Apocrypha stay night (須賀孝太郎)
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プロローグ

聖杯戦争、万能の願いを叶えるという聖杯を巡る戦い。ここに「冬木の」という枕詞がついた場合、秘匿される神秘を守る魔術師の間では英霊をサーヴァントとして召喚し最後の一騎になるまで殺し合う極めて特殊な戦争を指す。

東方の小国として魔術協会の監視が緩かったせいだろう。この聖杯戦争は三度繰り返されるまで魔術師たちの間にも目をつけられることはなかった。だが、第二次世界大戦直前に行われた三度目の聖杯戦争、時制の影響か国家が介入する。その異常事態を機に聖杯戦争のシステムそのものが世界中の魔術師たちに情報として拡散された。魔術師たちは驚くとともに冬木の聖杯戦争の模倣を試み始めた。結果は成功。システムを知っていれば、魔術師として二流の者でも再現ができたのだ。

それほどまでに遠坂、アインツベルン、マキリの御三家が構築した聖杯戦争のシステムは儀式として優れていたのだ。だが、冬木における聖杯戦争は60年以上経った今まで一度も行われていない。

現在、冬木の聖杯戦争を模倣した亜種聖杯戦争は世界各地で行われている。しかし、その儀式で呼び出せる英霊の数は多くとも五騎。儀式を成立させたとしても万能の願望機である聖杯を出現させるに至っていない。

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 燃え盛る洋館の中で彼は呻き、這っていた。身体の限界はとうに超え、数十cm進むたびに激痛と血に似た何かが飛び散る。それでも死なぬのは一重に「死んでたまるものか」という執念、いや、怨念のおかげだろう。今回、行われた聖杯戦争もまた失敗に終わり、大聖杯すら失ってしまった。もう、儀式の完成は不可能だろう。

(儂は……どこに向かっておる?)

 最初は願いがあった。「世界を救う」という大層な願いが、だが、今ではただ生きながらえることのみを考えるようになった。そのために自身の子孫を巻き添えに()()()は息絶えるのか?

 彼の身体が無意識に向かっていたのは彼の虫蔵、この地で最も彼が過ごした魔術工房。そこにたどり着いた彼の脳裏にある考えが浮かんだ。馬鹿げた考えだ、成功するはずがない、しかし……

 葛藤は数秒彼はすぐに行動に移した。身体中の刻印虫を総動員して魔力回路を開く。

「……素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。」

 虫蔵の中心に描かれた魔法陣が光り輝き、部屋中に魔力が満ちる。

閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)。繰り返す都度に五度。ただ満たされる刻を破却する。」

 もう、終わった聖杯戦争。これ以上呼び出されることのないサーヴァント。それを無視して行われる召喚。

「――――告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理ことわりに従うならば応えよ。」

 火の手はすぐそこまで迫ってきており、地下も崩れ落ちそうになっている。それを意に介さず、詠唱を続ける彼は狂気に染まっていく。

「誓いを此処ここに。我は常世とこよ総すべての善と成る者、我は常世総ての悪を敷しく者。汝、三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

 彼の狂気はバーサーカーすら通り越した災厄の英霊を呼び出した。

「令呪を持って命ずる!大聖杯を手に入れるまで死ぬな‼︎」

令呪による強制力がかかり、死ぬことが許されなくなる。

「重ねて、令呪を持って命ずる!我が肉体を糧にせよ‼︎」

目の前の災厄は自身の身体を喰らい、より強靭になる。

死の間際、最後の令呪を持って彼は命じた。

我が存在を魂に刻みつけよ‼︎と。

その日、完全に間桐は滅び、残ったのは災厄のサーヴァントだけだった

 

 

 

 

 

 




本作はfate apocryphaの二次創作です。あまり、期限などを設けずのびのびとしていくのでご了承ください。


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