明智恭介と奏者の黙示録 (テレサ二号)
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File1:偽りと契約

初めまして、テレサ二号です!

最近、シンフォギアのアニメを見始めて投稿してみたくなったので投稿させていただきました。
物語は原作1話の少し前からのスタートとなります。

これから少しずつ書いて行きますので、ご愛読していただけると幸いです。
ご注文はうさぎですか?を題材にした小説と書いておりますので、よろしければそちらもご覧ください。

では、本編です!!


薫「うわぁ……こりゃいよいよ万事休すっすかねぇ」

 

薫の目の前には美しい容姿に艶やかな青髪をなびかせた、変わった格好をした美少女が立っていた。

一見、運命の出会いとでも呼べる光景ではあったがそれを否定する確かな要因が1つあった。

それは目の前の美少女が"剣"を構えている事であった。

 

 

 

~~~~遡ること数時間前~~~~

 

薫はパソコンを弄りながらニュースを見ていた。

 

「人気歌手、風鳴 翼(かざなり つばさ)さんの全国ツアーライブがスタートしました。海外進出の噂も立つ彼女のライブに海外からも注目が集まります」

 

薫「風鳴翼ねぇ……」

 

彼の名前は天草 薫(あまくさ かおる)。

本作の主人公である。

身長165cm、体重55kgの小柄。

血液型はB型。

好きな食べ物は特に無く、嫌いな食べ物は沢山ある。

座右の銘は「人間は考える葦(あし)である」

嫌いな言葉は「知らぬが仏」

両親を幼い頃に亡くし、親戚に面倒を見て貰いながら一人暮らしをしておりおり、地元の私立に特待生で通う優秀な生徒である以外どこにでもいる普通の高校生である。

そして、趣味の将棋ではアマチュア日本一になるくらい将棋には力を注いでいる。

しかし将来プロになるつもりはない。

 

 

薫「同年代の女の子にしちゃ可愛い子だよな。まぁ女の子とのご縁が無い俺には全く関係ない事だけど」

 

「続いてのニュースです。ORAXネット銀行の25億円消失事件で会社側が会見を開き、犯人が全く特定できていない事から特異災害対策機動部にも捜査依頼をすると発表しました。巷では"タブリス"の仕業では無いかとの噂が流行しております」

 

タブリスとは数年前から出没し始めたハッカーで、どんな固いロックがかかったセキュリティでもすり抜けるように通過し、その中の情報を閲覧したのち、

"Tavris Attendance!!"(タブリス参上)と翼をイメージしたイラスト付きのメッセージを残して、痕跡を全く残さず消えるというパフォーマンスを見せている天才ハッカーだ。

一年前のアメリカ国防総省へのハッキング行為をアメリカが公表してから一躍時の人となった。

未だにアメリカは犯人を特定できていない。

タブリスの目的は未だ分かっておらず、様々な国の国家機関に入っては国家機密を閲覧して履歴を残して消えている。

薫はそんなタブリスのニュースがとても好きなのだ。

 

薫「おっ!タブリス様のニュースがまたやってるではありませんかー。有名になりましたなー♪」

 

その時、テレビの音量をかき消すほどの大音量のサイレンが鳴り響いた。

 

薫「警戒警報か……。近くにノイズが現れたって訳ね」

 

薫は上着を着ると外に走り出した。

途中までシェルターに向け走っていた薫だったが、急にノイズの事が気になり始めた。

※ノイズの説明についてはアニメや公式サイトを見てね!

 

薫「そういや生のノイズって見たこと無いな……」

 

薫は方向転換すると来た道を戻って行った。

しばらくは走ると薫の目の前の景色は一変した。

壊れた家屋に灰になった人達。

そしてカラフルな謎の未確認生命体。

 

薫「おぉ、これがノイズってやつですか……。触られたら一貫の終わりってか人生終わりってやつだね。これがノイズによって灰にされた人か……」

 

薫は灰を触って調べてみるが、特に変わったことはない。

再びノイズに視線を戻すと、奴等は臨海体勢になっており、恐怖を覚えた薫は再び走り出した。

 

当然ノイズは薫を追いかけた。

元々運動神経は悪くない薫ではあったが、逃げ惑う内にいよいよ逃げ場が無くなって追い詰められていた。

 

薫「やれやれ、これが好奇心は猫をも殺すってやつかねぇ。俺犬派だけど。仕方ない、人生の最後にノイズに灰にされる感覚でも味わうか」

 

薫は両手を上げて、無抵抗の意思を表した。

それがノイズに伝わったかは分からないが、ノイズは一斉に薫目掛けて攻撃をしかけて来た。

 

薫「おもひおく、言の葉なくて、つひにゆく、みちはまよわじ、なるにまかせて」

 

薫は尊敬する偉人である黒田官兵衛の辞世の句を詠んだ。

その瞬間、目の前が光り歌が聴こえ、目の前のノイズ達が消滅した。

 

薫「お、俺に不思議な力が宿った!?」

 

??「そんな訳無でしょ!!」

 

薫の目の前に青髪の美少女が現れた。

 

??「死にたくなければ、そこから動くな」

 

そう言い残し、少女は天を舞う。

その美しさに薫は言葉を失った。

 

全てのノイズを蹴散らすと少女は天から降り立つように着地した。

 

薫「これが風鳴 翼と天羽々斬の能力か……。!?」

 

??「!?」

 

薫は咄嗟に口を覆った。

それと同時に少女はこちらに向き、剣を構えた。

 

翼「貴様……何故その事を知っている」

 

そして場面は文頭に戻る。

 

薫「はて?何の事ですかな?」

 

翼「私と私の能力についてだ」

 

薫「空耳ではありませんか?」

 

翼「そんな訳無いだろ!」

 

薫「そういや、その剣でノイズをスパスパ斬ってたよね?人間も斬れるの?」

 

薫は躊躇せず指先で剣先に触れる。

当然指先が斬れ血が流れ始めた。

 

薫「やっべーー!斬れてる!すっげぇ痛ぇ!!」

 

翼「…………」

 

翼は薫の常軌を逸した行動に戸惑っていた。

その空気を打ち消すように完全武装をした男達に薫は取り囲まれた。薫は両手を上げ無抵抗の意を表した。

 

「動くな!大人しくしろ!」

 

薫「サブマシンガンを持った大きなお友達に抵抗なんてしませんて…………。地獄でも墓でも好きな所に連れて行ってくだせー」

 

両手に重厚な手錠とアイマスクを付けられた薫は翼と共に連行されていく。

 

薫「口は災いの元ってやつですかねぇ。あのぉ、俺はどこに連行されてるんでしょうか?」

 

??「スミマセン、お答する事ができません」

 

優しい声の男が答えた。

 

薫(この声色からして俺への害意は無い、警察関連では無いな。だとすれば取り調べかあるいは……)

 

薫「トイレに行きたくなったらどうすれば良いですか?」

 

??「私が動向します」

 

薫「良かったー♪トップアーティストの風鳴翼に下の世話をさせるのは気が引けてたんですよ~」

 

翼「///!!少し黙っていろ!!」

 

翼から足を踏まれた薫は激痛で黙るのだった。

しばらく行くと薫は車から降ろされどこかを歩かされた。

薫の態度は変わる素振りを見せず、呑気に歌を歌い始めた。

 

薫「♪~♪~♪♪♪」

 

翼「あなたには緊張感と言うものが無いのですか?」

 

??「あはは。でもお上手ですね」

 

薫(歌と声の反響からして長い通路に人の気配は無い。やはり警察や牢屋の類いでは無いな。そして先ほどから歩いている広大な敷地に人の気配が無いとするならば、役所か……いや夜の学校あたりか)

 

薫「どこかにスカウトでもいませんかね?」

 

??「私は翼さんのマネージャーも務めていますので、芸能事務所に推薦しておきましょうか?」

 

翼「緒川さん!!」

 

緒川「スミマセン、私も冗談が過ぎました」

 

薫(マネージャー"も"か……。決まりだな。向かっているのは二人の所属する部署の本部で目的は俺の正体を知る事と、シンフォギアについてどこで知ったかを探ることだろう)

 

しばらく行くとエレベーターのような物に乗せられ、かなり下層部まで降りて行った。

そこからしばらく行った所で薫は部屋に入れられ、椅子に座らせられた。

しかし薫の拘束が解かれる事は無かった。

 

部屋に入るとすぐに薫の指先の治療が施され、相変わらず抵抗の素振りを見せていない薫の治療が終わると明るい声の女性が声をかけてきた。

 

??「はぁ~い♪初めまして、天草薫君?私立の高校生で特待生なんだって偉いね?」

 

薫(身辺調査は済んでいるようだな。しかし問題ない)

 

薫「何で、俺の名前を知ってるんですか!?」

 

??「情報調査は私たちの得意分野ですもの♪私は櫻井了子(さくらい りょうこ)よ。よろしくね♪」

 

薫「お美しい声ですね♪是非とも顔を拝観させていただきたいものです♪」

 

了子「あらお上手♪でもダメよ。あなた将棋のアマチュア日本チャンピオンなんですってね?」

 

薫「そうなんです。目隠ししても指せますよ?どうですご一局?」

 

了子「魅力的なお誘いだけど止めておくわ。それじゃ、本題に入りましょ?翼ちゃんのギアについてはどこで知ったのかしら?」

 

薫「どこだったかな?ネットの噂サイトでその名前を見たんです。良く覚えていませんが」

 

了子「本当に?」

 

薫「本当です」

 

了子「アナタの身辺調査が終わるまでは解放できないから、そのつもりでいてね」

 

薫「自分の家や身の回りについても調べて構いません。早く解放していただけると幸いです」

 

その後、数時間薫は監禁されたままで過ごした。

さすがに飲食とトイレだけは最低限配慮されていた。

そしてやっと薫のアイマスクと手錠が解かれた。

そして目の前には赤服の体格の良い大人が立っていた。

 

薫「いや~、ありがとうございます。無実だって信じて貰えたんですね?」

 

??「いや、まだだ。今から最後の取り調べを行っていく。俺の名前は風鳴 弦十郎(かざなり げんじゅうろう)ここの司令官だ」

 

薫「ここのってここはどこですか?」

 

弦十郎「スマナイ、ここは特異災害対策機動部二課という。対ノイズの特別な部署だ」

 

薫「国家機関ですか?何故俺をこんな所に?取り調べならどこでもできたでしょ?」

 

弦十郎「お前について色々知りたくてな。さて、本題に入ろう。ここの監視カメラや録音機器は全て切っている。つまりここでの話を知っているのは俺とお前だけだ。俺はお前が俺の仲間になれるかどうか試したい、嘘偽りなく話してくれないか?」

 

薫「俺のメリットは?」

 

弦十郎「嘘を付けば俺がお前を銃で撃ち、その後俺も自分の頭を撃ち抜く。嘘が無ければ、ここから無罪で出してやるし俺もここでの会話は他言しない。神に誓おう」

 

薫(嘘を付いている人間の顔では無い。俺が嘘を付けば頭を撃ち抜くつもりだな。どうせ死ぬなら事実を話すか)

 

薫「分かりました。では質問をどうぞ」

 

弦十郎「明智恭介という人物を知っているな?」

 

先ほどまで余裕の笑みを浮かべていた薫の表情は一瞬で激昂に変わり、弦十郎に飛び掛かった。

 

薫「何故その名前を知っている?」

 

弦十郎「明智恭介(あけちきょうすけ)。システムエンジニアの明智圭吾とその妻の美夏の間の子供で10才の時に両親が亡くなり、その後12才の時に亡くなっている。そして有名な探偵明智小五郎の子孫にあたる」

 

薫「…………俺だよ。俺が明智恭介だ」

 

弦十郎「では天草薫は誰だ?」

 

薫「天草 薫は俺が13才の時に金で戸籍を買った同い年のホームレスだよ。今じゃ生きてるのか死んでるのか知らないがな」

 

弦十郎「お前は一体何者なんだ?」

 

薫はしばらく悩んだ後に、全てを洗いざらい話し始めた。

 

薫「まずは前提として俺も真実しか話さないから、疑うのは止めてくれないか?いちいち肯定するのは面倒だからな」

 

弦十郎「あぁ、元よりそのつもりだ」

 

薫「タブリスって知ってるか?」

 

弦十郎「知ってるも何もニュースでその名を聞かない日は無いくらいの有名人だろ。ウチも機密情報を閲覧されてる被害者だしな」

 

薫「俺がそのタブリスだ。だからシンフォギアについても風鳴翼についても知っていた。今日はたまたま口が滑ってしまってこのザマだがな」

 

弦十郎「お前がタブリスだと!?…………しかしそう考えると辻妻があう」

 

薫「逆に俺からも聴かせてくれ。何故俺の正体が分かった?」

 

弦十郎「この部屋に入ってきて最初に指先の治療をしたろ、あの血液からDNA判定をしたのさ。勿論、俺個人の単独の調査だがな」

 

薫「あの時か……。指先を切ったのはウカツだったな」

 

弦十郎「今度は俺の質問だ。何故、そんな危険な事をしてまで世界中の国家機関の機密情報を閲覧する?」

 

薫「俺と祖先の明智小五郎は良く似ているらしくてね。異常性癖なのさ。知識欲が満たされると興奮する体質なんだ。だから、世界中の国家が隠している機密を片っ端から閲覧していた」

 

弦十郎「ハッキング技術は独学か?」

 

薫「システムエンジニアの両親の部屋にはその手の資料が沢山あったからね。子供だから分からないだろうと思ってたんだろうけど、色々学ばせて貰ったよ」

 

弦十郎「今までどんな犯罪を犯した?」

 

薫「ネット犯罪はほぼ全部だ。戸籍も金で買ってからデータベースを弄って俺の写真を使って色々改竄したり、マネーロンダリングやネットバンキングの口座をまるごと盗んだり。アルバイトで一流企業のデータベースを全て破壊したこともあったな。最近だとニュースで話題のORAXネット銀行の25億円消失事件の犯人も俺だ。ただあれは暴力団や汚職で稼いだ政治家の資金をまるごと抜いてやっただけだがな」

 

弦十郎「本当にタブリスなのか?」

 

薫「疑わないって言っただろ。そうだな……。ここにパソコン1台持ってきてくれたら、ここのデータベースも破壊して見せようか?」

 

弦十郎「いや、充分だ。元々疑ってはいない」

 

薫「それで?俺の事がただ知りたいって訳では無いのだろ?」

 

弦十郎「あぁ、大事な話に移ろう。ウチの部署は今、誰かも分からぬ相手と闘おうとしている。その上ウチには密偵が潜んでいるみたいでな。こちらの動きは相手に読まれている事が多い。だからお前をウチに迎え入れ、相手の調査と密偵を探す手伝いをしてほしい」

 

薫「俺のメリットは?」

 

弦十郎「奴らは世界中の誰も知らない情報を隠し持っている。それを一番に知る権利をお前にやろう。どうだ?」

 

薫「!!」

 

薫の密偵探しのリスクに比べれば何と言うリターンの低さ。ハイリスク・ローリターンである。

しかし薫はこの提案に高揚を隠せない。

元々常軌を逸した人間なのだ。

 

薫「この部署での俺の肩書きは?」

 

弦十郎「作戦司令官補佐だ。表向きでは将棋アマチュア日本一の戦術を存分に指揮として奮って貰い、その裏では密偵を探す内偵と言った所だ」

 

薫「もし相手の正体が分かって、相手の方が面白そうなら相手側に乗り換えてしまうかもしれないぞ?」

 

弦十郎「その時はその時さ。"虎穴に入らずんば虎子を得ず"。危険を犯さなければそれなりの成果が得られる相手では無いし、"蛇の道は蛇"。その道はその道はプロに任せるのが一番だ」

 

薫「面白い!!乗るぞ!!その話!!」

 

弦十郎と薫は固い握手をした。

よってここに"特異災害対策機動部二課 作戦司令官補佐:天草薫"が誕生日した。

 

この出会いをきっかけにこの日から薫の悪に染まりきっていた日常が慌ただしく変化していくのだった。

 

 




いかがでしょうか?
初めてシンフォギアの作品を書いてみましたが、ごちうさの5倍くらい時間がかかりました。
原作は無印を一回見ただけなので、設定が色々甘くても多目に見てやってください(  ̄▽ ̄)

拙い文章ではありますが、これから少しずつ更新して行きたいと思います!
次回からはもっと女の子出てきますので!

冒頭でも言いましたが、ごちうさの小説も宜しければ是非!!

ではまた次回!ほなっ!(^^)ノシ


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File2:出会いと約束

どうもテレサ二号です!

投稿2話目で挫折しそうになりました(  ̄- ̄)
筆が全く乗らない……。

しかしようやくアニメの二期まで見終わりました\(^^)/
マリアさんええな(*´-`)

では本編です!


弦十郎「・・・」

 

一同「・・・」

 

今日はいよいよ天草薫の初出勤日である。

しかし彼の出勤時間である9時を過ぎたが薫は現れない。

 

緒川「あの?司令官がスカウトしたって男の子はいつやってくるんですか?」

 

弦十郎「9時だ……」

 

一同「・・・」

 

それから30分後に慌てて走って来た薫が汗だくになりながらも自己紹介を始めた。

 

薫「天草薫です!アマチュア将棋日本チャンピオンの思考力を風鳴司令に評価され、この特異災害対策機動部二課に作戦司令官補佐としてスカウトされました!昨晩は緊張で眠れず寝坊をしてしまいましたが、今後はこのような事が無きように注意したいと思います!よろしくお願い致します!」

 

薫が頭を下げるとチラホラ拍手が湧いた。

その後二課のメンバーの紹介を受けた後、司令室に呼び出された薫は弦十郎に説教をされていた。

 

弦十郎「勤務初日から遅刻とはどういう事だ!」

 

薫「仕方ねーだろ。昨日は色々調べてたんだよ」

 

弦十郎「それで寝るのが遅くなった訳か?」

 

薫「いや、10時には寝たし7時には起きたからな」

 

弦十郎「では何故遅刻した?化粧に時間が掛かった訳では無いだろう?」

 

薫「お、オッサンもそんな冗談言えるんだな」

 

弦十郎「お前の事だ。何か理由があったんだろ?わざとじゃないなら許してやる。訳を話せ」

 

薫「わざとだけど?」

 

弦十郎「だったら許せるか!ウチのような組織は規律も大切なんだ。初日から遅刻するような奴を信用する訳ないだろ!!」

 

薫「オッサン頭硬いな?頭皮が硬いとハゲになりやすいらしいぞ?それに逆だよオッサン。まずどこの誰かも分からない奴が入ってきて、作戦司令官補佐として活躍したらできる奴だと思われて密偵に怪しまれるだろうが。遅刻してまずは評価をマイナスにしてから、作戦司令官補佐として実践で活躍すれば指揮能力だけは使える奴ってインプットされるだろ?相手の油断や隙を誘うのは兵法の基本だぜ?」

 

弦十郎「なるほどな……。お前にはつくづく考えさせられる」

 

薫「将棋でも相手が格下の場合は角か飛車を先にわざと渡したりする事もするぜ。優位性を持った人間はその優位を優先的に行使する分行動は読みやすいからな。覚えておきな」

 

弦十郎「話は分かった。遅刻についてももういい。それで?昨日調べていた事は何か分かったか?」

 

薫「なーんにも。そもそも元々啓示されてる資料だけだと推測する根拠が少な過ぎる」

 

弦十郎「推測の範囲内でいい。お前が思う最悪のケースを教えてくれ」

 

薫「あくまで俺が事情を勝手に解釈して想像した推測だけどいいのか?」

 

弦十郎「頼む」

 

薫「最悪のケースは相手側にシンフォギア奏者がいて、人類を滅ぼす手段を構築段階まで進めてる」

 

弦十郎「人類を滅ぼす?」

 

薫「だから最悪のケースだって言ったろ?相手の目的は分からないがこれが最も最悪のケースだろ」

 

弦十郎「渡した資料の中に何か気になる所はあったか?」

 

薫「むしろ怪しい所しか無かったけど、特に気になったのは10年前の聖遺物イチイバルの紛失事件と2年前のツヴァイウィングのライブ強襲事件、その裏で行われていたネフシュタンの鎧の起動実験と鎧の失踪事件だな」

 

弦十郎「イチイバルの紛失事件は不明な所が多い。前司令官である俺の親父の風鳴訃堂が司令官だった時に起きた事件で、イチイバルの紛失の責任を取って親父は二課の司令官を辞任した。その二代目として公安警察だった俺に白羽の矢が立った訳だ。」

 

薫「紛失事件自体はそこまで気にならないが、イチイバルのコンバータをコレクションとして観賞用にする訳無いだろ?それに過去を調べさせて貰ったがシンフォギアの奏者候補者が何人も行方不明になってるんだろ?その行方不明者達を使ってイチイバルの適合試験をしていると考えれば辻褄が合う。その中で適合者が見つかっていても不思議では無いだろう」

 

弦十郎「ではいずれイチイバルの適合者が表舞台に出てくると?」

 

薫「その時は相手の親玉も一緒に出てくるかもしれないな」

 

弦十郎「ネフシュタンの鎧も気になるのは同じ理由か?」

 

薫「それもあるが、一番気になったのはノイズの出現の場所とタイミング、そして何故ネフシュタンの起動実験をギア奏者のツヴァイウィングのライブの日に合わせて裏で行ったのか。俺には初めからネフシュタンの強奪を目的に誰かが故意的に仕組んだとしか考えられない。だとすると親玉は案外近くにいるのかもしれないな」

 

弦十郎「ノイズの出現はイレギュラーで自然災害のような物だろう?」

 

薫「普段イレギュラーで出現しているのはこういった時のカモフラージュにしか俺には見えない。何者かがノイズ出現の鍵を握っているのかもな。ここ最近のノイズの出現パターンを漁ってみたが、明らかにこの施設周辺が特出している。恐らく敵の狙いは奏者の風鳴翼か完全聖遺物のデュランダルのどちらかだろう……。近々仕掛けてくるかもしれないから警戒は怠るなよ?」

 

弦十郎「分かっている。ウチに奏者は翼しかいないんだ。翼を失えばウチは烏合の衆と言っても過言では無いからな」

 

薫「新しいシンフォギア奏者でも都合良く現れませんかねぇ」

 

薫は腕を組みながら考えていた。

そして思い出したように弦十郎に確認をした。

 

薫「そういえば俺が作ったセキュリティ強化のプログラムは導入してくれたか?」

 

弦十郎「あぁ、セキュリティ強化にすぐに着手してくれて本当に助かった」

 

薫「なに、あのプログラムはセキュリティ強化なんて付け焼き刃程度でしかねぇよ」

 

弦十郎「なんだと?」

 

薫「あのプログラムのセキュリティ強化は表向き、実質の本命はデータの行き来を監視して不正な流出があればそこを辿るプログラム、名付けて"レリエル"だ」

 

弦十郎「名前は大事なのか?」

 

薫「名前が無ければ愛着が湧かないだろ?このプログラムで密偵を見つけられれば最高だけど、おそらく見つからない。それでも情報が流出するなら恐らく密偵は二課の中にいる事になる。相手が俺並みかそれ以上のハッカーなら話は別だがな」

 

弦十郎「了解した。引き続き調査を実施してくれ」

 

薫「りょーかい」

 

弦十郎「それと俺からお前にプレゼントがある、明日の午前8時にここに来てくれ」

 

薫「明日は学校なんだけど?」

 

弦十郎「そっちも上手くやっている。いいからここに8時だ。明日は遅れるなよ」

 

薫「???」

 

薫は首を傾げながらも了承するのだった。

 

 

~~~次の日~~~

 

??「それでは転校生を紹介する。天草薫君だ」

 

薫「私立リディアン音楽院高等科二回生に転校して来ました天草薫です。本校は女子校ですが、前校の校長と本校の校長の意向により特別留学生として本校に転校させていただくこととなりました。自分の事はフランクに薫と呼んでいただけると嬉しいです。よろしくお願い致します」

 

薫が深々と頭を下げると歓声と拍手が沸き起こった。

 

きっかけは今朝の8時である。

 

薫「オッサン来たぞ」

 

弦十郎「司令官おはようございますとか言えないのか?」

 

薫「そりゃ表向きの挨拶だろ?俺達は上司でも部下でもねぇんだからそこまでする理由はねぇよ」

 

弦十郎「全く……お前らしいな」

 

薫「それよりプレゼントは?吉川里穂の写真集でもくれんの?」

 

弦十郎「好きなのか?」

 

薫「結婚できるなら結婚してぇ。25億あるから金で釣れねぇかな?」

 

弦十郎「悪銭だろうが!それよりプレゼントはこれだ!」

 

弦十郎の手には制服が握られている。

 

薫「制服?どこの制服だ?」

 

弦十郎「ここ、私立リディアン音楽院の制服だ」

 

薫「誰が着るんだ?」

 

弦十郎「お前に決まっているだろう?」

 

薫「はっ!?何で俺がここの制服着なくちゃいけないんだよ!」

 

弦十郎「お前の今の学校とこことは距離があるからな、特別留学生としてリディアン音楽院に転校することを両校の校長に許可いただいた。これは決定事項だ」

 

薫「…………ここ女子校じゃなかった?」

 

弦十郎「ハーレムな毎日を送れるな薫!」

 

薫は出口に向けてダッシュしたが弦十郎に首根っこを掴まれた。

 

薫「嫌だ!絶対に転校なんてしないぞ!」

 

弦十郎「いい加減諦めろ!それに翼の近くに内通者がいる方が都合がいいんだ!」

 

薫「はぁ……。分かったよ、通えばいいんだろ?」

 

弦十郎「部屋はどうするんだ?」

 

薫「基本的には通うよ。ただし必要時はこの司令室に泊まらせてくれ」

 

弦十郎「お前がそれでいいなら構わない」

 

こうして私立リディアン音楽院の特別留学生の天草薫が誕生した。

 

薫(いつかオッサンの恥ずかしい過去を見つけて世間様に暴露してやる!)

 

 

挨拶を済ませた薫は転校手続き等で本格的に授業に参加するのは来週となっていた為、校内を散策がてら見回っていた。

すると目の前に木から降りられなくなっている猫を助けようとしている女の子がいた。

 

薫「こんな所で何をしているんだい?」

 

??「この子が降りられなくなっちゃったみたいで……。可哀想だから助けてあげようと思って」

 

薫(実益も無いのに変わった子だな)

 

するとドジな猫が足を滑らせ木から落ちそうになったのを女の子は反射的に抱き抱え、猫と一緒に落ちてきた。

しかし薫は反射的に女の子と地面の間に滑り込み緩衝材の代わりをはたした。

 

薫「ゴフッ!」

 

??「大丈夫ですか!?私重たくないですか!?」

 

薫「頼むから早く降りてくれないかな?」

 

??「す、スミマセン!!//」

 

女の子は薫から飛びのくと薫は身だしなみを整え、女の子と正対した。

 

薫「ケガは無いかい?」

 

??「はい!ありがとうございました!この子も大丈夫だったようです!」

 

薫「なら良かった。それじゃあ、俺はこれで」

 

??「あの!」

 

薫「???」

 

??「あの、名前を教えて貰えませんか?今度ちゃんとお礼をしたいので」

 

薫「お礼なんていいさ。俺が勝手に助けて、君が勝手に助かっただけなんだから」

 

??「あはは、変わった人ですね。それでもちゃんとお礼させてください」

 

薫「天草薫、二回生に今日転校してきたんだ」

 

??「転校生さんですか!?」

 

薫「訳ありでね。その辺は突っ込まないでくれると助かる」

 

??「私は立花響(たちばなひびき)、一回生です。趣味は人助けで好きな物はご飯&ご飯!」

 

薫「響ちゃんだね?よろしく。それより一回生がこんな所にいていいの?もう授業始まってるんじゃない?」

 

響「え?…………もうこんな時間!?急がなきゃ!先生にまた怒られちゃうよ~!」

 

そういうと響は走って校舎に向かった。

薫は響を見送るとそのまま指令部へと足を向けるのだった。

 

薫が指令部の入口付近まで来ると入口の前に風鳴翼が立っていた。

 

薫「どうもこんにちわー。俺に何か御用ですか?」

 

翼「……お前は一体何者なんだ?」

 

薫「天草薫16歳。趣味は将棋です。そういえば同じ学校の生徒になったんでしたね。よろしくお願いしますね、風鳴先輩」

 

翼「誤魔化すな!何者かも分からないお前を信用できるわけないだろう」

 

薫「信用できないって言われましても困りますねぇ……」

 

翼「そのヘラヘラした感じもだ!上辺を取り繕って心を誰にも見せない仕草もだ!」

 

その言葉に薫の目付きは変わった。

 

薫「あんたも当事者なら答えを求めるばかりじゃなくて自分で見つけてみろよ。心配しなくてもあんた達の役には立つし、今のところあんた達の敵になるつもりもねぇ」

 

翼「お前……」

 

薫「そうだ勝負しませんか?」

 

翼「勝負?」

 

薫「あなたが俺の正体を突き止めるができたら、貴方の質問に何でも答えましょう。それまではあなたからの俺自身に関わる質問には答えません」

 

翼「正体?天草薫では無いのか?」

 

薫「その答えは適切では無いとだけお答えしましょう」

 

そして薫はいつもの表情に戻った。

 

薫「それでは頑張ってくださいね?風鳴先輩♪」

 

薫は司令室に入っていく。その姿を翼は眺めていた。

 

翼「あいつは一体……」

 

その時、ノイズの襲来を知らせる警報が鳴り響いた。

翼は慌てて司令室に入る。

 

翼「ノイズですか?」

 

弦十郎「あぁ。翼は現場に急行し一課と連携してノイズを討伐してくれ」

 

薫「その必要はありませんよ。相手は小型ノイズ数十体と中型ノイズ一体、ならばヘリで敵の群れの中に落下し"逆羅刹"と"千ノ落涙"で小型ノイズを一蹴した後に、中型ノイズを"蒼ノ一閃"でカタをつけるでどうでしょう?」

 

翼「お前……私の戦い方を覚えたのか?」

 

薫「これでも"作戦司令官補佐"なんでね」

 

弦十郎「しかしそれでは翼に危険が!」

 

薫「ノイズとの戦いは時間が全てです。唯一の奏者である風鳴先輩に危険は付き物です。これ以上被害を出さぬ為、一課と自衛隊には小型ノイズの進路を膨らませない為に1ヶ所に纏まっているように通達ください」

 

薫は弦十郎に指示すると翼の方を向いた。

 

薫「損な役回りを押し付けてしまいスミマセン。それでもこれが俺の考えるベストな選択だと思います。引き受けてくれますか?」

 

先ほどまでのおちゃらけた様子は全く無く、薫は真摯な態度で翼に語りかけた。

その態度に少しだけこの男を信用しようと翼は決めた。

 

翼「案ずるな。それが防人の務めだ。それに作戦司令官補佐としてお前が考えた作戦なら、自分の出した答えに胸を張れ。その答えが正しかったのだと私が戦場で証明してきてやる」

 

翼は薫に微笑むとヘリに向け走り出した。

初めて見た翼の微笑みに薫は柄になく顔を赤らめていた。

 

弦十郎「惚れるなよ?」

 

薫「善処します」

(今度CD買お)

 

その後、現場に急行した翼の活躍により被害は最小限に食い止められ、薫の初仕事は無事成功に終わるのだった。

この日を境に薫は少しずつ翼に心を開き始めるのだった。

 

 




いかがでしょうか?

原作への理解度がまだまだな所はありますが、少しずつ勉強しながら書いておりますので時間を要しております(;´_ゝ`)

もしかしたらこれな今年最後の投稿になるかもです。

それでもいいよって方はお気に入り登録お待ちしておりますm(_ _)m

ではまた次回!ほなっ!(^^)ノシ


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