紅いイレギュラーハンターを目指して 旧話置き場 (ハツガツオ)
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紅いイレギュラーハンターを目指して
旧一話  きみは、ゆくえふめいになっていたレイじゃないか!!


ボツの理由:全体的に雑すぎたことや、戦闘シーンがちょっと少なかった。


お久しぶりです。私生活が修羅場な為に、かなりの時間がかかってしまいました。おのれ実験レポートめ!! 


ざっくりとした幼少期編のあらすじ

怪我の影響か、自身の前世の記憶を思い出した名も無き少年。彼はドルド夫妻に引き取られ、レイという名前を貰う。そして自身の身を守る為に自分の好きなキャラクター『ゼロ』を目指して修行を開始したのは良いものの、魔法弾(バスター)に苦戦し、魔法刀(セイバー)に苦労し、友達は作れず、果てには言語補正による勘違いの影響で、父親の友人である騎士ハクランから『ハクラン式マナリア騎士団訓練キャンプ~並の騎士はグロッキー不可避な特別仕様~』というどこぞの鬼軍曹の様な修行を三年間受ける羽目になった結果、(その年齢にしては)チート染みた強さに。
さらに、それを手紙で知った師の友人がココス村を訪問。その人の息子から魔法剣を教わったり、模擬戦やったり、友達になったり、魔法刀を成功させたり、野生のゴーレムにゼロばりの剣戟を喰らわせたりした後、互いの目標を目指して別れる。

本編はその七年後からスタート。


汗を拭いながら、部屋の中を見渡す。入った時に感じた埃っぽさは無くなり、床にも壁にも汚れ一つとして見当たらない。ベッドと壁の間や机の置いてある隅も勿論の事、小さな台所もピカピカだ。窓も薄く汚れていたものの、今では本来の透明さを取り戻し、外部から照らされる光を余すことなく部屋に伝えていた。それこそ

新品同然のように――正直言って、やりすぎである。

 だが彼からすればこれ位やって当然だと思っている。これからはこの部屋で生活するのだ。なら、少しの汚れも無い方が気持ち良いに決まっていると思われる。

 ほぼ新室同然となった部屋を満足そうに見渡した後、掃除道具を片付ける。部屋の換気を行うために窓を開けると、外に植えられていたサクラのが映り、昼過ぎの暖かい日の光が部屋に入ってきた。

 

――この分では、明日の入学式は問題無いようですね。

 

 そう顔を綻ばせた後、次は荷物の整理を行おうと隅に避難してあった自身の荷物を部屋の中央へと持っていく。最初は本からにしますか、そう思って紐を解いた。瞬間、少し強めの風が吹き、本のページを捲って中に挟み込んであったのだろう一つの少し古びた便箋を床の上へと晒した。風が捲ったのは自身の日記、飛ばしたのは友からの手紙、その最初のもの。思い出として大切に保管してあったのだが、まさか風が吹くとは思っても居なかった。

 次の風によって飛ばされる前に慌てて回収した後、便箋の隅に視線が行く。文字は薄くなってはいるものの、そこには自身の大切な友の名前が記されていた。

 

「……あれから七年、ですか」

 

 部屋の中で懐かしそうに、彼――オーウェンは呟いた。

 当時の事は今でも鮮明に覚えている。模擬戦を行った事、共に鍛錬を積んだ事、そして助けられた事。期間にして一ヵ月に満たない短さではあったものの、確かに自分はあの少年と友情を育んだのだ。無口で感情が乏しいものの、仲間を助けるためなら一人でも強敵に立ち向かえる強さを持つ人物。そんな友と互いの目標に向けての約束を交わした事も。 

 

 そして彼は自身の目標に辿り着いた。王都に戻ってからは、今まで以上に鍛錬を積んだ。自身と渡り合える友人に負けたくない、守る側でありながら守られてしまった、そうならない為にも今よりも強くなりたい。それらの思いを胸にして只管にこなし続けた。只でさえ同僚よりも多かった訓練量はさらに増え、人一倍取り組み弛まぬ努力を重ねた。

 その結果、オーウェンの腕前は国内でも屈指の強さを誇るほどになった。この事に関して自身は友に感謝している。彼の存在があったからこそ、今の自分があるのだから。

 

 しかしその友とはここ数年連絡を取っていなかった。というのも、あまりにも忙しかった為に手紙を送る暇も無かったのだ。どうやらそれは向こうも同じだったらしく、最初の一~三年は送られて来てはいたものの、四年前近くに最後のそれを受け取って以来さっぱりだった。忘れられた……という訳では無いはずだ。彼はそういう人間では無いと自分は思っている。そう信じたい。というかそうであってほしい。

 だからこそ、相手は今どうしているのかは分からない。目標であったマナリア魔法学院に入学できたのかどうかすらも。だと言うのに……

 

「私が学院に入学するってどんな皮肉でしょうか……」

 

 何とも言えないような顔で言葉を漏らす。そう、オーウェンがいるのはマナリア魔法学院、その男子寮の二階の自室。今は部屋の掃除の為に動きやすい青いジャージ姿に着替えてはいるものの、制服は一式所持している。――つまるところ、入学式を明日に控えた新入生なのだ。

 

 もちろんオーウェンは魔法を学ぶために学院に来たのではない。明日からは学生の肩書を持つことになるとは言え、本職は騎士である為今更魔導士を目指そうとしている訳でも無い。

 では何故彼が魔法学校に居るのか? 理由はとある人物の護衛の為である。対象の人物は王国の重要人物。その護衛騎士として、対象を守れる一定水準以上の強さ、護衛対象と年齢が近い、尚且つ家柄も申し分ないという条件の元で自身に白羽の矢が当たったのだ。

 ちなみにだが、対象の人物とは既に顔合わせは済ましてはいる。……初対面でいきなり友達になってと言われた時は驚いたが。しかも自分が七年前の模擬戦後に言ったあの時の事を思い出して顔を押さえて蹲ってしまうという、初日……というか顔合わせの時点で醜態を晒してしまうという事態に。おかげで護衛対象とその場に居合わせた騎士団長からはコイツ大丈夫か? という若干不安な目で見られてしまったのは思い出したくも無い事である。

 

 閑話休題 

 

 手紙の人物が入学したのかどうかは分からない。他の生徒から情報を得るという手もあるが、入学式の前日で忙しいと思えるこの状況だ。そこで態々時間を割いてもらうというのも気が引ける。それに今その事を気にしても仕方ないとも言えるだろう。頭からは離れないものの、いくら考えたところで友人の現在が分かる訳でも無いし、どうにかできる訳でも無い。出来たとしても、後日手紙を送る事位なものだ。なら、目の前の事を片付けるしかない。ため息を吐きながら頭を切り替えた彼は、荷物の整理に取りかかる。

 荷物自体はそこまで多くは無い。自宅から持ってきたのは書物は日記や兵法書、後はとある武器マニアの無限の剣拓氏監修の「全空武器名鑑」等。衣服の方も最低限のものである為に、部屋に備え付けのタンスに収納し、整理が終わるのには三十分とかからなかった。

 作業が終わった後、椅子に腰かけて一息つく。とりあえず一通りの作業は終わった。なら次にするべきことは……。

 

「……どうしましょうか」

 

 やる事が無い。既に取り組むべき事は終わってしまった。

 明日の入学式の準備を行う……とは言っても、持ち物は然程必要無い。精々が自身の武器位だ。兵法書等を読むという手もある。しかし、それを行ってしまえば今後読む物に困るという事態が容易に想像できる為に中々踏み出せない。別の物を買うというのも荷物が増えるばかりであまり宜しくは無い。

 なら護衛対象の手伝いでもすればいいと思うだろう。無論彼もその考えはあったし、すぐにでも行動に移そうとも考えていた。対象が()()()()()()()

 

 そう、護衛人物は(異性)――つまり女性なのである。

 

 当然の事ながら、男子が女子寮に向かうのは校則で禁止されている。逆もまたしかりである。もっとも、仮に校則で問題無しとされていたとしても、常識的に考えても向かうのは憚られる。いくら自身が護衛騎士の任を与えられているとはいえ、女性の部屋に踏み込むのも考え物だ。

 だがしかし、やる事が無いというのもまた事実。自身の性分からして時間を無駄にするのは、あまり好まない。隣人への挨拶も考えたが、どうやらまだ部屋の整理が片付いていないらしく両隣の壁から作業音のようなものが聞こえていた。その事から後回しにしても問題無いと思える。

 なら、残りの選択肢は鍛錬のみ。いついかなる時にも対処が出来るよう、己の腕を錆びつかせないようにする。しかし今の時間帯に、寮の前でやるのは邪魔にしかならない。となると、ここから一番近い第一演習場なら大丈夫だろう。そう考えて寮から少し離れた第一演習場へと足を運んだのだった。

 

◇    ◇    ◇

 

 オーウェンが演習場へと向かってから数分後、赤いジャージ姿の人物が彼の部屋の前に現れた。恐らくその部屋の主に用事があるのだろう、その人物は三回ほどドアをノックをする。が、当然ながら返事は無い。当の本人は入れ違いで寮から出て行ってしまったのだから。そんな事を知るはずもない彼は、何の反応も無いことに頭を掻く。

 

「今は居ないのか……」

 

 この人物、少し時間はかかったものの部屋の掃除や荷物の整理が終わった為に隣人への挨拶にでもと向かったのだが、まさかの不在。しかも自室の配置の関係上、隣人はこの部屋の主しか居なかった。となると、挨拶は後にするしかない。己の考えに結論付けた後、仕方なく別の行動に移す事にした。

 

(……鍛錬しに演習場にでも行くか)

 

 確かあそこは入学式前でも使えた……はずだ。微妙に記憶があやふやではあったが、すぐに行動に移すべく自身の得物を取りに部屋へと戻った。

 

◇    ◇    ◇

 

 寮を出てから歩き続けること十数分。最初は小さいシルエットだったが、歩を進める毎に次第に大きくなり、数分後には非常に大きな建物となって目の前に現れた。マナリア魔法学院には幾つかの演習場があり、第一演習場はその一つ。主に屋外での魔法実習を行う場所だ。

外観を少しの間眺め、いざ内部へ進まんと歩を進めた瞬間――。

 

「う、うわぁああああ!?」

「何ッ!?」

 

 突如として聞こえた悲鳴。オーウェンは急いで内部へと走って向かう。距離はそこまで遠くない。その証拠に、十数秒程度で中に到着する事が出来た。

 向かった先で彼が辺りを見回すと、天井の無い広いフィールドの隅で牙を見せて唸っている獣や蛇が融合したような魔物――マンティコアと、尻餅をついている服装からして新入生であろう三人の生徒達だった。

 

「あ、あぁ……ぁぁあ……」

「だ、誰か……」

「ひぇぇぇ……」

 

 恐怖のあまりか、魔法を発動するという考えが出ないのだろう。その場で身を寄せて震えているばかりだ。マンティコアはそんな事はお構いなしに、生徒達へと牙を向ける。

 このままでは不味い!! 彼は生徒達の元へ走ると共に腰に装備していた剣――ソード・オブ・ソーサリーを抜刀。水魔法を発動し、剣に水を纏わせた状態でマンティコアへ飛び掛かり、剣を振り下ろす。

 

「チェストォ――!!」

「グァッ!?」

 

 第三者の介入は頭に無かったのか、避けられる事も無く右の脇腹を斬り裂く。が、蛇の鱗に防がれたのだろうか、深い傷を負わせる事は出来なかった。傷を負ったマンティコアはバックステップで数メートル先へと下がり、こちらの様子を伺うかのように姿勢を低くして唸り声を上げていた。それに伴い、自身も剣を構えて生徒達の前に立ちふさがる。

 生徒達の方を見ると、恐怖の対象が遠ざかった事や助かった事で緊張が解けたのか、その場で放心していた。しかし、三人共怪我も無く無事の様だ。その事に安堵しつつ状況確認の為にも言葉を投げかける。

 

「皆様、お怪我はありませんか?」

「あ、ああ。助かったよ……」

「しかし、何故この様な状況に……? 少なくとも学院には居るはずの無い魔物ですが……」

 

 そう聞くと、内の一人である男子生徒がマンティコアの側方向を指さす。目を向けると、そこには魔法陣が展開されていた。となると……

 

「まさか召喚魔法を……?」

 

 そう問うと、三人は頷いた。 ――召喚魔法。離れた場所に居る存在を呼び出す魔法。呼び出されるのは、小型の魔物から大型の魔物。極めれば、高位の存在とされるものまで呼び出せるとされる。しかし、扱うにはそれ相応の腕が要求される。必要な術式も高度な物が必要とされるだけでなく、相手が召喚に応じるとも限らない上に下手をすれば召喚に応じた存在に術者がやられてしまう可能性がある。その為、魔法の中でも高い難易度を誇るとされる。

恐らくだが、折角マナリアに入れて気分が高揚していたのだろう。難易度の高い魔法に挑もうと複雑な術を組もうとしたものの、そこは新入生。まだ習って居ないそれらの意味を理解せずに滅茶苦茶に組み合わせた結果、魔物の中でも強い部類に入るマンティコアを呼び出してしまったのだと思われる。唯一幸運だったのは、演習場に他の人物が居なかったことだ。もし多くの生徒がいる中で呼び出されていたら、被害が出ていただろう。

 いずれにせよ、早急に対処しなければならない。そう考えたオーウェンは、生徒達に避難を促した。

 

「貴方方は避難してください。奴の相手は私が致します」

「む、無茶だ! マンティコアはあんな強い魔物を一人で相手するっていうのか!?」

「ええ。ここで誰か倒さなければ、他の生徒に被害が出る可能性があります。それに私は騎士。戦闘には慣れておりますので問題ありません。さあ、急いでください!!」

 

 激を飛ばすと、生徒達は急いでこの場を離れようと慌てて走り出す。それを目前で見ていたマンティコアは、逃すまいと追いかけようとする。しかし、その前をオーウェンが立ちふさがった。

 

「お前の相手はこの私だ。さあ、掛かってくるがいい!!」

 

 その言葉を聞いたマンティコアは咆哮を上げて、彼へと飛び掛かって右前脚で爪を振り下ろす。オーウェンはそれを左に回避し、攻撃してきた足を斜めに斬り上げた。だがやはり普段よりも刃の通りが悪く、傷が浅い。恐らくマンティコアが蛇や山羊、獅子等様々な動物が融合して生まれた魔物の為に、それぞれの特性を得ている事が起因しているのだろう。実際、斬った部分は鱗に覆われていた。それだけでなく、様々な属性を内包している事を活かし、鱗を土の魔法で強化しているのだろう。敵との相性は悪いと言えよう。

 だが、そんな事は七年前のゴーレム戦で経験済みだ。属性の相性というのは覆しにくいというのは分かっている。なら、どうするべきか。後ろへ距離を取り、その答えを証明するかの様に、魔力を剣へと集中させる。

 

「スゥゥウウウ…………」

 

 呼吸と共にさらに濃密な水の魔力が剣を覆い始める。迸る魔力を薄く研ぐようなイメージの下に収束させた。形状は先ほどとは変わってはいない。

 マンティコアがこちらにダッシュして、突進を仕掛けてくる。彼はそれを躱し、すれ違いざまに横を一閃。水の刃が鱗を削り取り、深い斬り傷を負わせた。――これが彼の出した答えだ。属性の優劣を覆す方法。それは、さらに属性力を高める事で無理矢理打ち破るというものだ。一見脳筋にしか見えない方法だが、これは彼の剣技も相まって成せるものである。いくら属性力を高めたところで、腕が無ければ結果は同じである。

 今の攻撃で傷を負ったマンティコアは、痛みで顔を歪める。傷口からは血が滴り落ちている事から、深手を負わせられたと判断できる。

 しかし、向こうはまだ戦意は喪失していないらしい。その場で攻撃態勢を取り、オーウェンを唸りながら睨みつける。

 それに応えるように、彼も剣を構える。戦いはまだ続く、そう感じていたからだ。

 

 だがこの時オーウェンは気づいていなかった。魔法陣が未だ起動していたことに――。

 

◇    ◇    ◇

 

 場所は変わって演習所より数十メートル離れた先、先程オーウェンの部屋を訪れた人物が背中に武器を携えた状態で向かっていた。道の途中、三人の生徒達とすれ違う。その際、声を掛けた。

 

「おい、アンタ達。ちょっといいか?」

 

 その言葉に三人は足を止めてその人物へと振り返る。

 普段なら気に止める事はなかった。だが、何やらただ事じゃない雰囲気を纏っていた為に気になってしまったのだ。何か嫌な予感がすると。そして、三人から聞いた説明でその予感は的中する事となる。

 

「――マンティコアだと?」

「ああ。俺達が召喚魔法を発動して……それで襲われそうになった時、アイツが助けてくれて……俺達は先生を呼びに行くところで……」

「アイツ……?」

 

 マンティコア相手に一人で挑むとは、一体どんな奴なのだろうか。疑問が生じたので、とりあえず聞いてみると、次の言葉が返ってきた。

 

「多分同じ新入生だよ。先輩は入学式の前日だから、学院にはあまりいないだろうし……自らを騎士だって……」

「騎士? そいつは一体……?」

「さ、さあ。青いジャージで、魔法剣を使ってた位しか分からなかったけど……」

 

 それを聞いた瞬間、ある顔が思い浮かぶ。騎士に魔法剣……何でか知らないけど、あの子の顔が思い浮かぶんですが。そう思っていると、三人が聞き捨てならない事を言った。

 

「でも、大丈夫なのかな……。いくらあの人が騎士とは言っても、マンティコアを一人で……」

「だから急いで先生を呼びに行くんだろ! アイツ一人とか、無謀すぎる!!」

「ああ。もしかしたら、魔法陣から他の魔物が現れる可能性だって――」

 

 他の魔物……もし戦闘中、乱入されて注意が逸れたら……。そう考えた時には、既に走り出していた。

 

「あ、オイ!? 何処へ!?」

「情報提供感謝する! 今から俺もそいつの元へと向かう!!」

「はぁ!?」

 

 そう言い捨てた後、あっと言う間に姿は小さくなっていった。止めようとする暇も無く起きたいきなりの展開に、三人はその場で茫然とするしか無かった。

 

「い、一体何だったんだ……?」

「さあ……」

「変わった人だったのは確かだと思うよ。背中に刀背負ってたし」

「せ、背中に刀? 意味不明だな……――って、そうじゃない! 急がないと!!」

 

 三人は気を取り直して、職員室へと向かった。

 

◇    ◇    ◇

 

「グルオオッ!!」

「ぬん!」

 

 オーウェンは未だ、マンティコアと戦闘中だった。あれ以降学習したのか、彼を近づけないように尻尾の蛇による素早い連続攻撃と魔法による遠距離攻撃を主体に攻めていた。オーウェンはそれらの攻撃を剣でいなし、一つの場所に留まらないよう動き回る事で回避し、同時に相手の行動パターンを分析していた。いくらこちらを近づけさせないようにしようと、攻撃の繋ぎ目といった隙は存在するからである。そうやって躱し続けた結果――チャンスは到来した。

 近すぎず遠すぎずの位置。そして尚且つ、蛇を直線に射出して戻すのに時間がかかるであろう攻撃。

 

(ここで叩く!!)

 

 真っ直ぐに飛んできた蛇を、膝を曲げ、身を屈める事で避ける。そして曲げた際にかかった足への体重。それを活かして、地面を蹴って接近する。

 まさか避けられるとは思わなかったのだろう、マンティコアは一瞬焦った後に蛇を戻しながら魔法での迎撃を試みる。だが、それよりもオーウェンが接近する方が速かった。

 マンティコアの眼前で、そのまま剣を振り下ろそうとする。瞬間――嫌な予感を突如として察知した。それに従い、その場からすぐに離脱した。彼が離れたとほぼ同時に、さっきまで居た場所に火炎弾が着弾、床に炎が広がった。

 攻撃の飛んできた方向へと顔を向けると、そこには攻撃の主であろう新たな乱入者が魔法陣の下に居た。赤黒い甲殻を纏った竜のような魔物――フレイムドレイクである。その魔物は、まるで自分も参戦せんとばかりに、身体の溶岩を活性化させて威嚇している。

 

「ここに来て、二体目か……!!」

 

 思わず歯噛みする。どちらか一方ならば、問題無かった。だが、状況があまりにも悪い。前にはマンティコア、後ろにはフレイムドレイクと挟み撃ちの状況だ。加えて、両者ともに遠距離からの攻撃を所持している。迂闊に近づけば只の的にしかならない上に、片方の攻撃を回避したところでもう片方に狙われるのが見えている。位置を変える為に距離を取ったとしても結果は変わらない、もしくはまた同じ状況に持っていかれる可能性がある。

 戦況は一気に不利に持ってかれた。その事実に眉を潜めつつも、剣を構え直す。ここで諦めてしまえば、誰が止めると言うのだ。自分を鼓舞しながら二体の魔物を視界に納めようとする。

 二体の魔物が歩もうと足を踏み出した。

 

――刹那。二発の風属性の魔法弾、そして斬撃が入口より飛来。フレイムドレイクへと命中し、身体をのけ反らせた。

 

「今のは……」

 

 オーウェンが呟きながら、入口へと顔を向ける。それに伴って、魔物達も同じ行動を取る。この状況に水を差した、第三者の存在を確かめる為に。

 

 そこに居たのは、赤いジャージの一人の男子生徒だった。それを見た魔物達は、人間が一人増えた程度としか認識しなかった。が、オーウェンは彼を見た瞬間、目を見開いた。灰色に近い白髪に、鋭い緑の瞳。そして左手に持つのは、風を纏わせた刀。そう、彼は――、

 

「レイ……」

 

 オーウェンが呆けていると、レイは刀を収めて、オーウェンの元へと駆けつけた。

 

「久しぶりだな……だが、挨拶は後だ。先にこいつ等を片付けるぞ!」

 

 その言葉にハッと正気に戻る。そうだ、今は戦闘中だったのだ。呆けている場合では無い。意識を切り替え、正面にいるフレイムドレイクと対峙する。それを見たレイは、オーウェンと背中合わせになるように、マンティコアへと向き直った。

 

「マンティコアは俺が相手をしよう。そっちのコンディションは知らんが、行けるな?」

「勿論です。……レイ、疑うようで申し訳ないのですが、腕は落ちていませんよね? マンティコアは鱗が頑丈ですので……」 

「問題無い。だから、お前は相手に集中してろ」

「分かりました。では、そちらはお願いします!」

 

 そう言った後、オーウェンはフレイムドレイクへと疾走。それをマンティコアは逃さないと言うかのように歩を進めようとした。しかし、レイが足元に魔法弾を撃ちこむことで阻止する。

 

「――悪いが、お前の相手は俺だ」

 

 マンティコアの前へと立ちはだかり、右手を構えた。

 

 

 口から放たれる火炎弾を避けながら、オーウェンは距離を詰め、剣で斬りつける。その身を覆っている甲殻を貫き、吹き出す炎を水で鎮火させながらダメージを与えた。フレイムドレイクはその事に怒りながら、こちらへと火炎弾を連続で放ち続ける。彼はそれを避け、再び接近を試みる。そうはさせまいと、相手は尻尾による薙ぎ払いを繰り出してきた。

 

「くっ……!」

 

 剣で受け止め、後ろに後ずさる。フレイムドレイクはその隙を利用し、口元に炎を溜める。次第に大きくなったそれを塊に形成、口から放った。放たれた巨大な炎塊は、真っ直ぐにオーウェンへと飛んでいき、着弾。土煙を舞い上がらせた。これで終わりだろう、炎の竜はそう考えていた。

 

 しかし、煙からオーウェンが剣を構えて飛び出してきた。

 

 実は火炎弾が着弾する際、剣に纏わせている水を剣に収束させた状態から形を定めていない解放状態へと変化させて、ぶつけていた。その結果、多くの魔力を消費してところどころ焦げてはいたものの、ほぼ無傷で済んだのだ。

 慌てたフレイムドレイクは近寄らせんと、先ほどと同じように太い尾で右から薙ぎ払う。

 だが、それは先ほども見ている。オーウェンはそれを剣を斜めに構えて受けることで、斜め上へと受け流す。そのまま間合いを詰めて、懐へと潜り込む。そして自身の持つ魔力を剣へと流し、大量の流水を纏わせて、己の最強剣技を放つ。

 

「我が極技、お見せしよう! ――ミラージュブレイド!」

 

 斜めからの振り下ろし、そして横に一閃。これには堪らず、悲鳴を上げる。そして最後の一撃を繰り出そうとしたところで、フレイムドレイクはその巨体を後ろへと下がらせた。いくら一撃が強烈でも、直前に間合いを離せば隙が生まれると判断したからだ。

 だがその考えは甘い。彼の剣はそんな程度では躱せない。表面を覆う水によって間合いは変幻自在。「逃げ水」の名を冠するが如く、例え距離を離そうとも刃は届く。オーウェンはそのまま剣を地に沿わせるように、渾身の力で振り上げた。地面より水柱が噴き出し、炎の魔物へと迫る。フレイムドレイクはそれを防ごうとするも、間に合わずに真っ二つに両断された。

 

 

「オーウェンの方は終わったようだな……」

 

 相方の方を眺めながら呟いた言葉と共に、マンティコアは鋭い牙でレイを噛み砕こうと大きく口を広げながら接近。レイは地面を蹴り、上空へと跳躍する事で回避した。

 しかしそれは悪手と言えた。空中では身動きが取れない、出来る事はそのまま攻撃を受ける事か、上手く受け身を取る態勢を取るの二択だけだ。それを好機と捉えたマンティコアは、土魔法によって地面からエネルギーを噴出させた。このまま呑みこまれるが良いと。

 

――直後、マンティコアは目を見張った。

 

 エネルギーがレイへと迫るその最中、彼は空中で右足を曲げていた。そして何かを呟いた後――何も無い空中で、()()()()()()()()()()マンティコアの方向へと突如加速したのだ。

 この予想外の光景にマンティコアは驚愕した。何故翼を持たない奴が空中を駆けているのだ!? あまりの驚きに反応が遅れたが、すぐに冷静になって自らも敵に向かって

地面から跳ぶ。いくら空中で加速しようと、直線的である事に変わりはない。そう考えたからだ。相手を叩き落とそうと前足を振り被った。

 

 しかし、それはレイの狙いだった。こちらが空中に居る、かつ敵と一直線の位置に居る事。その状態でこそ繰り出せる、自身の最速最強の技があったからだ。

 背中の刀――始刀を抜いて両手に持ち、突きを放つように前へと構える。さらに、武器に風を集約して威力を高め、風魔法(ウインド)を後ろで唱える事で追い風にして加速。一気にマンティコアへと突き進む。その有様は――正に、風の矢。

 

「――旋牙突!!」

 

 自身を矢と化したその一撃は首元に命中。鱗を貫き肉を抉り、鮮血を噴出させて大きな風穴を開けた。いくら耐久力があっても、これだけの傷ならば耐え切れない。その一撃でマンティコアは絶命した。

 

 

 互いに魔物を倒し、無事を確認した事でホッと息をつく。そして、遅れながらの挨拶を交わした。

 

「七年振りですね、レイ」

「ああ、久しぶりだな。オーウェン」

 

 言葉を交わした後、二人はお互いにガッチリと握手をした。

 

◇    ◇    ◇

 

 行方不明になった覚えは無いぞ、俺は。

 

 あ、どうも皆さんお久しぶり。ゼロを目指して十年、ようやく入り口に立ったかもしれないレイです。ちなみに今は、魔物達との戦闘の後に駆けつけた先生達への説明やら何やらを終えたので、オーウェン君と一緒に話しながら寮に戻っている最中です。

 

「先程はありがとうございます。おかげで助かりました」

「気にするな。……しかし、まさかマナリアで再会するとは思ってもみなかったな」

「ええ、私もです。ここ数年間、お互いに連絡を取りあう事が出来ませんでしたからね」

「……スマン。ハクランさんとの修行や座学の勉強で少しの時間も惜しかったからな……」

 

 オーウェン君と約束を交わしたあの日から、ずっとマナリアに入る為の勉強をしていたのだ。あの後マナリア魔法学院について調べたのだが、試験には一般的な教養と魔法の知識を確かめる筆記試験と、自身の習得している魔法を試験官の前で披露する実技試験がある事を俺は知ったからだ。

 以前この世界の一般常識が多少あるとは言ったが、あくまで多少。当然ながら試験を突破するには全然足りない。加えて記憶喪失の影響なのか、マナリア王国の歴史はおろか、魔法史や全空史等も足りておらず、まるでお話にならない状態だった。そんな状態で七年間過ごしたところで、筆記で間違いなく落とされる。そう考えたため、本屋に勤めている父さんや駐屯所の人達にお世話になりながら、この七年間座学に()心血を注いでいたのだ。

 

 ……『も』とついている時点で、大半の人達は既に察しているだろう。はい、そうです。毎度お馴染みハクランさん、あの人からの修行も続行な上にレベルアップしました。具体例を挙げると、魔物の巣の中に放り込まれたり、飛んでくる矢を只管避け続けて機動力を鍛えたりとか。もはや常識? 何それ美味しいの? 状態である。しかも一部の訓練の為だけに、数か月間他の島に向かうという徹底ぶりとか……うん、馬鹿なんじゃないかな。というか馬鹿だろ。おかげで魔物はサーチアンドデストロイの精神が身体に染みついちまったよ。しかも魔物に対する恐怖とか自分の命云々は、この七年間でさっぱりと綺麗に吹き飛んだし。そんなん考えてる暇があるなら、さっさと敵を倒せという事だ。これで俺も戦闘用レプリロイドではなく、スーパーケルト人の仲間入りである。いやさ、座学に時間を割きたいから修行時間の調整お願いしますって言ったら、

 

『おう、分かった。ならよりハードな内容にして、他の空き時間を訓練に回せば問題無えな!!』

 

 って返されるって、誰が予想できると思うよ。思わず『違う、そうじゃない』って突っ込んじまったよ。師よ、誰が量を増やせと申しましたか。俺を殺す気なのですか。そして貴方の耳は節穴なのですか。

 それはともかくとして、何故そうしたのか。師であるあの人曰く『魔法の失敗とかで魔物が出現する事はあるんだぜ? それに只でさえ学校に居る間は鍛錬の量が減って腕が鈍る可能性があるんだ。今やれるだけやっときゃ、大抵の状況は問題無いと思ってな』との事。で、それを聞いて一理あると判断して受け続けたんだけど……まさか本当にあの人の言う通りになるとは思ってもいなかったわ。ちなみに一日の日程としては、

 

 朝方起床→鍛錬→朝飯→自主練(ラーニング技)→昼飯→訓練と勉強→晩飯→魔法の訓練→ゼロの技をノートに纏めたりして考える(勿論厳重に保管)→勉強→就寝

 

 この様なよく訓練された七年間を送って試験を受けた結果、一ヵ月前に合格通知が来たのである。成績はどうだったのかって? ……真ん中ぐらいだよ。筆記試験も難しかった上、特別地頭が良い訳でも無いし。実技は問題無かったけど。

しかしこの生活のおかげで、魔法刀が自在に扱えるようになり、マナリアに無事合格出来た(奇跡)だけでなく、ゼロのラーニング技を習得できたのだ。どれを習得したかは今すぐ言いたいところだが、また今度でいいだろう。尚今までのお礼として、故郷を発つ前にとある場所に手紙を送っておいたという事だけ付け足しておく。しかし……

 

「む? どうされましたか? そんなに私をジッと見て」

「……いや、しばらく見ない内に変わったなと思ってな」

「そう、でしょうか?」

 

 主に外見的な意味で。勿論、内面も以前より落ち着いているというのもあるが。あれだけ小さかった子が、今じゃこんなに立派になって……お兄さん嬉しいよ!! ……止めようこのノリは。お兄さんっていう年じゃねえし。けれども、成長を見て嬉しく思うのは本当なんだよな。こう、親が子の成長を見守るとかじゃないけど。そんな事を考えていると、彼が口を開いた。

 

「そう言う貴方の方も大分変わったように思えるのですが」

 

 まあね。こっちも身長伸びたりしてるし、戦闘スタイルも少し変わってからね。そう返すと、苦笑された。

 

「それらの事ではありませんよ。七年前より、表情が豊かになっている事です。

心構え等に変化は見られないようで、安心していますが」

 

 あ、それね。言語補正、もとい黙り癖と表情補正、そして勘違い。あれからどうにかしようと努力したんだよ。鏡の前で笑顔を作る練習したり、自分の部屋で会話の練習したりとか。何が悲しくてこんな事をやらなけりゃならんのじゃと思いつつ続けたら、以前より遥かにマシになった。例えるのなら、ロックマンゼロのゼロからロックマンXのゼロに進化した。あまり変わってねえじゃねえかとか、口調は諸にゼロじゃねえかという突っ込みは無しね。これでも大分苦労したのと、自分でもこの現象が一体何なのか良く分かって無いし。

 

 だが悲しい事に、勘違い。これだけは未だに起こる。いや、言語補正がマシになったおかげで前よりは少なくなったんだけど、それでも起こるんだわ。もうね、どうしようもないの。既に諦めてる。俺に出来る事は、これ以上起こさないように努める事しか無いの。既に起こってしまっている事は変えようが無いので、そのまま通す事にしたけど。勘違いの被害者である彼を騙すような事して申し訳ないが、俺はそう決めたのだ。

今のところ、特に悪い方向には作用してないし。

 とまあ色々述べたのだが、コレに気付かせてくれたのはオーウェン君がいたからこそだ。多分彼が居なかったら、間違いなくずっと気づかなかっただろうし。とにかくお礼を言わないとね。

 

「何、お前のおかげさ。俺が変わる事が出来たのは」

「私の……ですか? 何も大した事をした覚えは無いのですが……」

「お前が俺の友人になってくれた。その事はお前からすればそこまでの事じゃないかもしれん。だが、俺からすれば、間違いなく大きなことだ」

「……それはこちらもですよ。貴方と友になる事が出来たからこそ、私にも目標が出来たのですから」

「お互い様、ということか」

「ええ」

 

 そう言った後、二人で笑いあう。……うん、やっぱりめっさええ子や。そこは七年経っても変わって無いというのが分かる。あの頃だって普通に接してくれたし。話していても楽しいし。いやぁ、色々な事を語りたいですね~。互いに何をやっていたのかとか何があったとか。そう思っていると、向こうも同じことを考えたのだろうか。話を切り出してきた。

 

「何はともあれ、共に過ごせる事を喜ばしく思います。宜しければ、この後私の部屋に来ませんか? 積る話もありますでしょうし」

「いいのか?」

「はい。私も是非話したい事がありますので」

「……分かった。そうするとしよう」

 

 そう言った後、オーウェン君の部屋へと向かった。

 




Q.別にオーウェン一人でいけたんじゃね?
A.二人の活躍が見たかったからさ! 


補足説明

・ジャージ

『グラブルジャージ部っ』より。というか、マナリアの制服がリアルのそれとあまり変わらないなら、ジャージだってあるよねという判断で出しました。『蒼空の向こう側』でもパー様が着てたし。

・当作品のオーウェンについて

基本設定等はグラブル準拠ですが、友人が同級生という事が嬉しいのかそれともレイが関わったせいなのか、原作よりも少しはっちゃけている模様。
それと武器に関しては、覚醒時の立ち絵にて解放武器を構えていたのでそれに準ずる事にしました。分かりやすいし。

・マンティコアとフレイムドレイク

グラブルの属性試練の最終ウェーブにて待ち受けるボス。それぞれ土属性と火属性。しかしマンティコアはゲームの都合上、尻尾による攻撃と魔法しか使わない。おい、爪とか使えよ。勿体無いなので、肉弾戦も出来る仕様に。生息地? シラネ。
実を言うと、当初の予定では大量の魔物を相手にさせようと思っていました。しかし、最初からそんな世紀末な惨状にするのもあれだったので急遽変更に。

・旋牙突

ロックマンゼロ2において、ランクA以上でクワガスト・アンカトゥスが使用してくる技【スピニングブレード】をキャプチャーする事で習得するEXスキル。(EXスキルとは、ミッション終了後に確定するゼロのランクがAかSの時にボスを倒すと獲得する事の出来る特殊な技。簡単に言えば、Xシリーズのラーニング技と同じ)
走りながらセイバーを前に突きだす事で、突進の加速力が突きに加わり、通常のそれよりも増した威力となる。レイが使う場合は風魔法を追い風とする事で、威力をさらにアップさせる若干のアレンジが加わっている。

余談だが、次作に当たるゼロ3にも同じ様な技である【烈風撃】が存在する。が、その実態は旋牙突には無かった連続ヒット性能を付与という魔改造が施された、最早別物と言える技に。これとラスボスのノックバックを活かした通称飯屋いじめというものが一時期流行った。(ちなみに他の技や三段斬りでもいじめは可能)
尚、某明治剣客浪漫譚のとある人物の使用技と攻撃方法や名前が一部被っているが、それが元ネタなのかは定かでは無い。所謂公式のみぞ知るというやつである。


第一話を仕上げるのに一ヵ月近くかかってしまい、申し訳ありませんでした。平日はレポートの為に図書館に籠り、土日も課題で潰れるという散々な日が続いた為にこの様な事になってしまいました。私生活の方はこのまま変わらない為に、更新は早くても二週間に一本ぐらいになりそうです。ですが、書く意欲が無くなったという訳ではないので、ゆっくりとですが更新は続けていく予定です。

余談ですがサイゲよ、マナリアフレンズ放送とはグッジョブである。おかげでモチベーションが上がる事この上なしです。ただ時間が無いせいで、放送までに当作品が孤独の竜姫に入れるかどうかが物凄く怪しく感じるこの頃。


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旧第二話 姫様と騎士が並んだら結構絵になるよね

ボツの理由:初っぱなからギャグに走りすぎて、アンの自己紹介が目立ってないように感じたため。


前回までのあらすじ

レイとオーウェン、マナリアにて再会。その後、オーウェンの部屋にて語り合いを行った模様


朝日が昇り始めて薄暗いさが残り、大半の生徒達が未だベッドの中で微睡んでいるであろう時刻。相当の広さを誇るマナリア魔法学院のグラウンドにて二つの影が忙しく動き、静かなグラウンドでは鈍い金属音が鳴り響いていた。

 その二つの影の正体は、青と赤のジャージに身を包んだ男子生徒。片や青い意匠の施された剣、片や鈍い光を放つ銀色の刀身の刀を手に取っている。彼らは互いの獲物を以て、激しく鍔迫り合いを行っていた。

 

――まあ、その二人は俺とオーウェン君なんだけどね?

 

「ぜあああッ!!」

「なんの!!」

 

斜めに一閃。左上からの袈裟切りを仕掛けるも、彼の剣で受けられて右へと軌道を逸らされる。そしてがら空きとなったところへ、剣の柄での打撃を仕掛けてきた。

 直ぐさま右手を刀の持ち手部分から離し、腹部に当たる前に柄を握り込んで阻止する。……あっぶねぇ。ギリギリ間に合った。

 

 何が何だか分からないと思うから簡単に説明しよう。昨日あれからオーウェン君の部屋で七年間の近況報告会みたいなのをやってる最中、鍛錬とかの話しになったんだわ。

 で、そこで俺が座学をやってても、腕は落とさないように修行は続けてるって言った瞬間――

 

『では早速明日の朝より、共に鍛錬を行いませんか?』

 

 って、それはもう言うのが速かった。速さが足りないとかそんなレベルじゃなくて、最早未来視の如くこっちが言ってる最中に被せてきた。しかも前日だってのに、今すぐ俺はやれるぜみたいなオーラを醸し出しながら。遠足を翌日に控えた小学生かよって突っ込みたくなったわ。

 で、翌朝になって走り込みや素振りなどの基礎練が終わった後、こうしてやりあっている訳である。以上、説明終了。

 

 数秒の間膠着状態となったものの、オーウェン君が身体を反転させてその場から離れて仕切り直そうとする。

 しかしそこを逃すわけにはいかない。追撃として俺は刀を脇に構えて接近し、右からの横薙ぎを仕掛ける。これを彼は刀身で受け止めた。

 成る程、これも防ぐか。流石……と言いたいけど、まだ()()残っているんでね

――――!

 

「ハッオリャッ! ハットウッオリャ――ハァッ!!」

「ぐっ……!?」

 

 振り下ろし、斬り上げ、袈裟切り、大上段、斬り上げ、そして跳躍と同時の切り上げ――先の一発を含めた七連撃を間髪入れずに叩き込んだ。

 彼はその全ての斬撃を防ぐことは出来たものの、威力までは殺しきれずに数歩後ずさる。えぇ……(困惑)。

 

「なんという凄まじい連続攻撃……昨日もそうでしたが、以前よりも遙かに強くなっていますね」

「これを全部防いだお前も大概だと思うんだが……」 

 

 何で今の連撃――メシア乱舞を裁ききれるんですかねぇ……。確か七年前に乱舞擬きを繰り出した時も防いでなかったっけ、君。自分でいうのもなんだけど、これ結構防ぐの難しいと思うのよ。上下左右別々の方向から剣が飛んでくるし、防いでも腕の力とか足りなかったら剣が弾かれるし。

 原作の様な低空ジャンプとか防御不可の状態とかは流石に再現出来なかったけど、俺の中ではかなり強力な部類に入っている。あ、もちろんメシアもといオメガもオリジナルゼロだから、ゼロとしてカウントするからね?

 しかし威力の相殺はともかくこれを全段防ぎきるって……速度や精度も格段に上がっているというのに……ええぃ! マナリアの青い騎士は化け物か!! 防いでる間もカウンター狙ってるの見えてたし!! 当たり前だけど、この七年間で向こうもさらに強くなってるよ!!  ――でも、やっぱり……

 

「お前と打ち合うのは……楽しいな」 

「ええ、私も心が躍ります!!」

 

 そして互いに踏み込んでからの斬り合いが始まった。いやー、バトルジャンキーになったつもりはないし心はチキンだけども、友達と腕を競い合うってのは気持ちが良いものだね。

 

◇    ◇    ◇

 

 早朝の鍛錬が終わった後、俺達二人は制服に着替えて寮を出た。勝敗の方は想像にお任せします。

 これから入学式に参加するために会場である大講堂へと向かわなければならないのだが、その前に寄り道としてとある場所へと足を運んでいる最中である。

 理由としては、現在オーウェン君が受けている護衛任務。その対象である人物との待ち合わせだ。

 本来なら部外者に当たるであろう俺はいない方がいいと思ったのだが、相手に紹介したいので一緒に来て貰いたいとのこと。

 で、現在サクラの映える通りを突き進んで向かっている訳なんだが。

 

(たまに思うんだけどさ。この世界の服装ってどういう基準になってんの?)

 

 この世界に限ったものじゃないけれども、大概服装が謎。

 両親やココス村の人達は割と簡素な服装なものがほとんどだったから、そういうものだと考えてた。

 しかしハクランさんと共に他の島に向かった際、ビミョーに違う――というか、思いっきり違かった。具体的にはアウギュステでのふんどしとかユカタビラとか。

 それに今現在俺達が着ている制服もそうだ。ブレザーにワイシャツにズボンにネクタイと、ぶっちゃけ前世のそれとほとんど変わらなかったりする。正直な話、違和感満載である。服装の歴史とかは詳しくないからどうとも言えないし。

 いくら魔法や科学が入り交じっていたり、ヒューマン以外の種族がいたり、星晶獣というヤベー奴が存在する世界とはいえ、そこの部分はある程度の整合性があってもよかったんじゃないですかねぇ……。

 ちなみにズボンとネクタイの色は青、赤、緑の三色から自由に選択出来たので、迷わず赤を選択した。

 

 そんなどうでもいいことに思考を割いている間に目的地に到着したらしい。オーウェン君が目印であろう、周りよりも一際大きなサクラの木の前で足を止めた。ああ、もう着いちゃったのか……。

「ここが待ち合わせ場所なのですが……少し速かったようですね」

 

 そう呟きながら近くに立っている時計を見て呟いた。ほっ、良かった。

 なんで胸を撫で下ろしているのかだって? 察してくれ。緊張しているんだよ。だから服装に関することを考えて気を紛らわしていたんだ。

 

 しかし、護衛対象の人って一体どんな人物なのだろうか。一応オーウェン君からはある程度の情報は貰っているものの、分かっているのは天真爛漫な女性ということのみ。

 後は俺が勝手に予想をつけているのは、相当なお偉いさんの娘であることだけ。オーウェン君がその人のことを"あのお方"って言ってる位だから。……もしかして、この国の姫様とか? 生まれながらに膨大な魔力を宿していたとかの話を何処かで聞いた気がするし。国の騎士団から彼が駆り出されている程だし。

 いや、流石にそれは無いか。そんな物凄い立場の方に、俺なんぞの様な田舎育ちの一般庶民なんかを紹介するはずが無いだろう。いやまあ、だからと言って何処かの大臣の子供でも相当困るんですけども。騎士団関わってる時点で貴族なのは確定だろうけど。……そう考えると胃が痛くなりそうだ。主に不敬扱いされないかどうかで。

 心なしかキリキリと痛くなってきた腹部を摩ろうとした時、オーウェン君がこちらを向いて口を開いてきた。――顔は真剣そのもので。

 

「レイ、貴方に折り入って頼みがあります。」

「頼みだと?」 

「はい。……あのお方とご友人になって戴けないでしょうか」

「……何か込み入った事情があるらしいな」

 

 そう返すと、オーウェン君は首を縦に振った後に話し始めた。

 彼曰く、その方というのは立場の関係で生まれ育った場所からほとんど外に出たことが無いらしい。当たり前のことだが友達と呼べる存在すらおらず、寂しそうにしているのを何度も見かけたとか何とか。そのために同期として友達になってあげてほしいとのことだった。

 

「とりあえずいくつか質問をしたい。その相手というのは、全く外に出たことがないのか?」

「そうですね……恐らくですが片手で数える程、と言っていいでしょう」

「……言葉から察するに、相手は貴族なんだろう? 詳しくないからどうとも言えんが、他の貴族との繋がりはあるものなんじゃないのか?」

「残念ながら……。あの方には他にも()()()()がありまして、外部との関わりはほぼ無いとも取れる状況なのです。それにそのような関係が全うであると思えますか?」

「いいや、思えん」

 

 思えませんね。権力目当てで近づく輩がほとんどでしょうし。そうでなくとも立場諸々の事情とかで対等みたいな関係性を築くのは難しいと思う。良くても従者とかそんなん。

 こちらとしてはその人の地位や彼の言う()()()()というのはさっぱりだけども、多少の考えは思い浮かぶ。

 

「一部不明瞭ではあるものの、大体の内容は把握した。しかし俺でいいのか? お前の言うことに反するのを承知だが、俺は田舎育ちの平民な上に戦うこと以外には特に取り柄のない男だ。……愛想もかなりよくないし、言葉も荒かったりするしな」

「地味に気にしてたんですね……。それはともかくとしてですが、あの方は言葉遣い程度で癇癪を起こすような方ではないので大丈夫かと。それに私が貴方にこの話をしたのは、貴方の人柄を知っているからこそです。貴方なら、あの方を色眼鏡で見ないでしょうと思ったので」

 

 そんなことはないんじゃないかなぁー……。別に権力者だからってゴマを擦るような真似はしないけども、口調とか態度は結構無礼な方よ? いくら相手が気にしないって言っても、また別の問題になるだろうし。それに同い年でも立場が上だったら内心滅茶苦茶動揺したり、緊張したりするしね。……顔には出てない辺り、黙り癖様々と言えるけど。

 しかしオーウェン君がここまで真剣に話してくるからなぁー……。ただでさえ生真面目な子がさらに輪を掛けて言ってくるんだから、相当その人を思っているんだろうと判断できる。じゃなきゃここまでやらないだろうし。でもいくら彼の頼みでも、流石に俺には荷が重い気が……。

 

「頼めます……でしょうか?」

「ああ、俺でよければな」

 

 友達からの頼みには勝てなかったよ。即墜ちじゃないけど、返事は即座にでした。

 了承の意を返したら「ありがとうございます」と頭を下げられた。いや、あの、なんか罪悪感が凄いんですけども。やべぇ、今更になって大丈夫かどうかかなり不安になってきたぞ。と、とりあえず持ちこたえるためにも、他の情報を貰わねば。

 

「他に分かっていることは?」

「直にご本人に会って頂ければお分かりになるかと」

 

 何でそこで暈かすんですかねぇ……。そんなことを思った時、少し高めの元気な声が俺とオーウェン君の耳に飛び込んできた。

 

「――あ、いたいた!」

 

 声の方向に顔を向けると、新品の制服に身を包んだ一人の女子生徒が手を振りながら走ってきているのが目に映った。

 少したれ目で鮮やかな橙色の髪の毛を腰の辺りまで伸ばしており、笑顔が可愛らしい活発そうな女の子だった。もしかしてこの人かな?

 

「おはよう! 今日は待ちに待った入学式だね!!」 

「はい、おはようございます。お元気そうでなによりです、姫様。このオーウェン、今日という日を迎えられたことを大変喜ばしく思います!」

「あはは……。相変わらず堅いなぁ……」

 

 そう言って彼女は苦笑いする。うん、いいよねこういうの!! 姫様と騎士が並んでいるなんて、物凄く尊い光景――いや、ちょっと待て。今何つった。姫様って単語が聞こえた気がするが。もしかしてマナリア王国の王女様……いやいやいや、待て待て待て。まだ決まった訳じゃあないんだ。女の子の愛称みたいな感じで呼ぶことだってあるじゃないか!! よし、とりあえず、オーウェン君に確認しよう!!

 

「オーウェン、彼女が……?」

「ええ。この方が私が護衛を務めさせて頂くことになったお方。マナリア王国第一王女の――」

「アンだよ! よろしくね!!」

 

――アイエエエ!? 王女様!? 王女様ナンデ!? 

 

 おいちょっと待てェッ!! 何でそんな大物が魔法学院にいるんだよ!? いや、いても不思議じゃないかもしれんけども!! そもそもマナリア魔法学院は平民から貴族まで様々だってのも知ってるし!! だけどまさかのオーウェン君の護衛相手ですか!? こんなことってあんの!? もしかしてさっきちょろっと考えたのはフラグだったのか!? 俺フラグ建てちゃったの!? フラグ建築士の資格なんぞとった覚えはねえぞ!!

 ええい! う……うろたえるんじゃあないッ! ドイツ軍人……じゃない、ゼロの背中を追う者はうろたえないッ!! 顔にはおくびにも出してはならんのだァ――ッ!! 頼むから仕事してくれよ、黙り癖!! 今ここで発揮せずして、何処で役に立つ!! 

 

「……挨拶が遅れて申し訳ない、俺の名はレイ。同じ新入生としてよろしく頼む。あと言葉が荒いかもしれんが、そこはどうにもならん。勘弁してくれると有り難い」

「うん、よろしくね! 言葉遣いの方は気にしないから大丈夫だよ!!」

 

 そう言ってにこやかに返してくれた。ああ、良かった。とりあえず何も言われてないことから、顔には出すことだけは阻止出来たようだ。ナイスだ、黙り癖。お前の存在にこれほど感謝したことはない。あと、胃の痛み。さっきからキリキリと締め付けるような鈍痛が俺に冷静さを取り戻してくれた。そっちもグッジョブだ。

 

(しかし、まさかマナリアの王女様が護衛相手とはね……)

 

 内心で呟きつつオーウェン君の方を見る。新人でありながらこんな大役を振られるなんて……その成長ぶりにはお兄さん嬉しくなっちゃうよ!! ……止めよう、言ってて気持ち悪いわ。外見上は同い年なんだし。中身はカオスだけど。しかしこちらの事情など知ることの無い彼は、俺の視線に首を傾けていた。

 

「……その妙な視線は一体?」

「何、少し思うところがあっただけだ。悪い意味は無いから気にするな」

「は、はぁ……」

 

 何処か納得いかないような顔でオーウェン君は返す。その光景を見たアンさんが俺に声を掛けてきた。

 

「ねえねえ、レイってオーウェンと小さい頃からの友達なんだよね?」

「ん? ああ、そうだが……何故そのことを知っている?」

「オーウェンから何回か話を聞いてたんだ。七年前、ある村で出会った友達がいるって」

 

 そんなことを……。何というか、微妙にこそばゆいな。嬉しいんだけどもね。もしかしたらそういう話をしてあることが理由だったのかもね。初対面の相手よりはっていう理由で。

 

「ちなみにオーウェンからはなんて聞いてるんだ?」

「えーっとね……あまり喋らないし、表情の変化が少なくて、オーウェンと同じくらい強くて……」

 

 ふむふむ、傍からしたら大体間違ってないな。勘違いの方は修正不可能だから放置を決め込んでるから置いておくとしても。こちらとしては変人とか思われてなかったらいいわ。

 

「あと、ごくたまに高笑いすることがあるって」

「おいちょっと待て」

 

 今明らかに変人と間違われるであろう危険なワードがあったぞ。何話してるんだよオーウェン君は。

 反射的にオーウェン君の方へとジト目を向ける。対する彼の方は一体どうしたのかと言うように首をかしげていた。

 

「何か問題でも?」

「何か問題でも、じゃない。問題しかないだろう。お前は何を話しているんだ」

「当然ながらレイのことですよ。貴方のことをお伝えしようとすると、どうしても好ましく捉えることの出来ない部分が多くなってしまうのです。その為、少しでもマイナスのイメージを払拭出来たらと思い、愉快な一面をお伝えしたのですが……」

「愉快にも程があるだろうに……」

 

 思わず頭を抱えてしまう。

 うん、その気遣いはとても有り難いと思ってる。でもね、内容が内容なんだ。俺と君だけならともかくとして、第三者が耳にしたら頭の狂った男にしか聞こえないからね? 総合的に判断したら、普段黙っている癖に時折発狂したかのように笑う危ない奴にしか思えないよ。アウトだよ完全に。

 

「ま、まあ、いいんじゃないかな? オーウェンにだって悪気があったわけじゃ無いんだしさ。それに高笑い位誰だってしたい時はあると思うだろうから、気にしないでいいと思うよ?」

「フォローになっているのかそれは……」

 

 流石にメシア笑いを目の当たりにしたらドン引きすると思いますよ? それならやるなって話なんだろうけどさ。あと、高笑いがしたい時は誰にも無いと思います。悪の秘密結社とか悪の烙印を押されたロボット科学者でない限りは。具体的にはドクロマークが特徴的だったり、秘密基地が骸骨を模したものだったり、爆発した後に立ち上る煙が人間の頭骨の形だったりする変わった髪型の老人とか。

 

「それよりアンタは俺の話を聞いて変人だとは思わなかったのか? 今の話を他の奴が聞いたら、十人中十人が俺を危険人物(イレギュラー)として断定すると思うぞ」

「い、イレギュラー……? まあ、確かに今の内容だけだとね……。でもさ、話を聞くのと実際に会ってみるのとじゃ全然違うことだってあるよね? ほら、外見が途轍もなく強面な人でも話してみると物凄くいい人だったってこととか」

「……まあ、無いとは言えんだろうな」

「でしょ? それはレイに関しても同じだよ。思ったよりも口数は多いし、表情も割と変わったりしてるし。何より、いい人だって分かったからさ」

「……そこまで話していないのにか?」

「うん! さっきのオーウェンとのやり取りなんかも、それだけお互いに信頼してない限りはやらないものだし。それにこうやって普通に話してても、相手を悪くいうつもりは全然ないことが感じられるしね!!」

 

 そう言いながら満面の笑みで返してきた。

 人は外見に寄らず、か。というか、この短時間でよくそこまで見れたなこの人。観察眼というか人を見る目というか、その能力が半端ないわ。 

 心の中で感嘆していると、何かを思いついたかのように彼女が声を上げた。

 

「あ、そうだ! 私とも友達になってくれないかな? もちろん、レイがよければの話だけど」 

「俺としては何も問題はない。友人が出来るのは嬉しいことだからな」

「そっか! じゃあ、これからは友達だね!!」

「ああ」

 

 と、口では言ったものの内心ではかなりビクビクしている。俺なんかで本当にいいのかとか、色々な問題で。結構重荷すぎやしませんかねぇ……。しつこいと思われてるのは重々承知しているけども。

 

「ふふっ、じゃあこれで二人とも友達になれたわけだし大講堂に行こっか。そろそろ時間だし」

「二人……? オーウェンとも友達なのか?」

「はい、一応。……護衛騎士たる私には恐れ多いことですが」

「もー、そんなに堅くならなくていいって言うのにさー……」 

「それはなりません。以前も申し上げましたが、あくまで姫様と私は主と従者の関係で――」

「そうじゃなくて! 私はもっと砕けた感じで接してほしいの!! さっきのレイとのやり取りみたいに!!」

「いえ、ですが、それは……」

 

 絞り出すような声を出しつつ、オーウェン君は俺の方へと助けを求めるかのような視線を送った。ちょ、おま。ここで俺に振るのかよ。原因は俺かもしれないけど。……よし、なら助け船を出そうじゃないか。ただし、聞かれないように小声でだけど。

 

「(オーウェン、ここは彼女に従うしかないんじゃないか?)」

「(貴方までそれを仰るのですか!? 私がそんなことをすれば不敬にも程がありますよ!!)」

「(そうじゃない、俺が言いたいのは言葉を濁せという話だ。真っ向から否定すれば、望むような答えを得るまで食いついてくるぞ、この手合いは。だからどちらともとれるような回答を返せばいいだろう)」 

「(何で貴方がそんなことを知っているのかが非常に気になりますが……分かりました。助言感謝致します)」

 

 この後、オーウェン君はアンさんに「出来る限り善処を尽くします」と返した。それを聞いたアンさんは若干不満そうではあったものの、一応は納得するという形で収まった為に、全員で大講堂へと向かって入学式に参加したのだった。

 

 

おまけ

 

「あ、そういえばオーウェンにも黒歴史みたいなのあったよね」

「え」

「よし、今の話を詳しく聞かせてもらおうか」

「お待ち下さい姫様! それだけは何卒ご容赦を!!」

「そ、そこまでなの……?」

「何をやったんだお前は……」

 

 非常に気になったレイではあるものの、あまりの慌てっぷりから聞くに聞けないのであった。内容はそこまでではないのだが……。




ちょっと今回はやりたいネタが多すぎたためにギャグが七~八割となりました。前回との落差が激しすぎる部分があるかもしれないので、ご指摘があれば感想欄などにお願いします。

《補足説明》

※注意! 今更かもしれませんが、今回の補足説明にはロックマンゼロ3等のネタバレがあります! まだプレイしてない人や、興味を持ってこれからプレイする人は見ないことをおすすめします!!※




・オメガ

「我はメシアなり! ハァ――ハッハッハ!!」

ロックマンゼロ3の最終ステージにて待ち受けるラスボスであり、その正体は正真正銘のオリジナルゼロ。つまりは、プレイヤーが操作していたゼロは偽物とも言える。
しかし本物なのはあくまでレプリロイドとしてのボディそのものであり、心(魂)そのものは制作者がプログラムしたもの。要は身体は本物! 心は偽物! その名は……救世主『オメガ』!! というやつである。
原作の百年前に起こった『妖精戦争』。長きに渡る戦いを終わらせた為に、自らを救世主(メシア)と自称している。なお、CV諏訪部順一(グラブルの十天衆シエテの中の人)
本物の身体を使っているだけのことはあり、ゼロがこれまで使ってきたであろう技の数々を存分に振るってくる。例としてはX6の裂光覇やX5の滅閃光など。

しかし本性は悪そのもの。制作者からは『血に飢えた破壊神』と言われるように、破壊を楽しむ残虐な性格であり、ゼロの開発者が想像していた姿に近い。『妖精戦争』を終わらせた手段としても、破壊の限りを尽くした結果によるもの。オメガによる破壊活動の結果、地球上のレプリロイド約90%と人間約60%が死に絶えた。その後はエックスとゼロ(コピーボディ)によって活動停止(完全破壊には及ばず)させられ、宇宙船にオメガの制作者共々宇宙への追放となった。

普段の巨大な銀色の甲冑姿はパワーを押さえる拘束具の役割であり、耐久度もかなりのもの。攻撃能力もそれに劣らず(という設定)、正に難攻不落の要塞と言っていい。
実際、ゼロと何度も戦ったネオ・アルカディアの四天王達を拘束具の状態で再起不能に追い込んでいる。しかし、ダークエルフと呼ばれる存在を取り込むことでさらなるパワーアップを遂げることになる。

そして最終決戦。ゼロに敗れたオメガはダークエルフの力を使って回復を試みるも、駆けつけた四天王達によって邪魔された上、頼みの綱であるダークエルフも使用不可に。
オメガの制作者がゼロに向かって本物の身体が惜しくないのかと説得を試みるも、同じく駆けつけたエックスによる『大事なのは心なんだ』という言葉が後押しとなり、ゼロは破壊神としての自分に別れを告げることに。

……と、なったらよかったのだが、続編であるロックマンZXにてまさかの隠しボスとして再登場。超絶強化を果たされて、多くのプレイヤーを葬った。

ここまで書けば相当の強敵だと思うのだが、ハッキリ言って()()。それはもう、オリジナルとは何だったのかというレベルで。攻撃食らう度に怯むわ、攻撃頻度は少ないわ、制作者による『限界まで引き出せるようにしてやったまでだ』という名の弱体化と、枚挙に暇がない(ゲームバランスを考えれば仕方ないとはいえるが)。
しかし戦闘中のbgmは全シリーズ屈指の名曲とされており、サウンドトラックなどでもかなりの人気を誇っている。

そんな皆のメシアさんであるが、本作で言うメシア笑いとは戦闘開始前に叫ぶ冒頭の台詞から取ってきている。
ちなみに中の人がグラブルの天星剣王ではあるものの、それとはまた違った感じの声である為に気づかない人も多い。(時期的にはグラブル開始の約十年前近く。それでもその頃にはアニメ版Fate/stay nightのアーチャー役をやっていたため、知っている人は知っているだろう)
聞き比べてもらえれば、その違いがよく分かる。


・メシア乱舞

文中通り高速で相手を七回斬りつける技。初出はロックマンゼロ3のラスボスがEXスキルとして使用。こちらは予備動作無しの低空ジャンプで相手との距離を詰め、間合いに入った瞬間に発動。防御手段はこれを受けないことだけであり、迫られたら全段食らうことが確定する。たとえ攻撃を受けた後に発生する無敵時間中であっても、それすら貫通させて斬ってくる。
ダメージも中々のものであり、ハードモードでは即死が確定。通常プレイであっても、プレイヤーのライフゲージをこれだけで三分の一近く削ってくる。

初出のゼロ3では使用条件が一定以下の体力になったら解禁してくるという仕様なため、使用頻度はかなり少なめ。これらの事情から、プレイヤーによっては見たことがないという人もいるかもしれないと思われる。
しかし続編のZXにてメシアが隠しボスとして再登場。それに伴ってAIの変更、のけぞりや攻撃後の隙の激減、一部の技の強化やEXスキルの廃止に伴う通常技への移行などの魔改造によって、頻度の少なかった乱舞をガンガン使ってくることに。
これが本当にえげつなく、数多のプレイヤーからは非常に恐れられている。作者の実体験を挙げると、

・他の技でバトルフィールドの隅にまで誘導。回避不可の状況からステップ→乱舞のコンボを仕掛けてくる。

・技を食らってこちらが行動不能の無敵時間中にステップ。からの乱舞というコンボ紛いのことをやってのける。

・ステップを躱した――と思いきや、連続で繰り出してきたステップに引っかかり、乱舞を食らう。

・二連続ステップを警戒し、躱した後は流石に大丈夫――かと油断したら、三回目を即座に繰り出してくるというステップコンボを繰り出してくる。こんな技を繰り出しておいてどうやって避けろと言うんだ。

と、あまりの強さから権利元である『CAP○OM』の別作品『ストリート○ァイター』のコマンド技になぞらえて【瞬獄殺】と呼ばれることになったとか。
散々飯屋だのメシア(笑)だのと笑いものにしてきたプレイヤーに一泡吹かせたであろう技の一つ。


・アン

マナリアを代表する人物その一。内容的にも詳しい説明は次回以降。


・イレギュラー

元の意味では『不規則、不揃い、反則の』等といった意味を持つ。
しかしロックマンXシリーズでは『電子頭脳が故障などにより支障をきたし、人間や他のレプリロイド等に危害を加えるようになった存在』、ロックマンゼロシリーズでは『ネオ・アルカディアによって処分が確定されたレプリロイド達の総称』と意味合いが異なる。また、Xシリーズお馴染みのラスボスであるシグマからも『イレギュラーとは人間の言いなりとはならないレプリロイド』というような旨で言われていたりするために、定義が結構曖昧。
さらに、イレギュラーであっても思考回路が正常なもの、イレギュラーに生み出された生まれながらのイレギュラーであるもの、不当にイレギュラーとしてレッテルを張られたものなど様々である。そのことから、イレギュラー=悪と見なすのは非常に難しいと言える。もっとも、根っからの悪人は別としてだが。

この作品では主人公レイが度々イレギュラーという言葉を用いるが、ここでは他者に害意を及ぼすもの、誰がどう見ても危険な奴などの意味合いで使うことが多い。なお、本人は無意識な模様。


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旧第六話 異種族とのハーフはファンタジー世界では割といるもの

ボツ理由:前半はともかく、後半部分で話の主旨が微妙にブレてるように感じたため。


私生活がドタバタ過ぎて時間が全然取れませんでした。しかし極度のスローペースでも更新は続けていきます。
それとロックマンゼロ&ゼクスダブルヒーローコレクションが発売決定とのことで胸熱です。まあ、switchとかの媒体持ってないから買えないんだけどな(泣)!! 


前回までのあらすじ

新しく就任した生徒会長ハンナから早々に呼び出しを食らってしまったレイ。演習場でアスクラぶっぱしたのが原因かと内心ビクついていたものの、用件は風紀委員への誘いだった。
会長曰くその能力を見込んでのことだったが何で自分なんだと若干渋る。しかし迷った末に少しでも紅いハンターに近づけるのならと引き受けたのだった。






風紀委員の仕事は学内の見回りが大部分を占めている。魔物の出現時には現場へ対処へと向かい、生徒同士で諍いが合った場合には仲裁役として介入する場合もある。それ以外にもその名通り校内の風紀の乱れを生徒会と連携して取り締まったり、交流戦や学院祭のような大きなイベント中での警備等を請け負ったりする。生徒の安全を保証する立場である以上、仕事はキッチリと果たさなければならない。

 それは新米風紀委員であるレイも同様だ。所属して日が浅いとはいえ手を抜く事は絶対に許されない。学内で怪しい行動をしている人物はいないか、物陰のような人目の付きにくい場所に魔物が潜んでいないかと目を光らせながら放課後の校舎を見て回る。僅かな気の緩みは大事に至りそれが後々厄介な種となる、という有り難い教訓を初日からくどい程に受けていた。

 

「異常無し、か……」

 

 生徒達が行き交う通りを見渡しながら見回りの結果を整理する。魔物に対して警戒を高めているとはいえ、そうしょっちゅう問題が起こるわけでも無いらしい。現にレイが風紀委員に所属してから数日は経っているものの、その間にも特に大きな問題は起きていない。

 それはそれで詰まらないし張り合いが無いようにも感じるが、レイとて頻繁に事件の類いを欲する嗜好の持ち主では無い。何も騒ぎが起こらずに平和に学生生活を謳歌する。そして紅き英雄の技能をものにする。それらが出来るのなら何も言うことはない。

 この調子なら今日も早く上がれるかもな。委員会の仕事を終えた後の事を考えながら、次の場所へ向かおうと校舎の方へ歩を進める。――尤も、そういう時に限って厄介事は舞い込んでくるのだが。

 

 レイが校舎の中を進んでいる最中、突如凄まじい衝撃音と共に地面が揺れた。

 

「何だ……!?」

 

 何かが地面と衝突したような地響き。明らかな異常と取れるその音はここからそう遠くない場所から聞こえてきた。レイは直ぐさまその場所へと急ぐ。

 

「総員、拘束魔法を対象に発動! 奴の動きを封じるのだ!!」

「はっ! ――だ、駄目です! 力が強すぎて魔法が持ちこたえられません!!」

「ええい、ならば防壁を展開だ! 被害の拡大を何としても食い止めろ!!」

「了解!!」

 

 レイが向かうとそこではゴーレムが暴れ回っていた。ゴーレムの足下には拳の跡が刻まれ、委員長含む数名の同僚達が対処に当たっていた。

 

「むぅおおおおおっ!!」

 

 振り下ろされる拳が展開された防御魔法とぶつかり鈍い音が鳴り響く。しかもこのゴーレム、普段彼らがよく目にしている土塊から生み出された存在では無い。身体は騎空挺のように機械のパーツから構成されており、持ち合わせる頑丈さと剛力は土から出来たそれとは比べものにならない機械式のゴーレムだった。

 一見魔法学院には似つかわしくない存在にも感じるが、機械を魔法で制御するという魔法と科学が組み合わさった観点から一部の生徒や教師達が研究対象にしているというのをレイは聞いていた。

 だがそれが何故こうして暴れているのか。その要因を探ろうとレイは丁度近くにいた上級生の風紀委員へ声を掛ける。

 

「状況の確認を。一体何故この様な事態に」

「ああ、それについては……」

 

 レイの問いに対し上級生は背後の人物へと目をやった。その人物は眼鏡と白衣を纏ったハーヴィン族の男子生徒。この騒動の原因に心当たりがあるのか顔を青ざめさせている。

 

「ご、ごめんなさいぃぃ! まさかいきなり暴走するなんて想定外でしたぁぁああ!!」

「……何をやった」

「ど、動力炉を改良したんです。魔力の供給量を増やせば性能が向上すると思って……」

「動力炉だと?」

 

 レイが首を傾げると男子生徒は未だ暴れているゴーレムへと指をさした。騎士の甲冑を歪にしたかのような意匠の外見の機械人形。その胸部は不自然に膨らんでおり、丸みを帯びたような装甲で覆われていた。

 

 土塊のゴーレムと機械式のゴーレムとでは当然ながら身体の構造が大幅に異なる。

 前者では身体が土で構成されており、術者から分け与えられた魔力と大地に宿っている魔力を基に擬似的な魂が生成される。それによって意思を持たないものの術者の命令や与えられた使命に基づいて行動し、大地からの魔力補給によって生命を維持している。

 しかし機械式のゴーレムは違う。製作の際に擬似的な魂が生成されるという点は共通してはいるものの、その身を構成するのは騎空挺と同じ金属の部品群。内部にはエネルギーの代わりである魔力が通る配管等が張り巡らされている。

 そしてその魔力の供給源であるのが動力炉だ。人間でいう心臓に当たるこれが身体の中心部に位置しており、ここから配管を通して魔力が全身へと送られる。

 この男子生徒は機械式のゴーレムについて研究しており、その性能をもっと高めることは出来ないかと考えていた。そして思考を重ねた末、動力炉を改良して魔力の生成量や貯蔵量の増加を試みたという訳だ。しかしそれはゴーレムへ魔力の過剰供給を引き起こすこととなってしまい、現状の結果を招くこととなった。

 

「……どうやったら奴を止められる」

「恐らく動力炉をどうにかすれば収まるかと思います。元はと言えばそれを増やしたのが暴走の原因ですので。ただ、その部分の装甲をかなり頑丈にしてしまって……」

「よし! だったら魔法で破壊すれば――」

 

 そう言って上級生は魔法を発動しようとする。だがそれをハーヴィン族の生徒は慌てて制止した。

 

「だ、駄目ですよ! 動力炉には大量の魔力が溜っているんです! 傷でも付けてしまえば最悪ゴーレムそのものが爆発します!!」

「なっ!? だったらどうすれば……」

「……大変難しいですが、動力炉をそのまま取り出すしかないかと」

「取り出すって、暴走してるアイツからか!?」

 

 先輩風紀委員が叫び声を上げるが無理も無い。人一人は軽く潰せる豪腕を振り回してひっきりなしに暴れているのだ。そんな相手から暴走の原因となっている動力炉を傷つけずに取り除くなど無茶にも程がある。

 しかし悠長な事を言ってられないもまた事実。今は委員長達が防御魔法による陣を展開して何とか被害を広げぬようにしているが、それも何時まで持つか分からない。恐らく破られるのも時間の問題だ。

 

「分かった」

 

 それだけ言うとレイはゴーレムの居る方へと疾走した。

 

「あっ、おい待て新入り!!」

 

 後ろから上級生が引き留める声を上げるがレイの耳には届いていなかった。彼の意識は既に暴走したゴーレムのみへと注がれていた。

 応戦している委員長達へと次の一撃が放たれようとしている間際、レイは委員長達の頭上を飛び越す。そして刀を抜刀し、すれ違い様にゴーレムの腕を根元から切り飛ばした。

 ゴーレムが自分の腕を切り落としたレイへともう片方の腕で横殴りを仕掛けるが、彼はそれを着地と同時に飛び退いて回避する。 

 

「攻撃が止んだ……?」

「壊れたとか?」

「違う! 早く逃げるのだレイ君!!」

 

 いち早くレイの姿を捉えていた委員長が言葉を発するも、ゴーレムは既にレイを攻撃対象と見ていた。彼の姿を視界へと捉えたゴーレムは上空から鉄槌を振り抜く。地面と拳が衝突し、轟音と共に土が舞い上がった。

 しかしレイは拳が衝突するまえに背部へと跳躍して難を逃れていた。身体を翻しながら校舎の壁へと着地、壁を足場に踏み込んでがら空きの胴体へと距離を詰める。

 さらに拳を握り込んで魔力を集中させる。本来はアースクラッシュ習得に当たっての魔力による一部分のみ強化を、鋼の身体を打ち破るためにそれを攻撃用へと転じさせた。

 

「ハァッ!!」

 

 レイの放った拳が胸部へと命中する。ひしゃげる音と共に拳が鋼の装甲を貫き、その先に何か丸みを帯びた物体の存在を感じた。――コレが動力炉か。そのまま動力炉と思しき物体を掴み取り、力の限り引き抜く。コードや配管、内部装甲諸共引きずり出し、ゴーレムの身体を足場に蹴って地面へと降り立つ。

 制御コアを奪われたゴーレムはレイに掴みかかろうとした。――が、それよりも先に身体に限界が来てしまった。その手を伸ばしたところで魔力が切れて機能を停止し、その場に崩れ落ちた。

 ゴーレムの停止を確認したレイは委員長達へ振り返る。

 

「……無事ですか先輩方?」

「あ、ああ」

 

 レイが声を掛けるも今まで攻撃を防ぎ続けたせいか委員長達は大きく肩で息をしていた。しかしすぐに身体を起こしてレイへと向き直る。

 

「よくやってくれたレイ君。君のおかげで被害が広がる前に処理できた。ただ、状況が許さなかったとはいえ、独断専行は考え物であることは覚えておくように。無茶をする事が必ず良い結果へ繋がるとは限らないのだからな」

 

 レイが黙って頷くのを見た委員長は、柔らかい笑みを浮かべた。

 

「では事後処理は私たちがやっておこう。君は引き続き見回りをよろしく頼む」

 

 今後の活躍も期待しているよ。そう言って委員長はレイから動力炉を預かって他の委員達と事後処理を始めた。

――結構良い人だよな委員長。ただ、スキンヘッドにドラフ族の大柄なせいでどこぞのラスボス隊長を彷彿とさせるけど。声もそっくりだし。

 委員長に対して失礼な事を考えていると、背後から見知った声が聞こえてきた。

 

「うわぁー……また凄い事になってるなぁ……」

 

 アン達だった。レイは彼女達の元へと歩を進める。

 

「……お前らまで来たのか」 

「あ、レイ。いや、音楽塔に居たら物凄い音が聞こえてきたから何があったんだろうって。すれ違った人もゴーレムが何とかって言ってたからさ」

 

 まあ、もう解決しちゃってるみたいだけど。そうアンは言った。音楽塔はここからそう遠くない所に位置している。あれだけの震動と衝撃音だ、そこまで伝わっていても何ら不思議でも無い。それでも態々見に来る辺りが彼女達らしいが。

 レイは彼女の言葉にそうかと短く返した。

 

「それで、結局何があったの?」

「機械式のゴーレムが暴走、それを俺達風紀委員が鎮圧。そして原因は改良した動力炉による魔力の過剰供給……だ」

「物凄く簡潔な説明をありがとう……。でも動力炉の改良かー、魔力の供給量を増やすためにそうしたんだろうけど他にももっと方法があるんじゃないかな? ほら、魔力生成の時に生じる無駄な部分を再利用するとかさ。そうなるように術式を弄くれば総合的には供給量は上がるだろうし」

「改善案なら俺では無く当事者に提示してやれ。その方がお互いにとって有意義……」

 

 そこでレイはふとアンの後ろにいる人物に気づく。

 深みのある赤色の髪にドラフ族の象徴と取れる二対の角。しかしそれを否定するかのように彼女の背後で主張している緋色の翼と尻尾を携えた女子生徒だった。

 確か彼女は……。レイの視線を感じ取った女子生徒はハッとしたような顔となり、アンは得心がいった顔となる。

 

「あーそっか、レイは知らなかったよね。グレアとは――」

 

 アンが言い終わる前に、グレアと呼ばれた女子生徒は何も言わずにいきなり三人の前から姿を消してしまった。

 

「あっ、ちょ、ちょっとグレア!? 何処行くの!?」

 

 グレアの行動に驚愕したアンは直ぐにその後を追って走り出した。それをさらに控えていた従騎士が追従しようとしたものの、レイの方へ一瞬目をやってから己が主君の背中を追いかけた。

 その光景をレイは棒立ちの状態で見送るしか無かった。 

 

◇    ◇    ◇

 

 それから迎えた翌日。レイは図書館から借りた魔導書を自分の席で読んでいたものの、頭は別の事を考えていた。内容は言わずもがな昨日の件である。

 レイがグレアについて知っていることはそう多くない。クラスメイトである彼女が竜族の姫であることや話しかけても素っ気ない態度を取られることが精々だ。それ故、いきなり逃げ出した理由に見当が付かなかった。

 

「おはよ! 何読んでるの?」

 

 釈然としないままに魔導書に目を落としていると、たった今登校してきたであろうアンから挨拶された。その傍らにはオーウェン、そして件の人物であるグレアが一緒にいた。

 しかしグレアはレイの方を一瞥するなり、何も言う事無く自分の席へと足早に向かっていった。それを見たアンは申し訳なさそうにレイに言った。

 

「あー……昨日からグレアがゴメンね。決して悪気があるわけじゃないんだ」

「……彼女とは仲が良いのか?」

「うん、グレアとはピアノを通して友達になってね」

 

 えへへと嬉しそうにアンは笑う。

 

「ただ、私の時もあんな感じだったんだ。話しかけてもすぐに切り上げられたり、会いに行ってもすぐに逃げられたりで……大変だったなぁ」

「……よく諦めなかったな」

「そりゃそうだよ! だって、グレアとも仲良くなりたいっていう想いがあったからね」

 

 でも、と彼女は続ける。

 

「私としてはグレアも皆と仲良くなってほしいとは思うんだけど、中々難しいみたいでさ」

「そうなのか?」

「うん。……グレアはちょっと事情があってね、人と関わるのを避けてるんだ」

「事情、か」

 

 そう言いながらレイはグレアの方へと目を向ける。そこには誰とも話さず自分の席で俯いている彼女の姿があった。

 アンの言う通り、何かしらの事情は抱えていても可笑しくは無いだろう。彼女は竜族の姫という立場ではあるものの、種族としては竜と人間の混血児。所謂ハーフという存在だ。そのような存在がどのような扱いを受け、どういった目で見られるかは容易に想像出来る。憶測ではあるが、少なからずそれが関係している可能性も考えられるだろう。

 

「確かに今のままではマズいだろうな」

 

 レイの呟きにアンは彼へと振り向いた。

 

「やっぱりレイもそう思う?」

「……他者とどう付き合っていくかはソイツの自由だ。だがここが学校という集団組織であり、お前のように心配する友人がいる以上、そうはいかないというものだろう」

 

 レイの答えに対し、アンは若干驚いたような素振りを見せつつも彼に言葉を返した。

 

「……もしかしてグレアのことを心配してくれてるの?」

「俺は一般論を述べたに過ぎない」

 

 レイが平坦な声で返す。しかしアンは彼の言葉をどのように受け取ったのか、そっかそっかとニコニコ笑ってレイにこう告げた。

 

「――だったらさ、レイもグレアと友達になろうよ!」

 

 正に寝耳に水の一言だった。

 

◇    ◇    ◇

 

――いや、何でこうなるんですかね……?

 

 虚空に疑問を投げかけるも答えは何も返ってこない。それはそうだろう。答える相手がいるいない以前に、人知れず心の中で呟いているのだから。

 昼休みである現在、レイはオーウェンと共に音楽室へ向けて足を運んでいた。勿論これはアンが朝に言ったあの一言が原因である。

 アンがレイに言った後、彼女の行動は早かった。直ぐさまグレアの元へすっ飛んでいき二人で何かを話し始めた。時折彼の方をチラチラと見ながらしばらく話し合った後、戻ってきてからこう伝えてきたのだ。

 

『じゃあ、昼休みに音楽室まで来てね! 道案内は任せたよオーウェン!』

『はっ! かしこまりました』

 

 最早レイが口を挟む暇すら無く決定されてしまった。一体どういう経緯でそうなったのかをアンに問いただそうとしても『大丈夫大丈夫! レイもきっとグレアと仲良くなれるはずだから!!』と返されたところですぐに授業が開始した。他の授業の合間に聞こうとしても、今日に限って移動教室や魔導具と薬品の準備が必要な科目が集中していたとで時間が無かった。仕方無く昼休みが始まった瞬間に声を掛けようとしたのだが、彼女はそれを見越していたのかのように教室からすぐに居なくなっていた。つまりは拒否権すら無かったのだ。

 確かにレイはグレアの事を気に掛けた。それに相違は無い。しかし気に掛けたとはいえ、アンとはその度合いが違う。グレアと友人であるアンは己が事のように思っているかもしれないが、彼の場合は同情の様なものに近い。友人の知り合いの不幸を聞いた時の気持ちそのままだ。

 しかもだ。それを言っただけであるのに、何故グレアと友達関係を結ぶ羽目になっているのか。

 別にグレアに嫌悪といった感情は一切抱いているわけではない。ハーフという面に関しても『あ、やっぱりこの世界にもそういう人いるんだ』程度の認識であり、むしろ友達が増えるんだからラッキーとさえ考えている。だがクラスとメイトとはいえグレアとは会話どころか面識すらほぼ皆無なのだ。そんな相手といきなり友達になれなど、いくら何でも過程をすっ飛ばしすぎである。

 

「アイツは一体何を考えているんだ……」

 

 レイのぼやくような言葉にオーウェンがにこやかに返す。

 

「良い事ではありませんか。グレア君だけでなく、レイの交友関係も広がるのですから」

「……お前はやたらと乗り気だな」

「当然でしょう。常日頃から思っておりましたが、貴方も貴方で他の生徒との交流が少なすぎるのです。そんな友人に新しい人間関係が築かれるのであれば喜ばしいものですとも」

 

 だからあんなに返事が早かったんかい。オーウェンの真っ直ぐさにレイは頭を抱えそうになった。

 さあ、着きましたよ。オーウェンの言葉にレイが視線を前へ戻すと、音楽室の扉が目に入る。レイにとっては色々な意味で重々しく感じるが、オーウェンはそんな事を気にせずにノックする。

「姫様、お連れしました」オーウェンが言った後に「いいよ、入ってきてー」というアンからの返事が中から響いてきた。

 

「ではどうぞ、お入り下さい」

「……お前は?」

「私には護衛の任務があります故ここで失礼します。いつ如何なる時も姫様達が安全に過ごせるように務めるのが仕事ですので」 

 

 そう言ってオーウェンは扉の前で待機しようとする。ため息を吐きたい気持ちを抑えながらレイはその横を通り過ぎた。

 それを見送ったオーウェンは小さく呟いた。彼ならきっと、グレア君と良き関係になれるでしょう、と。

 

 

 室内は相当広々とした空間だった。壁には歴代の音楽家であろう肖像画が掛けられ、いくつものガラス窓からは日光が差し込んで明るく照らしている。レイが進んでく中で目についたのは、反射光で黒い輝きを放っている一つの大きなピアノだった。

 

「約束通り来てくれたんだね!」

 

 そう言って先ほどまでピアノに着いていたアンが立ち上がってレイの元へ駆けていく。その横には戸惑ったような表情を浮かべたグレアも居り、彼女もまた後ろをついて行く。

 

「ありがとね、レイ。態々来てくれて」

「……誘ったのはお前だろう」

「ふふ、それでもだよ」

 

 短いやりとりの後、アンは自分の後ろで身体を小さくしているグレアへと振り向いた。

 

「ほら、グレアも縮こまってないでちゃんと挨拶しなきゃ。折角会いに来てくれたんだからさ」

「う、うん……」

 

 アンの言葉に答えてはいるものの、その顔浮かないものだった。言動もぎこちなく、レイを真面に見ようとはせずすぐに顔を伏せてしまう。恐らく彼に対して不安や恐れといった感情を抱いているのだろう。

 その様子を見たアンは微笑みながら優しく言った。

 

「怖がらなくても大丈夫だよ。他の人と比べれば口数は少ないけど、この人は良い人だからさ」

「で、でも……」

 

 口ごもりながらレイの方をチラリと見る。何者にも意思を読ませることの無い表情がその顔にはあった。冷ややかにも取れそうなその顔色を見たグレアはまた顔を俯かせてしまう。

 

「……駄目だよ。私なんかと話したって何も面白くないだろうし……」

 

 それに……。グレアが言いかけた言葉を遮るようにアンが言った。

 

「もう、そんな事無いって! 少しでいいから話してみようよ、ね?」

「……分かった」

 

 諭すかのようなアンの言葉にようやく決心したのか、頷いたグレアはレイの方を向いた。

 

「ど、どうも」

「ああ」

 

――沈黙が訪れる。外からは生徒達の賑やかな声や鳥のさえずりなどが入ってきているはずなのだが、それを無視したかのように静寂が場を支配した。空気も刺々しいものでは無いにも関わらず心なしか重苦しいものにも感じた。

 だがこれは仕方が無いことだと言えた。グレアは内気な性格であり、そこまで喋る方では無い。会話でも大抵はアンから切り出す方が多かった。レイもそれに似たようなものだ。傍から見れば彼もまた寡黙であり、誰かと話しをするにしても大半は相づちや短い返答で終わる。両者共に外交的な性格でないのが災いしてしまったのだ。

 この光景が長らく続き、気まずい雰囲気をどうにかしようとアンが口火を切ろうとした時、レイが静かに口を開いた。

 

「……アンタはアンと親しいんだったな」

「え……う、うん。そうだけど……」 

「……そうか」

 

 短く呟いた後にこう言った。

 

――良い友に出会えたな。

 

 と。

 平坦でありながら何処か喜色を含んでいるかのような声に、グレアは目を見開かずにはいられなかった。

 

「あ、あの!」

「何だ」

「貴方は私のことが怖くないの? 人には無い……竜の角や翼があるんだよ? それなのに……」

「……ドラフにも角は生えているしエルーンにも獣の耳があるだろう。ハーヴィンだって背が半分だ。程度の差はあれ、それらと大して変わらん」

「えっ……」

 

 何でもないかのように言い切ったレイにグレアは呆気に取られるしか無かった。そんな彼女にアンは笑みを溢した。

 

「ほらね、言った通りでしょ? この人は良い人だって」

「……うん」

 

 グレアが小さく笑ったのを見てアンは満足そうに微笑む。

 

「それじゃ、次はグレアの事を知ってもらおっか!」

 

 そこの椅子に座ってくれる? アンからの指示を受けたレイは腰掛け椅子に着席する。一体何をするつもりなのか。疑問を含んだ視線をアンに送ると彼女は「そのままでいてね」と返し、グレアと共にピアノへと着席した。

 

「これからレイには私たちの連弾を聴いてほしいんだ」

「連弾?」

「そ、連弾。要は一つのピアノを二人で弾くことだね。グレアの演奏は綺麗でさー、私はそれに惹かれたんだ!」

「も、もう、アンったら……」

 

 グレアが恥ずかしそうにしつつも二人は鍵盤へと視線を移す。お互いの顔を見合わせ――そして弾き始めた。

 明るく澄んだ旋律。聴く者の心に響くような優しく穏やかな音色。時折リズムを変えているのか曲調がガラッと変わったりもしている。音楽に詳しくないレイでも綺麗なものだと思える演奏だった。

 数分間という短い時間ではあったものの、アンとグレアの演奏に聴き入っていたレイにはそれ以上に短く感じた。

 演奏はやがて終幕を迎え、二人の連弾に終幕を下ろした。

 

「……良い演奏だった」

 

 ぽつりとレイが漏らすとアンは喜色満面となり、グレアも照れくさそうにしている。

 

「いやー、でも良かった。一時はどうなるかとは思ったけど上手くいったみたいで」

 

 しかし喜んでる彼女にレイが問いを投げかけた。

 

「……何故俺を選んだ」

「ん?」

「コミュニケーション能力の高い奴なら他にもいるだろう。だが、何故俺に誘いをかけた」

 

 彼はそこの部分が気になっていた。レイはお世辞にも愛想が良くない。いや、ハッキリ言って悪い方だ。それなのにアンは何故レイに今回の件を話したのか。

 うーんとねー。悩むようなポーズを取りながら考えた後、彼女は答えた。

 

「何となく、かな?」

「……何だそれ」

 

 これにはレイも呆れそうになった。もっと真面な理由だと予想していたがために思わずガクッとなりそうだったもののどうやらアンは本心から言っていると分かる。その目は虚偽の類いを一切秘めないものだったからだ。

 

「でも、これで二人も友達だよね!」

 

 レイの言葉に気にした素振りも無くにこやかに笑うアンに顔を赤くしているグレア。二人を眺めている際、レイはグレアと視線が合う。が、すぐに逸らされた。どうやら打ち解けるのはまだまだ先のようだ。




グレア(この人私のことが怖くないのかな……)
レイ(星晶獣とかの方がヤバいと思います)

ゴーレムさん機械となって二度目の登場。しかしゼロナックル擬きの餌食に。あと何かやたらと重苦しくなったなぁ……。

登場人物や技、ネタの解説

・グレア

マナリア魔法学院を代表する竜姫。
人間の女性と竜族の王との間に生まれた所謂ハーフであり、竜の翼や尻尾といった外面的特徴が色濃く表れている。炎術魔法に長け、戦闘では接近戦と絡めて使用する。
自身の力や姿がコンプレックスなために他者とは距離を取っていたものの、アンとの出会いで一歩踏み出すようになり親友の間柄に。また、一人で音楽塔にいることが多いからか『音楽塔に咲く花』と称されていたり、アンと並んで『学院の双華』と呼ばれていたりする。

――なお、SSR版が実装された翌年に水着バージョンが実装されたものの、ぶっ壊れ火力から水パでの奥義アタッカーとしての地位を築き上げ、カツオ剣豪には大体スタメン入りするように。

設定は神バハより流用。グラブルのフェイトエピソードやイベントを見ても詳しい素性が明記されていなかったので。


・風紀委員会の委員長(本名:オッティモ)

ドラフ族の男子でありスキンヘッド。並の生徒よりは腕は立つものの、新入生であるレイ達には残念ながら及ばない。見た目がまんまラスボス隊長、しかし人格者であるために風紀委員を始めとして人望は厚い。なお、CVは隊長と同じ渋めで重厚感たっぷりな低音ボイス。……本当に学生かこの人?


・シグマ

全ての元凶かつXシリーズ皆勤賞である皆のラスボス隊長。X8でセミラスボスなのはご愛嬌。

レプリロイドの生みの親であるDr.ケインの最高傑作と評価される高い戦闘能力と優秀な頭脳、圧倒的なカリスマ性を持ち合わせるレプリロイド。元イレギュラーハンター第17精鋭特殊部隊の隊長であり、エックスとゼロの上司でもあった。また、エックスの秘める潜在能力に気づいていた数少ない存在でもあり、紅いイレギュラーとして暴れていたゼロの鎮圧任務に当たっていたのも彼。
ハンターとして信頼されていたが、X1での反乱を契機にレプリロイドのための世界創造を目的とした世界征服を企んでいる。そのためにはイレギュラーハンターと同じ平和のために戦うレプリフォースやレッドアラートといった組織を利用したりと手段は厭わない。
また前述したカリスマ性によるものか、反乱を起こした際にイレギュラーハンターの識見を掌握したらしく、本来なら同格の存在であるアルマージやオクトパルドといった他部隊の隊長や部下達も指揮下に加わった。その結果、イレギュラー化した元イレギュラーハンター達と残りのイレギュラーハンター達による戦いとなった。
ちなみに目的は作品によって異なる。FC版X1では人間を抹殺してレプリロイドだけの世界を作るという目的は明らかだったもののシグマがイレギュラーとなった原因は不明だった。リメイク版であるイレギュラーハンターXではエックスの秘める「レプリロイドの可能性」を知るため「レプリロイドの未来を賭けた戦い」となっている。岩本版においては人間を愚かな存在と見なし、駆除のために生まれたレプリロイドこそ支配する側として反乱を起こした。
最終的にエックスの手によって葬られたものの、何度も復活を繰り返しながら黒幕として暗躍していくこととなる。

その正体は、シグマウイルスという名の悪性コンピュータウイルス。プログラムそのものが本体として独立していることから、例えボディが破壊されようともウイルスそのものを除去しない限り何度でも蘇る。そのせいでX7においてはゼロからはゴキブリのような扱いを受けてるばかりか、元隊長も度重なる復活のせいでテンションがぶっ飛んでいるのか何か熱い感じになっている。
以下原文そのままで抜粋。

ゼロ「懲りないヤツだな! どんなに細かく切り刻んでもまた出てきやがる!」
シグマ「フンッ、何とでも言え。エックス、ゼロ、貴様らの命をワシのものにするまで何度でも、何度でも、な・ん・ど・で・も!蘇ってやる!! さぁ、いつものように熱い戦いを期待しているよ。行くぞぉぉぉぉぉ!!!」

それにしてもこの黒幕ノリノリである。ちなみにこの「何度でも~」の部分でどんどんシグマの顔がアップされていくというプレイヤーの腹筋クラッシュ仕様もあってかX5とX6と合わせて「シグマの三大迷言」とファンから称されている。

なお隊長でありながらイレギュラーとなり正体は悪性のコンピューターウイルスなシグマだが、勿論最初からこうだった訳では無い。前述したゼロの鎮圧作戦に赴いた際、ゼロの身体に仕込まれていた「ロボット破壊プログラム」に感染した結果、回路内で突然変異を起こして「シグマウイルス」となり、それが元でイレギュラーとなってしまった。言ってしまうと彼もまた被害者なのである。

余談ではあるが、ラスボスとして皆勤賞なためかCAPC○MVSシリーズでは主人公であるエックスとゼロ共々出演していたりする。他作品とのクロスオーバーであるプロジェクトクロスゾーンでも敵として登場。え、進化を象徴する三人目? 二丁銃使いのハンター? ……まあ、新参者だから仕方無いね。


・ゼロナックル

初出、というより登場した作品は『ロックマンゼロ4』のみ。
手の平に『Z』の文字を象ったチップが埋め込まれており、エネルギーを帯びた掌底で攻撃する。これによって握力を強化しているらしく、一部のステージの障害物を除去したり特定の場所へとぶら下がる事が出来るように。また攻撃力は低くリーチも目の前のみとやや扱い辛い面はあるものの、真下以外の七方向に攻撃が可能な点は他の武器には無い利点である。

最大の特徴は、ゼロナックルでザコ敵に止めを刺すと『武器が奪える(シージング)』という点。要はお前の物は俺の物、X版の中の人でいう『騎士は徒手にて死せず(ナイト・オブ・オーナー)』。グラブルにおけるユリウスの3アビそのまんま。
敵から奪える武器はクセの強いものが多いが、一部の武器はゼットセイバーに匹敵する強さを持つものも。また、武器は廃棄する事で放物線上に飛んでいく投擲武器として利用可能。これで再びシージングが可能に。

余談だが、X4のムービーにてイレギュラーとして暴れていたゼロは、対処に向かったシグマの腕を素手で引きちぎっている。また、ロックマンX8においてはゼロの武器としてカイザーナックルというものが実装されており、拳で語り竜巻旋風脚で敵をなぎ倒すゼロの姿が拝める。

ちなみにロックマンゼクスに登場する隠しボスのオメガにもこれに似た装備を持っていることが攻略本等のイラストで確認できる。しかしゼロナックルと類似のものか将又無関係の装備なのかは言及されていないために不明である。


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紅きマナリアのイレギュラー
第一話 駆逐


ボツ理由:残虐描写が過ぎたため。


《前回までのあらすじ》

廃棄された研究所へと調査にやって来た騎士団長達。だが仕掛けられていた罠によって魔物が召喚され、それを退けようとするも追い詰められてしまった。為す術無しと思われたその時、眠りについていた者が目覚めたのだった。

今回若干のグロ描写があるので注意。


 悠久の時から"ソレ"は目覚めた。

 出立からして戦士と思われるその人物は、自身が眠っていた鉄の棺の前に佇んでいた。言葉を発することなく、この場にいる者達を静かに見つめていた。

 それは状況整理をしているようにも、見定めているようにも思えた。

 だが、その目には一切の光を宿していなかった。見る者を暗闇へと引きずり込むような空虚さがあった。

 暗く、深く――。それは最早人の目とは言えない無機質さを孕んでいた。

 この場の全員が戦士へと目を注いでいた。人間も魔物も、先ほどまで争っていた彼らは一斉に手を止め停戦状態へと至っていた。

 されどその様子は真逆だった。

 魔物達は警戒していた。得体の知れぬ者に対する不信感を隠すこと無く。自身の手に持った得物を、自らの身体に備わった武器を構えていた。

 人間達は何処か怯えていた。信じられぬものを見るように、驚きを前面に押し出していた。最早剣を握る手には力が込められていなかった。

 共通していたのは一つ――突然現われた者に対する懐疑心だけだった。

貴様は一体――。驚愕を含んだ目を騎士団長は戦士にぶつけていた。だが戦士は何も答えない。二つのがらんどうな瞳で前方を見つめているだけだった。

――だが、立ち尽くしている彼へと一匹の魔物が襲いかかる。

 

「グルァアアアア!!」

 

 炎を纏った狼の魔物、パイロウルフ。突如として現われた戦士の存在が気にくわなかったらしく、彼目掛けて走り出した。

 地面から跳ね、紅蓮の炎を纏わせた牙と共に真正面から飛びかかった。

 対する戦士は避ける素振りすら見せない。

 まずい――! 騎士団長は急いで立ち上がろうとする。しかし全身に走る痛みによってすぐに膝をついてしまう。 

 既に牙は戦士の目の前にまで迫っていた。

 そして戦士は、無抵抗のまま牙に貫かれた。

 

「グァッ!?」

 

――はずだった。

 呻き声を上げたのはパイロウルフの方だった。パイロウルフの急所である喉元が掴まれていたのだ。戦士の左手に。

 予想だにしていなかった出来事から炎狼の顔には驚愕の色が浮かんでいた。どうにか抜け出そうとして前脚を必死にバタつかせる。

 だが戦士の手はほどけなかった。焦ったパイロウルフはもがきを強めるも戦士が力を緩める気配は一向にない。

 あがく獣の様子を余所に戦士が左手を身体ごと大きく振りかぶった。

 そして次の瞬間――ぐちゃり、と潰れる音が室内に響いた。

「なっ……!?」騎士団長は驚愕を口にする。地面には血が広がっていた。先ほどまで元気よく脚を動かしていた炎狼の頭部は粉砕され、鮮血と脳髄が飛び散っていた。身体の方は突然の死に至ったばかりからか時折痙攣を起こしていた。

 戦士の手は赤く染まり得も言われぬ臭いが部屋に漂った。事を起こした張本人たる戦士は手を振って自身の手に付着したものを払った。

 

「…………」

 

 先ほどまで虚空を見ていた戦士の目が魔物達へと向けられる。そして、魔物達の方向へゆっくりと歩を進め始めた。

 魔に属する存在達も戦士を新たな標的と定めたらしく複数の魔物が殺到する。

 接近したスケルトンが戦士へと剣を振るう。常人なら瞬く間に肉片へ変える斬撃が戦士を襲う。首や心の臓、臓腑といった当たれば致命傷となる部分を的確に狙っていた。

 繰り出される鋭い斬撃を戦士は躱す。だがやはりというべきか、目覚めたばかりで身体が思うように動かないらしく回避動作が些か重かった。ギリギリで避け続けてはいるものの、完全には躱しきれず頬や脇腹を剣が掠めていく。

 スケルトンが戦士の回避後の隙を突き、もう片方の腕に装備していた盾で戦士を殴りつけた。

 戦士は空中を舞いながら飛ばされるも即座に身体を反転させて着地する。すかさずスケルトンは距離を詰めて斬込む。

 絶え間なく迫る凶刃を前に戦士は只管に躱し続けるしかなかった。

 やがて堪らないとでも思ったのか戦士は後ろへと大きく飛び退いた。

 しかしその先には――彼の背後にはミノタウロスが斧を振りかざして待ち構えていた。

「ブモォ……!!」気配に気づいた戦士が振り向くも、大斧は既に振り抜かれていた。地面を砕く轟音が室内に鳴り響く。

 間一髪のところで回避に成功した戦士は横へと跳ぶ形でミノタウロスから距離をとった。

 しかし直後に一筋の紫の光が戦士へと落ちる。反応が間に合わなかった戦士は直撃を胸部に喰らった。

 光の正体はガーゴイルが撃ち込んだ闇魔法だった。地上の者では手の届かぬ領域よりガーゴイル達が続々と闇魔法を発動する。闇の元素が塊を形成していき弾丸となって撃ち出される。

 弾丸の雨が降りしきる中を戦士はくぐり抜ける。その最中、肩や太ももを紫の弾丸が僅かに触れて通過していった。

 そのような状況においても戦士は足を止めなかった。一瞬たりとも速度を落とすことなく疾駆し紫電の包囲網を振り切ろうとする。 

 だがガーゴイル達は嘲笑うように戦士の走る先へと数発の弾丸を撃ち込んだ。

 自身の目前に紫が着弾したことで戦士は反射的に足を止めてしまった。――疾走を止めたこの瞬間、戦士は格好の的となったことと同義だった。

 ガーゴイル達は陣を空中へと展開し空に大量の光を浮かべた。そして戦士へと一斉に撃ち出した。

 弾丸が戦士目掛けて降り注ぐ。戦士は躱す間もなく飲み込まれた。

 

   ◇    ◇    ◇    ◇

 

 戦士の末路を見ていたスケルトンは顎の骨を揺らしながら嗤った。戦士の死を嘲笑うかのように。狩りに水を差した煩わしい存在の死を悦ぶかのように。

 これで心置きなく狩りが再開出来るというものよ――。スケルトンは呻き声を上げながら転がっている騎士達を見やる。

 いきなり鉄の箱から現われたことや同族の一体を素手で屠ったことには多少驚かされこそしたものの、所詮は人に過ぎない。自分達魔物に刃向かったところでどうなるはずもない。そうスケルトンは考えていた。先の者や今この部屋に転がっている者のようになるだけだと。

 だが狩りの前に戦士の死体を確認しなければならない、とスケルトンは再び正面に目を戻した。戦士の居た場所は大量の魔法攻撃によって舞い上がった土煙が朦々と立ちこめていた。

 死体を確認するのは単に生死を確かめる意味合いだけではない。悪辣なことにその亡骸を今は空っぽである自分の眼窩に収めるためであった。

 邪魔者は邪魔者なりに楽しむ、ということらしい。

 時期尚早ながらスケルトンは戦士の死体を見た後の事について既に思考していた。狩りの獲物である騎士達の殺し方を。

 単に殺すだけではつまらない。重要なのは如何に苦悶の表情を浮かべさせて悲鳴を永く上げさせるかだ。

 足の先からゆっくりと細切れにしていくのはどうだろうか。そうすれば出血は多少抑えられる上苦痛を永く感じさせることが出来る。

 他の仲間が死んでいく様を見せつけてから腕と足を削ぐというのも中々に捨てがたいものだ。死の間際に紡がれる叫びも良いが何も出来ないことへ吐かれる怨嗟は途轍もない心地良さを与えてくれる。

 スケルトンは朽ち果てた人間の怨念がそのまま骸骨に宿って変じた魔物と言われている。だが骸骨が生前に宿していたであろう人の心は肉と共に削ぎ落とされていたようだ。

 血に飢えたスケルトンにとっては犠牲者が断末魔として紡ぐ絶叫は心に安らぎを得る詠歌となっていた。

 奴は一体どのような姿で朽ち果てているのだろうか。筋繊維の無い下顎が笑みを浮かべるように僅かに上がった。周囲の魔物達も同じように卑しい笑みを顔に浮かべていた。戦士の死体を見るのが待ち遠しいとでも言うかのように。

 体中に開いた穴から骨と内臓が剥き出しとなっているのか。それとも原型が無い程に潰され臓腑と混ざり合った血の海が広がっているのか。心を躍らせながら魔物達は土煙が晴れるのを待った。

 やがて土煙が晴れた。スケルトン達が心待ちにしていたであろう光景が映し出された。

 そして現われた。――大地に立つ戦士の姿が。

 魔物達は驚愕で目を見開いた。信じがたいことに戦士は生きていた。腕に纏っている籠手から、全身に纏った無彩色の装束から、着弾による煙を上げて。その場で動くこと無く両の腕で防御する形で魔法攻撃の雨から身を凌いでいたのだ。

 驚く魔物達を余所に戦士は防御していた腕を下ろす。感情を宿さない黒い双眸が魔物達を映していた。

 スケルトンは上顎と下顎を強く噛み込んだ。ふざけるなとでも言うかのように。折角の楽しみを台無しにされたことに対する怒りが魔物達に猛烈な殺意を湧かせた。

 代償を精算させるべくスケルトンは再び戦士へと剣を振るった。剣速は怒りによって先とは比べものにならないほどに増していた。最早躱すことすらままならないだろう。

 現に戦士は躱すことに手一杯のようだった。辛くも躱し続けてはいるものの、攻撃が戦士を捉える回数は確かに増加していた。

 往生際が悪い奴め。戦士の奮闘を鼻で笑いながらスケルトンは容赦無く剣を振り下ろしていく。戦士は剣戟から逃れようとして横へと跳んだ。

だがそこへと今度は別個体のスケルトンが襲いかかる。繰り出される剣戟が戦士を捕らえようと次々と奔る。

 防戦一方である戦士へと更なる追撃としてハチェットバードが攻勢に加わった。スケルトンが展開する剣戟の隙間を埋める様に戦士の身長を超える頭部の斧が頭上から振り下ろされる。

 格段に上昇した攻撃の密度は戦士に反撃の暇すら与えなかった。攻撃が当たらぬようにと戦士が右へ左へ後ろへと踊る姿は酷く情けなくみっともない様であり魔物達の溜飲を下げた。

 この状況を少し変えようとでもしたのか戦士は後ろへと退いた。

 だが着地の際に生じた硬直をガーゴイルが狙撃手の如く魔法で撃ち抜いた。二発の弾丸は戦士の上体へと命中し、身体を大きくぐらつかせた。

 生じた好機を逃さずスケルトンは剣を大きく掲げる。にやりと嗤った。今度こそ臓腑が飛び散る様を想像しながら。

 スケルトンが垂直に剣を振り下ろした。

 

――戦士の瞳がスケルトンを捉えた。

 

 瞬間――スケルトンの身体は宙を舞っていた。

 戦士は髑髏の眼窩から姿を消していた。スケルトンの持つ剣は文字通り空を切っていた。――肩から先を千切り飛ばされる形で。

 スケルトンの髑髏が驚愕に満ちる。

一体何が起こった。何故奴は目の前から消えている? 何故右腕が無くなっている――!? 思考が追いつかない中、骸骨は背後からふと何かの気配を感じた。

 直感的に頸椎を僅かに回転させて振り向く。視界の先には、消えたはずの戦士がいつの間にか自身の背後へ回り込んでいたのが映った。

 否、戦士は消えたのではなかった。スケルトンが剣を振り下ろす刹那、真横を一瞬で通り過ぎると同時に腕を引き千切ったのだった。

 スケルトンが視認した時には既に戦士が拳を放っており、兜を被った髑髏を正確に打砕いた。突き動かす衝動の源が消失したことで、崩れ落ちた骸骨は鎧と地面の反響音と共に大気へと霧散していった。

 スケルトンが倒れた直後、別個体が戦士へ奇襲を仕掛けた。敵を倒して僅かに気の逸れているであろうこの瞬間を狙っていた。

 戦士は慌てる素振りもなく、拳を放った勢いを利用し片足を軸に身体を半回転させて回し蹴りを撃ち込んだ。

 蹴りは露出している腰椎へと命中し、骸骨の上半身と下半身を分断した。その折にハチェットバードが戦士への攻撃を開始した。

 趾で地面を捉えながら首をくねらせ処刑人の斧のようにうなじへと振り下ろす。

 そのまま攻撃は戦士の首を刎ねる――ことはなかった。一つの金属音とと共に斧の軌道は上へとずれ、戦士の頭上を素通りすることとなった。

 戦士は身を屈めながら斧の斧刃――刃の平らな部分――へと自身の腕を下から当てたのだ。それも腕に装着していた籠手で、だ。籠手で刃を流すよう斜めにぶつけたことで軌道をずらしたのだった。

 自身の下半身と同程度の斧を意図せず空振りしてしまったことで、斧鳥は勢い余って後ろへと回転してしまう。バランスの崩れたハチェットバードの胴体へと戦士が前蹴りを浴びせる。

 斧の勢いと戦士の蹴りによる速度を以てハチェットバードは空中を飛んだ。そしてその先には、ミノタウロスがいた。

 他の魔物を利用しての攻撃などミノタウロスですら予想出来ようはずもなかった。驚きながらもミノタウロスは両手に持った片刃斧で飛来したハチェットバードを両断した。

 その間に戦士はミノタウロスへと疾走し距離を詰めていた。気づいたミノタウロスが斧を手元で廻し接近した戦士へ横薙ぎを放つ。

 戦士は上へと跳んで躱し、ミノタウロスへの顔面に膝を喰らわせる。戦士の膝蹴りを真面に貰ったミノタウロスは堪らず後ろへと倒れ込む。 

 頭部を襲った震動と顔の中心部に居座る痛みをねじ伏せ何とか立ち上がろうとして目を開いた。天井ではなく、紅い影が差していた。

 紅い影は戦士が足に付けている鉄靴(てっか)だった。戦士が真上から覗き込んでおり、真紅の鉄靴がミノタウロスの牛を象った頭部へと下ろされた。

 牛頭を頭蓋諸共踏み砕き放射状に血液と脳漿が飛び散った。――僅か一分にも満たない時間での出来事だった。都合四体もの魔物を戦士は瞬く間に処理した。

 傍で見ていた魔物達からは侮蔑や嘲りといった感情は既に失われていた。新たに困惑や動揺のようなものが生まれていた。

 何だアレは。

 目覚めた当初は明らかに鈍い動きだった。攻撃を躱すのでさえやっとだった。それが急に動きが変わって――――。

 戦士は魔物の様子になど目もくれず、足下に広がる血を踏みしめ魔物達の方へと金髪を揺らして幽鬼のように振り向く。

 集団を視界に捕捉した戦士は獣のように身体を低く屈める。右足で地面を踏み込み、低く疾走した。強靱な脚力によって初速から一気に最高速度へと到達したことで数十メートルは離れていた魔物達との距離を零に。

 そして一体の魔物の頭部を掴み、地面へと叩き付けた。

 自身の身に何が起こったのかを理解する間も無くその魔物は絶命した。

 なっ――。魔物達が驚いている間にも戦士は次の魔物を標的にしていた。小鬼の魔物の腹部へと拳を突き上げ身体を強制的に蹲らせた。すかさず背中へと肘を撃ち込み背骨を損壊させた。側にいた人型の魔物の顔面を殴りつける。二発三発、四発五発と続けて打つ。頭部を揺さぶれて意識が落ちそうなところへと拳を振り抜き他の魔物ごと巻き込んで飛ばした。そして巻き込んだ魔物へと一足飛びに接近し蹴りを撃ち込み首の骨を砕いた。

 次々と同族を葬っていく戦士に魔物達はようやく状況を飲み込み反撃を開始した。不倶戴天の敵と化した戦士を誅殺するが為に。

 尤も――攻撃の悉くが通用せず、一方的な虐殺の目に遭わされることを、反撃と呼べるとすればだが。

 振り抜かれた剣を戦士は苦も無く手首を掴んで止めた。そのままもう片方の手で首元を捕まえ地面へと投げ飛ばし、背中を足で押さえながら腕をへし折った。苦痛の叫びを上げる魔物の頸椎へ踵を下ろして二度と声が出ないようにした。

 戦士目掛けて魔法が撃ち込まれる。戦士は僅かに身体を反らして躱す。続々と魔法が飛来するも躱しながら巨躯の魔物の背後へと回り込み、弾丸からの遮蔽物として凌ぐ。弾丸が止んだところで焦げた魔物の身体を踏み台にして跳躍した。視界に映った二体のガーゴイルを拳と蹴りで地面へと叩き落とす。落下を上乗せした脚力で地面のガーゴイルを踏み抜いた。

「グ、グルゥ……!」槍を手にした魔物が向かってくる戦士へと突きを放つ。だが戦士は身体を左に動かし、槍を躱して拳を魔物の腹部へ穿つ。突進の勢いに加え戦士の腕力が相乗したことで魔物の腹部を破り臓腑を貫いた。

 颶風のように戦場を駆け抜け、嵐のように命を奪い去っていく戦士を、どの魔物も捉えることが出来なかった。

 生命の支配権は既に魔物達から戦士へと奪取されていた。暴威にも等しい戦場の支配力を前に魔物達は為す術が無かった。

 

「ギャオォォォォォォ!!」

 

 刹那、咆吼が部屋に轟いた。獣の哮りに呼応して戦士の周囲の地面に突如として亀裂が奔る。大地が槍の穂先のような鋭利さを有して急成長し戦士を貫いた。戦士だけではない。戦士の周りにいた多くの魔物をも串刺しにし、溢れた血液を養分として真っ赤な華を咲かせた。

 自軍諸共の処刑でこの惨状を作り出した咆吼の主は、地面を踏みしめて死体の山へと足を運んだ。

 地面が戦士達を襲った要因を作り出したのは獣、キマイラが発動した土魔法だった。『アースグレイブ』と呼ばれる強力な部類に位置するソレを行使することで、周囲の魔物を巻き込む形で戦士を屠ったのだった。

 一際大きな大地の槍によって宙へ磔となっている戦士の死体を見てキマイラは鼻を鳴らした。無様な姿を愚弄するように。このような存在にやられた他の魔物を蔑むかのように。

「グル……?」だが、そこでキマイラは違和感を感じた。戦士の死体からは他の魔物の死体から流れている赤い液が一切溢れていなかった。どころか、槍は腹部を貫いてすらいない。脇に逸れて戦士が抱えていた。

 死体であった戦士が息を吹き返したかのように顔を上げる。腕から槍を放し地面へと降り立ち、即座にキマイラへと疾駆した。キマイラは魔法で生成した岩石の弾丸を戦士へと撃ち出す。戦士は跳躍し弾丸を躱すと共にキマイラとの距離を詰めた。

 そして拳に力を込めキマイラへと殴りかかった。――瞬間、戦士の身体が横からの衝撃で吹き飛ぶ。戦士の身体は水平に宙を飛翔し壁へと激突した。

 罅割れた壁に背を預けながら戦士はキマイラの方を見る。キマイラの真横には自身を吹き飛ばした存在たる毒蛇がいた。キマイラの尾である蛇は太い躰を持って戦士へと体当たりを仕掛けたのだった。

 戦士はキマイラと尾の蛇を見据えて近くの壁の配管(パイプ)を引き抜いて立ち上がる。

 毒蛇は細かく振るわせていた舌を引っ込めると、キマイラの真上へと移動し牙から分泌される毒液を塊にして吐き付けた。戦士は真横へと回避する。毒液は壁へと着弾し強力な毒素で壁を液状に溶かした。

 毒蛇は弾倉に目一杯装填した拳銃の如く矢継ぎ早に毒液を発射し戦士に近づく暇を与えない。戦士は振り切るように駆け、迫る一発を前転して避けた。そして体勢を直し、キマイラへと吶喊した。

 それを目撃したキマイラは岩石による攻撃へと切り替える。戦士は手に持っていた配管で岩石を打ち払いながら尚も直進する。

 大地の獣の王が不埒者の接近を禁じるために空へと咆える。再度地面が呼応し始める。先刻のような槍ではなく小さな棘針が剣山として戦士を襲う。 

 戦士は地面を蹴って跳躍し針山を回避した。だが、それは先刻の行動の焼き直しであった。毒蛇が巨大な身体をしならせて戦士を噛み砕こうと迫っていた。

 空中への回避は有効打ではある反面、その最中には一切身動きが取れない。それが人のような、翼の類いを持たない種族であるのなら尚更のこと。キマイラはそれを知っていた。先の行動から戦士もその理屈に従わざるを得ないということをも。

 毒蛇が獲物の肉を噛み裂こうと口を広げた。

――だが、戦士も同時に振りかぶっていた。先ほど壁から拝借した配管を。

 無理矢理引き抜いたことで配管先端は鋭利になっていた。刺突剣のような刺すことに特化した形状に。

 振り下ろした鉄管が、毒蛇の額板と口内を破って鉛直方向に突き抜けた。

 毒蛇の意識は絶たれ接近を余儀なく中断することとなる。支える力を失ったことで、巨体はそのまま地面へと倒れ込んだ。そう――つい数秒前にキマイラが生み出した棘山へと。

 

「ギャォォォオオウ!?」

 

 キマイラが悲鳴を隠すことなく叫んだ。意識そのものは別であっても身体を共有している以上痛覚も共有している。故にパイプで刺された痛みも棘山に串刺しにされた痛みも感じていた。

 戦士はお構い無しに毒蛇の身体へと着地する。棘の大群に蛇が刺さったことで、キマイラへの道を示す肉の道が舗装されていた。

 戦士はその上を駆け抜け、再度キマイラへと拳を振り抜く。二撃目である今度は妨げられることなく山羊の頭部を粉砕した。

 立て続けに生じた激痛で獅子を模した頭は苦しみ悶える。身体を大きく仰け反らせた。戦士は身体を半回転させ容赦無しに下から獅子の頭部を拳で突き上げた。

 切れた口内から鮮血が飛び獣の身体は地面へと倒れ込んだ。

 しかしキマイラに止めが刺されたわけではなかった。潰されたのは尾である蛇と片割れの山羊の頭部のみ。獅子の頭は強烈な一撃こそ貰ったものの、絶命には至っていない。

 どうにかして身体を起こそうと前脚に力を込める。それは混ざり合う前の獣が有していたプライドなのか、其れとも人間如きにこのような有様である自身への怒りだったのかは分からない。自身の中で沸き立つ戦意は失われていないことだけは確かだった。

 だがそこへと首元を踏みつけられたことでキマイラは地面へと接吻を交わすこととなった。

 キマイラは目を動かして自分の首を踏みつけた戦士の姿を認識する。そして、戦士の眼を見たキマイラは背筋が凍った。

――戦士の目は空虚なままだった。唯々無感情の黒い双眸がキマイラを見下ろしていた。波濤のように攻撃を浴びせられようとも、自身の生命が危機に晒された状況であっても、感情の一切が戦士には浮かべられていなかった。

 人間のように同族の仇討ちに闘志を燃やし怒りで顔を歪めもしなければ、恐怖に呑まれて戦きもしない。

 魔物のように狩りに興じて命の剥奪に高揚するわけでもなければ、殺戮の甘美を味わうように嗤いもしない。

 唯作業のように対象を抹殺する戦士には感情というものが――心というものが無いかのようだった。

 此奴は本当に人間なのか――。先ほどまであった戦意は既に失われていた。キマイラの身体は震えていた。寒さという外的要因ではない。動物の本能に刻まれている、誰もが知り得るものによって。失われたと思っていた感情がキマイラに湧き上がっていた。

 戦士が無感情のまま拳を振るった。

 ひっ――。気づいた時には行動に移していた。残りの魔力を稼働して身体を土魔法の作用で硬化させた。身体の表面を魔力が包み込み薄い褐色へと変化した。戦士の拳は弾かれた。

 キマイラは安堵の息を漏らした。

 だがそれは本質的な解決になってなどいない。その場凌ぎの対抗策でしかない。

 だからこそキマイラは気づいていない。自らが愚かな選択をしてしまったことを。"ソレ"を遠ざけることなど出来ないということを。

 戦士()から逃れる術など無いのだということを――。

 表皮を覆う防護に拳を阻まれた戦士は僅かに見下ろした後、キマイラの喉元と鬣を掴む。そしてあろう事か――力を入れて引き始めた。

 ま、まさか。キマイラの表情が凍り付く。首元の皮膚が伸ばした糸のように張り詰め、筋繊維がギチギチと悲鳴を上げる。キマイラの厭な予想は的中していた。――戦士がこれから残忍な方法で自分を屠るのだということを。

 例え表面を硬化させたところで内部にまでその作用が及ぶわけではない。衝撃吸収の役割を持つ脂肪の柔らかさや細胞の持つ水分はこの時においても普段通りに機能していた。

 故に、鉱物などでは不可能な引き裂くという行為を可能としてしまったのだ。

 直ぐさま抵抗しようとキマイラは足掻いた。だが首元を踏みつけられている上、尾の蛇の重量のせいで立ち上がるのが難しくなっていた。

 ならば防御を排除して攻撃すれば。そう思った。が――出来なかった。

 もしも解除してしまえばどうなるのか? 当然、戦士は直ぐに頭部への攻撃で止めを刺してくるだろう。遠ざけていたはずの死が目の前に現われてキマイラの魂を刈り取っていくだろう。

 だが、このまま防御しつづければどうなる? じわじわと痛みを与えられながら苦痛に塗れて死んでいく。――キマイラには既に逃げ道というものは残されていなかったのだ。

 自分の末路を自覚してしまった瞬間、身体が動かなくなってしまった。石化したかのように全身が硬直してしまったのだ。

 故に――キマイラはこのまま死を待つ身となった。

 ミチミチと首元が悲鳴を上げる。徐々に徐々に皮膚が引き絞られる痛みが強まり、焼けるような激痛となって襲う。筋繊維がプチプチと切れる音が静かになった身体から鼓膜へと響き厭でも知覚する。毛細血管が断裂して力を加えた箇所に出血が促されていく。

 キマイラは悲鳴を上げたかった。今にも逃げ出したかった。そして出来ることなら、一思いに殺して欲しいと願った。

 だが、無情にもそれは叶えられない。自分で選んでしまったが故に。

 そして数秒とも数刻とも感じられる時間を経て――首は引きちぎられた。

 キマイラの首元から勢いよく噴出した液は地面を紅く染め上げた。戦士は無表情のまま手に持っていた獅子の首を地面へと放り投げた。

 余りの凄惨な光景に魔物達は後ずさった。

 アイツは何だ。あの人間は、あの存在は……何だというのだ!?

 つい数分ほど前まで恐怖を与えていた側であるはずの、他の魔物の命など欠片ほどにも関心を持っていなかったはずの彼らが、同族が討たれる様を、キマイラがなぶり殺しにされる様を目の前にして初めて狼狽えたのだ。

 魔物達にとって戦士の存在は最早"人間"や"闖入者"という分類(カテゴリー)から逸脱していた。

 戦士の双眸が魔物達へと向けられる。それは感情などからではなく、残りの敵対者を排除するための機械的な行動のようだった。 

 魔物達には戦士の存在が酷く恐ろしく感じた。

 あれは人の目では無い。そう思った。土塊や機械で出来た人形(ゴーレム)と同じソレのようだ。そう感じた。

 戦士(アイツ)は目の前の目標(ターゲット)を私情無く葬る存在だ。そう認知した。 戦士(アイツ)は淡々と敵を処分する者だ。そう識別した。

 自分達は狩る側では無かったのだ。そう知覚した。自分達は狩られる側にあったのだ。そう自覚した。

 そして魔物達は理解した。奴は自分達を狩りに現われた狩人であるのだということを。 自分達に終焉を告げに来た死神であるのだということを――――。

 

「……ウ、ググ、ヴ、ヴァァァアアアアア――――!!」

 

――恐怖が魔物達を飲み込んだ。

 最初は僅かに抱いていたかどうかすら不明な小さな情感だった。それが同族達の死を通し爆発的肥大化して魔物達の精神を蝕んだ。体内での潜伏期間を終えた病原菌(ウイルス)の獰猛さを以てだ。

 魔物達は正気でいることなど出来なかった。残酷な狩りに耽ることも、命を奪う喜びを感じることも出来なかった。

 唯目の前に現われた生の簒奪者から逃れたいという思いだけが心を埋め尽くしていた。 故にそれを打破するべく彼らが取れる選択肢は唯一つ――戦士を殺すことだけだった。恐慌状態へと陥った魔物達が一斉に戦士へと雪崩れ込んだ。

 戦士は魔物達を応対し、そして悉くを葬った。

 複数体による立体攻撃を仕掛けようと。背後からの奇襲を仕掛けようと。素早さを活かした電撃戦を実行しようと。接近した魔物は近づく端からこの世から消えていった。

 地上での惨劇へと空中を領域とした魔物達が魔法での遠距離攻撃を試みる。彼ら地上の魔物よりかは僅かに正気が残っていた。乱戦状態に陥ったこの状況でなら流石の戦士でも反応しきれないだろうという微かな希望を抱いて魔法を撃った。

 だが――当たらなかった。どれ一つとして。正確に狙って放たれた魔法を戦士は全て避けて、躱して、そして同族を盾にして防いだ。

 何故だ!? 何故当たらない!? 滞空している魔物達にも地上の魔物同様恐怖に呑まれつつあった。

 なにせ戦士の動きが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()であったのだから。

 だったら同族諸共広範囲の魔法で――!! そう考えた時、目の前には戦士の姿があった。戦士は地面を疾駆した慣性のまま壁を蹴ってガーゴイル達空中の魔物へと接近したのだった。

 そして拳が顔面へと叩き付けられ地面へと墜落した。更には地上の者から奪っていた武器を投げつけ空に浮いていた他の魔物を壁へと磔にした。

 空中ですら逃れる場所はない。無情な現実を魔物達は突きつけられてしまった。

 厭だ厭だ厭だ! 死にたくない! 助けてくれェッ! それは皮肉にも、これまで自分達が殺してきたであろう人間が抱いたものを今度は彼らが抱く番だった。

 当然ながら魔物達の心情など戦士が知ったことではない。戦士は何も言葉を発さず冷淡に死体の山を生産していった。

 魔物達の願いは虚しく、数分と経たずに全て掃討されたのだった。

 

   ◇    ◇    ◇    ◇

 

 魔物達が殺されていく様を騎士団長は唯見ていることしか出来なかった。自分達があれだけ苦戦した魔物の軍勢を、何十といた魔物達をたった一人で殲滅する戦士を。

 騎士団長の視線の先では、魔物討伐の功労者たる戦士が陽光で照らされていた。金髪を煌めかせながら佇む彼の姿は絵になりそうな程神秘的だった。

 だが周囲に展開されているのは、真逆の情景だった。足下には魔物だった残骸が転がっていた。肉塊から流れた夥しい量の血で満たされていた。戦士が纏う鎧と同じ色に大地は染め上げられていた。

 目の前で見せられた光景は到底人の所業と呼べるものではなかった。己が駆体を駆使して魔物達を滅ぼしていく様は、戦士の存在が"兵器"であるのだと正しく証明していた。

 樹海の奥深くにあった研究所。その最深部で眠っていた戦士。そして、"0(ゼロ)"という数字。 

 

「奴は一体――」

 

 何者なんだ。小さく発された騎士団長の言葉だけが部屋の中に響いた。

 その言葉が届いたかのように、戦士が半分だけ振り返る。

 (くろ)き瞳が騎士団長を射貫いた。

 




 ちなみ初期案はキマイラとのタイマンではなく、モノクロプスを加えた二体同時戦闘だったので被害は減った模様。

《人物紹介》

・????
 極悪非道の魔王が如き所業をやらかした主人公。しかも二話目にも関わらずまさかのセリフ0。
 服装のイメージとしては、ゼロシリーズのゼロの服装をグラブルの世界観に調整(リデザイン)して人が着てもおかしくない感じに仕上げたもの。要はアルベールとかが纏っているような、軽装鎧とアンダーウェアの組み合わせ。ジャケット部分はロクゼロのものより生地を薄くした上着みたいな感じで。ヘルメットは考えた末にあえて無しの方向に。

・魔物達
 今回の被害者。

・キマイラ=サン
 通常種どころか魔物の群れの中でも目茶苦茶強い方……なのだが、作者の意向のせいで噛ませ犬扱いになった挙げ句しめやかに頭部を引きちぎられた。
 咆吼の声や一部技のモーション(毒液発射)はエグゼ6のグレイガから拝借。ちなみに魔力での防御はグラブルの土キャラのアビを参考。


《元ネタ・技解説》

・両腕による防御
 所謂アームブロック。元ネタは『ロックマンX2』にて敵として登場するゼロが使用する行動。
 技自体はただのガードなのだが、その性能は一言で言えばチート。エックスの放つバスターだろうと特殊武器だろうと将又ギガクラッシュ(システム的にはグラブルのフェイタルチェインに近い)だろうと全部ノーダメージで防いでくる。無論何のバリアも展開せずに。無印リメイク作『イレギュラーハンターX』においても敵のゼロが使用する。そちらは相方エックスとの二対一の状況も相まって相当厄介である。

・アースグレイブ
 四大天司の一人ウリエルが使用する技『アースグレイブⅢ』より。こちらはその下位互換程度をイメージ。
 詳細な範囲や規模は不明だがⅢのエフェクトからしてパーティ全体分の大きさだったのであちらは一個小隊~大隊なら軽く潰せる程度と判断(というか一つの軍程度軽く潰せそう)。それを基準にこちらの範囲は十数人程度を想定。

・鉄パイプ
 元ネタは『ロックマンX4』に登場した一見何の変哲もない唯の鉄パイプ。しかし赤いイレギュラーはシグマ隊長の操るビームサーベルと互角に渡り合っていた。勿論科学が発達した世界なのでパイプ表面に魔法とかを纏ってたりしない。機動戦士よろしくビームコーティングとかも一切施されていない。にも関わらず真正面から弾いていた。(ガチ)
 一説によると、パイプがあったのは赤いイレギュラーの生みの親の研究所だったことからパイプにも魔改造が施されていたか研究の過程で再現されたダマスカス鋼のような希少な金属で造られていたのではないかと云われている。(大嘘)


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