとは思わなかったけど数が多ければこんなものよ』

 

「……」

 

『あなたは何も出来ない。そう、今の私達の前じゃ、HOWも赤子の手を捻る程度……!これで恫喝すれば、もうHOWは』

 

 勝てない、と言おうとした彼女の言葉を砕くように、元は言って見せる。

 

「勝てない、本気で、そう思ってるのか?」

 

『何?それは事実で……』

 

 直後クローザーの力を解放する。先程のキャプチャー端末を破壊した以上の出力でDNL感応波を放出し、たちまちオーバーロードへと追いこむ。

 キャプチャー端末の許容数値を越えた感応波で不安定になった端末を、すぐさまジェミニアームズで切り裂いていく。その様子を通信越しで唖然と言葉が出ない流。

 

『あ、な、何で!?』

 

「何でも何も、お前の大好きなアンネイムドが既にやったことだろうが」

 

『嘘よ!そんなこと出来るのは、限られたパイロットと機体だけのはず……』

 

「そのお前の中で括った適合者に、俺とこの機体がいる。それだけだろ?」

 

 皮肉を込めた言葉を残して、無人島へと舞い戻っていく。

 島へと戻るとCROZE部隊は何とか善戦していた。だがゼロンのエース機三機の圧倒的な性能と、サーガガンダムの奮戦でかなり疲弊する結果となっていた。

 手始めにまず撃墜されそうになっていた沙織の支援へと割って入った。

 

「ふっ!」

 

「何っ?」

 

「っ、元、間に合ったか」

 

 クローザーの姿を見てそう安堵する沙織。俺は沙織に一度後退する様に指示した。

 

「待たせてすまない。ここは俺が。そちらはうちの隊員とフェネクスの輸送準備を開始してくれ」

 

「了解した。上空待機も、来てくれ」

 

 沙織が距離取って動けないままのフェネクスを守る千恵里、クルツ、深絵へと合流する。

 白いシナンジュ、そして重装機と戦っていた進と自衛軍のソルジスタ二機へもこの場の引き継ぎを命じる。

 

「進、そこのソルジスタ二機、後退しろ。俺がこの場を引き受ける。フェネクスの輸送支援を」

 

『はぁ!?』

 

『そ、そんな無茶です!いくらHOWの魔王とはいえ』

 

『せやで、何でも出来るわけやないやろ』

 

 不安になるのは分かる。だがそれだけの問題ではないことを元は告げる。

 

「奴らの目的はフェネクスだ。完全に捕らえてしまえば次の手のために撤退しかない。それにこの島がいくら無人島とはいえ国管轄の自然遺産の一つ、いたずらな環境破壊はご法度だ。少数で戦うしかない」

 

『それは……』

 

『クソッ、どうなっても知らないからな!行くぞ、そこ二機!』

 

 進がどうにでもなれと言った感じでソルジスタ二機を誘導して後退していく。進のインパルスも右腕を失う結果となっていた。継戦するにもパーツ換装が必要だった。故に下げたのだ。

 出来れば宗司も下げておきたかったが、方向が違うので断念する。一機で挑んでくるこちらの姿を見て集結したゼロンの3機のパイロット達が言葉をこぼす。

 

『よもや、我らの相手をたった一機でどうにか出来ると思われるとはな』

 

『いいじゃないかハル。その自慢の鼻っ柱を叩き折るいい機会じゃないか?』

 

『ゾルダーさんに同意です。僕らゼロンを甘く見る奴は、魔王でも痛い目に遭ってもらうしかないでしょう』

 

『ゾルダーだけでなく君も、か。出来れば君には後方支援を頼みたいのだがね』

 

 聞き手としてはとても好戦的な一派と思う。真紅の流星だけはやや落ち着くようにと重装機のパイロットに言っているが、止めきらないところから言ってやや思うところはあるらしい。

 そんな彼等だからこそ、こちらとしてもやりやすいものはない。わざと彼らを煽り立てるように挑発した。

 

「悪いが実戦テスト運用もまだやっていないんだ。これをその成果とさせてもらう」

 

『テスト相手……残党狩りのつもりかよッ!』

 

『後悔させてくれるっ』

 

『待て、二人とも!……仕方ないか』

 

 先行する二機を追うようにハリヴァーのシナンジュ・ゼロンが展開する。こちらも応じるように踏み込んでいく。

 まず血気盛んなゾルダーと呼ばれた男がビームライフルを乱射しながら格闘戦を仕掛けてくる。

 乱射、と言っても狙いはそれなりに精確で、外れていく弾も後方の回収班に向けて放たれている。

 それらを可能な限り受け止めつつ突撃する。が、それを阻むように重装機型がビームライフルで追加の弾丸を浴びせてくる。

 このままでも構わないが、如何せん高純度DNの消費が激しくなる。これ以上に最適に防御可能なモードが存在するのだ。

 そのモードへとシュバルトゼロクローザーを移行させる。

 

「シフトアレスマグナ!」

 

『轟熱激覇!アレスマグナ!』

 

 機体本来のシステム音声が読み上げる。アレスのようにフレームが紅く染め上げられるが、それだけではない。

 各部のパーツが形状変化を引き起こし、炎を模したようなパーツへと変化していく。エレメント粒子がビームを弾いていく。

 

『ビームを弾く!ならば接近戦だ!』

 

 ゾルダーが瞬時に格闘戦へと移行する。シールドのビームアックス端末を展開し、ハサミのようにしてこちらに振るって来る。

 こちらはそれを右腕の拳で打ち込むように受け止める。攻撃を止めていて隙だらけの機体に重装機が背後へと回って攻撃を行った。

 

『甘いっ!』

 

 自信に満ちた声だ。背後を取れば倒せる、その考えは間違いではないだろう。

 しかし今の立ち位置なら本来狙うべきではない。もし外せば味方に被弾しかねないからだ。その点ハル・ハリヴァーは冷静に中距離からライフルを構えて状況を見ていた。

 重装機からビームが放たれる。ライフルとシールドのカノンを連射し、弾雨を降らせる。だが予想通り、クローザーには届かず、むしろ隙間からゾルダーの機体に注いで被弾の爆発を起こす。

 

『クソッ、避けろよ!』

 

『貴様の攻め方が下手なのだろうが!』

 

「ごちゃごちゃ言っている暇があるなら!」

 

 被弾したゾルダーの機体に目がけて蹴りを浴びせる。その接触面から敵機の装甲を焼く音が鳴る。蹴りを喰らった機体の装甲がビームに焼かれたように融解する。

 アレスよりも攻撃的に強化されたアレスマグナは、まさに炎の化身。触れるもの全てを焼き尽くす。

 止まることなく続いて白い重装型に打ち込みを行う。重装機がシールドで受け止める。その時妙な感覚を覚えた。

 

「……?」

 

 一度戦ったことがあるような感覚。しかしそれが何なのか分かる前にシナンジュ・ゼロンがその機体からの弾き飛ばしを受けた。

 

『はぁっ!』

 

「っち」

 

 こちらもすぐに離れる。今は目の前の敵、シナンジュ・ゼロンに集中しなければならない。

 離れたタイミングで背後から攻撃が放たれる。回避すると先程蹴り飛ばしたゾルダーのプロトゼロンがこちらに向かって来る。

 

『この野郎っ!』

 

 手首装甲内からビームサーベルを取り出して斬りかかってくる。それに対抗し、こちらも動く。

 

「アズールハルピュイアっ」

 

『蒼穹連理!アズールハルピュイア!』

 

 蒼の力、ハルピュイアの強化モードへと変化する。通常のハルピュイアモードとは違い、換装された尾部は大きく拡張され、例えるならキジやクジャクを思わせるほどに展開していた。

 尾部のスラスター口とフレームからエレメント・アイスに似た蒼い粒子が放出される。しかし違う点として粒子はまるで雪から結晶のようなエフェクトへと変化していた。

 エレメントがゼロンMS達へと到達する。すると三機のMSが途端に調子を悪くした。

 

『ぐっ、機体が、重い……?』

 

『あぁ?どうなってる!整備班めまた!』

 

 先発する二機のパイロットは機体の重さに疑惑を口にする。思い通りにいっている証拠だ。その間にクローザーは白い重装機を落としにかかる。

 白い重装機はエレメント効果範囲内ながら、何とかこちらのビームサーベルと切り結び合う。余程素の機体性能が良いらしく、このエレメント範囲内で良く動ける。他の支援に入ろうとしたゼロン量産機はエレメントの接触で一気に調子を悪くしていくというのに。

 切り結び合いながらも敵も腹部のビームキャノンを突発的に放ってこちらをけん制する。

 二機が戦い合う中で、慎重に事を構えていた真紅の流星の再現がその動作不良の断片についてかぎ取っていた。

 

『違う……これは機体から……っ、騎士官、奴から距離を取れ。今のままではまずい』

 

『何っ!?』

 

『機体が、凍っている!』

 

 凍っている、という表現に些か疑問はあるだろうが、機能の予測としては間違いないものだった。

 エレメント・フリージア、その真の性質は「エレメント粒子展開領域内の機体の凍結化」。関節部に作用してエース機のようなまともな機体以外は戦闘すらも行えない程に凍らせてしまう。

 先程のアレスマグナのビームが直撃したかのような溶解も、同じような現象。あちらは炎熱である。

 MSにはあまり馴染みのないような攻撃だ。それを実現できるのはひとえにシュバルトゼロのユグドラシルフレームとツインジェネレーターシステム、そして自身のDNLがあればこそ。

 限りなく正解にたどり着いたハリヴァーに対し告げる。

 

「ご名答。お前がかつて破壊したジェミニアス1号機にはなかったか」

 

『あの機体の事か。あのパイロットもよく頑張ったと言える。こんな無茶苦茶な機体を任せられて、憐れだ』

 

「なら、今度はその完成形のクローザーの前に散るがいい!」

 

 悪役とも取れる言葉を放ってビームライフルを構える。ジェミニアス元来の物ではない。肘部分でホールドされた、フェニックスから分離されたライフルを手元まで持ってきてトリガーを握る。

 ゼロ・ビームライフルⅡとは違う機体供給式のライフルからの射撃がシナンジュ・ゼロンに放たれた。

 シナンジュ・ゼロンはその異名通り、流星のように攻撃を回避する。だが姿勢を若干崩し、続けて放たれた二射目はシールドで防御していた。

 予想通り、おそらく一射目の射撃で付近のスラスターが凍ったのだろう。このままならたちまち動けない様になる。それを感知してか否か、ゾルダーが勢いよく突撃してきた。

 

『こっちもいるぞガンダム!』

 

『ゾルダー、不用意な接近は……』

 

『そんなもの、ユグドラルフィールドで何とかするっ!』

 

 言ってゾルダーは機体に埋め込まれているであろうユグドラルフレームからフィールドを発生させる。

 フィールドの表面がたちまち凍っていく。が、内部の機体は問題なくスラスターを噴かせる。瞬時にエレメントへの対応を見せていた。

 あのパイロット、雑だが勘で対処法を出してきた。それなりにやれるようだ。だが。

 称賛しつつもビームライフルの大出力でユグドラルフィールドへ向けて放った。直撃したユグドラルフィールドが凍結し、そのまま破壊されていく。

 

『何っ!?』

 

「脆い!」

 

 そう、防ぐならもう少し強度を高く持たなければならなかっただろう。アズールハルピュイアの速度を以って、距離を詰めるとビームサーベルで一気にシールドごと腕部を切り裂いた。

 切り裂いた直後ゾルダーの機体が距離を取る。と、対処法を身に着けたハリヴァーがシナンジュ・ゼロンを前衛に展開した。

 

『騎士官、私が前に出る』

 

『俺もこれを外せばっ!』

 

『今はその時ではない!』

 

 装甲を外して前に出ようとする僚機を止め、高機動からのビームライフル連射がこちらを襲う。

 こちらもアズールハルピュイアの高機動でその射撃を避ける。ファンネルも交えた射撃戦を展開する。

 だが敵もまた同じ手を取ってくる。

 

『ファンネルなら、こちらも!』

 

「っ、同系、ビットか」

 

 ウイングの内面から放出した板状のビットがこちらを包囲し射撃する。

機体を通してビットにもフィールドを張っているようで、凍結が効かないようだった。また白の重装型も肩部シールドからDNウォールを展開して対抗しているようだった。

 対処法を取られてもそれだけでシュバルトゼロクローザーを止められるものではない。空中でどの三機に対してもけん制と本命の攻撃を織り交ぜて撃墜を図る。

 

『ぐっ!こんな不利な状況で……!』

 

『下がれ、君の機体では今はもう無理だ』

 

『まだやれる!おわぁ!?』

 

 撃墜寸前となるシナンジュ・プロトゼロン。確かに直感の発想などは良いが、腕はハリヴァーよりも劣るだろうと感じていた。

 だからこそ、優先して落とす。ビームライフルで狙いを定める。

 

「墜ちろ」

 

 殺意を込めた一射がプロトゼロンのバックパックを撃ち抜く。完全に戦闘能力を失ったプロトゼロンは撤退を始めた。

 それを支援すべく艦艇から砲撃が放たれる。ハルピュイアのまま避けたいところだが、連携する様にシナンジュ・ゼロンと白の重装機の攻撃が同時に迫る。

 

『逃れられまい』

 

『逝けよ!』

 

「シフトスカルキング!」

 

『鎧主一極!スカルキング!』

 

 雷撃と共にシュバルトゼロクローザーがキングモードの発展形へと変貌する。いつもの重装甲が合着後に雷を纏って大型化する。

 続けて装備したガン・グニールとキングビットシールドも、各部がクリア素材へと変質していたり装飾が追加されたりと強化された見た目となる。

 その機体にビームが直撃する、がこれまでのキングモードと同じくそれらビームは反射して敵へと帰っていく。それは艦船のビームも例外ではない。

 敵が反射したビームに対処する間にスカルキングとなったクローザーはシールドを四つへと分割させる。

 シールドは円を描くようにランスの周りを周回し出す。周回するシールドの内側、ランスの先端部にビームが集中していく。明らかな大出力攻撃の構えにゼロン側が危機感を覚える。

 

『っ!撃たせたらまずい!』

 

『待て騎士官!不用意な接近は……』

 

 ハリヴァーの制止の前にクローザーの砲撃を放った。大出力の砲撃、雷の砲撃のようだった。

 砲撃は発射と同時にいくつものビームに拡散していく。貫通より面での攻撃を重視した攻撃だ。それらが動こうとする敵機を横、あるいは背後から機体へ被弾させていく。

 

『あぐっ!?痺れる……電気属性!?』

 

『電撃攻撃……いや、電気を伴ったビームと言うべきか。しかし、船にも……』

 

 ハル・ハリヴァーの発言通り、それら電撃砲撃は撤退中だったゼロンMSを始め、遠くにいたゼロン艦艇と護衛MS群をも攻撃した。

 艦艇はダメージコントロールを行いながら被弾したMSの回収を始める。撤退行動にも移りつつあるだろうか。

 続く雷撃砲撃を回避しながら戦っていたハリヴァーが部隊の撤退を命じた。

 

『全機後退。作戦を放棄!』

 

『っ、またあなた達は、宗主様の為の作戦を無下にすると!』

 

『そんなもの今は何の価値もない。退くんだ、奴がまだ慣れ切っていない前に!それとも彼の言葉を忘れて裏切るとでも?』

 

『……くっ!』

 

 渋々と言った様子で撤退していく。これでゼロン陣営の邪魔は排除できそうだった。

 しかしまだ障害はある。未だに宗司と戦う流勢力のサーガガンダム、及川陽太の確保へと向かった。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP43はここまでです。

レイ「クローザー冗談抜きで強すぎるよ……」

ジャンヌ「属性攻撃って時点でもうMSの枠を超えている気がします」

元々は付ける予定なかったんだけどね。ただ前に入ってたグループでそんな感じになって、もうそれでいっかってなった。おかげで特殊能力の表現がしやすくなったんでいいんですけどね。

レイ「でもゼロンをこんなにも簡単に退けてると……こう、チート過ぎない?」

ジャンヌ「主人公の影が薄れる、といいますか……」

まぁ今回みたいにアクシデントそれなりに起こして強さは最終盤辺りまでそれなりに抑え込むつもりだよ。今回はジャンヌが意識失っているし。

レイ「そう言えばそうだね。つまりその上があると……」

ジャンヌ「なんかそんな感じで上手いこと能力出せなかったって展開、ありますよね」

マジェ○リのレッ○1とか1期と劇場版のファ○ナーのザ○ンとかね。最近だと○イダーの最終フォームとかもそういう制約が掛けられたりするよね。そういうの好き。特に最終話でそれを全部無視して全力で立ち向かうのとか。

レイ「実は作者、○イダーの暴走フォーム好きとか?」

ハザードとかプトティラとか大好物だが?

ジャンヌ「そこらへんの作品みたく、能力に振り回されないような作品作りお願いしますよ」

善処します。というわけで次に続きます。


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EPISODE44 閉ざすための人の意志3

どうも、藤和木 士です。引き続きEP43と44の更新です。EP44の更新になります。

ネイ「クローザーの性能は、もう前回の時点でお嬢様達が語っていましたね」

グリーフィア「うーんやっぱりダブル○ーライザーなのよねぇ。いくら性能をフルに発揮させないことを意識してても、敵側の戦力と帳尻取れるのやら……」

まぁそこら辺は今心配することじゃないさ。流石にL2の時みたいな露骨な戦力低下は行わないけども。というわけで本編をどうぞ。


 

 

 ガンダムDNアーバレストは引き続きルウォ・エンタープライズ、流勢力の相手をしていた。

 ドライバフォームも再始動させて互角の戦闘を繰り広げる。が、それでも機能の最大稼働した後での連続使用は二人の体に負担を掛けていた。

 

「くぅ……ソージ、もう、私……っ!」

 

『エターナ、くっ、こっちも……持たない……っ!』

 

 エターナ自身が音を上げたのと同時に、ソージも限界を示していた。それでも気をやったらやられると、ドライバフォームを維持する。

 限界が見えたのを見てオイカワが蔑む。

 

『ほら見たことか。学生如きが、俺を、呪われた悪魔の力のL-DLaを止めるなんて出来やしないんだ』

 

「言わせておけば……っ、こっちはフェネクス捕まえるのに力使ったってのよ……!」

 

『それが迂闊なんだ。学生なんかをメンバーに採用して、あまつさえ主力に……そんな甘い考えが戦場で通じるか!』

 

『甘い、だと……』

 

 ソージが力を振り絞ってアーバレストで張り合う。根性とも呼べるもので抑え込んでいたがそれも時間の問題だ。

 そしてその時が来る。最後の支えとも呼べた力をサーガガンダムの湧き上がる執念の力がこちらを弾き飛ばす。

 

『ぐぁ!』

 

『これで、お前は倒す!残りも全て!』

 

 ビームサーベルを構えて突撃してくる。もう終わる。そう諦めて姉への助けを呼んだ。

 

「助けてっ、姉様っ!」

 

『―――推力を切れ、相模!エターナ!』

 

「『!?』」

 

 突如響いた声。それが誰かなんてことに気づく前に反射的にアーバレストの推力をカットした。

 推力、浮力関係のエネルギーが切れたことでアーバレストは自由落下を始めた。それを見てサーガガンダムも軌道変更を開始した。

 

『そんなことで、避けられるか―――』

 

 ところが、急降下しようとしたサーガガンダムの太刀筋を割って入った機体が止める。

 それは姉がエンゲージパートナーとして同乗するシュバルトゼロガンダム・ジェミニアス。しかしその姿はエターナ達が知る物と違っていた。

 大型の追加パーツを装着したようなガンダムが雷撃を纏ってトドメを阻止した。変貌したジェミニアスから再びアイツの声がした。

 

『何とか、間に合ったな』

 

『ぐっ!?HOWの魔王……!』

 

「ハジメ……あいや、遅いのよクソハジメ!姉様はどうしたってのよ!」

 

 危うく本音が出かけたのを飲み込んで、訂正して問いただす。その間にも機体制御の回復は忘れない。

 光を纏った槍と光剣で鍔ぜり合う中、クソハジメは質問にも答えずにこちらへの指示を送る。

 

『お前達も下で回収部隊の護衛に付け。限界なら中央で守ってもらうんだ』

 

「ちょっと!指示はいいけど姉様は!」

 

『今はそれどころじゃない!後で言う!』

 

「あぁ、もうっ!」

 

 だが切迫具合から聞けずにやむなくソージと共に指示に従う構えを取る。

 何よ、それどころじゃないって……姉様の声も聞こえないし、姉様に何かあったってことでしょうが……!

 募る不安と苛立ち。今すぐ首根っこ捕まえてでも訊きだしたかったがそうしたらそれこそオイカワの発言を補強しているようだと思ってしまい、断念する。

 諦めて地上へ降下。同時に張り続けていたドライバフォームを解除する。と、機体が倒れ込んでいく。

 

『あっ……』

 

「ちょ、維持できな……」

 

 そこを抱きとめたのはチームメイトのイリジマのDNアルヴだった。

 

『大丈夫、宗司君、エターナちゃん』

 

『入嶋……あぁ、大丈夫、とは言い難いな』

 

「もうドライバフォーム維持できない……」

 

 そう入嶋に告げる。するとHOWでは見慣れないMSから聞き覚えのある声が聞こえてくる。

 

『宗司先輩、エターナ先輩、こちらへ』

 

『ほんま大変でしたねぇ、先輩方。けどお手柄ですやん!』

 

『あぁ……友直さんに、智夜さんか』

 

 ソージが自衛軍二機のパイロットの名を呼んだ。間違いなくこの声は同じ学園に通う後輩、イヌムラユナとササキチヤである。

 彼女達はシールドを構えて攻撃に備えながらこちらに現在の進捗について言及する。

 

『こちらの捕獲装置も合わせて、フェネクスは間もなく移送が可能です』

 

『その時にも一緒に送ってもらったらどうなんです?』

 

 チヤから撤退を勧められる。そうしたいところだったが、ソージが断る。

 

『そうしたいけど、まだ完全に撤退しろって言われたわけじゃないからな。中央で少し休みたい。いいですか呉川小隊長』

 

『あぁ、構わない。が、邪魔にはなるなよ』

 

『了解です』

 

 言ってアーバレストの機体を味方機が囲うフェネクス捕獲装置のある場所へと移動させた。

 機体を片膝立ちにさせて休む体勢を取る。と、そこにどうやらもうすぐこの戦いが終わろうとしていた。

 見上げた先のシュバルトゼロとサーガガンダムの会話が聞こえてくる。

 

『いくらDNLをメタったとはいえ、所詮はアンネイムドのプロトタイプのプロトタイプ。フォリウムガンダムの性能では!』

 

『あぁ、お前達の捨てたものだ!お前達に捨てられたものを、今度こそ救って見せる!助けて見せる!』

 

 激突する両者。だが既にシュバルトゼロはキングモードを解除しており、ノーマルモードで圧倒しつつあった。

 通常での姿すら、これまで見てきたエレメントシフト並みの性能みたい。あの強化パーツは……もしかして。

 とある考えが頭をよぎる。けれどもそれを今追求するべき時ではなかった。しかしそれももうすぐのようだった。

 突然オイカワの声が荒げる。話し相手はあの女、流のようだった。

 

『何、後退だと!?まだフェネクスを、リアを!』

 

『よそ見している場合かっ』

 

 隙を狙ってシュバルトゼロがサーガガンダムに合体させた長剣で斬りかかる。他のエース機だったら対応できたかもしれないが、相手はあのシュバルトゼロ。奴が防御するよりも早く、構えたバックパックのビームランチャーを切り裂いた。

 続く二撃目は両腕部のシールドを合体させて防がれた。その間にオイカワはナガレと話を終わらせる。

 

『……クソッ、覚えてろよッ!』

 

 弾かれた勢いを利用し後退しながらシールドの二連装ビームキャノンを悪あがきの如く放つ。シュバルトゼロはそれを切り捨てるが、その間に向こう側は急速撤退を始めた。

 アオリ隊長が追撃の認否を問う。

 

『どうする、追撃する?』

 

『いや、これを使う』

 

 言って取り出したのはジェミニアームズの一つ、ジェミニショットライフルだ。そこにジェミニソードと思われるやや形の違った長剣を合体させる。

 それらを敵に向けるとやや強めの勢いで長剣を銃で放った。放たれた長剣は伸びていったが、当たったかどうかは分からない。が、クソハジメは確信を持って言う。

 

『敵艦艇に着弾確認、動作もしてるようだな』

 

『何を、放ったんです?』

 

『試作のジェミニトランシーバーだ。これであっちの次の動向が分かる』

 

 どうやら盗聴器か発振器のような物を打ち込んだらしい。トランシーバーと言うからには盗聴器のようなものか。

 それにしてもあの距離を一発で打ち込む技量。クソと言ってはいても化け物級の技量だ。DNLの能力があっても、技量も合わせなければならないだろう。

 戦闘が収まっていくのを感じた頃、クソハジメが他の隊長達と確認を取り始める。

 

『深絵、沙織さん、フェネクスの方は』

 

『捕獲機正常に稼働中。移送途中だね』

 

『ユグドラル反応も抑え込んでいる。それにしても、よく素のジェミニアスで捕獲出来たものだ』

 

『それは、うちの優秀な部下達の身も顧みない頑張りのおかげだな』

 

 クソハジメが言及する部下、言われて何だか背中がくすぐったい。身の毛がよだつというか、気持ち悪いというか。

 そんな話をしている場合じゃないと、DNアーバレストの回線を開いて疲れも知らずに気になっていたことを問いただす。

 

「そんなのどうだっていいわよ!それより、姉様はどうしたのよっ!」

 

『おい、エターナ、声でかい……』

 

 そのやり取りに自衛軍の隊長が興味を示す。

 

『ん?彼らが噂に聞くアーバレストのパイロットか』

 

『そうだ。エターナ、悪いが今は』

 

「そんなこと言ってる暇があったら、姉様の声聞かせなさいよ!」

 

 クソハジメの制止にしつこく食い下がる。その甲斐もあってかその隊長もまた姉について尋ねた。

 

『……そういえば、確かにジャンヌ君の声が聞こえないようだが』

 

『……今は眠って』

 

『はーい、もう起きてますよっと』

 

 その時、エターナの求める声が聞こえてきた。彼女の姉にして最高の詩巫女、心から尊敬する人物の声。自身にとってはまるで聖女のような声音の持ち主だ。

 しかし喜びもつかの間、ジャンヌの苦悶交じりの返答が続いた。

 

『ジャンヌ君、眠っていた、とは』

 

『ちょっと……クローズモードの負荷のせいで、はぁ、疲れ――――あぅ』

 

『ジャンヌちゃん大丈夫なの!?』

 

 深絵隊長も明らかに弱っている姉の様子を心配する。未だに映像回線で健在な姿を見られないのが心配だ。

 今すぐ介抱しないといけないのではとクソハジメに直談判する。

 

「明らかに大丈夫じゃないでしょ!姉様を早く」

 

『はいはい。だったら元君はすぐに艦に戻りなさい。ここは私達が受け持ちます』

 

 自衛軍の隊長が途端に艦への帰還を促した。そうだけどもそうじゃない、と言う前に自衛軍の隊長、シンドウがクソハジメに言った。

 

『部下の不安を取り除くのもあなたの役目、姉妹がいるなら、なおさらでしょう?それにあなたとしては、どうなの?』

 

『……はぁ。分かりましたよ。回収は任せる。他の機体も損傷具合と疲労度を見て帰投しろ』

 

「あ、おい!」

 

 返答しシュバルトゼロは艦へと戻っていく。追い掛けたかったがソージがそうもいかない。

 ソージの帰投を補助する形で自衛軍MSがこちらに肩を貸してくる。そのパイロットは無論、学園でよく知る彼女達だ。

 接触回線でこちらに先程の会話について言われた。

 

『いやー、エターナ先輩戦場でもぶれませんねぇ』

 

「何よ、その言い方。姉様の無事は何事も優先されるべきなのよ」

 

『あ、はは……でも疲れてるはずなのに……あっ、宗司先輩無理はしないでください』

 

『すまない、友直さん。けど来てくれて本当に助かった。あと、本当に強いんだな、お前達……』

 

 宗司は二人の腕について感想を述べた。正直に言って戦果を確認していたエターナも、あの謎の機体一機相手によく戦えていたと思う。

 その二人の攻撃でも落ちることのなかった敵も相当だったが二人の支援が無かったら、こちらは持たせ切れない、最悪誰かがやられていたかもしれない。

 その彼女達自衛軍と協力してフェネクス、並びに負傷した面々が艦へと運び込まれた。CROZE部隊とSABER部隊、そして極舞の合同作戦は成功した。

 

 

 

 

「何で撤退した!すぐ近くに、フェネクスが、梨亜がいたのに!」

 

「っう!」

 

「陽太さん、落ち着いてください」

 

 再び戻った隠れ家兼格納庫で陽太は未緒に食って掛かる。未緒の秘書であった腹心の部下が陽太を止めに掛かるが、それすらも振り払う。

 彼女に対し、女子が意中の相手に迫られた時のような姿勢で壁を叩き、作戦の粗末さを吐き捨てる。

 

「何が私の作戦は間違いない、だよ。結局失敗してる。フェネクスどころか、あのガンダムだって抑え込めなかった!」

 

「あんなの知らないわよ!それを言うなら、ちゃんとあんたがあんなひよっこの機体に構ってるから」

 

「嘘つきじゃないか。サーガガンダムのどこが切り札だよ。あんなやつの機体すら性能で追い越せなくて、それで余裕ぶって!」

 

「調子に乗んなぁぁぁぁぁ!!!」

 

 遂に堪忍袋の緒を切らした未緒がこちらの襟首を力いっぱい掴み上げる。だが曲がりなりにも軍人だった陽太にはそれも小さな抵抗だった。

 未緒はその怒りの声音のままこちらにため込んだ陽太への不満と苛立ち、そしてHOWの魔王に対する憎しみを白状する。

 

「アンタがもっと上手かったら、全部上手くいってたのよ!L-DLaにも機体にも振り回されていたくせに、偉そうなこというなっ!魔王だって、あんな規格外なもの、フェネクスが無きゃどうにもならないわよ!」

 

 怒りのあまり泣き出す未緒。子どもの駄々のこね方のようだった。

 確かにHOWの魔王の対応は想定外だった。だがそれでも陽太はL-DLaからの操作でユグドラルキャプチャーの抑制するための出力を最大にまで指示していた。

 それを無理矢理打ち破るほどの出力。いくら陽太が優秀だったとしても、出来たのはおそらくいかに早く撃墜できるかだ。それをあの救援のタイミングで切ってきたのは、そこが勝負どころと定めたからに他ならないだろう。

 その点では俺自身にも責任はあった。けれどそもそも、ユグドラルキャプチャーありきで作戦を考えていた未緒に責任がなかったわけじゃない。それを素直に認めればいいものを。

 陽太の肩を拳で叩き、八つ当たりを行う未緒に騒ぎを聞きつけたこの傭兵部隊の隊長が彼女を宥める。

 

「おいおい、クライアントが弱音吐いてどうすんのよ。フェネクス捕まえるってトンデモ大罪犯す位なのによぅ」

 

「っ、アンタには関係ない。フェネクスを捕まえられなかったのはアンタ達の手間取りもあるんだから。それより、HOW部隊の動向は」

 

「おーう、ちゃんとやるべきことは分かってるわけだ。え、秘書さんどうなのそこんところ」

 

 未緒の棘のある返答を軽く受け流すと、傭兵隊長は未緒と同じく彼女の秘書へと敵状況の現状の把握を求めた。

 未緒の秘書は言葉に従い現在の状況について分かっていることを

 

「現在、HOWのSABER、CROZE部隊、自衛軍の極舞はカザノへと戻り、補給とフェネクスの解析を行おうと試みているようです」

 

「フェネクスの解析ぃ?傷がないか、ってことか?」

 

「いいや、違う」

 

 傭兵隊長の問いを否定する。彼に対し陽太は親しい者以外には伏せられていた事実を話す。

 

「フェネクスには、人の意志が宿っている。暴走事件当時に搭乗していたパイロットの意識が」

 

「ちょっと、陽太アンタまた勝手に!」

 

「んん?意識?人本人が乗っているんじゃなくて?」

 

 未緒の制止も聞かず、俺は話を続ける。

 

「あぁ。もうあの機体に、人の体は乗っていない。あるのは、あいつの魂だけだ」

 

「魂、オカルティックだなぁ。……ん?ひょっとして、乗ってたのって、君がよく口にしていた……」

 

 傭兵隊長はその事実に気づく。それを肯定する様子を見せず、濁した回答をする。

 

「そうかもって思うんなら、そう思えばいい」

 

「なるほど。クライアントも大体同じ理由ってわけか」

 

「あたしはそんなくだらないことのためじゃない」

 

「くだらないって、もとはと言えばお前の嘘と企みで!」

 

 再び未緒へと激高する陽太。右手を掴み上げようとするが、未緒は煩わしそうに素早く手を振り払った。

 彼女は言う。

 

「嘘じゃない!現にあの子はフェネクスと一体化した。予言の子ども達の中の、唯一の本物。本物のDNLよ」

 

 陽太達は予言の子ども達である。しかしそれには語弊があった。というのも、実際にDNL能力を用い、あの時見た、そして俺達に見せたのは他でもない最後の一人、梨亜だったのだ。

 俺達はただそれを梨亜が大人に言った時、信じてもらえなかった彼女を助けて大人達を説得した。自分達もその光景を見たと。

 それでも大人達は信用せずにかわいそうにと救護施設へと送った。そこでようやく、その信憑性が示された。

 次元覇院との戦争終結後、陽太達はその話を聞いた自衛軍の高官が指揮する後方特殊装備開発研究施設へと連れられた。そこでDNLと呼ばれる、当初は全く未知の力の研究を行っていた。

 身寄りのない自分達を引き取ってくれた意味では感謝すべきなのかもしれない。けれど、そこは地獄だった。思い出したくもない。

 それを経験したからこそ、自衛軍を信用すらしたくなかった。けれど生きていくためにその研究施設が摘発・解体後、自衛軍の一部隊へと数年所属した。

 怒りと失望の中で生きてきた。DNLを恨みたくもなったが、それでは梨亜も否定してしまう。

 俺の怒りの矛先は自衛軍とその自衛軍と何も知らずに協力し続け、11年前の事件の火種ともなったHOWだ。魔王もその例外ではない。

 梨亜を取り戻せなかった怒りをふつふつとさせながら、未緒の次なる手に耳を傾ける。

 

「それで、未緒様、どうするのですか」

 

「決まっているわ。カザノを襲撃する」

 

「襲撃って、相手はこの地方の大手MSメーカー、今はHOWもいる。逆に消されちまうぜ?」

 

 傭兵隊長の発言はもっともだ。しかし未緒はまた余裕を自信満々に語った。

 

「それについては、問題ないわ。その連絡をくれた者に、注文をお願い」

 

「はっ、して、内容は」

 

「荷物の発注をするように言ってちょうだい。そうね、民間貨物艦船の偽装とその宅配業者の施設内への立ち入り許可、かしら」

 

 まだ流未緒の、俺達の作戦は終わっていない。ここからが本番、セカンドステージだった。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP44はここまでです。

ネイ「無事、フェネクスを護りきることが出来ましたと」

グリーフィア「なんとなく思ってはいたけど、エターナちゃんも思ってる通り、このクローザーはGワイバーンの生まれ変わり、といったところかしら?」

後々に言及するし、何なら次の黒の館DNでも紹介するけど、そうだね。

ネイ「Gワイバーン、前書きでも触れていましたが、あれ露骨な戦力下げもあったんですね」

それもあるし、今回のクローザーへのバトンタッチもあった。とはいえ戦力下げが過剰すぎて派手なことがやれなかったって反省があるんですが。

グリーフィア「そうねぇ、L1終盤で大活躍だったオーバーレイが技術レベルの遅れた世界のたった1機のMAに進化解除させられるのは甚だ疑問に思う点だし」

L2は書き直してもいいかもしれない。それこそアレスモードとクリムゾンゼロが共存するくらいに。それはまぁ書き直しが膨大になるので置いておくとして。

ネイ「流勢力はまだ諦めていないようですね」

グリーフィア「原作だと……このあたりでⅡネ○・ジ○ングが起動し始めてるんだっけ?」

その少し手前だね。コロニーでの戦闘を誘発させた責任問われてる場面意識している。とはいえもうそろそろそいつらモチーフも動く頃ですよ。

グリーフィア「うーわ……ネ○・ジ○ング二体とか地獄」

ネイ「そうじゃないらしい、とはいえそれに匹敵する戦力でもシュバルトゼロクローザーと互角なんでしょうか……?」

互角とかそういう話じゃないかもしれないけどね。というわけでまた次回。

グリーフィア「次回もよっろしく~」


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黒の館DN 双翼英雄譚編 第7回 前編

どうも、藤和木 士です。黒の館DN双翼英雄譚編第7回の更新となります。今回は3部構成です。

ここまでに登場したキャラクターとMSの紹介となります。とはいえいつも通り諸事情で今回も紹介を省いたキャラクターもいます。

それではどうぞ。


 

士「黒の館DN今回も始めていきます」

 

レイ「今回も色々登場したけど、また4部構成になるの?」

 

ジャンヌ「相当出ていますよね、キャラクターも機体も」

 

士「それは……後々ね。というわけでまずは人物紹介だ」

 

レイ「それじゃあここまでの明らかになっている登場人物、紹介していこう~!」

 

 

蒼梨 深絵(L3)

性別 女

身長 151cm

髪色 黒

出身地 地球 日本 三枝県 四河市

年齢 35

誕生日 10月29日

血液型 O

好きなもの スケッチ、動物園通い、アイスクリーム、射的

嫌いなもの 騒音、結婚話

愛称 なっしー、蒼き狙撃手、蒼い死神、SABER隊長

 

・MSオーダーズ時代から戦い続ける蒼き狙撃手にしてSABER部隊隊長。元達との親交も相変わらず。髪型は基本ロングで流しつつも側頭部に編み込みをわずかに作って後はストレートにした髪型。

 歳を重ねていき苦手をいくらか克服している。が、代わりに自身の結婚の話題について触れられると言い返せなくなってしまうようになった。SABERの隊長としてはやわらげな口調ながらも厳格な指揮官であることから死神の異名は味方にまで広がり消えていない。眼光も鋭く、知る人は彼女の狙撃の師である須藤千を思い起こすという。

 専用ガンダムのブラウジーベンガンダム・ライブラも第2部4章時点から稼働し、第3部に再登場時も変わらない。

 本編においては4月からしばらく、元が地球へと叩き落したフェネクスの捜索を行っていたが、捕獲が困難を極めたことから、確実に捕獲できる今の状況を盤石とするために元のCROZE部隊への協力を要請。遂に新機体同士による連携が実現する運びとなった。あらかじめアンネイムド開発元のカザノメカニクスに対アンネイムド用の武装を手配させるなど、手際は良い。戦闘能力も申し分なく、久々にその戦闘を見た千恵里ですら驚く射撃精度となっている。

 なお裏話として彼女が婚期を逃しているのは、未だに黒和元に未練があり、元がジャンヌとくっついたら結婚すると誓いを立てているため。つまりは意気地なしでヘタレの元が原因である。

 モデルは変わらず、青兎みかも。彼女よりも大分大人びており、幼さは感じさせないデザインのイメージ。もっと言うと髪型は今回ゲーム「アンジュ・ヴィエルジュ」の白の世界のプログレス「コードΣ40シノン」の髪型に近い、というかそれが大元。

 

猫宮 夏香(ねこみや なつか)

 私立東響湾ポートランド学園に通う中等部3年生。信也の地元の後輩で幼馴染の一人。サイドテールと猫耳のような髪の癖が残る、小柄で好奇心旺盛、人見知りな少女。14歳、身長149cmのO型で茶髪。

 普段は信也の後ろにくっつくほど大人しい。しかし中学生ながらもMS所持法試験を突破しており、学校では光巴以来の中学生でのMS所持法突破者の一人。MS・生身双方含めて戦闘能力が高く、大人でも手を焼くほど。何か事件を起こした過去があるらしく、近所の大人や、話を聞かされた子どもからは嫌われているらしい。しかし深い事情を知る信也や紗彩達は彼女を庇い、色々と四苦八苦している模様。なお大人しい性格と言ったがどっちかと言うと臆病。なので言葉遣いはやや粗いところもある。

 前章の終了後、宗司達との顔合わせが行われていた。人見知りなためか当初宗司はおろか千恵里ともあまり話せていなかったようなのだが、第3章本編中では本人の努力で話は出来る程度まで交流が進んでいる。先輩である宗司に対しては敬語なところはあるが、信也にはタメ口。転入してきた進の妹の真由がやや天敵な様子。

 モデルは恨み来、恋、恨み恋の猫ヶ崎 夏歩。

 

戌村 友直(いぬむら ゆな)

性別 女

身長 151cm

髪色 黒

出身地 東響都 十二支区 戌使町(いぬしちょう)

年齢 14歳

誕生日 10月2日

血液型 O

好きなもの 姉上、剣道、クリームぜんざい

嫌いなもの お役目、剣術、智夜(嫌いというより苦手)

愛称 ユナ、新堂沙織のセカンド・ジェネレーション、戌村の当主候補

 

 私立東響湾ピースランド学園に通う中等部3年生。信也の地元の後輩で幼馴染の一人。黒髪のロングに戌耳のような跳ね返りが特徴的な真面目で健気な剣道少女。階級は准尉。

 礼儀正しい言葉遣いだが、所々独自の敬語が混ざる。夏香と同じく中学生でMS所持法試験を突破し、実際に自衛軍の十二支区家系の遠縁の関係に当たる新堂沙織の下で修練、任務へも参加している。特に剣術、居合切りの技術が高いが、本人曰く、姉や新堂沙織には及ばないと語っている。テンパると必ずと言っていいほどスマホの検索機能を使う。口癖は「(検索結果は)なしですね」。ちなみに髪型が友人の申々木 智夜にいじられるため、通学時とオフの時はハンチング帽のような物をかぶっている。

 夏香と同じく前章終了後宗司達と顔合わせを行う。ちなみに同時期の真由との顔合わせも滞りなかったようだ。本編中では直接の先輩である信也に対しては心配こそするもののその後は全く気にしてないことからやや冷たいが、外部入学者かつガンダムを操る宗司に対しては新堂沙織からの話もあってか興味を抱いているようでやや距離が近い。なおその事について触れられると意味不明な暗号と共に検索をし出す。その際エンゲージシステムのガンダムパイロットと浮気すると殺される噂があることを話す。

 その後HOWの作戦で援軍として、新堂沙織と共に参戦する。

 モデルは恨み来、恋、恨み恋にて作者の推しのキャラ「戌原 咲直」。髪色は原作通りの銀髪で行きたかったが、銀髪キャラが多すぎる問題と似すぎる為から自省して没となった。

 

申々木 智夜(ささき ちや)

 私立東響湾ピースランド学園に通う中等部3年生。信也の地元の後輩で幼馴染の一人。茶髪の髪を肩にかからない程度の短さでまとめている関西訛りのあるいたずら少女。

 友直の腐れ縁の友人でライバルあり、よく成績勝負で犬猿の仲のように争い合っている。成績は智夜の方が上で、いつも馬鹿にしているが、実際のところは友直に追いつかれまいと、幼少期の出来事から常に前を走ることを意識している。MS所持法も会得しており、友直と同じく自衛軍でアルバイト兼修行している。

 前章終了後宗司達と顔合わせをする。その際宗司の事を気になる友直をからかい、制裁を受けている。本編中ではスケジュールが合わず言及されるのみとなっている。が、その後HOWの作戦に援軍として友直と共に登場した。

 モデルとしては恨み来、恋、恨み恋の「申々町 千恵」。

 

 

及川 陽太(おいかわ ようた)

 ルウォ・エンタープライズに所属する傭兵。25歳。茶髪の男性。身長172cm。

 第1章の宇宙にてフェネクスを捕獲しようとしていた自衛軍の前に現れた人物。第3章では学校帰りの宗司達の前に現れ、HOWが自衛軍やゼロンと同じ、くだらない理想を追求する無駄な組織であること、そしてフェネクス、梨亜は渡さないと言った。

 フェネクス争奪戦に置いてサーガガンダムを駆ってHOW、そしてゼロンと対峙する。腕は立つものの、元達が強化人間風情と呼ぶゾルダーと互角かそれ以下の実力で、宗司達でも相手には出来るとのこと。ところが要所要所でDNLの片鱗とも呼べる実力は見せている模様。

 元達の調べではかつてのHOW、MSオーダーズ時代の大戦闘だった「東響掃討戦」で被災した子供らしく、彼を含めた幼馴染の両親達が敵MSとの戦闘の瓦礫で埋もれて死亡したという。その後は里親に引き取られ、東響都で暮らしていた。元々自衛軍に所属していたようだが、2年前に抜けている。丁度アンネイムドの事件「ラプラス事件」と前後する位置で、そのタイミングで未緒のルウォ・エンタープライズに合流したと思われる。予言の子どもの一人で、未緒ともその時からの知人。

 モデルは無論ガンダムNTのヨナ・バシュタ。第3章における主人公とも呼べる人物の一人としている。なおあちらよりも更にトゲトゲした性格、口調を意識している。

 

 

流 未緒(ながれ みお)

 本世界の日本において老舗の部類に入る岐敷県に所在を置く現民生MS・プログラム開発大手の一つルウォ・エンタープライズの特別顧問として腕を振るう女性。占いによって自企業に益を齎す。

 そんな彼女だが異様なまでにアンネイムドフェネクスに執着している。彼女自身はフェネクスを神の如き力と称し、人類の進化の為に、フェネクスを破壊しようとする元達の妨害を試みている。そんな彼女は陽太を始めとする私兵を雇って独自の捕獲作戦を執る。

 元達HOWも既にルウォ・エンタープライズが背後に付いているであろうことは辿りついていた。しかし動いた時には既に彼女達は社を離れた後であり、彼女達は石河県の未緒に味方するカザノメカニクス一部上層部が保有する施設に潜伏。HOWの捕獲作戦に乗じて乱入してきた。

 陽太ともう一人と合わせて予言の子供達の1人であり、フェネクスの情報は彼経由で自衛軍からもたらされたと思われたが、実際は未緒がアンネイムド事件を調べたのちに彼に知らせて引き入れた模様。彼を2年前に自分の笠下の私兵集団に加え、支援し続けた。

 モデルはガンダムNTのミシェル・ルオ。ルウォ・エンタープライズとは無論ルオ商会がベースであるが、街を束ねる大企業だったのに対し、こちらはエンタープライズの名の通りソフトウェアメインのMS開発企業となっている。なおサーガガンダムに関しては未緒を懇意にする自衛軍の一部高官から供給された物を自会社でカスタマイズしたものを使っている。この辺りは原典にてナラティブガンダムの装備を外部から揃えた事象を意識している。

 

舞島 独(まいじま ひとり)

 カザノメカニクスのMS開発部主任を務める男性。かのアンネイムドのハードウェア開発担当。

 アンネイムドの関わった当時の事件2件に関わった生き証人であり、ラプラス事件では事態解決のために自衛軍と共に各地を回った。

 本章においては2年前と同じくアンネイムドに関わるHOWに、ライバル会社ながらサポートとしてアンネイムドの開発資料の公開、対フェネクス用兵装「ユグドラルストーカー」の開発・供与を行い、捕獲を支援する。

 モデルはガンダムUCのアーロン・テルジェフ。こちらでもユグドラルフレームが光ることは分かっていても何で光るのか、光が変わる理由について分かっていない。

 

ハル・ハリヴァー

 ゼロンのエースパイロットの一人、真紅の流星と呼ばれる男のクローン、強化人間として生まれた男性。生きている当人が同組織に居る為か、はたまた真紅の流星のかつての趣向の再現の為か見分けの為に目元を覆う仮面をかぶっている。

 クローン精製技術に関してはギルボード・デュランザメスが担当し、記憶なども引き継ぎ、本物と見た目は謙遜ないほどの出来栄えとのこと。

 落ち着いた物腰の男性で、忠実にゼロンの目指す理想を推し進める。が、敵対者には容赦せず、交渉決裂時には躊躇いなく撃墜に掛かる非情さを持ち合わせる。しかしそんな彼も何やら考えがあるようで、それはクローン元である紅の流星にも明かしていない独自の思想がある模様。

 2年前にシュバルトゼロ・ジェミニアスの一号機を輸送中に奪取を目論むも抵抗に遭い破壊・自爆にまで追い込んでいる。そこから続くラプラス事件では解き放たれたアンネイムドユニコーンを巡った抗争に、自らの機体が共鳴したことで興味を抱き参戦。そこでシュバルトゼロRⅡだった元とも対峙し、自らの機体で圧倒したものの、撃破には至らず、そのままユニコーンのパイロットと死闘を繰り広げて機体が大破し、撤退する。その際覚醒した領域に至ったパイロットを見て、空しいなと言い残していた。

 今回の事件においてはとある新人パイロットのゼロン勢力外における初実戦の研修を兼ね、2年前のリベンジ、そしてまだ見ぬ3番目の兄弟フェネクスを確保する指令を受けて元や宗司達の前に立ち塞がる。

 モデルは機動戦士ガンダムUCの赤い彗星の再来、フル・フロンタル。こちらは既に原作時間に当たる部分から経過しているためか正体が各勢力に知られている。オリジナルと同じ時間軸に居るのはスパロボの設定を意識したもの。

 

 

ゾルダー・ヴァッターマン

 ゼロンの真紅の流星部隊に属する強化人間。ハル・ハリヴァーとは別の隊の小隊長を務める男性。片目が義眼で、髪は色素の抜けた白とアンバランスな配色の赤いメッシュのモヒカン風。ハルと比べるとやや言動が粗野で、砕けた話し方をする。

 実は彼もまた真紅の流星の再現、クローンの強化人間であり、彼はその失敗作。オリジナル程精神が安定しなかったため制御困難とされたが、それでも技能は高くまたDNL能力を有することからパイロットとして採用された。その為本人は完成型であるハルを嫌っている。

 実力は高いものの、元曰くハルよりは相手は楽、とされてしまっている。本人は魔王たるガンダムとの戦いを所望していたが、オースインパルスの妨害で近づけなかった。復活後のシュバルトゼロクローザーとの相手をするも、簡単に一蹴されてしまいますます彼は激情し、撤退した。

 モデルはガンダムNTのゾルタン・アッカネン。キャラが濃すぎる為概ねそのままだが、むしろ薄くなっている気がしないでもない。このあたりに関しては後半盛り返していきたいところ。

 

 

新堂沙織(L3)

性別 女

身長 163cm

髪色 黒

出身地 日本 東響都 新祷区

年齢 36

誕生日 4月12日

血液型 B

好きなもの 刀剣鑑賞、剣道、みたらし団子、芯のある人間

嫌いなもの 湿気(刀がさびる為)、肝試し、ぬれせんべい、芯のない人間

愛称 自衛軍最強のMS剣士、自衛軍第1MS部隊「極舞」隊長

 

自衛軍の将校となった最強のMS剣士。現在は大佐の地位にある。

 MS隊「極」は今や自衛軍のMS部隊として主力「極舞」となっており、彼女はその指揮官として後方で任に当たるようになった。かつてのラプラス事件でも活躍し、輪舞の鈴に協力して事件解決に尽力した。

 無論HOWとの関係も続いており、元とはお互いの立場の関係上よく関わる。居合の名人であり、刹那の一撃はガンダムすらも圧倒するほど。最近は弟子として遠縁の親戚にあたる友直と智夜をパイロット、護衛人として鍛えている。

 本編ではシュバルトゼロ・ジェミニアスの新装備クローズフェニックスの運搬護衛を行う。

 人物モデルは変わらず、マブラヴシリーズの篁唯依。

 

 

レイ「以上が人物紹介ってことだね」

 

ジャンヌ「この人物紹介ってレギュラーキャラは細かに年齢とか分けて書いてますよね」

 

士「そうだね。その方が後々登場させたときも分かりやすいし、キャラ登場の指針にもなるし」

 

ジャンヌ「ではそれを踏まえて、戌村友直さんレギュラーなんです?」

 

士「そのつもりです」

 

レイ「おおっ、自衛軍側もレギュラーキャラってわけなんだ!」

 

ジャンヌ「んー……今回で出向するってことなんでしょうか?」

 

士「それはどうかなー」

 

レイ「まぁその時はその時ってことだね。そして予言の子供達、ハル・ハリヴァー達は元ネタは分かっていたけど、まさか舞島さんもユニコーンのキャラモチーフだったなんてね」

 

士「どうやって漢字に名前を落とし込もうかめっちゃ悩んだわ(;´・ω・)変なところでこだわるの良くないんだけどね」

 

ジャンヌ「それと名前が出ないからか、あの傭兵隊長や秘書、それから騎士官と呼ばれた人も紹介無いんですね」

 

士「そうだね。まだ紹介には至らないってことだね」

 

レイ「至らない……」

 

ジャンヌ「また意味深な」

 

士「ま、それは今触れることじゃないよ。というわけでMS紹介、前編ではまず重要どころの機体の紹介からしようかな」

 

ジャンヌ「ということはフェネクスですか。それでは参ります」

 

 

型式番号 FRX-0[γ]

アンネイムド[フェネクス]

 

 

機体解説

アンネイムド(名前のない)と名付けられた機体、「アンネイムドシリーズ」の三番目の機体。金色の装甲と、鳥のような尾羽を取り付けたシールドユニットを二枚背中に背負った機体。頭部はマスクパーツに四ツ目が付いた形状、額に一本の可変式の角が取り付けられている。カザノメカニクスが自衛軍の情報提供の下開発した。

 3年前に行われた同じアンネイムドシリーズとの合同性能評価試験において暴走し、以来地球周囲の宇宙空間を飛び回っていた。その際自衛軍が何度も捕獲を試みたものの、いずれも失敗に終わった。

 これだけの性能を誇るのは無理もなく、理由はアンネイムドシリーズが「シュバルトゼロの再現」を目的とした機体であるため。動力源にはツインジェネレーターシステムを搭載し、試作型のユグドラシルフレームを搭載。そして機体制御戦闘用プログラムにあのDIENDのベースとなったシステム「L-DLa」と呼ばれるシステムを搭載しているため、戦闘能力が高すぎる為、捕獲に至っていないのである。

 もっともそれ以外にも通常の推進にユグドラルフィールドの推進を用いていること、そしてなにより疲れ・負荷を知らない機動運動が原因で、パイロットが生きているのか怪しい状態であることもあって確保に至ってない。

 なお本機は装甲を解放してガンダムとなった形態も存在する。が、失踪後は一度もその「デストロイドモード」になったことはない。

 その存在はおぼろげながら第2部4章時点で語られており、第3部においても自衛軍の捕獲部隊が動いていた。ゼロンとは別の組織が捕獲に乱入したりもしたが、シュバルトゼロが追走劇の末に地球へと叩き落す。その後は重力の影響もあってか地球を飛び回っていたが、第3章にて石河県の佐弩島に滞在中の所をHOWに補足、新兵器のユグドラルストーカーで捕獲されることとなった。

 ちなみにこれまでの話でそのまま重力圏を抜ければいいのでは、と思われるが実はアンネイムドシリーズはデストロイドモードにならないと大気圏を突破できるほどの推力は持たない。そのデストロイドモードも本機はなぜか暴走後逃走中は使用せず、ユニコーンドモードで驚異的な飛行速度で逃げていたためデストロイドモードが故障していると元達は予想している。

 コンセプトは「アナザーフェネクス」とするために「本来の仕様でフリーになる腕部への追加武装を多分に追加したフェネクス」「兵器としての道に囚われたフェネクス」「アーマードアーマーで押さえつけられないアンネイムド」を根底にデザインした。なお腕部の兵装はいずれもユグドラルフレーム製の為、原型機のサイコ・フィールドによる攻撃は阻害しない構成としている。なおこの腕部兵装群は初登場時に言及されていないが、これは設定そのものをしていなかったため。一応最初から搭載されていた体となっている。

 

【機能】

・DNフェイズカーボンGM

 もはや当たり前となったエース機採用の装甲部材の発展形。GMはガンダリウムメタルの略。

 ガンダリウムメタルとは自衛軍のMSに採用され始めている装甲で、軽いながらも実弾や衝撃への耐性が高い装甲。DNフェイズカーボンの原材料の一つとしても最適であり、本機はそれを体現している装甲を利用している。

 モデルはもちろんガンダリウム合金。

 

・ツインジェネレーターシステム

 機体胸部に内蔵する高純度DN発生器。出力はシュバルトゼロガンダムの物よりやや低め。しかし機体そのものの性能が高い為、それでもシュバルトゼロガンダムと同等の性能を引き出せる。むしろ低い為に扱いやすさではこちらが上でもある。

 L-DLa起動時には開いた胸部ダクト風装甲から活性化したツインジェネレーターの膨大な高純度DNが大量に放出される。これは出力の増大に伴い溢れ出すDNを逃がす目的もある。

 

・ユグドラシルフレーム

 機体フレーム全てをユグドラルフレームで構成する仕様。本機はシュバルトゼロのそれと違って装甲下にフレームを内包する形となっている。これはユグドラシルフレーム機であることを隠匿するための物であり、後述するL-DLaにてその力を解放する。デストロイドモード時には蒼く発光する。

 本機の放つユグドラルフィールドは触れた物の時を戻す機能を有する。これは同じユグドラル兵装、あるいはドライバ・フィールドなどの特殊力場でなければ防御不可で、DNウォールすらも貫通していく。

・対DNL戦闘用プログラム「L-DLa」

 本機最大の目玉と言っていい戦闘用プログラム。L-DLaとは「Leader-Destroyer Link accelerator」。直訳は「統率者を破壊する者、つながりを加速する物」。

 DNLの感応音を感知して稼働する。端的に言えばDNLが感じ取った敵意の音を感じ取り、機体がパイロットに伝達させる、あるいは自動的に攻撃・迎撃態勢に入るというもの。DNLが持つアドバンテージのその上を取る動きが可能となる。その為に使用時にはジェネレーターなど機体各部出力制限を取り払うデストロイドモードへと切り替わる。この時ユグドラシルフレームの思念拡張が行われて疑似的なDNL能力獲得、あるいはDNL能力の拡張がなされる。

 これが量産化されれば敵にDNLがいても対処可能、万が一シュバルトゼロが暴走しても対処が可能なはずだったが、途中でシステムには適性者がいることが判明。もし適性者でない人間が搭乗した場合はL-DLaがパイロットから制御権を奪い暴走するため危険なシロモノと言うことで量産化は見送り、更に合同性能評価試験とラプラス計画において適性者でも何らかの要因で機体がこちらの制御を離れることが判明し、少数生産すらも禁止されることとなった。本機の例こそその初事例であり、暴走後はパイロットとの交信が途絶えてしまった。

 とはいえそれを悪用する例が起きており、それこそ第2部4章から登場したディスティニーライダーの運用するDIENDシステムはこのL-DLaをベースに開発されている。DNLを仮想敵としている点が共通する。

 モデルは無論NT-D。DIENDシステムのネタベースとなったHADES、EXAMとは開発順が逆であり、本システムが大元のオリジナルとなっている。

 

・デストロイドモード

 本機の最大稼働を行うために装甲を展開し、ガンダムの姿を現すアンネイムド共通の形態。L-DLa発動時にしか起動しない。

 本形態移行時は自動的にユグドラルフィールドが展開し、変形を阻害する攻撃を無効化する。性能としてはシュバルトゼロRⅡ時のエラクスと同等以上の出力とスピードを誇る。だが特筆すべきユグドラシルフレームを発生源としたユグドラルフィールドの運用である。このモード時にはユグドラルジャックと呼ばれる能力により敵のDNLコントロールする兵装のコントロールを奪う機能を有する。

 これによりシュバルトゼロが劣勢に立たされるわけなのだが、それ以外にも出力が最大状態なため機動するだけでも並みのDNLでは感知できない程スピードで移動するため、無敵を体現している。

 ただしモード発動時はL-DLaの闘争本能が強く働いている時でもあり、パイロットが強い意志でそれを拒まないとたちまち殺戮マシーンとして暴走してしまう。現在のフェネクスはそのシステムによる乗っ取りではないかと多くの技術者が予測しているが、元とジャンヌといったDNLは最初こそそうでも今はそうではない別の要因、パイロットが喰われたとしている。

 モデルはデストロイモード。機能などもほぼ同等のものに置き換わっている。

 

 

【武装】

本機は三年の間無補給状態である。そのため本来の仕様から欠けた武装がいくつかある。よって今回は現時点で残っている武装を紹介することとなる。

 

・バルカン砲

 頭部に内蔵されたバルカン砲。5発に1発、軌道修正用の閃光弾が備わっている。弾数はおよそ120発。アンネイムドシリーズ共通の兵装。現時点でこれを使った描写はないものの、暴走当時に使った記録がないためそのまま残っているものと推測している。

 

・ビームサーベル

 アンネイムドシリーズ共通の兵装。バックパックと腕部サーベルホルダーに合わせて4本装備する。

 本機の場合後述する[ヴァリアントランス]が主力兵装を務める為かあまり使われない。

 

・ホルダーガン

 ビームサーベルを格納する腕部兵装。前面部分が低出力ビームガンとして使用可能。もっともこちらも[ヴァリアントランス]との兼ね合いで使われることは少ない。

 

・タクティカルアーマー[ディフェンスエクスプロード・フェニックス]

 背部の専用アームに二枚、翼のように装備したタクティカルアーマーDEの改良型。略称TADEF。フェネクスは分離させてファンネルとして用いる。

 違いとしてはビームキャノンと逆側にブレードとして使用可能なテールユニットが装備されている。これは単なる打突ではタクティカルアーマーの接続部が痛みかねないこと、そしてDNウォールの突破を目的としたためであり、テールユニットへのDN伝達で十分な切断能力を見せる。

 攻撃性能が高い兵装だが、それは裏を返せばDNを伝達させなければ殺傷能力がないということであり、フェネクスはその特性を生かしてパイロットを殺さずに迎撃することも出来る。

 装着状態では非常に高い機動性を本機に与えているのだが、本機は更にユグドラルフィールドによる加速力を得ており、そのスピードは想定スペックを越える。

 モデルはフェネクス版アームドアーマーDE。

 

・タクティカルアーマー[ヴァリアントランス]

 機体下腕部に装備される増加装甲兼専用武器群の一つ、なのだが本兵装は他とはやや出自が異なる。

 理由は本兵装が純粋なカザノメカニクス製ではないため、自衛軍が独自に作り上げたタクティカルアーマーなのである。手首を覆う方式のこのタクティカルアーマーのコンセプトとはずばり「ユグドラルフレームの共振効果の最大限活用」。展開されるランスパーツにはもちろんユグドラルフレームを採用。フィールドの活用においてもっとも重要視されると言われる「手」を丸ごと覆うことで展開した武装にその性質を付与させ、攻撃に強い影響力を及ぼさせることを狙っている。

 その狙いは正しく作用し、合同性能評価試験においてまるでドライバ・フィールドのようにビームを曲げて撃ち、ビームサーベルを形成した。

 逃走中の本機はこの兵装を使うことなくユグドラルフィールドを用いた攻撃を行っているため、無用の長物に近くなってしまっている。

 本兵装のルーツはかつてロートケーニギンが使用したヴァッペン・シルトの改良型、クリムゾンゼロが使用したオルトヌング・シルトであり、そちらからシールド機能を取っ払い、攻撃に特化させた仕様となる。もっともユグドラルフィールドの恩恵を受けられるため、総合的な防御力はこちらが上である。

 モデルはバンシィ用のアームドアーマーBSとVN。二つの機能を併せ持たせ、更にRX-0と似た色合いの機体が3機いる蒼穹のファフナーのザルヴァートルモデルの主兵装「ルガーランス」を掛け合わせた形となっている。有体に言ってしまうとマークアレスの腕部武器がベース。

 

 

ジャンヌ「以上がアンネイムド[フェネクス]の紹介ですね」

 

レイ「概ね、原作と同じって感じだね。違うのは腕部大型装備のヴァリアントランスかな」

 

士「そんなところですね。こうなったのには理由があるわけなんですが」

 

レイ「何か書いてあるよね。登場当初は設定してなかったとか」

 

士「そうそれ」

 

ジャンヌ「それは……間抜けという他ないんですが」

 

レイ「ジャンヌちゃん毒舌だねぇ」

 

士「まだあの時アナザー系の設定どうしようか考えていた段階なんですわ……。武装ちょっと変えるのか、そのままなのか。今回の場合は描写していなくても大丈夫な装備追加にしたわけなんですが」

 

ジャンヌ「まぁでもそれもあって原典機同士で色々似てるってうわさのザ○ヴァートル系列機、タイプシリーズの特徴を盛り込めたってわけですね」

 

士「展開時はザ○ンのランス二刀流みたいな感じになるね」

 

レイ「既視感はそれかぁ」

 

士「さて、そのフェネクスですが、捕獲されたから万々歳、ってわけでもないんですよ」

 

ジャンヌ「未緒派もまだ企んでいるわけですからね」

 

レイ「何か企んできそう、っていうか人物紹介の方でも触れてるからね」

 

士「あえてここで紹介しておきました。それでは次に続きます」

 



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黒の館DN 双翼英雄譚編 第7回 中編

 

 

士「中編始めて参ります」

 

グリーフィア「紹介内容見たけど、これ3部で収まりそうにないと思うんだけど?」

 

士「あ、クローザーの紹介は次回の黒の館DNに回す予定です」

 

ネイ「それでも辛い気が……」

 

士「その時は何とかまとめると思う。それ言うなら早速紹介に行きますよー」

 

グリーフィア「やれやれ、それじゃあ、次はサーガガンダムとゼロンMS、シナンジュ・ゼロンとプロトゼロン紹介していくわよ~まずはサーガガンダムから~」

 

 

型式番号 FRX-9

サーガガンダム

 

機体解説

 自衛軍がユグドラシルフレーム機を開発する為に試作したMS「フォリウムガンダム」を未緒の派閥のルウォ・エンタープライズが秘密裏に譲渡され、改修したMS。オーソドックスな白基調の白黒黄色のトリコロールカラー。パイロットは及川陽太。

 素体は装甲が不完全なやせっぽちとも形容されるほどの弱々しい姿だが、追加装備を装備することで作戦に相応しい姿に変わる。装備は宇宙戦用のα装備、宇宙戦寄りの地上戦用のβ装備、そしてのちに搭乗する疑似ユグドラシルフレーム機装備のγ装備に分類される。これら装備はルウォ・エンタープライズが企画し、外部委託した開発部から作らせたものである。

 未緒が神と形容するユグドラシルフレーム搭載の機体「アンネイムド」を捕獲するための機体ということで、神話と名付けられているが、その名前を名付けるだけあってアンネイムド対策はバッチリとなっており、同時に同じユグドラシルフレーム機のシュバルトゼロなどに対しても対策が取れているところからも完全にアンネイムドの周囲を抑える構成を取っている。

 ただし機体性能としてはγ装備を除いていずれかの能力に特化しすぎており、苦手な距離が存在する。

 コンセプトは「アナザーナラティブガンダム」。α装備が元々のA装備とあまり変わらないものの、βとγはアレンジを加える形で調整している。

 

【機能】

・DNフェイズカーボンGM

 高級機に採用されるDN浸透装甲。装甲が少ない本機でも最低限の箇所に採用され、また増加される装備の装甲にも採用される。

 

・対DNL戦闘用プログラム「L-DLa」

 アンネイムドシリーズに採用されているDNLと渡り合うための戦闘プログラム。本機にもまたアンネイムドやシュバルトゼロに対抗する為に搭載されている。

 ところがこのシステムはカザノメカニクスの影の実力者神鳴一族が作り上げた秘密のシステムの一つで、本来何があってもアンネイムド以外に搭載することは不可能であるはずだった。ところが未緒は何らかのつてを利用し、本システムを再現し、作り上げて本機に搭載したのであった。

 肝心要の性能も据え置きでユグドラルジャックが可能などアンネイムドと互角で、引けは取らない。ところがクローザーに対しては流石に性能差が開けられており、ユグドラルジャックすらもフレーム無しでは効果なしと言った具合。

 原作においてはNT-Dを装備されていることを知らなかったヨナと違い、陽太はシステムを把握し、その力を用いて戦った。

 

・換装

 本機専用のα、β、γ装備へと換装する。この機構の為に本機はバックパックもユニット化されている。

 また腹部にはコアファイターも内蔵しており、可能な限りパイロットを優先した機構を備えている。

 

 

【武装】

・バルカン砲

 本機唯一の基本装備。ビームサーベルすらもない素体状態ではMSの撃破は困難を極める。

 

<α装備>

 宇宙戦にて使用する大型ユニット。大元にはかつて自衛軍のMS開発プランとして存在した宇宙拠点防衛用MSとラプラス事件の裏で活動したとあるMSのデータが流用されているという。

 股間部にハイメガキャノンを装備した大型ブースターユニットを下半身に、ブースター後方から腕部方向へ抜けるように大型ウエポンアームを装備。加えてアーム根元には多連装武装コンテナを装備する。

 宇宙空間で逃げ回るフェネクスに追従し、ウエポンアームユニットのユグドラルキャプチャーで捕縛するという動きを行うための機体で、MS相手にはそもそも推進力で追随を許さないという戦い方を展開する。

 第3部第1章にて使用するがシュバルトゼロの不意打ちから徐々に崩されていってしまった。その後はフェネクスが地上に留まったことで出番は終わった。ちなみにブースターユニットにDNコンデンサー、腰背部ユニットにDNジェネレーターを追加で装備しているため、通常ジェネレーターである本機でもエネルギー不足に陥ることはない。

 モデルは無論ナラティブガンダムA装備。その設計思想のモデルとなっている二機は試作三号機「デンドロビウム」とトリスタン「フェイルノート」がベースという裏設定。

 

【追加武装】

・ビームサーベル

 通常サイズのビームサーベル発生端末を脚部ブースター内部に二本格納する。

 

・脚部ブースターユニット

 脚部へとブーツを履くように装着するブースターユニット。本形態での加速を担う。よくある大型機のブースターと異なり、本体の可動域でAMBACとして機能が可能で膨大な推力を生み出す。

 モデル元のブースターユニットとほぼ同等の性能。

 

・股間部ハイメガキャノン

 フロントアーマー用の増加装甲と共に装備される大出力ビーム砲。ガンダムのDNウォールさえ突き破る性能を持っていた。

 とはいえ本編中ではほとんど使われることはなかった。理由は非情になり切れなかった陽太の判断である。

 原型機と同型の兵装。ちなみに、ハイメガキャノンのメガはメガ粒子意味するが、こちらのメガは大出力ビーム砲の意味を持つ。

 

・複合対ユグドラル兵装「ユグドラルキャプチャー・ウエポンアーム」

 腰背部のジョイントで保持し、腕部で扱う特殊複合兵装。

 通常の状態では先端部がビームサーベルを出力可能なビームランチャー、後部にミサイルポッド、分離式拡散ビーム放射装置を含んだウエポンポッドを備える。だがそれらは全て通常戦闘や目標を追い込むための兵装であり、本命は後部にスライドされていたクローパーツを先端に展開した状態「ユグドラルキャプチャークロー」。このユニットから発生するユグドラルキャプチャーとは、ユグドラルフレームなどを採用した機体の動きを止め、捕獲するための領域であり、フェネクスを抵抗なく捕らえたりシュバルトゼロなどの足止めに本機は用いる。開発経緯としてはアンネイムドの事件後何らかの状況でアンネイムドが再び暴走することを避けるためにカザノメカニクスが中心に開発を呼びかけた。本機の物はその開発に携わったいずれかから(おそらく、ライバル社の佐成エレクトロニクスから)流出または譲渡されたとみられる。

 モデルはナラティブガンダムA装備の複合特殊兵装「サイコ・キャプチャー」。ウエポンポッドの一部にクレヴェナールの武装が一部参考にされている。

 

・ブースタータンク

 腰部コネクタのアームユニットの接続部を覆うように取り付けられたフレームに接続された4本のブースタータンク。

 実は自衛軍でも使われているサブフライトシステム「アメンボ」のプロペラントタンクが流用されており脚部ブースターユニットの大きさもあって判別は難しい。

 

 

<β装備>

 地上にて使用するユニット。とはいえどちらかというとコロニー内での戦闘を目的としている。

 これは本来未緒達がα装備でコロニー内に追い込んでから本装備を使用することを目的としていたからにある。フェネクスが人の多いところでは刻戻しを行わない、非殺傷を目的としていると気づいたため、それに当てはまる場所、コロニーにおびき寄せようとしていたのである。ところがその思惑を崩すようにシュバルトゼロがフェネクスを地球へと叩き落し、計画の修正を行う時間が足りず、一部仕様を変更しながらも本装備が運用されることとなる。

 なおガンダム世界でコロニー内での戦闘が畜生を越えた犯罪者扱いされるのはこの世界でもあまり変わっていない。シュバルトゼロなどの国家直属の専用機にも火力制限が設けられてしまう。それを行おうとした未緒達はその畜生である。

 装備紹介に戻るが、この仕様変更により本機は原型となったβ装備のバージョン1.5とでもいうべき状態である。しかしその特徴的なファンネル型ユニットを背負う点などは変わらない。

 モデルはナラティブガンダムB装備。コンセプトは「B装備の地上装備版」。ファンネルは維持しつつも地上で有利な仕様へと変更され、コロニーで戦わない分ある程度高火力を求めるようになった。

 

【追加武装】

・有線式遠隔操作端末(別称インコム)(正式名称「ユグドラルキャプチャー・ファンネル」)

 バックパックに四基、H字状に装備される有線式ファンネル。パイロットはインコムと呼んでいる。

 インコムとはDNLでなくとも使用できる遠隔操作端末の名称である。この定義に当てはめると第1部のドラグーナ・ヴォロスのガンブースターも同種の兵装であるが、あちらはエネルギー供給のための有線式であり、別種の装備である。

 そのままの状態だと放つビームも低く、有線であるために戦闘距離が短いという欠点も生まれている。しかし本領を発揮するのはアンカーユニットを排除したユグドラルキャプチャーモードであり、この状態ではファンネル自体が変形し、クロー型のユグドラルキャプチャー発生器へと変貌。L-DLaの影響下でユグドラルフレーム機へ猛烈なスピードで追従し、捕らえてキャプチャー領域へと閉じ込める。その状態では稼働時間が極端に短くなるものの、捕らえた後はキャプチャー領域発生時には物理的干渉が行われ、地面に落ちる為推力に関しては問題がなくなる。またキャプチャーモード移行後はアンカーユニットがパージされ、バックパックのもう一つの機能が目覚める。

 本編中では二基がシュバルトゼロを、もう二基がブラウジーベンの動きを封じてしまった。が、領域を広域に展開しておらず、これは2機を撃墜することも念頭に入れたためと思われる。

 モデルは無論ナラティブガンダムB装備の同名兵装。数が2倍になった程度だが、問題はバックパック排除後に新たな機能を設けた点にある。

 

・アドバンスドシールド

 機体両腕部のアタッチメントに接続して使用する小型シールド。二枚装備する。

 シールドの裏にはダブルビームライフルがそれぞれ内蔵されており、これで平時の射撃攻撃を行う。ライフルの銃口側同士で合体させることで大型シールドへと変貌。武器もライフル同士を合体させたことで扱うエネルギー量の増えたダブルビームキャノンへと強化される。

 攻撃性能は高いが、防御性能は特にDNウォールなどがなく、高級機に関しては脆い防御兵装となっている。とはいえ改修前はビームライフルがミサイルランチャーだったため、攻撃性能に振った結果、こうなった。

 モデルはナラティブガンダムB装備の小型シールド。合体機構などは同じだが武装の変更が行われた。これはコロニー内での戦闘を考慮する必要がなくなったためである。

 

・ビームサーベル

 MSに標準的な兵装。腰部アタッチメント部のホルダーに二本装備する。

 

・アストロロジーバックパック

 ユグドラシルキャプチャー・ファンネルを装備するバックパック名称は「占星術」の英語から。

 通常時は前述した通りインコムモードのユグドラルキャプチャーを装備しているが、それらをパージした後、バックパックが展開し、マキナ・ドランディアでも使われていたビーム兵装「ヴァルスビー」と増加スラスター「タクティカルスラスター」を使用可能となる。

 武装構成としてはガンダムF91のヴェスバー、タクティカルスラスターはガンダムアストレイ系列のタクティカルアームズのスラスターがベース。ちなみになぜ名称がこれなのかと言うと、単純に占いつながりである。

 

 

 

グリーフィア「以上がサーガガンダムの紹介……?になるわね?」

 

ネイ「γ装備は……また後で?」

 

士「後で紹介ですね。まだ出てないので」

 

グリーフィア「分かりにくくならなければいいんだけどねぇ」

 

ネイ「そうだね。それで機能としては、やっぱりアンネイムドの機能を一部有しているんですね」

 

士「L-DLaですね。とはいえこのシステム、大元のアンネイムドのものを再現している点も同じで、本来ならサイコミュジャックの機能も見せたかったところですが、劇中ではその機会はありませんでしたと」

 

ネイ「それにしてもちゃんとα装備の解説もあるんですね」

 

グリーフィア「そうねぇ。最初に出た時に出すかと思ってたんだけど、やっぱりまとめて紹介したかったって感じ?それとも第1章の時点だとネタバレ不味かった?」

 

士「両方だね。ま紹介するにもこっちでやった方が良かったし、それにフェネクスの紹介でも言っていたけど、まだアナザーガンダム達の設定も煮詰まってなかったから、紹介できなかったってことだ」

 

グリーフィア「なるほどねぇ」

 

ネイ「ではそろそろ次の紹介した方がいいですか?」

 

士「お願いします」

 

ネイ「それでは次はシナンジュ系統2機種の紹介です。どうぞ」

 

シナンジュ・ゼロン

ZAMD-06S

 

機体解説

 ゼロンがハル・ハリヴァー専用に開発したMS。一時期におけるゼロンの象徴として君臨した。異名通りの赤い機体色が特徴的。差し色に銀色を採用している。頭部ブレードアンテナにモノアイの機体。型式番号は「ZERON ARMYS MOBILESUIT DIMENSION」の略。

 本機の特性としてはアンネイムドシリーズと同じくユグドラルフレームの採用、思考による機体制御システムの搭載、そして異世界のガンダムを参考にしているという点である。本機のバックパックバーニアとビームライフルは何の因果かヴァイスインフィニットの物と酷似している。本機を初めて見た元とジャンヌが本機をヴァイスインフィニットの改造機と見間違えており、頭部がガンダムと違うにも関わらずこうなったことからも余程元達がヴァイスインフィニットに敏感になっていたかが読み取れる。

 機体性能は高機動よりのパラメーターでアンネイムドシリーズより一段劣る。が、それをカバーしてラプラス事件ではアンネイムドユニコーン、バンシィ共に相手に取るほどの力と、拡張兵装で圧倒して見せた。この点はパイロットの実力であり、ジェミニアス1号機を撃破していることからもうかがえる。武装もシンプルなものが多いが、時期が3年前の虚無戦争を経ており、その為かその戦争で悪魔の活躍を見せたオースプロヴィデンスの武装を一部踏襲している。

 コンセプトは「シナンジュにプロヴィデンスガンダム系列の特徴追加」。両者の共通点としてパイロットが「誰かをモチーフとして造られた存在」であり、また主人公の機体と兄弟機のような立ち位置にもある。案外似ているうえにDN本編での時期もそれなりに近いうえ、シナンジュの建造に時間が合ったため、虚無戦争にてプロヴィデンスのデータを盗用した設定を加えている。

 

【機能】

・DNフェイズカーボンGM

 アンネイムドと同じガンダリウムメタル製のDNフェイズカーボン。なぜゼロンが、という疑問についてはこんな事情がある。ラプラス事件以前からゼロンは自衛軍の一部高官と関係があり、そのルートからゼロンにガンダリウムメタル製のDNフェイズカーボンが提供、それを用いた試作MSがこのシナンジュ・ゼロンであったという話である。

 

・ツインジェネレーターシステム

 胸部に内蔵する高純度DN発生装置。粒子放出口はバックパックが兼ねる構造。

 今となってはあまり特筆されるようなものではなくなってしまっているが、問題はその

完成度。観測データによれば蒼穹島製の物よりもシュバルトゼロのそれに近く、これがまたゼロンにヴァイスインフィニットがいることの裏付けに繋がっている。

 

・ユグドラルフレーム

 ユグドラシルフレームの局所的採用版。本機の装備箇所は胸部ツインジェネレーター周辺フレームとなっている。

 全身に装備しつつ外界に露出させるアンネイムドシリーズと比べるとあまりにユグドラルフレームの量が足りない様に見えるが、ハルは自身の有り余るDNLとしての能力を活かし、アンネイムド達とユグドラルフィールドでの張り合いが出来るだけの出力を引き出している。その力は光巴曰く「憎悪の光」でプレッシャーを相対する物に与える。

 

 

【武装】

・バルカン砲

 ゼロン機に珍しい頭部バルカン砲。片側80発装備。

 ハルはいずれの武装もけん制に使うため、本兵装への依存も高く、かつての事件では幾度も本兵装の活用で隙を作って反撃に転じたりしている。

 

・ビームライフル

 長銃身を持つビームライフル。下部の可動部にグレネードランチャー、バズーカ、DNレールガン、そして試作のユグドラルキャプチャーネットを装備可能となっている。

 この兵装はやはりヴァイスインフィニット、かつてシュバルトゼロも装備していたと言われる「MWBR」がベースとなっている。グレネードランチャーもそこから発展したものである様子。

 とはいえバリエーションはシュバルトゼロが戦った時より増えているため、脅威度は増している。ハルはバズーカの付いたこのライフルで機動戦闘を繰り広げたこともその実力を補強している。

 そしてユグドラルキャプチャーネットはユグドラルストーカー、ユグドラルキャプチャーフィールドの中間的兵装であり、ユグドラル反応を抑え込む電磁波を放つネットを発射する。本編作戦を意識して搭載されている。

 モデルとなったシナンジュのビームライフルはヴァイスインフィニットのMWBRのモデルともなっており、こちらもシュバルトゼロガンダムRのウイングと同じように時を経て本家リメイクの機体に搭載されることとなった。

 

・ビームサーベル

 袖部分に格納された基本の近接格闘戦兵装。出力も一般的な高級機と同等。装着したまま使用することも可能で、アンネイムドのビームトンファーと関連が見られる。

 原型機と同じビームサーベルである。

 

・マルチ・ウエポン・カバーシールド

 本機の左腕を突っ込むことで保持するシールド装備。防御に加え、前面にビームガン二門、ビームサーベル一基、ビームアックスを側面に二本備え、シールド内部にはビームライフル下部のパーツ各種を内蔵。更に思考制御される手首が装備され、装備時も武器が持てるようになっている。表面にはゼロンのマークがプリントされている。

 搭載武器についてはまずビームガンとビームサーベルはシールド埋め込み式で即応性に優れている。ビームアックスは取り外し可能な兵装だが前方へスライドさせることでハサミのような使い方が出来る。ライフル追加パーツは前述した通り。

 モデルはシナンジュのシールドだが、装着方法などをプロヴィデンスの複合防盾システムからアイデアを得ている。

 

・シナンジュ・ビット

 機体サイドアーマー、バックパックスラスター内部側面に装着されるシナンジュ・ゼロンが運用する遠隔操作端末ユニット。サイドアーマーに二基ずつ計四基、バックパックに四基ずつを二セットの計八基の合計十二基を装備する。

 板状のビットであり、シナンジュ・ゼロンの手数を増やす。だがハルはそれだけにとどまらず、ビームライフルの近くまで持ってきて同時発射、威力統合で大出力ビーム発射を行いもする。機能として有さないにも関わらずこの使い方を出来るのはそれだけDNL能力が高いことの裏返しでもある。

 モデルはプロヴィデンスのドラグーンシステム。円錐状のドラグーンがないが、代わりにエクストリームガンダムTypeレオスⅡV.sのディバインバスターのような使い方がパイロットによってなされている。また板状の遠隔操作端末という表現から、原典のシナンジュのプロトタイプ、シナンジュスタインのベースとなったと言われるHi-νガンダムのファンネルも意識しているチョイスである。なおHi-νガンダムと言えばシュバルトゼロガンダムのRⅡまでの原型の一つであり、敵方の機能を再現したとも言える。

 

・ハイマニューバウイングスラスター

 かつてヴァイスインフィニットが装備していた兵装と同種の兵装。ウイング内部に遠隔操作端末を格納する点も同じ。

 機動力は当時のヴァイスインフィニットよりも当然良く、アンネイムドシリーズのデストロイドモード、エラクスほどではないものの、それらと対等に渡り合えるだけの物を持つ。

 バックパック中央には武装接続部が存在し、シールドやライフルを固定可能。下部にはプロペラントタンクを備えており、活動時間も引き延ばしている。そしてハイマニューバモードも引き継いでおり、機体各部のスラスターも合わせて紅の流星が得意とするデブリや障害物を蹴っての機動戦闘が可能となっている。

 ヴァイスインフィニットを経て遂にシナンジュのアナザー機体にデータが活かされることとなった。

 

 

型式番号 ZAMD-06P

シナンジュ・プロトゼロン

 

機体解説

・シナンジュ・ゼロンを開発する為にゼロンがプロトタイプとして開発したMS。意図的にHOW、自衛軍のMSに似た角ばった装甲にデュアルアイが光る、銀色と白の機体。頭頂部のブレードアンテナはない。

 本機の役目としてはシナンジュ・ゼロンを使うハルが果たしてどこまで兵装を追加しても問題ないかを確かめるため。基本兵装はほぼそのままにアタッチメントで追加できるようにしている。加えてHOWと自衛軍のMSの弱点を洗い出すために敢えて敵方のMSを参考に特徴を盛り込んだ。

 完成したシナンジュ・ゼロンと比べると、基本に忠実な兵装ばかりだが、逆にゼロンで削られた機構もあり、むしろ武装の使いやすさで言うならこちらの方が扱いやすい面を持つ。だが機動面や出力の出し方について、こちらの方が硬い面もあり、原石とでもいうべき機体となっている。

 そんな本機を操るゾルダーだが、その粗野な性格とは裏腹に充分本機のポテンシャルを引き出していると言って良く、むしろファンネルがない分そのリソースを操縦に回していると他の者は見ている。しかしそのゾルダー曰く自身はそのファンネルを扱って更に強くなるとのことで、奥の手なる装備を用意させることも多いという。

 コンセプトはそのまま「シナンジュ・ゼロンの原石」。基本的な性能などは準じる。だが同時に本機は「シナンジュスタインを純粋に再現したマシン」というコンセプトがある。この点はそれぞれの追加装備にて明らかとなる。

 

【機能】

シナンジュ・ゼロンとほぼ同じ機能を有する。

 

【武装】

・バルカン砲

・ビームライフル

・マルチ・ウエポン・カバーシールド

 これらは形状が一部違うものの、機能としては同じため説明を割愛。

 

・ハイマニューバウイングスラスター

 オリジナルと同じ兵装。だがファンネルユニットがなく、その分機体重量が軽くなったため機動力はこちらが上。

 

・ビームサーベル

 格闘戦兵装。オリジナルと違う点としては格納部カバーが可動する点で、自動的に手元まで持ってこれるため、スムーズな格闘戦移行が出来る点。

 

 

ネイ「以上がシナンジュ・ゼロン、プロトゼロンの解説ですね」

 

グリーフィア「プロトゼロンはS・ゼロンと武装は共通しているってことから武装説明は大分端折ってるわねぇ」

 

士「まぁ文章減らせるだけはあるし、書くのも面倒くさかったから。その分違いがある点は書いてあるし」

 

グリーフィア「にしてもシナンジュにビットとは、思い切り原典機をブレイクするような設定ねぇ」

 

ネイ「一応ビットはネオジオングでも使っているんですけど、本体に装備っていうのは意外でしたね」

 

士「ちなみにこのビットのモデル、プロヴィデンスのドラグーンがベースって点はちゃんとオース編読んでいればその交わりから取ってきたってのが分かるようになっているからね」

 

グリーフィア「なるほど、狂真嵐のルートから流れたってわけねぇ」

 

ネイ「一応時系列的には合っているみたいですね。プロトゼロンもビットがないことにもつながりそうですし」

 

士「そういうこと。さて続きは後編ということで」

 

ネイ「今回は話数収まりそうですね」

 

グリーフィア「いつも3部までで収まってほしいわよね~」

 



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黒の館DN 双翼英雄譚編 第7回 後編

 

 

士「それでは後編に参りますよ~」

 

レイ「そういえばさ、ローズポートとかゼロンの艦艇の紹介っていいの?」

 

ジャンヌ「それやっておいた方がいいような気もしますが」

 

士「あぁ、ゼロン艦艇については次以降の紹介でやるつもり。で、ローズ・ポートはスポット参戦みたいなものな上、表向きは民間船だからね……紹介はしないっす」

 

レイ「ローズ・ポートェ」

 

ジャンヌ「うーん、民間船紹介省くのってどうなんです?」

 

士「全部紹介入れたいけどそれまでやると、手間だから。さて、それでは今回の紹介もよろしく」

 

レイ「じゃあまずはソルジガンとソルジスタ、どうぞっ!」

 

 

型式番号 FRGM-3

ソルジガン

 

機体解説

 自衛軍にて現在採用されている主力量産型MSの一種。開発元はカザノメカニクス石河本社。

 今まではHOWのモビルスーツばかりを採用していた自衛軍だが、それでは経済の循環に繋がらないと判断、またMS登場当初よりもMSの開発企業も増えてきたことから隊員達の好みに合った機体を採用するべく、数年前から他企業より主力量産MSの開発を委託するようになった。

 ソルジガンはHOWのソルシリーズをベースに開発された「ソルジムル」をベースに発展させた機体で、多種にわたる武装換装機構を失くした代わりに各部の高出力化、安定化を図った機体である。頭部はガンダムをベースにゴーグルカバーセンサーを採用し、内部のメインカメラを守る構成となっている。各部も平面と球面をほどほどの採用したシンプルなつくりで、内蔵武器も少ないが、それが却って追加で装備を行いやすい設計となっている。バックパックにDNジェネレーターを格納し、主力スラスターはコーン型のバーニアで上部に伸びたスラスターと共に飛行を行う。

 換装として増加装甲を装着可能。なお今現在採用されているのはD型と呼ばれる最新機種である。最新機種とはいえ、販売も行われており劇中では未緒派もどこからか入手している。

 結果としてソルジガンは扱いやすくて強い、ソルジアスよりも高評価を得られた機体となった。ところが一部はソルジアスの持つ特異性、特にDBの持つ圧倒的攻撃機能の有無や、ピーキーさを好んだり、あるいはソルジガンが素直すぎて敵の意表を突けないと言った不満を持ったりするパイロットも少なくなく、その為ソルジアスをそのまま継続的に使う者や、ソルジガンをベースに許可を得てHOWが手を加えた改修機「ソルジスタ」の開発が行われている。

 モデルはジェガン。直接のモデルはそのD型で増加装甲はスタークジェガンの事である。ソルジアスの武器も一部共通するものの、ジェガンの武器などが主となる。

 

【機能】

・ガンダリウムメタル・イージー

 通常のMSの装甲として採用されるようになった新素材「ガンダリウムメタル」の量産向け仕様。カザノメカニクスが開発した。

 ガンダリウムメタル自体は剛性・重量などMSの装甲として十分な効力を発揮する金属であり、HOW側でもその有用性を認めている。イージーはその費用を抑えつつ量産性に向いた製法で作られており、この点もまた自衛軍が量産MSの開発をカザノメカニクスに任せた理由でもある。

 ガンダリウム合金が元ネタだが、ジェガンにはガンダリウム合金は採用されていない。

 

・換装

 機体を覆う増加装甲「ストークアーマー」を装着した「ストークソルジガン」などに感想可能。

 

【武装】

・バルカンポッド

 頭部側面に装備されるバルカンポッド。インカムのような形となっている。

 

・ビームサーベル

 右腰に一本装備される基本的な格闘兵装。

 

・グレネード

 左腰に三つ装備される投擲用兵装。DN炸裂式を採用する。なおこの兵装は元をたどればあのガンファイターのグレネードに当たる。

 

・シールド

 左腕部に装備される実体シールド。側面に装甲破壊用の炸裂式対MSダガーが装備されている。

 防御性能としてはある程度のビームを防御できる耐ビームコーティングが施されている程度。そもそも本機の場合はバックパックなどのスラスターを用いた回避行動がメインとなるため、防御性能はあまり考慮されていない。

 ベースはジェガンのシールドだが、ダガーはフルメタルパニックシリーズの対戦車ダガーがモデル。

 

<ストークソルジガン>

 専用増加装甲「ストークアーマー」を装備した形態。射撃武器が多数装備された射撃戦仕様となっており、援護がメインとなる。とはいえ一部装甲はパージが可能で野戦換装としてデッドウェイトとなる装甲をパージし、スラスター部分のみで高機動戦を仕掛ける高機動形態が存在する。

 モデルはやはりスタークジェガン。しかし高機動形態を考慮した兵装が一部追加されており、自衛軍らしさをうかがわせる構成。

 

【追加武装】

・ビームサーベル

 左腕部の増加装甲に格納される格闘兵装。装着前とは違い、二本が装備される。

 

・グレネードランチャー

 右腕部の増加装甲に格納される実弾兵装。両腕部の兵装はそれぞれ互換があり、ビームサーベル四本かグレネードランチャー四発と言った仕様も可能。

 

・ハイパーバズーカ

 手で保持する実弾発射兵装。ビームライフルとの選択式で腰部に装備する。弾種は通常の炸裂式に加え、高速機対策の散弾やネット弾など揃えている。

 

・対艦ミサイル

 肩部ウエポンラックにそれぞれ三本ずつ、計六発を装備する。DNウォールの突破は不可能だが、当たればそれなりに威力が出る。更に空中で時限信管により爆発させれば大火球を生み出すため、動きを縛ることも可能。全弾発射後はラックごとパージできる。

 

・MS刀「ヒノワ」

 腰部に二本装備するMS刀。主に高機動形態時における主兵装である。

 普段は鞘自体がスラスターとして機能している。よってストークの状態でも邪魔になるということはない。そしてその肝心の切れ味は鉄程度なら真っ二つに出来るほど。とはいえ専用機ほどの威力はない。これは射撃兵装が効かないDNウォール搭載機に対する兵装で、高機動形態も実質その為にある。

 原型機に唯一ない兵装。新堂沙織が居合の名手でもあることから本兵装が設定された。

 

 

型式番号 FRGM-4

ソルジスタ

 

機体解説

 自衛軍に納品されたソルジガンは新兵にとっては扱いやすく、また整備員にとっても整備しやすい機体であった。ところがあまりにも平凡すぎる機体であったために一部のパイロットから不平を買うことになる。カザノメカニクス側でも対応しようとしたものの、一々対応しているのでは追いつかないと判断。そこで新堂沙織の提案で、MS開発の総本山であるHOWに改修を依頼する。

 依頼を受けた次元黎人は話を聞いてから依頼を受理しプランを構築。そこでかつて開発したソルジア・エースのようにベースとなる機体を選定することから始める。しかしかつてのエースのようにシュバルトゼロをベースにするのではハイスペックすぎて扱えないというジレンマが生まれる。そのため、黎人は「新堂沙織専用の本機体を作ってから、それをベースに調整する」案を閃く。

 そこで生まれた試作の本機は新堂沙織の協力の下数々の武装の調整を行われ、改修されて洗練されていく。最終的に完成したのが現在のバージョン4.3である。このバージョンでは近接格闘戦を重視したセッティングながら狙撃戦などのあらゆる戦闘分野にも転用可能な換装システムを搭載しており、その手間も可能な限り取り除いている。またこの時にカラーリングも当初はグレーだったが、現在は黒にオレンジのカメラアイとなっている(新堂機は肩の一部を黄色にペイントしている)。

 またソルジガンでは運用できないDBも使用可能なように調整された。

 本機は限られたパイロットにしか配備されていない。これは先述した少数生産の態勢以外にもそのスペックがかつてのシュバルトゼロガンダムRⅡに匹敵するかそれ以上のポテンシャルを秘めているため、そして本機の改修時にアンネイムドシリーズの技術を一部スピンオフしているため技術漏えいを恐れて容易に増加生産することが出来ないようになっていることに起因する。

 モデルは機動戦士ガンダムUCのジェスタ。コンセプトとしては「ジェスタ×アームスレイブ「M9シリーズ」」。新堂沙織、並びに戌村友直機は特にファルケの意匠を頭部側面に持たせている。ちなみに本編中にて原作のシェザール隊に当たるアンネイムドフェネクスを追撃していた部隊はソルジアスを使っていたが、現在ではソルジスタに乗り換えている設定である。

 

【機能】

 基本的にソルジガンと同じである。よって追加されるものだけを記述していく。

 

・マルチサポートAI

 機体の制御をサポートするAIを搭載する。パイロットの癖に合わせて成長するAIであり、パイロットによって話し方などが異なる。

 このシステム構築にはアンネイムドのL-DLa、そして解析されたシュバルトゼロのAI「スタート」がベースとなっている。なぜこれを搭載する意味がとも思われるが、理由は至極単純にパイロットの負担を減らすためである。DBの制御なども行えるため、突発的なDBの発案でもちゃんと制御できる点は評価できる。

 モデルとしてはやはりフルメタルパニックのM9のAIから。

 

・DNウォール

 機体背面のから伸びるアームに接続されるシールドから展開する防御兵装。技術革新により、発生器が一つでも十分な防御性能を発揮でき、また消費エネルギーも少なくなっている。

 

・ビームシールド

 左腕部に籠手として装備されている装甲から展開する防御兵装。ソルジアスの物の発展形で、他機と違う点として腕部を覆って打撃に使用することが可能(その際本体には極薄DNウォールが発生して守る)。

 使い方のモデルとしてはガンダムビルドファイターズのウイングガンダムフェニーチェのビームシールド。

 

 

【武装】

・バルカンポッド

 頭部左に接続されたインカム状のバルカン砲。

 

・ビームライフル

 ソルジガンの物よりも大型のビームライフル。カートリッジ方式で右腕部に予備カートリッジが三本装備される。

 ビームは通常の弾丸に加え、連弾も発射可能。この機構はシュバルトゼロのビームライフル・ゼロから活かされた機構である。またアンネイムドからの技術吸収によりDBを利用したカートリッジ内エネルギーを全使用する大出力射撃も行う。

 モデルとなったジェスタのビームライフルと同等の機能を持つが、大出力射撃に関してはオリジナル。アンネイムドのモチーフであるユニコーンのビームマグナムの攻撃を機能化した。

 

・ビームサーベル

 右肩側面に装備される格闘兵装。一本だけの装備である。近接戦闘戦を行うというのにどういうことかと思われるかもしれないが、理由は本機の主兵装がビームサーベルではないからである。

 

・フレキシブルシールド

 バックパック左側面から伸びるアームによって支えられたシールド。DNウォール発生機構と武装として上部にビームソード発生端末と下部にビームバルカン、そして側面にミサイルランチャー4門を備える。

 本兵装の特徴は防御の要であるシールドを腕と一緒に動かさずに済む点にある。シュバルトゼロも肩部にシールドを位置する形だが、そちらは肩に直接アームが付いて保持する形なので近接格闘戦にてやや癖のある構成。対してこちらの場合腕と一緒に動かす形を取らずに済むため腕に掛かる重心と負担が少ない。可動域も十分あり、ビームバルカンの使用にも問題ない。

 モデルはジェスタのシールド。そこに近接戦闘用の装備と、原型機と同じミサイルは数を増やして搭載する構成。

 

・グレネード

・両腰に三発ずつ装備される実弾兵装。ロックを外し敵へ向けて射出することで使用する、短距離ミサイル的な扱いの武器。

 

・MS刀「オオテンタ」

 左腰、というより、左ふくらはぎ横に装備されたMSとの戦闘を考慮した刀。かの天下五剣の名を冠する特注品で、新堂沙織機と戌村友直機専用兵装。

 これまでのMS刀の技術を応用して作り上げられた一品でDNウォールを軽々と切り裂き、更にはビームシールドやDNフェイズカーボンすらも両断することが可能。DNを全く使わずにここまでの切れ味を生み出すのは至難の業であり、その事もあって本兵装の製造は天才鍛冶師「天王寺 蘊奥(うんのう)」が手作業で一人だけで鋳造まで行っている。

 モデルはアストレイレッドフレームのガーベラストレート。鍛冶師の名前も登場人物「蘊・奥」より取られている。

 

・エリミネイターエッジ

 オオテンタを装備しない通常機体達が両ふくらはぎに懸架・装備するチェーンソー刃を備えたナイフ。

 系列的にはエリミネイターブレードの発展型である。オオテンタが瞬間の一閃に特化したのに対して、こちらは継続した連撃による削り取りで確実にダメージを蓄積させていく。

 ただし形状的にはアサルトナイフというよりククリナイフといった形で、慣れていない人間にとっては使いづらい。その為、本装備装着部は汎用アタッチメントとなっており、他の機体の兵装を装備する者も多い。

 武装モデルはファルケのクリムゾンエッジ。

 

・展伸式ヒートランス

 バックパック右側面に装備される長槍。穂の部分が赤熱化する兵装。穂の部分の後部にはスラスターが内蔵されており、突撃時の助けになる。

 性質としてはDNウォールを貫く機能を持ち合わせる。当初はビームガンかバルカン砲を併設する予定だったが、武器構造の強度を優先して装備していない。

 モデルはフルメタルパニックのファルケのプラモデル版追加装備「HEATランス」

 

 

<ソルジスタ・カノン>

 ソルジスタに外装ユニット「カノンパーツ」を各部に装着、バックパック一部を換装した仕様。

 砲撃戦仕様であり、長距離から支援する部隊長、砲撃兵向けの装備形態となっている。ただしそのパーツにはいずれもスラスター機構を搭載しておらず、砲撃戦に徹することを求められる機体となっている。とはいえ装備は全て爆砕ボルトでパージが可能で、元々のソルジスタで継続戦闘を行えるのも魅力の一つ。

 モデルはジェスタの装備の一つ、「ジェスタ・キャノン」。

 

【追加武装】

・ビームキャノン

 バックパックに装備する高出力ビーム砲。右肩側から伸びる。

 性能としては基本的なものとなっている。だが基本に忠実だからこそ腕利きのパイロットが操縦する本機では硬い性能を誇る。

 

・四連マルチガンバスター

 バックパックに装備するマルチランチャー。左肩側から伸びる。

 徹甲弾、焼夷弾などと言った多様な弾丸を発射可能。

 

・グレネード・ミサイルランチャー

 脚部増加装甲に一体配置されるグレネード投射装置。腰部に装備するグレネードと同型で、それらを増設した形となっている。そのため威力も同等。とはいえ本機の砲撃能力を高めていることには違いない。

 

・肩部増設ミサイルランチャー

 肩部の増加装甲の蓋を開くことで露出するミサイルランチャー。純粋なミサイルであり、グレネードよりも誘導性が強い。

 モデルは漫画版ブルーディスティニー一号機のフルアームド装備の肩部兵装からビームサーベルを除いたもの。ちなみにこれはシュバルトゼロガンダムリペア[ハイブリット]にもモデルとして採用されている。

 

・腕部アーマーシールド

 左腕部に装着されるアーマー一体型の小型シールド。装甲内にはマシンガンが格納されており、近接防御を担当する。

 原型機の左腕部アーマーにシールドとマシンガンの機能を付与した。

 

 

レイ「以上がソルジガン、ソルジスタの紹介になるよー」

 

ジャンヌ「追加装甲装備、ちゃんとあるんですね」

 

士「装着しているような描写はないけど、こういった機体もいるよってことで」

 

レイ「けどこの機体達、名前は同じソルなのに大元はHOW製じゃないんだね」

 

ジャンヌ「ソルジスタはHOWが改修を主導していらっしゃるみたいですが」

 

士「まぁいい意味では独占を防いでるってことよ。HOWばっかり優遇するのも良くない。いろんなところのMSの活躍がなくっちゃね」

 

レイ「なるほどー」

 

ジャンヌ「まぁバックの人は同じですけど、それでもHOW贔屓にはなっていないってことですね」

 

士「なるべくはね。さて、次の紹介行ってみよう」

 

ジャンヌ「次はそのHOWの艦船、ヴァルプルギスの同型艦オーヴェロンとヴァルプルギスへの追加装備「DNブースター」です、どうぞ」

 

 

オーヴェロン

HS-G01-2

全長275メートル

最大搭載MS 31機+α

 

 

解説

・既にクローズで運用されている専用MS母艦「ヴァルプルギス」の2番艦として設計・開発された空中艦。こちらはSABER部隊にて運用される。艦長は黒鉄 来春(くろがね らいは)

 違いとしてはカラーリング程度。しかし先に運用されていたヴァルプルギスのデータから最適化が果たされており、またエラクスシステムも不完全ながら稼働が可能となっている。もちろん先行して稼働していたヴァルプルギスも第3章時点で改修が行われ、エラクスの不安定稼働が可能となった。

 無論これで完成というわけではなく、今後も様々な同型艦等のデータを収集し改修していく予定。開発者の一人である黎人としては大規模な艦隊戦のデータが収集してほしいと本音を漏らしている。

 ちなみに艦内の戦力割り当てとしては基本的にチームA、Bが右コンテナ、チームE、Rが左コンテナ、そして深絵が直接指揮するチームSが中央ブロックとなっている。SABERは通常配置がCROZEよりも少ない為、ペイロードにだいぶ余裕を持つ構成。

 劇中では第3章よりSABERの艦として登場する。ヴァルプルギスが黒と白、水色の配色なのに対し、こちらは水色、白に赤の指し色が入る。

 

【機能】

 エラクスシステムが不安定ながらも稼働出来る以外は以前のヴァルプルギスと同じ。

 

【武装】

 ヴァルプルギスと同じ。

 

 

DNブースター

 

 

機体解説

 ガンダムDN、特に2号機「アルヴ」は後継の量産機体へと技術を繋いでいく色が濃い機体である。が、それもあって1号機との性能差は、パイロットが力を付けていくほどに開いていく結果に嫌でもなっていくことになる。

 もっともその差が大きいのが動力源。ツインジェネレーターシステムか否かの問題は、少なからず本機の最大出力の劣化が認められた。そこで本機専用の出力、武装面を補う追加兵装の導入が行われることとなった。それがこの支援機DNブースターである。

 ブースター、と言っているが、これはアルヴにとってのブースター以外にも本マシンを格納するヴァルプルギス級にとってのブースターでもあることを意味している。ヴァルプルギス級の後部推進器の側面に装着する形で接続、格納する。その際にはヴァルプルギス級の追加ブースター、砲として機能する。これを2基接続する。

 肝心のガンダムDNでの運用はバックパックを外しての「合体」。これもまたエディットバックパックシステムの延長線にあり、同じシステム機とのドッキングが可能となっている。合体後の名称は「DNアーマー」合体部は可動フレームとなっており、ある程度姿勢を変えられる。合体時には変形し、上部キャノンパーツ、側面ウエポンアーム、そして脚部接続部兼ブースター兼レッグユニットという扱い。可動フレームを用いることで、機体そのものを再度もとの形に近い形へ変形させ、大型MAもかくやの巡航形態へと変形する。

 系列的にはかつてシュバルトゼロガンダム・リペアが機竜大戦にて使用したLBCAのモビルブースター「ヘッジホッグ」を参考に製作。あちらと違ってDNジェネレーターを内蔵することで合体した機体の出力に加算して性能を高める仕様で、量産機向けとなっている。

 問題となるのは製造コストで、可能な限り低予算で収めているものの、それでも量産型MS5機ほどのコストが製造だけで掛かり、整備、メンテナンス、予備兵装でも加算されていく。もっともその点は本兵装を格納できる艦が限られている、かつその部隊が限りなくエース部隊に近い点で補われている(ある程度の予算使用が認められている)。

 一応アーバレストにも装備可能であるものの、アーバレストはそのままの仕様で特化していることもあり装備は前提とされていない。主な使用者は千恵里とGチーム隊長の呉川鈴児になると思われる。

 モデルは機動戦士ガンダム00のGNアームズ。名称もGNアーマーをもじっている。コンセプトとしては「GNアームズ×デルフィニウム」であり、デルフィニウムは元を辿ればガンダムシリーズの大型追加兵装の本家とも呼べる「デンドロビウム」のスピンオフ的な装備である。なお本家と比べて全高6メートルほどとかなりダウンサイジングしているため、強化ブースターと言うよりは姿勢制御用ブースター兼予備砲塔増加の方が近い。

 

【機能】

・DNウォール

 機体各部の放出口からDNを放出し、機体を覆う膜とする。防御性能は元々の機体以上を誇る。

 

・変形

 背部と接続する可動フレームと脚部ユニットとで合体する機体を固定し、機体を覆うようにユニットを覆っていくことで巡航形態へと移行する。

 変形機構に関してはデルフィニウムを踏襲している。

 

 

【武装】

・メガビームマシンキャノン

 上部に備わったビームキャノン。本機の主兵装となる重火器である。合体時には機体の肩上部へと位置する。

 シュバルトゼロガンダムに装備されていたビームマシンキャノンのマイナーチェンジ仕様で、大型化したことであちらと同等の威力を誇る。

 とはいえ発射時には相当の反動があり、発射時にはしばらく硬直することもあってビームマシンキャノンほどの汎用性はない。

 モデルはGNアームズのビームキャノン。

 

・ウエポンアーム[ソード]

 側面に装備される大型ウエポンアームの一つ、大型の剣を備えた近接戦仕様となっている。

 機体の腕に合わせて振られる仕様で、MAの装甲すらも叩き斬れるシロモノ。また側面はシールドとしても使え、ビームガンも内蔵していることから突き刺してから射撃という攻撃も可能。

 ヘッジホッグのキャノン・アームがベースとなっている。

 モデルはGNアームズType-Eの大型GNソード。

 

・ウエポンアーム[ガン]

 側面に装備される大型ウエポンアームの一つ。折りたたみ式の大型ビームライフルとドライバ・フィールド発生器を兼ねたミサイルコンテナを右側と左側にそれぞれ装備する。

 右の大型ビームライフルはメガビームマシンキャノンと合わせて本機の火力を底上げする。左のミサイルコンテナは実体弾による攻撃が有効な敵への攻撃以外にも、DNウォールで対処不能な実体剣、ユグドラル攻撃に対しての防御手段としてのドライバ・フィールドを備えており、この手の大型機の欠点を補う装備となっている。ただしドライバ・フィールドは発生器が外側に近くなっているため、不意を突かれると破壊されやすいという欠点を併せ持つ。

 モデルはGNアームズType-Dの二連装大型ビームライフルとミサイルコンテナ、デルフィニウムの各腕部装備。

 

・ブーストブーツ

 MS側の脚部を接続するレッグユニット。非合体時の着地脚・としても活用される。ユニット先端部にはクローユニットも備わっており、格闘戦を想定している。

 変形時には脚部接続部からパーツをスライド可動させて機体の下面を覆うように固定される。

 モデルはGNアームズの下部パーツ群だが、変形機構に関してはデルフィニウムの変形をイメージ(変形機構は全く違うものの)。

 

 

ジャンヌ「以上がオーヴェロンとDNブースターの紹介です」

 

レイ「って言ってもオーヴェロンはほぼこんな感じだよーって紹介で、ヴァルプルギスとほぼ同じって位だよねぇ」

 

士「まぁ実際同型艦だとまた同じ説明を繰り返すのは億劫だろうから。というわけでメインはDNブースターの方だ」

 

レイ「プトレマイオスタイプをベースにした艦ならやっぱり追加装備はそうなるよねっ。けど今回は変形までしちゃうとか」

 

士「変形機構はデルフィニウムから参考にもしているんだけど、キュリオスのDNアームズが出来るとかいう話を漫画で見たってのが元ネタですね」

 

ジャンヌ「原作じゃ一切情報ないので、多分ビルドシリーズですか?」

 

士「多分、名人のアメイジングあたりかな。けど内側に収める機体まで変形機構であるってわけじゃなかったから、今回はこれらのニコイチというわけ」

 

レイ「あぁ、DNは可変機じゃないもんね。ならデルフィニウム方式が一番かぁ」

 

ジャンヌ「と言っても本来はGNアーマー方式が基本形態なわけですが、でもこの世界では元さんが第1部で使ったブースターがモデルとなっているんですね」

 

士「ヘッジホッグブースターとかどれだよ!という方は機動戦士ガンダムDNLEVEL1第4章を見ようね」

 

レイ「大胆すぎる宣伝だぁ」

 

ジャンヌ「実際登場しているので、活躍がどんなのだったか振り返るのは悪くないかもしれませんね。あの時のMS技術も大分現在に生かされてきているようですし」

 

士「今後もその時の技術が再びスピンオフされていくこともあるからね。過去のお話も見てくれると喜びます。拙さは心に来ますが。というわけで今回の黒の館DNはここまでです」

 

レイ「次回は何部構成になるかな~?」

 

ジャンヌ「あんまり喜ぶのもあれですよ……」

 

レイ「貶してるんだよ(真顔)」

 

士「善処しまーす」

 

ジャンヌ「やる気が感じられないです」

 




黒の館DN双翼英雄譚編第7回はここまでとなります。

まだまだ紹介を多分に残す結果となりました。クローザーは完全に次の黒の館DNでの紹介となります。まだまだ機能を隠し持っているので、それもあってです。

次の黒の館DNでは、果たして3部に収まるのか。心配ですがこれを書いている時点でもうすぐ第3章の終わりが見えてきているのでその内報告できるかと思われます。

次回からはいよいよフェネクスの事件にまつわる話や、自衛軍の強力な助っ人の登場、そして混乱からの第3章決戦まで向かいます。次回よろしくお願いします。


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EPISODE45 不死鳥になった少女の願い1

どうも、藤和木 士です。EPISODE45と46の公開です。まずはEP45から。

レイ「クローザーの活躍のおかげでフェネクスは捕獲に成功したってところだね」

ジャンヌ「タイトルからして如何にもフェネクスと関係ありそうなって感じですね」

というわけで本編どうぞ。


 

 

 カザノメカニクスへ到着後、フェネクスはカザノのユグドラシルフレーム機強制拘束ハンガーへと格納された。

 フェネクスの四肢は完全にハンガーの固定装置に装着されている。宗司にとってその姿はやや異常に思えた。

 MSならパイロットを排出してしまえばいい。いつも鹵獲したゼロンのMSを無力化するときは装置でそうやっている。

 それをやらないのはなぜか。その答えは程なくわかることになる。その様子をガラス越しに見るCROZE、SABER、極舞の主要メンバー達。蒼梨隊長が極舞部隊の隊長、新堂沙織さんに改めて感謝の言葉を贈った。

 

「先程は助けて頂きありがとうございました、沙織さん」

 

「いや、こちらとしても助けられたよ深絵君。元、流石は魔王だ」

 

「俺はやれることをやっただけだ。実際そちらに後半は任せきりだった」

 

 お互い助けられたと礼の押し付け合いをする三人。が、それがいつものことと認識しているようで、三人の押し付け合いはそのまま終わり、話題が変わる。

 

「ジャンヌ君の方は大丈夫なのかい?」

 

「えぇ、今はちょっと疲れすぎててこんな格好ですが」

 

 ジャンヌ副隊長は自身の状況を見てそう言った。服装は特に問題ないのだが、元隊長が持ち手を握る車いすの席に座っていた。

 あの後装依を解除し医務室へと運び込まれたジャンヌ副隊長。原因はあのユグドラルキャプチャーとそれを打ち破るために使った「クローズモード」と呼ばれる機能の解放によるものらしく、反動で気絶するほど深刻なダメージだったらしい。

 その姉を気遣うようにエターナが言う。

 

「姉様……疲れたってレベルじゃないでしょう。医務室の先生も安静にと」

 

「気遣い感謝するわエターナ。だけど、私は副隊長だから。あの機体の見分には可能な限り立ち合いたいの」

 

「姉様……」

 

 今でこそエターナも落ち着いているが、直後の姉の容体を見た彼女はすぐさま元隊長に傷つけた責任を迫っていた。むしろよく冷静になったとこれまでの様子からみると言える。

 しかし気丈に振る舞うジャンヌ副隊長への心配は、立ち会わせている蒼梨隊長や新堂隊長も思っていたようでため息を吐いて言う。

 

「とはいえ、私の観点からしても君の同席は好ましくない」

 

「そうそう、元君も大分心配しているみたいだから、本当に無理はしないでね」

 

「うっ、それは……」

 

 無理に同席してしまっていることを指摘され、ジャンヌ副隊長は気まずそうに元隊長を見上げる。元隊長は呆れを表すように目を閉じると擁護した。

 

「俺はお前の意見を尊重するよ。これまでもそうだったから。それに、これは俺の責任でもある」

 

「!ごめん……ありがとう」

 

 それは今まであまり見せてこなかったような口調でのやり取りだ。もっともエターナがむすっとさせたことから、彼女はよく見ていたようだ。

 そこに作業を行っていた研究員から合図をもらった舞島さんがこちらに声を掛ける。

 

「お待たせしました。準備は完了です」

 

「よし、じゃあ始めるか」

 

 始めるかという元隊長の言。それを聞いて進と入嶋が訊ねた。

 

「え、このまま?パイロットに聞くんじゃないのか?」

 

「そうですよ。こんな状態で話をさせるなんて、色々と不自由と言うか……あの、決して否定するわけじゃ」

 

 フェネクスのパイロットに話を聞くのには些か不便な状況だというのは宗司も、他の面々も思っていたようでやや声が漏れてくる。が、自衛軍の面々は友直達も含めてむしろそのどよめきに首を傾げる。

 

「えっ、みなさん知らないんです?宗司先輩も」

 

「あぁ」

 

「えぇ、HOWの魔王がこの重要な前提条件言ってなかったんだ……それでよう捕まえはりましたね」

 

「どういうことよ」

 

 一体何を言っているのか。その答えが新堂隊長から元隊長に質問し回答する形で明かされた。

 

「元君、隊員達に説明してなかったのかい」

 

「えぇ。聞けば色々と支障が出かねないと判断したので。お前達には初耳だろうが、あのフェネクス、既にパイロットの肉体はない」

 

「ぱ、パイロットがいない?これまで全部オートってことですかっ!?」

 

「いいえ千恵里さん。パイロットがいないんじゃないです、パイロットの肉体がない、文字通り、その意味です」

 

「…………えぇ!?」

 

 何を言っているんだ、と宗司自身も思う。パイロットの肉体がない、あるのは何なのか。その意味を素早く理解したのはエターナだった。

 

「…………それって、今はパイロットの意識だけが、機体に宿ってるってことですか、姉様」

 

「おいおい、パイロットの意識だけがあるなんてそんな馬鹿な話……」

 

「そうよ、エターナ」

 

「……マジで!?」

 

「やっぱり」

 

 あるわけがないと否定しようとしていたクルツ先輩が唖然とする。元隊長はこれまで掴んでいたパイロットの状況について語った。

 

「俺達は二か月前、宇宙でフェネクスと戦った。その時にDNLの感覚でこの機体を確かめている。こいつの肉体はない。そもそも重力下であれだけの連続機動、身体に負担がないわけがないだろう?」

 

「……確かに」

 

 納得を見せたのはクルーシア。フェネクス捕獲の立役者である。あの時彼女はシクサス・リッターに封印されていたというDIENDシステムを起動させたらしい。

 システム発動後の負荷の影響で途中撤退したのは聞いている。そのクルーシアがたった10秒だけでもフェネクスと同等の機動性能を体感してそれなのだから、それをずっと続けていたフェネクスが例外なはずが普通はない。

 ところがフェネクスはそれが出来ている。ならば、それはフェネクスが普通ではないということを意味していた。

 事実に気づき、閉口する。だがまだにわかに信じがたい。MSに意識だけが宿るなんてことがあるのか。すると、舞島さんから肯定がなされる。

 

「元さん達の言葉は間違いないです。本来、この強制拘束ハンガーはMS確保後速やかにパイロットを排出する機能を持ち合わせています。ですが、それがされていない」

 

「つまり本当に……」

 

「えぇ、この中に、人の肉体は既にありません」

 

 呉川小隊長の言葉に頷く舞島さん。

 そんなことを言われて信じられないはずはない。そして、決定的とも呼べる発言が「彼女」の声で語られた。

 

『………………そうだよ。私の体は、もうない』

 

「っ、この声」

 

「あの時の!」

 

 自身と入嶋、クルーシアが反応する。突如捕獲作戦中に聞こえた、少女の声と同じ物が、スピーカーから発せられたのだ。

 心当たりを示した三人に他の面々が説明を要求する。

 

「三人共、知っているのか?」

 

「え、聞いていないんですか?あの捕獲作戦で邪魔をしないでって言ってたじゃないですか」

 

「は?入嶋なに言ってんだよ。そんなこと、誰も聞いてないだろ、忘れているのかもしれないけど」

 

 進はそんな言葉は聞いていないと断言する。しかし宗司も似たような言葉は聞いていたことを告げる。

 

「いや、俺も撃とうとした時同じ声で言われた」

 

「マジで?私には聞こえなかったんだけど……DNLだったら、そういう声が聞こえてもおかしくないのに……」

 

 宗司に聞こえても自身に聞こえなかったはずがないと話すエターナ。するとジャンヌ副隊長と、同席していた光巴がそれぞれ見解を述べる。

 

「DNLの能力は確かに他のDNLの声を傍受することは可能です。ですが相手よりレベルが低かったり何らかの処置が出来る場合だと並みのDNLでは聞こえない場合もあります」

 

「この囚われている子の場合は、届けたい人だけに届ける、っていう傍受対策特化っぽいかな。みんなの状況から察して、って見解だけどね。私も戦場が遠すぎて聞こえなかったし」

 

「そ、そうなんです、ね……」

 

 エターナが複雑な表情でそう返答する。その目はやや涙目になる。

エターナは元々自分がいた世界の学園で、英雄と崇められていた姉と比べられるのが嫌でこちらに来た。その姉から間接的にレベルが低いと言われるのはそれなりにショックに違いない。

 姉のジャンヌ副隊長もそれは知っている。すぐにそれに気づいて訂正を掛ける。

 

「あ、いや、エターナはまだ成長途中だからそんなに落ち込まなくてもっ」

 

「い、いえ……姉様は、偉大ですから……」

 

「……はぁ。とりあえず、話進めるぞ」

 

「あっ、すみません」

 

「フン、アンタに言われたくないわよ」

 

「エターナ先輩……仮にも魔王相手に、凄いなぁ」

 

 姉妹のやり取りに元隊長が本筋へと戻す。エターナは姉との会話に邪魔されたことへやや不満そうにする。ブレのなさに違った意味で関心を寄せる友直さん。

 そんなわけで話は捕まっているフェネクスに宿ったパイロットの話へと戻る。こちらのやり取りにフェネクスのパイロットの声が笑う。

 

『……魔王って、面白い家臣を従えているんだね』

 

「面白っ!?」

 

「別に部下達に思想の強制まではしていない。無論戦場で生き残るために必要な思考を育てる訓練は課しているがな」

 

 それは元隊長、魔王の考え方が意外だったとでも言うべき発言。元隊長も訓練などには厳しく、訓練のある日の起床時間等の時間の徹底などもしているがオフの日には羽を伸ばせと放任主義を貫いている。

 とはいえ自分達のやり取りを見て、面白いなんて言われれば入嶋のように微妙な面持ちをせざるを得ない。

 フェネクスに宿った声の主はフェネクスの顔を動かし、頷く。

 

『そっか。魔王も名前の割りに悪くあろうとはないんだね』

 

「それはそうだよ。元君はやみくもに人を恐怖に陥れるために魔王になったんじゃない。人を護るために名乗ったんだから」

 

 蒼梨隊長は元隊長の魔王の名乗りをそう言った。しかしフェネクスのパイロットは否定する。

 

『けどさっきは私の大切な友達を傷つけた。陽太も、未緒も、彼らが悪いわけじゃない』

 

「庇い立てするっていうの、あいつらは作戦を邪魔してきた!」

 

「そうですね。自衛軍の作戦を妨害した。しかもフェネクスの力を神と崇めるやつらに渡すわけにはいきません!あなたはそんな奴らに協力したいと?」

 

『違う!二人の望みには応えない、応えられない。だけど、私がしようとすることに、二人は必要なの!』

 

「―――それは、ニア・ゼロングを止める、ということかな」

 

 そこでフェネクスに問い掛けたのは、自衛軍側のパイロットの一人だった。白髪の髪をややカールを掛けて全体的に広げさせた髪型の自衛軍制服姿の男性、その隣には同じ服装で、銀髪の男性が頷く。

 

「ニア・ゼロングの危険性はこちらも把握している。その為に俺達は派遣されてきた」

 

「……まさか、君達と再び会うことになるとは、思ってもなかったがな」

 

「呉川小隊長、知っているんですか」

 

 見知った様子の呉川小隊長に訊き返す。呉川小隊長は彼らの素性を明かす。

 

「こっちの男は神鳴 白(かみなり はく)、そしてこちらが政岡 利一(まさおか りいち)。二人はかつてラプラス事件においてCROZE部隊が協力したアンネイムドのパイロット達だ」

 

「アンネイムドのパイロット!」

 

「確か、ユニコーンとバンシィでしたっけ!?」

 

 アンネイムドの残る兄弟、ユニコーンとバンシィの事は聞いていた。だがそのパイロットが今目の前にいる彼等だとは思わなかった。

 その姿を見て進も意外を口にする。

 

「あんたらが、あのラプラス事件を解決したっていう」

 

「そうだよ、オースからの新人さん。君のお兄さんとも、一応顔を合わせたこともある」

 

「に、義兄さんの事を……」

 

「まぁ、諸々の時期が重なってたまたまだな」

 

 オースからやってきた新人へと語ってみせた白と利一。白さんにはどこかミステリアスさを感じる。対して利一さんは人間らしいけだるさ、もとい落ち着きがあって練度が高そうだ。

 彼らの事を智夜が自信満々に語る。

 

「二人はな、事件の後自衛軍でも白雷と黒霞って呼ばれてたんや~。まぁ政岡さんはお父さんが当時の防衛大臣の息子さんなんやけども」

 

「そうなんですか」

 

「まぁ、そうだな。とはいえ白も、元々はこのカザノの工専の生徒だったんだがな」

 

「それどころか、僕はこのカザノのかつての代表だった家系の末裔なんだけどね。あまり言いたくはないけれど」

 

 智夜の説明に付け足すように二人は話した後、ここへ来た理由ともう一つ明かす。

 

「僕らはフェネクス確保のためと、ゼロンが投入してくるであろうエース、ハル・ハリヴァー一派の企みを阻止する為に、残されたアンネイムドと共にやってきたんだ」

 

「残された、ってえぇ!?アンネイムド持ってきたんですか!?ていうか持ってこれたの!?」

 

「千恵里ちゃん声が大きい……でも、アンネイムドの機体は私のDIENDと同じ特級のはず……危険じゃないんですか」

 

 騒ぐ千恵里を窘めつつもアンネイムドがあることに疑問を抱く。フェネクスと同じなら、と思っているとその心配がないことを独さんが告げた。

 

「心配はご無用です。既に我々の方でお預かりして、フェネクスと同じ部屋に安置されていますよ」

 

 そう言って端末を操作すると、フェネクスが捕まっている部屋の左右の床が開き、似た、とは言いづらい増加装甲を取り付けられた機体がハンガーに収められていた。

 姿が違うことにエターナが疑問を投げる。

 

「あれ、こっちの二機の装甲は?封印装置?」

 

「みたいな感じではあるね。実際これは元々アンネイムドのL-DLaが暴走しない様にするための拘束装置兼増加装甲兼武装格納アーマー、アーマードアーマーなんだ」

 

 舞島さんはそう言って見せる。実際の使用者である政岡さんが使い心地を語った。

 

「動きが重くなるがそれも合わせて非常時の起動停止には役立っていたな。もっともあの時は収まらなかったが」

 

「あの時?」

 

「僕がフェネクス、今の彼女と同じ状況に陥りかけた時の事だよ」

 

「白さんがフェネクスと同じように!?大丈夫なんですか!?」

 

 入嶋は大丈夫なのかと不安を漏らす。今こうしているのだから大丈夫なのだろうと思ったが、白はそうでもないと答えた。

 

「いいや、その代償に僕の精神は今でもあのユニコーンに流れて行っている。……いずれは彼女と同じになりかねない」

 

「嘘……」

 

 まさかの事に言葉が出ない入嶋。同種の機体に乗っている政岡さんにも同じなのかと問う。

 

「それは、政岡さんも同じなんですか?」

 

 宗司の質問に政岡さんは首を横に振った。

 

「いや、俺は残念ながら、というべきかDNLの力が彼等より完成されていなかった。そこに行けたのはこいつらだけだ」

 

「そ、そうなんですか」

 

「まぁそれは置いておけ。今は彼女の目的を明らかにするべきだ」

 

 政岡さんは言ってフェネクスへの質問へと話題を戻す。フェネクスは先程の神鳴さんの質問に答える。

 

『そう、私はこのフェネクスと同じ、いいえ、それ以上に危険な人の意識を具現化しかねない、この世に存在してはならない機体「ニア・ゼロング」の最後の一機を破壊するために、この星に戻ってきた』

 

「やっぱり」

 

「ニア・ゼロング……?」

 

 ネーミングになんとなくゼロンとのつながりを思わせる。そして声の主、彼女は自己紹介を行う。

 

『話すよ、私のすべて。私は元自衛軍特殊MSパイロット、鳥金 梨亜(とりかね りあ)。あなた達が予言の子ども達と呼ぶ者の「本物」』

 

 この作戦「フェネクス捕獲作戦」の根源が明らかとなる。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP45はここまでです。

レイ「あんまり話としては進まなかったけど、やっぱりタイトルの事はフェネクスで間違いないね」

ジャンヌ「それがガンダムナラティブという作品でのキーパーソンというわけですし。それにニア・ゼロング……ネーミングからしてあの機体の関連機ですよね」

士「概ね原典と同じ理由で、フェネクスが戻ってきているのは変えたくなかったのでね。とはいえ、ここで終わるわけじゃないんだよねぇ」

レイ「終わるわけじゃない?」

ジャンヌ「他にも理由が?」

それは次のEP46でのお話かな。ユニコーンとバンシィのアナザーも出しましたし、劇中では遂にユニコーンとナラティブの競演からどうなっていくのかと言った具合です。

レイ「封印されていたものを引っ張り出してきた理由もそのニア・ゼロングってやつが関連してるよね。前にグリーフィアちゃんが言ってたけど、やっぱり怪獣大戦争みたいになっちゃうのかな?」

それは……あり得るけどその時をお待ちください。と、そろそろこのあとがきはここまでです。

ジャンヌ「それでは続きます。そのまま次のお話へどうぞ」


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EPISODE46 不死鳥になった少女の願い2

どうも皆様、藤和木 士です。引き続きEP45と46の公開です。続いてEP46です。

ネイ「フェネクス、鳥金梨亜の話が明かされる、と言った具合ですね」

グリーフィア「よくよく考えると被害者の彼女から事の子細が話されるってナラティブじゃあない展開だったわよねぇ。原作じゃあ最後の方でちょっと喋ってた感じだし」

状況説明の為にも今回捕獲された当事者である彼女の口から喋ってもらいますからね。というわけで本編をどうぞ。


 

 

「あなた達が知っての通り、私達は11年前の東響掃討戦で両親を喪った。その時、私はDNLに目覚めて、あの未来予測を見た」

 

 まだ機体のフレームに残っている私の自我の記憶。自宅避難命令が出ている中で私や陽太達の両親は家で大人しくしていた。私達は同じマンションの中の別室で暮らしていた。生まれてからご近所同士の付き合いで家族同士の仲もよかった。

 けれど、そんな中で次元覇院と当時のHOW、MSオーダーズの戦闘員達が戦闘を激化させていくうちに建物の被害が甚大なものへと変わっていった。そこで緊急電話回線でマンションの住人に緊急避難が告げられた。

 その知らせに住民たちは一斉に避難が始まった。私達も陽太や未緒の両親と合流して街中を戦闘範囲外へと逃げていく途中だった。

 両親達が子どもの私達にもうすぐだからと励まし逃げた。けれど、もうすぐというところで近くの建物から瓦礫が降り注いだ。

 助からないと判断した私達の両親は、私達を押して無理矢理逃がした。そのまま両親達は瓦礫に押しつぶされて、私達は助かった。

 

『母さん?父さん!』

 

『母さん達が!』

 

 陽太達はすぐに瓦礫に駆け寄って両親達を助けようとする。私も助けようとしたけど瓦礫に触れた瞬間、それを感じ取った。

 

『二人とも、逃げてっ』

 

二人の手を引き、無理矢理離れる。するとそこに次元覇院のMSを撃破したと思われる自衛軍のMSが訪れた。

 

『大丈夫か、君達!』

 

 その人に事情を告げると、もう助からないと言い、私達をすぐさま都市外の避難所、救護テントへと連れて行った。

 そこで、予言とも呼べるDNLの直感が告げた。告げたどころの話ではない。

 

『……あ、あぁ』

 

 視えた。戦場で消えていく命、そして目覚める黒と赤の機人。更に大きな円盤の上で黒い機人に何かが降臨し、一つになるのを。

 それを救護テントの人、当時の自衛軍人へと言った。けれど、誰も忙しくて信じてくれなかった。

 それは未緒も同じで。

 

『梨亜、そんな変なこと大人に言うのは止めようよ。忙しいんだから』

 

 言いたいことは分かる。でも私には確かに見えたんだ。陽太は信じるかどうか悩んでいた。

 時間がないかもしれない。そんな焦燥感に駆られた私は迷いなく二人の手を掴んだ。

 

『えっ、ひゃっ!』

 

『梨亜、これは……』

 

『これが、私が見たもの』

 

 二人を、私自身が見た光景へと、意識の中へと連れ込んだ。いきなり頭の中にイメージが流れ込んだからか二人は思わず手を離す。

 手を掴んでからこんな自分は嫌われるのではと思った。未緒は既に変なものを見せられたと思って疑う目をしている。今更少しだけ遠慮する様に手を引こうとする。

 けれど、陽太は違った。

 

『梨亜……』

 

『!陽太』

 

 陽太はその手を掴み直してきた。彼は言った。

 

『これから、起きることなんだね』

 

『……もう起きつつあること。最悪の結末に、なってしまう』

 

『じゃあ僕も見る』

 

『えっ』

 

『陽太!?』

 

 陽太の言葉に私と未緒は驚く。陽太はありのままに言った。

 

『僕らも見たって言えば、きっと信じてくれる。それに、僕も見たいんだ。見なきゃ、きっと梨亜だけが辛くなるだろうから……』

 

 少し前から気づいていた彼の気持ち。そしてもう一人の彼女の気持ちも分かっていた。未緒も彼の言葉に続く形で反対側に来た。

 

『いい、の?』

 

『うん、梨亜の見たものを、僕も見る。信じたいから』

 

『わ、私は陽太が言うなら、私もいた方が確実でしょうから……』

 

 二人はそう理由を話す。申し訳なさと、ありがたさ、二つの感情を飲み込んで二人に告げた。

 

『じゃあ、行くよ』

 

 そうして二人も合わせて、見た光景を共有した。

 

 

 

「そこから自衛軍の大人にまた話した。けれど、結局作戦が全て解決するまで、私達の話は聞いてもらえなかった」

 

 HOW、自衛軍の部隊へとその時の経緯を話す。おそらく、知っている人は知っているのだろうが、そのほとんどは初見の反応だった。

 

『は、話に聞いてましたけど……やっぱりDNLだったんだ』

 

『DNLって、やっぱり予知能力があるんですかね』

 

『流石にそんなエスパーみたいなこと出来ないわよ』

 

 聞こえてくる新人と思われる年下の子達の声。そこに大人の意見も混ざる。

 

『んーその話は聞いたことあるけど、眉唾もんだと思ってたんだが』

 

『俺もクルツど同意見だな。しかし、元隊長の実力を見ていればそんな気もしないが』

 

 そこで焦点となってくるのはやはりHOWの魔王の能力。ところがその当人もDNLがエスパーであることには否定的だった。

 

『いくら俺でも、そこまではっきりと鮮明な先を見据えた未来は見えない。精々できるのは敵の取る戦闘機動の動きと、ギャンブルの当たりが見えるくらいだ。競馬とかパチとか』

 

『あはは……懐かしいですねそれ』

 

 その発言にはどこかこりごりというべきオーラを感じ取った。彼が高レベルのDNLであるのにここまで見通せる、のは敢えて見せているのだろうか。そのパートナーの思考もあまり思い出したくないながらも朗らかさを感じる。

 そんな雰囲気に流されそうになったが、そこで同じ機体に目を付けられた存在、神鳴 白に続きを求められた。

 

『けれど、そこまでは僕も人伝に聞いたことがある。だけどそこに、どうして君がそうなったかまでは分かっていない』

 

『……白、それは俺達、自衛軍の愚かな闇だ』

 

 白の言葉に利一がそのように語る。

 そう、これは自衛軍にとって汚点とも言うべきもの。それを自衛軍が明かすことは許さない、と思われた。

 けれど自衛軍の部隊の代表者、沙織は関心を寄せない。

 

『愚かな闇だからこそ、今話さねばならない。友直、智夜も心して聞け』

 

『さ、沙織さん……?』

 

『何か嫌な感じやなぁ。ま、あたしは戌っ子友直より事情はよく考えて見れますんで』

 

『ど、どういうことよっ!』

 

 どうやら、ここにいる自衛軍は全てを明らかにする覚悟があるらしい。こんな自衛軍の人達に救ってもらえていたら、「こんなこと」にはならなかったのかもしれない。

 けれどもそれを話す。どれだけ絶句されようと、それは私が歩んだ道、そして陽太がそこまで私に、フェネクスにこだわるのかの理由もあるから。

 話を再び、過去の話へと戻す。

 

 

 

 戦闘終結後、MSオーダーズからHOWに変わるまでの間、私達は自衛軍管轄の孤児施設に預けられていた。そこで里親が見つかるまで過ごす。里親に引き取られるまで。

 もちろん、それは私達予言の子ども達には辛い選択だった。けれど生きていくにはそうするしかない。それを私達は受け入れ、それまで軍の管轄する学校で過ごす。そんな短い期間になるはずだった。

 けれど、それは音もなく突然崩れ去った。自衛軍のあの男がやってきた。

 

『ほう、彼らが予言の子ども達か』

 

 その男は私達を見てそう言った。まるで目星の物の品定めでもするかのように、ぎらぎらと見られたのを覚えている。

 私達は警戒した。その目から何かおぞましいものを感じて。けれどその後に続いた言葉は否応がままに呑みこむこととなった。

 

『この子達を、うちの施設で預かりたい』

 

 引き取り先が意外な形で決まった。後の話によればこの男性、自衛軍のとある高官は私達のいないところで施設への援助金をちらつかせ、話をまとめたらしい。

 納得もいかないまま、私達三人はその施設、発足したばかりの「超次元感応者研究所」へと引き取られた。

 そこには既に何人もの子供達がいた。自分達と同じく戦闘で孤児となった子、あるいは目覚めた力に親が恐れをなして引き渡された子、同い年もいれば少し年上、あるいはもっと年下の子どもまで様々だ。みんなDNLと思われ、引き取られてきた。

 そこまでして超次元能力者、DNLの能力を解析したかったのか。けれどもそんな予測は外れていくこととなる。

 最初の内は簡単なテストだった。それこそエスパーと呼ばれる人が透視するようなカードを使ったもの。

 他の人達は大なり小なり正解したり外したり。私は能力がない振りをして興味を失わせようとした。だけど徐々にエスカレートしていく実験内容は遂に、特殊な機器を動かす訓練へと変わっていった。それが自衛軍版DNLコントロールシステムと呼ばれる、現在ではL-DLaとなったシステムの原型であった。

 それを通して行われる仮想空間上の兵器のコントロール試験。だけどそこで多くの仲間達が狂っていった。

 

『ああああぁぁぁぁっ!!』

 

 未熟なシステムによる負荷。それだけじゃない。研究員達はいつか自分達が反旗を翻さない様にと思想、そして薬物によるコントロールを一部被験者たちに行わせていた。私達も軽い薬物によるトレーニングが始まりつつあった。

 そこまで行って私はDNLの力を引き出さないようにした。けれどこのままだと陽太と未緒が、関係ない二人まで被害に遭う。何かしなくちゃ、そう思っていた時、それは起こった。

 それは機器のOSの調整を行っていたルウォ・エンタープライズとのやり取りだった。HOWの介入を由としなかった高官が、DNLコントロールシステムの調整をお願いしていたのだが、そこで恐慌状態に陥った同じ被験者の一人が暴走し、ルウォの社員に暴行未遂の事件を起こしたのだ。

 その件を重く受け止めたルウォ側は研究所に対し損害賠償を請求。その際に予言の子ども達の話を聞いた彼らはそれに興味を示し、交換条件を申した。

 

『であれば、予言の子ども達の一人を引き渡してほしい』

 

 予言の子ども達は未来を見ることが出来る、そんな話を聞いて彼らは今後の自分達の利益の為に引き渡せと言ってきたのだ。

 流石に研究所側も難色を示していた。貴重なサンプルを手放したくない。しかし同時にこの時点で予言の子ども達が、一人を除いてDNL能力を持っていないことに気づき始めていた。

 ルウォ側も研究所側が譲歩しやすいように一人だけ、と言ったのもあって研究所側は偽物を仕立てて引き渡そうとしていた。私は陽太をそれに当てはめられるようにしようとした。でも、そこにあてがわれたのは、未緒だった。同時に本物のDNLが私だけだと分かったのもその時だ。

 私はDNLとしての直感で分かった。けれど、それに対して何も文句は言わなかった。言えなかった。巻き込んでしまった側として言える立場ではない。

 それによく考えれば適任者は確かに未緒だった。頭が回るし、偽物でもやっていけるかもしれない。

 けれどもそこに協力していたであろう陽太の顔が浮かなかった。きっと嫌々協力させられたのだろう。未緒は頭が回る。おそらくはこうするしかない、とでも言われたのだろう。

 そうして二人の最善策、もとい企ては成功し、未緒はルウォ・エンタープライズへの人柱となった。未緒との別れだった。

 そして、やがては彼との別れにも繋がった。

 

『梨亜、梨亜ッ!!違うんだ、僕はただっ、未緒の言うことに、こんなことになるなんてっ』

 

 研究所職員に連れていかれる私を、必死に追いかけようとする陽太。研究所に居たあの男子飼いの軍人は陽太を床へと押し倒し、拘束する。

 私はこの後、きっと「最適化」される。その為に他の人達から切り離される。この先、何があっても足取りを掴まれない様に。

 陽太は研究所の廊下で押さえつけられながら、必死で私に対し謝罪を叫ぶ。

 胸が締め付けられる。だから少しだけ止まって振り向いた。

 

『……陽太』

 

『梨亜……僕は』

 

『ありがとう、さようなら』

 

『!待って、梨亜、梨亜ァァァァ!!』

 

 絶叫が木魂する。私は研究員と共に奥の研究室へと消えて行った。

 それから、研究所は解体となった。理由は一部職員の汚職問題によるものと表向きはされた。だけど、それすらも作られたもの。私達を大事に扱ってくれた一部の善良な研究員たちにすべての実験の責任を押し付けて、彼らは充分実力のある私を連れて雲隠れした。

 やがてほとぼりが冷めた頃、軍の高官の男を中心に再びDNLを研究する機関が秘密裏に設立された。そこの被検体は、私一人。

 高官は私の脳の改造を命じた。DNLコントロールユニットを効率よく扱うため、裏切らせない様にするために脳の空白化を行う。

 既に私の意識はその時点で混濁していた。いつの間にか毛は剃られ手術用のマーキングがされてもいた。それすらも、やるときに気にならない程にまで、あの時の私は意識が飛んでいた。

 そして、そのまま―――

 

 

 

 

「そうして、私の、陽太達を知っている私の意識は、身体から切り離された」

 

 そこまで語って、一度様子を見る。隊長組は変わらず、しかし黙り込んでいる。問題は新人組だった。

 

『……どうして、そんな酷いことが。その人達は、ゼロンと戦うんじゃないんですかっ!』

 

『千恵里ちゃん……これが、現実なんだよ』

 

 千恵里と呼んだ少女は自分の体験を交えて説得する。

 

『ゼロンが魔王に対抗する為に私の機体、DIENDシステムを生んだ時点で、自衛軍もL-DLaという禁断の力へと伸ばしていた。DIENDも結局はそうして誰かを犠牲にして生まれた力』

 

『止めてよクルス!もうDIENDは救われた!あの事件はもう終わって……』

 

『終わってないよっ!』

 

 仲間、というより友達と思える会話をする二人。クルスと呼ばれた少女は言う。

 

『DINEDは、L-DLaを基に勝手に生み出されたもの。それに加担した私は……』

 

『で、ですが、クルスさんは今はもうHOWに協力を』

 

 呆然としていた自衛軍側の新人、帽子をかぶる少女が優しい解釈する。しかし当の本人は自分が悪だと譲らない。

 

『それも、今また贖罪になった。私は一生、やってしまったことの贖罪を、ただ唯一の生き残りの当事者として……』

 

『そんなのっ、そんなのっ』

 

 友達がそんなに気負う必要はない、と言いたくても言えない少女。それを見ていた銀髪の魔王のパートナーの妹とDNLのオペレーターとが話す。

 

『あちゃー、クルスちゃん真面目なところはいいけど、ちょっと責任感強すぎるんだよねぇ』

 

『そんなにこの事件とクルスの事件って繋がりあるの?システム系統が同じってだけでしょ』

 

『いやいやエタなん、他人にとってはそれでも、クルクルは気にしちゃうんだよ』

 

『エタなんって何!?』

 

「……フフッ」

 

 ちょっとだけ、笑いが零れた。その様子を見て、銀髪の妹の子のパートナー、この私を捕獲に至らしめた少年が最後の話題について触れた。

 

『……笑うんですね、こんなことになっていても』

 

「うん、まぁね。それって私が笑わない無機質な機械だって、思ってる?」

 

『そんなことないです。それよりも、その後って、やっぱりあなたが、フェネクスが暴走したっていう、事件に繋がっていくんですか』

 

 ちょっとだけ意地悪なからかいをするが、少年は軽く流す。つれない、と思いつつも頷き話をまとめる。

 

「むー……けど、そうだね。あとはみなさんが知っている通り、脳改造されて訓練を続ける日々。そこにDNL、ユグドラルフレーム機に対抗するための自衛軍独自のガンダム開発計画の一つ、プロジェクトアンネイムド、またはプロジェクトリビルドゼロの機体の一機、フェネクスのパイロットとして選出された」

 

『その件については裏が取れている。が、全て後の祭りだった』

 

 HOWの魔王はそう語った。実際、あの時暴走してからの記憶は記憶操作後からも含めて曖昧すぎた。

 けれどはっきりわかることが一つ。私は、奴を、フェネクスの開発チームで指示を出していたあの高官を……。

 HOWの魔王は高官について既に調べたことについて明かす。

 

『彼女、鳥金梨亜に強化処置した一派は、当日合同性能評価試験に参加した者は全員フェネクスによって殺されている。残るメンバーも、違法強化処置を行っていた件で既に処刑されている』

 

『……正直、面目ないと思っている。私が居ながら、そこまで目を見ることが出来なかった』

 

 自衛軍の隊長がそう語る。彼女の事は知っている。いくら強化処置をされたとしても、風の噂、施設の職員達が「油断ならない」とずっと警戒し続けていた人物だったから。

 悔しさを感じる。本当にこの人は強い人なんだ。今更になって、認知する。

 これで私のこれまでをすべて話した。これからの話を、口にする。

 

「後悔なんて、もういい。今の私には関係ない。でもこの世界の危機だけは止めたい。陽太と未緒が残った、この世界の敵。二人がもう私を求めなくてもいい世界。その為に」

 

 私は拘束されたままの状態で、言った。

 

「ニア・ゼロング、いいえ、それだけじゃない。すべてのユグドラルフレームを、破壊します。だから、拘束を解いて」

 

 

NEXT EPISODE

 




EP46はここまでです。

ネイ「ヤバい、思想というか、目的を持ってますね。フェネクスさんというか、梨亜さん」

グリーフィア「そうねぇ。原作じゃあ同じ立ち位置のキャラは無邪気な感じをあんまり絶やさなかったんだけど、これは捕獲されて明かさせるプロセス挟んだからってことでいいかしら?」

そういうことだね。けどまぁ本作の彼女は結局のところ、陽太と未緒っていう友達を救うために、そういう行動を取っている。つまり彼女自身現状の彼らの行動を由としていない。奔放さは変わっていないとも言える。

ネイ「そう、ですかね。でもこれ完全に元さん達と敵対する以外ないですよね?」

そらそうでしょ。元君達にとっては相棒を破壊させろって言われているわけだし。

グリーフィア「逆に元君達からしてみれば、そんな危険思想を持っているから解体するって免罪符得ちゃうからまぁやりやすくなりそうよねー」

そうであったとしても彼女はその使命に突き動かされている点も彼女が本質的には心を失った、脳の空白化を行われた頃から変わっていないって意味してますからね。そんな彼女への反論は、次へと持ち越しです。というわけで今回はここまで。

ネイ「それでは、また次回です」


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EPISODE47 不死鳥になった少女の願い3

どうも、藤和木 士です。まず最初に、劇場版SEED並びにSEEDのゲーム製作決定おめでとーう。

レイ「今回は入れるんだねそういうの」

まぁ私一応SDじゃないガンダムはSEEDDestinyが初めてですからね。今回のSEED続編、期待してるぞ?シン君救済とか。

ジャンヌ「あー、でも作者がツイッターでも言ってましたがまたストーリーの発端オーブの機体だそうですけど」

まーた戦争がしたいのかよ、あの国は。争い不介入とか言っときながら。まぁ武力無かったら平和なんて実現できないっていうのは一理あるけどね。ここまで軍事やら発展したら一度ガンダムXみたく滅亡一歩手前まで行かないと無理かもだけど。
まぁそんなガンダムX贔屓は今いいんだ。いずれ本作でもアナザー出したいけど。というわけでEPISODE47と48の公開だ。

レイ「フェネクスの話を聞いて……元君達はなんていうんだろ」

ジャンヌ「実質MSを捨てろ、だなんて言われて納得できるものではないでしょうから……残念ですが」

さぁ本当にどう答えるのか、本編どうぞ。


 

 

 全てのユグドラルフレームを破壊する。フェネクスに宿る女性、鳥金梨亜は確かにそう言った。

 アンネイムドどころの話ではない。ユグドラルフレームは元隊長の使うシュバルトゼロガンダムにも搭載されている。それはつまり……。

 意味を理解した元隊長も訊き返した。

 

「つまり、俺のガンダムを破壊すると?」

 

『そうなる。だけど、全てはあのガンダムから始まった。平和にしたい思いと健全な思想があっても、あんなものに頼る必要はない』

 

 きっぱりと返す鳥金フェネクス。その意見に真っ先に反対したのは入嶋だ。

 

「ふざけないで!いくら自分自身がこうなったからって、それは責任の押し付けでしょ!」

 

 入嶋の言うことはもっともだ。しかし鳥金フェネクスは言う。

 

『恨んでなんていないよ。だけど、そのフレームがあることは、この世界にとっての毒だよ』

 

「毒って何よ!元隊長に救われなかったからって、そんな勝手な」

 

「入嶋ちゃん、ストップ」

 

 入嶋の怒りを止めたのは蒼梨隊長。尋問を彼女と変わった。

 

「この世界の毒、ってどういうこと?」

 

『ユグドラルフレーム、そしてDNLはこの世界の外側、そして根底に触れる力。だけどそれは本来禁忌にする力。フェネクスと一つになって、それを理解した。フレームを使ったり能力に覚醒したりするだけで、既存の人達から大きく変わってしまうのを、ここにいる人達は知っているはずだよ』

 

 他とは違う。言われてエターナに顔を向けた。人形のように、小さく、可憐な乙女。その彼女が自分のサポート役だ。当初はなし崩し的にやれるのかと心配だったが、その心配は既に畏怖へと変わっていた。

 彼女がいなければ何度戦場で死んでいたことか。同時に守らなくちゃとも思ったわけだが。

 他のメンバーも大なり小なりを口にする。

 

「確かに、隊長と副隊長の戦闘技能は、目を見張るものがある。それに、チームメンバーの宗司とエターナの戦果も」

 

「そうだよな。宗司だけじゃない、エターナちゃんがいてこそ、短期間の間にあれだけの戦果を挙げてるわけだし」

 

 呉川小隊長、クルツ先輩から自身の話題を絡めて言われる。自身の話題に目を丸くして確認を取るエターナ。

 

「えっ、私、そんなにやれてる……の?」

 

「私はやれていると思いますよ、宗司さんはよく分かっていらっしゃるのではないですか?」

 

「あぁ、はい。寧ろ俺が早足すぎるって言われてるのに、よく合わせてるって思ってますし」

 

 姉のジャンヌ副隊長に言われ、ありのままを答える。それを聞いてエターナは顔を逸らして呟く。

 

「ふ、ふぅん……そう」

 

 ちょっと気になりもするが話題はそのままもとの形へと戻る。蒼梨隊長が共闘していた時の意見を話す。

 

「私も元君達と初めて一緒に戦った時からとんでもなく勘が冴える、というか見えないものまで見えるって理解していた。それに、今シュバルトゼロガンダムを支えるエレメントシフトは現状ではユグドラルフレーム由来の力。それを手放すなんてこと、今さらできないよ」

 

 否定的な意見で鳥金フェネクスへと返す。それは十年来共に戦ってきた者としての意見だった。

 鳥金フェネクスは怪訝そうな声を飛ばしてくる。

 

『今さらできない、なんて、そんな言い訳』

 

「言い訳だよ。でも、それは事実。危険であろうともそれを正しく使いこなすこともまた、平和だから」

 

 危険であろうとも使いこなす。それがHOWであり、それを誤認しているのがゼロン、ということなのだろうか。

 と、ここでようやく元隊長達の意見が取り上げられる。

 

「と、言っているが、当人の一人である君達はどう思うんだい」

 

 新堂隊長が話を振った。沈黙をしばらく貫いていた元隊長はジャンヌ副隊長の方を向いて目配せすると意見を述べる。

 

「正直言って、確かにシュバルトゼロガンダムはこの世界の外、マキナ・ドランディアから紛れ込んできた異物と言える。それを排除したいっていうお前の気持ちも理解はできる」

 

『じゃあ、あなたはもう機体を捨てて……』

 

「だが、だからと言ってお前の言葉を聞く理由には一切ならない」

 

 元隊長は彼女の言葉にノーと答える。拒否の理由を述べた。

 

「外から持ち込まれたものとしても、この世界でもいずれは開発されうるものだった。そして人の進歩の為に必要なものだ」

 

『違う、この力は今の人の世にあってはならないもの。他の次元世界にも言える』

 

「勝手なことを言うな。お前の発するDNL波は幼稚で衝動的だ。同情を誘うようにしか感じられない」

 

『それはあなたの勝手な思い込みだよ』

 

「いいや、お前の言葉は、人類に進歩を止めろと宣告する、映画に登場する侵略者の宇宙人と同じだ。優越感から来る他者の抑圧だ。ゼロンと何も変わらない」

 

『人の進歩は抑圧しない。だけどユグドラルフレームは、人の欲望を吸う。世界を改変してしまう。あなたはそれをやりたいの?』

 

 二人の会話がエスカレートし出しているように思える。その様子を宗司はただ見ているだけしか出来ない。

 それを見ていた友直さんは違う部隊ながらも鳥金の意見に賛成し、元隊長に尋ねた。

 

「こういうのも、あれ、ですけど……鳥金さんの言うことは一理あると思います。ユグドラルフレーム無しでも、戦ってきた時代もあってきたわけですし。こんな危険なことになるかもしれないなら、条約ででも」

 

「友直、その意見は今となっては的外れだ」

 

「えっ」

 

 友直さんの言葉を上官である新堂隊長は咎める。それが意味するものを元隊長と共に語った。

 

「既に生まれたものを、規制することは出来るかもしれない。だが、それも結局は極秘開発によって破られるもの。表向きは条約違反となった核兵器もその一つだ」

 

「核は持っているだけで脅威となる。もしユグドラルフレームを規制対象にすればそれと同じ意味を持たせる。人の中にはそう言う意味が生まれただけでそれを悪用しようとする人間もいるんだからな」

 

「その核と同じで、ユグドラルフレームやDNLは敵にも知れ渡った力だ。それをこちらだけ封印するなんて真似は侵略を受け入れるのと同義」

 

『そんなことさせない。私は彼等のユグドラルフレームも』

 

「そんなことを実現できる、などという無責任な平和主義は信用に値しない。それはオースの代表たちと同じ夢想でしかない」

 

 オースの代表たちという発言。確かに明日那さん達は自国民が他者を傷つけないように必死にコーディネイティアの戦線投入を拒んでいた。だけど今では進と真由を派遣する結果となった。

 人の争いの歴史を紐解くかのように元隊長が言葉を続ける。

 

「既に開発したものを消すなんてのは、人類の歴史の冒涜に過ぎない。失敗から学ぶのなら、使い方の教育と引き継ぎ、それを実現できる環境を作ることこそが正しい方法だ。消せばもうこれ以上の悲劇はなくなる、なんてのは軍隊をなくせば争いがなくなると思い込んだ偽善者の考え方だ。血を流さずに得られる平和がないのと、同じように」

 

『争いを肯定するの……?魔王らしいね』

 

 鳥金フェネクスは皮肉のように言った。血を流さずに得られる平和がない。そんなの、平和に生きる者なら信じたくない言葉だろう。

 けれど宗司達は、少なくとも宗司はそれを感じた者の一人ではあった。戦場に身を委ねたが故、平和がそういった流した血の上にあるものなのだと、納得は出来た。

 だからと言って、平和を疎かにするわけじゃない。何が言いたいのか、それを進が代わりに代弁してくれた。

 

「別に争いを肯定したらいけないのか?じゃなきゃ、争いを争いと認識できない。アンタの言ってるのは、争いって概念を根底からなくすことだ。俺達はそりゃあ争いはない方がいいけど、戦う時には戦わないと、護れるものも護れなくなる。ユグドラルフレームも、そういう物として捉えている人もいる。それがここにいる魔王、じゃないのか」

 

 護るための力。常々、元隊長が自身のガンダムを剣と称している。剣は人を傷つける。だけど取らなければならないもの。手にしなければ護ることも、傷つけることも出来ない。

 剣を手にするということは誰かを傷つける覚悟をするということ。その覚悟を持つことを元隊長達は教えるのだと最初の訓練で言われた。

 進が言っているのも護るために考えるべきことだ。その意見を蒼梨隊長も同意する。

 

「進君の言う通りだね。あなたにとっては忌々しい、あるいは危険に思うシロモノ、人種だと思うかもしれない。でも元君達にとってそれは生きるために手に入れた力なんだよ。他の人だって同じ。それを託された。危険性も分かった上で、今日まで戦ってきた」

 

『別にこれまでを否定するつもりなんてない。だけど、もうこれ以上、世界を改変するのは!』

 

「変わらない未来、世界になんて、意味はあるのか」

 

 元隊長の口からそう語られた。鳥金フェネクスの理想を真正面から隊長は否定する。

 

「お前のその考えは友人だった及川陽太と流未緒のためのものだ。あの頃の二人に心置きなく戻ってほしいという」

 

『……そうだよ。ユグドラルフレームがなくなれば、もう二人も追いかけなくていい』

 

「それが幼いんだよ」

 

『っ』

 

 拘束状態の鳥金フェネクスは物申したそうにハンガーから抜け出そうとする。しかしハンガーの拘束フィールドが干渉する音が鳴るだけでどうにもならない。

 それに何の感想もなく元隊長は言葉を続けた。

 

「お前の見ている世界はあの二人を中心としたものだ。つまり、それ以外の他者に何の価値も見出していない」

 

『あなたこそ、二人やゼロンの者達の価値を見ていない』

 

「いや、見ていない、見出していないんじゃない。俺は「否定」している」

 

『……何だって?』

 

 言葉の真意を測りかねている。分からずにいる彼女に対し元隊長は真意を話す。

 

「あいつらが何をしたいのか、何を求めているのか。それは既にこの目で確認している。が、確認したらなぜ必ず相手方の意見を尊重しなければならない?」

 

『それは、人として当たり前』

 

「犯罪者と取れる奴らの意見を、か?」

 

『陽太達は、犯罪者じゃない!それを言うなら、もとはと言えばあなた達が!』

 

 鳥金の話を聞いていて流石に勝手だと思えてくる。今はもう、それを問う段階じゃない。けれどもその話を聞いて迷う者も何人かいるようだ。

 いい加減にこの問答を終わらせようとしたのか、沈黙をしていたジャンヌ副隊長が口を開く。

 

「……鳥金梨亜。あなたの友人を思い、憂う気持ちは確かに分かりました」

 

『あなたは、違うの?』

 

「いいえ?言わせてもらうなら部外者の癖に口出ししないでくださいますか?」

 

 普段のジャンヌ副隊長の雰囲気からかけ離れた口調が飛んだ。声音はいつものままなのだが、その言葉の表し方に静かな怒りと苛立ち、呆れが感じられた。

 見ていたエターナも姉の小さな豹変に不安となって声を掛けている。

 

「ね、姉様……?」

 

「私達も助けたい人の為に今戦っているんです。十年以上、彼女は敵に捕らわれたまま。かけがえのない私の友人が、今もゼロンに囚われてる」

 

『……だったら、私が助ける。だから』

 

「そんな交換条件に、何の価値があると?あなたがそれを言う立場にあると?」

 

 圧倒的な雰囲気に凄んでしまう。ジャンヌ副隊長はパイロットではないのに、見ているこちらとしてはフェネクスに対し銃口を向けているかのような空気を感じる。

 眼光も灯っているようで、フェネクスに対し言葉を続けた。

 

「それに、今のシュバルトゼロにはたくさんの人の思いを乗せている。マキナ・ドランディア、こちらの世界で関わった多くの人達の思いを。それも分からないあなたが、いいえ、そんなあなただからこそ他の人の思いを踏みにじれるのでしょうね。流石、機達に念を執着させているだけ存在と言えましょうか。それとも何ですか、その権利は自分が持っている、とでも言いますか?」

 

『……そんな、こと……っ!』

 

 反論に悔しさを募らせていっているように思える。最後にジャンヌ副隊長はこう語った。

 

「いずれにせよ、あなたが立ち塞がるのなら、少なくとも私達は立ち塞がります。私達の理想、願いで、あなたの理想と願いを壊す」

 

「それが、前に進むと決めた者達の、俺達の「覚悟」だ」

 

 元隊長も最後の締めをパートナーと共に行った。明確な敵対の意志を示す。フェネクスは完全に言葉を失い、俯く。

 彼らの覚悟に対し、聞いていた新堂隊長も呆れ気味にそれを肯定する。

 

「まったく、君達はブレないな。だが、君達の言った言葉、私達の理想と願いで、敵の理想と願いを壊す。まさしくそうだね」

 

「敵対するなら、両者の主張は譲れない。叶えたいものがあるからこそ、俺達は戦う道を選んでいる。それをうるさい御託で誤魔化そうとする奴の言葉は聞かないさ」

 

 元隊長達の決意は固いようだ。もっともここまで聞いていて、宗司も同意見だった。

 DNLも最悪消そうとしていた彼女に、共感なんて出来ないからだ。しかし、宗司達の間で意見が分かれるのはまさかと思うわけだったが。

 

 

 

 

 フェネクスの口を黙らせてから、俺は今後の行動について作戦メンバーに指示する。

 

「まぁそんなわけで、フェネクスは危険分子として解体する。理由は既に分かってもらえたな?」

 

確認のための点呼を取る。が、複雑な思いをするものも中にはいた。

 その一人であるクルスが微妙な気持ちを吐露する。

 

「それは……分かりますけど、でも彼女はアンネイムドの一番の被害者じゃないですか」

 

「クルス……」

 

 DIENDに囚われていた彼女だからか、同じく囚われている彼女を助けたいということなのだろう。入嶋もシュバルトゼロの破壊には物申したものの、その彼女を救ったからこそ同意見に近いようだった。

 また今回の件の引き金となった自衛軍側からも、宗司の後輩の一人、黒髪の髪を流す犬耳風のはねが特徴的なヘアスタイルの少女が疑問を呈する。

 

「私達自衛軍が作り出してしまった、その責任は、取るべきなのでは……元さん達は除くにしても」

 

「おいおい友直、そんなこと言ってもキリないで?」

 

「分かってるって。でも……これを活かせなかったら彼女の犠牲も」

 

 申し訳なさそうにフェネクスの側を見つめる友直という少女。

 軍人であってもまだ人間としての甘さがある。いや、これは生粋の真面目さからくる責任感の強さというべきか。

 責任感があるのは良いことだ。しかし、過度に相手に肩入れするような、他者の責任を自らが背負おうとする姿勢はあまりよろしくない。そういった「正義の型」にこだわる者が辿った末路を見た身としては特に。

 が、その役目は彼女の上官が受け持った。

 

「友直、その気持ちは人として大事だ。他者を思いやる心、それを持ってくれることは嬉しい。だが、時にはそれが本来優先されねばならない、その他者を傷つける事もある。どれだけ被害者であったとしても、組織を活かすための決定として」

 

「うっ……」

 

「今、彼女は危険すぎる。彼女は自分の世界を実現できるだけの力を持っている。それは後ろ盾を得たテロリストと同義だ。もし許せば、彼女は革命を起こすだろう。それは既存の世界を破壊する、ある者にとっての「希望」であり、またある者にとっての「絶望」だ」

 

 希望と絶望。その言葉でヴァイスインフィニットを思い出す。奴は救世主であることを求めた。逆に今の自分は魔王と名乗った。白と黒、両者はまさに鏡合わせ。しかして同一の存在。

 救世主も魔王も変わらない。ただ人を救い、既存の世界を破壊する。それを果たしてヴァイスインフィニット、エンドが分かっているのか。

 非情なる決断、だが理屈の通ったそれを支持する者も多い。

 

「俺も、元隊長の意見に賛成です。ユグドラルフレームも、DNLももう生活の一部だ」

 

「ソージ……」

 

「そ、宗司、君……正気なの」

 

「俺も宗司と同意見だな。何でもかんでも縛りつけてきて、ちょっとは試練くらい乗り越える根性見せろっての」

 

「進君……それ、一か月前の君に言える?」

 

「な、何だよ光巴!言ったら悪いかよ!?」

 

「いーや?私も概ね二人の意見に賛成だなぁ。ユグドラルフレーム機に搭乗するのが私の夢でもあるわけだし♪」

 

 光巴の意見が自由奔放すぎるものの、今は問わない。彼女自身も要点は押さえて物を言っている。欲望に素直な分フェネクスよりマシというものだ。

 他の隊員達も概ねこちらと同意見、と言いたかったがそうともならない。成熟した大人であっても、その判断を決めかね、ある者は覚悟し、ある者は模索していた。

 兵達の議論は必要だろうが、いずれにせよ答えは既に自衛軍側で出ている。兵達は上の指示に従うのみ。歯車であることを沙織もまた厳命させる。

 

「色々、思う所もあるだろう。だがこれは既に軍上層部が決定したことだ。そして、それに私も関わっている。今は任務をこなしてくれ。恨みたいなら、私を恨め」

 

「そん、なの……」

 

 フェネクスに絆された自衛軍部隊員、沙織を知るHOW部隊員が表情を曇らせる。沈黙が部屋を支配したその時、突如静寂が破られた。

 

 

 

 

『だったら、アンネイムドは全てもらい受ける!』

 

 声と共に捕獲室の壁面が崩壊する。光刃を振り抜き現れたのは、神話をなぞりしガンダムと、それを支配する欲深きマリアのリアルの姿だった。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP47はここまでです。

レイ「やっぱり、元君は元君だったね……っていうかジャンヌさんが本気で怒ってるの珍しいね……」

ジャンヌ「モデルとなった本人としては、やはり大切な人を助けるために乗った手前、勝手なことを言われて頭に来ないわけではありませんね。レイさんが囚われていたとしても同じ状況でしたら容易には渡さず、目算を付けてからですね」

目算付けるんかい。まぁ元君や新堂さんはそもそも上からの命令順守しているわけだしね。もっとも元君からしてみれば、言葉からも分かる通りフェネクスの考えをゼロンと同じだと思っているわけだし。

レイ「これはDNLだとしても考え方は普通の人間と変わらないってことかな?」

ジャンヌ「それでも本人は違っていると思って、ゼロンも敵として認識していると」

そんな認識そのものが既に元君からはゼロンと同じってことよ。さぁ当然のことながら乗り込んできた未緒一派、どうなるのかは同日更新の次話にて。

レイ「そのまま続くよー!」


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EPISODE48 不死鳥になった少女の願い4

どうも、藤和木 士です。

グリーフィア「あ、作者君前話の前書きでSEED新作について話してたけど、こっちの方になんか影響あるの?」

唐突やな。まぁでも答えておくとそんなに影響ないかなと。

ネイ「そうなんですね」

多分全部発表される前にこっち終わりそうって目算と、あと新型ガンダムもこっちにアナザー出せるか微妙だし。と、そんなわけでEP48の公開です。

ネイ「未緒一派が動き出しましたね」

グリーフィア「未緒もそうだけど、ゼロンも動きそうよねー。ってかMS人型サイズだからこんな部屋にも襲撃可能ってこと忘れてたわ~大丈夫?」

さぁいきなりピンチのEP48本編をどうぞ。


 

「フェ、フェネクス捕獲室の中に、なぜ!?」

 

 舞島さんが当然と言うべき反応をする。それは宗司達も同じだ。よもやこのカザノメカニクス本社内で襲撃されるなどとは思わなかった。

 が、彼らも馬鹿ではない。舞島さんの質問に言葉ではなく行動で答える。

 

「死ねっHOWも自衛軍もっ!」

 

 先程の戦闘とは装備の違うサーガガンダムがライフルを向ける。その銃口はガラス越しに真っすぐこちらを狙っていた。ガラスを貫けば間違いなく自分達は焼かれて死ぬ。

 眼前に迫る死にいち早く対応して見せたのは、元隊長だった。

 

「ジャンヌ、すまん!」

 

『Standby Ready?』

 

 既に上着の下に装着していたスターターを操作して装依態勢に入る。他の面々は直後に飛んだ他の隊長達の声に従って伏せる。

 

「みんな伏せて!」

 

「物陰に隠れろ!」

 

 宗司もまた傍にいたエターナと友直、智夜を伏せさせた。

 職員達も咄嗟に従って攻撃から逃れようとする。ビームが放たれるのと同時にシュバルトゼロは顕現した。

 ガラスを破る音に続いてビームが何かの表面を焼く音を鳴らす。その音が聞こえなくなるまで抱えた三人に覆いかぶさるように伏せ続ける。

 音が止むと共に聞こえてきた金属同士の音。伏せを解くと、既にシュバルトゼロがサーガガンダムと近接距離で応戦していた。

 

「元君!」

 

 既に顔を上げていた蒼梨隊長が無事の声を上げる。それに対し元隊長は素早く指示を飛ばした。

 

「深絵、沙織さん、フェネクスは頼む」

 

「分かった!」

 

「MS隊装依。ただし数は少なく!他メンバーは外で出入り口を塞げ!」

 

 指示に従ってすぐに行動へと入る。だが未緒一派も間抜けではない。既にその私兵がアンネイムド三機を縛るハンガーのロックを無理矢理破壊し、スターターへと収めていく。

 

「くっ、アンネイムドが奪われる」

 

「今俺達にMSはない。任せたぞ、新堂」

 

「了解している」

 

 外へと向かった政岡さんの言葉を受けて、新堂隊長がソルジスタへと装依し強奪を阻みに向かう。

 その間に宗司もエターナに装依準備を確認した。

 

「エターナ、装依出来るか?」

 

「出来はするだろうけど、私らの装備かなり邪魔だと思うんだけど?」

 

 エターナの意見はもっともだった。バックパックの大きさが室内戦では不利になることは。それでもフェネクス相手にまともに張り合うには一度は動きを止めたアーバレストが必要になるはずだ。

 ところがその考えを改めることになる。ソルジスタを纏った新堂隊長が未緒一派に斬りかかっていた。

 

「はっ!」

 

「くっ、ソルジスタの特別仕様か」

 

フェネクスに触れさせまいとする未緒一派のMSを、抵抗に物怖じせず圧倒する新堂のソルジスタ。メインウエポンの刀を振れないにも関わらずビームサーベルで対等以上に渡り合う。

 邪魔となるMSを一刀に伏せたのち、フェネクスと未緒に向かう。

 

「お前達を、外には出さない!」

 

「くっ!?」

 

『っ!邪魔をしないでッ!』

 

 が、それを止めたのはフェネクス自身だった。振り下ろされたビームサーベルを、ソルジスタの持つ手から抑えて攻撃を止めた。サーベルに斬られることなく、精確に止めた。

 振り払うようにして新堂隊長の機体を振り払い、未緒へと言葉を投げる鳥金。

 

『未緒、助けてくれたのはありがとう。でも、もう……』

 

「何言ってるのよ。ここからが本番なんだから!あんたも幸せになれる世界、その為にあんたは断れない!」

 

『そんなのは望んでない……私はただ……』

 

 先程喋っていたように未緒側の意見を飲む気はないようだったが、無理矢理拒否すると言った行動まではいかない。それでも未緒に攻撃がいかない様に攻撃を捌いていた。

 そんな鳥金に対しても退くようにサーガガンダムのパイロットが叫んでいた。

 

「ここは俺が止める!梨亜は逃げろ!」

 

『陽太……』

 

「陽太は大丈夫よ。行くわよッ!」

 

「っ、待てっ!ぐぅ!」

 

 壊した壁からその奥へと姿を消していく未緒一派。新堂隊長は追いかけるが退けた未緒の私兵、それにサーガガンダムが全力でこちらの追撃を妨害してくる。

 その光景を見て、友直と智夜も加勢する動きを見せる。

 

「っ、新堂さん!私も行くです!」

 

「あたしも行くで~!宗司センパイは先回り頼んますよ!」

 

「分かった。外に行くぞ、エターナ」

 

「エスコート頼むわよ!」

 

 智夜から外の先回りを頼まれ、すぐにエターナと共にパニックで避難中のカザノ本社の中を走る。

 外へ出ると、既に戦端が開かれていた。こちらに気づいた数機が向かって来る。

 

「早速か!」

 

「う、撃たれ……」

 

『アル、マモル!』

 

 撃たれると思った瞬間、スターターをこちらに吐き出したアルが飛び出す。球体の体で敵のビームを防ぎきるアル。

 その間に宗司はスターターを起動させる。エターナの体を引き寄せ、二人でガンダムDNアーバレストへと装依する。

 

「行くぞ、エターナ!」

 

『分かってるわよ!』

 

 アルを攻撃した敵機に距離を詰め、シールドビームライフルで素早く撃ち抜く。一機のソルジガン・ルウォ仕様を撃破すると、両脇に居た二機をザッパーでそれぞれ切り裂く。

 撃破した後、同じく戦闘を行っていたクルスの支援へと入る。

 

「っ、宗司君」

 

「無理はするな。入嶋は」

 

「艦の方に居る。まだ千恵里ちゃんのアルヴは予備のバックパックの調整が終わってないから」

 

「了解した。はっ!」

 

 シールドで防御したのち、一気に距離を詰めてコンバートセイバーで叩き斬る。クルスもツインビームライフルで支援に徹する。

 他の場所では呉川小隊長や進も戦っていた。艦の甲板上ではクルツ先輩が固定砲座として周囲の敵の接近をけん制していた。

 ヴァルプルギス、それに自衛軍側の艦船も所属MSによる迎撃と艦砲を放つ。なるべくカザノ本社へと直撃を避けるべく、弾幕の形成と浮上を始めている。

 と、そこに壁を打ち破ってサーガガンダムとジェミニアスが姿を現す。

 

『くっ、無茶苦茶だ……っ』

 

『悪いが、テメェに用はねぇ!』

 

 サーガガンダムは既に換装した装備を破損させている。ジェミニアスはエレメントブーストでスタートへと操縦権限を預けている状態のようだ。

 そこに鳥型のメカが現れる。先の戦闘でも活躍した、ジェミニアスの追加装備クローズフェニックス。フェニックスはジェミニアスの背部へと近づき、ドッキングを行う。

 

『シュバルトゼロクローザー 世壊災醒(せかいさいせい)!ブレイクネクロ!』

 

 プロセスが自動で行われ、最強の形態「シュバルトゼロクローザー」へと変化する機体。エレメントブーストが継続してネクロの強化形態となる。合体直後を狙ってサーガガンダムが斬りかかる。

 

『てぇい!』

 

『むっ』

 

 その斬撃をクローザーは紫の銃剣ネクロブレイドライフルで受け止める。弾くと一気に踏み込んで肘部の結晶体刃を振り抜いた。

 リーチが短いにも関わらず形成したエレメントの刃で、サーガガンダムの胸部を切り裂く。瞬間サーガガンダムが呻く。

 

『ぐぁっ!?これは……どうしてっ』

 

『フン、なるほどな。ならば!』

 

 それを見て何かを確信したスタートが勝負を決めに掛かる。ナイトナイフを逆手にもって攻撃を繰り出す。怒涛の連撃にサーガガンダム側は防戦に回る。

 一気呵成の攻撃でシールドを切り裂き、各部に増加装甲として取り付けられえていたユグドラルフレームを破損させたサーガガンダム。破損した箇所をまるで生身の体のように抑え苦しむ。

 その現象に訝しむ及川。

 

『なんで……傷が痛む……っ!?』

 

『当然だ。今のネクロ、ブレイクネクロは装依者への痛みをダイレクトに伝えるエレメント持ち。小細工なんて、通用しねぇんだよ!』

 

 スタートが猛り叫ぶと再度合体させたネクロブレイドライフルを振るう。発生させた光刃で、ビームサーベルで受け止めようとしたサーガガンダムの機体をサーベルごと叩き斬る。

 肩から斜めに袈裟切りに両断されたサーガガンダムは傷口を抑えながら爆散する。これで及川陽太もこの世から去った。と思われたが不審さに気づいた。

 

「……?」

 

 首を傾げる。何だろう。今までの爆発跡から何かが見えないような気がする。それが何とまでは分からなかったが、何かがおかしい。

 宗司の気づきかけていた異変に、スタートは気づいていた。残骸を見て頷く。

 

『やはりか』

 

「やはり……?」

 

『ひよっこ、まだ奴は死んでねぇ』

 

 奴は死んでいないという言葉の直後、遠くのカザノの倉庫が爆発する。爆炎が上がる中、見えたのは未緒派の母艦ローズ・ポートの姿。回線で流未緒の勝利宣言が流れる。

 

『悪いけど、アンネイムドは頂いたわ。あんた達はそこで指をくわえて見てなさい!』

 

「くっ、艦がこのカザノの中に!?」

 

 あり得ない状況。過るのは「裏切り」。だけど、それは社全体ではないだろう。現にあの時舞島さん達まで巻き込まれかねなかった。あんなことになっても舞島さん達はちゃんと部屋のロックも解除して、今も避難の指示出しを行っている。少なくとも、舞島さんは違うだろう。

 元隊長やスタートも別の可能性にたどり着いていた。

 

『カザノの一派の仕業か』

 

『なら今の内に、落とす!』

 

 撃墜を宣言してネクロブレイドライフルを構えた。しかし撃つ前に機体の挙動が不安定になり、膝を着く。その様子に進がカバーに入りながら早く狙撃する様に言い放つ。

 

「何やってんだよ!早く撃てよ!」

 

『っ、いや、これは……』

 

 元隊長が動けなくなった理由に気づく。

 

『ジャンヌ、限界か……?』

 

『ごめん……緊急で装依したから……ううっ』

 

『ちぃ、仕方ないか』

 

 ジャンヌ副隊長の体力の限界だった。エレメントブーストを解除して膝を着く。

 動けなくなった隊長機の支援の為に、こちらも周囲へと集まって支援に徹する。そこへ未緒達を追っていたと思われる蒼梨隊長達の機体が出口から現れる。

 追跡がどうなったのか、元隊長が状況報告を乞う。

 

「深絵、沙織、未緒勢力を追っていたんじゃなかったのか?」

 

 すると二人の隊長は申し訳なさそうに顛末を語った。

 

『ごめん!フェネクスの刻戻しの光波で道を塞がれたの……』

 

『すぐに出られそうにもなく、奇襲を受けかねないからな……建物も倒壊する恐れがあったから、突破も無理だった』

 

 刻戻しの妨害で道を塞がれたという発言。フェネクスは完全にこちらと敵対するつもりのようだ。それともまた「二人の為」とでも言うつもりなのだろうか。

 不覚とはいえ元隊長も似たような状況で追及はせずにただ一言言った。

 

「っ、そうか」

 

『それよりそっちは?ジャンヌちゃんに何かあった!?』

 

『うう……すみません……こんなことなら、艦で休んでいるべきでした……』

 

『姉様っ。……あぁもう!クソハジメ!とりあえず一旦あんた艦に戻りなさいよ!追撃するにも姉様を置いてでもしなきゃ無理でしょ!』

 

 姉を心配してエターナが元隊長に強く意見する。言い方は問題視されかねないものだったが、内容は的を射ている。進からも同じく撤退する様にと言われていく。

 

「いつまでもあんたに構ってたら、こっちも追えないだろ!」

 

「っ、言ってくれる。だが事実だな。深絵、沙織さん、現場の指揮は任せます」

 

『任された!』

 

『何とかやってみよう。だが、アンネイムド三機も敵対することになれば……流石に』

 

「分かっている。何とかして復帰する。艦からの状況報告は呉川に任せる」

「了解」

 

 役割を指示し、元隊長が後退していく。これまであまり見たことがないが、まさか元隊長達が撤退することになるとは。

 指揮を委託された呉川小隊長がこちらに向かって呼びかける。

 

「元隊長が抜けたのは心配だろうが、集中を切らすな。進、砲撃戦用意を」

 

「分かってるっての!ヴァルプルギス、シュトラールリヴァイバーを!」

 

 進が受け答えして装備を砲撃戦仕様のシュトラールへと切り替える。装備を切り替え終わったオースインパルスはカザノを後にしようとするローズ・ポートの後ろを狙う。

 

「こいつから、逃れられると思うな!」

 

 ハーゲンティを狙い定め、放とうとする。が、それをまだカザノへと残っていた未緒一派のソルジガンが邪魔をする。

 

「クソッ、こいつら!」

 

 砲撃体勢を止め、回避に転換する進。こちらもその相手を行う。

 艦が離れていくにも関わらず、まだこちらに向かって来る。よっぽど未緒、あるいは彼女の理念に心酔したメンバーなのだろうか。このままでは見捨てられる、いや、既に見捨てるような動きだというのに。

 その行動の意図を図りかねていた蒼梨隊長達も不審さを感じ取っていた。

 

『っ、数が多い!』

 

『こんなにも残って戦闘し続けるなんて、おかしな話だ。どこから湧いて来る、何人いる?』

 

 二人の疑念に同調する様に同じく相手をしていた友直や智夜、進達も数の多さに僻辞する。

 

『くぅっ!斬っても斬ってもキリがないです!』

 

『まるでゲームの敵キャラみたいやでホンマ!』

 

「ちぃ!こんなやつら!数だけ多いからって!」

 

 全力の迎撃で敵部隊を壊滅させていく。そこへ元隊長が通信で介入してくる。

 

『全機に通達!今相手にしているMSは全て、マリオネッターシステムによる遠隔操縦だ!』

 

『え、遠隔操縦!?』

 

 エターナが驚きの声を返す。そこでようやく、先程の疑念の正体に気づいた。

 さっき撃墜されたサーガガンダムに足りなかったもの。それは搭乗者の肉体だ。いくら戦闘を何度も経験してきたとはいえ、あまり見たくないもの。それでも元隊長からは「なるべくは目を逸らすな、軽く見やる程度で」と言われチラ見して燃える遺体の破片を見てきた。

 ところが、先程の撃破した時にその燃えかけらすらも見えなかった。わずかな違和感、それが敵の正体だったのだ。

 元隊長はその知識の受け売りを話す。

 

『なんとなく俺も気付いていたが、スタートと話し合わせてで分かった』

 

「やっぱり……」

 

『は?ソージあんた分かってたっての!?』

 

「あぁ、元隊長に日頃言われてることが役に立ったよ」

 

 ともあれ敵の正体は分かった。だがそれは言うなればMSが続く限り未緒勢力を追うことが出来ない。振り切っても逆にカザノの人達を人質にでもされたらそれこそ手詰まりだ。

 どうするべきかも分からず絶え間なく続く増援を退け続ける。エターナからも対抗策を出せと催促される。

 

『あぁ、もう!ソージ何とかしてよ!敵の反応が至る所に!』

 

「分かってるよ!どうすれば……ん?」

 

 その時、何かを感じ取る。

 何だろうか、ローズ・ポートが出た倉庫の周囲、その地下に今戦っている敵と同じ物が次々と現れては消えるような……音?そう、音が、聞こえる。

 なぜそんな音が聞こえるのか。急にそんなものが分かるようになったのか。けれどその感覚はエターナの教えてくれたあの感覚、DNLの感知する感覚と同じだった。

 エターナが再び力を貸し与えてくれたのかとも思った。けれども違った。この感覚は、癖はエターナのものではない、と言いきれた。

 沸き立つ直感の下、感じ取った物を俺は蒼梨隊長へと内容を伝える。

 

「蒼梨隊長、見つけました」

 

『えっ、見つけた?』

 

「ローズ・ポートの出てきた倉庫、その周辺の倉庫地帯の地下からMSの反応が出てきています」

 

『えっ』

 

『う、嘘っ!そんなの聞いてないわよ!?』

 

 エターナが慌ててDNLで周囲状況を読み取り出す。その話を聞いてクルスや進が不思議そうに尋ねる。

 

「そ、宗司君、それどういうこと?」

 

「言った通りの意味だ。そこから発進してきてる。撃墜されるたびに別の光が灯る音が」

 

「お、音って、それお前……!」

 

 進が言いたいことはなんとなく分かる。自分で言っていて感じ取っていた。それを裏付けする様にエターナ、そしてヴァルプルギスのオペレーターの光巴からも報告が伝えられる。

 

『……マジだ。何で、今まで気づかなかったの……私』

 

『言われてみて私も気付いた。これカザノさん……いや、外部委託された奴の考えた構造で、DNLの読心をある程度防ぐ感じだね。気付かなくてもおかしくないよエターナちゃん』

 

「で、でも、それを感じ取れたって……つまり」

 

 注目が自身へと集まるのが分かる。しかし動揺を打ち破ったのは話を聞いていた蒼梨隊長だった。

 

『宗司君。ありがとう、場所が分かれば、後は私がやる!沙織さん!』

 

『あぁ。全機、残っている敵を全力で押さえろ!』

 

『了解!!』

 

 蒼梨隊長の言葉に同調し、新堂隊長が叫ぶ。自衛軍部隊、HOWの両部隊員が従い敵の撃破ではなく、足止めへと切り替える。

 その間に蒼梨隊長はライブラの機体を倉庫上空へと向けた。すべての倉庫を見渡せる場所に位置取るとビットを放出した。

 銃火器を模したビットは入れ物だった盾のビットと合わせて三つのひし形の陣形を取る。それを上から見れば円形のように配置し、残る一隅はライブラ自身のライフルとリング端末で補う。

 回線では光巴が連絡の取れた舞島さんに施設の安全性の確認を取る。

 

『ってことで、あそこ爆破したりしても問題ないです?』

 

『えぇ、その地帯は要らない物を格納していた倉庫なので、中に入られていることも気付きませんでしたから。貴重なサンプルが無くなるのは辛さもありますが……お願いします!』

 

『了解。ブラウジーベンガンダム・ライブラ、敵出現地点を殲滅する!』

 

 蒼梨隊長が宣言するとライブラが攻撃を開始した。ビット、ライフルからの一斉射。エネルギー増幅器となったビットを通して増幅された高出力ビームが眼下の倉庫を貫いていき、爆発を巻き起こす。

 それでもまだあの反応は消えない。それを分かってライブラの照射を続けた。

 

『はぁぁぁぁぁ!!』

 

 連続した照射に耐えかね、遂にビームが倉庫の地下に到達した。爆発が地下で連鎖していき、ライブラからの照射が止まる。一際大きな爆発が倉庫を飲みこんだ。

 事態に気づき、狼狽えだす敵MS。だがそれも時遅く、そのタイミングでこちらも一斉に墜としていく。

 何とかこの場を収めたものの、既にローズ・ポートの影は遠くへと消えていた。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP48はここまでです。

ネイ「凄まじいまでに巡りまわってますね」

グリーフィア「緊急防御成功してからはまぁタワーディフェンスかなぁと思ってたんだけど、懐かしのマリオネッターシステムそこからまさか宗司君の能力覚醒や、シュバルトゼロクローザーのシステムダウンやら……特に深絵ちゃんの最後の活躍は機体性能フル発揮だったわねぇ」

まーエラクス発動できていないんでフルではないんですがね。それでもそれぞれの協力で敵は打ち果してます。もっとも敵はその間に逃げてますが。

ネイ「これは……追撃ですかね」

グリーフィア「アンネイムドが3機奪われたんじゃあ取り返す必要あるわねぇ。それは次回、ってことでしょ?」

そういうことだ。というわけで今回はここまで。

グリーフィア「それじゃあ、また次回~」


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EPISODE49 世界を変革する神話領域(ユグドラシルフィールド)1

どうも、藤和木 士です。EP49、50の公開です。まずはEP49から。

レイ「タイトルが!タイトルにルビ振ってあるよ!?」

ジャンヌ「ユグドラシルフィールド……?これは一体……」

一体何を示すのか、誰が引き起こして、変革させようとするのか。それは本編で、どうぞ。


 

『地下のMS反応、並びに稼働する敵MSすべて撃墜。やったね深絵お姉ちゃん!』

 

 光巴からすべてのMS撃墜との知らせを聞く。だが撃破に貢献した深絵自身の心境は複雑だった。

 確かにすべて撃墜こそしたものの、そのいずれもおそらくは予備兵力。本隊のMSはサーガガンダムを除いて削りきれてはいない。

 追撃に回るとしてもこちらは虎の子のシュバルトゼロクローザーが使えないだろう。アンネイムドの内、最低でも二機、最悪三機を敵に回す状況でそれは辛い以外の何物でもない。

 果たしてこのまま追っていいものか。同じ悩みを沙織からも相談を受ける。

 

「深絵、ここはとりあえず押さえたが……追うか?」

 

 少しだけ判断に迷って、導き出した回答を共有した。

 

「アンネイムドが渡った以上それを敵に回すのは明らかです。追いたい気持ちはありますが、クローザーがいなければ戦力としては劣る。ゼロン側の動向も気になります」

 

「うむ、私も同意見だな」

 

『っ、あいつらを逃がすんですかっ!』

 

『そんなの……でも……』

 

 隊長達の考えに納得がいかないと呟く自衛軍の新人隊員戌村と、それにクルス。逃がしたくない気持ちはもちろんある。けれども退くべき時は撤退の指示を出さなければ、それが隊長としての役目。

 艦へも撤退指示を出そうとする。そこにあの人物から通信が入った。

 

『一時撤退は、正しい判断だ。深絵』

 

「葉隠さん!」

 

 諜報部の葉隠閃からの通信だ。彼はこのミッションでは未緒一派の追跡を担っていた。追っていた葉隠さんから彼女達に関する朗報が届けられる。

 

『彼女達を追う途中で、このカザノ側の協力者達を拘束した。そこから彼女が次に隠れようとしている場所を特定できた』

 

「それじゃあ……!」

 

『あぁ、既に先回りして自衛軍部隊に動いてもらっている。新堂隊長もそれでいいな?』

 

 自衛軍の部隊を動かすことに対し、沙織さんに確認を取る。沙織さんは二つ返事でそれを認めた。

 

『無論だ。追いかけている君の判断なら、それを尊重する。その間に私達が追撃態勢を整えれば追える。そうだろう?』

 

『そういうことだ』

 

 葉隠はそう頷く。

 知らせを受けて隊員達も安堵のため息を漏らす。ここで逃がしてもまだ追いつける可能性が生まれた。

 その間にシュバルトゼロクローザーが出撃できる範囲にまでジャンヌが回復出来れば何とかなる。

 まだ戦いは終わっていない。態勢を整えて、次こそは捕まえるという意志を固くした。

 

「よし、なら」

 

 だからこそ、そこに続いた声に正気を疑った。

 

 

 

 

『―――――すまないが、態勢を立て直すのは補給のみで対応してもらう』

 

 

 

 

 一番態勢を整えなければならない者達の片割れが、意見した。

 

 

 

 

 元は艦からの通信で、深絵や葉隠の対応に待ったを掛ける。その発言に深絵達は猛反対をする。

 

『ちょ、ちょっと!ジャンヌちゃんは大丈夫なのっ!?』

 

『さっきもジェミニアスの強制装依をした。限界のはずだろう』

 

 彼女達の不安はもっともだ。もちろん元もジャンヌは休ませてやりたいと思っていた。

 本来なら彼女達の選択した案を取るのが一番だ。寧ろ元個人の意見はそちらだ。だがそうではないのには理由がもちろんあった。

 その理由を、葉隠が問う。

 

『無理をしてでもその案を取る、その根拠は?』

 

「……嫌な感じがする。ローズ・ポートの逃げた方向、それとローズ・ポートそのものから、何かおぞましい兆候を感じ取っている」

 

『DNLの直感……?』

 

 深絵の言葉に「あぁ」と言って答える。すると、同じようなことを感じ取っていた他のDNLとその力に目覚めつつある者達が口を揃えて言った。

 

『あ、私も嫌な感じするねぇ。予感っていうか』

 

『……確かに。クソ野郎と同じで、何か圧迫感があるっていうか』

 

『俺も、さっきから音が五月蝿く必死に知らせてきてます……』

 

 光巴とエターナが感じ取るのはいい。だがここでまさか宗司も同じ感覚を覚えていたのは想定外だった。だが想定外だとしても良い兆候、なのかもしれない。目覚める時は近い。

 DNL達が一様に危険を感じ取る状況に、あまり見たことのないであろう自衛軍の新人が反応する。

 

『これが……その、ディーエヌエル?の皆さんが感じ取っているんです?』

 

『何か、本当にエスパーみたいやね。敵意を感じ取ってるってことなん?』

 

 その一人が言った敵意の感知はもちろんある。だがこれは敵意というよりも、こちらのDNLとしてのある存在にしての反応。とある感情を引き出していると言えた。

 それは生物が本能的に感じる感覚の一つ。誰もが生きているなら感じざるを得ない枷のようなもの。

 感情の正体を、回線で更に割り込んできたもう一人のDNLが示す。

 

『―――――敵意、というより、恐怖、とでも言うべき、でしょうか』

 

『ジャンヌちゃん!』

 

「ジャンヌ、大丈夫なのか」

 

 心配をパートナーであるジャンヌへと向ける。医務室からの回線を使ったジャンヌは気丈に振る舞い、まだやれると話す。

 

『鎮痛剤を打ってもらいましたから、まだ無理出来ます』

 

『いやいや、無理されたら困るよ。元君もそうでしょ!?』

 

「……正直に言えばそうだな」

 

 深絵の言葉に同意はする。だが同意だけだ。

 DNLとしての直感が告げるこれは、前にも経験したことがあった。かつてのラプラス事件でゼロン側が最終兵器として投入してきた「大型決戦MA」。

 プレッシャーはあれほどではないが、それでも機体からこちらへと圧を掛けてくる様は同じだ。

 あの機動兵器と対峙して、生き残れたこと自体が奇跡に近い。それを真正面で経験したアンネイムドの二人も確信して進言する。

 

『間違いありません、これはニア・ゼロングの物です』

 

『ニア・ゼロング……あの大型超常MAか』

 

『間違いないだろう。あの時破壊した奴とプレッシャー音が似ている。ニア・ゼロングの二号機だろうな』

 

『その名前……確かフェネクスもそんなこと……』

 

 進が呟いた。そう、フェネクスが「自身の目的」として真っ先に排除候補として挙げていた兵器の名前だ。

 用途としては拠点侵攻用に当たる機体。かつてこのカザノにも襲撃を行っており、ラプラス文書を巡って石河を壊滅に追いやりかけた。

 かなりの大きさの為に二号機は流石にないと思っていたのだが、その発言で不審さを覚え、そして今こうして感じ取れる。認めざるを得ないだろう。宇宙用の装備のはずの機体と、まさか地上でまた合見えるとは思わなかったが。

 そう言っていると、海上の方を映していた映像に動きが見える。何か高出力のビームが放たれローズ・ポートを掠め、その射線上の先に遭った山々を吹き飛ばしていく。

 その光景に深絵達も勘づく。

 

『あの光……あれがニア・ゼロング!?』

 

『距離があるというのにあの被害……っ』

 

『……確かに、元隊長の言う通りだな。ここで引くわけにはいかないわけだ』

 

「あぁ。またカザノ、いや石河が戦場になる」

 

 この街をこれ以上破壊させないために、終わらせる、この災厄の根源を。フェネクスではなく、俺達が。フェネクスを、あの忌まわしき巨体を破壊する為に。

 そのために元は全回線に向けて指示を行う。

 

「全部隊へ通達。これより海上の未緒勢力への追撃、並びにゼロンの大量破壊兵器の侵攻阻止を……っ!?」

 

 命じる直前で異変に気づく。異変は艦でも捉えられていた。オペレーターの真由が報告する。

 

『っ!待ってください!艦の索敵システムに尋常じゃないエラーが……えぇ、ナニコレっ!?』

 

 海上の方に光が満ちる。異常なまでのユグドラルの光が、海上にドームを作ろうとしていた。

 

 

 

 

 時は少し遡る。海上に出た未緒勢力は艦内からMSをコントロールしながら、逃走の時間を稼いでいた。

 本当ならゼロン方面へと逃げる予定だったのだが、ゼロンは信用できないと分かり、大回りで東北への逃亡へと切り替えていた。政財界の重鎮の一人の協力で日本の領海を出れば重鎮の手配した海外の部隊が護衛に付いてくれる。如何にHOWや自衛軍でも手出しは出来まい。

 HOWの足止めをマリオネッターシステムから出て艦橋にやってきた陽太が見る。

 

「HOWもシュバルトゼロはもう動けない。俺達の目的は達した。勝ちだな」

 

「フン、アンタも未熟ね。これからが本番なんだから」

 

 まだアンネイムド三機を確保しただけ。とはいえ当初の最低目標だったフェネクスだけでなく、残るアンネイムドもまとめて入手できたのは未緒自身の目的にとても意味のあることだった。

 本来ならフェネクスだけで行うはずだったユグドラシルフレームの能力の観測とそのエネルギーによる「現実と精神世界との接続」。それを行うには元となるエネルギーや基礎となるユグドラシルフレーム機が足りていなかったのだ。

 本来踏むべき段階を大きく省略できる。現在メカニックたちはマリオネッターシステムの制御と並行して、アンネイムド達の制限を取り払っている最中だ。

 もうすぐ、11年前からの悲願を達成できる。けれどもそれを快く思わない者も増えたのだが。

 

『……未緒、もうやめて』

 

「……フェネクス、いいえ、梨亜、あんたもようやく、解放されるのよ。その呪いから」

 

 梨亜がフェネクスに精神のみ囚われた事象。梨亜にとっては意味が分からなかっただろう。

 それだけじゃない。あの時、三人が別れてしまった時、梨亜一人だけ自衛軍に攫われてしまった後、本当なら未緒自身が動くはずだった。攫われた先を特定してその部隊の罪をでっちあげる。そうしたら解放した梨亜を救い出せると、三人がまた揃っていられると思っていた。

 けれども現実は甘くなかった。梨亜の行き先は徹底的に隠滅され、たどり着けなかった。ルウォの力も及ばない程に。それ以上に、私自身がもっと学ばなければならなかった。

 陽太も、梨亜も自分で境遇を何とか出来る人間じゃない。だから、わざわざ身代わりに名乗り出た自分が何とか出来るように、相談役としていられるよう本来はないDNL能力を補う意味で占い、に関連した対象のデータから本性を読み取り最適な行動を見出す技能を身に着けた。

 その方面で徐々に才覚を見出していって地位を安定させて、ようやく3年前に梨亜の所属先を突き止めた。けれどもその時にはもう彼女はフェネクスの暴走事件を引き起こして宇宙へと行方不明になった。陽太と接触したのも同時期で、それを知らされ、陽太は再び私に詰め寄った。

 

『お前だ!お前があの時、梨亜を見捨てなかったら!』

 

 怖かった。嘘をついて、少なくとも自分と陽太だけでも助かろうとしてあんなことを言ったのだと、見透かされたような気がした。

 あの時は子どもで幼く、迫力のなかった陽太は自衛軍での訓練・実戦を経てしっかりと大人になっていた。卑屈な手を使って回り道ばかりをしてきた未緒とは違い、フィジカルもメンタルも鍛えられていた。

 けれどもそんな陽太も梨亜の事だけは諦めきれていなかった。私はまだ、彼に焦がれていた。だからこそ、こう持ち掛けた。

 

『私なら、また梨亜とあんたを会わせられる』

 

 この頃はまだ何の根拠もない発言だった。けれども陽太との縁は繋いでおきたかった。再び吐いた嘘に陽太は黙って去っていった。

 それから、あのラプラス事件が起こった。フェネクスと同じ機種が起こした、驚異の力。それは未緒が求め続けた理想を、願いを、限りなく近い形で実現できる超常の力であった。

 戦争を、争いを終わらせ、人と人が誤解なく分かり合える世界。もう嘘をつかなくてもいい世界。陽太と梨亜に許されるかもしれない世界。

 ずっと願い続けた世界を実現できるマシーン、アンネイムドが思うように使えるようになれば、実現は目の前だ。

 その工程の段階を秘書である腹心が伝える。

 

「未緒様、現在アンネイムドの制限ロック解除が完了。バイオメトリクス認証をパスして両機体共に動かせます」

 

「ふふ、なら後は迎えと合流するだけね」

 

 勝利を確信する。もはや追って来ることも叶わないHOW部隊に見向きもしない。

 ローズ・ポートも領海外へ向け速度を上げている。如何に高性能でも追いつけないし、追い付けたとしてもその頃にはこの艦は某国の軍隊に守られた状態。もはや敵国は手出しが出来ないだろう。

 余裕を感じ、微笑む未緒。ところが秘書から続いた言葉が勝利への道筋にノイズを掛けた。

 

「それが……もうそろそろ通信が入ってもいい頃なのですが、一向にこちらの応答に応えないのです」

 

「?DNの散布状況は?」

 

「それが……かなり濃いです。あらかじめ、撹乱の意図をもってDNを放出しているとは聞いていたのですが、それにしては濃すぎる……まるで戦闘濃度です」

 

 DNによる電波撹乱、このMSが普及した現代でも追跡防止の為に散布は欠かせない。それが濃すぎるというのは不可解さを思わせた。

 まさか、そんな未緒の恐れはたちまち現実のものとなる。

 

「っ、艦長!合流ポイント方向に、敵反応!」

 

「まさかっ」

 

 すぐさま望遠映像が艦のスクリーンに表示された。そこに映るのは撃沈され燃え上がる某国の空中艦と、その前に立ち塞がっていた巨大すぎる機動兵器、それに追従するいくつものMSだった。

 そのMSに見覚えがあった。予想通りそのMSの一機である、新らに重装備を施した赤いMSのパイロットが回線を開いてくる。

 

『やぁ、どうやら君達が全てのアンネイムドを手に入れたようだね』

 

「……ハル・ハリヴァー……!」

 

 ゼロンの伝説的パイロット「真紅の流星」のクローンが仮面の姿のまま、回線で要求を行う。

 

『君達が助けを求めていたよそ者の救援は、私達が潰させてもらった』

 

「っ、そんなことをして、たかがゼロンに一国家からの怒りを、報復を、受け止められるとでも!?」

 

 軍隊を相手にして生き残れるはずがない。そう恫喝するが、その男はそれも軽すぎる障害と言って見せる。

 

『おやおや……確かにそれは怖いね。だが、既に君が助けを求めた外交官は既に自衛軍に拘束。軍隊は私達により殲滅され、かの国もその発端者は捕まり、君を迎え入れることは諦めたようだが?』

 

「そんな……嘘よ!そんなこと……」

 

「未緒様、残念ながら事実のようです」

 

 秘書が通信画面を提示する。秘匿回線の暗号文でその内容はハル・ハリヴァーが語った内容と同じ意味のものだった。

 悔しさでコンソールを叩く。

 

「っく!……」

 

『未緒……私出るよ。あれを止めなきゃ。陽太、手伝って』

 

「梨亜……」

 

 戦うという意志を示し、陽太にも来るようにと懇願するフェネクス、否、梨亜の姿。その影に見えないはずの幼き梨亜の姿が重なる。

 そこに回線からさらに追い詰めに掛かるハリヴァーの恫喝が加わる。

 

『君に出来るのは、ただアンネイムドを引き渡すということだけだ。ルウォ・エンタープライズを捨て、野心に溺れ、他者を飼いならそうとした大人になれない予言の子ども』

 

「っ!!」

 

 大人になれない予言の子ども。そんな見下しが自身の琴線に触れた。

 あの時を思い出す。施設に入れられた時、そしてルウォに引き取られた時。自分を予言の子ども達の一人としてしか見られなかったときの気持ちを、屈辱を思い出させた。

 あるはずもない力に期待され、捨てられない様に必死に誤魔化し続けてきた。それも全て周囲を利用しながら陽太と梨亜に赦されるために。

 そのためだけに利用した、利用するしかなかったその呼び名を、屈辱的な侮辱としてぶつけられた。思い入れがなかった、恨みしかなかった肩書で呼ばれて頭にこないわけがなかった。

 そんなに、言うなら、見せつけてやる!奴らに、HOWにも、私の見つけ出した結論、世界を本当に変えられるユグドラシルフレームの真の力を!

 私は梨亜とその手に引かれようとしていた陽太をひっつかむ。

 

『み、未緒……』

 

「何だよ、梨亜に何をしようと」

 

「あんたも来なさい!あいつらをどかさなきゃ、あんたも梨亜も死ぬわよ!」

 

 無理に二人を引っ張って、艦橋を秘書に任せてハンガーへと向かう。

 ハンガーでは既に傭兵達がMSで出撃を開始していた。その中で、今もアンネイムド二機を調整していた整備員に用件を突きつけた。

 

「今すぐ、アンネイムドの出撃を開始するわよ!」

 

「えぇ!?ですがまだ調整が……」

 

「パイロットはどうするんですか?誰が……」

 

 準備が出来ていないと言い訳する整備員達に、こう言い付けた。

 

 

 

 

「それでもいいわ。パイロットはバンシィに私が、ユニコーンは、及川陽太よ!ユグドラル反応を無理矢理引き出して、ユグドラシルフィールドを起こす!!」

 

 

 起死回生の一手、それで世界がどうなろうともはや関係なかった。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP49はここまでです。

レイ「ニア・ゼロングってやつもヤバそうだけど、それに滅茶苦茶にされて怒ってる未緒もヤバいね……ユグドラシルフィールドってやつで逆転しようとしてるけど、無理矢理でいいのかな?」

まぁユグドラルって名前の時点で発生には本来DNLが必要だ。だけどDNLの数が足りない。だから機械的な処置で無理矢理実現しようってことさ。嫌な予感しかしないけど。

ジャンヌ「これは……次辺りでやってきそうですね。もう既に今話でも元さん達が遠目で確認しているようですが、真由さんの慌てぶりからして尋常ではないようですし」

次でユグドラシルフィールドのヤバさが解説出来るといいね。それでは次へ続きます。

レイ「短いね」

まぁそれ以外で触れる事って陽太や未緒の過去語り位でしょう。

ジャンヌ「あの、某国については……」

伏字にしてるのを突っ込むな( ゚Д゚)ちゃっちゃと行くよー


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EPISODE50 世界を変革する神話領域2

どうも、藤和木 士です。引き続きEP49、EP50の公開となります。続いてEP50です。

ネイ「前話では満身創痍ながら未緒一派を追いかけなければならない状況となったHOWはどう立ち向かうのでしょうか……また無茶しそうですけど」

グリーフィア「そうねぇ。元君やジャンヌちゃんの性格からしたらねぇ。ニア・ゼロングも、ハリヴァーの機体もなーんか違うッぽいし」

追加装備など気になる要素も交えて、本編どうぞ。


 

 

 ゼロンと未緒一派の戦闘が始まった。だが果敢に応戦する未緒一派の傭兵MSはゼロンの最終兵器の一機、Ⅱニア・ゼロングを相手にするには役者不足が過ぎた。

 超大型MAと合体したゾルダー・ヴァッターマンのプロトゼロンは、Ⅱニア・ゼロングの武装で圧倒的な弾幕の壁を盾にMSを撃滅していく。

 

『アッハハハハハハ!ニア・ゼロング相手に、その程度のMSではなぁ!!さっぱりさせようぜぇ!』

 

 興奮するゾルダーの発言はまさに正しく、並大抵のMSでは侵攻を止めるに至らない。その推力と相まって未緒派の母艦への距離を見る見るうちに詰めていく。

 詰めていくたびに母艦からのビームが機体へと着弾していくが、それらは全て機体腰から展開するDNウォールで霧散していく。DNウォールの影響で接近戦すらも行えない敵機。

 しかしそれにも弱点はある。覆い尽くしきれていない脚部プロペラントタンクへ向け、気づいた敵機が攻撃を放つ。だがそれをカバーする形でハルは自身の機体、シナンジュ・ゼロンの強化パーツ「ハル・スーツ」装備型で迎撃に入る。

 敵機の攻撃をシールドで防御し、肩部の増設アーム内蔵のビーム砲で撃墜する。そのハルに対してゾルダーが茶化す。

 

『おやおや、気が利くねぇ』

 

「その装備の弱点は知っている。その機体は強力だが故にこちらの仕事は護衛以外なくなってしまう。悪いが支援に徹させてもらうよ」

 

『そうしてくれ。これは、俺の晴れ舞台なんだからなぁ!この奥の手でガンダムだろうが魔王だろうが、奴らに裁きを与えてやるよぉ!!』

 

 ハイテンションなゾルダーはⅡニア・ゼロングの指からビームを照射し、それをカーテンの如く振るった。ビームの薙ぎ払いによりいくつもの閃光が瞬いて消える。

 正面方向の敵を消すと、そのまま腹部フレキシブルハイメガキャノンの発射態勢を取る。腹部から砲塔が分離し、竜の首の如く、擡げる。

 しっかりと狙いを定め、砲塔アームを固定すると一気にそれを放つ。砲塔の3倍以上の大きさで放たれた高圧縮ビームがローズ・ポートを掠め、射線上の先にあった山々を削り取った。

 被害を出すのは避けるべきだが「敵が避けた」のなら仕方はない。撃墜できないことを残念に思うゾルダーの声が聞こえてくる。

 

『避けるなよ……でないと、民間人に被害が出ちゃうだろう!?』

 

 無論これはゼロン側の専用回線。向こう側には届いていない。にもかかわらずそう語るゾルダーのそれは猟奇的と言える。

 聞かせればくやしさに歯噛みする者も多いだろうに。もっともそれでも流未緒は止まらないだろうが。このまま沈黙を続ければ某国の部隊の母艦と同じ海の藻屑となる運命を取るのか。死なば諸共の精神で最後っ屁にアンネイムドごと海に沈めるなんてことをされれば相応に困るが、その前に確保すればいい。

 もっとも彼らは全くその気はないらしい。レーダーに反応、それから、騎士官であるシンジが告げる。

 

『敵艦からMS発艦……ターゲットだ』

 

「ほう、向こうから来てくれるとは……おやおや」

 

 向かって来る姿に思わず笑いが零れる。フェネクスは慣れた様子で素早くやってくる。だが問題は他の二機。ユニコーンは通常のDN推進に慣れているが置かれた状況から不慣れさも感じさせる。そのユニコーンが置かれている状況、バンシィを連れ添って手を引く姿はまるで恋人との逢引か。

 おそらくは違うであろう。となればパイロットが誰なのか、すぐに当たりが付いた。搭乗者であろう者に声かけをする。

 

「よもやよもや。まさか代表本人が持ってきてくれるとは、ね?」

 

『……フン、そう思っておけばいいわ真紅の流星の再現』

 

 女性の搭乗者の声が聞こえる。やはりバンシィのパイロットは流未緒だった。

 そうとなれば、あの因縁のユニコーンに乗るのは、先の戦闘でサーガガンダムとやらに乗っていた青年だろうか。青年はやや不慣れな手つきで装備していた主兵装ビームマグナムを向ける。

 青年はこちらに威嚇する。

 

『あんた達に梨亜は渡さない。せっかく会えた梨亜を、もう誰の物にもさせない!』

 

「フフッ、やはり予言の子ども達、か。あの事件は私にとっても転機だった。そう、ユグドラシルフレームの力は絶大だとね」

 

『奇しくもそこでは共通してた、ってわけね。でもあんた達みたいな武器としてしか見れない人間に、ユグドラシルフレームの真価は出せないでしょうねっ』

 

 こちらのユグドラシルフレームへの賛辞にそのように返す流未緒。真価、とはおそらくは自身が撤退した後、ユニコーンが発動し、フェネクスも振るっていたあの「刻戻し」の事だろう。

 残念ながら刻戻し程度ならまだ十分にやりようはある。特にこのハル・スーツ装備型のシナンジュ・ゼロンはこのサイズでありながらニア・ゼロングと同等の性能を引き出せる。

当然Ⅱニア・ゼロングもまた初代とほぼ同等の性能持ち。実質二機のニア・ゼロングを相手にすることになるのだ。

 そんな事実を知れば、ユグドラシルフレームの真価だろうがどうにでもなる。それを告げようとした。

 

「ならばこちらも、このハル・スーツの力を見せてやろう」

 

『そんなもの、通用しないわ。スレイブユグドラシルコネクター発動!』

 

『うぐっ!あぁ!!』

 

『ぐぅっ!?』

 

 何かを起動させた未緒の言葉の後、突如としてアンネイムド達が振動を起こし始める。その様子をかつてハルは見たことがあった。二機のアンネイムドの衝突で一方のデストロイドモードに触発されてもう一方のデストロイドモードを起動したときのことを。

 これもまた同じで、アンネイムド達が動いた。アーマード装備を纏っていた白と黒のアンネイムドがアーマードを外す。三機が一斉に上空へと飛びあがるとⅡニア・ゼロングの前で外向きに円陣を組む。

 目の前に来た得物。ゾルダーが逃すわけがない。彼はすぐさま捕獲するべく巨大アームユニットで手を伸ばす。

 

『わざわざ来てくれるとは!ならばその機体、今度こそもらい受ける!!』

 

 確実に捕獲できる。そう、それがなかったなら。触ろうとしたⅡニア・ゼロングを三基から展開した領域が阻んだ。

 そう、アンネイムドにはこれがある。ユグドラルフレームを共振させその力場で敵の攻撃を防ぎ、また攻撃に転用する。ユグドラルフィールドだ。

 普通のMSなら展開されれば貫くどころか近づくことさえも難しい。だがこちらもまたユグドラルフレーム内蔵機。しかも自分達のシナンジュは訳が違った。

 展開を確認し、ゾルダーが機体の機能を解放する。肩部と腰部から特殊な半円フレームを周囲に配置、増殖させたユグドラルフレームの培養体「ユグドラルシャード」を形成する。

 

『時を戻し、世界を繋ぐユグドラルフレームよ!その力で、臆病な奴らを覆いし殻を破れぇ!!』

 

 同じユグドラルフィールドの力を込めたアームでそのフィールドを壊しにかかる。Ⅱニア・ゼロングなら、基礎の馬力、そしてユグドラルフィールド出力でもあの神鳴白以下のDNLが一人と余分2人の生み出すユグドラル反応なら押し切れる……。

 そこで過ちに気づく。先程の光景が思い出される。未緒が何かのシステムを発動した時、苦しんだのはフェネクス、それから《ユニコーン》。そして敵は三機のアンネイムドで隊列を組んだ。

 まさか?そんな予感が現実のものとなる。

 

『グッ!?押し切れない……いや、逆に!?』

 

「っ!不味い。ゾルダー、緊急退避を!全部隊後退!」

 

 すぐさま指示を飛ばす。いつもなら指示に素直に従わないゾルダーも、そして信用が薄い客人とも呼べる騎士官神治もまた、これまでと違った声音と状況にやむを得ず従っていく。

 三機のアンネイムドが全てを破壊する化身にして、真の姿、デストロイドモードを起動させていく。ガンダムの顔を露わにした三機が共鳴するかのように目を光らせる。

 加えて、露出したそれぞれのユグドラシルフレームが固有の赤、金、青から、共通の緑色へと変色していく。そして極めつけに装甲とフレームが割れ、光の結晶が生えていった。MSにあるまじき変貌を起こしていく。

 幸運ながらハルは知っていた。それがアンネイムドの究極的形態、ニア・ゼロングのように技術に頼らず、搭乗者のDNL能力のオーバーフローによるユグドラルシャードを発生させた形態。

 しかしこれはその時を越えるものだ。その状態から急速に展開したユグドラルフィールド領域は、周りの物、海すらも食い破っていくように蒸発させ、MSから放たれるビームも吸い込んで無力化していく。カメラでは領域の中に霊的と呼んでいいような物質が充満していく。どころか触れた我が軍のMSが粒子状に還元され、内部へと取り込まれていくではないか。

 これが本当にユグドラルフィールドなのか。おぞましいその光景に、これを引き起こしたと思われる彼女の名を呟いた。

 

「流未緒……君はとんでもないことをしでかそうとしているようだな……!」

 

『おい、何が起こっているんだよ!あれがユグドラシルフレームの力だって言うのか?』

 

 騎士官の神治がこの事態の説明を要求する。彼だけではない。既に部隊員達からもどうすればいいのかと回線に殺到する。

 そんな中、唯一行動がはっきりとしていた一応の副隊長のゾルダーは戦う選択をした。

 

『どういう理屈かは知らんが、所詮はユグドラルフィールド!このⅡニア・ゼロングに破れない道理はない!』

 

 力で押し切る。今は彼の行動しか突破口はないだろう。対処を彼に任せつつ、自分達の取るべき行動を模索する。

 と、そこに彼らもまたやってきた。

 

『隊長、奴らが、HOWが』

 

「やはり来るか……ならば応戦する!各員、Ⅱニア・ゼロングの補助を残してこのフィールドから離れて戦闘しろ」

 

 危険なフィールドが近くにあっては戦いづらい。注意喚起をしてHOWを迎え撃つ構えを取った。

 艦がこのフィールドの正体を掴んでくれることを祈って、HOWとの戦闘に突入する。

 

 

 

 

 補給を終えて、海上の特殊フィールドへと向かっていくヴァルプルギスとオーヴェロン。その中で態勢を整えつつ外の様子をカメラから観察していた千恵里達。

 

「これ、ユグドラルフィールドでいいんです?」

 

「それは当たってると思う。けど、これはもっと違う、上の領域の奴だと思う」

 

 問いに光巴がそう答える。周りの物を何かに還元する様子。まるで生き物のように喰らって自身のエネルギーに変えているようだ。

 その領域、ユグドラルフィールドが元隊長のシュバルトゼロが使う防御手段の一つとしても知っていた。だがここまで広域に、更に広がりを見せるフィールドは見たことがなかった。

 使い手である元隊長もそれがユグドラルフィールドではないと断言する。

 

「ユグドラルフィールドじゃない。あれは周りの世界を改変していっている。干渉して一時的に現実化するものではない……近いのは、あの時のあれか」

 

「あれ?」

 

 尋ねたところで自衛軍側の回線から神鳴さんが正体を看破する。

 

『えぇ、かつて僕のユニコーンが、僕自身が起こしたユグドラルフィールドの完全形態。「ユグドラシルフィールド」で間違いないです』

 

 ユグドラシルフィールド。名前が微妙に違うそれを、神鳴さんは体験から解説する。

 

『ユグドラシルフィールドは完成されたDNLが自身の限界を超えたユグドラルフィールドの発生を望んだとき、他のユグドラルフレームが周囲に存在するならそのユグドラルフレームをパイロットごと、増幅プロセッサとして扱って発生させたユグドラルフィールドの完成形。その領域では通常のユグドラシルフィールドが行う「望む世界への干渉」ではなく、「望む世界の創造」が行われる』

 

「望む、世界の……創造!?」

 

『有体に言えば世界をユグドラシルフィールド形成者の思うがままに改変できる能力だ』

 

 丁寧に補足を入れてくれた政岡。やっぱりその認識で間違いなかったようだ。

 元隊長を始めとするDNLは先程の悪寒の正体の最後の一つに納得がいく。

 

「おそらく、未緒一派の切り札だろう。アンネイムドを捕らえた理由はこれか」

 

『でしょうね。ユグドラシルフィールドの改変で自分達に都合のいい、理想の世界を作る。それが流未緒達の真の目的』

 

『理想の世界、なんて、出来るんです?』

 

『そうね。いくらガンダムでも、戦争のない世界なんて無理だったし』

 

 当然の疑問をぶつける宗司。エターナも同意見を述べる。けれどもジャンヌ副隊長は二人の問いを肯定する。

 

『本来、出来るようなものではありません。けれどユグドラシルフィールドの力は未知数。既に存在した例では神鳴さんが宇宙より放たれたコロニーレーザーの無力化、それからMS1個大隊を動作不良に追い込み、果てにはタイムスリップと言えるような現象を引き起こしかねた、そうですし』

 

『タタタタイムスリップゥ!?』

 

『えっと、タイムスリップしかけたっていう確かなデータがあるんです?』

 

 疑ってかクルスがそう尋ねる。言うからにはあるのだろうが、クルスの言葉を肯定する様にその根拠を新堂隊長と共に明かす。

 

『MS側の時計が狂っていたんです。それから自動で合わせようとしたのが過去の時代の電波時計の局だって記録されていましたし』

 

『わざわざこっちも確認を取りに出向いたからな。過去の不明な電波接続がそれに繋がるとは、思わなかったが』

 

 一瞬、過去の超常現象は全てそれで説明がつくのでは?と思った。けれどそんなオカルト好きが食いつきそうな話題はせず、今現在の話へと集中する。

 これからあれと、ゼロン側の巨大MAをどうするのか。隊長達は戦力分けを話す。

 

『それで、あれどう対処する?多分ハル・ハリヴァーもいる、いや、あのMAがハルだと思うけど』

 

「いや、ハルはMAじゃない。もう一機、何か重装備を施している敵がいる。それが奴だ」

 

『そうか。そういえばシナンジュ・ゼロンのプロトタイプが居たな』

 

「あぁ、だからそいつが装備している」

 

 実際に見ていない、望遠にも関わらず敵の正体を看破する。元隊長のDNL能力による心眼を基に、新堂隊長が案を出す。

 

『ユグドラシルフィールドをどうこう出来るとすれば、元隊長のクローザーしかないだろう。辛いところだがゼロン、ハル・ハリヴァーは私に任せてもらえないだろうか?』

 

『確かに、ニア・ゼロングを相手にしてもらいたさはありますけど、ハル・ハリヴァーを近接戦で止められるだけの実力があるのは沙織ちゃんしかいないよね』

 

 蒼梨隊長が納得してハル・ハリヴァーの相手を任せる。それを元隊長も頷いて続くニア・ゼロングの相手について蒼梨隊長に打診する。

 

「となれば深絵には指揮を兼ねてニア・ゼロングの相手をしてもらいたいが……戦力としてはどれくらいほしい?」

 

『そりゃあ全部隊欲しい!ってところだけども……少なくとも近接メインでダメージ与えられる子をお願いしたいな。宗司君は大丈夫?』

 

 白羽の矢が立ったのは宗司。DNLでなおかつ近接型でダメージを与えられるのでまず間違いないだろう。千恵里自身もそれが適正だと思った。

 ところが元隊長は別の思惑があるようで、それを却下する。

 

「いや、宗司にはハリヴァーのシナンジュ・ゼロンの相手を任せたい」

 

『え、俺が、ですか』

 

『それだとあのMA落としきれないんじゃないの?』

 

「MAの相手は、入嶋と呉川に任せたい。新装備のDNブースターと合体してな」

 

「っ、私も、ですか」

 

 思わぬ自身の出番に驚く。現状予備のバックパックの調整が遅れていたためアルヴは出撃をお預けされていた。だから出るとしたらDNブースターとドッキングした状態、DNアーマーでなければならなかった。

 それを予想外の形で、元隊長に出撃を依頼された。それを嬉しく思わないはずがない。元隊長はそうだ、と言った。

 

「お前には射撃戦をメインとしたG装備だ。呉川、DNアーマーのS装備で奴のDNウォール発生器を潰してくれ」

 

『大型ソードなら叩き斬れると。それでも厳しいところではありますが、了解です』

 

「よし、艦長、それで行くぞ。指示の伝達を頼むぞ」

 

『了解です、隊長。さぁ、まもなく戦闘空域到達。MS隊発進準備!』

 

 艦長の声と共にMSハンガーが次々と起動していく。千恵里もすぐに調整中だった時期のハンガー前まで行って、DNアルヴへと装依する。

 バックパックセレクトはなし。その状態でハンガーの移動が開始される。発進用カタパルトに固定され、発射姿勢を取る。

 オペレーターの真由から発艦許可が告げられる。

 

『アルヴ発進、どうぞ!』

 

「入嶋千恵里、DNアルヴ出ます!」

 

 応答をしてヴァルプルギスから発艦する。発艦後、スピードを落としてヴァルプルギスの側面へと移動し、待機する。

 ヴァルプルギス側面のコンテナからパーツが分離、戦闘機のような機体がDNアルヴに接近する。その戦闘機は空中分解の如く変形を起こし、中央が開いた形態へと移行する。

 その中央部分に向けて機体を後退させる。バックパック接続部と中央の接続部が連結し、足底部が下部レッグユニットの接続口に収まる。

 これがガンダムDNアルヴの新たな力。新たに合体したユニットの形態を叫んだ。

 

 

「DNアーマーG-Side(ジーサイド)!合体完了!」

 

 

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EP50はここまでです。

ネイ「なんていうか……とんでもないものを発生させましたね、未緒一派は」

グリーフィア「タイムスリップとか完全にユニコーンのがネタじゃない……。でも世界を変革……なるほどねぇ、ちゃんとサブタイトル回収してるってことね」

ユグドラシルフィールド、ユグドラルフィールドが実現できない世界の変革を起こす。もちろん過去に発生した時も元君達は危険視して破壊を狙った。アンネイムドが封印指定された理由も、変革を恐れた政府が行ったってわけだ。

グリーフィア「原型の方もミネバ殿下がサイコフレーム禁止協定結んだくらいだものねぇ。けどこっちじゃユグドラルフレームの禁止まで行かなかったと」

禁止したらシュバルトゼロとかに支障が出るから。それに別世界があるってことを考えるとこれを封印するのはあまりにリスキーすぎたってこと。それに設定では元君達もユグドラルフレームの禁止に待った掛けてるからね。

ネイ「元さん達まで……あ、でもよくよく考えるとヴァイスインフィニットへの対抗策が無くなるからですか」

そういうことです。

グリーフィア「シュバルトゼロはそれを止めに行かなきゃいけないからⅡニア・ゼロングを止めるのも大変ねぇ。けど、DNアーマーようやく登場だから、ちゃんと止めて欲しいところっ!」

ネイ「わざわざ前もって紹介されていたもんね。ここはちゃんと止めて欲しいところだね」

さぁ、DNアーマーを装備して、入嶋もいよいよ活躍か?と今回はここまでです。

ネイ「また次回、です」


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EPISODE51 世界を変革する神話領域3

どうも、藤和木 士です。EP51と52の公開です。まずはEP51から。

レイ「DNアーマー出撃!いよいよ千恵里ちゃんの方にもスポットライトが当たるときだね!」

ジャンヌ「ユグドラシルフィールド……果たして止められるでしょうか?」

というわけで本編どうぞ。


 

 

 合体した入嶋のガンダムDNアルヴはその両側と肩部に巨大なビーム砲、重火器を携えていた。迫力からしてみれば、自身のガンダムDNアーバレストを超えるほどの火力が期待できそうだった。

 巨大なブースターユニットとドッキングした姿に圧倒される。だが彼女だけではない。反対側でも元隊長に指示されていつもの換装スタイルではなく同系のDNブースターとドッキングする呉川小隊長のソルジアスの姿があった。

 ドッキングを終えた二機が前方へと加速し、こちらに追いつく。

 

『DNアーマーS-Side、ドッキング完了』

 

「これが、MAとの対決も考慮した対策、か」

 

『あーいいなぁ、あんな重装備私も装備したいっ!』

 

 オペレーターの光巴がそんな欲望を口にする。徹底したメカフェチ、否MSフェチのようだ。

 とはいえ装備の大きさがもたらす利点、欠点は装着した二人も理解しているようだ。それぞれ感想を漏らす。

 

『出力が段違い……機体自体にもDNジェネレーターが入ってるにしても、これは……!』

 

『だがその分、出力制御は慎重にやらねばならない。動き自体も緩慢だ。あまり近づきすぎるなよ、入嶋』

 

『了解ですって!』

 

 二人の会話の後、ヴァルプルギスからジェミニアスが発艦した。早速クローズフェニックスと合体し、シュバルトゼロクローザーへと姿を変える。

 すぐに艦の甲板へと降り立ち、感触を確かめるような動作をするクローザー。それは無論ジャンヌ副隊長の様子を確かめているのであった。蒼梨隊長が具合を尋ねる。

 

『元君、ジャンヌちゃんは本当に大丈夫なの?』

 

 蒼梨隊長のジャンヌ副隊長への心配に元隊長は自信が無さげに対策を語る。

 

『なるべく俺に負担を集めるが、ジャッジメントクローズモードを使う以上、パイロットのエンゲージパートナー双方にダメージが及ぶのは間違いない。その時は頼んだ』

 

『あぁ……相変わらず無茶ばかりをする……』

 

 無茶を通り越して無謀を感じさせるが、それしかないのもまた事実のようだ。ジャンヌ副隊長が、こちらのエンゲージパートナーであるエターナに釘を刺す。

 

『エターナ、私に何があっても、あなた達は任務に集中してください。いいですね?』

 

『って言われても、姉様が撃墜されでもしたら!』

 

『それでも、今は最重要ターゲットを止めなければいけない。アンネイムドの、暴走を止めなければ、今ある世界が終わってしまう。私とて、この世界が終わってしまうのは嫌ですからね』

 

『うぅ……でも、その為に姉様が犠牲になることは』

 

 ジャンヌ副隊長、エターナはこの世界の住人ではない。この世界のもめ事に、いくら発端があったとしても命を張る必要があるのだろうか。

 しかしジャンヌ副隊長にはその気があった。いや、少し違うだろうか。副隊長は言う。

 

『犠牲になんてなるつもりはありません。ただ私は、レイアさんに笑っていてほしい。助け出した後に後悔なんてしてもらいたくないから』

 

『……もうっ。元君と似て、強情なんだから……』

 

 呆れと叱りを込めた蒼梨隊長の声には、これまでも何度も肩を並べて戦った者同士の慣れとも言うべきものを感じ取れた。言っても聞かないと分かって、そのうえで止めたい気持ちを抑えている。

 既に出た機体を下げることも出来る。にも関わらず、蒼梨隊長は自衛軍の新堂隊長と作戦の確認を行う。

 

『それじゃあ、新堂さん、手筈通りに』

 

『あぁ。宗司君、私達の方に』

 

「了解です」

 

 宗司は先程の打ち合わせ通り、自衛軍、新堂沙織の率いるソルジスタ部隊と合流した。合流した先で学校の後輩二人と軽く挨拶する。

 

「というわけで、二人のお師匠様にお供させてもらうよ」

 

『まさか、宗司先輩と共同戦線を張ることになるなんて、ちょっと驚きです』

 

『ほんまや。先輩つっても、加減しませんからね?』

 

「あぁ。エターナも頼む」

 

『しょうがないわね。姉様を護るためにも、こっちが囮になるわよ!』

 

 共に奮起する。そして全MSが一気に速度を上げて、戦線を構築するべく敵と接敵した。

 

 

 

 

 俺達はまず、真っすぐにニア・ゼロング近くに位置取っていたハル・ハリヴァーの機体へと急接近する。当然敵の弾幕、本体からの近づけさせないための射撃が飛んでくる。

 先頭の新堂隊長はMS刀を抜くと、その弾幕を切り捨てていく。

 

「っ、はぁ!」

 

 回避も織り交ぜて順調に距離を詰めていく新堂隊長。宗司と友直、智夜は共にその後を追うが、流れ来る弾雨に対処しつつも、新堂隊長に付いて行くのがやっとだった。

 弾を避ければ、また次の弾が飛んでくる。避けきれない弾は咄嗟に展開したドライバ・フィールドで防いでいく。この人に付いて行くのは元隊長以上にきつそうだ。

 ドライバ・フィールドを使えない友直達が心配だったが心配は無用だった。二人の機体もそれぞれの格闘戦兵装、友直は新堂隊長と同じMS刀で、智夜は槍で攻撃を捌いていた。

 

『くうっ、てぇい!』

 

『よっ、ほっ。まぁ数だけ多いやね!』

 

 二人の技量を少々甘く見ていたようだ。負けられない。宗司も目覚めつつある直感で侵攻の速度を上げていく。

 弾幕の雨を突破する頃には既に他部隊への迎撃に敵の意識が向けられ、新堂隊長がシナンジュ・ゼロン、並びに別の白いMSとの戦闘に入っていた。

 

『このっ、量産機風情が!』

 

『その機体で、よくやる』

 

『生憎ながら、私も部隊の隊長を務めているのでね』

 

 一対二でありながら高級機二機を相手に翻弄している。それを少しでも楽にすべく、宗司もまたDNアーバレストを戦いに割り込ませる。

 

「はぁっ!」

 

『む』

 

 ザッパーでシナンジュ・ゼロンへと斬りかかる。ハリヴァーはそれを回避する。重装型に装備変更しているにも関わらず、容易く避ける様は、やはり二つ名を持つエースと言ったところか。

 友直と智夜も白い重装型との相手を務める。接近戦を仕掛ける両機に、他機からの支援を受けながら射撃戦で苦手な近接距離の戦闘を避けていく。

 だがそれでも誰もが目の前の敵に食い下がっていく。新堂隊長の機体と共にシナンジュ・ゼロンと刃を交える。

 

『ガンダムDN……噂には聞いていたが、よくやる』

 

「っ、そうじゃなきゃ、止められない!」

 

 接触回線で聞こえた敵からの賛辞に対し返す。元隊長の作戦の為にここで抑え込まなければならない。エターナも姉を護るべく反射的に返す。

 

『あんたなんか、姉様の敵じゃ!』

 

『宗司君、エターナ君避けろ!』

 

 飛んできた新堂隊長の声に合わせて、ハリヴァーのシナンジュ・ゼロンに追加されていた肩部アームユニットからビームが振るわれた。横薙ぎにビームサーベルとしての一撃が、間一髪避けて胸部へのわずかな傷を作り出す。

 回避こそしたものの、制御に手間取る。続く追撃を辛うじて新堂隊長の機体に防いでもらう形となった。

 新堂隊長の機体はそのまま二度の鍔迫り合いの後弾く。先程の言葉の続きを、ハリヴァーが語る。

 

『だが、まだ甘い。いや、若い、かな?言葉に熱がこもっている。それを経験して、大人になればいいがね』

 

「くっ」

 

 大人になればいい、とは随分と洒落た挑発だ。こちらを撃墜するつもりでやってきたにも関わらず、そんなこと思ってもいないだろうに。

 だがその指摘は事実だ。それを認めて今度は黙って戦闘態勢を整える。ハリヴァーは装備を展開し、迎撃する構えを見せた。と、そこでニア・ゼロングの側の敵にも気づいていた。

 

『む、あれはMA……ふふ、対艦戦用装備か』

 

 DNアーマーとニア・ゼロングが戦闘を開始した。DNウォールを破るべく、呉川小隊長、入嶋、そして蒼梨隊長がそれぞれ部隊を率いて撹乱して隙を探る。

 ニア・ゼロングはこちらを気にも留めず応戦する。予定通りだ。ニア・ゼロングをあの機体達で押さえられれば元隊長達の方に戦力は向けられない。

 フェネクス達の起こしているユグドラルフィールドが拡大しているおかげで、こちらも徐々に距離を取り始めている。フィールド解除後の奇襲もしづらくなる。

 しかし当然、敵もそれには気づいていた。シナンジュ・ゼロンがこちらの戦線を抜けようと急加速を行う。が、それを阻むようにこちらも塞ぐ。

 

『悪いが、あのMAも君も、フリーにするわけにはいかないな』

 

『だろうな。だがしかし、君も知っているはずだ。あのMA、Ⅱニア・ゼロングがただのMSやMA程度では止められないことを。そして』

 

 シナンジュ・ゼロンの増加装甲部が動き、拡張された。

 

 

『この今の私の機体が、かつて君達を苦しめた、ニア・ゼロングのオリジナルコアにして、その後継形態であることを、君達に教えよう。―――――ユグドラルアーマー、ユグドラルシャード展開。爆ぜろ!!』

 

 瞬間、おぞましい意志を感じ、咄嗟にドライバ・フィールドによる防御姿勢を取った。が、続く光景に言葉を失う。

 

『がぁ!?』

 

「っ、新堂隊長!」

 

 新堂隊長のソルジスタが、敵に触れられることなく、爆発を起こした。

 

 

 

 

 深絵や沙織さん、CROZEメンバー達が奮戦する中、艦のいる後方まで待機していた俺達も動く。

 

「ジャンヌ、行けるか」

 

『出力系の感じは掴みました。体力も調整出来ています。いつでも』

 

 こちらの呼びかけにジャンヌはそう答える。艦でモニタリングしていたメディカル担当医とジェミニアス機付長の来馬もOKサインを出す。

 

『心拍数、血圧、共に正常値をキープ』

 

『シンクロ率に問題はなし。だけど分かってると思うけど、ジャッジメントクローズモードはジェミニアスの、エラクスモード時をも超える負荷がかかる。しかもジャンヌちゃんは前の戦闘で倒れかけてるし、何なら実機でのクローザー各モードを彼女はほぼ触っていない。無理だと判断したら、すぐ後退を』

 

 いつものおちゃらけはどこへか、慎重な声音で通信を行う。曲がりなりにも彼女もまたMSオーダーズ時代からのHOWのベテラン。年数で言えば元よりも長い。

 特に東響掃討戦以後からは周りの整備メンバーの体調管理などにはきちんと配るようにもしている。機体の特性をデータから読み取り、こうしてこちらにも注意を向けるほどに成長していた。

 そんな彼女の言葉に元とジャンヌももちろんだと頷く。

 

「あぁ。分かっている。止めた上でジャンヌを生還させる」

 

『生きて帰らないと来馬さんも大泣きしちゃいそうですからね』

 

『もうっ。もし帰らぬ人になったら、髪全部私が冷凍保存するからね!そんな鬼人みたいなことさせないでよ!』

 

『あらら……それは普通に嫌ですね』

 

 そんな出撃前のような笑いのムードを作っていると、紫音から現状の報告を受ける。

 

『隊長。前衛部隊が敵と交戦を開始。予定通り、戦線を上げてフィールドから距離を話しているわ』

 

「よし、こっちも手っ取り早く片付けよう。白と利一もいいな」

 

『問題ないです』

 

『一応何かあった時の為の予備戦力として持ってきておいて正解だったな』

 

 白と利一がアンネイムドとは違う、本来の彼らのソルジアスで応答する。それぞれがアンネイムド用のビームマグナム装備と可変機用のビームランチャー装備で構える。

 フィールドに対抗している間は専用機を奪われている彼らがサポートに付いてくれる。逆に言えばそれしか戦力に回せないわけだが。

 確認を終え、最後に再びジャンヌにクローズ回線で言葉を掛ける。

 

「ジャンヌ……すまない」

 

『謝らないでください。もとはと言えば、私がアンチユグドラル兵装の接近に気づかなかったがいけなかったんですから。エンゲージパートナー失格ですね、あはは』

 

 嘘だ。本来敵機の反応には自分が気づくべきだったのに。DNLとしての能力を使わずとも、ジャンヌの必要以上の不甲斐なさが、言葉の端にとれる。

 けれどもそれは裏を返せば元自身にも当てはまることだろう。謝るなと、俺が悪かったと、エンゲージパイロット失格なんだと、ジャンヌには聞こえているのかもしれない。DNLでひしひしと伝わってくるかもしれない。

 今の俺に出来るのは、ただ破壊することだけだ。目の前の障害、世界を作り変えようとする「奇跡」を望む者達の願望の領域。誰かにとっての希望は誰かにとっての絶望だ。その希望を破壊する魔王として今の人の世を革命の如く壊そうとする救世の産声を叩く。

 だから発破を自身に掛けるように俺は発進を合図した。

 

「……行くぞ。シュバルトゼロクローザー、これより敵超次元現象強制適用フィールドの破壊行動を開始する!」

 

 艦の甲板から飛ぶと肩部合体バインダーの蓋を開いて粒子を放出、加速する。やはりこれまで以上の圧倒的な加速力。体にGを感じる。

 なるべくジャンヌに負担がかからないよう、そして白達が付いて来れるように速度をセーブして海上のユグドラシルフィールド発生領域へと向かう。到着すると、周りにはフィールドの接触を受けて轟沈したローズ・ポート、並びに未緒一派に属していたMS達の退避行動が見られた。

 混雑した回線からは傭兵達の契約金の支払いや、それに応対しつつも今は未緒を信じて敵を止めろと叫ぶ側近の声が聞こえる。やはり金の切れ目が縁の切れ目と言った具合か。

 しかしそれでも一部の傭兵達は迎撃に来た。

 

『敵機です。数は5』

 

「ちっ、こんな時に」

 

 邪魔な奴の相手はごめんだ。ところが、それを相手にする者こそ、追随する白と利一だ。

 

『やりますよ、利一大尉!』

 

『あぁ、白!』

 

 二人は素早く狙いを定めると攻撃を開始した。ミサイルランチャーで敵を動かし、そこをそれぞれビームマグナムとビームランチャーで一網打尽にし、あっという間に交戦を終わらせた。

 流石は二年前の事件でアンネイムドのパイロットとして戦っただけはある。アンネイムドに乗ってなくともこれだけの力を持っている。

 とはいえ、彼らに出来るのはこれくらいだろう。彼らの援護を受けて、今ようやく件のユグドラシルフィールドの前まで到着する。

 

『これが……二年前白さんが起こしかけて、今はそれをも超える出力のユグドラシルフィールド……』

 

『単純計算で三倍。でもこれは、単一の願いを他の二人が無理矢理増幅させているものだ』

 

 白の言う通り、このフィールドから伝わるのはとある一人の念だ。怒り、悲しみ、妬み、後悔。誰の物かは想像がつく。

 例えそうだとしてもやることはただ一つ。だからこそその名を周囲へ告げた。

 

 

 

 

「さぁ、世界を壊そう。革命を起こそうとする者に鉄槌を下すために。ジャッジメントクローズモード、解放!!」

 

 宣言と共にクローザーの出力が上昇を始めた。フレームが金色の輝きへと変わっていく。エレメントも同色が多量に振り撒かれていく。

 機体外見の大きな変形はない。だがその変貌は誰の目からしても変質を感じ取れるほどにエネルギーが溢れていた。

 背部マルチプル・スペースシフターから自動で武器が分離し、組み上げられていく。完成したのはジェミニショットライフルと、これまで一度も武器に組み込まれてこなかったジェミニブレードウイング、それから持ち手のパワーグリップで構成された大剣。

 ジェミニアスでもっとも高威力の武器でありながらその威力の為に今までの戦闘で封じられてきた兵装、ジェミニアス・マテリアル・デトネイターを握り、掲げた。

 すべては新しい世界の実現を止めるために。魔王の裁きが下されようとしていた。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP51はここまでです。

レイ「千恵里ちゃんの大活躍~と思ったけど、視点は宗司君だったね。でも無事MAとの交戦には入ってるみたいだね。でもそれ以上にシナンジュの方がヤバいことやってるよぉ?」

ジャンヌ「まるで、というよりネオ・ジオングの力をそのまま引き出しているように思えますね。いきなり爆発って」

それこそシナンジュ・ゼロン・ハルの力。小さくなってもニア・ゼロングを2体相手にしているのと同等ですからね。

ジャンヌ「そんなヤバい敵を放っておいてシュバルトゼロクローザーは遂に神話領域の破壊を行おうとしているわけですね」

レイ「世界を壊す、革命に鉄槌ってもう悪役だねぇ。でも止めないといけないから合ってるよねコレ」

必ずしも革命が正しいとは限らない。そもそも革命も成功したから革命と呼ばれるのであって、やってることはまぁまぁテロみたいなものだし。とそれは今いいわ。
シュバルトゼロクローザーもいよいよ最終兵器ジェミニアス・マテリアル・デトネイターを持ち出したぜ(^ω^)

レイ「あらかじめ紹介されていたけどジェミニアスで一番強いって武器らしいね。ぶった切るのかなぁ?」

ジャンヌ「精神の奇跡を、果たして人類の叡智が上回る、でしょうか?」

というわけで次に続きます。そのまま続けてよろしくどうぞ。


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EPISODE52 世界を変革する神話領域4

どうも、藤和木 士です。EP51と52の更新です。続いてEP52の更新です。

ネイ「革命と対峙する王……世界が変わるか、今を維持するか……」

グリーフィア「まさになるべくして敵対する者って感じよねぇ。でも今回は魔王に勝ってもらわなくっちゃね!」

というわけで本編をどうぞ。


 

 

『フン、ユグドラシルフィールドは絶対。壊すなんてことガンダムだってできないわ!』

 

 内部から周囲に向けて流未緒の声が拡散される。もはやユグドラシルフィールドは彼女の制圧下にあると言っていいのだろう。

 それを聞いてなお元はその剣を下ろさない。構えた状態でユグドラシルフィールドの読み取りを行っていた。

 

(三機分のユグドラシルフィールド……出力は高いな。だが、無理矢理引き出している分、安定性は……!)

 

 まだ止められる。そう確信し、護衛に付いた白達に離れるように言う。

 

「白、利一、距離を取っていろ!」

 

『任せます、背後は任せてください』

 

『頼むぞ、魔王!』

 

 二人の離脱を確認する。俺はジャンヌにも合図を出す。

 

「ジャンヌ、行けるな?」

 

『っ、はいっ。ジャッジメントクローズの負荷、まだ耐えられます!』

 

ジャッジメントクローズモードの押しかかる負荷にジャンヌは耐える様子を見せた。覚悟は決まった。そしてその剣を大仰に構え、振るった。エネルギーをチャージしたデトネイターで、ユグドラシルフィールドと激突する。

 本来なら簡単に切り裂ける攻撃力。だが彼女の言葉通り、ユグドラシルフィールドはその攻撃を容易く受け止め、刃を通さない。どれだけ力を込めて押し込んでも、鉄に包丁を差し込もうとするかのように通さない圧倒的な防御力にジャンヌが苦悶する。

 

『っく、硬い!』

 

「単純な防御力じゃない……これは攻撃の拒絶か」

 

 接触して感じ取る。ユグドラシルフィールドに込められた他者を拒絶する命令が、攻撃を通さない様にしていた。

 これらはいずれもユグドラルフィールドに共通する性質だ。しかし今回はそれを増幅して現出させているユグドラシルフィールド。通常の時のように、同じユグドラルフィールドでの中和やパワーでのごり押しは効かない。やるなら、同出力のユグドラシルフィールド位の物だろう。()()()()

 

「だが、この程度ならっ!押し通る!」

 

 その宣言と共に一度距離を取ったシュバルトゼロクローザーで突貫姿勢を取る。腰だめに構えなおした大剣で突き刺すように再度フィールドとぶつかり合った。

 バチバチと、フィールドの抵抗を受ける。むしろ、その干渉を起こした電撃が、こちらを取り込もうと覆いつつあった。白が注意を呼びかける。

 

『元さん!それに飲み込まれたら……!』

 

 危険は承知だ。しかし、手加減すればかえって危険だ。意識をフィールド側に持っていかれない様に強く持つ。

 しかしその影響はジャンヌにも出る。精神への汚染に苦しみだす。

 

『ぁ……いやっ、私の大切なものが、上書きされるぅ……!元ェ!』

 

 その悲鳴にわずかに均衡が崩れる。フィールドからの侵食を受け始める。戦うことこそが愚かなのでは、このままこの感覚に委ねたい気持ちが侵食していく感じだろうか。

 こちら側に来い、とでも言うように取り込もうとして来る。一刻も離れた方がいい。しかし、クローザーをそのまま接触させ続ける。

 

『フフッ、もう逃がさないっ!このまま操り人形にしてあげる!』

 

 未緒が一気にフィールドの侵食速度を上げてくる。機体が飲み込まれかける。その時、クローザーが動いた。

 

「っ!!はあああぁぁぁ!!」

 

『っぐ!?何っ!?』

 

 刃をフィールドが侵食し始めた直後、一気にデトネイターを振り抜いた。フィールドに呑まれていた先がDNへと還元されかけていたのだが、気合を込めた直後再形成されてフィールドに切れ込みを生んだ。

 侵食を物理的に切り払い、すぐに距離を取る。蝕まれていた思考もすぐに本来の自分へと取り戻していった。ジャンヌも珍しく半泣きながら自身を取り戻した。

 

『はぁっ、はぁっ!私……ダイジョウブ……大丈夫ですよね?元の事、忘れてない……!?』

 

「あぁ、忘れちゃいない。俺達は戦う。戦いを止めない。戦い続けて、勝つ、勝ち続ける!」

 

 強く宣誓する。それは魔王として敵対する者に対しての言葉。もう負けないとあの時、マキナ・ドランディアで誓った覚悟。

 HOWの中核となったCROZE部隊の隊長の力を、見せる時だ。

 DNLの能力で機体のフレームに作用させ、ツインジェネレーターの稼働率を上げる。加えて、もう一つの「奥の手」を取り出す。

 背部に装着されたクローズフェニックス、その頭部パーツを引き抜く。異様な形をしていた頭部は手に持つことでやや不格好とも取れる銃、あるいは剣へと変わった。

一本の剣としたそれに、これもクローズフェニックスの合体したウイングパーツの片側から分離した鋭利な羽が分離して合体していく。6枚の羽根と合体した剣「エリミネイターソード」はデトネイターと同じ幅広の大剣「エリミネイターバスターソード」へと姿を変えた。

 MSが、人の姿には些か不釣り合いな2本の大剣を握った状態から、DNFを起動させた。

 

『Ready set GO!DNF「エリミネイト・デトネイター」!』

 

 大剣にエネルギーを集約させる。そのエネルギーはDN、ユグドラル、そしてエレメントを含み、剣そのものを光らせる。圧倒的なまでのエネルギーを剣の中に収めてそのエネルギーをぶつけるべく再びフィールドへと接近する。

 先程と同じように大剣を振り下ろす。エリミネイターバスターソードでフィールドを切り裂こうとする。が、やはり強烈な拒絶を受けて刃は切り裂くに至らない。

 しかしそのまま振り抜き、勢いのまま今度はジェミニアス・マテリアル・デトネイターで斬りつけた。こちらも同じだ。切り裂けない。

 もはや打つ手なしかと思われた。だがまだだ。まだ、攻撃は終わっていない。まだ攻撃は途中の段階。二度の斬撃に続き、クローザーを操り三度目となる刺突を二本の大剣で同時に行った。二本の剣で同じ個所を同時に突く。

 再び起こる干渉のスパーク。やはり反応は同じ。このままなら再び取り込まれかねないだろう。ところが、今回は変化が起こる。ピシッ、とフィールドに亀裂が走った。

 

『……嘘でしょう?何で、何でっ!くっ!』

 

 起こり得ないと思われた現象を目にし、内部から見ていた未緒の声が震えだす。すぐさま亀裂の修復に入る様子を見せる。だがこちらはそんなものは待たない。ジャンヌに呼びかける。

 

「ジャンヌ、ここで決めるぞ!」

 

『早く終わらせましょう。こんな気味の悪い領域の拡大は!』

 

 先程の侵食への恨みを口にして、ジャンヌが奮起した。出し尽くしていたはずのDNL能力をフレームへと伝達させ、更にシュバルトゼロクローザーの出力を上げる。それをちゃんと機体へも反映させていく。

 機体に発破をかけるが如く、叫ぶ。

 

「こんのぉ!!」

 

 より洗練させた切れ味を持ったバスターソード、デトネイターが遂に難攻不落とも呼べたユグドラシルフィールドを貫く。今度ははっきりと両兵装が現存したまま、内側へと入り込んだ。

 フィールドに刻まれた亀裂が拡大していく。亀裂からは内部に充満していたはずのユグドラルが次々と漏れ出し空気中へと霧散していた。

 更に内部にいたアンネイムド達にも変化が生じる。三機が一様に震え出し、苦しみだす。その耳に、脳裏にようやく残りの声が聞こえてくる。

 

『がぁっ!あ、あぁ……!』

 

『そん、な……こんな、ことで……っ』

 

『これが……魔王の…………こんなの、止められるわけ』

 

 その声にわずかに耳を傾けてトドメを繰り出す。

 

「これでっ、壊れろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 クロスさせる様にして刃を引いてから、思い切り斜め上へと振り上げる。振り上げた剣の切っ先の軌道から衝撃波がユグドラシルフィールドへと伝わっていく。亀裂を砕いていくように衝撃波は走っていき、ユグドラシルフィールドは砕かれていった。

 崩壊する流未緒の願う神話領域。破片は次々と海上へ落下していく前に空気に溶け、何も残らなくなる。人類進化の力とされたアンネイムドも一機を除いて、それぞれ地上へと力を失って降下していく。そう、たった一機を除いて。

 その一機、流未緒の駆るアンネイムド[バンシィ]がユニコーンドモードへと解除されながらもこちらに襲い掛かってくる。

 

『魔王!よくも、私の願いを、世界をっ!』

 

「ふっ!」

 

 振り抜かれたビームサーベルをデトネイターで受け止める。それを弾くと反対のバスターソードで頭部を体から斬り飛ばす。メインカメラを失い、コントロールも失ってバンシィが海上へと落ちて行った。

 そこに護衛に付いていた白と利一が見渡して言った。

 

『流石ですね、元さん。まさか、本当にユグドラシルフィールドを破壊するとは』

 

『やはり、新型の力は伊達ではないか』

 

「そうでもない。二人が周りを片付けてくれたおかげで、こっちの対処に意識を割けた」

 

 そう言って見せる。事実、あの攻撃はいずれも意味のあるもの。三回の攻撃すべてがいずれも寸分違わず同じ場所を攻撃し続け、ダメージを蓄積させていたのだ。攻撃が通らないとはいえ、あれらはいずれも本来ならMSはおろかMAすらも一撃で両断するとされる攻撃。それを止められた時点であのフィールドの硬さが相対的に分かる。

 が、それらもここまでだった。フレームの輝きが青へと戻り、出力が下がっていく。同時に機体がやや不安定になる。

 

『あ、うぅぅ……』

 

「限界か。よく持たせてくれたジャンヌ」

 

 ジャッジメントクローズが解除されるのはつまり、機体制御を担っていたジャンヌの限界を意味する。なるべくこちらに負担を引き受けていたつもりだったが、それでも負傷した彼女にとっては大きすぎる負担だったのだ。

 ジャンヌは弱々しい吐息を聞かせながら元へと感謝の言葉を伝える。

 

『いいえ。本当なら、もっと……持たせられるようにしないといけないんですから、まだまだです。でも……今回ばかりは、本当にありがとう。あの時……肯定してくれて、だから私も持たせようって思えたんですから』

 

 自然と出たあの言葉が、ジャンヌを最後まで支えてくれたらしい。MVPである彼女をすぐさま休ませてやりたいところだったが、そうもいかない。まだ仕事は残っている。

 

「そうか。でもまだ終わっちゃいない」

 

『えぇ……。二つほど、残っていますね』

 

 二つ、海上に落ちたアンネイムドへの対処と今も戦いを続ける残りのメンバー達への支援。フィールドが拡大していたため、距離はあるがそれでも起こっている異変はすぐに分かる。

 仲間達への支援に行きたさを抑え、それをしり目に元達は海上のローズ・ポート残骸、その上に乗る三機のアンネイムドの下へと向かった。

 

 

 

 

 海上に落ちたローズ・ポートの残骸、そのうえで陽太はようやく自由を取り戻していた。

 

「はぁっ、はぁっ!」

 

『陽太……大丈夫?』

 

 荒く息を吐くこちらにフェネクス、梨亜が体の容体を気遣ってくる。梨亜も強制的に力を使わされた影響で体力を大きく消耗しているにも関わらず、こちらに気にかけてくれていた。

 陽太は力を振り絞って大丈夫だと声を出す。

 

「大丈夫だ。梨亜こそ、大丈夫なのか」

 

『私は……もう肉体なんて概念はない。苦しさはあったけど、まだちゃんと動けるよ』

 

 肉体がない、その言葉に苦しさを感じる。もう本当に梨亜は自分達の手の届かない世界にいる。

 どう返せばいいのか分からずにいたところに、上空から落ちてくる機体があった。未緒の搭乗していたアンネイムド[バンシィ]が、頭部を失った状態で同じ破片の上へと落下してきた。

 

『ぁぁあああ!!』

 

『未緒っ』

 

「………………」

 

 落ちてきた未緒に駆け寄ろうとする梨亜。けれども陽太はそれを無言で制止させた。

 頭部を失い、手を右往左往させる未緒に近づいて見下しを行う。

 

「何だよ、結局お前の理想が負けているじゃないか」

 

『ぅ……陽太……っ!』

 

 未緒は反論すら言えずにいた。あの領域発生時、陽太は未緒の精神と繋がっていた。その時に彼女の真意を改めて確認していた。

 彼女は赦されたかった。俺をだまして梨亜を売った事、梨亜を救い出すことが出来なかった事。その為だけに彼女は今回の作戦を起こした。ユグドラシルフィールドで、お互いが分かり合える、嘘をつかなくていい、生者と死者が出会える世界を望んでいた。

 陽太はずっと前から、彼女の気持ちに気づいていた。けれども陽太自身はもう既に彼女から興味を失っていた。今更答える気にもならない。結局今回も未緒のエゴに付き合うことになってしまった。

 ならばどうして今回の企てに乗ったのか。梨亜に会えるから、というのが第一だったが、それだけじゃない。本当に確かめたかったのは……。

 

「未緒。もう終わりにしよう。お前ももう、梨亜に囚われるのはやめろよ」

 

『!陽太』

 

『陽太?何言ってるのよ。あたしが、梨亜囚われてる……?冗談じゃないわよ!あたしが、梨亜程度にそんな入れ込んでいるとでも!』

 

 未緒は必死に否定する。自分はそんな小さい人間ではないと、動けない状態で喚く。

 梨亜もそれを分かっていたのか、何も言わずに見守る。俺は未緒にここまで着いて来た理由を語る。

 

「俺はずっと求めてきた。梨亜の、俺達の運命を狂わせた者達の謝罪を。もう梨亜は戻らないって、どこかで思ってた。梨亜が戻らなくたっていい。だけど、なら謝ってほしかった。誤ってくれさえすれば、もう俺はそれでよかったんだ。そして、俺自身も謝りたかった」

 

 許し。それが及川陽太の望んだものだった。だけどそれは未緒の赦しとは違う。赦されるために行動したのではなく、ただ謝りたいという気持ちからの行動。梨亜に謝りたい、そして自身は、未緒を許したかった。その気持ちを伝える。

 

「お前がただ、俺に謝罪してくれれば良かった。もうそれで終わりだった。だけどお前は梨亜に会えると言った。たった一言の「ごめんなさい」じゃなかった。変わってないって思ったから、俺もまだ、自衛軍を、あの時の大人達と同じ選択をしている人達を恨むしかなかった」

 

『何よ……そんなの、言ってくれなきゃわかんないわよ!!あたしは、あたしがベストだと思ったことをやってたのに、そんな事だけで許してくれるなら、あたしのやってきたことは何だったのよぉ!!』

 

 泣き叫ぶ未緒。彼女の言い分はもっともかもしれない。言わなければ伝わらない。陽太もそれを含めて彼女に黙っていた自覚があった。だけどそれは未緒にも当てはまる。ユグドラシルフィールドを無理矢理使用するシステムで、自身や梨亜の意志を無視して道具として扱ったことも例外ではない。

 だが言わなかったのは彼女自身が気づくべきことだったからだ。彼女自身が気づかなかったら、謝罪も形だけの物でしかない。彼女が梨亜への後悔の念から解放されたうえで、謝る。それが、及川陽太の願いだった。

 もっとももうそれは望めない。事は大事になってしまった。本当ならフェネクスだけを助け出すはずが他のアンネイムドまで奪い、使った。いくら逆恨みとはいえHOWや多くの人を巻き込んで、世界を勝手に書き換えようとまでした。

 上から聞こえてきた声も、それを指摘した。

 

『―――謝罪だけ、と言っておきながらここまで周りを引っ掻きまわすとはな』

 

『―――あっ』

 

『うぐっ、HOWの、魔王』」

 

 HOWの魔王が、ここに降り立った。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP52はここまでです。

ネイ「ユグドラシルフィールド、発生者の想いを実現するべく、接触したものを取り込む力、ですが」

グリーフィア「想いのこもってるのはシュバルトゼロクローザーも同じ、力のままに切り裂いたって感じねぇ♪いや、パートナーへの気持ちが勝ったってところかしらぁ?」

未緒は二人に良かれと思って勝手に、対して元とジャンヌは互いに思いやって侵食と戦っていた。これが両者の分かれ目っす。

ネイ「だけど、未緒さんも、そして陽太さんもあんなことを思っていたんですね」

グリーフィア「赦されたい。簡単だけど、難しいわよねぇ。赦すこともまた同じ。すれ違いだったこの子達も今回は救われてほしいものねぇ」

まぁこれだけのことやってHOWとかには許されないでしょうけどねぇ。だけど、少しは道を変えられる、ということを見れるといいですが。と、今回はここまでです。

ネイ「それではまた次回」


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EPISODE53 虹と鳥と暴かれし者と1

どうもお久しぶりです、藤和木 士です。EP53、54の公開です。まずはEP53から。

ジャンヌ「随分と時間が空きましたが、いつもの次章設定の為の準備期間ですね」

レイ「てことはもう今章は書き終えてるってわけだ!だったらもう先に話消化した方がいいのにねー」

それはちょっと思ったけどね。とはいえこれが私のスタイルだ。というわけで本編をどうぞ。


 

 

 

 ユグドラシルフィールドを破壊、世界の書き換えを止めて「くれた」漆黒のガンダム。二機のソルジスタを引き連れて降りてきた魔王黒和元は、こちらと未緒の方を一瞥してこれまでの惨状に感想を吐く。

 

「お前達の勝手な期待で、多くの人が傷ついた。どういう思惑であれ、お前達はその道を自らの意志で取った。今更、止めたかったで言い訳なんて出来ない」

 

「確かにそうだ。だけど、それはあんただって同じだ。人なら正しく使いこなせると、ガンダムの情報を開示して」

 

「俺はそんな、人なら正しく使いこなせるなんて善意の理想で、MSの情報を開示したりはしないさ」

 

 未緒に従ったまで、とはいえ決してその技術を譲渡した根源を許すわけじゃない。魔王の真意だけは聞かなければ、謝罪が聞けなければまだ終われない。

 魔王に問う。

 

「なら、何の為に」

 

「人の進歩に、理由が必要か?」

 

「そんなの、当り前じゃないか!」

 

 理由のない進歩なんてない。そう言って見せる。空を飛びたい、そう思ったからこそ人は飛行機を作ったのだ。人々の生活を豊かにするために、人は成長していく。

 ところが魔王はその考えに異を唱えた。

 

「当り前、とは大きく出たな」

 

「何だと」

 

「進歩とは、人の歴史において生き残るために必要なものだ。その理由など、ただ生きるということだけで十分だ。それに基づけば、俺は生きるために必要だと思って情報を渡したに過ぎない。後の人間がどう使おうと、それはその起こした者達の問題で、俺の問題ではない」

 

「ふざけるな!そんな責任転嫁が許されるとでも!」

 

 すぐに責任転嫁だと否定する。ところがそこに割って入ったソルジアスのパイロットがそれを肯定する。

 

「いいや、魔王の言っていることは間違ってはいないよ」

 

「何っ」

 

 アンネイムド装依者本人の言葉が告げられる。

 

「人は時に過ちを犯す。誰だって悪に落ちる可能性を持っている。君だって、その悪の可能性に落ちた。だけど大事なのはその自分を肯定する、信じることだ」

 

 自分の肯定。その最たる例を先程の陽太の会話に当てはめて言った。

 

「さっき君も流未緒に願っていた、謝ってほしかったというのと同じだよ。自分の罪と向き合うことだ」

 

「そんなの分かってる。だから今魔王に聞いたんじゃないか!」

 

「なら、彼は既にその責任を果たしている」

 

「何だって……?」

 

 意味が分からない。一体どこが、責任を果たしているんだと。ただ任務に従って敵を倒しているだけの男が、どうやって。

 それは陽太の意識から大きく外れた、しかし思わずうならされるものだった。

 

「彼は戦っている。戦い続けている。どれだけ魔王と罵られても、前に出て戦い続けている。いや、むしろそう名乗った。それが彼の負った責任の形だ」

 

「戦い、続けている、それ自体が……責任?」

 

 一瞬、何を言っているのかと思った。戦っているのだったら意味はない、と思っていた陽太の考えに真っ向から否定する意見。

 意図を自分なりに汲んだソルジアスのパイロットは続ける。

 

「戦い続ける、なんて誰もが出来るように見えて、とっても難しいことなんだ。当たり前だと思っている人ほど、簡単に出来ると思い込んでいる。だけど実際はそうじゃないことの方が多い。元さんも例外じゃない。そうですよね?」

 

「まぁな。俺自身ジャンヌの献身あればこそ、戦い続けられている。俺は何人、何十人、何百人以上もの人の命を奪った。戦った者がいずれも敵だとしても、敵にも理念が、願いが、奴らの正義がある。それを潰しておいていい気はしないさ。ま、それでも叩き潰しはするが。それに俺は何も、争いを起こすために技術を提供したわけじゃない。寧ろ、終わらせるために開示したんだからな。お前にとっては争いを起こした側だろうが、白も例外じゃない、か」

 

「そうやってかつての僕のような敵を作ってきましたね。そんな真っ直ぐに動いて、反発を買うように。だからこそ、ジャンヌさんの信頼を得られているんでしょうが」

 

 そんな会話に閉口する。梨亜もただ黙って俯いていた。自分達の考えていたことは、もうとっくの昔に、この人達にとっては通ってきた道なのだと。ただやり方が違っていて、それに気づかなかった。

 その紹介を受けて黒和元は戦いに賭ける想いと共にこれからどうするかを陽太に語る。

 

「俺は立ち止まるわけにはいかない。勝者は戦場に残り続ける。そしてお前も、まだ戦場に残っている」

 

「なら、どうしろと」

 

「足掻き続けろ。それでも、と。俺はフェネクス、鳥金梨亜の望みを否定する。そいつの望みは人類の進歩を後退させる。だがお前はその彼女を、彼女の残留思念だけの存在を護りたいのだろう?ここまでしたお前に、その覚悟がないと?」

 

 ここまでしてきたことに省見ればこれくらい、とでも言うような、いや実際言っている魔王。言うことは癪に障るし、梨亜も言い分に懐疑的だ。

 

『覚悟だなんて。陽太はただ、私に』

 

「こいつの覚悟を、お前が語るな。こいつの覚悟は、こいつ自身の物。そしてフェネクス、お前は鳥金梨亜として望んでいたものは、何だ」

 

『それは……』

 

「鳥金梨亜が望んだこと、一つくらいは叶えてやる。お前とフェネクスで、決めろ」

 

 決めろ、と判断を委ねられることに戸惑う。そんなことでいいのだろうか。おそらく、その一つ以外は容赦なく落とす、ということの裏返しなのだろう。

 先程の言葉が蘇る。黒和元は真っ直ぐに動く。これは魔王が望んでいる事なのか。その言葉に従うように、フェネクスを見返す。

 

『陽太……私、前にも言ったよね』

 

「……あぁ、鳥になりたいって言っていた」

 

 なんとなく、そう訊き返す。いつも交わされていた中で思い入れのある内容。本当にそうかは分からなかったけれど、今はそれを話したかった。

 するとそれは正しかったらしく、梨亜は肯定して語り出す。

 

『うん。私の名前にもあった生き物。この3年、私は宇宙を渡っていく鳥として、この世界を見てきた。追いかけられるばかりの日々だったけど、やっぱりこの世界の事を見捨てるなんて、出来ないよ』

 

 ずっと追いかけられてきた。それはきっと自分達の事も指している。未緒に従っていたとはいえ、そう言われてしまえば梨亜にも謝罪が必要だ。

 未緒の企てに加担してしまったことも含めて謝罪する。

 

「ごめん、俺も追いかける側だった」

 

『そう、だね。陽太も追いかけてきていた。でもそれは私に会いたいって気持ちからで、未緒や自衛軍、魔王とも違っていた。だから、着いて行っても良かったかもしれない』

 

 梨亜を宿したフェネクスはそのように呟く。こんな自分を許してくれるのか。だけど最後に乗り越えるべきことが語られた。

 

『けど、謝るならもう一つ謝ってほしかったのはあるかな』

 

「もう一つ、謝る……?」

 

『私が自衛軍の高官に連れられて行くとき、陽太違うって、言ったよね。未緒に言われただけだって』

 

『っ!』

 

「……あぁ、そうだな」

 

 思い出す。あの時、確かに俺はそう言って、許してもらおうとした。思えばあれも言い訳だ。

 その話を振られて未緒がまた言葉を詰まらせる。けれども俺は違う。アンネイムドの視界に同型のフェネクスの顔を入れて、モニター越しに伝える。

 

「あの時、俺は言い訳をしてしまった。俺が話を聞いて、決めたことだったのに」

 

『うん』

 

「今さら遅すぎるって分かってる。でも、俺は言わなくちゃいけない。―――ごめん、護ってあげられなくて。一緒に居られなくて。約束を破って」

 

 かつて戦闘に巻き込まれた時に誓ったこと。同じ物を見ると誓ったのに果たせなかった。その謝罪をする。

 その言葉を聞いて、フェネクスは何も語らない。けれどもその手を今の陽太の機体、アンネイムド[ユニコーン]の胸に当てる。

 

「っ!!」

 

 

 

 

 すると、その意識が転移させられた。体が自由になったかのような感覚を覚える。そこに居たのは、あの時別れた姿のままの彼女。梨亜がその姿で陽太に寄り添って来る。

 

「いいんだよ。そうでなければ、二人とまた会うことすらもなかったんだから」

 

「梨亜……っ。それでも僕は、君と居たかった……いなければいけなかったのに!」

 

 心象世界で、あの時の姿となって抱き返す。二人揃って涙を流していた。届かなかったその手が、声が、ようやく届いた瞬間だった。

 再び顔を向き合い、笑いかける梨亜。

 

「うん、ありがとう、そう思っていてくれて。それだけで私は、こんな姿になってまで、この世界に残れて良かったと思うよ」

 

 その言葉と共に徐々に意識が遠くなる。気付くと再びもとのアンネイムドの装依空間へと戻っており、目の前にはフェネクスがいた。そのフェネクス、梨亜が先程までの会話に返答する。

 

『まだ遅くない。私の今の望みは一つ。ある意味、今の私はフェネクスっていう、鳥、不死鳥になれた。願いは叶った。でもやらなくちゃいけないことがある。陽太は?』

 

 自分が何をしたいのか、どうしたいのかを尋ねる梨亜。陽太は自分自身の、アンネイムドの体を通して自身を見つめる。

 そんなの決まっている。もう今なら、これしかない。

 MSの装依を解除する。未だ戦場の真ん中で、装依を解除して解除したスターターを本来の持ち主、ソルジアスのパイロットへと返す。未緒の分まで謝罪を込めて。

 

「すみませんでした」

 

『構わないさ。返してくれるのなら、それ以上の事を僕は求めない。それより、君の答えは』

 

 陽太の出した答えにソルジアスのパイロット、本来のユニコーンのパイロット、神鳴白はそう返した。

 俺の出した答え、それは―――。

 

 

 

 

「君が鳥になったなら、俺も、俺も鳥になる」

 

『うんっ!私もまた陽太に会いたいから、何度だって生まれ変わる』

 

 

 

 

 フェネクスと手が触れあう。直後、フェネクスの機体が電子状に分解された。宙に浮かぶように出現したスターターが自動的に陽太の腰に巻き付けられ、起動した。

 自身の体がアンネイムド[フェネクス]へと憑依していく。その過程で彼女に抱きしめられるかのような感覚を覚える。

 確かに彼女は、鳥金梨亜はここにいる。その感覚を確かめ、完全にフェネクスへと装依する。

 装依すると同時に機体のL-DLaが機能する。だがそれは決して暴走などではない。やるべきことを成すために、フェネクスが彼女の思念がそうさせた。L-DLaの発動がフェネクスを本来の姿へと移行させる。装甲を解放し、ユグドラシルフレームを露出したガンダムとしての姿。

 一角が割れて翼を広げたようなアンテナに形取る。ユグドラシルフレームの蒼い光が溢れ出す。ツインジェネレーターの駆動にも問題はない。フェネクス、梨亜と息を合わせるようにして飛び立つ。

 

「アンネイムド[フェネクス]、及川陽太、行きます!」

 

 ユグドラルの加速を伴って、今ニア・ゼロングを止めるべく不死鳥が飛翔した。

 

 

 

 

 フェネクスが飛び立っていくのを見届ける元達。そこに装依を解除させられた未緒の乾いた声が聞こえてくる。

 

「何で……何でなのよ、梨亜。あんたはそうやって、いつも私から欲しいものを持っていって……」

 

 先程の対峙で、彼女の考えが読み取れた。彼女は鳥金梨亜に嫉妬していた。持たざる者が必死にやって手に入れた物を、彼女が持っていたから。そしてどう頑張っても手に入れられないものを彼女が持っていたから。

 その彼女に言ってやる。

 

「それを、言えばよかったんじゃないか。及川陽太に」

 

「……」

 

「及川陽太が言ったように、素直に言えばもうそこで後悔は終わっていただろう。お前は問題を先延ばしにしていた。恥を隠した」

 

 恥を承知で明かせる人物であったなら、こんなことにはならなかった。だが流未緒はそういう人間だった。

 そういう人間は立場問わず多い。変にプライドの高い人間の悪い癖だ。頭が回るほどこういう時に声を出せなくなっていく。

 案外と、自分も同じタイプだ。それが言えない気持ちは分かる。だから俺は言ってやる。

 

「もうあいつに届かない、と思っているなら無駄だが、そう思わなければまだ届くだろうさ。届かなかったとしても、お前の周りにはまだその手を取ってくれる人間がいるんじゃないか?」

 

 既に海上からこちらに向けて脱出用の小型空中ボートが向かって来ている。MSも護衛に付いているが、こちらへの攻撃の意志は見せていない。救助に来た、と思われる。

 だがそれでも未緒の表情は浮かない。それは彼女の口から語られる。

 

「もう無理よ。ルウォは私を見捨てるだろうし、このまま捕まる。もう何もない」

 

 当然と言えば当然だ。もちろんそれを考えていない元ではない。罪を犯したなら罰を受ける。

 それを踏まえて上での発言である。だがこれまでの彼女からしてみれば、そこから這い上がるのはまさに奇跡と思っているのだろう。

 実際そうだ。罪を犯して、更生出来た人間は多くない。未緒にも事実を告げる。

 

「そうだな。何もないだろう。それでもお前は生きなければならない。傷つけ、利用した人間に贖罪する為に。罪を隠し続けてきたお前には酷だろうがな。利一、ここは頼む」

 

「了解だ」

 

 そう言ってこの場を利一に任せる。既に白が本来の機体、陽太から返却されたアンネイムド[ユニコーン]を纏って準備を終えていた。

 白が未緒の今後についてクローズ回線で尋ねる。

 

「と、仰っていましたが大丈夫なんです?」

 

「まぁ無理だろう。とはいえルウォ側は弁護士を付けるらしいし、縁を切るとしても会社には残すだろうな」

 

「そうですね。まだ使える、と言った具合でしょうが」

 

 選択の先が残酷でも見捨てられないだけマシ。そうとしか言えない。それ以上の介入をしようとも思わない。介入するのは価値があると思った時だけだ。傲慢だろうがそれを決めるのは自分だ。

 それに、こうも思う。彼女は自らの意志で立ち上がらなければならないと。

 

「まぁあいつなら大丈夫だろう。あのルウォの相談役にDNLでもないのになれた。ルウォ側も途中から分かっていてもきらなかったのは純粋に彼女の実力だよ」

 

「つまり、それだけ信用されるだけの仕事はしていたってわけですね」

 

「そういうことだ。さぁ、俺達も行こう。ジャンヌ、最後の大一番、行けるか?」

 

『えぇ。十分休ませてもらいましたから。……ですがあの子達に大分負担を……っ、これはっ』

 

 大丈夫と答えたジャンヌの声が上擦った。元も、白もまた感じ取る。急激に増加するDNL反応とユグドラルの音。

 ユグドラルの反応はこれまでに感じたことのないものとそれなりに感じていた物とが混ざっている。それに合わさるのはドライバ・フィールド固有の音だ。

 それらを発する機体は今までに存在しない。が、あり得る話だった。あの機体が、宗司が目覚めたのなら。確信を口にする。

 

「目覚めたか、相模宗司。お前もまた次元世界の力に触れる時が、ガンダムDNアーバレストが「真に目指す領域」に」

 

『行きましょう。彼らをサポートする為に』

 

「アンネイムド[ユニコーン]、いつでも行けます」

 

 二機のガンダムが同時に残骸から飛ぶ。宿敵ハル・ハリヴァーを今度こそ叩くために。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP53はここまでです。

レイ「フェネクスいよいよ陽太君が搭乗!まさかサーガガンダムの方じゃなく、こっちで口上言うとはねぇ♪」

ジャンヌ「あちらはナラティブガンダムで言っていましたが、こちらではフェネクスに装依してからに変更したんですね」

まぁ大きく動く、加えて言っても不自然じゃないって考えるとここくらいでしょ。前の時点ではまだ敵ムーブしていたわけだし。

レイ「決意をした、かつ流れが変わるからこそ言ったって場面だもんね原作じゃ。ならここだね」

ジャンヌ「それにしてもやっぱり元さんが敵っぽい発言ばかりしている件に関しては……」

兵器に関しての持論の場面ね。やっぱ悪役の理論よねぇ。でもまぁ元君は劇中でも言ってるけど終わらせるために開示した。それに今は開示した技術で起こしたことに責任は持たないと言ってるけど、前もどこかでその責任は感じてるみたいに言ってたはずだしね。

レイ「どこの場面かなぁ」

ジャンヌ「分かりやすく明示して頂けているならいいんですけど」

ま、それは後々確認し直していただけたなら。しばらく更新が遅くなりますから。というわけで次話にていよいよフェネクスが戦場を駆ける!と見せかけて、もう少し別の話が続くんだ。

レイ「えぇ~まぁどんな話か、楽しみだねっ。次に続くよ~」


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EPISODE54 虹と鳥と暴かれし者と2

どうも、藤和木 士です。引き続きEP53と54の公開です。続いてEP54です。

ネイ「フェネクスに及川陽太が乗る。いよいよ物語の終盤を感じさせますね」

グリーフィア「とは言っても、今回はそこが主役じゃないらしいわねぇ?一体、誰にフォーカス当てるのかしらぁ?」

それは、本編でね。それではどうぞ。


 

 

「くっ!」

 

「ガンダムと名前が付いているからと、このシナンジュ・ゼロン・ハルを止めることは、叶わないようだ!」

 

 宗司は引き続き、シナンジュ・ゼロン・ハル、ハル・ハリヴァーとの戦闘を行っていた。

 先程謎の爆発によりダメージを受けた新堂隊長は各部を中破させた状態で撤退した。そして宗司自身も同じような突発的な爆発をドライバ・フィールドで防ぐ。

 攻撃を防御出来てはいる。だがそれではこちらの精神力、体力が減っていくのを抑えられない。そもそもなぜビームが直撃していないにも関わらず、空中で突然爆発が起こるのか。既にエターナに攻撃の正体を探らせていたが、当人も発生源の特定が出来てもそれがどういう攻撃なのか掴めずにいた。

 

『あぁもう!周りの至る所から奴の敵意を感じる。いつでも攻撃準備出来てるって!』

 

「そういうものだっていうのはもう分かった!これは何なんだよ」

 

『うっさい!どうやって攻撃してんのよ……来るっ!』

 

 再び目の前で爆発が起こる。出力を上げてドライバ・フィールドで防御する。完全には防ぎきれず、装甲に火花が散る。

 負けじとこちらも反撃のコンバートライフルのビームを放つが、流星と名乗るだけあって攻撃を当てさせてはくれない。続くマルチキャノンウイングの射撃も避けられ、近傍で爆発を起こしながらこちらにビームサーベルで斬りかかる。

 

「はぁっ!」

 

「ちぃ!」

 

 コンバートライフルからブレードザッパーのみで攻撃を受け止める。新堂隊長の撤退を受けて、艦の護衛から前線へと出てきた進が支援に向かって来る。

 

『宗司、一人じゃ無理だろ、俺も!』

 

「っ!待て進!こいつは……」

 

 危険だと叫ぶ前にハリヴァーはこちらを突き放し、迎撃する。向き合うだけで瞬間的にオースインパルスの目の前を、関節付近を狙って爆発させる。

 

『うわぁ!?』

 

「進!」

 

「よそ見をしている暇があるのかね!」

 

 言って再びビームサーベルを今度は肩と合わせて二刀で振り下ろしてくる。一度目をブレードザッパーで受け止め、反動で腕が下がると同時にもう片方のガンザッパーと合体、コンバートセイバーとして再び攻撃を凌いだ。

 いつ爆発が起きてもおかしくない。ドライバ・フィールドで保護しながらの鍔迫り合いで耐える。

 進の方は爆発を自慢の耐衝撃特化のDNフェイズカーボンでダメージを最小限に止め、途中から加勢してきていたシシャのオールレンジ対応改造機と戦う。

 これでいい。進にはあっちを抑えてもらっていた方が入嶋や呉川小隊長達に増援がいかない分戦いやすくなるだろう。

 その呉川小隊長達も、巨大MAⅡニア・ゼロングの攻略に手間取っていた。敵は強力なDNウォールを発生させているのだが、それを破ろうとソードで切り裂こうとしても破り切れず、攻撃に切り替えて迎撃されるか、周囲の敵MSによって追い返されるのが関の山だった。

 呉川小隊長が防壁を破れなければ当然入嶋のDNアーマーも出番はなく、辛うじて防壁の解除された瞬間を狙って大型二連ビームライフルを放つがそれも再展開されたDNウォールに阻まれ、逆に入嶋がDNウォールを使わなければならない状況になる。

 二人と、蒼梨隊長の焦りが回線から漏れてくる。

 

『クソッ、流石DNL専用機か』

 

『くぅ!こいつこんなに大きなのを軽々……!』

 

『落ち着いて。私が突破口を……くっ!』

 

 蒼梨隊長も狙撃をして敵の数を減らしながら突破口を見出そうとするが叶わない。なぜなら敵はゼロンのMSだけではなかった。妨害は未緒派のソルジガン、それにうちのソルジアスに自衛軍のソルジガン、ソルジスタも含まれていた。

 それらの機体にはⅡニア・ゼロングから伸ばされたコードが装甲に潜り込むように接続されていた。それらのMSは有線でⅡニア・ゼロングに操られ、敵対していたのだ。

 それらの機体を盾にⅡニア・ゼロングのゾルダーが喜々とする。

 

『おいおい、撃たなきゃ倒せねぇぜ?こっちは遠慮なく、撃っちゃうんだなぁ、これが!』

 

『う、うわぁぁぁ!』

 

『くぅ、味方を撃つなんて……っ!』

 

 クルーシアが入嶋の直援に回りながらもどかしさを口にする。いくら操られているからと撃つのにはためらいがある。パイロットがちゃんと自我を持っているのならなおさらだ。

 コード自体を切ろうにもそのためには接近が必要だ。深絵隊長は器用にコードを狙い撃つも不規則な動きと本体からの攻撃の回避により困難を極めていた。

 クローザーを待つ他ないのか。そうだとしても持たせなければと宗司は目の前の敵であるハル・ハリヴァーとの戦闘を続ける。

 

「くっ、ビームは当たってるのに!」

 

『ユグドラルフィールド……そうか、この爆発、全部ユグドラルによるものなら!』

 

 エターナが攻撃の正体に気づいたような口ぶりをする。しかしそれをかき消すようにシナンジュ・ゼロン・ハルがビームライフルとビットの合わせ技を繰り出す。

 

『気づいたところで、もう遅い!』

 

「ぐっ!?あぁ!」

 

 ユグドラルによる爆発を周囲に起こしながら増幅させた収束ビームでドライバ・フィールドを破壊した。爆発の影響をもろに受けて装甲を溶かしていく。

 体勢の立て直しを図る。それより前に、敵の攻撃が放たれた。

 

『ヤバい……直撃コース!』

 

「くそっ!」

 

 ドライバ・フィールドのイメージが乱れる。攻撃が来るのが分かっているのにどうしようもない。

 何か出来ないか。短い時間で考え抜くが何も浮かばない。このまま終わるのか。否―――叫んだ。

 

 

 

 

「どうにかしろよ、ガンダムッ!!」

 

 

 

 

 その叫びがガンダムを覚醒させる。

着弾の瞬間、一気に機体が軽くなる。いつもの倍はあるスピードで攻撃から逃れていく。その動きにハリヴァーが戸惑う。

 

『何!?この動きは……』

 

 通常よりも鋭角な動き、エラクスとは違うそれはマルチウイングキャノンにより起こしていた。

 宗司は感じ取る。解放された力が呼んでいる。隠されていた機構をマルチウイングキャノンに指示を送った。

 

「キャノンウイング、本当の力を見せろ!」

 

『マルチキャノンウイング、ロックギミック解放。機体、オーバードライバモードへ移行します』

 

 機体のOSが読み上げると、マルチキャノンウイングが分解を始める。縦に割れ、収縮して中にあったモノを露出させる。

 露出したのは結晶で出来た翼の骨組み。それがユグドラルフレームで出来た翼と分かったのは色が変わってからだ。

 宗司とエターナ、二人分のDNL能力でユグドラルフレームの骨組みにユグドラルフィールドによる膜が生まれ、翼として完成していく。

 展開された二対の翼。マルチウイングキャノンの外装が肩へと砲として完成した。翼のユグドラルフレームからはユグドラルの光とDNが混ざり合って放出される。

 ユグドラルの翼を得た機体で、宗司は再びドライバ・フィールドも発生させてハリヴァーへと挑む。

 

「おおおぉぉぉ!!」

 

『ちぃ!』

 

 再びハリヴァーは爆発とビームライフルの斉射を行う。それらを防ぎながら高速移動で距離を詰め、踏み込んでビームサーベルを振り上げる。斬撃がわずかに、シナンジュ・ゼロン・ハルに装備されていた増加装甲、そのユグドラルフレームらしきパーツの一部を切り裂いた。

 すぐさまハリヴァーが反撃に転じるが、こちらもそれに合わせて攻撃をいなす。攻撃を読んでいるかのようにアーバレストは回避する。

 先程までの動きが嘘のような回避機動に、宗司も内心驚いていた。だがそれを実現しているのは宗司だけの物ではないとも分かっていた。

 拡大されたDNLの能力。自身のものでもあり、同時にエターナからももたらされていると感じ取っていた。二人のDNL能力で攻撃の予測を強固なものとし、攻撃に対処する。それはエンゲージシステムを使う黒和元とジャンヌ・ファーフニルの領域と同じ事を意味していた。

 ハリヴァーも自身のDNL能力で気づく。

 

『そうか、この感覚、あの魔王と同じ』

 

「だったら、どうした!」

 

 流れる動作で軌道運動の後シールドビームライフルを放つ。連射に回避が追いつかずシールドで防御するハリヴァー。

 彼はほくそ笑むと語る。

 

『君もまた、彼と同じDNLとなりうる。魔王と同じように、もう知っている人たちの中には、みんなの中には君は戻れない。パートナーも含めてな!』

 

『そんなことっ!』

 

 エターナの怒りの否定と共にそれぞれが放ったビームが撃ちあう。周囲に火花を散らせながら消えたビームの先から、わずかに感じ取れるオーラのような物を発生させながらシナンジュ・ゼロン・ハルがこちらに掴みかかってくる。

 こちらもユグドラルフィールドとドライバ・フィールドの重ね合わせをして、それを受け止める。慣れない多重展開だが、無我夢中で両方を維持する。

 接触したフィールド越しに敵意、戦意というべきものが流れ込んでくるのを感じる。フィールド越しに何かしてくる、おそらく先程からの爆発を狙っているのか。

 させまいとドライバ・フィールドの圧を強めて掴みかかる力に反発して押し退ける。

 

『そう来るならば!』

 

 剥がされるもののそこからハリヴァーは攻撃に転じ、肩部のアームからビームサーベルを出現させて叩き斬りに来た。すぐこちらも回避するが、続く二撃目をもろにフィールドで受け止める。

 

「ぐっ!?」

 

『きゃあああああ!!』

 

 大きく揺れる機体に悲鳴を叫ぶエターナ。再びドライバ・フィールドを、今度はユグドラルフィールドも合わせて破られる。再展開に手間取る間に、ビームの一斉射が襲い来る。

 ユグドラルフィールドだけでも、と回避をしようとするも発生に手間取る。終わったと思ったが、そこに割って入った機影が攻撃を防ぐ。

 

『む!来たか、白君!』

 

『危ないところだったね、宗司君』

 

「っ、白、さん……」

 

 その声に反応して前を見る。そこには先程までユグドラシルフィールドを発生させていたアンネイムド[ユニコーン]がこちらを背にしてハリヴァーの機体と向き合っていた。

 声の主から、やはりフィールドの破壊は無事成功したようだ。更に後方から元隊長のクローザーも到着する。

 

『宗司、よく持たせた。やはり、その力を覚醒させたか』

 

 元隊長は今のガンダムDNアーバレストを見てそう呟く。戦闘中は気にしていなかったが、やはりこれは、以前紫音艦長に言われていた最後のエクストラロックと呼ばれるものなのだろうか。

 それを聞きたい気持ちはあったが、今はすべき時ではないと簡潔に言葉を返す。

 

「これって、俺もDNLに……」

 

『そういうことだ。悪いがこいつの相手はお前と白に任せる』

 

『そうですね。僕にとっても因縁深いですし、それに……』

 

 白の見る視線の先にあの白い機体と戦う友直や智夜の苦戦する姿が見受けられる。

 この状況で気になるのはⅡニア・ゼロングの方だが、そちらも今、問題ないことを知る。

 

「元隊長があの白いのを……じゃあⅡニア・ゼロングは……って、フェネクス!?」

 

 カメラが映すのはⅡニア・ゼロングと戦うフェネクスの姿だった。あり得ないと思っていた状況に元隊長は状況が変わったと告げる。

 

『今、あの機体は及川陽太の意志で動いている。彼女の遺志を継いで』

 

『大丈夫。今の彼は強い。こっちに集中して、宗司君。ハル・ハリヴァーは、強い』

 

 言われ、再び意識を目の前の敵に集中させる。ハリヴァーは白さんのアンネイムド[ユニコーン]に釘付けとなっていた。

 

『フフフ、久しいな白君』

 

『ハル・ハリヴァー。いい加減に、ゼロンなんて仮面の下に隠したものを吐き出せ!』

 

 二人の会話は因縁の敵を思わせる。それを察してかクローザーはその場を任せてすぐさま友直さん達の支援へと向かう。

 これまで元隊長をマークし続ける動きを見せていたハリヴァーだったが、今回はそれをせずにただ目の前の宿敵、白さんへと言葉を向けた。

 

『ゼロンという仮面、か。生憎ながらゼロンを仮面にするほど、高潔ではない。私が思うに、ゼロンという存在は人々の欲望を可視化するろ過装置であり、HOWの提唱する可能性や善意などという不確かな未来を否定しうる世界を実現できる世界と思っている。私などはその役割、彼らの想いを受け入れ、導く彼らの総意の器だよ。あの騎士官も、ゾルダーすらもそれを求められている』

 

『違う!少なくともあなたは、そんなこと一つも思っていない。自分の敗北すら、空しいと呟いたあなたには、誰かの気持ちを受け止めるなんてことも、出来やしない。今も、あなたのユグドラルフィールドからは感情を感じられない。いや、生霊の怨念ばかりだ』

 

『そうであっても、私は器だ。自分だけの真紅の流星「シャア・アライバル」を欲した者が作り出した器として、ゼロンの民の欲を満たし、そして新たな秩序へと変えるのだよ白君。それが、私の役割だ』

 

『まだ器と形容する貴方は、人を踏み外したあなたは、落とす!』

 

『私はクローンだ。既に人の域など、関係ない!』

 

 二人の話が終わるとそれぞれ戦闘態勢を取った。ユニコーンはL-DLaを起動させてデストロイドモードへ、機体フレームが緑色へと変色する。対するシナンジュ・ゼロン・ハルは欠損したユグドラルフレームのアーマーを再形成して加速を始める。

 両者が共にビームサーベルで斬りかかってぶつかり合う。激突で周囲の空気が振動する。加えてユグドラルフィールド同士の衝撃が伝播し、周囲に爆発の嵐を起こす。

 爆発に構えていると、エターナから支援の必要性を問われる。

 

『ほら、ソージ。私達も行くわよっ』

 

「あぁ、そうだな。ドライバ・フィールドとユグドラルフィールド、形成継続は」

 

『任せなさいって!』

 

 威勢のいいエターナの声に任せて、宗司もハリヴァーとの激突を再開した。

 ハリヴァーの機体はガンダム二機による二体一でもその戦力差を感じさせない程に渡り合っていた。だが宗司と白はそれを連携で対抗した。

 

『宗司君、切り結んでいる内に射撃を』

 

「了解!」

 

 指示を受けてドライバ・フィールドで包み込んだビーム弾を発射する。直後ユニコーンが弾き飛ばし、着弾を狙うもシナンジュ・ゼロンは回避した。だが避ける途中で他とは違う弾に被弾する。

 

『何?』

 

「はぁっ!」

 

 それを好機とコンバートセイバーで斬りかかる。回避されても接近戦を想定していた白さんのユニコーンが瞬間移動に似た超高速で肉薄する。

 咄嗟の攻撃にハリヴァーは爆発で動きを止めようとするがそれら既に宗司達の妨害にはならず、余裕を持って回避する。

 初めてながら息の合った連携。それだけではない。宗司自身相方のタイミングが手に取るように分かった。エターナ単体のDNL能力の時の比ではない。勘が冴えていた。

 だからと言って油断しない様に、確実に白さんと一緒にハリヴァーと戦っていく。もう遅れは取らない。落とす気でシナンジュ・ゼロン・ハルと交戦していった。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP54はここまでです。

ネイ「宗司さんのガンダムDNいよいよ本性を、という感じでしたね」

グリーフィア「んーバックパックのギミックってもう一つあったのねぇ。確かドライバモードだと排熱機構だけ展開していたはずなのよね?今回はそれを全部取っ払ったと……あらぁ?つまりドライバ・フィールドの発生元ってあのユグドラルフレームの翼?」

いや、本体。とはいえバックパックもドライバ・フィールド発生の為のアシスト機器だからある意味その認識で間違いない。キャノンの装甲を外して排熱機構はそのままユグドラルフレームが担っているから排熱効率は向上している感じです。

グリーフィア「あぁ、排熱がってことね」

ネイ「なるほど。ですが、ユグドラルフィールドとドライバ・フィールド……同時活用が難しいと劇中で言われてますけど、戦えるんですかね?」

それは今章終わりまで見て頂ければ。

グリーフィア「そうねぇ。ま、ユグドラルフィールドに関しては助っ人に来た白君もサポートしてくれるでしょ」

ネイ「ドライバ・フィールドは……本人が初めてですから、本人さんの問題ですかね?」

いや、劇中で最低でも一人は確実にドライバ・フィールドの使い手いるよ。

ネイ「あれ、そうでしたっけ?」

グリーフィア「ほらほら、あの黄色のガンダムだっけ?それね」

そうそう。というわけでそろそろ今回はここまでで。次回はフェネクスの戦い、そして衝撃の展開が!?

ネイ「なんです、それ……」

グリーフィア「衝撃、ねぇ。楽しみにしておくから、頑張んなさいよぉ?」

あ、はい。

グリーフィア「それじゃあ、また次回~」


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EPISODE55 虹と鳥と暴かれし者と3

どうも、藤和木 士です。EP55と56の公開となります。まずはEP55から。

レイ「宗司君がオーバードライバモードを発動させて反撃を開始するってところだったね」

ジャンヌ「ですが、また例の如く別視点のようですね。ですが、今回は分かりやすいかもです」

それもそのはず、いよいよナラティブ最終盤の再現だ。Ⅱニア・ゼロングとアンネイムド【フェネクス】の直接対決、勝つのはどちらか。というわけで本編をどうぞ。


 

 

 硬直するⅡニア・ゼロング戦。それを打ち破ったのは思わぬ援軍だった。

 

『お前は!』

 

『嘘っ……何でフェネクスが!?』

 

「……」

 

 敵と味方、双方が絶句する。攻撃を行おうとしたⅡニア・ゼロング。あのままなら千恵里を撃墜まで追い込んでいたであろう。しかしそれをビームサーベルの一刀で止めた。それは敵対していたはずのフェネクスだったのである。

 フェネクスがここにいる、ということなら間違いなく元君達が作戦を成功させたってことだ。だけど、何をしに?

 尽きない疑問。その答えはⅡニア・ゼロングのパイロットから投げられた質問で分かった。

 

『っく、おやおやぁ?フェネクス、あんなもん作っておきながらこっちに来るとはねぇ。あのまま殻にこもっていた方が良かったんじゃねーの?』

 

『……俺は、もう殻にはこもらない。梨亜は、死んだんだ』

 

 平静を装うゾルダーからの挑発の言葉をフェネクスに装依しているであろう及川陽太は答える。しかし、その声には覚悟がこもっている。少なくとも深絵にはそう感じ取れた。

 覚悟を決めた及川陽太はⅡニア・ゼロングに刃を向けて言い放つ。

 

『殻の中がどれだけ良かったとしても、俺は前に進む。鳥となって、この宙に向かって飛び立つ。だから、俺はお前を止める!梨亜の果たせずにいた願いを果たす!』

 

『良いぜぇ、ならさっぱりさせようぜぇ!!そんな願いなんてすっきり捨てられるようになぁ!』

 

 明確なⅡニア・ゼロングとの敵対を発言した。そこまで聞けば、容易に元君とのやり取りは想像できる。私はⅡニア・ゼロング攻略部隊に命令変更を告げる。

 

「全機改めてフォーメーション確認。フェネクスを援護して」

 

『え、えぇ!?フェネクスを?』

 

『……分かりました。千恵里ちゃんフェネクスならこの状況を打破できるかもしれない』

 

『クルスの意見には賛成だ。DNアーマーだけではどうにもならん。いくぞ』

 

 戸惑いはあれど、このままでは不利とちゃんと認識しみんな従っていく。フェネクス側も察し、腕部のタクティカルアーマー[ヴァリアントランス]を展開する。

 Ⅱニア・ゼロングも迎え撃つ気満々でスレイブモビルスーツを展開し、DNウォールを発生させた。

 

『どんなモビルスーツだろうが、このⅡニア・ゼロングに及ぶとでも!』

 

『力を貸してくれ、梨亜っ!』

 

 フェネクスへと向けた叫びと共に、ヴァリアントランスの周囲にあの光波を発生させた。その光波をⅡニア・ゼロングの操るMS目がけて放つ。

 このままでは犠牲となったMS達が破壊されてしまう。一瞬焦りを感じるが、その最悪の結果にはならなかった。

 放たれた光波はあり得ない機動で曲がりくねり、DNウォールとこれまで展開していることに気づかなかったユグドラルフィールドごと、コードを切り裂いた。

 DNウォールとユグドラルフィールドが同時解除され、MSも解放されたことにゾルダーが絶句する。

 

『なっ……ゼロングの防御を突破しただと?クッ!!』

 

 素っ頓狂なゾルダーの声が漏れる。が、すぐに反撃の為に手を伸ばす。何も感じ取れないが、おそらくあれはユグドラル攻撃だ。しかしそれも今のフェネクスを止めるに至らない。

 これまでの逃走劇で見せたあの圧倒的な超機動で攻撃を避け、弾幕を掻い潜る。懐に飛び込んで敵の防御を担う腰DNウォール発生器と、後光のように展開していたユグドラルシャードを切り裂く。

 展開されていたそれぞれの防御壁が弱まる。そこを逃さずDNアーマーS-Sideが突貫した。

 

『今度こそ、貫く!』

 

 呉川小隊長の掛け声と共に遂にこちら側でもDNウォールとユグドラルフィールドを貫いた。貫いた直後肩部のビームキャノンを放つ。敵が腕部を振るって直撃を避けた。

 だが同時に別方向からDNアーマーG-Sideが待っていたと言わんばかりに全砲門を向けて一斉射を放つ。

 

『行けっ、行けェっ!!』

 

『ぬぅぅ!!』

 

 多量のミサイル、ビームに対し緊急回避を行っていたが、避けきれない弾がプロペラントタンク、そして形骸になりかけていたユグドラルシャードを粉砕していった。

 身軽になったとはいえ損傷を受けて動きも悪くなる。だがようやく攻撃態勢を再度整えた。ユニットを取り換えた指部ビーム砲からビームサーベルを形成し、振り払ってくる。

 

『うるさいハエ共が!』

 

「全機、回避行動!」

 

 言って回避行動に専念させる。だが振るわれたサーベルは近くにいるだけで機体を熱し、エース機以外をたちまち蒸発させていく。先程操りから解放された機体が、次々とそれに蒸発させられていく。

 私はホルスタービットを起動させて飛ばす。行き先はその機体達。動けずにいる機体達をホルスタービットで攫い、攻撃範囲から逃がしていく。

 他を逃がしつつこちらも回避行動を取る。バックパックのブースターを噴かせて、ギリギリを回避して同時に狙い撃ちする。狙い撃った弾丸が、Ⅱニア・ゼロングの巨大な腕部を真正面から撃ち抜く。

 そこに追撃を行ったのは他でもないフェネクスだった。高速移動で懐に飛び込むと、残りの腕部を展開したヴァリアントランスの巨大なビームサーベルで一挙に切り裂く。

 あれほどの巨大な腕部が簡単に宙を舞う光景はそうない。追い打ちにヴァリアントランスがスカートユニットを斬り裂き、露出していたウエポンケージ目がけてビームを直撃させた。

 

『グッ!まだだ、まだっ!』

 

 諦めを見せないゾルダーが機体を起こし、腹部のハイメガキャノンを放とうとする。

苦し紛れの一発、だがそれは間違いなく一直線上の全てを薙ぎ払おうとしていた。流石に不味いと深絵も咄嗟にライフルを向ける。ところがそれをまだ生き残っていたシトに取り押さえられる。

 

「っ!邪魔ッ!」

 

『このまま墜とす!』

 

 無理矢理射線上に出される。ブレイドガンで邪魔してきた敵機は片付けた。しかしブースターは初速に特化していない。ビットを呼び戻すが、間に合わない。

 そう思った。けれども再びあの機体が助けにはせ参じる。

 

『やらせない!』

 

『グッ!?またお前か!』

 

「っ、フェネクス!」

 

 発射より前にその砲口をヴァリアントランスで貫き、そのまま撃ち抜く。内部のエネルギー回路に引火し、爆発を起こすと浮力を喪失。その巨体が海へと落下していく。

 敵はその巨体を必死に制御するがもはや維持できない状況だ。無理と分かるとその機体を捨てる。が、まだ闘志は収まってはいない。

 機体をドッキングアウトさせ、その両腕でウエポンケージに残っていたビームアックスを合体したビームナギナタをフェネクスに向けて振るう。

 

『ウゥォォォォォォ!!』

 

『!!』

 

 対抗してフェネクスがヴァリアントランスを実体剣として構え、対抗して突撃する。一瞬その横に幻影のように少女の姿が見えたような気がした。あれは、もしかすると……。

 幻影が見えたのもまた一瞬。フェネクスとプロトゼロンが一瞬で振り合い交差する。

 一度目の激突、そこでフェネクスがアックスの接続部を叩き斬る。完全に両断され、ナギナタとしてではなくアックスとしての使用を求められ、ゾルダーは思い切って斬られた片方を投擲した。近接距離での対応としては隙を作る意味では間違ってはいないだろう。そしてやはりゾルダーは避けたフェネクスに対しもう片方のアックスで奇襲した。

 しかし、フェネクスもまたポテンシャルは最高潮だった。それを回避し、更なる一撃を流れのままに、一回転して勢いを付けてヴァリアントランスでコアブロック、胸部を貫いた。

 貫いたまま、機体を加速させるフェネクス。その先に見える空となったⅡニア・ゼロングのドッキングブロック。フェネクスは真っ直ぐ向かって機体を本来あるべき位置へとねじ込み戻した。

 直後Ⅱニア・ゼロングが鳴動する。まるでパイロットがコクピットをやられ、もがき苦しむ様子を再現する様に。が、それが止まると残った腕部をだらんとさせ、ゆっくりと海に沈みだす。

 Ⅱニア・ゼロングが落ちた。そんな瞬間に喜びが沸き立つ。

 

『やった……あの機体を落とした!』

 

『ギリギリ、だったな』

 

『はい……!』

 

「安心するのは早いよ。まだ元君達の方もあるから、そっちを―――」

 

 手伝って。そう言いかけた時、危急を要する知らせがヴァルプルギスのオペレーターの光巴から放たれた。

 

 

 

 

『みんなまだ終わってない!あいつ、この海底奥底のD4ガスを爆発させようとしてるッ!!』

 

 

 

 

 

 

 フェネクスに残された全体回線から絶叫する様に放たれた言葉。それを聞いてフェネクスの中の梨亜が言葉の指し示す意味に気づく。

 

『陽太、Ⅱニア・ゼロングだ。あれに残ったユグドラルフレームの怨念が、地下のガスを引火させようとしている。もし爆発したら、この石河の街が大災害で滅茶苦茶になる……!』

 

「何だって……くっ!」

 

 そんなの、ダメだ。いくら襲撃したとはいえカザノの人を巻き込むわけにはいかない。それにまだ未緒達もこの海上に居るはずだ。

 HOWの方は対処しようと方法を模索し始めていた。が、これと言って有効な策を見いだせずにいた。

 

『ヤバいですよヤバいですって!もう海の中に沈んじゃってるし!』

 

『落ち着け入嶋。艦長、来馬整備主任、DNアーマーの水中行動は』

 

『流石に無理、だったわよね?』

 

『そりゃね。どうにか出来るとしたら、元君位?』

 

『くっ、今からでも、元君に状況を知らせて、来てもらった方が』

 

 HOWの魔王。彼ならばこの状況を何とかしうるだろう。だがその魔王は今、白の重装型と戦いの真っ最中。回線で彼女らの言葉を聞いて応答する。

 

『聞いている。今向かいたいが……くっ!』

 

『こいつ、しつこいっ』

 

 このままでは間に合わない。今から止めに入らなければ引火まで抑えられないと直感する。

ならどうするのか。動ける者がほとんどいない。けれどもこれをどうにか出来る可能性を陽太は感じ取っていた。

償いをする。そう決めたなら取るべき行動は一つだった。梨亜が行おうとしたそれを果たす。梨亜に確認を行う。

 

「梨亜、君のやろうとしたこと、出来るか?」

 

『うん。今がその時だから。力を貸して、陽太』

 

 優しく誘う梨亜。その言葉に従って、機体のコントロールを委ねた。デストロイドモードのまま、ユグドラルフィールドを展開した状態でフェネクスが海へと潜った。

 海水で本来は動きが遅くなるのを、フィールドの防護で素早く動いていく。海底へと目がけて沈んでいくⅡニア・ゼロングからは、確かに海底へ向けてユグドラルの不協和音が海底へ向けて流されていた。

 海底からは爆発を想像させる音が脳に直接聞こえてくる。DNLが感じ取るそれを陽太もまた感じ取っていた。あれを爆発させてはいけない。

 沈みゆくⅡニア・ゼロングの巨体。それに速度を合わせてフェネクス、梨亜が動く。ユグドラルの特殊な領域が展開されていく。

 それは一面緑一色の世界。海の暗さがどこかに行ってしまった。その中でただ一人佇むフェネクスと落下状態のⅡニア・ゼロング。

 プロトゼロンがねじ込まれた場所から亡霊の如く人型の影がはい出てくる。亡霊が語りかける。

 

『お前も嫌なんだろ?この不条理な世界が。俺もさ。勝手に作られて、英雄の身代わりにされそうになって。それでも希望に満たないからって予備として捨てられて』

 

 それが誰なのかなんとなくだが分かった。しかし俺は断固として拒否する。

 

「嫌だったさ。こんな世界、変えたいほどに。本当なら苦しい思いをして今を生きたくない。梨亜と一緒に生まれ変わりたいくらいだ」

 

『陽太……』

 

「でも今はまだ梨亜に付いてはいけない。梨亜の望んだことを、果たすために!お前を止める!」

 

 フェネクスのユグドラシルフレームが活性化していく。やがてフェネクスのバックパック、ウイングが光を帯びていく。光が伸びていき、そして―――――巨大な光の翼を形成した。

 まるで本物の鳥のような翼だ。もし周囲の光がなかったならその光景はクリオネのように見られたかもしれない。

 広げた翼はⅡニア・ゼロングの巨体を包み込む。光の伝播が起こっていき、それは海底の怨念にも伸びていく。悪意をすべて包み込み、浄化するかのように。

 フェネクスの中にいた陽太は心地よさを感じる。梨亜の優しさを一心に受けているようだった。その時、イメージが陽太を引き込む。

 

 

 

 

 引き込まれたイメージの先で陽太は見る。梨亜が一人の少年を抱きかかえている。泣きじゃくる子供をあやすかのように、その姿は聖女か。

 その少年が誰なのかは察しが付く。嫉妬はあれど、それより意外さがあった。あやす梨亜が言う。

 

『彼は、身体こそ大人だけれど、実際はそう長く生きていない。誰かのコピーとして生まれた。彼にはその道しかなかった。それ以外を、求められなかった』

 

「同じだ。俺達と。自由に生きたくても誰かの思惑に縛りつけられていた頃の俺達と、それに、今の君と」

 

『フフッ、そうだね。私も結局はフェネクスに縛られて、だからユグドラシルフレームやDNLを知らず知らずのうちに憎んでしまっていた。魔王と話して、今陽太と一緒に戦って分かった』

 

 気づかずに抱いていた恨みを、梨亜も理解する。あの事件で誰もがずっと心に苦しみを抱いていた。それはきっと、彼も同じだ。今なら分かる。彼が、彼らが生まれた意味を。それはきっと、このアンネイムドに関わる。

 梨亜は少年をその手に抱いて、こちらを向く。それはとても寂しそうで苦しそうだった。その訳を話す。

 

『陽太、私この子と行くよ。Ⅱニア・ゼロングも、この子のゆりかごと一緒に。この世界にあってはならない存在だから』

 

「……あぁ」

 

 悲しみをグッと堪える。本当は嫌だ。だけども、これは必要なことなのだ。この世界を護るために。

それが、きっと梨亜とまた会うために必要なプロセスなのだ。出会いがあるなら、別れもある。梨亜は「何度だって生まれ変わってまた出会う」と言ってくれた。なら、今は送るべきなのだ。

 梨亜はその子を連れて、遠ざかっていく。その途中で振り返る。

 

『大丈夫だよ、陽太は。きっと、これからも戦っていける。この世界の争いは当分終わることはない。でも戦うことを諦めちゃいけない。諦めたら私と同じ側になっちゃう。苦しいと思うけど私と同じにならないで。そしたら、私もそっちに追いつくから』

 

 道を踏み外したことを梨亜は後悔している。やっぱり本当はそうなりたくないのか。梨亜は最後に掛け合いをする。

 

『陽太。また三人で一緒に、友達として出会おうね』

 

 三人。ああはなっても梨亜は決して未緒を恨んでいなかった。その優しさに応えたい。俺は頷く。

 

「あぁ、もう一度、やり直そう。生まれ変わった、その先で」

 

 そう答えた瞬間、梨亜の影が揺れた。少女の姿から大人びた姿に。全身傷だらけのパイロットスーツ姿、だけどそれが一瞬で消え、白いワンピース姿の可憐な女性に様変わりする。きっと、それは本来歩んだはずの、イフの姿。その姿で微笑んだ。

 

 

 

 

「うん。さようなら」

 

 

 

 

 

 

 

 

 その声を聞いた時には、既にフェネクスは海上へと上がっていた。気付いた陽太はあたりを見回す。だけど、そこにはもうⅡニア・ゼロングの姿はない。

 また違和感にも気づいた。フェネクスの姿が、ガンダムからもとの一角獣、ユニコーンドモードへと変形していた。

 もう、そこにあのDNLの力を感じない。それを実感して理解した。理解して海を見つめた。

 

「……行ったんだな、梨亜」

 

 海から空へ、海鳥と共にユグドラルの羽が舞い上がっていった。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP55はここまでです。

レイ「概ね同じだけど……また新しい単語が出て来たね。D4ガス?」

ジャンヌ「……ちょっといいです?性質は分かりませんけど、この世界の成り立ちとかと絡めつつ最近の作品と絡めますと……」

いやぁ、ZとAの競演は熱かったけどあんな爆弾が残ることになろうとは……。

ジャンヌ「……やっぱり」

レイ「ごしょーわ!」

止めんか!(゚Д゚;)手間がかかる!

レイ「えーでもあの作品ならご唱和は必要でしょ?」

そうだけど違う。

ジャンヌ「いや、吹っ掛ける形になったのは作者ですし」

まぁ次の話の冒頭でちょっと言うけどあれよりは厄介なことにはならない……っていうかもう人類の科学力が触れる奴になってるから。名前はちょっと借りたけども。

レイ「あははっ、最終盤でそれを利用した兵器出てきたらご唱和しないとね~」

ない、と思いたい。その時はウルトラ申し訳ない気持ちでございます……って言うわ。

ジャンヌ「それで話を戻しますが、まぁ最後の演出はちょっと違ってましたね、ニュアンスと言いますか」

レイ「そうそう!宇宙の彼方へ機体ごと!じゃなくて、意識だけが抜けていったって感じ?」

ジャンヌ「それを海鳥で表現するのはちょっとポエマーぽくって気持ち悪いですけど」

(´・ω・`)……いいじゃない、そういうことしたって……。

ジャンヌ「まぁ否定はしませんけど、作者はあなたですし」

レイ「でもでも、ナラティブと違って舞台が宇宙じゃなく地球だからこそ出来た演出だよねー」

割と今回生き物の描写を多く入れてますからね。ある意味動物たちが今回はキーポイントだったかもと思っていたり。
と、色々話したいけど次の方に行きますか。

レイ「だねー。次は多分、宗司君達の決着だねー次へゴーゴー!」


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EPISODE56 虹と鳥と暴かれし者と4

どうも、藤和木 士です。引き続きEPISODE55と56の更新となります。続いてEP56です。

ネイ「フェネクスはゾルダーと共に天へと昇りましたが、ハリヴァーを撃墜できるのか……」

グリーフィア「こっちはどういう幕引きをしてくれるのか、楽しみね~」

それではどうぞ。


 

 

 フェネクスの起こした奇跡を間近に見て宗司は絶句していた。

 先程聞こえていたD4ガスは、この世界のDNジェネレーターの次元境界接触用ゲートを作り出すための加工に使われる物質。もしそれが爆発に用いられることがあれば、大規模な超次元現象を引き起こしかねないと、深絵隊長達が騒いでいた。

 だから宗司もどうにかするべく行った方がいいのではと思っていた。ところが同じくハル・ハリヴァーと交戦しながら聞いていた白が手を出すなと言った。

 

『あれは、彼らに任せるしかない。僕らは信じてこのままハリヴァーを抑えるんだ』

 

 などと言われてしまっては、従うしかない。彼の方がDNLとしてずっと先輩だったのだから。

 エターナも珍しく焦燥に駆られていたが、パートナーとして言い聞かせてハリヴァーを必死に抑えた。その間にもハリヴァーは「ここら一帯が、地獄へと変わる」などと言ってこちらを焦らせに来ていた。

 それでも諦めず、信じて抑えた。その結果が、この幻想的な光景だ。羽に似たユグドラルの塵が空へと舞い上がっていく光景に、エターナが唖然とする。

 

『何、これ……悪意も絶望も、全部包み込んで、抱擁して、空に還したの……?』

 

 先程まで海中から発せられていた破壊音のようなそれは、全て羽の粒子に吸い込まれていった。それらは悪意の音を漏らすことなく、空へと消えて行っていたのだ。

 今まで体感していたDNLの感覚はいずれも聞き取るくらいのものだった。だけどそれらは誰かの優しい言葉と共に包み込まれていき、封じ込めてしまった。DNL初心者の自分でもそれが誰によるものだったのかは勘づく。

 一方で、それらを感じ取れる敵のハリヴァーはその光景を見て不機嫌さを表す。

 

『また、無駄なことを。どれだけ浄化しようとも、人は変わらない。だからゼロンがもたらす欲で器を満たそうというのに』

 

『僕たちはそれでも可能性を信じて、人の明日を信じる。他人を器なんて形容する、そのあなたの考えは傲慢だ。他のゼロンの人もそうだっていうのか』

 

『少なくとも、私はそういう役割を持たされた存在さ』

 

 再びユニコーンとシナンジュが激突する。激突は既に熾烈を極め、両機共に正確無比な攻撃を躱してぶつけ合う状態だった。

 白さんが使うL-DLaは前に陽太のサーガガンダムが見せた物とは全く違う、圧倒的で他を寄せ付けない性能を見せていた。それに追随するハリヴァーの腕も尋常ではない。

 宗司は飛び交う攻撃は二つの防御領域で何とか防いで介入出来ていた。だが苛烈さはそれだけじゃない。

 

『ぐっ、ユグドラルフィールドの共鳴部分が拡大……もう他の非ユグドラルフレーム機からの支援は期待できないわよ!』

 

「それだけ、あの二人のユグドラルフィールドが強いってことか」

 

 既にこの空域は多量のユグドラルフィールドの領域が展開されていた。エターナによれば力場が敵味方関係なく結合して、同じユグドラルの力を扱える機体でなければ近づくことさえも叶わないという。

 それに対処しながら機体も動かす。当然それが初めてな宗司の機動は幼い。それを当然ハリヴァーも狙って来る。

 

『まずは足の遅いのを狙う』

 

「くっ」

 

『よそ見を!』

 

 だがそれをカバーする様に白さんがシナンジュに発砲する。ハリヴァーも攻撃してくるユニコーンに目を向けざるを得ず、高機動による斬り合いを展開する。

 動くことに精一杯な状況で、助けられたことにエターナは未熟さを呪っていた。

 

『……クソッ、こんな空間で、どうしてあんなに動けるのよ……』

 

「エターナ……」

 

 実際エターナの言葉は的を射ている。体の重さ、周囲の動きづらさを感じているパイロットとして、あそこまで動ける二人に脱帽せざるを得ない。

 助けられる現状に悔しい気持ちはエターナと同じだ。エターナにその想いを伝える。

 

「エターナ、俺もこのままじゃ嫌だ」

 

『ソージ……なら、どうすんのよ』

 

「俺自身のDNLとしての力、引き出してみせる。どうすればいい?」

 

 シンプルな要求。だがそれをエターナに教えてもらうというのは、彼女の技量、知識的に無茶だろう。いくらDNLの先輩だとしても答えてもらえるかどうか。

 もちろん答えてもらえない可能性の方が高い。一歩間違えばプライドを傷つける発言だ。それでも彼女は答えてくれると信じる。本音としては答えてもらわねば困る、だったが。

 しばらく沈黙を続けたエターナ。彼女がそうする間も宗司は攻撃に備えて警戒する。

 沈黙が長い。無理か、と思った時、彼女の口が開かれた。

 

『……私だって、感覚任せにどうにかやっている。こんな状況、体験するのだって初めてだし。正直、これが正解ってわけでもないと思う。でも、私がやっている感じはこの圧迫を相手から出されている音だと思っていて、それを自分側の音で相殺する、平たく言えば相手の音が聞こえない様にこっちの大声でかき消す感じ。……分かる?』

 

 意外にも分かりづらそうでなんとなく分かる説明。もどかしさはあれどそれが彼女らしいと言えばいいか。

 声を大きく騒がしく発する。音を能力のイメージとしたDNLの感覚はこれまでエターナの感覚を間借りしていた宗司も分かっている。そこにドライバ・フィールドで様々な物をイメージしてきた宗司にとって、イメージすることは朝飯前と言えた。

 要は自分のDNLを操作し、憑依するユグドラルフィールドを打ち消せと言っている。二つ同時に扱うのは難しい、と思ったがそこでガンダムDNの変化に、否、自身の更なる変化に気づく。

 

(あれ、そういえば俺、いろんなことを考えながらドライバ・フィールドとユグドラルフィールドを制御してる……?)

 

 今まではドライバ・フィールド単体と機体の制御、思考をエターナのサポートを受けつつで精一杯やってきていた。けれども今、現状維持だけでも最大稼働した時と同じだけの負担をこれまでよりも軽く感じていたのだ。

 ユグドラルフィールドにドライバ・フィールドの維持。これだけでも煩雑になりそうなものを。これが意味する物を軽く想像できる。だが今は噛みしめている場合ではない。流れてきた弾をすぐに感知して回避行動をとる。ぼさっとしていたこちらにエターナは怒る。

 

『こらっ、何考えてる!もう少しで当たりそうだったじゃない!』

 

 叱りの言葉を放ったエターナに俺は謝罪と、反撃の言葉を告げた。

 

「悪い。だけど、もう大丈夫。行くぞ」

 

『え―――――』

 

 周囲の空気が揺らぐ。と同時にガンダムDNアーバレストが動く。その機動は先程までとは違う。ユグドラルフィールドが周囲に展開される前と、このモードが発動した直後と同じスピードで、高速機動戦闘を行うシナンジュ・ゼロン・ハルへと追いつく。

 

『何っ!?』

 

『これは……君は』

 

 一目瞭然の変化に両機体のパイロットがこちらに驚愕し、目を向ける。先程までこの空間内で超高速戦闘を行っていた二人が注意を向けないといけない程にその変化は急で驚異的だった。

 追いついたその速度のまま、宗司はビームライフルを放つ。

 

「行けッ!」

 

『っ、ぬおぉっ!?』

 

 初撃は避けられる。が、二撃目は避けた先に直撃コースとなり、シナンジュ・ゼロン・ハルはシールドで防御する姿勢を取った。これまでよりもいい流れで、このまま行けると思った。

 しかしそこでもまたおかしなことが起こる。直進していたはずのビームはシールドから少し離れた空間で着弾、霧散していった。霧散していくときにビームは不自然な弾き方で、円形を作るように霧散していった。

 

「何が……っ!」

 

 当たっていないと判断して、続けて撃つ。だがまた直撃には至らない。追いつける速度まで行って何も出来ないなど嫌だ。そのまま回り込んで位置を変えたりしてビームを放ったが、いずれも防御姿勢すら取られることなくそのフィールドで防がれる。

 流石にここまですれば宗司自身にも何があるのか分かる。こちらの無駄な努力をハリヴァーが嗤う。

 

『残念だが、君の攻撃では私を倒すには程遠い』

 

「みたい、だな。エターナ、ユグドラルフィールドの突破ってどうやるんだ」

 

 ハリヴァーの発言に同意しながらも再びエターナに疑問をぶつけた。ハリヴァーが発しているのは間違いなくユグドラルフィールドだ。それを防御に使われた場合の対処法をもちろんしらない。

 先程教えてくれたエターナに期待するほかない、と思って投げかけるがその当人は唸ってしまう。

 

『う……えぇと……』

 

『力場を持たせるんだ』

 

 それを回答したのは白だった。白はそれを実践して見せる。

 

『こういう風に、攻撃にユグドラルフィールドを乗せる、相手は自分の心の世界を展開している。騒音を発してこちらの言葉を防御している。それを突きさすようにイメージして、攻撃に乗せる!』

 

 言ってシールドのビームガトリングとバズーカと放つ。見るからに先程宗司の放ったビームライフルの威力よりも低かったが、フィールドに防がれることなくシールドへと着弾した。ハリヴァーも先程と違って鬱陶しそうに防御し、回避して対応する。

 白はそのまま近接戦へと移行し、ビームサーベルで近接戦に移行する。その間宗司はDNL能力で観察する。すると、確かにその発言通り鋭さのある音がユニコーンのビームサーベルから発せられていて、それが敵のフィールド切り裂いて本体のサーベルと打ち合っていた。

 エターナも同じように気づいてその技量に感嘆する。

 

『これが……本当のDNLの戦い……?』

 

「これが出来てようやくスタートライン……。行くぞ、エターナ」

 

『っ、私だって、DNLだからっ!』

 

 二人揃って機体の操縦に合わせてDNLの感応波を通じてユグドラルの制御を開始する。感覚を掴みながら、行けると判断して再び追撃に入った。

 向かってきたこちらにハリヴァーは無駄なことと吐く。

 

『また来たか。君達では』

 

「何度も、同じ手になるか!」

 

 再びビームライフルから攻撃を放った。シナンジュ・ゼロン・ハルは再び余裕の構えを見せていた、が途中で瞬間的に防御の構えを取る。その行動が示す通り今度はフィールドを貫き、本体へと当てることに成功する。

 その攻撃を白が称賛する。

 

『いいね。このままついて来れるか?』

 

「はいっ」

 

 白のユニコーンと共に二機でハリヴァーの機体を攻撃する。慣れている白の援護を担い、ユニコーンが斬りこめばこちらはその後の隙をカバーする動きを行う。

 だがこちらも近接攻撃を混ぜ、単調になりがちになる攻撃を複雑化させていく。ハリヴァーは何とか捌いていたものの、徐々に被弾を抑えられなくなっていく。ゼロン側のパイロット達が支援に入ろうとしていたが、そこで障害となっていたのは他ならぬシナンジュ・ゼロン・ハルも展開していたユグドラルフィールド。こちらのユグドラルフィールドとも結合して強固なフィールドを作り上げ、他機の接近どころか攻撃も通さない。

 本当ならユニコーンと一騎打ちとなるはずの領域が、こうしてハリヴァーを苦しめていた。だがゼロン側は必ず手を出せないわけではないようで、シシャの特殊カスタム機が救援へ向かおうとしていた。しかしそれは相手にしていた進が阻む。

 

『えぇい、邪魔な!ハリヴァー様、逃げてください。あなたがこんな……!』

 

『宗司、決めちまえ!』

 

 抑えてくれている進の言葉に報いるべく、決意と共にエラクスを起動させた。モードに掛け合わせてのエラクスの速度は全力機動しているユニコーンとほぼ同等以上だ。二機で次々と攻撃を繰り出す。

 ドライバ・フィールド弾、ビームマグナム、ビームサーベル、蹴り。攻撃の応酬が続く。負けじとシナンジュ・ゼロン・ハルも応戦した。

 

『うぉぉぉぉ!!』

 

「ぐっ!?クッ!」

 

 攻撃を行おうとしていたビームライフルが爆発を起こす。何かが入りこみ、ビームライフルの中を爆発させたような感覚を感じ取る。更に意識外だったシールドビームライフルにも同じことが起こり、瞬時に分離させてまとめて爆発するのを回避する。

 原理は分からないが、これもまたユグドラルフィールドによるものだろうか。ユグドラルフィールドを今度は介入されない様に注意しながらビームソードを展開して斬りかかる。

 

「えぇい!」

 

『くっ!』

 

 出力全開で切り結ぶ。受け止められてもエラクスの勢いでそのまま押し切る。シナンジュ・ゼロン・ハルの出力が上がっていてもお構いなしに押し開くその光景はドライバ、ユグドラル、エラクスの三つの力が合わさっているからこそだ。

 シュバルトゼロでも持っていないその三つの力。どんどん宗司自身の中に確信が生まれていく。それが最高峰に達した時、一気に勝負を掛ける。

 

「はぁぁぁぁぁ!!」

 

 光剣を交差させて切り抜ける。シールドを十字に切り裂いて、遂にシナンジュの左腕部と左脚部を腰の増加装甲ごと切り裂いた。

 増加装甲を切り裂いた瞬間、周囲のユグドラルの圧迫が弱まった気がする。ユグドラルパーツを切り裂いたからだろう。しかしシナンジュはそのパーツをすぐに再生させていった。

 

『くっ、まだユグドラルの力は尽きないぞ、ガンダム!』

 

 諦めを口にしないハリヴァー。明確にこちらを「ガンダム」と認識していた。そこにもう一機の「ガンダム」がそのハリヴァーに続く一撃を加える。

 

『なら今度こそ、あんたは落とす!』

 

 ユニコーンが突貫し、両腕部のホルダーに収まったビームサーベルを装填したまま突き立てる。トンファーとしてのビームサーベルでシナンジュ・ゼロン・ハルの両肩へと繋がる胴体部を貫く形となる。

 シナンジュ・ゼロン・ハルは腕部をがたがたと震わせる。ビームライフルも取りこぼしていた。押さえつけられたような状態でユニコーンを介したハリヴァーの接触通信が聞こえる。

 

『また、君は人に戻れなくなりたいか……っ』

 

 戻れなくなる。それが意味する物を宗司は理解しかねた。けれどもそれを分かっている様子の白は返答した。

 

『もう戻れない。確かにそうだ。いつかは僕の意識は次元世界の中へと消える。だけど、今の僕は、俺は、彼女の下に、大鳥居 伴南(おおとりい はんな)の、みんなの下に帰る。それが出来るのが、DNLなんだ!』

 

『DNLなどという希望など持つから、世界の争いが無くならないのをまだ洞察出来ないか、君も』

 

『うるさい!過去や今に縋っているあなたに、未来は分からない!』

 

 これまでとは違う気迫の白が言い放つ。直後突き刺していたビームサーベルをそのまま極大化させた。

 串刺しのままシナンジュ・ゼロン・ハルの機体は上空へと飛ばされる。その後出力限界を迎えたビームトンファーが爆発した。ユニコーンの機体がぐらつく。

 ビームトンファーは背部のウイングスラスターまで貫いたようで、それにも関わらずハリヴァーは空中で浮遊を維持する。周囲の音からユグドラルで何とか浮遊していることが分かる。

 だがそんな満身創痍のシナンジュを見てもまだ白さんは、白は逃すつもりはなかった。手を手刀の形に構え、DNFを宣言した。

 

『DNF Authorize 「ユグドラルブレイカーブレード」!』

 

『亡霊は、次元の彼方に還れッ!!』

 

 巨大なユグドラルフィールドを手に纏わせる。手を軸にしたそれは大振りの大剣の如き形を取り、天高く研ぎ澄まされる。

 普通の人には見えない、不可視の刃。けれどもDNLには分かる。音を軸に気づけば、その大剣の鋭さが。

 その音の大剣を満身創痍のシナンジュ・ゼロン・ハルに向けて振り下ろした。間違いなく叩き斬れる。これで、戦いが終わる――――――。

 

 

 

 

 そう、思った。

 

 

 

 

『や、ら、せ、る、かよっ、お前達如きに!!』

 

 そんな声と共に向かってきたのは、元隊長と対峙していたはずの白い重装機。既に各部を損傷させていたが、搭載されているのであろうユグドラルフレームの力を纏ってこの力場の中を突っ切ってきた。

 大剣の前に到着するとその機体は肩部のシールドを構える。そんなもので防御できるとは思えない。だが意外にもそれはちゃんとDNFによる攻撃を受け止め、同時に爆発が起こる。

 爆発の煙が周囲を覆った。攻撃を受け止められて白もこちらも視界不良に陥る。

 

「くっ、視界が……」

 

『落ち着いてくれ、DNLの力を使うんだ』

 

 言われて宗司はDNLの力を研ぎ澄ます。いつもなら何も見えない、状況を把握できないとエターナに任せていたが今は自分でも分かる。すぐに煙の中の状況を把握できる。

 中でうごめく音。装甲か何かの金属音がガラガラと音を立てている。しかし中の者、爆発の中心部からは未だDNジェネレーターの駆動音が響く。二つのゲートの駆動音が聞こえる。

 その時、元隊長の声が回線から聞こえてくる。

 

『……ゲートの駆動音が、二つ……、いや、四つ?』

 

 言葉の意味を理解しかねる。が、すぐにその意味を知る。煙が晴れる。そこに居た機体は先程とは違っていた。

 

「あれは……!?」

 

『アイツ、は……まさかっ!』

 

 煙が晴れた後にいたのはシナンジュ・ゼロン・ハルと見慣れぬと言ってしまえばそうではない、だがあり得ない色の機体。

 ()()()()()()()()()()()()()だった。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回はここまでとなります。

ネイ「……いやいやいや、え、最後……?」

グリーフィア「あらら~……今回の話、ひょっとして今回最後のやつを一番だしたかったって作者君の気持ちかしら~?」

まぁ、元々最後のあれは最初からこの第3章に織り込むつもりで作ってましたからね。それ以外は割と途中変えてたりとかはしたんですが。

ネイ「思えば、ナラティブ編、ユニコーンとバンシィが出る時点で察せるといえば察せるとも言えたわけですか。ユニコーンたちはアンネイムド、名前のないですが、シュバルトゼロ、そして、あの白いガンダムは「名付けられている」……」

グリーフィア「そしてその二機のガンダムは、奇しくもユニコーンとバンシィと同じく特殊フレーム付きで、対照的な色をしている。主役が黒ってことを除けば似てるものね~」

とはいえ、それ以外にも名付けられしモノの意味は他にもあるんですが、今章で覚醒したアーバレストのオーバードライバフォームもアンネイムド達と関係あるし、そこらへんもひっくるめてこの小タイトルです。

ネイ「これ、まだ話はあるんですよね?」

あ、本編はあと一話です。

グリーフィア「一話でどう終わらせんの~!?」

如何なる終わらせ方でも第3章ストーリーは残り一話。最後までお付き合いください。それではまた次回。

ネイ「よ、よろしくお願いします」


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EPISODE57 虹と鳥と暴かれし者と5

どうも、藤和木 士です。今回は1話のみ、EPISODE57の更新です。

レイ「これがLEVEL3第3章の最後だね。遂に現れた白いシュバルトゼロ!もうあいつしかいないね!」

ジャンヌ「パイロット……今回もエンドがだましたのでしょうか……それとも」

気になるパイロットは一体誰なのか。というわけで本編をどうぞ。


 

 

 既に周囲の明かりは落ちていき、瞬くのは爆発の光とMSなどが発するDNの輝き位のものだった。

 巨大な思念の斬撃が流星の再現と称された男の機体を切り裂こうとした時、白きタリスマンと形容できるMSはその機体を庇った。

 普通なら真っ二つに切り裂かれて破壊されていたはずの機体。だがその機体は現存していた。

 防御の為と思われた鎧は「外界から姿を隠すための偽装」であったと言わんばかりに、今、真実の姿を明かしていた。

 その姿は魔王と瓜二つ、真逆の白を夜の中に輝かせていた。

 

 

 

 

『はじ、めっ……!あれ、あ、れ、は……!』

 

 ジャンヌの声が震える。無理もない。今攻撃を受け止めた機体が、よもやあんな姿へと変わっていると目にすれば俺達が驚かないわけがない。

 姿を露わにしたその機体に、助けられたハリヴァーが驚きを口にする。

 

『……よもや君に助けられてしまうことになるとは、ね』

 

『フン、だから言っただろう。俺はお前が敵うような相手じゃないんだ』

 

『……認めたくないものだな。若さゆえの過ち、驕りを』

 

 納得がいかなくとも助けられたことに礼を述べていた。それをしり目に白い機体のパイロットはシナンジュ・ゼロン・ハルの相手をしていた白と宗司……と、先程まで相手にしていたこちらに向けて言い放つ。

 

『見るがいい脆弱腐敗のHOWと自衛軍よ。これがゼロンの希望にして、唯一無二の世界の救世主。ヴァイスインフィニットガンダム・ゼロニアスだっ!』

 

 その名前が響いた。詳細を知る者達の間でどよめきが生まれる。

 

『ヴァイス……インフィニット!』

 

『あれが……シュバルトゼロと対となると言われた』

 

『姉様……あの中に、姉様のレイアさんが』

 

 そうだ。あれこそ、シュバルトゼロの対の宿命、そしてレイア・スターライトを捕らえる最悪のガンダム。

 ふつふつと湧き上がる憎しみ。憎しみは続くゼロニアスのパイロットの言葉で爆発する。

 

『魔王、いや、黒和元!親不孝者のお前を、本当の黒和家の血を引く、この黒和 神治(くろわ しんじ)が粛清する!』

 

「お前か、ヴァイスインフィニットのパイロットは!」

 

 スラスターを全開に、一気に突撃する。エラクスも使用しての加速。そのままディメンションブレイカーで掴みかかる。

 あちらもまた掌を開いてDNFで対峙する。両者の強力なDNFの激突が、周囲の空気を震わせ、そして次元空間の裂け目を作り出す。

 

『エネルギー反応極大値!何、あれ!?』

 

『ちょ、ちょっと!超次元現象起きてるけど!?』

 

『シュバルトゼロと同等のMSとの激突……だとしたら、過度なエネルギー衝突で次元世界に異常を与えても……!』

 

 艦の方からの回線も聞こえてくる。だがそれを無視してでも、今は目の前の敵を落としにかかる。

 互角に演じる両者。しかし均衡を崩したのはこちらだ。

 

「今のお前に!」

 

『っ、ちぃ!!』

 

 出力を上げて無理矢理吹き飛ばす。スリープさせたジャッジメントクローズモードを無理矢理起動させると、その胸部目がけて手を伸ばす。

 

「ウォォォォォ!!!」

 

 蒼い稲妻を迸らせて掴みかかる。ところがそこでジャッジメントクローズが強制解除されてしまった。解除されて一気に推力を喪う。

 

『カハッ!ォェ……』

 

「っ、しまっ……」

 

 ジャンヌの体力が持たなかった。ようやく我に返るがジャンヌは吐血と共に沈黙してしまう。途端に機体が重くなっていく。

 それをチャンスと押し込まれていたヴァイスインフィニットが反撃する。

 

『よくも舐めた真似をっ!!』

 

「ちぃ!」

 

 だがその攻撃は届かなかった。素早く四方から放たれた多重攻撃により追い返されたのだ。

 追い返したビットの持ち主である深絵が安否を、いや、冷静になれと声を掛けてくる。

 

『元君!冷静になって!ジャンヌちゃんだって今病み上がりなのに!』」

 

「あ、あぁ。もう大丈夫だ。すまん」

 

『あぁ、もう!今になってからじゃ遅すぎる!下がってて』

 

 言われて下がるしかない。が、相手もまた後退の意志を見せた。

 

『神治騎士官に助けられたとはいえ、こちらの戦力はもはや瓦解したな。撤退するぞ、神治騎士官』

 

『おい!魔王を殺るチャンスだろ!俺の機体だってもうこうして出た!こいつらを葬って、勝負を決して……』

 

『君の主観で、我が隊を壊滅させるというのなら、勝手にしたまえ!例え帰ってこようが代表は決して君を許しはしない。命令違反をして、我々を危険にさらしたと言ってね!』

 

 意見の対立は好機と言える。もっとも今攻撃すればたちまち向かってこられてこっちが不利だが。

 だからこそ様子を見る。こちらも態勢を整える。ハリヴァーが黒和神治を、あの少年(ガキ)を諭す。

 

『例え大きな力を持っていようが、救世主と名乗るなら味方の被害を考えたまえ』

 

『救世主の俺の言葉が聞けないのか!勝てると言っているんだ!』

 

『根拠のないそれに、従えんよ。それに君は今回あくまで見学の立場だ。指揮官には従ってもらう』

 

『俺が根拠だ!攻撃を止めた俺と言う存在が!お前が戦えないのなら、俺に指揮権が移るだろう!?代表はそうおっしゃってくれるはずだ!』

 

『……なんていうか……駄々っ子?』

 

「だな。力を手に入れて舞い上がっている。かつての俺のように」

 

 深絵と共に会話をそう解釈する。アニメでもナルシストが言ってそうな発言のレパートリー。かつて対峙したランド・オンや沢下判と同じタイプだ。

 救世主を主張する談義は実につまらない。とはいえ虚勢を張って突撃されてもかなわないので聞き続ける。ハリヴァーの言葉が話をまとめた。

 

『やれやれ、君のその行為は、先程の君が憎く思う魔王と同じだぞ?』

 

『なっ、魔王と同じだと侮辱するのかっ!』

 

 聞いている側として、癪に障る。だが紛れもない事実であり、心の中で同意する。まるで他人をダメな例を指し示す親のように撤退を再び呼びかける。

 

『同じと思われたくないなら、黙って従え。もちろん、私を連れてな』

 

『ぐっ、覚えていろっ!』

 

 舌打ちと共にハリヴァーの機体を捕まえると、そのままエラクスの蒼い光を放ちながら高速で離脱していった。追いたい気持ちはもちろんあった。けれども、今は無理だった。

 回線が聞こえないジャンヌの様子が心配だった。自分の感情的な行動が原因なのに。

 ただ見る事しか出来ない。ただ謝罪を口にすることしか出来ない。

 

「ジャンヌ……ごめん」

 

『……はぁ。全機に通達。作戦を終了する。全機帰投しカザノへ後退。未緒一派の拘束も、忘れずに』

 

 代わりに本作戦の総指揮官である深絵の言葉で、作戦は終了した。

 

 

 

 

「いやぁ、またアンネイムドを駆りし者達に、助けてもらうことになるなんて……」

 

 夜明け、全ての後始末を終えて帰ろうとする宗司達に見送りにやってきてくれた舞島さんはそう言って見せた。

 あの後、カザノ本社は消防により火災を鎮火させられ、徹夜で業務復旧を行っていた。この時間になってようやく手が空いたことで彼は見送りとして別れの挨拶をしに来たのだ。

 それに快く応じ、こうしてメンバーを集めた蒼梨隊長は礼を述べる。

 

「いえ。こちらの無茶な要件に応えて頂いた上に、作戦にまで巻き込んでしまい申し訳ありませんでした。作戦の指揮官として、責任は私にあります。本当に申し訳ありません」

 

 頭を下げる蒼梨隊長、それに自衛軍の新堂隊長も続けて頭を下げた。ちなみにその中に始め隊長はいない。

 理由は横に並んでいたエターナの小言が示す。

 

「……まったく、姉様を殺しかけて……独房入りで済むと思ってんの」

 

 元隊長は戦闘中、負傷していたジャンヌ副隊長の容体を無視して戦闘を行った。それを自戒して現在艦の独房に入っていたのだ。

 その事を艦に戻ってから知ったエターナはカンカンに怒鳴り散らしていた。だが元隊長も相当気に病んでおり、何より意識が戻ったジャンヌ副隊長の嘆願もあって収められた。

 それでもまだエターナは納得がいっていなかったのだ。彼女の苦しさは分かる。だけど元隊長達の事情もあるようで、宗司は隊長の肩を持つことにした。

 

「エターナ……とりあえず今は抑えておこう」

 

「……分かったわよ」

 

 そう言って挨拶の方に視線を戻す。舞島さんはこちらのせいだけではないと語る。

 

「そうは言っても、こちらにも落ち度はあります。何より、我が社の利益ではなく、他人の利益、それも我欲に力を貸していた者を社に残していた方が恥ですから。それを浄化してもらったと思えば、こちらも痛み分けと言った感じです。ですから気にしないでください」

 

「そう、ですね。そう言ってもらえると、気は楽です。それで顛末としてはお渡しした資料の通りです」

 

「えぇ。解決した、とはいえ、我が社の責任は非常に大きいものでしょう。アンネイムドという機体達を作ってさえいなければ、彼も」

 

 結局のところ、未緒一派は全員拘束され、国の刑務所へと護送されることが決まった。ゼロンに情報を流し、国の機関であるHOW、自衛軍の邪魔をしたのだから、当然だった。

 当のフェネクスは宿っていた鳥金梨亜の意識が退去し、もとの高性能ユグドラシルフレーム機へと戻っていた。その為当初の自衛軍で内密にされていた「捕獲して研究」することは意味のない行為となったのである。

 前提が崩れたことで執着が無くなり情状酌量する部分はあるが、それは法廷で決めることだ。しかしただ一人及川陽太だけは別で既に判決が下されていた。

 それは無期懲役。軍の物であったMSを勝手に運用し、加えて捕獲対象を勝手に、人知を超えた方法で特異性を喪失させたのだ。

 その結果彼は生涯ずっと「自衛軍で働く」ことになった。自衛軍を信用できなかった彼に対する刑はその方がいいと新堂隊長は言い、本部も了承したという。そして彼の乗機は他ならぬアンネイムド[フェネクス]。梨亜に続く「二人目の自衛軍専属DNLパイロット」として罪を償いながら働くという。

 当初及川陽太本人は気まずさを感じていた。だがその働き次第によっては未緒の刑期が縮まると聞いて、考えた末に了承していた。

 捕まる前に話した及川陽太の言葉が蘇る。

 

『梨亜はもういない。けど頼まれたからな。罪を償う。戦うために引き受けます』

 

 DNLの行きつく先。機体に喰われて、最終的には……などと考えてしまう。けれども新堂隊長によれば必ずしもそう言うわけではないという。

 そもそもの話、ユグドラルフレームがなぜ光るのかすらも分かっていない状況らしい。舞島さんにも分かっていないらしく、アンネイムドの間でどうしてフレームの色が違うのか、そして今度からはジェミニアスがなぜフレーム色変化と共に機能を変えられるのかが目下の研究課題らしい。

 そんなことを思い出していると隊長達の会話が終わりを迎える。

 

「では今後ともよろしくと、貴社の繁栄を願って。ありがとうございました」

 

「えぇ。こちらこそ、ゼロンの取り締まり、期待しています」

 

 そうしてミッションは終了し、帰投していく。

 

 

 

 

 ヴァルプルギス、オーヴェロン、自衛軍極舞艦艇「ジンギ」が東響方面へ向けて帰る道中。休憩スペースで俺はエターナの機嫌取りに付き合わされていた。

 

「あぁもうっ、腹立つ!」

 

「いい加減落ち着け……。これでもうアイス四個目だぞ」

 

 元隊長への苛立ちを抑えられないエターナはちょっとお高めのアイスを自販機から買い、もう四つ食べようとしていた。

 やけ食いするその姿は見ていて止めたくもなる。お腹が出ないのかというツッコミが禁句なのはもちろん、止めるにしてもどうするべきか。ここは同じく見ている女子勢に任せた方がいいだろう。

 その一人である入嶋が隊長の心配をする。

 

「あの……エターナちゃんの気持ちも分かるけども、元隊長もさ……事情があったわけだし。エターナちゃんもジャンヌお姉さんの話を知っているんでしょ?」

 

「……そりゃあ、まぁ」

 

 元隊長が突貫したわけ。ヴァイスインフィニットガンダム・ゼロニアスという存在。もっともどちらかと言えばそれに取り込まれた一人の少女が原因らしいのだが。

 エターナは恨み言のようにそれを呟く。

 

「レイアさん……あの時は声が聞こえなかったけど、生きている……のかな」

 

「元おにーちゃんが当時の事件からこの世界に来て今までの間で大体13年。人質の為になら流石に生かしておくとは思う」

 

「ちょっと!姉様の最愛の人を人質扱いだなんて!」

 

「でも実際、そう言う側面もあるでしょ?」

 

「うっ、それは……」

 

 光巴の人質発言にエターナが叫ぶも、続く言葉で黙らされる。するとそんなやり取りを聞きつけてかの人物が車いすで姿を現す。

 

「やれやれ……エターナもそう感情を沸騰させないでください」

 

「!姉様、大丈夫なのっ!?」

 

「えぇ。とはいえ、動くのはちょっと辛いのでこうなってはいますが」

 

 エターナの姉、ジャンヌ副隊長はそう言って見せる。安静にと言われていたはずなのだが、流石は副隊長だからか。

 と思ったが慌てて止めに来た医務室の人の言葉でそうでないことが告げられる。

 

「じゃ、ジャンヌ副隊長!車いすだからって補助なしに動き回らないでください!」

 

「やっぱり動いちゃダメなんじゃないですかぁ!」

 

「あ、はは……ごめんなさい」

 

「まったく……あぁ、君達にジャンヌ副隊長のこと任せてもいいかしら。今回の作戦で医務室の備品結構使ったから確認したいのよ」

 

「それは、はい」

 

 副隊長はすぐに謝る。医務室の先生はこちらに副隊長の事を任せて仕事に戻っていく。

 見送ってからジャンヌ副隊長は先程までの話に付け足しをする。

 

「それで、この度は元が勝手な行動をして申し訳ありませんでした。みなさんに心配させて……」

 

「いやいや、その無茶をされて怪我した張本人が言えることじゃないですって」

 

「そうよ、姉様もうあんな最低男のパートナーじゃなくていいんだからっ」

 

 元隊長の無茶に付き合ったにも関わらず、謝罪するジャンヌ副隊長。光巴とエターナがツッコみ、エターナはパートナー解消を提案する。

 相変わらずの元隊長嫌いのエターナだ。けれども今回はそれも視野に入れていいのかもしれない。というか入る前もジャンヌ副隊長はこうだったのだろうか。

しかし当の本人はその提案を却下する。却下したうえで自身の胸の内を明かす。

 

「そんなのできません。そもそも、元があそこまでレイアさんの事に敏感になってしまっているのは、私のせいなんですから……」

 

「ジャンヌ副隊長……?」

 

 自分のせいだと話す副隊長に訊き返す。するとジャンヌ副隊長はこう返した。

 

「元は私がレイアさんの事を愛しすぎていた頃の事を知っているんです。私はもうレイアさんだけに頼ることをやめているのに、その時の日々を、自分が介入しなかった未来を求めてしまっている。……言うなら、エターナ、あなたの理想を叶えようとしているの、あの人は」

 

「………………」

 

 悲嘆に暮れたジャンヌ副隊長を、エターナはただ無言で返す。返すしかなかったのだった。

 

 

 

 

 今、白のガンダムが戦場へと舞い戻る。因縁は深く、それぞれのパイロットが、存在が、お互いを憎み合う。

 黒き魔王、黒和元と白き救世主、黒和神治。11年前の因縁。

 断罪の魔女王、ジャンヌ・ファーフニルと囚われの詩巫女、レイア・スターライト。13年前の別れ。

 黒の元英雄の一部、スタートと白の元英雄の一部、エンド。1400年前の××。

 最初からすれ違っていた。今もまたすれ違う。互いを滅ぼしたとき、始まるのかそれとも終わるのか。

 再び激突する黒と白の英雄(ガンダム)。その時、他の者達の運命も対立していく。

 終誕の日は、近い。

 

 

第3章 END

NEXT CHAPTER AND NEXT EPISODE

 




はい、というわけで第3章の物語は終幕です。

レイ「うーんどこから突っ込んでいいか……」

ジャンヌ「とりあえず、過去に張っていた伏線が意外な形で回収された、と言っていいですね。ヴァイスインフィニットのパイロットは、あのL2第4章で残された黒和家の養子ですか……」

あの子が成長して、MSパイロットとして敵対した。しかもよりにもよってヴァイスインフィニットと……まぁ因果ですわな。

レイ「因果にしても作者の悪趣味を感じるよ……。エンドの思惑も分かってないし、一体何を考えてこんなことを……」

ジャンヌ「ですけど、分かることとしてははっきりゼロンの教義に毒されているというのは分かりましたね」

家族を殺された復讐を背負って、奴は元君に挑む。これが次章のテーマとなりますね。詳しい話はまた黒の館でも話すよ。

レイ「そこであの元君の暴走も分かるかな?」

それも、まぁ後々喋っていくかと。

ジャンヌ「最後のジャンヌ・Fさんの言葉、すっごく気になります。エターナさんの理想ということはつまり、二人が別れることを望んでいると。それってL1の二人の告白を台無しにするってことじゃないですか」

果たして元君に何があったのか。いや、もうここまで読んでくださっている方にはとっくに分かっているんじゃないかな?何が元君を狂わせたのか。行き過ぎた信仰が内乱を誘発する様に、過度な思いやりもまた人を遠ざける。でももし、それすらも構わないのだとしたら?例え自分の心が壊れようと。
そんな人はきっと狂っていることでしょう。その末路や如何に!

レイ「末路って……嫌な感じ……」

ジャンヌ「バッドエンド、とは思いたくないんですが……いつものように這い上がるリライズルートでお願いします」

それでは次回は黒の館DNでお会いしましょう。

レイ「また次回っ!」


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黒の館DN 双翼英雄譚編 第8回 前編

どうも、先日ようやく閃光のハサウェイ見に行きました藤和木 士です。動きがすげぇよ。

話を戻しまして今回は黒の館DN双翼英雄譚編第8回となります。アンネイムド関係、ゼロンの切り札たちの、そしてHOWの切り札たる最強のシュバルトゼロの紹介を三回にッ分けて紹介です。

それでは前編からどうぞ。


 

 

士「さぁ黒の館DNのお時間です」

 

レイ「ヴァイスインフィニット……そこにいたんだね」

 

ジャンヌ「色々ツッコミどころ大ありですね。というか、名前もあれってことは」

 

士「そこら辺はこれから紹介していくってことで。とっとと人物紹介行こう」

 

レイ「それ通してからじゃないと話せないこともあるよねー。ってわけでどうぞっ!」

 

 

 

 

神鳴 白(かみなり はく)

 民間人から自衛軍所属となったパイロット。かつてのラプラス事件においてアンネイムドユニコーンを操った当事者でもある。白髪の男性。

 かつてはカザノメカニクス管轄の工業専門学校に通っていたが、そこでラプラス事件に巻き込まれ、アンネイムドユニコーンを駆ることとなった。カザノメカニクスの裏の支配者だった神鳴一族であり、曽祖父が政岡 隆と共にかねてより進めていた政府直属のDNL輩出プログラム「ラプラス計画」にてDNLとして見出された。その戦いの中でゼロンの真紅の流星勢力の姫君として祭り上げられていた女性を救出することは出来たものの、その直後のゼロン・自衛軍一族一派の総攻撃にて味方を守るため人智を越えた領域「ユグドラルの結晶発生体」へと変化。その後の呼びかけで戻ったものの、白の精神は少しずつ外部へ、アンネイムドユニコーンへと流れている事が判明し、それを少しでも防ぐべく、アンネイムドシリーズは凍結扱いとなった。

 本編ではまだ精神が持っている状態で参戦し、アンネイムドを奪取されてしまうがのちに返還され、卓越した技能とDNL能力により奪還したユニコーンでシナンジュ・ゼロンと渡り合い、戦線を支援した。

 モデルは機動戦士ガンダムUCの主人公バナージ・リンクス。時系列的にはナラティブの頃を意識。ちなみに髪色が白なのはMSのカラーに合わせた、わけではなく、かつて元が陥った高純度DNを浴びたことによるDNL覚醒の副作用の類似現象。色素が抜けきってしまったため。本人は今さら色を入れても意味はないから、とそのままにしている。

 

政岡 利一(まさおか りいち)

 政治家一家の跡取りでありながら自衛軍MSパイロットを志すパイロット。かつてのラプラス事件に置いて黒のアンネイムド、アンネイムドバンシィを駆っていた。銀髪の男性。

 当時の防衛大臣であった政岡 隆(まさおか りゅう)の息子。しかし安全な政治家人生を願っていたその親から逃げるために自衛軍に入った経緯がある。その自衛軍の任務でアンネイムド受領に向かっていたが、ゼロンの襲撃を受けてラプラス事件に巻き込まれていく。やがてバンシィのパイロットを務めていくが、白の戦果に嫉妬していき、自衛軍の一派に派閥拡大の為に利用されアンネイムドユニコーンと激突を繰り返す。その後ラプラス計画の根底にあった非開示文書「ラプラス文書」の開示とそれを巡る戦闘でユニコーンと共闘し、最終的に自衛軍一派が図った証拠隠滅のための衛星兵器の攻撃をユニコーンと共に完全に防御し、危機を救った。

 以後は新堂沙織の下で自衛軍と政府の再編に協力。本編にてシュバルトゼロの新装備の運搬のために現場に出て、合体を支援した。その後は未緒一派を戦闘終了まで見張り、バンシィも回収する。

 モデルはガンダムUCのリディ・マーセナス。白と同じくアナザーUCの枠としてのキャラクターである。

 

鳥金 梨亜(とりかね りあ)

 かつて東響掃討戦の結末を予言した「予言の子ども達」の一人にして、当時本物だったDNLの少女。かつてアンネイムドの合同運用試験でフェネクスのパイロットを務め、現在は暴走を経て肉体を喪った意識だけの存在となっている。登場するのは予言当時の姿と、高官に連れられ雲隠れする直前までの姿。ブロンドに近い茶色の髪を軽くおさげのようにして下げるような髪型。

 予言を行った当時は14歳で、家族や友人である及川・流一家と共に東響掃討戦の余波から逃げる途中だったが、咄嗟に家族たちに突き飛ばされて自分達だけ瓦礫の倒壊から助かった。直後DNLへと目覚め、高いDNL能力で一連の戦いの結末を予測した。

 その後は陽太達共に軍の孤児保護施設へと預けられるが、訪れたとある高官の企てにより、三人まとめて発足したばかりの当時の超次元感応者研究所へと引き取られる。そこで三人一緒に生きて実験から逃れようとするも、アクシデントにより梨亜のみが本物の予言の子ども、DNLであることが露見する。だが梨亜は二人を助けるためにそれを受け入れ、高官と共に研究所から去り、雲隠れした。

 その数年後、フェネクスへと乗るが強化処置により最適化され過ぎていた彼女はL-DLaの発動と共に暴走し、彼女を操っていたフェネクス開発陣、高官の男を惨殺。止めに入った当時のバンシィにも深手を負わせ施設から逃走。その後デストロイドモードの推力で宇宙へと飛び去った。

 その後はしばらく行方が分からなかったものの、一年後のアンネイムド二機によるラプラス事件以後、再び目撃される様になり、自衛軍、ゼロン、そして未緒の勢力に狙われる様になった。

 劇中では石河沖の無人島にて鳥と戯れていたところをHOWに捕獲。事情を話してユグドラシルフレームの消滅を願っていたが、未緒による救出後は未緒の企てによりユグドラシルフィールド発生の媒介にされる。クローザーによりフィールドを処理された後は対話を経て和解した陽太を機体に装依させて、共に本来の目的であるⅡニア・ゼロングの破壊を行った。決戦後は全ての残留思念を使い切ったのか、完全にフェネクスから彼女の意識が消え去っていた。しかし陽太は「きっとまた生まれ変わって会える」と信じ、フェネクス本体のみ自衛軍に回収されることになった。

 モデルは機動戦士ガンダムNTのリタ・ベルナル。ユグドラシルフレーム、DNLの消滅を願うなど、原典よりもやや過激な面を見せたが結末を経て考えを改めるなど根は良い子。物語からの退場も機体のみが残るように変更しており、生まれ変わりを示唆する流れとしている。

 

 

黒和 神治(くろわ しんじ)

性別 男

身長 163cm

髪色 黒髪に黄のメッシュ

出身地 三枝 松板市(まつばんし)

年齢 15歳

誕生日 11月26日

血液型 A

好きなもの 正義を成すこと、わたがし、おつとめ

嫌いなもの 黒和元、ゼロンの邪魔をする者、らっきょう

愛称 白き救世主、ゼロンの御旗

 

・黒和元と同じ、黒和の苗字を持つ少年。その正体は第2部4章にて元達の父親が語った教団から預けられた戦災孤児。ゼロンでの位は「騎士官」。

 始めにMSオーダーズとの衝突で彼自身の両親を失い、その親代わりとして元達の家族が選ばれ、自衛軍残党の教団が親代わりをさせた。しかしその後は知る通り、元の手で再び両親を目の前で殺されることとなる。二度の両親の殺害に幼いながらも憎しみを抱いた彼は次元覇院残党であった今のゼロンの代表かつ教祖の零崎に引き取られた。

 その後に経緯は不明だが、偶然にもシュバルトゼロと対となるヴァイスインフィニットのパイロットとなる。直接自身の手ですべての仇を討つためにその力を教団の為に振るうことを誓っている。

 本編中では真紅の流星部隊に支援兼ゼロン領域外での初実戦経験のためにゼロン・オブ・インフィニティーで出撃。ハルの撃墜の危機に割って入り、外装を完全破壊されるも修復されたヴァイスインフィニットの姿を晒して元達に挑発し、撤退した。

 人物モデルは鉄のラインバレルの「早瀬浩一」。もっと言うなら「城崎絵美に会わず、事故で自身ではなく家族が亡くなった世界線の早瀬浩一」である。

 

 

レイ「以上が人物紹介だね」

 

ジャンヌ「ユニコーン、バンシィ、フェネクスのパイロットが揃うのは初めてですかね」

 

士「そうだね。ナラティブじゃあユニコーンとフェネクスのパイロットまでしか会えてないからね」

 

レイ「概ね原典のバナージ君達とも設定は類似と」

 

ジャンヌ「あまり深すぎてもって感じらしいですね」

 

士「設定管理が追いついていないところもあるんで……。前の設定のまま投稿しちゃってたりするし」

 

ジャンヌ「反省してくださいね。そして黒和神治……やはりL2の第4章で引き取られていたっていう黒和家の養子でしたか」

 

士「まぁね。そこから見てもらえれば分かる通り、今回もまた復讐ってわけだ」

 

レイ「国を追われた復讐、妹の復讐、仲間の復讐……そして今回は、里親の復讐?」

 

士「そゆことー」

 

ジャンヌ「それにしては今回その復讐者の武器が……機体が」

 

レイ「ヴァイスインフィニット、っていうかエンドが凄いいやらしく感じるね……元君が劇中でああ怒るのも分かるよ……」

 

士「今回は元君にとってもある意味復讐だもんな。悲しいね」

 

レイ「ある意味言うな!」

 

ジャンヌ「そうしたのはあなたでしょうに」

 

士「とまぁそこらへんにしておいて、続いてはそのヴァイスインフィニットガンダム・ゼロニアス、の偽装機ゼロン・オブ・インフィニティーの紹介だ」

 

ジャンヌ「それではどうぞ」

 

型式番号 ZAMD-00X

ゼロン・オブ・インフィニティー

 

 

機体解説

 白い重装甲を纏ったゼロンのMS。型式番号から分かるだろうが、DNL専用機でなおかつゼロンのDNL専用機の祖。パイロットは黒和神治。

 重装甲かつ武装は基本のビームサーベル、ビームライフルなどが揃っている他、腹部のハイメガキャノン装備など火力重視な点も見逃せない。

 防御手段もDNウォールを備えるなど、他の機体と毛色は違うものの備えており、祖でありながら性能は後発機に劣らない。機動戦、射撃戦、格闘戦をその気になれば何でもこなせる万能機。とはいえパイロットの生還が何よりも根底にあるため、防御兵装が多い。

 ここまで引き延ばしたものの、この重装甲はカバーであり中のMSはシュバルトゼロと因縁深いあのヴァイスインフィニットの最新改修機、「ヴァイスインフィニットガンダム・ゼロニアス」である。中身を守るべく、本機の増加装甲はDNFの直撃でも中身を完全防御するだけの性能を備えている。

 コンセプトは「ヴァイスインフィニットのビレフト版改修機」。シュバルトゼロのロックフルアーマーとしての役割を持たせている。

 

 

【機能】

 本項では装甲装着状態にて使用可能、動いているシステムのみ解説する。

 

・DNフェイズカーボン

 本体と同じDN浸透性の特殊装甲。外装として用いられている。

 本体のものと明らかに違う点として瞬間的な出力増加が可能で、例えDNFでも一発限りだが防御が可能な防御力を誇る。

 

・ツインジェネレーターシステム

 胸部に内蔵されている高純度DN生成機関。マキナ・ドランディアの時から変わらないオリジナルを搭載。加えてSEED-UNIT00も本世界で生み出した物を使用し、エラクスの安定稼働も行える。

 

・ELACSシステム

 DNジェネレーターの回転数を暴走域に突入させて圧倒的な粒子放出を行う形態。シュバルトゼロと同じ機能である。読みはエラクス。

 かつてはこのシステムの安定稼働が勝敗を分けたが、本機ではエラクスのカギとなるSEED-UNIT00を換装し、完全に使いこなせるようにしている。とはいえエンゲージシステムの値が低い為、そのままではこれでも及ばないらしい。

 

・DNウォール

 肩部シールドから展開する防護壁。機体周囲からの攻撃を防御する。防御だけでなくシールドのビームキャノンの束ね等も行うため、攻防一体の装備である。

 

・ビームシールド

 両腕部から展開するビームの盾。シールドが破壊された時などの保険。

 

・エンゲージシステム

 シュバルトゼロガンダムと同じサブパイロットコントロールシステム。見ていれば分かるだろうが、本機の物が最初に稼働した。

 元達にとっては今までに繋がる因縁のシステムであり、その中にはレイア・スターライトが閉じ込められ、人質となっている。

 

【武装】

・MWBRⅡ

 バックパック側面に装備される手持ちの射撃兵装。前装備の改良型兵装。

 出力は増していて威力も比例しているが、特徴としてビーム出力の変更が可能となっており、マシンガンのような弾を放つことが出来るようになっている。この点はシュバルトゼロRⅡのビームライフル・ゼロから学んだと思われる。

 もちろん銃身下部の武装換装も引き継いでいるが、ここでの紹介は割愛する。

 モデルはシナンジュのビームライフル。

 

・ビームサーベル

 基本的なMS用格闘装備。腕部装甲内部に格納する。このビームサーベルは中のヴァイスインフィニットの物ではなく、この増加装甲自体の兵装であり、これを使い潰しても装甲排除後のヴァイスインフィニットの格闘戦能力は落ちない。

 

・腹部ハイメガキャノン

 腹部に装備された展開式高出力ビームキャノン。本形態時における最大火力。正面にしか撃てないものの、大抵のMSは防ぐことは出来ない。

 モデルはフルアーマーダブルゼータガンダムの腹部ハイメガキャノン。ただし型式番号などから、本世界におけるシナンジュ達の祖となっているため、同名の兵装は本機の物がベースとなっている。

 

・ゼロン・オブ・シールド

 肩部に装備された実体シールド。シュバルトゼロのマルチ・アサルトシールドに位置する兵装で、シールド先端を開いてビームを出力する点も同じ。

 重装シールドだが、実はこれもまた増加装甲であり、表面をパージすることで本来のシールドが出現する仕組み。ビームを出力する先端パーツも増加装甲の一部であるため、パージすると使えなくなる。

 機能のモデルとしてはνガンダムHWSのハイメガシールド。先端パーツは丸く置き換えている。シナンジュのシールドが近いか。

 

・ビームランチャー「ロンゴミニアス」

 バックパック側面に装備されるビーム兵装。名称は「ロンギヌス」の日本における別名(作中ではそういう扱い)。

 ビーム砲でありながら有名な槍の名を冠しているのは本機の使用方法に起因する。ビーム砲は変形によりビームの穂先を宿した形態への移行が可能となっている。加えてビーム砲形態でも放たれる一撃は鋭く、ビームシールド、DNウォールですらも簡単に破ってしまうのだ。その性質から槍の名前であるロンゴミニアスの名が採用された。

 モデルはデスティニーガンダムの長射程ビーム砲。機能としてのモデルはデート・ア・ライブのエレンが纏ったCRユニットの兵装から。名称モデルはロンギヌス、ではなくデート・ア・ライブのCRユニットの兵装の名前「ロンゴミニアント」と、某聖杯探索のFの作品にも登場する最果てにて輝ける槍こと「ロンゴミニアド」から。もっとも現実でも両者、ロンゴミニアドの大元であるロンの槍は同一視されているため概ね同じである。なお名称が作者の好きなバ○スピに同名の名前のカードがあるが、聞くだけ野暮である。

 

 

 

ジャンヌ「以上がゼロン・オブ・インフィニティーの紹介になりますね」

 

レイ「外装ってだけあってシュバルトゼロ・ビレフトみたいに防御性能特化なんだね」

 

士「偽装って点ではガンダムヴァルプルギスのオーヴェロンが大元だからね。正体隠しつつ、性能を維持するってコンセプトで他の戦闘能力も高いよ」

 

ジャンヌ「その点ではビレフトとは違いますね」

 

レイ「ビレフトは完全に踏み台みたいな感じだったもんねー」

 

士「戦績が生身の竜人族だけなのやめてあげよう、まぁそうしたの私だけど」

 

レイ「それで、次からはちゃんとヴァイスインフィニットガンダム・ゼロニアスが出るってことなんだよね。紹介もそっちかな?」

 

士「そういうこった」

 

ジャンヌ「では文字数的に次に行くんです?」

 

士「ごめん、ここに追加で入れる機体がある。というわけで第3章ボスの一体、Ⅱニア・ゼロングですどうぞ」

 

レイ「おおーっ、ここで!」

 

 

型式番号 ZA-999

Ⅱニア・ゼロング

 

機体解説

・ゾルダー機の奥の手にして、かつて二機のアンネイムドを苦戦させた最悪のMA「ニア・ゼロング」の二号機にプロトゼロンが合体した姿である。ユニット自体はハル・ユニットと呼ばれる。

 元々はシナンジュ・ゼロン用のニア・ゼロング予備機だったのだが、一号機ユニット破壊後、ハルが別のユニットを所望したことから本ユニットが在庫となり、それをプロトゼロンパイロットであるゾルダーが所望したことから一部改造して予備装備となった。

 全高30メートル級の大型MAであり、プロペラントタンクまで含めるとその大きさは50メートルまで達する。本来の設計では宇宙用で、地上で運用することは出来ないのだが、内蔵した多数の大型機用DNジェネレーターによって無理矢理浮力を得ており、地上でも活動が可能となっている。

 その破壊力は絶大で、単純な兵装だけでも都市やコロニーは壊滅的被害を受ける。だがそれを更に助長するのが「ユグドラルシャード発生器」であり、これの併用で超次元現象も操って無双とも呼べる状況を作り出せる。その力を含めてフェネクスに宿った梨亜は「世界を終わらせてしまう力」と危険視し、陽太と共に止めることを望んだ。

 ゾルダーは本機を操ってアンネイムドと対峙するものの、好き勝手に暴れて町や島に大打撃を与えていき、最終的にはフェネクスへと装依した陽太とDNアーマーによる猛撃で各部ユニットを損壊し、やけくそ紛れにドッキングを解除したシナンジュ・プロトゼロンの突撃を行うが、それすらもいなされビームサーベルを胸部に突き立てられて蒸発した状態で再びもとの場所に戻され、フェネクスのDNF「ナラティブ・フェザー」によってその巨体を光の粒子へと還元されてしまった。

 モデルとなるのはもちろん「Ⅱネオ・ジオング」。

 

【追加機能】

・ユグドラルシャード発生器

 ドッキングした機体がユグドラルフレーム機の場合、そのユグドラルフレームの核となる物質を放出させ、発生器を軸に展開したDNLコントロールユニットを軸にユグドラルフレームを形成し、搭載量を増加させる。

 本機の場合肩部・腰部アーマー内に発生器を内蔵し、機体周囲に展開して発動する。その際位置の固定にはDNを用いるが展開後はユグドラルフィールドで位置を維持する。後光のようにも見える。

 

・ジャック機能

 アームユニットの指砲塔の先端部分が分割して飛ばされるユニットに内蔵された機体則りシステム。装甲にドリルで潜り込んで敵機体のコントロールを奪取、即席のMSビットとして運用してしまう。

 ビットの性能としては有線かつ操作が煩雑となってしまうため良くないが、それ以上に敵に対する心理的盾となり、本機の機動性の低さから来る被弾を抑える働きを持つ。

 潜り込めればガンダムすら操れる可能性を秘めているが、そもそもそこまでが遠足でほとんどエース相手には見られない。

 

・DNウォール

 腰部ジェネレーターが発生元となる機体防御手段。ユニット自体も本体と同じDNフェイズカーボン製だがそれでも攻撃を受けるのは辛い為、本装備が採用される。近接攻撃などにも強くなったものの、プロペラントタンクまではカバーできず、またビームサーベルは防御できてもやはり実体剣兵装が弱点なのは変わらずで、突破直後発生器を貫かれればほぼ再展開は不能。発生器が露出している点も弱い点である。

 ネオ・ジオングのIフィールド発生器を置き換えている。

 

【追加武装】

・ウエポンカーゴ

 機体上部前面に位置するシナンジュ・プロトゼロン用武装格納庫。内部にはバズーカやビームライフルが内蔵されており、合体時はこちらの武装をコアユニットとなったプロトゼロンが使用する。また周辺にはビームキャノンが四門備わっており、迎撃、砲撃など多種多様に用いられる。

 

・腹部フレキシブルハイメガキャノン

 腹部に装備される大出力ビーム砲。一見して正面しか撃てなさそうに見えるが、根元からアームを伸ばして分離が可能で、正面方向は全て射程範囲内となる。

 原型機のハイメガキャノンに加え、機動戦士ガンダム00にて本機と同じようなコアMSのあるMA「アルヴァトーレ」のキャノン砲のギミックを採用。

 

・有線アームキャノン

 機体腕部を構成するアームユニット。同型の予備を背部にも四本備える。指部分がビーム砲となっており、合計三十門のビーム火砲で圧倒的弾幕を周囲に作り上げる。また前述したようにアームユニット、指部分の砲は有線式ビットとして運用が可能で指部分からは更に機体ジャック用のビットが分割して攻撃してくる。

 ビーム砲は収束によりビームサーベルとして使用が可能。使い潰しても表面を分離させて内部に格納された予備に切り替えて補充できる。

 原型機の武装そのまま採用する形である。

 

・ホーミングレーザー

 機体腰部スカートユニット外縁に何十もの発射口を持つ誘導レーザービーム砲。主に横方向、下方に回った敵への対処が目的。

 モデルとしてはビグザムの全方位メガ粒子砲、アルヴァトーレの側面ビーム砲。

 

・プロペラントタンク

 底部スラスターに接続する巨大なプロペラントタンク。それだけで20メートル近くある。このタンク自体はランディング機能を持ち合わせ、不安定ながらも着地脚として地上で運用される。

 

 

 

レイ「以上がⅡニア・ゼロングになるね。といっても、ほぼⅡネオ・ジオング据え置きかな」

 

ジャンヌ「あれ、外縁部ビームキャノンって使われてましたっけ?」

 

士「ごめんほぼ使われてない(;´Д`)死に設定です」

 

レイ「おいおい作者さん……」

 

士「追加で投入した武装なのに、ほぼ原型機の戦闘をリスペクトしてたら忘れてたんですよねぇ。まぁここからの攻撃を防ぐためにフェネクスがスカートユニット切り裂いてはいるんですが」

 

ジャンヌ「うーん作者のおじいちゃん脳」

 

士「もうちょい弾幕欲しいなぁと付けたのに申し訳ない。まぁ当初DNアーマーで突破する作戦を立てていたHOW側の計算を狂わせているのでヨシです」

 

レイ「けどもっと驚いたのはもう片方の方だよねぇ」

 

ジャンヌ「そちらは次で、ということですかね」

 

士「そう言うことです。けどもうちょっとだけ続くんじゃ。ローゼンシシャも紹介で」

 

レイ「ローゼンシシャ?」

 

ZAMP-03R

ローゼンシシャ

 

 

機体解説

ゼロン主力MSの隊長機タイプ「シシャ」を、真紅の流星の再現部隊特別随伴機として再設計した機体。藍色のカラーリング。

 特徴として対DNL・ユグドラルフレーム機に対抗するために背部に自立遠隔操作妨害兵装「ユグドラルジャマー」を装備する。これによって当時はアンネイムド[ユニコーン]の無力化を、今回はフェネクスの鹵獲を試みようとしていた。

 他にも腕部を丸々有線遠隔端末へと換装しており、外装もバラを想像させるようなものになっている。また脚部はテールブースターと合体して高速巡行形態へと移行出来る。

 各装備を活かして遠距離からDNL機を封殺する働きを得意とする。が、劇中ではフィールドの関係上、有線遠隔操作端末のみ求められるような遠隔操作がなされていない。

 モデルはガンダムUCのローゼン・ズール。あちらのパイロットはネームドのアンジェロ・ザウパーだったが、こちらは名前が明かされていない。コンセプトは「ローゼン・ズールのプロトタイプとして知られるクラーケ・ズールの特徴も取り入れたシシャ」。テールブースターがその役目を担っている。加えてこちらは少数生産機である模様。

 

【機能】

・次元電子装甲

 シト、シシャから引き続き運用される電磁バリア装甲。

 

・ユグドラルフレーム

 機体一部に採用された特殊脳波用フレーム。有線も混ざっているとはいえ、反応性を上げるために装備されている。ちなみにシナンジュ・ゼロン系列機の物を流用する形を取っている。

 

・ノイズ・オーロラ

 シールドに埋め込まれたビーム屈折回避式フィールド。

 その起源は何と第1部のマキナート・エアクルセイドの技術が発端となっている。が、当然マキナスとゼロンが共同して機体を生みだしたなどという事実は確認されておらずなおかつあり得ない。これはゼロンに協力するヴァイスインフィニットの手土産と思われる(時期が合っていないものの、ヴァイスインフィニットは一時期両軍のデータベースをあさっていた期間があるため、おそらくその時に極秘開発中だった機体のデータを盗んだとされる)。

 このフィールドを用いることでビームの回避を担う他、シールドに埋め込まれたビーム砲と連動して拡散したビームを降り注がせると言った使い方が出来る。

 モデル元のIフィールドを意識した装備となっている。

 

 

【武装】

・有線式アームズ・アーム

 シシャが本来装備するマルチアームズ・アーム改の特殊仕様。通常のシシャやシトにも肩部から換装して装備は可能。

 手の部分はクローアームとなっていて内側がビーム砲となっていることから武装を持つことが出来ないという無視できない欠点が生まれてしまっている。が、それを補う形で手首からアームを射出し、有線で操作する遠隔端末として使用が可能。手数で敵を圧倒する。また腕部全体は次元電磁装甲のため

 ただしそれにも弱点があり、重力が大きい場合、有線そのものが重すぎて支えられない。重力下では短いアンカーとしてしか使えない。

 モデルは原型機の有線式クローアーム。

 

・ローゼスシールド

 左腕に装備された花のような見た目のシールド。中央にビーム偏向用ノイズ・オーロラ発生器と、周囲にビーム砲が並ぶ。

 ビーム砲は通常の同時発射以外にノイズ・オーロラとの連携で広域への不規則な拡散ビームが放てる。最大出力なら正面方向をビームの竜巻が通ったかのような威力を見せる。

 モデルはローゼン・ズールのシールド。

 

・ジャマーバックパック

 背部に備わったバックパックユニット。ユグドラルジャマーの装備箇所である。

 

・ユグドラルジャマー

 バックパックに6基格納する特殊遠隔操作端末。

 敵機を囲うことで結界領域を展開、内側のDNL・ユグドラルフレーム搭載機の活動を抑制する。技術としてはユグドラルキャプチャーの発展元であり、オリジナルはこちら。ラプラス事件ではアンネイムドの一号機ユニコーンのデストロイドモードを解除し、止めた。

 モデルとなったサイコジャマーのユグドラル版。機能も準じる。

 

・ヴァリアブルテールブースター

 腰背部から伸びる二股の尻尾型増加ブースター。内部にスペースがある。

 本兵装は可変式で脚部を格納する形で装備できる。その際のAMBAC性能は2割増しで、速やかな展開、離脱が可能となる。

 モデルはクラーケ・ズールの脚部であり、ブースター装着状態がそれにあたる。

 

 

レイ「これかぁローゼンシシャ」

 

ジャンヌ「確かにいましたね。シナンジュの支援機として」

 

士「こちらはローゼン・ズール+クラーケ・ズールを合わせた感じです。もっとも今はほとんど活躍しなかったわけなんですが」

 

レイ「でも紹介しないとね」

 

ジャンヌ「一応アンチユグドラルウエポンを装備していたんですね」

 

士「でも対決した相手がいずれも進のインパルスみたいな非DNL機体や、シュバルトゼロのヤバい機体ばかりで使えなかったというね」

 

ジャンヌ「残念すぎる」

 

士「と、ここで前編はここまでです」

 

レイ「じゃあ次に続くよーっ」

 



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黒の館DN 双翼英雄譚編 第8回 中編

 

 

士「第8回中編始めて参ります」

 

ネイ「中編は思い切りガンダムUCの機体が原型機ばっかりになりそうですね」

 

グリーフィア「紹介するのはあとシュバルトゼロクローザーだけだものねぇ。そうでしょ?」

 

士「いや、まだガンダムDNアーバレストの新モードがあるけども」

 

グリーフィア「あぁ、あったわねぇ」

 

士「まぁ最初はアンネイムドからなんですけどね。というわけでお願い」

 

ネイ「それではアンネイムド残り二種、ユニコーンとバンシィです、どうぞ」

 

 

型式番号 FRX-00

アンネイムド[ユニコーン]

 

 

機体解説

・ホリンダウン作戦後、シュバルトゼロガンダムの技術が世界へと解禁されていった。その技術で各国はMS開発技術を高めていき、やがてはシュバルトゼロガンダムと同等の機動兵器開発へと乗り出していく。

 それは日本も例外ではなく、自衛軍も軍独自のシュバルトゼロガンダム対抗兵器を欲した。そこで国内のMSメーカーにして、HOWMSメーカーとしてのライバル的会社である「カザノメカニクス」へと共同制作を提案。カザノメカニクスはそれを了承し、自衛軍版シュバルトゼロガンダム開発計画「プロジェクトリビルドゼロ」を開始した。そのプロジェクトで生まれた機体こそ、アンネイムドシリーズである。アンネイムドシリーズは3つの部署でそれぞれ機体を開発し、共通の素体でどこまで発展させられるかを競わせる形で製作された。型式番号のFは戦闘機のFに加え、未来を意味するFであり、戦闘機からMSの時代となっていったことを意味させている。

 外見としては白一色に近いカラーリングにシュバルトゼロのカラーリングである黒を取り入れる構成。顔は名前の通り、一角を備えた上青一色の大きなゴーグルセンサー付きのマスクがメインカメラとして機能する。が、それらを覆うように灰色の対実弾、ビーム対策のチョバム・フルアーマーが装備される。本機の特徴としてもっとも大きいのは、変身。装甲を解放し機体各部を変形、リミッターを解除した形態で後述するL-DLa発動時には必ず行われ、その際にはマスクパーツが外れ、正体であるガンダムの顔を表す。

一号機である本機には基本スペックである試作ユグドラシルフレームとツインジェネレーター、そしてシュバルトゼロガンダムと同等の戦闘能力を与えつつ、それを上回れるように対DNL用に構築された特殊機体駆動システム「L-DLa(エルドラ)」を最大限生かせる構成として非常にシンプルな武装構成を行っている。これらは今後の拡張が可能なようにすることで後発機との互換性を持たせる意味合いもある。しかしこれらと引き換えにその操縦はDNLか「強化人間」と呼ばれるカテゴリの人間でなければ操縦は困難を極める。

 基本武器でも十分DNLの機体と渡り合え、実際当時のシュバルトゼロガンダムRⅡとの模擬戦でも特性を殺して圧倒するほどだった。その後アンネイムドシリーズは合同性能評価試験で抜群の成果を上げるが、アンネイムドフェネクスが暴走を起こしたことで稼働が凍結される。ところがその後L-DLaの性能を見込まれて禁忌を侵す覚悟で政岡隆が本機体をゼロンに対抗しうる人材「DNL」を見つけ出すために、カザノメカニクスの裏の支配者「神鳴一族」と共謀し、本機体は仕様変更されてロールアウト。その後強奪未遂事件を経て神鳴一族の末裔である神鳴 白が操縦した。

 その際シュバルトゼロのエヴォリュートアップに近い現象「ユグドラシルフィールド」を生み出すなどDNL用MSの開発に貢献するものの、結果としてアンネイムドシリーズ2機は凍結された。

 のだが、本編でアンネイムドフェネクス捕獲とそれを狙う勢力へのけん制と陽動の為、凍結が解除されてアーマード形態で再度表舞台に出ることとなった。

 ちなみになぜガンダムではなくアンネイムドと名付けられているのかと言うと、ガンダムと正式に名付けられる前に合同性能評価試験にて暴走事件を起こし、ガンダムと名付けられることなく倉庫番となってしまったことからの「言葉遊び」である。

 コンセプトは「アレックスのようなユニコーンガンダム」「アナザーユニコーンガンダム」である。ユニコーンモードだけだと味気ない上にユニコーンモード時の戦闘能力が心もとないと判断したため、フルアーマーシステムなどを兼ねた増加装甲兼武装装甲を取り付けて継戦能力を高めている。なおこれによりアーマードを装着している場合は原型機のデストロイモードに変形できないという制約があるが、実はこれが「拘束具」を果たしており、ラプラス事変後のユニコーンを安定的に動かすためにはどうすればいいかということで「外装で固定する」という解としても意味している。

 

【機能】

・DNフェイズカーボンGM

 もはや当たり前となったエース機採用の装甲部材の発展形。GMはガンダリウムメタルの略。

 ガンダリウムメタルとは自衛軍のMSに採用され始めている装甲で、軽いながらも実弾や衝撃への耐性が高い装甲。DNフェイズカーボンの原材料の一つとしても最適であり、本機はそれを体現している装甲を利用している。

 モデルはもちろんガンダリウム合金。

 

・ツインジェネレーターシステム

 機体胸部に内蔵する高純度DN発生器。出力はシュバルトゼロガンダムの物よりやや低め。しかし機体そのものの性能が高い為、それでもシュバルトゼロガンダムと同等の性能を引き出せる。むしろ低い為に扱いやすさではこちらが上でもある。

 L-DLa起動時には開いた胸部ダクト風装甲から活性化したツインジェネレーターの膨大な高純度DNが大量に放出される。これは出力の増大に伴い溢れ出すDNを逃がす目的もある。

 

・ユグドラシルフレーム

 機体フレーム全てをユグドラルフレームで構成する仕様。本機はシュバルトゼロのそれと違って装甲下にフレームを内包する形となっている。これはユグドラシルフレーム機であることを隠匿するための物であり、後述するL-DLaにてその力を解放する。デストロイドモード時には紅く発光する。

 完成度としては試作品であり、シュバルトゼロのそれに及ばない。が、パイロットのDNL能力との相乗や兄弟機バンシィと合わせることでシュバルトゼロが辿りついていない領域(というより、正規の領域か不明な)であるユグドラシルシャード発生体となっている。

 ようやく原型機であるユニコーンのアナザーにこのフレームが乗ることとなった。ユグドラルシャード発生体は無論光の結晶体形態である。

 

・対DNL戦闘用プログラム「L-DLa」

 本機最大の目玉と言っていい戦闘用プログラム。L-DLaとは「Leader-Destroyer Link accelerator」。直訳は「統率者を破壊する者、つながりを加速する物」。

 DNLの感応音を感知して稼働する。端的に言えばDNLが感じ取った敵意の音を感じ取り、機体がパイロットに伝達させる、あるいは自動的に攻撃・迎撃態勢に入るというもの。DNLが持つアドバンテージのその上を取る動きが可能となる。その為に使用時にはジェネレーターなど機体各部出力制限を取り払うデストロイドモードへと切り替わる。この時ユグドラシルフレームの思念拡張が行われて疑似的なDNL能力獲得、あるいはDNL能力の拡張がなされる。

 これが量産化されれば敵にDNLがいても対処可能、万が一シュバルトゼロが暴走しても対処が可能なはずだったが、途中でシステムには適性者がいることが判明。もし適性者でない人間が搭乗した場合はL-DLaがパイロットから制御権を奪い暴走するため危険なシロモノと言うことで量産化は見送り、更に合同性能評価試験とラプラス計画において適性者でも何らかの要因で機体がこちらの制御を離れることが判明し、少数生産すらも禁止されることとなった。

 とはいえそれを悪用する例が起きており、それこそ第2部4章から登場したディスティニーライダーの運用するDIENDシステムはこのL-DLaをベースに開発されている。DNLを仮想敵としている点が共通する。

 モデルは無論NT-D。DIENDシステムのネタベースとなったHADES、EXAMとは開発順が逆であり、本システムが大元のオリジナルとなっている。

 

・デストロイドモード

 本機の最大稼働を行うために装甲を展開し、ガンダムの姿を現すアンネイムド共通の形態。L-DLa発動時にしか起動しない。

 本形態移行時は自動的にユグドラルフィールドが展開し、変形を阻害する攻撃を無効化する。性能としてはシュバルトゼロRⅡ時のエラクスと同等以上の出力とスピードを誇る。だが特筆すべきユグドラシルフレームを発生源としたユグドラルフィールドの運用である。このモード時にはユグドラルジャックと呼ばれる能力により敵のDNLコントロールする兵装のコントロールを奪う機能を有する。

 これによりシュバルトゼロが劣勢に立たされるわけなのだが、それ以外にも出力が最大状態なため機動するだけでも並みのDNLでは感知できない程スピードで移動するため、無敵を体現している。

 ただしモード発動時はL-DLaの闘争本能が強く働いている時でもあり、パイロットが強い意志でそれを拒まないとたちまち殺戮マシーンとして暴走してしまう。神鳴 白すらもラプラス事件最終決戦にて「意志」に呑みこまれてしまい、結局このシステムを完全に「使いこなした」人物は存在しない。この誤発を防ぐためにアーマードアーマーが装備されている。

 なおこのモードは完全暴走状態と呼べる「デストロイド・アンコントローラブル」が存在するものの、それに陥ったパイロットは未だいない。

 モデルはデストロイモード。機能などもほぼ同等のものに置き換わっている。

 

 

【武装】

・アーマードアーマー

 機体全体を覆う増加装甲兼拘束具。

 装甲は頭部、バックパックにまで及んでおり、全身が変形するアンネイムドの為には必要な処置である。この増加装甲装着時にはデストロイドモードが機能しない様になっている。この際カメラユニットは装甲側に移行しており、装甲側のカメラはゴーグルタイプを採用する。

 装甲の内部にはリアクティブアーマーとしての機能に加え、周囲殲滅用の開閉式レザーポッド、打ち切り式マシンガン、マイクロミサイルが内蔵されており、攻撃性能は充分。

 装甲自体にスラスターもあって機動性も可能な限り落としていないが、それでもやはり幾分か付けていない状態「ユニコーンドモード」には及ばない。当初はユグドラルフィールドを用いたユグドラルコントロールで質量弾あるいは暴走強制停止の再装着が考えられていたが、システムに盛り込め切れなかった。

 ちなみに技術としてはシュバルトゼロ[ビレフト]のロックフルアーマーを参考にされている。あちらもあくまで本来の姿を「封印」していたため、適しているとされたようだ。

 元はガンダムNT-1アレックスのチョバムアーマー。SDシリーズにて初設定されたヘッドセットまで含めてリスペクトしている。

 

・バルカン砲

 頭部に内蔵されたバルカン砲。5発に1発、軌道修正用の閃光弾が備わっている。弾数はおよそ120発。アンネイムドシリーズ共通の兵装。

 

・ビームマグナム

 本機専用のビームライフル。一射でビームマシンキャノンフルバースト並みの出力を誇るビームを放つ。アンネイムドシリーズ共通の兵装。

 エネルギーパックを五つ合体させたカートリッジを装填して使用され、一射ごとに一発を消費する。このエネルギーパック自体は普及するエネルギーパックでありそれを連結している。数射分のエネルギーを一発で消費するため継戦能力が非常に低いが、携行武器でこれだけの威力を誇る武器はそうそうなく、しかも機体のジェネレーターに依存しないことから画期的であるとはされた。ただし現場からの、使用者からの意見は「使いづらい、威力が高すぎる」とのこと。

 不使用時にはバックパックかアーマーパージ後の腕部側面に懸架される。

 モデルは原型機のビームマグナム。無論リボルビングランチャーも装備が可能。

 

・ビームサーベル

 バックパックと腕部ホルダーに計四本装備される格闘戦兵装。腕部の物は展開してトンファーとしても使用が可能。アンネイムド共通兵装の一つ。

 いたって普通の高級機用ビームサーベルなのだが、本機はラプラス事件時にスペースデブリや敵機を貫いた超出力のビームサーベルを発生させたことがあり、その出力はいくら何でも出し過ぎている。これはユグドラシルフレームとの共振があったからこそとの見方がHOWから出ている。

 

・ホルダーガン

 腕部のビームサーベルホルダーを兼ねたユニット。前面にビームガンを備える。

 180°回転させることでビームサーベルをトンファーとして扱える。ホルダー部装甲は換装に対応しており、専用武器群の「タクティカルアーマー」と呼ばれる兵装に感想が可能。シールドもこの部分の上から接続することで使用する。この仕様のためシールド装着時は保持する側のトンファーは使用できない。ビームガンに関しても特に触れるほどの性能ではないけん制用武器だが、連射性が高いものであることと、本兵装が盗用先であるディスティニーライダーにおいても似たような兵装として採用されたことがある。

 原型機のホルダー機能に加えてディスティニーライダーの原型機であるペイルライダーの機能を一部有する形となった。

 

・アンネイムドシールド

 左腕に装備される可変式シールド。中央部に攻撃受け流しの為のDNウォール発生器を備える。

 デストロイドモードに合わせた可変機構によりシールドも変形する。しかもシールド部材にもユグドラルフレームを使用しているためシュバルトゼロよりも積載量が多い。これによりシールドも場合によってはファンネルとして使える。その際は打突、もしくはシールド裏の兵装で攻撃を仕掛ける。

 ユニコーンのシールドがベース。というかシールド自体はほぼ同形状となっている。

 

・ビームガトリングガン

 シールド裏に装備するビーム機関銃。ビームマグナムを使うには早すぎる時に使用されるけん制弾のようなもの。回転させて収束ビームを放つことも出来る。

 専用のアタッチメントで固定されており、通常なら二本合体して使用する。がこのアタッチメントは汎用型で、場合によっては後述する手持ちバズーカを合体させた混成使用も出来る。ガトリングガン自体も手持ち式に変更が可能。

 モデルは原型機のビームガトリングガン。回転による収束ビームは完全にこちら側の独自仕様。

 

・ハンドバズーカ

 MSが携行・使用するバズーカ。HOWで運用されているものを使用する。

 この装備自体はありふれた量産品である。しかし本機の場合専用アタッチメントで合体させることで連装式、またはビームガトリングとの混成仕様でシールド裏に装備できる。

 原型機のハイパーバズーカを模倣した武装であるが、形状モデルはジオンのザクバズーカであり、これは大きさが合わないと判断したため。

 

・ユグドラルスラスター

 かつての最終決戦直前に追加された変形後のバックパック側面から展開する追加ブースター。

 ユグドラルフレームで内部が構成されており、推進力は無論ユグドラルフレーム。フレームの共振作用で起こる斥力で推力を得る仕組み。これを考え付いたのは白の当時の学友伊澄 卓也であり、その画期的な推力増加能力はユグドラルフレーム機開発に新たな可能性を見出させた。

 原型機にはない追加スラスターだが、実はこれにも元ネタがあり、それはアニメ版ガンダムUCEP7でサイコジャマー下に置いて覚醒形態へと突入した際のコンソールに映った翼のイメージ。

 

 

 

型式番号 FRX-0[β]

アンネイムド[バンシィ]

 

機体解説

・アンネイムドシリーズの二号機。本体は黒に金色のカラーリング、アーマードアーマーは銀一色となる。パイロットは政岡 利一。

 一号機と違う点として二号機である本機は戦術増加装甲兵装群「タクティカルアーマー」を主力に組み込んだ機体であり、様々な機能拡張を以って作戦行動に当たる。また頭部の変形前マスク兼用メインカメラはモノアイのカメラが縦横無尽に動く仕様となっており、まるでガンダムさを感じさせない外見となっている。

 本機は兄弟機の中で唯一限界を超えた超常的な段階まで行かなかった機体であるが、その可能性がある時点で本機も同じように凍結。ユニコーンと共に凍結解除されて持ち出された。

 ちなみに本編中で登場するのは改修型の「ノルン仕様」である。

 コンセプトはやはり「アナザーバンシィノルン」。だが同時に本機のアーマードモチーフはあの「ザクⅡ改」としており、これはアレックスと対になる点、そして原典のパイロットのやや外れた形の声優ネタとしてである。

 

【追加機能】

ユニコーンと共通する点が多い為、一部省略。

 

・システムLi-ON(リオン)[Leader install-Over Normal]

 背部のタクティカルアーマーLCに設定されたプログラム。装依者の脳内に作用し、L-DLaに適した人間の脳内環境を整える。

 整えるとは言うが、実際のところパイロットを強化人間化して最適化させるというもの。変貌した姿はまるで獲物に飢えたライオンそのもので、システムの名称もそこから取られている。

 しかし本機のそれはオリジナルよりも劣化させつつL-DLa時の起動サポートに重きを置いた仕様、しかもパイロットの政岡利一のDNLへの覚醒によってシステムが書き換わり、サポートシステムの主機として働きユグドラシルフレームの最活性状態、所謂覚醒形態と呼ばれる緑色のフレームへと変化していく。

 モデルは無論アームドアーマーXCに備わっていたナイトロシステム。このナイトロオリジナルを積んだMSももちろん存在しているが、現状での登場予定時期は不明の模様。

 

 

【追加武装】

 ユニコーンと共通する武装については詳細を省く。

 

・リボルビングランチャー

 ビームマグナム銃身下部に装着される追加武装ランチャー。

 4つの砲門を備え、それぞれからビームジュッテ、ミサイル、機雷ユニット、炸裂式固形DNボムを放つ。

 いずれも継戦能力の低いビームマグナムを補うための兵装である。このセットはAセットであり、いくつかのバリエーションにより多様な戦術を取れる。中でもバルーンセットと呼ばれるDセットはあらゆる場所で有効的に使えるダミーバルーンでたちまち宙域を狩場に整えることも可能。

 原典と同種の兵装であるが、バルーンセットに関してはポケットの中の戦争を意識している。

 

・タクティカルアーマー[ディフェンスエクスプロード]

 増加装甲兼専用武器群の一つ。シールドにかぶせる形で装着する。略称はTADE

 増加部分に関してはスラスターであり、バックパックに合体させることで推力向上と航続距離の増加を担える。スラスター部分の反対側にはビームキャノンが備わっており、先制攻撃やビームマグナムの代わりを務められる。

 デストロイドモード時にはやはり変形する。デストロイドモードの際には追加効果でスラスター部から高威力の線状ビームがいくつも放射され、敵を薙ぎ払う。

 モデルはアームドアーマーDE。スラスター部のビームはガンダムXディバイダーのハモニカ砲がベース。

 

・タクティカルアーマー[リーダーコントローラー]

 バックパックに追加される特殊機能搭載の装甲板兼補助翼。発動時には鬣のようにバックパック上部と下部に装甲、補助翼兼プロペラントタンクが展開される。

 組み込まれた特殊機能とはL-DLa発動を補助するプログラム「システムLi-ON(リオン)[Leader install-Over Normal]」。このシステムにより本機のL-DLaはある程度能力の段階を無視してデストロイドモードの起動、力を引き出せるようになっている。更にデストロイドモード時にはパーツからユグドラシルフレームと高純度DN由来の光の翼ならぬ鬣が形成され、威嚇効果、機動力向上に加え更なるシンクロにより物理干渉を行う。

 モデルは原型機のアームドアーマーXC。プロペラントタンクと飛行に適した補助翼等が追加、更に光の翼ならぬ鬣が追加された。鬣に関してはクロスボーンガンダムゴーストのブランリオンの光の鬣をベースにサイコフレーム由来の能力に加えた。

 

・アーマードアーマー[バンシィ]

 本機の装甲を覆う増加装甲兼拘束具。ユニコーンの物と武装は共有するが、形状は異なる。まず頭部の形状、宛がわれたマスクパーツには装甲下と同じモノアイカメラがある。そこにパイプパーツと熱解放用のダクトが備わっている構成。しかもこのパイプがアーマードの至る箇所に配置されている。これはバンシィ側ではアーマードアーマー状態でも性能を落とさないことに挑戦し、採用されたもので、これにより十分なエネルギーがアーマードアーマーにいきわたる。このためアーマード形態でもユニコーンの物より幾分かスピードは上がっている。またミサイルは代わりにグレネードとなっており、一斉射の他手に取って敵に向かって起爆させるやり方もある。が、欠点として機体装甲換装式のタクティカルアーマー接続箇所はアーマーが装備しきれない為、排除されている。

 こちらの外装モデルはザクⅡ改となっている。グレネードもそこを意識している。

 

 

ネイ「以上がアンネイムド二種、ユニコーンとバンシィになりますね」

 

グリーフィア「アーマード装備、フルアーマー形態がこっちのユニコーン系列機の基本形態ね」

 

士「けど文で示している通りこっちのは拘束具って意味合いも持たせてますけどね」

 

グリーフィア「デストロイアンチェインドって機能が確かユニコーンにはあったと思うけど、こっちはその逆ってわけね」

 

士「そういうこと。もちろんアンチェインド形態もあるんですけどね」

 

ネイ「この拘束具兼アーマー、元ネタはあのポケ戦の機体達がベースみたいですね」

 

士「声優ネタから思いついた案なんですけどね。でもニュータイプ専用ガンダムの原点ってやっぱアレックスだと思うので組み合わせました。こっちの世界だとそれにあたるのはシュバルトゼロガンダムRⅡFⅡなんですけどね」

 

グリーフィア「けどもともとはビレフトだからヨシ!」

 

ネイ「ヨシって」

 

士「ま、そう言うことだ。で続いてシナンジュ・ゼロンの追加装備、シナンジュ・ゼロン・ハルの紹介頼むぞ~」

 

グリーフィア「それじゃーどうぞっ」

 

 

ハル・スーツ

 

解説

・シナンジュ・ゼロンの性能強化を狙い、自衛軍のMSに施される「フルアーマープラン」に則り開発された増加装甲兼スラスター武装群。本装備時にはシナンジュ・ゼロン・ハルと呼ばれる。

 シナンジュ・ゼロンに対し羽織るように合体し、シナンジュ・ゼロンの火力・機動力を高める。これはシナンジュ・ゼロンの本来の強化プランであった「ニア・ゼロング」と呼ばれた形態が機動格闘戦を主体に行うハルと合わないと判断されたため、没プランだった本プランを採用することとなった。

 重装甲は嗜好に合わないと言うものの、本プランはハル自身ニア・ゼロングより気に入っており、本プランの後継開発を指示している。

 コンセプトの根幹としては「原作小説においてのシナンジュの戦闘再現」そして「アニメ初期段階にて考案されていたというシナンジュの強化プランの踏襲」がある。本来シナンジュはフルアーマーのような装備を付けるだけだったのを、小説のオーラ再現のために超大型MAのネオ・ジオングに置き変わったという話から、その話のプランを採用。更にそのうえで「ネオ・ジオングの小型化」も加えて設定する。

 

【追加機能】

・ユグドラルシャード発生器「ユグドラルアーマー」

 機体各部の装甲をスライドさせて機体本体のユグドラルフレームの核となる物質を粒子状に分解・放出、発生器に埋め込まれたDNLコントロールユニットと合わせてより多くのユグドラシルフレームとして再形成する技術。ニア・ゼロングの持つ能力の一つ。

 それを用いて本機は追加装甲として用いる仕様となっている。この機能と本人の技能を合わせてアンネイムドと覚醒したアーバレストの二機でも押し切れないユグドラルフィールドを展開し、互角の戦いを展開できるようになったほど、この機能は対DNL機戦においては重要である。

 増加装甲部分は破壊されても再生可能なほどであるが、その度にユグドラシルフレームの濃度が減っていくため、長期戦は見込めない。

 モデルは無論ネオ・ジオングのサイコシャード発生器。小型機に搭載する為に各部装甲に分割して内蔵・使用時に各部を展開して増加装甲とする形を取った。

 

 

【追加武装】

・サブアームズ

 機体肩部増加装甲、背部増加ブースターを兼ねるサブアームユニット。四基備える。

指自体が五連装のビーム砲として機能する。逆を言えばこのサブアームは決して武装を持つためのものではない。アームズとなっているのはそれも意味している。しかしアーム自体の汎用性はあり、砲塔からビームサーベルの形成が可能、肘に当たる部分から分離が可能で、有線式のファンネルとして使用が可能など活用はいくらでも出来る構成。その上砲塔部を中に格納することでバーニアを使用できる。

 モデルはネオ・ジオングの有線アームユニット。本機では数を減らし、同時にⅡネオ・ジオングの機能を持った。

 

・ディメンション・ユグドラル・ディストラクター

 増加装甲下に内蔵された超次元現象発生装置。本機のメインウエポンである。

 ユグドラルシャード発生時にしか使えない武装。しかしその性能は出鱈目で、攻撃は全てユグドラルにより事象を起こすというもの。武器の爆発、超次元現象のビーム発射、超次元現象の発生まで行え、その能力はもはや最強のタイプシリーズと同等と呼べる。

 ただし武器の爆発はユグドラルフィールドの干渉で弾くことが可能。もっとも弾くには相応の技量と敵パイロットの思念を打ち払える者に限られる。同レベルのDNLではまず防御は出来ず、回避までが限度。他には敵の意識外から攻撃を行って意識を乱し、爆発反応を阻止するやり方がある。こちらは非ユグドラルフレーム機における基本戦術となる。

 サイコシャードでフル・フロンタルが起こした現象がモデル。それをユグドラルフレームの現象に置き換え、更に世界の構成を作用させる超次元現象まで引き起こせるようになった。また各部のビーム砲などもこれに集約させている。

 

 

グリーフィア「はいこれがシナンジュ・ゼロン・ハルねー。っていうか装備名はハル・スーツなのね」

 

士「書いてる途中でこれ機体自体の名前も欲しいなってことで追加しました」

 

ネイ「そうなんですね。にしても当初はネオ・ジオング二体並ぶと思われてましたが……小型化とは」

 

士「何か違うことしたいなぁと考えた時に話を思い出してね。これだ、って思った」

 

グリーフィア「小説版じゃあ損傷した状態でなおも戦闘したって言うんだから、こっちもそれくらいしてくれても良かったのに」

 

士「まぁね。でもユグドラルフレーム機以外だと近づくことすらできなかったのであの大きさのシナンジュでネオ・ジオング並みの事もやるという当初の目的は達してます」

 

ネイ「なるほど。でもオーラに関しては?」

 

士「そっちはまた別の時にやるかな。まだハル・ハリヴァーも死んでいないし」

 

グリーフィア「殺してないってことはまた出るって証だものね、この作品」

 

ネイ「必然的にそれは言えてるね。再登場はいつになるのか」

 

士「意外と早いと言っておこう。とりあえず中編はここまで」

 

グリーフィア「次回はいよいよ、アーバレストに起こった変化とシュバルトゼロクローザーね!そのまま、Go~」

 



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黒の館DN 双翼英雄譚編 第8回 後編

 

 

士「後編始めて参りましょうか。いつもより長いですよ」

 

レイ「あ、そうなんだ。ひょっとして続・後編になりそうだった?」

 

士「そゆこと」

 

ジャンヌ「そこまで文をため込むのも……」

 

士「必要文章にまとめてこれなんだよなぁ(´・ω・`)モデルとかを書かないのならもう少し減るかもだけど。というわけでまずはアーバレストの最新にして最終形態「オーバードライバフォームから」

 

レイ「そんな名前だったんだね!というわけでどうぞっ」

 

 

ガンダムDNアーバレスト

[解放ログ3]

・オーバードライバフォーム

 ドライバフォームの更に上を行く一号機の限界稼働フォーム。本機の発動条件は本機のパイロット達が有するDNLレベルの合計値が一定を越えること。これはすなわち、パイロットもDNLになることを意味する。

 両パイロットのDNLでドライバ・フィールドを強化する。その為にこれまで使ってきたバックパック「アーバレスト・パック」は各部外装を完全開放し、マルチキャノンウイングに隠されたユグドラルフレームの可変翼「ユグドラルウイング」が開放されてユグドラルフィールドも使用可能となる。キャノン外装はパーツ分解で肩部から伸びるビームキャノンとして運用されるようになる。

 ユグドラルウイングはユグドラルフィールドの斥力による推進を行うユグドラルスラスターの機能を有しており、もととなったそれよりもスラスターとして使うユグドラルフレームが多くなったことで加速力等はこちらが上。しかもドライバ・フィールドとの掛け合わせでAMBAC・機体制御性能が足され、空中戦や高機動戦に更に強くなった。

 またパイロット・パートナーのDNL能力を合算もした上でユグドラルフィールド発生や機体制御の処理にも生かされており、それらが本来掛かる負荷を相殺する。

 総じて機体性能を高める仕様となっているが、唯一マルチキャノンウイングだけは威力が落ちてしまう結果となっている。もっともそちらも強化されたドライバ・フィールドで底上げが可能。

 これら機能はドライバフォームも含めてアンネイムドの機構から参考にされた物であり、そこにドライバ・フィールドという機能を前提に組み立てられたものとなっている。その為ある意味ではアンネイムドシリーズの後継機とも呼べ、純粋な戦闘機能で言えばそれは間違いない。

 モデルはラムダ・ドライバの発動機構だが、翼に関してはアーバレストの後継機「レーバテイン」の妖精の翼から用いられたものとなっている。これは後々重要な意味を持ってくる予定。

 

 

レイ「以上がオーバードライバフォームだね」

 

ジャンヌ「オーバードライブ、ではないんですね?」

 

士「そう、オーバードライバ。そこにもじってはいるけども」

 

レイ「ドライバフォームを越えたモードだからって感じだねぇ」

 

士「実際その通り。ユグドラルフレームを露出させて、ユグドラルフィールドも搭載しているくらいだからね」

 

ジャンヌ「その二種って運用方法は被っていませんか?どちらも力場展開、意識して展開するとか」

 

士「あ、そこ運用方法的に被せてます」

 

ジャンヌ「意図的でした!?」

 

レイ「え、理由は?」

 

士「そこは、もうこの章の作中でヒント明かしてる、というか、過去に答え出してると思うんですが」

 

レイ「……マジ?」

 

士「マジマジ。意味あるやつだよ」

 

ジャンヌ「前ならいいんですけど、この章でヒントって……なんです?」

 

レイ「うーん?ヒントってどんなの?」

 

士「まぁ今は明かすときじゃないので考えてくださいな。それよりそろそろクローザー(;´・ω・)」

 

ジャンヌ「あ、はい。じゃあそろそろ行きましょうか、主役にしてトリ。シュバルトゼロクローザー、並びにクローズフェニックスです、どうぞ」

 

 

型式番号 DNMX-XX000-APⅡ

クローズフェニックス

 

機体解説

・Gワイバーンの後継機となるアシストパーツ兼サポートメカ。Gワイバーンが竜型なのに対しこちらは鳥型。

 操作は以前と同じで電脳による無人操縦。しかし専用の搭乗電子スペースが追加されており人二人ほどの運搬がその電子空間で可能となっている。そしてようやく次元世界移動が機能として復活。

 やはりこちらもシュバルトゼロと合体でフルパワーモードへの移行が可能で、シュバルトゼロガンダム・ジェミニアスをエヴォリュートアップなしでイグナイター以上の性能を誇る機体へと強化する。その状態ではガンダムの範疇を越えた性能を見せることからガンダムの名を外して「シュバルトゼロクローザー」と名付けられる。

 以前のGワイバーンが各部合体強化式だったのに対し、こちらはシンプルに変形しながら背部に合体、通常時のウイングユニットを分離させて肩のシールドにかぶせるようにして合体を完了させる。よってイグナイトの時のような武装不足が回避できる構成を取れるため手持ち武装も完備し非合体時でも戦闘能力が高い。

 なお鳥とは言うものの、頭部は武器である銃剣が兼ねており、それを失うと合体解除後は胸部のカメラユニットに切り替わる(電脳が直結している形)。

 モデルとしては最大の翼竜と称されるケツァルコアトルスにクリムゾン・ドラゴンのデザインを落とし込んでいるイメージ。コンセプトは「オーライザーをより動物チックに」。

 

【機能】

・合体機構

 シュバルトゼロの背部に合体し、シュバルトゼロクローザーへと機体を強化する。初出撃の際は戦場での合体だったが、基本的にはあらかじめ合体してから装依する、あるいは装依直後共に別個で出現し合体する模様。なお合体するとスペースを圧迫するため、作業員としては多少面倒くさくともその場で合体してほしい模様。

 

・DNフェイズカーボン

 本機の装甲もまたDNフェイズカーボン製となっている。カラーリングは黒と紫。

 

・次元世界移動機構「Dトラベルコントローラー」

 Gワイバーンがシュバルトゼロとの連動で可能にしていた次元世界転移機構。本機に置いて再び使用可能とした。

 ただし実験して次元世界に行ったという証拠はなく、あくまでも機能として復活しただけに過ぎない。この機能に関しては実際に使うまで復元しているか分からず、また元達も配備当初は使う気が今のところないとテストを後回しにする発言をしている。

 

【武装】

・ゼロ・バスタービームライフル

 尾部に装着される高出力ビームライフル。ゼロ・ビームライフルⅡの強化発展型にしてメガ・ビームライフル・ゼロの後継機種。固定器具を軸に折りたたみが可能。この機構はシュバルトゼロが本装備を装備した時に真価を発揮する。使用の為にシュバルトゼロの肘部分コネクタに接続、そこからエネルギー供給を行う。不使用時には先述した折り畳み機構で保持したまま他の装備を使用可能であり、その状態で逆手の形でグリップを握ることで反対側からビームソードを形成できるようになっている。

 ライフルモードでは更に後述するビットと合体することで強力な砲撃性能、銃剣としての機能を用いることが出来る。

 本形態時においては後方への射撃がメインとなる。

 モデルとしてガンダム00二期のリボーンズガンダムのGNバスターライフルが使われている。というよりビームサーベル発振機能以外は大体同じ。

 

・パイルバンカーシールド「ナハト=ヴァール」

 尾部にライフルを保護する様に装着される手持ち固定式実体シールド。左腕で保持する。

 リボルバーユニットで供給するDN炸裂式のパイルバンカーを中央に設置。更にセットする種類によってその機能を変化させる。またリボルビングユニットで炸裂するDNの数を選択可能で6発分のパイルバンカー作動DNを1回で使い切る最大出力も行使可能。

 パイルバンカーの側面には射撃けん制用のビームバルカンが計4門装備され弾幕戦に加えて突き刺した直後の攻撃にも使える。加えてバンカーユニットを含めた先端部は後述するビットの合体機構を備えており、その核としての役割も兼ねている。とはいえ盾としての機能も最低限備わっている。

 形状モデルは魔法少女リリカルなのはMovie2A,sにて闇の書(アインス)が使用したパイルバンカー。

 

・シールド・ソードウイング

 機体の翼を構成するユニット。DNの噴射機構を有するスラスターカバーと剣状の遠隔操作端末「ソードビット」を備える。

 これらの機能は支援機状態でも使用が可能だが、最大限発揮するためにはやはりジェミニアスとの合体が必須である。

 

・エリミネイターソードビット

 シールド・ソードウイングに装備される近接戦用遠隔操作端末。片側6基ずつ、計12基を装備する。

 ソード部分は後述するエリミネイターソードと同質の物質で構成。それを突撃させて敵を切り裂く。また持ち手を露出させることで近接戦用兵装としても用いられる。ビットも組み合わせることでDNウォール、プロテクションを形成可能。そして最大の特徴は先述したライフル、シールド、そして後述する同名を冠したエリミネイターソードと合わせることでそれらの強化が可能となっている。

 モデルは劇場版機動戦士ガンダム00のダブルオークアンタのソードビット。

 

・エリミネイターソード

 機体頭部とメインカメラを構成する銃剣型兵装。トリガー後端の接続部と首の部分で合体する。ブレードガン系列の強化仕様で、刃は十字型の特別仕様、ライフルモード時は剣先から放つ、刀身の色が紫であるなど今までのブレードガンと比べて極めて異端。

 それもそのはずで刃自体がDN放出体を兼ねた精密機械であり、その切れ味はこれまでのブレードガンを凌駕する。その分普通の機体では扱えず、ツインジェネレーター仕様機でも調整が困難を極める。合体状態ではクローザーフェニックスそのものが鞘となっている仕様のため、攻撃に使っても問題ない。

 モデルはダブルオークアンタのGNソードⅤ。しかし刃の形状はフレームアームズのフレズヴェルクの変形時先端部を参考にしているイメージ。

 

 

 

型式番号 DNGX-XX000-SZGU+DNMX-XX000-APⅡ

シュバルトゼロクローザー

 

機体解説

・シュバルトゼロガンダム・ジェミニアスがクローズフェニックスと合体した状態。イグナイト、イグナイターの形態を踏襲するシュバルトゼロガンダム・ジェミニアスの完成形。

 合体することによりDNジェネレーターのリミッターを解除、出力はジェミニアスの3倍を記録し、エラクス時には通常時の5倍まで上昇する。

 機動性能、攻撃性能などが飛躍的に向上し、あらゆる災禍を弾き飛ばすポテンシャルを秘めた本機にはガンダムの名は相応しくないと敢えて外し、チームCROZEの象徴、争いを終わらせるという意味を込めて「シュバルトゼロクローザー」と命名される。

 具体的な変化としてはエレメントブーストの強化であり、第二段階目となるフルブーストへ移行し、さらなる強化形態、ジャッジメントクローズと呼ばれる形態へと移行が可能になった。

 背部に武装を背負う関係でマルチプル・スペースシフターの一部武装が背負えないが、その兵装に関しては使用の際に別のマルチスペース箇所から取り出すので問題ない。

 非常に強力な機体で、DNF一つで地形を変更させるとのうわさがあるほどの機体である。ところがそれだけに機体の負荷もかなり高く、特にジャッジメントクローズモードはジャンヌと元が揃っていても負荷が高いなど危険性もはらんでいる。

 ちなみに戦闘能力比では現在稼働中の他のカラーガンダム3機でほぼ互角と言った具合。そこにDNL能力も絡めばそれ以上の戦闘能力とのこと。

 コンセプトは「既存のジェミニアスにダブルオーライザー、クアンタの戦闘能力付与、エレメントブーストの完成形態」転じて「完璧なシルエットシステム換装のあるダブルオーライザー」。対話能力などを除いたGN粒子ありきの性能が消えているが、戦力的にはそれらとほぼ同等の性能を誇る。ちなみに完璧なシルエットシステムとは漫画SEEDDestinyASTRAYにて言及されているドラグーンシステムによる換装。合体法も大体共通しており、違いとしてはオーライザーが反転して合体するのに対し、こちらは頭部を後方へと折りたたみ、正面から合体する。この時足に当たるパーツがマルチプル・スペースシフター側のジョイントを掴んでドッキング、固定される。

 

【追加機能】

・次元転移機構「Gトラベルコントローラー」

 Gワイバーンから受け継がれた次元世界転移機構。この機能の復活により様々なことに光明の兆しが見えている。

 次元世界の移動でジャンヌ達がマキナ・ドランディアに帰還が可能となっており、HOWや日本政府からは次元世界の進出に一歩近付けて期待が寄せられている。そして何より、このシステムの復活で元とジャンヌが考えているレイア救出のための一つの要素が満たされ、これでようやくレイア救出の目途が立つこととなった。

 

・エレメントフルブースト

 合体により出力が向上したことでエレメントブーストの強化度合いが変化。これにより各機能特化形態もより強化されることとなる。

 名称も変化し、それぞれの形態を象徴する四字熟語が読み上げられる。これに関しては元の趣味も関係しているらしいが、ここまで来たらと言うことで来馬や黎人も二つ返事でOKし、名称に関して意見を出している。

 肝心の性能もより強化され、エラクス無しでもMAや拠点に致命的なダメージを与えうることが出来る。所謂属性攻撃が使用可能となった。そしてそれらをすべて内包した完全形態「ジャッジメントクローズモード」も発動が可能で、理論上はこのモードだけですべてのモードを圧倒も出来る。

 しかし強化された分反動も大きく、ジャッジメントクローズモードは元とジャンヌが揃っていてもなお反動を相殺しきれない。

 

【追加武装】

・ゼロ・バスターライフル

 クローズフェニックスから分離装備する本形態時の主兵装。右腕部の肘部コネクタで固定、使用する。

 エネルギー供給は本体から行われ、ゼロ・ビームライフルⅡよりも威力が当然ながら高い。更に折りたたむことで待機状態に出来ると共に追加トリガーグリップを展開することで銃後端からビームサーベルの発振が可能で、素早く格闘戦へと切り替えることが出来る。

 エリミネイタービットとの合体で最大出力形態ゼロエリミネイトモードに切り替え、最大出力の砲撃で正面敵を薙ぎ払うような使い方が出来る。

 

・パイルバンカーシールド「ナハト=ヴァール」

 クローズフェニックスから分離合体する本機のマルチウエポン。左腕部と腕部側面のアタッチメントで保持する。

 手持ちで使用するこちらとバスターライフルに関しては素の状態と最強形態ジャッジメントクローズの戦闘能力強化が目的であり、シンプルな使い方が出来てなおかつ決め手がある兵装となっている。またバスターライフルはハルピュイアとネクロ、そしてシールドはアレスとハルピュイア、ネクロの強化にも対応しており、特にアレスマグナから放たれる本兵装の一撃は仮に後述するスカルキングのシールドでも防御不可と非常に強力。加えてエリミネイターソードビットとの合体で大型盾剣「エリミネイターバンカーソード」を使用可能となる。この時パイルバンカー機能は失われる。

 不使用時にはシールド・ソードウイングの装着されていたアームに接続される。

 

・マルチアサルト・ソードウイングシールド

 本機の肩部マルチアサルト・シールドの上からシールド・ソードウイングを被せる形で合体した複合兵装。両兵装の機能を等しく同時に扱えるようになる。更にDNウォールに関しては元々のシールド・ソードウイングのスラスター部から発生が可能であり、防御性能が高められている。

 加えてソードビットも使えるようになったこととも相まって攻撃性能・機動力も高められている。ただし重量が増えたことで制御は難しくなった。シールド裏面のマルチスペース・システムも使用可能。

 形状としてはダブルオーライザーとダブルオークアンタのバインダーを融合させたような形となる。

 

・エリミネイターソードビット

 ソードウイングシールドに装備される12基の近接用遠隔操作端末。ライフル、シールド、エリミネイターソードへの合体でそれぞれ強化する。

 ビット単体としてはフェザービットよりは威力が高いものの、ずば抜けてはいない。しかしエリミネイターソードの刀身と同質の結晶体が素材に使われていること、合体時が主力の為問題となり得ない。

 合体時にはDNエネルギーの放出体並びに増幅器兼転換を兼ねており、高純度DNの破壊力を増幅させDNFの威力などを高める。

 合体状態はGNソードⅤのバスターソードモード、バスターライフルモードを参考にしている。

 

・エリミネイターソード

 背中へと折りたたまれたクローズフェニックスの首に頭部として接続される銃剣。剣先を下に向けて装着されており、引き抜く時はトリガー部を持つ。

 DN放出体で構成されており、単なる斬撃でも並みのDNフェイズカーボンを切り裂き、DNウォールをも両断する。

 だが真価を発揮するのはエリミネイターソードビットと合体した時。合体した際の斬撃、射撃性能は当然強大であり、専用戦術級DNF「スターフォールエリミネション」は小型の次元崩壊を生みだし、直撃した、あるいは周囲の敵を次元の彼方へと吸い込み高純度DNの嵐ですりつぶし消し飛ばす(一応は防御可能だが吸い込まれた先ですりつぶされる未来が待つ。よって防御した直後緊急離脱するのが望ましい。もっとも吸引力に勝つことが課題である。あるいはそれ以上の高純度DN制御能力で吹き飛ばす、あるいは制御するのみ)。

 

 

[モードシフト]

<アレスマグナモード>

・アレスモードが強化された第2形態。別名「轟熱激覇」。アレスモードからより近接戦能力に出力が振れるようになった。

 その高出力性から射撃防御だったエレメント・フレアは攻撃性能を付与されたエレメント・マグナへと進化している。

 変化の際にわずかながらエヴォリュートアップがなされているようで、装甲形状が変化し、炎の意匠を持ったスラスターが肩部・膝部に現れている。

 追加されるコンセプトとしてファントム(ゴーストガンダム)、ビルドバーニングガンダム系列がある。別名のモデルとしては「正面突破」に炎らしさを盛り込んだ形。

 

【追加機能】

・エレメント・マグナ

 機体フレームから全体を覆う紅い粒子体「エレメント・フレア」が強化されたもの。これまでの機能を有しつつ、触れた相手を焼き尽くす機能を有する。この機能は攻撃に付与することも可能で、これまでの打撃系DNF、手から放つ射撃系DNF双方の強化が見込める。しかも打撃に使った場合この粒子は衝撃を何倍にも高める(強化度合いについては不確定)ため、やはり近接格闘、打撃戦を得意とする元にとってもっとも合った形態と言える。

 

【追加武装】

・マグナスラスター

 肩部と膝部にそれぞれ追加されるスラスター。機動力向上に役立てられるだけでなく、ユグドラシルフレームが内部から露出しているため急速なエレメント・マグナ噴射が可能であり、近づいてきた敵への不意打ち、繰り出す攻撃の急激な上昇を見込める。

 

 

<スカルキングモード>

・キングモードが強化された第2形態。別名「鎧主一極」。キングモードから防御性能、武器火力が強化されている。

 ビームの防御・反射を行っていたエレメント・スパークはより強固なエレメント・ボルテックスへと進化。

 変化する際のエヴォリュートアップの作用でキングの兵装がいずれも強化されている。雷の意匠が各部に追加されている。

 追加されるコンセプトとしてV2アサルトバスター、アストレイゴールドフレーム天、νジオンガンダムがある。別名のモデルとしては鎧袖一触。ガンダムシリーズでは有名な言葉であろう。

 

【追加機能】

・エレメント・ボルテックス

 機体のフレームから放出される金色の粒子体「エレメント・スパーク」が強化されたもの。これまでの機能に加え、稲妻の持つ雷属性、分裂性が攻撃に付与される。これによりキングビットシールドとガン・グニールを合わせる想定されていた砲撃パターンが可能となった。更に近接攻撃、エレメント・ボルテックスを付与した攻撃時に敵機のDNコンデンサーからエネルギーを奪いエレメント・ボルテックスを活性化させる性質が追加されている。

 

【追加武装】

・ガンランス+「ネオ・ガン・グニール」

 キングモードにて装備されていたガン・グニールが強化された状態。外装の一部がエリミネイターソードと同質の粒子放出体へと変化し、槍そのものをビームで覆う使い方が可能となった。

 槍の重さ自体は粒子放出体で軽くなっているが、その分粒子の質量操作が可能なことを意味しており、ブースター機能とも合わせて打突威力等は前よりも高い。

 

・キングビットシールドV(ボルテックス)

 左腕に装備するシールドユニット。キングビットシールドの強化型。豪華な装飾が施されたエレメントコントロールユニット兼追加アーマーコンデンサーが外縁に追加される。

 前述したようにこの追加でネオ・ガン・グニールを用いた砲撃で拡散モードが使用可能となった。もっとも稲妻のような不規則さも兼ね備えたもので、直角ホーミングに近い。また収束させた状態でビームサーベルとして放出させることで超巨大ビームサーベルの形成が可能。これは後述するジャッジメントクローズも同じである。

 

・ハイブリットキングアーマー

 キングアーマーが若干のエヴォリュートアップで変化を起こしたもの。各アーマーが大型化している。

 防御性能の向上はもちろんのこと、一部を粒子放出体に置き換えることで軽量化とエネルギー消費軽減も担う。

 唯一の明確な欠点としてアーマーの巨大化による可動範囲の縮小化が問題となっている。

 

 

<アズールハルピュイアモード>

 ハルピュイアモードが強化された第2形態。別名「蒼穹連理」。ハルピュイアモードから機動力、反応性が引き上げられている。

 ビットの性能向上を担っていたエレメント・アイスは強化されて相手の動きを縛る、凍結機能を付与するエレメント・フリージアへと昇華している。

 変化した際のエヴォリュートアップもサイドアーマー、テイル・スラスターユニットに集中する。鳥の翼を思われる装飾・スラスターが追加される。

 コンセプトの追加として銀河機攻隊マジェスティックプリンスのレッド5がある。別名のモデルは「比翼連理」がベース。

 

【追加機能】

・エレメント・フリージア

 機体フレームから放出される蒼い粒子体「エレメント・アイス」が強化されたもの。これまでの機能に合わせて一定空間中の物質を凍結させて動きを封じる性質を齎す。これは自身以外に働く効果で、自分だけは同じエレメント・フリージアの効果で楽に動くことが出来る。また手の表面から放出することで正面の空間を氷の壁として扱って防御することが可能。

 

【追加武装】

・クラウンハルピュイア・テイル・スラスター

 ハルピュイア・テイル・スラスターが強化された兵装。スラスターパーツがそれぞれ独立稼働し、飛んでいる最中の鳥の尾羽のような広がり方で威嚇効果をもたらす。この配置は伊達ではなく、ビットの展開が素早く可能であり、スラスターも分散しているため攻撃姿勢をいつでも取れることの裏返し。

 展開方法をマジェスティックプリンスのレッド5覚醒形態のテールスタビライザー変形から参考にしている。

 

・フェザービットCN(コンパクト・ネオ)

 フェザービットCの改良型。個数は変わらず、一部に粒子放出体が出現して性能の向上が見られる。

 

 

<ブレイクネクロモード>

 ネクロモードが強化された第2形態。別名「世壊災醒」。ネクロモードから全体的な性能向上を果たしている。スタートが本能のままに暴走するのは変わらないが、いくらか冷静さを取り戻している。

 エヴォリュートアップの変化は機体各部に出現した刃状の粒子放出体が装着された装甲「ブレイクリッパー」が追加された点。これにより獣を思わせる姿となる。

 そして前後するがエレメント・カオスは新たにエレメント・ファングへと強化される。以前までの性能に加えて、非常に攻撃的な性質が追加された。

 コンセプトの追加として仮面ライダーWファングジョーカー、ジェミニオンがある。なおネーミングやら何やらが中二病をぶっちしているが、これの作中での命名者はスタートである。その別名のモデルは「世界再生」。

 

【追加機能】

・エレメント・ファング

 機体フレームから放出される紫の粒子体「エレメント・カオス」が強化されたもの。これまでの機能に合わせて本機能も追加されたがその性質は違う。付与されるのは属性などではなく性質で、その性質は「近接攻撃時の防御機構無効化」である。

 端的に言えばDNウォール、ビームシールド、あまつさえはこれまでからずっと採用され続けているDNフェイズカーボンの防御すらも貫通する。どうにか出来るのはDNを使わない防御機構、シールド、ユグドラルフィールド、旧機体の装甲、そして同種のエレメント系防御機構位の物。旧機体の装甲も装備の発展で簡単に破壊できるため実質4つほどしかない。

 唯一の相手側からした利点として近接攻撃にしか付与されない為、そもそも近接戦を挑まなければいい。とはいえ本機の操縦は元英雄スタートであり、しかも理性を取り戻していることから射撃戦も正確無比なため元来の機能も加味しても苦戦は必至だろう。なおこの形質を利用して獣の顔型の盾を展開して攻撃の直後カウンター気味に喰い砕くということも出来る。

 

【追加武装】

<ネクロアームズ壊>

 ネクロモードの物から一部が粒子放出体に置き換わったもの。性能強化がメインの為詳細は割愛する。

 

・ブレイクリッパー

 機体の肘部、膝部装甲に出現した突起。粒子放出体で構成されている。肘のコネクターから生えているわけではなく、その後方から生えている形。

 蹴りとひじ打ち、肘での切り裂きで使われる。ここにエレメント・ファングの効果も追加されるため非常に強力な兵装となっている。

 

 

<ジャッジメントクローズモード>

・シュバルトゼロクローザー最大最強のモード。別名「転千万勝」「オールオーバー」。今まで培ってきた元の戦闘能力を最大限に生かすためのモードとして全エレメントブーストの能力全てを使用可能となり、出力は限界出力まで引き出せる。フレームの色は金色。

 ウエポンも全てを単一のモードで使用が可能であり対応力が増加。ウイングはそれら全てを活かせるように追加アタッチメントを装備する上でジェミニアスノーマルモードのまま使用が可能となる。

 限界出力に達するまでもなくユグドラルキャプチャーを打ち破るなど、DNL関連のパラメーターも高く、この形態こそ再びシュバルトゼロがCROZEの象徴、HOWの魔王たらしめるに相応しい機体である。まさしく万能であり寄せ付ける敵はいない。ところが完璧な兵器などこの世界には存在しない。この形態にも弱点はもちろんあり、それは性能などの問題ではない、パイロットとパートナーへの過負荷である。本形態でもエンゲージシステムで機体のエネルギーなどを制御するのだが、全ての能力が統合されているためにシンクロ率99,1パーセントでも抑えきれない。武装選択肢も多いを通り越して多すぎる為に管理するのも必要で、平均的な本モードの使用時間は15分が限度である。

 この仕様の為に本モード時にはMS装依時電子空間が二人の体に必要な栄養素を送り込む「メディカルドロップシステム」通称MDSと呼ばれる状態に移行し、装依解除後も行動できるようにしている。このシステムを酷使した場合は一人でも本モードは使用できるが、あくまで「非常事態」であり、使った際のパイロット、元への障害が出る可能性は否定できない。

 ちなみに実は本形態に対となるモード、クローズモードが合体前のジェミニアスのエレメントブーストにも存在するのだが、そちらは安定稼働が出来なかった。むしろ安定稼働が出来なかったが故にクローズフェニックスが安定装置としても導入されるに至っている。そちらは短時間だけなら稼働可能で、作中ではユグドラルキャプチャーを突き放してクローズフェニックスと合体する為に使っている。

 コンセプトは「負荷のあるトランザムライザー」。トランザムライザーは合体によってトランザムの安定稼働、ガンダムを越えた性能を引き出すが、こちらはその機能拡張によって負荷を持っているため。別名のモデルは「天地万象」。オールオーバーと呼ばれるあたり、作者はあれから取っている。

 

【追加機能】

全てのエレメントブーストの機能を持つ。

 

【追加武装】

本機の形態すべての武装が使用可能。

 

 

 

ジャンヌ「以上、はいバケモノですね」

 

士「大雑把すぎる感想どうもありがとうです」

 

レイ「いやぁ、だってさー強化されたアレスモードとかだけでもヤバいことやってるのにジャッジメントクローズモードなんていう全部乗せだよ?やりすぎでしょ~」

 

士「まぁエレメントブースト全部の能力使えるのは相当ヤバいとは思いますよ。でも相応に負担がかかるってことしてますし」

 

ジャンヌ「……神話領域と形容されたユグドラシルフィールドを壊しても?」

 

士「パワーイズジャスティス。実際実力が落ちていたからこそゼロン・オブ・インフィニティーもといヴァイスインフィニットは撃墜されていなかったから、描写出来ていると思うんだけど」

 

レイ「あーあんな力使えてたらもうアーマー割れてるはずだもんね」

 

ジャンヌ「そう考えると……迂闊に使えず、なおかつ元さんが途中までジャンヌさんの気遣いをしていらっしゃったのにも納得できますね」

 

士「ま、そうなるよねー。元君が我を忘れて暴走する。これ前にもあったぞ」

 

レイ「うーん同じ繰り返し、になっちゃうのかなぁ」

 

ジャンヌ「次は何を失ってしまうのか……想像したくはないですね」

 

士「そんな次への不安を抱えたまま、いよいよHOWとゼロン、一大決戦が始まろうとしていた!かつてのホリン・ダウン作戦の地、三枝県の前線基地で遂にシュバルトゼロとヴァイスインフィニットと四度目の対決にして二度目のガチ対決の幕が切って落とされる!!」

 

レイ「えっ、もう決戦!?」

 

ジャンヌ「とはいえもう4章、あり得ますね」

 

士「ここで決着がつくのか、それとも……?次回、機動戦士ガンダムDN、LEVEL3、第4章「救世の咆哮(ドラゴニック・ハザード)」」

 

レイ「何か前にもあったよねこんなルビ!?」

 

ジャンヌ「救世、ドラゴン……果たして勝者は……?」

 




以上ここまで黒の館DNをお読みいただきありがとうございます。
次章ではいよいよシュバルトゼロとヴァイスインフィニットの対決といういつ振りかの激突となります。

シュバルトゼロとヴァイスインフィニットはいずれも対立する要素を盛り込んだ機体です。白と黒、救世主と魔王、パイロットが実子か養子か、などなど。
ただ個人的には救世主と魔王の対立というのは納得がいかなかったり。だって救世主も魔王も所詮はどちらも後の人間が決めた物。良く見せるか悪く見せるかで、やっていることは基本同じだと思うんですよ。そしてそれは見る側によって変わる。
それなのにどうしてやたらと救世主を持ち上げるのか。その問いかけみたいなものを両キャラクターを通して描いていきたいと思っています。鏡に映ったモノは果たして同じなのか違うモノなのか。黒と白の対比と合わせて、拙いでしょうが、お付き合いいただければと思います。

と、難しそうに語るのもここまでにして。次章もよろしくお願いいたします。


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第4章 救世の咆哮(ドラゴニック・ハザード)
EPISODE58 狙うエース・オア・ジョーカー1


どうも皆様お久しぶりです。誕生日を先日迎えました藤和木 士です。EP58と59の更新です。

レイ「久々すぎる……待ちかねたよ」

ジャンヌ「何があったんです?言ってみてください。いや、言え」

圧が強い(´・ω・`)いや、まずこのEPISODE58のとある場面でめっちゃこれでいいのか自問自答してました。次にダイナゼノン再放送二話を待ってました。それからちょっと深く鬱になってて、ウルトラマントリガーの放送に舞い上がってて二話見るまで手つかずで、なおかつクリアしてたPCゲームの新たな遊び方に熱中してたり、あとバトスピのバトラーズカップ参加してたり。

レイ「長い長い!」

ジャンヌ「色々追及したいところはありますがまぁ今回の話からのを訂正する時間はあったようなのでとりあえずはいいです。それで、その問題の場面は大丈夫なんです?」

正直個人的には危ない橋渡ってる感覚だったけど古今東西色々なライトノベルが書物として発売されている中でその関連描写が割とぼかしつつも鮮明に文章で表現されている現状を鑑みて「とりあえず市販されてるからこのくらいならR-15でヨシ!」の現場猫精神でGOサインしました。

レイ「いやいや、大丈夫なの!?現場猫!」

詳しく言及してないから、OKでしょ多分。

ジャンヌ「とりあえず、変わる可能性もあるとみて今回は行きましょう。そこまで明確でないのなら角は立たないでしょうし」

とりあえず行くぞ、L3第4章始まります。EP58どうぞ。


 

 

 異世界、マキナ・ドランディアの6月某日、俺達の前に現れた白のガンダム、ヴァイスインフィニットガンダムは俺達から大切な人を奪い去った。

 ジャンヌの父、ガンド・ファーフニルを殺し、友人レイア・スターライトを人質として、異世界へと渡った。奴は一人の少女を利用して我欲を満たそうとした。今でもあの時の風景を夢で思い出す。

 

 

 

 

『ははは!まさかこんなことになるとは思わなかったぞ。だが好都合だ!このまま次元のどこかに撤退するとしよう』

 

『ハジメ!レイアさんを!!』

 

『…………っ!』

 

 

 

 

 二機のガンダムが繰り出したDNF。そのエネルギーの激突により起こった超次元現象にが全てを飲み込む渦となってヴァイスインフィニットを吸い込んでいく。その中でヴァイスインフィニット、のOSであるエンドが嘲笑っていた。

 

(俺は……どうしたら……っ!)

 

 手を伸ばせない、伸ばせば、自分達が飲み込まれてしまう。もし変なところに飛ばされてしまったら、とあいつを追うことが出来なかった。

 勝負は結果としてこちらの勝ちだっただろう。しかし奴は目先の勝負にこだわらず、人質を連れて逃げる選択を取った。結果として俺達の負けだったと言える。

 今でも思う。あの時、もっと力があればと。けれどもそれは叶うはずもない。何度危機を逆転してきた今でさえ、あの時の自分には何も出来なかった。今ですら出来ないと分かり切っている。

 あの時と同じ無力感を、あの後何度も味わっている。象徴クリムゾンドラゴニアスを救えなかった時、ガンダム反対運動「ノット・ア・ジー」の活動を撲滅しきれずにこちらの世界に来た時、光姫を救えなかった時……。それらを経験してもなおオースやアンネイムドの事件などで、いつも後れを取っていた。

 そして、つい先日、再びヴァイスインフィニットと敵対した時も俺は奴を捕らえられなかった。しかも今回は勝手にできた義弟をパイロットにされているにも関わらず。

 

(何で、何で俺は……勝てない!)

 

 一刻も早くレイアを取り戻したい、というのが焦りなのは自分でも分かっていた。それでも彼女と会わせてやりたかった。呪いから解放された彼女の笑顔を「本当の意味で」取り戻すために。

 そんな気持ちばかり逸るから、ジャンヌを傷つけてしまったのも事実だった。だが歩みを止めるつもりはない。俺が止まれば、ジャンヌや、それ以外の人がまた涙を流す。そういうことをする奴らと戦い続けてきた。

 魔王なら魔王らしく、全てを殲滅するまで戦ってやる。俺に何も残らなくたっていい。兵どもが夢の跡。行いが過去の物になったとしても、あいつの幸せだけを願っている。

 と、彼女の言葉がフッと過る。

 

 

 

 

『呼んでよ……名前で呼んでよ!この大戦で呼んだように!私の事を必要だって!お願いぃ…………私を、一人にしないでよ……うっ』

 

 

 

 

 一人で、もとの世界へ向かおうとした時のジャンヌの叫び。あの時からジャンヌと付き合うことになった。嬉しくないわけじゃない。けれども俺の中では納得がいかなかった、いや、こう思い続けていた。俺には、過ぎた相手だと。

 その想いは戦い続けるたびに強くなっていった。無茶を強いているのに、彼女は耐えていた。怒るときもあれば、大丈夫とやせ我慢したり。無茶に付き合わせて、それなのに果たせずにいる。だから、俺は彼女を一人にだけはしない様にしていた。それは、レイアが戻ってきたのなら必要ないということ。

 そうだ、俺は―――――

 

 

 

 

「……夢、か」

 

 深夜、目が覚める。時計を見る。時間はまだ床に就いてから3時間と言ったところか。自室のベッドから起き上がると、元は水を汲みに向かう。

 まただ、あの夢を見るのは。ここ最近自分の気持ちを振り返るような夢を何度も見続ける。だがそれは決して今までもなかったわけじゃない。自分の選択が正しかったのか思い悩んだり、力不足を痛感したりすると、よく見る。

 そして、今回の原因は分かっていた。

 

「……ヴァイス、インフィニット……」

 

 呪詛のように吐いたその名前。今までずっと追い続けてきた因縁の相手が先月、遂にその足取りを完全に掴んだ。フェネクス捕獲作戦の最終盤で姿を現した奴を俺は捕らえようとした。

 だが、それは叶わなかった。ジャンヌの体力の限界で捕らえられなかった。もしあそこでジャッジメントクローズモードでなかったなら、ユグドラシルフィールドを相手にしていなかったなら。思い浮かんだIFはいずれも非現実的だった。いつも五月蝿い政府の委員会も全会一致で対処は間違っていないと言ったのだ。

 外野にとやかく言われるなんてこと、なるべくはしたくない。そして俺のいち早い戦線離脱を望んだ一部の政府高官は、今度の作戦でゼロンが集まりつつある三枝の前線基地に対して行う作戦で、ヴァイスインフィニットとの対決を指示している。

 そんなの、言われなくたってやってやる。俺達が待ち望んだ、今目の前にある。ならば今度こそこの因縁に終止符を打つ。もうジャンヌがガンダムに乗らなくていいようにする。

 が、まずは今日の予定を消化してからだろう。今日は宗司達学生組とその友人達にうちの新しくできた施設のプレオープンに参加してもらう。俺とジャンヌはその引率者だ。引率者として、しっかりしなくては。

 水を一気に飲み干してからトイレに寄ってから再び就寝する。

 

 

 

 

 その同時刻、隣の個室でジャンヌもまた起きていた。否、起きてしまっていた。

 

「……元……」

 

 起きた理由は至極単純、隣の部屋にいる元の夢を共有したからだ。

 DNLの詩巫女タイプの資質を持ち合わせるジャンヌは、周囲の人の感情の機微を読むことが出来る。それは決して夢も例外ではなかった。

 これまでにも何度か彼の夢を共有してきた。いつも後悔と責任を負い続けている。私が悪い時もあるのに、彼はいつも自分のせいだと。

 そんなわけない。発端は私なんだから。でもきっと話を聞いてくれない。彼はそう言う人だって痛いほどよく分かっていた。

 魔王なんて名乗って、自分にすべての悪意を集めようとする人。そんな彼の支えになりたいと思い続けてパートナーを努めてきた。

 そんなことを思い続けて、もう13年になる。13年前、機竜大戦が終わってから告白してずっとこんな関係。それで我慢できるかと言われたら、そんなわけ、なかった。

 

「……っはぁ……あぁ、あぁっ」

 

 嗚咽と共にその体をもぞもぞとさせる。これまでに何度も「そういうこと」はしてきた。昔ははしたないと思っていたが、10年以上も経ってしまえば、もう羞恥心よりも欲求が勝る。

 きっとそれを告白したら、彼はますます焦るだろう。早くレイアを助けなくては、私の事を「好きになった女性」ではなく「預かっている主」として、もとの世界に帰そうとするに違いない。

 そうしたらきっと、彼はまた無茶をする。私のせいで彼がまた傷つく。そんなのは嫌だから私が支える。でも代わりに私が傷ついたなら……。もう、負のスパイラルの中に、私達はいた。

 それならもうこんな気持ちは隠さなきゃいけない。でも、そんなの……っ。

 もどかしさと哀しみで動きは激しくなる。声にならない叫びが部屋に響く。

 

「っ~!!むーーっ、~~~~~~!!」

 

 涙を浮かべてジャンヌは動きを止めるとそのまま静かに眠りへと落ちていった。

 

 

 

 

 

 

「いっくぜー、宗司!」

 

「っぷ!?信也!?」

 

「あははっ、信也センパイ続きますよ~!」

 

 信也からの水鉄砲の直撃を受けた俺は態勢を整える間もなく、続けざまに智夜の水鉄砲の追撃を受ける。

 今、宗司はHOWが新しく設立したリラクゼーション施設「アクアパラダイス・ヒカリ」のモニターとして参加していた。

 リラクゼーション施設といっても、その対象者は主にHOWの職員や敷地内に存在する施設の人間対象。とはいえ、そうなると学園の人間も範囲であり、宗司も呼ばれたのだ。

 宗司以外にもエターナや、入嶋、クルーシア、光巴といった同じ学生チームに加え、信也達の宗司達に馴染みの深いポートランド学園の生徒も招待されている。もちろんみんな水着姿だ。学校指定ではなく、各々の趣味の水着。エターナは先日女子達と一緒に買いに行ったものらしい。

 招待された一人である友直さんがこちらを気遣ってくれる。

 

「あわわ大丈夫ですか!?」

 

「あぁ。普段の戦闘に比べたら、これくらいお遊びだ」

 

「まぁ、遊びだもんな!まだまだやるぞ~っ」

 

「あ、私も私も~」

 

「容赦ないな、信也。光巴も来い!」

 

 水鉄砲による水遊び以外にもエターナと入嶋、クルーシア、紗彩はその様子を眺めながら軽く泳いでいたり、向こうでは進が訓練の一環と称して流れるプールに逆らいながら泳いだり。

 そんな俺達の監督役兼保護者を引き受けてくれた元隊長とジャンヌ副隊長は、パラソルの下でのんびりとしている。いや、どちらかというと疲れてぐったりとしていると言った方が正しいだろうか。

 朝からあの調子なのだが、どうやら二人とも機能は寝つきが悪かったのだとか。最近どうも二人の様子がおかしい。やっぱりあの白いガンダムが……?

 と、考えた瞬間再び水の噴射が視界を奪う。

 

「ぶっ!?」

 

「そ、宗司先輩!?」

 

 クリーンヒットを受け、友直さんが悲鳴を上げる。水が口の中に入る。そんな様子を見てしたり顔の信也達。

 

「へへっ、何考え事してんだよ。上の空だったぜ?」

 

「視線的に魔王とその彼女さんのこと見てましたー?」

 

「へー、宗司君ジャンヌお姉ちゃんのこと狙って?」

 

「んなわけあるかぁ!!三人とも覚悟しろっ!」

 

 注意を向けない様にしつつ、三人への怒りの反撃を開始する。怒ってこそいるが、いつものようなものじゃない。遊びの範疇の怒りだ。

 楽しい時間だ。こんな時間がいつまでも続けばいいのに。これまでの任務に集中してばかりの時間を忘れて、今はたっぷりと息抜きをしよう。そんな事を思いながら信也達と面白おかしく遊び倒していく。

 

 

 

 

 スライダーや、水遊具を楽しんで信也と一緒にいったん水から出る。一息ついた信也が今回連れて来てくれたことに礼を言う。

 

「いやぁ、ありがとな宗司。俺達を誘ってくれて」

 

「いやいや、元隊長から学校の子達も誘えばって言われたし、むしろこっちとしては信也達に来てもらえたのがありがたいと思うだろうしな」

 

 信也の礼に対しそう返す。本当かどうかは分からないが、そう言っておいてもいいだろうとは思った。

 そんな声を聞いていたのか元隊長が向かって来ていたこちらに椅子から立ち上がって声を掛けてくる。

 

「宗司、それから信也君だったかな。すまないな、夏休みだというのにこんなことを頼んでしまって」

 

「隊長」

 

「いや、大丈夫っすよ。俺らの地区じゃ中々こういうの無いですから、学校の近くで生徒も自由に利用できるなんて、すごいと思いますから。テスターなら大歓迎ですよ!」

 

 魔王と呼ばれる元隊長に対し、怖気づくことなく話す信也。凄いな、と思った宗司の心の声に同じく、元隊長も言及する。

 

「そうか。フフッ、若さはやはりいいな。俺も気楽でいられる」

 

「あっ、いや……ちょっとはしゃぎすぎました?」

 

「いいや。構わないさ」

 

 信也は迂闊だったかと訂正しようとしたが、構わないと元隊長が返す。やや疲れていそうだった表情を翻し、隊長は信也に対し話題を振っていた。

 

「時に、君は確か十二支区の管轄者、子尾家の跡継ぎだったね」

 

「っ!」

 

 子尾家と聞いてそれが信也の実家の話であることがすぐに分かる。けれどもそれを聞いた信也の表情はどこか浮かない。

 言われてみれば、宗司も今まであまり信也の家の話は聞いたことがない。いや、どちらかと言えば聞いても信也が話したがらないというのが正しかった。何でも実家とは不仲というのは聞いたことはあるが……。

 と、そこに休憩に来た紗彩と友直さん、エターナが集まってくる。

 

「信也さーん!なーに話してるでぇすかー?」

 

「あ、宗司先輩も、それに黒和隊長さん」

 

「姉様っ、お疲れ、寝不足なら私が取って差し上げますっ」

 

 一人だけ別方向に行こうとしているが二人のやり取りに注目が集まる。信也が先にその話題に対し申した。

 

「知っているんですか。うちのジジイのこと」

 

「っ!?」

 

 なぜだか信也の声が重い。それに話を聞いていた紗彩がビクつく。声は出していないものの、友直も深刻そうな表情だ。

 それに触れることなく、元隊長は質問に頷いた。

 

「あぁ。あの家、いや、町も相変わらずあの力に振り回されている」

 

「力……?」

 

 単語が指す意味を図りかねる。すると友直さんが物申すように話す。

 

「元さん、あなたがHOWの英雄、HOWの魔王であるのは良く知っています。でも、その件は信也さんが……いいえ、私達が何とかしないといけないことなんです」

 

 友直さんの声には静かな怒りがこもっているようだった。DNLの力が読み取る。それは事実で、他を拒むような音と思える。もっと言えば、そう、聞かれたくない……。

 その発言に元隊長はしばし見やると返答に頷く。

 

「そうだな。あの問題は悪いが、俺達が構っていられる問題じゃない。決着は、信也君、君が付けるべきだろう」

 

「なら、何で……」

 

「なに、お前達はよく考えて状況を覆せ、と言いたいだけさ」

 

 そのように呟く元隊長。その表情は未練を残したといったような、やるせなさを感じさせる。

 表情の意味についてかつての話を踏まえて話す。

 

「かつて一人の少女の運命……呪いを覆すために、男が奮起した。やがてその男女は1000年も続いた大きな戦争を止めた。だが、彼らの健闘も空しく新たな戦争の火種が起き、世界はまた争いに包まれた。男はただ少女の為だけを思って行動し、後の事は周りの人間にまかせっきりだった。そもそも、男は結局、少女の当初の願いは果たせなかった。それどころか、少女の身内に余計な心労を抱えさせてしまう結果ともなった」

 

 それらはどこか聞いたことのある、いや、誰の話かなんとなく察しがつく。ジャンヌ副隊長に掛かりっきりだったエターナもいつの間にか隊長の方に失望にも似た眼差しを向けていた。

 隊長は続ける。

 

「信也、君達はもっとよく調べてから、行動しろ。覆した先のビジョンを見ろ。でなければ、事態はより深刻化する」

 

「……そんなの、分かってますよ。ジジイは凄い。でもいつまでもあんなやり方じゃ」

 

「なら、彼のやり方を学べ。そのうえで君の言う別のやり方で変えて見せろ。変えられるならな」

 

「やってやるさ!」

 

 決意と宣言を口にした信也に少しだけ笑って見せた元隊長は、踵を返して話題を逸らした。

 

「そうか。じゃあそろそろ昼食としようか。あっちの方に試験的に屋台が出てるから、行って来いよ。代金はこっちで持つ」

 

「え……あぁ、はい」

 

「!そうですね、信也さんとっとと飯に行っちゃいましょ~!!ついでに宗司さんもっ」

 

 紗彩が俺と信也の手を引いて屋台の方へ引っ張る。まるで逃げるようにして引く手は強かった。友直さんもそれに慌て気味に付いて行く。

 申し訳ないと思いつつも信也と紗彩に尋ねる。

 

「……なぁ、お前達の問題って、そんなに……」

 

「……宗司、ごめん、それは……」

 

「……そうか。わかった。ごめん」

 

 信也の言葉に黙らざるを得なかった。そして、今回招待してしまったことに謝罪する。が、信也はそれだけは否定した。

 

「謝んなよ。俺達の問題なんだ。今日誘ってくれたお前に悪気がないのは分かっているんだから」

 

「……」

 

 沈黙を破って友直さんが首を振って言う。

 

「宗司先輩はいいんです。それより、早く食べに行きましょう!それを引き摺っていられる方が、こっちとしては苦しいですから」

 

 言われて確かにと思う。また何か表情を見せていたら、入嶋達に会った時に指摘されるかもしれない。その方が苦しいと信也達は言っているのだ。

 ならば、と宗司は頷き従う。

 

「そうだな。今はその方がいいな」

 

「あぁ」

 

 言葉を交わし合って昼食へと向かう。けれど思う。こういう時、友達なら何かあったら相談しろよと言うのでは、と。

やっぱりだ。まだ俺は人を信じ切れていない。上手くなったのは、人殺しの腕だけか。そんなことを表情の裏に隠して、手を引かれていった。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP58はここまでです。問題ないね?

レイ「あー……うん?まぁ?いいの、かな?これくらい、なら?サービスシーン?シリアスだけど」

ジャンヌ「……モデル元の私としては、物申したさありますけどね。作者?」

でしょうね(;´・ω・)まぁでも前章から鮮明になった主人公元とヒロインジャンヌ、二人のすれ違い、それをここで証明するためにはどうしたらいいかの案としてこれかなぁと思った次第なんですよ。モデル元の問題に直面するのはこれで何度目かってなるので考えてない。

レイ「まぁ始めちゃったからね。けど本当にそこまで重症化してた、っていうのはよく分かるね」

ジャンヌ「そこは同感です。我慢しすぎても良くなく、やがて破裂しかねない。今話で出た子尾さんの実家との関係の話は真逆ですね。信也さんは何かを決意して行動している。そして周りの人も陰ながら支えている、いえ、見守っているの方が正しいですね」

元君は昔から何でも一人で決めがちだ。そしてその責任を一人で背負い込み過ぎている。乗り越えたと思ったらこれだからね~。だからと言ってあそこまで溜めさせている。深絵ちゃんとか黎人さん、来馬さんとかも心配しているしこの不安が杞憂になることを祈るしかない。この章の戦いはゼロンとの大戦になるんだからね。
と、今話はここまでにして、今回も次話へと続きますよ。

レイ「次に続くよ~」


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EPISODE59 狙うエース・オア・ジョーカー2

どうも、藤和木 士です。EPISODE58と59の公開です。EPISODE59となります。

ネイ「ほんわかな話、となっているはずが、いつの間にかまた重い話になっていそうですね」

グリーフィア「そうねぇ。誰も彼も背負いっぱなし。肩の荷を下ろさなくちゃ。そう言う意味では信也君はもうちょいね。元君は修正しないとだけど」

修正してくれる仲間、となるとマキナ・ドランディアの彼ですかね?と、それでは本編をどうぞ。


 

 

「じゃあ、今回のモニターはここまで。面倒くさいと思うが、後で施設の感想と改善点、気になることがあれば渡したペーパーを書いて宗司達に渡してくれ」

 

「参加してくださった方々とそのご学友の皆様、本日はありがとうございました。お送りしたいところですが、こちらの方も忙しくて……申し訳ありません」

 

 施設のモニターを終え、着替え終わって集まった信也達に今回の感想についてと礼を述べる元隊長達。それらに対しすっかり気まずさも潜めた信也達も今回の件に重ね重ね感謝を言った。

 

「いえいえ、むしろこんな施設に招待してもらっちゃって、本当にありがとうございます」

 

「そうでごぜぇますね。これからも使えるってんですから、お礼は正式にオープンした施設を使うってぇことで」

 

「そうしてもらえると、こちらとしてもありがたい。もちろん、宗司達も学校に通っている間なら食事代以外は無料で使えるからな、温室仕様でもあるし、冬でも使える」

 

 離している限りはもうあの事は引き摺っていないようだ。しっかりしていると思いながら返事をする。

 

「はい。そう言えば正式なオープンは8月からでしたっけ」

 

「あぁ。もっともその時期は移動する可能性もある」

 

「移動……あっ、あれですか」

 

「友直ぁ、それここで触れたらあかん奴とちゃう?」

 

 友直さんの言及に智夜が指摘する。言われて友直さんもしまったという表情で訂正を行う。

 

「あっ、いや……その、あ、ははは……この場を切り抜ける方法……」

 

「友直、多分ないと思うぞ?」

 

「あう、信也さん……」

 

 信也に指摘され落ち込んでしまう友直さん。流石にこれは隠しきれないだろうか。やれやれと元隊長がフォローに入った。

 

「あまり部外者に話すのもあれなんだけどな。実は8月に入る直前、HOWの作戦が入る。君の幼馴染である彼女達も自衛軍の側で協力してもらう立場にあるんだ」

 

「あー、なるほど。ってかそれを話すってお前……軍に向いてないんじゃ」

 

「言わないでください言わないでください……こんなんじゃ姉上に追いつけない……」

 

 うわごとのように失敗を責める友直。それをまぁまぁと慰める紗彩。ちなみに友直のお姉さんは元自衛軍のパイロットとして活躍していたそうだが、今は実家のお役目を果たしているそうだ。自衛軍を抜けるなんて、と思っていたが、今となればそれも先程の信也の話と関係があるのではと思ってしまうが。

 それに関しては詮索無用と元隊長が話を切り上げる。

 

「それによってはオープン時期がずれるって話だ。くれぐれも他言は無用。特に紗彩さん」

 

「うっ、まぁ、そうですね。実家には言いません……よぉ?」

 

 目をそらしているのが不安要素だ。言いたいことを言い終えて、解散を告げる元隊長。

 

「じゃあこの夏休み、悔いのないように過ごせよ。大人になったらこんな楽しい時間ないんだから。暗くなる前に帰れよ」

 

「はい。では失礼します」

 

 そう言って信也達が帰っていく。入嶋達と一緒にそれを見送る。やがて見えなくなってから、元隊長がこちらにも確認を行う。

 

「さっきも言ったが、今月末は三枝に建設されているゼロンの前線基地攻略任務がある。ゼロンでもそれに向けて軍の移動が見受けられる。おそらく、これまで戦ってきた奴らも集結するだろうな」

 

 今まで戦ってきた相手。そこに含まれているのはオースから寝返った火葉零と水無月加子、それに石河で逃した真紅の流星の再現ハル・ハリヴァーだろう。後々の話によれば蒼穹島勢力もちょくちょく出ていたらしいのでそこも含まれる。

 宗司にとってはハリヴァーが再び来るということにプレッシャーを感じる。あの時は白さんの手助けでどうなったが、もし戦うのだとしたらその時は一人で対処しなければならないのだろうか。

 一方でもう片方の方にやる気を見せる人物もいた。そう、進だ。

 かつての仲間だった人物の名前を呟く進。

 

「零……今度こそ、お前を止めて見せる」

 

「お兄ちゃん、あんまり生き急がないでよ?」

 

「分かってるって。でも、今度こそは……」

 

 今度こそ、というのはやはりこの2か月の間、オースを裏切った火葉零と水無月加子のことだった。彼らの機体を戦場で見ることがなかったのが理由だ。

 MSを強奪したのに戦場で使わない。それについて元隊長達上層部は機体を解析し、後発のMSに生かしているとの見解を示していた。

 しかしそんなことは進には関係なく、早く会って止めたいという気持ちを滾らせていた。そんな矢先にこの作戦。進が作戦参加を志願しないわけがない。もっともそれだけが理由ではなかった。

 真由がそれについて尋ねた。

 

「それで、うちの本国の方の協力は行けたんですか?」

 

「それに関してはオースの方も了承しました。久しぶりに進さん達のお話も聞きたいとのことでしたので」

 

「そっかー。輝さん達、心配してるかな」

 

 この作戦にはオース政府も参加することになっていた。オース出身の彼らの養子縁組先の兄である大和輝さんも、フリーダムで参加する予定となっていた。

 他にも様々な人物が参加し、迎えるという作戦。元隊長達はしっかりと準備を整えていた。大作戦という言葉を使って言う。

 

「ホリンダウン作戦以来のMSによる大作戦になる。俺も戦わなければいけない敵がいるから、全員のフォローには回れない」

 

「戦わなければ……それって、やっぱりあの白いガンダムと……」

 

 入嶋からの質問。話題はやはり先月のあのガンダムについての事だった。白さんがハリヴァーを撃墜しようとした時、割って入った機体。その増加装甲が外れ、姿を現したシュバルトゼロに似たガンダム。

 そのパイロットの名前も、元隊長と同じ「黒和」で真の黒和家の血を引く者と名乗った。それがどういうことなのか、宗司達はまだ隊長の口から聞いていない。

 だが流石にこの状況となったからには、聞かなければいけない。隊長へと勇気を出して聞いてみる。

 

「あのガンダム、それを操るあの黒和神治って奴、元隊長は知っているんですか。アイツは」

 

「ソージ」

 

「……はぁ。言わなきゃいけない、だろうな。きっとそれは、お前達全員が疑問に思っている事だろう」

 

「じゃあ……」

 

 聞き返した進に返答する形で元隊長は説明を了承した。

 

「あぁ。帰りながらになるが、話してやる。アイツの正体と、俺達のすべきこと」

 

「………………」

 

 不安そうに見つめるジャンヌ副隊長。その背を向けつつ、帰途に就く中で俺達はその話を聞く。

 

 

 

 

 

「まず、ヴァイスインフィニットガンダムはシュバルトゼロガンダムと対となる機体。俺はそれを追いかけて、この世界に戻ってきた」

 

「理由は人質になっているお姉様の最愛の人、レイア・スターライトさんを救出するため」

 

 元隊長の口からまず語られたのは、シュバルトゼロとヴァイスインフィニットの関係性とそこまでの経緯。そこにエターナが捕捉のように説明を付け足す。エターナのそれに姉のジャンヌ副隊長は苦言を呈する。

 

「エターナ、今元が説明を……」

 

「だってそうでしょ。お姉様はそのために付いて行って……」

 

 しかし姉の言葉に耳を傾けず、エターナはそうだと言い張る。すると元隊長もそれを認める。

 

「まぁ、エターナの認識で今は良い」

 

「ほら、こいつだって」

 

「元っ!……まぁ、そうですけど」

 

 納得したくないように思われながらも、ジャンヌ副隊長は言葉を飲み込むようにして引きさがった。

 目に見えて不満があり、なおかつ納得がいかない様子だ。普段ならジャンヌ副隊長を元隊長が気遣うところだろうが、何故か元隊長は躊躇いの動作の後話に戻る。進の質問に答える。

 

「ジャンヌ副隊長の最愛の……って、恋人居たのか!え、じゃあなんで元隊長は」

 

「こらっ、お兄ちゃん今言うべきことじゃ!」

 

「デリカシーなさすぎ、進さん」

 

「何でだよ!?」

 

「補足しておくと、レイアは女性だ。ジャンヌにとっては特別な思い入れのある、友人以上の親友も超えて、心の支えだった女性だ」

 

 明らかな地雷を踏み抜いて行った進に妹真由を含めた女子達からの非難轟々が刺さっていく。こちらから見てもやってはいけないことだと分かるが、何故踏み抜いて行ったのか。

 元隊長からのフォロー、というより問題にしていない様子で批判を押し切ってそのまま話を進めていく。

 

「レイアを捕らえているのはシュバルトゼロやアーバレストでも核となっているエンゲージシステムによるものだ。これの対抗策は考えてあるから今回は説明を省く。それで、そのパイロットについてだが」

 

「っ、黒和神治……」

 

 その名前に嫌でも反応する。一体、奴は何者なのか。ジャンヌ副隊長が未だに暗い表情なのは気になるが、今はキーマンと呼べる人物の詳細に耳を澄ませる。

 元隊長がパイロットと自身との関係に言及する。

 

「一言言えば、弟だ」

 

「弟……っ」

 

 単語を思わず復唱する。が、続いた入嶋の言葉で再び情報が混乱する。

 

「え、でも元さんって……妹さんとの兄妹だけじゃ……?」

 

「え?」

 

「あぁ。俺の肉親と呼べるのは、今HOWを離れて子育てに専念している妹の華穂だけだ」

 

 元隊長も入嶋の言葉を肯定する。妹がいることも驚きだがそれ以上に二人だけの兄妹に弟がいるという意味は何なのか。

 当然の疑問を続く元隊長の言葉が解決した。

 

「奴は、次元覇院に傾倒したうちの母親が引き取った養子だ」

 

 養子。話を聞いて合点がいったクルーシアが推測される状況の確認を取る。

 

「養子……つまり、彼は勝手に黒和家の血を引き継いでいる、って言ってたと?」

 

「そういうことだ」

 

「そういう、ことですか」

 

 事情が呑み込めた。相手はゼロン、出まかせを言うことも多々あると言われている。あの時撤退か進撃かで何やら揉めていた時も変な言葉が聞こえていたが、それが関係していた話でもあったのだ。

 とはいえ、養子が勝手に後継者を名乗るのも異常事態だ。引き取った元隊長の両親は何を、と思ったところで先程の言葉を思い出す。

 

『奴は、次元覇院に傾倒したうちの母親が引き取った養子だ』

 

 次元覇院に傾倒。かつてこの日本を滅茶苦茶にしたカルト教団の名。宗司がその悪質さを知らない訳がなかった。

 傾倒して、それからどうなったのか。嫌な予感がする。果たして言っていいのだろうか。

 それについて尋ねたのはまたしても進だった。

 

「じゃあ、あんたの家族は妹以外みんな次元覇院、いや、今はゼロンに……?」

 

 当然聞くとしたらそんな内容だ。母親がそうなったのなら、少なくとも、母親は……。ところが、それ以上の物が、返ってくる

 

「……両親は、死んだ。―――――いや、俺が殺した」

 

『っ!?』

 

 あまりにも大きすぎる衝撃。耳を疑った。ジャンヌにべったりだったエターナも反応するほどだった。

 両親を、殺した?本気で、そんなことを……?いや、そんなことをHOWの隊長でも言っていいのか。

 流石にその発言は大問題だったようで、ジャンヌ副隊長と光巴が大慌てで発言を問いただしていた。

 

「ちょ、ちょっと!元、それを言うのは!」

 

「元お兄ちゃん、それランクSSSの秘匿情報だって!」

 

「ランクSSS!?それって開示したらヤバいやつじゃんか!?」

 

 情報のヤバさを一番理解していた進にハッとさせられ、こちらも入嶋を始めとして動揺が続く。

 

「それ、明かさないとダメだった奴……なんです?」

 

「そんなの聞いて、私……」

 

 が、それでも問題ないことを元隊長が訂正を入れる。

 

「大丈夫だ。今日の朝の報告で、黎人から詳細を知っていないメンバーへの開示要請が出ている。政府側ももう隠す気はないらしい。もっともそれを積極的に知らせるわけでもないようだが」

 

「……本当に?」

 

 ジャンヌ副隊長が不審に思って聞き返す。少し目を逸らすが、元隊長は頷く。

 

「あぁ。黎人に確認すればいい。それに、以前の戦闘で会話を聞いていたお前達にそれを明かさなければ、支障が出るだろう」

 

「そ、そりゃ、そうだろうけど……でもその方が余計ダメージがあるっていうか、ていうか、姉様だって心配させてるし!」

 

 エターナの言うようにその発言はジャンヌ副隊長を動揺させていた。視線を逸らしたこともきっと副隊長の不信感を助長させているだろう。

 しかし隊長はやはりパートナーであるはずのジャンヌ副隊長に気に掛けることなく、話題を進めようとする。

 

「ともかくだ、奴が今回ゼロンの前線基地まで出張ってくるのは確定している。俺達がいかなければそのまま境界線を拡大する思惑付きでな。そこで奴からレイア・スターライトを……」

 

「ちょ、ちょっと!それもそうだけどあんたさっきから姉様を……」

 

「エターナ!いいの……」

 

「えっ?」

 

 エターナの追求を止めたのは他ならないジャンヌ副隊長だった。俯いていた顔を上げる。見てこちらが閉口せざるを得なかった。酷い表情だった。何もかも抑え込んだとでもいうべきほどに平静を装うとしている顔。

 その表情のまま立ち止まるジャンヌ副隊長は言った。

 

「元、そのまま続けてください」

 

「……俺は絶対に、レイア・スターライトを奪還する。そして今度こそ、因縁を終わらせる。救世主ガンダムとしての因縁も、黒和家としての因縁も。あの時見逃したあいつが向かって来るのなら、今度こそ殺してやる」

 

 悲壮の覚悟、元隊長の因縁に対する本気はパートナーの想いを拒絶するほどのものだと宗司達には思えた。

 

 

 

 

 施設のモニターから帰ってきてエターナはずっと考え込んでいた。

 

「…………」

 

 今日のアイツの様子、おかしいにもほどがある。いや、自分が散々言ってきた状況になりつつあるのは、本来喜ぶべきことなのだ。

 だけどそんな状況を手放しで喜べない。こんなのは私が望んだものじゃない。面倒くさいと思われてもあんなのは納得がいかない。

 そんなことを思いながら夕食の口を進めていると、同じ机の席に座っていたソージが声を掛けてくる。

 

「エターナ、考え事か」

 

「……食事中はあんまり喋らない方がいいと思うんだけど?」

 

 邪険に扱うようにそう言って見せる。確かに考えていたが、今はあまり話したくないと思って、そう理由を投げた。

 我ながら汚い理由づけだ。もっとも今のこいつには考えが透けていたようで、そうだなと応えつつ更に踏み込んでくる。

 

「ごもっとも。だけど、俺だってあれはおかしいって思うさ。お前がそれに対して思い悩んでいるのも。最近じゃDNLの力でそういうの嫌でも分かるし」

 

「……そういうの、癪なんだけど。ちゃんと制御できるようにしなさいよ」

 

「それで、どうなんだ」

 

 ホント、強引。そう思いつつ少しだけ席を寄せて小声の届く範囲で話す。

 

「前に話したわよね。私が姉様のプレッシャーに押し負けた話」

 

「あぁ、一番最初の頃だな」

 

 そう、私は聖トゥインクル学園に編入し、そこで姉の功績をから過度な期待を受けてそれが嫌になった。段々と姉様を恨み始めて、そういう感情が沸き立ったのに気持ち悪くなって、勝手に軍の施設を利用してこっちの世界にやってきた。

 それは宗司に話したし、最初のエンゲージシステムリンクで、おそらく共有されていただろう。だけどエンゲージシステムで繋がったからとはいえ、その全てを正しく把握できるわけではないし、まだ知らなかったからこそ理解出来なかった事の方が多かった。

 だからこそ、今読み取れてなかったであろうもう一つの考えを語る。

 

「だけど、私がこの世界に来たのはそれだけじゃない。ううん、最初から変わっていなかった。私は、あいつの言葉が本当だったのかどうか」

 

「本当?」

 

「あいつは、本当に姉様を無事に私の下に帰してくれるのか―――――ううん、姉様を愛しているのか」

 

 一見すればそれは何の変哲もない約束。だけどその言葉の矛盾に私は気づいていた。ソージに自身の考えを語る。

 

「おかしいでしょ。姉様を愛しているって言ってるのに、私の下に帰すって」

 

「……おかしい、のか?家族と再会させるって意味なら、おかしくは……」

 

 ソージの言いたいことも分かる。正直言ってしまえば最初はそういう意味だろうと思った。それでも当時の私は大好きな姉を取られてしまうことが許せなかった。

 問題は、この世界に来てからだった。

 

「じゃあ、何で13年、こっちじゃ11年も一緒にいるのにイチャイチャな話……結婚の話も一つも出ないのよ」

 

「っ……それ、は……」

 

 別に、おかしい話じゃない。すべてが終わってから抱くとアイツは言っていた。だから終わってからだと思っていた。

 だけど、それは全部ここまでの時間が1年だった場合にのみ限る。1年くらいだったら順調ならそろそろ取り返せててもいいと思った。でも結果として取り返せておらず、年月も11年が経っていた。

 それでも姉様はそれに耐えていた。そう思っていたけど、今回のでそれが全然違っていたことに気づいた。嫌でも気づく。

 

「結局、あいつにとって姉様は主のままなんだ。恋人じゃない、箱入り娘のまんま……」

 

「……そういう、ものなんじゃない……のか?良家の娘さんなんて」

 

「そうだろうけど……もうお母様や、執事のフォーンもあいつと姉様の仲は認めている。もう許嫁みたいなもんよ。そして、あいつは姉様と恋仲になった。それでもあいつは今……」

 

 二人の気持ちを踏みにじるのか、と硬く奥歯を噛みしめる。姉の辛さが今なら分かる。肩を持ちたくないけど、もうあの二人は……。

 こんな話をして迷惑だろうと思った。流石に席を立とうとする。するとそこに夕食を食べ終え、デザートを取りに行ったのだろうイリジマ達がやってきた。

 

「あ、相模君にエターナちゃん」

 

「何か、深刻そうな表情してるけど……」

 

「ハハーン、なんとなく分かったぞー。さっきの隊長のあれかな~?」

 

 察しの良いミツハが核心を突く。私は口を閉ざしていたがその席の隣に座ったミツハがその問題にメスを入れる。

 

「まぁ元お兄ちゃんのあの性格は今に始まった事じゃない。けど、ここ最近酷いのは……やっぱりあのガンダムだろうね」

 

「光巴ちゃんからみても、あれはおかしいんだ」

 

「うん。というか、あなた達が知る魔王としての性格も昔とは全然違う。昔はもっと温厚で……いや、それすらも深絵さんやうちのお母さん達が知っていた彼とは違う、か」

 

 ため息を吐くミツハの表情を見て、申し訳なさを感じる。自分もこの世界に転移してきた直後、あの男の豹変ぶりに押さえつけられながら動揺したものだ。

 何があの男を変えたのか。イリジマ達も席に座り話を聞く中で心当たりはあれしかないとミツハは語った。

 

「やっぱり、お母さんから死んで、元お兄ちゃんが両親を殺してから、ちょっと壊れ始めてる気がするよ……」

 

「!そういえば……ミツハは」

 

「うん。お母さんはHOWの前身、MSオーダーズで戦っていた時に、敵のリーダーに殺されて戦死してる」

 

 あまり聞いてはいけないことに触れて、余計に気まずさを感じる。が、当の本人は全く気にしていないと言った。

 

「ま、それはいいんだよ。お母さんは私達を護るために戦って死んだ。戦士として使命を果たした。悲しいけど、でも私はそれに敬服してる。おかげで今私はこうしてMSにうつつを抜かしていられる。それより、今は元お兄ちゃんの事」

 

「それで、なんでその二つが元隊長に影響を……いや、両親を殺すことに……」

 

 イリジマが理由を訊ねる。又聞きである、としながらも彼女は知る限りのことを話してくれた。

 

「お母さんが死ぬ直前、元お兄ちゃんはその死期を感じ取っていたらしいの。すぐそこまで来ていたんだけど、間に合わなかった。目の前でそれを見たから、ね。それで両親の方だけど、その殺害を指示したのは他でもない元お兄ちゃんのお父さんだったらしいの」

 

「父親が……!」

 

「多分、そういうのが重なったからなんだろうね。そこに魔王なんて名乗ることになったら……いや、きっと救えなかったから名乗ったのかな、そう卑下して。なんていうか、エースか、はたまたジョーカーか」

 

 ミツハは持論を語って見せる。正直言ってそんな話は当人の問題だと思う。それが決して姉をあんな風に扱ってもいい理由になんて、ならない。本来なら。

 だけど、私には一つだけ、思い当たるもう一つの関連が思い浮かんでいた。

 ――――私と姉様の父、ガンド・ファーフニルの死。それも重ねていたのだとしたら。

 

(……そんな、わけ)

 

 あり得ない。だってあいつは、それは克服したって聞いてた。今更また再発するなんてこと……。そう思って私はミツハの考えをそっけなく否定しておいた。

 

「そんなの、それだけで姉様を遠ざけるなんて」

 

「そうだよねー。エターナちゃんは心当たり」

 

「ノーコメント。ていうか私あいつがいた頃は寄宿学校にいたから」

 

「あっ、お疲れ」

 

「ん」

 

 入嶋の言葉に短く返して、私は食堂を後にした。果たしてこんなので次の作戦が上手くいくのか。不安と憤りを抱えて、時は過ぎていくことになる。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP59はここまでです。

ネイ「うーん……やっぱり元さんが復讐者、というか、悪人みたいな言動が出てき始めている気がしますね」

グリーフィア「今度こそ、ね。もう憎しみを抱いてるっていうレベル。光巴ちゃんの言う通り、壊れてたわねぇ元君」

これはおそらくだけどこっちの世界で相談に親身になって聞いてくれる存在がいなかったというのもあるんでしょう。首相達も立場が違い過ぎてあまりなじみがなく、かといって新堂沙織さんや黎人は同僚って感じで元君だと距離を作ってしまう。深絵とか夢乃、華穂ちゃんのような存在とは違う何かが必要だった。

グリーフィア「それはきっと、本当に親だったんでしょうね。本物じゃなくていい。深絵ちゃんにとっての須藤司令みたいな、師匠とか」

ネイ「それを自分自身の手で殺してしまった……もしかして、怯えてる?」

それは、本編が進んでからかな。というわけで今回はここまでです。

グリーフィア「気になる次話もお楽しみに~」


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EPISODE60 狙うエース・オア・ジョーカー3

どうも、藤和木 士です。EPISODE60と61の更新です。まずはEP60から。

レイ「問題抱え込んだまま、次の作戦なんて大丈夫かな……」

ジャンヌ「クローザーの性能なら大丈夫、と言いたいところですが不安しかないですね」

その不安は今話でも色々な人に指摘されますよ。というわけでどうぞ。


 

 

 7月月末。愛智県の自衛軍新四ツ田第1基地に多くの人員が集まっていた。彼らは東日本各地から集められた精鋭達、自衛軍はもちろんの事、HOWに代表されるMS犯罪対策組織、MS運用組織、警察のMSを扱う特殊部隊や公安のMS対策班、そしてオースといった政府の計画した特殊技能運用組織のメンバーまで、メンバーは多岐にわたった。

 彼らが集められた理由は他ならない、西日本を未だ占領するカルト教団「ゼロン」の侵攻作戦阻止と攻略足掛かりとするための敵前線基地「四河港ポート基地」の攻略作戦「オペレーションヴァイス」のため。

 まずはかつて次元覇院に勝利した時の決戦の地、三枝を攻略することで機運と高めようとしていた。攻略後は三枝をそのまま前線基地とし、住民の浄化活動も行われる。

 数多くの英雄と呼ぶにふさわしい者達が揃う基地。そこに既に、黒和元率いるHOWのCROZE部隊もやってきていた。

 

 

 

 

 指定された部屋へと入ると、そこには既に各地から招集された作戦参加者が騒々しさと共に埋め尽くしていた。

 その人数に思わず声を出す。

 

「うわっ、凄い人だな」

 

「人もそうだけどそれを収容できるこの会議室の広さでしょ」

 

「この人たちが、一緒に……」

 

「各地で活動するゼロンや他の武装勢力と渡り合ってきた人たちばかり……」

 

 緊張を見せる新人達へ元隊長は引率者として定められた席へ向かうように言う。

 

「お前達、後が閊えている。早くこっち来い」

 

「あ、はい」

 

 指示に従って先を行く呉川小隊長とクルツ先輩の後を追う。当然ながら先頭を行く元隊長の後ろにジャンヌ副隊長が続いている。表面上は割と平静を保っているが、今日も朝から元隊長との会話はちぐはぐとしたものだった。

 心配はCROZEのチームメンバーも色々と察していた。しかし聞かれても隊長は問題ない、今はいいと言っていて聞けずにいるようだ。

 クルツ先輩も小声でこちらに尋ねてくる。

 

「……なぁ、やっぱ言った方がいいんじゃねぇか?ジャンヌ副隊長も相当気が滅入ってるの、分かってるよな?」

 

「はい。でも隊長が言うなら、今は触れない方がいいかと……」

 

「んー……けどよぉ」

 

 こそこそと話す二人に先を行く呉川小隊長が諫める。

 

「気になるだろうが、今はそれを言っている時ではない。どうにかしなければならないのは事実だがな」

 

「呉川小隊長……」

 

「はぁ、そうかい」

 

 気になりはするが今は触れない方針で、席へと急ぐ。

 人波を避けて席へと到着するとその周囲の人物に気づく。その人物達の方からこちらに声が掛かる。

 

「お、元君のCROZE部隊到着だね」

 

「あ、深絵さん」

 

 入嶋が顔を出して名を呼ぶ。同じHOWのSABER部隊の隊長、蒼梨深絵隊長が部下の隊員を連れて出迎えてくれた。

 あれから相変わらず、HOWの主力攻撃チームとして東響周囲のゼロン撲滅に励んでいるらしい。基地でもそれなりに会うのだが、それでも入嶋達は挨拶を行う。

 

「深絵さんもこっちの作戦参加なんですね」

 

「そうだね。とはいえ何人かは本部の防衛に置いて来てるし、何かあったら自衛軍の方でも対処してくれるから」

 

「でも、今回は深絵さんが作戦の指揮官というわけではないんですよね」

 

 クルスが訊ねると、深絵隊長は作戦司令の人物について言及する。

 

「そう。今回は私の恩師で、かつて次元覇院の衛星打ち上げ阻止の作戦「ホリンダウン作戦」でも一部指揮を執った須藤千司令が今回も指揮を取ってくれるんだ。ちなみに、ここの基地の司令さんでもある」

 

「あぁ、あのおっさんが今回も指揮だったな。とはいえ俺達は今回独自行動権もらっているが」

 

 元隊長も知っている辺り、親交は良いらしい。ホリンダウン作戦の時から指揮を執っていたなら当然なのかもしれないが。

 それにしても深絵隊長の恩師とはにわかに信じがたい話だ。もし狙撃のというのならあの狙撃技術の更に上を行くことだろう。同じ疑問に至った進が訊ねる。

 

「恩師って、狙撃の?」

 

「うん。元々狙撃はみんなからは得意だって言われていたんだけどどうにも自信が無くってね。でも千司令にアドバイスもらうようになって実感できるようになったんだ」

 

「へぇ……」

 

「お兄ちゃんまた言葉遣い」

 

 進の悪癖に文句を入れる真由。不味いと思った進が謝罪する。

 

「す、すいません……」

 

「いいよ。それより、元君とジャンヌちゃんの方が問題あると思うけどな」

 

 進への注意は程ほどに、むしろ問題があるのはこっちと元隊長とジャンヌ副隊長の方を指して言う。その指摘にジャンヌ副隊長が体を震わせた。

 元隊長が押し黙る。深絵隊長からしてもこの歪さには口を出したくなるほどだったのだ。

 深絵隊長はそのまま自分達の隊長に問う。

 

「どうしたの、二人が仲たがいするなんて」

 

「あ、ぅ……」

 

「問題ない。そんなことは」

 

「ないって言える?」

 

 いつものような朗らかさは鳴りを潜め、真剣な様子で元隊長へと問い詰める。隊長同士、というのもあるだろうがこれはきっと同級生だからこそ踏み込むという方が近い。

 怒りも込めた眼差しに元隊長は目を細めながら変わらず答える。

 

「……言えるさ。ずっと追い続けたやつがいる。これで、もう終わりなんだ、終わらせる」

 

「っ、あなたそれは」

 

「深絵さんっ」

 

 そこに声を上げて入る影。渦中にある人物のジャンヌ副隊長が二人の間に入った。遮る彼女に深絵隊長が戸惑う。

 

「ジャンヌちゃん……」

 

 震える声で、副隊長は言った。

 

「いいんです、これで。元々は、レイアさんを助けに来たんですから」

 

「でも、言ってたじゃない。ジャンヌちゃんは元君と」

 

「今、逃がしたらいつまたチャンスが巡ってくるか分からないんですっ!私達は、この瞬間をずっと待っていた……。ようやく、肩の荷が下りる」

 

「そんなことを言っているんじゃ!」

 

「お前ら、騒がしいぞ」

 

 と、そこに一人の男性が話に入ってくる。最初は単に注意をしに来た人なのかとも思った。が、元隊長や深絵隊長の反応で少し違ったことを察する。

 顔を見て、深絵隊長が目を丸くする。

 

「何を……あ、古橋君」

 

 知り合いを前にしたような反応。実際それは当たっており、元隊長が軽く挨拶をする。

 

「これはこれは、公安MS対策班の古橋じゃねぇか」

 

「その言い方、癪に障るぞ元」

 

「そりゃ悪かった。紹介しておく。こちら、警察公安のMS対策班班長の古橋 勇人(ふるはし ゆうと)

 

 やや無理矢理な紹介となっていたが、それを受けつつ名乗りを行う男性。

 

「古橋だ。一応こいつらとは同級生、四河の中学校の同窓生としてあのモバイルスーツ暴走事件にも巻き込まれた」

 

「あ、あの事件に……」

 

 慌てて敬礼で返す新人一同。だがそれだけでないことを続く元隊長との会話で明らかとなる。

 

「それで、そっちのガンダムの調子はどうだ」

 

「問題ない。今回でそちらの整備員にオーバーホールを依頼してもいる。万全で作戦を迎えられるだろうよ」

 

「えっ、ガンダムって……」

 

 入嶋のふとした疑問は、宗司達新人にも同じ反応を与えた。するとその中で事情を分かっている光巴が言葉の意味を教えた。

 

「実は警察組織にうちのカラーガンダム一機譲渡しているんだよね~」

 

「そ、そうなんです?」

 

「あぁ。ゲルプゼクスト、公安配属と共にお前達HOWから送られてきたガンダムだ」

 

 言葉の意味に納得する。だが同時になぜ送られたのかという疑問もあったが、それは実に単純明快なものであると、深絵隊長達が明かす。

 

「何せ私達の知り合いがこっちでMS対策のチームのリーダーになるって言ってたからね。私達もすぐに接触して色々便宜図ったんだよね」

 

「もっとも、本人は迷惑そうだったがな」

 

「当り前だ。いきなり来たと思えばMSを渡すなどと。しかもガンダムと来た。まぁその話は今いい。それよりだ」

 

 長くなる話を嫌って古橋さんは元隊長に今回の作戦について自分の意志を表示した。

 

「今回の作戦、俺はお前達にそのガンダムの配備の借りを返すつもりで来た」

 

「それはまた、真面目なことで。東響周辺のMS犯罪抑止の時点で返してもらっていると思うんだけどな」

 

 宣誓とも取れる発言に、肩を竦め、顔を横に振る元隊長。その様子にはいつも聞いて来たというような雰囲気が漂っている。

 警察組織の人間なら、そう言うイメージはついている。だからこれは別にこの人が特別真面目というわけではないのだろうと思っていた。

 しかし、それだけではないことを先程までの話題と絡めて古橋さんは言った。

 

「だが、今のお前の様子は見ていて気が良いものではない」

 

「っ……」

 

 古橋さんもまた元隊長とジャンヌ副隊長の不仲を問題視する。だが深絵隊長達よりは重大視していない、というより放任主義のように言って見せた。

 

「今は解決する気がないならそれでもいい。だったら今回の作戦が終わってからけじめを付けろ」

 

「……そう言ってくれると気が楽だ」

 

「あ……」

 

「むぅ」

 

 元隊長にとっては助け舟のようだった。対応が功を成す。その証拠に元隊長はこれまでの難しい表情をようやく崩し、ジャンヌ副隊長の肩を抱く。ジャンヌ副隊長も安心した様子で体を預ける。が、やはりそんな流れは良くないと深絵隊長は不満を見せていた。とはいえそれ以上の追求はしない。

 きっとそれが今の元隊長のメッセージなのだろう。これまでの反応の通り、今だけは見逃してほしいという。

 なら今は黙っているしかないのだろう。どれだけ言っても、これは二人の問題なのだろうから。物申そうとしていた様子のエターナの肩を持つ。

 

「エターナ、今はそっとしておこう」

 

「ソージ!」

 

「……下手に言うのも、その方が辛いかもしれない」

 

 宗司なりの言い訳だった。我ながら下手なものだ。けれどもエターナも認めるところがあったのか怒りの矛先を抑えた。

 他の面々もとりあえずはと言った具合で沈黙を守る。そこまで気遣って言える古橋さんに今は感謝しかない。

 と、その雰囲気に惹かれたのかHOWの陣営から自分達Gチームに声が掛かる。

 

「おっ、もうみなさん揃っているんですね~」

 

「あ!夢乃おばさん!」

 

 光巴がその人物の声を聞いて真っ先に反応する。光巴の言うようなおばさん、というには明らかに年齢が足りていないような気もする女性。しかしその人物が身に纏う夏用コートは元隊長や深絵隊長が纏っている物と同種のものだと判別できる。

 つまりはHOWの隊長クラス。光巴に呼ばれたその人物は苦笑いで発言を咎める。

 

「こらっ、私まだ若いよ~?」

 

「えへへ、でも私からみたら叔母さんでしょ?」

 

「言い方っ!他の人もいるんだからっ」

 

「えっと……この方は?」

 

 二人の仲睦まじさに戸惑っている入嶋に、元隊長が代わって答えた。

 

「彼女は鈴川夢乃。光巴の母、次元光姫の妹だ。さっきも言っていたが叔母だな。ついでに言うと緑のガンダムのパイロットでもある」

 

「は、元さん!その言い方やめてくださいよ~!それとついではないでしょついでは~」

 

 親し気に元隊長と話す夢乃さん。光巴の母親の妹ということなら納得だ。もっともそれだけではないということも続いて知る。

 

「それで、お前も深絵と同じで引退は視野に入れていなかったのか」

 

「ちょっと、それ遠回しに婚期逃してるって言ってるよね?私達に」

 

「元さんだって同じじゃないですか。妹のかほちーにお前は結婚しろって言っておいて、ジャンヌさんとまだくっついてないくせに」

 

「っ!」

 

 楽しい久々のお話、かと思いきや再びの核爆弾。ジャンヌ副隊長がまた思いつめた表情をする。それにすぐに気づいた夢乃さんが状況を尋ねる。

 

「あれ、ジャンヌさんどうしたの?」

 

「あぁ、夢乃ちゃんは知らなかったね。実は……」

 

 事情を知らない夢乃さんに対し、深絵隊長がこれまでの経緯を簡単に話す。先月の事も教えられて夢乃さんは顎に手を当てて頷く。

 

「なるほど、確かに心配しちゃいますね。けど理由が分かれば私としては勇人さんと同意見だなぁ」

 

「えぇっ!?」

 

「ほう、珍しいな」

 

 意見の一致に古橋さんが返す。夢乃さんは理由を簡潔に言って見せた。

 

「深絵さんの言うように、作戦に支障が出ると危惧する気持ちは分かる。でもそれは却って過保護な気はする。他人の心配する前に自分の心配ってね」

 

「……あぁ、なるほど。理屈は通ってるね。でもそれって私や夢乃ちゃんも言えてるよね」

 

「深絵さんや私と?」

 

「他人の恋路より自分達の恋路」

 

「そういう意味で言ってませんから!?かほちーからも最近言われるんですよ!?周りの隊員にも指さされて!」

 

 割とあっさりと疑心は解け、笑い話でジャンヌへの言葉の矛先を逸らしていく。DNLの波長は感じないが、それでも意図的にずらしたというのは感じ取れる。ジャンヌ副隊長もクスッと笑い、緊張を解いていた。

 余裕も見られやはり歴戦のエースと言うべきか。と、話がずれたと夢乃さんは元隊長やこちらを指さして言う。

 

「と、それは置いておくにしても、新人さん達、今回の作戦はあなた達が経験してきた中でももっとも大きいと思う。元隊長さんの手も借りられない状況になるはず。けれど安心して。私や、他のエース達が強敵は引きつける。自信を持って、作戦に臨んで!」

 

『は、はいっ!』

 

「俺は別に、新人って程じゃ……」

 

 入嶋やクルーシアと共に返答を斉唱する。進だけ自分は新人じゃないとぼやく。が、それに特に触れることなく、言葉を続ける。

 

「それから、元さん。ジャンヌさんとの不仲は触れませんけど、心配はしてますから。これが終わってから、というより、今回の任務をちゃんと果たして安心させてあげてくださいよ?今のままだと華穂ちゃんにまで呆れられますから!」

 

「心配じゃなくて、呆れか。ま、あいつが心配なんて似合わないだろうからな。言葉は受け取っておく。失敗なんて、考えないさ」

 

「それで今は良いですよ。はい、この話終わり」

 

 釘を刺しておいてある程度収まったところに、懐かしい顔が次々とやってくる。進を呼ぶ声が聞こえる。

 

「進、真由ちゃん」

 

「!輝義兄さん!」

 

「あ、輝お義兄さん、それに正お兄さんも」

 

 進、真由の故郷オース種命島の戦力としてやってきた大和輝さんと影義明さんがやってくる。名前からしてもう明沢正として戻っているらしい。それに引率される形で月子もいる。

 久しぶりの同郷との再会に進達が夢中になっている間に、もう一つの知り合いとも再会する。

 

「やぁ、宗司君」

 

「白さん、利一さんも」

 

 自衛軍の神鳴白、政岡利一もまたこの招集に集まっていた。個人的にはDNL同士ということで、あの時だけとはいえ良くしてもらっている。

 彼らがいるということは、つまり彼女ももちろんいた。

 

「はるばる遠路、お互いご苦労様だな、元君、ジャンヌ君、深絵君」

 

「あぁ、沙織さん」

 

「沙織さんお疲れ様です~」

 

 自衛軍極舞隊長新堂沙織、その後ろに引き連れた者には先日プールで一緒に過ごした友直さんと智夜さんもいた。彼女らもこちらに声を掛ける。

 

「宗司先輩、エターナ先輩、千恵里先輩にクルス先輩、光巴先輩もお疲れ様です」

 

「一々律儀やなぁ友直は~。先輩方も緊張してます~?」

 

「友直さんもお疲れ様」

 

「智夜ちゃんは大分余裕あるよね。羨ましい」

 

 彼女達も普段の調子を維持しつつこの作戦へ臨もうとしていた。前に共同戦線を張った時もそうだったが、ここに呼ばれるだけあって彼女達も実力は相応だ。

 これだけの戦力が整っているのなら作戦が失敗するなんて思わない。と、集合時間が来て部屋前方の方から呼びかけられる。

 

「えー静粛に。これより、明日のゼロン前線基地侵攻阻止、並びに攻略作戦「オペレーションヴァイス」の作戦確認の会議を始めます。各員所定の席まで……」

 

「時間だ。俺らは前の方で説明しなきゃならん。各チームのリーダーはこっちで確認を行っておけ。呉川はメンバーの保護者も頼むぞ」

 

『了解』

 

「了解です、隊長。Gチーム、静かにしているんだぞ」

 

 指示に従い、GチームはCROZE部隊に割り当てられたエリアの席に座っていく。

 全員が着席したところで参謀と思われる男性が会議の開始を宣言した。これが、初めてとなるゼロンとの大戦争、オペレーションヴァイスへの参加となる。

 

 

 

 

『今回の作戦はつい先日、ゼロンに侵攻の動き有りということで日本政府、自衛軍、そしてHOWが主導で行う防衛作戦である。が、予想以上に敵の攻勢を削ぐことに成功した場合、敵基地の奪還も視野に入れる構えだ』

 

 そのように説明する総司令官の須藤千氏。もうすぐ還暦を迎えると言うが、今回の司令役を買って出てくれた。

 会ったのが11年前。もしかするとこの作戦が最後の作戦になるかもしれない。そんな事を思ってもいたがもう一つ思うことがあった。

 彼の言った基地の奪還。確かに黎人達も視野には入れているがおそらく実行は去れないだろう。なぜなら今回の作戦は実質HOWの、俺の為の作戦でもあるのだから。

 向こうも承知しており、作戦概要の説明を参謀が引き継ぎする。

 

『作戦の流れに関しては既に配布されている資料で確認済みと思われます。が、同時進行するプランXに関してはHOWCROZE部隊所属のシュバルトゼロガンダムパイロットの黒和元に説明を譲渡します。元隊長、説明を』

 

「紹介に預かります、HOWCROZE部隊総隊長の黒和元です。それではプランX、レイア・スターライト奪還作戦に関して説明を開始します」

 

 スライドパネルを切り替え、ヴァイスインフィニットとそのパイロット情報が載ったモノを表示させた。説明を始める。

 

「そもそも、ヴァイスインフィニットガンダムとは、シュバルトゼロガンダムの兄弟機と推測されます。性能も似通っており、おそらくゼロンはもちろん、かつて我々がMSオーダーズの頃から敵対していたカルト教団次元覇院のMS技術確立の要因となった機体です」

 

 話を聞く隊長クラスから唸る声が聞こえてくる。「あの頃から」という単語も聞こえてきており、そちらに関しては当時からのパイロットが多い隊長クラスではMS技術の成熟性から納得するのは早いようだ。

 あの頃の次元覇院のMS技術はまだ拙さがあるとはいえあの時代においては驚異的なものだった。シュバルトゼロガンダムという対抗存在がいなかったならあのまま押し切られてしまっていた可能性も十分ある。

 その屋台骨となっていた可能性には元も当時気づいていたが、明確にそうだと確信したのは先月の遭遇時。確かな確信を持ったからこそここで明らかにした。

 確信に触れて更にパイロット情報について話す。

 

「操縦パイロットは黒和神治」

 

 名前が出た途端ざわつき出す。当然の反応だ。作戦を話している本人の苗字と同じ、血縁者と誰もが思っただろう。

 これに関しても宗司達からの追求があったことで予想は出来ていた。話したくはなかったものの、話さざるを得ない。重くなる口を開いた。

 

「彼は、俺の母が次元覇院に傾倒して引き取った養子です。無論そこに俺や妹の意志は介在されていない。言うなれば、勝手に引き取ったどことも知れぬガキだ。そいつのせいでうちの家族は死に別れることになった。血も繋がってない、なのに黒和家の後継者を名乗る、疫病神だよ、こいつは」

 

 口調を崩し、威圧を強める。もちろん言葉に嘘はない。アイツや、あんな母がいなければ父だって来たはずなのだ。

 言葉に含まれる怒りを分かる者は少ない。そう言っても理解しない、疑いの晴れないのは分かっている。それでも言わずにはいられない。

 それに今回知らせるべきなのはそこではない。話の筋を戻す。

 

「それは今回置いておくとして重要なのはこのガンダムに人質が取られているということ。本プランではその人質、異世界マキナ・ドランディアの住人のレイア・スターライト奪還が最優先事項となります」

 

 そこで多数の手が上がる。発言を許可し、質問を聞く。

 

『そのレイア・スターライトとは何者なのですか?』

 

「レイア・スターライトは向こうの世界での、一般人です。ですが、こちらにいるジャンヌ・ファーフニルと同じ学校で詩巫女と呼ばれるDNLの力を扱える人物の一人でした。その彼女をエンゲージシステムで強制的に捕らえ、こちらが迂闊に撃墜できない様にしつつ、そのエンゲージシステムの力を強制的に引き出す道具として扱っています」

 

 質問に応じてレイアのプロフィールについて明かす。詩巫女に関しては親しい人物や政府上層部にしか明かしていない。初耳という人間も多かったが、DNLの力を扱えることとエンゲージシステムの力を引き出すということで理解は進んでいた。

 今話している本人がその力を扱えるからというのも大きいだろう。シュバルトゼロの圧倒的性能はおそらく敵も味方もよく知っている。

 それらは分かった事だろう。手も降りていく。して、その捕獲方法に関して言及していく。

 

「これに対抗する為に、俺達シュバルトゼロガンダムパイロット・パートナーは特殊兵装、並びに特殊DNFによる敵エンゲージパートナーの奪取を11年前から計画してきました」

 

 奪還方法が表示されたスライドへと切り替わる。難しい理屈は後で理解してもらうとして、簡単に言えば接触した面から敵エンゲージシステムに介入し、引き摺りだすというものだ。

 普通ならあり得ない現象ばかり。実際元達もこれは理論の話で実戦はほぼ一度もない。いや、理論の一部を利用した戦闘も少ないが経験はしている。特にクルス・クルーシアの関わったDIENDを巡る事件で、システムに取り込まれた彼女を救い出すためのあれに近い。

 分からない者達に、今言える最低限の確定情報を告げる。

 

「成功率は不明、これはヴァイスインフィニットとの接触回数が少ない為想定だけの話になります。よってこの戦闘でそれらを計測しぶっつけ本番で作戦を完遂します。時間稼ぎをなるべく悟られない様にするべく、プランXは自分達シュバルトゼロのみで行い、戦線維持とメインの作戦進行、ゼロンの東日本進出阻止を全軍に担ってもらう動きとなります。つまり、本作戦でシュバルトゼロの支援はそう受けられないと考えてください」

 

 単機でヴァイスインフィニットを抑える。非常にリスクが高い選択で戦闘しながらの計測は困難になるものの、データの正確な計測ならこっちの方がいい。とはいえそのためには最大戦力を縛る形となる。敵の戦力の一つを抑えられるとはいえ、それでもタイプシリーズといった超常機体が残っている。

 それでも今は遂行しなければならない。今後のために、戦力低下を行うためにも元は彼らに言い放つ。

 

「戦線は任せます。どうか、奴らの猛攻を凌いでくれ。彼女を奪還することは今後俺達と別次元マキナ・ドランディアの人を繋ぐ架け橋になる」

 

 礼をしたのち再びバトンを参謀に返す。任せるという行為に嫌悪感がある故にほぼ終始丁寧語になっていたのは自覚している。

 それでも言わずにはいられなかった。架け橋と言う表現も間違っていない。彼女が奪還できるかどうかで再び戻れるかも決まる。

 果たして奴が一騎当千のエースか、はたまた番狂わせのジョーカーか、

 参謀からの話は続く。むしろここからが全体に向けた作戦指示だからだ。じっと聞き入る。隣のジャンヌのいたたまれない表情に背けて。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP60はここまでです。

レイ「うーん今回文字というか話が多いような……」

あ、久々のストーリー本編9000字越えです。とはいえ分割できなかったのでこのままなんですが。

ジャンヌ「なるほど?それで今回はまたあの因縁の海上での戦闘ですか」

境界線がそこになっているからね。衝突しやすいのはそこになるでしょというわけで。

レイ「メンバーも層々たるメンバーだね。黄色のガンダムと緑のガンダムまで登場だよ~。しかもパイロットも新しい人に夢乃ちゃん!」

夢乃さんはあの後外縁の敵侵入を阻止する部隊の部隊長を務めていたんですよね。とはいえそれでも東響に敵を入れてしまっているんですが」

ジャンヌ「それ、どこから入ってきているんですか?夢乃さんが裏切っている、とは考えたくないですが」

何処からなんでしょうねぇ(とぼけ)まぁそのルートも追々明かされる時は来るでしょう。そして黄色のガンダムのパイロット君に関してですがこれは完全に前から考えていました。

レイ「その割には名前が出てないよね。プロローグにもいないし」

ジャンヌ「プロローグに居ないだけで描写としてはいたんです?」

そこにも描写書いてすらいないんだよね(;´・ω・)でも居たので。彼は元君のタメで話せる友人であると同時に、宗司君とも関わりを持たせていくつもりですのでそこら辺は追々分かっていくはずです。

レイ「宗司君とねぇ~。あ、ちなみにだけど華穂ちゃんも子育て頑張ってるみたいだね!」

ジャンヌ「東響の方にいらっしゃるんです?」

そらそうよ。彼女の夫がMSオーダーズ時代からの同期って設定だし、彼自身HOWのパイロットとして働いていますからね。こちらものちに出てきますよ。

ジャンヌ「華穂さんは、残った唯一の肉親ですから、どうにかしてくれるといいんですが……」

レイ「でも母親になったあの子がどういう感じで登場するのかとか楽しみだよね~あと子供も!」

一応もとのキャラクターのイラストレーターさんがレイさんと同じだから何かしら絡ませたいところではある。と、雑談はここまでにして次話へと続きます。

ジャンヌ「それでは続きます」


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EPISODE61 狙うエース・オア・ジョーカー4

どうも、藤和木 士です。EP60と61の更新です。EP61となります。

ネイ「作戦の概要、本隊が敵侵攻を抑える中でシュバルトゼロが奪還する。スケールが大きいですがかつてのヴァイスインフィニットとの戦いを彷彿とさせますね」

グリーフィア「でも今回は一筋縄じゃ行かなそうよ?横槍は入るでしょうし、そもそも辿りつけるかも。正々堂々と前に来るかも分からないわけだし」

とまぁ作戦についての話かと思いきや、始まるのはその作戦通達が終わってからの話なんですがね。というわけでどうぞ。


 

 

 長い作戦通達が終わり、千恵里達は母艦ヴァルプルギスへと戻っていた。とはいえやることは多く、すぐに各々の機体のチェックに取り掛かる。

 いつもながら面倒だと思っている。しかしちゃんと見ておかないと損をするのは実際に戦う自分自身。しかも今回は元隊長の支援を受けられない。いつも以上に引き締めなければならない。その中でもとりわけ忙しいのは私を含めたGチームの一同だ。

 私は自身の変貌していく愛機の前で呟く。

 

「こんなごっつい装備……アルヴって名前とかけ離れてません?」

 

「はは、入嶋ちゃんの言うことは一理あるな。とはいえ今さら俺がこれに独自のチューンナップをする時間はないよ」

 

 そう言うのはヴァルプルギスのGチームガンダム担当の整備士星北。今入嶋のガンダムDNアルヴには追加装備の武装アーマーが取り付けられている最中だった。

 解説書には「新型スラスターとそれを抑え込む増加装甲・武装群」とある。何でもスラスターの推力が高すぎて今は装甲の重りで制御しろとのことだ。

 追加武器は良い。だけど、他の人への追加物資と比べるとあまりにも大雑把さを感じた。ふと他の人達の機体を見る。クルスと宗司達の機体は相変わらずだが、自身の方と同じように整備士達がマニュアルとにらめっこしている機体が二機。そこにはGチーム小隊長の呉川と先輩のクルツがいる。

 彼らの機体も新型に置き換わり、その調整段階にあった。各々の真剣な様子でそれぞれの機体と向き合っている。

 

「武装はこのバインダーにほぼ集約されています。バインダーの武装は変更も可能ですが、おそらく今回では変更の機会はないかと」

 

「うむ。ようやく俺の望んだ機体が来た、というわけだ」

 

「―――で、ライフルはこちらがビーム仕様、こっちが実体弾です。テールのライフルは機体のAMBACも兼ねているので、制御は以前より難しいですが……って聞いてます!?」

 

「聞いてる聞いてる。ちょっと武装は減ったが、俺好みだ。ステルスも狙撃手が様になって来たってわけよ」

 

 二人とも自分の望んだ機体が来たようで満足の様子だ。隊長達の喜びの横で千恵里はため息を吐く。それをたまたま来ていた宗司が目撃していた。ため息の理由を尋ねてくる。

 

「どうしたんだ入嶋。ため息なんて。新しい機体なんだろ?」

 

「機体っていうか、装備だよ。もっとも、アルヴのスピードを殺すような装備……上の判断だから文句なんて言えないけど」

 

 愚痴りたい気持ちはある。だけど仕方がないんだと言い聞かせる。アルヴの仕様変更はこれまでの千恵里が望んでいたものではない。隊長達が意見に沿った改修をされている中でこの強化は自身にとっては仕打ちと言ってもいい、と自分で思っていた。

 アルヴの名前は妖精から取ったと前に聞いた。なら、妖精らしくもっと軽い感じの、スラスターや大きく広がったウイングが付いた追加装備でも良かったのではと思った。

 それを宗司にも聞かせた。

 

「でもさ、あたしだって成長しているんだよ。だから、もうちょっと望んでいる強化が来たって……」

 

「ふむ……でも強化が来てるってことは、声は聴いてくれてるってことじゃないのか?俺の方はいつものメンテナンスだけだし、むしろ万全を期すためにもっと入るかと」

 

「そりゃそうだけど……だからって今までと同じじゃ味気ないっていうか、あなたに追いつけない……」

 

 これまで続いて来たポジションと嫉妬に文句を言おうとしたところで作業をしていた星北さんがこちらに顔を向ける。

 

「やれやれ、うちの新人ちゃんは注文が多いなぁ」

 

「星北さん聞いていたんですね」

 

「そりゃね。で、次の注文はシュバルトゼロみたいなウイングを付けてくれってか?」

 

「そ、そこまでは……」

 

 思わぬ返しに戸惑う。それを見てふん、と様子を覗き見た星北整備長は再び背を向けて機体と向き合って話す。

 

「ま、追加装備っていうのはいくつかパターンがある。純粋に機体を強化する、実験の為のテスト、はたまた企業同士の技術供与、利益供与……いずれの場合でも本人の意思が尊重される場面が少ないのは事実だ。君が嫌いそうなやつだな」

 

「笑わないでください!私は真面目に……」

 

「だが、今回のは割と真面目だ。あんまり言うのは良くないんだが、この装備は間もなく完成するお前の後継機のテスト装備だ」

 

「えっ」

 

 唐突にそんな話を持ってこられる。後継機の意味はよく分かっている。元隊長にとってのシュバルトゼロRⅡからのジェミニアス。要するに機体の昇格のようなもの。

 ガンダムDNが次世代の機体の為のテストベットというのは前にも聞いた。しかしそれは他の機体のためだと思っていて、後継機、それも自分の為のとは聞いていなかった。

 星北さんは言う。

 

「お前の新しい機体の装備は、これに準じている。もしこの戦闘が長引いても到着した新兵器に順応できるように。まぁ、それはほぼないと思いたいがな」

 

「新型と……同じ」

 

「同じなら確かに、この方式ならすぐに扱えるかもですね」

 

「ま、細かい調整しないとすぐには無理だけどな」

 

 その話には納得できた。新型とほぼ同等の性能に機体を上げる。素早く戦力増強も出来て、なおかつ今後に繋げられるのなら文句はない。

 だからといってこのちぐはぐとも呼べる仕様は納得できない。扱えるとはいえこれは、と文句を言う。

 

「でも、なんで重装甲に加速性のあるスラスターを……。どうせならスラスターは機体本体に付ければ……」

 

 疑問に対し素早く星北さんが逆に問いをぶつけてくる。

 

「じゃあ聞くが、お前は機体制御も未熟な後輩に、いきなり高性能な機体を渡すとする時、お前はまず何をする?」

 

「何ですか、その質問」

 

「いいから。答えなきゃそれ以下だぞ?」

 

 弄ばれてる。そんな感想を心の中で抱きながらも今のままでは意趣返しもままならないので自分の答えを返す。

 

「そりゃあ……まずは機体の性質について確認を……」

 

「はずれ。それはお前がするんじゃなくて、後輩がするものだろ」

 

「ぐぬっ!?」

 

 最初の答えを叩き落とすかの如く不正解と言われる。理屈も実際正しく、言われて擬音が口に出てしまう。

 とはいえ回答は一度だけと言われたわけではない。そのまま矢継ぎ早に答えを言っていく。

 

「扱えるようになる訓練メニューを作る!」

 

「それは必要だがこっちが言っているのはもっと前の段階だ」

 

「似たような性質を持つ機体で練習する!」

 

「さっきのと似てる気もするが、それも似たのがなかった意味がない」

 

「じゃ、じゃあそれの性質を再現する兵装を別の機体に装備して試させる!」

 

「だからなんでそれをする理由を聞いてんだよ!」

 

「分かるかー!!」

 

 お手上げとなりそう叫ぶ。一際大きく響き、周りの人からの視線も一斉に向く。流石に恥ずかしくなって各方面に「すいません、すいませんっ」と頭を下げる。

 その様子をおかしく笑う星北整備長。恥ずかしさで私は彼を睨み付けて頬を膨らませる。自分が悪かったとはいえ、こんな辱めを受けるとは。こうなったら満足する説明を受けなければ辱められたと言いふらそうか。

 答えの出る様子のないこちらに星北は助け舟もとい、ヒントを出した。

 

「出ると思ったんだけどな。じゃあヒントだ。お前の競争相手、相模宗司のガンダムDNアーバレストはその仕組みを取っている」

 

「え、俺の機体の?」

 

 言われて相模君が目を丸くする。相模宗司のガンダムDNアーバレストはドライバ・フィールドを用いる形態変更式のMS。

 そのアーバレストに取り入れられた仕組みと同じ、となると形態変更が思い浮かぶ。高性能な機体を制御するためには、つまり形態変更を行う……?

 千恵里は考えを巡らせる。既に今のアルヴは増加装甲で覆って形態変更を行っている。だがそれでは機能を活かせるとは言い難い。機能を封印されていては……。

 

「……ん?」

 

 そこで閃く。未熟な後輩、相模君も適性は高かったとはいえ最初は未熟そのもの。ガンダムDNアーバレストも完全ではない。徐々にエクストラロックを解かれて行ったことで、今の性能がある。形態変更もそれと密接につながっている。

 先程の質問は「未熟な後輩に高性能機を渡す際、自分は何をするべきか」。自分があるべきことではないが、たどり着いた答えを提示してみる。

 

「……機能を制限、する?」

 

「おっ、正解」

 

 あっさりと声が返ってくる。やっぱりか、と思いつつも問題の整合性について問う。

 

「でもそれ、実際にやるのは星北さん達整備員では?」

 

「そりゃな。よく分かっている上級整備員だと各々の判断でその設定掛けるんだけど、大抵は上官が指示する。今回は武器構成の大半に元が関わってるからなおさらな」

 

 問題はないと答える星北整備長。同時にこの武器が元隊長の指示のもと作られていることを知る。

 そのうえで星北整備長が諭してくる。

 

「あいつは味方の事よく見てるよ。MS操縦技術が得意じゃないお前に開発プランを合わせてやってる」

 

「……そんなこと言わなくても」

 

「言えるよ。機体のレコード見てるんだから。そのうえであいつはお前のやりたいことを叶えようとしている。今回の増加装甲と新開発の「フェアリィスラスター」。今はフェアリィスラスターの高すぎる性能を、増加装甲とセットにして押さえるって意味合いが強いが、戦闘中に一部のパーツを外すことも出来る。戦闘中に外して身軽になって少しだけ動きを上回るって使い方が出来る」

 

 星北整備長の言うことは事実で、解説書にも使い方の一つとして不要部分の排除が可能となっている。その際にスラスターも外れてしまうが、その部分の重量が軽くなるとも書かれている。

 その部分以外のフェアリィスラスターは問題なく稼働でき、確かにその動きも出来る。思っていた以上に出来ることは多い。ただしその分扱いが難しくなると書いてあり、星北整備長も欠点に触れる。

 

「ただその分コントロール能力を求められる。いっそ全パージを強制するのも良かったんだが、あいつがその方がいいってな。それだけ腕は信用されている、ちゃんと期待はされてんだよ、お前は」

 

 言われて黙る。今まで自分はその隊長の厚意に反抗していた。何も言えるわけがない。

 黙ったままのこちらの返答を待つことなく整備長は付け足す。

 

「新型機はこいつの性能を更に上回る。その分扱いは難しい。ここで手間取るようなら使えんぞ?一応シミュレーターにこいつのデータはもうインプットしてもらってあるから、行って来い」

 

 背中を押される。そうだ、言うよりも行動。特殊な技能も持たない私にはそれしかない。相模君と進、二人に追いつくなら。

 非礼を詫び、先程の言葉に従う。

 

「すいませんでした、文句言って。私、行ってきます」

 

「おう、無理はすんなよ、明日本番なんだからな」

 

 その言葉を背に受けて、足早に訓練に向かった。憧れの人の期待に応えられるように。

 

 

 

 

 入嶋が立ち去った後、残された宗司はそのまま星北さんに尋ねる。

 

「あの、星北整備長」

 

「何だ?今度はお前の機体に何の追加装備もないって言いに来たか?」

 

「あぁ……そう言えばそうでしたね」

 

「違うんかいっ。まぁいいや、それも答えるけど、質問は?」

 

 早とちりした星北さん。この流れでならそれもあり得るから申し訳ないと思いながら、こちらはこちらで問題となっていることについて見識を訊く。

 

「元隊長と、ジャンヌ副隊長の不仲……って、どう思ってます?というか、友人として何か言ったりとかは」

 

「あ~……まぁお前ならそうだよなぁ」

 

 納得した様子で返答する星北さん。お前なら、と付けた理由は無論俺がエターナのパートナーだからであろう。

 もちろんそれも正しいのだが、個人的には言葉通りの意味を持っている。宗司自身もそれを踏まえて話す。

 

「えぇ。あいつのパートナー……っていうのもあるんですけど、俺個人としては、その……」

 

 これまで幾度かのパートナーの協力を得て、トラウマを克服してきたとはいえ、他人の関係に踏み入るのにはためらいがあった。しかし星北さんはそれを察して自分から口を開いてくれた。

 

「……そうだな。俺はあいつのことを小学校の時からよく知ってる。昔はちょっと今より雰囲気は明るかったが、基本真面目で過保護になりがちだった。あの頃は痴話げんかしてたが、柚羽のことを気にしてたな。あいつが亡くなって、拗らせたあたりもそうなんだろうな」

 

 あまり聞いたことのない名前。亡くなったということは聞いていなくて当然、いや、エターナや最悪ジャンヌさんも知らないのか……。

 それはどうか置いておくとして、星北さんの話に耳を傾ける。今の現状について星北さんの思っていることを明かしてくれた。

 

「正直言って、今のあいつはその時のようにならないために頑張り過ぎている。いや、何が何でも見えた目標を逃すまいと盲目になってやがる。トラウマを再発してる」

 

「やっぱり……そう見えますか」

 

「あぁ。あいつがこの世界に帰ってきた時、そのトラウマはもう向こうでの友人やジャンヌちゃんと一緒に乗り越えたとは言っていた。けどあれは、抑え込んでてまたぶり返した。きっと光姫が、光巴ちゃんのお母さんが死んだのがやっぱり相当堪えたんだろう。だが、俺としては魔王という存在の重責だろうと思う」

 

 光巴がしてくれた持論とほぼ同じ推察。やはり鍵はそこなのだろう。だけど、これを解決するのは、少なくとも自分達には無理なのではと思った。

 宗司の考えを見透かしていたのか、星北さんが断りを入れる。

 

「言っとくが、心配してくれるのはありがたいが君が関わるのだけは止めておけ。エターナちゃんも姉さんが心配だろうが、これはきっと、あの時寄り添ってやれなかった俺達の責任だ」

 

「星北さん……」

 

 忠告して星北さんはおどけた様子を見せた。

 

「まったく、まだ俺も相手が見つかってないのに同級生の恋仲を応援してやらないといけないとはよ。あいつには世話になってるけど、手間もかかるよ。部下にこんな心配までさせて」

 

「……早く問題が解決するといいですね」

 

「本当にな。けど、そうするためには君には今回の任務で頑張ってもらわないと」

 

 言って星北さんは一応上げておいたもう一つの質問にも流れで伝える。

 

「今回新武装がなかったとはいえ、大立ち回りしてもらわなきゃ困る。ちなみに君の後継機はよりシュバルトゼロの戦闘能力に比類させた大変ハイスペックな奴になる予定だ。言うなれば、オーバードライバモードが平常運転に加えて相反する新装備付きのな」

 

「相反する装備……?」

 

「ま、今は急ぎでそっちを使う機会はないだろう。使うことになっても、ドライバにユグドラルの力も手に入れた君なら行けるさ」

 

 随分と期待を寄せられている。新装備が気になりはするが、その期待に応え、感謝を伝える。

 

「分かりました。明日の戦闘、生きて帰ります」

 

「それが一番だ。じゃあ作業に戻るぜ」

 

「はい。では」

 

 言って別れる。明日の決戦、それですべてが決まるだろう。果たして、生き延びることが出来るのか。不安も胸に、一旦自室へと戻ることにした。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP61はここまでです。

ネイ「作業風景って感じですね。けど新装備が凄いあるみたいですね」

グリーフィア「やっぱり大作戦ってことで色々追加するみたいね。それと千恵里の方はちゃんとDNアーバレストと同じようにエクストラロック解除って感じで追加装備ってわけ。でも文章だけでも結構何言ってんのって話よね、強力なスラスターを抑え込む増加装甲群?」

まぁ性能高すぎてですね、DNLじゃない入嶋千恵里には扱いづら過ぎる、というか本来ならDNLが使う装備の延長線上ですからね今回の追加装備は。

グリーフィア「じゃあ何でそれを今回?」

それはガンダムDNの本来の開発理由にある。技術をスピンオフして次なる機体へ。量産機でもそれら高性能兵装を扱えるように試験する機体がDNなんだから、色々試してもらわないと困るってわけだ。

ネイ「確かに最初の頃の黒の館DNでも言っていたような気がしますね」

グリーフィア「まーそれはそうね。DNLじゃなくてもDNLと同じ装備で追いつく、ってことのテストケースか」

そういうこと。まぁそれに関してはまた驚くこともあるでしょうが。

ネイ「それで元さんの事、星北さんも心配していらっしゃってましたね」

グリーフィア「友人だから余計に辛いわねぇ。元君達に心配かけさせているのも辛いって感じ、夢乃ちゃんも言っていたものね」

こっちが心配しているのと同じで、出してませんけど佐倉君も心配してたりしますので。と、雑談はこのくらいで。

ネイ「次回もよろしくお願いします」


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EPISODE62 狙うエース・オア・ジョーカー5

どうも、藤和木 士です。今回はEPISODE62のみの公開です。

レイ「珍しいねぇ、一話だけって」

次黒の館DNだからどうしてもキリが悪くなるの……(´・ω・`)

ジャンヌ「それは言えてますね。事前情報では今回はゼロン側の話だとか?」

その通り。大作戦を迎えるゼロンは東日本連合軍をどう迎え撃とうとするのか、思惑は一体……という本編をどうぞ。


 

 

 自衛軍、HOWを筆頭とする東日本勢力が決戦に向けて動いている一方、ゼロンもまた決戦のために動いていた。

 元々はここ最近進撃を行っている名護屋勢力の押し返しだが、そこにヴァイスインフィニットが参戦したのには訳がある。とある存在の指示によるものだ。

 指示をしたのは他でもない、あの男……意識だけの奴だった。

 

 

 

 

「……では、君は神治と君自身、そして君の機体に捕らえている少女でシュバルトゼロを必ずおびき寄せることが出来ると?」

 

『あぁ。奴と俺は惹かれあう運命。それぞれの機体に選ばれるものは、必ず逃がせない運命を背負う』

 

「運命、か。話には聞いているが、それに神治騎士官も当てはまると」

 

 初老の男性が画面に向かって話しかける。彼はゼロンの創始者にして、西日本のカルト集団の長たる男、零崎秀夫だ。

 その彼と話すのはこれもまたゼロンに欠かせない存在。次元覇院の頃から自衛軍、MSオーダーズ改めHOWに反旗を翻す者達に異世界のMS技術を提供し、自らの機体の隠匿を依頼した異世界のガンダムのOS「エンド」。

 彼らが出会ったからこそ、このゼロンが生まれた。日本の半分を飲み込むほどの教団が誕生した。これは過去の最大勢力「ラウル神聖教」に匹敵しうる。

 そんな彼らが話しているのは次の一大決起作戦「名護屋『偽装』攻略作戦」について。偽装、というのは攻略そのものがとある目的のカモフラージュであるためだった。

 その目的とは他ならぬ魔王、エンドが宿るガンダム、ヴァイスインフィニットと対となる「シュバルトゼロ」の撃破を狙ったものだった。

 周囲ではその会話を聞いていた多くのゼロン幹部達が、議場に並べられた席へと座り、攻略作戦の概要について話し合う。

 

「偽装作戦とは、まどろっこしい。下の者にはそのまま襲撃することを伝えているのに」

 

「わざわざ当日の指示を最優先にと言ってはいるが……これで勝手に動かれては台無しだな」

 

 信者達をまとめる神官の何人かはそう愚痴をこぼす。だがそうでない者達もいた。

 数少ない理解者である蒼穹島管理者「真藤 史丈(ふみたけ)」が言う。

 

「だが、あのガンダムの無力化は必要だろう。うちのタイプシリーズすらも袖にされる」

 

 タイプシリーズ、イグジストとディナイアルのことだ。パイロット達は順調に成長していたが、それでも「今は」あのクローザーに立ち向かうのは厳しいとされていた。

 現在蒼穹島勢力ではそれに対抗しうるエースパイロット、史丈の息子真藤一真の新たな専用機の開発にいそしんでいる。それが無ければ対抗できないと踏んでのことだ。だがゼロン本部は本部で、今のままでも問題ないとしている。

 その要因であるゼロンのタイプシリーズのパイロット、ジョセフ・ゼロン・ガドナーが史丈の言葉に反論する。

 

「それはあの未熟なパイロットに任せているからだろう?カズマやコウジがまたあの機体に乗ればあんな程度は造作もない。俺とリズンでもいい」

 

「それは出来ん。またイグジストに一真を乗せれば、余計に症状が悪化する。ただでさえ新型のU(アルティメット)タイプシリーズに乗せようとしている。その前に果てる」

 

 実の息子に最悪の無茶をさせられないとする史丈司令。人の親として、もっともな意見だ。ゼロンとはいえその意見は無視することは出来ない。それに真藤一真は確かに強い。その新型に乗せるまで無理はさせられないだろう。

 だがゼロンは様々な考えを持った者の集まり。ジョセフと同じ考えを持った者も存在した。

 

「なら、果てる前に奴を潰すのは理にかなっていると思うが」

 

「ハリヴァー君」

 

 真紅の流星の再現たるクローン人間、ハル・ハリヴァーが言った。彼は先月、シュバルトゼロの新たな姿、クローザーと対峙した数少ない生き証人。

 クローザーの脅威を知る者の中で一番経験のある彼は意見の根拠も示した。

 

「奴の力は異常だ。既にMSの域をタイプシリーズとは違った意味で超えている」

 

「君が言うほど、か」

 

「まだ戦える、などと言っていたその白きガンダムのパイロットである騎士官ほど軽薄ではないのでね」

 

「っ、貴様、まだそんな世迷言を!」

 

 同じく話し合いの場にいた件の白のガンダムパイロット、黒和神治は声を荒げてその言葉を否定した。

 神治は今もあの判断が間違いだと思っていた。今のハリヴァーと同じように、一刻も早く奴を殺したかった。にも関わらずそのハリヴァーに引けと言われたから引いたというのに、と。

 かつてとあべこべの事を語る彼を引き合いに神治が長にして親代わりの零崎へと上申する。

 

「零崎代表、こいつは私があの場で奴を葬ろうとした時その絶好の機会を逃したのですよ!?それを今さらになって早いうちに始末をなど……!」

 

「ふむ、それは確かに訊いたが、それについて申し開きは?」

 

 ハリヴァーへと尋ねる。ハリヴァーは質問に対し当時と今の状況とで答える。

 

「あの時は生きて情報を持ち帰ること、何よりヴァイスインフィニットの彼を生きて帰すことが私の任務でした。撃墜よりも、そちらの方が何よりも優先される。現にこうして奴の危険性について話すことが出来ている。では、不満ですか?」

 

「何を!それ以前の……」

 

 意見を押さえつけようとする神治に手でかすかに制すると、向き合って答える。

 

「不満はないさ。事実の確認をしたまで。で、その時は無論、かの魔王の撃墜は意識したのであろうな?」

 

 そこで尋ねたのは意志の確認。魔王を前にして倒す気はあったのか、という問い。問いに対してハリヴァーはもちろん、と答える。

 

「はい。気持ちだけは。口惜しさを噛みしめ、そのうえで彼と共に撤退しました。今の私達では勝てない、強く痛感して」

 

「なら、それでいい」

 

「それでいいなどと!私達は撤退したんですよ!?敵を前にして、逃げて……」

 

「落ち着きたまえ、神治騎士官」

 

 オールバックの髪型の男性、シャア・アライバルが熱の入る神治の仲裁に入った。ハリヴァーと同じ声を持つ男。ハリヴァーのオリジナルである彼が、己のクローンであるハリヴァーの、ひいては話を聞いた零崎の考えを諭す。

 

「君はおそらくだが、負けることが嫌い、いや、許されないと思っているね」

 

「そんなの、誰だって同じだろ!負けるのなんて……あなたは違うって言いたいのか!?」

 

「いいや?私、いや、ここにいる者すべてが負けるのは嫌いだろうな」

 

 そう、負けるのが嫌いな者はいない。ここに限らず、おそらく自衛軍やHOWの人間も同じことを言うだろう、人類のほぼすべてが思う共通の思想。

 争いという話題で唯一どんな人間でも共通するだろう。とても皮肉なものだ。ならばシャアは何を言いたいのか。零崎はなんとなく予想が付いていた。シャアは零崎の思う言葉をッ代弁する。

 

「だが、負けは嫌いでも、許されなくとも認めなければならない。もっとも私もかつては君と同じように認めたくなかったがね。いや、今もか。負け、いや、若さゆえの過ち、驕りを」

 

「くっ……」

 

 シャア・アライバルの過去、彼はかつて熱心なMSパイロットとして自衛軍で別の教団を相手に戦ってきた。零崎もなぜその彼がこちら側にと思ったが、その熱さこそが理由と知った今では心を許す同志としてその手腕を振るってもらっている。

 それに関しては聞き手であったハリヴァーも同意する。

 

「そうだな。負けを認めるのも必要だ。ただ認めて次に生かす。それが大人の特権だろう」

 

 これもまたシャアのクローンだからこその一致か。しかしシャアはそれが明確に自分と違うことを指摘する。

 

「ただ認めるのと、苦しく認めるのとでは違う。君の言うそれは諦めだ。初めから諦めているのでは成長も出来ない。彼の悔しさは彼の人生でかけがえのないものとなりうる」

 

「熱意……私のオリジナルはまだ持っているんだったな。だが、私は生憎、そんな不安定な人々の波に埋もれた物を信じようとは思わない。君が持っていることに異存はないが、彼は重要な戦力、感情に絆されるのは良くない」

 

「それもまた、君の感情だろう。クローンだとしても、お前はお前なのだから問題はない」

 

 クローンだとしてもそのすべてを受け継いでいるわけではない。それはいい意味でも悪い意味でも言える。全く同じ人間が生まれないこと、個性があること、偏見への対応、どう受け取られるかもまた扱う者の腕次第か。

 そう言った意味ではシャアとハリヴァーの関係は表向き良好なのかもしれない。一線を越えずに、互いの主張は認める。腹の内は分からないが、それはシャアに任せよう。

 そう言う意味ではゼロンにおけるクローン製作者であるギルボードが言いそうだが、彼はそれに触れることなく話の脱線を指摘した。

 

「クローンや神治君の苛立ちはさておき、作戦の方に話を戻さないか?」

 

「そうだね、ギルボードの言う通りだ。では本題へ戻そう。シュバルトゼロの撃破、それが今回の作戦のプライマルターゲット。しかし多数対一で襲い掛かったところで、狙いに気づかれて撤退される。加えて他の戦線が押されるだろう。そこで」

 

 事実を認めたシャアは本来の議題である作戦におけるシュバルトゼロの対処について、決まっていることを通達する。

 

「シュバルトゼロと直接対峙するのは、ヴァイスインフィニットガンダム・ゼロニアスだ。他の者はその舞台を整える」

 

 通達にどよめく一同。だが零崎は冷静だった。いや、正確には自身が「そうさせるようにと提案したから」だ。

 言った時にはシャア本人からも正気を疑われた。だが確かな理由を以ってそれが確かな命令だとした。シャアもその理由を明かす。

 

「これは、零崎代表の言葉である。魔王と対となる我らが救世主。ならば、潰すのもまたそれしかない。因縁ならば因縁で決着を付けるべし。同時に、彼自身の成長を促すためでもある。一対一の対決の為に、ガンダムが指揮している新型ガンダム達のチームを抑えるチームも構成した」

 

 彼とは他でもない、神治の事だ。ヴァイスインフィニットを起動できるようになったとはいえ、まだ戦士としては未熟。もっと場数を踏む必要がある。それにしては重すぎる気がしないでもない。が、その本人がそれを望んでいる。

 実際に話を聞いていた神治は目を輝かせていた。願ってもいない機会に目がくらんでいる。

 だがそれだけで挑ませるほど零崎は愚かではなかった。続けてシャアが自身の言葉を更に代弁する。

 

「先程も言ったが、我々は彼の為に戦場を整える。シュバルトゼロを彼の下へ誘導し、また撃墜されないよう支援する。だが言ったように決着は彼自身の手で取らせる。決して撃墜の支援などはせぬように」

 

「つまりはお膳立て、ということか。面倒な」

 

 シャアの言葉に真っ先に愚痴をこぼすジョセフ。他の神官達も口々に手間がかかると漏らしていく。シャアはその事実を認めつつ、彼らを諭す。

 

「手の掛かるのは事実だ。英雄象はこうして作られる。しかし、それに貢献したという事実は何にも代えがたい、なおかつ直接相手にするよりリスクは少ないだろう。もっとも死ぬリスクはそのままだが」

 

「フン、物は言いようだな。もっとも俺は死ぬわけがないが」

 

 ジョセフはシャアの言葉を鼻であしらう。しかし他の神官達はなるほどとその捉え方を好意的に見る。

 人は地位に固執しがちな生き物だが、その道は決して一つではない。英雄の片腕という腰ぎんちゃくのようなものでも、人によってはいい場合もある。

 神治は気に入らないかもしれない、と思ったが別にそんなことはなかったようだ。それよりもようやく自分の手で因縁の相手を殺せることに打ち震えていると言った具合。心配も兼ねて指示の確認を代表自らが取る。

 

「よいな神治。お前の為に皆動いてもらう。迷惑を掛けることは出来んぞ」

 

「代表、必ずや報いて見せます。奴を討ち、ゼロンの理想を果たすために!」

 

 これではまるで殉教者だ。ゼロンの他の者達も大抵がそれを望んでいる。死んだとしても使い道があると。そして彼自身も自らの体が貫かれようと奴を貫ければそれでいいとさえ思っている節がある。

 だからこそ、シャアには気を配ってもらいたい。無論彼にも止めてもらいたい相手がいるのだが、それでも最低限彼が必ず守られるように、彼が無事に帰ってくることを命じる、信者達を信じるのが後方指揮官である自分に出来ることだ。

 小さく、シャアがこちらに耳打ちをする。

 

(これでは道化ですね)

 

(神治にはそれを押し退けて欲しいものだ、この戦いで学んでくれれば)

 

(そこはガンダムにも期待する他ないでしょう。護衛と誘導にはハリヴァーと一真を付ける予定ですので)

 

(あぁ)

 

 密談を終え、前を向き直る。席を立って幹部や神官へと呼びかける。

 

「諸君、不満は多いだろう。いくらガンダムとはいえ、まだ生意気な子どもをと、思う者も少なくないはずだ。実際、まだ若さが故の生意気さが残っていると親代わりの私も強く思う」

 

 バッサリと言い切った発言に頷く聞き手。言われてしまっている神治は物申したい表情をしていたが、親代わりの自身に強く言えない様子で聞くだけだ。

 その性格を何とかしてほしいという想いも込めて、今一度幹部達に告げる。

 

「だが人間誰しも最初は小さく愚かだ。彼を導くこともまた君達にとってかけがえのないものになるはずだ。一人の大人として、我らが教団の子を救ってほしい。もちろん敵を全力で迎え撃つ布陣をしている。各戦場の者達も全力で当たってもらう」

 

 届いたかは分からない。だが反対意見は出ることなく、会議はそのまま順調に進んでいく。

 

「先にも申したようにガンダムチームに対抗するためのチーム、アンチガンダム部隊にも新人パイロットが数名入る。彼らの総括は、ギルボード神官、任せたぞ」

 

 シャアが返答を問うと、頷くギルボード。ガンダムチームのパイロットについては既に情報が集まっている。何という幸運か、かのチームはいずれも我らゼロンに、彼らを揺さぶるであろう人物が集まっていた。

 彼らを立たせれば、強力な壁として機能するだろう。卑怯、と取られるかもしれないがこれもまた運命だ。

 そのために新型も用意した。彼らの働き、期待は充分だ。

 果たしてあの自衛軍はどう向かって来るのか。それを後方でゆっくりと見せてもらおう。

 

 

 

 

 会議が終わり、神治はゼロン前線基地「四河港ポート基地」の廊下を歩いていた。歩きながら先程の会話を思い返していた。

 

(実際、まだ若さが故の生意気さが残っていると親代わりの私も強く思う)

 

 零崎代表から、あんなふうに言われるなんて思っていなかった。自分の中ではもっと優しく「奴を存分に殺せ」と激励されるとばかり思っていた。

 それはかねてから神治が願っていたことだった。以前も「その強い意志、忘れるなよ」とほめてくれたというのに。

 これが戦場に出る事、だったとしても彼の言葉は納得できない。もう戦場に出れるのだ。子どもなんかじゃない。人を殺せる一人前の兵士だ。

 それを示すためには、やるべきことはただ一つ。だが、すぐに取った行動はすれ違ったゼロン信者への咆哮だった。

 

「なぁに笑ってんだよ!救世主の前でッ!!」

 

「きゃぁあ!?」

 

「何よ、この短気~!!」

 

 すぐさま信者達はこちらから逃げ出していく。その様子にご満悦になっていると、懐から声がする。

 

『……そうやって、また半人前の要素を盛り込んでいくのか、神治』

 

「っ!……またお前か、お前のせいじゃないのか、エンド」

 

 聞こえてきた声の主、取り出したセットバックル……ではない、インフィニットスターターに向けて苛立ちを吐く。そこに誰の顔も映っていない。しかしそこには確かにガンダムのOSたる存在、元英雄の一部のエンドがいる。

 こいつと出会ったのはずっと前、ゼロンが結成された直後だろうか。その時から俺の事を「こいつに相応しい」と言っていた。そう言った割には一々自分の行動に難癖をつけてきていた。

 英雄だか知らないが所詮は機械の中に残った古い知的生命体の残滓、聞く気もないとしていたがそれでもこいつはしつこく言って来る。今日もそうだ。

 

『おいおい、そういう自分の過失を他人に押し付ける性格が、味方にも敵を作っているんだぞ?』

 

「何が味方だ。ほとんどが自分の支配欲を丸出しじゃないか。そんな輩、零崎代表に近づけるのだっておこがましい」

 

 実際神治の見立てではギルボードやハリヴァー、蒼穹島の勢力は怪しい。ジョセフは比較的性格を表に出す機会があるためか、気を張らずに敵として見れるが、先に挙げた者達は中で何を考えているか分かったものじゃない。

 DNLという力を使っても漠然としたものしか見えなかったり、ジャマーに邪魔されたり。ほぼ唯一心を許しているであろう一人のシャアに力の使い方は教えてもらっているが、それでも奴らの思考は読めなかった。

 シャアも「彼らの考えは読むモノではない。君自身が確かめるモノだ」と言われ放っておかれた。怪しいのに組織を追い出さないこの現状に神治は苛立ちを隠せずにいた。

 けれども、それもきっと杞憂だろう。この戦いで自身の力を証明すれば、きっと同意を得られる、嫌でも力を認めざるを得ないはず。完璧な考えだ。

 神治の完璧と自称する考えを見透かしたのか、エンドはため息と共に毒を吐く。

 

『単純だな、お前』

 

「なんとでも言え。勝てば官軍、だろう?」

 

 そうこうしている内に施設のとある一角へと到着する。ここは第0実験室。普段は稼働していない区画である。

 外部からの研究材料が届いた際に運用される一室。かつては修復途中だったヴァイスインフィニットもここで研究されたという。

 そんな一室を訪れたのは単に懐かしさをエンドに教えてやる、などと言った気遣いなどではもちろんない。今この部屋はとある理由で使っているのだ。

 部屋のロックをカードキーで解除する。部屋に入ると薄暗い闇の中に照らし出される水槽が一つあった。中に浮かび上がるのは一人の少女の姿。

 彼女はヴァイスインフィニットと共に齎された存在。次元覇院やゼロンに次元粒子を操る存在がいることを教えるためのサンプル、そしてシュバルトゼロにとって一番効く人質兼ヴァイスインフィニットガンダムの機能を生かす人柱の少女だ。

 かつてはスターターの機能の一つ、セレクトカードに閉じ込めていたのだがそれでは人質の体が持たないとされ、今ではこのように専用の水槽へと定期的に転送・保存されている。

 当初は面倒なパーツと思っていた。酷使してやらなければまともに戦闘も出来やしない不良品。あまつさえ抵抗の意志を示すのだから、懲罰し、余計に消耗を速める結果だ。だが先月の戦いを通して分かった。このパーツは使えると。

 先月の戦いを思い起こしてほくそ笑む。

 

「そうだ、こいつがあればあの憎き魔王を追い詰められる。奴を討った時が、お前の最後だ……!」

 

 水槽の中にいる、レイア・スターライトに届かないであろう言葉を投げかける。人質として、ヴァイスインフィニットを勝たせるための部品には、まだ持ってもらわなければ困る。

 果たして魔王はどんな助けを乞うだろうか。もし戦いの中であいつが負荷でこの女を殺したなら、どれだけ無力さに打ちひしがれるか。かつて自分が味わった、目の前で親しい人を殺された時の気持ちを、あいつに味合わせてやる時を思い、笑いがこみ上げてくる。

 

「ははは……お前も味わえよ、敗北の屈辱を!俺の11年間の苦しみを!!」

 

 誰も答えない水槽の前で、その時を待ち遠しく叫んでいた。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP62はここまでです。

レイ「ゼロンの親玉、教祖の零崎秀夫の登場かぁ。もう名前は出てたんだけどね~」

ジャンヌ「狂った教団の教祖、だからこそのあの冷静さなのでしょうか。けれどそれにしては神治への態度がそっけないようになったと見受けられますね」

まぁ言ってしまえば期待しているからこそ律させているという見方にも十分見えるかと思います。神治を救世主と言う象徴に立たせようとしているのですから救世主らしい人物、それこそ今のまま進んでいって復讐一辺倒、最近の作品で言うところの増長した勇者にならない様に矯正していくわけですよ。自分の考える理想の為に判断を下す。そう言う意味では零崎秀夫は冷酷非情とも言えるかもです。

レイ「そう、なのかな。けどやっぱり象徴にするって考えは昔のドラグディア、マキナスとかと同じ発想だし、道が分かる気もするなぁ」

ジャンヌ「それ、逆にシュバルトゼロや元さんも当てはまるってことですよね?」

救世主と魔王はどっちも象徴よ(´-ω-`)いがみ合ってても本質は同じなのよ。それを今章、そして次章でも描いていくんだから。

レイ「それ絶対今言うことじゃなかったって~」

ジャンヌ「ちゃんとあとがきまで読んでくださるといいですね……」

レイ「ってそこで終わりそうになっちゃったけど、私!私モデルのキャラのレイアちゃんが言葉にしたらサービスシーンみたいな酷いことになってるんだけど!」

まぁ、人質ですし。ああいう扱いもあるでしょう。

ジャンヌ「私としては全てが終わってからじっくり問い詰めたいところですね……覚悟はよろしいです?」

駄目です。そこは元君達の戦いに期待してあげてください(;・∀・)というわけでここまでです。

レイ「次回の黒の館DNもお楽しみに~」

ジャンヌ「フフフフフ?」


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黒の館DN 双翼英雄譚編 第9回 前編

どうも、藤和木 士です。今回は黒の館DN双翼英雄譚編第9回前後編となります。

このタイミングで説明を入れる理由は一つ、後々の解説が長くならない様にするためです。
とはいえゼロンは紹介しなければいけないですので、先取り紹介は少なめとなっています。

というわけでどうぞ。


士「双翼英雄譚編も4章、黒の館DN始めていきます」

 

レイ「紹介するのって人物紹介くらい?かなぁ」

 

ジャンヌ「大分名前は出ましたけど、機体はほぼ出ていませんものね」

 

士「ごめん、紹介できるところは未登場の機体もデータ今回出します(;´・ω・)多分夢乃ちゃんのガンダムは紹介するかな」

 

レイ「夢乃ちゃんもそうだけど、懐かし顔が集結だよねぇ。須藤司令とかさ」

 

ジャンヌ「それ以外にも敵も中々厳つそうです。シャアの名をわざわざ持ってくる辺り……これは「アムロ」も出てきそうですね」

 

士「気になることは多いけどそこら辺は紹介からだ。人物紹介よろしく」

 

レイ「人物紹介、いっくよー!」

 

 

 

 

鈴川夢乃

性別 女

身長 165cm

髪色 こげ茶色

出身地 日本 三枝県 四河市→東響都 世川区

年齢 30

誕生日 9月7日

血液型 B

好きなもの ライブ巡り(ドーム、ハウス関係なく)、エアホッケー、クレープ

嫌いなもの ガム、計算、病院

愛称 ゆめのん、緑のアマゾンハンター、雷霆の女帝(ライトニング・エンプレス)

 

・MSオーダーズからのメンバーにして、次元光姫の妹。元の妹華穂の親友で、現在は緑のガンダム「グリューンアハトガンダム」のパイロットである。

 11年の時を経て東響外縁部隊の隊長となった。隊長となるべく苦手な勉強も頑張り、数学系列が絡まなければ支障ない知識を得ている。相変わらず近接距離と機動技術がずば抜けて高い。

 姉の娘である光巴とは叔母として接するも、極端に叔母と呼ばれることを嫌っている。また結婚もまだであり、黎人や既にHOWから引退した華穂からは催促されているが、本人は姉を葬った原因である次元覇院の後継組織ゼロンが壊滅しない限りはなしとのこと。

 本編では新四ツ田第1基地にてCROZEやSABERと合流。新人達に檄を飛ばしつつ、速やかなる基地制圧を元達に宣誓した。

 モデルは変わらずセガ・ハード・ガールズのドリームキャスト。歳を重ねて相応に老けているイメージ。

 

古橋 勇人(ふるはし ゆうと)

性別 男

身長 175cm

髪色 黒

出身地 三枝県 四河市→東響都 千田区

年齢 35歳

誕生日 2月4日

血液型 A

好きなもの ドライブ、一人焼肉、サッカー

嫌いなもの 事務作業、カラオケ、トマト(プチトマト、ケチャップなどは除く、トマト丸々)

愛称 ユート、警察のGパイロット

 

・警察組織の中でも公安課、それもMS犯罪に対処するチーム「MS対策班」のMSパイロットとして所属する男性。HOWから譲渡された黄のガンダム「ゲルプゼクストガンダム」を操る。警察組織では類まれなDNLとしての資質も持つ。

 実は元や深絵達と知り合い、というより中学時代の同級生。四河グランドホテルの事件も遭遇しており、その経験があってMSによる犯罪抑止を目指して警察へと就職した。数年は現場で働いていたが、転属希望と警察上層部の意向が合致し公安課のMS対策班が設立、無事そのMS隊員として宛がわれた。

 その際にMSパイロットとなった元達と再会、彼らの厚意もあって試作の黄のガンダムことゲルプゼクストを譲渡してもらった。ガンダムの性能と彼自身の技量も合わさり、エースに恥じない戦果を上げ続けている。

 本編では愛智側のパイロットとして招集され、同じ公安課のメンバーと共に元達の支援として遊撃部隊に組み込まれている。再会した元達に対しては借りを返すことに言及しつつも、ジャンヌとの仲たがいに対し今は良くとも戦いが終わったならけじめを付けろとした。

 外見モデルは名探偵コナンの沖矢昴。もとの人物の正体はむしろ警察ととある人物によく追われているが、こちらはその追う人物に近い立ち位置となっている。

 

零崎 秀夫(れいさき ひでお)

 宗教組織「ゼロン」の代表もとい教祖を担っている男性。今年の時点で73歳。にも関わらずその体は鍛えられていると言った印象を与える。

 もともとは次元覇院に属してはいない、かつては公務員をしていたというが、突如として次元覇院の元信者などをまとめてゼロンの旗揚げを行っている。

 ゼロンの信者達の元締めではあり、信者達と似て目的の為ならば他者を傷つける事をいとわない。が、信者同士の言い争いは拒み、自身が目に掛けている黒和神治にも冷静になる様にや、非を認めるようにと窘める場面も見られており、非常に理知的な人物であることを思わせる。実務はほぼ信頼するシャア・アライバルに任せており、自身は象徴として、かつ代表者として言うべき時に言うと徹底している。

 HOWが自衛軍や警察、オースと共にこちらの前線基地四河港ポート基地を襲撃するという情報に、当然だと答えながらゼロン最高戦力を以って迎え撃つこと、そしてすべての者達にガンダムを倒すのは黒和神治であり、その支援を全力ですることを徹底させた。

 モデルとしては東方不敗がある。彼のように体は若々しさを感じさせるが老いという意味でMSには乗らず、指揮官として、戦う姿勢を取っている。

 

真藤 史丈(ふみたけ)

 蒼穹島の司令を務める男性で、真藤一真の父。57歳。かつては自衛軍の前身の組織に属していた様子だが今はその縁は切れているという。

 蒼穹島が合流する直前は別の人間が司令官を務めていたが、その直前でその司令が射殺(権力闘争として処理されている)、その後地位についた。基本的に蒼穹島の技術の交渉役であるが、指揮は今もなお十分に取れる。海凪晃司とはその射殺した司令が晃司の父親なのだが、何らかの理由を知っている模様で不仲は感じられない。

 表向きにはゼロンに忠誠を誓っているが裏では何かを考えている模様。もっとも代表の零崎からしてみれば自分の意に反していないということで、シャアからも共々見逃されているという。

 モデルは蒼穹のファフナーの真壁史彦。

 

シャア・アライバル

 黎明期のゼロンをまとめ上げ、大作戦「西日本制圧作戦」を成し遂げた稀代のエースパイロット。現在はかつての次元覇院での指揮官・隊長の呼び名であった戦神官の地位を得ている。別名「真紅の流星」。34歳

 かつては自衛軍の部隊に属していたが軍を除隊したその後どういう経緯かゼロンへと付いていた。自衛軍に属していた時からMS技量は非常に高く、東響掃討戦、ホリンダウン作戦という二大作戦にも自衛軍側として参加、MA撃墜という戦果を挙げた上で生還するなど、注目はあった。

 自衛軍に属していた時点でDNLに目覚めていたフシがある。それもユグドラルフレームに依らない覚醒であり、ナチュラルDNL、真に進化したDNLとも呼ばれている。ゼロンはその彼をベースにDNLクローンのハルやゾルダーが生まれ、戦力増強を図っていた。

 もっとも次代ゼロン教祖に近い男とされているが、本人は教祖である零崎の言葉を尊重する姿勢を取り、前線指揮官としてその腕を振るう。そのうえで自衛軍にいる「ある男」との決着を望んでいるらしく、零崎もそれを考慮してその時に彼の穴を埋めるためのクローン計画を実現させた。

 本編では零崎の黒和神治を立てる要請に難色を示しつつも了承し、そのうえで神治に檄を送る。

 モデルは無論名前が示す通り機動戦士ガンダムの「シャア・アズナブル」。時期としては既に逆襲のシャアの時代のシャアとなっており、総帥に近い位置となっている。

 

ジョセフ・ゼロン・ガドナー

 ゼロンの究極のタイプシリーズ、タイプ[リズン]のパイロットを務める男性。20歳の外見をしているが、実際は生まれてまだ2年しか経っていない。クローンで、クローン元はかつて蒼穹島の研究者だった男のもの。

 普段は理知的な様子を見せるが、専用MSタイプ[リズン]に乗るとその影響で好戦的かつ荒い言動が現れる。

 劇中では作戦会議の中で神治のお膳立てに否定的な意見を示す。その場では渋々従うも、実際の作戦では構わず暴れることを考えていた。

 モデルは蒼穹のファフナーEXODASのジョナサン・ミツヒロ・バートランド。モデル元の機体、マークレゾンをモデル機とするリズンとセットで運用する。

 

 

レイ「以上が人物紹介ってことで」

 

ジャンヌ「夢乃さんはあれから昇進していらっしゃったんですね」

 

士「まぁMS技能だけでは隊長を務めるのなんて難しいからね。元君もそうだけど、陰でちゃんと部隊指揮とか以外にも資格取ってたりする設定よ」

 

レイ「なるほど。ちなみにそれを明かしたりすることは」

 

士「面倒くさいので省略で」

 

レイ「おい」

 

ジャンヌ「勉強が必要なのは作者でしょうに……」

 

士「そうっすね。語彙力、ストーリー構成……伝えたいことが伝え辛いって思ってるんでね……。色々作品は読んでいるつもりなんですが。まぁ今は書きますが」

 

レイ「それで、いきなりまた元君達の16年前の事件の関係者が出てきてるけど」

 

ジャンヌ「唐突ですよね。作者?」

 

士「ぶっちゃけ言うと彼所属の警察組織の設定が二転三転しててこの唐突な登場になりました。元々は愛智方面の警察組織ってことでやっていたんですが、公安ってなると東響の方になりそうだからってなって、その頃にはもうこの章に近くなってましたとさ。とはいえもう彼の機体については随分前から言っていたと思うけれども」

 

レイ「黄のガンダムについては確かに何度か記述を見かけているよね」

 

ジャンヌ「宗司さん達のガンダムDNアーバレストと同じ、ドライバ・フィールド機とかいう話もあったような……宗司さんにとっては先輩になると?」

 

士「そうそう。そこらへんで絡み入れるつもりではある。どこで入れるかはまだ決めてないけどね」

 

レイ「うーむ。けど警察さんが入ってきたってことは、大分日本政府も本腰入れて来てるね。というか警察にもやっぱりMS採用されるんだぁ」

 

ジャンヌ「警察のMSはやはり戦闘用ですか?」

 

士「手荒さのいる現場は戦闘用、それ以外は警備用MSでって感じだね。そこらへんも用語設定集、そして本編の方で紹介出来たらかな」

 

ジャンヌ「それでゼロン側ですが……いよいよ敵の親玉も登場ということで」

 

士「零崎秀夫、如何にもカルト教団の親玉って感じではありませんがね、巨大な壁って感じを出せたらなと」

 

レイ「人物モデル的にむしろ積極的に前に出てきそうなイメージなんだけどさ……」

 

ジャンヌ「この馬鹿弟子がとか言いそうですよね」

 

士「今回の場合馬鹿神治かな?」

 

レイ「その言い方ぁ!」

 

ジャンヌ「もうそれ別作品なんですよ……それやるくらいならもうあの司令の方が……」

 

士「ただそうするともう最後に起こるのは補完計画になってしまうので……。あの司令程人類巻き込んだ一人の計画ではないにしても、師匠ほど地球環境を汚した人類に絶望して悪魔を利用するというわけではないので」

 

レイ「そしてその司令に付き従う人物達も、ね。シャアと東方不敗が組むとか地球何回人類滅亡させられるのさ……」

 

ジャンヌ「シャア……宇宙世紀だけでもその名前に関わる人物はそれなりにいますが、このシャアも何を以ってゼロンに付いているのか気になります」

 

士「もしかしたらシャアの意志を引き継いだ自衛軍高官の息子とか出てくるかもな(゚∀゚)」

 

レイ「それ今書いている時にタイムリーすぎるんだけどさ」

 

ジャンヌ「ちなみに書いてる現時点で作者は」

 

士「あ、見ました。と言ってもジャンヌが聞いてる時点ではまだ見ていなかったんですがね。と、そこらへんも気になるところではあるけど、シャアと零崎はお互いに目的を共有してそれぞれの達成に協力し合っている関係です。ただ零崎の年齢も考慮してシャアが代わりにゼロンを動かしている状態なのは間違いない」

 

レイ「それで後は蒼穹島、というかファフナーシリーズのキャラモチーフの二人だけど……まぁジョセフの方は割と原作に忠実な出自かな?あっちは端末で、こっちはクローンかぁ」

 

ジャンヌ「本来の敵が出せない分、クローンで幅を利かせているように思えますね。とはいえ以前にもクローンが国際的にNGと言われながらもこれは……」

 

士「彼らの是非が問われる時が来るのかどうか、っすね」

 

レイ「真藤司令さんも、一体何のために争いに協力するのか……原作じゃそんなことしようとはしないと思うんだけど」

 

ジャンヌ「何か事情があるのか、はたまた性格がまるで違うのか。情動が少ない分、読めませんね」

 

士「それらは明らかになっていくのかどうか。気になるところだけど続いてMSの紹介だ」

 

ジャンヌ「前編での紹介は……あら、カラーガンダムの一機、緑のグリューンアハトガンダムみたいですね。それではどうぞ」

 

 

 

型式番号 CGMS-04Ⅷ

グリューンアハトガンダム

 

 

機体解説

・カラーシリーズから引き継がれる形で拡大したカラーガンダムシリーズ。その中でも新たにプランニングされ、新規で開発されたのがこのグリューンアハトガンダムである。機体カラーリングは緑、濃い緑。ユグドラルフレームは搭載しているが、DNLに覚醒していない為灰色のままである。

 パイロットは同じカラーシリーズに分類されるロートケーニギンガンダムのパイロットであった次元光姫の妹、鈴川夢乃。というより彼女の希望で本機の開発が承認された。完成時期は2034年。

 夢乃の適性を鑑みて本機は近接戦闘戦特化として設計された。時期からガンダムDNの武装のプロトタイプも装備しており、本機もまたガンダムDNアーバレストの後継機のための運用データ取り元にもなっていて何かとガンダムDNとは関わりが深い。これは夢乃本人が志望したことで、姉のような犠牲者が出ない様にと自身がそのテスターとして、かつ自分のデータが後進に活かせるようにとのこと。

 武装にはMS刀などかつてMSオーダーズで活躍した兵装から、当時の最新鋭武装などが集まっている。機動力と運動性もDN推進の加速力を高める「アクセル・ブーストスラスター」、装甲本体から浸透済みDNをそのまま放出することでわずかな時間の間防御力が下がる代わりにデコイ、盾代わりと運動干渉を行う「ディメンションミラージュ」を備え、それらをすべてツインジェネレーターシステムで担っている。

 コンセプトは「ガンダムDNのプロトタイプ(武器のみ)」、「デスティニーガンダム×ランスロット・アルビオン」。なお機体の開発順に名前の数字は関係ない。

 

 

【機能】

・次元装甲

 DN浸透式変色装甲。またの名をDNフェイズカーボン。本機では緑系統にシフトしている。

 

・ツインジェネレーターシステム

 DNを生成するDNジェネレーターの粒子生成量乗化システム。ブラウジーベン・ライブラと同程度の完成度を誇る。エラクスシステムも使えるが、やはり制御までには至っていない。

 ジェネレーターの駆動制御にはバックパックのコンピューターが使われる。なお現在MSツインジェネレーター機用のリム・クリスタルが完成間近となっている。

 

・ユグドラルフレーム

 高純度DNを、物体を軸に集め結晶化したもの。各部位に採用されている。

 こちらも搭載しているだけであり、発光はしない。

 

・ELACSシステム

 DNジェネレーターに設定された高出力モード。ライブラと同じく制御が不可能なため封印中。

 

・ビームシールド「イージス・フィールド」

 本機に装備されるビームシールド機構。

 本機のビームシールド発生位置は腕部、膝部、肩部。これらを同時稼働させたとき、機体を包み込むほどのコーン型ビームシールドを発生させることが出来る。これを用いた突撃もまた本機の特性で、特攻まがいの攻撃はある意味ではドライバ・フィールドの再現と言える。これが名前の基となっている。

 モデルはコードギアスのルミナスコーン。

 

・エディットウエポンシステム

 HOW製MSに装備される武装換装機構。背部バックパックのアームユニットが該当。基本的に装備内容は固定になることが多いが、まれに作戦内容によって換装されることもある。

 

・ディメンションミラージュ

 機体装甲システムに追加された特殊運用方法。DNフェイズカーボンに浸透させられたDNを機体外に放出しつつ移動、機体本体の防御力が落ちる代わりに放出したそれをデコイとして機能させて敵の攻撃の回避を行う。

 残像としても用いることが可能かつ、放出した際逆方向に機体が加速するため近接戦闘戦においてのハットトリックとしても使える。

 モデルはデスティニーガンダムの残像。他にも脱皮をモデルとしている。

 

 

【武装】

・ラピッドブレードアームズ

 両腕部側面に装備される弓型のマルチウエポン。外見通り弓としての機能に加え、通常時はビームサーベルを手刀のように振るえる。同時にビームシールドの発生器も兼ねているが、それぞれの機能はどれか一つしか同時に使用出来ない。

 旧シュバルトゼロガンダムことゴッドクロスの兵装がベースとなっている。

 

・バトルザッパー

 腰部に一本ずつ装備される銃剣兵装。ブレード、ガン部分共に大型の兵装となっており、合体機能持ち。

 ガンダムDN達が持つブレードザッパー、ガンザッパーの発展元でありそれらのテスターとして数多くの実験的機能を持つ。特に合体させた状態の大剣のバスターモードはコンバートセイバーのモデルとなりつつも粒子放出体で構成された両刃の剣で、威力も当時完成間近だったシュバルトゼロ・ジェミニアスのディオスクロイ・スラッシャーと同等と破格。

 この武器で多くのゼロンMA、母艦を撃墜しており、その際に雷のように振り下ろす姿から本機とパイロットの異名が「雷霆の女帝(ライトニング・エンプレス)」と呼ばれている。なお本兵装は必ずしも大型目標を落とすための物ではないのだが、この結果によりガンダムDNのザッパーがやや小型化してMS戦を意識している。

 モデルはゲーム「アリス・ギア・アイギス」の「金潟すぐみ 臥薪」のSPスキルのウエポン。合体方法も踏襲する形。

 

・シールドウエポンポッド

 肩部装甲を構成する武器格納スペース。ビームシールドの発生部位となっている。

 未使用時にはスラスターとして機能する。使用時には四つの穴からビームを出力してビームシールドを形成。この機構はビームサーベルの展開も可能であり、タックルと同時に貫く方法もある。

 更に開くと内部の格納スペースが開いて正面に向けてビームサブバルカン二門ずつが現れ使用可能になる。またユニットの上部にはビームサーベルの柄が寝かされており、展開することで使用可能となる。

 モデルは特に決めていないものの、この部分のビームシールド使用法はクロスボーンガンダム系統のブランドマーカーと同一となっている。

 

・ビームウイング・ホルダーバックパック

 背部を構成するバックパックユニット。エディットウエポンシステムとなっているアームと、当時は新開発だった硬化式ビームウイング「イージス・ウイング」を装備している。

 イージス・ウイングはビームシールドを硬化させることで可変式の翼として運用することを可能とした。このビームウイングは攻撃力や防御力があり、すり抜け際に切り裂いたり、ウイング根元自体を動かして機体を覆って突貫するという動きが出来る。もっともイージス・フィールドと役割が被るが、こちらはあちらよりも消費DNが少なく、また被弾の危険性はあちらがカバーできるため、場面によって使い分ける。

 それに併設する形で下部から伸びるアームに接続されたホルダーはエディットアームとなっており、武装を懸架して攻撃を行う。

 モデルはコードギアスのエナジーウイング。

 

・エリミネイターセイバー

 エディットアームホルダーの右側に装備された大型格闘兵装。多重にビームサーベルを発生させて、切り裂く。エリミネイターブレードの系譜の兵装。

 ビーム圧が激しく、ビームシールド程度なら容易く切り裂く。またビームサーベルとの斬り合いにも有効で、敵のビームサーベルを無効化して一方的に切り裂くことも出来る。反面出力がいる為ツインジェネレーターシステム機以外でこれを使うのは厳しい。

 モデルはクロスボーンガンダムのムラマサブラスター。射撃機能を無くした仕様となっている。

 

・MS刀「クラレント」

 エディットアームホルダーの左側に装備される実体剣。MS刀に分類される兵装だがその形状は剣に近い。名称も海外の剣を参考にしている。

 刀身そのものが粒子放出体となっており、ここからビームの大剣を形成することも可能。本来ならシールドに格納されて装備される予定だったが、夢乃本人が実体シールドの運用を嫌ったため不採用となった。

 モデルはFateシリーズのモードレットの宝具「クラレント」。ビームの大剣は無論「クラレント・ブラッドアーサー」をモデルとしつつ、「エクスカリバー」に性能を寄せている。

 

 

ジャンヌ「以上が夢乃さんの新たに駆るグリューンアハトガンダムの紹介ですね」

 

レイ「緑でアハト……」

 

士「どっちかっていうとゼロン勢力で出てきそうな名前だけどそこには触れない方針で」

 

レイ「はーい。で、換装としてはやっぱり格闘戦重視だね。しかも昔のMSオーダーズの機体特性に近い感じかな?」

 

ジャンヌ「MS刀にエリミネイター系武装と見ると、やっぱりそう思ってしまいますね」

 

士「それらはMSオーダーズのMSが主力兵装としていた武装だからね。今にも受け継がれているとはいえ、主力兵装から外れていった者達を多数採用する本機は夢乃が過去に引きずられているとも言えるようになってます」

 

レイ「ちょっとちょっと、そんな感じ今まで微塵も感じられなかったんだけど」

 

士「でも新人達に大見得切っていたじゃん?」

 

ジャンヌ「なるほど。姉のような犠牲者を出さない様に、言っていたわけですか」

 

士「そういうこと。その感情に関してはバトルザッパーの設定にも表れているからね」

 

レイ「言われてみれば、後輩の為にって感じで書いてある」

 

ジャンヌ「そう言われると、死に急いでますね……。光巴さんもいるんですから、ちゃんと生きて欲しいです」

 

士「と、前編はここまでかな」

 

レイ「後半もレッツゴーゴー!!

 



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黒の館DN 双翼英雄譚編 第9回 後編

 

 

士「後半始めていきます」

 

ネイ「後半に収まるとは、珍しいですね」

 

士「いや、これ後々の紹介が長くなる奴なんですわ」

 

グリーフィア「でしょうね~。今回名前くらいしかメインに出てないのに、わざわざグリューン紹介した辺りで怪しいと思ってたから~」

 

士「まぁ後々大量になり過ぎてもダメなので。というわけで紹介はHOWの新たな戦力、装備です」

 

ネイ「ソル・タクティクス、ソル・シャドウ、そしてガンダムDNアルヴの新たな装備バレッツフルアーマーです。どうぞ」

 

 

 

型式番号 HMS-10

ソル・タクティクス

 

 

機体解説

・ソルジアスの機能を十全に使いこなせると判断されたCROZE部隊Gチーム小隊長の呉川鈴児に先行配備されたソルジアスの上位機種。カラーリングは通常は白だが、呉川機はパーソナルカラーの青に変更されている。

 本機はガンダムDNアーバレストの運用データを軸に、通常のソルジアスに用意されたAR、SR、BS、LL、SAと言った各種装備の機能を盛り込み、そのうえで可能な限り煩雑化させないシステムを構成。結果全領域対応という当初シュバルトゼロの再現を目指したソルシリーズの最高傑作と呼べる機体へと仕上がった。

 メインとなるのは腰背部の可変ウイングウエポンバインダーで、マルチプル・スペースシフターほどの汎用性はないものの、ウイングバインダー内部に一枚ずつそれぞれ武装を多数格納しそれらを振るう。バインダー自体は換装が可能であるが、代わりにエディットバックパックシステムとの互換性を失っている。これは新しい換装形態の模索のため。

 モデルは鉄のラインバレルのマキナ「ヴァーダント」。ちなみに漫画版とアニメ版とではバインダーの装着位置が違い、こちらは漫画版をモデルとしている。コンセプトとしては「パーフェクトヴァーダント」。パーフェクトガンダムの系譜と呼べる。頭部デザインもソルジアスと同系のテムジンタイプと、呉川鈴児専用先行量産型の原型機ヴァーダントに似た頭部タイプが存在している。テムジンタイプの方は「クリアリア」も原型ベース。

 

 

【機能】

・リミテッドDNフェイズカーボン

 HOWが独自に開発したDNフェイズカーボンの量産仕様。機体の装甲の一部にDNフェイズカーボンを採用し、コンピューターが被弾を予測すると自動的にDNが割り振られて防御性能を発揮する。

 モデルとしては機動戦士ガンダムSEEDのトランスフェイズシフト装甲。

 

・ダブルジェネレーター

 本機の胸部と背部バックパック内部にDNジェネレーターを一基ずつ搭載する仕様。二つのジェネレーターから来る高出力で機体の性能は飛躍的に向上している。

 

・ビームシールド

 機体の両腕部に装備されたビーム防御兵装。ソルジスタは両手甲に装備されていたが、こちらでは装備位置が変更となった。だが本体以外に可変ウイングウエポンバインダーの表面にもビームシールド発生器が埋め込まれており、同時展開した時にはビームウォールとでも言うべき代物となる。

 

・換装

 テールバインダーを予備と換装が可能。もっともほぼ武装補給のみであり、多彩な武装をもとから装備していることで対応している。

 

・ドライバ・フィールド

 ガンダムDNアーバレストのデータをもとに改良された防御フィールド。ある程度モーションに合わせた自動展開が行われるタイプで、宗司のように多彩な戦術は出来ないものの、単純な戦闘力としては同等となっている。

 原作での量産機ラムダ・ドライバとガンダムシリーズのIフィールドの中間に近い性能となっている。

 

 

【武装】

・バスタースラッシャーA

 右腰に装備されるバスタースラッシャーの発展型兵装。LLの装備を持ってきている。

 モデルは変わらず。

 

・ビームサーベル

 バックパック側面に二本差された近接格闘戦兵装。通常の装備であるが、ビーム刃が切っ先がとがりつつも反りの入っていない刀のようになっている。

 

・ハイマニューバスラスター

 機体の肩部、ふくらはぎ、膝部分に増加装甲として装着された機動戦闘用スラスター。

 

・ブーストバックパック

 高機動タイプのバックパックに上方向へと向けて接続式プロペラントタンク兼ブースターを装着したもの。ブースターに関しては長距離飛行と直線加速のための装備であり、外すことが可能。外したのちは根元が機動力優先のブースターポッドとして機能するようになる。

 

・可変ウイングウエポンバインダー

 テールスタビライザーとして接続されている武装格納スペース。いくつものバインダーを接続し、折りたたんでいる。左右5枚計10枚を装備する。

 各部にバーニアを配置しており、展開前はブースターとして加速力を、展開時にはAMBACとして機能が優先される。バインダーの内側に武装が格納されており、盾のように展開して機体を覆ってから武器を取り出す。実際にこのバインダーはシールドとしても使用が可能で、ビームシールドの同時展開でそれぞれが増幅させて強固なビームシールド「ビームウォール」が形成される。

 ウイングバインダー内部の武装は外側から順にエリミネイトカッターS、レールガン、ビームカノンS、アサルトサブマシンガン、分割式バスタースラッシャーとなる。

 モデルはヴァーダントのバインダー。すべての裏が同じ兵装ではなくなっており、全領域に対応可能な兵装となっている。

 

[ウエポンバインダー内武装]

・エリミネイトカッターS(スモール)

 SRカスタムにて装備されていたものの小型版。小型化していても切れ味はそのままで、他の機体が借り受けても動作にさほど問題ないようになった。

 

・レールガン

 BSカスタムの兵装を手持ち式に置き換えた。弾数は5発。予備弾倉も同じシールド内に格納される。

 射程距離も落ちているがこちらの強みは手持ち式になったこと自体。素早く敵の態勢を崩したりして近接戦闘へ移行がしやすくなっている。

 

・ビームカノンS(スモール)

 BSカスタムの装備の小型版。威力も相応に落ちている。が、代わりに連射が可能となり、近接戦を重視したセッティングとなっている。だがあくまでそれは初期設定であり、調整すれば長距離砲撃も不可能ではない。

 

・アサルトサブマシンガン

 LLカスタムにて装備された実弾兵装。仕様も変わらない。

 

・分割式バスタースラッシャー

 トンファーモードで分割されて装備されるバスタースラッシャー。

 合体させることで通常のバスタースラッシャーとして振るえる。だがこれは射撃性能に割り振られた兵装であり、砲撃戦用形態のメガ・バズーカモードへの移行を可能としている。

 メガ・バズーカという名称から分かる通り、本兵装はSAカスタムのメガ・ビーム・バズーカを取り入れたものとなっている。

 

 

 

型式番号 HMS-11

ソル・シャドウ

 

機体解説

・クルツ・ディランドルに先行配備する形で登場した新型狙撃用MS。機体カラーリングは黒だが、クルツ機は本人の希望でグレーとなっている。

 ガンダムDNアルヴによる射撃データ、ブラウジーベン・ライブラのデータを盛り込んでソルジアスSSカスタムを強化し、量産機の枠に収まるように開発された。その為一部武装はそれらの機体の武器の廉価版も認められる。

 特徴的なのはオースの技術の一つミラージュコートを実装している点。ステルスにより隠密作戦での活躍を前提にされている。

 機体本体も狙撃にしては運動性能が高く、素早い移動は充分出来る。またバックパックはエディットバックパックシステムとなっており、汎用性も同時期に完成したソル・タクティクスと同等である。

 モデルはジムスナイパーⅡに鉄のラインバレルのアパレシオン。コンセプトとしては「アパレシオンの量産型」かつ「シムスナⅡとアパレシオンのハイエンドモデル」。ただし頭部デザインはクルツ機がキャラクターの元ネタの搭乗機であるフルメタルパニックのM9カーンズバックの頭部から額部分をガンカメラに変更しているイメージとなっている。

 

【機能】

・ステルス装甲「ミラージュコート改」

 本機のステルスシステムであり、オースが開発した物をHOWで量産したもの。

 システムを起動させることでコート粒子を放出、機体周囲の風景と同化し、見えない位置からの狙撃を遂行する。このステルスは武器にまで届くため銃のみが浮いて見えるなんてことはない。

 本来ならステルス機能のみの機構だが、HOWで改良がおこなわれ非ステルス時にはDNを機体に定着させて防御力を高められるようになっている。

 モデルは機動戦士ガンダムSEEDシリーズのミラージュコロイド。

 

・エディットバックパックシステム

 ソルジアスから引き継がれているバックパック換装システム。とはいえ本機の場合専用バックパックがあるため換装はほぼ行われない。

 

・センサージャマー

 SSカスタムから引き継がれたセンサー妨害装置。バックパックに主機を持つ。

 

 

【武装】

・ビームバルカン

 頭部に備わった近接防御機関砲。ステルス性を維持する為にかなり威力を落としている。

 

・ガンザッパー

 腰部に装備される近接戦用の銃剣。ガンダムDNにも装備される同名の装備を二丁装備する。

 性能は据え置き。ただし合体機構は対となる装備がなく、使用不能となっている。これを実現するならガンザッパー側に改造が必要となる。が、それを必要としないために装備開発は行われていない。

 

・ホルスターバインダーバックパック

 バックパック。二本のアームが肩に向けて伸びる先に、ホルスターバインダーを2枚ずつ、計4枚装着する。

 ホルスターバインダーそのものが元々ライブラのホルスタービットのガワを流用・延長しており、スラスター機能は引き継いでいるため機動力の低下は最小限に止められている。シールドとしても使える。

 ホルスターの名前の通り、内部にビームスナイパーライフル「シャドウアイ」を格納する。基部が可動可能で前方に向けて内部の武器をそのまま発砲することも出来る。

 モデルはライブラの兵装と同じだが、配置はダブルオーガンダムのツインドライヴの配置に近い。

 

・ビームスナイパーライフル「シャドウアイ」

 ホルスターバインダーの内部に格納されているビーム兵装。性能的にはホークアイの射程距離を2割超えている。

 マルチウエポンであり、銃身を外してミニガンというサブマシンガンとして使える。4本もあるため滅多に狙撃戦が行えないということもない。

 モデルはケンプファーアメイジングのアメイジングロングライフル等。

 

・テールスナイパーガン

 テールスタビライザーに装備されたアーム接続式の実体弾ライフル。ライフル周辺には銃弾供給のカートリッジとサブスラスター兼用のボックスユニットを接続する。

 ライブラのスナイパーライフルと同様に逆手持ちで構える。弾種には通常の狙撃弾に加え、徹甲弾、試作のDNウォール貫通用セラミック弾、ユグドラル反応無効化のアンチユグドラル弾の四種を標準装備し、作戦によって変更できる。

 機体バランスが乱れる為必然的に本兵装の使用は静止が推奨される。

 モデルはアパレシオンのライフル。マウント位置が背部からスタビライザーに変更されている。

 

 

ガンダムDN

[解放ログ4]

・バレッツフルアーマー

 2号機アルヴに用意された決戦用増加装甲。肩部、腕部、胸部、腰部、脚部に装着される。

 中距離支援を更に充実させた兵装であり、防御力を高めつつ機動性にも配慮している。各部スラスターは新開発の「フェアリィスラスター」が採用され、機動力は通常のアルヴの3割増し、フルアーマー装備時でも通常のアルヴと同等かやや上と高出力。ただこのスラスターは扱いの難しい兵装であり、それをわざわざ重いこのフルアーマーで制御している。が、そのせいで負荷が高まり、パイロットが装依状態でも疲弊する状況を生み出す結果となっている。

 こうなった理由としてはそもそも、スラスターがアルヴの後継機である「アルヴⅡ」と呼ばれる機体の為の装備であり、今回はその試験も兼ねて装備するのだが素の状態でいきなり戦っても入嶋が付いて行けないと判断されて別のプランであったフルアーマーとセットにしたというのが真相である。もっともフルアーマーもアルヴⅡの要素であり、劇中でもアルヴⅡ移行の為の慣熟訓練兼実機装備開発のためのテスト用装備であるとされている。

 フルアーマーを速すぎる機体の拘束具にするが、それでも扱い難くなるというのからこれはガンダム7号機の要素を盛り込んでいる。名称のバレッツは無論弾丸の事を意味している。

 

 

【追加武装】

・増設式ドライバシールド

 右肩部に装備された特殊シールド。内部にドライバ・フィールド発生器を内蔵しており、この部分だけでドライバ・フィールドを発生させられる。

 所謂非思考式の自動発生型なのだが、同様の武器を持つ黄のガンダム「ゲルプゼクストガンダム」の同型武装の運用データからシールド形成パターンを算出し、自動で防御強度を高められる方式となり、ドライバ・フィールド未経験者でも扱いやすい兵装となっている。

 なお本来この場所に装備されるビームアサルトライフルは本形態では排除された。

 

・胸部格納式マシン・ビームバスター

 胸部装甲内に格納される回転式ビーム機関砲。胸部左右に二門ずつ装備する。

 シュバルトゼロガンダム・リペア[ペルセウス]にて運用されていた兵装の系統で、小型化しながらも威力を落とさないことを実現した。

 

・ガンアサルトⅢ

 かつてMSオーダーズ時代のMSにて選択兵装として用いられていたガンアサルトの三代目。伸縮式で右腕部増加装甲側面に固定砲として装備される。

 弾丸はビーム砲となっている他、新たにビームランサーモードが追加。威力も現代版に改良されており、マシンガンモード、ロングライフルモードも含めた3つのモードを使いこなす方式である。

 

・脚部増加装甲内マイクロミサイルポッド

 脚部のバレッツアーマーに内蔵されたミサイルポッド。弾頭の数は片側12発、計24発。

 

ネイ「以上が機体紹介になります」

 

グリーフィア「順に言っていくと、ソル・タクティクスはソルジアスの上位互換ってわけね。あらかじめ多数の武装を持っておくっていうのは、大分呉川小隊長さんの意見が反映されている感じかしら?」

 

士「そうですね。実は作中では言われてませんが、本機のテスターとして調整に付き合っていたという設定です」

 

グリーフィア「その結果がコンセプトのパーフェクトヴァーダントと。とはいえ元々がテムジンを参考にしているので、本来としてはテムジンの上位機種のクリアリアに近いってわけね」

 

士「クリアリアと大元のテムジンカッコいいんだよなぁ。原作ゲーム以外だとスパロボととあるコラボのゲームでしか使えなかったと思うんだけど」

 

ネイ「あぁはい。けどこれ呉川さんが使いこなせるのはいいですけど、他の隊長さん達に使いこなせるんですか?」

 

グリーフィア「そうよねぇ。呉川さんは適性があるからいいけども、どうなの?」

 

士「それに関しては内包する武装の種類が自由に変更できるのでそこで対処するしかないかと。いずれにせよ、このソル・タクティクスは文字通り戦略を象徴する物。使いこなすためにどうカスタマイズするかもまた本機の特色と言える。そこまで含めてエース向けの量産機ってわけだ」

 

グリーフィア「なるほど。で、ソル・シャドウの方も大分タクティクスのモデルの原作に引きずられているようだけど?」

 

士「まぁそれっぽいようで実際のところは名称から分かるようにフルメタルパニックのシャドウもベースになっているんですがね。特にクルツ機の」

 

ネイ「あれ、ベース機一覧に入ってませんが」

 

士「入れてなくても知ってる人には知ってるでしょって位の要素ですので」

 

グリーフィア「それも結局言っているっていうね。ま、それはそうとして、入嶋ちゃんのDNもちゃんと2回強化もらって良かったわねぇ」

 

ネイ「一つ目はDNアーマーかな。でもそのDNアーマーも登場一回きりっていうのは……」

 

士「そうだけども今章ではその実稼働データから量産型生まれている設定ですので、どこかで出てくるかもです」

 

グリーフィア「それはさておくとして、まぁ劇中でも言ってるけど大分入嶋ちゃんの要望から外れているようで……実際のとこはセーブしないと使えないって感じね」

 

ネイ「イグナイトエフェクト……前に出てきた時の名前ってなんでしたっけ?L1の第1章だと思うんですけど」

 

士「あ、サイレントモードの機能と言われただけで明言はしてないです」

 

ネイ「あぁ、そうなんですね。てっきり出ているものかと」

 

士「私もさっき確認してきてこれだったからね」

 

グリーフィア「けどあの機能って割と凄かったわよね~。DNL能力ないと攻撃当てられない位に」

 

士「実際のところ今のシュバルトゼロとかは通常の機能としてそれを盛り込んでいるんだけど、あえて明言していないんでね。シュバルトゼロが継続して対等、あるいは圧倒的な性能を持っているのもこれが一因だし。そこにようやく技術が追いついてきたわけだ」

 

ネイ「追いついて大丈夫なんですか?言うのもあれですけど書くのとか難しくなりそうですし」

 

グリーフィア「そこは作者君の腕の見せ所ね♪」

 

士「期待できるかは分からないですが、色々頭捻りますよ。その為にもまずは千恵里に頑張ってもらうわけですが」

 

グリーフィア「いよいよ始まる攻略戦。この三機にはシュバルトゼロが縦横無尽に動けない分活躍に期待しなくちゃね」

 

ネイ「カラーガンダムも、だね。今までの味方も合わせて、ゼロンを足止め出来るかどうか……」

 

士「もちろんゼロンの強力な敵機もいるから、一筋縄ではいかないよ。果たしてそれがどう響くのか……それは本編をお楽しみに」

 

ネイ「では今回はここまでというわけで」

 

グリーフィア「また次回~。どうなっているかしらね~」

 




黒の館DN双翼英雄譚編第9回はここまでとなります。

この後から東日本連合軍対ゼロンとの対決が展開されて行きます。今回紹介したキャラクターやMSも次から活躍していくことでしょう。
もちろん、次話以降の新キャラ、新機体も登場する予定ですので楽しみにしていただければ幸いです。

では次話からもよろしくお願いします。


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EPISODE63 聖戦の始まり1

どうもまた1週間空きました作者の藤和木 士です。EPISODE63と64の公開です。まずはEP63の方から。

ジャンヌ「なんで空いたんでしょうね、という質問は今はしないでおきましょう」

レイ「まぁでもそれが解決したからこっちに割り振れるってわけだし、私達としては良かったってことだもんね」

迷いは晴れた、ってところ用件の方で見せたいところですわ。で内容。

ジャンヌ「聖戦の始まり、ということでいよいよゼロンとの対決ですかね」

レイ「今章のメインだからね~、どうなることかっ!」

とはいえまずはお茶濁しからです、どうぞ。


 

 

 決戦の朝。宗司はエターナと共にとある人物の下を尋ねていた。その人物とは先日顔合わせをした公安所属のガンダムパイロット、古橋勇人だ。

 なぜ尋ねることになったのか。それは黒和元へととあることを相談したからに他ならない。

 

『ドライバ・フィールドとユグドラルフィールドをどう組み合わせればいいのか分からない』

 

 以前の戦闘からずっと考えていた。ドライバ・フィールドとユグドラルフィールドは形質がどちらも似ており、同時展開すると意識のリソースが割かれる事態に陥っていたのだ。

 とはいえ形成できることは出来ており、それを維持しようとも務めている。それでもあまりに負担が大きいことから、決戦にて不安をぬぐえず隊長へとそれに詳しい人物がいないかどうか尋ねたのだ。

 専門ではない、としつつも元隊長は公安所属の友人、古橋勇人に尋ねることを勧めてくれた。昨日の時点でもしかしたらと思っていたのだがやはり適任者は彼をおいていないだろう。

 話の場は隊長が設けてくれた。来てもらった古橋さんに礼を言う。

 

「今日は貴重な時間を割いていただき、ありがとうございます」

 

「あまり時間はない。が、こっちも暇はしていたからな。最終チェック位のものだ。それより、お前の方は大丈夫なのか」

 

 こちらの心配はいい、と逆に心配される。新人だからこその応答だ。実際こんなタイミングで尋ねる事も双方にとっていいのだろうかと思ったくらいだ。

 それに頷きつつ、本題を切り出す。

 

「自分としてもあまり時間を裂いてはいられないと思ってます。けど、これだけは聞いておきたいので」

 

「まさか、あいつのパートナーとの関係、とかじゃないな?」

 

「流石にもう聞きませんよそれは……。同じ、ドライバ・フィールドとユグドラルフィールドを使える人、ということで聞きたくて」

 

「フン?なるほどな」

 

 呼び出された理由を聞いて察しの付く古橋に宗司は用件を言った。

 

「古橋さんはドライバ・フィールドとユグドラルフィールド、どうやって同時に使っているんですか」

 

 一体どうやってこの問題を解決しているのか。真似できるかどうかは分からないがそれを乗り越えられる方法があるなら自分も試したい。何かが得られれば、と。

 しかしその考えは古橋からの思わぬ回答で根底から崩されることになった。

 

「同時に?そんなことやっていないが?」

 

「えっ?」

 

「一応出来る、とは言われているが俺は操作が煩雑になり過ぎるから完全にどっちかだけで運用している。もっぱら汎用性の利くドライバ・フィールドがメインだがな」

 

 まさかの回答。古橋さんはどっちも使えるが、片方しか使わないという回答が返ってきたのだ。

 確かに煩雑ならどちらかしか使わないというのは理にかなった方法だ。けれどもそれでは片方を持て余していると言える。そうではないのかと問う。

 

「け、けどそれじゃあ機能を持て余しているんじゃ……」

 

「実際そうだな。改修案にその機能を削ることも考えている。例えDNLでもそれら機能を同時に運用するなんて、馬鹿なアイデアだったな」

 

 使えなかったことを自嘲する古橋に宗司達は頭を抱える。エターナも失礼なことを気にも留めず舌打ちで愚痴る。

 

「ちっ、前任者でこれってそういうの分からずに作ったんじゃない」

 

「エターナ。古橋さんの前でそれは……」

 

「ま、事実だから言い返せねぇよ。イラつきはするけどな。ただ、悲観するのはまだ早いぞ」

 

 事実を認めながら、考えがあると示す古橋の言葉に二人の意識は吸い寄せられる。二人の反応に不敵に笑う古橋。

 

「何よ、そんなにおかしい?」

 

「いや?あいつらしい部下だと思ってな」

 

「それで何か思いついたんですか?」

 

 待ちかねるこちらにあくまで予想、と前置きしてここまでの分析を古橋は語った。

 

「勝手な予想だが、あいつは俺がゲルプゼクスト、つまり俺のガンダムでドライバとユグドラルの両力場を片方しか使っていないのを知らなかった訳じゃないと思う。そもそもお前達の側の機体はおそらく俺のガンダムの運用データから作っている」

 

「それは……同じドライバ・フィールド運用機ならあり得る話ですよね」

 

「おまけにユグドラルフィールドも使えるようにしてる。実質的な後継機なんじゃないの?」

 

 話によればガンダムDNはこれまでに開発したカラーガンダム達を平均化し、量産機への技術流用を目的としたテスト機としての思惑が強い機体だという。バックパックやドライバ・フィールドも今は後発の量産機の装備として開発途中で、同時進行だったDNアーマーは既に各隊で運用されているらしい。

 その中でもアーバレストは同じドライバ・フィールド搭載機のガンダムを参考にしたと聞いた。おそらくは古橋さんの機体だろう。

 ならば、と前提を踏まえたうえで古橋は持論を語る。

 

「お前達の機体は既にその対策がなされている、いや、対策途中の機体なのではないか?」

 

「対策が……」

 

「いやいや、安定した同時展開なんて出来てないじゃん!」

 

 文句を言うエターナの言う通り、その実感がない。同時に展開出来ているとはいえ、これでは不安定としか言えない。

 そこで古橋さんの口から飛び出したのはその運用体系についての質問だった。

 

「ちなみに聞くが、二人の割り振りはどうなっているんだ?」

 

「割り振り?機体制御とかって話?」

 

「そう。どうなんだ?」

 

 言われて首を傾げる。が、言うほど困るものでもない為それを言っていく。

 

「俺は基本の戦闘担当、機体制御と攻撃・防御面、ドライバ・フィールド、ユグドラルフィールドの運用担当です」

 

「私はサポートメイン、通信の受領とレーダー索敵、DNL索敵のメイン、火器管制とかもなるべくやってるわ」

 

 普段の仕事の割り振りとしてはこのような感じだった。ちなみにDNLでの索敵は自分も最低限やっているし、エターナも防御・回避指令を出して緊急回避を行う場合もある。オースで二人がかりによるドライバ・フィールドの出力増大が良い例だろうか。

 そんなものを聞いてどうするのだろうか。気になっているとそれを聞いた古橋さんの口からとんでもない言葉が返ってきた。

 

「なら、フィールドの精製を別担当にすればいいんじゃないか」

 

「別担当……?」

 

 言葉の意味を図りかねる。別担当、ということは三人目のパイロットを採用するということだろうか。しかし古橋の言葉はそれよりももっと単純明快だった。

 

「ドライバを宗司、ユグドラルを……えぇとエターナだったか、君がやる様にする」

 

「はぁ!?本気で言ってんの!?」

 

 提案を真っ向から否定するエターナ。それが理想的なのは分かっている。けれどもユグドラルフィールドを使用可能になるオーバードライバフォームは二人掛かりで起動する必要がある。

 その必要性を理解しているならば出てこない意見に宗司も事情を説明する。

 

「それは無理だと思います。オーバードライバフォームは俺達二人で起動させなきゃ到底使えない。人数を増やして担当を増やすのならまだしも、エターナだけのDNLの力じゃ……」

 

 しかしその事実を認めたうえで更なる考えを古橋さんは提示した。

 

「発動は二人掛かりでも、維持には二人はかからないんじゃないか?」

 

「えっ?」

 

「起動条件が必ずしも使用条件とイコールではない。探知が可能なら、ユグドラルフィールドの発生も一人で出来るんじゃないか?」

 

「それは……やったこと、ないし……」

 

 考えるような仕草でエターナが目を逸らす。考えもしなかった。どうしても起動するための条件がユグドラルフィールドの発生につながっていると思っていたのだが、どうやらそうではないらしい。

 ならばなぜ、エクストラロック解除の条件がそんなことになっていたのだろうか。ふと呟く。

 

「けど、ならどうして条件が」

 

「おそらくだが保険だろうな。パートナーの補助が必要な時に代わりに使うための。あるいは本当にDNLのレベルが二人分必要なのか……ともかくやったことが無いのなら試せ。エンゲージシステムなんていうごちゃごちゃしたものを乗せているのはそう言った理由があると、俺は思う。俺から言えるのはこれくらいだ」

 

 これ以上は言えることはない、と語る古橋さん。試すしかないのは言えている。エターナが少々消化不足のような様子だが、言葉を飲み込んで宗司は引き下がる判断をする。

 

「分かりました。やってみます」

 

「正しいかどうかは分からない。しかし若いなら飛び込んだっていい。実戦で一か八かやるくらいなら練習をこなせ」

 

「はい」

 

 礼を行ってエターナを連れて古橋と別れる。

 

 

 

 

「……これは」

 

『出来てる、わね』

 

 結果として古橋の言葉は正しかった。オーバードライバフォームのシミュレーションで宗司がドライバ・フィールドを、エターナがユグドラルフィールドを形成していた。

 出力はユグドラルフィールドの方が劣っているものの、安定性に関してはこちらの方がずっといい数値だ。こちらもドライバ・フィールドの維持にだけ努めればいい分戦闘にも集中しやすい。

 事実シミュレーション結果は今までの中でもっともいい。強力な攻撃や高いユグドラルフィールド機に当たらない限り、ユグドラルフィールドに比重を寄らせる必要もない。問題ないと言える。

 だが同時に物足りなさを感じていた。

 

「性能は安定した。でもなんか納得がいかないな……」

 

『そう?まぁ私も手伝わなきゃいけないっていうのは、正直言ってだるいけどね。けどおまけって感じはしなくなったからこれで良いとは思ってるけど』

 

 珍しく前向きなエターナが言う。おまけだなんて思ってはいないのだがエターナからしてみればそう思っていたのだろう。むしろおかしいのは自分だ。

 そもそもどうしてエンゲージシステム機なのか。古橋さんが言うようにこの機能を十全に扱えるように、とも取れる。疑問は解決できるが果たして本当にそういうことなのだろうか。もっと何か裏があるように思える。

 

(……なんで、人を心から信じられなかった俺が選ばれたんだ……)

 

 エンゲージシステムはパートナーを信用しなければ使えないと聞かされている。ならばどうしてあの時契約が出来たのか。

 悩みは絶えない。けれども一つだけ分かることがあった。自分はきっと信頼でエターナとパートナーになったのではない。きっと何か別の要因がある。それを今開発者達に聞く気は起きなかったが。

 

 

 

 

「あれでよかった、のか」

 

「あぁ。あいつらの経験を深める意味ではお前が適任だよ、古橋」

 

 HOWの新人、宗司達が去ってから仕掛け人となっていた元にそう語りかける。彼らが訪ねる前に古橋は既に元から用件について聞いていた。

 同じドライバ・フィールド運用者だから、というのは納得できる。だが同時に適任者として宛がわられたもう一つの理由にはその時何故と思ったものだ。

 理由について愚痴をこぼす。

 

「二人とも他人との関係を作るのが苦手、とは言っていたがそんなことなかったぞ。エターナは口調が大分荒いと思ったが」

 

 元は自身に対し、ドライバ・フィールドとユグドラルフィールドの同時展開法だけでなく「彼らの対人関係強化の協力」もお願いしてきた。最初は何を言っているのか問い返したが見ればわかると言われなし崩し的に見ることになった。

 結果としてほぼフィールド関連の話しかしていない。というか、問題があるとすればエターナの年上を敬わない態度とは思う。もっともそこをうるさく言うつもりはないが。

 しかしそれだけではないのだと元が言う。

 

「じゃあ、宗司の事はどう思う?」

 

「どうって?エターナの手綱を握っている、真面目で寡黙っぽさを感じさせる若者って感じだが。ちょっと自分を出していないって感じはしたが」

 

 率直にそう答える。古橋からしてみれば宗司はいい子という言葉が似合うほど、素直かつ真面目。感情の気迫は見受けられるが、真面目過ぎてむしろ「気味が悪い」という感想も同時に抱いていた。

 手が掛からないのは良いことだが、あれくらいの年なら反発くらいあっていいとは思った。逆に本音をさらけ出していないのが却ってこちらを気掛かりにさせる。まるで誰かのようだと思った。

 せっかくなので皮肉も込めて言及する。

 

「なんて言うか、お前の部隊員らしいと思うよ。自分から不利な状況に追い込んでいるところとか」

 

「余計なお世話だ。だがやはり同じことを感じたか」

 

「フン。てことは俺に任せたのはそう言う理由か」

 

 理由、それはおそらく自分からでは彼に注意が出来ないからだろう。自分自身がもっともその状況に当てはまり、指摘しようにもお前が言うなと言われかねないと。

 それでも心配だから向こうの本命のドライバ・フィールドとユグドラルフィールドの同時制御方法と合わせて指摘できないかと踏んだのだろう。そちらは要点を伝えなかったせいで台無しとなってしまっていた。元も肩を落とし頷く。

 

「そうだよ。同じDNLなら雰囲気察してくれると思ったんだが」

 

「DNLはエスパーじゃないってお前も言っているだろ。まったく、鋭いのか鈍いのか」

 

 部下の深みへの陥り、自分の失策は分かっているにも関わらずそれを自分で解決できずにいる。そして何より恋人と公言していたにも関わらず二人の仲が壊れつつあることは控えめに言ってみていて気の良いものではなかった。

 その思考に陥らせている奴の振る舞いに俺は苦言、いや否定を入れる。

 

「だが、お前のそれはやがて自分自身も破滅させるぞ。徹底的に悪を潰すそれはお前の思考では耐えられない。悪いとは言わないがお前は」

 

「気遣い、感謝するよ。流石は警察の公安までその年齢で登り詰めただけある」

 

 一言で分かる嘘だ。もっと内面で苦しくもがいているイメージを感じ取れた。きっとそれに気づいたこちらを悟ってもいる。そのうえで元は覚悟とも取れる願いを告げる。

 

「だけどな、俺は止まらない。奴らにとっての絶対悪として戦い続ける。俺は魔王。人類にとっての救世主で、信者にとっての魔王。例えそれが非難されても、この身が果てようとみんなの平和とあいつの願いは果たす」

 

「……それは本当に平和なのか?」

 

 問いかけに沈黙をぶつけてくる。やがてあいつは沈黙に耐えられずに部屋を出ていく。寸前、置き土産の如く言い残す。

 

「宗司達の事、何かあったら頼む。嫌な予感がする」

 

「そうかい、覚えておくよ」

 

 部屋のドアが閉まる。再び部屋に静けさが戻る。時間はちょうどいい頃だ。

 出撃の準備の傍ら、あいつの対応に愚痴をこぼす。

 

「王を名乗ったとしても、自分が生きてなきゃ意味ないだろ。女を泣かせる馬鹿が、今にも童貞にナイフ突き立てられるぞ」

 

 それは自分とは違う、どれだけ突き放しても尽くしてくれるパートナーを見捨てるアイツへの恨み節だった。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP63はここまでです。

レイ「本当にお茶を濁した……でもまぁここで宗司君と古橋さんを早速絡ませてくるんだね」

ジャンヌ「忘れないうちに、というわけですか?」

そういうこと。やっぱ早めに書きたかったですし。

レイ「表向きのドライバ、ユグドラルの展開も解決方法を見出すとは流石エースパイロット、いや、エリート警官かな?」

ジャンヌ「公安に所属しているだけあって優秀ですね。すぐに解決策を出すとは。でもこれ元隊長達からも出そうなアイデアですよね。やっぱり後半の目的が理由ですよねこれ」

宗司君とエターナ、特に宗司君を心配した元君が他の人の意見も聞きたかったってところだからね。実際懸念通りに宗司君は抱えがちな感じだったし。

レイ「でも元君も痛いところ突かれてるね~。無理している精神……これやっぱり不安なフラグ乱立してるなぁ」

ジャンヌ「まぁでも逆にこれだけフラグ立てると生存はしそうですよね。嫌な事が起きそうではありますが」

そこは回避じゃないんですか……

レイ「だって最近配信やってたマク○スFじゃ隊長は死にかけたけど死なずに別の人が死んじゃったじゃん」

ジャンヌ「ヒロイン……ジャンヌさんが、というわけではないのなら、まさか今回再登場した夢乃さんが……」

おいおい君達……夢乃ちゃんを詩に引きずり込むんじゃないよ。

レイ「だって元君除いたら死にそうなの夢乃ちゃんだもん」

ジャンヌ「まぁそこは詳しくは追及しませんが」

ふぅ。では続く同日公開のEP64へ。


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EPISODE64 聖戦の始まり2

どうも皆様、藤和木 士です。引き続きEP64の公開となります。

ネイ「ワンクッション挟んで、またワンクッションとかあります?」

流石に(ヾノ・∀・`)ナイナイ

グリーフィア「じゃあ、戦闘開始ってわけね。はてさて、今回も無事にGチーム生き残れるかしらねぇ~?」

というわけで本編をどうぞ。


 

 夕刻、東日本政府部隊が新四ツ田第一基地を出た。HOWの艦艇フェアリーやヴァルプルギス、オーヴェロン。自衛軍の「暁光」、大型空中戦艦「天照」。それらが大量に合計30の艦隊で三枝県方向へと目指して進軍する。

 東勢力の艦艇による最大望遠で既にゼロン側もその艦隊を展開しつつあった。MSの発進も見受けられる。東側勢力もMS部隊発進が命令される。

 

『司令部からのMS発進命令受諾。各員発進シークエンスを開始してください』

 

「いよいよか……っ」

 

『Gチーム出撃を開始する。新機体・新兵装の者もいる。既存機がカバーを頼む。行くぞ』

 

 先発する呉川小隊長、そしてクルツの発進に引き続いて宗司もカタパルトから発進する。

 

「相模宗司、エターナ・ファーフニル、ガンダムDNアーバレスト行きます」

 

 Gを体に受けつつ、艦から発進するDNアーバレスト。通常形態のウイングで飛行を開始する。

 遅れて入嶋のガンダムDNアルヴ、クルーシアのシクサスリッター、進のオースインパルス・ルフトと合流してから編隊飛行を取る。チームの半数が新機体、あるいは新兵装装備となったGチーム。普段なら装備の感触など聞くのだろうが、大作戦ということで聞きづらくもなる。もっともそうでない人もいたが。

 そのうちの二人、クルツ先輩と入嶋がそれぞれの機体について回線越しに触れる。

 

『いやはや、このソル・シャドウ望遠距離も段違いだぜ。成層圏の向こう側まで狙い撃てるかもなぁ!ソージ!』

 

「あの……今回クルツさんも前衛なんですか?」

 

『クルツの機体、前線でも活躍できるようにはなっているほどに機動力は挙げられているらしいが実際にテストしていないからな。それに前線に居た方がまだカバーしやすいだろう』

 

「はぁ……」

 

『うぐ……私の……アルヴ、く!重い癖に挙動が過敏すぎる、きゃあ!?』

 

『千恵里ちゃ……!』

 

 余裕な呉川とクルツと対照的に機体バランスを崩しまくる入嶋。落ちかける機体を素早く進が立て直させる。

 しっかりしろと緊張から来る叱咤を飛ばす進。

 

『大丈夫なのかよ、そんなので。練習したんじゃないのかよ』

 

『したけど、シミュレーターと実機じゃ癖が違うんだって!っと、なんとか落ち着いた……』

 

『……入嶋は下げるべきか。クルツ、クルス。二人で彼女の支援を』

 

『了解だぜ~』

 

『了解です』

 

 呉川小隊長の指示に返答するクルツとクルーシア。周囲確認をしているとあることに気づき、呉川小隊長に尋ねた。

 

「そう言えば元隊長達は」

 

『聞いていなかったのか。隊長達は艦から遅れてスタートダッシュで一気に前線に躍り出る。前線にいるのでは加速時に敵スナイパーに捉えられかねないとな』

 

「あぁ……そう言えばそんなこと言っていましたね」

 

 先日のブリーフィングでも言われていたのだが元隊長達はゼロンのエースから狙われる傾向にある。エースをエースで止めるというのは戦場の常であると参謀からも言われており、ヴァイスインフィニットから人質を素早く抑えるには邪魔な障害だと挙げられていた。

 にもかかわらず参謀らの提案した作戦は「シュバルトゼロを突貫させて素早くヴァイスインフィニットを引き摺り出す」というものだった。

 あまりにも無茶な作戦に深絵隊長や夢乃さんからは反対の声が上がっていた。しかし元隊長自身が「よくあること」と仲裁し結局作戦は見直しも含めるが概ね同じになるとされたのだ。

 その見直しについて決まった事を呉川小隊長が言及する。

 

『見直しはされたらしいが、それも俺達と母艦との距離の間隔位だ。まぁエラクスシステムを使ってしまえばあっという間に飛び越すだろうな』

 

『いくらツインジェネレーターシステムとはいえこの距離をエラクスでひとっとび……これ戦闘能力に影響出るんじゃ』

 

 エターナも不安を過らせている。自分達の機体と元隊長達の機体は似てはいてもその最大戦力は全く違う。オリジナルのツインジェネレーターシステムから生み出される粒子生成量はリミッターを設けて段階的に上げられる。それを駆使すれば機体性能は問題ないのかもしれない。

 だが動かすのは人間だ。元隊長もジャンヌ副隊長もDNLだが、それでもフィジカルはそう変わらないという。老化が大幅に停滞しているとしても肉体の強度が爆発的に上がっているわけでもない。果たしてそれが体力をわずかでも減らすだけに留まってもあのヴァイスインフィニットガンダムと呼ばれる存在に不利にならないのかどうか。

 その考えに呉川小隊長は分からないとする。

 

『分からん。だが言えるのはあの人の戦闘能力は俺達とかけ離れていること、そして支援に入ったところで互角に戦えるわけじゃないことだ』

 

「……」

 

 沈黙で返す。するとエターナから敵艦隊に動き有りとの知らせがチーム全員に伝えられる。

 

『!敵艦隊から高エネルギー反応。MSも射撃態勢!』

 

『こちらも攻撃態勢に入る。味方の弾幕に当たるなよ。砲撃戦開始!』

 

『呉川小隊長、後方より高エネルギー反応……この感じ、シュバルトゼロです!』

 

 クルーシアの言葉が飛ぶと同時に後方から凄まじい圧を感じ取る。それは一気に動き出し展開しているMS群の合間を抜けていく。

 気づいた時には既にシュバルトゼロクローザーが前方に姿を現していた。超加速状態で突っこんでいっている。機体の前方に光が灯る。砲撃が放たれた。

 一斉射撃による砲撃同士が空中で激突しいくつもの閃光となって散っていく。弾雨の雨を宗司達も掻い潜って前進を続けた。

 

「くっ、いつもより弾幕が激しい」

 

『各機密集しすぎるな。お互いの激突で隙を作るんじゃないぞ』

 

『へへっ問題ねぇ!千恵里ちゃんは気を付けろよッ』

 

『クルツ先輩も油断しないでくださいよっ!!』

 

 こうして戦端は開かれた。ある者にとっての戦争、聖戦、またある者にとっての因縁の対決の幕が切って落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 弾雨の中を蒼炎に染まったシュバルトゼロクローザーが駆け抜ける。先程の一斉砲撃で前面に展開した機体はある程度撃破したが、それでも弾の雨あられは全くと言っていいほど落ちていない。

 決戦の為に集めた戦力がどれほどかよく分かる。エラクスシステムで回避できてはいるが、突っこむのは愚策だろう。

 後方が追いつくまでは時間がある。本来なら撹乱しながら味方の到着を待つのがこの場面のセオリーだろう。だが今回は短期決戦で行かなければならない。

 被害は甚大になるかもしれない。それでも「あれ」の使用を決意する。ジャンヌにジャッジメントクローズモードの使用と共に告げる。

 

「ジャンヌ。エラクスを解除してジャッジメントクローズモードに一時的に移行する。戦術級DNF「スターフォールエリミネイション」を使う」

 

『っ!!それは……下手をしたら味方まで……いいえ、最悪ヴァイスインフィニットを!』

 

 撃墜しかねない。彼女の意見はもっともだ。しかし直感で分かる。あいつはまだずっと奥にいる。前線で奴の気迫を感じない。

 代わりにもっと別の者がこちらに来る感覚を覚えている。これはおそらく、真紅の流星の再現と蒼穹島の英雄だろう。

 その二人は真っ直ぐこちらを目指して左右方向から来ている。彼らとも対峙しなければならないやもしれないなら、ここで敵の攻勢を削ぐ必要があった。

 ジャンヌもきっとそれには気づいているだろう。故に俺は言い聞かせた。

 

「落とす気でやらなきゃ、奴は出てこない。俺達の負け以外にも味方が戦線崩壊しても作戦は失敗なんだ。俺達の我儘を通すならその覚悟を示す」

 

『―――っ、はいっ』

 

 躊躇いを振り切って苦しさを見せながらジャンヌが了解するのと同時に蒼炎を消したシュバルトゼロクローザーに黄金の輝きを纏わせる。

 

「ジャッジメントクローズモード、起動!!」

 

『ジャッジメントクローズモード、アクティブ』

 

 シュバルトゼロクローザー最強の形態が戦場へと姿を現す。途端に体への負担がより大きくなる。

 まだ戦闘開始からそんなに経ってないのもあって負荷は充分許容範囲内だった。素早くジャンヌが味方回線に向けて緊急通信で戦術級DNFの使用を通達する。

 

『味方全部隊へ通達!これよりシュバルトゼロクローザーは戦術級DNF「スターフォールエリミネイション」を発射します。発射圏内に入らない様にしながら支援をお願いします!』

 

『はぁ!?戦術級DNF!?』

 

 一気に回線がパニック状態になる。しかし了解を得られる時間はない。エリミネイターソードにエリミネイターソードビットを合体させて発射態勢を取る。

 

『敵機、こちらを狙っています!』

 

「エリミネイターソードビット、DNウォールッ!!」

 

 素早くもう片方のソードウイングシールドからビットを放出し、前面にDNウォールを作り出す。攻撃を防ぎながらDNFのチャージと着弾位置の調整に入る。

 後方では可能な限り支援しながら回避を続ける味方機体の姿が分かる。その時ウォールの側面付近ギリギリでこちらを攻撃する敵機が現れる。ハリヴァーの駆るシナンジュ・ゼロン・ハルと真藤一真の駆るタイプツーだ。

 もう来たのかと思いつつもその時は既に来た。DNFのチャージ完了を確認出来た。

 

『元っ!』

 

「行くぞ!」

 

 掛け声と共にDNF名がシステムに読み上げられる。

 

『Ready set GO!DNF「スターフォールエリミネイション」!!』

 

 正面に展開していたソードビットがDNウォールを解除する。同時に邪魔してくるシナンジュ・ゼロンとタイプツーを足止めする。それらに目も暮れることなく敵本隊へ向けたエリミネイターバスターソード・ライフルモードの開いた先端から、漆黒の球体が作り出される。

 暗黒と形容するにふさわしい球体は形成しきると先端から敵に向けて放たれる。

 それはかつてヴァイスインフィニットと二度目に激突した際咄嗟に繰り出したDNF「シャドウアウト・ディメンション」を発展させたもの。より強力な次元崩壊武装として昇華させた技だった。

 ヴァイスインフィニットのシャインライト・ディメンションと激突した際には超次元現象を共に引き起こした技。あの時は偶発的な超次元現象だったそれがこのスターフォールエリミネイションではその数十倍の威力を誇る。

 つまりは、こういうことだ。

 敵陣へと到達した漆黒の球体が破裂する。破裂と共に超次元現象の渦、さながらブラックホールが現れ、周囲に破壊の粒をまき散らしながら全てを飲み込んでいく。

 その影響は空中まで及ぶ。迎撃に回していたソードビットを回収、ジャッジメントクローズからアズールハルピュイアへとモードチェンジして一気に上空へと退避する。こちらを襲っていた二機も別方向の空へと逃げた。

 異常なまでの次元崩壊現象は続く。海の水をも巻き上げて辺りは天変地異と言う具合の状況で敵はパニック状態。味方からもそのあまりにもとんでもない光景に驚く者は多い。

 

『何あれ、ブラックホール!?』

 

『戦術級って……核みたいに危なくないんです!?』

 

『こんなもの……シュバルトゼロ一機が起こして……?』

 

 まさに星落とす殺戮者(スターフォールエリミネイション)。やがて超次元現象によるブラックホールは収まるが、大半は渦に飲み込まれ消えて残った空中艦も動力のオーバーヒートで浮力を失って海へと落下していく。

 戦線が瓦解した隙を狙ってクローザー・アズールハルピュイアモードで再度突撃を行う。直線状の敵機はまだ立て直している最中で抜けるのは容易い。そう思ったが追いついて来たハリヴァー達が阻みに来る。

 

『悪いが、ここから先は通さん、と言っておこうか魔王!』

 

『いたずらに無の境界を操る……お前達も俺と同じだろう?』

 

「っ!空っぽ野郎と祝福の救世主か!」

 

『味方部隊再度進撃開始です!』

 

 ジャンヌの報告を受けながら両者との相手を開始する。ファンネルと周辺空間凍結化で近づけさせない様にしつつ進撃を続ける。

 行く先の敵機はいずれも近づけばたちまちエレメントフリージアで凍る。ビーム射撃だけならまだ対処はやりやすい。とはいえ追ってきている両者に同じ手は通用しない。

 両者共にそれぞれの展開出来るフィールドで機体を包んでいる。先月の戦いでゼロンのゾルダー・ヴァッターマンが編み出した対処法をきちんと共有しているようだ。

 流石にエースとなればそういった戦術を取られるのは仕方がない。ならばこちらも相応に対応して見せる。ファンネルの弾幕を隠れ蓑にハリヴァーへと急襲する。

 

「てぇい!」

 

『ちぃ!』

 

 ビームサーベルによる斬りかかりは避けられるが、瞬時に反対の手のバスターライフルを狙い放つ。フィールドを直撃し機体を吹き飛ばす。

 その後ろを取る形で真藤一真のタイプツーがガンブレードランスで奇襲を掛ける。

 

『はぁっ!』

 

「んのやろっ!っ!?」

 

 ガンブレードランスとシールドが触れた瞬間意識の逆流を感じ取る。直後真藤の言葉が脳裏にも響く。

 

『何で殺し合う。平和を勝ち取る方法は一つだけじゃない。殺さない戦いだって、出来るのに!』

 

「お前達に、それが言えるのかッ」

 

 ふざけるなと武器の触れ合う箇所から生えだす結晶を右手に出現させたジェミニソードで斬りほどく。

 相変わらず、その考えには反吐が出る。大守と同じだ。平和の為に武力を使うなと言っておきながら自分達は武力を蓄え、あまつさえ戦闘も辞さない。そのほとんどは自衛ばかりだが、敵対勢力の殲滅にすら力を貸さない姿勢は自衛軍やHOWからも不評だった。それを今回何とか引っ張り出してきたのだ。進達の存在に感謝せざるを得ない。

 島に囚われている自己中心的な、自分達は例外と言うべき真藤のその考えに切っ先を向けて言い放つ。

 

「お前達はそれをしたのか?今やっているのは殺し合う戦いだろう。お前はそれを取った。ならそうじゃない戦い方も出来るなどというのは、妄言でしかない!」

 

『ぐっ!妄言じゃない!どれだけ傷つけあう戦いでも、痛みがあると言わなければ、痛みを痛いと言えなくなる世界になる』

 

「綺麗ごとで飾るな。俺達がやっていることは争い、平和の為に意思をぶつけ合う。傷つこうとも前へ進む。それが間違っているなどと言う、お前達の意見は的外れなんだよ!これもまた平和を勝ち取る方法だ。非戦を持ち上げるな!」

 

 主張と共に銃剣と銃槍がぶつかり合う。どれだけ平和を叫ぼうと、目の前の奴らはその平和を壊し続けた。取り込まれた、などと言っても結局従っているのなら同じ。

 それでも、と突撃と共に叫ぶ。

 

「それでも平和を望むなら、まずは自分達の行動を見返して見ろ!痛みを訴えているにもかかわらず、敵に痛みを与えている!」

 

『違う!痛みは悪じゃない。痛みを伝え合って分かり合う。理解するのは、お前達だッ』

 

 激突と同時に再び弾き合う。追撃の一撃を放とうと素早くバスターライフルを構える。ところがアラートに反応し中断せざるを得ない。

 肩のシールド、DNウォールで長大なビームサーベルを受け止める。アームユニットで攻撃してきたハリヴァーが意見に異議を唱えた。

 

『フン、綺麗事をと言っておきながら君のそれもまた綺麗事だな魔王』

 

「ハリヴァー……!」

 

 距離を取ったこちらへその間違いを語って見せるハリヴァー。

 

『痛みなど飲み込んでしまえばいい。それ以上の闇で。君達が考えなしに宗教を弾圧する様に』

 

「それは違うな、間違っている。俺達が戦っているのは痛みを忘れて勝手な解釈をし、矛盾を正さない者達。自分達の痛みだけを癒す者」

 

『矛盾している、それは平和でもある。一定の矛盾を受け入れないことは逆に悪だ。そう、我らの存在もまた、世界のあり方、必要悪なのだよ』

 

「何が必要悪だっ、貴様らは只の悪だっ」

 

 機体の手を上げるハリヴァー。一斉に周囲を囲む形になっていた敵MSが銃を向ける。絶体絶命。アズールハルピュイアでも無傷で避けられるかどうか。

 ハリヴァーの一声と共に攻撃が開始された。

 

『やれっ』

 

 放たれる弾丸。同時にこちらも仕掛けた。

 

「スカルキング!」

 

『鎧袖一極!スカルキング!』

 

 超重装甲形態、スカルキングへと移行するとエレメントボルテックスが機体全体へと迸る。更に掲げたランスからの電撃がビームを防ぎ、敵へと向けて跳ね返していく。

 攻撃を行った側が逆に撃墜される。悪夢のような光景を見せつけるこちらにハリヴァー達はまさに悪魔だと形容する。

 

『その力、もはやMSの域を超えている。悪魔は討伐する』

 

『悪いが話を聞かないなら俺達はあんたを倒す。俺達の痛みを否定されたくない』

 

「だったらやって見せろ。それもまた、そもそも他人の痛みの否定だ。自分達だけが今痛いと思うな!器や救世主と思い上がった奴が、勝手に決めんじゃねぇ!」

 

 逆に器や救世主とまくし立て排除に掛かる。目の前の敵に時間は掛けてられないのだ。邪魔する敵は全てこの手で投げ捨てる覚悟でアレスマグナとなって向かっていった。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP64はここまでとなります。

ネイ「新型機の活躍に目を向けようとしていたら、いきなりぶっ飛んだ必殺技が飛びましたね……」

グリーフィア「星落とす殺戮者とかネーミングFG○かしら?」

ぶっちゃけそこは意識しました。やってみたさあったからね。まぁそれと同等の戦術級のDNFです。それを開戦からすぐに撃つことで、戦力の低下と敵の混乱、直線距離の短縮を行ったわけです。引き換えに彼らの機体のエネルギーや体力を少々失ってね。

ネイ「うわ、言い方」

グリーフィア「疲弊してばっかりだったら勝てる戦いも勝てないものねぇ。リソースを溜めて時には動かない。ゲームでも重要なんだけど」

今の元君はいかにして素早くレイア・スターライトを取り戻すかが最優先事項ですから、それ以外はほぼ度外視してますね。

ネイ「台詞も攻撃的、粗暴なものが普段より多く見えます。ゼロンと戦っているからかもしれませんけれど」

グリーフィア「オース勢力の引き出し……進君を利用しているのも大分ヤバい感じだし。まぁでも言ってることについては同意はあるかもね。特に真藤一との言葉」

ネイ「戦っているのに非戦を、ってところ?」

グリーフィア「ちょっと違うかな~。まぁ実際非戦を促しているのに戦ってるっていうのは違うだろって思うけど、でも相手が話し合いに応じないなら武力もやむなしってね。それよりかは痛みを理解するってところかなぁ。一応聞くけどHOWとかはゼロンとの話し合いはしたりしたの?」

一応はしてるよ。けれどそもそも誘拐して止めても邪魔すんなと発砲している連中(意訳)な状況が続いてる。そもそもゼロンは一枚岩じゃないところが見え隠れしてるよね。これが多分こういう齟齬、ややこしい状況、正しいことと間違ったことを言ってて状況把握を複雑にしてる。割とこういうの現実のカルトの根深い問題ですし、まぁ救いようがない。まるっきりこれと同じではないというか多分現実はもっとひどい。
と、そんな話は今どうでもいい。話を戻してゼロンとHOW、日本政府はずっと正しさの下にすれ違っている。まぁぶっちゃけこれまでを見ればゼロンとか結局は自分達が一番って思っているだけだから。

ネイ「すごい酷い評価ですね……」

グリーフィア「まぁ言わんとしたいことは分かるわね。狂った人間には話し合いは通じない、ってこと」

そういうことだ。さて、そんな彼らの戦いが今回からしばらく続いていきます。どんな胸糞発言が出るか、そして激情の声が飛び交うのかお楽しみに。

ネイ「楽しみにすべきものじゃないと思いますが……次回もよろしくお願いします」


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EPISODE65 聖戦の始まり3

どうも、藤和木 士です。EPISODE65と66の更新です。

レイ「今回は早いね」

ジャンヌ「劇中で戦闘も始まっていますし筆が乗ったということで?」

寧ろ速度落ちてんだよなぁ。もしかしたらまた長く待たせるかもと。それでは早速本編をどうぞ。


 

 

 シュバルトゼロクローザーがゼロンエース二機と戦う頃、既に東側戦力の各エース部隊もゼロンのエースと激突を開始していた。

 オースの英雄二人はゼロンのタイプシリーズこと黄金のタイプシリーズ「タイプ[リズン]」と対峙していた。が、その圧倒的性能に押されていた。

 

「ぬぉぉ!?」

 

「正!くっ、フリーダムでも回避が精一杯……こんな、これは!」

 

「ハハハハハ!!こんな程度か、種命島ご自慢のコーディネイティアは!」

 

 種命島勢力だけでは抑えきれない様相を見せていた。一方自衛軍のアンネイムド率いる部隊はタイプシリーズの二機タイプ[イグジスト]、[ディナイアル]との対決を展開する。

 

「くっ、これがタイプシリーズ……確かに僕らの機体と似ている」

 

「似ているからこそあなたには理解してもらいたい。あなた達は私達と戦う理由なんてない」

 

「白!そいつらの言葉を聞くな!こいつらは日本の政府を、乱す者だ」

 

「乱しているのはお前達だろ!こんなやつらに理解してもらわなくとも!」

 

 両者形質的にも似通った力で激突し、言葉を交わし合う。相手への理解と今の日本の主導権がどちらにあるかを問いながら。

 その様子を横目に深絵と夢乃はシュバルトゼロクローザーの後を追って進軍していく。

 左方向には本来元が率いるはずのCROZE部隊、Gチームがよく見えている。新型の機体・装備が多いが今のところ被弾もなくよくやっている。

 片手間に向かって来る敵機と交戦しながら深絵は夢乃と話す。

 

「シュバルトゼロクローザー……速すぎるよ」

 

『やっぱりそうですよね。進軍スピードが追いついていない』

 

 元達のスピードが速すぎる。想定していたよりもこちらが追いついていない状態で奥へと進んでいる。DNの散布によって通信もやや阻害され出していて声も届いていない様に思えた。

 やっぱり、元君が焦っている。早くレイアって子をジャンヌちゃんの下に返したいって思いに逸っているんだ。

 急ぐ元に何とか追いつこうと夢乃にも全速前進を指示した。

 

「夢乃ちゃんビットで突破口を開く。開いたら一気に突撃して!」

 

『了解です!』

 

 返答を聞き届けてからライフルビット、ホルスタービットで陣形を作る。ひし形を三つ正面に重ねて展開し、筒状の銃口を向ける。一番外側だけがやや大型の窓枠を正面方向に作ったそれは一直線に敵を捉えていた。

 そこに向けスナイパーライフルを構える。もはや狙いは丸わかりだ。しかしそれでいい。撃墜しようができまいがそこに「穴」が作れれば。

 トリガーを引き絞りビームを放つ。ビームはホルスタービットの枠を通過するとエネルギーを増大させて次の枠へと伝達、より出力の高いビームへと昇華させていく。最前面のホルスタービットまで到達すると溜められていたビームが一気に放出された。

 放出したビームはまるで大洪水の放水とでも言うべき勢いで、竜巻を横倒しにしたような攻撃範囲を持って敵陣営へと放たれた。

 ビームに気づいて敵機が逃げ出す。だがその圧倒的な攻撃範囲は並大抵のMSでは外側しか逃れられず、大抵のMSを飲み込んだ。加えて艦艇もビームの中に呑みこまれる、あるいは巻き込まれて艦体の半分を喪失しながら撃沈していった。

 敵艦隊を貫く形で通り過ぎたビームの後には敵がほとんどいない。すぐに埋まるのは分かっていたがそれでもこちらの狙い通り進撃のチャンス。夢乃を先頭に突撃していく。

 

『突撃!弾幕なんて、全部切り捨てるっ!』

 

 宣誓を口に突撃した。それを早速実現させる様に狙い澄ました一発が夢乃のグリューンアハトガンダムに向けて襲い掛かる。

 

「夢乃ちゃん!」

 

『っと!』

 

 ビームを手にした銃剣「バトルザッパー」で弾き返す。返す刀で反撃しようとする夢乃だったが、その姿を視認して唖然とした様子を見せた。

 

『なっ、なんであんたが!?』

 

「……あなたは」

 

 深絵も気付いた。攻撃を放ったのは本来こんな前線でいるはずのないMS。後ろで戦闘指揮をやっているような機体のはずなのだ。計算違いの敵機の遭遇に絶句してしまった。

 対する敵MSからは動揺が指摘される。

 

『―――そんなに私がいることが想定外かなっ』

 

「っ!!」

 

 そのまま速射される。間一髪膝のSPIRITをフィールドモードで起動して攻撃を防いだ。その間にこちらもスナイパーライフルを構える。

 流石はゼロンのエースパイロットの中でも格が違う相手。ハリヴァーのコピー元。

 そのパイロットと機体の名を呼ぶ。

 

「相変わらずこっちの裏をかくのが好きですね、戦線指揮をしなくていいの?真紅の流星、いいえ、シャア・アライバル!ゼロ・サザビーは止めて見せる!」

 

 彼こそゼロンの最強のパイロット、DNL使いにして真紅の流星の再現のオリジナル。

 ゼロ・サザビーはそんな彼の専用機。しかし元を辿ればその機体はかつて自衛軍で開発されたソルジアⅡカスタム「アケシキ」がベースだ。

 数年前の機体に遅れは取らないつもりだ。が、そんな意気込みは崩れ去ることになる。

 

『ほう。これほどまでに私のゼロ・サザビーを知りながら恐れを知らないとは。そういった人材は、稀有だな!』

 

「くっ、待てっ!」

 

 戦闘機動に入るゼロ・サザビーに向け足止めの一射をスナイパーライフルから放つ。だがそれは掠めもせずに空へと消える。追いかけようとするがその必要すらなかった。

 シャアは周囲を飛び回りながら攻撃を仕掛けてきたのだ。

 

『私は逃げんさ。君達を、ここに縫い付ける。魂もな!』

 

 素早く周囲を移動しながら攻撃を仕掛けてくるゼロ・サザビー。包囲する敵、味方の機体の体を蹴り、スラスターも駆使しての機動に対し、夢乃も深絵も応戦する。

 夢乃はスラスターを全開にして追いつこうとする。が、届く前に離れて苦し紛れの一発も交わされる。

 

『速い!』

 

「任せて!」

 

 続いてその逃げるゼロ・サザビーの行く先を予測してこちらが狙い撃つ。かなりの速度とはいえ、軌道は読める。そのままいけば当たる動きだ。

 しかしゼロ・サザビーは動いた。シールドを軸に軌道を変更、速度を落とさずに攻撃を回避した。

 あの感じ……シールドのスラスターで避けた?いや、そうだとしても適切な推進量を噴射しなければ機動時にバランスを崩すはず。それを容易くやって見せる姿は、やっぱり元君と同レベルのDNLだから……っ。

 考えている間にもライフルの射撃が飛ぶ。通常弾に加え散弾が飛んできていくらかを被弾する。夢乃もグリューンアハトのビームウイングで機体をカバーして防戦一方になりつつあった。

 

『くっ!動けない……』

 

「進撃を止められる……これが、ゼロンの真紅の流星の実力……!」

 

 その彼女らに余裕を見せたシャアは作戦の真意について語る。

 

『君達も狙っているはずだ。魔王の駆るシュバルトゼロと我らが救世主と駆るヴァイスインフィニットとの対決を』

 

「っ!なんでその事を……」

 

『まさか……ゼロンも狙って!?』

 

 シュバルトゼロとヴァイスインフィニットの対決を、あちらも想定していた。となれば相手もそれを狙ってこの作戦を遂行していることになる。

 予想としては立てられていたが、本当に敵は知った上で行動している。ならば罠が仕掛けられている可能性も……。

 シャアはこちらの考えに首を縦に振った。

 

『今宵時代が動くのだろう。世直しなどではない。革命の刻。生憎ながら私は革命も世直しも興味はないが』

 

「興味がないのなら、どうしてゼロンに」

 

『自衛軍もまた粛清される対象だからだ!それを理解出来うるのは奴しかいない!』

 

 こちらの射撃を回避して斬りこんでくる。間一髪夢乃のグリューンアハトが割って入って反撃に転じる。

 

『何?私達は眼中にないって!?』

 

『君達だけではない。シュバルトゼロすらも私には興味はない。故にヴァイスインフィニットに討たせるのみ!』

 

「そんなこと、させないっ!」

 

 鍔ぜりあう横からゼロ・サザビーをビットと共に狙い撃つ。ところが素早く鍔迫り合いを解除してゼロ・サザビーは攻撃から逃れる。ビットすらも足場にして腹部ハイメガキャノンの拡散弾が襲い掛かる。

 二体一にも関わらずこの圧倒的な力。元達と模擬戦をしたときのような感覚を覚える。機体性能差が縮まっているのに加えてこれがDNLと自分達との差。

 そうだとしてもこの戦線を持たせなくてはならない。ここをこの男に突破されたら撤退する他ない。私はそう決意し、夢乃ちゃんに何としても戦線を維持、撃退することを意気込む。

 

「絶対にここで食い止めるよ夢乃ちゃん!」

 

『もちろんですよ深絵さん!』

 

 久々に見せる時が来た。二人のコンビネーションを見せつける。

 

 

 

 

 各部隊が敵戦力と対峙していく中、Gチームは未だ進撃を続けていた。だが彼らにとってはまだその方が二つの意味で助かった。

 どのみち進撃は続けなければならない。陣取りゲームの要領で適切な空域を占領しておけば相手はそこに戦力を裂かなければならない。その間に別の空域が楽になれば間接的に支援になるし、こっち側から背後を取る動きも出来る。

 そしてGチームは特に新型MSが多い構成となっている。同時に新人も。三か月最前線で戦ってきたとはいえその練度は危うさもある。そこに新型機体が来たとなればいつもの実力を出せるかどうかは明白だった。故に進撃を続けているというのはそれを阻害する「強敵」とまだ接敵していないという事実なのだ。

 それがどれだけ幸運なことか。その恩恵を多く受けているのはGチームの一人入嶋だった。

 

「ぐぬぅ!そこっ!」

 

 敵の攻撃を増加装甲内に仕込まれた強化スラスター「フェアリィスラスター」で回避しながら右腕部のガンアサルトⅢで攻撃、撃墜する。

 最初は重いだのバランスがだのと言っていたがなんだかんだ使えてはいた。しかし使えるだけであってその問題は解消しきれていなかった。重い装甲の癖にスラスターは出力が高すぎて制御は困難。じゃじゃ馬が過ぎる。遅いと思っていた機体の動きは逆にスラスターが過敏に働き、重りが却って加速時のGを掛ける結果となっていた。

 端的に言えば速いが空中を飛び回れる機体ではないというものだ。オーダー通りで無くてよかったのか悪かったのか……。もっともそんなことを悠長に考えていられもしない。クルスがすかさず意識外の敵機を撃つ。

 

『千恵里ちゃん危ない!』

 

「っ!クルス!」

 

 クルスの声に反応して回避行動を取る。再びGに息が詰まるが素早く向きを整えてバックパックのヴァルスビーで狙い撃った。敵をシールドごと貫き爆散させた。

 乱戦の中呉川小隊長から現状を維持しつつ前進することの命令を受ける。

 

『各機、このままこの空域を押し返す。エネルギー補給が必要なら言え』

 

「エネルギー残量、問題ないです!」

 

『武装損失ほぼなし。パートナーの消耗も規定値。アーバレストも行けます』

 

 同型のアーバレストもドライバフォーム状態となっているが問題ないと宗司が語る。

 元々同程度のスペックで競争していくとなっていたはずの二つのガンダムDN。しかしアーバレストはDNL機として輝かしい道を進み続けているが、対する自分は扱いの難しい装備ばかりを押し付けられている。

 使いこなすと星北の前で言った手前、文句などはないがそれでも与えられた装備を十全に使える宗司に焦りを覚える。嫉妬の感情を知らずに抱いてしまっていた。

 それを察していたクルスからは心配されてしまう。

 

『大丈夫。千恵里ちゃんは千恵里ちゃんだよ。ちゃんと役割があるなら役立ってる』

 

「クルス……」

 

『それより今は戦いに集中して。ゼロンが本気なら私でも千恵里ちゃんを護りきれない』

 

 クルスでも太刀打ちできないという発言にハッとして戦いへと意識を戻す。クルツ先輩からもクルスの言葉が正しいと予測する。

 

『クルスちゃんの言う通りだな。途中まで一緒だった蒼梨隊長さん達を抑え込んだ真紅の流星……。直援の部隊とかがこっちを全力で止めなかったのは何かある。いや、誘い込まれてるな』

 

「誘い込まれて……」

 

『俺も同じことを思っている。元隊長の支援のために引き付けなければならないのは分かっているが、こう誘い込まれては撤退の判断も……』

 

 渋々撤退の判断も仄めかす呉川。その呉川の予感が現実のものとなった。新たな敵反応をキャッチしたアーバレストのエンゲージパートナーであるエターナがGチームへと伝達する。

 

『ちっ、新しいお客さんよ。反応四つ!これまでにパターンの例のない新型二機、もう二機は……っ!?この機種って』

 

 動揺を口にするエターナちゃん。口はきつめだが割と冷静な思考を持つ彼女が敵のパターンを解析してそこまで驚いた事例は少ない。余程の想定外の敵と見える。

 そしてそれが何なのか。彼女から聞くまでもなく、Gチームのとあるパイロットが接近する敵の姿を視認しての反応で分かった。

 

『っ!なるほど。お前もやっぱり来たのか!』

 

 そのとある一人、進が声を上げた対象は間違いない。2か月前オースの記念式典でオース軍を裏切っていたパイロット達の操るステージツーシリーズのガンダム「オースカオスガンダム」「オースガイアガンダム」の二機だった。

 それら二機が今までに見たことのない、ガンダムに似て異なる耳の部分が大きく伸びた頭部と腰の後ろから左右に広がる翼のような珍妙なユニットを備えた機体を引き連れている。こちらの姿を認めたオースカオスが一気に加速して詰め寄る。

 

『零!』

 

 応じるように進のオースインパルスもビームサーベルを抜き放って突撃する。二機が空中でサーベルをぶつけ合わせる。

 進の回線から火葉零の声が聞こえてくる。

 

『進!今日こそお前を落とす。ギルの前に立ちはだかる、裏切り者をここで!』

 

『それはこっちの台詞だ!オースを裏切って、俺達を裏切った事!反省してもらう!』

 

 白熱する二人の会話。そこに割り込む一つの影。変形して空中跳躍を行うオースガイアによる奇襲だ。

 その動きに進が気づき、驚く。

 

『っ!?速い―――』

 

 それを咄嗟に前に出た呉川小隊長が防ぐ。バインダーから取り出したカッター状の武器でウイングのビームエッジを防ぐと、素早くオースガイアは空中で飛びのく姿勢を取り回転しながら人型形態へと戻る。

 そのまま呉川は戦闘体勢を取る様に言う。

 

『各機応戦しろ。ツーマンセルで行け』

 

『了解!』

 

「了解、ですっ!」

 

 千恵里達も構える。やはり敵も新型二機がそれぞれアーバレストとソル・シャドウ、アルヴとシクサス・リッターのペアで対峙を開始する。

 接近する敵機に向け胸部増加装甲内のマシン・ビームバスターを掃射する。だがガンダムに似たその敵機体は展開したDNの粒子防壁で防ぐ。

 

『DNウォールっ!?』

 

「っ!やってくれるじゃないの!!」

 

 DNウォールで射撃攻撃は効かないと判断し、ビームサーベルを抜き放って応戦する。相手もバインダーを後ろに展開し加速してぶつかってくる。

 その時接触回線がオンになる。相手に向かって咆える。

 

「たとえ新型でも、私は負けたりなんか!」

 

『!……へぇ、やって見せてよ、その意気込みがどこまで続くかっ』

 

 一瞬相手の声に胸がドクンと鼓動する。感じたのは懐かしさ。この声で何かが思い起こされるような感覚。私はこの声を聞いたことがあるような……。

 相手への疑念を抱く。しかし今は悠長に考えている暇はなかった。ビームサーベルを弾き合い、反撃の素早く構えたガンアサルトⅢとビームアサルトライフルの弾とが衝突しはじけ飛ぶ。

 戦いに集中して目の前の敵機との激突を繰り広げていく。その奇妙な激突に違和感を抱きながら、その疑念が大きくなって確信へと迫っていくとも知らずに。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP65はここまでです。

レイ「それぞれの戦闘が始まった……。名有りのエースとか新型も出てきて激戦を感じさせるね」

ジャンヌ「この世界での「シャア」も二人相手に抑え込む……実力は高そう、いいえ、高いんでしょうね」

戦いの幕は上がった。ここからそれぞれの戦いをしていくわけです。やがてその戦いは対立する二つの復讐者達の激戦に決着を委ねていくわけです。

ジャンヌ「対立する二つの復讐者……」

レイ「もう誰か分かっちゃうね。次でぶつかるのかな?」

気になる続きも同日公開。EP66に続きます。


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EPISODE66 白と黒の復讐者(リベンジャーズ)1

どうも、藤和木 士です。引き続きEP65と66の公開です。続いてEP66です。

ネイ「サブタイトルも変わってますね。ここからはあの二人との激突がメインになるという意志が見えます」

グリーフィア「それはいいんだけど……ルビはズってついてるのに感じは達が付かないのはミス?」

ミスっぽいけどミスではないです。とりあえず本編をどうぞ。


 

 

 ゼロン軍と東日本連合軍の戦闘開始からおよそ30分が過ぎた。各部隊、隊長達がエースと交戦する頃には艦隊戦もまた活発化していた。

 東日本連合軍の旗艦の一つ、HOWのヴァルプルギスも紫音艦長の指揮の下奮戦していた。

 

「左前方、敵艦に向けてミサイル掃射!」

 

「前方敵、砲撃体勢!」

 

「掃射後反動を利用しつつ右下方に向けて回避!避けられない弾はDNウォール曲面でずらしなさい!有野、回避任せる!」

 

「ぐっ、了解っ!」

 

 艦橋で次々と指示を飛ばしていく紫音。攻撃を何とか回避し、反撃へと転じる。艦体上部のビームキャノンが攻撃をした敵艦に向かって発射、着弾の報告がされる。

 

「敵艦に着弾確認!後退して別の艦に」

 

「数だけは多いわね……直援のMS部隊への被害は?」

 

「被害はほぼなし。敵MSも近づけさせていません!」

 

「チームG敵エースとみられる部隊と交戦開始!ウチのオースカオスとオースガイアもいます~!」

 

 たった今真由からGチームの交戦開始が告げられた。報告を聞いて紫音は戦術を再び整理する。

 オースのエースにはゼロンのタイプシリーズ、アンネイムドには白黒のタイプシリーズ二機、SABERの深絵隊長と外縁防衛部隊長の夢乃さんには真紅の流星……そしてGチームにはオースの裏切り者と新型をぶつけてきている。確実にこちらの攻勢を削ぐような部隊配置。定石と言えば定石だ。

 しかしそれだけでは説明のつかない配置でもある。なぜ深絵隊長と夢乃部隊長の相手が真紅の流星当人なのか。普通なら数の優位的にシュバルトゼロと戦っている再現と蒼穹島の祝福の救世主を充てたくなる。最高戦力であろう真紅の流星をシュバルトゼロに充てないのはなぜなのか。

 逆に考えてみよう。彼を深絵さんや夢乃さんに充てるのはどうしてか。考えられるのは、シュバルトゼロをどうしても止めたかったから数で押さえるため?いや、そうだったとしても敵も以前の作戦で数を並べても今のシュバルトゼロクローザーを止められないというのは分かり切っているはず。なら……深絵さん達を絶対に止める為……?彼女達を万が一にも前に救援に行かせない為に……いや、これも物証が足りない。だったらシュバルトゼロクローザーにあの二人を充てる意味などない。分かりやすくノーガードで通した方が戦力は大きく削られる危険性はないし、なんならその二人をこちらへの攻撃手としてやればこちらもそちらに戦力を裂かねばならないのに。あの二人がクローザーを倒せるとは思えない。

 むしろこちらにとって有利。そう考えたところで気づく。

 

(ちょっと待って、まさか誘い込まれて!?)

 

 考えに至った瞬間、敵艦隊に大きな動きが起こる。観測から報告が上がる。

 

「敵艦より高エネルギー反応!えっ、これ陽電子砲!?」

 

「陽電子砲ですって!?くっ、回避全力!僚艦にも回避打電!」

 

 唐突に出た陽電子砲という単語に一気に考えが吹き飛ぶ。あんなものを地上で放つとは正気か、などという考えよりも艦隊がズタボロにされると回避をすぐさま全艦へと通達させる。

 わずかな輝きの直後、敵の新型艦から陽電子のレーザーが戦場を貫いた。ヴァルプルギスは全力回避するが艦体が激しい揺れに襲われる。

 

『うわあぁぁぁぁぁ!!』

 

 ブリッジに響き渡る悲鳴。紫音は衝撃に耐えながらそれでも敵艦を見る。完全に衝撃が収まった後、すぐに被害報告を知らせるように言う。

 

「被害状況!」

 

「ヴァルプルギス、右翼損傷軽微、後部コンテナユニット消失!」

 

「味方艦、フェアリー級二隻轟沈、四隻が損傷で撤退開始」

 

「自衛軍艦も「暁光」三隻が戦線離脱とのこと。旗艦「天照」は無事です」

 

 損害は九隻か。冷静に戦力計算を行う。こちらの戦力のおよそ二割がさっきの攻撃で撃破された。

 もっとも相手の戦力も最初のシュバルトゼロクローザーのスターフォールエリミネイションで前面の部隊は壊滅しているわけなのだが。

 しかしそのせいで中腹に居たはずのあの旗艦が前に出てきたのは間違いない。望遠で見えるその艦影は艦首に天使か女神のようなレリーフを取り付けている。女神像のレリーフの上には発射したばかりの陽電子砲の砲口が見えており、それらが排熱機構を作動させながら閉口していくのが見える。

 ブリッジの要員からもその機構に唖然の声が漏れる。

 

「な、何あれ……女神像?」

 

「……洒落た真似をしてくれるじゃない。紫の女神なんてあだ名されてる私の前で!」

 

 しかし紫音はその衝撃から素早くメンタルを立て直すと、宣言通り珍しく意趣返しの為に次々と行動を起こす。

 

「戦線を立て直すわ。弾幕を張って、砲撃!MSを近づけさせないで」

 

『了解!』

 

 まずは通信担当以外に艦の姿勢制御、攻撃の再開を指示する。続けて通信担当に僚艦への指示を飛ばす。

 

「光巴、真由。僚艦に通信。敵陽電子砲発射艦のマーキングと搭載MS部隊に敵の狙いを知らせて。おそらく彼らはこちらを誘い込もうとしているって!」

 

「は、はい!」

 

「っ!お兄ちゃん達にも伝えなきゃ!」

 

 指示を受けた二人はすぐにコンソールを操作しすぐさませわしなく口を動かし続けて命令を伝達する。

 紫音もまた艦長席手元の受話器を取ってとある場所へと掛けた。

 

『こちら旗艦天照、須藤だ』

 

「須藤司令、ヴァルプルギスの紫音です。自衛軍本部に要請です。対要塞戦装備「ダーイン・ス・レイヴ」の使用許可を要請します」

 

 繋がった先は自衛軍旗艦「天照」に同乗する須藤司令。その彼に本部に向けての武器使用許可を求める。

 ダーイン・ス・レイヴとはヴァルプルギス、そして二番艦オーヴェロンに搭載されている実弾火器の名称だ。実弾ではあるものの、その脅威度はシュバルトゼロクローザーの戦略級DNFスターフォールエリミネイション並み。しかしこちらの方は自衛軍上層部、並びに日本政府に使用許可を求めなければ使用できない程に使用制限の施された兵装だった。

 それこそがかつて紫音が本艦を「扱いづらい」と称した理由でもあった。一番火力の出る兵装をこの一分一秒が勝敗を分ける戦場で使えないことに苛立ちが無いわけがない。危急を察し須藤司令も了解を行う。

 

『先程の砲撃か……分かった。すぐに掛け合おう。それまで持たせてくれ』

 

「了解です」

 

 回線を切る。とりあえずはこれでいい。使用許可が来れば即反撃開始だ。再び受話器を取りブリッジ、そして艦内作業員にもそれを通達する。

 

「全員へ通達。現在本艦は敵旗艦に対しての条約兵装「ダーイン・ス・レイヴ」の使用許可を要請しています。使用許可を得られるまでの奮闘、並びに許可を得られた後の迅速な対応をお願いします」

 

「!ダーイン・ス・レイヴを使うの?」

 

「初めてだろそんなの……」

 

 ブリッジからも困惑の声が上がる。しかしもう決めたのだ。相手があれだけの兵器を使うのなら、こちらもなりふり構っていられない。目の前の敵は自分達で何とかする必要があるのだから。

 使うのが初めてなクルーに発破をかける。

 

「私ももちろん使うのは初めてよ。だから落ち着いて、かつ迅速に!」

 

『はい!』

 

 そうして砲撃の飛び交う中、手詰まりの戦況をひっくり返す一撃が使える時を待つ。だが敵もまた次なる手に着手していた。光巴が敵艦の動きを知らせてくる。

 

「っ!艦長。さっきの母艦が機体発進シークエンスを開始!この感じ、シュバルトゼロに似てる!」

 

「何ですって!?」

 

 シュバルトゼロに似ている、というだけでそれが何なのか本能的に理解する。まさか元隊長が狙う敵機がこっちに居たなんて。

 これはすぐに彼に知らせた方がいいか。そう思って真由に連絡を行わせようとしたが、そちらも異変が起こっていた。

 

「くっ!?っはぁ、っはぁ」

 

「どうしたの、真由さん。凄い汗だけど……」

 

 見ると真由が冷や汗をかいた様子で自身の胸元を抑えていた。呼吸も荒く、光巴も何位があったのか尋ねる。

 

「ちょっと、大丈夫!?」

 

「っ……!分かんない……何か、お兄ちゃんのところに敵が現れてからちょっとずつ痛かったんだけど……くうっ」

 

 大和進のいるGチームとの交戦の直後から、なぜそのタイミングからそんなことが。気になるが、それでも手を止めていられもしない。

 救護班に真由を搬送する様に回線を繋ぎつつ、戦闘継続を言い渡す。

 

「救護班、至急ブリッジに上がって!光巴さん、気になるだろうけど他の人に任せてヴァイスインフィニットの動向を」

 

「っ……了解です、って、飛んだ!」

 

 光巴の切羽詰まった声が示すように艦から一機のMSが飛び立つのが見えた。その機影がシュバルトゼロのいるであろう敵陣営の方へと向けて飛んでいく。

 

(元隊長、ジャンヌ副隊長。どうか無事で)

 

 心の中で想いながら目の前の敵艦との対峙を続ける。

 

 

 

 

 シュバルトゼロクローザーとシナンジュ・ゼロン・ハル、タイプツーカスタムとの対峙が続く。弾き飛ばした敵に対し、アサルトシールドのビームキャノンを放つ。ハリヴァーと真藤はそれを避ける。

 元はイラついていた。これだけ戦闘しているにも関わらず、ヴァイスインフィニットは現れない。しかも目の前の敵を落とせずにいることにも怒りを覚えていた。

 既に彼らが囮であることには気づいていた。行動が撃墜を意識していない。時間稼ぎをしに来ていると。だからこそ撃墜する気で攻撃しているのだが、敵二機は上手く躱していく。

 しかしそれでもダメージは重ねつつあった。

 

「シフトスカルキング!ライトニングボルテックス!!」

 

 ネオ・ガン・グニールからDNFを放つ。雷となったエレメントのエネルギーが敵機へと迫る。どちらもフィールドで防御するが構わず放ったままタイプツーに肉薄する。

 

『来るっ!?』

 

「このまま叩き潰す!」

 

 エネルギーを集中させフィールドに対し叩き付ける。膨大なエネルギーと出力でフィールドを割ると同時にエネルギーをさく裂させてその破片をタイプツーに当てていく。

 動きの悪くなったタイプツーカスタムに追撃を浴びせようとする。だがそこにシナンジュ・ゼロンからの横槍を受ける。

 

『させぬ!』

 

「ちぃ!」

 

 咄嗟にキングビットシールドで防ぐ。アームをすべて使ったビームサーベルによる叩き付けを防御するが、緊急だったためか防御に回す出力が足りていない。ビットシールドを分解しながら後方へと下がる。

 下がったこちらへハリヴァーに救われる形となったタイプツーカスタムが反撃を放つ。それをスカルキングの能力で反射させた後、アズールハルピュイアで攻めに転じる。

 続く攻防の最中、戦場全体をサーチしていたジャンヌが遂にその動きを捉えた。

 

『っ!!高密度DN反応がこちらに来るのを感じます。これは、あいつです!』

 

「っ!ようやく来たか!」

 

 待ち望んだ敵が来る。となれば目の前の敵に構っていられる暇はない。合流されて一気に襲い掛かってくるなんてことはごめんだ。

 敵もまたその接近に気づいている。ハリヴァーが待ちかねたと援軍の到着を喜ぶ。

 

『ようやく救世主様のご登場のようだな。勝ったな』

 

『エース三人、いや、四人の相手だ。後退するなら今だぞ』

 

 真藤一真からは撤退を勧められる。しかし今さらそんな障害程度でこの進撃を止めるつもりはない。

 13年、俺達は13年も待った。ヴァイスインフィニットが再び現れる時を。ただ一人の少女を、ジャンヌにとって心の支えだったレイアを取り戻すために戦い続けてきた。

 だが実際はジャンヌにとってだけじゃない。元にとってもこれまで戦ってこられた理由、魔王という名前を背負ってまで戦い続けてきた原動力、心の支えでもある。彼女を救出する。それでジャンヌは自身のパートナーから解放される。魔王なんて名乗る男の下に居なくていいようになる。

 そのために邪魔となる者は全て薙ぎ払う。すべては彼女達の大切な時間のために、黒和元は魔王として歯向かう有象無象に向けて断罪の言葉を吐く。

 

「何寝言言ってる。逃げ腰だけはしっかりしてる今のお前らに、俺が止まるとでも!力の差を……見せつけてやる!」

 

転千万勝(オールオーバー)!ジャッジメントクローズモード!!』

 

 機体をジャッジメントクローズモードへと移行させる。魔王が魔王たる所以を示すための姿。シュバルトゼロの全力にして至高、そして最強と謳われる姿へと変わる。

 断罪し、全ての争いを終局へと収束させる力。CROZE部隊を象徴する形態が彼らの前にさらけ出すことは、元が敵を葬ると意思表示したことを意味する。

 しかしそれは元、ひいてはエンゲージパートナーであるジャンヌにも多大な負担を掛ける諸刃の剣。本日二度目となるシステムの起動にジャンヌも若干苦悶の声を上げる。

 

『ぐっ、くぅ……』

 

「ジャンヌ……ごめん、けど……すぐに終わらせる。この呪われし宿命は全て!」

 

 右手にネオ・ガン・グニール、左手にジェミニ・フォトンランチャーを構えたシュバルトゼロクローザーが加速する。シナンジュ・ゼロン・ハルとタイプツーカスタムに追い縋りながら攻撃を仕掛ける。

 重武装を難なく連続使用するシュバルトゼロクローザー。背部のビットとアレスビジョンも利用しての怒涛の攻め。これこそがジャッジメントクローズモードの真の力。

 敵もその力に苦戦を強いられる。

 

『くっ!?速い』

 

『力の振る舞い……それがお前の答えか!』

 

 そう言い放った真藤一真の機体がガンブレードランスでこちらに斬りかかる。翻弄するシュバルトゼロクローザーに放たれる正確無比な突き攻撃。しかしそれを寸前で肘部のブレイクリッパーで防ぐ。防ぎながらガンブレードランスを攻撃し強度を落とす。

 真藤一真に対し、答える元。

 

「今のお前では、この魔王を止めることは出来ない!」

 

 ビームを纏ったネオ・ガン・グニールで横薙ぎに弾き斬る。タイプツーカスタムの胸部装甲が溶断され中のメカニック、液体CPUが零れだす。

 その間にハリヴァーの機体がクローザーの背後を取る。最小限の動きでこちらの後ろからビームサーベルを振るう。

 

『鈍い!何っ!?』

 

 しかしその斬撃は蒼い粒子を放出しながらシュバルトゼロクローザーが避ける。ハルピュイアの力が敵の攻撃を当てさせない。トドメの一撃を構える。

 

「そんな程度のMSでこのシュバルトゼロクローザーと対等とでも思ったか、ハリヴァー、一真!!」

 

 両者にそれぞれネオ・ガン・グニール、ジェミニ・フォトンランチャーから光を放つ。それらはシナンジュ・ゼロン・ハルの右腕と肩部増加腕部、タイプツーカスタムの両脚部を飲み込み消失させる。

 そこでようやく劣勢を感じ取った二機が撤退の行動を取る。

 

『ちっ、やむを得んな。後退する』

 

『みたいだな。だけど、魔王。その心の在り方は同じ人を多分に殺す』

 

 捨て台詞を真藤一真が残して後退する。追撃はするべきかもしれなかったがそうしていられるほど余裕があるわけではない。

 ジャッジメントクローズモードを解除する。両手に握った兵装をそれぞれマルチスペースへと戻す。ジャンヌからは制御に苦心しつつもまだやれると声が掛かる。

 

『……っ、後退してくれた。元、ジャッジメントクローズモードまだ余裕はあります』

 

「そうか。だけど油断するな。次が本番……。ジャッジメントクローズモードの負荷は比じゃない」

 

『えぇ……!』

 

 どれだけすれ違っていてもそれはまだ共通の認識だった。例え操るパイロットが大口を叩いている生意気なガキでもその装依する機体は確かに英雄の機体。親愛なる友人と恨みながらも尊敬していた父親を奪った悪魔の強さを二人は知っていた。

 しかしそれでも彼らは、いや、彼は歩みを止めない。全てを終わらせる。終息(クローズ)させるために、緊張を解かない。

 遂にその時はやってくる。接近警戒警報と共にあの少年の声が響く。

 

 

 

 

『―――――さぁ、悪の断罪の時だ!悪の魔王!!』

 

「そう言う貴様は勇者気取りか、神治!!」

 

 

 

 

 神治の声にそう返す。そして彼等もまた言葉を返していた。

 

 

 

 

『久しいな、ようやくのご登場かスタート』

 

『追いかけっこはおしまいか、エンド』

 

 

 

 

 元英雄の一部もまた回線が繋がった。二機は光のサーベルを構えぶつかり合うのであった。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP66はここまでです。

ネイ「艦の皆さんも頑張っている中で、遂にシュバルトゼロとヴァイスインフィニットが久々の激突というわけで」

グリーフィア「今回は前章みたいにおまけってわけじゃなく全力で戦えそうねぇ。追いかけっこはおしまい、なんてスタートも本気でエンドを捕まえる気満々だしね~」

それの直前の元と神治の掛け合い。それもまた対比しつつ二人が同じような存在であると示唆させていますからね。相手を悪の魔王と罵る自称救世主の勇者と魔王と認めつつも相手を勇者気取りと指摘する魔王擬き。二人とも過去に失った人の為に、今生きている大切な人の為に命を投げ出す覚悟で戦います。

グリーフィア「そう言われるとまぁ似た者同士ね。孤児となった自身を育ててくれた親代わりの男の組織に心身思想に浸かって尽くす神治と、異世界へと放り出された自分を助けてくれた女の子とそ大切な人の幸せの為に過剰なまでの「恩返し」をする元、と」

グリーフィアさん全部言ってくれたわ(´-ω-`)

ネイ「姉さんの言う通りですけど、でもそれってどちらでも、少なくともジャンヌさんは不幸ですよね。きっと、こちらのジャンヌさんは……そう言う意味では元さんもジャンヌさん達を思い過ぎていると言いますか……」

グリーフィア「おっ、言うわね~ネイ。やっぱ元君のやり方、正しくないのよね~」

だからこそ、その元君に教えてくれる人がいたら……親となりうる人がもういないからこそ、元君は狂っていく。狂って、狂って、先に待つのは滅びのみ。ってね。逆に親のプレッシャー背負い過ぎることもあるわけなんだけど。

グリーフィア「何か達観って感じね、作者君?」

そんなことはどーでもいい。これはお話。お話だからこそってのもある。元君の先に未来があるのか?この戦いの結末は、まだ当分先の話。というわけで今回はここまで。

ネイ「何か言いたそうなのに終わらせていくという作者さんの意志がちらほら……」

ぶっちゃけて言うと「この戦い」の結末まで書ききってますからね。その後がまだだけども言いたいことあり過ぎて必死に抑え込んでいるんですわ。胸やけしそう(;´Д`)

ネイ「あ、はい。それでは皆様。また次回で」


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EPISODE67 白と黒の復讐者2

どうも、またお久しぶりです藤和木 士です。あと今回は投稿時間を試験的に遅らせてます。平日か休日かの違い。

レイ「まーた空いちゃって……」

ジャンヌ「早く進む、と思っていたんですが、何があったんです?」

簡単に言わせてもらうと、一応次話以降は普通に出来ているんですよ。ただ今書いてるところが予想以上に苦戦してまして、全然進んでいないんですわ。

レイ「オッオウ……書き直して?」

いや台詞選びがね……ぶっちゃけ今の状態でも理解してもらえるかなのでここら辺変な後々変なターニングポイントになりかねない状態です。一応自分なりに納得できるような形にはしましたが。

ジャンヌ「読んでいただける話にしてくださいよ……?」

やりました……やったんですよ!必死に!( ;∀;)それがこの結果なんですよ!内容詰めれていなかったっていう地獄を見たんですよ!
とまぁそんな嘆きは今降っている大雨に流して、EP67と68の更新ですってことで。

レイ「ようやくこの時が来たもんね。シュバルトゼロと、ヴァイスインフィニットの対決!」

ジャンヌ「今回はその二機のパイロットの掛け合いが展開されるとのことで、一体何をぶつけるのでしょうか。まぁどちらも言いたいことは予想できそうですが……」

というわけで本編へ。


 

 

 戦場の空気が一変する。各地で大きな力のぶつかり合いと周囲に展開される争いの渦。とある一点からそれを超える大きな力の激突が戦場へと静かに大きく響いたのだ。

 そのぶつかり合いを他の戦場に、後方にいる者達が感じ取り、報告する。

 

「!この激突……元さん!?」

 

「っ!?何だ、一つはあいつ、もう一つは……あのガキか!」

 

「この感じ……先輩は撤退したんだ。これは……っ!」

 

「ちぃ……この空気の悪さは……あれがシュバルトゼロの?」

 

 蒼穹の英雄たちと名もなき一角獣達が感じ取る。

 

「この膨大なエネルギーは……まさか」

 

「よそ見をしてる場合かぁ!死ね!」

 

「これを感じないのか!クソッ!」

 

 オースの両雄達も数値を見て驚き、しかし金色の悪魔は構わず暴虐を振るう。

 

「!遂に交戦を開始した……元君!」

 

「つぅ!?この……どれだけ動けるってのよ!?」

 

「さぁ、上手くやってくれよ騎士官!」

 

 HOWの彩りの英雄を困惑させながら、真紅の流星が檄を飛ばす。

 

「!?姉様とこれは……レイアさんのっ!」

 

「戦っている……元隊長達が」

 

「こんなところでっ、もたついてられるかっ!あの人が!」

 

「千恵里ちゃん焦らないでっ。つぅ!?この感じ、私達が行ったところでそう簡単には」

 

「俺達に出来ることを!」

 

「……始まるのか。最後の聖戦か」

 

「元隊長……悪いけど、俺は零との戦いを優先させてもらう。あんただって言ってたもんな、あいつの相手は俺だって!」

 

「進……お前は知る。あのガンダムが負けるという事実を!」

 

『………………』

 

 新世代のGを操りし者達が救援に行けないことを歯噛みしながらも前にいる敵と戦いながら、理想に酔いしれる者達はそんな彼らすら嘲笑っていく。

 

「っはっ……エネルギーが……爆発的に」

 

「間違いない……艦長さん。戦ってるよ、元お兄ちゃんと、あのガンダムが」

 

「遂に……始まるのね。この作戦の真の目的が」

 

「―――ゼロニアス、ジェミニアスと交戦に入りました」

 

「神治よ。大人になれ。大人になって、神話にすらもなってゆけるほどに」

 

 艦や後方基地から見る者達もその激突を目の当たりにする。そこにはゼロンの長たる男もいた。

 多くの者達がそれぞれの思惑を持って待ち望んだ激突。しかし激突の最中にある本人達はその大半を受け止めるには至らない。

 わずかな期待、そして大半を占めるそれぞれの願いの為に激突する。

 

 

 

 

「父と母の理想、ゼロンによる真の平和の為に!」

 

「駆逐する。神も、信仰も、身勝手な理想を破壊する!」

 

 

 

 

 

 

「俺の前から、消え失せろ神治!」

 

「魔王が!調子に乗るな!!」

 

 シュバルトゼロクローザーとヴァイスインフィニットガンダム・ゼロニアスの攻防が開始される。しかしその性能差は誰の目を見ても明らかで圧されているのはゼロニアスの方だった。

 クローザーの通常形態でゼロニアスを圧倒する。しかしその性能差でも神治は撃墜されることなく応戦を続けていた。

 それをサポートするのは古の元英雄の一部。そして……。

 

『あ、ぐ……ぐぁ』

 

『レイアさん……!』

 

『相変わらず、酷使するかエンドよ』

 

『今はこうするしかない。貴様らの行いが、そうしている。スタート』

 

 囚われていたレイアの苦悶の声が響く。久しぶりに聞いたレイアの声。やはりまだ組み込んでいた。まだ息はあるようだがそれでも弱々しい。

 声を聞いて更に元の中の焦燥感が加速する。やはり短期決戦しかない。弾き飛ばす形で一度距離をとってジャッジメントクローズモードになろうとする。しかし間髪入れずにゼロニアスが攻めてくる。

 

『息なんてつかせるか!チャージスタイル!』

 

「何?」

 

 突然ヴァイスインフィニットのフレームが「橙色に変わる」。直後その姿がその地点から消え、至近距離まで跳んできた。振り下ろされるビームサーベルを咄嗟にこちらもビームサーベルで攻撃を受け止める。しかし受け止められるとすぐにヴァイスインフィニットが再び姿を消し、背後に回って攻撃してくる。

 瞬間移動としか取れない攻撃。それをDNLとしての力で察知し捌く。だが同時にこの光景に既視感を覚えていた。フレームの色が変わり、特殊能力を使う。その姿は他でもないシュバルトゼロ自身の機能「エレメントブースト」に非常に近しいものだった。

 その疑念は続くヴァイスインフィニットの行動で明確化する。何度目かの攻撃を受け止められた後神治が一度距離をとる。

 

『なら、これで!』

 

「ちぃ、また色が……」

 

 今度は橙色から薄い黄色……クリーム色とでも言えばいい色にフレームが変わる。その状態でビームライフルが構えられビームが放たれる。その攻撃は左手のクローズフェニックスから受け渡された「ナハト=ヴァール」で受け止める姿勢を取る。

 一見こちらとそう変わらない通常出力のビーム。しかし着弾と同時に予想していた以上の衝撃をシールドに受ける。

 

「っ!?」

 

『きゃあ!?』

 

 衝撃にシュバルトゼロの機体の姿勢を崩す。崩したところに再びあの瞬間移動でヴァイスインフィニットが迫りくる。再度ビームサーベルで防御を行うが激突する瞬間ヴァイスインフィニットは素早く色をクリーム色に戻す。激突した瞬間、出力で一気にビームサーベルが折り切られる。

 

『何でっ!?』

 

「くっ!」

 

 瞬時にビームサーベルを避ける。しかし斬撃の軌跡は腕部に装備していたゼロ・バスターライフルを両断した。

 誘爆を避けるために瞬時に分離させる。返す刀で爆発の傍を突っ切りそのまま斬りかかる。だがまたしてもヴァイスインフィニットが変わる。

 

『攻撃しようなんて!』

 

「むっ、攻撃が浅い?」

 

 攻撃が当たった瞬間、手ごたえが弱くなる。それにビームサーベルのエネルギー量も目に見えて少なくなる。ヴァイスインフィニットはフレームを今度は暗い紺色に変えて攻撃を装甲で弾き返す。

 あり得ない状況。高性能MSだとしてもガンダムのビームサーベルを止められるとは思えない。ましてや兄弟機であるヴァイスインフィニットがそう簡単に出来るとは思えなかった。

 しかしそれが現実であり、また正体に気づいたのは元々の持ち手であるスタートからの知らせであった。

 

『なるほど、超次元現象で攻撃を逃しているのか』

 

「クッ、タイプシリーズの……」

 

『そうとなればおそらくさっきのあれも全てだ。タイプシリーズを取り込んでいたのは、こういうわけか』

 

 スタートの独り言にも似た声にヴァイスインフィニットの同じ存在であるエンドがその力を明かす。

 

『そうだ。お前達がエレメントシフトと呼ぶ、未知なる力。それを私の主導の下、ヴァイスインフィニットで再現した。英雄の片割れがそういう力を得たのなら同じ力を得る。お前達も心当たりはあるだろう?』

 

 心当たり、と聞いて来るエンド。シュバルトゼロR2もかつてはヴァイスインフィニットとの遭遇をきっかけに改修を行われた機体。当時のヴァイスインフィニットから参考にした部分もある。そして奴との戦いの中でヴァイスインフィニットの力に呼応するように元達のシュバルトゼロも力を覚醒させた。

 相手にその機会が一体いつあったのか。となれば思い当たるのはただ一つ。真紅の流星の再現が行ったジェミニアス強奪未遂事件のことだ。あの時の時点でこちらの技術を映像で読み取った、あるいは残骸からデータを取ったのか。

 それを言っているのだろう。それを指してエンドはこちらに問い掛けてくる。

 

『真紅の流星の再現には感謝している。なればこそ、私が再び姿を現したのはこのヴァイスインフィニットがお前達と同等となったということ。すなわち!』

 

「来るか」

 

 フレームの色が変わり出す。これまでにない黄緑色となってその両手を広げる。手の先には究極のタイプシリーズ、タイプ[ディナイアル]で散々見た超次元現象の塊が円盤状に形を成す。

 叫びながら投擲するヴァイスインフィニット。

 

『今こそ決着を付ける。そして思い知らせる。貴様は魔王と名乗るには、未熟だと』

 

『ごちゃごちゃ五月蝿いんだよエンド!魔王を潰せぇぇぇ!!』

 

 冷静なエンドを戒めるように咆える神治。飛んでくる円盤はフリスビーのようにこちらに向かって来る。

 それを一度回避してから肉薄する。だが後方から来る攻撃に気づく。先程の円盤だった。そのままスタートに任せる。

 

「スタート!」

 

『任せておけ!世壊災醒!ブレイクネクロ!』

 

操作をスタートが代わる。ブレイクネクロとなったクローザーが宙がえりをしながら円盤の奇襲を回避する。

 回避した円盤に向けてスタートは合体させたネクロブレイドライフル壊を放つ。弾丸の着弾により帰還するルートからわずかに外れヴァイスインフィニットに襲い掛かる。

 それをヴァイスインフィニットは後退しながら手をかざす。すると形を砕き、分解されながら超次元現象の武器は消失していく。

 その扱いの手慣れさはタイプシリーズ以上かもしれないと思った。刃を交えたスタートも言及する。

 

『フン、同じ元英雄なだけあってその程度の新技はお手の物というわけか。以前のよりも冷静なようだしな』

 

 今のエンドをそう形容するスタート。それに対しエンドは言う。

 

『やはり、そう言うか。お前は覚えていないんだろうな、かつてのことを』

 

『何?』

 

 おかしい。エンドの言っていることの意味が理解できない。覚えていない、とは。まさか、と思った矢先、エンドが衝撃の事実を語る。

 

『俺はもう、思い出しているぞスタート』

 

「っ!?」

 

『何だと……?』

 

 息が詰まるような感覚。エンドの言葉に衝撃を受ける。

 思い出している。それはつまりエンドの、スタートが未だ復旧できていない機竜創世記時代の記憶を知っているということ。

 スタートの知らないことをエンドが知っている。今のエンドの方が本来の状態に近い。戦闘技術も高いことを密に示していた。

 こちらの動きが緊張感で若干硬くなる。記憶を取り戻していた元英雄は言う。

 

『あの大戦で失った記憶、それを取り戻して分かった。やはり貴様らとは敵対する運命にあると。人質も返すことは出来ない』

 

『……返すことは出来ない、か。随分と偉そうだな。散々やった未成熟のお前の愚行には目も向けない、と?』

 

『スタート、私はただ今のこの世界にとって最良の道を取っているだけに過ぎない。間違ったことだとしても今必要なら私はやる。背負い込むことなく、な。いや、むしろ真実を知ったなら私の方が正しいと言うだろう』

 

 その言葉に苛立ちが滾る。落ち着いた口調にこそなっているが結局こいつの思考は以前と変わっていないと見える。自分の目的の為に他人を利用し、何の感傷も持たない。自分が英雄であるために全てをささげてもらうことが当然と思っている。

 わざわざこちらを煽っているのだ。俺達の行いを馬鹿にして。なら躊躇いなんて必要なかった。

 

「ふざけるなよ……」

 

『元……』

 

『フン?』

 

「最良?お前がこの世界で英雄として君臨するのに「都合のいい選択」だろうが」

 

 奴にとっての「都合のいいこと」、これまでに奴が行ってきただろうことを並べる。

 

「テロリストの教団にMSの技術を流して、そのMSで関係ない人たちを殺させて、それでもまだ人類のためと嘯く。そんなことはマキナ・ドランディアじゃ当たり前だとでも言うのか!」

 

 この世界に厄災をばら撒いたこと、そしてなによりパートナーの世界ではそれが必然であるのかと問う。

 元自身はそんなことはないと知っていた。戦争の中でもそれを憂う者達がいた。終わらせたいと願う人たちがいた。その人達の為にあの大戦へと身を投じたのだ。それを無下にするような振る舞いは許せない。

 その問いかけを聞きエンドからの申し開き、そして言い訳が響く。

 

『それは誤解だな。彼らは彼らにとっての敵を撃ったまで。それに私は必要だった。私が蘇るために。だからこそ今の私がいる。今は彼らを導くための象徴だ。それに関係ない人間なら貴様も私のパイロットの両親を殺したのだろう?それもこの世界では、当り前と?』

 

「俺にとっての両親だ。勝手に奪った人間と組織を認めるかよ。両親を奪うことの意味を、重さを知らない英雄擬きが」

 

『ならば彼の怒りを受けてみろ、魔王のなりそこないよ』

 

 エンドの呼びかけにこれまで操作をカットされていた神治が表へと出てくる。胸に抱いた憎しみを表して。

 

『俺の家族を、勝手に取るなぁぁぁぁ!!』

 

 ショートジャンプで跳び敵意をむき出しにして襲い掛かってくる。しかしこちらも沸き立つ怒りを見せて振り下ろされる実体剣をアレスマグナモードで振り抜いたカスター・イーターで競り合う。そのまま二機は再び交戦状態へと突入する。

 跳んでは避け、また攻めてくるヴァイスインフィニット。シュバルトゼロもまたモードシフトで対応する。互いに一進一退の攻防を繰り広げる。だが徐々にまた元が押していく。

 最初の内は能力が掴み辛かったのもある。だが戦う内にスペック差に気づいていた。シュバルトゼロの力を真似た、と言っても所詮はジェミニアスの物。クローザーと互角というわけではない。

 それにパイロットの質もこちらと大差があった。エンドがコントロールを代わっている、いやサポートしているのだろう黄緑色の形態とそうでない時とでは攻撃の太刀筋が甘い。そこにシュバルトゼロが持つ性能を合わせれば、こうもなる。攻め手だったはずの神治が動揺する。

 

『ぐっ!?翻弄されている……?俺が!』

 

『あのジャッジメントとかいうものでもないのに……なるほど、それがお前の持つ力』

 

「こっちは13年戦い続けてきた。テメェが1400年生きてると言っても1400年間戦い続けてきたわけじゃないだろ!」

 

 挑発する様に言い放ってスカルキングの状態で切り替えたディオスクロイ・スラッシャーを叩き付ける。防御しきれないと判断したのか防御の硬い紺色の形態ではなく、エンドの形態で超次元現象を手に纏わせて防御する。

 超次元現象の球体が高速回転しながらスラッシャーの刃を止める。ところが勢いまでは殺せていないようでヴァイスインフィニットの腕が下がる。

 

『ぬぅ……それは言えている。パワーでは勝てない、か?』

 

「力だけじゃない。思いも、覚悟も、背負っている物も、違うんだよ!」

 

 叫びと共にスラスターの出力を上げていく。目の前の敵を防壁ごと叩き斬るという強い意志で圧していく。

 パワーの差に徐々にヴァイスインフィニット側が競り負けていく。圧されていくことを認めないと騒ぐ神治。

 

『クソッ!このままだとやられるぞ、エンド!何とかしろよ!』

 

 このまま切り裂く。相手の声に耳を傾けることなく力を込めたその時、エンドが唐突に笑う。

 

『フフッ』

 

「何がおかしい」

 

『まだ、私達は切り札も使っていないさ。その切り札が、来た!』

 

『っ!!元、敵に向かって接近する反応!ファイター……?いや、小さい、これは』

 

 ジャンヌの声が示す先に元も何か近づいてくるのを感じる。そちらの方にわずかに目を向けると、その正体に気づく。

 戦闘機、というにはあまりにかけ離れた形状。明確な機首の存在しないそれはそのままヴァイスインフィニットの腰にドッキングを果たす。

 瞬間、ヴァイスインフィニットの力が増す。

 

「ぐっ!?」

 

『圧し返される……っ!攻撃反応!』

 

 ジャンヌの悲鳴の直後、敵腰部のアーマーが下部をこちらに向ける。防壁として扱っていた超次元現象の塊を破裂させた後、そのアーマーの先から鋭い刃を放ってきた。

 素早くアズールハルピュイアへと変化させて回避行動に入る。しかし至近距離からの緊急回避だったため一部が機体を掠め、揺らす。

 それでも致命傷は避けて距離を取った。合体を完了したヴァイスインフィニットの姿を見て呟く。

 

「なるほど……クローザーも真似たってことかよ」

 

『真似た?違うんだよ!これからはこっちが本物だ。このヴァイスインフィニットエアレーザーの前から、ガンダムの偽物も黒和の偽物も消え失せろよ!』

 

 エアレーザーと名乗った神治。接続したスタビライザーパーツが展開されると機体全体からDNが多量に放出を開始する。シュバルトゼロクローザーがドッキングした直後のように、DNの精製量を増幅させる。

 射出されたブレードユニットがアーマーに戻る。その手に超次元現象を武器、槍の形へと固めて精製するとそれを構えてエンドが挑発を掛けてくる。

 

『さぁ、貴様は敵うか?このヴァイスインフィニットエアレーザー、かつての英雄の新たな姿に』

 

「上等だ。魔王として身勝手な救世主はここで討つ。ジャンヌ、スタート!」

 

『は、はいっ!』

 

『油断するなよ、元!』

 

 ブレードガンⅡへと持ち替えて真の力を発揮したヴァイスインフィニットエアレーザーを迎え撃つ。最強と最強、伝説のMS達が異世界での対決は始まったばかりだ。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP68はここまでです。

レイ「怒りを爆発させた元君……心配だけど、やっぱり伊達じゃないね」

ジャンヌ「圧している状態でなら何とかなっていますが、終盤で見せた合体形態……エアレーザー。やっぱりクローザーを模して、とのことですかね。そう考えると不安はまだぬぐえません」

まぁあのユニットは間違いなくシュバルトゼロクローザーに影響されて開発された物だろうね。性能と技量で怒りによる判断低下を抑えていたけれど、果たしてそれが今後どうなっていくか。それもまた今後の読み進めていく上でのポイントとなります。

レイ「きっと大丈夫!最近負けなしだもん!…だよね?」

ジャンヌ「……でも、元さんって怒りに任せた戦いであ大分戦績が悪いと言いますか……強化をもらわない限り勝てたのは数えるくらいかと」

その章での強化無し、怒りぶちまけて勝てた戦いって多分ないよ元君。あったら申し訳ないけど、でも戦績が悪いのは事実。このジンクスを覆せるかな?
と、今話はここまで、次話へと続きますよ~。

レイ「次話では他の面々の戦いにフォーカスするみたいだね~」


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EPISODE68 白と黒の復讐者3

どうも、皆様、引き続きご覧の方は改めまして、作者の藤和木 士です。
EP67、68の投稿です。本話はEP68となります。

グリーフィア「いよいよ因縁の対決再来!となったけどまた間空くみたいねぇ?今回は主役こっちじゃないの?」

いやいや、今話はGチームとかにも目を向けないとですので。それに前半はゼロンのあの人物、零崎秀夫の出番でもありますので。彼が一体どのような人物なのか、見て頂ければ。

ネイ「教団のトップ……巧みな話術で味方を犠牲にしてきそうなイメージだったんですが、前の時を見るに、やっぱり何か違う感じなんですよね。前話で神治への応援も、あの作品をイメージしつつも何か意味深でしたし」

彼が何を考えているのか。そして混沌へと向かっていく戦場の動きを括目せよ。というわけで本編をどうぞ。


 

 

 ゼロンの艦隊後方に位置する四河港ポート基地。そこでゼロン宗主である零崎秀夫が指揮官席に座って戦場を見通していた。

 彼の前方に移るモニターには味方観測機から送られてくる映像、今はシュバルトゼロとヴァイスインフィニットがそれぞれのMSの限界を超えた性能を発揮できる状態となってぶつかり合っていた。

 観測者は先程まであのシュバルトゼロと対決していたハル・ハリヴァー、そして真藤一真だ。その映像を見て零崎は話す。

 

「遂にこうなったか。我らの白き救世主と、敵の黒き魔王との対決」

 

「シミュレーションよりも敵の戦術修正が速いですが……あのヴァイスインフィニットエアレーザーなら何とかしてくれるでしょう」

 

 そう語るヴァイスインフィニットの技術顧問。しかしその声はどこか心もとなく聞こえる。まどろっこしいお世辞は勘弁してほしいといつも言っているのだが、こうなってしまうことはある。

 すぐに言葉を修正する様に促す。

 

「お世辞は良い。メカニックとしての君の判断を教えろ。それでは今戦っている彼の為にも私の為にもならない。もちろん君の為にもだ。率直に言ってどうだ?」

 

 私の言葉に技術顧問は少しためらったのち、ありのままの感想を吐き出す。

 

「そうですね。やはり手数でヴァイスインフィニットエアレーザーの方が圧されています。エンドの助けがあっても幾分厳しいところはあります」

 

「そうか。当然か」

 

「しかし想定外の良いこともあります。先程シュバルトゼロから放たれたあの規格外のDNF、あれで幾分かあちらの機体、良ければパイロットが消耗していれば勝ち目はあるかと。もっとも艦隊戦での勝ち目は大分怪しい気もしますが」

 

 開戦直後に放たれたDNF、あれには零崎も驚かされた。前面に展開された我が艦隊のほとんどを壊滅させたうえ、発生した津波でこちらの基地も少数の被害が出ている。

 あのDNFを更に喰らえば瓦解したも同然だったが、幸い二撃目はなかった。二撃も撃つ余裕がなかったのか、それともあれは突破口の為の一発だったのか。それを探る意味でもハリヴァーと蒼穹島の真藤一真の機体からの映像と傍受した通信を聞いていた。だがその感想は意外なものとなった。

 

(魔王、と名乗った者。しかしてその本質は善人……悪人らしく振る舞おうとするか。いや、だからこその魔王と名乗った。話通りの人物だな)

 

 黒和元をそう分析する。ゼロンを旗揚げする前、零崎はシュバルトゼロガンダムのパイロットについてこう聞かされていた。「異世界からガンダムを持ち出し、この世界のルールを無視して人を動かす傍若無人な自己中心的人物」「魔王と言うにふさわしい傲慢さと是非を言わさぬ先読みによる抑圧を行う人物」。

 しかし今見ている彼の行動と会話からはそれをあまり感じられない。言葉は荒さを持つが人相応にこちらへの苛立ちを持ち合わせ、なおかつ事実をはっきりと言う。人によってはそれを嫌悪するのだろう振る舞いだ。おそらく一部の政府高官からの反応は良くないのだろう。

 宗教の長をする零崎が認めるほどに彼は真っ直ぐだった。真っ直ぐさがあったからこそどれだけの教団を相手にしてもなお敵対者を潰し続けられたのだろう。もっともそれが「負担がない」というわけではなさそうだが。

 そんな彼にとってはやはり黒和神治の存在は許せないというのはすぐに分かった。怒りの矛先にするには十分すぎる。むしろ私としては……。だからと言って負けを認めるわけにはいかない。零崎はそのまま監視を続けるようにとハリヴァーと真藤に言う。

 

「このまま観察を続けよ。手出しはするでない」

 

『了解です、宗主』

 

 言ってまた静かに戦闘を見つめる。その動きは決してエンドのような全てを機械的に熟知したものではない、しかし人としては非常に洗練された動きだ。踏み込むべきところを踏み込み、引く時には考えて引く。神治にはそれを学んでほしいくらいだ。

 それを実現しているのはきっとあのガンダムにもいるパートナーのおかげなのだろう。こちらとは違い「望んで協力し、共に戦う相棒」の力。こちらは結局協力を得られずにまた適合率を上げられず強制的に従わせるしか出来なかった。こちらが偽りで向こうが本物という自覚はあった。

 こうして人質に取っているにも関わらず、シュバルトゼロはヴァイスインフィニットと戦闘を続ける。既に囚われていることは知っているだろうに。きっとパイロットはそれを承知で戦っているからに他ならない。

 経験した修羅場も、背負っている覚悟も神治とはけた違いに違う。これが味方であったならどれほど心強かったか。それでもこう信じる。例えそうだとしても神治なら出来ると。小さくつぶやく。

 

「やれるぞ、神治。お前なら」

 

 親代わりをしてきた男として息子の勝利を信じる。そして彼が新しい道を切り開くことを信じて戦闘を見守った。

 

 

 

 

 続く各地での戦闘。その中でもGチームの戦闘は苦戦を強いられる結果となっていた。宗司と千恵里のDN両機は敵新型のガンダム擬きと戦っている。それぞれクルツとクルスの支援を受けながら戦っているのだが、二体一のはずなのにその機体を抑えられていなかった。

 オースの裏切り者を抑える進と呉川もまた同様だった。

 

「零!あれもまた俺達の機体のデータを奪って、作った機体なのか!」

 

『フン、そうだ進。あれこそ、我らデスティニーズが作り上げたゼロンの新型モビルスーツ……「アポカリプス」!ガンダムを模し、ガンダムを駆逐する天使の騎兵』

 

 進の問いかけに零はそう明かす。やっぱりそうだ。あの機体の動き、設計思想、武器の構成がオースカオスやオースガイアに近かった。パイロット専門の進でも宗司達の戦いを見て分かった。

 裏切ってあんなものを作ったことに怒りをぶつける。

 

「本当に、もうオースには戻らないつもりかよ!オースの機体を使ってあんなものを作ったら、遺伝子で未来を決めてもまた争うだけじゃないか!」

 

『違う!今のこの機体は、オースの機体ではない。ゼロンのガンダム……ゼロンカオスガンダムだっ!』

 

 言い訳を吐くと零はオースカオス改めゼロンカオスを変形させ一斉射で弾幕を張ってくる。

 何とかそれらを回避する。ビームライフルで反撃するも再度MS形態に可変しながら回避してこちらと距離を詰める零。

 前よりも強くなっている。振り下ろされたサーベルを左手で引き抜いたビームサーベルで受けながら思う。だが強くなったのは単体性能だけではない。

 突如鍔迫り合いを解除して退くゼロンカオス。するとその背後に先程まで呉川のソル・タクティクスと交戦していたオースガイアもといゼロンガイアがタクティクスから距離を取りながら変形し、こちらに向けてウイング付け根と変形後の頭部に備わったアサルトビームキャノンを連射してくる。

 

「しまった、進!」

 

「くっ!?」

 

 攻撃を何とかシールドで防ぐ。続けざまに空中を足場にして飛び掛かってきたゼロンガイアにそのままシールドを構えてぶつかりあう。飛び掛かる獣に対し、盾で防ぐように戦うインパルスとガイア。ゼロンガイアはシールドの外側からこちらを攻撃しようとする。それをこちらもさせまいとビームサーベルへと切り替えてはみ出す箇所を切ろうとする。

 が、それを瞬時に察してシールドを蹴るようにして飛び去って再びMS形態へと戻る。その間にも僚機のソル・タクティクスが放っていたけん制のサブマシンガンの援護を通常の機体ならあり得ない動きで回避していた。

 その動きを見て考える。

 

(……この動き、前までの加子と一味違う……いや!そもそもこの複雑な動きは加子が出来ないと投げ出していたやつだ)

 

 オースでの訓練時代に行ったやり取りを思い出す。この戦術パターンを演習でやった際、制御が上手くいかないと騒いでいたのを覚えている。何度か上手くいくように協力もしたのだが、結局加子の実力不足ということでこのマニューバは封印されていたのだ。

 それをゼロンで出来るようにしたという考えももちろんあった。けれども動きの癖からまるで違うような気がさっきの激突で感じ取った。

 本当の事を言うかどうかは分からない。しかし確認の意味を込めてゼロンガイアへ、そして零へと問いただす。

 

「お前は何者だ。加子はどうした、零!」

 

『―――――』

 

 それに応えることなくゼロンガイアが襲い掛かってくる。突貫して向けてくるビームブレイド「アンドラス」をフォロカルのビームサーベルで防ぐ。

 拮抗させた状態で、問いただされた側の零が称賛を送る。

 

『ほう。やはり気づいたか。そいつの中身が加子ではないことを』

 

「当然だ。動きが全然違う。そいつは誰だよ、加子はどうした!」

 

 称賛を嬉しく思わず、どういうことかと説明を急かす。進の要求を呑み、零がここまでの顛末について明かす。

 

『アイツは死んだよ。ギルの考えにそぐわなかったからな。そのパイロットが殺した』

 

「っ!!零、お前……使い捨てにしたのかよ!」

 

『厚かましいやつを置いておく理由などない。役割に収まろうとしなかったのなら当然だ』

 

 殺したことに何の後悔も見せない零。何のためらいもなく殺したと話す零は本当にギルボードの為に心酔しているようだった。

 失望と憤りが高まっていく。だがそれ以上の事実を、それらの感情を加速させる事態がまだ待ち受けていた。

 零は加子からパイロットの座を奪ったいまのゼロンガイアのパイロットを紹介する。

 

『紹介しよう。我らの新たな尖兵、大天使の子スリア・ルーチェ』

 

 発言と共に回線がつなげられる。回線元はゼロンガイアからだ。どうやら本当に紹介するつもりのようだ。

 どんな奴がパイロットなのか。こういうところで紹介するからには動揺を狙っているのだろう。周囲に気を配りながら身構える。

 しかしその衝撃は予想していたものより遥かに大きかった。

 

「………………っ!?どういう、ことだよ……!?」

 

 目が見開かれる。映像回線に移った通信相手の顔。一目で加子ではないことは分かった。しかしその顔は進が良く知る顔だった。

 あり得ない、なぜならその人物の顔は髪色など違えど進のよく知る人物の、こちらの味方サイドにいてこんな前線に出てくるはずのない人物だったのだから。

 進が見間違った人物の名を呼ぶ。

 

「真由、何で、お前がっ!?」

 

『大和真由だと?』

 

『フッ、気づいたか』

 

 回線に移っていたのは他ならぬ進の妹、大和真由と瓜二つの人間だった。名を呼ばれた回線の向こう側の人物は鬱陶しそうに返す。

 

『馴れ馴れしく私の名前を間違うな、ギルボード様に楯突く羽虫が』

 

「くっ!?」

 

 名前を間違えたことに腹を立てスリアと呼ばれた少女がライフルを発砲する。シールドを構えて攻撃を防ぐ。

 続けざまに彼女の駆るゼロンガイアはこちらに向かいながら変形し、すれ違いざまにアンドラスで切り付けてくる。

 やはり加子と段違いの腕前だ。攻撃に入るときの隙がほとんど見られない。攻撃を受け流しながらも反撃を放つが変形を解除しながら回避し、逆にこちらを狙撃してくる余裕を見せる。

 しかし相手は彼女だけではない。零もまた攻撃に加わってこちらの背後を狙ってきた。こちらもフォロカルで応戦する。競り合いながら零は彼女を見た感想をこちらに聞いて来る。

 

『驚いただろう。彼女の姿に』

 

「当り前だろ!どういうことだよ!?」

 

 尋ねると、零は少し間を置いて彼女の正体を話す。

 

『クローンだ』

 

「何っ!?ちぃ!!」

 

 明かした直後、背後からソル・タクティクスの弾幕を抜けてきたゼロンガイアの奇襲を受ける。素早く切り返してシールドで受ける。シールドの表面からひび割れの音が聞こえてくる。

 そのまま吹き飛ばされると空中で四つの足を固定させたゼロンガイアの砲撃が飛ぶ。バックパックとシールドのスラスターを駆使しながら避ける中で零が説明を続ける。

 

『お前の妹大和真由、彼女もまたお前と同じで高いMS操縦適性を秘めている。それも特異な適性……ゼロンガイアに適したな』

 

「どうやってそんな……っ、ギルボードかっ」

 

 そんな適性、分かるとしたらギルボード以外に考え付かない。零もそれが正しいことを示し、その工程について明かす。

 

『お前と真由が三年前に遭った虚無戦争。そこで真由は重傷を負って入院したな?その時ギルは島の内通者に真由の遺伝子サンプルを取らせ持ちこませていたんだ。お前のデータが手に入らなかったのは残念だったそうだが、それでもあのオースガイアという機体を完全に使いこなしうる技能を持った彼女を得られたことは、ギルの計画にとって大きな意味を持った』

 

「くっ……あの時の」

 

 言われて確かに思い出す。真由は生死を彷徨うほどの重傷をあの戦争から逃げる時に負い、救出された後すぐさま稼働出来る医療施設に搬送された。その時なら間違いなく治療の途中でそれらを取れるだろう。

 しかし怒りがそれで収まるわけがない。当然の怒りと、それを話した彼自身のかつて語った言葉に対する怒りを同時にぶつける。

 

「人の命が懸かっている時に、そんな事をやるやつなのかよ、ギルボードはっ!クローンとして生み出されたことを恨んだお前が、それを許すのか!」

 

『っ!?何を……!』

 

 一瞬ゼロンカオスの動きが止まる。弾幕が弱まった隙を見てスラスターを噴かせてゼロンカオスへと斬りかかった。

 

『何をやってる、零!』

 

 その隙をカバーする様にゼロンガイアが割って入る。自身の妹と同じ顔をしたクローン。だがそれを無理矢理弾いて隙だらけの零へと光剣を打ち込む。零にシールドで防御させて、否、シールドに攻撃して接触回線でも呼びかける。

 

『ぐうっ……何を』

 

「クローンを生みだした蒼穹島やオース、そもそもの研究島計画を作り上げた日本政府を恨んだ!それはいい。だけど、だったら何で同じクローンを作らせているんだよ!」

 

『それは……ぐっ!』

 

 答えようとする零の防御を押し込んでいく。明らかな矛盾の中でも、それでも親友が選んだ選択の意味を聞きたかった。

 許せなくともそれだけは聞かなくては敵対できないという自分のエゴに従った。そんなやり取りを不服に感じたスリアがこちらの死角から飛び込んでくる。

 

『どけっ、零。私を馬鹿にするこんなやつ!』

 

「っちぃ!!」

 

 スラスターを全開にして襲い掛かってくるゼロンガイアにオースインパルス・ルフトは遂にSEEDを発動させる。

 たちまちクリアになっていく思考。機体を絶妙に動かしてその場で一回転する形で素早く前後を反転させると、襲い掛かる光の翼を防ぐ。防いだと同時にその刃を受け流して後方へと追い出す。

 防いだ一撃。しかし敵も一筋縄ではいかない。受け流した直後背部に爆発が響く。

 

「うぐっ!?バックパックが……」

 

 機体状況を示すランプがバックパックの右ウイング周辺に被弾したことを告げてくる。敵の方を見るとMS形態へと変形し直していたゼロンガイアがビームライフルをこちらに向けて発射していた。

 ビームライフルを構えなおしてゼロンガイアと並ぶゼロンカオス。こちらもちょくちょく支援は入れてくれていたソル・タクティクスが並んでから零が返答する。

 

『……今は必要なことだ』

 

「零……それは」

 

『自分勝手と言ってくれて結構だ!それでも、復讐を果たすため、ギルの願いを叶えるために、俺は、俺達は生まれ、戦っていく。それがクローンの使命だ!』

 

「ふざけるな!」

 

 怒りのままに光剣を構え、加速する。零も進と同じくその光剣に感情を乗せて振るって来る。

 

「そんなの認めない!お前達を道具なんて、そんなこと!」

 

『そう理想を言い続けていればいい!どのみちお前達の理想を叶えるなら俺達を倒さなければ掴めやしない。そう、相模宗司も入嶋千恵里も、お前と同じ宿命を越えなければこの先を行くことすら敵わないのだから!』

 

 不穏な言葉を紡ぎながら戦う零。妹と同じ顔をした敵と戦わなければならないというプレッシャーを背負いながら戦う進。

 零の意味する言葉の意味とは。離れて戦っていた千恵里や進達の所で、既に起きつつあったのである。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP68はここまでです。

ネイ「ま、まさかのステラ・ルーシェ枠が……」

グリーフィア「ちょっと意外すぎるんだけど。なるほどぉ?第2章の終わり辺りで零君が顔を険しくしてたのは、そういうわけね~」

そう言うことです。つい先ほどまで味方だった、友人だった奴の妹とそっくりな奴と居れば、零君にとっては二重の意味で複雑だったことでしょう。それを必死に今回もぬぐおうとしている。

グリーフィア「大分進君、原典のキャラと比べると性格丸くない?」

ネイ「確かに、スパ○ボとかだとまだデスティニーガンダムに相当する機体が搭乗してから説得コマンドが出そうなものですが」

まぁ、第2章の時点でギルバートとかキラポジションの人から離しているからね。元君も大分厳しくはあるけどジャンヌを除いた他人へのケアはちゃんとやる派だし。

グリーフィア「ん~言い方」

ネイ「事実ですけどもあんまり言うのやめましょうね?」

とまぁ進君は動揺しつつもまだまだ大丈夫ですが、問題は零君の言葉。果たして宗司と千恵里に何が待ち受けているのか!?という所で今回はここまでです。

ネイ「宿命……これ、もしかして?」

グリーフィア「あるかもねぇ~?ではではまた次回~」


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EPISODE69 白と黒の復讐者4

えーまたお久しぶりです。作者の藤和木 士です。EPISODE69と70の公開となります。

レイ「また期間空いたけど、詰まってるの?」

ジャンヌ「無理はしない様にですが、理由は?」

まぁ実際詰まってたってのはある。けど今回書いてた部分から色々問題が生じたので遅くなった感じです。まぁそこは今回のあとがきにでも書いておきます。というわけでEP69です。

レイ「シュバルトゼロとヴァイスインフィニットも激突してるけど、戦っているのは彼等だけじゃない!ってことで前は進君と零君、そして進君の妹の真由ちゃんそっくりのスリアってこと戦ったところだったね」

ジャンヌ「宗司さんと千恵里さん……二人の相手には新型のMS二機。アポカリプスですか。宗教組織のMSの名前としては……でもこれ名前が別の」

それは気にしてはいけない。とはいえ二人にとっては黙示録とも呼べる展開が待っているので。それではどうぞ。


 

 不快感、ではない、拭えぬ不信感と言った方がいいだろうか。そんな感情を千恵里は戦いながら感じていた。

 敵の新型の顔がガンダムタイプに近しいことや、その機体構成がまるで天使か人馬を彷彿とさせる異形であることもそうだが、何より敵の攻撃パターンに強くそう感じる要因があった。

 先程から弾幕を形成したり、近接攻撃を行ったりと掛け合わせて攻撃しているのだがどの行動でも敵が先読みしているかのように行動を合わせてくる。DNLによる先読みのように感じるものの、決定的な違いとして先読みの行動を潰していない差異があった。

 まるで、()()()()()()のように攻防を繰り広げる目の前の敵機。今までに戦ったことがない。今もまたガンアサルトⅢで攻撃を仕掛けてからビームサーベルを振るう動きに、手持ちのアサルトライフルから弾を放ってある程度相殺してから同じくビームサーベルでこちらの斬撃とぶつかり合う。

 まただ、相手と同じ攻撃が続く。出力もほぼ同じ。均衡を崩そうと出力を上げて圧し飛ばそうとするが、相手も同じ思考に至ったのか出力を上げて応戦してくる。

 その現状を見ながら支援を行おうとするクルスもその不可解さに悩む。

 

『動きを読まれている……?でもDNLみたいな感じはないのに』

 

「っ!クルス、援護お願い。突貫する!」

 

『分かった!』

 

 要請に従ってクルスが援護射撃を開始する。ツインビームライフルデバイスによる射撃が敵の新型を狙う。アポカリプスは腰部のウイング状のスラスターを可変させ、四足となって空中を地上のように走破して避けていく。

 時にはジャンプのように上昇し動かす機体。回避しながら両腕部に装備されていたシールドが分離する。分離したシールドは空中を漂う、ビットとして稼働してクルスの駆るシクサス・リッターの攻撃を防御、反撃を開始する。

 シクサス・リッターの相手をそれに任せて本体は再びこちらと対峙する。手に握る武器を後部の脚部側面に装備していた槍へと持ち替えて。こちらも武器をコンバートセイバーへと切り替えている。両武装が激突する。またしてもほぼ同じ軌道でお互い武器を振るっていた。

 また同じ!という感想を口に出す間もなく動く。刀身をずらして先端の銃口を開く。続く二撃目を用意していたのだ。

 如何に攻撃が似ると言っても機能の真似はすぐには出来まい。そう思ったからこそこの武器に切り替えた。普段は使用しないような使い方。突発的でも攻撃を通す。通せる、はずだった。

 そこにビットを相手にするクルスからの警告が飛ぶ。

 

『ダメ!また同じ!』

 

「はっ?っ!?」

 

 一瞬素っ頓狂な声と共にすぐにその意味を理解する。こちらに向けられた穂先。その先にはうっすらと見えるビームエフェクトが。警告も鳴り響いた直後刃状のビームがこちらのビームとほぼ同時に放たれていた。

 無理矢理身体を捻らせて回避行動を取る。相手もこちらと同じように無理に回避態勢を取って攻撃を避ける。幸いこちらの損傷は見受けられない。だが同時に相手もまた同じく攻撃を避けていた。

 奇襲すらも同じ考えだった。こんな偶然あってたまるかと匙を投げたくなる。そこでふと思い出す。進の回線から聞こえてきていた火葉零の発言。

 

(ガンダムを模し、ガンダムを駆逐する天使の騎兵)

 

 模している。初めのうちは外見の事を指すのかと思ったがもしかすると武装構成まで同じなのか?そんな考えが過って機体をよく観察する。

 外見はかなり違う。武器も似ているようで一致しない。ビームサーベルと連弾式のライフルは合致するがそこをとっても似ていると言えるのだろうか。

 しばらく膠着状態が続く。が、こちらの意図に気づいていたように、沈黙を守っていた敵パイロットがこちらに声を通してきた。

 

『何々?見惚れちゃった?もう終わり?』

 

「っ……そんなわけ……」

 

『悩殺したっていうなら傷つけずに鹵獲できるからありがたいんだけどな~』

 

「あなた……ちょっと子供っぽいんじゃないの!?」

 

 何というか苛立ちを覚える。先程からずっと感じる不信感もそうだが、この声。思い出そうとしても思い出せない聞き覚えのある声が何なのか。

 思い出したい。けど、何故か記憶が思い出せない。大切な人の声のようなはずなのに息苦しさを感じる……思い出したくない?

 分からずにいた千恵里は悩んだ末にこのもどかしさを解消したい方を選択する。思い切ってそのMSのパイロットに問いかける。

 

「誰なの……あなたは。私の知っている人なの?答えなさいよっ!」

 

 回線に千恵里の声が響く。それを聞いていたのであろう敵機は武器を構えながらも動きを止める。絶好の機会だったがここで攻撃はしない。敵を知ってしまって撃てなくなることよりも大切だと思ったから。

 じっとその口が開くのを待つ。その時はすぐだった。

 

『………………っははははははっ!!』

 

「何がおかしいのよ!」

 

 突然上げる笑い声に不快感が沸き立つ。だがその理由をすぐに敵は教えた。

 

『おかしいよねぇ。ずっと探していた()()なのに、声すら分からないなんて、滑稽の極じゃない?お・ね・え・ちゃん?』

 

 目を見開く。耳を疑った。目の前にいる敵の正体に、そしてそれに一番に気づけなかった自分の鈍さに。

 忘れるわけない、忘れるわけ、ないのに……。私はずっとあなたとお母さんを助け出すためにMSパイロットを目指したっていうのに。

 早鐘を打つ心臓。荒くなる呼吸。それが隙を生む。気付いた時にはクルスが叫んでカバーに入っていた。

 

『―――千恵里ちゃん!!』

 

「っ!?」

 

『ちぃ、邪魔しないでよ、おねえちゃんのオトモダチ!』

 

 突き出された銃槍をクルスのシクサス・リッターがその手で持ち手部分から逸らしている。掴まれることを嫌がった「敵」はシールドポッドを呼び戻して展開したブレードユニットを振るった。流石のクルスも避けるしか方法がなく、千恵里の機体を引っ張って距離を取る。

 クルスに引っ張られるがままの身体。ようやく脳が理解をし終え、「敵」へとその名を呼んだ。

 

「くあ……?玖亜なの?本当に……?」

 

 入嶋玖亜。それが七年前夫婦聖院に連れていかれた千恵里の双子の妹の名前だった。

 千恵里の問いかけに名を呼びかけられた「敵」は頷いた。

 

『そうだよ。夫婦聖院に連れていかれた、ううん、アナタに人身御供に捧げられた、血を分けた双子』

 

 正体を明かすなり千恵里に対し曲解した考えをぶつけてくる玖亜。いきなりそんなことを言われ、思わず反論する。

 

「人身御供って、そんなこと思ってない!私はずっと玖亜も、お母さんも助けようって思ってた!」

 

 その言葉に偽りはない。同じような目に遭う人が減る様にHOWで戦い続けてきた。MSパイロットという最前線を選んだのもすぐに助け出せるようにするためだった。もちろん元隊長に憧れていたから入ったのも間違いない。

 数年越しで若干声が変わって気づけなかったことを今も悔やんでいる。玖亜に伝える。

 

「今さら遅すぎるとか、そういうのは覚悟してる。でも、そこにいちゃ不幸になる!私達はもう戻らなくちゃ!」

 

『戻るぅ?はっ、笑うよ。寧ろおねえちゃんがこっちに来るべきだよ?』

 

 しかし玖亜は話に耳を傾けず、逆にこちらを引き込もうとしていた。サーベルをクルスと切り結びながら誘拐されてからの事を語り出す。

 

『夫婦聖院に誘拐された後、ワタシはあの人達に色々なことをやらされた。胡散臭い集まりの参加と行程の暗記、教団の掲げる夫婦のあり方、その実習の為に色々の汚いことも見てきて、そしてワタシも穢された』

 

「玖亜……」

 

『夫婦聖院がHOWに壊滅させられてからはもっと酷かったわ。見知らぬ教団をあっちこっち移動して、あいつら結局ワタシとお母さんの身体にしか興味なかったもの。心も体も壊れたから。でも、ゼロン、いいえ、零崎様とギルボード様のおかげでワタシは純粋さを取り戻せたのっ。HOWなんかじゃ出来ない、ワタシ達にとっての本当の救いを与えてくださった……んふふ』

 

 恍惚の声を漏らす妹に千恵里は言葉を失う。何を言えばいいのか、どう答えればいいのかまるで分らない。恐れていた中で最悪の事態に直面する。

 それでもまだ諦めない。もう一度、戦うのをやめるように言った。

 

「……そんな辛い目に遭わせるまで助けられなかったのは事実だよ。でも!そんな奴の為に戦っていたらまた同じ目に」

 

『根拠のないことを言わないでくれるぅ?どれだけ綺麗事を並べても私にとってはゼロンこそ救世主、恩人にして世界を導く者。寧ろ、ワタシがあんな目に遭ったのは無暗に教団を敵視するHOWと日本政府のせいなんだから!』

 

 しかし玖亜はこちらの話に耳を傾けず、逆にこちらの言うことを乏しめる。今の彼女はもう千恵里の知っている妹ではない。認めたくない事実。機体の中に隠した表情が暗い絶望を表す。

 どうして……どうしてこんな。きっと呼びかけ続けなければならないのだろう。けれども何を言えばいいのか。どんな言葉も彼女には届かない様に思えてしまって……。

 攻撃を止めていたクルスの声がこちらに引き戻そうとしていた。

 

『千恵里ちゃん!しっかりして!あなたは妹やお母さんを助けるためにここまで戦ってきたんでしょ!?』

 

「クルス……」

 

『まだ生きているならどうにでもなる。前にいるならあなたの声を届けられる!そして、それを無理矢理にでも止められるのもまた千恵里ちゃんでもあるんだよ!』

 

 クルスにはもう家族はいない。どれだけ努力しても会うことは出来ない。けれども私はまたこうして会うことが出来ている。それを示してくれているのだ。

 そう言ってくれると気が楽ではある。けれどもクルスのその言葉も事情を知っていたうえでそのうえで最悪の言葉を投げた。

 

『生きてるならどうにでもなるなんて、アナタらしいわねぇDIENDの失敗作ちゃん?』

 

『っ、その言い方……私を知ってるの?』

 

『そりゃあ知ってるでしょ?ゼロンの為にとDNLを利用じゃなく殲滅しようとする方向に舵を切った愚かなグレイブ・モセス。その男と研究材料のDIENDをHOWに対する爆弾として用いたはずなのにパイロットだけは裏切ってHOWに味方した。ゼロンに災害から救ってもらっておいて、今まで生きてきた恩を仇で返すアンタはゼロンのジンドウに反した愚行。裏切り者は始末する。生きてたってアンタなんか目の上のたん瘤。HOWのお人形でしかなくなった奴に期待もしないしうざいだけ。だからこそ、今ここで失敗作の出来の悪さを清算してあげる!感謝しなさいよぉ!!』

 

 玖亜はそう言いながら機体の出力を上げてクルスの迎撃をはねのける。ビームサーベルを突きの構えで突き出してくる。クルスに向かって。

 やられる!そう思った時には既に私の機体は動いていた。突発的に加速する機体。慣れない機体制御を無理矢理こなして割って入って腕部の増加装甲で受け止める。

 普段なら腕が斬られているそれも新たな増加装甲装備のおかげで内側までは損傷を受けていない。装甲に仕込まれた耐ビームコーティングが剥離していく間に玖亜が舌打ちの言葉を投げる。

 

『ちっ、やっぱそう言うことなの、おねえちゃん。裏切り者に情を入れたら死んじゃうよ?』

 

「……死なない。私も、クルスも。玖亜だって殺さずに取り戻すんだっ!」

 

『あは♪そんな空想が叶うとでもっ!』

 

 言葉に掛ける想い、それを笑われる。何とか装甲をパージしてその余波で攻撃から逃れ反撃を繰り出す。

 しかしその手は自然と力が入らない。まだためらいがあったのだ。言葉だけで戦いを避けたい。それでも今は自分が、クルスが死なない様に戦うことを選んだ。

 それこそが玖亜の、この部隊の本当の目的とは今は思ってもいなかった。

 

 

 

 

 入嶋やクルスの状況を宗司もまた回線で聞いていた。とはいえ戦闘中で全てを聞き取れたわけではない。

 敵対する機体とは、やはりこちらも接戦を繰り広げていた。入嶋のように動きが被るということはない。だがあちらよりも機体性能と相性を生かした攻撃を繰り出してきていた。

 今もまた攻撃を行う。背部ユニットを使って縦横無尽に空域を飛び回りながら射撃けん制、からの銃槍の狙い澄ました一撃がこちらを襲う。

 

「くっ、速い」

 

『狙いも精確……四本足で空中移動してるってのにこの安定感って!』

 

 動き回りながら流鏑馬のように放たれる射撃はこちらのウィークポイント、ユグドラルウイングやドライバ・フィールド排熱機構部分を狙って攻撃してきていた。しかも時には全く意識を向けていないところにも攻撃を仕掛けるというフェイントで、こちらの集中力を乱してきている。クルツからの支援が無かったらなかなか危ういと言えた。

 ドライバ・フィールドは思考によって周辺にユグドラルフィールドに似た空間力場を形成する。DNLでない普通の人間でも使えるようにした分明確な防御イメージや集中が必要なため力場の「穴」が発生することもある。これまでの運用で学んだことだ。

 これまでの戦いで明確にそれを狙ってきたパイロットはほぼいない。大抵が高出力で真正面から破るというのが多かった。だからこそ今こうして弱点を狙ってきているのはやりづらかった。ただ戦うだけでは勝てない。

 そんな戦いの面でのやりづらさを感じ取っていたわけなのだが、それとはもう一つ別で、DNLとして感じ取った、ひとえにおかしさというべきものを感じていた。

 もどかしさ、とでもいうべき感覚。間違いなく今対峙している敵機から感じるものだ。思ったことは素直に口にするはずのエターナからは全くそちらの方を指摘もしない。

 

『何なのよこいつ……どこを狙って』

 

「……いや、狙ってるのは場所じゃない、隙だ」

 

『えっ』

 

『だな。落とされんなよっ!』

 

 エターナが不意を突かれたような声を上げたと同時に再びアポカリプスが動きを変えた。先程まで射撃攻撃を主体にしていたのを、銃槍による格闘攻撃を織り交ぜる。一撃離脱を基本としつつも腰背部の翼脚を操作して素早い反転、連続攻撃がこちらを襲う。

 こちらもドライバモードのスラスターを駆使して応戦する。コンバートセイバーとシールドライフルをそれぞれ構えての対峙。接近戦はセイバーで、離れたらシールドライフルで狙い撃つと言った具合だ。

 対応こそしてはいるものの、やはり敵も新型を任される人物。動きに無駄が中々無くこちらの攻撃に被弾をほぼ見せない。

 再び刃と刃が交差する。接触回線がつながる。しかしお互い何も話しはしない。どちらも不用意に隙を与えない性格だからか。

 けれどもその沈黙を宗司の方から破った。接触回線で敵パイロットに問う。

 

「お前……「生きていたのか」」

 

『っ、ソージ?』

 

『?』

 

『………………』

 

 なんとなく感じていた違和感。それは進や入嶋の戦闘を回線越しに見てたどり着いた仮定に基づいたものだ。進には裏切った戦友と妹のクローン、入嶋には生き別れた妹。共通するのは「戦いづらい相手」。

 火葉零は言った。俺や入嶋は進と同じ宿命を越えなくてはならない、目の前にいる敵がそうだという意味の言葉を放っていた。

 ならば宗司自身に当てはまるのは思いつく限りでは一人しかいない。その仮定の根拠を語る。

 

「お前達の部隊が仮に「Gチームを抑制するためのチーム」なら、お前は俺かエターナの動きを止められる、動揺させられる敵。エターナの世界の住人が来ることも考えられるが、一番手っ取り早いのは……俺の犯した罪の象徴」

 

『罪って……まさか』

 

『なんだ、何だ?』

 

『……その罪は?』

 

 聞き返す敵パイロット。その声は少女の物で、随分と大人びていたが誰なのか宗司には十分分かった。

 剣を構えたまま確かな確信を以って彼女へと告げる。

 

「11年前の次元覇院を東響から追い出すきっかけとなった東響掃討戦。それは俺がお前とのやり取りから起こったものだった。――――――千住 栞奈(せんじゅ かんな)

 

 哀しみを込めた声が敵の名を呼ぶ。敵とこちらの間に沈黙が訪れる。その答えが正しいものか、こちらも返答を待つ。

 数秒の沈黙の後、パイロットが回線を開いてその口を動かす。

 

 

 

 

『―――――覚えてたのね。あの時の事』

 

 

 

 

 橙の髪にきつそうな目。それは確かにかつて宗司が「殺したはず」の少女の面影があった。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP69はここまでです。

レイ「うわぁ……ここで出すんだね、二人の失った人」

ジャンヌ「なんとなくは思っていたんですが、やはり彼らの生き別れた人達は、ゼロンに」

吸収されたってわけです。まぁ宗司君の方のは生きていれば可能性としてはあったわけなんですが、一体どうやって生き延びたのか、分かりませんね。次で明らかになる予定ですので。
で、玖亜ちゃんの方だけど、これ割とある話なんだよねぇ。拒否しても無理矢理信者にさせるっていうのがこういうカルトの常套手段ですし。洗脳に近いやり方よ。もっともカルトはそれを認めようとしないんだけどね。そういう思考ルーチンを指摘されてもお前がおかしいって仲間で抑え込むってね。どっかで聞いた話だろ、これ?(唐突なゾルタン)

レイ「そっかぁ。ってかなんか詳しそうな言い方してない?」

まぁそれについて深く語るつもりはないし今必要ではないので話を戻そう。面倒くさいし。
で、まぁ彼女のバックボーンに関しては……察しろ。夫婦聖院が発端だが他のこの世界のカルト教団頭おかしいから。いや現実もおかしいと思うけど。そこまでは知らんけど。

ジャンヌ「それでも双子の姉妹としての癖とかは変わっていないみたいですね……皮肉といいますか」

バッチリ動揺させるという目的は達してますからね。

レイ「それで今さら思い出したけどそういえばクルスちゃんゼロンの裏切り者だったね」

ジャンヌ「ここでまた話題になるとはって思いましたね。でもあんまり取り返すって発想には至っていない?」

いやーやっぱクルスはゼロンの元被験者だからどっかで入れたいなぁって思っていたんですよねこの話。ゼロン側から今どう思われているのか。それらへの疑問は次話も含めてゼロンがこだわらない理由が明らかになると思いますので。

ジャンヌ「なるほど。それで今回遅れた理由とは?」

レイ「それそれ!」

実際詰まってたっていうのが大部分なんですけど、実は予定していた話の流れと今現状変わってきちゃっててプロットがほぼ意味を成していないんですよね。

ジャンヌ「えぇ……それ今後の話展開大丈夫なんです?」

もちろんよろしくないけど、プロットが骨になってるおかげであまり話を崩すことはなかったのでよし。今現在第4章の最終話を書いている途中ですので次話は割と早く出せそうです。

レイ「何か不安だなぁ」

実は次話のあとがきでそれに関して報告があるんですよね。
というわけで今回はここまでです。

レイ「同日公開の次話に続くよ~!」


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EPISODE70  白と黒の復讐者5

どうも皆様。引き続きご覧の方は改めまして、作者の藤和木 士です。EP69と70の更新です。こちらはEP70となります。

ネイ「ようやく更新ですね。理由はまぁ仕方ないと言いますか」

グリーフィア「まぁでもそこまで進んでいないって言うのも何だか新鮮ね。前の連載の時は」

もうその話やめて( ;∀;)失踪したくない。

グリーフィア「ま、それは良いとして、宗司君も嫌な相手と戦うことになったわねぇ」

ネイ「殺してしまったと思っていた相手と……どうするんでしょう、彼は」

宗司君の決断を含めて、本編をどうぞ。あ、あとがきに重要事項書いておきますので。


 

 

『そう、わたしは千住栞奈。相模宗司。MSオーダーズに、いいえ、あなたに次元覇院を潰されるきっかけを与えてしまった愚かな女』

 

「栞奈……まだそんなことを」

 

 そんな風に語って見せる懐かしくも因縁浅からぬ少女。言葉は自身の過ちを悔いるような話し方だがその内容は決して自分の信じるモノは間違っていないという考えを曲げていない。

 自分勝手な自省を口にしてから彼女は自身を覚えていた宗司に対し、剣の切っ先を向けて言い放つ。

 

『わたしはまだ次元覇院の復興を諦めていない。それがお父さんとお母さんの生きてきた意味、子は親の跡を継ぐ。彼も、黒和神治も亡き義父母の為に殉じている。だけど、それ以上にわたしは犯した過ちを正す』

 

『過ち……?』

 

 怪訝な声で訊き返すエターナ。援護のクルツもまた銃を構えながら様子を伺う。構える三人に己の罪を語る栞奈。

 

『そう。あの時わたしが止めるべきだった。帰さないべきだった。あなたを、殺すべきだった!だから!』

 

「くっ、栞奈!」

 

 再び闘志、殺意を込めて襲い掛かってくる栞奈。アポカリプスの銃槍が突き出される。その攻撃をコンバートセイバーでずらす。

 しかし少女の力とは思えないMSの圧倒的な出力でこちらを無理矢理押し飛ばそうとする。彼女の恨み言が接触回線から聞こえる。

 

『わたしはあの東響掃討戦の時、たまたまガーデンタウンの外をお父さんの知り合い、同じ教団の人に連れてもらっていた。だから助かった。けれどそれからお父さんとお母さんには会えず、しかも代わりに隣に住んでいた人の子どもが回覧板を家に届けた直後に崩落と火災に巻き込まれて亡くなっていた。あなたが殺したのはわたしじゃない、無関係の人達よ!』

 

「くっ、それが、真実……っ」

 

 互いの刀身を弾き合って、また交錯する。言葉も同じだ。彼女の言葉が続く。

 

『それからはもっと酷かった。次元覇院は壊滅して、わたしはお父さんの友人に連れられて各地の教団を渡り歩いた。でもわたしはいずれの教団にもなじめなかった。次元覇院しかなかった。ただMSという戦うための手段を得られるようにいつも操縦を勉強していたの。そして二年前、ゼロンが誕生してMSの訓練を受けさせてもらって、ようやくここにいる。あなたのおかげなのよ、わたしがあなたと知り合いで、かつあなたにとって動揺を誘える、強さを抑え込める相手として今、こうしてイーター部隊に抜擢された』

 

「イーター部隊……」

 

喰らいし者(イーター)……?』

 

『わたしは、あなたたちを喰らう者。次元覇院を滅ぼしたあなたを喰らってわたしはゼロンの教徒を導く者となる!』

 

 高らかに宣言して栞奈はこちらを跳ね除ける。その機体が変化を始める。双眼のセンサーアイが紅く染まる。機体各部が展開し、その変形は頭部の口部、マスク部分すらも観音開きに中の牙の生えたような口を露出させた。

 MSとは思えない顔、悪魔を思わせるような変貌を彼女は息を一泊置いてから告げる。

 

『L-DLa起動。行くぞ、SINモード!』

 

『っ!?L-DLaだと!?』

 

 クルツが叫んだ時には敵が猛スピードでこちらへと肉薄する。動きに反応してコンバートセイバーを振り上げる。

 しかしその先に敵機の姿はなく、代わりに下方からの接近警報が鳴る。死角からアポカリプスがその槍で突き抜ける。咄嗟に回避を入れる。それでも穂の一撃が胸部装甲を掠めて斬撃跡を残した。

 この動きは確かにL-DLaだ。そのままでは対処できないと判断してこちらもオーバードライバフォームを宣言した

 

「オーバードライバ、イグニッション!」

 

『オーバードライバフォームへ移行させるっ!』

 

 エターナの操作で機体がオーバードライバフォームへと移行する。背部のウイングキャノンの装甲が収縮し、ユグドラルフレームによって形成されたウイングがスラスター機構へと変貌する。

 より強くなったドライバ・フィールドの力を解放する。その力を左のシールドライフルに込めて放つ。攻撃は避けられる。SINモードとなったアポカリプスはこちらの攻撃を見切っているかのように攻撃を回避していく。クルツの精密射撃すらも回避していく。クルツが舌打ちを打つ。

 

『っ!?こんな量産機にもL-DLaかよ!?ソウジ!』

 

 危機を知らせるクルツの声。こちらの射撃と斬撃の迎撃を避けて再び心臓部となるジェネレーター内臓部分の胸部へと攻撃を仕掛けてくる栞奈。

 

『死ねっ!』

 

「くっ!!」

 

 無理矢理間にシールドライフルのライフルを置く。槍に貫かれるライフルは既にシールドから分離している。だがそのおかげで機体本体へは攻撃は届いていない。

 切り捨てるようにライフルから槍を引き抜く栞奈。同時に次の動きへと両者が移行する。どちらも跳ね上がった機動力と出力で互いに攻撃を交える。それは支援を行うクルツにすら追えない程激しさを増す。同時にそれぞれの言葉も飛び交う。

 

『罪だと認めるならとっととわたしの贄になりなさいよ!』

 

「くっ、俺は、死ねない!お前がゼロンに付くのだとしても、生きている事には感謝してもやっている事には同意は出来ない」

 

『偉そうな口を!』

 

 そう、生きていてくれたことに宗司は感謝こそしていても結局やっていることが同じだった。恫喝する者達の側で戦う、それはどうあっても認めるわけにはいかない。

 しかし、そうは言っても言葉で圧倒しきれない。もっと批判すべきそれを、かつての自分の考えが邪魔をする。

 

(こうなったのはおれのせいだ。おれがいやがったから、かのじょをおいこんだ)

 

「っ……栞奈、もう終わりにしよう。そうでないのなら」

 

『えぇ、終わらせるわ。あなたを殺して!』

 

「お前を……討つ!」

 

 終わらせるには戦うしかないのか、いやそれしかないという強迫観念を抱いてかつて初恋だった相手と殺し合いを行う。

 

 

 

 

 MS部隊の戦闘は激しさを増していた。激しさのあまり双方のMS部隊の後退が多くなっていく。しかもその数は東日本連合軍の側が多かった。

 そのうちの一つ、ゼロンのタイプシリーズと接敵していたオースの両雄大和進の率いる部隊が丸ごと後退を始めていた。回線に告げられる。

 

『ぐっ……もう無理だ、抑えられない。機体中破、これより帰投します!』

 

「オース軍、後退開始!」

 

「っ……戦線が崩壊してきた……無理もないわね」

 

 光巴からの通達にそう呟く紫音。敵部隊とこちらの戦力、崩れるとしたらそこだと最初から分かっていた。

 機動力に優れたMSでも敵はDMS、超次元モビルスーツ。知らされるオースフリーダムとオースセイバーの破損状況は酷く、飛ぶのもやっとと言える状況だった。

 とはいえ彼らに対応してもらったおかげで今の状況が作り出せていた。未だ元隊長から人質奪還の知らせは届いていないがまだ想定の範囲内であるということだ。

 後は彼らが抜けた後を別の部隊に抑え込んでもらう。その部隊、HOWのカラーガンダム達にお願いしてもらうように指示出ししようとすると、その絶望的状況を知ることになる。

 

「深絵さん夢乃さん敵と以前交戦中!」

 

「何ですって!?」

 

 耳を疑う。相手はHOWの戦力の中でも双璧のはずだ。増援を送り込まれたのかと疑う。しかしそうではないと通信役を今一手に担っている光巴が報告した。

 

「資料で見たけどやっぱりあのDNL使い、凄い。ただの人間の深絵さんと夢乃さんじゃ、どれだけMSが優秀でも……!」

 

「くっ……ゼロン最強のDNL、真紅の流星。戦術だけじゃなくて、実力も規格外……いいえ、むしろこれも彼の戦術?」

 

 手が打ちづらい。彼の存在抜きでは次の指示を出すことが出来なかった。戦力を充てなければならないが、どこを動かすべきか。流石に切り札は温存したいところだが……。

 何か、大きく戦線を動かす一手が欲しい。それが出来るとしたらこの艦の「ダーイン・ス・レイヴ」だろう。そして先程要請した使用許可についての返答が丁度帰ってきた。

 

「艦長、須藤司令からです」

 

 すぐに手元の受話器を取る。

 

「紫音です。どうでしたか」

 

『あぁ、返答が来た。使用を許可する。ただし一発のみだ。先のDNFが懸念事項らしいが大丈夫か』

 

「問題ありません。それだけあればまだ!」

 

 それで構わない。元々この艦で二発分の発射は大分無理のある設計となっている。片側一発だけでもあの艦艇には十分効くはず。

 敵艦を見る。旗艦と思しき女神像を備えた艦はDNウォールを展開しながら砲撃を継続する。我が方のMA、量産型DNアーマーが攻撃を仕掛けているがそれらは敵の弾幕、それに哨戒する敵方のMA、そして空戦型のタイプシリーズにより近づけさせてもらえていない。

 そんな彼等にも私達にとっても打開するための一撃の使用を自ら宣言する。

 

「全クルーに次ぐ。これより本艦は右舷超主砲「ダーイン・ス・レイヴ」の使用を行う。各員所定の作業を開始せよ!」

 

『了解!』

 

 クルーからすぐに返答が入り超主砲の発射準備が開始される。エネルギー確保のため艦内が一部省電力化されブリッジの照明が落とされた。

 動きは僚艦の方でも起こる。後方の艦が位置をずらし、ヴァルプルギスを護衛する様に弾幕を形成していく。

 エネルギー全てをダーイン・ス・レイヴに回す。砲撃手である三ヶ島(みかじま)が狙いを定める。

 

「一発で決めて。あの砲撃だけは止めること」

 

「難しい注文で。けど、やるからには当てて見せます」

 

 いい返事だ。そのまま三ヶ島は照準を定める。最低限の目視監視等をしながらクルーが見守る。三ヶ島が動いた。

 

「照準OK!」

 

「撃て!」

 

 艦の右舷側からブリッジまで響く駆動音が鳴る。発射装置が高速回転で発射の為のエネルギーを解き放った。凄まじい轟音と振動と共にダーイン・ス・レイヴが放たれた。

 それは戦場を駆ける一筋の矢。MS部材にも使われるDNフェイズカーボン製の槍を矢に見立てて放ったそれは寸分狂いなく弾幕の中を突き進む。ビームすらも捉えられない一撃が敵艦へと到達する。着弾の瞬間、衝撃が周囲の艦艇を揺らす。女神の飾りを正面から粉砕する光景が見えた。

 その一撃の威力にブリッジが歓声に沸く。

 

「やったぁ!!」

 

「三ヶ島さんやるぅ!」

 

「何とか行けました、これで戦況も……」

 

「えぇ、どうにかする―――」

 

 言い切ろうとしたその時、僚艦の爆発が艦橋を照らす。空気の振動が艦を揺らし、喜びに沸いていたクルーを現実へと引き戻す。すぐに何が起こったのか観測がその理由を悲鳴交じりに通達する。

 

「敵機接近!ゼロンのタイプシリーズです!」

 

「何ですって!?」

 

 一手遅かった。耳を疑う報告は確かに現実だとすぐに分かる。ブリッジ正面に見えるのは戦場には似つかわしくない黄金の機体。機体の構えた両腕に歪んだ黒い球体が浮かぶ。あれは次元世界の外と繋がる次元のひずみ。

 強烈な破壊力を秘めたそれを喰らったならひとたまりもない。ブリッジが耐えられるとは思わない。そして敵もそれを狙ってこちらに放つ。一気に背筋が凍る。クルーの悲鳴が木魂する。

 

「いやああああ!!」

 

「くそっ、神様仏様っ!」

 

「モビルスーツに乗りたかったァ!!」

 

「慌てるな、緊急回頭……無理かっ!」

 

 もうダメだと諦めかけた。目を背ける。ところがいつまでたってもブリッジのガラスが割られることはなかった。

 違和感を覚えた紫音が正面を見るとそれはすぐに分かった。

 

「あれは……公安の」

 

「え……あれは!」

 

 クルーも気付き始める。ブリッジから見える機影、黄色の可変型ガンダム、古橋勇人の駆るゲルプゼクストガンダムが攻撃を防いでヴァルプルギスの前にいたのである。

 

 

 

 

『ちぃ、邪魔をしてくれたな、ガンダム!』

 

 ゼロンのパイロットは攻撃を防がれたことに怒る。が、それに対し勇人は必要最低限の会話と共に攻撃を行う。

 

「邪魔をしているのはお前達だ。これまでにお前達が犯した罪は俺達が裁かせる。全員残らず」

 

『くっ、裁かせるとは笑わせる。神の領域たる私達に警察の力が及ぶとでも』

 

 自分達が絶対に警察には太刀打ちできないと意気込む。反撃の攻撃が来るがそれも最小の動きで避けて攻撃を継続する。

 粋がる敵のパイロットに対し、勇人は淡々と語る。

 

「神だろうと関係ない。俺達の仕事は犯罪者を捕らえるだけ。使徒であろうと犯罪者には変わらない」

 

『貴様もHOWを護ろうとする愚か者だろうが!貴様の罪、我らの正義で裁く!』

 

 推進機構を起動させて敵が前進してくる。こちらの射撃は全て掌に形成した超次元現象が防ぐ。そのまま接近する敵が余裕を口にする。

 

『脆弱な!』

 

「それはどっちかな?」

 

 しかし言って見せると意識を集中する。攻撃をそのまま放つ。同じことの繰り返し、とても対処できるとは思えないだろう。

 ところが敵がその手に作り出していた壁が攻撃を透過して機体本体へと着弾していく。機体の装甲に着弾の煙が起こっていく。敵が被弾を嫌がって回避を行う。それを執拗に狙って照準を動かす。

 敵が困惑を口にする。

 

『っ!?何故だ、何故防壁が……っ、システム上は機能しているだと?どういうことだっ、ディサピア!』

 

 同乗しているのであろう誰かにこの状態がどうなっているのか怒鳴りつけている。当然それは勇人自身がゲルプゼクストを介して行っているものだ。

 この力を使えるようになったのは大分前、別のタイプシリーズと対決した時のことだ。たまたま愛智方面へと出張した際に黒のタイプシリーズと対決した際にうっとおしい超次元現象の攻撃を「なくなればいい」と思った際に発現できるようになった。

 詳しい解析でこれが「敵の超次元現象を阻害する」機能と分かった。以来同じような敵機に対しては攻撃にそれを乗せて着弾、直撃させる様になった。メカニズムを解明したHOWからはユグドラルフィールドと同質のフィールドとして利用できると沸き立っていたがそんなものは現場の勇人にはさほど問題はない。

 使えるのなら使う。もちろんリスクを見ての判断だ。幸い精神力の消耗は許容範囲内だった。今もこうして敵の長所を押し殺して押し留める。あの艦、ヴァルプルギスを護りながら。

 

「とにかくまずは、こいつを離す……」

 

 今度はこちらも前方向へと加速し、敵へと詰め寄っていく。その際にも主兵装「ツールバスター」の発砲は止めない。しつこく足止めする形だ。

 敵も回避を必死に行っていたが何とかギリギリ避けている状況だ。防御も出来ないのが辛いと見える。

 だからこそ敵も発想を変えてくる。

 

『ちっ、防御壁が使えないなら直接叩き付けるッ!』

 

 弾に触れなければいいと被弾を覚悟であちらも逃げから攻めに転じる。接近戦なら攻撃を通せる。避けられないと踏んでのことだ。

 それに応じる形でそのまま前進を続ける。腰部に接続されたバインダーからも噴射し、一気に接敵する。それぞれの攻撃を放つ。

 

『これでひしゃげろ!』

 

「この距離ももらう」

 

 相手は掌の超次元現象で、対する此方はドライバ・フィールドで覆ったツールバスターで、それぞれのバイタルパートへとぶつける。

 お互いの装甲が火花を散らす。が、一足早くゼロンの側が叫ぶ。

 

『超次元現象が、働かない!?密着状態で!?』

 

「甘いな。一度沈んでもらう」

 

 敵の攻撃をドライバ・フィールドで防ぎながら、言葉と共にツールバスターのドライバ・フィールドに指令を繰り出す。圧縮したドライバ・フィールドを一気に打ち出す。敵の身体が曲がり、装甲が一瞬にしてひしゃげ、腹部を貫通する。

 ビームではない、文字通り空気が貫通したかのような光景は味方すらも驚かせる。敵を退けるもそれで終わりではない。

 

「まだだ」

 

『ぐっ、がぁっ!?』

 

 テールコンテナバインダーを前に向け、ツールバスターの発砲と連動させる。攻撃を避けられずに弾を喰らっていく敵機。それを見かねて敵僚機が手を貸そうとするが、それすらも発生した結晶で取り込み糧とする。

 

『う、うわぁぁぁぁぁ!!』

 

『味方だぞ!?がぁぁぁ!!』

 

『お前達は……俺の贄だ!俺の力となって、生きればいい!!』

 

 機体の損傷を回復させ、力を増して再度向かって来る。厄介、そして身勝手。醜悪な教団関係者の良い見本と呼べるそれを警察関係者として見過ごすわけにはいかない。

 襲い掛かってくる敵機は結晶を発生させた状態でこちらに襲い掛かってくる。以前も見た強化状態だ。あれと張り合うには相応の覚悟がいる。

 全く、厄介なことをさせられる。悪態を心に吐くとその力を解放する。DNLとしての力を「DNジェネレーター」に作用させる。加減は覚えている。後はどれだけやれるか。

 回避行動を取りながらそれを使う。

 

 

 

 

『エラクス、始動!』

 

 

 

 

 ツインジェネレーターが稼働を開始する。DNLとしての感応音でその回転率を強制的に上げる。暴走するツインジェネレーター。機体が蒼く染まり、蒼炎を上げ始める。

 各部の出力が上がっていき超高出力状態から更に上がっていく。

 カラーガンダムは未だエラクスを発動できない。しかし、この機体は別だった。ドライバ・フィールドとDNL、その力がわずかな間だけエラクスを起動させられた。

 多大な負荷を勇人に与えながら。

 

「ぐっ……行くぞっ!!」

 

 相応の覚悟と共に勇人はタイプ[リズン]を追い払いを始めた。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP70はここまでです。

ネイ「宗司さんは……殺すことを決めたんですね」

グリーフィア「でもまぁ、殺していいのかって葛藤はしてるみたいね。作者君としては?」

いや、書いてることが結果ですので(;´・ω・)けどまぁ言わせてもらうと「可能性に殺されるぞ!」って感じですね。

グリーフィア「うん、意味わからん☆」

ネイ「あ、はは……それで必殺の一撃を放ったヴァルプルギスに突如として襲来したゼロンのタイプシリーズ。大和輝さん達でも抑えられなかったんですね」

そりゃああのザルヴァートルモチーフの機体(リミッター解除版)ですから、スパロボの時の性能以上ですよ。それをフリーダムやセイバーで止められるわけがないんですから。

グリーフィア「原作の性能で言えばまぁそうなるわよねぇ。同じ機種でもどうにもならない感じだし、おかげで新型に乗り換えてるわけだから」

ネイ「けどそれを手玉に取るような勇人さんにも驚かされました。超次元現象を貫く一撃、ですか」

まぁ大分やってる部類の機能ですね。ちなみにここ超次元現象とドライバ・フィールド、ユグドラルフィールドが明確に違う部類の領域って証明ですので。

グリーフィア「いまいちそこら辺の違いが分からないのよねぇ。ドライバ・フィールドのそれはユグドラルで同じように超次元現象は無効化できるの?」

無理ですね現状。出力で無理矢理超次元現象を弾くってやり方しか。

ネイ「そうなんですね。でもドライバ・フィールドはすごいですね。エラクスシステムを使えるようにするって……他のツインジェネレーター機はまだなんですよね?」

そうだね。ただこれが終わったら実装される予定ですので、それで戦力比も大分変ってくるかと。

グリーフィア「これで変わるといいけどねぇ~。と、そろそろ終わりかしら?」

あぁ最後に一つ。
次話投稿後、また投稿間隔があきます。

グリーフィア「うわ、マジで?」

ネイ「ちなみに理由は?」

前話でも言ったけど第4章の後半がそれなりに内容が変わりました。ので第5章プロットの修正と、第6章以降のプロットの作成作業を開始したいと思います。

ネイ「なるほど。このタイミングでですか」

グリーフィア「プロットの書き直しって言及あんまりしてないけど第2部4章以来ねー。内容変わるってことだから、それ相応の作品期待してるわよ~?」

まぁ、これがいいかなと思ってそうしたのでそうでありたい。と、そんなわけですので先に謝っておきます申し訳ないです。
それでは今回はここまで。

グリーフィア「次回もよろしく~」


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EPISODE71 白と黒の復讐者6

どうも、予告通り次話は早めに出しました、作者の藤和木 士です。今回はEPISODE70の投稿となります。ここが一種のターニングポイントと言えるでしょう。

レイ「ターニングポイントとは思い切ったね。何か起こるってこと?」

そういうことです。

ジャンヌ「それは気になりますね」

気になる、いい言葉だ。もっとも今回は気になるというより、気にせざるを得ない、が正解かもしれない。

レイ「せざるを得ない?」

ジャンヌ「また何を考えているんだか……ともあれ最新話の更新が早いのは良いことです」

というわけで本編です。場面は再びシュバルトゼロとヴァイスインフィニットへ。どうぞ。


 

 

 各地の戦闘が激化するのと同様にこの戦いの中心となっている二機のガンダムの激突も苛烈を極めていた。

 互いの武装の潰し合いに発展するが、しかしどちらもその武装を喪失した直後に転送で武装補充を行う性質の為全くと言っていいほどダメージを与えられていなかった。

 千日手のような状況だったがそれでも戦う内に両者は戦い方を変え、再び本体への攻撃へと回帰した。

 

「はぁっ!!」

 

『ぐぅぅ!!』

 

 クローザーのブレードガンⅡをエアレーザーが腰部の実体剣を抜いて受けとめる。すぐにその刃が折れてしまうが構わず腰部から別の剣を取り出し果敢に向かって来る。

 元はそれに対し舌打ちをかすかに打つ。既にブレードガンⅡは一本失っている。あの実体剣は加熱式の実体刃でそれを何度も打たれるうちにブレード部分が熱され叩き折られてしまったのだ。

 だからこそ今持っているブレードガンⅡはカバー形態で用いている。射撃こそ出来ないがそれでもいくらか耐性はある。振り上げた一閃が敵の左腕を狙う。

 クローザーの一撃をシールドから射出されたモノが阻む。幅広の剣が斬撃を撃ち落とす。瞬間を作り出し、カウンターの一閃が振り下ろされる。それを受け止める。

 

『本当にしつこいな……魔王!人の時代、神を愚弄する愚か者!』

 

「人の時代、ならば台頭するべきは神ではない、王、統治者だ」

 

『その王も、欲にまみれた愚か者ばかりだ!だからこそ神に遣わされし救世主が必要だ。救世主こそ統治者、それこそ、俺の使命!』

 

「救世主なんて……そんな幻想の存在は統治者ではない!」

 

 馬鹿々々しい妄想を切り捨てるように剣の鍔迫り合いを振りほどき、腰部のフェザーショットを放射する。放射される羽のビームは怒りそのものを表しているようだった。

 実際元は怒りしか抱いていなかった。次元覇院に関わったせいで両親を殺さなければならなかった。華穂は家を出るしかなかった。両親の件に関してはやったのは自分自身だ。しかしそれでもそんなことをやる必要があったのは他でもない次元覇院のせいだろう。

 殺したのが俺だと言われる筋合いはあっても、殺す理由はお前達によって作られた。()()()()()()()()。こんなはずじゃ、なかったのに。

 勝手に回り続ける物語。ならば止めるのは必然。人として終わった奴らを止めて、彼女が付き合わされなくていいようにする。それが、親を殺した者の贖罪。

 そんな覚悟を秘めて再び距離を詰める。左手のディオスクロイを振るう。

 

「せぇい!」

 

『ぐっ!こんな力任せッ!』

 

「甘いんだよ!」

 

 受け止め、単調だと言い返そうとする神治を黙らせるように素早く宙返りをする。宙返りと同時に機体を捻らせ、シールドカノンから発生させた大型ビームサーベルが斬撃を繰り出す。その手に握っていた腰部の刀剣を叩き落とす。

 その勢いを殺さず、空中で機体の足を縮ませると一気に脚部で空間を蹴る。イグナイトエフェクトを足場に使っての緊急加速。それをクローザーが持つG制御技術で可能な限り抑え込んで使用する。

 加速には耐えられる、が、それだけ制御を行うジャンヌも疲弊している。

 

『っ……』

 

 耐えてくれているジャンヌの為にディオスクロイで再度エアレーザーを強襲する。反応しきれるとは思えない。が、それを咄嗟に腕部のスマッシャーでビームを纏わせ防御する。

 防御行動を行ったエンドが予想外だったと反応する。

 

『フン、感情に任せているとはいえ、この腕前……以前の俺でも無理だな』

 

 少しばかりの賛辞。エンドも前に出なければならないと判断したのだろう。それは少なからず元達の認識を改めたということ。それに対してあの時からの屈辱で返す。

 

「あの時お前に届かなかった手だ。今度こそ大切なものを取り戻すためにお前を掴んで奪い返す!」

 

『奪い返す、か。言い逃れはせん。だが忘れてはいないだろうな、こいつの新たな家族を奪ったのは、お前だと』

 

「家族を奪ったのはお互い様だ。冷静さを取り戻したならなぜそいつに正しく理解させない!?」

 

『正しいさ。倒すべきは、貴様だと』

 

 握りしめた刃を掴んで、エアレーザーが振り回す。宙に投げ出されるクローザー、負荷が掛かっていく。態勢を立て直そうとするそこにエアレーザーが武装を切り替えビームライフルで狙いを定める。

 

『元っ!?』

 

「ぐっ!?」

 

『隙だらけだぞ』

 

 ビームライフルの銃口から連弾が飛ぶ。間一髪シールドを制御して防御する。がいくつかの弾が機体のウイングやサイドアーマーに被弾、表面を焼く。

 攻撃を続けたまま、エアレーザーが追撃を仕掛けてきていた。振り上げられたシールドの大剣が左手に握られ、突き立てようとする。が、間一髪気づいてシールドを開いて外へと弾く。空いた中央にビームライフルの銃口をねじ込んでくる。

 

「!?」

 

『終わりだ!』

 

 発砲、腹部付近が光で照らされる。ところがその弾丸は外へと抜けていく。間一髪その銃口を外側へとずらしていた。ジャッジメントクローズの光を放ちながらそのビームライフルを握りひしゃげさせる。

 

「終わりじゃないのか?」

 

『フン、こちらも本気、だすぞ?』

 

『ヴィクトリープロフェシーモードッ!!』

 

 両者の間で凄まじい力のぶつかり合いが起こる。破損したビームライフルの爆発すらも吹き飛ばす圧倒的な高密度エネルギー同士のぶつかり合い、それが空気を振動させる。シュバルトゼロクローザーがジャッジメントクローズモードを持つように、ヴァイスインフィニットエアレーザーもまた持っていたのだ。それに匹敵しうる最強の形態を。

 隠された力。しかし予想はしていたと余裕を持って告げる。

 

「やはりあったか。追加ユニットが来た時点でなんとなくは思っていた」

 

『互いに似る収斂進化だ。もうお前にも分かっているだろうが。だが、お前達とは違う。英雄にして救世主と呼ばれた俺が本気で行く……ついて来い、神治!』

 

『違う、俺について来いってんだ!』

 

 英雄と救世主気取り、それぞれのコントロールを得てヴァイスインフィニットエアレーザーが襲い掛かる。より加速を増した機体の突撃をこちらもブレードガンⅡで受け止める。

 激突する剣。衝撃でブレードガンⅡのカバーが粉砕した。破片が両機体を叩く。剣戟が展開される。互いに武装ではなく機体本体へと攻撃し、防御を行う。

 攻防の中、元達も疲れを感じ取る。ジェミニアスの戦闘は既に1時間が経とうとしている。ジャッジメントクローズモードも始動と停止を繰り返していた。それに稼働時間で言えばあちらの方が短い。やはりその為のハリヴァーと一真の横槍だ。長引かせる戦闘でこちらの消耗を狙う。今更ながらやるな、と思う。

 クローザーの弱点を的確に突くのは元英雄の分析力だろう。そうだとしても勝つ。いや、取り戻す。その決意を口に疲弊する精神を奮い立たせる。

 

「本気ならこっちだって出すさ。取り戻すための戦いを繰り返してきた!今度こそ、取り戻すさ!」

 

『虚勢を!』

 

 幾度目かの切り結びを解く。直後距離を取ると同時に右手のブレードガンⅡを投擲する。続けざまにDフィストスマッシャーからビームを放ってブレードガンを爆散させた。ところがその刃は加速した状態でヴァイスインフィニットエアレーザーの肩のシールドを横から貫いた。

 

『っ!?やるな、しかし!』

 

 右のシールドを唐突に潰され、意表を突かれるエンド。しかし反撃へと素早く転じた。もう片側のシールドからその手に握る大剣と同型の剣を射出する。

 一つだけではない。射出するとすぐにマルチ・スペースシステムで補充、再び外へと放出し、それらが宙を飛び回るビットとなった。

 剣を操る戦士と言うべきエアレーザーはその剣を従え、こちらに突撃する。こちらも応戦する。肩のソードビットを射出し、右手にエリミネイターソードを持つ。

 

『英雄の力は伊達ではない!』

 

「だったらそれを越えるまで!」

 

 遠隔操作端末が空を舞う中、その手の武器で斬り合う。剣戟の最中、それぞれの武器が隙を突くよう襲って来る。それらを回避、あるいは切り落とす。

 たった二機での乱戦は空を飛び回りながら続く。敵もその中に近づけないからか、それとも手出し無用としているのか横槍はない。だが狙っているような感覚がある。それを探ろうとするが敵の攻撃が激しくこちらを攻め立て、そちらに意識を割かざるを得ない。

 

「くっ」

 

『よそ見をしている暇はないぞ!』

 

 エンドからも見透かされていた。ジャンヌが疲労と事態が不利になっていると伝えてくる。

 

『元、こっちも……大分限界が……。連合軍も各部隊の撤退が続出しています。このままじゃ!』

 

 限界、それを認めたくはない。ここまで来たのだ。またあんなことを繰り返すなんてことは是が非でも受け入れられない。

 13年、屈辱の時を味わってきた。ジャンヌだってそれだけの長い時間を付き合わせてしまった。もうあの頃の学生生活をもう一度、なんて出来やしない。例え肉体の時間が止まっていようとも、過ぎた時間は取り戻せない。

 ならこの好機をみすみす逃すのは認められない。こんなところで諦められるか。

 

「まだだ……まだ終わりじゃない!」

 

 ソードビットを呼び戻す。エネルギーチャージの為、そして最大の武器「エリミネイターバスターソード」を形成するためだ。合体させるとそれを携えエアレーザーへと進撃する。

 

「絶対に、逃がさない!!」

 

『フン、特攻かよ!エクスカリバー!』

 

『ちぃ、神治前に出過ぎるな!奴の力は』

 

 操縦を代わって迎撃しようとして見せる神治を抑えるエンド。大剣が一挙として迎撃に向かって来る。

 それらを最小限の動きと剣のガード部分、シールドからのビームで回避していく。エンドの危惧した通り、妨害を物ともせず猛進する。

 ようやく操作を代わったエンドが大剣操作を継続しつつ超次元現象の武器を出現させて投擲する。円盤のそれらがこちらを切り裂こうとして来る。的確にこちらの防御の薄いところを狙って。それでもスピードを落とさず潜り抜ける。

 十分接近したところでエリミネイターバスターソードを振り下ろす。

 

「はぁっ!!」

 

『くっ』

 

 攻撃は回避される。距離を取るエアレーザー。だがまだ終わりではない。エリミネイターバスターソードの先端が開く。砲身を形成するとビームを発射して薙ぎ払いを行う。薙ぎ払ったビームがエアレーザーを直撃し、シールドごと弾き飛ばす。

 

『っ!?』

 

「逃がすかよ!!」

 

 逃がさないという意志の元、パネルウイングそのものを分離させる。分離したパネルウイングは端末として空を舞う。加えてその表面にこれまで使ってきたことのある武装をマルチ・スペースシステムで装着させていた。

 即席の砲台として機能するそれから弾幕がエアレーザーへと襲い掛かる。これまでのビット攻撃とは違った攻め方にエアレーザーは撹乱されていく。

 大剣のビットとパネルウイングの近接格闘武器とが衝突し合う。敵の大剣が徐々に減っていく。壊れ、あるいはエネルギーが尽きていこうとしている。それらに対処するべくエアレーザーが再びシールドから武器を射出しようとする構えを見せる。

 それを待っていた。意識を集中させ、攻撃を繰り出す。

 

「そこっ!」

 

『!?シールドがっ!?』

 

 側面を位置取らせたパネルウイング二枚からネオ・ガン・グニールを形成し、射出する。簡易電磁投射砲として放たれたそれは意識外からの予測砲撃でエアレーザーの左シールドを貫き、左腕の一部と共に粉砕した。

 使い捨ての砲撃。砲弾にしたネオ・ガン・グニールは眼下の海へと重力に従って落下していく。それに見惚れる間もなく元はシュバルトゼロクローザーを加速させた。

 近づけさせまいと残存する大剣と超次元現象の刃を飛ばしてくる。それを回避、したところを素早く構えたビームランチャーのビーム三本が襲い掛かる。

 

「ぐっ!?」

 

 ギリギリでシールドとバスターソードの面で防御する。弾着と同時に一気に爆発が強くなる。そして背後に敵機の殺気を感じる。短距離移動で詰めてきたのだ。

 神治の威勢のいい声が響く。

 

『取った!!』

 

「まだだっ!」

 

 素早く前後反転してナハト=ヴァールで防ぐ。エレメント・フリージアとエレメント・ファングの併用で敵の勢いを削ぎながら防御し、不用意な消耗を抑える。ビームランチャーを槍の如く操るエアレーザーから、神治が忌々しいとの声を吐く。

 

『墜ちろよ墜ちろよ!正義は勝つんだ!消えろっ』

 

「駄々をこねるガキが。まだ落ちねぇよ!」

 

 我慢比べならこちらが上手。かつては新型MS相手にシュバルトゼロガンダムRⅡで張り合ったこともある。その時の経験で耐える、ということは得意だった。

 それゆえ疲労という差でも張り合える状態。とはいえそれをいつまでもやれるわけではない。エンドの力を借りていると言ってもまだ、未熟。故に助けられていた。

 奴自身が成長する前に叩く、速攻しかない。焦りが混じっているがなりふり構っていられない。シュバルトゼロクローザーの性能を限界まで引き出す。落とそうとして来る神治の執拗な斬撃を弾き飛ばして空いた腹に蹴りを入れて黙らせる。

 

「っ!」

 

『ぐぁっ!?卑怯な……』

 

 飛ばされながらも腰背部から伸びるビームランチャーでこちらを狙って砲撃する。しかしその状態での砲撃、そうは当たらない。こちらも敵に向かって加速し、逃げる敵機に追撃の一撃を仕掛ける。

 迎撃態勢を取れない状態で、加速して一気に斬りかかる。斬る、その瞬間に敵の機体が消えた。

 残った残光。急速に知らせるアラートで振り向く。直後左手のディオスクロイが宙を舞い、左シールドがビームに切り裂かれて増加部分がソードビットごとパージされた。

 爆発と共に見えるのは蒼い蒼炎を纏ったヴァイスインフィニットエアレーザー。エラクスシステムだ。かつてシュバルトゼロとヴァイスインフィニットの対決を左右した因縁のシステム。

 それを見て元もまた使用を決意する。

 

「エラクス!」

 

『ぐぅ……了解っ!』

 

『ELACSSystem,Standby!』

 

 蒼炎に染め上げられるシュバルトゼロ。エラクスシステムを発動した証。ジャッジメントクローズモードに重ね掛けで発動したシュバルトゼロが高速戦闘に突入する。

 その負荷はさらに増大する。高速で動く中加速する痛みに呻く二人。

 

「っ……ぐぅ」

 

『うう、うぅぅぅ……くぅ』

 

 高速戦闘と高負荷のモード、戦闘の継続が困難に近くなっていく。息が荒く、酸素を求めていく。機体からもメディカルアラートが鳴り出す。限界、それでも継続しなければならない。

 ここで決めなければ。エラクスシステムを発動させた状態で激突する中で一気に押し切る決断を取り、その機体を全力で制御して攻撃を繰り出す。

 素早い武装切り替えで息つく暇を与えない。武装を仕舞う時間もない。それに対抗してヴァイスインフィニットも意地の攻防で両者の機体が傷ついていく。気迫に押されていく神治とエンドの声が漏れだす。

 

『くそっ、何だよ、これ。着いて行かない!?』

 

『負荷がないはずがない……これが、今のシュバルトゼロの……くっ、ぐぅ!?』

 

「逃さん!」

 

 勝負に出るように敵機体との距離を急速に縮めるクローザー。瞬間に薙ぎ払ったビームサーベルの斬撃がエアレーザーの左腕の肘から先を一気に斬り飛ばす。宙へと舞ったエアレーザーの腕の爆発を背に受けて追い詰めていく。

 その耳にレイアの苦悶の声が聞こえてくる。

 

『うぁっ!!くぅぅ……』

 

『人質の声を聞いて、まだ戦うか。それが貴様の正義か』

 

 単純な挑発。しかしそれは非常に強く元の心に作用していた。余裕のない状態でそんな声を聞かされて痛まないはずもない。装依の下の顔が苦しさと怒りで歪む。

 既にけたたましいアラートが戦闘続行困難を告げる。悲鳴を伴ってジャンヌが制止を呼びかけていた。

 

『もう無理……元、ハジメェ!!』

 

「罰は受けるさ……取り戻してからなぁ!!」

 

 勢いを止めることなく戦闘続行を選択する。鍔迫り合いのまま敵を押し込む。機能するスラスター類を全開にし、エラクスの暴力的な出力を込めて押し込んでいく。

 もはや戦闘技能の話ではない。力で全てを押し切り、海上に浮かんでいた撃沈されたゼロン艦艇の上へと叩き付けた。

 

『がぁぁぁぁ!?!?』

 

『あぁっ』

 

『ぬぅ……!』

 

 叩き付けられたエアレーザー側の陣営が痛みに声を呻かせる。それは叩き付けた側のクローザーも同じだった。

 

『くぅぅ……つぅっ』

 

「……ぐっ、ジャンヌ、データはっ」

 

 片膝を着くクローザー。お互いエラクスシステムが解除されている。完全に限界に近い。その状態で果たして作戦通りにレイアを救出できるのかという不安があった。

 ここまで来て頼りにするのはジャンヌの観測データ次第。無茶を多大に掛けてきた中この激突で手に入れてくれたかどうか。

 しかしそこはこれまで無茶に付き合ってくれたパートナー。意地を見せてくれた。

 

『データは、既にあります……波長は、合わせられれば』

 

「そうか」

 

『でも無理です!二人ともここまで消耗していたら、成功するかどうか……』

 

 ジャンヌが失敗しかねないと中止を訴える。確かにその可能性は高い。何とかギリギリ意識を保っている状況でそんな繊細なことが出来るのか。

 万全を期すなら撤退が固い。部隊を率いる隊長なら無責任な行動はせず、生存を優先する場面。普段ならそれを選択しただろう。

 だがこの場面で元はノーを選択する。

 

「ダメだ」

 

『元……』

 

「もう、終わりにしよう。悪夢のような13年を、苦しみの時を。あなたが悲しまなくていい、愛しい人との日常を取り戻すために」

 

『違う……そうかもしれないけど、違うの!私は』

 

 ジャンヌの言葉を振り切って作戦を決行する。Dフィストスマッシャーの手甲部分に設置されたマルチ・スペースシステムからユニットが転送、そのまま接続される。短いかぎ爪のようなパーツ。それがレイアをあの機体から救い出すための手立て。

 それを構えて突撃する姿勢を取る。何かしようとするのが見えたエアレーザーからエンドがやり取りを聞いて呆れを示す。

 

『フン……痴話喧嘩とは聞いて呆れる。助けると言いながら意見が合っていないとは』

 

「お前のせいで彼女を長く付き合わせてしまった。いや、俺が手を伸ばせなかったから遅れた。俺は、その償いをする。例え望まれていないのだとしても」

 

『……なるほど。理解したうえで、突き進む。もはや未来も求めぬか』

 

「俺も、お前も、この先の未来には必要ない。その羽を、捥ぐ!」

 

 そうだ。ジャンヌの隣にいるのは俺じゃない。そんな考えを言葉に隠し、決意と共にシュバルトゼロが突貫する。

 両者の間に障害はない。目に見える敵も見当たらない。加速するこちらに怯えた様子の神治の声が聞こえる。

 

『クソッ、身体が思うように動かねぇ。どうするんだよエンド!何とかしろよっ!』

 

 回避しようとしていたが機体の操縦系統に問題が生じたらしい。ギリギリ立ち上がったところで止まった。絶好の機会。一直線に加速する。

 このまま掴みかかれる。掴めば後はレイアとの同期で電子体を掴んでこちらに取り込めば終わる。すべてが終わる。

 しかし、その動きが唐突に止まった。後方から縛りつけられるように。機体が前へとつんのめる。

 

「ぐっ!?何が」

 

『元、後ろ!ハリヴァーともう一機!』

 

 ジャンヌの言葉に従い後方を確認する。すると確かにハリヴァーのシナンジュゼロンが、部下のオールレンジ運用型シシャと共にいた。クローザー動きを止めていたのはそのシシャ。半オールレンジ装備であるワイヤー式アームユニットのワイヤーがこちらを縛りつけて加速と動きを封じていた。

 急な横槍に激高する。

 

「ハリヴァァァァァァァ!!」

 

『魔王が随分とお怒りだな。……しかし、対処は早いか』

 

 ワイヤーにからめとられた激情する姿を嘲笑うハリヴァー。だがその指摘通り、出力を一気に引き上げてパネルウイングから展開した射撃武装の射撃と斬撃武器を飛ばしてワイヤーを滅多撃ちにして引きちぎる。

 このぐらいの障害はどうということはない。本来なら喰らうはずもない攻撃だ。察知できたはずの攻撃。それが命取りとなろうとは。

 正面を向き直した時、エアレーザーが再びこちらに向かって来ていた。残ったその手に握られたビームランチャーが槍の光刃を煌めかせている。

 突きの一発と共にエンドが語る。

 

『どうだ、本来なら防げた攻撃だろう』

 

「っ、挟み撃ちか。結局お前はそういう」

 

『挟み撃ち?違うな。あれはビット。俺達が操作したMSだ。お前も心当たりがあるだろう。マキナ・ドランディアで俺が操作した円盤を』

 

『そうか……ヴァイスインフィニットに与えられた軍隊指揮能力「G-Arc」か』

 

 スタートが納得したようにする。元も言われて思い出す、が生憎そんなことに意識を割いてはいられない。

 

「ぐっ!」

 

『そんな程度の防御で!』

 

 迎撃をするも右手にはレイア救出用のユニットが装備されている。この装備装着時には必然的に右腕の手持ち武装へのエネルギー供給がカットされてしまう。右腕がDフィストイレイザーしか使えない今、使える左手のナハト=ヴァールで応戦する。

 攻撃をいなすが、それも破れかぶれのものだ。調子を整えた神治とエンドを交えた攻撃に弾かれ装備を手放してしまう。

 まだ終わりじゃない、そう思って肩部シールドを可動させてビームを発振しようとする。ところがそれを腰背部のビームで素早く打ち抜かれた。

 判断と思考が鈍く、追いついていない。対応が後手に回る。ここに来てようやくこれまでのゼロンが仕掛けた戦闘の疲弊が実を結んでいた。

 動け、動けと体の、機体の端まで命令を飛ばす。だが全力で指示を飛ばしても動きが追いつかない。

 ジャンヌの声が悲鳴を帯びる。

 

『元、ハジメ!!!』

 

『神治、行け』

 

「ぐうぅぅぅ!!」

 

『くたばれ……魔王ォォォォォォォ!!』

 

 槍となったビームランチャーを構えて貫く体勢で突撃してくる。咄嗟に右手のイレイザーで防御する。発生させたビームがビームランスの穂を抑える。しかし脳裏にビジョンが過る。

 貫かれ、敗北する未来。元も、ジャンヌもその命を散らせる最悪の未来。元自身がもっとも危険視していた未来が、今起ころうとしている。

 ダメだ。そう思った時既に思考が勝手に動いていた。ジャンヌの担当する操作領域すらも侵して、それを実行していた。

 最後の言葉を口にする。

 

「今までごめん、ジャンヌ」

 

『……え』

 

 ジャンヌをエンゲージリンク状態から強制排除する。緊急脱出機能。それによってジャンヌがシュバルトゼロクローザーの後方へと放り出される。

 直後、ビームランスの刃がイレイザーを、手の装甲を焼き切った。その穂先がクローザーの胸部を貫く。

 

「があああああぁぁぁぁっ!?」

 

「はじ………………ハジメェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!!!!!!!!――――――――」

 

 

 ジャンヌの絶叫を最後に、黒和元の意識は鈍い胸部の痛みと共に消えた。

 

 

NEXT EPISODE

 




はい、今回はここまでです。主人公、撃墜です。

ジャンヌ「………………」

レイ「あっ……あっあっ……」

おーい君達しっかりしてくれ。……これダメだな。まぁメタいこと言うと話したいことがこっちからじゃないと言えないんですけどね。
と今回はこちらのターンです。

とある事件にて同じ家族を失った元と神治。しかして、その発端は全く異なる立ち位置。自ら家族を殺さざるを得なかった男と、目の前でなすすべなく失った少年は、それぞれその事件を機に変貌していくこととなりました。
男はもう戻れないことを覚悟して、「自らの未来を捨て」、組織の仲間達や民間人と言った他者の未来の為だけに戦う、敵の的になる「魔王」へと歩み出し、その障害となる者達、ゼロンなどを筆頭とする「人々の生活を脅かす独善的な嘘つき者」達に罪を償わせる様になった。
対して少年は失った過去を教訓に、「自らの未来を第一に」、反目しながらも仲間達の最前線に立ち、敵を倒して味方を鼓舞して前へと進ませる「救世主」となることを目指し、敵である者達、代表が敵としたHOWなどに代表される「弱者を脅かす傲慢な支配階級者」達に罰を与えようとする。

こう書くと彼らは等しく真逆、なのにどうして同じく「作中人物の注目を浴びる」存在になってしまったのか。おそらくは二人が等しく「真面目であるから」なのでしょう。
元は他人の事を真面目に考えて、不器用ながらも寄り添っていく。だけど故に孤独になっていってしまうこともある。一方で神治は真剣なまでに恩人の、組織の教義を信じている。熱心だからこそ不穏分子は味方であろうとも許せない。
そう言った描写が作中でも多数みられたでしょう。そんな彼らが遂に今章で直接対峙となりました。その決着は僅差と呼べるほどの差でヴァイスインフィニットが勝ちました。しかしこれは彼の勝利と言えるのでしょうか?
戦争という括りなら間違いなく勝ちは勝ちです。それを前提に元も戦っています。そこに問題はありません。ですが、一対一で決着したとは言い難い。
だからこそ、言わせてもらいます。これは最後ではない。ここからどうなるのか。驚かせたい。その場面をちょっと考え直してしまったせいで現在執筆進行が遅れているわけですね!(;´Д`)

とまぁ真面目くさって意味わからないと思いますが、要約するとこれが私の二人に対する英雄像、本当の決着はまだまだ先!ということです。
と、長くなりましたが今回は私一人で締めさせてもらいます。次回、黒の館DNにて、その次なる展開が、見え隠れします。お楽しみに!


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黒の館DN 双翼英雄譚編 第10回 前編

どうも、1か月半ぶりです作者の藤和木 士です。

遂にプロットが修正と書き出すところまで書き出したのでこちらの更新を再開します。まずは黒の館DNから。

直前までに登場した人物とMSを振り返る意味でも丁度良いかと思われます。最後には次の予告なども入っております。

それでは3編構成の黒の館DNどうぞ。


 

士「はーいみなさーん黒の館DN始めて参りますよ~(゚∀゚)」

 

レイ「悪魔、クズ」

 

士「いきなり!?(゚Д゚;)」

 

レイ「そりゃこの作品ガンダムだから死ぬってことにケチ付けるつもりはないよ。だけどさ……その顔文字はイラつく」

 

士「レイさんがイラつくって言葉使う時点でヤバいですねそれは。☆って付ける気すら起こさせないわ……ってかジャンヌさんは」

 

ジャンヌ「……」

 

士「あ、絶賛不機嫌モードっすね」

 

ジャンヌ「……本当、作者の性癖って良い趣味してますね……そうやって私と同じ容姿の子を悲しませたりするのが好きなようで」

 

士「………………うん、大好きさ(゚∀゚)」

 

レイ「トリプルソードブレイヴかジャッソ、どっちがいい?っていうか処すね」

 

士「何のどっち!?(゚Д゚;)待って待って!その怒りはせめてこの黒の館DN終わってからにして!流石に調子乗り過ぎたのは謝りますから!でも性癖ではあるよ!限度はあるし!」

 

レイ「ジャンヌちゃん?」

 

ジャンヌ「一旦矛は収めましょう。私がされたわけじゃないですし。ただ終わってもある程度の制裁は加えます。煽らなければよかったものを」

 

士「(あ、死んだわ(´-ω-`))と、まぁいつも通りの解説やってもらいましょう。人物紹介はゼロンが多めだね」

 

レイ「というよりゼロンだけじゃない?紹介するの」

 

ジャンヌ「東日本連合軍で紹介するほうが少ない気がします。古橋さんの機体とかだけな気が」

 

士「もうちょいあったと思うけどね……」

 

ジャンヌ「では人物紹介です。どうぞ」

 

 

 

スリア・ルーチェ

 ゼロンにて鹵獲されたオースガイア改めゼロンガイアガンダムを操る少女。クローンとされており、ギルボードの隠し刀。隠密行動のエキスパート。コードネーム「Gイーター1」。

 そのクローン元は何とHOWに同行している大和進の妹大和真由。零曰く、3年前に真由が虚無戦争時に逃げる際の大怪我で緊急入院した際に独自のルートで彼女の血液を採取しギルボードが作成していた。容姿も非常に似ており、零によれば進の動揺を誘うため、あえて成長を合わせたという。違いは髪色で、こちらはくすんだ金色。

 大和進と同じく、真由もまた天性のMSパイロットのセンスがあったために、クローンである彼女もまた同じ才能を発揮している。しかもそれはオースガイアに求められていた者と合致しており、無調整で対応できるほど。

 第2章時点で登場しており、楯突いた水無月加子を素早く殺し、ギルボードの手間を省いた。

 第4章にて本格的に動き出す。CROZE部隊チームGメタのアポカリプス部隊にて進のメタとして激突し、大和進の動揺を揺さぶりながら(本人にはその自覚なしで)進を抑え込んだ。

 モデルは機動戦士ガンダムSEEDDestinyのステラ・ルーシェ。あちらはクローンというわけではないが、モデル元に共通する点としてマユは第1話のみステラの声優と同じであり、その点からクローンとして設定した。

 

 

入嶋 玖亜(いりじま くあ)

性別 女

身長 155cm

髪色 黒に赤のメッシュ

出身地 神名川県 河崎市→台坂府 旧境市改め現「零市」

年齢 15歳

誕生日 9月9日

血液型 A

好きなもの 教祖様、お母様、ドーナツ

嫌いなもの HOW、姉、魚

愛称 Gイーター2

 

・ゼロンの対CROZE・Gチーム部隊「Gイーター」のパイロット。千恵里の双子の妹にしてその千恵里に対するカウンターカードである。

 昔は姉である千恵里にべったりとしていて、活発的な少女だった。

 夫婦聖院によって母と共に連れ去られた後、夫婦聖院の壊滅に先んじて別の宗教組織を通じてゼロンへと流れついた。ゼロンに着くまでの間、夫婦聖院に居る間からずっと彼女と母親は慰み者として性的暴力(本人曰く「汚され続けて壊れた心と体にされた」)を受けていた。それを救い出した形となったゼロン、零崎秀夫の事は母親も合わせて救世主と崇め、彼の為なら命を投げ出しても使命を果たす気持ちでいる。ゼロンの敵は全て根絶やしにするというほど狂っており、姉との再会時に表面上は優しく勧誘していたが、本性はぬくぬくと暮らしていた姉をどう穢そうかを考えていた。

 本編ではアポカリプスの性能と自身の存在、そして言葉を盾に姉の千恵里を強く追い詰める。

 モデルは姉のモデルであるエリスの仮の姿であるクリス。こちらの方が信仰心に関係あるようになっている。

 

 

千住 栞奈(せんじゅ かんな)

性別 女

身長 163cm

髪色 橙

出身地 東響都 西東響市→台坂府 零市

年齢 15歳

誕生日 12月27日

血液型 O

好きなもの 特撮時代劇、マスターペッパー、決められた平和な日常

嫌いなもの 知能の低い人間、きのこ類、未知の明日

愛称 Gイーター3

 

・ゼロンの対CROZE・Gチーム部隊「Gイーター」のパイロット。かつて死んだと思われていた宗司の幼馴染にしてその宗司に対するカウンターカード。

 宗司とは昔よく遊んでいて、その時から次元覇院の信者として両親と共に信仰していた。その信仰を宗司にも伝えようとしたが、恐れた宗司に恫喝し、突き放した。

 東響掃討戦ではたまたま外に出ており、建物の倒壊に巻き込まれずに済んだ。が、両親は死亡。その後の身寄りは両親の仲間に引き取られて様々な新興集団へと流れ歩いた。両親や傾倒していた次元覇院がなくなり、鬱屈とした日々が続いていたがそれでも次元覇院再興のために、いつかMSを操れるようにと戦闘訓練を志願して備えた。そして2年前のゼロン決起で次元覇院の流れを汲むゼロンのために裏方で働き続け、遂に今年MSパイロットとして抜擢された。抜擢された要因は無論宗司の存在があり、事情を知っている彼女は憎くも敵として立ちはだかってくれたことに感謝した。

 本編にてガンダム対抗MS「アポカリプス」で宗司の前に立ち塞がる。次元覇院を潰す結果となった宗司の行動を逆恨みし、自分が殺すと押し気味に立ち回る。

 人物外見モデルとしてはフルメタルパニック!の千鳥かなめ。自己中心的な性格を受け継ぎながらも本作では彼女以外にもそう言った人物が多い為やや気持ち控えめにデザインしているつもりである。

 

 

ジャンヌ「以上が人物紹介ですね。そして今回紹介したのはいずれもGチームへのカウンターカードの人物ばかりという」

 

レイ「スリアって子は進君の妹真由ちゃんのクローン、玖亜は千恵里ちゃんの生き別れの妹ちゃん、そして栞奈は宗司君の他ならない幼馴染で殺してしまったと思っていた子。結びつきが凄い強いね」

 

士「ゼロンもそれを見越してこんなアンチGチームみたいなのを作ったわけですからね。クルスに対してはそもそもゼロン自体がアンチになってしまっているわけですし」

 

レイ「効くなぁそういうの。でもそう聞くと疑問があるよね」

 

ジャンヌ「呉川さんとクルツさんへのカウンター、でしょうか?」

 

レイ「そうそう。クルツさんはまだしも、呉川さんにもカウンター用意しても良かったんじゃないかなぁ。完全に動きが縛れるし」

 

士「まぁそこは上手く人材が見つからなかったとかじゃないですかね。現状ではそれくらいしか思えない。私だって全部一々設定するの面倒くさくなってしまったかもしれない(´-ω-`)」

 

ジャンヌ「で、実際のところは?」

 

士「ノーコメント(´-ω-`)」

 

レイ「ともかく、元君が心配だけどもこっちも心配だね。みんな自身のトラウマにどうやって立ち向かうのか……心が砕けないといいんだけど」

 

ジャンヌ「今回の話を見ているとそんな気もしますね……曇らせる時はとことん曇らせてきますし。そろそろ機体解説で空気変えた方がいいかと」

 

レイ「そうだね。早速紹介していくけどいい?」

 

士「やっちゃいなよ!そんな解説なんて!」

 

レイ「じゃあやらなくていい?」

 

士「ややややってくださいレイさん(゚Д゚;)」

 

レイ「ってことで次に紹介するのはゼロンの機体、ゼロン独自のタイプシリーズタイプ[リズン]、そして対ガンダム戦を想定した新型機「アポカリプス」……とタイプシリーズのバリエーション機タイプ[スリー]の紹介だよっ。どうぞ!」

 

 

型式番号 TP-[REASON]

タイプ[リズン]

 

 

機体解説

 蒼穹島の最高戦力と呼べる究極のタイプシリーズ。それらをゼロン本部側でも運用が可能なように技術とベースのみを流用し、完成させたゼロン純正のタイプシリーズがこのタイプ[リズン]である。名称は理由の英単語から。パイロットはジョセフ・ゼロン・ガドナー。金色にカメラアイが青とオレンジ。

 機能面ではほぼイグジスト・ディナイアルと同等の物を備えており、ツインジェネレーターシステムも搭載する。特筆すべきはシステム・ヴァルニールがパイロットに依存しないものに書き変わっている事。DIENDシステムと同じように疑似人格「ディサピア」を形成し、それにシステムの制御を任せており、パイロットはシステムの恩恵だけを受けられる構造となっている。

 装備に関しては先行二機と比べて大きく異なり、上半身が専用大型アーマー「リズン・フルアーマー」を装着した姿となっており、防御用のビームシールド「アイギス」の主機とそれを兼ねたホーミングレーザー+クラスタービームポッド、背負い式のガンブレードランスを合わせている。またディナイアルで運用されている超次元現象を攻撃に変えるゼロ・ディメンションも搭載し、これまでのタイプシリーズを凌駕する性能を秘めている。

 これを蒼穹島の手から離した運用をするのは、ゼロン側が彼らを敵にしてもいいように取った「保険」であり、この提案は信用を得るために蒼穹島側から提案を行った。

 モデルは無論蒼穹のファフナーEXODASにて登場した人類軍三機目のザルヴァートルモデル「マークレゾン」。リズン・フルアーマーの構成なども原型機を参考にしつつ、そちらにはない機能や、各部にも武装を追加している。また、色も金色になっている(原型はえんじ色)。

 

【機能】

・次元電磁装甲

・コアファイター

・換装システム「ワルキューレ」

・ツインジェネレーターシステム

・リブートクリスタル

・次元崩壊現象運用機構「ゼロ・ディメンション」

 これら機能は既に説明しているため機能説明は省略。

 

・システム・ヴァルニール

 別の場所にいるオペレーターとの精神同調による思考読心妨害とパイロット能力向上を行うシステム。

 本システムは蒼穹島のそれとは完全に独立しており、システムの管轄は疑似人格「ディサピア」が行う。汎用性のある疑似人格による管制で理論上は誰にでも使える量産型システムとなっているが、現時点では適合者がジョセフ・ゼロン・ガドナーのみの専用システムとなっている。

 だがそれでも蒼穹島側のそれよりも戦闘能力が明らかに高く、演習ではタイプイグジスト、タイプディナイアルが二機がかりで押し留められるのがやっととなっているため、本来ならシュバルトゼロクローザークラスで互角となっているはずなのだが、作中に置いては黄色のガンダム「ゲルプゼクストガンダム」と競り合う状況となっている。これに関してはゲルプゼクストガンダムがある意味対タイプシリーズと呼べる状態であるために仕方ない点が見られる。

 

 

【武装】

・ベヨネットビームライフル

 腕部で保持する銃剣式ビームライフル。不使用時には右腰で保持する。

 砲身と刀身が一体化した、ブレードガンタイプの兵装であり、ゼロンが本機専用に独自開発した。

 持ち手を切り替えずに遠近を切り替えるタイプで、銃へは刀身を分割して変形を完了させる。銃としての威力は究極のタイプシリーズ共通の大出力を実現しており、更にはビームブレイドまで形成が可能。通常の斬撃も並みの防御は叩き斬るどころか、超次元現象の刃で戦艦すらも叩き斬る。

 意外にも手持ちで扱える武器としては主兵装という立場(背部のガンブレードランスは手持ちよりも背部で構えるのが基本)。

 モデルは蒼穹のファフナーEXODASのベヨネット。

 

・ビームシールド「アイギス」

 蒼穹島勢力の機体の一部に装備されるビームシールド。腕部や膝部、胸部から背部、肩部にかけたリズン・フルアーマーに装備されている。

 ビームシールドと言ってもほぼビーム版DNウォールと言って良く、展開されればまず突破は困難。加えてシールドを媒介に超次元現象で攻撃することも可能で、これをどうにか出来るのはユグドラルフィールド、ドライバ・フィールドを発生可能な機体などの攻撃しながら超次元現象攻撃を防御できる機体に限られる。

 モデルは原型機のイージス。

 

・リズン・フルアーマー

 機体上半身にかぶせられるような形で固定装備されたケープ型増加装甲。本機の最大の特徴である。

 アーマー自体にはアイギスでの防御が行えるほか、肩部にアイギスの主機と併設してホーミングレーザー+クラスタービームポッドが二基ずつ、背部に大型ガンブレードランスをキャノン砲のように二本装備する。

 ホーミングレーザー+クラスタービームポッドはディナイアルの物のマイナーチェンジ版、大型ガンブレードランスはキャノン砲として運用するべく作られた特注品であり手持ち使用ももちろん可能。

 原型機のシルエットを再現するための装備。

 

・ベイグラントユニット

 腰背部から伸びるように接続された遠隔操作ユニット兼追加ブースター。

 遠隔操作はディサピアが行う。タイプリズンの支援を行うが、単体でも大抵のMS相手なら圧倒できるだけの性能を誇る。

 武装はレーザーバルカン、ハイメガキャノン一基、シザースビームキャノン二基。

 モデルは蒼穹のファフナーEXODASのフェストゥム「アザゼル型ベイグラント」。マークレゾンを支援、共に行動する点を遠隔操作端末で再現した。

 

 

型式番号 TP-03

タイプ[スリー]

 

 

機体解説

 タイプシリーズの第3仕様の機体。空戦仕様の機体である。

 タイプツーをベースとしつつも背部ユニットを二基のバインダースラスターに換装、肩部のワルキューレパーツもバーニアパーツの物へと換装され、徹底的に機動性を底上げする形をとる。

 通常のタイプシリーズの中では安定した空中戦が出来ることから指揮官機・遊撃手としても優れる。また腰部の換装で多重に武装を懸架することが可能で、仲間に武器を渡す支援機としての運用も可能であると、汎用性は高い。中でも青紫色の本機は蒼穹島のエース狙撃手「真理矢」の機体で、ブラウジーベンガンダム・ライブラのパイロットである深絵と謙遜ない遊撃狙撃手として活躍している。

 モデルは蒼穹のファフナーの空戦型、「マークゼクス」系列機。真理矢機は無論遠見真矢とマークジーベンが元ネタ。

 

 

【追加機能】

特になし。

 

【武装】

・レイジング・ワイヤー

 機体手甲部に装備される懸架・捕獲用ワイヤー。ワイヤー自体には切断力もあり、フレームなどを狙えば簡単に切り裂けるだけの強靭さを持つ。

 原型機のレイジングカッターがベース。

 

・空戦用レールガン

 タイプツーの既存のレールガンから空戦での運用に調整を行ったもの。移動射撃中でも十分な命中精度を誇る。

 

・ビームスナイパーライフル

 狙撃戦仕様の場合となる本機の主兵装。狙撃用のビームライフルである。基礎設計にはブラウジーベンガンダム(ライブラではない)のビームスナイパーライフルがベースとなっているが、違いとして当時は実現不能だったビーム、実弾の混成をカートリッジとバレル内環境変化で実現している。

 中でも真理矢機はHOWの主力機ブラウジーベンガンダム・ライブラの狙撃能力と同等まで達しており、現時点で両者の対決は実現してないものの苦戦は必須と思われる。

 モデルは原型機のスナイパーライフル準拠だが、ビーム弾も撃てるようになっている。

 

・ガンドライグ

 ブレードガンに似た銃剣兵装。刃はガンブレードランスと同じ物で、そちらの派生兵装となっている。ベヨネットビームライフルの発展元である。

 機能もほぼ据え置きだが、変形方法は若干複雑化し、側面の収束兼排熱用パーツが展開する点が違う。

 モデルは原型機のガンドレイク。ちなみにだがシュバルトゼロのブレードガンのモデルはこのガンドレイクも含まれており、ようやくオリジナルが登場したと言える。

 

 

 

 

型式番号 ZAMP-05IG

アポカリプス

 

 

機体解説

・ゼロンの新たな量産型MSだが、この機体はその中でも特別な階位のパイロットのみが搭乗を許されている。名称のアポカリプスは黙示録を意味する。

 特徴は機体の頭部で、ゼロンMSでは珍しくガンダムに似た頭部を持っているのだ。これはゼロン側ではガンダムを模すことでその力を制したという表しを示している。敢えてガンダムの顔を自軍の機体に使うことで敵を威圧する。型式番号末尾のIGも「イミテーション・ガンダム」の意。

 機体特性もまた対ガンダムを意識しており、機体の高性能化を果たしつつも、黙示録をイメージしてその姿は異形、飛行形態では翼を広げた天使のように、地上では翼を足にして走る四足歩行の獣となって敵に襲い掛かる。これらの変形中の技術には奪ったオースの機体の技術が用いられている。加えてL-DLaも搭載し、対DNL戦も対抗できるように調整されているなど、気合の入れようが違う。

 ジェネレーターは流石にガンダム並みとまではいかないまでもダブルジェネレーター装備で、しかもその装備位置が本体と追加テールレッグバインダーと別々に搭載されているという一風変わった仕様。

 まさにガンダムという概念すらも捻じ曲げる機体は、CROZE部隊のチームメンバー達を動揺させるために生まれたと言っていいだろう。

 モデルおよびコンセプトは「スパロボシリーズのヒュッケバイン」「エヴァンゲリオンAnimaのアレゴリカユニット装備」これらを掛け合わせて「偽物の量産型ガンダム」としている。ガンダムタイプの四足歩行と言うとSEEDのMSVにおけるガイアインパルスガンダムが挙げられ、今回ガイアモデルのゼロンガイアがベースになっているのはその影響。ヒュッケバインとガンダムと言えば色々と因縁のある機体同士なのだが、今回は偽物と言うことでデザインモデルとした。なお裏話として設定自体はスパロボ30の情報が出る前に作られており、ヒュッケバイン30はまさに寝耳に水である。

 

【機能】

・DNフェイズカーボンVerV

 機体のDN浸透装甲。ガンダムに対抗する為に装備された。オースからの強奪機の機能を踏襲し、通常のカラーガンダムとも装甲性能は充分張り合える。基本カラーリングは水色。しかし入嶋玖亜と千住栞奈の機体は白と黒のカラーリングとなる。

 

・DNウォール

 DNを防壁として形成し、防御する。放出機構はテールバインダー部分とシールドユニットが担う。

 

・ディメンションバウンサーMK-Ⅱ

 テールレッグバインダーに内蔵された特殊機動を実現する専用システム。基礎はゼロンカオスガンダムのシステムが基となっている。

 ゼロンガイア、本来のオースガイアはディメンションバウンサーで海上や空中を陸のように駆けていた。本機においてはウイングモード、レッグモードに変形するテールレッグバインダーのサポートという位置づけで、それらを用いる時にスムーズな形態移行と移行後の機能を可能な限り高水準の物にする働きを持つ。もちろん空中歩行も可能であるが、どちらかと言えば飛行支援や悪路の走破に重点を置いている。

 

・L-DLa

 アンネイムドシリーズで運用された対DNL戦を想定した戦闘プラグラム。DNLの感知を上回る動きを予測し、機体行動を行わせる。

 OSとも呼べるシステムであり、非DNLにも機能は十全に発揮する。本システム起動中は本機も高出力状態となるが、それを活かすために本機にはL-DLa発動中のみの専用モード、「シンモード」を備えている。

 発動後の機動としては荒々しい獣を想定としており、パイロットの思考にも干渉する。その姿はまさに暴走と言って差し支えない。

 元はNT-Dだが、機体のモデル元となったエヴァの暴走が発動後の機動に影響している。

 

・シンモード

 本機の全性能をすべて発揮するためのリミッター解除形態。シンの意味は「神」「真」。だが真の意味は「SIN」である。

 アンネイムドのデストロイドモードに当たるモードであり、このモードでは口部のマスクパーツが展開され、唸り声のようなものを発する。機体各部も排熱部が開放され、L-DLaの性能に追従できるようになっている。

 モデルはデストロイドモードだが、エヴァの暴走もオマージュ元となっている。

 

 

【武装】

・ビームアサルトライフル

 両腰部に装備される手持ちのビーム兵装。性能としては通常のビームライフルとさほど変わらない。

 外見モデルはパレットライフルをモデルとしている。

 

・ビームサーベル

 両腰部上部にマウントされる格闘兵装。機能は平凡なものとなっている。

 

・テールレッグバインダー

 腰背部から接続される本機最大の武装。背部のウイングバインダー、尾部のテールスタビライザー、そこから繋がるテールバインダーで構成される。ディメンションバウンサーMK-Ⅱと二基目のDNジェネレーターの内蔵する部分でもある。

 もっとも重要なのはテールバインダー部分であり、この部分は通常翼のように左右に大きく展開されているがこれを下方に展開することで四本足により駆けるケンタウロス形態へと移行する。

 これらのモード変形はいずれもディメンションバウンサーMK-Ⅱを効果的に使うための機構で、L-DLaと合わせて理論上カラーガンダムと同等の機動力を得られている要因となっている。

 火器武装自体も装備しており、上部のウイングユニットにはミサイルランチャー、テールバインダーに細身のビームを拡散する拡散ビーム砲、ユニット側面に接続される格闘兵装「ロンギヌス」を装備する。

 モデルはエヴァンゲリオンAnimaのアレゴリカユニット。その内の設定案の一つを採用している。

 

・銃槍「ロンギヌス」

 テールバインダー側面に装備される伸縮式のガンランス。二本装備する。

 銃としての機能は穂に統括されており、刃状のビームを放つ。貫通性が強く、出力の弱いビームシールドやDNウォールを貫通できる可能性も秘めていて、なおかつ穂に纏わせたまま近接攻撃に生かすやり方もある。

 だがもっとも威力が高い使い方として、テールバインダー内部に格納後、先端部を敵に向けて放つやり方があり、威力は艦砲に匹敵する威力を誇る。ただし槍自体は失われるため、使用回数は最低でも2回となる。

 モデルはエヴァのロンギヌスの槍。放つ方法は鉄血のオルフェンズのダインスレイヴがモデル。

 

・シールドポッドⅡ

 両腕部に装備される武装内蔵シールド。強奪したオースカオスガンダムの装備を解析し製作されたマルチウエポン。

 元々の機能である遠隔操作も可能かつ、制御はL-DLaが行うなど装依者のDNL能力に左右されない運用が出来る。内蔵武器もアサルトビームキャノンを収縮可能なガンブレードランスに内蔵する形で装備し、運用がMSオーダーズの秩序の盾のような使い方となった。

 

 

レイ「以上がMS設定解説になるよ~」

 

ジャンヌ「タイプシリーズのゼロン版、と言っても量産型などではなく究極のタイプシリーズの方になるんですね」

 

士「量産型の方に関してはほぼ蒼穹島の専用運用って感じにしているね。原作だと人類軍量産型があるんだけどそこまで出せる余力がなかったです。もしかしたら出せるかもしれないけども。余程のことがない限りはですね」

 

ジャンヌ「それで性能ですけど……まぁ他の究極のタイプシリーズ+αですね」

 

レイ「その+αがヤバいんだよねぇ。オースの英雄勢力を撤退させるってヤバい……二機がかりでも駄目だったんでしょ?」

 

士「それに関しては相性の問題でもある。原作同士の関係(スパロボ)としても蒼穹島関連の攻撃はオース含めてDNフェイズカーボンの技術は、防御は充分でも攻撃に関しては届くかどうか怪しいところがあるからね。何よりリズンの性能が馬鹿げ過ぎててパイロットの力量だけではどうにもならない点があるのが悲しい事実。流石にあのバケモノ性能はDestiny程度では抑えられない」

 

レイ「スパロボでもまだファフナーのEXODASは参戦してないから色々気になっちゃうよね」

 

ジャンヌ「それも気になりますが、これだけの性能を止められるゲルプゼクストの凄さも垣間見えますよね」

 

士「それに関しても相性の問題になってる。劇中でも話した通り、ドライバ・フィールドには他のフィールド系を阻害する能力が付いているんだよね。もっともこれは宗司君には出来ない。これに関しては中編以降で話すとしよう」

 

レイ「それじゃあ……タイプ[スリー]って劇中で出た?」

 

ジャンヌ「真理矢なる人物も出ていなかったように思えます」

 

士「それに関しては機体だけ文中に出ているって感じだね。機体だけちらっと。真理矢もその内出すつもりではあるけど本章での登場……あぁ、あそこでは出せるかな。まぁお楽しみに」

 

レイ「見ると本当にチラッとだね。それで問題はこのアポカリプス。L-DLaにそれを活かすためのモード切替……四本足ってところも驚いたのにこんな機能まで持っちゃって」

 

ジャンヌ「そのモード名もSIN……罪。全く違いますが、これ黙示録の獣関連です?」

 

士「そこら辺はそれほどではないけどまぁ意識してはいるね。ただ単純に人のようで人ではないものを目指した結果ケンタウロスみたいなスタイルにはなった。そこから更に変形するんだから、人の形は相応にブレイクしているイメージではある」

 

レイ「これが絵もあったらなぁ」

 

ジャンヌ「作者の語彙力に期待ですね」

 

士「(´・ω・`)すまない……。で、まぁ一応小ネタとして対ガンダム用ではある本機、L-DLaも搭載していて高コストではあるんだけどこれでも量産型なんだよね」

 

レイ「あぁ、まぁもう2機見えてるよね。少数生産?」

 

士「いや、次期主力」

 

レイ「ちょっとちょっと!?流石にこれ量産は無理でしょ!?」

 

ジャンヌ「正気を疑います。いや、高コスト過ぎて量産化普通に無理では?」

 

士「もっともこの仕様のまま主力にする気はないよ。いくらか簡素化される予定ではある。そこを考えるのがどちゃくそ大変なんだよなぁ。まぁ期待してて」

 

レイ「うーんこれHOW側の戦力も底上げ必須なんじゃあ……テコ入れか」

 

士「もちろん必須。その為のストーリーも考えているからね。実質それが来れば我が世の春が来た状態だからね」

 

ジャンヌ「なんですその月光蝶出しそうなたとえは」

 

士「まぁそれはまだまだ先ですので。今回はここで中編へと続かせてもらいましょう」

 

レイ「それじゃあ中編に続くけど、ネイ達からもしっかり反省させられてね」

 

ジャンヌ「まず、私達からの制裁を」

 

士「……ヒエッ(゚Д゚;)」

 



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黒の館DN 双翼英雄譚編 第10回 中編

 

 

士「……それじゃあ中編始めていくよ」

 

ネイ「自業自得ですね。ですが、本当に最悪の展開でしたね」

 

グリーフィア「作者君だったらやりかねなかったけど、これ本当に主人公交代ってやつ?」

 

士「それに関しては後編でまた言うかと……とりあえず中編の紹介お願いします」

 

ネイ「分かりました。それでは中編は……警察組織のガンダム「ゲルプゼクストガンダム」とゼロン・自衛軍艦艇群になります。どうぞ」

 

 

型式番号 CGMS-05Ⅴ

ゲルプゼクストガンダム

 

 

 

機体解説

・HOWが開発したカラーガンダムの一機ではあるものの、配備先はHOWではないという異質な機体。同時に可変機であり、これまでのカラーガンダムとは違った性質を見せる機体となっている。完成は2034年。

 パイロットは警察の公安課MS対策班に属する、元や深絵のクラスメイトだった「古橋勇人」。警察組織の中では珍しいDNLだがこれは本機の運用によるものである。

 カラーリングは黄色と黄土色、そこに警察を意味する白黒のラインが入っている。シュバルトゼロを除くカラーガンダムの中で現在唯一ユグドラルフレームが発光しており、色は紺色を示している。

 公安課からの依頼で開発しており、そこにHOWの関わりとしてかつ警察組織での事態解決の一助としてテスト段階だったドライバ・フィールドを搭載した可変機として開発された。これらの相性で逃走する目標に素早く追いつき、被害拡大の前に確保するという動きが出来る。

 武装に関しては公安課の行動から重火器ではないものの、ドライバ・フィールドを利用して有事には大火力を有することが出来るなど、この時点でドライバ・フィールドの武装有効活用が行われている。

 コンセプトとしては「ガンダムハルート×ガンダムAGE-2、そこにスパロボZのガンレオンの武装を落とし込む」というもの。主兵装が多分にそれを盛り込んでいることを顕著に示している。

 

 

【機能】

・DNフェイズカーボン

 他のカラーガンダム達と同じ機能。カラーリングは黄色、黄土色が基本カラーだったが、警察側での調整で作戦行動中は白と黒にラインが入る。

 

・ツインジェネレーターシステム

 胸部に内蔵されたDNジェネレーターの粒子生成量乗化システム。他機と同じく制御は背部のユニットで行われる。

 

・エラクスシステム

 DNジェネレーターに付随するDN高出力解放モード。

 概ね他の機体と同じで、制御も基本的に本機では現状出来ない。が、本機のパイロットである古橋勇人はドライバ・フィールドを用いた制御によりわずかな時間ではあるがエラクスの発動に成功している。これは非常手段と言え、決して推奨されるものではないことに留意しておく必要がある。

 

・ユグドラルフレーム

 機体各部に露出するDNL感応波を高める高純度DNの結晶体。

 他機においてはほぼお飾りだったこのフレームだが、本機ではパイロットのDNLへの覚醒の誘発に貢献しており、ドライバ・フィールド含めてDNL覚醒の一助になる可能性を明かした。フレーム色は紺色となっている。

 

・変形

 カラーガンダムの中で初の可変機構持ちで、飛行形態へと変形する。変形時に主兵装であるツールバスターを胸部にドッキングさせたうえで胸部を腹部から分離させて背中側へと逸らし、肩部ウイングを展開、その後テールバインダーを横に展開し、脚部の膝を折りたたんで後方に向けることで変形を完了させる。

 移動がメインの機構ではあるものの、変形時には胸部の動力系がツールバスターと接続されるため威力が遠近共に強化される。他の武装などもパラメータ変更がなされる。

 本機の変形機構は公安からも要請された仕様に沿っているものの、同時に自衛軍の次期可変MSの為のデータ取りも兼ねており、それもあって戦闘機型となった。

 変形機構に関しては上半身をAGE-2、下半身はハルートを意識している。

 

・ドライバ・フィールド

 DNを用いた特殊な力場で敵の攻撃を防御する特殊な力場。本機の場合はパイロットの思考を基にフィールドを変質させて攻防に転用する完全版の試作品。

 試作品とはいえ性能はガンダムDNの物と変わらず、加えてパイロットがDNLに覚醒したことでオーバードライバ・フォームのガンダムDNアーバレストと性能が同等以上になっている。

 本機の場合は当初は変形時の空気抵抗を減らすためのフィールドかつ犯人捕縛用のフィールドとして用いられる。現在では敵MSに対し不意の一撃を撃ちこんだり、近接攻撃のレンジ向上のためにも使われている。

 なおユグドラルフレームが活性化しているので、ユグドラルフィールドも使用可能なのだが、パイロットが「使い勝手が悪くなる」として力場展開は基本的にドライバ・フィールドのみとしている。同じユニットでDNウォールも展開可能だがこちらはドライバ・フィールドが使用不能な時のみ機能する。

 ここまではドライバ・フィールド運用者である宗司のガンダムDNアーバレストと同じだが、本機では加えて敵周辺への働きかけが非常に強力。言ってしまうとタイプシリーズ最高峰のリズンなどの行う超次元現象を攻撃に行うことをキャンセルする攻撃が可能。ドライバ・フィールドをぶつけて無力化してしまう。相応に負荷がかかるのだが、これが対タイプシリーズの特攻となっており、ドライバ・フィールド、ひいてはそれの基となったユグドラルフィールドが超次元現象に対するカウンターとして用いれることを証明している。

 

・エディットウエポンシステム

 武装換装システム。本機ではテールバインダーの武器側面に持つ。だがこの部分には現状専用兵装の為のアタッチメントが取り付けられており、事実上使用は不能となっている。

 

 

【武装】

・ツールバスター

 本機の主兵装。レンチのような突起とその間に銃口を持つ格闘向けマルチウエポン。不使用時にはテールバインダー接続側面に装着される。

 ツールの名の通り道具としての武装だが、これは意外にも公安課側からの要請で実現した。というのも本機に求められるのは敵対する者を必ず取り押さえるという姿勢であり、武器の破損は日常茶飯事であった。よってなるべく複雑な機構は求められていなかった(可変機構に関しては承知している)。

 それらを踏まえて考え付いたのは工具をモチーフにすることで、ドライバ・フィールドを活かしやすくする方策を取った。武器が大破しても似た鉄骨を咄嗟に武器にする癖がつくし、加えてドライバ・フィールドも使いやすいと判断されたのである。

 この思い切った案は割と有効に働くこととなり、HOW側も可変機構を少なめになおかつ強度を追求する形を取って対策。本兵装が大破したのは2年でわずか3回だけである(中破や小破は多い)。

 通常ではレンチとして打突、殴打と、中央のビームライフルと側面のビームマシンガンで射撃戦を行う。ドライバ・フィールド使用時が本番で、ドライバブレードや捕縛用のドライバハンド、ドライバショット以外に、変形後の機首を形成してからは突撃後のパイルバンカー的エネルギー爆発や胸部エネルギー直結によるビームキャノンとしての運用も出来るなど意外にも出来ることは多い。なおパイルバンカーに関しては手持ち状態でも使用可能。武装の装甲自体かなり堅牢でシールドとしても使用可能なほどである。

 モデルはガンレオンのライアット・ジャレンチ。機首部分になる点はAGE-2のハイパードッズライフルおよびドッズランスをイメージしている。

 

・ユグドラルエッジウイング

 肩部に装備される大型可動翼。4枚を片側2枚ずつ装備する。ユグドラルで翼部分は構成されている。

 機体の姿勢制御に使われるが、同時に根元から分離してビットとして用いる。ビットにはビームガンも併設されていて、分離時の射撃、変形時の副砲も担っている。加えてドライバ・フィールド最大出力では出力制御も担っており、ユグドラルフレームの可能性を見せている。

 モデルはガンダムAGE-ⅡマグナムのFファンネル。

 

・ドライバ・スパナ

 腰部に装着されるスパナ型の兵装。実際にスパナとしても使える耐久度を誇るが、規格はMSの手に合う位なので大きい。

 本機の真価はドライバ・フィールド発生器内蔵ということで、スパナ同士をフィールドで接続することでヌンチャクとして使用できる。しかもドライバ・フィールドで操作するため軌道変更が可能で、DNウォール、ユグドラルフィールドの突破が可能など高性能。

 モデルはガンレオンのデッカード・スパナ。遠隔操作兵装となったりと強化は多め。

 

・ドライバシールド

 左腕部に装備される可変機構搭載のシールド。腕部のユニットで固定するためか持ち手はない。

 正面パーツが盛り上がるように展開し、ドライバ・フィールドを発生させる。発生したドライバ・フィールドはシールド状に形成されて盾として扱える。こうして形を与えることはドライバ・フィールドのイメージを強固なものとしやすく、通常の物よりも強固なものを形成する。

 変形時にはツールバスターと合体して機体上部をやや覆う形となる。ツールバスター喪失時は腕にそのまま装着したまま

 形状自体はAGE-2のシールドがベース。

 

・テールコンテナバインダー

 尾部から伸びる、接続基部とアームとコンテナバインダーで構成されるユニット。

 接続基部となるテールスタビライザーにはミサイルコンテナが接続されており会敵後の初期行動として使われる。

 コンテナバインダーはその名の通り武器庫となるバインダーであり先端部にビームキャノン、側面に翼部となるブレードガン・Wを一本ずつ、そしてコンテナ後部にはバーニアが装備されている。これら装備はMS形態でも使用可能だが飛行形態で主に使われるもので、飛行形態での戦闘の幅を広げる。

 モデルはガンダムハルートのバインダー。

 

・ブレードガン・|W(ウイング)

 テールコンテナバインダーのコンテナ側面に翼状に装備されるブレードガンの発展型兵装。1本ずつ左右に装備される。

 ビームライフルと粒子放出体の刃で構成されているが、使用方法がやや特殊なシザースモードが追加されている。本来ブレードが疑似砲身となるそれを銃身下部にソードユニットを配置し、ソード部分とライフル部分を分割し、間にDNウォール、あるいはドライバ・フィールドを展開、その間に敵を入れて挟み切るという使い方をする。

 ライフル自体の出力調整も可能で通常出力から連射、更には照射まで可能。何よりツールバスターよりも扱いやすい為乱戦時にはこちらが用いられることも。

 モデルはガンダムハルートのGNソードライフル。

 

 

型式番号 ZAWS-04M

アライアンス級

全長240m

最大搭載MS 25機

 

解説

・ゼロンで主力としている陸海宙対応量産型MS母艦。細長いシルエットにカタパルトが先端に3基設置される。

 下部には艦体浮遊と着陸を担うコントロールユニット板が伸び、着陸時には折りたたんで高さを合わせる。

 砲撃能力も平凡だが、その砲撃戦能力は充分かつ対弾性能は優秀。ただし前後接続部が細い為、他の艦との接触時に折れる危険性も合わせる。

 この艦はダウンサイジングした中型艦「アライアンスS級」も存在する。

 モデルはガンダムZZのエンドラ級。あちらよりもカタパルトの数を増やしている。

 

【機能】

・DNウォール

 艦船における基本防御機能。もっとも艦艇においては浮力にもDNを使わなければいけない上、量産型の為出力は低い。

 

【武装】

・バルカン砲

 実弾砲。ミサイルやMSの迎撃に用いられる。10門を装備する。

 

・ミサイルランチャー

 艦体前面と艦橋後方に設置された誘導兵器。DNによる炸裂式を採用し、火力は充分。

 

・ビームキャノン

前部と中央ブロックにそれぞれ2門ずつ、後部ブロックに4門の計8門を備える。

 

 

ZAWS-06G

アーク

全長316m

最大搭載MS39機

 

解説

・ゼロンが自分達の旗艦とするべく開発した大型万能戦艦。艦首に女神像らしき装甲を取りつけ、翼を広げているかのようなシルエットを見出すようなウイングユニット艦側面に備える。名称のアークは「箱舟」を意味する。

 翼のユニットと艦首の女神像は飾りではなく、機動力と必殺の砲撃を放つ要となっている。翼部分はDNによる翼を形成し、素早い回避運動と優れた旋回性能を誇る。女神像の方はパーツをスライドさせて放つ陽電子砲「バーガトリ(煉獄)」を備え、必殺の一撃を以って敵艦隊に大打撃を与えるという、切り札的運用を求められる。

 またその大きさからMS搭載量はHOWの旗艦に当たるヴァルプルギス級を軽く超える。総合性能でもこれまでに登場したどの艦よりも性能は高く、エラクスシステムも安定使用可能と先を行く。MSでは先を行くHOWも艦艇に関しては遅れが出る結果となっている。

 モデルは星のカービィシリーズの戦艦ハルバード。女神像を艦首に付けるという前時代的な要素を取り入れている。

 

【機能】

・ラミネートパネル・DNフェイズカーボン

 名前は違うが、HOWのヴァルプルギスの耐ラミネート構造体+DNフェイズカーボンSと同じである。完成度はやはりこちらが高い。

 

・エラクスシステム

 ヴァイスインフィニットから解析されて機能を搭載された。人工リム・クリスタルは蒼穹島製で、蒼穹島勢力の近縁技術であるリブートクリスタルの技術を掛け合わせて制御する。

 機動力と砲撃能力をブーストする形となっているが、隠し玉として女神の装甲を基にDNを集中させ、DNウォールの剣を形成して突撃を行う「勝利の女神剣」を備える。

 

・DNウォール

 艦船において必須となりつつある防御兵装。本艦の場合は敵DNウォールを突破するための「剣」としても用いられる。

 

 

【武装】

・ビームバルカン

 船体各所に備えた対空機銃。もっとも本艦は回避に振っているため本兵装はより近づけさせないための弾幕としての役割が強い。

 

・ディメンションミサイル

 艦体各部に設置されたランチャーから発射される次元炸裂式ミサイル。弾数としてはおよそ500発。

 

・可動式3連ビーム主砲

 艦体各所に備えられた3つの砲身を備えた主砲。合計6基となっている。主砲の角度はそれぞれ上下に変えられるため、弾幕としても最適である。

 

・艦首増加武装ユニット「勝利の女神(ゴッデス・オブ・ヴィクトリー)

 艦首を構成する武装ユニット群。メンテナンスの為に取り外し式となっている。見た目は女神の彫刻だが、武装を管理・運用する。

 女神の頭上部分が陽電子砲となっており、そこから螺旋状に陽電子ビーム「バーガトリ」を放って目標を粉砕する。またユニットに沿ってDNを放出・形状固定させてDNによる剣「勝利の女神剣」を形成し、突貫することも出来る。

 モデルは機動武闘伝Gガンダムのネオ・アメリカの自由の女神砲。

 

・エリアル・フェザーリパルサー

 両翼を担う機関。DNを用いて機動に生かす翼として機能する。

 この翼の力場を作用させることで周囲の物体も含めて浮かせると言った芸当も可能で、ゼロンの勢力を補っている機能の一つとなっている。

 

 

 

 

型式番号 43DMS

MS巡洋艦「暁光(ぎょうこう)

全長264m

最大MS搭載数25機

 

 

解説

・自衛軍がHOWとの共同で開発したMS母艦の一つ。量産型の部類となっている。縦長のMS格納庫のコンテナにジェネレーターエンジンや環境を取り付けているようなイメージ。カタパルトは2基。

 砲撃戦能力は並みだが、これはMSによる砲撃が主になるため。だが本艦、というより自衛軍艦では艦自体の砲撃性能を落とさないために、各砲座にMS装依システムと同じ電子憑依を採用。これにより従来の艦船において銃座に座って人の目で狙いを定めるという方法が取れるようになっている。その関係で砲座は特殊な形状のMS「ダイバ」が変形して設置されていることになっている。

 こちらは大型の空中艦の区分で、コンテナユニット・カタパルトが一列になった駆逐艦クラス「矢島」も存在する。なおL3第3章にて登場したジンギはこのクラスの艦である。

 モデルは宇宙世紀シリーズのクラップ級。矢島の方はクラップ級をほぼそのままDN技術に置き換えたような外見だが、暁光の方は横に倍加する形で装備を追加している。

 

 

【機能】

・DNウォール

 艦艇にはなじみとなった防御機構。

 

・局所的DNフェイズカーボン「ピンポイントカーボン」

 艦体の一部分、バイタルパートと砲座MS「ダイバ」の装甲としてDNフェイズカーボンが採用されている。

 モデルはトランスフェイズ装甲から。

 

【武装】

・バルカン砲

 艦体各所に設置される実弾砲。とはいえダイバの担当する部分もあるため装備数は少ない。

 

・ミサイルランチャー

 艦先端付近に位置する誘導兵器。弾数はおよそ150発。

 

・砲座MS「ダイバ」

 艦の火砲として開発された可変MS。下半身が無く、完全に艦体の中に埋まっている上半身だけのMSとなっている。艦各部に八機配置される。

 背中に可動式ビームキャノン、両腕をシールド兼用のウエポンラックを装備。ウエポンラックにはバルカンポッド、10発までのミサイルランチャーを装備する。変形中は各部を折りたたみ、艦の砲として違和感のない外見となる。

 ちなみに操作方法としては、HOW開発のマリオネッターシステムで艦内のポッドルームから転送・操作するというもの。

 モデルとしてはタンク系MS。

 

 

型式番号 45DMS

MS戦艦「天照」

全長560m

最大搭載MS数 80機

 

解説

・自衛軍が軍の旗艦として暁光の機構を発展させたうえで大型化、高性能化させた戦艦級MS母艦。カタパルトを計10基も備える。

 ゼロンはもちろん、各国の増強されていくMS戦力に対抗できるようにかつての戦争で使われた大戦艦を現代の技術力でよみがえらせた。技術にはHOWの旗艦ヴァルプルギスのデータなども用いられており、あちらよりも一発の火力よりも旗艦としての生還能力、継戦能力を重視した設計となっている。

 砲座も暁光と同じくダイバを設置。空だけでなく、海、そして宇宙にも出られる設計、なおかつ宇宙では底部のカタパルトも使用可能となる。本艦は一番艦で、二番艦月夜見、そして三番艦の須佐之男も就航が間近となっている。

 モデルは機動戦士ガンダムUCにて初登場したゼネラルレビル。あちらは宇宙戦艦だったが、こちらは地上での運用も考慮した構成、構造へと仕様変更している。

 

【機能】

・ラミネートパネル・DNフェイズカーボン

 艦の装甲として採用される構造。HOWのヴァルプルギスと同じだが、こちらは砲座MS本体にも通常のDNフェイズカーボンが採用でき、脆さを克服している。

 

・DNウォール

 艦体周囲を覆う防御壁。機能的には他の艦艇と同じだが、艦形状からこれを展開しないと大気圏突破、再突入が難しい。

 

・エラクスシステム

 ヴァルプルギスの技術を流用した出力解放システム。エラクスの安定稼働は行えている。

 エラクス中はDNウォールがフィールドを形成し、スピードを上げつつカタパルトなどを保護する。

 

 

【武装】

・バルカン砲

 艦各部に設置された、ダイバではない機関銃砲。機械制御の為近づけさせない弾幕としては最適。

 

・2連ビーム主砲

 艦各部に設置されたダイバではない主砲のビーム砲。旋回式の砲台で、砲身は可動式。こちらも機械制御式である。

 

・砲座MS「ダイバ改」

 暁光にも採用された砲台MS。改の名の通り回収が施されている。回収点は2つ。武装の変更と装甲材質である。

 武装はビームキャノンが二門となり、シールド兼用のウエポンアームもミサイルランチャーはそのままに火砲をビームマシンガンへと変更している。装甲材質も高級なDNフェイズカーボン仕様となり、耐弾性が向上。艦のDNフェイズカーボン仕様なためかビームサーベルすらも短時間なら受け止められるシロモノとなっている。

 

 

ネイ「以上が紹介になりますね」

 

グリーフィア「遂に登場の黄のガンダム、可変型に加えて色々意外な面を見せているわよね~」

 

士「ドライバ・フィールド初搭載機、元君以外でカラーガンダム初のユグドラルフレーム発光機。そして専用武装はまさか工具。まぁ他の機体とは大分外れた機体ではあるけども、だからこその見せ場が今回多数あったというわけでして」

 

グリーフィア「確かに、ドライバ・フィールドでタイプ[リズン]の超次元現象攻撃を封殺、そもそも可変機構による飛行形態で窮地に間に合ったわけだからこの機体がなかったら完全に崩壊してたわけだし。ツールバスターも文章での見た目に反して思った以上に多機能だしねぇ」

 

ネイ「でももっと驚いたのはエラクスシステムを発動したことですよ。それをドライバ・フィールドで制御するなんて」

 

士「回転速度の限界解除も回転の停止もドライバ・フィールドで行う形ですね。通常のエラクスシステムとは違うんですけども疑似的に同じ状況に至らせています」

 

グリーフィア「確かにすごいけど~、それって劇中でも見られてたようにかなーり負担有りそうよねぇ?」

 

士「それはそう。まさに奥の手。とはいえ彼のおかげでHOWはゼロン側にエラクスシステムの完成度を誤魔化してある程度警戒させたところはある。深絵さんと夢乃さんが生きていられるのは元君だけじゃなく勇人さんのおかげでもあるわけだ」

 

グリーフィア「それってつまりジェミニアス完成前は勇人君の機体がカラーガンダムの中で最強だったってこと?」

 

士「ずばり正解。で、逆に言えば元君がオースやアンネイムドの事件のために各地を飛び回れたのも最高戦力が東響に留まってくれていたからになる」

 

ネイ「城を落とされない様にするのは大事ですからね。例えが古いんですけど」

 

グリーフィア「そんな彼だけど、エラクス発動してからはどうなったのか見てないのよね~。元君も死んじゃったしどうなるのやら」

 

士「(´・ω・`)」

 

ネイ「作者さん?」

 

士「うん……何でもない。とりあえず艦艇については」

 

グリーフィア「んーまぁゼロンの量産艦は特に言うことないかしらぁ。でも旗艦のアークだっけ?女神像ってあれ全体が武器なのね……笑っちゃうwww」

 

ネイ「しかもこれ、近接バリエーションがあるみたいだね……突貫ってリスクある攻撃を」

 

士「まぁたまにはこんな頭おかしい攻撃兵装あってもいいよねということで。女神像を武器にするのはツッコミありそうですが」

 

グリーフィア「勝手に女神像を使うなって話?」

 

士「いや、ゼロンって海外系のカルトかよって」

 

グリーフィア「そこっ!?」

 

ネイ「まぁ日本で生まれた組織なのに女神像崇拝っていうのは首傾げそうですけどね」

 

士「それにゼロンが定めてる崇拝対象は女神像じゃなくて普通にMSですからね。ここら辺はやっぱり次元覇院と同じ」

 

グリーフィア「次元覇院……その最後の戦いから11年。そうなれば自衛軍の艦艇も随分発展してるわねぇ」

 

ネイ「話の持って行き方……でも本当にあの最終決戦での間に合わせの艦よりも装備は充実していますね。しかも砲座はMSになっているなんて」

 

士「ここら辺は最近見てたマク○スFの奴が参考になりました。流石にあの攻撃をするのはまだ先とは思いますが」

 

グリーフィア「やる気満々じゃないの(笑)」

 

ネイ「それで姉妹艦の名前もアマテラス、ツクヨミ、スサノオと。私達の世界のアマハラ勢力の名前勢ぞろいですね」

 

士「日本と言えばそこでしょってなりました。思いっきり大和とかモデルにしてるって劇中設定書いてあるからやまととかしようかなって思ったけど、名前が下手に被るの怖かったのでこうしました」

 

グリーフィア「出た、作者君の変なビビり」

 

ネイ「変なところで腰抜けですよね」

 

士「流石に事実だから腰抜けで変な風に激怒するのはないけども。と、中編はここまでにしておこうかな」

 

グリーフィア「あら、もう結構書いているのね」

 

ネイ「後編……まぁ残っているのは因縁かつ今回勝利を掴んだあの機体とその拡張パーツ……シャアの機体もですか?」

 

士「ごめん、シャアの機体は本章最後の黒の館DNで」

 

ネイ「分かりました」

 

士「というわけで後編に続きます」

 



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黒の館DN 双翼英雄譚編 第10回 後編

 

 

士「それでは後編始めていきます」

 

ジャンヌ「また戻ってきたわけですが……けど紹介しないわけにはいきませんからね」

 

レイ「何せ今回の主役、メインキャラクターの機体だからね」

 

士「気が乗らないかもだけど紹介してもらえると助かるよ。終わりでは私が今後の予告も含めて話したいし」

 

ジャンヌ「!予告。まだ続く……?」

 

士「それは最後の方でお話を」

 

レイ「じゃあやろっか」

 

ジャンヌ「はい。それでは後編最後の紹介は蘇りし救世主、ヴァイスインフィニットガンダム・ゼロニアスとその追加パーツ合体形態ヴァイスインフィニットエアレーザーの紹介です。どうぞ」

 

 

型式番号DNGX-XX000-WIZU

ヴァイスインフィニットガンダム・ゼロニアス

 

機体解説

 第1部の世界から地球へとやってくることに成功したヴァイスインフィニットガンダム。ところがその機体のパーツはバイタルパートである胸部、頭部を除いてほとんどが次元空間内で喪失し、到着した時にはほとんど動くこともままならなかった。

 ところがそのやってきた場所がヴァイスインフィニットにとって幸運だった。たどり着いたのは当時次元覇院の勢力範囲だった西日本。次元覇院の信者に見つけられた本機は本部である三枝へと移送。そこで修復と並行して次元覇院のMS開発を支援した。

 そこからホリン・ダウン作戦を発端とする次元覇院崩壊に乗じてその機体は行方不明となるが、その機体は巡り巡ってのちにゼロン旗揚げを行う零崎の下に渡る。そこで零崎は本機の更なる解析と再生、後継機としての再構成を行う。それらは年を重ねて、シナンジュと言ったMS達を作り上げていき、遂に転移したシュバルトゼロと同等までの機体として完成する。それがこのヴァイスインフィニットガンダム・ゼロニアスである。

 本機の武装構成はシュバルトゼロ・ジェミニアスに似る。形質の収斂進化、というわけでは当然なく、これはシナンジュ・ゼロンがジェミニアス1号機を襲撃した際に戦闘データを収集、強奪していたため。敢えて同条件の上で叩き潰すというエンドの趣味と思われる。

 その性質、特にマルチ・スペースシステムとエレメントブーストもコピーしているが、独自の仕様となっている。加えて本仕様はパイロットの黒和神治に合っているとは言い難い。特に武装切り替えに技量が付いて行かないためか、エレメントブーストに当たる「スタイルブースト」でも武装の変更は行われない。

 機体カラーリングはやはりシュバルトゼロに合わせて白を基調としながらも灰、そして薄黄色にエンドをイメージした黄緑色のラインが入っている。

 コンセプトは「シュバルトゼロガンダム・ジェミニアスを真似たヴァイスインフィニットガンダム」「ジェミニアスのデッドコピー」。第1部ではシュバルトゼロ側がヴァイスインフィニットガンダム側をやや真似つつ、元に合わせたセッティングが行われていたが、こちらでは真似を意識しすぎるあまり適性をやや無視してしまっている(それでも負荷を抑えるためにある程度要素をカットして運用できるようにはしているのだが)。同時にジェミニアス1号機のデータが使われていることから「強奪されたガンダム」要素も取り込んでおり、武装の一部にもそれに関連する機体の武装が使われている。

 もっと言うと、本機のコンセプトには「アーサー王伝説を体現したガンダム」であり、アーサー王=救世主とした仮説の下作られている。

 

【機能】

・DNフェイズカーボン

 機体を構成する装甲部材。この時代においてはもう珍しくもないものである。シュバルトゼロの黒とヴァイスインフィニットの白はいずれも高純度DNだけが安定稼働をもたらすものだったが、今ではもはやどの機体も再現可能な色となっている。

 

・ツインジェネレーターシステム

 機体を動かす高純度DNを生成するDNジェネレーターの特殊システム。ゼロン側のツインジェネレーターシステムは全てこの機体の物を参考に作られた。

 

・DNLコントロールユニット

 パイロットのDNL能力を増幅させ、制御し機体をコントロールする機能。本機のパイロット黒和神治もDNLに目覚めた者であり、この機能を十分には使いこなせる。

 

・ユグドラシルフレーム

 機体フレームを構成する特殊脳波増幅フレーム。蒼い光を灯す、2機のガンダムの最大の特徴の一つだったもの。

 材質はオリジナルの物を可能な限り修復・再生産している。ただ同時にジェミニアス1号機からもデータフィードバックが行われており、ヴァイスインフィニット由来の物より、ジェミニアスの開発による性質が付与されている。

 

・スペース・ハードポイント

 機体の武装接続部を兼ねたマルチ・スペースシステム。シュバルトゼロのものとは違い、武装を装備していない箇所への導入はされていない。これは後述する技量の理由から。

 

・ELACSシステム

 DNジェネレーターの回転数を暴走域に突入させて圧倒的な粒子放出を行う形態。シュバルトゼロと同じ機能である。読みはエラクス。

 かつてはこのシステムの安定稼働が勝敗を分けたが、本機ではエラクスのカギとなるSEED-UNIT00を換装し、完全に使いこなせるようにしている。とはいえエンゲージシステムの値が低い為、そのままではこれでも及ばないらしい。

 ELACSの制御技術に関してはどうしても残骸からはデータを確保できなかったため、やはり本機でもレイア・スターライトを酷使して使うしかないようだ。もっともそれでもエレメントブーストを模したスタイルブーストによるDNF強化は一応見込める。

 

・エンゲージシステム

 シュバルトゼロと同じサブパイロット搭乗システム。しかし本機の運用状態はそれとはまったく正反対のものとなっている。

 レイア・スターライトを人質、人柱としてしばりつけ、ヴァイスインフィニットの機体制御を無理矢理行わせている。そこにレイアの意志はなく、彼女をパーツとしてしか見ていないそれは、本来のエンゲージシステムとは程遠い。なにより元とジャンヌの運命を縛り続ける最大の障害。

 リンク値はやはり高くはない。

 

・DNウォール

 放出したDNを防壁として展開し、防御する機構。シールドに発生装置を内蔵する。

 

・マルチ・スペースシステム

 ジェミニアスから奪いし力。武装格納空間「ウエポン・ベース」から武装を転送し装備する機構。

 ジェミニアスでは多彩な武装に換装し、あらゆる状況に対応可能な万能システムとして機能していた。しかし本機においてはパイロットである神治の技量不足から多種多様の武装を操ることは困難と判断。よって本機能を武装の着脱部分、コネクター部分に採用。これにより武装を破壊された際に瞬時に補給し、戦力を落とさない方面へと特化させることとなった。

 

・スタイルブーストシステム

 本機のモード変更に当たる機構で、エレメントブーストの模造品。

 シュバルトゼロ・ジェミニアス1号機の強奪を決めた時点でエンドはこの機能をコピーしようとしていた。ところが残骸を収集した段階でこれは断念せざるを得なかった。というのも強奪段階の時点でジェミニアス1号機にはエレメントブーストのエレメントそのものが存在していなかったのである。

 データこそあれども、そこから分かったのはジェネレーターとフレーム、そしてパイロットのDNLであるということ。完全再現は不可能と判断し、それらを模造したもので代用することを決断。それがこのスタイルブーストである。

 スタイルの名の通り、戦闘の型を変えることに重きを置いており、高速のチャージ、破壊力のバスター、防御のガードナー、そしてエンドに任せるバディの四つである点もエレメントブーストとの対抗となっている。

 エレメントブーストの性能には追いつくことは出来ていないものの、それでもMSとしては充分であり、他のパイロットの影響も含めてシュバルトゼロ・ジェミニアスと張り合うことが出来ている。

 

・軍団指揮統制システム「G-Arc」

 ヴァイスインフィニットのみに与えられた軍団指揮用マルチアンテナユニットに内蔵されたシステム。300機に近いMSとのデータリンクを確立させる。

 それだけでなく、十数機のビットMSとの連携活動も可能で、大戦期においては「G-ヴァイス」と呼ばれる機体を操った。

 本機においては操作する端末はない。が、周囲のゼロン機をハイジャックする機能が備わっており、ハル・ハリヴァーの部下のローゼン・シシャを操り、元を拘束、機能停止に追い込む活躍を見せた。

 このコントロール機能はビットモビルスーツが基本となっているが、使い方はあのガンダムAGE第2部のデシル・ガレットの使い方がベース。

 

 

【武装】

・MWBRⅡ

 バックパック側面に装備される手持ちの射撃兵装。前装備の改良型兵装。

 出力は増していて威力も比例しているが、特徴としてビーム出力の変更が可能となっており、マシンガンのような弾を放つことが出来るようになっている。この点はシュバルトゼロRⅡのビームライフル・ゼロから学んだと思われる。

 装甲排除後に主に銃身下部の換装機構を利用するのだが、換装パーツは機体の何処にもない。それは当然で実は銃身下部そのものがマルチ・スペースシステムを採用しており、選択で自動的にバズーカ、グレネードランチャー、レールガンに換装し、活用する。

 

・スティンガーブレード

 腰部アーマーに装備される刀剣兵装。MS刀の流れを汲んでいる。片側四本、計八本を装備する。以前のブレードガンのようなマルチウエポンではなくなっているものの、これにはもちろん理由がある。

 多機能化はパイロットである神治への負担が大きいと判断したこと、そして神治はブレードガンの適性がよろしくないと判断されたためである。同時にブレードガンの弱点が浮き彫りになってきたことも不採用の理由である。本武装はそのブレードガンの弱点である「刀身部分の脆さ」を突いた兵装、刀身部分を赤熱化させて切り裂く。これはブレードガンの刀身に対しても有効で、何度も同じ場所に叩き付けることで脆くなった刀身部分を焼き切る。

 装備部分は前方に向けることで射出が可能で、射出後は持ち手部分に接続されたアンカーで引き戻すことも可能。これを用いて壁を起点に方向転換することも出来る。加えて刀自体は柄同士で合体させることで双刀としても用いる。遠近両用の兵装であることは変わらず、むしろ戦法の多様化にも寄与している。

 刀身収納部分にマルチ・スペースシステムを搭載しているため、武装そのものは尽きることがない。これは後述するセイクリッド・エクスカリバーにも言える。

 モデルはブリッツガンダムのトリケロスおよびランサーダートの機能。アンカー回収などを加えている。ブレード自体のモデルは機動戦士ガンダム00のスサノオの強化サーベルを参考にしている。

 

・ビームサーベル

 本機が元々装備していた物を順当に発展させていった兵装。シュバルトゼロと同じ場所に装備し、性能も同等。

 

・D・フィストスマッシャー・ロスト

 シュバルトゼロ・ジェミニアスの同武装をコピーしたもの。腕部の兵装となる。

 概ね同仕様となっているが、手甲部の武装に関しては元達が非常事態に備えて武装データを導入していなかったこともあり、コピーできず、マルチ・スペースシステムに関しては増幅装置と非顕現状態で接続する増幅状態しか機能しない。

 

・マルチ・シースシールド

 マルチ・アサルトシールドに対となる肩部に装備されたシールド。内蔵された剣の鞘の役目を果たしている。またDNの放出口がいくつも取り付けられており、これらは全てDNウォールの発生器、そしてスラスターとして機能し、剣「セイクリッド・エクスカリバー」装備時の戦闘をサポートする。

 マルチ・スペースシステムも搭載しており、剣を失っても瞬時に補充が可能となっている。よってシールドを完全に破壊しなければセイバーによる攻撃を断つことは出来ない。とはいえシュバルトゼロ・ジェミニアスのような多様な武器が飛んでくるということはないため、やはりオリジナルと比べると操作性を重視していると言える。

 

・セイクリッド・エクスカリバー

 マルチ・シーフシールドに格納される実体剣。アーサー王伝説に登場するエクスカリバーの伝説を踏襲し作られた。

 そのままでは大振りな大剣止まりの兵装である。が、本兵装の特徴は前述した鞘、マルチ・シーフシールドによるほぼ無尽蔵の補給であり、更に本兵装は本機には数少ない遠隔操作端末である。よって尽きることのない遠隔操作端末であり、使いこなせば自機にとっても味方にとっても非常に強力な兵装となる。まさに団体戦を得意としたとされるヴァイスインフィニットに相応しい武装だろう。

 名称からも分かる通り、アーサー王伝説のエクスカリバーと、魔法の鞘がこれらのモデルである。尽きない剣は鞘の効果、傷を受けない→戦える→武器が尽きないと連想したことによるもの。二刀である点は一部書物においてエクスカリバーが二本あるという話から、もっともなことを言えばシュバルトゼロ・ジェミニアスと対にするための所謂こじつけとも言える。

 

・ブレイズマニューバウイング「レッドドラゴン」

 背部バックパックを構成するウイング。シナンジュ・ゼロンの物の発展形でありながら、その運用の仕方は全く異なるものとなっている。

 元々のハイマニューバウイングから薄型化がされており、推進部はバーニアではなくスラスターベーンで構成。推進法も通常のDN放出推進だけでなく、DNの光の翼、それもビーム翼を形成し、それを推進機関兼AMBACとして機能させる。この推進力は真っ向からクローザーと渡り合えるほどであり、単純明快な強さを求めたエンドの趣向が見て取れる。

 その光の翼はまるで炎のように揺らめく。やはりこれも蒼炎と形容される機能を持つガンダム故か。ちなみにマルチ・スペースシステムを搭載しているが、用途としてはバックパックに装備するビームライフルとビームランチャー双方の補充が目的。

 モデルはクロスボーンガンダムシリーズのファントムのバックパック。光の翼もまたファントムの機能からである。形状が似ていることから発展先として選択した。名称のレッドドラゴンはアストレイ……ではなく、ヴェールズの伝説に出てくる赤い竜を意識。

 

・ビームランチャー「ロンゴミニアス」

 左ウイング側面に装備される長射程ビーム砲。ゼロン・オブ・インフィニティーから引き続き運用される。

 貫通性能の高いビーム砲で、その力は健在。ただし装甲を排除した本形態時にはどちらかと言えば名前通りの、槍としての機能を主に使う。

 

 

<チャージスタイル>

 スタイルブーストの一つ。近接戦闘を意識した高速機動形態。フレームの色が橙色に変わる。能力は「短距離瞬間移動」。次々と居場所を変えて敵を翻弄する戦闘スタイルを取る。

 

【追加機能】

・短距離瞬間移動「ディメンションジャンプ」

 超次元現象を利用し、短い距離だけだが瞬間移動を行う。出現する際は空間が歪むのでDNLで補足することが可能。

 エラクスに依らない高速戦闘が可能で消費DNやユグドラシルフレームによる精神的負荷もそれほどではない。システムの基礎には蒼穹島のタイプディナイアルで運用されたデータが用いられており、高純度DN機かつユグドラシルフレーム機だからこそ実現できる機構で、なおかつシュバルトゼロに対抗できる能力となっている。

 

<バスタースタイル>

 スタイルブーストの一つ。遠近共に一発の破壊力を重視した形態となっている。フレームの色はクリーム色に変わる。能力は「質量・エネルギー量増加」。他のスタイルで疲弊したところを狙う決め手と呼べる。

 

【追加機能】

・質量・エネルギー量増加「ディメンションインパクト」

 超次元現象を働かせ、攻撃する際の武器の質量・攻撃のエネルギー量の増幅を行う。

 具体的に言うと攻撃の直前で近接武器の質量を増加させて破壊力を増加させると言った行動が可能。エネルギー量の増加は運動エネルギーだけでなく、ビームの出力にも作用可能で、本来なら武器の構造上出せない出力をビーム放出直後から機能を働かせて外部で出すなどと言った明らかに物理法則を越えてそうな使い方が出来る。

 ヴァイスインフィニットにて使用していたと思われるD・フィストイレイザーロストのインパクト・ブレイクが元となっていると思われる。

 

 

<ガードナースタイル>

 スタイルブーストの一つ。防御性能に秀でた形態となる。フレームの色は紺色。使用能力は「攻撃被弾時のダメージの低減」である。防御力のごり押しで突破することを前提とした戦法で重宝される。

 

【追加機能】

・損傷危機回避システム「ディメンションストック」

 超次元現象を機体装甲周囲に働かせることで着弾する攻撃のエネルギーの一部を次元空間に逃がし、ダメージ量を減らす。いわば機体全体を超次元現象の穴に変えてしまうような機能である。

 逃がしたダメージは戦闘終了後に専用の機器を介して外部へ排除するか、徐々に機体に返還していく。損傷を一部なかったものとして扱うことから資材難の多かったカルト軍にとっては待望の機能とも呼べる。ただしこのシステムを司るスタイルブーストシステムが損傷するとコントロールが乱れ、直ちに機体へとフィードバックダメージが還っていき大損害を受けかねない諸刃の剣でもある。

 

 

<バディスタイル>

 スタイルブーストの一つ。エンドが表側に出てきて戦闘を行う。フレームの色は黄緑色。能力は「超次元現象の現実化」。超次元現象を武器にする姿はタイプディナイアル、タイプリズンと同じであり、同じディメンションモビルスーツであることを痛感させられるだろう。

 

【追加機能】

・超次元現象現実化機構「ディメンションリアライズ」

 超次元現象を操り、形状を与えて武器にする力。圧倒的破壊力を持つ超次元現象自体を槍と言った武器にするだけでも普通の機体にとっては強力だが、それを起点に超次元現象まで起こすことが可能で武器を弾き落とされてもエンドによるDNLコントロールでファンネルとしても使用が可能な点で、脅威度は非常に高い。

 一応マルチ・スペースシステムを完全にコピーした場合でも武器使用に問題ないエンドの為に用意された機能である。

 

 

型式番号 DNGX-XX000-WIZU+ZASD-XX000【POPE】

ヴァイスインフィニットエアレーザー

 

機体解説

 シュバルトゼロクローザーに対抗する為にエンドが急遽完成させた専用ユニット「ポープユニット」を腰背部に合体させたヴァイスインフィニットガンダム・ゼロニアスの形態。救世主(エアレーザー)の名を冠するゼロン最強のMS。

 ポープユニットは武装に展伸式長射程ビームキャノンが二門とブレイズテイルスタビライザーが一つと目に見える装備は少ないが、これは神治の技量に配慮しての事。とはいえ出力の向上などはクローザー同様の値をキープしており、むしろ特殊機能に出力を裂かない分こちらの方が単純性能は上とも言える。そして何よりクローザーのジャッジメントクローズに対抗したスタイルブースト統合形態「ヴィクトリープロフェシースタイル」が追加されている。強化こそないものの、こちらはエンドのアシストも正式に機能として加わっている(ジャッジメントクローズではスタートはネクロの意識下にない、システムからは外れた状態にある)ため、エンドと二人分の相手をしないといけない点はジャッジメントクローズのクローザーと同等の戦力ではある。

 ガンダムの名を冠していないが、こちらもやはりクローザーを意識したもの。エンドによればある意味シュバルトゼロとは当たりたくないであろう機体と自負している。

 以上のようにクローザーと張り合えるように緊急で追加装備として実装された形態であるが、そもそも追加装備はプランとしては上がっていたものであり、開発も進められていた。ところが本来のものが完成まで程遠いことから今回プロトタイプであるポープユニットを開発途中の物を一部機能の切り上げをさせて完成させた。武装が少ないのはこのためである。

 なおポープユニットの構成・合体が単純なため、ポープユニット単体の紹介ではなく、エアレーザーの紹介にまとめる形となった。

 コンセプトは「ヴァイスインフィニット・ゼロニアス×ラインバレル」。ポープユニット自体のモデルがラインバレルのスタビライザーの為、当然だが、そもそもスタイルブーストや超次元現象がラインバレルのオーバーライドを意識したモノである。

 

【追加機能】

 特になし。意外と思われるかもしれないが、スタイルブーストの拡張統合こそ行われるが追加される機能はないのである。

 

【追加武装】

・ポープスタビライザーユニット

 ポープユニットのメイン機関となるテイルスタビライザー。大容量エネルギーコンデンサーと多数のスラスターで構成されている。

 扇状に展開することで高機動状態へと移行する。大容量エネルギーコンデンサーに関してはこの補助には当てられるものの、本命は側面から接続されているエクス・ビームランチャー「エクセキューショナー」の供給元。

 モデルはラインバレルのスタビライザー。

 

・エクス・ビームランチャー「エクセキューショナー」

 ポープユニット側面に装備されたビームランチャー。脇下から抱える形で使用する。

 系列としてはかつてヴァイスインフィニット本体に装備されていたスラスターキャノンがベースとなっている。その時よりも可動域があるため、使い勝手が向上している。威力も時代相応に高まっており、本形態時においては砲撃性能の付与でクローザーと渡り合える。

 モデルはラインバレルのエグゼキューショナー。

 

 

<ヴィクトリープロフェシースタイル>

 エアレーザーとなりスタイルの統合が行えるようになったことで使用が可能となるヴァイスインフィニットの最強形態。直訳は「勝利の神託」。別名「神理救裁(じんりきゅうさい)」。フレームの色は奇しくもシュバルトゼロクローザージャッジメントクローズモードと同じ黄金となる。

 今までのスタイルの能力をすべて使用できる点はクローザーのジャッジメントクローズモードと共通だが、本機のそれは本来の機体の持ち主、「元英雄」エンドの力を直接借りられる点で異なる。

 この違いはそもそも現状のシュバルトゼロとヴァイスインフィニットの運用思想が違うため。シュバルトゼロクローザーがエンゲージシステム、ジャンヌ・ファーフニルとの連携を重視するのに対してヴァイスインフィニットエアレーザーがそのエンゲージシステムに頼り切れない、エンドの力を引き出すしかないためにこのような形となった。

 性能で言えばやはりクローザーの方が上である。が、負荷という点に焦点を当てると、エンゲージシステムへの負担は変わらないものの、パイロットへの負担はこちらの方が軽く、長期戦において有利という利点が生まれる。現実問題、本編中では負荷の溜まり過ぎた元がG-Arcによる操りに気づけず隙を晒したことからも有用性は間違いないだろう。

 すべてのスタイルブーストの力を使いこなす姿は、モデルとなったラインバレル並みの圧倒的性能であり、まさに「救世主」「正義の味方」を体現せざるを得ないほどの力を振るう。

 

 

 

ジャンヌ「以上がヴァイスインフィニットガンダム・ゼロニアスの周辺設定です」

 

レイ「うーんやっぱり色々と今まで暗躍していたみたいだね」

 

士「順を追っていくとまず次元覇院のMS開発にデータを与えた。そこから次元覇院壊滅と同時に次元覇院の教祖たる大教柱の手で西日本の未だ影響の強い支配区域に移送されて、その後ゼロンのMS開発の礎になりつつ自身の復活の為に移送中だったシュバルトゼロガンダム・ジェミニアス一号機を襲撃してデータを奪ったわけですからね。L2でシュバルトゼロのコンピューターが次元覇院のMSをマキナートと見間違えたのはこれが原因だったと完全に証明できたわけです」

 

レイ「それに次元覇院の教柱がホリン・ダウン作戦の終わり際に移動させた荷物も、ヴァイスインフィニット、それにレイアちゃんだったわけだね」

 

ジャンヌ「本当に元さんの推測通りだったんですね。しかもその時は全く迎撃準備が出来ていなかった……もしあの時本当に対面できていたら」

 

士「今回こんなことにはならなかった。と言いたいのは分かるけど、これが現実だ」

 

レイ「それは仕方ないよね……それでエアレーザーの方はこれ救世主って意味なんだね」

 

士「ドイツ語における救世主の意味ですね。ポープも教皇の意味を持った言葉ですし、まぁヴァイスインフィニットらしいネーミングで合わせておきました」

 

ジャンヌ「けどヴィクトリープロフェシーモード、その別名が……聖杯探索に引っ張られました?」

 

士「丁度いい四字熟語がそれしか思いつかなかったんだよ……劇中ではまだ言ってないんだけど、どこかで言えたなら出そうとは思ってるから」

 

ジャンヌ「それにしてG-Arc……すべての発端とも言えるあのリングの制御技術がこの結果を生み出すなんて……あそこで一回きりの登場と思っていたんですが」

 

レイ「そうだね。味方機を操作して攻撃を仕掛けるなんて、乱戦じゃシュバルトゼロが不利だよ……」

 

士「しかもそれ、ヴァイスインフィニット側では武器の一つとしての認識ですからね。エンドにその気があろうがなかろうが、それをゼロンが使っているとなると、最悪特攻兵器のようにMSが使われる可能性も出てくるわけで」

 

レイ「うわっ、救世主には程遠い戦法だ……」

 

士「いや、むしろ逆に救世主っぽさあるよ。人を弾にしてでも悪を討つ、理想への犠牲は美徳みたいな狂ったカルト教団っぽさ、なくない?」

 

ジャンヌ「どうやったらそんなクズな発想が出てくるんですか……っていうかそもそもエンドはマキナ・ドランディア側の人物、しかも元英雄ですよ?それってつまり……」

 

士「もとから、マキナ・ドランディアの人達がおかしかったのかもしれねぇ……(´Д`)」

 

レイ「うわー……聞きたくなかった」

 

ジャンヌ「マキナ・ドランディアの終誕の日、国民たちがガンダムに反旗を翻したとか言ってますけどこれもしかして逆にガンダム側が虐げられて怒ったんじゃ……」

 

士「いやいや……それは飛躍しすぎ。元英雄が狂っていても虐げられるまではなかったんじゃないかな。少なくとも今の時点では可能性としてないし」

 

ジャンヌ「言われてみればそうですね。早計でした。けどシュバルトゼロとヴァイスインフィニットを作ったであろう創世記時代のマキナス、ドラグディア。彼等への疑念が深まりますね……」

 

レイ「だね。それとパイロットだった元英雄の一部、スタートとエンドも」

 

士「彼らが失っていた記憶とは、何がエンドをああまで言わせるのか。気になるところではありますが、それ以上に気になるのはやはり、凶刃に貫かれた元君と一人それから逃がされたジャンヌの行く末でしょう」

 

レイ「おっ、遂にその話題に触れるわけだね」

 

ジャンヌ「……本当にもう終わりのような気がします。宗司さんがどうにかしてくれるくらいしか。でもL1、L2で戦い続けた二人がこんな別れ方を……」

 

士「まだ終わりじゃないよ」

 

レイ「……え?」

 

ジャンヌ「いや、ガンダムだったらこれ終わりでしょ!?胸部を完全に貫かれてDNジェネレーターが大破して、こんなの!」

 

士「既存のガンダムと決定的に違うこと、MSへの搭乗方法。身体を電子化させて憑依する。奇跡だって起こるかもしれない」

 

レイ「うむむ……言われてみればそうだけど」

 

士「まぁもっとも確実に貫かれたんで完全に身体のデータぶっ壊されてそうですけどね」

 

レイ「おい」

 

ジャンヌ「じゃあ駄目じゃないですか!」

 

士「聞こえてこないかい?竜の呼び声が。怒りに満ちた声が(゚∀゚)」

 

レイ「え、大丈夫頭」

 

ジャンヌ「今さら中二病ですか……」

 

士「待ってくだされ(゚Д゚;)今章のサブタイトル回収です」

 

レイ「えーと?救世の咆哮、ドラゴニックハザードだっけ?」

 

ジャンヌ「ドラゴニックハザードと言えばシュバルトゼロのEDNFの名前ですね」

 

士「そうでもある。このタイトルはどちらかと言うと元君と神治君、二人の姿を分割して名付けた物、救世の「災害(ハザード)」、「(ドラゴニック)」の咆哮」ってのが元々の単語ね」

 

レイ「うわっ、そんな難解なものだったの!?」

 

士「けど同時に元君単体でも見ることが出来る単語でもあるように設定したんだ。元君の行いは結果的に救世とも取れるしって意味で」

 

ジャンヌ「言わんとしていることは分かりましたが、それでも咆哮なんて……」

 

士「それが指す意味は、次に紹介する予告ですぐに分かると思います。では次回予告!と言ってももうあと数話しか今章ないんですけどね!どうぞ!」

 

 

 

 

神殺しの魔王は遂に墜ちた。泣き叫ぶ詩巫女を嘲笑い獲物を前に勝ち誇る新たな救世主。

 

「はじめ……やぁ、いやぁ……!」

 

「何泣いてんだこの女!悪魔の癖に!」

 

 

 

 

敗北の知らせは戦場へと瞬く間に届き戦士達を一喜一憂させていく。

 

「そんな……元隊長が」

 

「姉様、姉様っ!」

 

「くそっ……どうすれば、くっ!」

 

「HOWももう終わりだッ!ゼロンに呑まれなさいよ!」

 

「魔王は消え、救世主の時代が始まる」

 

 

 

 

人の時代が終わる。神の時代が再び、そう思われた時次元の彼方から、竜が舞い降りる。

 

「クリムゾン……ファフニール?」

 

 

 

 

竜が魔王と重なる時、肉体と魂は再生し魔竜が生まれ、世界の滅びを開始する。

 

「ガァ……ガアアァァァァァァァァン!!!!」

 

『ぐっ……奴め、合神形態に呑まれたか。ここはっ』

 

 

 

 

神と言える存在との合体、救世主の元英雄すらも慄く力が戦場に暴力を振り撒く。

魔竜は世界を滅ぼすのか――――――

 

 

 

 

否。

 

 

 

 

私は、私がいなければ時代も、世界も変わらないと感じているに過ぎない。

 

英雄として、傍観者などではない。私自身がこの戦いを終わらせる。次元の神などと言う輩も私以外の救世主も、それを止められぬ抑止力も私が粛清する。

 

 

 

 

「何だ、これは!」

 

「貴様は何者だ。元じゃないのか」

 

「君達では出来んよ。私とシュバルトゼロを止めることなど」

 

 

 

 

蘇る英雄は、世界への復讐を始める。次元世界に生きる者達への審判者。

 

最重要ミッション、魔王の奪回。

 

 

 

 

「ジャンヌちゃんを取り戻せるのは……あなただけでしょ!元君!!」

 

魔王よ、現世へ戻れ。

 

 

 

 

 

 

士「はい、というわけで次回もお楽しみ」

 

レイ「ちょいちょいちょいちょーい!!」

 

ジャンヌ「待って待って待って待って!これひょっとしてアナザーヴァルプルギス編ですよね!?」

 

士「何の事やら(;´∀`)」

 

レイ「いやいやいや、ツッコミどころ多すぎるよ!?やっぱりジャンヌちゃん捕まってるし、みんな士気が落ちてダメだと思ったのに、それ以上にクリムゾン・ファフニールが突然出てきてしかも合神形態とか言ってるし!咆哮の意味とかもはやどうでもいい!」

 

ジャンヌ「途中から予告と元さんを乗っ取った奴は誰ですか?英雄って言ってますけどまさか!?」

 

士「はいそれ以上は本当にネタバレになるんで、今回はここまでです。大丈夫、次回からすぐに色々分かっていくから。というわけで閉館!バイバイ!」

 

ジャンヌ「う~!早く書いてくださいよ!」

 

レイ「元君……!無事でいて……」

 




はい、今回はここまでです。久々の投稿となりました。

この1か月半、ずっとプロットとか書いていたんですが、MSの方も先に書いていたんですよね。それに加えて先の展開が鬱展開それなりにあって私の精神力ガリガリになって大分ペースが悪かったです。ごめんなさい。けど今後もこれ当然遅くなると思われます。鬱な展開とかで遅れます。先に言っておきますが。

とまぁその話はここまでで。世間話としてはこの休みの間に他にプライベートでバトスピの大会参加とかしたんですよね。それの調整もありました。結果?……HAHAHA。

それと今回の黒の館DNで紹介したタイプ[リズン]、モデルとなったマークレゾンが登場する蒼穹のファフナーTHE BEYONDが最終話まで公開されたんですよね。BEYONDは全部公開されてからゆっくり見ようかなという勢なんですが、ネタバレは見る派なんですよね。まぁここじゃ話しませんけど。それはご法度。
ただ一つだけ、一言だけ。……どうして?

以上です。知りたい方はビヨンド見ろ。私も見たい。

今後はまた連載は再開していきたい所存です。既に第4章は最終話まで書いているのでそこまではペースは速いと思われます。
では次回から始まる展開、お楽しみに。それではまた次回。


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EPISODE72 魔竜顕現・英雄の再来1

どうも、皆様。EPISODE82の公開です。

レイ「あぁ……ついにストーリーも再開かぁ……」

ジャンヌ「前回の黒の館DNを見て頂ければ分かりますが……ジャンヌ・Fさんもひどい仕打ちにされることは確定事項。見守るしかありませんね」

というわけで長らくお待たせしました本編、どうぞご覧あれ。


 

 

 最悪の光景を目にする。私達の最大の「力」、もう負けるわけがないと思っていた存在の敗北。

 敗北したなら、今ここにいる自分も同じ道を辿っていたはずだった。彼と共に死ぬ。けれども今自身はその光景を外から見ている。

 自分から脱出したのではない。となれば考えられるのはただ一つ。

 けれども、そんな事よりも私の最初の行動は絶望の絶叫だった。

 

「はじ………………ハジメェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!!!!!!!!」

 

 ビームランサーが引き抜かれ、甲板へと倒れ込むシュバルトゼロクローザー。尻餅をついていたジャンヌはすぐにその機体へとはち切れそうな思いで駆け寄る。

 たどり着いた機体にはもはや生の動作も見られない。わなわなと手を震えさせて必死に呼びかける。

 

「はじめ、はじめはじめ、返事をして……はじめ……やぁ、いやぁ……!」

 

 声にならない哀しみ。大切な人を失って完全に錯乱しつつあった。しかしそれを引き戻すようにヴァイスインフィニットが左手を掴み上げる。

 

「ひぐっ!?」

 

「何泣いてんだこの(アマ)!悪魔の癖に!母さん達や仲間を殺された怒り、思い知らせてやるっ」

 

 勝ち誇る神治がジャンヌに手を掛けようとする。生身でMSにはほぼ抵抗できない。このまま腕を折られ、貫かれ殺されると思ったが、それをエンドが制止する。

 

『いや、ジャンヌ・ファーフニルは殺さない』

 

「エンドっ!?何を言って」

 

『彼女には利用価値がある。こいつが指揮していた部隊の一人は、この女の妹だ。そいつの動揺も誘える。もしマキナ・ドランディアの連中がこちらの世界に到達しても人質としてどちらの世界にも通用する』

 

 エンドは様々な可能性を考慮してジャンヌを人質とする考えを持っていた。自分が有利になる様に一番効果的な一手を打つ。たとえそれが組織の第一目標で血祭りにあげるべきだったとしても。

 エンドの考えは正しいのだろう。しかし撃破の為の恩人であるとしても、組織の主義にそぐわない考えだと神治が認めないと告げる。

 

「そんなの俺達がねじ伏せればいい!みんなの総意はこいつらを殺すことだ!零崎様も」

 

 と言い掛けたところで言葉が止まる。何やら回線で誰かと話し出す。言葉の端々が聞こえてくる。

 

「……っ!?そんな。ですがそれは……う……くぅ、クソッ!分かりました」

 

 締め上げる力が弱まる。どうやら上からの命令らしい。コントロールを代わったエンドが処遇について聞かせてくる。

 

『良かったな。生きていられて』

 

「………………どうだっていい。殺してよ……元と一緒に……。一人残るくらいなら、私の想いが届かないくらいなら、いっそのこと……」

 

 生きていられる。そんな発言に対し、嬉しくもないと突っぱねる。その気持ちは紛れもなくジャンヌの本心から来るものだった。

 神治だって聞いているはず。すぐに殺そうと言ってくるかもしれないが、その方がジャンヌにとっては救いだ。叶わぬ恋でも、最愛の人と一緒に死ねるのなら、それでよかった。

 それを聞いてエンドからはまた良かったとの声が返ってくる。

 

『死んだ方がマシ、なら今の状況がお前にとって一番苦しいことだろう。死にたいと思っても自死すらも叶わぬ、させず。お前は人質として丁重に扱わせてもらう』

 

「……うう……はじめ……はじめぇ……っ!あぁっ、うわあぁ……!」

 

 今まで堪えてきていたものが一気に溢れ出す。伝えようとしたい相手はもういない。13年の想いが潰えた瞬間だった。もうこの思いは永遠に届かないと絶望に心が染まる。大粒の涙が頬を流れて下へと零れ落ちていく。

 

 

 

 

 各空域で未だ戦闘する東日本連合軍。その彼らにも黒和元の撃破とジャンヌ・ファーフニルの捕縛が告げられる。全体回線でゼロンの宗主零崎秀夫が通告した。

 

『東日本連合軍の諸君。私は次元境界信仰教団ゼロンの宗主零崎秀夫である。諸君らに通告する。諸君らのエース、「魔王」黒和元は我らが次元世界の救世主黒和神治によって討ち果たされた。そしてそのパートナーであるジャンヌ・ファーフニルも我々が抑えた』

 

「っ!?そんな」

 

「元さん!?」

 

 降伏を呼びかけるその宣言にHOWのエース深絵と夢乃も目を見開く。その報告を聞き相手となっていたシャアが笑みをこぼす。

 

「流石だな、やはり彼に任せて正解だったな」

 

「くぅ……元君!ジャンヌちゃん!」

 

「おっと、行かせはせん」

 

 助けに向かおうとする深絵が再び抑えられる。

 HOWのエースが動揺するのだから、当然他の面々も伝播していく。

 

「元隊長が……負けた?」

 

「くっ、自衛軍機に乱れが……新堂、そっちは!」

 

「っ、ダメだ、とてもたどり着けない!」

 

「作戦……失敗」

 

「あかんやん!これ撤退が吉ですって!」

 

「輝……これは」

 

「もうどうしようもない。元々駄目だったんだと思う。こんな無茶苦茶な作戦」

 

 諦めを口にする者もいる。それがエースならなおさら味方の士気が下がっていくのは明白だった。

 何より一番そのあおりを受けていたのは他でもない、元自身が隊長を務めるCROZE部隊、そしてGチームの一同だ。

 

「元お兄ちゃんが……ジャンヌお姉ちゃんも……捕まって」

 

「……くぅ。作戦が……これは」

 

「元め……しくじったか」

 

「他人の心配している場合かぁ!」

 

 ヴァルプルギスのクルーが、光巴や紫音が苦しい表情を見せる。指揮を任されているものとして、苦しい決断をしなければならない。それを護る勇人も対峙を続けながらその撃墜に顔を歪める。勇人も敵と戦いながら舌打ちをする。護るべきものを引き続き護っていく。

 Gチームも宗司達が目の前の因縁の敵と苦戦しながら絶望的状況を突きつけられていく。

 

「そんな……元隊長が……元さん、元さん!」

 

「あら、よそ見?」

 

「千恵里ちゃん!」

 

 元への心配に意識を割かれて危うく妹に撃墜されそうになる千恵里。それをクルスがカバーに入るが、SINモードで性能の上がった玖亜のアポカリプスの振り払いで二機とも弾き飛ばされる。

 

「入嶋!くっ!こっちだって手が離せないのに……くそっ!何が俺達だけでやるだよっ、あんの野郎!」

 

「無様だな。そろそろこちらへ寝返ってほしいものだ」

 

「別に、こんなのいなくていいでしょ」

 

「ちぃ!こんなことで寝返るかよ!」

 

「進、落ち着いて戦え!」

 

 言いようのない苛立ちをぶつけながら戦線維持を続ける進と呉川。いつものように攻撃的な面を見せつつも動きに冷静さが垣間見えている。

 Gチームの中では比較的ショックのダメージを抑えながら戦闘を継続する。

 最後の宗司達の方は、おそらく千恵里達と同等のショックを受けていただろう。エターナがパニックを起こしていた。

 

『姉様、姉様っ!嘘だ、捕まるなんて、そんなっ!』

 

「嘘じゃない。次元覇院が目指した世界がここに!」

 

「宗司!エターナちゃんしっかり!」

 

「元隊長……くそっ……どうすれば、くっ!」

 

 どうすればいいのか。エターナの動揺でガンダムDNの制御系が狂ってきていた。宗司は何とか自分で何とかしようとするも、敵は強化状態。宗司への負担はドライバ・フィールドも含めて高まっていく。

 ビームライフルが撃ち抜かれる。爆発から身を護りつつ突貫してきた栞奈の攻撃をシールドビームソードで受け止める。ゼロン有利へと傾いた状況。

 Gチームの宿敵と相対しながらゼロン側の少女達が凱旋を謳う。

 

「HOWももう終わりだッ!ゼロンに呑まれなさいよ!私達の勝利を彩って散りなさい!」

 

「もう終わりよ。人の時代を象徴するHOW、魔王は消え、救世主の時代が始まる。神を捨て、次元世界の始まりすらも捨て去った古き人間から、私達が正しき時代と次元世界地球の覇権を取り戻す!さぁ括目なさい。これが世界のあるべき姿!」

 

 槍をその手に、アポカリプスが後ろ脚を翼形態に移行させる。それはまさしく、新たな世界の到来を告げ、既存の人類を滅ぼす天使のような姿。

 罪を被った新世紀の福音を告げる天使が戦場に終焉を告げてくるのであった。

 

 

 

 

 勝利を確信し、盛り上がりを見せるゼロン陣営。それを俯瞰した様子で見通すエンド。

 その胸の内には発言と違うものがあった。

 

(救世主に祭り上げられる組織。これもまた、繰り返しか。それにしてもスタート……黒和元。確かにお前達の言う通り、これは悪だ)

 

 彼らの言葉は対峙している間、ちゃんと聞き続けていた。彼らの言うことは決して間違いではない。ゼロンは危険な存在であることは認知している。

 しかし、それは決してゼロンに属する人間すべてが彼らの思うような危険人物ではないことを知っている。勝ちのあるべき人間。それは零崎に代表される者達だ。

 それを伝えられればとも思った。だが出来なかった。そうしていてはこちらが負けていた。彼らがこちらの人質、レイア・スターライトを奪還しようとしていたのは目に見えて分かった。今それをされては困る。されていたら、「本当の敵」を倒すには至らない。

 だからこそこの結果を生み出した。しかし後悔はない。残念であるのは本当の敵に対抗できる戦力を失ったということだけ。かの詩巫女、DNLの神髄へと至ろうとする完成系である成長した少女ジャンヌ・ファーフニルは手に入った。

 当の本人は既に抜け殻のように虚ろな様子で泣き縋る。奪ったのは私達だが、これもまた次元世界の為。すべてが終わってから罪は受ける。全てを知れば罪とは思わないかもしれないが。

 一方でその処遇に不満足な様子なのは使い手の神治。形だけとはいえ称賛を送ってくるハリヴァーの言葉を邪険にあしらう。

 

「流石、異世界の英雄の機体を使うだけある」

 

「フン!お前達の機体だって、俺の機体のデータを使って開発されているんだ。条件は同じだろ。それなのにお前達は良いように」

 

「貴様っ!大佐に向かってそのようなことを!」

 

 ローゼン・シシャが手首から先を失いながらも掴みかかる動きをするが、コントロールを奪った神治が人質としたジャンヌ・ファーフニルを盾にしてきて腕が止まる。

 

「ひぐっ!?」

 

「ぐっ!」

 

「おっと失礼。いい加減に立たせた方がいいと思ってなぁ。けどこのままお前が殺したら、零崎様はさぞお怒りになっていただろうな?その時はお前の敬愛するハリヴァーも……」

 

「おのれっ!」

 

 必要以上に挑発する神治。その様子は見ていて良いものではない。救世主であることに必要以上に思い上がり、図に乗る様は完全に悪印象しか与えない。

 ジャンヌへと必要以上に痛めつけるのを避けるべく、コントロールを奪い返す。そのうえで今回の功労者と言えるハリヴァーに謝罪と礼を告げる。

 

「すまないな、うちのパイロットは些か調子に乗っている。今回は君や真藤一真のおかげで得た勝利だというのに」

 

「っ!エンド!」

 

「フッ。流石は異世界の元英雄。そう言っていただけると足止めした甲斐もある。シュバルトゼロの撃墜という私達の逃した失態も取り返してくれたのだからな」

 

 そのように返答し合う両者。実際お互いの言葉に偽りはない。神治の言う通り、相手が何か抱え込んでいるとはいえ、ちゃんと任務を果たした人物には礼を以って答える。これは神の時代であろうとも必要なスキルだ。

 人質もこれから行うであろう必要事項以外は傷つけるつもりはない。その必要事項も決して尊厳を奪うつもりもない。何よりこれは零崎も望んでいる事。下卑た真似を他の者にはさせない。

 黒和元は自身の事を身勝手な救世主と呼んだ。しかしそれは決して違う。私は英雄として、人々を導く実力のある者として立つ。汚れた道であっても英雄なら進む。奴もそれと同じ道を歩んでいたが決定的に違うことがある。それは心が納得しているかどうかだ。

 奴は甘さを残している。実力で上回るにも関わらず、激情に駆られ本来の実力を、引き際と判断を見誤った。それはきっと余裕を失っていたから。資料で見る冷徹さはなく、神治のように沸き立つ怒りで戦う。もっともそれでもあれだけの実力を出せるのは紛れもなくエースである証拠だが。その実力はこちらの言葉を押し切るほどのものだとも思っていた。

 ふと奴の言葉を思い出す。

 

『俺も、お前も、この先の未来に必要ない』

 

 詭弁だ。奴が必要ないのだとしても、私はいなければいけない。あの悲劇をこの世界でも繰り返さないために。例えデータの存在になっても、生きている意味はある。そう、英雄として導く。未来を切り開くために。

 その意志を新たにしていると、残骸となったシュバルトゼロを見てハリヴァーが処遇について話す。

 

「さて、もはや奴は死んだが……機体は再利用するのか?」

 

「そうだな。これを修復し、ゼロンで使えるようになればどの勢力も敵うまい」

 

 至極当然の発想。完全にパイロットも機体も沈黙している。直せば機体は使える。スタートが問題だろうが完全に切り離せば問題あるまい。最悪、先程の攻撃で「死んだ」可能性もある。

 エンド達の判断を聞き、わずかに目を見開くジャンヌ。身じろぎをして拒絶を見せる。

 

「やだ…………やぁ、やめて……やめてぇ!」

 

 思い出が壊れるのを嫌がる。勝手にその機体を使って欲しくないという考えが見て取れる。しかし止まることはない。目線でやるように指示しハリヴァーの僚機であるローゼン・シシャが背部のユグドラルジャマーで捕獲活動に入る。

 囲い込むジャマー。フィールドを発生させようとして、ジャンヌが絶叫する。

 

「やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

 

 

 絶叫が響くと、突如空が割れる。

 倒れていたシュバルトゼロの真上の空間が次元崩壊を起こし、次元空間から何かが凄まじい勢いで着地、衝撃波と物体の落下でジャマーが粉砕、踏みつぶされる。

 降ってきた乱入者……それは機械の竜と呼ぶほかない。しかしかつてエンドが見たシルエットに完全に合致する存在はいなかった。

 

「何だ……この機竜は」

 

「かつていたというシュバルトゼロの強化パーツ……?いや」

 

 ハリヴァーもその考えにしか至っていない。確かにGワイバーンも機竜ではあるが、それとは各部が異なる。DNで形作られた翼などはその最たるもので実体ウイングを使っていたあれとは明らかに違う。

 そもそもあれに単独で次元移動する機能はなかったはずだ。目の前にいるそれは単独でこちらの世界に来た。しかしその眼光に何か見覚えがあった。

 その姿を見て人質のジャンヌ・ファーフニルの唇が震えている。

 

「あ…………あっ……」

 

「!ガァアアアアアアァァァアァアア!!!」

 

 耳を劈き、周囲が震えるほどの咆哮を上げる機竜。MSの動きすらも封じるそれが周囲へと響き渡る。

 こちらも目を背けざるを得ない。次に目を向けた時、その機体は更なる行動を取っていた。

 

「っ……!?」

 

 機体が分離し、その各部が倒れていたシュバルトゼロクローザーへとパーツを重ね、合体しようとしていた。

 両手にその強大なクローユニットを接続し、それを軸に体を持ち上げる。持ち上がった体に、今度は脚部ユニットを履かせていく。まるで糸繰人形のように力のない体を手や足が操作していく。

 傀儡となっていくシュバルトゼロの姿。異常な光景をただ見ているわけではなく、すぐにビームランチャーを構え、合体を妨害しようとする。

 

「っ!させぬ!なんだと?」

 

 ところがその攻撃は着弾するより前にかき消される。周囲に放出する機竜の翼からのDNがビームを削り取った。

 こちらは強化型ガンダムというのに攻撃を防いだ。尋常ではない力を持っていると悟る。その間にも謎の機竜は合体を続けていく。

 あの大型バックパックとなっている鳥型兵装の上から機竜の身体が合体する。その時首ユニットから実体剣をむしり取り、パージした頭部と代わってドラゴンの首へと接続される。

 その様子を目の当たりにするジャンヌ・ファーフニル口から何かの名称が呟かれる。

 

「クリムゾン……ファフニール?」

 

 呆然とその名を口にする彼女。聞いたことのない、というには心当たりのある名前。クリムゾン。それは……。

 やがて頭部以外のすべてのパーツが完全に合体し、最後に頭部が合体する。しかし、その光景はあまりに生理的な嫌悪感を抱かせる。

 その機竜の口が後方からシュバルトゼロの頭部を食おうとして、いや、噛み付く態勢を取る。機体が非常用回線を用いて警告する。

 

『Warning! Warning! This is not a safety limiter!』

 

「ぐっ!?これは!?」

 

 その意味を理解し急速的に距離を取る。ジャンヌ・ファーフニルも抱えて退いた後、シュバルトゼロの頭部にその機械の龍頭が「かぶりつく」。

 ブレードアンテナや側頭部装甲を機竜の牙が割り、内部メカニックに接続する。直後周囲に微弱な駆動音が届き始める。

 完成した異形。かすかに上がる頭部。生気のない動作が緊張を生み出す。

 ハリヴァーも損傷を庇いながら戦闘体勢を取っていた。護るようにしてほぼ武装のないローゼン・シシャがシールドを構えて前に立つ。直後、ローゼン・シシャの身体がかすかに震える。

 

「がぁっ!?」

 

「何だ、どうし……!?」

 

「これは……」

 

 変貌したシュバルトゼロから伸びる「尾」。その先端がローゼン・シシャを貫いていた。

 瞬間、奴が咆える。

 

「ガァ……ガアアァァァァァァァァン!!!!」

 

『Uncontrol unit!Over-dragon!DESTROYER…』

 

 

 魔竜。それは英雄が暗転せし破壊の化神。それが何なのか。エンドは、白の元英雄は知っていた。

 

 

NEXT EPISODE

 




EPISODE72はここまでです。

レイ「象徴が、クリムゾンファフニールが、合体した……」

ジャンヌ「寄生した、と言ってしまっていいんでしょうか……。いえ、そうとしか言えないと言いますか」

乗っ取りっていうイメージだね、個人的な設定では。まぁ死んだ人間を動かしているようなものだから、寄生でも間違っちゃいないけども。

レイ「やっぱり死んでるんじゃん!死んでないとか言って!」

ジャンヌ「……まさか、他人が動かしているから生きてるなんて屁理屈言いませんよね?」

流石にそれはヤバすぎるから考えてないよ……何でそんな発想思いつくん……?とはいえここからが本番ですから。暴走したシュバルトゼロが果たしてどんな被害を起こしていくのか。それに対し両軍がどのような対応を取るのかが次回から描いて行きます。

レイ「頼むからこれ以上殺すなんてことは……」

ジャンヌ「……助ける道であってほしいです。ゼロンはどうか分かりませんが」

というわけで次話に続きます。

レイ「それ私の仕事!ネイ達お願いっ」


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EPISODE73 魔竜顕現・英雄の再来2

どうも、皆様。本日2話目となります。EPISODE73の更新です。

ネイ「シュバルトゼロの再起動……からの暴走ですか……」

グリーフィア「暴走シークエンスとか劇中の台詞的にあれを意識しているんでしょうけど……それ以上にヤバそうねぇ……。これは敵味方とか言ってる場合じゃなさそう」

果たしてHOW、そしてゼロンはどのような決断を下すのか。それでは本編をどうぞ。


 

 

「が……こいつぅぅぅぅ!!」

 

「くっ、すまない」

 

 貫かれたローゼン・シシャがもがく。あれではもはや助からないだろう。しかしハリヴァーはすぐにその意図を察して距離を取る。

 腕に装着されたシールドを向ける。そのシールドも正面から貫かれ半壊状態だ。しかしそこにエネルギーが集中していく。

 エンドもそれを理解してジャンヌを庇う姿勢を取る。

 

「目を塞げ」

 

「え……」

 

 直後、ビームエネルギーの放射と共に大爆発が引き起こされる。誘爆による自爆。それで再起動したシュバルトゼロを葬ろうというのだ。

 爆発と同時に辺りへ機体のパーツが高速で散乱していく。機体の背に金属が叩いていく。やがて爆発が収まったのを見計らい再び正面へと向き直る。人質であるジャンヌを庇う姿勢だ。

 あれで機能を停止できたなら儲けものだろう。あれには対DNL用機構がいくつも備わっている。DNL対策が通じるかは分からないが、自爆でも効力を発揮するシロモノを近距離から受けて無事とは思いたくない。

 だがもし、あれが、自身の想像と違わないのならば。じっくりとその様子を慎重に確かめていく。警戒態勢、先程のシュバルトゼロとの対決と同等に、いや、それ以上に。

 煙が晴れた先を見て、声が詰まる。

 

「!?やはり……」

 

 現れたのは無傷のシュバルトゼロ。未だにその機竜に操られるその姿があった。

 自爆でも機能停止しない機体。確信した。やはりあれは。そう思った瞬間、奴が動いた。

 

「ガァアァアアアアア!!」

 

「っ!!」

 

 背筋に冷たいものを感じる。データとなっているにも関わらず。その直感が示す通り、奴の攻撃が仕掛けられる。エラクスではない超加速で距離を詰めたシュバルトゼロは肥大化した手、否、爪を振り下ろす。

 咄嗟に腰部のスティンガーブレードを引き抜く。しかし容易く打ち壊され続けて繰り出された突きが胸部装甲を抉る。

 後ろにジャンヌがいるために下がれないまま膝をつく。痛みを共有し神治が絶句する。

 

「がぁっ!?エンド、何がどうなってる!なんであいつは動いているんだよ!?」

 

「くっ……見ろ、奴の胸部を」

 

 誘導させた視線。その先には、確かに貫いたはずの胸部。ところがそれは完全に穴がふさがり、再生してしまっていた。

 

「なっ……なんだよ……あれ」

 

 機械ではとても出来るはずのない光景。ところがエンドにはなぜそれが起こったのか直感で分かった。知識に合致する機能。再生というより「創造」に近い機能。それは象徴と呼ばれる存在が必要不可欠となる進化機能「エヴォリュート・アップ」しかない。

 資料で見たことがあった。こちらの世界に転移した当時のシュバルトゼロは確かに、合体したGワイバーンと自身を丸ごと別の形に生まれ変わらせ、まったく別の機体へと変貌した。だから、プログラムはおそらく持っているのであろうと考えてはいた。

 これまでのクローザーで使わなかった事だけが気になっていたのだが、温存していたのかそれともあの機体だけでは発揮できなかったのか。だがそんなことは今の奴の前では無意味だ。

 神治に、そしてハリヴァーにも対処を呼びかけた。

 

「神治、ハリヴァー退くぞ」

 

「なっ!?なんでだよ!あんな奴生かしておいたらゼロンの、零崎様の教義が屈したと!」

 

「同感だな。だが、逃げ切れるか!」

 

 神治は反対するが、ハリヴァーはその言葉の意味を理解していた。いや、神治にも分かっているだろう。今の自分達では奴を抑えることは出来ないと。

 圧倒的なプレッシャーを放ち続ける奴を前に、神治の声が震えている。無理もない。彼としては全力で戦い、勝ったはずなのにその勝利を無に帰されようとしている。

 しかし逃げたくもない。その心理故の発言。だからこそそれを打ち砕く一言を掛ける。

 

「逃げるが勝ちだ!奴に一度は勝った。ならば今度は生き延びることが重要だ!今の奴は危険すぎる。それこそ、人質など意味を成さない」

 

「っ……くぅ」

 

 神治が一応の了解を見せる。すぐに捕虜としたジャンヌ・ファーフニルを引き寄せ、言った。

 

「お前には余剰領域に入ってもらう。生身では危険すぎる」

 

「あ……何で、ファフニールが……元を、喰って」

 

「今それに答えを出している暇はない!あれは……お前すらも殺す」

 

 何とかヴァイスインフィニットエアレーザーのポープスユニットの余剰領域へと取り込む。目で確認していたシュバルトゼロの眼光が猟犬の如く光る。

 そして、再度攻撃を仕掛けてくる。一度両手を地面に付けてスラスターと合わせた跳躍でこちらへと詰めてくる。

 

「グォォォォォ!!」

 

「ぐっ……奴め、合神形態に呑まれたか。ここはっ」

 

 左腕部は既にない。残っていた右腕部と半壊したシールドで防御するが、再び大きく後方へと吹き飛ばされる。

 続けざまに追撃を仕掛けようと手を向けるシュバルトゼロ。しかしそこに別の部隊の増援が間に合う。回線で零崎が呼びかける。

 

『神治!エンド、作戦は充分だ、帰投せよ』

 

 やはり撤退の指示を出してくる。当然だろう。シナンジュもその援護に守られる形で撤退していく。エンドももちろん了解の答えを出す。

 

「無論だ。こちらもダメージを負い過ぎている。撤退支援を頼む」

 

『分かった』

 

「……それと、もう一つ」

 

 零崎へ追加でもう一つ頼み事を持ちかける。奴の力と予想される行動パターン。それらを踏まえて自身の考えを伝える。

 きっと零崎としては判断に困るものだろう。ゼロンと言う組織の枠組みを崩しかねない考えも取れる発案。いくらこれまで組織の為を尽くしてきたとはいえ、このような行動は咎められかねない。内容を所々端折っているのも信憑性を落としているだろう。

 しばしの間沈黙が続く。その間後方に注意をやる。やがて零崎からの回答が返ってきた。

 

『……お前はその決断をよく考えた上でしたのだろう。例え敵への利敵行為になろうとも、最善を尽くすべきだと』

 

「零崎様!そんなこと!俺達だけで」

 

「奴を……あのガンダムの暴走を止めるには奴らに頼るほかない。タイプシリーズだとしても、今の奴とは分が悪すぎる。誰も勝てない。奴に勝ってはいけない」

 

 もし勝てるものがいたのだとしたら、それは次に自分と敵対する者となる、と意味する。

 神治のような考え方ではゼロンはただ滅ぼされるのみ。ならば今取るべきなのはこの方策だけだ。

 それと共にもう一つ、エンドには考えがあった。もしエヴォリュート・アップを発動させたのなら、ああなっていたのなら、もしかすると。

 すべては語らない。しかし十分な考えを語る。

 

「ともかく、奴らの回線を解析して回してくれ。私がやる」

 

『分かった。少しばかり口を出させてもらうかもしれんが』

 

「当然だ。あなたが本作戦の代表。言いたいことがあれば、言えばいい。安全圏まで後退してから始める」

 

 告げて通信を切る。通信が終わると話を聞かされる立場であった神治が苛立ちを口にする。

 

「何でだよ……何であいつらに頼んなきゃいけない!?敵だ、奴らは!」

 

 敵とは協力することは許さない、と叫ぶ。だが、とエンドは話す。

 

「これは世界の危機だ。奴はこの次元世界を破滅させる」

 

「破滅……?」

 

「あれを止めるには、奴を、黒和元を叩き起こす必要がある。残念ながら殺すことだけが勝利ではない。奴を起こせるのはおそらくは……」

 

 

 

 

 

 

 シュバルトゼロの異変。それはHOWを始めとした東日本連合軍も気付きつつあった。各地の戦闘も収まり、ゼロンが撤退する方向を見せていく。

 Gチームもそれは例外ではない。

 

『ちっ……ここまで……?』

 

「栞奈……?」

 

『悪いけど、撤退命令ね。最低目的は達した。けど忘れないで。今度はあなたを、裁く』

 

「おい!」

 

 制止に待つことなく、栞奈は撤退していく。ライフルを向ける、がロックを合わせてもその銃口からビームは放たれない。撃てない。

 また、いや、今度こそ殺してしまう。ほぼ互角の戦いをしていたとはいえ、殺してしまうことに躊躇いを覚えてしまっていた。

 逃がしたくない、けれども討たせないでくれという二つの想いがせめぎ合う。結局宗司は撃てずにシールドライフルを下げる。躊躇いを一人愚痴る。

 

「俺は……俺は」

 

『そんなの今どうだっていい!姉様が、姉様が!あいつも!』

 

 しかしエターナの危急を要する声で戦況が変わったことを知る。緊急アラートが鳴り、四方八方にビームが海上から放たれていた。

 同じく戦闘を中断させられた入嶋や進と合流し、状況を整理していく。

 

「あれ……やっぱりシュバルトゼロが……」

 

「何で、こんなこと。無差別じゃんか!」

 

 進の指摘通り、今やシュバルトゼロの攻撃は味方にも向けられている。敵味方関係なく攻撃する、暴走状態。撃墜されてから再起動したという知らせにまさかと思ったのだが、想像以上に事態は厄介なことになっていた。

 呉川部隊長やクルツからも酷いありさまと指摘が飛ぶ。

 

「もはや制御できないか……最悪撃墜も視野だな」

 

「そんな!元隊長はまだ生きてるかもなんですよ!?」

 

「流石に撃墜は考えたくないよな。けど、それくらいに今の状況を静観していられるほど危険な状況なのは間違いねぇぜ」

 

「そ、れは……」

 

 Gチームで意見が割れていく。そこに回線で他の隊長達、深絵隊長や勇人さん、夢乃さん、ヴァルプルギスクルーが加わった。

 

『元君を救出する。それはやらなくちゃいけないことだよ』

 

『助けるかどうかともかく、あれは止めねばならない。今の奴は危険だ』

 

『問題は、どうやって止めるかでしょ』

 

『どうすればいい……?こっちもほとんど戦力は瓦解してるのよ。確実にエース一個大隊はいる。でもゼロンに横槍されたら……』

 

 対処しようにも対処できないありさま。考えが思い浮かばず沈黙する一同。と、通信の光巴が深刻な声音で知らせてくる。

 

『……ごめん、これ聞いてから結論は出してもらえますか?』

 

『光巴さん?』

 

 すると突然オープン回線から思わぬ人物の声がこちらに呼びかけてくる。

 

『―――聞こえるか、HOW。私はエンド……お前達のエースシュバルトゼロを倒した者だ』

 

 その人物は確かにそう言った。倒したと。すぐにそれがヴァイスインフィニットの繰り手であると結びつく。

 神治ではなかったのかという疑問が浮かぶが、すぐにエンドが訂正を入れる。

 

『いや、正確には神治のサポートAIとして参戦した、元英雄の一部』

 

『……そんな奴が、一体何を言いに来たの!殺しておいて、その上あんな!』

 

『そうよ!姉様を人質に……象徴だって、あんなの違う!』

 

 深絵、パートナーのエターナが敵意を露わにエンドと名乗ったAIの言葉に噛みつく。感情的、と言ってしまうには切り捨てられない怒りだ。

 しかし今はその怒りを抑える時。勇人、それに呉川が二人をそれぞれ落ち着かせる。

 

『落ち着け蒼梨。話だけは聞くぞ』

 

『勇人君、これで冷静でいられるの!?』

 

『敵とはいえ、この状況でだ。何かある』

 

『エターナ、少しだけ静かにしていろ』

 

『あんた、何も分かってないでしょ!』

 

『分かっていないから聞くんだ。宗司、パートナーなら何とかしろ』

 

「何で……って、まぁ、そうか」

 

 エターナの対処を押し付けられる。宗司自身は他で考えたいことが、あいつのことで考えたかった。

 だが同時に考える。あり得ないことだがもしもエターナが逆に暴走してあの中に無策に機体操作を奪って突っこんだら、エターナの腕では死にかねない。宗司自身疲弊もしている。

 それにやはり宗司もまた元隊長の異変に目を背けられない。あの人がいたからこそ、自分がこうしてここに居て、栞奈と再会出来た。

 今戦力が瓦解したなら、元隊長(ガンダム)を失うのなら彼女を助けることは出来ないのかもしれない。あの人はこの戦争を戦うために必要だ。ならばとエターナに事実を告げた。

 

「エターナ、お前こそ分かってるのか。所詮俺達じゃゼロンは叩けない。元隊長のシュバルトゼロがあったからこそだろ。そんなことも分からずに」

 

『……何よ、それ』

 

 しかしエターナは静かに聞き返す。回線から聞こえてくる怒りを含んだ声。宗司にはその意味を察しかねる。次の瞬間、彼女の怒りははじけた。

 

『ガンダムはあいつだけの力じゃない!姉様と、二人合わせての力なのよ!?それをお前はガンダムがあったからとか……!力だけしか見えてないじゃないのっ!』

 

 普段以上の、普段は見られない呼び方で痛烈に宗司を否定するエターナ。そんな酷く言われるとは思わず、それに対し宗司は衝動的に反論した。

 

「何だよ……事実だろ!それに俺は元隊長達の事を退けて考えてなんか……」

 

『そう言ってるようなもんでしょ!一人で戦って負けたあいつに非がないみたいに!』

 

「そんなこと言ってない!」

 

『言った!』

 

『ちょ、二人ともどうして』

 

 流石に感づいたクルツが止めようとするが、二人の意見のデッドヒートがそのまま加速していく。互いに互いを傷つける発言をする。

 

「そもそも姉のことしか見えてないとか言っておきながら、邪魔だと思っていた奴のことを何で心配しているんだよ!」

 

『そんなんじゃない!むしろあんたこそ勝手に殺したって僻んでいた奴を助けられなかったからって私にまでその気持ちを勝手に押し付けてきて何なのよ!そんなに助けられなかった責任をあの二人に押し付けたい!?』

 

「僻んでる!?僻んでなんかいないし、責任を押し付けたりなんてな!」

 

『勝手なことばっかり!』

 

 二人の不仲がシュバルトゼロのエンゲージ係数を下げていく。機体の動きが不安定になっていくがそれでもいがみ合いは止めない。

 段々と苛立ちが暴言へと変わっていき、越えてはいけない一線へと迫っていく。

 

「大体お前みたいな面倒くさいやつとパートナーなんか!」

 

『私だってあんたみたいな得体のしれないやつ!』

 

『落ち着け!お前達今は言い争いしている場合ではないっ』

 

 その先を止めた勇人の声。気付くと既にこちらに向かって勇人がやってきてこちらへと接触する。

 こちらの機体を抑えて安定させてから勇人は言った。

 

「今その先を言ったなら後悔する。嫌うかどうかは好きにしていい。だが今は止めろ。宗司の言う通り、今はシュバルトゼロの救出が優先ではある。だがその力はあいつらが揃ってこそだ。例えシュバルトゼロがあったとしても、人物が違ったならそもそもこんな作戦は承認されていない」

 

「……そんなの、分かっています」

 

『ならばお前に今の彼女の考えを否定する権利はない。今は二人とも話を聞け。でなければどちらの願いも果たされない。あれを止められる、あの二人を救える可能性があるのは、俺達なんだからな。それは間違いない』

 

『………………フン』

 

 エターナは鼻息で返す。が、それとは真逆に機体の出力が安定していく。気まずい為に言葉は交わさないがこれ以上ややこしくするのも面倒なので触れないでおく。

 二人の言い争いが一旦収められたところで勇人が話の続きをエンドに要求した。

 

「それで、エンドと言ったか。あれは何だ」

 

『もういいか。ならば教えよう。あれは、合神形態』

 

「合神……?」

 

 入嶋を筆頭に言葉の意味を聞き返す。エンドは答える。

 

『シュバルトゼロ、ヴァイスインフィニットがマキナ・ドランディアでの代表国家マキナスとドラグディアの代表的機体であることは知っているな?』

 

「そう、なのか?」

 

 まだHOWに来て事情をよく知らない進が訊くと、それに通信回線から会話する夢乃が事実だと認める。

 

『そうだね。ジャンヌさんから聞いたことがある。シュバルトゼロとヴァイスインフィニットは元々両国家の象徴とセットになっている機体だって』

 

『象徴も知っている、なら話は早いか。その象徴が生み出した、あるいは分離したパーツとそれぞれのガンダムが合体した形態が、合神形態と呼ばれるものだ』

 

 象徴が合体した姿。その形態が今陥っている状況について話される。

 

『本来なら装依者の意志で動かされる機体。だが今の奴はパイロットが意識のない状態。生きているのか死んでいるのかも分からない』

 

『それは、あなたが殺したから……!』

 

『言い逃れはしないさ。だが私にとってはやるべきこと。お前達にとってもプラスになる。だが今はそれを言っている暇はない。奴のあれは象徴のプログラムが暴走の域にある。あれを放置すれば数時間たらずでこの国が、更には全世界が壊滅しかねない』

 

『そんな……』

 

 殺した本人がそんなことを言って、とこちらの面々に疑念と憎悪があっただろうが、それすらも一蹴するほどにエンドの話は衝撃的なものだった。

 にわかに信じがたいと最初に口を開いたのはヴァルプルギスから聞いていた紫音艦長と、天照の須藤司令だ。

 

『世界の壊滅……たった一機のMSが?』

 

『信じられないこと、だが……あの様子は確かに尋常ではない』

 

 後方から確認しているのだが、現在シュバルトゼロはゼロンのいる方向に向かっていきつつも、こちらにも構わず攻撃し、敵味方の区別がついていない状況。こちらにも周辺に攻撃が来ていて注視せざるを得ない。

 それを補強する様にヴァルプルギスの光巴が意見を述べる。

 

『そいつの言っていることは多分正しい。今のシュバルトゼロからは元お兄ちゃんじゃない、破壊衝動と怒りを暴走させた、別の何かの感情が渦巻いてる。憎しみ……それと何か、別の感情が。それを止めないとこの国の最悪のビジョンが見える』

 

『っ……光巴ちゃんが言うなら……そうなの、かな』

 

 光巴が言うなら、と納得を見せる深絵隊長。他の面々も頷く。

 

『それしかない、ようだな』

 

『決まったか。なら我らの要求は一つ、奴を止めるのをお前達に任す。ゼロンにあれとやり合うほどの戦力は今ない。対価に奴の身柄は好きにしていい。ゼロンもその後に手出しはしない。それで十分だろ……』

 

 引き受けてくれた対価として元隊長、シュバルトゼロの身柄はこちらに引き渡すことと、エンド達ゼロンは手を出さないことを告げる。全てを取り戻せるわけではないものの、今はこれ以上にないベストな取引と思えた。

 ところが、その言葉を遮る形で終わっていないとした人物が一人いた。

 

『待って』

 

 真っ先にゼロンに狙われるであろう光巴がガンダムを倒した元英雄に食って掛かった。

 

 

NEXT EPISODE

 




EPISODE73はここまでです。

ネイ「ゼロンは手を出すことなく撤退、元さんの処遇についても不問ですか……」

グリーフィア「まぁぶっちゃけジャンヌ・Fちゃん人質に取っているから残っていても問題ないってことよね。以前としてHOWが不利なわけだけど」

そうなんですよぇ。このままだと処理を押し付けられたうえで後々も言いなりになりそうですからね。それはダメだと光巴ちゃんも立ち上がるわけです。

ネイ「光巴さんも幼いとはいえHOW司令官の娘さん。これまでもMS所持法の早期修得など才を見せてきた彼女なら、あるいは」

グリーフィア「流石に荷が重すぎると思うけど。でも彼女は優秀なDNLでもある。発想が違えば、何とかなるかも……?」

それに期待して次話を見て頂けると幸いです。個人的にまた交渉事なので上手く描けている自信ないわけなんですが。

グリーフィア「まーたこの作者君は」

ネイ「いつも通りと言いますか……自信がないのも大概ですね」

すみませんね。というわけで今回はここまでです。

グリーフィア「次回もよろしく~」


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EPISODE74 魔竜顕現・英雄の再来3

どうも、皆様。本日もEP74と75の更新となります。

レイ「いよいよ今年も終わりが近いね~。突如として回線に割り込んできたエンドとの交渉……そこに光巴ちゃんが割り込んだんだったね」

ジャンヌ「彼女は一体何を感じ取ったんでしょう。元さん達に次ぐDNLの使い手は……」

さて、それでは早速本編へ。


 

『お前は……HOWの代表の娘か。いいのか?そうやって表に出て』

 

『今そんなのを気にしている場合じゃない。私は気づいてる。あなたの言葉に、嘘があること、そしてその二つだけじゃ対価に相応しくないってことを』

 

 エンドの敢えての忠告を無視し、光巴はそう言った。

 正直言って、光巴の言っていることの意味が分からない。しかしその詳細を聞きたくなる内容であり、それは深絵隊長といった他の面々の反応を見ればすぐにわかった。

 

『嘘……?』

 

『対価が足りない……それはどういうことなの、光巴』

 

『うん。エンド、あなたの言葉、特に元お兄ちゃんを倒したって言ったあの言葉。その発言に私は妙な感覚を覚えたよ』

 

『……フン。気に入らなかっただけだろう?DNLであろうとも、そんなことは』

 

 エンドはあり得ないとして光巴の言うことを否定した。隠し通したいとも思えるが、それに至る確証はこちらとしては分からない。DNLである自分にもプレッシャーこそあれど感じるものはない。

 見間違いならぬ、まさに勘違いをしていると思ってしまう。ところが光巴は勘違いではないとガンダムを倒した敵を相手に食い下がる。

 

『別に勝利したことにケチを付けるつもりはない。だけど、あなたはそれに不満、ううん、満足していない』

 

『満足していない、それはシュバルトゼロを捕らえられなかったこととは考えないのか?』

 

『言い方を変えますね。あなたは元さんを欲していた。だけど拒絶されたから撃墜するしかなかった。いや、撃墜できてしまった』

 

『その根拠は』

 

『ならなぜ、今こうして頼み込んできているの?』

 

 本末転倒の質問、そう見える。しかし光巴は続けた。

 

『あなたはゼロンに今、あのシュバルトゼロとやり合うだけの戦力がないと言った。確かにあのタイプシリーズですら本来のシュバルトゼロを相手取るには不足しつつある。ゼロンじゃ、そして純粋な戦力じゃ私達でもダメでしょうね。だけど、それでも今までのあなた達ならそれで私達にやらせようとしても、人質を使って命令してくるような人だと思ってる』

 

『……その方がお好みか?』

 

『光巴ちゃん!』

 

『光巴、それ以上は』

 

 ヤバい、と思い止めようとする深絵や夢乃。それでも光巴は言い切った。

 

『そう聞くってことは、考えている事、あるんでしょう?全部を聞くつもりは、私にもない。だけど、それを分かっていて言わないのは元お兄ちゃんにも……エンド、あなたにとってもマイナスになる。そう勘が告げているから』

 

『……分かったような口を。嫌いだな、お前のような勘のいいDNLは』

 

 怒りを面に出すエンドに、HOWの緊張が走る。ところが、緊張の糸を切るように更なる乱入者がゼロン側から、静かに語り出す。

 

『―――だが、事実だろう、エンドよ』

 

『!?誰ッ』

 

『……貴様、ゼロン代表の零崎か』

 

 ざわつく一同の中で素早く気づいた勇人。

 その名前は宗司もよく知っていた。自分達が今戦っているゼロンを統率する教祖・宗主・頭・元帥とでも言うべき存在。ゼロンの代表者、敵の親玉。

 いきなりそんな人物が割り込むことにGチームはもちろん、他のチームや隊長クラスでも、うちの艦長すら動揺を隠せない。

 

「敵の親玉がぁ!?」

 

「……なぜ、ここで」

 

「この人が……玖亜やお母さんを……」

 

「零崎さん……どうして」

 

『零崎秀夫。あなたまで何の用?』

 

『穏やかじゃないね。まぁ私達もそうか』

 

『君達には予想外の対面とさせてしまったようだな。しかし、全てを見抜いている者がいる以上、全ての発端とも言える私が出んわけにはいかん』

 

 すべての発端と自負する零崎はそう言って見せると見抜いたという光巴と話を交わす。

 

『次元黎人の娘。君には優れたDNL能力があるようだ。私の意図を、エンドを通して見たのかな?』

 

『あなたとエンドが同じ事を考えているのなら、そうかもしれない。けれど同じ物は感じても、あなたとエンドとではたどり着く先が違うようにも思える』

 

『人とは、そういう物だ。だがそこまで分かっているのならなおの事、それ以上は触れるべからず。今はそれだけで話を聞いてほしい。君が思うあのガンダムを止める対価、聞かせてもらおうか』

 

 必要以上の話を避けつつ、信じて欲しいとして対価の話について要求を尋ねてくる。須藤司令の指示がなされる。

 

『……光巴君、今はその方向で頼む。後々は私が』

 

『分かりました。あなた達が犯したこの事態を引き起こした原因は三つ。だから対価も三つ』

 

 原因と対価。罪と罰とも言えるそれらを光巴が順に語っていく。

 

『原因の一つ目、ガンダムを撃墜したこと。撃墜しなければそもそもこんなことは起きなかった』

 

『当然、だが詭弁だな。私達の言い分としては』

 

『それでも原因の一つだよ』

 

『して、二つ目は?』

 

 静かに、二人が語っていく。

 

『二つ目は暴走の原因となる象徴の合体を、阻止できなかった事』

 

『……言い訳出来ないな。エンドもそれをしたと言うが、阻止出来ずに合体したようだ』

 

『三つ目』

 

『それだ。お前は何を以って、三つ目の罪が私達によって引き起こされたという?』

 

 零崎も知りたがる三つ目の原因。思い当たる者はほぼいないと言える三つ目の罪。何を以って対価とするのか。

 いよいよそれが光巴の口から語られる。その内容は一周回って呆気にとられるものだった。

 

『あなた達は、その象徴の怒りを買った』

 

『……フフフ、アーッハッハッハ!!』

 

 聞いた途端、零崎が笑い声を上げた。あまりに馬鹿らしいからだろうか。しかしそれにしてはやけに楽しそうな声音、いや、嬉しいと言えばいいのだろうか。

 零崎は言った。

 

『続けよ』

 

『エンドはさっき、あのガンダムが合神形態と言った。それだけじゃなく、あの象徴は次元世界マキナ・ドランディアの一種族「竜人族」の神と呼べる創世記時代からの存在。もっともあれは、元さん達の時代で象徴から新たに生み出された次代の象徴らしいけど』

 

『……そうか。だから違っていたのか……』

 

 エンドがそのように呟く。まるで自分の見ていたものとは違っていたというような反応。

 一方光巴の発言にこちらのエターナが補足を入れる。

 

『……光巴の言う通りよ。エンドがこの世界に逃げた後に起こったマキナスとドラグディアの最後の戦争、機竜大戦でクリムゾン・ドラゴニアスが散り際に残した希望。お姉様にとっては全ての呪いから解放された証でもあった。それをあんたは』

 

『あの戦争が、終わった?はっ。終わるわけがない。次なる戦争は始まるだけだ。違うか?』

 

『……っ』

 

 言い返せずに黙るエターナ。光巴がそれを触れることなく、本題へと話題を戻していく。

 

『合神と呼ぶからには、あれは神と言って差し支えないはず。それどころか象徴とは国の神話時代から代々受け継がれてきた系譜、シリーズ。私達の国では国造りの神の作り出した子供達と同義。ならば、それを怒らせたとしたらどうなるか』

 

『……いくらガンダムを持っていようと、それを抑えることは出来ぬ、だな?』

 

『出来ると思うならやればいい。けれどこれは新たな戦争になりうる。いいえ、むしろ急に象徴が消えたことで既にジャンヌさんやエターナちゃんの世界の人達は、向かってきているかもしれない。神を怒らせるという意味、流石にあなた達ならよく分かっているでしょうね』

 

 その言い方はまるで神に仕えるものが神に不敬な者を叱るようないい分。逆の立場で言うのはどこかおかしさもある。しかし言い換えればそれは次元の世界の神を信じると謳っているゼロンにはその重大さを知っているはずと語りかけていた。

 それを逆手に取って三つ目の対価としたことにHOWの者は絶句していた。隊長達もまさか光巴がここまで言えるとはとにわかに信じがたい様子で静観していた。

 そしてそれはゼロンの代表零崎も食わされる形となる。

 

『神を怒らせる。確かにその意味はよく理解している。しかし次元の神とは彼らの信奉するそれとは違う、本質を見たものだと自負できる』

 

『なら私の指摘は的外れ?』

 

『いいや?それも苦しい言い訳と今は言わざるを得ない。向かって来るやも知れぬ彼らに対しては。故に、君の警告をゼロンの総意として受け止める。三つ目の罪、確かに認めよう』

 

 確かに零崎はその口で認めると言った。これで対価を三つ、先程の条件に加えてあと一つ指定することが出来るようになった。

 交渉の成功に他の面々の緊張がややほぐれる。

 

「やった!これなら!」

 

「ジャンヌさんも取り戻せるかもしれない。ううん出来る」

 

「あぁ。正気に戻したら一発言ってやんないとな!」

 

『元君の為でも、ジャンヌちゃんの為でもある。これで……』

 

 三つ目の対価はほぼ確実にジャンヌ・ファーフニルの返還で決まりそうな流れとなっていた。全員がそれを望んでいる。ゼロンに対してもせっかく取った人質を取られるという大ダメージを与えられる。

 きっと光巴もそれを指定するに違いない。彼女も他ならぬ元隊長とジャンヌ副隊長の安否を思う人物の一人。指定を三つにまで増やしたのもきっとジャンヌ副隊長まで助けられるようにするためだ。

 間違いないと思いながら、光巴が対価の指定をする時がやってくる。光巴が三つ目の対価として求めるものを告げる。

 

『それらの罪を基に、東日本連合軍のシュバルトゼロを止めるための対価の指定を提案します。一つ目と二つ目はそのまま、三つ目は「ヴァイスインフィニットとシュバルトゼロの再戦」』

 

『……えっ?』

 

『ほう?』

 

 予想外の回答がなされる。なぜ、という声が上がり出す。

 

『何で……何でそんなことに!?』

 

『どういう、こと?説明しなさい、光巴』

 

 光巴の判断に異を唱える深絵隊長に夢乃さん、それに釣られる様に入嶋も疑問をぶつける。

 

「再戦って……ジャンヌさんを取り戻すのじゃダメなの?」

 

『……光巴さん、それを取る理由は』

 

 同じヴァルプルギスにいる紫音艦長も説明を要請する。光巴は自身の判断の根拠について簡潔に述べる。

 

『これがベストだと私は考えます。ゼロン側にとっても、そして、HOW、ひいては元お兄ちゃんにも』

 

『元君の……』

 

 その意図を図りかねる一同。ところが須藤司令と少し間を置いて紫音艦長は判断を尊重すると言った。

 

『なるほど。承認しよう艦長』

 

『……そうですね。ゼロン側もそれでいいかしら?』

 

 問題ないかと聞き返すとゼロン側からも頷きが返される。

 

『構わんよ。むしろ、最初の時よりも良いと言える。』

 

『私も異論はない。だがこれだけは伝えろ。例え次があったとしても、勝つのは私と神治なのだとな』

 

『交渉は成立だ。君達がシュバルトゼロのいる地点へと到達後、我らは基地へと撤退する。その後は任せる。これは全部隊へと徹底させる。ではまた』

 

 了解を得て彼等との通信が切れる。交渉は確かに成立した。しかしそれでも憤りは残る者には残る。

 ゼロン側の回線がなくなったタイミングで、深絵隊長と夢乃さんが回線越しに詰め寄った。

 

『どうして……どうして!』

 

『あなたは今回ヴァルプルギスクルーとしての参戦。それがこんな……』

 

『それは……ごめんなさい。でも、みんなじゃゼロン相手に十分な交渉を、出来ないと思ったから』

 

『あなたねぇ……!』

 

 叔母として怒ろうとした夢乃を紫音が止めた。

 

『夢乃さん、今は怒らないであげてください。これは私の責任です』

 

『っ!紫音さん』

 

 同じ艦にいる、どころか艦長としての立場でそれを止められなかったとした上で、紫音は謝罪すると同時に同じく光巴に言った。

 

『光巴さん。止めなかった私にも非はあるけれど、それを決めていくのは本来目上の人物よ。私か、須藤司令に』

 

『でも』

 

『今はうんと言っておいて。後々の処理が面倒になるから』

 

 反論をそのように言って言わせない。建前とはいえ面倒なのは本当でも言うような声音。おそらく事実なのだろうが同時に光巴に必要以上に責任を被せないようにしたいと思っている。

 処遇を置いておくとして紫音艦長が須藤司令とすぐさま次の行動への通達準備を始める。

 

『とりあえずはそれでいいだろう。問題は元君のシュバルトゼロを止めることだ』

 

『そうですね。今はゼロンが相手を引き受けてくれている。けどいつまでも任せていられるわけじゃない。交渉を無駄にしない為にも、戦力を整えて、シュバルトゼロの暴走を止める』

 

 暴走を止める。その為にすべきこと。艦長たちが東日本連合軍の全回線に向けて指示を飛ばす。

 

『東日本連合軍全部隊へ通達。本作戦は失敗と判断。ただし、現在暴走するシュバルトゼロガンダムを停止させるため、そのまま作戦を継続。残存戦力の整備・補給後、行動へ移る』

 

『MS隊補給が必要なら帰投、そのまま行ける場合、直ちに現場へ向かわれたし!』

 

 作戦目標は変わる。ゼロンから、暴れ狂う自軍のエース機体を止めるために。

 

 

 

 

 戦力再編成からわずか5分。それだけの時間で東日本連合軍の戦力把握は終わった。そもそも通達時点で大抵の部隊が戦線離脱の目途が立っており、またシュバルトゼロを止められるであろうと目していた主力もほぼ確保できたためである。

 前進するヴァルプルギスから見える景色。海面では未だにシュバルトゼロが多方向にビームを放ち、多数の撃墜光を灯していた。

 これがシュバルトゼロの、とは思いたくはない。しかし納得する部分もある。かねてから言われていたシュバルトゼロを敵に回した際の推定被害。現行のカラーガンダムですら止めるのは至難の業とされていた。

 しかしそれはあくまで撃墜に限った話だ。停止させるのはより難しいかもしれないが勝算はある。光巴が教えてくれた。

 

『おそらく、あの形態は合体した象徴によって暴走を引き起こされている。感じるの、象徴のパーツと、シュバルトゼロの中にある何かが反応し始めている。だから、全てが手遅れになる前に象徴をシュバルトゼロから外す』

 

 彼女の予測をアテにするのなら無理矢理外すしかない。そしてそれが出来るのはやはりHOWではあの二機は必須に違いない。止めることに特化した、なおかつ強靭なパワーを持つ機体。DNL専用機、超次元MSに対抗できるように調整されたゲルプゼクストとガンダムDNアーバレストならば。

 非常に高いDNL能力を持つ彼女の予測ならば、それで止まるという。紫音もそれを推したい。が、同時に不安も抱いていた。

 止められないかもしれない、というわけではない。むしろ止められないかもしれないのはもとから半分分かり切っているようなものだ。問題は本題のそれではなく、彼女の言い方。

 

『シュバルトゼロの中にある何かが反応し始めている。だから、全てが手遅れになる前に』

 

 彼女の言い方は何か妙だった。内側にまだ自分達が知らないモノがあるような言い方。それを先程問い詰めてもみたのだが、彼女も「分からない。けれど、そういう表現が自然と頭に浮かんだ」としか言えないらしい。

 確かめようにも光巴以上にあの状況を理解できるものがいるとは思えない。分かるとしたら敵サイドのエンドか、あるいは敵に奪われているジャンヌ・ファーフニルか……。

 とはいえ、今は取り押さえに向かった救出チーム、Gチームや深絵隊長、夢乃隊長、勇人達に任せるほかないだろう。その為に報告は厳にするよう言っている。

 光巴から捕獲チームが間もなく接触すると告げられる。

 

「捕獲チーム、間もなくゼロンと暴走シュバルトゼロクローザーとの交戦地帯に入ります」

 

「了解。ゼロン側にオープン回線。後はこちらの領分と伝えて、撤退を促して」

 

「了か……っ!!」

 

 やり取りの途中で突然肩を寄せるように二の腕を掴む光巴。凍えている、あるいは「恐怖で身がすくむ」かのような様子。近くのブリッジクルーも指摘する。

 

「どうした、光巴ちゃん!?」

 

「光巴!?」

 

 それらに対し、光巴は震える声音で言った。

 

「来る……何か、嫌な奴が……いや、来るんじゃない、シュバルトゼロの中から、「蘇る」っ!!」

 

 

 NEXT EPISODE

 




EP74はここまでです。

レイ「いやぁ、まさかゼロン代表も話に関わってくるとはねぇ」

ジャンヌ「一応前話の時点で何やら介入するような事を言っていましたから。でもそれに対してよく光巴さんも言い返しました」

まぁゼロンも最高峰のMSを持ち、日本の西半分を占領しているとはいえ、所詮はただの組織。流石に異世界一つの戦力を敵に回す真似はしたくなかったということでしょう。

レイ「普通勝てないよね。ゼロンにはヴァイスインフィニットもタイプシリーズ、シナンジュとサザビーもいるけども」

ジャンヌ「何でしょう……そこまで言われると逆に勝てる可能性が浮かんじゃいます……」

いやいや流石に無理無理。元君の機体解析とかもあってドラグディアもMS開発は進んでる。流石に進んでる時間が違うから性能はこっちよりも低いかもしれないとはいえそもそもがMS科学が多く発展した異世界ですから、ある意味ようやく互角のラインかもしれませんよ。

レイ「あー言われてみると」

ジャンヌ「けどそう思ってくれたおかげでゼロンも光巴さんの話を聞いてくれたわけですから。後は元さんを取り戻して、再戦でジャンヌ・Fさんを取り戻すだけですね」

まぁそこまでの道が遠足ですよ。それにジャンヌだけじゃなく、レイアも助ける。それが元君の目的ですから。

レイ「けど今回のお話最後光巴ちゃん気になることを言ったね。蘇る……?」

ジャンヌ「蘇る、と聞くと、まさか元さんが、とも思いますけど……でも嫌な奴とはなりませんよね」

当然、光巴からしてみれば元は嫌な奴ではないでしょうしね。彼女は一体何に身がすくほどの恐怖を覚えたのか。それは次話にてすぐ明らかとなります。

レイ「うーんやっぱり二話更新だとすぐに分かるね~。早く次も見なくちゃ!」

ジャンヌ「その分期待も少し減る可能性もあるわけですが……作者としては?」

二話更新だと正直ペースが……現在1日2000字を目途に書いてますから大体2話分書き上げるのにおよそ6日掛かります。その後投稿始めるので。まぁ基本それくらいの時間がかかると思っていてください。次のお話はすぐに読めますが。

レイ「というわけで、同日更新の次話に続くよ~」


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EPISODE75 魔竜顕現・英雄の再来4

どうも、引き続きご覧の方は改めまして。EP74、75の更新、こちらはEP75となります。

ネイ「雪の季節ですね。雪は好きです。にしても本編の方はまた嫌な予感がざわざわと……光巴さんの危惧は何でしょうか」

グリーフィア「危惧って言うより恐怖を感じ取ってるって感じよね~。それだけヤバい存在がシュバルトゼロに眠ってる……これはマジでヤバいかも?一体誰の事なのやら?」

というわけで本編へどうぞ。


 

 

 海上のゼロン艦艇の残骸の上で暴れ狂うシュバルトゼロに向けて捕獲部隊として緊急で組織された宗司達が飛行を続けていた。

 部隊は三つに分かれており、Gチームも役割に合わせて分割されている。呉川小隊長とクルーシアと入嶋は近・中距離支援、クルツは遠距離支援、そして宗司とエターナ、それに進が主力捕獲・戦闘部隊へと加わっていた。

 飛行を続けながらなぜ自分が主力に選ばれたのかとひとり呟く。

 

「……何で、俺が主力に」

 

 不満はある、というより今は不満しかない。現状の実力で言うならここに当てられるべきは呉川小隊長だと思ったからだ。

独り言の疑問は、同じ主力チームの部隊長を急遽務める勇人さんが答える。

 

「俺達はドライバ・フィールドの使い手。お前も使ったなら分かるだろう。ドライバ・フィールドは極めて捕縛性能の強い兵装。調節すれば敵装備の解体は容易だ」

 

「それは分かりますけど……でも今の俺にそれだけの事は」

 

 現時点で宗司に足りないもの、エンゲージパートナーの支援。エターナの助力が無ければガンダムDNはその全性能を発揮できない。

 今もエターナとはエンゲージシステムで繋がったまま。しかしそのシンクロ率は恐ろしいまでに低下していた。平均30パーセント。機体の挙動・エネルギー関連には不安を残したまま、オーバードライバフォームは発動できるが維持はギリギリとコンピューターで予測されている。

 それらを踏まえたうえで作戦の成功率について勇人さんがこちらに語った。

 

「確かに今のお前達ではオーバードライバフォームの長時間の維持は困難だ。しかしここで重要なのはドライバ・フィールド。お前自身の力があれば奴を止められる、かもしれない」

 

「かもしれないってそんな……」

 

 無責任な、と言おうとするそれを勇人は言葉で押さえる。

 

「実際、俺自身のドライバ・フィールドであれを止め切れるかどうか怪しい。お前が本来の力を発揮できていたとしてもだ。だから、二人分を掛け合わせる。捕獲行動までは隙が出来るまでは機体制御を、捕獲段階でドライバ・フィールドに全力を注ぐやり方で対処してもらうしかない。ドライバ・フィールドを、意図的に制御できるのは俺達だけなんだからな」

 

 ドライバ・フィールドの意図的な制御、本作戦においては入嶋のガンダムDNアルヴと呉川小隊長のソル・タクティクスが新たにドライバ・フィールドを発生可能なシールドウエポンを装備している。だがそれらはこれまでの技術の蓄積で、機械的に発生可能としたドライバ・フィールドで、アーバレストやゲルプゼクスト程自由が利かない。端的に言えば捕縛フィールドの発生が出来なかった。

 今回の作戦ではその捕縛フィールドの発生が必要不可欠だ。よってこの布陣となっている。だから宗司もこの状態でも戦力となりうると判断されたのだ。

 不満はまだある。しかしやるしかない。自身の目的、栞奈を助ける為には、今ここであの人がいなくなることは避けたい。

 

「やるしかない、か」

 

「まぁ、俺も支援してやるよ。近づけさせはしないって」

 

「エターナちゃんもいることだし、私も近接攻撃で注意を逸らす。だから宗司君はドライバ・フィールドの維持と回避行動を優先して」

 

 相手は任せろと進と夢乃隊長が言う。他の隊員もいる。相手は彼らに任せる他ないだろう。その方がこちらとしても今はありがたい。

 そうしているうちに距離が近くなったことを勇人さんから回線で告げられる。

 

「そろそろだな。戦闘体勢」

 

『了解した。中距離での指揮は任せてもらおう、勇人警部』

 

 中距離支援部隊の新堂大佐がそう返答する。友直さんや智夜さんもそのまま追従している。

 その友直さんからこちらに単独で回線が繋げられた。

 

『あの……宗司先輩』

 

「……何だ、友直さん」

 

 その声は遠慮しているようにも聞こえる。あの時の回線は聞こえていた。なんとなくその予想はつく。そして彼女の口からも先程の件について言われる。

 

『宗司先輩は、昔の幼馴染を救うために、HOWに入ったんですか?』

 

「……いいや、元々はガンダムDNに選ばれたから。あの時の行いが正しかったのかどうか、探すために」

 

 嘘は言っていない。むしろ真実だ。あの時はそう思った。けれども今はそうじゃない理由が生まれた。それだけの事。

 彼女が生きていたなら、今は後悔が正しかったのかというよりもやるべきことがあると気づく。彼女と話をする。あの時、それを放棄したから。

 それを、質問をした友直さんにも言った。

 

「けど、今彼女は生きていた。なら俺は彼女とまた話さなきゃいけない。いや、今度こそ離さなきゃいけない。助け出す、それが出来ないのなら……俺の手で、今度こそ……」

 

 殺す。その一言に友直さんは口を閉ざす。やはり物騒と思うのだろうか。けれども彼女は自分達とは違って軍人だ。そう言ったものは慣れていると思った。

 そんなので大丈夫なのか、と思いつつもそのまま作戦の方に再び目を向けようとした時、友直さんは言った。

 

『事情は分かりました。変わるのは良いです。でも、それってエターナ先輩の、元隊長さんに対しての心配を遮ってまですることでしたか?』

 

 言葉が突き刺さってくる。本当にそれが正しいのかと疑いを持ってくる友直に知らずの内に表情が険しくなっていた。

 なんでそんな事を聞いて来るのか。パートナーの事実を言ったに過ぎない。嫌いと言っておきながら心配するなんて、そんなのあべこべだ。

 友直にそれを指摘する。

 

「お前も知ってるだろ。エターナが元隊長の事を嫌っているのは」

 

『もちろんです。でも今思えばあれは、元隊長さんへの憤りだったんだと思います』

 

 友直さんはそう言う。そんなのは承知している。承知した上で自身は言っている。どっちにしても元隊長は必要だというのに、なぜ得体のしれないと言われなければいけないのか。それが事実だろうに。

 友直に構ってもいられない。もうすぐだと言って話を切る。

 

「憤り、ね。それはこっちの台詞でもある。それより、そろそろだ。切るよ」

 

『……そうですね。それじゃあ最後に』

 

 最後に、と友直は宗司へと告げる。本音を語る。

 

『宗司先輩の探していたものは、なんですか』

 

「……えっ」

 

 瞬間、アラートが鳴り響く。敵、暴走状態のシュバルトゼロが放ったビームが主力チームに迫る。

 勇人が叫ぶ。

 

「全機回避!」

 

「ぐっ!?」

 

「攻撃範囲かよ!?」

 

 幸い全機回避に成功する。だが攻撃は休まらず、二度目、三度目の砲撃が味方のソルジアス、ソルジスタを撃墜していく。

 友直に言い返したい気持ちはあったが、今はもう無理だ。状況が動いていく。

 

『ゼロン部隊撤退開始!こちらへの作戦が移譲されました!』

 

『頼むぞ、勇人警部、新堂大佐』

 

「奴は連れて帰る」

 

『あぁ。行くぞ』

 

 ゼロンの撤退に合わせ、こちらが攻撃で注意を向けながら戦闘フィールドへ突入する。先発する主力チームを後方の近・中距離支援部隊が射撃で接近の支援を行う。

 頭部の、喰われた顔の部分からビームを吐くように放ってくる。更に竜の爪が覆いかぶさった手からも、スマッシャーのビームを更に強化した拡散放射ビームが雨あられのように放たれる。それらをDNウォールやドライバ・フィールドで各員が耐え忍ぶ。

 弾幕が切れた直後、一気に加速して破壊された艦艇の甲板へと着地し遂に件のシュバルトゼロの前まで到達する。シュバルトゼロを四方から囲うように展開して着地する宗司、進、夢乃、勇人。中距離支援部隊、遠距離包囲部隊もそれぞれの配置でシュバルトゼロを逃がさない様にする姿勢だ。

 四方を見渡し、咆哮するシュバルトゼロ。

 

「グォォォォォォォン!!」

 

『……もはや制御とは程遠いな。しかし、今のアイツそのものだな』

 

 暴走するシュバルトゼロを指して形容する勇人さん。暴れ狂う姿を最近の元隊長のそれと掛け合わせて見た発言。言われてみて納得がいく。

 元隊長も助け出そうとした人がいたからこそあそこまでなった。自分もそう言った意味では似ている。だが自分は違う。もし救えないのなら、殺す覚悟がある。救うことだけを考えず、そうじゃない選択肢を取れると自負する。だから元隊長ほど愚かじゃない。

 そんな考えを心の中で考える宗司。彼にとってはそれが正しいと思っていた。自分はそのようにはならないと。それが結局は同じ道の繰り返しだと気づかずに。

 シュバルトゼロは唸り声を上げながら腰を落とした姿勢で捕獲部隊を見ている。誰から襲い掛かるのか見定めるようにその眼光を見せつける。

 

「グゥゥゥゥ……グガッ!?」

 

『何?シュバルトゼロが……元君!?』

 

 突然シュバルトゼロがかみ砕かれた頭部を抑えて苦しみだす。苦しみの声を上げているのは乗っ取ったのであろう象徴側だったが、それを聞いて異変に不安の声を上げる深絵隊長が近づこうとする。

 

『待て深絵君。様子がおかしいとはいえ不用意に近づくな』

 

『新堂さん!でもあんな……』

 

『様子を見る。合図と共に押さえつけに入る』

 

 それを新堂大佐が制止する。各員に指示を出して、抑え込みの為の構えに入る。

 隙のあるタイミング。静止するタイミングを待つ。やがてうめき声が止む。

 

『新堂さん!』

 

「新堂、今なら」

 

『あぁ。先発隊全機包囲確保!』

 

 捕獲の指示が飛ぶ。勇人警部を最初に捕獲のための部隊が一斉に接近する。もちろん宗司もアーバレストで向かう。

 しかし、それらに向けてシュバルトゼロは瞬時に爪を振るう。延長線上にビームエッジが飛び、こちらは攻撃を防御、一部の機体が腕などを斬り飛ばされる。

 不意打ちに舌打ちする勇人。

 

「くっ、やはり攻撃で弱らせるしかないか」

 

「……フ。ハハハハハ」

 

 射撃戦に切り替えようとして、唐突に声が発せられる。声の聞こえる先は……暴走状態にあるはずのシュバルトゼロからだった。

 思わぬ反応に元隊長を慕う者達が反応する。

 

『元隊長!?』

 

『元君!意識が戻って……』

 

『……いや、何かおかしい』

 

 その動きに疑惑を向けて、心配で近づこうとする深絵隊長達を新堂大佐が制止した。その判断は正しく、その異変がまだ安堵するべきものではなかったと知る。

 シュバルトゼロからの声、元隊長の声が語る。

 

「ふむ……この場所は……理解した。奴も一足先に目覚めていたか……。そして君達はその奴を止める事すら敵わないと」

 

『何を……言ってるの。元君?あなたはヴァイスインフィニットを止めようとして、撃墜されて……』

 

 明らかにこれまでの元隊長の話し方ではない。意味の分からない発言を繰り返す元隊長に深絵隊長が問いただす。と元隊長の声は否定を述べる。

 

「否」

 

『えっ』

 

「私は、私がいなければ時代も、世界も変わらないと感じているに過ぎない。そう、私は魔王などではない、英雄なのだから」

 

 唐突に出てくる英雄と言う単語。確かに黒和元という人物は英雄と称するにふさわしい戦果を挙げている人物だ。魔王という名乗りも、英雄の二つ名と思えば不思議ではない。

 これまでそう名乗ってこなかったのが不思議なくらい。そう、名乗ってこなかったのだ。むしろそんな英雄などと呼ばれるのを嫌い、わざわざ嫌われ者として「魔王」を名乗っているとしていた黒和元が自ら英雄と名乗るのはおかしかった。そもそも魔王と呼ばれるのを今は嫌い、自分がいなければ変わらないという考えも、元隊長のそれとは異なる。

 明らかに違う人物、人格の考え方だ。流石に入嶋達や深絵隊長も気付く。

 

『違う……元隊長じゃない!』

 

『元君は、苦悩の末に英雄じゃなく魔王を名乗った。そこにいるのは誰!?』

 

 周囲を囲うMS部隊も緊張を高めて対応する。宗司も補充されていたビームライフルを構えて警戒する。それらを見てシュバルトゼロを動かす元隊長の声が返答する。

 

「言っただろう、私は英雄。この体の主を借りた身。奴は負けた。そして合体した新たな象徴の電気信号が、私のいた封印領域に刺激を与え、この合体時だけ私を目覚めさせることとなった」

 

『合体……目覚めさせる?』

 

 夢乃が疑問を口ずさむ。言葉の意味が分からない。象徴が合体したことがきっかけとなったようだが、それでも今ここでシュバルトゼロを動かす者が何者なのか、そして目的すらも分かっていない。

 何者なのか、目的は。それを勇人さんに指摘され奴は自ら答える。

 

『お前は何者だ。元じゃないのか』

 

「君達に分かるように言うなら、我が名は「スタート」」

 

『っ!?スタートって……シュバルトゼロのOSの!?』

 

『嘘……』

 

 小声でエターナの驚愕が聞こえてくる。そのままスタートは語っていく。

 

「この世界は実に醜い。次元の神などと言うありもしない幻想に踊らされ、信望者もそれを止める抑止力も十分に働かない。見るに堪えない。次元世界に魂を引かれた愚かな人間達は解放しなければならない。どうやって?ならば、私が解放する」

 

『解放だと?』

 

「そうだ。英雄として、傍観者などではない。私自身がこの戦いを終わらせる。次元の神などと言う輩も私以外の救世主も、それを止められぬ抑止力も私が粛清する。私が復活したのは、そう言う意味なのだからな」

 

『ふざけたことを!』

 

 言ってバスターを構える勇人。宗司や他の隊員達も攻撃態勢を取っていく。銃口を向けられてなおスタートは余裕を保って返事をする。

 

「ふざけている?フッ、この英雄の足を引っ張ることしか出来ない雑兵にはそうと思えんだろうな」

 

「雑兵って……そんなことを思って」

 

『違う、これは元君じゃない。そのガンダムに備わった、かつてのシュバルトゼロのパイロットの意志。だけど、こんなことって……!』

 

 雑兵などと言われていくら本人ではないとはいえ聞いていて気持ちの良いものではなかった。悪態を吐くがそれを咎めるように深絵隊長が今のシュバルトゼロを否定する。深絵隊長の発言を裏付けるような形でヴァルプルギスから観測する光巴の見立てが告げられる。

 

『深絵お姉ちゃんの言う通りだよ。間に合わなかった。シュバルトゼロの奥底に潜んでいた亡霊。かつての英雄が蘇った』

 

『蘇ったって……でもスタートはもとから』

 

『あれは英雄の善の側の存在。今対峙しているのは英雄の悪、負の側の存在』

 

 彼女は言い切る。話を聞いていたスタートは通信で彼女にその認識が正解であることと、評価を告げる。

 

「君のDNL能力、良い力だ。才能がある。だが雑兵のために使っていては宝の持ち腐れだな」

 

『私は、元お兄ちゃんや、みんなの為にこの力を使う。DNLは使い方次第で善にも悪にもなる。それを教えてくれたのがお兄ちゃんやお姉ちゃんなんだから』

 

「フン。魔王を名乗っておきながら、所詮は凡人の枠を出ない人間の言うことなど我ら英雄には足手まといだ。君も感じるだろう?持たざる者の行いを鬱陶しいと」

 

『……っ』

 

 指摘したそれは、きっと先程のゼロンとのやり取りに対してのこちら陣営の対立の事だろう。DNLで状況を読み取った、としても出来ることが自分達と違い過ぎる。

 圧倒的な力の差はDNLだからこそ感じられる。対峙しているだけなのにプレッシャー音がずっと響き続けている。とてもではないが自衛でどうにか出来る代物ではない。対処で徐々に精神力が削られていく。

 そのプレッシャーを与えられたままスタートがシュバルトゼロを臨戦態勢へと移行させる。

 

「ならば見せてやろう。君達や、邪なる俗人連中に身を置いた英雄を自称するあの気障な白機人共も、マキナ・ドランディアを真に救った者として、これから救う者として、貴様らを粛正する!」

 

 瞬間振り抜いた腕部から超次元現象の刃が飛ばされる。竜のかぎ爪状の衝撃波が周囲に展開していた捕獲部隊を襲う。宗司もシールドを向けて咄嗟にDNウォールで防御する。

 

「ぐっ!?」

 

『っ……来るか。奴を抑え込む』

 

 攻撃を避けた勇人が警戒と捕獲作戦開始を告げる。敵意を全開にしたスタートはこちらに狙いを定めて加速して距離を詰める。

 

「まずは、手負いから狩らせてもらう!」

 

「っ!こんな時にっ!」

 

 光刃とエネルギークローが火花を散らした。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP75はここまでです。

ネイ「……スタート」

グリーフィア「うわぁ……記憶蘇ったってこと?しかも負の側面が」

そう言うことです。今まで接してきたスタートもあまり語られていませんでしたが記憶喪失の一人でした。そこら辺はL1の時のお話を読んでいただければ分かるかと。

ネイ「確かに……言っていたような覚えが」

グリーフィア「だからって、これは変わり過ぎよ~。完全に傲慢そのものっていうか」

だからこそ、光巴は嫌な奴と言っていたわけです。

ネイ「間違いないですね。こんなスタート、いえ、元さんの声でああまで言うのは冒涜と言いますか」

グリーフィア「ちなみに、元君の声ってことはあの竜の唸り声とかも元君?」

あ、そっちはクリムゾン・ファフニールの声です。保護が外れてスタートが話すために利用したという感じです。

グリーフィア「なるほどね。糸繰人形って前回の更新した話で言ってたけど、まさしくその通りっていうか」

ネイ「これを、果たして今の宗司さん、みなさんは止められるんでしょうか……」

色々と上手くいっていない宗司とエターナ、それにまだ千恵里と進も親しかった人物や意外な人物達との戦闘で動揺していますからね。これがどうなるのかは第4章を最後までご覧ください。というわけで今回はここまでです。

ネイ「次回もまた覚醒したスタートとの戦闘のようです。お楽しみに」


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EPISODE76 魔竜顕現・英雄の再来5

どうも、皆様。今回はEPISODE76と77の更新となります。まずはEP76から。

レイ「遂に目覚めた、英雄との対決……」

ジャンヌ「英雄と言うにはあまりに傲慢だと思いますけどね……元さんや、今までのスタートを見ているとあまりにかけ離れすぎていて、不安しか感じません……」

見ていて不安になる言動。しかしその実力は本物でしょう。それでは本編をどうぞ。


 

 

「貴様のような未熟なDNLは粛清される運命にあるのだ。分かるか!」

 

「っ!!誰がっ」

 

 攻撃を行いながら、宗司の事を下に見てくるスタートの発言。それに対し怒りのまま拒絶して迎撃する。

 暴走状態とはとてもではないが思えないほどに攻撃は鋭い。こちらの防御を崩され、撃墜される寸前のところを何とかドライバ・フィールドと援護してくれる味方機のおかげで免れていた。

 味方機の一人である勇人のゲルプゼクストガンダムがドライバ・フィールドを発生可能なスパナから形成したビームサーベルで斬りかかる。しかしそれを素早い身のこなしでシュバルトゼロは避ける。続く夢乃のグリューンアハトによるバトルザッパーも回避して後方へと退く。

 そのままスタートは武器の名称を口にする。

 

「来い、エクスターナル・メガビームランチャー!!」

 

 マルチ・スペースシステムで呼び出したであろうそれは今までに見たことのない巨大な手持ち式ビームランチャーだった。身の丈以上もあるそれを軽々と扱って、こちらへと砲口を向けるとビームが連続して放たれた。

 高出力のビーム弾は正確に捕獲部隊を狙って来ていた。シールドで防御しようとする量産機をそのまま貫くほどの威力。避けた直後に迫ってきた別のビーム弾を咄嗟にドライバ・フィールドを展開して防御する。相殺しきれない衝撃が機体を揺らす。

 

「っ!!」

 

「防ぐか。ならば!」

 

 防いだのを確認して更に砲撃を行うシュバルトゼロ。放ったビームが正面から襲ってくる。単調な攻撃。何かおかしい。そう思いながらもこうなれば取るべき行動は一つ。回避行動に移行してビームから逃げる。

 が、そのビームは決して宗司を逃がそうとはしなかった。いきなりビームが屈折する。

 

「何だ、これは!」

 

「避けてみろ!」

 

 照射ビームを曲げて見せたスタートが煽る。その言葉通り、全力回避で攻撃を避ける。しかし射線上の先に居た味方機はそのまま貫かれていく。射線上にいた入嶋とクルーシア、新堂だけが反応して攻撃を回避した。

 突発的な攻撃に反応して見せた彼女らも驚く。

 

『何、今の!』

 

『ビームが……曲がった』

 

『その類の武器はシュバルトゼロには装備されていないはずだが……厄介な。夢乃君!』

 

 冷静さを取り戻した新堂隊長が夢乃隊長へと突撃を指示する。その言葉に従ってグリューンアハトがバトルザッパーを大剣、バスターモードへと切り替え斬りかかる。

 腕の一本でも切り裂いて止めるという意志が見える。多少の損傷は仕方ないとのことだろう。夢乃隊長がスタートに向かって叫んだ。

 

「スタート、悪いけど!」

 

「威勢だけはいい!」

 

 しかしスタートもまた対応する。ビームランチャーの先端から発生させたビーム刃がバトルザッパーを防ぐ。

 雷霆の女帝(ライトニング・エンプレス)と渾名されるその一撃が容易く受け止められた。それだけあのビーム出力が、機体出力が高いという証拠でもあった。カラーガンダムの礎とされるガンダムだからこそ出来る鍔迫り合い。押し留めながら夢乃隊長が呼びかける。

 

「元さん、お願いだから目を覚まして!」

 

「そのような声、こいつには届かん!それよりも」

 

 力任せに弾き飛ばしたスタートが言い放つ。

 

「自分の心配をしたらどうだっ」

 

「くっ!?」

 

 光の翼を大きく伸ばす。高出力状態となった翼から光の針が散弾の如く振りかかる。圧倒的なまでの弾幕が襲い掛かり、対応しきれない味方機が損傷、撃破されていく。射線上にいた進がシールドを構えたものの防御しきれずバイタルパート以外をDNフェイズカーボンごと貫かれ損傷する。

 夢乃のグリューンアハトも流石にこの攻撃は避けきれない。背部のビームウイングで機体を覆う形にして防御するが、ビームウイングで覆われていたはずの発生基部が貫通、損傷しビームウイングが消失した。

 

「ぐああぁぁぁっ!?」

 

「っ……しまった、ビームウイングがっ」

 

 浮力を大幅に失ったグリューンアハトが甲板へと着地する。文字通り羽をもがれたグリューンアハトをスタートが操るシュバルトゼロは追い込む。

 

「己の非力さを、愚かさを呪うのだな!」

 

 突撃槍として構えたビームランチャーで突貫してくるシュバルトゼロ。すぐにグリューンアハトは迎撃を開始するが、如何せん近接格闘戦意識の機体、まともな射撃武装を持たないせいでその突貫を回避することも出来ない。

 このまま突撃を受ける、と思いきや寸前で肩のビームシールドを展開し攻撃をいなす。咄嗟の判断にスタートが唸る。

 

「ちっ、逸らしたか」

 

「愚かだったのはあなたね!」

 

 攻撃を逸らしたことで夢乃隊長の言葉通り、シュバルトゼロは味方の部隊に包囲されるという失態を侵していた。

 ビームシールドでこすりながら回避したのも、突撃の速度を緩めて包囲をしやすくするためか。突っこんできた時点で部隊も迎撃の準備は整っている。

 それらを見てなお余裕を保ちながら見渡すスタートは言う。

 

「これで逃さない、とでも言うつもりかな。君は」

 

「深絵さん、新堂さん!」

 

『全員、飽和射撃開始!』

 

『味方に当てるなよ。落とす気で攻撃しろ!』

 

 二人のエースの合図と共に一斉に攻撃を開始した。宗司もガンダムDNアーバレストのビームライフルと、マルチウイングキャノンを放つ。もちろん、撃墜するつもりで狙う。

一挙に押し寄せる弾幕。シュバルトゼロはビームランチャーを上空へと上げる。

 

「その程度の力で、私とシュバルトゼロを止められると思うのか!抑止者よ!!」

 

 その直後シュバルトゼロがその場から上空へと緊急離脱する。機体自体のスラスターだけではないスピードで、上方向へ逃げた後、空中を飛行する。

 それを追って捕獲部隊も飛び立ち、弾幕を放ちながら包囲を再度展開する。弾幕の雨あられを、シュバルトゼロは器用に回避していく。

 

「くっ……一体どうやってあの速さを……?」

 

 見ているとシュバルトゼロからだけでなく、ビームランチャー自体からもスラスター光が光っているように見える。急速転換の際もビームランチャーを進行方向に向け、直後回避しているようにも見える。

 それを裏付ける形で同じく気づいていた勇人が各員へと伝達する。

 

「あいつ、メガビームランチャー後端にスラスターユニットがある。あれで増速して回避してるぞ」

 

『何だよそれ!?戦闘しながらそんなことを!』

 

 進が驚いた様子を見せる。武器側のスラスターも推進に合わせて使うとなると、増速になる分扱いが難しくなる、そう取れる発言だ。

 実際そうらしく夢乃隊長は厄介さを口にする。

 

「そんなことも出来る相手……これじゃあ追いつけない!」

 

『大丈夫。私なら!』

 

 そこで名乗りを上げたのは深絵隊長だった。HOW最高峰の狙撃手である彼女が味方の支援に放っていたホルスタービットを呼び戻し、高速機動するシュバルトゼロに向けて狙撃態勢を取る。

 かなりの高機動だがあのフェネクスを狙い撃った深絵隊長だ。どうにかなると思った。しかし、あの時とはわけが違ったことを知らされる。

 

『深絵さん、まだなんですかっ!?』

 

『くぅ……ごめん、勇人君、夢乃ちゃん、もう少し抑えて!』

 

 狙いを定めるだけでも苦労している様子だった。捕獲部隊も足を止める、回避速度を落とそうと弾幕を放っているが、それでも大した速度低下には至っていない。主力攻撃チームの勇人、夢乃、そして進が追いかけながら止めようと攻撃を仕掛けていたが、そのいずれも掠めることはなく、代わりにシュバルトゼロが放つビームランチャーの砲撃と腕部のイレイザーによる射撃で追い返されてしまっていた。

 必死に追い縋ろうと、動きを止めようとするこちらにスタートが憐れみを漏らす。

 

「君達には出来んよ。私とシュバルトゼロを止めることなど。当たると思うか」

 

『言ってくれる!』

 

 挑発に乗る形で深絵隊長が手にしたスナイパーライフルを発砲する。吸い込まれる様にシュバルトゼロへと向かっていく。それを、ビームランチャーを軸にして回避行動をしたシュバルトゼロ。加速態勢のまま銃口をブラウジーベン・ライブラに向けて発砲しながら機動を行う。

 ロングレンジ同士の射撃。分は深絵隊長の方にあるはずだが、逆に相手の射撃にブラウジーベン・ライブラが圧される形となっていた。ホルスタービットに防御を任せて射撃をしていたものの、正確にその間を狙ってくるシュバルトゼロの射撃は狙撃手に劣っていない。対してこちらの射撃は狙い澄ましているはずなのに当たる気配も見せない。

 次第に距離を詰められ、既に狙撃距離ではなくなっていた。その距離でシュバルトゼロが動いた。

 

「悪いが、その盾ごと一掃させてもらう!DNF、クリムゾン・セイヴァー!!」

 

「くっ!?」

 

 振りかぶったビームランチャーの銃口から赤色の光剣を形成する。それを鞭の如く軽々振り回す。範囲にいた護衛機が光剣の一閃で手足を両断され最悪撃墜までされていく。深絵隊長のブラウジーベン・ライブラもビットが焼き尽くされて行き、本体にはさほどダメージはなかったものの自身を護るためのビットしかほぼ残っていなかった。

 防御隊形を崩したそこに、更に追い打ちを仕掛けにビームランチャーをまた振り上げるシュバルトゼロ。スタートが告げる。

 

「ここで引導を渡す!私に歯向かった罰を!」

 

「っ!?」

 

『深絵さん!!』

 

 入嶋の悲鳴が響く。ところがその間に割って入る影が一つ。先程シュバルトゼロにダメージを負わされた進のオースインパルスがボウガンセイバーでビームランチャーの光剣型DNFと張り合った。

 

「っ!!大丈夫ですか!」

 

「な、何とか!」

 

 割って入った進の支援ですぐに攻撃範囲から逃れる深絵隊長。鍔迫り合いをする進を見てスタートは機嫌を悪くして呟く。

 

「フン。人体改造、いや、遺伝子操作をして生まれた量産の人工物風情が、希少にして純粋たる英雄の私に敵うと思っているのか」

 

「っ!なんだとッ!」

 

 直情的な進の怒りが爆発する。無理に攻撃を弾こうと力を込めていた。が、圧し返せず、逆に押し切られそうになっていく。

 それを先程助けられた深絵隊長が味方機と共に放った援護射撃でシュバルトゼロを退かせた。鍔迫り合いを解かれた進が動こうとする。ところが異変を進が口にする。

 

「助かっ……くっ?」

 

「どうしたの、進君」

 

「やべぇ……さっきのダメージが」

 

 先程のダメージ、シュバルトゼロが放射した光翼の散弾はオースインパルスの機体を広範囲に損傷させていた。先程までは動けたのだろうがあれだけ動いたことで出力系統に問題が生じたと推察できる。

 まともに動けずにいる進をスタートは嘲笑いながらランチャーを向ける。

 

「雑兵、人工物風情で粋がるからだ。今、楽にしてくれる!」

 

「くっ!」

 

「進君!くっ」

 

 すぐに深絵隊長が残ったホルスタービットを自身の身を顧みず送ろうとする。だがそれを止めたのは別方向から放たれた弾雨だった。

 その方向からやってきたのは進が本来所属するオースのMS、ムラマサ。その先頭で馴染みのある声が救援に来たと告げた。

 

『シン!大丈夫!?』

 

「!ルナ!」

 

 ルナ、改め進の元チームメイトの鷹宮月子だった。彼女がオースの味方機と共にこちらの支援にやってきたのだ。

 月子は果敢にシュバルトゼロに攻撃をしながら捕獲支援に来たと告げる。

 

「オースからの支援は私の部隊だけですけど、協力します。シン、オースに残ってたトップフライヤーとボトムフライヤー、それにルフト・リヴァイバー、受け取って!」

 

「あぁ!」

 

 オースインパルスがコアストライカーへと分離、月子達が護衛してきた予備パーツと合体を開始する。無防備となる進を護るべく月子達オース部隊がシュバルトゼロへと攻撃を集中させる。それに合わせて捕獲部隊もシュバルトゼロに他方向から火線を浴びせる。

 攻撃をDNウォールで防ぎながらスタートから徒労、と月子の行いを否定される。

 

「人工物如きが、時間稼ぎをしたところでこの状況を打開出来るとでも?」

 

「その言い方癪なのよ。他国の英雄様はそういう人を見下すことしか言えない。うちの英雄、エースパイロット達をそんな言い方!」

 

 人工物という言い方はオースに住む人にとって不快以外の何物でもない。いくら以前二度も危機を救ってもらった機体とはいえ、その怒りが爆発するのは当然と言える。

 怒りもあってかオース部隊の攻撃は怒涛の勢いでシュバルトゼロを回避させずにDNウォールでの防御に徹させる。本当に抑え込んでいると思える。だがスタートにとっては何の苦でもないことを知らされる。

 

「無能だな。事実を言ったまで。貴様らにとってのエースなど、本当の戦いを、政すらもまともに知らぬ。彼らをエースと呼ぶには浅はかすぎる、子どもの考え方だ。この攻撃も、何の洗練された動きもない!」

 

「何をっ!っ!?」

 

 DNウォールを解除し、ビームランチャーを放り捨てる。武器を捨てたのは好機と思ったが、それらと同時にシュバルトゼロは再び羽を伸ばした。あの散弾の構え。オースの部隊はそれを見ておらず、注意が掛けられる前にその暴力的な光羽の弾雨を受ける。

 月子を含めた少数はシールドで進と同じくバイタルパートを防御したが、大半が貫かれて撃墜された。シールドを構えた機体も、一部は貫かれてまた爆散する。月子も肩部に被弾するが何とか生き残る。

 だがその間に進のコアストライカーは新たなパーツでオースインパルス・ルフトを構成し直していた。再合体した進が月子の支援へと向かう。

 

『ルナ、助かった!後は俺が!』

 

「シン!うん、任せる!」

 

 役目を果たした月子が進に従い後退していく。

 だが、それが今生の別れになろうとは、誰も思いもしなかった。

 

 

 

 

「ならば貴様はもう、消えていい!!」

 

 

 

 

 スタートが強く言う。瞬間、シュバルトゼロのいる方向とは全く違う、海上方向からのビームが撤退しようとした月子のムラマサを貫いた。

 

「あ、がっ」

 

『ル、ナ……?ルナぁ!!』

 

 腹部を貫かれた直後、月子のムラマサが爆発を起こした。思わず目を見開いた。宗司だけではない。隊長クラスも絶句していた。

 当然彼女を良く知る者達は現実に打ちのめされる。

 

『嘘……月子さん』

 

『い、一体どこから攻撃しやがった!?』

 

『っ!みんな下!宗司君狙われてる!』

 

「っ!?」

 

 クルーシアの言葉を受けた直後、悪寒を感じ緊急回避。ギリギリの距離を下から放たれたビームが真上に抜けて直進していく。

 放ってきたのは先程シュバルトゼロが投棄したはずのビームランチャー。それが空中浮遊しこちらを狙ってくる。

 何で、と思いつつも理解する。ビットだ。推進機構を備えているなら、曲がりなりにもこういうことが出来る。浮遊にも使えるほどの推進能力は先程までの機動を見れば頷ける。出来る、とまでは考え付かなかった。

 反撃で弾を浴び始めるとビームランチャーはすぐさま逃げていき、生き物のようにもとのシュバルトゼロの右手に握られ直す。スタートが残骸となったムラマサを指して言った。

 

「所詮、貴様ら如きは粛清される運命にある。彼女のようにな。むしろ感謝してほしいものだな」

 

『感謝……だと!?』

 

 進が怒気を込めた返事をする。スタートはそれを意に介さず持論を展開する。

 

「英雄の意味すら理解を介さない人間など、粛清するべきだ。俗人ならまだしも、それが人工物ならば論外。そう言った人間、知的生命体達が英雄の足手まといとなり、我欲のために陥れてきた。無能な権力者、馬鹿な働き者共など本来英雄の下で言いなりになるべきだ。そう、やはり私のような英雄がいなければ、時代も世界も変わらんよ」

 

 自分勝手、そう思いながらもその言葉に頷けるところがあった。そいつらがいなければ、きっと栞奈は。

しかし、彼は、仲間を殺された進はそれを一切合切切り捨てた。

 

「ふ、ざ……けるなぁぁぁぁぁ!!!」

 

『進!』

 

『待て、冷静に!』

 

 入嶋や古橋の制止を聞かず、シュバルトゼロに向かって光刃を振り下ろした。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP76はここまでです。

レイ「月子ちゃんが、そんな……」

ジャンヌ「このタイミングで彼女が……しかもあんな言い方、進さんが怒るのも無理有りません……」

かつての仲間だったとしても、容赦なく落としていく。だって今のスタートは共に戦ったスタートではないですからね。とはいえそのスタートは彼らの事を知っていてなおかつ乏しめてくる。完全に下に見ている証拠ですね。

レイ「傲慢以外の言葉が見つかんないよ~!英雄って名乗るやつこの作品みんなろくでもない!」

ジャンヌ「まぁ、現実でも自分から英雄と名乗る人間にろくでもない感じしますね。そもそも名乗る人は少ないですが」

そりゃそうでしょ。頭沸いてるのかって話です(´-ω-`)まぁそれは置いておくとして、けど地味にスタートの言っている事、作中としては当たっているところもありますからね。

レイ「えー擁護するの?」

行動一つ一つすべて正しいわけじゃないけど、実際オースの方には割と問題残ったままなところあるし、ブラックな面としては時代が変わらないっていうのは合ってるし。

ジャンヌ「元さんがどれだけ戦おうとも、11年前から変わっていない、と?」

そういうこと。まぁ裏スタートの今やってたり言ってる事ヤバすぎるので止めなくてはいけないんですがね。さて、怒りに震えあがる進君がスタートを止めるのか?それは次話に続くというわけで。

ジャンヌ「ネイ達にバトンタッチですね。交代してきます」


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EPISODE77 魔竜顕現・英雄の再来6

どうも、皆様。引き続きEP76と77の更新です。こちらは77となります。

グリーフィア「進君大激怒なわけだけど……これ元ネタ的に悪夢になるの?」

ネイ「フリーダム撃墜ならぬ、シュバルトゼロ撃墜は……してほしくないですね。今のスタートはそれに値するくらい酷いですが」

果たして進君の怒りはどこに行きつくのか?誰がスタートを止めるのか。それでは本編をどうぞ。


 

 

 激情を迸らせる進の一撃がシュバルトゼロの手甲に装着されたクローから展開するビームクローに防がれる。文字通り片手で抑え込むシュバルトゼロは進に対しため息を吐く。

 

「私を落胆させるな。やはり君達の英雄と言う概念はそんなものか」

 

「何をっ!勝手なことを!」

 

「勝手なのは君達だ。生の感情を丸出しにして、平和だのを叫べば得られると思い込んだ、子供と同じ思考。品性のかけらもない。そんなものが、真の英雄であろうはずもない。ましてや人工物の語る英雄象など。消えた君の仲間のように、ああなった方が世界の為だ」

 

 酷く中傷するスタート。それに対しますます攻撃の激しさを増していくオースインパルス。既にSEEDシステムを発動させているようで動きの荒さの中には確実に敵を殺そうとする攻撃が何度も見受けられる。

 支援しようにも攻撃を当てかねない。捕獲部隊は攻撃のタイミングを見計らいながらその行く末を見守るしかない。

 進の機体の動きが変わったことにスタートも気付く。

 

「SEEDシステム。素養を持つ者の脳領域を活性化させてパイロットの能力を上げるシステム。人工的にその領域を成長できるようにした人種を製造した君達の島の考えは間違いではない。が、それを宇宙開発のためのものなどと言っているようでは」

 

「っ!人を武器としてしか見れないのかよ!」

 

「逆だよ。君達は自分達が武器では決してないと言っている。それが間違いだ。君達は君達自身の強みを否定している。それは平和を愛しているようで、限りなく平和を否定する行為に他ならない。戦争を拡大、ほう助していると何故分からん」

 

「そんなの、詭弁だ!」

 

 真っ向から否定した進の一閃が後方に引いたシュバルトゼロに届くことなく空振る。そこに十分な隙はあり、素早く反撃のビームバルカンを頭部に噛みついた象徴と呼ばれる存在のパーツから放つ。

 威力は低くとも目くらましとしては効果的だ。進が対処に追われる間にシュバルトゼロが先程月子を葬ったビームランチャーを向ける。

 

「くそっ!っ!?前」

 

「その魂、無様に散らすがいい!!」

 

 ビームを放とうと構える。その直前にシュバルトゼロが身を引く。ランチャーにあった場所を鋭いビームの火線が集中して撃ちこまれた。

 見ると深絵隊長と勇人警部が合流してそれぞれの武器で同時に射撃した後なのが見えた。勇人警部がそのままゲルプゼクストを前進させる。スタートは狙いが自身だと気づいてシュバルトゼロでその前進に速度を合わせて進から離れていった。

 

「っ!待てよ!」

 

 追いかけようとした進。それを追い付いた深絵隊長が肩を掴んで止める。

 

「待って進君!冷静になって」

 

「仲間がやられて冷静でいられるかよ!罵倒までされて!あの野郎絶対に許さない!消す」

 

「そんなことしたら元君まで!」

 

「うるさい!」

 

 元隊長が言ったわけではない。だがそれでも進にとってあれはそれ以上に仲間の仇。意味がない、むしろ自軍を不利に追い込むとしても殺さねばならないとする。

 止める深絵隊長も悲痛な声でやめてほしいと願う。その間に勇人警部率いる警察部隊も含めた捕獲部隊が銃火を交える。

 勇人警部はスタートに持論を述べる。

 

「英雄、か。確かにお前は別の世界で非常に知恵と力のあった者なのだろう。お前の言うことには妙な説得力がある」

 

「ふむ。やはり英雄の事を理解できるのは、同じ英雄となりうる力を持つ者だけか」

 

「だが、お前にはこの世界の英雄とはなり得ない」

 

「ほお?」

 

 英雄であることを認めつつもこの世界の英雄にはなれない、と高速戦闘を続けながら勇人はスタートの考えに異議を唱えていく。

 

「スタートと言ったな。異世界の元英雄。俺はお前のその時代を知らない。知ろうとも思わない。今俺達に仇なすというのなら戦うだけだ。どれだけ表の面が俺達に協力し、戦ってきたとしても、今のお前はそのスタートではない」

 

「当然。だが違うな。あの存在と私はコインの表と裏。一心同体にして決して同じ面に立つことはない。奴は私であっても、私は奴ではない」

 

「そうだな。だが俺はこう思う。表裏はあろうと、ただのコイン。同じ存在であることに変わりはない。裏にひっくり返ったコインを、もう一度表に、あいつらに戻す」

 

「出来るものならな。言ったはずだ。君達では出来ない、と」

 

 そのように例えてみせた勇人警部。シュバルトゼロと組合いとなり、その顔に手でつかみかかる。しかし腕部から分離した象徴の手が追い払うように阻み、再び間合いを測る。

 それを見ているだけの宗司と進。深絵が二人に告げる。

 

「……あれを持ちこんだのは、確かに元君だよ。でも、こんなこと誰もなると思ってなかった」

 

「だからって……あんなのを許すのかよ!?」

 

「分かってる!分かってるけど……それでも、彼の、元君の行いまで、生きてきた証まで否定しようとしないで!宗司君も、今だけは、エターナちゃんと一緒に戦って……!」

 

「……」

 

 今そう言われてもどうすることも出来ない。向こうから既に回線は切っている。機会もない。むしろ繋げばまた罵倒されるのが関の山。

 そんな奴の言葉を聞いてまた乱れるよりは自分だけ集中して力を使った方がいい。無言を貫くこちらに深絵隊長は心配そうな息遣いをする。そこに新堂隊長からの短い咎めが入る。

 

「深絵君、今は感情的になるべき時ではない。心を乱すな」

 

「それは……はい」

 

「進少尉。我々の使命はシュバルトゼロを止める事だ。それが聞けないのならこの作戦を降りてもらう」

 

「っちぃ!」

 

 作戦除名を言い渡す新堂の言葉に不服そうに舌打ちだけをはっきりと残す。それ以上進は言わず、新堂の言葉は宗司と、中距離支援の入嶋へと向けられる。

 

「シュバルトゼロの性能、状態は我々の予想を大きく超えている。もはや一刻の猶予もない。プランB3へ変更する。宗司君、千恵里君、君達と勇人君のガンダムの力が必要だ」

 

「今の状態で、あれを使っても俺の機体が落とされるだけです」

 

『私も……元隊長の機体の動きに追いつけるかどうか……』

 

 それぞれ無理だという根拠と不安を明かす。しかしそう言う話ではないと新堂の窘めが掛けられる。

 

「諦めや無理かもなんてことで、今の作戦を中止する要因とはなり得ない。「やる」んだ。やるしかない。それが私達軍人の、民間人を護る者達の使命」

 

 無茶苦茶な言い草だ。と今の宗司にはそうとしか思えなかった。けれどもMSという兵器を駆っている以上、それには背けられないことを思い出し、言いたくなる口を閉ざす。

 やらねばならない。それを伝えたところで新堂隊長が戦闘を続ける勇人警部とスタートを見つめながら作戦の子細を再度確認する。

 

「君達の機体には、ガンダムから技術提供された機体強化システム「エラクスシステム」がある。奴もエラクスを使ってくるだろうが、数の利で圧倒する」

 

「もちろん私達も援護する。だけど、エラクスの効果時間中に抑える手筈が整わなかったら……」

 

「とにかく、そんなことにさせない様に、君達二人には頑張ってもらうよ。エースとして」

 

 夢乃からそのように言われる。また艦からのバックアップも準備を終えていた。光巴が回線で告げる。

 

『二人の動きのアシストには私が付く。シュバルトゼロの次の動きは私が読む』

 

『光巴……うん!夢乃さん、深絵隊長、新堂隊長、私やります!』

 

 それぞれの言葉を受けて奮起した入嶋はそう言って見せる。そんな彼女を冷ややかな目で見ていると、呉川小隊長から同情の声が届けられる。

 

『こんな作戦は無茶苦茶だ。成功する可能性の低い、いや、お前が最悪死にかねない可能性が高い。直接の上司として、それは到底受けられない』

 

「ならばどうすると?呉川隊長」

 

『先程、あなたは進に作戦を降りるようにと言った。ならば不服であるという旨を伝え、作戦を放棄すればいい。それで捕まるのだとしても、生き残る確率はある。学生を戦場に出すのだとしても、死にに行かせるような事はご法度だ』

 

「君は、もう少し冷静だと思ったが」

 

 互いに反目し合う呉川小隊長と新堂隊長の主張。宗司自身の意見は呉川小隊長のそれを非常に尊重したい、というより本音はまさしくそれだ。いくら志願したとしてもこんな状態で止めに行くなど死にに行けと言われているのと同じだろう。

 こんな言い合いを収めるなら、自分の意見を言ってみればいい。そんな考えを思い付き、呉川小隊長の意見に賛成であることを伝えようとして、友直さんのソルジスタに接触され回線を繋がれる。

 

「宗司先輩」

 

「っ、何」

 

 思わず反射的に返す。彼女もまた新堂隊長と同じことを言いそうな雰囲気を感じ取り、逃げようとするが彼女は掴んで離さない。

 そのまま彼女の言葉を聞く。

 

「私は宗司先輩に死んでほしくないです。だけど、この作戦も失敗してほしくない。戦力とか、ゼロンのような反政府勢力と戦うためだとか、そんなことよりも、同じ側の人として案じているんです」

 

「そうだとしても、俺はこんなところで死にたくは」

 

「だったら、宗司先輩は私が守ります」

 

 唐突に告げられ息が詰まる。そう言う意味ではないと認識している間にも友直さんが決意を口にしていく。

 

「動きについていけないとしても、全力で追い縋ります。撃墜なんてさせません。機体を滑りこませてでも宗司先輩やエターナ先輩は守って見せます。それじゃあ、ダメですか?」

 

 果たしてこの言葉の意味を理解しているのだろうか。あまりの詰め寄り具合に言い合っていた新堂がヒートアップしていた友直を穏やかに諭す。

 

「友直。君も心情が入り過ぎている。そういうのはこんなところで言うものではない。もっとも、君はそれを考える間もなく言えてしまう人間で、それも私が弟子とした所以でもあるわけだが」

 

「そうやで友直。それ告白の台詞とちゃうか?しかも男の」

 

「え、あっ!すみません新堂隊長、宗司先輩!智夜!変にからかわないでよ!?」

 

「え、あぁ……」

 

 やり取りに僻辞している中、新堂隊長がでも、と付け加える。

 

「彼女の言うことは私も同じだ。部下や若き者達を全力で護る。機体性能が下だとしても立ち向かう。それが大人の使命だからな」

 

「……それは」

 

「宗司、お前は、っ!?」

 

 そこで事態が動き出す。ぶつかり合いが激しくなり、高機動音がけたたましくなる。見上げたその先でシュバルトゼロとゲルプゼクストが蒼い蒼炎を纏って戦闘を継続していた。

 戦闘を激化させる様子を見て新堂隊長はもう一度要請をする。

 

「あれに追いつけるのは君達しかいない。私達ではどうにもならない。無力さしかない。だが止めなければならない。勝手と言ってくれて構わない。それでもお願いしたい」

 

 言われて宗司は沈黙したまま、激化する戦闘を見つめる。エラクスシステム状態で張りあえるのは同じエラクスシステム搭載機くらいのもの。それと同等に渡り合えて動けるのは自分と入嶋の機体だけなのも分かっている。

 それでも躊躇うのはこんなところで死ねないというエゴがあるからだ。栞奈と何が何でももう一度会うために。しかしそれも友直の発言で揺らぎつつあった。

 申し訳ない気持ちが強くなった。彼女の真摯さに、自分の先程の言葉を聞いたのにそんな事を言える彼女に応えるべきではと。

 

(自分のことながら……いや、自分の言葉だからこそ、恥ずかしいな)

 

 冷静さを取り戻して、入嶋のガンダムDNアルヴと空中で並び立つ。しっかりとその眼差しで蒼炎を纏った機体達を見る。

 そのキタイに気づいてしまったら、もうあとには退けない。入嶋と顔を見合わせてからそれぞれがそのシステム名を読み上げる。

 

「エラクスシステム、起動!」

 

「……エラクス!」

 

 アルヴ、アーバレストの順に同じ蒼炎を纏わせる。DNジェネレーターが過剰回転を開始して圧倒的出力を生み出す。

 多分に増したDNをDNL能力で感知したのか、シュバルトゼロがこちらを向く。注意がこちらに向いたところをバスターウエポンにドライバ・フィールド・ブレードを形成させてゲルプゼクストが斬りかかるがそれをすかさず防御して見せる。

 防御したまま、回線をオープンにして挑発するスタートの声が聞こえてくる。

 

『掛かって来い。私の時代の機体よりも数段劣る骨董品のような機体に、負けるつもりはない』

 

「そう、思うかよ!」

 

「例え後追いの技術でも!」

 

 二機のガンダムDNがシュバルトゼロへ向けて追撃を開始する。三つの蒼炎の尾が一つの彗星を追いかける。

 両者の間でビームの弾雨が交わされていく。夜空をバックに戦闘機動を行う姿はまさに流星群の如ききらびやかさ。しかし行っているのは死のやり取り。必死に機体を動かしてシュバルトゼロのペースを握らせない様に立ち回る宗司達。

 ビームを二連射してから、左手のビームクローをサーベルとして束ねたシュバルトゼロがこちらへ急襲する。迎え撃つ形でコンバートセイバーを構える。刀身にビームサーベルを纏わせ、光刃同士が激突の火花を散らせる。

 スタートが言い放つ。

 

「墜ちろ、馬竜(ばりゅう)!!」

 

「ぁぁああああああ!!」

 

 

 

 

 三機のエラクスシステム稼働機によるHOWの戦闘を撤退したゼロンの総大将たる零崎秀夫も望遠映像で確認していた。

 傍らには帰還したヴァイスインフィニットのAIであるエンドも転送先端末に映っている。エンドが想定外の姿を見せたシュバルトゼロを見て言う。

 

「かつての俺と同じ状態だ」

 

「かつて、というとこちらに転送される前の君か」

 

「あぁ。俺は転送の影響で表と裏の人格が統合し直され、本来のこの人格へと戻った。だがスタートは俺とは逆に今まで善の側だけで活動してきていた。その状態ならかつての俺よりも理知的に動くことが出来た」

 

 かつてドラグディアの詩巫女養成の学園を襲撃した頃のエンドは悪の側、それも記憶を欠いた状態でシュバルトゼロと対峙していたという。実際に見たわけではないのでエンドの話を信じるほかない。

 そこからエンドは突如発生した次元崩壊による転移でこの世界へとたどり着いた。その時の衝撃でようやくこの人格へと戻ったらしい。詳しく知るのはおそらくかつて次元覇院を率いた大教柱のみ。

 その経験を踏まえたうえで、今現状のシュバルトゼロの状況を語る。

 

「だが奴は俺とは逆に悪の側面のみを開花させた。善の側を封印して」

 

「なるほど。ではどうしてそのようなことに?衝撃?何のきっかけで?」

 

 尋ねると思い返す一間を置いて、仮説へと繋がる自分達ガンダムAIの造りについてエンドは話し出す。

 

「我ら元英雄のガンダムAIはデータでしかない。MSに居る時は中心となるコンピューター部位はDNジェネレーターに併設されつつ、頭部のCPUユニットと合わせて起動している。だがMSと一体化している分、MS側で受けたダメージはそのまま本来の自身の身体の部位に当たる部分にフィードバックされている。腕を斬り飛ばされれば、それに近い痛みが大分抑えられこそするが受けると言ったようにな」

 

「そのような話を技術部から聞いたことがあるな。……もしや?」

 

「想像通りだ。頭部に噛みついた象徴が、奴を目覚めさせた可能性が高い」

 

「そうか」

 

 返答に渋い顔をする。合体を止められなかったゼロン側の責任、とHOWのあの少女に言った手前、取り消すような事はしたくはないが更に弱みを付け入れさせることになる。

 失態だな、と思いつつもすぐに考えを切り替える。あの少女ならば既に気づいているかもしれない。今更気づいてももう遅いのならそこで唸っていても意味はない。それをいつまでも考えるよりかは次の行動、暴走が止まること、また止まった後の事態について考えるべきだ。

 問題ない、としつつ答える。

 

「問題は君と匹敵する力を持っているかもしれん彼をHOWが止められるかどうかだが」

 

「善の側は知識、悪の側は力だ。しかし、あれはおそらくもっと違う」

 

「違う?」

 

 問いかけるとエンドはあれを自らの推論で評した。

 

「あれは統合に近い状態。しかし悪の側に主従権が取られている。知識と力を持ったうえで悪の側の思考で動いている。おそらく、戻ったとしても善の側は力と悪側の記憶を得ることもない。次の俺を超えるには奴に頼らなければいけないだろうな。もっとも超えるわけがないだろうが」

 

 次の時、ヴァイスインフィニットは更なる力を得るかもしれない。鍵を握るのは捕虜としたシュバルトゼロのパートナーの女性。

 未だこの世界の人間が踏み込んだことのないであろう領域に我々は向かっている。その力があれば、あのガンダムが生き残ったとしても敵うまい。

 エンドと共に勝利を確信する。後は今のあれを東側の捕獲部隊が止めてくれることを祈るばかりだ。

 

 

 

NEXT EPISODE

 




EP77はここまでです。

ネイ「ここで、まさかのフラグ立ててきましたか」

ナンノコトカナー?(´-ω-`)

グリーフィア「わっかりやすいわよ~。初めは宗司君とエターナちゃんって思ったんだけど、これってもしかしてぇ~」

はいはい、今それはいいから。まぁそう匂わせる表現も使ってるけどね。

ネイ「キタイの所ですね。期待と機体に掛けてる」

恥ずかしいから解説止めて(*ノωノ)まぁ進君も冒頭では心配でしたが、何とかとどまったということで。

グリーフィア「だけどそっちも危ういわよね~。いいところで邪魔になるようなことやったら、それこそ戦犯なわけだし」

ネイ「ないとは思うけど……殺すことを優先したら、その時は敵になっちゃうね……」

深絵の説得がちゃんと上手くいっているといいですね。宗司君達も止められるといいのですが。

ネイ「それにしても最後の会話……零崎は一体何を考えているんでしょうか」

グリーフィア「何やら悪趣味なこと考えてそう。ジャンヌ・Fちゃんを一体どうするのかしらねぇ……寒気してくるわ」

そんな不安も生まれますが、今回はここまでとなります。いやぁ、ここ数日雨でダウナーですわ。

グリーフィア「ま、頑張ってちょうだいな。次回もよっろしくぅ~」


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EPISODE78 魔竜顕現・英雄の再来7

どうも、皆様。EP78、79の更新です。まずはEP78から。

レイ「宗司君も遂に戦う気になったね。三機で頑張れッ!」

ジャンヌ「果たして、シュバルトゼロにその手は届くんでしょうか……」

というわけで早速本編へ。


 

 

 エラクス機同士による高速戦闘が続く。三機による追撃をシュバルトゼロは見事にいなしていた。

 もちろん宗司達は本体に当てるつもりで攻撃を行っていた。エラクスによって上がったスピードと数押しならばと思ったが、そう簡単に思い通りにはならない。

 それでも諦めず、連携攻撃を仕掛ける。アーバレストとゲルプゼクストが挟み込む形でそれぞれの射撃攻撃を放つ。

 

「このっ!」

 

「当てる」

 

「それでは遅いな!」

 

 機体を悠然と動かし、弾幕に一つも当たることなく回避するシュバルトゼロ。パネルウイングをパージして追いかけてくるこちらに向けて反撃を行う。

 追撃から迎撃に切り替えてパネルウイングの対処へと移る。こちらの狙撃を回避してすぐさま反撃の武装を顕現させて攻撃してくる。普段の訓練ならたちまちハチの巣だったが、宗司はその操作に甘さを感じ取る。

 

(武器の切り替えが遅い。まだやれる!)

 

 確信したと同時に攻撃を回避してみせる。続く反撃の一撃。狙い撃った攻撃がパネルウイングを掠めた。

 直撃こそしてはいないものの、事実にスタートが虚を突かれる。

 

「……小賢しい」

 

「どうやら、武器に慣れてないらしいな」

 

 訓練をしていた時、元隊長から言われたことがある。ビット系兵装はMSが強奪されたりした際に一番性能を発揮しづらい兵装だと。元々調整されていた人物ではないパイロットによって運用されるために癖についていけないというのだ。

 特にシュバルトゼロはビットの一つがマルチ・スペースシステムも用いて運用する端末兵装であり、初めての人間がそれらを十全に扱いながら戦闘を継続するのは困難だと言われていた。如何に英雄としても、それは例外ではなかったのだ。

 サポートに付いている光巴からもそれでいいと指示が飛ぶ。

 

『そう、ちぇりーもパネルウイングの撃墜を狙って!』

 

「それ今言うべきじゃないって!でも指示は聞く!」

 

 入嶋も同様に狙いを定めて続けてビームを放ってパネルを撃墜しようとする。しかし今度は動きの俊敏さが勝った。攻撃が当たらない。動きを修正したのだ。

 

「雑兵如きが、粋がるな!」

 

 その言葉通りパネルの動きが激しさを増す。攻撃が当たらず、むしろこちらの動きを制限してくる。回避に全力で対応する。

 このままでは当たる。ところがそれは他の二人にとってのチャンスだったのだ。勇人警部が仕掛ける。

 

「その雑兵に、感けている場合か!」

 

「っ!賢しい真似を!」

 

 注意を向けたスタートの呼び戻したパネルウイングによる迎撃を、勇人はゲルプゼクストの連続変形ですべて回避した。スピードを殺すことなくシュバルトゼロへと肉薄する。

 ゲルプゼクストが銃身を開いたガンブレードで挟むように突き出す。シュバルトゼロは束ねたビームサーベルで受け止める。攻撃は防御されてしまった。スタートはその攻撃を遅いと評する。

 

「残念だが、それでは遅いのだよ」

 

「どうかな」

 

「私達が、いますから!」

 

 入嶋と共に攻撃を仕掛ける。シュバルトゼロ本体、ではなく、展開していたパネルに向けて火砲を一斉射する。意識を勇人に向けていたことで、移動していたパネルの動きはコンピューターメインの単純な動きとなり、二人の構えていた射撃兵装をもろに浴びた。損傷を受けてパネルの大半が推進機能を失って海へと落ちていく。

 それらを見せつけられる形となったスタートは苛立ちを募らせていく。

 

「おのれ……不愉快だな!だがかすり傷だ」

 

「果たしてそうかな?」

 

 弾き合う形で距離を取る両者。シュバルトゼロが素早くパネルウイングを呼び戻す。その間にゲルプゼクスト、アルヴがDNFとDBの発射態勢に入る。

 

「DNF!「ゲルプ・メガキャノン」!」

 

「DB!「アルヴ・クアッドキャノン」!」

 

 ゲルプゼクストは胸部にバスターを合体、アルヴはバックパックの射撃兵装二種からビームを発射、高出力状態にドライブして放つ。二機の収束ビームがシュバルトゼロに向かっていく。気付いたスタートは瞬時に身を翻して避ける。が、集結しつつあったパネルウイングの一部が回収しきれず飲み込まれる。

 爆発はシュバルトゼロの姿を覆い隠す。それを見て宗司の中にわずかに確信が生まれる。これならやれるかもしれない。シュバルトゼロを無力化して、止められる。わずかな希望が見え始めた。

 そんな瞬間だったからこそ、油断も生まれる。煙が晴れた直後、光条が鞭のように煙を割って伸びて薙ぎ払われる。間一髪その光をシールドとドライバ・フィールドで防御しながらも、吹き飛ばされる。

 

「ぐっ!?」

 

「相模君!?」

 

「油断するな!来るぞ」

 

 構える勇人の言うように、煙の中から五体満足のシュバルトゼロが飛び出す。光の鞭として薙ぎ払ったビームランチャーから発生させたビームサーベルをそのままアーバレストに向けて突き出し突貫する。

 

「このまま貫く!」

 

「ちぃ!」

 

 真っ直ぐDNアーバレストを貫くコース。それが直撃する寸前でドライバ・フィールドを再度まとわせた左肩部シールドで受け流す。出力が低下しているのかビームランサーが通過したシールド表面を焼く音がする。

ビームランサーが通過した直後砲身を手放したシュバルトゼロが、両手のイレイザーを至近距離から放つ構えを見せる。スタートが言い放った。

 

「焼き尽くす!」

 

「っ!」

 

 同じ姿勢で咄嗟に両手を突き出す。放たれた広域拡散ビームが両手を軸に展開したドライバ・フィールドによって防御、外側へと拡散されていく。

 拡散されたビームは暴力的な雨となって後方の空を、味方機を焼いていく。防御しているにも関わらず、機体の手が焼かれる感覚を覚える。完全にドライバ・フィールドを展開出来ていない証拠だった。

 

「く……うぅ!」

 

 攻撃を通してたまるかとドライバ・フィールドの強度を上げることを意識する。なるべく味方にも被害が出ないように。そちらに意識を割かれていたからこそ、突然響いた友直の声に驚かされる。

 

「宗司先輩!下、避けて!」

 

「っ!?」

 

 同時に感じ取る悪寒。無理矢理回避すると下方から光の熱戦が先程までいた場所を通過していく。発射元は嫌でも分かる、手放したあのビームランチャーだ。

 鷹宮月子を葬った攻撃法。もし見ていなかったら自分も同じ目に遭っていた。避けれたことに安堵するが、まだ終わりではなかった。

 

「油断したな!」

 

『攻撃倒れて来る!』

 

「っ!?何」

 

 光巴の言う通り直後通り過ぎていくはずだったビームがそのままこちらへ向けて倒れ込む。叩き付けてくるようなそれを咄嗟にシールドで防御する。ドライバ・フィールドの展開が間に合わず、焼き切れながらも機体からの分離で何とかそれから逃れた。

 ビームをそのまま長大なビームサーベルとして振るったビームランチャーがシュバルトゼロの右手に再び握られる。その背後を位置取っていたゲルプゼクストがビームをばら撒くが、それも避ける。

 その流れで再び高速機動戦闘へ移行し、様々なビームを放って戦闘するスタート。追いかける宗司達を指して言う。

 

「所詮エラクスを使おうとも操るパイロットがこれではな」

 

「の、割りには貴様も撃墜できていないが?」

 

 挑発気味に返す勇人警部。それに対しスタートは明らかな不快を口にし、宣言する。

 

「不愉快な……ならば容赦せん!本当のエラクス戦闘という物を見せてくれる!」

 

 よりDNを多量に放出し、速度を上げるシュバルトゼロ。ジグザグとした軌道を取ったのち、こちらに身を翻してビームを放つ。

 一見してどこへ向けての砲撃かと錯覚するほど狙いの甘い攻撃。弾速も遅い。しかしそれは全てスタートの手の内だった。

 

「エラクス、シュート!」

 

「そんな攻撃」

 

「待て、後退!」

 

 余裕と思い回避しつつ接近を選んだこちらに後方への回避指示を送る勇人の声。考える間もなく敵の攻撃が変質、直角に曲がってアーバレストとアルヴに襲い掛かる。

 いきなりのことで声を発する間もなく回避するものの両機体共にビームライフルウエポンを撃ち抜かれ、爆発をもろに喰らう。その間にも跳ね返るようにカーブしたビーム弾が煙を突き破って降り注いでくる。

 それらをドライバ・フィールドでそれぞれ防いでいく。だが攻撃の衝撃で後方へ押し戻されていく。

 

「ぐぅぅぅっ!?」

 

「きゃああああ!?」

 

 二人の苦悶の声と悲鳴が響く。それでも何とか攻撃は防ぐ。完全に攻撃を防ぎ切ったと思ったところでシュバルトゼロは動いた。こちらの爆発の煙を突っ切って狙ってくる。

 

「まずは貴様から狩らせてもらう」

 

「くっ!」

 

 ビームランチャーを投げ捨てての近接格闘戦。それだけでまたビームランチャーの位置を確認しなければというプレッシャーになる。そして今回はそれを見つけられずに反応が遅れた。迫るビーム刃。どこかを犠牲にしなければ防げない。

 判断の遅れたアーバレスト。この窮地に割り込む機体が一機存在した。

 

「宗司先輩!!」

 

「友直!?」

 

 友直のソルジスタがMS刀でシュバルトゼロの振り下ろすビームクローを受け止めに掛かる。振り下ろされた二つの斬撃は確かに斬撃を受け止める。

 約束を守って攻撃を止めた友直。邪魔をされた形となったスタートは憤慨する。

 

「私の邪魔をするのか。俗人の分際で!」

 

「宗司先輩はやらせないっ!」

 

「ならば、貴様も消してくれる!」

 

 スタートが咆えるとシュバルトゼロのビームクローが刃の間隔を狭める。刀を押さえつけていただけのそれは束ねられると一本のより高出力のビームサーベルへと変貌し、友直のソルジスタが握るMS刀の接触面が溶断されていく。

 自身の武器が負けていく光景に息を呑む友直。

 

「嘘……天王寺さんの刀が」

 

「時代遅れなのだよ。そのような鉄屑で、このシュバルトゼロを越えられるとでも思ったか!量産機!」

 

『っ!?宗司君!支援に!』

 

 力を込めて完全に友直の機体のMS刀を切り裂く。直後に伸びたサーベルの刃がそのまま彼女のMSの両腕を肩口から切り裂いてしまう。

 どうすることも出来なくなった彼女に向けてシュバルトゼロがその刃を発生させた手を後方に伸ばす。勢いを付けて串刺しにするために。それをさせてはいけないと光巴の指示が飛ぶ。

 

「あ……いや……」

 

「やられに来ただけだったな、女!」

 

『宗司君!』

 

「っ、友直!」

 

 機体を加速させる。だが脳裏に嫌な感じがその行いを否定しにかかる。

 

(どうしてたすけようとするの?そんなことをしたら、かのじょにあえなくなるよ?)

 

 どこからか聞こえてくる、自身の負の感情の声。躊躇いとして自身にのしかかる。

 そうだ、彼女は言ったじゃないか。機体を滑りこませてでも自分達を守ると。ならこのまま撃墜されたって何の問題もない。彼女はそれで役割を果たす。

 生き残れるなら、とそんな想いが宗司自身の衝動に絡みつく。一人死んだとしても、それは一番叶えたいことの為の、犠牲だ。だから、ここで失っても、と納得させて手を引きかける。

 けれども、あいつの言葉が不意に蘇る。

 

 

 

 

『覚悟、出来てるわね?』

 

 

 

 

 今閉じこもっているパートナーとの二度目の装依を果たしたときの掛け合い。あの時あいつ自身の言葉と思ったそれは、後日元隊長の受け売りだったと知った。

 元隊長がヴァイスインフィニットと再戦した時の独白。それをなぜ彼女が知っているのかとその時も問うたのだが、その時彼女はさぁ、としらを切っていた。

 

『さぁ?何でかしらね。けど、そんなんだから、私は今のあいつも嫌いなんだから』

 

 今なら分かる、かもしれない。あいつが嫌っていたのは元隊長そのものじゃない。そして今やるべきことは、止まっている事じゃない。

 足に絡みついて来るどす黒い感情の象徴がまた甘い言葉を吐く。だが振り払うようにして光巴の声が響き、また心の中で呟き返す。

 

(たすけたって、しぬだけだ。いまならだれもせめない)

 

『お願い、自分の闇に負けないで!』

 

(うるさいな。これはおれの……!)

 

(そうだな。あの時みたいに、五月蝿い騒音のような言葉に、耳を背ければ苦しまなくて済む。だけど、そうじゃない。誰も責めなくても俺自身が、後悔する。あの時もそうだった。なら、俺がするのは、俺がするべきだったのは!)

 

 下ろしかけた手を伸ばす。そして叫びと共に、DNを解放した。

 

 

 

 

 

 

「この手を、伸ばすことだっ!」

 

 

 

 

 

 

 蒼の残像が空を翔ける。瞬間、血しぶきにも似たDNが空に舞う。

 スタートの声が響いた。

 

「な……貴様、正気か」

 

「あ……」

 

『そんな……嘘』

 

 シュバルトゼロが突き出した右手のビームサーベルは、ガンダムDNアーバレストの左の張り手を受け止める形で貫通していた。右手側に両腕を損失してまで身を挺してくれた後輩のMSを抱きかかえている。

 その状態で目の前の、暴走するシュバルトゼロのパイロットに向けて言い放つ。

 

「正気さ……でなきゃ後輩を守ることなんて出来なかった。これは、俺が選んだ、最善手だ!」

 

 選んだという言葉。それは紛れもなく、自分を信じたということ。それに対し、目の前の英雄を名乗る存在はその選択を嘲笑う。

 

「これが最善とはな。節穴かっ!」

 

「ぐがっ!?」

 

「宗司先輩!」

 

 左腕に突き刺さった状態のまま、シュバルトゼロの手が無理矢理引き抜く、いや、引きちぎろうとする。ビームサーベルの刺さったままの痛みがダイレクトに伝わってくる。

 中に攻撃したまま動かそうとして来るので意識が乱れる。ドライバ・フィールドの維持が困難になればたちまちやられてしまう。絶体絶命の危機に彼女が動く。

 

『左腕部、肩から緊急パージ!下がんなさい!』

 

 声と共に左腕部が破損部分を含めて肩口から分離が行われる。声に無我夢中で従って更なる追撃を回避する。

 エラクスの超高機動性能を活かして瞬時に攻撃圏内から退避する。相手が手放していたビームランチャーも見える距離まで十分離れたところで先程の声の主から愚痴が吐かれた。

 

『全く……あそこまで攻撃受けたら、いくらガンダムでも死ぬわよ!?私も含めて!』

 

「そう、だな。ごめん。それを忘れていた。届くかもしれないって思って、焦っていた」

 

 先程までのやり取りはいずこかへ、冷静に自らのパートナーに謝罪を入れる。その間にもシュバルトゼロへの注意は逸らさない。

 向けられた謝罪にやや間を空けてパートナーのエターナは返答する。

 

『……そう。じゃあこの痛みの落とし前、付けてもらおうかしら?』

 

「どうしたら赦す?」

 

『決まってる。目の前のあいつを、英雄と思い上がったAIを叩き潰してあいつの目を覚まさせる!』

 

 過激な発言にやや心配さも出てくる。しかし感じ取れるDNLの音は目の前のシュバルトゼロに向けての慈しみを表していた。

 それだけでいい。確かな選択の道筋をエターナは示してくれた。かつて交わした約束通り、エターナの信じることを、自分が信じる。それに今値する言葉だと確信した。

 友直を下がらせてその手にビームライフルを構えなおす。満身創痍とも言える機体状況をスタートが煽った。

 

「そんな壊れかけのモビルスーツでこのシュバルトゼロに敵うとでも思っているのか、少年!」

 

「普通なら相手なんて絶対出来ない……だが、そう言ってくるならやってみせる」

 

『ええ、やって見せなさいよ、ソージ!』

 

 

 安定したオーバードライバフォームの力をエラクスと合わせて、全力での捕獲行動に挑む。

 

 

 NEXT EPISODE

 




EP78はここまでです。

レイ「ようやく宗司君が主人公っぽいところ見れた気がする!それくらい今の宗司君カッコいいよ!」

ジャンヌ「過去を振り払い、護るべきものの為に手を伸ばす。ありきたりですけど、いい展開ですね。その後のエターナさんとの掛け合いも何というか、良いものがあります」

やって見せろよ宗司!( ゚Д゚)なんとでもなるはずだ(゚∀゚)オーバードライバフォームだとぉ!?(゚Д゚;)と思わず言いたくなりますね(´-ω-`)

レイ「あ、やっぱりそれ意識してたんだ最後のエターナちゃんの言葉」

ジャンヌ「掛け合いは再現しなかった辺り、乱発しようとは思っていない感じですかね」

まぁ無理矢理ねじ込むのも面倒ですし、もう書いちゃっているんでね。流石に繋げられなかった。

レイ「でも、そんなマフティーに謙遜ないくらいの戦いしてた感じかなぁ。連携して追い詰めてるし!」

ジャンヌ「ここから如何にして宗司さんが巻き返すかが見物ですね。次の話でどうなるか……」

次がいよいよ第4章最終話。果たして今章はどういった形で幕を閉じるのか?最後までご覧ください。それでは次話に続きます。


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EPISODE79 魔竜顕現・英雄の再来8

どうも、皆様。EPISODE78,79の更新です。続いてEP79、本章最終話となります。

ネイ「迷いのない宗司さん、エターナさんと再び心を通わせて、どこまで渡り合えるのか……」

グリーフィア「ここはもう、大立回り見せるしかないわよね~?最後に見るのは、救いか、それとも……?」

では第4章最終話、ご覧ください。ちなみにLEVEL3は9章構成となっております。


 

 

「あああああぁぁぁぁぁ!!」

 

 叫ぶ声と共にガンダムDNアーバレストがシュバルトゼロとの戦闘を再開させた。

 当然シュバルトゼロは迎撃、撃墜を狙ってくる。ところが、その攻撃はアーバレストを捉えるに至らない。空中を演舞の如く舞っていくアーバレストからの反撃が掠めて、スタートは困惑する。

 

「何だ……この動きは。捉えられない?そんなことが!」

 

 さっきまでとは打って変わっての展開。翻弄される姿を認めないとシュバルトゼロはエラクスの加速を強める。機体性能は元々シュバルトゼロの方が上、しかし宗司もそう簡単に接近を許さない。後方に向けてシールドライフルを向けて速度を落とさず迎撃する。

 それらの弾丸を避けて接近するシュバルトゼロだが、その内の弾が途中で拡散弾となって追いかけてくるシュバルトゼロに襲い掛かる。ドライバ・フィールド弾がシュバルトゼロの侵攻を妨げた。

 弾のダメージは拡散弾ゆえにそれほど高くはない。それでも一度攻撃を受けたスタートが弾幕をうっとおしいと吐く。

 

「姑息な手を……賢しいだけのつがいが!」

 

 宗司達をつがいと称したスタート。エンゲージシステムの使い手なら、そのように称するのも無理はないのだろう。しかしそう言われてもあまり嬉しいものではなかった。

 俺自身は今までエターナをそのように思った試しはない。元隊長と同じような立場にあっても、二人はそれぞれ別の未来を見ている。

 故にパートナーのエターナからはその決めつけに顰蹙を買う結果となる。

 

『つがい?はっ、パートナーはパートナーでも、人生設計まで預けてない!』

 

 彼女の言葉を代弁する様にビームライフル3機を同時に発砲した。ドライバ・フィールド弾をそれぞれ拡散、跳弾、徹甲弾とばらけさせてシュバルトゼロの動きを抑制する。

 攻撃をビームサーベルで切り裂きながらも防いだスタート。しかしその機体を別方向から入嶋と勇人の攻撃が襲う。

 

「っ!後ろから」

 

「いっけぇ!フルバースト!」

 

「若輩者が踏ん張っている。ならば俺が立たずしてどうする」

 

 アルヴ・バレッツフルアーマーのミサイルを含めた一斉射に追従する形で飛行形態となったゲルプゼクストがシュバルトゼロに向かって突撃する。弾幕を迎撃したシュバルトゼロと同タイミングで肩部のビームガンを放ち、ミサイルの弾幕を爆発させる。爆発のカーテンを作り出し、入嶋への狙いを絞らせないようにした。

 更に爆発を目くらましとして急速旋回したゲルプゼクストガンダムはエラクスの加速量に任せて奇襲を仕掛ける。ビームライフルとビームバルカンをドライバ・フィールドでまとめて圧縮した高出力弾、それらが放たれ到達寸前で解除、全方位へ向けてのクラスター弾をばら撒き、シュバルトゼロを襲った。

 

「ぐっ!?この私に!?」

 

 被弾してバランスを崩したところを再び宗司も攻める。肩部のマルチウイングキャノンを放ち、それが残っていた肩部のシールドを吹き飛ばす。

 

「おのれっ!」

 

「死角だ!」

 

 注意を向けたところにすかさず勇人警部が攻撃を入れた。人型形態のまま放つツールバスター、コンテナビームキャノンはシュバルトゼロのエラクスが生み出す高機動により当たらなかったが、爆発のカーテンが収まって近づけるようになった入嶋の中距離砲撃に被弾する。

 

「雑兵如きが!?」

 

「はぁっ、はぁっ!まだ、私にだってできる!」

 

 エラクスの機動に体力をすり減らしながらも入嶋がそう言って見せる。DNLでなく、また才能も特別ないことを気にしている彼女だが、そうであっても今彼女はシュバルトゼロと、憧れの人物の機体を止めるために全力で戦っている。確かに戦力として数えられる位置にいた。

 それでも今戦っている三人が誰か一人でも欠ければこの捕獲作戦は失敗する。三人の機体でようやくシュバルトゼロを抑え込めていることを忘れてはいけない。かつて元隊長が言っていた。チームワークを欠かさない、子供でも出来ることで出来なかったら恥じだと。前提を忘れずにシュバルトゼロを追い込む。

 こちらの攻撃に自らのペースを乱されていくスタート。攻撃を回避しながら反撃を伺っていくが、やがて積み重なった苛立ちを爆発させた。

 

「雑兵風情が!この私に敵うと思うな!解き放つ!」

 

 一声と共に背部に合体した象徴のDNのウイングが伸びる。前にも見た広範囲への針状のDNの発射態勢。構えた時には既にそれが発射されていた。

 前回とは違い、先程のゲルプゼクストが行った攻撃のような全方位放出型の攻撃が展開していた三機に襲い掛かる。勇人警部はゲルプゼクストのドライバ・フィールドで防御しつつ回避、フィールドが貫通されながらも本体へのダメージをゼロにする。

一方で入嶋の方は避けきれないと判断してガトリングランチャーとヴァルスビーの火砲を正面に集中、弾幕での防御を図った。しかしその弾幕はシュバルトゼロを相手にするには弱く、増加装甲の恩恵を受けて致命的なダメージを避けるのがやっとだった。

 

「分かっているのなら、避けられないわけではない」

 

「お願い……っ!ダメか!ひぐっ!」

 

 そして当の宗司自身はこれまた驚く方法で対応する。発射と同時に機体を加速、全方位一斉射の光羽の弾撃を回避していく。勇人が回避しきれなかったそれを、初撃でビームライフルを喪った以外にはドライバ・フィールドに被弾することなく抜けていく。

 オーバードライバフォームの本来のスペックでは不可能な回避。それに驚いていたのは他でもない宗司自身だった。

 

(見える……聞こえる。敵の動きが、攻撃の来る方向が、敵意の音が分かる。シュバルトゼロでも!)

 

 一種の覚醒状態とでも言うべきほどに研ぎ澄まされた感覚。これまでの戦闘以上に動ける。これが本当に自分のやっている事なのかと疑わしく思える。

 誰かが力を貸している……誰かは知らないが、それでも今は。そう思いながらシュバルトゼロへと続くルートへ攻撃を掻い潜って接近していく。その事実にスタートは驚愕する。

 

「避ける?馬鹿な、このような!」

 

「いっけぇ!!」

 

 距離を詰め切ったところで一瞬の隙を突いてシールドビームライフルを速射する。放った弾丸が弾幕の間隙を縫ってシュバルトゼロに直撃弾を与えた。

 

「この私が……直撃だと!?このっ」

 

 不利と判断してか本気の一斉掃射の後、ビームランチャーを明後日の方向へと飛ばす。狙いは分かっており、一斉射を避けたところに狙ってきた一射をギリギリのタイミングで回避する。

 

(行ける)

 

 もはやこちらにシュバルトゼロの、スタートの攻撃は通用しない。回避した瞬間そう思いかけたところでスタートが勝負に出た。徒手空拳のままエラクスの急加速で距離を詰めてくる。それもビームランチャーを避けたタイミングで、満足な武器を失った左側の死角から攻撃態勢に入っていた。完全に避けることを予測しての攻撃に勇人が回避を指示する。

 

「ダメだ、回避を!」

 

「もはや遅い!もらった!」

 

『ソージ!』

 

「クッ―――――」

 

 ビームライフルで迎撃しきれない、避けるしかないと思いかけた時、唐突に思い出す。

 二度目に装依したときの人質救出、種命島でオースアビスの攻撃から進達を守った時、アンネイムド・フェネクス捕獲作戦、そして勇人警部が教えてくれた、見せてくれた可能性。

 それらが走馬灯の如く瞬間的に思い出される。そして見つけ出す。この場を切り抜ける画期的かつ逆転可能な秘策を。

 その行動を土壇場で繰り出した。

 

「まだ手は、あるんだよ!」

 

 迫る光刃。それがアーバレストに直撃する、直前で静止した。まるで何かに受け止められたかのように攻撃が止まる。だが何も見えない。

 起きている状況にスタートが困惑する。

 

「何だ!?私の知らない新兵器……戦術だとでも?」

 

 混乱は当然味方陣営でも起こる。

 

「相模君?何が……」

 

「なるほど、ドライバ・フィールドをそう使うか」

 

『ドライバ・フィールド?それがどうやってあんなピンポイントで……』

 

『そうか、宗司君ドライバ・フィールドを「腕にした」んだ!』

 

 光巴が正体を看破する。そう、破損した左腕の断面からドライバ・フィールドによる力場を「腕」に加工して形成、文字通り「手はあった」のである。

 騒ぎで状況を理解したスタートは絶句する。

 

「馬鹿な……ユグドラルヒットを狙ったのだぞ。単なる力場で、今の私は止まらないというのに!」

 

「領域で止まらないのなら、掴んでしまえばいい。そして……動きを、捉えたぞ!」

 

 ドライバ・フィールドでビームサーベルを掴んだままこちら側へと引き込む。そしてそのまま残っていた右腕部で顔面を殴りつけた。

 左顔面を強く打つ一撃。ドライバ・フィールドで威力強化も行った打撃で大きくスパークを散らせながら吹き飛ばす。スタートが驚愕の叫び声を上げながら飛ばされていく。

 

「うぉぉぉぉぉぉ!?」

 

 まともに入った一撃に味方からの歓声が沸く。それでも英雄と名乗るだけあって立て直しは早かった。だがその声には余裕のなさが見え隠れする。

 

「……ぐっ、私が……圧される?この戦闘能力、奴らだけのものではないな……誰だ、誰が手を貸している!」

 

 スタートの言う通り、先程から確かに何か自分達だけではない力が感じ取れる。これは、オーバードライバフォームを介してだろうか。一体それが誰なのか。一瞬だけそちらに気を集中させる。

 するとビジョンが脳裏に浮かぶ。浮かび上がるのはシュバルトゼロガンダムの姿。しかしその姿はクローザーではなく、どちらかと言えば今のシュバルトゼロに似ている。その機体の姿が掻き消え、姿を現したのは、銀髪から白髪へと変わった元隊長に似た人物。

 その人物が誰なのか。分からないまま現実へと引き戻される。だが同じように感じ取ったスタートの口から、その人物の正体が明かされた。

 

「!貴様の企みか、スタート!」

 

 自分の名を叫ぶスタート。だがそれだけで理解しうる。スタートの表側が抵抗し、システムを通じて支援してくれている。

 スタートの支援を受けて立ち塞がるこちらに、目の前にいる裏側のスタートは歯噛みをして苛立つ。遂には奥の手を繰り出す。

 

「この不愉快さ……同じ存在であっても許しがたい。貴様の時代は終わったのだぞ。ならば取り除いてくれる!刻よ聞くがいい!世界の産声を!」

 

『DNF Activation.「ハイパーメガビームサーベル ジオ・メガセイバー」』

 

 普段のシステム音声とは違うそれが名称を読み上げると、掲げたビームランチャーの砲口から超巨大な黄色のビームサーベルが顕現した。その長大さは軽くMSの高さを越え、対岸まで届きそうなほどの大きさだ。

 砲撃と見紛うそれを生み出す出力がどこにあるのかという疑問よりも、振り下ろされる危機に身構える。操るスタートがその様子を見てほくそ笑む。

 

「くっ……でかすぎるだろ」

 

『こんなのをぶつけるっていうの!?』

 

「貴様らの頑張り過ぎだったな。希望諸共、世界の都合を、流れを洞察出来ずに戦いを長引かせた罪を受け止めろ!」

 

 光の翼を大きくはためかせ、攻撃態勢に入る。このままなら東日本連合軍の艦隊諸共壊滅させられる。どうやっても止められそうにない。無理でも避けるしかないと思われた。

 ところが続くスタートの挙動で事態は一変する。振り下ろそうとする直前、機体の向きが反転した。

 

「何だ?」

 

『背中を向けた!?』

 

『違う、あいつが狙ってるのはゼロンだよ!』

 

 光巴の指摘で気が付く。その先には確かに撤退したゼロンの艦隊が、攻撃目標だった前線基地が見える。

 スタートもその狙いが正しいと語る。

 

「ご名答。エンゲージパートナーを消せば、表の私の抵抗も消える。世界を蝕む邪な者も消せるのだからな!」

 

「そうだとしても、そんなの!」

 

 そんなことは止めなくてはならない。提示した条件を、そしてなによりジャンヌ副隊長が死んでしまえば、本当に取り返しがつかなくなる。敵の殲滅よりも味方の生存を望むこちら側に動揺が走り、止めようと反射的に機体を動かされていた。

 だが明らかに行動が遅すぎた。後ろからでは展開した光翼で近づけそうにない。横からでもまだ危険すぎる。止めるためには正面しかない。しかし光翼のせいで大回りしなければならない。それでは振り下ろす動作に間に合わない。

 ややゆっくりと、しかし確実にゼロン領域へと超巨大ビームサーベルが迫っていく。もはや止める術などない、割り込んで止めることも敵わないと思われた。止まるようにと叫ぶ。

 

「やめろ……やめろぉぉぉ!!」

 

「もう遅い!これで世界は――――」

 

 変革の一撃。しかしその挙動が鈍くなる。明らかに振り下ろす速度が遅くなった。なぜそんなことが起こったのかは分からない。把握するには時間が足りないと分かる。

 そう思ったなら取るべき判断は一つ。無心に機体を全速力で、ビームサーベルが振り下ろされる先へと割り込ませる。既にない左腕から発生させたドライバ・フィールドの腕を介してDB発動を宣言する。

 

「行ける!DNF!」

 

『最高の護りを、ここに!』

 

 エターナも叫ぶ。その声に機体が応える。

 

 

 

 

『Authorize!DNF「ロード・ドライバ『アイギス』」

 

 

 

 

 ドライバ・フィールドで作り上げられた不可視の巨腕。大地すらも掴み上げるほどの巨腕が振り下ろされる光の柱を掴み、押しとどめる。

 接触と同時に左腕に尋常ではないほどの熱と重みが加わる。負荷に苦痛の声を上げる。

 

「ぐあああぁぁぁっ!」

 

『ドライバ・フィールドで……MSの装依システムを介してんのに、これは……くぅぅぅ!』

 

 受け止めることは出来たが、このままでは時間の問題だった。先にこちらの意識が尽きかねない。

 未だシュバルトゼロは光翼を大きくはためかせながらこちらを押しつぶそうとしている。力もしっかりと入っている。が、回線からは動揺が聞こえてくる。

 

「く……動け、シュバルトゼロ。何故だ、何故邪魔できる?黒和元ェ!!」

 

 それはもしかすると元隊長の抵抗なのかもしれない。まだ全力を出し切れていない。ならここを何としてでも死守する。

 

「ぐ……くぅ」

 

「私の勝利は揺るがない、もう揺るぎはしないのだ!墜ちろ、馬竜!」

 

 競り合う両者。それでもシュバルトゼロが優勢を保っていた。均衡が徐々に崩れていく。抑えきれなくなる、その寸前でシュバルトゼロに妨害が入った。

 

「落とさせはしない!」

 

『全機、一斉攻撃。落とす気で当てろ。光の翼を……消し飛ばせ!』

 

 入嶋に続いた新堂隊長の指示で支援のタイミングを見計らっていた捕獲部隊が一斉にシュバルトゼロを攻撃する。

 本来なら避けられる攻撃も、今はビームランチャーの出力の為にまともに動けない。火力全振りの攻撃が光の翼を喰らい尽くし、本体へと直撃弾を生み出していく。

 それでもまだ宗司達は気を緩められなかった。未だに現出するハイパーメガビームサーベル。その根元で、シュバルトゼロがいくつかの兵装を中破させながら未だに攻撃の姿勢を崩さない。

 スパークを散らせながらスタートは闘志を絶やしていない様子を露わにする。

 

「シュバルトゼロも限界が近いか……だが、この一刀は!」

 

「くっ!」

 

 再び力が込められる、瞬間を蒼き流星の如く肉薄する影がシュバルトゼロに突貫した。

 

「―――――よくやったぞ、相模、入嶋!後は、任せろ」

 

「何っ!?ぐぁっ!?」

 

「!勇人さん!」

 

 巡航形態へと変形したゲルプゼクストがシュバルトゼロに特攻する。特攻を喰らったシュバルトゼロが衝撃でビームランチャーから手を離す。直後ビームランチャーが出力を失いビームサーベルを停止、落下していく。

 粘り続けて遂に得た瞬間だった。ここから捕獲・奪還作戦は最終段階となる。

 

 

 

 

 待ちに待った瞬間。それを作ってくれた若輩達に言葉を掛けたのち、ゲルプゼクストのドライバ・フィールドの安定化を図る。

 既にエラクスモードは解除している。流石にエラクスの制御とドライバ・フィールドの同時運用は負担を掛けていた。ドライバ・フィールドをクローアームのようにイメージして捕らえるシュバルトゼロからスタートが離せと猛り狂う。

 

「くうっ……このような領域程度で、このシュバルトゼロがっ!」

 

「しつこい」

 

 ドライバ・フィールド越しに引きはがそうと拳を叩きつけたりクローを差そうとするシュバルトゼロ。いつまでもそうされると消耗が激しいので素早く対処行動を行う。

 変形した肩部に設置されたユグドラルエッジウイングを分離させ、素早く脳波コントロールとドライバ・フィールドの掛け合いでシュバルトゼロの腕部、脚部へと差し貫き、フィールドに磔とする。無論攻撃兵装となりうるテールユニットとウイングにも伸ばしたフィールドの斬撃で固定し、動きを止める。

 

「がぁっ!?う、動け、シュバルトゼロ……なぜ動かん!?」

 

 余程シュバルトゼロのパワーに自信があるようだが現実は無情なものだ。あの攻撃でエネルギーを使いきった可能性も否定できない。それでも今がこちらにとって最大の好機である。新堂達に機体へ取りつくよう指示する。

 

「今だ、新堂!」

 

「あぁ」

 

 素早く新堂達が捕らえているこちらの周囲に集まってくる。その中にはGチームの残りメンバーもいた。配置につくと、一斉に行動を開始する。

 素早く腕部、脚部、背部ユニット、テールユニット、そして頭部へと取りついた新堂や鈴川達。しっかりと掴んだのを確認して合図する。

 

「いくぞ、せーのっ!」

 

 引きはがそうと力を入れる彼女達。ところがそのタイミングでシュバルトゼロが足掻いた。

 

「英雄に対する無礼、許さん!英雄の前に跪け!!」

 

「っ!?新堂、一気に外せ。やられる!」

 

「なにっ」

 

 その時には既にシュバルトゼロからオーラというべきものが噴出し、周囲へと広がりを見せた。

 オーラに触れた機体達が次々と落ちていく。その中にはパーツを外すことに成功した機体もいる。勇人自身もドライバ・フィールドの操作で自機にも領域を張って防いでいた。しかしシュバルトゼロはまだ動いていた。

 スタートがこちらを指して告げる。

 

「ユグドラルと同じ物を使う者には効かなかったか。だが、まともに動けないはずだ」

 

「くっ、飛行制御が狂いだしている……この力、ユグドラルフィールド、いや、DNL由来の力か」

 

 感じ取った物から直感で推察する。理屈は分かる。しかしそんな技術こちらは発想にも至っていない兵器のはずだ。ましてや機体の制御を狂わせ、動作をエラーにさせるなどと。オーラのエフェクトが無ければ攻撃されたとも思わなかっただろう。効果は覿面だった。

 別世界の、神話時代の兵器は現代の技術すらも上回るというのか。それでも若輩者達に言った手前、これだけは持たせなければならない。しかし、この追加装甲を外せるパイロットが、MSが果たしているのか。その答えは敵であるスタートの発言が現実だ。

 

「もはや貴様の役割も、無意味となったな。こうなれば!」

 

「ぐっ、こいつ」

 

 未だ不自由なままの腕でドライバ・フィールドの拘束を無理矢理外そうとしてくる。こちらのドライバ・フィールドが機体制御と未だ侵食してくるオーラ、プレッシャーとでも言うべきものからシステムへの侵入の妨害に回しているせいで出力を十分に維持できていない。

 徐々にひび割れていくドライバ・フィールド。もう持たないと直感する。頭が割れるように痛み、普段は全く吐かない弱音と言うべき要請を回線にぶつける。

 

「ぐっ……誰か……もう、持たない」

 

「このまま引きちぎってくれる!」

 

 力を入れて押し破ろうとした、そのシュバルトゼロへ突如として機体が二つ飛来する。カメラでは分からない。しかしDNLの感覚がその特徴的な音波を告げてきた。その人物達の名を呼んだ。

 

「この感じ、蒼梨か。それにオースの!」

 

 勇人と同じカラーガンダムの青を担当するハイ・スナイパー、深絵がシュバルトゼロの頭部を掴んで引きはがそうとしていた。オースインパルスのパイロットの進も機体の腕部でシュバルトゼロの動きを抑え込みに入る。

 

「くっ、くぅぅぅぅ!!」

 

「ちぃ、狙撃型が前に。く、この推力は……!」

 

「こんの……意地でも止めてやるっ!」

 

 彼女の機体は狙撃型。よって基本的な戦場は後方支援となる。彼女の例外的な狙撃センスと独特な機体武装により遊撃戦すらも可能とするが、近接戦はほぼと言っていいほど向いていないはずだった。

 しかし、とある一点を除いて、現状を打破できる可能性を秘めていた。バックパックユニットは以前のシュバルトゼロガンダムを直線加速だけは凌駕するシロモノ。推力は非常に大きく、かつてのホリン・ダウン作戦にて近接格闘戦を経験した深絵用に一撃離脱戦闘を行えるほどのものとなっていた。

 今、その馬鹿げた推力がシュバルトゼロの頭部からドラゴンの頭部ユニットを引きはがそうと加速を行う。そして進のインパルスが加速で後ろへと向かってしまう二つの機体全体をその場に留めさせる。固定されたうえで後ろへと無理矢理引っ張られて剥がされようとする光景にスタートが危機感を覚えて制止する。

 

「ま、待て!これを引き剥がせばこの戦いの勝利は、君達の勝利はなくなるのだぞ!隊長という地位にあるのなら、その地位に上り詰めた実力と洞察力で世界を、戦況を見てみろ!君もそうだ。犠牲の上での勝利がどれだけ価値があるか!」

 

「例えそうだとしても、目的を果たせないのだとしても、救わなきゃいけないものがある!」

 

「ふざけんな!仲間の犠牲のある勝利よりも、仲間達が全力を出して止めようとするのを助ける方がいい!」

 

「私なら世界を救える!君達を、未来ある財産を生かせる!」

 

「そうかよ!」

 

「あぁ、そう。……でもね」

 

 拮抗し合う中での会話。スタートが懐柔しようともくろむ。しかし進は聞かず、一泊置いて、深絵は冷静さと共に成すべきことを語った。

 

「今私達が救わなきゃいけないのは、生死を彷徨う魔王の仮面を被ったエース!―――――そして、ジャンヌちゃんを取り戻せるのは……あなただけでしょ!元君!!」

 

 その宣誓と共にブラウジーベンガンダム・ライブラが一気に加速した。こちらもオースインパルスと共に全ての力、領域を使って自機とシュバルトゼロを固定する。

 引き裂かれるような金属音。スタートが抵抗を込めた絶叫を響かせる。

 

「動け……、動けシュバルトゼローーー!動けェェェェェェェェェェェーーーーーー―――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、シュバルトゼロの頭部から、ドラゴンの頭部が外れた。

 直後シュバルトゼロに張り付いていたドラゴンのユニットが自動的にパージされていく。パージされたパーツは海上へと落下していた別のパーツと集まって、もとの機竜の姿へと構成されていく。

 合体を終えた姿を見て深絵が警戒をする。が、不要であることをその機竜が告げた。

 

『大丈夫だ、異世界のガンダム達よ』

 

「えっ」

 

『もう私は、意識を取り戻した。すまなかった。シュバルトゼロを、黒和元を生かすには、あれしかなかった』

 

 あれしかない、とした機竜の言う通り、合体の解除されたシュバルトゼロは損傷個所が修復されたままで、接触回線越しの生体反応は微弱だが確かに検知されていた。

 生存の知らせを周囲へ、後方待機の自軍艦艇へと通達する。

 

「シュバルトゼロ、黒和元の生存を確認。暴走装置も解除された」

 

『そうか……よくやってくれた』

 

『ありがとうございます、勇人警部さん。それに、みなさんも』

 

 次元黎人の娘、次元光巴もHOWの紫音艦長と共に礼を告げる。シュバルトゼロをドライバ・フィールドで抱えたまま変形解除し、その腕でシュバルトゼロを抱き支える。

 暴走状態から脱したとはいえその体に意識は戻っていない。死の淵から生還したのなら相応にダメージが大きいのだろう。

 シュバルトゼロを注視しつつ、救援にやってきてくれた二人に言葉を向ける。

 

「助かった、深絵。お前のおかげだ」

 

「そんなことない。動きを止めてくれた勇人君、それに宗司君や千恵里ちゃんが頑張ってくれたから。それより、進君はどうして……」

 

 深絵がやや伺うような形で進に尋ねる。確かにあのタイミングで動けたのだとしてもあれほど怒り狂っていた進がシュバルトゼロの動きを止めに入ったのが不思議ではあった。

 すると進の口から短く言葉が紡がれた。

 

「別に、あいつらに感化されたのかもな」

 

 視線の先に映ったガンダムDNの姿。それを見て察する。

 ともあれ、シュバルトゼロは止まった。これ以上の滞在は無用だった。すぐさま撤退の準備へと入る。

 

 

 

 

 

 

 こうしてゼロンからの防衛戦と救出戦は終了した。東日本連合軍の敗北と、次なる戦いの布石を残して。

 

 

 英雄は眠らない。再び目覚め、決着がつくその時まで、真の英雄の誕生まであとわずか。

 

 

第4章 END

 

NEXT CHAPTER AND NEXT EPISODE

 




EP79はここまでです。

グリーフィア「いやぁ、宗司君大活躍じゃないの!」

ネイ「無くなった腕を、ドライバ・フィールドで形成する。元さん達とは違ったアプローチで、窮地を脱した宗司さん。もうエースの一員ですね」

黒和元の駆るシュバルトゼロを暴走状態でありながら押し留めた。それが例え元やスタートからの支援があったとしてもおそらく自衛軍や日本政府にも多少の影響があることでしょう。暴走した英雄を止めうる力があるとして喧伝されるかもです。もっともそれだけの実力が元々あったからこそ、引き出せたわけでもあるのですが。

グリーフィア「けど、そう言っているように、やっぱり元君と本来のスタートの抵抗も流石ってところよね~。その二人がいなかったら、やられていたかもなんて」

ネイ「元さんも、やっぱりジャンヌさんを殺させたくないって気持ちがあるんですね……当然と言えば当然ですが、その……」

思いが強い、ってことね。

ネイ「そうです。でも最後に止めたのはその想いを誰よりも知る深絵さんと、想いを爆発させがちな彼とは……」

グリーフィア「そうよね~。深絵さんもそうだけど、進君って前々話くらいにはふざけるなって言って殺してしまえって言ってたはずなのに。言っているように、宗司君の行動が変えたってことでいいのよね?」

それで間違いないですね。友直を助けた時、そしてそこから決死の攻防を繰り広げた宗司君がいたからこそ、この結果を掴みとれたというわけです。もちろん、それに必死に食らいついていった千恵里ちゃんも大事な要因ですよ。

ネイ「ちゃんとチームで勝ち取った、というわけなんですね。いいですね」

グリーフィア「まぁ呉川さんとクルツさんはなすすべなく動き止められたみたいだけども」

それは言ってはダメなのです(´-ω-`)とまぁ、第4章は無事終了。しかし、この戦いは続く第5章で決着です。

ネイ「当然ですね。次はジャンヌ・Fさんとレイアさんを助けないと」

グリーフィア「今度は元君が、何とでもなるはずだって言わなきゃね!」

まぁその主人公また曇るんですがね、ネタバレですが。

ネイ「えぇ……」

グリーフィア「それはヤバい。まさか助けないなんてこと……」

それは次章をチェック、ということで。それでは今回はここまでです。

ネイ「また次回、黒の館DNでお会いしましょう」

あ、ちなみに次回黒の館DNはネイさん達お休みです。

ネイ「えぇっ!?」

グリーフィア「どゆこと?」

今回1回分しかないんですね~。

ネイ「あぁ、お嬢様達しか出る必要がないんですね」

グリーフィア「なるほどね。じゃあお休みってわけだ~!」

あ、でもTwitterの告知はやってもらうかも。

グリーフィア「え~だる」

ネイ「あはは……では、失礼いたします」


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黒の館DN 双翼英雄譚編 第11回

どうも、今日はクリスマスイブイブ。今回は黒の館DN双翼英雄譚編の第11回解説となります。

今回解説内容は1話でまとまる長さとなっております。紹介を後に回したゼロンのシャアのMSと、世界を破滅へと導こうとした禁断のシュバルトゼロの紹介となります。

それではどうぞ。


 

 

士「さぁ黒の館DN、第11回となります」

 

レイ「はわわ……まさかこんなことになるなんて、第10回の時にも驚いたけど、訳が分からないよ」

 

ジャンヌ「途中スタートがどっちのスタートのことなのか分からなくなってきてゲシュタルト崩壊しましたね。でも本当にこんな形でスタートが出てくるだなんて」

 

士「ぶっちゃけここで裏のスタート、もとい現状は真スタートの覚醒はなかったんですよね、もとのシナリオだと。ただこの先の展開変えていく間にクロブの方でオーヴェロン参戦PV見てたらこういうシナリオ変更になってました(´-ω-`)」

 

レイ「あれが原因か!」

 

ジャンヌ「まぁ……調べてみると大分そちらから台詞引用していらっしゃるような様子でしたからね。カトンボを馬竜と変えてのは驚きましたが」

 

士「そこら辺は第5章末に書く予定の用語設定資料集の方に入れておきます。さて、今回の紹介はまず後回しにしていたシャア・アライバルの機体からお願いします」

 

レイ「そう言えば言ってたね。じゃあ、シャア・アライバルの機体、ゼロ・サザビー紹介!どうぞ!」

 

 

型式番号 ZAMD-04L

ゼロ・サザビー

 

 

機体解説

・ゼロンの英雄的エースパイロット「シャア・アライバル」が駆るDNL専用MS。建造は2033年である。赤いカラーリングにガンダムタイプに似た頭部を持つが、カメラはモノアイを採用している。

 元々シャア・アライバルは自衛軍のMSパイロットであり、彼が元々使用していたソルジアⅡカスタム通称「アケシキ」を基本素体として各部装甲等を最新式にアップデート、ユグドラルフレーム・ツインジェネレーターシステムなども採用し、性能はカラーガンダムに匹敵する。

 武装は基本的なライフル、サーベルに加えキャノンバインダーとそれに格納されたファンネルユニットという高機動系機体の装備から腹部ハイメガキャノン砲といった重火力機ご用達の兵装まで揃えており、上手く使えばシュバルトゼロ並みの戦果を挙げられる。

 そしてパイロットであるシャア・アライバルはそれらを十全に使いこなせる実力を持つ。機体性能と合わせて、HOWの最高戦力の一つであるカラーガンダム2機を相手にしてもなお逃がさないという恐ろしい実力を発揮する。

 一応言っておくと本機がこの性能を実現できたのはヴァイスインフィニットがあればこそであり、本機もまたヴァイスインフィニットの技術を再現した機体かつヴァイスインフィニット再生のための技術検証機であることを明記しておく。シナンジュ・ゼロンは本機をベースに作られた機体であるが、パイロットの腕を合わせると本機はそれすらも凌駕する。

 モデルは無論、シャア・アズナブルの最後の機体サザビー。そこに歴代搭乗機体の一つ百式を大元のベースとし、コンセプトを「百式および零式をベースにサザビーの要素を再現していく」ことに設定している。そもそもソルジアⅡは百式がベースの一つであり、そこから本機のベースとして選ばれた裏事情がある。

 

【機能】

・DNフェイズカーボン

 ヴァイスインフィニットから提供された技術。本機では赤いパーソナルカラーを再現し、異名通りの真紅の流星を実現している。GMでない分こちらの方が洗練され、高速機動中でも安定して防御力を得られる。

 

・ツインジェネレーターシステム

 ヴァイスインフィニットから提供された技術。本機が細身ながら高出力兵装を使える理由の一つ。

 完成度はシナンジュ・ゼロンの物より低いが、丁寧なオーバーホールにより今日まで互角以上のスペックを発揮できている理由の一つとなっている。

 

・ユグドラルフレーム

 機体内部に埋め込まれたDNL感応波対応フレーム。本機ではコクピット周辺以外にも機体の脆い腕部や脚部にも強化部材として内蔵し、機体の強度を上げている。

 シナンジュ・ゼロンでは憎悪のプレッシャーを発する媒介となっているが、本機は純粋に機体性能を引き上げるのに使っており、単純な力としては非常に高い結果を示す。もちろんユグドラルフィールドも発生させて介入することも出来る。

 元々はサザビーがユグドラルフレームに当たるサイコフレームを搭載したのが先だが、本機では他機のフレームを内蔵するようになった。

 

・流星システム

 本機に搭載されたリミッター解除機構。言うなればゼロン版エラクスシステムである。

 ジェネレーターに過負荷を掛ける点は同様で、過負荷を掛ける媒体がツインジェネレーターに設置されたクリスタル「アクシズクリスタル」で発動する。アクシズクリスタルはかつてディスティニーライダーにて検証されたアーダー・ゲルを基に開発したシロモノで、暴走性を克服し、いつでも解除が可能なクリスタルとして固形化させた。

 解除する場合はDNジェネレーターから引き離して隔離する方式を取る。システム使用中はクリスタルの影響でDNが紅い流星のように尾を引く。なお粒子が紅くなっているが、それでもちゃんと高純度DNである。

 元となったのは赤い彗星の異名。エクストリームバーサスシリーズのシャアザクの通常の三倍がモデル。クリスタルの名称はもちろんアクシズから。

 

【武装】

・バルカン砲

 頭部に設置された実弾砲。

 

・ビームショットライフル

 右腕で保持される大型ビームライフル。エネルギーパック方式で、予備弾倉はスカート裏に格納する。不使用時には腰背部に装備される。

 やや大型のビームライフルだが、本機は軽々と扱う。通常のビームに加え、拡散弾、徹甲弾級のビーム弾も発射が可能。

 モデルはサザビーの同名装備。

 

・ビームサーベル

 基本的な格闘兵装。腰背部のソケットに保持されて装備する。ソルジアⅡカスタム時代からの継続武器となっている。

 

・腹部ハイメガキャノン

 腹部と胸部の間に設置された高出力ビーム砲。ジェネレーター直結式の装備。

 本機の火力の中でも1,2を争う威力の武器。正面方向にしか撃てないがそれでも十分。背部のメガ・ビーム・バズーカⅡと直結させることでバズーカのエネルギーを増幅させて撃つモードが存在する。

 モデルはサザビーの腹部メガ粒子砲。

 

・シールド

 左腕部に装備するシールド。機体のサイズに対してやや大きめとなっている。表面にはゼロンの紋章が描かれる。

 高性能機にしては珍しく防御に関して特別な機能を持たない。代わりにスラスターを内蔵して回避行動に寄与する。加えてシールド裏にはミサイル4発、ビームトマホーク1本を装備する。

 モデルはサザビーのシールド。武装も概ね同じ。スラスターのみ付け加えられている。

 

・ビームトマホーク

 シールド裏と腰背部スカート裏に装備する近接格闘兵装。計三本を装備する。

 トマホークの名の通り、斧として使える他、ビーム刃を伸ばしてビームサーベル、そのままでもヒートホークとして使用でき、なおかつ投げて投擲武器、あるいはビームコンフューズと呼ばれる対ファンネル戦術が取れるなど性能は高い。

 モデルは原型機の同名兵装。

 

・フルバインダーバックパック

 本機のバックパック。プロペラントタンクとメガ・ビーム・バズーカⅡ付きのバックパックに、側面から伸びたアームで多目的ブースターバインダーを接続する形。

 ブースターバインダーとメガ・ビーム・バズーカⅡのブースターが使え、想像する以上に機動性に寄与する。バインダー自体には先端部にビームキャノン、後部カバー内部にファンネルユニットを計6基備え、射角によってはメガ・ビーム・バズーカⅡも使えると攻撃性能も隙を見せない。

 モデルは大元にガンダムビルドダイバーズリライズのガンダムアドバンスドテルティウムのヒュージブースターをベースに、メガ・ビーム・バズーカⅡの位置は百式の改造機であるガンダムビルドファイターズトライの百万式、バインダーの武装構成は百式のベース機に設定された零式弐型とそもそもの原型機サザビーの武装を配置した構成となっている。

 

・メガ・ビーム・バズーカⅡ

 背部に追加ブースターとして装備される大型ビームバズーカ砲。メガ・ビーム・バズーカの発展形兵装。

 現行のサイズよりも小型化しているが、威力はそれと同等となっている。ブースターとしての機能も簡略化してより高出力となった。

 運用も手にもっての射撃であるバズーカモードとアームを展開してのバーストモード、そのバーストモードから胸部のハイメガキャノンとドッキングさせて撃つハイパーバーストモードが追加され、本機を万能機たらしめる要因となっている。

 モデルは百式のメガ・バズーカ・ランチャー。百万式のメガライドランチャーに近い。ビームランチャーとの合体形態はドーベン・ウルフのビームランチャーもモデルとしている。

 

 

レイ「以上がシャア・アライバルの機体、ゼロ・サザビーってことで」

 

ジャンヌ「なんでしょう、サザビーの武装ちゃんと再現しているのに名前だけのような気がします」

 

士「まぁ武装はほぼ持ってきているんですが、こちらでは大型機にならなかったイフを辿っています。そもそももとの機体がかつてHOWでも採用されたソルジアⅡのカスタム機をベースにしているので」

 

ジャンヌ「ソルジアⅡ……ってそんなに画期的な機体でしたっけ?」

 

士「というより外見ベースがそもそも百式だったんですね。それに癖を取り除いたおかげで割とカスタムしやすい構成になっていたという設定をここで入れています」

 

レイ「まぁ裏事情って言っちゃってるけどね。でもちゃんとその性能はバケモノだったね。カラーガンダム2機を止めるって……」

 

士「もしかすると暴走状態のシュバルトゼロと互角の戦い繰り広げていた可能性は高いです。とはいえリスクも考えてゼロン側は出さなかった訳ですが」

 

レイ「それはありそう。でも出てたら出てたで元君、シュバルトゼロを奪ってた可能性もあるよね」

 

ジャンヌ「それを考えるとやはり宗司さんと千恵里さん、勇人さんは本当に頑張ってくれたと言わざるを得ませんね。もちろん最後を決めた深絵さんと進さんも、他の方々もですが」

 

士「ちなみに宗司君のあれは劇中でスタートが力を貸していたとみられていますが、実際のところスタートが力を貸していたのはあくまで機体制御系とDNLコントロールユニット。精度を上げてドライバ・フィールドの形成や、回避の支援を行っていただけで大元は宗司君達の実力によるところが大きいです」

 

レイ「おおー!」

 

ジャンヌ「つまり、今後それだけの力を、彼らが発揮できると?」

 

士「宗司君だけじゃない、千恵里も進も次章からはその戦果を認められて新型機が配備される展開です。もっとも喜ぶわけではないんですが」

 

ジャンヌ「えぇ……」

 

レイ「確かに、進君も協力してくれたとはいえってところがあるし、何より元君が……ショック受けてそう」

 

士「そんなところも気になってくるわけですが、続いてはその元の機体の新たな姿の紹介です」

 

レイ「いよいよ来たな~暴走形態!」

 

士「まぁ単純に暴走形態ではないんですがね。とりあえず紹介して頂けたら」

 

ジャンヌ「ええと……うわ、これ名前長いですね。では紹介しますのは「シュバルトゼロクローザー・クリムゾンフェイズ、またはクリムゾンフェースです、どうぞ」

 

型式番号 DNGX-XX000-SZGU+DNMX-XX000-APⅡ×CF

シュバルトゼロクローザー・クリムゾンフェイズ シュバルトゼロクローザー・クリムゾンフェース

 

 

機体解説

・シュバルトゼロクローザー背面にドラグディアの象徴「クリムゾン・ファフニール」が合体した「合神形態」と呼ばれる姿。

 元々象徴はガンダムのサポートを行っていたと言われてはいたのだが、クリムゾン・ファフニールはサイズが小さく、象徴が機体パーツを形成、分割し、装着させるこの合神形態はないと思われていた。ところが実際は違い、確かにその合神形態は存在していた。

 真実はそもそもクリムゾン・ファフニールそのものがシュバルトゼロと合体することを考えられていたのである。合体方法はシンプルで、クローズフェニックスと同様に背部に合体する。だがその際に両機体の間で変容を起こし、無理矢理ドッキングユニットを形成して合体させる。そして頭部ユニットをシュバルトゼロガンダムの頭部を「かみ砕く」ように装着し、システム系統に割り込んで合体にエラーが起きないようにして完了する。この際邪魔になるであろうエリミネイターソードはクリムゾン・ファフニールの頭部があった部分へと接続される。

 名称が二つあるのはこのかみ砕く合体に関係があり、この合体時にモニターが割れるようなエフェクトが起こった時、それは搭乗者保護や戦闘不能時に自立稼働する必要のために機体操作系に介入し、発動する第一形態クリムゾンフェイズと呼ばれる所謂「暴走形態」となる。段階を意味するその名称では、災害の如くクリムゾン・ファフニールの闘争本能とシュバルトゼロのAIスタートのかつての記憶が封印された領域「OVER-ON(オーバー・オン、またはオーヴェロン)」が刺激され、暴れ狂うのだ。反対に第2形態クリムゾンフェースは制御された状態で、搭乗者の意志でその力を振るう。

 実際はシュバルトゼロガンダム単体。あるいはGワイバーンと合体する事を想定されていたが、このように無理矢理合体することも運用にあることから、それらを見越してクリムゾン・ドラゴニアスが設計したとみられる。この想定があったためクローズフェニックスとも変容を起こして合体が可能だった。加えてクリムゾン・ファフニールの動力はツインジェネレーターシステムであり、何と本機は類を見ない「ツインジェネレーターシステムのダブルジェネレーター仕様」というとんでもない仕様でもある。とはいえ現状その豊富な出力を扱う方法がない為、現状ではエネルギーを持て余すということしかないが、暴走状態ではそれが却ってエネルギー切れがないという絶望を突きつける。

 武装に関してはクリムゾン・ファフニールが持つ武器を新たに使用可能になった程度だが、それらも威力強化や性能向上が見られる。両モードでの大きな違いとして、頭部がフェイズ時にはかみ砕いた状態でそのままなのに対し、フェース時は頭部上部にある棘パーツが分離して側面へと移動し、ファフニール家先祖とされる初代ファフニール卿の飾りにそっくりな姿となる。これもまたおそらくドラゴニアスの遊び心と思われる。加えてクリムゾン・ファフニールの腕部がシュバルトゼロの腕部に合体していればフェイズ、脇部分に待機していればフェースなど外見的違いも案外多い。

 合神形態の戦闘能力は絶大であり、本来なら如何なるMSでも寄せ付けない。エラクスシステムでも止められないと言われていた。ところがフェイズ時は暴走状態にあった事、何よりおそらくマキナ・ドランディアの1400年前にはなかったであろうドライバ・フィールドの特性やツールバスターの特性を把握しきれなかったこと、そして何よりOVER-ONの人格の慢心でシュバルトゼロから剥がされ、暴走を停止させた。フェースは現状未登場だがここで言及しておく。

 コンセプトは「仮面ライダーの暴走フォーム要素を取り入れたシュバルトゼロ」。フェイズが暴走、フェースが暴走克服形態と言える。が、もっと言ってしまうと本形態はパイロットにして主人公黒和元の外見イメージモデルである「マシロ・オークス」が運用したMS「オーヴェロン」の機構が盛り込まれたものとなっており、OVER-ONもシロッコの残留思念と言えるバイオセンサー“0”ver-ONが基。次章ではこれがスタートの古の記憶として元とスタートを苦しめることとなる。

 ちなみにカラーリングはクリムゾン・ファフニールの赤が加わるのだが、その際の姿はまるで血を掛けられたかのよう、血染めのシュバルトゼロといった外見となる。ある意味罪を自覚している元の姿そのものと言えるか。

 

 

 

【追加機能】

・エヴォリュート・アップ

 物質変容・進化機構を攻撃に使用することが可能となった。作中では圧倒的に届かないであろうローゼンシシャをテールユニットで貫いた点が該当する。

 

・ツインジェネレーターシステム

 クリムゾン・ファフニールも搭載する高純度DN生成量乗化システム。ツインジェネレーターシステムのダブルジェネレーターは今までに類のないもので、本機にエネルギー枯渇という概念はないとされている。

 

・OVER-ON

 本機で新たに収められているわけではないが一応こちらで紹介する。

 シュバルトゼロのAIにして元英雄「スタート」が失っていたマキナ・ドランディアの建国当時の記憶がブラックボックスとして具現化したもの。読みは「オーバー・オン」もしくは「オーヴェロン」。

 独立したAIとなっているがスタートの失った部分、所謂機竜創世記時代の裏側の経験が大半を占め、形成した疑似人格はかつてのエンドのような自身の力に絶対な自信を持つ尊大な性格となっている。

 この領域が今になって出てきた理由として合体したクリムゾン・ファフニールの頭部の噛み付きが何らかの刺激をした結果と思われる。暴走形態の本来の凶暴な様子を抑え込むほどに冷静な言葉でしゃべるこの人格の姿は極めて異常で、戦闘能力もそれに合わせて補強されている。よってこの機能は本来のクリムゾンフェイズでは想定されていないものとなっている。

 しかし言ってしまえばこの人格こそスタートの本来の力とでもいうべきもので、隠された歴史と合わせてスタート本来の力を借りられると思われる。

 モデルは機動戦士ガンダムヴァルプルギスの「シロッコの残留思念」。

 

 

【追加武装】

・スレイヴ・ドラゴニックヘッド

 頭部ユニット。クリムゾン・ファフニールの頭部そのままがシュバルトゼロの頭部に噛みついて形成する。

 側面にビームバルカン砲が追加されるほか、口部に当たる部分にビームを収束させて放つ「バスターシャウト」が可能となっている。なお頭部にはファフニールの思考ユニットが存在するが、胴体本体にも主機は存在し、何ならシュバルトゼロ側のプログラムにデータのみ逃げるというやり方も存在する。

 

・スレイヴ・ファングクロー

 手甲部分、あるいは胸部側面の脇部に装備されるクリムゾン・ファフニールの腕部。一種の遠隔操作兵装である。

 強靭な爪はDNフェイズカーボン製のMSの装甲すら容易く貫ける。また指先にはビーム発射口があり、バルカン、もしくはビームサーベル形成が可能。

フェース時には第三、第四の手として扱える。一方でフェイズ時には腕部の強制操作のための端末と化しており、敵味方問わず対象を切り裂く呪いの装備となる。

 また本兵装はGワイバーンのそれと違って手に直接合体する方式ではないため、通常の手も使用可能で武器の使用を可能としている。

 モデルとしてはエヴァンゲリオン新劇場版Qにて初登場したエヴァンゲリオン第13号機の第3,4の腕。もっとも形状は全く似ていない。

 

・レッグスラスター

 クリムゾン・ファフニールの脚部が変形・変容して形成される脚部兼後方スラスター。

 フェイズ時とフェース時で使い方が違う。フェイズ時は脚部の強制操作の為に膝から下の脚部を覆う増加装甲となり、コントロールする。その際脚部はドラゴンの爪を持ったものとなり、蹴りや踏みつけに威力を発揮する。対してフェース時には分離せずに本体の部分に戻っている。この状態では増速ブースターとして機能し、加速に役立てる。この加速に用いられているのはビーム砲であり、前方に向けるか、後方の敵を撃ち抜くビーム砲としても使用が可能。

 

・ノイズウイング「クリムゾンウイング」

 クリムゾン・ファフニールのウイングをそのままウイングとして運用する。が、本機構も特筆すべき点がある。

 本機が放出している蒼い粒子はDNであってDNではない。正しくは高純度DNを超高圧縮させて物体とも気体とも取れる状態にしたもの「クリムゾンDN」であり、本来触れれば簡単に物を切り裂いたりする代物である。

 が、このウイングの発生部はそれを任意で無害化・有害化する機構を持っており、また自由に形を調整することで防壁と言った物理的物質として運用することが可能となっている。L1にて元達が騎乗している際はこの機能を利用している。またもしこの機構が破壊される場合には強制的に放出が止まり、非常用のジェット推進、あるいは電動フロートシステムに切り替わるので最低限安全は確保されている。

 L3第4章では古のスタートがここから羽の弾丸として放出し、攻撃に転用している。

 フェイズでは破壊のため、フェースでは護るために用いられると思われる。

 モデルは流星のロックマン3のクリムゾンドラゴンのウイング。

 

・テールストライカー

 尾部のユニット。合体時はテールスタビライザーとして機能する。

 基本的には機体のAMBACや加速方向変更に用いられるが、名称の通り攻撃も想定された兵装で、射撃に加えエヴォリュート・アップの併用でロングレンジを貫く槍のような使い道が出来る。

 Gワイバーンのテイルバスターと同系統の兵装である。

 

 

・エクスターナル・メガビームランチャー

 OVER-ON活性化時に呼び出した長距離砲撃用兵装。エクスターナルは「外部、外からの」の意味。

 転送して装備していることからマルチ・スペースシステムで呼び出しているようなのだが、本兵装はHOW製ではないことが明らかになっている。のちの調べでこれはマルチ・スペースシステムを土台にクリムゾン・ファフニールから別の空間にアクセスして呼び出していたことが判明し、おそらくこれがマキナ・ドランディアの1400年前シュバルトゼロが装備していたオリジナル兵装であるとみられる。

 性能としてはビームランチャーの使用がメインとなるが、ブースターとバーニアが各所に設けられていて遠隔での大型ビットとしての使用も可能。またビームサーベルの発振が砲口から可能で、その大きさから大型ビームランサーとしての使用が求められる。

 非常に威力の高い兵装なのだが、シュバルトゼロのデータによるとこれでも劇中では最大出力のための要求値が現行のシュバルトゼロの平均出力より高すぎるとされており、オリジナルのシュバルトゼロはこれよりも更に高い出力を持っていたと推測できる。

 劇中ではDNFハイパーメガビームサーベル「ジオ・メガセイバー」を発生させた。その全長は撤退している敵の旗艦アークまで余裕で届くほどの長さを誇っており、もしこれが振り下ろされていたらヴァイスインフィニット諸共ジャンヌを殺してしまっていた可能性が高い。なお持ち手はかなり大きく、両手持ちがほぼ必須か、あるいは本形態時のスレイヴ・ファングクローで持つのが基本となる。

 モデルはオーヴェロンと合体するメッサーラ・グラシュテインのメガ・ビーム・ランチャー。あちらと違い素で遠隔操作が可能な機能へと昇華している。

 

 

・エクスターナル・シュツルム・ブースター

 初登場時には装着していない、分割可能なシールドブースターユニット。第5章にて登場予定。

 頂点部にメガビームキャノン、底部側には可変式ビッグアーム、その内部に連装ビームマシンキャノンが装備されている。元々はアタッチメントに接続する形で装備される増速機兼シールドだが、あらゆる場面・武装と組み合わせられるように上下で分割し、別のシールドと接合して機能を追加したうえで使用可能と拡張性が高い。本世代のシュバルトゼロにおいてはどちらもシールド裏にそれぞれ裏向きで接合し、本来の機能を維持したまま運用を行っている。

 これらユニットは同じ名前を冠するエクスターナル・メガビームランチャーと合わせて騎乗型支援機「エクスターナル・グラシュテイン」と呼ばれる機体を構成する。その際の動力源はエクスターナル・メガビームランチャー本体の超高圧縮コンデンサータンクとシールド側の分割タンクで補い、また騎乗するMSからも供給される。

 Gワイバーン、クリムゾン・ファフニール(クリムゾン・ドラゴニアス)、そしてこのエクスターナル・グラシュテインは全てかつてスタートの頃のシュバルトゼロの拡張兵装であり、これらをすべて使いこなした際の合体した姿は気になるところであるが、今現状では再現は不可能(Gワイバーンが既にクローズフェニックスとなっている)。しかしその想定から現状のシュバルトゼロの最大装備は可能となっている。

 これらもモデルはメッサーラ・グラシュテインとそのブースターユニットがモデル。

 

 

 

ジャンヌ「以上が紹介、になるわけなんですが……また長い」

 

士「それは許して(;´Д`)まぁ初期はエクスターナル系列の武装なかったんですよ」

 

レイ「まぁなんとなく分かるよ。明らかオーヴェロン周りの説明が付け足された部分なんだろうし。でも無理矢理ねじ込んでよかったの?」

 

士「そもそも元君とヴァルプルギス関連は組み合わせようとはしていたんです。が、PVで衝動が抑えられなくなって大幅に搭載装備前倒しになったって感じです。なので設定上は組み合わせても展開は修正可能ってわけ」

 

ジャンヌ「まぁわざわざ元さんの姿のモチーフをマシロさん使っているので、この作品の傾向としては明らか何かありそうというのは想定できたわけですか」

 

レイ「でもまさかスタートが、パプテマス・シロッコに近いところがあったなんてね」

 

士「それに関しては劇中でも言っているけど裏面が出てきているので。理性で抑え込むところが駄々漏れになっているイメージです」

 

レイ「うわっ、タガが外れているんだ……」

 

ジャンヌ「なんか、他人事と思えないです……じゃなくて、つまり本来のスタートはこれまでの表と今回の裏、それらを合わせたものと」

 

士「そういうことです。で、まぁこの機体の解説になるわけですが、本来は純粋な強化形態です。暴走形態もパイロットがあくまでも気絶したり戦闘続行不能になったりした時に発動する保護機能でしかない」

 

レイ「みたいだけど、それがどうしてこんな」

 

士「鍵は創世記時代と何が違うかです」

 

ジャンヌ「何が、違う?創世記のシュバルトゼロと……」

 

レイ「うーん……なんだろ。ジェミニアスって存在そのもの?クローザーとか」

 

士「それらは現代改修というハードウェアの問題ですね。問題はソフトウェア、ずばりスタートというAIそのものです」

 

レイ「あー!確かに、元々はスタートがシュバルトゼロのパイロットだもんね」

 

ジャンヌ「元英雄、その存在が機体側のコンピューターに残っていた。それははたから見れば確かにバグだったわけですか。しかも表面上は善の方しか出ておらず、裏は頭部に噛みつくことで刺激されて出現すると」

 

士「そういうわけです。劇中でもこのメカニズムはエンドの口から語られていますね。機体と一体化しているから、頭部を噛めば頭が痛みを感じる、それで刺激されるというわけです」

 

レイ「てことは今後ずっとこれに悩まされるってわけ!?」

 

士「解決しなかったらね」

 

ジャンヌ「……どうするんでしょう。ジャンヌ・Fさんもいない中、ヴァイスインフィニットと戦うならもうこのモードしかないような気がしますが」

 

士「ライダーの暴走フォームも、使わなければ勝てないというジレンマの下使われる傾向にありますからね。果たしてこれをどう克服するのかあるいは向き合っていくのかが第5章の命運を分けると言っていいでしょう」

 

レイ「うわーやっぱそう言う~」

 

ジャンヌ「元さん、大分前から余裕がありませんでしたが、今回ので大分精神的にも肉体的にもダメージを負ったはずですし……不安しかないです」

 

士「まぁそこらへんはこの最後の予告で分かるかもね」

 

レイ「予告今回もあるんだ!」

 

ジャンヌ「まさかこれからずっと……?」

 

士「流石にずっとはない、と思いたい。それではどうぞ」

 

 

 

 

 多くの犠牲者を払って、現実へと戻された神殺しの魔王。しかし、その心は完全に砕けつつあった。

 

「もう、放っておいてくれ。俺に、出来る事なんて、ない」

 

 同様に、CROZE部隊の三人のパイロットも作戦で受けたショックが徐々に心を蝕んでいく。

 

「やっぱり、ダメなのか。俺があいつを助け出す、っていうのは」

 

「あいつしか姉様は助けられないのよ!それなのに、あいつはっ」

 

「元隊長があんなんじゃ、私も、私自身をどうにか出来るとは思えないよ……」

 

「千恵里、ちゃん……」

 

「助けたっていうのに、意味ないじゃんか!こんなんじゃ、死んだ月子も、残された芽衣も、報われない、っ!」

 

「お兄ちゃん……」

 

 彼らに配備された新型機にも向き合えない程に弱まっていくパイロット達。そんな彼らを心配しながらも、大人であるHOWの上官達はどうにかゼロンと交渉を続けていく。

 HOWの司令次元黎人も応援を引き連れて愛智の地へと降り立つ。そこには、かつて次元覇院と戦い、除隊して平和な生活を送っていたはずのあの女性もまた家族と共に訪れる。

 

「そんなのでだらしないんじゃないですか、深絵さん、ゆめのん」

 

「!かほちー……どうしてここに」

 

 組織を抜けた女性はかつての仲間として、そして先輩としてアドバイスし、やがて兄と妹として向き合う。

 

「何やってんのよ!元にぃ!」

 

「俺に、俺には、誰も救えないんだよ!どうせ!」

 

 すれ違ってしまった兄妹の想いがぶつかり、抑え続けてきた慕情が綴られる。

 

「お願い、私と、このまま一緒に……」

 

 返答した男の覚悟は、再び気高き志を胸にした復讐鬼と相対する。

 

「俺は勝つさ。魔王を今度こそ討伐し、HOWや日本政府を殲滅する!」

 

「俺に護るモノはない。だから、取り返す」

 

 激化する戦闘、窮地に再びあの力が舞い降りる。

 

『貴様……人質を殺すつもりか』

 

「覚悟が無きゃ、もう戦えない」

 

『よせ、元!その力は!』

 

『Standby OK?』

 

「覚悟するさ」

 

 次章、機動戦士ガンダムDN LEVEL3 双翼英雄譚編 第5章

 

 

「やはり私がいなければ、時代も世界も変わらんよ」

 

 

機動戦士の神話(ガンダム・ヒストリー)

 

 

「絶望の運命を、ゼロに巻き戻してみせろよ、シュバルトゼロ!いや、ガンダム!」

 

 

 

 

 

士「以上が予告でした」

 

レイ「華穂ちゃん再登場!」

 

ジャンヌ「どうか、彼に未来を……」

 

士「次章をお楽しみに。それでは!」

 




と、今回で第4章終了となります。ここまでご覧いただきありがとうございます。

次章では再びヴァイスインフィニットガンダムとの対決をご覧いただくこととなるでしょう。
暴走するシュバルトゼロを自ら望む元。それしか勝てないと手にした力は、果たして届くのか?何を考えてその力に手を伸ばしたのか。それらに加え、懐かしのあのキャラとの会話も織り交ぜて、再び黒和元が立ち上がり、起死回生を狙っていく様をご覧いただけましたらと思います。
もちろん、L3主人公である宗司や千恵里達の活躍も新たな機体と共に描いて行こうと思っております。

それでは第5章でもよろしくお願いいたします。


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第5章 機動戦士の神話(ガンダム・ヒストリー)
EPISODE80 選ぶゼロ・エンド・インフィニット1


どうも、皆様。本年最後の更新です。第5章突入となります。EP80、81の更新ですよ~。

レイ「元君は負けた……でも、きっと取り返すって信じてる!」

ジャンヌ「それが黒和元という私達の主人公ですしね。レイアさんを取り返すってところに、ジャンヌ・Fさんも加わっただけ……きっと、やってくれますっ」

果たして予告は無視されるのでしょうか?それでは本編へ。

レイ「やめて!必死に忘れようとした!」

ジャンヌ「……元さん、また悩むんですよね……それどころかGチームまで、それっぽいと言いますか」


 

 

 ポート基地攻略作戦から二日が経とうとしていた。この戦いの結果に対し世間の話題はとある一点に集中する。

 HOWの隊長格の一人、ジャンヌ・ファーフニルが捕虜となった。それはゼロンからの放送で国民が瞬く間に知ることとなった。同時にシュバルトゼロガンダム・ジェミニアスの敗北もまた知られる。

 ゼロン側の国民は歓喜に沸き立ち、このまま殺してしまえと暴力と殺意を迸らせる。一方日本政府側、東日本側はあまり喧伝もないことから騒ぎはなかったものの、不安と不信感が広まりつつあった。もちろん直接助けられた者達は事の重大性をよく知り、心配も少なからずあった。

 ゼロンの戦勝ニュースには捕虜となったジャンヌのあられもない姿が映る。ボロボロのHOW制服は痛々しく傷跡を見せ、手錠をされたジャンヌが俯く。そんな映像が街中のテレビにも映る悲惨な状況。

 それを打開するべく、HOWも自衛軍も反撃のための準備を行っていた。ゼロンとの交渉、否、再対決の為の約束は既に結ばれている。しかし、どうしてもそれに移れない理由があった。

 一つは必要人員の確保が難しいこと。特にCROZE部隊Gチームのメンバーが半数戦闘不能状態へと陥ってしまっていた。欠けたのではなく、戦闘不能状態なのは戦いの後にそれらニュースを見て心身的にダメージを受けてしまったからだ。

 そしてもう一つ、これこそ致命的な原因。黒和元の再起不能。再び戦うはずの彼が今、その戦意を喪失してしまっていたのである。

 崩壊しつつある戦線を立て直すべく、HOWのエースパイロット達が奮闘する。再び対峙する為に。

 

 

 

 

「……どうしたら、いいんだろう」

 

 ふとそのように呟く。深絵は今、新四ツ田第1基地の一室で夢乃や勇人と共に机を囲んで悩んでいた。理由はもちろん、山積みになった課題、元とCROZE部隊Gチームの一同の復帰をどうすればいいのかということだった。

 端的に言うと、現在元は意識を回復させている。医療施設収容後程なく目を覚ましていた。撃墜時に負った傷もあの暴走形態、現時点では「クリムゾンフェイズ」と呼ばれる状態を経て急速に回復していた。けれどもそれは肉体的な話。精神面はどうにもならなかった。

 その時の光景が蘇る。回復した元はジャンヌを捕虜とされたことに強く自分を責めていた。

 

『俺のせいだ……俺に、力がなかったから』

 

 彼女が攫われたのは自分の力不足だと責めた元に、深絵達はそんなことはないと言おうとした。けれどもそれを須藤司令が認める。

 

『そうだな。力不足だったのは間違いないだろう。力が不足していた、今回は』

 

 須藤司令の言いたいことは深絵にも分かっていた。いつもなら欠けているはずのない力が、元とジャンヌの絆が、重すぎたせいで踏み込み過ぎたことを既に知っている。敢えて口に出せなかったこちらに代わって須藤司令は代弁してくれたのだ。

 その言葉を元はそのまま受け取る。自身の力不足、実力がまだ足りないという方向に。

 

『今回だけじゃない。いつも、俺は……奴に』

 

『そんな、こと』

 

『……そんな性格だからお前は奪われ続けるんじゃないのか』

 

 そう言い放ったのは勇人だった。心無い発言ではと夢乃が庇った。

 

『そういうの、今言うべきじゃないんじゃ』

 

『事実だろう。そのせいで奪われるきっかけも作ったようなもの。今回の作戦は中止するべきだったと思わないか?』

 

 勇人はそのように言った。実際深絵も彼の言うことは正しいと思っていた。自身が対峙したシャア・アライバルの駆るゼロ・サザビーはとても今の深絵達では太刀打ちできない。彼が最高峰のDNLである以上、元と同等に撃破が困難であるように思えた。

 それだけではない。そもそも、あれだけ互角の戦いを展開していたのなら奪取した後の作戦展開が不能だと元が気づいてもおかしくなかった。その判断を出さなかった元に、自分達がもっと早く撤退を打診していれば、あるいは無理にでも止めに入ればよかったのではないか。もっとも後者は目の前に立ちはだかったシャアを越えられなければ無理なはなしではあったが。

 それを夢乃も感じていたのか、反論には出なかった。けれどもその表情は不満を見せ、元の方をちらちらと見ていた。当の本人の元はそれら意見に対しやや投げ槍気味に答える。

 

『……もう、いい。俺には、彼女を救う資格なんてない』

 

『元君!』

 

『もう放っておいてくれ。俺に、出来る事なんて、ない』

 

 言って医療用ベッドに潜り込んでしまう。何も出来ない、それは奪われてしまったことと、暴走して味方に損害を与えたことに対しての言葉だろうか。暴走の原因も自身が撃墜されて意識を、生死を彷徨った故のコントロール不能。それも未熟だった自分のせいだと言わんばかりに。自分が、仲間が引き起こしてしまったことに目を向けられずにいた。その姿に深絵は何も言えなかった。言えずに去ってしまった。

 須藤司令と勇人は今刺激するのは良くないと言った。それは正しかったのかもしれないが、それでも深絵の中では納得できない部分が大きかった。

 同じくその時のことを思い出した夢乃がもう一つの危惧について触れた。

 

「元さんの問題だけじゃない。Gチームの方だって……」

 

「……あいつら、か」

 

 ため息を吐く勇人も分かっている様子だ。CROZE部隊のGチームは今回、自分達にとってもっとも厄介な敵と遭遇している。一人は殺してしまったと思っていた幼馴染、一人は生き別れの妹、そして最後の一人は勝手に造られていた妹のクローン。ゼロンには人の心がないのかと言いたくなるほどの仕打ち。加えて最後の一人は味方に仲間を殺されている。それを行ったのが他でもない元であった。一度は元の為に奮起してくれたとはいえ、戦闘終了後のニュースと元の現状を聞いて思い悩んで、怒りを再沸騰させてしまっていた。

 そのうえもう一人、重篤な状況に陥ってしまっている者がいる。相模宗司のパートナー、エターナ・ファーフニルだ。その理由は言うまでもなく姉のジャンヌ・ファーフニルが捕虜にされたことにある。

 ニュースで晒される姉の身体。テレビで良いように言われるその屈辱に耐えきれず、彼女は怒り狂い、泣き叫んだ。

 

『もう、これ以上姉様を辱めないでぇ!!』

 

 テレビのニュースに対し行き場のない怒りを叫んでからエターナは部屋へと閉じこもってしまった。当然だろう、身内があんな目に遭わされてしまっては憤るのも無理はない。同じGチームのクルツ隊員が食事を持って行ってくれているらしいが、あまり食べないとぼやいていた。

 他の小隊も先の戦闘で大幅に戦力を削られている。補充の人員はどのみち必要だが、それでも彼らに代わる人材はそうない。それは自衛軍の新堂沙織とも共有する認識だ。故に彼女の部下であり、彼らGチームの学園での後輩という立場にある者達も復帰の為の説得に励んでくれている。だが果たして彼女達でも彼らを再起できるのか。そして、元は一体誰が再起させるのか。

 

(……どうすればいいの、光姫ちゃん?)

 

 もう死んでしまった、精神的に頼れるかつての相棒に心の中で問いかける。けれども彼女は答えてくれはしない。どうするかは自分達で決めなさい、とでも言っているかのように。

 今はもう自分も導く立場の人間。そのためにも出来ることから手を付けていく。勇人と夢乃にも提案する。

 

「とりあえず、今までと同じように自分の部隊への通達は怠らない様に、各部隊の調整を行いましょう。問題についても適宜打開策を出すように」

 

「今のままだと無駄撃ちになりそうだがな。だがその時を見据えて準備することは悪いことではない。うちの対策班は問題ないだろう」

 

「こっちの受け持ちも何とか……でも彼らの問題解決は、元さんはやっぱり……」

 

「……」

 

 分かっている。彼らを、元を立ち直らせるには相応の人物でなければ……と思いながらも見るべきものから自然と目を逸らす。

 それを見透かしたかのような声が開け放たれた自動ドアの方角から響く。

 

 

 

 

「―――そんなのでだらしないんじゃないですか?深絵さん、ゆめのん」

 

 

 

 

 顔を上げる。考えに疲れ切った様子で宗司は天井を見上げていた。周りには友直と智夜、少し離れたところでは同じように思案に疲弊した入嶋と進、それに付き添うクルスと真由がいた。

 疲弊しているのには理由があった。顔を上げたこちらに心配の声を掛けてくる友直。

 

「宗司先輩……無理は、しないでくださいね?」

 

「無理……してると思う、よな?」

 

「はい……。先輩の皆さん、暗い顔してますから。辛いのは、すごくわかりますから……」

 

 友直の指摘は正しい。無理をしている。それは紛れもなく今回の戦闘が原因だった。出会ってしまった自分達にとって一番戦いづらい相手。宗司にとってはそれが千住栞奈だったのだ。あの時の事はいつでも思い出せる。あの日、彼女がニュースで話題になっていたカルト教団の一員だったと知った時、思わず危険だと言った自分に対し、彼女は自分が敵なのかと詰め寄った。

 地区から逃げた一家。その後彼女は家族と共に死んだと言われていた。自分が殺してしまったと思い込んでいた少女。しかし彼女は生きていた。その時の言葉が蘇る。

 

『そう。あの時わたしが止めるべきだった。帰さないべきだった。あなたを、殺すべきだった!だから!』

 

 本気で殺しに来た彼女の剣幕に、圧されてしまった。だからこそ宗司も彼女を討つと言った。あの時の彼女は危険だと思ったから。けれども戦いが終わって、元隊長を救い出してから違う考えが浮かんだ。

 彼女を救えるかもしれない。そう思うとあの時の発言は間違いなのではと思った。けれどもそれをテレビのニュースが告げてくる言葉が否定してくる。ゼロン側の報道でHOWの魔王、元は奪われた仲間を救えないと謗られていた。もちろん、それを鵜呑みするつもりはない。だが負けたという事実は重く突き刺さり、また次に戦う時には圧倒的に不利であることは明白だった。

 それに加えて今の元の状態を宗司も知っていた。あれでは、戦ったとしても勝てない、そんな不安が、やはり栞奈を救うなど夢もまた夢、一部の東日本側のニュースキャスターが言うようにゼロンに救いはないということなのだろうかと苛んでいた。

 故にそれを考え続けた宗司を友直が心配しているのだった。宗司自身は知らなかったが、智夜もそれを察し、自身も答えを出せないと言いながらも語りかけてくる。

 

「センパイ、友直に難しく考えさせやんといてくださいよ?こいつ心配しだすとキリないで」

 

「ちょっと智夜!」

 

「それは、思うな」

 

「先輩!」

 

「あたしも、センパイの考える事全てわかるわけやない。なんやら悩んどるのは分かる。それもちっとは想像出来とる。どうしたらええとかあたしにも分からん。せやけど今はもう立ち向かうしかないんやと思う。あたしらは今、戦う仕事をしとるんやで」

 

 戦う仕事。もはや宗司自身新人とは言い難い領域まで足を踏み入れている自覚があった。もう守られる側じゃないのだと先日の戦いで知った以上、これからは自分自身で護っていかなくてはならないのだ。

 だからと言って、それで気持ちが完全に晴れるかと言われればそうではない。視線が入嶋と進に移る。こんなところまで来てしまったという後悔が入嶋と進の陥っている状態を見て思わされることになる。

 

「玖亜……お母さん……ごめん、私、わたし……」

 

 入嶋は生き別れていたという妹とあの戦場で再会していた。入嶋のメンタルを削るには適した人物をかつてあった別組織から人員として引き抜いていたのは幸か不幸か。

 その表情は再会出来たことと、救えないかもしれないという哀しみとが混ざり合っている。

 

「千恵里ちゃん、大丈夫だよ。私だって救えたんだから、きっと……」

 

 必死に励まそうとするクルーシアの言葉。しかし入嶋はこれまでになく落ち込んだ様子でクルーシアの言葉を否定していた。

 

「ううん、無理だよ。元隊長だって負けた。元隊長があんなんじゃ、私も、私自身をどうにか出来るとは思えないよ……。また戦わなきゃいけない、けど、私の力は……未熟で、幼くて……!」

 

「千恵里、ちゃん……」

 

 諦めに傾く入嶋。彼女は特に黒和元に依存している側面があった。元隊長がいるから自分も出来る。故に元隊長が立ち直らなければ彼女も立ち直ることはないだろう。そう言った意味では彼女と元隊長は似ている、入嶋が似たと言った方が正しいだろうか。

 自分の意志に揺らぐ入嶋。対照的に進の方は苛立ちを募らせ、感情に翻弄されつつあった。壁を叩いて怒りを吐く。

 

「クソッ、クソッ!なんだよ、何でこんなことになるんだよ!」

 

「お兄ちゃん、落ち着いて……」

 

「落ち着いていられるかよ!お前のクローンと戦って、月子だって死んで、それでも助けたっていうのに、あいつは、あいつは!」

 

 進の怒りは戦った妹のクローンへの怒りもそうだが、それ以上に仲間である月子を他でもない元に殺されたことに対して憤りが中心だった。親友がクローンを作った人類を憎んでいるにも関わらず恩人のクローン作製に対して異を唱えなかった。それを経て突如暴走したシュバルトゼロが増援に来た月子を殺し、怒りの爆発した進はシュバルトゼロに斬りかかった。

 それに対してHOWと自衛軍は不可抗力として罪には問わなかった。隊長達もむしろそうであっても止める側として最後は尽力してくれたことに感謝し、進も納得と謝罪をしていた。

 だが、その後の元の様子は進の期待を裏切った。意気消沈し、ジャンヌを助けることは自分には出来ないと言ってしまった元に進の堪えていた感情が全て爆発した。以来このようにやる気にならない元に業を煮やす状況が続いていたのだった。

 未だ続く怒りを進はそのまま吐き出す。

 

「助けたっていうのに、意味ないじゃんか!こんなんじゃ、死んだ月子も、残された芽衣だって、報われない、っ!」

 

「お兄ちゃん……」

 

 死んだ月子には芽衣という妹がいる。彼女は現在もオースの主力艦艇のオペレーターとして着任している。姉の反応消失はもちろん彼女も知っており、直後にはこちらにもきて取り乱した様子で事情を聞いていた。

 その時、芽衣も訳の分からない状況に泣き叫ぶだけだった。それを進が謝り、励ましたのであった。けれどもその結果はこうだ。故に進の怒りは当然と言える。

 友直と智夜達も後々話を聞いて理解している。彼らの事情に頭を抱える。

 

「チームG崩壊寸前ですやん。理由が理由とはいえ、これはなんていうたらええか」

 

「私達じゃ、どうしようもできない……力になれなくて、ごめんなさい」

 

 悩む二人。だが力になれないことを気に病む友直の言葉に流石の宗司も考え過ぎだと思い、二人に気にするなと伝える。

 

「二人が気に病むことなんてないと思う。これは俺達の問題だろうから」

 

「宗司先輩……そんなこと。私だってちゃんとした軍人で」

 

「まぁ、センパイの言う通りやな。自分で解決できればやけど。それに、センパイはセンパイでもう一つ解決しないといけない問題あるわけやないですか」

 

「……そう、だな」

 

 智夜からの指摘に言葉に詰まる。彼女の言うもう一つの解決しなければならない問題。宗司にとっては解決しなければならない問題の一つであることは重々承知している。

 自身のパートナー、エターナ・ファーフニルを立ち直らせること。それもまた宗司自身が悩みの種としている課題であった。

 エターナの姉、ジャンヌはゼロンに囚われ、東西問わずに映像で晒し者とされている。それに対しエターナは耐えがたい屈辱を感じ、部屋に閉じこもっていた。

 正直な話、宗司もそれを見て良い気はしない。今は収まっているとはいえ味方の痴態を晒すテレビに不信感しか感じなかった。それもまた宗司が考え込む理由の一つでもあったのだ。

 その時のエターナの発言は身内として当たり前の意見だった。

 

『何で、何で姉様がこんな目に遭わなきゃいけないのよ!助けてよ……姉様をすぐに助けてよ!』

 

 あれはきっと、姉を溺愛しているからだけではないはずだ。きっと助けると言った深絵隊長達の言葉に反論したあいつの言葉が、何よりも証拠だろう。

 

『嘘ばっかり!姉様は……あいつしか姉様は助けられないのよ!それなのに、あいつはっ』

 

 今までなら言うはずのない発言。それだけ精神的に辛く、構っていられなかったのだろう。いや、もう分かっている。きっと彼女はもう、彼らの事を……。

 彼女は哀しみを抱えたまま部屋へと閉じこもった。今はクルツが食事を持って行ってくれているが、顔を出さないという彼女に心配しかない。しかし和解したとはいえ先の戦闘で心無いことを言った手前、顔を出しづらかった。

 対応に迷う宗司に、友直は力になろうと何か言おうとする。

 

「エターナ先輩も……きっと苦しんでいる。やっぱり、その……元隊長さんをどうにかしないことにはみなさんは……」

 

「分かってる。けど……ならどうしたらあの人は、魔王は再び立ち上がれるんだろうな」

 

「それ、は……」

 

 きっとここにいる誰もが心の内で思っている事。頼りきりなんて嫌だ。けれどもその人がいなければこの状況の打開は出来ないと分かっている。自分の目的も果たせやしない。

 その方法をみんな探しているのだ。けれどもいい考えは思いつかない。一番関わりのある深絵隊長でも説得できていないことは、宗司達に不安しかもたらさなかった。

 ふとその視線が机に移る。視線の先にあるのは機体の資料。それに気づいて智夜が言及する。

 

「立ち直らんと、この新しい機体達も宝の持ち腐れやで」

 

 その資料は新型MSの物だった。誰のかなど決まっている。自身とエターナの機体だ。同じ形式のものが既に入嶋と進にも渡されていた。

 三人の機体は既に修復作業に入っていたものの、それよりも四人の実力が評価されたうえでの乗り換え。修復よりもその方が今手間もかからないというものらしい。

 本来ならパイロット達は乗り換えの為に機体特性などを読みこんでいる段階。しかし現実はこうだ。やらなければいけないだろうが、それをやろうというやる気が起きない。言うべき人間が閉じこもっている。

 やらなければいけない、けれどもやって意味があるのか。そんな板挟みにふと呟いた。

 

「今の俺達に、何が出来る」

 

「……あぁ……これ重傷や」

 

「宗司……先輩……」

 

 憂鬱な声に二人の後輩が沈黙する。入嶋と進の周辺も同じなのであった。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP80はここまでです。

レイ「あぁあぁ……元君完全に戦意喪失してる……もうダメだぁ」

諦めるの早くないかな(;´・ω・)

ジャンヌ「まぁ元さんが拗らせるのは以前もありましたから……けど毎回ヴァイスインフィニットに負けるとこう…情緒不安定になりますよね元さん」

何というか、設計上同じ機体だからってのもあってパイロットの腕が出やすい、だから負けると必要以上に落ち込むとかあるんでしょうかね。それとまた負けたっていうのは元君のトラウマほじくり返してますし。

レイ「一度は勝ってるんだからさぁ!元君大丈夫だって~」

ジャンヌ「負けたのもそうですけど、それ以上に、ジャンヌ・Fさんの為にってのが果たせなかったのを気に病んでいるという感じですけども……」

それは間違いない( ˘ω˘ )元君口ではジャンヌを戦わせたくないって言ってもジャンヌがいないとダメですからね。

レイ「うーん否定できないなぁ……作者が言うのあれだけど」

ジャンヌ「反論したいところではありますけど、その通りと言いますか……依存と言えばGチームも大分元さんに依存していたような感じで」

依存って言っちゃっていいんだろうけど、まぁ頼れる上司って感じで負けるイメージがなかったからね。深絵とか夢乃とかは見ているから普通の心配なんだけど、思ってもなかったGチーム面々はショックが大きいんですよ。

レイ「その重傷たるや、新型機の配備間に合うのかなぁ」

ジャンヌ「その新型機が次の戦いを左右するかもしれないと思うと……」

そんな不安を振り払ってくれそうな彼女も登場する同日公開のEP81、是非読んでください。それでは次へ続く!


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EPISODE81 選ぶゼロ・エンド・インフィニット2

どうも、皆様。引き続き今年最後の更新をやっていきます。EPISODE81の更新となります。

ネイ「活気を失ったHOW、それを蘇らせてくれるのは、かつての仲間、という感じですか、今回は」

グリーフィア「久しぶりねぇ、華穂ちゃん。結婚したって話だけど、今回は子連れとかで来てるのかしらぁ?」

それに関して、覚えている人はちょっと驚くかもしれないです。というわけで本編をどうぞ。


 

 

 数分前、新四ツ田第1基地の廊下を二人の男性が闊歩していた。

 

「はぁ……うちのチームはどうしたもんかねぇ……なぁ呉川隊長?」

 

 憂鬱な質問を投げかけながら基地内を歩くクルツ。質問を投げかけられた呉川はやや返答を濁す。

 

「さぁな。俺達に出来ることはない、ことだけは言える。あまりこういうことは言ってはいけないのだろうが、隊長も含めてあまりに未熟だと思う」

 

「……そりゃ言い過ぎだろ……特に隊長が無茶してたって話は前からあったんだし。まぁ、しっかりしてくれって言いたいのは分かるけどな」

 

 ストレートに意見を言った呉川にあまり言い過ぎるなと言う。何というか呉川はたまにこういう所がある。物事を妥協せずにありのままに意見を言う性格。そのために上官であろうとも相応しくない行動をした者には容赦なく毒を吐く。

 クルツはチームを組むようになってからそれを知ったのだが、HOW本部ではもとの部隊ではよく知られていたらしく、不評だったらしい。

 それが何の因果か元隊長の指揮するCROZE部隊に引き抜かれた。大方呉川の戦闘技能が評価されたのだろう。それも含めて便宜上副小隊長である自身の立場から言葉を諫めるように言う。

 

「けどよ、呉川だって色んな部隊転々としてようやく元隊長に引き抜かれたんだろ?CROZEに引き抜かれてからは全然転属してないんだから、拾ってくれた元隊長に、恩義とかねぇのかよ?」

 

「ないな。馴れ合いで組織に所属しているわけではない。これまで元隊長は敵を殲滅する為に戦ってきたのは評価する。だが負けて閉じこもるようでは部隊を預かる者としてあまりに弱い。それをダメだと言えなければ人としてダメだろう」

 

「そりゃ、そうだけどなぁ……だからってそんな突き放し方ないだろうよ」

 

 たった一度の失敗、いや、元隊長なら何度か失敗しているのかもしれない。そもそも自身がCROZEに入ったのは呉川よりも遅い。それまでの間に何らかの失敗をして呉川の不評を買っていたのだとしたらこの態度もおかしくはない。

 しかし、これまで元隊長の指揮するCROZE部隊の一部隊を任せられた男が先日の失敗でここまで過剰に反応するとは。それだけ負けが信じられなかった、これまで失敗してこなかった元の事を信頼していた故の失望なのだろうか。今回が初めて見た、とは到底思えない。

 失望と言えばもう一人、今身近に失望してしまっている奴がいた。これからまた尋ねようとしているのだが、同じチームメイトの元のエンゲージパートナー、エターナ・ファーフニル。彼女も姉の目を背けたくなる光景を好き勝手報道する両陣営報道機関に失望し、ふざけるなと怒って部屋に閉じこもっている。

 クルツは未だ立ち直れない本来のパートナーである宗司に代わって彼女の世話を見ているのだが、その状況は芳しくない。

 最後に訪問した時も食事を受け取らず、ドアの向こうで叫んでいた。

 

『どうせ、あんたもあいつらと同じなんでしょ!?』

 

 まったく、DNLとは便利そうで不器用だ。その力で落ち着いて見通せば悪意など持っていないことも分かるだろうに。しかし彼女がそう疑いたくなる気持ちも分からないわけではない。むしろクルツも同じ経験があった。

 自分の家族と恩師達があのテロに巻き込まれた後、医療施設に運び込まれた重傷の恩師の妹はテロの凄惨な生存者として取材が殺到した時、しつこすぎたので止めたのだ。しかしそれがテレビ局の顰蹙を買い、恩師の妹はテロリストの関係者であると悪質なデマをばら撒かれた。

 そのせいで一時は人間不信にも陥った。それを払ってくれたのが元隊長達だった。元々はデマが真実か調査しに来たのであったが、それがデマであることを見抜き、それらへの対処、更には危篤状態であった恩師の妹の治療費まで支援してもらった。

 恩師の妹は今も病院生活だが、もしあの時元隊長がいなかったら、その時点で彼女は死に、自分も復讐で悪しき道へと踏み入れていたのは頑なに想像できる。故に自身は元隊長の事も強く責めたくはなかった。

 それが彼女も分かれば、少しは信用してくれるのだろうが、今のあの状態では話にならないだろう。かつては自分もああだったのではと過去に反省する。

 一方先程のクルツの言葉を聞いた呉川は相変わらずそんな事はお構いなしとの返答をする。

 

「元隊長はそんな子どもじゃないだろう。これまで通り責任を持った大人としてただ使命を果たせばいい。それが出来ないのなら」

 

「だからさぁ……どんな人間でも、我慢し続けたらいつか壊れるって……ん、あれは!」

 

 年上に対して咎めようとした時視線の先に見知った顔が映る。見知ったなどとは恐れ多い。なぜならそれは自分達組織の長、本来なら東響の本部にいるはずの黎人司令だったのだから。

 その姿を認めると二人は同時に姿勢を揃え反射的に挨拶する。

 

「黎人司令お疲れ様です!いつこちらに?」

 

「ん?あぁ、Gチームの。お疲れ様。今来たところだ。大変なことになったな、君達も」

 

「いえ。パイロットの未熟さゆえの問題でしょうから」

 

「パイロットの未熟さ、か。そんなものでは、推し量ることは出来ないだろうな、今回は」

 

 黎人司令は二人へ返答していく。司令の隣には民間人と思われる女性と子供、一見して母親と娘の親子と思われる二人組が連れ添われている。

 黎人司令は子持ちだが、それは光巴がいる。まさか愛人とかではないだろうと思いつつもその二人組に目を向ける。子どもの方が視線を感じて慌てて母親の影に隠れる。

 

「っ!!」

 

「あっ、すまない……」

 

「あらら、大丈夫よ。この子恥ずかしがり屋なの。まぁ、気になるでしょうね、私もあなたの顔は見たことないし」

 

 女性は娘を安心させながらそのように言って見せる。その言い振る舞いから何やらHOWと以前から関係があるようだ。

 尋ねるべきかと迷っている間に黎人司令が断りを入れる。

 

「すまないが、彼女についてはまた後程聞いてくれ。一刻も早く、彼女と会わせたい者達がいる」

 

「あ、それは失礼。お時間取らせてしまい、申し訳ないです」

 

「そうね。言わなきゃいけない人達が結構いるから。それじゃあ挨拶はまたの機会に」

 

 言って彼らを見送った。その横で何やら考え込む呉川の姿。その横顔に向けて何を考えているのか尋ねた。

 

「何考えてんだよ。あの人知り合いか?」

 

 悩むからには心当たりでもあるのだろうかという発想。それは図らずも的中することとなる。

 

「あぁ。話には聞いたことがある。既に引退した身と聞いていたが……なるほどな。彼女ならあるいはか」

 

「何納得してんだよ。結局彼女は何者なんだ?子供連れなんて珍しい」

 

 知っているような素振り。それだけではやはり分からないので聞き返す。その当たり前の疑問に呉川は回りくどい言い方でおそらくその正体を推測した。

 

 

 

 

「黒和元を擁護するなら、彼女も知っていると思ったのだがな。知らないか、かつてHOWに所属していた、黒和元の血縁者、最後に残された妹の話を」

 

「妹……妹ぉ!?」

 

 思わず声を大にして聞き返した。

 

 

 

 

 進退窮まる深絵達の話し合い、そこに唐突に彼女の声が聞こえる。

 

「―――そんなのでだらしないんじゃないですか?深絵さん、ゆめのん」

 

「えっ……華穂ちゃん!」

 

 開かれたドアの方を見てその人物の名を呼ぶ。黒和、今は本堂華穂と名前を変えたかつての仲間が一人娘を連れてそこにいた。

同じくその姿を見た夢乃がその姿を見て驚きと共に駆け寄る。

 

「かほちー!礼華(らいか)ちゃんまで……どうしてここに」

 

「それは、私を呼んだこっちの人の話も聞いてね」

 

 返答した華穂が娘の礼華を横に引き寄せてもう一人を部屋に入れる。見慣れた顔の男性が姿を現す。

 

「やぁ、ご苦労だった深絵君、夢乃君」

 

「黎人君。そっか、黎人君が呼んだんだ」

 

 HOW司令の黎人は頷く。この緊急事態ということで既に黎人がこちらに来るということは聞いていた。ゼロン側との交渉、それに隊員達への労いという意味でわざわざ東響からやってきたのだ。

 だがその彼が華穂まで連れてくるというのは聞いていない。彼女がいる理由もいくつか挙げられるが、これと決まったものはない。そもそも彼女は既にHOWを退職した身。なぜ彼女を呼んだのかと疑問が夢乃の口からも零れる。

 

「でも、どうしてかほちーを……彼女はもうHOWの人間じゃ」

 

「確かに、私はもうHOWに所属してない。夫がHOWのチームRIOTに所属しているくらい。だけどね、今まで気遣ってくれていた肉親や、後輩達が苦しんでいると聞いちゃあ、見捨てられるほど図太くないわ」

 

 その理由を華穂自身が語る。理由を聞いてやはり、と思う。考えていた予想の中でももっともハードであろう役割だ。彼女は元々HOWのCROZE部隊所属、そして他でもない元の唯一の妹なのだ。その彼女ならではの役割と言えるだろう。

 理由は分かった。とはいえそれを引退した彼女にやらせるのは気が引けた。その意見を述べる。

 

「それは、ありがたいけど……でもこれは、私達今のHOWのメンバーがやるべきことじゃ……」

 

「確かに、それは間違いないでしょうね。けれどそれのきっかけ位は作る理由はある。踏み込めないようじゃ外から押してやるしかないんじゃないです?」

 

 しかしこちらの意見を華穂はそのように返す。深絵にはそのたとえがいまいちよく分からなかった。

 踏み込めない……確かに元君を刺激しすぎない様にしている面はあるけれども、それをせずに遠慮なく意見を言っていくべき、ということなのかな……。

 と深絵が思う間に話を聞いていた勇人が華穂の言葉に同意する。

 

「黒和妹の言う通りだな。刺激するのは良くないとはこいつらには言ったが、自分から物を言うということをこいつらはしないからな。特に深絵は」

 

「えっ、私!?」

 

 思わず自身に向けられた罵倒とも取れる言葉に反射的な反応を見せる。ちゃんと自分は意見を言っていると思っていたばかりにそう言われるのは心外だった。

 自身への言葉に対する反論をしようとするも、それを遮るように華穂が勇人に頷く。

 

「そうなんですよねぇ~。ゆめのんもそうなんだけど、特に深絵さんは鈍いというか。あと、私今は本堂誠の妻ですので、勇人さん?」

 

「か、かほちー、私も鈍いの……?」

 

「一々名前を覚え直すのは面倒なんだよ。まぁ不都合は出るか、分かった、華穂」

 

 鈍いと言われショックを受ける夢乃。もちろん深絵自身も同じ気持ちである。自慢ではないが、これまで自分は光姫の後任として、様々な任務に真剣に取り組んできた。それを見ているはずの華穂に鈍いと言われたのはあまりに不条理であった。

 もっともそれこそが彼女が鈍いという本質であることに気づいていなかった証拠なのだが。それらのやり取りを見ていた黎人が咳ばらいをすると、本質へと戻すために話の舵を切る。

 

「ともあれ、彼女の方も兄の元の事を心配して今回要請に応じてくれた。私も、唯一の肉親の言葉なら何か突破口になると思っている。希望的観測でしかないがな」

 

「それを言うなら兄の面倒を見てくれていたHOWの皆さんがフォローしてあげていれば良かったんですけど。毎年礼華の方に顔を合わせてくれる度に、元にぃってば難しい顔しているんですから。ゆめのんと深絵さんには伝えていたと思うんですけど?」

 

「そ、それは……」

 

「……事実だね。何も、出来なかった、わけだし」

 

 華穂は前々から兄の様子がおかしかったことを知り、こちらに知らせてくれていた。にも関わらず今回までに何も解決できなかった。理由は分かっていても対応が実を結ばなかった。そう言ってしまえば努力が実らなかったと言えるが、実際には何も出来ていなかったのと同じだ。

 こうして手をこまねいているのもその延長線上なのかもしれない。そうなれば異変に気づいていた本人がこうしてくるのは当然だ。恐縮するこちらにため息を吐く華穂が自らフォローする。

 

「別に気にしなくていいよ。二人はパイロットとして元にぃに負担掛けさせない様にしてくれてた。そんな最悪の状態にそもそもならない様にする選択をしてたんだから。今回は私に任せさせて。ついでに、私の後輩達に元気つけさせてあげたいし」

 

「華穂ちゃん……」

 

 いつまでも迷惑を掛けてはいられない。けれども今はその力を借りるしかない。夢乃と顔を見合わせて、二人でそれを受け入れた。

 

「分かった。なら、彼らのケアについては任せる」

 

「やったね。久しぶりに会話方面でだけどかつてのエースの実力見せますか」

 

「夢乃君、悪いがGチームのメンバー、相模君と入嶋君、大和君達を会議室に集めておいてくれるかな?エターナ君に関しては……」

 

「はい、分かっています。無理にはさせません」

 

 そうして華穂とCROZE部隊Gチームとの顔合わせの準備が行われていく。

 

 

 

 

 CROZE部隊Gチームへの面会の準備を深絵達に任せている間、華穂は久しぶりとなる司令との会話に意識を向けていた。

 

「こんな形で、また関わり合うことになってしまうなんて、ですね」

 

「すまない。私としても君に不安を掻き立てない様に注意を向けてきたつもりだったが……どこか油断、いや、傲慢さがあったのだろうな」

 

 話を聞く黎人司令の顔には申し訳なさが見て取れる。それをただ横目に覗き見る。彼が悪いわけではない。彼はただ、組織の為に兄の力を頼りにせざるを得なかっただけだ。

 それにこれはHOWの面々の問題というよりも、兄の問題である点が大きいと華穂は思っていた。ずっと他人からの干渉を拒んできて、縋れるものも押し退けてきた。問題を遠回しにして来た兄の自業自得。

 しかし、全てを自業自得で片付けるには虫がよすぎる話だ。原因は彼や、それどころか自分自身にある。黎人司令の言葉に自らも懺悔する。

 

「いえ、もし傲慢さがあるとするなら、それは私にもあります。11年前、私は兄にすべての責任を押し付けてしまった」

 

「11年前……スパランドの事件か」

 

 11年前、華穂は元、ジャンヌと共に彼女達の両親を救出する為に未だ次元覇院の影響の残っていた三枝へ潜入した。しかし結果は失敗に終わり、雨の中を逃げ回っていた華穂達に父親の元時は自身と妻の殺害を依頼した。

 その翌日、兄はその言葉通り永島スパランドの施設にて狙撃を敢行。彼らを殺害して騒ぎになる前に自分達を連れて離脱した。

 狙撃を実行する際、兄の手は震えていた。兄もまた撃ちたくないと思っていたのだ。その悲しみを自分は分け合わなかった。兄が分け合ってもらおうとしなかった。それからというもの、兄は魔王として敵に対して冷酷に作戦を遂行していった。

 もちろん、自身もそのサポートなどは請け負った。けれども兄はやっかむように結婚の話題を振ってくる。もう次元覇院はいない、華穂が戦う理由はないと必死に戦いから遠ざけようとしていた。

 初めの内は拒絶していた華穂だった。しかし旧式化していく機体で、無茶をしていく兄がそれでも自分の事を心配する姿を見て、もうダメだと思った。強情にしていたら兄はもっと苦しんでいく。結婚しても余計に気負わせてしまうのは分かっていたが、それでもこれ以上自分の事で憔悴していく兄を見るのは耐えられなかった。

 事件から3年後、ずっと交流のあった夫に悩みを話し、彼からの返事を受けて恋人となった。その二人で兄の下へと行き、兄からも頭を下げられて二人で夫婦となった。今ではこうして子どもも生まれている。

 礼華の頭を撫でながら、華穂は今の生活について語る。

 

「私は、今幸せだと思います。もしあの事件の事を私まで背負っていたら、きっと私も罪の意識でゆめのんのように結婚を諦めていたと思います」

 

「……夢乃君をああしたのは私の責任だ。光姫がああなってしまったから」

 

「それをきっと、ゆめのんも望んでいない。私も今の黎人司令のように、この幸せを享受したいと同時に、謝りたいと思っています。押し付けてしまった辛さを、勝手に背負ってしまった兄にもういいんだよと言いたい」

 

 紛れもなく華穂自身の本音。その瞳に涙が零れる。だけどもそれは決して礼華の上にはこぼさない。隠すようにして拭うと同時にこれから行う説得について心の内を明かす。

 

「だけど、これから私が兄と話すのは、きっと最悪のお願いをするためなんだと思います。また勝手に押し付けて、やれと言ってしまうようなこと。恨んでくれた方がマシです」

 

 その手がかすかに震える。礼華は気づいていないだろうか心配になる。黎人司令はすぐにそれに返答する。

 

「それを君が全て背負う必要はない。これは私の要請でもある。責任は私が取るさ」

 

「黎人司令……私だって、最低なことをした自覚はあるんです。ですから、私にも背負わせてください。これはあの時、我儘を言えなかった私の責任なんですから」

 

もしあの時強情になって結婚を拒んでいたなら。兄は変われたかもしれないが、今この手に収まる愛娘はいない。だからこそ今に目を向ける。今自分に出来る事をやる。たとえそれが最低な行為だったとしても。

 そんな願いを口にしてしばしの沈黙、その後3人のいる廊下に男性が訪れる。

 

「お待たせしました。待ったかい、華穂」

 

「大丈夫。ちょっと話していたから。あなた」

 

 その男性は華穂の夫、RIOT部隊の小隊長を務める本堂 誠(ほんどう まこと)だ。将来を共にすると誓った男性にハグをして会えた喜びを表現する。

 

「あなたも、こんな大変な作戦で生きていてくれてよかった」

 

「そうだね。お義兄さんも何とか無事だったよ。これから行くんだろ?」

 

「えぇ」

 

 夫は兄の状態を既に知っている。HOWの戦力の中核なのだから、知っていて当然だろう。そして華穂自身がここに来た理由も分かっている。

 抱き付いたまま夫に語りかける。

 

「本当ならあなたを労うために行こうと思っていたのに、こんなことになるなんて」

 

「君にとっては辛いと思う。僕も、お義兄さんの力になれなかったこと、すごく申し訳なく思うよ」

 

「あなたが責任を感じる必要はない。これは、大丈夫だと心のどこかで勝手に決めつけていた私の責任だから。……だから、これだけは受け止めてほしいな」

 

 一泊置いてから華穂は誠の胸に顔を押し付けて小さくむせび泣く。

 

「私、最低だ……元にぃをまた、苦しませる道に歩ませようとしてる……。でも、これしかない……これしか、思いつかないっ」

 

 再び兄に戦わせようとする自分と、もう戦わせたくない自分、相反する感情に押しつぶされそうになる。その叫びが漏れていた。

 感情の波に押しつぶされそうになる華穂に対し、夫である誠は抱きしめ返して答える。

 

「大丈夫だよ。君のやろうとしていることは、間違っちゃいない。例え最低だったとしても、ちゃんと思いやっているはずだ。もし僕が同じ立場だったとしてもきっとそうしている。それだけ、あの人には立ち上がってもらいたいと思うよ」

 

「うん……うん!」

 

 涙声で夫の胸の中で泣く。普段は決して見せない母の弱気な姿に礼華は戸惑う。

 

「ママ……ママ?」

 

 呼ばれて華穂は何とか平静を装うと礼華に心配いらないと声を掛ける。

 

「大丈夫よ、礼華。お母さんお兄ちゃんとそのお仲間さんを励ましてくるから」

 

「ママ……なかないで?」

 

「うん、もう大丈夫だから」

 

 言って礼華を抱きしめる。彼女がいるからこそ、今私は話しに行く。彼女や光巴、それにこの先生まれてくる子供達の未来の為に、大人である私達が今の問題を解決する。

 たとえそれが他の誰か、兄を一時的に不幸にするとしても今はそれを貫く。それが今の兄に、世界に必要なことだと思うから。落とし前は後で必ずつける。だから。

 予定通り礼華を誠に任せて、黎人司令と共に彼らの待つ会議室へと向かった。

 

 

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今回もお読みいただきありがとうございます。

ネイ「うーん……驚くって言ってましたけど、どこがです?」

分からなかったらいいよ。でもグリーフィアさん気づいてますよね多分(;´Д`)

グリーフィア「気づくわ(笑)あのさ、第二部では戌原華穂って名前のはずなんだけどどゆこと?」

ネイ「苗字違うんですか……どういうことです?」

身構えている時に死神は来ないものだ……簡単に言うとチェック漏れです。戌村友直と関係のある名前にしたのによぉ(T_T)

ネイ「うわぁ……っていうか、そこ関係あるんですね」

グリーフィア「それちょっと思ってたわね。で、どういうことになってるの?」

お家の事情で苗字変わってます。今の彼らの苗字は現戌原家妻の旧姓ですね。

グリーフィア「強引すぎて草。ってかそれっていいの?」

そういうこともあるさ。というかそこ関連はややこしい事情絡んでて後々やるよお話。そこで明らかになる。

ネイ「ネタバレですねぇ。話は戻しますが、その華穂さん、覚悟を以って戻ってきたんですね」

かつての事件を引き摺っているのは、彼女も同じ。だが、兄が背負ってくれたからこそ、今の彼女がある。そういう意味でも彼女は今立ち止まろうとする兄をどうにかしたいと思っているってわけだ。

グリーフィア「軽口叩き合ってた兄妹が、こんなに泣かせる展開にしちゃって。でも華穂ちゃんも夫の誠さんと娘の礼華ちゃんとで幸せに暮らしてて何よりね~。でも誠さんがまだHOWの仕事してるっていうのは、ちょっと心配ね。この作品だと死にかねない」

止めんかその予想(゚Д゚;)どうなるか分からんけども。

ネイ「流石にない……と、信じたいです」

グリーフィア「ド畜生じゃないことを祈ってるわぁ」

それよりっ、次に何か感想とかないのっ。

グリーフィア「そりゃあ華穂ちゃんやってくれるでしょ!」

ネイ「華穂さんも深絵さんや夢乃さんにも言ってくれてますから、不思議と心配ない気もします。元さん相手には、どうか分かりませんけど」

おお、期待がこもってたのか。なら彼女に任せるしかないでしょう。ということで今年はこれにて終了です。

レイ「あ、終わった~?」

ネイ「終わったよ、レイ」

ジャンヌ「今年も書きましたね」

グリーフィア「とはいえ、更新止まっていた時期今年は多かったけどね~大体5か月分くらい更新なかったんだっけ?」

そうだね……(;´・ω・)今後もペース維持できなくなりそうかな。それでも続けたい。と、それでは今年も書き収めと言うことで。

レイ「今年もこの作品を読んでくれてありがとう!」

ネイ「ここまで読んでくださってる方も少ないようですが」

グリーフィア「来年も続けていく所存のようですので」

ジャンヌ「来年もよろしくお願いいたします」

全員「よいお年を!」


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EPISODE82 選ぶゼロ・エンド・インフィニット3

どうも、皆様。新年あけましておめでとうございます。今年も更新始めて参ります。EP82と83の更新です。

レイ「新年最初の話は、明るいものであってほしい!」

ジャンヌ「今回カギを握るのは華穂さん。明るい流れへと変えてくれるのでしょうか?」

私が来た!とかいう安心感が欲しいですよね。どうなるのか。それではどうぞ。


 

 

 唐突に新四ツ田第1基地の会議室に集められた宗司、入嶋、進達Gチーム。付き添いには先程も一緒にいた友直や智夜、クルス、真由、それに呼びに来た夢乃隊長に深絵隊長と光巴も同席している。

 入嶋が自分達を呼んだ夢乃に対し用件を尋ねる。

 

「呼ばれたから来ましたけど……私達を呼んだ理由って、やっぱり……」

 

「うん。君達の問題を解決するため。みんな多分自分に自信を持てなかったり、憤っていることがあると思う。それをどうにかしたいって人がもうすぐ来る」

 

「フン。どーせそいつも黒和元と同じで上辺だけの奴だろっ」

 

「お兄ちゃん喧嘩腰は良くないよ?」

 

 進が疑心を露わにして嫌煙する。だが話を聞いていて宗司は何か狙いがある様に感じた。自分達に再び戦場に立たせられるという自信が。けれどもどうあっても今の自分達をどうこうできる人物がいるとは思えない。

 エターナも呼ばれたようだが、やはりいない。どうあっても元隊長が動かなければ動けないと言ったところか。

 一体、誰が自分達にそんな期待をしているのだろうか。気になっていると会議室のドアが開く。

 やってきたのは自分達のよく知る人物。次元黎人司令だった。彼の姿を見て、娘の光巴が声を出す。

 

「パパ!来ちゃったんだ」

 

「もちろん来るさ。何せ、娘が勝手なことをしたと報告があればね」

 

「あうっ!?それは……その」

 

 それを指摘されて光巴が珍しく追い詰められたような表情にこわばらせる。実際光巴は先の戦闘で命じられた立場ではないにも関わらず、無断でゼロンの最高責任者とそれに類するものとの会談に介入した。それに関して戦闘終了後、紫音艦長から後程厳重な注意がどこからかあるだろうと聞かされていたのだった。

 それが実の父親からされるのはあり得る話だ。もっともそれは司令だからという立場と同等に、娘を心配する父親としての立場から来る言葉でもあったが。

 怒られると思い、光巴は目を逸らしながら弁解する。

 

「あの……あのままだったら、きっと悪い方向に流れるって直感で思って……後先考えずにあの場で話しちゃいました……。でも私は」

 

「光巴、勝手なことを自分でするな」

 

「うっ……はい」

 

 勝手を咎められ、落ち込む光巴。あの時、彼女がああ言わなければ今まだ戦えるという状況にはならなかったかもしれないというのに、司令は随分と子どもの行動を制限したがるように思える。

 しかし、そう単純な問題ではないことをすぐに司令自身の口から知ることになる。

 

「光巴。あの時、お前は元の事を一番に考えて行動してくれたんだろう。他人を思いやる気持ちは母さんや元と同じだな」

 

「……だって、みんなずっとお父さんや私を護るために、戦って……」

 

「そうだ。だが、そこでもしお前自身が前に出てしまったらどうなる?護るべきものが前に出てしまえば、みんなも以上に前へと出なければお前を敵の前に晒すことになる。あの時は敵が積極的ではなかったにしろ、状況が違えば隊員達を却って危険にさらす可能性もあるんだよ」

 

 黎人司令の言いたいことをなんとなくだが察する。あの時、光巴がゼロン代表零崎と会話したことは言ってしまえば交渉の場に立ったことに他ならない。もし相手の気に触れたなら容赦なく敵が狙って来てもおかしくはなかった。

 それがなかったのは敵もこちらを追撃する余裕がなかったからだ。一刻も早くシュバルトゼロの相手をこちらに任せたい。その利害故に追撃をしなかったに過ぎないかもしれない。

 今回の交渉が成功したことを理由に光巴がまた同じことをしたなら、逆に今度は光巴が危険に晒されるかもしれない。それでもしも他の隊員が死んだとしたら?光巴はそれを理由に苦悩することもあるだろう。

 その気持ちを光巴に背負って欲しくないという気持ちを黎人司令の言葉からは読み取れた。結局のところ司令はそうあってほしくないために厳しい言葉を投げたのだ。

 それを証明する様に黎人司令は諭すようにして光巴に語りかける。

 

「だけど、お前の言うことは確かだ。あの場でお前と同じ判断を下せた人間はおそらくいない。戦場を見て、同時に、お父さんの仕事を間近で見てきたお前だったからこそあそこまでギリギリのラインを攻めた交渉を出来たんだと思う。それについては至らなさと申し訳なさを思う。ありがとう、光巴」

 

「お父さん……」

 

 父親として、隊員を預かる司令として、娘であり仲間の一人である彼女に礼を告げた。それは紛れもなく彼女を一人の人間として認めている証拠であった。

 やがて司令はそれらを踏まえたうえで今後の彼女自身の行動について約束を持ちかける。

 

「もし、何か自分でなければダメだと思った時は、まず紫音艦長に一言断りを入れてからにするんだ。彼女もこれまでいくつもの戦場を駆け抜けた若き英雄。お前が交渉することも踏まえて陣形を整えてくれる。それでもダメならその時は私が責任を取る。だが……」

 

「分かってるよ、毎回は絶対しない。したら、お父さん、ううん、いろんな人に迷惑が掛かっちゃう。そんな事くらい、DNLじゃなくても分かるから」

 

「なら、この話はおしまいかな」

 

「ううん、これからもちゃんと覚えておくから」

 

「よし。ならいい。じゃあ、本題に行こうか」

 

 言われて思い出す。確かに元々は話したい人物がいるとのことだった。しかしそう言うということはどうやら話すのは黎人司令ではないようだ。となれば、やはりその相手はその黎人司令の後ろにいるあの女性だろう。

 女性は黎人司令が離している間、その様子を見守っていた。話しが終わったのを確認すると女性が前へと出て注目を集める。

 

「さて、じゃあ私の番かな。もっともまずは自己紹介からね。知ってる子もいるんだけど、とりあえず、私の名前は本堂華穂」

 

「本堂……聞いたことのない名前、ですね」

 

 感想をそのまま話す。実際聞いたことがない名前だった。話し手である華穂もそれを承知しているからか、更にもう一段踏み込んだ紹介をしてくる。

 

「それはそうね。だったらこっちなら分かりやすいかしらね。旧姓、黒和華穂」

 

「!黒和って、それって……」

 

 入嶋がすぐにその名前に反応する。もちろんその場にいた面々の何人か、新人の大半が視線をその女性に注目させる。

 女性はその思っていることが正しいと自身の関係について明かす。

 

「想像通り。私は黒和元の妹。もっとも、今は元にぃはDNLの影響で大分成長が止まってるから、姉として見られちゃうこともあるんだけどね」

 

「確かに……あ、いえ!決してそう言う意味では!」

 

 失言をして入嶋が謝罪する。対して華穂さんは笑って平気な表情を見せた。

 

「大丈夫。個人的には兄よりも先に結婚してるから、割とそんな感じは慣れてるからね。それにしても、私の後輩は凄いなぁ」

 

「後輩?ひょっとして……」

 

 クルスが言葉の意味を尋ねる。すると光巴が彼女の横に立ち、その言葉の意味を解説する。

 

「華穂さんはこの組織がMSオーダーズと呼ばれてた頃からのメンバーなんだ。HOWに変わってからは初代CROZEのエースパイロット!深絵隊長と夢乃隊長とはとっても仲がいいし、私もお世話になったんだよね~」

 

「懐かしいね、一緒に戦ったの」

 

「三人一緒にっていうのは数えるほどしかなかったけど、でもあの時はかけがえのない時間だって思ってる」

 

「そうそう。二人はガンダムパイロットっていう凄い肩書まで手に入れちゃって、私だけはガンダム乗れなかったんだよね。光巴ちゃんも今では大仕事しちゃって、聞いた時は冷や冷やしちゃった」

 

「か、華穂さんもうその話ほじくり返さないでください!?」

 

 ラフな感じで話す4人。年齢差の堅苦しさを感じさせない、自然な関係であると一目でわかる。あべこべになってしまうが例えるならその姿はまるで歳の離れた四姉妹のようだ。

 自分達の先輩にあたる人からの言葉、けれどそんなもので自分達の意識が変われるのか。進が思ったことをそのまま口にする。

 

「ハン。先輩風吹かせて説教垂れようって言うのかよ。いくらあいつの妹だからって、そう簡単に聞けるかよ!」

 

 強情な態度を崩さず食って掛かる。対する華穂さんもまたこれまでの余裕を保ったまま進に切り返す。

 

「そうね。説教っていうのはガラじゃない。けど、それが必要ともなれば話は違ってくるわ。黒和元の妹だからじゃなく、かつてHOWに在籍したからでもなく、両方を備えているからこそ言う」

 

「何だと?」

 

 訝しむ進。宗司も入嶋も華穂の言葉に惹かれる。話を聞く第三者達もまた同じだった。

 注目を集めたところで華穂さんは本来の目的へ行動を移行させる。呼ばれた3人へと問いかける。

 

「相模宗司、入嶋千恵里、大和進。あなた達は、黒和元を……私の兄を何だと思っているの?」

 

 一瞬、反応に戸惑う。質問の意図が掴めなかった。それは他の面々も同様で、迷いながらその言葉に何とか返答する。

 

「何って……俺達の部隊の隊長では」

 

「そうですよ。元隊長はいつでも私達にとって頼れる上官です。無下にしたりなんてしてません!」

 

「頼れるとか、そういうのは思っちゃいない。けど、あいつは俺達には届かない領域の、何でもやっちまうエースパイロット、だと思う」

 

 それぞれ自分の思っているような元の印象を並べていく。それが彼女に対する答えだと思ったから。

 しかしそれを聞いて華穂さんは思った答えではなかったと首を振った。

 

「そういうのは思っててほしいことではあるよ。でも私が言ったのはそう言うことじゃない。ううん、あなた達がどう思っているのか知る意味では逆に良かったのかもしれない」

 

「それって、どういう……」

 

 気になったのか外野から尋ねる形となった友直。彼女の言葉に華穂さんは質問の意図について答えた。

 

「みんな、元にぃに頼り過ぎだよ」

 

「頼り過ぎ……」

 

「黒和元は確かにこれまでいくつもの難しい作戦をやってみせた。あなた達が思うように、兄はきっと頼れる隊長で、エースパイロットだと思うよ。だけどね。兄はそれ以前に、あなた達と同じ、人間なんだよ」

 

 同じ人間。その言葉が突然重くのしかかる。人と明らかに違う量を完遂する人が、自分達と同じ存在。にわかに信じがたいそれを正面から言及された。

 変わらず華穂は言葉を続ける。

 

「期待って言えば聞こえはいいけど、それは重責であって、プレッシャーでもある。みんなは何気なく頼ったり、エースパイロットだって思ってるんだろうけど、兄にとってはそれも……ううん、きっと兄はそれでいいと思っているんだろうね。だって、元にぃはずっと、我慢し続けてきたんだもの」

 

「我慢……」

 

「……」

 

 入嶋も、進でさえも口を閉ざす。宗司自身どう返していいかも分からなかった。それが正しく自分達の考えを射貫いていたからだ。

 元隊長はレイアという少女を助けるためにひたすらにヴァイスインフィニットを追い求めてきた。その中で自分達新人の面倒まできちんと見てきた。もしヴァイスインフィニットを追うことだけを本気で追い求めていたら自分達の面倒なんて見ない方が、それこそ特別チームを作って追い求めた方が早かっただろう。

 それでもそうしなかったのは、元隊長の優しさだろう。他人の為に我慢し続ける。それを今回、どうしても逃がしたくなかったからあそこまで無茶をした。

 華穂さんもそれを理解しており、愚痴をこぼす。

 

「昔からそうだった。私達の両親を狙撃で殺したときも、元にぃは恐れていた。自分で生みの親を殺してしまう、それを自分の手でやってしまうことに。私も、代わってあげたいって思った。でもきっと、私もダメだったと思う。そして元にぃは撃った。すべての責任は自分にあるって言ってね」

 

「両親を……それって、あの」

 

 入嶋の発言に思い出す。以前HOWの新リゾート施設からの帰り道、元隊長が明かした事実。信じられないと思っていたそれの更なる続きを聞いて宗司達の表情が曇る。

 唯一直接話を聞いていなかった進は両親を殺していたことに憤慨する。

 

「何だよ……親殺しておいて平然としてるのに、何で今回!」

 

「誰が平然としてるなんて、言った?」

 

 進の言葉に初めて明確な怒りを表現してみせる華穂。その圧に進が気圧されつつもこれまで見てきて感じたことを話す。

 

「そ、それは……でも、ずっと戦って」

 

「そう、戦ってる。戦うことでしかその罪の意識から逃れられないの。元にぃはずっと、あの時の罪から逃れようとしている。逃れられないと分かっていても。例えそれが自分の心の限界だったとしても、元にぃは抱え込んでしまう。逃れられないからこそ、ジャンヌさんとの仲も踏み切れないんだ」

 

 唐突に告げられたジャンヌ副隊長の話。それは今ここにいないエターナに向けての言葉でもあったのかもしれない。それを言った理由はおそらく、そのパートナーである自分がいるからなのだろう。同時に、宗司へと向けたメッセージとも言える。

 今ここにいないエターナにはあなたの口から話してほしい。それを伝えることもあなたのやるべきことなのだ、と言われた気がした。

 そんなことを、自分が言えるのだろうか。言いようのない不安が宗司を包む。華穂さんが先程の期待の話へと話題を戻す。

 

「期待は簡単に人を殺せる。期待すればするほど、期待した側の人間はどんどんその人に、見に余るほどの期待を込めていく。それに耐えきれなくなって人は壊れていく。元にぃはそんな状態でもずっと戦い続けた。たった一人の少女のかつての願いのために。私達も最初はそれに甘えていた。でも、ある時気づいた。このままじゃ兄を、黒和元を殺してしまうって。分かってた。分かってはずなのに、私達は止められなかった。それがこの結果」

 

「かほちー……」

 

「……っ」

 

 華穂さんのその言葉に見ていた夢乃隊長と深絵隊長が頷く。二人もそれを分かっているような節だ。いや、当然なのだろう。彼女達は共に駆け抜けた仲。それには当然、元隊長とジャンヌ副隊長も含まれているのだろうから。

 その表情は黎人司令にも伝播している。自分達よりも遥かに長い間、元隊長と接してきた人達が皆後悔を浮かべている。それを見せられると、自分達の心配は同じだった。何も言えなかった。

 それを察して華穂さんはでも、と言葉を返す。

 

「もちろん、あなた達の不安は当然の物だって思う。戦いや、この先の未来が怖くなることは誰にだってある。時には誰かに頼ったっていい。でも忘れないで。あなた達の未来は、あなた達自身が切り開いていく。そしてあなた達はそれを示すことが一度は出来た」

 

「示す、こと……」

 

「あなた達は、暴走したシュバルトゼロを止めることが出来た。私達が一度たりとも直面したことのなかった問題に、協力して解決することが出来た。それは紛れもなくあなた達の成果よ。あなた達なら乗り越えられる。逆に、元のことだって支えられるはず。もちろん、保証はないけど。でも出来る気がする。私は期待できるって思うよ」

 

 彼女は自分達がシュバルトゼロを止めることが出来たことを以って力があると言った。そう言われると、確かにあれは紛れもない自分達のやって見せたことだ。勇人さんや、深絵隊長、夢乃隊長達がいてくれたのもあるが、間違いなく3人はあの戦いで活躍を果たしている。

 それが正しいと見ていた第三者である友直達も頷き、言葉を掛けてくる。

 

「そうです!宗司先輩たちは頑張ってます。それこそ、元隊長さんやうちの新堂隊長と同じくらい!」

 

「それは言い過ぎやろ、友直。けど、それに劣らん活躍今回してたって言えると思うわ。実際元隊長の機体とは張り合えとったわけやし」

 

「千恵里ちゃんの頑張りは、私が保証するよ」

 

「私はお兄ちゃんの活躍、今回は見れてなかったけどこうして生きていられるのは少なくともお兄ちゃんの頑張りのおかげだって思ってるからっ。だから隊長さんの事も、芽衣ちゃんのお姉さんの事も気にしすぎないでって」

 

 気にかけてくれていた者達の声が続いた。それを宗司達は聞いて、口を開いた。

 

「二人とも……やるしか、ないんだな」

 

「クルス……そう、かな。そういうなら、そうなんだろうね」

 

「……別に、気にしすぎてないって。ただ当然のことだ。月子が死んだことを、水に流すわけじゃ……」

 

 宗司と入嶋はそれぞれかすかに表情を緩やかにしていく。進だけはやはり月子の死を未だに赦せていない様子だった。

 それを華穂さんは慈しむようにして言った。

 

「あなたの怒りはもっともよ。私も、それをちゃんと兄の口から、あなたと向き合うようにさせる。けど、あなたもその兄がどういう気持ちでいるのか、それだけは分かって、どうするか決めて。……身勝手、よね。でも、きっと一番つらいのは、兄だと思うから。だから……」

 

「…………分かったよ」

 

 華穂さんの嘆願にようやく進が折れた。正直なところ、本当に出来るのかどうか。今でも不安しかない。まだあのニュースで感じた疑念が晴れたわけではないからだ。

 けれども、やるしかないのだということは改めて理解出来た。例え元隊長が俯いていたのだとしても、自分達がいつまでも俯いていていいわけじゃない。元隊長がいなくても戦う。それが今の自分達の使命だと再認識する。

 少しだけ意識の変わった宗司達を見て、安堵の表情を浮かべる華穂さんは少しだけ肩の力を抜いて息を吸う。そして次なる相手へと向かうことを告げた。

 

「さて、じゃあここからが本番ね」

 

「そうだね。元さんの説得……かほちーは出来ると思う?」

 

 どちらかと言えばこちらが本題だろう。元隊長の説得、いや、立ち直らせる。やはり隊長が立ち直ってこそ、ようやくチームGは機能出来ると言える。というよりエターナだけは元が立ち直らなければ現状復帰できないだろう。

 その質問に対して華穂さんは難しい表情を見せる。

 

「正直言って、今までも言い聞かせることが出来なかったから私じゃ難しいと思う」

 

「そっか……」

 

「それだとこちらとしては非常に困るが……言い方的に別の人間なら行けるということか?」

 

 華穂さんの発言に対して黎人司令が不安を感じつつもそのように指摘した。確かにそのようにも取れる言い方だ。それを華穂さんは認めてその人物を指名する。

 

「そうですね。カギを握るのは深絵先輩です」

 

「えっ、私って!?無理だよ、だって私の言葉でも……」

 

 珍しく狼狽える深絵隊長の声。しかし華穂さんは臆することなく先輩であるとした深絵隊長に物申していく。

 

「それは、深絵先輩自身の言葉じゃなかったからです。HOWの人間としての言葉だったから駄目だった。深絵先輩は光姫先輩と同じく学生時代から兄の事を見ていた時間がある。ジャンヌ副隊長と同じ立場にあるあなたの言葉が必要なんです」

 

「そ……それは……そんなの」

 

 指摘を受けて顔を曇らせる深絵隊長。一体何の話をしているのか。事情を知らない年の若い組は光巴と何かを察した智夜以外が首を傾げる。

 詳しい話を聞く間もなく、華穂さんは深絵隊長の腕を掴む。否応がままに手を引き、黎人司令に元隊長との面会を希望する。

 

「行きます、元にぃの所に」

 

「分かった。夢乃君、案内を頼む」

 

「わ、分かりました。かほちーこっち」

 

 夢乃隊長の後を追ってドアを潜る華穂さん。深絵隊長はその手に無理矢理引かれていく。

 

「待って、待って!私じゃそんなこと……」

 

 言い切る前に深絵隊長はドアの向こうに姿を消す。強引のように思えたが、きっと考えがあってのことなのだろう。少なくとも、今はそう思える。

 それを信じて、宗司達は来る前よりも落ち着いた状態でその帰りを待つことにした。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP82はここまでです。

レイ「華穂ちゃんはやっぱり元君の妹だったね……ちゃんと説得できたみたいで良かった」

ジャンヌ「まだ宗司さん達だけですけどね。でも彼らの事をちゃんと理解して話していると思ってます」

ちなみに華穂ちゃんに事情を話したのは黎人司令。その黎人司令に報告を上げたのは深絵と夢乃ちゃんですので、そこ描写していないですので追記です。

レイ「8年ぶりのチームワークバッチリってことだね!」

ジャンヌ「チームワークかどうかはさておき、ちゃんとホウレンソウを守れていて安心します」

その感想はどうなの……(;´・ω・)まぁそういうのの積み重ねでこういうこともあるだろうけどね。さて、問題一つは解決しましたが……残る問題が最大の障害でしょうね。

レイ「そうなんだよね……鍵を握るのは深絵ちゃんって、華穂ちゃんには何が見えているんだろう」

ジャンヌ「一度失敗したのは本心を明かしていないから、だそうですが、それってつまり……あれを出すってこと?」

あれしかないでしょう。深絵の一世一代の大告白は近々公開です。次話ではない。

レイ「でもすぐだろうね!深絵ちゃんに期待かなっ?」

ジャンヌ「責任重大ですね。ということで、新年最初の私達の仕事はここまでですか」

そうなる。では同日公開の次話もよろしくお願いします。


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EPISODE83 選ぶゼロ・エンド・インフィニット4

どうも、皆様。引き続き新年初更新となります。続けてEP83の更新です。

ネイ「前話から引き続いて華穂さんの大舞台ですね」

グリーフィア「身を引いた彼女の成長、見るっきゃないっしょ!果たしてどうやって元君を攻略するのか?いや兄の心を開く道筋は、もう見えちゃってるみたいだけどね!深絵ちゃんどうやるのかしら~?」

それではどうぞ。


 

 

 夢乃に先行してもらって基地内を行く華穂。やはり改築されたと言うだけあってどこに何があるのか全く知らない。

 最後に訪れたのが結婚報告の時だからおよそ8年になる。その時にまだない建物もある。夢乃の案内が無かったら今頃迷子になっていたことだろう。

 先を行く夢乃にお礼を言う。

 

「助かったよ、ゆめのん。建物どこに何があるのか全然わからないし」

 

「あはは。無理ないよ。かほちーが引退してから基地の防衛基準とか変わったし。その影響で改築もされてたから」

 

「基準が変わると大変ね。うちの旦那も前にHOWの建物が少し変わっただけで軽く迷子になって言うから」

 

「それは……ちょっと問題あるんじゃないかな」

 

 そんな笑い話を交わす。一方その華穂に引っ張られている深絵は納得のいかない表情を浮かべていた。

 引っ張っていた華穂もそれに気づいて宥めるようにしてその理由を尋ねる。

 

「深絵先輩もそんな顔しないでくださいって」

 

「だって……言ったじゃん。私じゃ、元君を立ち直らせるなんて、無理……。私に何が出来るって」

 

 自分ではダメだと諦めを口にする深絵。その様子は先程までの宗司達新人と似たような反応だと思った。

 やっぱりこの人も相変わらずそう言う感じかぁ、と思いながら私は彼女に言って聞かせる。

 

「はぁ……さっきも言ったじゃないですか。深絵先輩は私達の中で唯一、今囚われているジャンヌさんと近しい立場にいる」

 

「近しいって……そんなこと、ない。ジャンヌちゃんと近しいって、どこがどう……」

 

 未だに認めようとしない深絵。その煮え切らない対応に少しだけイラつく。沸き立つ怒りが深絵の身体をガシリと掴む。そのまま事実を浴びせる。

 

「あっ、華穂ちゃん」

 

「深絵先輩!もう知ってるんですよ?深絵先輩が元にぃのこと好きだったってこと!」

 

「っ!?それは……」

 

 驚いて目を見開く深絵。華穂は気づいていた。ずっと前から、17年前の柚羽が亡くなる前から深絵が兄に対し、ほのかな恋心を抱いていたことに。

 兄が不登校になった時も、光姫と一緒に深絵も荷物を届けに訪れていた。その時の眼差しは、明らかに恋をした少女が落ち込む恋人を心配するときの物だった。それに柚羽の生前の時からも彼女と共に家に遊びに来た深絵は兄の事をずっと見ていた。

 それでも告白しなかったのは、きっと柚羽がいたからだ。ずっと我慢し続けてきた。そして今も、ジャンヌに譲ろうとしていた。

 そんなままでは彼女にとっても良くない。そう思ったのも彼女に兄の説得を任せた理由でもある。ジャンヌと同じ人に恋をし続けている彼女の言葉なら、彼女なら兄に言い聞かせられると思った。それを深絵にも伝える。

 

「柚羽さんが生きていた時から、ずっと好きだったんでしょう?なのにあなたはずっと抑え込んでいた。そのあなたならジャンヌさんの気持ちだって分かるはず」

 

「それは……言い過ぎだよ。彼女みたいに、はっきりと言えるわけじゃ」

 

「今言わなかったら、きっと兄には届かない。兄は見失ってしまう、自分の戦う意味を。言わなきゃ兄には何も届かないよ!戦ってほしい気持ちも、深絵先輩がずっとどう思っていたのかも」

 

「そんなの……今言っても、迷惑だよ……元君にも、ジャンヌちゃんにも」

 

 これだけ言ってもなお深絵はその好意を伝えたくない姿勢を崩さない。おそらくこのまま言っていてもダメだろう。全く、変なところで頑固なのだから。

 そうとなれば華穂も強硬手段に出るしかない。そうこうしている間に夢乃が立ち止まり、告げる。

 

「はい、ここが元さんのいる部屋だよ」

 

「ありがとう。ゆめのんはここで待機してて。深絵先輩が逃げない様に見張ってて」

 

「っ!華穂ちゃん、そんなこと……しないでよ」

 

 深絵が逃げない様にと釘差しする。本来ならHOWの隊長クラスに対し、民間人が言えることではない。見るところが見れば処罰されかねない。

 夢乃もそれについて言及する。

 

「それ、本来なら越権行為なんだけどな。司令にどやされちゃう。けど、今回は特例だよ。仕方ないなぁ」

 

 が、しかし夢乃はそれを許す。長年の仲というのもあったが、それ以上に今必要なことと多めに見てくれたようだ。

 それに対し改めて頭を下げる。

 

「ホント、ごめん!」

 

「はいはい。それはお兄さんを説得できてから!」

 

「うん、行くよ」

 

 部屋のロックが解除される。息を吸って気持ちを整える。決意してそのドアを開け放った。

 ドアの先は異常が起こっていることもない、普通の病室だった。清潔感の保たれた一室。その端にふくらみの出来たベッドが一つ置かれている。

 二人が部屋の中に入ると、そのままドアを閉める。二人の気配を察してか、ベッドふくらみがうごめく。布団の隙間から、年明け以来に見たやる気のない顔が覗いた。

 

「何だ……言っただろ、もう俺には何も……っ、華穂」

 

 最初は虚ろだった返答が、華穂の姿を見てはっきりとしていくのが分かる。目を見開く兄に対し、妹として挨拶をする。

 

「久しぶり。全く、呼ばれたと思ったら、久々にヘマしたにぃの励ましに来させられるなんてね」

 

「……そういう、ことか。余計なことを」

 

 事情を察した兄は不貞腐れたように視線を逸らす。会いたくなかったという表情をしている。それはそうだ。こんな状況で、自分と会いたくなどなかっただろう。

 深絵もいるのだが、そちらには反応を示さない。本当に華穂の事を鬱陶しく思っている反応だ。しかしそれに構うことなく兄へと語りかけていく。

 

「聞いたよ。ジャンヌさんを捕虜にされたって」

 

「……笑いに来たのか。なら笑えよ。全部俺のせいだ」

 

「笑って欲しいの?嫌だね。誰がにぃの間抜けなんかで笑うかっての」

 

 兄の雑な話題逸らしを平然と無視する。このくらいは前もあった。そう、17年前に柚羽さんが死んだときも兄はこのように関わりを持とうとしなかった。

 あの頃は未熟で何と声を掛けていいかも、どうすれば兄が自分の話を聞いてくれるかも分からなかった。けれども今はそれをまとめられる、気がする。兄に向けて言葉を紡ぐ。

 

「……正直な話、私もにぃが負けたなんて、何かの悪い冗談だって思った。ジャンヌさんがあの身勝手な次元覇院の後継組織に捕まったのも、何やってるのって思った」

 

「……お前なら、そう思うだろうな。当然か」

 

 兄の言葉の意味は分かる。自分は過去に次元覇院の信者の勝手な取り決めで、無理に彼らの関係者と婚約を交わされそうになったからだ。

 それが嫌で自分は家を出て、今横にいる深絵に誘われてMSオーダーズに属した。5年間次元覇院と戦い続けて、彼らに抗ってきた。

 その戦いを終えて数年、結婚し、子どもも生まれ、彼等は完全に消えたと思った時に彼らは現れた。

 ゼロン。次元覇院の跡継ぎを名乗る組織。それに対し、華穂も不快感を覚えた。元関係者として狙われるのではないかと不安になるときもあった。兄はそれも心配してわざわざ警備を厚くするように進言したのだ。

 戦いから離れて、平和な道を歩んでほしいと願った兄だからこそ、妹である自身に余計な心配を掛けさせたくない。きっとその想いもまた兄自身を疲弊させた。だから兄は言ったのだ。「お前ならそう思う」「当然か」と。

 そう言われれば確かに正しい。正しいが、しかし思うことに差異はある。兄に自身の気持ちを言ってやる。

 

「黎人司令から話は聞いた。にぃ、最近ジャンヌさんとまともにコミュニケーション取れてなかったって」

 

「………………それは」

 

「私は怒ってる。負けたことじゃない。あれだけの人に幸せを願っておきながら自分の幸せを捨てた兄に、にぃのことを大切に思ってくれている大事なパートナーを捨てるような真似をしたことに!」

 

「華穂ちゃん、そんな言い方……」

 

 兄へと非情な事実を突きつける。ストレートな言葉による意見をぶつける様を見て深絵が手心を加えるように言う。

 全く、深絵先輩は甘い。それを言葉にして伝える。

 

「それ以外の言い方なんてないですよ。それがどれだけ、ジャンヌさんを傷つけたか分からないんですか?」

 

「……分かるよ。でも、元君だって今は」

 

「今言わなきゃ、兄は向き合わない!まともに反論しようともしない今のにぃには、誰だって救えない!何やってんのよ、元にぃ!ジャンヌさんを救いたいって気持ちはないっての!?」

 

 煽る様にして兄に対して怒る。仲間だったジャンヌのために、そしてなにより身内であり、今も家族として身を粉にして支えてくれる兄の為に発破をぶつけ続ける。

 必死さを感じ取った深絵は口を噤んだ。彼女もまた、元の復帰を望んでいたから。そんな華穂の言葉に少しだけ元が反応する。

 

「……やったんだよ」

 

「何?」

 

 返した声が聞き取りづらく、自然と聞き返す。それに対し、元がようやくその胸の内を暴露する。

 

「やったんだよ!ジャンヌがもう、俺の事を気にしなくていいように!そのためにずっと戦ってきた!この13年間、レイアがどんな思いでいたのか、考えるたびにあいつのあの時の顔が、声を思い出す!」

 

 唐突に告げられたそれに華穂は心当たりがなかった、わけではない。かつてジャンヌに聞かされた、兄とヴァイスインフィニットとの対決。そこでジャンヌの必死にの懇願も空しく元は逃げるヴァイスインフィニットを追わないという選択を取ったことを聞いていた。

 ずっと考えていた、とはもしかすると後悔なのかもしれない。追っていれば変わっていたかもしれない。だけどそうなっていたら、事態は悪くなっていたかもしれないという葛藤。そしてそれは的中していた。兄は語る。

 

「みんな、あれでよかったと言った。そうだと思っていた。だけど、この世界に戻ってきて、レイアをあと少しの所で何回も救えずに、それどころか、他の誰かまで傷つけて……」

 

「……確かに、あの戦いで私達は多くの人の命を失った。だけど、それがジャンヌさんを救わない理由はならないでしょ」

 

 兄の意見は筋違いである。そう華穂は告げた。兄はただ逃げている。間違った選択をした自身は悪くないのだと。華穂にはそう見えた。

 そんな言い訳がジャンヌに通じるものかと思う。だが兄は醜くも言い訳を続ける。

 

「もう……放っておいてくれ。俺の取った行動が愚かしいのなんて分かっている。普通なら、そんなことしないだろうな」

 

「だったら、何で」

 

「俺は……もう普通じゃない。あいつの想いを受け止めるわけにはいかない。そんなことをすれば、あいつ自身に迷惑が掛かる」

 

「迷惑って……どこが迷惑なの?元君は、普通の、パイロットとして非凡な……」

 

 決して迷惑をかける人間ではないと言おうとした深絵、そして強気な態度を崩さない華穂に元はそれを言った。

 

「自らの親すら手に掛けた男が、普通か?」

 

「……あ」

 

「やっぱり、それなんだ」

 

 呆れとも、後悔とも取れる言葉を吐く。これは華穂自身が予測していた回答の一つであり、その中でも強く当たりを付け、また対処が困難としていたものであった。

 11年前の呪縛がずっと、兄を苦しめている。その事実は華穂もまた思いつめさせる。だが元は全てが自分のやったことだと救出への諦めと共に語る。

 

「それは俺がやったことだ。決して消えない。そしてこの事態も、それが原因で引き起こした。黒和神治に負けたのは、必然なのさ……」

 

 負けたのは必然、などと馬鹿を言う元。それに対し一喝しようとするがそのまま元は思いつめた想いを口にする。

 

「親を殺して、仲間も殺して、そんな奴に誰が救えるっていうんだ!誰が、あいつを救う資格があるんだよ!?俺は、俺には、誰も救えないんだよ!どうせ!」

 

「元、君……」

 

 その言葉を聞いてもう一つ予想が的中する。「仲間も殺して」という言葉。それは他でもない、今回の戦闘で暴走したシュバルトゼロに殺されてしまったHOWのパイロット達、そして大和進のかつての相棒の女性のことだろう。

 先程進と向き合った時に華穂は兄自身もその女性を殺してしまったことをきっと辛く思っていると言った。あの時はまだ憶測の段階でしかなかったが、この言葉で確信に変わる。

 機体が勝手に、自らの意志がないまま暴走したのにも関わらずそれを自分の責任だという。状況としては不可抗力かそうでないか割れるところだが、迷わずその考えを選択する兄の変わらない性格に安堵しながらも、今取るべき対応としてはそうではないと覚悟を決めるとそれを告げることにする。

 叫びを吐露した兄に、妹ははっきりと告げる。

 

「そんなに救えないって言うなら、こっちにも考えるしかないね」

 

「何をだ」

 

「私だって、ジャンヌさんを救いたいって思う。それに元にぃの抜けた穴、誰かが補うしかないでしょ。だったら私、HOWに復帰して戦う」

 

「……えぇ!?」

 

 それを聞いて深絵が驚いた反応をする。当然だろう。まだ誰にも言っていない。その反応が普通だ。

 元もその例外ではない。いや、深絵が驚いた以上に狼狽え、血相を変えて制止してくる。

 

「何を言っている。馬鹿なことはやめろ!」

 

 その驚きようはベッドから飛び起きるほどであり、すぐさまこちらの肩を掴んでくる。表情が動揺に歪んでいた。

 掴まれた肩が痛む。けれどもその瞳は真っ直ぐと兄の顔に視線を注ぐ。全てを明かしてほしいと思うような目で見続ける。その眼差しに元は歯ぎしりして考え直すように言ってくる。

 

「分かってるのか。お前は礼華の母親なんだぞ。まだ彼女は幼い。お前がいなくなったら残された家族はどうなる!?光姫のことを忘れたのか!」

 

 予想通り光姫先輩の事を例に挙げて批判してくる。彼女もまた光巴と黎人を護るために母親でありながらMSパイロット、ガンダムパイロットとして戦って死んでしまった先輩だ。何より、彼女の死を自身も目の前で見ている。見た本人がそれを言うことを兄は認めたくなかったのだろう。

 もちろん華穂自身忘れたことなんてない。あの時の事はよく覚えている。その後の次元一家の苦労も分かっている。

 自分だって同じ思いを夫や、娘にさせたくなんてない。それでも言わなければならなかった。なぜそんなことを言うのか。胸に抱いた決意を告げる。

 

「覚えてる。あの時悲しんだことは忘れるはずがない。でも、光姫さんだって戦った。それだけは踏みにじっちゃいけない」

 

「なら、あいつの為にお前まで犠牲になる必要なんて!」

 

「犠牲になる気なんてこれっぽっちもない!戦おうとしない人間が、そう勝手に思わないで!そう思うなら戦いなさいよ!人に犠牲になるなと言うのなら、私に傷ついてほしくないって言うのなら!」

 

 伝えたかった事。今やるべきことは後悔でも、拒絶でもない。ただ前に進むこと。進もうとする人間を止めようとするなら、自分も同じステージに立てと、兄に対して言い放つ。

 当たり前の理屈を述べて兄からの反応を待つ。兄は反論しようとするも言葉が見つからない様子で負け惜しみのように苛立ちを口にする。

 

「……屁理屈が」

 

「そう思うなら思えばいい。私は元にぃにもう一度戦ってほしい。あなたの大切な人を、取り戻してもらうために。光巴も、みんなもそのために動いている。それを無駄にしないで」

 

 光巴が取り返すチャンスを作った。それを今、黎人達が繋げている。後は元が立ち上がり、その勝負を受ける返答、戦い、ジャンヌとレイアを取り戻せばいい。それが簡単ではないのはもちろん分かっている。だが元なら出来ると信じて、みんな動いている。

 期待が人を殺すことはもちろん承知しているだろう。しかしそれ以上に皆望んでいた。彼らが再会できることを。

 そんな想いのバトンが繋がっていることを伝えた華穂の言葉に対して、元は気力を失ったままやけくそに文句を垂れる。

 

「結局、お前達はそんなに俺を戦わせたいのかよ」

 

 怒りがこみ上げる。が、それは言い逃れできない事実だ。兄に対して言える言葉はそれしかない。戦う道しかないのだ。ならば戦えと言うほかなかった。

 それは華穂にとって最もつらい選択。これ以上兄に苦しんでほしくないと思いながらも、戦ってほしい。そんな矛盾を押し通すしかない。

 やっぱり駄目だな、と思う。どうしても強制する形になってしまう。これしかないと思い込んで話してしまう自分が、それに罪悪感を抱く自分が情けない。

 だけどここからはそうではない。ここから彼女に任せる。自分の目的は、彼女が話す場を整える。後は自身の言葉に彼女自身が理解してくれるかどうか。

 沈黙の後、華穂は口を開いた。

 

「戦ってほしいよ。あの頃みたいに、ヒーローであろうとした頃のように。それを望んでいるのは私だけじゃない。ここにいる、深絵先輩だってそう!17年前からずっとね!」

 

「えっ、えぇっ!?」

 

 驚きのあまり声を出す深絵。そんな彼女を前に出して言い切って見せる。

 

「元にぃも聞いてあげて!17年間、深絵先輩が元にぃに抱いていた、今の元にぃに対する本当の気持ちを!ジャンヌさんと同じ気持ちを!」

 

 無茶ぶり、それでも今伝えるしかない。今しかない。深絵の今の元に対する本音。それがきっと、今の元には必要なのだ。

 二人の背中を押して、その場を後にする。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP83はここまでです。

ネイ「最後、無茶苦茶じゃありません!?えっ、これ帰ってますよね!?」

そうですね(´・ω・`)

グリーフィア「うーん、無茶苦茶なんだけど……でもこれくらいしないとあの二人は話せないってのは分かる気がする。だから私的にもオールOK!」

妖精たちが刺激しそうですね。でもグリーフィアの言う通りこれが最善かなと。

ネイ「この作品の人達、無茶ぶりが多い……」

グリーフィア「というより無茶しないと話が進まない登場人物が多い感じよ。重要キャラの押しが弱い!」

だから華穂ちゃん言っているんだよなぁ。まぁでも華穂ちゃんは華穂ちゃんで元君に対して、感謝の気持ちいっぱいいっぱいなのは分かるよね?


ネイ「それは、まぁ。狙撃をやってもらって、結婚した後もよくしてもらっているっぽい?」

グリーフィア「家族全員含めてみたいよね。やっぱり残ってる肉親として溺愛してるのね。その溺愛っぷりをジャンヌ・Fちゃんに向けてあげなくっちゃ!」

それな?だからこそ、華穂が立ち上がったのです。今度は兄に幸せになってもらいたい。実はこの第5章からしばらく華穂ちゃん準レギュラー的に重要になっていくので、要所要所で彼女のこれからの活躍も楽しんでいただけると幸いです。

ネイ「これからも活躍するんですね、やり残したことを果たす、って感じでしょうか」

そんな感じです(´-ω-`)

グリーフィア「おー、それはこの新年最初の投稿で、いい感じじゃないの。嬉しい報告ッ!」

というわけで、新年最初の投稿はここまでです。

ネイ「今年もよろしくお願いします」

グリーフィア「今年も飛ばしてくみたいよ~」

レイ「安定したいって話でもあるらしいよね?」

ジャンヌ「無理なく続けられるのなら、それが一番です」

全員「ではまた次回!」


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EPISODE84 選ぶゼロ・エンド・インフィニット5

どうも、皆様。今回も更新してまいります。今回はEP84、85から。まずはEP84です。

レイ「前回は深絵ちゃんが無茶ぶりされたシーンからだね。果たして何言えばいいのか……」

ジャンヌ「ジャンヌ・Fさんと同じ、元さんを愛していたからこそ言えるものがある、みたいでしたけど……それで言えたら苦労しないと思うんですよ」

果たして無茶ぶりは元君に届くのか?深絵は話せるのか。というわけでどうぞ。


 

 

 華穂からいきなり会話のバトンを渡されてしまう。まだ華穂が話すのかと思っていたために深絵は心の準備が出来てないと物申す。

 

「ま、待って!いきなり過ぎるよ……何を言えばいいのか、って、華穂ちゃん!」

 

「言えばいいんです。深絵先輩が今元にぃに何が言いたいのか。今までずっと言えなかったことを言えば!」

 

 しかし華穂はそのようにして会話を打ち切って部屋から一目散に出ていく。慌ててその後を追うが、先にドアを閉められ、鍵まで掛けられてしまう。

 開かない扉を叩いて出すように懇願する。

 

「ちょっと華穂ちゃん!夢乃ちゃん!」

 

 何度叩いても返答は帰ってこない。完全に無視を決め込まれて深絵はなすすべなく立ち尽くす。

 こんなのは嫌だ。こんな形で、自分が元に対して抱えていた気持ちを明かすなんて。恥ずかしさと申し訳なさで元の方を向けない。

 それにこんな想い、本人の前でそう簡単に言えるものじゃない。片思いだった気持ちを伝えたところで何になるのか。恥が増えるだけだ。

 そう自分に言い聞かせる。何とか元と一緒の空間に閉じ込められていることを忘れるために。一方の元はこの状況であるにも関わらず、冷静に、冷徹に口を閉ざしていた。

 沈黙はありがたいものの、同時に息苦しさも生む。一体元が何を考えているのか。どう思っているのか。分からないまま時間が過ぎる。

 

『………………』

 

 それが3分ほど続いた頃、沈黙を我慢できなくなった深絵は、元に尋ねる。

 

「……元君は、戦いたくないの?」

 

 純粋な疑問。元はこれまで戦う資格がないと言っていた。それはジャンヌを奪われてしまったから、味方を撃ってしまったからだと。けれども先程の華穂との会話の中で、彼は自分を戦わせたいのかと言った。それは言い返せば自分は戦いたくないのに、お前達は戦わせるのかと言っているようにも取れた。

 そんな理由で質問した深絵。元は態度を崩さず、嫌煙するように答える。

 

「言っただろう。俺にはそんな資格はない」

 

「そんなこと、ない。元君はずっと戦ってきた。華穂ちゃんの為に、みんなの為に、……ジャンヌちゃんの為に」

 

「その結果が、これだ。どれだけ人の為と言っても、結局俺は何も、救う選択をしていなかった」

 

 その言葉が胸を抉る。そんなことないと、今すぐ言いたい。けれどもそんなことを言っても、きっと先程までの繰り返しと悟る。

 どうすればいいのか。何を言えばいいのか分からなかった。けれど何か言わなければと思い、思いつく限りの言葉を言う。

 

「どうして?だって元君はいつもみんなの為に行動していた。私がフェネクスを捕らえられなかった時も快く作戦に協力してくれた。種命島やラプラスの事件でも自分の機体が性能不足だって言われても、自分じゃないとこれは対処できないって受けた。結果的にその判断は正しかった。……ジャンヌちゃんのことも、それが一番だって、思ったから追い求めたんだよね?」

 

「あぁ、そうだよ。そう思ったからやった。でも最後は届かなかった。それどころか、彼女が囚われてしまった。これまでのそれだって、勝手な判断が、たまたま成功していただった。いや、危険に晒していることも気付かなかったのかもな」

 

「そんなわけない!ちゃんと作戦は成功して……」

 

「全部が全部、上手くいったわけじゃないだろ!お前の時だって、終始ジャンヌを苦しめて!」

 

 言われて思い出す。確かにフェネクス捕獲作戦の時、相当にジャンヌを酷使する結果となっていた。

 最終盤の時が最たるものだが、クローザーへと合体した時も、ジャンヌは一時意識を失ったと後から聞いていた。その後の集合でもジャンヌは車いすに座らされるほどに重傷だった。

 作戦の為に仕方がないと思っていたそれを、元はずっと気にしている。後悔がずっと積み重なって責任に押しつぶされてしまっていた。これまでの選択が間違いだったのではと思い込んでいる。

 そんなことはないと、言うのは簡単だ。けれどそれを解すには、言葉が見当たらない。どうすればいいのか、自分は何を言えばいいのか。回答に噤んでしまう。

 

「あ、……う……」

 

「もう放っておいてくれ。お前達が、あいつを……救ってくれ」

 

 関わるなと言いつつ今までの元からはあり得ない頼みを嘆願されてしまう。そんなことを自分達には出来はしないし、仮に出来たとしても受けることなど出来ない。これは彼の問題、元にしか解決できないのだ。

 言いたい。戦って、と。けれど、伝える言葉が、方法がない。説得を諦めようとしたその時、華穂のある言葉が頭を過る。

 

『戦おうとしない人間が、勝手にそう思わないで!そう思うなら戦いなさいよ!』

 

 華穂が自分も戦うと言った事に反論した元を沈黙させた言葉だ。戦おうとする人間に戦うなと言うなら、戦っている人間が言えと言ったその言葉。同じ立場から言うようにと促したその言葉が深絵に自問自答させる。

 

(本当の……気持ち。私も、戦えて……向き合えていない?……そんな、こと……)

 

 そんなこと思っていない。否定しようとした時、記憶が呼び起こされる。それはかつてジャンヌと休憩時間の時に語らった時の事……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 それはおよそ2年前のクリスマスの時期。その頃はまだ比較的忙しい時期ではなかった。事件があればすぐに行かなければならなかったが各員非番の者は街へと繰り出し、担当者も休憩時間には騒いだりとクリスマスをそれぞれの形で楽しんでいた。

 深絵も例外ではなく、休憩時間に端末でクリスマスが題材の映画を見ていた。楽しんでいるところに出撃から帰ってきたジャンヌが声を掛けてきた。

 

「お疲れ様です、深絵さん」

 

「ジャンヌちゃんお疲れ。元君は」

 

「今黎人司令に報告に行ってます。クリスマスなのに、全然休みも通らず忙しいのはこの時期ならではですね」

 

「あはは、まぁみんな騒いでいるから、それを狙ってくる犯罪者もいるんだよね。私も休みが欲しかったよ」

 

 クリスマスなのに働いていることに肩を落とす二人。だが二人も働かなくてはいけないと自覚していた。

 自分達がいるからこそ、世間の恋人たちは安心して惚気られる。それもまたクリスマスの過ごし方だと今は思える。

 とはいえ深絵本人としてはジャンヌがとても残念だろうなとは思っていた。せっかく元と過ごす時間が仕事などとは。ジャンヌももう気にしていないのだろうが、異世界での時間含めた11年もこんな調子では彼女も不満を抱えているのではないだろうか。

 思い切って元との現状を聞いてみる。

 

「けどジャンヌちゃんも災難だよね。10年近くも元君とクリスマス過ごしているのにそれが仕事でなんて」

 

「そう悲観することでもないですよ。私は、元と過ごせてるだけで、幸せですから……」

 

 ジャンヌは微笑みと共にそのように語る。その様子は嬉しさもあると共に、どこか寂しさも見える。

 やっぱり寂しさはあるのだなと思ってそこで追及はしなかった。しかし逆にジャンヌからふと動画について聞かれる。

 

「そういえば、深絵さんが見ていらっしゃるのって」

 

「ん?あぁ、随分昔に流行った海外の映画。丁度クリスマスの時期の話だったから、久々に見たいなぁって思ってね」

 

「あら、いいですね」

 

 話の内容としてはとある男性画家がスランプ気味の中、やんごとなき身分を隠した女性と出会って、クリスマスの2日間様々な場所を渡り歩いていくという内容だった。ジャンルとしてはラブロマンスなのだが、深絵が気に入っている理由はそれではない。

 この男性画家の絵がとても独特で、好みだったのだ。裏話としてこの映画の劇中に登場する絵はいずれも芸術担当が大元を描き、それを男性画家役の役者が酷くならないようにしながらも上から描いているという方式で撮られている。役者の人も絵にとても配慮しており、それでありながら絵描きとしての役を丁寧に演じられていて好印象だった。

 特に映画の最後に描いていた絵は色使いや書き方も本当に良く、一時期真似を目指して描いていた。そう、丁度元や柚羽と共に過ごしていたあの頃に。

 少しだけ寂しい気持ちを呼び起こす。だがその間にジャンヌは映画が気になって覗きに来る。

 

「ちょっと一緒に見てもいいですか?」

 

「え、あぁうん。私の気に入ってるシーンが……あっ」

 

 画面を見て凍り付く。そのシーンは丁度ラブシーン。それもヒロインの女性が絵のコツを掴みかけようと模索する主人公に不意にキスを仕掛ける場面だった。しかもディープな感じだ。

 それをいきなりジャンヌが見せられる形となる。それもあってかジャンヌは少し顔を赤らめて口を噤んでしまう。弁明をする深絵。

 

「あ、あのね!これ、私はこの主人公が描く絵が好きで!別にこういうイチャコラするシーンはまぁ、こういうの受けいいよねーって思ってるだけでね!?そりゃあこういうシーンはいいと思うけどそういうつもりじゃなくって!」

 

「え?あ、そう言う楽しみ方もありますよね。ちょっと驚いちゃいました」

 

「お、驚くよね!あははー……」

 

 休憩スペースでやや騒ぐ二人。周りの隊員の何人かがなんだなんだと視線を向けてくるがすぐに平静を保って何事もなかったかのように過ごす。

 とはいえ、空気が気まずい。何か他の話題に逸らさないとと思い、飲み物に口を触れるところでジャンヌが問いかけてくる。

 

「そういえば、少しいいです?」

 

「ん?何?」

 

「深絵さんって好きな人っているんです?」

 

「ブフゥ!?!?!?」

 

 ジャンヌの質問にむせる。口に付けていた飲み物のコップから周りに水滴が飛び散り、音を聞いた周囲の人物が再び何事かと目を向けてくる。ジャンヌもいきなりの事態にハンカチを取り出しながら狼狽える。

 

「だ、大丈夫ですか深絵さん!?」

 

「げほっ、げほっ!?大丈夫……だけど、ごめん。すぐ拭く!」

 

 二人で急いで飛び散った水滴に対処していく。二人の服にもそれぞれ飛び散っており、自分のハンカチでキレイに水滴をふき取っていった。

 しばらくして吹き出してしまったものをすべてふき取り、再び二人は席に座る。が、両者共に言葉に戸惑う。

 正直、別の話に変えたい。その話は不味すぎる。けれども焦る脳は何を話すべきかで思考が渋滞状態。迂闊な話題を振ってもとの話に戻ってしまうとまた取り乱しそうだ。

 一方のジャンヌは先程の事に動揺しつつもジッとこちらの顔を見つめている。まだその答えを聞く気満々の様子だ。

 

「………………」

 

 また聞いて来るのかと身構える。ジャンヌがバツの悪そうな表情で口を開く。

 

「その……すみません。ちょっと心配で……」

 

「し、心配?」

 

 聞き返す深絵。ジャンヌが心配するほどの事とは一体何なのか。こわばっていた体は柔らかさを取り戻して身を乗り出す。

 

「はい。深絵さん、もう30後半に差し掛かるじゃないですか」

 

「うぐっ!そ、そうだね……」

 

 気にしていることをさりげなく言われる。事実が事実なのでしょうがないが、まだこれ以上の事を言われるかもしれないとなるとまだダメージは安い。

 続く言葉に耐えるべく再び身構える。ジャンヌは言った。

 

「このままだと、深絵さん結婚せずにそのまま行ってしまうような気がして……夢乃さんもそうなんですが、二人にはそういう将来を共にしたい相手がいないのか、それとも結婚したくない理由でもあるのかと思いまして……」

 

「……あぁ、そういう」

 

 先程の質問と繋がる。彼女は純粋にこちらの将来について心配してくれていたのだった。

 正直に言ってそういう心配はさせてしまって申し訳ない気持ちがある。自分自身どこかでそういう踏ん切りを付けなければいけないなとは思っていた。もっとも夢乃の方はどうか分からない。彼女はきっと、姉を死なせてしまったことに責任を持っているから。

 話は戻るが、自分も結婚した方がいいとは思っている。だがそれに移れない、迷う原因があった。

 それこそ、他ならない目の前の彼女、ジャンヌとパートナーであり、付き合っているという元の動向についてだ。

 元は当初、周りにはジャンヌと付き合っていると公言していた。今でもパートナーとして抜群の相性で任務を遂行していた。だがその彼は「今でも」付き合っている状態から進捗していない。

 元本人はかつて、追い続けているガンダムからジャンヌの大切な人を連れ戻すまではそういうことはしないと言っていた。最初は真面目な性格は変わっていないと思ってみていたが、11年もその関係性なのを見ていれば、逆に心配にもなる。

 心の片隅で「もしかしたらまだ可能性が」と思ってしまう。深絵もまたかつて元に心惹かれ、好意を抱いていた。その気持ちは二度の別れを経た今でも保っている。ジャンヌと結ばれないために、今でもくすぶっていた。

 

(二人が結ばれてくれれば、私もすっかり諦めきれるんだけどなぁ……なんて、言えないよね)

 

 そんなことを心の中で思う。それは自分の勝手な言い訳だ。本当ならそんなことを言わずに自分で振り切るべき問題。元のせいにしてはいけない。

 だからこそジャンヌの質問に対して当たり障りのない嘘を返そうとする。と、その前にジャンヌが自分の事を例に挙げる。

 

「私も、その……もうすぐ人の事は言えなくなるんですけども、まだキスすらしてないっていうのに、こんなこと聞いちゃって」

 

「え?いや、別にそういう形でもいいんじゃ……」

 

「私は、嫌です」

 

 突然の言葉に返しかけた深絵の言葉を遮って、ジャンヌが言葉を通してくる。中々耳にしないジャンヌの本音を聞いた気がした。いつも元に対して寛容な様子のジャンヌから、そのような言葉を聞くのは珍しかった。

 そしてその表情もあまり見たことがないものだった。ふと見たその顔は不安と不満の織り交ざった哀しみを感じさせる表情。普段の彼女からは想像できないものだった。

 しばらく深絵はその表情に呆然としてしまう。目が離せない。どうして、そんな表情を簡単に出来てしまうのか。そんな疑問と共に思考を放棄してしまう。

 やがてジャンヌがしてはいけない表情をしてしまったと気づいて謝罪する。

 

「すみません。こんな話して。ダメですね、そんなことを思っちゃいけないのに……失礼します」

 

 そそくさと居心地の悪くなったこの場から逃げようとさえ見える。そのジャンヌに気づいた時、既にその手を掴んで言った。

 

「待って!」

 

「えっ」

 

 無意識に掴んでいたジャンヌの腕。そのまま再び席に座らせる。その時にはもう自分の中に考えていた迷いなどは全て吹き飛んでしまっていた。

 先程の質問に対して、自らの言葉で話し出す。

 

「さっきの質問、答えるね」

 

「べ、別に大丈夫ですよ。話したくないようですし」

 

「気が変わった。話させて」

 

 真っすぐとジャンヌの瞳を見つめる。その目に怖気づいてしまったのかジャンヌはこちらの言葉に従い、抵抗せずに向き直る。

 

「私もね、昔からずっと好きだった男の子がいた。今でも、その子の事が好きなの」

 

「前から、ですか」

 

「うん。その子は二度私の前から消えてしまった。最初は私の居場所から、二度目はこの世界から。ずっとその事を後悔し続けていた。気持ちを伝えなかったことに。でも彼は戻ってきた。その子は二度目に、私なんかよりずっと可愛くて、綺麗な子を連れて戻ってきたの」

 

 何をしゃべっているのだろうと思う。こんなことを言ったら、彼女はきっと引く。彼女じゃなくてもいい印象を抱かないだろう。

 だけど言った。今、彼女に言わなくてはいけないと。目の前で折れそうな彼女に、自分と同じ間違いを犯そうとしている彼女を黙って見ていられない。もう自分だけでいいのだ、そんな間違いを犯すのは。そう思いながら言葉を続けた。

 

「私も、いつか結婚したいって思ってる。だけど、その二人がちゃんとゴールにたどり着くのを見ないと、私が結婚しても不安で仕方がない。だから私はその二人が幸せになるまで結婚できない。好きだった人が本当に好きな人と幸せになって初めて、この恋は諦められるから」

 

「………………」

 

「お、おかしいよね!こんな理由。理解されないのは、分かってる。私も、何言ってるんだろう、あ、あはは!忘れて、今の。だから、私が結婚しようとしないのは、その―――」

 

 今度は自分がその場から立ち去ろうとする準備をし出す。恥ずかしさで今にもトナカイの着ぐるみにでも入りたい気分、そのまま街の催し物で注目されずに退屈にアルバイトをして過ごしていたい、そのようにすら思う。

 だがしかし、今度は逆にジャンヌがその手を掴んで止めてくる。その行動に驚くが、更にジャンヌの発言にも驚かされる。

 

「ジャンヌちゃん?」

 

「……そう、だったんですね。もう…だったら、全力で私も元を落とさないとですね」

 

 そう答えたジャンヌの声。その顔は既にあの不安と不満を表したものではなく、いつもよりも勝気な、笑みを浮かべた物に変わっていた。

 言葉の意味を理解すると深絵にもその笑顔が自然と伝播する。そして言っていた。

 

「期待しているよ。二人の今後に掛かってるんだから」

 

 そうしてクリスマスの休憩を、元が来るまで過ごしたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうだ、思い出した。ジャンヌに対して、自分はそう言ったのだ。恥を承知で彼らを応援した。自分で二人が結ばれてくれないと結婚も出来ないと言っていた。

 その言葉を糧にジャンヌも再び元と向き合っていた。その気持ちを知っているのは、今自分だけだったはずなのに。

 確かに華穂の言う通りだ。ジャンヌの立場に一番近い、彼女の今の気持ちを、推察して伝えられるのは自分位しかいない。自分だって元に立ち直ってもらいたい。なのに、その理由を、彼女がどう思っているのかすらも伝えていなかった。

 元はまた閉じこもろうとしている。あの時、柚羽が死んでしまった時のように。あの時も自分はその気持ちを伝えようとしなかった。それを出来ずに時が経ってしまった。

 

(もう、そんなのは嫌だ……)

 

 深絵の考えが変わる。そして代わりに救ってくれと言った元の顔を掴んで向かい合わせる。

 

「深絵……?何を」

 

 これから何をされるのか分からずにいる元。その彼に向かって、告げた。それは17年前の後悔、そしてこれからの為の、決意だった。

 

「―――――私は、元君の事がずっと好きだった」

 

 

NEXT EPISODE

 




EP84はここまでです。

レイ「過去に、こんなエピソードが……っ!?」

ジャンヌ「ジャンヌ・Fさんと、約束していたんですね。ちゃんと話していて……それを思い出せと言ったわけではないんでしょうけども、ちゃんと言わなきゃいけない理由があったんですね」

そういうことだね。かつての約束の為に、深絵さんが次回いよいよ勇気を振り絞る!

レイ「元君、立ち上がれ!」

ジャンヌ「深絵さんの覚悟を決めた説得、通じてくれると信じます」

とまぁEP84はここまでなんですが、実は今話でDNが計300話になったというね。

レイ「うわっ、もう300話なんだ?」

ジャンヌ「旧作は確か、200何十話で止まったんでしたっけ」

そこらへんですねぇ。そこまで行ってまだ序盤中盤差し掛かるかと言ったところだったので、マジでこっちに切り替えて正解だったって思います(;´・ω・)

レイ「それヤバい。終わりが見えないじゃん」

だからこっちなんだよね。ちなみにまだ400話まではこっちも越えそうです(;´Д`)

ジャンヌ「いや、多いですって!」

やっぱり第1部第2部第3部分けるべきだったんだなぁって思います。まぁ300話越えますが、これからもよろしくお願いします。では同日公開の次話へ移動を。

ジャンヌ「バトンタッチですね」


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EPISODE85 選ぶゼロ・エンド・インフィニット6

どうも、皆様。引き続きご覧の方は改めまして。引き続きEP84、85の更新です。今回はEP85です。

ネイ「深絵さんの言葉で、元さんは変われるんでしょうか。それとも……」

グリーフィア「どういう結果であれ、前には進まないといけないって思うわ。さぁ、元君の選択は?」

どうなるのでしょうか。それでは本編へ。


 

 

 俺には何も出来やしない。そう元は思っていた。レイアは奪還できず、ジャンヌは奪われ、自身は死にかけ、挙句の果てに暴走。暴走には共に戦ったクリムゾン・ファフニールやスタートが関わってしまっている。

 なぜあんなことになってしまったのか。そう思う以上にそれを誘発してしまった自身の至らなさを後悔し続ける。Gチームの面々には特に申し訳なさがあった。進には何を言っても許してはもらえないだろう。

 暴走したことに対しておそらく日本政府も問題視するに違いない。元々シュバルトゼロの運用に関してはこちら側も慎重的なところがあった。いつか問題を起こすのではないか、そしてそれが今起こった。外されるのも時間の問題だ。

 だからこそ、迷惑を掛けない為に遠ざけた。戦ってほしい、救えるのは元しかいないと言われても、それを出来る立場にはもはやいない。それを伝え続けているのに彼らは諦めようとしない。

 流石に華穂まで来たのには驚かされた。彼女は痛いところを突いて来たがその彼女も深絵に任せて部屋を出た。逃げたのだ。

 あまり言いたくないが深絵に自分をどうにか出来るとは思えない。普段は明るく振る舞う彼女も元々は奥手な性格。過去の自分の事件と光姫との関わりがあったからこそ今のあの姿なのだ。

 仮初の、ペルソナを被った彼女の言葉など、今は通じない。そう、思っていたはずの彼女が言った。

 

「―――――私は、元君の事がずっと好きだった」

 

 突如として放たれた彼女の言葉の意図を掴み損ねる。なぜ、そんな言葉が今出てくるのか。説得に来たのではないのか。彼女が自分の事を好きだったということも初耳だ。しかしそんな元の疑問を他所に深絵は言葉を続ける。

 

「初めて会った時、同級生にいじめられていた私を、柚羽ちゃんと一緒に助けてくれたあの時から、二人の事が好きだった。それからいつも、二人は美術室で一人にこもりがちだった私の所にやってきて、色々な話し相手になってくれた。そうしているうちに、あなたの事を目で追うようになっていた」

 

 かつての思い出を述べ続ける深絵。意図を掴めないせいで、話を止めるべきなのかどうかも分からずにいる。

 話をするからには何か理由があるはず。そんな警戒心を持ったまま、深絵の話は続く。

 

「柚羽ちゃんが亡くなった時、すごくショックだった。でもね、私ちょっとだけ、思っちゃったんだ。柚羽ちゃんがいなくなったら、元君を奪えるのかなって」

 

「……え?」

 

「元君も、柚羽ちゃんも、二人とも好きあっていた。そこに私の入り込む隙間なんてなかった。もちろん悪い考えだって分かってる。だから私も元君を奪おうなんて出来なかった。それは、今も同じ」

 

 奪う、所謂略奪愛を望もうとしていたことを明かした深絵に驚きを隠せない。しなかったのだとしても、そんな考えをしていたなんてと。

 だが更に気になったのは今も同じという話。それに心当たりのある元は、聞き返す。

 

「それは……ジャンヌか」

 

「そうだよ。また会えたと思ったら今度は異世界から恋人を連れてくるんだもん。私じゃまた叶わない、気配りも出来る子があなたの隣にいた。だから私はまたこの想いを隠した」

 

 頷く深絵に言葉を失う。そんなこと、知りもしなかった。当然だろう。彼女はそれを知られたくないために一切口に出さなかったのだろうから。DNLでも彼女の思考を覗こうなど思いもしなかった。

 自分には関係ない、と思いたかったが今の元には辛く届く。こんな近くに、柚羽がいた時からこう思ってきた少女がいたことに気づかなかった。それに対する申し訳なさが募る。

 そう言った思いから彼女の声を聞く。聞かざるを得なかった。彼女の言葉が続いた。

 

「願うことなら、ずっとこの想いを隠しておければよかった。でも今、元君はその彼女の事を見捨てようとしてる」

 

「それ、は……」

 

 言い逃れようのない事実。どれだけ違うと言っても、助けるべきは自身ではないと言っても結局はそれを意味する。反論できないまま深絵の発言を許していく。

 

「なら、もう、いいよね。今しかないよね。元君をジャンヌちゃんから奪えるのは」

 

「深絵……」

 

「お願い、私と、このまま一緒に……」

 

 深絵はそんな危険な言動と共にこちらの手を掴んでくる。それに対し元は何も抵抗できなかった。言い返してはいけないのだと思ってしまう。

 一度顔を伏せてから、深絵は元に宣告する。

 

「戦いたくないなら、戦わなくていい。だったらこのまま、私と一緒に全部逃げちゃおう?HOWもゼロンも、ジャンヌちゃんからも。一緒に、平和に暮らそう?ね?」

 

 顔を上げた深絵に二つの衝撃を受ける。一つは、やはりそう言ったのかということ。すべてを捨てて、自身と共にという言葉。そこまで言い切ってしまったことに如何に拒んでいた元でも驚きが隠せない。

 そしてもう一つはその表情。顔はようやく手に入れられるかもしれないという笑みを浮かべている。そう言うのだから言ってしまえば当然だった。しかしその瞳からは大粒の涙を浮かべていた。

 なぜ涙を流すのか。ようやく願いが叶うから、喜びのあまり泣いてしまったのか。それだけが気になる。

 だがいずれにせよこれは一つのチャンスだった。これでもう逃げられる。尾を引くのは辛いが、逃げられると思い、手を引こうとする。

 ところが、その手を引こうとした、最後の異変に気付いた。

 

「……お前」

 

「……っぅ」

 

 手に力を入れて、その真意に気づく。その手はこちらを求めているように、引き込むような雰囲気を持っていた。だがその手を引き寄せようとしたその時、その手に抵抗を覚えた。

 深絵は引き寄せられることを拒んでいた。それだけではない。彼女はこれ以上自分が引き込むこともやめていた。ただ元の手に、腕に手を当てて元の選択肢を一つに絞っていた。

 なぜ、こんなことを言っておきながら拒む。当然疑問はそのことになる。先程の話は嘘だったのかと問いたくなる。そんな思いを感じながら深絵の顔を改めて見た。その顔には、既に先程のような笑みを浮かべた余裕などなかった。

 ただひたすらに涙を流して、唇をかみしめる深絵の姿。それほどまでに元の行動を拒んでいた。先程とはまるで違う反応だ。そして掴んでいた両手の内左手がそっとこちらの胸に当てられた。その手はこちらを引き剥がすかのように当てられている。

 引くも引かれるも出来ない中、深絵の鳴き声が木魂する。

 

「うっ……ひぐっ!お願い……だから」

 

 その言葉の意味は、きっと受け入れて、なのではないのだろう。もう既に分かっていた。彼女が何を求めているのか。なぜこんなことをしたのか。

 きっと先程の言葉は嘘ではない。元の事をずっと前から好きだったことも、奪ってしまいたかったことも。だが彼女には出来なかった。そう、出来ないと元も知っていた。

 彼女を苛めから助けた時も、苛めた先輩の迷惑にならないかどうかを心配していた。柚羽が死んで籠っていた時も無理に引きずり出そうとした光姫を止めていた。さっきも思ったが、彼女は奥手だったのだ、友達のためを思い過ぎて自分の気持ちすら口に出来ない程に。

 だからこそ、彼女のこの行動も分かる気がする。これはきっと、願いなのだ。受け入れないで、払って欲しい。この手を掴むべき相手が別にいるのだと言って欲しい、思い出してほしいという、彼女の願い。

 結局彼女はまた自分の気持ちを押し留めている。だがそれは彼女のやさしさ。そして何より、戻ってきた時からジャンヌを気にかけてくれていた彼女からの檄だったのだろう。

 優しくも残酷な檄を飛ばす深絵。涙はその証だ。その意図をようやく汲み取る。こんなにも自分を、彼女を思ってくれる人がいる。だがやはり彼女の、ジャンヌの手を掴むことは出来ない。自分にはその資格がないから。それでも、元の、今の状況から這い出す気力には十分すぎる理由だった。

 

「……」

 

「あっ……!?」

 

 元は無言でその手を払う。その行動に一瞬深絵は笑顔になる。が、すぐにそれは困惑の表情へと変わった。元の手はそのまま深絵の身体を抱きしめたのだ。

 望んでいなかった行動に深絵は抗議する。

 

「違う、違うのっ!私はこんなこと……」

 

「分かってる。これが最後だから」

 

「あっ」

 

 元はそう告げる。その言葉を聞いて落ち着きを取り戻す深絵。ここまでしてくれた彼女に応えなくてはならない。感謝と謝罪、そして決意を告げる。

 

「言ってくれてありがとう。そう思っていたなんて全然気づかなかった」

 

「だって、言ったら元君にも、二人にも申し訳ないからって、思ったから……」

 

「そうだな。残念だけど、俺はその言葉に答えられない。そして、今はジャンヌの言葉にも頷くことはできない。あいつの手を掴む資格もない」

 

「ジャンヌちゃんが悲しむよ……。でも、そう言うってことは……」

 

 深絵もこちらの意図に気づく。そうだ。下を向いてはいけない。向き合わなければならない。罪に、救い出してくれた者達に。そして示さねばならない。敵に、そして、失われた仲間達に。

 全てを打ち明けてくれた彼女に気持ちを明かす。

 

「深絵、俺も、好きだったよ」

 

「っ、そんなの、ずるいよ」

 

「ずるいだろうな。今の俺には、救わなきゃいけないやつがいる。その為に俺は戦う。それが俺の、戦う理由、俺がもう一度立ち上がる理由だ」

 

「うん、うん……!」

 

 それを聞いて安堵した深絵は自らその抱擁から離れる。涙を袖で拭くが、まだ泣き足りない様子だ。それをあえて指摘せず、元はドアの方に顔を向ける。

 その顔には既に闘志が戻っていた。迷いながらも突き進む。魔王は止まらないことを体現する様に。

 

 

 

 

 ドアの外では夢乃と先に外に出た華穂が神妙な面持ちで待っていた。何かあればすぐに夢乃がカギを開けて飛び込む準備だったのだが、その心配はこれまでない。

 そしてないまま、その声が聞こえた。

 

『華穂、ここから出る』

 

「……そう言うってことは、覚悟は出来た?」

 

 まるでそこで待っていたのを見通していたかのようなセリフだ。それに動揺することなく聞き返す。もしかするとここからまた逃げるなんてこともあり得る。

 だがそれは状況によりけりだ。もし深絵と共に逃げるつもりなら、止めるつもりはなかった。それもまた兄の選択だと思っていた。しかし兄の言葉はそれを裏切る。

 

「覚悟がなければ、もう戦えないさ。俺には、それしか出来ない。俺は、そう言う人間なんだ」

 

 諦めにも似て、心配になる言葉だ。だけど仕方ないのかもしれない。そう思っていたとしても、今は戦ってくれることに感謝するほかない。今それ以上を望むのはあまりにも傲慢と言うものだ。

 要求通り夢乃にお願いして部屋の鍵を開けるようやく部屋の外に出てきた元の顔は不安にはなるが、覚悟を決めているように思える。それでも何も言いたくないわけではない。兄へと向けて自身の本心を伝える。

 

「そんな事はないかな。元にぃは真っ直ぐだから。ちょっと不器用なだけだと思うから」

 

「そうかよ」

 

「これ以上は文句も言わない。だけど、これだけは言わせて。―――――勝って、あいつだけじゃない、自分自身に」

 

「……あぁ」

 

 元は短く答える。そのまま夢乃に対して、現在の状況に関して簡単な説明を求めた。

 

「夢乃、今の状況は」

 

「今、黎人司令がこちらに来ていてゼロン代表の零崎と会談しています。元さんと黒和神治の再戦の事を話しているかと」

 

「まずはそちらからか。宗司達の方は」

 

「それに関しては私が声を掛けてる。だけど、元にぃも直接、声を掛けた方がいいと思う。本人から伝えなきゃいけないことがあるでしょ。特にエターナちゃんは」

 

「……そうだな。まずは会談の方か」

 

 華穂からもここまでの状況を聞いて向かう優先順位を決める兄。ちゃんとGチームの面々と向き合う気もしているので、ひとまず問題はなさそうだ。

 こうして話に入っていると昔を思い出す。兄と共にMSオーダーズ、HOWで活動していた頃も、兄やジャンヌ、深絵達と共に次の活動について話していた。

 懐かしさに浸っていると確認を終えた元が早速向かおうとする。その背中を見送ろうとするが、そこで兄が思い出したように立ち止まった。

 

「?どうしたの」

 

 尋ねると兄は言いづらそうにしながら籠っていたドアの方を向いて小声で頼んでくる。

 

「あいつの事を頼む」

 

「……そっか。分かった。こっちは任せて、元にぃは今自分のやらなくちゃいけないことを」

 

 それだけで何が言いたいのか分かった。顔を申し訳なさそうな、困った表情へと変えながらその後始末を引き受ける。

 それを聞いて元は「行ってくる」と言って通路の奥へと消えた。ため息を吐いていると夢乃が先程の会話の意味を尋ねてくる。

 

「ねぇかほちー。元さんのあの言葉……」

 

「……やっぱり、こうなるよね。ごめんゆめのん、来て」

 

 夢乃に言うとそのまま病室へと入る。そこですぐにその理由が目に見える。

 病室のベッドに腰かけるようにして深絵が座り込んでいた。その顔はこちらにはよく見えない。

 しかし声だけが小さく響いていた。すすり泣くような声。夢乃もそれに気づいた。

 

「あっ……深絵さん」

 

「………………」

 

 華穂は黙ってその前に座り込む。それでも顔を手で隠していたためよく見ることは出来なかったが、手の隙間からぽたぽたと液体が零れ落ちていた。

 こうなることは分かっていた。あれを言って、元がああいうのならきっと返した返事は一つ。その言葉を受けたであろう深絵に謝罪を入れる。

 

「ごめんなさい深絵先輩。こんな役目を押し付けてしまって」

 

 こんな役目、とは兄の説得だ。直接彼女が何を言ったのかは分からない。だがあらかじめ自身が言った事を覚えていたなら、きっと彼女の隠していた好意について話したのであろうことは見当がついている。

 むしろ、それを言って欲しかった節すら自分にはある。それがジャンヌと同等の立ち位置にいる理由、元に好意を抱いている人の声ともなればきっと話を聞いてくれると思った。

 それは結果的に成功した。しかし、それはつまり彼女の気持ちが届かなかったことを意味する。それすらも華穂は利用してしまった。兄が本当に好きな人の為に。

 謝罪を百万回しても足りないとさえ思える。自分は最低な人間だと自責する。だが説得してくれた本人は涙をずっと溢れさせながら呟く。

 

「ううん……いいの、っぐ!ずっと、もどかしかった、からっ。伝えられない自分に。心配してくれた、みんなにっ!ちゃんと、自分の答え、出せた、からぁっ!」

 

「深絵さん……」

 

 華穂は深絵の体を抱きしめる。自分のやらせた行為へのせめてもの懺悔。焚き付けて、それでも苦しい役回りをやってくれた彼女への感謝を表す。

 抱きしめられた深絵は少しだけ落ち着いて、しかし泣きながら苦しさを吐露する。

 

「受け入れたとはいえ……やっぱり、辛いなぁ……。私、振られちゃったんだぁ……!」

 

「ごめんなさい……私、私……!」

 

 つられて涙が出てくる。自分まで泣いたら申し訳ないと涙をこらえる。深絵はそれに気づいて赦した。

 

「いいんだよ……私だって、元君が、また戦ってくれるの、嬉しいんだから……今度は、ちゃんと、救ってあげられるように、出来たんだからっ!」

 

 深絵の言葉が深く心に突き刺さる。かつて兄が救えなかった少女、初恋の人を救えなかったあの事件を、もう繰り返させない。その為に彼女が言ってくれたことに泣いて感謝を告げる。

 

「ありがとう……ありがとう、ございますっ!!」

 

 抱き合い泣き謝る二人の肩を夢乃がそっと抱く。何も出来なかった彼女が、辛い役回りを演じた二人に労いの言葉を掛ける。それが今の彼女に出来る唯一の気遣いだった。

 

「頑張ったね、二人とも」

 

 

NEXT EPISODE

 




EP85はここまでです。

ネイ「あっ……深絵さん……」

グリーフィア「……まったく。終わらせないことを選ばせるために、自分の想いを終わらせる。そうしなきゃ物語は続かないんだから、悲しいことねぇ……」

深絵の元に対する想い、それはジャンヌ・Fが抱く想いと同じ。かつて想いを共有した仲間の為に、今回で完全に終わらせる結果となったわけです。元君を立たせる代償としては、果たしてまだ安い方なのか否か。

ネイ「安くない、安いわけ、ないです。深絵さんがどれだけ元さんの事を思って来ていたのか、L2でだって分かってたじゃないですか」

グリーフィア「そうねぇ。大丈夫そうにしてて、無理していたんだから。それを華穂ちゃんも分かってて、分かった上で利用するしかなかった。あんな事件があったのを知っていた二人なら、なおさらね」

その二人の決断もあって、元君も再び立ち上がったわけです。もっとも、完全な回復ではないですが。

ネイ「そう、なんですか」

グリーフィア「半分あきらめているような感じよねぇ。でも、戦うしかないって分かってる。だから、主人公には頑張ってもらわないとね」

ここから怒涛の展開に元君はどれだけ耐えられるでしょうか( ˘ω˘ )ハッピーエンドはあるのか?

ネイ「その言い方やめましょうよ!?」

グリーフィア「あはは……それは流石にきつくない?そんなに重い展開多いのこれから?」

さぁどうでしょう(´-ω-`)というわけで今回はここまでです。

ネイ「次回は、この会談への介入あたりでしょうか」

そうなる予定です。で、久々の1話更新になるかな?ちょっとだけ更新は早いかもです。ではまた次回。


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EPISODE86 選ぶゼロ・エンド・インフィニット7

どうも、皆様。本日は1話更新、EP86の公開です。

レイ「元君は再び立ち上がる!ジャンヌ・Fちゃんのために!」

ジャンヌ「ここからは元さんの逆転劇。再び宿敵と戦うための道のり、どのような考えを持って、ゼロンと向き合うのでしょうか」

さぁ、ここから再び始まる、黒和元というガンダムパイロットの物語、括目せよ!ってね。それでは本編をどうぞ。


 

 

 基地司令部では須藤司令と黎人司令がゼロン代表零崎との交渉を続けていた。

 

『こちらとしては、そろそろ決闘の日程は決めてもらいたいものだが、なぁ?』

 

「須藤司令も言っただろう。うちのエースは気難しいのさ」

 

 黎人は零崎に対しそのように返す。いや、そう返すしかなかった。まだ元がこの場に現れられない以上、時間を稼ぐことしか出来ない。

 元々黎人がこちらに来たのはその時間を稼ぐためでもあった。元の説得と共に、対象首が前線に出てきたことで相手の沸点を抑える為にわざわざ真正面に出てきた。今前に出るしかない。そう判断したからだ。

 それにいくら名将でも歳の行った須藤司令に代表同士の交渉はストレスになりうる。一時は反目し合っていたとはいえ以降は良好な関係を築いてきた相手に負担掛けるような真似はさせたくない。

 もっとも今回の作戦、現場の代表は彼だが書類上は黎人自身が発案者ともなっている。元の意見も取り入れているが、それは今回の作戦に便乗する形で提言したからにならない。黎人自身が交渉に出ることはおかしくない。

 しかし交渉が変わったことで敵も状況を察したようだ。態度を崩すことなくこちらに圧を掛けてくる。

 

『出てこないというのならもはや大勢は決したな』

 

「それは早いんじゃないか」

 

『こちらは魔王の女を手に入れている。彼女も実にこちらに従順だ。魔王が前に出なくてはこちらには何の不自由もないが』

 

「言ってくれる。普段のあなた達の事を考えれば、彼女の行動は咎めるべきではない」

 

『考えてくれるのはありがたいが、張り合いがないのは面白くないがね』

 

 好き勝手を言ってくれる。だが状況としてはかなり最悪だと胸の内は思っていた。本当かどうかは分からないが、ジャンヌが抵抗していないとなると事態は相当厳しいと言える。ジャンヌが救出を諦めているかもしれないからだ。

 十分にあり得る話と今は言わざるを得ない。元との仲たがいは報告を受けていたが、それが続いているのだとしたら対決にも支障が出るかもしれない。しかしその心配よりも、この対決を実現できるかどうかすらも怪しい。

 ゼロン側には対決する元の同意を以って対決の日時を決めると伝えていた。万全の状態で元にバトンを渡すためとはいえ、その制約を護るためにゼロンからは不信感を抱かれている。黎人が来たとはいえこれ以上の時間の伸ばしは無理な段階にあった。

 

『答えを聞くのは今日までだ。超えるなら、我らは諸君を神の怒りに触れたとして処罰する』

 

「好き勝手言ってくれる……っ」

 

『好き勝手言って時間を伸ばしたのはお主らだろう。今は許しても、時間を超えるのならその態度は改めてもらう』

 

 心の中で舌打ちをする。華穂はどうなったのか。元は果たしてまた戦ってくれるのか。申し訳なさと共に頼むから来てくれという願いを込めながら何とか話し合いを引き延ばそうとする。

 その時、司令室のドアが開く音が聞こえてくる。同時に覇気を取り戻したその声が黎人に呼びかけられた。

 

「―――――待たせたな、黎人、須藤司令」

 

「元!」

 

 そこには確かに失意の中から復活を果たしたHOWのエースパイロットが、HOWの魔王が立っていた。

 

 

 

 

『……ほう。ちゃんと生きてはいたようだな。戦える状態ではないとひた隠しにされておったから、死んだと思っていたぞ』

 

「そいつは残念だったな。だが、そんなことを言って、寝首を掻かれても知らんぞ」

 

 零崎の言葉に対し、初めから強気な口調で張り合っていく。自身の目に見えている人物についてはちゃんと頭に入っている。ゼロン代表、零崎秀夫。新たな因縁となった男に対し、言葉を交わす。

 

『寝首とは、掻かれたのは驕っていた貴様の方ではないか?我らが救世主に敗北して』

 

「昔こんなことを聞いたことがある。慢心しない王はいない。王は余裕の風格を持つ。もっとも俺はそんなつもりもなかったし、それでこうなったのはそう言う考えがあったからだろうな」

 

『魔王を求める者がそうでないと自ら否定するとは、滑稽な』

 

「俺は俺の道を行く。それだけだ」

 

 関係のないような話でも二人は態度を崩さない。それを見ながら黎人は耳打ちする様に具合を尋ねてくる。

 

「元、もう大丈夫なのか」

 

「大丈夫じゃないさ。ただ俺は戦うしかない。俺は戦って破壊することしか出来ない。それでも助け出すと誓った」

 

「……本当に、大丈夫かね黎人君」

 

 須藤司令の心配の声が聞こえてくる。心配するのは当然だろう。戦うしか出来ないと人の命を護る者として最低な言い訳だろう。

 だが今の元にはそう言うしかない。そう自分を卑下することでしか冷静に戦うことは出来なかった。

 それは黎人も承知していたようで、沈黙の後返答していく。

 

「私は彼に一任している。これしかない、と思う」

 

 本当に、黎人には申し訳なく思う。自身の勝手に付き合ってもらっている。きっと政府の方にも何とか話を付けてきてここにいるのだろう。

 それにいち早く報いるべく、ゼロンが望む日程の指定を手短に行う。

 

「再度の決闘、明日夕刻、イチナナゼロゼロでどうだ」

 

『明日の……いいだろう。元より早く決着をと言っていたのだからな。覚悟するといい』

 

「望むところだ。だがその前に個人的な話がある」

 

『話、か』

 

 日程の決定はすんなりを決まった。だが個人的な話をするために通信を呼び止める。黎人達も全くの想定外で、下手なことを言い出さないか緊張を張り詰めさせている。

 臆することなく零崎に問いかける。

 

「なぜ、黒和神治を戦わせる」

 

 聞いた途端虚を突かれたような顔を見せる零崎。黎人達も何を言っているのかと言ったような表情になる。

 しかし零崎はすぐに平静を取り戻し、笑みを浮かべると問いに応える。

 

『そんなもの、知れたこと。彼が望んだからだ』

 

「戦いを、か」

 

『少し違うな。戦いを求めたのは間違いではないが、戦いに至った理由がある。彼は復讐を望んだ。貴様らによって両親を殺された。二度もだ』

 

 二度殺したという零崎の言葉。一度目もHOW、いや、MSオーダーズの攻撃によって殺されたという意味だろう。

 二度目は言わずもがな。黒和家の両親の殺害だ。それをやったのは自身なのだと自覚はある。

 子どもの両親を殺したという罪を感じることはもちろんある。黒和神治をそれだけの感情に浸した自覚も持ち合わせている。だが、それでもやらなくてはいけなかったことなのだ。

 零崎の発言にそれは自然なことであるとしながら、行動を否定する。

 

「それなら、奴の怒りは当然なのだろう。同じ組織の人間として、恨まれることも必然だ」

 

『そうだ。君達は神の怒りを、裁きを受けるべき業を侵している』

 

「そうかもな。だが俺達がやっていることは、人を護るために必然だ」

 

『いいや、お主らのやっていることは人を傷つけ、不幸にする。我らを拒絶している時点でそれは明確だ』

 

 零崎は自分達が被害を被っていることが、その言葉を護っていない証拠だと突きつける。同じ人としての扱いを求める。人としては必然で、当り前の価値観なのだろう。

 だがしかし、それは詭弁である。彼らは自分達だけは裁きを受けないと、裁きを与える側だと勘違いしている。人と違う立場だと自負しながら、人が受ける権利を自分達も受ける権利があると厚かましく主張しているのだ。

 自分達は悪しき人でないと言いながら、ひとたび傷つけられれば同じ人間であると主張する。それがこれまでの歴史にも存在した、醜い主義者達と同じ身勝手な考えであるのは明白だ。

 そんな人間まで守らないといけないのが正義の味方というやつなのだろう。かつては憧れた存在。だがそれではいけないのだと、そんな理想では救うべきものを救えないと分かっていた。だからこそその言葉を明確に否定する。

 

「護るべき人間を選択する。それは俺達に与えられた権利だ。お前達は、同じ人を傷つけた。主張が通らないからと暴力を正当な権利だとして、それを名目に人を襲う。差別と偏見を植え付けるお前達は、それに値しない」

 

『……それもまた、偏見よ。ならば、自らの両親を殺したお前は、両親が守るべきものではなかったと主張するか』

 

 元の言葉にお前が言うなと言うように返答する零崎。その言葉は確かにこちらの心に突き刺さる。

 その言い分は正しい。護るべきはずの両親を殺したということは普通に考えれば護るべきではなかったと言えるのだ。普通ならどれだけ言い訳を並べても苦しい答えになる。

 それでも零崎の言葉に真正面から返した。自身の決意、覚悟を。

 

「俺は親父に頼まれた。自分達を殺してくれと。親父は俺や妹の足手まといにならないことを望んだ。俺はそれを、ただ遂行した」

 

『詭弁だ。親を殺したことに変わりはない。貴様は親不孝者なのだ』

 

 零崎が取るに足らない言葉、勝手に言っている言い訳だと指摘する。それを認めて言葉を続ける。

 

「そうだろうな」

 

『何?』

 

「俺は最低の息子だよ。だけどな、それでもやらなきゃいけないと思った。あの人の覚悟を受け止めないといけない。実の子どもの事を何より優先してくれたあの人の覚悟を、俺は受け継いだ。だからこそ、俺がお前達と戦う。親を殺した俺だからこそ、その悲しみを、繰り返させないために」

 

 言い切った後、それぞれが沈黙を貫く。通信相手の周りからざわつく人の声がする。その言葉は余程衝撃的だったらしい。こちらサイドからは「本気か」という声も漏れてくる。

 だが生憎ながらそれは紛れもない本心だ。あの時からずっと変わらない気持ち。悲しみを連鎖させ続ける彼らを許さない理由がそこにあった。

 未だ沈黙は破られない。元と零崎はただただお互いを通信越しに見返し続ける。そんな沈黙を騒々しく破ったのはその話題に深くかかわる、騒々しい奴の声だった。

 

『―――何が悲しみを繰り返させないだ!お前はいたずらに悲しみを増やしている!』

 

『神治、会話に入るなと……』

 

「やはり、聞いていたか」

 

 黒和家の両親を掠めとり、自分こそが救世主だと信じて疑わない子ども、そして自身が敗北した因縁の相手、黒和神治が元の言葉を否定して乱入してくる。

 通信回線からは他にもいるであろう幹部のざわつきが響いている。しかしそれを周知することなく神治は大層怒り狂った様子で元の言葉を否定する。

 

『父さんと母さんはお前に殺された!それだけに飽き足らず零崎様の同志を次々と殺している!そもそも、父さんが言うはずないだろうそんな事!そんな無責任なことを!』

 

 神治は父の行ったことを嘘だと批判する。神治の言うことはもっともだ。普段の父なら言うはずのない言葉だと、あの当時も思っていた。嘘であってほしいとさえ思う。神治もまた両親の事を尊敬していたようだ。

 だが例えそうだとしても元は主張を変えるつもりはなかった。何よりも奪った自覚のない神治に苛立ちを覚える。神治に受け入れがたい事実を告げる。

 

「普通だったら、言わなかっただろうな。だがお前達は普通じゃなかった。神を本当にいると思い込んだ異常者。そんな奴らの前ではたとえ子供相手でも容赦することはない。親父もそれを分かっていた」

 

『そんなの詭弁だ!都合のいいように解釈するな!母さん達の裏切り者が!』

 

『神治、冷静になれ』

 

 元の言葉を聞いてますますヒートアップする神治を零崎が抑える。一々感情を爆発させられるのはこちらとしても話しづらい。もっともそういう性格の人間とはまともに話が通じるとは思っていないが。

 だからこそ、元は零崎に問うたのだ。代表という立場の人間に、部下をどう思っているのかを。改めて零崎に質問する。

 

「それで、こんなやつをまだ戦わせるのか」

 

『なっ……貴様!』

 

 まだ突っかかってこようとする神治。しかし裏の方で取り押さえられる。零崎は元の言葉の意味をその間に問う。

 

『こんなやつ?彼の怒りがその程度の物だと?』

 

「怒りだけで戦うやつに救世主なんて務まらない。それはただの狂人だ。奴は自分の為に戦い過ぎている。エゴの塊だ」

 

『お主もそうではないか?魔王を名乗る狂人だろう』

 

 零崎は質問をまともに取り合う様子はなく、逆に問いかける。彼の言葉はまさしく的を射ていた。こんな自分がまともな人間であるはずがない。元自身もそう思っていた。

 親まで殺した人間がまともな人間であるはずがない。そう言った意味でははっきりと指摘してくれる彼らは逆にありがたかった。罪から逃れようとする必要もない。全力で、その役目を遂行し潰せる。その相手に感謝の言葉の代わりに頷き返す。ここまで陥った根本を語りながら。

 

「まともであるはずがないさ。俺は狂い続ける。ただお前達をひたすらに葬るため、人間を救うために」

 

『救うために、狂う、か。言い訳だな』

 

「そうだ。言い訳だろう。だがそうしなきゃいけない。そいつの幸せの為に俺達の家族を奪ったのは事実。それをやったのは他でもない。神治自身とかつてのカルト、次元覇院、それをやったのは宗教にどっぷりとつかった母方の叔母、あの詐欺師の山神 麻衣だ」

 

 初めて出す名前。しかし零崎の顔が歪んだ。その人物はかつてゼロンの立ち上げのために資金調達した人物であり、同時に各地で巨額の詐欺・暴行・洗脳事件を引き起こした極悪人の名前。資金調達を受けたゼロンですら嫌う名前だったのだ。

 そんな女は自身の母の妹だった。その名前を出すことは元にとって諸刃の剣であると同時に敵である神治にも効く発言だった。神治が静かに怒る。

 

『その名前を出すな……奴は、俺の為と言いながら零崎様にすべての泥を塗り、責任を押し付けて死んでいった女。俺とは何の関係も……ない!』

 

「殺したのはお前達だろ。それに、母の妹を認めないのはどうなんだ。お前は奴の導きで両親に導かれたのだろう?」

 

『それを言うな!ならお前はどうなんだ!あんな奴を身内と認めるのか!』

 

 図星を突いた発言に神治が矛盾をはらんだ発言をする。いくら養子縁組の橋渡しとなったとはいえ、行った行為を全肯定するわけではない。それだけあの女のやった行いは双方に被害を与えていた。だからこそゼロンも自らの手であの女を葬っていた。

 今さらあんなろくでなしに感傷は抱かない。ただ自分はどうなんだという問いに対してはその答えを口にする。

 

「身内としては認めるさ。ただし、身内の恥だがな」

 

『なっ』

 

『あのような者を、血のつながったものとして認めるのか?』

 

 零崎もまた問いかけてくる。身内の恥、正直言って血のつながった人間として見るのすら憚る相手。それでもその事実だけは認める。簡単に言及し、話を流す。

 

「認識せざるを得ないさ。人は時を変えられない。起こった事象に干渉することなど出来ないんだからな。変えようのない事実だ」

 

『変えようのない事実、か』

 

「それでも、縁を切るくらいは出来るだろうけど。それよりも、話が脱線したな」

 

 言って話題を本来の話の軸、黒和神治をなぜ戦わせるのかという話題へと戻す。釘をさすようにして零崎と神治に宣告する。

 

「お前達は俺の言葉を言い訳と言った。それは認めるよ。だけどな。お前達の戦う理由も、言い訳だろ」

 

『何だとっ!?』

 

『……ほう』

 

 戦う理由を言い訳だと称したこちらに各々の反応が返ってくる。納得のいかない様子、神妙な面持ちでその先を聞こうとする姿を見て、その根拠を突きつけた。

 

「お前は、神治が望むから戦わせると言った。その理由が復讐だったとしても、それを咎める気はない。だが、人を戦いに駆り立てているんだ。それが言い訳でない訳、ないだろ」

 

 人を戦いに駆り立てる行為。それは紛れもなく咎められる行為であり、それに対する理由は言い訳に成り下がる。それを聖戦とする彼らの言葉は言い訳なのだ。

 それを聞いて零崎が問いただしてくる。

 

『ならば、平和のためと言って戦うお主らの言葉も、言い訳ではないか?』

 

 流石はゼロンの代表、姑息な反論を仕掛けてくる。その答えは決まり切っているというのに。元は変わらぬ口調で答えた。

 

「当り前だろ。既に言っている。戦う人間に、言い訳がないわけないさ。それでも戦うと、矛盾していても存在する、そう俺達は決めているんだからな」

 

『……フン。言い覚悟だ。では、明日の夕刻、海上に出現した旧ポート基地にて会おう。座標については後程……』

 

『れ、零崎様……』

 

 神治の声をバッサリと切られて通信が終了する。終了したのを見て黎人がどっとため息を吐く。

 

「まったく、相変わらず無茶苦茶な交渉だ」

 

「君の意志は変わらんな。危うく、達観している」

 

 その二人の言葉には同感だ。しかし、これが俺だと自分自身分かっている。真っ向から間違っていることに反論する。それが黒和元という人間のやり方だ。

 とはいえ心配を掛けてしまったことに代わりはない。今までの失態をすべてまとめてこのタイミングで謝罪する。

 

「それより、すまないな黎人、須藤司令。交渉を続けてもらって。それに黎人は政府の説得もしてもらっただろうし。その上、あんなことを言った」

 

「問題ない。どのみち、私はそれしか出来ないのだからな。戦いたくとも出来ない。ならば、現場の無茶を通すために動く。もっとも、それをうちの娘がやったことには冷や汗だがな。さっきの君の言葉も、私達まで巻き込まないでくれよ」

 

「はは、同感だ。しかし私も良い対案を出せなかった。寄る年波には敵わん」

 

 それぞれ二人の言葉を聞き、すまないと呟く。どうやら黎人のおかげで政府の方には堪えてもらったようだ。再戦の機会ももう一度与えてもらった。なら今度こそ自分は勝たねばならない。いや、やるべきことは一つ。

 その決意を口にする。

 

「二人の、いや、支えてくれている仲間達の為にも、もう一度戦う。勝って、いや、あいつらを取り戻す」

 

「それについてだが、勝てるのか、あのガンダムに」

 

 黎人が心配の声を漏らす。その意見はもっともだ。ジャンヌもいない中、どうやって戦うのか心配にもなるだろう。

 正直に言って今当てがないわけではない。二つほど策があった。しかしそれはいずれも自分への負担を大いにかけ、最悪の場合……。

 もし根拠を話せばきっと黎人達は止めるだろう。だからこそ情報は最小限に止めて彼らに伝える。

 

「方法はある。それより、問題はまだあるはずだ」

 

「……そうだな。君の指揮するCROZE部隊、彼らに、君の顔を見せて来てやれ」

 

 彼らという言葉が指す意味を元は感じ取る。きっと自身があの状態で思う所があったであろう者達の顔が思い浮かぶ。

 彼らには、申し訳ないことをした。その自覚がある。特に進には謝罪しても許されないであろうことは分かっていた。また、彼女が今までの自分に失望していたことも分かる。

 なら、だからこそ会わねばならない。そんな彼らにまた力を貸してもらうべく、今度は彼らを再び立たせるべく。その時、先程の自身の言葉が蘇る。

 

『だが、人を戦いに駆り立てているんだ。それが言い訳でない訳、ないだろ』

 

 これもまた戦いに人を駆り立てる行為だった。彼らと同じ穴の狢。それを分かっていて元は彼らを立たせるつもりだった。それが、今の彼らにとっては乗り越えるために重要なことなのだ。

 黎人達に彼等との面会を希望する。

 

「宗司達、Gチームに会う」

 

「それを決めるのは君だ。任せる」

 

 黎人は面会を許可する。その言葉を受けて元は機材の使用を願い出て基地内の放送機能の準備をしてもらう。

恨んでくれて構わない。そんな気持ちで使用可能になった放送のマイクに向けて呼びかける。

 

 

 

 

「CROZE部隊隊長、黒和元だ。CROZE部隊Gチーム一同、至急第2会議室に集まられたし」

 

 

NEXT EPISODE

 




EP86はここまでです。

レイ「元君は元君、変わんないねぇ」

ジャンヌ「真正面から物を言う。否定意見でも隠さず言いますからね、元さん。でもここ最近はそれが落ち着いていたようにも思えたのですが……」

そここそ、再び変わった、いえ、変わってしまった元君の姿かもしれませんね。

レイ「昔みたいに……ジャンヌ・Fちゃんのためにって暴走するってこと?」

前回の会話も含めるとそれも言える。とは思わないかい?

ジャンヌ「全然あり得るんですよね、それ。深絵さんにああ言っているわけですし……」

それでも元君は進むのだろうね。果たしてその想いは届くのか?それは、どこに?

レイ「どこにって……どこ?ジャンヌ・Fちゃんにだよね?」

ジャンヌ「言い回しが遠回しなんですよ作者……」

そらぁ……まぁ。けどそれが本当にジャンヌ・Fに届いているのかという問いかけでもあるわけでして。

レイ「ん~?」

ジャンヌ「……あぁなんとなく分かりました。それ本当にジャンヌ・Fさんの思ってる事?ですか」

そゆこと。すれ違った彼らの心は通じ合えるのか?それが早くも次回、分かるかも?というわけで今回はここまでです。

レイ「次回もよろしく~!」

ジャンヌ「次回の最初もまた、私達担当ですね」


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EPISODE87 戦う理由(わけ)1

どうも、皆様。本日はEP87、88の更新となります。

レイ「元君も何とか復活!ゼロンとの再対決に向けて動き出すッ!」

ジャンヌ「反撃の為にも、準備は十分しなくてはですね」

HOWで動き出しているなら、当然ゼロンも動いている。今回はそんなゼロン側の、あの人物の視点からの一話です。どうぞ。


 HOW側との通信を終えたゼロンでは零崎に対し幹部らの意見が飛び交っていた。

 

「あのような不遜な態度、今すぐあの人質をつるし上げるべきだと思いますが」

 

「そうでしょう。舐められてもらっては困る」

 

 幹部の中でも信仰心に溢れた者達を中心とした意見は報復で一致しつつあった。それを少数存在する穏健派とでも言うべき冷静な人物達がもう少し考えるようにと諭す。

 

「勝手なことをすれば、HOWも何か動きを行うでしょう。それでもし向こうの世界の戦力を連れて来られれば……」

 

「そんなもの、英雄であるガンダムの前には無力のはずだ!如何に異世界の戦力全てでも、ヴァイスインフィニット程度でも抑えられる、シュバルトゼロを倒したのだからな!」

 

 粛清派は神治の出した戦果を盾に異世界の戦力と張り合えると豪語する。確かに今回の戦いで零崎たちの狙いの一つは神治の力を誇示するというのもあった。

 新型となったシュバルトゼロを相手に敗戦し続けるのはそれだけで前線の者達の士気を削ぐ。それにいつまでも神治を弄ばせておくのも戦力としても神治のメンタルとしても良くないとしていた。

 戦って、勝つ。その経験をさせるためにも今回の作戦は考案された。もし神治が撤退するような状況になっても他の戦線は抑えられるようにしていたため、負けて帰ってきても神治にはよく戦ったと褒めてやることも出来た。結果は予想以上の戦果を挙げてくれたわけなのだが。

 しかしそれが今回の場合駄目だった。神治の辛勝を味方はそれが当たり前の戦果、それどころか神治に任せてしまえばいいと過大評価してしまっていた。

 その考えは穏健派と称した者達の一部も同感のようであり、反論がやや減る。もちろん、いくらガンダムでもその戦力差を押し返すのは現実的ではないという声も上がっている。

 その言い争いは幹部の中でも名の通っている者達の間でも分かれていた。粛清派寄りのハリヴァーが自らの意見を述べる。

 

「私も彼の言動に対して慎ませるという意見には賛成です。不遜な態度を崩さない者にはそれなりの未来を与えてやればいい。取り返したとしても取り返しのつかないような、ね」

 

「私も同意見だな。残念だが、いくら面倒事をやってくれたとはいえ、その本人があのような言い振る舞い……身に余る」

 

 ハリヴァーと同意見であると述べたのはデスティニーズを指揮するギルボード。彼には今回HOWのエースガンダム部隊とされるGチームに対する対抗策、Gイーターの組織に尽力してもらった。

 彼らはこの数か月シュバルトゼロに辛酸をなめさせられた者達。シュバルトゼロに対する恨みも多少入っているためにこういった意見に傾いているのかもしれない。

 一方で同じような立場でありながら穏健派として声を上げたのは蒼穹島部隊の真藤史丈。彼が二人の仲裁に入る。

 

「確かに二人の言うように不遜な態度ではあろう。だが、彼の立場からしてみれば、あれは必然だろう。日本政府の指針は我らテロリストに交渉をさせないというのを立てているのだから」

 

「だが上に逆らえんとは、それでも魔王と言えるのかね」

 

「皮肉を言ってしまえば、それだけ彼と日本政府は繋がっている。我らよりも強いつながりを。逆を言えば、どちらかを崩せば東側の攻略にも繋がるとは言えなくもない」

 

 ギルボードの返しとしてそのように答える史丈。彼の言っていることは的を射ている。彼の攻略こそゼロンが日本を制圧する重要なポイントとなりうる。

 もっとも史丈司令本人としてはまた別の考えがあるのだろう。それに零崎自身気づいていたが、ここでは追求しない。むしろ、こちら側の味方として認識する。

 そこにもう一人報復を現段階で行うべきではないと主張する者がいた。

 

「―――――私も、彼を必要以上に煽る真似は止めた方がいいと思います」

 

「……ヒイラギ・ノリエラ。君か」

 

 ハリヴァーがその名を呼ぶ。彼女はチームソレスタルリーディングと呼ばれる部隊で、普段は宇宙で活動している。今回訳あって地上に降りてきていた。

 地上で活動する者達は宇宙で活動する彼女に口を挟むなと口撃する。

 

「黙っていろ!宇宙人擬きが。地上は我らの領分。とっとと宇宙の支配権を確実な物としろ!」

 

「それを言ってはそこのハリヴァーさんも似たようなものではなくて?随分前に宇宙から地上に転属されたみたいだけど。それに今は零崎代表の右腕たるシャア様も所属は宇宙外縁部隊司令のはずだけど」

 

 反論に対しそう答えるヒイラギ。それを聞いていたハリヴァーは口撃した幹部を咎める。

 

「口を慎みたまえ。ヒイラギ君、続けて構わん」

 

「なっ……!」

 

「ありがとうハリヴァーさん。これまでの戦いからしてシュバルトゼロ、黒和元は非常に実力のあるパイロット。それに彼の怒りで謎の現象を引き起こした例もある」

 

 話の場を設けてくれたハリヴァーに一礼すると彼女はかつて次元覇院と呼ばれていた頃の「我が軍」の映像を見せる。撃墜された味方機のパーツを装着し、変貌を遂げるシュバルトゼロ。その姿は異形。言いたくはないが、奇跡と言ってしまっていい。

 その例を挙げて彼女はこう告げた。

 

「下手にこちらが挑発して、こんな現象を起こして負ける、なんて過ちを二度犯す真似は避けたいところね。まだ彼は死んでいないらしいから。……あんな状況で生きている、というのもにわかに信じがたいのだけれど」

 

「ノリエラ君の言う通りだな。粛清するにも、選ぶ必要はある、か」

 

 ノリエラの言葉で落ち着きを取り戻した様子のハリヴァーがそう話す。どうやら矛の切っ先は収めてくれるようだ。

 作戦に直接関与しておらずとも意見を提出してくれる。流石は戦術予報士と呼ばれるだけはある。更にノリエラは零崎自身が思っていたこと、もっとも気にするべき点についても言及する。

 

「それに……先程から皆さんは神治君なら、ヴァイスインフィニットならやってくれると言っていますが、彼への負担を考慮していますか?」

 

「そ、そんな甘ったれたこと!今まで活躍していなかった奴を活躍させるのは当然」

 

「彼は今までもゼロンの為に戦っています。それに彼は若いわ。私達大人よりも心は脆い。その言葉がどれだけ彼に不安を与えているか」

 

 ノリエラの言っていることは正しく、先程から会議に参加していた神治は彼らの言葉を聞いていて難しい顔をしていた。

 今まで馬鹿にされていた分、急に頼りにされることにそもそも慣れていない。しかもそのされ方が強引であり、本来なら嫌だと言える場面で何を言えばいいのか決めあぐねていた様子だ。

 ノリエラの言葉を受けて神治はそんなことはないと無理に奮い立たせて反論する。

 

「…………っ、そんなことはない。俺は、ゼロンの為に戦う。頼りにされているのなら、ただ戦うだけだ!」

 

「その頼りのされ方にも、問題がないわけじゃないわ。もしそのままの思考で行くのなら、あなたはあなた自身が倒した者と同じ末路を辿る。黒和元はそのせいで負けたとも言えるのだから」

 

「違う!俺は真正面から奴を打ち破った!だからこれからは俺がゼロンを引っ張っていくんだ!」

 

 ノリエラの的確な指摘を必死に否定する神治。神治のそれはまるでこれからをすべて犠牲にしてもゼロンの為に全てを賭けると言ったようにも取れる。

 その覚悟に零崎は思う所を感じる。二人の言い争いに割り込んだ。

 

「そこまでだ、お前達」

 

「!零崎様……」

 

「代表……」

 

 二人は言い争いをやめて零崎の方に注目する。こちらを向かせてから彼らの意見について言及する。

 

「二人の考えについてはよく分かった。ノリエラ君、君の危惧はもっともだろう。神治は少々焦っておる。期待になれておらんのが問題のようだ」

 

「そうですね。期待を背負うにはまだ若すぎる」

 

「私はそうは思わん。だがこれもまた神治の期待の応え方なのだろう。その答え方が魔王と同じなのは因果だろうな。神治。期待を込めるものも居れば無責任に押し付ける者もいる。同時に、ノリエラ君のように気に掛けてくれる者もいる。それを、忘れるなよ」

 

「……はい」

 

 代表の、恩人の言葉を聞いて神治は反省を示すように気落ちする。期待に応えようとしてくれる姿勢までは否定しない。それで無茶をするような真似はしてほしくない。それが零崎秀夫のポリシーであった。

 もっともすべてがすべてそうではないが。二人の争いを収めたのち、そもそもの発端である黒和元への報復について言及する。

 

「代表として、君達の気持ちは分かる。だが、必要以上にそれをやってこれ以上の厄介事を増やすことを、私は望まん」

 

「代表……」

 

「よって、今までの決定通り、プランγのみを実行に移す。それこそ、魔王、黒和元にとってもっとも残酷な選択となるだろう」

 

 それを告げると騒がしかった幹部達の声が鳴りを潜める。ギルボードやハリヴァーからも反対意見が出ない。説得は聞き入れられたらしい。

 確認するとシャアが会議を締める。

 

「では各員持ち場へ戻ってほしい。ヴァイスインフィニット担当チームはプランγの受け入れ準備を」

 

『仰せのままに!』

 

 言って会議は終了を見る。移動をする前にシャアとノリエラ、史丈に声を掛ける。

 

「シャア、ノリエラ君、史丈君。頼みがある」

 

「何でしょう」

 

「?」

 

「はぁ……」

 

 三人を集めたところでそれぞれに関わる一つの事柄について、この後の零崎の行動について告げる。

 

「この後、史丈君の隊員が面倒を見ている捕虜の様子を見に行きたい。ヴァイスインフィニットチームにはプランγを少しだけ遅らせてほしい」

 

「なるほど。分かりました」

 

「ノリエラ君は私の付き添い、史丈君には隊員の方に連絡を頼む」

 

「私が、ですか」

 

「分かりました。すぐに連絡を取ります」

 

 ノリエラを除く二人が言ってそれぞれ準備する。呼ばれる理由について意図を掴み損ねているノリエラに呼ぶ理由を簡単に話す。

 

「我らが組織の中でも数少ない女性幹部なのだ。話を聞いてやってほしい」

 

「なるほど。分かりました」

 

 それだけ伝えるとノリエラも納得した様子で頷く。これ以上を話してもいいのだが、物わかりのいい人物で本当に助かる。

 そして最後に未だ悩む様子の神治に声を掛ける。

 

「神治よ。お前はちゃんと自分の使命を全うした。次なる戦いでも期待しておる。焦らず、自分の答えを見つけるのだ」

 

「自分の、答え……」

 

 小さく頷く神治。まだ完全には理解できていないだろうが、きっと彼なら答えを出せるだろう。それを見届けると早速ノリエラを連れて議場を後にする。

 

 

 

 

 

 ゆっくりとした足取りで次なる目的地へと向かう。同年代と比べて若々しいとされる零崎でもやはり歳には勝てないところもある。ノリエラから心配される。

 

「やはり移動には車いすなど持ってきましょうか?恐縮なのですが」

 

「いや、その気遣いだけで十分だ。君には迷惑を掛けるが、そうでもしなければ周りにいらぬ心配を掛ける」

 

「はぁ……分かりました」

 

 そうするうちに目的地にはすぐに到着する。基地の監獄エリア。管理人にお願いしてその扉を開けてもらい、中へと入る。並んだ牢屋の数は想定した反逆者の数をうかがわせる。

 そのうちの一つの前に女性が立っていた。蒼穹島部隊の制服を着る彼女がこちらに気づく。

 

「お待ちしてました、零崎代表」

 

「あぁ、待たせた。それで、彼女は」

 

「起きてますよ、もっとも相変わらずの調子ですけど」

 

 彼女が見やった牢屋の中、そこには先の対決で捕虜とした女性、ジャンヌ・ファーフニルが鎮座する形で腕を縛りあげられていた。

 概ねニュースで流れている光景と同じ姿でいる。その目は虚ろで、しかし嫌悪感はまだ残っている。銀髪の髪はやや汚れでくすんでしまってはいるが美しさは健在のようだ。

 その彼女が訪れた此方に気づいた様子を示す。自分の今の姿に恥じ、見せないようぬ体を縮込ませる。

 

「っ……」

 

「まだ、戦意は喪失してはいなかったようだな」

 

「……また、辱めるつもり、ですか……」

 

 辱める、というのはこれまでに彼女に対し行ってきたことだろう。捕虜として彼女に行った身体検査。それは体の不調がないかを調べると共に、今後の研究のための前段階でもあった。詩巫女レイアのデータは取れてはいたが、それと比較するデータが欲しい。それに今後行おうとしているあることの為に、彼女の遺伝子データが必要だったのだ。

 無論零崎の管轄で行っているため、他の幹部がやるような非道な実験までは行わない。ギルボードや、今はもういないグレイブ・モセスのようなあれは零崎の望むゼロンではない。しかし力がいるために黙認しているところがあった。だが自身の管轄ではそう言った事は決してさせない。そう言った強い決意があった。

 だが彼女に対して行ったそれは、辱めと取られても仕方がない。身体の隅々まで調べ上げられて、データを取られるというのは不快以外の何物でもないだろう。

 今後に快く協力してもらうためにも丁重に扱う。もっとも次の戦いでは彼女には耐えてもらわねばならない。それがプランγだ。

 彼女の警戒に対して見張りを行っていた蒼穹島の人物、遠葉 真理矢(とおば まりや)に用意してもらった椅子に腰かけるとそれを否定する。

 

「それは、今からやることではない。だが、今後によっては、こちらに協力してもらうことも考えられる」

 

「……もう、どうだっていい……殺して……。元がいない世界になんて、意味ない。生きていても、私は、選ばれない……っ」

 

 彼女は生への執着を捨てる発言をして泣く。その様子を話を聞いていた真理矢が小声で伝えてくる。

 

(まだ、黒和元が生きていることについては伝えていません。それと彼女は大分黒和元に遠ざけられていたようです。原因は、私達のようです)

 

「そうか……狂わせて、しまったか」

 

 後悔を口にするような発言。実際零崎自身はこれまで後悔をし続けてきた。後悔しても、立ち止まれない。かつての悲劇を繰り返さない。その為に日本政府と敵対すると決めたのだ。

 だがその過程で傷ついた人間を見るのは辛い。それが使命ということもあって割り切ってはいる。傷心状態に付け込んでこちら側に引き入れたこともある。それでも、今回のケースは非常にやりづらかった。

 救いたい。しかしゼロンの救い方となれば、ここでやることはただ一つ。その為にあらかじめ指示を出していたノリエラに合図する。

 

「頼む、ノリエラ君」

 

「はい」

 

 言って牢屋に手を掛ける。鍵を開けようとしていた。その行動にジャンヌが体を震わせ、鎖の音が鳴る。

 

「っ!」

 

「心配しなくていい。ただ話すのにはこれが一番というだけだ」

 

 何度目かの金属音で鍵が外れる。中に入っていったノリエラにジャンヌが怯える。その動きには怯えが確かにあった。少女として、これから行われるかもしれない行為に例え同性でも怖がっている。

 彼女の手を縛るチェーンにも手が掛けられる。鍵を外そうとするノリエラを懸命に拒むジャンヌ。その想像は実現しない。鍵が外れるとそのままノリエラは彼女に声を掛ける。

 

「ほら、もう大丈夫よ」

 

「……へ」

 

 その体に手が掛けられることはない。安心させてからノリエラは牢を出て、再び鍵を閉める。分からずにいるジャンヌに零崎は処置について話す。

 

「そのままでは、話に対してまともに反応出来ないだろからな。明日の夕刻まではこの処置だ」

 

「……どう、して」

 

 捕虜の口から困惑の声が漏れる。当然のことだ。まだ彼女は先程の決定を何も知らない。それどころかパートナーの安否すらも知らない。

 それらについての情報をすべて、零崎自身の口から語っていく。

 

「まずは話そう。黒和元は生きている。そして先程その本人から正式に再戦の取り決めが行われた。それが明日の夕刻だ。君にはこちら側の人質として―――」

 

「―――あっ、あぁ……」

 

 ジャンヌはそれを聞き表情を崩す。緊張を伴ったものからたちまち涙を浮かべて自由となった両手で涙をぬぐう。

 何度も涙をぬぐうが、それでもその両目から流れるそれは止まらない。やがて拭うことを諦め、感極まるように呟き出す。

 

「もう……戦わなくていい……私の為に戦う必要なんて。……あぁ、そっか。違う。彼はただ、みんなの為に戦うんだ」

 

 弱音が聞こえてくる。報告では彼女は魔王、黒和元の恋人であると聞いている。それがこうなっているのも、自軍が捕らえているレイア・スターライト、他ならぬ自分達ゼロンとエンドが発端であることも知っていた。

 ゼロンの代表として、本来これは好都合と言える状況。人質を懐柔するには丁度いい心理に当たる。こちら側に協力する様に言って、心を折って裏切らせる。他のゼロン幹部なら間違いなくそうしただろう。

 だが零崎秀夫は違った。彼女にこう問う。

 

「お前は、あのような男でも愛せるのか?」

 

「……当たり前です。彼が狂ったのはあなた達のようなカルトと、私のせい、なんですから……」

 

 問いに対し捕虜のジャンヌはそう答える。捕まった側としても当然の発言の内容。そう返ってくるのは予想できる。だがその内容に零崎は黒和元と同じ物を感じ取る。

 その言葉を受け、ありのままに返答を返す。

 

「すまないな。そう思うのも、当然だろう」

 

「え……」

 

 ジャンヌが予想外と言ったような声を漏らす。きっと彼女は肯定するとは思わなかったのだろう。零崎を見る真理矢とノリエラは注視してそれを静観する。

 狼狽える様子のジャンヌに対し、自身の言葉の意図について語る。

 

「私のやっていることは、ただの復讐だ。だがこれをやらねば、この先も同じ犠牲者が生まれる。だからこそ、私は戦っているのだ。これ以上の痛みを生まないために」

 

「そうやって、戦いの輪を広げていく……。戦いを求めているんじゃなくて?」

 

「あぁ、そうだ。戦いを求めている。だが、戦いは私にとっては手段の一つでしかない」

 

「手段……?」

 

 その表現にジャンヌは首を傾げる。おそらく、シャア以外には誰も理解できていないだろう考え。真理矢やノリエラも顔を見合わせ、知っているかどうかを確かめ合っている。

 残念ながらそれを明かすことは出来ない。シャアにすらすべては明かしていない。その大きな考えを漠然とした言葉で伝え、動かしているのだ。味方にも決して明かさない真意。今もまた大仰に話し出す。

 

「私の望みは争いのない世界。それを実現できるのはゼロンの人間のみだ。それでも、その為に人を傷つける事は極力望まん。敵であってもな」

 

「零崎代表……」

 

「……」

 

 敵であっても傷つけたくはないという言葉。ノリエラは驚いたように口に手を当てる。一方で真理矢はただじっと零崎を横目に見る。

 これが今言える精一杯の表現だ。知られたくなくとも、教えたい真実。残酷でも与える慈悲の為の計画。それを目の前のDNLは疑惑の視線を変わらず向け続ける。

 

「……詭弁です。そんな考えは」

 

「だが、私は黒和元も同じ考えだと思っている。争いのない世界の為に、自分が戦う。私も、戦場ではない場で戦っている。戦うしかない。」

 

 黒和元と話して得た結論。彼もまた戦いでしかこの問題は解決できないと思っている。同じ結論に至ったものとして、例え違う立場であってもこの考えは共有できる。

 黒和元はその考えが出来る人間なのだ。それこそ零崎秀夫が望んだ人物。この暗闇に光差す革命の光。それを目の前の捕虜、彼を最も近くで見ている彼女がどう思っているのか。それを今知りたい。

 そんな期待がジャンヌ・ファーフニルへと向けられる。じっくりとその答えを待つ。やがてジャンヌ・ファーフニルの答え、それが返される。

 

 

 

 

「……違う。元は、元は!……ただ、人と戦うのが嫌いな人間なんです……。怒りに呑まれたあなたと、本当に、ただ戦うしかなかった彼を一緒にしないで……っ」

 

 精一杯、口から出した反論だったのだろう。例え今この場で殺されることになっても否定したいと思い、出た彼女の言葉。紛れもなく本心からの言葉。

 それを聞いて零崎は短く、口角を上げて頷く。

 

「そうか。君がそう言うのなら残念ながらそうなのだろう」

 

「っ……私は、どうなっても……」

 

「どうもしないさ。明日まで、好きに過ごすと良い。ありがとう、教えてくれて」

 

 痛めつけられると思った彼女の覚悟を決めた言葉に、心配ないとの発言を言ってその場を後にするように立ち上がる。彼女に言ったように、何かをするようにはせずに。ただ、離れる前に真理矢に耳打ちする。

 

「真理矢よ。明日の夕刻までの間、プランγの最中も彼女の見張りを頼む。よからぬ考えを他の信者には許すな」

 

「はっ。ですが、いいのですか?あのように言われて、あなたは」

 

 真理矢からそう尋ねられる。その言葉に笑みを浮かべながら余裕を以って応える。

 

「当然だ。人質は、死んでしまっては意味がない。それに、君達も彼女には苦しんでほしくないと、思っているだろう」

 

「!それは……いえ、分かりました。全力で、当たります」

 

 核心を突いた言葉を何とか平静を保って返答した真理矢に微笑みながら頷く。やはり彼女を捕虜の見張りに充てて正解だったと確信する。

 共に様子を見ていたノリエラに声を掛ける。

 

「行こうか、ノリエラ君」

 

「はい、代表」

 

 これでいい。明日が楽しみになった。零崎秀夫は安堵と呼べる表情を浮かべながら、監獄エリアを後にするのであった。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP87はここまでです。

レイ「ゼロン代表、零崎秀夫……平和の為って言ってるけど、やってることと違い過ぎるよ?」

ジャンヌ「いままでからしてもそうですね。そもそも、次元の神とは一体何なのか。どうしてそんなものを信奉するようになったのか。誰がそんなこと言ったんでしょうかね」

多分そこらへんが黒幕なのでしょう。果たしてモブの何気ない一言なのか、はたまた悪意を持った者の犯行か。そこよりも今回は零崎の思想について触れてほしいかな。

レイ「んー神治を使い捨てにする気はなさそうだよね。ちゃんと子供として、後継者として扱おうとしてるっていうか」

ジャンヌ「一応、ダメなところはダメと言っていますから、人格者ではありそうです。それにしては性格が捻くれてて……裏で何かやってそうな気もするんですけど」

まぁそこら辺は色々関係者いますし。零崎だけが彼を教えるというわけにはいかない。ゼロンの教師が普通に教えている感じですから、知識が偏ってしまうわけですよ。

レイ「うーんやっぱり環境かぁ。でもそんな神治をそれもありって言ってるのはカルトって感じするなぁ」

ジャンヌ「それは思いますね。けど、そう思うと今回のジャンヌ・Fさんの扱いが妙なんですよね。優しくしている、取り込むつもりもないみたいに描写が」

レイ「それ!なんか考えてるみたいに言ってるし」

彼の目的も、何か一つ以上は抱えているものがあるようですしね。彼の最終目標に神治が必要というのはあり得そうですよね、このままだと。

ジャンヌ「いずれにせよ、零崎秀夫というキャラクターはまだ謎が多そうです。周りの人の関連も見えませんし」

レイ「今回登場したヒイラギさんとかね。驚くのも無理ないけど、なんか考え方とか珍しく常識人で、なのにゼロン中核にいるのも違和感ある」

それも今後明らかとなっていくでしょう。

ジャンヌ「あ、あともう一つ。ジャンヌ・Fさんの最後の方の言葉なんですけど、元さんが戦うのが嫌いってなんか違和感を感じます」

レイ「そうだね!失礼だけど元君次元覇院とかに対しては凄い敵意むき出しのような気がする。華穂ちゃんとの一見もそうだし、それなのに戦いたくないってさ」

あぁ。それについてですが、分かりやすく言うと元君は優しすぎるんですよ。

ジャンヌ「優しすぎる……?」

レイ「どういうこと?優しいとは思うけど……でも敵相手には」

じゃあクルスを助けたり、L1でアルスを助けたりしたのは?戦場で味方に付いてもらったりしたのは?

レイ「あー……割とそういうのは、すんなりと受け入れてるよね、元君」

ジャンヌ「同じ例ではL3第3章でフェネクスが戦闘参加した時も捕獲よりも優先してましたよね。それ以前には元さん処遇を時には意見して変えてもらってるみたいなことを言われていましたし」

元君も根はそういう甘さを抱えながら、戦いを無理矢理受け入れているところがあるんですよ。さてそこらへんも含めて、同日公開の次話に続きます。

レイ「次へ続くよ~!」


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EPISODE88 戦う理由2

どうも、皆様。引き続きご覧の方は改めまして。EP87と88の更新です。こちらは88となります。

ネイ「ゼロンの内部事情も分かったところで、また舞台はHOW側と」

グリーフィア「もう一度やる気を出した元君が、迷惑をかけたってみんなに謝る感じね~。さて、赦したりとか、してもらえるのか~?」

それではどうぞ。


 

 

 突如として会議室に集められたGチーム一同。そこにはしばらくそっとしてやろうとしていた呉川やクルツ、そして同じGチームでずっとふさぎ込んでいたはずのエターナも同席している。

 二日ぶりの再会となったエターナに、声を掛ける。

 

「エターナ、出てきたんだな」

 

「……当たり前でしょ。あいつの、言い訳聞かなくちゃ……」

 

 その声にやや覇気がない。泣き疲れたと言った様子でそれでも元の口から聞こうとする姿勢は崩さないそこに、彼女の執念のようなものを見る。

 とはいえそれ以上に出て来てくれたことにこちらは安堵を覚えており、入嶋とクルーシア、クルツがエターナと話す。

 

「エターナちゃん、出て来てくれたんだ」

 

「よかった……」

 

「せっかく人が毎日顔見てやろうとして見せてくれなかったのに、やっぱり元隊長じゃなきゃダメなんだな。あの人には敵わねぇな~」

 

「アンタは、しつこい。一人に、なりたかったから。一人になってるときも姉様の悪いニュースばっかり、流れてきて……だから、あいつが今どう思ってるのか、聞きに来た」

 

 世話を掛けてくれたクルツを邪険に扱いつつもこれまでの様子を伝える。きっとこの中で最も元隊長の言葉を聞きたい者の一人だろう。

 そのもう一人も元隊長の到着を今か今かと待ちわびている。

 

「あいつはまだかよ……人を呼びつけておいて……」

 

「でも、お兄ちゃん声が聞こえた時真っ先に立ち上がったよね~」

 

 兄の進に対し、ちょっかいを掛けるように事実を指摘する真由。妹からの指摘を進は必死に否定する。

 

「違っ!俺は、ただ……あいつが何を思ってまた戦うのか……知りたい、明かしてほしいだけだ」

 

「うん。分かってる。みんなそうだもん」

 

 真由の言葉は正しい。ここに集まった者は皆、どういう思惑であれ元隊長が戦うと決めたその理由について聞きたがっている。それを聞いてようやく、自分が前に進めると信じている。

 傍から見ればなんて無責任なのだろう。他人に自分の再起を押し付けるなんて。だがそれと同じくらい、彼の言葉を聞き届けたいという想いがあった。

 宗司は、少なくとも聞き届けて、見届けたいと思っていた。パートナーのエターナがまた再び戦ってくれることを信じて、その再起を。

 そしてその時は訪れる。部屋のドアが開いた。元隊長が入室してくる。

 

「!元隊長!」

 

「元、隊長……」

 

 入嶋の声につられて呼ぶ。二日ぶりに見せたその顔は決して明るくはない、いつもよりけだるげで、しかし硬い表情を顔に張り付けている。

 無理に平静を保とうとさえしているその表情でこちらに返答する元隊長。

 

「待たせたな。心配を掛けてすまなかった」

 

 最初の一声はそんな内容だった。心配を掛けたのは間違いない。だがそれよりも不安が勝っていたのはある。そして一部の人間は元隊長の行動に憤りと悲しみを持ち合わせていた。

 それを代表する二人がそれぞれ詰め寄り、止める間もなく想いを吐き出していった。

 

「何が心配をかけた、だ!どうするんだよ、この落とし前!月子を、返しやがれ!」

 

「今まで何してたのよ……ずっと姉様はテレビで晒し者にされて!今だって、ゼロンでどんな仕打ちをされてるか……!早く助けてよ!」

 

「進、やめろよ。そんな、こと言うのは……」

 

「エターナちゃん落ち着いて!ちゃんと隊長も考えてくれている、はず……」

 

 入嶋と共に気持ちを荒ぶらせる二人を宥める。二人の言葉は正反対の事を求めている。どちらかが落ち着かなければ話も出来ない。ところが元隊長はその気遣いをいいとした。

 

「宗司、千恵里、構わない」

 

「えっ」

 

「でも、元さん!」

 

「二人の怒りは当然だ。俺に任せてくれ」

 

 諦めているかのような声音で諭され、その庇いを止める。一歩下がると、部屋の隅でそれを見やる呉川小隊長の姿が見える。

 その姿はまるで見定めるといった様子だ。今後も使えるのかどうかというような。それほどではないが、宗司達もその様子を見守る。

 元隊長はそれぞれに一つ一つ言葉を返していく。

 

「俺は、ずっと後悔していた。暴走状態とはいえ、味方を撃った。殺した。そんな俺には、もうジャンヌを救う資格もないんだろうとさえ思った」

 

「だったら、なんで今ここにいる!」

 

「姉様を救えるのはあんただけなのよ……!悔しいけど、その力がある!資格とか言ってる場合じゃ!」

 

 進はなぜまたここにいるのか問い、エターナは救う資格がないとかいう問題じゃないと訴える。

 死んでしまった仲間の為、今を生きて助けが必要な家族の為にそれぞれが求めるのは元の死と生。相反する望みを叶えるのは不可能だ。

 二人の言葉に満足する答えが返せるのか、少なくとも宗司にはそれは出来ないと思っていた。二人の願いを叶えるには、どちらかの願いを壊さなければならない。

 どちらを叶えるのか。どちらを選ぶのか明白なような気がしたが、その過程がどうなるのか注視せざるを得ない。その時元隊長の口が動いた。

 

「俺は、償うためにここにいる」

 

「何?」

 

「今までもそうだ。殺してきた命の為、命を救った代償を俺は払ってきた。前線で戦い、敵の憎しみを受け止める。その結果がこれだ。味方も殺して、かけがえのないパートナーは奪われて……」

 

「……そう思うなら、早く助けてよ……大切だって思うんなら!」

 

「それで、月子の命の代償が払えるのかよ!芽衣の悲しみを救えるのかよ!?」

 

 元隊長の言葉にそれぞれの反論が突き刺さっていく。それでも元隊長は正しいと思った反論をぶつけていった。

 

「助けるさ。だけど、もうその想いは受け止められない」

 

「どういう、こと」

 

「殺した代償さ。鷹宮月子や、残された鷹宮芽衣に償えるのは、それくらいしかない」

 

 その言葉にエターナの表情が更に曇る。助けると言っているのに、想いを受け止められないというのは、きっとそういうことだ。元隊長はジャンヌ副隊長の気持ちを分かった上でそれを拒んでいる。この状況であっても、それは変わらないのだと伝えている。

 挙句の果てにそれを償いであるとしていた。それもまた進の望む答えだと思っている。まるで自分だけが不幸であればいい、そう言っているかのようだ。

 けれどもそれは矛盾しているようで今の二人の願いに重なるところがある。助け、また罪を償う。いいとこどりと言うよりは、「どちらにも踏み込まない中途半端」と称するのが一番だろうか。

 確かにどちらの願いも叶える案ではあった。だが、それは決して二人の求めるものではない。それでは認められないと最初に声を上げたのは進であった。

 

「ふざけんなよ!!何が代償だよ。そんな、後ろ向きなことで、あいつらの悲しみが救えるってのかよ!」

 

「ちょっと、お兄ちゃん!」

 

「!…………」

 

 その襟元に掴みかかって壁へと叩き付ける進。真由と共に止めようとしたが、それよりも先に元隊長の身体が壁へと叩き付けられる。

 それを一切抵抗することなくされるがままの元隊長。やや身じろぎをするも、沈黙を守る。そこに進の叫びがぶつけられた。

 

「月子と芽衣はとっても仲のいい姉妹だったんだ。喧嘩することもあったけど、かけがえのない半身だって、月子はいつも言っていた。曲がりなりにも、パートナーなんていうものを組んでいたあんたなら、どうするべきかは分かってるだろ!」

 

 姉妹とパートナー。その結びつきは近いものがある。特に進は半身という言葉を使って、それを訴えていた。

 ここでようやく気付く。進は、決して死んで償えだとか、そういうことを言いたかったのではない。その苛立ちはエターナと同じ憤りから来るものであったのだ。もちろん、殺された恨みもあったのだろうが、それが決して黒和元本人から向けられた物ではないと既に割り切れていたのだ。

 だからこそ、黒和元の口からその本心を聞きたい。宗司にはそう読み取ることが出来た。だが元隊長の口から語られたのは、彼が望むとは思えない、失望を誘わせるような返答だった。

 

「だったら、俺が彼女の支えになれとでも」

 

「お前ェ!!」

 

 ダン!と再び叩き付け音が響き渡る。痛々しいが、無理もない。その言葉はまるで長髪のようであり、進が怒るのも無理はないと思った。

 しかし元隊長を心配する入嶋からはやりすぎだと宥める声が飛んだ。

 

「進さん!そんなことしないでっ」

 

「うるさい!なんで、何でそんなことが言えるんだよ!パートナーがいるってのに、こんな!」

 

「それは……分かんない、私、元隊長が分かんないですっ……!」

 

 反論しようとした入嶋も元隊長の意図が理解できず、反論できないことに涙をこぼす。泣きじゃくる入嶋をクルーシアがフォローに入る。

 クルーシアが抱き留めている間、主張をぶつけあっている両者で沈黙が生まれる。先に口を開いたのは進の方だ。

 

「違うだろっ……償うっていうのは、生きて、戦うってことだろっ!死を覚悟するなんてこととは違う!」

 

 進は必死にこの場での償うということがどういうことかを訴える。とても進の口から語られる言葉とは思えない程にしっかりとして、かつ意外な言葉だった。ところが元隊長の口から、その言葉が受け売りであることが語られる。

 

「その言葉……大守明日那の言葉か」

 

「っ!?知ってるのか……そうだよ。あの一々イラつくあいつの言葉だ!だけど、合ってるだろ!?」

 

 進は恥ずかしさを隠すかのように早口で語る。大守明日那の言葉。それが進の口から出てくるのはあの時から考えれば意外であったし、その関係性の変化まで読み取れる。

 そんな彼女の言葉を引用した進が詰め寄る。だが元はその彼に対し不自然なまでの乾いた笑いを見せた。

 

「フッ、ハハッ。そんな理想を、どこまでも」

 

「っ、何だよ……お前もあのスタートとかいうやつと同じことを思っているのかよ!」

 

 あの時の会話が蘇る。覚醒したスタートは進やオースの面々を指して子どもだの英雄に相応しくないなどと言い放った。理想かもしれないが、それでもやると決めた道を否定したのだ。

 それがあっても進は元隊長を助ける側を選択した。どれだけ怒りがこもっていたのかあの時の進の様子を見れば分かる。それでも感情を裏切ってその選択をした進に、元隊長が言うのならどんなことになるのか。

 それを承知しているかのように、元隊長は言葉を続ける。

 

「あいつらの、オースの考え方は甘い。それでは自分の都合で人を振り回すだけだ。そしてその言葉も一定の人間には響かない。今の俺には、な」

 

「っ、どうして、響かないんだよ」

 

「お前達は、俺とジャンヌに結ばれてほしいと思っている。だけど、俺は違う。少なくとも、今の俺はもうあいつに相応しくない。そう気づいている」

 

「そんなの、助け出せればいいでしょ?それだけで、もう……」

 

 エターナがそう語り告げる。エターナはジャンヌ副隊長の、姉の気持ちを推し量り、今までの口からは語ってこなかった言葉を伝えている。

 二人の仲に対する諦め、とも言えるエターナの言葉は、確かに二人に幸せを望んでいた。ところがその言葉を、想いを元隊長は押し退ける。

 

「駄目なんだ、俺には。親も、仲間も殺した俺と結ばれて、彼女が祝福されると思うか?」

 

「っ!……」

 

「そ、れ、は……」

 

 告げられた言葉。諦めと言える言葉。しかしそれだけで宗司達Gチームには彼の言いたいことが分かる。この一週間宗司達が嫌でも経験した、世間からの声。それを元隊長は気にしていたのだ。

 ずるいと思った。決して無視できないその想いをぶつけられては、反論は出来ない。宗司達では言い返す言葉が思い浮かばない。

 返答に戸惑う間に元隊長は掴み続ける進に語り聞かせる。

 

「俺には、もうそれしか残ってないんだよ。こんな生き方しか出来ない。こういう対応しか出来ない。それが俺の償いなんだよ」

 

 言われて気付く。元隊長の言う償いは、これら含めてのことなのだ。先程から進が失礼にも壁へと叩き付けても何も抵抗しない。受け入れるかのような姿勢。

 一見すれば人としてはおかしな反応だ。しかしそこで華穂さんから言われたことを思い出す。

 

『例えそれが自分の心の限界だったとしても、おにぃは抱え込んでしまう』

 

 きっと、言いたいこともあるのだろう。だけどそれを押し殺して、黒和元という人間を演じている。今の宗司には少なくともそう思えた。

 もう進の表情からは明確な怒りは消えていた。代わりに複雑な憤りを感じさせる。それを見た元隊長はふと、こんなことを口にする。

 

英雄(ヒーロー)なんてものは、この世界には存在しない。所詮は架空の存在。憧れ、そうであれたらいいと思うだけ。俺は、そうでありたいと思ってしまったんだ」

 

「…………っ!」

 

 エターナが拳を握りしめる。その言葉の持つ意味について何か知っているかのような反応。反論をしようとする様子にも見えた。

 そのまま元隊長はオースの考えについて、そして俺達自身の考え方について言及する。

 

「オースも、その幻想と同じ事を求めている。永遠の平和なんてない。武装放棄なんて実現は出来ない。無駄なあがきだ」

 

「お前!結局そんなことを!」

 

「だが、お前達の状況は違う。お前達がこの戦いで抱いたそれは、決して無駄なあがきじゃない」

 

 その言葉の意味が何を示しているのか、嫌でも分かる。既に元隊長は宗司達が敵対した彼らの事について知っている。その事について話をしていた。

 決して出会うはずのないと思っていた存在。それに対して、自分達、少なくとも宗司は倒す以外の方法があるはずと思っていた。けれどもその考えは連日のニュースで消えそうになっていた。

 何を以てそれが無駄ではないと言うのか。元隊長の言葉に注目が集まる。

 

「俺達は大人だ。無茶なことは出来ない。だがお前達は若い。無茶が出来るかもしれない。けど忘れるな。お前達の一番の使命は生き残ること。それを忘れての行動は認められない。それだけは肝に銘じて臨め」

 

 これまでにも散々聞いてきた「生き残れ」という命令。それを護ってなら多少の無茶はしてもいいと元隊長は言った。

 心が楽になる。その行動を取ってもいいという許しは宗司達にわずかな希望を見出させる。自分達の抱いた気持ちは間違いではないのだと。

 しかしそれは同時に無責任な発言でもあるとの側面も持ち合わせる。無茶な言い分とも取れるそれはGチームの先輩にあたる呉川小隊長、クルツからは反論、呆れが飛んでくる。

 

「元隊長、あなたの考えは破たんしている。彼らに死にに行けと言っているようなものだ。敵を説得するなどと」

 

「それを止めるのが、俺達大人の仕事だ。止めると言ってもやらせないわけじゃない。死なせない様に立ち回る」

 

「まったく、隊長の言い方、滅茶苦茶だぜ。俺達は死んでいいのかよ?」

 

「無論お前達が無茶をすることは許さん。第一優先は自分の命だと言っている。それじゃあダメか?」

 

 二人の言い分に対し言い返す元隊長。フォローに回ってほしいとの言葉を掛ける。それに対し、二人の意見は割れる。

 

「ダメかって……はぁ、まぁ俺も異論こそあれど、後輩たちの望みは叶えてやりたいもんだ。俺はやってやろうじゃないの」

 

「俺は賛成できません。この事は上に報告させてもらいます」

 

「言えばいいさ。それをどう判断するかは上だ、呉川。クルツはすまないな」

 

 呉川隊長に対しては、まるで上がどう判断するか分かっているかのように返す。そしてクルツには謝罪の言葉を伝える。二人はそれぞれそっぽを向けるか、あるいはやれやれと言った具合に頭に手を当てる。

 しかし、ここまで来てまだ本題には入っていない。今後どうするのかはまだ最後の段階は踏んでいない。言い訳を聞いただけに過ぎない。

 ところがそれを元隊長も分かっていたようで、こちらへと視線を向け直し、呼吸をする。まるで何か重いことを告げるかのように。

 その重たい口が開く、そして言った。

 

「俺は、もう一度あいつと戦う。戦って、取り戻す。二人の大切な女性を。彼女達を救い出すことが、俺に出来る、死んでいった者達への償いだ」

 

「またかよ……そんなんで、救えるのかよ!」

 

 進が問いかける。再度の問いかけ。進の追求に対し、元隊長は確かな口調で応える。

 

「救わなきゃいけない。俺は、そう言う人間だから」

 

「……くそっ、勝手にしろっ」

 

 進は匙を投げるかのようにそっぽを向く。だが、もう理不尽に暴力を向けるような事はしない様に見えた。

 その彼にも向ける形で、宗司達にへと向けて言葉が告げられる。

 

「だからこそ、お前達にお願いしたい。次の作戦に、参加してほしい。俺の支援の為に」

 

 その時の表情が目に焼き付く。少しだけ表情を緩め、目つきが優しさを伴う。参加してほしいという気持ちがひしひしと伝わるかのような雰囲気だ。

 きっと先程の言葉も関係しているのだろう。諦めかけていた自分達の願いを果たしてほしいという願い。それはまるでその行いが赦されているかのようだった。

 そんな目を向けられてはもう答えは決まっていた。ふと横を見ると、入嶋も覚悟を決めたような目つきを取り戻している。彼女は言った。

 

「参加、させてください」

 

「千恵里ちゃん……」

 

「私、何が出来るか分からない。まだ、あの子と向き合えるかどうかすらも。でも、元さんの力にはなりたいです。ジャンヌさんを今どう思っていたとしても、きっと決着はつくはずだと思いますから」

 

 入嶋はまだ元隊長とジャンヌ副隊長の仲を諦めていなかった。きっと最後には結ばれると、口にする。

 それに続いたのは意外にも進の言葉だった。

 

「俺も、戦う。あんたのそれが償いって言うんなら、俺はそれを見届ける必要がある。あんたのそれが正しいっていうんなら、俺に示して見せろっ!」

 

「お兄ちゃん……フフッ」

 

 真由が兄の成長に微笑みを漏らす。このまま怒って抜けるかと思われたそこも、繋ぎ止められたらしい。

 それは小隊長クラスも同じで、呉川小隊長とクルツがそれぞれの意見を述べる。

 

「無駄死にも、勝手な命令違反も許さん。だが、それが命令というのなら……っ」

 

「相変わらずお堅いねぇ呉川は。ま、俺も相当ヤバいと思うんだけども。けど隊長からお願いされちゃあ断れねぇ。ここで動けなけりゃ俺は自分を軽蔑しちまうからな」

 

 二人とも覚悟を決めたように返答する。残るは宗司とエターナのみだ。

 どう答えるか考え込む。単にやる、と言えばいいかもしれないが、エターナが心配だ。もしそんな隊長には付いていけないと言ったら……。

 彼女のための言葉も一緒に考えようとする。だが、それはたちまち杞憂となった。先にエターナの口が開いたのだ。

 

「……黒和元、一つだけ聞いていい?」

 

「エターナ……?」

 

 質問の許可を願うエターナの声に首を傾げる。元隊長はそれをすぐに認めた。

 

「あぁ、いいぞ」

 

 その返答を受けて、すぐにエターナが尋ねた。その質問は宗司達が予想外と思うしかない内容だった。

 

「アンタは、もうヒーローを信じないの?」

 

 エターナの口からは到底出てきそうにない単語。と、同時に先程の疑問も解決する。エターナはずっと元隊長の言ったヒーロー像について思う所があったのだ。

 エターナの発言は、まるで元隊長が過去にヒーローを信じていたかのような言及だった。過去に一緒に過ごしていたこともあるであろうエターナからの言葉の信憑性は高い。

 元隊長はしばし思案を巡らせるように手を顎に当て、瞬間的な熟考の後、答える。

 

「今も信じているさ。ただそれが、現実にはいないと思っただけだ」

 

「……そう。分かった。それだけでいい。私も、こいつの力になる。相模宗司の力に、それだけ」

 

 自分の力になると言って要請への返答としたエターナ。その形にやや思う所を感じる。だがこれで残すは宗司の返答を待つのみとなった。

 こうなったならもう悩む必要なんてない。宗司はすぐに要請へと答える。

 

「俺も、戦います。戦う理由は、変わってしまったかもしれない。だけど、それも叶えたいって思うから。俺はようやく、戦う理由を見つけられたと思うから」

 

「そうか……分かった。ありがとう、みんな」

 

 受けてくれたことに礼を述べる元隊長。ここまで来ればもう引けない。いや、引くつもりなんてない。取り戻すのだ、全てを。明日を。

 エターナも、進も戦う意志をちゃんと取り戻した。やっぱり元隊長がいなければ、このチームは成立しないと思った。けれども同時に頼り過ぎない様にしないととも思った。華穂さんの言うように、期待を背負わせすぎないように。

 その事を解散の別れ際に元隊長に告げた。

 

「あの、俺も、なるべく自分一人で……いや、他の人に頼れるようにします」

 

「……そうか。それはいい傾向だ」

 

「えっ」

 

 いい傾向と言われて若干戸惑う。まさか褒められるとは思っていなかったからだ。その時入嶋から若干恨みのある視線は向けられたのも戸惑いの一つだが。

 しかし元隊長のそれは、単純なものではなかった。隊長の言葉が続く。

 

「他の人間に頼る、俺には出来ない。いつもそういう時俺は押し付けると思っているからな。頼るという言い方の出来るお前は充分に良い。―――お前達は、俺のようにはなるなよ」

 

 その表情からはいたたまれない様子を察することが出来た。足早にその場を後にされたのであった。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP88はここまでです。

ネイ「何か、凄い複雑」

グリーフィア「元君はもう色々諦めてる感じよね~。しかもそのトラウマを今回増やしてるみたいだし」

前も言ったけど元君は戦いに向いている人間ではないんです。憎しみも抱いたりしますが、仲間の事を考え過ぎてる。その上敵だとしても対話を求める傾向にある。

ネイ「あーL1とか強敵と戦闘開始する前に話す場面確かに多いですよね。生身の時含めて」

グリーフィア「そうねぇ。割と武人思考だったりしてる。ちゃんと話してって場面多いのよ元君。もっともL2以降結構減ってるんだけど。なんか元君も深く語らないようにしてるって感じ?」

あれですね、元君の意識が変わっているんですよ。普段は聞きたいって思考を、これは任務だって自己暗示かけて止めてる。それも元君が敵に余計な情けをかけないようにってやってるんです。これマキナ・ドランディアでの生活の時、L1のエピローグ期間からちょっとずつやってる設定です。

ネイ「え、あの期間から……?」

グリーフィア「言われてみると、確かに辻褄合ってるのよね~。やっぱり時間が経っているとどうしても違いが出てくるっていうのはあったし。まぁでも戦闘停止状態だとL3第2章とか第3章みたいに話してる、説教場面があるんだけども。L2は少なくとも両軍静止して話してる印象はほとんどないわね。これもやっぱりカルトの侵食具合もあってかしら」

次元覇院はゼロンよりも話聞いてないイメージですからね。現在の神治君と同じで考えてます。っていうか神治君の性格はその頃のゼロン全体のイメージです。

ネイ「とすると、やっぱり前話で話していたように、零崎秀夫が何らかの思惑を持って行動しているとの説を補強しますよね。無策に動かしていないって点で」

グリーフィア「なんというか、零崎をゼロン、神治を次元覇院って当てはめると、零崎は修正してるイメージよね。合ってる?」

全然合ってる。てか話脱線(;´Д`)

グリーフィア「それもそうか。じゃあまとめっていうか、気になるのとしてはあと進君の望んでた答えね。元君が戦って償うも十分答えだと思ったんだけど」

ネイ「作者さん、正解は?」

謝罪だよシンプルに。ただ進は殺してしまった月子に対しての、残された芽衣への、そして仲間を目の前で殺されてしまった自分への謝罪。同時にそれでも前向きに事態を解決していく姿勢が欲しかった。だから後ろ向きな元君に怒ってた。

ネイ「あー」

グリーフィア「なるほどね。謝罪は確かに必要だわ。後悔してるって言ってるけど直接的な謝罪ないし」

まぁそれでも進君は戦場なら、パイロットならやむなしって思うべきところもあるんですけどね。もちろん悲しむ心も必要です。覚悟がまだ足りてない。

グリーフィア「非情ね~」

ネイ「原作のシンさんもストレスたまりっぱなしだったっていうのに」

さて、まぁ今回は長くなったのでここまでです。次はもう少し早めに出したいですね。

ネイ「今回も5日投稿目指してたみたいですしね」

グリーフィア「ま、無理のない程度に頑張って~。それじゃあまた次回~」


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EPISODE89 戦う理由3

どうも、ちょっと今日はまともな返しが出来そうにないです。とりあえずEPISODE89と90の公開です。

レイ「鬱モードで投稿するの初めてかなぁ」

ジャンヌ「…今日は、いえ、しばらくは私は許しますよ。最低限話していただければ」

ごめんなさいです、皆様。それではどうぞ。


 

 

 目まぐるしく事態が変わった一夜が明け、決戦の日となった。東日本連合軍の面々は非常にハードなスケジュールをこなすこととなった。急遽決まったシュバルトゼロとヴァイスインフィニットの決闘の為、手の止まっていた作業を再開。一日ですべてのMS修復作業を完遂させたのだ。

 それだけにとどまらず、各勢力で投入しようとしていた新型MS、新武装の調整も急ピッチで仕上げられた。その調整はHOWも例外ではなく、相模宗司、入嶋千恵里、大和進の新型MSの調整作業はほぼ徹夜で進められた。

 その作業に無論彼らも付き合い、仮眠を取りながらもその行程は何とか完了を見た。新型機「ガンダムDNⅡレーバテイン」「ガンダムDNアルヴⅡ」「オースデスティニーガンダム」の3機は無事作戦前にロールアウトされたのだった。

 その3機がきっと黒和元の力になる。関わった者達とパイロット達は確信していた。しかし不安がないわけではない。

 なぜならこの3機が、改修、修復された機体達が活躍するのは、シュバルトゼロが勝利した後にしかないのだから。すべては、シュバルトゼロが勝つかに掛かっている。勝たねば意味がない。それでも彼らは無理を押して仕上げた。その時の為だけに。勝つと、信じていた。

 すべては、その時の為に。

 

 

 

 

 約束の時まで1時間を切った頃、準備を整えていた宗司達の下に元がやってきていた。

 元隊長は徹夜明けの宗司達を労う。

 

「すまないな。急な日程で」

 

「大変でしたけど……これも俺達がグズグズしてたからと思えば、自業自得ですよ」

 

「そうですよ。隊長こそ、ジャンヌさんのいない状態でのシュバルトゼロのシミュレーションやっていらっしゃるみたいですし」

 

 謝る元隊長に対し、入嶋と共にそう言って見せる。眠気はないわけではなさそうだが、徐々に覚醒しつつはある。ドリンクなどを飲めば耐えられそうだ。

 MSの方も頭に入っている。これまでとはやや勝手の異なる機体ではあったが、基本となる部分は同じ。後は武器の使いどころさえ誤らなければ大丈夫だろう。

 入嶋の方も苦戦していたものの問題はないと思う。もっとも入嶋のアルヴⅡは新型素体のレーバテインと違って旧来のガンダムDNをベースにしているため、操縦系統の意味では複雑ではないだろうが。それでも扱いの難しい兵装が多くなったらしい。

 ここまで言ったとはいえこのハードなスケジュールに文句がないわけではない。そしてそれは、もう一人の新型受領者の口から告げられる。

 

「俺は文句がないわけじゃない。いくらサボってたとはいえ、俺の機体の方は普通一日じゃ無理だろこれ……!」

 

「あはは……見てたけど私じゃ無理だったね。進さんのコーディネイティア能力があればこそ、一日で分かったくらいだと思う」

 

「一日読み込んでもこれが正しいかどうか分かんねーよ、ったく」

 

 進はフォローしたクルーシアにも文句を言う。進の新型機はオースから提供されたプランに則り開発された。オースで作ってからこちらにロールアウトするのでもよかった、むしろ最初はその方向でオースがお願いしていたらしいのだが、HOW側が運用を管理する都合で最初からこちらでパーツを作った方が修復に時間がかからないとなって開発が委任されたらしい。

 そのオース側が成長した進のパイロット、戦闘データを基に開発したオースインパルスの後継機と謳っているオースデスティニーガンダムは控えめに言っても通常戦闘能力でもレーバテインと互角以上。流石、オースのメカニズム。そのせいか、進も癖を掴むのに苦労したわけだが。

 そして苦労したのは進だけではない。ガンダムDNⅡレーバテインを共に調整したエターナも疲れに目をこすらせていた。

 

「そーよ……私だって、いつもなら寝てた時間に起きてエンゲージシステムの調整やったんだから……ふぁう」

 

「エターナ、大丈夫か」

 

「大丈夫……仮眠取ったし、まだ寝ない」

 

 眠りこけそうになるエターナの肩をそっと支える。

 エターナもずっと新造されたガンダムDNⅡレーバテインのエンゲージシステム調整に駆り出されていた。負担の少ない電子空間での作業とはいえ、疲れは溜まり、途中で寝てしまうほどであった。

 それでも戦闘を完璧に出来るほどに調整を行ってくれて、なおかつこちらのシミュレーションにも付き合ってくれた。エンゲージシステムの主調整が出来るのはパートナーのみであり、おそらくレーバテインが無事ロールアウトできたのは彼女のおかげだった。

 そんな進とエターナに対して、仕上げてくれたことに頭を下げる元隊長。感謝を述べる。

 

「ありがとう。そこまで手間を一日で掛けさせてしまって」

 

「あ、頭下げんなよ!まだこれからだろ」

 

「そうね……これで負けたら、一生恨む、から」

 

 二人から感謝はまだだと言って逆に元へエールを送った。そう、まだこれからが問題なのだ。

 一方それを見て呉川小隊長はこの作戦における心配、不満を口にする。

 

「彼らが受け入れているからいいものの、いたずらに負担を掛けることは賛成ではありません。もしそれで彼らが死ぬようなことがあれば……」

 

「おいおい呉川……そんなこと今言わなくても」

 

「今だからこそだ、黙っていろ、クルツ」

 

 無茶をして死んだら、という不安になることを口にする呉川。確かに、疲れは溜まっている。油断、あるいは注意散漫で落とされる可能性だってある。心配されて当然だろう。

 そこまで心配してくれる呉川小隊長の言葉を無下には出来ない。呉川小隊長は元隊長に問い詰める。

 

「それについては、どうお考えで?」

 

「手厳しいな。いつもより。昔と同じか」

 

「私は何も変わっていません。どうなのですか」

 

「そうだな……」

 

 きつい視線を向けられて目を逸らす元隊長。呉川小隊長に圧される、というより呉川小隊長が誰かを気圧す滅多に見ない光景に唾をのむ。

 しかし思案の後元隊長は困ったような声で答えた。

 

「それに関しては、既に最初に入るときに問うているさ。覚悟はあるか、と」

 

「それは、戦う覚悟という意味だ。無茶をしろということを覚悟しろと言っているのでは……」

 

「それも普通は含んでいる。人を護る仕事なんだ。福利厚生をちゃんとしていても、護れないことだってある。ベストを尽くすためのものだと、分かっているんじゃないのか」

 

 HOWの仕事へと関わる際、元隊長は確かに言った。その覚悟はきっとこういうことを意味していることもなんとなくだが感じていた。それを今さらながら責任を問う呉川小隊長の言い分は、的外れとも言えた。

 もちろん、心配してくれるのは嬉しい。だがそれで隊長を困らせるのは違う。それをクルツも分かって会話にダメ出しした。

 

「呉川、もう諦めとけ。ソージ達だって、それ分かってて入ってるんだ。俺達と同じだ。今さらだろ」

 

 ドライな意見であるものの概ね宗司が言いたいことを言ってくれる。それに対し納得のいかない様子の呉川小隊長であったが、ふとこちらを見やってため息を吐く。

 

「……戦うことに異論はない。だが、俺はそうやって人がすりつぶされていくのを見たくないだけだ。立場がある者が、ない者を蹂躙する姿をな」

 

 呟く呉川小隊長の顔は険しい。何かを思い出し、嫌悪するような顔を見せる。背を向けると負け惜しみの如く最後に告げていく。

 

「そこまで言うのなら俺はただ任務を遂行するだけだ。俺が、お前達を死なせない。行くべき場所へと連れていく」

 

 言って先に行ってしまう。その背に呉川小隊長の辛い経験を持っている事を感じ取る。その背を見ながら、クルツがふと呉川小隊長の過去について触れる。

 

「そういや俺、あいつの昔の事なんも知らねぇな」

 

「そうなんです?」

 

「あぁ。部隊を転々としていたのは分かってるけど、入る前とかは全く話さないんだよなぁ」

 

 意外と謎が多いのかもしれない。それは元隊長も同じだった。

 

「うちの調査部も彼の経歴を調べたが、実はまだはっきりしていないことがある。あいつは捨て子だったらしいが、親とかを特定できていない」

 

「そうなんですか……」

 

「あぁ。その件で、何かあったのかもしれないな。成長してからの何かが。いずれにせよ、今それを解す暇はない。戦ってくれるだけありがたい」

 

 どうにかしたい気持ちを持ち合わせながらも、元隊長は進む達に言われたように今へと目を向ける。

 隊長はふと、昨日の話題と共に言った。

 

「昨日も言ったが、お前達は、俺のようにはなるなよ」

 

「それ、気になってました。どういうことです」

 

 入嶋がその意図について尋ねる。すると元隊長はこう言った。

 

「今の俺は、他の誰かを巻き込まないように生きている。作戦では必要な時は力を借りているが、それでも、あいつの力を借りることだけは、今もずっと納得できなかった」

 

 あいつ、という単語だけで誰の事を指しているのか分かる。納得できなかったのも、きっと戦わせることに対してだ。

 

「…………っ」

 

 それを聞いて少しだけエターナが曇った表情をする。他には気づかれない程に小さな反応だったが、宗司は気づいていた。元隊長はそれを知ってか知らずか話を進める。

 

「だからあいつらを救えた時、俺は言うつもりだ。もうこの戦いから降りろと。それが間違いなことなんて分かってる。だけど、俺にはその資格はない」

 

「資格がないなんて……それでもジャンヌ副隊長さんは」

 

「分かってるさ。だから、言うんだ」

 

 クルーシアからのそれでもという言葉を打ち消した元隊長。その声に悲しみを漂わせて。クルーシアは持ち合わせた第六感で感じ取り、口を噤む。

 それを見て申し訳ない表情をすると元隊長は自分達にはそうなってほしくないと語る。

 

「お前達には、こんな大人になってほしくはない。こんな、無責任な大人には。そうなってもらわないために、俺は戦う。ダメな大人が前に出て、犠牲にならないとな」

 

「犠牲って、そんなこと!」

 

 進が言の一番に反応し怒る。昨日言った事を覆す発言に対して怒ったのだ。しかし当然元隊長も分かっており、勿論と答える。

 

「死ぬつもりはないさ。ただ俺は、国の平和の為に、身をすりつぶす。それだけだ」

 

「国の、ため……」

 

 その言葉に恐怖を覚える。いつかは自分もそうなるのだろうか。国の為に自分の未来すらも捧げて。

 そんな考えをしていると、元隊長は宗司達がそうはならないと言って見せる。

 

「お前達はそうならないさ。そうはさせない。苦しむのは俺達上の世代だけだ」

 

「あ……いえ」

 

「そんなの……」

 

 宗司と入嶋は思い悩む。任せてしまうことの申し訳なさと、受け継がねばならないという焦燥感に駆られる。クルーシアもそんな二人を見て同じ気持ちを表情に表している。

 対して、軍人思考の進とクルツはため息と共にまっぴらごめんだと語った。

 

「はっ、そんな積み重ね、ごめんだっての」

 

「俺らはそんなの嫌ですよ。まぁでも、戦いは終わらねぇのは事実ですけどね。必然的に、責任背負っていかなきゃいけない。面倒くさいなぁこの仕事」

 

 ドライな考え方で宗司達よりは現実を受け入れている。だがそれでも嫌なものは嫌とはっきり言えている。正直言ってそんな思考が羨ましかった。

 そんな中、エターナだけは元の方を真っ直ぐ見やる。その視線に気づき、元隊長が尋ねた。

 

「どうした、エターナ」

 

「っ」

 

 尋ねた元隊長。エターナは目を逸らす。やはりその発言に納得がいかないのか。今更降りるなんて言われてもおかしくなく、またそれを止めるにもどうやって言えばいいのか分からない。

 だがエターナは自らその口を開いてみせた。元隊長に意見する。

 

「……姉様は、きっと犠牲なんて認めない。あんたが、そうなるっていうのなら、きっと姉様もそれを望む。一緒でありたいって思う」

 

「そうだろうな。だけどそれはもう届かないこと。それに、最初は君が望んだことだから」

 

 君が最初に望んだこと。エターナは決して元隊長とジャンヌ副隊長の仲を認めていなかった訳ではない。だがあまりにも未熟だった精神が、急激な変化に着いて行けずに発した言葉だった。

 そんな我儘な言葉にも元隊長は今も護り続けている。立場が弱いものに寄り添う姿勢。それは優しさとも呼べるのかもしれない。

 だが、今の彼女は違った。力強い声で元隊長の続く言葉と、自らの言葉を否定しにかかった。

 

「だから、俺は」

 

「違う!私は、姉様に甘えたかっただけだった。でももういい。私だってもう戦ってる。それに、気づいた。私がやるべきことは止めることじゃない。認めることだった。そうすれば、きっともっと早く、姉様を幸せにできた。私は、あんたを認める。もう、認めてる」

 

 ずっと言いたかったのであろう言葉だと分かる。謝罪と承認をエターナが口にした。その言葉は元隊長をわずかに驚かせていた。

 もちろん、入嶋達も驚いている。筋金入りの元隊長キラーだったエターナがそう言った事を。

ようやくそれを彼女が言えたことにパートナーとして安堵する。エターナにとってはこれも一つの成長だと思うから。

 それを聞いた元隊長は迷うような動作の後、エターナに問いかける。

 

「エターナ、それは、以前言ったことを……」

 

「そう言ってる。あんな約束なんてもうどうだっていい。私が今望むのは……」

 

 言いかけて口を閉ざす。やはりそれを口にするのはまだ恥ずかしいらしい。そこもエターナらしいと言えばらしいが。

 それに対して元隊長はどう答えるのか、注目が集まる。重たい口を開くように元隊長は声を発した。

 

「俺は、お前が変わってくれたことを心から嬉しく思う。それは間違いない。―――だけど、もう決めたことだ。助け出したとしても、それは変わらない」

 

 後ろ向きな返答。予想はしていた。唐突に言われたとしても変わらない意志。それだけ本気で考えている証拠だった。

 望む答えが得られなかった事にエターナの心配をする。恥も捨てて伝えた彼女が自棄にならないかどうか。けれどもそれは杞憂に終わった。

 落ち着いた、落胆した口調でエターナが頷いた。

 

「そう。変わらない、か」

 

「お前の言葉があったとしてもなかったとしても、今の俺は彼女と共にいるに値しない」

 

「自分でそう思ってるなら、もう言えないわね。分かった」

 

「エターナちゃん……」

 

 入嶋の声を受けてもエターナは顔を背けたままだった。玉砕と言ってもいい結果。だがエターナは全てを受け入れたように穏やかに話す。

 

「あんたがそう思うなら、私も何も言わない。姉様を助けてくれれば、それでいい」

 

「そのつもりだ」

 

「だけど、言わせて」

 

 離れるかと思われた時、エターナが元に対し詰め寄った。真剣な表情で言い聞かせるように元隊長に釘を差す。

 

「もし姉様が本気なら、その時は私も本気であんたに言うつもりだから」

 

 強く言い放ったエターナの言葉に息を呑む。空気が変わったとでもいうべきか。いつもの元隊長への敵意がそのまま結ばせるというやる気に転化したかのようだ。

 決意と呼べる宣言に元隊長も躊躇うような視線を見せる。一度目を閉じ、困った様子で返答する。

 

「無駄だと分かっていても、か?」

 

「それでも、私は姉様の願いを叶えたい」

 

「そうか。それでも、分かってもらうしかないな。それはそうと、今日は頼む」

 

「分かってる。まずはここからだから」

 

 やや煙たがった様子の元隊長は会話を切って宗司達に今日の支援を頼んでその場を後にする。エターナも諦め良く追及はせずにその背中を見送った。

 それを見送ったのちエターナにこれで良かったのかと問う。

 

「エターナ、もういいのか?」

 

「よくはない。だけど、今はあーだこーだ言う時じゃない。あいつに、賭けてるから」

 

「……そうか」

 

 その肩にそっと手を置く。エターナはむすっとしながらもその手をそっと弾く。手厳しいな、と思った。

 とはいえいつまでも話していられる場合ではない。宗司達も行かなければならない。6人の意見が一致する。

 

「じゃあ、そろそろ俺達も」

 

「……そうだね。元隊長をサポートする為に、昨日今日って頑張ってるから」

 

「あいつに、見せつけてやんなくちゃな」

 

「そうね。見せつける。私達の想いまで」

 

 意気込む新機体組。それを既存の機体を操る2人が激励する。

 

「きっと出来るよ、みんななら」

 

「もうエースなんだからな!」

 

 全員で向かう。その中でただ1人、入嶋だけが少し不安な表情を顔に残していた。

 

 

NEXT EPISODE

 




EPISODE89はここまでです。

ジャンヌ「よく打てました。次の方もよろしくお願いします」

レイ「まぁ相当滅入ってるのは分かるんだけど、ちょっとくらい解説入れる?」

これ書いてるの、私。

レイ「分かったから!もう、それならお休みすればいいのに…」

ジャンヌ「それでも打ちたいのでしょうから、わたくしの公式からの供給カードイラスト見てもまだ引き摺っているの大分ヤバいんですって」

レイ「そうだね。そして劇中の元君もそれくらいやばい状態っぽいけども」

ジャンヌ「れ、レイさん!まぁ、エターナさんも決意されていますし、呉川さんは何やら不機嫌と言いますか、ですし?」

君達が喋るくらいなら、まぁ打てるくらいは打つ。けどもうちょっと次もあるから勘弁。

ジャンヌ「ここまでが限界ですね。皆様。作者がしばらく落ち着くまでこの調子で、お付き合いよろしくお願いします」

レイ「無理に空元気は今度こそダメだからね~。というわけでグリーフィアちゃん達に続くよ」


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EPISODE90 戦う理由4

どうも、続けてEP89、90の更新です。こちらはEP90です。

ネイ「えーとちゃんと聞いてますので。鬱モード」

グリーフィア「あんまり刺激しないようにってのはジャンヌからの通達だからねぇ。ちなみに本編の方は普通の調子で書いていた文なので、感じ取りづらいと思うわぁ」

それではどうぞ。


 

 

 MSデッキへ到着後、千恵里達は自らのMSへの装依を開始した。新たな機体であるガンダムDNアルヴⅡはしっかりと整備されており、装依完了後その万全さをデータから示していた。

 作戦完了後、必ず元を連れ戻す。その為のHOWの支援戦力。助け出したレイア、ジャンヌ達を乗せたシュバルトゼロを確実に生き残らせるために千恵里達は動く。

 既にHOWはゼロンが大人しく約束を守るとは思っていない。いや、守ってくれるなどという思い込みはテロリスト相手には危険すぎる。最悪の事態を考えてベストを尽くすのが黎人司令の主義なのだ。

 機体チェックを終えて、後は出撃の時を待つのみとなる。その間、千恵里の顔は真剣さから一転して憂鬱なものとなる。

 

「………………」

 

 千恵里は悩んでいた。戦うと言っても自分は本当にまた戦えるのか。玖亜を前にしたとき、動揺せずに対処できるか不安で仕方がなかった。

 今回は元隊長の撤退の支援が主目的だ。明らかに玖亜を助け出せる状況ではない。そうなった時、玖亜を殺さずに撃てるのか。未熟な自分では殺すか撃てないかのどっちかになるのではないかと不安を抱く。

 そんなことを考えていては元隊長の迷惑になる。きっと作戦に出してもらえないだろう。けれども自分だけ出ないなんて結果を千恵里は受け入れたくもない。だからこそ誰にも言うことが出来なかった。

 そんな不安を抱えたままこの戦いへ臨むことになる。答えを見つけ出せないまま戦いへと臨んだらどういう結果になるのかは明白だ。それでも、と感情を押し殺そうとする。ところが、それに気づいた者が、彼女の回線へと繋いできた。

 

『なぁ、入嶋。大丈夫か』

 

「相模君……どうしてそう思う?」

 

『いや、何かさっき浮かない顔をしていたから。元隊長の為に応えるって言っていたのにいつもより無理に笑っているっていうか』

 

 相模は鋭い指摘を飛ばしてくる。完全に隠せていると思った。暗くなる気持ちを抑えてあそこで声を出したというのに、結局気づかれてしまっている。

 とはいえ、まだ一人にしかばれていない様子。ならまだ口止めは出来そうだ。今関わると面倒になりそうな呉川小隊長にばれないように、相模に伝えようとする。

 

「……気のせい、だと思うから」

 

『気のせいじゃないだろ』

 

「えっ!?」

 

 そこに関わってきたのは進だった。あまりこういうことに関わってこない進からの指摘に動揺を漏らす。

 二人からの指摘でたじろぐ。何か言い訳はないかと戸惑いに喘ぐ声が続く。

 

「あの……えと……その」

 

『あぁもう。秘匿回線にはしてるから。何に迷ってんだよ、今さら』

 

「う、うぅ……」

 

 しっかりと悩んでいることを見抜かれてしまっていた。こういう時クルスに助け舟を出してもらえればいいのだが、そのクルスにもこの事を伝えていない。

 一人で対処しなければならない状況。言ってしまっていいのか。しかし、正直言ってこの二人に聞きたいことではあった。

 ばれているのならむしろチャンスなのではないか。そう思い、プライベート回線になっていることを確認して、二人にその悩みを打ち明ける。

 

「……どうして、二人はそこまで切り替えられるかなって」

 

『あん?武器の話か?』

 

「違う!……身内のクローンとか、昔馴染みの子と戦えるようになること。私、ああ言ってもまだ迷ってるよ」

 

 進の的外れな問いかけに怒った後、再びしおらしく話した。それを聞いていた二人の声にため息のようなものが入ったのが分かる。

 やっぱり、話すべきではなかったなと思う。呆れられている。今更、こんなことで悩むなんて馬鹿々々しいことなんだ。そう思った。

 失望したっであろう二人にせめて口止めはしてもらわないと。ところが二人の考えていたことは千恵里の想像とはことなるものだった。

 

『はぁ、迷ってないとでも思ってるのかよ』

 

「えっ」

 

『宗司、お前は平気な口なのか?』

 

 迷っていないことを否定した進がこちらの動揺も気にせず相模へと尋ねる。相模も進からの急な問いかけに関わらず、落ち着いた口調で答えた。

 

『いいや。そんなことはない』

 

『だろ』

 

「いやいや……今二人ともすっごく落ち着いているじゃない!それの何処が迷ってるって……」

 

 見るからに二人の様子は迷っているというものではない。寧ろ覚悟を決めて、戦いに望むといった顔に見えた。そこに一点の曇りも見えない。迷いなんてないように見える。

 それが迷っていると言ったのだから、そんな反論もする。しかし二人は、進は自分達が抱いている感情が千恵里のそれとは少し違うことを話す。

 

『あー……なんていうか、迷ってるっていうのとは違うな』

 

「ほら、やっぱり。どういうこと」

 

『なんていうか……分かってる、そう、迷ってるけど、分かってる。やらなくちゃいけない、やるしかないって思ってるんだ』

 

「やるしか、ない……」

 

 その感情が使命感から来るものだと千恵里にも分かる。おそらく、達観したような考え方であるのだろう。相模も進の説明に同意をする。

 

『そうだな。出来るのかって不安だけど、でも他の誰かに任せることは出来ない。自分でなきゃ向き合えないって思う。自分の問題、自分の思ったことだからって。そう思うと迷っててもやらなくちゃって思える。まぁそれしかないなって思う』

 

「………………」

 

『なんていうか、少し元隊長の事情に似てる気もする。自分にしか出来ないから、やるしかないって、少し切羽詰まっているのかもしれないな。それでも俺はあいつを、栞奈のことを諦めきれない。救いたいって、思ってる』

 

 言われて自分の気持ちを見つめ直す。相模の通りだ。千恵里自身、焦っていたのかもしれないと客観的に見て思う。やらなくちゃいけないという気持ちが強く出て、その焦りが不安も煽っている。

 相模もまた幼い頃に生き別れた親しい存在、幼馴染を救うために戦おうとしていた。牙を向けられたとしても、救いたいと思う気持ちは、千恵里と同じだった。それを思って戦いに望もうとしている。そこに焦りがないわけではなかったのだ。

 もっともその焦りが元隊長と似ていると指摘されるのは予想外だったが。でもそんな側面を今の元隊長は持っていると納得も出来た。

 あの人もまた焦っている。その焦りはきっと、あの人に向けられた物に応える為、そして彼女達の為。もがいて、今戦いに望もうとしている。

 その言葉を聞いた進からも同じであることに煙たがる様子を見せながら、それを認める発言をする。

 

『あいつと一緒ってのはなんか嫌だ。けど、宗司の言う通り。零を止められるのは俺だけだと思うし、あの真由とそっくりな奴を止めるべきなのも、俺だと思ってる。止める以上、負けることも、間違って殺すことも考えない。絶対に、あいつらに分からせてやるんだ。お前達のそれは、間違ってるってな』

 

 凄い自信だ。一体どれだけ自分に自信があるのか。進だからこそ、それが言えるのだろう。

 けれど、それだけでは足りない。もう一つ千恵里には不安があった。それは他ならない元隊長の覚悟のことだ。

 二人の気持ちを受け止めつつ納得しながらもそれを口にした。

 

「二人とも強いなぁ」

 

『強いって……そりゃあ戦わないといけないんだから、強い気持ちがないとダメじゃないのか?』

 

「そういう意味じゃない。けどさ、そんな強い気持ちを持ちすぎて、元隊長はああなってる。それを、不安に思わないの?」

 

 知りたい。二人が今の元隊長にどういう印象を持っているのか。間違っているなら間違っていると言って欲しい。変えられることなら今すぐにでも変えたいって思う。

 それでも今の千恵里にはそれが言えなかった。これはただの承認欲求だ。同じ考えの人がいてくれるなら心強いという考えだった。

 こんな浅はかなことを、と恥ずかしい気持ちもある。だがそれでも縋りたかった。誰かに、二つの苦しみを癒してほしい。

 しかし、求めた二人からの言葉は甘くなく、衝撃的だった。

 

『不安は……ないかな。今の元隊長には』

 

『そうだな。不安なんかねぇよ今のあいつに』

 

「っ!?そんな、元隊長が心配じゃないの!?」

 

 思わず驚愕する。ひょっとしたら外に声が漏れているかもしれない位に驚いた。

 なぜ、どうしてそのようなことを思うのか。その感情がないなんてどうかしていると思った。薄情者、人でなしと声が出そうになる。

 だがそうではないことを、進が千恵里を咎めるようにして言った。

 

『いや、だってお前今不安って言っただろ。不安はないけど、心配は……いや、俺は不満足か』

 

「えっ……不安、じゃない?」

 

『そう。不安ってのは何かやらかしそうって感じだろ。けどあいつのあれは、もうそれを通り越してる。もうやらかそうとしているんだから、そういう疑惑の段階じゃない。その行動が間違ってると思ってるのは明らかなんだからな』

 

 そもそも考え方が違っていたのだと気づく。進は元隊長の考えが、行動が間違っていると分かり切っていた。だから不安なんていう危惧ではなく、満足していないという感想が出ていたのだ。

 それを踏まえる形で、相模が言った。

 

『進の言う通り、俺も元隊長の心配はしている。それは元隊長がやるべきことを示してくれたからだ。その考えが上手くいくとは思えない。でも助け出そうとしている気持ちは分かる。だから協力するんだ。作戦が上手くいくように。そういうのは、その後の話だから』

 

「……そういう、こと」

 

 二人の言うことが分かったような気がする。確かに自分はまだその間違いが成功するかもしれないと思ってしまっていた。でも違う。例え助け出したとしても、それで二人の関係が上手くいくわけがないんだ。

 それを二人は分かっている。でも作戦の目的には何ら支障はない。だって元隊長は助け出すと決めているのだ。人質の二人を助け出すのが目的。なら助けるということに何ら不安を抱く必要はない。

 無茶をするかもしれない、ではなく、無茶をする気で臨んでいる。なら自分達はその後のフォローをする。最初から分かっていたことだ。その為に自分達は出撃するのだから。それはきっと、先程までの自分の悩みも同じ。そんな当たり前の事すら忘れて、何を悩んでいたのだろう。

 それに気づかされて呆然としていたところで相模のパートナーであるエターナがクルスと共に回線へと割り込んできた。

 

『ちょっと、もう秘匿回線やってる暇ないわよ?』

 

『あぁ、分かってる。これでいいか、入嶋』

 

「うん、大丈夫」

 

『千恵里ちゃん、何かあったの?』

 

 心配そうにこちらの様子を伺うクルス。伝えていなかったものの彼女も心配してくれていたようだった。

 迷惑を掛けたなと思いつつ、その彼女にもう心配ないと告げる。

 

「大丈夫、私も、今どうしなきゃいけないか、少し、分かった気がするから」

 

『……そう?ならいいけど……』

 

『ほら、とっとと出撃準備!呉川にどやされるわよ!』

 

『分かってる』

 

 慌ただしくも出撃準備を再開する。千恵里の表情には不安はもう消えていた。心配しながらも、今やるべきことにしっかりと目を向けられていた。

 私達は見なくちゃいけない。元隊長が目的を果たすその瞬間を。

 

 

 

 

 中央カタパルトで元は発進の時を待っていた。進の機体が特殊な設備の必要がない機体に変わったことで中央カタパルトは再びシュバルトゼロ専用のカタパルトとなっていた。

 出撃前に何かと騒がしかった奴がいなくなるのは少しだけ寂しく思う。だがそれ以上に寂しいのは、きっと彼女がいないからだろう。

 エンゲージシステムの方を探る。けれども無論そこには誰もいない。その理由は分かっている。その彼女を、これから取り戻しに行くのだから。

 その様子を感じ取っていたスタートから声が掛けられる。

 

『寂しいのか、お前』

 

「……そんな気持ち、もうとっくの前に捨てたと思っていたんだけどな」

 

 寂しいなんて子供じみた感情は魔王である自分には必要ないと思っていた。そんなものがあったら、フルポテンシャルをいつでも発揮できるわけがないと。

 ずっとそんな気持ちは感じまいと振り切っていた。11年前のあの時から、今に至る呪いから逃れるために。今までずっと見なかった。しかし、今またそういう気持ちが湧き上がってくる。

 それはきっと、彼女がいないから。彼女がいてくれたからこそ、そんな気持ちを忘れることが出来たのだ。一人ではなかったから。

 情けない、と思う。宗司達にこの戦いが終わった後、ジャンヌには戦場から降りてもらうと言ったのにも関わらず、今いない時点でこんな気持ちに陥るなんて。それでは何も果たすことは出来ない。

 再びその気持ちを確かめるべく強く自身にマインドセットを掛ける。

 

(俺は魔王だ。そんな気持ち、俺にはない。ただその手を伸ばす。果たせなかった約束を、今度こそ果たす。人の為に、ただそれだけだ)

 

 迷いをそれで断ち切る、と整備を終えた来馬から今回のセッティングについて通信回線で話しかけられる。

 

『元君、調整はちゃんと完了した。一人でも可能な限りシュバルトゼロクローザーの性能を引き出せると思う』

 

「分かった。ありがとう、来馬さん」

 

『……必ず、生きて、ジャンヌちゃんと帰ってきて。その為に私達も、頑張ったから』

 

 彼女の声に強い願いを感じる。徹夜で仕上げただろうにも関わらず、しっかりと覇気が感じられる。それだけ彼女も本気で仕上げてくれたということだ。

 その願いに応えなければならない。そう思うと先程の迷いも完全に吹っ切れる。その言葉に強く頷く。

 

「あぁ。必ず」

 

 回線を閉じ、発進シークエンスを待つ。その間、再びスタートに話しかけられる。

 

『シュバルトゼロクローザーが如何に高性能だとしても、これから戦う奴はまた強化されているだろう。おそらく……』

 

 その先の言葉は分かっている。奴らのすることだ。容易に想像がつく。こちらへの精神的攻撃と性能向上のために、おそらく……。

 理論上は可能だと思われていたことを、彼らはやってくると予測していた。その際の戦力比はこちらが不利。如何にパイロットの腕が未熟だったとしても圧されるのは間違いない。

 それにあのG-Arc。どんな味方MSでも武器にしてしまえるあれで、何の機体が支援に来るかも分からない。あのシステムにどこまで対処できるかどうか。

 様々な面で不安を残すヴァイスインフィニットとの再戦。先程来馬には生きて帰ってくると約束したが、本当に守れるのか正直言って分からない。だがそれでも彼女を救うことだけは諦めていない。

 それに、今回のセッティング以外でも、元には最後の切り札としたものがあった。スタートにすら話していないことだ。おそらく、反対されるだろうから。

 ふと、スタートがクリムゾンファフニールのことについて尋ねる。

 

『そういえば、クリムゾンファフニールとは話したのか?久しぶりの再会だろう』

 

「少し、な。あんなことになってすまなかったと。けど、あいつも気にしていたし、何より俺のせいじゃないって言われちまったよ」

 

『そうか。あいつもただ、お前が死なないように無我夢中だったんだ。仕方ない。今回で責められるべきは、俺だ』

 

 スタートは言って自らの事を責める。スタートも自分が意識を失っている間の事を覚えていない。明確に、あのスタートが今のスタートとは違うことを示していた。

 まさか自分の失われた記憶が、こんな形で牙をむくとは思ってもいなかったのだろう。だがスタートは早いうちから、それを反省し、行動に移していた。独自の追加制御システムを作り上げ、再び不意に意識を奴に奪われることのないように対策を講じていたのだ。

 いつも以上の手際の良さに元はありがたさを感じていた。ところが同時に申し訳なさも感じる。なぜならその気持ちを、気遣いを裏切るかもしれないから。

 クリムゾンファフニールと話したとき、とあることを頼んでいた。それを知れば、スタートはどれだけ失望することだろうか。心苦しい。

 それでもやらなくてはいけないかもしれない。使わないに越したことはない。これは保険なのだから。そんなことはおくびにも出さず、スタートに労りの言葉を語った。

 

「いや、全部俺が負けたから、それがいけなかったんだ。お前達は、そんな俺の為に尽くしてくれていた。悪くない」

 

『元、それではお前が……』

 

「構わないさ。もう慣れてる。俺が悪いって言われるのは。だから、今回も戦うんだ。国に、迷惑はかけられない。落とし前は、付けるさ」

 

 もう決めたのだ。助け出す。しかしどんな結果になろうとも、後悔しないと。そのすべての覚悟を背負ってカタパルトの先を見据える。

 遂にその時が訪れる。カタパルトが動き出し、前のハッチがオープンする。その先に見えるのは夕焼けに染まる空。決戦へと続く空だ。

 カタパルトのボルテージが上昇していく。管制の光巴から告げられる。

 

『カタパルト正常に稼働中。発進シークエンスをシュバルトゼロに譲渡します』

 

「了解」

 

『あの、元お兄ちゃん』

 

 光巴からそう呼ばれる。彼女がその呼び方をするのは決まって不安な時だ。その声に落ち着いた様子で聞き返す。

 

「どうした」

 

『……死なないで。誰も、もう』

 

 きっと彼女のDNL能力が危惧しているのだろう。もしかするとこちらの考えている全てを感じ取っているのかもしれない。

 もしそれならとても厄介だ。けれどもそれを咎めることなく、逆に諭す。

 

「それは約束できない。戦場では、どちらかが生きて、どちらかが死ぬんだからな」

 

『それは分かってる。そういう、意味じゃなくて……』

 

「だろうな。弱気になるな。お前はこの先、黎人の後を継ぐんだからな。負担にはさせないさ」

 

 元なりの激励を掛けて返答にする。すべては言えない。だからこそのこの返答だ。光巴も納得した、あるいは察したのか涙をすする音を響かせてからもとの仕事に戻った。

 

『発進、どうぞ!』

 

「了解。シュバルトゼロガンダム・ジェミニアス。黒和元、出撃する」

 

 カタパルトが動く。前方からのGを感じ取りながらその空へと飛び立つ。蒼いDNを放出させながら飛行を安定させる。

 その後を遅れてクローズフェニックスが発艦する。空中で相対速度を合わせて、スタートにドッキングの合図を送る。

 

「クローズフェニックス、ドッキング!」

 

『クローズフェニックスドッキングモード、クローズフェニックスドッキングモード!』

 

 クローズフェニックスがシュバルトゼロとのドッキング態勢に入る。背部が展開され、空いていた箇所にクローズフェニックスが接続される。シールドの上から翼が被せられ、より大きな翼盾を作り出す。両手にライフルとシールドが装備された。

 エンゲージシステムを通していないが故に、合体完了のツインアイの発光が緑となっている。例えそうだとしても、その瞳には確かに取り戻すという意志が込められていた。

 元は胸の中で、固く決意をする。

 

(助け出す。二人とも、俺のせいでこんな目にあった。だから、もう終わらせる。俺が終わらせる……!他の誰でもない、俺自身の手で!)

 

 その強い意志と共に、目的の海上へと向け飛翔する。後方から味方MSが次々と発艦していく。それを待つ必要はない。彼らは後方待機なのだから。先行して目的地へと向かう。

 決着の為に、黒き翼が蒼い光を放って空を往く。果たせなかった願いの為に、失ってしまったものの為に再び宿敵と対峙するのだった。

 

 

NEXT EPISODE

 




はい、EP90はここまでです。

ネイ「えっと、少しだけ言えばいいんですかね。入嶋さんの迷い、払しょく出来たらいいんですが」

グリーフィア「そこら辺は戦わないと分からないって思うわ。そして元君は、切札を以って挑もうとしてるわけだけど、不安はぬぐえないわねぇ」

ネイ「最後のシーン、あの作品のオマージュなわけですがこれは成功するという予兆であってほしいとは思います」

グリーフィア「まぁそれも全てこの章が終われば分かることでしょ。それより最新機、みんな受領して乗ってるみたいだけど、いよいよエースらしくなってきたじゃないの!」

ネイ「単なる高性能機からパイロットに向けた専用機。こうして変わっていくのがだいご味とか作者さんいいそう……あっ」

グリーフィア「あれ、作者君?どうしたの?」

もう、喋ることないので、終わりに。

グリーフィア「へ、、へなちょこすぎる……水銀メンタルが発揮してる」

ネイ「豆腐メンタルとか懐かしい。本気で落ち込むこうなるわけなんですね」

本当に、ごめんなさい。

グリーフィア「分かったから!打つ手が震えてるの分かったから!それじゃあまた次回!」

ネイ「Twitterの予告は省エネモードということでしばらくジャンヌさん単体になるみたいですね。一番ジャンヌさんの台詞で考えるのが楽なんだとか」


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黒の館DN 双翼英雄譚編 第12回 前編

どうも、今回は黒の館DNの双翼英雄譚編第12回を、引き続き鬱モードで更新していきます。

ちなみに中の文は鬱前に考えているので影響なしです。

それではどうぞ。


 

 

士「さぁやっていきましょう黒の館DN第12回を!」

 

レイ「元君……立ち直ったはいいにしても、覚悟が悲壮すぎる……もう一緒に歩むことを考えてないよぉ」

 

ジャンヌ「邪魔になる、迷惑を掛けたくないって気持ちは分かりますが、そういうのを承知で共有するのが、恋人、って言うのじゃないかと……」

 

士「そういうものなんだろうけど、元君も大分拗らせていますからねぇ。一度はそんなわけないとL2で振り切ったんですが……まぁ世界に毒されたと言いますか(´Д⊂ヽ)」

 

レイ「あう……悲しいよ。二人の仲が裂けていくの……助けても解決できるのかな……」

 

ジャンヌ「声を届ける為にもまずは助け出さないといけませんから、助け出すことに意欲があることには感謝ですね」

 

士「そうそう。というわけで今回は人物紹介、それからまだ機体自体は出ていないけどHOWGチームの新型3機もご紹介となります」

 

レイ「新たな機体と共に、この時代を駆け抜けて欲しいね!」

 

ジャンヌ「それではまず人物紹介からですね。懐かしいあの人から、敵の新キャラまで登場です。どうぞ」

 

 

 

本堂 華穂

性別 女

身長 160cm

髪色 黒に近い紺色

出身地 地球 日本 三枝県 四河市→東響都 港内区

年齢 30

誕生日 1月24日

血液型 A型

好きなもの 夫と娘、メロンパン、ウインドウショッピング

嫌いなもの 細かい作業、シイタケ、虫、宗教、セールスマン

愛称 かほちん、ヴァルキリー、悪魔の一番槍

 

・かつて次元覇院と戦った元の妹。現在はHOWのRIOT部隊に所属するMSオーダーズ訓練学校の同級生であった本堂誠と8年前に結婚し、娘の礼華をもうけている。

 今ではすっかり大人となり、家事に精を出している。長い髪もほぼそのままの長さをキープしつつポニーテールにしており、体型も維持できるように日課として柔軟を始めたとのこと。

 一応夫が現在もHOWに属していることからHOW関係者であり、都内のHOWの監視が行き届く地区に特別建設された一軒家(元の祝儀による補助あり)を構える。仕事の方は関わっていないものの交友関係は健在。非番の夢乃と共に礼華を連れてショッピングに行くことも多い。元とは年末の集まりとして顔を合わせる程度になってしまっているが、これは元があまり自分と礼華と顔を合わせるのは止した方がいいと遠慮しているため。華穂はちゃんと叔父として礼華に向き合って欲しいと思っている。また自身が結婚した理由として兄に心配を掛けさせない為というのがあり、夫の誠もそれを理解している。

 本編においては黎人に付き添う形で作戦に参加する夫の誠を労う形で久々の新四ツ田第1基地を訪れる。かつての先輩として兄の指揮するCROZE部隊Gチームの若輩者達を説得、また兄とも面会し兄妹として話し、自身の復帰をほのめかしつつも兄の復帰を後押しした。

 ちなみにL2本編中で一度「戌原 華穂」という劇中で登場する戌村友直の苗字と似た名前で出ているが、こちらは元々夫が戌村家の分家、戌原家の人間であり、当初はその苗字を使っていたが本家からのお達しで使えなくなったため。夫の母方の旧姓を使っているという設定。

 モデルは変わらずZ/Xの上柚木八千代。大人になって兄離れを果たすようになった点はモデルが姉である点を意識したためか。

 

本堂 誠

・華穂の夫でかつてはMSオーダーズ訓練学校での同期だった男性。現在はHOWのRIOT部隊に所属する。眼鏡を掛けたインテリ系の柔和な人物。31歳。一応華穂とは同い年である。A型。

 華穂と出会ったころから仲は良く、夢乃とも面識があった。更に東響掃討戦では元の指揮していたCチームの管轄にも入っており、それが華穂との結婚にも繋がっている。その頃からRIOT部隊所属であり、小隊の隊長を任せられるほどには実力がある。

 8年前に華穂からのアプローチで付き合う。元からの無意識のプレッシャーも感じていたのだが、華穂からの願い、そして元も挨拶の時に華穂をお願いしたいと言われて結婚に至る。

 部署は違うものの同じ組織であるため元とは顔を合わせることもそこそこある。とはいえやはりお互いの距離感もあって組織で話すことは少ない模様。誠としては元には礼華へお年玉などを送ってもらっていることから何とかしたいとの話。

 本編では語られていなかったもののポート基地強襲作戦に参加。作戦を生き延びている。二度目の強襲、並びに人質奪還の為に自分の部隊で出来ることを模索しながら待機していた。そこに妻と子供が来たのには大層驚きつつも彼女の意志を汲み取りその話を聞いていた。

 なお旧姓は戌原であり、戌村友直の従兄に当たる。だが戌村本家が分家の名前であっても名乗ることを許さなかったために数年前に戌原から母親の旧姓である本堂を名乗ることになった。

 

本堂 礼華(らいか)

性別 女

身長 120cm

髪色 蒼に近い紺

出身地 日本 東響都 港内区

年齢 7歳

誕生日 2月12日

血液型 O型

好きなもの お絵かき、パパとママ、元おじさんとジャンヌおねえさん、チョコの棒菓子

嫌いなもの 他人の視線、お化け、しいたけ

愛称 らいちゃん

 

 華穂と誠の間に生まれた娘。母親とは違って明るい赤系統の紫色に近い髪をツインテールにしている。私立東響湾ピースランド学園の初等部2年生。

 髪色以外は母親似の外見だが性格は反対の恥ずかしがり屋。知り合いでなければ凄まじく人見知りしてしまい、学校でも困っているとは先生の話。元とジャンヌに初めて会った時も同じく苦労したらしい。

 なついている人でなければ会話もままならないが、逆になついた相手には母親と同じくよく喋る。今現在なついているのは両親を除けば元とジャンヌ、深絵、夢乃、光巴。黎人にはなついていない(割と接しているらしいのだが)。MSには現在興味はない模様だが、母の昔の写真を眺めていることも多く、いずれ興味を持つのではと両親からは思われている。

 元に対してはまだ苦手意識、というより元の身体に染みついたと言われる殺意に怯えているとのこと。直感がいいのか、DNLではないかとも言われている。

 本編では父への労いのために母の華穂が連れてくる形で初登場。光巴の歓迎に恥ずかしがる。その後は父に抱えられる。この時元との会話は本編外でも意図的に外されている。

 モデルは母親のモデルである八千代の妹の上柚木さくら。時代的にかなり幼い容姿となっているうえ、髪色もあちらよりは青系統に寄っている。

 

遠葉 真理矢(とおば まりや)

 ゼロン、蒼穹島勢力に所属するエーススナイパー。22歳。身長163cm。血液型はAB。搭乗機はタイプ[スリー]狙撃戦型。

 蒼穹島のパイロットの中でも一真と並ぶベテランであり、タイプシリーズパイロットの最年長の一人。戦闘時などは冷静沈着であるが、同年代の一真と晃司とは非常に仲が良く、やわらげな表情を見せることも多い。ただし晃司の弟である興司に対しては当たりが強い。これは彼が妹のようにかわいがっている親戚の美波を多々困らせているため。

 しかし彼女も立派な兵士。ゼロンの血気盛んな連中ほどではないものの、敵には容赦ない。ただし限度は弁えており、また必要以上にいたぶると言ったようなこと、他人が行おうとする時には止めるなどする。

 前々から凄腕のスナイパーとしてわずかに語られていたものの遂に第5章にて捕虜となったジャンヌの世話役として初登場。見張りとして厳しくジャンヌを扱うも、彼女に余計な危害が加えられない様に立ち回っていたことを零崎に指摘される。

 人物モデルは蒼穹のファフナーの遠見真矢。

 

 

ヒイラギ・ノリエラ

 ゼロンの勢力の一つ、チームソレスタルリーディングのまとめ役の女性。チームの旗艦「クラウディオス」の艦長と戦術予報士を務める。25歳。海外生まれの日系人。

 若くして数々のMS運用の戦場を制圧してきた天才指揮官であり、ユーロア(現実におけるヨーロッパ、EU勢力)においては既に勃発していた紛争のいくつかにその戦術を以って介入していた。本国でも非常に重宝されていたのだがとある紛争において味方との同士討ちと、それによる仲間の戦死を受けて戦術予報士を半引退、療養の為に日本を訪れる。その際にゼロンのスカウトを受け、チームソレスタルリーディングの創始者「クオリア・エルフェンベルグ」を思想に感化されてゼロンに所属することとなった。

 そう言った事情とチームの活動しやすさから普段は宇宙部隊に所属。しかし大きな作戦の際には意見を求められることも多い。

 本編ではそれも含めて一度地球に降りている。捕虜の扱いに紛糾するゼロン幹部を諫め、その後は零崎と共に捕虜となったジャンヌに面会している。

 ゼロンに関しては恩人と言う認識だがどちらかというとクオリア寄りの思想であり、反乱が考えられる勢力としても零崎からは見られているらしい。

 ちなみにHOWの紫音・プラネリアスとは面識があり、一時的に指導を受けていた。紫音の戦術の一部は艦長、指揮官として先輩であるヒイラギのものを参考にしている。

 モデルは機動戦士ガンダム00のスメラギ・李・ノリエガ。

 

 

ジャンヌ「以上が人物紹介ですね」

 

レイ「はぁ~人妻になった華穂ちゃん大人だねぇ~可愛いところもあるし!」

 

士「人妻て(;´Д`)まぁ事実だけども」

 

ジャンヌ「でも本当に意外ですよね。華穂さんがしっかりと主婦やってる姿って。仕事一辺倒な人だと思っていたんですが」

 

士「まぁ根は真面目ですから彼女。仕事一辺倒なところも夢乃としょっちゅう買い物一緒にしたりするところでも表現されているわけですし」

 

レイ「それはあるよね。気になっちゃってるっていうか、そういうの感じる。それで夫の誠さんは元々は戌村家関連の人間かぁ」

 

ジャンヌ「たびたび出てくるたびに思いますけど、戌村と子尾、十二支区ってもとのネタの影響もあって大分厄介ですよね。今回は分家の苗字すら軽々しく名乗らせてもらえないなんて」

 

士「まぁ昔からの家はしきたりが多いのでね。とはいえこの地区は更に厄介事を抱えていると言いますか……まぁそれもいずれ明かされる時が来るかもです」

 

レイ「うわぁ面倒そう。これ次の世代に残しておきたくないね」

 

ジャンヌ「次の世代……礼華ちゃんが育った時ですね」

 

レイ「そうだね~。礼華ちゃんはお母さん似らしいし、きっと可愛いよ~!私と絵師さん同じだし、モデル!」

 

ジャンヌ「そうですねっ、期待の子ですっ」

 

士「親が美人ですからねぇ。すくすくと育ってほしいものです。光巴のように」

 

レイ「光巴ちゃんはアグレッシブすぎるかなぁ……交渉とかはもうちょっと後で……」

 

ジャンヌ「うーん、確かに。でも光巴さんもしっかりと育ってくれましたし」

 

レイ「それにしてもゼロン側の新キャラ、どっちも女性かぁ。割とどっちも常識人って感じだよね」

 

ジャンヌ「確かに、いえ、男性陣も常識人っぽい人はいるんですが、話し方だけと言いますか……モラルに配慮している敵というのはこの作品中々いませんよね」

 

士「ゼロン側でそういうの配慮しているっていうのは多分この二人とか今回で何かしら考えてると分かった零崎とかくらいのものですかね。あとは一歩引いた身のシャアとか?」

 

レイ「えーシャアはうさん臭いよ~!」

 

ジャンヌ「私も、胡散臭いとかではないんですがやっぱり宿敵の為にはた迷惑なことを起こしそうで、その……紳士ではあると思うんですが」

 

士「風評被害が激しすぎる(´・ω・`)まだそんなに喋ってないやん」

 

レイ「だってシャアだから」

 

ジャンヌ「シャアモチーフなら何かあると思いますよ?」

 

士「そういうものか」

 

レイ「でも新キャラの人達はちょっと安心したね。真理矢ちゃんはジャンヌ・Fちゃんのこと大事にしてくれてるし、ノリエラさんもヒートアップを抑えてくれたし」

 

ジャンヌ「作戦観点上から怒らせるのは得策ではない、と理知的なところが評価高いですね。ただやみくもに嫌がることをするということがないだけでもいいです」

 

士「とはいえ彼女達も戦うとなれば容赦ないでしょう。はたして彼らとHOWが戦う場面を描く時はいつ来るのかな?」

 

レイ「それも気になるね。けどそろそろ機体説明の方に行くかな?」

 

士「そうですね、お願いします」

 

レイ「了解っ!てことでまずは宗司君とエターナちゃんの新機体!ガンダムDNⅡレーバテインの紹介だよっ」

 

 

型式番号 HGX-02

ガンダムDNⅡレーバテイン

 

 

機体解説

・ガンダムDNアーバレストの運用データを基に開発された新型ガンダムにして、ガンダムDNの後継機。カラーリングが白と黒から白とオレンジに近い赤となっている。頭部も頭頂部装甲が上下に展開し放熱部を解放する特殊タイプのガンダムヘッドとなっている。

 これまで通りのドライバ・フィールド運用機で、なおかつアーバレストではモード発動中でなければ使えなかったユグドラル関連の力を通常形態でも使うことが出来る。

 また装備の方も安定的に使えるようになったドライバ・フィールドを前提とした新たな装備が追加されており、戦闘能力はかつてのシュバルトゼロガンダム「イグナイター」と同等の戦闘能力を有する計算となっている。

 これまでと大きく変わる特徴というものは存在しないが、アーバレスト・オーバードライバフォームの状態が常に通常形態であり、それ以上の力を発揮できるというのが本機の特徴だろう。が、問題点として本機にはエネルギーを用いないシールド機構が一切存在しておらず、防御機能はいずれもバックパック、あるいは腕部から形成する物に限られる。これに関しては機動力を優先したセッティング故のデッドウェイト化回避のためとなっている。

 名称は伝説の魔剣の一つ、レーヴァテインをもじっている。

 モデルはフルメタルパニック!のレーバテイン。そこにガンダムらしさを併せ持たせたイメージ。現状では、特に弄っておらず、これは一つの意味を持つ。それは―――。

 

【機能】

・DNフェイズカーボン

 アーバレストと同性能のDN浸透装甲。

 

・ツインジェネレーターシステム

 アーバレストの物を引き継いで使用する高純度DN発生用DNジェネレーター。オーバーホールなどにより出力制限が一部解除されており、これまでよりも強いビーム兵器の使用や、出力系の強化が可能となった。

 

・エラクスシステム

 アーバレストから引き続き用いられるDN高出力解放形態。ジェネレーターがそのまま移設しているため同じ性能で使用が可能。

 実はレーバテインの本システムは不完全である。というのもマキナ・ドランディア出身のエターナがパートナーとなったことでプランとしてリム・クリスタルを本物、所謂竜人族との交わりで生まれるそれを使うという設計思想に変更したため。新たなリム・クリスタルの精製で、より純度の高い人工リム・クリスタル、あるいは人類だけでパートナーを組んでリム・クリスタルを形成することを黎人達が模索していたのだが、肝心のエターナが未だに宗司との交わりを拒否していたため人工リム・クリスタルのまま運用することになった(強制など出来ない為)。

 よって制限時間は本来想定したものより早い為、性能が落ちる結果となっている。

 

・エンゲージシステム

 アーバレストから引き継がれるサブパイロットサポートシステム。現在の宗司とエターナのエンゲージ率、シンクロ率は90,1%。

 元とジャンヌのシンクロ率より低いが、スタートによればむしろ元達が高すぎるとのこと。加えて高すぎても逆にデメリットがあることがクリムゾンフェイズから解放されたスタートが明かしている。

 

・DNウォール

 ドライバ・フィールド、ユグドラルフィールドが使えない時のセーフティとして引き続き搭載する。発生機構はバックパックに内包する。

 

・ドライバ・フィールド

 アーバレストから引き継がれる高純度DNによる斥力操作フィールド。

 アーバレストに搭載されていたものよりも更に改良が加えられており、超遠距離の物すらも掴みかかることも出来る。DNL能力と合わせて真価を発揮する。

 

・ユグドラシルフレーム

 機体へと埋め込まれることとなったユグドラルフレーム。しかし本機ではそれどころか完全版のユグドラシルフレームへと変更となった。ユグドラルの力を存分に扱えるが、パイロット達からは煩雑になると意見が出ている。ユグドラルウイングも形を変えて健在。

 

・ドライバイグナイトモード

 現状本機にのみ備わる第二形態。イグナイトの名前からシュバルトゼロガンダム・イグナイトをもじっている。

 ドライバフォームと同じくドライバ・フィールドを効率よく使うためのフォームだが、本形態に置いてはドライバ・フィールドとユグドラルフィールドを融合させて使うことを意識している。両方の力を同時に使うことでそれぞれの強度掛け合わせ、より高度な現実干渉が出来るようになる。言ってしまえばシナンジュ・ゼロン・ハルがやったような超常現象をドライバ・フィールドの補助で引き起こすことも出来るようになる。

 単純に出力が上がり、DNFもより強いものを使える。カラーガンダムの性能もこの時点で超えており、おそらく性能だけならシュバルトゼロガンダム・ジェミニアスに次ぐものと思われる。

 

【武装】

・ビームアサルトショットライフル

 手持ち武器の一つ。多機能ビームライフルウエポンで、不使用時にはバックパック側面へと懸架される。元々あったビームライフルをベースに開発された。

 多機能というだけあって通常のライフルモードを始めマシンガンモード、照射モード、そしてショットガンモードが追加された。ショットガンモードはこれまでのドライバ・フィールドの運用を鑑みて搭載された兵装であり、何の因果かゼロ・サザビーのビームショットライフルと構成が似る。

 モデルはレーバテインのショットガン「ボクサー2」。

 

・ビームサーベル

 基本的な格闘兵装。本機では肘部分に装備される。

 

・対要塞級破城小型砲「マテリアル・バスター」

 右肩部後部に本体部分を、左肩後部に延長バレルを分割して装備する対要塞攻略用兵装にして本機の最大火力。

 使用時には腰部の専用圧縮コンデンサと本体部分を接続させる必要がある。圧縮コンデンサから供給された超高圧縮DN弾を装填し、放つ。この弾は要塞の装甲すら貫通し、DNウォールは簡単に貫いてしまう。そのままなら近距離まで(と言っても有効射程距離はおよそ100mはある)しか射程がないが、延長バレルを用いることでおよそ10キロまでの長距離砲撃が可能となっている。

 この砲弾の威力はかつて存在した重対物ライフル「ダンガン」のデータを基に、シュバルトゼロガンダム・ジェミニアスの持つジェミニアス・マテリアル・デトネイターの威力を再現することで生み出している。

 モデルは原型機のデモリッションガン。原型と同じく延長バレルを持つが、発射する弾は固形に近いビーム弾となっている

 

・噴射突撃式対フィールドダガー

 機体膝部装甲を兼用する形で装備される実体ダガー。二本を装備する。

 後端にスラスターユニットが装備され、投擲後のスピードを維持したまま、ダガー部分で貫く。ダガー部分はこれまでの研究で製作された対特殊フィールド貫通の為の専用部材で構成し、敵のユグドラルフィールド、DNウォール、ビームシールド、果てにはドライバ・フィールドも防御壁としては意味を持たなくなる。

 防御状態を貫くため、フィールドを変質させて掴みかかるのであれば間接的に防ぐことが出来る。だがこれまでのように一辺倒な防御行動が迂闊になると敵、そして使う自身側にも痛感させる武器となった。

 モデルは原型機の対戦車ダガー。もっともその性能は対防御キラーと化している。

 

・アサルトザッパー

 胸部横に装備される銃剣。ガンザッパー、ブレードザッパーの派生武器となっている。

 銃身とブレード部分を切り詰めている。これは装備位置との兼ね合いもあるが、もとが大振りすぎるものはドライバ・フィールド機にとって不利だと判断されたため。

 コンバートライフルは小型のコンバートアサルトライフルへ、コンバートセイバーはコンバートブレードへとサイズダウンした。が、ドライバ・フィールドを用いることでもとのコンバートライフル、セイバーと同等の性能を発揮できる。

 

・レーバテインウイングバックパック

 背部を構成するウイング付きバックパック。アーバレスト・パックの後継に当たるが、エディットバックパックシステムには対応していない。

 ユグドラルウイングとしての機能に特化している構成で、機動性寄与に大きく貢献する。しかし今回初の試みで新型のアンチユグドラル兵装「ユグドラルキャンセラー」を備える。このユグドラルキャンセラーはドライバ・フィールドと併用して運用される兵装で、ドライバの働きかけで有効範囲内のユグドラルに関連する機能を「封印」してしまうというもの。ビットの運用に加え、アンネイムドに代表されるユグドラルジャックや、デストロイドモード、ユグドラルシャード発生器の停止など現行のエース級MSに対して異常なまでの対抗性能を誇る。ただしこれは周辺の機体全てに影響し、本機も例外ではない。故に本兵装機能時にはユグドラルウイングは機能を停止し、通常のDN推進しか使用できなくなる。

 当初は肩部シールドと兼用する形での装備を考えられていたが、被弾して使えなくなる事態を避けるために推進器であるバックパックの、使えなくなるユグドラルウイング収納部にスイッチする形で機能させる方法が取られた。

 モデルは原型機の妖精の羽。こちらではラムダ・ドライバ関連のキャンセルではなく、ユグドラルのキャンセルを行うこととなった。

 

 

レイ「以上がガンダムDNⅡレーバテインの設定だよっ!」

 

ジャンヌ「やはりあの機体と同じ名称を継ぎましたか。カラーリングとか武装も引き継いでいますね」

 

士「そうだね。設定文にも書いているけど大分寄せて設定しているね」

 

ジャンヌ「寄せて設定している、何か意図があるんですか?」

 

士「考えていることはあるけど、とりあえず順に見ていこう」

 

レイ「イグナイターと同等の性能ってそれ普通にヤバい気がする」

 

士「まぁとはいえあの機体も11年前の機体ですからね。オーバースペックだったとはいえ旧式なんですよ。特異能力よりも圧倒的な性能の方が特徴でしたし」

 

ジャンヌ「特異能力……ありませんでした?」

 

レイ「え、武器補充能力……」

 

士「そういうの抜きにして性能では互角って意味です、機体性能として」

 

レイ「そういうものかー、でもまぁ比べるにしても難しいよね今回。ユグドラルキャンセラーって普通にヤバいし」

 

ジャンヌ「対ユグドラル機能使用機に対して絶大なまでに効力を発揮するようですが、これは原型機のキャンセラーがモデルですよね」

 

士「あっちも超常的なことが起きるわけがないとキャンセルするわけですしね。もっともこちらはその発動キャンセルされる側の機能を使って別の機能を封じ込める形なんですが」

 

ジャンヌ「面倒くさい分け方ですね……同じ機能を無効化するのじゃダメなんですか?」

 

士「それは作中に言ってくれい!ユグドラルの方が今は面倒だって思ったってことよ。もしかすると今後変わるかもだし」

 

レイ「なるほど、ここからもとのドライバ系にメタっていく可能性もあるわけだねっ」

 

士「そんな想像もあるわけです。と、それでは今回はここまでにしておきましょう」

 

ジャンヌ「それでは後編に続いていきます」

 



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黒の館DN 双翼英雄譚編 第12回 後編

 

 

士「それでは黒の館双翼英雄譚編第12回後編を始めていきます」

 

ネイ「やっぱり思うんですけど、長くないです?それ」

 

グリーフィア「長い!」

 

士「だから正式名称たまにしか言わないようにしてるんよ……(´・ω・`)」

 

グリーフィア「長ったらしいのはちょっとねぇ~こっちも言いづらくなるしぃ?」

 

ネイ「よく書こうと思いますよね」

 

士「流石に面倒くさいけどね。と、では前編に引き続いて後編の内容へと」

 

ネイ「それはそうですね。後編でもまだ活躍はしていない機体の紹介、今回はガンダムDNアルヴⅡとオースデスティニーガンダムの紹介ですね」

 

グリーフィア「まだ活躍していないのに紹介っていうのも不思議よねぇ。ま、これから見ようって時にあらかじめ分かってると見やすいって感じもあるか」

 

士「絵とかないからそうであってほしいなぁ(´-ω-`)というわけでお願いします」

 

ネイ「それではまずはアルヴⅡから、どうぞ」

 

 

 

 

型式番号 HGX-01ⅡA

ガンダムDNアルヴⅡ

 

 

機体解説

・ガンダムDNアルヴのデータを基に完成したDNの完成形の一つ。入嶋千恵里専用機である。機体カラーリングは白に青、アクセントで黄色となっている。

 アルヴを順当に発展させたもので、アルヴにて試験されていたバレッツフルアーマーやフェアリィスラスターを本格的に装備した機体となっている。

 完成時期が同じことからDNⅡレーバテインと同型に思われそうだが、あちらはDNⅡという新規素体に対し、こちらは素体をDNのまま、装備などを一新した形となる。ただし両機体はセット運用が前提となった構成である。

 今までは普遍的な運用を求められてきた本機だが、苛烈となるゼロンとの対決を見越してモードシフトとして「フェアリィダンスフォーム」が追加。火力重視の通常と、フェアリィスラスターとフェアリィウイングを利用した超高速戦闘を得意とする機体として仕上がった。

 モデル元にはフルアーマー系機体のうち、アヴァランチエクシアが追加。コンセプトに「装甲を排除して高速化するアヴァランチエクシア」というフルアーマーコンセプトと同じ物になった。加えてDNⅡレーバテインの相方と言うことで武装も非ユグドラルウエポンで構成されている。

 

 

【機能】

・DNフェイズカーボン

 特筆事項のないDN浸透装甲。

 

・ダブルジェネレーター

 アルヴから変更されたDNジェネレーター運用機構。2基のジェネレーターで出力を補う方向へとシフトした。

 この状態でのエラクスシステム発動もテスト要項となっており、性能が上がるのかどうかなどが見られる。

 

・エラクスシステム

 アルヴから引き継がれるDN高出力解放形態。元々の機体からDNジェネレーターが倍増し、得られる性能も2倍になっている、のかどうかが不明なためテストで2基のジェネレーターにそれぞれシステムを内蔵する。

 

・DNウォール

 増加装甲の噴射面と肩部ユニットから放出する機体防御フィールド。

 

・エディットバックパックシステム

 DNⅡには引き継がれなかったが、本機では本システムによるバックパック換装が可能。

 

・フェアリィダンスフォーム

 本機にのみ設定された第二形態。バレッツアーマーを排除し、フェアリィスラスターの機能を完全開放する。

 フェアリィスラスターは単純に機動力が通常のスラスターよりも高いというだけではない。リミッターを解除することで、シュバルトゼロガンダムでも用いられている特殊機動DNコントロールが可能となり、予測が難しい複雑な高機動、回避しながらの攻撃「イグナイトエフェクト」が可能となる(LEVEL1でのイグナイト登場時のシュバルトゼロ、ヴァイスインフィニットの動き)。

 ほぼ忘れられていた技術かもしれないが、意外にもシュバルトゼロガンダムはいつも使っていた機能であり、対DNL機並びに強敵相手にシュバルトゼロガンダムRⅡが生き残れていたのはこの技術のおかげ。DNLでなくても感覚を掴めば対DNL戦に有利なためHOWが実用化に躍起になっていた背景を持つ。

 

 

【武装】

・バレッツフルアーマー

 アルヴにて試験運用された増加装甲。概ねそちらで採用されたものと同じだが、肩部ユニットは本体側の専用ユニットとの関係で排除され、胸部・膝部装甲も形状や武装が変更された。

 変更武装としては胸部がミサイルランチャーへ、膝部は折り畳み式ビームランチャーとなった。なお本体側にメインのフェアリィスラスターがあるが、こちらにも元々の最低限の機動用の外付けフェアリィスラスターは備えているので、アルヴバレッツアーマーよりも回避性能は高い。

 

・ガンアサルトⅢ

 アルヴにて実験装備されたものと同型。豊富な出力から連射性などが改善されている。同じく右腕に装備される。

 

・肩部大型フェアリィスラスター

 肩部の装甲を兼ねつつ、ユニット化された大型フェアリィスラスター。バックパックの物を除くとこれが本体の機動力を担うスラスターとなる。

 スラスター部分の形状はシュバルトゼロのマルチ・アサルトシールドの開閉式スラスター部分を参考にしている。このスラスターだけでも通常機のスラスターに匹敵し、パイロットの腕が良ければバックパック無しでの戦闘も可能。

 形状モデルはアヴァランチエクシアの肩部ユニット。ただし機構としてはガンダムデュナメスリペアⅢの肩部GNシールドの可動を意識しているイメージ。

 

・ビームサーベル

 基本的な格闘兵装。アルヴと同じ背部ソケット部分に装備される。

 

・フェアリィザッパー

 腰部側面に装備される、ザッパーウエポンのアルヴ専用型。

 射撃性能をメインに合体機構を見直し、コンバートライフルの代わりにコンバートバスターライフルモードへと変更。コンバートセイバーに当たるモードもバトルザッパーを原型にコンバートバスターソードモードとなった。

 合体機構をバトルザッパーから引き継ぎつつ、ウイングガンダムゼロのツインバスターライフルを模した形態へ移行することが可能となったイメージ。

 

・アルヴブースターⅡ

 アルヴⅡ専用に調整されたバックパックユニット。スラスターをフェアリィスラスターに換装し、更に変形機構を内蔵する。

 変形機構は言ってしまえばDNアーマーの機構を移植した物で、下部スラスターを脚部に装着、ブースターの中央ユニットに頭部を収めるように被せることで簡易飛行形態へと移行、空力抵抗などがやや気になるが、フェアリィスラスターの推力に任せればそれが気にならないほどの速度、運動性を持ち合わせる。この変形は途中で停止することも可能、というよりもっぱら運用はこちらで、脚部に下部ユニット「フェアリィボード」に機体を乗せることでより予測不能な機動性を得ることが本来の目的である。

 

・ヴァルスビーⅡ改

 ヴァルスビーⅡの改良型。アルヴブースターⅡ側に装備。脇下から回すのではなく、肩掛けの砲へと変更された。

 

 

ネイ「以上がガンダムDNアルヴⅡになりますね」

 

グリーフィア「新型機!ってわけじゃなくて、アルヴの改修機って感じなのね」

 

士「元々のガンダムDNをベースにアルヴの性能を突き詰めたという感じです。アルヴの2号機みたいな感じですね」

 

ネイ「うーん、でも納得いかないといいますか……他の二人に比べて冷遇されていません?旧型機の改修機って」

 

士「まぁどうしてもそう見えてしまうよね。とはいえここら辺はMS適性がやや低い千恵里に合わせる形になってるから、仕方ない(´・ω・`)」

 

グリーフィア「うわっ、バッサリ言うわねぇ。千恵里ちゃんもこの前活躍したっていうのに」

 

士「どうしてもそのタイミングだから、成果が反映されていないんですよ。もしかしたら、それが評価されて再度の機体変更もあり得るかもです」

 

ネイ「でもそうでなくてもちゃんと乗り換えが出来るのっていいと思います。アルヴの追加装備もちゃんとこれを見越してのものって分かりますし」

 

グリーフィア「バレッツフルアーマーも運用データが反映されているみたいねぇ。にしても反映が早いというか」

 

士「これに関しては予備パーツという形で開発している可能性はありますし、仕様がいくつかあったかもですね。試作品なわけですし」

 

グリーフィア「なるほどね。仕様変更は割と簡単ってことか」

 

ネイ「いままでのアルヴよりも攻撃的と言いますか、前衛寄りですよね今回」

 

士「そこが今回売りだからね。今まで下がっていた千恵里が前に出てもいいと認められた証、それがこのアルヴⅡということです。アルヴから一歩進んだという感じです」

 

グリーフィア「それも狙ってるのね~。これは千恵里ちゃん分かっていてほしいわねぇ」

 

士「まぁ気づきにくい時もありますからこればかりはしゃーない(;´∀`)」

 

ネイ「今も悩みは解消したとはいえまだ迷ってるみたいですし」

 

グリーフィア「でも戦わなくちゃって気持ちにはなれてるから、後は本番で相対してって感じよね」

 

士「果たして千恵里は玖亜と戦えるのか?それでは続いてオースデスティニーの紹介をお願いします」

 

グリーフィア「それじゃあ紹介していくわねぇ、どうぞ~」

 

 

 

 

OUSG-X42S

オースデスティニーガンダム

 

 

機体設定

HOWで運用されていたオースインパルスガンダムのこれまでの戦果を基に、オース、HOWとで協力して設計、開発された大和進専用機。蒼と白、オレンジのトリコロールにオレンジ色の翼を持つ。

 オースインパルスでは換装により継戦能力、多様な戦術に対応していた。しかし目まぐるしく状況が変わる戦場で現行のリヴァイバーシステムを用いた換装では成長したパイロットの腕に換装が追いつかない、特に前線で活躍する必要があるパイロットは一々艦に戻っていては手間だとの意見が進から出た。今のインパルスでは進の戦い、敵の動きに付いて行けないとHOWは判断してオース側と情報共有。そこで今までのインパルスのデータを基に新規機体の開発が要請され、大和進専用機の開発がスタートした。

 大元のフレームを大和輝用に開発が進められていた「オースストライクフリーダムガンダム」に採用されたDNフェイズカーボン製の特殊フレーム「フェイズフレーム」をコピーして転用。そこにインパルスのそれぞれの兵装を洗練化して装備させた。装備の中にはHOW側の装備も含まれる。SEEDシステムもHOWで調整が行われ、より進化を果たしている。

 モデルはインパルスの後継機「デスティニーガンダム」。コンセプトは「アナザーデスティニーガンダム」「デスティニーガンダムがオースで開発していた、あるいはフリーダム系列の兄弟機として開発されていたら」がメインである。武装もある程度それらを意識した構成を取る。が、隠されたコンセプト、というより位置づけとして「デスティニーインパルスが中間乗り換え機体としてあったなら」も含まれており、これが意味するものは「現時点でのオースデスティニーガンダムは本当の意味で大和進専用機ではない」事を意味している。

 

【機能】

・DNフェイズカーボンVerV

 インパルスと同じ変色装甲。本機においてはオースの色であるオレンジ色は本体とウイングに使われている。

 

・DNフェイズフレーム

 本機のフレームとして採用されている特殊フレーム。簡単に言えばDNフェイズカーボンでフレームが構成されている。

 構成されたフレームはこれまでのユグドラシルフレームの持つ剛性の代用として開発。DNフェイズカーボンによる剛性強化で消費DNは増えるものの、過剰な機動によるフレーム部材の疲労や無理な可動による損傷を抑える。この機能は手の部分にも働いており、殴打する際のアシストにも繋がってる。

 モデルはデスティニーのフレーム。ストライクフリーダムとも近縁の技術である点を流用するという形で再現する。

 

・SEEDシステム

 パイロットのSEEDホルダーに干渉し、潜在能力を引き出す機能。通称種割れ。

 インパルスから引き継がれた機能であるが、今回HOWで開発されるにあたってSEEDシステムによるサポートでこれまでのSEEDシステムよりも負荷が2割軽くなった。

 

・ビームシールド

 腕部装甲内に格納されている発振器から形成するビームの盾。オース側が開発したモデルを採用している。

 形状を自由に変えられ、場合によってはビームサーベル、ビームガンにもなるなど多機能。

 モデルはデスティニーのビームシールドだが、今回はストライクフリーダム側の装備位置と同じとなった。

 

・クリアージェネレーターMK-Ⅱ

 本機のジェネレーターとして新たに搭載された動力機関。フリーダムが装備していたものの2世代目で、オースストライクフリーダムも同じ物を搭載する。

 性質は同じだが、パワーが4割増しとなっており、これまでよりもパワーダウンしづらい。また本ジェネレーターから放出されるDNはウイングの装置を通すとミラージュステルスと同質の粒子を放出し、残像のようなものを残しながら飛行できる。この飛行状態は通常よりもスピードが出て、圧倒的な戦闘能力にも磨きがかかる。

 モデルはハイパーデュートリオン。

 

・ミラージュウイング

 バックパックのウイングから放出される残像粒子。クリアージェネレーターMK-ⅡのDNと化合して形成される。

 光やDNを受けて加速する性質を持ち、理論上では無限に加速できる。

 生み出される残像はミサイルの赤外線はおろか機体のカメラすらも狂わせる。DNLに対してもこの残像粒子は撹乱する効果を得ており、オース勢力が他勢力と張り合える技術として期待している技術である。

 モデルはデスティニーガンダムのヴォワチュール・リュミエール。

 

 

【武装】

・CIWSバルカン

 インパルスの物と同様の兵装。ただし威力効率を良くなったモデルと換装している。

 

・ビームライフル「ダンタリオン」

 本機の基本的な射撃兵装。不使用時には腰背部に装備する。

 いたって基本的なビームライフルに思われるが、これまでのHOWのCROZE部隊での運用から進の癖に合わせて微調整されてエネルギー量を控えめにしつつ弾速と連射速度を向上させている。

 名称はソロモンの悪魔の敵の秘密計画を教える悪魔の名前から。

 モデルはデスティニーのビームライフル。名称はデスティニー初出撃時の状況から。

 

・ビームブーメラン

 機体肩部に装備される投擲兵装。2枚装備する。

 インパルス・アッシェの物を発展させた兵装で、あちらよりもグリップが太く、頑丈化したため手持ちでの運用が意識されている。

 ビームブーメラン使用中、あるいは失った後の接続部はスラスターとなり、一時的に機動力を向上させ、戦闘能力に寄与する。

 モデルは原型機のフラッシュエッジ2ビームブーメラン。

 

・Dフィストバンカー

 掌部分に内蔵された小型ビーム砲。シュバルトゼロの技術を基にオースが原型を作成、HOWが最終調整を行った本機の特殊兵装。

 機能も腕部で掴みかかってゼロ距離砲撃、ビームサーベル形成、腕部全体にビーム粒子を纏わせて殴打、加えて攻撃時に射撃防護フィールドが形成など多彩。これはシュバルトゼロの戦い方を見た進からの提案で、提案書には「零を一発殴りたい(原文ママ)」と書かれていた。実際元の目線から見ても進の技量、性格からいいのではと許可され、開発許可が下りた。

 モデルは原型機のパルマフィオキーナだが、他機と同じく本世界ではモデル先となったシュバルトゼロから反映される形をとる。

 

・シーフシールド

 左腕部に装備される実体シールド。可変機構を持ち、内部の突撃槍「オセ」を展開、使用する。

 オセはかつてシュバルトゼロに採用された「ボウゲン・ランツェ」の発展型であり、このシールドも元々は紋章の盾、秩序の盾がベース元。槍部分はガンブレードランスの発展もあって強度強化を果たしており、放たれるビームはキャノン並み。とはいえシールド接続部がビームシールド発生器を兼ねており、DNによる吸着がされているとはいえ今度は刀身ではなく接続部が折れかねない事態も起きている。

 モデルは原型機のシールド。

 

・デスティニーバックパック

 本機のバックパックユニット。大型の稼働翼と、エディットバックパックから発展させたウエポンアームを備える。

 ウイングはミラージュウイング発生器になっており、抜群の飛行能力を持つ。そうでなくとも通常時でカラーガンダム達並みの推力を得ている。ウイングに存在する小羽はそれぞれの共振でビーム弾を発射可能となっている。

 モデルは原型機のバックパック。小羽からビーム発射はストライクフリーダムのドラグーンを意識しつつコードギアスのランスロット・アルビオンのエナジーウイングから。

 

・大型対艦刀「ボティス」

 バックパックの右アームユニットに懸架される折りたたみ式対艦刀。アッシェにて採用されていたレーザー対艦刀「ハルファス」の発展型。名称は友人や敵同士を調停するソロモンの悪魔の名前。

 一本の対艦刀となっているが、破壊力などは問題なく、リーチなども同等。この長さに対応するためにDNフェイズカーボンを使用したオースストライクフリーダムと同じDNフェイズフレームを採用した理由でもある。もっともセッティングは大和進専用に調整されている。

 DNAの為の端末としても用いられる。

 モデルは原型機の対艦刀「アロンダイト」。

 

・展伸式ビームランチャー「ハーゲンティⅡ」

 バックパックの左アームユニットに懸架される折りたたみビームランチャー。シュトラールの「ハーゲンティ」を改修したものとなる。

 機能も基本的に同じだが、出力の上昇で一本でもあちら二本分のエネルギー量を放出できる。DBの為の端末でもある。

 モデルは原型機の長射程ビーム砲、通称名無し砲。

 

 

グリーフィア「以上がオースデスティニーガンダムの設定になるわね~」

 

ネイ「本当に、デスティニーの名を冠する通り、原型機とそっくりな武装構成ですね」

 

士「諸事情でオリジナル兵装を盛り込めなかったんだよねぇ(´・ω・`)時が解決してくれるとはいえ……」

 

ネイ「どういう意味です?」

 

グリーフィア「なーんとなく分かっちゃった。そう言うことね」

 

士「分かってても言わないでね(;´Д`)」

 

グリーフィア「分かってるぅ~。でも所々違ってるところはあるわよねぇ。ウイングの攻撃性能とかなかったし、シールドには銃槍ついてるし」

 

ネイ「言われてみると割と相違点はあるので気にしなくてもいいかと」

 

士「そう言ってくれるとありがたい。HOWの技術をある程度取り込んだ機体って感じに仕上がってます。デスティニーの戦闘スタイルを崩さず、完成させましたので」

 

ネイ「原作では悪役みたいな感じになってしまいましたけど、本作では主人公的ポジションでの活躍を期待してます」

 

グリーフィア「作者君デスティニー自体は好きだから、そういうところでどう優遇してくるかとか見てみたいわねぇ」

 

士「優遇まではいかないけど活躍させたいですね。どうなるかはまだ少し未定なわけですが。それでは紹介も以上になりますかね」

 

ネイ「次回からはいよいよシュバルトゼロとヴァイスインフィニットの再対決が始まりますね」

 

グリーフィア「全てを奪った者が勝つのか、それとも奪われた者が全てを取り返すのか。見物ねっ」

 

士「果たしてどうなるのか?見守っていただければ幸いです」

 

ネイ「それでは今回の黒の館DNはここまでです」

 




今回もお読みいただきありがとうございます。

新たな人物と機体を交えて次回から遂にシュバルトゼロとヴァイスインフィニットの決闘が始まっていきます。
MSの決闘と言えばかつてのヴァイスインフィニット戦以来となるであろう戦いです。やはりこの二機はその形式での対決が一番ということなのか。もっともただでは終わらない予定です。

と、短いですが今回はここまで。それから注意事項というか連絡を一つ。現在鬱モード状態ですが、それに影響して更新日が乱れることを伝えておきます。今のところは6日~7日ペースでの更新ですが、これからまた遅くなることが十分考えられます。
精神的に落ち着いたりすればまた戻れるかもしれませんが、それまではご理解よろしくお願いします。
ちなみにTwitter上では普通に話してますが、これでも落ち込んでいるので。それから鬱の原因はこちら関連ではないことをお伝えしておきますので、ご心配などなさらずに。
それではまた次回の更新にて。


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EPISODE91 十数年の因縁1

どうも……本日はEPISODE91、92の、公開、です……。

レイ「ここ最近のいつも以上に体調が悪そう!何があったの……?」

ジャンヌ「えー……どうやら気になったゲームの事前情報動画を見ようと調べたところ、それを見ていた他の人のサジェストでグロ映像見たらしく、それで気分悪くなっているようです……」

レイ「あちゃー、そういうダメなんだ作者」

ジャンヌ「まぁ、聞く限り大分ショッキングな映像みたいですけどね。サムネイルだけで体調を崩すくらいですから……。手を気にしてらっしゃるのでしばらく手を握るようにしてます」

あんなのおすすめに表示するな……それではどうぞ(ガクブル)


 

 

 今度こそ取り戻すという強い意志を以ってシュバルトゼロクローザーは空を往く。行く先に見えるのはゼロンの艦隊が待ち受ける四河港ポート基地。しかし、決戦の地はそこではない。

 ゼロンから後日改めて指定のあった場所の名前は「旧ポート基地」。四河港ポート基地の前身にあたる基地と言われていた。

 その事実にHOWの側では混乱があった。そんな基地の情報は今までなかったからだ。おそらく四河港ポート基地に移管する前にゼロンが潜伏期間中に利用していた基地であることは分かる。だが今も現存しているような言い方で言われ、どこにあるのか分からなかった。

 それも考慮していたのか、ゼロンはこんな指示を送っていた。

 

『四河港と名護屋港の間に位置する場所まで来てもらいたい』

 

 その指示にHOWの間で一つの仮説が浮かぶ。移動基地、普段は海中に沈んでいると判断した。それならば基地を浮上させて出現させられる。決戦の地として場所を用意できる。

 もっともゼロンがそんな移動基地を所有している事に大層驚いたわけだが。しかし当人である元にそんな事は関係なかった。

 ただ取り返す。例え罠が仕掛けられようとも行って戦うだけだった。その脳裏にジャンヌとのやり取りが思い浮かぶ。

 

『違う……そうかもしれないけど、違うの!私は』

 

 彼女が真に望んでいる事が自分の考えと違っているのは分かっている。だがもうそれは出来ない。今の自分にその資格はない。それを分かってもらうために、本当に幸せを掴んでもらうために助けに行く。

 そんな思いを抱きながら空を行く。その道中でシュバルトゼロクローザーの調子を確認する。

 

(ジャンヌなしでもポテンシャルはある。若干出力上昇にタイムラグがあるのが気になるな。それ以上に問題なのは……ジャッジメントクローズモードの安定駆動不可か)

 

 シュバルトゼロクローザーの最大機能であるジャッジメントクローズモード。それはジャンヌとのエンゲージリンクがあればこそ起動できる最強のモード。ジャンヌがいない為に、このモードの使用は厳禁とされていた。

 だが決して稼働できないわけでもない。パイロットのへの高負荷を無視すれば稼働が出来る。もちろん高負荷であるために推奨はされない。来馬からも絶対に使うなと再三言われている。

 約束はなるべく守るつもりだ。しかし、もしどうしようもないなら、この身を犠牲にする覚悟が元にはあった。そうしなければ届かないのなら手を伸ばす。それでも届かないのであれば、その時は本当に最後の一手を使うつもりでいる。

 スタートからの反発は容易に想像できる。だからこそ言っていない。言っているのはただ一人、いや、一体だ。

 そのスタートから機体についての調子を触れられる。

 

『どうだ、元。機体の方は』

 

「問題ない。ジャンヌがいない分性能の低下は免れない。だがお前と考えた戦闘スタイルでなら、奴と張り合える、かもしれない」

 

『かもしれない、か。不安だがそれが現実だな。ジャッジメントクローズを無理に発動させてでも勝ちにいかねばならないのは、避けられんかもな』

 

 スタートですらジャッジメントクローズモードの発動は避けられないと言う。来馬の言いたいことは分かるが、それが守られる保証は極めて低い。大目玉を喰らうほどに無茶をするのは確定だ。

 それには同意見だ。だが元にはそのスタートからそれ以上に止められるであろう打開策を考えていた。

 それを使わないことに越したことはない。しかし使うことになれば、何を言われるか。そうならない為にもスタートに返しながら今のうちにシュバルトゼロクローザーの性能を確認する。

 

「そうだな。そうならないためにも少し動かす」

 

『了解だ。その間にこちらで細かいところを調整する』

 

 幾度かの機動を行いながら目的地を目指す。後方からはある程度距離を離して護衛のHOW艦隊が追従している。そちらには決戦を邪魔しないようにと言って同行してもらっている。

 もし何かあったとしても手を出すな、と言ってもやはり心配されるのは当然だ。ゼロン側にも見届け人という形で観戦することは許可されている。ゼロンも同じ条件だという。

 とはいえ、元は思う。おそらくゼロンは抜け道を用意している。移動要塞ならいくらでも戦力を隠しておける。そこからヴァイスインフィニットのG-Arcを行使してくる可能性は十分にあった。間違いなく二体一以上で戦闘が行われる。

 操るとはいえそれはルール違反に近い。だがそれがヴァイスインフィニットの力。それを考慮して元も作戦を立ててきた。

 どんな手を使って来てでも必ず勝つ。その強い意志と共に向かっていると上空にその機体が現れた。

 

『止まれ』

 

「……ポイントはここか」

 

 銃を向けられながら制止を呼びかけられる。シュバルトゼロクローザーもブレーキを掛けて空中で静止する。白銀のガンダムヴァイスインフィニットエアレーザー。そのパイロット、黒和神治がこちらに話しかける。

 

『今日ここで決着を付けてやる。お前達をここで葬る。魔王の終わりだ』

 

「威勢は充分。だがそもそも旧ポート基地はどこにある。光学迷彩か潜水でもしてるなら姿を見せろ」

 

『すぐに見せてやる!お前を殺すフィールドは、ここだ!』

 

 神治が合図をすると空気が振動を始める。振動の発動元は海からだ。浮上してくる。ゼロンの隠された基地が。

 空気の振動が大きくなっていく。そして海が割れた。海中から出現したシルエット、それを見て元はその正体を口にする。

 

 

 

 

「……なるほどな。これが旧ポート基地か。まさか、これをまた見ることになるとは……「人工衛星 ホリン」」

 

『そうだ。お前が魔王となって旧組織を壊滅させた地。ここでお前は懺悔し、地獄へ落とされるのだ!』

 

 そこは魔王黒和元という存在が生まれた、あの場所だった。

 

 

 

 

 ホリンの浮上を見て、後方待機していたHOWの面々は驚きの声を上げる。Gチームがあれほどの物体が海中にあったことに戸惑う。

 

「なんだ……あんなのが海に?」

 

『こんな基地をゼロンが……クルスは知ってた?』

 

『知らない……こんな移動基地、私も知らないよ……』

 

 かつてはゼロン側勢力であったクルーシアが首を横に振って知らないと断言する。こんな巨大な物、いくら末端でも知っていそうな感じだが、それでも知らなかったと言うあたり本当に知らなかったのだろう。

 比較的戦闘員として長い進やクルツもゼロンにこれほどの要塞があったことに驚く。

 

『こんなのがあるの、どの組織でも聞いたことないぞ!本当に移動要塞なのか?』

 

『これだけの規模ってなると……移動要塞、とは違うかもしれねぇな……』

 

 クルツのそんな指摘は的を外していないらしく、解析していたエターナがガンダムDNⅡにインプットされていたデータを引き出してくる。

 

『待って、機体にあれとよく似た施設の情報が入ってる』

 

「よく似た施設?前にもあったってことか?」

 

 エターナの言葉に聞き返す。エターナがその施設の情報を出そうとしているところで、呉川小隊長がその名を読み上げた。

 

『……ホリンだ』

 

『えっ?』

 

『かつて次元覇院が衛星軌道上に飛ばそうとした人工衛星。宇宙軍事基地。「黒和元」が魔王と名乗るきっかけとなったホリン・ダウン作戦の元凶だ』

 

 ホリン・ダウン作戦という単語に少しだけ聞き覚えがあった。かつて両親と共に家から非難した時、その数日後に当時のMSオーダーズが行ったという作戦をテレビ画面で見た。

 海上に浮かんでいた鉄の円盤の上でビームの火線が飛び交っていたのを覚えている。時通り異常なまでのビームが放たれたりして余波で中継が止まった。今なら分かる。あれはきっとシュバルトゼロがやったのだ。

 その話題がきっかけで、当時を知る者達からその時の事が回線から聞こえてくる。

 

『うん、忘れもしない。元君が魔王を初めて名乗った場所。次元覇院壊滅の最初の場所にして、MSオーダーズ最後の戦場だよ』

 

『そういえば、深絵さん達はその時からずっと……』

 

『深絵先輩だけじゃない。私やかほちーも、新堂さんだって戦ってきた』

 

『話には聞いていましたけど……でも次元覇院の人工衛星ってその事件で接収された後は爆破処理されたんじゃ……?』

 

『そですよね?そないなこと聞いた覚えあるけど……あれ新造したん?』

 

 その話を聞く限りではそうとしか思えない。これほどの物を新しく作り上げるだけの資金があるとは思えないのだが、そう考えるしかない。

 しかし、黎人司令がそうではない可能性をデータと共に示す。

 

『いや、あれは間違いなく、ホリンだ』

 

『それは……あの事を指してか?』

 

『あの事……?新堂さんそれって……』

 

 紫音が尋ねるとその言葉の意味を黎人司令が衝撃の事実と共に話す。

 

『ホリンは表向きには爆破処理されたと言われている。だが実際はあれだけの物を完全粉砕することは出来ない。ガンダムのDNFも通常では破砕できなかった。だから僕らMSオーダーズや日本政府は、ホリンを沈没処理としたんだ』

 

『沈没、処理……』

 

 学校の歴史の授業で聞いたことがある。大きな戦争が終わった後、軍艦などを使えなくするために海に沈める行為が行われたと。

 完全に壊すよりも海に沈めた方が手間がかからない、というような話だった気がする。確かに海に落着した人工衛星を処理するならその方がいいだろう。

 問題はその話が今回の話とどうつながるのか。するとその話を聞いていた勇人警部が納得したように頷く。

 

『なるほど。その場所は確か、四河湾の海底だったな。今のゼロン前線基地の目と鼻の先』

 

「!まさか……直した?」

 

『そんな面倒な事……』

 

 自身と共にエターナがそんな事がと否定する。しかし隊長陣達はそれがあり得ない話ではないとメリットの例を挙げる。

 

『だがする価値はある。直せばまた宇宙からの攻撃の起点となる。ゼロンは宇宙にも進出しているが、未だ安全に宇宙から攻撃する方法は作り上げてはいない』

 

『ゼロンも色々と宇宙での拠点づくりに躍起になってるけど、あんまりうまくいっていないみたいだしね。その担当って言われていたプリテンダーズはもう完全にゼロンと敵対して、本拠地のコロニーを護るって言ってるし、地球を攻められる拠点としてまた宙にあげたいって気持ちはあるのかも』

 

 そこまで瞬時に考えられる隊長達にただただ沈黙する。そんな事情からそこまで考えてゼロンは再び人工衛星を打ち上げようとしているのか。

 しかし、そんな壮大な考えよりも、もっとシンプルかもしれないとその人物は言った。

 

『……案外そういうことまで考えてないかもしれないよ』

 

『光巴?』

 

 光巴が首を横に振ってゼロンの目的について予想を立てる。

 

『ただ単に、魔王を今度こそ討ち果たすっていう目的の為、生まれたこの場所でまた戦って、今度は殺すっていう願掛けだと思う。ゼロンは、次元覇院はそういう人達の集まりで、今もそんなに変わっていないと、大勢は思うから』

 

 ドライな考え方。しかし納得する部分はある。ゼロンなら考えそうなことと。悪趣味というか、執念深いと言えるか。

 そんな執念こそがホリンを蘇らせたのだろう。機体のデータからすぐに判別されるあたり、その意向は強そうだ。執念の強さに黎人司令と須藤司令がやっかむ。

 

『そんなことされても、僕らは何とも思わない、むしろはた迷惑なんだけどね』

 

『彼らには意味のあることなのだ。カルトとはそういう意味のないことにこだわる。もっとも、当の本人である元君には堪えることかもしれんが……』

 

『元隊長……』

 

 心配の声を口にする入嶋。遠目から見るシュバルトゼロの機体は静観していると言えるほど静かだった。その機体が徐々に降下していく。ヴァイスインフィニットも同じ速度で降りていく。

 この後、戦いが始まる。相手は元隊長を殺そうとし、元隊長は奪われた大切な人達を取り戻す。条件はイコールではない。圧倒的に不利だ。

 そこに場所のプレッシャーまで入るのだろうか。元隊長に限ってそれはないと思いたい。そんなプレッシャーに呑まれないでほしい。元の事を知ったつもりでいるパートナーからもあり得ないと声が飛ぶ。

 

『アイツにそんな子供だましは通じない。思ったとしても、黒き英雄は折れない!願いを果たすだけ、だから……』

 

 自分自身に言い聞かせるような声で元隊長に期待を寄せるエターナにも、不安はあるようだ。それでも信じている。それが彼女を知る中でどれだけ大きなことか。

 エターナの言葉を噛みしめるようにして宗司自身も信頼を言葉にする。

 

「あの人は、隊長はやるさ」

 

 ジッと戦いが始まる時を待つ。

 

 

 

 

 黒和元に対し、言ってやったと神治は思う。魔王の生まれた地、確かに葬り去ったと思っていた場所、自身の晴れ舞台となったであろう舞台が再び目の前に現れる。絶望は計り知れない。

 ゼロンが人工衛星ホリンを流用して作り上げた移動基地こそこの旧ポート基地だ。潜伏しながら日本各地の動向を探り、各地の旧次元覇院信奉者を支援して決起に備えるための移動要塞。

 宙への浮上は完全に諦めてしまったものの、ゼロンの活動の為にその第一歩を確実に作り出してくれた重要な基地。それを今回初めて公の場に晒したのだ。

 その理由はHOW側でも予想された通り、見せつける為であった。HOWに、魔王に絶望を突きつける為。どれだけ壊そうとも不滅なのだと教える為、そして今度こそ完全敗北させるために因縁の地であるこの基地を待機状態から復旧させて決戦の地としたのだ。

 声を出さない魔王に対し、得意気になって気分を聞く。

 

「どうだ、絶望したか?お前達HOW、MSオーダーズが破壊した人工衛星ホリン。それは爆破されてこの三枝の海に沈んでいた。それをゼロンは新たな基地へと生まれ変わらせ、新たな覇道の為の足掛かりとしたのだ!残念だったなぁ!お前達のやったことは、所詮無駄なこと!何度でも、何度だってこの教義は蘇る!」

 

 言ってやった!心の中で充足感が生まれていく。今まで馬鹿にされてきた。下に見てきたあいつに言ってやったのだ。

 どれだけ魔王という強力な後ろ盾があったとしてもこの事実を見逃せないはず。次元覇院を潰したという証の復活が、彼らを追い詰める。

 そうに違いないという強い思いが神治の頭の中で決まっていた。それだけが彼らの勢いの源だと。しかし神治の期待は大きく裏切られる。黒和元の口が開かれた。

 

『絶望?残っていたのならやることは一つ。また破壊するだけだ。人を傷つける兵器がそこにあるのなら、何度でも』

 

「無駄なこと。何度蘇ると言ったはずだ!」

 

『ならば、蘇る気力すらも打ち砕く。粉々に壊して、蘇る力すらも奪い去る』

 

「やはり悪だな、お前達は。人の意志を、正義を砕くなどと言う野蛮な発想を平気でするお前達は!」

 

 心底嫌悪する。奴らは所詮人の気持ちを、信心をないがしろにするろくでなしだ。それをまたこうして示した。奴らを許しては置けない。

 ますます黒和元への憎しみが募っていく。両親を殺された時の絶望が蘇る。あの時、神治は何も出来なかった。両親がただただ無慈悲に殺されていくのを見る事しか出来なかった。この絶望と同じ気持ちを、奴にも味合わせる。自分自身と「仲間」、その二つの側面から苦しませると誓って戦いの地への着地を急ぐ。

 その降下の間に黒和元の生意気な言葉は止まらない。

 

『お前の今の言葉に、正義はない。ただ自分の我儘を、感情を押し付けたいだけにしか聞こえない。そこにお前達以外の人間の存在を認めていない』

 

「それの何が悪い!俺達を虐げる者、妨げる者は、全て人にあらず!俺の復讐の何が悪い?みんなそうだ!復讐だ!」

 

『その被害者ぶった傲慢さが、開き直りが世界を閉ざしていると、なぜ分からない』

 

「開き直りならお前だって!散々人を殺しておいて、魔王と名乗ってるじゃないか!」

 

 そうだ、奴は自ら魔王を名乗っている。人を傷つける最低の存在だと自ら名乗った男。悪人を殺さずして何が正義か。当然の事を言い放った。

 ゼロンだけではない、普通ならすべての人が望むこと。それをなぜ東側の人間擬きは許すのか理解に苦しむ。

 いや、理解する必要なんてない。こんな自ら悪を名乗る者を理解する機など起こさなければいい。それがゼロンの、ゼロンが引き継いだ次元覇院の教義なのだ。

 しかし、黒和元は思ってもいない言葉で反論する。

 

「当然だ。俺はお前達によって、憎しみの渦に落ちたんだからな。復讐が悪いとは思わんさ」

 

『何を……』

 

「ただ、復讐される側がその思考を理解できないだけ。だからこそ、語らないか?」

 

 そう言ったところで「移動要塞リ・ホリン」の甲板へと着地する。着地して戦闘体勢へと入ろうとした神治に対して、黒和元は―――――その装依を解いた。

 

「なっ……!?」

 

『……ほぅ』

 

「……」

 

 声にならない驚きのまま、生身の黒和元の前に立ち尽くしてしまった。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回は、ここまでです……。

レイ「この調子狂うなぁ……まぁ話としてはまさか衛星ホリンをまた見ることになるとは」

ジャンヌ「設定の方では沈没処理とされていましたが、作中では壊されたと伝わっていたんですね。それをまた使うなんて、ゼロンも次元覇院の頃と変わらないと言いますか……」

レイ「それもだけど、元君もヤバいよ!MS解除しちゃってさぁ!」

ジャンヌ「対話を求める姿勢、神治相手に通じない気もするんですが、果たして次話でどうなるか、と言った感じですかね」

そ、そろそろいい?

ジャンヌ「全然喋ってないんですけど……そんなに怖かったんです?」

も、むり……一回休憩挟む……( ;∀;)

レイ「どんなの見たのさ……」

ここで話したら、また思い出すから嫌……記憶から消したい……。

レイ「うわー、相当だねこれ」

ジャンヌ「作者怖がりでもあるんですけど、ここまではヤバいですね。舞台裏にしておきましょう。では次話に続きます。休憩を挟んでね」


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EPISODE92 十数年の因縁2

どうも……引き続きEP91、92の更新です。今回はEP92です。

ネイ「事情はもう聞きました。……ショッキングって言うか、まぁあんまり目に入れたくない写真だなぁというのは分かりました」

グリーフィア「まー耐性ない子だと卒倒しそうよね。サムネイルに表示するのも人呼び込むための技とはいえ悪質というか……不特定多数に見られるんだからねー。作者も耐えきれてるかどうかあやしいけど。と、本編の方も元君に冷や冷やさせられるというか……」

ネイ「作者さんガクブルですけどこっちはこっちでガクブルな展開、どうなることか」

それでは、どうぞ……うぅ……。

ネイ「あ、ジャンヌお嬢様ところに逃げ帰った」

グリーフィア「今回はもうこれで行きましょ~」


 

「なん、だ。何でMSの装依をっ!?」

 

「言っただろう。語らないか、と。MSを装依したままより、こっちの方が顔も見れる。お前とは、一度顔を見て話をしなければならないと思っていた」

 

 動揺を隠せないでいる神治に対し、落ち着いた口調でそう話す。だがその胸中は決して穏やかなものではない。

 むしろ冷や汗をかいていた。相手にとっては絶好の機会。ゼロン相手に無抵抗を示すことはリスクが大半だ。

 それでもこの選択を取ったのは話すべきだと思ったのと、彼だからこそ話が出来る状況もあると踏んでのことだ。

 このことは一切黎人達には相談していない。スタートには無理を承知で頼んだこの選択が本当に受け入れられるのか。

 神治からの答えは、当然と言えるものであった。

 

「何がだ!お前と話すことなんて何もない!ただ死ねばいい!」

 

「っ!」

 

 言葉を否定し、ライフルを向ける。会話すら無理かと諦め、スターターの装依ボタンに手を伸ばす。しかし相手の方が早い。射撃態勢に入る。

 

「俺の勝ちだぁぁ!!」

 

『―――待て、神治』

 

 だがその行動を制止する者がいた。その声は飛び回るドローンから発せられたが、耳元にも届いていたのか神治が大層驚いた様子で聞き返していた。

 

「なぜ、止めるんですか!こいつは父さんと母さんを殺した!あなたも罪を犯した者には裁きをと……」

 

『確かに言った。だが、言い分があるのなら、決闘ならば、そう言った演出も超えてこそドラマがある物。それこそ、真なる英雄の物語。そう私は思う』

 

「そん、なの……」

 

 神治は零崎の言葉を否定しようとしていたが、やがて思い悩んで口を閉ざす。零崎の声がこちらに問う。

 

『もっとも、お主がどう思っているかは、知らんが。命乞い、とも取れるわけだ』

 

「命乞いするならもっとましなことを言うさ。こんな危険も犯さない」

 

『ならば、なんの為に?』

 

 零崎の問いかけを受け、そのままの気持ちを、理由を話す。

 

「こいつには話さなければならない。話しておかなければ。俺がどうして父さん達を撃ったのか。何を以って、こいつの前に立ち塞がるのかを。それが、戦う者としての礼儀だ」

 

『礼儀、か。残念だよ。君が我が組織にいたならと、思わせる。情など掛けたくないが』

 

「っ!……」

 

 突然そんな事を言う零崎。元には全く影響は与えなかったが、わずかに神治が何か言おうとする。だが先程までのやり取りを思い出し、出そうになる口出しを抑えた。

 何を言うのかと思えば、とだけ思ってその誘いに断りを入れる。

 

「例えそうでも、お前達に肩入れするつもりはない。ただ倒すのみだ。だが、この言葉でお前達を絆すつもりもない。ただ覚悟している。これが最後の戦いになるかもしれないから」

 

 最後の戦い。勝てる見込みのない戦いに挑む。だからこそ言うべきことは言う。古の武士が語った決戦前の言葉のように、後悔が残らないように。

 負けるつもりはないが、それでも言いたい。対峙する者として覚悟、信念を残すために。我ながら古臭い、馬鹿らしい行いだと思う。

 だがそんな思いを示したからなのか、話を嫌がっていた神治のヴァイスインフィニットエアレーザーが光に包まれ、その装依を解除した。現れる神治の姿。

 年相応に育っている。十何年前の自分のように、学生としての標準的な体つきだ。11年も経てばこうもなると納得する。

 遠目で見たきりの彼の姿にふと感想を呟く。

 

「11年前、お前の姿をスコープ越しに見た。あの忌々しいガキが身体はこうも立派に育って」

 

「気持ち悪いんだよ、その感想。11年前の俺の馬鹿にする気か!今は勝てないからって!」

 

「そんなつもりは最初からない。だが俺が話すのはその時から想い続けた俺の感情だ。お前と、俺との因縁の」

 

 喋る口をその言葉と視線で塞いでいく。睨み付けられた神治は睨み返しながらもその話を聞く姿勢を取る。

 それを確認して、過去を語り出す。

 

「11年前、俺は次元覇院の大規模作戦阻止の後、三枝の親父達の下を訪れた。家族として救うために。だがその時には、お前がいた。お前が次元覇院から押し付けられていた」

 

「違う。俺は幸せに暮らし直せるように旧教団に、……あの女の情けで新しい父さんと母さん達に育てられようとした!それをお前が壊した!」

 

「経緯はどうでもいい。俺や華穂から両親を奪ったのは事実だ。変え様のない、真実」

 

「黙れ!お前の勝手な言い分だ!」

 

 苛立ちを露わにして地団太を踏む神治。感情を露わにして騒ぐ姿。まるで騒げば思い通りになるかのような振る舞いだ。

 あの女、叔母である山神麻衣もそうだった。ずる賢く、時にヒステリックになって弱者を演じていた。それを受け継いでいるようだった。もっとも彼女に子供がいるはずもない。だからこそ、神治に自分の共通点を見出したのかもしれないが、そこまで行けばDNLと大差なくなってしまう。DNLはエスパーや、あの女が掲げる目覚めた人ではない。

 そんな神治をまともに相手はせず、ただこちらの感情を、思っていることを淡々と告げていく。

 

「お前にとっては、な。お前には、うちの寝取った両親は神から与えてもらったチャンスだっただろう、それを奪われたことに対して、怒りも復讐も芽生えるだろう。だが俺は知っている。父はお前を嫌ってはいても、守るべき命だと思っていたことを」

 

「どういう、ことだ?」

 

 こちらの言葉に聞き返す神治。明らかに動揺している。単に嫌っていると言うならここまで反応しない。ただ否定するだけに留まっていたに違いない。その言葉の根拠を語る。

 

「覚えているか、お前は。父を殺したとき、殺された時、お前の前に立ったことを」

 

「……確かに、父さんは立ってお前の銃撃の真正面に立った。それの何処が嫌っていると!」

 

「ならなぜ、お前を抱いて逃げなかった?」

 

「それ、は……」

 

 言葉に詰まる神治。あの時の受け取り方は人それぞれだ。もちろん、元は知っている。父は撃たれる為にああして前へと歩み出たことを。目立つように前へと出たのだ。こちらが分かりやすいように。

 もし知らなかったのなら慌てて前に出るような事はしない。知っていても神治が大事なら逃がすなりしていた、撃たれる覚悟があっても物陰に避難させるか、他の人に任せていたはずだ。しかしそれもせずに前へと出た。冷静に状況を見るなら、元の考えが正しいはずである。

 突きつけられた紛れもない事実を必死に返そうとする神治。しかしその受け答えはたどたどしい。

 

「違う……それは、その……父さんは、そんな、こと!」

 

「何が違う、どんなことを思っていたと」

 

「そ、そもそも、お前と父さんの間に、そんな取り決めなんてなかった!あれはたまたまだったんだ!だから、そんなことを考える暇もなく、守らなくちゃって、思って!」

 

 苦し紛れに考え付いた言い訳を主張する神治。だがそれでは拙すぎる。完全な妄想に、対応する反論を告げる。

 

「ならなぜ、俺と接触した次の日にお前や母さんを連れて永島スパランドに行ったんだ?悪人である俺に無理矢理さらわれて、その次の日にホイホイと家族連れでレジャー施設へと行くのか?仲間の護衛無しに」

 

「なんで、そんなことを知ってるんだ。そうだと分かる?」

 

「単なる推測だよ。事実、次の日は一切妨害もなく、狙撃には成功している。その後出てきたMSも、スパランドからではなく、周辺の隠れ家からの緊急発進がほとんどだった。とすれば、そう考えるのが妥当だ」

 

「そ、そんなの、ただの妄想だ!そんなお前に都合のいい状況が!」

 

 否定する神治の声が震えている。指摘された点をとにかく否定することしか考えられていなさそうだ。

 それはまさしくゼロンに属する大半の主張と同じ。未熟で幼い、一方通行の会話。それでも良かった。それを突きつけるために、真っ向からその言葉を聴聞することを告げていく。

 

「ならなんだ、お前の答えは。憶測でも、妄想でもない、実際に見て、知っていることを話せ。事実を、真実だけを。そのうえで、お前の全てを否定する」

 

「くっ!う、う……」

 

 放つ威圧感と言葉の圧にたじろいでいく神治。情けない。ちょっと都合の悪い質問を問いただされたところでこうも脆く崩れるものか。MSという武器で脅さなければまともに言い合いも出来ないと見える。

 いつもなら武器の攻撃と共に飛んでくるはずの反論の勢いはすっかりなくなっている。先程の的外れな反論はお断りだが、それすらもないのは歯ごたえがないと言える。

 悔しさをしばらくの間噛みしめたのち、神治の口が開く。その口から出たのは、予想通りの場違いな反論だった。

 

「お前、人質がいるのを忘れたか!」

 

 人質。レイアとジャンヌの事に違いない。その二人の命が掛かっていることを示してきた。自分が満足させられるだけの反証を用意できないから、相手が一番気にしているであろう存在を盾にその発言を取り消させようとしていた。

 本来ならその一手は強烈なものとなっただろう。非道とされても相手はただふんぞり返るだけで良い、楽な一手。しかしそれは本来時を考えなければならない一手でもある。今の元に、それは動じるほどではなかった。

 神治に対し、軽い言い回しで言った。

 

「ならやれよ」

 

「……何?お前何言って……」

 

 本来聞こえてくるはずの言葉とは、反応の違う回答に困惑する神治。そんな奴に構わず、言葉を続けた。

 

「言っただろ、覚悟している、と。俺の死だけじゃない。レイアが、そして、ジャンヌが死ぬことも、可能性としてはありうる。その全てを、考慮して、そのうえでここにいる。あの時と、父さんと母さんを殺したときと同じように」

 

 そんな事は考えたくはなかった。それでも避けては通れない。それらを全て覚悟しなければ、この決闘に立つことは出来ない。引いてはいけない。彼らにこの国が蹂躙されないために戦士としての覚悟だ。

 その覚悟をしたという上で決意は変わらない。怯む神治に宣告した。

 

「だが、それでも彼女達は死なせない。助け出す。助け出せなかったとしても迷わない。止まらない。それが俺の、魔王という道だ」

 

「っ……何だよ、それっ」

 

「お前に、救世主という覚悟が、国の反逆者として処刑されるとしても後悔しない、零崎秀夫が捕らえられたとしても動じない覚悟が、やり遂げる決意があるのか?反論もまとも出来ない、お前如きに」

 

「う、うぅぅぅぅぅ!!お前、本当に!」

 

 殺すぞ、と言おうとした神治。それを再び零崎の言葉が止めた。

 

『そこまでだ。二人とも』

 

「零崎代表!」

 

「いいだろう、聞こうか」

 

 出された助け舟に神治が縋る。元の方も神治の過度な行いを抑制させるいい機会として聞く姿勢を持つ。

 零崎は両者に向け語りかける。

 

『神治、冷静になれ。それでは魔王の思うがままだ。優位を自ら崩している』

 

「そんな、こと!人質がいるなら、こいつだって」

 

『それを彼は既にしている。まだ意味はあれど、それを盾にしているようでは負ける。己の未熟さに押し殺される。魔王はお前より、遥かに強い。それはパートナーのあるなしに関わらない』

 

『そうだな。黒和元は俺と戦った時よりも格段に強くなっている。技術も、精神も』

 

「エンドまで……俺は、弱くなんて……」

 

 こちらの強さを頑なに認めようとしない神治。自分の弱さを否定しようとする。だがそれに根拠を示すモノは、具体的にはなかった。逃げ道を塞ぐようにエンドが言い聞かせる。

 

『お前は確かに、黒和元に勝った。だが、その姿は英雄には程遠い。信者にすら振り回されるお前が、たとえ味方でも危ういのは見るに耐える』

 

「けど、勝利したのには変わりない!」

 

『そうだ。勝利したのなら、その威厳を見せてみろ。今のお前は、変わらない、駄々をこねる子どもだ』

 

「っ、お前なんかに……零崎代表は!」

 

 味方であるエンドにすら酷く言われて後退る神治は零崎へと助けを求める。親代わりとも呼べる存在、ゼロンという教団の教祖、代表に救いを求めた。しかしその言葉も今の神治にとっては苦しいものだった。

 

『私は、お前に英雄になってもらいたい。この教団を導く救世主になってもらいたい。勝利したことに私は満足している』

 

「零崎代表……!そうだ、零崎代表の判断がゼロンの全て!ゼロンは零崎代表の為に戦うんだ!それでいい!」

 

 神治は零崎の言葉をかみ砕いて早口にまくしたてる。ゼロンは零崎の言葉が全てと決めつけた言い分。ところがそれを零崎は良しとしなかった。

 

『良くない』

 

「えっ……零崎、代表?」

 

『今の神治は組織を預かる物として危うい。成長を期して黒和元、君と戦わせたが、勝つという目的だけを追い求めるようでは、ゼロンの未来に暗い影を落とす』

 

 零崎もまた今の神治の立ち振る舞いを良くないとしていた。神治に突きつけ、変わるようにと宣告する。

 流石に組織の代表。信者がああなっているのは代表のおざなりさが原因とも思われたが、代表は理知的のようだ。いや、理知的だからこそ、ああも人を狂わせることが出来るか。狂わせながらも冷静さを求める。無茶ぶりさはカルト教団の代表と言うべきか。

 現実を突きつけられた神治は激しく苦悩する。

 

「そんな……俺は、どう、すれば……」

 

『……それで、黒和元。君も随分と大層な覚悟を決めている。人質の安否よりも、国の平和か?』

 

 失意の中の神治をそのままにして零崎はそう尋ねてくる。その言葉の意味を聞き返す。

 

「どういう意味だ」

 

『そのままの意味だ。君もまた、あの愚かな首相達の礎となることを厭わぬ人材なのかね?』

 

 零崎の言葉にその意味を知る。どうやら彼には自分が所謂上流階級とか世間的に風潮される存在の為に尽くしていると考えているらしい。

 そう思われるのは心外だ。なのではっきりと否定する。

 

「笑わせる。権力に尻尾振っているつもりはない」

 

『ほう、では、なんの為に』

 

「国の平和、は望むところだ。だが、その国はあの首相達だけが作っているわけじゃない。平和を求める者達の為、静かに日常を過ごす人たちの為に戦う」

 

 黒和元が望むのは、平和。争いをいたずらに広げないこと。平和の為に戦うということだった。それを矛盾していると零崎は正そうとして来る。

 

『それは、我らも同じはず。寧ろ君達の方がそれを壊す』

 

「お前達の平和は壊すさ。お前達は、平和を求めているんじゃない、ただ自分達の理想を求めている。その為に気に入らない人間を悪だと断じて殺す。それは争いそのもの。無用な争いを起こす者は、人々にとって迷惑だ」

 

『必要な争いだ。正すために、あるべき姿の為に』

 

「その争いは、本当に必要か?」

 

『それはのちの歴史が示す。ゼロンに利する民たちの歓声がその証だ』

 

 のちの歴史とは、如何にもらしい言葉を使う。DNLとしての直感が不快な音と共に心に隠す闇を告げてくる。

 王道とも呼べる反論に、こちらもよく言われる言葉で返す。それと共に感想も投げつけた。

 

「そう言って示せた例なんてほとんどなかったと思うがな。けど、あんたは神治ほど無茶苦茶ではないらしい」

 

『当り前だ。私はゼロン代表なのだぞ』

 

「なら、教え方は下手糞ってことか」

 

『言ってくれる。そう言われてしまうからこそ、神治には落ち着きを期待しているのだがな』

 

 そう愚痴を吐いて来た零崎の言葉の後。ようやく神治が怒りに震えながらも救世主としての心構えを宣誓してくる。

 

「俺は、父さんと母さんの優しさを受けた。それを無下にしたお前を、許さない!」

 

 優しさを受けて育とうとしたと訴える神治。その目には明らかな恨みがこもっている。そんな神治に対し、元もまた両親について言いたかった事を口にする。

 

「優しさ、か。寵愛、とでもいうべきか。生憎そんなロマンチックなことを少なくとも父さんは思ってないだろうが」

 

「勝手な事言うな!父さんは!」

 

「俺の父さんは、寵愛なんて似合わねぇ。人が馬鹿やらかしたら凄まじい剣幕で怒ってくるような人だったよ」

 

「っ、そんなの……お前が愛されていなかっただけだろ!」

 

 父への悪口に対し、神治から悪態をつかれる。心の中で確かに、と思ってしまう。正直言ってしまって元達の父親は最後の時のように背中を押すタイプの父親であるが、行けないことをしたときは家から本当に追い出すような父親であった。流石に華穂にはそこまでしなかったが、元に対してはそれもあった。

 何度恨んだだろうか。死んでしまえと思ったこともある。だが、今思えばそれも理解できる、かもしれなかった。

 自分なりの今の考え、父の考えを述べる。

 

「かもしれないな。けれど今思うと、父さんなりの心配から来るものだった、優しさだったのかもと思うよ」

 

「怒るのが、優しさ……?そんなの!」

 

 あるわけがない、と言ってくる神治。その神治にそれを告げた。

 

「お前は優しさを受けたと言った。だが、俺は違うものを受けている。父さん、親父からは厳しさ、母さん、あの馬鹿なお袋からは甘さ。それがあって、今の俺や、華穂がいる。事実、親父は怒りこそするが、他人に迷惑を掛けさせることはしなかった。俺らが他人に迷惑を掛けた時は矢面に立って謝り、その分俺達を叱った。親としては当たり前の義務を、果たしてくれていた」

 

 優しさだけが愛ではない。それを父は教えてくれた。だからこそ俺はこの選択をしている。そしてあの時感じた気持ちを神治にぶつける。

 

「そう思うから、あの時、お前を庇うように死んだ親父に怒りを覚えた。お前に嫉妬した」

 

「嫉妬……」

 

「そうだ。偽りの息子でも、そういうことをした親父を許せなかった。こっちには分かりづらい愛情表現をするくせに、お前には分かりやすく守ろうとした姿勢を取ったと思った。もちろん、撃ちやすくなるようにああしたんだろうが、それでも誤解はするさ」

 

 もちろん、それが本意でないことは思っている。結果的にああなってしまったのだと納得させている。親父はそういうところがある。お袋との関係も愛が深いが故に間違って道へ行こうとするときも必要以上に過保護になってしまう。だがお袋には却ってそれが良かった。そうでなければもっと早いうちに次元覇院、いや、かつて存在した母方の実家が取り込まれていたカルトに家族が滅茶苦茶にされていたかもしれないのだから。

 父には様々な気持ちを思っていた。けれど最後まで残っていたのは、感謝だ。本当に辛い時、柚羽を喪った時には気に掛けてくれつつも敢えて触れないでくれていた。いつもなら無理矢理にでも発破をかけてこようとする父がだ。それもあって大分立ち直るのが遅かった気もするが、それでもありがたかった。

 その時、どういう想いであれ気に掛けてくれたという事実だけで、ちゃんと見てくれていたのだと思える。それを踏まえて神治に言い放つ。

 

「なのにお前は、守ってくれた恩義も忘れて、仲間にすら牙をむくお前が、救世主と名乗れるのか?」

 

「勝手な事!」

 

「思いたければ思うがいい。お前が行くのは、救世主ではない、それと全く同義の存在、魔王と同じ、破壊者だ」

 

「違う!俺はお前とは違う!」

 

 その突きつけを神治は全力で否定する。破壊者であると認めようとしない。普通ならそうだろう。

 だが元は気づいていた。有史以来、救世主と呼ばれた者が何なのか。マキナ・ドランディアの歴史にも触れたことで得た答えを、話す。

 

「いいや、事実さ。救世主も、魔王も等しく世界の枠組みを破壊する。破壊からしか、創造が生まれないのと同じように。お前と俺は同じだ」

 

「そんなの、お前だけが!」

 

「いいや。俺はもう、その役割を受け入れた。だからこそ、破壊する。この歪な世界を作り出す根源であるお前達を。エンド、お前もだ」

 

『フン。言うようになった。ならば、後は力で示すのみ』

 

 エンドは完全に臨戦態勢に入る。その言葉につられて神治も強気の威勢を取り戻して戦闘開始を要求する。

 

「俺は勝つさ。魔王を今度こそ討伐し、HOWや日本政府を殲滅する!救世主が世界を変える!」

 

 そう意気込む神治。元自身もそろそろ始めるべきだと思っていた。だからこそ、最後にそれを零崎らへと告げる。

 

「なら、最後に言わせてもらう」

 

『ほう』

 

 これから望む決戦への想いと、ゼロンに対しての問いかけ、そして愛しき少女達への宣誓。それらを明かす。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回はここまで、です。

ネイ「元さんなりの、両親の想い、がこれですか」

グリーフィア「なんていうか、両方とも不器用って言う感じね。元君の父親と元君は」

ネイ「そうだよね。もっと言葉を交わしていたら、こんなことには®ならなかったって気がする」

グリーフィア「それゆえに今の元君がいる厳しさを無理に遂行し、甘さに苦しむ。与えられたもので足を引っ張ってるっていうのは、何というか本当に心配になるわー」

ネイ「そんな元さんから、次に何が語られるのか、気になるね」

グリーフィア「そうねっ。元君が答えを見つけ出したうえで、救出できるといいわね。ってことでここ辺りが限界?」

はい……お願いします(´Д⊂ヽ

グリーフィア「分かった分かった。っていうか聞くんだけど、あ直接的じゃないんだけど元々何調べてたの?」

ゲームの……もうすぐ発売されるらしい、やつ。エ○ゲーなんだけど

グリーフィア「おいおい」

ネイ「18禁だからそういうの表示されたのでは……」

けど、ゲームの内容的にはまだそういうの表示されるとは思わないやつよ。ギャング系なんだけどさぁ。

グリーフィア「ふーん。ちなみにそれを選んだ理由は?」

あ、好みの声優さんがヒロインの一人です(´-ω-`)

ネイ「あーひょっとして最近やってたカステラの?」

ナツメさんの中の人です(;´∀`)ちょっとスリーブも探したくなる。

グリーフィア「あーそーですか。まぁ買うかどうかは任せるわ。って言ってもうちだと多分中古よね~」

ネイ「積まないようにお願いしますよ」

分かってます。というわけで、今回はここまで。最後に、他人のおすすめなんていらねーんですよ(T_T)(怨嗟)

ネイ「で、ではまた次回です」


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EPISODE93 十数年の因縁3

どうも、番外編6を挟んでEPISODE93と94の公開です。まずはEP93から。

レイ「久々だったね番外編。しかも前の奴見たら一年後くらいにやるとか言っておきながら今年まで放置してたし」

ジャンヌ「まぁネタ埋めとしてはいいのでは。放置してたのに文句あるのは変わりませんけど。それで前話は確か零崎、神治との会話で終わっていましたね」

というか途中です。元君は最後に何を告げるのか。いよいよ戦闘開始になりそうな最新話をどうぞ。


 

 

 零崎、神治、エンドに向けて最後に告げる。

 

「俺には未来を歩む資格はない。一度この世界から消え、別世界に渡ったとしても、それはもう俺自身が死んだことに変わりはない。それ以前に、俺の人生は終わっていたのかもしれない」

 

 異世界マキナ・ドランディアへ渡った時、外の身体が記憶のない状態のとき、ずっとスタートと共にMSの操作について学んでいた。だがその時点で、もう思い出さなければいいとさえ思っていた時があった。

 柚羽が死んで、なのに自分が生きていて。生きる目標なんてない。記憶が戻ってもこの異世界で生きる理由なんてないのだと。ところが、それを変えた、変えさせた人物がいた。

 それは他でもない、記憶を失っていた自分自身。ハジメ・ナッシュと呼ばれていた存在の最後の願いだ。

 

『でなきゃ、俺はあいつに勝てない。お嬢様の隣にも行けない。……だからさ、託すよ。本当の俺に。受け継いでくれるかどうかは分からないけど、でも託す。……お嬢様を、救ってくれ、俺』

 

 決めかねていた決断を最終的に決めたのはあの時の言葉。俺にとっての柚羽が、彼にとってのジャンヌだった。ならば、今の俺が、あいつの願いを叶えなければならない。だからこそ記憶を取り戻して立った。

 

「それなのに俺は愚かにも生きることを選択した。間違っていたのかもしれない。けれど、そこにはあいつが、柚羽と同じ護りたいと思った少女がいた。だから俺は戦い続けた。けれどもその彼女は囚われた。俺自身のミスだろう」

 

 立ち上がり、戦った。その少女と様々な経験をした。共に戦い、戦争を終わらせた。彼女は積極的に自身を求めるようになった。

 最初はこれも悪くないと思っていた。レイアを救出するまでの間だけだと。きっと取り戻せば彼女もレイアの方に目を向け直すと。しかし過ごしていくうちに気づいてしまった。彼女の期待を。想いを。

 それが怖かった。また心を通わせれば、失ってしまうのではないかと。好意と共に一度は請け負った想いを手放そうとする気持ちが生まれた。

 その気持ちは過ごしていくうちに大きくなる。だが彼女は必ず守り抜くという願いだけは果たそうと表と裏で葛藤を続けてきた。彼女への好意を、心の中で裏切って、守ること、使命のことだけを考えてきた。

 それが果たせる時が来たとき、思わず我を忘れてそれを掴みにかかった。その結果がこれだ。奪われ、全てを失いかけた。愚かしいにもほどがある。やはり生きていなければよかったとその願いを諦めようとした。

 けれどもそうならなかった。そうさせないと思う者達がいた。そいつらが、再び俺を焚き付けさせた。戦え、戦えと、戦ってほしいと。それでようやく気が付いた。

 まだ終わっていない。こんなところでは終われない。まだ俺は生きている。動くのなら、手を伸ばさなければならない。俺は魔王。人のために手を伸ばす者。もう共に歩めないとしても、救い出さなければならない。消えていった者達の願いを果たす者として、戦い続ける。新たな時代を作る「破壊者」として、目の前の障害を破壊し、未来を創造する。

 その決意が、再び自分を立ち上がらせた。後悔する暇なんてなかった。

 

「けれど、後悔したって何も変わりはしない。なら、取り戻すだけだ。俺は、そんなことしか、戦うことでしか護れない。もっとも、今の俺に護るものはない。だから、取り返す。だがお前達はそうでないと言えるのか?」

 

『どういうことだ?』

 

「お前達ゼロンに、戦って護れるものがあるのか?護るものを、その行いで取り返せるのか?その手で護るものは、なんだ」

 

 ゼロンの護るもの、などたかが知れている。聞きたいわけではない。そんなものに価値があるのかと問いかけたのだ。お前達は自分とは違う、人とは違うのだと。

 そんな侮蔑しかない言葉に対して、零崎が答えた。

 

『あるさ。護っている。ゼロンを崇める民を。護るものはそれだけでいい。いずれすべての人間がゼロンを崇める。すべての人間が守るべき対象となるのだから』

 

「そうか。やっぱりその程度の存在だったということか。どうだっていいがな」

 

『聞いておいてそう語るか』

 

「あぁ。予想できた答えだ。理解できないと、変わらないのなら、破壊してでも理解(かえ)させてやる。魔王らしくな」

 

「本性を現したな。ならっ」

 

 神治がそれを合図と受け取り、再装依の構えを取る。こちらもスターターを再始動させる。

 両者が戦闘体勢を取る中で、零崎は先程の元の言葉にこう返す。

 

『理解はしている。理解したからこそ、儂はこの道を行く。理解されないのならそれでいい。その時を、儂は待つだけよ』

 

「あぁ、そうかい!」

 

 荒々しく返答し、装依ボタンを押し込む。二機のスターターが同時起動する。

 

『ジェミニアス・クロス・クローザー!シュバルトゼロ・クローザー』

 

『ゼロニアス・ザ・エアレーザー!ヴァイスインフィニット・エアレーザー』

 

『装依』

 

 ゲートが重なり、再びリ・ホリンの甲板上に2機のガンダムが出現する。不死鳥の背負いし漆黒のガンダムと、救世主のローブを巻いたような白銀のガンダムが相対する。

 ここで決まる。日本という国が足掻けるか、そうでないか。だが元には大して関係なかった。

 目的はただ一つ。零崎たちにはああ言ったものの、変わることのない絶対目標。ジャンヌとレイアの奪還。必ず果たすという意志の下、先日よりも格段に出力の増していると感じられるヴァイスインフィニット相手に構えた。

 

「さぁ、聖戦の始まりだァ!」

 

「来い。越えられるものならな」

 

 

 

 

 一方元と神治のやり取りを後方で見ていた宗司達はその一挙一挙に気が気でなかった。エターナが愚痴をこぼした。

 

『まったく……いきなりMSを装依解除した時は、何やってんのかって思ったわよ……』

 

『エターナちゃんの言う通りだよ……諦めたのかと思った……』

 

 入嶋も同じ感想を抱いていたと述べる。宗司も、唐突に元が装依を解いた時には不調かと疑い、エターナと共に飛び込もうとしていた。それを事情を察した光巴に止められなければ乱戦になっていただろう。

 その止めた光巴からは心配していた者達に向けてその判断が正しかったであろうことを指摘する。

 

『言ったでしょ。元お兄さんの行動には意味がある。ゼロンみたいに、考えなしじゃない。出たとこ勝負なところはあるけどね』

 

『それって駄目じゃないの……賭けなんてあの人らしくないというか』

 

 紫音艦長が光巴の言葉に対し、元隊長がらしくないと評する。その意見は他の面々にも共通しており、進と呉川小隊長が言葉を続ける。

 

『それ、一つの部隊を預かる隊長として一番やっちゃいけない気がする。そんなの無責任だ』

 

『同感だ。最近の元隊長は目に余る。やはり着いて行くことは……』

 

 元隊長の行いを、そのように否定する二人。二人ほどではないが、宗司もどうなのかと思っていた。

だがそんな意見にも反対意見、擁護する意見もまた存在していた。

 

『けど、お兄ちゃんそれ言えるの?お兄ちゃんの尊敬する輝さんだって、時折命令違反とかする常習犯でもあるって』

 

『そ、それは!……特例、とか?』

 

『いや、絶対あれ問題するべきことなのに身内ってことで見逃されてる感じだよ。軍隊としては失格っていうか、仕事場としてダメでしょ』

 

『ぐむむ……そう、だけど……』

 

 進は妹の真由からの指摘にたじろぐ。恩人の例を挙げられては擁護したくなるものの、それが特例としてしまっては示しがつかない。何せ進自身先程は隊長としてどうなのかと一般論で語ってしまっていたからなおさら言い訳できなかった。

 完全に言い負かされる形となった進。対して呉川小隊長にはクルツが元隊長の弁護に入る。

 

『いやいや、それお前が言っちゃったらおしまいだろ。元問題児』

 

『何の話だ』

 

『とぼけちゃって。お前CROZEに来る前は独断行動で色んな部隊の隊長達を困らせてただろ。HOWの中じゃ有名だぜ?』

 

『そういえば、そうだったね。私もそんな話聞いたことある』

 

 呉川小隊長が問題児、それを聞いて宗司は自らの耳を疑った。まさか、呉川小隊長が、と。ところがクルツの言葉に深絵隊長が頷いたことで、それが本当の事なのだと理解する。

 深絵隊長が噂に聞く呉川小隊長の過去の騒動についてかいつまんで話し出す。

 

『私は直接担当したわけじゃないんだけど、別区の小隊長さんにしつこく絡んでたって話だったね。失敗に対して赦さなかったり、考え方ひとつとっても殴り掛かってたって話』

 

「そう、なんですか」

 

『言いがかりですよ、それは。私は正しいことの為にやっている。言われた人間が間違っていただけの事。相応しくなかっただけだ。今のあなたと同じように』

 

 深絵隊長に対して強く否定する呉川小隊長。否定こそしているが、それが却ってその事実を助長しているようにすら思える。高圧的、上官に向かってすら失礼な物言いだと客観的に見て思う。

 例え呉川小隊長の言っていることが正しかったのだとしても、頷けない。どこかゼロンの物言いにも似た意見にも思える。その様子にやれやれと言った具合の深絵隊長。

 

『そう言ってると顰蹙しか買わないよ?』

 

『勝手に言っていてください。それは黒和元だってそうだったでしょう』

 

「元隊長も、って」

 

 気になる単語に反応する。元隊長が呉川小隊長と同じ問題児だったというのだろうか。すると黎人司令がその話の詳細を話す。

 

『まぁ、転移してきた頃の元はこちらの作戦にもケチを付けて来たね。そんな馬鹿気た対応でいいのか、とか言っていたかな』

 

『あの馬鹿、そんなことを……馬鹿なのは知ってたけど』

 

 エターナもこちらの世界への転移前からの想像していたイメージと違っていたためか、意外という反応を示す。

 その話は無論入嶋をも驚かせていく。

 

『元隊長が、そんなことを!?あ、でも凄い人だし、それくらいは……?』

 

『確かに、それ相応の力があったのは事実だ。けれどそれでも問題にはなる。反省したからか、あるいは無茶できないと判断したからか、シュバルトゼロの旧式化問題が出て来てからは無茶もしなくなった。もちろん、隊長という立場の自覚が出てきたというのも間違いではないだろう』

 

『いずれにしても、元君もそれが間違っていたって分かった。その上で自分の通したい考えを通せるように動いていく。あなたのそれとは違う。そうやって人がいたの、忘れてる?』

 

 前にもそう言う人物がいたことを例に挙げて問い詰める深絵隊長。悲しみを想起させるような表情をする彼女に対し、呉川小隊長もそれを知っている素振りながらも、それを切って捨てていく。

 

『えぇ。ですが、あの女は間違っていた。俺とは違う。それだけです。話はここまでです。戦闘中ですので』

 

『そう。後でどうなろうと、文句言わないでね』

 

『言いますよ。それは不当なのですから』

 

 言って意に介さない呉川小隊長が通信から外れる。こちらからも距離を取る小隊長はやはりおかしいと思う。これまでがまるで嘘のようだ。

 しかしその呉川小隊長に声を掛ける隊員もいなかった。宗司も心配こそしたものの、構っていられずに元隊長とヴァイスインフィニットのパイロットとの話し合いを見る方に戻る。

 先程していた話を話題にクルーシアがかつての自身の事件を振り返っていく。

 

『確かに、元隊長さんは凄く無茶をする人だと思います。私の事件の時も、色々掛け合ってそれで今観察処分という形で私がHOWに属せるようにしたって』

 

『そうだったよね……。元隊長がいなかったら、クルスと一緒に戦うどころか、私もHOWに入れていなかった、HOWに入ろうとすら思わなかったかもだから』

 

 入嶋の憧れもまたない。それは全て元隊長が自らを変えて、周りの運命を変えていくかのようだ。深絵隊長もその考えを明かす。

 

『元君は、みんなの為に戦える人だから。そうしようと思ったら思い切った策もやる。何事も一生懸命だから』

 

『流石に肩の力を抜けと言っているんだがね。聞こうともしない』

 

『そうだな。あいつは気を使い過ぎる。だから自分自身を追い詰めるというのに』

 

 黎人司令のため息に続いて勇人警部も愚痴をこぼす。しかしそんな彼らからは決して嫌という気持ちは感じられない。

 気になって宗司は問いかけた。

 

「でも、嫌がってそうには感じませんけど」

 

『そりゃそうだよ。お父さんもみんな、私だってちゃんと元お兄さんを信じられる。応援できる。積み重ねてきた実績と人柄が元隊長の力だから。ゼロンのそれとは違う』

 

『そうだな、光巴』

 

『光姫の娘には随分とロマンチストなところがあるようだ。否定はしないがな』

 

『あはは、照れてますよ~勇人さん』

 

 光巴の言葉に頷く黎人司令と勇人警部。それだけの信頼を得ているからこそ、元隊長は後を任せられるのかもしれない。仲間を信じすぎて、先の戦闘も自分が無茶をしたのかもと思ってしまう。

 それは黎人司令達も感じ得居たことのようで、現在の話し合いについては苦言を告げる。

 

『だからと言って、ゼロン側に会談を申し込むなんて先に言ってほしいがな……』

 

『黎人にも言っていなかったのかあの馬鹿。やっぱりあれ殺されそうだったの不味いんじゃねぇか』

 

『き、きっと……大丈夫、だったと……思いたい』

 

『深絵先輩。フォローしすぎるのも大概ですよ?って、みんな、あっちが動きそうです。装依態勢に入りました』

 

 夢乃隊長からの言葉で集中がなされる。再び装依した二機のガンダム。戦闘体勢に入ろうとする。

 その様子を見ながら、パートナーであるエターナに言った。

 

「エターナ、不安だと思うけど、待とう」

 

『不安?そんなのとうにない。あいつが助けてくれなきゃ、姉様は戻ってこないんだから』

 

 エターナは再び姉の事を第一に考えていた。出撃前のやり取りがまだ引っかかっているのだろうか。

 だがしかし、それが決してエゴだけの感情でないことを彼女の口から知る。

 

『アイツが凄いのなんて、ずっと前から分かってた。姉様の呪いを解いて、機竜大戦も終わらせて、ドラグディアの両雄って呼ばれて。ずっと羨ましかった。姉様だけじゃなく、アイツも』

 

「エターナ……」

 

 エターナは俺達の知らない、異世界マキナ・ドランディアでの元隊長の事を知っている。その時の隊長は大きな戦争を止めたという話だ。その話を実際に知っているエターナにとっては姉を取られるという危機感も存在していた。羨ましかったというのはあり得る話だ。

 その気持ちを含めてエターナはこの戦いに対する元隊長への想いを吐露する。

 

『だから、私はもう信じてる。妬むってことは、実力があるって認めてるから。私が救えなかった人を、アイツは救えるってこと、私は知ってる。だからってあんな行動はしてほしくなかったけど。でもそれがアイツの平常運転って言うなら……見届ける』

 

「そうか……なら見よう。あの人が救う所を。その時が来るのを」

 

『そうね。それが今の私の役目、か』

 

 役割を受け入れるエターナ。その彼女と共に、見る景色の先で、遂にその戦いの火蓋が切って落とされたのであった。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP93はここまでです。

レイ「元君……もう心を自分で追い詰めてて辛いよぉ……」

ジャンヌ「見ててただただ辛いですね……。それでも戦うことはやめない。いいえ。終わってはいけないと思って、再び立ち上がる。ここで勝たなければ本当に道がないですね」

負けるという選択肢はないですからね。そして零崎とのやり取りですが。

レイ「零崎の言葉もカルトっぽさあるね。自分達を崇める存在だけ守るとか」

ジャンヌ「いずれは全ての人間が、と言っていますが、それって逆らうものを全て抹殺するってことですからね。本当にこの人ジャンヌ・Fさんと話したいって言った人物と同じなんでしょうか」

レイ「それでHOWの方も、なんか色々起こってたね」

ジャンヌ「呉川小隊長も、何か今までと違う、落ち着きがないように思います。否定していますが、あの羽鳥さんと似たようなものを感じます」

彼女は理想の為に、仲間の為に狂った。彼が狂う理由は果たして何か、と言った具合ですね。

レイ「それに負けることなく、宗司君達は元君の事を信頼してくれるといいね!」

ジャンヌ「彼らが支え、導くのが一番元さんの未来にとって大事な気もします。元さんの意識が変わるときは来るんでしょうか……」

さて、それではそろそろ次話へと移りましょうか。

レイ「なんか大分持ち直したよね作者」

ジャンヌ「でもまだ不調なんですよね」

まだ、ね。そろそろ終わりたいから。

ジャンヌ「はいはい。それでは同日公開の次話に続きます」


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EPISODE94 勝利は遥か遠く1

どうも、EPISODE93,94の更新です。こちらはEP94です。

ネイ「再びの決闘。第1部3章を思い出しますね」

グリーフィア「あの頃から年も技術も重ねて、相手はパイロットも変わった。果たして、勝つのはどっちかしら?」

それでは本編をどうぞ。


 

 

「さぁ、やらせてもらう!お前を、討つ!」

 

「っ!」

 

 早速攻撃を仕掛けてきたのはヴァイスインフィニットの側だ。血気に満ち溢れた神治の声と共にビームライフルを放ってくる。それを冷静に回避に徹する。

 回避しながら相手の動きを計測していく。ジャンヌがいないために今回はスタートがフォローに回っている。同時に元もその動きを測っていく。

 

(相変わらず射撃精度はエンド頼りのようだな。狙いを付けてからの発射にラグがある。DNL能力も低い。そこは問題じゃない。けど……)

 

 厄介に思うのは予想していた通り、ヴァイスインフィニットの機体性能。前回戦った時のデータよりも機動性能、その反射性能が上がっているように思う。反撃も兼ねてこちらも速射のビームライフル二射を放つ。

 それに対しヴァイスインフィニットは余裕を持って回避行動を取る。こちらの攻撃に当たる素振りすら見せずに素早い機動制御で回避して攻撃に転じる。

 

「やはりか」

 

「何がだよっ!」

 

 振り下ろされるビームサーベル。こちらもビームサーベルで防ぐ。飛び散る火花が数舜輝く。だがそれを嫌うようにシュバルトゼロ側は素早くいなして左腕のナハト=ヴァールのバルカンをばら撒く。

 バルカン系列は威力としては大したほどではなく、ガンダムならば強引に突破することも可能な攻撃だ。事実目の前のヴァイスインフィニットは強引に弾幕を越えて来ようとする。

 

「そんな程度の攻撃!」

 

 止まらないと自負する神治。そこにこちらは右手のゼロ・バスターライフルを折りたたみ、アレスモードに切り替え弾幕の中から拳を振るう。

 

「単純な!」

 

 弾幕を無理矢理突破したことで神治はその攻撃に一歩反応が遅れる。気付いた時にはエンドが動かす。

 

「ぐっ!?」

 

『えぇい!』

 

 エンドの操縦の下、素早く飛びのく。ヴァイスインフィニットは再び様子見の距離へと移動する。

 機体性能が上がったことでエンドは大分動かしやすくなったようだ。それを理解しながら素早くシュバルトゼロクローザーのモードを切り替える。

 

「スカルキング!」

 

『鎧袖一極!』

 

 その手にガンランスを構えた重装備形態へと切り替えると、片手で保持したまま射撃形態をとる。キングビットシールドがランスの周囲を旋回する。

 それを見てヴァイスインフィニット側もモードを切り替える。ジャンプ形態と記憶している橙色にフレームが変化した。そこに間髪入れずにネオ・ガン・グニールの砲撃を放つ。

 放たれた光の束が途中で分裂、拡散弾としてヴァイスインフィニットに襲い掛かる。それをヴァイスインフィニットは持ち前の機能である短距離瞬間移動で回避する。

 普通なら捉えきれない回避。しかし元はDNLである。放たれる弾丸をあらかじめ制御し、分裂後の軌道をある程度制御し襲い掛からせた。タイミングの違う分裂砲撃がヴァイスインフィニットの回避した先にも降り注ぐ。

 だが、それもまたヴァイスインフィニットは避ける。

 

「くっ!まだまだぁ!」

 

 威勢よく声を張り上げる神治。その言葉通り、転移直後も更なる連続転移で空間を移動し、転移直後の機動でも攻撃を回避していく。

 それも元にとっては予測の範囲内であった。既に左腕のシールドをマルチスペースに格納し、キングビットシールドVを合体、大型シールドとしての拡散ビーム砲発射形態をとる。

 弾幕が途切れようとしたタイミング、そこでシールドから第2波となるビームの雨を放った。

 

「まだ撃ちこむ!」

 

「ちっ!しつこい!」

 

 第1波となる弾幕を回避して加速起動に入ろうとした神治だったが、続く二射目に舌打ちしながらも再び攻撃を回避する。

 それを見て元は口元を緩める。やはり、と思った。二射目の攻撃は射程の短いショートショットで撃っている。故にヴァイスインフィニットは後方へと一時回避の形で短距離跳躍を使った。それは既に見切っている。

 シールドにはショートショットで使わなかったエネルギーが残っている。既に溜め切ったビームを、今度は全力照射で放った。

 

「キングビットシールド、空を薙ぎ払え!」

 

 掛け声と共にキングビットシールドVから大出力の光条が、幾重にもバラバラに空を焼いていく。照射されるビームは正面の空域全てを薙ぎ払っていく。そしてそれが回避した直後のヴァイスインフィニットエアレーザーを捉える。

 回避した直後伸びてきた攻撃に神治の反応が遅れた。それを全力で回避させたのは他ならないエンドだ。

 

『ちぃ!緊急回避!!』

 

「ぐぁぅ!?」

 

 伸びてきたビームをエンドによる更なる短距離跳躍で回避した。その時には既にヴァイスインフィニットのフレームが個々の物ではない、全能力統合の白へと変わっていた。

 その様子を遠目で確認していた元。これだけの全力攻撃を物ともしない。やはり同型機では向こうに負荷の分がある。

 この時点で攻略の困難さがうかがえる。だがまだ攻撃が終わったわけではない。元は次なる攻撃の態勢を取る。キングビットシールドV再び分離稼働させる。

 ヴァイスインフィニットもやられるだけではない。背部から展開したビームランチャーを構えこちらへの砲撃を定めていた。

 こちらもガン・グニールを射出する構え。パイロットの宣言がなされる。

 

『DNFッ!』

 

『Ready set GO!DNF「ガン・グニール・ストライク」!』

 

『DNF ロンゴミニアス・バスター』

 

 両者同時に動く。投げつけるようにして放ったネオ・ガン・グニールがキングビットシールドVで加速、撃ちだされる。それを迎え撃つようにヴァイスインフィニットのビームランチャーが大出力で放たれる。

 互いに直撃コース。その勢いを落とさずに両者の攻撃が激突した。焼き尽くそうとするビームを展開したフィールドで打ち消し、貫こうとするガンランス。しかし出力に競り負け、先に均衡を崩したのはガンランスの方だった。フィールドが消失し、ビームに呑まれる。

 ビームに呑みこまれて大爆発を引き起こす。煙が辺りを覆った。しかし、その時点でシュバルトゼロクローザーは次なる行動を取っていた。

 

(視界不良……だがDNLの力なら)

 

 元の操るシュバルトゼロクローザーはその機体を爆発の煙の中に隠していた。目くらましとしての策。DNLならば視界不良の状態でも敵の位置が分かる。

 しかしそれは相手も同じ。そう簡単にはいかない。だからこそ、元は策を講じる。パネルウイングから射出装置を顕現させると、煙の外に向かって物質を飛ばす。それはダミーバルーン。デコイの一種である。

 デコイを飛ばすためにDNを用いたそれは射出されて展開されると内部のDNで浮遊状態となる。それらが煙の外に向けて飛ばされる。

 一般的なデコイの使い方だ。おそらく普通なら飛び出してきたそれらに向けて攻撃をしてくるだろう。だが相手はDNL。気付かれる可能性も高い。だからこそ、再び策を講じる。

 

 その頃先に射出したデコイが煙から飛び出す。煙の外にいたヴァイスインフィニットエアレーザーは出てきた影に向けて撃とうとする。

 

「そこっ!って、なんだ?」

 

 だが撃つ前に気づいた。いくつもの影が飛び出すのを、同時に煙の中の別方向から更に単体で一つの影が飛び出す。それに対し素早くライフルを向け直す。

 

「デコイか!姑息なんだよ!」

 

 素早く標的を切り替え、その目標を撃つ。ビームで撃ち抜かれたそれは爆発を起こして更に煙と高純度DNを辺りに充満させる。

 間違いなく撃ち抜いたという確信を得ていた神治。ところがエンドの声が警戒を呼んだ。

 

『待て神治!まだっ!』

 

「何……!?」

 

 煙を突っ切る形で、再びシュバルトゼロクローザーが姿を現す。その体には一切の被弾はない。

 

 これが元の策だった。撃ち抜かれたそれは、同じくデコイ。ただ、高純度DNをより多く注入し、機体が損傷したと誤認させるための目くらましとした特注品だったのだ。

 油断しきっていたヴァイスインフィニットエアレーザーにビームサーベルの一太刀を浴びせる。

 

「はぁぁっ!!」

 

 振り上げられた一撃が火花を散らせる。しかしそれはヴァイスインフィニットの本体を切り裂いたのではなく、ビーム刃を展開したビームランチャーとの鍔迫り合いによって起こったものだった。

 攻撃を受けた神治は驚きながらも余裕を崩そうとしないのに必死だった。

 

「は、ははっ!どうだ!全然効かない!お前の力じゃ俺には届かない!」

 

 勝ち誇った様子の神治。鍔競り合う状態でそのように言った。押し込めずにいる状況でそう思うのも当然。しかし元は、決して諦めていない。まだこれが全てではない。冷静沈着に、一手一手を繰り出していく姿勢を崩さない。

 それどころか逆に神治に対し、煽りを入れていく。

 

「この程度で勝った気でいるのか、お前は」

 

「っ!!強がりをっ!ぐっ!?」

 

 反論を封じようとする神治。しかし直後にアレスマグナモードに切り替えて近接出力を押し上げて弾き飛ばす。反動で後退する最中にアズールハルピュイアへと移行、体勢を立て直そうとする神治を銃撃する。

 神治の対応が遅れ、攻撃をそのまま受ける。しかしそのダメージは想像以上に効いていない様子。見ると観測データからダメージを軽減しているとの情報が上がっている。おそらくはモードの一つのダメージ軽減によるものだろう。

 アズールハルピュイアの攻撃をモードの力で受け止めながらエンドが元達の攻撃を徒労と評する。

 

『無駄な事。その程度の攻撃では今の私達には到底及ばない。無駄弾だ』

 

「そうだな、だが」

 

『だったら、それに対応するまでってなぁ!』

 

『世壊災醒!』

 

 それに対しこちらは更なるエレメントシフトで返す。スタートのブレイクネクロに交代して翻す動きで急激に距離を詰める。

 背部から引き抜いたエリミネイターソードを銃として扱い、狙い撃つスタート。それもエンドは手を掲げる程度で防御し、ダメージを受け付けない。だがその状態目がけてスタートがエリミネイターソードを振るうと、ヴァイスインフィニットはそれに触れるのを避けるように後退する。

 ブレイクネクロはエレメント・カオスによって防御機構の無効化を近接攻撃に付与する。だが敵のヴァイスインフィニットも似た機構で攻撃を受け付けないようにしている。攻撃は受け付けないはずだった。

 それを見て元は予測する。それでも嫌がったのはおそらく攻撃の許容値があるためであること。敵が無傷で受け止められる攻撃にエリミネイターソードの近接攻撃はないかもしれない。

 もちろんそうであるとは決めつけない。片隅に入れておく。そのようにしてヴァイスインフィニットのデータを測定し、攻略プランを作り上げていく。その間にスタートがエンドとの戦闘を続ける。

 スタートがエンドに対し言葉をぶつける。

 

『お前は記憶があるらしいな。機竜創世記の本当の真実まで知っている』

 

『そういうということは、それがあることは分かっているようだな』

 

 話しているのは機竜創世記時代についてのこと。二人は共に機竜大戦のそもそものきっかけとなった機竜創世記時代の元人間。英雄として駆け抜けた者達だ。

 その記憶をスタートはおぼろげにしか覚えていない。その事は昨日今日の時点でスタートから聞いている。醜い戦争であったことは覚えていても、その発端や奥深い記憶を忘れてしまっていると言っていた。

 一方、先日の戦闘でエンドはその記憶を覚えているとの旨を言っていた。それが本当なら、そのうえでなぜゼロンに味方するのか。その理由は知らなければならないとスタートと共に思っていた。

 その質問をぶつけるスタート。

 

『あの戦争で、多くの者を喪った!その痛みがなぜ分からない!』

 

『失った者の痛みが分かるなら、今の私の行動も理解できるはずだ。この戦争はまた奴に支配されている』

 

『支配されている……?それをしようとしているのは、ゼロンだろ?』

 

『私の中では違うな!記憶のない、真実を知らぬ者には分からんさ!』

 

 スタートを拒絶する様にしてエンドがヴァイスインフィニットの反撃を繰り出す。腰部から実体剣を振り抜き、振りかぶっていたエリミネイターソードを弾く。その勢いをそのままに連続して斬りつけてくる。

 スタートはエリミネイターソードでそれを防ぎながら反撃を試みる。ところが一つ一つの攻撃が重く、徐々に押されていく。

 

『ぐっ、やはり出力は上か』

 

「スタート、代われ。シフトスカルキング!」

 

 返事を待たずスタートと再び担当を交代する。スカルキングへと移行したシュバルトゼロクローザーはエリミネイターソードをバスターソードへと強化しながら、振り回す。その一刀がヴァイスインフィニットエアレーザーの腰部剣を叩き壊す。

 その一刀がそのままヴァイスインフィニット本体を切り裂こうとする。しかしそれを見越していたエンドが素早く身を引き、攻撃から逃れた。

 攻撃から逃れて距離を取ると、その声が神治の物となり叫び声を上げる。

 

「別世界の事なんて知るかよっ!」

 

「来るっ」

 

 エンド達の会話を切り捨てるようにして向かってくる神治。肩部のシールドから両刃剣を取り出すと次元跳躍して飛び込んでくる。その攻撃をエリミネイターバスターソードで防ぐ。

 攻撃を防がれようとも、構わず攻撃を繰り出してくる神治。その気迫は十分なものがあるが、まだまだ子ども。防いだところにシールドカノンで狙いを定める。

 ところが放たれたそれはヴァイスインフィニットを捉えるに至らない。撃った時には姿を消してしまっていた。

 

「何っ。くっ、後ろっ」

 

「こっちだ!遅い!」

 

 後方からの気配を感じ取り、対抗する。短距離跳躍で飛んだヴァイスインフィニットエアレーザーはその両刃剣を突き立てようとしてくる。それを回避しての反撃、と思ったのだが、その勢いが予想以上に早いことを感じ取る。対応を変え、シールドで受け流しながら横を抜ける。

 両者共に一歩も譲らない攻防を展開する。その背に向けて反撃を放つが、神治は既にそれを見越していたのか、短距離ジャンプで距離を取る。

 同じくライフルを向け、咆える。

 

「お前では、俺には勝てない!」

 

 腰背部のランチャーも展開して放つ一斉射。こちらもシールドカノンとエリミネイターバスターライフルで相殺する姿勢だ。両者のビームは共にぶつかり合い、爆発を起こす。

 爆風が辺りを再び包み込む。神治の側はそのままビームランチャーを向けいつでも撃てる構えをキープする。

 

「さぁ、次出てきたら……」

 

「―――――どうなるんだ?」

 

 既にシュバルトゼロクローザーは背後に位置取っていた。蒼のフレームが輝くアズールハルピュイアの速度で、爆発と同時に移動を行っていた。

展開されたアズールハルピュイアのエレメント・フリージアによる冷気がわずかにヴァイスインフィニットの反応を遅らせる。その間にアレスマグナへとエレメントシフトし、その拳を見舞う。

 

「ぐうっ!?」

 

「まだっ」

 

 ディメンションナックルの一撃がビームライフルを叩いて弾き飛ばす。続く二撃目で防御したシールドを打ちヴァイスインフィニットを後退させる。アレスマグナの一撃は確かに通じている。ダメージ軽減でも勢いまでは殺せていない。

 このままテンポを取る。選択を決めて更にヴァイスインフィニットの攻撃を加えようと拳を振るいあげる。

 だが、それを見て神治が呟く。

 

「ならっ、こうだっ」

 

『―――あっ、があああぁぁぁっ!!?』

 

「っ!」

 

 響いた悲鳴。よく聞いた彼女の声だった。それによる衝撃で攻撃の勢いが衰える。だがすぐに隙を晒すまいと素早く後退して距離を取る。

 距離を取ってから思考を巡らせる。先程の声。間違いない。やはりその手で来た。

 自身を、黒和元の力を抑え込むための一手。動揺を誘える手段。抗おうとしても無視できない弱点。それを元も予測していた。

 その声の主を、元は尋ねた。

 

「やはり、ジャンヌがそこにいるのか」

 

『その通り。お前に対する人質だ。黒和元』

 

「無視できんのかよ!?魔王!!」

 

 その言葉が重くのしかかる。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回はここまでです。

グリーフィア「元君も予想していたとはいえ……胸糞悪いわねこの展開」

ネイ「人質となったジャンヌさんの悲鳴……やっぱり、元さんには効果抜群だね……」

グリーフィア「抜群ってレベルじゃないわよ。自分の攻撃でジャンヌが痛めつけられる。そんなの今の元君には途方もない精神的ダメージでしょ。自分のせいだって前の話でも言っているんだし」

ネイ「そうだった……作者さん元さんに酷いことしかしてないですよ……」

正直書いてて物語とはいえつらです。けど元君ならやれるから書いてます。

グリーフィア「元君はおもちゃじゃないんだぞ!」

それはA○E。

ネイ「でも、この状況から次回どうしていくんでしょうか。この話の時点で元さんはどんなことになっても戦うと言っていますが、まさか、本当に顧みずに……」

グリーフィア「戦うしかないのは、そうでしょうね。問題は元君が戦えるか。それは次回のお楽しみってことでしょうが。けど、それに至るまで元君凄い考えて戦ってるわね」

ネイ「そうだよね。今までも機体性能を生かしたり、先を読んでいたけど、今回はもっと考えているというか。やっぱりジャンヌさんがいない分をちゃんとやっているんですね」

そこは旧式で戦い続けたパイロットの意地ってやつですよ。さて、それでは今回は、ここまでです。疲れた。

グリーフィア「はいはい。この後はツイッターの告知もよろしくね~」

うぃっす。

ネイ「最近はジャンヌお嬢様で通してる分、楽ではありますね」

グリーフィア「そもそもアシスタントとかもういいのでは案件」

それは、考えてる。はい、ではまた次回。

ネイ「あはは、次回もよろしくお願いします」


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EPISODE95 勝利は遥か遠く2

どうも、今回はEPISODE95,96の更新となります。まずはEP95から。

レイ「前話じゃ最低で効率的な方法で元君の進撃を止められたね……今話でもそれが続くとなると」

ジャンヌ「元さんの苦戦も必死ですね。二人の人質がいる中で、果たして元さんは勝てる、いえ、そもそも戦えるのでしょうか……」

それでは本編をどうぞ。


 

 

 シュバルトゼロとの対決は俄然有利でヴァイスインフィニットが圧していると神治は思っていた。姑息な手ばかりを使ってくるシュバルトゼロに対し、こちらは正々堂々とすべての攻撃を避け、真正面から受け止める。

 やましいことは何もない、救世主として素晴らしい戦い方だ。そう自負していた。このまま力で全てを圧倒する。そう思っていた。しかし、その瞬間、シュバルトゼロはこちらを押し始める。

 不意打ちと呼べる攻撃。わざわざ位置を知らせてからの攻撃は完全にこちらを舐めてかかっている。全力でそれを拒もうとした。ところが敵はそれを上回った。近接戦闘型の紅い光の形態は最強の統合型ヴィクトリープロフェシースタイルの動きを封じながら一撃を浴びせてくる。

 二度も攻撃を喰らい、神治も動揺する。こんなやつに、性能で劣る奴にここまでコケにされて頭に来ない訳がない。このままだとこいつは調子に乗る。

 そう思った神治は切り札を切ることにした。本当ならヴァイスインフィニットの力で完全に圧倒し、存在すら最後の撃墜前まで見せる気のなかった存在、人質の存在を、声を、認知させることにした。

 攻撃を受ける直前、ヴァイスインフィニットの回線を一つ開き、出力負荷を上げた。

 

「ならっ、こうだっ」

 

『―――あっ、があああぁぁぁっ!!?』

 

「っ!」

 

 同時に響き渡る女の声。その声にシュバルトゼロクローザー、黒和元の動きが鈍った。狙い通りの結果を得る。だが反応は早く、こちらが反撃の一撃を加えようとする前に、反射で後退していく。

 逃げ足だけは早いようだ。しかし効果はある。黒和元本人からはその声の主について言及がされる。

 

「やはり、ジャンヌがそこにいるのか」

 

『その通り。お前に対する人質だ。黒和元』

 

 エンドが頷く。そう、この機体にはあの黒和元が取り返そうと必死になっていた存在、レイアという女に加えて今回、ジャンヌという女も人質兼エンゲージシステムのパーツとして組み込んでいた。

 ゼロンの解析でエンゲージシステムは制御するDNLの追加でより力の制御の安定と、出力の引き出す量が上がっていくことが分かっていた。これまでもその研究がされていたが、まだ間に合わなかった。そこにガンダムのサブパイロットのDNLが手に入ったのだ。利用しない手はなかった。

 二つのエンゲージシステムを同時稼働させられるように改造して、サブパイロットにも処置を施した。強制的にヴァイスインフィニットの性能を引き出し、利用する。負荷を高めれば簡単に悲鳴を上げてくれる。それだけで黒和元の動きが鈍る。

 迷わないと言った時には通用しないとも思ってしまったが、所詮は思い上がりだったようだ。それを存分に煽ってやる。

 

「無視できんのかよ!?魔王!!さっきの言葉はどうしたァ!!」

 

「………………」

 

 その煽りに対し、ただ黙って構える魔王。みじめだ。言い返す気力もないらしい。言い返せない魔王を見て優位性を再確認する。

 このまま攻撃してくる時に苦しめるだけであいつも抵抗する気も失せるに違いない。どういたぶってやろうかと考える神治。一方的な展開。それでも黒和元は諦めが悪かった。

 

「それでも、戦うさ!」

 

 再び炎のようなエフェクトを纏って殴りに来るシュバルトゼロクローザー。その様子を見てMSの中で笑う。愚かしく、みじめなあがきをしてきたと思いながらその拳をシールドで受け止める。

 余裕を見せながらの防御で先程までの攻撃に対する答えとする。しかし黒和元はそんな事を考えもせず、目の前の盾を吹き飛ばそうと必死だ。

 その防御が徐々に押し込まれていく。こちらは二人分のエンゲージシステム、ダブるエンゲージシステムだというのにその出力を上回ってくる。パートナーがいない、エンドがかつての状態と同じだと言っていたそれとは思えない。

 それもまた突然開花した力、ゼロンが、エンドがどれだけ解析しても解き明かせなかったエレメントシフトと呼ばれる力の実力というわけだろうか。

 だがそんなものもはやどうでもいい。そんな力は自分自身の実力の前には、今のヴァイスインフィニットの前には紙屑も同然だ。実力で圧し返せない訳がない。だが神治はそれも全て解決できる「便利な道具」を再び使う。

 

「その程度なら!けど!」

 

『あぐっ!?あああぁぁぁぅっ!!!』

 

「っ!ジャンヌっ、くそっ!」

 

 再び響いた人質の声にまたしてもシュバルトゼロクローザーの攻勢が弱まる。今度はそこでシールドで圧し返し、セイクリッドセイバーを抜き放って振るう。切っ先が拳を掠め、火花を散らせる。

 今度はこちらの番というように、戦闘体勢を攻撃に移行させる神治。戦闘機動の間にも負荷をわざとかけ続け、人質を苦しめつつ声を聞かせる。

 

『ぐっ、うううぅぅぅぅ……やめ、て……あぁっ!』

 

「あははははっ!どうだどうだ!苦しめ、苦しめよ!悪は苦しんで負けていけ!」

 

「ちぃ……!」

 

 元を、魔王を煽りながら狂気の笑みを浮かべる。敵から見れば醜悪と言われるような笑みでも今の神治には気にならない。それは勝つ者として当たり前の反応だと思っていた。悪を全力で滅ぼす今の自分の姿はそれこそ救世主に相応しいのだと認識する。

 救世主になるというその勢いのままに神治は暴走していく。自らの正義によって、新たな秩序を作り出すために。ただひたすらに猛進していく。

 その動きにシュバルトゼロは対応しきれず、ただ圧倒されていく。防戦一方のシュバルトゼロクローザーを、更に悲鳴を聞かせながら追い詰めていくのであった。

 

 

 

 

「くっ……ジャンヌ」

 

 黒和元は苦戦を強いられていた。決して戦闘技能では負けていない。戦術ではこちらが翻弄していた。だがたった一つの弱点を突かれただけでこの様だった。

 その弱点はあらかじめ元も覚悟していた。ジャンヌが人質に取られること、MSに同乗させて撃墜を狙わせない。それは戦略観点上から言っても理想的な「盾」だった。よく自分の事を分かっていると言える。

 それを分かった上で元はここにいたはずだった。それでも彼女を、戦場で取り返すと。しかし現実は甘くなかった。彼女の声を、苦痛を受ける悲鳴を聞くたびに動きが鈍る。こうして隙を付け入れられて、一方的に攻撃を受けている。

 シールド、フィールドで的確に防御こそしていたものの、攻撃の度に負荷を掛けられて悲鳴を上げるジャンヌの声に嫌でも意識を向けてしまう。

 

『あぐっ……がぁっ!!』

 

「おらおら!どうしたぁ!攻撃して来いよぉ!出来るかどうか知らないけどなぁ!」

 

 圧倒的有利な状況へと追いやり、調子づく神治。その態度は癪に障るが、これもまた戦いであることを理解している。

 何とか自分の調子を取り戻そうと反撃の機会を伺う。粘り強く耐え、反撃の一発を仕掛ける。

 

「っ、そこっ!」

 

「っ!!それなら!」

 

『あっがあああぁぁぁっ!!?』

 

 そんな声と共に、また彼女の悲鳴が響く。その声にまた勢いが弱まる。躊躇いによる中途半端な攻めにヴァイスインフィニットが繰り出した両刃剣の振り下ろしがこちらを吹き飛ばす。

 間一髪左腕のシールドで攻撃は防いでいた。地面へと足を付ける。ヴァイスインフィニットも降りてきて、低空飛行状態でこちらを見下ろすように話しかけてくる。

 

「諦めろ。もうお前は戦えない。俺が人質を苦しめるだけで戦いになってないじゃないか!」

 

 その言葉を蔑むように言ってくる。事実だ。奴の言う通りまともに戦えているとは言い難い。一方的な戦いになっていた。

 それでも目の前の敵を見続ける選択をする。再び拳を構える。

 

「………………」

 

「しつこいぞ、お前。まだ正攻法で勝てると思ってるのかよ。こっちは人質だってとっているんだ!勝てないことに気づけ、絶望しろ!卑怯だって言ってみろよ!!」

 

 中々こちらが折れないことにしびれを切らしてこのように煽ってくる。しかしそんな安い挑発、素直に乗るつもりはなかった。

 自分を貫く形でその言葉に返答する。

 

「卑怯なんて言わないさ。それは戦術の一つ。戦うなら考慮すべき一手」

 

「何だよ、開き直るっていうのか。それでも不利なのは変わらないだろ!それとも煽てて譲歩でもしてもらおうって魂胆か!?」

 

「開き直っても、煽ててもいない。ただ事実を言っただけだ」

 

 勝手に妄想し突っかかってくる神治に淡々と答える。そう、元は決して開き直りも、煽てるつもりもなかった。ただその胸中にはやるせない気持ちと、怒りがあった。

 それでも、と神治の発言に反論する。

 

「それでも、怒りがないわけじゃない。お前のやっていることは、戦術的に正しくとも、クズのやる所業だ」

 

 はっきりと言った罵倒。それがどんな結果を生み出すのか分かってはいた。しかしそれでも言う。目の前にいる無自覚の邪悪には、その現実を突きつける。例え余計に不利な状況に追い込まれるのだとしても。

 それを聞いた神治は、エンドの言葉に続けて予想通りの言葉を口にしていく結果となる。

 

『戦術的に正しくとも、か。フッ、お前らしい反論の仕方だ』

 

「黙れ!クズは、お前だぁぁぁーーー!!!」

 

 より逆上し、出力を反射的に引き上げて襲い掛かってくる。意図せずとも出力を引き上げて、ジャンヌを苦しめていく。

 

『や、やあ゛あ゛ああぁぁぁぁっっっ!!』

 

「……スカルキング!」

 

 その悲鳴に背を向けるように、エレメントをスカルキングへと切り替える。その状態でヴァイスインフィニットとぶつかり合う。

 最高の防御能力を誇るスカルキングで、徹底的に防御を固める元。だが良いようにされていくのもあってジャンヌの苦悶の声は止まらない。それでも反撃の一手を見出そうと戦闘を継続する。

 何度かのシールドと武器のぶつかり合い、その中で元の表情が歪んでいく。悔しさに歯ぎしりし、必死に涙をこらえるようにしていた。

 何がジャンヌを救い出すだ。こんな戦闘を続けていたら、却ってジャンヌを苦しめるだけだと言うのに。なぜこんな戦いを続けているのか。

 今すぐにこの場から離れたい。これ以上彼女を苦しめてはいけない。それでも逃げてはいけない。約束したではないか、断言したではないか。ジャンヌを救い出す。救えないのなら、その時は……彼女を。

 

(言ったはずだ……分かっていてやっているはずなのに、俺は……!)

 

 そんな決意も、決断も今となっては呪いのように締め付ける。彼女の痛みに苦しむ声を無視できずに攻撃が出来ない。それを越えなければ助けることも出来ないと分かっていても、無視できなかった。

 それだけまだ元自身がジャンヌを思っていることの裏返しとも言えた。だが元はそうでありたくないと必死に否定する。

 そう思ってしまったから、彼女をこんな目に遭わせている。もう繰り返させないと思って助け出そうとしている。なら、今だけは動かなくてはいけない。例えどれだけ彼女が傷つこうとも、今だけは悲鳴に構っていられないのに。

 そんな思いを胸に秘めながら攻撃を捌き続ける。だがその均衡は一瞬にして崩れ去る。

 

「ぐっ!しまっ……!」

 

「これで、終わりだぁぁぁぁぁ!!!」

 

 シールドを弾かれ、突きの構えを取られる。このままなら再び貫かれる。先の対決での敗北が脳裏に蘇る。

 また、負けるのか。元の頭をそんな考えが過る。致命傷は避けられる。しかしその回避手段すら元は捨てようとするほどに精神を追い詰められていた。元々弱くなっていた心は、いともたやすく崩れるほどのメンタルしかなかった。

 ここで終わってしまえば、もうジャンヌがこの戦いで苦しむことはない。そんな考えで、反撃を、生を止めようとする。

 しかし、それに喝が入れられた。

 

 

 

 

『何をやっている!元!!』

 

 

 

 

 響くスタートの声。気付いた時にはその機体はブレイクネクロへと姿を変えていた。

 入れ替わったスタートは間一髪ヴァイスインフィニットエアレーザーの攻撃を回避させる。ジャンヌの悲鳴に動じることなく剣をブレードガンⅡで弾くと、そのまま距離を取った。

 距離が離れると両者は素早く次なる戦闘態勢を取る。そんな中でスタートは元を叱咤する。

 

『今諦めようとしたな?生きることを』

 

「……それが何だってんだ。これ以上ジャンヌを苦しめても、なんの意味も!」

 

『ないというのか!』

 

 スタートの声が一際大きく響く。弱気になっていた体が、その大声で震える。スタートはこちらに言い聞かせてくる。

 

『お前を再び立ち上がらせた者達が、お前なら救えると言ってくれたのだぞ。お前も、答えたのだろう。お前がジャンヌ・ファーフニルを痛めつけられ、苦しむのは当然だ。それに怯えるのだってかまわない。だが、諦めるのだけは止めろ!』

 

 諦めるなとスタートの言葉が強く刺さる。スタートはさらに続ける。

 

『それは、諦めずにお前に賭けてくれた者達の期待を裏切る。お前のジャンヌ・ファーフニルの犠牲がどうなろうという強がりも分かっている。そうでなければ、奴には勝てない。それでも苦しむ心は忘れず、目の前の困難を抗っていけ。それを成すために、今俺もここにいる!』

 

「スタート……」

 

 スタートからの激励。普段は任されていたはずのスタートからそのように言われる。そうだ。スタートもまた、かつては英雄だった。裏スタートに記憶を持って行かれていたとしても、エンドのように完璧でなかったとしても、そこに残っている経験は確かに本物なのだ。

 その言葉が、経験が、知識があったからこそ、元は、ジャンヌもここまで戦い抜いて来れた。欠かすことのできない、ジャンヌと同じくらい、頼れる相棒が今もここにいる。

 そんなやり取りにエンドが水を差す。

 

『相変わらず、暑苦しい。貴様のその態度が、綺麗事が気に喰わなかった。その甘さこそ、「奴」の台頭を許した』

 

『それは何のことか、今は分からない。だがそうだとしても、今シュバルトゼロのパイロットを、俺の後継者を立たせない理由とはなり得ない』

 

『それが甘さだ。現実は、そんなことでは解決しない!お前では話にならない。あいつが、お前達の中に閉じ込められた、あいつなら、分かっているはずなのに……』

 

 エンドの言葉が指すのが誰なのか、元にも分かる。その存在は、スタートと自身を封じ込めて出てくる。

 とはいえ目の前の敵はそれを望みつつも望まない考えであった。

 

『もっとも、今の状態では話にもならないかもしれないが。敵が分かっていても、自分一人の成果にしたがる奴では……奴と同じだ』

 

「そう言ってるお前とも、同じだろ」

 

 エンドに対し、そう言ってやる。先程までの弱気は既に消えていた。煽るだけの覇気を取り戻してヴァイスインフィニットと対峙する。

 自らの発言を侮辱される形となったエンドだったがそれを静観する姿勢を崩さない。代わりに神治が再びジャンヌに痛みを与えながら煽ってくる。

 

『あぐっ、ううぅ……』

 

「喚け!お前如きに何が出来る?エンドにだって敵わないくせに!」

 

 自らがエンドより上だとイキる神治。だが気づけなかった。元の動きはその声を聞いても一切鈍っていないことに。

 再び構えなおして、彼らに告げる。

 

「敵わないかもしれない。英雄には、俺如きじゃ。だけど、それでも立ちはだかると決めた。お前達から、取り返すために」

 

「さっきから言ってるだろ!お前なんかに、誰も救えねぇ!覚悟できてないやつに……」

 

「出来たさ」

 

『転千万勝!オールオーバー!!』

 

 シュバルトゼロクローザーがモードを解放する。発動できないはずのモード、禁じられた裁きの形態が、発動していく。

 高まる負荷。その負荷は尋常ではない。しかしもう発動してしまった。止まらない。止まるわけにはいかない。そう覚悟したからこそ、今発動した。

 目の前の敵を越えるために。越えた先にいる彼女達を救うために、傷つける覚悟をしたその証を解放する。決死の覚悟を示すには十分すぎる。

 スタートもそれを汲み取り、声を掛けてくる。

 

『行くぞ元。ここからが勝負だ』

 

「あぁ……!!全てを、振り絞る!」

 

 その全力を以って、ヴァイスインフィニットエアレーザーに立ち向かった。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP95はここまでです。

レイ「やっぱり苦戦必至……!いいようにされてたね」

ジャンヌ「そうですね。元さんも決意が揺らいで……途中、もう助ける事すらも諦めようとしていたんですから」

戦って苦しめるくらいなら、と元君の優しさが裏目に出るところでしたが……そこを救ったのは他ならぬ英雄でしたね。

レイ「そうそう!スタートもいいタイミングで代わってくれた!しかも鼓舞の言葉もなんかグッと来た!」

ジャンヌ「苦しさを理解し、寄り添いながらも前への道を示す。記憶がなくとも、そういったすべきことを見失うことなく示せる。エンドには分かっていないと言われてしまっていますが、そんなスタートこそ、英雄に相応しいと思います」

そんな英雄に鼓舞され、遂に元君は禁じられていた手段に手を伸ばすわけですが。

レイ「ジャッジメントクローズ!ジャンヌちゃんがいなくても、元君ならやれる!最後の切札ってやつだね!」

ジャンヌ「これが通じなければ、後は……あれ、でも元さん、何か隠していそうなものがあったような……」

果たしてそれがこれに通じるものなのか、そうでないのかは次話も見て判断いただければと思います。それでは今回はここまでです。

レイ「同日公開の次話EP96もよろしくね~」


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EPISODE96 勝利は遥か遠く3

どうも、引き続きEPISODE95,96の更新です。こちらはEP96です。

ネイ「遂に切られた切札。一度は敗れたジャッジメントクローズモードですが、今の状態で通じるんでしょうか?」

グリーフィア「正直言ってあんまり通じるとは思えないけどね。あの時だって二人で全力でやってたと思うのに、勝ちをギリギリで持って行かれたんだし」

どのようにして勝ちを狙っていくのか。それでは本編をどうぞ。


 

 

「今さらそいつを発動したところで!俺は止まらない!!」

 

 ジャッジメントクローズモードを発動した元に対し、未だに余裕の姿勢を崩さない神治がそのように言って迎え撃ってくる。神治の言う通り、今さらの発動と言えるだろう。しかし、止まらないかどうかはまた別の問題だ。

 ブレードガンⅡにビームサーベルを纏わせ、ヴァイスインフィニットエアレーザーの両刃剣と再び激突する。当然の如くジャンヌの悲鳴が聞かせられる。

 

『う、ぐうぅ……!!』

 

 神治は分かっている。それが元にとって無視できない声であると。その苦悶の声を聞かせるだけで、元は弱くなることを。だからこそここぞとばかりに使ってくる。

 だが、それは「今」以外の元に対してだった。「今」の元は、止まらなかった。

 

「ふ……何?止まらない、だと?」

 

「はぁっ!!」

 

 神治が動揺した隙を突いて斬り抜ける。両刃剣の片方を叩き落とし、シールドアームに切れ込みを入れる。斬り抜けてから反転すると、その背部目がけて取り出したネオ・ガン・グニールの砲撃とナハト=ヴァールの連弾を浴びせる。

 ヴァイスインフィニット側は唖然としながらも攻撃を防御する。DNウォールを展開したのを見てから、ネオ・ガン・グニールを構え、アズールハルピュイア譲りの加速力とアレスマグナの力でその突撃を敢行する。

 銃槍による突撃はDNウォールによって防がれる。が、それも一瞬の攻防。加速力と腕力にDNウォールが屈し、内部に槍の先端が突き刺さる。それを見てエンドが狼狽する。

 

『この機体のDNウォールを突破だと?スタートの力もか』

 

「それだけじゃない。全部の力を、上乗せだ!」

 

 その言葉が示す意味、ネオ・ガン・グニールが砲撃態勢へと入る。穂先からビームが生成されていく。穂の部分が可変し銃口を露出させる。スカルキングの砲撃能力が加算されていた。

 防御した状態からのこの状況に神治からは切羽詰まった声が漏れる。本当に躊躇いなく攻撃しようとして来る元に、正気を疑っていた。

 

「くそっ、人質がいるんだぞ!?声が聞こえてないのか?」

 

『……神治、どうやらもはや通じないようだ、その戦法は』

 

「何だと!?まさか、本当に……」

 

『この状況は、こちらが不利だッ!』

 

 エンドがこちらの覚悟を悟る。その時、ネオ・ガン・グニールからビームが煌めく。

 

「狙うは、そこっ!」

 

 放たれた高圧縮ビーム。しかし寸前でエンドの操作したであろうヴァイスインフィニットエアレーザーの蹴りにより、射線がずらされビームはシールドを掠めながら明後日の方向へと飛ぶ。

 DNウォールが消失し、一度距離を取ろうとするヴァイスインフィニット。元は、シュバルトゼロクローザーでそのまま逃げるヴァイスインフィニットを追う。

 追跡が展開されながら、お互いに銃撃戦へと発展する。その中でエンドが元の狙いに気づく。

 

『なるほど。まだジャンヌ・ファーフニルを救うことは諦めていない、ということか』

 

「っ!そうなのか……だったら、何で……まさか、本当に?」

 

『愛する者が傷つこうとも、突き進む。その覚悟を決めたということ。その前に助け出すという自信を、賭けに出たわけだ』

 

 エンドの言う通り、突き進むことを選んでいた。そこに迷いはもうない。

 助け出す、絶対に。助けられなかったことの事を今考えていては救えないと理解し、救い出すことだけを考える。その思考だけが元の身体を突き動かし、シュバルトゼロクローザーで攻撃を仕掛ける。

 攻撃の精度も先程までとは違う。撃墜しない箇所を、なおかつ動きに影響の出るスラスター、四肢部分の可動箇所、武装を一点集中して狙う。その攻撃にヴァイスインフィニットはただ避け、防御するしかない。

 その過程で神治らはジャンヌへと、同時にレイアにも負荷は掛けていっていた。レイアの分まで悲鳴をこちらに聞かせてくる。

 

『あぐ……づぅ……いぎゃ!!』

 

『っ!……うぐ、くぅ……』

 

「おらっ、働けよパーツ共っ!俺が救世主になるために!もっと声を響かせろよぉ!!」

 

『あああああぁぁぁぁぁぁーーーーっ!!?』

 

 更なる悲鳴で動揺を誘おうとする神治。そのうえでこちらを叩き潰そうとビームランチャーをビームランサーとして起動、反撃の一刺しを繰り出す。が、その攻撃は身体を捻らせ避けて、代わりにその胴体にシールドによる打突を喰らわせる。

 

「遅い」

 

「がっ!?このっ!」

 

『っ!殺気!?待て神治!回……』

 

 エンドが喋るより前にシュバルトゼロクローザーの武装制御を行う。瞬間轟音と共にヴァイスインフィニットの胴体が衝撃に襲われていた。その衝撃にうめき声を上げるヴァイスインフィニットのパイロット達。

 

「がぁっ!?」

 

『げふっ!?』

 

『おぇぇっ!!……』

 

『ぐぅ……これは……バンカー、だとっ』

 

 シュバルトゼロクローザーの手持ちシールド、ナハト=ヴァールの先端が煙を上げながら突き出されている。ヴァイスインフィニットの機体にはそれが当てられたであろう箇所にへこみが生まれていた。

 それを確認してから、スタートが知らせる。

 

『ナハト=ヴァール、パイルバンカーモード、出力50%カットで動作確認!効いているぞ』

 

「分かっている!」

 

 普通なら軽々とMSの装甲を貫く一撃。それを中にいる人質のジャンヌ達の為に敢えてその出力を抑え込み、貫かないギリギリの出力で稼働させたのだ。

 威力は貫かない程度に抑え込んでこそいるものの、衝撃まではコントロールできない。強く打つ程度でもヴァイスインフィニット側には大ダメージのようだ。バンカーを収納形態に戻しながらジェミニナイフを構えて斬りつけていく。

 よろけていたヴァイスインフィニットエアレーザーにナイフの斬撃がダメージを与える。無秩序ながら関節駆動系を狙っており、肘部にダメージを与えて斬り抜ける。即座に切り返してジェミニソードと合体、ディオスクロイとして背部スラスター、強化パーツを狙う。

 しかし、神治もまだ動けた。痛みを堪えて、機体を動かす。

 

「こんのぉぉぉぉ!やられるかよっ!」

 

 渾身の機動、間一髪のところを勢いよく取り出し、即振り回した両刃剣で受け止める。激突と同時に両者は弾かれ、距離が空いた。

 お互い衝撃に苦難しながら立て直す。それぞれから文句が放たれる。

 

「無茶苦茶な反撃だな……間に合わせるためとはいえ、そうも来る」

 

「お前、こそっ。助ける気が、あるくせに、こんなっ、ぐぅ……」

 

 だがまだ元が有利な展開は続いている。変わらずディオスクロイとナハト=ヴァールを構え、突撃のタイミングを伺う。

 万全の戦闘体勢を整えている元に、神治の方は動揺で突破口を切り開こうと映像を展開する。それはエンゲージシステムで捕らえているジャンヌ・ファーフニルの現在の映像だった。

 

「見ろっ!お前の攻撃で、この人質だって今にも息絶えそうに……」

 

「小賢しい!」

 

 ところがその映像を切り裂くように元はシュバルトゼロクローザーの機体を突撃させる。映像の奥から突如として飛び出してきたシュバルトゼロクローザーを見て反応の遅れた神治。

 

「なっ!?」

 

『余計なことを!』

 

 吐き捨てるエンドがすぐに操縦を変わった様子で、攻撃を止める。押し込む刃。その状態で元は神治達に言い放つ。

 

「お前達が、どれだけジャンヌを、レイアを痛めつけようと勝手にしろ。だけど、俺は必ず二人を救い出す」

 

「くっ、こいつ……どうしたら、そんな考えに!?」

 

『ごく当たり前のことだ、神治。戦士として、時として傷つける覚悟を持った者がいる。それがお前の敵である、黒和元という男』

 

「そんなの、ただのクズじゃないか!人質に構わずなんて……」

 

 元の行いをクズだと断言する神治。元自身もそれを言われて仕方ないと思う。だがしかし、それを否定したのは目の前にいるエンド自身だった。

 

『確かに、その点ではクズと言えるだろう。だが、それを成せる奴は、お前よりも戦う者として、遥かに高みにいる者だ。今のお前には、越えられない……!』

 

「くっ!?何だよ、それっ!こいつが、上だと!?なんで!」

 

 エンドの言葉の意味を理解できずに苛立つ神治。一方元はその意味を分かっていた。

 決してエンドは褒めてなどいない。厄介な相手であると、貶してやっかんでいる。その度合いを神治に伝えただけだ。

 実際元自身も心の中で舌打ちしている。本気になられるのは厄介だ。けれども押し通すしかない。攻撃を、隙を突いて、一撃で決めると。もっとも奴の言葉に救われていないわけではない。

 はっきりとクズと言ってくれる分割り切れる。やはり自分はジャンヌには相応しくないのだと思える。救うことだけに専念できた。

 それらを何も分かっていない様子の神治は苦し紛れに回線を人質としているジャンヌに繋げ、苛立ちと共に喋らせようとする。

 

「おい、魔王の女!お前のパートナーはお前を殺そうとしているぞ!殺されたくないんじゃないのか!命乞いしてみろよ!」

 

『あ……ぐぅ……』

 

 項垂れた様子が回線から聞こえてくる。無理矢理喋らせようとしているのがよく分かる。しかしそれではむしろ状況がよく分かっていないのがほとんどだろう。

 もっともその様子も痛々しさが伝わってくる。押し込む力をそのままに、ジャンヌの声にしっかりと耳を傾ける。

 何とか命令を聞き、精一杯声を出すジャンヌ。ジャンヌのたどたどしい喘ぎ声が言葉を紡ぐ。

 

『はじ、め……倒し、て……ゼロン、を……』

 

「なっ、お前何言って!?」

 

『わたし、は……あなたに、もう、ひつよう、のない……存在。わたしの、ことは……いいから……痛み、は……うけとめて、いるから、レイアさん……を……』

 

 回線から聞こえてくるジャンヌの懇願。囚われる前のやり取りを強く意識しているせいか、自ら生きることを諦めてしまっていた。ただレイアの救出を願う。

 神治の思う通りにならないのは良かった。しかしこの事態は自分が招いたことだ。元の気持ちは変わらない。だがそれでも生きる事すら諦めて欲しくはない。元にとってはジャンヌとレイア、「二人が」生きていてほしいから。

 諦めるジャンヌに向けて接触回線で呼びかける。

 

「ふざけるなっ。俺はお前と、レイアの二人に生きていて欲しいから戦う。お前がいない世界じゃ、意味がない。お前達二人が再び笑い合える時間のために、絶対に救い出す!そこに俺がいなくとも!」

 

『違う……わたし、が、のぞんだ……のは、そんなことじゃ……あああぁぁぁっ!?』

 

「何イチャついてやがる!!」

 

 回線を無理矢理終わらせる様に負荷を引き上げた神治。同時に機体の出力を上げて無理にシュバルトゼロクローザーを押し返す。

二つのエンゲージシステムで上がった出力は凄まじく、軽くシュバルトゼロクローザーは飛ばされる。空中に身を投げ出しつつも後転するような形で地面へと着地する。

 身構えようとする元だったが、そこで鋭い痛みが身体を襲う。

 

「っ……がぁっ!?」

 

『元!もう限界か……』

 

「まだだ……まだ終われない!」

 

 限界というのはジャッジメントクローズモードの発動限界だった。通常時よりも多大な負荷を掛ける単独のジャッジメントクローズモードに身体が悲鳴を上げていた。

 吐血し掛けるもそれをぐっと堪える。何とか目の前の敵を、ヴァイスインフィニットと相対し続ける。

 一方のヴァイスインフィニットもそれになんとなく気づき、嘲笑う。

 

『どうやらその機能、単独では負荷が大きすぎるようだな』

 

「ははっ、そういうことかよ。所詮お前が、俺に敵うわけないだろ!これで終わりにしてやる!」

 

 神治が勝てると意気込み、シールドから両刃剣を大量に射出。ファンネルとして浮遊させる。こちらも無理を押してビットウエポンを全て射出、コントロールする。

 まだ終われない。そう語ったからには対抗する。全力でDNFをぶつける。

 

『DNF!』

 

『DNF「セイクリッドラウンドナイツ」』

 

『Ready set GO!DNF「ウイングレイド・クロスストーム」!!』

 

『いっけぇぇぇぇぇ!!!』

 

 同時に叫び、ファンネル同士が突撃する。数で言えばこちらが有利。しかし相手の物は大きい分頑丈。それを動きで補い、避け、DNFの出力で撃墜し合う。

 遠隔操作端末同士が激突を繰り広げる中、元の方は更に自らも攻撃を仕掛ける。コントロールをスタートと共に維持しつつブレードガンⅡを構えてヴァイスインフィニットエアレーザーに仕掛ける。

 

「はぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

「ちっ!コントロールしながら?手助けかよっ」

 

 それをスタートにやってもらっていると勘違いしながら神治が迎え撃つ。予想通りファンネルコントロールはエンドが担当しているようだ。

 神治と剣同士の激突を行う。残っている両刃剣とのぶつかり合い、神治単体でも剣の扱いはそれなりと言った様子だ。元もビットのコントロールに意識を割いている分精度は甘い。それでもやや元が圧されつつあるのは負荷が限界まで来ているのと、ダブルエンゲージシステムの恩恵だろう。

 出力と反応速度で互角以上に渡り合ってくる神治は、余裕を崩さず元を貶してくる。

 

「どうした?さっきよりも動きが鈍いぜ!」

 

「そこは、分かるくらいの能力はあったか!」

 

「調子に、乗るな!」

 

 挑発に乗せられ力任せに振るわれる一閃。それを大きく後ろに跳躍したシュバルトゼロクローザーは、その吹き飛ばされた高さを生かしてそのまま次なるDNFを繰り出す。

 

「DNF!」

 

『Ready set GO!DNF「ディメンションストライザー」!!』

 

「くっ!?」

 

 急降下を合わせて神治の不意を突く。だがその一撃はギリギリのところで躱される。蒼い残像が残る。エラクスだ。エラクスシステムで背後に回った神治が咆える。

 

「そんな攻撃!隙だらけなんだよ!」

 

 がら空きの背後を目がけてヴァイスインフィニットが攻撃を仕掛けてくる。大きく隙を晒したシュバルトゼロは体勢を崩している。反撃、回避にもワンアクションがいる。もはや決定的だった。

 しかし、元は冷静に告げる。

 

「隙だらけなのは、そっちもだ!」

 

 瞬間ヴァイスインフィニットエアレーザーの機体を一斉に拘束していく。それはシフトパネルウイングから放たれたアンカーとフェザービットから形成されるビームウィップ。激突の中でマルチ・スペースシステム内に補充していたそれらを積載していたシフトパネルウイングを飛び上がりと同時にパージ、あらかじめ展開していたのである。

 誘い込まれたことに絶句する神治。一方エンドは冷静にそれらの撃墜をファンネルとなっていた大剣でやろうとする。

 

「嘘だろ、こんな……古臭い武器に!?ぐっ!」

 

『すぐに対処する。セイクリッド!』

 

『やらせん!』

 

 スタートがエンドを先回りする形で残っていたビットで射出済みの両刃剣を攻撃、いくつかのビットの犠牲と共に破砕を成し遂げる。

 ヴァイスインフィニット側の両刃剣も射出出来ないように既にアンカーで剣をがんじがらめに抑え込んでいる。シフトパネルウイングのアンカーの反対を地面へと射出して固定するとシフトパネルウイングがシュバルトゼロクローザーの本来の位置へと戻ってくる。

 完全に固定したのを確認し、スタートに仕上げの合図を放つ。

 

「スタート、これで決める!」

 

『分かっている。DNF使用許可!』

 

『っ、何をするつもりだ……』

 

 何をするのかと尋ねるエンドに答えてやる。

 

「言っただろう。救い出すと!」

 

 その言葉と共にシュバルトゼロクローザーの右腕を掲げる。マルチ・スペースシステムで取り出したのは手甲パーツ。あの日、レイアを救い出そうとした時に装着したあの装備だった。

 それを装着した上で、エラクスを起動。エレメントをアレスへと切り替え、更にDNFを起動させる。

 

『Ready set GO!EDNF「アレス・ゴッド・フィンガー」!!』

 

 蒼く染まった全身、その中で唯一右手が真っ赤に燃え上がる。失った者を取り返せと言わんばかりの輝きに染まっていた。これこそ、二人をこちら側に強制的に引き戻すための必殺の一撃だ。

 その行動でエンドも気付く。あれを受けてはいけないと拘束から逃れようと試みる。

 

『ぐっ、外れん……』

 

「くそっ!エンゲージシステムは二つあるんだ!押し返せよっ!なんでできない!!」

 

 神治も出力が上がっているのにと必死に騒ぐ。だが如何に出力を上げようと抵抗できないだろう。それはかつてシュバルトゼロクローザーにも使われた兵器、ユグドラルキャプチャーと同じ対DNL兵装に加え、ワイヤー自体はあのANDメタルで構成されている。

 DNの出力での抵抗すら封じるANDメタルも使った捕縛。それでは接触したシュバルトゼロクローザーも影響を受けそうなものだが心配は無用。ANDメタルには接触したMSのみに効力を抑え、更に万が一にはそれを無効化する機能が手甲のパーツに追加されていた。

 一度失敗したからこそ改めて構成し直した作戦。二度目は必ず成功させる。その想いを抱えて動けないヴァイスインフィニットに向かって機体を加速させる。

 

『向かってくるか、黒和元!』

 

「このっ、何とかしろよエンド!」

 

 抵抗を諦めようとしないエンド達。それに向かって元は子の一撃で絶対に救うと宣言する。

 

「約束を果たす。ジャンヌもレイアも、救って見せる。今度こそ、終わらせる!」

 

 その手がヴァイスインフィニットの胸部に向けて伸びる。エンゲージシステムに近い場所を触れて、そこからデータ化しているジャンヌ達をサルベージする。触れてしまえば後は勝ちだ。

 その距離がもうすぐで届く。もう数十センチとなった、その時、突如エネミー反応が近距離に示される。同時にリ・ホリンの甲板が吹き飛ぶ。飛び出してきた影が襲ってくる。

 

「残念だが、そこまでのようだな、ガンダム!」

 

「くっ!?ハリヴァー!」

 

 ハル・ハリヴァーの駆るシナンジュ・ゼロンがライフルを向けて妨害してくる。直撃コースを狙ってきており、やむを得ず回避する。再び離れるヴァイスインフィニットとの距離。

 更に立て続けに甲板が吹き飛ぶ。続いて現れたのは黄金の機体。蒼穹島のタイプシリーズからデータを得て作られた究極のタイプシリーズの一機、タイプ[リズン]だ。そのパイロットのジョセフが待っていたと言わんばかりに叫ぶ。

 

「こっちにもいるんだなぁ!魔王、お前を狩る!」

 

『っ!タイプシリーズもか!元!』

 

「くぉのっ!!」

 

 大型ガンブレードランスから放たれる大出力ビーム二本を束ねた極太のビームが襲い掛かる。それをエラクスの加速で間一髪回避する。

 攻撃は完全に避け切った。しかしもう攻撃には移れない。奴らは拘束されたヴァイスインフィニットの前にたどり着いており、こちらに銃を構えている。

 エラクスを解除し、着地する。途端に痛みが身体を支配する。

 

「がぁっ!?……ぐぅ…あ」

 

『元!……G-Arcか……エンド』

 

 倒れるのを堪える元に心配を向けながらエンドへと言葉を向けるスタート。普通なら横槍と判断する、ルール違反の行動。しかし奴にはそれを合法とする機能がある。元もそれを分かっていた。それを秘密裏に使ってくることも、想定していた。

 遠くなる意識を繋ぎ留めながら、エンドの答えを待つ。エンドはヴァイスインフィニットの拘束を、二機を「操作」して解かれながらこちらに対し現実を突きつける。

 

 

『分かっていたはずだ。こうなることは。私の「軍隊」に、お前達は敵わない』

 

 

 その言葉と共に二人を救うという希望は打ち砕かれたように見えた。元の持つ、「最後の切札」以外。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP96はここまでです。

グリーフィア「はー最後マジクソなんだけど!?」

ネイ「落ち着いて、姉さん……口調が」

グリーフィア「失礼♪ただ、本当に厄介ね、G-Arcは」

ネイ「MSを操作して運用する。単純に単体のMSの戦力を二倍以上に引き上げられるっていうのは驚異的だね」

単純ではないよ。MSほどの機体をファンネル操作するなら確かニュータイプ能力もそれなりに高いのじゃないとダメだったはずだから。

グリーフィア「つまり、それをやってるエンドはとんでもなくヤバいDNLってことの裏付けね。ホント、ヤバいわね。MS二体操作とか」

ネイ「そのうえ本体の操作も……神治が動かしているとはいえ、まだ危なっかしいところもあるみたいだし」

今分かっているのはMSのメイン操縦は神治、ファンネル系統や緊急時にエンドって感じですね。元君より助けてもらう割合は多いけど。

グリーフィア「ホント、それまでに何とかしなきゃいけなかったって言うのにさ!けど元君も結構凄かったわよね~。この状態になるまでの間」

ネイ「能力の同時使用、隙を見てパイルバンカーの使用、ファンネル系武装同士の対決からの不意打ち、避けられてもトラップ配置と。いつも以上に元さんの戦術が輝いていたんですが……ヴァイスインフィニットの方が上でしたね」

本当なら元君はG-Arcを使われる前に終わらせるつもりだったんです。すべての能力をフルに使い、反応されるよりも前にDNFで決着を付ける。それがことごとく失敗しているのはやはりエンドも英雄であるというのが影響してますね。

ネイ「英雄相手に小細工は通じない、と言いますか……」

グリーフィア「いずれにしても、元君も体力限界で手詰まり、のはずなんだけど。なんかまだあるみたいよね、これ。ここまで来ると……まさか?」

その想像は次回にお願いしようか。というわけで今回はここまでです。

ネイ「それではまた次回に」


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EPISODE97 魔竜顕現・希望は暗闇の中に1

どうも、今回はEPISODE97、98の更新となります。まずはEP97から。

レイ「前回は助け出すはずが……G-Arcに阻まれて、もう……」

ジャンヌ「その続きの話なんですが……サブタイトル、前にもありましたよね。魔竜顕現って」

それの続きとも呼べる話ですからね。ということは、奴でしょう。ということで本編をどうぞ。


 

 

 黒和元が黒和神治と戦う様子を見ていた後方待機のHOW部隊。元が攻撃に転じ、遂に取り戻せると思っていた千恵里達は、起こった事象に困惑していた。

 ゼロンの取った行動に憤りを隠せない。どうしてそんなことが出来るのか。その気持ちを千恵里は吐露する。

 

「そんな……決闘って、こんなの!」

 

「……戦争だけど、こんなの、卑怯だと思う……」

 

 クルスも千恵里と同じ気持ちを抱く。3対1なんて卑怯すぎる。それを他の面々も苦い感想を抱いて見ていた。

 

「こんなので、勝てるのか」

 

『勝てるかじゃない!こんなの、もう姉様は……うっ』

 

「何が決闘だよ!こんなだまし討ち!」

 

「お前らの気持ちも痛いほどわかる。けど、システムなんて言われちゃ、指摘は難しい……」

 

 相模とエターナは諦めに傾き、進は反則とも言える手に怒りを露わにする。クルツもこの状況に歯噛みしながら、仕方のないことと納得せざるを得ないと語る。

 自分達にはどうすることも出来ない。それが結論だと言わんばかりに重い沈黙がチームGを支配する。

 その中にただ一人例外がいた。呉川小隊長は冷酷に状況を分析し、告げる。

 

「3対1であろうとそれは承知のはずだ。ならば勝てばいいだけだろう」

 

「勝てばいいって……それが難しいって分からないんですか!?」

 

「難しいという問題など考慮する必要はない。それを示そうとしたのがあの黒和元だろう。あの人が考えていない馬鹿だとでも?それならそれで滑稽だが」

 

「そんな言い方!」

 

 呉川小隊長の言葉に怒る。まるで後はどうなろうと知らないというような意見に、食って掛かろうとする。

 元隊長だって考えていたかもしれない。不利になっても勝てばいいだけというのは正しいかもしれない。けれどそれは凄く難しいし、その前に終わらせようとしていたに違いない。だから、そんな言葉一言で解決できるような問題じゃないと思う。

 それを訴えようとする千恵里だったが、呉川小隊長はただ静かにライフルを向けてくる。その行為に身構える。

 

「呉川小隊長!?」

 

「ちょっと、何しているんですかっ!」

 

「黙っていろ。子どもには分からんだろうからな」

 

 クルスの問いかけにすらまともに取り合わず、呉川小隊長は銃口を向ける。冷たい銃口を向けられたまま尋ねる。

 

「……私達の思っていることは、理解されないっていうんですか」

 

「そうならないために教えてやっている。理解できないのなら、これも当然」

 

「お前、正気かよ!?それはダメだろ!」

 

「呉川小隊長……あなたは」

 

「呉川やめろ!それ以上は!」

 

 制止を呼びかけるGチームメンバー。それに耳を貸さずに銃を向け続けた呉川。ところがそのライフルを一筋のビームが撃ち落とす。

 鋭く放たれた一撃。直後呉川のソルジアスを無数のビットが取り囲む。一つは良く知るあの人の機体のビット、もう一つは刀剣を模したあまり見たことのないビットだ。

 舌打ちをしてビットを見渡す呉川小隊長が邪魔者に対し言葉を吐き捨てる。

 

「越権行為ですよ、蒼梨深絵。それにこのビットは……誰だ」

 

「私だよ、呉川鈴児君」

 

 そうして名乗り出たのは見たことのない装備を纏ったソルジスタ。しかしその装備にとある人物の名残を見出す。正体が分かっていた相模がその名を呼ぶ。

 

「新堂さん。新型ですか?」

 

「まぁ新装備だね。これを出さねば勝てないと分かったからね」

 

 新堂沙織隊長の新たなソルジスタは余裕を兼ね合わせて呉川小隊長と向き合う。そこに同じく新装備を装着していた深絵隊長が厳しい言葉を呉川小隊長に投げつける。

 

「呉川鈴児。あなたは規律を乱している。味方への攻撃行為、既にあなたの行動は司令部にも伝わっている」

 

 呉川小隊長の声に劣らない程に冷たく違反を告げる深絵隊長。静かな怒りを示している。それに対し呉川小隊長は退かずに逆に咎めようとする。

 

「それはあなたの方が重罪だ。こちらは向けただけ、あなたは撃った」

 

「正当防衛だよ。撃とうとする人を撃っただけ。止めたんだから」

 

「私は懲罰を課そうとしたしただけ。あなたのその行為とは度合いが違う。それもわからない程、あなた達は狂っているのか?」

 

 上司の立場であるにも関わらず、平然と相手を罵っていく呉川小隊長。それを受けても深絵隊長は態度を下手に崩さず、落ち着いて返していく。

 

「狂ってる、かもしれないね。あなたから見れば。自分の事を正しいと思っているあなたには」

 

「何が言いたい?」

 

「それはあなただけの感情ってこと。あなたが狂ってない証拠でもなんでもない。そもそも私達は後方で見守るはずなのに、君は何でそれを乱すことを平然としたのかな。先に調和を乱したのは、君だよ」

 

 事実を突きつける。そのタイミングで通信が深絵隊長に入る。それに耳を傾けていた深絵隊長と新堂隊長は呉川隊長に宣告する。

 

「ゼロンからも言われた。こっちは君が暴走して戦闘を混乱させようとしたって伝えてる。悪いけど君は作戦終了まで拘束させてもらう。終了後ももうHOWにはいられないよ」

 

「無理矢理ですね。ここまで腐敗が進んでいたか」

 

「腐敗とは違うな。浄化作用がちゃんと働いている。自衛軍から見ても、第3者として深絵君は不穏分子、違反者を取り締まっている」

 

「こんなやり方が、HOWか!」

 

 深絵のチームの部隊が呉川小隊長を連れて行こうとする。それに対し呉川小隊長は抵抗を見せる。が、それを深絵隊長の圧が、ビットの攻撃態勢が塞いだ。

 

「ぐっ!」

 

「君にはもう撃墜許可が下りてる。撃たないだけ有情だと思って欲しいけど、どうする?」

 

 その言葉でようやく大人しくなった呉川が連行されていく。その様子を見送りながら千恵里は深絵へと礼を述べる。

 

「すみません、助けて頂いて……呉川小隊長、どうして……」

 

「千恵里ちゃん、大丈夫?」

 

「気にしないでいいよ。彼も本性を現したってことなんだと思う。全く、何で元君もあんなのを小隊長に置いたんだか……」

 

 クルスに安否を確かめられながら深絵隊長と話す。理解できないにしても、あんなことを平然とするなんて、正直ショックだった。けれども私はかつて深絵隊長から掛けられた言葉を思い出し、呟く。

 

「……昨日までの味方を撃たなきゃいけない時もある……」

 

「ん?その言葉……」

 

「ずっと昔、深絵隊長から言われた言葉、覚えてますか?」

 

「ふふ、そりゃもちろん。小学生なのにHOWに入りたいって言ってた君に私が言った言葉だね」

 

 深絵は笑って返す。あの時言われた言葉を、今実際に体験している。自分が今撃つべきだった呉川を撃てなかった。そもそも、撃ってよかったのかも分からない。

 突然訪れたその瞬間に対し、何も出来なかった自分を責める。するとそれを察した深絵は伝えてくる。

 

「それを思い出しただけでも、今はいい」

 

「深絵隊長……」

 

「いきなりそんな場面に直面して、撃てる人は少ない。千恵里ちゃんも、宗司君も今回が初めて……あーオースでは味方部隊とやり合うことになったんだっけ。それでも、身近にいた人に銃を向けられたらそうなっても仕方ない。けど今、体験した。次はちゃんと構えられればいい。今回は私が間に合っただけ。間違ってるって頭で考えて理解できるなら、自分で対峙できるようになって、みんな」

 

「はい。分かりました」

 

 深絵隊長の言葉に力強く頷く。心配していたクルスも同じく頷く。そんな話を交えてから、深絵隊長は現状のシュバルトゼロクローザーの状況について苦心する。

 

「それで、元君の方だけど……」

 

「あぁ、よろしくないな。タイミングを逃して、いつ自暴自棄になっても不思議じゃない」

 

「元隊長でも、やっぱり、諦めてしまうことはあると……」

 

 相模が呟いた。諦める。元隊長にそんなことがあるとは思えなかった。けれどもあの人も、華穂さんも言っていた。元隊長も自分達と変わらない人間であると。どれだけ凄い戦果を挙げていようとも、核となるのは人間そのもの。弱い心を持っている。

 望遠カメラで見えるシュバルトゼロクローザーは未だに膝を付いている。立ち上がれない程に負荷に襲われているのか、はたまた絶望しているのか。

 見ているだけで胸が痛む。今すぐ助けに行きたい。でもそれは、ルール違反だ。責められる口実を作るだけ。歯噛みする思いで見る事しか出来ない。

 その苦悩を口にする。

 

「元隊長……ごめんなさい」

 

「千恵里ちゃん……」

 

 クルスが回線を繋いで様子を見てくる。今の自分は耐えられないという顔をしているに違いない。

 そんな中でも、深絵隊長は大丈夫だとGチームを鼓舞する。

 

「大丈夫だよ。元君なら」

 

「何で、そんなこと言えるんですか」

 

『そうよ。いくらあいつでも、こんなの……』

 

「あいつが、魔王だからってことなのか?」

 

 相模とエターナ、進の問いかけに首を振ってから笑って答える深絵隊長。

 

「そんなの関係ないよ。味方なら信じる。勝ってジャンヌちゃんを取り戻す。凄いプレッシャーをまた掛けてるけど、それが一番きれいな収まり方だから」

 

 

 

 絶望的な状況へと追いやられることとなった元。目の前には3機のMSが立ち並ぶ。1機は先程まで戦っていたヴァイスインフィニットエアレーザー。その両脇にはリ・ホリンの甲板内に潜んでいたハル・ハリヴァーのシナンジュ・ゼロン・ハルと、ゼロンのタイプシリーズ、ジョセフ・ゼロン・ガドナーのタイプ[リズン]。

 この三機となぜ戦う羽目になるのか。普通は戸惑う。決闘なのだから1対1ではないのかと。しかし元はその理由を当然分かっていた。先程も言ったエンドの言葉をしっかりと聞いている。

 「私」の軍隊。ヴァイスインフィニットに搭載された軍団指揮統括システム「G-Arc」は元来ビットMSを一流の軍隊の如く動かせる機能を持っている。それはスタートの証言と戦後発見された機竜創世記時代の遺跡から発見されたヴァイスインフィニットのデータから読み取れたことだ。

 それは現在稼働するMSに対しても有効。友軍なら回線を用いてその操作をジャックできる。

 増援としての援軍は決闘の違反だ。しかし奴は増援ではなく「武器」として持ち込んでいた。そんな子供じみたような頓智のような言い分でMSを操り、戦力にした。ルールに抵触しないルール破り。それが奴の取った策だ。

 もっとも決闘のルールと言ってもそんな大それたものは存在しない。精々一対一で戦う位しか存在していない。そのルールさえも穴を突いて来たわけだ。

 膝をついたまま、彼らを見渡す元に、ハリヴァーが降参を促す。

 

「もう諦めた方がいい。君では、彼には勝てんよ」

 

「勝てない、か。数で圧倒されるからか」

 

「数と言っても、手数だ。我らは彼の武器。彼に動かされる。それでもエンドはそれを十全に扱える。英雄のAIとエンゲージパートナーを除いても、君の英雄では彼の足元にも及ばん」

 

『よくもまぁそんなことを。決闘の穴を突いた、反則スレスレの手を使いやがって』

 

『言ってろ。これが私の、救世主たるものの力。お前では勝てない。今の私は、更に進化しているのだから』

 

 エンドの構えと同時にゼロンのMSが構える。対してこちらはダメージに倒れる一歩手前だった。苦戦しながら立ち上がる。スタートが意見する。

 

『元、もう無理だ。今のシュバルトゼロクローザーでは、三機同時には相手できない。こうなる前に決着を付けるべきだった。もうジャッジメントクローズは使えんだろう?』

 

 スタートの言う通り、この状態でのジャッジメントクローズモードは流石にもう無理だ。これ以上の使用は先に命が尽きる。命が尽きてでもジャンヌを救いたい気持ちはあったが、それすらも叶わないのならまだ自制出来るだけの判断はあった。

 しかし、それでももう一つの方には頷けない。スタートの言葉に反対する。

 

「確かに、ジャッジメントクローズはもう使えない。エレメントブーストの連続切り替えも、難しいかもな」

 

『もう俺達に出来ることは、ない。勝ち目も……』

 

「けどな。まだ、出来ることはある」

 

『何を……言っている。もうシュバルトゼロクローザーは、奴を上回ることなど』

 

 諦めるスタートにまだ手はあると言って見せる。そんな様子を見て、呆れるエンドは元の中にあるであろう希望がまやかしだと告げた。

 

『スタートがないと言っているのに、お前は何も分かっていないようだな。お前以上にシュバルトゼロを分かっているのは、そのスタートだ。そいつがないと言うのならないのが当然だ』

 

「フフッ、お前も、どうやら分かってない馬鹿野郎らしいな」

 

『何だと?』

 

 そんな事を言うエンドを笑ってやる。これは冗談でも幻覚でもない。確かに希望はある。もっともそれは、絶望と隣り合わせの、限りなく望みの薄い希望なのだが。

 全てを失う可能性すら秘めた賭け。わずかな希望に賭けた一発逆転なんて、ゼロンのようなカルト集団と同じ思考だ。確実な勝利の一手を取るべき。しかしそれでも縋るしかない。ここで勝つには、二人を救うのも、全てを終わらせるのもこれしかない。

 そんな訳の分からないことを口にした元をジョセフもまた嗤った。

 

「どうやらおかしくなったらしいな。魔王は。けど死にたいなら殺してやるよ!」

 

「待てよジョセフ。殺すのは俺だ!救世主になるのはこの黒和神治だ!」

 

「うっせぇなぁ!操りゃいいだけだろ!」

 

「何を……!」

 

 どちらが殺すかという話でもめる神治とジョセフ。そのやり取りに奇妙なものを覚えるが、それよりもエンドが何かに気づいたように舌打ちをする。

 

『……なるほど。そんなものを、希望と称するのか、お前は!』

 

「エンド?何を言って……」

 

『貴様は、滅ぼすというのか、全てを。思い通りにならないからと』

 

「エンドよ、何を分かったという。彼に逆転の目があるとでも」

 

 神治やハリヴァーすらも困惑を見せる。エンドにはこちらの言っていたことに気づいたらしい。

 滅ぼすのかと言ったエンドの問いかけに俺は力のない笑いを呟く。

 

「そうかもしれないな。もうどうしようもならないから、自棄になったのかもな。あんなのを繰り返すなんて」

 

『……待て元。繰り返す……まさかっ!』

 

 スタートがようやく気付いた様子を見せる。それに構わずエンドとの会話を続ける。

 

「俺はヒーローなんかじゃねぇ。みんな救える手なんて、もう残っちゃいない。それでも勝たなきゃいけない。護るべきは、この国に住む人たちなんだから」

 

『そのために、愛する者も、救うと誓った者も捨てるか!』

 

「俺に誰かを愛することなんて出来ない!それでも、それくらいの覚悟が無きゃ、救えないって分かってる。二人を救うなら、失う覚悟もしてるさ!だから!!」

 

 その手を天に向かって伸ばす。掴みとるために、あるいは助けを求めるように。その力を呼んだ。

 

 

 

 

「―――来いっ、クリムゾン・ファフニールッ!!」

 

 

 

 

 直上の空間上にマルチ・スペースシステムの亀裂が生まれる。それは先の戦闘で、「それ」が呼び出された時のような亀裂。まるで再現のようだ。

 その亀裂は段々と大きくなっていく。内側から打ち破るような割れ方。そしてとうとう完全に破壊され、姿を現す。

 先の戦闘で、戦闘不能状態になったシュバルトゼロクローザーに突如として合体したドラグディアの象徴。それを呼び出したのがどういうことなのか、見る者見たならそれは理解する。もちろん、元も分かり切っていた。

 呼び出した元は周りの者に対し、言い放つ。

 

「これが俺の、最後の切札だ」

 

 絶望と隣り合わせの、元が賭けた最後の希望だった。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP97はここまでです。

レイ「いやいや!ツッコミどころが多いよ今回!」

ジャンヌ「呉川小隊長の行動も突然すぎて訳が分からないんですが……それよりも元さんは、どうしてこんな……」

呉川小隊長の行動に関しては不信感と言ったものしか今のところは分かりませんね。いったい彼は何を考えて味方に銃を向けることをしたのか。気になるところでしょう。
そして元君の行動に関してはもうこれしかないということです。

レイ「それが意味分からないって!クリムゾン・ファフニールと共闘は無理だろうから、やるとしたらもう、合体しかないんだよ!?」

ジャンヌ「合体するということはつまり、裏スタートが出てくる」

十中八九、そうでしょうね(´-ω-`)

レイ「本当に、元君はもう自棄になったって言うの?ジャンヌ・Fちゃんや、レイアちゃんまで見殺しにして……」

ジャンヌ「……護らなければいけないのは、国民だなんて。それが、正しいのだとしても……だからってこれは納得しがたいもののような気が……いいえ、違うと、思います」

ではなぜ元君はその策を取ったのか。自棄ではないのなら、なんの狙いがあるのか。それは同日公開の次話以降とさせていただくことになるでしょう。

レイ「うむむ……気になる」

ジャンヌ「元さんの真意、気になります」

というわけで今回はここまで。なんですがちょっと近況報告がてら世間話でも。
いやぁもうここで言うのも憚るんですが、ここのところ世界は騒がしい……こういう作品書いてる身としては戦うべき時には戦う、その為の力はいるけど戦争はない方がいいよねって思うわけですよ。

レイ「え、作者もそういう風に思うんだ……」

ジャンヌ「戦争中毒でないのは素直に安心ですね。人の道は外れてなかったと」

君達私を何だと思ってるの(;´・ω・)

レイ「だってストーリーから悪趣味さが出てるもん」

ジャンヌ「ちょっと人道外れてるんじゃないかって思うシナリオありますからね……主にジャンヌ・Fさんの被害シーンとか」

それは……性癖だ(?)

レイ「うわー……」

ジャンヌ「ちょっと引きます。引いたのでもう終わりにしましょう」

そんな……私はただジャンヌさんのパラレルを初動で迷わず確保する程度の狂人よ?

レイ「そういえばそうだったね。バトスピディーバパックも発売して作者もカード揃えてまぁ」

ジャンヌ「買ってくれるのはいいんですけど、ちなみにあれに関しての感想は」

しゅき。好きなポイント10個くらいは言える。

ジャンヌ「なんだか……疲れる。まぁ悪い気はしませんけど。では続きます」


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EPISODE98 魔竜顕現・希望は暗闇の中に2

どうも、引き続きEPISODE97,98の更新となります。こちらはEP98です。

グリーフィア「ヤバいわね~クリムゾン・ファフニールに頼るなんて、何考えているのか……」

ネイ「……合体したら、ジャンヌ・Fさんを殺してしまうかもしれないのに。そんなことを、するしかないんでしょうか」

何を考えて再びあの姿を取ろうとするのか。それでは本編をどうぞ。


 

 

 絶望的とも呼べる状況、そこに現れたのは、また別の絶望を引き起こしかねない存在だった。

 シュバルトゼロの制御を担当するスタートはもちろん、対峙するエンドやハリヴァー、ジョセフ、神治、後方で動向を観察していた東日本連合軍やゼロン本隊の有識者たちは皆呼び出したそれに絶句する。

 それを呼び出した側であるスタートは元に正気なのかと叫ぶ。

 

『何を考えている元!それを、クリムゾン・ファフニールを呼び出すということがどういうことなのか、分かっていないわけじゃあないだろ!?正気か』

 

「分かってるさ、そんなこと。だけど、勝つにはこれしかない」

 

 スタートの言葉を分かっていると返す。もう一度助け出すと誓ってから、何度も状況をシミュレートした。既存のシステムから、開発中の新兵器、シュバルトゼロクローザーに活用できるものを可能な限り黎人に頼んでデータを出してもらい、考えた。

 だがそのどれも決定打になり得なかった。必ず、ヴァイスインフィニットエアレーザーの性能の前では膝をつくことになった。それを使われる前に決着を付けるという結論しか出せなかったのだ。たった一つを除いて。

 その残ったたった一つの策がこれだ。現状のシュバルトゼロクローザーを純粋に越えられる性能を持ち、エンドを越えられるかもしれない存在。過去のスタートと、暴走したシュバルトゼロだけが、この状況を変えられると結論した。

 それをスタート自身に否定されるのは分かり切っていた。そしてもう一人、もう一匹否定した存在がいた。他でもない当人、当竜であるクリムゾン・ファフニールが悲しみのこもった声音で問いかけてくる。

 

『本当に、やると言うのか。お前は』

 

「やるさ。ジャンヌ達を救う。だけど、救えないのなら、せめて利用されないようにする」

 

『それが、お前の答えなのか。それでは誰も救われない』

 

「あぁ。だろうな。だからお前には言った。それでも希望を見つける。その為には、奴と向き合わなきゃいけない」

 

『あのことか。本当に、やる気なのだな』

 

 既に伝えていたことをもう一度象徴クリムゾン・ファフニールに伝える。それを聞いていたスタートとエンドは会話の内容に独自の推測を立てる。

 

『向き合う……?何を言っている。何の話だ』

 

『……考えられるとしたら。だが、そんなものは幻想だ。本気でどうにか出来ると思っているのか、貴様は。……貴様、人質を殺すつもりか』

 

 それらの会話を聞かされる側であったハリヴァー達はくだらない会話と早くシュバルトゼロを撃墜する様にエンドに促す。

 

「何をやっているエンド。彼にも人質にもさっさと引導を渡してやる方がいいだろう、余計なことをされる前に」

 

「とっとと殺してやろうぜ!ゼロンの大義の為によぉ」

 

『黙っていろ。お前達では奴の考えは理解出来ん』

 

「なぁっ!?どういうこった!」

 

「邪険に扱うとは、君らしくないな。それほど意味のある事とは思えんが」

 

 エンドはそれに構うことなく元の動向を注視してくる。エンドでもこの決断の意図を完全には掴めずにいるらしい。

 真意を確かめようと試みてくるエンドは問いかけた。

 

『どういう思惑で、再びその力を手にしようとする。それはお前の愛する者を殺すぞ』

 

 取り込まれたなら最後、真のスタートはジャンヌ諸共、敵視するエンドを殺そうとするだろう。そう簡単には殺せはしないだろうが、それでもジャンヌを負荷で殺すことは想像に難くない。

 敵の立場でありながらそれを危惧してくるエンド。それだけ、その危険性を理解している。それでも、選んだ答えだと返した。

 

「それでも俺はこの手を選ぶ。覚悟が無きゃ、もう戦えない。お前がわざわざ危険だと言ってくるんだ。それだけの価値はある」

 

『フン、ジャンヌ・ファーフニルを殺しはするだろうが、それでも私が死ぬとは限らない。いや、私は死なない。逆に、乗っ取られたまま殺してくれる』

 

 こちらの煽りを意に介さず、逆に更なる自信を持った言葉でひねりつぶすと宣告した。それくらいの気持ちで対抗してくれなければ、元自身の思う「答え」にたどり着く前に戦いが終わってしまう。その意味ではその答えはありがたかった。

 一方でスタートも問いかけながらその危険性を変わらず訴える。

 

『よせ、元!その力は!その力に頼ったら最後、お前に残る物は屍だけだ!ジャンヌ・ファーフニルを、いや、救うと願っていたレイア・スターライトも殺す気か!』

 

 スタートも元がどれだけこの二人の為に戦ってきたか分かってきていた。それがこんな自暴自棄の策を取ることを咎めている。

 その言葉の矛先は、元だけでなくそれを認めていたクリムゾン・ファフニールにまで向けられる。

 

『お前もそうだ、クリムゾン・ファフニール。お前はお前の母が心を通わせた、いや、お前自身も共に過ごしたジャンヌ・ファーフニルを、お前自身が殺す引き金となってもいいのか!?』

 

 その問いかけを受けたクリムゾン・ファフニールは沈黙する。数秒の沈黙の後、返事をする。

 

『その覚悟も、こいつの、黒騎士の言葉を聞いて、決めた』

 

『何っ?』

 

『荒唐無稽な考えだ。成功するかも分からない。だがそれは、お前の事を信じてそのうえでこの黒騎士がやって見せると決めたことだ、スタート』

 

『まるで分からない……どういうことだ、元!何を考えている?』

 

 英雄としての知識を以てしても自身の機体の装依者の思考を読めないスタート。それだけ、あの状態を危険視し、忌み嫌っているのだと推察できる。

 しかし、スタートも決してすべてが反対ではなかった。スタートの意見が語られる。

 

『確かに、あの状態ならまだヴァイスインフィニットと戦えるかもしれない。英雄としての記憶をすべて持っているあの状態なら、エンドを倒せるかもしれない。だが奴は本当に殺すつもりだ!お前がどう救おうとしても、奴は台無しにする!それを』

 

「……誰も、あいつなら勝てるとか、思ってないさ」

 

 そんなスタートに本心を打ち明ける。元自身、勝てるかもしれないと思っていても、それが完璧な勝利とは思っていない。そうならないための最後の一手がこれには必要だ。

 スタートにこれまでの出会いからの思い出を語っていく。

 

「お前と出会った時、スターターを付けられた時、出会わなければ俺は次元移動の反動でとっくに死んでいた。それだけじゃない。戦う術を教えてくれなければ、何度もドラグディアで死んでいた」

 

『そんなことを、今さら何を言って』

 

「お前には感謝してる。頼れる奴だ。偉そうにしてくるけど、ちゃんと親身になってくれる。サポートしてくれてた。俺が思ってるのは、あいつだから勝てるんじゃない。あいつが、スタートだから勝てる。お前を信じてる。そう思っているだけだ。それに、さっきお前は言ったじゃないか。諦めるなと。なら、諦めないさ。この手を使ってでも」

 

 本音でスタートに告げる。スタートがいたからこそ、今の自分がある。ドラグディアでもそうだし、地球に戻って来てからも勝手など分からないだろうに、ジャンヌや他の者がいないところで、話を聞いてくれて、作戦にも寄与してくれた。

 深絵達や、エターナは自身とジャンヌがいるからこそのシュバルトゼロと言っている。だがそれだけじゃない。スタートもいて、シュバルトゼロガンダムという機体は成り立っている。

 ジャンヌに制御を任せる場面が多いのも、それは彼女の成長あってのもの。だが決してスタートが関わっていないわけではない。常にサポートしてくれるスタートにはそれだけ信頼を寄せている。

 だからこそ、真なるスタートに対して、思うことがあった。あれもまたスタート。例え残虐な思想を持っていたとしても、それもまた自分達を支えて来てくれた存在と同じ。ならば、それを力として使うこともまた自然の摂理ではないか。

 勝てる望みはある。諦めない限り、まだ道は続いている。それをさっき、スタート自身からも教えられたのだ。制御できない力を信じて使う。それが元の考えである。スタートに主張する。

 

「あれもお前だって言うなら、まだ共に戦える可能性もある。力を使える可能性が」

 

『そんなことは不可能だ!お前も分かったはずだ。奴の支配力。完全にパイロットは隔離される。入れ替われたとしても、それをずっと妨害しなければ……』

 

 スタートの言うことはもっともだ。きっとあの意識に呑みこまれる。死にかけだったとはいえ、目覚めるのを押さえつけられたような感覚。あの状態では絶対に無理だった。消耗している今も同じかもしれない。

 しかし、解決を諦めるスタートに対して、元は諦めていなかった。その自信の基を明かす。

 

「言っただろう。お前を信じてる」

 

『それが、何になる』

 

「俺だけじゃ、全部は無理かもしれない。というか無理だ。ジャンヌだっていない。でもお前はいる。奴が表に出ても、お前がいなくなるわけじゃない。お前がいてくれなきゃこんな無茶はしない。人に英雄の役目を押し付けたくせに、協力しないなんてそれでも英雄かよ」

 

 初めて黒白の海岸で会った時、スタートは自分が英雄であると自負し、元を英雄にすると言って記憶を失っている間の訓練を行った。

 最初は嫌だったそれは、表のハジメ・ナッシュの様子を見るうちに変わった。彼に代わって目覚めた時の為にやらなければと思い、スタートの指導を受けた。スタートの望む英雄を演じるために。結局は英雄からは逃げる選択を取っているのだが。その時のやり取りをスタートに言って思い出させる。

 スタートもその時の事を覚えており、苦い表情で元の問いかけに答える。

 

『確かに、お前には俺に代わってシュバルトゼロのパイロットを、英雄であることを求めた。お前には、押し付けたとも思っている。だが、それでも奴の、もう一人の俺の力を使うのはよせ!何をしようとしているのかくらいは相談を……』

 

「……悪いが、もう、そんな時間はない」

 

 苦悶の表情を作る。これまでの負荷が体力をすり減らし、まともな意識が落ちかけている。ずっとエンドに強襲されないようにも気を配っていたのもその原因だ。

 それにジャンヌとレイアへの負荷が気になる。ずっとこんな状態を続けていても、鈍い疲労は彼女達に負担を掛けているだろう。

 だからこそ時間はないと言った。そんな元の意図を全て読み取ったかは分からないが、スタートは歯ぎしりをするようにして言葉を絞り出す。

 

『そう、言うのなら、もう止められはしない。これ以上、不利な状況に追い込むことは、俺の本意じゃない。今のお前を、俺も英雄のはしくれだと思っているからな』

 

「そんなこと、今言うかよ」

 

『だが、これだけは言っておく。失ったとしても、それでも突き進むのが英雄の道。決して易しいものではないぞ』

 

「……分かったよ。壊すなら、殺すなら、俺自身の手で、だ。……なら、行くか」

 

 言って膝をついていた姿勢から立ち上がる。エンドを、神治を、ヴァイスインフィニットを見つめ返す。その視線をキープしたまま、クリムゾン・ファフニールに呼びかける。

 

「やるぞ、クリムゾン・ファフニール!」

 

『未来を見せてみろ、黒和元。もう一度、奇跡を起こせ。ドッキングフェイズ』

 

 クリムゾン・ファフニールがシュバルトゼロクローザーとの合体準備態勢に入る。

 周囲へと鳴り響く危険を知らせる警報。機体のシステム音声が危険域を知らせる。

 

『Warning! Warning! This is not a safety limiter!』

 

 周囲へと吹き荒れる高純度DNの守護領域。クリムゾン・ファフニールのDNによるウイングから多量に放出される高純度DNが敵の接近を妨害する。

 エンド達はこの合体をただ見るだけしか出来ない。いや、少なくともエンドは合体を邪魔するつもりはないらしい。動かず、逆に猛るタイプ[リズン]を制する。

 

「面倒になる前にとっと殺ろうぜ!」

 

『いや。合体してからだ』

 

「何だよ、また邪魔するのか!」

 

『合体するというのなら、私も、奴の言葉を、意志を確かめる気はある』

 

 合体した後、現れる真のスタートとの対話を望むエンド。それに見守られる形で、合体最終体勢に入る。

 

『Standby OK?』

 

 鎌首を擡げるように噛み付く態勢に入るクリムゾン・ファフニール。「覚悟はいいか?」と問いかけるシステムに、俺は応えてやる。

 

「覚悟するさ」

 

 その言葉と同時に合体が承認、頭部へと噛みつかれる。同時に負荷が高まっていく。意識が飛ばされる。

 

「ぐっ―――――」

 

 ここからが勝負だ。閉じ行く意識の中で必死にそれを探索し始める。

 

 

 

 

 クリムゾン・ファフニールに噛みつかれたシュバルトゼロクローザー。次々と合体機構を起動させていき、各部にパーツを装着する。

 スレイブコントロールの為にナハト=ヴァールをパージ、腕部、脚部にそれぞれクリムゾン・ファフニールの腕部と脚部が増加装甲として合体、一回り大型化したようになる。背部にはクローザーフェニックスのパーツを一部改変して合体、エリミネイターソードを首だったパーツが取り上げ、自らのパーツとして運用していく。

 完全にパーツを合体したシュバルトゼロクローザー。合体完了と共に機械音声とクリムゾン・ファフニールの雄たけびが上がる。

 

『Uncontrol unit!Over-dragon!DESTROYER…』

 

『ガアアアアアァァァァァン!!』

 

 これがクリムゾン・ファフニールと合体した第1形態、クリムゾンフェイズ。本来ならこの形態は元でも操れるはずのものだった。

 しかしそれは今、クリムゾン・ファフニールの意識が優先された。そしてそれもまた、別の意識に呑まれることとなる。咆哮の後、苦しみだすクリムゾン・ファフニールの声。

 

『ガグッ!グゥン……』

 

 力の抜けたように手をだらんとさせ、頭部を下げる。それは敵にとっては絶好の機会。しかしエンドは動かなかった。この後に来るものが分かっていたからだ。

 そして遂に奴が来る。

 

『…………フ、ハハハッ。やはり私がいなければ、時代も世界も変わらんよ』

 

 元の声で、まったく違う喋り方をする人物。人が変わったと言わざるを得ない豹変だろう。だがそれを見てエンドは動じない。横にいるハリヴァー達や同じMSにいる神治は多少なりとも身構えているのに。

 ヴァイスインフィニットの中からその様子を見ているであろうジャンヌ・ファーフニルが、悲観したような声を力なく紡ぐ。

 

『あ……あぁ……』

 

 敵も、味方からさえも絶望の声が上がる存在。ますます黒和元が信じると言った発言が眉唾に聞こえることだろう。

 しかし、そんな事は目覚めた真の英雄には意にも介さない細事であった。そのまま真の英雄は、前方に見える白のガンダムの実質的なパイロット、自らと同じ存在へと挨拶する。

 

 

 

 

『久しいな、エンド、と言えばいいかな?』

 

『貴様がそう呼びたければ、そう呼べばいい。変わり果てたな、スタート』

 

 

 

 

 1400年前の英雄が、当時の記憶を持って相対する。両者が発する空気は、場の空気を重くしていく。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP98はここまでです。

ネイ「遂に、なってしまいましたね……」

グリーフィア「なるしかなかった。けど、元君は最後までスタートを信じていた。いや、今も信じて、何か足掻いているみたいね」

よくもまぁそんなことに気づきますね……(;´・ω・)

グリーフィア「だって意識消えてフェードアウトする前に探索って言葉があるからね。まだ策があるのは確定でしょっ?」

ネイ「それにしても、間に合わなきゃ意味はない。……間に合うかな」

グリーフィア「間に合わせるしかない。その為にまた元君はやるってんだから。それよりも次気になるのは裏スタートの動向ね……」

ネイ「確かに。エンドとどう接するのか……」

エンドは裏スタートが自分に同意してくれると思っているようですが、果たして真意はどうなのか?全く分かりませんからね。

グリーフィア「ここでうっかりOKしてもダメ、NOと言ってジャンヌ達を殺してもダメ。本当に元君に全てかかってるってこと!」

ネイ「クリムゾン・ファフニールさんが全てを知っている、みたいだよね。それを受けて承認した。……クリムゾン・ファフニールさんは成功するって思ったってことかな」

そうなるわけですね。無策に認めると言ったようなことはクリムゾン・ファフニールにはなさそうですし。はてさてどうなることやら。と、それでは今回はここまでとしましょうか。

グリーフィア「そういや次は初めてEPISODE100っていう大台ね。まぁ全体合わせると軽く300話越えているんだけども」

ネイ「でも今までの部よりも一番長いから、そういうのは感じるね」

本当にね、こんなことならLEVELで作品分けておくんだったなぁって思うわけですよ(;・∀・)まぁそうするとすぐに見れないっていうのが欠点なんですが。

グリーフィア「けど言うて今でも見づらい件。話が多すぎて」

これでも短くなってると思うんですよね……。

ネイ「まぁそこは何も言いませんけども。でもこれだけ書いているんですから、そろそろ完結とかさせてくださいね?」

まだ今章含めて5章くらいあるんだよなぁ……(;・∀・)頑張ります。

グリーフィア「それじゃあ、また次回~」


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EPISODE99 魔竜顕現・希望は暗闇の中に3

どうも、今回もEPISODE99、100の公開です。

ネイ「今回、私達が先に99の担当になりましたね」

グリーフィア「まぁジャンヌにEP100の方任せたいって気持ちはあるんでしょうねぇ?」

察してくれると助かります。

グリーフィア「それはそうとして、英雄の復活か……字面で見ると心強いってなるけど、今回はねぇ」

ネイ「心配しかない、よね。元さんも乗っ取られて、どうなっちゃうんでしょうか……」

それでは本編をどうぞ。


 

 

 とうとう相対する当時のマキナ・ドランディアの英雄。その一声は憎しみのこもったものであった。

 

『まったくもって、貴様には虫唾が走る。貴様のような機人族のエリート擬き程度が本当に単体であいつを倒せるとでも思っているのか?』

 

『私はやる。私だけではない。ゼロンという、奴に対する反対勢力が、奴の野望を今度こそ打ち砕く。貴様の属する集団など奴の味方ではないか』

 

『フン、品性のかけらもない、欲望だらけのならず者集団に共に世界の変革を促せるとでも?あのHOWという集団の方が、まだ使えるよ』

 

 互いに互いを批判していく。犬猿の仲、と見ている人物達には言えるだろう。しかしこれがスタートにとって当たり前の光景であった。

 創世記と呼ばれたあの時代、常にエンドは邪魔をしてきた。因縁の相手に対し、何も同感することはない。それはエンドに味方する者に対しても同じだった。

 ヴァイスインフィニットの現パイロットとされている神治が反論する。

 

「お前、なんていった!俺達が品性のかけらのない、ならず者集団だと!?」

 

『まさしくそうではないか?人質を痛めつけ、いたぶり、それを正義と疑わない。私にはどうでもいいが、俗人たちにとって、それは非道の行いと言うのではないか?』

 

「俺達は正義だ!悪をいたぶることは必然の!」

 

『それは違うな。正義と悪など戦争では混じり合う。それぞれの信じる信条こそが正義であり、敵の言うことが悪。それを利用し、平和へと導くのが我ら英雄。俗人に如きの語るそれに、絶対的な立場などありはせんよ』

 

「貴様ぁ!」

 

 神治が怒り狂う。目覚めたスタートは冷静に、敵対する相手を貶す。決して英雄という欲だけに突き動かされず、コントロールできていた。

 だがそれはエンドにとっては、スタート本来の姿を知る者にはややおかしなものであった。問いただしてくるエンド。

 

『もう少しお前は、甘い、いや、遠慮があったと思うがな』

 

『そんなものは捨てたさ。そうでなければ、あの悲劇は起こらなかった。貴様と同じだよ。私はあれがあったからこそ、同じ二の舞を繰り返さないよう善と悪の領域に分かれた。甘さは全て、表の私にある。今の私は、英雄として、必要なことをただ成すだけだよ』

 

 そう、スタートはかつての出来事故に分かれた。今の自分ではこの先どうしようもできないと、「悪」とも呼べる領域が判断して、記憶と共に分かれたのだ。

 すべては、あの時封印したあのMSを今度こそ倒すため。悪の領域にとっては今度こそ「勝つために」。ただそれだけだった。

 その為なら何だってする。人質が邪魔なら、その人質ごと敵を殺す。破壊兵器を持っているなら、それを上回る攻撃で、町ごと吹き飛ばす。それも必要なことだけやる。無益な殺傷はしない。ただ必要だからやるだけだ。

 エンドに対して、スタートは変わる必然性を説く。

 

『それに、貴様も変わっただろう。高潔さを求めていた貴様がその連中とつるんでいること自体、あの頃のマキナスを否定している。お前もまた、変わらねば変えられないと思ったのだろう?』

 

『言っておくが、彼らは必要な存在だ。世界を守るために。それでも、あの頃のマキナスでは世界は変わらないのは認めるが。今のマキナスも、大して力もないだろうしな』

 

『それには同感だ。実際、今私が使っているこの体の主が、シュバルトゼロの力を少し引き出した程度で収まったのだからな』

 

 元がシュバルトゼロガンダム・イグナイターで勝ち取った平和を、程度という言い方で表現するスタート。スタート自身にとっては、あの程度で1000年以上続いた戦争が止まるなど、馬鹿らしいと思っていた。

 1000年以上も争っていた歴史が、たった1機のMSで止まる。それ自体はいいことでも、シュバルトゼロならもっとやれたはず。それこそ、あの機械となってしまったかつての盟友を殺さずに済んだかもしれないと。

 とはいえ、あのような姿で生かされるのは実に心苦しい。ようやく死ねたことは幸せとスタート自身は思っていた。

 その間際に生まれた新たな象徴が、まさか自分を完全に呼び戻す結果となろうとは思ってもいなかったが。これもまた時の運命とスタートは受け取っていた。今は亡きクリムゾン・ドラゴニアスの遺志が、自分を呼び戻した。あいつも俺を必要としたのだ。

 だからこそ、この醜い争いを終わらせる。異世界の英雄が争いの種となるのなら、同じ異世界の英雄が終止符を打つ。エンドも、あいつを討つのもまた今の自分なのだ。

 この世界を救うのは自分だと、エンドに言い放つ。

 

『だが、変わったところで所詮は貴様だ。組む相手を間違っている時点で、貴様は英雄とはなり得んな』

 

『勝手なことを言ってくれる。ポッと出の英雄が、今さら口を出すな。協力しないと言うのなら、今再び因縁を決着するのみ!』

 

 説得を諦め、明確に敵意を向き出すエンド。それに合わせて、ゼロンのMS二機が戦闘体勢を取る。その二人、いや、ヴァイスインフィニットの仮のパイロットから殺意に戦意に満ちた発言が飛び交う。

 

「ようやくかよ。とっとと英雄殺しを始めようぜ!」

 

「だから、倒すのは俺だ!救世主なんだ!」

 

「くだらない言い争いをしている場合か。もっとも、倒せば英雄ともてはやされなくもない、か」

 

『結局のところ、貴様らは何と言おうと英雄の邪魔をする敵役でしかない。主役たるこの私には敵うはずもない!故に!』

 

 その手を横にかざす。マルチ・スペースシステムを介して形成、転送されたかつての主兵装を構え、粛清を言い渡す。

 

『この私が、直々に粛正する。この体の主は私に人質を救ってもらうことを期待していたようだったが、甘かったな』

 

 決死の覚悟をして合体を行った元を馬鹿にして、エクスターナル・メガビームランチャーを構え、発砲する。攻撃を避け、散開するゼロンのMS。G-Arcによる統制の下、攻めてくる。

 操縦権限を委譲してもらった神治が英雄たる自身に挑んでくる。他との連携は意識していないらしい。

 

「英雄と言っても、所詮は過去の人物!今の人間にも、MSにも勝てるかよ!」

 

『生憎、私は人間とは違う。マキナ・ドランディアで生まれし、竜人族の英雄の初代当主。今のMS如きに、もう遅れはとらん!来い、エクスターナル・シュツルム・ブースター!!』

 

 掛け声と共に再びマルチ・スペースシステムを起動させる。シールド付近の空間が歪み、盾のようなブースターが出現する。それが上下で分割され、シュバルトゼロのマルチ・アサルトシールドの裏面へと接続される。

 合体を完了したシールドの底部をヴァイスインフィニットに向ける。接合したシュツルム・ブースターの底部を開いた。中から銃口が露出する。それを見てエンドが回避を促す。

 

『神治、回避だ!』

 

「見ればわかるっ!」

 

 射線を回避しようとする神治。それを見越してスタートはビームマシンキャノンを起動させ、連弾を放っていく。

 圧倒的な連射が4つの砲門から放たれる。それらを回避してなおも近づいて来るヴァイスインフィニットエアレーザー。やはりダブルエンゲージシステムの性能拡張が大分あるらしい。しかし今のスタートにはそれすらも些細な差であった。

 連弾が徐々にヴァイスインフィニットを掠めていく。そして唐突に機体の足を直撃する。バランスを崩して神治が動揺の声を上げる。

 

「なっ、この速度に当ててくる!?」

 

『くっ、ちゃんと回避しろ!』

 

「やってる!くそっ、くそっ!なんで、何で当たる!?」

 

 複雑に、いや、無秩序に回避するヴァイスインフィニット。しかしその行く先を先回りして攻撃を当てる。

 やはり、読み通りだ。ヴァイスインフィニットのパイロットは多分に甘い。DNL能力も低く、それを補う腕もない。それが自分の見立てだった。それは予想通りであり、致命的とならないのは扱うには高すぎる性能のおかげだった。

 これでは話にならないと感じると同時に、今のシュバルトゼロガンダムのパイロットの不甲斐なさを強く自覚する。この程度の相手を圧倒も出来ないようなら、やはりこのまま乗っ取るのが世界にとっても良い。

 戦いが終わった時の事を考えながらヴァイスインフィニットを攻め続けようとする。だが散開した他の二機が遅れてカバーする動きに入る。

 

「神治だけが相手だと思ってんなよ!」

 

「それでは隙だらけだ」

 

『フン。よもや私が注意散漫とでも?』

 

 ビームライフルとガンランスからの挟撃を容易く回避する。シールドに追加されたブースターで大幅な速度上昇を果たしたシュバルトゼロは回避したと同時に攻撃の姿勢を取る。

 

『行け、エリミネイタービット』

 

 シールドから刃状のビットを飛ばす。最新世代のシュバルトゼロの兵器を操り、迫ってくる二機に向けて迎撃に充てる。

 すぐさま二機はまとわりついて来る端末に対し反撃を行う。だがそれらの攻撃は掠めることなく、端末が攻撃しては素早く翻すヒット&アウェイを繰り返す。

 翻弄される二機のパイロットがその精度に驚く。

 

「ちっ!ちょろちょろうぜぇ!!」

 

「こちらのパイロットは、最新型のシュバルトゼロの武器は把握できていないと聞いていたが……くっ!」

 

『その情報は古かったな。既に最初の接触で武器情報は把握している。二度目となれば、このくらいはやって見せるさ、英雄ならばな!』

 

 そう語るとエクスターナル・メガビームランチャーの銃口にビームサーベルを展開させる。ビットによる一斉攻撃の後、怯んだ二機を薙ぎ払うようにして巨大ビームサーベルで一閃する。

 間一髪両機共に展開したフィールドで直接攻撃されるのは防いだ。だがそれに構わず薙ぎ払い、更に追撃の反転させたシールドからのメガビームキャノンで防御フィールドを貫き、装甲に破片を飛び散らせる程度のダメージを与える。

 防いだ二機に対し、まだ攻撃が終わりでないことを告げる。

 

『この程度で終わりではないぞ』

 

「なにっ!?ぐっ!!」

 

「いつの間に、ちぃ……!」

 

 接近し、素早く駆け抜け様にシールドからのビームサーベルで斬りつける。金色に対しては斬り上げで左腕を肩から吹き飛ばし、赤色の方は肩部の増加アームユニットと思われるパーツを斬り飛ばす。

 切り抜けた直後、後ろから更にメガビームキャノンを喰らわせる。不意打ちの一撃で推進機関を損壊させ、足を奪う。これで片方はそう簡単には邪魔出来まい。金色の方は既に再生態勢に入っている。

 邪魔者を一時的に減らしたところで態勢を立て直して突撃の準備を図ろうとしていたエンドとヴァイスインフィニットの仮パイロットに向けて、言明する。

 

『さぁ、貴様らを殺すときが来たぞ!盾を喪い、英雄に無様に負けるがいい!』

 

『盾ならばいくらでもある。だが、貴様如きに盾を使い潰すつもりはない!』

 

『そうか。ならば潔くその偽りの気高さごと、魂を散らすがいい!!』

 

「ほざけよ!」

 

 神治の一声と共にヴァイスインフィニットエアレーザーがシュバルトゼロを撃墜しようと攻撃を掛けてくる。三つのランチャーによる同時射撃が襲う。

 それを突撃姿勢で回避すると、そのままの姿勢でこちらもビームランチャーを放つ。一発目を回避されるが、続けてビームを連射、誘導の二発目を回避したところへ、本命となる三発目の曲射ビームで狙い撃ちにする。

 攻撃をシールドと疑似エレメントの合わせでダメージをゼロに限りなく抑えるエンド達。だがそこにランチャーとシュツルム・ブースターの分まで加速した機体で、蹴りを浴びせて吹き飛ばしていく。

 

「がぁぁぁぁっ!?」

 

『ひ、ぐぅっ!』

 

『人質の事は既にお構いなしか。それでも、ドラグディアの詩巫女守りの英雄と呼ばれた貴様か!』

 

『そんな名前!貴様に言われるほどではないなぁ!!』

 

 エンドの声にも耳を貸さず、吹き飛ばしたヴァイスインフィニットに向けてビームマシンキャノンの弾丸を飛ばす。雨あられの如く降り注ぐそれを回避しようにも体勢が体勢で、ヴァイスインフィニットは疑似エレメントでダメージを軽減するしかない。そこを狙ってシールドカノンを放ってダメージを与えながら更に後退させた。

 このまま押していく。そう思ったのもつかの間、後方から警報が鳴る。向くと、機体を再生させて万全の状態で襲い掛かってくる金色の機体と、損傷を嫌って距離を取って遠距離攻撃を放ってくる赤色の機体があった。どうやらまだ戦えるらしい。

 金色の方は厄介だ。そこでまずは金色の機体へと踵を返す如く翻り相手をする。

 

「こっちを向いたな!魔王!」

 

『君はしつこそうだ。故に、動きは止めさせてもらう』

 

 言って金色の機体と鍔迫り合いを演じる。左手に持ったブレードガンⅡビームサーベルモードが敵の銃剣とぶつかり合う。

 出力は互角に思える。当然だ。今のシュバルトゼロはエンゲージシステムを発揮できていない。しかしそれだけで圧し返せない敵ではなかった。右手に構えていたエクスターナル・メガビームランチャーで唐突に敵を叩きあげる。鍔迫り合いが解除され、敵の姿勢が崩れる。

 

「ぐっ!?小癪な」

 

『そう言っている場合かな?』

 

 その間にスタートはエクスターナル・メガビームランチャーを捨てブレードガンⅡ二丁で金色の機体の肩部を差し貫く。

 一度距離を取ってマルチ・スペースから取り出したブレードガンⅡで腹部を狙い撃つ。しかし急速に侵食を加速させた機体がブレードガンⅡを飲みこみ無へと還すと、ビームシールドを肩部ユニットから展開し防御する。

 なるほどと思いつつ、それを見てすぐさまもう一度突貫を仕掛ける。変わらずビームシールドで防ぐカウンターを狙ってくる金色の機体。

 

「このまま来るか!飲み込んでくれる!」

 

『悪いが、君の思うようにはならん』

 

 その言葉を掛けると、ビームサーベルを出現させたブレードガンⅡを突き立てにかかる。敵の支援攻撃を避けながら、接近する。シールドとの接触直後、結晶がビームサーベルごと武器を飲みこもうとする。しかしそれをビームの圧で吹き飛ばす。

 増したビーム圧でシールドを貫通させる。と同時にビームを切って実体刃を再び機体へと突き刺す。先程と同じ流れ。しかし先程と違い、突き刺してから押し込むように、しっかり突き立てる動作を行う。

 それに対し、ほくそ笑むパイロットが叫ぶ。

 

「ぐっ……そんな近づいてんなら、飲み込んでやるっ!」

 

 発生する結晶がブレードガンⅡにまとわりついていく。ところがガンダムのツインアイが光ると、結晶の侵食が止まり、砕け散る。その様子を見て絶句するパイロット。

 

「なっ!?何が……ぐっ!?この不快感は」

 

『悪いが、そんなものは必要ない』

 

 ブレードガンⅡから手を放し、テールストライカーで金色の機体を貫く。構造的に弱そうな腰パーツを貫き、分離する動きを見せていた腰背部にあったユニットごと貫き、そのユニットを爆散させる。

 それでもまだ機体は爆発を免れており、地面へと落下していく。だがその機体は再生が鈍っていた。

 種としては簡単なもの。ブレードガンⅡを介してDNLの阻害波、言うなればコンピューターウイルスを流し込んだに過ぎない。再生を阻害するそれを流し込み、その動きを止めさせたのだ。

 金色の動きを止め、エクスターナル・メガビームランチャーを再度その手に取る。と同時に流れる動きで狙撃してきた赤色の機体の攻撃を躱し、流れる動きでメガビームランチャーを発砲、着弾で武器と装甲の一部を爆発させる。

 そうしてようやくヴァイスインフィニットとの相手に戻る。丁度ヴァイスインフィニットも急接近してこちらを落とそうとして来ていた。

 

「お前を、落とす!」

 

『来ると良い。だが、お前を待っているのは、大嫌いな敗北と死だ!もう一度死んでいろ、エンド!』

 

『強がりを!這いつくばるのは貴様だ!』

 

 殺意のこもった罵り合いと共にヴァイスインフィニットエアレーザーとの対決に突入する。既に展開していた両刃剣のファンネルがこちらを襲う。だがそれを容易く回避、スレイヴ・ファングクローで迎撃していく。

 その回避を狙って本体も攻めてくる。ところがその精度も甘く、防御してすぐさま反撃へと転じ、逆に斬撃を喰らわせる。カウンターを受けた胸部を庇いながらパイロットはその差に困惑する。

 

「何で、何でだよ!俺は、勝つんだ!」

 

『無様だな。まだ終わりではないぞ!少年!』

 

 言葉通り攻撃を続ける。回避しようとするヴァイスインフィニットだが、新たに握った合体可変兵装「ジェミニアームズ」の一つ、ナイフとソードを合体させた「ディオスクロイ」で剣を捌き、弾いて本体を傷つけていく。

 上がる悲鳴に人質の声が聞こえようとも止めることはない。

 

『あぐっ、いぐっ!』

 

『あぅ……ぐぅ……』

 

『人質を、ここまで、無視するか……』

 

『たとえ本来の私だったとしても、人質がいる状態でも攻撃しただろうさ。ただ、救うか救わないか。効率を優先するかしないかだっ。私は、最短で未来を切り開く!』

 

 その言葉を、武器を捨てた左拳と共に見舞う。投げ捨てられた武器に気を取られて弾いた直後のヴァイスインフィニットの顔面を直撃して殴り飛ばす。悲鳴が響く。

 

「があああぁぁぁぁ!?」

 

『神治、体勢を』

 

『遅いな!!』

 

 体勢を整える前に追撃のメガビームランチャーを砲撃、着弾と同時に空へと投げ捨ててシールド上部先端を向けてメガビームキャノンの連弾を浴びせる。

 容赦ない砲撃が疑似エレメントの防御を突破する。脚部の一部が半壊し、機体全体にスパークを散らせ出す。動けはするもダメージを負った機体が、仮のパイロット達の苦痛の声が漏れてくる。

 

「くぅ……まだ、だ……!負け、な……」

 

『ぐっ……!?神治、上――――』

 

 エンドがそれに気づく。しかし、全ては遅かった。フィンガースナップと同時に宣告を行う。

 

『もう遅い!そこだ!DNF「オルフェウス・スターフォール」ッ!!』

 

『DNF「オルフェウス・スターフォール」』

 

 上空に待機していたビット状態のエクスターナル・メガビームランチャー。既にDNF用のエネルギーをチャージしていたそれの銃口から直下のヴァイスインフィニット目がけてビームが放たれた。

 高純度DNを用いた超高出力DNF。完全にとどめを刺すための攻撃である。放たれた一撃は狂いなくヴァイスインフィニットを狙い撃とうと放たれている。

 これで終わる。この下らない戦いも。放ったビームはランチャーの曲射機能を制御して狂いなく奴ら、ヴァイスインフィニットの胸部を貫く。どう逃げようと必ず貫いてくれる。

 その自信を抱え、撃った一撃。油断することなく、直撃の瞬間まで目を見張る。もうあと数舜で届く。世界が、跪く時だ。

 

 

 

 

 そのDNFは、ヴァイスインフィニットを避けてすぐ近くを抜けて地面へと着弾する。すべてのビジョンが、覆る。それは、その領域に届いた瞬間でもあったのだ。

 

 

NEXT EPISODE

 




EP99はここまでです。

グリーフィア「最後……何だ?」

ネイ「攻撃が、外れたみたいですけど……スタートが外した?」

グリーフィア「いや、絶対これそういうことじゃないの~。繋がったわぁ~」

ネイ「姉さん、凄い盛り上がってる……」

まぁそれに関しては次話で分かることです。なぜこうなったのかも含めてね。

グリーフィア「でしょうね。じゃあそれに至るまでの話だけど、裏スタートは大分尖ってる思想よねぇ」

ネイ「そう思う。人質を救わずに、最短でなんて。しかもそれが失敗からって、つまり、助けたから救えなかったものがあったってことかな」

グリーフィア「それよりかは目の前のことを救うより、もっと大きなものを救うことに目を向けちゃったってところかしらぁ。いずれにせよ、裏スタートは任せるべきじゃないってことははっきりしたわね」

ネイ「そういう意味ではエンドと似通っているのかもね。エンドも世界を救うために平和を壊す側を味方にしているから……」

そう言った意味では似た者同士と言うねこの英雄たち。やたら自分の考えに自信満々なところとか、英雄って誇ってたり。もっとも会話から分かるだろうけどスタートに関しては本来の性格は違うってことは留意しておく必要がある。

ネイ「きっと表スタート主軸だと願ってます」

グリーフィア「だけどそれだと今の裏スタートの性格が証明できないから、多分理性でそう言った黒い気持ち抑えてた人間だって思っておくわ。もしくはタガが外れて過激になってるか」

それではこちらはここまでにしておきますか。

ネイ「では、次話に続きます」


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EPISODE100 魔竜顕現・希望は暗闇の中に4

どうも、引き続きEPISODE99,100の公開となります。こちらは大台のEP100となります。

レイ「EP100ってことで記念する為に私達だねっ!けど前話は本当に危機一髪だよ~!危うくジャンヌ・Fちゃんとレイアちゃん殺されちゃうところだった……」

ジャンヌ「妨害したのは、きっと……目覚めてくれるんですよね……彼が!」

それでは本編を早速どうぞ。


 

 

『何故だ、何故!外れたっ!?』

 

 あり得ない。その光景にスタート自身は動揺する。確実に貫くという意志の下DNLで制御されたビームの軌道は、何故かその標的となったヴァイスインフィニットのすぐ横を通り過ぎていってしまった。

 おかしい。直感でその原因が先程生じた奇妙な違和感にあると理解する。あの一瞬で、何かをされた。誰に?目の前にいるヴァイスインフィニットか、後方に置いて来た赤の機体、可能性としては金色の機体だろうか。

 いずれも確認するには時間がかかる。ヴァイスインフィニットは攻撃が外れた後咄嗟に距離を取っている。金色の機体と赤色の機体は未だに損傷から復帰しておらず、ダメージコントロールと復活に意識を向けている。それらの可能性は低い。

 ならば、一体何が邪魔をしたというのか。眼前で警戒を続けていたエンドに怒鳴り声で問いただす。

 

『貴様か、エンド!コントロールをG-Arcで奪ったのか』

 

『何の話だ。G-Arcはあの二機を扱うために使っている。貴様が単に外しただけのこと……』

 

『そんなものが方便なのは分かっている!貴様が、G-Arcをこちらに向けて使った。フン。有効な防御策だ。しかし、一度見てしまえばもう同じ手は通じん!』

 

 DNL能力を拡張する。遠隔操作中のエクスターナル・メガビームランチャーを呼び戻し機体とリンク。直後命令プログラムを流し込み、ヴァイスインフィニットの扱うG-Arcシステムの命令をカットするように調整する。

 これでもう同じことは起きないはずだ。その確信を以って再びヴァイスインフィニットに宣告する。

 

『今度こそ、貴様を葬る。同じ攻撃で、屈辱を受けるがいい』

 

『そんなにヒントを与えるなら、回避も容易い!』

 

『そう思うかな?』

 

 今度は加速を付けて構える。まずはメガビームランチャー自体の打突でヴァイスインフィニットの動きを抑制する。届かないと思われていた距離からの攻撃を咄嗟に防御するが、それに構わずメガビームランチャー自体を投げ飛ばして上へと防御を弾く。

 その直後懐へと飛び込み拳を握る。スレイヴ・ファングクローを装着している今より凶悪な質量兵器としてヴァイスインフィニットの胴体を殴り、息を吐かせる。

 

「がぁっ!?」

 

『このまま、打ち上げるっ!』

 

 宣言通りヴァイスインフィニットの機体を力づくで打ち上げる。ヴァイスインフィニットの機体は空へと上がり、そのまま逃げようと試みる。

 だがそれを思うようにさせないように、追撃の広域拡散の波動型のビームを掌から放って、動きを封じる。そこに再びDNFオルフェウス・スターフォールの発射を宣言した。

 

『DNF、オルフェウス・スターフォール!!』

 

『DNF「オルフェウス・スターフォール」』

 

 先程の帰還で既にエネルギーはリチャージしている。再度の砲撃が放たれようとする。ところが、今度は発射を指示するその腕自体に異変が生じる。

 振り下ろそうとした腕が変に邪魔されて横へずれる。その振り下ろした方向に合わせるようにしてオルフェウス・スターフォールの弾道はずれ、あらぬ方向へと撃ち落とされてしまう。

 またしても回避に成功したヴァイスインフィニットは後退しながらも困惑した様子でランチャーとシュバルトゼロを交互に見ていた。

 今度はエンドが困惑した様子で問いかける。

 

『何をやっている。遊んでいるのか?』

 

『そんなはずがないだろう!?やったのは貴様だ!?シュバルトゼロを操る能力が……ちぃ、なんなのだ』

 

 今度はシュバルトゼロを操ったのかと疑う。しかし自らの中でそれは否定された。

 かつての戦いの中でシュバルトゼロをヴァイスインフィニットが操った場面は存在しない。そもそも当時のエンド自体がそのような戦法を嫌ったというのがあったが、シュバルトゼロ側の強固なプロテクトで防護されるのが常だった。

 それを、今のエンド単体で出来るとは思えない。エンゲージシステムはダブルとはいえ不適合。こちらはエンゲージシステムを発動していない。それらが重なって、こちらがかなり性能上不利だとしても、パイロットとの相性と相乗されたDNL能力で上回るはずだった。

 実際二度もDNFを当てられる状況まで追い詰めている。反撃が間に合わないタイミングで必殺の一撃を放った。それなのになぜかそれだけは決められない。邪魔をされる。なぜ?

 あのタイミングで自身の気が緩んでいるとでもいうのか。タイミングよくどうして邪魔が、殺させようとしないのか。と、そこで気づく。

 

『……まさか?』

 

『?』

 

 そう言ったところで、異変を実感した。乗っ取ったはずの意識に波が立つ。支配の感覚が揺れ始める。苦しむ声が上がった。

 

『がああっ!?何だ、この気持ち悪さは……!?やはり、そういう、ことか……っ!?』

 

 言いようのない苦しさ。自分の中から「何か」が上がってくるような。胃液が上がってくるような感覚が頭の、思考の中から出てくるような感覚を覚える。言ってみればその感覚は、本来自分がやっていることに近かった。

 だからこそ気づく。何が上がってきているのか。何が起こっているのか。それを必死に食い止めようとするが、遅かった。

 

『ぐ、おぉぉぉ!?これは……』

 

『スタート!?これは、チャンスか?』

 

 エンドが攻撃の姿勢を取る。そのタイミングで、不意に声が響く。ヴァイスインフィニットの現パイロット、神治にとって目障りとも言えるあの声が。

 

「―――――ようやく、たどり着けたっ!」

 

「なっ、その声は、お前は!?」

 

 それは紛れもなく、真のスタートが取り込んだはずのパイロット、黒和元の声だったのである。

 

 

 

 

 黒和元は、飲み込まれたはずだった。真のスタートによって、シュバルトゼロの隔離領域に。以前にも緊急離脱的に飲み込まれた領域。そこでは抵抗すら出来ないはずだった。

 しかし、以前とは状況が違った。以前元はここに意識が薄くなった状態、消耗した状態で飲み込まれていた。だから抵抗が満足にできなかった。しかし、今は違う。

 消耗してるとはいえ、まだ気力で耐えられている状況。まだ生きている。DNL能力を十分に使える。だからこそ、抵抗した。完全に領域に閉じ込められる前に外へ、身体へと戻れる道を見つけ出し、外へと出た。

 領域から外に出て、身体に戻るまでには時間がかかった。しかしあらかじめ作戦を伝えていたクリムゾン・ファフニールの導きのおかげで、今こうして、スタートの意識に割り込む形で、再び制御を取り戻した。

 戻ってきたという事実にスタートが拮抗しながらもあり得ないと口にする。

 

『馬鹿な、あり得ない。確かに飲み込んだはず!?もうこの体は、私のものなのだぞ!?』

 

「ふざけるな。お前はもう死んでる。過去の人間が、竜人族が、未練たらたらしく今を生きてる俺達の邪魔をするなよ。ジャンヌは、レイアはお前と同じ竜人族の末裔なんだぞ」

 

『そんなこと知れている!人質になった者など、足かせにすぎんよ。それに感けていられるほど英雄は暇ではない』

 

「そうかよ!」

 

 スタートの言葉を一蹴し、未だ攻撃態勢だったエクスターナル・メガビームランチャーを手元に強制的に呼び戻す。攻撃態勢の解けた状態を見てエンドが状況を整理した。

 

『まさか……我ら英雄の意志を、跳ね除けたというのか。黒和元』

 

「楽じゃなかったさ。けど、クリムゾン・ファフニールのおかげで取り返せた。お前を殺してしまったら、意味がないからな」

 

 もちろんヴァイスインフィニットが撃墜されるのを防いだのは俺自身だ。撃墜しようとしたスタートの攻撃に割り込んで制御し、攻撃を外させた。

 撃墜するしかないなら撃墜もやむを得なしだったが、まだその段階ではない。だからスタートの邪魔をした。それだけだ。

 その邪魔をされたスタートからは不評が飛んでくる。

 

『何をやっている!?敵を殺すことこそ、魔王と名乗った貴様の役目ではないか。それをやってやろうというのに、貴様は!』

 

「黙れ。俺は、敵を滅ぼすだけだ。その為に、人質を無意味に殺すことはしない。お前みたいに、効率よくなんて言葉で片付けない!」

 

『お人よしが……!私のその結果が、あの機竜創世記の結果でもあるのだぞ!それが間違っていたからこそ、今の私がある!そんな考え!』

 

「それでも、俺はあいつの、お前達の戦いまで間違っていたなんて、まだ思いたくない。理由があって戦ったお前達の戦いを否定しない!」

 

 今までのスタートに向けての言葉を、真のスタートにも告げる。説得できる相手でないのは分かっている。それでも告げる。

 それを聞いていたもう一人の英雄であるエンドも真のスタートと同じようにその考えを嗤う。

 

『敵に対して塩を送るか。貴様は何処までも、理想論を語る。あいつと同じだ』

 

「エンド……」

 

『その状態で戦うのなら勝手にしろ。だがそれは、弱さの強まった姿。今までと同じではない。その余裕を、この状態でも言えるか?』

 

 エンドの言葉が示すように後方から結晶の音が響く。後方カメラで確認するとそこには串刺しの状態だったタイプ[リズン]が復活していた。

 突き刺さっていたブレードガンⅡは手負いのシナンジュ・ゼロン・ハルが抜いていた。完全に戦闘態勢を立て直していたタイプ[リズン]もまた戦線に復帰する。

 更に機体、身体自体も未だ真のスタートは制御を取り返そうとして来ていた。それを阻害しながら、戦闘しなければいけない。考えただけで気が遠くなりそうだ。それでも元は戦う姿勢を崩さない。

 もっと苦しんでいる奴が、あそこにいる。その想いに、応えてやることは出来なくても、報いてやるために、エンド達に向けて布告する。

 

「来るなら、とっとと来い。それでも俺は、戦う!」

 

「なら、殺してやるよぉ!」

 

「今までの分を受けてみろっ!」

 

 気性の荒いジョセフと神治の声と共に、リズンとヴァイスインフィニットエアレーザーの同時攻撃が襲い掛かる。その攻撃を元は機体の各部スラスターと右手に構えたメガビームランチャーを上下反転させて起動させたスラスターで緊急離脱を図った。

 大きく飛び上がって攻撃のを避ける。そこにリズンが急加速して迫ってくる。ビームシールドを媒介にしてはなってきた超次元現象の輪。それを咄嗟にシールドカノンで迎撃しようとする。

 ところがそこを、再び真のスタートに主導権を握られる。

 

「ぐっ!?」

 

『貴様の操縦で殺されてたまるか!全弾薙ぎ払う!』

 

 銃口を前へと構えなおしたメガビームランチャーを構えて照射で薙ぎ払う。薙ぎ払いの攻撃はリズンへと迫るがそれをジョセフは避ける。だが照射は続けられ、それがヴァイスインフィニットを狙う。

 神治もそれに気づいてすぐさま退避する。その照射の間にリズンに迫られる。攻撃を停止してスタートは掴みかかってきたリズンにビームランチャーを投げ捨てて展開したビームクローで受け止める。

 両者の超次元現象と高純度DNによる激突の火花が散る。その間にヴァイスインフィニット、更にシナンジュ・ゼロン・ハルから機体のビットが飛ばされ、こちらを包囲する様に迫ってくる。

 さすがに包囲されれば不利と判断し、完全に囲まれる前にスタートは素早くリズンをあしらい、蹴り飛ばす。機体がビットとなった両刃剣と衝突する。

 

「ぐっ!邪魔だぞ、このビット!」

 

「お前が突っこんできたんだろ!」

 

 敵が言い合う中、真のスタートはクリムゾン・ファフニールのノイズウイングを大きく広げる。飛ばす態勢を取りながら言い放つ。

 

『薙ぎ払う!』

 

 光翼を伸ばしたまま、シュバルトゼロクローザーが一回転する。その間に翼から光の針が放たれながら周囲を攻撃する。一度回転してから、更に反対にもう一回転。文字通り薙ぎ払う形で周囲のビットごと、リズンをもう一度撃破近くまで追い詰める。

 注意を向けようと攻撃してきていたシナンジュ・ゼロン・ハルを無視して、真のスタートはヴァイスインフィニットエアレーザーへと詰める。ビームマシンキャノンをばら撒きながらその手のメガビームランチャーで精確に狙い撃つ。

 

「クソッ、しつこい!これで!」

 

 弾幕をうっとおしく思った神治がランチャーを三本一斉射で打ち消しにかかる。しかしそれを見切っていたスタートは攻撃を躱し、素早くシールド上部のメガビームキャノンで狙撃、疑似エレメントで防御しながらも態勢を崩したそこにメガビームランチャーを向けた。

 

『消えろ、次元の塵と成れ!』

 

 再び撃墜しようとビームを放つ。しかし今度は間一髪で元が主導権を握り返し、再びビームは照準がそれてヴァイスインフィニットのシールドを直撃するにとどまる。

 奪い返されたことにスタートが抗議する。

 

『貴様!また!』

 

「っ!攻撃、来るっ!」

 

 スタートの喧騒に耐えながら攻撃に転じてきたヴァイスインフィニットの対処に入る。腰のカッター兵装を振りかぶってこちらを切り裂こうとして来ていた。

 神治のこちらの弄びに対する怒りが爆発する。

 

「一々癪に障る!どっちも消えちまえ!!」

 

「ふっ!このッ!!」

 

 それを今度は元が一回転して避ける。そのまま回転により勢いの付いたメガビームランチャーの砲身でヴァイスインフィニットを左から強打して吹き飛ばす。

 無茶苦茶な迎撃ではあったものの効果はあり、ヴァイスインフィニットを素早く後退させることに成功する。シュバルトゼロも体勢を整える。

 もっとも戦い方に対してスタートから非難が集中する。

 

『凡人如きが戦うな!そのような戦い方で、英雄が務まるとでも思っているのか!』

 

「生憎、英雄なんて俺には相応しくないんでね」

 

『魔王を名乗っているのだろう!これはただの素人の戦い、場当たり的な対応にすぎん!』

 

 言って再び制御を奪って来ようとする。それを何とか抑え込み、直後復活したリズンの攻撃を避けて一度距離を取る。

 ヴァイスインフィニットにリズン、シナンジュ・ゼロンが合流する。激しく拮抗するスタートは準備を整えた彼らを指して叱責する。

 

『今頃ならば、既にここにいる三機の内、一機は消しているのだ!それを貴様は人質などに気を取られて!』

 

「人質を救えないやつの、どこが英雄だよっ。そんなの人殺しの英雄だ」

 

『物の見方だ。一人二人を犠牲にしても、それで数百万の人間を救えばそれは英雄なのだ!』

 

「そんな理屈!」

 

 スタートの物言いを否定する。しかし敵対するエンドもスタートの考え方を聞いてある意味正しいと説く。

 

『スタートの言い分は間違ってはいない。そういう世界にいたのが我らでもあった。だがかつてのスタートは、それでも甘い理想を掲げてはいたがな。今の貴様は、飢えた狼だ』

 

『貴様とて、今はその道を選んだだろうに。気高さを求めていたお前が、今は愚鈍な悪人と手を組んでいる』

 

『散々言うが、彼らは必要な存在。愚鈍な悪人ではない。革命に熱意ある者達。それを導くのが今の私の英雄像だ』

 

 自身の英雄像を熱く語るエンド。ゼロンによってこの日本を変える、あるいは黒幕を討つという姿勢を崩さない。

 そして神治達も変わらず元達を葬ることだけをただ考え、殺してやると口にし続ける。

 

「無駄なあがきをするな!俺の贄になれ!」

 

「贄とかどうでもいいから、とっとと英雄を殺させてくれよ!」

 

「君は危険だ。ゼロンというものを受け止める器として、ここで討つ。次で終わりしたいものだ」

 

 そんな血気盛んな彼らと、同等と言えるスタート、エンドに対して俺は文句を言った。

 

「負ける気はないし、お前達の思い通りにもさせるつもりもない。まだこれで終わりじゃない」

 

「何だと?」

 

『ほう。ならばその奥の手見せてみろ。その足手まといの英雄で、何が出来る』

 

 スタートは確かに今、足手まといと言える。強さは確かだが、考え方が極端すぎる。このままでは制御しきれない。

 ならばどうするか。その答えを既に元は見つけていた。クリムゾン・ファフニールと表側のスタート、そして勇人の証言で、既に回答は見つけていた。

 真のスタート、いや、裏のスタートに向けて話す。

 

「スタート、お前は、俺の知ってるスタートの、持っていない記憶も持っているやつだったよな」

 

『散々言っているだろう。私は、要らぬ記憶をすべて捨てた完璧たる英雄。甘さなどない、全ての戦いに勝利し、終止符を打つ存在!』

 

 仰々しく自らの存在を誇示するスタート。本当に自分達の知るスタートとは根本的なところが違う。しかし、これまでも似たところはあり、それがスタートなのだと分からせていた。

 しかしそう尋ねたのは別の意味があった。実際に裏のスタートからその言葉をもう一度聞いておきたかった。確かめたかった。こいつが本当に、スタートの裏の存在なのか。欠けたもう一人なのか。

 それが分かった時、ようやくこの段階に行ける。クリムゾン・ファフニールに提案し、荒唐無稽とまで言われた夢理想。けれどもそれは今実現できる可能性を秘めている。心配すれば終わり。だが、あいつなら、俺達のスタートなら出来ると信じる。

 それを期待して、元は言った。

 

「そんなに自信があるんだな。お前が完璧な英雄だって。なら、示してもらおうじゃないか。実際に、どっちが強いのか」

 

『……何だ?』

 

 訝しむスタート。空いていた左拳を掲げる。拳にDNが集中する。DNFほどではない、だが明らかに破壊力を込めた攻撃をしようとする行いだ。

 それを見て身構えるエンド達。攻撃が来ると思ったのだろう。そしてその拳が振るわれる。

 

「俺の答えは、表のスタートが勝つ!それだけだ!」

 

『!?ぐっ!?何をッ』

 

 衝撃が機体を襲う。左拳がシュバルトゼロの噛み付かれた頭部、その牙の部分に叩き付けられた。破片とスパークが飛び散る。

 自傷行為に戸惑いを見せるエンド。神治達も動揺する。

 

『何だ!?何をしている!?』

 

「自分自身を殴った!?馬鹿かこいつ!」

 

 理解できないであろう行為。自棄を起こしたのかと思うだろう。しかしこれは自棄ではない。賭けだった。

 痛みをリンクしていたスタートがいきなり行われた行為に腹を立て問いただす。

 

『何をやっている!私を殴ったのと同等の行為だぞ、これは!』

 

「ははっ、普通なら不利になる行為だ。カメラが少し壊れちまった。けど、すぐに分かるさ」

 

 すぐに分かる。その元の言葉通り、変化がすぐ現れた。スタートが呻き出す。

 

『ぐっ!?ぐうううぅうぅぅくっ!!なんだ、私の、意識が……あぁぁっ!!』

 

『っ、スタート!?何が』

 

 エンドが思わず声を上げる。やがて周囲に発していたスタートのプレッシャーの圧が消えていく。スタートの声が断末魔のように叫んで小さくなっていく。

 

『黒和元、貴様何をおおおぉぉぉぉぉぉ………――――』

 

 完全に裏のスタートの声が途切れる。すると元の方にも変化が訪れる。

 軽い負荷となった機体操縦。先程までのスタートによる圧もない。完全にどこかへと消え去ったように自由に動ける。

 楽になった機体でヴァイスインフィニット達と相対する。まだ何が起こったか分からずにいるエンド達に対し、元は言った。

 

「さぁ、ここからは時間の勝負だ」

 

 

 英雄が帰ってくるその時までに、自分が倒れないようにする勝負の始まりだった。

 

 

NEXT EPISODE

 




EPISODE100はここまでです。

レイ「元君来たー!!裏スタートをどっかに閉じ込めちゃったよ。これでシュバルトゼロを心置きなく動かせる!」

ジャンヌ「それは確かに良いこと、なんですが……勝てるんですか、これ」

無理でしょうね(;´Д`)

レイ「ダメじゃん!?どどどどうするの?」

ジャンヌ「落ち着いてください、レイさん。最後の方に答えが書いてあります。英雄が帰ってくるその時までって」

レイ「本当だ。もしかして、スタートが帰ってくるってこと?」

ジャンヌ「どうなんです?藤和木」

そこは次回以降のお楽しみ。どういう形でスタートが帰ってくるのかも含めてね。

レイ「うう~。でもでも、元君も裏スタートと負けず劣らずの戦闘を展開したね。邪魔されながらも攻撃を繰り出してたし」

ジャンヌ「何度か殺そうとした裏スタートの動きを邪魔してなおかつ直撃しないように立ち回る。やはり元さんはちゃんとジャンヌ・Fさんとレイアさんを救うつもりがあったんですね。ちょっと心配していたんですが、その心配は無用だったみたいですねっ」

まぁ……多少危ない賭けなんですけどね(;´・ω・)間に合わなかったら死んでいたわけですし。

ジャンヌ「やめてください、言ってから思いましたよそれ……間に合わなかったらすべて無駄になるって」

レイ「あーでも間に合って良かったねってことで!で、確か次の更新も私達後の方なんだよね?」

そうそう。それに合わせたいのもあって今回二人には後半に来てもらったんだよね。

レイ「うーんでもなんで?」

ジャンヌ「わざわざ見てもらいたいものがある、とか?」

その通りでございます。二人にコメント欲しかったってのはあるから、次はね。

レイ「そっかぁ。じゃあちゃんとコメント出さないとね」

ジャンヌ「台本決まっているところはあるんですけど、たまにアドリブ入れたりしてますからね。こういうのみたいに」

とまぁ今回はここまでです。

レイ「次回、どうなるかな~?」


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EPISODE101 蘇る英雄1

どうも、本日はEPISODE101のみを公開します。理由は後程、今後の活動についての報告と共に。

ネイ「いつになく作者が真剣ですが、理由が理由なので……」

グリーフィア「いろんなことが重なっちゃって、こうなっちゃったのよねぇ。それでもこっちは通常通りいくわよ~」

それでは本編をどうぞ。


 

 

 元により意識を飛ばされた真のスタートがたどり着いたのは普通なら見たこともない海岸だった。辺り一帯黒一面、自分が生きていたマキナ・ドランディアでも見たことがないような場所。そんな場所にかつての自身の姿と共に顕現する。

 しかし、どこか懐かしさを感じる。そんな場所に来たことにスタートは舌打ちする。

 

「クソッ、奴めあの攻撃で私を逆に隔離領域へと追いやったか。一人であの敵に何が出来るという」

 

 心配のような言葉だったが、実際はそうではない。純粋に勝てるはずがないと蔑み、馬鹿にしていた。あれを突破できるのは英雄である自分しかいない。そんな自負から元を逆恨みしていた。

 とはいえ領域に送られたからと言って何も出来ないわけではなかった。黒和元が領域から脱することが出来たなら、自分もまたそれが出来ない道理はなかった。素早く状況把握とほころびを見つけるためにその海岸を歩いていく。

 歩いていくうちにその空間の気味の悪さを感じ取っていく。どこまで行っても同じ場所に帰ってくるような感覚。だが正確には一歩一歩前に出ている。足跡なども一周しているわけではなかった。ただ歩いているだけなのに永遠に続いている。

 それだけ歩いても出口に繋がる手がかりは見つけられない。朝日と言える光源すらも発見できない。ただ辺りは少しだけ明るくなっていた。おそらくこれは心象空間の一種。電子の心象空間は主がいる。黒和元を閉じ込めたのが自身であるのと同時に、ここに取り込んだ奴がいる。

 それはきっと元だろう。だから、その鍵を見つけられれば抜け出せると踏んだ。

 ところがそれは半分間違いであった。不意に声が掛けられた。よく知るその声が。

 

「―――――出口ならば、俺が消えなければ出てこないだろうな。この黒白の海岸の出口は」

 

「っ!!お前は」

 

 振り向いた先に奴はいた。黒和元、いや、()()()()()()()()()()が立っている。瓜二つの存在に気味悪く感じる。だがスタートはすぐにそれを理解する。

 そうだ。ここにいる存在、ここにいられる存在で、そんなことが出来るのはただ一人。分かっていたことだ。あの時、1400年前に自身が生まれたあの時に見ていたはずなのだ。

 ゆっくりと、その人物に対し舌打ちの言葉を吐く。

 

「貴様か、「スタート」」

 

 分かたれた自分自身、過去に捨てた善性を持つもう一人と遂に邂逅したのだ。

 

 

 

 

「よもや、こういうことになろうとはな」

 

「これも、またお前の政か、スタート」

 

「違うな、スタート。これは、あいつ、黒和元の策だ」

 

 謀ったのはお前かと問う裏のスタートに対し、表のスタートは否定する。表のスタート自身、この状況を理解するのに時間を要した。

 いきなり黒白の海岸に投げ込まれた存在は察知していた。既に裏のスタートに無意識にこの黒白の海岸に閉じ込められていた表のスタートは、当初元がこちら側に投げ込まれたのかと思っていた。

 しかし会ってみればそれは元などではなく、当の騒動の張本人である自身の分身だった。到底想定していなかった状態であると同時に、表のスタートはようやく元の隠していた真意に気づいた。

 元の策について自身の感想を語る。

 

「あいつは、黒和元は本当にとんでもないことを考える。そうしても本当にそうなるとは限らないというのに。いや、だからこそ、俺を信じると言ったのだろうが」

 

「何の事だ。あの未熟な素人に何の策がある」

 

「未熟な素人と言う割には、その考えを理解できていないとはな」

 

「貴様……!」

 

 元を乏した裏のスタートの揚げ足を取る。正直言って、ここまで来れば元の狙いも分かりそうなものだ。もっともそれこそが自身を信じたという元の信頼の証なのかもしれないが。

 だからこそ、裏の自身に対し、元の狙いを明かした。

 

「今この状況こそ、元の狙い。表と裏、決して会いうことのない者が出会った。そして、どちらかが消えねば、この状況をお互い、打破することは出来ない」

 

「……打破。そうか、そう言うことか。つまり」

 

「そうだ、我々は戦う運命。今こそ、分かれたことに対する、決着を付ける時」

 

 互いに戦闘体勢を取る。そう、どちらかが消えれば残った方が主導権を握る。これはそういう戦いだった。

 構える表のスタートに対し、裏のスタートは余裕綽々で挑発する。

 

「勝てると思っているのか。この私に。本来の英雄としての記憶を持ち、甘さを捨てた完璧な英雄である私に」

 

「強さは、非情さにあらず。俺は覚えている。英雄とは、記憶ではない、行いこそが英雄たる所以。今何をやるかだ」

 

「そんな甘さがあるからこそ、世界は変わらん。お前も、変えられなかった存在なのだ!」

 

 言い放って裏のスタートは高純度DNに呑みこまれる。姿を現したのはシュバルトゼロガンダム。その背中にはクローズフェニックスではなく、クリムゾン・ファフニールが直接合体している。イメージがこの空間で現実化していた。

 対する表のスタートも高純度DNが纏っていく。現実化したのはシュバルトゼロクローザー。クリムゾン・ファフニールのついていない、クリムゾン・ファフニールに依らないシュバルトゼロガンダム現状の最強形態だ。

 その二機が相対する。それはまさしく、それぞれが思う理想の激突。その火ぶたを切ったのは裏のスタートだった。エクスターナル・メガビームランチャーを構えて発砲する。クローザーが避けて海岸の砂浜に着弾し、砂埃を巻き上げる。

 

「さぁ、私達の望んだ戦いだ!勝った者が全てを制する英雄となる!」

 

「くっ、そう簡単にはやられない!」

 

 勢いを崩さない裏のスタートに、表のスタートも負けじと反撃を行う。ゼロ・バスタービームライフルを構えて発砲する。同時にシールドのビームバルカンも火を噴き、高速移動するシュバルトゼロ・クリムゾンを動かす。

 英雄同士の、もとは同じ存在同士の激突は激しさを極める。互いに癖を分かっているために攻撃の先の先、次の行動を予測し攻撃を置き、択を潰そうとしては押し返す動きを繰り返す。

 今もまたファンネル同士の撃ち合いの中、互いの武器を狙って攻撃を行う。

 

「このっ!」

 

「えぇいしつこい!となれば!」

 

 射撃戦ではダメと格闘戦を織り交ぜてくる。それに対しもう片方も格闘戦を展開し、相手の思うような行動を取らせないようにする。しかしそれでもお互い自分の一手を通そうと押し切ってくる。

 鏡合わせ故にそう簡単に決着がつかない。予想はしていたが、純粋な激突は例え記憶が分かたれていたとしても、同じだったのである。

 激突は続き、武器の潰し合いとなっていく。だがここは精神空間。精神の強さでいくらでも戦闘は出来る。その上どちらもマルチ・スペースシステム対応機だったため、いくらでも武器を取り出せるという悪手へと追いやられていく。

 表のスタートもこの時ばかりは自らの機体の現在の仕様に悪態をつく。

 

「お互いに同型機。ヴァイスインフィニットとの戦いでも思ったが、これでは決着がつかない……!」

 

 その流れはヴァイスインフィニット戦でも感じ取ったことだ。元もよくあの仕様を乗り越えて、一度は追い込んだと褒めてやりたかった。それを自分が対応するのも一苦労なのだ。

 それでも目の前の敵を倒さねばならない。いかにして相手を上回るか。それを考えながら切り結び、撃ち合う。

 その中で裏のスタートに対し、表の世界で行おうとしていたことについて追及する。

 

「貴様の行いは、間違っている。過去の英雄である自分達が今に下手に介入するなど、エンドと同じことだ」

 

「フン!戯言を。結局は奴の行動は正しい。脅威を知る者が、これ以上の災厄を止める。それは当然のこと、持つ者の義務だ!もっとも奴は、手を組むべき相手を誤ったがな」

 

 振り下ろされる銃剣の一撃をシールドで受け止める。確かに、その義務は果たすべきだとも表のスタートは思っていた。間違っているのも分かる。それはいい。

 記憶は欠けていても分かる。あの戦争は繰り返してはいけない。当時も酷かったというのに、それが1400年も尾を引いたことを表のスタート自身見せつけられた。

 その原因もあったことは覚えていたが、それだけは思い出せない。きっとその記憶を目の前にいる裏の自分は知っているのだろう。知っているからこそ、変えなくてはいけないと思っている。犠牲すらも生ぬるいという今の人格を作り出している。

 知らないことは罪だ。しかし、知らなくてもその行動の是非は問わなければならない。俺は裏の俺自身に間違いを指摘する。

 

「例え義務だったとしても、人質となった者を殺そうとする行為は許されない!ましてやそれを進んでするなど……それは俺達英雄の取るべき行動では……」

 

「だから甘い。英雄とは、多くの人命を救済する為に存在する。だが取りこぼさずにいるだけでは、英雄などにはなれはしない。そうだ、だからこそ、黒和元は英雄にはなれない!」

 

 鍔迫り合いを弾いて、直後速度を上げて斬りつけてくる裏スタート。一撃はシールドで防ぐが、裏に回った裏スタートはそのままシールドを開いてシールドカノンとビームマシンキャノンをばら撒いて来る。

 その攻撃を避けながら反撃へと転じる。こちらもシールドカノン、ビームバルカンで応戦した。しかし弾の強さでこちらが押される。

 

「ぐっ!」

 

「これが貴様との差だ。私の純然たる力なのだ!」

 

 言って接近戦を仕掛けてくる裏スタート。こちらもエリミネイターソードを構えてぶつけ合う。

 だがそこからの展開は予想できなかった。シールドのビームマシンキャノンを放ってきていたパーツ、開閉した追加パーツがそのままこちらのシールドに掴みかかってくる。

 想定されていた運用であろうクローに合体したシールドが掴まれる。分割パーツとは思えない程強力な力を以てしてこちらのシールドを粉砕、あるいは肩からちぎろうとして来る。接続パーツに負荷がかかる。

 

「このまま、引きちぎる!」

 

「くっ、ならばこちらは!」

 

 それに対し、こちらも素早く応戦する。掴まれていない側のエリミネイターソードビットを射出する。それを素早く操作してシュバルトゼロ・クリムゾンのシールドアタッチメント、並びに追加パーツに向けて突き立てる。

 スパークが散り出す両者の兵装。それでも裏のスタートの攻撃の手は緩まない。最終的にパーツが限界を迎え機能停止、両者共にシールドを肩から切り離して離脱、地面へと落下したシールドが爆発を起こした。

 ここにきて初めて両者共に明確なダメージとなる。痛み分けであるがそれでも攻撃の択は潰す。それでも裏のスタートも、こちらも攻撃の手を緩めない。

 

「消えろ!」

 

「こちらの台詞だ!」

 

 両者共に腕に構えていたランチャーとエリミネイターソードからビームを放つ。お互いのビーム出力は同じだったようで霧散する。

 しかしその激突も一瞬の事。続けて放たれるシュバルトゼロ・クリムゾンのエクスターナル・メガビームランチャーの攻撃は、エリミネイターソードビットなしでのエリミネイターソードの射撃では到底かなわない。

 すぐにエリミネイターソードから腕に折りたたんでいたゼロ・バスタービームライフルに武器を切り替える。その射撃はまだビームランチャーと拮抗する。

 果たしてどれだけの時間が経ったのだろうか。外の、元の方はまだ大丈夫なのだろうか。戦いながらその心配に気を取られ、裏のスタートの接近を許した。

 

「よそ見とは良い度胸だ!」

 

「来たかっ、くっ」

 

 咄嗟にビームバスターライフルを放つ。それを回避してシュバルトゼロ・クリムゾンが左腕を伸ばしてくる。顔を掴もうとする一撃を、咄嗟にこちらもバスタービームライフルを折りたたんで右腕で受け止める。

 その瞬間、ノイズが頭の中を駆け巡る。負荷に悲鳴を上げる。

 

「ぐっ!?おおぉ?」

 

「フッ、掴んだな?それでいい」

 

 予想通りという反応を見せる裏のスタート。脳裏に次々と記憶が流れ込んでくる。それらは知らない記憶のはずなのに、懐かしさを覚える。

 多くの戦火、血の流れ続ける戦場、裏切りと不信……それらの中に、自分の姿がある。それだけでそれが何なのか気づく。苦しみながら全てを知る裏のスタートに記憶の正体を問う。

 

「これは……俺の、俺達の、記憶……」

 

「ご明察。これがお前の知らない、機竜創世記の記憶」

 

 その記憶こそ、表のスタートが失っていた本来のスタートの記憶。今までに存在していなかった記憶、更にこれまでノイズが掛かっていた言葉の部分が露わになっていく。

 自身の名前、仲間達との思い出、失った記憶、裏切られた記憶、憎んだ記憶、愛した記憶。あの戦いで得た記憶が、湧き上がっていく。

 自分が誰なのか、その答えがまさか、自分がそのような存在とは思わなかった。それを今まで言えなかったことに少しばかりの後悔が生まれる。

 愛した者への謝罪がこみ上げつつ、裏スタートにも問いかける。

 

「これを、知っていてなお、人質を殺すというのか、お前は!」

 

「そうしなければ、世界は救えない。もはや我らは世界に牙をむいた存在だった。ならば、清算はするべきだろう。それを黒和元も分かっている。分かっているからこそ、あの女の隣には立たないと決めている」

 

「違う!あいつは、ただ自分の感情に、責務に押しつぶされている。それを助けるべきなのが、俺達英雄のはずだっ」

 

 流される記憶の圧に耐えながら、弁護を行う。牙をむいたというその言葉の意味を理解できないが、それでもそれは否定する。

 それを分かっている裏スタートは更に記憶を流し込む。それはもっとも知りたい、知るべき記憶。すべての元凶を映したもの。かつての相対が蘇る。

 

「ならば、その愚かさを知れ。こいつこそが、黒幕、そして、何をしたのか!」

 

「ぐっ、あああっ!!あぁ、あぁ……これは、こいつ、は……!」

 

 流れ込む記憶。思い出す。奴の名を、奴が何なのか。崇めるべき存在が、反転し、牙をむく。破壊されていく街。マキナスもドラグディアも関係ない。全てを破壊しようとする悪魔だ。

 それを止めるために戦った。仲間達と、愛する者達と共に。それが消えかけた時、伸ばされた手があった。それは、自分と似た、機械の戦士。白き英雄と共に、互いの護りたいものを守るために、最後の決戦へと臨んだ。

 熾烈を極めた戦闘。もはやMS同士の戦いではなかった。たった3機で、世界大戦を行うほどの苛烈さ。その最期、シュバルトゼロとヴァイスインフィニットが奴に挑みかかる。あの存在を同時に貫く。しかし、こちらも無傷ではなく、コアを貫く。寸前で二つの機体から、女性が分離する。それぞれの想い人の名前を叫んで。

 そうして自分は、スタートとエンドは死んだのだ。そして、どういう経緯かこんなことになった。どういう想いでこうなったのか、それはまだ思い出せない。きっと裏のスタートも曖昧なのだろう。

 これで互いに知る記憶を全て思い出す。だが、黒幕の事実を知って、愕然とする。

 

「そんな……まさかあやつが、あいつが、生まれ変わり、だとでもいうのか?」

 

「それは分からん。だが、この事態を全て仕掛けたのは奴だろう。すべての始まりを、きっかけに関わっているのだから」

 

 裏スタートはそう答える。既に手は離されており、シュバルトゼロクローザーは砂浜に足を付く。

 もしこれが本当なら、いや、本当だからこそ、どうするべきか。分からない。迂闊に伝えれば、今の彼等では敵わない。いや、ヴァイスインフィニットが今自分達に勝ったとしても勝てる相手なのか。

 残酷な事実に愕然とする自身に、もう一人の自分は告げる。

 

「いずれにせよ、これが運命だ。今度こそ、英雄である私が、勝たねばならない。もう死んだのなら、何一つ恐れるものなどない。自分の死すら克服し、今ここに立っているのはそう言う理由だ」

 

「……」

 

「もっとも、お前では分からんだろうが。とっととここから出させてもらう」

 

 その左手にブレードガンⅡを握る。シュバルトゼロクローザーにその一撃が繰り出される。

 

「消えろ、必要なき存在」

 

 金属の斬撃音が響いた。その時、思い出した。何のために戦うのか。

 

 

NEXT EPISODE

 




今回はここまでです。

ネイ「話としては表と裏、それぞれのスタートの対決が繰り広げられると」

グリーフィア「残った方が主導権を握る、ってところかしら。まぁありきたりだけど、王道ね。どっちが元君と共に戦うのやら」

その続きが次話にて決着するということで。で、早いですが早速今回の事情説明を(;´・ω・)

ネイ「あー早速ですがお願いします」

グリーフィア「まずは単体投稿の点から」

まず単体投稿に関してですが、話の内容的にこれ一旦ここで区切った方が面白いんじゃないかなというのが一点、そしてもう一つが単純にちょっとペースを緩くしたいなと。
少し前に頭痛するようになっちゃって、それで少しペースを落とそうかなとも思い、今回だけ1話ずつ、感覚を四日ずつ開けて投稿しようと思いました。
のですが、そこに次の問題。作者本人ここ数日睡眠障害、それと過呼吸で死にかけた日がありまして……(;・∀・)

ネイ「これヤバかったんですよね。作者さん寝れない上に頭イライラするって言って、呼吸も苦しくなってって、最終的にそんな発作みたいに起こって……」

グリーフィア「家族にも心配されてすぐに病院に、でもなんともないと言われた上に収まりもしたのよね。ただその二日後、つまりおとといの夜にまた同じようなことになって、すぐさま行きつけの心療内科へ直行と」

原因は生活習慣と言われました。一応薬も追加でもらってます。それで流石にこれ落ち着かないと小説もまともに書けないと思うので落ち着くまでしばらく活動を休止します。多分早くて数日、1週間ちょっとで復帰出来ればと思います。

グリーフィア「理由はまぁそんなところね。とはいえここで区切るとは」

次の話でとある存在が姿を現すので、それまでのお楽しみということです。

ネイ「そういうのもいいですが、まずは今日眠れるかどうかですね。一日おきにしか今眠れていないのでは?」

そうなんですよ……薬ちゃんと効くかな……眠る時間割と早めにしているはずなんですが( ;∀;)

グリーフィア「二日分の疲れで眠れてる、なんて嫌よねぇ。そこは科学の力信じるしかないわね。ということなので、見ている方は理解して頂けると幸いだわ」

ネイ「ちなみにうちのジャンヌお嬢様、この二回の緊急事態で大層心配されています。画面外で今も心配してますし」

ということですので今日は眠りたいです(´Д⊂ヽそれでは皆様、私の回復を祈っててください。それではまた次回。


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