インフィニット・ストラトス タイトルなんて自分で考えなさいな (伊頭音)
しおりを挟む

原作前のお話
始まりはいつも突然


日本都内のとあるアパートの一室、その一室で一人の少年がパソコンの画面とにらめっこしていた。画面には素人では理解できない数式や何かの設計図が映し出されていた。

 

「ここの出力を23%上げて・・・、いやこれだと後でオーバーヒートを起こしかねない・・・。あ~もうダメだ、一旦休憩‼」

 

そう言って少年はパソコンから離れ台所の冷蔵庫を開け作り置きの麦茶を飲み始めた。

 

〈~♪〉

 

丁度飲み終えたタイミングで携帯の着信音が鳴り始めた。

 

「ハイハイ誰ですか~?」

 

そんな独り言を言いながらポケットから取り出すと画面にはあまり見たくない名前が表示されていた。一瞬切ろうかと思ったが後が面倒になりそうだから出ることにした。

 

「何だこっちはプログラム開発で忙しいんだが?それよりなんで・・・」

 

「なんだよ冷たいな~、冷たいのは飲んでる麦茶だけにしてよ。それにそのプログラムだってパソコンに送った自動で感染するCPウィルスと一緒に送ったメモの通りにプログラムに組み替えれば一発だよ。呑気に麦茶飲んだコップなんか洗ってないで早く完成させちゃいなよ」

 

「いろいろ突っ込むとこがあるけどとりあえず後で説教だ‼」

 

少年は急いでパソコンのある部屋に戻りパソコンに向かいウィルスの駆除を開始した。3分後、無事にウィルスを駆除し終えるとまた携帯を取り出し先程の番号に掛け直した。

 

「おおピッタリ3分、それじゃあいっただっきま~す」

 

そして電話越しに聞こえてくる何かを啜る音。電話の向こうではカップ麺を食べてるらしい。

 

「この際食べながらでもいい、俺からの質問は2つ。何で電話番号とメアドを知っている?アンタとアイツ等から逃げ隠れする為に足がつかないように定期的に番号とアドレス、更には住んでる場所も変えてるんだが!?あと何で部屋の中なのに現状がばっちり筒抜けなの!?」

 

少年は怒りながら問いかけた。そして電話越しの()()

 

「ふぅ、ごちそうさま。え~と、2番目の質問の答えは私の優秀な助手が君が寝ている間にその部屋に忍び込んでカメラと盗聴器を仕掛けたから」

 

(さらりと犯罪発言しやがったコイツ)

 

「そして最初の質問は・・・」

 

そこまで聞いた瞬間、部屋の窓が()()()()()、外から電話相手の()()が少年目掛け文字通り飛び込んできた。青と白のワンピース、そして頭には機械のウサ耳。一人で不思議の国のアリスを表現したような恰好。そして彼女は少年に馬乗りになりながら

 

「この私を誰だと思ってるのかな?なんでも出来る天才束さんだよ?」

 

「天災の間違いだろ」

 

その一言を発した瞬間、少年は彼女、篠ノ之束の頭を掴んだ。束の唯一の親友(向こうがどう思っているかは分からない)織斑千冬直伝のアイアンクローである。威力は本人のお墨付き。

 

「イダダダダダダダダダ、ハル君痛い、痛いよ⁉ちーちゃんより痛い‼爪が、遠慮なく爪が思いっきり刺さっててアダダダダダダダダダダ‼」

 

「よーしこの隙に千冬(化け物)に連絡を・・・」

 

「くーちゃん‼ヘルプ‼ヘルプ‼このままじゃ束さん頭をクルミみたいに割られた挙句、鬼に食べられちゃうよ‼」

 

束の声に窓の外からではなく部屋の入り口の方から一人の少女が入ってきた。

 

「失礼します。春斗様、お久し振りです。心中お察ししますがクルミ割りはお止めになった方が宜しいかと。後処理が大変ですよ?」

 

「くーちゃんがちーちゃんみたいなこと言ってる⁉」

 

「ようクロエ、この駄兎が言ってたが不法侵入は関心しないな。でも来たなら来たで顔出しな?茶くらいはだす。あと悪いがそこの棚の上の木箱取ってもらえるか?お前に免じて中の麻袋と荒縄での拘束にするから」

 

「へぇ、ハル君にそんな趣味があったなんて束さんドン引k」

 

「お前みたいなのが来た時用だよ‼」

 

「ギァアアアアアアアアアアアアアアア‼」

 

天災の断末魔を聞きながら少年、天城春斗は大きなため息をつくのだった。

 




タグにもありますが更新が遅いと思いますので長い目で読んでいただけると幸いです。

それではまた次回お会いしましょう。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

これが権力だ(強制入学)

駄兎(たばね)を黙らせ拘束した後、春斗は自分とクロエの分のインスタントコーヒーを入れ、束の前に座った。一方束は頭に麻袋を被せられ、腕を後ろで縛られ、石抱を執行されていた。この絵面だけを見るとその人の趣味を疑われるが、受けている本人は顔色一つ変えておらずニコニコと笑ってた。袋の中でであるが。

 

「で?今回俺を見つけ出した理由は?内容によっては石を一つ増やすぞ」

 

「そんなに怒らないでよハル君、今回は束さんからの簡単な依頼だよ。ハル君にとっても悪くはない内容だからさ」

 

「ほう?」

 

束の返事を聞いて春斗はクロエの方を見た。クロエも首を縦に振り

 

「はい、今回ばかりは春斗様にとっても悪くはないお話です。寧ろ暫くは追手もなく安全な生活が出来るようになるお話です」

 

春斗は視線を束に戻し「内容は?」とだけ聞いた。

 

「えーとね、ハル君IS学園は知ってるよね?」

 

「嫌でも知ってるよ。お前が作ったISの基礎を学ぶために造られた学園だろ」

 

「そのIS学園にね、今年私の最愛の妹である箒ちゃん、ちーちゃんの弟のいっくんが入学することになったんだ」

 

「おい、話の流れ的にまさかとは思うが、俺にそのIS学園に入って二人の護衛をしろとか言うんじゃないだろうな?」

 

「護衛しろとまでは言わないよ。ただもしも何かあった時は助けてあげてほしいんだ。これはあくまでお願いだから強要はしないよ。手続き云々は束さんがやっておくから安心して」

 

確かにIS学園なら学園の外からの力は及ばない。学園にいれば少なくとも3年は安全に暮らせる。ISに関する設備だってどこよりも充実している。悪い話ではないが

 

「その話、悪くはないが大丈夫か?ニュースでも見たが、確かに今年は織斑一夏が学園に入学する。だがあいつはイレギュラーだ。そこに別のイレギュラー(俺みたなの)が追加で入学しても良いのか?」

 

「だからその辺は大丈夫だって。学園には束さんが『私の助手の男の子を一人入学させるからよろしく。断った場合、学園にあるISの機能こっちで全部止めるから』って手紙で伝えてあるから」

 

「それ交渉ってより脅迫だよな」

 

「権力っていうのは持つだけじゃなく行使してこそ意味があるんだよ」

 

束は袋の中でドヤ顔を決めながら胸を張った。腕を後ろで拘束してるため束の大き目な胸が揺れたが春斗はそれを気にせず顔に手を当て、大きなため息をついた。そこで春斗は気付いた。

 

「ん?メールを送ったってことはもう実質俺には拒否権は無いんじゃ・・・」

 

‘‘ガゴン‼‘‘

 

春斗が呟いた瞬間、束の足元の床がいきなり円状に崩壊しそのまま下の階の部屋に落ちた。それを追うようにクロエも「コーヒーご馳走様でした」とすれ違い際に呟きながら崩れた穴に飛び込んだ。

 

「あっ、てめぇ‼」

 

「じゃあそういうことだからよろしくね~。詳しいことはパソコンの横にあるメモに書いてあるから~」

 

穴を除くと束とクロエの姿は無く、瓦礫だけが残っていた。崩壊した床を見るに後ろ手に吾輩は猫である(名前はまだない)を使って()()()()()()()()()()ようだ。

 

「あんにゃろめ、下の階に住人がいたらどうするつもり・・・、いやそんなのお構いなしでやるかアイツは。」

 

偶然にも下の階に住人は住んでなかった為、春斗は一安心しながらパソコン横に置いてあったメモを読んだ。

 

「えーと、学園入学手続きは・・・3月15日午後18時迄」

 

春斗はメモを見て戦慄した。今日の日付は3月15日、時間は午後17時40分。残り20分。

 

「あんの駄兎がぁぁぁぁぁぁぁ‼」

 

春斗は必要な証明書や書類を大急ぎでバックに詰め込み、玄関からは出ずに束が入ってきた開いたままの窓に向かい走り出し、

 

「今度会ったら覚えとけぇぇぇぇぇ‼」

 

そのまま外に飛び出し()()()I()S()()()()IS学園のある方へ飛んで行った。




おはこんにちばんは。伊頭音です。一日空きましたがこんな調子で投稿できるよう頑張ります。それではまた次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

春斗のスペック大雑把に紹介

筆(指)の進み具合が絶好超だったので連続投稿です。それではどうぞ。


午後17時57分。IS学園職員室で織斑千冬と山田真耶はコーヒーを飲みながら春斗の来客を待っていた。校門前の受付にも事情を説明し、それらしい人物が来たら連絡を入れるようには伝えてある。しかし受付最終日の締め切り時間3分前。この状況に流石に真耶も不安になってきた。

 

「大丈夫なんでしょうか?いくらあの篠ノ之博士の助手の方とはいえ、こんな時間になっても来ないとなるとあの手紙がいたずらだったんじゃないかと思えてくるのですが・・・」

 

「山田君の気持ちはわかるが、あのバカ(天災)を知っている私からするとこれがアイツの普通だ。大方、今から30分くらい前にその助手に入学の件を伝え、慌てる姿を見て楽しんでるんだろう。まったく、春斗(アイツ)には同情する」

 

千冬はコーヒーを飲み干し一息ついた。

 

「織斑先生、その助手さんの事知ってるんですか?」

 

「ああ、以前訳あって実家に住まわせた事がある。うちの愚弟とも知り合いだ」

 

「(実の弟に愚弟って・・・)どんな子なんですか?その天城春斗君というのは」

 

興味津々というように真耶が質問する。そんな質問に対して千冬は

 

「器用貧乏だが少し変わった奴だ。掃除・洗濯・料理は平均以上に出来るが自分から進んでやろうとはしない。その癖その技術を他者に教え込むような奴だった。まるで自分を超えてみろと言わんばかりにな。あと機械弄りも得意だった。壊れた洗濯機をバラして元の使える状態に修理したり、その辺のゴミ処理施設にあるようなジャンク品で一から当時の最新スペック並みのパソコン作ったりな」

 

「最初はともかく、後半は普通じゃないですよね」

 

真耶は一応ツッコミを入れるが千冬は気にせず続けた。

 

「それとISに関するプログラムのプログラミングは大人顔負けだった。特に空間に干渉するタイプが得意でな、確か今の中国の第三世代兵器の『衝撃砲』だったか?あれはアイツが作ったプログラムを基に開発されたらしい」

 

「織斑先生、もういいです。聞いてて頭が痛くなってきました」

 

春斗のスペックの高さに真耶の頭が処理不足を超し始めた。そんなタイミングで備え付けの電話からコールが鳴った。千冬は電話に出て電話を切ると。真耶に告げた。

 

「どうやらその本人が来たようだ。迎えに行くぞ」

 

「・・・はい・・・。」

 

そして二人は春斗が案内されている応接室に向かった。

 

 

―応接室—

 

「間に合ってよかった~」

 

ステルス迷彩機能を使い空を飛び、誰にもバレず無事に学園に着いたのは締め切り1分前。受付の人からも苦笑いされながら応接室に案内され、担当の人を待っていた春斗。飛びながら必要な書類の記入は済ませたため後は渡すだけの状態である。そして待つこと4、5分後、部屋のドアが開いた。

 

「久し振りだな天城。半年振りか」

 

「あ、化け物(千冬さん)。久し振りだな。そういえばここの教師やってたんだっけ?」

 

「一度目だから許すが、ここでは織斑先生と呼べ。あとなんとなくだが一発殴らせろ」

 

「はーい織斑先生。あと暴力反対」

 

そんな軽い挨拶の後必要な書類を渡したり、署名を全て済ませ無事入学手続きを済ませた。

 

「ところで天城、最後に実戦形式のテストの話だがISは使えるのか?」

 

最後に千冬が確認するように質問してきた。

 

「いや織斑先生、いくら篠ノ之博士の助手とはいえ弟さんみたいにISを動かせるとは・・・」

 

千冬の質問に真耶は否定するような反応をしてしまったが

 

「ええ、使えますよ?」

 

そう言って春斗は右腕を前に突き出し腕だけISを部分展開をした。それを見た千冬は「分かった」と呟き書類にペンを走らせ、真耶はそのまま絶句した。

 

「では都合の良い日時はあるか?」

 

「明日の12時以降ならいつでも大丈夫ですが?」

 

「では、明日の15時もう一度学園に来てくれ。ISの実戦形式のテストを行う。細かいルールはその時に説明する。では今日はもう帰っていいぞ」

 

千冬からそう言われ一度アパートに戻るため挨拶を済ませ応接室を後にした春斗。IS学園は小さな島の上にあるため帰りは近場の陸地まではISで飛び、他は公共の電車等を使い帰宅した。しかし春斗は帰宅中ある事で頭がいっぱいだった。それは・・・

 

(あの駄兎が壊した床の修理代、一体いくらになんだろう・・・)

 

学園に入るより入るまでの後始末の事で頭がいっぱいだった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

春斗、修羅と一騎討ち

翌日、春斗は早朝にアパートの大家さんと話をした。壊した部屋の修理、学園の寮で暮らすことになるのでアパートからの退居手続きである。修理の方は元々下の階は修理が必要だったとのことで、大きなお咎めはなく修理費は要らないと言われた。退居手続きも書類にサインをするだけですんだ。こんなに簡単でいいのか?手続きを終えると春斗は直に荷物整理に入った。細目に引っ越しをしていたため大きな荷物も無く、運べないような物はISの拡張領域(バススロット)に入れた。荷物を纏め終え大家さんに挨拶をし、アパートを出た春斗はそのままIS学園に向かった。

 

 

 

—IS学園—

午後15時、春斗は学園の校門前で立ち入り手続きを済ませ昨日と同じ応接室でお茶を啜っていた。流石国のお金で作った施設、銘菓の茶菓子と良い茶葉を出しよる。と若干精神が爺化しているところでドアからノック音が聞こえた。ドアが開くと千冬と真耶の二人が入ってきた。

 

「待たせたな、これからISを使った実戦形式のテストを行う。移動しながら説明をするから付いてこい」

 

そう言われ春斗は応接室を後にした。アリーナがある場施設に向かいながら真耶がテストの説明を始めた。テストはISを使って一対一の試合で、使用する機体は公平にするようこちらが《打鉄》か《ラファール・リヴァイヴ》を選び、教員もそれと同じISを使い試合を行う。勝敗はSEが0になるか降参するかで決めるらしい。武装も本人の使いやすい武器に変えるなり追加してもOKとの事。

 

そうしてアリーナのある施設に着き、更衣室でISスーツに着替え、ピットまで行くと真耶が待っていた。

 

「では天城君、《打鉄》と《ラファール》、どちらにしますか?」

 

「じゃあ打鉄で、装備はどこで換えれます?」

 

「天城君の後ろにあるコンソールですね。設定してから機体をハンガーにあげますね」

 

そう聞いて春斗は後ろにあったコンソールに向かい武装設定画面を操作し始めた。自分の使いたいと思っていた装備は一通り揃っていたためスムーズに設定を終えた。

 

「山田先生、変更が終わりましたよ?そういえば対戦相手は誰で?織斑先生の姿が見えないから織斑先生が相手なんて事は…」

 

春斗が冗談半分で質問すると真耶が僅かに顔を引きつらせ告げた。

 

「え、マジで・・・?」

 

『私だ』

 

「お、織斑先生です・・・」

 

それを聞いて春斗は内心で叫んだ。テストのレベルがいきなりレベルMAXである。

 

(だからあの人歩きながら身体の筋肉解すようなストレッチしながらあるいてたのか‼いくらなんでもテストのハードル上げすぎだろ‼)

 

「で、ですが、このテストは勝敗ではなくISをどれだけ動かせるかを見る為のテストなので織斑先生に勝てと言ってる訳ではないですよ??」

 

真耶はフォローを入れるがあの人外(化け物)の性格を知ってる春斗は次に千冬が言うであろう言葉をなんとなく予想していた。

 

『山田先生、今回のテストは少し内容を変更する』

 

予想的中

 

「へ、変更ですか??」

 

『制限時間は30分、時間内に私に攻撃を三発当てる事。当たりの判定は掠る程度はノーカウント、確実に当たったものだけで判定する。私からの攻撃はいくら喰らっても構わん。安心しろ、攻撃を当てられなかったから入学取り消しなんてことはせん』

 

その声は心なしかいつもより笑っている気がした春斗と真耶の二人。二人は一度顔を合わせ数秒見つめ合い、真耶が胸の辺りで両手を合わせ静かに合唱した。それを見て春斗は呟いた。

 

「最悪だ…」




それでは皆様また次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

春斗、修羅と対峙

お久し振りです。戦闘描写ってやっぱ難しいですね。(;´д`)

それでは本編スタートです


ピットから出た春斗は一度フィールドの中央に降り、後から出てきた千冬も春斗の前に降りてきた。

 

「さて、これより試験を始めるが何か質問はあるか?」

 

「ルールを元のルールに戻して」

 

「却下だ」

 

「ダヨネー」

 

春斗は駄目元で抗議したが秒で却下された。返事を聞いて春斗は諦め修羅(千冬)と戦う覚悟を決めた。そんな中、千冬は春斗の設定した打鉄を観察していた。

 

「シールドを腕につけ腰回りの装甲を外したか。その見た目から考えると、シールドの防御性能を駆使したインファイトスタイルか?」

 

「そこまで正確に戦略当てられるともう戦う気力が一気に無くなるんだが」

 

「だがお前の事だ、隠し玉を何かしら持ってるんだろ?なら大丈夫だろ」

 

「もう試合放棄していい?」

 

手の内を全て知られてもう嫌だと言いたいように春斗は千冬に聞き返した。

 

「それでは試験を開始します。両者位置についてください」

 

真耶のアナウンスで二人は一度離れ投映されたラインの上に立った。

 

『3』

 

カウントが始まり千冬は近接ブレードの『葵』を、春斗は小太刀タイプの武器『弧月』を二本手にし、

 

『2』

 

そして両者は構えた。

 

『1』

 

『試合開始‼』

 

合図と共に千冬は春斗目掛け駆けスラスターで加速し距離を詰めた。それに対し春斗は両手に持った弧月を時間差をつけて千冬目掛け投げつけた。それを千冬はブレードで弾きながら距離を詰め間合いに入り剣を振るった。春斗はその一撃を両腕につけたシールドで防いだ。そしてそのまま鍔競合いになって三秒程、春斗は一度距離を取る様後ろへ下がった。

 

「逃がさん」

 

追撃をしようと千冬が前に踏み出した瞬間()()()()()()()。春斗は鍔競合い中、シールドの陰でグレネードを取り出しピンを抜き起爆の直前に手離してから後ろへ下がっていた。

 

「まず一発」

 

春斗は拡張領域(バススロット)からアサルトライフル『焔備』を取り出して構え、後退しながら煙が晴れるのを待った。

 

「シールドの死角を利用した攻撃、中々のアイデアだ。残り二回もその調子でがんばれ?」

 

声が聞こえた後、煙の中から千冬がまた春斗目掛け距離を詰めてきた。焔備で牽制するが弾をブレードとシールドで防ぎ、瞬間加速(イグニッション・ブースト)で更に加速。防御が間に合わず焔備を盾にして一太刀目は防いだが返しの二太刀目は春斗の胸元を切り裂いた。苦悶の表情を浮かべた春斗だが、そんなことは構わず更に切り込んでくる千冬。三太刀目からは春斗も葵を取り出し剣の打ち合いになった。

 

一回、二回、三回、四回、五回・・・

 

打ち合いは続くが少しづつ春斗が押され始めた。単純に元の腕力の差である。そして腕に限界が来たのか春斗は葵を弾き飛ばされ、それを逃さず千冬そのまま切りつけた。だが春斗はそのままブレードを受け止めるように両手を突き出した。だがその両手にはまたグレネードが握られていた。

 

「同じ手が通じると思ってるのか」

 

グレネードが握られてるのを見て千冬はすぐに後ろへ下がった。そしてそのまま春斗が手にしていたグレネードは起爆した。しかし先程と違い起爆すると大量の白煙が舞い上がった。

 

「今度はスモークで視覚を奪いに来たか」

 

その後立て続けに起爆音が聞こえ、辺りが白煙で視界が確保できない状態になった。千冬はISのレーダー機能を使い春斗の居場所を探したがスモーク以外にもチャフグレネードを使ったのか探知できなかった。

 

(ここまでするとアイツも私を確認できない筈、何を狙っている?)

 

千冬はその場から無闇に動かず奇襲に気を付け警戒を始めた。

 

数秒後何かが落下する音が聞こえ始め、幾つかは千冬の近くにも落下した。目視出来た落下物に千冬は違和感を抱いた。意図的に起爆させなかったのか、起爆せずにそのまま転がるグレネード。起爆するも出てきたのは煙というよりは()()()()()()()()・・・。

 

そこまで考え千冬はまさかと思い耳を澄ませた。起爆しなかったグレネードからは『シュ———』という()()()()()()()()()()、そして鼻に来る刺激臭。それを確認すると千冬は急いで煙の外を目指した。しかしその場から動いた瞬間、千冬の視界は光の包まれた。

 

 

 

—千冬が光に包まれる数秒前—

 

煙の外で春斗は真耶からの回線に耳を傾けていた。

 

『天城君!いくらなんでもこれはやりすぎです‼』

 

「大丈夫大丈夫。IS使ってるし、こんなんで死ぬ化け物(ヒト)じゃないから」

 

真耶は通信で春斗がやろうとしていることを止めさせようと説得していた。

 

『だとしてもやりすぎです‼()()()()()()()()()()()()()()は危なすぎます‼』

 

そう、春斗がしようとしてるのは粉塵爆発とガス爆発の同時爆破である。これならISのSEを確実に減らし、運が良ければISが解除されて試合が終了する。

 

「だってしょうがないだろ‼山田先生は30分も本気のあの化け物を相手に出来ますか‼」

 

『確かに無理ですけど・・・、ですが物事には限度というものが』

 

「あーあー、チャフのせいで声が聞こえませーん」

 

『たった今まで会話してたでしょう‼』

 

春斗は通信を切り、煙が充満している場所目掛け

 

「レッツ爆裂☆エクスプローーージョン‼‼」

 

そんな台詞を吐きながら起爆剤代わりのグレネードを投げ入れ、用意してた大型シールドの陰に隠れた。そして

 

 

『——————ッッッ‼‼』

 

 

大きな爆発が起こりアリーナが揺れた。爆風に煽られシールドごと吹き飛んだ春斗だが、アリーナの壁に背中からぶつかり停止した。

 

「ごふっ、いたたた、壁際で起爆すればよかったか」

 

「そうだな、次があればだがな」

 

「あのさ、こうなるような気はしてたけど、あれで倒しきれないとなるとどうすればあんた倒せるの?」

 

春斗の隣には千冬がいた。春斗と同じく吹き飛んだのか、壁に背中を預けた状態で。それに無傷とはいかなかったのか装甲の所々が壊れていた。

 

「この大馬鹿者、私相手の手段とはいえやりすぎだ、流石に私も肝を冷やしたぞ。周りに目立った被害が出てない辺り、お前が計算して爆破したんだろうが・・・」

 

「説教してていいんですか?まだ試合中ですよ?」

 

「は?」

 

春斗の問いに千冬は素っ頓狂な声を上げた。

 

「あと一回」

 

「お前まさか」

 

「さっき言ったでしょう。()()()()()()()()()()()()って」

 

春斗と千冬の距離は僅か2m。

 

「これで三回目」

 

春斗は持っていたシールドを裏返し千冬の方に向けた。そこにはピンを抜いたグレネードが数個ぶら下っていた。

 

「アデュー♪」

 

そしてグレネードが起爆し、爆風が千冬に襲い掛かった。

 




「粉塵爆発とガス爆発の同時爆破」って文章的に違和感がありますけど、どう書けばよかったんですかね?

次回は春斗が千冬に説教されてる所から始まります(笑)

それではまた次回


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

試験終了、学園最強(笑)とエンカウント

お久し振りです。伊頭音です。投稿が遅れました。取り敢えず本編スタートです。


試験が終わり、春斗と千冬の二人は真耶のいる方のピットに戻っていた。

 

「お疲れ様でした織斑先生。天城君も頑張りましたね」

 

「まあ久し振りのいい運動にはなったか。山田君、すまないがアイスコーヒーを頼む」

 

『こっちは気が抜けなくて精神的に疲れましたよ。あ、山田先生、良ければでいいんで俺にもコーヒーください。』

 

「良いですよ。では少し待っててください。天城君はホットとアイスどちらにしますか?」

 

『ホットで。』

 

それを聞くと真耶はピット横の管制室にコーヒーを取りにいった。

 

「それにしても自分で言うのもあれだが、よく私に勝てたな天城」

 

只待つのも暇なので千冬は春斗と雑談を始めた。

 

『いや、今回は偶然の作戦勝ちですよ。織斑先生が最初から俺を〇す気でかかって来てたら流石に負けてましたし。』

 

「教師が一生徒に向かって〇す気でかかる訳無いだろ、馬鹿者。それに最後のは私も予想外で避けれなかった。その点では褒めてやってもいいぞ」

 

『ありがとうございます。』

 

「そういえばお前、助手という名義での入学手続きだったが、本当にあの天災(バカ)の助手をやってるのか?」

 

『まさか、そんな訳無いだろ?本当にあの天災(バカ)の助手なんかやってたら、今頃勝手に身体を弄られて文字通りの改造人間になってら。声が『イーッ!』だけになるぞ?』

 

『実際はあの天災(バカ)と面倒な奴等からの逃亡生活してたんであの天災(バカ)関わりは殆ど無いですよ。』

 

何処かで「そんなにバカバカ言わないでよ‼」という声が聞こえた気がした。

 

「面倒な奴等?」

 

「お待たせしました」

 

話の途中で真耶がコーヒーを持って戻ってきた。トレーにはコーヒーが二つと砂糖、ミルクが乗っていた。

 

「はい織斑先生。天城君は何か入れますか?」

 

「ありがとう山田君」

 

『ありがとうございます。砂糖三つとミルク一つでお願いします。』

 

千冬にカップを渡し、春斗の要望の物を入れ、カップを渡そうとした真耶だが・・・

 

「ところで天城君?その状態でどうやってコーヒーを飲むつもりですか?」

 

実は春斗、ピットに戻ってからずっとISを纏った状態の千冬のアイアンクローを受けていた。生身の状態で。

 

『やっと突っ込んでくれましたね。』

 

何故こうなっているのか。理由は簡単、千冬の八つ当たりである。春斗に負けたのが悔しいのか、まんまと策にハマってしまったのが悔しいのか。本心は本人でないと分からない。ISを纏った状態の為、春斗は顔というよりは頭を掴まれ、尻尾を掴まれた魚の様にぶら下がった状態である。会話はどこからか取り出したスケッチブックとペンを使った筆談となっている。しかも達筆で。

 

『このまま装甲にコーヒーを垂らして隙間から流れてきたのを飲みます。』

 

「私のアイスコーヒー用のストローをやろう。これで隙間に差して飲むといい」

 

「火傷しますよそれ!?」

 

『大丈夫だ、問題ない(`・ω・´)(キリッ)』

 

「天城君も随分器用ですね!?」

 

そんな会話をしながらも、試験は無事終了した。

 

 

 

—アリーナの外—

 

春斗と千冬は一度着替え真耶と合流し、三人は学園の寮に向かった。

 

「天城君、何故女装してるんですか?」

 

「この時間は他の生徒が出歩いてる時間だからな。今学園内に男子がいると喧しくなると思って私が女装させた。中々の出来だろう?」

 

「逃走生活する中では必須スキルですからね。背丈が似てるんでその気になれば山田先生そっくりにもできますよ?胸は詰め物になりますけど」

 

「もう天城君に質問するのは野暮なのではと思えてきました・・・」

 

質問の答えを聞いて真耶は『もう疲れた』という感じで片手で頭を抱えた。

 

「昨日も伝えたが今日から登校初日までの約二週間、ここの寮で暮らしてもらう。なにか必要な物があれば私か山田君に連絡を入れろ。それと食事だが朝は7時半、昼は12時半、夜は6時半にこちらで用意する」

 

「それと寮は基本二人一組ですが、天城君は事情が事情なので特別に二人部屋を一人で使ってもらいます」

 

「あれ、一夏(アイツ)と同じじゃないの?」

 

「最初はそうしようと思ったのですが、もしどこかの違法組織が二人を誘拐しようと侵入した時、別々の方が手を打ちやすいとのことで話が決まりました」

 

「そういうことだ。だからと言って女を連れ込むなよ?」

 

「しませんて。第一そんなことしたら目の前の鬼(織斑先生)の鉄拳制裁だろ」

 

「貴様今変な変換しなかったか?」

 

「シテナイデース」

 

そんな会話をしているうちに寮に着いた。着くと千冬が部屋の鍵を渡し春斗は受け取り挨拶をした後、二人と別れ部屋に向かった。

 

「753、753・・・あった、この部屋か」

 

自分の部屋に着いて一度周りを確認する。逃走生活してるうちについた癖の一つである。

 

「いかんいかん、つい癖が。なんか疲れたから飯の時間まで寝るか。荷解きは飯の後でいいか」

 

現在17時23分。食事までは一時間程時間があった。寝ると意識したからか、眠気が急に襲ってきた。そんな状態で春斗は部屋の鍵を開錠してドアを開けた。

 

「お帰りなさい。ご飯にします?お風呂にします?それともわ・た・し?」

 

ドアを開け中を見ると部屋の中には裸エプロンの痴女が立っていた。




ここ数日仕事でファッ○ンなシフトを組まれ、中々投稿出来ませんでした。しばらくは前みたいな投稿ペースに戻るので引続きお楽しみ下さい。それではまた次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

学園最強(笑)討伐?クエスト

春)「何で投稿こんな遅れたの?」
作)「寮に決闘者(デュエリスト)が引っ越してきたりスマブラしたりFGOに手を出してたから」

そんな事があって投稿が遅れてしまいました(焦)。
取り敢えず本編スタートです。


「お帰りなさい。ご飯にします?お風呂にします?それともわ・た・し?」

 

先程までの眠気が吹き飛び、春斗は一度ドアを閉めスマホを取り出し千冬に電話を掛けた。

 

『どうした天城、さっき別れたばかりだが』

 

「俺の部屋の鍵渡し間違えてません?」

 

『いや、間違えてはない。部屋番号は753の筈だが?』

 

「そうですか。また掛け直します」

 

そう言って通話を切った。そしてもう一度ドアを開けた。

 

「お帰り。私にします?私にします?それともわ・た・し?」

 

「じゃあ、お風呂で貴女を戴きます」

 

「え?」

 

春斗の発言に目の前の痴女は頬を赤く染め硬直した。春斗はそのまま痴女を抱え上げシャワー室の前まで運ぶと中に放り投げ、素早くドアを閉めた後ドアノブを破壊した。更にドアが外開きだったのでISの拡張領域からクローゼットを出しドアの前に置き閉鎖した。そしてスマホを取り出しスピーカー機能をONにして千冬に電話を掛けた。

 

『さっきの電話はなんだ。用が無いなら電話するn』

 

「部屋の中にいた不審者を捕まえました。今シャワー室に閉じ込めてますが、不審者が施設を破壊してでも逃げようとした場合は実力行使でいいですか?」

 

『許可する。今から向かうがあまり物を壊すなよ?壊したら両者罰金だからな』

 

『その声は織斑先生!?ストップ!ストップ‼謝るから織斑先生を呼ぶのは勘弁して‼』

 

シャワー室の痴女の声が聞こえるがマイク部分を指で塞いだので千冬には聞こえなかった。そして三分もしないうちに千冬が到着した。

 

 

 

「で、天城に呼ばれて来たが訳だが、何をしている更識生徒会長」

 

「え?生徒会?この痴女が?」

 

「悪かったのは私だけど痴女って言わないでくれる?流石のお姉さんも傷付くんですけど」

 

千冬が到着すると痴女をシャワー室から出した。そして中から出てきたのが生徒会長と言われ春斗は思わず聞き返した。

 

何故部屋に居たのかを聞いたところ、春斗が入学するという情報を手にしたこの生徒会長は春斗がどんな人間なのかを確認するためドッキリを仕掛けようとしたらしい。結果は自分が返り討ちにあった訳だが。

 

「生徒会長として彼がどんな人間かを確認したくて。結果は返り討ちだったけどね」

 

「こいつの人間性に関しては私が保証する。ここの女生徒に手を出すような奴ではない。第一そんな奴だったら私が始末している」

 

「始末とか言うなよ」

 

そんな春斗のツッコミを無視し千冬は「食事の時間までにドアノブの破損届を書いておけ」と言ってから職員室に戻った。

 

「改めて自己紹介するわ。私はこのIS学園の生徒会長更識楯無よ。気軽に楯無お姉さんと呼んでいいわよ」

 

「その恰好で言っても何の説得力も無いんだが・・・。天城春斗だ。これから二年間よろしく頼む、更識会長」

 

「お姉さんとは呼んでくれないの?」

 

「気が向いたら呼んでやるよ。とりあえず今日は帰ってもらっていいか?こっちは化け物(織斑先生)と戦って疲れた。明日でよければ話し相手になる」

 

「そうね、今日は大人しく帰るわ。また明日ね、春斗君」

 

そうして楯無は部屋を出て行った。その後眠気が少し取れていたので先に荷程きを済ませ夕食を食べた後ゆっくりと眠りに着いた。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

原作一巻
入学式だよ!全員集合‼


お久し振りです。帰ってきた伊頭音です。年末から一月一杯は仕事に追われ、二月に入るとパソコンがバグり二度データが消えるというトラブルがありましたが無事投稿できました。それでは本編どうぞ。


二週間の間に楯無に学園の案内、一般的な施設やIS学園特有な施設、春斗や一夏、即ち男子が使用可能になる予定のトイレや更衣室を教えてもらった。

他にも生徒会室でのお茶会に招待されたりした。そこで副会長の布仏虚とその妹の本音とも仲良くなった。お茶会に誘ってもらった礼に一度生徒会の手伝いをすると、楯無が事あるごとに虚の入れる紅茶を餌に春斗を呼び手伝いをさせる様になった。そして春斗の知らない内に楯無が春斗を生徒会の庶務にしていた事を知るのは今からそう遠くない未来の話である。

 

 

 

そして二週間が経過し入学式当日。千冬に連れられ編入先の部屋に向かう春斗。道中他の生徒はいなかったので女装はしていない。

 

「俺のクラスって織斑先生のクラスなんですね」

 

「当たり前だ。イレギュラーは一か所に纏めた方がいいのに決まっているだろ。着いたぞ。中から私の合図があるまで待ってろ」

 

そういって千冬は教室の中に入っていった。入って数秒後、景気の良い何かを叩いた音が聞こえてきた。更に数秒後には大音量の黄色い声が響き渡った。そして静かになって数分後、千冬の合図が聴こえ教室の中に入った。

 

 

 

—教室内—

 

「これでSHR終わるがその前に滑り込み入学の生徒を紹介する。入ってこい」

 

その声を聴いて春斗は教室に入った。教壇の横まで行くと全体を見るように体の向きを変えた。千冬に自己紹介するよう促され少し考え

 

「えー、天城春斗です。世間に公開はされてない二人目のIS男性操縦者です。趣味は多趣味だけど得意なのは情報収集と機械弄りで、IS関連の事とかも得意です。ここに来る前はIS関連の自作プログラムをネット経由で企業に販売したり、情報屋紛いの仕事をしてました。その辺りの依頼があれば商談するんでどうぞよろしく」

 

自己紹介を終えると教室が静まり返った。滑ったのかと思った春斗だが次の瞬間黄色い声が再び響いた。

 

「二人目の男子!!」

 

「しかもうちのクラス!!」

 

「神様ありがとう!!」

 

「夏の新作ネタ確保(ボソッ」

 

など一部はアレだが歓迎の声が多かったので取り敢えず安心した春斗。自己紹介を終えると指定された席(一番後ろの列の真ん中)に座った。そして千冬は必要な連絡事項を伝えるとSHRを終わらせ真耶と共に教室を出て行った。二人が出て行くと教室内の女子が春斗と一夏に別れ一斉に集中した。だが、話しかけたいと思いながらも他の女子を気にして話しかけるのを躊躇っている状態だった。ある二人を除いて。

一人は篠ノ之箒、他の女子同様話しかけるのを躊躇っていたが覚悟を決め一夏の席へ向かいそのまま教室から連れ出した。そしてもう一人は

 

「おはよ~ハルハルー。同じクラスだったねー、よろしくー」

 

もう一人は布仏本音だった。まったりとした足取りで春斗の席に向かい春斗に話しかけてきた。『ハルハル』というのは春斗の事である。

 

「よぅ本音、相変わらず眠そうだな。眠気覚ましに飴でも食べるか?」

 

「うん、食べるー」

 

すると春斗は制服の袖(袖の部分を浴衣の様に改造している)から適当な飴を取り出し包みの封を切って中身だけを本音に渡した。それを受け取り口に入れた本音だったが入れて数秒後、

 

「ハルハル~、これハッカ飴じゃん~」

 

若干泣き目になりながら訴えてきた。それを見て春斗はからかう様に笑いながら

 

「いい目覚ましじゃねぇか、それにルアミサッキじゃないだけマシだと思え」

 

「うぅ~、ハルハルの意地悪~」

 

「ハッハッハッ、ほれ、それ出しな。今度はブドウ味の飴だ」

 

ハッカ飴の入っていた包みとブドウ味の飴を渡した。本音は飴を包みの中に戻し新しい飴を口に入れた。ハッカの飴は(お姉ちゃん)にあげようといって本音がポケットに入れた。そして雑談をしているうちに次の授業の予鈴が鳴り本音は自分の席のに戻り、一夏と箒も教室に戻ってきて席に着いた。そして千冬と真耶も教室に戻り授業が始まった。




次回は二週間以内に投稿出来たらなと思います。それではまた次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

なんだかチョココロネが食べたくなったな

思いのほか早く投稿できました。最近リアルでもサブタイのような状態になってます(どうでもいいわ)。
それでは本編開始です。


一、二時間目の授業が終わり春斗は椅子に座りながら伸びた。授業の内容は春斗にとっては簡単を通り越して退屈だった。ISの基礎理論についての授業だったが春斗は授業内容を聞き流しながらISのプログラムを作成していた。時折授業内容に付いて行けず狼狽える一夏を見ては面白がったりもしていたが。

 

伸び終わると春斗は席を立ち一夏のいる席へ向かった。

 

「参考書を電話帳と間違えて捨てるとかお前は阿保か」

 

「は、春斗。久し振りだな、何でIS学園に入学してんだ?今までどこに行ってたんだ?あとこの状況から助けてくr」

 

「喧しい、落ち着け、取り敢えずダマレ」

 

最後にそう言って春斗は一夏の机の上にある教科書で頭をチョップするように叩いた。『ゴン‼』と良い音がすると同時に一夏が頭を抑え静かになった。

 

「い、痛い」

 

「今の質問に順で答えてやる。まず一つ目、さっきお前を連れ出した篠ノ之箒の姉、あの駄兎に強制的に入学させられた。()()()()I()S()()()()()()()()()()()()()()。二つ目、約一年前お前の家で世話になった後、自己紹介の時に言ったように一人で稼ぎながら生活していた。まぁ置き手紙だけ残していきなり居なくなった事は謝ろう。俺個人の事情があったからな。そして三つ目、それに関しては諦めろ」

 

答え終わると二人は何気ない会話を始めた。久々の再会で積もる話もある中、

 

「ちょっと、よろしくて?」

 

会話を妨げる様に一人の生徒が話しかけてきた。

 

「へ?」「あ?」

 

二人は話しかけてきた生徒を見た。

 

「何ですのそのお返事。私に話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度があるのではないかしら?」

 

「悪いな、俺、君が誰か知らないし」

 

「おい一夏、さっき自己紹介してただろう?イギリス代表候補生のセシリア・オルコットだよ」

 

感情のままに喧嘩腰(本人にその意識はない)で返答する一夏にフォローするように説明しながら返事をする春斗。

 

「すまない、この一夏(バカ)が失礼をした」

 

「春斗いきなり人をバカ呼ばわりするn」

 

途中で一夏をデコピンで黙らせ耳打ちする。

 

(バカ、この手の奴はあまり刺激するな。後々面倒だ。ここは俺に任せろ)

 

(わ、わかった)

 

「なにをこそこそ話してますの?」

 

「いや、何でもない。で、何の用で?」

 

一夏が出しゃばらないように釘を刺しセシリアの対応をする春斗。

 

「せっかく同じクラスになったのでご挨拶に来ました。この代表候補生であるわたくしが…」

 

「あ、一つ質問いいか?」

 

(こんのバカ)

 

忠告を無視し一夏がセシリアに質問をした。

 

「下々の要求に応えるのは貴族の務めですわ。よろしくてよ」

 

「代表候補生って何?」

 

「あ、あなた本気でおっしゃってますの?」

 

「ああ、知らん」

 

すると春斗は制服の袖からハリセンを取り出し再び一夏の頭を叩いた。

 

「ぃでっ」

 

「一夏くぅ~ん?人の忠告を無視した挙句何やらかしてるのかな?第一単語から想像すればわかるだろ?」

 

顔を若干引きつらせながらハリセンを空いてる手にポンポンと当てながら一夏に笑いながら怒る春斗。

 

「そ、それもそうか。そしてごめんなさい」

 

「ま、まぁわたくしは優秀ですから?貴方の様な人間でも優しくしてさしあげましわ。何せわたくし試験で教官を唯一倒したエリート中のエリートですから」

 

俺も倒したわ。しかも織斑千冬(化け物)に。これをいうとセシリア(彼女)の対処が面倒になる。

 

「俺も倒したぞ?教官」

 

一夏がそう言うのと同時にセシリアの意識が一夏に集中した。そしてそれと同時に春斗は二人にバレないようにその場を離れた。もう付き合ってられん。フォローが間に合わん。つまり諦めである。そして自分の席に着き予鈴を待った。幸いにも話の途中で予鈴が鳴り、居なくなった事に気付かれずに会話は終わった。

 

 

三時間目。教壇には千冬が立ち、授業が始まる前にクラス代表を決めると告げた。するとクラス大半が春斗と一夏を推薦した。まぁ最悪一夏に難癖つけて押し付けようと考えていた春斗だったが

 

「納得いきませんわ!そのような選出は認められません!」

 

この学園には安息の地というのは無いのではないか?自薦推薦問わないと言ったのにも拘らずセシリアが抗議した。それを皮切りに一夏とセシリアの口論になり、その火の粉は春斗に飛び火した。

 

「貴方も何か言う事はないのですか?貴方先程話の途中でいつの間にか居なくなってましたが」

 

「生憎面倒事は嫌いでね、さっきは逃げさせてもらった。」

 

春斗はもう逃げようがないと判断した。『なら正面から当たってやる。しか、しやるなら徹底的に』と。

 

「それとオルコット、アンタも代表候補生なんだから自分の発言には気を付けた方がいい」

 

そういって春斗は胸ポケットに差してあったペンを手に取りカチカチと少し弄り、見せつける様に前に差し出した。

 

『大体文化としても後進的な国で暮らさなくてはいけないこと自体、わたくしにとって耐え難い苦痛で———』

 

ペンからセシリアの声が聞こえてきた。その音声を聞いて顔が青褪めるセシリア。

 

「問題、この音声データをしかるべきとこに差し出すとどうなるでしょうか?」

 

「っ‼」

 

「別に脅迫するつもりはない。ただ、今後は発言に気を付けろという忠告だ」

 

そういってペンをセシリアに向かってパスするように投げる春斗。そして手を上げ

 

「織斑先生、俺は俺自身、オルコットさん、一夏の三人でクラス代表を決めるISの摸擬戦を提案します。ここで四の五の言いあうよりは分かりやすい」

 

「構わないが、それに伴う準備はどうするつもりだ?」

 

「伝手ならあります。学園に迷惑はかけません」

 

あの楯無(生徒会)ならなんとかできるだろう。

 

「いいだろう。他に立候補はいないか?いない様なので天城の案を承認して一週間後の月曜日の放課後、天城、オルコット、織斑の三名でクラス代表を決める摸擬戦を行う。天城はそれまでに手筈を整えておくように。それでは授業を始める」

 

突然の決定にクラスの空気がざわめくがそんなのはお構いなしに千冬は授業を開始した。そして

 

「なんだかチョココロネが食べたくなったな…」

 

そんな呑気な事を考えながら事の経緯を説明したメールを楯無に送るのであった。




この調子で次の回も早めに投稿できればと思います(フラグ)。
それではまた次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

それ私の食べ掛けのヤツだから!!

お久し振りです。最近DX版のフルボトルを集めたり友人にポケカを勧められて沼に片足を突っ込んでる伊頭音です。
さて、そんなどうでもいい前置きは置いといて本編スタートです。


昼休み、授業が終わるのを見計らったようなタイミングで春斗のスマホにメールが届いた。差出人は楯無からで、事情を直接聞かせて欲しいから生徒会室に来てほしいとの事だった。

メールを確認して席を立ち、廊下に出ると廊下には他のクラスの女子が集まっていた。それを気にせず春斗は生徒達をかき分けながら生徒会室に向かった。途中、購買に寄りチョココロネと菓子パン数個と牛乳を購入した。

そして生徒会室前に着くとノックをした。

 

「天城でーす。入ってもいいですかー?」

 

「いいわよ。入ってきて」

 

返事を聞いてから教室に入ると楯無と布仏姉妹が先に昼食をとっていた。本音は春斗が購買に寄っている間についていたらしい。

 

「事情は先に本音ちゃんから聞いたわ。要するに、クラスの生徒三人でクラス代表を決める為の試合をしたいからアリーナの手配をお願いしたいのね?」

 

「ああ。もし手配してもらえるなら試合までの一週間、可能な限り生徒会の手伝いでも雑務でもなんでも引き受ける」

 

「あら、春斗君にしては妙に景気がいいじゃない。何か特別な事情でもあるのかしら?」

 

「事情というよりは私情だな。一夏にはなるべく沢山の経験を積ませてやりたい。この学園にいる限りISに関わらなきゃならんが、アイツはISに関しての知識な経験も皆無だ。昔世話になった恩返しみたいなもんだ。それに、オルコットみたいな奴は一度灸を据えないとな。あの性格が悪いとは言わないが、あれでは周りに敵しか作らん。一度目を覚まさせてやらないといけない」

 

「意外と世話焼きなのね。いいわ、そういうことならアリーナの手配をしてあげる。」

 

「交渉成立だな。じゃあ早速だが…本音、悪いが丁度お前の後ろにある資料ファイルが並んでる棚の右から赤の五番と青の四番、それと黄色の三番のファイルを取ってもらえるか?」

 

チップに買ってきた菓子パンを一個渡し、それを貰った本音は春斗が指定したファイルを持ってきた。春斗は各ファイルを開き中から書類を数枚引き抜き並べた。

 

「今日の夕方まで提出期限の書類を片付けてやろう」

 

並べられた書類を見て虚は楯無を睨んだ。睨まれた楯無は顔を真っ青にして虚と目を合わせず反対方向を向いていた。

 

「は、春斗君?な、なんでその書類の隠し場所を知っていたのかな?」

 

楯無は冷や汗を流しながら春斗に質問した。

 

「ひ・み・つ☆」

 

春斗はお茶らげながら答えた。

 

「かーいーちょーうー?あの資料、この間提出したか聞いた時提出したって言いましたよね?なんでそれがここにあるんですか?」

 

「そ、それは…」

 

楯無は完全に委縮しており、その姿は例えるなら隠していた点数が赤点の答案用紙が親に見つかった子供の様だった(実際にそれに近い状況だが)。

 

「天城君、ありがとうございます。お礼といってはなんですがこのお昼ご飯を貰っていただますか?ええ、遠慮はいりませんよ?むしろ貰って下さい。」

 

この時の虚は笑ってこそいたが目からハイライトが消えていた。

 

「虚ちゃん!?それ私の分のお弁t…」

 

虚は一度楯無を睨みつけ強制的に黙らせた。

 

「食べかけですけど大丈夫ですよ?サンドイッチ等の手に取って食べれる物ばかりですから」

 

「では遠慮なく」

 

渡されたバケット受け取る春斗。バケットを春斗に渡すと虚は楯無に向き直りお説教を始めた。

 

「今日はこの資料を終わらせるまで帰しませんからね‼」

 

「せ、せめて半分に…」

 

「大丈夫です。先生にはちゃんと残って書類を書きますという旨の説明をしておきます」

 

「そんな殺生な—‼」

 

そんな二人を他所に春斗は貰ったサンドイッチを齧りながら書類を処理していた。途中物欲しそうに見ていた本音にもサンドイッチを食べさせながら書類を全て書き終え、虚に渡してから本音と一緒に教室に戻る春斗であった。

 




予定ではあと二話で代表戦になる予定です。
それではまた次回お会いしましょう。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

織斑一夏強化計画:序

お久し振りです。作者の伊頭音です。
皆さんはGWはどの様にお過ごしになりましたか?私は地獄に居ました。職場という名の地獄にね・・・。
さて、そんなどうでもいい話は置いといて、本編スタートです。


入学式から五日後の土曜日。土曜日は午前だけの授業の為、四時限目の終了のチャイムが鳴ると大半の生徒達は席を立ち、仲良くなった他の生徒達と合流し午後をどう過ごすかを相談していた。ただ一組を除いて。

 

「春斗一つ相談g…」

 

「今日の昼食からスタートで一週間、食後のデザートを俺に奢ればISの基礎知識のレクチャーと、ついでにISを使った軽い訓練を付けてやる」

 

一夏が相談を持ち掛ける前に春斗が返事をしてきた。

 

「春斗って読心術でも持ってるのか?」

 

「ちげーよ、情報収集の成果だよ。俺の集めた情報では、今週の火曜、ランチ中に三年の三条あやか先輩に声をかけられたのをきっかけに、篠ノ之箒に特訓を付けてもらう事になったが、肝心の篠ノ之はISについては一切指導もなく、放課後、毎日、剣道場で、二人っきりで、打ち合っている。と」

 

最後の方を妙に強調しながら春斗は懐に入れてあった手書きの契約書を机の上に出し、ボールペンを重石にして一夏の前に差し出した。

 

「く…、背に腹は代えられない。頼む‼」

 

そう言って一夏は契約書にサインした。それを確認した春斗は「毎度あり」と呟きながら懐に仕舞うと、制服の袖の中から厚さ1㎝程の紙の束を出すと一夏に渡した。

 

「今のお前の学力レベルに合わせて作ったISの基礎知識一覧だ。今日の午後からはそれを頭に叩き込んでおけ。そんで明日の朝九時、倉持から送られてきたISスーツと多めの飲料、タオル二、三枚持って第三アリーナに来い。ISを使った特訓を付けてやる。ISは打鉄を一機用意してある」

 

あまりの手際の良さに一夏は若干引いていた。一夏が自分で練習の為にISとアリーナと使用手続きをしようとしたがどちらも間に合わず諦めていた。なのに春斗はそれらを事前に予約していた。

 

「俺が自分で申告したのが火曜日で、両方間に合わなかったのに、何でお前の申告は両方通ってるんだ?」

 

一夏は恐る恐る聞いてみた。

 

(もしかしたら使用の権利を得るために手荒い手段でも使ってるんじゃ…)

 

「ああ、楯無(生徒会長)に頼んどいた。あの人なら権力使ってどうにかできるかし。あ、俺因みに生徒会の庶務な」

 

「え、一年で!?」

 

「生徒会長がOKを出せば一年でもなれるらしい。まぁ俺の場合、生徒会の手伝いしてたらダミーの書類に俺の名前書かされて、いつの間にか庶務にされてた。ハメられたのに気付いた時には頭にきて問答無用で膝十字固めきめた。権力を持っておくのに損は無いからそのまま入る事にしたけどな」

 

「その流れだと春斗っていつの間にかそのまま生徒会長になってそうだな」

 

「ははは、流石にそれは・・・うん、あり得る。あの生徒会長なら仕事から逃げるために擦り付けてきそう。って言ってるそばから」

 

春斗の携帯から着信音が流れてきた。春斗は届いたメッセージを確認すると

 

「わりぃ、ちょと職務放棄した生徒会長(アホンダラ)をとっ捕まえてくる。そんなに時間かかんないだろうから先に食堂で飯喰いながら待ってろ」

 

「お、おう」

 

そう言って春斗は教室を出て行った。置いて行かれた一夏はさっき渡された資料を見ながら食堂に向かった。

 

 

「あ、本当に分かり易いなこの資料」




三条あやかというのは適当につけた名前なのであまり気にしないでください。

そういえば最近になって原作12巻見たんですけど、『次巻で本当に上手く纏め上げれるのかな?』という期待?不安?が込み上げてきました。

次話はいつ投稿できるかわかりませんが、少しでも早く投稿できるように努力します(汗)

それではまた次回


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

織斑一夏強化計画:破

お久し振りです。作者の伊頭音です。今回は割と早く次話の投稿が出来ました。


翌日。一夏は春斗に言われた物を持ち、第三アリーナにやってきた。入り口には春斗が女装した状態で待っていた。「なんで女装してんだ?」と質問した一夏だが帰ってきた返事は「絡まれるのが面倒臭い」というシンプルな返答だった。そして春斗の案内で更衣室に向かい一夏はISスーツに着替え、春斗も女装姿からISスーツに着替えた。

 

「では、今から打鉄を使ってISを使った訓練を始める」

 

どこからか取り出した竹刀を地面に突き刺すように下し『カンッ‼』と音を鳴らし活を掛ける春斗。その音を聞いて一夏は思わず背筋ピンと伸ばし「よろしくお願いします‼」と返した。

 

「ところで春斗、ここにいるのって俺たち二人だけだけどまさか貸し切りってことは…」

 

「貸し切りに決まってるだろ。考えてもみろ、学園にいる男子が二人揃っているこの状況で、俺たちに話しかけてくる生徒と話しかけてこない生徒、どっちが多いと思う?」

 

「そりゃあ、話しかけてくる方が多いと思う」

 

「そんな中で訓練なんてしてみろ、集中出来ない上にそもそも訓練にすらならない。こればっかは生徒会に無理言って貸し切りにしてもらった。お陰で今度の火曜から生徒会の仕事の四割を俺がやることになった」

 

「なんか悪いな、迷惑かけてるみたいで」

 

「気にすんな、昔世話になった礼だ。じゃあ始めるぞ。後ろにある打鉄に乗り込め」

 

春斗の指示を受けながら打鉄を纏うことができた一夏。

 

「よし一夏一つ質問だ。ISのPICについて簡単にでいいからどんな物か答えてみろ」

 

「ええと、確かISを浮かせたり加速減速をさせたりするときに使ってるプログラムだっけ?」

 

「ちゃんと参考書を読んできたな。そうだ。PICがあるお陰でISは空を飛べるし、空中で留まる事もできる。じゃあ今から言う手順でコンソールを操作してみろ」

 

そう言われ言われるままコンソールの操作をする一夏。指示された最後のコードを入れるとISが急に重くなり思わずその場に倒れ込んだ。

 

「春斗、今何の操作をさせたんだ!?急にISが重くなったぞ…」

 

「ISのPICと補助動力をOFFにさせた。体感して分かるようにISはPICが無ければただの鉄の塊だ。ISにはSEや絶対防御がある。参考書を見たなら分かると思うが、これらがなければ操縦者は簡単に死ぬ。もし、相手のISが何らかの事情でその二つが機能しなかったとする。そんな状態でISで加速を付けたタックルをしてみろ。相手は一瞬で人からただの肉塊に早変わりだ。同じ状況でタックルではなくブレードで切り付ければ真っ二つ、銃火器を使えばハチの巣だ」

 

それを説明する春斗の顔は真剣そのものだった。そしてその光景を想像したのだろう。聞いていた一夏の顔から血の気が引いていくのがわかった。

 

「ISは世間ではスポーツの一環として扱われているが、そういう危ない一面も持っているっていう事を忘れるな」

 

そういうと元に戻す手順を教え一夏を立たせた。

 

「まあSEと絶対防御の無効化なんてのは、専用に特化させた装備でも作らない限りありえないから気にすんな。あくまで例え話だ」

 

いつもの明るい笑顔に戻った春斗。そして軽いストレッチをした後、飛行の仕方、武装の展開の仕方などを手短に教えた。

 

「よーし、そろそろ実戦訓練に入る。じゃあまずブレードを展開してみろ」

 

そう言われ一夏は拡張領域(バススロット)からブレードを取り出した。

 

「実戦って春斗と摸擬戦するのか?正直手加減込みでも勝てる気がしないんだが…」

 

「いや、戦うのは厳密には俺じゃない」

 

「じゃあ誰と戦うんだ?」

 

含みのある言い方に首を傾げる一夏。そして春斗も自身のISを展開し告げた。

 

「お前の相手は()()()()だ」

 

そう告げると春斗の前に二体の人型のマシンが現れた。片方は赤を基調とした全体的に尖った攻撃的なデザイン。もう片方は緑を基調とした風をイメージさせる様なデザインだった。

 

「コイツ等は俺のISの装備、自動機巧武装(オートマトン)。お前にはこれを相手にしてもらう。それじゃあ構えろ一夏」

 

春斗の声に反応したかの様に二体が構えた。

 

「ここからはちょっとスパルタ気味で行く。やられたくなかったら全力で来い」

 

こうして『織斑一夏強化計画』が始まった。




今回春斗のISがちょろっと出てきました。元からこのスタイルを頭に描いていたのですが、原作とネタ被りして「うそーん」となりました(笑)。

次回から春斗のISが大暴れ?する予定なのでぜひお楽しみに。それでは次回でお会いしましょう。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

急をやるとは言ってない。

どうも作者の伊頭音です。

タイトル通り急は無しでクラス代表戦をはじめます。

それでは本編スタート。


月曜日の放課後。第三アリーナには多くの生徒が集まっていた。理由は一つ。春斗、一夏、セシリアのクラス代表決定戦を見る為だ。

そしてアリーナのピットには四人の影があった。春斗、一夏、箒、千冬の四人である。

 

「ふわぁ~~~、眠い…」

 

大きな欠伸をし、目元を擦る一夏。

 

「緊張感が無いぞ一夏。これからセシリアとの摸擬戦だというのに」

 

「いやぁ、昨日の春斗の特訓の疲れが抜けなくてな…。土曜までの箒との鍛錬が無かったら多分今頃筋肉痛だった。その辺はありがとうな」

 

「その辺とはなんだ。それでは鍛錬でしか力になれてないみたいではないか」

 

「いや、現にそうだろ。お前ISの知識を教える訳でもなく、ISの使い方を教えもしなかったんだろう?そう言われてもしょうがないと思うぞ」

 

痛いとこを指摘され思わず春斗を睨む箒。睨まれた春斗は

 

「良いじゃねぇか、代わりに放課後二人きりでイチャイチャできたんだから」

 

「イチャイチャ…!?」

 

頬を赤く染め半歩下がる箒。対して一夏は

 

「いや、あれはイチャイチャっていうよりビシバシ…」

 

そこまで言うと今度は一夏を睨む箒。それにビビる一夏。そしてそれを横で見てた春斗は『やっぱ駄目だコイツ』と思いながら頭を抑えながらため息をついた。

 

「姉として今の弟さんのリアクションを見てどう思います?織斑先生?」

 

「下らない質問をしている暇があるならさっさとオルコットとの試合を始めてこい。織斑のISが来るまでもう暫く時間が掛かる」

 

一夏のISは未だ届いていない。その為先に春斗とセシリアの試合をする事になった。

 

「はいはい、じゃあ行ってきますよ~」

 

そう言って春斗はISを展開しカタパルト前まで移動した。カタパルトに足を置こうとすると後ろから

 

「頑張れよー春斗‼応援してるぞー‼」

 

そう叫んできた。それを聞いて春斗は右腕を横に伸ばし、親指を立て「おう」とだけ返した。

 

「天城春斗、いっきま———す‼」

 

そしてカタパルトから射出される春斗。そしてそのまま地面に着地すると空中に待機していたセシリアを見上げた。対するセシリアは春斗を観察するように見つめていた。

 

「随分と変わったISですのね。殆ど装甲が無いなんて余程の死にたがりなのでしょうか?」

 

「このISの特性上仕方なくてな、スーツ事態に装甲機能を付けている」

 

『それでは試合を開始して下さい』

 

アナウンスが入った。それを聞くと春斗は自動機巧武装(オートマトン)を二体展開した。

 

「あ、試合前に一つ」

 

「何ですか?今から手加減のお願いでしょうか?」

 

余裕ありげに春斗の問いかけに応えるセシリア。その態度は気にせず春斗は続けた。

 

「アンタ()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「な!?」

 

その瞬間、空中で停止していたセシリアが糸が切られた操り人形の様に落下し始めた。そしてそのまま不時着するかと思ったがそこは代表候補生、驚いたのは一瞬で、すぐにビットを足場替わりにし着地した。

 

「貴方、何をしましたの?」

 

コンソールをチェックしながら春斗を見るセシリア。画面には異常を示す表示はされていない。だが現にISは飛行できない状態になっている。

 

「戦いってのは戦う前にどれだけ手を打てるかで勝敗が決まるもんだ」

 

そういって春斗は右手に持っているスイッチを見せた。

 

「これはISのPICを弱める装置の起動スイッチだ。出力をホバリングレベルまでに落とす。ISを使ってる奴らはISの機能に頼り切って普段から空中で戦いがちだ。これを使ってその自由度を減らす」

 

「姑息な手を使いますわね…。一体いつの間にそんなものを仕掛けましたの?」

 

「そんな事を気にするより今の自分の心配をした方がいいんじゃないか?」

 

二体の自動機巧武装(オートマトン)がそれぞれ構えた。

 

「助さん格さん、やっておしまいなさい」

 

それを合図に二体がセシリアに向かい襲い掛かった。

 

 

 

—ピット管制室—

 

「天城君、ジャミング装置なんていつの間に仕掛けたんでしょう?」

 

試合をモニターで見ながら真耶が呟いた。管制室には真耶の他に先の三人が居た。

 

「織斑、昨日お前と天城でこのアリーナでISを使って訓練していたらしいが本当か?」

 

「ああうん、あの二体を同時に相手にすることになって大変だった」

 

パァンッ‼

 

千冬は持っていた名簿で一夏の頭を叩いた。

 

「教師には敬語を使え馬鹿者。その時春斗(アイツ)が何かしてなかったか?」

 

そう聞かれ頭を抑えながら少し考える一夏。少しすると何か思い出したように顔を上げた。

 

「そういえば特訓中、アリーナの壁際の地面を何か所か掘って何かを埋めてた気がする」

 

「となるとその時に装置を仕掛けてたか」

 

「試合場所のであるこのアリーナを指定して特訓したのを考えると完全に確信犯ですね」

 

「卑怯な奴め」

 

春斗の用意周到振りを飽きれながらも感心する千冬と真耶、春斗の策をあまり快く思わない様子の箒。

 

「篠ノ之の気持ちも分らんではないが決してこの策は悪い訳ではない。中世の戦争では予め罠を仕掛け、敵が攻めてくると罠を使い兵を減らし戦いを有利に運んだものだ」

 

そう言って千冬はモニターに視線を戻し、他の三人もモニターの視線を戻した。

 

 

 

「そらそら、さっきまでの威勢はどうした?まだ攻撃が一発も当たってないぞ?」

 

セシリアを挑発しながら二体に指示を出し攻撃を続ける春斗。対してセシリアは不慣れな地上での戦いに加え、春斗と二体の自動機巧武装(オートマトン)計三人の連携攻撃に苦戦していた。

 

「あまり調子に乗らないでくださいまし‼」

 

ビットを使い二体を牽制しながらライフルで春斗を狙うセシリア。そしてそのまま引き金を引いた。

 

「格さん!」

 

その声に反応してビットを振り切り緑色の機体が間に割って入ってきた。格さんはそのまま片手を前に差し出すとビームが()()()()()()()()()()()()()()()明後日の方へ飛んで行った。

 

「どうしたBT兵器十八番の偏向射撃で追撃しないのか?それともまだ使えないのか?」

 

「いちいち癇に障ることばかり言いますわね貴方‼」

 

痛いところを疲れ思わず声が荒れるセシリア。表面上はまだ冷静を装っているが内心は怒りの感情で溢れていた。

 

「助さん!」

 

今度は赤色の機体がセシリア目掛け突撃していった。手には二本のブレードが握られていた。セシリアはビットで助さん目掛け攻撃をするが助さんはそれを全て避けセシリアを切りつけた。

 

「くっ…」

 

諸に斬撃をくらいよろけるセシリア。そこに追い打ちをかける様に春斗も手にした実弾装備のライフルで発砲した。それは喰らうまいとセシリアはブーストを掛弾丸を回避した。

 

「甘い」

 

弾丸の先にはいつの間にか格さんが回り込んでいた。そしてさっきと同じように片手を差し出すと弾丸がセシリア目掛け軌道を変え直撃した。

 

「ビ、ビームだけでなく実弾も曲げれますの!?」

 

今のダメージでセシリアのブルーティアーズのSE残量が三分の一を切った。

 

「さぁフィナーレだ」

 

その合図で春斗と助さん格さんがセシリアの周りを囲うように回りだした。

 

「ターゲットを中央に固定」

 

格さんが今度は両手を差し出すとセシリアの体は()()()()()()()()()()()()

 

「そしてそのまま火力を集中」

 

今度はそれぞれが自身の持つ銃器でセシリア向け発砲を開始。動けないセシリアはダメージでビットを操作する余裕がなかった。

 

「最後は中央を突破‼」

 

春斗と助さんが武器をブレードに持ち替え、左右から挟み撃ちする形で突切りつけた。そうしてブルーティアーズのSEがゼロになり試合は終了した。

 

「perfect」

 

呟くと助さん格さんはその場から消え、春斗は出てきたピットに向かい飛んで行った。




次回春斗のISについて説明・解説しようと思います。

それではまた次回ノシ


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ブラックホールに消えた奴がいる

お久し振りです。ここ最近溜め録りしてたアニメの消化をしてた伊頭音です。
盾の勇者の成り上がりが面白くて原作買おうかなと天秤が揺れています。二期やらないかな?

そんな話は置いといて本編スタートです。


「ただいま~」

 

間の抜けた返事をしながら春斗は元のピットに戻ってきた。

 

「お帰り春t」

 

ッパァァァン‼‼

 

一夏が最後まで言い切る前に千冬が春斗の頭を出席簿で叩いた。いや、殴りつけた。そしてその勢いで春斗は床に顔を叩きつけられた。

 

「べふっ」

 

「貴様!!地上でブラックホールを造るとは何を考えている!!下手をすればオルコットはお陀仏だったぞ!!」

 

「「え、ブラックホール!?」」

 

一夏と箒が声を揃えて聞き返した。管制室の方から真耶が歩いてきた。

 

「正確には『ブラックホールに匹敵する程のエネルギーを検知した』というだけであって、本当にブラックホールが発生した訳ではありません。ですが、この反応は危険なことに変わりありません。天城君、この件について具体的な説明をお願いできますか?」

 

真耶の問いに春斗は返事をせず伏せたまま懐から出した血ノリを使って『犯人は織斑千冬』とダイイングメッセージを書いていた。

 

「ふざけてる暇があったら説明せんか!」

 

千冬は春斗を猫の首根っこを掴むように持ち上げた。

 

「絞まる、絞まる。説明するから離して」

 

台詞に反して軽い口調で返事をする春斗。すると千冬は手を放し春斗はそのまま着地し、説明を始めた。

 

「まず、格さんがオルコットの動きを止めたアレはブラックホールではなく、俺が『空間湾曲』と仮称している技術です」

 

「空間湾曲?」

 

一夏を含めその場にいる全員が『?』という顔をした。千冬と真耶は一夏と箒とは違った意味合いでの反応だったが。

 

「細かい理屈を言っても一夏(お前)と篠ノ之は分かんないだろうからざっくり説明すると…」

 

春斗は少し考え、話を続けた。

 

「ドラ〇もんのどこでも〇アってあるだろ?アレはドアとドアの間の空間を縮めて一瞬で行きたい場所に行くって理屈なんだが、今回格さんが使ったのは()()()。オルコットの周りの1ミリ辺りの空間を何十キロにも伸ばした。その結果オルコットはその場から動いているのに動かなかった。補足するとこの技術で空間を伸ばす・縮める・曲げるの三つができる」

 

その説明を聞いて『おお、分かり易い』納得する一夏と箒だが千冬は片手で頭を抱え、真耶は青ざめた顔でワナワナしていた。

 

「山田君、私の考えが間違ってなければこの技術…」

 

「ええ、私も織斑先生と同じ考えだと思います」

 

二人は何かの確認をすると真耶は春斗に恐る恐る質問した。

 

「あ、あ天城君?一応確認しますけど、その空間湾曲は()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「制御できてないのに使う訳ないじゃないですか。慢心無く、100%制御できてます。何なら制御システムの設計図でも見ます?」

 

三人のやり取りに違和感を覚えた一夏と箒。二人は一度顔を合わせ、

 

「あの、何か悪い事でもあるんですか?話だけ聞いてると大きな問題は無さそうですが…」

 

箒が質問した。すると千冬が返答した。

 

「大問題だ。天城のいう空間湾曲は一歩間違えると()()()()()()()()()()()

 

「「え、壊滅!?」」

 

「ええ、今の人類の技術力では完全な空間の制御は不可能で、良くて中国で開発された『衝撃砲』が限界とされています。そもそも空間に干渉する技術はまだ曖昧で、確定された技術を模索している状態なんです」

 

「とある学者たちがその手の装置を作ったが結果は装置が暴走し、その施設から半径約5キロが吹っ飛んだという記録もある。それをコイツは完全に確立して自由に操作している。この事が世間に知れれば学者たちが挙って技術提供を求め天城のところに殺到する」

 

それを聞いて一夏と箒(二人)は春斗を見た。

 

「実は俺が一夏(お前)の家を出た理由がそれだ。丁度あの頃にこの技術を完成させたのはいいが、その事がバレちゃいけない奴等にバレた可能性があった。だから何も言わず、痕跡も残さず、液化爆薬を染み込ませた手紙だけ残して出て行った。もし少しでも情報残すとお前の身に危険が及ぶ可能性があったからだ」

 

「そうだったのか。ていうかあの手紙そんなもの仕込んでたのか!?あれ俺の手の中で爆発したから結構痛かったんだからな‼」

 

一夏は今まで何故春斗が消えたのかが気になっていた。だがそれが今やっと解決して一安心した。

 

「そういえばなんで中国にその技術を流した?」

 

「ええ。中国でちょっとその手の関係者に借りができて、その借りの返済に技術の一端を出して出来たのがあの衝撃砲です。ちゃんと最後まで監修したんでそこは大丈夫です」

 

『問題ない』という様に親指を立てる春斗。するとそのタイミングで近くのIS格納用のハンガーからアラームが鳴った。

 

「どうやらやっと届いたらしい。織斑、準備しろ」

 

そう言って千冬はハンガーのハッチを開けた。中には一機のISが鎮座していた。

 

「これが織斑君専用IS、白式です」

 

そしてそのまま千冬の指示で白式に乗り込む一夏。そして春斗と同じようにカタパルトに向かった。途中春斗は一夏に声をかけた。

 

「昨日で基礎中の基礎はお前の身体に叩き込んだ。流石に代表候補生に勝つまではいかないだろうが。せめて善戦くらいはして来い」

 

「ああ、期待に応えられるよう頑張ってくる」

 

「一夏」

 

箒が話しかけた。しかし何も言わずただ黙り込んでいた。何かを察した一夏が一度箒の名前を呼ぶと「行ってくる」とだけ告げた。すると箒も「勝ってこい」とだけ返した。

そして一夏はそのままフィールドへ射出されていった。




空間湾曲と見て心当たりがあるという方はそれで正解です。

次回は多分一夏対セシリアをカットして春斗対一夏になると思います。

それではまた次回(^U^)ノシ


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

「それなんてスパイ映画?」

お久し振りです。夏休みシーズンが終わり仕事で身体がボドボドな作者の伊頭音です。
今回は一夏との試合前のちょっとした閑話になります。



結論から言うと一夏とセシリアの試合は一夏の負けだった。

 

だが試合内容自体は決して悪くはないものだった。春斗との特訓の成果もあり、遠距離タイプを相手に近接武器だけでよく喰らいついていた。白式の一次移行(ファーストシフト)が完了すると、セシリアのSEを約六割は削っていた。だが雪片弐型のワンオフアビリティーのせいで白式のSEが尽き、一夏の負けという結果になった。

 

「武器の使い方を理解してなかったのが原因で負けたが、それ以外のところは及第点だな。初心者にしてはよくやった。ご褒美に飴ちゃんを一個やろう」

 

そう言って春斗は飴玉を一つ一夏に渡した。

 

「「「お前は大阪のおばちゃんか」」」

 

一夏と千冬と箒のツッコミがハモった。姉弟・幼馴染仲がよろしいことで。

 

「それじゃあ時間も時間だし、俺は反対側のピットに移動しますか」

 

形式上同じピットから出ていくのはアレなのでとちらかが反対のピットに行く必要がある。一夏の白式は先程の試合でSEが空の為、補充する必要がある。なら補充している間に春斗が移動すれば移動後少し待つだけで試合が開始されるからである。

 

「今のうち白式のスペック確認しとけよ?さっきと同じ試合結果だとつまらん。少しでも俺に噛み付ける様にしておけ?」

 

一夏にそう告げ手を振りながらピットを出ていく春斗。それに答える様に一夏も「ああ」とだけ返事を返しコンソールを開き機体のスペックを再確認し始めた。

 

ピットを出て反対側のピットとの中間程の場所で春斗の携帯に着信が入った。番号を見ると相手は駄兎(たばね)からだった。前回からアドレスと番号は変えてなかった事を今思い出し面倒臭いと思いながら電話に出る春斗。

 

「なんだこの駄兎。今取り込み中だから用件は手身近に言え」

 

『うんじゃあハル君の要望に答えて手短に言うよ?今すぐハル君の自動機巧武装(オートマトン)の稼働データちょうだい?』

 

束にしては珍しく素直かつ面倒臭い事を言ってきた。自動機巧武装(オートマトン)のデータを渡す事態は別に問題は無い。ただどうやって渡すかだ。データは要領が大きく、この携帯では遅れない。いつも企業宛に送るときに使うパソコンも今手元には無い。

 

「今すぐって、今手元に送る手段が無いんだが。それにただではやらんぞ」

 

『それなら大丈夫。受け取りには今学園にくーちゃんが行ってるから』

 

そう言うと近くにあった消化扉が勝手に空き、中からクロエが出てきた。

 

「お久し振りです春斗様。束様からの使いでデータをいただきに参りました」

 

「それなんてスパイ映画?」

 

あまりの手際の良さに驚きを通り越してなんとも間抜けな質問をしてしまう春斗。

 

『そんでもって、データの見返りとしてはハル君の『空間湾曲』のアップデートデータをくーちゃんに持たせてあるから』

 

するとクロエが一本のUSBメモリを出していた。

 

「アップデート?具体的にはどんな内容だ?」

 

春斗が質問する。

 

『今のハル君の『空間湾曲』は空間を「伸ばす」「縮める」「曲げる」のどれかを一つしか出来なかったでしょ?今回束さんが作ったアップデートにはこの三項目を同時に二種類使える様にするデータが入ってるんだよ』

 

「はぁ⁉」

 

『その代わりデータ容量が大きいから多分自動機巧武装(オートマトン)が一機しか使えなくなるかもしれないけどね』

 

この野郎やりやがった。春斗(自分)がどんなにプログラミングしても同時に二種類の空間湾曲の操作ができなかったのにそれを完成させやがった。

 

「はぁ、で?このデータを何に使うつもりだ?」

 

『ヒ・ミ・ツ♡』

 

イラっときて通話を切りクロエに顔を向けた。

 

「クロエはあの駄兎(バカ)がデータを何に使うか知ってるか?」

 

「いいえ、私も知りません。今日いきなり春斗様にこれを届けてほしいと言われたので」

 

さっきのUSBメモリに視線を落としながら答えたクロエ。『やれやれ』と言いながらメモリを受け取り、ISの待機状態であるベルトのバックルに差した。数十秒でデータの交換は終わり、春斗は束からのデータに目を通した。確かにこれなら同時に二種類の『空間湾曲』を使えそうだ。そして束の言った通り自動機巧武装(オートマトン)は一機しか使えない。

春斗はメモリをクロエに返すと短く別れの挨拶をして消化扉の中に戻っていった。試しに扉を開いてみるとホースの陰に隠し扉がついていた。今度使ってみるかと考え、春斗は投影型ディスプレイを展開しながらピットに向け歩き出した。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

インストール!3・3・5

お久し振りです。久々にモンスターをハンティングしていてら夢中になって書くのが遅くなりました。ちなみに私は弓と操虫棍がメインです←どうでもいい情報

取り敢えず本編スタートです


春斗と一夏はアリーナ上空のスタート地点で停止していた。

 

「さぁて一夏、こうして試合することになったが俺に勝つ自信はあるか?」

 

挑発する様に一夏に問いかける春斗。対して一夏は

 

「正直勝てるとは思ってない。だけどせめて攻撃を掠らせるぐらいはしてみせるさ」

 

「良い答えだ。自分が相手より弱いのを自覚してそれを認めるのは戦いでは重要なことだ」

 

そう言って春斗はセシリアとの試合の時に使ったジャミング装置のスイッチを取り出し握り潰した。

 

「これでさっきのジャミング装置は使えなくなった。遠慮せずかかってこい」

 

『それでは天城春斗君と織斑一夏君の試合を始めます』

 

『3』

 

カウントダウンが始まり一夏は雪片を手に取った。対して春斗は自動機巧武装(オートマトン)は出さず拡張領域から槍を一本取り出した。

 

『2』

 

そのまま二人は構えを取り

 

『1』

 

完全に静止した。

 

『試合開始』

 

合図と共に先に動いたのは一夏だった。スラスターを全開で稼働させ一気に距離を詰めた。そしてその勢いを殺さないよう雪片で横から切りつけた。春斗は槍を両手で縦に持ち、その一撃を防ぎいだ。そしてそのまま勢いの付いた一夏目掛けてヤクザキックをかました。

 

「ブヘッ」

 

蹴りが顔面に入り間抜けな声を出して仰け反る一夏。更に春斗は腕を伸ばし白式の脚を掴み地面目掛けて投げつけた。

が、流石の一夏もそのまま無様には墜落せず、空中で姿勢を戻し綺麗に着地した。そして一度顔を撫でた。

 

「イタタタ、容赦無く蹴りやがったな春斗…。大丈夫かこれ?顔腫れてない?」

 

「安心しろ傷どころか腫れすらない」

 

「流石はISの絶対防御」と感心しながら他のぶつけた箇所を見る一夏。すると春斗も地上に降りてきた。

 

「さて一夏。試合前までそれなりにデータを確認したと思うが、白式のスペックは大体理解したか?」

 

「ああ、千冬姉ぇと山田先生にも教えてもらいながら大まかなところは理解したつもりだけど…」

 

「けど?」

 

含みのある発言に突っ掛かる春斗。

 

「さっき使えた『バリア無効化攻撃』っていうのが思うように発動できない」

 

「あー」

 

雪片弐型の特殊武装、あれは確かに一回二回ですぐには使いこなすのは難しい。使用者の精神に反応して発動なんていうのは回数をこなさないと発動させれない。

 

「一夏、それは焦らなくても良い問題だ。その『バリア無効化攻撃』は今度使い方をレクチャーしてやるから置いておけ。この試合はISを動かすのにひたすら慣れる努力をしろ」

 

春斗は地に足を付け片足を軸にコンパスの要領で円を描いた。

 

「この試合、俺はハンデとしてこの円からは出ない。無論反撃もするが一歩でも円の外に出たら俺の負けでいい」

 

円の大きさは肩幅より少し大きいくらい。脚の踏ん張り位置を間違えるとすぐに足先が出る。

挑発なのか、それともそれ程の自信があるのか。どちらにしても一夏は少しカチンときた。

 

「いくら春斗でもそのハンデはやりすぎだろ」

 

「大丈夫さ、少なくとも今のお前には十分なハンデだ」

 

そう言うと春斗は左手に槍を仕舞い、構えをとり右手を前に出し手招きした。

それを見た一夏は内心は挑発には乗らないと決めていたのだが思わず乗ってしまった。

 

再びスラスターを使い距離を詰め勢いを付けた突きで攻撃すると春斗は雪片の刀身が当たるギリギリで刀身を手で払い体を捻り、突っ込んできた一夏を受け流した。

そのまま一夏は後方に飛んでいったがすぐに起動を変え今度は連続で雪片を打ち込むが、春斗は体を捻らせ雪片の側面を殴り付け無理やり起動を変えながら避けた。

 

「どうしたどうした?もっと本気で来いよ!!腕が止まって見えるぞ!!」

 

春斗は左手で雪片を掴み取り一夏を自分の方へと引き寄せた。引っ張られ思わず伸びきった一夏の腕の関節目掛け、空いてる右腕を勢いよく振り下ろした。

 

「っ!?」

 

一夏は痛みに顔を歪め、思わず雪片を手放す。春斗は雪片を手早く持ち替え、プロ野球選手の様な綺麗なフォームで一夏のがら空きの腹部目掛け雪片をフルスイングすると一夏はそのまま吹き飛び地面を転がった。

 

「残念、ピッチャーゴロか」

 

とふざけた事を言う春斗。

 

「ゴホッ、ゲホッ。俺は今一瞬バックスクリーンが見えたけどな」

 

咳き込みながら言葉を返す一夏。今のフルスイングで白式のSEが三割削れていた。

 

「ていうか春斗さっきの避け方はなんだよ!?お前ホントに人間か!?」

 

「失礼な、二か月前中国で知り合った武術の達人は真剣相手に指一本でこれやってたぞ」

 

「マジか」

 

そんな会話いていると春斗の視覚上に『インストール完了』『インストールデータを含めた最適化が完了しました』というバーが表示された。

 

「おっと一夏、残念なお知らせだ。試合前から開始していたプログラムのインストールが今終わった」

 

「終わるとどうなる?」

 

「知らんのか」

 

「今のお前が勝てる確率がゼロになる」

 

すると春斗、もとい春斗のISが光りだした。光が消えると今まで手足だけにあった装甲が変わり、黒を基調とした特撮ヒーローを連想させるスリムな全身装甲のISになっていた。

 

「さぁ、実験を始めようか」




次回に続きます。

明日から台風が来ますね。『台風19号』と聞くと劇場版パトレイバーネタが頭の中をよぎります。「何それ?」という方は是非観て下さい。面白いですよ?(無理やりな布教)

それではまた次回


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

「勝てる」ではなく「勝った」と思った瞬間が負けである

お久しぶりです。明けましておめでとうございます(遅い)。前回から大分時間が経っていますがこの駄文を楽しみにしていたという方がいれば(いないとは思う)お待たせしました。それではスタートです。


春斗のISのフォルムが変わり、アリーナにいた全員が春斗に視線を向けた。

 

一次移行(ファーストシフト)?」

 

一夏は姿が変わった事に驚き、春斗から貰った資料にあった項目を思い出し呟いた。

 

「残念ながらそれは間違いだ。これは俺のISの特徴でな、プログラムをインストールするとそれに合わせた機体調整をするんだ。前の助さん格さんもその産物だ。ただ、一度別のプログラムをいれると上書きされるせいで他のプログラムを使いたい時は再インストールが必要なのがネックでな」

 

 

そう説明すると春斗は拡張領域(バススロット)から機械的なデザインの杖を取り出した。

 

「さぁ、ここから第二ラウンドだ」

 

杖をバトンの様にクルクルと回し始めると杖から煙幕がでてきて春斗の周りに広がり始めた。

足元の円だけは見える状態で煙幕は広がり続け、何をするのかと見構えてる一夏も包んだ。一夏はセンサー等を確認するが特に変わった変化は起きていない。それで安心してため息をつくと真耶からの回線が入った。

 

『織斑君!、今すぐその煙から出て下さい‼』

 

「え、なんd」

 

「ダイ〇マン‼」

 

春斗が謎のワードを呟くと煙が爆発した。爆発で一夏は最後まで言葉を発せる事が出来ずにアリーナの壁まで吹き飛んだ。白式のSEは五割まで減っっていた。

 

「げほっ、げほっ。そんな手ありかよ」

 

爆発で煙はすべて消え、お互い目視できるようになり一夏は春斗に抗議した

 

「前住んでいたアパートの近所にいたおじいちゃんが言っていた。『何事も最終的に勝てばよかろうなのだ』ってな」

 

「最悪だなそのじいちゃん」

 

一夏は壁から離れ一度深呼吸した。多分これは春斗の作戦だ。このままだと春斗のペースに乗せられるだけだ。そう心の中で呟き呼吸と整えた。その間春斗は円からは出ず、中で杖を使いながらストレッチをしていた。

呼吸を整え終えると雪片を両手でしっかり握り締め構えた。それを見た春斗はストレッチを止め『さぁ来い』と言わんばかりに杖を地面に突き立て仁王立ちをした。

距離は大体50m。それを詰めるために一夏は先程と同じように春斗目掛けスラスターを全開にして距離を詰めた。

 

「お前も学習しないな、それだとまた顔面キックだぞ!?」

 

仁王立ちを止め動く為の構えを取った春斗。すると一夏は雪片をブーメランの様に春斗目掛け投げつけた。

 

「っ、」

 

一夏の行動に春斗は驚いたが慌てる事無く杖で弾き飛ばした。これで一夏は丸腰、大方弾いたところをタックルで突っ込んで円から出すつもりか、と思った春斗だったが視線を一夏に戻した瞬間、視界には一夏とは別のナニかがあった。それは春斗の顔面に直撃した。春斗はのぞけりながらソレを見た。

 

(石…?いや、アリーナの瓦礫か)

 

先程一夏がアリーナの壁にぶつかり破損した壁の一部。一夏は起き上がった際その一部を装甲の隙間に隠していた。

 

「勝てばよかろうなのだなんだろ!?」

 

このままタックルすれば自分の勝ちだ。そう確信した一夏。残り距離数㎝。そして

 

()()()()()()()()()()()

 

「「「え???」」」

 

一夏や管制室にいた箒と千冬と真耶、アリーナにいた全員が今起こった事に頭が追い付かなかった。確かに今、一夏は完全に春斗の意表を突き確実にタックルする筈だった。だが結果は、いつの間にか一夏が春斗の後方にある壁に激突していた。

 

「な、なんで…?」

 

壁からずり落ちながら痛みよりも何故こんな事が起きているかが気になった一夏。

 

「うん、実験成功だな。いや~今のはマジで一杯喰わされたわ」

 

瓦礫が当たった場所を擦りながら円からは出ずに振り返る春斗。

 

「褒美にこの状況の種明かしをしてやろう。種は簡単、さっきインストールしていたプログラム。『空間湾曲』のアップデート結果、今まで三つの内一つしか使えなかったのが二つまで使える様になった。そして今回は『曲げる』と『縮める』を同時に行った」

 

投影型ディスプレイを展開して大雑把な図を描き見せた

 

「まず『曲げる』で俺の正面の空間を勝手に俺を迂回して後ろに回り込む様な形に捻じ曲げた。その後『縮める』で俺の後ろの空間とアリーナの壁の間の空間を限りなくゼロになるように縮めた。するとお前は気付くと壁に激突、周りから見るとお前がテレポートして壁にぶつかったように見える訳だ」

 

「なんだそりゃ」

 

「ただ演算処理が大変で瞬間的な実行は難しいがな。瓦礫を避けれなかったのはそれが理由だ。だが」

 

春斗は杖をゆっくりと振り上げた。すると何もない空間から()()()()()()()()()()()()

 

「予め決めていた空間を対象にとるなら演算は簡単だ」

 

その光景を見た一夏は悟った。これは詰んだな、と。そのまま春斗が杖で一夏を指す様に振り下ろすと銃弾の雨が降り注ぎ、白式のSEは0になった。




リアルで最近バトスピに復帰して仮面ライダーデッキの殺意の高さに驚きました。コレクションで集めてはいたけどこんなに強かったのかと実感。

次回はいつ投稿になるか分かりませんが今後ともよろしくお願いしますm(_ _)m


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

今の時代、ベッドの下にエ〇本はない

おはこんにちばんは。作者の伊頭音です。
思ってたよりも前回から早めに投稿出来ました。今回は前回の武装の説明回になります。
それではどうぞ


弾丸の雨を浴び、生きた屍になった一夏を肩で担ぎピットに戻る春斗。

 

「頑張ったな一夏。立派な墓石立てて埋葬して、部屋の引き出しの三番目の隠し床底に隠してある姉弟モノと幼馴染モノのエロ本はしっかり焼却処分しといてやるから安心して眠れ」

 

「勝手に殺すな。あと姉弟モノと幼馴染モノじゃねぇし、そもそもそんなの持って無ぇし」

 

「いや、今は床底と本じゃなくてクローゼットの中の冬物の紺色のジャケットの内ポケットの中のUSBメモリか」

 

「ちょっと待て、何でそれを知ってんの!?」

 

プライベートが駄々洩れで焦る一夏。担がれた状態で降りようと暴れるがそうはさせんとしっかりロックする春斗。

 

「さぁて何ででしょうね~?因みにファイルは10個中9個はダミーで本物のファイルにも何個かダミーがあって本命のデータ内容は…」

 

「わー‼わー‼わー‼」

 

「無様に二連敗した癖に随分と元気だな、一夏…」

 

声に反応し、ビクリと身体を硬直させる一夏。春斗の頭超しで前を見るとそこには腕を組み仁王立ちで殺気を放つ鬼、ではなく箒が立っていた。

 

「春斗、一夏(ソイツ)を降ろせ。あとついでにお前の持ってる一夏の()()()()情報を寄こせ」

 

「構わんがそれなりに高いぞ?」

 

春斗は一夏を降ろし(落とし)、指を二本立てその後横に物を切るようなジェスチャーをした。

 

「良いだろう。その不埒者を更生させる為なら安い額だ」

 

「交渉成立」

 

そう言ってお互い左手で軽い握手をし、離れた互いの手の中にはそれぞれの物が握られていた。

 

「毎度あり」

 

それに対し一夏は終わったと言わんばかりにorzしていた。

 

「何をしとるアホ共」

 

箒の後ろから千冬の声がすると春斗・一夏・箒に一回ずつ出席簿アタックが決まった。

 

「あべしっ」「たわばっ」「ひでぶっ」

 

「ここは世紀末ですか」

 

真耶がツッコミをいれると千冬が春斗に目線を向けた。

 

「ところで天城、最後のアレはどんな仕組みだ?銃が勝手に生えてきたようにも見えたが」

 

「あれですか。あれは『伸ばす』と『縮める』の応用で作った『拡張空間』です」

 

「拡張空間?」

 

「織斑先生、私、名前からしてもうとんでもない技術のような気がするのですが」

 

「山田君、こいつの発明はいちいち気にしたら敗けだと私は思っている」

 

後ろで教員二人が何か言っているが気にせず春斗は説明を始めた。

 

「この場合解釈を『開ける』と『閉める』に置き換えて考える。まず『開ける』で空間そのものに穴を開ける。この力はそのままだと際限なく広がるから、それを外側から抑え付ける様に『閉める』力で固定する。後は中に銃火器を入れて任意のタイミングで拡張空間から外に移動させればさっきの現象の完成。前にISを二機用意してちゃんとした実験データを取ってあるんでミスってボカンっ‼なんて事は無いんでご安心を」

 

「すまん春斗、もっと解りやすく説明をしてくれ」

 

首を傾げながら手を上げ説明を求める一夏。隣の箒も質問はしないが首を傾げていた。教員二人は揃って『やりおったコイツ』と言いたそうな顔をしながら片手で頭部を抑えていた。

 

一夏(お前)レベルに分かりやすく言うとな…、おにぎりを空間に例えてみろ。中身の無いおにぎりを半分に割って、その中に具を置く。置いたらまた握って元の形に戻す。必要になったら具だけ中から取り出す。OK?」

 

「おお、何となくわかった。でも銃なんていつの間に仕込んで…、煙幕を撒いた時か」

 

「正解。遊び心で銃か槍にするかで迷ったがな」

 

「どっちにしろ地獄じゃねーか‼」

 

一夏のリアクションをスルーしながら春斗はディスプレイを展開した。

 

「にしても実際使ってみると結構便利だな。まだ新しい使い方が見つかりそうだな。今日は徹夜だな」

 

この時の春斗は台詞とは裏腹に、新しいおもちゃを買ってもらった子供の様なキラキラとした顔をしていた。そしてそのままピットから出て行った。それを見ていた真耶は「学園の敷地、無くなりませんよね?」と千冬に質問するが「アイツなら大丈夫だろう…多分」と心許ない返事をしていた。

 

「そういえばこれで春斗の二勝だからクラス代表は春斗って事か?」

 

「ええ、そうなります。この後私たちはその手続きをしてきます。織斑君も今日は疲れたでしょうから着替えて部屋に戻っていいですよ。あと、これにちゃんと目を通しておいて下さい。今度は電話帳と間違えて捨てないで下さいね」

 

そう言って真耶は一夏に『ISを運用するにあたっての注意事項』と記された鈍器にもなりえる参考書を渡した。受け取る一夏は愛想笑いしながら受け取り肩を落とした。

そして生徒陣と教師陣で別れそれぞれ歩き出した。

 

一夏と箒は今後のちゃんとした練習予定を決め、部屋に着くと箒は今日最後の一撃として一夏の秘蔵データ諸々を粉☆砕処分した。そして一夏は次の朝まで完全に撃沈したとかしないとか。

一方千冬と真耶はクラス代表に関する資料を作ろうとしていたところ一通のメールを受け取り頭を抱えたとう。

 

尚その日の夜、殆どの生徒が寝静まった時間、学園敷地内では誰も気付かない程の小さな地震が明け方まで多発していたそうな。




次回は鈴ちゃん回になると思います。
それではまた次回ノシ


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

正直、春斗に元ネタの技名を叫ばせたい

お久し振りです。ここ数日、休みの日に限って天候が荒れてバイクに乗れてない作者の伊頭音です。今回鈴ちゃんをだすと書きましたが次回になります。

☆9)姉妹の兄で弟 様
☆7)青いカンテラ 様

評価を入れていただきありがとうございます。


「クラス代表なのですが、全勝した天城君が代表を辞退しましたので代わりに織斑君がクラス代表になりました」

 

「ちょっと待って、なんでそうなったの?」

 

翌日、SHRで真耶からの発表を聞いて一夏は思わず声が出た。それだと昨日の試合が全部ではないが無駄だったのでは?とクラス一同は思った。

 

「いや、俺って代表ってキャラじゃないし、今回の俺の目的は一夏(お前)の経験値稼ぎとそこのオルコットとのいざこざを解決させる為だったからな」

 

「だったら代表は俺じゃなくても…」

 

「それは私も辞退したからですわ」

 

途中でセシリアが割り込んできた。

 

「あの時は私も感情に任せあのような態度を取ってしまいましたが、今思うと貴族としてあるまじき行為でした。その点についてはお二人には謝罪致します」

 

そう言ってセシリアは二人に向かって頭を下げ、戻ると話を続けた。

 

「天城さんのISの操作技術や、対IS用の機械を作れる程の専門知識、彼からは教わるべき事は多そうです」

「一方、一夏さんはほぼIS初心者。先にISを動かしている私が勝つのは当然の事です。ですので天城さんと話し合った結果、あえて一夏さんを代表にしたくさんの経験を積んでもらおうという事に致しました」

 

「そういう事だ。大人しく敗者は勝者の言葉に従うんだな」

 

こうして一夏がクラス代表になった。

 

 

 

―数日後―

 

「これよりISを使った飛行訓練を行う。最初に天城、織斑、オルコットは手本を見せろ」

 

セ「はい!」

 

一「は、はい!」

 

春「へーい」

 

千冬に指名され、三人は他の生徒の前にでる。春斗は出席簿アタックを喰らった。そしてセシリアは直にISを展開したが一夏は白式を展開するのに苦戦していた。

 

「織斑、早くせんか。あと天城は何故展開させない」

 

「まぁそう焦りなさんな千冬先生」

 

そう軽口を叩きながらも春斗はISを展開せず一夏に近づいた。

 

「一夏、ISを出すのに変に意識しなくてもいい。もっと簡単なイメージをすれば簡単に展開できるもんだぞ?」

 

「そんなこと言ったってさ、簡単なイメージってどんなイメージをすればいいんだ?」

 

「例えばだな…こうヒーロー風に」

 

春斗は左腕を見せつける様に胸元まで上げ

 

「蒸着!」

 

そう叫ぶといつの間にかISを展開していた。

 

「ギャ〇ンとはこれまた渋いチョイスを…」

 

真耶が苦笑いするが一夏は自分なりに理解したのか、次のタイミングでは早めに白式を展開した。

 

「全員展開したな。では飛べ!」

 

今度は一夏が一瞬遅れたがほぼ同じタイミングで三人は飛んだ。そのまま数十秒三人は空を飛んだ。上手く飛べない一夏にセシリアが「天城さんも言っていましたが所詮はイメージでしてよ」と説明するがやはりうまくイメージできないらしい。

 

「飛べない豚は只の豚だ」

 

「お前ただそれ言いたいだけだろ」

 

『よし、三人共そろそろ降りてこい。目標は地上十㎝だ。但し天城は地上一mmだ』

 

千冬から通信が入ると三人は一度停止した。

 

「俺だけ超スパルタなんですけど」

 

「普段の行いに対する罰じゃないのか?」

 

「ですわね」

 

「それではお先」とセシリアが最初に降り、指定通り地十㎝で停止した。

 

「しっかり十㎝で停まったか。じゃあ次は俺が行くか」

 

春斗は身体を大の字に広げながら最大スピードで急降下した。そして

 

「我が魂はZECTと共にありぃぃぃぃぃぃ‼」

 

と大声で叫びながら地表一mmで停止した。そして上から頭を千冬に踏み付けられ地面と冷たいベーゼを交わした。

 

「初めてのキスの味は土と血の味でした」

 

「喧しい。しっかり一mmで停止したのは褒めてやるがそのまま地面に激突しそうな謎の叫びは余計だ」

 

身体を起こしながら口元を拭う春斗。そして空を見上げると

 

「けど今降りて来てる一夏(ヤツ)はこのままだと文字通り墜落すると思いますが」

 

それに釣られ全員が空を見た。最後に降りてきてる一夏が春斗程ではないが、猛スピードでこちらに向かって落ちてきていた。一夏は上手く制御できてないのか『マズい』という顔をしていた。

 

「俺みたいに勢い良く降りてくるなっていう警告のつもりだったんだけどな」

 

そう言いながら春斗は丁度一夏の着地(墜落)地点に移動して武器である杖を取り出しながら一夏に通信を入れた。

 

「一夏、お前のペースでいいから白式のスピードを落とせ。実験ついでに墜落しないように調整してやる。手数料として今日の昼食のデザートは俺に献上な」

 

『悪い、頼む‼』

 

通信を切り春斗は杖を掲げると、杖より少し上の空間が渦を描くように歪みだした。そしてそのまま一夏が渦に突っ込むと目視できる一夏も渦を描くように歪み出した。

 

「よし、実験成功。後は排出する座標を指定して…」

 

そう呟くと一夏が渦を抜け再び春斗向け墜落してきた。しかし先程よりスピードは落ちていた。そして今度は空中で停止した。

 

「一夏、今の白式のスピードはどうなってる?」

 

『なんかいきなりスピードが落ちて今は直に停まれるくらいになった』

 

「OK」

 

それを聞いて春斗は杖を降ろすと白式が姿勢と整え地に足を付けた。

 

「サンキュー春t…、オェッ」

 

「あーやっぱそうなる?やっぱこのパターンの湾曲空間に入るとこうなるのか。袋はいるか?」

 

「いや…大丈夫、ギリギリでセーフだ…。ところで今のって何がどうやったらああなるんだ?最後のはセシリアとの試合と同じ原理なんだろうけど…」

 

「説明が面倒だから詳細が気になる人は勇者王の38話か覇界王の第三回をチェック」

 

「誰に向かって言ってんの?」

 

こうして一夏はクレータを作る事は無く、無事に授業は終了した。




最近気になったのですが、この作品のタイトルはこのままでも大丈夫なのでしょうか?

書いた当時はタイトル考えるのが面倒でこのタイトルにしましたが、もしタイトルに関するご意見がありましたらコメントお願いします。

それではまた次回ノシ


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

カンフー系映画の殺陣のシーンって文字で書こうとすると難しいよね

前話仕上げてから窓の外を見たら雨だったのでそのまま連続投稿です。

それでは本編をどうぞ


「ふうん、ここがIS学園か…」

 

深夜8時頃、学園の敷地内には一人の少女がいた。手に持ったメモを見ながら学園の受付を探すが見つけられずイライラしていると、不意に後ろから声を掛けられた。

 

「学園の中で迷子ですか?中国代表候補生の凰鈴音さん?」

 

「え?」

 

振り返ると一人の生徒が立っていた。顔は狐の面を被っていてわからない。だが彼女、鈴はその生徒にどこか見覚えがあった。この生徒にどこで会った?学園の外での記憶を辿り思い出そうとする。頭を悩ませていると目の前の生徒が近寄りいきなり正拳突きをしてきた。が鈴は生徒の拳の側面を掌打し軌道を変え回避する。

 

「ちょ、何よアンタ!?いきなり攻撃してくるなんて‼」

 

続けで生徒は反対の手でまた攻撃してくるが鈴も同じように掌打で弾きながら応戦する。途中肩にかけてたボストンバッグを降ろし、両腕で対応しているとこのやり取りに懐かしさを覚えた。すると鈴は拳を弾かず受け止めた。そして硬直状態になると呟いた。

 

「なんでアンタがIS学園(ここ)にいるのよ春斗…」

 

「いろんな事情が重なった成り行きでな」

 

そして生徒もとい春斗が拳を下げて面を外し、素顔を見せた。

 

「半年振りだな。その後の鈴ちゃんと甲龍(シェンロン)の様子は?」

 

「アンタのお陰で無事に正式なパイロットに選抜されて甲龍も大きなトラブルもなく稼働中よ。それより‼一夏の他に男子の生徒がいて、しかも春斗(アンタ)なんて聞いてないんだけど!?第一何でアタシがここに来るってわかってたのよ!?」

 

「情報集めは最早俺にとって呼吸同然だからな。鈴ちゃんが今日この時間に来るっていう情報は持ってたから。あと、俺の事情知ってるんだからわかるだろ?公表なんてしたら即刻指名手配モノだっての。それより受付ならコッチ」

 

そう言って春斗は鈴を受付へ案内した。途中積もる話もしながら案内したためあっという間に受付に着いた。

 

「そういえばアンタは何組なの?」

 

必要書類に記入しながら春斗に質問する鈴。

 

「ん?、一夏と同じ一組だ。因みに鈴ちゃんは二組になる予定」

 

記入が終わり『どのクラスになるか』等が記入された資料を受け取ると、資料には所属は二組と書かれていた。

 

「アンタって絶対使っちゃいけない手段使って情報仕入れてるわよね?」

 

「大丈夫、限りなく黒に近いグレーの手段だから」

 

「それってほぼアウトじゃない!?」

 

「証拠は欠片も残してないから無問題(モウマンタイ)

 

「確信犯じゃない‼」

 

そんな漫才じみた会話をしながら鈴の部屋がある寮の前まで案内をした春斗。別れの挨拶を済ませようとすると最後に鈴が話しかけてきた。

 

「そういえば、二組のクラス代表って何て名前の子?」

 

「聞いてどうすんの?まさか代表を譲ってもらおうってか?」

 

「ええ、アンタの話を聞いてて一夏が他の女子と仲良くしてるみたいだからどこかでお灸を据えないとね…」

 

その時の鈴の顔は笑ってはいたが血管マークがついてそうな声だった。春斗はそれを見て「おぅおぅ、恋する乙女ってのは恐ろしいね…」と呟きながらメモを取り出し、名前と簡易な特徴を記入して「初回サービスで今回はタダでいいよ」言いながらメモを渡した。メモを受け取ると鈴は笑顔で「ありがとう」と返事をしながら寮の中に入っていった。

 

「鶴留さん、悪く思わないでくれよ。男ってのは怒った女には逆らえないんだ」

 

そう呟き春斗は今食堂で行われているであろう『織斑一夏クラス代表就任パーティー』に合流するべく食堂へ向かった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

尾鰭のついた噂って弁解が大変

お久し振りです。最近バンドリに色々かけてる作者こと伊頭音です。

前話の誤字のご指摘ありがとうございました。

他に特に言うこともないので本編スタート


『織斑一夏クラス代表就任パーティー』の翌日。一夏と春斗が教室に入ると、クラスはある話で盛り上がっていた。

 

「おはよー。ねぇ二人は転校生の噂って聞いた?」

 

二人が入ってきたのを見て谷本さんが話を振ってきた。

聞くと昨日の夜、この時期にしては珍しい中国からの転校生が学園に来て早々、自分のクラスのクラス代表の女子に喧嘩を売り、カンフーでフルボッコにして無理矢理クラス代表の座を奪ったとか。

 

(あ、これ多分俺と鈴ちゃんとのじゃれ合いが変な尾鰭になってるヤツだ)

 

後で別の噂流しておかないとなと思いながら春斗は話を聞いていた。

 

「中国か、そういえば春斗って少し前まで中国に居たんだっけ?」

 

思い出したように話を振る一夏。

 

「まぁな。前に話したような気がするが、一夏(お前)の家を出て半年くらいした時にな。ある時ヘマして中国の川を負傷した状態でどんぶらこしてたら向こうの軍絡みの人に助けられてな、その礼に三ヶ月の間IS関連の指導と『衝撃砲』の技術を提供をした」

 

「さらっと凄いこと聞いちゃった気がするんだけど大丈夫なのかな?」

 

「話すって事は大丈夫だろ、多分…」

 

壮大なカミングアウトに、後が怖くなる一夏と谷本さんだった。

 

「因みにだが、その転校生の情報なら仕入れ済みだ。いずれ知れる情報だからタダで教えてやる。来たのは中国の代表候補生で専用機持ち。名前は(ファン)…」

 

ガラガラ!!

 

途中で教室のドアが勢いよく開いた。そこにはツインテールの少女が一人。そのまま少女は春斗達に近寄ってきた。

 

「おっと噂をすれば、二組クラス代表で中国代表候補生の(ファン)・リn…」

 

ガシッ!!

 

少女は春斗の胸ぐらを両手で掴み

 

「な"ん"て"あ"ん"な"物"騒"な"噂"か"広"か"っ"て"ん"の"よ"ーーー!!」

 

春斗の頭を全力でシェイクし始めた。

 

「それに関しては多分昨日のじゃれ合いが原因だと思う。後で誤解を解く噂流しとくから取り敢えずシェイクは止めて?今朝面白半分で食べたケバブ逆流するから止めて?」

 

「朝からなんつーもん食べてんだ。てかお前、鈴か?」

 

一夏の呼び掛けに反応しると鈴は春斗の胸ぐら離し、右手を口元に当てわざとらしい咳をした。

 

「そうよ。中国代表候補、凰鈴音。今日は宣戦布告n…」

 

バシンッ!!

 

途中で心地の良い打撃音で言葉が止まり鈴が頭を抑え蹲った。

 

「SHRの時間だ。さっさと自分のクラスに戻れ」

 

「ち、千冬さん…」

 

「ここでは織斑先生と呼べ。今回は見逃してやるから早く戻れ」

 

「うっ…、また後で来るから逃げるんじゃないわよ!!」

 

捨て台詞めいた事を言って鈴は自分のクラスに戻った。

 

(鈴ちゃん、結局自己紹介出来ずに帰っちゃったな…)

 

新しい噂をどう流すかを考えながら教室から去る鈴を見送る春斗だった。

 

 

 

ー昼休みー

 

新しい噂を流しながら食堂に向かうと、奥で一夏・箒・セシリア・鈴が集まってるのを見つけた春斗。

 

「今日はKQJランチかなー?」

 

食券を買っておばちゃんに券を出して交換してもらうと春斗は一夏達のいるテーブル近くに座った。そしてどんな事を話してるのか聞き耳を立てた。

 

「そういえば鈴って春斗と仲良さそうに見えたけど、何かあったのか?」

 

「あれ?春斗(アイツ)から聞いてないの?」

 

「詳しくは。今朝、中国の川を血だらけでどんぶらこしたっては聞いた」

 

「あーそう、まぁ減るもんじゃないから教えてあげる。私が春斗(アイツ)にあったのは大体半年くらいまえだったかしら?」




次回は春斗と鈴ちゃんの過去話になります



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

鈴「私に釣られてみる?(イケボ)」

今回は春斗と鈴の出会った時の話です。前半と後半に分けます。

それでは前半をどうぞ


-半年前-

 

その施設では後に自分が代表候補生に選ばれる為、国内から選抜された少女達が訓練を積んでいた。そんな中、鈴は自室でベッドで横になりながら窓の外を見ていた。

 

(退屈ね…。ここの訓練も毎日毎日同じメニューの繰り返し、実戦訓練も誰も私に勝てなくなってきてつまんなくなってきたし…)

 

施設内で常に優秀な成績の彼女は日々の訓練では心が満たされなくなっていた。

日本を離れ早半年近く。向こうに居た頃は一夏とオマケの弾と蘭、みんなで毎日の様に遊んで充実した日々だった。

だが両親が離婚し母と一緒に中国に来て新しい友達はできたがあの頃の様な満足感は無かった。思い人(一夏)が居ないのもあったのかもしれない。しかしそれを差し引いても心が満たされる事は無かった。

 

(今一夏(アイツ)どうしてるかな…)

 

そんな事を考えながら日本での思い出を思い出していると、ある日の事が頭の中を過った。

 

(そういえばここの近くに綺麗な川があったわね…)

 

前に一夏達と釣りに行ったのを思い出した。思い立ったがなんとやら、部屋を出て必要な物を持ち出し目的の場所へ向かった。

 

施設を出て歩くこと十数分、目的地に着いた鈴。餌は途中落ちていた木の実等を使う事にした。

 

一夏(アイツ)餌に岩陰の虫なんて使うんだから信じられないわよ」

 

当時の事を思い出し一人愚痴を垂れながら準備を整える鈴。そして針を川へ投げ入れると持ってきたチェアに座り、竿を石を積んで作った支えに掛けただ水面を眺めた。

 

(偶にはこういうゆったりとするのもいいかもね…)

 

水の流れる音、風で揺れる木々の音を聞いている内に、鈴は自然と眠りに就いていた。

 

______________________

 

それからどのくらい時間が経ったのか、鈴は目を覚ました。

 

(あれ?私いつの間にか眠ってた?あっ!釣り竿は!?)

 

確認すると竿は流されてはいなかった。が、何かが掛かっているらしく、少しだけ傾いていた。

 

「ラッキー、このまま釣り上げちゃえ」

 

そう言って竿を手に取りリールを巻き始めた。しかし掛かった獲物は重いが全く抵抗してこない。流木でも引っ掛けたのかと思いながらも巻き続けた。そして少しずつその姿が見えてくると…

 

「え?人!?」

 

掛かっていたのは人だった。それを確認すると施設に連絡を入れ鈴は川に入った。そして(それ)を陸に引き上げ状態を見た。自分と同じくらいの少年だった。身体中傷だらけで意識が無い。

 

(うー、初めては一夏(アイツ)にあげたかったけど…、いや、人命救助なんだからこれはノーカンよね。うん、ノーカン)

 

自己暗示を掛けながら口元に持ってたハンカチを当て、「大丈夫ですか!?」と声を掛けながら人工呼吸を始めた鈴。繰り返す事数回、少年は口から水を吐き出し意識を取り戻した。

 

「ここは…?」

 

「いいから黙ってなさい。もうすぐ施設から救助隊が来るから、今は少しでも体力を残して…」

 

「…っ!?」

 

少年は鈴の顔を見ると目を見開き、鈴から離れ戦闘態勢に入った。その姿は警戒心剥き出しの獣の様だった。

 

「ちょっと‼せっかく助けてあげたのに随分と失礼ね。私が助けてなかったらアンタ死んでたわよ?」

 

鈴の言葉を聞き警戒を少し緩め何かを考える少年。そして鈴に質問をした。

 

「すまないがここはどこだ?飛び降りた場所からはそれなりに流されている筈なんだが…」

 

「(飛び降りた…?)ここは——の中国代表候補生を育てる為の施設がある場所の近くだけど…」

 

一つ奇妙なワードがあった気がするが気にせず教えた。すると少年は警戒を解き続けた。

 

「そうか、なら安心した。少なくともアンタは奴らの仲間じゃ…、ん?アンタどっかで…」

 

途中安心したのか力尽きたのか、少年はその場で意識を失い倒れた。そして数分後、施設からの救助隊が到着し少年は取り敢えず施設に保護された。

 

______________________

 

 

「ってのが私と春斗(アイツ)の出会い」

 

「「「漫画(かよ)(か)(ですか)!?」」」

 

聞いてたメンバーが突っ込んだ。所々搔い摘んだ部分(人工呼吸)もあったが大まかなところは説明した。途中、話を止めさせようとした春斗だったが、虚からの『生徒会長捕獲作戦(尚大至急)』に狩り出されこの場にはいなかった。

 

「しかし、飛び降りたというのは一体…」

 

「天城さんは何かに追いかけられていたので?」

 

「春斗が何かから逃げていたのは知ってたけど一体何に追われてるんだ?」

 

「さぁ?そこまでは私も知らない。その辺の事聞いたら聞いたで『国家機密レベルの情報だけど聞く?』とか『知ったら今後逃亡生活することになるけどOK?』とか言ってくるから相当言いたくないんじゃない?」

 

そうして鈴は続きを話始めた。




後半へ続く(キートン山田声で)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Q「どうしてこうなった?」A「俺に質問するな」

お久し振りです。自粛が始まってずっと同じ寮の人とモン〇ンやら麻雀やらTRPGやらをやってて今更な投稿になりました

最近とあるアニメのラグビー回を見たのでその影響が出ています


施設に保護されて三日後、春斗は目を覚ました。

 

「知らない天井だ…」

 

「当たり前でしょ、少なくともアンタの寝床じゃないんだから」

 

呟いた独り言に返事が返ってきた。声のした方に顔を向けるとそこには椅子に座りながら日本のファッション雑誌を読んでる鈴が居た。

 

「アンタあれから三日間寝てたけど身体大丈夫?記憶とかちゃんと残ってる?」

 

鈴は雑誌を閉じ春斗に質問する。それに対し春斗は身体を起こし軽く腕などを動かし状態を確認した。

 

「取り敢えず川で助けてもらって倒れるまでの記憶は残ってるし、それより前の記憶もちゃんとある。身体はまだ少し痛むけどそれだけ。支え用に杖を一本貰えれば歩けそうかな?」

 

「そう」

 

返事を聞いて鈴は備え付けの固定電話でどこかに電話をかけ少しの会話をすると電話を切った。そして懐から銃を取り出し春斗に向けた。

 

「ごめんね。アタシこういうのは嫌いなんだけど、上の連中がアンタがもし他の国のスパイだったら面倒だから目が覚めたらこうしとけって煩くて」

 

「だろうな、俺だって上の人間だったらそういうと思う」

 

鈴の顔は申し訳無さそうな顔をしていた。そして春斗もそれをみて両手を掛布団の上に置いた状態でまたベッドに横になった。

 

「いくつか質問していいか?」

 

「答えられる範囲なら」

 

「まず、今日って何月何日?」

 

「十一月二十四日」

 

「俺の着てた服や身に着けていたモノは?」

 

「一応検査して問題はなかったから保管してあるって言ってたわ」

 

「サンキュ」

 

それだけ聞くと春斗は無言になった。質問中鈴は気を張りながら答えていたが春斗は変な素振りは見せず、本当に気になった事だけを聞いてる様で内心ホッとしていた。

 

そして部屋のドアが開いて室内に武装した兵が数人とこの施設の責任者が入ってきた。

 

「目が覚めて何より。私はここの責任者の(ヤン)だ。君の事について色々聞きたいんだが大丈夫かな?」

 

「ああ、ここで拒否して銃殺は嫌だからな」

 

「はは、随分と肝が据わってるね君は」

 

楊は兵の一人にアイコンタクトを取るとその兵は杖を春斗に渡した。

 

「どうも」

 

杖を受け取り楊と共に部屋を出ようとした時、ふと立ち止まり鈴の方を見た。

 

「助けてくれてありがとね、()()()()

 

そう伝えると春斗また歩き出した。残った兵が鈴の今後についてを伝えると鈴と兵達も部屋を出た。

 

「あれ?あたしアイツに名前教えたっけ?」

 

そんな疑問を抱きながら言われたよう訓練に戻った鈴だった。

 

 

 

—それから三日後—

 

鈴を含む施設の少女達が全員呼び出された。集合場所には楊と教官用の服を着た春斗がその隣に立っていた。

 

「おはよう諸君。突然だが今日から彼、天城春斗が諸君の教官になる」

 

「へ?」

 

楊の発言に思わず声が出た鈴。他の少女達も困惑の声を漏らしていた。

 

「諸君の反応ももっともだ。しかしこれはこの施設を運営する方々の決定事項だ。ではMr春斗、自己紹介を」

 

「えー、はい。紹介に預かった天城春斗だ。一週間くらい前に川下り(笑)してたところを保護されて昨日教官に任命された。色々言いたいことはあると思うがよろしく。それと…」

 

春斗は楊と何かを確認するアイコンタクトを取ると続けた。

 

「今日から約三ヶ月、来年の二月二十八日までに俺からこのブレスレットを奪った者に代表候補生の座と中国第三世代IS、甲龍(シェンロン)を与える」

 

春斗は右手首のブレスレットを見せながら宣言した。

 

「「「はぁ?」」」

 

「これは国の上層部の連中も承諾済みだ。力尽くで奪うも良し、毒を盛るなりして無力化して奪うも良し、色仕掛けでも殺人でも寝首を搔くでも構わん。とにかく手段は問わない。全力で俺から奪い取れ。期限までに奪えなかった場合、最終日に俺の判断で渡す者を決める。以上‼」

 

そう言って春斗は楊を置いて部屋を出た。

 

室内が鎮まる中楊がワザと咳をすると補足する様に口を開いた。

 

「Mr春斗からの指示で八時~十三時、十四時~十八時の訓練以外の時間は基本自由となった。それと施設のDブロック、教官専用ブロックの出入りを期限まで自由とする。何か質問のある者は?」

 

全員がざわつく中鈴が手を挙げた。

 

「どうした(ファン)?」

 

「アイツ何者なんですか?瀕死で川を流れてきたと思ったらいきなり教官になるなんて」

 

「すまない、彼の素性に関する事は口外しないのが彼との約束、いや、契約でな。知りたいのなら彼の口から直接聞いてくれ」

 

他に幾つかの質問がとび落ち着いた頃に午前の訓練の為一時解散になった。

 

______________________

 

—十二月十日—

 

春斗が教官に着任してから約半月。施設の屋内訓練室では春斗を中心に少女達が息切れしながら倒れていた。

 

「ほらほらどうした?そんなんじゃ何時まで経ってもこれを奪えないぞ?」

 

ブレスレットを指でクルクルと回しながら欠伸を掻いていた。

 

「ま、まだまだぁ‼」

 

一人の少女が起き上がり春斗目掛け突っ込んだ。それを見た春斗はブレスレットを手首に戻し、落ち着いた様子で首袖を片手で掴み下へ押した。少女がバランスを崩すと透かさず春斗は少女の足を払い空中で一回転させ後方にあるマット目掛け放り投げた。

 

「時間切れだ。今日の訓練はこれで終了。俺はこの後事務仕事をして夕食を取り、屋外に造った簡易浴槽で入浴してから就寝に着く。以上」

 

人数分の水分とタオルを入れた籠を用意してから春斗は訓練室を出た。

 

______________________

 

事務仕事を終わらせ事務所を出ると、正面にかなり際どい水着グラビアの等身大パネルが置かれていた。その一瞬の動揺を逃さず二人の少女が両手に一つずつ手錠をかけた。

 

「教官殿も年頃の男子でありますなぁ?」

 

「ブレスレット、貰ったら、このパネル、あげるから、許してぇ」

 

互いの腕には掛けられた手錠の反対側が付けられていた。そして二人は春斗を抑える為に空いた方の腕を素早く伸ばし拘束しようとした。しかし

 

「お前達、相手を間違えてるぞ」

 

手錠に捕まってたのは(ヤン)だった。

 

「「え?」」

 

「不意を突こうとするのは良いが対象を瞬時に判断しないとこうなるぞ」

 

楊の後ろから春斗が顔を出した。

 

「Mr春斗、珍しく茶会に誘ってきたのはこれの為か?」

 

「さぁ?どうでしょうねぇ?」

 

そう言いながらも春斗はどこから取り出したのか『ドッキリ大成功!』と書かれたボードを出しながら「テッテレー」と呟いた。

 

「はぁ、取り敢えず二人はこのパネルの事で説教だ。このまま連れて行くが問題ないな?」

 

「え、ちょっと待ってください!?」

 

「私達、まだ、晩御飯、食べてない…!」

 

「人は一食抜いたくらいじゃ倒れないからゆっくりお説教受けてきな(笑)」

 

「「教官の鬼ー‼」」

 

こうして二人は楊に連れていかれた。

 

______________________

 

夕飯時、春斗は麻婆定食を注文していた。開いてた席で静かに食事をしていると正面に一人、断りを入れてから座った。

 

「教官は麻婆定食っすかー。自分の餃子一個あげるんで一口貰っていいっすか?」

 

「関節キスを気にしないならご自由にどうぞ?」

 

「自分弟いるんでそういうの気にしないっす」

 

そう言って少女は餃子を一つ春斗の空き皿に乗せ、レンゲで麻婆豆腐を一杯すくい口に運んだ。それと同時に顔を真っ赤にして悶絶しだした。

 

「あと俺超絶に辛口だから気を付けて…って食べた後に言ってみたり」

 

そして春斗は貰った餃子を戻し別の餃子を取り口に頬張った。

 

「薬を使うならもう少し薬事態の臭いを消す事、ご馳走様でした」

 

食器を受付に戻し食堂を出た。

 

______________________

 

 

「はあ”ぁ”~~~、日本人はやっぱ風呂だよな~」

 

春斗は頭にタオルを乗せながら親父臭い声を出しながら浴槽でのんびりしていた。

 

「親父臭い声出してんじゃないわよ~。こっちもそういう声出したくなるじゃな~い」

 

「別に出してもいいんだよ~?一夏だって絶対ってレベルでだしてんだから~」

 

「アイツは元から精神が親父臭いからノーカン~」

 

鈴も一緒に。尚二人は水着を着ている。

 

「しかしアンタが一夏と知り合いだったとはね~。アタシの事知ってて納得したわ~。今度アイツの隠し撮り写真何枚か売ってよ~」

 

「隠し撮りなんて失礼な~、盗撮だよ~。残念ながら~、ストックは本当に全部鈴ちゃんに売っちゃったからもう無い~」

 

「一緒じゃな~い。あとついでにその縁に免じてブレスレットちょうだ~い」

 

「それはダ~メ~。自分で奪いなさ~い」

 

「アンタ強すぎるから面倒臭~い」

 

「そうか~」

 

そんな会話をしながら二人は最後に牛乳一瓶を一気飲みして別れた。

 

______________________

 

深夜。春斗はベッドに横になっていると部屋に入ってきた人の気配で目が覚めた。悟られない様呼吸はそのまま、侵入者の気配を感じながら様子を窺った。

 

「おい教官、貴様起きてるんだろ?」

 

春斗は反応せずそのまま寝たふりを続けた。

 

「狸寝入りするならそれでもいい。私は貴様が眠るまでこのまま待つ」

 

(ほぅ?)

 

「私は昔から体質なのか、眠れる時間が他と比べて異様に少なくて済む。昨日までで貴様の睡眠のリズムは大体わかった。これからは毎晩こうして隣に立ってやる」

 

そう告げ少女は適当な椅子をベッドの横に移動させ座ると腰に下げてたナイフを手に取った。

 

「貴様はいつまで睡魔に耐えられるかな?」

 

(成程、そうやって眠れず精神が摩耗したところをバッサリって事か…)

 

そうして春斗の眠れない夜が始まった。

______________________

 

 

—一月一日—

 

「午前零時。諸君、新年あけましておめでとう。年が明けたが今後も気を抜かず…」

 

「楊さん、挨拶は良いけど誰も聞いてないと思うよ?」

 

春斗の言う通り、誰一人(ヤン)の話を聞いていなかった。理由は単純、全員が春斗のブレスレットを奪う為春斗に総攻撃を仕掛けていた。深夜テンションに加え、面白半分に春斗がアルコール入りの甘酒を全員に配ったのが原因である。全ての攻撃を躱しているが、互いに意図せずに発揮させている連携に春斗は珍しく手こずっていた。

 

「…偶にはハメを外すのも悪く無いか。最近君が強すぎると愚痴っているのを聞いたからな。ストレス発散に丁度いいだろ」

 

「けど彼女達確実に強くなってますよ?中には拳で壁壊す娘や突然死角からナイフで襲ってくる娘だっているんですから」

 

「君は特殊部隊でも造る気かね?」

 

______________________

 

—一月二十八日—

 

「期限まであと約一か月。最近では俺も危うくブレスレットを取られそうになる。お前達は着実に強くなっている。しかし‼、この言葉を聞いたからと言って油断をするな。油断していると他の者がブレスレットを先に獲るかもしれない。そうなる前に、己の手で奪い取れ‼奪うために己を鍛えろ‼いいか‼」

 

「サーイエッサー‼」

 

「声が小さい‼」

 

「「サーイエッサー‼」」

 

「良い返事だ‼それでは今から施設周辺をランニングだ‼十五分以内に五周してこい‼間に合わなかった者は一秒に付きスクワット三回だ‼それでは三分後施設出入口に集合だ‼」

 

「「「サーイエッサー‼」」」

 

「楊管理官、訓練メニューはともかく、このテンションに着いて行けないアタシは間違ってるのかしら?」

 

「いや凰、これは私にもわからん。が、今言えるのは最終日にはこの施設が特殊部隊の育成施設になっているかもしれないという事だ」

 

______________________

 

—二月二十八日—

 

「それでは甲龍は凰に渡すものとする。一同、異存は無いな?」

 

春斗の問いに反対する者はおらず、ブレスレットもとい甲龍は鈴の手に渡った。

 

「ねぇ、貰っといてこういう事言うのはアレなんだけどホントにアタシでいいの?」

 

「というと?」

 

「だって他の娘の方があきらかにアタシよりつよ…」

 

「貴様ァ‼せっかくの教官殿からの行為を無下にする気か‼」

 

「貴様が選ばれたのは我々には無い何かを持ってるからだ‼」

 

「選ばれなかったからと言って我々に悔いは無い‼」

 

「今日まで教官殿と訓練を詰めた事こそが一番の報酬だ‼」

 

「そ、そう…。じゃあ遠慮なく貰うわよ…」

 

そう言いながら鈴はブレスレットを右手に付けた。

 

「Mr春斗、凰君の登録手続きと今後の彼女等の事で話があるのでご移動をお願いできるかな?」

 

「分かりました」

 

そう言って三人は部屋を出た。

 

「楊管理官。あの娘達ってこの後特殊部隊に配属でもされるの?」

 

「そうなる可能性もあるが、彼女達がMr春斗以外のいう事を聞くのかも怪しい。それとこの間、Mr春斗の為の隠密部隊を自分達で作ろうとしている会話を聞いた。そうなると私にもわからん」

 

「どうしたんですか二人とも。置いてきますよ?」

 

二人の会話を聞いてない春斗は呑気な顔で廊下の奥で二人を呼んでいた。

 

 

______________________

 

 

 

「ていう経緯でアタシは代表候補生になったって訳」

 

「もうどこを突っ込めばいいかわからねぇ…」

 

「よくお前は無事だったな」

 

「思わず途中で考えるのを止めてしまいました」

 

三人は思い思いの事を口にしていた。当の春斗は途中、虚からの会長捕獲命令(緊急クエスト)に狩り出されていた。

 

「それで実際、残った施設の娘達は今施設に残って警備隊してるって噂」

 

そこで昼休み終了のチャイムが響いた。

 

「とにかくアタシもアイツについての情報は持ってないからその辺は期待しないで。それじゃおっ先ー」

 

「やばい、次千冬姉ぇの授業だ」

 

数分後、心地の良い鈍い音が響いたとか…




それではまた次回


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

怒った時は甘い物を摂取すると良いらしい

最近知り合いにIS関連のカードを貰ってテンションが上がって創作意欲が湧きました。
それでは本編どうぞ


数日後のある日の放課後、廊下で春斗は呼び止められ振り返った。そこには一夏が立っていた。

 

「どうした一夏?放課後の特訓から篠ノ之とオルコットを外してくれっていう相談なら無理だぞ?」

 

「それも頼みたいとこだけど今は言ってる場合じゃない。春斗、俺をもっと強くしてくれ‼クラス代表戦までの間だけでもいい‼」

 

そう言って一夏は頭を下げた。それを聞いて春斗は「ちょい待ち」と呟くと懐から小型端末を取り出し何かを確認しだした。

 

「あーうん、理由は分かった。しかしお前ほんとデリカシーないよな?」

 

「は?」

 

「鈴ちゃんに向かって貧…おっと、禁句を堂々と言うんだからな」

 

「あれはついカッとなって」

 

「知ってる事自体には驚かないか。正直その件について一発殴ってやりたいところだが…まぁいい。その依頼受けてやってもいいが、正直かなり厳しいぞ?」

 

「なんでだ?」

 

「まず俺に対する報酬はいつも通りでいいとして、問題はさっき出た二人だ。お前はあの二人の特訓で多少は成長できてるのは間違いない。だが正直、俺個人としては邪魔だ。それを踏まえると時間は二人が眠る深夜になる。使用許可はなんとかできるが、同じ部屋の篠ノ之に出入りがバレればそれで終わり。それに日中の授業への悪影響がでる可能性もある。それでもやるか?」

 

「構わない。今回は鈴に勝たないといけないんだ」

 

「ほんと鈴ちゃんなんでコイツに惚れてんだろ」ボソッ

 

「今なんか言ったか?」

 

「独り言だ気にするな。分かったじゃあ早速今夜から追加特訓を始めるから夜中十一時に第三アリーナに来い」

 

「え、今日から!?」

 

「当たり前だ。特訓ついでに新武装の実験台になってもらうから覚悟しとけ。ホントならその為にアリーナ予約してたんだからな」

 

「お、お手柔らかに…」

 

その日から代表戦前日までの間、深夜になると謎の悲鳴と爆発音が聞こえるという苦情が生徒会に寄せられたとか寄せられてないとか…

 

 

 

______________________

 

—クラス代表戦当日—

 

「さて、試合当日になった訳だが…お前何してんの?」

 

春斗が視線を向けるとそこには正座させられている一夏と腕を組み怒りをあらわにしている箒とセシリアの姿があった。

 

「私達に内緒で深夜に特訓していただと…?」

 

「はい…」

 

「でしたら篠ノ之さんはともかく、何故わたくしをお呼びにならなかったので?」

 

「だって二人がいると特訓にならないって…」

 

「「私(わたくし)が邪魔だったと!?」」

 

「いや、俺じゃなく春斗が…」

 

「天城(さん)!?」

 

怒りの矛先が春斗に向けられた。

 

「じゃあ聞くが、お前ら自分からブラックホールに突っ込む度胸はあるか?」

 

「はぁ?」

 

「何故そこでブラックホールが…?」

 

「俺は特訓と同時にある武装の実験をしていた。それは下手をするとブラックホールに飲まれるのと同等の現象が起こる可能性があった。一夏一人なら面倒を見やれるが、三人もいると全員の面倒を見るのは無理だ。これを言った上でまだ何か言うか?」

 

「ほんと、死ぬかと思った。途中、部屋に遺書置いていこうかとも思った…」

 

振り返ると一夏が青い顔をしていた。それを見た二人は怒りを鎮め、一夏の肩を叩いた。

 

「おかげでいいデータが録れて武装も無事に完成したけどな。そろそろ時間だ行ってこい一夏。衝撃砲は元々俺が作った物だ。教えた攻略法さえ守れば勝機はある」

 

「ああ、行ってくる」

 

顔色が戻った一夏はそのままカタパルトに乗りアリーナ中央へ飛んで行った。

 

 

 

______________________

 

 

 

「特訓の成果はあったみたいだな」

 

試合開始から数分、春斗たちは管制室にいた。モニターの向こうでは一夏は初心者とは思えない動きで鈴の衝撃砲を躱し続けていた。

 

「一体どんな特訓を?」

 

パネルを操作している真耶の問いかけに全員が興味深々といった様子で春斗を見た。

 

「簡単な事です。アイツにひたすら衝撃砲の雨を浴びせただけです」

 

「というと?」

 

「衝撃砲を俺のISにインストールしてそれを一夏に撃ち続けて避けれるようになってきたら数を増やす。それの繰り返しです。衝撃砲は撃つ前に僅かに空間の歪みが発生する。それをISのセンサーを無しで目視と直感で分かるようにする事が特訓の内容でした。結果としてはセンサーが感知してから反応できるぐらいにはなりました」

 

モニターには衝撃砲を躱し近接戦に持ち込み鍔競合いをしている一夏と鈴が写っていた。

 

______________________

 

 

「いい加減当たりなさいよ‼」

 

攻撃が中々当たらず苛立ちを覚える鈴。一方一夏は春斗との特訓を思い出していた。

 

(春斗との地獄の特訓のおかげで全部は無理だけど半分は躱せる。後は隙が出来たら瞬時加速(イグニッション・ブースト)で距離を詰めて一気に…)

 

そう思った時、空から何かがアリーナのバリアを突き破って中央に落下してきた。舞っていた土煙が晴れるとそこには全身装甲(フルスキン)のISが立っていた。一夏が問いかけるも一切反応せず、一夏と鈴に襲い掛かった。

 

 

______________________

 

 

一夏と鈴が生徒の避難と教員が来るまでの時間稼ぎを始めて数分、管制室ではセシリアが千冬にISの使用許可を求めていた。

 

「それは無理だ」

 

「何故ですか!?」

 

「アリーナは今あのISの仕業でシステムがハッキングされてロックが掛かっている。三年の精鋭がシステムクラックを実行中だ。それが終わるまでは突入できない。それにお前は部隊には入れない。お前のISは一対多向きだ。お前が多側になるとむしろ邪魔になる。第一、お前は連携訓練の実績が…」

 

「じゃあ俺になら許可はでますか?織斑先生?」

 

会話を止め一同が春斗の方を向いた。春斗は備え付けのコーヒーが入ったポッドから中身をカップに淹れながら返事を待っていた。

 

「何を考えている天城」

 

「システムクラックにはまだ暫らく時間がかかる。解除出来たとしてもそれまでに二人がそれまでにもつかもわからない」

 

入れ終わると中に砂糖を入れ始めた。一杯、二杯…

 

「なんなら先にあの二人を逃がしながら戦う事もできる。本音を言えば新しい武装の実戦データを取りたいって言うのもある」

 

三杯、四杯…。五杯目を入れると真耶とセシリアが口元を抑えた。そして六杯目…

 

「何より、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ガラクタ…?」

 

真耶が春斗の発言に疑問を持ち思わず口にした。

 

「良かろう、お前にISの使用許可を出す。ただし、周りへの被害は最小限に抑えろ。それが条件だ」

 

「了解。それとオルコットにも使用許可を出してもらえますか?」

 

「え?」

 

春斗に指名されたセシリアは思わず声を上げた。

 

「何故だ?理由を聞きこう」

 

「先にさっきまでここにいた筈の誰かに説教してくる。それまでの時間稼ぎに代理でオルコットの力を借りたい」

 

春斗の発言で三人は箒がいない事に気付いた。

 

「そういう事なら仕方がない。オルコット、お前にもISの使用を許可する」

 

「ありがとうございます」

 

それを聞いて春斗は淹れたコーヒーを一度で全て飲みカップを置いた。

 

「行くぞオルコット。お前の惚れた男を助けに」

 

「なっ、何を根拠に…ちょっとお待ちなさい!!」

 

そうして二人は管制室から出て行った。

 

「織斑先生、宜しかったんですか?あの二人に使用許可を出して…」

 

「天城の奴、コーヒーに大量の砂糖を入れて飲んでただろう?」

 

「はい、見てるこちらが胸焼けしそうな量でした」

 

「あの飲み方をしている時のアイツは()()()()()()()

 

「怒ってるって事ですか?」

 

「ああ、恐らくあの所属不明ISに何か心当たりがあるんだろう」

 

「だからガラクタですか…」

 

春斗の発言に納得した真耶。

 

「それにアイツのいう事も一理あるからな。ここは彼等に任せてみよう」

 

そして二人はモニターに視線を向けた。




ちょっと半端な気がしますが次回に続きます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

普段怒らない人程怒った時が怖い

手が進んだので連続投稿です。


一夏と鈴が戦闘を始めてからどのくらいの時間が経っただろうか。二人は即席ながらも連携攻撃で応戦していた。鈴が注意を惹いてその隙を一夏が攻撃する。しかし中々当たらず白式のSEが残り三割を切っていた。一度二人は距離を取り、相手も様子を見ていると一夏がある事に気付いた。

 

「なぁ鈴。アイツの動きってなんだか機械みたいじゃないか?」

 

「何言ってんのよ。ISは機械に決まってんじゃない」

 

「いや、そうじゃなくてこう…決められた動きしかしないAIみたいな」

 

「じゃあ何?アイツが無人機だって言いたいの?」

 

「そう。そんな感じ」

 

「そんなのあり得ないわよ。第一ISは人が乗ってないと…」

 

「実は前に春斗がISの無人機みたいな装備を使ってる事があったんだ。もしそれと同じ、似たようなプログラムを使っていたら…」

 

「アイツなんてモン作ってんのよ」

 

一夏の話を聞いて鈴はその可能性を視野に入れ考えた。

 

「じゃあもしアレが無人機だったら勝算はあるの?」

 

「ああ、とっておきながな」

 

「ふーん、じゃあアレが無人機と仮定して攻撃を…」

 

「一夏ぁっ‼」

 

いきなり大きな声が聞こえ、声のした方を見るとピットの上に箒が立っていた。

 

「男なら、それぐらいの敵に勝てなくてどうする!!」

 

箒の呼び掛けに反応して敵のISは箒を見た。そのまま腕を上げ腕部のビーム砲のチャージを始めた。

 

「っ!?マズい、鈴‼俺の背中目掛けて全力の衝撃砲を撃て‼」

 

「はぁ!?アンタ何考えてるの!?そんなことしたら…」

 

「良いから撃て‼」

 

「ああもう‼どうなっても知らないわよ‼」

 

そうして鈴は一夏の背後に回り込み、一夏に言われたように衝撃砲を撃った。そして一夏は衝撃砲の威力を利用して瞬時加速(イグニッション・ブースト)で加速、同時に零落白夜も発動させ腕を切り取とした。

しかし少し遅かった。一夏が切るより先に敵ISのビームが箒に向け発射された。

 

「箒…っ‼」

 

一夏はは箒の名を叫んだが敵ISの残った腕で殴り飛ばされた。鈴も衝撃砲を撃ってすぐに移動していたが間に合わない。

 

「っ‼」

 

箒は逃げようとしたが体が思う様に動かなかった。そのまま両目を閉じ死を覚悟した箒だったが、何かが横を通り抜け正面にソレが割って入ってきた。

 

「力も持ってないのにしゃしゃり出るんじゃねぇっつーの‼」

 

声が聞こえると同時に爆音が鳴り響いた。だが箒は傷一つなくその場に立っていた。爆音による煙が晴れるとそこには大楯を構えた春斗が立っていた。

 

「春斗!?」

 

「今だ!オルコット!!」

 

「了解ですわ!!」

 

「セシリア!?」

 

春斗の声で上空で待機していたセシリアが敵ISを打ち抜き機能を停止した。

 

「ナイス狙撃」

 

「天城さんの予測が正確だったからですわ。一夏さんの一撃で相手のSEが大きく減った時を狙いつつ、弱点であろう部位を予め教えて下さいましたから」

 

そして春斗は一度回線を切ると箒を見た。

 

「どうだった?自分が死ぬかもしれないと思った瞬間は?」

 

箒は腰が抜けたのかその場に座り込んでいた。

 

「すまない天城…、お陰でたすかっt」

 

そこまで言いかけて箒は言葉を止めた。目の前で春斗が明らかな殺意を箒に向け、喉元にナイフを突きつけていたからである。

 

「な、なにをする…」

 

「今劣勢の思い人の力になりたくて身体を張って励ますという行動原理は理解できる。だがその過程でお前が死んだらアイツはどう思う?『自分のせいで死んだ』『自分が力不足だったから』と嘆きながら後の人生を後悔する事になるぞ」

 

「それは…」

 

春斗は突きつけていたナイフを降ろし殺意を消した。

 

「頼れば力を貸す奴がいるのに、それをつまらない意地を張って頼らないでいるのは愚者のやる事だと俺は思う。いや、つまらない意地というのは取り消そう。それをいつまで続けるかはお前の自由だ」

 

「…。」

 

春斗の言葉に箒は返す言葉が無かった。春斗の言う『力貸してくれる奴』が誰なのかは理解している。それを頼らないでいるのは春斗の言う所の自分の詰まらない意地であるのも分っている。あの人ならそんな事を気にないで力を貸してくれるのは分かってるのに。

 

「もし自分で言いづらいなら俺に言え。そん時は代理で頼んでやる」

 

「すまない、だがそれは私自身が決める事だ」

 

「そうか、だがその決断は早い方がいいぞ?悩んでる間に一夏を他の奴に盗られても知らないからな?」

 

「お、大きなお世話だ!!」

 

箒が茶化され大声で返した時だった。

 

『天城さん大変です!!先程のと同じISが上空から二機、こちらに向かってきてます!!』

 

セシリアから敵の増援の知らせが入ってきた。

 

「分かった。セシリアは鈴と一緒に一夏をここまで連れてきてくれ。多分今の一夏は身体が言う事を聞かないだろうからな」

 

 

そう返すと春斗は管制室にチャンネルを繋いだ。

 

「山田先生、今の避難状況は?」

 

『たった今クラックが成功して生徒の避難が始まりました。増援部隊ももうすぐそちらに向かい…』

 

「増援部隊を避難誘導に割いて代わりに救護班をこちらに回して下さい。多分一夏が無茶したせいで身体がボロボロです」

 

『貴様はどうする、天城』

 

千冬が割って会話に入ってきて質問してきた。

 

「織斑先生なら分かるでしょう?今から来るガラクタを全部ぶっ壊します」

 

『天城君一人でですか!?無茶です!!いくら何でも一人では…』

 

『分かった。出来れば一機は綺麗な状態で無力化しろ。そいつを調べたい』

 

「今の俺にそんな手加減できると思います?」

 

『出来たら報酬として一週間、私の授業中にIS関連のプログラミングをしていても注意しないと約束しよう』

 

「二週間の免除を希望します」

 

『それでは長すぎる。十日で我慢しろ』

 

「…分かりました。じゃあ十日間免除でその依頼を受けます。本当にいいですね?」

 

『ああ構わん』

 

「今の会話しっかり録音しときましたからね。それじゃあ通信切りますよ」

 

そういって通信を切ると同じタイミングでIS乗り三人が到着した。

 

「という訳だ。俺がガラクタを一体鹵獲して、もう片方をスクラップにするからここで救護班が来るまで待ってろ。それまでは鈴ちゃんとオルコットは二人をよろしく」

 

「わたくしも戦いますわ。二人だけならある程度の連携も…」

 

「待ったセシリア。春斗からコーヒーの匂いがする」

 

一夏がセシリアを止める様に小声で呟いた。

 

「セシリア、ここに来る前に春斗はコーヒーに何杯砂糖入れてた?」

 

「確か六杯程入れてましたが…」

 

「六杯!?よくそんなの飲めるわね」

 

「春斗がコーヒーに大量の砂糖を入れて飲む時は怒ってる合図なんだ。今は言う通りにした方がいい」

 

「わ、わかりました」

 

小声での会話を止めセシリアはやはり残ると春斗に伝えた。

 

「じゃあ行ってくる」

 

そう言って春斗はピットを後にした。




次回は春斗単体の戦闘になります


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。