仮面ライダーヴィランズ (辰ノ命)
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プロローグ
EP00 日常の終わり


ヴェノム面白かったですね!!(唐突
それをちょっと意識してたり…

仮面ライダーは確かに登場しますがあくまで怪人主役だゾ
つまりライダーは敵ゾ(ライダーは大好きゾ)

フォーエバー前にこんなもの見せやがってもう許さねーからな!という方はすみません許してください。それでもいいという方は私の小説に耐えきることができるでしょうか。それではどうぞご覧ください。


「お先に失礼します」

 

「お疲れ〜」

 

今日も仕事が無事に終わった。やっぱり何もないことが一番なんだけど、この世界には『アンチバイツ』って呼ばれている怪物が存在する。人に寄生し体を奪い、怪人になって人を食い栄養にする。一度寄生するとアンチバイツ自体が人間の細胞と遺伝子と直結し、体からもし分離するような事があるならアンチバイツは死に、寄生された人も死んでしまう。つまり人を助ける方法をなく、殺すしかないという事…。

 

こちらにはまだ来てないらしいがどうなのだろうか。まぁ大丈夫だろう。この世にはアンチバイツ以外にも『仮面ライダージャスティス』が怪人の魔の手から守ってくれているのだから。

 

「あ、卵買わないと」

 

 

 

 

 

 

-----------------

 

「ただいまー。母さんお待たせ。父さんはまだ帰ってきてない?」

 

「んー?うん。今日は少し遅れるらしいよ。あの人中途半端嫌いな人だから」

 

「たしかに」

 

『篠瀬 睦生』ただ普通の会社員。アパートの実家暮らしで、親と彼の3人暮らし。一応彼女持ち。

 

「ただいま。悪いな遅くなった」

 

「ちょうどいいわ。夕飯そろそろできるから」

 

「お帰り父さん」

 

「あぁ。ただいま」

 

それから家族団欒でいつも通りくだらない会話をし、夕飯を済ませた睦月は自室へ行く。スマホを開き、彼女といつも通り特に何かあるわけでもない会話をする。それがいい。いつも通りがなんだかんだ一番いい。何かあるより何もないの方が自分とって好ましい。これでいい。こうであり続けたい。

 

「じゃあまた明日」

 

「うん。睦生おやすみ」

 

「おやすみ」

 

 

 

 

 

------------------

 

「さて、仕事に行くかな」

 

パリッとしたスーツに着替える。今日も無事に終わらせよう。睦月は会社へ向かう。

 

「行ってきます」

 

「行ってらっしゃい」

 

「おう。行ってらっしゃい」

 

「いいなー父さん休みで」

 

「たまには羽伸ばさないとやっられないからな。お前も無理だけはするなよ?」

 

「わかってるよ。じゃあ行ってくる」

 

いつも通り会社へ向かう。いつもの道を通り、いつもの角を曲がると何やら人が集まっている。何かあったのだろうか。人混みの隙間から覗くと男性が1人苦しんでいる。その人を数名が声を掛け、電話をする人もいる。

 

「大丈夫ですか!?聞こえてますか!?」

 

「はい!すぐに来てください!!場所は!!」

 

みんな必死になっている。自分も何かできればいいが、帰って邪魔になってしまうだろう。ここに残っても仕方がない会社へ行こう。

会社へ向かおうとその場を後にしようとしたが、何やら様子がおかしい。先ほどのざわつきが静まり返る。苦しんでいた男性の声だろうか?うめき声じゃなくてこうグジュグジュとした感じの…

 

 

「キシャァァァァァァァァァァッッッッッ!!!!」

 

 

耳がつんざけるような叫び声が辺りにこだまする。周りの人たちも叫び逃げ惑う。何があったんだ。逃げる人々について行きながら後ろを振り向くと、この世のものとは思えない何かが立っていた。テレビで見たことがあるその姿。間違いないあれはアンチバイツだ。

そしてすぐ睦生は目をそらす。目が合ってしまった。焦りと恐怖で鼓動が大きく早くなる。全速力で走っていると突然空が曇る。いや曇った訳ではなかった。遮られている。上を向こうとした時、強い力で押さえつけられた。

 

「あ、あ……ぁ…」

 

声が出ない。恐怖で声が出ないのもそうだが、首を絞められている。

 

「だ、大丈夫だよ。君は死なない本当だ」

 

「え…?」

 

先ほど怪人に成り果てた男性が目の前にいる。しかし顔だけだそれ以外全て化け物である。殺すつもりだろ。首を絞める手に更に力を加えてくる。もうだめだ………と思ったその時である。アンチバイツが吹き飛ばされる。

 

「大丈夫かい?」

 

「あなたは…!」

 

「もう安心してくれ。君は安全な場所へ」

 

仮面ライダージャスティス。彼が来てくれた。睦月は走り出す。彼に感謝しながら後ろを見ず、ただ前だけ見て走り続けた──。

 

 

 

──気づいたら会社に着いていた。ジャスティスは大丈夫だろうか?…彼なら心配いらないだろう。今まで数々のアンチバイツを倒してきたんだから。ほっと胸を撫で下ろし、腕時計を見ると5分くらい遅刻している。人生初の遅刻だ。仕方がないとはいえ少し残念。それじゃあ会社へ行こうかな…鞄は…持っている。あの状況下で離さなかった自分は本当にすごいと思ったが、同時に会社人間なんだなと思った。

 

「鞄が重いなぁ…」

 

エレベーターを使いオフィスへ向かう。そしてすぐに上司の元へ行き事情を話した

 

「申し訳ありません…実は会社へ向かう途中に…」

 

「何考えている!!そんなことがあったならまず自分の心配をしろ!!怪我はなかったのか!?」

 

「す、すみません…身体は特に問題ありません…」

 

「…はぁ…とりあえず今日は病院へ行きなさい。見た目は大丈夫でも相手はあのアンチバイツ。何かあったじゃ遅いんだ。今日は休んで、後は任せなさい」

 

「すみません。ありがとうございます。お先に失礼します」

 

周りに頭を下げ病院へ行こうとオフィスを後にすると。廊下まで女性が追いかけてきた。『金井 まな』それが自分の彼女の名前だ。

 

「まな。ごめん先に帰るよ」

 

「それはいいけど怪我なくてホントに良かった…ジャスティスが助けに来てくれてホントよかった…あーもうホントにびっくりした!」

 

「ごめんごめん。今日は早く病院に行って何もないか見てもらうからさ。それじゃあまた明日。ごめんね心配かけて」

 

「うんじゃあね。無理しちゃだめだからね」

 

「わかってるよ」

 

まなに手を振り病院へ向かう。うちの会社から病院までの距離は近い。大丈夫ならそのまま行けるんだけど、今日はお言葉に甘えて休むとしよう…親になんて言おうか。聞いたら色々言われるだろうなぁ…ただ今は何もないことを祈って病院に行こう。

 

 

 

 

 

-----------------

 

ここはかなり大きい病院。今日は平日だしいつもなら人は少ないはずなんだけどやけに混んでいる。診察待ちの人がズラッと並んでいる。とりあえず椅子は空いてるけど自分は立ったままでいい。別に体が痛い訳でも苦しい訳でもないし。しばらく待っていると尿意を覚える。まだまだ時間かかりそうだしトイレに行こう。

 

「ハァ…」

 

朝から色々ありすぎた。色んな意味で今やっとゆっくりできてる気がする…。それにしても足元がやけにむず痒い。何か上へ上へ登ってきているようだ。

 

「え…!?」

 

そうして黒い何かが全身を包み込みふっと意識が遠のく。

 

 

 

 

 

 

彼の運命を大きく変える瞬間であった。

 

 

 

 

 

-----------------

 

 

トイレで倒れてからなにがあったか思い出せない。ここは病室だろうか。父と母、それに医者と看護師が自分を見ている。誰かが見つけて知らせてくれたんだな。

 

「よかったー…全く心配かけさせないでよ」

 

「特に異常は見られません。疲れからのめまいかと思われますので、自宅で安静にしてもらって、異常が見られる場合はすぐにご連絡ください」

 

なんだなにもなかったんだ…よかった…

 

「さぁ帰りましょ」

 

帰宅して風呂へ入りベッドに行って横になる。眠い。眠すぎる。体も熱くなってきた。吐き気も。苦しい。動きたいのに動けない…しばらく横になってよう。そうして目を閉じているうちに彼は眠りに落ちる────。

 

 

 

────何時間くらい経ったのだろうか。外はもう真っ暗だ。それに眠ったら体に異常はないしスッキリと起きれた。

 

「……………」

 

あの黒いものはなんだったんだろうか。医者が言ってた通り疲れで幻覚でも見てしまったのか。そう考えて窓の外に目をやると、突然頭の中に声?が響いてきた。言葉はわからないが「助けて」と言っているように感じた。睦生は体を引っ張られるように、その呼び声の元へ歩いて行く。窓を開けて足をかける。

 

「いやいやいやいやいや待て待て待て待て」

 

そう言っていた頃にはすでに飛んでいた。ここはアパート最上階。木をクッションの代わりにすれば助かるかもと思ってはいたが、下にはなにもない。何m飛んだんだ?10mいや20m…それ以上飛んでいるかもしれない…。

 

「う、うわぁあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

落ちる。グチャッという音を立てて地面に激突した。痛いものすごく痛い。けど…

 

「え?…え…?な、なんで…!?」

 

体は元通りになっていた。傷一つない体に……更に頭の中に響いてくる。「助けて」と。何が何だかわからないがその声のする方へ走る。走る速さも尋常じゃなかった。ただわかることは自分の体に異変が起きているということ。なんとなく察しはつく。あの黒いのは幻覚ではなく、なんらかで自分をこんな風に変えてしまったんだと。馬鹿げてるがそうとしか考えられない。

そんなことを考えているうちに声がした現場に着く。ここは工場か?周りは黒いものが散らばっっている。血のようにも見えるが黒いこれは血ではない。もう声は聞こえないが、何かが歩いてくる。物陰に隠れ恐る恐る覗くとそこにいたのは…

 

「ジャスティス…?……っ!?」

 

手に持っていたのは多分アンチバイツになってしまった人の頭?じゃあこの周りにある血みたいのはアンチバイツの肉片なのか…?そう考えただけで気分が悪くなる。そういえばなんでこんな真っ暗なのにこんなはっきりものが見えるんだ?

体制を変えようと少し動くとそこら辺に落ちていたボルトを蹴ってしまう。

 

「…………誰かいるのか?」

 

睦生は隠れていても仕方ないと思いゆっくり両手を上げて出ていく。

 

「何故ここにいる。君は一体誰だ」

 

「あ、朝助けてもらったものです。あのアンチバイツに捕まってしまった時の…」

 

「……あぁ君か…こんな遅くに何故こんな所にいるんだ?それに君がいた場所よりもかなり離れている」

 

「あ、えっと…(変なこと言ったらあれだしうまく誤魔化そう…)」

 

「ん?」

 

「実はここに勤務していて、忘れ物しちゃって取りに来たんです。お恥ずかしい話し…夜遅くに思い出してしまって急いで取りに来たんです」

 

「…そうだったのか…なら何故そこに隠れていた」

 

「そ、それは音がしたので何かあると思って…」

 

「ほう。しかも裸足でお出かけか。それにここは倉庫。なにを忘れたかは知らないがここから事務所までは距離がある。わざわざここへ立ち寄る必要がない。それからこんな積み上がってるコンテナのどこになにを忘れたんだ?リストに何にしろ。上司が聞くか確認に入るはずだ……お前。人間か?」

 

彼は剣を取り出した。そしてこちらにゆっくりと歩いてくる。刃先を向け、一歩でも動いたら切ると言わんばかしの殺気を放って。

 

「す、すみません!!!体がおかしなことになっていて声が聞こえて!!!それからえっと!!!!」

 

土下座をしながら必死になって事情を説明する。自分の体に起こったこと。何故ここにいるのかを全部洗いざらい吐いた。

 

「君…まさか……………っ!!」

 

 

ジャスティスが急に周りを警戒し始める。見ると周りに飛び散った肉片が、徐々に集まり一つの生命体を築いて行く。ニタリと笑い、こちらに指をさしてくる。

 

「殺したと思ってたか?仮面ライダー」

 

「アンチバイツ……やはりお前は特殊か」

 

「この身体は非常に馴染むな。かなりの適合率だ」

 

「コアを破壊しないと無駄というわけか」

 

「やってみろ。ジャスティスちゃん」

 

激しいぶつかり合い。共に譲らない。2人が戦っている最中、睦生はアンチバイツの体から声がするのが聞こえた。これは取り込まれた人の声…「助けて」と今度ははっきり聞こえる。そう思うと飛びかかっていた。

 

「な…!?」

 

「なんだこのガキ!!邪魔だ…くっ!!」

 

凄まじい力でアンチバイツの動きを封じる。体が更に熱くなる。この人を助けたい。今ならできるかもしれないと思った。自分は不死身の体を手に入れたんだとそう思っていた…だが

 

「そうか。お前もこっち側か。だが違うな。反応が薄い。逆に取り込まれた感じか?それとも適合率が高すぎて抑制されちまってるのか?まぁどちらにしろ。人間に近いお前は邪魔でしかない…失せろ」

 

気付いた時には体が真っ二つになっていた。上半身と下半身が離れ、血しぶきをあげながらそこら辺に無残に転がる。痛みより先に熱さを感じた。視線をアンチバイツにやると、腕が剣のように鋭い刃物に変化していた。

 

「これくらいじゃ死なないだろうけどな」

 

「………なるほど。ふんっ!!」

 

剣と剣がぶつかり合う音がする。「助けて」…まだ聞こえる。なんだこれもう治ってる。すごいなホントに人間じゃなくなってしまったのかもしれない。ならもうやるしかない。多分自分ならできる。あの中にいる人を。

 

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉっっっ!!!!」

 

「またか!!邪魔だ!!」

 

左腕を切られた。しかしすぐに再生する。驚異的な再生スピードで。

 

「なに!?お前…本当にこっち側なのか…!?」

 

みるみる姿を変えて行く。睦生はもう人間ではないという自覚してからだろうか。覚悟を決めたからだろうか。それは本人にしかわからないが、今、アンチバイツの目の前にいるのは自分たちと同種であってそうでないもの。

 

姿形は似ていても違うものに。

 

人を超えた何かに。

 

 

 

 

「ウ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛

ァ゛ァ゛ァ ッ ッ ッ ッ ッ !!!!!」

 

 

 

 

アンチバイツの顔面に固く握った拳を叩き込むと、コンテナを巻き込みながら倉庫の一番端の方まで吹き飛ぶ。急いで視線を睦生の方へ向けると、すでに目の前におり、馬乗りになり何度も顔面を殴る。

 

「戦いは素人だな」

 

両腕の剣で突き刺すが怯むことなく何度も殴る。

 

「その人を返せ!!」

 

「人?バカかこいつは俺のものになったんだ。俺とこいつを離してみろどちらも死ぬぞ?」

 

「…っ!!」

 

そうだ。アンチバイツに寄生された人は死ぬ…だけど

 

「うわぁぁぁ!!!!」

 

「な…っ!!」

 

自分の体の一部をうまく人に包み込ませゆっくりと引っ張り出す。人間とアンチバイツを引き剥がすことは無理だと言われていたが彼はやってのけた。ただ一心に助けたいと思い行なっているので、周りが見えてはいない。そこに隙が生じた。

 

「まさかこんなことが……だが素人だ!!!!」

 

突き刺していた剣を抜き、睦生の腕を切り裂くと思いっきり蹴り飛ばし、ジャスティスにぶつける。その隙に倉庫の壁を壊し逃げてしまった。逃げたアンチバイツに見送りジャスティスは彼に目を向ける、

 

「くっ…うぅ…」

 

「………君はアンチバイツに寄生された。しかし自我を保ち、不可能だと言われているアンチバイツと人の分離をも可能とする………………非常に不愉快だな」

 

「え…?」

 

「お前はここで死んでもらう」

 

「え?ジャスティスさん?なに言ってるんですか…?」

 

「化け物にこれからヒーロー気取られたら邪魔でしかないんでね」

 

「え…え?」

 

「化け物はおとなしく俺に殺されろ」

 

「ジャスティスさ…!!!」

 

何か言おうとしたがその途中で睦生の首は宙を舞っていた。




ヴィランズで色々想像してしまった方申し訳ナス……

また続きもオリジナル展開だけどお兄さん許して

次回もよろしくお願いさしすせそ


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ユニク・アンチバイツ編
EP01 日常の始まり


EP1以降は週1であげられればと思ってます。

前回より怪人 アンチバイツになってしまった篠瀬睦生。
一体これからどうなってしまうんでしょうかねー。まぁ黒幕はウェスカーなんですけどね初見さん。

というわけで、皆さんは私の小説に耐えきることができるでしょうか。それではどうぞご覧ください。


睦生は今、一番高いビルの屋上で景色を眺めていた。真夜中でも煌びやかなこの街。これからどうなってしまうのだろうか。姿はまだ怪人のままである。元に戻そうとはしているのだが、まだ完全に操れているわけではない。

しかしジャスティスが言っていたことは本当なのだろうか。今でも信じられない。

 

あの時─────。

 

 

 

 

──────

 

首が宙を舞う。ジャスティスは自分を殺す気だ。でもなぜ…。頭を再生し彼を見る。何の情もない目だ。人として見てない。アンチバイツとして見ている。

 

「ま、待って下さい!!ジャスティスさん!!僕は人間です!!…いや、あの姿形は違っても僕は…!!」

 

 

「あーいいもういい。お前は確かに元人間だ。だが今はアンチバイツ。だから殺す」

 

「僕には自我があります!!人としての!!これは僕なんです!!アンチバイツに喋らされてるわけじゃない!!」

 

ジャスティスは大きなため息をつく。「だからわかってるんだよ」と殺気がこもった剣を喉元に突きつけてくる。

 

「俺がな。仮面ライダーやってるのはビジネスみたいなもんだ。周りがあの寄生虫どもを殺せば感謝して俺に褒美をくれる。その褒美で俺は飲み食いできる。所謂ギブアンドテイクってやつだ。わかるか?」

 

「は、はい…ですけど僕は…!!」

 

「そうそうお前は寄生されてても自我を保ってます…だろ?そうだな。確かにお前は自我を保ったままだ。だけどな、そうなると俺が困るんだよ」

 

「え…?」

 

「さっきも言った通り。俺はビジネスでヒーローやってるんだ。お前がもし寄生してますが自我を保っています。そして僕は寄生された人を分離させることができます。なんて言ってみろ。最初は信じられないかもしれないが大体どっかの誰かは一部始終見てたりするんだよな…それが信じられて広まってみろ。どうなると思う?」

 

「どうなるんですか…?」

 

「俺の人気が駄々落ちだ。そうなると報酬も減る。だからさ。お前にいられるとホント困るんだよね」

 

「そ、そんなの自分勝手じゃないですか!!僕だって好きでこうなったわけじゃ…」

 

「自分勝手でもな。この世を生き抜く為には食うか食われるかなんだよ。俺は勿論食う方に行かせてもらうけどな」

 

喉元に剣先が入ると同時に、後ろに飛び跳ねて態勢を立て直す。

 

「やる気か?それはそれでいいがお前見たところ、身体は変形できないようだな。特殊系のアンチバイツどもと同じだと思っていたが、お前は出来損ないのアンチバイツと同じらしいな」

 

アンチバイツは本来、今朝あった体の変化はできないが身体能力は常人よりも遥かに上回るだけのはずだが、どうやら今回のアンチバイツは特殊らしく体の一部を武器に変換することができるらしい。

 

「いや、自我を保ったままで尚且つ、分離させる能力があるから特殊系よりも特殊なのかもな!!」

 

ひと跳びでこちらは飛んできた。そして剣で切りつけてくる。ギリギリでかわし、倉庫内のコンテナを盾にしながら逃げ惑う。

 

「ハァ!!ハァ!!」

 

本当にこの人、あの仮面ライダージャスティスなのか。どんな危険も顧みず、人の為に身を投げ出し、差別をしないみんなの憧れのヒーローじゃないのか。しかし違ったあの人は自分の利益しか考えない。だから僕を消すつもりだ。自分の利益の邪魔になる僕を!!

 

「ちょこまかするな!!」

 

「ぐっ!」

 

右脚を銃で撃たれた。あの武器、剣から銃にも変形できるらしい。だが今の自分は痛みだけ、別に何の支障もない。歯を食いしばりコンテナを一つ持ち上げ、ジャスティスに向かって投げつける。

 

「観念し…ろ?」

 

コンテナを剣に切り替え真っ二つに切り裂いて、見ると睦生がいなくなっていた。辺りを見渡すと例のアンチバイツが開けた穴から抜け出そうとしていた。

 

「逃げる気か!!」

 

睦生は近くにあったコンテナの破片を集め、思いっきり投げつけ、最後にコンテナを二個ほど投げつける。

 

「クソ!!こいつ!!」

 

ガードをし視界が開いた時には彼の姿はなかった────。

 

 

 

 

 

 

 

────────

 

「はぁ………これからどうしようかな…父さんと母さんになんて言おう。まなにはなんて言おう…はぁ……」

 

何度もため息をこぼす。このまま戻らずにいたら親はなんていうだろうか。多分というか絶対息子だって信じてもらえないし。まなに至っては気絶しそう。どうせ戻れないなら自分の姿忘れないうちに、今までの事、思い返してみよう。楽しかったあの頃や悲しかったあの頃を、一つ一つ思い出し涙を流した。するとどうだろう。体に違和感を覚えた。

 

「あ、あれ?………戻ってる…?」

 

人間の姿に戻っていた。自分を思い浮かべたからだろうか…しかしこの体のことだ。自分の事を少し美化してる可能性も高い。帰ったら家に帰って見てみよう。別人になっていたら大変だ。

 

「さて…何とかバレないうちに帰ろう…ものすごく眠たいし…それからジャスティスにも見つからないように……」

 

驚異的なスピードで帰宅し、ささっと着替えてパパッと風呂へ入り、床へ着き目を閉じる。明日のことは起きてから考えよう。今はとにかく眠りたい。というか忘れたい。これが夢であってほしい。そうして睦生はゆっくりと眠りにつく。

 

 

 

-----------------

 

「…朝か…」

 

時間を見るとまだ5時だった。昨日最後に時計を見たのが…1時ごろ…ほとんど寝ていない…訳でもないか。その前に眠っていたし。

 

「今から支度して今日はゆっくりしてから会社に行こう」

 

身支度を済ませ、リビングへ行くと母が朝食の準備をしていた。

 

「あれ?早いじゃないどうしたの?」

 

「なんか早く目が覚めちゃって」

 

「…会社行くの?大丈夫?」

 

「あーうん。調子いいみたいだし。今日から行くよ」

 

「無理しないでよ。本当に何かあったじゃ遅いからね?」

 

「わかってるよ」

 

6時ごろ父が起きてきた。朝から変な会話をして仕事へ向かう。ついでにゴミも出しとく。いつも通りの道を歩いて、いつも通りの角を曲がると警察が集まっている。アンチバイツが現れたから仕方がないか。そして咄嗟に睦生は目を伏せ、その場を早足で後にする。見つかったらまずい。

 

「正義(まさよし)さん昨日も大活躍でしたね」

 

「いえいえとんでもない。私は皆さんの日常を守れるならそれで充分ですので。」

 

『世偽 正義(よぎ まさよし)』。その正体は仮面ライダージャスティスであり、睦生の存在を消そうとする男である。自分の利益のために。

インタビュー中でほんとに助かった。バレたらひとたまりもない…いや流石に人がいる場所ではやらないか。たけど今度から道を変えよう。通勤時あそこを通るってバレてるだろうし。

 

30分前くらいについてしまった。そういえば自分はもう普通ではなかった。早足が普通に走ってる速さだったらしい。早いけど掃除やら何やらやれることをやって時間を潰そう。

オフィスへ入り身の回りの整頓や掃除を行う。すると丁度終わる頃に人が入ってきた。

 

「あ、部長すみません昨日は…」

 

「あぁ篠瀬。怪我とかなかったか?」

 

「はい。特に異常は…………………ないです」

 

「…な、何だ今の間は?」

 

「い、いや何かあるかなと思い出してまして…」

 

「まぁそれくらい間が空くんだ。特に問題ないならよかったよ。それにしても本当に驚いた。あのアンチバイツにあって何もなかったなんてな」

 

「ははっ…今思うとジャスティスには感謝してもしきれませんよ……ほんと…………」

 

「…?よし、今日も張り切って頼むよ。あーそうだ。この書類だが金井がやっておいてくれたぞ。それじゃあ無理だけはするな」

 

「はい。ありがとうございます」

 

問題ありありなんだけど、話すことなんかできない。日常生活の中で支障は今の所ないからまぁよしとしよう。睦生はまなの元へ向かう。礼を言うために。

 

「まな。書類の件だけどありがとう」

 

「ん?あぁ気にしないで別に構わないから。それとどうだった?」

 

「うん。特に何もないって。調子いいよ」

 

「そっかよかった。これで一安心ね…いつも通りでよかった」

 

「ありがとう」

 

「ん?なにが?」

 

「なんでもないよ」

 

「…ふふっ。変なの」

 

それから自分のデスクへ戻り作業をし始める。午前の仕事始まりだ。

 

 

 

 

-----------------

 

昼休み。ビルの屋上で、僕のために、まなが作ってきてくれた弁当を食べる。優しくて料理が上手いしほんと理想の彼女だよ。

 

「うん。美味しい」

 

「よかったぁ。あなたの好きなもの作っておいて」

 

「いやいやそれ以外の物も美味しいよさすが」

 

「褒めてもなにも出ないけどね」

 

「それでいいよ別に」

 

「全く欲がないわね」

 

2人で笑いながら食事を取る。これがたまらなく好きな時間である。化け物になって味がわからなくなる事なくて本当によかった…でも、いつまたアンチバイツ。それにジャスティスが現れるかわからない。用心しなければならない。

 

昼休みを終え、階段を下っていると、急に頭の中に声が聞こえる。「助けて」と昨日聞いた声がまた聞こえる。その声はとても近く。この近辺にアンチバイツがいると言う事だろうか?相当近くのはずだ……このビルの中……

 

「……嘘だろ!?」

 

「わぁっ!びっくりした。どうしたの?」

 

「まな。ここで待ってて」

 

「え?なんで?早く行かないと間に合わないよ?」

 

「いいからお願い!!」

 

「……何かあったの?」

 

「うん………事情は後で話すから。絶対動かないで!!!」

 

「え、ちょっと睦生!?」

 

まなが見えない位置まで下ってから、声のする方まで飛び降りながら向かう。この察知能力はアンチバイツ特有のものなのだろうか?それとも自分だけ?どちらにしろ慎重に進むしかない。近くなると、ゆっくり階段を降り、声のする方へ進んで行く。

ここってオフィスじゃないか。ここから声が聞こえる。無残にもドアが壊されている。嫌な予感を感じつつ、恐る恐る壁越しに中を覗く。

 

声を押し殺した。反射的に口が開いてしまった。中は血だらけ、肉片は飛び散り壁にへばりついている。人だったろうものの頭が、入り口近くに転がっている。更に奥を覗くといた。昨日のアンチバイツだ。部長を…………食っている……!!!

 

「…………っっっっ…………!!!!!」

 

激しい怒りがこみ上げてくる。アンチバイツに対してでもあるが自分に対してないからでもあった。気づけたはずなのに気づけなかったという事。皆殺しにされるまでの間に自分はなにもできなかったということに。そして睦生は中へ入る。

 

「アンチバイツッッ!!!!!!」

 

「ん…?あぁ昨日のやつか。そこにいたんだな。なに?何の用?見ての通り食事中なんだけど」

 

「お前…みんなを…!!」

 

「あー食べ残しだろ?許せよ。不味い部分もあるんだ」

 

「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!!!」

 

姿を異形に変え一気に距離を詰め、怒りに任せてアンチバイツの鳩尾を殴る。

 

「かはっ…!!!」

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

怒りに任せ一心不乱に殴りまくるが、腕が軽くなる。忘れていたこいつの能力を…。気付いた時には両腕を切られていた。そのまま蹴り飛ばされ壁に激突する。

 

「うぐっ…!!」

 

続けざまに両腕を剣に変え切りつけてくる。再生するよりも先にバラバラにしてやろうという事なのだろうか。攻撃は止まる気配がない。

 

「食事の邪魔しやがって!!ジャスティスの野郎がいなくてよかったぜ!!傷はもう完全に治ってんだ。万全の状態ならお前に負けることはまずありえねー!!!」

 

「あっ…!!ぐっ…いっ……!!!」

 

痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。冷静になってくると痛みを徐々に感じるようになってくる。ジャスティスはあの時、コアを潰さなければ死なないといっていたが、それって心臓のことなんだろうか。だとしたら腕がないこの状況で受け続けたら自分のコアは…

 

「はぁっ!!」

 

壁を利用し両脚で相手を蹴り飛ばす。すぐさま体制を立て直しこちらへ向かってくるが、すでに腕は再生していた。アンチバイツはそこら中の障害物関係なしにそのまま切りつけてくる。ギリギリで躱すが、すぐさま次の刃が立て続けに襲いかかってくる。確かに彼は超人的な肉体を手に入れたが、それがアンチバイツ同士での戦いとあれば別だ。自分は確かに他のアンチバイツと少し違うが、戦闘においてこの状況は、武器を持たない人間と武器を持った人間との戦いであると。

 

「いや、わけが違う!!」

 

「何言ってんだ!?」

 

また避けようとした時、今度は軌道を変えてきた。これは避けることができずくらってしまい地面に倒れてしまう。背中を剣で刺され身動きが取れなくなる。

 

「お前はアンチバイツに取って邪魔でしかない。俺たちはただ食事をしているだけだ。お前ら人間と同じようにな」

 

「で、でもこんな無惨なこと…!!」

 

「黙れ半端もんが!!!無惨だと?無惨に殺して何が悪い。結局食うからいいだろ?この世はな、食うか食われるかなんだよ。食われる方なんて俺はごめんだな。俺は食って自分の価値を示してやる」

 

コア…僕の心臓がある位置に剣先が置かれる。殺される。もうダメなのかな…。

 

「じゃあな半端もん」

 

目を瞑り覚悟を決めるが、刺される痛みを感じない。死ぬ前ってこうなのかな?と思っていると、すぐに動きが止まったんだと認識する。目を開きオフィスの入り口を見ると、1人の女性が立っていた。まなだ。

 

「なんだまだ生き残りがいたか」

 

「あ………ぁ…………」

 

「まっ…………!!!!??」

 

まずい本当にまずい。早くアンチバイツを退けてこの子を安全な場所へ運ばなければ。睦生は渾身の力で立ち上がり殴りかかるが、アンチバイツは分かっていたのかすぐさま反応し、腹部へ剣を挿しこみそのまま壁に串刺しにする。それから自分の腕を切り落とし、まなの元へ向かって行く。

 

「やめろ!!やめてくれ!!」

 

「あー今日は朝から腹一杯だから食わねーよ。夕飯時に食うとするか。女の肉は美味いんだぜ?」

 

「………ぁ………………」

 

そうしてまなを抱えてどこかへ去ってしまった。今度はまなを守れないなんていやだ。剣を引き抜き、耳を澄ませるが声は聞こえない。「助けて」と中の人の声も聞こえない。しかしサイレンが鳴っている。パトカーだ。

一先ず人間態に戻る。どうやらアンチバイツに寄生されると体の傷だけではなく、服も自由自在にできるんだということがわかった。とりあえず少しボロッとした感じに仕上げ、擦り傷もそれっぽく作っておいて警察を待つことにする。

あいつは夕飯時に食うと言っていたが本当なのだろうか。まだ朝だ。いつ食べられてもおかしくない。それに疲れて動けない。親にも迷惑はかけられないし…。まなは絶対助ける。どこにいても必ず。今の自分なら。

 

「これは君がやったのかな?」

 

「え?……あっ…!!」

 

「どうなんだ?アンチバイツ。篠瀬 睦生」

 

最悪は続く。




全体的に戦闘シーンが短すぎる(戒め
これから長くなると思います(震え声

グロテスクな描写もま、多少はね?入れていきたいですね

というわけでまた次回の小説でお会いしましょう。またのぉーい、やっ!!


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EP02 宿命の悲しみ

ジャスティス(正義)に名前バレてるじゃん。やべーよやべーよ…
殺さないで…やめてください…アイアンマン!

果たして彼は自分の運命に耐えることはできるでしょうか。それではどうぞご覧ください。


「な、なぜ…僕の名前を…」

 

「少々つけさせてもらったよ。このガジェットを使用してね」

 

正義の手には手のひらサイズほどの機械があった。どうやらこれで自分を監視していたようだ。この状況かなりまずい。

 

「どうしようっていうんですか…正義さん」

 

「ジャスティスと呼んでくれてもいいのに、まぁ君の好きなように呼びなよ…ところで、彼女さんが連れ去られたらしいね」

 

「…!?」

 

「助けに行ければ行くけど。場所がわからないからね。まぁ夕飯とか言ってるけどどうなんだろうね。もしかしてもう食われてたりして」

 

「やめてください!!」

 

軽率な発言に、睦生は正義を睨みつける。とても鋭い目に正義は思わずニヤリと笑う。

 

「…昨日始まったばかりなのに、もうあっち側の目になったな、お前」

 

「え?」

 

「だいぶ馴染んできたんじゃないの?その体。そろそろ完全にアンチバイツになったりしてな」

 

言い返そうと口を開いた時、警察がオフィス内に入り込んできた。正義は自分のことに関して何やら色々言っているが、正体やらその辺のことではないらしい。とにかく今は都合が悪いようだ。睦生は少し事情聴取されたが、特に何も聞かれなかった。とりあえず、まなの捜索はしてくれるらしい。それから僕は病院に運ばれた。親もその後駆けつけてくれた。

ん?まずくないか?病院に運ばれて検査でもされたらバレるんじゃないか…?

 

「あ、あの検査とかします?」

 

「ん?あぁ一応ね。アンチバイツと会ったんだ。もしかしたらってことも考えられるから」

 

「そうですか…」

 

「何か不安でも?」

 

「い、いえ別に。ただ気になっただけで」

 

どうしよう。バレたら殺されるのかな。それとも実験…。アンチバイツの力を手に入れてからまだ1日しか経ってないから不安で仕方ない。まだこの体についてよくわかってないし…。

 

と、そんなことはなかったので本当に安心した。特に異常は見られませんで済んだ。病院を出て親に、ちょっと気持ちが落ち着かないからそこら辺でぶらついてるよ、と言って別れる。

人がいない路地に入り、睦生はビルを這い上がる。屋上に着くと神経を集中させ、周りの音を余すことなく聞いて行く。自分でもここまで集中するのはなんだが久しぶりな気もする。ただ今はまなを助けたいという一心で耳を澄ませる。

 

「…………」

 

やはり何も聞こえない。諦めかけたその時、微かにだが聞いたことがある声が聞こえる。あのアンチバイツだ。まなの声は流石に聞こえない。だがかなり距離は離れてはいるがそこにいる。

 

「待ってて…絶対助けるから…」

 

怪人態へと変貌し、急ぎその声のする方は駆け出す。まなだけは必ず助ける。まなだけは………。

 

まなと初めて出会ったのは高校生の頃、1〜3年までずっと同じクラスだったけどただ仲がいい程度だった。同じ会社に入ってから本格的に付き合い始めたのかな。凄く優しくて、僕の事をいつでも気にかけてくれて…色んなところへ行った。思い出もたくさん作った。とても…とても楽しい時間だった。

これだけじゃない。まだまだ彼女には魅力的な部分がたくさんある。何があっても絶対に助ける。これはその為の力だ。

 

 

 

 

 

 

-----------------

 

まだ建設中のビルの中を慎重に忍び込む。ここから声が聞こえた。外は昼過ぎ、まだ明るいはずだがビルの中は薄暗く、妖しい光が射し込んでいる。周りに警戒しつつ、耳を澄ませる。声が聞こえ…ない?何かやっているのか?……いや違う…後ろにいる!!!

 

「オラァァァァァッ!!!」

 

「あぶっ…な!!」

 

胸から横真っ二つにされる所で、指先だけの力を使い剣を受け止めるが、もう一本の方で右腕を切られる。

 

「不意打ちへの対応は良かったが、その後がやっぱりど素人だな」

 

「ハァ…ハァ……まなは…どこだ!!」

 

「あぁ、あの女か…知りたいか?」

 

「どこだっ!!!!!!!」

 

「そう怖い顔するなよ…俺の腹の中」

 

「お前ぇぇぇぇぇぇぇっっ!!!!!」

 

再生し、ただひたすらに殴りまくるが、剣で塞がれる。アンチバイツは右から来たパンチを避け、すぐさま睦生の顎に蹴りをかます。体制が崩れたところを見逃さず、胸の部分を十字に切りつける。

 

「うっ…!!」

 

左腕の剣を地面に突き刺し、それを軸に一回転し、顔面に蹴りをかます。が、その瞬間アンチバイツの脚を掴み上げ、投げ飛ばすも周りの柱を利用し衝撃を和らげてしまった。

 

「はははっ女1人のためにこれか。素晴らしいな愛というのは」

 

「まなを…まなをよくも…!!」

 

「ジョーダンだジョーダン。安心しろあの女は生かしてある」

 

「……え……?」

 

「今このビルの一番高い場所に縛り付けてある。まぁ後で夕飯時に食うつもりだったけどな」

 

「…………」

 

「これで一安心だな。それがちょっとした…」

 

凄まじい速さで睦生の脚を掴み、振り回して柱に叩きつける。

 

「隙になるんだよなぁ!!!」

 

最後に地面に叩きつけ、大きな穴が開く。そこで頭を掴み睦生に乗ったまま下降する。鳴ってはいけない音がなり地面着地する。間髪入れずに動けなくなった睦生に対し、両腕、脚を切断する。

 

「あ…ぐっ……っ!!!」

 

「しばらく寝ていろ。お前と遊んでたら腹が減っちまった」

 

「まさかお前…!!」

 

「……こいつの記憶からこういうのは…早弁ってやつだな」

 

「や、やめろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!」

 

軽々とジャンプし彼女の元へ向かって行く。早く。早く再生しなくては。早く!!

 

「くそ!!…くそ!!!!!」

 

まなの元へたどり着いたアンチバイツは、舐めるように見つめる。そしてニタリと笑い、叫びそうになるまなの口を手で覆う。

 

「騒ぐなよ女。食事中は静かなにしたいんだ…なぁ?」

 

「ん…んん…!!」

 

「それじゃ…頂くとするか」

 

頭を丸かじりできるほど大きく口を開ける。

しかしその瞬間、その口に銃弾が撃ち込まれる。たまらずアンチバイツは一段ほど置いて行く。口を抑え、周りを探っていると空から一人。仮面の男が現れた。

 

「仮面…ライダー…!!」

 

「大丈夫?もう安心だから」

 

「ジャスティスさん!!」

 

再生し終えた睦生が飛び上がってくると、目の前の光景に驚いた。

 

「正義さ…!!」

 

「おっとそこにいるのはアンチバイツ。まさか…二人も相手することになるとはね…と、言いたいけど。君はそこのアンチバイツと違うらしいね。いいよ。協力ならしてあげるよ。今は」

 

「お前…ら…!!!」

 

ジャスティスはまなを安全な場所へ運ぶと、すぐさまアンチバイツの懐へ飛び込み剣で切りつける。反応が遅れ、斬撃をもろに浴びてしまい足場から落下する。その隙を逃さず、睦生がアンチバイツの頭を掴み、全体重を乗せて地面に直撃させる。

ぐちゃりと音を立て顔が潰れる。しかしこれくらいではたかが知れている。睦生の腹部に両腕を変化させた剣で突き刺し、内臓を抉り出さんとかき回す。

 

 

「うっ…!!!??」

 

「…ゲッ…ァガ……ェ……!!!!」

 

流石にこれは今までで一番きつい。だがここで仕留めなければ…仕留めなければ……………そうだ。このアンチバイツの中にはまだ人が生きている。でも助ける隙がない…一体どうすれば………

 

【 ジャスティスラッシュ!!! 】

 

コアにその一太刀が入る。睦生は目を丸くした。

 

「驚いたか?言ったろ。今は協力してやるってな」

 

「ま、待ってください!!彼はまだ助けられたんです!!なのに…!!」

 

「黙れガキが。何ヒーローぶってんだ?俺は言ったぞ。この世は食うか食われるかだってな。お前がたらたらしてるから、今回あの女が連れ去られたんじゃねーのか?あ?」

 

「それは…」

 

「調子に乗んのも大概にしろ。お前のその力は確かに使えるかも知れないけどな。非効率的なんだよ。そのままだとお前本当に死ぬぞ?…まぁ時が来たら俺がお前を殺すけどな」

 

「…………」

 

確かにそうだ。理由はなんであれ、僕はこの人を…アンチバイツを殺そうとは思わなかった。ただ戦闘不能にできればいいと思っていた。正義さんが言っていることは正しいのかも知れない。そんなことを考えながら人間態に戻る り、前を向くと見られてはいけない人物に見られてしまった。自分の姿を。一番知って欲しくなかった人に。

 

「………まな………」

 

「ごめんね…静かになったから降りてきたの…」

 

「…まな…僕は昨日、化け物になったんだ。アンチバイツに」

 

「でも睦生でしょ。わかってる。あなたは姿が変われるようになっただけ。いつもの睦生だから」

 

「……怖くないの?人を食う化け物になっちゃったんだよ?」

 

再び怪人態に変わり、ゆっくり近づく。すると彼女はひるむ様子もなく、微笑みそっと抱きしめてくる。

 

「あなたは睦生。どんな姿になっても私はあなたを愛してるから」

 

「…ありがとう、まな。僕も愛してる」

 

人間態へ徐々に戻って行き、まなを抱きしめる。これでいい。これでいいんだ。彼女が認めてくれるなら僕は…

 

「全く君達は私がいることを忘れてないか…?……はぁ…それじゃ邪魔にならないうちに帰るよ…睦生。またどこかで」

 

ジャスティスはそう言って早々に立ち去ってしまった。空気を読んだのか。それともやはり都合が悪かったのか。いまいちまだよくわからない。

だけどようやくスッキリした。いや、家族にもなんとか正体を明かさないと。いつかね。

 

「じゃあ帰ろうか」

 

「うん……でも明日から仕事どうしよっか」

 

「今日はいいよ。まだね」

 

そうして2人でビルから抜け出そうと手を握った。

 

 

 

 

 

 

手を握った

 

 

 

 

 

 

その瞬間だった

 

 

 

 

赤い液体が宙を舞う。一つを軸に地面を円状に赤く染め上げて行く。

 

 

 

 

 

「あ…あれ…?」

 

「まな…?」

 

 

 

 

 

 

「死ねえぇぇぇぇぇっっっっ!!!!!!」

 

あのアンチバイツは生きていた。片腕を剣に変え、まなを刺し貫き、勝ち誇ったように笑う。剣が引き抜かれ、まなの体を更に真っ赤に染め上げる。睦生は急いで傷口を抑え、荒い呼吸と心臓の鼓動で周りの音は何も聞こえない。ただ目の前の光景を理解できずにいた。理解しようとはしていたがあまりにも衝撃的、突然の出来事。

 

「あ…………あぁ…………!!」

 

今、わかる。こんな傷で生きられるはずがない。もうすぐ死んでしまうと。まなの呼吸、鼓動が徐々に弱まってきている。虚ろな目をし、睦生を見つめる。

 

「まな…!!だめだ…だめ…こんな……!!!!」

 

「…む…つき……私……もう…だ、め…みたい……」

 

「まだ!まだ治せる!大丈夫!!大丈夫だから!!!」

 

まなは静かに首を横に振る。そして優しく微笑み、睦生の頰に触れる。

 

「ごめんね………めいわ…く……かけちゃ…って………」

 

「迷惑なんてこれっぽっちも…!!」

 

「あな…たは………いき…て……おねが…い……」

 

「だめだよ…まながいなかったら…僕は…!!!」

 

「睦生…………その…ちか、らは…………人を……守れ……る……あなた…なら……できる……から…………」

 

「君を守れてない…守れて…」

 

「いいの……睦生は……こうし、て……来てくれた…から………それだけで………だから……おねが…い…みんなを…守っ…て……………大好きだよ……むつ………──────」

 

 

 

「まな…?まな…だめ…やだ…いやだ……だめだだめだだめだ…いかないで…いっちゃだめだ…!!!まな!!!まなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!!!!!!」

 

 

 

睦生の腕の中で、彼女は静かに息を引き取った。彼女は二度と眼を覚ますことはない。二度と。

 

「今度はお前だ。出来損ないのアンチバイツが!!!」

 

「………………」

 

底知れぬ怒り・憎悪が込み上げてくる。拳を握る手が力を増す。限界を超えた殺意が溢れ出た時、体の中で知らぬ声が聞こえる。

 

---殺したいか?

 

「誰だ」

 

---お前の主となるはずだったアンチバイツだ

 

「それが今更なんだ」

 

---お前にもう分離させる気がないのはわかってる…だとするならもう殺すしかないもんな

 

「………………」

 

---この世は食うか食われるか…いや、違う。食われて食うんだよ。あいつが憎いよな?あいつをぶち殺したいよな?ならもうやることは一つだ

 

 

「………ってやる…………」

 

 

---あぁそうだ…食え。喰らえ

 

 

「お前を………!!!!!!喰ってやるっっっっ!!!!!!!!!!」

 

 

怪人態へと姿を変える。が、いつもと違い口元が裂け始める。今まで晒すことなかった鋭い牙が露わとなる。そして一瞬でアンチバイツの目の前に移動し、殺意に塗れた拳をぶつける。顔が歪み、大きく吹っ飛び、端の壁に激突する。

 

「かはっ…!!」

 

「……………」

 

それと同時に飛び跳ね、そのままアンチバイツに馬乗りになる。口が更に裂けていき、その顔は笑っているように見える。アンチバイツは今まで感じたことのない恐怖を覚え、何度も剣を突き刺し、必死の抵抗をして見せたが、睦生は全くひるむ様子なく睨み据え、首を掴む。

 

「い、今わかった…お前は俺たちと同じだ…いや…かなり特殊な方のな…」

 

「………………」

 

「…っ……お、お前は一体…何なんだろうな…」

 

その言葉を聞いて首を掴んだまま立ち上がり、そのまま持ち上げる。

 

僕はもう人間でもなければ、こいつらのような怪物でもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は………………俺は……………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「 『 ヴ ァ イ ザ ー 』だ 」

 

 

 

 

 

 

 

 

-----------------

 

あれから色々あった。2ヶ月経った今も仕事に就いてない。まぁアルバイトはしている。だけどそれ以上に自分にはやらなきゃいけないことができた。

この力は自分の思っているよりも強大で恐ろしい。だからこそ、使い方を誤ってはならない。人の為に…自分の為に使っていく。

まなと約束したように…。

 

「行ってらっしゃい」

 

「あぁ、行ってくるよ」

 

「…変わったね。あんた」

 

「ん?え?……あー…まぁ人はいつかは変わるものだよ…多分」

 

「多分ってなによ。ほら、バイト遅れるよ」

 

「母さんが言ってきたから……ふっ…うん。行ってきます」

 

 

 

 

 

 

 

-----------------

 

夜の街に悲鳴声がこだまする。あの日、初めてアンチバイツにあった場所に、また出現したらしい。『ユニク・アンチバイツ』ではないらしい…。

あの腕を剣に変えるとかを、これから特殊なアンチバイツをユニク・アンチバイツと呼ぶ事を正義さんが世間に公表した。

 

「助けてぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

 

「大丈夫です。私が保証します」

 

取り込まれた人の自我を出してるだけ。あの人は脅されてるだけだ。あれから自分も考え方を変えた。確かに取り込まれた人を助けられる力を持っている。だけどそれでもやらなければならない。アンチバイツはそれほど力を持っている。分離させるには相当時間がかかる。つまり能力を持っていてもほぼ無意味だ。だからやるしかない。自分は生きる為に戦う。

 

「…行こう」

 

---いい目だな

 

「そうかな」

 

---いや、言ってみたかっただけだ

 

「なんだそれ…」

 

自分の中の悪魔と共に。

ビルの上から飛び降り、膝を悪くする着地を行う。衝撃で地面にヒビが入る。

 

「……同じ種か………っ!?…ちっ。お前は例のヴァイザーか」

 

「あぁ」

 

「…俺を殺すつもりなんだろ?……逃げるつもりはない」

 

「逃げても、俺はどこまでも追いかけるけどね」

 

そう言って右手を、横に大きく払うと同時に片腕を剣に変える。

喰ったものを力に。それが自分の…アンチバイツとしての本来の力。

 

「行くぞ。アンチバイツ……お前らが一匹残らず消えるまで喰ってやる」

 

「…調子にのるなよ。劣等種がぁぁぁぁ!!!!────────」

 

 

 

───ヴァイザー。生きる為、守る為に、全てを喰らう者。




以上!!皆解散!!君もう帰っていいよ!!

戦闘シーン…いやぁきついっす

さぁ次から…やっと…ちゃんと戦いが始められるねんな
それじゃまたはいよろしくぅ!!お願いします。


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EP03 心情の彷徨い

お気に入りにしてくれるの嬉しいゾぉこれ

ちょっと待って!仮面ライダーの出番がほぼないやん…
すみません許してくださいちゃんと増やしますから!

愛する彼女を亡くしてしまった睦生。この2ヶ月でどれほど成長できたんでしょうか。それではどうぞご覧ください。


「久しぶりのユニクか…」

---アンチバイツの中で言えばレアな部類だからな。そう何匹もいないだろう。

「……嫌な思い出しかない」

---……あの『ビラーデ』戦でお前の女は死んだ。だがその代わりにお前は強くなった。結果はいい方ではあるだろ。

「なにも良くないけど…まぁ強くはなれた気がする」

 

 

2ヶ月前に戦ったユニクの名はビラーデというらしい。後にこのヴァイザーから聞いた。というか言ってきた。

そして現在、睦生たちはユニクを追っている。あれ以来、通常のアンチバイツが出てきたくらいで情報はこれっぽっちもなかったが、今日になって出現が確認された。情報を頼りに探していると、ユニクの声が僅かながら聞こえた。今その場所へ向かっている状態である。

 

「今回のユニクはどんなのだろう。同じじゃないんでしょ?」

---あぁ。人間で言う所のいわば個性みたいなものだ。一匹一匹がそれぞれの能力を持ち合わせている。

「相性悪いの来ないでほしいな…喰えるかな…」

---喰える

 

 

そしてようやくたどり着いた。声もかなり近いしここで間違いはないだろう。

 

「やっと着いた…結構距離あったね」

---…近いぞ

「うん」

 

木々の間から光が不気味に射し込む森の中。ここにユニクがいるらしい。通常種より遥かに強い。二ヶ月で慣れはしたが、やはり怖い。それにトラウマもある。注意深くあたりに警戒し、森の奥へと進んで行く。

すると後ろでガサガサと音がした。バッと振り向くとただのカラスだったのだが、それとは別に何かが木の上を飛んでいる。猿ではない。軽々としているがもっと重い。

 

「…いるんでしょう!?話し合いで済めばいいけど…そっちにその気はありますか!?」

---何言ってる。喰うんじゃないのか?

「いやその、アンチバイツも感情あるからちょっと試してみたい…どうですか!?」

 

天に向かって叫ぶとそれに答えるかのようにピタッと動きが止まる。そして大きいものが木の上から落下してくる。

 

「噂に聞くのと違うなぁ…知ってるぜ。お前らヴァイザーだろ?」

 

「はい、そうです…えっと、あなたのことが知りたくて」

 

「俺の?何故?」

 

「いやぁそのアンチバイツでも、友好的に接することができる人もいるんじゃないかなと思いまして……」

---いるわけない

 

「あーなるほど。ならそりゃダメだな」

 

「え?」

 

「俺、そういうの嫌いなんで」

 

そう言うと突然飛び上がり、両手を鉤爪のような形状に変化させる。四つに分かれた鋭い刃を睦生に向け、刺し貫こうとしてくる。

 

「爪か…!!」

 

右腕を剣に変え、その攻撃を受け止めるが、立て続けに攻撃を行ってくる。止まぬ引っ掻きの嵐。右腕にグッと力を込め、思いっきり薙ぎ払うと、吹き飛ぶが、木の幹に爪を引っ掛け衝撃を相殺してしまう。

 

「強いなあんた。だけど遅い。そんなんじゃ甘いよ?」

 

「…………」

---こいつは『シラウィ』だな。能力は今、見た通りの爪を使用する。まぁまずブレードだと、あの速度についていくのは無理だろう。

「…なら、どうすればいい…?」

---力ならばこっちが上だ。武器を使うのは隙ができてから…喰うぞ。

 

「おーい。なにしてんの?」

 

腕を元に戻し、ファイティングポーズを取る。前とは違う。実戦経験は積んできた。今ならやれる。

 

「あ?」

 

爪を振りかざした瞬間、目の前まで飛び込み顎を殴る。シラウィがぐらつくとそのまま顔面を殴り、地面に叩き伏せる。

 

「なに…!?」

 

睦生の腕に爪を刺してから、滑るように股の間をくぐり、背後に回って爪を振り下ろす。背中に三つの切り傷がつけられる。だがこの痛みは何度も味わってきた。まだ宙にいるシラウィに腕を掴み地面に叩きつけた後、頭を掴み木に投げつける。そして木々を巻き込み吹き飛んでいくシラウィを追う。

 

「やるなぁ!!」

 

両爪を地面に突き刺し減速し、向かってくる睦生に飛び込む。

 

「ヴァイザー…片腕犠牲にするよ」

---なるほど。喰え

 

「鈍い動きで当たるかぁ!?」

 

両腕の爪を交差させて斬りつけようとするが、睦生は片腕を片方の爪に突き刺し、そのまま力を入れる。

 

「バカか…!?」

 

もう一方で切り裂こうとするも、腕を剣に変え爪ごとぶった切る。そして剣を元に戻し、木まで追いつめる。

 

「………なぁ………」

 

「…なんですか…」

 

「お前、人間の方だよな」

 

「?…そうですけど…」

 

「…俺ら食ってなんも思わないの?」

 

「え…?」

 

「えってお前。今まで何の目的もないで殺してきたのかよ」

 

「……目的ならあります。僕はアンチバイツを喰います。一匹残らず。」

 

「そうかい。……なら食えよ」

 

「…随分あっさりしてますね」

 

「助けてくれなんていうかよ。トロトロすんな。本当に鈍いやつだな……再生したら殺すぞ?」

 

「………………」

---どうした睦生。早く喰え。再生するぞ

「……わかってる」

 

 

 

 

 

 

 

 

-----------------

 

自宅のドアを開け、リビングへ向かう。

 

「あ、おかえり。遅かったじゃない」

 

「ちょっと帰るのに時間かかって」

 

「そんな遠くないでしょ?」

 

「あー…色々あって」

 

「……???」

 

「風呂入ってくるよ」

 

それからシャワーを浴びているとヴァイザーが話しかけてきた。何やらシラウィの話のようだ。

 

「シラウィが…どうしたの?」

---どうしたのだと?あいつを取り逃がしてよく言えたな。

「うっ……コアを少しでも食べれば大丈夫かなって…」

---バカが。コアを完全に壊さないと力こそ劣るものの、それでも人間くらい簡単に殺せるぞ?

「………ごめん………」

---なんだ?アンチバイツに情でも持ったか?言っておくが俺らアンチバイツは、感情こそあるがそれが何かまではわからない。今、こうして話している時も、自分がどう言った感情を持っているのかもわからない。

「…次は大丈夫だから…」

 

自分でもよくわからなかった。全てを喰らうと意気込んだが、実際それが正しいのかわからない。ヴァイザーが言った通りだとするなら、感情がたしかに存在するならまだ別に他の道があるんじゃないかと。戦わなくてもいいんじゃないかと。アンチバイツは許せないけど……睦生は大きなため息をついた。

明日に備えて今日は早く寝よう。とにかく気持ちを整理したい。そう思いつつ静かに目を閉じ眠りにつく。

 

---人間を捨てきれない怪物ほど厄介なものはいないな…

 

 

 

 

 

 

 

 

-----------------

 

「はぁ…はぁ…凝りもせずにまた来やがって」

 

「今回で終わりにする…!!」

 

木々を飛び回り後を追う。苦しそうに息を荒くし、速度も遅い。剣で追いつける。昨日までの俊敏さは嘘のようだった。

 

「やっぱりコアが…」

---あぁそうだ。コアは命の塊だ。少しかけただけでも、まず人間の生命力じゃ耐えられないな。そんなものを半分も失った。ほぼこっちの勝利だ。

 

「!?」

 

木の枝が折れ、そのまま落下する。体を重そうにしながらゆっくり四つん這いになる。立ち上がろうとするも、どうやら限界が来たらしい。立つことができないでいた。睦生は近くに降り、側によりその顔を見つめる。睨むとはまた違う、諦めた表情だった。

 

「はぁ…はぁ…は、早く…食えよ…はぁ…」

 

「そのつもりです…」

 

「…へっ……全く……こんなんで…よく、生きてたな…」

 

「…?」

 

「普通聞いてこねーよ………そんなこと…今までアンチバイツ殺って来た奴が……言うセリフかよ……」

 

「……知りたかったんです」

 

「…あ?」

 

「あなた達アンチバイツは僕たち人間と同じだと思いました。この世は食うか食われるか…今まさにそんな世の中です…………シラウィさん達は生きる為に人間を食べている。自分も…人間も、生き物を食べて生きている…。だから話し合えば分かり合えるんじゃないかと…思って…」

 

「…………つくづく馬鹿な男だな…」

 

シラウィは大きなため息をつき、こちらを見てから空を見上げる。

 

「話し合えば分かり合えるなんての、馬鹿がすることだ。話し合いじゃ解決できないことなんてザラだ。特に俺みたいな奴とかはな」

 

「…………」

 

「もう俺は逃げねーよ。どこに逃げても結局食われる運命だ………ただ一つ言っておくことがある」

 

「…はい」

 

「お前、覚悟を決めろ。なんだかんだ言ってお前は口だけだ。実行しろ。この先俺より強い奴なんて大勢出てくる。こんなところで迷って取り逃がすような奴が生き延びれるはずない」

 

---…そうだ。こいつの言う通りだ睦生。お前の言葉には責任がない。

「……」

---あの女のこと忘れてるわけないよな?

「当然…」

---ならさっさと食え。その為に手に入れたお前だけの力だろ」

 

口が開き、首を掴み上げる。

 

「……さぁ…やれ!!」

 

ヴァイザーの能力…喰ったものの身体能力を奪う。ユニクに限ってはその特殊能力までも我が物とする。

発動条件として……コアを全て喰わなければならない。

 

「…………っ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

-----------------

 

これで能力は二つ。剣と爪を手に入れた。アンチバイツには感情はあるがそれが何かはわからない。先程から話していた内容の中に、その感情はあったのか否かはわからない。もう何もかもがわからない。自分のやっていることが人間にとっては正しいことだが、アンチバイツ達に取っては邪魔でしかないのだから…

 

「今日は夕飯なんだと思う?」

---ハンバーグ

「本当に?」

---前に食ってうまかったからな。また食いたい。

「そういう理由か…」

 

帰宅途中にふと見た、暗く細い通路。そこに苦しそうにうずくまっている男性が1人いた。すると声が聞こえてくる。人の声。頭に響いてくる感じ…

 

---おい。

「うん」

 

通路に入ると怪人態に変化する。片腕を剣に変え、ゆっくりと近づいて行く。危険な香りが漂う。そして男性との距離が残り数歩というところで突然にクスクス笑い始めた。

 

「な、なんだ…?」

 

「待ってたぜ。ヴァイザーよ」

 

---なるほど。この感じあいつか………今のお前じゃ一番会いたくない奴とあっちまったな。

「え?」

---シンプルが一番厄介なんだよな。

 

「この距離ならタイマンが張れるってわけだ」

 

---気をつけろ。睦生。こいつは『ムスクル』。

 

ムスクルは腕を振り上げる。みるみるうちに腕が太く硬くなり、血管のようなものが異様に膨らみ赤くなる。

 

---筋肉野郎だ。

 

地面に拳を叩きつけると周りの建物が、叩き割った中心に向かい斜めになる。いくらなんでも狭すぎる。相手のパワーは遥かに上だ。このままでは一瞬で片付けられる。

 

「さぁどうする?ヴァイザー?」

 

「……ヴァイザー……これって…」

---筋肉増加……簡単に言えば身体能力を跳ね上がるだけだ……………。だがな。そういうのが一番厄介なんだよ。

「…うん…わかるよ」

 

そして今、剛力の拳が振り下ろされる。




お前はえーんだよ!!(文書
今回は早めに区切ったゾぉ……申し訳ナス。

次回は長めにするからお兄さん許して。

シンプルが強い。それ一番言われてるから。というわけで次回もまた見てくださいね。頼むよぉ〜…(懇願


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EP04 単純の一撃

ライダーはどこ…?ここ?

今回登場しますよ。大丈夫だって安心しろよぉ

シンプルな能力ほど恐ろしいよね。そんな相手に睦生達は耐えきることができるでしょうか?それではどうぞご覧ください。


「さぁタイマンだ」

 

「…………」

 

ヴァイザーが言ってた通りこのユニクは手強い。身体能力が高いだけという単純な能力。シンプル過ぎる。だがそれが恐ろしい。今、相手の能力がわかったから弱点は?なんてことを考えても思いつかない。弱点がないのだ。これと言ったものが。

能力にはメリットデメリットが付いてくる。剣ならば重いがその分の威力が高い、爪ならば軽いがその分の耐久性が低い。しかしこの能力の弱点を強いて言うのであれば、鋭利な武器を形成できないということだけ…。

 

「何ぼーっとしてるんだ?来ないなら…こっちから行くぞ?」

 

「…っ!!」

 

ムスクルの腕が振り下ろされた。それをギリギリでかわす。勢い余って拳が地面を叩くと、周りの建物がさらに傾き、いくつかは崩れていく。その光景を見て思わず生唾を飲み込む。一旦体制を立て直したほうがいい。それから建物を利用し、全速力で逃げようとした。

 

「どこへ行こうってんだ?」

 

自分の能力は喰らった相手の能力を奪うことができる。身体能力もそこにはいるはずなのだが足りなかった。自分含めた三匹のアンチバイツだけでは足りなかった。すでに懐に入られている。

 

「はや…!!」

 

今まで食らったことがない、きつい一撃を食らわされる。建物を貫通し地面に転がる。血は吐かないというか吐かなかったが苦しい。胸には拳の後がくっきりと残っている。

飛び跳ねながらムスクルがこちらに向かってきている。又一撃でも食らったらまずい。胸を押さえながら立ち上がり、両手を爪に変える。大きく息を吸いそしてゆっくりと吐くき、神経を研ぎ澄ませムスクルを待つ。単純に向かい合うつもりはない。避けることに専念しよう。

 

「ふん…っ!!!」

 

「…………うぉっ……と!!!」

 

その拳が顎をかすめる。ギリギリ躱して右手の爪をムスクルの腹へと突き刺す。そのまま持ち上げ、もう一方の爪で頭を貫く。

 

「どうだ…!!」

---やはり強かったが反射神経やらはこっちが上だったな。さっさとトドメを刺すぞ。

 

「…………」

 

---…!?おい!そいつを離せ睦生!!

「何が…」

 

見ると手首を掴まれていた。そのまま力が加えられ、最後には潰されていた。

 

「うぐっ…!!あ、あああぁぁ!!」

 

睦生の力無くした腕を払いのけ、ムスクルの右脚が首元に決まる。そのまま吹っ飛ばされ、体勢を立て直そうとするも視界がぼやけて前が見えない。頭を刺されてもなんともないのに、強い衝撃には弱いらしい。脳が震えるってこういうことなのか…

凄まじい速さで追撃に向かってくる。再生は間に合ってない。そこから殴る蹴るの猛攻が始まった。ガードをする腕の再生が間に合わない。ここで死ぬのは嫌だ。だけど動けない。

 

「くそっ…!!」

 

どうすることもできず、サンドバッグになりつつある睦生の後ろから、見覚えのある剣が伸びてきた。その剣先はムスクルの目に突き刺さる。

 

「正義さん…!!」

 

「おう、お前も甘いな。こんな奴に遅れとってよ」

 

「ちっ…タイマン張っていたが、とんだやろうが入ってきたな」

 

左目を押さえながら正義を睨む。正義はニヤリと笑い、睦生に対して手を払う。

 

「向こう行ってろ。再生まだしてねーんだろ?俺がこいつの相手してやる…まぁそのあとはお前だけどな」

 

そういうとバックルを取り出し、掲げると腰にベルトが巻かれる。それから一つアイテムを取り出し、正義から見て右側へアイテムを装着する。

 

 

 

【 ジャスティドライバー!! 】

 

【 正しき道義!! 】

 

 

 

「…変身」

 

 

 

左手で左にあるレバーを押し込むと、彼の周りが光り出し、その光からアーマーが形成されて行く。そして彼が歩き出すとアーマーが足元から頭にかけて徐々に装着され、最後には眩い光を放つ。

 

 

 

【 正義の名の下に!!ジャスティス!! 】

 

 

 

「……行くぞ!!」

 

「は…?」

 

ムスクルの懐へ一瞬で入り込み、『ジャスティカリバー』を形成。そのまま切りつける。すぐさま反撃に入るが、腕を切り裂き蹴りを浴びせる。

 

「仮面ライダージャスティス…噂通りだな」

 

「喋ってんなよ怪人」

 

剣から銃の形へ変え、ムスクルを撃つが、素早いフットワークでそれを躱しながら、ジャスティスに向かう。殴る蹴るの連打が始まるがそれを物の見事に捌いて行く。まるで攻撃が読めているかのように…。そしてその連打の中の一撃を避けた時、ムスクルが宙は浮かぶ。どうやら顔面にカウンターを食らったらしい。あの速さの中、自分は見えなかったが彼は見えている。そのまではっきりと見えていた。

やはり強い。この人は…

 

「どうした?もう終わりかユニク?……ふっ。ユニクだから少しは動けると思ったが、まぁそこら辺の雑魚よりは幾分マシみたいだな。通りであいつも苦戦するわけだ」

 

「これがライダーの力か…俺の攻撃を完全に見切りやがって」

 

「んで、どうする?このままぶっ殺すけど遺言あるか?」

 

「……ほざけ」

 

「あっそ」

 

先程ドライバーに装着したアイテムを外し、剣に差し込む。剣身が強い光り放ち、ムスクルを照らす。そして振り上げる。

 

 

【 ジャスティスラッシュ!! 】

 

 

決まったかに思えたが、剣が途中で静止する。震えている。睦生の角度からは見えなかったがジャスティスが両手に力を込めているのはわかった。ムスクルが止めたのだ。拳と拳を合わせ、彼の剣を受け止めた。

 

「真剣白刃取り…か?」

 

「ふんっ…!!」

 

そのまま投げ飛ばし、間も与えず腹を渾身の一撃で殴る。吹き飛び地面を転がるジャスティスから、今まで聞いたことがない苦痛の叫び聞こえる。

 

「調子に乗るなよ…仮面ライダー!!」

 

「あっ…ぁ……!!ぐっ……うぅぅぅ…!!!」

 

「お前が死ね…」

 

腕を振り上げるも、今度は完全に再生を終えた睦生が片腕を剣に変え、その拳を受け止める。その衝撃で地面が割れる。ジャスティスは驚いたようにこちらを見る。

 

「お前…!!」

 

「正義さん…あなた言ってましたよね?ライダーはビジネスだって…。それでもあなたはこうやって戦う。まなの時だってあなたは来てくれた。助けに……本当に…ビジネスなんですか…?」

 

「……お前本当にバカか?話題作りに決まってるだろ。そこら辺に取材陣やらパパラッチやらうじゃうじゃいる。そいつらに情報提供すれば後はどうでもいい」

 

「なら何故!!」

 

両手を爪に変え、縦横無尽に切り裂きドロップキックをかましてムスクルを吹っ飛ばす。

 

「僕にとどめをささなかったんですか?」

 

「……」

 

「あの時コアを貫いていれば僕は死んでいました…なのに何故ムスクルを…」

 

「黙れ。お前は俺を殺さないのは知っている。だから先にあいつを潰して、何もできないお前をやろうって魂胆だっただけの話だ…あんまり図に乗るな?」

 

「…………」

 

「…まぁあいつは単純だが面倒だ。手を出していいが邪魔するな」

 

「…わかりました……え?」

 

「邪魔だけはするなってことだ、後は好きにしろ」

 

「…!!わかりました!!」

 

2人は並ぶ。そしてムスクルの前に立つ。

 

「今日だけだ。次は殺す」

 

「はい!!」

 

「……ジャスティス…ヴァイザーが手を組んだか……流石に骨が折れるな…ならば!!!」

 

ムスクルの筋肉が盛り上がる。ギチギチと今にもはち切れそうな音を立て、肥大化して行く。体から蒸気のようなものが噴き出てくる。

 

「この能力は確かに弱点という弱点はない…それはこの力の真髄を見せていないからだ。セーブしていなければ、今のように自分への負担が大きくかかり、耐えきれなければコアが圧迫されて死ぬ……ふっ、少し動くだけで全身が破裂しそうだなぁ…」

 

---なるほど。しかし加減をしてあれならば、限界値のこれは更にまずいな。

「うん…でもやるしかない」

 

「自我崩壊寸前か…色々危ない能力だな」

 

「オォォォォォッッッッッ!!!!!」

 

 

雄叫びをあげ、今でとは比べ物にならない速さで2人を殴り飛ばす。飛ばされたジャスティスの方へ向かい追撃を行う。ジャスティスはそれをなんとか受け止め、その隙に睦生が剣で後ろから切りつける…が、刃が通らない。

 

「かたっ…!?」

---ちっ…ダメか!!

 

「無駄だ!!」

 

剣でガードするも貫通して、その拳が肩に当たる。ブチンと果実をもぎ取るが如く簡単に千切れた。ジャスティスは銃に変形させ銃口をムスクルの口の中へと突っ込む。

 

【 ジャスティシューティング!! 】

 

「かふぁっ…っっ!!!」

 

「なるほど……やはりその形状変化は部分的にしかできないらしいな…!!」

 

怯むことなくジャスティスを地面に叩きつけ、拳を振り上げ力を込める。その瞬間に睦生はもう片腕を剣に変化させ、大きく跳ぶ。自分の中では最大高度に達するその高さから、剣身をムスクルに向け、全体重を乗せて急降下する。

ジャスティスの方は左部分のレバーを押し込み、渾身の力でムスクルを蹴り上げる。

 

「くたばりな……アンチバイツ!!!!」

【 ジャスティフィニッシャー!!!! 】

 

「うぉぉおぉおぉぉぉぉぉぉっっっっ!!!!」

 

剣の一撃と蹴りの一撃。互いに挟む形でムスクルに重い一撃を食らわせる。ぶつかり合った衝撃で周りのものが吹き飛ばされる。

 

「アアァァァァァァァッッッッッ!!!!!─────────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-----------------

 

「…………」

 

ぐちゃ…ぐちゃ………

 

「……グロテスクだな」

 

「…すみません」

 

「これでお前はまた強化されたってことか……やっぱり仕留めとくんだったな」

 

「え……」

 

「まぁお前と違って俺は人間だからな。今日のところは見逃してやる」

 

「前も見逃してくれましたね…」

 

「お前いつも都合悪い時なんだよ……俺の為ならここでくたばれ」

 

「いやそれはちょっと…無理です」

 

「ちっ………まぁせいぜい足掻け。俺がいつかこの手で殺す」

 

「……………」

 

彼は去っていった。今回「も」助けてくれたが……ばったり会ったらもう終わりだろうな…今度から……

 

「ねぇヴァイザー……これでブレード、クロー、マッスルが手に入った訳だけど…正直全部混ぜて使えないのがきついね」

 

---無理だな。あの正義も気づいたが形状変化はある一定の部分にしかできない。その部分ごとに負担をかけるといってもいいだろう。マッスルの場合は全体的にだからな。負担が分散される。

 

「……あのさ。今まで聞かなかったけど……」

 

---……なんだ?

 

「ヴァイザー達アンチバイツは…………どこから来たの?前もそうだけど、なんで他の…いやユニクアンチバイツに詳しい……どうして…?」

 

---…………。

 

「ヴァイザー…?」

 

---今は簡単に言っておいてやる。お前らがいうアンチバイツは一般兵。そしてユニクの方は上級兵………みたいなもんだ。

 

「ふーん……え?今は?どこから来たとかは?国とかあるの?」

 

---…あーもう、うるせー。お前に押さえつけられてなきゃ内部から食い殺してるところだ。

 

「なんかごめん…」

 

---ふん……

 

「……ごめん最後に質問いい?」

 

---あ"?

 

「…!!……ヴァイザーは…その、仲間を。同種を殺して何も思わないの?」

 

---……俺たちには感情はあるがそれがどういったものかは分からないって前に話したろ?…別にどうとも思わない。この世は食うか食われるか。だが俺は食われて食う。人間でいうなら喧嘩売られたから買うってことだ。

 

「そっか……いつまで続くかな」

 

---さぁな。正義ってやろう潰せば幾らかマシにはなりそうだけどな。

 

「それはやめよう」

 

 

 

 

 

アンチバイツにも感情はある…けどそれが何かわからない。これから教えていければヴァイザーも少しは楽しくなるんじゃないか、と帰宅する道中そんなことを思っていた………

 

 

 

 

-----------------

 

それはとある夜のこと…

 

「へ、へへっ…これで95人目ですね……」

 

「ガッハッハッハッ!!お前のお陰だ。褒めてやる!!」

 

「あ、ありがたきお言葉です…」

 

「さぁて…あと5人は…………!。あいつらにするか」

 

「あ、あいつら…?」

 

「仮面ライダーと……あの裏切りもんのヴァイザーだ!!」

 

「…あ、あのジャスティスと…!?…あともう1人は………?」

 

「お前は黙ってな。生かしといてやってるんだ……いつでも殺せるぞ?」

 

「は、はいぃぃぃ!!」

 

「それでいい!!…待っていろ!!この『ハンメアー』様が!!お前らを叩き潰してくれるわ!!ガッハッハッハッ!!」

 

高らかと笑うアンチバイツの体には、目に光をなくした人間が、上半身のみ外へ出されていた。そして足元にいる人間の体を掴み上げ上半身を貪り食い、目の前の深い穴へ捨てる。

それから右腕の体の半分以上ある大きな金槌のようなものを振り回し、そのアンチバイツは向かう。2人の元へ…。




あっぶえ…週一じゃあまだいいだろうなって思って、カレンダー見たらもう1週間じゃないか!たまげたなぁ…

とりあえず遅れて申し訳ナス!!

見てくれる人がいる限り続けていくから見とけよ見とけよ〜。

それでは次回もよろしくお願いします


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EP05 敗北の傷

お待たせ。やっと…計6話なんやな…
読んでくれてる兄貴たちありがとナス!!

今回またも新能力を手に入れる……はずだった。

もう察してると思いますが、睦生たちに一体何が起こったのでしょうか。それではどうぞご覧ください。


最近ユニクの目撃情報が多発している。レアな種であり、出現率も高くないと言っていたヴァイザーの言葉は妙に引っかかる。昨日のムスクルの時もアンチバイツは一般兵。ユニクは上級兵みたいなものだ、とか言っていたけど、それなら出現率とかなんとかって矛盾してる気がする。一体何を隠しているのかはわからないけど、今はヴァイザーと共に戦うだけだ。

 

「…睦生。いつまでご飯眺めてるつもり」

 

「………っ!あ、え!?ううん、食べるよ」

 

考え事をして手が止まっていた。ささっと食べてしまおう。

 

「『弥生』。これなんだ?」

 

「ん?それは金目鯛の煮付けよ。『睦吾郎』さん」

 

「はえぇ〜通りで美味いわけだ」

 

「…それどういう意味?」

 

「あぁ…!い、いやそういう意味じゃなくて…弥生の料理は最高だな!!」

 

弥生というのがうちの母。睦吾郎が父。睦生という名前は2人から一文字ずつ貰った名前だ。結構自分の名前は気に入っている。

 

「あ、そうだ。睦生」

 

「ん?」

 

「あんた最近バイト長引いてるけど…大丈夫なの?」

 

「う、うん…って俺も一応、大人なんだからさ。どっか寄り道したりとかで少し遅くなったりするよ」

 

「……ならいいんだけど」

 

「……なにその感じ」

 

「ま、あんたが悪いことするはずないもんね」

 

「するわけないでしょ」

 

「どうだかね〜。アンチバイツみたいに暴れてたりして」

 

「…!!ゴホッゴホッ!!!!???」

 

「ど、どうしたのいきなり!?」

 

「いやただ…そ、その喉に詰まっちゃってははは…」

 

絶賛戦ってるし、アンチバイツ?になっちゃったし…息子がそんな事になってるなんて話しても信じてもらえないだろうし……

 

「ごちそうさま」

 

部屋に戻るとすぐに横になる。

 

---食べてすぐ寝るのは体に悪いと聞いたぞ?

「…僕の今の状態で病気とかなるのかな……」

---なるはなるだろうな。まぁ俺が治すけどな。

「治せるの?」

---お前は俺が付いている限りは死なないし死なせない。よほどなものじゃなければ、時間はかかるが治せる。

「すごいね…」

 

横になっているとウトウトし始めてきた。本格的に睡魔が襲ってくる前に寝支度済ませてしまおうとした時、あの声が聞こえる。助けを求める声。

 

「…………」

---…来たな。

「うん。行くよヴァイザー」

 

怪人態となり窓から出て行く。その直後に母親がドアを開けて入ってきた。

 

「睦…き…?あれ?いない…いつ出かけたのかしら?…あ、窓開けっ放し」

 

 

 

 

 

 

---------------

 

「……何もないねここ」

---あぁ。

 

現場に向かうとそこは平地であった。周りに何もなく、あるのはわずかな隙間から生えた雑草だけ。

 

「こんな所じゃすぐ見つかるはずなんだけど…」

 

耳を澄ませ辺りを歩き回り、アンチバイツを探す。その途中ピタリと足を止める。あのムスクルでさえ、ここまでの力は持っていなかった。

 

「なに…これ…!?」

---…………。

 

底が見えないほど巨大な穴がそこにあった。人力ではないのは確かだ。

何故なら今、その開けたであろう張本人が自分の後ろにいるのだから。

 

「待ちくたびれたぞ。ヴァイザー」

 

「……ユニク」

 

「なんて言ったか……あーそうだ。人間のお前は睦生だったな…俺様はハンメアー。この穴作ったのは俺様だ」

 

「何のためにこんなものを…」

 

「あ?そりゃもちろん。ゴミ捨て場よ」

 

「ゴミ捨て場?」

 

「俺様たちアンチバイツだって味覚は感じるからな。不味い人間は捨てるんだよ」

 

「…!!」

 

「人間だって食えない所は捨てちまうだろ?それと一緒だ…まぁ俺様の場合は、単純にすぐに死ぬ人間が面白いからだけどな」

 

「なに…!」

 

「使い終わったら捨てるようにな?流石に潰れたもん食うのは気がひけるからなぁ?」

 

「お前…!!」

 

「文句があるのか?」

 

「やめろって言ってもやめないんですよね?」

 

「あぁ…俺様に命令できるのは俺様だけだ」

 

右腕を巨大なハンマーに変え睦生に向かって振り下ろす。だがその動きは今の彼にとってはとても遅く感じる。軽く身を躱し、すぐさま攻撃に移ろうとした。が、そのハンマーが地に着いた時、大きく広く深い穴が地面に開く。

 

「なっ…!?」

---奴の動きは今のお前にとってはただノロいだけだ。一気に潰せ。

「うん!!」

 

全身の筋肉を膨張させ、身体能力を跳ねあげる。凄まじいスピードでハンメアーを殴る。何度も何発も、間髪入れず全身に叩き込む。

 

「ぐっ…!うっ…!!」

 

「うおぉぉぉぉぉっっっ!!!!」

 

最後にフルスイングで一発入れる。その一撃で大きく吹き飛んだハンメアーだったがすぐに体制を立て直す。

 

「……てめぇ…!!!」

 

「………!」

---レベルが違ったな。さっさと喰うぞ。

 

両腕を爪に変化させ一気に間合いを詰め、四方八方から斬りつける。自分のスピードについてこれていない。勝てると思った。ここまで自信が持てるのは、やはり経験からなのだろうか。

 

「…鬱陶しい!!」

 

ハンマーを振るうとその風圧により睦生は吹き飛ばされる。

 

「すごい風…!!」

---こいつの攻撃に絶対に触れるなよ

「わかってるってば!!」

 

「ごちゃごちゃと………」

 

空中に飛び跳ねる。

 

「喋っているなよ…!!!」

 

 

睦生に向かって降下して行く。それを軽く躱すと、凄まじい衝撃とともに地面が崩れる。石や砂が飛び散り、手で遮る。周りに警戒する事をしなかった。気がつくと目の前に影がゆらりと現れる。

遅かった。ガードの体制を即座に取るが、ハンメアーの強烈な一撃はその防御を貫通し、睦生を数百メートル先まで吹き飛ばす。どこかの岩肌に激突し、プツッと糸が切れたように気を失う。

 

 

---------------

 

死んだのかな…。ヴァイザーは即死だと言っていた。あの一撃を食らったのだから無事では済まないだろう。まな…約束守れなかった…ごめんね…

 

…声が聞こえる。聞き覚えがある声だ。睦生はゆっくりと目を開ける

 

「よかった…!!睦生…!!」

 

「心配したんだぞ…」

 

「母さん……父さん……」

 

どうやらここは病室らしい。助かった。生きてる。死んでいない。泣いている母と父を見ながら医師が口を開く。

 

「それにしても息子さんはすごい…こんな患者さんは今まで一度も見たことがない。普通の人間であるなら原形をとどめるのもやっとな大怪我です。下手をすれば……しかし息子さんは驚異的な再生能力です。今ではここまで回復している…」

 

バレなくてよかった…。自分がそういうものになっていると知られたらまずかった。それにしてもよく生きていたな…。

 

「母さん。父さん」

 

「ん?」

 

「ちょっと1人にしてもらえる?」

 

「え?…あ、うん。わかったわ」

 

「ゆっくり寝てろよ」

 

「うん」

 

病室にいた人たちがみんな外へ出て行く。睦生は不可解だったのだ。あれを食らってコアが無事なわけがない。なぜならコアにほぼ当たっていたのだから。

 

「ヴァイザー…大丈夫?」

 

---……あぁ。

 

「そっか…なんで僕は無事なの?」

 

---……運が良かったんだろう。

 

「いや、違う。ヴァイザー何かしたでしょ?」

 

---俺は何もしてない。お前に制御されてるのにどうやったら動ける。

 

「それってもし…僕が死ぬギリギリの状態だったら…?」

 

---…なに?

 

「そうなれば僕だってどうすることもできないと思って。自分の体が制御できないのにヴァイザーを留めることなんかできない…でしょ?」

 

---…………。

 

「それにあの場所からここまで来れるはずがないし。コアだって無事で済むはずない…」

 

---………あぁ。俺が一度お前の体を操作してここまできた。コアはもちろん無事じゃなかったが…まぁ一か八かだったけどな。なんとか修復できた。

 

「……なんで体を奪わなかったの?」

 

---あ?

 

「本来なら僕の体はヴァイザーのものになるはずだったんでしょ?…なんで…」

 

---……今のままの方が過ごしやすいと思っただけだ…それに俺とお前でヴァイザーだからな。一人欠けたらよくわからないだろ?

 

「ふふっ…なにそれ…」

 

---ふん。今はゆっくりしてろ………ユニクを二体相手にしないといけないからな。

 

「…え?二体?」

 

---……あぁ。お前をここへ運ぶ途中に見つけた。

 

「ユニクが二体も…」

 

---ただな。そいつを喰えば、ハンメアーに勝てる。

 

「ハンメアーに?」

 

---あのバカみたいな威力を無効化できる。

 

「え…!?」

 

---……やれるか?

 

「やるしかないよ…あんな奴をそのままにして置くなんてできない」

 

---なら傷を治せ。奴も奴でなかなか骨が折れる。

 

「どういう奴なの…?」

 

---『シエリド』。まぁ…好戦的ではないな。

 

「やっぱりそういうアンチバイツもいるんだね…」

 

---だからってそのままにするのか?

 

「いや、一度会わなきゃ…わからないと思う…」

 

---…もうお前に任せる。好きにしろ。

 

「うん。ありがとうヴァイザー」

 

---さっさと寝てろ。

 

睦生は目を瞑る。ユニクを二体も相手にしなければならない。今はとにかく体を回復させる為、眠りにつく。




完全に遅れて申し訳ナス!!

許してください!!なんでもしますから!!

まさかのユニクが二体も出現。次回もお楽しみに。
というわけで次の回でまたお会いしましょう。


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EP06 最大の防御

最大の攻撃には最大の防御で頑張るしかないよ!
しまっていこぉぉぉぉ!!!!

週1ペースとかお前もうガバガバじゃねーか。

今回また新たなユニク。その実力とは、それではどうぞご覧ください。


山の中に廃墟と化した病院が不気味に立つ。

睦生は今その病院に来ている。人が一人もいない。周りに何もない。鳥の声が聞こえるだけだ。

 

「ねぇヴァイザー」

 

---なんだ?

 

「ここにシエリドさんってアンチバイツがいるんだよね?」

 

---そうだ。

 

「…中…入るよね…」

 

---入るに決まってる。

 

「…本気で嫌だ…」

 

---あ?なんでだ?

 

「いやいやいやいや。怖いって。何か出るって絶対」

 

---……馬鹿か。早く行くぞ。

 

「呪われるって!!ここから大声出して呼ばない!?」

 

---あいつは警戒心が強い。ヴァイザーだと言っても信じてはくれないだろう。

 

「………あぁ…本当にやだ…」

 

---早く行け。

 

「わかったよ…」

 

恐る恐る扉を開け中へ入る。まだ昼間だというのに真っ暗である。光が全く入ってない。見た目だけで何か出る雰囲気が漂っていた。

 

「怖い」

 

---まだ言ってるのか。

 

「…だって何も見えないんだよ?…こんな暗くて物があちこちに落ちてるってすごく怖…い…?あれ見える?」

 

そういえば夜でも見えていた。便利だとは思っていたけど、まさかここでこの能力を恨むことになるとは思わなかった。流石に幽霊やらは見えないだろう。いや見えなくていい。

 

「声は聞こえない…ね」

 

---奴の性格なら人間も別に悪い気はしないんだろうな。

 

「え?」

 

---シエリドは人間と共存できると思ってる…少なくとも人間の方は普通の暮らしが出来ているかも知れん。

 

「それなら…なんでここへ?」

 

---そこは知らないが…取り付いた奴の問題だろうな。そこはあって聞け。

 

「はいはい」

 

階段を上がり二階へ行く。本当に暗い。窓も覆ってしまっているのか?

辺りを見回しながら、病室を覗く。かつて使われてたであろう道具が無残に散らばっている。機械なんかもそのままだ。わずかな隙間から入る風がカーテンをなびかせる。やばい怖い。

 

「なんか寒い気がする…」

 

---気のせいだ。次の階だ。

 

「………」

 

三階へ上がる。すると右の方から物音が聞こえた。

 

「あー待って待って待って……」

 

---あっちだな。

 

「何も出ませんように…」

 

奥の方に部屋があるが他とは違い、明らかに綺麗だ。それに周辺には物がない。ここだけ別物だった。だがその違いが逆に不気味さを醸し出す。怪人態になりドアに手をかける。

 

「……行くよ」

 

---あぁ。

 

ゆっくりドアを開け、中へ入るとそれらしき人が座っていた。人だった。アンチバイツなのだろうけれど、今までとは何かが違った。

 

「あなたが…シエリドさん?」

 

「…………やっと来たか。シエリドさん…」

 

そういうと、みるみる形が変わっていき異形の姿となる。

 

「…よぉ。久しぶりだなヴァイザー…と言ってもその人間通してじゃないと会話は無理か」

 

「初めまして篠瀬 睦生です。えっと、ヴァイザーと知り合いですか…?」

 

「まぁな……で、要件は俺とやり合うってことだろ?」

 

「あ、いや…」

 

「隠し事は良くないな」

 

「……あの……どうしてここへ?」

 

「…こいつが行きたいってよ。全く変な趣味してるよな?」

 

「そうですか……あの…」

 

「やるの?やらないの?…俺はやりたくないけど」

 

「………なら…」

 

「ん?」

 

「僕と一緒に戦ってください!」

 

「え?なんで?」

 

「あのハンメアーを倒すためにあなたの力をお借りしたいんです!」

---おい睦生。一体何を言ってる。

 

「…………なるほど、そう来たか。だがダメだ」

 

「え…?」

 

「俺が取り付いた人間に危険が伴う」

 

「…シエリドさん…」

 

「俺はこいつに取り付く前から決めていた。人間と共存するってな。俺たちはここじゃ寄生しなきゃ生きられない。生かしてもらってるんだ。最低限のことはするつもりだ」

 

「そう…ですか…」

---睦生。ハンメアーをそのままにする気か?奴に勝つにはシエリドの能力が必要だ。

「だけど…」

 

「……全く相変わらずだな。ヴァイザー…どーせ睦生とかいう人間に早く俺を喰えとか言ってるんだろ?」

 

「…!!」

 

「…………まぁそうだな。ハンメアーの攻撃を受け止められるのは俺の能力くらいだからな」

 

「……」

 

「……ならわかった。くれてやるよ。俺の能力。……ただこの人間をどうにかしたいと思ってる」

 

「…一つだけ方法がありますけど……結局シエリドさんは………」

 

「…なんだ?」

 

「僕はアンチバイツと人間を引き剥がすことができるんです。二人とも生かした状態で」

 

「…!?そんな事ができるんだな…ならやってくれ」

 

「……喰われるんですよ?」

 

「構わない」

 

「何故ですか…?」

 

「なんでか…俺も随分と長いこと生きてきたからな。それに俺はこの星を、人間を好きになった。俺たちが知らない感情まで知っているんだからな」

 

「……」

 

「ヴァイザーはどうせ言ってないだろうから言っておくが、俺たちはこの星と別の場所からやってきた…簡単に言えば宇宙人って奴だ」

 

「…え…!?」

 

「…さて、さっさとやってくれ……この星を頼んだぞ」

 

---……お前も相変わらずだな……こいつは一度行ったら曲げない奴だ。それと嘘をつかないやろうだ。…さっさと喰ってやれ…。

「ヴァイザー………」

---……ありがたくもらっておいてやるとでも伝えとけ。

「え、うん……行きますよ。シエリドさん……すみません……」

 

「あぁ……じゃあなヴァイザー…人間……睦生よ…」

 

引き剥がした後に伝えた。ヴァイザーが言いたいことをしっかりと。

今までありがとうってことを。

 

 

 

 

 

 

 

 

---------------

 

「ま、正義さん!ちょっと待ってください!どこへ行くんですか!?」

 

「アンチバイツが出現しました。インタビューを受けてる暇はありませんよ」

 

世偽 正義。仮面ライダージャスティスに変身する男。彼は今、取材を受けている最中であった。

 

「え!?ご一緒させてもらっても…」

 

「ダメですよ。危険です。もし何かあったでは遅いんですよ?」

 

「ぐっ…」

 

「…。(馬鹿がただの一般人がいたら邪魔なだけだ)」

 

バイクに跨り現場へ向かう。先程帰ってきた、手乗りのガジェットがその位置を示す。無数の点が何個もある。アンチバイツが複数その場にいるらしい。

 

「多いな…」

 

ユニクの出現率が高くなっている。雑魚が何匹も現れるだけだったが、ヴァイザーの出現から数が増えているのは事実。偶然かどうかなんて関係ない。ただ目の前の商品潰して報酬をもらうだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

---------------

 

しばらくして現場に到着する。人々が逃げ惑い、軍隊が必死に応戦している。そんな鉄クズじゃこいつらは死なねーよと思いつつ、銃を取り出し襲われている人々を助けて行く。

 

「さぁ逃げて!!早く!!」

 

「ありがとうございます!!ジャスティスさん!!」

 

「やっちまえジャスティス!!」

 

赤い点の多さに驚いたが、いざ実際見てみると更にすごい量だ。一匹一匹相手にしていると時間がかなりかかるだろうな。

ドライバーを取り出して、アイテムを装着する。

 

「変身!!」

 

レバーを押し込むと、アーマーが形成されて行く。

 

【 正義の名の下に!!ジャスティス!! 】

 

ジャスティカリバーを剣に変え、斬り伏せ、銃に変え的確に撃ち抜く。そうするとみるみるその数が減っていき、数分も経たないうちに一匹だけとなる。

 

「最後はお前だけだな」

 

「このやろう…!!仮面ライダー…!!」

 

「さっさとくたばれ。アンチバイツ」

 

「こんな所で…死ねるギャッ……!!!!?」

 

「…なっ…!」

 

アンチバイツが弾け飛んだ。まるで風船が破裂したかのように。その後ろに片腕が大きな鈍器のような形になっているアンチバイツがいる。

 

「邪魔だ。これだから雑魚どもが繁殖するのは困る」

 

「ユニクか…」

 

「あ?仮面ライダーだな?俺様のことは知ってるよな?」

 

「知らねーよ。ユニクってことに変わりないだろ」

 

「そこら辺の奴らと一緒にするな。俺様はハンメアー。アンチバイツの中で一番強いのがこの俺様だ」

 

「はっ。頭がイってるときたか」

 

「…なんだと…?」

 

「聞こえなかったか?脳筋野郎が喋ってんな。さっさとかかって来いって言ったんだよ」

 

「ほざけ…っっっ!!!!」

 

そのハンマーを振り下ろすと、その中心に向かって一気に沈む。巻き込まれないとバックステップで回避する。

 

「とんでもない奴だな…」

 

「やっとわかったか?」

 

「あぁ……攻撃力だけだってことがな!!」

【 ジャスティスラッシュ!! 】

 

十字に斬りつけた後、ハンメアーを土台にし高く舞い上がり、もう一撃食らわせる。その際ハンマーの付いている腕を斬り飛ばす。

 

「ぐっ…て、てめぇ…!!」

 

反撃の隙を与えないまま、ジャスティスの猛攻が続く。すると、背後から悲鳴声が聞こえる。途中、蹴り飛ばして後ろを振り返ると、まだ残っていたアンチバイツに襲われそうな家族がいた。

 

「くそっ…!!」

 

銃に変え、襲おうとするアンチバイツを撃ち抜く。だがそれが大きな隙となってしまった。ハンメアーが再生し終わった腕を振り上げ、ジャスティスを叩き潰そうとしていた。

受け止めきれない。やられる!!

 

「潰れろ!!仮面ライダァァァァ!!!」

 

「くっ…!!」

 

剣でガードする体制で一撃を受けようとした時、何者かが目の前を遮る。強烈な一撃を防ぐ盾。

 

「お前か…」

 

「大丈夫ですか!?正義さん!?」

 

「…またなんか手に入れたのか」

 

「はい…!!」

 

渾身の力でハンメアーを押し飛ばす。何があったかわからないという風に棒立ちでこちらを見てくる。

 

「ハンメアー…これでお前を倒す」

 

「…シエリドのやつか…確かにそれなら俺様の攻撃は受け止められる…ただそれで俺様に勝ったつもりか?調子に乗るなよ!!半端もんが!!」

 

「勝ったつもりじゃない。勝つ。これ以上、犠牲者は増やさない」

 

「このやろう…」

 

「みんなが生きる為、自分が生きる為に僕はお前を倒す。……行くぞハンメアー。喰ってやる」

 

「…テッメェ…ッッッ!!!」

 

ハンマーを振り回し、高く跳ね上がる。そして全体重をその腕に乗せ、急降下しこちらに向かって落ちてくる。

 

「こい!!」

 

「ガァァァァァァッッッッッッ!!!!!」

 

今、最大の防御vs最大の攻撃の戦いの火蓋が切られた。




まだ間に合うまだと思って放っておくと痛い目見るから…やめようね!!

仮面ライダー出番ほぼないじゃねーかよお前よぉん!?
……お兄さん許して……

まだこんな流れが続くけどどうか行かないで。
という事で次回もお楽しみに。終わり!!閉廷!!以上!!みんな解散!!


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EP07 最大の攻撃

お待たせ。タイトルが思いつかなかったです(小並感

決着です。果たしてどうなるのか!!…あ(察し
大丈夫だって安心しろよぉ〜

この流れについてこれるでしょうか?それではどうぞご覧ください。


「ガァァァァァァッッッッッッ!!!」

 

「…っ!!」

 

ハンメアーの猛攻でもビクともしない。傷一つ付かない。片腕のみにしか変化させられないこの能力だが、あのハンメアーの一撃すら軽く凌いでしまう。

 

「くっ…そっがぁぁぁっっっ!!!!」

 

「はぁっ!!!」

 

振り下ろされたハンマーを力任せに押し返し、体制が崩れたところを片腕を剣に変え、すれ違うように斬りつける。

ハンメアーは変化していない腕の方で腹を抑え、こちらを睨みつける。その目は殺意に満ちていた。敗北した相手に対し、自分が何もできずにただ切られたことがたまらなく腹が立ったらしい。プライドを傷つけられたことの方が、奴にとってはこの上ない苦痛なのだろう。

 

「お前ぇぇ………」

 

「諦めろ。もうお前の攻撃は僕には効かない」

 

「…っっっっ!!!!!」

 

顔中に血管であろう凹凸が現れ始める。わなわなと拳を震わせ、ハンマーを振り上げる。何度同じ事を繰り返すのだろう。もう自分の方は勝つことが目に見えている。睦生はそう思っていた。確信していた。しかしその油断が一瞬の隙が生じた。

 

「ぐっ…!!!」

 

一撃を食らわされ、盾が飛ばされてしまう。真正面からの攻撃を受けようとしなかったのが間違いであった。

 

「そのシールドが邪魔だっっっ!!!!」

 

「くっ…そ!!!」

 

筋肉を倍加し、間一髪のところ避ける。振り下ろされた場所は大きな穴が開く。ゆっくりとこちらを向く。だいぶ苛立っているようで、ハンマーを振り回している。そうする度に凄まじい風圧が睦生を苦しめる。踏ん張っているからこそ耐えられてはいるが、少しでも重心がズレればその風圧により吹き飛ばされてしまう。

 

「ちっ…おい睦生。ここはお前がやれ。あっちにまだアンチバイツの雑魚どもがわんさかいやがる」

 

「正義さん…はい!任せてください!!」

 

「…………くそっ。ほんと腹立つやろうだな…」

 

「ん?何か言いました?」

 

「さぁな……はっ!!!」

 

正義は救護に向かった。そしてアンチバイツに的確にダメージを与え、ねじ伏せて行く。あっちは大丈夫そうだ。目の前のハンメアーに集中しよう。

睦生は筋肉を倍加した状態で、一気に近づき、片腕を盾に変え押し付けたまま壁まで突進する。

 

「このハンメアー様がこんなもので…!!」

 

「はあぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!」

 

複数の壁に激突させた後、両手を爪に変え、顔面を切り裂きまくる。ハンメアーは手で顔を覆い始める。その隙をつき、今度は筋肉を通常よりも更に倍加させ、ドロップキックを繰り出す。強烈な一撃をもろにくらい、かなりの距離まで吹き飛んだ。

まだこれで終わりじゃない。続け様に片腕を剣に変え、真っ二つにしようとするが、ハンマーで弾き返される。

 

「調子に乗るなよ!!!」

 

「さっきまではね!!」

 

「なっ…!!?」

 

ハンマーを掴み、それを軸にして、思いっきり膝蹴りを鼻の辺りに食らわす。仰け反った所をすかさず剣で斬りつける。何度も何度も相手に攻撃の隙を与えないよう、あらゆる方向から切りつけて行く。

どうすることもできないハンメアーは、ただ睨みつけるばかり。とても悔しそうな表情を浮かべると、不意に叫び出す。痛みとかじゃない。敗北という悔しさが、怒りがその声となって現れる。

 

「この俺様がァァァァ!!!こんなぁ!!!こんな半端な野郎なんかにぃぃぃぃぃぃぃっっっ!!!!!!!」

 

「うおぉぉぉぉぉぉっっっっっっ!!!!!」

 

「クソがァァァァ!!!!!」

 

「うわっ…!!!」

 

回転をし始めた。ハンマーを重りにして地面をえぐる程の竜巻を起こし始める。周りのものを全て巻き込み、更に回転を強くして行く。

最後の悪あがきといった所だが、自分の生命が奪われるという状況下の中、そして自分のような半端な奴なんかに負けるという悔しさ、怒り。彼のプライドがズタズタにされた今、やり方を確実に仕留められる方に移し、自分を殺すだけということだ。

 

一見単純なこの技だが、実際立ち会うと隙が見えない。下手に手を出せば粉々にされるだろう。ただ一つ攻撃できる場所があるとするなら上からである。台風の目の如くそこだけ、ハンメアーが中心に回っている部分させたければ勝てる。

だが届かない。あそこまで行ける手段がない。発生した竜巻が天辺が見えないのだ。それに凄まじい風が壁になる。もし行こうとしても押し戻されてしまう。

 

「やるしかない…」

 

---どうするつもりだ

 

「シールドで回転の反対方向へ当たりに行く」

 

---なんだと…!?

 

「大丈夫、受け止められる。それでこの竜巻を止める」

 

---…無理がある。いくら効かずとも、あの威力をお前1人が受け切れるわけがない。盾が吹き飛ばされるぞ。

 

「でもやるしかない…それにヴァイザーならできるでしょ」

 

---なに?

 

「僕たちなら」

 

---馬鹿か。俺はお前に抑制されて…。

 

「ほら行くよ!!ヴァイザー!!」

 

---こいつ……わかった。

 

片腕を盾に変え、回転の逆方向からぶつかる。金属がぶつかり合う音が響く。今にも吹き飛ばされそうだが、足を踏ん張り、その衝撃を耐える。

 

「す、凄い力だ…!!」

 

---耐えろ睦生。お前の身体能力なら行けるはずだ。

 

「ヴァイザー…うん!!」

 

---喰ってやれ睦生。

 

「はあぁぁぁぁぁぁ…っっっ!!!!」

 

回転の力が弱まって行く。盾にヒビが入ってきた。まだ素で受けるには充分とは言い難い威力ではない。耐える。ただひたすらに耐える。

 

「粉々になれ…!!ヴァイザー…っっ!!!!」

 

「…っ!!」

 

盾に大きな亀裂が入る。まずい。だけど…!!

 

「まだまだぁぁぁぁ!!!」

 

そして砕け散る。ハンマーが睦生の片腕に当たり、吹き飛ばされる。

ただ止まっていた。今の一撃は造作もない。すぐに着地し、筋肉を倍加させる。限界前まで。ギチギチと筋肉が音を立てる。コアが押しつぶされないか心配だが、彼には耐えられる。

土煙の中からハンメアーが現れる。叫び声を上げ、ハンマーを振りかざす。睦生は構える。真正面から受け止めつもりである。これが最後の一撃だ。

 

「ガアァァァァァァァァァァッッッッッ!!!!」

 

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!」

 

ハンマーと拳がぶつかり合う。その衝撃で周りにあるものは吹き飛ばされ、2人が立つ地面には亀裂が走る。

先に睦生の腕が風船のように破裂した。そしてダランと腕を垂らし、ハンメアーを見つめる。

 

「……お前の負けだな」

 

ニヤリと笑うハンメアーだったが、ある異変に気付く。

 

「ん?なんだこの音は?」

 

何かがピシピシと音を立てる。

 

「まさか…!!」

 

次の瞬間ハンマーが崩れて行く。そしてハンメアーも崩れ落ちる。

全て終わったことを察して、空を見上げる。

 

「僕の勝ちだ。ハンメアー」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…俺様の負けか…」

 

「……あぁ」

 

「ちっ…こんなアンチバイツなのか、人間なのかわからねーやろうにこの俺様が負けちまうとはな…ムカついてたまらねぇ…」

 

そういうと自分の体に腕を貫かせ、コアを取り出した。

 

「な、なにを…!?」

 

「てめぇに…む、無残に食われるくらいなら…!!こう…した方がマシだ…!!!」

 

それからコアを投げつけ、目を閉じ、静かに倒れる。しばらくすると溶けて行くように跡形もなく消えて行く。

 

「ハンメアー…」

 

---あいつなりのけじめというやつか。プライドだけは高いやつだったからな。

 

「……そうだ!正義さんは!?」

 

正義の戦っていた場所へ戻ると、すでにアンチバイツは全滅させられていた。刃の部分を手で拭うようにスライドさせる。

正義に近づこうとした時、悲鳴が聞こえた。

 

「か、怪物だぁぁぁぁ!!!!」

 

「まだ生き残りがいたぞ!!!か、仮面ライダー!!!なんとかしてくれ!!!」

 

「くそ!!この化け物め!!正義さんやっちゃってください!!!」

 

隠れていたらしい人たちが、睦生を見つけるやいなや罵倒し始める。このくらいの事は覚悟していたが、実際に言われるとやはり苦しい。

そして正義がこちらに気づいたのか。武器を構えて近づいてくる。

 

「せ、正義さん…」

 

「まだ残党が…まぁいい。相手になってやろう」

 

「えっ…!?」

 

「ハァッ!!!!」

 

即座に片腕をシールドに変え斬撃を凌ぐ。

 

「や、やめてください!!」

 

「やめろ?君はなにを言ってるんだ?散々人々を食い物にしてそれでやめろ?ふざけるのも大概にしろ!!!」

 

「そ、そんな!!」

 

後ろに回り込まれ、背中を切りつけられる。更に回し蹴りをくらい、バランスを崩し倒れてしまう。

 

「いいぞジャスティス!!!」

 

「そのまま決めちまえ!!!」

 

ドライバーのレバーを押し込み、高く飛び上がる。

 

【 ジャスティフィニッシャー!!!!! 】

 

眩い光を纏った蹴りを睦生に浴びせる。しかしその瞬間、睦生は急所を避け、大きく吹き飛ぶ。

 

「外したか…!!」

 

「かはっ…!!?」

 

さすがジャスティスのキックだ。急所を外したものの、ダメージが大きい。立ち上がることができない。

 

「よく避けたね。だけど…これで終わりだ…!!」

 

「くっ…!!」

 

正義がとどめを刺そうと、近づいてきた次の瞬間。鋭利な刃がついた触手のように伸びた何かが、正義を突き刺し、壁に激突させる。

 

「ぐっ…!!なんだと…!?」

 

それから伸びる触手は睦生に巻きつき、そのまま連れて行ってしまった…。

 

「あれは……新たなアンチバイツか……」

 

変身を解除しながら、あとは追わず人々の安否を確認しに行く。

 

 

 

 

 

 

 

---------------

 

「あなたは一体…」

 

「ままっ、お座りくださいよ。ここならだーれも来やしませんから」

 

見た目はアンチバイツ。しかもユニクだ。先ほどの触手はどうやら鞭のようである。ヴァイザーが言っていた。

 

「あの…さっきはなぜ助けてくれたんですか?」

 

「いや、仲間を助けるのは当然のことですわ。アンチバイツはみんなフレンドですからね」

 

「………」

---『ウリープ』か。懐かしいな。

「知り合い?」

---まぁな。まさか寄生してたとはな。

 

「あれ?今ヴァイザーと話してたんですか?懐かしいですなヴァイザー」

 

「あ、はい…」

 

「いやー寄生した人間が、まさかの死ぬ間際だったもんでほんと焦りましたよ。ま、今は完全に自分が主導権、握ってるもんであれですけど。そうでもしなきゃこの人間死んでしまってましたからね」

 

「……今その人は生きてるんですか…?」

 

「生きてなきゃ寄生した自分が死んじまいますからね。しかしね。この人間の病気が相当重かったらしくて、再生させようにもその病気すら再生させちまって、治すどころか一定のところ彷徨ってる感じになっちまってるんですな」

 

「あー…」

---おいこいつの口止めろ。このままだと永遠に話し続けるぞ。

「あ、あのウリープさん」

 

「あれ?自分の名前ご存知ですか?そういや自己紹介まだでしたね。 自分ウリープ言うんですわ。よろしくお願いしますな。まぁヴァイザーから色々聞いてるとは思うんですけど、自分は戦闘は向いてないタチでして。あの仮面ライダーって人間と一対一でやり合ったらもうボコボコにされますわ」

 

---おいこいつの口止めろ。喉潰せ。

「まぁまぁ…」

 

「……そういやそのコアいつまで持っとるんですかい?」

 

「え?あ、これは…」

 

「さっさと食べてやってくださいよ。その見るも無残な姿でぷらぷらさせとくのも、命奪ったこっち側はマナー違反ってやつですわ」

 

「は、はい」

 

コアを喰らう。実感はないが確実にハンメアーの力はついてきている。

 

「いい食いっぷりですな。……さて、まぁ自分があんたさんをここに連れてきた理由なんですがね」

 

「なんですか…?」

 

「実はですね……この人間、前に死にたい言うてたんですね」

 

「死にたい?」

 

「もういいらしいんですわ。本来なら自分は死んじまってるもんだから。このまま生かされるのは嫌だ言うんですわ」

 

「………」

 

「……あんたさん。噂によれば寄生された人間と自分を引き剥がすことができるって聞いたんですが…」

 

「できますよけど…そうすれば…」

 

「分かってます。自分は場所がなくなりますわ…ただ、あんたさん所に入れば別ですわ」

 

「まさか…!」

 

「自分を喰ってください。……もう自分はこの人間を生かすどころか、苦しめるのはどうも気が引けるんですわ」

 

「そしたら結局あなたもその人も…!!」

 

「分かってますわ…ただこの人間は早く楽になりたい言うてます。……自分もこの場所からそれ相応の人物を探し出せる保証もありません」

 

「ウリープさん…」

 

「ま、ヴァイザーになら食われてもいい思うてましたよ。ははははっ!!」

 

「………」

 

「さてさて、そろそろやってくださいな。自分は準備できてますから」

 

---シエリドと仲良かったな…こいつ…

「ん…?」

---さっさと喰うぞ。続けざまだ。力が更に倍増するぞ。

「いいんだね…」

---覚悟決めたやつをそのままにするのも、そいつの名誉を傷つけることになる。うだうだ言うな。やれ。

「…うん…」

 

「ありがとうな……あんたさんは良い人ですわ」

 

良い人…。なのだろうか。人間を守ると誓って今日まで戦って来たが、何故だろう。アンチバイツという種族も守るべき対象ではないだろうかと思ってしまう。話が通じるアンチバイツだっていた。争う必要があるのか。

睦生は喰らった。わからなかった。苦しかった。ただやけに目の前が霞んで、味がしょっぱかった。

 

その場所を出ると、すでに真っ暗だ。冷たい風が吹く。

 

「ヴァイザー…」

 

---なんだ?

 

「僕は何してるのかな…?」

 

---さぁな。

 

「…ごめん。帰ろっか」

 

---そうだな。

 

袖で目元をこする。暗い夜道を歩きながら、ゆっくり自宅へ帰って行く……。




良いアンチバイツだっているんだゾ。

毎回投稿時間ガバガバだけど大丈夫だって安心しろよぉ!

あ、そうだ。もうすぐフォーエバー始まるから泣く準備して…見ようね!!上映中はマナーを守って楽しく…見ようね!!生きようね!!
という事で次回もよろしくお願いさしすせそ。


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EP08 天誅の色

それじゃあ早速小説の方、入らさせていただきますので。
フォーエバー…よかったね!!二回も男汁を出した。あ^〜たまらねぇぜ。

前回、二個も能力を手に入れてやったぜ。あーもうめちゃくちゃや。
急展開はいつものこと。それから1日遅れ申し訳ナス!それではどうぞご覧ください。


「睦生〜朝ご飯よ〜」

 

「あーはいはい」

 

「よし、来たな。…いただきます」

 

父の睦吾郎と母の弥生。そしてその息子の睦生。ごく一般的な3人家族だった。

ただ1人。息子の睦生はあの日から何もかも変わってしまった。怪人を喰らい続ける怪人となり、日夜人々を守る為、アンチバイツと呼ばれる寄生生物と戦っている。しかしそのアンチバイツは宇宙から来た生物だとシエリドが話していた。ヴァイザーはあれ以降も何も言わない。本当に何を隠しているのだろうか。

 

「あんた最近、独り言多いわね」

 

「え?…そう?」

 

「そうよ。たまに部屋でブツブツなんか言ってるじゃない。画面の向こうの子にでも話しかけてたのかしら?」

 

「いやいや待ってよ!そういうの別にしてないから!」

 

「趣味は人それぞれだしね」

 

「僕、彼女いたよ!?」

 

「それとこれとは別でしょ?」

 

「あ、そっかぁ…じゃなくて!」

 

ゲラゲラと母と笑っていると、それを聞いて笑いながら父がテレビを点ける。

その途端に、父から笑顔が消える。何やらニュース速報のようだが…

 

「おいなんなんだこれ…」

 

「ん?どうしたの父さ……っ!?」

 

かなりの大きさのビルが亀裂が入って行き、やがて崩れ始めている。これは生放送のようだ。その近くにいるリポーターがこの光景について何か言っていた。

 

〈現場からは以上で…〉

 

〈おいなんだあれ!?〉

 

〈あ、あれは!?…鳥?〉

 

〈いや違う。コウモリか…?〉

 

〈見ろ!!でかいぞ!!!〉

 

鳥でもコウモリでもない。あれは…

 

「アンチバイツだ…!!」

 

「え…!?」

 

「む、睦生どうした…?」

 

「あ、いやぁ… …ちょっと出かけるね」

 

「え?まだご飯途中でしょ?」

 

「すぐ戻るから!!」

 

「出てっちゃった…」

 

「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

---------------

 

現場に近づくにつれ人々の叫び声が聞こえてくる。周りにアンチバイツが溢れ、人間を食っている。すぐさま怪人態となり、アンチバイツを片付けて行く。すると微かにうめき声が崩れたビルの隙間から聞こえた。よく見ると人が挟まれており身動きが取れないようだ。

 

「大丈夫ですか!?」

 

「ひ、ひぃぃぃ!?」

 

「…ですよね……よいしょ!」

 

瓦礫を軽々と投げ飛ばし、挟まっていた人を助け出す。ただ脚を骨折しているようで動けないらしい。叫び続ける彼を掴み上げ安全な場所まで運ぶ。

他も同様に徐々に助け出して行く。アンチバイツを避けながら、最後の1人を助け出そうとすると上空から甲高い声が辺りに響き渡る。

 

「ん?」

 

「ヴァイザァァァァァァァッッッッッ!!!!!」

 

「なっ…!?」

 

腕全体が翼になっている。まさしくコウモリのように。飛ぶ事が出来るアンチバイツ。ユニクだ。最後の1人を抱え、凄まじい速さで逃げる。今やり合うのはまずい。この人を危険な目に合わせてしまう。しかしこのユニク速い。筋肉を倍加させ、更にスピードを上げるが追いつかれる。

抱えていた人を地上に降ろし、片腕を剣に変え迎え撃つ。

 

「ハァッ!!!」

 

「遅いねぇ…」

 

「はやっ…!?」

 

完全に当たったと思ったが、スレスレのところを躱された。今度は爪に、そして筋肉倍加とスピード重視の攻撃を次々と行うが、全て避けられた。

 

「どうなってるんだこれ…!」

---『ワンガ』か…こいつここまで力を付けていたか。

 

「ムスクルの能力を使ってもこの程度なのかぁ?ユニク結構食らってるくせにこれかよ…期待外れ過ぎるねぇ」

 

「なんだと…っ!!」

 

「お前弱すぎ」

 

「…っ!!」

 

睦生の周りを飛び回り、切り裂いて行く。かまいたちのように体に傷が入る。盾に切り替え、防ごうと試みるがその攻撃を全て防ぐことができない。ここに来て盾の弱点が垣間見える。

 

「くそっ!!……っっ!!」

 

「ほらほらしっかりガードしないと死んじゃうよぉ?」

 

「…っ!!なら!!」

 

盾から形状変化する。そして伸ばす。

 

「ん?いやな…え?」

 

三又になった鋭利な先端がワンガを追う。どこまでも伸びて行く。避けるがその避けた先に鋭利な刃が現れる。そしてそれを一気に自分の元へ戻すと、伸びた鞭が一気に縮まり、ワンガを絡める。逃げようとするが隙間が無くなり、動けば動くほど締まって行く。

 

「おっとこれは…!!」

 

「オラァァァ!!!」

 

更に引き寄せ、力を込めた拳でワンガの顔面を殴る。鞭を開き、わざと逃す。睦生は腕を振り回すと、徐々にその範囲を広げて行く。ワンガは避けるが、その不規則な動きにやがてハマってしまい、強烈な一撃を食らってしまう。

怯んだその隙を逃さず追撃をする。

 

「ハァァァァァッッッ!!!」

 

何発を叩き込み、腹部に鞭を貫通させ地面に叩きつける。

流石にダメージが大きかったか、立ち上がれそうにないでいる。ハンマーに切り替え、自分を軸に回り始める。

 

「これで…終わりだぁぁぁぁ!!!」

 

「くそっ…!!」

 

悔しそうに地面を殴る。しかし何か妙であった。先ほどの態度とまるで違う。あまり深く考えず、ワンガにこの一撃をぶつけることに集中する。

ワンガがニヤリと笑ったように見えた。いや笑っている。回転を急に止めることはできない。そのまま行くしかない。更に回転速度をあげ、一撃を叩き込もうとする。

 

「そのまま鞭なら良かったものを…バカだねぇ…」

 

「なに?……っ!?」

 

急に飛び立つ。そして睦生が作り出した渦の中へ入り、回転と同じ方向に周り始める。それも凄まじいスピードで。完全に止まらなくなってしまった。

 

「お前…!!!」

---俺たちを利用して周りを巻き込むつもりか…!!

 

「くくくっ…ホントあれだけでやられるわけないでしょ?…さ、人間共巻き込んで一生悔やみなぁ」

 

「くそ!!なんで戻せないんだ!!」

---遠心力で細胞が動かせない!!無理だ!!

「どうすれば…!!」

 

「おいなんだあの竜巻…!!」

「こっちに向かってきてるぞ!!」

「逃げろ!!逃げろ!!」

 

もうだめだ。どこかで正義の名を叫んだ。今、頼れる人は彼しかいないのだから。

 

「全く。お前は最後で詰めが甘過ぎる」

 

【 ジャスティシューティング!! 】

 

光を纏ったエネルギー弾が睦生の足元を捉える。バランスを崩し、間一髪のところで止まる。

 

「正義さん…!!」

 

「話は後だ…また雑魚処理させられた俺の身にもなれ」

 

「雑魚処理…?」

 

「お前がやった奴らは一部だ。まだありえないほどいたぞ。お前がこのユニクとやり合ってる間に何人襲われたと思ったんだ?」

 

「す、すみません…」

 

「…ちっ…まぁこいつが例の事件の犯人なのは確信した」

 

「例の事件って?」

 

なにも答えずワンガの方を向き、銃口を向ける。ワンガは笑う。当てられるわけないだろ?とでも言っているようだった。

 

「例の事件ってそれはあれかねぇ?人間1万人行方不明ってやつかねぇ?」

 

「やっぱりお前だったか」

 

「ま、人間だけじゃこんなに強くはならないけど、共食いってこともあるしぃ」

 

「くそやろうだな」

 

「そんなこと言うなよ。悲しいだろ?」

 

「ぶっ殺してやるよ」

 

「やってみなよぉ」

 

銃を乱射するも、先程よりスピードが増している気がする。まだ本領を発揮してないとでも言うのだろうか。

 

「ほらぁしっかり狙わないと当たらない」

 

「くそが!!」

 

銃弾を避けながら正義に近づいて行き、すれ違いざまに足を鉤爪のようにし、正義を掴み上げ、そのまま空高く舞い上がる。必死に引き剥がそうとしてはいるが、その力は自分たちの想像している以上にあるようだ。

そのまま急降下し、睦生に接触させる。もし彼が通常のアンチバイツならひとたまりもない衝撃が体中を駆け巡る。

 

「どうしてこんな力を…!!強すぎる…!!」

---ワンガの野郎はユニクの中でもトップの実力を持つ。それも俺たちが今まで喰ってきたのも含めても奴に勝てるかどうかだ。

「そんな…じゃ、じゃあ対策法とかないの!?」

---鞭で攻める案はあるが…奴に同じ攻撃が通じるかどうかだな。

「くそっ…!!」

 

「がはっ…!……っ睦生…お前盾になれ。俺が奴をぶっ殺してやる…ぐっ…」

 

「!!む、無理ですよ!さっきの僕とぶつかった時のダメージが!!」

 

「ここに来てライダーシステムの限界が来るとはな……今のままじゃ勝てないってことか……ぐぅ…」

 

ワンガは首を回して、飽き飽きしたようにため息をこぼす。

 

「終わった?終わったな。じゃあこれで終わりだからねぇ?」

 

「…っ!!」

 

「さよな……あぎゃっっ!!!!??」

 

「え……?」

 

ワンガの横腹に風穴が開く。なにが貫いたのか。理解できないようだった。目を丸くし、ただ目の前の出来事に驚いている。

睦生は妙な気配に気づく。ここから数km離れた所から、何者かが狙撃を行なった。微かに弾を打ち出す音が聞こえたから、と言う理由もあるが、何より今、目の前にその撃ったアンチバイツがいるのだから。

 

「…………」

 

「銃の…ユニク…?」

 

片腕が銃と化しており、もう一本は銃身の部分に装着されている。そしてその銃口をワンガに向け撃ち放つ。

 

「ぐっ!!」

 

避けることができない弾速。これにはたまらず瓦礫を巻き上げ、視界を殺し、そのまま逃げていった。銃のアンチバイツはビルの屋上に着地するとこちらを見る。

 

「あなたは…?」

 

「…………」

 

特に何もすることなく何処かへ跳んで行ってしまった。そして違和感を覚える。あのユニクの中の声が聞こえないのだ。人の声が全くと言っていいほど。しかし不思議と自分たちと同じような気がした。

 

「…あ!ま、正義さん!!大丈夫ですか!!?」

 

「触るな…!!こんなものをなんて事はない…」

 

「で、でも!!」

 

すると正義は睦生の首を掴み、壁にぶつける。

 

「いいか!!?俺はお前に同情される覚えはない!!本来ならお前をここで殺しているところだ!!」

 

「……それでもあなたを助けたい!!殺される前に!!」

 

「……意味がわからねぇ……くそ!!」

 

首から手を離し、ふらふらとしながらその場を後にしてしまう。きっと悔しかったんだろう。最近になってユニクの強さは増した気がする。正義は一人で今のところ勝つことができていない。むしろ手が出せないと言った方が正しいのだろうか。睦生との差、ユニクとの差が開く一方で彼の中で、悔しさという感情が積もってきている。

 

「 …逃げ遅れた人がいないか見ていこう…」

 

---…あぁ。

 

「あのユニク……なんか変だったよね…」

 

---……多分だが俺たちと同じだろうな。

 

「僕もそう思ってた」

 

---奴に会う必要があるな

 

「喰うの…?」

 

---場合によってはな。むしろその方がワンガに勝てる。

 

「……そっか。だけど会った方がいいとは僕も思うよ」

 

---なら一度帰るぞ。とにかくこの場を離れる。

 

「うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

------------------

 

「ただいま〜…」

 

「ちょっと睦生!!いきなりどこ出かけてたの!?心配したのよ!?」

 

「ご、ごめん……居ても立っても居られなくて…」

 

「!?まさか見に行ったんじゃないでしょうね!?」

 

「…ちがっ…!!………うん…そう…」

 

「ばか!!なんでそんな危ないことするの!!巻き込まれたりしたらどうするのよ!!」

 

「ご、ごめんなさい……」

 

「全く……睦吾郎さんも帰ってこないし」

 

「父さんも?」

 

「あなたが出てってちょっとしてからね…どこ行ったのかしら」

 

するとドアが開く音がする。父が帰ってきたのだろう。

 

「おかえり父さん」

 

「あぁただいま……ふぅ……」

 

「睦吾郎さん遅かったわね…どこ行ってたの?」

 

「あーちょっとそこまで行ったら友人と会ってね。話してたら盛り上がってな」

 

「ふーん…あ、聞いて睦吾郎さん!睦生ったらね…」

 

その後、説教を長々とされた。仕方ないことだ。あんな所行けばそれは誰でも言われる。自分のような化け物は関係ないけど。

 

---睦生。

「ん?」

---お前の父親から違う奴の…アンチバイツの匂いがする。

「え…?どういうこと?」

---気のせいならいいんだがな…

「…待って…」

 

睦生は睦吾郎に近づき、少し険しい顔で「二人で話しがしたい」と父の部屋に行く。

 

「どうした睦生。急に呼び出して」

 

「父さん…変なこと言ってたらごめんね」

 

「ん?なんだ?」

 

「アンチバイツ…いるんでしょ?父さんの中に」

 

「…なにを訳の分からんことを言ってるんだ?」

 

「とぼけないで。父さんから違う奴の気配がするんだ」

 

「はぁ…ふざけるのもいい加減にしなさい」

 

「ふざけてない!!父さん……本当はなれるんでしょ?アンチバイツに」

 

「睦生…!!」

 

「銃のアンチバイツ!!」

 

「はっ……!?」

 

「やっぱり…そうだったんだね……父さん」

 

「睦生…まさか…お前が…」

 

「うん。僕もそうなんだ。あの日から…まなを失う前から……」

 

「そうか…お前もか……」

 

「父さん」

 

「なんだ…?」

 

「父さんに話したいことがあるんだ」




次回ユニク編終了だゾ。

もう年越しちゃうよ…やべーよやべーよ…
わし(53)は年越しそば結構好きなんや。当たり前だよなぁ?

ということで次回の小説でお会いしましょうまたのぉー!!!


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EP09 親子の怪人

ようこそ!私の小説へ!わーおっ!
前回も後書きで申し上げました通り、今回ユニク編最後です。

まさかの父が睦生と同じアンチバイツに!?やべーよやべーよ…

果たして、皆さんは私の調教(小説)に耐えきる事ができるでしょうか。それではどうぞご覧ください。


「話したい事?」

 

「うん」

 

父に全てを話した。今まで自分が行ってきた事、自分の中にいる者の事、そして今からすべき事を。

睦吾郎は睦生の話を1つも余す事なく聞いた。それから目に涙を浮かべ睦生を優しく抱きしめる。息子が自分の命を顧みず戦い、その事を何も知らずに過ごしてきたのが腹立たしかった。

 

「そうか…そうか…何もしてやらなくてごめんな…」

 

「ううん。僕がこうして今まで戦ってこれたのも家族…父さん。母さんのおかげだよ」

 

「本当に…立派になったな睦生」

 

「…父さん…もう一ついいかな?」

 

「ん?どうした?」

 

「…僕と一緒にあのユニクを倒して欲しいんだ」

 

「……」

 

「無理にとは言わないよ。ただ…僕の力だけじゃあいつに勝てないかもしれない。父さんの力が必要なんだ。その銃の能力が…」

 

「…………」

 

睦吾郎はしばらく黙った。ただ睦生を見据え続ける。そして一つため息を吐くと、ようやく口を開く。

 

「自分の息子が困っているのに断れるわけないだろ?任せろ。俺も戦う」

 

「父さん……!!」

 

「まぁお前の方が経験豊富だからな。俺も役に立つかわからないが…」

 

「全力でカバーするよ」

 

「…あぁ。被害が大きくなる前に倒さなきゃな…」

 

「うん…ねぇ父さん。父さんはいつ寄生されたの?」

 

「あぁいつだったかな…公園のベンチに座った時…からか?俺の中にいるやつはあまり喋らないから詳しいことはわからん」

 

「ふーん…」

 

「『グンパー』…って言ったか?確か名前が…」

 

「グンパー…」

---聞いた事ないな…。だがまぁ協力者が増えた。明日に備えて準備しろ。ワンガ喰うぞ。

「…珍しいね」

---あ?

「…父さんのこと食えって言うのかと思った」

 

「え…?」

 

「あ!?いや違うよ!?なにもしないからね!?」

 

「あ、あぁ……お前の中のヴァイザーとか言うやつか。そんな事を言うのか…」

 

「な、なにも言ってないよ!?ただなんかヴァイザーなら言うかなー…って…はははっ…」

---…喰う気がないだけだ。

「…え?」

---…何故かはわからないがな。喰う気が起きない。それだけだ。

「…??」

 

「とりあえず…明日に備えるか。……頑張ろうな睦生」

 

「…うん!父さん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

------------------

 

決戦当日。ワンガは傷が癒え、また人々を襲っている。次々に建物を破壊し人を貪り食う。

もうそんな事はさせない。

 

「行くよ…父さん…ヴァイザー」

 

「あぁ…」

 

二人は怪人態となり、ビルの屋上からワンガ見下ろす。

 

「僕があいつの隙を作るよ。父さんはその隙にお願い」

 

「あぁ。任せろ………睦生」

 

「なに?」

 

「……いや、なんでもない。やるぞ!!」

 

「え、あ、うん!!」

 

睦生は片腕を鞭に切り替え、ワンガを囲むように伸ばす。それに気づいたワンガは、そのわずかな隙間を異常な速さですり抜ける。昨日までとは全く違う。動きがより俊敏になっていた。

 

「同じのが2度食らうとでも?」

 

「まだまだ!!」

 

筋肉を倍加させ、距離を一気に縮める。殴る蹴ると攻撃を繰り出すが、軽々と避け、上空へ舞い上がる。そして急降下し、睦生の周りを高速で周る。速度が上がってくると、徐々に体に傷が入って行く。

 

「っ…!!またか…!!!」

 

「俺に同じ攻撃は効かない。けどお前はどうかねぇ?」

 

「なに!?」

 

「ま、俺の攻撃は精度も威力も前とは違うから」

 

このままでは父が攻撃できない。一瞬でもその隙が作れればいい。なら自分はこうする。自分の再生能力だからできることを。

左腕を盾に変え、足を大きく開き踏ん張る。それから盾をワンガの正面に当たるような位置どりをする。

 

「無駄よぉ?なに考えてるか知らないけどそんなの当たるわけが…」

 

「その自信はどこからくるのか……な!!!」

 

盾を振るうようにワンガはぶつけようとするが、寸前のところで避けられる。

 

「やっぱりな…」

 

そう呟き睦生に一発喰らわせようとするが右腕で掴まれる。掴んだ瞬間すぐさま筋肉を倍加し、離さないよう渾身の力で掴み上げる。

 

「な、なんだと…!?」

 

「盾を当たるギリギリのところに持って行ってもどうせ避けられる事は分かってた。だけどお前はその瞬間スピードを落とす。そのわずかな隙が命取りだった」

 

「くそっ…!!」

 

銃声が聞こえる。ワンガに三発の銃弾が撃ち込まれる。

 

「かはっ…!?」

 

「よし!!…ハァァァァァッ!!!」

 

殴ろうとするが筋肉倍加を振り払い、上空へ逃げる。高速移動を行い、自分ではなく別の方向へと飛んで行く。あの方角は…

 

「父さん!!」

 

「俺を本気にさせたなぁ…!!!!」

 

足を鉤爪のようにし、睦吾郎を掴み上げ、先ほどよりも比べ物にならないスピードで飛行する。それから高度を下げ、地面を引きずり回す。

 

「ぐああぁぁぁぁっ!!」

 

「くそっ…!!」

 

ワンガを追うもののその速さについていけず、立ち止まってしまう。筋肉倍加のスピードよりも速いとなるとどうすることもできない。

 

「この怪物が!!!」

 

「ん……っが!?こいつ!!」

 

近距離で銃を乱射しワンガの翼に穴を開ける。ゆらゆらとしながらもスピードを落とさず、そのまま壁に叩きつける。

 

「かはっ!?」

 

「このやろうがよぉ…っ!!?」

 

素早く翼を再生させ、飛びながら鉤爪で切りつける。途中えぐるように鉤爪部分を閉じると、激しい痛みが睦吾郎を襲う。

 

「ぐあぁぁぁぁぁっっっっ!!!!!」

 

「やってくれたねぇ??えぇ…!!!?」

 

睦生は両手を爪に変え、翼を斬りつける。怯んだその隙に、その体を突き刺し投げ飛ばす。それから睦吾郎の元へ駆け寄る。

 

「父さん大丈夫!?」

 

「ハァ…ハァ…あ、あぁ…」

 

「よかった…」

 

「こ、このくらい…ハァ…屁でもない」

 

「…父さん…?」

 

「ん…?」

 

「その能力……もしかしてだけど自分の肉体使うって事はないよね…?」

 

「なに…?」

 

「その疲れ具合…それに体も少しだけど軽くなってる気がするんだ。……それが銃の能力でしょ?」

 

「…………あぁ。弾は自分自身。全く体に良くないな…」

 

「そんな…!!なんで…」

 

「これ言ったら…ハァ…ハァ…お前は俺を止めるだろうからな……それが嫌だった…」

 

「父さん…」

 

その瞬間、背後からワンガが猛スピード突っ込んできた。気づいた時には対処しきれない距離だったが、しかしワンガは吹き飛ばされた。睦吾郎が撃ち抜いていた。

 

「ごめん父さん…ありがとう」

 

「俺の事は気にするな…!!行け睦生!!」

 

「うん!!!」

 

今まで手に入れた能力をフルに使い、ワンガに対抗する。そのスピードに完全について行くことはできないが、ある程度までは体が慣れてきた。お互い一歩も譲らず体力を消耗して行った。

 

「ハァ…ハァ…」

 

「中々…大した奴じゃないのぉ……」

 

「うおぉぉぉぉぉぉっっっっっっ!!!!!」

 

「ちっ…!!」

 

剣にした腕で鉤爪を切り離す。怯むことなく、ワンガのもう一方の鉤爪が睦月の腕に突き刺さり、そのまま引き千切る。すかさず睦生を地面に何度も叩きつける。

しかし睦吾郎が横から銃で撃ち抜く。この一発はコアの角に当たったらしく、今まで出したことがない悲鳴をあげる。睦生はその隙を逃さずにワンガの首をへし折るように蹴りを放つ。

それから辺りに響き渡るほどの悲鳴をあげ、しばらくのたうちまわったが、次第に動きが鈍くなって行き、しまいにはピクリとも動かなくなってしまった。

 

「……終わった……?」

 

「ハァハァ…らしいな…ふぅ…」

 

「父さん!!!!?」

 

「あ、あぁ大丈夫だ。…前もこうなってな。アンチバイツを不本意だが食べたら治った……ははっ。ホントに怪人になったな…」

 

「全く…あーよかった…」

 

「しかし睦生…強くなったな…」

 

「ありがとう」

 

「ん?」

 

「ただのお礼だよ」

 

「別にいいのにな…」

 

「まぁいいじゃん」

 

「なんだそれは………っ!!!?睦生!!気をつけろ!!」

 

「え?」

 

父の指差す先にワンガの姿がなかった。どうやらまだ動けたらしい。すぐさま周囲の警戒へ入る。

 

「一体…どこに…」

 

「どこだ…」

 

静まり返る。羽音も聞こえない。神経を研ぎ澄ませ、その時を待つ。

すると上空から空を掻っ切るような音が聞こえる。凄まじい速さでそれは飛んできた。

 

「はやっ…!!?」

 

睦生は腹をえぐられた。しかし間一髪のところでコアへのダメージは避けられた。自分は避けられた。

 

 

 

 

 

自分だけが。

 

 

 

 

 

「父さん…?」

 

 

 

 

 

「あっ…っ……」

 

 

 

 

 

「父さん………父さんっっっ!!!!!」

 

父の元へ駆け寄る。コアが見えている。それに半分以上が壊れ、その半分がなくなっている。

 

「あぁぁぁ…っっ!!あぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!!」

 

「睦…生…」

 

「ごめん父さん…僕が…僕のせいだ……僕があの時…!!!!」

 

「違う…睦生…よく聞け……!!!」

 

「うぅっっ…!!ぐっ、うぅ…」

 

「いいか…?よく聞け…?……俺はもう…死ぬ……だから……!!…ゴボッ…!!」

 

睦生の手を強く握り、睦生の目を見る。そして一言。彼に対して言う。

 

 

 

「俺のコアを……喰えっ……っっっ!!!!!」

 

 

 

「そんな…!!やだ!!ねぇ父さん!!いかないで!!お願いだから!!!!!」

 

 

 

「睦生ィィィィッッッッッ!!!!!!!」

 

 

 

「…!?」

 

「頼む……あいつを…倒せ…!!」

 

「父さん…」

 

「お前は俺の子だ!!!お前ならできる!!!……っっ!!ゴホゴホッッ…!!」

 

「父さんっっ!!!!」

 

「母さんを……守ってやってくれ…………睦生………弥生………愛してるぞ………………………────────」

 

「父さん…?ねぇ……起きてよ…ねぇ!!!父さん!!!……あぁ…あぁぁぁ…………アァァァァァァァァァァァァァァッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

それからまた後ろから風を切る音が聞こえる。

 

「死にな!!?ヴァイザァァッッ!!!!!!!」

 

「……………………」

 

筋肉を倍加させ振り向き様に殴り飛ばす。強烈な一撃が脳を震わせる。

 

「ガハッ!?」

 

そして睦生は喰らう。コアを。父を。

銃に変化させる。何も言葉は発さず。ワンガを睨む。とてつもない殺意が全身から溢れで出る。

 

「武器が追加された程度だろぉ?…なぁ!!!」

 

飛び上がろうとした瞬間、顔の半分を吹き飛ばす。それでもなんとか持ちこたえ、とてつもないスピードで飛び回る。

 

「くそっ!!このスピードならどうだぁ!?」

 

「………………」

 

ゆっくりと銃口を向ける。そしてものの数秒でワンガの翼を穴だらけにする。飛行能力を失い落下するワンガの上へ跳び、そこから何度も何度も銃弾を撃ち込む。地面に背中から落ちてから更に、何発何発も打ち込んで行く。

 

すでにワンガは再起不能。死んでしまっている。

 

「………っっっ!!!!!!!!!!!!」

 

---おい睦生。そいつは死んだ。

 

「…………っっ!!!!!!」

 

---おい!!!このままだとお前が死ぬぞ!!!

 

「…………っ!!!!!!!」

 

---今ここでお前が死んだらお前の母親はどうなる?2人の家族を失うことになるんだぞ?それでもいいのか?お前はそれでいいのか?睦生!!!!!

 

「わかってるよ!!!!!……わかって…る…………うぅ…うっ…………」

 

崩れるように膝をつく。そして泣いた。側から見たらその光景はどう映るのだろうか。きっと親を亡くした可哀想な子だろうと。

彼が泣いているのは父を亡くしたからでもあるが、行き場のないこの感情をどうすることもできないことへの涙である。

 

---ん…サイレンか…ようやくお出ましだな。

 

彼は泣いた。涙が枯れ果てるまで…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

------------------

 

あれから3ヶ月が過ぎた。悲しみはなくなることはないが、今は楽しくやっている。母も最近になって笑顔を取り戻した。

 

「母さん。手伝うよ」

 

「ありがとう睦生」

 

「このくらいいいよ」

 

母にはまだ何も伝えてはいない。父は事故で死んだことになっているが、実際は自分と父はアンチバイツで、父は戦って死んでしまった。

思い出すたびに自分の責任だと感じてしまう。

 

「そろそろバイトの時間だ。行かなくちゃ」

 

「え?もう?……それじゃ行ってらっしゃい」

 

「うん。行ってきます」

 

戦うたびに大切な人を失って行く。やめたいと思う時もある。だけど僕はそれでも人を守る。この先もそうであり続ける。

ヴァイザーとともに、これからも約束を守る為に僕は戦う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ユニクはこれで全滅…という事でよろしいでしょうか?お嬢?」

 

「………………」

 

「おっとユニクはあの睦生…残りはヴァイザーだけですね」

 

「………………」

 

「我々、人工的に生み出されたアンチバイツ。『メイズ・アンチバイツ』の出番はもうありません」

 

「………………」

 

「そうですね。下等なアンチバイツどもなら、腐るほどいますが…」

 

「………………」

 

「まぁ数に入りませんね。とにかく今は彼らを抹殺するまでにございます」

 

「………………さい…………」

 

「…はい?」

 

「…………うるさい」

 

「…これは失礼致しましたお嬢……」

 

お嬢と呼ばれる女性は窓際へ行く。扉を開け空を見上げる。

 

「…………明日は……晴れるかしら」

 

「さぁどうでしょうか……明けない雨はありませんから…」

 

「…………そう…」

 

 

to be continued ──────。




これにてユニク編終了です。
次回メイズ編、開始致します。

ぬわぁぁぁぁぁん疲れたもぉぉぉぉん
きつかったすねぇ今日は、あーもうすげぇきつかったゾぉ〜

次回もお楽しみに!!終わり!!閉廷!!以上!!解散解散!!


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メイズ・アンチバイツ編
EP10 作品の凄み


メイズ編行くぞぉぉぉぉぉぉおお!!おえっ!!
LOVE TOGETHER,LOVE TOGETHER

お陰様で計11話目。うれしぃうれしぃ。お気に入り登録。これを見てくれている皆さんやりますねぇ!!(喜び

ここからメイズ編です。また新たな展開にみなさんは耐えきることができるでしょうか。それではどうぞご覧ください。


「ちっ…」

 

どこかの研究施設。薄暗い中でパソコンを眺める1人の男。彼は仮面ライダージャスティス、世偽 正義である。

 

「これだと意味がない…くそっ!!」

 

彼は今、新たなアイテムを作っている。先の戦いでユニク達に歯が立たないという現実を突きつけられ、仮面ライダージャスティスに更なる力を見出そうとしていた。

しかしそう簡単にことは進まない。イライラしつつも作業を進めていると、ドアを叩く音が聞こえる。

 

「ん…?」

 

「正義さんにお会いしたいという方が…」

 

「…通してくれ」

 

「承知しました」

 

しばらくしてまたドアを叩く音がする。正義は「どうぞ」と、言うとドアが開かれる。

 

「正義さん。お久しぶりです」

 

「お前か…何の用だ?ここにはお前の気を引くような物は置いてない」

 

「ヴァイザー」

 

「…なに?」

 

「彼ら相当な力をつけたようですね。なんでもあのワンガに勝利したとか」

 

「…わざわざ俺を笑いに来たのか?…あぁ、そうだな。あいつらはあのコウモリに勝った。そして、その能力もなにもかも…本当に腹が立つ」

 

「そうですね。実力はあなたよりもかなり上回っています」

 

「…………やはり笑いに来たか?それなら帰れ。俺は忙しいんだ」

 

「作用で。ただ『メイズ』が動き出しましたよ、と伝えに来ただけですので、これで失礼いたします」

 

「…!おい待て。メイズが動き出しただと?どういうことだ?」

 

「全く頭の悪いメイズは困ります。すぐに体が動いてしまう」

 

「そんなことはいい。どういことだ?お前らメイズは影に隠れていたはずだ。なんで今、動き始めた」

 

「…ユニクがあのヴァイザーに取り込まれた事によって、ユニクはそれ以来全く現れなくなりました。我々にとってユニクはいわばオリジナル。我々のような人口アンチバイツが勝てるはずがありません」

 

「………それで?」

 

「メイズは新たな力を手に入れました。それはユニクが成し得なかったこと。非常に効率的に力を得る事ができます。」

 

「だから一体…」

 

「無機物を力に変換できます」

 

「…っ!!?…無機物だと!?」

 

「えぇ……詳しくお話ししましょうか?」

 

「……あぁ──────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──────なんかまた出たんだって?」

 

---ユニクとは考えらないがな。俺の知っている中では全て終わったはずだ。

 

「…新しいアンチバイツってことかな…。テレビだと武器を使ってるように見えたけど…」

 

---さぁな。ただとてつもなく嫌な予感はする。油断するなよ

 

「わかってるよ」

 

アンチバイツの目撃情報は多々あるものの。ユニクのような特殊系は今の今まで現れることはなかった。

武器を使っている。形状変化するアンチバイツ。しかしユニクはヴァイザーが言った通り、もうすでに全滅はしているらしい。ヴァイザーは隠し事をよくするのであまり信用はしてないが、ユニクが出なくなったことと、この様子だと本当に知らないらしい。

翼をはためかせ空を飛びながら、急いで現場へと向かう。

 

 

------------------

 

「着いた」

 

---すでに荒らされた後か。人1人いないな。

 

「うん。ただ近くにいそう。例のアンチバイツ」

 

---罠かも知れないからな。気をつけろ

 

瓦礫まみれ、見るも無残に破壊された建物の数々。人の声は聞こえない。が、人の亡き姿はある。拳を握りしめ、爆発しそうな怒りを抑える。

 

「…ん?」

 

---何かいるな。

 

「…誰?いるんでしょ?僕はヴァイザーだ。君を止めに来た」

 

すると横にある瓦礫の陰から、この世の者ではない化け物が姿を現した。アンチバイツだがやはり何かが違う。

 

「お前か。例のヴァイザーとかいうやつは」

 

「あぁそうだ。君はアンチバイツ…だけどユニクじゃない。君からは…声が聞こえない。なにも…」

 

「声?そりゃそうだ。俺はお前らと違うからな」

 

「どういうこと…?」

 

「話すつもりは………ない!!!」

 

いきなり飛びかかり、鋭い爪で睦生の腕を引っ掻く。しかしこの程度の攻撃、今までのと比べたら擦り傷程度。右腕を剣に変え切り裂くと、筋肉を倍加させ、建物の壁へ叩きつけ、爪に変えアンチバイツの首元へ突き立てる。

 

「がはっ!?」

 

「君は一体何者なんだ?答えて。これ以上お互い傷つく必要はないはずだ」

 

「…ちっ!だから言ってるだろ?俺とお前らは違う。俺たちは……作られたアンチバイツだ」

 

「…え!?作られた!?人口的にってこと…!?」

 

「あぁそうだ。だから違うって言っただろ?そして俺たちは更に違う所がある」

 

「…?」

 

「簡単に言えば取り込んだ無機物を、一つだけだが武器にすることができる」

 

「無機物…?」

---……!?睦生避けろ!!!

 

眩い光が睦生の前を照らしたかと思うと、視界がなにも見えなくなった。

 

「ひ、光!?」

---あのやろう。光のか!!

「くっ目が…!!」

 

「俺はライトを食った。全身発光することができるのよ。さぁてやられた分やり返すか…な!!」

 

デタラメに殴られる。掴もうとするが避けられる。目には真っ白な光景が浮かび、なにも見えない。睦生は盾に変えるが、全くガードができずにいた。

 

「どうなってるんだこれ!!」

 

「くくっ!!俺の勝ちのようだな!!」

 

「ならこれだ!!」

 

鞭に変換させると、回転をし始め、徐々に鞭を伸ばして行く。次第にそのスピードは上がり、避けきれず鞭があたり吹き飛ばされる。回転を止めると丁度目も見えるようになっていた。

 

「よし…これで!!」

 

「く、くそぉ…!!」

 

「悪いけど…喰わせてもらうよ!!」

 

相手に鞭を絡め引き寄せる。首を掴むと口を開く。このアンチバイツを取り込もうとする。

バイトはヴァイザーの力。相手の能力を奪い取ることができる。いつもならそのはずだった。しかし、今回はその能力どころか。体がそれを受け付けない。

 

「うっ…!!ゲホッゲホッ…!!どうして…」

 

「だーかーらー…言ったでしょ?俺はお前らとは違うんだって」

 

「なに…!?」

 

「俺らはな…」

 

アンチバイツが口を開こうとすると、後ろから何かが現れた。人の姿をしているが全くと言っていいほど普通ではない。

アンチバイツの横まで来ると睦生をじっと見つめる。

 

「お、お嬢……」

 

「邪魔」

 

「は、え…?」

 

「あっち行って」

 

「は、はい…」

 

女性だ。自分と同じくらいの。とても冷たい表情でどことなく悲しそうなきがする。

 

「あなたがヴァイザーね…」

 

「君は一体誰なの…?」

 

「……私はメイズ・アンチバイツに寄生された。人ではないものよ」

 

「メイズ…アンチバイツ…?それがこのアンチバイツの…」

 

「あなたも寄生されてるけど…私と同じで自我は保っているようね」

 

「メイズって何だ…人口アンチバイツって一体何なんだ!!」

 

「その名の通り作られたアンチバイツ。普通のアンチバイツと同じで人に寄生するけど、その場合、人は死んでしまうわ。完全に自分の体にすることができるの」

 

「え…!?」

 

「あなた達のように有機物は食べられない。無機物しか食べられないの。そこら辺に沢山落ちてる瓦礫。あれも私たちの食べ物…ほんと最悪よ…」

 

「な、何でそんなものが!!?人口って…アンチバイツにはアンチバイツで対抗でもしようとしたのか…いやでもそれじゃ…!!」

 

「まぁ何はともあれ、私たちは敵同士なことに変わりないわ」

 

突然、彼女は右腕をチェーンソーに変え、睦生に突き立てる。

 

「そんな…敵同士って…君は自我があるんだろ?なら何で!!見てみてよ!!周りにはこんな大勢の人たちが命を落としているんだ!!何も思わないの!?」

 

「思わない。むしろ…」

 

チェーンソーを振り上げ、切りつける。それを剣で受け止める。

 

「イライラする」

 

「ぐっ!!」

 

素早い動きで無情に攻撃を繰り返す。睦生と同等。いやそれ以上の実力がある。更に刀に変え、素早く切りつける。

 

「なに!?」

 

「私もあなたと同じで一つだけじゃないの」

 

「そんな…!!」

 

鎌に切り替え、引くようにして睦生を切りつけ、今度は槍に変化させ貫き、そのまま投げ飛ばすと、すぐさま弓の形状で矢を放ち睦生を射抜く。

 

「はぁはぁ…こんなことって…!!」

---あの女に寄生したやつは中々の成功作らしいな。強さがそこらのアンチバイツと桁違いだ。それに睦生。お前より遥かに強い。

 

「どうしたの?ヴァイザーってこの程度?」

 

「くそっ!!」

 

筋肉を倍加させ、一瞬で懐へ行き、剣に切り替える。女は左腕を斧に変え、剣での一撃を受け止める。

 

「私を喰おうと思ってるかは知らないけど。あなたは普通の生物。無機物なんか取り込めないわ。だから……これで終わりよ」

 

「まだ…まだぁっ!!!!」

 

「…っ!!」

 

押し返すと爪で縦横無尽に引っ掻きまくる。相手は無表情のまま攻撃を受け止めている。更にスピードを上げるが、完全にこちらの動きは読まれているようだ。

 

「お嬢!!助太刀しますぜ!!」

 

「いらない邪魔」

 

その隙をつき、銃に変え、撃ち抜こうとするも、弾丸が放たれる前に銃が蹴りあげられる。目の前に物凄いスピードで誰かが乱入してきた。

どことなくバイクに似ているその見た目。

 

「またメイズか!!」

 

「お嬢。ご無事で」

 

「えぇ。こいつが話しかけなければ、こうはならなかったんだけど」

 

その女はそういうと、光るメイズに指を指す。それからバイクメイズはそのメイズに歩み寄る。右腕に拳を作る。

 

「おい」

 

「は、はい」

 

「お嬢の邪魔をするな」

 

「ひぃ!!?」

 

拳がメイズの腹を突き破る。殺してしまった。

睦生に向き直ると、ゆっくり歩み寄ってくる。その目は非常に鋭い。全く笑っていないことがわかる。

 

「お前…仲間じゃないのか!!」

 

「仲間?これはただの光る何か…それにお嬢の邪魔となるものは退ける。それが私の役目」

 

「これがメイズの……やり方かよ!!」

 

「そうこれがメイズ。有機物しか食えないお前らとは違う」

 

「くそっ…!!」

---逃げるぞ睦生。こいつはやばい。

「でも…」

---レベルが違う。急げ!!!

 

「中のものと会話をしている暇ない」

 

体をバイクにし、凄まじいスピードで睦生に体当たりを食らわす。

 

「ぐわぁぁぁぁぁっっ!!!!」

 

大きく吹き飛ばされ、壁を何個も割りながら最後当たった壁で止まる。

バイクのエンジン音のようなものが聞こえる。きっと追撃してくるに違いない。そう思うとハンマーに変え、思いっきり振り上げる。

 

「ん…?」

 

「ハァッッ!!!!」

 

地面にハンマーを打ち付けると、地面が揺れ、真っ二つに割れる。女とバイクメイズはバランスを崩しそうになるが、体制をすぐさま立て直すも、その時すでに睦生はいなくなっていた。

 

「…逃してしまいましたか…」

 

「次があるから」

 

「ん?お嬢どちらへ?」

 

「帰る…あなたはどうするの?」

 

「私はあのモノを探してからすぐに…」

 

「そう」

 

お嬢と呼ばれるその女性は闇に紛れ消えていった。残ったメイズはバイクに変化し、周囲を見渡そうと走り出した。

 

 

メイズ・アンチバイツ。それは人工的に作られたアンチバイツ。

その強さの前に睦生とヴァイザー。彼らはどう立ち向かうのか。




お待たせ致しました。申し訳ないです……
頑張って投稿できるようにするゾ〜

次回何かあると思うのでお楽しみに!ほんじゃまたのぉ〜


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EP11 強化の正義

玉がはみ出ちゃってる(誤字
投稿日は土曜だから見とけよ見とけよ〜…見て(懇願

タイトルで察しましょう今回のお話を。
それではどうぞご覧ください。


「母さん」

 

「ん?」

 

悲しそうな表情でこちらを見る。やはり立ち直れていないらしい。それもそうだろう。大切な人を失ってしまったのだから。

他人にとって興味のない話だ。人の死なんて。ただその人の一番隣にいた自分たちは違う。特に母はずっと一緒にいた。睦生が生まれるずっと前から。

 

「いやその……」

 

「なによ?」

 

「やっぱなんでもない」

 

「なにそれ」

 

母は笑顔になった。しかしその目は赤くなっている。また泣いていたのだろう。その顔を見るたびに、睦生は胸が締め付けられた。自分があの日しっかりしていればこんな事にはならなかったと。

そして彼は食べてしまった。殺してしまった。自分の父親を…。

 

「母さん」

 

「だからなに?」

 

「ごめんね…」

 

「はぁ?なに謝ってるのよ。あなた私になんかしたっけ?…まぁ苦労はかけられたかな」

 

「ううんなんでもない。それじゃ僕は出るよ」

 

「行ってらっしゃい」

 

「行ってきます」

 

アンチバイツは許さない。ただあのメイズというユニクとまた違う種をどうするかが先だ。睦生は街へ出る。今日もアンチバイツを止めるために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-------------------

 

「メイズと雑魚か…ちっ。めんどくせー事しやがってメイズの奴ら」

 

バイクのスピードを上げ現場へ向かう正義。ベルトを装着しアイテムを差し込んで行く。

 

「変身!!」

 

眩い光から仮面ライダージャスティスが現れる。前方に目をやると、街から黒煙が上がっているのが見える。派手に暴れているらしい。

 

「好き勝手しやがって」

 

現場に着きバイクから降りると、ジャスティスは黒煙の中へ入って行く。そこを抜けると、瓦礫の山が辺り一面にできているのが見てとれる。

周囲に警戒し銃を構える。なにも聞こえないのが不気味ではあるが、アンチバイツもバカじゃない。一人一人が知能を持ち、人並み外れた力を持つ。相手はジャスティス。どこかに隠れてこちらの様子でも伺っているのだろう。

 

「………」

 

後ろで瓦礫が崩れる音がした。すぐさま振り向きそこへ銃弾を放つが、瓦礫に当たると同時に、背後よりアンチバイツが大勢姿を見せ攻撃を仕掛けてきた。

 

「やっぱり隠れてたか。俺相手に強襲か。雑魚の分際で随分と思い切ったことしてくるな!!」

 

今度は剣に切り替えると、一番近いアンチバイツを、剣を押しつけるようにして他のアンチバイツに弾き飛ばす。

すかさず剣で近づいてきたアンチバイツを巧みにさばき切りつけて行く。堪らず後退しジャスティスから距離を置く。

 

「こんなもんか?まぁこうなることは想定内だ……根元のやつはどこだ。いるんだったらとっとと出てこい」

 

「はいはい……ごほん。お呼びでしょうかぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっ!!!!!」

 

「ぐっ…!!?」

 

とてつもない音量。いや、声量が正義の耳を震わせる。すぐに耳を抑えるもあまりの声量に今度は衝撃波が起こり、耐えられず吹き飛ばされる。

周りのアンチバイツ達は苦しみもがき、やがて破裂する者もいた。正義は態勢を立て直し剣を構える。

 

「なんて声だユニク…じゃねーな。メイズだったか。お前ら早速暴れてるけどな。こっちの仕事を増やされても困るんだよ」

 

「私はメイズの『ミゲフォン』でございます。と、あなたの事情なんぞに興味はありませんが、あなたがジャスティスですね」

 

礼儀正しく頭を下げてはいるが、こいつの中身は相当黒いな。腐っているといった方が正しい。よくある性格が捻じ曲がってるクソ野郎だな。

正義は剣先をミゲフォンに向け睨みつける。

 

「分かってるくせに一々言うんじゃねーよ。とっととかかってこい」

 

「やれやれこれだから頭の悪い人間は困ります」

 

「あ?」

 

「今あなたが戦おうとしている相手は、メイズの中でもエリート中のエリートです。人工的に生み出された中で唯一、他のメイズとは一味を二味も三味も違う個体。いや成功例とでも言いましょう。その1人が私ミゲフォンでございます」

 

「んなことどーでもいいんだよ。早く来い。来ないなら…こっちから仕掛けさせてもらう!!」

 

正義は駆け出すと背後を取るように旋回し、目にも留まらぬ速さで切りつける。が、片手でその一太刀は簡単に抑えられてしまった。

 

「くそ!!」

 

振り払おうとするも、力ではミゲフォンの方が上でありビクともしない。すると、剣を掴んだまま口を大きく開ける。

何かが来る…!!直感で察し、剣を離して横へ飛ぶ。

先程と同じように、耳をつんざくほどの声が辺りに響き渡る。周りには衝撃波が発生し、正義はおろか周りのものまで吹き飛ばす。真正面に立っていたアンチバイツ達は風船のように次々と破裂し、やがて原型がなくなるまで散り散りとなる。

 

「これがお前の能力か…!!」

 

「私はスピーカーを食し、その力を得ました。いやはやエリートの私が食べるとその威力は桁違いですね!!どうですか?中々というかかなり応えるでしょう?」

 

「スピーカーか……なるほどな。地味に嫌な能力に目をつけたもんだ」

 

「地味とは失礼ですね。では、本当に地味かどうか……その身をもって分からせて差し上げましょう!!」

 

声を発すると、ミゲフォンの目の前の地面がえぐれる。

あんなもの食らったらひとたまりもないな。鼓膜破れるだけじゃすまねーぞ…。近づいて攻撃するにしても、あいつの周りから発生する衝撃波がそれをさせない。

 

「どうしました?そんな事ではいつまで経っても、私を倒せませんよ?最も私に勝つ事自体、不可能ですがねぇ!!!」

 

「…っ!!」

 

避け続けながら正義はミゲフォンに問いかけた。

 

「おいスピーカーやろう!!」

 

「ミゲフォンですっ!!!!」

 

「お前が強いのはよく分かった!!このままじゃ俺は勝てない!!」

 

「そうでしょう?やっとわかりました?」

 

「あぁ!!どうだ!?ここは一時休戦というのは!?」

 

「はぁ!?なに言ってるんですかあなたは!!私の油断を誘おうとでもいうんですか!?」

 

「いや違う!!ミゲフォン!!お前と戦う前から俺はずっと負け続きだ!!まだ本気じゃないお前相手にこの様だ!!これ以上やったところで俺の前が目に見えている!!」

 

「ほう…」

 

するとミゲフォンは攻撃を中止し、正義の話に聞き入れる。

 

「つまり私にはもう勝てないからやめたくれと、そう言ってるわけですね?」

 

「そうだ。もうこのままじゃ勝てない。今ここで逃がしてもらえないだろうか?」

 

「…なんか嘘くさいですねぇ…まぁ私に喧嘩を売っておいて逃がしてもらえないか?とは中々上手い話ではないですか?ん?」

 

「頼むこの通りだ」

 

「はぁ…ダメに決まってるでしょ?私はあなたを殺しますよ」

 

「どうしてもか?」

 

「しつこいですね。先程からそう言ってま───」

 

「──そうか。ならお前はここで終わりだ」

 

「………ん?」

 

正義は変身に用いるジャスティスタンドの他に、それとは別のアイテムを取り出す。

 

「何ですかそれは?」

 

「さぁなんだろうな」

 

そのアイテムの名はジャスティスペシャル。ベルトに差し込まれたジャスティスタンドに被せるように装着する。

 

 

【 正義執行!!! 】

 

 

「このままじゃお前には勝てない。ビジネスの為にはな。負けっぱなしだとこっちの収入減るんだよ」

 

「あなたの都合なんて知りませんよ。それより何ですかそれは!!」

 

「勝たなきゃ意味がねーんだよ。何をするにも結局勝たなきゃ意味がない。負けっぱなしはジャスティスの名の恥だ」

 

「答えなさい!!」

 

「それにな……失って一生後悔するよりその日その日をどんな手を使ってでも勝ち取った方がいい。じゃないとな。二度と戻ってきてくれなくなるんだよ。大切なものは」

 

「答えろと言っているんですよォォォォォォッッッッッ!!!!」

 

ベルトの左にあるレバーを押し込む。

 

 

「答えただろ?」

 

【 正しき道義!!正しき未来!! 】

 

 

 

「未来を勝ち取る為の力だ…!!」

 

 

 

【 輝く正義の名の下に!!! ジャスティススペシャル!!! 】

 

 

 

煌びやかなアーマーがジャスティスのアーマーに重なって行く。全てが装着されるとジャスティスの時よりも更に眩い光を放つ。

 

「な、何なんですかこれは…!!」

 

「仮面ライダージャスティス。モードスペシャルだ」

 

「何がスペシャルですか……たかが煌びやかになった程度で調子に乗らないでください!!」

 

深く息を吸い込み。正義に向かって叫ぶ。先程の威力とは比べ物にならないそれを、避けずに真正面から受ける。地面がえぐれ、周りの瓦礫は吹き飛び、残りのアンチバイツ達を全滅させるその威力。まともに食らってしまった。

 

「ふぅ…やれやれ手間をかけさせてくれますね」

 

ミゲフォンの目の前は見るも無残な光景になっていた。確信した。これは死んだと。奴は死んだと。

しかしミゲフォンは目を丸くした。砂煙から煌びやかなアーマーを身にまとった者が、全くの無傷のまま姿を現したからである。

 

「ば、ばかな…!?」

 

「段々とかませ野郎になってきたな。その方が見ていて面白い」

 

「こ、こいつ…っ!!」

 

「どうしたエリート?殺すんだろ?ならやってみろ。正義の名の下に、悪を葬ってやる」

 

「アァァァァァァァァァァアアァァァァァァアァァァァァッッッッッッッッ!!!!!!!」

 

凄まじい声量が辺りに響く。しかし今の彼にとって、多少の痺れはあるものの、戦闘において支障はない。ジャスティカリバーを剣の状態で何度も切りつける。すると、切った場所が発光し更に切りつけられる。

 

「ガハッ……!!ど、どういう事ですか…!!?こんな…!!」

 

「モードスペシャルは、攻撃した箇所にもう一度ダメージを入れられる。つまり一度の攻撃で二回分のダメージとなるわけだ」

 

「そんなことが…!!」

 

「仮面ライダーをなめるなよ?」

 

「ひっ!!」

 

「はぁぁぁっっ!!!」

 

攻撃の間もないほどの斬撃をミゲフォンに浴びせる。切りつけるたびに発光し再び切りつけられ、又、切られるたびに2回分のダメージを負う。

今度は銃に切り替え、的確に弱点を撃つ。その際も撃った場所が発光し再度攻撃が行われる。

 

「ま、まさか……!!この私が…!!この私が…ぁぁぁあっっっ!!!」

 

「決めるぞ」

 

「来るなァァァァァァァァァァッッッッ!!!!!」

 

その声を物ともせずに、ミゲフォンに近づきながら、ジャスティスペシャルの真上についているスイッチを押し、ベルトのレバーを押し込む。

 

 

 

【 スペシャル!!! ジャスティフィニッシャー!!!!!! 】

 

 

「はぁぁぁ…………!!はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!!」

 

 

 

飛び跳ねて頭上高く飛ぶと、光を纏い、背から輝く粒子が噴流すると、降下による加速と相まって凄まじいスピードでミゲフォンを蹴り飛ばす。

 

「……ッッ!!!!!?ゲボッ…ッッ!!!!!!!」

 

「ふっ…」

 

華麗に着地し、それから背を向け歩く。

しばらくするとミゲフォンの体が発光し、その光が徐々に強くなっていくと爆散してしまった。爆発した場所から、星のように綺麗な光の粒子が溢れ出る。

 

「はぁ……今日は嫌に疲れた。さて、帰るとするか」

 

バイクを呼び、跨ろうとすると、後ろから声をかけられる。女性の声だ。

 

「……お前か。何の用だ」

 

「いえ…ちょっと近くを寄ったから挨拶くらいしてこうと思って」

 

「メイズの親玉……『加奈井 まな』。名前を聞いた時は驚いた」

 

「何が」

 

「いや…どっかのヴァイザーの女がそういう名前だっただけの話だ」

 

「…そう」

 

「悪いが立ち話をするほど俺は暇じゃない。それじゃあな。メイズどものしつけをしっかりさせとけ」

 

「随分上からね」

 

「当然だ。俺の方が年上だ」

 

「……」

 

それから手をあげるとバイクを走らせ、その場を後にした。

暫くしてから、もう一台バイクが走って来た。ただし人は乗っていない。無人のバイクである。

 

「遅かったわね。『ビーケ』」

 

「申し訳ございませんお嬢。少々探すのに手間取ってしまって」

 

「…ヴァイザー……篠瀬 睦生のこと?」

 

「はい。そうです」

 

「……今どこにいるの?」

 

「ご案内いたします」

 

「えぇ」

 

その場でドリフトを行い、向きを変える。ビーケの背に跨るのではなく、腰をかけるように座る。

 

「…跨ってはいかがでしょう?」

 

「何で」

 

「いえ、特に」

 

「行って」

 

「かしこまりました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-------------------

 

睦生たちは街を歩き回り、久しぶりの何もない日を満喫していた。

普段はアンチバイツとの戦い続きで、まともに休みが取れていなかったが、その日だけは別である。

 

「何もないね」

 

---それでいい。

 

「ヴァイザーもたまにはこういうのいいでしょ?」

 

---まぁな。だが、いつあいつらが出てくるかは分からない。

 

「メイズ…アンチバイツ……」

 

近くにあった公園に入り、そこにあったベンチに腰掛ける。

 

---ちっ。厄介なやつらが現れたものだな………やつらが喰えないとなるとこの先の戦い。雑魚どもを喰って力をつける以外なくなるが……あのバイクやろうとの戦いでそれだけじゃ力不足だとわかったからな。

 

「じゃあどうすればいいの?……僕もまた戦って今度は無事に済むか分からないよ?」

 

---逃げながら戦うしかないな。お前が今まで喰ってきた能力をフルに活用するしか勝てる見込みは今の所ない。

 

「そっかぁ…はぁ………ぶっちゃけ会いたくない……」

 

ベンチに座り、肩を落とす睦生。それを遠くから見つめる女性と怪物。

 

「見つけたわ……ヴァイザー」




デデドン!!(絶望

今回は正義さん…書けたんじゃないかなって…
ぶっちゃけメイズ編の後の話は、まだ絶賛考え中でございます……硬くなってんぜ?(思考

次回も白菜かけますね。


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EP12 進化の牙

見たーい見たーいメイズ編の終わりが見たーい
まだまだもうちょっと待ってよ。

あと何話やるんやろな…よし1分追加しまーす。
毎度タイトル(察し)でそれではどうぞご覧ください。


---おい。睦生。

「なに?もう家帰る?」

---違う。後ろだ。

「え………っ!!!」

 

振り向きはしないが、背中から異様な気配がひしひしと伝わってくる。この前も感じられたこの気配を鮮明に覚えている。

気づかないフリでもしていようかと、前を見続ける。それに今ここでやり合ったら、公園に来ている人たちを、巻き込むことになってしまう。

 

「どうしよう…」

---ちっ。来てるぞ。

「うん……」

 

近づいてきている。睦生は頭の中でこの状況をどうするか、考えを張り巡らせた。心臓が弾けそうになる程、鼓動が激しくなる。

肩に手をかけられ、その一瞬で立ち上がり、裏拳を繰り出すが、隣にいた側近のメイズに片手で止められてしまう。

 

「会って早々、無礼だな。ヴァイザー」

 

「くっ…!」

 

「そういえば名乗っていなかったな。私はビーケ。お嬢の側近だ」

 

更に手を捻られ、近くにあった木へ押し付けられる。抵抗するも全く身動きが取れず、固定されたまま、あの女性が睦生の耳元まで近づいてくる。

 

「君は…」

 

「私は加奈井 まな……今日はあなたと話に来たの」

 

「まな…………」

 

「…なに?」

 

「い、いや……なんでもない。それより話ってなに」

 

「…………」

 

急に黙り始めた、まなの視線の先を見ると、周りに人が集まってきていた。それもそのはず、明らかに異様と思える光景だからだ。親子集まるこの公園で、木に押し付けられ、苦しい表情を浮かべる青年が、女性と背が高めの男に尋問のようなことをされていれば、誰だって気になってしまうだろう。

まなとビーケは顔を見合わせ頷くと、睦生を抱えて凄まじい速さでその場を離れる。集まった人たちはその異常な速さに驚愕し、人間でないことを知った。そらが何かわかった途端に逃げ出す人々が、抱えられながらも見えた。

 

「僕をどうする気?」

 

「あそこは人目につく。一旦場所を変えようと思ってね」

 

「…………」

 

「静かな場所の方が話しやすい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-------------------

 

連れ込まれた場所は廃墟であった。元は学校だったのか、その頃の机や椅子、他にも黒板やロッカーがボロボロになりながらも置いてある。まなは近くにあった椅子に腰掛け、その隣にビーケが並ぶ。睦生は立ったまま、彼女と向かい合うようにして見つめ合う。

そんな一室に睦生と2人はとても嫌な雰囲気を醸し出していた。

 

「話って一体なに…?」

 

「あなたとヴァイザーについて」

 

「僕とヴァイザー?」

 

「そう…あなたとヴァイザーは私たちと同じ、人間の意思が表立って出ている種。つまり、アンチバイツの細胞に抵抗力があると考えられるのだけれど…どうやら、あなたは違うみたいね」

 

「ど、どういうこと?」

 

「…あなたとそのヴァイザーは、細胞から何まで適合してるってこと。だからどのアンチバイツよりも強く、成長の早さが違う」

 

「…なんで君はそんなに詳しいの…?僕の…何を知ってるの?」

 

「私の中のメイズに聞いたのよ」

 

「ん?ちょっと待って!!メイズって無機物しか食べられないんだよね?それなら、君の中のメイズはどうやって寄生を…?」

 

「…私のことは別にいいでしょ。それよりあなた、このままメイズと戦う気でいるの?」

 

「君たちが暴れる限り…戦うつもりだよ」

 

「そう…」

 

まなは椅子から立ち上がり、割れた窓の方に向かう。そこから外を眺め、再度睦生を見る。

 

「あなたでは絶対に勝てない」

 

「なんでそう言い切れるの?」

 

「実力以前にメイズの方が圧倒的に優れているわ。対アンチバイツ用に作られた人工生物とはいえ、あなた達より早く成長できる。ただ、そこらの石ころでも食べてればいいんだから……」

 

「……それでも…」

 

「…ん?」

 

「それでも僕はやるよ。もう誰も失いたくないから」

 

その言葉を聞き、一言「……バカみたい」と呟く。確かに今の実力では、圧倒的にメイズの方が、優っているのはわかっている。

しかしアンチバイツと戦えるのは、自分を含め正義しかいない。ここで諦めたら、まなとの約束、父との約束を破ってしまうこととなる。

 

「何を言われても、僕はやるつもりだから。それじゃ…」

 

立ち去ろうとする睦生の前を、遮るようにビーケが前へ出る。

粗方察しはつくが、まともに戦って勝つ自信がない。正攻法ではまず勝てないだろう。

怪人態へと変わり、片腕を鞭に変化させる。

 

「察しはついたようだな。だが、お前は私に勝てるか?いや無理だ。差があり過ぎる、実に無謀だ。大人しくここでくたばった方がいい」

 

「いやだ…ね!!」

 

鋭利な先端を、ビーケに向かって突き伸ばす。ガラ空きになった胴体に、すかさず入り込もうと、近づいてくるビーケを残った片腕で流す。

 

「鞭で狙ったのは、あなたじゃない」

 

「なに…?」

 

「逃げるためだ」

 

伸ばした鞭の先端は、木の幹を捉え、ゴムのように一気に元に戻る。

戻った反動を利用し、筋肉を倍加させ、木から木は飛び跳ねながら全速力で逃げる。正攻法で勝てないのなら、まともに相手をしなければいい。逃げて隙を作り、そこを突くしか勝てる見込みはない。

 

「…あの子…なんで急にあんなことを…」

---おい、よそ見するな。来てるぞ。

「…やっぱりね!!」

 

バイクに変化したビーケが、睦生の後を追ってきていた。筋肉を倍加させているはずなのだが、そのスピードは桁違いに速く、徐々にその差を埋めてきている。

わかってはいたが、ここまで速いとは思っていなかった。

 

「もう少し…」

 

脚を車輪のままに、他を元の姿に戻し、木を駆け上がってくる。

 

「今…!!!」

 

「…っ!!」

 

ギリギリの所を翼に変化させ、空中へと回避し後ろへ回り込む。剣に変化させた腕で、背中に一太刀入れ、怯んだ所を鞭を巻きつけ、振りかぶって地面に叩きつける。睦生は爪を木に突き立て、ゆっくりと地面に降りて行く。

 

「はぁ…はぁ…」

 

土煙が上がる中、恐る恐るビーケの様子を見に行く。何の音をしない。ただこれで倒せるはずがないのはわかっている。すると、バイクのエンジン音が聞こえる。やはり効いていなかったと構えるが、何やら様子がおかしい。

先程、バイクのエンジン音だと思っていたものが、聞いたことがないような音は変わる。エンジンではある事は確かであるそれは、煙の中から現れた。

ビーケではないメイズ。

 

「ヒャッハーーーッ!!!」

 

「これは…!!?」

 

ブロロロロッとエンジン音を鳴らし、急加速させた回し蹴りを、睦生の肋へと蹴り込む。メキメキと音を立て吹き飛ばされ、何本もの木をなぎ倒す。地面を殴り、爪を突き立て、体制が立て直せるよう減速する。

コアへの衝撃はかなりあったが、特に問題はなさそうだ。しかしこの状況が理解できない。ビーケはどこへ行ったのか。あのエンジン音を鳴らしたアンチバイツは一体どこから…。

 

---分離か?

「分離?」

---仕組みは分からないが、あのビーケとかいうやろう。自分の体からもう一体別のメイズを作り出しやがったんじゃないか?

「バイクだから…そうか。でもそうすると本体の方は…」

 

「本体の方は別に何もねーよ」

 

「っ…!!」

 

「ビーケはな。メイズを複数宿すことが出来るんだよ。他の奴らと違ってな。この俺、『インガイネ』もその1匹ってわけだぜ」

 

「あいつそんなことが出来るのか…」

 

「あいつにひっついてると、自分たちまで力をつけられるし、何よりメイズの中でも群を抜いて強いからなぁ?必然的に周りも寄せ付けなくなる、つまり一石二鳥ってわけだ」

 

「これは厄介…だよね…」

 

「そういうことよ!!!」

 

急加速させた拳を、睦生の顔面へ打つ。それを手で遮ろうとするも、あまりの速さに一発貰ってしまう。

体が宙に浮き、目の前がぐらつく。続け様に、腹を何発も殴り、宙に浮かせたままそれを永遠とやり続ける。

 

「あっ…がっ…!!!ガハッ……!!!!」

 

激しい苦しみが睦生を襲う。何も考えられず、ただ殴れるばかり。すると、攻撃をやめ、インガイネは睦生の腕を掴む。地面に叩きつけ、肩を足で踏みつけ固定し、両手で腕を握りしめる。

まさかと思ったその瞬間、両腕を急加速させ、ミリミリと音を立て、睦生の腕を引き千切った。斬られる痛みより、引きちぎられる痛みは訳が違う。

 

「アァアァァァァ……!!ァァァッッ!!!!!…ッゥゥッッ!!!」

 

「いてーか?痛いよな?」

 

今度は上顎と下顎を掴む。もう何をするかわかっていた。睦生は筋肉を倍加させ、インガイネの腕を渾身の力で引き離そうとする。だが、力でも奴の方が優っていた。鈍い音を立てながら、徐々に口が開いて行く。

 

「アァ…!!ガッ…!!アアァアァァァアァアアァ……ッッッ!!!!!

 

「ぱかっとね」

 

バキッと音を立て、180度に口を裂かれた。手を離すと、力無く倒れ伏せる。ピクリとも動かなくなった所を、インガイネは不敵な笑みをこぼしながら、睦生の胸部分を乱暴にこじ開ける。そしてコアを見つけ、更に笑い出す。

 

「あっけないな人間……お前よく頑張ったよ。だけどな。所詮メイズには足元にも及ばなかった。対アンチバイツように作り出された俺らに、まさかの人間様が滅ぼされる。皮肉な話だな」

 

「…………」

 

「あばよ。ヴァイザー────────」

 

 

 

──────このままだと死んでしまう。しかし、体が動かない。いつもなら片腕がもがれようが、足を折られようが、関係なく相手に挑むはずだった。

諦めたくはない。だが、指一本動かすことができない。

 

ヴァイザーは何を思っているだろうか。きっと自分と同じで死にたくないと思っているに違いない。だけど無理だ。

メイズは強過ぎる。あれは異常だ。ユニクよりも格段に強い。

 

 

どうすればいいんだろう…今、戦ったとして希望はあるのかな…

---どうする?ここで死ぬか?

 

こんなところで死にたくないよ……もちろん……

 

---なら立て。全て喰うんじゃないのか?

 

だけどどうすればいいの…?本気で戦ってもこの実力差だよ?……もうどうすることもできないじゃないか……

 

---約束云々言っといてこのざまか…所詮この程度だったかお前も。

 

え?

 

---もうお前の好きにしろ。俺はお前に使われるだけの存在だ。死のうが何しようがお前の自由だ。

 

……ねぇヴァイザー…

 

---…なんだ。

 

ごめん。力を貸して……ヴァイザー…僕は思い上がってたのかもしれない。この力が自分の力だって……約束守る以前に人として……最低だったよ……

 

---…………

 

だからお願い。君の力を…僕が最大限に使ってみせる。ヴァイザー……約束を守るために、人を守るために…そして…君と共に生きるために……

 

---…勝てるか?

 

ヴァイザーとなら

 

---なら喰うぞ…お前の体を俺に委ねろ…その後は…お前の仕事だ。

 

うん…行くよ…ヴァイザー!!!!──────。

 

 

 

 

 

 

 

「 ───────ん?なんだ!?」

 

睦生の体が脅威的なスピードで再生していく。元通りになると、呆気に取られるインガイネを蹴り飛ばし、立ち上がる。

 

「な、何があった!?」

 

「………」

 

口元が裂けて行き、牙が現れる。前と大して変わらない見た目ではあるが、より鋭くより強固と化していた。そして…

 

「ガアァァァァァァッッッッ!!!!」

 

「ぐっ…!!」

 

インガイネに飛びかかり、腕に噛み付く。それから骨ごと腕を噛みちぎる。

何が起こったのか把握できず、ただ自分の噛みちぎられた腕を見続けた。骨を噛み砕き、肉を食い、飲み込む。

 

「こいつ……バカか!!メイズは喰えない!!無機物と大して変わらない俺らを喰うことは、すでに人間どもが対策済みだ!!」

 

「そうか…対策済みか…」

 

 

 

生物はやがて変化する。その場の環境に適応しようとする。

だから彼も変わった。今の状況を打開する為に、それに適応する為に。

 

進化する────。

 

 

 

「…っな!!?く、喰われた、う、腕が再生しない…だと!!?」

 

---俺は喰った奴の能力を得ることができる。だが、それは生物だけに限る話…。しかしな。睦生と俺が組む事で、その輪は広がる。確かに無機物単体でなら無理だが、命を作られた生物としてのこいつだったら話は別だ。

「…つまり…こいつが生物である以上」

---あぁ。例え、そうであっても…喰える。…………喰うぞ、睦生!!

「うん!!」

 

「あんまり調子に乗るなよ…状況は大して変わってない!!!」

 

目にも留まらぬ速さで拳が迫る。すんでの所を盾で防ぎ、押し返すようにして前方へ飛び込む。

 

「ハァッ!!!」

 

顔面に蹴りを浴びせ、その勢いで高く飛び、銃に変え銃弾を放つ。顔の前で腕をクロスさせ、本能的に身を守ろうとするも、弾の威力には勝てず吹き飛ばされてしまう。

腹を抑え、苦しみながらゆっくり立ち上がる。目の前には既に、睦生が片腕を剣に変化させ立っている。

 

「クソ…!!こんなはずじゃ…なかったはずだ…!!」

 

「行くぞ。インガイネ」

 

剣先を向け、腰を落とし、構える。

 

「喰ってやるよ」




進化した牙の詳しい話は、また次回に持ち越しです。
そして新たな展開が…?

それではまた次回!!フラッシュ!!!!!アエッ…


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EP13 仲間の裏切り

ご無沙汰じゃないですか!

さぁ稽古の続きだ!!
タイトルでなんだこれはたまげたなぁ……

皆さんはこの小説に耐えきることができるでしょうか。それではどうぞご覧ください。


「てめぇ。これは一体どういうことだ!!」

 

 

喰われた右腕を抑え、睦生を睨みつける。

再生しない自分の腕。アンチバイツの再生力は異常である事は、誰しもが知っていることだ。再生しないなんて事はありえない。腕一本くらいなら数秒経てば再生し、元の筋肉量に戻り、完全なものとなる。

 

だが、今。目の前でそれが起こっている。ありえないことがインガイネ目の前で起こっている。

 

 

「フッ!!」

 

 

剣を勢いよく振り、上段から切りつける。インガイネはそれを加速させた蹴りで弾き飛ばし、距離を取る。

そして気づく。蹴った方の脚がビリビリと痛みがある事に。

 

 

「今のは避ける為の蹴り。威力はマジに蹴った時程のものじゃねーが、てめぇくらいの剣なら、でけーヒビが入るはずだ…!!」

 

 

明らかに違うのだ。睦生の剣が。その硬度が。

ヒビが入るどころか傷1つ付いていない。

 

 

「僕の半分はヴァイザーに渡してる」

 

「は…?」

 

「主導権は僕でもあるけどヴァイザーでもあるってことだ」

 

「な、なにがどうなってる…説明しろ!!」

 

「…僕がいくらアンチバイツになろうと、元は人間。限界がある。それにヴァイザーから力を貰っているだけのこの体が、借りただけの力が、君たちみたいな奴に勝てるはずない」

 

「なるほどな…てめぇの主導権を半分、ヴァイザーに渡す事によって、本来の力を引き出し、進化を促したというわけか…」

 

「そして新たな能力を身につけられた…。1つは喰った箇所の細胞を死滅させて、再生をできなくする。もう一つは…君たちメイズの能力を奪うことができる!!!」

 

 

筋肉倍加をし、腹にめがけて、更に強度を増した拳で殴りぬける。

インガイネは綺麗なくの字に曲がり、辺りの木々を巻き込み、ある程度吹き飛ばされた位置で地面に転がる。が、体勢を立て直そうとした瞬間、すでに彼は目の前にいた。

 

 

「ハァァァァァッッッ!!!!」

 

 

叩きつけるように殴ると、地面が大きな穴を開ける。

それからすかさずにコアのある胸に、牙を立てる。それをゴクリと喉を鳴らして飲み込む。睦生は食べ終わったあと、近くの岩に腰をかけ、何も言わずにしばらく空を仰いだ。

 

 

「…………」

 

---どうした?帰らないのか?

 

「いや、なんか彼女の事が気になって…」

 

---あのまなとかいう女のことか?

 

「……うん」

 

---名前が似ているだけだ。その他が似てるところはない。そんなに前の女が…

 

「大事だったよ。すごくね。でもそのことじゃないんだ」

 

---なに?

 

「あの子…何か抱えてそうだった」

 

---アンチバイツに寄生されて普通じゃなくなった。まぁ当然だろうな。それについて悩んでいるとかだろう?

 

「違う」

 

---…?

 

「もっと黒い何かがある。あの子の声じゃない…何かが…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

---------------

 

「何か用?ビーケ」

 

「お嬢。インガイネがやられました」

 

「…誰?」

 

「私と共にあった者の名前です」

 

「…そう」

 

 

先程いた教室の窓から外を見ながら受け答えをする。その顔はとても悲しそうである。

 

 

「お嬢」

 

「…なに?」

 

「睦生という男は今、更なる進化を遂げ、インガイネを打ち破りました」

 

「それが?」

 

「申し訳にくいのですが…お嬢の力では及ばなくなるやもしれません」

 

「………」

 

「我々が優っていたのは、あくまで彼がメイズの力に及ぶ程の力を手に入れてなかったからです。しかし彼はメイズに対しての力…メイズの力を手に入れてしまった。

即ちそれは、我々の領域に足を踏み入れたということ。今はお嬢と私の力の前では非力でしょう…」

 

「でも時間が経てば、それ以上の物を手に入れる…」

 

「えぇ。ですから早急に始末した方が妥当だと思われます」

 

「……考えとく…」

 

 

そう答えると、ビーケの目がスッと光を失う。そしてまなに近づき、無表情のまま後ろに立つ。

 

 

「……後ろに立たないでくれる?」

 

「…お嬢。私は常々思うんです。あなたは甘過ぎると」

 

「急に声色変えてどうしたの?」

 

「本当は同類の睦生のことを気にしているだけなんでしょう?」

 

 

その瞬間振り返り、片腕を刀に変え、ビーケの首元に突き立てる。少し力を入れれば突き刺さるほど、刃先を押し当てながら睨みつける。

 

 

「あいつは同類じゃない……さっきから私に対してなんのつもり?」

 

「あのですね……」

 

 

ビーケは刀を思いっきり掴むと、まなを睨み、その手に力を込めて行く。

 

 

「私が従っていたのは、あなたのその力です。が、あなたはそれを使おうとはしない。そんな人にもう従ってはいられない」

 

「ただで済むと思ってるの…?」

 

「それはお前も同じことだ」

 

 

刀を力に任せ砕き、腹に向かって蹴りを入れる。それをすかさず斧に切り替え防ぎ、槍に変え、そこらにある物を巻き込みながら突き刺す。

それを軽々と躱し、バイク音を響かせながら、重い蹴りをまなの脇腹へ入れる。

 

 

「かはっ…!!」

 

「吹き飛べ…ッッッ」

 

 

教室の壁を突き破り、外へと投げ出される。ビーケはバイクの様な姿へと変化し、その後を追う。

外では苦しそうにしながらも、次の攻撃に備え片腕を弓に変化させ、ビーケの追撃を待つ。バイク音が聞こえ始めると、手から出現させた矢を弓を引いて放つ。

矢は風を切り、ビーケを捉えたがスピードは緩まず、そのまま激突する。

 

 

「あっ…!!」

 

 

体に走る激痛に耐え、今度は両腕をクロスさせ、ハサミの形状へと変わる。ビーケが向かってくると、周りの木々を切り倒し、目の前を塞いで行く。

 

 

「こんな物で私は止められない」

 

 

勢いそのままにバイクから元に戻ると、硬く握り締めた拳で、目の前に置かれた木々を殴り飛ばす。

すると、彼女の姿はなく、そこには大きな岩があるだけだった。

 

 

「逃げたか………まぁいいだろう。お嬢が居られる場所なんか、この世のどこにもない。せいぜい足掻くがいい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

---------------

 

外はすでに日は落ち、辺りは暗くなっている。

睦生は食べ終わった食器を洗いながら、今日の出来事を思い出していた。ヴァイザーの力を引き出し、新しい能力を手に入れ、より一層強くなった自分。

しかし逆に言えば怪人としての力が、更に高まったということだ。人ではない何かに変わってきているのだ。

 

 

「母さん」

 

「ん?」

 

「母さんは…父さんのどこを好きになったの?………っあ!ご、ごめん…」

 

 

暫く父さんの話をしない様に心がけているつもりであったが、無意識にただ自然と口から溢れる。

それを聞いた母は悲しい顔をするどころか、吹き出して笑った。久しぶりに見た母の笑顔に、睦生も釣られて笑顔になる。

 

 

「なに言い出すかと思ったら……さては」

 

「さては?」

 

「彼女できたでしょ?」

 

「ないない。全然ない」

 

「嘘ばっか。隠したって無駄よ」

 

「ほ、ほんとだよ…」

 

「ふーん……まぁでも気になる子くらいいるでしょ?」

 

「気になる子かぁ…」

 

 

一瞬だが、まなの顔が脳裏に浮かんだ。メイズの方…。

 

 

「…って、僕の方じゃなくて母さんの事を聞かせてよ」

 

「あーそうだったわね…。私と睦吾郎さんの馴れ初めは…人がほとんど訪れない神社で、1人お参りに来ていた睦吾郎さんが、たまたま私と出会ってね」

 

「うん」

 

「2人とも一目惚れして、そこから恋に発展して、それからすぐに結婚して、それから…」

 

「あーありがとう…。そう言えば昔、母さんは巫女さんやってたんだっけ」

 

「えぇ。でも人が全然来ないの。まぁ睦吾郎さんはそれから毎日来てくれたけど」

 

「ふーん…ラブラブだったんだね」

 

「そうよ。……ほんと楽しかったわよ…アンチバイツに出会っていなきゃ、あんなことにはならなかったのにね……」

 

「………母さ……」

 

「だけど、あの人は私に光くれた。あの日に睦吾郎さんに会ってなかったら私……今頃何してたのかな……」

 

「…………」

 

 

すると、突然インターホンが鳴る。こんな時間から一体誰なんだろうか。

母は「はーい」と返事をしつつ、玄関へ向かう。ドアが開かれると背筋がゾッとする。今日は特に冷えるわけではないが、それとは違う。

 

 

「睦生ーあなたにお客さんよ〜」

 

「……うん」

---睦生…わかってるな

「わかってる」

 

 

玄関へ行くと、そこには彼女がいた。メイズ・アンチバイツに寄生された彼女が…。

 

 

「やっと来た。待たせちゃってごめんね」

 

「か、母さん!!」

 

「なによ、声張り上げて…」

 

「い、いや…」

 

「あ、もしかして…ほら上がって上がって名前は?」

 

 

弥生はそう聞くと、彼女は「加奈井 まな」と答えた。

母は勘違いをしているのはわかる。この時間に訪問。さらには女の子。更に更に先程の話が加わったことにより、信憑性が上がってしまっている。

 

 

「……こっちに来て」

 

「えぇ」

 

 

まなを自分の部屋へ連れて行く。それを母はニヤニヤしながら、後からついてくる。とりあえず絶対に入って来ないでね、と疑われる可能性を大にしつつ、念を押して扉を閉める。

睦生はベッドに腰掛けると、その隣にまなは自然に座ってくる。何か言おうとしたがやめておいた。

 

 

「…………よし、それで何しに来たの…?どうしてこの場所が…?」

 

「…前にビーケから教えてもらった」

 

「なっ…!!?じゃああいつは僕の家を知っているって事なの!!?」

 

「…えぇ」

 

「そんな…!!それならあいつは……くそ!!」

 

 

拳を強く握りしめ、イラつきを見せる。まなはそれを見ると、ボソリと何か呟いた。

 

 

「今なんて…?」

 

「……ごめんなさい……」

 

「…………いや、いいよもう。対処法は…また考えるよ。それよりなんでここに来たの?」

 

「…………裏切られた……」

 

「裏切…られた?ビーケにって事?」

 

「そう…」

 

 

その理由に驚きが隠せなかった。あのお嬢と慕っていたビーケが裏切ったなどと思えなかったのだ。

その訳を聞こうと、少し距離を詰めようとしたその時…

 

 

「---てめぇ!!さっきから聞いてれば訳がわからんなーこと抜かしやがって!!おい睦生!!こいつ喰うぞ!!」

 

「な、え、えぇ!!!!???」

 

 

左腕が怪人体の時のように変わったかと思うと、そこから頭が現れ、まなに噛み付こうとしていた。

その顔はヴァイザー。前に鏡越しにみた怪人体と同じ顔。

 

 

「ヴァ、ヴァイザー!?な、なんで!?ってちょっと待ってよ!!落ち着いてって!!」

 

「---睦生、これが三つ目の能力だ。俺はお前から主導権を半分譲渡されて、少しの距離なら離れる事が出来るようになった。だからこいつを今ここで喰う!!」

 

「へー…じゃなくて、なんでよ!!まなにも色々理由あるだろうし、まず話を聞こうよ!!」

 

「---聞いてられるか!!こいつは俺たちを狩ろうとした女だ!!そんな奴が信用できるか!!?」

 

 

必死に制止しようと格闘していると、まながまた話し始めた。

 

 

「あいつは、私の中のメイズが怖くて逆らえないでいたの。だけど……」

 

「だ、だけど?」

 

「いつまでもその片鱗すら見せない私に、愛想を尽かしたのか…それとも、私の力が解放されることはないと判断したからなのか……」

 

「………」

 

「……ねぇ」

 

「なに?」

 

「今日1日だけでいいの……泊めてくれないかしら」

 

 

その言葉を聞いて、怒り狂うヴァイザーであったが、睦生は違った。

確かに変なことを言うようだが、まなは他のアンチバイツとは違う。いや彼女は元々人間だったのだ。過去に何かあったに違いない。

今日はいつにも増して自分が変である。そして彼女の目を見て、こう告げた。

 

 

「泊まっていっていいよ」

 

「!!…ほ、ほんと…?」

 

「---やめろ!!お前、寝首を掻かれたいのか!?」

 

「だけど……君になにがあったか。話してもらうよ。それが条件だ」

 

「………」

 

「---ちっ……勝手にしろ……」

 

 

舌打ちをしながら、ヴァイザーは引っ込んでいった。それから再び彼女に視線を戻す。

 

 

「…さて、その事については明日、聞かせてもらうから。いい?」

 

「えぇ…」

 

「じゃあ今日はもう寝ようか」

 

「…………」

 

「ん?どうしたの?」

 

「どこで寝ればいい…?」

 

「あ」

 

 

とりあえず僕は床で寝た。




よし(満足

今日で一気に詰め込みましたねぇ…
伏線とか貼ろう何かこうさらっと…こうね?(語彙力崩壊

次回もよろしくお願いさしすせそ。


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EP14 同士の絆

投稿遅くなって申し訳ナス……そしてお気に入り登録20イッたぁぁぁぁぁぁ!!!!!
中居さぁぁぁぁぁぁぁん!!!中居さんありがとうっっっ!!!フラッシュッッッ!!!アエッ

それじゃあ早速行きますよぉ〜行きますよぉ行く行く…それではどうぞご覧ください。


朝になり、僕は体を起こす。

仕方ないとはいえ、女の子を1人泊めたと言う事実。今現在、彼女…まなは僕のベッドの上でスヤスヤと寝ている。

母に昨日から誤解されているが、それもそれで仕方ない事だった。自分自身がアンチバイツであることを告げていないし、父のことも、まなのことも…。でもそれを知れば、きっと悲しむだろう。もしくは……考えたくない。

 

 

「んぅ……」

 

「…はぁ…」

 

 

しかも昨日からほとんど眠れていない。なぜなら……。

 

 

「---睦生ッ…この女まだ寝ているぞ…喰い殺すチャンスだ」

 

「落ち着いてヴァイザー!!ちょ、ちょっと!!」

 

「離せ、睦生!!こいつは野放しにしていい人間じゃねぇ!!」

 

「昨日から言ってるけど少しは冷静になって!!」

 

 

そう昨日からこの状態なのだ。

ヴァイザーは一定の距離しか離れることができない為、玄関から僕の部屋に掛けては全く届かない。しかし、昨日の状態は同じ部屋で真隣。つまりヴァイザーがいつでも喰いつける位置にあった。

必死に抑えること数時間…やっと眠ってくれて、僕もそれから眠りについた。

 

 

「んぅ……」

 

「……ん?あ、起きた?おはよう」

 

「……おはよう」

 

 

起きたてボーッとしながらも挨拶をする。寝巻きとかなかったから、母のものを代わりに着てもらった。

目をこすりながら睨みつけるヴァイザーを見ると一言「おはよう」と言った。

 

 

「---………あ"?」

 

「ただの挨拶だから落ち着いてヴァイザー…」

 

「---ふんっ。今に本性が現れるぞ」

 

「う、うーん…」

 

 

ヴァイザーは仲良くする気はサラサラないらしい。そのまま僕の体の中へ入り込み静かになった。

すると、まなは立ち上がり洗面所の方へ向かおうとする。

 

 

「…使ってもいい…?」

 

「別に、構わないよ?」

 

「…ありがとう」

 

 

礼を言うと、そのまま部屋を出て洗面所へ向かう。やっぱり本当は良い子なのかも知れない。あんなボスみたいな子だったのに、実際はとても静かで不思議な感じのある子だなと思う。ヴァイザーの言う通り、これが演技だとしても、流石に昨日の感じからして普通じゃないと思った。

仲間の裏切り…。

彼女の心にどう突き刺さったのだろうか。ずっと一緒にいたアンチバイツから裏切られた…。敵ながら本当に可哀想だと思ってしまう。

 

 

「……はぁ」

 

---なにため息なんかついてるんだ?

 

「いやなんか…落ち着かない」

 

---ふん。前に女がいたにも関わらずにそれか?

 

「そりゃそうだよ。あの子初対面ではないけど、親しいわけでもないでしょ?ましてや、まだ彼女のことをなにもわかってない状態だし……これからどうなるんだろうってため息」

 

---精々自分の首を絞めないようにすることだな。俺は知らん。

 

「わかってる。責任は果たすつもりだよ。これで何かあっても僕のせいだからね」

 

---そうなったら俺も……ちっ。好きにしろ。

 

「ありがとうヴァイザー」

 

 

リビングへ行くとテレビがついており、ニュースが流れていた。アンチバイツに襲われたという内容だ。母、弥生はそれを見ている。いつも通りの光景であった。

テーブルには朝食が並べられ、まなもすでに座って待っている。

「いただきます」と言って、朝食を食べようとすると、ニュースを見ていた母がポツリと呟く。

 

 

「…アンチバイツも人間と暮らせないのかしらね…」

 

「……ん?え?」

 

「…………あ…ほら、さっさと食べないと冷めるでしょ?」

 

「急にどうしたの?」

 

「…別に。ただそうなればいいなーって」

 

「……そうなればいいね…」

---…………。

 

 

アンチバイツと共に生きる自分の身としても、その意見には賛成はし難い。父も大切な人も奪われた。母には悲しみを与えた。そんなアンチバイツを許しておけるわけがない。

ただヴァイザーだけは違うような気がする。なぜかはよく分からないがそんな気がするのだ。

 

 

「遠慮しなくていいからね?えっと……」

 

「加奈井 まなです」

 

「あぁ……名前、似てるのね…」

 

「はい。話は聞いてます」

 

 

弥生は何かを察したのかそれ以上なにも言わず、朝食を食べ始める。

 

 

「そういえば、まな。」

 

「…なに?」

 

「いつまでいる?」

 

「…できるならしばらく居候させてもらいたい…」

 

 

そして弥生は噎せる。それもそのはず、息子の普通の彼女だと思っていた人物が、実はそういう事情を抱え込んだ子であったのだから。変な解釈をされているはいるが、弥生はまなに向き直し、咳払いをする。

 

 

「まなちゃん。わかった。大丈夫よ」

 

「え…?」

 

「好きなだけ居なさい。後のことは私と睦生に任せて」

 

「はい…」

 

「辛かったわね…でももう安心して!私たちが守ってあげるからね」

 

「……あ、ありがとう…ございます…」

 

 

まなの手を握り、目に涙を浮かべる母。家族が増えたとか言いそうである。

 

 

「良かったわね睦生。家族が1人増えたわよ」

 

「やっぱり」

 

「なにが?」

 

「いやなんでも」

 

 

するとニュース番組の途中、速報が入る。それに気づいた睦生はテレビの方を向く。

 

 

『…あ……!?ここで緊急速報です!!○○○市にメイズ・アンチバイツが出現しました!!付近の皆さんは避難を!!』

 

「え…!?」

---メイズか。ちょうどいい。

 

 

睦生は飯をかき込むと、すぐ立ち上がり玄関へ向かおうとする。まなもそれに続き、後を追う。

 

 

「え?ちょっと!!どこ行くの!?」

 

「すぐそこまで行ってくる!!」

 

「……待って!!睦生!!」

 

「なに…?」

 

 

玄関の前まで来た睦生を制止し、とても悲しそうな表情で母は言う。

 

 

「睦生…前にもニュースが流れていた時、出かけてたわよね?」

 

「……それは」

 

「睦生…何か隠してるんでしょ?だったら教えて」

 

「別になにも隠してるつもりは…」

 

「最近のあなたの行動はおかしいわ。帰って来た時の表情が、バイト疲れとは思えないくらい疲れてるし、さっきだってニュースが流れたら、突然家を出て行こうとするし……一体なにを隠しての?私に言えないようなことでもしてるの?」

 

 

睦生はしばらく黙った。言っていいものなのか。母に心配を掛けさせたくないと思ってずっと黙ってた。しかし話したところで心配どころの騒ぎではなくなるだろう。勢いで父のことまで話してしまいそうで怖い。

だけどいつまでも隠しておけるわけがない…ただ今は………

 

 

「あなたまさかあの現場へ…!!」

 

「母さん」

 

「…………」

 

「今は話せないけど、いつか必ず母さんに伝えるよ。だから今だけは…行かせて」

 

「…………」

 

「僕は…行かなきゃいけないんだ」

 

「…………」

 

 

母は拳をワナワナとさせ、下を向いている。そんな母を睦生は目を離さずに見続ける。すると母は何かを察したように頷いて、笑顔になる。

 

 

「……あんまり危ないことするんじゃないわよ?」

 

「母さん?」

 

「行って来なさい。睦生」

 

「……ありがとう。母さん」

 

 

そして家を飛び出す。まなは弥生に一礼してから睦生の後を追いかける。

開かれたドアが閉まるまで、弥生は彼らを見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

---------------

 

凄まじい音が辺りに響き渡る。そのあとは衝撃波となり、周りを抉るようにして破壊して行く。

メイズは生き物を食べることが不可能だ。だからメイズは人間を食わず、その衣服や装飾品を食べる。睦生と同じように、食べる毎にその力を増大させて行くのだ。

 

 

「着いた!!」

 

「…!?あれは…!!」

 

「どうしたの?」

 

「だって…あれは…!!」

 

 

そう。まなはあのメイズを知っている。スピーカーの能力を持つ。音を攻撃手段とするメイズ。正義との戦いで散ったはずの…ミゲフォンがそこにいた。

 

 

「ミゲフォン…」

 

「……ん?おやおや、誰かと思えば元・ボスのまなさんじゃありませんか!!」

 

「なんであなたが生きているの…?」

 

「生きていてはおかしいですか?」

 

「えぇ。おかしいわよ…あなたは力を上げたジャスティスにやられて、爆散したはずでしょ?」

 

 

まなとこのミゲフォンと呼ばれるメイズが、知り合いだと言うことは予想できていたが、パワーアップした正義と戦いで死んでしまったはずの、メイズであるということがわかって驚く以前に整理ができない。

 

 

「あのビーケさんのお陰ですよ」

 

「ビーケが…?」

 

「あの方は様々なメイズを取り込んでおけます。私もその1匹でした……」

 

「結局なんなの?早く言って」

 

「全く短期なお方だ。いいでしょう。教えて差し上げます……ビーケさんは取り込んだメイズの細胞から再び我々を作り出し、蘇らせることができるのです」

 

「!?そんなことができるわけ……だったらあなたの記憶はどうなるのよ」

 

「あーそれは後から教えていただきましたよ……だからこそ…あの仮面ライダー…そしてあなたというメイズを!!!」

 

「私が…?」

 

「聞きましたよ。あなた私に対して散々な言い方をしてくれたそうじゃないですか…」

 

「なんの話よ」

 

「覚えてないのなら思い出させてあげますよ!!」

 

「本当に何も言ってないはずだけど…」

 

 

ミゲフォンは深く息を吸い込むと、咆哮をあげる。とてつもない声が辺りの瓦礫を吹き飛ばす。まなは片腕をチェーンソーに変え、瓦礫を弾き飛ばして行く。

その隙をついて睦生がまなを横を通り過ぎ、一直線にミゲフォンへと向かう。

 

 

「あなたがヴァイザーですね…そんな遅い動きをしてては私の声には敵いませ……」

 

「ハァッ!!!」

 

 

急加速させた剣を振り下ろす。ミゲフォンの体は縦に切り裂かれる。ギリギリの所を躱すことができたが、あまりの速さに驚きが隠せていない。

 

 

「それはインガイネの…!!それにあなたは能力を併用して使用することは不可能なはず…!!何故ですか!!」

 

「僕もよくはわからないけど…ヴァイザーが言うには別物らしいから一緒に使うことができるらしいよ」

 

「そんなバカな…!?」

 

「そういうことだから…とっとと終わらせるよ」

 

「くっ…!!」

 

 

エンジンの力により加速させた爪で切り刻み、筋肉を倍加させ上空へ打ち上げる。

そしてハンマーへと変化させた腕を振り回し、落下するミゲフォンを吹き飛ばそうとする。

 

 

「まだ死ぬことなんかできませんよォォォォォォッッッ!!!!」

 

「うわっ…!?」

 

 

叫んだ同時に発せられた衝撃波でバランスを崩し、睦生は吹き飛ばされてしまう。すぐ近くにいたまなは、吹き飛ばされた睦生に巻き込まれ、飛ばされてしまう。

体勢を立て直すも、その時すでにミゲフォンの姿はなかった。

 

 

「あ、あれ!?」

 

「---ちっ。逃げたか」

 

「……ビーケってやつ一体なんなんだろうね……」

 

「---ただのバイク野郎だと思っていたが…その他にもありそうだな」

 

「だね…まなですら知らなかったようだし…」

 

 

悪い予感がするが、一先ずは帰宅することにする。母に何か聞かれるかもしれない。

 

 

「あぁそうだ、まな。さっきはごめんね。ぶつかっちゃって」

 

「…えぇ。別に気にしてない」

 

「…そっか…じゃあ帰ろっか」

 

 

まなは無言で頷くと、睦生と共にその場を離れる。

その陰にその様子を見る1人の男…

 

 

「また強くなったのか…睦生……」

 

 

そして男は……正義は睦生と逆方向へとバイクを走らす。

2人の歯車がまた一つ動き出した。




投稿できたと勘違いしてたゾ…本当に申し訳ございません。

そして1週間お待たせしてしまい申し訳ございません。

次の投稿もよろしくお願いします

それからお気に入り登録ほんとにありがとォォォ!!ございまぁぁぁす!!!!!!


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EP15 音響のテクニシャン

感想・質問、いいよ!!こいよ!!
またも長らくお待たせいたしました……

皆さんは私の調教に耐えきることができるでしょうか?それではどうぞご覧ください


「ハァッ!!!」

 

「グギャァァッッッ!!!」

 

 

ジャスティスの無駄のない剣捌きにより、その場にいたアンチバイツ達の数が減って行く。

僅かな隙も見逃さず、手際よく最後の1匹を倒し、残党がいないか辺りを見回す。

 

 

「さすが仮面ライダー!!」

 

「やっぱり違うな!!ライダー!!」

 

 

歓声が聞こえる。しかし彼にはそれが気にくわない。

喜ぶ暇あるなら俺に生活費でも恵んでくれ、と思っている。

 

 

「ジャスティス!!サインちょうだい!!」

 

「ん…?」

 

 

子供がサインをねだりに近寄ってきた。

逃げろって言っただろ。親は何してやがる?

そんな事を思いながらもサインをする。子供は大人と違ってそこに黒いものがない。純粋である。故に彼は子供に優しくする。

 

 

「こんな感じかな?」

 

「ありがとうジャスティス!!」

 

「喜んでもらえて嬉しいよ」

 

 

このサインを売り飛ばす奴がいる。金になるからが理由だろう。まぁそんな奴は見つけて、即、警察に突き出してやるがな。

バイクに跨り、手を挙げてその場を後に、次に向かう先は例のメイズの居場所だ。確かではないが、情報ではそこに住み着いているらしい。

例のメイズ…ミゲフォン。それが今回のターゲットであるが、正義は困惑していた。一度倒したはずのメイズがなぜ生きているのか。情報通りであるなら絶対と言っていいほど、そのメイズが当てはまる。

 

 

「とりあえず……確かめる必要があるな」

 

 

その真相を確かめるべく、更にバイクを加速させ走らせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

---------------

 

睦生とまな、そして弥生は2対1になるように、テーブルを真ん中にして座っていた。気まずい空気が漂う。

帰ったら覚悟はしていたが、いざ話すとなるとやはり緊張する。不安というより怖い。母にその事を話す事が。真相を話す事が。

 

 

「…………それで睦生。一体どういう事か説明してくれる?」

 

「……うん」

 

「察しはついてる。だけどそれが本当なのか、睦生の口から聞きたいの。睦生が覚悟しているように、私も覚悟してる。でも今、凄い不安だし怖い」

 

「…母さんもなんだ…」

 

 

僕は全てを話した。今の自分、そしてやってきた事。父の事。全部話した。

話し終えると睦生は涙を流す。母に真相を話して楽になったというのもあるが、それを伝えた事が苦しくてたまらない。

 

 

「…………信じたくない……けど嘘じゃないのよね。睦生がそんな目をして言ってくれたもんね」

 

「今まで黙っててごめん…だけど言いたくなかった。母さんを悲しませたくなくて…」

 

「いいわよ。楽になったでしょ?……ごめんね。何もできなくて…」

 

「そんな…!!僕は母さんが支えてくれたからこうしていられるんだ!!母さんが笑っていてくれたから戦ってこれた…だから…」

 

「睦生……あなたはこれからどうしたい?」

 

「どうしたいって…?」

 

「まだ戦う?」

 

「……うん」

 

「…そう……そうよね。わかってた。なら、絶対負けない事。絶対生きて帰る事。絶対笑っている事。いいわね?それとまなちゃん。あなたもこの事を守りなさい。2人ともいい?」

 

 

母のその言葉に涙が溢れた。認めてくれたのがとても嬉しかった。母は優しく睦生を抱きしめる。そしてまなも抱きしめ、しばらくしてそっと離れる。

 

 

「今日も行くんでしょ?」

 

「え、あ、うん…」

 

「なら頑張ってきなさい。晩御飯までには帰ってくるのよ」

 

「……ありがとう……母さん……行ってくる!!」

 

「行ってらっしゃい」

 

 

まなはその光景を見て、口元が緩む。その顔を見て睦生も釣られて笑顔になる。その雰囲気の中で飛び出してくる黒い影。

 

 

「---やっと俺が解禁というわけか」

 

「!!!!???こ、これが話に聞いてたヴァイザー…だったかしら…?」

 

「ヴァ、ヴァイザー!!?いきなり出たら…あ、うん。そうだよ。これがヴァイザー…」

「---この能力を手に入れてからの開放感は最高だ。だが、今まで出てこれなかったからな。ようやく本格的に外に出れた感じだ……それとそこの弥生だったか?お前の飯はうまい」

 

「あ、ありがとう…?」

 

「あはは…それじゃあ行ってくるね…」

 

「き、気をつけるのよ」

 

 

ヴァイザーを戻して玄関のドアを開ける。まなは頭を下げて睦生について行く。これからまた新たな日常が始まる。だからこそメイズを倒す。

怪人体となった2人はアンチバイツの声のする方へと向かう。群れている場所にいる可能性はなくもない。急ぎその場へ向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

---------------

 

錆びれた工場に着いた睦生とまな。工場の入り口付近には物が多く積まれ、侵入者を寄せ付けない形となっている。見た目も不気味ではあるが、隙間から見える内部の暗さが、より一層嫌な雰囲気を醸し出している。

正面切って行くほど無謀なことはしない。他に入れる入り口はないか隈なく探しているとある人物とばったり遭遇してしまう。

 

 

「「あ」」

 

 

光り輝く装甲を身に纏ったライダー。仮面ライダージャスティス。

まさか鉢合わせになるとは思わなかった。しかし無理もないだろう。ミゲフォンは一度、正義の手によって倒されているはずだった。それが復活したとなれば、彼が黙って見ているはずがない。

 

 

「奇遇だな……と、どうせここに来ると思ってたがな」

 

「正義さんもミゲフォンを…?」

 

「ここにそいつがいるという情報を聞いただけで…確かではないが、信じないよりマシだろう……それにあまり親しそうに話しかけるな。俺とお前は敵同士だ。本来ならここで殺し合ってるはずだ」

 

「…でも今はとりあえず、ミゲフォンを倒すことが先決です」

 

「……言うようになりやがって…ちっ。お前なら中の様子くらいわかるだろ」

 

「え?あ、はい……」

 

 

睦生は神経を集中させ、耳を澄ませる。工場内部からは以前にも聞いたことがある声が聞こえてくる。これはミゲフォンなものだろう。

 

 

「……はい。いました。多分ミゲフォンです」

 

「数は?」

 

「だから数だ。中に何匹かいるはずだ。あいつ1人ならいいが、あのスピーカーもバカじゃない。それに以前も戦った時、周りにザコを敷き詰めてやがった」

 

「なら…」

 

 

すると、まなが横から割って入り、睦生と同じように耳を澄ませる。

 

 

「……50」

 

「なにが?」

 

「数が」

 

「50!?」

 

「今のあなたなら余裕で終わるはずよ。それにそこの正義もね」

 

 

それを聞くと正義は、剣を構え、円状に壁を切り抜く。それを蹴飛ばすと中にいたアンチバイツ達を巻き込み、残り破片がさらに突き刺さって行く。

あまりの突然の出来事、いや予想はしていたがまさか壁を開けてくるとは思わなかったのだろう。

 

 

「また会ったな。スピーカーやろう」

 

「ジャスティス……ッッッ!!!」

 

 

正義に会った瞬間から目の色が変わる。復讐に燃える目。殺意に満ちた気が張り詰める。それから睦生を睨む。

そうして仰け反りながら息を深く大きく吸い込み、それを一気に吐き出す。

凄まじい声量により、工場全体にヒビが入る。所々嫌な音が聞こえ始める。

 

 

「前よりも力を増してやがるとはな……!!」

 

「崩すつもりか!」

 

「いや……ただの威嚇だろ。はっ、ザコが。またぶっ倒してやるよ」

 

 

ミゲフォンの顔が引きつり、声にならない叫び声をあげる。それほど悔しかったのか、いや違う。プライドが高いやつを煽るのは自殺行為に等しい。特にあのミゲフォンというメイズには尚更のこと、煽り耐性はないと見ていいだろう。

 

 

「くたば…れェェェェェェェッッッッッッッ!!!!!!」

 

 

すると、まなは睦生の背中を思いっきり蹴り飛ばす。驚いてまなの方を振り返ると、そこには溝ができていた。溝ではなく崖のような、深くまで削り取られている。今の声量がミゲフォンの限界であろう。

しかしこれをまともに食らうとなれば重症どころの話ではない、下手をすれば即死は免れない。

 

 

「睦生。ここは私がやる…あなたは外へ行って」

 

「え?どうして…」

 

「外にもう一体いる」

 

「…たしかに他とは違う奴がいるね……なら…」

 

「ん?」

 

「まなが外の方をお願い。こいつは俺が倒す。そして喰う」

 

「……わかった」

 

「頼むよ。まな」

 

 

まなは頷いて工場の外へ出て行く。それを確認した正義はジャスティスペシャルを取り出しながら横へ並ぶ。

 

 

「邪魔だけはするな」

 

「しませんよ」

 

 

ジャスティスペシャルをベルトにセットしてレバーを押し込む。

 

 

【 輝く正義の名の下に!!ジャスティススペシャル!!! 】

 

 

「行きますよ…」

 

「命令するな」

 

 

睦生はエンジンの力、マッスルの力を利用し一気に間合いを詰める。それを予想していたのか、ミゲフォンは口を大きく開け、今にも声をあげようとしていたが、正義がミゲフォンの懐に狙いを定め、銃を撃ち放つ。

見事に命中し隙を見せたところへ、睦月は左拳をその口の中へ思いっきり入れ込む。

 

 

「あがっ…ぁ!?」

 

「……っ!!」

 

 

睦生の口元が裂け始めると、ミゲフォンの腕を噛みちぎる。これで再生は不可能となったが、苦し紛れにとんでもない声量を放ち、逆に今度は睦生の左腕が吹き飛んでしまう。

 

 

「しまった…!!」

 

「何やってんだバカが!!」

 

 

ミゲフォンの両脚を斬りつけると、二度目の斬撃が行われ、体と脚が引き裂かれる。ミゲフォンは怒りや憎しみで戦っていたがこの時は違った。

やはり今のままではこの2人に勝つことは不可能。人を超え、ついにはアンチバイツの力をも超えてしまったこの2人には決して勝てないと。

 

 

「二度も…こんな…!!こんなっ……!!…くそがァァァァァァァッッッッッ!!!!!」

 

「…!?」

 

 

自分の死を察したミゲフォンは、先ほどの限界と言った声よりも遥かに大きい声をあげると、2人は吹き飛ばされてしまう。天に向かって放った声は、とても生命を感じ、それでいて悲しい。まだ生きようとすると強い意志が込められた最後の声であった。

 

 

「ちっ…!これで最後だ」

 

「行きますよ…!!」

 

 

ジャスティカリバーにジャスティスペシャルを差し込む。それと同時に睦生は腕を剣へと変化させ、エンジンの力をそこは付け加える。

 

 

【 スペシャル!!ジャスティスラッシュ!!! 】

 

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉッッッッッ!!!!

 

 

彼らの斬撃がミゲフォンの胸を十字に切り裂く。その時ミゲフォンは声をあげなかった。あげれなかったのである。

睦生はミゲフォンへと近づき、コアをすぐさま抜き取る。体は溶けるようになくなっていき、周りは静寂を取り戻した。

 

 

「これで終わり……!あ、そうだ。まだ外に…!!」

 

「待て」

 

「せ、正義さん…?」

 

「悪いがいつまでもお前を見送ってるわけにいかない」

 

「急に何を…」

 

「今、もう周りに誰1人としていない。いるのはお前と俺だけだ……それにな。俺たちは本来殺し合うべきなんだよ。今更何をとかそういう問題じゃねぇ……ここでケリをつける」

 

 

最初、正義が何を言っているのかわからなかったが、これが普通なのだろう。今までは状況が悪くて戦闘はおろか、こうして互いに共闘したりもした。いつから仲間だとか思っていたのだろうか。

ただ本当にそれが本意なのかどうかわからない。どことなくだが正義からは闘争の意思が伝わってこないのだ。

 

 

「……わかりました。ただいいですか」

 

「なんだ」

 

「僕が勝ったら、この後、好きにさせてもらいます。」

 

「これから先ずっと…ってか?」

 

「はい」

 

「…………」

 

 

しばらく黙っていた正義であったが、笑い始める。

 

 

「いいだろう。ただしまぁ、俺が勝ったらお前の死は確実だがな」

 

「はい」

 

「……勝てると思うなよ」

 

「勝ちますよ」

 

 

その瞬間、外に強烈な光が射した。それと共に彼らは剣を交える。

そうしてついに二つの正義がぶつかり合う。




最近疲れて力が出ないです(ANPNMN)

ついにぶつかる2つの正義。果たして勝つのはどちらなのか?
しwらwなwいwよw

次回も…よろしくお願いします。


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EP16 対峙の行方

皆さまお久しぶりです。素人の辰ノ命と申します。
まず最初に言い訳をさせてください。投稿がここまで遅れたのは決して忘れていたわけではなく、やる気というものがその離れていた期間が長過ぎて、そのぉ…無くなったというか……はい。

そしてもう一つ。
本当に申し訳ございませんでした!!!!!忘れている方もいるかもしれませんが、多分というか絶対いると思いますが(私も忘れてる……)もうバッサリ切っていきながら進めていきます!!すみません!!今後ともよろしくお願い致します!!

前回対峙することとなった2人。果たしてその結末は……それではどうぞご覧ください。


今まで交わる事は度々あった2人ではあるが、こうして剣を交わらせ、互いの命をかけた戦いをするのは初めてと言うべきか。最初の頃に出会った時は何もできず、ただ逃げるだけであった睦生だが、ここまで培ってきた努力や経験が彼の成長を促した。

 

睦生は正義の剣を弾く。しかし正義はすぐさま剣を振るい受け止める。

 

 

「この戦い…絶対に負けませんよ。僕は生きなきゃいけないんだ!!」

 

「お前達アンチバイツが生きたいだと?ふざけるな。散々人を無差別に殺し、食ってきた下衆共が何をほざいているんだ?お前達は人間にとっての悪。この世に居てはいけない存在なんだよ!!」

 

「僕は違う!!」

 

「いいや違わない!!お前もあいつらと同じ血に濡れた化け物だ!!」

 

 

お互いに一歩も引かず、ただただぶつかり合う。それは自分の為なのか、それとも他人の為なのか、或いは2人にしかわからない何かの為なのか…。

睦生はミゲフォンとの戦いで壊れたガラスや鉄の破片をデタラメに投げつける。それを軽々と躱して行く正義ではあるが、気がつくと目の前から睦生が消えている。

 

 

「なるほど……最初に会った時とは大違いだな」

 

「えぇ…正義さんも……」

 

「……何故そこまで力をつける。何故戦う。お前はアンチバイツだぞ?人間の姿をしているだけの。ただの化け物だ。そいつが何故…人類の為に動く?」

 

「僕はただみんなを守りたいんです。それ以上でもそれ以下でもない……僕は化け物になったけど人間としての感情を失ったことはありません…!!」

 

「わからないな…それが本当に心からのセリフなのか……アンチバイツは……俺の……全てを……」

 

「正義さん…?」

 

「くそが…ッッッ!!!!!」

 

「ぐっ!」

 

 

ジャスティスカリバーを水平に力一杯に振るうと、凄まじい衝撃波が睦生を襲う。スペシャルの力が加わっている為、2度の衝撃が彼を突き抜け大きく後退させられる。仮面の下では分からないが、彼の目つきはとても鋭くなっていることは間違いない。自分もそうではあるが、彼はアンチバイツに相当な恨みを持っている。それは名誉のためでも、ましてや金のためでもない。きっと何かがあるはずだ

 

工場はすっかり平坦な土地となっていた。そこに佇むは2人だけ。1人は人々から慕われる最高の戦士。1人は人々から嫌われる最悪の戦士。

瓦礫が崩れる音がする。2人は構える。

 

 

「さぁ全力で俺を殺してみろ睦生。俺はお前を本気で殺す。まぁ…アンチバイツの数を減らす奴がいなくなると思うと、少し面倒な気もするがな」

 

「……あなたにどんな過去があるかはわかりませんが、僕は家族の為に、人の為にアンチバイツと戦わなければならない…」

 

「ほざけ!!」

 

両者の剣がぶつかり、大きな音を立て周りを吹き飛ばす。力を緩めることはない。互いに殺すつもりで。自分の全てをぶつける。

 

 

 

 

 

 

------------------

 

「後を追ってきたけど……」

 

「くっくっくっ。お嬢、お久しぶりですねぇ?……なぁ?」

 

「【リグート】ね…」

 

 

メイズを追って来たまなは何もない森の中にいた。その薄暗さの中に淡く光るアンチバイツの姿がある。それに負けじと目をギラギラとまなを睨み、鋭い歯をギラつかせる。

 

 

「久しぶりだなぁ?おぉ?よくもまぁ殺してくれたなぁ?」

 

 

それはかつてまなによって殺されたメイズ。電球を喰らい、更に多少の電気を扱える。実際かなりの実力ではあったのだが、まなや今の睦生と比べると単純なスペックでは太刀打ちができないのだ。

 

 

「さぁて…復讐の時間だ。いいかこのくそ女。舐めてると痛い目を見ることになるぜぇ?」

 

「……ふーん。そっ」

 

「俺はわかってる。お前らみたいな野郎には勝てないってことくらいな」

 

「ならなんで戦うの…負けるとわかっておいて」

 

「まともにつってんだよアホ。トリッキーな戦いってのを見せてやるよ。ビーケのお人形さん……」

 

 

そう言い終えた途端、リグートの顔を刃がかすめる。それを微動だにしなかった。いや、動からどころか初手が全く分からなかったのだ。しかしそれを見て引くどころが逆にリグートは笑ってみせた。

 

 

「…殺しとけばよかったな」

 

「今やるわ………んっ…!?」

 

 

するとリグートは体を眩く光らせると目の前から消え、後ろから彼女の方を掴む。振りほどこうともがくも一瞬の隙を狙い電流を流す。

多少とは言ったもののそれはアンチバイツレベルではの話。致命的ダメージとは行かずとも、まなに掛かる負担はかなりのものであった。

 

 

「うっ…うぅ……」

 

 

手足が痺れて、まともに立つことができなくなり、その場へと座り込んでしまう。リグートはそれを見ると不気味に笑う。顔が歪むほど口角を上げまなの姿を目に焼き付ける。どうやら簡単に殺すつもりはないらしい。

まなの髪の毛を掴む上げると、自分の口元をベロリと舐める。

 

 

「俺の能力がわかったか?お嬢ちゃん?」

 

「くっ……」

 

「まともにお前らとやり合うつもりはない。だからこそ姑息な戦いをする。プライドなんてねーよ。お前を簡単に殺すとな……俺の気が収まらないんだよ。覚悟しろ。お前を股から真っ二つに引き裂いてやるからな」

 

 

体が自由に動かない程度の電気を流し続ける。苦しむまなの姿を見て、更にその顔は歪んで行く。それから両足首を掴むと徐々に股を開いて行く。開くたびにまなから苦痛の声が聞こえると、リグートは心の底から笑顔をこぼす。

彼女はリグートの笑顔を見て、なぜか怒りや殺意が湧かなかった。前の自分であるなら迷わず殺していただろう。ただ睦生と弥生と少しの間だが生活する内に自分の中に何かが芽生えているのかもしれない。リグートを殺してしまった罪悪感が彼女をそう思わせていた。

 

 

「泣け…鳴け………声を上げろ!!俺を喜ばせろッッッ!!!」

 

「……そっか……」

 

「あ…?」

 

「ごめんなさい」

 

「……ッ……クッ……ハハハハハハハハハッッッ!!!ついに!ついに……ッッ……謝りやがったか!?お前が!?こりゃ傑作だ!!最高だぜ!!ハハハハハハハハハッッッ!!!」

 

「ごめんなさい…リグート。昔の…私は許せなかったの。自分がこうなってしまって…嫌だったの。普通の…生活がしたかった……」

 

「は?今更なんだお前?」

 

「弥生さんにご飯を貰っても吐いてしまった……無機物しか食べられないこの体が…味を感じられないこの体が……嫌だった……」

 

「よく喋るようになったな?ただあんまりうるせーと、股裂くぞ?」

 

「それでもあの人は…あの人たちは…私を受け入れてくれた……だから…!!」

 

「…な、なんだ…!?」

 

 

まなの右腕から禍々しく、それでいて曇りのない真っ白な液体状の触手が飛び出す。それはリグートを包み込むと地面へ叩きつけて遠くへ投げ飛ばす。

それからその液体はみるみる姿を変え、まるでヴァイザーと似ているが、少し違う顔が浮かび上がる。

 

 

「……【 オルギン 】」

 

「---ようやく我が姿を見せることになるとはな。まな、何があった?」

 

「なんでもない。色々あったの」

 

「---お前が話しかけないもので暇だったぞ」

 

「いいから…来るわよ」

 

「---いいだろう」

 

 

リグートは体制を立て直しこちらを睨みつける。憎しみに満ちた目を向け、真っ直ぐにまなの元へと走る。そして自身の体を光り輝かせ、先ほどと同じようにまなの後ろへと回り込む。

 

 

(死ね…!!くそ女ッッッ!!)

 

 

電力を最大にして、今度は確実に仕留めるべく首に手を回そうとする…が、オルギンがリグートの手を噛みちぎると、まなはすかさず左腕を斧に変え、思いっきり振り下ろす。斧が体を突き抜ける衝撃を感じて、半端後ろへ下がる。自分の手を見てから、まなを見るその顔は恐怖に変わっていた。何かを言いたそうに口をパクパクしているが、それは叶わず体が左右に分かれる。

コアだけはなんとか避けたようだ。グチャリと音を立て、傷一つない状態で地面に落ちる。まなはそれを拾い上げるとオルギンが丸呑みしてしまった。

 

 

「……ふぅ……」

 

「---よくやった。褒めてやろう」

 

「前から思うけどなんで上からなの?」

 

「---共にこの体を使用する仲だ。馴れ合いくらいいいだろう?」

 

「…私は嫌だけど」

 

「---……さて、そろそろ睦生という男の元へ向かうか」

 

「睦生?ミゲフォンを倒してるはずよ…多分」

 

「---それならいいが……もう1人の……正義だったか?あいつと一緒で大丈夫か?奴のことを相当恨んでるんじゃなかったか?」

 

「え?……ッ!急いで戻る」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

------------------

 

「カハッ……!!」

 

「ハァ……ハァ……手こずらせやがって……ありえないほどの再生能力。やはり他のアンチバイツとは一線を画しているな…」

 

 

睦生は再生が追いつかないほどのダメージを浴び、まともに立てる状態ではなくなっていた。ヴァイザー自身も完全に回復の方へと回ってしまい、睦生の攻撃・防御をサポートできずにいた。

正義はドライバーのレバーを押し込むと高く舞い上がる。空中でくるりと一回転すると、そのままこちらに足の裏を向け落下する。

 

 

【 スペシャル!!!ジャスティスフィニッシャー!!! 】

「くたばれ!!睦生ィィィィィィ!!!」

 

「こんな所で………」

 

 

片腕を銃に変え、最大火力で正義に打ち込む。決死の銃弾は正義の蹴りの方向をずらし、すんでのところで躱すことに成功する。彼のキックは地面を深くえぐり、大規模な爆発を引き起こした。もしも当たっていたら致命傷どころの話ではなかっただろう。しかし、銃は自分の血肉を使用する為、かなり体に負担がかかる。それを最大限に放ってしまい、既に体は限界を迎え、力なく倒れてしまう。

 

 

「ハァ…クッ……」

 

「外したか……だが、もう終わりだ。お前の体力は限界のはずだ。もう立てもしないだろう」

 

「まだ…だ…」

 

「安心しろ…今、楽にしてやる」

 

 

剣を構えると睦生の心臓に刃先を当てる。何もできない睦生は唇を強く噛む。涙が頬を伝う。本当に死んでしまうとわかった。とても怖かった。だが、声を上げることはできない。それほどまでに体は限界を迎えていた。どの部位を複雑骨折。まず見るにも耐えない形をしているだろう。

 

 

「さよならだ。睦生」

 

「やだ…やめてください……正義さん……」

 

 

刃は睦生の胸に深く突き刺さる。コアを捉える感覚が体全体に伝わる。睦生はピクリとも動かない。体から生気が抜けたようにぐったりとし、あたりは静寂が訪れる。剣をゆっくりと引き抜くと、血を振り払うように横へと薙ぎ払う。

睦生の姿を見てから、正義はバイクを呼び出しそれに跨ると、彼を背に走り出す。

それから暫くしてまなが駆けつけると、何かの異変に気付く。

 

 

「睦生…?大丈夫…?」

 

「………………」

 

「ねぇ嘘でしょ…?睦生ってば…!!」

 

「……………………」

 

 

篠瀬 睦生 正義との戦いにより心臓を貫かれ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死亡




食品レビューの方は以上となります(意味不明

大変長らくお待たせいたしました……いやぁ……言い訳しか出てきませんよほんとに……
あーここまでご覧いただきありがとうございました。これにてヴィランズは終了となります……





ちょっと待って!!ほんとにこれでええの!?
というわけでまだ終わりませんよ!!みなさん読むのやめないで!睦生くんまさかの死亡……?突然の急展開申し訳ナス!!次回もお楽しみに!!!


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EP17 星屑の集まり

おっはー!!!おっはぁぁぁぁ!!!!
稽古の続きだ!!

前回、命を落とした睦生。これから一体どうなってしまうのか。
皆さんは私の小説に耐え切る事ができるでしょうか。それではどうぞご覧ください。


弥生は毎日のように泣いていた。泣く場所はいつも同じ場所で仏壇の前であった。そこには夫、睦吾郎と……睦生の写真が飾られていた。

まなは毎日それを見る。弥生が悲しむ姿を見るのも苦しかったが、何より睦生が死んでしまったことが何より悲しく、そしてとても苦しい。

 

 

「弥生さん…」

 

「ごめんね…まなちゃん……毎日こんな……っ……ごめんなさい……」

 

「うぅん…そんな事ありませんよ。私もとても辛いです……」

 

 

睦生が死に、弥生と暮らしてからすでに3ヶ月が経過していた。弥生はまなを本当の娘のように可愛がっていた。以前からそうしていたが、今となっては彼女しか家にいない。尚更だろう。しかし他に理由があるとするなら、まなに逃げているのかもしれない。家族を失う悲しみはまな自身もわかっている。

自分が代わりに精一杯、弥生に尽くす。完全な代わりでなくてもいい。彼女の気持ちが少しでも軽くなればそれでいい。

 

 

「買い出しに行ってきます」

 

「うん。いつもごめんね」

 

「…いってきます」

 

「いってらっしゃい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

------------------

 

ショッピングモールに着き、食材を選ぶ。やはり広くて安い。

純粋に買い物を楽しめるのはみんなと2人と暮らしたからであろう。ただぽっかりと空いた穴は楽しい事をしても埋まらなかった。

ある程度、買い出しを済ませるといつもの道を歩き、周りの景色を眺めながら、自分が食べれないので弥生に作るメニューを考える。

 

 

「…………ん……」

 

---ほう。あいつが来たな

 

「何の用…ビーケ」

 

 

背後に気配を感じ振り向くと、かつて仲間だと思っていたビーケが姿を現した。とても優しそうな表情でニッコリと微笑む。あい変わらず裏が読めない奴である。

 

 

「戦うの?」

 

「いえ、お嬢。そんなつもりはありませんよ」

 

「私がこの力を使ったから今更あなたの下に付きます…と、でも言うの?」

 

「いえ」

 

「じゃあ……何の用」

 

「お前の力は確かに強大だ…だが、そんなものでは私を倒すことはできない」

 

「やってみなきゃ……わからないわよ?」

 

「やめておけ…私が今日来たのはお前に忠告しに来た」

 

「忠告……?」

 

「これ以上、私……メイズに手を出すことは許さん」

 

 

ビーケはそういうと、ある写真を見せつける。そこに写っていたものを見ると、まなは恐怖に満ちた顔を浮かべる。

弥生の姿がそれには写されていた。ビーケを見ると笑顔が無表情へと変わり、写真をぐしゃぐしゃに丸めてそこらへ捨てる。

 

 

「……こういう事です」

 

「ビーケ……ッッッ!!!」

 

「ふっ。その表情とても美しいですよお嬢」

 

「…ッッッ!!!」

 

「ヴァイザーがいなくなった今、後は仮面ライダージャスティスとあなたのみです。ですが、そんな2人といえどかなり戦闘能力を有していますね?私たちメイズはそれが非常に困るんですよ……わかります?」

 

「……」

 

「もしこれ以上手を出す…というのであれば……わかるな?」

 

「……えぇ」

 

「お分り頂きなによりです……ではお嬢。お互いに争いがないことを…祈っていますよ?」

 

 

そういうとビーケはバイクの姿へと変わりそのまま走り去る。その姿を見て、まなは拳を握りしめて、言葉にならない怒りと悲しみが沸き立つ。人々のため、大切な人を守る為に戦っていたが、今度は大切な人を守る為には戦うなと言われた。ビーケが言うことが本当であれば弥生だけは見逃してもらえるのかと、思ってしまったが、睦生の変わりとなる為、この数ヶ月メイズたちと戦ってきた。だからこそ悔しい。

 

 

「どうしよう…」

 

「---人間という奴は大変だな。1人だけ…というのができないのか?我は理解に苦しむがな」

 

「……あなたにはわからないわ」

 

「---ふっ……しかしこうもされると我の栄養源がなくなるな……仕方がない。もう少し待つべきだが、そろそろ頃合いだろう」

 

「え…?」

 

「---墓荒らしに行くぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

------------------

 

皆が寝静まった真夜中に1人。墓場に女性が立つ。幽霊ではないまなである。今から墓を掘る。

 

 

「ねぇほんとに大丈夫なの…?」

 

「---我に聞くな。悪いかどうかなど関係ない」

 

「…………で、どうするの…ここって」

 

 

彼女の目の前の墓石に『篠瀬 睦生』と刻まれていた。そう、彼女達は今から彼の体を掘り出すのだ。何故こうなったのかは分からないが、オルギンに何か考えがあってのことだと思うが……

 

 

「---我が掘ってやろう」

 

「……うん」

 

 

オルギンは瞬く間に穴を掘り、睦生を見つけると地面へとそっと置く。その姿を見たまなは涙が引っ込んでしまった。目を丸くして地面にヘタリと座り込む。

目の前には死んでしまった睦生の姿が、変わり果てた彼の姿があると思い込んでいた……だが、そこにいたのはまるでただ寝ているかのような、何事もなかったかのように傷一つなく仰向けに寝る睦生の姿があった。

 

 

「これって……」

 

「---このヴァイザー。攻撃・防御に転移出来ずに困っていたんだろう。こいつは正義の攻撃によるダメージを修復しようと、再生することに全てを注いでいた……まぁただの予想ではあるが、差し詰めコアと同化したのだろうな」

 

「コアと同化?」

 

「---そのおかげでなんとか生きている状態だ。よくもまぁこの長い期間。こいつを殺さず生かし続けたもんだ。ヴァイザー自身もかなり危険な行為であるというのにな……」

 

「ちょっとよく分からないんだけど……どういうことなの……?睦生はどうなったっていうの…?」

 

「---……こいつらはすでに二つの生物として独立できている状態だ。一応だがな。ただコアの損傷はかなりのもの。ヴァイザー自身がコアにならない限りこの男は確実に死んでいただろう。しかしその行為はヴァイザー自身、命渡す形となる……つまり……ん?」

 

「……この気配…」

 

 

墓場の周りの木々がざわつく。この気配は異形であることはすぐにわかった。メイズ・アンチバイツだ。

その姿を暗闇からゆらりと現す。雑魚のアンチバイツと同じ姿であるが、そのただならぬ奇妙さは今までに感じたことがない。

 

 

「メイズ……だけどなんか違う」

 

「---あれは……メイズだが自己強化に失敗したらしいな。制御ができてない。完全体になりきれなかった出来損ないと言ったところだが……かなりの強敵に変わりはない」

 

 

無言のままこちらにゆっくりと近づいてくる。目線を見ると睦生を見つめているようだ。どうやら目的は彼らしい。ビーケの差金だろう。

 

 

「…行くわよ……オルギン」

 

「---いいだろう」

 

 

片方を槍。片方を刀に変え構える。この数ヶ月で形状変化の力が増し、それぞれ部位別に変化させられるようになっていた。

しかし、まなは足に力を込めるとハッとして腕を下ろす。そう、戦えば弥生の命が危ないからだ。ビーケがいつどこで見ているかが分からないままでは、まともにメイズとやりあうのは得策ではない。だからと言って戦わなければ睦生も守れない。

 

 

「キシャァァァァァァァァァァッッッッッッ!!!!!」

 

「……ッッッ!!」

 

 

メイズはその場から飛び跳ねると、目にも留まらぬ速さでまなの肩を切り裂く。反射的に肩を抑えると、続けて背中を切りつけられる。何もできぬまま、体に傷跡が残されて行く。

 

 

「---おい。死ぬ気か?」

 

「だって…戦えば睦生が…!!」

 

「---お前が死ぬぞ?馬鹿を言うな。早く戦え」

 

「いや…!!!」

 

 

メイズの猛攻についに耐えきれずしゃがみ込んでしまった。息を荒くし、メイズの動きを見ようとするも、すでに彼女はどうすることもできずにいた。彼女が追う頃には全く逆の方向へと移動し、鋭い爪を立て切りつけられる。

 

 

「……む…つき……」

 

 

名前を呼んだ瞬間、彼女の顔にめがけ爪が伸びる。まなは目を瞑る。覚悟しようとした。

 

だかその爪はまなに刺さることはなかった。むしろメイズの腕がへし折られ剣を突き立てられている。

その剣を彼女は見たことがある。

 

 

「睦生…?」

 

「ごめん……大丈夫?」

 

「……う…ん…」

 

 

すると、まなはふっと意識を失い倒れてしまった。睦生はまなを受け止め、地面へ寝かす。それからメイズへと向き直る。肩を回し、相手を睨みつけ腕の剣を振るう。

 

 

「---いいか睦生。よく聞け。俺はお前を生かそうとしてほぼ瀕死状態だ」

 

「ありがとうヴァイザー…でも意外と悠長に喋れてるよね?」

 

「---アホか。きついんだよ…それとその影響で俺達はブレード以外何も使えない。身体能力もそれなりには下がっているが、それ以外特に問題はない」

 

「それってかなり大問題だよね……」

 

「---わがまま言うな。来るぞ」

 

「うん…ありがとうヴァイザー。行くよ!!」

 

「---あぁ!!」

 

 

メイズは体勢を低くし、睦生の懐に向かって飛び込んでくる。それを剣で受け流し、刺し貫いて地面へ叩きつける。口を大きく開け、噛み付こうとするその口に腕を突っ込み黙らせる。

そして睦生は腕を突っ込んだまま、上空高くへと飛び上がり、腕を元に戻してからメイズの脚を掴むと、地面に向かって急降下を行う。

何かを察したメイズは暴れるが、しかし腕を突っ込まれているため、その行為はまるで意味をなさない。

 

 

「くらえ…!!!」

 

 

嫌な音を立て、メイズの体の骨が砕ける音が聞こえる。そしてその隙を狙いメイズを食べ尽くす。一口食べる度に無我夢中になって喰らう。自分でも驚くくらい空腹であったのだ。

跡形もなく喰らい尽くすも満足できなかった。自分の体が何かが起こっているのがわかる。ヴァイザーと同化したのが原因の一つだろう……。

 

 

「…!!まな!?」

 

「…………うぅ……」

 

「大丈夫…?」

 

「睦生…?」

 

「うん。睦生だよ」

 

「睦生…!!」

 

「うおっ!?」

 

 

まなは睦生を抱きしめると、それに驚いた彼はあたふたと手をどこへやっていいのやら分からず、手が忙しいことになっている。

しかし一旦落ち着くとまなを抱きしめ返す。

 

 

「---これが青春ってやつか?」

 

「---さぁな我は人間に関してはよく分からん」

 

「---…何だお前」

 

「---我はオルギン。この娘に寄生している」

 

「---はっ、そうか」

 

 

睦生達は家路に向かう。自分の帰る場所へ。墓場については申し訳ないが、大問題となるだろう。

その前に母に何と説明したらいいのか…そんなことを思いながら、睦生とまなは理由を考えつつ道を進む……

 

しかし彼女は忘れていた…この行為が最悪の結果を招くことになるとは……

 

 

 

 

 

「どうやら……私の忠告を無視したようで…………さて、始めるか」

 

 

メイズの闇が今、動き出す。




今現在ドバーッと書いてます。

とりあえず書きたいもの書くので大体どのくらいで終わるかは不明な所でございます。この分だと30話行かないんじゃないか……?これマジ…?

さて、睦生くん復活させましたが…色々代償がありますねぇ…くぉれは。次回一体何が起こるんでしょうか…というわけで次の小説でお会いしましょう。ほんじゃ待ったのぉ〜どーもありがとぉー


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EP18 失敗の繰り返し

素人ハーメルン調教師の辰ノ命と申します。

前回、復活した男!!篠瀬 睦生!!
あぁ^〜良かった助かった生きてるはっはっはー!!帰ってこれタァ〜!!

と言うのもつかの間、大事なことを忘れてしまっていた……あ、ふーん(察し

それではどうぞご覧ください。


睦生は謝罪した。

めちゃくちゃ謝った。

かの実の母に頭を下げて、泣くほど謝った。

弥生は怒ったが、泣きながら笑っていた。睦生もまなも泣きながら笑いあった。3人でその日はずっと話したのを覚えてる。

それから1週間が経ち、自分の正体をひた隠しにしてきた。死んだはずの男が生きていたとなればとんでも無い事になりかねない。それに1番厄介なのが、正義である。もしバレることがあれば戦いは逃れられないだろう。今現在の自分ではまともに戦うことはおろか、今度こそ塵ひとつ残さず消されそうである。

 

 

「暫く外に出てないけど……ホントにきつい……」

 

「---あぁ。暇だな……睦生」

 

「ん?なに?」

 

「---お前わかってんだろうな?自分の今、起きている事がよ」

 

「わかってるよ。生きてるって事を隠し続けるんでしょ?」

 

「---違う。今更だが、お前の体のことだ」

 

「…あぁ……そういえばなんかあるんだっけ……」

 

 

忘れていたが自分は一度死んだはずの身である。実際本当に死んだわけではないが、もしヴァイザーの判断が少しでも遅れていたら、自分はもうこの世にはいないだろう。

だからこそ自分の身に何かが起こってるのは確かである。ヴァイザーとは互いに一つの生命体として成り立っていたが、今回は再同化という一見元に戻ったという感じではあるが今までのものは違うらしい。

 

 

「---俺はお前のコアにとなり生き長らえた。だが、それは容易なことじゃない。人間の急所は馬鹿みたいにあるが、俺たちアンチバイツにとって急所はたった1つ。頭を潰されようが、両腕を蝶結びにされようが、目玉をくり抜かれようが、俺たちにとって大したことはない話だ」

 

「……(大したことあると思うんだけど…)」

 

「---そのたった1つが、わかっていると思うがコアだ。たかが、1。されど、1だ。このコアがあるからこそ、俺たちは複雑な形状変化が行える……そんな体の全てを任されているコアが欠損でもしてみろ。再生はおろか、動く事もできやしなくなる」

 

「今回はハンメアーと同じようにコアが割れたとかそんなんじゃないの?…半分にはされたけど……」

 

「---あぁ…本来なら俺とお前はそこらのアンチバイツとは違う。再生力で言えば群を抜いている…だが、相手があの正義だったのが災いしたな」

 

「正義さんが…?」

 

「---俺もよくはわからん。何にかしらあいつが仕込んだか……何はともあれ、俺たちは今、ファングとブレードの2つの武器しか持っていない。さらに言えば、再生能力も身体能力も前よりも劣っている始末だ……あいつに勝てたのは正直、驚いたがな」

 

「あいつくらいには一応勝てるって事なのかな…?」

 

「---本来なら瞬殺だ。あんな小物」

 

 

するとコンコンと、ドアをノックされる。

きっとまなが帰ってきたんだろう。

 

 

「まな?いいよ入って」

 

「入るわよ」

 

 

ドアが開くと、まなが買い物袋を持って入ってきた。食材の買い出しに行ってきた訳ではなく、こうして自分たちが外に出られない代わりに菓子類やらを買ってきてもらっている。早く外に出たいのは山々なのだが、こればっかりはどうしようもない。

しかし最近になって気になる事ができた。正義がまなに対して手を出さない事だ。なにかしらの考えがあるのだろうけれど、意図してそれをやっているのか分からないうちは油断できない。まなもそれについてはわかっているのか定かではないが……

 

 

「---…まな。この近くにアンチバイツの気配がする」

 

「ほんと?」

 

 

アンチバイツの気配を感じられない。オルギンがいう近くというのがどれほどかは分からないが、それすらも感じ取れなくなっている。

かなり厄介な状況である。

 

 

「睦生ちょっと出てくるね」

 

「---大人しくしていろ。ヴァイザー」

 

「---…けっ」

 

 

睦生は「いってらっしゃい」というと、まなが出て行きドアが閉まるまで手を振った。そして大きなため息をつく。

 

 

「……動かないってここまで嫌な気分になるのかな……」

 

「---お前も欲してるんだろ。血肉を」

 

「……やめてくれ……さて、ちょっと母さんの手伝いでもしないかな」

 

「---ニートだったか?恥ずかしいものらしいな」

 

「……やめてくれ……ほんと……」

 

 

自分の部屋を出て、キッチンへ向かうがそこに母の姿がない。いつもならば料理を作っている時間帯のはずである。最初は出掛けているのだろう、そう思った。

しかし様子がおかしい。冷蔵庫は扉が開いたままであり、野菜は切っている途中で、よく見ると包丁は床へと落ちている。明らかに何かが起こったことは間違いないのだ。

 

 

「……ヴァイザー」

 

「---睦生。窓を見てみろ」

 

 

ヴァイザーに言われて窓を見ると、カーテンがなびいている。開かれている。まなは部屋のドアから出て、その時に母いたのだろうか。入れ違いか。或いはそれを見計らって母を連れ去ったか。

連れ去られたと決めつけるのもどうかと思ったが、睦生のそれは確信に変わる。窓に近づいてみると傷跡が見える。ぶつけて出来たものである。かといってこの家の誰かがぶつけたものなのかと言われると違う。これは爪痕だ。そしてその近くに母の服の切れ端が引っかかっている。

 

 

「……ヴァイザー……」

 

「---あぁ。わかってる。だが、お前の今の状況を理解しているな?」

 

「わかってるよ……だけどこれ以上……大切な人を失いたくない…!!」

 

「---……ひと昔前の俺ならその言葉鼻で笑って行こうとは思わなかったが……行くぞ睦生。弥生を救い出す」

 

「うん!!」

 

「---飯を食いそびれた仕返しだ。派手に暴れてやる」

 

「……だよね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

------------------

 

「どうやら……お前の息子は釣れたらしい。弥生という女」

 

「……睦生になにをする気なの?」

 

「フフフッ。いえいえ別にどうしようというわけではありませんよ。弥生嬢」

 

 

とある研究施設。ここは昔メイズ達が産まれた場所、作られた場所である。大きなカプセル内に緑色の液体が入っており、そこにメイズであろう化け物が身を丸めて入っている。他にもいくつも同じカプセルがあり、中にメイズ達が眠っている。それから正面には複雑な機械がズラリと並び怪しげな雰囲気を醸し出している。

ビーケはそこで弥生を連れ出し、椅子に座らせ、手と足を拘束し動けない状態にして睦生が来るのを待っていた。

 

 

「ここはメイズ・アンチバイツを生み出している場所なんでしょ?丁度いいわ。睦生があなたを見つけてボコボコにしちゃうから」

 

「ほぉ……息子さんが私を?1度もこの私に勝ったことがおありでないのにも関わらず?」

 

「睦生はね……睦吾郎さんが亡くなってから……いえそれよりずっと前から私に黙って、必死になって、みんなのために戦ってきたのよ。そんな息子を私は誇りに思ってるし、だからこそあなたみたいな化け物は絶対、睦生に……」

 

 

最後に何かを言おうとした瞬間。ビーケは椅子が倒れるほど弥生の頬を殴った。口の中を切って血が滲み出る。しかし弥生の目はビーケを睨みつけ、全く臆していない表情を見せる。

 

 

「わからないな……いずれあの男は血眼になって乗り込んでくるだろう。しかしまぁどれほど時間がかかるか。奴は今、気配を感じ取ることも、形状変化もろくに出来やしない。ましてや身体能力、再生能力の低下……これで勝てるとでも?私に勝つことすらできていない男が、前よりも遥かに劣る力でこの私に」

 

「えぇ……あなたは負けるわ。だって……睦生は…………私の息子だもの」

 

「……馬鹿馬鹿しい」

 

 

ビーケはそう言うと、操作盤は向かう。そこでなにやらパスワードのようなものを打ち込んだ後、ボタンを押すと1つのカプセル内の液が吸い出されていく。

全てなくなるとカプセルが開き、中からメイズが唸り声をあげながらゆっくりと出てくる。ヨダレを垂らし、全くと言っていいほど知性を感じられない見た目をしており、まるで獣のように周りの匂いを嗅いでいる。

 

 

「…う…っ!?」

 

 

弥生はビーケと違い、その恐ろしい姿を見て思わず声を漏らしてしまった。するとこちらに気づいたのか、奇声を発しながら走って近づいてきている。

しかしそこへビーケが目の前に来ると、ピタリと止まり、大人しくなってしまった。

 

 

「いい子だろ?もし私が止めていなければお前は……まぁ感謝することだな。お前にはまだ生きていてもらわなければ困るんだよ」

 

「…………っ!」

 

「……よし、そうだな…お前の名前は『 シレン 』だ。この写真の男を…………食い殺してこい」

 

 

話を理解したのか、そのシレンというメイズは研究所の階段を駆け上がり、外へと飛び出していった。男というのはきっと睦生のことであろう。弥生は口ではそう言っていたが、睦生の弱体化の話は聞かされており、かなり心配でありとても不安なのだ。今は無事を祈るしかできない自分が悔しくてたまらない。

 

 

「さて、睦生。よくもまぁ生きててくれたなぁ?……そしてまな。約束を破るというのはどういうことか身を持って味わってもらう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

------------------

 

家を飛び出したまなは、ビルとビルの合間を跳びながら現地へと向かっていた。しかし彼女は妙なことに気づいていた。そのメイズの気配が近くだったのは確かなのだが、かなり薄くなっているのだ。感じ取れないほどではない。けれどこの分だと死にかけているか、単にアンチバイツの方が気配を殺しているか。

 

 

「……なんか、全然感じ取れなくなってきたんだけど」

 

「---……怪しいな」

 

「なにが?」

 

「---して…やられたという感じのようだな」

 

「え?」

 

「---そこで止まれ。あそこを見てみろ」

 

 

すぐ近くのビルの屋上に立ち止まり、現地を見てみるとまなは目を開いて驚いた。

 

 

「これは…!!」

 

「---むごいな」

 

 

見ると、メイズであろうそれは肉塊のように原型を留めておらず、されどその状態のまま生きているようだ。先ほどまで感じ取れた気配だったが、急に薄れたのはこのせいであろう。しかしおかしい事に出てきたばかりにも関わらず、メイズの悲惨な状態を見る限りまな達が向かう直前にやられたようだった。

 

 

「…罠…って事でいいのかしら」

 

「---そのようだな……」

 

 

まなは右腕を刀に変えると、すぐさま後ろは振り返り構える。気配を感じ取っていた。真後ろに体中触手だらけの怪人がいるのである。触手といっても、誰しもが想像するようなヌメヌメしたような物ではなく、1本1本が鋭利な刃となっている。

 

 

「あなたはメイズでいいのよね」

 

「…………」

 

 

そのメイズはなにも答えず、ただ触手をうねうねとさせている。

見つめ合い続けて5分が経った頃ようやくメイズが動き始め、戦闘態勢に入ろうとするまなであったが、メイズの方は地面に傷を付け始めた。

 

 

「…?」

 

 

傷跡を見ると【 ティーシル 】と書かれていた。このメイズの名前だと思われる。

 

 

「ティーシル…あなたの名前?」

 

「…………」

 

 

ティーシルは何もしてこない。ただその触手をうねらせているだけでこちらに危害を加えてこない。

しかし暫くすると触手が広く、かなり伸びてきているのがわかる。みるみるうちにまなの周りを刃が覆う。

 

 

「……まずいかも」

 

「---そのようだな」

 

 

そして急に動きが荒ぶったかと思うと、全ての触手がまなに向けて一斉に襲いかかってきた。思っていた以上に量が多く、更に1つ1つが不規則に動いているため避けることが困難である。

まなは避けながら人がいない方へと跳び、ティーシルを森の方へとおびき寄せることにした。

 

 

「さて、この後どうするかだけど……」

 

「---とにかくこいつの触手は厄介だな。我ならばこの木々を盾にするがな」

 

「それ名案だと思う」

 

 

地面に刀を突き刺し、ティーシルが追いつくのを待つ。意外とスピードはそうでもないのかかなりの距離がある。

 

 

「ここで向かい打つわ」

 

「---…くくくっ。メイズも進化したな。味が楽しみだ」

 

「そう。行くわよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

------------------

 

「まずはまなを探して状況を話そう」

 

「---あいつどこへ行ったんだ…」

 

「さぁ……っ!?あぶなっ…!!」

 

 

睦生は避けると同時に足を滑らせ、ビルの上から地面に叩きつけられる。それを見た周りの人達は悲鳴をあげて遠くへ逃げて行く。

この程度なら毛ほども痛くないはずなのだが、弱体化によってかなり痛い。特に背中が。

 

 

「いったた……ま、まずいな…正義さんにでもバレたら……」

 

「---んな事は後回しだ。来るぞ」

 

 

上を見ると、唸り声をあげて一匹のメイズが落ちてきた。見るからに危険そうである。それに筋肉も大きく、弱い部分が見つからないほどがっしりとした体型だ。今の自分達で勝てるとは到底思えない相手だ。差し詰めビーケの命令である事はわかった。それほど睦生を殺したいらしい。

 

 

「ビーケはとことん僕を殺したいらしいね」

 

「---目障りなんだろうな。俺たちが強くなる事が嫌で嫌で仕方ないようだな」

 

「それならここでこいつを倒して、まなを見つけ出して母さんを助けて、ついでにビーケを倒す」

 

「---最初からそのつもりだ」

 

「行くぞメイズ……お前を喰ってやる!!!」




今、暇さえあれば書いてる状態です。
ぶっちゃけきつい(本音)いや、やっぱりきつくはない(本音)

とりあえず次回は2話使ってティーシル戦とシレン戦を終わらせます。
メイズ編も残すところ大体110弱でしょうね(大嘘)

まぁ、22話がメイズ編最後となりますけどね……初見さん,。
23話以降は最終章になるよう予定です。終わりは近づいていますね……。
皆さま!最後までお付き合いください!それでは次回のオフ会でお会いしましょうまたのぉ〜いぃや!


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EP19 開始の合図

次で入っちゃう……(20話)

じゃあ今回は前置きなしでパパッと書いて、終わり!!

それではどうぞご覧ください。


なんとかここまでは追い詰めた。いや追い詰められたといっていいのか。

まなはこれまで幾多のメイズ達と戦ってきたが、どう考えても今回の相手はメイズの概念を破っているとしか思えない。

まず形状変化というもの自体が、アンチバイツの中でも数匹しかできないのである。ユニクがその1つであった。しかしメイズと呼ばれるアンチバイツが姿を現し、生き物を食らう彼らにとっては珍しい、いや気味が悪いといってよかった。物を食らう事で強くなる彼らを。アンチバイツを殺すためだけに作られた生き物を。

 

しかし今、目の前にいるこの触手のアンチバイツはどのメイズよりも異質を放っている。

まなはこのメイズからは何も感じられないことに気づいたのだ。まるで本当に殺す為だけにいる殺人マシンのような。とても冷たく底が知れないなにかが見えるような気がした。

 

 

「ハァッ!!」

 

 

迫り来る触手の群れを刀一本であしらう。もう片腕はチェーンソーに切り替え、ティーシルの隙を伺うことにする。ティーシルは全くと言っていいほどなにも考えていない。その証拠に触手は彼女を狙い続けてはいるもののデタラメに、そして不規則に暴れまわる。

一見、馬鹿の一つ覚えであるこれはまなにとって非常に厄介であり、いつどこから自分を狙ってくるのかがわからないのだ。

 

 

「…っ!!隙が全く見つからない…!!」

 

---困ったな。このままでは体力が持たんぞ。

 

「わかってるわ!」

 

 

チェーンソーを力任せに横へ振るうと、ほとんどの触手は弾き飛ばされ、一瞬ではあるがかなりの隙を生むことに成功した。

これを好機と刀だった腕を槍へと変化させ、残りの触手を払いのけて一直線にティーシルの懐へと向かう。

 

 

「悪いけどこれで終わりよ」

 

 

槍の先端はしっかりとティーシルの胸を刺し貫いた。完全にコアを捉えている。まなは勝利を確信した。

だが、様子がおかしい。元々このティーシルはなにを考えているのかわからないほど気持ちを表情に出さないが、この時は違った。まなは触手に生まれたティーシルの顔を見ると、ゾッとするほど満面の笑みでこちらを見ていた。

その顔を見てから、背中に激しい痛みが訪れる。

 

 

「かはっ…!」

 

---こいつコアを破壊したはずなのにどういうことだ。

 

 

余った触手が彼女の背後から何本も突き抜ける。間一髪のところでオルギンがコアをずらしてくれたおかげで命拾いしたが、確かにコアを捉えたはずであるにも関わらず何故このメイズは苦しみもがかないのか。

すぐさまティーシルを蹴飛ばしてまた更に距離を開こうと走り出す。

 

 

「一体…どういうことなの…」

 

「---……と、あのメイズ。コアを破壊されているのは確かだ。しかしあいつ苦しむどころか平然としているな」

 

「……まさかだと思うけど、その破壊されたコアが一瞬にして再生したとか」

 

「---それはありえないな。ヴァイザーでさえコアの再生はかなり難だったはずだ。たかがメイズだろうとそんな芸当できるとは思わんがな」

 

「……なら、コアがいくつも体内にあるってことは考えられない?」

 

「---可能性としては0に等しいぞ。コアを多く抱えて戦うなど体への負担が大きすぎる」

 

「それがあのビーケだとしたらやれるはずよ」

 

「---……なぜあいつならと言い切れる」

 

「勘よ」

 

「---ふっ。お前もだいぶ頭が緩くなってきたな」

 

「……なんかイラッとした」

 

 

やはりまなの方が格段と早い。大きく距離を空けることができた。

オルギンが言うことが確かであるなら、ティーシルはコアの負担で体が重くなっているのかも知れない。アンチバイツに感情はあるのかないのか。彼らはないと言っているが、今まで会ってきた中でもこのメイズは異常だ。

その姿を見ていると、同士ですら道具のように扱うまでになったビーケにイラつきを隠せない。

 

 

「アローで行くわよ」

 

「---あの触手に遠距離攻撃か?」

 

「やるだけやってみるの」

 

 

ティーシルは徐々にその距離を縮めてきている。触手の隙間からチラリと見える表情は、まなを傷つける度に快感を覚えていると言った顔だ。

背中の傷も再生しきっている。後は狙いを定めて、そのコアを撃ち抜くだけだ。

 

 

「---当たるのか?」

 

「当てるつもりでやる」

 

 

まなは不規則に動く触手の間をジッと観察する。

大木すら一刀両断するほど、鋭利な刃物がゆらりゆらりと近づいてくる。間合いに入だだその瞬間、わずがな隙間目掛けて矢を放つ。一直線に矢は間をすり抜け、矢は2つ目のコアへと突き刺さる。

 

 

「……よし!」

 

---しかしまぁ相手はまだまだコアがあると言ったところか。

 

 

予想通りコアが重みとなり動きが鈍くなっているようだったが、コアが2つ無くなると同時にティーシルの動きは見違えるほど俊敏になっているのがわかる。その証拠に触手の一本がまなの元へ伸びる。

すんでの所を躱すも、やはり動きは他のアンチバイツと同等レベルには変化しているようであった。

 

 

「あといくつくらいあるのかしら」

 

---さぁな。この分だとあと3つほどあるんじゃないか?

 

「2つなくなったら……かなり苦労するかも」

 

---そうなる前に最後の1つを潰せばいいこと

 

「簡単にできればいいわね」

 

 

これが並のアンチバイツの状態だとすると、残り3つのコアがあるとして1つ潰す毎により素早く、より強くなるということである。

まなはティーシルの攻撃を捌きながら隙を伺う。

 

 

「手数…っ!!足りない…!!!」

 

 

並であったとしても、数で言えば格段に相手の方が有利である。こちらがいくら他のアンチバイツよりも優れているからと言って、数の多さが極端にその実力差を埋めている。

次第にまなは遅れを取り始め、何本もの触手によって切り裂かれて行く。そして最後に捌こうとした触手が彼女の胸を引き裂いたのだ。

 

 

「うっ……っぐ!!!」

 

---まなっ…!!

 

 

そのまま吹き飛ばされ近場にあった川に勢いよく着水する。飛沫が飛び散り、周りの木々にピシピシと降りかかる。

 

 

「はぁ…はぁ……これじゃ…2つなんてとても…」

 

「---……仕方がない。我はまだ死ぬ訳には行かないから」

 

「なに?…オルギン……」

 

「---我に主導権を寄越せ。こいつらを片付けてやろう」

 

「え…?」

 

「---どうした?ここで2人一緒に死ぬか?我はごめんだぞ?」

 

「……やれるの?」

 

「---見ておけ……少々我の養分になってもらうだけだ……」

 

 

そういうとまなは力が抜けたように水に浮かび続ける。ティーシルがゆっくりと近づいて、射程距離内へと入るとまなは浮かぶのをや目立ち上がる。ポタポタ水を垂らしながら、ティーシルを睨みつけるその目は、彼女の眼とは思えぬほど釣り上がり、まるで獰猛な獣のように恐ろしいものへと変わっていた。

 

 

「さぁ……---我の力をその身をもって味わってもらおう」

 

 

触手の先端が一斉に彼女の元へと向かう。

この場合は避けるか防ぐかの二択だ。だが、今の彼女……オルギンにとってはそのどちらでもない。

片腕をチェーンソーへと変化させると、触手を退かすように横へと薙ぎ払う。すると向かってきた触手はバッサリと切られ、無残にもあちこちに散らばってしまったのだ。

ティーシルはそれを見て笑顔が消えた。いや笑ってはいたが、状況が受け入れられないという間の話であり、自分の身に起こった事柄を理解すると、こちらを見ながらゆっくり後ろへ下がり始める。

 

 

「---なんだ?なにがあったかわからないという顔だな」

 

「…!!……!!!!」

 

「---我はな。腹が減って仕方がない。喰っても喰っても我のこの空腹を満たせるものがない。無機物と我と同種族のお前達メイズ以外が食えないから……そういうことでもない。ただ我はなにかを食いたいという欲求がふつふつと湧いてくるのだよ。特に理由などない。ただその欲のまま我は喰らうのだ」

 

 

オルガンの表情はとても穏やかである。しかしその顔からはただならぬ恐怖すら感じるのだ。

ティーシルは野生の直感でそれを理解した。だからこそ今やるべきことはなんだ、と自分の頭の中で考えた。今までやらなかった事を、ここに来て初めてやった。これからこの女から逃げなければならない。

戦ったら確実に殺されてしまう。

 

一歩踏み始める毎に、一歩下がり。また一歩踏み出せば、一歩下がる。

そしてもう一歩踏み出た時、ティーシルは敵前で振り返って走った。初めての逃亡。初めての恐怖。色々な感情が体中を、頭の中を駆け巡る。ただ今は逃げなければならないとティーシルの脳が判断したのだ。

 

 

「---どうしたティーシル。どこへ行こうという?我を殺さないのか?……ならば今、楽にしてやろう」

 

 

片腕を鎖鎌へと変化させると、鎌を振り回しティーシル狙いを定める。そして思いっきり加速した状態で投げつけると、鎌は逃げるティーシルを追い抜き、刃先は彼の喉元に当たる高さで一旦止まる。

察したのか触手で自分の前側を覆うように絡ませるが、オルギンは力任せにそれを引き戻すと、触手の盾は全く意味をなさず真っ二つに両断されてしまう。

すかざすオルギンはコアを3つ抜き取ると、メイズ一体をものの数秒で食い尽くしてしまった。

 

 

「---…こんなところか……さっきからコソコソと我を監視しているようだが、一体我に何の用だ。仮面ライダー」

 

 

そういって茂みの方を見ると、正義が仮面ライダージャスティスに変身した状態で姿を現した。

 

 

「---覗き見か?いい趣味をしているな」

 

「悪いが冗談が通じるほど、俺はお前達と親しくするつもりはない」

 

「---ならば、要件を聞こう」

 

「……アンチバイツ。どこから来たのか、目的も不明の謎の生命体……だったが、最近ある一体を実験に使わせてもらってな。色々わかった」

 

「---………」

 

「突拍子もないが、アンチバイツはこの地球の生き物ではない。その証拠にDNA鑑定を通しても、地球のものとみられないものが多く検出された……俺がライダーになる前からもこの世界にはアンチバイツが蔓延っていたそうだな?」

 

「---……らしいな」

 

「…………しらばっくれるのもいい加減にしろ」

 

「---なにを言いたいのかわからないが」

 

「…そのDNA鑑定でもう一つ、これに関しては俺も驚きを隠せなかった……だから俺はお前らを泳がせた……そう、加奈井 まなのDNAが僅かながら検知された」

 

「---だからなんだという?」

 

「なぜ彼女のDNAが検知されたのか。単純に考えれば彼女がアンチバイツを生み出している可能性が少なくても0ではないと推測がたてられる」

 

「---…………」

 

「だが、俺はそうは思わない。何故ならこの実験は彼女が生まれる前からやっていることだ……ライダーシステム。俺の父親が開発した代物だ。その技術力の高さは俺が生まれる前からもあったって事だ……その時のDNA鑑定はどのアンチバイツにも共通して出てくる遺伝子があった。そうそれは加奈井 まなと近いものが、しかしまぁ彼女じゃないことは確かだよな。お前というアンチバイツがいるんだからな」

 

「---…………」

 

「そろそろ吐いたらどうだ?メイズ・アンチバイツ……いや【オリジン・アンチバイツ】。オルギン」

 

「---……………………くくくっ……」

 

「……なにがおかしい」

 

「---オリジンか。我に種族名を付けてくれるとは感激だ」

 

「隠さないんだな……なにが目的だ」

 

「---目的だと?強いて言うならば我はこの欲を満たしたい。この空腹と別れを告げたい。だからこそ喰らうのだ。我が子たちも欲のままこの世界を喰らう。非常に素晴らしいとは思わないか?我はそれを尊くも感じる」

 

「……くだらん…これからなにをする気だ」

 

「---言っただろう。我々は喰らい続ける。この欲求を満たす為に永遠とな」

 

「……なるほどな。よくわかった」

 

「---なんだ?我と戦おうと言うのか?」

 

「いや、まだその時じゃない。今の力で戦った所で俺はお前に勝てる保証がない」

 

「---賢明な判断だ…………………………ん……?オルギン?勝ったの?…!?ジャスティス……」

 

「……ふん」

 

「……?」

 

 

そして場面は移り、睦生の戦いが始まろうとしていた。




というわけでこんな風に終わりました。急展開お兄さん許して

後ろの穴にまで入っちゃってる……(後半戦

次回も何かがある…!!お楽しみに……!!!


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EP20 暴虐のディザスター

ウァァ!!オレモイッチャウゥゥゥ!!!ウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥウウウウウウウウ!イィィイィィィイイイィイイイイイイイイイイイイ!!
祝!!20話目!!(計21話)
ありがとう!!!!!みんなありがとう!!!!!
20話行ったから更に気合い入れて、いくぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっっっっっっっ!!!!!!!!!!

新曲!!それではどうぞご覧ください


---睦生。バカなお前でもわかってると思うが、下手したら死ぬぞ。

 

「わかってるさ。サポート頼むよ」

 

---……とにかく危なくなったらすぐに逃げろ。真正面からやり合うのは分が悪すぎる。

 

「うん…行くぞ!!」

 

 

街中である為、障害物が多い分逃げやすいといえば逃げやすいが、中にまだ人がいるかもしれない。それに自分は真正面からやり合えるほどの力を今は持っていないのだ。かなりのリスクを抱えて、この目の前にいる明らかに強そうな見た目をしたやつに勝てるのかと、そう考えるだけでも怖くてたまらない。

 

 

「キシャァァァァァァァァァァッッッ!!!!!」

 

「来た…っ!!!」

 

 

腕を大きく振るうと、風邪を切る音と共に睦生の顔スレスレを拳が通過する。なんとか避けられたことはいいのだが、次に同じ攻撃が来た時、ギリギリのところを躱すと睦生は驚愕する。

地面がまるで豆腐のように抉られているのだ。いやここまで来ると、意外と普通なことなのかもしれないと錯覚してしまうがこのシレンは違う。力任せに振っている所を見ていただけで、よく見ると軽い手刀で地面が切れている。ただの手であるのだが、まるで研いだばかりのナイフのようによく切れる。

 

 

「……嘘でしょ……」

 

---こいつかなりの化け物だな……俺たちが力を取り戻しても勝てるかわからないぞ。

 

「……冗談でしょ?」

 

---冗談にしたかったんだがな。

 

 

睦生はとりあえず街中を避ける為、人気のない場所へシレンを追い込もうと走る。しかし弱体化のせいで思った以上にスピードが出ない。振り向くと、真後ろにシレンが叩き潰そうと手を振りかざしていた。

 

 

「危な…っ!!!」

 

 

一撃が即死だと思った方がいい。相手と自分の力量差は大袈裟だが天と地ほどあるだろう。やはり今のままでは勝てない。

たとえ誘い込めたとしても、その後どう戦う?どう倒す?逃げる事も難しいこの状況下で、まともに戦うこともできないのにどうすればいい。考えれば考えるほど嫌な方向に思考が行ってしまう。

 

 

「ブレード通ると思うっ……!!?」

 

---…通る可能性は低いと思うぞ。

 

 

ブレードを両腕に展開しようと試みるが、片腕のみにしか反映されない。

仕方なく右腕のみでシレンの腕を落とそうと、肩に剣を振るうが、まるで鋼鉄の鎧でも着ているかのように全く歯が通らない。それどころかそのまま受け止められてしまい、刃を抜こうとしてもビクともしない。

 

 

「くそッッッ!!外れ…っない……ッッッ!!!」

 

---…ッ!!睦生!!避けろッ!!

 

 

ヴァイザーの声を聞き、反射的に躱すとなんとか避けられはしたが、ブレードの腕は捻れるようにしてもげてしまった。久しぶりの激痛を耐え抜き、次の攻撃が来る前にビルの間を縫うようにして走る。

 

 

「うっ……この痛み久しぶりだな……もうこの辺りの人は粗方逃げてるよね…?」

 

---さぁな……どうだか。気配を感じ取ることが出来ない以上、はっきりとはわからん。

 

「………物を盾にして逃げるしかない……戦うしかない。この世の人たちをアンチバイツから守るんだ」

 

---……生き残るために戦うしかない。例えそれが同種だとしてもな……

 

「……ヴァイザー……ごめん。そういうつもりじゃ……」

 

---違う。俺がこうなる運命だったならそれに従うまでだ。睦生、同種だろうと俺は関係ない。俺は今の運命を受け入れてお前と共に戦う……昔なら考えられないだろうな。これも人間に魅せられたのかもしれないな。

 

「…そっか。ありがとう…っていうのもアレだけどさ。一緒に生きよう…ヴァイザー」

 

---あぁ……それならまずここを離れるぞ!

 

 

コンクリートの壁を破壊しながら進むシレン。避けるよりも効率がいいのだろう。むしろあの力量であるなら当然といえば当然の動きである。

しかし睦生は巧みに障害物を利用し、なんとか人のいない場所へとシレンをおびき寄せることに成功した。

 

 

「よし!!」

 

---…ここからが問題だな。

 

「うん……」

 

 

後ろを振り返ると、既にシレンがよだれを垂らし荒い息を立てながら、睦生の方をジッと見ていた。こちらの出方をうかがっているようで、睦生の周りをゆっくりと歩き始め、いつでも飛び掛かれる姿勢を保っている。

腕はまだ治っていない。一本や二本あった所で場が一転するわけでもない。

 

 

「アァァァァァァァァッッッ!!!!!」

 

 

シレンの右腕が飛んでくる。それを躱そうと身を伏せようとするが、あまりの早さに対応が追いつかず、肉が潰れる音と共に壁に叩きつけられた。

 

 

「ゴホッ…ガッ……ッ!!……オエッ……ッッッ…!!!」

 

 

ただのビンタだ。それだけのはずなのに、自分の体はやつにとってはゼリーのようなものだろう。ちょっと力を入れれば簡単に崩れてしまう。

コアが破壊されるのも時間の問題である。ヴァイザーがコアを移動させてくれたおかげで生き延びられたものの、今の再生能力ではほぼ死んでいるも同然である。

シレンはトドメを刺そうと、何もできない睦生の元へ近づいてくる。

 

 

「ヴァ…イザー……ごめん……ハァ……生きようって……言った瞬間これだよ……」

 

---……諦めるな。まだ…チャンスは残っているはずだ……

 

「多分……それ冗談…だよね?」

 

---……………。

 

「いいよ…別に……ハァ…ハァ……ッこれじゃ……しょうがないもんね……」

 

---………あぁ、よくやった。俺たちは…ここで……

 

「………………」

 

 

シレンが目の前まで近づいてきている。

睦生は諦めてはいなかった。必死に思考を巡らせるが何もできない。あるはずのない奇跡を祈るばかりだった。

腕を振り上げ、もうダメかと思ったその直後、バイク音が聞こえると、シレンが吹き飛ばされる。

 

 

「え……?」

 

「……この死に損ないが……ご丁寧に生きてやがったか」

 

「……あ…!!」

 

 

仮面ライダージャスティス スペシャルフォームが現れたのだ。自分を殺した彼だが、何故かとても嬉しく涙がこみ上げてきた。

 

 

「正義さん…!!」

 

「……ったく、賭けだったが実験が成功してよかった」

 

「じ、実験…?」

 

「お前を殺した……いや、厳密に殺そうとしていないんだがな」

 

「どういう…ことですか?」

 

「俺はお前のDNAを摂取する為に戦った。そして前から作っておいた対アンチバイツ用の薬をコアを断裂させると共に投与した。そいつはアンチバイツの特性をかなり弱体化させることが可能な代物だ。そうでもしないとお前はとっとと再生して墓から飛び出してただろうな」

 

「え?いや話が読めないんですけど……何故そんなことを…」

 

「ビーケのやつを止める為だ。その為には準備期間が必要だった。あいつの脅威は俺とお前だ。もし双方の1人が死ねば、あいつも手を緩めることは間違いと踏んでいたが、どうやら間違っていなかったようだな。まぁあいつも墓を狙っていたのは予想外だったが。ま、お前が死ぬか否かは本当にただの賭けだった」

 

「……嘘でしょ……!?」

 

「ハァッ!!!」

 

 

シレンが起き上がり、飛びかかってきたところをスペシャルジャスティスラッシュで斬りつけ、力一杯に蹴飛ばす。

 

「……なんで礼を言うんだ?」

 

「それは……何はともあれ僕を助けてくれたんですよね……?だから……」

 

「勘違いするな…と言いたいところだが……………俺も昔、アンチバイツのせいで親を失った……」

 

「…………」

 

「バカみたいに愛想振りまいて、バカみたいに金で遊びまくった……忘れようと思ってた…………そんなの無理に決まってる。表の自分と裏の自分が分からなくなってきた時、お前みたいなアンチバイツに出会った…お前は何もかも違った。そしてお前は戦いに身を投じ……家族を失った……」

 

「正義さん……」

 

「今更だよな。俺もとんでもないことをやってきたが……結果的に残るのはクソみたいな自分だけ…………だから俺はもう一度だけ本当の正義のヒーローになって見せる。偽りのない本当の……!!それが…父と母との約束だ」

 

「……本当の正義のヒーロー……仮面ライダーですよ。正義さん」

 

「なら寝とけ。ここから先は俺がやる」

 

 

シレンに向き直ると、地面をまるで駄々っ子のように暴れまわり、最後に耳が劈けるほどの咆哮を放つ。

正義は全く動じず、あるアイテムを取り出す。ジャスティスペシャルを外すとそのアイテム……ゴッドジャスティスタンドを組み替えてボタンを押す。

 

 

【 最終正義!!! 】

 

ジャスティスタンドと合体させ、右腕を天にかざす。

 

 

「俺は……全人類の正義の味方ッッッ!!!仮面ライダーだ!!!!!」

 

 

ボタンを力強く押すと、天より光が降り注ぐようにして彼を包み込み、あたり一面を照らす。

 

【 神々しきッ!!天より舞い降りし最強の正義の名の下にッッッ!!!仮面ライダァァァッッッ!!!ゴッド!!!!ジャスティスッ!!!!! 】

 

 

まるで神が舞い降りたかのように神々しい鎧を身に纏い、シレンの前に立ち塞がる。シレンはその余りの威圧に思わず身を引いてしまう。

 

 

「……正義を執行する」

 

 

シレンが飛び掛かってくるが、避けようとせずそのまま攻撃を受けるが、傷一つ付かずそれどころか全く怯むことがない。

正義は構えもとらず、ただ単純にノーアクションでパンチを放つとシレンは腹に穴が空き、かなり遠くまで吹き飛ばされてしまった。

 

 

「す、すごい……」

 

「今だったらお前を簡単に倒せるだろうな」

 

「……ははっ、そうですね」

 

「……さっさと決めてやるか」

 

 

上空高く跳ぶと、ボタンを再度押してから、ジャスティドライバーのレバーを押す。

 

【 ゴッドッッッ!!!!! ジャスティフィニッシャァァァァァァッッッッ!!!!! 】

 

 

「はぁぁぁぁぁぁ…………っっっ!!!はぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!!」

 

 

そのままシレン目掛けて急降下し、腹にキックをお見舞いする。すると眩い光が溢れ出し、シレンが浄化されるかのように消えていった。

 

 

「ふぅ……中々楽しめたな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

------------------

 

「正義さん!!」

 

「やっと治ったか……本当におせーな」

 

「あなたがやったんでしょ……まぁまだ完治してませんが……ありがとうございます。仮面ライダー」

 

「俺はやるだけやったまでだ…後は……」

 

 

2人の背後に怪しい影が一つ。顔に血管が浮き出ており、かなりのお怒りのご様子である。

 

 

「仮面ライダー……まさかここまで邪魔をしてくるとは思わなかったですよ……」

 

「そうか?なら良かったな。虫がまた1人増えたぞ?」

 

「貴様……調子に乗りやがって……ッッッ!!!」

 

 

ビーケは拳を血?が出るほど握り、2人を殺意のこもった目で睨みつける血?と表現したのはとても毒々しく、あまりにも奇妙な色をしていたからだ。

しかしすぐにビーケは不敵な笑みを浮かべた後、高らかに笑い始める。

 

 

「何がおかしい…母さんをどうする気だッ!!!」

 

「お前の母親は無事だ、睦生……そもそもあの女を連れ出したのは、お前だけを誘い込むつもりでやったんだが……ジャスティス。貴様も釣れるとはな」

 

「母さんを解放しろ…!!」

 

「あぁ……返してやるよ……まだ準備段階だったが仕方がない…………この世を終わらせてやる!!この俺が!!」

 

 

するとビーケは手に隠し持っていたあるスイッチをオンにする。すると地面が激しく揺れ動き亀裂が走る。亀裂からあらゆる個体のメイズ・アンチバイツ達が一斉に飛び出した。その数は100、1000……いやそれ以上のメイズが我先にと溢れ返る。

 

 

「これは…!!」

 

「睦生…正義……お前らは終わりだ。俺たちメイズがこの世を支配する。この数相手にどうする?」

 

「……正義さん。ここは僕がやります」

 

 

睦生は突然ビーケの前に立ち構える。なにをしているのか正義には分からなかった。今ビーケと戦えば負けるのは確実だというのに。

 

 

「正義さんはメイズの殲滅を……そしてわがままなんですが、僕の母を助けてください…お願いします」

 

「いやここは俺がやる。今のお前じゃ…」

 

「許せないんです。こいつが…確かに今の僕じゃ勝てません。ですけど、逆に今の僕ではこの量の相手をどうすることもできない……なら、少しくらい足止めにはなるんじゃないかと思って……」

 

「……睦生……いいだろう。だが、まずいと思ったら逃げろ。いいな」

 

「はい!」

 

 

ビーケは彼の行動が無謀過ぎて笑いを堪えることができなかった。腹を抱え、吹き出して笑い始めた。

 

 

「この死に損ないが……死ぬ前に母の顔でも見せてやろうか?」

 

「悪いけど僕は死なない……生きてみんなと一緒に暮らすんだ!!」

「---その通りだ。お前なんぞの作りもんに俺たちが負けると思うな」

 

「クッ…フハハハハッッッ!!!……やはり……お前達は私をイラつかせる……ッ!!!」

 

「来い……ビーケッ!!!喰ってやるッッッ!!!!」

 

「砕き殺す…ッッッ!!!!」




メイズ編終了まで後2話。完結まで残り7話となりました。
長かったなぁ……

まぁまだまだ話数あるのでよろしくお願いします!

次回、睦生vsビーケ!!メイズが溢れて大変な事に……それでは次の動画(意味深)でお会いしましょう。まったのぉ〜


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EP21 絶望のレクイエム

ついに始まったビーケ戦。睦生は勝てるのか……?

怒涛の急展開!!(についてこれ)ないです

メイズ編も残りわずか!!それではどうぞご覧ください。


僕はこの数ヶ月で多くのアンチバイツと戦いそして勝ってきた。

今まで普通の生活を送っていた僕が、あんな化け物と戦ってきてたなんて今更ながらすごく驚いている。だってそうじゃないか。あいつらは人間レベルの相手なら全く歯が立たない相手。仮面ライダーか同種でなければ絶対敵わない、そんな奴らに僕は誰かを守る為に、ヴァイザーと共に歩んできた。

 

 

「ビーケ。お前と僕の戦力差は遥かに大きい。でも、だからと言って逃げ出すつもりも負けるつもりもない。僕は僕の全てを使ってお前を倒す!!!」

 

 

形状変化させ剣に変えた腕で、頭を叩き割るかのように振り下ろす。

これで倒せるとは思ってない。これは様子見だ。

ビーケは首を横に振るうと、片腕で刃を受け止める。掴まれた腕は全く微動だにしない。

 

 

「……お前バカか。全てをかけたとしても、お前と私の力は埋まらない……というより意味がない。この攻撃が全く意味がないんだよ。このまま腕を掴まれたまま、お前が死ぬまで殴り続けてやってもいい」

 

「確かにバカだよ。お前を叩き斬ろうとした所で受け止められる事くらいわかってたよ……今の僕ならこの状況かなり不利だし瞬殺されるだろうね」

 

「…にも関わらず、私に真正面から挑み、結果殺されて終わる。なにがしたいんだ?気でも狂ったか?……まぁ私はお前をすぐに嬲り殺すのも不服だと思っ……」

 

「うん…僕もただでは死ぬつもりはないからね………ヴァイザァァァッッッ!!!」

 

 

ビーケは崩れるように倒れる。本人も突然の事に驚いたが、すぐに状況を把握し目を血走らせ、怒りを露わにする。

右脚が食われていた。しかしこれはありえない事なのだ。1つの能力の使用中は二つを併用する事は出来ない。睦生が使える能力はバイトとブレード。牙と剣のみ。

ただありえないと述べたが、実際まなは2つを併用して使うことが出来るようになった。だが、まなの場合は元々の力と相まって使用することができるのだろう。

けれど睦生は違う。コアの再生のよる代償で彼は弱体化を強いられた。何もかもができなくなった。今のようにヴァイザーを体の一部から外側へ出て、更には決まった部位にのみしか、本来は形状変化…能力は使用できないはずだ。これは制約を無視した牙の使用である。

 

 

「き、貴様…ッッ!!!」

 

 

睦生はすかさず間合いを取り呼吸を整える。

 

 

「ありえないって顔だよね…そうだよ。ありえない」

 

「なぜ能力の使用ができた……完全に制約を無視している…………ありえん。貴様なにをした!!!」

 

「僕もびっくりした。ヴァイザーが突然提案するんだから……」

「---ふん。俺も一か八かの勝負だったがな。お前のいう通り俺たちは全てにおいて弱体化をしている……が、この牙だけは別だ。こいつは睦生が手に入れた力であり、俺の18番ってやつだ。これなら多少は落ちてもそのもの自体は代わり映えはしないだろうと踏んだまでだ」

「能力を2つ使えるのはなぜかは分からないけど……なんにせよ。僕はヴァイザーを信じる。例えそれが命をかけたものだとしても!!!」

 

 

意味がわからない……私の想像を遥かに超えている。前は確かに、確かに私の方が格上だった。この男は私の足元にも及ばない……そう思っていた。だがどうだ?こいつは雑魚となって、私よりも…いや、下手をすればそこらにいる小物と同じぐらいの戦闘能力しか持たないまでになったというのに…………なぜだ。なぜだ!!なぜだ!!!!!!

 

ビーケの脚は再生しようと肉が蠢いているが、まるで見えない壁があるかのようにそれ以上先に進もうとしない。

 

 

「お前なら片脚だけでもまだやれるだろ?……僕は……お前を絶対許さない」

 

「このッ……ッ!!ガキがッッッ!!!」

 

 

拳を地面に突き立てると、ビーケの体はみるみる姿を変えバイクに変化する。彼の怒りを表すかのようなエンジン音が鳴り響く。それを見つめる睦生。

2人は互いに正面に向かい合い、その間に緊張が走る。

先に行動したのはビーケだった。睦生の周りを回り始め、徐々にその距離を縮めながら走行する。かなりのスピードであり残像が見えるほどである。

 

 

「いいか睦生!!人間なんぞアンチバイツに遠く及ばない下等な生物だ!!いや…この世はアンチバイツではなく!!メイズこそいればいい!!私たちがふさわしい!!」

 

「なにがふさわしいだ……お前達がやっていることはただ殺すだけで何も変わってないじゃないか!!そんな事に意味なんてない!!」

 

「意味があるから言っている!!私が世界を統べる!!そして私が生物の頂点へと君臨する!!」

 

「1人の想いだけでこの世を変えるなんて間違ってる!!お前が頂点だって?お前なんて………力でしか解決しようとしない哀れな生物だ!!」

 

「黙れェェェェェェェェェッッッ!!!!!」

 

 

残り数センチという所で突然タイヤに何かが突き刺さり、ビーケは勢いよく跳ねて壁に激突する。

そこへ空から華麗に着地をし、睦生の隣へと立つ。肩腕を槍に変えたまなの姿があった。

 

 

「まな……ッ!!」

 

 

ビーケは立ち上がりドリフトをかましながら再びバイクの体制を立て直す。

 

 

「ごめん…遅れた」

 

「…………大丈夫。助かったよ」

 

「あんまり無理しないで……もう嫌だから」

 

「わかってるつもりだよ…ありがとう」

 

「それじゃ……一気に仕留める」

 

「なら、まなは攻撃に徹してほしい。僕は隙を見てあいつを喰らう……再生能力を奪って畳み掛けよう」

 

「…使えるのね。わかったわ……極力無茶はダメだから」

 

「あぁ…」

 

 

そして向き直る。ビーケは更に怒りを見せる。だが、もう勝てる事は出来ないようだ。なぜなら目の前には既にビーケの想像を超える2人が立ち並んでいるのだから。

 

 

「キサマラァァァァァアァァアァァッッッッッッ!!!!!」

 

 

怒りに身を任せた突進が彼らに迫る。あのビーケともあろうメイズが我を忘れ、単純に殺意だけで動いている。いや、元々この性格だったのかもしれない。

まなはヒラリとそれをかわすと、後ろのタイヤの回転軸に槍を突き刺し動きを封じると、すかさず睦生があらゆる箇所を噛みつく。喰らうたびにビーケは苦痛の声をあげいつしか元の形状へと戻ると、所々が欠損してしまった哀れな姿と化してしまったのだ。

もう立つことすらできないだろう。

 

 

「クッ……!!!こんな……!!こんなことが……ッッ!!」

 

「終わりだ…ビーケ」

 

「終わりだと…?ククッ…………そうか。終わりだな」

 

「何がおかしい?」

 

「ハァ……ハァ…………さて、私はお前に負けるのは想定外だった。驚いた。まさか睦生ィ……お前がここまで成長しているなんて」

 

「だからなんだ…?」

 

「負けてしまった……ククッ……そうだ負けた…………ハァァァ…この…………戦い“だけ”はな」

 

「なにをするつもりだ?もう…お前に勝ち目なんか……」

 

 

ビーケは残った指を3本前は突き出すと、まるで数えるかのように1本、そしてまた1本と折って行く。

全ての指が折られた時、突然地震が起こる。

 

 

「な、なんだ!?」

 

「睦生!!あそこ!!」

 

「…ッッッ!!?

 

 

ここから数10メートル先に5本の柱が現れる。その真ん中の柱に弥生が血だらけで括り付けられており、それを囲むように4本の柱が連なっている。

 

 

「…ッビ……!!!ビィィィケェェェェッッッ!!!!!」

 

 

睦生はビーケに馬乗りになり殴りまくる。何度もその拳を叩きつける。だが、ビーケにはまるで効いていない。それでも尚、怒りに任せて殴り続ける。

 

 

「フッ…安心しろォ……みためはあぁだがあの女は無事だ。ただし………………お前の目の前で死ぬがな」

 

「……なッ……に……ッッッ!?」

 

「言っただろ……第1試合には負けたが……第2試合…私の……私の勝ちだァァァァァァアッッッッッッ!!!!!」

 

「や……やめろォォォォォォッッッッッッ!!!!!!!」

 

 

4本の柱はビーケの合図と共に大爆発を引き起こし、辺り一帯を火の海と化したのだった。その威力もあり、メイズ達も巻き添えを喰らい、半分以上が消し飛んでしまった。

嘘だろ?嘘だ。待ってくれ。嫌だ嫌だ嫌だ!!!

 

 

「母さんッッ!!!!!」

 

「睦生…ッ!!」

 

 

まなはビーケを掴むと目玉に槍の先端を捻り込む。最初は苦痛の声を上げたビーケであったが次第に笑顔が溢れ出した。気味が悪いほどに、とても嬉しそうに。

 

 

「終わりはお前らだ………本来であるならば私が貴様らを殺した後、残りのメイズ達を存分に暴れさせてから…融合しようと思っていたが…………仕方がない…来いッッッ!!!」

 

「こ、これは…!?」

 

 

残りのメイズがビーケの体に喰らいついて行くと、徐々に融合し始める。まなは思わず飛び跳ね、腕を弓に変え矢を放つ。しかしそれは止まることなく急激な速さで取り込んで行く。

 

 

「な、なに……これ…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

------------------

 

「母さんッッッ!!!どこッ!?いたら…いたら返事してくれ!!頼む!!生きててくれ!!お願い……お願いだから……頼むから……!!!!!」

 

 

睦生は必死に耳を澄ませ、辺りを探索する。無我夢中で探した。顔がぐしゃぐしゃになるほど泣きながら。

すると、微かだが声が聞こえる。聞いたことがある。間違いない。

 

 

「母さん!!!!」

 

 

母の元へ駆け寄る睦生だったが、その姿を見た時、言葉にならないほどの声を上げ、泣き始めたのだ。

弥生は確かに生きている。しかしこれは生きているというには余りにも酷い姿だった。

右腕と下半身は吹き飛んでおり、顔半分は焼けただれている。

 

 

「か…あ………………ぐっ…………!!!なんで…ッッ!!…………なんでだよ…ッッッ!!!!!後少しだったじゃんか…………また僕は……………家族を……殺し……ッッッ!!!」

 

「睦……生……」

 

「……ッ!!母さん…?母さん!!!」

 

「あな…たは…………誰も……殺してなんか……ないわ…………」

 

「…………え…?」

 

「いい…?……睦生…………?」

 

「うん…」

 

「私…は…………死んじゃうわ…この…………傷じゃ……助からない…………」

 

「母さん……やだよ………俺もう誰かを失うのはやだ…………頼むから死なないで……お願いだから……」

 

「あなたが……アンチ……バイツだったの…………知っ……てたわ…………あなたが…………あの日…………帰って来た時……から……」

 

「ど…どういうこと…?」

 

「睦生………アンチバイツは…………2匹の原初の……アンチバイツから…………始まったの…………その1匹が……【ジーエンズ】という名で……今は……どこにいるかはわからない…………そしてもう1匹が私……【ビーレンズ】…………」

 

「え……?なに言ってるの…?」

 

「私は……原初のアンチバイツ…………この……地球に来て…………睦吾郎さんを…………愛してしまったの…………本来の目的は……この地球…を……喰らい尽くすこと……だった…………でも……あなたや色んな人に……囲まれて……そんな事…次第に忘れていった…………けど…元はと言えば私たちが……元凶……なの…………」

 

「なんで…!!なんでそんなッッッ…!!」

 

「睦吾郎…さんも…知ってたわ…………それなのに…………私は…………私達は…………とんでもない過ち…を…犯していたの…………すでに……私には力がなかった……なにもできなかった…………忘れてた……全てを…………私は…………あなたにこんな……こんな…辛い思いをさせて…………最低よ…………私は…………これは私への…罰なんだわ…………」

 

「母さん…………」

 

「母親として……人間として……アンチバイツとして…………本当に最低…………失格よ…………」

 

「…………確かに母さんは最低だよ……だけど、例え母さんがどんな人だったとしても……僕は……母さんの息子だから…ッッッ!!!」

 

「………………あり…がと……ごめん……ね…………強く生きて……む……つき…………あなたなら…きっと………………世界を…………救え……る…………か………………………………」

 

「母さん……?…………ねぇ?母さん…?…………母さん…ッッッ!!!!!……うっ…………!!!ぐぅぅぅぅ…ッ!!!!!!…………くそっ……クソクソクソクソクソッ……ッッッ!!!!!!」

 

 

雨が降り始めた。睦生は血のような涙を流す。悲しみと怒り。両方が混ざり合うようにして彼の体を覆い始める。

そして、睦生は手を出した。母のコアを喰らった。人の心臓ではない、アンチバイツのコアを。

 

 

「ヴァイザー………………」

 

---…………なんだ。

 

「あいつを………………」

 

---…………

 

「喰らい殺すッッッッッッ!!!!!!!!!」

 

---…あぁ。

 

 

睦生に血管のような赤黒いものが全身を覆った。そして彼は天に向かい、全てに知らせるかのように咆哮する。

彼の怒りを。悲しみを。

 

 

「アァァァァァァァァァァァァァァアアァァァァァァァァアァァァァァァァァァアアァァアァァァァァァァァッッッッッッッッ!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

------------------

 

まなはもう限界であった。メイズを取り込んだビーケ相手にはどうすることもできなかったのだ。

途中駆けつけた正義であったが、新たな力の反動が著しく、通常形態でギリギリ戦っているという状態である。

しかし今のビーケにとって2人は赤子同然なのだ。

 

 

「ここ……までか……ッ!?」

 

「睦生……大丈夫かな……」

 

「あいつの心配もそうだが……今は目の前の奴をどうにかしねーと……死ぬぞ」

 

 

ビーケは笑っていた。目の中は真っ白であり、なにも見えていないだろう。意識はあるのだが、まるでその力を制御できていないのだ。

 

 

「---ハハハハハハハハハッッッ!!!いい…!!実にいい…!!この体……最高だ…………ハハハハハハハハハッッ!!!!」

 

「化け物が……!!」

 

「---だぁれが?化け物だってェェェ!!!!?????」

 

「カハッ…………!!!!」

 

 

正義は吹き飛ばされ壁に激突する。変身が解けると何処か折れたのか、全く身動きが取れていない。

勝てない。と、まなは悟った。そして殺される。逃げる事は可能かもしれない。だが、この怪我では正義を担ぐことができない。何より正義を見捨てて行くことができないのだ。

 

 

「---お前は…まなか……?なら殺す……殺す殺す……ハハハハハハハハハッッッ!!!!」

 

「……ッ!!」

 

 

目を伏せた。心の中で助けを呼びながら。

 

 

「---死…ッッッ!!!」

 

 

まなは声が途切れたのを聞いた。目を開けるとビーケの右半分がバッサリと切られ、地面に半身が大きな音を立てて倒れた。

 

 

「え……」

 

 

まなの前には何かが立っていた。見た目はアンチバイツと似ているが、それとは全く違う。まるでその身に鎧を纏っているかのように、右腕を剣ではあるが、より禍々しく大きく、全身に赤黒い筋が通ったその姿。

 

 

「---……なんだ…!?なにが起こった……!?」

 

 

「ビーケ……俺はお前を喰らい殺す」

 

 

睦生……覚醒!!




次回、メイズ編ラスト!!
睦生の怒りと悲しみが爆発する!!


仮面ライダーヴィランズ 完結まで残り6話……!!


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EP22 覚醒の時

最後のメイズ編始まるよ!!!!!

新たな力を手に入れた睦生。その実力とは……?

皆さんは私の調教に耐えきることができるでしょうか?それではどうぞご覧ください。


ビーケの半身は真っ二つに切り裂かれた。

目の前にいるこの男の手によって。

 

 

「---睦生……キサマ…………ククッ。そこにいるのはわかる。わかるぞ……あれじゃ助からなかっただろ?悔しいか?悔しいよな……お前はまた救えなかった。なにもかも…………だが、安心しろ。お前とそこの奴らも全員殺してやるからなぁ……!!!」

 

 

半身を即座に再生させ、右腕を振り上げ平手打ちをした……はずなのだが、ビーケの手は睦生をすり抜けた。いやすり抜けたのではなく手に穴が開いていた。彼の形となって。

 

 

「---な……なに……ッ!?」

 

「…………どうした?準備運動は終わりか?」

 

「---ほざけ!!!!」

 

 

右腕を剣から元に戻し、片手で受け止めると、軽々と持ち上げ地面に叩きつける。

 

 

「な…!!あいつ…一体なにがあった……」

 

「能力が……戻ってる……?」

 

 

間髪入れずに睦生はビーケを殴り続ける。まるで隙を与えない。そしてすぐに殺さないように手加減を行なっているようだ。

 

 

「---カハッ…!?どうなっている……!!お前は…能力を失ったはずがは……ッッ!?」

 

「あぁ、失ったかもな。でも今はあるだろ?」

 

「---…ッッッ!!!」

 

 

まなと正義は驚いていた。先ほどの彼とは全く違う。その姿、その力、まるで今までのアンチバイツとは比べ物にならない似て非なるものであった。

右腕をブレードに変えると、弾き飛ばすように刃を当てビーケを壁にめり込ませる。

 

 

「---これが……ブレードなのか……?これは一体なんだ……!!?」

 

「………………」

 

 

睦生の持つ全ての能力は混ざり合った。能力はバイトとブレードのみとなってしまったがあらゆるものが複合されたのだ。

クローによる、重量軽減。

マッスルによる、全身を限界値まで倍加。

ハンマーによる、超破壊力。

シールドによる、超硬化。

ウィップによる、柔軟性と伸縮化。

ウィングによる、翼を展開せずとも飛行を可能とし。

ガンによる、遠方へほぼ無限に放つことができ。

エンジンによる、超加速。

スピーカーによる、爆音。

弥生のコアを喰らったことにより、全ての力は元の状態を遥かに上回る形で元に戻り、究極の姿となった。

 

そしてこの10番目の力。アーマーはヴァイザーを睦生の全身に纏わせるようにしてできたもので、シールドには劣るものの、核爆発だろうと余裕で耐えられる耐久性を身につけた。

 

 

「その見えない目で俺を見ろ、ビーケ」

 

「---…なに…?」

 

「お前が最後に目が見える頃には、お前が死ぬ時だ」

 

「---死ぬだと…?……死ぬのは貴様だ…貴様なんだヨォォォォッッ!!!!」

 

 

またも殴りかかろうとするビーケだが、一瞬のうちに腕をまるで雑巾のように絞られ、捻り取られてしまった。

その腕をビーケの顔目掛けて思いっきり叩きつける。

 

 

「---ピギュッッッ……!!!」

 

「お前を……簡単に殺すと思うなよ?」

 

「---な、なにを……」

 

 

すると睦生はビーケの目に腕を突っ込み、中でかき混ぜるように指を動かす。苦痛の声が辺りに響き渡る。それをまるで聞こえていないかのように、拳を握りしめるとそのまま何度も何度も地面にビーケの型が出来るほど叩きつける。

最後に腕を引き抜くと、今度は頭に指を突き刺し、もう片方の目を見えるのようにヴァイザーを伝せ修復した。

 

 

「これで…見えるな?」

 

「---ハァ…ハァ…………ッッッ!!!」

 

「恐怖か?それとも絶望か?……どっちでもいい。絶対許すつもりはない」

 

「---た、頼む…これ以上は……」

 

「哀れだな…悪いが、お前には聞く耳を持てない……ここで仇を取る。例えこれが間違っているやり方だとしても……俺は……お前をこの手で葬らなければならない」

 

「---……ククッ……今の貴様は……人間か?それともアンチバイツか?」

 

「…どっちだろうな……ただ言うとするなら、俺たちは……ヴァイザーだ」

 

「---ヴァイザーか…………この世で最強の生物となるのは貴様かもな…………ハハハッ……ハハハハハッ……」

 

「そんなものに興味ない……アンチバイツをこの世から全て消す。全て喰らう。それが俺のやるべきことだ」

 

「---…ただで…死ぬと思うなぁ……ハハハハハハハハハッ…!!!」

 

 

するとビーケの体が突然、光を放ち、みるみるうちに膨れ上がって行く。見た目でわかるが、ここで自分もろとも爆発して巻き込むつもりらしい。さらに言えば今のビーケは、メイズ達を何匹も体内に取り込んでいた為、その破壊力は県一つ分の大穴ができるのではないだろうか。

まなと正義は急いで対処に向かおうとするが、2人を手で静止し、睦生はビーケノ元へ近づいて行く。

 

 

「睦生……どうするつもり…?」

 

 

睦生はビーケの喉元目掛けて鋭い牙を立てる。ブチブチという肉が裂かれる音が聞こえたかと思うと、膨らんでいたはずのビーケが止まってしまったのだ。

 

 

「…俺の牙もまた進化した。食らった部位の再生能力をなくす力から昇華して、お前自身の生命力を食いちぎった。つまり……お前はこの数秒後、死ぬ」

 

「---…む……づ……ギィィィィッッッ!!!」

 

「コアをもらう…が、お前は今迄の事を悔いながらゆっくり死んでいきな」

 

「---ア、アァァァァァァァァッッッ…!!!!!……………………」

 

 

ビーケが溶けるように死んで行き、残ったのはアンチバイツにあるコアだけであった。

それを拾い上げ一口で食べてしまう。

 

 

「…終わったな。睦生」

 

「はい…母は……救えませんでしたが……」

 

「……俺があの雑魚どもで手こずってなければ……すまない睦生。俺の責任だ…」

 

「いいんです。俺は全てを失ったわけではないから……」

 

 

そういうと、睦生はまなを見て微笑む。まなも彼の言いたい事を理解し、微笑み返す。

 

 

「……正義さん。1ついいですか?」

 

「ん?なんだ?」

 

「…アンチバイツの親玉がいるみたいです。いや、今迄のアンチバイツ全て含めてその元凶が……」

 

「…やはりか………」

 

「やはり…?」

 

「……そろそろ姿を見せたらどうだ!?オルギン!!」

 

 

正義の目はまなに向いている。睦生は何が何だかわからなかったが、彼女とは思えない不気味な笑い声が聞こえる。これはまなではない。オルギンの声だ。

 

 

「---クククッ。ようやく我の名を聞いたな?睦生よ」

 

「さっきから嫌な気配がすると思ったら……あぁ。俺がアンチバイツと縁があるってことも、そして母の…正体も。お前の本名もな…ジーエンズ」

 

 

2人の会話は続く。正義は自分自身、知らないことが多く驚いていたが、いつも通りの冷静さを取り戻し彼らの話を聞く。

 

 

「…これからどうするつもりだ?」

 

「---お前はどうする、睦生。我を殺すか?まぁそうだろうな」

 

「まなの体から離れろ。話はそこからだ」

 

 

片腕を剣に変え、剣先をオルギンの額へ向ける。怯むことなく立ち上がり笑い始める。まるで余裕かのように剣を指一本でゆっくり右へ移動させる。

 

 

「---この女はまだ使える。いいか睦生?我は貴様を簡単にひねり潰せるというのは頭に置いておいた方がいい。あとで、後悔する羽目になるからな」

 

「ジーエンズ…俺はアンチバイツを終わらせる……みんなが笑える明日を作るためにな」

 

「---……そいつはいい心がけだ。関心した……なら我は消えさせてもらうとしよう……世界は終わりに近いからな」

 

「なん……っ!?」

 

 

そういうとオルギンことジーエンズは一瞬のうちにその場から消えてしまった。まなもいなくなっている。

 

 

「…正義さん……」

 

「あいつも万全な状態になりつつあるってことか……わかってる。まなをどうにかするんだろ?む

 

「はい…」

 

「その件に関しては任せてくれ……次こそは俺が助ける。ライダーとしてな」

 

「お願いします…正義さん」

 

 

遂に始まる絶望。アンチバイツの始祖ジーエンズ。

睦生たちの最後の戦いが幕を開ける……




早くなぁい?
許してください!!なんでも許してください!!

次回オリジン・アンチバイツ編スタートです。
仮面ライダーヴィランズ。ついに最終章。
残すは5話…!!

それではまた次の小説でお会いしましょう。またのぉ!!


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オリジン・アンチバイツ編
EP23 始祖の目覚め


最終章であり、オリジン編始まるよ!!

オリジン・アンチバイツで、全ての元凶ジーエンズ。この相手に睦生たちはどう戦うのか。
張り切って参りましょう。

それではご覧ください。


「……すみません、正義さん。わざわざ家に来てもらって……」

 

「いや別に構わない」

 

 

睦生達は3人で暮らしていたアパートに集まっていた。

しかしそれは昔の話。今は睦生1人だけである。家族と共に過ごした楽しかった日々、それが全て夢であったかのように消え、残されたのは静寂のみだった。

 

 

「… まなに寄生していたのが、最初のアンチバイツ……ジーエンズだったなんて……」

 

「--- あの女、とんでもない野郎を寄生させてやがったな」

 

 

オリジンについては亡き母…ビーレンズに聞いた。本来ならこの地球は崩壊してた、という事なのか? 自分にはよく分からない。突然、言われた自分とアンチバイツの関係。

まさか2番目に生まれたアンチバイツの息子だったなんて思いも、いや普通ありえない事なんだけど、今となっては色々辻褄が合う気がする。

最初にヴァイザーに寄生された時、あの時点で俺は死んでるも同然だったんだ。だけど俺はこうして共に共存できている。寧ろ最初なんて自分に主導権があった。

だからこそ知りたい。アンチバイツについて。自分について。

 

 

「ねぇ、ヴァイザー。そろそろ教えてくれてもいいんじゃない? アンチバイツの事を……」

 

「--- …なに?」

 

「だってさ。俺はオリジンの息子なんだろ? ……ならアンチバイツと関係がない訳がない。少なくとも半分人間だろうけど… だから聞きたい。ヴァイザーの事も全部」

 

「--- 確かに… もう隠す必要もないな」

 

 

正義と睦生は黙ってヴァイザーの方を向く。

そんな彼の顔は今迄見た事がない表情だった。どことなく悲しげな顔をしている。

 

 

「--- 俺達アンチバイツは宇宙から来た…ってのはもう知ってるか。俺達の目的はただ一つ。その惑星の生物を喰らうこと。食べ終われば次の場所へ転々する…その命令を下したのもオリジン、ジーエンズだ」

 

「ヴァイザーもジーエンズについては知ってたんだね」

 

「---まぁな。あいつは簡単に言えば王だ。その下で支えてるのが俺達ユニクって訳だ……だが、そのユニクの中でも、俺は最底辺の奴だった……」

 

「え …?」

 

「---俺達も一応生物だ。生きてりゃ個性だって、その強さの具合だってそれぞれ違う。他の奴らは戦闘向けで、俺のこの牙はデメリットしかない。射程距離は短いし、コアを喰らわなきゃ能力だって取れやしない。身体的力だって他の奴らには程遠かった…」

 

「ヴァイザー …」

 

「--- …… そんな俺はある日お前に寄生した。するとどうだ? お前は俺を使いこなし、みるみるうちに成長しちまった。乗っ取ろうとしていたはずが、逆に利用されるなんて夢にも思わなかった… だけど俺はこれでいいと思ってる。感情のないはずのアンチバイツに、いつしか情が芽生えて、こうしてお前と強く成長できているからな」

 

「…… そっか。俺も嬉しいよ。まぁ、最初は嫌だったけどさ。今じゃ… 俺にとってヴァイザーはかけがえない存在… 俺に唯一残された家族さ……」

 

 

それを黙って聞く正義は静かに微笑む。

自分がこうして変われたのは睦生達と出会ってからだ。アンチバイツに襲われ、家族を失い、全てを憎み戦ってきた。しかし今は正義の為に、1人の仮面ライダーとして戦う事を決めた。

 

 

「ふっ… 感謝してるぞ」

 

「…… え?正義さん。急にどうしました?」

 

「いや、ただの独り言だ」

 

「そ、そうですか …?」

 

「…… さて、ジーエンズの動きが未だに把握できてない状態だが…… 睦生。あいつの居場所はここからわかるか?」

 

「はい。試してみます」

 

 

睦生は目を閉じ、感覚を研ぎ澄ませる。あらゆる方向から声、気配、鼓動を感じ取りながら隅々まで、まなとジーエンズを探す。

すると微かではあるがジーエンズの気配を感じ取った。しかしその瞬間、彼の圧が荒波ように睦生に押し寄せ、冷や汗をかきながら床に手を着く。

 

 

「どうした!? 大丈夫か!?」

 

「… ハァ… ハァ… なんとか。見つけましたけど、ただ奴はこちらの気配に気づいてるようです」

 

「… やはり只者じゃない。予想はしていたが、これから一戦交えるとすると、かなり厳しいかもしれないな。ただ負ける前提で行くより勝つことを前提にした方が後々、後悔しなくて済みそうだ」

 

「不穏な言わないでくださいよ… ホントに何があるかわからないのは事実ですけど、必ず勝ちましょう!! … そして、まなを助ける… !!」

 

「なら、準備が出来次第さっさと行くか。この地球をあいつの好きにさせてたまるかよ」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

------------------

 

周りは既に暗くなっていた。かなりの長距離を移動しながら、睦生と正義はある古びた洋館に辿り着く。

館自体大きいのだが、それ以前に庭が広い。一目見て分かるが、かつての大金持ちが住んでいたことは間違いない、その証拠に所々に生える木々は綺麗に整えられている。

しかし妙なのは古びているのは確かで、今は人がいないはずにも関わらず、庭は片付けられているのだ。

 

 

「… ジーエンズは庭師にでもなる気なんですかね」

 

「その方がよっぽど平和的で助かるんだがな」

 

「確かにそうです」

 

 

洋館の扉まで近づくとより一層気配が強く感じ取れる。睦生は扉に手をかけようとすると、何かを踏みつける感触を覚える。

見ると、なにやら苗字が書かれているプレートのようだ。

 

 

「… !? これって ……」

 

「どうした?」

 

「あぁ、これ …… 『加奈井』って書かれてて」

 

「加奈井 …… まさか、ここはまなの」

 

「…… かも知れないですね」

 

 

まながジーエンズに寄生された時の話を聞いていない。それに過去のことも。

それよりも今は彼女を助けることが先決だ。

睦生は両手で扉を開くと、外もそうだが、中も真っ暗だ。月の光が全くと言っていいほど入り込んでいない。その暗闇の奥からただならぬ気配を感じ取れる。

 

 

「…… 行きましょう。正義さん」

 

「あぁ… 気をつけろ」

 

 

奥へと進むと、大きな扉が立ちふさがっており、それを開き、更に進むと広間へと出た。

真っ暗だった広間に突然明かりがつき始める。異様な空気の中、周りに多くの気配を感じとった。2人に緊張が走る。

 

 

「アンチバイツの数が多い……」

 

「ビーケの時と同じくらいか? それともそれ以上か、それ以下か?」

 

「… 以下ですね。あの時とは全然、数が少ないです」

 

「なら余裕だな。やるぞ…… 変身ッ!!」

 

「はぁぁぁ……ァァァ」

 

 

それぞれ装甲を身に纏い、2人は背中合わせになると、アンチバイツを待ち構える。

そして周りのアンチバイツたちは、絶叫とともに飛びかかってきた。

 

 

「来たぞ睦生…!!」

 

「はい!!」

 

 

睦生は剣に変えた腕を伸ばし、2周ほど回すとアンチバイツは次々と斬られて行く。

一方で、正義はジャスティカリバーを巧みに操り、仕留めきれなかったアンチバイツを的確に切り裂いて行く。

数は多いが、2人の今の力であるなら、この程度の相手がいくら飛びかかってこようがなにしようが、全く意味がないのだ。みるみるうちに敵はその数を減らしていく。

 

 

「そろそろ出てきたらどうだ!? ジーエンズ!! 俺たちをこいつらで止めるのは無理だぞ!!」

 

「親玉ならさっさと出てきて、俺たちのことを潰してみろ。まぁ出た所で返り討ちにしてやるがな!!」

 

 

そういうと突然アンチバイツたちは動き止め、数歩下がる。

その間を抜けるように女性が現れた。まな、ではあるが違う。アンチバイツの王ジーエンズである。

ジーエンズはこちらが来たことを歓迎するかのように、腕を広げ、ニタリと笑う。まなの顔だが、その不気味さは異様な程だ。

 

 

「やっと出てきたな…… まなは…… まなは無事なんだろうな?」

 

「---あぁ… 無事だ。寄生はしているが、完全に体を乗っ取っているわけではない」

 

「そうか。それを聞いて安心したよ… これからどうするつもりだ」

 

「--- …… クククッ… もちろん欲のままに喰らう。全てをな…… ただ、今の力ではそれは叶わん。この女は未熟すぎる」

 

「どういうことだ…?」

 

「--- あの日、この女の住んでいた場所。それがここだ。我はまだまだ子の女に寄生した。そして我は…… ここにいる者たちを1匹残らず喰らった」

 

「なに……ッッ!?」

 

「--- この女からしたら、我は仇とでも言うべきだろうな。上手く騙し、今に至るが、これほどまで未熟だと思わなかったがな…… 」

 

「お前… まなの家族を殺して、まなを利用して…… ふざけるなよ!!」

 

「--- ふざけてなどいない。我は欲のままに動いているだけ。人間もそうだろう? 何かを手にいれるためには、何かを犠牲にしなくてはならない。我は自然の摂理に従っているまでだ」

 

「だからって生物を無差別に殺す事も違う。お前たちは喰らっているだけじゃない。ただ命を絶っているだけだ……!!」

 

「--- 必要のないものは捨てる。我は人間と同じことをやっているだけだ。文句を言うのであれば人間にいうことだな…… さて」

 

 

腕を振り上げると、アンチバイツ達は身を低くし、構え始めた。

 

 

「どこへ行く気だ!!」

 

「--- 始まりだ。お前たちの世は、我の手によって終わる」

 

 

腕を振り下ろすと、アンチバイツ達が一斉に飛びかかってくる。

それらを斬り裂いて、ジーエンズの元へ向かおうとするも数が増えたのか、睦生達をこれ以上進ませないと、目の前に次々と並び立つ。

 

 

「待て!!ジーエンズッッッ!!!!」

 

「--- お前達がこの館から出た時…… 我の計画は実行されている」

 

 

ジーエンズはその群れの中に静かに消えて行く。

怒りのままに、力任せでアンチバイツ達を退けていき、追いかけようとするが、彼の姿はどこにも見当たらない。

 

 

「くそッ!!!」

 

「これは時間稼ぎだ!! あの野郎、外で何かするつもりだ… こいつら片付けてさっさと追うぞ!!」

 

「はい!! … 絶対助ける……!!」

 

 

 

 

 

 

---------------

 

あれから1時間もかかり、ようやく館の外へと出られた。

しかし目の前の光景がまるで嘘のように変わっていた。

 

 

「なんだよ…… これ……」

 

「あいつ…… 俺たちに何もしてこなかったのも、あの中に留めておいたのも、こいつの為だったのか……!!」

 

 

2人はこの世の終わりを見ていた。

街はアンチバイツが溢れており、人々の悲鳴がこだまする。

 

 

「ジッ……………ッ!!! ジーエンズゥゥゥゥゥゥッッッ!!!!」

 

 

睦生達は急いでアンチバイツを倒し、襲われている人たち、まだ息がある人たちを助ける。

街は血の海だ。死体が無残に転がっている。どこもかしこも止まらない悲鳴。圧倒的数に全く減る様子がない。

 

暫くして、生き残っている人たちを避難させることができた。全て正義さんに任せてしまったが、こうでもしなければ睦生のことを誰しもが良しと思わないだろう。完全に守る側に徹していた。

それを繰り返しすることによって、落ち着いてはいないが、アンチバイツ達は大人しくなっていた。

あのジーエンズのことだから、また数を増やして再開するだろう。

それにこのアンチバイツ。他とは違う。人間を取り込んでいないのだ。後々調べてわかったが、どうやらメイズのような人工生物に寄生しているらしい。

だからこそこの短期間で多くのアンチバイツを量産できたようだ。

 

 

「すみません… お任せしてしまって」

 

「いや、いい…… 俺のせいでもあるからな」

 

「正義さんは何もしてないですよ」

 

「今までずっと否定して続けてきたからな……お前のような人間みたいなアンチバイツがい、あ、すまん逆だったな……」

 

「どちらと言っても否定はできませんが、俺は別に気にしてませんよ…… 怖がられるより、誰かを失う方が嫌なんです……」

 

「…… ついに恐れていたことが起きたな」

 

「そうですね…… 今は感じ取れませんが、これからまだ被害が増え続けるかもしれません……」

 

「そうだな… 迂闊に奴の場所へ行けないのか……」

 

「…… いや、来ますよ。俺たちが暴れ続ければ」

 

「なに…?」

 

「あいつがこの数時間でここまで増やせたのは、奴が身を潜めてた期間、アンチバイツの量産とその器を量産していたからだと思います。まなの体を未熟と言っていたので、まだ完全じゃないはずです。つまり、このまま俺たちが奴よりも早く倒し続ければ……」

 

「なるほどな。完全じゃない分、量も作れない。嫌でも潰しに出てくるってことか」

 

「…… やりましょう正義さん。あいつの好きにはさせない…!!」

 

「勿論だ。やるぞ睦生」

 

 

2人は握手を交わすと、明日に備え、一時の休息を取ることにする……




工事完了です……

やべーよやべーよ…… 敵が増えてきたから……
次回、戦います (いつもの)

残すは後…… 4話…!!!


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EP24 決死の覚悟

今更やけどオーバークォーツァー面白かったですね。もう顔中草まみれや。
それじゃ始めて行きましょうかね。

そして今回、まさかの展開に……!!!??

それではどうぞご覧ください。


睦生達はかなりの数を相手に戦っていた。

あれから3日間耐え続け、やっとアンチバイツの姿をほとんど見なくなるほどまで倒した。

そしてそれは同時に頭が黙ったらわけがないということだ。

 

 

「ハァッ!!!…… これで100体くらいですかね?」

 

「この3日を合計すりゃそんなもん、手乗りサイズだろうよ」

 

「… これで後は」

 

「あいつが出てくることだな」

 

 

残りのアンチバイツを潰していると、予想していた通り、辺りに不穏な空気が立ち込める。

どうやら出てきたらしい。奴… ジーエンズが。

 

 

「やっと出てきたな。ジーエンズ!!」

 

「--- まさかこの数を相手にここまでやるとはさすがだな。ビーレンズの息子よ」

 

「悪いけど、俺は睦吾郎っていう父さんと、弥生っていう母さんの間に産まれた人間。篠瀬 睦生だ」

 

「--- ふっ…いくら否定しようと、お前は我と同じ遺伝子を持つアンチバイツだ。それは変わらない」

 

「アンチバイツはヴァイザーだけで充分だよ。ね?」

「--- そうだな…… 久しぶりだなジーエンズ」

 

「---"ジーエンズ様"だろう? ヴァイザー……」

 

「--- 悪いが俺は、もうお前を王と呼ぶつもりもない。勿論、様付けなんてゴメンだな… 俺はこの世が気に入った。こいつの家族も好きだ。だから… それに手を出したお前を俺は許さん」

 

「--- 最底辺の雑魚が、我に対して偉そうにモノを言うようになったな」

 

「--- なんとでも言え。今の俺は、俺たちは……」

「負けることはない!!」

 

 

ジーエンズは睦生とヴァイザーを見て笑い始める。

その後、正義を見て、静かに微笑む。

 

 

「--- お前もこいつらに着くのか? どうだ? 我と共に世界を、欲のままに好きにしようと思わないか?」

 

「誰がするかよ。寝言は潰されてから言いな」

 

「--- …… お前も変わったな。何を吹き込まれたんだか…」

 

「こいつらを見て、俺は…… 忘れていたことを思い出しただけだ。仮面ライダーとして、俺はお前を倒す。この地球は俺が守る!!!」

 

「--- クククッ……面白い。いいだろう」

 

 

ジーエンズは怪人態へと姿を変えると、目の前から姿を消し、睦生の首を掴みそのまま投げる。

かなりの投力であり、体勢を立て直そうにも、圧のせいで全く身動きが取れない。

 

 

「睦生 …!!」

 

「--- 仲間の心配をしている場合か?」

 

「… ッ!!」

 

 

顔を殴り、蹴りを腹部に一発入れる。単純な攻撃に対処できない。

それもそのはず、ジーエンズの攻撃は非常に素早く、まず目には見えない。来たと思った時、すでに別の方向から飛んでくるのだ。

仮面にヒビが入るが、怯むことなく、ゴッドジャスティスタンドを取り出すと、ジャスティスタンドと合体させて、仮面ライダーゴッドジャスティスへと姿を変える。

 

 

「…… ッラァァァッッ!!!!」

 

「--- ヌグッ!」

 

 

先程とは比べ物にならない力で、ジーエンズを殴り飛ばす。

これには彼自身を少々驚いた。人間でここまでの力を有するとはありえない話。

すると、右方向より銃弾が数発飛んでくる。

それを回避してから、見てみると睦生が的確に、急所に当たるように調整させながら撃ち込んできているのだ。

 

 

「--- ほう。お前も成長したものだな、ヴァイザー」

 

「--- お陰様でな …睦月ッ!!!」

「あぁ!!」

 

 

弾を飛ばしつつ、一気に近づくと剣をコアを貫くようにして突き刺そうとするも、片手で掴まれてしまう。

 

 

「--- ほう、殺す気か?いいのか?この女が死ぬぞ?」

 

「お前も自立できないから再生させないといけないんじゃない?」

 

「--- 確かにそうだな……」

 

 

剣をなぎ払い、距離を広げる。

正義は睦の隣に並び立つと、構えて耳打ちをする。

 

 

「…… 睦生。俺に合わせて、あいつを遠距離から狙えるか?」

 

「任せてください」

 

「当たるなよ?」

 

「ブレなければ」

 

「よし…… 行くぞ!!」

 

 

正義は駆け出すと、ジャスティカリバーに、もう1本別の武器【 ジャスティゴッドライザー 】を取り出し、合体させると大剣となる。

剣にスタンドをセットすると、眩い光が激しく刀身を包み込む。

 

 

【 ゴッドッッ!!!!ジャスティスラッシュ!!!!!! 】

 

「ハァァァァッッッ!!!!!」

 

「--- 来い…ッ!!」

 

 

ジーエンズは手を交差させ、斬撃を受け止めようとする。

力一杯に振るわれた一撃を彼に浴びせると、凄まじい衝撃を生み出す。

しかしそれを受け止めてみせるが、その時、睦生の最大火力の銃弾が、正義が体勢を低くすると同時に放たれ、右肩を持っていかれガードが甘くなる。

その一瞬の隙を利用し、正義の刃が体を通り抜ける。

 

 

「1人だったら良かったかもな!!」

 

「これでも… くらえ!!」

 

 

睦生は腕を伸ばし、異常な速さで回ると、その勢いを利用してジーエンズの頭を叩くようにして振り下ろす。

ジーエンズの首がメキリと音を立てる。

だが、彼はアンチバイツ王。目の色を変えて、先ほどの攻撃を完全ではないが再生させ、睦生の剣の腕を、力任せに引きちぎり正義に投げつける。

装甲を破り、肩を貫通するほどの威力があった。

 

 

「正義さん!!?」

 

「俺は大丈夫だ…!!! チッ!!!」

 

 

腕を引きちぎられた睦生は再生させるが、途端に胸を骨ごと鷲掴みされると、ジーエンズは腕を槍に変え、口に突き入れる。

そのまま正義の方へと投げると、今度は弓へと変化をさせ、矢を放つ。

風を切る音が聞こえる。いや、引き裂いてるといったほうがいいほど凄まじい威力の矢が飛んできた。

 

 

「まずいッ…!!」

 

 

間一髪のところを、睦生が盾となり、矢は防げたものの、アーマー状態の彼と正義が激突した事により、お互いとてつもない衝撃を受け、骨が折れる音が聞こえる。

 

 

「正義さん骨が…!!」

 

「ガハッ…!! …… 俺はいい!! 次に備えろ!!」

 

 

地面に一回、蹴りを入れ、一瞬で近づくと刀に変えた腕を振り下ろす。

それに気づき、すぐさま剣で受け止める。

力は五分五分と言っていいだろう。刃と刃の間から火花が散る。どちらも全く譲る気は無い。

 

 

「--- なかなか耐えるな」

 

「これでも結構キツイんだけど」

 

「--- 我もここまで苦戦するのは初めてだ。褒めてやってもいい。だが、お前たちがいくら我を痛め付けようと、この女を救い出す事はできない」

 

「だよね… そんなの知ってるさ。あの日から寄生された人を救う為に頑張った。けど俺はアンチバイツを殺す為にそれをやるのをやめた」

 

「--- それをやめただと?」

 

「ただ今は…… それをやるべきだと思う」

 

「--- 一体何を……ッ!!」

 

 

ジーエンズの隙を突き、正義は渾身の力で羽交い締めにする。

振り払おうとするが、覚悟のできている正義の力は尋常ではなかった。

 

 

「やれ!!睦生ッッッ!!!」

 

「はい!!!」

 

 

すると、睦生はジーエンズの体に腕を突き入れる。

彼は驚いた。コアを貫くつもりだと思ったらそうだは無いのだ。

徐々に、彼の体から人間の手が見え始める。睦生の手ではないし、正義のものでもない。

 

 

「--- なに…ッ!?」

 

「--- 言ってなかったか?睦生の野郎の力をな…… いや、今ならわかるな」

「借りるよ…… 母さん!!!」

 

 

そう。睦生のこの能力は確かに彼自身のものである。

しかし元を正せば、彼がこの力を身につけられたのは、ビーレンズ… 弥生の子であるがゆえ。効率でアンチバイツを殺していた彼は、この能力を封印した。

ジーエンズから引き剥がせば、奴の行き場所は無くなり、無防備になったところを叩ける。

元凶を倒せば、全て許されると思ってない。助けられる命を助けなかった自分は残酷な男だった。いつしか本当に自身がアンチバイツになっていたのかもしれない。

だからこそ、今、ジーエンズを倒して平和を取り戻す。今度はみんなを救う。この身がどうなろうとも。

 

 

「ウオォォォォォッッッッッ!!!!」

 

 

睦生は咆哮と共に、まなを引き出すのに成功する。

器が取り出されたことにより、ジーエンズは自分の体の形状を保てなくなってしまう。

この好機に2人は、息を合わせて最大の必殺技を、同時にジーエンズに浴びせる。

 

 

「--- バ、バカな……」

 

「調べが足りなかったな…… ジーエンズ」

 

「--- …… そうだ…… 確かに足りなかった……」

 

「… 俺の勝ちだ」

 

 

ジーエンズはドロリと溶けて、跡形もなく消えてしまった。

睦生はまなに近づき、声をかける。

 

 

「まな? 大丈夫?」

 

「… ん…… ここは…?」

 

「あぁーーー…… よかったぁーーー……」

 

「え? どうしたの睦生?」

 

 

今までのことを全て話すと、まなは驚いた。

それもそのはずだろうが、何はともあれ、終わったのだ。

睦生は彼女を静かに抱きしめ、涙を流した。

 

 

「ごめんね… 心配かけて……」

 

「いいよ。まなが無事でよかった」

 

「睦生…」

 

「俺は…もう家族を失うのは嫌なんだ。だから本当に… よかった……」

 

「うん。私も嬉しい。ありがとう」

 

 

正義は2人のやりとりを見て、嫌な気分を覚えたが、後ろから見守る。

 

 

「よし、じゃあ色々片付けたら、今までの詫び…っていうとあれだが、睦生、まな。お前ら2人を援助させてもらいたい」

 

「え? いや、そんな……」

 

「頼む。これがせめてもの報いだ」

 

「ありがたいですけど、俺も罪があります。ただでして貰うわけには…」

 

「なら、俺の所で働いちゃくれないか? 優遇するとかそんな事はやらない…… ただお前が納得するようにはするつもりだ。どうだ?」

 

「… 嬉しいです。ありがとうございます」

 

「決まりだな… もちろん、まなも来て貰う。いいよな?」

 

「え、あ、はい」

 

 

3人は避難場所へ向かおうと歩き出す。正義が変身を解こうとした。

だが、その瞬間。

彼が苦しみだした。

 

 

「ウッ……ッッ!!!グゥゥゥッッ!!!」

 

「正義さん… !?」

 

「離れろッッ…!!! まだ…… こいつッ……!! 生きて… やがったッッッ!!!!!」

 

「…ッッ!!! ま、まさか……ッ!?」

 

 

正義は最後に絶叫すると、突然、静かになる。

すると不気味な笑い声が彼から聞こる。それを聞いて、睦生たちはゾッとした。

ジーエンズが正義の体を乗っ取ったのだ。

 

 

「--- クククッ…… ハハハハハハハッ!!!! 流石の我も死ぬかと思ったぞ…… 我が知らないとでも思ったか? まぁ賭けではあったが、うまくいったようだ」

 

「まさか今までのは全部ッッッ!!!」

 

「--- あぁ… 嘘だ。だが、これでようやく最高の器を手に入れた。クククッ…… 我は完全なものとなった!! これで… 我は何者にも支配されない」

 

「ジーエンズッッッ……!!!!!」

 

「見せてやろう… 我が完全なる力をな」




デデドンッ

もうめちゃくちゃや…
といっても、終わりがわかっているので、察しがいい兄貴たちは分かっていたことでしょう。

次回、睦生vs正義!!… +ジーエンズ!!!

残り…… 3話……!!!


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EP25 終焉の幕開け

前回のあらすじ!!
ジーエンズに勝った!!
でも正義が寄生された!!

完全体となったジーエンズ。果たしてその実力とは……
今回は短めに終わります。理由?戦闘描写が長々続くからです(グダ嫌逃げ

それではどうぞご覧ください。


「正義さん……」

 

「--- 突然で悪いが、仕返しをさせて貰うとしよう」

 

「え…?」

 

 

何が起こったかわからなかった。

気づけば右腕がなくなり、吹き飛ばされ、全身に激痛が走っていた。

 

 

「睦生!!!」

 

「グッ…く、来るな!!!」

 

 

鎧がまるで豆腐のように壊される。

ジーエンズの攻撃が読めない。見えない。触れることすらできない。

ただ目の前に見えるのは、形がわからない何かが睦生を殴りつけているとうことだけ。

見るも無残にされた睦生の頭を鷲掴み、自分の顔の手前まで持って行く。

 

 

「--- どうだ?完全体である我の力と…… ゴッドジャスティスの力は?」

 

「カハッ…… ハァ……元から、正義さんが目的だったのか」

 

「--- ご名答」

 

 

手に力を入れて行くと、頭がミシミシと音を立てる。卵を握り潰すかのようだ。

勝てない。無理だ。強過ぎる。

この状況をどう打開する? 隙をついて切り裂くか? それともまなに協力を得るか?

いや全て無駄に終わる。明らかに今までのものとは比べ物にならない。

それにまなは普通の人間に戻っているはずだ。協力を得たところで、犠牲が増える。

彼女だけは逃がしたい。しかし今、倒さなければ、確実に地球は滅びる。

 

 

「--- 頭の中で色々考えているようだが、無駄だ。今の我に太刀打ちできる奴は存在し得ない」

 

「ま、まなには手を出すな… ッ!!」

 

「--- …… いいだろう。ただしお前には我の力を思い知って貰うとしよう」

 

 

宙へと投げると、その状態で殴る。

地面に落とさず、浮かせた状態で殴り続ける。

 

 

「やめて…!! 睦生ッッ!!!」

 

「--- 防御してみろ。睦生」

 

 

片腕を剣に変え、その攻撃を受け止めようとした。

しかし殴られる度に、剣は割れて行く。ゴッドの力であれば、確かに壊すことは可能だが、それでも睦生の剣を壊すには、かなりの力を有することだろう。

相手が正義に寄生したジーエンズとなれば話は別、それすら容易に行える。

 

 

「ブレードが …!!」

 

「--- 脆い脆い。もう少し質のあるものに取り替えた方がいいな」

 

「この…ッッ!!」

 

 

睦生はエンジンの力で跳ね除けると、上空へ逃げ、飛び回りながら、銃弾を何発も放つ。

それを避けようともせず、ジーエンズは受け続ける。

ビーレンズの力ですら、既に彼とはその差が違う。母に与えられた力は、爪痕を残せない程まで、差が開いたしまったのだ。

 

 

「そんな………」

 

「--- いいぞ。その表情。もっと見せろ睦生」

 

「くっ……!!」

「--- チッ…… 流石に強過ぎる… 再生させるだけで手一杯だぞ」

 

「--- ヴァイザー良く成長したな。だが、所詮は人間レベルにまで落ちた哀れな生き物だ。そんな奴が我に勝てる筈もない」

 

「--- クッ…」

「ヴァイザー… このままだと……」

「--- わかってる。ただ近づくのは危険すぎる」

「このまま遠距離で撃ち続けるしかないってこと…?」

「--- 今はな」

「…… わかった。行くよ」

 

 

尚も遠距離から銃弾を浴びせる。いや、浴びてやっているのだろう。全くダメージを負う傾向すらない。

急所を狙い、何度も何度も撃ち続けるが、ジーエンズは首を回し、暇そうにしている。

 

 

「やっぱり埒が明かないッ!!」

 

「--- これで終わりか?流石の我も飽きてきたぞ」

 

「ここまで… 戦力差があるって言うのか」

 

「--- 当然だ。我はアンチバイツの王。これまで全てのアンチバイツ達は我が生み出した。故に、その力を扱えないわけがない…… それにお前が戦っているのは、我らに刃向かう仮面ライダー。こいつのゴッドの力は、スペシャルの力を受け継ぎつつ、更に我らに攻撃を加える度に弱体化させる機能が付いているらしいな」

 

「なら… お前だって……」

 

「--- 我の能力はもう一つ…… 寄生した相手を力、全てを意のままに操ることができる」

 

「なに…ッ!? いやでもそんなこと……!!!」

 

「--- 言っただろう。我は…… 王であると」

 

 

すると、ジーエンズの背中から、触手が何十本も飛び出し、睦生の体に絡みつく。

睦生は力を振り絞り、拘束を解こうともがくも、まるでビクともしない。それどころか動く度に、締め付けが強くなってきている。

 

 

「ぐわァァァァァァァァ……ッッッ!!!」

 

「もう… もう、やめて!! オルギンッッッ!!」

 

 

まなの叫び声に、攻撃を辞め、彼女の方を向く。

 

 

「--- オルギン…… か。懐かしい名だな。まぁ無理もない。お前とは昔から付き合いだからな…」

 

「…… お願い。睦生にこれ以上、手を出さないで」

 

「--- 先に手を出してきたのはそっちだろう?我は非常に不快だったからな。仕置きをしてるだけだ」

 

「その事については謝るから… お願い。これからあなた達には手を出さないから… 睦生だけは…… 私の家族だけはッ……!!」

 

 

深々と頭を下げて、涙を流しながら、ジーエンズに許しを請う。

それを見た彼は、今迄見せたことがない表情で笑った。

 

 

「--- クククッ…… なるほど。面白いそうきたか。お前は… この男を救い、世界がアンチバイツに支配されるのを、その目で見たいと言うことか?」

 

 

なにも言わなかったが、首だけは微妙に横に振れているのがわかる。

だがジーエンズは、その仕草も矛盾していることがまた面白く、触手の力を緩めて行く。

そして睦生を、ゆっくりとまなの前へと下ろすと、背中を向けて歩き出す。

 

 

「--- さぁ…… 終焉の始まりと行こう……」

 

 

ジーエンズが消えて行くまで、見続けていたまなだったが、彼が消えると、睦生の安否を確認する。

すると、目を開けて、まなの顔を見た。

それから彼女はボロボロと涙を流し、睦生を抱きしめる。

 

 

「私… ごめんなさいッ……!! 取り返しのつかないことを…ッッッ!!!」

 

「いい。君は悪くない。悪いのは…… 弱い俺だ」

 

「ごめんなさい…… ごめんなさい……!!」

 

「うん。大丈夫。大丈夫だから……」

 

 

この国は王により、終焉が訪れる。

彼らはそれを見守ることしかできないのか……




これマジ?早過ぎる。
お兄さん許して。お兄さん壊れる(意味不明

勝利の兆しが見えない彼らだったが、ついに睦生は決断をする。

残り2話。最後までよろしくお願いさしすせそ。


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EP26 最後の牙

あー…… 悲しいかな。

最終回一歩手前となりました。
色々と感謝の言葉を述べたいのは山々なのですが、シメで言わせてください。お願いします。なんでもしますから
ん?

皆さんは私の小説に耐えきることができるでしょうか? それではどうぞご覧ください。


あれから1週間、外を見れば火の手が上がっている。

睦生は何もしないとは言ったものの、裏で人の救助を行っていた。

事あるごとに罵声や暴力なんかを振られたけど、当然のことだろう。けど、それは自分がアンチバイツだから仕方がない、というのとは違う。

俺は戦えるにも関わらず、逃げている。最低な化け物だ。

 

 

「…… ただいま」

 

「おかえり。睦生」

 

 

このアパートにいるのは、俺たちだけだ。

2人だけでここに住んでいる。他の人達はみんな避難所へ逃げた。

時期にそこも危うくなってしまうだろう。だが、自分にはそれを守れる力がない。

 

 

「今日は… 弥生さんが教えてくれた料理だよ。前にこれ美味しいって言ってたから…」

 

「うん、すごく美味しそう」

 

「ありがとう」

 

 

あの日以来、まなは無理して微笑んでいるように見える。

これも当然といえば当然。彼女はあの状況の中で、俺を助けるために、言葉を悪く言えば、人類を選ばなかった。

しかしあの場で何をしようが、結果は変わらないだろう。

俺たちにはすでに選択肢なんかない。あるのは死を待つことのみ。

 

 

「すごく美味しい…… でも食材、残り少ないね」

 

「うん。ガスもなんとか使えるけど…」

 

「そっ…… かぁ……」

 

 

街は荒れ果てている。そんな中で食べ物以前に、生活環境だってままならない。

今、俺に出来ることは人々を避難所に届け、物資を届けるだけ。

アンチバイツを殺す事は、確実に標的にされる。約束を破ることとなる。だから倒せないし、手すら出せない。日に日にその数を増やしている気がする。

睦生は食べ終わった食器を、洗い終わると、椅子に座る。またはその隣に腰掛ける。

 

 

「…… あれから1週間も経つのか。時が過ぎるのは、ホントに早い」

 

「そうね…」

 

「社会人になって、大切な人もできて、毎日楽しかったんだ…… でも、あの日から全て変わった」

 

「ん…?」

 

「俺は… ヴァイザーに寄生された。トイレの中だったかな? 嫌な場所で倒れたもんだよ……ハハッ」

 

「……」

 

「それから色んなアンチバイツと戦った。もちろん仮面ライダージャスティスとも。今、覚えばあんな体験してる人、俺しかいないんじゃないかな? それもそのはずだよね。だって俺は… 人間じゃなかったから……」

 

「睦生…」

 

 

机に膝をつき、片手を額に付けて、笑顔を保ちながら話し続ける。

 

 

「自分のこの力は与えられるべくして、貰ったんだろうなとか、ちょっと思ったことあったよ。俺は他の奴とは全然違うし、なんでも出来る気がしてた。アンチバイツを倒して、みんなを救えると思ってた…… それが全部、間違いだったんだ」

 

「……」

 

「俺は結局、この世を救えなかった。今のこれはなんだ? 家族と一緒にゆったりと過ごす。別に何処にでも普通の光景さ…… だけど俺がそれをする資格があるのか? あいつとやり合えるのは、俺しかいない状況で、俺は何のうのうと生きてるんだ? 俺は一体なにも出来ず、ただ怯えてるだけの…… 弱い男だ……!!」

 

「睦生は弱い男なんかじゃないよ… だって現に、あなたに救われた人はいっぱいいるじゃない…」

 

「… ありがとう、まな。でもこれは事実なんだ……」

 

 

まなは既にアンチバイツではない。ジーエンズが外れた為、ただの女の子となった。

そんな彼女に、睦生は自分の怒り、悲しみのままに打ち明ける。

かつて寄生されたものとして、聞いて欲しかったのかもしれない。自分のことを。

 

 

「戦いは怖かったさ。いつもいつも自分を奮い立たせて、アンチバイツ達に挑んでた。人を守る為に戦った。命懸けで守った…… でも、最終的には、自分を選んだ」

 

「……」

 

「ジーエンズと戦ってわかった。俺はあいつに勝てない…… おかしいだろ?今まで命懸けてたのに、あいつと真正面からやりあって、怖くなって、何も出来なくて…… なにも………… 僕は… 怖い。死ぬのがとても怖くなっちゃったんだ……」

 

 

睦生の胸の内を聞き、まなは優しく彼を抱きしめる。そして泣いている睦生の頭を数回撫でる。

 

 

「睦生は充分頑張ったよ…… 私が言える口じゃないけど、あなたは誰よりも頑張った。だからもう… 戦わなくてもいいんだよ?」

 

「…… でも… 僕は、大切な人を失いたくない。僕の為に死んでいった人たちが何人もいる。だから、それを蔑ろにしたくない……」

 

「やっぱり… 行きたいのね……」

 

「本当は行きたくないよ… だけど僕が、僕がやらなきゃいけない。救わなきゃいけないんだ… それが僕に託された使命だと思う」

 

「…… わかった」

 

「まな…」

 

 

まなは涙を必死に堪えて、無理矢理に笑顔を作る。

本心は嫌だとわかっているから、睦生自身の心情もかなり苦しい。

 

 

「絶対… 生きて… 帰ってきて……ッ!!」

 

 

この言葉を聞いて、睦生は覚悟を決めた。

彼は再び、ヴァイザーとして復活する。

 

 

「あぁ… もちろんだよ」

 

「約束だから…… 」

 

「約束」

 

 

しばらくお互いを抱きしめ合い、最後の戦いまでの時間を過ごす。

明日から準備が整い次第、すぐにジーエンズの元へと向かうつもりだ。

睦生はベッドに寝転がって、天井を見上げる。特に変化はなし。それもそうか。

 

 

「… 明日だよ。ヴァイザー」

 

「--- なんだ?あんな事を言っておいて今更、無理だから逃げる、ってのはなしだぞ」

 

「言わないよ。この状況で言うとか、格好つかないでしょ?」

 

「--- それもそうだな」

 

 

ヴァイザーと最後の会話になるのかな。できれば死にたくはないけど、今回ばかりは万が一のことがある。

だから、相棒と少しでも話がしたい。

 

 

「そうだ、ヴァイザー。今日のまなの料理どうだった?」

 

「--- あぁ? まぁ美味かったな。ただ弥生のにはまだ足りないと言ったところだな」

 

「そうかな? 結構似てたと思うけどな」

 

「--- なんだ? 味覚音痴にでもなったか?」

 

「誰が音痴だよ」

 

 

会話最中、扉を叩く音が聞こえる。誰かはわかっているから、あえて返事はしてみない。

しかし全く開けてこないものだから、結局、呼んだ。

なんで返事してくれないの?と、怒っていたが、笑っていたから良かった。

 

 

「そういえば、ヴァイザー。最初の頃はグレてたね」

「--- グレてた?」

 

「私知らないけど、そうなの?」

 

「かなり酷かったよ。もう人のことなんだと思ってるんだって感じの」

「--- 仕方ないだろ… あの時は若かったんだ」

 

「アンチバイツに年齢ってあるの…?」

 

「--- 知らん。俺に聞くな」

「人間年齢って大体どのくらい?」

「--- …… お前と同じくらいなんじゃないか」

「え!?」

 

「へぇー…」

 

「--- なんだその顔は」

 

「別にー」

 

 

楽しい会話、かなり長い時間話していた。

この楽しい会話も今日で終わりになってしまうのか。

睦生は最後の時間をたっぷりと過ごし、明日に備えて眠りに落ちた───。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

---------------

 

朝の日差しは差し込まない。空は毎日暗闇に覆われている。

起床した睦生は、着替えてからリビングへと向かう。

キッチンではまなが朝食を作っていた。これが最後の食事だ。

 

 

「あ、起きた? ご飯もうできてるよ」

 

「うん。食べるよ」

 

 

椅子に座り、「いただきます」と、合掌をして食べ始める。

途中、まながジッと顔を見つめてきているのがわかり、そちらの方を向くと、驚いて顔を伏せる。

 

 

「ん? 顔になにか付いてる?」

 

「んーん… なんでもないよ」

 

「…… まな」

 

「なに?」

 

「大丈夫。俺は必ず帰ってくるから」

 

「うん…」

 

 

食事を済ませると、両親の写真がある仏壇の方へ行く。

その前で正座をして、合掌をする。

 

 

「母さん。父さん。俺、行ってくるよ… 」

 

 

さぁ、行こう。

玄関へと移動し、靴に履き替える。

まなもその後、片付けをしてやってきた。

 

 

「いってらっしゃい。気をつけてね」

 

「いってくるよ」

 

「… 絶対。帰ってきて」

 

「もちろん」

 

「うん… 気をつけて……」

 

「…… いってきます」

 

 

まなはゆらゆらと手を振り、ドアが閉まるまで見ていた。

そしてもう一度ドアを開けた時、すでに彼の姿はなかった。

 

 

「… 頑張って…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

---------------

 

「邪魔だぁぁぁッッッ!!!」

 

 

街に蔓延るアンチバイツ達を、みるみるうちに殲滅して行く。

人類の未来のために、彼は今、もう一度立ち上がる。

 

 

「気配はこっちからだ!!」

 

「--- あぁ… 睦生。お前がこの先何があっても、俺は最後までとことん付き合うつもりだ」

 

「かしこまった感じして… どうしたの?」

 

「--- 相手は今の俺たちを圧倒する、アンチバイツの王… 無事でいられるはずもない。だからだ」

 

「… わかってるよ。帰るとは言ったけど、本当に帰れるのかもわからない。あんな圧倒的差を見せつけられて、それでも戦いに行くなんて馬鹿らしいよ… でも、俺しかできない。俺がやらなきゃいけない」

 

「--- やはりお前は面白いな。もうすぐあいつの場所だ」

 

 

睦生達はジーエンズのいる場所へ、覚悟を決め向かう ───。

 

 

 

──── しばらくして、ようやくジーエンズの気配がする更地へやってきた。

来るのがわかっていたかのように、周りの木々や瓦礫は除去してある。それらしき残骸が所々に見られる。

 

 

「来たぞ… ジーエンズッ!!!」

 

 

さっきまで、そこにいなかったはずのジーエンズが、一瞬のうちに目の前に現れた。

深くため息を吐くと、呆れたように首を振る。

 

 

「--- なぜ、来た」

 

「お前を倒すため」

 

「--- …… ありえない。お前も理解しているはずだ。我とお前とでは話にならない。だが、どうしてだ? 一体、お前の何がそうさせる」

 

「大切な人を… もう2度と失いたくないからだ」

 

「--- ククッ… たったそれだけの理由で、我と戦おうなどと無謀が過ぎる」

 

「たしかに無謀だ。だけど、俺は戦わなければならない… それに俺は死ぬ気なんてない。必ず帰って、あの頃のように平和に過ごすんだ。俺はお前に勝つ。勝って、みんなの明日を作る!!!」

 

「--- ハハハハハッ! … さすがビーレンズの息子だ。悔いのないように殺してやろう」

 

「行くよ。ヴァイザー」

「--- あぁ、行くぞ睦生」

 

 

そして構える。

全てを終わらせる為に、平和を取り戻す為に、生きる為に。

最後の戦いが始まる。

 

「「ジーエンズッッッ!!! お前を喰ってやるッッッ!!!!!」」




次回、最終回です。

睦生 VS ジーエンズ
果たして、地球の未来はどちらのものになるのか。

残り1話。皆さん、よろしくお願いします。
次回まで暫しお待ちください。


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EP27.final 最高の日常

皆さんご無沙汰しております。
「仮面ライダーヴィランズ」本日、最終回となります。

沢山の方に愛を込めて。

エンドクレジット(あとがき)にお知らせがあるので、最後までご覧頂けると嬉しいです。
皆さんは最後まで私の小説に耐えきることが出来るでしょうか?
それではどうぞご覧下さい。


アンチバイツの王。それは始祖であり、この惨事の元凶。

全てのアンチバイツを統べるその力は、まさに他を寄せ付けない圧倒的な存在。

たとえ、どのアンチバイツよりも遥かに優れ、今までに何千と戦ってきた猛者だったとしても、ジーエンズと対峙する事は死に急ぐこと。はっきり言って無謀である。

ただ、この男だけは違う。負けると分かっているが、勝つつもりでこの場に立っている。なんとも矛盾しているが、これが事実なのだ。

 

 

「お前にアーマーなんて意味ないだろうけど、ないよりはマシだよね…」

 

「--- お前の事情などどうでもいい。我の前ではお前の能力は無力。全く意味をなさない。精々、5秒の命だ。今この瞬間、我に生かされていることを感謝するがいい」

 

 

ジーエンズは片腕を槍に変化させ、一瞬の内に数キロ先まで伸ばす。

普通であるなら、コアを貫かれて死んでいたであろう。

ただ、睦生は本能的にそれを避けた。これにはジーエンズも驚いた。

 

 

「--- ほう。避けたか」

 

「で? どうした?」

 

「--- どうした… とは?」

 

「5秒以上経ってるぞ」

 

「--- なるほど… そこまで死にたいらしいな」

 

 

こんな相手に挑発をするのは間違ってはいるが、自分自身を奮い立たせる為であり、未だ未知数の相手がどう動くのか、様子見の部分もある。

ジーエンズは背中から複数の触手を伸ばすと、それぞれの形が変化していき、今までに出会ったユニク達の武器となる。

 

 

「やっぱり… 喧嘩売らない方が良かったかも」

「--- かもな」

 

「--- 原形すら残らないよう、刻んで肉塊にしてやろう」

 

 

先ほどの突きは避けることに成功したが、何本もあらゆる武器を仕掛けられたら、彼の言葉通り原形を留めるのは無理な話だろう。唯一の救いは、銃などの遠距離系がないと言ったところか。

そう思っていると、一斉に鋭利な刃が睦生に向かって飛んでくる。

反射的に2、3本は躱せたが、そのほとんどが彼の体に深く傷をつける。

 

 

「カハッ…!!」

 

 

避けてはいるが、攻撃一つ一つは全くと言っていいほど見えてない。

ただ睦生の本能が勝手にそうしているだけで、彼自身全く避けようと考えているわけでもないし、寧ろ対処法すら見出せていないのだ。

そうしている間にも、彼は刻まれて行く。

 

 

「--- よくこの攻撃を避けていられるな。さすがと言ったところか? まぁ、時間の問題だがな」

 

「ぐっ!! …ッいつまでも!! 好き放題できると思うな!!!」

 

 

すると睦生が纏うアーマーが弾け飛び、それが単体で形を築いて行く。

睦生は怪人態のまま、出来た"それ"に捕まると、瞬発的に走り出す。

そう。ヴァイザーはバイクに姿を変え、一気に加速をし、ジーエンズと距離を離した。

 

 

「--- 睦生、俺がまず距離を取る。それからあいつの攻撃を避け続ける。お前は攻撃に徹しろ」

 

「… 任せるよ。ヴァイザー」

 

「--- しっかりやれよ」

 

「もちろんやるさ」

 

 

右腕をジーエンズに向け、弾丸を連射する。

やり方こそ前とは違うが、やっていることは変わらない。もちろん攻撃など通るはずもなく、全く怯むことなく、ジーエンズは凄まじい速さで睦生たちを追う。

それでも撃ち続ける。決して、デタラメに撃っているわけではない。

ほんの少しでもいい。

ただ奴に有効打を与えられればいいのだ。

 

 

「--- 先程から何を企んでいる? 我の急所でも探しているか? 残念だが、我に弱点などない。無駄な足掻きはよせ」

 

 

それでも睦生は攻撃を止めることはない。

ヴァイザーが回避に徹してくれている。だから自分は、それを信じて攻撃に徹することができている。

そしてジーエンズは数本の触手を、ドリルのように回転させ、地面を抉るように唸りながら、睦生達の方へと真っ直ぐに向かってくる。

 

 

「来たよヴァイザー!!」

 

「--- 任せろッ!!」

 

 

元より奴の攻撃を受けようものなら、まず致命傷は免れないだろうが、ただアレは巻き込まれれば、確実に即死であろう。

それらを躱し、睦生は撃ち続ける。

 

 

「--- 同じ事を繰り返しても、どうにもならんぞ? …だが、それも仕方のないこと。それ以外に手はないからな」

 

 

それでも繰り返し撃ち続ける。ただし、同じ箇所を何度でも。

 

 

「--- ん…?」

 

「確かに… そうだな。お前と戦って俺の攻撃が通ることはない」

 

「--- それでも尚のこと撃ち続けているのはどういうつもりだ? 傷跡でも残そうと言うのか?」

 

「あぁ、その通りさ。こうやってお前に何度も何度も攻撃して、たった一箇所だけ見えたんだ。ほんの一瞬で、僅かだったけど、それでもこの瞬間は無駄じゃなかったッ!!!」

 

「--- 一体なにを… ッ貴様まさか…」

 

 

睦生はジーエンズのほんの僅かな隙を、攻撃の最中に見破っていた。

あの1発が奴の腹部に当たると、ジーエンズ自体には特に変わりはない。

しかし、ある部分にだけ確かな手応えを感じた。

いくら能力が完全に乗っ取りるものだったとしても、その完全すらも彼は破ったのだ。正義の誇りは、仮面ライダージャスティスのドライバーだけは、全く侵食されていない。

今更気づいたジーエンズであったが、もう遅い。

 

 

「正義さん… すみません。それを破壊させてもらいます!!!」

 

 

ライダーシステムさえ破壊することができれば、奴は仮面ライダーの力を失う事になる。

そうなれば、確実に弱体化を狙えるはずだ。戦況は余り変わらないだろうけど、今は少しでも突破口が開ければ良い。

 

 

「--- クククッ、無駄だ。よく気づいたが、我にとってそれは問題ではない。ゴッドの力により、お前の攻撃はほぼ無力化されている。況してや、ジャスティスのドライバーはアンチバイツの力で破壊できるほど、やわに造られているはずがないだろう」

 

「"普通なら"の話だろ? 正義さんは… お前に寄生されようとも、まだ落ちちゃいない!!」

 

 

ジーエンズもその事については気づいていた。正義に寄生し、暫く経つが、身体に馴染むのが明らかに遅いのである。

さほどの問題でもないと思い、放っておいてはいたが、人間を甘く見ていた王にとって、それはある意味で天罰といったところなのだろうか。

正義という男の魂が、彼が思っている以上に強く、簡単には屈しない事に。

それからピシリと音を立て、ドライバーに亀裂が走る。

 

 

「正義さん、行きますよッッ!!!!」

 

 

ジーエンズに向け、最大級に力を溜めた1発が放たれる。

その弾丸はジャスティドライバーを確実に捉え、亀裂が大きく走る。

すると彼の体に異変が生じた。

ライダーシステムの停止に伴い、ジャスティスの力は完全に消え、ベルトが完全に砕け散ると、ジーエンズの怪人態のみが姿を現した。

ヴァイザーはバイクを急停止させ、再び睦生のアーマーとなる。

 

 

「無駄じゃなかっただろ?」

 

「--- …… ここまで…… ここまで我がコケにされるとは、王として初の体験だ…」

 

「これでお前だけになったな」

 

「--- 図になるなッッッ!!! … 貴様、我がライダーの力を失ったからといって、対等に渡り合えると思ったら大間違いだぞ」

 

「……」

 

「--- 我はアンチバイツの王!! 全ての頂点に立つ存在!!下等な人間とアンチバイツの恥晒しが、我に勝利するなどと、大それたことを…ッ!!!」

 

「来い、ジーエンズ。お前が王というなら、俺たちを下等だというのなら、勝って見せろよ。口だけじゃなくて、行動で示してみろッ!!!!!」

 

「--- 殺してくれる…ッ!!!」

 

 

ジーエンズは背中の触手に加え、両腕を睦生と同じ剣のような形状変化させる。

ただ一つ違う所は、刀身は遥かに長く大きく、棘が多く、肉を抉るような形状であり、睦生の剣よりも更に禍々しい物となっている。

そんな彼も右腕を剣に変え、左足を後ろへ下げる。

 

 

「喰ってやる… お前を、お前の野望もッッッ!!!!!」

 

「--- 睦生ッ… ヴァイザーッ…!!!!!」

 

 

ゴッドの力は無くなり、これできっと自分の攻撃も通るだろう。そう思っていた。

 

 

「ハァァァァッッッ!!!」

 

「--- 我の力… 身をもって知れ!!」

 

「…っ!!?」

 

 

大きく振り降ろした剣が、ジーエンズの右肩から切り抜けるはずだった。

が、それどころか、刀身はピタリと彼の肩で止まり、睦生は剣を掴まれると、腹にドリルのように回転させた触手を突き刺し、そのまま中身をかき混ぜるかのように回し続ける。

 

 

「ゥゲッ……ガッ…ッ!!」

 

 

その職種の一つでハンマーに変化させ、睦生の上半身に横から殴り抜ける。

この一撃をかつて食らったことを思い出す。ハンメアー戦で瀕死に追い込まれたあの日を。

吹き飛んだ先の瓦礫の山に、盛大に当たり、瓦礫は吹き飛び、クレーターができる。

起き上がろうとするが、その際に胸に痛みを感じた。

コアにヒビが入っているのがわかる。これだけで済んだのはきっとヴァイザーのおかげだろう。また助けられてしまったらしい。

 

 

「--- まだ生きているか。あれで終わると思ったんだがな… いい方に考えれば、じっくり殺せるな」

 

「うぅ…っ!」

 

 

喉仏を剣先で刺され、宙へ放り投げられると、複数の触手を銃へ変え、一斉に射撃を行う。

防御しようにもかなりの弾丸が飛び交い、身動きを取れない。

ここで負けるわけにいかない。しかし、その量に全く抵抗ができない。

蜂の巣と同じ状態となり、力なくダランとした睦生の足首を触手に絡んでくる。

 

 

「--- … 行くぞ」

 

 

かなり高くまで持ち上げていき、そのまま地面に叩きつける。

更地だった場所は、亀裂が走ると共に大きな穴が開く。

触手を外し、ジーエンズは飛び上がると、両腕と触手を合わせ、その数100本といったからか。睦生に向けて、連続して斬撃を浴びせる。

気付いた時には既に彼のコアは削られて行っていた。

 

 

「--- これで生き抜くことができるのなら!! 貴様らを賞賛してやってもいい!! まぁ、無理な話だがなッッッ!!!死ぬがいいッッ!!!!!」

 

 

止まることのない雨のように降り注ぐ斬撃。アーマーを無視し、睦生は切り刻まれて行く。

死ぬ。本当に死んでしまう。

やがて、長く続いたジーエンズの攻撃は終わり、着地する。

見るも無残に刻まれた彼は、ピクリとも動かない。ほぼ死んでいる状態であった。

コアは半分くらい残っているのか、いないのか定かではないが、かなりのダメージ量である。

 

 

「--- その状態でよく生きていられるものだ。やはりビーレンズの息子だな… ヴァイザー、貴様も成長したな。2人でよく我の力に抗った。しかし、それも終わりの時が来たようだ。選ばせてやろう… 我にトドメを刺されるか、それともこのまま息絶えるか…… 今、その状態ではろくに話せないか」

 

 

睦生は腕をなんとか再生させ、弱々しく地面を殴り、無理矢理起き上がろうとする。

 

 

「どちら… でもないッ!!俺は… 諦めない…ッ!!」

 

「--- やめておけ。既に勝負はついた。現に貴様は何ができる? その体で我と戦おうというのか?」

 

「あぁ… そうだ!!!…… 俺はもう一度、あの頃のように!!! 笑って過ごすんだッッッ!!! 約束したんだ… まなと一緒にッッッ!!!!!」

 

「--- 黙れッ!!! 妄想もいい加減にしろ。貴様はこの後、どうする? 我に向かってくるか? その体を引きずって、まともに動けない状態で一体、何をしようと言うッ!!?」

 

「… やってやるんだよ… それが俺たちだ。だろ… ヴァイザー…ッ!!!」

「--- ハァ… ハァ… 無茶して、されて、全くお前といるとろくな事がないなッ!!!」

「ごめん… また付き合わせるよ!!!」

「--- 今更だな!!とことん付いて行ってやるッ!!!」

 

 

睦生は雄叫びをあげて、まだ再生しきってはいない、不完全な状態で気を振りは絞って立ち上がった。

そしてジーエンズに向かって全力で走る。

声が枯れるほど、大声をあげて、ジーエンズの元へと向かう。

 

 

「--- ありえん… ふざけている…… ッ!!」

 

 

ジーエンズは拳を固め、思いっきり睦生の顔面を殴る。

倒れる彼はすぐさま立ち上がり、掴みかかってくる。

何度も殴り、何度も立ち、何度も何度も同じことを繰り返す。

 

 

「--- 何故だッ!!何故、立ち上がれるッ!!!」

 

「まだまだァァァァァッッッ!!!!!」

「--- ウオォォォォォッッ!!!!!」

 

 

ジーエンズとガッチリと組み、お互い純粋な力比べとなる。

しかし、明らかに睦生の方が遥かに劣っているのだ。にも関わらず、彼らは全く引こうとしない。

次第にジーエンズは今迄、思ってた事がない感情を覚える。

それは恐怖だった。アンチバイツの王として君臨し、何者も寄せ付けない存在だった彼にとってこの2人は、全く予想だにしない存在なのだ。

 

 

「ヴァイザー… 謝りたい事があるんだ…」

 

「--- … なんだ?」

 

「俺に考えがあるんだ… だけど、それをすれば──」

 

「--- ── わかった。いいんだな?」

 

「うん」

 

「なら…… この戦いを終わらせるぞッ!!!」

 

「行くよ… ヴァイザーッ!!!」

 

 

睦生は大きく口を開き、ヴァイザーと共に渾身の力でジーエンズ押さえ込み、首元に噛み付く。

歯が彼の首に突き刺さると、それを引き剥がそうとコアに向けて触手を何本も突き刺し始める。

 

 

「--- 何をする気だッ!!! 貴様ッ!!!」

 

「正義さんッッッ!!!!!」

 

 

ジーエンズは首から何かが流れ込むのを感じた。

すると、それは胸を徐々に裂き、正義の姿をさらけ出す。

 

 

「--- ヴァイザーか… ッ!!?」

 

「--- ようジーエンズ様。返してもらうぜ」

 

「--- ヴァイザァァァッッ!!!!」

 

 

睦生はその瞬間を逃さず、胸に手を突っ込み、正義の腕を掴む。

既に限界を超えているはずの彼であったが、彼の覚悟は決まっていた。

火事場の馬鹿力で正義を引きずり出したのだ。

 

 

「--- まだだ…ッ!!まだ我は……ハッ!!?」

 

「コア… 貰うぞ」

 

「--- 貴様ッ!!」

 

 

触手が増し、更に突き刺す量を増やすが、今の睦生にはもう効かなかった。

彼の想いは既にジーエンズが思う以上に決まっていた。

そして、ジーエンズのコアを喰らい飲み込む。

 

 

「--- アッ…!! き、貴様…ッ!!! わかっているのか…? 我の力を今のお前が取り込む事は不可能だ… 死ぬぞ…ッ!!!」

 

「… 最初から… そのつもりで喰ったんだ」

 

「--- なにッ……!!!」

 

「終わりだ… ジーエンズッッッ!!!!!!」

 

「--- き、貴様アァァァァァアアァァァアァァァァァッッッ!!!!!!!!──────」

 

 

 

 

 

 

─── 引きずり出された正義は目を覚ますと、周りの異様さに気づく。

そして声がする方を見ると、睦生が人間態で立っていた。

しかし彼をよく見ると、所々にジーエンズと似たような形状をした皮膚に変化している。

 

 

「睦生!!!…… お、お前」

 

「あ、正義さん… 起きましたか?」

 

「一体なにがあった…」

 

 

睦生は粗方を説明する。

それから全てを察した正義は、静かに涙を流した。

 

 

「お前が犠牲になる必要が… 俺のせいだ。あの時、俺がジーエンズを仕留めていれば…ッ!!!」

 

「違いますよ… 正義さん。俺は自分のやるべき事を見つけたんです」

 

「まなはどうするつもりだ」

 

「… すみません。謝っておいてもらえますか? もう帰れそうにないって事を…」

 

「睦生…」

 

「正義さん。まなの事をお願いできますか? 彼女を… もう1人にさせたくないんです… はははっ……ちょっと無理なお願いかもしれないですけど」

 

「無理なんてことはない… 任せろ。彼女は必ず俺が幸せにしてやる」

 

「ははっ、結婚前みたいですね」

 

「ふっ、そうだな…… 睦生」

 

「はい?」

 

「礼を言わせてくれ。俺はお前のおかげで変われた。お前がいなかったら、俺は変わらずどうしようもない奴になっていたはずだ…… こんな俺を救ってくれて、ありがとう」

 

「なに言ってるんですか。正義さんは今も昔も変わらず、俺にとって仮面ライダー… 正義の味方ですよ」

 

「……ぐぅっ……!! すまない睦生…っ!!! くそっ!!」

 

「大丈夫ですよ… まなを頼みます…… そろそろ行きますね。さよなら… ありがとうございました。正義さん」

 

「あぁ… さよならだ。睦生…」

 

 

睦生は宙へ浮かぶと、全身を赤黒い血管が包み込み、全身から触手が現れる。

それが弾けるように各地に飛び、アンチバイツ達を飲み込んで行く。その触手は人や物を避け、確実に捉える。

全てのアンチバイツ達を飲み込み、触手は元の場所は引き返す。

それと共に睦生の体は崩れ落ち、やがてゆっくりと消えていった。

 

 

「クソッ…!! なんでこんなことに…ッッ!!! うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッッ!!!!!!」

 

 

正義の叫びは静寂の中に消えて行った……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

---------------

 

── あれから10年の時が経った。

 

 

「正義さん。頼まれてた書類片付けましたよ」

 

「おう、お疲れ…… で、子供は元気か?」

 

「えぇ… ふふっ、ちょっとイタズラするようになっちゃいましたけど」

 

「はっはっはっ! もうそんな歳か! 時間が流れるのは早いな」

 

「お陰様で」

 

「じゃあ今日は上がっていいぞ。お疲れ… まな」

 

「はい。お先に失礼します」

 

 

まなは現在、正義が社長を務める会社に勤めていた。

アンチバイツはいなくなったが、まだまだ犯罪が消えることはないとの事で、警察や消防などの人材を育成する為の会社新たに設立した。

教育もそうだが、身体的な面でも幅広く行われており、プロとなっても更なるステップアップをする為の教育等、まさに現社会ではなくてはならない今や知らぬ者はいないほど、規模が大きい会社になっている。

一方、まなはと言うと、同業者の男性と結婚しており、子持ちの母となっていた。

夫は彼女の昔を知ってはいたが、全く気に留めず、元々好意を寄せており、彼の必死のアプローチに、次第にまなも惹かれ、恋に落ちた。

 

 

「ママァ〜まだ着かないの〜?」

 

「あとちょっとだから、もう少しの我慢。ね?」

 

「はーい」

 

 

まなは仕事から上がると、家族である場所へ向かっていた。

車を走らせてから、しばらくして目的地に到着した。

そこには鮮やかな黄色で、綺麗な花が一面に咲いており、その真ん中にポツンとお墓があるのだ。

ここはかつて、睦生とジーエンズが戦いあった更地だった場所。

正義があの後手を加え、今のような状態になったのだ。もちろん睦生だけではなく、その家族の名前も彫ってある。

 

 

「ほら、お花置いて」

 

「ここ?」

 

「そう、ここ」

 

 

一通り済ませると、家に帰るために車へ向かおうとする。

すると、強い風が吹く。

 

 

「キャアッ!」

 

 

たった一瞬であったが、不自然な風に驚いた。

そしてまなは微笑む。何故かは分からなかったが、自然と笑みがこぼれた。

 

 

「まな? そろそろ行くぞー!」

 

「はいはーい!」

 

 

そこはいつも綺麗な花が咲いている。

太陽の光が降り注ぐ。その太陽に向かって背筋を伸ばし、精一杯に生きようとしている。

 

 

「ヴァイザー。ホント最高の相棒だよ。ありがとう」

 

「--- あ? 気持ち悪いな。なんだ急に」

 

「いや、なんか言いたくなっちゃってさ」

 

「--- 変な野郎だ。お前は昔から……… ふっ、まぁ、俺も感謝してる。睦生」

 

「… それじゃ、行こっか」

 

「--- そうだな。行くぞ、睦生。俺はお前の行く場所なら何処へでも行くぞ」

 

「うん、ヴァイザー。僕は君となら何処へでも行ける」

 

 

人は誰かの支えがなければ生きられない。

アンチバイツだってそうだ。誰かに寄生しなければ生きることはできない。

違う種族が、互いに分かち合い、理解するのは難しいことなのかもしれない。

だけど僕たちは共に生き、同じ道を進んでいた事に気付いた。僕らは未来へ進む。

 

 

こうして世界に平和が訪れた。

いつもの会話、いつもの遊び、いつもの食事。

そんないつも通りがなんだかんだで1番幸せなのかもしれない。

いつもと変わらない最高の日常。

 

「今日も平和だよ。睦生」

 

 

仮面ライダーヴィランズ the end




読者兄貴の皆様。ここまで「 仮面ライダーヴィランズ 」をご覧下さって誠にありがとうございました!!
失踪はしないと息を吸って吐くように告げて来ましたが、続けられるのか実は不安な所ではありました。
が、しかし。1人でも読んでくださる方がいたからこそ続けてこられました。
やはり小説は難しいですね。
私のようなトーシロではここまでが限界のようです…。
そんな駄文でも楽しんでもらえただけで私は幸せ者です。
本当ならもう一つ編ぶち込もうと思ってたんですが…… 絶対グダるのでやめました……(隙自語
ん?挿絵? ………… くぅ〜ん(心肺停止)


兎にも角にも、これで私の小説は以上で終了となりますが最後にもう一度。
皆様!!沢山の愛と感謝を込めて!!本当にありがとうございました!!!!!!!
それではさよならァ〜





























…… ん?






























15年前、突如として現れ、人々の記憶を奪い取る謎の組織「ウォンテッド」によって、この国は支配されていた…

24人のウォンテッド幹部達は軍を滅ぼし、それぞれがエリアを確立し、徐々に支配領域を拡大していく。
人類に最早自由などない…


人々は…… 自由を諦めかけていた……


しかし15年後、帽子を被った仮面の戦士が現れると、幹部の半分が倒され、国は徐々にではあるが、平和を、希望を取り戻した。



ライダーの変身者であり主人公「射手園 兆」はその功績を持ちながら、何故かお尋ね者にされてしまう………!?


警視庁「組織犯罪対策部」対ウォンテッド特別制圧課。通称、RIVERSは「上砂 巧也」を筆頭に、天才? 新人警官「内嶋 永理」を連れ、彼を逮捕し残りのウォンテッドを殲滅する為に動き始めるのだった。


そんな事を御構い無しに、彼は今日も人類の記憶を守る為、そして自分の正体を知ってもらう為「セイブドライバー」を使用し仮面ライダーとして戦う!!



奴のいる場所は荒野の風が吹く!! 宿命のトリガーを引けッ!!


新 連 載!!!【 仮 面 ラ イ ダ ー ト リ ガ ー 】 !!!!!


「聞けッ!! 今日は俺の…… 誕生日だ」(イケボのつもり)


次回から連載スタート!! 今後ともよろしくお願いします!!


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