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0羽 無口な少年と少女の出会い

「お前はいらないやつなんだよ!!」

「お前の声を聞くだけでイライラする!」

「もう一生喋るな!!」

 

 

 物心ついた頃から言われ続けた言葉だった。

 

 僕のお父さんは俗に言うヒモだった。そして、ギャンブル好きでもあった。

 僕への暴力もただの八つ当りだった。

 お母さんはそんな、お父さんの言動に耐えられなくなり僕を置いて家を飛び出してしまった。

 言ってしまえば僕を身代わりにしたのだ。

 

 お父さんは僕への暴力がさらに強くなった。学校にも行けずひたすら殴られちょっとでも声を出せばさらに殴られた。

 そんな、毎日が約5年続いた。

 気が付けば僕は、喋らなくなっていた。声の出し方を忘れてしまったのだ。

 

 そんな、ある日11歳になった僕にお父さんはこれまでにないほどに暴力をふってきた。理由は競馬で負けたからだった。

 殴られ蹴られ口の中を切ったのか血の味が口に広がった。僕は、限界だった隙を見つけて家を飛び出した。

 

 雨が降る中ひたすら走り続けた

 途中何回か転んで膝から血を流したが、痛いのを我慢しながら走った。

 しかし、小学生の体力では限界があった。

 

「!!」

 思いきり転び、立ち上がることが出来なかった

 膝に力が入らないのだ。

 

(ここまでかな)

 冷たい雨に打たれながらそんなことを思いながら意識を離した。

 

 

「!!ちょっと君大丈夫!?」

「ひどい怪我だ、とりあえず病院へ!」

 

 

 

 

 僕は、気が付いたら見知らぬ部屋のベットにいた。

 

(ここは?)

 

 周りを見渡しているとピョコと桃色の髪をした女の子かこっちを覗きこんできた。

 

「あなたおなまえは?」

「…………」

「わ、わたしココア! きみは?」

「………………」

「う、うぇ~ん!」

「!?」

 

 

 喋れず無言でいると桃色の女の子が泣き出してしまった。どうしたもんかとオロオロしていると

 

「あら、目が覚めたのね♪」

 

 ドアから桃色の長い髪をした女の人が入ってきた。

 

「うぇ~んおかあさん~!」

「あらあら、どうしたのココア」

「お、おなまえおしえておしえてくれない」

「そう」

 

 女の人は泣いている女の子を落ち着かせながら僕のほうをじっと見てきた。まるでなにもかも見透かされているような気持ちだった。

 

「ココア~?」

「おねぇちゃん~!」

 しばらくしてココアと呼ばれていた女の子より少し背の高い女の子がでてきた。

 

「モカ、ココアをお願いね私はこの子と少しお話しするから」

「うん!わかったよママ」

 

「さてと」

 そういうと女との人はベットの隣へと腰掛けた。

 

「あなた、喋れないのよね?」

「!?」

「順に説明するわね」

 

 そこからおれはいろんなことを話してもらった。

 僕のお父さんは虐待の罪で刑務所に入ったこと。

 ここにいる女の人とその夫が俺を助けてくれたこと。

 さっきの女の子がこの人の娘のココアとモカであること。

 そして、僕かこの人達の養子になったこと。

 

 

 僕が喋れないのを知ってたのは、お父さんの虐待をしていることを知り医者にもしかしたら喋れなくなってるかもしれないと言われたかららしい。

 

 

「それでどうする? あなたさえ良ければ私達の養子になってほしいの。年齢的にココアと同じぐらいだから、ココアの弟になるかしらね」

「……」

「もしかして、何か言いたいことがあるの? そしたら、はい紙とペン」

 

 

 僕は、渡された紙に書き始めた。

 本当にここの養子になっていいのか、あなた達の息子になってもいいのか、……家族になってもいいのか

 書いた紙をココアのお母さんに見せると

 ギュッ

 強くそう強く抱きしめられたのだ

 

 

「いいのよ私達の息子になって家族になってもいいのよ」

 そう言われた瞬間眼から涙が出始めた

 お父さんからの虐待で泣くことさえあきらめて約5年は泣いていなかったのに不思議と涙が溢れて止まらなかった。

 僕は、この日保登家の一人になったのだ。

 そこから、家族に紹介されたり、僕が喋れないのを説明したり引かれるかと思ったがお兄さんもモカさんやココアさんは僕を受け入れてくれた。

 

 

 

 それから、約3年の月日が流れた。

 俺は、14歳になっていた。あれからなんとか喋れるようになった。もちろん、保登家の人達のおかげだ。しかし、やはり後遺症のようなもので必要最低限しか喋れなくなってる。

 

「シノン~」

 シノンとは、俺の名前だココアのお母さんが俺につけた新しい名前だ。

「…………?」

「もう! こんな所にいた。もう!今日がなんの日かわかってる?」

「………………発表」

「わかってるならよろしい!」

 そういうとココアは嬉しそうに俺の手を引っ張った。

 そう、今日は俺とココアの高校の合格発表の日なのだ

 

 結果はもちろん、合格

 春から俺とココアは木組みの家と石畳の街にある香風さん家に居候させてもらい。高校に通うことになる。

 

 

「楽しみだね!シノン」

「…………」コクッ

 

 

 

 

 

 

 …………これは、無口な少年と5人の少女達の物語

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございます。
第0羽は主人公とココアの出会いになります。
投稿は気ままにするので過度な期待はしないでください。
展開が速いことには気にしないでください。


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1羽 無口な少年と青い少女との出会い

長い間投稿しなくてすみませんでした。
今回も過度な期待はせず、あたたかい目でご覧いただけるとうれしいです。
それと、お気に入り登録していただき本当にありがとうございます。



 

 

「わぁ~!可愛い街、ここならやっていけそう! ね? シノン!」

 

「………………」コクッ

 

 

 

 

 

 俺とココア姉は春から高校に通うべく新しいこの木組みの家と石畳の街へとやってきた。

 

 

 

 

 

 ちなみにココア姉と呼ぶようになったのは、高校に合格したときだった。

 

 それは、俺が保登家の養子になったときココアにお姉ちゃんと呼ぶことを強要された。

 

 

 

 しかし、喋れない俺はそれを断りしばらくして、少しは喋ることができるようになったがココアをお姉ちゃんと呼ぶことを断り続けた。

 

 

 

 そして、中学3年の時ココアからある提案をされた。

 

「私が高校に合格したら私のことお姉ちゃんて呼んで!!」

 

 

 

 

 

 俺達が目指していた高校は、ココアはあと少し点数が足りなかった。その原因は、苦手な文系が足を引っ張っていたからだ。

 

 そして、ココアは苦手な文系を猛勉強し見事に合格。

 

 その日から俺は、ココアのことをココア姉と呼ぶようになった。

 

 

 

 

 

 

 

 今、俺とココア姉は、これから、居候させてもらいその代わりに住み込みとして働くことにもなっている香風さん家を探している。

 

 

 

「それにしても、香風さん家てどこにあるんだろうね?」

 

「……………………地図」

 

「地図? あー!そういえば地図があったね!さすが! 私の弟!」

 

 

 

 ……………………俺の姉はどこか抜けてる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その時、路地裏からかすかに叫び声が聞こえてきた。

 

 様子を見てみるとウェーブのかかった金髪の少女が、涙目に怖がっていた。…………うさぎに

 

 

 

 シャロside

 

 

 

 

 

「う~不良野良うざき、怖い!噛まれる!」

 

 こんなことなら特売に間に合うために近道なんてするんじゃなかった。

 

 

 

 その時不良野良うざきがシャロに飛び掛かろうとした。

 

 

 

「きゃあああああ!助けて──!!」

 

 

 

「あ、あれ?」

 

 いっこうにこないうさぎに疑問を持ち、恐る恐る目を開けると黒髪の男の子がうさぎを抱えていた。

 

 

 

「………………」

 

「あ、あの?」

 

「…………………………大丈夫?」

 

「え?あ、はい!大丈夫です!」

 

「……………………………………」

 

「あの、助けていただきありがとうございました」

 

「…………………………………………」コクッ

 

 

 

 黒髪の男の子は頷くと不良野良うざきをそっと降ろし、シッシッと逃がし始めた。

 

 

 

「……………………じゃあ、これで」

 

「え!? いや、あの何か、お礼を」

 

「……………………………………大丈夫」

 

 

 

 そういうと少年はどこかへ行ってしまった。

 

 

 

 

 

「お礼したかったなぁ、また会えるかな」

 

 

 

 

 

 

 

 シノンside

 

 

 

 金髪の少女をうざきから助けたあと俺は、あることに気がついた。……………………ココア姉がいない。

 

 地図は、ココア姉が持っているし…………どうしょう。

 

 とりあえず、道なりに進むか。

 

 

 

 

 

 そのころ、ココアは野良うさぎを追いかけていた。

 

 

 

 ココアside

 

 

 

「うさぎ♪うさぎ♪あ~可愛い!ね!シノン。あれ?シノン?シノンがいない!」

 

 

 

 シノンと離れて約30分後に気が付いたココアであった。

 

 

 

「とりあえず、香風さん家に行こう!多分シノンも向かってると思うし」

 

 

 

 しばらく歩いていると

 

「ラビットハウス!きっとうさぎがいっぱいいるんだ!」

 

 

 

 カランカラン

 

 

 

「……いらっしゃいませ」

 

「うさぎ♪うさぎ♪」

 

 あれ?店内を見渡すとうさぎはいなかった

 

 一応机の下も見てみるが一匹もいない

 

 

 

「うさぎがいない!」

 

 

 

「なんだ、この客……」

 

 ココアが席につくと店員さんの頭の上に白いモジャモジャしたものが乗ってるのに気づく

 

 

 

「……モジャモジャ」

 

「これは、ティッピーです。一応うさぎです」

 

「うさぎ!」

 

「あの、ご注文は?」

 

「じゃあ、そのうさぎさん!」

 

「非売品です」

 

「じゃあ、モフモフさせて!」

 

「コーヒー1杯につき一回です」

 

「じゃあ、3杯!」

 

「!」

 

 

 

 店員さんは、驚きながらもコーヒーを作り始める。

 

 

 

「お待たせしました」

 

「3杯たのんだから、3回モフモフする権利を手にいれたよ!」

 

「その前に速くコーヒー飲んでください」

 

「うん!それもそうだね!」

 

 

 

 1杯目

 

「う~んこの上品な香り!これがブルーマウンテンだね!」

 

「いえ、コロンビアです」

 

 

 

 2杯目

 

「この酸味……キリマンジャロだね!」

 

「それが、ブルーマウンテンです」

 

 

 

 3杯目

 

 

 

「安心する味!インスタントの」

 

「うちのオリジナルブランドです」

 

 

 

「え?うん!どれも美味しい!」

 

 

 

 3杯飲み終えたココアはティッピーをモフモフし始めた。

 

 

 

「あ~気持ちいい~モフモフだぁ~あ、よだれが」

 

「のおおおおお!」

 

「え!? 今、この子にものすごくダンディーな声で拒絶されたよ!」

 

「私の腹話術です」

 

「え?でも」

 

「私の腹話術てす。それよりもティッピー返してください」

 

「もう少しだけ~」

 

 

 

 

 

 

 

「私ね、この春からこの町の高校に通うの! 

 

 それでね、下宿先探してたら弟とはぐれちゃて」

 

「下宿先ですか?」

 

「うん! 香風さんていう家なんだけど香る風て書くんだけど」

 

「香風は家です」

 

「えー! これはもう偶然を通り越して運命だよ!」

 

 

 

「弟さんは、大丈夫なんですか?」

 

「うん、下宿先が香風さん家てことは、知っているから」

 

「弟さんは、地図なんかを持っているんですか?」

 

「私が持ってるよ?」

 

「それじゃあ、弟さん私家わからないと思いますよ」

 

 すこし、呆れ声でいうと

 

「あー!!」

 

「今、気付いたんですか?」

 

「さ、探しに行かなきゃ!」

 

「ま、待ってください。入れ違いになるかも知れませんし私が行きます。今、お店を閉めますから」

 

 

 

 そう言いながらドアを開けて外に出ようとしたとき

 

 なにかとぶつかった。

 

 ぶつかったせいで後ろに倒れそうになるが腕をつかまれて倒れることはなかった。

 

 

 

 そっと目を開けると黒髪の男の人が心配そうにこちらを見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これが、無口な少年と青い少女の出会いだった。

 

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございます。
今度の投稿も気ままにするので
気長に待っていただきたいと思っています。
できるかぎり頑張ります。


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2羽 無口な少年と紫き少女との出会い

今年もよろしくお願いします。
長い間投稿出来ずにすみませんでした。




 チノside

 

 

 

「………………大丈夫?」

 

「え、あ、はい」

 

 

 

 心配そうにこちらを見る、黒髪の男の人に腕を少し引っ張てもらい体を起こしてもらう。

 

 

 

「…………………………怪我はない?」

 

「あ、はい大丈夫です」

 

 私がそういうと男の人はホッと安心した顔をし

 

 

 

「……………………良かった」

 

 

 

 そう言って微笑んだ。

 

 私はその時少しドキッとしてしまいました。

 

 

 

 

 

「あー!!シノン!」

 

「…………………………ココア姉」

 

 

 

 ココアさんは満面の笑顔で弟さんに思いきり抱きつきました。

 

 

 

「シノン~!会えて良かったー!」

 

「…………………………」コクッ

 

「シノン!シノン!シノン~」

 

「……………………………………ん」

 

 

 

 黒髪の男の子は少し微笑みながら優しくココアさんを撫で始めました。

 

 

 

「あ!チノちゃん、私の弟のシノンたよ!」

 

「はじめまして香風 チノです」

 

「……………………………………保登 シノンです」

 

 

 

 

 

 そう言いながらシノンさんは、軽く首を傾げていると横からココアさんが

 

「ねぇねぇ!シノン! 探してた下宿香風さん家ここだったの!」

 

「……………………!………………お世話になります」

 

 

 

 少し驚いた顔をし軽くお辞儀しながらそう言いました。

 

 

 

「あ!そうだチノちゃんマスターさんはいる?ご挨拶したいんだけど」

 

「祖父は去年……」

 

「そっか今は、チノちゃんが一人で切り盛りしているんだね」

 

「いえ、父もいますしバイトの子が一人……」

 

「私のことをお姉ちゃんだと思って何でも言って!」

 

「!」

 

 

 

 私に抱きつきながら目をキラキラさせながらココアさんが言ってきました。

 

「だからね、お姉ちゃんて呼んで」

 

「では、ココアさんと」

 

「お姉ちゃんて呼んで」

 

「ココアさん」

 

「お姉ちゃん!」

 

 

 

 そんなやりとりをしているとシノンさんがココアさんの肩をたたき

 

 

 

「………………………………仕事」

 

「?」

 

「あー!そうだった!チノちゃん、私達の学校の方針でね下宿させてもらう代わりにそこの家でご奉仕することになってるの」

 

「家で働くということですか」

 

「うん!」

 

「でも、家事は私一人でできますし仕事も十分人が足りているので」

 

「いきなりいらない子宣言されちゃた」

 

 

 

「それじゃ改めてチノちゃんお姉ちゃんて……」

 

「ココアさん早速働いてください。シノンさんもお願いします」

 

「………………」コクッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが更衣室です。制服はロッカーの中にあります」

 

「シノンさんは、この制服を更衣室は一つしかないので部屋で着替えてもらう形になります」

 

「………………」コクッ

 

 チノちゃんからバーテンダーの制服を貰い、案内され部屋にいき着替え始めるシノン

ココアもまた更衣室で着替えようとしていた。

 

 

 

 ココアside

 

 

 

「~~♪」

 

「ん?なんか、誰かに見られている気がする」

 

ちょっと気になってロッカーを開けてみると

 

 

 

 紫の下着姿の女の子がいた。

 

 

 

「完全に気配を消したつもりだったのに……お前は誰だ!」

 

 そう言いながら拳銃を向けるリゼ

 

「お、お、落ち着いて!わ、私は、今日から働くことになっているココアです!」

 

「そんなこと聞いてないぞ怪しいやつめ!」

 

 

 

 今ここで怪しいのはどっちだろう

 

 

 

「何やっているんですか?」

 

「あ!チノちゃん危ない! 強盗が」

 

「ち、違う!知らない気配が来たら隠れるのは普通だろう! 私は父が軍人なあれで昔からいろいろ仕込まれてるだけで普通の女子高校生だから信じろ!」

 

「説得力ないよー!!」

 

 

 

 

 

「とりあえず二人とも着替えてください」

 

 

 

 

 

 しばらくしてココアがホールに出てきた。

 

 シノンは既にバーテンダーの服に着替えておりカウンターに立っていた。

 

 

 

「シノンかっこいいね!」

 

 

 

 そう言いながらシノンに抱きつくココア

 

「……………………………………似合ってる」

 

「えへへ~」

 

「あー確かに似合ってるな」

 

「似合ってます」

 

 そう言いながらホールに出てくるリゼ

 

 

 

「ん?そこにいるのは…………」

 

「あ!リゼちゃん私の弟のシノンだよ!」

 

「………………………………よろしくお願いします」

 

「あぁ天々座 リゼだリゼで構わない」

 

「………………………………………………」コクッ

 

 

 

「では、リゼさんココアさんとシノンさんに先輩として色々教えてあげてください」

 

「きょ、教官ということだな」

 

「嬉しそうですね」

 

「この顔のどこにそう見える!」

 

「よろしくねリゼちゃん!」

 

「上司に口を聴くときは言葉の最後にサーをつけろ!」

 

「落ち着いて!サー!」

 

「………………………………」ペコリ

 

 

 

 軽くお辞儀をするシノン

 

 

 

 

 

「じゃあ、このコーヒー豆の入った袋をキッチンまで持っていくぞ」

 

「了解です!サー!」

 

 

 

 

 

「お、重い、これは普通の女の子には少しキツいね……」

 

「え!あぁ!そうだな普通の女の子にはきついな!」

 

 

 

 そう言いながら軽々く持ち上げた袋をおろすリゼ

 

 

 

「シノンは大丈夫?」

 

「…………………………」コクッ

 

 

 

 ココアがシノンの方を見ると軽々く袋を持ち上げているシノンがいた。

 

「それじゃ、大きい袋はシノンに任せて私たちは小さい方を持っていこうかな!」

 

 

 

 

 

「んー!小さいのも重い!一つ持つのがやっとだよ……」

 

「あ、あぁ!一つがやっとだ!」

 

 そう言いながら4つぐらい持ってた袋を一気におろすリゼ

 

 

 

 それを見ていたシノンはこの人は別な意味で不器用なのかもしれないとおもった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これが、無口な少年と紫の少女との出会いだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どこで区切ろうかわからず結果変なところで終わってしまった。


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3羽 無口な少年と仕事

そういえばしてなかったので主人公の容姿を簡単に説明します。
・黒髪で目に少しかかるくらい
・身長はココアより少し高いぐらい
・めつきは鋭い
・無口、だけど保登家の人は何言ってるのかだいだいわかる。
・天然だけど頭は良い
以上主人公の簡単説明でした。


「ココア、シノン、メニュー覚えとけよ」

「うわ!コーヒーの種類て多くて難しいね!」

「そうか? 私は一目見て覚えたぞ?」

「すごーい!」

「チノなんて香りだけで銘柄当てられるしな」

「私より大人っぽい!」

「だけど、砂糖とミルクは必須な」

「なんか、今日一番安心した」

 

 恥ずかしそうにノートで顔を隠すチノ

 

「あれ?チノちゃん何やってるの?」

「これは、春休みの宿題です。空いた時間にこっそりやってます」

「へぇ~……あ!ここの答えは128でその隣のは367だよ」

「「!!」」

「ココア、430円のブレンドコーヒーを29杯頼むといくらになる?」

「12470円だよ?」

「はぁ~私も二人みたいに何か特技があったらなぁ~」

「いや、それは、十分に特技だろ」

「…………………………」コクッ

 呆れたようにいうリゼそして、シノンの方を向き

 

「そういや、シノンは何か特技はあるのか?」

「…………………………?」

 

 首をかしげるシノン

 

「ココア、シノンは何か特技はあるのか?」

「シノンは何でも得意だけど強いていうなら料理はすごく美味しいよ!!」

「そんなに美味しいのですか?」

「うん!」

「………………………………裏」

「ん? 裏? なんのことだ?」

「?」

 

 リゼとチノが首をかしげていると

 

「えっとね"自分は接客は苦手だけど料理は得意なので裏方に回りたいです。あと、コーヒーの入れ方も覚えたいです"だって」

「「!!ココアさんわかるんですか!」」

「しかもあのひと言にこんな意味が込められていたのか」

「……………………」コクッ

「合ってるらしいな」

 

 しばらくしてお客がやってくる

 

「いらっしゃいませ!」

 元気に接客するココア

「あら、新人さん?」

「はい!今日から働くことになったココアです。あ、あと私の弟のシノンも今日からなんです。今は裏で働いています」

「そう、よろしくね頑張ってね。とりあえずキリマンジャロをお願いねあとは、適当にサイドメニューのスイーツをお願い」

「はーい!」

 

 楽しそうにチノとリゼのとこにいき

 

「やった!私注文とれたよ!キリマンジャロと適当にスイーツお願いします」

「おぉ」

「えらい、えらいです」

「ん? スイーツ?」

「今気がついたのか、ラビットハウスはサイドメニューにスイーツが少しあるんだ」

「あまり注文する人はいませんけどね」

「へぇ~」

 

「とりあえずキリマンジャロはチノがやるとしてスイーツは」

「シノンに任せれば大丈夫だよ! ね? シノン」

「…………………………………………使う」

「ん? …………ココア頼む」

 少し考えたがわからずリゼはココアに聞く

「う~んとね"材料とか勝手に使っていいのかこちらで作っても大丈夫なのか"だって」

「はい大丈夫です。お願いします」

「だってシノン!」

「………………」コクッ

 

 シノンはそのまま厨房に入っていた

 しばらくして……リゼが注文を運ぶ

 

「お待たせしましたキリマンジャロとシフォンケーキになります」

「あら? シフォンケーキなんてあったかしら」

「そちらは新作になっております。よろしければどうぞ、代金はメニューに載っているスイーツと同じ値段なので」

「そう、ありがとう」

 

 

 

 それから、何人かお客が来て落ち着いた頃

 

 

 

「ねぇねぇ、チノちゃんラビットハウスて名前なのになんでうさ耳つけないの?」

「うさ耳なんてつけたら別のお店になってしまいます」

「リゼちゃんとか似合いそうなのにね」

「……」

 少し考えたあと

「露出度高すぎだろ!」

「うさ耳の話だよ!?」

 

 

「教官、じゃあなんでラビットハウスていうんですか? サー!」

「それは、ティッピーがこのお店のマスコットだからだろ」

「う~ん、でもティッピーうさぎぽくないよ? もふもふだし」

「じゃあどんな店名ならいいんだ?」

「ズバリ!もふもふ喫茶!」

「そりゃまんますぎるだろう」

「もふもふ喫茶!」

「気に入った!?」

 

「リゼちゃんなにやってるの?」

「ん? ラテアートだよこの店ではサービスでやってるんだ」

 

 カップの中にはカフェオレにラテアートでハートマークが書かれていた。

「絵なら任せてこれでも金賞をとったことがあるんだから」

 そう言いながら袖をまくるココア

「町内会小学生の低学年の部とかじゃないだろうなぁ」

「うっ!」

「当たりか!」

 そこに皿洗いを終えたシノンがやって来た。

「お!シノン皿洗いお疲れ様、シノンの作ったシフォンケーキすごく良かったぞ。お客様も喜んでた!」

「…………………………………………」コクッ

「あ!シノンもやってみよ!」

「…………………………………………?」

「ラテアート!」

「………………………………手本」

「ん?お手本を見せてほしいてことか?」

「……………………………………」コクッ

「しょうがないなぁ見てろよ?」

 

 そう言いながらラテアートを作っていく

 

「すごい!リゼちゃんて器用なんだね!」

「そんなに上手いか?」

「うん!ねぇ! もう一回見せてよ!」

「しょ、しょうがないなぁちゃんと作り方も覚えるんだぞ」

「うおおおおおお」

 

 照れながらもものすごい速さでラテアートをしていくリゼ

 

 出来たのは戦車のラテアートだった

「できた!」

「う、上手いというから人間業じゃないよ」

「そんなことないて!ほら、二人ともやってみろ」

「うん!」

「………………」コクッ

 

 しばらくして……

 

「う~ん難しいなぁ、イメージと違う……」

「どれどれ……!」

 そこには、口元が少し違ううさぎのラテアートが

(か、可愛い!)

「わ、笑われた!」

 

 

「………………………………ココア姉……上手」

「え、本当!?」

「………………」コクッ

「そういえばずっと気になっていたんだが」

「ん?どうしたのリゼちゃん」

「シノンはココアの弟なんだよな?」

「そうだよ!シノンは私の弟だよ!」

「二人は双子なのか?」

「ううん、違うよ?」

「同じ年なのに姉弟なのか?」

「?」

「………………………………養子」

「養子……あー! なるほど! リゼちゃん、シノンは家の養子ななんだよ」

「!そうだったのか、それは、悪いことを聞いたな」

「…………………………………………」フルフル

「………………………………………………幸運」

「コ、ココア」

「えっとね"ココア姉のとこの養子になれたことは、自分にとっては幸運のことでした。なのでリゼさんも気にしないでください。"だって!」

「そ、そっかならよかった。ところでシノンも出来たのか?」

 

 

「「!!」」

 

 そこには、一匹のうさぎと葉っぱが書かれていた。

 それは、素人とは思えないほどに上手かった。

 

「す、すごい!」

「なんで、シノンこんなに上手なの!?」

「………………………………………………勘」

「「えぇ~」」

「もー!チノちゃんも書いて!」

「私もですか?」

 しばらくして……

「できました」

「おぉ~!チノちゃんも仲間!」

「仲間?」

「ち、違うぞココアこういうのは私達と比べていいものじゃ……」

「……………………」フルフル

 リゼの肩に手を置き静かに首を振るシノン

 

 

 

 

 仕事を終えリゼと別れリビングで夕飯作りが始まろうとしていた。

 

「夕飯はシチューにしましょう」

「野菜切るなら任せて!」

「いえ大丈夫です。あ、でもシノンさんには手伝って貰いたいです」

「なんで! シノンは良くて私は駄目なのー!?」

「シノンさんは料理が得意ですし、お昼のシフォンケーキも美味しかったので」

「う~」

「シノンさん、お願いできますか?」

「………………………………」コクッ

 

 

 

 

「シノンさん、鶏肉に火通りました?」

「…………………………」コクッ

「野菜もいい感じです」

「…………………………」コクッ スッ

 鶏肉を指差し、鍋の方に指差す。

「そうですね、鶏肉も入れちゃていいかもしれませんね」

「……………………………………」コクッ

「あとは、ルーと牛乳を入れて煮込んだら完成ですね」

「……………………」コクッコクッ

 

「わぁ~いい匂い!」

「もうすぐ完成です」

 

 ドアがノックされバーテンダーの格好をした男が入ってきた。

「なにもの!?」

「こちら父です」

「君がココア君とシノン君だね」

「あ、はい!今日からお世話になります!」

「………………………………」ペコッ

「こちらこそ、チノのことよろしく頼むよ」

 

 そう言うと同時にティッピーはタカヒロの頭に乗り始めた。タカヒロは一階に降りていった。

「あれ?お父さんは一緒に食べないの?」

「ラビットハウスは夜になるとバーになるんです。父はそこのマスターです」

「バーか、なんか裏の取引が行われてそうでかっこいいね」

「なんの話ですか……」

 

 

「そろそろかな?」

「もうすぐです」

 

「なんか、こうしていると姉妹みたいだね」

「姉妹ですか、じゃあココアお姉ちゃんですね」

「!!」パアア

 お姉ちゃんと呼ばれたのが嬉しかったのかココアはチノに催促し始める。

「チノちゃん! もう一回言って!」

「……」

 シチューを食べているときも

「チノちゃんもう一回」

「……」

 皿を洗っているときも

「もう一回」

「……」

「うわーん!シノン~チノちゃんがお姉ちゃんて呼んでくれないよー!」

「……………………………………ん」なでなで

 ココアの頭を優しく撫でるシノン

「なんだか、シノンさんのほうがお兄ちゃんぽいです」

「そんなー!!」

「……………………………………」フルフル

「………………尊敬」

「コ、ココアさんお願いします」

「えっとね、"自分は兄らしくないしココア姉のことは、尊敬している。自分が弟でいい" だって!」

「………………………………」コクッ

「シノン!私のこと尊敬してくれてるの!」

「………………………………ん」なでなで

「シノン~」

「やっぱりお兄ちゃんぽいです」

「…………………………………………尊敬」

「え?」

「う~んとね、"チノちゃんのことも、尊敬しているよ? まだ中学生なのに働いているし家事もしている。自分のほうが年上だが尊敬している。"だって!」

「あ、ありがとうございます」

 少し頬を赤くし照れながらお礼を言うチノ

「………………………………」コクッ なでなで

 チノの頭を優しく撫でるシノン

 

 

 

 お風呂side

 

「……」

(ココアさん、シノンさんと上手くやっていけるでしょうか)

(ココアさんは)

(シノンさんは…………)

 頭に浮かんだのは始めて会ったときにぶつかり腕を掴まれたこと、尊敬していると言われ頭を撫でてもらったこと。

「う~」

 チノは顔がどんどん赤くなっていくのを感じていった。

 その時、お風呂のドアが開きココアが入ってくる。

「チノちゃ~ん一緒に入ろう!」

「!」

「ココア風呂だよ~」

「ココア風呂……?」

 

 

 

「気持ち良い生き返る~」

「ねぇ? チノちゃん今日一緒に寝ても良い?」

「一緒にですか?」

「うん! まだ荷物届いてないしもっとお話ししたいし」

(お話し、一緒に寝る私にちゃんとできるでしょうか)

 

「ふ、不束者ですがお手柔らかにお願いします」

 プッギュー

 そう言いながらうさぎの玩具をならす

「……」ニコッ

 プッギュー

 少し笑顔になり、ココアも同じようにうさぎの玩具をならす。

 

 

 

 

 リゼside~

 

「ふぅ~聞いてくれよワイルドギース、今日ラビットハウスに二人の新人が入ってきてな」

「それが、一人は少し天然なやつでな、もう一人はとても無口なやつなんだよ」

「練習用のラテアートが余って大変だったよ。当分はカフェラテは飲みたくないなぁ~」

「……」

「う!寂しくない!寂しくないぞー!」

 

 

 

 チノの部屋side

 

 

「そういえば、ティッピーは?」

「ティッピーは父と一緒にバーにいます」

「そっか、もふもふしながら寝たかったのに」

「ティッピーは抱き枕じゃないです」

「じゃあ、チノちゃんをもふもふしながら寝ようかな!」

 チノに抱きつくココア

「!」

 チノは抱えていたぬいぐるみをココアの顔に押し付ける

「ムギュー!」

 

 

「あ! そういえばチノちゃんに見せたいのがあったんだ」

「なんです?」

「これこれ」

 ココアはケータイを見せ始めた。

 そこには、ココアが書いたラテアートが4つ写っていた。

「わ、私達ですか?」

「うん!」

「か、可愛いです」

「えへへ」

 

 ガチャ

 

「あ、シノンおかえり!」

「…………お邪魔します」

「シノンさんも呼んでいたんですか?」

「うん! みんなでお喋りしたいなぁて」

「そうですか」

「あ、そういえばシノンもこれ見て!」

 ココアはケータイの写真を見せる

「………………ん? ………………可愛い」

「えへへ」

 

 

「……………………リゼさん」

「リゼさん?」

「うん! それが良いかも!」

「え!? コ、ココアさんシノンさんはなんて?」

「"リゼさん最後寂しそうにしてたからメールで送ったほうが良いと思う"だって」

「そうですね、それが良いと思います」

「うん! それじゃ……そういえばシノンもラテアートと撮ってなかった?」

「…………………………記念に」

「じゃあ、それも送ろうよ!」

「……………………」コクッ

 

「…………」

「…………」

「………………」ポチ ポチ

 

「シノンさんて機械弱いんですね」

「うん、メールも時間が掛かるからあまり使わないよ」

「………………」ポチ ポチ

 

 

 

 リゼside

 

 

 ピローリーン

「ん?ココアからメール?」

 布団から顔をだしケータイを見始める。

「あいつこんなのつくってたのか」

 

 ピローリーン

「ん? シノンからもメール?」

 メールには昼間にシノンが作ったラテアートと文字で明日と書いてあった。

「明日?」

 

 ピローリーン

「ココアから、またメール?」

("シノンのメールの意味はまた明日ラビットハウスで一緒にお仕事頑張りましょうだって)

 

 

 

「シノン……あいつメールでも無口なんだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これが、無口な少年と木組みの街での一日だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




呼んでいただきありがとうございました。
前回よりかなり長くなってしまいすみません
なんだか、書いていて色々迷走している自分がいます。
でも、下手なりに頑張って書くので
次の投稿も気長に待ってもらえれば幸いです。
それでは、また。


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4羽 無口な少年と緑の少女との出会い

これから、基本第三者視線で行きたいと思います。
そして、会話文多めです


「~♪」

 

 ココアは姿見の前で制服をさまざまな着方をしていた。

 最初は普通に、次に優等生ぽく最後にヤンキー風に

 

「あの、そろそろ行きますよ?」

「!!」

 そこに、制服姿のチノがやって来た。

「チノちゃんの制服可愛いね!」

「そうですか?」

「!」

 ココアはチノちゃんの帽子をとり頭を見る

「あっ……」

 がっかりした顔になる。

「何を期待してたんですか?」

 

 

「そういえばシノンさんは?」

「シノンも準備終わっていると思うよー?」

「少し様子見に行きますか?」

「そうだね!」

 

 コンコン

 

「シノンさん?準備できています?」

「あれ? チノちゃんなんで、私の時はノックしなかったの?」

「ちゃんとしましたよ、でも鼻唄は聞こえてくるのに返事かないので開けました」

「そ、そうだったんだ」カァ~

 

 姿見で試着をしているところを見られてたのをを改めて言われ恥ずかしがるココア

 

 ガチャ

 ドアが開きシノンが出てくる。しかし、その姿はパジャマ姿だった。

 

「あ、シノンさん……!」

「あれ! シノンなんで着替えてないの!?」

「………………………………?」

「遅刻しちゃうよ! 早く着替えないと」

「そ、そうです急いだほうが良いですよ」

「…………………………………………??」

「ほら、シノン速く! 入学式に遅れちゃうよ!」

 二人がシノンを急かそうとするがシノンはゆっくり首を横に振った。

「……………………………………違う」

「「え?」」

 二人はきょとんとした顔になりシノンを見る。

「………………………………入学式は……明日」

「……」

「……」

「ココアさん?」

「何も、言わないで!」

 恥ずかしそうに顔を隠すココア。

 

 

「ま、まだこの街に来たばっかだし。少し街を見て回ろうかな。 ね、シノン?」

「………………」コクッ

「ごまかしましたね」

「………………」コクッ

「そ、そんなことないよ!」

 

「それでは、行ってきます」

「行ってきますー!」

「………………………………」ペコリ

「あぁ、行ってらっしゃい」

 

「チノちゃんもこっちの方向なんだ!」

「こっちの方向なんです」

「途中まで一緒に……」

「行けますね」

「やったー!」

「では、私はこれで」

「はやっ!?」

 

「最初に来た時も思ったけど良い街だよね」

「………………」コクッ

「うさぎはいっぱいいるし」

「……………………」コクッ

「街の人はみんな親切だし」

「……………………」コクッ

「……………………」

「……………………?」

「……………………………………」キョロキョロ

「……………………」

「……………………いない…………ココア姉」

 

 ココアの話に頷いていたシノンだが途中からココアの声が聞こえてこなくなり回りを見渡すがココアはいなくなっていた。

 

「………………………………はぁ」

「……………………迷子……………………ココア姉が」

 

 

 

 

 

「~♪ ~♪ あ! リゼちゃんだ」

「ココア。……あれ? 今日入学式て言ってなかったか?」

「こ、この街てイイトコロだよね」

「入学式」

「うさぎはいっぱいいるし」

「ココア」

「聞かないで!」

 ココアは恥ずかしそうに両手で顔を隠した。

「さては、間違えたな?」

「う~」

「まぁ、私は学校あるし、もうそろそろ行くよ」

「うん!私も学校見てくるよ」

 

 しばらくして……

 

「あれ?リゼちゃんまた会ったねー」

「!?」

「じゃあ、リゼちゃんまたねー」

「お、おいお前学校への道わかってるのか?」

「心配しなくても大丈夫だよ」

 またしばらくして……

「すごーいまたあった!」

 さらにしばらくして……

「あれあれまただー」

 

「わ、私は異次元に迷いこんだのか!?」

「どうしたの? どこか体調悪いの?」

 

 リゼと別れたあとココアは街を見ていた。

 路地裏にて

 

「あ!あれは、噂に聞く野良ウサギ!」

 野良ウサギはココアを見ると逃げていった。

「待って! モフモフさせて!」

 

 

 

 

「おいで~おいで~」

 

 千夜はお得意様に羊羮を配ったあと。ウサギが集まっている噴水のある公園で休憩していた。

 

 余った羊羮でうさぎが釣れるかどうかためしていた。

 しかし、一匹も食べようとはしなかった。

 

「う~ん食べないわねぇ~うちの子は食べるのに……」

「ん?」

「……」じ~

 

 どこからか視線を感じてそちらを見ると桃色の髪をした女の子がこちらをじっと見ていた。

(うさぎじゃなくて女の子が釣れちゃた)

 

 

 

「あ~ん……うん! 美味しい!」

「本当? 良かった~実はそれ家の自信作なの」

「和菓子作れるの!?」

「ええ、幾千の夜を往く月……名付けて! 千夜月! 

 栗を月に見立てた栗ようかんよ!」

「なんかかっこいい! ……意味わかんないけど」

 

 しばらく二人で話しているとココアの学校の話になった。

 

「そう、ココアちゃんは今年の春からこの街に来たのね」

「うん、そうだよ!」

「話からするにココアちゃんが通う高校は私と一緒みたいね」

「そうなの~!?」

「えぇ、でもココアちゃん明日大丈夫?」

「なにが?」

「ほら、この街の建物て似てるやつが多いから迷わないか心配」

「大丈夫だよ! 私にはシノンていう可愛いくてしっかりとした弟がいるから!」

 

「あら、弟さんがいたのね」

「うん! 今朝も入学式を今日だと勘違いしていてシノンがいなかったら制服着て学校に行ってたよ」

「それを止めてくれたのね」

「うん! それで二人でこの街を見ようて話になったの」

「?その弟さんはどちらに?」

 

「もうなに言っての千夜ちゃん。シノンならそこに…………」

「!! シノンがいない!」

「ど、どうしょう!」

「コ、ココアちゃん落ち着いて!」

 オロオロしているココアの頭にチョップがおちる

「痛っ!」

「もぉー! 誰……!?」

 

 そこには、ムスッとしたシノンが立っていた。

 

「シ、シノン」

「……………………………………」プイッ

「わー! シノンごめん!!」

「あらあら」

 

 

 

「う~シノンごめんね~」

「…………………………………………はぁ」

 

 シノンはため息一つつくとココアの頭を撫で始めた。

 

「う~シノン」

「ココアちゃんそちらがさっき言ってた弟さん?」

「あ、うん! 私の弟のシノンだよ。シノン、こちらさっき友達になった千夜ちゃん」

「………………………………保登 シノンです」

「………………よろしく……お願いします。……」

「宇治松 千夜よ、よろしくね」

「………………………………」コクッ

「ココアちゃん? 弟さんとはいくつ離れてるの?」

「んー?私と同じ年だよ?」

「え?でも……」

「……………………ココア姉」

「あ! そうだね説明しないとだね」

 

 事情説明中~

 

 

「そう、弟さんは、ココアちゃん家の養子だったのね」

「うん!」

「なら、私とも同じ年よね。私のことは、千夜でいいわよ」

「…………………………」コクッ

「………………シノンで……いい」

「えぇ、改めてよろしくね」

「………………………………」コクッ

 

 

「二人は学校の下見にも来たのかしら?」

「そうだよー!」

「…………………………」コクッ

「なら、私が案内するわ」

「本当!助かるよー!」

「…………………………」ペコリ

 

 案内中~

 

 

「おー!!ここが私が通う高校か~見てるだけでわくわくするよ~」

「この学校でたくさん学んで!友達と笑って時には喧嘩して!……ん?」

 シノンがココアの肩を軽く叩く

「………………………………違う」フルフル

「え?」

「……………………ここ……………………中学校」

「……」

「……」

「卒業してたの忘れてたわ」

「え~」

 

 

「…………………………ココア姉と………………同じ」

 

 

 

 

「…………………………………………天然」

 シノンはため息一つ、つくと楽しく話している二人を暖かく見守っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これが無口な少年と緑の少女との出会いだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございます。
次回も気長に待っていただければ幸いです。


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5羽 無口な少年とパン作り

色々迷走中です。
今回もあたたかい目で見守って頂ければ幸いです。



 三人は学校を終え、下校していた。

 

 

 

「ココアちゃんとシノンくんと同じクラスで良かった~」

 

「私も千夜ちゃんと一緒のクラスになれて嬉しいよ!」

 

「………………」コクッ

 

 

「あっ、何だかいい匂いがする」

 

「…………………………」トントン

 

 シノンはココアの肩を軽く叩くとあるお店を指差した。

 

「パン屋さんみたいね」

 

「…………」じっ~

 

「……かわいい」

 

「………………」コクッ

 

「パンが?」

 

 

 

 

 

「実家がベーカリーでよく作ってたんだ、また作りたいなぁ~ね? シノン」

 

「………………………………」コクッコクッ

 

「お手製なの?すごい!」

 

「パンをみてると私の中のパン魂が高ぶってくるんだよ」

 

「わかるわ!私も和菓子を見てるとアイデアが溢れてくるの」

 

「千夜ちゃんは、和菓子が作るのが好きなんだよね」

 

「うん!でも何より好きなのは……出来た和菓子に名前をつけること!」

 

「すごーい!」

 

「……………………………………?」

 

 シノンは何故和菓子に名前をつけるのかわからず。ただ首を傾げた。

 

 

 

 

 

 

 

 ココアはラビットハウスに戻るとパン作りをするためにチノにオーブンがあるかどうかを聞き始めた。

 

「大きいオーブンならありますよ。おじいちゃんが昔調子に乗って買ったやつが」

 

「ほんと!」

 

「今度みんなで看板メニューの開発しない?焼きたてパンすっごく美味しいよー!」

 

「話ばっかしてないで仕事しろよー」

 

 

 その時リゼのお腹から音がなる。

 

 

「……………………」プイ

 

 

 視線をそらすシノン

 

「焼きたてってすっごく美味しいんだよー」

 

「そんなことわかってる!そして、シノン! 気を遣わないでくれそっちの方が恥ずかしい!」

 

 

 顔を真っ赤にしなから叫ぶリゼ

 

 

 

 

 

 

 …………次の日、5人はパン作りをするために厨房にいた。

 

 

 

「千夜ちゃんだよー」

 

「今日はよろくね」

 

「香風 チノです。チノで大丈夫です」

 

「天々座 リゼだ。リゼで構わない」

 

 自己紹介も済み、千夜はチノの頭にいるティッピーに興味を持ち始めた。

 

「あらそちらのワンちゃん……」

 

「ワンちゃんじゃなくてティッピーです」

 

「この子はただの毛玉じゃないんだよ!」

 

「まぁ、毛玉ちゃん?」

 

「もふもふ具合いが格別なの!」

 

 

 

 そう言いながらココアはティッピーの頭を撫でる

 

 

「癒しのアイドルもふもふちゃんね」

 

「ティッピーです」

 

「誰かアンゴラうさぎって品種だって説明してやれよ」

 

「………………………………アンゴラ……うさぎ」

 

「アンゴラうさぎ? ココアちゃんどういうこと?」

 

「えっとね、シノンが言うには"アンゴラウサギはカイウサギの品種のひとつで、全身を長い被毛で被われた長毛種だよ。また、被毛はアンゴラ兎毛と呼ばれて毛織物の素材としても利用されているうさぎだよ"だって!」

 

「あの一言にそこまでの意味があったのか……そして、説明してくれてありがとうな、シノン」

 

「シノンさん博識ですね」

 

「……………………………………」フルフル

 

「シノン君すごいわね」

 

「ふふふさすが! 私の弟!」

 

「なんで、ココアが自慢気なんだ……」

 

 

 

 

「それにしてもシノンはともかく、ココアがパン作れるって意外だったな」

 

「えへへ~」

 

「褒められてないと思います」

 

「…………………………………………」コクコク

 

 少し呆れた顔になるチノとシノン

 

 

 

「みんな、パン作りをなめちゃいけないよ!少しのミスが完成度を左右する戦いなんだから!」

 

「ココアが珍しく燃えている!このオーラ歴戦の戦士のようだ」

 

「今日はお前に教官を任せた!よろしく頼む!」

 

「任された!」

 

「わ、私も仲間に~」

 

「暑苦しいです」

 

「………………………………」コクッコクッ

 

 

 

「それじゃあ各自パンに入れたい材料提出!」

 

「「おー!!」」

 

「はい」

 

「………………」コクッ

 

「私は新規開拓に焼きそばパンならぬ焼きうどんパンを作るよ!」

 

「私は自家製の小豆と梅と海苔を持ってきたわ」

 

「冷蔵庫にいくらと鮭と納豆とゴマ昆布がありました」

 

「私はイチゴジャムとマーマレードを…………これってパン作りだよな?」

 

「は! シ、シノン! お前はちゃんとしたやつだよな!?」

 

 リゼはシノンの肩を掴み揺らしながら聞いてくる。

 

 シノンは首を傾げ袋から材料を取り出す。

 

「………………?」

 

「………………………………これ」

 

「これは、メロンエッセンス? あとは、卵にグラニュー糖……シノンは何を作るつもりなんだ?」

 

「…………………………………………メロンパン」

 

「「「メロンパン!?」」」

 

「シノン甘いの好きだもんね~」

 

「………………」コクッコクッ! 

 

 目を輝かせながら頷くシノン。

 

「い、意外だな」

 

「なんだか可愛いです」

 

「そうね」

 

 

 

「今日はドライイーストを使うよ!」

 

「ドライイーストってパンをふっくらさせるんでしたっけ?」

 

「そうだよ~乾燥した酵母菌なんだよ」

 

「攻歩菌……!?」

 

「そ、そんな危険なものをいれるくらいなら、パサパサパンで我慢します!」

 

「?」

 

「……………………大丈夫」

 

 そう言いながらチノの頭を撫でるシノン

 

「ほ、本当ですか?」

 

「………………………………」コクッ

 

「ホッ」

 

 安心し少し笑顔になる、チノだった。

 

 

 

「パンをこねるのってすごく時間がかかるんですね」

 

「う、腕が……もう動かない……」

 

「リゼさんは……平気ですよね」

 

「なぜ決めつけた?」

 

「千夜ちゃん大丈夫?手伝おうか?」

 

「!いいえ大丈夫よ!」

 

「頑張るなぁ」

 

「健気ってやつだね」

 

(ココアちゃんに手間を取らせるわけにはいかないもの、みんなについていけるってことを見せなきゃ!)

 

「ここで折れたら武士の恥だよ! 息絶えるわけにはいかんきん!」

 

「健気?」

 

「…………」

 

「シ、シノン君?」

 

 シノンは千夜のそばに来ると唐突に頭を撫で始めた。

 

「…………………………」なでなで

 

「「「「!?」」」」

 

「ど、どうしてわ、私の頭をな、撫でるの!?」

 

「…………………………無理…………しないで」

 

「え、あ、ありがとう……」

 

 少し頬を染め、下に俯く千夜それを見て少し微笑みながら頭を撫でるシノン

 

「むっ~」

 

「……いいなぁ」

 

「う~」

 

 それを見た3人は……ココアは頬をぷくっと膨らませ、チノは羨ましいそうに見つめ、リゼは、顔を赤らめながら、顔に手をあて指の間がら見ていた。

 

 

 

「チノちゃんはどんな形にするの?」

 

「おじいちゃんです。小さな頃から遊んでもらっていたので……」

 

「おじいちゃん子だったのね」

 

「コーヒーを入れる姿はとても尊敬していました」

 

「みんなーそろそろオーブン入れるよー」

 

「では、これから、おじいちゃんを焼きます」

 

「ノオオオ!!」

 

「もう少し言い方があったろ……」

 

「………………」コクッコクッ

 

 リゼはシノンがパンとは別の何かを作ってることに気づく

 

「シノンは何を作ってるんだ?パンなのか?」

 

「………………………………」フルフル

 

「じゃあ何を?」

 

「…………………………クッキーの…………生地」

 

「クッキー!?」

 

「どうしてクッキーの生地を作るんですか?」

 

 不思議そうに聞いてくるチノにココアが答える

 

「メロンパンはパンにクッキーの生地をくるむからね」

 

「……………………」コクッ

 

「そ、そうだったのか」

 

「でも、それならシノン君はクッキーも作れるの?」

 

「………………」コクッ

 

「シノンはお菓子全般作れるよ?」

 

「…………」コクッ

 

「す、すごいな」

 

「さすが、シノンさんです」

 

「今度食べてみたいわ」

 

 

 

 

 

 

 パンが発酵するまでの待ち時間にココアは千夜にラテアートをプレゼントしようとしていた。

 

「千夜ちゃんにおもてなしのラテアートだよ!」

 

「まぁ!すてき!」

 

「今日のは会心の出来なんだぁ~」

 

「味わっていただくわね」

 

「あっ!」

 

「……」

 

「あっ~」

 

「…………」

 

「あっ! 傑作が~」

 

(の、飲みにくい)

 

「…………………………ふぅ」

 

 シノンは一つため息つくとココアの頭に軽くチョップする。

 

「いたっ!? な、なにするの! シノン」

 

「………………千夜が…………飲みづらい……でしょ?」

 

「あ、そっかごめんね千夜ちゃん」

 

「大丈夫よココアちゃん。ちゃんと味わって飲むわ」

 

「うん!」

 

「やっぱりシノンの方が兄ぽい気がする」

 

「私もそう思います」

 

 

 

 

 

「じっ~」

 

「チノちゃんさっきからオーブンに張り付きっぱなしだねー」

 

「パン見ててそんなに楽しいか?」

 

「はい。どんどん大きくなって行きます」

 

「あ、おじいちゃんがココアさんと千夜さんに抜かれました!」

 

「おじいちゃんもがんばれー」

 

「リゼさんだけ出遅れてます。もっと頑張ってください」

 

「私に言われても……」

 

「あ! シノンさんのが一番膨らんでます。さすが、シノンさんです!」

 

「…………………………」 なでなで

 

 目を輝かせながらこっちを見てくるチノをみて微笑みながら頭を撫でるシノン

 

「ど、どうして私の頭を撫でるんですか?」

 

「うんとね、なんか知らないけど撫でたくなったんだって」

 

「………………」コクッ

 

 

 

 

 

 

 

「焼けたよー! さっそく食べよう!」

 

「! 美味しい」

 

「いけますね」

 

「さすが焼きたてだな」

 

「これなら看板メニューに出来るよ!」

 

「この焼きうどんパン」

 

「梅干しパン」

 

「焦げたおじいちゃん」

 

「シノン以外のは、どれも食欲そそらないぞ」

 

「じゃーん! ティッピーパンも作ってみたんだ」

 

「おお!」

 

「看板メニューはこれで決まりだな」

 

「食べてみましょう」

 

「もちもちしてる」

 

「えへへー美味しくできてるといいんだけど」

 

「中は真っ赤なイチゴジャムね!」

 

「なんか、エグいな」

 

「……………………」

 

「シノン? どうした?」

 

 シノンが顎に手を添え少し考え込んでいた。

 

「…………………………試行……錯誤」

 

「「「?」」」

 

「えっとね"このままでも美味しいけど、リゼさんの言う通り少しエグいから少し小さくして揚げパンにしたり

 フレンチのままだしたりとこれから、試行錯誤していこう"だって」

 

「そうですね、それがいいかもしれませんね」

 

「ふふっ頑張ってね」

 

「さすが、私の弟だね!」

 

「だから何でココアが自慢気なんだ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 これが無口な少年と四人の少女のパン作りだった。

 

 




読んで頂きありがとうございました。
次回も気長に待って頂ければ幸いです。


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6羽 無口な少年と甘兎庵

今回も暖かい眼でご覧ください。
また、迷走してます。


 

 パン作りのお礼にと千夜の喫茶店に招待された、4人は甘兎に向かってた。

 

 

 

「どんなとこか楽しみだね」

 

「………………」コクッ! コクッ! 

 

 目を輝かせながら勢いよく頷くシノン。

 

「そっか、シノンは甘いもの好きだもんな」

 

「………………」コクッ! コクッ! 

 

「やっぱり可愛いです。そういえば、なんて名前の喫茶店ですか?」

 

「甘兎って聞いているけど」

 

「甘兎とな!」

 

「チノちゃん知ってるの!?」

 

「おじいちゃんの時代に張り合っていたと聞きます」

 

 しばらく話していると甘兎に到着した。

 

「着いた~」

 

「ここみたいですね」

 

「看板だけやたら渋い……」

 

「面白い店だな」

 

 ココアは首をかしげながら呟いた。

 

「オレ うさぎ あまい」

 

「甘兎庵(あまうさあん)な、俺じゃなくて庵(いおりだ)」

 

「………………昔…………右…………だから」

 

「へぇ~そうなんだ、さすが、シノン! 物知りだね!」

 

「ココアさん、シノンさんは、なんて?」

 

「うん! "昔の日本語は漢文に倣い、文字を上から下へ、また行を右から左へと進めて読む習慣があったんだよ。昭和辺りに左横書きに統一されたらしいよ。"だって」

 

「シノンはなんでそんなに物知りなんだ!?」

 

「………………………………趣味」

 

「趣味って……」

 

 苦笑いになるリゼ

 

「シノンさん、さすがです!」

 

「………………」フルフル

 

 

 

「こんにちはー」

 

「みんな! いらっしゃい!」

 

「あっ! 初めて会った時もその服だったね!」

 

「あれは、お仕事でようかんをお得意様に配った帰りだったの」

 

「あのようかん美味しくて3本いけちゃったよー」

 

「3本丸ごと食ったのか!?」

 

「シノンさんも食べたんですか?」

 

「…………………………」フルフル

 

 ココアは、お店の真ん中のテーブルにいる黒い兎に気づく

 

「うさぎだ!」

 

「看板うさぎのあんこよ」

 

「置物かと思ったぞ」

 

「あんこはよっぽどのことがないと動かないのよね」

 

 その時あんこがティッピーに飛び付いた! 

 

 チノはその勢いで後ろに倒れそうになる。

 

「!!」

 

「………………ッ!」

 

 シノンは咄嗟にチノの後ろに行き抱き止める。

 

 

 

「チノちゃん大丈夫!?」

 

「び、びっくりしました……」

 

「縄張り意識が働いたのか?」

 

「いえ、あれは一目惚れしちゃたのね」

 

「一目惚れ!?」

 

「恥ずかしがり屋君だったのに、あれは、本気ね」

 

「あれ? ティッピーってオスだと思ってた」

 

「ティッピーはメスですよ」

 

(中身は違いますが)

 

 

 

「…………………………起きれる?」

 

「えっ?」

 

 そこでチノはシノンに抱き止められてることに気づく

 

「えっあ、ご、ごめんなさい!」

 

「………………………………」フルフル

 

「………………怪我………………ない?」こてん

 

「はい、大丈夫です」

 

「………………………………良かった」

 

「……」ぽ~

 

 少し微笑みながらチノの頭を撫でるシノン

 

 チノは頬を染めながらそれを受け入れた。

 

 

 

「私も抹茶ラテでラテアートを作ってみたんだけど、どうかしら?」

 

「え、どんなの!?」

 

「ココアちゃんたちみたいに可愛いのは描けないんだけど」

 

「北斎様に憧れていて……」

 

 富士山や女の人の絵がかかれている

 

「浮世絵!?」

 

「俳句もたしなんでいて……」

 

 そこには、ココアちゃんどうして今日はおさげやきん? と書かれている。

 

「風流だ!!」

 

「えっ季語は」

 

「はいシノン君にも」

 

 シノンの前に置かれた抹茶ラテには、シノン君なんか良いことでもあった? と書かれていた。

 

「…………………………甘いの…………食べれる」キラキラ

 

「あら、それでそんなにキラキラしているのね」

 

「…………………………」コクッコクッ! 

 

 

 

「メニューは何があるの?」

 

「はい、お品書きよ」

 

「なんだ、この漫画の必殺技みたいなメニューは!」

 

「わー! 抹茶パフェもいいし、クリームあんみつ、白玉ぜんざいも捨てがたいなぁ」

 

「わかるのか!? シ、シノンもわかるのか?」

 

「……………………………………」フルフル

 

「そ、そうか」

 

「………………………………でも」

 

「ん?」

 

「………………美味しいのは………………確か」

 

「なんでわかるんだ?」

 

「……………………千夜が………………作るから」

 

 

 

「「「……」」」

 

「……」かぁ~

 

 顔を真っ赤にして、照れる千夜

 

「も、もぉ~な、なにいってるのシノン君~でも、お世辞でもうれしいわ」

 

「………………? ……………………………………本気」

 

「……え」かぁ~

 

 シノンの天然攻撃にさらに顔を赤くする千夜

 

「さすが、ココアさんの弟ですね」

 

「私まで顔があつくなってきたぞ」

 

「千夜ちゃんも顔が真っ赤!」

 

「ココアちゃん!」

 

「………………………………?」

 

 シノンだけがなんのことかわからず首をかしげて不思議そうな顔をしていた。

 

 

 

「じゃあ私は、黄金の鯱スペシャルで」

 

「海に映る月と星々で頼む」

 

「花の都三つ子の宝石」

 

「……………………………………これを」

 

「白と碧の小さな都ね」

 

「は~い、じゃあちょっと待っててね」

 

 4人の注文を受けて厨房に戻っていく千夜 

 

 

 

「和服っておしとやかな感じでいいねー」

 

「……」

 

 千夜の方をじっと見るリゼ。

 

「着てみたいんですか?」

 

「いやっ! そ、そういうわけじゃっ……!」

 

「リゼちゃんならきっと似合うよ!」

 

「…………………………」コクッコクッ

 

 ココアは博打をやっているような和服をイメージし、シノンは、紫色の和服に身を包み和傘をさし紫陽花の道を歩くリゼをイメージする。

 

「ココアのはそっちか!? そして、シノン! 嬉しいがそれは、恥ずかしい……」

 

「………………?」

 

 照れた顔を隠す姿に何故そんなに照れるのかわからず、また首をかしげるシノンだった。

 

 

 

「お待ちどうさまー」

 

「きたっ!」

 

「………………」コクッコクッ! 

 

「リゼちゃんは海に映る月と星々ね」

 

「白玉栗ぜんざいだったのか」

 

「チノちゃんは花の都三つ子の宝石ね」

 

「あんみつにお団子がささってます!」

 

「シノン君のは、白と碧の小さな都」

 

「………………和風………………ミニパフェ」

 

「………………………………バニラ…………もある!」

 

「ココアちゃんは黄金の鯱スペシャルね」

 

「鯱=たい焼きって無理がないか?」

 

「あんこは栗ようかんね」

 

 

 あんこがじっとココアのパフェを見る

 

「どうしたの?」

 

「こっちのを食べたいんでしょうか?」

 

「しょうがないなーちょっとだけだよ。そのかわり後でもふもふさせてねー」

 

 スプーンをちらかせるとあんこはパフェにまっしぐらにむかい無我夢中に食べ始める。

 

「本体まっしぐら!? あ~ほとんど食べられちゃた……」

 

「…………………………ん」

 

 落ち込むココアにシノンはそっと自分のをスプーンで取りあ~んをし始める。

 

「シ、シノン!?」

 

「………………………………あ~ん」首を傾げながら

 

「あ、あ~ん」パクっ

 

「う、うん! シノンのも美味しいね!」

 

「シノンに恥ずかしいって感情はない気がする」

 

「同意です」

 

「私もそう思うわ」

 

 

 

「それにしてもこのぜんざい美味しいな」

 

「うちもこのくらいやらないとダメですね」

 

「それならラビットハウスさんとコラボなんてどうかしら? きっと盛り上がると思うの! コーヒーあんみつとか」

 

「………………」グッ! 親指たてる

 

「いいねぇ! タオルやトートバッグなんてどうかな?」

 

「私、マグカップが欲しいです」

 

「ん……?」

 

「料理の方じゃなくて?」

 

 

 

 

「触らないの?」

 

「チノはティッピー以外の動物が懐かないらしい」

 

「………………………………頑張って」なでなで

 

「はいっ」

 

 チノは恐る恐るあんこの頭を少し触る。あんこはなんともなかったように動かない。

 

「やったよチノちゃん! おめでとう!!」

 

「……!!」

 

「ちゃんと触ってから祝ってやれよ」

 

 ココアのお祝いの言葉にビックリして手を離してしまうチノ。 そのあと、チノは撫でたりギュッと抱き締め、そぉ~と頭の上に乗せた。

 

「すごい! もうこんなに仲良く!」

 

「頭に乗せなきゃ気がすまないのか?」

 

 

 

 それぞれの和菓子を食べ終わり帰ろうとしていた。

 

「私の下宿先が千夜ちゃんの家だったらここでお手伝いさせてもらってたんだろうなー」

 

「今からでも来ていいのよ。従業員は常時募集中だもの」

 

「それいいな」

 

「同じ喫茶店ですし、すぐに慣れますね」

 

「じゃあ部屋を空けておくから早速荷物をまとめて来てね」

 

「誰か止……!」

 

「…………………………ダメ」

 

 言いきる前にシノンがココアにあすなろ抱きをした。

 

「「「「え!?」」」」

 

「………………ココア姉……一緒に……いるって……約束……した」

 

「え、あ、うん、そ、そうだね」かぁ~

 

(((あのココア[さん、ちゃん]が真っ赤!!?)))

 

 

 

 しばらくココアが落ち着くまで時間がかかった。

 

 

 

「千夜ちゃんまたねー!」

 

 4人は挨拶を、済ませたあと帰っていた。

 

「昔はこのお店とライバルだったんだよね?」

 

「今はそんなこと関係ないですけどね」

 

「私たちもお客さんに満足してもらえるように頑張らなきゃね」

 

「だなー」

 

「…………………………」コクッコクッ! 

 

 ココアはそこで、あることに気づく

 

「あれ!? あんこ!?」

 

「いつのまに!?」

 

「…………………………ふぅ」

 

 シノンはゆっくりとため息をつく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これが無口な少年と甘兎庵での出来事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回はシャロが出ると思います。
気長に待って頂ければ幸いです。


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7羽 無口な少年と金髪の少女との出会い~再び

7羽です。シャロをちゃんと書けているのかすごく不安です。ちょっと長くなってしまったかもしれません。
あまり、気にせず読んで頂ければ幸いです。


 ある日のラビットハウスでのこと。ココアは、カップを見ながら思い付いたかのように言い出した。

 

 

「このお店のカップって無地だよね」

 

「シンプルイズベストです」

 

「もっと色んなのがあったらみんな楽しいよ!」

 

「そうでしょうか?」

 

「この前面白いカップ見つけたんだ。今度買いにいかない?」

 

「へぇ、どんな?」

 

「こんなの!」

 

 ココアのイメージしたのはカップの中が空洞で回りは所々穴が空いていているやつだった。

 

「それアロマキャンドルじゃないか」

 

 そこに皿洗いを終えたシノンが厨房から出てきた。なんの話をしているのか気になり首を傾げている。

 

「お!シノン皿洗いお疲れ様!」

 

「…………」コクッ

 

「……………………?」

 

「あっ! シノンも色んなのにした方がいいよね!」

 

「…………なんの…………話?」

 

「ココアがカップのことを言い出してな、今度買いに行こうかて話になってるんだ」

 

「私は、今のままでいいんですか」

 

「えー?色んなのがあったほうが楽しいよ!」

 

「…………………………」

 

 二人の会話を見守っていると。

 

「シノンもそう思うよね?」

 

「シノンさんも無地の方が良いですよね!?」

 

「……!?」

 

 二人はシノンに少しムスッとしながら詰め寄る。

 

「シノン[さん]はどっち[ですか]!?」

 

「…………………………えっと」オロオロ

 

「二人ともやめてやれ」

 

 困っているシノンにリゼが助け船を出す

 

 シノンはリゼの方に行く

 

「ふぅ、二人とも少し落ち着けって」

 

「でも……」

 

「ですか……」

 

「シノンが困ってるだろ。シノンも何か言ってやれ?」

 

「…………………………どちらも…………だから」

 

「うん、そうだねごめんねシノン」

 

「ココア私たちにも通訳を頼む」

 

「うんとね、"チノちゃんの無地ってのも個人的にはラビットハウスに定着しているしコーヒーを飲むときは無地の方が良い気はするよ? だけどココア姉のも色んなのがあったほうがお客様も楽しめるし面白いとは思うよ。だから喧嘩しないで。"だって」

 

「そうですね。ごめんなさいシノンさん」

 

「…………………………」フルフル

 

「……………………こう……する」

 

「ん? "少し柄物置いてお客様が誕生日だったりなんかのイベントの時に出したら"って? うん! いいね! シノン!」

 

「そうですね、シノンさんの意見に賛成です」

 

「そうだな。今度行くか」

 

「………………」コクッ

 

 

 

「あの店良さそうだな」

 

「………………」コクッ

 

「わー可愛いカップがいっぱいー!」

 

「あんまはしゃぐなよー」

 

 ゴッ! 

 

「……………………ッ!」

 

 ココアが棚にぶつかりお皿とコップが落ちてくる。

 

 リゼとチノが咄嗟にキャッチし、シノンはココアを支える。

 

((予想を裏切らない))

 

 シノンはココアを起き上がらせる。

 

「えへへ~ごめんねぇ」

 

「………………」ペシペシ

 

 シノンはココアの頭を軽くペシペシする。

 

「いた! いたいシノン」

 

「…………危ないから…………気を付けて」

 

「うん……気を付ける」

 

 少しショボンとするココア。ちょっと

 

「シノンさんも怒るんですね」

 

「あれは、怒ってるのか?」

 

 

 

 

 ……シノンはお手洗い中~

 

 

 

「これなんて良いかも」

 

 ココアがカップに手を伸ばすと誰かの手に触れる。

 

 ハッ……

 

 そのまま金髪の少女とココアは少し見つめ会う。

 

「こんなシチュエーション漫画でみたことあります」

 

「よく恋愛に発展するよな」

 

 もじもじするココア。

 

「なんか、意識されてる!?」

 

 

 

「あれ? よくみたらシャロじゃん」

 

「天々座先輩!?」

 

「リゼでいいよ、噛むし」

 

「どどどうしてここに……」

 

「知り合いですか?」

 

「私の学校の後輩だよココアたちと同い年」

 

「……え?」

 

「リゼちゃんって年上だったの?」

 

「今更!?」

 

「あ! だからシノンは、リゼちゃんにさん付けだったんだ!」

 

「それも今更か!?」

 

 

 

「喫茶店で使うカップを買いに来たんだよ」

 

「そうだったんですね」

 

「シャロは欲しいものあった?」

 

「いえっ私は見てるだけで十分なので」

 

「この白くすべらかなフォルム……はぁ~……」

 

「それは変わった趣味ですなー」

 

「えっお前が言う?」

 

 そこにシノンが帰ってきた。

 

「シノンさんおかえりなさい」

 

「……………………ただいま」

 

「あー!! あの時の!!」

 

「………………………………?」

 

「お、覚えてませんか?」

 

「……………………ん?」

 

 シノンは思い出す。この街に初めて来たとき路地裏で、不良野良ウサギから助けた。女の子のことを。

 

「…………………………路地裏の」

 

「はい!あの時はありがとうございました」

 

「……………………大したこと………………してない」フルフル

 

「いつかお礼したかったと思ってたんです」

 

「……………………」フルフル

 

「え? でも……」

 

「…………………………また……今度」

 

「はい!いつかお礼させてくださいね!」

 

「………………」コクッ

 

 

 

「三人はいつ、知り合ったんですか?」

 

「二人とも私が暴漢に襲われそうになった所を助けてくれたの」

 

「ん?」「…………ん?」

 

「へーかっこいいね! さすがリゼちゃんとシノン!」

 

 

 

 ~回想シーン~リゼ

 

 二人の暴漢がシャロに詰め寄る。そこにリゼが現れ拳銃を突きだし叫

 

「失せろ!この私が断罪してくれる!」

 

 

 ~回想シーン~シノン

 

 二人の暴漢がシャロに詰め寄る。そこにシノンが現れ

 

「……………………やめろ」

 

「んだてめぇ!」

 

「邪魔するな!」

 

 二人の暴漢はシノンに怒鳴る。シノンはため息一つついて構える。

 

「……………………はぁ」

 

「………………………………倒す!」

 

「調子乗るなよ!」

 

 暴漢の一人がシノンに殴りかかる。

 

「……………………ふぅ」

 

 シノンはそれを受け止めるとそのまま一本背負投いをする! 

 

「アポウ!」

 

「この~! なめるなよ!」

 

 残った一人が蹴りをくりだす。

 

「……………………ッ」

 

 シノンはその蹴りをかわし、回し蹴りをした。

 

「ヒデブ!?」

 

「…………もう二度と…………この子に…………近寄るな!」

 

 ~回想シーン終了

 

 

 

 

 

「そんなこと言ってない!!」

 

「……………………」コクッ! コクッ! 

 

「ちがうちがう本当はー」

 

「あっ言っちゃだめです!」

 

 ~回想シーン正解

 

 

 

「不良野良ウサギー!? 噛まれる! 怖い! 通れない!」

 

「あーまた通行の邪魔してるなほらしっしっ」

 

 リゼはウサギをしっしっと逃がす。

 

 

 

「う~不良野良うざき、怖い! 噛まれる!」

 

「……………………」

 

 シノンはそっとうさぎを抱えて、少し離れてそっと降ろす。そのあとしっしっと逃がす。

 

 

 回想シーン終了

 

「じっ~」

 

「う、うさぎが怖くてわっ悪い!?」

 

「……………………俺の…………何で……長いの?」

 

「確かに」

 

「リゼさんのと比べると長いですね」

 

「え、あいや!その~」

 

(い、言えない! 助けてもらったときからちょっと妄想してたことだったなんて口が避けても言えない!)

 

「き、気のせいよ気のせい」

 

「そうかなぁ~」

 

「……………………?」

 

 

 

「このティーカップなんてどう?」

 

「誤魔化しましたね」

 

「違うの! ほらこのカップとか香りがよく広がるの」

 

「カップにも色々あるんですね」

 

「こっちは取っ手のさわり心地が工夫されてるのよ」

 

「なるほどねー」

 

「詳しいんだな」

 

「上品な紅茶を飲むにはティーカップにもこだわらなきゃです!」

 

「うちもコーヒーカップには丈夫で良い物を使ってます」

 

「私のお茶碗は実家から持ってきたこだわりの一品だよ」

 

「何張り合ってるんだ?」

 

「……………………」コクッ

 

 

 

「でもうちの店コーヒーが主だからカップもコーヒー用じゃないとなー」

 

「えっそうなんですか!?」

 

「リゼ先輩のバイト先行ってみたかったのに」

 

「もしかしてコーヒー苦手?」

 

「砂糖とミルクいっぱい入れればおいしいよ!」

 

「にっ苦いのが嫌いなわけじゃないわよ」

 

「カフェインを摂りすぎると異常なテンションになるみたいなの。自分じゃよくわからないんだけど」

 

「コーヒー酔い!?」

 

「……………………大変……なんだね」

 

「労ってくれてありがとうございます」

 

「………………?」

 

「?」

 

 シノンが首を傾げてシャロもそれにつられて傾げる

 

「…………同い年……だよ?」

 

「え!?」

 

「………………保登 シノン………………よろしく」

 

「桐間 シャロです」

 

「……………………敬語なくて………………良い」

 

「…………………………シノンでいい」

 

「じゃあ私もシャロでいいわよ」

 

「……………………」コクッ

 

 

 

「この前カップの中にうさぎが入ってる写真見たんだかわいかった~」

 

「窮屈じゃないのか?」

 

「ティッピーも入ってみたら注目度アップだよ!」

 

「でもティッピーが入るほど大きなカップはないだろう」

 

「ありました」重いです

 

 シノンはそっとチノの持っているカップを持ち上げた。

 

「……………………持つ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「あるのかよ!?」

 

 さっそく皆はティッピーをカップの中に入れる。

 

「……なんか違う」

 

「ご飯にしか見えないです」

 

「……………………」コクッ

 

 

 

「あのカップおしゃれだよ! みんなどうかな」

 

「と思ったら高い!」

 

「五万円……」

 

「アンティーク物はそのくらいするわよ」

 

「あぁ、これ」

 

「昔的にして打ち抜いたやつじゃん」

 

「「「「!?」」」」

 

「…………………………すごい」

 

 リゼがお嬢様であることに四人はびっくりした。

 

 

 

「チノちゃんお揃いのマグカップ買おうよ」

 

「私物を買いに来たんじゃないですよ」

 

 その様子を見てたシノンはチノの頭に手を置き。

 

「…………………………買う?」

 

「シノンさんとならいいかもしれませんね」

 

「ヴェアアアアア」

 

 白目になって叫ぶココア

 

「……………………ココア姉も…………お揃い…………する?」

 

「もちろんだよ!」パアアア

 

「私も気軽にあんな事言えたらなー」

 

「先輩が羨ましそうにみてる」

 

「こっこのカップなんて色違いで可愛くないですか!?」

 

「2つセットですしかっ片方いりませんか!?」

 

「あ、これ可愛いな」

 

「ってよくみたら恋人用!?」

 

 困惑している。シャロを気にせずリゼはレジに向かう。

 

 

 

「シャロちゃんて高いカップ詳しくてお嬢様って感じだよね」

 

「お嬢様!?」

 

「その制服の学校は才女とお嬢様が多いと聞きます」

 

「おまけに美人さんだし完璧だねー」

 

「それリゼ先輩に言いなさいよ!」

 

「シャロにとってはこのカップも小物同然だろうな」

 

「あなたが言う!?」

 

「そっそんな末代まで家宝にしますけど!?」

 

「お嬢様ポーズだ!」

 

 

 

「カップを持つ仕草も気品があるよね」

 

「普通に持ってるだけなのに」

 

「髪もカールしてて風格があります」

 

「クセ毛なんだけど」

 

「やっぱりキャビアとか食べるんですか?」

 

「そそういうことはリゼ先輩に聞いた方が……」

 

「んー私がよく食べるのは」

 

「ジャンクフード? あとレーションのサンプルとか即席で食べられるものっていいよな」

 

「わかります! 卵かけご飯とか美味しいですよね」

 

「きっと卵ってキャビアのことだよ」

 

 

 

「……………………違う……気が……する」

 

 シノンだけは疑問にもっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 ~帰り道

 

「それじゃ私はここで」

 

「うん、またねー!」

 

「…………………………ん?」

 

 シノンは落ちている財布に気づく。

 

「あれ? シャロちゃんお財布忘れてる?」

 

「……………………届けて……くる」

 

「うん! 行ってらっしゃい!」

 

 

 

 

 

 

「あら シャロちゃんお帰りなさい」

 

「…………」

 

「リゼ先輩に余計なイメージもたれた……」

 

「あと頭に変な生き物が……」

 

「ココアちゃん達に会ったのね」

 

「……絶対秘密よ」

 

「なにが?」

 

「私がこんな家に住んでいるっていうことをよー!」

 

「慎ましやかでいい家だと思うけど……」

 

 

 

「……あっ」

 

「「え!?」」

 

 そこにはシャロの財布をもったシノンが立っていた。

 

 その顔は驚きと焦りが見えた。

 

「き、聞いてた?」

 

「……………………ごめん」

 

「うわぁぁー!!」

 

 顔を真っ赤にして叫ぶシャロ

 

「…………ほんと…………ごめん………………秘密に………………する」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これが無口な少年と金髪の少女との二回目の出会いだった。

 

 

 

 




読んで頂きありがとうございます。
次回も気長にお待ちください。では!


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8羽 無口な少年とフルール・ド・ラパン

第8羽目です。チノちゃんをちゃんと書けているか不安になっています。
暖かい目でご覧ください!


 ある朝のこと。

 

 

 

「シャロちゃん今日もお疲れ様」

 

「お疲れ様」

 

「今日は何のバイト?」

 

「今度働くお店のチラシの配りよ」

 

「私も1枚くださいな 」

 

「……別にいいけど」

 

 チラシを見る千夜

 

「こ……これは!!」

 

 

 

 ラビットハウスのドアが勢いよく開いた。

 

 

 

「みんな!シャロちゃんが大変なの!」

 

「何事!?」

 

「……………………?…………………………ん」

 

 とりあえず落ち着いてもらうためにコーヒーを出すシノン。

 

「ありがとう♪シノン君」

 

 

 

 ~事情説明中

 

「へーシャロちゃんと千夜ちゃんって幼なじみだったんだ」

 

「そうなの、だけどこんなチラシ持ってきて……」

 

 そのチラシには~心も体も癒します。OPEN~fleur du Lapin~と書かれていた。

 

「きっといかがわしいお店で働いてるのよ!」

 

「なんと!」

 

「怖くて本人に聞けない!」

 

(フルール・ド・ラパンって広告で釣ってるけどただの喫茶店じゃ……)

 

「…………………………」コクッ

 

 疑問に持つリゼにシノンは無言で頷いた。

 

「どうやってシャロちゃんを止めたらいいの……」

 

「仕事が終わったらみんなで行ってみない?」

 

「潜入ですね」

 

「潜入!」

 

 チノの言葉にわくわくしだすリゼ。

 

「お前らゴーストになる覚悟はあるのか!?」

 

「ちょっとあるよー」

 

「潜入を甘くみるなぁ!よし、私について来い!」

 

「「イエッサー!!」」

 

「どこに潜入に行くんです?」

 

「…………………………フルール?」

 

 

 

 ~しばらくしてフルールの窓際まで来る。

 

「ここみたいだね」

 

「いいか?慎重に覗くんだぞ 」

 

「せーのっ」

 

 五人はそっ~と覗く。そこには、ロップイヤーを着たシャロが接客していた。

 

「いらっしゃいませー」

 

「……」

 

「何でいるのよー!」

 

 

 

 あっという間に気づかれた五人だった。

 

 

 

 五人はお店に入った。

 

「ここはハーブティーがメインの喫茶店よ。ハーブは体に良い色んな効能あるのよ」

 

(心も体も癒すってそういうこと)

 

「大体こんなチラシで勘違いしたの誰?」

 

「私たちシャロちゃんに会いに来ただけだよ」

 

「いかがわしいってどういう意味です?」

 

「こんなことだろうと思った」

 

「………………………………?」

 

 じっ~

 

 四人はいっせいに千夜を見る。

 

 千夜は誤魔化すかのようにシャロの手を取り。

 

「その制服素敵!」

 

「こいつか!」

 

 

 

「シャロちゃんかわいーウサミミ似合う~」

 

「て、店長の趣味よジロジロみないで」

 

「じっ~」

 

(こんな格好リゼ先輩には見られたくなかった……! あの目は軽蔑の目よ!)

 

(ロップイヤーもいいかもしれない)

 

「………………」じっ~

 

「ん? シノンどうしたの? シャロちゃんをじっと見つめて」

 

「……………………似合う………………可愛い」

 

「えっ!?」かぁ~~

 

「またシノンの天然攻撃の被害者が……」

 

「あれは、防ぎ用がないからね!」

 

「わかります」

 

「そうねぇ~」

 

「う~恥ずかしい~」

 

 

 

「そういえばあんたたちなんで制服なのよ」

 

 ハッ!! 

 

「つい急いじゃって……」

 

「店員さーん注文おねがーい」

 

「こっちもー」

 

 お客様に呼ばれそのまま動こうとするココアと千夜。

 

「はーい!」

 

「いま、伺います~」

 

「紛らわしいことやめてよ!」

 

「……………………ごめん」しょぼん

 

「え!?」

 

 そこには手伝おうとしていたシノンがしょぼんとする。

 

「え、あ、ち、違うのよ手伝ってくれるその気持ちは嬉しいの! だけどお客様も混乱しちゃうだろうしあの、その」アタフタ

 

「確かにシノンの制服はバーテンダーのだもんな」

 

「そうね、フルールに溶け込んでるかも」

 

「シノンは渡さないよ!」

 

「なんで張り合ってるのよ!?」

 

「……」ぎゅ~~

 

 無言でシノンに抱き付くチノ

 

「…………?」なでなで

 

 

 

「せっかくだからお茶してってもいいかな?」

 

「しょうがないわねー」

 

(ハーブティーの種類ってよく分からないな。適当に選んどくか?)

 

「やっぱダンディ・ライオンだよね!」

 

「飲んだことあるんですか?」

 

「ライオンみたいに強くなれるよ!」

 

「たんぽぽって意味分かってないな」

 

「え!? ダンディ・ライオンってたんぽぽっていう意味だったんだ!!」

 

「やっぱりわかってなかったな」

 

「それじゃあ、なんでタンポポなのにライオンさんなの? シノン知ってる?」

 

「……………………」コクッ

 

「知ってるの!?」

 

「……………………」

 

「へぇ~そうなんだ!」

 

「!?」

 

「ココア通訳してやれ」

 

 困惑するシャロにリゼが助け船をだす。

 

「うん! えっとね"ダンディライオンはフランス語で「ライオンの歯」を意味するんだよ。これはギザギザした葉がライオンの牙を連想させることから来てるらしいよ"だって」

 

「あ、合ってる。シノンはハーブティ詳しいの?」

 

「……………………そんなに………………詳しく…………ない」

 

「十分だと思うけど」

 

 

 

「迷うならそれぞれに合ったハーブティーを私が選んであげる」

 

「ココアはリンデンフラワーねリラックス効果があるわ。ちょっとは落ち着きなさい」

 

「千夜はローズマリー肩こりに効くのよ」

 

「助かる~」

 

「チノちゃんは甘い香りで飲みやすいカモミールはどう?」

 

「子供じゃないです」

 

「リゼ先輩は最近眠れないって言ってましたからラベンダーがオススメです」

 

「あっ、ティッピーには難聴と老眼防止の効能があるものをお願いします」

 

「ティッピーそんな老けてんの?」

 

「シノンはどうする?」

 

「……………………エルダーフラワー…………ある?」

 

「えぇ、あるけど風邪気味なの?」

 

「…………多分…………ひき始め」

 

「え! シノン風邪なの!?」

 

「………………だから…………ひき……始め」

 

「しかし、なんでシャロは風邪ってわかったんだ?」

 

「エルダーフラワーは風邪のひき始めに飲むと良いと言われているハーブティーなので」

 

「…………………………だよ」

 

「えっとね"このハーブは粘液を浄化して呼吸器の気道をきれいにしてくれることから、風邪に効くんだよ。"」

 

「なるほどな」

 

「やっぱりシノンは充分詳しいと思うわ」

 

「「「「 うんうん 」」」」

 

 シノン以外の四人は頷く。

 

「……………………?」

 

 

 

「お湯を入れたら赤く染まった! きれ~い」

 

「いい香りです」

 

「なんかスーってするね」

 

 みんなで楽しんでいるとシャロがクッキーを持ってきた。

 

「ハーブを使ったクッキーはいかがでしょうか? 私が焼いたんですか……」

 

「シャロが作ったのか」

 

「美味しい!」

 

「……………………」コクッ! コクッ! 

 

「良かった……!」

 

「シャロちゃんが真っ赤に!」

 

「こっちの方が見てて面白い!」

 

 

 

「……このクッキー甘くない……」

 

「そんなことないわよ?」

 

「ふふっ、ギムネマ・シルベスターを飲んだわね」

 

「名前がかっこ良かったから……」

 

「それを飲むと一時的に甘味を感じなくなるのよ」

 

「そんな恐ろしい効能が……!?」

 

「…………さっき…………止めた…………のに」

 

「シノンは効能の意味を知ってたのか?」

 

「…………………………」コクッ

 

「シャロちゃんはダイエットでよく飲んでたのよね」

 

「いっ、言うなばかー!!」

 

「………………」じっ~

 

「な、なによ」

 

「………………?」

 

「? ココアわかる?」

 

「うんっとね"ダイエットしなくても充分痩せてるし可愛いよ? "だって!」

 

「……」かぁ~

 

「シノンはなんであんなにあっさりと言うんだ?」

 

「本人が気にしていないからだと思うよ」

 

「それでも躊躇なく、言えるのはすごいわね」

 

「ですね」

 

 

 

「このお茶レモンを入れたら色が青からピンクになりました!」

 

「えっほんとだ!」

 

「私もやってみたい!」

 

「シャロちゃーん!」

 

「おもしろーい千夜ちゃん達も見てー」

 

「あっ色が変わる瞬間を見逃しちゃった!」

 

「シャロちゃん! 追加お願いできるかしら?」

 

 すごく嫌そうな顔になるシャロ

 

「一度に頼んでやれ」

 

「……………………大丈夫」

 

「ん?」

 

「………………録画………………した」

 

 シノンのケータイにはココアが紅茶にレモンを入れる所が写し出されていた。

 

「………………シャロが………………大変…………だから」

 

「シノン~」涙目

 

 

 

「何かお手伝いできることがあったら言ってください」

 

「ありがとう」

 

「チノちゃんて年下なのにしっかりしてるのね、妹に欲しいくらい」

 

「!!」

 

 なでなで

 

「……」ほわ~~ん

 

「!!」

 

「チノちゃんは私の妹だよ!」

 

「なに言ってるの?」

 

「妹じゃないです」

 

「うぅ~シノン~」

 

「………………ん」なでなで

 

「これじゃ、どっちが妹かわからないわね」

 

 

 

「シノンさんの妹ならいいかもしれませんね」ボソッ

 

「え? チノちゃんなんて?」

 

「なんでもありません」

 

 

 

「たくさん飲んじゃった」

 

「お腹の中で花が咲きそうだよー」

 

「そういえば肩が軽くなったような」

 

「少し元気になった気がします」

 

「確かにリラックスしたけどさすがにプラシーボ効果だろー」

 

「ねぇシャロちゃんハーブティーって自分の家でも作れるの?」

 

「そうね 自家栽培する人もいるわ」

 

 シャロがココアの方を見ると

 

「ココアさんが寝てる!」

 

「ハーブティー効きすぎ!」

 

「今、話してたのに……」

 

 

 

 ~しばらくして

 

 

 

「さてと、そろそろおいとまするとしょう」

 

「そうね」

 

「ココアさんが起きません」

 

 そう言いながらココアの肩を揺らすチノ

 

「…………………………ココア姉…………起き……する」ペシペシ

 

「う~んあと5分」

 

「………………ムッ」 ペシペシ

 

「う~ん」

 

「……………………」ペシペシ ペシペシ

 

「い、痛い」

 

「……………………」ペシペシ ペシペシ ペシペシ

 

「わ、わかった! 起きる起きるよ~シノン~」

 

「すごいわねシノン君」

 

「やっぱりシノンさんのペシペシは怒ってると思います」

 

「ペシペシの威力も弱いからわかりづらいわね」

 

「ただ、何回もやられるから痛いと感じるのかもな」

 

 

 

 ~翌日

 

 

 

「みんなーハーブティー作ろー」

 

「これでできるかなー?」

 

「ココアさん……」

 

「それ雑草です」

 

「…………………………雑草じゃ…………無理かな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これが無口な少年とフルールでの出来事だった。

 

 




シノンに何のハーブティーを飲んでもらうか悩みました。自分が風邪を引いたので風邪に効くハーブティーにしました。
シノンには風邪を引いてほしくないなぁ~みなさんも風邪には充分注意しくださいね!手荒いうがい大事!
次回も気長にお待ちください。


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9羽 無口な少年と雨の中のお泊まり

今回は、今までより長くそして微妙なシリアスがあります。今回も暖かい目でご覧ください。





ラビットハウスでのこと。

 

 

 

「…………………………」

 

シノンは窓の外に降る雨を静かに見つめていた。

 

「今日は雨でお客さんあんまり来ないねー」

 

「二人ともこんな天気なのに遊びに来てくれてありがとね」

 

「ちょうどバイトの予定が空白になっただけだし」

 

「でも私たちが来た時は晴れていたのに」

 

「誰かの日頃の行いのせいね」

 

「シャロちゃんが来るなんて珍しいことがあったからかなー」

 

「えっ!?」

 

「それにしても今日のシノンさんは少し静かな気がします。」

 

「そうか?」

 

「確かに少し元気がなさそうかも」

 

「そうね」

 

「……きっとお客さんがあんまり来なくてシノンも寂しいんだよ!ね?シノン!」

 

「……………………ん」

 

シノンは優しく微笑み返事をした。

 

4人は一応納得しそれ以上何も言わなかった。

 

 

 

リゼがコーヒーを持ってきた。

 

「シャロ コーヒー苦手なのに大丈夫か?」

 

「少しなら平気です」

 

(先輩がいれてくれたコーヒーだもの)

 

 

 

~3分後

 

 

 

「みんなー!今日は私と遊んでくれてありがとー」

 

「時間が空いたらいつでも来てねー」

 

「いいの?行く行くー!」

 

「あっ!チノちゃんふわふわー!」

 

(ココアが二人になったみたいだ…!)

 

「…………こんなに………………変わるの?」

 

あまりの変わりぷっりに驚きを隠せない。

 

「そうね酔った時はいつもこんな感じよ?」

 

「あ!?シノンー!!」

 

シャロはシノンに思いきり抱きついた。

 

「!?」

 

その勢いのままシノンは後ろに倒れた。

 

 

 

チュ

 

 

 

「「「「!?」」」」

 

 

 

「えへへ~」

 

「…………?……!…………!?」

 

「ななな何を」

 

「キャー!シャロちゃんとシノン君が!」

 

「!?!?」

 

「わー!シャロちゃんずるい!」

 

「…………ち、違う!……ほ、頬っぺただから!」

 

顔を真っ赤にし否定するシノン

 

「えへへ~シノン~」

 

シャロはキスしたことに気づいてないのかシノンの胸に顔を擦り付けている。

 

「頬っぺたとはいえキスするとは酔ったシャロは怖いな…」

 

「多分だけど酔いが覚めても記憶はないと思うわよ」

 

「シノンさん顔が真っ赤です」

 

「さすがのシノンでもあれは、恥ずかしかったと思うよ?」

 

「………………とりあえず…………シャロ……には……このこと…内緒で」かぁ~

 

「わかった」

 

「わかったわ」

 

「わかりました。」

 

「わかったよー!」

 

「シノン~」

 

「………………はぁ」

 

シノンは顔に手を当てて深くため息をついた。

 

しかし、余った左手はシャロの頭を撫でていた。

 

 

 

一通り暴れたシャロは満足したのかテーブルに伏せて寝ていた。

 

「雨激しくなってきたねー」

 

「風も強そうです」

 

「迎えを呼ぶから家まで送ってってやるよ」

 

「はっ!」

 

「家バレたくないー!」

 

千夜はそこでシャロが言ってたことを思い出す。

 

「いえっ私が連れて帰るわ!」

 

千夜はシャロを背負いお店を出ようとする。

 

「じゃあまたね」

 

「お おい…」

 

ザー!!

 

しかし、雨の中1人背負いながら行けるわけもなく力尽きる千夜

 

「千夜ちゃーーん!!」

 

「………………!!」

 

「あ!シノン!?」

 

シノンはすぐに二人のところに駆け寄ると千夜を背負いシャロをお姫様抱っこし始めた。そして、すぐにラビットハウスの中にと入る。

 

 

 

「ごめんねシノン君……」

 

「………………大丈夫………………気にしないで」

 

「んぅ?」

 

ラビットハウスに入るのと同時に目を覚ましたシャロ

 

ぐしょ~

 

3人はびしょ濡れになっていた。

 

「ごめんなさい」

 

「いつの間にびしょ濡れに……」

 

「………………さむい」

 

「えっと…今日は泊まってってください。」

 

「二人は先にお風呂どうぞ」

 

「お言葉に甘えちゃいたい所だけどシノン君は大丈夫?」

 

「…………………………大丈夫…………先に入って」

 

「なんだったら一緒に入る?」

 

「な、な、なにいってるのよ!?千夜!?」

 

「えーでもシャロちゃんのほ……むぐっ!」

 

シノンは千夜の口を後ろから押さえた。

 

「私がなによ」

 

「……………………なんでもない」

 

「?」

 

「………………風邪引く…………から……速く」

 

 

 

「ほらシノン私が拭いてあげる!」

 

「………………ん」

 

シノンの後ろから髪を拭き始めるココア

 

「私まで泊まって良かったのか?」

 

「構わないですよ」

 

「リゼちゃん緊張してるー?」

 

「いや…親父の部下に誘われたワイルドなキャンプしか経験した事ないから……こんなの初めてで」

 

「ワイルド?」

 

 

 

「チノの部屋ってチノって感じだなー」

 

「そうだ!」

 

~ちょっとして

 

「じゃーんチノちゃんの制服着てみたよ!」

 

「そのまま学校行っても違和感なくて心配だ」

 

「ホント!?」

 

「ちょっと行ってくる」

 

「待ってください!外は大雨です!」

 

「そういう問題じゃない!?」

 

「……………………可愛いよ?」

 

「そういう問題でもない!!」

 

 

 

~お風呂

 

千夜とシャロは背中を合わせて話していた。

 

「リゼちゃん達とお泊まり出来て良かったわね」

 

「別によくないし」

 

「ホントはみんなと会いたかったのよね」

 

「会いたくないし」

 

「シャロちゃんホントは楽しくないのね」

 

「楽しくなくないし…………って ん?」

 

「チノちゃんぎゅーしたらふわふわよね」

 

「そんなココアみたいな事したら迷惑じゃない」

 

(おもしろい…)

 

「シノン君にぎゅ~てしたらどうなるのかしらね」

 

「え!?ま、まさか私そんなことを!?」

 

「さぁ?私にはわからないなぁ~」

 

「千夜~!?」

 

「私も今度やってみようかしら」

 

「私もってなによ!?私もって!!」

 

「うふふ、さぁなにかしらねぇ~」

 

「う~千夜の……おばかー!」

 

顔を真っ赤にし怒るシャロだった。

 

 

 

風呂上がった2人は髪を乾かしながら雑談していた。

 

「チノちゃんにパジャマ借りたのはいいけどちょっと可愛すぎない?いつもはジャージなのに」

 

「本物のお嬢様みたい♪」

 

(リゼ先輩に笑われたりしたらどうしょう…)

 

部屋のドアを開けるとチノの制服を着たリゼがいた。

 

「これはちがっ……!ジャンケンで負けて……!」

 

「ほわぁ~~」

 

目を輝かせてリゼを見つめるシャロ

 

「……………………ごめん…………お先」ペコリ

 

シノンは、そう言うとココア達に軽くお辞儀して部屋を後にした。

 

 

 

「そういえば千夜は何て言おうとしたの?」

 

「え?何が?」

 

「雨に濡れたときといい、風呂場のときといい何か隠してない?」

 

「えっと」

 

(千夜、またシャロをからかって……)

 

(多分それで……)

 

(気づかれちゃう?)

 

リゼ、チノ、ココアはハラハラし始めた。

 

「わかったわ正直に言うわね」

 

「「「え!?」」」

 

「シャロちゃんは…」

 

「うん。」

 

「酔った勢いでシノン君に抱きついたのよ!!」

 

「「「・・・」」」

 

「な、な、ななにやってるの!?私ー!?」

 

 

 

~お風呂

 

お風呂に入ってたシノンはかすかに声が聞こえてきた。

 

私ー!?

 

「……!?………………まさか」

 

シノンは少し不安になっていた。

 

 

 

~しばらくして

 

 

 

「あっ!シノンおかえり~」

 

「………………ただいま」

 

「あっ」かぁ~

 

顔が真っ赤なシャロ

 

「………………」じっ~

 

千夜をじっと見つめるシノン

 

「・・・プイッ」

 

シノンから目をそらす千夜

 

「「「・・・」」」

 

じっと見守る3人

 

「シ、シノンご、ごめんね。だ、抱き付いたりして」

 

「……………………大丈夫」

 

そう言うとシノンは千夜の方に向い話始めた。

 

「………………なんで……話すの」コソッ

 

「大丈夫よ頬っぺたのことは言ってないわよ、抱きついたことしか言ってないわ」コソッ

 

「…………なら……よかった。」コソッ、ホッ

 

「?」

 

「……大丈夫…………忘れるから…………シャロも……気にしないで」

 

「うん、ありがとう。」

 

「とりあえず一件落着だな」

 

「そうね」

 

「チノちゃんお風呂入ろう~」

 

「そうですね」

 

 

 

~またしばらくして

 

 

 

「ただいま~リゼちゃんお風呂最後で良かったの?」

 

「あぁ、最後の方がゆっくり出来そうだし!なんか二人ともココアの匂いがするぞ!?」

 

「私の匂いってなにー?」

 

「飲む方のだよ!」

 

「入浴剤でした!これでリゼちゃんも甘い匂いに」

 

「余計なことを……」

 

「悔しいが悪くない」

 

お風呂の中でリラックスするリゼがいた。

 

 

 

「なんかいつもより一気に賑やかになったね」

 

「ところで、こんな機会だからみんなの心に秘めてる事を聞きたいんだけど」

 

(これは……好きな人を暴露する流れ!ちょっと待ってやだやだ心の準備が)

 

「とびきりの怪談を教えて…」

 

(恋をしたような瞳で言うな!)

 

「怪談ならうちのお店にありますよ」

 

「そうだったの!?」

 

「リゼさんとココアさんそして、シノンさんはここで働いていますけど…落ち着いて聞いてください。」

 

「この喫茶店には夜になると店内を白い物体がふわふわとさまよっているという。目撃情報がたくさんあるんです!」

 

(一生懸命怖がらせようとしてるけど)

 

(テッピィーでしかない!)

 

「…………………………怖いね」なでなで

 

微笑みながらチノの頭を撫でる。

 

 

 

「では次はリゼさんの番です」たっち

 

「もう終わり!?」

 

「小さい頃うちの使用人から聞いた話なんだけど」

 

「使用人!?」

 

「仕事を終えて帰ろうとすると……」

 

「ゆっくりと茂みの中から何かが地面をはって近づいて来たんだ」

 

「使用人はあまりの恐怖に逃げだした。」

 

「犯人はほふく前進の練習をしていた私だ」

 

「バラしちゃだめじゃん」

 

「…………」コクッコクッ

 

 

 

「とっておきの話があるの切り裂きラビットっていう実話なんだけど……」

 

カッ!!

 

「キャ!雷!?」

 

「わ!?」

 

「てっ停電!?」

 

「バーの方は大丈夫かな!?」

 

「………………ん」

 

「落ち着いてくださいこんな時のために……」

 

ポッ……

 

チノはロウソクに火を灯した。

 

「盛り上がって来ちゃった」

 

「よりによって懐中電灯じゃなくてロウソクか」

 

「……………………下…………見てくる。」

 

「え!?シ、シノンも一緒にいよ?」

 

「そ、そうだな一緒に聞こう」

 

「下は父がいますから大丈夫ですよ」

 

「そうね、シノンも一緒にいよ」

 

「…………はぁ…………わかった」

 

 

 

~お話中~

 

 

 

「はいっおしまい。今日はもう寝ましょう」

 

「ぜ……絶対取り憑かれる」ボソッ

 

「「!!」」

 

ココアが呟いた言葉に反応するリゼとシャロ

 

「……………………部屋……戻る」

 

そう言いながらシノンは立ちあがり部屋を出ようとする。

 

ガシッ!

 

シノンはココアに右手をつかまれる。

 

「…………?」

 

「シノン……今日は一緒に寝よ?」コテン

 

「……………………おやすみ」

 

シノンは何もなかったように部屋を出ようとする。

 

「シノン!?」

 

ガシッ!!

 

シノンの左手にチノが掴む。

 

「…………ん?」

 

「シノンさん今日は一緒に寝ましょう」

 

「……………………さすがに………………女の子とは…………寝れない」

 

「………………みんなも…………嫌……でしょ?」

 

「私は構わないわよ♪」

 

「…………!?」

 

「私は別にシノンは信用してるし」

 

「…………!」

 

「その、シノンなら……ゴニョゴニョ」

 

「………………?」

 

「…………シノンさんのことお兄ちゃんだと思うことがありますので」

 

「…………」

 

「私はシノンと昔よく一緒に寝てたもんね!」

 

「…………………はぁ…………わかった」

 

「そういえばシノン君は怖くなかったの?」

 

「……………………」コクッ

 

「なんかコツとかあるんですか!?あるなら是非教えてほしいです!」

 

「そうだ教えてくれシノン!」

 

「……………ごめん……………とくに…………ない」

 

「そっか」

 

「…………もっと……怖い……いる」ボソッ

 

「え?」

 

「………………なんでもない」

 

(気のせいかしらさっきシノン、"もっと怖いもの知っている"って言ってた気がするけど気にしない方が良いのかな)

 

シャロだけが疑問をもっていた。

 

 

 

「…………それで………誰と?」

 

「ここは公平にじゃんけんでいきましょ。」

 

みんな納得しじゃんけんをしようとする。

 

「「「「「じゃん けん ぽい!」」」」」

 

 

 

~しばらくして

 

「…………………よろしく…………お願い」

 

「よ、よろしく!」

 

「ほわぁ~よ、よろしくお願い!」

 

シノンの隣はリゼとシャロに決まった。

 

ちなみに勝った人から寝る場所を決めていった。

 

シノンはもちろん端を取ろうとしたが千夜とシャロが両端をとりココアとチノがベットになり

 

最後に負けたシノンが二人に挟まれることになった。

 

(シ、シノンがこんなに近くに!な、何を慌ててる。相手はあのシノンだ!大丈夫あいつは変なことをするやつじゃ……って変なことてなんだ!私ー!!)

 

(ど、どうしようシ、シノンがこんなに近くに!さっき抱きついたって千夜が言ってたしと、とりあえず落ち着かせよう深呼吸してスーハースーハー…………ん?なんか良い匂いが……ま、まさかシノンの匂い?……もっとって、私は何をー!?)

 

(…………なんか…………暑い)

 

 

 

(……トイレ)

 

「あ~もう千夜のせいで行くの怖くなったじゃない」

 

 

 

「キャーーッ!」

 

そこには膝を抱えているリゼがいた。

 

「ってリゼ先輩!!何してるんですか!?」

 

「ロ……ロウソクの火が消えて動けなくなった……わけじゃないぞ」

 

「一緒に行きましょう」

 

「そ、そうだな」

 

「……………………何…………してるの?」

 

「「キャー!!」」

 

「ってシノンか驚かせないでくれ」

 

「………………ごめん」

 

「それにしてもシノンはなんでここに」

 

「…………目が覚めたら…………二人…………いなかったから」

 

ピカッ!

 

その時雷が落ち窓がひかる

 

「「キャーー!」」

 

二人はシノンに抱きつく

 

「…………!!………………ん……落ち着いて」

 

シノンは落ち着いてもらうため二人の頭を撫でる

 

(あっ、シノンの撫で方優しい)

 

(シノンの体暖かい……って私酔っらった時こんな風に抱きついていたの!?)

 

(………………眠い)

 

 

 

 

 

 

 

「んー」

 

目が覚めたチノはカーテンを開けて太陽の日差しを部屋に入れる。その日差しのお陰か千夜が目を覚ます。

 

「おはようございます。」

 

「おはようチノちゃん。」

 

「う~んおはよう」

 

「シャロちゃんおはよう。寝言で今日は特売なのーって……むぐ」

 

「そそそんなこと言っててもここで言うなー!!」

 

「うーん!おはよう。そういえばココアは……」

 

ココアはドアの前で寝ていた。

 

「なんであんな場所に……」

 

「ほふく前進の夢でも見ているんでしょう」

 

「あれ?シノンは……」

 

リゼが隣を見ると

 

「…………う~ん」

 

そこには、寝ぼけいるのか枕を抱き枕のようにギュッとしながら寝るシノンがいた。

 

「「「「・・・」」」」

 

「「「「可愛い(です)」」」」

 

「………………ん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これが無口な少年と雨の日のお泊まりでの出来事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んで頂きありがとうございました!
今さらですが感想を送ってくださったみなさん。ありがとうございます!
とても嬉しいです!
次回も気長にお待ちください。


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10羽 無口な少年と野菜と好き嫌い

今回も暖かい目でご覧ください。


 ~ある朝のラビットハウス

 

 

 

 

 

「いただきまーす」

 

「いただきます」

 

「……………………いただきます」

 

「あ~ん。ん~♪…………あっ」

 

 ココアはトマトジュースを見て食べていた手が止まる。

 

「?」

 

 それにつられてチノは、セロリを見て止まる。

 

 二人とも嫌いな食べ物が目の前にあったのだ。

 

「ふぅ~やれやれ」

 

 ティッピーは二人の様子をみて呆れる。

 

 シノンもまた呆れる。

 

「……………………ふぅ」

 

「ね~シノン飲んで?」

 

「お、お兄ちゃん食べてください」

 

「…………………………だめ」

 

「そ、そんな」

 

「シ、シノンさん」

 

「…………二人とも…………一口…………食べて?」

 

「…………そしたら…………食べてあげる……から」

 

「う~それなら」ゴクッ

 

「う~」パクっ

 

「「まずい~」」

 

「………………ん…………えらいえらい」なでなで

 

「ん~ありがとう!」

 

「ありがとうございます」

 

 シノンは二人のトマトジュースとセロリを受け取り食べ始める。

 

(シノンは2人に甘すぎる気がするのぉ~)

 

 

 

 ~登校中

 

 ココアは朝のことをチノに言う。

 

「チノちゃん! 好き嫌いせずちゃんと食べないと駄目だよ!」

 

「ココアさんだってトマトジュース残していたじゃないですか」

 

「えへへ~、でも私よりチノちゃんの方が好き嫌い多いよ?大きくならないよ?」

 

「心配はいらないです。ココアさんと同じ年の頃には私の方が高くなっています」

 

「なんでそんな自信あるの!?」

 

「でも毎日ティッピー頭に載せてたら……伸びるかな」

 

 チノはシノンの服をギュッと掴み悲しい顔で聞き始める。

 

「!! シ、シノンさん!わ、私これ以上の、伸びないのでしょうか?」

 

「………………わからない」フルフル

 

 シノンの言葉に落ち込むチノ

 

「そうですか」しょぼん

 

「…………でも」

 

「?」

 

「……………………応援…………してるよ?」

 

 そう言いながら微笑むシノン。

 

「あ、ありがとうございます」

 

「むぅ~」

 

「……?…………ココア姉も…………応援……してる」なでなで

 

「えへへ~」

 

「あっ、わ、私も良いですか!?」

 

「……? …………ん」なでなで

 

 朝からシノンになでなでしてもらい笑顔になる2人だった。

 

 

 

 ~チノの学校

 

「おはよーチノ」

 

「今日は暑いねー」

 

 じっ……

 

 二人を見つめるチノ

 

「どうしたの?」

 

 メグを見て

 

(私とあんまり変わらない)

 

 マヤを見て

 

(私より小さい)

 

「ほっ……」

 

 安心するチノ

 

「そんなに休み中私たちに会いたかったの?」

 

「照れるじゃん」

 

 ちょっと勘違いする2人

 

 

 

 キーンコーンカーンコーン

 

 

 

 ~お昼休み

 

「授業終わった!」

 

「お昼食べようぜ!」

 

「昨日スーパーでチノのお父さん見かけたよ!それと……黒髪のお兄さんも一緒にいたよ?」

 

「多分お……シノンさんだと思います」

 

「シノンさん?」

 

「ココアさんと一緒に下宿している人です」

 

「そうなんだ。お父さんシブくてかっこいいよね。そのシノンさん? って人もかっこ良かったし」

 

「そうですね」

 

「弁当はお父さんが作ってるんでしょ?」

 

「最近はシノンさんも作りますね。今日は2人で作ったみたいですが」

 

「豪華なフルコースっぽいの作ってもらってるんだろ!」

 

 マヤが叫ぶ

 

「昨日買ったもので作ったのはたぶん……これだと」

 

 弁当箱には可愛いうさぎのおにぎりが入っていた。

 

「「かわいい!!」」

 

 

 

「うちの親 夜更かしするとチビのままだぞってうるさくてさー」

 

「よく寝る人なら身近にいますよ」

 

「そういえばチノちゃんの喫茶店にスタイルいい人いたね」

 

「寝ると育つってやっぱ本当なんだなー」

 

 チノは思い出す

 

「今日はお昼寝日和だよ~」

 

「カフェインは駄目なの~」

 

「ふわぁ寝不足~」

 

「……そうとは限りませんよ」

 

「あれー?」

 

「そういえばジャンブすると良いって言うよね」

 

「バナナも良いって聞くよね」

 

 

 

 

 

 ~下校中

 

「ジャンプすると伸びるって本当かな」キョロキョロ

 

 周りを見渡したあとスキップし始めるチノ

 

「楽しいことあったのかな……」ほほえまー

 

 それを見て微笑む千夜

 

「スキップだと効果が薄いかな」

 

「そうだ、赤い石畳の部分だけジャンプして渡って帰ろう」

 

 赤い石畳をジャンプしていくチノそこにうさきが横切る

 

「は!」ガッ! 

 

 電柱にぶつかるチノ

 

(チノちゃんが暑さのせいで暑さのせいで!)

 

 

 

「そうだバナナ……スーパーに寄ってこう……」

 

「タイムセールまであと10分だから……それまでにもやしとああ、あと魚が割引きだったわね。タマネギ3玉100円にキャベツ半分で50円……これで1150円だから……よし1500円以内に収まりそうね!」

 

「シャロさん?」

 

「ぴゃっ!」ビクッ

 

「シャロさんみたいなお嬢様でもスーパーに来るんですね」

 

「えっえーと……」

 

「あっあの商品棚にぎりぎり手が届かなくて!」

 

「お互い苦労しますね」

 

 棚の上の品物を取ろうとジャンプする2人

 

 ぴょんぴょん

 

 そこに下校中に偶然会ったシノンとリゼがスーパーの前を横切る。ちなみにココアは買い物があると先に帰り千夜とは途中でわかれた。

 

「なんだこれは新しい訓練か」

 

「………………違うと思う」

 

 

 

 スッ

 

 シャロの横から手を伸ばし品物をとるシノン

 

「…………ん」

 

「シ、シ、シノン!?」

 

「リゼさん、シノンさん奇遇ですね」

 

「外から見えたからな」

 

(背が小さくてよかった……!)

 

「すっぽん汁とは渋いな」

 

(……もしかして)

 

 シノンは少し考えたあとシャロの肩を叩き

 

「…………シャロ」

 

「ん? なに、シノン」

 

「……タイムセール…………行かない?」

 

「「「え!?」」」

 

 驚く3人

 

「シノンなんでシャロを?」

 

「そうですよお嬢様なのに」

 

(シノンもしかして私に気を使って!)

 

「………………シャロに…………庶民の……知って……もらおうと」

 

「なるほどなそれは良いかもな」

 

「ですね。あっ、もうそろそろタイムセール終わりそうですね行きましょうシャロさん」

 

 納得した2人はシャロをタイムセールに案内しょうとする。

 

「えっ、あ、うん!」

 

(や、やったー! タイムセールに行ける!)

 

 内心すごく喜ぶシャロ

 

「あっ! ありがとうねシノン」ボソッ

 

「………………」コクッ

 

 こっそりとお礼を伝えてきたシャロにシノンは微笑むながら軽く頷く

 

「……」かぁ~

 

「……ん?」

 

 急に顔が真っ赤になるシャロを不思議そうに見つめるシノン

 

 

 

「チノちゃんのためにセロリパン作ったよ!」

 

「ココアさんのためにトマトジュースを買ってきました」

 

「一緒に克服しよう!」ゴクッ

 

「はいっ!」パクパク

 

「………………」

 

 2人を静かに見守るシノン

 

 

 

「2人とも戻ってこないなぁ~キッチンかな」

 

 キッチンを見るとそこには

 

「!?」

 

 チーン! 

 

「………………ふぅ」ふきふき

 

 テーブルにうつ伏せに倒れているチノとココアがいた。

 

 シノンはテーブルを拭いていた。

 

 

 

「で?いったい誰にやられたんだ?またシノンの天然攻撃でもくらったか?」

 

「……………………ん?」

 

「……トマトジュース」

 

「……セロリ」

 

 やつれたように言うココアとチノ

 

「野菜?」

 

「…………好き嫌い……克服」

 

「あ~なるほどな」

 

「声が大きければ存在も大きく見えるかもしれない」

 

「錯覚ですか」

 

「ほら言ってみろいらっしゃいませー!」

 

「いっいらっしゃいませ……」

 

「声が小さい!」

 

「いら……っ」

 

「ちがう!」

 

「いら……」

 

「もっと声を張り上げて」

 

 いらっしゃいませのいらで言われてしまうためなかなか言えないチノ

 

「チノちゃんがイライラしてる」

 

「……リゼさんの…………違う…………気が…………する」

 

 カランカラーン

 

「らっしゃいませ!」

 

「リゼちゃん! なんか八百屋さんっぽい!」

 

 すぐに止めに入るココア

 

「……………………ふぅ」

 

 シノンは厨房に戻るとケーキを持ってお客様のところまで行く

 

「……先程は失礼いたしました」

 

「……こちらサービスのケーキです。よろしければどうぞ」

 

「シノン、いつもより喋れてないか?」

 

「あ~あれは、すごく頑張ってるね!」

 

「頑張ってるですか?」

 

「うん、お客様とかに話さなきゃいけないときはあんな風にすごく頑張って喋るんだよ」

 

「なるほどな。シノンには悪いことしたな後で謝っとく」

 

「それが良いと思います」

 

 

 

 

「シノンは好き嫌いとかあるのか?」

 

「………………ある」

 

「あるのか!?」

 

「以外ですね」

 

「シノンはね辛いのが苦手なんだっけ」

 

「………………」コクッ

 

「好きなものが甘いので苦手が辛いのって……可愛いな」

 

「ですね!」

 

「シノンは可愛いよ!」

 

「………………違う」

 

「?」

 

「…………可愛いの…………3人」

 

「「「……」」」かぁ~

 

「またシノンの天然攻撃が」かぁ~

 

「防ぎようがないからね!」かぁ~

 

「ですね」かぁ~

 

 しばらく顔が真っ赤な3人だった。

 

 

 

 ~更衣室

 

「チノがココアの身長抜かしたら面白いよな」

 

「モフモフする側じゃなくてされる側になるぞ?」

 

「それでもいいかもー」

 

「あ 私抱きついたりとかしないので大丈夫ですよ?」

 

「!?チノちゃんは大きくなっちゃだめー! 寝ちゃ駄目ー! 食べちゃ駄目ー!」

 

 そう言いながらチノの頭をポフポフするココア

 

「無茶言うな!」

 

 着替え終わりケータイを開くココア

 

「ん? 千夜ちゃんからメールだ」

 

 千夜のメールにはこう書かれていた。

 

「チノちゃん夏バテみたいなの! ちゃんと栄養と睡眠とらせてあげて!」

 

 ココアは厨房に戻るとすぐに更衣室に行き

 

「チノちゃん!」

 

「はい?」

 

「ちゃんと栄養とっていっぱい寝なきゃだめー!」

 

「どっちですか!?」

 

 

 

 ~シノンの部屋

 

 シノンのケータイにも千夜からメールが来ていた。

 

「…………………………ん」

 

 シノンは厨房に戻るとあるものを作り始めた。

 

 

 

 ~しばらくして

 

 

 

 コンコン

 

「はい」ガチャ

 

 ドアを開けるチノ

 

「シノンさんどうしたんですか?」

 

「………………食べて」

 

 そう言いながらオレンジ色のケーキを出した。

 

「え? これケーキですか?」

 

「………………」コクッ

 

「どうしたんですか?」

 

「…………セロリ……食べなくても……いい」

 

「………………そのかわり…………他の…………野菜…………食べて」

 

「え、あ、はい。でもそれじゃあ、なんでケーキなんですか」

 

「………………にんじん…………ケーキ」

 

「え?」

 

「………………栄養…………満点だから…………食べて」

 

「クスッ。はい、わかりました。いただきます!」

 

「………………ん」コクッ

 

 お互いに少し笑い会うシノンとチノだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これが無口な少年と野菜の好き嫌いでの出来事だった。

 

 




読んでいただきありがとうございました!
次回も、気長にお待ちください。


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11羽 無口な少年と図書館

今回も暖かい眼でご覧ください。
そして、遅くなりましたがお気に入り登録してくださった方感想くださった方。本当にありがとうございます!
自分事でありますがとても励みになっています。
本当にありがとうございます!


~ある休日の街

 

ココア、千夜、チノそして、シノンの四人は勉強するために図書館へ向かっていた。そこで偶然シャロに出会う。

 

 

 

「シャロちゃんだ!今帰り?」

 

「図書館に本返しに行こうとしたとこよ」

 

「それなら私たちと一緒に図書館で勉強してかない?」

 

「えー…」

 

そこでリゼのことを考えるシャロ

 

「へーココアたちに勉強教えたのかーやるじゃん」

 

(リゼ先輩に誉めてもらえるなら……)

 

シャロはふとシノンを見る。

 

「…………………………ん?」

 

(もしシノンなら……)

 

「…………教えてくれて……ありがとう……シャロ」

 

そう言いながらシャロの頭を撫でるシノン

 

そして、頭を撫でていたシノンの手はシャロの頬に行きそのままシノンの顔が近づいて……

 

 

 

「わ、私はなんていけない妄想をー!」

 

「「いけない妄想!?」」

 

「………………シャロ………勉強……………教えてくれる?」

 

「そ、そんなに言うなら教えてあげてもいいかなー」

 

「シノンはそこまでは言ってないよ!」

 

 

 

「チノちゃんもいるの?」

 

「はい」

 

シャロがそう言うとシノンの影からチノが顔を出した。

 

「私は小さい頃に読んだ本がもう一度読みたくなって……ですがタイトルが思い出せないんです。」

 

「どんな内容なの?」

 

「えっと……正義のヒーローになりたかったうさぎが悪いうさぎをこらしてしめるんですが……関係ないうさぎまで巻き込んで大変な事になってしまうんです。主人公を追う別のうさぎまで現れて……途中戦ったりなんかもするんですけど……そして最後が……」

 

(((そんなに内容覚えてるのにまた読みたいんだ)))

 

「………………見つかると…………いいね」なでなで

 

「はい!」

 

シノンに撫でられて喜ぶチノだった。

 

 

 

~図書館に到着

 

「わーこの図書館大きいね!」

 

「このへんでいいかしら」

 

適当な席を見つけて座る五人。ココアは思い出したように話し出す。

 

「チノちゃんもテスト近いって言ってたよね」

 

「それならシャロちゃんに教えてもらったら?特待生で学費が免除されてるくらい優秀なの」

 

「すごーい」

 

「美人で頭がいいなんて」

 

「非の打ち所かないです」

 

顔を手で隠すココアとチノ。褒められ照れるシャロ

 

「おまけにお嬢様なんてーまぶしいー」

 

棒読みで言う千夜その姿になんともいえない顔をするシャロ

 

「…………………………千夜……違う」

 

「え?違うって何が?」

 

「………………シャロは…………お嬢様……関係なく…………可愛いし…………美人……だよ?」

 

「そ、そうね私が間違ってたわ」かぁ~

 

「今日はじめての天然攻撃が入りましたね。」

 

「相変わらず切れ味すごいね!」

 

「う~シノンのばかぁ~」かぁ~

 

今回もシノンの天然攻撃をくらう四人だった。

 

 

 

「じゃあココアちゃん今日はよろくしね」

 

「え?千夜が教えてあげるんじゃないの?」

 

「ちがうちがう、私が教えてもらうの」

 

「私数学と物理が得意なんだー」

 

「うそでしょー!?」

 

ココアの意外な所にビックリする。

 

「それならココアがチノちゃんに教えてあげれば良かったんじゃない?」

 

「う~ん私総合順位でみたら平均くらいだし」

 

「そんなに足を引っ張っている教科があるの?」

 

「これ」

 

そういってココアが出したのは文系のテストだった。その点数はお世辞にもいい点数とはいえない数字だった。

 

「本はいっぱい読むんだけど……」

 

「文系が絶望的!」

 

 

 

「そもそもココアさんは教え方がアレなので頼りになりません」

 

「アレ!?」

 

「そうなの?わかりやすいのに」

 

「千夜さんはきっと波長が合うんですね」

 

「仲良しだもんね~」

 

「ね~」

 

そう言いながら手を重ね合う二人。ふと気になりシノンに質問するシャロ

 

「シノンはどれくらい勉強できるの?」

 

「……………………?…………普通」

 

「「いや、シノンは普通じゃないよ!(わよ)」」

 

机にのりだしツッコム、ココアと千夜。それにびっくりするチノとシャロ

 

「「え!?」」

 

「シノン総合順位一位じゃない」

 

「テスト100点だし」

 

「す、すごいわねシノン」

 

「さすがシノンさんです。」

 

「ならシノンが教えてあげれば?」

 

「………………教えるの…………苦手」

 

「あ~なるほど」

 

「………………本当に…………わからない……あったら…………教える」

 

「うん!よろしくねシノン!」

 

「………………」コクッ

 

 

 

「この問題はさっきの答えをここに当てはめて……」

 

「すごく分かりやすいです!」

 

「うれしいっチノちゃんみたいな妹がいたら毎日だって教えるのに」

 

「私もシャロさんみたいな姉が欲しがったです」

 

「私いらない子だぁぁ」

 

チノの言葉にショックを受け机にふさぎこむココア

 

「図書館では静かに」

 

「………………よしよし」なでなで

 

「う~シノン~」

 

「…………ココア姉…………必要」

 

「シノン~」ぎゅー

 

ココアは涙目でシノンに抱きつく。

 

「………………よしよし」なでなで

 

「ここが公共の場所って認識はないのかしら」はぁ

 

「ないと思いますよシャロさん」

 

「たぶん、二人には普通のことなんだと思うわ」

 

 

 

「チノちゃんは将来私達の学校とシャロちゃんの学校」

 

「どっちに行きたい」

 

「チノちゃんはセーラー服が似合うよ」

 

「ブレザーの方が絶対可愛いわよ」

 

「私は袴姿がいいと思うの」

 

「いつの時代?」

 

「…………チノは…………いつも………………可愛い」

 

「・・・」かぁ~

 

「そ、そう言うことでもないと思うんだけど」

 

「チノちゃんが真っ赤だぁ~」

 

「シノンくんはいつもそう思ってるのかしらね」

 

「…………?…………みんなに…………おもってるよ?」

 

「「「「不意打ちはやめて!(ください)」」」」かぁー!!

 

「………………?」

 

 

 

~すこし落ち着いて(シノン以外の四人が)

 

 

 

「将来かー私はパン屋さんか弁護士になりたいなー」

 

「そ そう……」

 

「こんな感じ」

 

ココアの妄想ではスーツを着て六法全書を持っていてイスに座っている。

 

(私ココア街の国際弁護士)

 

「なんかおかしい!」

 

「あちょっと間違えたやり直し」

 

頭身を大きくし大人の女性になったココアが同じくイスに座り六法全書を、持っている

 

(私ココア街の国際弁護士)

 

「頭身じゃなくて!」

 

「…………ココア姉…………頑張って」

 

「うん!頑張るよ!」

 

 

 

「私は自分の力で甘兎をもっと繁盛させるのが夢♪」

 

(とりあえず今の貧乏生活から脱却したい……)

 

「私も……家の仕事を継いで立派なバリスタにないたいです」

 

「チノちゃんならなれるわよ」

 

「バリスタもかっこいいねー決めた!」

 

「街の国際バリスタ弁護士になるよ!」

 

「街の国際から離れてください」

 

 

 

「シノンは何か夢あるの?」

 

「………………夢……なのかな」

 

「そういえば私もシノンの将来の夢は聞いたことなかったな」

 

「ココアさんもなかったんですか」

 

「ぜひ聞かせてほしいわ」

 

「………………自分の…………」

 

「自分の?」

 

「…………………子供と…………お嫁さんを………………幸せに…………したい」

 

少し照れながらそう呟くシノン

 

それを聞いた四人は少し照れる。

 

「シノン…」

 

「シノン君いい夢だと思うわ」

 

「うん、シノンなら絶対出きると思うわよ……本当に」

 

「私もそう思います。」

 

「………………ありがとう」

 

微笑みながらお礼を言うシノンにさらに照れる四人だった。

 

 

 

「私達チノちゃんの本探してくるね」

 

「いってらっしゃい」

 

「………………行ってらっしゃい」

 

「シノン君は行かなくてよかったの?」

 

「…………ココア姉…………姉らしく…………したそう………………だったから」

 

そう本を読みながら答えるシノン

 

「本当にシノンの方がお兄さんぽいわよね」

 

 

 

「はぁ、私が千夜達と同じ学校だったらどうなってたんだろ」ボソッ

 

そうシャロが呟いた。

 

「今の学校後悔してるの?」

 

「せめてリゼ先輩と同じ学校だったら」

 

(ほんとにしてた)

 

「んー正直窮屈よね。学費免除が理由でエリート学校に入れても。私だったら周りがお嬢様だらけで気を遣って疲れちゃう」

 

「でも待って……もしシャロちゃんが私達と同じ学校だったら……私とココアちゃんが違うクラスになっちゃってたかも!それは困るわー!」

 

「ぐさっ!」

 

ショックを受けるシャロ

 

「なんて冗談♪」

 

「いっ、いい加減からかうのやめてよ!」

 

「シャロちゃんだってほんとは分かってるんでしょ?学校以外だってこうして会えるんだもの。私達大人になってもずっと一緒」

 

 

 

「……ん」ガタッ

 

それまでずっと黙っていたシノンが口を開いた。そして、立ち上がるとシャロの近くまで行き

 

「……………………そうだよ」

 

「シノン……」

 

「…………………………ずっと…………一緒」なでなで

 

「・・・ん」

 

シノンのなでなでを受け入れるシャロ

 

「………………」スッ

 

シノンはシャロの頬に手を添えた

 

「え!?シ、シノン!?」

 

「……………………」

 

そのまま顔を…………

 

 

 

 

 

 

 

近づけず手を頭の後ろに持っていき

 

「……………………ぎゅっ」

 

「!?」

 

「!!」

 

シノンはシャロを抱きしめた。

 

「…………大丈夫…………一人じゃないよ」

 

「シ、シノン!!あ、あの も、もう大丈夫だからそのあ、ありがとう!?」

 

「シノン君!!もうやめてこれ以上はシャロちゃんが!」

 

「………………?…………なんで…………真っ赤?」

 

「きゅう~」かぁ~~

 

「シ、シャロちゃん!しっかり」

 

「………………?」

 

最後までわからなかったシノンだった。

 

 

 

~ココアとチノ

 

「本が多くて探すのが大変そうです」

 

「うーん……さっきチノちゃんが言ってた内容を思い出すと……」

 

「!本のタイトル分かったかも」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

「今まで気付かなかったけど私たち本の趣味合うのかもしれないねっ」

 

そう言いながら手を差し出すココア。その手に照れながらも掴むチノ

 

「……」

 

はしごを登り少し上の棚にある本を取るココア

 

「あったよ!」

 

「やりましたね」

 

「えへへーちょっとは頼りになるお姉ちゃんになれたかな?」

 

少し照れながら頬を赤らめながら本を渡す。

 

「ココアさん……」

 

「よかったねー」

 

そういって渡した本の題名は「罪と罰」

 

「これしゃない!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これが無口な少年と図書館での話




読んていただきありがとうございました!
次回も気長に待ってくれれば幸いです。


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12羽 無口な少年と占い

投稿が遅れてしまって申し訳ありませんでした。
今回もあたたかい目でご覧ください。


あるお昼のラビットハウス~

 

 

 

チノちゃんがお客のコーヒーカップを覗きながらお客様と話していた。

 

「明日の恋愛運は上々です。」

 

「水玉模様を身に着けた年上の方に誘惑されるでしょう」

 

「ありがとー」

 

「チノちゃんお客さんと何話してるのかな?」

 

「…………………………ん?」

 

シノンが厨房から出てくる。

 

「コーヒー占いだよ。頼まれたらやってるけどチノの占いはよく当たるんだ」

 

「ほーほう!お天気占いかよく当たる私と張り合うとはなかなかやるね」

 

なぜか自信満々にいうココア。

 

「なんで勝負になってるんだ?」

 

 

 

ココアは興味津々でチノに聞き始める。

 

「さっきのコーヒー占いってどうやるの!?」

 

「やり方はいたって簡単ですよ、まずコーヒーを飲み干します。次にカップを逆さにしてソーサーにかぶせます。そうやってカップの底に出来た模様で占うんです。それがコーヒー占いことカフェドマンシーです」

 

「おじいちゃんのカフェドマンシーは当たりすぎて怖いと有名でした。私はカプチーノでしか当たらないですが……」

 

カプチーノしか当たらないことに少し落ち込むチノ

 

「十分すごいよー!」

 

「………………」コクッコクッ

 

シノンは微笑みながらチノの頭を撫でる。

 

 

 

「うー!私も占いやってみたい!三人とも飲んで飲んで!ほらティッピーも!」

 

コーヒーを飲み干す三人と一匹

 

ココアはそれぞれのカップを覗き占っていく。

 

「チノちゃんは……空からうさぎが降ってくる模様が浮かんできたよ」

 

「?そうは見えませんが本当だったら素敵ですね」

 

「リゼちゃんは……コインがたくさん見える!金運がアップするのかな」

 

「おー欲しかった物が買えるかな」

 

「シノンはハートが見えるよ!いつもとは違う仕草にドキッてするかも!」

 

「…………………………ん」コクッ

 

シノンは頷きながら聞く

 

「むー!」

 

むくれるココア

 

「いや、自分で占って嫉妬するなよ」

 

「…………………………?」

 

「そして、シノンさんは意味をわからないんですね」

 

ココアとシノンに少し呆れるリゼとチノだった。

 

 

 

引き続き占いをするココア

 

「ティッピーはセクシーな格好でみんなの視線を釘付けだよ!」

 

「ポッ」

 

ココアの占いを聞き少し姿勢を正すティッピー

 

「あれ?ティッピーどうしたの?」

 

「ティッピーも占いみたいです」

 

「お!どっちが当たるか勝負だね!」

 

「ココアの明日の運勢は雨模様……とういより水玉模様正直外出しないのが吉じゃ」

 

「だって」

 

「いや私じゃなくてお前の結果だから」

 

「…………………………」

 

シノンはココアを心配そうに見つめる

 

「シノン?」

 

「………………」なでなで

 

「ん~!」

 

「あそこだけ会話ができているのか?」

 

「多分そうだと思います。」

 

 

 

「リゼは将来は器量のある良きお嫁になるじゃろう」

 

「私が?まさかー」

 

「昨日は夕食後にティラミス一つじゃ足りずキッチンに侵入した。」

 

「実は甘えたがり褒めると調子に乗りおる適当に流すのが無難」

 

「この毛玉め!ただの性格診断じゃないか!」

 

(当たってるんだ)

 

「う~!」

 

顔を真っ赤にしてうなだれるリゼ

 

「…………………………ん」なでなで

 

「な!なにをする!」

 

「………………ん?」

 

「う~んとね、"リゼさんがむくれているから、なでなですれば落ち着くかなって"だって」

 

「シノンさんにとって撫でるってことはなんですか?」

 

「シノンにとっては落ち着く行為かなもしくは、相手が喜ぶこと?」

 

「………………」コクッ なでなで

 

「いや、あの」

 

「………………ん?」なでなで

 

「いつまで撫ででるんだー!!」

 

さらに真っ赤になるリゼだった。

 

 

 

ココアたちの学校で~

 

「カフェドマンシー?それってネクロマンサー的な?」

 

「千夜ちゃんてどうしてそういう知識が豊富なの」

 

「…………………………ネクロマンサー」

 

「ん?シノン君どうしたの?」

 

「えっとね"ネクロマンサーとは死霊魔術や降霊術を使う術師のことを言って、ネクロマンサーとは、死霊や死者を使った何らかの術を行う者である。また、そういった術をネクロマンシーと呼よ"だって!」

 

「説明ありがとね♪シノン君」

 

「……………………」コクッ

 

「そういえばね、占いといえば私 手相ならみえるの」

 

「わーみてみてー!」

 

「ココアちゃんは魔性を秘めた相があるわ」

 

「魔性!?」

 

「実は私もあるの」

 

「おそろいだね!」

 

「シノン君も見てあげるわね」

 

「……………………」コクッ

 

シノンの手を見始める千夜

 

「シノン君にも魔性を秘めた手相があるわね」

 

「…………………………?」コテン

 

「なんでだろう、シノン君に魔性があると言われると納得してしまうわ」

 

「千夜ちゃんわかるよ!私もすごく納得しちゃた」

 

「……………………?」

 

「「はぁ」」

 

(((魔性?)))

 

クラスメイト達は魔性という言葉にすこし疑問を持っていた。

 

 

 

 

 

「そのお弁当おいしそう」

 

「ほんと!?」

 

「今日はね自分で作ったんだけど自信作なんだ!」

 

「特にこの卵焼きの焼き加減がー…」

 

「……………………!!」

 

シノンは咄嗟にココアを押した。

 

「キャッ!」

 

べしゃ!

 

そのままシノンは空から降ってきたあんこをキャッチした。

 

「あらあらあんこったらまたカラスにさわられたのね」

 

「……………………ココア姉……大丈夫?」

 

「うん!大丈夫だよ」

 

「……………………ごめん…………お弁当」

 

地面にはシノンが押した時にココアが落としてしまった弁当があった。

 

「ううん助けてくれたんだもん、ありがとねシノン」

 

「…………………………時間」

 

「え、でも」

 

「ココアちゃん、シノン君はなんて?」

 

「うん、"ここは自分が片付けておくからココア姉はお昼買ってきたら?昼休みが終わっちゃうから早めに買っといた方が良いだろうし"」

 

「私もそっちの方が良いと思うわ」

 

「うん、それじゃ悪いけどシノンお願いね」

 

「…………………………」コクッ グッ!

 

 

 

 

 

「ごめんねココアちゃんあんこってよくカラスにさわられるの」

 

「この学校のコロッケパン食べてみたかったんだー」

 

「ん?ココアちゃん!」

 

千夜はココアのスカートを勢いよく直した。

 

ココアは直された。勢いで手から離れてしまったパンを上手くキャッチする。

 

「ひゃっ!ほっ!」

 

「コ、ココアちゃん!パ、パ」

 

顔を真っ赤にし何か伝えようとするが上手く言葉が話せない千夜

 

ココアはパンを無事にキャッチできたことを伝える。

 

「パンなら無事キャッチ出来たよ」

 

「ううん!ち、違うの多分さっき購買前に行ったトイレの時から………………ココアちゃんの水玉が……っ!」

 

「…………」

 

ショックのあまりパンを落とすココア。

 

 

 

その帰り道ココアはあんこを抱き締めながら落ち込んでいた。

 

「なんだか今日はついてない気がする……」

 

「こんな日もあるわよ」

 

「…………………………ん!」

 

シノンはココアをぎゅっと抱きしめて自分の体で覆い隠した。

 

次の瞬間上からじょうろが落ちていき、思いきり水を被るシノン。

 

「ごめんなさい!手が滑ってじょうろが!」

 

「コ、ココアちゃん、シノン君!」

 

「……………………大丈夫?」ポタポタ

 

「う、うんありがとうシノン。」

 

シノンはすこしかがみあんこに頭を撫でる。

 

「……………………あんこも…………よかった。」

 

「うん!あんこが濡れてなくてよかったよー」

 

「二人とも……!」

 

自分よりあんこを心配する二人に感動する千夜

 

シノンは濡れた髪の毛を手で後ろへとかくしあげる。

 

その姿はシノンのオールバックだった。

 

「…………………………ふぅ」

 

「シノンは…………!!」

 

「…………!!」

 

ココアと千夜はシノンを向くと固まってしまった。

 

「……………………ん?」

 

「「…………」」ぽ~~

 

「………………?」

 

二人ともシノンの普段見ない姿に心打たれていた。

 

 

 

~しばらく落ちついて。

 

 

 

「お礼とは言ってはなんだけどシャロちゃんの喫茶店によってかない?二人にご馳走するから」

 

「いいの!やったー!」

 

「……………………ありがと」ペコッ

 

 

 

~フルール・ド・ラパン

 

 

 

「なななんてもの連れてきてるのやめてこっちこないでぇぇ」

 

ココアを見たとたん怯えながら拒否した。

 

「がーん私不幸オーラ出てたんだ」

 

「………………違うと…………おもうよ?」

 

「シャロちゃん小さい頃あんこによくかじられてから以来ちょっとうさぎ恐怖症で……」

 

そう千夜が言った瞬間あんこがシャロの顔面に飛び付く。

 

「う、うきゃぁぁー!!」

 

「ちょっとてレベルじゃないよ!」

 

 

 

シャロが注文のハーブティーを持ってくる。

 

「お待ちどうさま」

 

「わぁい!」

 

「こいつが来るなんて今日はついてない」はぁ

 

「ついてない……」

 

シャロのついてないという言葉に落ち込むココア。

 

「せっかく今日の出来事忘れてたのについてない何て言っちゃだめ」

 

(よくわからないけどめんどくさい)

 

「そういえばシャロちゃんはなんともないの?」

 

「なにが?」

 

「シノン君のあれ」

 

そう言いながら千夜はシノンの頭を指差す

 

「ん?なにが…………!」

 

シャロはシノンのオールバックに気づく

 

「………………!?……ッ!」

 

固まり続けるシャロ

 

「………………?」

 

「シャロちゃん気づいてなかったんだ」

 

「多分あんこでいっぱいいっぱいだったんだと思うわ」

 

「…………………………なんで…………固まるの?」

 

「「シノン(君)のせいだよ!」」

 

 

 

「490円のお釣りです。キャ!何!?」

 

お釣りを取ろうとした。千夜がシャロの手をとる。

 

 

 

「シャロちゃんの手相も見てあげる。片思い中でしかもまったく相手に通じない相があるわ障害だらけの相ねあと……」

 

「そ、それ以上いうなばかー!」

 

怒ったシャロがお釣りを投げる

 

「…………!?」

 

シノンは咄嗟にココアの前に立ちお金を片手でキャッチした。

 

「………………ふぅ」

 

シノンはそのまま千夜にお金を渡した。

 

「………………………………落ち着いて」なでなで

 

「え、あ、ごごめん」

 

「………………大丈夫」

 

「フフッ」

 

「むー!」

 

二人の姿を微笑ましく見守る千夜少しむくれるココア

 

 

 

~ラビットハウス

 

 

 

「二人とも!今日は私の占い当たった?」

 

「え……別に何もなかったけど」

 

「そっかー私はあんこが落下してきたりスカートがめくれちゃってたりシャロちゃんにお金投げらそうになったり色々あって大変だったよー!占い勝負はティッピーの勝ちだね!」

 

「あっ、でも!あんこはシノンがキャッチしてくれたり、お金もキャッチしてくれて上から落ちてきたじょうろからも助けてくれたもんね!ありがとうねシノン!」

 

「…………………………」コクッ

 

「「……」」

 

「どうしたの二人とも」

 

「今後は占いはやめた方がいいぞ自分のために」

 

「なんで!?あ、でも良いこともあったんだー!」

 

「なにがあったのか?」

 

「えへへ~シノンのいつもと違う姿が見れたんだ~」

 

「いつもと違う姿!?」

 

「うらやましいです。」

 

「「…………」」じっ~

 

チノとリゼはじっとシノンを見つめる

 

「…………………………?」

 

シノンはなんのことかわからず首を傾げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これが無口な少年と占いでの出来事。

 

 




読んでいただきありがとうございました!
次回も気長にお待ちください。


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13羽 無口な少年と球技大会

投稿がかなり遅れてしまってすみませんでした。
そして、おそらく迷走してるのかな?
今回も暖かく読んでください。


 

 

 

ラビットハウスの廊下でココアがサーブの素振りをしていた。そこにリゼ、チノシノンが来た。

 

「えい!フッ!」

 

「なにやってるんだ?」

 

「もうすぐ私の学校で球技大会があるんだよ!それで、千夜ちゃんと練習するからその間バイト出れなくなるけどいいかな?」

 

少し落ち込みながら聞くココア

 

「いいですよがんばってください」

 

「え!?ほ、本当に?止めないの」

 

「別に忙しいわけじゃないしな」

 

「……………………」コクッ

 

「あ、あの」

 

ガチャ

 

「・・・」グッ!

 

丁度出てきたチノのお父さんに聞くと親指を立ててお許しをもらった。

 

「そっか」しょぼーん

 

「とめてほしかったのか?シノンは何に出るんだ?」

 

「………………男子」

 

「"男子は人数が少ないから審判に回るんです"だって」

 

「そうなのか、じゃあシノンは特訓は必要ないのか?」

 

「…………ココア姉…………の分…………働く」

 

胸の前で拳をグッとした。

 

「シノンらしいな」

 

シノンのことを暖かく見守る三人だった。

 

 

 

「そういえばリゼさんにお願いが……」

 

「ん?」

 

「私も授業でバドミントンの試合があるんですが、調子が悪くて…練習に付き合ってもらえませんか?」

 

「いいよ、親父直伝の特殊訓練を叩き込んでやるよ」

 

とても笑顔で言うリゼに対して後退り青ざめた顔になるチノ

 

「あのでも私も人間なので殺さない程度に」

 

「私を何だと思ってる」

 

「………………頑張る」

 

「んー?」

 

「おそらく私たちの分も働くということでしょうか?」

 

「…………………………」コクッコクッ

 

「ありがとなシノン」

 

「ありがとうございます。」

 

「…………………………」コクッなでなで

 

 

 

~翌日

 

「早めに仕事代わってくれたおじさんのためにも上達しような」

 

「…………………………いいのかな」コテン

 

シノンが抜けた三人の分も働こうと思っていたらチノのお父さんが「シノン君も一緒に行ってきなさい」と代わってくれたのだ。

 

「まぁおじさんが良いって言ってるし」

 

「そうですよ、シノンさんが居てくれたほうが心強いです。」

 

「………………」コクッグッ!

 

「それに、ティッピーが頭に乗ってたら2倍の力が出せるんです」

 

「・・・」

 

なんともいえない顔で見るリゼ

 

「うそじゃないです」

 

「……………………」なでなで

 

「んっ」

 

公園を見つけてそこの近くにいく三人

 

「この辺の公園だったらいいかな」

 

「ん?あれは」

 

「…………………………ん?」

 

そこには倒れているココアがいた。

 

「ココアさん……?」

 

「死んだフリにハマってるのか!?」

 

「隣には千夜さんが」

 

「何があった!?」

 

「……………………??」

 

シノンは不思議そうに二人を見つめる。

 

 

 

「まるで殺人現場だな」

 

「この状況どう見ますか」

 

そう言いながらココアの周りに線を書くチノの言葉に考え込むリゼ

 

「現場に残されたのは一つのボール、球技大会の練習といのは建前でお互い叩きのめしあったというわけか…」

 

「どうしたらそう見えるの!?」かばっ

 

「生きてたか」

 

「……………………千夜~………………起き……して」ペシペシ

 

「う、う~ん」

 

 

 

~しばらくして

 

「バレーボールの練習?」

 

「ボールのコントロールがうまくいかなくてココアちゃんに付き合ってもらってたの」

 

 

 

~回想

 

「もう無理……私当日休むから」

 

「努力あるのみだよ、今度はトスで返してね」

 

ココアは千夜にレシーブでボールを渡す。

 

「トス?トスって、トスって何!?」

 

千夜のアタックが炸裂する。そのボールはココアの顔面へと

 

「ぐはっ」

 

「体力 の 限界」パタッ

 

力尽き倒れる千夜

 

~回想終了

 

 

 

「千夜ちゃん和菓子作りと追い詰められた時だけ力を発揮するから」

 

怯えながらそう言うココア。それを聞き怯えるリゼとチノ

 

 

 

「これじゃチームプレイも難しいかもな」

 

「顔に当てたら反則なんだよ」

 

「うそ……知らずにやってたわ」

 

「え わざとじゃないよね!?」

 

「たしか顔面はセーフじゃなかったですか?」

 

「そうなの?よかったー」

 

「全然よくないよ!」

 

「………………大丈夫?」なでなで

 

「シノン~」

 

 

 

 

 

「私達も練習しないとな。いくぞチノー」

 

リゼはチノにラケットでサーブを打つ

 

「えい!」スカッ

 

空振りするチノそれを励ますリゼその姿はとてもほのぼのしていた。

 

「すっすみません」

 

「落ち着いてやれよ」

 

「私そっち行きたいー」

 

「だめだ」

 

 

 

「せめて関係ない人に当てちゃうクセは直さないとで」

 

「今度はレシーブで返してね~あっ!ちょっと強すぎちゃった!?」

 

「あっ手がすべった!」

 

ラケットとボールが物凄い速さで千夜に向かう

 

「……………………ッ!?」

 

シノンは咄嗟に千夜の方に向い千夜を押し 倒した。

 

千夜は靴紐を直そうとしゃがもうとしたときにシノンが押し倒した。

 

「あっ靴紐が…………キャッ!?」

 

「…………」

 

「…………」かぁ~

 

 

 

「「「・・・」」」じっ~

 

 

 

「…………………………大丈夫?」

 

「え、あ、うん!」かぁ~

 

 

 

 

 

「シノンが行く前に千夜、しゃがもうとしていよな」

 

「自分の危険は回避できるんですね」

 

「そうかもね」

 

「……………………?」

 

「あ、あのシノン君も、もうそろそろ」

 

「………………ごめん」

 

千夜からどくシノン。

 

 

 

 

 

「リゼちゃん交代してー!」

 

泣きながら訴えるココア。

 

「しょうがないな」

 

ココアとバドミントンすることになったチノ。

 

「ココアさんバドミントン得意なんですか?」

 

「私の華麗なる振りを見ててねー」

 

サーブをするチノ

 

「いくよー!」スコン

 

空振るココア。恥ずかしくなり手で顔を隠すココア。それを見て呆れ顔になるチノ

 

「みないでー!」

 

「どっちですか」

 

ココアの顔面へにボールが飛んでくる。

 

「……………………!?」

 

シノンはココアの方に向い飛んできたバレーボールをレシーブであげる

 

「シノンさんすごいです。」

 

「ありがとう!シノン!また顔面に当たるところだったよ!」

 

「ごめんなさい。また私が」

 

落ち込む千夜

 

「私周りに迷惑かけてばっかり……」

 

「でもさっきから私の方にしかきてないよね」

 

「たとしたらそれはもう愛です」

 

「ココアさん……私に華麗なる顔面レシーブを見せてください!」

 

「そんな愛やだ!」

 

「よーしみっちり鍛えてやるからな」

 

自信満々にココアの方に行くリゼ

 

「なんで私の特訓になってるの!?」

 

 

 

 

 

5人で特訓しているとシャロが来た。

 

「千夜ーおばあちゃんが帰りが遅いって心配してたわよ」

 

「あっ、シャロちゃん」

 

「シャロもちょっとやってく?」

 

「リゼ先輩も練習してたんですか!?」

 

(気を抜いた私服を見られたこんな事なら着古した服で来なければ良かった……!)

 

私服を見られ恥ずかしくなるシャロ。

 

「その格好なら動きやすいし大丈夫だよ」

 

「やる気満々だとおもわれてる!?」

 

「被害……人数は多いほうが楽しいよ」

 

「ん?被害者?」

 

ココアの被害者という言葉に疑問をもつシャロ

 

「……………………シャロも………………やろ」

 

「う、うん」

 

少し頬を染めながら答えるシャロ

 

 

 

「ではこれよりバレー試合を始めます。」

 

「あれー?なんて?」

 

いつのまにか試合に巻き込まれたシャロ。

 

「あれ?シノンはやらないの」

 

「…………審判………………だから…………やらない」

 

「そうなんだ はぁ、先輩に勝てる気がしない」

 

 

 

「………………頑張って」

 

「うん、ありがとうシノン♪」

 

「私シノンさんが応援してくれたらなんでもできそうな気がします。」

 

「「「わかる」」」

 

「…………………………?」

 

「それよりも!シャロちゃん今こそあの状態になるべきだよ」

 

ココアはシャロの肩に手を置き励ます。

 

「で でもそんな事恥ずかしい」

 

「さっきあれを見かけたからちょっと待ってて」

 

「待って!まだ使うって決めてな……」

 

ココアを止めようとするが遠くにいってしまった。

 

「バレーボール大好きー!」

 

「カフェインでドーピングしましたね」

 

 

 

バレー試合が始まり、リゼがボールをレシーブで返しって行く。

 

「よっ!」

 

「おりゃ」

 

「とぉっ」

 

「ふれーふれー」

 

「あれ?」

 

リゼが一人で頑張っていると千夜は応援に回ってしまった。

 

 

 

「リゼ先輩に情けない所見せられない!」

 

「チノちゃんにかっこいい所見せなきゃ」

 

「えいっ!」

 

「すごいぞ千夜!やっとトス出来るようになったな」

 

「やりましたね!」

 

頑張る二人だかその二人を置いて喜ぶ三人。

 

「「ゼーハー」」

 

 

 

数日後

 

 

 

シノンは早めに帰ってきた。

 

「リゼさんとシノンさんが毎日練習に付き合ってくれたお蔭て試合乗り越えられました」

 

「よかったな」

 

「……………………」コクッ

 

「球技大会勝ったよー!」

 

「大丈夫だったのか」

 

「千夜ちゃんだけ種目をトジッジボールの子と交代してもらったんだけど、避けるのだけはうまくてボールが全然当たらないの」

 

「何故最初からそうしない」

 

最初からすれば良いのにっと思う四人だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これが無口な少年と球技大会だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございました!
次回も気長にお待ちください。


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14羽 無口な少年と父の日

また投稿が遅れてしまいました。
今回若干シリアスあります。そして、長いです。
ご注意ください。それでは、暖かい目で御覧ください。



ラビットハウスのカウンターでのことココアとチノとシノンは父の日が近くに来てることで話していた。

 

 

 

「そういえばもうすぐ父の日だねー」

 

「今年は何を贈りましょう…………」

 

「…………………………?」

 

三人が悩んでいるとドアが勢いよく開きリゼが入ってくる。

 

バン!

 

「明日から私は短期で他店でもバイトすることにした!シフトを少し変えてもらったからよろしく」

 

ココアとチノは震えながら勘違いした。シノンは少しむすっとしていた。

 

「リ、リゼちゃんが軍人から企業スパイに!」

 

「スパイなんて頼んでませんよ」

 

「…………スパイ…………め!」

 

「軍人じゃないしスパイでもない」

 

呆れながらそう答えるリゼ。

 

 

 

「実は昨日……親父のコレクションのワインを一本台無しにしてしまってな。だから、父の日を機に飲みたがっていた高価なヴィンテージワインを贈って罪滅ぼしがしたい」

 

「女子高生がそんな高い物を!?」

 

「…………………………あ、」

 

「シノンさん?どうしたんですか?」

 

「……………………自分も」

 

「え!!そうなの!?」

 

シノンの一言に凄く驚くココア

 

「ど、どうしたんだココア!?」

 

「ココアさん教えてください」

 

「"自分もリゼさんと同じように短期バイトするからシフト変えてもらったんだった"って」

 

「「えぇ~!?」」

 

「シノンどうして!?私達には飽きたの!?」

 

「………………買いたいのが…………あるだけだから」なでなで

 

こうして、シノンとリゼの短期バイトが始まった。

 

ちなみにリゼは後々知ったが偶然にも同じ時間の同じ場所だった。

 

最初に千夜が働いている甘兎庵にきた二人。

 

 

 

~甘兎庵

 

「上手く着れたかしら」

 

「いや、まだだ着物はなれなくて」

 

ドアを開けて千夜が覗くと着物が少しはだけだリゼがいた。

 

「あら着方が違うわ左前にならないようにね」

 

そう言いながらリゼの着物を直す。

 

「す すまない最初から素直に頼めばよかった」

 

「あ、そうだわ!」

 

リゼの着物を肩を半分出してサラシを巻きチンコロの人のように着させた。

 

「…………想像以上に似合う」

 

「ちゃんと着せろ。そういえばシノンは着れたのか?」

 

「えぇ、手取り足取り手伝ったわ」

 

頬を微笑みながらそう言う千夜に焦った表情でツッコム

 

「なにやってるんだ!?」

 

「冗談よ♪私が教えなくても普通に着れてたわ」

 

「な、なんだ驚かせるなよ」

 

 

 

「そういえば、リゼちゃんが来てくれるからミリタリー月間にしようと思うの」

 

「しなくていい!」

 

「抹茶の迷彩ラテアートよ」

 

「悪くないが気持ち悪い!」

 

「私もモデルガンを装備してみました」

 

「何だこのイメージ!?ついポーズをとってしまった。」

 

「こんなに連続でつっこまれるの初めて!つい はしゃいじゃった」

 

「今までワザとボケてないよな」

 

千夜の連続ボケに呆れるリゼ。

 

コンコン

 

「?はーい」

 

千夜が返事すると作務衣姿のシノンがいた。

 

「「・・・」」

 

「……………………?」

 

急に黙る二人に首を傾げていると

 

「に、似合うな」

 

「何度見ても心臓に悪いわ」

 

「……………………??」

 

 

 

店内にはシャロが来ていた。

 

「先輩すごく似合ってます!」

 

「あ、ありがとう、それで、何にす……しますか?」

 

いつもの口調で言いそうになりすぐに言い直すリゼ

 

「この黒曜を抱く桜華ってなんですか?」

 

「黒曜を抱く桜花?えっと~」

 

なんのことかわからず困っていると

 

「はい、こちら新作の黒曜を抱く桜華」

 

そう言いながら桜餅を持ってきた。

 

「おぉ桜餅のことだったのか」

 

「相変わらずね、お客さん混乱しないの?」

 

「初めての人には指南書を配っているわ」

 

「だったら最初からそうしなさいよ」

 

「そうかしら……こちら新作の桜餅です」

 

「「・・・」」

 

千夜は膝から崩れて

 

「うぅ、駄目よ!普通すぎる私負けちゃう!」

 

「何に負けるのよ」

 

その姿に呆れるシャロ

 

「この桜餅いただくわね」

 

「どうぞ」

 

桜餅を食べるシャロ

 

「ん、おいしいわね」

 

「いつもの和菓子と比べてどうかしら?」

 

「?そういえばいつもの和菓子と同じぐらい美味しいけどなんか違う気が」

 

「フフッさすがシャロちゃん、実はそれシノン君が作ったのよ」

 

「そ、そうなのか!?」

 

「すごい千夜のおばあちゃんが作った和菓子と同じぐらい美味しい!」

 

「だってシノン君」

 

「「え?」」

 

振り向きながら言う千夜の言葉に驚く二人

 

「……………………」コクッ

 

「シ、シノンいつからそこに」

 

「…………………………さっき」

 

「・・・」かぁ~

 

「……………………?」

 

「なんでシャロは真っ赤になってるんだ?」

 

「多分作ったのがシノン君って知って自分が褒めてた事実とシノン君の作務衣姿に照れてるんだと思うわ」

 

「なるほどな」

 

「………………??」

 

 

 

~ラビットハウス

 

チノとココアが父の日に何を送るか悩んでた。

 

「私たちはチノのお父さんに何贈ろうか?」

 

「実用的な物がいいんですか……」

 

「それなら手作りネクタイなんてどうかな?水玉なんて可愛いよ!」

 

「水玉はちょっと……うさぎ柄ぐらいじゃないと父は喜びませんよ」

 

「今度生地買って来て二人で作ろっか」

 

「かわいいうさぎ柄見つかるといいですね」

 

ドアの近くで聞いていたタカヒロは少し照れた。

 

「……うさぎ柄」てれ

 

「そういえばシノンさんは何を送るんでしょうか」

 

「シノンからね、チノちゃんのお父さんには個人的に送って私のお父さんには私と二人で渡そうって言ってたよ」

 

「ん?では、シノンさんはなんで短期バイトを」

 

「それが私もわからないんだよね」

 

首を傾げる二人

 

 

 

~フルール・ド・ラパン

 

リゼはロップイヤーの制服を着た姿を見て輝いていた。

 

「……」ぱぁ~

 

コンコン

 

そこにシャロが入ってきた。すぐにキリッとした表情になるリゼ

 

「服のサイズの方大丈夫でしたか?」

 

「問題ない」きり

 

「・・・」じっ

 

「へ 変だったら正直に言えよ?」

 

「いえ……先輩が着るとこの制服いかがわしさが増すなぁと」

 

「どういう意味だ!?」

 

二人は着替え終わりフロアに出る

 

「シノンは?」

 

「今着替えて来ると思うんですけど」

 

ガチャ

 

「あ、シノン……」

 

「着替え……」

 

「……………………?」

 

そこには、紺色のスーツ姿のシノンがいた。

 

「「・・・反則すぎる」」かぁ~

 

「………………??」

 

この前から皆の反応によくわからなくなるシノンだった。

 

~しばらくして

 

落ち着いたリゼが話しかける。

 

「シノンどうしたのその姿?」

 

「………………店長が…………これ着てくれ……って」

 

「また、店長の趣味ね」

 

「でも、シノンって接客じゃ」

 

「…………………………たまに……フロア……でる」

 

「そう店長から頼まれたの?」

 

「…………………………」コクッ

 

リゼとシャロはシノンから少し離れて小声で話始め。

 

「もしかしてこれからフルールのバイトはこのシノンなのか?」ボソボソ

 

「ですね。心臓に悪いです。」ボソボソ

 

「だな」ボソボソ

 

「「・・・」」ちらっ

 

「…………??」

 

「「はぁ」」

 

バイトの前に疲れる二人だった。

 

 

 

~フロア

 

「あ、先輩もシノンも恥ずかしいとは思いますが仕草を変えて……いらっしゃいませ~」

 

シャロはいらっしゃいませと言いながら手を出してとても可愛いポーズだった。

 

「こんな感じです」

 

「わ、わかった……い、い、いらっしゃいませ~」

 

リゼも可愛いポーズをとり、それを見たシャロが照れて手で顔を隠す。

 

「は、はぅ~」かぁ~

 

「ってお前が照れてどうする!」

 

「すみません なぜかいけないものを見た気がして」

 

 

 

「シノンもあれやるのか?」

 

リゼはシノンもあのポーズをやるのかと思い聞いてみる。

 

「フルールは男性のスタッフ少なくて私もわからないんですよね」

 

「……………………教えって…………もらった」

 

「店長から?」

 

「…………………………」コクッ

 

シノンは軽く頷くと二人の前に立った。そして、少し前屈みになり左手を胸の所に持っていき右手を後でくみ、顔を上げ

 

「…………いらっしゃいませ……………お嬢様方」にこっ

 

「「!?!?」」かぁー!!

 

急な不意打ちに顔を真っ赤にする二人だった。

 

ちなみに、このあとシノンのいらっしゃいませという名の攻撃を受けて撃沈する女性が後を絶たなかった。

 

 

 

~皿洗い中

 

「そういえばシャロはどうしてここでバイトしてるんだ」

 

「そっそれはっここの食器がすごく気に入っていて決してお金に困ってるとかいうわけでは……」

 

少し焦りながらそう答えるシャロ

 

「そういえばティーカップ好きとか言ってたっけ」

 

「そういう先輩は……」

 

「あのお店に縁があったし親に頼らずお金使いたいもんな」

 

「初めて自分のお金で好きな物買えた時ってうれしいですよね」

 

「感動したなー……シノンは父の日のためだっけか」

「……………………」コクッ

 

「でも短期バイトをするほど高いの買うの?」

 

「……………………」フルフル

 

「「?」」

 

「…………………………」

 

シノンは何も言わずただ皿を拭いた。その姿に何も言えなくなった二人だった。

 

 

 

~更衣室

 

「もうすぐバイト最終日ですね」

 

「あぁ」

 

「せ、先輩!こっこのままここでバイトしませんか!?仕事中の先輩すごく輝いてました!」

 

少し頬を染めながらそう言うシャロ。リゼは少し間をおいて

 

「いや 遠慮しとくよこの店に染まるのは自分に合わないからな」

 

「先輩……」

 

「ところでシャロもこの後ワイン見に行くか?」

 

「先輩!もう若干染まってます」

 

リゼの頭には取り忘れたロップイヤーの耳がついていた。

 

 

 

~ワイン店

 

「お金が足りない!!」

 

ワインを見るがお金が予想以上に高かったのだ

 

「予想以上だった」

 

「それなら……ワイングラスはどうですか?」

 

 

 

~グラス店に移動し

 

「あれ?シノン?」

 

「…………………………」コクッ

 

「シノンも何か買いに来たのか?」

 

「………………………………」コクッコク

 

「シノンは何を買うんだ」

 

「……………………秘密」

 

「何故秘密にする」

 

少しむすっとしながら言うリゼ

 

「…………………………なんか…………恥ずかしいから」

 

「「シノンに恥ずかしいという感情があったのか!?」」

 

「……?」

 

「それより先輩、このグラスの透明感たまりませんよね!」

 

「陶器フェチというか器なら何でも興奮するのか」

 

少し引くリゼ

 

「今ならセットがお得みたいです」

 

「親父とペアグラスだと!?さすがにキツイだろ」

 

「両親用とか考えないんですか?」

 

「あ、そうか」

 

「こんなに頑張ったんですからどんな物でも喜んでくれますよ」

 

「………………」コクッコクッ

 

「あぁ」

 

シャロの言葉と同意してくれたシノンに優しく頷くリゼ。

 

 

 

~ラビットハウス

 

ココアとチノは父の日のためにネクタイを作っていた。

 

「あぁまた失敗した!ミシンって難しいねー」

 

「今更ですかココアさんまでプレゼントに気を使わなくていいんですよ」

 

「えーやだやだそんな寂しいこと言わないでよ!チノちゃんのお父さんは私のお父さん同然だよ!!一緒に作らせてよ」

 

「そうですか」

 

チノがココアと交換しミシンでネクタイを作り始める。

 

「……」ダダダダダダダ

 

「私より上手かった」

 

 

 

~しばらくして

 

「出来た!喜んで使ってくれるといいねー」

 

「ココアさん今気づいたんですか、父が仕事中にいつも着けているのは蝶ネクタイです。このネクタイを着けてくれる機会はあるんでしょうか」

 

少し考えながらそう言うチノ。

 

「……こんなに頑張ったんだからどんな物でも喜んでくれるよー」

 

「それとこれは別です」

 

 

 

~リゼの家

 

「直接手渡すのは恥ずかしいから手紙を一緒に部屋に置いていこう」

 

ドアを開け心なしかスパイのように入るリゼ。机の上には割ってしまったワインが置いてあった。

 

「!このワイン手に入ってたんじゃないか ちゃんと閉まっとけよ」

 

机にワインを置きながら

 

「今はこんなプレゼントしか出来ないけどいつかこのグラスで一緒に飲めたらいいな」

 

 

 

~ラビットハウスのバーで

 

「息子よワシの秘蔵のワインが一本足りないんじゃが」

 

「あぁ、あれなら昔馴染みに譲っちまったよ」

 

「なにー!ワシのワインをー!?」

 

泣き出すティッピーだった。

 

ガチャ

 

タカヒロが働いているとドアが開きシノンが入ってくる。

 

「ん?シノン君?」

 

「………………………………お仕事中…………すみません」

 

「構わないさそれで、どうしたんだ?」

 

「……………………これ」

 

シノンは青いリボンがついた白い箱を渡した。

 

「これは?」

 

「………………父の日なので…………ウイスキーグラスを」

 

「そうか……ありがとう」

 

「…………………」コクッ

 

「しかし、ココア君もそうだが私まで気を使わなくてもいいんだよ?」

 

「………………………………」フルフル

 

シノンは首を軽く振るとそのままドアの方に向かった

 

(怒らせてしまったかな)

 

タカヒロが少し考えてるとシノンは少し振り向き小さくしかし、確かに聞こえる声で呟いた。

 

「………………自分には……………最高の父親が…………二人います……から」

 

軽くお辞儀をすると部屋に戻っていた。

 

「彼は、女性だけでなく天然攻撃するんだな」

 

「なんじゃ照れてるのか息子よ」

 

「あれは、無理だ」

 

「じゃな」

 

そのあと少し笑うタカヒロとティッピーだった。

 

 

 

 

 

シノンは部屋に戻ると机の上には二つの箱があった

 

一つはココアと一緒に買ったココアのお父さんへのプレゼント。ちなみに中身は新しい木製のめん棒とのし台。明日宅配で送る予定である。

 

そして、もう一つは……………………元父親へ。

 

中身はお酒と手紙。手紙の内容は……

 

 

 

"拝啓

 

お元気ですか、

 

今回は父の日ということであなたがよく飲んでいたお酒を送ります。

 

何故送ったのか疑問を持つと思いますが理由は少なからずあなたに感謝しているからです。

 

俺から母も声もそして、自由を奪ったあなたを許すつもりはありません。

 

しかし、あなたのおかげで今の家族に会えました。

 

あなたが声を奪ったおかげで声でなく心で繋がることを知れた。

 

あなたが母を奪ったから母の大事さを知れた。

 

あなたが自由を奪ったから今幸せになれた。

 

今後あなたに会うつもりも手紙を出すつもりはありませんがこの父の日の贈り物と手紙で終わりにしたいと思います。

 

それでは、もう二度と会わないことを願っています。   

 

                      敬具"

 

そう書かれていた。

 

 

 

シノンは箱を見つめ静かに呟いた。

 

 

 

「……じゃあね…………お父さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これが無口な少年と父の日での出来事だった。

 

 




今回も読んで頂きありがとうございました!
次回も気長にお待ちください。


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15羽 無口な少年と休日

前回の投稿から、かなり遅くなってしまい申し訳ありませんでした。
言い訳をさせていただきますと免許に仕事始めと大忙しで書く暇がありませんでした……
今後は仕事の合間を見て書いていきます!
どうぞよろしくお願いいたします。


ある休日の朝チノはいつも通り起きて窓を見ていた。

 

「今日は……いい天気です。こんな日は日当たりの良い部屋でボトルシップを……」

「お散歩に行こう!」

チノが言いきる前にココアが入ってきた。シノンを連れてというおまけ付きで

「……休みの日は家でのんびりしていたいです。あと少しで作りかけのボトルシップが完成するんです。」

「それなら公園で作って川に浮かべて流そうよ!」

「ボトルシップって何かわかってます?」

「……………………。」

「そっか~」

「え!コ、ココアさんいつものですか?」

「えっとね……"1800年前後に、ある船乗りが飲み終わった酒瓶と船の中にある材料だけで作ったのが始まりとされている、帆船などの模型がそれよりも小さな口を持つ瓶(ボトル)の中に入っている工芸作品だよ。

引き起こしタイプ、分解・組み立てタイプ、偽ボトルシップがあるよ"だって」

「今回…シノンさんはなにも話してないような?」

「チノちゃんもわかるようになるよ!」

「自信ないです。」

「………………?」

 

ココアの説得もあり……3人は私服に着替えて街に繰り出した。

 

「この街の散策をちゃんと出来なかったから今日はチノちゃんに案内してもらうんだ」

「…………よろしくね」

「……ココアさんは迷いますもんね」

「………………」コクコク

「え~そうかなぁ?」

「シノンさんは苦労してそうですね……」

「………………………………ん」

「え!?そうなの!?」

「………………よく…………迷子…………探す」

「これは、私もわかりますね。〝ココアさんはよく迷子になるから探すのに少し苦労する〟と言ってますね!」

「…………………………あってるね」

「ご、ごめんね……シノン」

「……………………大丈夫……………見つけるから」

「そういえば、シノン私が迷子になっても見つけるよね?」

「何かコツでもあるんですか?」

「………………………………勘」

「「勘!?」」

 

「自転車があったらチノちゃんを後ろに乗せてこの坂を滑走するの!」

「二人乗りは駄目ですよ」

「その前に自転車の乗り方教わらなきゃね」

「ええーー!?」

「私、夕日のなかで何度も倒れながら特訓するのが憧れで」

(話がコロコロ変わっていく)

「そういえば、シノンさんは乗れるんですか?」

「………………乗れるよ」

「シノンは運動神経いいもんね!」

「そうなんですか?」

「……………………?」

首をかしげるシノン

「首をかしげですが……」

「んっとね"自分ではそんなにいい方ではないと思ってるからよくわからない"だって!」

「首をかしげるだけでそこまで言ってたんですね……」

首をかしげた仕草の意味を考えていたチノだったがココアの説明により理解するのはまだ先だなと思うチノだった。

「えぇ~シノンはすごいんだよ~」

「…………それより…………次……行こ」

「そうですね」

「うん!」

3人は先に進んだ。

 

「あの看板は何屋さん?」

ココアが看板を指差しながらチノに聞いてみる。

「手前から古本屋さん時計屋さん床屋さんです。」

「…………………………家の………………色が………………違う?」

「はい。シノンさんの言う通り。この街はお店がわかりやすいように職業別に家の色が決まっていたんです。昔の話ですが、魚屋さんは青色パン屋さんはピンクなどですね」

「へー私は将来ピンクの家のパン屋さんになるのかなー」

「え?ここに住む気ですが?」

「………………………?」

ココアの些細な言葉に気がつくチノとシノン

「1階がチノちゃんとシノンの喫茶店で2階が私のパン屋さん3階がリゼちゃんのガンショップだったらとてもカラフル」

「一つ物騒なお店があるんですが」

「………………チノちゃん………………その時は…………お願いね」

「えっと…その……はい、お願いします。」

「えー!?ずるいよ!シノン!」

「ココアが言いましたことではないですか…」

チノの頭に手を置きお願いしてくるシノン。それに嫉妬して頬を膨らませるココアであった。

 

 

「あれは……リゼちゃん?」

「……………………リゼ?」

歩いていると服屋で服を両手に持ち選んでるリゼを見つけた。リゼは服を探すことに夢中で3人には、気づいていなかった。

「洋服を選んでますね」

「リゼちゃんって感じの服だね」

「私たちはあまり着ない系統の服です。」

「…………………………可愛いね」

「あ、ちょっと笑顔になった」

「気に入った服を見つけたんですね」

「なにやら葛藤しているようですな」

「そっとしておきましょう」

3人はまた街へ散歩に歩き出した。シノンはそっと振り返りリゼを見ながら思った。

(………………多分……"結構この服いいなぁ、でも自分には可愛いすぎるか、いいやでも色もいい感じだし、う~ん買うべきか買わないべきか~う~ん悩むな"…………って顔してる気がする。)

 

「公園はぽかぽかして気持ちいいねー、あれ あのクレープ屋さんにいるのって……」

ココアの目線の先にはクレープ屋のキッチンカーで働いてるシャロがいた。

「シャロちゃん!こんな所でもバイトしてるなんて多趣味だねー」

「ココアとチノちゃん!?それにシノン!!?そっそうよ多趣味よ悪い!?」

「趣味の多さならチノちゃんも負けてないよ」

「チェス ボトルシップ、パズルなどを嗜みます。」

「ろ、老後も安心の趣味ね…………その、シノンも趣味ってあるの?」

「……………………?………………料理と読書」

「あの美味しさなら納得ね」

「シノンさんの料理は美味しいですもんね」

「さすがだね!シノン!」

「…………ん」

 

「おいしーっ はいシャロちゃんもあげる」

ココアはクレープをシャロに向ける。

「私 仕事中よ?」

「一口だけでも」

「ひとくち……」

(節約中でクレープなんて、滅多に食べられないし)

シャロがクレープに手を伸ばした。その時空から黒い物体が落ちてきた。

べしゃっ!

クレープの上にあんこが落ちてきてクレープが撒き散らされた。

「あーっ!!また空からあんこが!!」

「うっ……」じわぁ~

「あれ!?私よりショック受けてる?」

「………………ん」

シノンはあんこを持ち上げて自分のハンカチで軽く拭いてあげた。そして、次にテイッシュを取り出し。クレープが撒き散らさせれた所を拭いていく。それを見てシャロが申し訳そうに謝る。

「あ!ごめん、シノン」

「………………気にしてないで……………それより……………」

シノンは自分のクレープをシャロに向けた。

「え?」

「……………………あ~ん?」

首をかしげながらクレープを向ける。

シャロは、顔を真っ赤にしてあたふたしてる。

「!?え、その」

「………………?……遠慮……しないで?」

「そ、そういう問題ではなくて……」

「ちなみにココアさん、シノンさんに羞恥心というものは?」

「まったくないね!」

「………………?…………あ~ん?」

「うっ、……あ、あ~ん」

意を決してクレープにかじりつく。

「………………美味しい?」

「う、うん」かぁ~

さらに顔を真っ赤にするシャロ

すると千夜が走ってきた。

 

「やっと追いついたー」

「千夜ちゃん!またカラスにあんこさらわれたの?」

「そうなのよ」

「そういえばいつもと制服が違うけどもしかして仕事中だった?」

そうココアが言う。実際千夜の服装はいつもの緑をベースにした服装ではなく、オレンジなど明るい色がベースの服装だった。

「今はレトロモダン月間中なの」

「甘兎もそのうちフルール・ド・ラパンよりいかがわしくなるんじゃない?」

「そう……それなら脱ぐわ」はらり

そう言いながら少し肩を出す千夜

「ここで脱がないでよ!」

「………………………………」

「シノン!見ちゃ駄目だよ!」

ココアはシノンの目を後ろから手で隠す。

「……………………ん」

シノンは器用にあんこを持ちながら上着を脱ぎ、上着を差し出した。

「…………千夜………………これ……着て」

「え?」

「…………………………寒い…………でしょ?」

「シノンさん……」

「シノンに色仕掛けは無理ね」

「シノン君、鈍感を通り越している気がするわ」

「そういえば、シノン昔からそういうのに鈍かったな~」

「…………………………?」

 

千夜とシャロと別れた3人は公園のベンチで休憩していた。そして、ココアは兎と戯れていた。

 

「もふもふ天国さいこー!!」

「いいんですよ、私にはティッピーがいますから」

「そういえば動物が懐かない体質だっけ」

「きっと、チノちゃんは口とか毛並とかうさぎに似てるから同族嫌悪されてるんだよ」

「意味わかって使ってます?」

「それなら私がチノちゃんをもふもふすれば寂しくなくて解決だね!」

そう言いながらココアはチノを抱き締めた。

「何も解決してませんが?」

「…………………………ん」なでなで

「シ、シノンさん!?」

「………………チノちゃんのこと…………好きだよ?」

「え、あ、ありがとうございます」かぁ~

「照れてる、チノちゃんも可愛いね!」

「うぅ~」

シノンは胸のところで手をグーにしてチノに言う

「…………チノちゃん…………まかせて」

「「え?」」

シノンは近くにいる一匹の白いウサギをじっと見つめ始めた。

「………………」

「………………」

「シ、シノンさん?」

「………………」

「………………」

「シ、シノン?」

「………………」

「………………ん」

シノンはゆっくりと手をウサギに出した。

ウサギはゆっくりと近づきシノンの手に顔をスリスリし始めた。

「な、懐いた!?」

「見つめていただけで!?」

「……………………お願い」

シノンはウサギを持ち上げると目をじっと見つめて話しかけた。

そうするとウサギはチノの膝の上に飛び乗ると座り始めた。

「え!?い、いいんですか?」

チノはおそろおそろウサギに聞くと意を決して撫で始めた。

「おぉ!良かったね!チノちゃん!」

「はい!ありがとうございます!シノンさん!」

「…………………………ん」

((シノンさんは動物と話せる(のかな)んでしょうか?))

 

しばらくベンチで休憩していると青い髪の女の子と赤い髪の女の子がやって来た。

「あっー!チノじゃん」

「喫茶店の仕事休みって知ってたら誘ってたのに」

「隣にいるのは、チノが言ってた、お兄さんか!?」

「えぇ……春から家で働いて貰っている保登 シノンさんです。」

「…………シノン……です。…………よろしく」

「マヤでーす!」

「メグです~」

「噂はチノから聞いてるよ!」

「………………噂?」

「うん!お料理も上手だし優しいお兄さんだって」

「………………」チラッ

「あ、いや、その……」

「…………ありがとう」なでなで

「い、いえ」かぁ~

「今度チノちゃんも一緒に映画行こうね」

「はい、どんな映画を見てきたんです?」

「私はアクションがいいって言ったんだけどメグが~」

「今流行ってる映画でねすごく泣けるんだ~」

「パンフレットも買っちゃった」

うさぎになったバリスタ

((他人事とは思えないタイトル!!))

そう心で思うチノとティッピーだった。

 

マヤとメグと別れたチノ

「また明日ね~」

(あれココアさんどこに行ったんだろ……)

「………………ココア姉…………いない」

「はい。迷子ですかね?」

「………………多分………………探そっか?」

「そうですね」

こうしてココアを探し始める2人

 

その頃ココアは1人の女性と話していた。

その女性は落ち着きのある雰囲気で薄い金髪で眼鏡をかけた綺麗な女性だ。

「小説家さんですか~」

「そう……閃きを求めて彷徨っているんです。」

「ペンネームは何ていうんですが?」

「青山ブルーマウンテン……といいます」

(不思議な名前だ)

「書いた小説が最近映画化したりしました。」

その話を聞いてココアは思い付く。

(街の国際バリスタ弁護士としてパンを焼きながら小説家の道を生きるのもいいかもしれない)

「あ、いました!!」

「………………見つけた」

少し遠くからチノとシノンがココアを呼ぶ

「あ!!シノン、チノちゃん!!」

「では、また彷徨ってきます。」

「あ、はーい」

そう言いながら女性は去っていった。

「ココアさん、さっきの人は?」

「う~んと通りすがりの小説家さん?」

「………………小説家?」

「うん、何書いてるのか聞いておけばよかった~」

「………………そのうち…………また……あえるよ」

何故かそんな気がしたシノンだった。

 

「公園は人が集まるから色んな人とお話しちゃった」

「……ココアさんは知らない人と気軽に話せて羨ましいです。」

「チノちゃんも喫茶店のお客さんと話せてるよ?」

「いきなり世間話はしませんし……話すのは得意じゃないです」

「さっきの友達とは楽しそうに話してたよ?」

「……あの二人が積極的に話しかけてくれなかったら友達になっていませんでした。」

「そんなっ!ティッピーの腹話術の技術があれば私だったら世界を狙ってたのに!」

「頑張ってください」

「……………………チノちゃん…………大丈夫だよ」

「シ、シノンさん……!」

少し微笑みながらチノの頭を撫でるシノン。

そのれに安心したのかチノは心地いい気持ちになりこれから頑張れるような気がしたのであった。

 

公園を出てしばらくして…………

紫髪の長髪の女性が前を歩いていた。

「次はどこ行こっか」

「……リゼさん?」

「………………?」

「はい!?」

(バ、バレた!?)

チノが声をかけると女性はビクッとして振り返った。しかしチノはリゼと勘違いしたと思いすぐに謝った。

 

「……す、すみません人違いでした。」かぁ~

「さっき見かけた時と服と髪型が違うもんね」

(み、見てたのか!?)

「ん?でもリゼちゃんって呼んだら振り向いたよ?」

「ちっ、違います、き、聞き間違いました。私その、ロゼという名前なので」

少し頬を染めながら鞄で顔を隠すロゼ(?)

 

「でもびっくりです。ロゼさんに良く似た人がうちの喫茶店にいるんです。ぜひ来てください、ラビットハウスという名前の喫茶店です。」

「ほ、本当?ぜひ行ってみたいわ」

「……………………」ペコリ

そう言うとそそくさとでは、と帰る女性

「私 人見知りするんですがさっきの人はなぜかいきなり会話できました」

「やったねチノちゃん」

(もしかしてこれは……ココアさんの影響!?)

(いやあれはリゼじゃろ)

「……………………」

(カットモデルに頼まれたのはまだしも買った服をすぐ着たくなってしまったなんて)

(言えないとか考えてる顔じゃな)

(あの2人はうまく誤魔化せたがシノンは…)

リゼは後ろを少し振り返るとシノンもまた少し振り返り自分の口元に指を持っていき少し微笑みながら

「………………し~」

「!?!」

シノンの思いもしなかった行動に顔を真っ赤にするリゼだった。

 

「足がくたくたー」

「今日は休日なのに色んな人と話しました。」

「あの……ココアさん」

「わかってるよー明日は学校だから早く寝ないとでしょ?じゃあおやすみー」

そう言うとココアはドアを空け自分の部屋に戻った。

「……おじいちゃん……お父さんとバーにいるんだった」

チノは少し考えると部屋を出てココアの部屋へと向かった。

コンコン

「?はーい」

「今日は何だか落ち着きませんまだ……お話してたい気分です」

「でもココアさんが迷惑というなら……」

ぱぁ

ココアは一気に明るくなりチノを部屋へと招いた。

「じゃあリゼちゃんに借りたDVD見よっかー」

「会話が盛り上がる気がしないです」

そんな2人の会話を壁越しに聞こえてきたシノンは少し微笑み好きな小説を読みながら今日あったことを振り返りまた微笑むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これが、無口な少年の休日の物語だった。

 

 

 

 




読んで頂きありがとうございました!
気長にお待ちいただければ幸いです。


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16羽 無口な少年と妹達との出会い~再び

前回から書き方を変えました。
見づらかったらすみません。
今回も暖かい眼でご覧ください。


 

 

「補習って連絡するの忘れてバイトかなり遅刻しちゃった、2人とも怒ってないかな」

ココアは学校の補習がありいつもより遅くなってしまい急いで帰っていた。ラビットハウスに着き、制服に着替えようとするココアだったが、なぜかロッカーに制服がなかった。チノに確認しようと店内に行ってみると

「遅れてごめん!ところでいつもの制服がロッカーになかったんだけ……ど?」

そこには、赤色のツインテールの女の子がココアの制服を着ていた。

「あ! おかえりなさい」

「それは私の制服!もしかして私 リストラ!?」

驚きで叫ぶココアであった。

「チノーこのもこもこしたのかわいいな!倒したら経験値入りそう」

そんなやり取りしてると置くから濃紺の短髪の女の子がティッピーを頭に置いて倒そう(?)としていた。

(!?)

「リゼちゃん!?いつの間にこんなちっちゃく……!?」

「ちっちゃ……!?」

「あれよく見たら違う(制服が同じだったから)」

「リゼってこの制服の持ち主?」

「マヤさんティッピー返してください。」

「あとこれ(リゼの銃)もロッカーにあったけど裏の仕事も引き受けてるの?」

「リゼちゃん!大変なもの置き忘れてるよ!」

 

 

「2人は私のクラスメートです。」

「マヤだよ」

「メグです」

「ココアさんもリゼさんも帰りが遅いので……ちょうど遊びに来ていた2人が手伝ってくれてたんです。」

「本当にごめんね。そういえばシノンは?」

「シノンさんはいつも通り奥で働いてくれてますよ。」

「…………………………おかえり」

シノンが奥から出てきた。

「う~ごめんね~2人とも。それにしても2人とも制服よく似合ってるよ!あともう2色増えたら悪と戦うのも夢じゃないよ!」

「マジで!?私ブラックがいい!」

「私 ホワイト~」

「何と戦うんです?」

「う~んライバル店かな?」

「ただの営業妨害じゃないですか」

「…………………………」しょぼ~ん

「?シノンさんどうしたんですか」

「…………………………余」

「ん?何て言ってんだ?」

「わかんないよ~」

「えっ~とね〝ココア姉達2人と3人合わせて5人……俺余らない?〟だって!大丈夫だよシノン!シリーズの中には6人もいるわけだしシノンは余らないよ!」

「そこ気にするんだ~」

「そうだねぇ~」

「シノンさん、可愛いです。」

 

メグはココアに申し訳なさそうに声をかける。

「えっとココアさん……」

「あ、私の事はお姉ちゃんって呼んでね」

「気にしなくていいので」

「チノちゃん羨ましいな~こんな優しそうなお姉ちゃんと一緒に暮らせて」

「!?」

「いえいえ姉らしい事は何も出来てませんが~これパンのお裾分けだよ」

どこからともなくパンを取り出すココア。

「わぁ~ありがとうございます! (モグッ )!? お料理も上手!どうしてこんな素敵な人って教えてくれなかったの!?」

「ココアさんはパンしかまともに作れないんですよ!?それに、そういうことであればシノンさんのほうがいいです。」

「シノンさん?」

メグがシノンの方を向く。

「…………………………??」コテン

「そうです。優しくて、料理も出来てすごく素敵な人ですよ。」

「…………………………そんなこと………………ないよ」

「チノがそこまで言うなんて!」

「シノンさんって呼んでいいですか?」

「…………………………呼びやすい…………ので………………呼んで」

「じゃあシノン兄さん?」

「…………………………んっ」

「シノン!ずるいよー!」

シノンの肩を揺らすココア

「……………………………………ん?」

少し困るシノンだった。

 

そんなやり取りしているとリゼが慌てて入ってきた。

「すまない!部活の助っ人に駆り出されて…………」

「あ リゼちゃん紹介するね 私の新しい妹達です!」

そう言いながらマヤとメグをぎゅっと自分の方に抱き寄せるココア。

「状況がよくわからないが嘘をつくな」

「そうだ!私としたことがアレをなくしてしまったんだが…誰が見てないか?」

「もしかしてこれ?(リゼの銃)

あとコンバットナイフも入ってたけどこっち?」偽物だよな

「リゼェェーーー!!?ウチに物騒な物を持ち込むでない!」

「………………………………危ないよ」ちょんちょん

マヤの、肩を突っつきながら声をかける。

「え~大丈夫だって……うわ!?」

マヤが足を滑らせ転ぶ手に持ってたナイフはそのまま近くにいたシノンの方へと行く。

「…………………………ッ!」

シノンは咄嗟に後ろに飛び紙一重で避けてバク転する要領で足でナイフを蹴りあげた。なるべくマヤの手を傷つけないように蹴り飛ばしそのまま着地して、転ぶマヤを受け止めて、落ちてくるナイフを器用に空中でキャッチした。そして、マヤに向けて一言

「……………………大丈夫?……………………怪我ない?」

「え、あ、うん」かぁ~~

「………………うん………………気を付けてね」ニコッ

「うん、ごめんなさい」

「………………大丈夫だよ」

「シノンさんすごい身体能力です。」

「シノン!!家のトレーニングに参加しないか!?」

「………………」フルフル

リゼの誘いにゆっくりと首を横に振るシノンだった。そして、他の人達は何故こんなに身体能力がいいのか気になったがリゼとシノンのやり取りで聞くことが出来なかった。

「それよりもシノン返してもらっていいか?」

「…………………………うん………………扱い……………………気を付けてね」

(そのやり取りカッコいい!)

「リゼって役者めざしてるの?それともミリオタ?んでシノン兄は何か武術やってたの?」

「ミリオタってなんです?シノンさんはわかりませんけど」

「まぁいいか。私もCQCとかできるよ」

そう言いながらもリゼとシノンに向かって構えるマヤ

(昨日見たテレビの真似だけど)

「マヤちゃん、また変な影響受けてるー」

「こいつCQCに精通しているのか!?年下ながら軍の関係者か!?」

「…………………………………………違うよ」ポンッ

「わ、わかってるぞ!」

シノンはリゼの肩に手を置きそっと言う。恥ずかしいのか少し顔を赤くして言うリゼだった。

「シノン兄はなんかやってたの?」

「……………………う~ん………………内緒?」

「え~」

頬を膨らませて不満ですと顔で訴えるがそれをスルーするシノンだった。

 

「リゼって立ち振舞いが普通の女の人と違うね~憧れちゃうな~」

「やっぱり私って浮いてる!?」

「ココアちゃんを私の目標にするね」

「そんな事初めて言われた……!お姉ちゃんって呼んでいいよ!」

マヤとメグがチノに興味津々に聞いてくる。

「「チノはどっちに憧れてる!?」」

チノは少し考え言葉を発する。

「強いて言えば……シャロさん?かシノンさん?」

「「ですよね!」」

「………………………………俺?」

「は、はい。シノンさんは私のあ、憧れなので」

「………………うん…………………………ありがと」ニコッ

「い、いえ」かぁ~

チノはこっそりと心の中でいつか、兄さんと呼ぶことをひそかに決めた。

 

「じゃあ今日はリゼちゃんと一緒にお客さんしてようかな」

「なんか新鮮だな」

2人は席にすわり今日はお客様をすることにした。

「メグちゃん コーヒー豆は生のまま食べない方がいいよ」

「あはは、知ってるよ」

「え!?常識!?」

「親の影響受けると殺伐とした考えが染み付いて大変だよな お互い」

(? お互い?)

ココアがメグとリゼとマヤが楽しそうに話している。

そこにシノンがケーキを持ってきた。

「シノン?」

「…………………………サービス」

「おぉ!ありがとシノン!」

「いいなぁ~」

羨ましいそうに、見てくるマヤとメグ

「…………………………大丈夫だよ。」

「「え?」」

「………………休憩……………………?」

「えっとね〝休憩時間に2人の分も準備してあるよ。ただ俺の作ったチーズケーキタルトだけど大丈夫?〟だって」

「わぁ~ありがとうございます!」

「全然OKだよ!」

そんな様子を見ていたチノは少し落ち込んでいた。

「……おじいちゃん……この気持ちは何なんでしょうか……」

「う~む」

「…………………………んっ」

「シ、シノンさん?」

いつの間にか戻ってきたシノンはチノの頭にいるティッピーを持ち上げチノの頭に手を置くとゆっくりと撫でで

「…………チノちゃん…………………………あるよ?」

「えっと〝私の分もあるから大丈夫だよ〟ですか?」

なんとなく解読したチノは不安そうにシノンに聞く。

「…………………………」コクッ

シノンは頷き少しにっこりと笑う。

「良かったです。」

それに安堵するチノ。しかし落ち込んだ気持ちは消えなかった。

 

「あんこに会うついででもチノちゃんが私に相談してくれるなんて嬉しいわ。シノン君も来てくれて嬉しい♪」

「………………………………ん」ヒラヒラ

シノンとチノは甘兎庵にきていた。チノはこのまえの相談をするためにシノンは付き添いとして来た。千夜のお礼に手を振りで答えた。ぽつぽつと千夜に相談し始めた。

「あれから2人が時々来るようになって私だけ置いてけぼりな感じなんです」

(シャロちゃんに教えたら何て言うかしら)

「それに……もやもやするんです」

「嫉妬してるのね」

「しっと?誰にですか?」

「自覚がない!?」

チノの答えにびっくりする千夜

「………………………………嫉妬……してるの?」

「シノン君も気づいてなかったのね」

「シノンさんは嫉妬したことあります?」

「………………………………?…………みんな…………すごいから…………羨ましいかな」

「シノンさんの方がすごいかと」

「何故か照れるわね」

 

「ココアさんは年下だったら誰だっていいんです。みんな妹なんです」

(誤解を招く言い方だわ)

「リゼさんはマヤさんに親近感を覚えてしまったみたいですし」

「それは何か勘違いしてるんじゃないかしら」

「メグさんもマヤさんもまるで私の事を忘れてしまってるみたいでした。」

「考えすぎよ」

「………………大丈夫………………忘れてないよ」

「そうでしょうか」

チノが少し落ち込むと千夜がチノの手を持ち上げて眼をキラキラさせながらいう

「寂しいならいっそのことウチの子になっちゃいましょ♪」

「ややしいことに」

「シノン君もウチの子になっちゃう?」

「…………………………」フルフル

静かに首を振り

「…………家族は………………あの人達だけだよ」

そう少し遠い目をしていうシノンだった。

そんな相談をしていると後ろから声をかけられる。

 

「あの……もしかしてラビットハウスのお孫さんでしょうか」

「?はい。うちの常連さんですか?」

不思議そうに答えるチノ

「学生だった頃は……でも最近は心の準備が……もやもやしてしまう気持ちわかります。とても大切な人達に囲まれているんですね」

(相談に乗ってくれてる……?けどなんで目を合わせて話さないんだろう変な所で恥ずかしがり屋に違いない)

(背中合わせで話してるわ……)

「………………ん?」

シノンの席からは後ろ姿が見えたため、どこかで会った気がしていた。

そう言いながら席を立つ青山

「では私はこれで。お会計お願いします。」

「青山さん今日の執筆は進んだの?」

千夜が青山さんに聞く。

「いいえ全く」

(不思議な人だ……)

「……………………………………やっぱり」

「やっぱり?」

チノがシノンに聞いてくる。

「…………うん…………この前…………ココア姉…………あってた。」

「あの小説家さんですか」

「…………………………うん」

 

「私ったらダメねチノちゃんの相談きちんと乗れなかった」

「そんな事ないです。」

「聞いて貰えて心が軽くなりました。」

少し微笑んで答えるチノ。するとドアが勢いよく開きシャロが入ってくる。

「リリリリリゼ先輩に妹が出来たってどう言う事!?」

「メールしてたんですか?」

「フフフッ」

「………………大丈夫………………なってないから」

「ほ、ほんと?」

「………………うん」コクコク

頷き頭を撫でるシノン

「ちょっ子供扱いしないでよ!」

「………………?………………う~ん」

シノンは少し考えるとシャロの手をそっと自分の口元まで持っていき。

「……………………これでいい?」

そう言いながらも眼を細める(手にキスはしていない)

「あ、あわわわ、」かぁ~

「シノンさん意味がちょっと違います。」

「むしろあってる気がするわ」

「…………………………?」

 

次の日のラビットハウスにて、ココアとリゼが話している。

「ねぇリゼちゃん。私チノちゃんがあの2人と仲良くしてるの見てたら、嬉しいけどちょっと寂しくなっちゃったんだ。きっと私の知らないチノちゃんの一面をいっぱい見てるんだろうな」

「わ 私だってそう言うのわからなくもないぞ?私だけここに住み込んでないワケだし……」ごにょごにょ

「え?何か言った??」

小さい言葉で言って聞き返すココアに少し恥ずかしそうに誤魔化すリゼ

その様子を奥から覗くチノとシノン

「……シノンさん、もやもやしてたのは私だけじゃなかったみたいです」

「…………………………うん」

少し微笑みティッピーを持つシノン

「やっぱこの4人で仕事してる時が一番落ち着くね~」

「そうかもな」

「コンビネーションもとれてるもんね!」

「そうでしたっけ」

「リゼちゃんがコーヒー豆挽いたりシノンがお料理してチノちゃんがお客さんに運んで私は……日向ぼっこ?」

「サボるな」

シノンは厨房にてティッピーと少し話していた。

「…………………………チノちゃんは………………大丈夫…………そうだね…………ね?ティッピー」なでなで

(こやつは本当にチノのお兄ちゃんになってきてるの)

そんな様子を見ながら微笑ましくなるシノンとティッピーだった。

 

 

チノ達の学校にて

「あっチノちゃんおはよー」

「その……もう具合大丈夫?」

心配そうに聞いてくる、マヤとメグ。

「何のことです?」

「最近元気なかったじゃん?」

「声かけにくかったから心配だったの。我慢しちゃ駄目だよ?」

「そうそう、変なとこで遠慮するからさー」

「……大丈夫ですよ。今、治ったみたいです」

「今 治ったの!?」

「なんで?」

笑って答えるチノに治ったことにびっくりするマヤとメグだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これが無口な少年と妹達との出会い再びだった。

 




新コーナーを作ってみました!シノンが何を言ってるのか予想してください!答えは次回の投稿で!
では、シノンさんどうぞ!
「………………………最近……………………気を…………………………………って!」

さぁ!シノンはなんと言ってるでしょうか!ヒントは最近の出来事についてです。


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17羽 無口な少年と勘違いをした日

前回の投稿の時に感想を頂き、長く待たせてしまったのに感想を貰えたのが嬉しくって、つい調子に乗っちゃって2羽連続投稿してしまいました。なんてチョロい自分
さらにコーナー、アンケートとやって……………チョロすぎる自分
ん、んまぁ、それは置いといて!今回も暖かい眼でご覧ください。!


ある日~

ココアはパンを焼いてチノとリゼに試食して貰おうとしていた。

「2人ともー今日もパンの試食してくれないかな」

「今日はちょっと……」

「私もパスです」

しかし2人は申し訳なさそうにそれを断った。

「えぇっいつもしてくれたのに!」

「食べたい気分じゃないんです(だ)」

「私にはもう飽きたのね!」

「変な言い方するな」

「う~シノン~」

「…………………………ん」

ココアはシノンの方を向きながら涙目で訴えてくる。

それに対してシノンはちょっと頷くとパンを受け取り食べていく。

「どう?」

「…………………20…………30…………美味しいよ」

「数字!?」

「コ、ココアさん…シノンさんはなんと?」

「えっとね〝砂糖があと20gいれて良いと思うよ。あと30分ぐらい発酵させてもいいかもね。だけど美味しいよ〟だって」

「細かいな!?」

「さすがシノンさんですね」

「ありがとうねシノン」

「…………………………うん」

余ったパンはラビットハウスの限定メニューとして販売しました。

 

ココア達の学校の休憩時間にてココアは千夜とシノンにパンの試食して貰いながら相談していた。

「最近2人とも味見してくれないんだよね……」

「こんな美味しいのに変ね」

「………………うん………………美味しいよ」

「きっと他のパンに浮気してるんだよ」

「そんな……マンネリ化した彼女みたいなこと言わなくても」

「味のマンネリなら新しい境地を開拓するべきよ!」

「でもどうすれば……」

「豆板醤パンは?シャロちゃんはダイエットに豆板醤団子よく食べたもの」

「そんなの作ってたの!?」

「………………………………辛いの」

「シノン君?」

「えっとね〝正しいかはわからないけど辛いものはダイエットにはあまり効果がないと思うよ?基礎代謝が上がったりはするかもだけど……辛いものは食べて痩せるのは体の水分が汗で減るだけだから水分補給したら戻るよ?〟だって」

「シノン君はどこでそういうの、知るの?」

「…………………………本」

「シノンは物知りだねぇ~」

「そんなレベルじゃないと思うけど」

 

「!もしかして2人ともダイエットしてるんじゃ!?」

「チノちゃんは太るの気にする年でもないけどリゼちゃんはどうかしら?」

「リゼちゃんのあのプロポーションを保つのは難しいと思うよ。きっと?陰で努力を……!」

ココアは千夜の方を見る。運動嫌いで一部(どこかとは言わないが)ふくよかで 現在進行系で間食している。

「?」

「努力しなくてもスタイル保つ秘訣ってなんですかっ!」

「もぐもぐ?」

ココアの質問に首をかしげる千夜

「シノンもそう思う……!」

ココアはシノンの方をみる。運動よりも部屋で本を読むことが多い。間食・ココアやチノの残した物を食べたりしている。自分よりも痩せているんではないかと思うほどの体型

「シノンー!?痩せるためになにかやってるんでしょー!!?教えてー!!」

シノンの肩を掴んでぐわんぐわんと揺らすココア

「………………??」

何のことかわからず首をかしげるシノン

そんな2人を微笑ましく見る千夜だった。

 

(シャロちゃんにも相談してみよう)

「こんにちはー」

「…………………………こんにちは」

~説明中

「毎日菓子パンは飽きるわよ」

「リゼちゃん最近イライラしてるしやっぱ豆板醤パンしかないのかな」

「…………………………やめといた………………方がいい」

「ん~、シャロちゃんからもそんなの食べても痩せないって言ってあげてよ」

「それ 私にも言い聞かせてるの?」

「……………………シャロ………………大丈夫…………可愛いよ?」

「え、あ、ありがとう」かぁ~

シノンの言葉に顔を真っ赤にするシャロ

(やっぱり慣れない!)

そう心の中で思うシャロだった。

シャロはリゼがイライラしてると聞いてこういわれると思った。それにフォローするシノンだった。

「第一お前は胸がない分軽いからいいよなって言われるに決まってるわよ」

「そこまでイライラしてないと思うよ」

「…………リゼは…………そんなこと…………言わないよ」

 

「じゃあチノちゃんは……」

「もしかして……虫歯かもしれないわよ」

「………………………………虫歯?」

「甘いパンは歯に染みるし昔は歯医者が怖かったもの我慢してるのかも」

「そっか……チノちゃん我慢する子だもんね。一緒に暮らしてても言ってくれてないこときっとたくさんある……お母さんがいないのま歯が痛いのも我慢して」うぅ……っ

「………………?」

「シノン?」

「………………………………俺…………?」

「えー!?〝チノちゃん、俺に結構相談してくるよ?〟だってー!!いいなぁー!シノンずるいよー!」

「歯医者が怖いだけでどうしてこんなことに?」

「…………………………………………わからない」

 

それから何日間後~

「今日は甘くなくて低カロリーなパン作ったよ!美味しそうでしょう」

そう言ってパンを出してくるココア。

それに対して何とも言えない顔になってるチノとリゼ

「「………………」」

「出来立てほかほかのパンだよ!お腹が空く匂いでしょ」

「「……………………!!」」

ぐきゅるるるるる

2人はそのまま我慢しているような苦渋な顔をするチノとリゼ。

「2人とも正直になってよー!その顔やめてよー!」

「……………………我慢…………よくないよ?」

「そうだよー!!よし!チノちゃん口開けて!」

「なっなんでですか」

「虫歯検査だよ」

「みっ見てもわからないですよ」

あ~と口を開けるチノの口の中をじーーーっと見るココア

「チノちゃんの歯がちょこんとしててかわいいねー」

「あれっ虫歯は!?」

目的がずれるココアだった。そうするとココアはシノンの方を向き手招きする。

「………………………………ん?」

「シノンも見てあげてよー」

「え!?」

「…………………………ん」

シノンはチノの方に行きそっと頬に手を添えて口を開けて貰おうとする。

「……………………………………あ~」

「あ、あ~」

チノもゆっくりと口を開ける。そしてそれをじっと見るシノン。しいさ10秒……30秒…………1分時間がゆっくりと過ぎていく。顔を真っ赤にしながら耐えるチノ

「………………………………」じっ~~~

「………………」かぁ~

「……………………うん………………大丈夫……………………綺麗な歯だよ」

「あ、ありがとうございます。」

「私あれされたら耐えられる自信ないな」

ちょっと離れた所でそう思うリゼだった。

 

ココアはシノンの作ったショートケーキを持ってきてチノに渡した。

「じゃあこのケーキを待ったまま口を開けてて」

「こうですか?」

「うんそのままー」

ケーキに向かって口を開けるチノしかし目の前にケーキがあるのでだんだんと空腹になっていき苦しくなっていく。

ぐ~~

「こうすれば虫歯菌がケーキの方に移るって聞いたことあるの」

「素晴らしい迷信ですね。いっそのことココアさんに移したいですよ」

「えー!?」

「このケーキは冷蔵庫に入れておきますよ」

「…………………………食べて………………いいよ」

「え、でも………………」

「…………大丈夫………………………低Kcal………………だから」なでなで

「あ、ありがとうございます。」

まるですべてわかってるかのような微笑みで頭を撫でるシノン。それにお礼をして恥ずかしがりながらケーキを食べるチノだった。

 

「………………ゴクリ」じ~っ

リゼはそんなチノちゃんが食べてるケーキをじっと見つめた。

「リゼちゃんケーキ食べたくなっちゃった?」

「別にっ」

そう言いながらもコーヒーをこぼしてるリゼだった。

そして、お客様にケーキをだすリゼ。しかし、そのケーキを凝視するリゼ。

「お待たせしました」コト

「………………ゴクリ」じ~

「・・・」

少し困った顔をするお客さん。

「お客さんが食べにくいでしょー!」

リゼの腕を引っ張って奥に連れていくココア

じー……

 

ココアが痺れを切らして2人に怒る。

しかし、ティッピーは間にだされショックを受けていた。

「チノちゃん!歯医者はちゃんと行かなきゃダメだよ!ティッピーみたいに歯がなくなっちゃうよ!」

「ティッピーはお年寄りですが歯はまだあります。」

「リゼちゃん!自分が十分痩せてる事をわかってないみたいだねティッピーを見すぎて自分も太ってるって勘違いしちゃったの!?」

「ティッピーは太ってません毛が豊富なだけです。」

「それともシノンの綺麗な歯に嫉妬しちゃったの!?それともシノンのよりも痩せてると思っちゃったの!?」

「………………………………ん?」

「シノン(さん)?」

「………………………………?」

ココアに言われてシノンの、方を見る2人。

毎食歯を磨いて、綺麗な歯。歯並びがいい。自分よりも痩せているんではないかと思うほどの体型。

「「………………くっ!」」

「気持ちはわかるよ2人とも」

「…………………………………………??」

自分を見ながら苦渋の顔をする2人に対してよくわからず首をかしげるシノンだった。

 

そんなことをしてるとシャロを入ってきた。

「リゼ先輩!」

「あれシャロちゃんバイト終わったの?」

「先輩の体が心配で……これっバイト中に作った低カロリーお菓子です!無茶なダイエットはやめてちゃんと食べ……」

「…………」ゴゴゴゴゴ

シャロから渡されたクッキーを見てやはり苦渋の顔をするリゼ。それを見て勘違いしてシャロは叫びながら外に飛び出そうとした。

「貧乳ぽっちゃりは去りますー!」

「なんだそれ!?ちょ、まっ!」

シャロを制止させようとするリゼとチノ。

しかし、チノは少し悲しそうにした。

「待ってください!シャロさんは太ってないです!私の方が……私の方が……!」

「わっわかった食べるから!だから泣くな!」

「リゼちゃん男前ー!」

「〰️〰️~っ」

シャロから貰ったクッキーを食べ急に頬を支えながらガクッと落ちるリゼ。しかし、シャロは止まらずたまたま前にいたシノンにぶつかる。

「うわー!あぷっ」

「…………………………大丈夫?」

たまたま前にいたシノンに当たるシャロ

「ご、ごめんシノン」

「…………………………シャロ………………可愛いよ」なでなで

シノンは左手で軽く抱きしめ右手でゆっくりと撫でる。

「あ、ありがとう」かぁ~

「私あれやられたら沈没する、自信あるな」

「同感です。」

「うんうん。」

頬を支えながら話すそれに同感するココアとチノ。

 

~説明中

「じゃあリゼちゃんが虫歯で悩んでて、チノちゃんが体型を気にしてたの?」

「……………………逆…………だったね」

そう2人が思ってたことは逆だったのだ。リゼを心配そうな顔で声をかけるシャロ。

「治療が遅れると大変なことになりますよ」

「行くことは毎日考えてる!しかし、銃撃戦の音はよくても歯医者のあの音だけはダメなんだ!」

「リゼちゃんが吹っ切れた!」

「後輩として何としても連れて行きます!」

急に強気になるシャロ。しかし中々覚悟を決めれない

「し、しかしやっぱりあの音だけは……」

「…………………………ムッ」

「シ、シノン?」

シノンは少し頬を膨らませながらリゼの方に歩いていき

「…………………………」ペシペシ

「い、痛い!そんなに痛くないけど地味に痛い!!」

リゼの頭をペシペシするシノン

「………………ちゃんと………………行かないと…………………………ダメ」

「わ、わかった!行くから!」

「…………ん…………ならよし♪」

「あ、ありがとう」

そう言うとシノンはゆっくりと頭を撫で始める。

「あれこそが飴と鞭ね」

「使いこなしてます。」

「さすがシノンだね!」

 

「チノちゃんは全然太ってないよ!どうして言ってくれなかったの?」

「だって……ココアさんはバカにするじゃないですか。私がダイエットなんてまだ早いって言うに決まってます。よく私に抱きついてふわふわふかふかって言いますし」

「それで太ったと勘違いしたのか」

「あれはそういう意味じゃ……私のせいだー!!」

「あぁそうだな」

自分のせいで勘違いしたと思ったココアは項垂れる。

「………………大丈夫だよ?」

「シ、シノンさん」

「…………成長期……無理な……ダイエット………………よくないよ?」

「でも……」

「…………チノちゃんは………………そのままで………………可愛いよ」

「あ、ありがとうございます」かぁ~

そんな2人のやり取りを微笑ましく見るココアとリゼだった。

 

その日の夜チノの部屋でココアとチノとシノンは揺ったりとしていた。ふっと思ったチノはココアに質問する。

「ところでココアさん……一人でパンの試食してましたが自分の体重測って見ましたか?」

「私太りにくい体質だったみたい」

「甘い菓子パンばかり食べてたら虫歯になりますよ」

「私虫歯にならない体質みたい」

ココアの答えに怒ったチノは枕をもって頬を膨らませ今にも襲うとしていた。

「チノちゃん!落ち着いて!」

「む~~!そういえばシノンさんも痩せてるよね」

「………………少し…………運動…………してるよ」

「そうなんですか?」

「私も初耳だよー!」

「どんなことをしてるんです?」

眼を輝かせながら見てくる。

シノンはう~んと少し唸ったあと少しはにかみ笑いをしながらこう言った。

「………………………………内緒♪」

「「ん゛っ!!!」」

何故か胸を押さえながら悶える2人だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これが無口な少年と皆が勘違いをしていたそんな日だった。

 




読んで頂きありがとうございました!
また、アンケートも作成したのでよろしければ参加して頂けると幸いです。
なお、シノンの答えは次の投稿時に出したいと思っております。
では、次回も気長にお待ちください。


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18羽 無口な少年と姉妹喧嘩とパズル

アンケートに答えて頂いた皆さんありがとうございました!
前回のシノンの言った言葉は!!ココアに答えをどうぞ!
「はーい!〝最近コロナで大変だけど気をつけて皆で頑張って行きましょう!〟だって!」
どうだったでしょうか?楽しんで頂けたでしょうか?
では、本編をどうぞ




 

 

ある日のラビットハウスにてチノはいかにも怒ってますという感じだった。頬を膨らませていた。

「……」ぷくつーん

「今日のチノ機嫌悪くないか?」

「へ?そうかな?」

「………………確かに…………いつもより…………不機嫌」

「ん~?」

思い出すココア。

~回想中

ココアがチノに抱きつく。

「もふもふー」

「やめてください。ココアさん。」

ココアの近くを通る。

「ちょっと邪魔ですココアさん。」

~回想終了

「チノちゃんはいつも私につんつんだよ」

「いつもそんなあしらわれ方してんの?」

「…………それでも……いつもと………………違う」

「チノに聞いてみるか」

「………………」コクッコクッ

シノンとリゼはチノに聞いてみることに

「何かあったのか?」

「……………………?」

「昨日……」

~事情説明中~

「ちょっと御手洗いに…」

「行ってらっしゃい~」

~しばらくして

「ただいまです。ん?」

「御手洗いから帰ってきたら机の上に毎日少しずつやるのが楽しみだったパスルが……ほぼ完成状態に! しかも1ピース足りなかったんです。」

「それは、へこむな。シノンは止めなかったのか?」

「…………その…………時間…………寝てたから。」

 

 

ココアに説明後

「……だと余計なことしたな」

「………………」コクッ

「えー!?チノちゃん喜ぶと思ったのにー」

「………………楽しみ……方は…………人……それぞれ」

「シノンのいう通りだなチノはゆっくりと完成させていくタイプらしいしな」

「で、でもパズルのピースは最初からなかったよ?」

「無くしたのがココアのせいと思ってないだろうけど。楽しみが取られてショックだろうな」

「わたし……わたし……お姉ちゃん失格だあああ」

「先に謝っとけよ!」

「………………行っちゃった」

「まったくココアは」

少し呆れた顔になる2人。

~夕方

「ココアが帰ってこない」

「……………………遅すぎる」

「心配しなくてもすぐ戻ってきますよ」

「悪気はなかったんだから許してやったらどうだ?」

「こんな事で怒ったままでいたくないですけど……」

「…………………………変えにくい?」

「はい、あんな態度をとってしまった以上普通に話しかけるのが恥ずかしくって……」

(ココアは態度の変化に気づいてなかったけどな)

「………………ココア姉…………そこまで…………察しよく……ないよ」

「さらっとひどいなぁ!?」

バン

その時勢いよく扉が開く。そこには涙眼のココアが箱を持って叫んでた。

「チノちゃんっ新しいパズル買ってきたから許して!」

「8000ピース!?」

「………………多い」

呆れ顔でため息をつくシノン。

 

 

~夜~チノのお部屋

チノの部屋にはシノン、チノ、ココア、リゼの4人と先程来たシャロと千夜がいた。

「協力して欲しいことがあるって聞いたけど……」

「手伝ってー」

「始めたはいいんですか片付かないんです。」

「パズルやる事になるなんて、一回崩してしまっちゃえば?」

「そんなぁもったい無い」

「それに今リゼちゃんの集中力遮る事なんて出来ないよ」

(楽しい‥)もくもく

「た、確かに…」

「よし、シノンのおねだりだよ!」

シノンの方を向きながら言うココア

「…………?………………うん」

シノンはシャロと千夜の方を向き、胸のところで手を合わせて首を傾げて

「……………………お願い」

「「んん゛っ」」

胸を押さえて苦しくなるシャロと千夜

「よし、破壊力十分だね」

「くらいたくないな」

「同感です。」

こうしてシャロと千夜も加わり6人でやることに

 

 

「ジグソーパズルなんて久しぶり」

「端っこから作ってくのが楽なんだよね」

「…………………………」コクコク

「チノちゃんが作った所と合体」

「合いしょうですね」

そう言いながらお互いが作ったパズルを組み合わせて1つとするシャロとチノ。

「こっちもリゼちゃんのと合体だよ!」

「あぁ」

ココアとリゼもお互いのパズルを組み合わせる。

「えっとえっと」1ピースも合わせられてない

まだ皆と合わせられていない千夜は焦り始める。

「シャロちゃん、皆と合わせられない役立たずがここにいてもいいのかしら」

「急にネガティブになりだした……めんどくさい」

「……………………千夜」チョンチョン

千夜の肩を突っつくシノン。

「シノン君?」

「………………これ」

シノンは作っていたパズルを千夜が作ってたパズルと合わせた。

「わ~!ありがとう!シノン君!」

「んっ」なでなで

「フフフッ」

シノンに撫でられてつい頬が緩む千夜だった。

「シノン準備してたのか」

「千夜が作ってたのをみて合わせたのね」

 

パズルを作っていった時シャロとリゼが同じところにピースを置こうとした。

「「…………!」」コッン

「せ、先輩からお先にどうぞ」

「いや、シャロの方が合ってるっぽいし」

「そっそんなこと無いです」

「だってはら形が……」

そんなやり取りをしていると千夜が2人の間からピースを置いた。つい無言になるシャロとリゼ

「あ はまったー」

「「…………」」

千夜がふっと気がついた顔をするがなんでもないと答える。それを見ていたシノン

「あ……」

「どうしたのよ」

「ううん、なんでもないわ」

「…………………………」

 

 

パズルは進み1時間が経過していた。みんな、集中力が切れてぐったりしていた。シャロはそう思っているとリゼがハートマークを作っていた。

(みんな集中力がなくなって、来てる)

「ハートマークが出来たぞー」

「リゼ先輩疲れてるなら休憩してください……」

その時チノはふっとココアの方を見た。ピースを見つめて動かないココア。申し訳なくなりそっと声をかけるチノ

(あ、ココアさんさっきからピース見つめながら動かない……)

「その……責任取ろうと無理しないでください。」

「私もう怒ってな…………寝てる!?」

「……チノちゃん…………気にしなくて…………いいよ」

少し呆れ顔で言うシノン

 

 

「…………皆腹」

「腹?も、もしかして私たちのお腹が!?」

シノンの言葉に咄嗟にお腹を隠すリゼ。

「ううん、違うらしいよシノンはね」

首を少し横に振り答えるココア

「〝皆、小腹が空いて来る時間だしホットケーキとコーヒーでもいれてくるよ〟だって」

「なんだ、そう言うことならお願いするよシノン」

「あ、私も手伝うよ!」

「!わ、私も手伝います」

シノンの後についていこうとする、ココアそれを見てチノも立ち上がり後を追うように部屋を出る。そんな様子を見て2人が仲直りしたことを思うリゼ。

「あの2人自然に仲直りしたみたいだな」

「え?喧嘩してたんですか?」

「だっていつも以上にチノの口数少なかっただろ?」

「「………」」

「いつもあんな感じじゃないの(んですか)?」

(こいつらが鈍感なのか私が勘繰り過ぎなのかわからなくなってくる………)

自分の違いによりなんとも言えない顔になるリゼだった

 

 

キッチンにて

ココアはホットケーキを焼いておりチノは近くで見守っている。シノンは少し離れた所でコーヒーと紅茶をいれてた。

「私ねー最近ホットケーキ宙に浮かして返せるようになったんだよ!みててねいっくよー」

そう言いながら勢いよくホットケーキをフライパンを上げて空高く…………

「………………!!」

シノンは咄嗟にチノを自分の方に抱き寄せた。

そして、落ちてきたホットケーキを手の甲で受け止め、そのまま横へと流した。ホットケーキは勢いよく地面に落ちた。

「………………ッ」

「シ、シノンさん!?」

少し熱そうにするシノンを心配するチノ

「シノン!大丈夫!?」

ココアも心配そうに駆け寄る。

「……………………んっ」

「!?、ご、ごめん…………シノン」

シノンの手の甲を見ると少し赤くなっており、ココアが凄く申し訳そうに声をかける。

「………………大丈夫だよ………次から………気を付けてね」

そう言いなから火傷した反対の手でココアの頭を撫でるシノン

「うん……」

「シノンさん」

(痛いはずなのにココアさんを責めないで、それどころか優しく声をかけるなんて私と違って……すごい)

自分がパズルで怒っていたことに対してシノンは少し火傷したが怒らなかったことに自分との器の違いを知るチノだった。

シノンが氷と水で手を冷やしてる間にチノがホットケーキを作る。

 

 

(う~チノちゃんに良いところを見せようと思ったのに全然駄目だった、それにシノンにも迷惑かけて……こうなったらお詫びするしか)

「そろそろ全部焼けるので先に運ん…」

チノがココアの方を向くとテーブルに顔を伏せて死して償います。と書いてあった。

「シ、シノンさん!!大変です!ココアさんがケチャップで死んでます!」

近くで冷やしているシノンに助けを求めるチノ

「……………………?」

シノンはココアの方を行くと頭をペシペシする

「………………」ペシペシ

「う、わ、わかったよシノン」

先程のこともありすぐに起き上がるココア

「………………めっ!」

少し頬を膨らませ人差し指を出して怒るシノン

「うっ、だってもう嫌われたと思って……」

「…………ココア姉を…………嫌いになることは………………一生ないよ」

「シノン~」

「ココアさんここにも汚れが」

そう言いながらタオルで頬を拭くチノ。

 

「う~ごめんねチノちゃん」

「私も素っ気ない態度を取ってしまいました…」

「でもね‥…なんだか初めて姉妹ケンカっぽいこと出来てちょっと嬉しかったかも」

少し笑うココアに照れるチノ。

「そういえば…兎も気を引きたくて死んだフリをするんだよ」

「ココアさんは兎というより笑顔が…ウーパールーパー?」

「ウーパールーパーか~複雑」

「…………ウーパールーパー…………可愛いよ?」

「えへへそうかなぁ」

「そういうことではないような」

 

ガチャ

「………………出来た…………みんな…………来て」

チノの部屋に来たシノンが皆をリビングに呼ぶ。

「ここじゃ駄目なのか?」

「…………洗い物…………楽…………部屋…………汚れないから」

「えっとつまり、〝リビングで食べた方が洗い物が楽だし、部屋も汚れないから〟てこと?」

シノンの言ったことを考察したシャロが言う。

「……………………」コクッコクッ

「ふふっ、シャロちゃんもシノン君の言ってることわかるようになったのね」

「お~すごいなシャロ」

「い、いえそんなこと」

「………………」ニコッ

「………………」かぁ~

笑いかけるシノンに顔をそらしてしまうシャロだった。

その2人を微笑ましく見る千夜とリゼだった。

 

~リビング

「ん~美味しいなぁ」

「温かいホットケーキに冷たいバニラアイスが合間って美味しいです」

「家でもだしょうかしら」

「あんた家って和菓子でしょ」

「シノンの作ったのは絶品だねぇ~」

「そういえばシノンは?」

「なんか、自分の部屋でやることがあるんだって」

「宿題とかですかね」

「ん~シノンならあり得るかもな」

「シノン君も一緒に食べたらよかったのに」

「お礼も言いたかったな、私のためにわざわざ紅茶を入れてくれたし」

「食べ終わったら言いに行こうよ」

「「「「賛成(です。)」」」」

~食べ終わって

「御馳走様でした」

「美味しかった~」

「そうね、紅茶も美味しかったし」

「そういえば少し前から気になっていたんだが、あのパズル下に何も敷いてないのにどうやって移動させるんだ?」

「「「「!!」」」」

リゼの一言に黙り込む4人

「何も考えてなかったのか!?」

千夜が顔を青ざめて話し出す。

「私……気付いてたのにこの空気になるのが怖くて言えなかった…もっと早く言ってれば……私のせいで……っ」

「余計重くなるから自分を責めるのはやめなさい」

「と、とにかく今からでも移動させれば何とか行けるかもしれません。」

「チノちゃんの言う通りだよ!諦めちゃ駄目だよ!」

「そうね、すぐに洗い物を済ませていきましょう!」

「だな!」

「えぇ!」

5人は気持ちを切り替えてすぐに洗い物を済ませて部屋へと向かう

ガチャ

「よーし!頑張るぞー!」

ココアが気合いを入れ直してパズルに向かう。しかしそこには地べたでやっていたパズルはなかった。

その代わり板のボートが敷いてあった。

「これって……」

その時後ろから声をかけられる

「…………………………どうしたの?」

「シノン!」

「これ、も、もしかしてシノンが!?」

5人はシノンに勢いよく問いかける。

「……………………妖精…………じゃない?」

「「「「「妖精?」」」」」

「…………うん、………………妖精」ニコッ

「よ、妖精がやってくれたのか?」

「…………きっと……そう…………お風呂……行ってくるね」

シノンはそう言いながら部屋を出ていった。

「本当に妖精さんが!?」

「き、きっとそうだよ!」

チノとココアはあわあわと驚いてる。

「いや、2人に申し訳ないが間違いなくシノンの仕業だな」

「そうですね。きっと私たちが食べてる間に直してくれたんでしょうね」

「だけど私達に言うとあれだからあんな嘘を?」

「だろうな。それに最後は少し慌てる様に部屋を出たのは気のせいではないだろう」

「ですね」

「さりげなく嬉しいことするのよねシノン君って」

「シノンさん」キラキラ

「やっぱり自慢の弟だね!」

その後お風呂が出たシノンと交換ずつお風呂に入っていき。最後は皆でパズルを続けた。

 

「これって知恵の輪?難しいねぇ」

「昔おじいちゃんが作ってくれたんです」

「チノってパズルゲーム好きなんだな」

「難しくて何度挑戦しても解けなかったんですが………」

「いつか自分の力で解いておじいちゃんをあっと言わせて見せます。」

「しかし、最初やってたパズルのピースは何処に行ったんだ?」

「こういうのって忘れた頃に見つかりますよね。」

「シャロちゃんは学校にランドセルを忘れたまま帰ってきた事があったわ明日学校いけなーいって言ってたわ」

「リッリゼ先輩の前で昔の話はやめてよ!」かぁ~

顔を真っ赤にしてベットを叩くシャロその反動で落ちるティッピー

「……………………んっ」

シノンは咄嗟に後ろを振り返りティッピーをキャッチする。

「シノンさんありがとうございます。」

「……………………」フルフル

静かに首を横に振り大丈夫と伝えるシノン。

「………………ん?」

ベットの近くを見るシノン。そこには1ピース落ちていた。

「これって……」

「無くしたピース」

「ティッピーの体に埋まってたのか」

「見つかって良かったね」

「はい!」

「良かった~これで完成だね~」カチャカチャ

ココアが知恵の輪をいじってると輪が外れてしまった。それを見ていたリゼとシャロはなんとも言えない顔をしており千夜はフフッと笑っている。チノは頬を膨らませ怒っていた。ココアはから笑いをしている。

「あっ」カチャ

「「あ~」」

「まぁ!」

「は、ハハハ」

「む~ココアさん!」

「はい、お姉ちゃんって」

「呼びません!」

「…………………………ハァ」

シノンは一息ついてココアの持っていた知恵の輪を受け取り皆に見えないようにカチャカチャと動かしていく。

「シノンさん?」

「…………………………んっ」

シノンは知恵の輪をチノに渡す。

「これって」

渡された知恵の輪は外れる前の状態に戻っていた。

「も、戻ってる!?」

「ど、どうやったんですか!シノンさん!?」

「……………………それを…………解くのが……………チノの………役目だよ」なでなで

「はいっ!」

微笑みながらチノの頭を撫でるシノン。その様子を微笑ましく見る4人だった。

 

~数日後のバータイム。

タカヒロとティッピーが話していた。絵が変わってることに驚くティッピー

「なんじゃこれりゃー!?わしの絵が」

「新しいのにしといた」

「なんじゃと」

「よく見ろよ親父この6匹誰かに似ているだろ?」

「何?…………まぁこれはこれで悪くない。それによく見ると真ん中のはわしに似ておるしのぉ」

そこには色鮮やかな6匹の兎がいた。

真ん中の黒い兎に5匹の兎がくっついてた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これが無口な少年と姉妹喧嘩を解決した日だった。

 




読んで頂きありがとうございました!
そして、ご注文はうさぎですか第3期10月放送…………え、ほんとに?
曖昧ですが、確か10月放送だった気がします。良かったら皆さん確認してくださいねぇ~
次回も気長にお待ちください


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19羽 無口な少年と千夜の憂鬱

更新が遅くなってしまい申し訳ありません。
いつも通り文章力はないので、今回も暖かい眼でご覧ください。



 

「あ、千夜ちゃ~ん。おはようー!」

「……………………おはよう」

「あら、ココアちゃんにシノン君。そういえばチノちゃんご機嫌治った?」

「朝起きたら許してくれたよ」

「…………………………はぁ」

「シノン君?」

「………………ううん………………なんでも……ないよ」

「?」

シノンは昨日チノのご機嫌をとり(撫でたり一緒に本を読んだりなど)チノとココアの仲を取り持ったのだ

そんなことはつい知らないココアはきょとんとしているのであった。

ふっと千夜の足を見ると黒いタイツに穴が空いていた。

「あれ?タイツに穴が」

「やだ……今朝転んだからだわ気がつかなかった」

「このままたと目立っちゃうね。絆創膏で穴を塞ぐのとペンで肌を黒く塗るのどっちがいい」

「大丈夫よ」

そう言いながらチノはタイツを下へと降ろそうとした瞬間!シノンが後ろに回り自分の上着を腰へ巻き付けた。

前を隠すように

「え、シノン君?大丈夫よ?」

「……………………………………脱いで」

「え!?」かぁ~

「あ~千夜ちゃん〝多分タイツを脱げば大丈夫って思ってるかもだけどせめて人がいないところで脱いで〟って意味だよ」

「え、えぇそうねわかったわ。シノン君。」

「あ、私も付き合うよ~」

「そ、それじゃぁ上着借りるわねシ、シノン君」かぁ~

そう言いながら慌てるようにココアと一緒に行く千夜を見送るシノン

「……………………ふぅ」

一息ついて落ち着くシノンだが、自分の言った言葉がとんでもないことだったことは最後まで気がつくことはなかった。

 

 

 

 

~お昼

「おじさんが作ったきりきんとん美味しいね」

ココア達のお弁当は基本的にタカヒロが作っている。その代わり朝御飯や晩飯などはシノンが積極的に作っているのだ。3人で雑談しながら食べていると千夜が食べるのをやめてしまった。

「千夜ちゃん?お昼食べないの?」

「…………………体調………………悪いの?」

「ううん、食欲なくて‥…私のお弁当…いる?」

自分のお弁当を差し出す千夜。

「悩み事あったら言ってね」

「ううん いいの。これは、私の問題だから余らせちゃうともったい無いから良ければどう?」

差し出された弁当の中身は卵焼きや鮭などバランスを考えられていて配色もよく綺麗に作られていた。弁当と満点といってもいいだろう。全てが焦げていることを除けば……

(私達の問題でもあるかもしれない!)

「で、でも食べないと体に悪いよ?」

「…………」コクッコクッ

「うん……でも喉に通らなくて」

心配そうに言うココアとシノンに申し訳なさそうに謝る千夜。

ガタッと勢いよく立ったココアはシノンに向かって声をかける。

「う~んこうなったら!シノン!看病作戦だよ!」

「ココアちゃん?」

「………………ん」

シノンは自分の箸を置きかわりに千夜の箸を手に取る。

そして、千夜の弁当から卵焼きを取り、首をかしげながら

「…………………………あ~ん」

「シノン君!?」

シノンの行動に思わず大きな声を出す。いつもの千夜なら出さないだろうがそれほど驚いたということである。

「千夜ちゃん!これがシノンの看病作戦だよ!とことんシノンに甘やかされるんだよ」

「そ、そんな恐ろしい作戦がこの世にあったの!?」

「ちなみに私が風邪引いた時に出来たんだよ」

「ココアちゃんなんでそんな作戦ができちゃったの!?」

「……秘密」プイ

あからさまに顔を背けるココア。昔に一悶着合ったのだがそれはまたあとの話。

「……………………あ~ん?」

シノンは何事もなかったようにあ~んを続ける。

「シ、シノン君私は大丈夫だから」

「あ、ちなみにシノンが満足するか相手が元気になるまで終わらないよ?」

「そんな!?」

「……………………あ~ん」

「うっ…あ、あ~ん」

観念したのか千夜は口を少し開け顔を真っ赤にしながらシノンのあ~んを受けとる。

「あ、ありがとうシノン君。もう大丈夫よ」

「……………………」じっ~

「シノン君?」

千夜が大丈夫と言うとこちらをじっと見つめているシノン。

「えっとね〝本当に大丈夫なの?〟って心配してるよ」

「えぇ、本当に大丈夫よ」

「………………なら…………良かった」

(というか心臓の方が持たない!!)

ドッと疲れた千夜だった

 

 

 

 

「千夜が落ち込んでる?」

「そうなの」

「………………」コクッ

ラビットハウスでいつも通り働いているとココアとシノンはリゼに相談し始めた。

しかし、そんな中シノンの隣でムッとしているチノがいた。

「…私が怒ってる時は気がつかなかったのに千夜さんの様子がおかしい時は気づくんですね」

「これって……ジェラシー!?」

ココアの妄想のでは、チノは少し頬を膨らませココアに言う。ムスッとしているチノにココアは元気よく言う。

「お姉ちゃんの鈍感」む~

「チノちゃんの事はちゃんと見てるよ!」

「え?」

「一緒にお風呂入ってくれない時はそういう年なんだなって気を使ったり反抗期の対処法方を考えたりしてるもん!」

「かんがえてるというか」

「お前は思春期の娘に接する父親か」

「………………………ココア姉が…………目指してるの…………姉でしょ」はぁ

姉の変なところでため息をつくシノンだった。

 

 

「実は最近私も悩みが…」

チノが少し落ち込んだ感じで言うとココアとリゼが自信満々に言う。そのあとにシノンが少し心配そうに声をかける。

「辛いことがあったら我慢せずに私の胸に飛び込んでおいで!」

「相談に乗るから何でも言えよ。精神のブレは戦場でも命取りになるからな」

「……………………………………俺で…………良ければ…………聞くよ?」

「シノンさん、成長が止まった気がします」

「………………まだ…………成長期…………だから…………大丈夫」なでなで

「スルー!?」

チノはティッピーを抱えながらシノンに向かい悩みを話し始める。シノンは撫でながら答える。その姿はまさしく兄妹だろう。そんな中でリゼとココアはスルーされたこにショックを受けていた。

 

 

 

バイトが終わって3人は更衣室で雑談をしていた。なおシノンはバーの準備をしたり夕飯の仕込みなどをしている。

「千夜ちゃんが心配だなぁ~今から行ってこようかな」

「今から行くのか?」

「外はもう暗いので危ないですよ」

「私は自衛出来るけどココアは心配かもな。これ貸すか?」

そう言いながらリゼが渡してきたのは拳銃だった。

「撃つときは脇を締めて両手で構えろ」

「私が捕まるから!?」

「では、シノンさんと一緒に行ってはどうですか?私もリゼさんもこの後は忙しいですし。」

「そうだな、シノンがいれば安心だな。」

「うん!誘ってみる」

こうしてシノンとココアは甘兎庵に行くことになった。

着替えて2人で向かって甘兎庵に着くとシャロがドアの近くで座っていた。

 

 

 

「シャロちゃん?千夜ちゃん家の前で何してるの?」

「…………………………入らないの?」

「朝……お越しに来た千夜とちょっと揉めちゃって」

「だから落ち込んでたんだ」

「追いかけてきたのを振り切って学校を行ったんだけど罪悪感が」

それは、今朝のこと千夜がシャロの名前を呼びながら走ってると躓いて転んでしまったのだ。今朝のストッキングが破れていたのもこれのせいだった。

「仲直りしたいんだね」

「でも千夜も悪いのよ成長するようにって毎朝しつこく牛乳を押し付けてくるのよ!胸が無いからって」

「身長の心配だと思うよ」

「はっ!?」

その時シャロはシノンがいることに気がついた。いくら仲良くても女性が男性に胸の話をするのはあまりよくないことである。それに気がついた時にはすでに時遅し、咄嗟にシノンの方を向くとシノンは明後日の方向を向いていた。

「シノンどうしたの?」

「…………………………なんでもない」

「あ、あわわわ」

それから、シノンとシャロは気まずい雰囲気になってしまった。

 

 

 

「そういえば、あんなにしょぼんとした千夜ちゃん初めて見たよ。シャロちゃんの事が凄く心配だったんだね」

「そんなに?」

「幼馴染みっていいなぁ~」

「………………………」コクッコクッ

「一緒に会えば恥ずかしくないよ?」

「おっお店に入りにくいのはそういう理由じゃなくて……」

3人で甘兎庵を見るとあんこがいつものところに座っていた。その姿はまさしく不動の如く。

「あいつが怖いの!?私の顔を見るなり噛み付くから!」

「それなら任せて私が守るよ!」

「………………?」

少し準備して。

カラカラ~

入ってきたのは拳銃を持ったココアと紙袋に眼のところに穴が空いており手を引かれているシャロ。そして、シノンは後ろから着いてきた。(特に変装はしていない。)

「いらしゃいま…キャー!ご、強盗!?」

「私だよ私」

慌てて千夜の方へと駆け寄るココア。

聞きながらもふらふらな千夜。

「ココアちゃんどうしたの?あうっ」

「ふらふらしてるよ!?お昼も食べてなかったし」

「食欲がないの……」

「もうオーダーストップしてる時間よねキッチン借りるわよ」バリッ

勢いよく紙袋を破くシャロその瞬間獲物を見つけたようにシャロへと飛び掛かるあんこ。玄関へと逃げようとする。シノンはあんこが飛び付こうとした間に入りあんこをキャッチする。

「のぉー!!」

「…………………………ん」

「シ、シノン。あ、ありがとう」

「…………………………うん」なでなで

(さっき気まずくなったのにそれでも助けてくれる。やっぱり優しいなぁ)

人知れずシノンにときめくシャロだった。

 

 

 

 

シャロとシノンは千夜のために夕飯を作っていた。

シャロは味噌汁をシノンは食材を切っていた。出汁を入れ具材に火を通して味噌を溶かしあとは、味見をしてワカメを入れたら完成である。

「……こんなもんね」

「お味噌汁作ってシャロちゃんって意外と様になってるねー。地元のお母さんが恋しくなっちゃった」

「やっやめてよ」

褒めてる?のかわからない言葉に照れるシャロ

ココアの、持っているワカメが増えていた。

「ところでお母さん さっきからわかめの増殖が止まらないの」

「入れすぎ!?」

「玉ねぎで涙が止まらないよ」

「娘なら邪魔しないでよ!」

「「うわぁーーん!」」

「…………………………ん」

泣きながら玉ねぎを切る2人。そんな2人にシノンは手を差し出してきた。まるで包丁を貸してくれと言わんばかりに

「シ、シノン?」

「…………………………うん」

シノンは玉ねぎをまな板に置くと素早く切っていく。

「さすがシノン!速いね!」

「…………………………鼻」

「鼻?」

「えっとね〝玉ねぎは眼より鼻の粘膜が刺激されるから涙が出るんだよ。だから少し素早く切れば案外いけるよ?〟だって」

「シノンだから出来る荒業な気がするんだけど」

「………………?」

 

 

 

 

そんな風に料理をしていると千夜が申し訳なさそうにキッチンに入ってきた。

「3人とも私のために夕食作ってくれてるの?」

「しょ、食欲がないっていうから食べやすくて体にいい物を」

「シャロちゃんのお味噌汁凄く美味しいよ」

「…………………………」コクッコクッ

味見をした2人が自信満々に言う。ココアに関してはまるで自分のことのようだ。

「でも、シャロちゃんにはお母さんというより生活に困っていても愛があれば大丈夫な新妻役でお願いするわ」

「ちゃっかり会話聞いてんじゃないわよ」

「………………でも…………シャロなら…………良い…………奥さんに…………なれそう」

「え!?」

「あら~」

「わ、私とシ……が」

ここからはシャロの妄想である。

「………………ただいま」

「おかえりなさいあなた。ご飯も出来てるしお風呂も湧いてるし、それに…………私も空いてるよ?」

シノンはシャロの頬から手を入れ髪を撫でながら一言。

「…………………………うん………………シャロから貰おうかな」

ここから現実である。

「キャー!!そ、そんな大胆な」

「シャロちゃん~戻ってきて~」

「あらら何を考えてたのかしらね」

「…………………………?」

顔を真っ赤にしながらもじもじしてるシャロになんとも言えない顔をする2人となんのことかわからないシノンだった。

 

 

 

何とか現実に戻ってきたシャロは朝逃げたことを千夜に謝りだした。

「そ、それよりも、その…朝は逃げでごめんなさい」

「シャロちゃん。」

「ね!千夜ちゃんも元気だして

「ごめんなさい、そのね、チノちゃんのお父さんが作った栗きんとんが私の作った和菓子より美味しかったなんて、恥ずかしくて言えなくて」

「そうだったんだ~」

「…………………………ん」

「そういえば今朝渡したかったものだけど」

「えっ牛乳じゃなかったの?」

千夜はポッケから白い布を取り出した。

「シャロちゃんの下着がうちの木に引っかかってたの。風で飛ばされたのね」

「なッ!?」

「追いかけても逃げるように学校行っちゃうんだもん」

「それ振り回して走ってたんじゃないでしょうね。この和菓子バカー!!」

「白かー」

「はっ!?」

シャロはそこでシノンがいることに気がつく。シノンの方を向くとそっぽを向いていた。

「み、見た?」

「…………………………ご、ごめん」

「な、な、な、」かぁ~

「あらあら」

「千夜ー!!」

「あららごめんなさい~」

「………………ごめん…………忘れるように…………するから」

今日はシノンに恥ずかしいところを見せていると思ったシャロだった。

その後落ち着いてから4人で仲良く栗きんとんを研究しました。

「ちょっと甘すぎ?」

「…………………………美味しいよ」

「今度おじさんに作り方聞いてみるよー」

 

 

 

次の日のチノ達の学校で

「チノちゃんの今日のデザートは牛乳寒天?」

「父にリクエストしたんです。毎日食べればデザート感覚で、カルシウムがとれて背も伸びるかもしれません。……あわよくば胸も大きく」

「合理的!」

「効果があるのかなぁ」

そんな会話している時千夜はまた憂鬱になりそうになっていた。

「はっ!これ……うちの寒天デザートより美味しい」

「!?」

「…………………………ん」

千夜も和菓子に関しては上手なのにな~と思うシノンだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これが無口な少年と千夜の憂鬱な日の出来事だった。

 




読んでいただきありがとうございます!
言い訳ですが仕事が忙しくなってきてしまい遅くなりました。
次回も仕事の合間を見ながら書いていくので気長にお待ちください。


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20羽 無口な少年とチラシと秘密

前回からまた遅くなりすみません。
今回も文章力は皆無です。それでも皆様の、日常の一時の癒しになればと思っております。
いつもより少し長めですご了承ください。
今回も暖かい眼でご覧ください。


ある朝の事いつも通り?兎から逃げるシャロ

「うひゃあー!!」

とうとう追い込まれるシャロ

「こないでえー!これ以上来たらした噛むから」

「まて」

「………………そこまで」

「あ!」

そこに現れたのはリゼとシノンだった。

シノンがそっと手を出すと兎はテクテクと近づいてきてそのまま抱っこされた。

(リゼ先輩とシノンはうさぎ恐怖症の私をよく助けてくれる先輩は私にとって憧れの存在です。そして、シノンはごにょもにょな存在」

「こいつよくみると可愛いな」

「………………」コクッコクッ

(もし私が先輩の性格だったら貧乏でも学校で堂々としていられたのかな)

妄想↓

「特売だ!道を空けろ」

「はっ!?」

「キャッ」

拳銃を手にして牽制するシャロその圧に圧倒した客はサイドに寄る。その様子はモーセのようだった。

「ごめんなさいごめんなさい私ったらいけない想像を」

「いけない想像!?」

「…………………………?」

 

 

「フルール・ドラパンです。ハーブのお店でーすありがとうございます!」

ある公園でシャロはチラシを配っていた。服装はフルールの制服で丁度、持っていた分を配り終わり残りを、取りに行こうとしていた。

「チラシの残りは……キャー!!」

しかし、そこには不良野良うさぎがチラシの上に座っていた。シャロは退くように言うがもちろん聞く耳は持たない。

「そそそそことこなさいよ!ど…どい……っ」

「ん?」

「………………シャロ?」

リゼとシノンが公園に着くとシャロがうさぎに土下座していた。2人とも苦笑いしか出来なかった。

「どいてくださいお願いします!お願いします!」

「うさぎに向かって土下座してる」

「…………………」苦笑い

「ほら」ひょい

「リ、リゼ先輩!?それにシノンまで!!」

「………………大丈夫?」

シャロに手を差し伸べるシノン。

「あ、ありがとう。その服で外にいるなんて珍しいですね」

「ココアが企画した。夏のパン祭りのチラシ担当に私達が任命されたんだ。」

「………………」コクッ

「メロンパン」

キラキラとした眼でチラシを見る。しかし、すぐにそれが終わりだんだん暗くなる。

「でも、土日はバイトが」

「そっか残念だな」

「こうやって配れば受け取ってくれるのか?フルール・ド・ラパンをお願いしまーす」

「無意識にウチの宣伝になってます!」

 

 

「シノンは大丈夫?」

「そういえば……」

((無口だけどチラシ配り大丈夫なのだろうか))

心配になりシノンの方を向く2人そこには……

「…………………………お願いします」ニコッ

「は、はい!!」

「…………………………どうぞ」ニコッ

「あ、ありがとうございます!!」

「………………良かったら…………お越しください」ニコッ

「尊死」バタッ

シノンにチラシを渡された女性はあるものは物凄く良い笑顔になり。あるものは何回も首が千切れるんではないのかという勢いでお礼を言い。あるものは謎の言葉を言って倒れるというカオスな状況が出来ていた。

「シノンはテロなのか」

「テロですね」

「…………………………?」

 

その頃ラビットハウスの2人は

「ココアさん……ラビットハウスのスペルが間違ってます。ハウスじゃなくてホース。馬です。」

「やっちゃった!?か、看板にも馬つけたら解決…」

「しませんよ。それにうぇるかむかもーんってどうしてかっこつけて変な英語を使おうとするんですか」

「わしの似顔絵が気持ち悪い」

「チラシを回収しないと!私のうっかりが知れ渡る!!」

「確認しなかった私がバカでした。」

ココアのミスで慌ていていた。

 

チラシを配ってるとリゼ達と同じ学校の人達が話しかけてきた。

「あら桐間さんと天々座先輩だわ」

「面白い格好をなさっているわ」

「桐間さんも今度開くお茶会ご一緒しない?お菓子を持ち寄るの」

「ま またいつか……」

「先輩もよろしかったら」

「それならクレープやケーキのレーションを持っていこうサバゲーやりながら食べるときっと楽しいな」

「お嬢様ばかりの中先輩のそういう所すごく安心します。」

「あら、そちらの殿方は?」

「……………………?」ニコッ

「「ん゛」」

少し離れた所で配ってるとお嬢様達がシノンに注目し始めた。

シノンはお嬢様達に首を傾げながら少し微笑む。

「あ、あのよろしければ私達の学校に見学にいらっしゃいませんか!?」

「ぜひに!!」

「…………?………………うん……その時は…………お願いします」ニコッ

「「あ゛ぁぁ~」」

謎の言葉を発しながらその場に座り込んでしまう2人

「いつの間にかシノンが私達の学校に来る流れになってるな」

「あれよあれよですね」

 

 

引き続きチラシを配るシャロ、そんなチラシを薄い金髪の女性が受け取った。

「お願いします~」

「あの……このお店はいかがわしいお店なのでしょうか?」

「普通の健全な喫茶店です!」

「なるほど……耳をつけた少女達を拝みながらお茶をする…こういう趣向もあるんですね」

「近日伺いますので何卒良しなに」

「ちょっ太ももに話さないでください」

「目を合わせて話せないせいで誤解されてしまった」

「是非来てくださいー」

「これは、ラビットハウスのチラシ」

(マスター……喫茶店を盛り上げようと頑張ってるんですね久しぶりにお会いしたい)

「………………最近…………見かけるなぁ」

どことなく不思議な感じがするなぁと思うシノンだった。

 

 

チラシを配ってると慌てた様子でココアとチノが走ってきた。

「リゼちゃん、シノン~チラシ配りストップー!」

「あ、シャロさん」

「2人とも~どうしたんだ?」

「………………?」

「スペル間違えちゃった」

「え!?………………どこだ?」

「…………………………?」

「「え?」」

2人が持っていたチラシを確認するとそこには普通の兎とコーヒーのイラストが書かれており。パン祭りの日時や詳細、そして、一番上には〝RabbitHouse〟と筆記体で書いてあり立派なチラシになっていた。

「えー!?私が作ったチラシでなくなってる!?」

「いったい?なんで?」

「そういえば机に置いてあったチラシをとろうとしたらシノンに止められたな」

「「「「!!!」」」」

4人が一斉にシノンをみる

「………………………………?…………直したよ?」

まるでやって当たり前のような顔で言うシノンに言葉を失う4人。そうココアが作ったシノンがチラシ配りする前に造り直しておいたのだ。シノンに抱きつくココア。

「シノン~ありがとう!!」

「ありがとうございます。シノンさん」

「……………………ん」なでなで

近くに来たチノの頭を撫でながら抱きついてるココアの頭をポンポンするシノン。その姿は手の掛かる妹達を慰める兄のようだった。

「うんうん、んまぁ何事もなくて良かったな」

ヒュ~

リゼが安堵していた時。急に突風が吹いた。

その風でリゼが持っていたチラシが空を舞った

「「「え~!?」」」

「……………………あちゃ~」

 

リゼ以外の3人は驚きシノンは少し困った顔になった。

そのあとみんなで散らばったチラシの回収を始めるのであった。

木の上にあるチラシを取るためにココアが椅子になりチノがその上に登って手を伸ばす。枝に触れたその時大きい虫が落ちた。その虫が2匹リゼの頭へ到着した。

「動かないでください。」

「本当に馬になるなんて」

「あ!おっきい虫が落ちました」

「キャー!!何てことを」

「意外な一面ですね」

「……………………ん」

リゼの頭に着いた虫をシノンとシャロが払いのける。

「おおっお前も意外とたくましいな。そして、シノンはありがとうな」

「家の隙間からよく入ってくるんで慣……んでもないです」

「…………………………うん」

シャロに2羽の兎が足を舐めていた。

「あ、うさぎが足をペロペロしてます。」

「ぴゃー!!」

「でもうさぎはだめなんだな」

「…………………………おいで」

一羽をリゼが抱き上げて、シノンが少し手を差し出して一声かけると自ら寄ってきた。シャロが安堵しているとココアが小兎を連れてきた。

 

「このちっちゃい子なら大丈夫でしょ」

「か 噛まないなら」

目の前にいる小兎に対してどうしたらいいのかわからないシャロは少し困っていた。

(どっどうしたら……)

「き……きゅう~」

「え!?うさぎって鳴くの!?」

「そんなはっきりとは鳴かないと……」

「…………………………兎」

「えっとね〝兎は、声を使ってのコミュニケーションはしないよ。そのため、発しようと思って出た音ではなく、漏れてしまった、という感じだよ。

音の大きさも耳を塞ぎたくなるようなものではなく、全く「声」を出さない子もいるそうだよ〟だって」

「む、昔千夜が言ってたから」

少し恥ずかしそうに言うシャロ。シノンは兎の頭を少し撫でながら言う。

「…………………………仲良く…………なれるよ」

「ほ、ほんと?」

「…………………………」コクッ

「とりあえず、千夜はあとで問い詰める!」

「……………………ほどほどにね」

少し怒った顔で言うシャロを抑制するシノンだった。

 

 

翌日、ココア達の3人は甘兎庵に来ていた。シノンは片付けがあり来れなかったのだ

「千夜ちゃん今日はパン祭り来てくれてありがとうね」

「無事に成功してよかったわね」

「千夜ちゃんあまりいれなかったからお裾分け」

「ところでシャロの家知らないか」

「バイトで来れなかったからお裾分けしたくって」

「えっ~と」

「きっと赤い屋根の大きなお家に住んでいると思うんだー」

千夜が困り顔でどうしょうかと考えていると

「………………まって!」

「シノン!?」

シノンが息を切らせながら走ってきたのだ

「ど、どうしたんだ?」

「…………いや…………その」

(もしかして、シャロちゃんの秘密を心配して)

その通りである3人を見送ったあと嫌な予感がして

甘兎庵に行く→シャロの家を聞く→まずい

という予想が出来たシノンは、急いできたのだ。しかし、そんな努力はすぐに水の泡となる。

隣の家のドアが開く。

ガチャ

「夕飯買い忘れちゃった」

そこからシャロが出てきた。その姿はTシャツにズボンという簡素な姿でお嬢様とはかけ離れていた。眼と眼が合うその瞬間バレだと気がついた。

「…………………………ッ!?」

シノンは咄嗟にシャロの手を引き自分の胸へと抱き締めた。まるで、宝物を必死に守ろうとするようだった。

 

!!!??

 

「シ、シノン!?」

「…………み…………見ちゃっ……駄目」

 

「シノンは知ってたのか!?」

「この前シャロちゃんの財布を届けてくれたときにね」

「もしかして、その時に?」

「えぇ、シノン君が秘密にしてくれるって」

「それで、あの行動か」

「羨ましいです。」

「「「わかる!!」」」

そんな、様子を見て羨ましくなる4人だった。

~落ち着いてから

 

 

「ごめんな、私達大きな勘違いをしていたよ」

「い 今まで勝手に妄想の押し付けをしてしまいすみません。でも、お嬢様とか関係なく私の憧れなのでっ 」

「気を遣わせちゃってごめんね」

「ところでシャロちゃん家はどこなの?」

「この物置よ!?」

「さっきのやり取りもあったのに気づいてなかったのな」

「…………………………ココア姉」

最後まで気づかなかったココアに呆れる一同だった。

 

「それにしてもうちの学校に特待生がいるのは知ってたけどシャロだったんだな」

「何だか言いにくくて……」

「よし、フェアになるよう私の秘密も教えよう」

「いっいいんですか!?」

「あのな、うさぎのぬいぐるみに銃のミニチュアを背負わすのにハマってるんだこんな趣味おかしいかな」

「わかります!私も人形の近くに小物の食器とか置くの好きです」

「同じベクトルなのかしら?」

「…………………………俺も」

「シノン?」

「〝自分のせいで秘密がバレちゃったから俺も話すかな〟」

「そんないいのよ、シノンのせいじゃないわ」

「………………」コイコイ

「いや、だからね」

「………………」コイコイ

「わかったわよ」

シャロに向かって何回も手でおいでおいでをするシノン

観念して近くに来たシャロの手を引き皆から離れる。

「……………………いくよ?」

「え?」

そっと耳元に手と口を近づけ話し始める。

「………………その…………今だに……お母さんのことを…………たまに…………ママって…………呼んじゃうんだ」

「・・・きゅ~」

「!?」

シノンはお母さんの愛情がなかった。保登家に拾われ、初めてもらう母の愛情。最初からお母さんと呼んでいたシノンは小さい頃の反動なのか極稀にママと呼んでしまうのだ。

年頃の男の子にとってはかなり恥ずかしいことでココアにも黙っていたことである。

そんな秘密を聞いたシャロは不思議な事を発しながら倒れてしまった。咄嗟に受け止めたシノンはいったい何が起きたのかわからずただオロオロするしか出来なかった。

「いったい何を話したんだ?」

「わかりませんが、とりあえずシャロさんは危険な状態かと」

「そうね~」

「む~気になる~」

「!?…………!?!」

「あうあう」かぁ~

4人がそれぞれの気持ちで見ていて相も変わらずオロオロしているシノン。そして、眼を回して倒れているシャロ。

なんともカオスな状況が出来ていた事は言うまでもないだろう。

 

~その日の夜

「あぁもう恥ずかしい……こんな家見られて」

「でも……わかったでしよ?お嬢様じゃなくてもみんな幻滅したりしないわ。シャロちゃんはシャロちゃんよ」

「千夜~」

「けど3人だけの秘密がバレちゃってちょっと残念」

「なんでよ」

「さぁ頂いたパン食べましょ」

「私のティーカップコレクション勝手に使うなぁ!……あっ!メロンパンいっぱい入ってる」

「ふふっ、よかったわね」

2人でお茶会をしようとした時ふっと千夜がシャロに聞く。

「そういえば、シノン君の秘密って何だったの?」

「え?そ、それはその、い、言えない!これだけは言えない!」

「そうね、この話はここで終わりにしましょ」

「え、あぁそうねうんそうしましょ!ほら、パン食べましょ」

「えぇ、そうね」

頬を真っ赤にしながら言うシャロ。

これ以上詮索するのはよくないと思いここで止まることにした千夜だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これが無口な少年と秘密の話だった。




読んで頂きありがとうございます。
アンケート・感想もお待ちしております。
次回も気長にお待ちください。
リクエスト募集も始めたので気軽にコメントしてくだされば幸いです。
やり方が合ってるかわかりませんが活動報告の所に作ったのでそこからお願いいたします。


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21羽 無口な少年とプール前編

水着回!!と思ったらいつの間にか少しシリアスになっていました。てことでシリアスがあります。申し訳ありませんがご了承ください。
今回も暖かい眼でご覧ください。


ラビットハウスではお客様が一時の休憩を済ませてお会計をしてお店を出ようとしていた。

リゼがお会計をして、ココアがテーブルの上を片付ける。

「600円になります。1000円お預かりしたので400円のお返しです。」

「「ありがとうございました」」

お客様がドアの近くに来た時ドアが勢いよく開かれる。

そこには千夜に支えられて元気よく挨拶をするシャロがいた。

「イェーイたのもー!!」

「テンションが高い!?」

「……………………?」

何事かと奥からシノンが様子を見に来る。それを見たリゼとシノンは少し苦い顔をする。前回のことを思い出したからだ。

「お、おいシャロのこの感じ」

「貧乏がバレて恥ずかしさに耐えられないって言うからヤケコーヒー巡りを勧めたの」

「もっと違うものを勧めろ!」

「ここで3件目、でも見てあの晴れやかな笑顔」

「カフェインで可笑しくなってる顔だな」

「シャロさん……コーヒー好きになってくれて嬉しいです。」

「ちょっと違うと想う」

「……………………ん」なでなで

呆れてる2人を前にココアとアルプス一万尺をする。シャロがその様子を見て笑っているがコーヒーで可笑しくなっていることには変わらなかった。シノンは近くにいたチノの頭を撫でている。喜び方を間違えてるチノが愛らしいのだ。

 

 

「酔いつぶれるほど悩んでたんだな」

「みんな気にしないってシャロちゃん自身わかってるんだけどね」

「…………でも…………本人は…………そこまで…………悩んだね」

「あぁ、私なんかシャロのお嬢様らしさを見習いたいぐらいだ。その方があの学校では周りと馴染みそうだし……」

以下リゼの妄想である

「ご覧になってましてお父様、射撃は淑女の嗜みです。」

「お疲れ様です。お嬢様ご休憩に珈琲をどうぞ」

「えぇ、ありがとう」

メイドから貰った珈琲を飲んでシャロみたいに顔を赤くする妄想内のリゼ。

「わぁい!当たった当たったー!全弾ぶち抜いてやったよーハハハ!」

「はっ!戦場の悪魔が誕生した」

「そのフレーズ素敵ね~」

「……………………なぜに…………そうなるの?」

 

 

 

「ん~?」

「……………………」

ココアと遊んでいたシャロがふっとこちらを見始めた。

シノンは言葉こそ発しなかったがその顔は少し引きつっていた。前回お泊まりの日酔っ払ったシャロがシノンに抱きつきそのまま頬にキスをしたのだ。

仲の良い女の子に抱きつかれキスをされれば誰だって困惑するだろう。次もその機会に近いことが起きれば身構えるのも当たり前なのである。

「シノンー!!」

案の定というか予測通りというかシャロはシノンに向かって飛び込んできた。

「……!?」

シノンのもしかしてがやっぱりになった。しかし時既に遅し、シャロに抱きつかれたシノンはこの前と同等に後ろに倒れる。

「シノン~」

「………………ん!?」

シノンの胸に頭を擦り付けてから、少し顔を上げてロックオン。目線の先は頬でなく唇……シャロがゆっくりと顔を近づける…………そして

「………………ん」

「え?」

シノンはシャロの頭の後ろに手を持っていきそっと抱き締めたのだ。そしてそのまま頭を撫で始める。

「………大丈夫……………ずっと………一緒…………だから」なでなで

「ん」

その言葉本心であった。例え貧乏でも秘密がバレてもこれからも一緒にいる。だから安心してほしい、大丈夫だよとそんな気持ちで抱き締め頭を撫でていた。

「……」

「…………」

「…………」

「…………シャロ?」

「すぅ~すぅ~」

返事がなくそっと、横を見ると寝息を立てているシャロがいた。とりあえず一難去ったことに安堵するシノンしかし……

「………………ふぅ」

「いいなぁ~シャロちゃん」

「羨ましいです。」

「お、お前達なんてことしてる!?」

「あらあら~ふふっ♪」

一難去ってまた一難だと思うシノンだった。

 

 

 

次の日~

 

シノン達は日頃の疲れを癒すためにプールに来ていた。

そのプールの外見は洋風でお城のようだった。

「うわぁ~お城みたいだねー」

「古い建物を改造した名残だな」

「私水着で温泉って初めて」

「泳ぐのと温泉が一緒に出来て一石二鳥ね」

「あ、浮き輪持ってくれば良かったです。」

「これなら持って来たんだけど」

「足ヒレ!?」

「…………………………あるよ」

「え?」

シノンはバックから浮き輪を取り出す。

「さすがは、シノンだな準備が良い」

「…………………………んっ」ブイッ

手でVサインをするシノン。心なしかその顔はどや顔のようだった。

 

 

 

皆が着替えてる間シノンはティッピーと一緒に待っていた。

ティッピーを抱え壁に寄りかかる。

「……………」

「………………」

「……………………」

(き、気まずい!しゃ、喋れないがこの無言の空気は気まずいのぉ)

「…………喋って…………もいいよ?」

「ぬっ!?」

ティッピーが1匹で気まずくなっているとシノンが話しかける。それは、ティッピーにとっては衝撃の発言だった。

「お、お主いつから?」

「…………?……最初……から?」

「な、なんじゃっと!?」

「……………………チノちゃん…………腹話術…………無理が…………ある」

「そ、それだけじゃ……」

ティッピーがそれだけで判断されたと思い言おうとするがその前にシノンが言う。

「…………………………ティッピーから…………人の……気配も……するから」

「何でお主は気配なんてわかるんじゃ!?」

「……………………勘?」

「わしは、勘で見抜かれたのか……」

シノンのすごい?勘により見抜かれたことに脱帽するティッピー

「これは、皆には……」

「…………ん…………言わない……でも……チノちゃん…………とタカヒロさん……には」

「2人にはわしから言っておこう。…………わしの秘密を知っていたと言うのは少し卑怯じゃかの?」

「…………………………?」

「お主の過去をわし達は知っているんじゃよ」

「‥…なんで?」

いつもの声より一段と低い声になったシノンに内心恐怖を覚えるティッピー。しかし、これは遅かれ早かれ言わなければならないことだった。正確にはタカヒロが言わなければならないことなのである。下宿する人の過去や詳細を知ることは基本的にないだろう。その人のプロフィールは書類で貰うだろう。しかし、シノンは無口である。それだけならタカヒロも過去を聞こうとは思わない。それだけならば………シノンは無口であり保登家の養子……そして、元親父

 

 

 

これは、シノンとココアが下宿してからしばらくたった日のことである。

タカヒロの元に一本の電話が来たのである。

「もしもし?」

「もしもし、タカヒロさんでしょうか?」

電話の相手は女性の様だった。その声は女性の少し高いが落ち着いた感じの声だった。どことなくココアの声に似ている気がした。

「そうですか?失礼ですか貴方は?」

「あら!失礼しました。私ココアの母です。」

「!!こちらこそご挨拶が遅れました。チノの父のタカヒロです。」

「いつも娘と息子がお世話になっています。」

「いえいえ、こちらもあの2人のお掛けで娘が明るくなりましたよ」

「あら、そうなんですか?」

「えぇ」

1通りの挨拶を済ませるとココアのお母さんが話題を出す。

「実はシノンのことで今回電話したんです。」

「シノン君のこと?」

「えぇ、というよりその元お父さんについてと言うべきでしょうか」

「元…お父さんですか」

「えぇ、ちなみにシノンから昔の話は?」

「いえ、一切聞いておりませんね」

「そうですか…………あの子が言ってないのに私から言うのは卑怯かもしれませんが緊急事態なので説明してよろしいですか?」

「えぇ、大丈夫ですよ」

声は普通だ。しかし、内心不安でいっぱいだった。自分の娘があんなに懐いていて本人も凄く良い子なのにその彼の過去、話し方からしてただ事ではないと察したタカヒロは自然と身構えた。

 

 

「シノンは、虐待を受けていたんです」

「!?」

「警察と本人の話だと元お父さんが酷い人で暴力は日常茶飯事だったそうです。喋るな!という罵倒と暴力の日々によりシノンは喋る事をやめてしまったそうです。母親はシノンを捨て家出、そして、さらにエスカレートする暴力にシノンは必死に逃げ出した。そこで私達に拾われたんです」

「……ッ!!」

タカヒロは右手で受話器を持ち空いてるその左手はギュッと力強く握りしめられていた。それは、真っ赤になるまでにもっと力を入れればきっと爪が食い込んで血が流れるだろう。

「そして、元お父さんは警察に捕まりました」

「して、今回の電話の件にどう繋がるんですか?」

タカヒロは必死に冷静になろうと頭を回転させ言葉を発した。

「その元お父さんが脱獄したんです」

「!!!?」

 

 

ココアのお母さんから発されたのは衝撃の言葉だった。

シノンを虐待して言葉を無くさせた本人が脱獄。それだけで危険度は限りなく高いだろう。

「そ、そんな」

「私達もさっき、警察から電話があって……警察も捜索はしているそうです」

「そうですか」

「それで警察が言うには目的はシノンではないだろうかって」

「なっ!?」

考えてみれば当たり前のことである。自分が刑務所に入った原因を辿ればシノンなのだ。実際は自業自得だが、恐らくやつはシノンのせいだと思っているだろう。

「目的は復讐ですか」

「恐らく、私達もむやみに外出、出来なくて」

「わかりました。私も気にかけることにしましょう。それと知り合いに頼んで彼の護衛とこの街に彼がいるかどうかと詳細も調べましょう」

「そこまで!すみませんがお願いいたします。」

「いえ、私にとっても彼は息子も同然です。」

「!そう言ってくださると預けた身として嬉しいです。」

「その元親の詳細を教えて貰っても?」

「えぇ、FAXで警察から貰った詳細書を送りますね」

「よろしくお願いいたします。」

「では、これからも娘と息子をよろしくお願いいたします。」

「えぇ、こちらこそこれからもよろしくお願いいたします。」ガチャ

電話を切って一息つく。

「ふぅ、まさかシノンにそんな、過去があったなんて……これからは、私が……いや私達が彼等を守っていかなければ」

 

 

 

そして、この話はタカヒロからティッピーとリゼのお父さんへと伝わった。

「ってことらしいのじゃ」

「………………そっか」

声の低さは変わらないがどこか悲しく切ない声だった。

「タカヒロ曰くこれからも普段と変わらず外出はしてもいいらしい、街の警備をしているらしいからのぉ」

「……………………ん」

「お主はこらからどうするんじゃ?親のこととか」

「……………………何もしない」

「何も?」

「………………来るなら阻むし……来ないなら何もしない」

「シンプルじゃのぉ……」

「……イズ……ベスト」

「すまんのぉ、こんな時にこんな話をして」

「…………ん…………大丈夫…………話してくれて…………ありがとう」なでなで

「よ、よせ!わしは撫でられる年ではないぞ!」

 

 

「…………………………」

ティッピーに言った言葉。もし、自分だけに来るなら阻むことはしないかもしれないシノンはそう思っている。しかし、もし自分以外の、大切な家族を友人を大事な人を傷つけるならその時は………………一切容赦はしない

「!?」ゾクッ

ティッピーは毛が逆立つ気がした。人間で言う鳥肌に近かった。殺気……それを出しているのは紛れもなく今自分を抱っこしているシノンだった。もちろん自分に向けてではない。しかし、その殺気に恐怖を覚えないものはいないだろう。

 

 

「…………あ、……ごめん」

「い、いや」

「………………さっきの…………話…………頭に…………入れておくね」

「う、うむ」

「………………今日は…………プールを楽しもう」

「そうじゃな」

一言謝ったシノンから殺気が消える。いつもの優しいシノンはどこに?シノンの新たな一面に驚愕しながら安堵するティッピーだった。

今後あの親と会うのかわからない。しかし、それまでは今まで通りの日常を楽しむことにしたシノンだった。

そんな、2人の話をしている間更衣室では

 

 

 

ココアの水着はピンクのビキニチノちゃんは青いワンピースを着ていて千夜は緑のビキニを着ていた。そして、リゼは紫色のビキニを着ていた。

「ココアちゃん良く似合ってるわ」

「ありがと~実はビキニ初挑戦なんだぁ~」

「チノちゃんの水着も可愛いわね」

「でしょう!!」

「どうしてココアちゃんが自慢げなの?」

「千夜さんはいつもとイメージが違って素敵です。」

「普段なら落ち着いた色を選ぶんだけど若い人達と遊ぶんだから冒険しないとね。」

「千夜さんは何歳なんですか?」

「あれ?リゼちゃんは?」

「ん?」

「素材を活かした味付けって感じ」

「はぁ!?」

千夜の天然発言にココアのまるで料理の感想の様な発言に困るリゼとチノだった。

シャロは黄色いビキニを着ていた。

(千夜からの水着のお下がり少し緩いけど紐をキツく締めれば…行ける!)ギュッ

「シャロちゃん?紐が食い込んでるよー?」

「察してよ!」

ココアの天然発言にいつも通りツッコミをいれるシャロだった。

 

「シャロちゃんその水着とってもよく似合ってるわ」

「うんすごく似合ってるよ!」

「でも……その紐が」

「あのリゼさん良かったら私の髪を結んでくれませんか」

「あぁいいよ」

チノのお願いに快く引き受けたリゼはチノの髪を整え始める。

「こんな感じでどうかな」

「素敵です。ありがとうございます」

出来たのは両端にお団子で余った髪を三つ編みにしてその髪をお団子に巻いたなんとも可愛い髪型が完成した。

「チノちゃん可愛い!」

「先輩すごいです。」

「リゼちゃんは本当に器用ね」

「じ、自分の髪が長いから髪を結ぶ機会が多いだけで」

「ねぇ、私の髪も結ってくれない?」

「い、いいけど」

今度は千夜のお願いで髪を梳かし始める。

(私も髪が長ければ自然な流れで先輩に髪を結んでもらったのに)

「お~手慣れた手さばき」

「華麗です。」

「普通だ!」

「こんな上手な人見たことないよ」

「本当に普通だって私なんて」

出来たのは凄いタワーで出来た色んな花で飾られた髪型だった。一言で凄いいや、すんごっい!

「わぁー!これはすごすぎるよ!」

「あれ?満足してる?」

でもその完成も喜んでいる千夜だった。

ふっと気になったリゼが皆に問う。ちなみに千夜の髪型はリゼが直しました。 

「そういえばシノンはどんな水着を着るんだ?」

「う~ん赤かなぁ」

「私は白だと思います。」

「私は、紫だと思うぞ?」

「私は緑だと嬉しいわね♪お揃いが出来るわね」

「わ、私は黒だと思うわ、一番シノンに合ってる気がする」

 

皆がシノンの水着の色を予想する。ちなみに上からココア、チノ、リゼ、千夜、シャロである。

「そうだ!じゃあ、さっきの予想が当たった人がシノンのなでなでしてもらうってのはどう?」

唐突にココアがそんな提案をしだした。そして、皆の眼の色が変わった

「シノンさんの、なでなで」

「あ、あの噂の!?」

「それは、負けられないわね~」

「わ、私もしてほしい」

「よーし!じゃ、すぐに準備して行こう!」

「「「「おー!!」」」」

その5人の後ろはやる気で業火となっていた。それほど気合いが入っていたのだ。ただ自分達が予想した事が当たってるか確認するだけなのだが

 

 

 

「遅いのぉ」

「………………女の子は………準備に………時間…………かかるよ」

「お主は理解があるのぉ」

ティッピーをなでなでしながら、ゆったりと待つシノンだった。このあと少し大変な事になるとも知らずに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これが無口な少年とプールに入る前での出来事だった。

 

 

 

 




読んで頂きありがとうございました。
前回のアンケートでたくさんのご回答ありがとうございました!
また、アンケートをします。内容は関羽で誰の話を書くかです。全員書こうとは思ったのですが皆さんが読みたいキャラ達から行こうかなと思いまして。ご協力よろしくお願いいたします。


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22羽 無口な少年とプール中編

脱字・誤字報告並びに感想・アンケートの等本当にありがとうございます。皆様からの上記が来ると、とても嬉しく感じております。
今回も文章力は皆無なので暖かい眼でご覧ください。
また、後編で一纏めにしょうかと思ったのですが長くなりそうなので区切りました。後編は近々投稿予定です。


前回までのあらすじ~

 

「ん~シノンー!」

「………大丈夫……………ずっと………一緒…………だから」なでなで

「お主の過去を知っとる」

「………………」殺気

「シノンの水着を予想して当たった人がなでなでしてもらえる!」

「シノンさんの、なでなで」

「あ、あの噂の!?」

「それは、負けられないわね~」

「わ、私もしてほしい」

「よーし!じゃ、すぐに準備して行こう!」

「「「「おー!!」」」」

 

 

あらすじ終了~

 

 

シノンとティッピーは更衣室から少し離れた所の壁に寄りかかって皆を待っていた。

「遅いのぉ~」

「………………女の子は………準備に………時間…………かかるよ」

「お主は理解があるのぉ」

ティッピーをなでなでしながら待ってると更衣室から5人が出てきた。

「お待たせ~」

「…………………………ん」じっ

出てきた5人を見てシノンは少し微笑みながら言う

「…………皆……似合ってるね」にこっ

「「「「ん゛っ」」」」

「わ~ありがとう!シノン!」

「もう、ご褒美関係ないんではないのか」

「私、 満足です。」

「私も」

「同じく」

「そうだ!シノンの水着は………どんな………の?」

「………………ん?」

シノンに誉められて喜んでいる5人が一斉に見る。

シノンの水着は黒ベースに赤のラインが入ったズボン、外側が緑色ベースに内側が白模様のパーカーそして、紫色のビーサンだった。

「ちょ、ちょっと待ってて!」

ココアはそう言うと5人はシノンから少し離れてヒソヒソ話をし始める。

「こ、これは誰が当たりだ?」

「水着だから、ズボンが正解よ」

「うんうん!シャロちゃんの言う通りだよ!」

「でも、パーカーも水着の一部じゃないかしら?」

「同感です。」

「ビーサンだって水着コーデーの大切な部分だぞ」

 

「そうだ!全員ご褒美を貰えばいいんだよ!」

「な、何を言ってる!?」

ココアが唐突に言い出した。

「皆の予想が入ってるから皆が当たりということで皆でなでなでして貰おう!」

「ココアちゃん!ナイスアイディア!」

「なのか!?」

「とりあえずシノン君にお願いしてみよう!」

「おー!!」

「「「え~」」」

話が終わり最初にココアがシノンに話しかける。

何を話していたのかわからないシノンの頭には?マークが付いてる。

「えっとねシノン?」

「………………ん?」

「かくかくしかじかなでなでなの!」

「それで伝わるのか?」

「………………なるほど」

「伝わった!?」

「ご、ごめんねシノン、迷惑ならいいからね」

シャロが申し訳そうに言うがシノンはそれを手で制した。そして…………微笑みながら手を出すシノン。

「……このくらいなら…………いいよ?」

「「えー!!?」」

リゼとシャロが驚きココアと千夜は喜び、チノは少し慌ててる。

「…………おいで?」

「わーい!一番乗りー!」

「あ、私も私も」

まず最初に名乗り出たのがココアと千夜だった。

「…………うん…………よしよし」なでなで

「えへへ~ありがとうシノン」

「あ~病み付きになりそう~」

ココアは顔が蕩けていて、千夜は頬を赤らめながら笑ってる。次に出てきたのはリゼとシャロだった。

「つ、次は私達だな」

「よ、よろしく」

「………………ん」なでなで

「お、おぉこれは、なんとも心地いいなぁ」

「あれ?なんか懐かしい感じが……?」

リゼは恥ずかしいが嬉しいそうにしており、シャロは何故か懐かしく感じたのかを不思議そうにしていた。

「最後は私ですね」

ティッピーを抱えながら言うチノ、その様子は恥ずかしそうだった

「………………ん…………おいで?」なでなで

「あ、ありがとうございます。」かぁ~

「…………ティッピー……も」なでなで

「何故じゃ!?」

顔を赤くしながら喜ぶチノに自分まで撫でられるとは思ってなかったティッピーは驚いていた。

5人はとても満足しました(まーる)

 

 

そんなこともありながら……6人と1匹は温泉プールにに移動した。シャロ・ココア・シノンは温泉プールに入ってた。ココアのやらかしにため息混じりに言うシノンにお風呂のことで落ち込むシャロだった。

 

「ふわぁ~気持ちいい。」

「…………ん」

「小さい頃銭湯で泳いで怒られたことを思い出すなぁ~ね?シノン?」

「………あの時………止めた……のに」

「ここは、銭湯じゃないけどシノンも苦労してるのね。そういえばシノンって見た目よりもガッチリしてるのね」

そうシノンの体は意外としっかりしているのだ。マッチョとか腹筋が割れているではないが程よく筋肉は付いている。平均男性と同じぐらいだか気持ち筋肉が付いてるかなという具合である。

シノンの元親父は切るという行為を余りしなかった。

元親父は学校に行かせなかったそこからバレる危険があるからだ。そして、もし、近所に怪しまれても病気だからと言えば済む話だ。しかし、傷があっては不味い。故に残りやすい切り傷をしなかったのだ。

不幸中の幸いとも言うべきかシノンの体は過去の事があれど人に見られても問題はないのだ。

「……………………運動…………してるから」

「そっか……」

「そういえばシャロちゃんは今でも良く銭湯に行くの?」

「たまにね、たまに。こんな大きな所じゃないけど」

シャロが人知れずシノンの体に見惚れているとココアが話しかけてきた。その内容によりシャロは少し落ち込むのである。

「うちのお風呂借りてる話しでもしてるのかしら?ぬるいわこんなのお風呂じゃない!」

「千夜さんは、江戸っ子ですね」

温泉に手を付けて言う千夜。そのあと3人は温泉に入る。リゼと千夜がチノの頭にいるティッピーに話しかけるが高さ的に2人の胸の膨らみがチノの顔付近となる。

「ふぅ~おい毛玉このくらいの温度ならお前も入れるんじゃないのか?」

「あっちにティッピーにぴったりのサイズの桶があったわよ」

「あ 嫌がるなよ温泉嫌いなのか?」

「濡れたら普通の兎になるの?」

「ここのお湯は高血圧や関節痛に効果があるらしいよ」

「成長促進に効果がありますか?」

いつの間にか来たチノはひどく落ち込んでいた。

「………………ふぅ~」

その時だったシノンが濡れた髪に両手でかきあげたのだ。

俗に言うオールバックである。シノンは普段は髪で顔を少し隠しているためわかりづらいがカッコいいのだ。

それこそ、顔を出しながら歩けばナンパは必須であろう。そんなシノンが濡れた髪をオールバックにしたのだ。顔は見えるしなにより濡れた髪がさらに引き立てている。つまりヤバイのだ!!

「「「「「………………」」」」」ぽ~

(シノンのオールバック姿やっぱりカッコいいよ~)

(いつもと違いますがカッコいいです。)

(いつもと雰囲気が違う。でもいいなぁ)

(カッコいいよ~シノン)

(この前ココアちゃんを守って水を被った時も見たけどやっぱりいいわね~)

「………………どうしたの?」

「「「「「な、なんでもないよ」」」」」

5人揃ってそっぽを向く、しかしその顔は真っ赤だったのは言うまでもない。

 

場所は変わりチノは温泉の端にある台にチェス版を置いてティッピーと対峙していた。

シノン以外には1人で2役やっているように見えていた。

「今日はあまり人がいませんね」

「この温泉の強者共とあいまみえることを楽しみにしていたんじゃがのぉ」

「では、私とさしますか」

「勝負じゃチノ!」

「1人二役やってる」

「レベル高いな」

(本当は2人2役なんだけどな……)

 

 

そして、他の皆は少し深いプールで泳ごうとしていた。

「こっちはこっちで泳ぎましょうか」

「あ 私、泳ぐのはちょっと」

「私 深いプールで泳いだことないんだけど」

「「意外!」」

「じゃ、私が教えてあげるよ!見てみて!これがクロールだよー」

「泳ぎ方を覚え直した方がいいわね」

「…………ココア姉…………それは…………背泳ぎだよ」

リゼの意外な出来ないことに見本を見せようとするココアがクロールと言いながら背泳ぎしていた。それに呆れるシノンとシャロだった。

練習の合図をだすココアにシャロが待ったをかける。

「じゃ、これからリゼちゃんが泳げるように特訓を始めます。」

「あ 待って。泳ぐならストレッチした方がいいと思うの」

「…………筋肉……解して…………怪我……防止」

「うん、準備運動は大切だよな」

そう言いながらストレッチを始めるシノンとリゼ。

リゼは開脚して胸を地面に付ける。シノンは両足を付けて自分の方に寄せて膝を地面に付けて体を下げる。股関節の柔軟である。

「柔らか!?」

「シャロちゃん!」

「へ?」

「肉体美の表現なら負けてれないね」

「え……何してる」

ココアがシャロを呼び、シャロの足を膝に付けてピンと伸ばす俗に言う組体操のサボテンである。

「…………もう……危ないよ」

そう言いながらシノンはそっとシャロの脇から抱き抱える。

「ひゃぁ!?」

「…………大丈夫?」

「・・・降ろして!降ろして」

「………………ん」

急に空へと空間へと動いた恐怖から咄嗟にシノンの頭を抱き締める。しかしそれもほんの少しの間の出来事である。シャロは顔を真っ赤にしながら降ろしてと懇願する。シノンはそれを受けてゆっくりと降ろす。

「う~」

「…………?」

「これって私が原因か?」

「わたしのせいかな?」

顔を真っ赤にしながら俯くシャロになんで?という顔のシノンに原因が自分にあるんじゃないのかと思う2人だった。

 

 

チノはティッピーとの対戦が終わって一息ついていた。

そこに千夜がやってきた。

チェスに興味を持った千夜はシノンと対戦することになった。そして、いつの間にか賭け事の対象となったココアはビックリしていた。

そんな、ココアとリゼとシャロは引き続き泳ぎの練習をしていた。

シノンは喉が乾いたため飲み物を買いに行っていた。

 

「いい勝負じゃった」

「はい」

「チノちゃん~私とお手合わせしましょう

チェスってやったことないんだけど将棋とよく似てるんでしょ?」

「いいですよ勝負です」

「せっかくだから何かかけてみない?」

「私が勝ったらティッピーがびしょ濡れになったらどうなるのか見せて貰うのはどう?」

「わかりました。私が勝ったらココアさんにお姉ちゃんと呼んでもらう事にしましょう」

「なんで巻き込まれてるの!?」

「では…………」

こうしてチノと千夜のチェス勝負が始まった。

こっちで勝負が起きている間別の勝負が始まろうとしていた。

ココアが急に言い出す。

 

「まずは息止め勝負」

((なんでそうなるんだろう))

こうして3人による息止め勝負が開始する。一斉に潜り始める。シャロは、目をギュット瞑り必死に息を止める。リゼがふっとココアの方を見るとまるで死んでいるかのように浮いていた。

(そろそろ苦しい)

(ココアは?)

「ごフッ!?」(死っ‥‥‥!?)

「ゲホッゲホッ」

「私の勝ちだね」

「紛らわしい潜りかたをするな!」

「じゃあ!2回戦!」

「まだやるの!?」

2回戦目の息止め勝負は一味違った。ココアが2人に対してジェスチャーしていたのだ。最初は頭に手を付けて兎の様子を表していた。次に手を人差し指と親指を立てて他の指は曲げて打つ構えをうる。最後にキメ顔をした。それを見て考える2人

(ん?兎のジェスチャー?)

(右?)

(いや、銃か)

(全然わからない)

(ナルシストか?)

「なんだぁー?」

ココアの問いに2人が少し考えていると早めに答えが出る…………しかしその答えは不服だろう。

「正解はリゼちゃんでしたー」

「私はそんなんじゃない!」

 

 

一方飲み物を買いに行ったシノンでは…………ナンパされていた。

大学生ぐらいの金髪の長髪と短髪の女性が2人、茶髪の短髪女性が1人。腕や首にアクセサリーがついていて、見た目からしてギャルだった。

「あら~お兄さんカッコいいわね」

「ねぇ、お兄さん?私達と遊ばない?」

「あっちで私達といいことしましょ?」

「…………………………」

三者三葉で聞いてくるギャル達、それに対してシノンはいつもと変わらない顔で黙っていた。

「ねぇ~無視しないでよ~?」

「………………?」

「も~ちょっとお兄さん?」

「…………………………?」

そう言いながらシノンの腕をとる金髪の女性

シノン自身は何やっているんだろう?と不思議そうに女性を見ていた。

呆気にとられていると女性はシノンの腕を自分の肩にまわした。周りから見ればシノンが女性を誑かせているように見えるだろう。

「おいお~い?俺の女になにしてんだ~?」

そこに男性が3人やってきた。

金髪、茶髪、赤髪の短髪の男達は女性達と同じく大学生ぐらいだろうか。ネックレスや指輪、ピアスなど至るところにつけており一目でヤンキーか、もしくは遊び人であることかわかった。

「人の女に手を出すとはいい度胸だなあんちゃん」

「たっく~んこの人が私達をナンパしてきたのよ~?」

「あ゛ぁ?おい覚悟は出来てんだろうなぁ!?」

茶髪の女性が赤髪の男に抱きつく。それを合図にシノンにくっついていた女性ともう1人の女性が男達に抱きつく。

そして、男達は眼をギラつかせながら近づいてくる。1人は睨みながら、1人は拳をコキッコキと鳴らしながら、赤髪の男が茶髪の女性の肩を抱きながらふんぞり反っている。その態度からリーダーはそいつなんだろう。

そうシノンがされているのは、一種のカツアゲである。

 

女性がナンパをしそれに足を止めさせる。手を掴まさせたり、近くにいて少ししてから男性が来る。直ちに女性が男に寄りナンパされたと言う。その人の性格によるが

ほとんどの人は口がごもるだろう。

その隙に男達が責めて金を取るという作戦である。

 

「まぁ?俺達は優しいからなこれを出すなら許してやるか」

そう言いながら赤髪の男が親指と人差し指をくっつけてお金のマークをつくる。そして手首を上下に揺らして挑発してくる。

周りの男達と女達はにやにやしながらシノンを見ている。金が入る、狙いどおり等という悪い顔である。

それまで、なんの行動もせず黙っていたシノン。赤髪の男の問いに対してシノンは………………

「…………………………」

 

 

 

 

 

 

 

変わらずに無反応だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これが無口な少年とプール内での出来事だった。

 

 

 




ここまで読んで頂きありがとうございます。
梅雨が空けて急に暑くなり、コロナも感染者が増えてきているので、皆様も体調のほど気を付けてこの小説が一時の癒しになりますように
次回も気長にお待ちください。


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23羽 無口な少年とプール後編

感想・アンケートのほどありがとうございます。
プール編最後です。書きたいことを書いてたらいつの間にか「あれ~?」ってのが出来てました。
ということで今回も文章力は皆無です。
暖かい眼でご覧ください。


「……………………」

シノンは無反応だった。まるでつまらない映画を見るようにそこら辺にいるアリを見るようにそこに喜怒哀楽どころか感情の欠片もないだろう

「おいてめぇ!無視してんじゃねぇぞ!?」

シノンが無口と知らない以前に無視されている結果に金髪の男が怒鳴る。しかし、それでも反応はない。

「まぁ、いいじゃねえか」

赤髪の男がそう言うと金髪の男が不思議そうに見る。

「こいつをぶん殴って有り金、全部もらってそのあと…………こいつと来ていた女共を貰うか!」

にやけながら、笑いながら言う赤髪の男。その視線は遠くで遊んでいるココア達へと向けられた。

その眼は酷く濁っており、冗談の域を越えていた。

「さぁ~てと、どいつから……!?」

「……………………」

 

次の瞬間6人全員が寒気を……いや恐怖を感じた!

その原因は探すよりも速くわかった。

何故なら目の前にいる少年が出しているのだから、体温が一気に下がる感覚がした。

さっきまで無反応だった、こちらにまるで興味はなかったはず。

 

良い獲物のことを鴨と例えることがある。

。そして、その鴨がさらに良い獲物を持っていたら、もしくは鴨を獲ることによりさらに得ることを鴨が葱を背負ってくると例える。シノンは男達にとってまさにそれだった。シノンから金を取り、同時にその連れであるココア達を我が物とする。一石二鳥でありまさしく都合の良い鴨だった。

 

しかし、違った。ある言葉を切っ掛けに立場は変わってしまったのだ。

もし、シノンを鴨と例えていたのであればカツアゲしようとしていた男達と女達は、さしずめハイエナと言ったところだろうか。

鴨を狙ったハイエナが6匹。さぁ、襲おうという所でハイエナの1匹が鴨の奥にいる大事な物を狙おうとした。その瞬間鴨でなくなった。

そこにいるなは鴨ではなく鷲だった。

鷲は鷲でも日本で一番大きな鷲ともいわれている。雄は全長88cmもある。その鋭い爪と嘴は獲物を食らいつくすだろう。そんな空の王者・大鷲である。

そう捕食者だった、食べる側だった。だか、今の現状は補食対象、エサ、食べられる側になっていた。

シノンが少し通路を歩きこちらを見る。

まるで獲物を見てゆっくりと歩む獣のように、獲物の上で旋回する大鷲のように歩いた。

 

「こ、このやろう!?」

痺れを切らしたのか金髪の男が殴りかかる。

それを紙一重で躱して、その手首を左手で掴む。

そして一言

「なっ!?」

「………………失せろ」

「ッ!?この!?」

シノンの忠告、それでも男は殴りかかった。

しかし、その拳は届かなかった。拳が届くよりも速く投げたからだ。

グッと掴んでいた腕を自分の方に引き、それと同時に右手を相手の腕へとそして体を回して腰を下げて相手を担ぐ。これを同時に速く行うそして、相手を腰の上に担ぎ上げればあとは、テコの要領で一回転!見事な一本背負いである。

「…………ハァ!」

「グハッ!?」バシャ!!

プールの地面は基本的に固い。それは、周知の事実である。そこに大学生ぐらいの男性が一本背負いされれば軽傷ではすまないだろう。だからシノンは狙ったのだ。近くにあったプールに、わざと移動して投げたときに水の中へと投げれるように、しかし水とはいえ衝撃はある。

水の入った桶を思いっきり振り相手に水をかければ、まるで鞭で打たれたような痛みが現れる。

普通に入ればなんてことない。しかし、高い位置から飛び込めば、衝撃の痛みが現れる。

水とは時に柔らかくなり時に固くなる。そんな水に勢い良く投げられば地面ほどではないがかなりの痛みある。

「ゴホッ!!」

水の中に入った男は衝撃により肺の中の空気が外に出る。しかし、ここは水の中、口から水が入り息が出来なくなる。背中の痛みを我慢してプールサイドに上がる。

口から水を吐き出して体に空気を入れて落ち着かせる。

視界がぐらつく中、顔を上げるとこちらを鋭い眼光で睨むシノンがいた。

「ハァ……ハァ…………!!」

「………もう一度言う…………失せろ……そしてあいつらに手を出すな」

「あっ…………なっ」

男の恐怖は最大だった。そして、その恐怖は伝染した。

他の男と女性も恐怖を感じていた。目の前にいる少年に

「……………3回目は…………無い」

「い、行くぞ!!」

赤髪の男が叫び、他の奴らも続いて逃げていく。プールに投げられた男も遅れて逃げる。

幸い周りに人はいなく大事にならなかったが男達には1つのトラウマになったのは言うまでもない。

「………………はぁ」

シノンはため息を1つ、そして水を買って自分の大事な人達の所へとココア達の所へと歩み始めるのだった。

 

 

チノの千夜チェス勝負は終盤にさしかかっていた。

「追い詰めました」

「まだまだよ」

千夜が負ければ自分の沽券にかかわると思ったココアはすぐに2人への元へと

置いてけぼりにされたシャロとリゼは練習を開始する。

「千夜ちゃんが負けたら私のお姉ちゃんとしての威厳がぁぁ」

(はっ!2人きり……)

「えっと、とっとりあえずビート板を使って練習しましょう」

「あ ビート板じゃなくて、手を引っ張るやつあれがやりたい」

「リゼ先輩意外と子供だ……」

こうして手を引っ張りながらの泳ぎ練習が開始された。

 

千夜とチノの勝負を見ているココアとティッピーが騒いでいた。

「千夜ちゃんそこでチェストだよ!」

「チェクメイトって言いたいの?」

「ここで負けたらわしがあわれもない姿に」

「ティッピーうるさいです。」

「一兵卒が女王に逆らおうなど貴族に生まれ変わってからにしろ!」

「ココアちゃん……駒になりきるのやめてもらえる。」

「チノ、今じゃそこだ、!」

「千夜ちゃん上後ろ」

(しゅ……集中出来ない)

「………………駄目」

「あ、いたっ」

そこに水の入ったペットボトル片手に来たシノンがペシとココアの頭に軽くチョップする。

「あ、シノンおかえり~」

「………………ん」

「う~でもこれで千夜ちゃんが負けたら姉の威厳が……」

「…………勝負の……邪魔………………めっ!」

「う~、は~い」

「……………………」チラッ

(うっ、今シノンから〝ティッピーもね〟と言われた気が)

チラッと見たシノンの意図を汲み取ったティッピーと注意されたココアはこのあと静かに観戦をした。

 

それと同じぐらいの時シャロとリゼは引き続き泳ぎの練習をしていた。手を引っ張りながらの

「先輩ってスポーツ万能かと思ってました」

「泳ぐ機会なかったからなー授業もなかったし、年下に教わるってなんだか、、恥ずかしいなぁ」

(手を引っ張られてるこの状況は恥ずかしくないんだ)「シャロが溺れても助けられるくらい上手くなってやるぞー」

「そ、そんな迷惑かけませんよ……!?うわっー!?」

「もう想定訓練か!?」

(緊張して足がつった)

シノンはチノ達を観戦しながらもシャロ達の方も気にかけていた。その理由は先程の出来事である。またあいつらが来ないという保証が無いため念のため、注意深く周りと皆を見ているのだ。理由はどうあれ、しているのは完全に保護者役のお父さんである。

そんな、気にかけているシノンがシャロが溺れたことに気がつかないわけはない

「…シャロ!!」

勢い良く立ち上がりすぐさまシャロの元へと駆け出す。

バシャッ!

プールの中に飛び込みすぐに見つけ出してお姫様の要領で抱えて水面へと浮上する。

「プハッ!!」

「……ハァ!!」

シノンはすぐにプールサイドへと向かい。シャロを上げた。そして、自分も上がるとシャロの顔を覗いた。

その時水が眼に少し触れた。それを邪魔だと思ったシノンは髪をかきあげた。軽く頬を叩きながら名前を呼ぶシノン。

「……シャロ…………シャロ!?」ペシペシ

「……んぅ~」

幸い溺れてからそんなに時がたっていないこと、すぐにシノンが助けたこともあり、シャロはすぐさま目を覚ました。しかし、どちらかと言うとそのあとが大変だった。

目を覚ましたシャロの前にいるには顔を覗き込んでいるシノンがいた。顔が近いのだ、もう少し近づいたらキス出来るほどである。しかも濡れ髪にオールバック、そして、好意を寄せていて。いつもカッコいいと思っていて、さっきココアが組体操した時脇から抱えられて抱っこされたこともありシャロの恥ずかしさは最高潮である。

「ひゃあぁぁぁー!」

「…………………………?」

「あわあわあわあわ」

頬をペシペシしていた右手を止めてそのまま添えてじっと見つめる。顔を真っ赤にして口をパクパクしている。

そんな、シャロを不思議そうに見つめるシノン。とりあえず大丈夫そうで安心したが何故こんな風になっているのかはわからないようである。

「シノン、そのぐらいで勘弁してやってくれ」

「………………??」

「とりあえず大丈夫そうだしあとは私がやっておくから……冷たい、そう冷たい飲み物を買ってきてくれ。」

「………………わかった」

そう言われて再び飲み物を買いに行く。その間にシャロの介護をするリゼ。まぁ、溺れたことに対してではなくてシノンからの辱しめへの介護である。

ちなみにこのあとスポーツドリンクを買ってきたシノンの顔を見て、また顔を真っ赤にするシャロだった。

 

 

シャロが落ち着いてから、シノンと共にリゼの泳ぎを見ていた。

シャロの指導の元リゼの泳ぎは驚くほど上達していた。

「リゼ先輩流石です。」

「…………凄い」

「シャロの特訓のお陰だな」

「リゼ先輩は飲み込みが早いですから、私はほとんど何もしてないです。」

「泳ぐのがこんなに楽しいとは思わなかった。ありがとな シャロ」

「…………謙遜……大丈夫………………教え方…………上手」

「えっと、そのありがとう」

「じゃぁ次は…………」

そう言いながらシャロの手をとるリゼ。そしてあっちの方向を指差した。その方向にはココアが持ってきた足ヒレが

「これを使った深い所へ行こうな」

「それは、私でも無理です先輩~」

「………………プール…………そこまで…………深くない」

少し苦笑いするシノンだった。

 

 

 

一通り遊んで、気が付けばいい時間になっていた。

ココア達は皆で景色を見ていた。少し高いところから見る夜景はとても綺麗だった。

ちなみにシノンは先程のことを気にして皆には待っててもらって自分は飲み物を買いに行った。シノン、今日3回目の飲み物買いである。

 

「夜景が綺麗~」

「そうですね」

「夜風が心地いいわね」

「そうね、確かに気持ちいいわね」

「こうやって耳をすませばあの光一つ一つから町の営みが聞こえてきそう」

「素敵です」

「あのお家今夜は妹さん特製カレーだっていいなぉ~」

「あの家のご夫婦今夜は修羅場ね」

「台無しにするな!?」

リゼのツッコミが夜空に消えるタイミングでシノンがやってきた。その手にコーヒー牛乳の瓶を抱えながら

「……………………買ってきたよ」

「あ、おかえり~」

「でも良かったのか?1人で行かせてしまって」

「………………大丈夫………………皆で…………飲もう」

「「「「「それじゃ!コーヒー(フルーツ)牛乳で乾杯」」」」」

「…………乾杯」

「お姉ちゃん!コーヒー牛乳はこうやって飲むんだよ」

「チノが勝ったのか」

「ゴクゴクぷはー」

「…………ほら………………口元……汚れてる」

そう言いながらココアの口元を手の甲で拭いていく。

「シノンの場合賭け事以前に兄だな」

「同感です。」

「ねぇねぇ、シャロちゃんあのまま気絶してたらもしかして……」

「そ、それ以上言うなー!千夜のバカー!」

皆でわいわいしている様子を星を見上げシノンはこう思った。

(皆が何事もなく幸せでありますように)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ!

 

「クソーなんなんだよあいつ」

「いててて、まだ背中が痛いぜ」

「おいおい、大丈夫か?」

シノンにカツアゲしょうとした6人は帰り道でシノンのことを話していた。

「今度会ったら今度こそ痛い目見させてやる」

「出来んのかよ?俺は、無理だな」

「同感」

「なに、弱気になってんだよ!?おいお前らも手、貸せよ!」

そう言いながら赤髪の男は女性達へと顔を向ける。

その女性達はと言うと…………

「「「・・・」」」ぽ~~

頬を赤く染めながら上の空だった。

「お、おいどうした?」

「かっこよかった」ぽ~

「は?」

「頭から離れない」

「え?」

「はぁ、もう…………好き」

「おい!?」

「あ、ごめん……ちゅき」

「変わってねぇよ!?」

そう、女性達はシノンの魅力に心を射たれていたのだ。

さすがシノンである。

「なんか、やっぱすげーかなわねぇ気がしてきた。」

「それな」

「もう、今日のことは忘れようぜ」

「あぁ」

「だな」

現実逃避をする男達。そして、上の空の女性達が現実に戻ってくるのはまだしばらくのようだ

「「「ふわぁ~」」」ぽ~

「「「はぁ~」」」

恐らくシノンの魅力の威力はとどまることを知らないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これが無口な少年とこの日のプール最後の出来事である。

 

 

 

 

 




読んで頂きありがとうございます
如何だったでしょうか?良ければ感想のほどお願いします。
仕事の合間で書いていくので次がいつになるかわかりませんが気長にお待ち頂ければ幸いです。



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24羽 無口な少年と雨の日の映画

久しぶり投稿できましたが…………スランプなのか上手くかけなかった気がします。
いつも以上に暖かい眼でご覧ください。


黒い雨雲が空を覆っているある日

ココア達は今日の映画のことで話していた。

この前、チノの悩みに答えてくれた小説家の青山ブルーマウンテン、略して青ブルマがくれたもので、その次の日に皆が偶然バイトが休みということもあり映画に行く事になったのだ。

その映画の事で3人は盛り上がっていた。若干1名眠そうにしているが

 

「うさぎのマスターがCGかどうか確かめないとね」

「そうだね~」

「…………」コクッ

「あと、あのコーヒー豆のシーンあれを映画でどう表現するのか見物だわ」

「…………」コクッコクッ

「千夜ちゃん楽しそうだね」

「だって皆と映画だものチケットをくれたお客様に感謝しなきゃ」

「……………………」コクッ!!

「シノン君も嬉しそうね」

「シノン……本すきだから、楽しみなんだと思うよ~」

 

「それは、そうとココアちゃん眠そうね」

「昨夜、チノちゃんに私の修行の成果を見せようと思って、コーヒーの銘柄当てクイズしてたの」

「………………全部……ハズレてた」

「飲みすぎてあまり寝れなかったのね」

「一応シノンのおかげで少しは寝れたんだけどね」

「この後映画観に行くのに大丈夫?」

「コーヒー呑めば夜までもつと思う」

「え~!?」

「………………………逆効果」

昨日の夜シノンは、ココアを寝かせ付けて朝は、朝で眠そうにしているココアの準備を手助けしたり、まるでメイドのようなこうとをしていた。

そして、下校時雨が降り始めていた。

 

「やだ 急に雨が……映画今日じゃない方が良かったかしら」

「ううん せっかく皆揃ってバイト休みなんだから……えーい!!」

「…………ココア姉?」

「小雨の中走るのも気持ちいいよ」

「…………ココアちゃん」

「誰が映画館に一番乗りするかなぁ」

(…………嫌な予感がする。)

次の瞬間ココアが転びそうになった。近くまで走っていたシノンはそれを受け止める。

「キャ!?」

「…………走る…………危ない」

「あ、ありがとうシノン」

「2人とも大丈夫?ごめんなさい、楽しそうに走るから黙ってたけど私置き傘持ってるの。」

「用意周到だね!」

「でも1つしかないわ」

「………………ココア姉」

「うん!」

「・・・え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

映画館前には、チノ以外が集合していた。5人で話していると少し遠くからチノがやってきた。

 

 

「あっ、チノちゃん」

「お待たせしました」

「みんなびしょ濡れ」

「雨なんて予想外だったもの」

「でも目は覚めたかも」

「私は、それよりも3人の姿を見て目が覚めたがな」

「私も先輩と同じです。」

「私は、シノン君の行動で目が覚めたわ」

「なんの話です?」

「いや、実はな私とシャロが一番最初について次にシノン達だったんだが……1つの傘に3人が入っていたな」

「そんなに大きな傘だったんですか?」

「いえ、普通のよ」

「驚いたのは……シノンがココアをお姫様だっこしていたんだ。それで傘に入っていた。」

そう、シノンはココアをお姫様だっこしてそれで3人で相合傘をしていたのだ。ココアにとっては、良くされていることだし、子供の時から傘に入りきれないときはこれをしていたため2人に抵抗を執着心も無いのだ。

 

「そんなにおかしいかな?」

「………………?」

 

「「「「おかしい!(です!)」」」」

 

 

映画館に入りリゼがタオルを皆に差し出す。

体育で使わなかったやつである。

ココアがチノの髪を拭き

千夜がシャロの髪を拭き始める。

 

「頭拭いてあげるね」

「いいです私はあまり濡れなかったので」

「………………拭く」

「あ、シノン!ありがとう」

「チノは傘持ってたんだな」

「途中でティッピーが持ってきてくれました」

「器用だな!?」

「あ、私ポップコーン買ってくるね。」

「私もよく子供扱いされるんです」

「わかるわ」

「本当にクセ毛すごいのに」

「・・・」チラッ

シャロが売店をチラ見する。

「………………」

 

映画開始

 

ちなみに席順は下がシャロ、千夜、リゼ

上がシノン、ココア、チノである。

 

(開始五分で涙腺が……お姉ちゃんなのにチノちゃんの隣で泣いちゃ駄目!)

(泣いてるのココアさんにバレたくない。絶対からかわれる)

「ぐす……ぐす……」

(チノちゃん?そうだね感情に素直になるべきだよね」

そう思いながらチノにテイッシュを渡す。しかし大泣きしているのはチノではなくその頭の上にいるティッピーである。

(そういえばシノンは……?)

(シノンさんも泣くのでしょうか?)

シノンのことが気になり2人は隣のシノンを見る。そこには無表情のシノンが映画を見ていた。

(さ、さすがシノンさんクールです。)

(良かった!シノンも感動しているんだ)

シノンの感情がわかる日はまだ遠いチノだった。

 

 

(スクリーンって大きいな!うちのTVより大きいんじゃないかな)

(ふむふむ、メニュー名に使えそうね)

(うぅ~おっお腹静まれ……っうぅ~ケチらずに軽食買っておけば良かった)

「……………………」

(ん?)

シャロが視線の先に動くものがあり顔をあげると前の席のシノンが指でこちらに何かを伝えようとしていた。

(シノン?)

シャロが気づいたことに気づいたシノンは指を引っ込め次に何かを渡した。

 

(これは、ホットドッグ)

(…………)

「た、食べていいの?」小声

「………………」

シノンはなにも言わずサムズアップだけする。シャロはそれを申し訳なさそうに受け取り食べ始めた。

(ありがと、シノン)

(…………良かった)

 

 

上映後

 

 

「後半寝てたんですか!?すごく良かったのに皆さんと語り合えないじゃないですか」

「………………」コクッコクッ!

「でも小説は読んだから~」

(((あまり内容を覚えていない)))

リゼはスクリーンのことで、千夜は台詞で、そしてシャロはシノンのことで映画を良く見ていなかったのだ。

それは、ともかく皆の話は映画の内容へと移っていた。

 

 

「主人公のうさぎになっちゃったお爺ちゃんかっこよかったね」

「ライバルの甘味処のあ婆さんの情熱には心打たれたわ、くだらないことで争ってたけど」

「どこかで聞いた話ね」

「でもジャズやって喫茶店の経営難救ったバーデンダーの息子さんはもっとかっこよかったな」

「まるで父みたいでした」

「…………カッコ良かった!」

「ムキーッ!?」

「今日のティッピーは表情豊かだな」

「一番楽しんでたんじゃないか」

(………………嫉妬?)

 

「ちょっとトイレ行ってくる」

「待ってるね」

リゼがお手洗いに行ってるとチノが眠そうにしていた。

「リゼちゃんがもどってきたら……あ、チノちゃん眠いの?」

「あ、いえ平気です。」

「カモン!!」

「はい?」

「家までおんぶしてあげる」

しゃがんでいつでもおんぶできる状態にするココア。

「子供じゃないんですから」

「大丈夫!気にしないよ」

「私が気にします」

「え~」

「え~じゃなくてココアさんがおんぶしたいだけじゃないですか」

「やめといた方がいいわよでもココアちゃん眠いんじゃ」

「倒れたりしたら悲惨よ」

「………………おいで」

シノンがチノに手招きをする。

「え、あ、はい」

チノが近づくとシノンはチノをお姫様だっこをした。

「え、あの!?」

「………………俺なら……安心……じゃない?」

「は、はい……」

「うわーん!シノンにチノちゃんとられた!」

「よしよし~」

「た、ただいま……ってなんだこの状況は」

「説明しづらいです。」

「………………?」

本人が気づかない所でラブコメがされていたことは言うまでもあるまい。

 

 

「心がバリスタなら、例えうさぎだって珈琲を入れられるんだ」

「あ、それ昨日の映画の台詞だな」

「すぐに影響されるんですから」

 

「私も本格的にバリスタ目指してみようかな!それでリゼちゃんはバーデンダーかソムリエになるの!チノちゃんもバリスタやって、シノンはコックで大人になって。ここで4人で働けたら素敵だね」

「…………」パァ!

ココアの発言にあるかもしれない未来に嬉しくなるチノ。

「パン屋さんと弁護士はもういいのか」

「あっ最近小説家もいいなーって」

「……むぅ」

それもまた、ココアの発言でなくなってしまう。

その夜

「どうして怒ってるの」

「本気で目指したいならコーヒーの違いくらい当ててみせてください」

「えぇ~~シ、シノン助けて~」

「………………自業自得」

「そんなぁ~~」

「…………ずっとか」

「シノン?」

「…………なんでもない」

別にバリスタにならなくてもコックにならなくても皆ずっと一緒に笑いあっていたい。そう思うシノンだった

こうして、夜はまたふけていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これが、雨の日の映画での出来事であった。

 

 




読んで頂きありがとうございます。
スランプから抜け出せるように頑張っていきますので
どうぞよろしくお願いします。


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閑羽集
1閑羽 無口な少年がヤンキー?


平成最後の投稿です。
シノンがもしヤンキーぽくなったらという妄想で書きました。
でも、実際書くとただ言い方がちょっときつくなっただけになってしまいました。
今回も暖かい目でご覧ください。


 私ココア! この春から弟のシノンと高校に通うために一緒に木組みと石畳の街へとやってきたの! 

 

 私とシノンは香風さんという家に下宿させてもらってるんだ! 

 

 

 

 私の弟シノンは過去にいろいろあってちょっと口が悪いけど私の自慢の弟なの! 

 

 

 

「…………ココア姉……行くぞ」

 

「あ、うん! 今行くよシノン!」

 

 

 

 

 

 ~シノンとココア

 

 ココアとシノンは休みの日に二人で出掛けていた。

 

 

 

「いい天気だね~シノン♪」

 

「…………あぁ」

 

「このあとどこ行こうか」

 

「…………ココア姉の行きてぇとこにいけばいいだろ」

 

「ありがとう、シノン」

 

 

 

 自分の行きたい所を優先してくれるシノンに微笑むココア

 

 

 

「それでねチノちゃんが……きゃあ!」

 

「ココア姉!?」

 

 

 

 二人で歩いているとココアが転んだ

 

 

 

「……たくっ、相変わらず鈍くさいな」

 

「えへへ、ごめんね」

 

「……はぁ、ほら立てるか?」

 

「ありがとうシノン」

 

 シノンは少し屈み手を差し出した。

 

 近くの公園のベンチに移動しシノンはココアの膝を見る

 

 

 

「……ほら、手当てするから」

 

「うん!」

 

 そう言うとシノンはどこからともなく消毒液と絆創膏を取り出した。それらを使いココアの手当をし始める。

 

 

 

「や、優しくしてね? シノン」

 

「…………やだ」

 

「なんで!?」

 

「……速く手当てしねぇと傷口にばい菌が入るだろうが!」

 

 シノンはさっき水道で濡らしてきたハンカチでココアの膝を軽く拭いた。そのあと消毒液をティッシュで湿らせ膝に押し当てる。

 

 

 

「……ほら、少し染みるぞ」

 

「う、うん……う~痛い~」

 

「……我慢しろよ」

 

「痛いよ~シノン~」

 

「……あとちょいだから」

 

 シノンは手当する速さを少し早めた。

 

 

 

「……はい、終わり」

 

「ありがと! シノン!」

 

 にっこり微笑むココアにシノンは黙って頭を撫でた。

 

「…………」なでなで

 

「えへへ~」

 

 シノンは暫くしたあと撫でるのを止め、手を差し出す。

 

「……ほら、もう立てんだろ? ……さっさと行くぞ」

 

「うん!」

 

 

 

 二人は公園を出てまた街を歩き始める。そうすると、ココアがシノンに聞き始める。

 

「ねぇ? シノン」

 

「…………ん?」

 

「またこうやって遊びに行こうね!」

 

「…………はぁ」

 

「え?」

 

 シノンはため息を一つつくとココアの手をとり一言。

 

「……んなの当たり前だろ?」

 

「うん!」

 

 

 

 シノンの言葉にさっきまで少し暗くなっていたココアは一気に笑顔になる。

 

 そして、そのまま手を繋ぎながら歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 ~シノンとチノ

 

 

 

 今日のラビットハウスではココア、リゼは休みでシノンとチノしかいなかった。

 

 シノンはキッチン担当で忙しい時にたまに接客に入る。

 

 

 

「ふぅ」

 

 チノはテーブルを吹きながらシノンのことを考えていた。

 

(シノンさん…………少し恐い人ですが優しい人です)

 

 

 

「……チノ、皿洗い終わったぞ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「……そうだチノ、久々に俺が淹れるコーヒー飲んでくれよ」

 

「コーヒーですか?」

 

「……あぁ、チノにはまだ届かねぇが少しは上達したはずだぜ」

 

「いえ、私なんて」

 

「……なにいってんだ? チノの淹れるコーヒーは日本一だろ?」

 

「い、言い過ぎてすよ」

 

「そうか?」

 

 シノンの褒めに照れるチノ

 

 

 

 

 

 シノンはコーヒーを淹れ始める。豆を挽き、お湯を注いでいく。

 

 出来たコーヒーをカウンターに座るチノに出す。

 

 

 

「……できたぞ」

 

「いただきます」

 

 シノンが出したコーヒーを飲み始める。もちろんミルクと砂糖は入っている。

 

「うん、美味しいです。前より凄く上達してますね」

 

「……えへへ、だろ?」

 

「ココアさんもシノンさんみたいに勉強してくれればいいんですか」

 

「……ココアには少し難しいかもな」

 

「ですね」

 

 そのまま、二人で少し雑談し続けた。

 

 ~しばらくして

 

 シノンがチノの様子を見て違和感を感じた。

 

 

 

「……ん? なんかチノ疲れてんのか?」

 

「い、いえそんなことは……」

 

「……あほか、普通にわかるわ」

 

「わかりますか?」

 

「……たりめぇだ。なんかあったか?」

 

「最近疲れがとれなくて」

 

「……なるほどなぁ」

 

「でも、私の気のせいかもしれないですし」

 

「……はぁ」

 

「え?」

 

 シノンはため息を一つ、つくとチノの頭に手を置いて一言

 

「……チノが頑張ってんのは知ってるよ、そこも尊敬してるよ」

 

「……」

 

「……だけどな、もう少し頼ったって罰はあたんねぇよ」

 

「…………はい、ありがとうございます」

 

(やっぱりシノンさんは優しい人です)

 

 少し頬を染めながら小さな声で答えるチノ。

 

 そのあと、シノンはチノの仕事を軽くするため、沢山働きその日の夜はチノを速めに寝かせた。

 

 

 

 

 

 

 

 ~シノンとリゼ

 

 

 

 日曜日、シノンとリゼは服を見に来ていた。

 

 

 

「……珍しいな、リゼから誘ってくれるなんて」

 

「たまにはいいだろ」

 

「……なんか、あったのか?」

 

「べ、別にな、なにもないぞ!」

 

「……嘘だな」

 

「即答!?」

 

「…………」

 

 じっ~と見つめ続けるシノンに根負けして事情を話し始める。

 

 リゼは部活の助っ人で演劇をやっている。そして、次の役で男性役らしいしかし、演劇部の人達は難しいお願いをしてきたらしい。

 

 そのお願いは男性らしい服装だがリゼらしさも残してほしいという難しいやつだった。

 

 お金は部活が出すから休日買ってきてほしいということらしい。

 

 

 

「……なるほどな、なんとも難しいお願いだな」

 

「そうなんだよ」

 

「……それで、男の俺に意見を聞きたいということだな」

 

「そのとおりだ、お願いだ! 協力してくれ!」

 

「…………役に立つかはわからねぇがいいよ協力するよ」

 

「!! ありがとう!」

 

 

 

 そんなこんなで始まった服選び

 

 

 

「こんなのはどうだろうか?」

 

「…………う~ん男はあんま着ねぇな」

 

「じゃあこれは?」

 

「……リゼらしくねぇな」

 

「これは?」

 

「……悪くはねぇが微妙だな」

 

 

 

 軽く一時間選び続けるがなかなか良いのが見つからなかった。

 

 

 

「はぁ、なかなか見つからないな」

 

「……だな」

 

「……はぁ、もうなんでもいいかな」

 

 諦めかけてたリゼにシノンは肩に手をおいた

 

「……あほか、諦めるには、はぇよ」

 

「しかし……」

 

「…………確かにリゼは、何着ても似合うけど、より似合う服選ぶのが一番だろ」

 

「お、お前はまた……」

 

「……ん? 事実だろ?」

 

「天然攻撃はやめろ!」

 

「……?」

 

 なんのことかわからず首をかしげるシノン

 

 そのあと、お店で二手にわかれて選び始めた。

 

「……リゼこんなのはどうだ?」

 

 シノンが持ってきたのは紫色のジャケットに中のTシャッは縞模様で黒のジーパンを持ってきた。

 

「おぉなかなか良いんじゃないか」

 

「……試着してこいよ」

 

「あぁ」

 

 

 

 試着室に入るリゼ

 

 ~しばらくして着替え終わったリゼが試着室のカーテンを開ける

 

 

 

「ど、どうだ」

 

「……やっぱりな」

 

「に、似合ってないか?」

 

「……すげぇ似合ってるよ」

 

 少し微笑みながら答えるシノン。

 

「……」かぁ~

 

「……どうした?」

 

「これで、悪気がないからたちが悪いな」

 

「……?」

 

 

 

 ちょっと落ち着いたあと

 

「シ、シノンもなにか、着替えたらどうた!?」

 

「……俺はいいよ」

 

「そんなこと言わずにどれ、私が選んでやろう!」

 

 

 

 リゼが選んできた服は蒼のジーパンに黒のジャケット柄が入ったTシャッを持ってきた

 

 リゼに言われるまま試着室に入り着替えた。

 

「……どうだ?」

 

「……」

 

「……に、似合ってないか?」

 

 黙り続けるリゼに不安になっていくシノン

 

「か、かっこよすぎだ」ボソッ

 

「……え? なんて?」

 

「な、なんでもない!」

 

「それにしても、この格好はお揃いみたいだな」

 

「な!」

 

 リゼとシノンの格好は色は違えどほとんど一緒だった。

 

「わ、私なんかとお揃いしても嬉しくないだろ!」

 

「……はぁ」

 

 シノンはため息一つつくと、肩に手を置くと一言

 

「…………光栄に決まってんだろ」

 

「はぁ、かなわないなシノンには」

 

 

 

 シノンとリゼは最後に試着した服を購入して、お店を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これが無口…………若干無口なヤンキーと三人の少女の物語

 

 

 

 




読んで頂きありがとうございました!
次回はこのまま まだ出ていない二人と……を書こうと思います。
令和でもよろしくお願いします。


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2関羽 無口な少年がヤンキー?

投稿がかなり遅れてしまい申し訳ございません
今回もあたたかい眼でご覧ください。
お願いいたします。


俺の名前はシノン。

 

んまぁ、昔色々あって喋んのはそんなに得意じゃねぇ

 

そんな、俺は今………女の子と2人ベンチであ~んをしている。

 

 

 

俺は、いったいなにをやってるんだろう……

 

 

 

~シノンと千夜

 

 

 

「ごめんなさいね、付き合ってもらって」

 

「……………まぁ、気にすんなよ」

 

俺は、千夜に誘われて公園に来ていた。その理由は新作和菓子の試食を頼まれたからだ。俺は、甘いのを食べれるし、千夜は意見を聞けるからどちらにも得だから快くOKしだが、さすがに、かれこれ2時間……きついな

 

「……しかし、なんでこんなにあんだよ」

 

「そ、それはその…」

 

「……ん?…なんか言えない訳でもあんのかよ?」

 

「ひ、秘密で……」

 

(い、言えない!シノン君のこと想って作っていたら、いつの間にかこんなに沢山出来ていたことなんて!!)

 

「………ふ~ん、まぁなんでもいいけどよ。全部うまかったし」

 

「え?」

 

「………ん?」

 

「お、おいしかったの?」

 

「…………?なに不思議がってんのか知らねぇが千夜の作る和菓子は全部うめぇぞ?」

 

「あ、そうなのね」かぁ~

 

「……んで、次は?」

 

「あ、えっと次はね、このみたらし団子なの」

 

「…………了解」

 

シノンが団子を取ろうとしたら千夜がそれを阻止した。

 

「…………ん?」

 

「えっと、た、食べさせてあげる。」

 

顔を真っ赤にしながら言う千夜、手に持った団子を少し上に上げ手を添えながらまさしく、あ~んの形になっていた。

 

(……まぁいいか)

 

「…………ん」

 

シノンは特に考えもせず目を閉じ口を少し開けた。

 

「え!あ、そのえっと、あ、あ~ん」

 

「……あ~」

 

千夜は団子を口に持っていき食べさせる。

 

「……ん、やっぱうめぇな」ペロ

 

口の近くについたタレを舌で取り少し笑うシノン

 

「あ、お、お粗末様です」

 

「………ん?千夜のつくるもんがお粗末なわけねぇだろ?」

 

「いや、そのそういうわけでは……」かぁ~

 

「………でもまぁ、千夜の作る和菓子は全部旨いし、毎日でも食べてぇな」

 

「!!!」かぁー!!

 

「………ん?どうした?」

 

「な、なんでもないよ!」

 

(シノン君に他意はないはず!………でも嬉しい)

 

「……なんで真っ赤になってんだ?」

 

「シノン君のせいよー!」

 

「………解せん」

 

 

 

2人はしばらくのんびりしたあと帰りました。

 

帰り道でもシノンの天然攻撃にやられ、家についた頃にはぐったりしていた千夜だった。

 

 

 

~シノンとシャロ

 

 

 

「はぁ……今日特売なのに風邪引くなんて」

 

シャロはバイトの連勤と季節の変わり目などが重なったせいで風邪を引いて寝込んでいた。

 

「今日は皆、バイトだしおとなしく寝てようかな。」

 

そう言いながら布団に潜ろうとした瞬間

 

コンコン

 

「?はーい」

 

ドアがノックされ出ると……

 

「………よぉ」

 

そこには、一杯に物が入ったビニール袋を持っているシノンがいた。

 

「シ、シノン?」

 

「………とりあえず入るぜ」

 

「え、あ、どうぞ」

 

そのまま家の中に入るシノン。

 

 

 

「ど、どうしたの?」

 

「……なにってお見舞いに来たんだよ」

 

「……?」

 

「……シャロのことだから、特売行きたいけど風邪だし無理しても意味ないから寝てよう……でも特売には行きたい!と思ってんだと思ったから買ってきたんだよ」

 

「え!本当に」

 

シノンが買ってきたのは今日特売されてるものだった。

 

「あ、お金……!」

 

ベットに腰かけていた。シャロが立とうとした瞬間シノンがそれを止めた。

 

「……いいから寝てろ」

 

そう言いながら布団をかけて寝させるシノン

 

シノンはそのまま冷蔵庫にの所に行き食材を入れていく。

 

「ご、ごめん」

 

「……シャロは無理しすぎるんだよ、こういう時ぐらい頼っても罰はあたんねぇよ」

 

シャロの謝罪に振り向かずただ返事をする。

 

その言葉に少しはにかみながら答えるシャロ

 

「…………食欲はあんのかよ?」

 

「う、うん少しは」

 

「……今からお粥作るから待ってろよ」

 

「あ、ありがとう」

 

「…………あぁ」

 

それから、シャロはシノンの看病を受けた。

 

 

 

~しばらくして

 

 

 

「すぅ~すぅ~」Zzzz

 

「…………よく寝てんな」

 

シノンはシャロのベットに寄りかかり本を読んでいた。ふと見てみるとよく寝ているその姿におもわず微笑んでしまう。

 

「……そういえば熱は下がったのか?」

 

シノンはふと気になり熱を測ろうとする。しかし、測るには体温計を脇の下に入れなければならない。もちろん寝いてる女子にそんなことはできない、だからシノンはシャロのおでこに手を………………ではなくおでこを当てて熱を測り始めた。

 

「う~ん」

 

その時シャロが目を覚ました。

 

「…………」

 

「…………」

 

シノンは熱を測るためシャロのおでこに自分のおでこを当てて上半身をベットに少し乗り出していた。両手はシャロの顔の両側にあった。

 

シャロからすれば目の前にシノンがいて客観的に見るならば、シノンがシャロを押し倒しているようにも見える。

 

声にならない悲鳴をするシャロ

 

「ーー!!!!ーーッ!!!」

 

「…………ん?さっきまで熱下がってたのにまた急に上がった?」

 

「あんたのせいでしょうがー!!!」

 

「…………解せん」

 

 

 

相変わらずのシノンだった。

 

 

 

 

 

シノンとみんな

 

 

 

シノンは街の少し高いところから木組みの家と石畳の街を見ていた。

 

「………………」

 

シノンは少し目を瞑り昔を思い出す。

 

親に虐待を受けたこと、必死になって逃げ出したこと、そして、ココアの両親に拾われ助かったこと。この街に来れたことそして、かけがえのない人たちに出会えたこと一つ一つが自分の生きてきた道だと、今の自分に必要だったということ。

 

 

 

「あ、こんなとこにいたんだ!シノン!」

 

「もう探しましたよ。シノンさん」

 

「こんなとこにいたのかシノン。」

 

「シノン君ってばここで何してたの?」

 

「普通に景色見てただけでしょ、ね?シノン?」

 

 

 

 

 

「…………あぁ、今行く」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は、本当にいい人たちに出会えたな……………そう思うだろ?

 




読んでいただきありがとうございました。
今後もゆっくりと投稿していきますんで気長にお待ちください。


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3関羽 無口な少年とココアとのデート

ココアとシノンのデートを書いてみました。途中気持ちの描写がおかしい所があるとおもいますがご了承ください。
感想・アンケートそして、誤字修正本当にありがとうございます!
今回も文章はおかしい所があると想いますが暖かい眼でご覧ください。



これは、ココア達が木組みの家と石畳の街に越してきてからしばらくしたあとの話である。

「シノン~こっちこっち!」

「………………ん」

私、ココア!

今日は弟のシノンと街にお出掛けしに来たよ

でも、弟と言っても私達は血が繋がっていない。

ある日、私が11歳の時お母さんとお父さんが雨の中倒れているところを助けたらしいの。

第一印象は不安、絶望、恐怖……とにかく暗い顔をしていた。

黒髪で、その髪は目元を少し隠していて、不思議と嫌な感じはなかった。まるで助けを求めてるかのようなそんな悲しい雰囲気だった。

私は、始めてみる人に興味津々だった。

仲良くなりたい、一緒に遊びたい!沢山お喋りしたい等と思いながら話しかけた。

「あなたおなまえは?」

「…………」

でも、少年から返ってきたのは返事がないという虚無だった。

しかし、私は話し掛けるのをやめなかった。

「わ、わたしココア! きみは?」

「……………………」

されど返事はない。

「う、うぇ~ん!」

ついには、私は泣き出してしまった。

 

ココアは、昔本で読んだことがあった。心理学においてストロークという考えがあるらしい。ストロークとは、話しかける誉める触れる等と言った人から人への働きかけ全てを言う、ストロークは2つに分けられる。

プラスのストロークとマイナスのストロークだ。

プラスのストロークは誉める、笑い合う、撫でるなど相手が喜ぶことである。では、逆にマイナスのストロークは怒る、悪口、殴るなど相手の気分を悪くすること全てを言う。

 

そして、ストロークは心の栄養とも言う。

つまり、ストローク=食べ物や水なのだ。人は、これがないと生きては行けない。

そして、人はストロークを求めるものである。多くの人はプラスのストロークを求めるだろう。しかし、中にはマイナスのストロークを求める人もいる。食事に例えるとわかりやすいだろう。誰でも豪華な食事を望む、しかし、もし遭難したのであればどんなに不味くても食べたいものでもある。

 

故に人にとって孤独や無視されるのは一番辛いものなのかもしれない。例えマイナスであっても何もないよりマシなのである。

シノンに悪気は一切無い、ましてや傷つける気など皆無である。しかし最終的にはココアは無視されるという結果になってしまった。

 

 

泣き出してしまった私の前に現れたのはお母さんだった。私はすぐにお母さんに抱きついた。暖かくいい匂いがして安心できた。しかし、私が泣き止むことはなかった。お母さんに撫でてもらってると姉であるモカ姉が入ってきた。

私は、お姉ちゃんに抱きつく。お母さんも好きだけどお姉ちゃんも好きなのだ。お母さんに言われてお姉ちゃんは私を連れて自室へと向かう。

 

あのあと、落ち着いてから少年が家族になる両親から言われた。私は嬉しかった一番末っ子である私に弟が出来るから。年は同じでも誕生日は私の方が速い、これからお姉ちゃんになれる、憧れだったお姉ちゃんに!とても嬉しかった。

 

その日に家族会議が行われたの、内容は少年の名前を決めるためのもの。少年にも名前はあったでも捨てた。なぜなら本人曰く過去を思い出すかららしい

 

「どんな、名前がいいかしら」

「カッコいい名前がいいかな」

「え~可愛いほうがいいよ!」

「モカ、あの子は男の子よ?」

「ボーイ!?」

「そんなに驚かなくても」

「シノンなんてどうかしら?」

ふっとココアが言った。

「シノン?」

「えぇ、あの子の過去を想うとね、これからは静かにのんびりと幸せに、暮らしてほしい……そんな願いを込めてシノン。どうかしら?」

「うん、いいんじゃないか?」

「私もそれがいいと想う!」

「私もー!」

ココアのお母さんが決めた名前に兄妹と父は賛成した。

その日、保登 シノンという一人の家族が出来たのだ。

 

シノンが来た日にお母さんから喋れない事は説明されていたでも、その理由までは聞いていなかった。

その理由を聞いたのは私が14歳の中学二年生の時だった。涙が止まらなかった。気がつけばシノンをぎゅっと抱き締めていた。

 

「わ、私がお姉ちゃんになるから!シノンの家族になるから!ずっと一緒だから!!」

「……………ん」コクッ

シノンはそっと肩の服を掴む。その手は怯えながらも離れたくないという意思表示だった。

そこから、私達はもっと仲良くなった。

お姉ちゃんと呼んでほしかったけどシノンは中々呼んでくれなかった。

そして、私はある提案をした。

「私が高校に合格したら私のことお姉ちゃんて呼んで!!」

正直シノンと同じ高校に入るには少しギリギリだった。だから提案したのだ。苦手な文系を頑張って勉強して見事合格。そこからシノンは私の事をココア姉と言ってくれるようになってくれた。

 

そんなシノンと街に出掛けてしばらく歩いていた。

 

「ね!シノン次どこいく?」

「…………………………」

「う~んじゃあ、本屋でいい?」

「……………………」

「わーい!ありがとー!シノン♪」

「………………」

周りの人達(なんで会話が成立しているの!?)

他の人からしたら私がずっとシノンに一方的に話し掛けてるようにしか見えないかもしれない。でも私達の会話は成立している。ちなみに今の会話はこう

※(シノンが言ってる言葉でココア視点)

「ね!シノン次どこいく?」

(ココア姉の行きたい所でいいよ)

「う~んじゃあ、本屋でいい?」

(もちろん、いいよ)

「わーい!ありがとー!シノン♪」

(うん)

 

ココア、もしくは保登家の人達しか出来ない神業である。

このあと、2人は本屋をめぐり服を見て休憩にカフェに入った。シノンはバニラアイスとカフェオレ。ココアはスイーツパフェにオレンジジュースを注文した。

 

「ん~美味しい~♪」

「………………」コクッ

シノンはそっと少し立ち上がるとココアの口に手を近づけた。

「………………ん」

「ん?シノンどうしたの?」

「……………………」

「え!?」

「………………あむっ」パクっ

シノンはココアの口元にあったクリームを手で掬うとそのまま自分の口へと……そして食べた

「シ、シノン!そういうのはしちゃ駄目だよ!!」

「…………………………?」

「そ、それは、とにかく駄目なの!駄目なものは駄目なの!」

 

↑の会話はこうである。

 

「ん~美味しい~♪」

(うん、美味しい)コクッ

(ココア姉……ちょっと)

「ん?シノンどうしたの?」

「動かないで」

「え!?」

(あむっ)パクっ

「シ、シノン!そういうのはしちゃ駄目だよ!!」

(なんで?)

「そ、それは、とにかく駄目なの!駄目なものは駄目なの!」

 

シノン達はカフェのあとは公園に来ていた。2人はたくさんいるうさぎと戯れていた。

 

「わー!うさぎかいっぱい!」

「……………………」

「わかってるよ~」

「……………………」

「う~んもふもふ~♪」

「……………………ん」

「………………………………?」

「……………………」キョロキョロ

「…………………………はぁ」

~しばらくして

「あれ?シノン?もう~シノンったら自分が言ったくせに迷子になるなんて」

「シノン~どこ~」

「………………」ペシ

「いたっ!?あれ?シノン!?」

「……………………」

「え~シノンが迷子になったんだよ!?」

「……………………はぁ」

「シノン?」

ぎゅっ

シノンはココアの手を掴んだ。しかも俗に言う恋人繋ぎである。

「シノン!?!!?」

「……………………!」

「いや、それはそうかもしれないけど」

「……………………」

「う~心臓にわるいよ~」

 

↑の以下略

 

「わー!うさぎかいっぱい!」

(迷子にならないでよ?)

「わかってるよ~」

(本当かな~?)

「う~んもふもふ~♪」

(確かに可愛い……ん、もふもふだね)

(ん?)

(ココア姉?)キョロキョロ

(はぁ、言った傍から)

~しばらくして

「あれ?シノン?もう~シノンったら自分が言ったくせに迷子になるなんて」

「シノン~どこ~」

「居た」ペシ

「いたっ!?あれ?シノン!?」

「探したよ。ココア姉……まったく言った傍から迷子にならないでよ」

「え~シノンが迷子になったんだよ!?」

「…はぁ、ココア姉が迷子なんだよ?もう……」

「シノン?」

ぎゅっ

シノンはココアの手を掴んだ。しかも俗に言う恋人繋ぎである。

「シノン!?!!?」

「これなら、はぐれないでしょ?」

「いや、それはそうかもしれないけど」

「文句言わない」

「う~心臓にわるいよ~」

 

公園を出ようとすると5歳くらいの2人の姉弟がいた。

「おねぇちゃんまってよー!」

「もう、はやくおいで」

「うん!」

姉弟は仲良く手を繋ぎながら歩いていった。

 

「ねぇ、シノン?シノンは私がお姉ちゃんでよかった?」

いつも明るいココアには珍しくなんとも静かで落ち着いた声で聞いてきた。その姿は心なしか大人びて見えた。

「…………………………」

「そっか、うんありがとうシノン!」

ココアは繋いでいた手に少し力が入っていた。それは、もしかしたら目元の涙を止めるためだったのかもしれない。

「行こっ!シノン?」

「……………………うん」コクッ

 

ココアは帰り道こんなことを考えていた。

私はこれからもシノンのお姉ちゃんでいよう

でも、少しぐらいお姉ちゃんじゃなくて一人の……そう一人の女性として見てほしいかな

 

それは、1人の恋する乙女の願いだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、シノン?シノンは私がお姉ちゃんでよかった?」

(ココア姉とモカ姉が俺のお姉ちゃんでよかったって心の底から想ってるよ?)

「そっか、うんありがとうシノン!」

 

 

 

 




読んで頂きありがとうございます!
また、アンケート・感想・活動報告の所からのリクエストもお待ちしております。
皆様の一時の癒しになればなと想ってます。
次回も気長にお待ちください


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4関羽無口な少年とタカヒロもう一人の父

ごちうさ三期放送おめでとうございます!
しばらく更新出来ずすみませんでした。
次は関羽を書く予定で、アンケートを見たらまさかのネタ枠のタカヒロが一番多くビックリしました。
親子のデートって、難しく時間がかかってしまいました。
タカヒロのキャラを掴めているのかわからず恐らく所々これ誰?があるかもしれません暖かい目でご覧ください。


ある日、妻が死んだ。私達の娘であるチノを残して…………今思えばその時からだったんだろう。チノがあまり、笑わなくなったのは随分と大人馴染みてしまったのは

そんな、チノが中学生になり今年の春から近くの高校に通う二人の子が家に下宿することになった。

どんな子が来るのかわからないが、どうかチノが良い方向に行ければと願う。

 

そして、遂に下宿の子達が来た。

一人はココア君。

ストロベリーブロンドの女の子。明るく元気で、チノとは正反対な感じがする。

だか、その明るさのおかげかチノが前より明るくなった。

恐らくチノに言えば怒るだろうが、本当の姉妹のように見える。

そして、もう一人ココア君の義理の弟である保登 シノン君。

黒髪でその、髪は目に少しかかるくらいで目付きは鋭く、ココア君よりも身長は少し高い。

そんな、彼は無口な少年。

必要最低限のことしか話さない。

話しても一言か普通の人の五分の一しか喋らないのだ。

そんな彼だが、性格はとても良いと言えるだろう。

優しく仕事には真面目な青年である。強いて駄目なところをあげるなら天然で鈍感な所だろうか?

彼は、思ったところを恥ずかしげもなく言うのだ。

日曰く可愛いと日曰く撫でたりなど……彼は他意が無い分余計にタチが悪い。

そんな、彼シノン君と私タカヒロは…………2人で街へ買い物に来ていた。

 

「いや~すまないねシノン君。買い出しに付き合って貰って」

「……………………いえ、大丈夫です。」

 

そう、私達2人はラビットハウスの買い出しに来ていた。もっとも喫茶店というより夜のバーの買い出しである。買い物内容はボトルのストックが切れたのと新しいグラスやメニュー開発のため他店を観察するためである。

 

「さて、まずは軽く見て回ってそこからお店を決めよっか。」

「……………………はい」

「……………………」

「……………………」

か、会話がないな。確かにシノン君は当たり前だが私もそこまで饒舌ではないからな

確か、ココア君なら話してなくても会話が出来るらしいが……あいにくそんな能力は持ち合わせていない。

「シノン君、最近どうだい?」

「………………?」

ま、まずい接し方がわからない父親みたいな態度をとってしまった。

「……………………元気……ですよ?」

「あ、あぁ良かった。家のチノが迷惑を掛けてないだろうか?」

「………………」フルフル

「違う?」

「…………むしろ………いつも………助けて…………貰ってます。」

「そうか……」

 

そんな、途切れ途切れの会話を続けながら私達は目的の1つ酒店に着いた。

ここは、親父の時からの付き合いで酒と言ったらこのお店なのである。

お店に入ると奥の方に新聞を広げながらだるそうに座ってる老人がいた。

髪は白髪で老人と思えない筋肉をしている。

本人曰く酒と筋肉は裏切らない………だそうだ。うむ、よくわからない。

「おう、らっしゃい!」

「どうも」ペコリ

「……………………」

「お?タカヒロか、なんだぁ?随分と久しぶりじゃねえか!?」

「えぇ、ご無沙汰しています。」

「んで?隣にいるやつは誰だぁ?」

「家で下宿してる保登 シノン君です。今日は買い物に付き合って貰っているんです。」

「………………こんにちは」ペコリ

「おう。んまぁ、ゆっくりしてけりゃ」

「………………」ペコリ

 

そうして、タカヒロは店内を回りながらお店に必要な酒を探していく。

シノンは適当にぶらつきながらお酒を見ていた。

その時少し後ろから声をかけられる。

声をかけてきたのは店主だった。先程はなかった煙草を吸いながらだるそうに見つめてきている。

「おい、坊主?」

「………………はい?」

「おめぇ、彼女いんのか?」

「……………………いません」

「ふ~ん」

突拍子もないことをにやにやしながら聞いてきたと思いきや、その返事でつまらなくなる店主

「…………でも…………」

「ん?」

「……大事な人達……はいます」

「ほう?その大事な人達ってのはどんな奴らなんだ?」

「………………目に入れても痛くない人達?」

「それは、親が子に言う台詞だ」

「………………虎の子、掌中の玉?」

「難しいことわざを知ってるな」

「……………………まとめて…………大好きな……みんな」

「ほ~?んじゃ、最後の質問だ」

「………………?」

「その人達を傷付ける奴が現れたらどうする?」

「……………………」

「いや、みなまで言わなくていい。」

「…………?」

「目は口ほどに物を言うとは良く言ったもんだ。」

「……??」

(言葉にしなくてもそんな輩がいたら容赦しないって言ってるよ)

「言わなくてもわかってるだろうが、大事にしろよ」

「………………」コクッ

「ふっ」

 

会話が終わりタカヒロが必要なお酒を発注していく。

「うっし。んじゃ、2日後に店に届けるぞ」

「よろしくお願いします。」

「………………お願いします。」

「おう、坊主悪いんだけどあっちから飲み物を取って来てくれるか?」

店主が指差したのはお店の中にある簡易自動販売機だった。販売機といってもお金を入れるやつではなくてガラス張りで開くやつである。

「………………」コクッ

 

「んでだ、タカヒロ」

「はい?」

「あの坊主良い男だな。」

「えぇ、家の子も凄く懐いてますよ。」

「なんだぁ?あの坊主を息子にするつもりか?」

「家の子次第ですが、だったら嬉しいですね。」

「ふ~ん、んまぁ、大事にしろよ?」

「もちろんですよ」

シノンが少し離れていた間にこのような会話が行われていた。

 

「それでは、よろしくお願いします。」

「おう!任せとっけ」

「…………ありがとうございます。」

「また来いよ?坊主」

「…………………………」コクッ

「んまぁ、こんなジジィの所に来ても面白くないだろうけどよ」

「………?………………貴方に…………会えるだけで…………嬉しいですよ?」

「ッ!?」

「あ~」

「………………?」

こうして、お酒での買い物は終了した。2人が去った後の店の中で店主は額に手を置いてため息を1つ。

「本当……良い男だな。」

 

お昼になり、2人は昼食をとることに。近くの喫茶店に入ってそれぞれ注文して食事を開始する。

「ん、美味しいな」

「………………」コクッコクッ

タカヒロはボンゴレパスタとブラックコーヒーを、シノンはチキンドリアとカフェオレを食べていた。

しばらく食べ進めていくとタカヒロからある話が始まる。

「シノン君」

「………………?」

「実は、ココア君のお母さんから連絡が会ってね…」

「…………知ってますよ?」

「・・・え?」

「……ティッピーから…………聞きました。」

「い、いつから?」

「…………プールの日に…………かくかく…………しかしか…………うさうさ……ということで」

「なるほど」

(((今ので伝わったの!?)))※他のお客様達

 

「これからは、私達も目を光らせるつもりだ」

「……自分は……いいです。」

「なっ!?」

「…………ココア姉達の方を……ココアお願いします。」

(この子は自分よりもココア君達を優先するのか)

「…………それに、……あの男なら……自分よりも…………そっちを狙うから」

「なるほど、人質か」

「…………はい」

(確かに、それを考えるとココア君達を優先するべきなのか?しかし、彼自身にも危険が及ぶ可能性はある。)

「…………でも」

「ん?」

「…………もし、それをするなら…………容赦はしません。」

「ッ!?」ゾクッ

(なんだ!?この寒気はシベリアの作戦時と同じくらいだぞ!?)

「………………?」

(ティッピーが言ってたな。〝シノンは怒らせてはいけない人じゃ〟って…………うん、その通りだな。)

「……どうしました?」

「いや、とりあえず私達で警戒はしていこうと思う。もしもの時はよろしく頼む。」

「…………はい。」

(もしかして、私よりも彼は強いのか?)

「…………美味しい」

(いや、考えすぎだな)

 

こうして、しばらく食べ進めていくと後ろから声をかけられる。

そこに立っていたのは2人の女性だった。

「あの~ちょっといいですか?」

「はい?」

「………………?」

「ねぇ~私達と遊ばな~い?」

「少しでもいいから……ね?」

「・・・・・」

「……………」

2人は少し互いに見つめ会い、まるで照らし合わせたように立ち上がり女性に一言。

「光栄なお誘いありがとうございます。」

「……………………」ペコリ

「しかし、このあと用事があるので今回はご遠慮させていただきたいと思います。」

「え~」

「残念」

「それでは、」

「………………」ペコリ

 

 

そのあと2人は、女性と別れて買い物をして公園で休憩していた。

 

「ふぅ~買った物は全てラビットハウスに配送したし、少し休憩したら戻ろうか」

「………………」コクッコクッ

ベンチに寄りかかり話していると

「ヘイヘ~イ?そこのお二人さん?」

「はい?」

「………………?」

話しかけてきたのは目立つ男性が2人とその仲間ぽい5、6人。一人はガタイのいい黒人の男性と帽子を被りヘッドホンを着けているチャラそうな男性だった。

そして…………その他

「おいらの女を邪険に扱ってくれたそうじゃねぇか?」

「女?」

「昼間、あんたに話しかけたらやついたろ?ヒデェ扱い受けたって聞いたぞ~?」

(昼間の女の彼氏か?ナンパが上手く行かず私達に腹いせに彼氏にお願いしたと)

「何かの誤解だ。声をかけられたが邪険にした記憶はないぞ?」

「うるせぇ!?」

「はぁ、話し合いでも意味ないか」

「あぁ!?」

「悪いねシノン君下がっててくれ」

「おっと~?」

立ち上がろうとしたシノンの前にチャラ男とその他が立ちはだかった。

そして、タカヒロの前には黒人が立っていた。

「オレ、オマエ、タオス」

黒人の身長はタカヒロよりも高くその筋肉は立派なものだった

「くっ!」

(シノン君が危ないのにこの男……やるな)

「さぁいこうか~?」

そのままシノンはチャラい男に連れられていく

 

「シノン君!」

「ムシ、シタ、ブッコロス!!」

黒人の男略して黒

黒のパンチを紙一重で避けるタカヒロ。

「はぁ、さっさと君を倒してシノン君の、所へ行くとしょう。」

そこから、男のラッシュを避けていく。

タカヒロは元軍隊である。その実力は、軍隊の中でもトップクラスである。

そんなタカヒロがこんな、黒に負けるわけはない

パンチの間を潜り抜けみぞおちにひじ打ち。

「コノヤロー!」

「ハァ!!」

「グボッ!?」

「セイヤ!」

倒れかけた所に顎へ上段蹴り

黒の意識は消えかけ膝をつき倒れそうになる。

しかし、まだ意識はある。黒は倒れる寸前でタカヒロにアッパーを決めるつもりである。

しかし、そうは問屋が卸さない。

タカヒロはそのまま黒の後頭部へかかと落とし

黒の意識は痛みと共に暗闇へと消えた。

 

「ふぅ~……はっ!シノン君!!」

シノンのことが心配になり林へと向かう。

「うぅ」

「く、くそ~」

「チェケラ……ガクッ」

シノンの回りに倒れているチャラそうな男略してチャラとその他が倒れていた。

 

 

 

以下回想シーンである。

 

チャラい男略してチャラとその他に連れてきたのはタカヒロから少し離れた林の中である。

「へへへってめぇの父親はアイツにボコボコだろうよ?」

チャラがチャラチャラとナイフを振り回しシノンを威嚇する。

(…………なんか、デジャブ)

「なんか、言えこの野郎!」

シノンの後ろからその他1が殴りかかる。

それを振り向くことなく頭を横へ傾けて避ける。

そのまま腕をつかみ一本背負い。

「ケバブッ!?」

 

「なッ!?」

「てめぇやんのか!?」

その他2、3が両隣がら殴りかかる

2の拳を受け止め、払腰をする。3の方向へと

その勢いのままその他2は3にぶつかり倒れる。

「ヤンニョム!?!」

「チキン!?」

 

その他4が上段蹴り、しかしそれよりも速くシノンが脚を高く上げ4の顎を蹴り上げて、気絶させ。

「ロコモコ!?」

その他5がこちらへ向かってくるタイミングで後ろ回し蹴りにより吹き飛ばす。

「タコスッ!?」

 

「…………あと、お前だけ」

「チッ、調子こくなよてめぇ!」

ナイフを振り回していた手を止めて、刃先をこちらへ向向けるチャラ。

恐らく殺しはしないだろう。しかし、少し怪我させて怯えさせようとしているのだ。

「死にさらせぇ!」

「……………………やだ」

シノンはチャラのナイフを避けてそのまま右手で顔に手をあて、左手で肩を掴み相手の勢いを利用し地面に叩きつける。

草むらといえ、地面に頭を叩きつけられたら大の男でも気絶するのは必須である。

「ブタキムッ!?」

「…………………………ふぅ~終った」

 

以下回想終わり!

 

 

 

「こ、これは!?」

「…………?」

「シノン君がやったのか?」

「…………飛び掛かる…………火の粉……振り払う……だけ」

(この子は、なんとも頼もしいんだろう。)

 

それから、警察への引き渡しや説明など色々終った後の

帰り道

 

「今日はすまなかったね」

「…………なにがです。」

「買い物に付き合わせてしまっただけでなく。あんな、輩に絡まれるなんて」

「…………タカヒロさんの…………せいではないです。」

「君のその武術はいったい誰に?」

「…………師匠に」

「その師匠はどんな人なんだ」

「……強く……優しく…………暖かい人です。」

「そうか、機会があれば一度会ってみたいね」

「…………その時は……是非」

(フッ、息子がいたらこんな感じなのかな)

(…………不思議な体験をしている気がする………………元父親、今のお父さん…………そして)

シノンはチラッと見上げる。自分よりも少し背の高く、今の父とは違う所もあるがどちらにしても優しく、暖かい人。

(………………クスッ…………お父さんとのデート……楽しいな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これが、ある親子のデート?だった。

 




読んで頂きありがとうございました。
アンケートに答えて頂いた皆様本当にありがとうございました。
アンケートはこの話で消します。
また、活動報告からリクエストも募集していますので
皆様気軽に書いて頂ければ幸いです。
次回も気長にお待ちください。


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5関羽 無口な少年とチノとの1日

今回はチノとのデートです。チノの書き方がちょっと微妙かもしれません。さらに、
書きたいことを勢いで書いたので……ちょっと短めです。
本当は年が変わった瞬間に投稿したかったのですが寝ちゃいました。
今回も暖かい眼でご覧ください。


私の名前は香風 チノ

ここ喫茶店ラビットハウスマスターの娘です。

昼は喫茶店で夜はバーになります。

そんなラビットハウスには勿論のことだが働いている人がいる。

私と私の父、そして一応私のお爺ちゃん。今は兎ですか

少し前からバイトとして働いて貰ってるリゼさん

今年の春から家で下宿しているココアさん。

そして、ココアさんと一緒に下宿兼働いて貰ってるココアさんの弟のシノンさん。

今日はそんな無口なシノンさんと私のお話です。

 

 

 

 

お昼前のラビットハウス。

リゼさんとココアさんは2人とも用事があってここには私とシノンさんの2人きりです。

 

「………………終った」

「あ、ありがとうございます。」

「………………」

「………………」

 

シノンさんは皿洗いが終ったのかキッチンから顔を出していました。

私は一言かけて、このあとどうするかを考えていました。

昼過ぎとはいえお客さんもいなく。何をしたら良いのか。普通の人なら対談等するのでしょうけど元からお喋りではない私と無口なシノンさんでは会話どころか目も会わせていませんでした。

 

「あ、コーヒー豆の補充しませんと」

 

私は倉庫に行ってコーヒー豆の入った袋を持ち上げようとするが、しばらく持っていなかったからか袋の重さに負けて後ろに倒れそうになります。

倒れる衝撃を思い目を瞑る。

「……ッ!」

ボフッ

しかし、来たのは痛みではなく柔らかくだけど少し固く。そして柔らかい触感だった。

 

「あ、あれ」

「………………大丈夫?」

「シ、シノンさん」

「………………コクッ」

 

後ろに居たのはシノンさんだった。

いつもの優しい雰囲気とその鋭い目付きが近く少し私はドキとしてしまう。

 

「………………持つよ」

「え、いやでも」

「……………………力……仕事……だから」ポン

「あ、ありがとうございます。」

 

シノンさんは大きいほうの袋を軽々しく持ち上げ部屋を出ていく。部屋を出ていく前にシノンさんは私の頭に軽く手を置きポンポンと2、3回叩く

私はその行動に嬉しさと少しの嫌悪感を感じた。

まるで子供扱いされているようで嫌だった。

 

「…………お昼作る?」

「わ、私が作りますよ」

「……………………大丈夫」ニコッ

「え、あの」

 

シノンさんは、そういうとキッチンへと入っていった。

その優しさが暖かさが苦しくなる時がある。

彼の優しさは私を妹だと思ってるから物なのかもしれない。

 

「シノンさんは……私をどう思ってるんでしょうか」

「………………俺が……何?」

「え!!い、いや何でも無いです。」

「……………………?」

 

そのあとシノンさんが作ったオムライスを食べながらお昼を過ごした。

その間も心のモヤモヤは切れなかった。

食べ終わって片付けしていると父に買い出しを頼まれた。シノンさんと一緒に

 

 

「…………何……買うの?」

「オレンジジュースとグレープフルーツジュース等の飲み物関係を買ってきてほしいと」

「…………カクテル用…………がなくなった……のかな」

「あと、クラッカーとパスタだそうです。」

「……………………荷物……多くなるね」

「そうですね。」

「…………飲み物の方………………持つね」

「あ、ありがとうございます。」

 

 

2人で歩いていると向こうから女性が2人歩いてきました。

「あら~貴方カッコいいわね」

「そっちの子は可愛いわね~~」

「あ、あの」

2人の女性が私達に詰め寄ります。私が困っているとシノンさんが前に立ってくれました。

「……………………すみませんが…………急いでるので」

「え~~良いじゃない」

「そうよ少しだけ」

「………………すみません。」

 

中々引き下がらない女性達に私は少し嫌な気持ちがした。そして、無意識だった。シノンさんの服の袖をギュッと掴んでいた。

 

「………………?」

「あ、いや、その」

「………………ん」ニコッ

「え?」

 

「………………すみませんが……見ての通りなので…………勘弁して貰いたい」

「……そうね♪」

「これ以上は無粋ってものね」

 

シノンさんが少し言うと女性達は素直に離れていった。

何故今、私はシノンさんの袖を掴んだんでしょうか

まるでシノンさんがどこか行ってしまうそんな気がしたのだった。

お店について買い物を済まして、帰ってる途中。

 

「…ふぅ」

「………………疲れた?」

「え、いや、その」

 

ど、どうしましょう。さっきのシノンさんの態度でついため息を……変に誤解させてしまいました。

 

「…………少し……休んでく?」

「は、はい」

 

近くにあった公園のベンチに座って。シノンさんは飲み物を買いに行きました。

もちろん、私は断りました。しかし、シノンさんは『…………大丈夫』と

ココアさんに子供扱いされるのも嫌でしたが、シノンさんにされるのは別の嫌な感じがするのは何故でしょう。

 

 

「グ、クフフフフ。ソ、ソコノオジョウサン?」

「は、はい?」

 

声をかけられて、そちらを向くと父よりも背が高く。服を着ていてもわかるぐらい立派な筋肉をしている。黒人が立っていました。

 

「ス、スコシ。ミチアンナイタノミタイ!」

「え、でも、その」

「イイカラ!オネガイ」

「あの、ちょっ」

 

その、黒人さんは私の手を強引に掴んできました。

一瞬で悪い想像をしてしまう。このままどこに連れられるのか、連れられた先で何されるのか。

もしかしたら、もう会えなくなるかもしれない。

ココアさん、リゼさん、シャロさん、千夜さん、マヤさん、メグさん、お父さん、おじいちゃん。

 

 

 

シノンさん!

 

 

「…………ハァ!!」

「what!!!?」

「ッ!?」

 

もうダメだと思った矢先、シノンさんが黒人の腕を蹴り上げ私を抱き抱えた。

 

「!!マ、マタオマエカ!!」

「……………………」

「シ、シノンさん」

 

「……俺の大事な女に……手ェ出してんじゃねぇよ!」

「お、女…………」

「オマエ!ブッコロス!!」

「…………チノ……離れてろ」

 

シノンさんは私をおろすとそう言う。しかし、私は腰が抜けてしまっていてそこから、動けなかった。

「……チノ!?」

「す、すみません。腰が抜けてて」

「………………なら、俺に捕まってて」

 

再度私を抱き抱えるとそう言いました。私はさっきの恐怖もあり無意識にシノンさんの首に腕を回していました。

 

「ソノコ!オレノヨメ!!」

「…………させるか」

 

黒人がシノンに殴りかかる。それをシノンは紙一重で避けて、そのまま右蹴り。

黒人は両手で振り下ろす

「コノヤロー!」

「…………ハァ!!」

それを避けながら相手の懐に入り、足を上げて顎を蹴り上げる。そのままスキだらけの鳩尾に肘打ち、正拳突き、掌底打ちを繰り出す。

 

「ゴハッ!」

「…………もっと!」

 

そこから、始まる連撃!猛撃!!

右蹴り・ローキック・正拳突き・裏拳・掌底打ち・かかと落とし。一切相手に攻撃の隙を作らせない。

その猛撃を受けて黒人は膝をつきこちらを睨んでいく。

 

「オ、オマエ!ソノコノナンナンダ!」

「………………すぅ~」

 

シノンはゆっくりと足をあげた。

 

「………………ハァァ!!」

「グホッホ!!?」

 

 

そして、黒人の後頭部にかかと落としを決めた。

男はそのまま地に伏せて起き上がることはなかった。

 

「………………言ったろ…………大事な(ひと)だってな」

「!!」

 

あ、そっか。シノンさんは私を子供扱いなんてしてなかった。私のことを1人の家族として、1人の妹として、1人の女性として扱ってくれていた。

一番子供扱いしていたのは……シノンさんではなく私自身だった。

 

少し離れた木陰~

 

「………………大丈夫?」

「ぐすっ……ぐすっ……あ、ありがとうございます。」

「………………うん」よしよし

 

シノンさんは優しく頭を撫でてくれる。

暖かく、心地良い、いつまでも感じていたい温まりだ。

夕方になり夕陽が周りを照らし、聞こえる呼吸は2人のみ。

 

 

「……………………」

「…………ぐすっ…………ぐすっ」

「…………………………守るから」

「……え?」

 

ギュッ

 

シノンさんが優しく私を抱き締める。

左手が私の背中に、撫でていた右手はそのまま後頭部をより自分へと引き寄せてくれる。

 

 

「………………何があっても…守るから」

「……」

「………………ずっと側に要るから」

「…………はい。…………ッはい!」

 

~次の日

 

 

「~~♪」

「あれ?チノちゃん何か良いことあった?」

「な、何がですか?」

「そうだな、鼻唄なんて歌ってるし」

「な、何でもないですよ!」

「「??」」

「あ、あー!そうでした。コーヒー豆の補充しないと」

「………………手伝おっか?」ポン

「…………えっと……その」

「…………?顔…………赤い?」

「ッ!き、気のせいです!!」

「……………………?」

 

この気持ちがなんなのか、まだよくわからないけど。

でも、不思議と嫌では無いですね。

いつか、この気持ちがわかった時……私はあなたに。

 

「ふぅ、シノンさん!」

「………………ん?」

「運ぶのお願いしますね!」ニコッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは青い少女の無口な少年への気持ちが変わる…………そんな1日だった。

 

 

 

 

 

 

 




読んで頂きありがとうございます。
次回も気長にお待ちいただければ幸いです。
そして、こんな自分ですが今年もどうぞよろしくお願いします。


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