気怠げな修復屋 (artisan)
しおりを挟む

SAO
開店


書いちゃった.....
たまーに投稿するので、首をながーくして待っていてください。


「ふぁーあ.....おはよう俺.....」

 

オリ主は此処に居る。

ふわふわの布団に包まりながらそのまま起きている。

朝。俺にとって地獄のように思える朝。

ホントならもっと眠っていたいが、生憎とそんな中学生の頃のようにはいかない。

身震いしながらベッドから降り、リビングともダイニングとも言える狭い場所で着替える。

 

 

「今日は何にしよっかなー......」

 

ま、どうせ朝食はパンに限るのだが。

右手をスナップしてメニューを開き、パンを焼く。

あとは目玉焼きやらなんやらを作ろう。あまり時間はかけられないし。

 

 

「.....ごちそうさまでした。」

 

1通り食べ終わると、2階から1階へと降りる。

()()()()()()()()()其処は、明かりをつけると如何にもロマンチックな場所だ。

 

 

「.....まぁ、喫茶店じゃないんだけどな。」

 

なんでこんな見た目になってしまったのか、と溜息をつきながら用意をする。

ちょっとしかない準備を終えると、外にあるCLOSEの文字をOPENに変える。

.....うん、今日も良い天気だ。こんな風景を作ったあの人はやはり凄いな。

 

 

「.....さて、やるか。」

 

そんなこんなで丁度いい時間だし、そろそろ良いだろう。

メニューで防具の場所を開き、エプロンを着ける。

 

さて、今日も修復屋は開店でございます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

修復屋。簡単に言えば壊れかけ、もしくは壊れてしまった物を直す職だ。

通常は壊れた物は直せないのだが、自前のエクストラスキルで直せるようになった。チートスキルばんざーい。......まぁ、公には公表していないんだけど。

 

まぁ、そういう訳だ。俺はこの職業で金を得ている。

 

 

「.....ビミョーだなぁ.....」

 

なんて、偉そうな事は言えないんだけど。

客は来るのは来る。まぁ、1時間に2、3人程度だけど。

ま、仕方ない。此処は中層にあって、しかもあんまり目に付かない。なんでこんな所に建てたとかは聞かないでくれ。

 

 

「場所かえよっかなー.....」

 

まぁ、変えないんだけど。なんやかんや言って思い入れがあるし。まぁ、客は来るといえば来るので別に問題ないだろう。

問題は俺の知り合いだ。アイツら、此処に来たら修復依頼はするものの、ずーっと浸るんだよな。

良いんだよ。それならまだ良いんだよ。だけど、菓子までせがんでくるのは可笑しいと思うんだ。

 

 

「.....ヴッ。噂をすれば、か.....」

 

ピロリロリーンと通知が来たので開いてみれば、今度此処に来るんだと。だから菓子を用意していてくれと。いやふざけんなし。此処は喫茶店じゃねーんだよ。

.....言ってても仕方ないか。諦めよう。

 

 

「.....お、いらっしゃい。修復依頼か?」

 

取り敢えず客が来た事だし、愚痴を話すのはここまでにしよう。

 

 

今日も修復屋は平常運転。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

黒の女誑し

「だ・か・ら!何でお前はここまで壊すんだよ!?」

「うぐっ.....」

 

オリ主は此処に居る。

目の前の真っ黒黒助に対して怒号を散らしている。

いや、これはいつもの事なんだが。正直言って、コイツは学習する事を知らないのかと疑いたくなる。

この黒人(※誤字ではありません)、武器を壊す頻度がホントに多いのだ。

 

例えを言おう。仮に武器の耐久度が100あるとしよう。

此処に来る人は大体10〜15ぐらいまで削れているのが目安だ。

それをコイツは1どころか0.01まで減らしてから来るのだ。.....まぁ、まだ壊していないだけマシか。

 

 

「それでお前は菓子も要求するだとぉ!?お前は何様だぁ!?ブラッキー様かぁ!?剣士様かぁ!?」

「全て合っています.....」

 

この野郎.....!!.....ハァ。もういいや。

ちゃんと代金は持って来てるし、責めてもイライラが増すばかりだ。

さっさと直して、イライラを鎮めるとしますかね。

 

 

「.....ほれ。試作中のショートケーキだ。噛み締めて食うんだな。」

「ありがとうございますッ!!」

 

ああもう飛びつくな。誤って地面に叩きつけちゃったじゃないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい。直ったぞ。さっさと金出せや。」

「お前はヤンキーかよ.....」

 

知るか。これが俺の商業スタイルなんだ。(コイツにだけ)

んでコイツは見事に完食してやがる。おいコラ至福の表情を浮かべんな。

 

 

「ハァ.....攻略は進んでのか?」

「ああ。もうすぐアスナと74層のダンジョンに行くんだ。そこで多少は進むかなって。」

 

最前線か。コイツは兎も角、閃光サマはそんな奴だっけか?

.....あ。成る程。コイツ目当てで切り出したのか。凄い勇気だな。

 

 

「.....お前、ユニークバレるんじゃねぇの?ホントに大丈夫か?」

「大丈夫だよ。余程の事が無い限り、アレは出さないさ。」

 

どうだか。こういうフラグを建ててブチ壊すのがコイツなんだよな。

ま、まぁ、コイツ自身が言った事だし、安心しておこうか。......不安だけど。

 

 

「取り敢えず、頑張れよ。同じ()()()()使()()として応援してるぜ?」

「応援してる、か。.....前線には出ないのか?お前みたいな奴だったら十分戦力になるだろ?」

「.....確かにそうかもな。でも、俺は前線には極力出たくないんだな。それに.....俺が此処で待たないと、誰がお前らの帰りを待つんだ?」

 

ハッ、と驚いた表情を見せる黒の剣士。

そんなに驚くモンかね?ただ面倒臭い事をしたくないから綺麗事を言ったまでなんだが。

.....さてさて。そろそろ仕事の時間だし、支度をしますか。コイツにはさっさと帰ってもらおう。

 

 

「おい。そろそろ仕事だ。レベル上げに行ってこい。」

「仕事ってどうせ新レシピの作成だろ.....別に良いじゃんか。なんなら審査員、務めるぜ?」

 

クソッ。言うんじゃなかった。

この後、結局コイツにご馳走したのは余談だ。ハァ.....

 

今日も修復屋は平常運行.....




感想・評価、気軽にしてくださいな。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

閃光サマ

「.....なぁ閃光さんや。何で此処で飯食ってんの?」

「別に良いじゃない。貴方のご飯は美味しいんだから。」

「そういうアンタも料理スキルMAXだろ.....」

 

オリ主は此処に居る。

目の前の閃光サマを見て呆れている。

つーか喫茶店のように使うなし。修復屋なんですけど。

 

 

「.....で、何で来たんだよ。タダ飯食いに来たわけじゃねぇだろ?」

 

溜息を吐きながら言うと、彼女は至って真剣な表情へと変わった。

.....成る程、これだけ真剣な顔をするって事は、余程の事か。

俺は心を構えて、話を聞くことにした━━。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「タダ飯な訳ないでしょ!!」

「そっちじゃねぇよ!?」

 

思わず椅子から転げ落ちたのは余談だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「調味料を作って欲しい?」

 

改めて、言われた事をそのまま返すと彼女はコクコクと頷いた。

.....どういう事だ?別に醤油とマヨネーズは作れてるし.....第一、俺が渡すようなモンなんて無いぞ?

 

 

「.....前にキリト君が言ってたのよ。『アイツんとこのサンドイッチは美味しい』って。だから、その.....」

 

成る程。乙女だなぁ。しっかし、そんなに好評だったのか?

特に調味料は入れてなかった.....あ。入れてたわ。

 

 

「それならあげるよ。ほれ、多分これだろ。『自家製マスタード』。」

 

そう言ってメニューから取り出す。

これは俺が作った調味料の1つ。しかも、普通のマスタードじゃなく、アイツ専用の辛さ増し増しだ。

因みに他の人が食べるとHPが1割程減るだろう。.....いや、だろうじゃないな。減る。

 

 

「マスタード.....舐めても良いかしら?」

「やめとけ。それはアイツ専用だ。.....普通の奴も渡しとく。これなら大丈夫だろ。」

「ホント!?ありがとう!」

 

ホント、良い笑顔な事で。この美貌でアイツを魅了させたんだろうな。

.....いや、違うか。コイツはコイツなりに頑張ったんだ。何勝手に納得してやがる。

 

 

━━ねぇねぇ!一緒にあそぼーよー!!━━

━━こら!困ってるでしょ!!全く.....妹が迷惑をかけてごめんなさい.....━━

 

 

「......」

「?.....どうしたの?そんな、悲しい表情(かお)して。」

「!.....いや、なんでもない。」

 

危ない危ない。まーた思い出してた。

全く.....似てるんだよなぁ、コイツの顔...というか雰囲気が。だからあんまり会いたくないんだよ。

......はぁ。少しサボり過ぎたか。そろそろ支度をしますかね。明日は野武士面がやって来る事だし。

 

 

「んじゃ、そろそろ店番に戻るわ。会計は別にいらん。その代わり、感想よろしく。」

「分かったわ。ありがとう。」

「んー。」

 

さて、今日も修復屋は平常なり。




感想・評価、気軽にお越し下さいませ。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

野武士面

「邪魔するぜー。」

「邪魔すんなら帰ってくれ。」

 

オリ主は此処に居る。

邪魔してきた風林火山のおっさんを帰そうと奮闘している。

 

 

「なんだよぉ.....キリの字は良いのに、俺はダメなのかぁ?」

「誰も許してねぇよ。客なら良いけどさ.....また菓子目当てだろ?」

「刀を修復してもらいた━━「いらっしゃいませぇ!」━━移り変わりが激しいなぁ!?」

 

当たり前だ。タダ飯喰らいはいらねぇが、客となれば全力でもてなす。

これが俺のモットーだ。.....つーか修復屋としての仕事を求めない奴が多過ぎるんだよ。此処は喫茶店か?

 

 

「さてさて.....お、丁度良い具合に壊れかけてんな。んじゃ、早速直すぜ?」

「おう!最っ高の状態にしてくれ!!」

 

宜しく頼まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、やるか。アイツ(真っ黒黒助)のよりは簡単だな。」

 

ここからは説明しながらやっていこう。

まずはおっさんの愛刀.....【風林オニキリ】をメニュー欄でタップ。

そのままスライドして【修復】の所をタップする。

 

エクストラスキル【修復】。その名の通り、アイテムを修復するスキルだ。

習得するのは簡単なんだが、熟練度を上げるのが難しいから取っている人は少ないと思う。

 

 

「ふむふむ.....ここか。よし、それじゃあ......」

 

ほう、やはり刃の部分か。これなら簡単だな。

【解析】スキルも発動しながら、刃の部分を修復していく。

修復方法は至って簡単。修復と書いているボタンを押してから、手で触るだけ。

だが一瞬では直らないので、撫でるようにして触る。

 

“よく頑張ったな。偉い偉い。”と。俺はそういう風にして撫でる。

 

 

「.....これでよし。綺麗になったなぁ.....」

 

所々刃毀れが起きていた刀は、まるで新品のようにキラキラと光っていた。

これで修復は終わり。だが、まだやる事がある。

 

 

「次は鞘だな。こーんなボロボロになっちゃって.....」

 

そう、鞘だ。野武士面のおっさんによると、モンスターの攻撃を受ける時に鞘で防御したらしい。

まぁ、賢明な判断だな。普通のゲームならカッコつけの行動だが、デスゲームとなるとな.....

 

 

「.....結構ダメージが入ってんな。仕方ない、使()()()。」

 

思いの外耐久力が減っていた。一体どんな奴と戦ってたんだよ.....

少々愚痴りながら、俺は持ち物欄からある物を取り出した。

それは結晶。【修復】スキルを持っているものしか手に入れることが出来ない結晶。

名前を、『修復結晶』。安直な名前でなんとも分かり易いものだ。

 

 

「さてさて.....今度こそ......」

 

修復力を上げたことにより、そこまで時間は使わない筈。

鞘を手で摩り、修復していく。

そして.....

 

 

「ふぃ〜.....完了、っと。」

 

修復完了だ。

さてさて、ケーキを食ってる野武士面の所に知らせに行こうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっ、直ったのか!ありがとうな!!」

「良いってことよ。んじゃ、金出せ。4500で良いよ。」

「ナニィ!?お前、修復価格は500じゃねぇか!!」

 

は?何言ってんのコイツ。

 

 

「ケーキの分も含めてるに決まってるだろ。頭おかしくなったか?」

「ケーキィ!?」

 

一々オーバーリアクションして疲れないのか?

というか恨みに染まった目でコッチを見んな。食べたお前が悪いんだよ。(正論)

 

 

「クソォ.....分かったよ、出してやるよぉ!!ほら!これで良いんだろ!?」

「毎度あり〜。今後とも宜しくなー。」

「クソッタレェェェェ!!!」

 

おいおっさん。泣くのは良いが喚くなら外でやれ。意外と響くから耳障りだ。

ま、わざわざ希少な結晶使ってやったのにそのままの値段で良いって言ったんだ。これぐらい別に良いだろ。

 

 

「ハァ.....あ、そういえば明後日に74層に行こうと思うんだけどよ、どうだ?一緒に行かねぇか?」

「お断りだ。俺は修復屋なんでな。前線に行くなんて馬鹿げた事はしないさ。」

「何言ってんだか。お前、俺より強いだろ?そういう奴が居ると心強いんだよ。」

「なら何で不安な所に行くかね.....」

 

そういう所に行こうとするのが解せんな。

ま、俺は行かないから別に関係n.....

 

 

「じゃ、そういう事だ。65層(本拠地)で待ってるぞ!」

「へ?いや、待て、俺は━━」

 

パタリ。行かないと言おうとしたその時には、既に扉は閉じていた。

━━今日も修復屋は平常運転。ただ、明後日はそうじゃなくなりそうだ。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ぼったくる商人

あのイベントの前にあの人の登場です。


「よぉ。元気にしてるか?」

「.....珍しいな。今日は雨でも降るんじゃねぇの?」

 

オリ主は此処に居る。

珍しい人が来た事に結構驚いてる。

 

 

「なに、武器の修復をお願いしたくてな。」

「は?アンタ、商人だろ?アイテムならまだしも武器の修復とか.....何かあんのか?」

 

別に何も無かった筈だけど.....いや、商人対象のイベントがあるのか?

でも、それにしては真剣な表情だよな。ホントに何があるんだ?

 

 

「ああ.....(74層)を乗り越えたら、もうクォーターだろ?

ちょっと気が早いかもしれねぇが準備しておこうかと思ったんだ。」

「そういう事かい。クォーター攻略に参加する商人なんてアンタしか居ないぞ?」

 

苦笑いしながら奴さんの武器を受け取る.....グッ。

やっぱ両手斧は重いなぁ.....まぁ、外見的にも質量的にもしっくり来るんだろうけど。

 

せっせと運んで、修復作業を開始する。あまり傷も見えないし、これぐらいならすぐ終わるだろう。

にしても.....もうクォーターか。早いもんだなぁ。早く出たいと思ってんのに心の何処かで寂しく感じるな。

 

 

「何言ってんだ。お前も偶に出てるじゃねぇか。」

「出てた、の間違いだな。俺が来る度に噂になるからもう行かねぇよ。」

「確かにな.....結構キテたのか。」

「いやジョークですけど?」

 

そんな事で辞めたら何言われるかたまったもんじゃねぇよ。

つーか、ユニークスキルの事もあるし。まだ熟練度MAXじゃないからな.....上げておかねば。

.....明日、風林火山の奴らと74層に行くって言ってたな。後で自前の武器も確認しとくか。

 

 

「.....もう攻略組には戻らないのか?」

「.....」

 

ああ、戻らない。だけど、その言葉はまだ紡げない。

そりゃそうだ。こんな奴が居れば嫌だろう。だから抜けたんだ。

でも、戻りたいと思っている自分も居る。その2つの思いが自分の中で戦ってるんだ。

 

 

「ま、お前の好きなようにすればいいさ。」

「っ〜〜〜!?あ、頭撫でるなっ!!?」

 

むぅ.....また子供扱いされてるよ.....10代の中で年長者なのに。

まぁ、この人は既婚者だからな。そういう気持ちもあるんだろう。俺としては納得いかないが。

 

 

「じゃ、また来るぜ。俺の所も来てくれよな。」

「最後に宣伝かよ.....。...ああ。またお邪魔するさ。」

「おう。じゃあな。」

「毎度ありー。」

 

今後とも気怠げな修復屋をよろしく。それだけ言うと奴さんは出て行った。

さてと。次は自分の武器だな。どれを持って行くか.....

 

そんなこんなで1日を潰す修復屋は、今日も普通運行。




artisan「いつの間にかお気に入り登録者数が40人超えてる!?マジで!?」
運営「UA見てみ?」
artisan「1000超えてるぅ!!?」

感想・評価、気軽にお越し下さい。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

修復屋の出張

お待たせです。
他作品スランプ気味です。
近々投稿予定です。
よろしくでしゅ。


「ハァァァァァ!!」

 

オリ主は此処に居る。

おっさんが怒涛の攻撃を繰り出す所、という謎のシーンを見ている。

 

 

「いよっしゃぁぁぁぁ!!どうだい、俺の力はぁ!!」

「ザコ敵倒しただけじゃねぇか.....」

「そこは気にするな!」

 

オイ野武士面。お前、見た目はおっさん、頭脳は子供ってやつか。気味悪いぞ。

つーか、他の人達はよくこんな奴がリーダーでやっていけるな。俺だったら1日で抜けるね。

 

 

「うっせぇな!そういうお前はまだ1体も倒してねぇじゃねぇか!」

「武器を抜刀するのが面倒なり。」

「コイツいつか死ぬぞ.....」

 

うっさいやい。言っとくけどアンタより強いからな。レベルとかレベルとかレベルとか。

.....プレイヤースキルはどうしたとか思ってる其処の人。それ以上追求すんな。おーけー?

...いや、ホントに面倒くさいだけなんだって。後ろから襲いかかってくるとかが無い限り俺は.....

 

 

「ウガァァァァァ!!」

「フラグ立てたからってホントに出てくんなよ!?」

 

まぁ、自業自得か。(正論)

しゃーない、ちょっとだけ動きますか。

 

俺はくるりと回転して奴の方へと向く。同時に、武器を抜刀するのも忘れずに。

受け止めるなんて、何処かのブラッキーみたいな真似はしない。そもそも俺にそこまでの力がない。

なればどうするか。.....至極シンプルだ。

 

 

「フ───ッ!」

「グガァ!?」

 

襲いかかってきた奴の、腕と脇の間を通り過ぎる。

それと同時に、脇腹を短剣で斬り裂く。因みにソードスキルである。

で、()()()削りきれないだろうからメニュー画面を開いて武器を変える。

 

 

「ガ、ァァァァァ!!」

「一々うるせぇ、よ!」

 

強がりのつもりか吠えるトカゲ人。

俺はそいつの頭を両手棍でブッ潰した。ポリゴン体に変わったのは言うまでもない。

 

 

「.....結構酷い事するんだな.....」

「あん?酷いか?」

 

仲間のおっさんが何か言ってるがそんな事知らない。本能が意図的に動いっちゃたんですぅー。

.....ゴホン。それは兎も角。俺はまたまたメニュー画面を開いて短剣に戻す。...え、何でかって?

そりゃお前、動くのは軽い武器の方が良いだろ。両手斧とか意味分かんない。

 

 

「そろそろ中間地点だな.....。其処で休むぞー!」

「「「「「うーす。」」」」」

「返事の仕方がおっさんだ.....」

「「「グギャァァァァァ!!」」」

 

そしてそれに釣られて出てくるお前らは一体なんなんだ。

というかタイミング良すぎでしょ。なに?待ってたの?

 

 

「総員、突撃ィィィィィ!!!」

「「「「「オラァァァァァァァ!!!」」」」」

 

一斉に突っ込んで行くおっさん達こと、ギルド【風林火山】。

俺の心中で赤い流星群と言ってしまったのは余談だ。全くの余談だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぃ〜.....まさか連続でスポーンするとは思わなかったな.....」

 

数分後。ちゃっかり戦闘に参加した俺は欠伸と伸びをした。

まさか倒した後にすぐに出てくるとは。一種のバグだと俺は思いたい。

 

 

「良いじゃないか。経験値儲けたしさ。」

「そういう言い方は止めた方がいいんじゃないかな.....?」

 

だから女の人が寄って来ないんだよ、という言葉を呑み込んだ。

危ない危ない。此処で風林火山(赤い流星群)を相手にしたらレベルとか関係なしに負けると思う。それだけは絶対に避けなければ、と無意識に感じた。

 

 

「お、安全地域d.....ん?彼処に居るのは.....」

「真っ黒黒助じゃん。しかも閃光サマとデートか。

おい野武士面。此処は邪魔しちゃいけねぇし、違う所で.....」

「女の雰囲気っ!!行くぞ野郎共ー!!」

 

このクソが────!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「.....すまんな。イチャイチャしてる所を邪魔してさ。」

「「イチャイチャしてないぞ(わよ)!?」」

 

オイオイ。アレでイチャイチャしてないとか巫山戯てんのか?巫山戯てるんだな?

.....まぁいい。俺がダメージを受ける訳じゃないし。(そう言って野武士面を見る)

 

 

「は、初めまして!!お、俺はクライン、24歳独身──!?」

 

ボスッ。野武士面は 女誑しに 殴られた!

いや待て待て。何で自己紹介するんだよ。

 

 

「え、えぇーと.....よろしくお願いします.....?」

「律儀かよ...」

 

まぁいい。出て来たモンは仕方ねぇし、此処で休憩するか。

俺はキリトの隣に座り、今日の昼飯を出す。

自家製マスタードを入れた、簡素なサンドイッチ。いやー美味しそーだなー.....ん?

 

 

「.....」

「...食うか?」

「頂きます!!」

 

クソ野郎が。目で訴えてくんな、目で。ガン見してたじゃねぇか。

.....ハァ。まぁ、3個作ってきたから別に良いか.....ん?んん?

 

 

「.....」(じゅるり)

「良いよもう!食ってけよぉ!!」

「ありがとー!!」

 

ウガァァァァァ!!?俺の昼飯がァァァァァ!!?

ちくしょぉ.....何で俺は他人の目に弱いんだ.....

 

 

「ハァ.....頂きます.....。.....うん、美味しいわ。」

「流石だな.....アスナのサンドイッチと競えるんじゃないか?」

「無理無理。そもそも競う気がねぇよ。」

 

そうなんだよ。そんな面倒な事誰がやるか。

俺は安全な場所でただ見下ろしてる方が気持ちよく感じるのさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「.....誰か来る。」

「ああ。数からして軍だな。」

 

数分後。昼食を食い終わって休憩していた俺達は、索敵スキルにプレイヤーが引っかかったのを感じた。

数は10人足らず。最近、悪名高い《軍》の奴らだろう。

そして、奴らは現れた。如何にも偉そーな態度を取ってるリーダーが近寄ってくる。

 

 

「.....アインクラッド解放軍、コーバッツ中佐だ。」

「キリト。ソロだ。」

「ホワイト。コイツと同じく。」

 

そういや何気に名前を出すのは初めてだな。俺はホワイトだ。宜しくな!(某黒の剣士感)

閑話休題。咄嗟に代表として出てきたけど、意味なかったか?

 

 

「そうか.....君達は、この先のマッピングを完了しているのかね?」

「いや、俺とあそこに居る6人組はまだだ。コイツらは攻略したらしいけどな。」

 

それだけ言うと、奴はふむ.....と考える仕草を見せた。

.....嫌な雰囲気だな。こういう時に限って面倒くさい事が起きるんだが。

 

そして、それは残念ながら当たってしまう事になった。

 

 

 

 

 

「では、その情報を私達に提供してくれないか?」




後半へ続く。

感想・評価、気軽にお越しください。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ユニークスキル【主人公補正】

遅れてすみません。ちょっと怪我をしてしまって。

今はもう大丈夫ですので、投稿再開します。


「んなっ.....渡すわけねぇだろうが!!」

 

野武士面の怒号が響く。

そりゃそうだ。渡す云々の前に、対価なしで渡せって言ってるんだから。

 

 

「キリの字よぅ、渡さなくていいぜ。それはお前さんが努力して取ったモンだ。それをこんな奴に渡す必要は無ぇ!!」

 

おっさんの言う通りだ。こんな奴に渡してたまるか。

俺は静かに真っ黒黒助の後ろに立ち、睨みを利かせておく。

.....しかし。

 

 

「黙れッ!!我らは解放隊だッ!!よって、()()()は我らに従うべきなのだッ!」

「っ.....クソ野郎が.....」

 

何なんだコイツ。勝手に現れて、んで寄越せとか。巫山戯てるにも程がある。

仕方ないが、此処は俺が力尽くで━━

 

 

 

 

 

「止めろ。お前は出なくていい。」

「!!」

 

が、止められてしまった。

チッ.....コイツ、渡すつもりかよ。どんだけお人好しなんだ。

こんな奴に渡してもデメリットしか残らねぇってのに。それはコイツも分かってるだろ.....

 

 

「.....マッピング情報、提供するよ。」

「うむ。協力、感謝する。」

 

何の心も込めていない感謝を言うと、奴はまた大勢のプレイヤーを連れて歩き出した。

それも、俺達が来た方向とは反対──つまり、()()()()()()()()

 

 

「...ちょっと待て。お前以外は全員バテてるぞ。」

 

嫌な予感を感じながら、俺は忠告する。そのままで行ってはダメだと。

だけど、奴はそれを聞いた瞬間怒りの表情を浮かべた。

 

 

()()()が何を言うか!!我らが疲れているだと!?そんな事があるか!お前達、行くぞッ!!」

「ッ.....」

 

止められなかったか.....。まぁ、俺の言う事なんか聞きたく無いだろう。仕方ないか。

頑固中佐は部下達を無理やり奮い立たせ、そのまま進んでいった。

 

 

「あの野郎、言いたいこと言いやがって.....」

「良いよ。それより、奴等が心配だ。追いかけよう。」

「ああ。行こう。」

 

行ってなければ良いんだけど。さっきの言い分からして行ってそうだ。

仕方ない。行くしかないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「デヤァ!」

「ハッ!!」

 

道を塞ぐモンスター共を斬り裂いていく。当然、俺以外の奴が。

え?戦わないのかって?俺の性格は“面倒くさい”だから仕方ない。ハハッ!

 

 

「.....なぁ、ホワイト。」

「んあ?どうした真っ黒黒助。」

 

.....?いきなり真っ黒黒助が話しかけてきた。

そして何故に真剣な表情?何かしたっけ?

 

 

「その.....何とも思ってないのか?“鬼”って呼ばれた事。」

「ああ.....。.....別に何とも思ってないよ。事実だからな。」

「いや、それは━━「それに。」━━え?」

 

頭をポリポリと掻きながら俺は答える。

心配してくれてるようだけど、もう弱っちい俺じゃないから。

 

 

「━━お前らがいる。それで十分だろ。」

「.....ホワイト..........」

 

あーあ。何らしくない事言ってんだか。今日の俺は変だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グァァァァァ!!?」

「「「!!!」」」

 

突如、奥から叫び声が聞こえた。

まさか。全て察した俺は即座に動いた。

 

 

「あ、ちょ━━!?」

 

野武士面が何か言ってるが、止まりやしない。

隣には閃光と黒の剣士。だが、僅かに俺と黒助が速い。

そして、ボス部屋の前に着くと、其処には━━

 

 

「うわァァァァァ!!?」

「く、来るなァァァァァ!!?」

「嫌だ死にたくないィィィィィ!?」

 

━━阿鼻叫喚。地獄が広がっていた。

幸い、まだ誰も死んでない。早く助けないと。

 

 

「ダメよ.....」

「.....アスナ?」

「ダメェ━━!!」

 

マジかよ!!此処で飛び出したら奴に狙われるっつーの!?

ソードスキルを放つが、全く怯まず。それどころか彼女を弾き飛ばした。

 

 

「■■■━━!」

「チッ.....黒助ェ!時間稼いでやるから()()()()()()()()ッ!!」

「!!...わ、分かったッ!!」

 

彼女に振り下ろされる大剣を、短剣で受け流す。

ユニークは.....使えるな。()()()()()()()

 

 

「閃光ッ!!お前はアイツらの救助だ!!!

お前ら(風林火山)もだ!出来るだけ早く!!」

「う、うん!!」

「分かった!お前ら、行くぞッ!!」

 

さて.....タゲはこっちに向いてるな。

幸運だ。これはあまり人に見られたくないし。

 

 

「■■■■■ッ!!」

「五月蝿い。受け流されただけで怒るなよ。」

 

それを挑発と見たのか、奴はいっそう吠えてくる。

そんな無様な姿を見ながら、俺は構えた。逆手で短剣を持った右手を後ろに、腰は深く。

そして俺は━━

 

 

 

 

 

「どこ見てんだ?」

「━━■■■!?」

 

奴を()()から斬り裂いた。

奴の反応が一瞬遅れて、だがすぐさま得物を振り抜く。

 

 

 

「━━!!」

「■■━━!?」

 

しかし、遅い。

振り抜かれたソレを宙返りしながら躱し、連続で斬りつけていく。

右、左、上、下、斜め。短剣特有の素早い動きでダメージを与えていく。

HPバーを2()()()()()()ところで、俺は後ろへと下がった。同時に、()()姿()がすれ違う事も。

それを認識した瞬間、俺は力強く叫ぶ。

 

 

「“スイッチ”ッ!!」

「デヤァァァァァ!!!」

 

そして、奴を吹き飛ばす。前には2()()()()を持った奴──黒の剣士が。

俺の仕事は一先ず終了。続いて、入口の所まで走って戻る。

 

 

「ホワイト君!?き、キリト君のアレは.....」

「それはアイツに聞け!!それよりも、ポーションは足りてるか!?」

「...分かったわ。分けてくれるかしら?」

「勿論。」

 

念の為に持って来ていた大量のポーションを渡す。

俺に出来ることはこれぐらい。【修復】スキルは治癒も出来るが、まぁ、ポーションだけで事足りる筈。

 

それに、俺の仕事は“一先ず終了”したのであって、まだ“終わって”はいない。まだ頑張ってる奴がいるんだし。

俺はそう思って真っ黒黒助を見た。2つの剣で淡い星光の斬撃(スターバーストストリーム)を放っている。

 

だが、相手は怯まずに、それどころか反撃している。もしかしたら、黒助の方が先に事切れてしまいそうな程に。

.....仕方ない。此処で、こんな所で死なれても面倒だ。つーか、『あの人』との約束もある。尚更、手助けしてやらないと。

 

 

「.....結構危ないみたいだし、ちょっと行ってくるわ。」

「え?ちょ、ちょっと━━!?」

 

後ろでなんか喚いてるけど、俺は黙り込むことにした。(無視とも言う)

シュン、と短剣を抜き、一直線に閃光を描く。刃に血塗られたような光が宿り、そのまま加速していく。

 

 

「.....フッ!」

「■■ッ!」

 

短剣が奴を斬り裂いた瞬間、奴は悲鳴を上げて怯んだ。

良かった良かった。スタン性能が発揮出来たようだ。俺の幸運値マジスゲェ。

それはともかく。俺はすれ違いざまに黒助へと視線を向ける。『トドメはお前に任せる』と。

 

 

「ハ、ァァァァァ!!!」

「■■■■■━━!!?」

 

そして、奴を星光が貫いた。




次回は普段通りの修復屋方面に戻ります。
月曜日までには投稿する所存であります。

あ、あと、ホワイト君のステータス必要ですかね?
感想で書いてくれれば、次回の前書きにて書きます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ピンク髪の鍛冶師

城崎温泉に行ってきました。(唐突)
気持ちよかったです。.....柳湯は熱かったけど。

てな訳でどうぞ。


「...【黒の剣士、脅威の100連撃!】、ねぇ.....」

 

オリ主は此処に居る。

今日の朝刊に書かれた真っ黒黒助の見出しを見て溜息を吐いている。

いやまぁ、予想はしてた。馬鹿デカいニュースになるだろうって。

でも100連撃は盛り過ぎだろ。元の6倍以上あるぞ。

 

 

カランカラン。

 

 

「お、いらっしゃい.....」

「ちょっと!!これ、どういう事よ!?」

 

......これまた五月蝿いのが来たな。何の用ですか()()()()()()()()様。

コイツは【鍛冶スキル】をMAXまで高めた、ある意味俺と同類のバカだ。

 

 

「落ち着け落ち着け。そのままの意味だよ。ユニークがバレちまったのさ。」

「何でそうなったのか聞いてんのよ!アンタが居ながら何があったのよ!?」

 

俺が居ながらって何さ。俺はそんなチートキャラって訳じゃないんだけど。

まぁ、()()()はそうだったかもな。改めて見ると黒歴史だな。

 

 

「人を助ける為に賭けた代償だ。文句言えねぇだろ?」

「うぐっ......そ、それなら.....」

 

仕方ない、か。それを言って納得出来るモンじゃないけどな。

ともかく、現在判明してるユニーク使いは2人から3人になった。

これで攻略に拍車が掛かるか、はたまたアンチプレイヤーから妬まれるのか。どっちに転がるかな。

 

 

「.....言いたい事はそれだけか?」

「え、ええ。用は済んだわ。」

 

マジかコイツ。この事を聞く為だけにここに来たのかよ。

俺はいつから情報屋になったんだ.....。そういう事は鼠にでも聞けばいいのに。

 

 

「...ん。」

「.....どうしたの?手なんか出して。」

「早く鍛冶用ハンマー出せっての。折角来たんだから修復してやるよ。」

「え.....いいの?」

「いいから早く。」

 

全く.....これじゃあ、アイツの事を悪く言えないんじゃないの?同類じゃねぇか。

慌てて出した槌を受け取り、修復を始める。やる事は簡素だし、ここでやる事に決めた。

 

 

「.....こうも有名になるとは思わなかったな。」

「へ?」

 

俺の呟きが聞こえたのか、?を浮かべて聞き返してくる。

まぁ、さっきも言った通り予想はしていたんだが、これだけの騒ぎになるとどこか悔しさが滲み出てくる。

何で止められなかった。自分ならもっと動けた筈だ。なんて、馬鹿な事を考えてしまう。

 

 

「こういう時に助けてやれねぇ事が悔しいよな。いつも下らねぇ事は助けてやってんのによ。」

「ホワイト.....」

 

修復し終えたハンマーを渡す。でも、顔は伏せたままだ。

多分、酷い顔をしてるんだろう。手が震えてるのが目に見えて分かる。

 

 

 

 

 

「大丈夫よ。アイツなら何とも思ってないわ。」

「.....何言ってんだ。」

 

ホントに何を言ってるんだ。何とも思ってない訳━━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいえ、思ってない。アイツはアンタに何度も助けられた。()()()()()、何とも思ってない。私が断言してあげるわ。」

「!」

 

助けた.....バカ言え。アレは気分がそうしたかったからだ。

でも.....そうかい。なら、そういう風に思っとくかね。

 

 

「.....ありがとな。まぁ、立ち直れたわ。」

「良いって事よ。アンタには借りがあるからね。」

「ハハッ、そうだな。.....そういやそろそろ昼時だな。食ってくか?」

「よっしゃァァァァァ!!」

 

今日から修復屋は通常運転に戻りました。




駄文で申し訳ない。表現するのがマジで難しい.....

感想・評価、気軽にお越しください。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

小竜と少女

童謡みたいなタイトルになっちゃった.....


カランカラン。

 

 

「お、いらっしゃ....こりゃまた珍しいお客さんだな。」

「お、お邪魔します.....」

『キュル〜!』

 

オリ主は此処に居る。

いつも通りカウンターでだらけていると、珍しい客が入ってきた。

呼び名は【竜使い】。初めてドラゴン系モンスターをテイムした事から、その名がつけられたんだとか。

 

 

「こんな辺鄙(へんぴ)な所に何しに来たんだい?」

「えぇーと.....これ、壊れちゃって.....」

 

そう言って取り出したのは、彼女愛用の短剣。しかし、所々刃毀(はこぼ)れがある。

成る程成る程。じゃあ、早速直しますか。

 

 

「ほれ。直すのはこれだけで良いか?」

「はいっ!お願いします!」

 

元気が宜しくて何よりだ。

俺は短剣を受け取り、【修復】を開始。いつものように淡い光が手に現れる。

 

 

「結構久し振りだけど.....良い面構えしてんじゃん。」

「えへへ.....色々あったので.....」

 

色々あった、には突っ込まない方が良いだろう。どうせ黒助の二刀流(でっち上げ)記事でも見て思い立ったんだろう。

そうじゃないとここまで使い込まない。前は2、3ヶ所だったのが数え切れない程に増えてるのだから。

 

 

「.....無茶はダメだぞ?いくらアイツに追い付きたいからって、自分を疎かにする事はないようにな。」

「うっ.....こ、心に刻み込んでおきます.....」

 

おいおい、図星じゃねぇか。つーか黒助と似たような反応をするな。

隣の小竜も溜息してるじゃん。使い魔に心配されるテイマーとか何処のラノベ主人公だ.....?

...まぁいいか。取り敢えず忠告しといて良かったな。

 

 

「.....うし、出来た。新品同然、最高の輝きだ。」

「ありがとうございます!えーと、お金は確か500コルでしたよね?」

「それだけど、半額にしといてやるよ。その代わり、健康的な生活を送る事。約束な?」

「へ.....?わ、分かりました!ちゃんとご飯食べます!!」

 

それだけじゃないんだけどな?ま、まぁせめてそれだけでも伝わって良かった。

竜使いちゃんから300コルを受け取り、お釣りの50コルを返す。

 

 

「ありがとうございました!また来ます!!」

「今後もよろしくなー。」

 

元気良いサヨナラに手を振って返してやると、彼女は満面の笑みで飛び出していった。

その笑みを見た途端、俺は懐かしいあの2人をまた思い出してしまった。

 

 

━━ねぇ!今日は公園に行こーよー!!━━

━━ちょっと!そんなに走ったら転んじゃうわよ!━━

━━大丈夫だって姉ちゃん.....のわぁっ!?━━

 

 

「.....何重ねてんだか。俺は疲れてるのか.....?」

 

思い出す、なんて馬鹿な事は止めて、俺はさっさと作業に戻る事にした。

今日の修復屋は雨模様。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァッ...ハァッ.....クソッ!?」

 

深い深い、闇夜の中。

頭上のカーソルを橙色で染めた1人の男は、必死に()()()()()

 

 

「何でこんな事に.....ヒッ!?」

「オイオイ.....逃げても意味ないって事は分かるだろ?」

 

咄嗟に振り返ってみれば、其処には追いかけ回されていたその原因である男が立っていた。

全て濃い灰色で埋まった()()は、薄く笑いながらゆらりゆらりと近づいていく。

 

 

「俺相手にここまで逃げ切れた事は褒めてやる。その功績を称えて、恐怖に塗れて死なせてやるよ。」

「あ、ぁぁぁぁ.....お、俺が何したってんだよぉ!?」

 

俺が何をしたのか。その言葉にソレは一瞬目を丸くし、次の瞬間には━━

 

 

 

 

 

「━━クハハハハハハッ!!何をしたってぇ...ハハハハハ!」

 

笑っていた。フード越しでも分かる程に奴は狂笑していた。

その姿を見て、男は益々恐怖に溺れていく。

 

 

「お前、そんなモン1つに決まってんだろ?お前はぁ.....」

 

そして、再びゆらりと動いたかと思うと。

ソレは既に男の視界から消えていて━━

 

 

 

 

ザシュ。

 

 

「..........ぇ?」

「━━━━お前が人殺しで、()()()()()だよ。」

 

次の瞬間には、男はポリゴン体へと変わっていた。

それを口元を歪めながら見届けると、ソレは暗い空を見上げた。

 

 

「.....これで残党は残り9人、か。やっと1桁かよ。」

 

そこまで呟いて、持っていた刀を鞘に直し。

今度は闇夜を淡く照らす月へと目を向けた。

 

 

「━━今夜も、月が綺麗だな。」

 

今宵の()は、また紅に染まっていた。




どうしてこうなった。(困惑)
おかしい.....構想ではただの世間話となる筈だったんだけど.....まぁいっか。(諦観)

あ、原作主要SAOキャラは全員出ましたね。
これからは原作改変キャラとの触れ合いです。

あと、私の小説を読んでくれている人なら分かるキャラも出る.....かも?


感想・評価、気軽にお越し下さい。読了、お疲れ様でした。
.....一応言っとくけど、完結じゃないヨ?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

SAO Especial Guest
ナイトはん


「今日も晴天。本日も修復屋日和だなぁ。」

 

オリ主は今日も気怠げなり。

思ってもない事を口に出し、欠伸を噛み締める。

今日の予定は特になし。オーダーも入ってないし、客を待つだけ。

 

 

「.....朝飯食うか。」

 

そもそも朝ご飯を食べていない。(何故)

つー事で今から朝飯を.....

 

 

「それなら僕も貰っていいかい?」

「んあ?」

 

すると、後ろから声が聞こえる。

頭をポリポリと書きながら振り向くと。

青髪でいかにもイケメンというものを体現したような奴。

 

 

「おはよう。そして、久し振りだね?」

「.....どーも、ナイトさん。朝飯ぐらいなら作ってやるよ。」

 

最大人数を誇る大型ギルド、【聖龍連合】団長さんが立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うん、やっぱり美味しいね。喫茶店も営んだらどうだい?」

「バカ言うな。これ(修復屋)で食えてるんだからいらねぇよ。」

 

簡素な朝飯を2人分作り、平らげる。

コイツと会うのはそれほど久し振りじゃない。周期的に修復を頼んでくるからな。

でも、本人が来るのは珍しい。ま、どうせ暇潰しにでも来たんだろう。

 

 

「さてと.....取り敢えず、武器の修復を頼めるかな?」

「んあ?ああ、りょーかい。」

 

ナイト様から豪華な装飾を施された片手剣を受け取る。銘は【奏剣エクシア】。

能力はソードスキルクールタイムの短縮。だけど、その分耐久値が減りやすい。あ、だから来たのか。

 

 

「.....にしても、お前が直々に来るなんて珍しいな。どうしたんだよ?」

「いや、もう少ししたら大きなイベントがあるからね。それの準備さ。」

 

大きなイベント?何だそれ、初耳なんですけど。

イベントつってもな.....75層攻略しか思い付かないぞ。つーかそれもまだ先だと思うけど。

 

 

「.....あ、大きなイベントっていうのはね、僕達【聖龍連合】とヒースクリフ率いる【血盟騎士団】で合同練習をするのさ。それで、僕も準備しないと、ってね。」

「.....団長って練習に参加するっけ?」

 

大体は団員の練習を相手の団長と一緒に見守ったり、今後の事について話し合ったりするだけなんだが.....

何か、コイツの気を引くことがあったんだろうか。

 

 

「いや、それは彼が来るからだよ!【黒の剣士】が!」

「へ?何でアイツが.....」

 

そこまで言って気付いた。そういやアイツはヒースクリフと戦って負けたんだったな。それで血盟騎士団に入ったんだったか。え、て事はアイツが真っ白白助な姿を見れるのか。良いなー。

 

 

「.....ホワイト君?なんか狂った笑みを浮かべていて怖いんだけど?」

「そりゃ、アイツの真っ白な所を見たら吹くだろ。」

 

少し沈黙して、コーヒーを吹いた。いや、まぁ、いっつも黒だった奴がいきなり白になったら笑うだろ。つーか狂ったってなんだよ。んな訳.....ちょっと可能性あるな。

まぁ、それは置いといて。合同練習ねぇ。ユニーク使いが2人も集まるんなら、これは.....

 

 

「.....俺も行った方がいいか?」

「いや、大丈夫だよ。()()()()は皆が知っているからね。」

 

それなら安心した。俺の問題としても、また、ユニークの特性としてもヤバいからな。

でも.....見物ぐらいしてみるか。正体はバレないようにフード付きの全身コートでも着て行こう。

 

 

「ほれ、お待ち通様。ノーコンティニューでクリアしたぜ!」

「何を言ってるんだ君は.....」

 

アレ、通じなかったか?.....まぁいいや。

ともかく、良い情報が聞けた。こっそりアイツを撮ってネタにしてやろう。

 

 

「んじゃ、僕はそろそろ行くよ。.....はい、500コル。」

「毎度あり。これからも宜しくなー。」

 

そして、ナイト様は修復屋を後にした。

余談だが、この後日では何故か黒の剣士の叫びが絶えなかったんだとか。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

歌姫と剣聖

期末テスト突入。更新遅くなります。

そして今回は珍しく戦闘要素アリ。寄ってらっしゃい見てらっしゃい。


「我々は宇宙人だー.....あー.....」

 

オリ主は、寛いでいる。

扇風機擬きが送る風に当たって、子供の頃によくやった宇宙人の真似をしている。

え、店はって?やってるけど?誰も来ないけど。

まぁ、今日は何もないからな。特に誰も来ないだろう。

 

 

カランカラン。

 

 

「こんにちは、ホワイトさん!」

「こんにちはーっす。」

「.....最近珍しい客しか来ないな。」

 

そんな事を思っていると、入って来たのはまたもや珍しい客。

美しい歌でプレイヤーを支援する【歌姫】サマと、FNC(フルダイブ不適合症)に打ち勝って剣の実力を日々成長させている【剣聖】サマ。

因みにコイツらはカップルだったり。リア充爆発しろとか思って.....思って.....る。(本音)

 

 

「どうしたんだ?2人揃って。」

「何もないですよ。ただ、どっちも頃合いだっただけです。あ、お願いします。」

「ついでにお昼ご飯もー!」

「何言ってんだコイツ」

 

剣聖サマも大変だねぇ。こんな奴のお世話を毎日やってるとか。幸せそうで何よりだけど。

さて、お2人さんから武器を受け取る。どっちも重くて笑える。

剣聖サマの両手剣である【ブレイヴチャージ】と歌姫の()()()である【ノクターン】。

 

読者サマ方も思っただろう。ギターなんかで戦えるのかと。最初は俺も思った。

しかし、一緒に戦ったことがあるから分かる。意外と強い。まぁ、囮的な意味だけど。

自分が引きつけて、パーティーメンバーが倒す。んで自分もレベルアップ。良い戦術だ。

 

 

「ふぅ.....んじゃ、始めるか。」

 

いつものようにメニュー欄を開き、【修復】をタップ。右手が疼く.....!ごめんなちい。

いや、疼きはしないんだけど、なんか温かいんだよね。冬には便利ですよ奥さん!(何処が)

 

 

「そういえば、お前らって今何してんの?まだ攻略組?」

「はい。血盟騎士団()()()()です。」

「私はそのサポートみたいな感じかなー。」

 

へぇ。めちゃくちゃランク上がってるじゃん。結構頑張ってるんだな。

にしても、あれだけの事があったのにまだ前線に居るとか。俺にゃ耐えられんな。

 

 

「.....また、特訓に付き合ってくれますか?」

「んえ?何で?」

 

ホントに何で?確かに猛特訓してあげたけどさ。

そこまでランクアップしたならもう必要ないと思うけど。

 

 

「俺は、まだ弱い。まだユナを守り切れるか分からないです。だから、もっと強くなりたい。お願いします.....!」

「ノーちゃん.....」

 

良いセリフだ。そこまでの熱意を見せられて黙っている程、俺は非道じゃない。

つまりは、そういう事。

 

 

「...良いぜ。久し振りに付き合ってやるよ。」

「ホントですかっ!有難うございます!!」

 

ハァ.....ついでに自分のもやっとくか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて.....当たり前だけど、《初撃決着》で良いよな?」

「勿論です。」

 

デュエル申請を送って互いに得物を手に取り、静かに佇む。

奴はさっきの両手剣。対して俺はいつもの短剣。ユニークは出来るだけ使わない。

 

 

「頑張れノーちゃーん!」

「ほれ、彼女も応援してる事だし、思いに応えてやらないとな?」

「うっさいですよ.....」

 

照れ隠しかよ。ツンデレかよ。リア充死ねよ。(涙目)

そのリアル.....俺がブチ壊してやらぁ!

 

 

「行きますッ!」

「来い!」

 

ブー、と開始を合図するブザーが鳴り響く。

その瞬間、奴は俺に向かって突撃して来た。

 

 

「らァァァァァ!!!」

 

良い気迫、良い太刀筋だ。大抵の奴ならその動きすら見えないだろう。

自分の目の前に両手剣が迫ってくる。それを俺は━━

 

 

「甘い。」

「!」

 

短剣は使わず、剣を蹴って軌道をずらす。

隣にドゴン、とデカい音がした。そのまま態勢を取り戻そうとする奴に接近する。

 

 

「ハァッ!!」

「フッ!」

 

互いに打ち合う、打ち合う、ただひたすら打ち合う。

俺が振るえば跳ね返され、奴が振るえば俺が跳ね返す。

正に互角。いや、拮抗と言うべきか。

 

約15秒間ほど打ち合った後、互いに距離を取って態勢を立て直す。

 

 

「ハァ...ハァ.....やっぱ.....強いですね.....」

「そっちこそ強くなってんじゃん。打ち合った時に負けるかなーって思ったぞ?」

「本気出してない癖に何言ってるんですか.....」

 

あらま、気付いていたのか。流石は親衛隊長。

んじゃ、ちょっとだけやりますか。ほんのちょっとだけ。

俺はメニューを開いて、続いて装備の箇所を開く。

そして、()()1()()()()()()()()()、左手に持つ。

 

 

「.....やっと本気ですか。キツいなぁ.....」

「戦おうっつたのはそっちだろ。ちゃーんと本気出してやるから感謝しな。」

 

右手の短剣はそのままに、左手の短剣は逆手に持つ。

これぞ俺流。一番動きやすい姿勢だ。

俺は大きく深呼吸をして数秒沈黙し、そして、言った。

 

 

「行くぞ。」

「!!」

 

━━刹那、俺は既に奴へと斬りかかっていた。

相手が防げたのはほぼ反射だろう。良くやったものだ。

しかし、一撃で終わらせるのは有り得ない。つまり.....

 

 

「ハァァァァァ!!」

「うぐッ!?」

 

無駄な動きは除き、攻撃の動作も無駄なく。

ただ、先程のように斬りまくる。違うのは一方的という事。

偶に防がれるものの、すぐに斬り刻んでいく。やっぱりまだ追いつけないか。

 

 

「舐め、んなッ!!」

「おっ、と!」

 

痺れを切らしたかのように両手剣を振り回す。

咄嗟に飛び退いて、俺はそれを躱した。

危なかった。まぁ、レベルアップしたのは能力だけじゃないって事か。

 

 

「...ソードスキルで決めましょうか。」

「そうだな。んじゃ、お先にどーぞ。」

 

先手は譲る。そもそも俺の戦闘スタイルがそうだからな。

奴の剣は希望を示す黄金色に光り輝く。“アバランシュ”の構えだ。

一瞬沈黙が訪れて、そして━━

 

 

 

 

 

「ハァァァァァ!!!」

 

━━瞬時に接近。刹那、光が増したような気がした。

自分に振り降ろされる両手剣。対する俺は.....

 

 

「ハァァァ.....デヤァ!」

「!!」

 

“ラピッドバイト”。短剣の中級突進技だ。

俺は敢えてそれを選び、同じように突進した。

黄金色の剣技と深緑色の剣技。勝ったのは.....

 

 

 

 

 

「.....俺の勝ちだ。」

「そうみたいですね.....」

 

俺の目の前にwinnerの文字が出現。つまりはそういう事。

短剣を鞘に戻しながら、倒れているノーチラスを起こす。

 

 

「やっぱり俺には勝てなかったな。ざーんねん。」

「そりゃそうでしょ。ソードスキルを発動しながらスピードアップするってなんですか.....」

 

そう。俺がさっきの勝負で勝った要因はただ1つ。避けたからだ。

ソードスキルの動きには逆らえない、なんて事は常識中の常識。ではどうやって躱したのか。

簡単な事だ。()()()()に動けば良い。そうすればブーストがかかるのだ。

 

 

「ま、お前も十分強くなってるよ。俺だって危なかったぞ?」

「ホントですか.....」

 

何を失敬な。俺とここまで戦えるのはお前か黒助、聖騎士サマだけだぞ。

.....まぁいい。さて、そろそろ腹も減ったし飯にするか。

 

 

「...今から昼飯作ろうかね。何が良い?」

「別になんでも「洋食が食べたーい!」...あのなぁユナ。俺達はタダ飯で食ってるのも同然.....」

「大丈夫さ。んじゃ、作るから準備だけ手伝ってくれ。」

「ホワイトさん.....。...すいません.....」

「やったー!パスタ♩パスタ♫」

 

今日も今日とて、修復屋はのんびり運転。




読了お疲れ様でした。

感想・評価、気軽にお越しください。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

白鬼と忍者

私は帰ってきたァ!

.....はい、という事で再開です。お待たせしました。
で、早速なんですが社内コラボでございます。
『Diavolo Bianco』と『彼は彼である』から主人公が来ております。

興味を引いた方はそちらも読んでみてください。.....駄文ですが。


「ふぁーあ.....暇すぎて死ねる.....」

 

オリ主はもうすぐ死んでしまう。(嘘乙)

原因は暇死。やけに人が来なくて死んじゃいそう。

確かに、来ないのは来ない。2、3人程度なら来るけど。

でもね、今日はヤバイ。1人も来てないんだよ。こんなの無かったんだぜ?

 

 

「なーんか、面白い事起きないかなー.....」

 

なんて、バカな事を考えてみたり。そんな事簡単に起こるわけないけど。

と、思ってたその矢先。

 

 

ドォォォン!

 

 

「うおッ!?」

 

外から結構デカい音が。まるで()()()()()()()()()かのように聞こえた。

取り敢えず短剣を装備して、恐る恐る扉を開けると.....

 

 

「イッテェ.....いきなり落とされるとか意味分かんないんですけど.....」

「ホントそれ.....」

「.....誰だお前ら。」

「「へ?」」

 

デカいクレーターの真ん中に2人の少年。

1人は俺と同じく白がメインの服。もう1人は忍者のような格好。

取り敢えず俺は中に入れる事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「“流殺法”に“忍者”.....どっちも聞いたことがねぇな.....」

「なら、此処は平行世界のSAO、って事か.....?」

 

数分後。俺は彼らから色んなことを聞いていた。

すると、聞いた事がないユニーク。そして聞いた事がないプレイヤーネーム。

これらから推測して、彼らは平行世界から──馬鹿らしいとは思ったが──来たんだと結論付けた。

 

 

「しっかし、平行世界か.....全く同じ雰囲気なんだけどなぁ.....」

「同感。違うようには見えない。」

 

彼ら.....《アーティザン》と《リア》が感心したように溜息を吐く。

まぁ、そりゃそうだろう。少し違うだけで他は何もかもが同じ。困惑するのも無理はない。

 

 

「.....これからどうするんだ?こんな所で良かったら部屋貸すけど。」

「いや、良いよ。茶まで出してくれたのにそこまで世話になるのは気が引ける。」

「うん。気持ち、有難う。」

 

どうやら色んな所を見て周るつもりらしい。ついでにレベル上げもするんだと。

なら、俺の出番だな。最後の手助けをしてやりますか。

 

 

「じゃあ、武器を見てやるよ。そろそろ危ねぇだろ?」

「え、直せんのか?」

「直せるも何も俺は【修復屋】さ。そっちがメインだっての。」

 

もしかして喫茶店と間違えてたの?何か複雑だなぁ。

.....アレ?そんな険しい顔を浮かべてどうしたんだ?

 

 

「...【修復屋】って、そんなモンがあるのか。」

「え?いやまぁ、『修復スキル』で店みたいに振舞ってるだけだけど.....」

 

それだけ言うと、アート──彼のあだ名──ではなくリアが首を横に振った。

どういう事だ?そもそも何の話をしてるのやら.....?

 

 

「言いたい事違う。そんなスキル、僕達の世界(SAO)じゃ()()()()()。」

「!.....へぇ。さっそく平行世界要素が出て来たなぁ。」

 

『修復』が無いとすると、『鍛冶』で修復してんのかな?

でも、アレは中途半端なんだよな。武器しか直せないし。

 

 

「そうなるとワクワクすんな!じゃ、早速頼むよ!」

「おう!毎度アリ!!」

 

ワクワク、ねぇ。まるで真っ黒黒助みたいな事言うな。

ま、そんな事はどうでも良いか。んじゃ、さっさと直しますかね。

 

そんな修復屋は今日は少し寄り道中。




━━その後━━


「ふぁーあ.....眠.....なんかデジャヴを感じるなぁ。」

翌日のオリ主も眠気と奮闘中。気怠げな修復屋は伊達じゃないな。
あ、あの2人は既に帰った。どうやら道中で帰れたらしい。フレンドリストから消えてるからすぐに分かった。


「.....でも、せっかく友達になったのにな.....」

少し寂しいな。でも、元の世界に変えれたんだから別に良いか。
さて、そろそろ客も来る頃だろうし、準備でもしておきますか。


──頑張れよ、ホワイト!──


「んあ?」

刹那、背後から誰かが名前を呼んだような気がした。
ゆっくりと振り返れば誰もいない。だけど、俺には誰かが分かった。


「.....さーてと。今日も1日頑張りますか。」

今日の修復屋は一味違うところを見せてやろう。
そんな張り切る修復屋。その足元には白い羽が1枚落ちていた。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

串刺し公

コラボ回です。(唐突)
お相手は『串刺し公は勘違いされる様です(是非もないよネ!)』を書いている【素敵な賽銭箱】サマです。

そこの主人公であるゔらどサマがご来店。
.....自分でも未だに信じられませんが。((((;゚Д゚)))))))


「あーあ.....暇じゃなぁ.....」

 

老けたオリ主はもうすぐ睡魔に身を委ねそうだ。

昨日の事(アートとリア)があってから、またまた客が来ず。いや、二刀流サマは来たけども。

やっぱり、こんな森奥に建てたのは間違いだったか。そもそも圏外だしなぁ。

 

 

カランカラン。

 

 

「んあ?いらっしゃ──」

 

店の扉を開く音が聞こえたので、そっちに顔を向ける。

其処には.....

 

 

「ほぅ、内装は中々の物だな。 して、此処はどのような店か聞かせてもらえるか?」

「ッ────!?」

 

異様に背が高くてその身にあった槍を持っていて、薄い金色の伸びた髪の40代らしき男性。

だが、威圧がそれに合わず。例えるなら、それは鬼の如く.....いや、吸血鬼の如く。

 

 

「.....ただの修復屋だ。どんなアイテムでも直せるのがウリだよ。」

「ふむ、どんなアイテムとな。そのような店など聞いた事も見た事も無いが?」

 

...警戒、されている?いや、気のせいか。

まぁ、『修復』を取ってる奴は他に見た事無いし。仕方ないか。

 

 

「こんなモン取ってる奴が可笑しいのさ。熟練度の上げ方が鬼畜だからな。」

「...余の問いとは些か異なるな。 余はそれについて問うているのではない。」

 

え?それについて?何言ってんだこのおっさん。

そもそも何者なんだ。恰好とか態度を見て只者じゃない事は分かってるんだけど。

.....もしかして、レッドか?にしては、威圧が過ぎるんだが.....

 

 

「如何にそうであれ、そのような物を取っている者なら多少は耳に聞く筈。しかし、余は其方の事など、ましてや『修復』等と言ったスキルは聞いたことが無い。何者だ?」

「.....は?」

 

 

え、えぇ!?何でデッカイ槍を抜いておられるので!?俺何かしたっけ!?

つーか、俺が怪しい奴みたいに思われてるけど!?

 

 

「待て待て待て!なら聞くけど、アンタこそ誰なんだよ!?レッドじゃねぇだろうなぁ!?」

「.....む?余を知らない、だと?」

 

.....ちょっと待て。こんな事は前も経験したぞ。

すると、相手も何か察したかのように、溜息を吐くように言った。

 

 

「.....もしや、此処は平行世界か?」

「やっぱりかァァァァァ!!」

 

ですよねー。(棒)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほう.....以前にも似たような事があったと?」

「ああ。取り敢えず今みたいに修復したけどな。」

 

数分後。何とか誤解を解くことに成功。現在は談笑も兼ねて修復を施している。

この人、見かけによらず良い人だった。先程の威圧は何処へやら。

 

 

「ふむ...不思議な事もあるものだな。平行世界への転移に、目の前にある異世界の技術.....我の興味を引くものばかりだ。」

「そうか?俺にとっては見慣れた光景なんだけどな.....」

 

この作業に興味を引いてくれるとは。意外と嬉しいモンだな。張り切っちゃおうかな!(チョロい)

そんな事はさておき、頼まれたアイテム──編み棒の修復に取り掛かる。何故編み棒なのかは聞いていない。

いつものように撫でながら、その姿を新品同然へと変えていく。

 

 

「.....見事なものよ。 このスキルが此方にも有ればと惜しむ程だ」

「そうかい?まぁ、楽しめたようで何よりだよ。ほれ、お待ち遠様。」

「うむ。」

 

ピカピカに輝いている編み棒を彼──ヴラドに渡す。最も、編み棒を持っているその恰好は面白く見えてしまうが。それは言わないでおこう。

それよりもこれからだ。彼をどうするか。アートの時は勝手に帰っていったからな.....

 

 

「.....これからどうするんだ?俺で良ければ力になるけど.....」

「問題ない。寧ろ興味深いものだ。なに、色々と周ってみるさ。この世界は未だ行き着いていない階層もあるらしいからな。」

 

なら大丈夫か。アートの時と同じように帰れるだろう。まぁ、困ったらまた来るだろうし。

.....あ、そうだ。ポーションぐらいなら渡しておくか。

 

 

「じゃあ、ポーション用意してやるよ。アンタなら75層に行きそうだからな。」

「む、何故分かった。」

「レベルってモンを知らねぇのかアンタ」

「ふはは! 冒険せずして何がプレイヤーか、と言っておこう。」

 

マジかよこの人。少々バーサーカー気味じゃねぇか。

.....まぁいい。そう言う類の奴は何度も見てきてるからな。

 

 

「...では、そろそろ行く。良いモノを見せてもらった礼だ。これをやる。」

「お、何を.....って、10万コルゥ!?こんなには貰えな──」

 

焦って再度前を向いたら、もう彼はいなかった。

キザな事しやがって.....しゃーない、有難く使わせてもらうか。

 

今日の修復屋は引き続き寄り道運転。




どうでしたか?自分としては良い経験になれたかと。

コラボを申し出てくれた【素敵な賽銭箱】サマ、ありがとうございました!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

殺人鬼

お久し振りです。
メリクリです。
リア充爆発しろdeath(です)


「うーむ.....」

 

オリ主はクリスマスイヴに絶賛お困り中である。

何故かって?ここのところ不可解な事(並行世界の事)ばかり起きていたので調査をしているのだ。

しかし、何も得られず。ホントに何なんだったのかと溜息を吐いていた。

 

 

「最早、魔法なんじゃないか.....?うん、それで良いや。」

 

良くないけどもう面倒くさい。ホントに魔法みたいだったし別に良いだろう。

さて、強引に困り事を解決したところで、俺は()()()()()()()()()

剣先が向いている方向には、偶に来やがるヒスパニック野郎が。

 

 

「.....何しに来やがった。まだ定期じゃねぇが?」

「相変わらず怖いねぇ?ちょっとお茶しに来ただけさ。」

 

そう言って、奴──PoHは近くの椅子に座った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「.....マジでお茶しに来ただけかよ。」

「俺はちゃんと言った筈だぜ?」

 

数分後。俺は奴の向かい側に座って、フツーに茶を飲んでいた。

実は先程のやり取り、何度もやっている事なのだ。他の奴はコイツが来るなんて事は知らないが。

 

 

「.....ほれ。取り敢えず修復だけしたぞ。」

「Thanks!恩に切るぜ!」

 

()()()()()()ので奴に投げ渡す。それを見ずに受け止められたが。

先程言ったことから分かる通り、俺はコイツの武器を何回も直してきた。脅された、とかそんなのではなく。

ドアから入ってきた以上、コイツも客。店主が客に手ェ上げちゃいけないからな。脅しはするけど。

 

 

「んで、ホントにこれだけか?もっとデカい(目的)、あるんだろ?」

Exactly(その通り)!つっても、()()()()()だけだがな。」

 

教えに来た?珍しい事もあるんだな。こんな事が起こる事なんて巡り合わないと思っていたが。

まぁ、偏見はここまでにして。こんな奴が伝えに来るような事なんだ、聞いておかないと。

 

 

「最近、俺たち(ラフィン・コフィン)以外で人狩りをしてる奴が居る。しかも対象は、()()()なんだと。.....恐らくだが、アイツだ。()()()()()んだな?」

「.....そうか。ま、俺の所に来たなら、完膚無きまでに虐殺するだけだ。忠告、感謝するよ。」

「いやいや。お前を殺すのは俺だからなぁ。俺以外に殺されるのは癪しか無いんでな。」

 

コイツらしいな。こんな事言ってる割には意外と「うっせェ!」.....と、いう訳だ。

しかし、遂に動き出したのか。場所さえ掴めたらこっちから行くんだが。どうせ転々としてるんだろう。

 

 

「んじゃ、そろそろ行くわ。また邪魔するぜ、()()()。」

「二度と来んな、迷惑野郎。人殺しが来ると迷惑だって分かってんのか、()()()()?」

 

名前を呼んで一瞬目を合わせる。

互いに苦笑した後、アイツは店から出て行った。こんな気持ちを感じるのもこれで13回目。

ああ。本当に、この日は最悪だ。不吉でままならない。

 

今日の俺は、どこか違っていた。




なんだこれ(困惑)。
ま、まぁ、この設定は元から考えてた事だし。別に良いか。

さて、そんな事はさておき。またもやコラボ企画を考えております。
恐らく、年内最後の投稿になるかと。お楽しみに。


感想・評価、気軽にお越し下さい。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

無型の剣聖

コラボ&今年最終回です。
お相手は【SAO 〜無型の剣聖〜 】を書いてらっしゃるmogamiサマです!

ではでは、どうぞ!


「えぇーと.....これは此処で、これはこっち、か.....」

 

どうも、オリ主です。現在、店の物を整理中でうぃす。

もうすぐ75層攻略なんでな。そろそろ忙しくなる時期だろうし、今やっておこうと思ったんだ。

改めて言うけど、俺は攻略に出ない。皆の帰りを待つというのが建前で死にたくないってのが本音だ。

 

 

「.....大分、片付いたな。休憩しますか。」

 

実際には疲れてないんだけど。そういう風に感じるのだ。錯覚って言うのかな?

取り敢えず、俺はいつも使っているカウンターの椅子に座り、茶を嗜む。

まぁ、まだ片付ける物は沢山あるんだが。今日中に、って訳じゃないからな。

 

 

 

 

 

カランカラン。

 

 

「お、お邪魔しまーす.....」

「んあ?いらっしゃい。」

 

すると、1人の青年が店内に入ってきた。妙に警戒心みたいなモノを持ちながら。

顔は見た事無いが、防具が少々高めの物と思われる。髪色と同じく藍色。ダボダボに見えるが突っ込んでいいのやら。

 

 

「えーと.....此処って、どういう店か、教えてくれないか?」

「へ?知らずに来たのか?」

 

それは凄いな。此処に来る人は俺の噂を聞きつけてやって来るんだが。

まぁ、それ程有名でも無いし、そもそも偶々見つけたってのもあるだろう。しゃーないか。

 

 

「そ、その事なんだけど.....」

「ん?どうした?」

 

すると、彼は苦笑しながら頭を掻き始めた。

.....待て。このやり取りは前にもやったぞ。これはまさか.....

 

 

 

 

「俺、違う世界から来たみたいなんだ。」

 

カウンターに頭をぶつけたのは仕方ないと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「━━それで、変な穴に吸い込まれたと思ったら、店の前に立っていたのか。」

「ああ.....」

 

 

数分後。俺はデジャヴを感じながら、彼──アルスの話を聞いていた。

彼もアート達やヴラドと同じく、変な穴に吸い込まれたらしい。異世界に評判とかいらないんですけど。

つーか、最近こういう客しか来ないよな。この世界の人が恋しくなってきた。(何を言うか)

 

 

「あ、剣出してくれ。修復してやるよ。」

「それは有難いな。じゃ、宜しく頼むよ。」

 

アルスから剣を受け取り、修復を開始する。

銘は【ペイルライダー】。全てを飲み込まんとする黒が輝いている。.....これの説明欄に書いてあった。俺じゃないからな!

そんな事はさて置き、慣れた手つきで修復を開始。淡い薄緑色の光が右手を包み始めた。

 

 

「おぉ.....これが【修復】か!なんか安心する光だな!」

「そうか?そんな事言う奴はお前が初めてだよ。」

 

安心する光、ねぇ。慣れちまったから分らんな。

ま、大方そんな意味も兼ねて【修復】って名前にしたんだろ。あくまで推測だが。

閑話休題。所々にあった刃毀れが、みるみる内に消えていく。

 

 

「そういや、この後はどうするんだ?探索でもするのか?」

 

修復をしている最中に、この後どうするのかを聞いてみる。

どうせ探索に行くとは思うんだが、一応な。

 

 

「うーん.....まだ決めてないんだ。もうちょっと居候しても良いかな?」

「そうなのか。俺は別に良いぜ。怠い事さえしてくれなきゃ、な。」

 

予想外の答えが出たな。てっきりアートと同類かと思ったが。

まぁ、人それぞれだから別に良いか。予想外だとしても何ら問題は無いし。

 

 

「じゃあ、メシ作ってくれよ!お前からは凄腕の匂いがするんだ!」

「マジかよお前」

 

訂正、凄く怠い事を申し出てきた。

人の為にメシを作るとか嫌なんですけど。そもそも俺は修復屋なんですが。

 

 

「なぁ、作ってくれよ〜.....余分に払うからさ、なっ?」

「グッ.....仕方ねぇな。ホントに払えよ?」

 

畜生、やはり俺は金に弱いのか.....まぁ、前から知ってたけど。

丁度修復も終わって時間も12時過ぎ。作りましょうかね。

 

 

「ほい、修復完了っと。」

「うぉっ!?.....スゲェ、新品同然じゃねぇか...!?」

「当たり前だ。頼まれたからにはそこまでやらねぇと。さて、今日は洋食にしようと思うんだが、何が良い?」

「ナポリタン大盛りで!!」

「容赦ねぇなお前」

 

今日も今日とて、修復屋は通常運転。




お疲れ様です。
感想・評価、気軽にお越しください!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

因縁 上

あけおめ(遅い)。
いやー、正月だから良いかなーと思ってたらこんなに経ってました。(何言ってんだコイツ)

しかも戦闘回だと。ふざけてるのかな?ハハッ!


ま、まぁ、大目に見てやってください。これが終わればALOが待ってるんだ!
つーわけで、どぞ!


「.....光陰矢の如し、か。正にその通りだな。」

 

(オリ主)は此処に居る。もうすぐ2年が経つ時間を噛み締めていた。

前線はもうすぐ75層を攻略するのだとか。俺は参加しないのであまり関係ないが。

 

 

「.....いや、あるか。どうせもうすぐ攻略組サマが来るし。」

 

ハァ、と溜息を吐きながら店の準備をしていく。部屋の電気をつけ、ついでに暖炉の火もつけておく。ゲーム内なので寒いとは感じない筈だが、それでもつけたくなる。心がどうやらこうやら関係してるんだろう。

 

続いて、いつもの仕事の準備。事前に届けられていた数本の剣を取り出して、作業机の上にガラガラと置く。.....この作業も手馴れたものだ。最初は現実と違いすぎて失敗ばかりだったのに。帰還したら絶対衰えてるわ。

 

 

「.....いつもよりも可笑しいな。こんな事を考えるとは。紛らわす程度に始めるか。」

 

【修復】をタップして、淡い緑の光を右手に宿す。

そういえば、一度も()()()使()()()をしていなかったな、と今更ながらに気付いた。まぁ、俺は戦闘職じゃないしこれからも使わないんだろう。

 

そんな事を考えていると。

 

 

 

カランカラン。

 

 

 

「ん、いらっしゃい。まだ修復中だから注文は後で━━━━」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「久し振りだなぁ、ウィルゥ!」

 

その瞬間、俺は修復を強制終了して、クイックチェンジで短剣を召喚。

そのまま奴に投擲した。

 

 

「お、っと!久々の再会にしちゃあ、ちょっと過激すぎるんじゃないか?」

「黙れ。何故テメェが此処に居る。赤狩りはお前の仕業か?俺の質問に答えてから死んでくれ。」

「おいおい、一度に沢山じゃあ聞き取れねぇよ!」

 

何で。何でコイツが此処に居るんだ。

あぁ、憎悪と怒りが募っていく。殺したくないのに、蹂躙したい、という気持ちで彩られていく。

 

 

「俺だってゲームぐらいするさ。()()()()()()()

赤狩りは俺の使命さ。悪を討つのは正義が当たり前だろ?そういう人間だって事はお前が一番知っているはずだぜ?」

「テメェが正義だと?巫山戯んな!お前のせいでアイツらが.....木綿季と藍子がどれだけ傷ついたと思ってやがるッ!」

 

歪んでやがる。コイツがこういう人間だという事は嫌でも知らされていたが、まさか、ここまでになっていたとは。

どうすればいい。ナイフを向けているものの、コイツを殺すかどうかまだ迷っている。

 

コイツが此処に来た理由はわからないが、このチャンスを逃せば多くの人達が被害に遭うだろう。だが、だからといって殺すのは無理だ。俺には、そんな事出来ない。

 

 

「オイオイ、折角の俺を殺せるチャンスだぜ?来ないのかァ?来ないなら.....俺から行くぜェ!!」

「ッ!!」

 

そんな事を迷っている内に。

戦いの合図は、奴が突進してくる事で火蓋を切られてしまった。




読了、お疲れ様でした。この話は意図的に分けております。
早めに続きを投稿しますので、待っていてください。取り敢えず頑張るお。

そういえば、ディズニー系の制限が解除されましたね。

.....書くしかないなぁ。(アホ)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

因縁 中

待て待て待て。評価バーが赤く見えるんですが。
え、マジで?こんな話、そこまで評価良いようには見えないんデスけど。


.....まぁいいや。(思考放棄)
評価をしてくれた方、ありがとうございます!


...なるべく早く投稿します.....


「ウルァ!オルァア!!」

「グッ.....」

 

唐突に仕掛けられた縦の斬撃をなんとか躱し、転がるままに受け身を取る。

続けて繰り出された横撃が来るが、咄嗟に出した短剣で防いだ。

 

 

「弱いん、だよッ!!」

「ガッ!?」

 

しかし、押し返される。どうやら(STR)は奴の方が上らしい。お陰で吹き飛ばされてしまった。

店内で起きた事なので、俺がぶつかった衝撃で机が崩れる。数秒もしない内にポリゴン体へと変わってしまったが。やはり圏外に店を建てたのは慢心が過ぎたな。

 

 

 

 

 

「なんだよなんだよォ!その程度かよォ!?俺はずっとこの時を.....お前()を倒す時を待ってたのによォ!!」

「うるせぇ.....生憎と支援職なんでな。それに、俺は殺しはしない主義なんだ、よッ!」

「ッ!?」

 

言い切るその直前に短剣を投げ飛ばす。

顔を仰け反らせて避けられるが、それでいい。逃げるようにして俺は店から出る。

出ていくと同時に“クイックチェンジ”で短剣をもう一度出現させた。

何故逃げないのかは、それは至極当然の事。此処で逃げれば被害が広がると思ったからだ。

 

今の対象が俺とレッドであるものの、それはやっていいことではない。命を奪っている時点で牢獄にぶち込むべきだ。

それに、このまま放っておくと遂には普通の人にさえ毒牙をかけるかもしれない。

それはなんとしてでも防がなければならない。絶対に。

 

 

 

 

 

「オイ.....随分と癪な真似するじゃねェか。

悪は悪らしく、無謀に突っ込んでくるモンだろ。勇気ねェのかァ?」

「こんな時に勇気なんて持ってられるかよ。お前を牢獄にぶち込むには捨てないとな。」

 

そう言って俺は、短剣をもう1つ出現させ、左手で逆手に持つ。

右手を前に出して左手を胸の前に持ってくる、いつものスタイル。ソードスキルでは倒せるか分からないから、このスタイルを構える事にした。

 

 

「そうか...よォ!!」

「ハァァァ!!」

 

言い切ると同時に振り下ろされた得物(曲刀)を、俺は2つの短剣で受け流す。

そのまま回りながら相手の懐に忍び込んで。腹を刻もうと迫る。

 

 

「甘いッ!!」

「ガァ!?」

 

だが、届かない。

空いていた左手で地面に叩きつけられ、曲刀で斬り飛ばされた。

やはり、一筋縄ではいかないようだ。動きながら策を考えなければ。

俺は大きく後ろに跳び、奴を倒す為の策を考える。

 

 

「甘いつってんだろォ!!」

「!?」

 

しかし、そんな時間を与えてくれるほど、奴は優しくなかった。

俺が飛び退くと同時に、奴はこちらへ特攻を仕掛けて来た。剣先は真っ直ぐに、自分の腹へと向かって来ている。

慌てて防ごうと出した短剣はそれに掠らず、そのまま━━━━

 

 

「──ハァッ!」

「ガッ!!?」

 

深々と腹へ突き刺さり。続いて橙色の光が剣を纏った。

ソードスキル━━マズいと思ったその時には、既にもう━━━━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───死ねェェェェ!!!」

「ガァァァァァァ!!?」

 

多数の斬撃が、俺を裂いた。

数の暴力と有り余るその力に、俺は為す術なく地に伏した。

 

 

「ハ、ハハハハハ!終わりか!遂に終わりかァァ!!」

「ぅ...ぁ..........」

 

身体が動かない。恐らく、先程のソードスキルはスタン属性が入っていたのだろう。鉛が体の中に入ったように、身体が重たい。だが、そんな事は今は関係ない。

 

動け、動け。立たなければ。コイツを殺さず、牢獄にぶち込まないと。此処で倒れてどうするのだ。倒れてしまったら今度はアイツ等が.....

 

 

「やっと殺せるゥ.....長かったなァ。お前が双子ともども逃げた時から、ずっと憎悪を募らせてよォ。分かるかァ、この気持ち。悪を取り逃した正義の心境をよォ!!」

「グァッ.....」

 

背中にズブリと曲刀が突き刺さる。画面の右上に表示されているHPバーが緑から黄色に変わった。

何とかしなければ。しかし、スタンは消えない。あと10秒程度だろうか。そこまで持ってくれ、俺の体力。

 

 

「これからも悪を殺し続けて.....正義だけが存在する、平和な世界にするんだ。お前等みたいな悪は.....存在しちゃいけないんだよォ!!」

「グッ.....だから、名前を『Justice(正義)』にしたのか?ハッ、お前みたいな奴が正義とは言えないな。」

「!.....黙れッ!!」

 

曲刀が俺を搔き乱す。HPの減りが速くなった。ここで挑発するのは拙かったか。

だが、咄嗟にでてしまったのはしょうがないだろう。こんな奴が正義なんて、誰が認めるものか。

 

そのせいで、アイツ等は.....虐められる事になったんだ。

()()()()()()()()() 』が、『 ()()()()()()()() 』という捻じ曲げられたものへと変わり。俺が知らない内で、彼女達は言葉と力の暴力に犯されていた。

 

情けない話だ。彼女達を.....自分を何度も助けてくれた彼女達を救おうと頑張っていたのに。結局は守れていなかった。

虐めから助ける方法も、結局は、一緒に転校するという事だけ。大事をやったのは大人たちだった。

 

 

「無力なお前がッ!逃げる事しかできないお前()がッ!調子乗ってんじゃねぇよッ!!」

「っ.....ぁ.....」

 

正論だ。全て当てはまっている。

俺は逃げる事しか出来ない。殺すことは未だしも、人を傷つける事さえできない。

 

 

 

 

 

バキッ。

 

 

「んあ?...あー、折れちまったか。」

「.....」

 

背中にあった違和感が消える。音から察するに、刀身が折れたのだろう。

あぁ、次で終わりか。案外長く感じたなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや待て。()()()()()()()()()

バカか。ここで終わったら、次は誰が苦しむと思っている。

 

野放しにしていいのか。そもそも、()()()()()()()()()()()()()()()()

違うだろう。それで終わらないだろう。

 

 

「(.....殺したくない。)」

 

知るか。自分の心情は、今は捨てるべきだ。

 

 

「(.....傷つけたくない。)」

 

知るか。時には力さえ必要なのだ。

 

 

「(.....でも、それじゃダメなんだ。)」

 

そうだ。分かってるじゃないか。

今此処に必要なのは優しさではない。やっと分かったよ。

 

 

 

 

 

「.....さて。長かった時間もこれで終わりだ。これで━━━━トドメだァァァァァ!」

 

世界が遅い。曲刀がゆっくりと振り下ろされる。

...もう、いいか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────うるせェ」

「ガッ!?」

 

即座に受け身を取って、()()()()()で奴を斬り裂く。

ああ、使いたくなかった。使ってしまったら、二度と戻れないだろう。そう思ったから。

だけど、もういいや。光で居る事は諦めよう。

 

 

「.....傷つけたくない、殺したくない。そう思うのはもうやめた。

俺が躊躇っていたのはさ、お前を殺してしまうかもしれない、って思ったからだ。

だが.....その必要はないらしい」

 

ヒュン、と刀の切っ先を奴に向ける。

刀身からは赤い稲妻がバチバチと走っている。いや、自分の身体にも。

 

 

「断言しよう。俺は.....お前を殺す」

 

そして俺は.....悪に堕ちた。




読了、お疲れ様です。

...実はここだけの話。12時頃に投稿予定だったんですよ。なんでこの時間になったか分かります?

答えはですね.....言いにくい事なんですが、まさかの寝落ちです。ハイ。
いやー、スマブラって恐ろしいね。集中してずっとオンラインやってたら、いつの間にか3時ですよ。ヤバいね。


次回でこの話は終わります。戦闘回を好まない人には申し訳ありません。
これが終わったら、あと1話でSAOは終わりなんです.....!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

因縁 下

お久しぶりです。(^_^;)
気づけば平成が終わり、令和へと突入。

.....ハイ、ものすごく遅れました。マジですいません。
実は、現在高校2年生なのですが、志望大学が難関なので既に受験勉強を目指しておりまして。
これからも不定期になりそうです。流石にここまでは開けませんが、週1更新になると思います。

期待して下さっている読者の皆様。ご了承ください。


あと、今回で「因縁」は終結します。駄文要素はいつも通り。しかし、残酷成分がパネェです。
.....ご了承くだs(殴打)


さて、やっと俺のユニーク──【殺人剣】──を出したのだが。

あんな大層なことを言っておいて、それでもコイツに勝てる気がしない。

そもそもこういう場面はラノベやらコミックやらでよく見るが、それだけで急に強くなるのはおかしいと思う。あくまでも俺の偏見だが。

だから、油断はしない。奴の言動と行動、その全てを目に焼き付ける。

 

 

「クソが.....クソがクソがクソがァ!!」

 

俺の上から見下したような発言に腹が立ったのか、剣の切っ先をこちらに向けて突進してくる。

怒りに塗れているせいでなんとも単純だが、それを高いレベルが補っている。

 

 

「だぁぁッ!」

「グガッ!?」

 

まずは奴とすれ違うように突進。刀で奴を斬りつけるのも忘れずに。

後ろから悲鳴が上がるが、それは気にせずにソードスキルを発動する。

 

 

 

“単発SS 辻風”

 

 

 

「もういっ、ちょ!」

 

短い硬直が解けたところで、再度、発動の構えを取る。

 

 

「ナメんなァ!!」

「! なにっ!?」

 

しかし、奴はそれを許さない。

顔を上げれば、すぐそこまでオレンジ色に光った刃が迫っており──

 

 

「グ、ァァァァァ!!」

「!」

 

いや、斬られはしない。

ほぼ反射だったが、何とか刀を滑り込ませる事が出来た。

 

 

「弱ぇんだよッ!!」

「ガッ!?」

 

しかし、防御にはならなかった。

刀はそのまま押し切られ、俺の肩を斬り裂く。

光はそれで止むことはなく、俺の体に傷をつけていく。

 

 

「ッ.....サンドバック、みてぇ、に、斬るなッ!!」

「グッ.....!?」

 

数秒遅れて、刀を乱暴に振り回す。

多くの傷を身に宿してしまったが、まだ大丈夫だ。まだ戦える。

 

 

「ハァ.....ァァァァアアアアア!!」

「ッ!!」

 

自分がしていた事を邪魔されたからか、再度突進してくる奴。

先程よりも速い。レベル差によってここまで変わってくるのか、と。

溜息を吐きながら、腹を左手で押さえ、刀を構える。

──そして。

 

 

 

 

 

「────取った」

「ッ!!?」

 

ズブリ、と左手から音がする。正確には、()()()()()()()()()()()から。

ちょうど左手で抑えていた部分──腹を狙ってきた。おかげで、剣筋は単純で分かりやすかった。

ダメージがジリジリと減っていくが、奴を捉える事が出来たから良しとしよう。

 

 

「は、離せッ!!」

「っ.....」

 

俺に怯えるように、体術スキルを使ってくる。

少しずつ傷が増えていくが、気にしない。ノックバックが入るのは少々問題だが。

しかし、せっかく捉える事が出来たのだ。このチャンス、使わねば。

 

 

 

 

 

「だ、ま、れェェェェ!!」

「ゴベェァ!!?」

 

刀を握りしめた右手で、奴の顔面を殴り飛ばす。

刺さっていた曲刀も衝撃で抜けてしまうが、まぁいいや。

 

 

「ッ.....何で!何で死なねェんだ!?もうとっくに死んでてもいいだろォ!!?」

 

突如、奴は駄々をこねる餓鬼のように叫び始めた。

まぁ、コイツが言いたいこともある。デカいレベル差があるのに、何故未だ、この世界に居るのか。

 

 

「ハッ.....お前、俺を狙ってんのによく見てないんだな?」

「アァ!?何言って.....!?」

 

そこまで言いかけて、やっと奴は気付いたようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その光.....まさか、【修復】か!?」

 

俺の左手が、淡い黄緑色の光に包まれている事に。

そう。俺はここまでつけてきた傷を、【修復】で回復していたのだ。

 

【修復】の本当の使い方は、物を直すことではない。

自分、あるいは、自分が入っているパーティー所属のメンバーを回復する。これが本質である。

確かに便利なのだが、【修復】の取得方法はなんと、『自分のHPがレッドゾーンの時に、武器を破壊させてダンジョンから生還する』、というイカれたもの。

さらに、熟練度の上げ方も『どれだけレッドゾーンで居られるか』なんてバカみたいな上げ方だ。だから取得した人は少ないんだろう。

 

まぁ、そんな事はさておきだ。

奴がこの光に気づいたところで、今更だ。まぁ、遅かっただけであって、勝ち確定になった、という訳ではないんだが。

 

しかし、勝つ可能性は上がった。

『人型に対して1.8倍の攻撃力上昇』の効果を持つ【殺人剣】。

『毎秒ごとに階差数列の仕組みで回復』の【修復】。

 

負ける気がしない。

 

 

「ッ.....それがァ、どうしたァァァァァ!!!」

 

奴は、まるで恐怖を消し飛ばすように叫ぶ。

単純な突進攻撃。刀身が光っていることからソードスキルと確定。

 

 

「フンッ!」

「なにッ!?」

 

それを俺は、()()()()()()()()()

刀の耐久値が急激に減っていく。無論、黙って見過ごすことはなく。

 

 

「【修復】ッ!」

 

緑色の光に包まれた左手で、刃に触れる。

縮まっていた耐久値は踏みとどまる。僅かに【修復】が勝っているように見える。

 

 

「グッ.....死ねよッ!!粘るんじゃねェ!!!」

「ッ.....」

 

しかし、相変わらず力は奴の方が上だ。

防ぐことは出来ても、押し負けてしまう。

 

 

 

 

 

「.....いちいち心に響くようなこと言いやがって.....」

 

それがどうした。

ああ、そうしようか、なんて言うとでも思っているのか。

 

 

「アイツらが、俺を待ってるんだ」

 

ここで死んだら、誰がアイツらを守る。

まだ死ねない。まだ頑張れ。まだ耐えろ。

 

 

「だから、俺は.....」

 

俺は.....!

 

 

 

 

 

「こんな所で死ぬ訳にはいかねェんだよぉぉぉぉぉ!!」

「な、んだと.....!?」

 

刹那、俺は奴を()()()()()()()()

どうやって吹き飛ばせたのかはわからない。しかし、これはチャンスだ。

素早く態勢を立て直し、俺は勢いに任せて──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザシュ。

 

 

「.....あ」

 

自分の負の側面に気づいた時には、既に遅かった。

刃は奴の腹で丁度止まっていて。肩からそこにかけて、赤い傷が出来ていて。

 

やってしまった、と瞬時に分かった。

 

 

「ぁ、ぁぁ.....!」

「...やりやがったなぁ?やっちまったなぁ?喜べよ....

 

 

 

 

お前は今、人を殺したんだ.....!」

 

奴はそれだけ言い放って。

ポリゴン体へと変わってしまった。

 

 

「.....ハハ。やっと殺せた。殺せた!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハハ.....」

 

今の事象を見て、あなた達は俺の事をヒーローと思っただろうか?

そんな訳ない。俺は、取り返しのつかないことをしてしまった。

 

俺は.....今、この時を以って、悪へと堕ちた。




読了、お疲れ様でした。次回は出来るだけ早く上げるつもりでございます。
それと、SAO編は次回で終結。次々回からALO編が始まります。お楽しみに。


あ。現在、『Diavolo Bianco』のリメイク作品を作成中です。
もう少しで投下予定です。5月中には1話を投稿するつもりでいます。


長くなりました。では、またの来店をお待ちしております。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

閉店(開店)

終結───。


「.....」

 

ああ。やけに首が痛いと思ったら、座りながら眠っていたのか。

気づいたら店に置いてある、客用の椅子に座ってた。ゆらりと店を見渡せば、それはもう荒れに荒れまくっていて。

 

俺は先程まで狂乱していたのだと。嫌でも分かった。

 

 

「.....汚い」

 

その言葉は、どっちに向けたものなのか自分でもよく分からなかった。

今の自分の心象風景をそのままに映したような店の風景。はたまた、何度も水で洗おうと取れやしない血塗れの手か。ああ、両方の事を言ったのかもしれないな。

 

 

「汚い、汚い汚い汚い汚い」

 

ゆらりと立ち上がり、洗面台で手を洗う。

洗い流す。取れない。洗い流す。取れない。洗い流す。取れない。

ゴシゴシと洗っているうちに、両手からポリゴンが浮かんでいるのが目に映った。

強く擦ったせいか攻撃判定になってしまったのだろうか。

 

ポリゴン()があの時の惨状を呼び起こして──

 

 

 

 

 

『お前は今、人を殺したんだ.....!』

 

 

 

 

 

「ああああああああっ!!?!?」

 

嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ

 

 

気持ち悪い。吐き気が来た。頭が痛い。

あの時のアイツの顔が。呪いのように自分に纏わりついていて。

必死に手を擦る。擦れば擦るほどポリゴン()が出ると気付かずに。

 

 

 

 

「何をしている?」

「───あ、?」

 

その声に気づけば、ずっと擦っていた左手は自分の手前で止まっていて。

それを止めている腕を辿って見ていけば、よく目立つ赤い鎧が目に入った。

 

 

「自分に生の素晴らしさを教えてくれたキミが。自分を殺そうとはどういう事だ?」

「.....茅場、さん..........」

 

つまり、俺の目の前には聖騎士が居たということだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「即興で悪いが、コーヒーを作った。なに、GMアカウントで調整しておいた。味には心配無用だ。」

「.....」

 

彼なりのジョークを言ったのだろうか。生憎だが笑う元気は持ち合わせていない。

何故ここに居る、とかは聞かない。だから早く帰ってほしい。

 

 

「.....帰ってほしそうな顔だな。キミの状態を見て帰ると思うか?」

「.....有り得ない、な。何事にも無頓着だったアンタは何処に行ったんだか」

 

うざったらしい。他人を無機質な目で睨んでいたアンタはどこへ行ったのか。

やめてくれよ。そんな、光が灯った目で俺を見ないでくれ。

 

 

「.....なんで此処に居るんだよ」

「近々、75層ボス攻略があるだろう?ただ武器の修復を頼みに来ただけだったのだが.....こんな事になっているとはな。」

「っ.....」

 

その言葉に俺は詰まらせてしまう。ホントに偶然なのか.....ああ、考えても仕方ない。

 

 

「.....俺の事はもういい。早く出て行ってくれ」

「何を言っている。そんな状態のキミを放っておけるわけないだろう。」

「チッ.....アンタには関係ないだろ。これ以上関わんな」

 

イライラする。なんでこんなにも構おうとしてくるんだよ。

私には関係ないって言えよ。お願いだから気にかけないでくれ.....!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く.....これ以上ない程に捻くれているな。」

「あァ───ガッ!?」

 

ため息が聞こえたかと思えば、俺は頬を打たれていた。

世界が動いた。いや、実際そうなのだが、何と言えば良いのか.....心が動いた気がした。

 

 

「人を殺しておいて何を迷っている。何を後悔している。キミが殺したのは悪だったのだろう?悪は殺してはならない、そういう甘い考えでも持っているつもりか?」

「ッ.....で、でも、悪とかそれ以前にアイツは人間で......」

「それがどうした。もしも、彼を殺していなければ。それはつまり───」

 

それだけ言って少し間を置き。

彼はこう言った。

 

 

「───彼女達に危険が及んだのではなかったのか?」

「!」

 

その言葉を聞いて、俺はハッと顔を上げた。

目には、やけにニヤついた彼の顔が映っていて。俺の目を見てから、頭に手を置いた。

 

 

「なんだ、それで戻ってこれたのか。ここまで愛されているとは、彼女達を救った甲斐があったというものか。」

「......俺は、間違っていなかったのか.....?」

「うん?ああ、それはキミが決めることだ。彼を殺したことを背負って生きていくのか、それとも自分のやったことは間違っていないとするか。どちらもキミの選択の自由。私が決めることではない。」

 

すると彼は立ち上がり、俺の前に剣を差し出してきた。

.....ん? “剣”?

 

 

「その状態なら大丈夫だな。では、剣の修理を頼むよ。」

「え、あ.....お、おう。」

 

戸惑いながらも了承すれば、彼はツカツカとカウンターの方へ歩いて行った。

.....なんというかなぁ。実際、俺は立ち直れたんだけれども。

 

 

「.....マイペース過ぎるんだよ.....」

 

そんな事を言っている俺の口は、三日月を象っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───ん。これで良いだろ。」

「うむ。」

 

数分後。まるで新品のように見えるそれを投げ渡す。

彼は難なく受け取り、少しじっくりと見てから鞘に直した。

 

 

「では、行ってくるよ。」

「おん。行ってらー ───ああ、ちょっと待て。」

「む?」

 

ドアノブに手をかけた彼に一声かけて、振り向かせる。

俺は手に持っていたお守りを投げる。顔辺りに投げたのだが、流石は騎士様。上手く掴みやがった。

 

 

「.....これは?」

「一定の確率で防御アップ。前に探索行ったらたまたま見つけたんだよ。

.....今回の礼だ。それはアンタにくれてやる。いつか死にそうだからなぁ。」

 

流石にそれはないと思うけど。まぁ、念の為だ。

自分の心を取り戻してくれた恩人に死なれても困るからな。元より死なせないつもりではあるが。

 

 

「ふむ.....ありがとう、とでも言っておくか。そんな事態は起こらないと思うがな。」

「そーですかい。ま、次も来るんだな。アンタも数少ない常連客の1人なんだからよ。」

「ああ。そのつもりだ。」

 

それだけ言えば、彼は店から出て行った。

さて、今は昼前。仕事盛りの時間だ。

 

 

「.....片付けますか。あーあ、面倒くさいなぁ.....」

 

 

 

 

 

この日──2024年11月7日。

この9時間後に、あるアナウンスが流れた。

 

『ゲームはクリアされました』、と。

 

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

 

「..........」

 

次第に、閉じられていた瞼が開いていく。

昏い目に映ったのは、白い天井。自分の家ではない事、すぐに分かった。

恐らく病院か──。腕に感じる違和感を感じながら、俺はふと左の方へ顔を向けた。

 

 

「───。」

「.....ぁ、ぃぉ...........ぅぅ、ぃ......」

 

そこには、俺の顔を見て、口元に手を当てている双子の姉と。

すでに涙を流している双子の妹が。

つまり───ずっと会いたかった彼女達が、目の前にいたのだ。

 

 

「ぁ......う、ぁ.....!」

「!」

 

二人して胸元に飛び込んできた。

激しい痛みが襲ってきたのだが、そんなものは無視して。感じなくて。

上手く動かせないが、なんとか両手をそれぞれの頭に置いた。

 

 

「ぁ.....ぃ.....あ.....」

「おかえりなさいっ.....おかえりなさい.....!」

「にいちゃん.....!にいちゃんが、帰ってきたぁ.....!」

 

ちゃんと言えなくてごめん。

後でちゃんと言うからさ。今は心の中で言わせてくれ。

 

ただいま。藍子、木綿季。




イエモンのライブ行って来ました。
ヤッベェ。初めて行ったんだけど、イエモンで良かったわ。(小並感)


これにてSAO編は終了です。
次回からはALO編が始まります。イチャイチャ話もありまっせ。グフフ。

.....それにしても、なんか無理やり詰め込めた感がしてならない。
ちゃんと出来てますかねぇ?


では、次回もお楽しみに。
感想・誤字報告、受け付けております。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ALO
アルバイトな修復屋


次回からALOに入ると言ったな。アレは嘘だ。(オイ)
いや、まぁ、ALOの話ではあるんですが。いきなり入ってもアレだなーって思いました。なのでリアルの話っす。

では、どうぞ。


「───おっさん。コレ、ここに置いとくぜ?」

「おう。あ、それ拭き終わったら休憩な。」

「ほーい。」

 

キュッキュッと水滴だらけの皿をしっかりと拭き、乾燥機の中に置く。

カチャリ、という音が響いた。店の中はなんとも静かである。決して客が少ないという意味ではない。言うならantique……じゃなかった、アンティークな雰囲気と言ったところか。

 

 

「うし。おっさん、コーヒー入れていいか?」

「OK。ミルクいるか?」

「No thank you。」

 

予め欠点豆が取り除かれた袋を取り出し、じっくりと豆を焙煎する。

2ハゼ目の音を聞いてからコンロの火を止めて、カゴに移す。この音が結構好きなんだよな。

15gほど手動式のグラインダーに入れて、ゆっくり回していく。

 

粉状になったのを確認して、カップに入れる。

ゆっくり、ゆっくりと回しながらお湯を入れていく。拙いが、これでも練習した方だ。大目に見てくれると助かる。

 

さて、自作のコーヒーも出来たことだし。ちょっと休憩しま───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やぁ。すまないが、僕にもコーヒーくれるかい?」

「」

「お、珍しいな、アンタが来るとは。」

 

…気付かなかった……

何で此処に居るんだよ、茅場さん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほう、なかなかの出来じゃないか。よほど練習したのが良く分かるよ。」

「うっさい。これでも半人前だってよ。」

 

数分後。取り敢えず茅場さんの分も入れ、カウンター席で休憩する。生憎と休憩にはなりそうもないが。

……全く、唐突に来るのはやめてくれってい言ってるのに。俺の顔見るの、そんなに面白いか?

 

 

「ああ。見ていて飽きないのはあるかな。」

「心読まないでくれますか?」

 

…エスパータイプか。あとは悪か格闘かな?(小並感)

 

 

「……アレから2ヶ月か。彼女たちはどんな感じだい?」

「元気過ぎていつも通りさ。リハビリ終わってからすぐにベタベタだよ。」

「ラブラブだね?」

「そういうアンタもだろ?」

 

違いない、と苦笑してから静かにコーヒーを飲む。そんな彼を見て、未だに俺はアレが終わったのかと実感できていない事を感じていた。

SAOの終了。つい2ヶ月前にあの悪魔のゲームは終わったのだ。どっかのラスボス様は平然と俺のコーヒーを飲んでいるが。

 

ああ、捕まっていないのか?という疑問にはこう答えよう。

彼は捕まっていない。だけど、逃げてもいない。どういうことか分かるか?

 

答えは簡単。政府に協力という形で逮捕を無しにしたのだとか。そっち方面はよく知らない俺だが、どうやったのかは知らん。なんか凄い事でもやったのだろう。(思考放棄)

 

 

「それにしても。かの修復屋はこんな所でバイトか。物は直さないのかい?」

「あそこに書いてるよ。」

 

“壊れた物、直します”と書いてある紙に指をさす。

他の皆が何をしているかは知らないが、俺はおっさんの喫茶店でバイトする、という形に落ち着いた。

いや、まぁ、言ってしまえばバイトではなく店員として働いているのだが。いつも働いている訳ではないので、こういった表現は正しいと言える。

 

因みにリアルでも修復屋は健在だ。スキルが無いと直せないのでは?なんて事にはならない。

自慢ではないが、親譲りの“修復スキル”は元より高いもの。それは衰えるばかりかレベルアップしてるんだよな。

 

 

「んで、何の用だよ?アンタが手ぶらで来るなんて事は無いだろ。」

 

取り敢えず、触れておくべき事はこれぐらいか。まだ疑問があったら言ってくれ。

さてさて、取り敢えず俺は茅場さんにジト目を向けておく。

どうせ面倒くさい用事、という事はわかってる。もう諦めた。

 

 

「……今、約300人のSAOプレイヤーが、まだ目覚めていない。これは知っているかね?」

「勿論。……その中に、アスナが入ってることもな。」

 

そうだ。あれから2ヶ月が経っているにも関わらず、まだ目覚めていない人たちがいる。その中には、“閃光”として名を馳せたアスナも。キリト……いや、和人が悔しそうに嘆いていた。

……ああ、成る程。()()()()()()()

 

 

「察しがいいな。まぁ、なんだ。どうやら僕の後輩が色々やっているみたいでね。

どうだい?お姫様を助けてみたくないか?」

「……それ、俺じゃなくてアイツに言えよ。」

「もう言ったよ?」

 

なんで俺にも言うんだよ……俺にはアイツらが居ると知っててか?

でも残念。手助けするつもりはないね。尚更やる訳にはいかねぇのサ。

 

 

「そういうのは、勇者がやるもんだ。俺みたいな弱っちい奴がやる事じゃない。

……代わりと言うのはどうだが…木綿季と藍子に頼んんでおく。それでいいだろ。」

「流石、“気怠げな修復屋”と言われていた事はあるな。」

「それ言ってんのアンタだけだからな?」

 

なんだよ、気怠げな修復屋って。ネーミングセンス皆無かよ。

……まぁいいや。取り敢えず、アイツらに頼んでおきますか。

俺はアイツについて行かない。これだけは定義しておこう。

 

 

「じゃあ、そろそろ行くよ。お金、ここに。

マスター。こんなツンデレで目つきが悪いウィルですが、どうかよろしくお願いします。」

「おう。コイツの扱い方はもう完璧だぜ。」

「最後の最後でやめてくれよぉ!?」

 

何なのこの人達。ツンデレとか馬鹿じゃねぇの?……馬鹿じゃねぇの?

つーか、エギルさんや。アンタも乗るなよ。何が完璧だよ。マニュアルでも読みやがったかクソ店主。

 

 

「……はぁ。溜息しか出ねぇな。あ、おっさん。電話していいか?」

「おう。……ホントに手伝わねぇのか?」

「ん?んー……まぁ、そうとも言うし、そうじゃないとも言えるね。」

「?」

 

まぁ、そういうことよ。ついていかない事は確かさ。

ただ、それだけだ。取り敢えずアイツらに電話しておこうか。あと和人にも。

 

 

「──もしもし?ちょっと頼みたいことがあってさ────」

 

さて。俺も準備しますかね。




須郷ってフェアリー・ダンス編の最後に何したっけ?(大ヒント)

って事を踏まえておきましょう。ウィルのしようとしている事が分かります。


フツーに修復屋の仕事を待っていた方。もう少しだけお待ちを。
あと1話が終わったら、すぐにそっち方面の話に移ります。

それまで、少々お待ちください。




感想・評価、くれてもいいんだぜ……?(うるうる)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

妖精の都

お久ですね(諦観)
久々の投稿ですまないですが。恐らく、いや、間違いなく亀更新になります

期待して待ってくださった方、すいません、ホリゾンタル(ちょっと待て)


「……今日もいい天気だなー」

 

 

こうやって空を見るのは、そういえばSAO以来か。

あのオールドマンに勧められて泣く泣く貯金を崩すこと。まぁー、悪くないな。

……おっと、こんな所でのんびりしていてはダメか。開店祝いにアイツらが来るんだよな。

 

さて、準備しますか。今日はあの双子もアイツらと来る予定だし。早くしよう。

 

 

「えぇと、これはここで………アレ、何処に閉まってたっけ。アレェ………?」

 

 

試行錯誤しながらストレージ満タンの荷物を解いていく。いや、収まってはいないんだけど。

持っているもの全て片付ければ、玄関付近に置いてあるチェストからまたストレージをいっぱいにする。

 

そうすること10分。意外にも早く終わった。

 

 

「いや早過ぎたわ。アイツら来んの、あと30分もあるじゃんか」

 

 

しまったなぁ、フツーに時間配分ミスった。現実と混同しすぎたか?最近VRやってなかったからなぁ………

……自分の武器の手入れでもしようか。ついでに、()()()()()をお客さん方に教えよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在、2025年8月。あの事件から、半年以上が経過した。

 

鍍金の勇者は各地で様々な妖精と出会った。

風を統べる、シルフ。

動物との親交、ケットシー。

双子の絶対、インプ。

焔の如く、サラマンダー。……などなど。

 

時に焔の妖精と戦い、時に猫と風の妖精の力を借りて。そして世界樹を登った先には、どこまでも謎の機械が広がる不気味な研究施設。

それらの機械の中で眠るのは、300人程の人間。──SAOクリア後、意識不明だった人達。

進みに進めば、遠くに檻が見え、居たのは探し求めていたお姫様。

 

しかし、それで感動の再会とはならない。泥棒の王の誕生だ。

 

 

「………泥棒の王は()から奪った力で勇者を虐めました」

 

 

あまりにも巨大すぎた力は、勇者の心を泥に溺れさせました。勇者は負けそうになったのです。

そう、負けそうになった。勇者は、主人公は負けない。彼に助けの手が差し伸べられた。

 

かつて魔王だった力を使い、見事彼は姫を檻から救ったのでした。

 

 

「因みに、勇者はその日の夜の内に病院に向かったそうだが、そこには泥棒の王が倒れていたんだと。さて、誰がやったのやら。……フフフ」

 

 

現実では、非力だったな。まぁ、泥棒なのだから。奪うことしか出来なかった奴に勝つのは意外と容易いものだ。あ、これ独り言なので。ハイ。

まぁまぁ、勇者の伝説は、これで終了。姫を救ったと同時に、彼等の役目は終わったのだ。

………保険はあるけどね。1人ぐらい、あの世界の思い出を残していてもいいだろう。

 

 

 

 

 

「こんにちはー………あ!兄ちゃん、おはよー!」

「お、来たか。………んあ?正反対な姉はどこ行った?」

「正反t………お姉ちゃんは予定通り、キリト達と来るよ。用事があるんだって。というか、ボクが早く来るなんて言ってないはずだけど?」

「お前の性格を考えたら分かる」

「えへへ」

 

 

全く………まぁいい。丁度、終わったからな。折角早く来てもらったんだ、手伝いでもさせるか。

かと言って、料理は既に終えてるし。他にやる事つってもなぁ………あ。

 

 

「なぁ。手伝いとかいいからさ、お前の剣。俺に見せろ」

「手伝うとか言ってないんだけど………で、ボクの剣?何で?」

 

 

おいおい、修復屋の俺に言うのかよ?

俺がそんな事を言うなら、何をするかなんて決まってるでしょーが。

 

 

 

 

 

「流石に、完璧に直せる奴は此処に居ねぇだろ?俺が新品同然に治してやるよ」

 

 

修復屋の、妖精郷での最初の仕事だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

 

さぁ、始めよう。

メニュー欄を開いて、“スキル”から“修復”をタップ。右手に緑の色、そして熱が宿る。

あぁ……この温かさ。懐かしい。半年しか、いや、半年も経っているのだ。こう感じるのも仕方ないかな。

加えて、あそこと全く同じ作業場。自然と笑顔が浮かんでくる。

 

 

「……ふぅー………」

 

 

懐かしさを感じるのはここまで。ゆっくりと、刃に触れる。

撫でるように、慰めるように、励ますように。ゆっくりと、ゆっくりと。

 

 

「頑張れよ、アイツについていくのは大変だろうけどさ。でも、お前は良い持ち主に恵まれたよ」

 

 

目を凝らさないと見えないが、無数の傷がついていた。

これは、良いプレイヤーが使っている証。ここまでSAOに似せてくるか。アイツらがこの世界を気にいるのも、似てなくて似ているからなんだろうな。

っと。話が逸れた。

 

 

「疲れたら此処に連れてもらって来い。俺が何度でも治してやるから」

 

 

その前に折れんなよ、なんて言葉も付け加えて。

光が一瞬強く光ったと思ったら、それは新品のように淡い紫色の光を纏っていた。

銘は、【絶剣マクアフィテル】。ホントに良い剣だよ、コイツは。

 

 

「………うん。完了だ」

 

 

何度か剣を振って手心地を確認。意外と重かったのは余談。

剣を鞘に入れて、作業場を後にする。

 

 

「おーい、修復終わったぞ───」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「ホワイト、ALOにようこそー!!!」」」

「───え?」

 

 

なんとビックリ。戻ってみれば、アイツら──キリト達が居るではないか。

これは………ふと剣の持ち主──ユウキの方へと顔を向ければ、やけににやけた顔をしてる彼女と、その姉──ランが居た。

 

 

「サプライズだよ、ウィルさん……いや、ホワイトさん」

「どう?驚いた?こういうの好きでしょ?」

「………生意気な双子どもめ」

「「んなぁ!?」」

 

 

全く、怠いことしやがって。照れ隠しに髪の毛をグシャグシャにしたけど、やっぱ照れ隠しにしか見えないよな。

あぁ、嬉しい。ありがとうよ、ラン、ユウキ。

 

 

「さぁさぁ、イチャイチャしてないでこっちに来なさいな!」

「ほらほら、こっちに来てください!」

「うぉ?おおお?」

 

 

リズとシリカに腕を引かれ、強引に前に連れ出される。

おいおい……こんな事はしないって言ったのに………はぁ。

ま、今日ぐらい、はっちゃけてみても構わんか。

 

 

 

 

 

「………あー、主役のホワイトだ。言う事なんてホントは無かったんだけど………まぁ、話させてもらうよ。…ここまで長かったなぁ。ホントに色々あった。特にキリトとアスナは厄介ごとに巻き込まれてさ。全然関与してない俺が言うのも、んで半年経った今で何を言うか、だけど。敢えて言わせてもらう。…お疲れ様」

「ハハッ、主役が労ってどうするんだよ」

「私達の事は大丈夫。でも、ありがとう」

「…うん。元気そうで何より。で、肝心の俺の事だけど、さ。別に何も言う事がないってさっき言ったからさ。一言だけ言わせてもらうよ」

 

 

目を閉じ、あの世界を思い出す。

 

色々あった。たくさん死んで、たくさん生き残った。

これからは死人なんて出ない。でも、胸に留めておく。

アイツだってそうだ。俺たちの中に足を踏み入れた。だけど、それでも忘れちゃいけない。

 

“ホワイト”の仕事は終わり?何を言ってるのやら。

これからだ。俺の物語は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───これからも、修復屋は平常運転だ。武器も心も、いつでも癒してやる」

 

 

気怠げな修復屋の話は、ここから始まる。




知ってるか?これって最終回じゃないんだぜ()
というわけで、ALO編、本格的に開始です。ごゆっくりとどうぞ

たまーに更新するぜぶるぅああって感じです
なんて、自分では決められなーいのデス。アンケートよろしくぅデスぅ


では、またのご来店、お待ちしております


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。