僕の個性は自衛隊 (こしあんA)
しおりを挟む

1話 進路希望

どうも皆さんお久しぶりです。
と言っても覚えてない方が大半だと思いますが。
文章もゴミみたいですが許してください。お願いします。

それにしてもヒロアカのssを一度でいいからやってみたかったんですよね。



改良、付け足しをしました。2019年 2月 24日



 この世界には超能力が存在する……と言っても何十年前からだが。

 

 始まりは隣国、中国の某市で『発光する赤子』が生まれたというニュースから。

 

 最初は『所詮デマだろ?』、『はいはい、お隣の中国はすごいですね〜』などとネットで散々叩かれていたが、それを境に世界各地で『超常』は発見されるようになった。

 

 全世界が手を取り合い、『超常』の原因解明に莫大な金が動いたらしい。どうせ軍事利用への転用が目的なのだろうが。

 しかし、一向に研究は進まず金の浪費に終わった。そして国々はある一つの結論を出した。

 

「人類がさらに進化する時代に直面したのだと」

 

 

 ……もはや何も言うまい。

 

 

 そして、いつしか『超常』は『日常』となり、超能力の原因究明をしようとする者は消え去った。

 世界総人口の約八割が『なんらかの特異体質』である超人社会となった現在。

 誰もが子供の頃に夢見た職業が脚光を浴びていた!

 

 それと同時にある職業が衰退の一途をたどっていた!

 

 

 

 

 

 超能力を手にした若者は非行に走り、警察、消防隊、自衛隊などの公務員が対応に回った。

 しかし、個性の圧倒的強さに無個性の公務員側は劣勢に立たされ、かなりの被害が出た。

 これまでの治安維持組織が全く通用しなくなった後にある職業がその一躍を担うことに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 世界は理不尽だ。無個性というだけで虐げられ、また、体格に変化をもたらす個性の持ち主は『怪物』と罵られる

 俺は無個性だからこんなことを考えているわけではない。

 個性はある。だが、もはや無いにも等しい。

 

 個性でとある一つの銃器を出現させることができる。これができるようになったのは、4歳の時、父さんが趣味で買った本に写っていた銃を見た次の瞬間欲しいと望んだ。そして、気が付けば銃が出現した。

 しかし、それは表紙の銃とは若干違っていた。

 

 父さん曰く、表紙の銃は知らない者はいないとも言われる『AK47』と呼ばれるもので、出したものは『六四式小銃』と呼ばれるかなり昔の自衛隊のものらしい。

 

 

 父は子供の個性の出現を嬉々としたのか、市役所に大急ぎで個性届けを出しに行った。

 

 個性名は『銃器創造』

 

 

 しかし、この名は正しく無いことに気づいたのは個性届けを出した後だった。

 後日、個性の使用を許可されている市民体育館へと父に連れていかれた。

 父に言われるがまま銃を取り出し、父に体を支えられながら慣れない手つきで引鉄を引いた。

 しかし、引き金を引いても弾は出ず、脳内に「憲法九条ニヨリ、先制攻撃ハ出来マセン」と言う言葉だけが流れた。

 

 

 そう、僕の個性は自衛隊。

 憲法9条がある限り、先制攻撃は出来ない。

 

 なめんな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうして、個性はあるのに無個性な人生を送り、早数年。付いたあだ名が『無能なヒロ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕は今日小学校を卒業した。

 思い返してみればロクなことが無かった。

 無個性、無個性などと散々煽られ、俺の中何かが切れた。

64式を取り出し、自分身長とほぼ同じ長さの64式を慣れない手つきで構え、引き金を引いた。

 

 しかし、激昂のあまり忘れていた。そう、弾は出ない。

 物量にものを言わせ、いじめっ子集団に包囲殲滅されてしまった。

 

 めでたしめでたし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドキドキ、ワクワクの中学校デビュー、そろそろ一人称を僕ではなく俺にしても自然なお年頃だ。

 

 

 

 

 

 中学校生活、それは別に楽しいものではないと入って直ぐに感じた。小学校の頃の友達の半分はこの学校には居らず、大半が知らない人間。

 以前、仲良くしていた友達ともお別れをしてしまったのだ。

 俺は、友達というものをずっと一緒に居られる存在だと認識していた。だが、数週間前まで友達だった人間はもう居ない。

 永遠だと思っていたものがそうでは無い。そんな知りたくもなかったことを知ってしまった。

忘れようとした感情は夜な夜な俺を襲い、涙で枕が染みた。それ以降も何ヶ月かこの感情が消えることは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 中学三年生の春

 

 まるでタイムスリップしたかのように時間は経ち、俺はもう中学三年生。

 今日の授業は全て終了し、今はホームルームの時間だ。

 

「今から進路希望のプリントを配ります」

 

 もう三年生ということもあり、進路に向けて考えなくてはならない時期となった。

 うん、遅いよ。

 学校ももうちょっと早く取り組もうよ。日本の将来を担う若者の進路だよ? もうちょっと力入れようよ。

 

 とは言っても自分の将来なのだから自分自身でやらなくてはいけない。義務教育だからと甘えていては絶対にダメなんだ。

 

「進路……進路なぁ」

 

 そう誰にも聞こえない声でぼやく。

 

 私的には、自衛隊に入りたいのだが、今の自衛隊は名ばかりで誠に遺憾だ。

 自国領域に侵入されても、忠告しか出来ない。災害復興支援は新たな職業『ヒーロー』に取られる。海上警備もフットワークの軽い『ヒーロー』が殆どやってしまう。

 ただ、軍を持っていなければ他国からの侵略を全く防げなくなってしまうのでなんとか残されている。

それでも何度と自衛隊は消されそうになった。

 

 俺の個性が使えないのも、自衛隊が衰退するのも、全て『憲法9条』が悪い!

 

 俺は決めた。いや、前々から決めていた。

 

 ヒーロー科に入学して、ヒーローになって、活躍して、自衛隊の布教活動をしてやる!

 

 

 

 

 この時、災害復興をしているのはヒーロー科卒業の警察、消防隊、自衛隊だという事、そして、自衛隊に入るには高校課程のヒーロー学科を修了してなくてはならないことをまだ知らない。

 

 

 

 

 進路希望のプリントは来週提出と言われた。

 

 進路は決まったが、ヒーロー科のある高校がどんなにあるのか分からない。

 しかし、布教活動をするため、なるべく有名な学校を選ばなくては。

 最初、俺は数少ない友達から情報を得ることにした。

 

 掃除も終わり、部活にいく前になるべく人のいない時を見計らい話しかける。

 

「デクさんや、デクさんや」

 

「どうしたの、ヒロくん」

 

 まず、何気ない日常会話から入るのが情報を聞き出す時の基本だ。

 そうして本題へと入る。

 

「たしか、ヒーローになりたいんだよね? だったらどんな学校が有名とか知ってる? 知ってたら是非教えて欲しいなと思って……」

 

「……うん。そうだよ。一番有名な学校なら雄英高校かな……。でもあそこはかなり偏差値高いし……あっ、でもヒロくんの学力なら……ギリギリ入れるね……」

 

 俺の数少ない友達こと緑谷出久。通称デク。

 その出久は俺が質問をすると一瞬体が震え、言葉にも覇気がなく枯れ木のようだ。

 

「……ぼくも……行きたいんだ、昔からの夢なんだ……だけど、僕には個性なんてないから……でも! それでも僕は雄英高校に受験するんだ! 誰がなんと言おうと! 例え、無個性だとしても!」

 

 ずっと胸に抱え込んでいたものを吐き出せたのか、次第に声音がしっかりとしていき、『何が何でもやり抜く』という信念までもが伝わってくる。

 

「安心しろ、俺だって個性はあっても無個性に近い。ポンコツ同士頑張ろう!」

 

「うん!」

 

 

 二人は違う部活動場所へと向かった。

 

 

 

 

 

 休日

 

 カタカタとキーボードを打つ音がする。

 我が娯楽マシーンは今日初めて娯楽以外に使われた。そう、学校選択だ。

 第1希望はもちろん雄英。

 しかし、落ちた時のための滑り止め受験は必要。

 そのため今は滑り止め受験をする場所の捜索をしている。とりあえず関東圏に絞って探そう。

 

 

 

 

 とりあえずで候補はメモをしておいた。後で出久に尋ねておこうかと思う。

 

 しかし、今回かなりの情報を得られた。

 何よりいちばん驚いたのが、自衛隊はヒーロー科目を学ばなければ入れてくれないということだった。

 理由を調べてみると、自衛隊の最近の仕事が災害復興支援を除き、ヴィラン共の鎮圧。

 そのためヴィランとの戦闘を意識したヒーロー科の実習を受けたもので無ければ原則入らないらしい。

 

 

 

 それにしても試験内容が実技と筆記だとは。

 後で個性を少しでも使えるよう、訓練しなくては……

 

 

 

 

 

なお弘が見ていた自衛隊の説明文は特殊部隊のものであった。

 

 




ヒロアカの世界って何年くらいなのだろうか? 自衛隊の装備も絶対変わっているだろうし。
知っている人がいたら教えて下さい。


気軽にご指摘等お願いします。
コメントはやる気に繋がるので


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

2話 第一次受験大戦

一日に連続投稿!

まさか投稿してすぐコメントを頂けるとは思ってもみませんでした。
しかも評価してくれる方まで居る!
ありがてぇ、ありがてぇ!

思ったのですが、作品なんて山の様にあるのに、そのなかからよく見つけて貰えたなっと。

人気になる前の作品だって、その前は人気でもなんでもない『ありふれた小説』なのによく人気になったなっておもうんですよね。



「ええ、では先週言った進路希望書を回収する‼︎ と言ってもだいたいヒーロー志望だよね」

 

ハーイと皆の騒音がクラス中を響き渡る。俺も俺もと自己主張するために個性を発動。

 

「うんうん、皆良い『個性』だ。でも校内で『個性』の発動原則禁止な!」

 

この教師は口だけで咎めようともしない。何故こんな学校に来てしまったんだ。友達が行った方に行けばよかった。毎度毎度何かあるたびに心の中で愚痴を吐く。

 

しかし、ここに来なければ出来なかった友達もいる。

 

 

 

「爆豪は雄英志望か……」

 

「国立の! 今年偏差値79だぞ‼︎」

辺りがざわついた。

 

えっ、今なんて?

そんなに高かったのか! 全く見てなかった。これでは訓練に割く時間が無いじゃないか!

 

「そのざわざわがモブたる所以だ! 模試じゃA判定‼︎ 俺は中学(ウチ)唯一の雄英圏内! あのオールマイトをも超えて俺はトップヒーローと成り、必ずや、高額納税者ランキングに名を刻むのだ‼︎」

 

よし、塾に行こう。後、爆豪様に勉強を教えて頂こう。

 

「そういや緑谷と山口も雄英志望だったな」

 

次の瞬間皆の視線が俺と出久へと向かい、その後、クラスが爆笑の渦に包まれた。

 

「はああ⁉︎ 緑谷と山口ぃ? 無理っしょ!」

 

「勉強出来るだけでヒーロー科は入れないんだぞー!」

 

「……そんな規定もうないよ! 前例が無いだけで……」

 

次の瞬間、爆風がオレ達を襲った。

 

「テメェら! なんちゃって『個性』と無個性のテメェらがあ〜。なんで俺と同じ土俵に立てるんだ⁉︎」

 

 

まずい、このままでは勉強を教えてもらえないではないか!

このクソ教師が! 余計なこと言いやがって!

 

「別に……張り合おうとかそんなの全然! ホントだよ。ただ……小さい頃からの目標なんだ……それにその……やってみないとわからないし……」

 

出久の声は徐々に弱々しくなっていく。しかし、それでも引こうとはしない。今どれほど怖いか、どれほど勇気を振り絞っているのか。

 

「何がやってみないとだ! 記念受験か⁉︎ ああ! ……テメェが何をやれるんだ⁉︎」

 

切れた。自分の中で何が切れた。

 

「予定変更。こんな奴に教わるものなどない」

 

「ああッ?」

 

こちらに攻撃、被害大。これより専守防衛を許可。

 

「来い、ロクヨン!」

 

宙に現れた小銃を手に取り、照準を爆豪へと向け構える。

 

「こちらの要求

その1:先程出久へ行った暴力行為に対し謝罪せよ。

その2:先程出久へ発言した言葉全てを撤回せよ。

そちらがこちらの要求を飲まない場合、然るべき措置をとる」

 

「はぁ⁉︎ 脅しのつもりか? テメェのその銃は弾が出ない事は皆知ってんだよ! その玩具諸共ぶっ潰してやる!」

 

今日初めて人に向けて銃弾を放った。

単発射撃を行い、何発も発射した。そのうちのいくつかが足に命中。

飛びかかってきた爆豪はバランスを崩し、地面に落っこちた。

 

「いってぇな! この……」

 

「降伏せよ」

 

背中を踏んで抵抗されないようにし、銃口を爆豪の頭部に向け、短くそう告げる。

 

「誰がそんな事を……なっ、邪魔すんじゃねぇ!センコウが!」

 

立ち上がろうとした爆豪と俺を騒ぎを聞きつけた先生と担任が俺達を止めにかかった。

今更気づいたのだが、確かに弾は足に命中したはずだ。そのはずなのに血がどこにも見当たらない。

 

 

 

 

 

その後、家族を呼ばれ校長室で『お話し』をしたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

脳内でファンファーレが響く。

 

『経験値が一定に達しました。新たに手榴弾が使えるようになります。階級が二等陸士から一等陸士になりました。また、演習モードが追加されました』

 

今までの装備は、アサルトライフル(六四式)と銃剣だけ。その他に迷彩服やヘルメットもある。

だが、新たに手榴弾と現段階で最高火力の物を手に入れた。

これなら試験科目の実技も多少は楽になる事だろう。

 

 

 

 

そして一番気になったのが『演習モード』だ。

 

 

 

 

検証の為、個性の使用を許可されている市民体育館へ向かった。

 

 

検証その1:演習モードでは弾を撃てるのか?

検証結果:撃てた。

 

では次にフルオートはどうだろうか。

セレクターを『単発』から『連射』にして引き金を引いた。

しかし、何も起こらない……訳では無かった。

『貴様! 誰が連射をして良いと言った! 今は演習中なのだぞ!』という声が脳内に響いた。

 

そうだった。

自衛隊は勝手にフルオートで撃ったら怒られるのだと自衛隊系ユーチューバーが言っていた。

 

 

 

検証その2:人に向けたら撃てるのか?

 

先日、爆豪の足に向けて撃ったが、傷一つなかった。

試しに、自分の足に向けて撃った。するとタンスの角に小指をぶつけた時と同じような痛みが走った。

足に傷口はない。

 

以前、バカだとは思うが自分の足に向けて撃った事がある。

結果は、弾が出なかった。

 

つまり、演習モードなら相手に攻撃出来る!

と言っても演習モードではエアガンくらいの威力だが。

 

個性名を『自衛隊』から『エアガン』に変えてやろうか。

 

 

検証その3:手榴弾も演習モードで使えるのか?

 

「ピン抜きよし!……」

 

掛け声まで出して意気揚々とピンを抜こうとする。しかし、安全ピンは抜けず、脳内でまた例の声が流れた。

 

『貴様ごときが演習で手榴弾などという高価な物を使えるとでも思っておるのか!』

 

勘弁してくれ。

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

あれから何ヶ月かが経ち、もう二学期だ。

あの日以降、塾に通わせてもらい、勉学に励んできた。

模試の結果はまだB判定。

 

 

『一層奮励努力セヨ』だ。

 

まだまだ気を抜いてはいけない。引き締めなくては。

 

 

 

☆☆

 

 

あの爆豪事件以降、明らかに出久が変わった。

まず筋肉が付いた。

運動部の場合、部活を辞めたら普通筋肉は落ちるはずなのに、筋肉は衰える事なく、さらに筋肉がどんどんと付いていく。

 

しかし、日に日に目の下にクマが出来ていく。

 

 

恐らく、試験の実技に向けて特訓をしているのだろう。

勉強はどうなのだろうと思い、模試の結果を聞くとA判定。

ちなみに爆豪は後もう少しでS判定に届く。

 

俺も負けてはいられない。

 

 

 

 

 

 

 

☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まず学業を上げるには、『やるぞ!』という精神。健康な体。

となればする事は一つ。

 

自衛隊式訓練だ。

 

少し前に解放された機能。

一般自衛隊の訓練を理解できる機能……それだけだ。

 

やるかどうかは自分次第。

足りぬ足りぬは努力が足りぬ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして月日はあっという間に経ち試験当日に。

家族に見送られながら、受験場所の雄英高校へと向かい行く。

と次の瞬間すっ転んだ。

受験前に滑るとか笑えない。

 

家族は笑いをこらえられず、腹を抱えていた。

おぼえてろよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一日目

 

 

 

キーンコーンカーンコーン

 

「はい、止め!」

 

時間終了の音が鳴る。

 

5教科全ての試験が終了した。次は実技なのだが、それは明日。

今日は休んで英気を養う。

 

 

 

二日目

 

 

 

「今日は俺のライヴにようこそー‼︎ エヴィバディヘイセイ‼︎」

 

俺達に掛けた陽気な声とは裏腹に会場は静まり返っていた。

 

「入試要項通り十分間の模擬市街地演習を行ってもらうぜ! 持ち込みは自由! プレゼン後は各自指定の演習会場へ向かってくれよな!」

 

 

演習場には4種類の仮想敵がいるとプリントに書かれている。

1ポイント、2ポイント、3ポイント。そして、0ポイント。

 

「演習場には3種類・多数配置している」

 

ん?

 

「質問よろしいでしょうか? プリントには4種の敵が記載されてあります!誤載であれば……」

 

 

うわっ、めっちゃ意識高いやん、ダル。

 

この後の話を聞くのを止め、ぼーっとしだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぼーっとしているうちにどうやら話は終わり各演習場へと移動し始めた。

俺は一足遅れて会場から立ち去り、演習場へ向かった。

 

 

 

ガチの市街地だった。

高層ビルがいくつも聳え立っているのが待機場所からもうかがえる。

敷地内にこれほどの市街地をいくつも作れるほど財源を持っているとは。

 

 

迷彩服を身に付け、ヘルメットを被る。

手榴弾を装備し、マガジンポーチに予備マガジンを3つ程。

最後に六四式小銃を装備し、武装完了。

 

 

 

「ハイ、スタート!」

 

ん?

 

 

皆自分と同じく、「?」を浮かべポカーンとしていた。

 

そうしてあっさりと賽は投げられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




主人公、山口 弘
個性、自衛隊
好きな物、カレー 兵器諸々

自衛隊より大日本帝国軍のほうが好き。
理由:憲法9条がないから


山口弘というのは『山口 多聞』と日本のヘラクレスこと『船坂 弘』
から取りました。
最初は佐藤 弘とか高橋 弘とか鈴木 弘とかを考えていましたが、なかなかしっくりくるものが無かったんですよね。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

3話 第2次受験大戦

気が付けばユニークアクセス数が1000回を超え、さらに、お気に入り登録者も17人を突破!

ありがてぇ、ありがてぇ!

今回戦闘描写を稚拙ながらも頑張りました。
もし、こうした方が良いなど思ったらビシバシご指摘下さい。


『どうしたぁ⁉︎ 実戦じゃカウントなんざねぇんだよ‼︎ 走れ走れぇ‼︎賽は投げられてんだぞ⁉︎』

 

 そうだ、ここは自由が売りの雄英高校。

 なんでもありなんだ。

 

 大地を思い切り蹴り、走り出す。

 

「突撃ぃぃっ‼︎」

 

 一度は言ってみたかったセリフを大声で叫び、一人走り出す。

 

 

 

 皆ポカーンとしている中、俺は幸先の良いスタートダッシュを決めることが出来た……そのはずだった。

 ステータスを機動力に全振りしているようなやつがものすごいスピードで俺を抜いていきやがった。そして、徐々に後方の奴に抜かれていった。そう、武器が重すぎるのだ。

 

 銃一つですら4キロ程、手榴弾二つで約1キロ。ヘルメットは500グラムほど。その他マガジンも含めたら合計……いやもう止めよう。

 

 と、不意に前方左の壁をぶち壊し、何かが来た。

 1ポイントロボットが現れた!

 

『敵、補足、ブッコロス』

 

 あかん奴やこれ。

 

「演習モード!」

 

 銃を構え、射撃。やはり、かなりの反動だ。肩が痛い。

 エアガン弾は跳弾した。

 

「グホッ!」

 不意の腹パンを喰らい、2〜3メートル飛ばされ尻餅を着いてしまった。

 だが、これで……

 

『攻撃を確認。これより専守防衛の下、敵群団を撃滅せよ!』

 

 でもフルオートは許してくれないんでしょ?

 

 

 

 

 一心不乱に引き金を引いた。

 あんな巨体、この距離なら狙いを定める必要もないとはいえ、全くもって慣れない射撃。そして、大きな反動。

 

 銃を真っ直ぐ支える事がこんなにも難しいなんて思わなかった。今の俺ではフルオートなんてまともに使えないだろうな。

 

 全弾撃ち終わる前にロボットは黒煙を吹き出し、動かなくなっていることに俺は気づかなかった。

 

 空のマガジンを外し、新たにマガジンを再装填。その後、標的撃滅の任を続行した。

 

 戦闘時以外引き金には指を置いてはならない。もし、誤射をして他人に命中してしまえば、自衛隊失格だ。

 だから今、いつでも撃てるようグリップを軽く握り締める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 壁が崩れる音。そして、大地を揺るがす地響き。

 左右から一体ずつ、上空からは二体。

 壁の向こうからだけでなく、空からも奇襲してくるとは、しかも、さっきのやつより強そうだ。

 

 2ポイントロボットの群れが現れた!

 

 すぐさま射撃を開始。

 突然のことだった為、当然狙いはてきとう。さらに、また一心不乱に引き金を引き続ける。しかし、カチッ、カチッ、と引き金を引いているのに弾は出ず、音だけが鳴る。弾切れだ。

 まだ一体も無力化できていない。

 

「くそっ!」

 

 マガジンを外し、予備マガジンを取り出そうとする。

 

「あれっ、抜けない」

 

 慌てすぎてマガジンが取り出せない。しかも、ようやく取れた思いきや、マガジンを落としてしまったのだ。

 

 俺はまた腹にパンチを喰らい今度は十メートルも飛ばされてしまった。さらに不幸は重なる。飛ばされた拍子に六四式すらも手離してしまった。

 

「これは予想以上にまずい」

 

 体勢を立て直し、手榴弾を手にする。

 

「ピン抜きよし! 投げ!」

 

 手榴弾は敵の手前に着弾し、数秒後に爆発。時間差により敵の背後で爆発という形になった。

 倒れたロボットの装甲には穴が空き、所々配線は剥き出しになり、ジリジリと電気の音が鳴る。

 四体全て黒煙を上げ、動かなくなっていた。

 

 落とした六四式とマガジンを拾い、個性を発動。マガジンをいくつか補充した。

 ☆

 

 

 

 

「オラオラ、かかって来いよ1ポイント共! 今の俺なら憲法9条だって怖くねぇ! ヒヤッハー!」

 1ポイントは3、4発で動かなくなる。

 撃つときは止まり、しっかり狙う。そして、タン、タン、タンとゆっくり。

 そうでなければ銃が跳ね上がり、違う所に飛んでいってしまう。

 

 

 2ポイント以上の敵(まだ3ポイントとは敵対していない)には全くと言っていいほど小銃では歯が立たなかった。マガジン内の20発、全て使って倒せるかどうか。

 だから、

「ピン抜き良し! 投げ!」

 手榴弾で対抗する。

 しかし、これでもう手持ちの手榴弾が無くなってしまった。

 個性で出そうとすると数秒の時間が掛かる。だから予備を持っていたのだ。安全を確認できたらばすぐ補給しなくては。

 

 

 しかし

『貴様! 一等陸士の癖していったい何個使う気だ! 貴様なんぞにくれてやる手榴弾などもう無い! これでも持っとけ!』

 

 掌に信号拳銃が現れた。

 

『条件を達成しました。新たに信号拳銃が使えるようになりました」

 

「なめんな!」

 

 俺はそれを地面に思い切り叩きつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「痛えっ!」

 

「クソっ、足が……」

 

「流石は雄英……俺なんかが来て良い場所じゃ無かったんだ……クソっ!」

 

 多くの者がそこに倒れていた。そしてその周辺では3ポイントの残骸らしきものが山となっていた。

 中には3ポイントの残骸に囲まれて、倒れている者も何人か。

 

『ラッキー、ライバルが減った。早くポイントを稼ごう』そう思った。だが、足が先に行く事を止めていた。

 

 そうだ、俺の個性は国民を守る『自衛隊』だ!

 

 俺の目的はここに合格することではない。目的は自衛隊を布教する事。これはその手段に過ぎない。

 自衛隊を布教する俺が自衛隊にあるまじき行為をしてたまるか。

 

 俺は武器を投げ捨て、負傷者達の所へ走り出した。

 

 

『条件達成。衛生科の資格を取得』

 

「大丈夫ですか! 意識はありますか! どこが痛いか話せますか!」

 

「右脹脛が、痛ぇんだ。多分折った」

 

「安心してください。なぜなら、貴方達の自衛隊が来ましたから」

 

 

 

 添木と包帯、医療用テープが現れた。

 この個性は人助けには協力的だな。

 

 添木を右脹脛の左右に置き、包帯で巻いていく。

 

「痛いでしょうが、我慢して下さい!」

 

 包帯を巻き終え、医療用テープで止める。

 しかし、これ以上専門的な事は出来ない。

 

「応急処置完了。ちゃんとした医療の方がここに来るまで動かないでください」

 

 

 そうして全員の処置が終わる頃にはとっくに試験など終わっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「嗚呼ああああっ! やっちまった。俺はなんて愚かな事をしてしまったんだ! なんであの時柄にもない事を……自衛隊を布教するには目立たないといけない。だから目立つための手段として、受験したのに!」

 

 燃え尽きたぜ……真っ白にな。

 

 

 この時、レスキューポイントなるものがあることを今の弘はまだ知らない。

 

 試験後、怪我により『リカバリーガール』さんとやらに治癒してもらい、今現在、入院中である。

 あの時はアドレナリンが湧き出て、痛く無かった。しかし、それが終わった後とてつもない痛みに襲われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 入院している間に中学校では卒業式が終わり、俺は病院で中学生を卒業してしまった。

 

 卒業記念なんたらも書いていない。本当に何も無い中学校生活を過ごしてしまった。

 

 きっと笑い者にされているのだろう。

 入院のため、他校の試験も受けられなかった。

 ペーパーテストでギリギリで、さらに実技でも得点を全く稼げなかった俺は落とされているだろう。

 

 中卒。

 今の厳しい社会では全く生きていけない。

 ヒーロー科の教育課程を修了していないため、夢の自衛隊すらも夢のまま。

 

 次の日

 手紙が届いた。雄英からだった。どうせ、落選通知だろう。『貴方様の益々のご活躍を云々』と

 

 破き捨ててやろうか。いや、虚しいが記念に持っておこう。

 爆豪が言った通り記念受験になってまうな。あいつはなんて言うんだろうか。

 

 そんなことを考えながら手紙を開けた。

 

『私が投影された‼︎』

 

 よくテレビに出てくるオールマイトさんだった。

 

『君筆記は可もなく不可もなく、普通だね。筆記は合格だ。しかし、実技は20ポイント。これでは不合格だ』

 

 よし燃やそう。

 

『それだけならね』

 

 どう言うことだ? 俺は不合格。それで終わりだろ?

 

『先の入試で見ていたのは敵ポイントだけにあらず! 人救けした人間を排斥しちまうヒーロー科などあってたまるかって話だよ‼︎ 綺麗事? 上等さ! 命を賭して綺麗事を実践するお仕事だ!』

 

『レスキューポイント。しかも審査制! 我々雄英が見ていたもう一つの基礎能力‼︎ 山口弘 レスキューポイント40。合計60ポイント!合格だよ』

 

 そして映像は消えた。

 

 

 俺はどうやら受かったらしい。

 

 やったぜ!




この個性対物戦に全く適してない。
しかも次体力テストやん。
何しろって言うんだよ!




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

4話 個性把握テスト!

みなさんどうもこんにちは。外国軍歌歌える系小説投稿者です。

それにしても皆さんバットカンパニー好きですね。私は全く印象に残って無いので、そこまで強いと認識してなかったのですが、動画見たらめちゃ強いやん。

億泰の兄は序盤に死んじゃったからそこまで印象がないせいで、私の中では石と一緒にさせられたアンジェロと同等なんですよね。

そういえばたった二日でユニークアクセス数が2000を超えててびっくりしました。
私は他の作品も書いたことがあるのですが、最初からこんなに見てもらえませんでした。しかもコメントがもう8件も。
通知が来るたびニヤついています。さらには評価をしてくれる人。一言つけて評価してくれる人までも!

この作品を見守ってくれている皆さま。そして皆さまのコメント、評価等が私を支えてくれています。ほんとうにありがとうございます。


どうやら進級は戦闘後に起きるらしい。あの日その事を知った。

 

「イテテっ、やっぱりまだ痛いな」

 

痣となった箇所を興味本位で突く。触ったら痛い事なんて分かっているが、つい触ってしまう。

 

「これが名誉の負傷か……」

 

また、あのファンファーレが脳内に鳴り響く。

 

『二階級特進しました。階級が三等陸曹になりました。三等陸曹の階級章を贈呈します』

 

死んでねぇよ!

全くもって失礼な個性だ。

階級……か。

 

戦闘後に勲章を貰えるとは、まるで、本当に戦争にでも行ってきたかのようだ。しかし、階級章を付けて何か利点があるのだろうか。

続けて、また、ファンファーレが脳内に鳴り響いた。

 

『伍長になったことにより新たな技能を取得しました。『銃器の扱いの基本』を取得。『ステータス確認』を取得」

 

階級が一つ上がるにつれ、一つ便利な技能をくれるらしい。

『銃器の扱いの基本』は便利そうだ。だがステータス確認はもっと便利そうだ。

実際便利だった。『ステータス確認』は、今解放している装備とその詳細などいろいろと書かれているが、途中で飽きて読むのをやめた。しかし、いつのまにかこんな武器まで解放しているとは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

入院中、毎日銃を真っ直ぐ構える練習を行っていた。退院後はさらに、銃の反動に慣れる訓練も追加するはずだった。しかし、そうはいかなかった。

そう、高校の範囲の勉強だ。雄英はエリート校、予習なしで付いていけるほど俺は要領がよくない。凡人だろうが天才だろうが努力はするんだ。

それを否定したい者の気持ちも分かる。俺だってそう思ってしまう心があるのだから。しかし、否定しても自分が上に行ける訳ではないから頑張るのだ!

 

「分かんねぇよ!」

 

……が、がんばるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかし、彼はなかなかいいね。残り時間で十分稼げたはずのポイントを捨て、人命救助をするとは、これも個性が『自衛隊』だからかな? この子は是非とも我が雄英に入学させたいね」

 

「しかし、理事長。もうヒーロー科に空きはありませんよ」

 

「大丈夫さ。たった一人くらい多くたって問題はないだろ?」

 

「はあ、理事長がそういうのなら我々も止めませんが、さっきも同じようなことを言って緑谷 出久という少年もいれたじゃないですか」

 

「いいじゃないか。それでね、この子は君のクラスに入れようと思うんだ。まったく、攻撃されないと個性がロクに使えないなんて……とても面白いじゃないか!」

 

ネズミは高らかと笑う。

 

変なのが来たな。とA組の担任はつくづくそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

入院していて聞けずじまいだったが、果たして出久はどうなったのだろうか。

あまり言いたくはないが、無個性の出久があんなロボットを倒せるとは到底思えない。最悪、レスキューポイントで……無理だよな。誰にも知らされていないのだから。

こうなったら神頼みをするしかない。

 

 

嗚呼、神よ! 出久を救い給え!

 

 

そうして、訓練はちっとも出来ず……

 

「行ってきまーす」

「いてら〜」

 

高校生活を迎える事になった。

 

しかし、それにしてもこの学校は馬鹿みたいに広い。地図もなく、今自分がどこにいるのか全くもってわからん。

と、そこに上級生と思わしき人が現れた……壁から。

 

「やあ」

「……」

 

今何が起きているのか理解できなかった。人の顔だけが壁から出ている。

この人は貞子先輩と命名しよう。

 

「あは、驚いた? ところで君、新入生だよね? 迷子かい?」

「そ、そうなんです。1のAってどこにあるか教えて頂けませんか?」

「お安い御用さ」

 

 

 

 

 

 

 

 

あのひとがいい人でよかった。変な人だけど!

 

1ーA

そう書かれた教室のドア。この先にはエリートたちがいる。俺はそれについていけるだろうか。

まあ、やってみなければわからない。

 

「ええい、儘よ!」

 

勢いよくドアを開け、教室に入る。

 

「……あ」

「……あ」

 

爆豪と目が合ってしまった。

俺が受かったのだから、彼が受かるのは当然だ。だが、同じクラスとは思いもつかなかった。

俺はなるべく顔を合わせないようにてくてくと自分の席に着いた。

 

「……」

「……」

 

凄く気まずい。

あの日以来、全く話していなかった。それもそのはず、あんなことをしたあとでは気まずくて話など出来ない。

 

「おい……おいったってんだよ! 返事しろやゴラ!」

「ど、どうしましたか?」

 

「何シカトしてんだテメェ! 一回俺を倒したからって調子乗ってんじゃねぇよ! なんなら今ここであん時のお返ししてやろうか!」

 

「おやおや、誰かと思えば慢心して僕にぼこされたエリートくんじゃないか。ちなみに決闘はお断りだ。正々堂々戦ったら俺負けるもん」

 

「やっぱ調子乗ってんじゃねぇかテメェ!」

 

この後滅茶苦茶ぼこされた。

 

 

 

 

数分後、今度は会場で質問していた意識高い系こと飯田さんと爆豪がなにやら言い争っていた。

いいぞ! やってしまえ飯田さん!

 

 

その時、ドアが少し開く。

そこには、緑谷 出久が居た。

 

「出久!」

「ヒロくん!」

 

感動の再会とでも言おうか。

 

「どうやったんだ? なあ、どうやって個性もつかえず、あのロボットを倒したんだよ? それともレスキューポイントか? 出久は優しいもんな!」

 

「そのね、驚かないで聞いて欲しいんだ。僕ね……個性が現れたんだ……」

「はっ⁉︎……」

「まじかよ! こりゃめでたい。今日は赤飯だな!」

「ヒロくん……恥ずかしいからその……もうやめて!」

 

「そのモサモサの頭は……地味めの」

 

と出久を呼ぶ声。

その声の正体はショートヘアの明るい女の子。まったく、いつこんな子と仲良くなったのか……うらや、けしからん!

 

「お友達ごっこがしたいなら他所いけ。ここは……ヒーロー科だぞ」

 

恐らくA組の担任であろう寝袋に入り、横たわるこの男は10秒チャージを1秒でチャージし、寝袋を脱ぐ。

 

「ハイ、静かになるまで8秒かかりました。時間は有限。君たちは合理性に欠けるね」

 

きっと合理性だけを人間に詰め込むとこんな人間が出来るのだろう。髪はボサボサ、ヒゲはまったく手入れされていない。ぱっと見小汚いと言われてもしょうがないだろう。

 

「早速だが、体操服に着替えてグラウンドに出ろ。」

 

 

「えー、これより個性把握テストを行う」

『個性把握テスト⁉︎』

「入学式は⁉︎」

「ガイダンスは⁉︎」

「ヒーローになるならそんな悠長な行事に出る時間ないよ」

 

俺達が今からやるのは個性ありの体力テスト。小学、中学の頃やった体力テストは公正公平を重んじ、個性の使用は禁止だった。それが今、個性の使用を許された。

皆が面白そう面白そうと言うが俺はちっとも面白そうに感じない。何故かって? 個性自体全く使えないし、使い所が無いからだよ!

 

()()()()……か。ヒーローになるためのこの3年間。そんな腹づもりで過ごす気でいるのかい?」

 

気怠そうな眼つきが、鷹の目のように鋭くなった。俺はそれを見て、全身が小刻みに振動する。

 

「よし、トータル成績が最下位の者を見込みなしと判断し、除籍処分としよう。生徒の如何は先生の『自由』ようこそ、これが雄英高校ヒーロー科だ」

 

お父さん、お母さん。入学初日の今日、僕は退学するかもしれません。

 

「 最下位除籍って、入学初日ですよ⁉︎ いいや、初日じゃなくても理不尽すぎる‼︎」

「そうだそうだ!権力の横暴だ!」

 

ここは便乗しておこう。

 

「理不尽、横暴ね……自然災害、大事故、身勝手な(ヴィラン)。いつどこから来るかわからない厄災。今の日本には理不尽が溢れている。そういう理不尽を覆していくのがヒーローだ。放課後マックで談笑したかったらお生憎様。これから3年間雄英は全力で君たちに苦難を与える。『Puls ultra(さらに向こうへ)』全力で乗り越えて来い」

 

 

第1種目:50メートル走

 

飯田さんが3秒04とクラス内最高記録更新を出した。

他にも個性を使い、4秒13、5秒51、5秒58、と皆続々に好成績を残していく。ちなみに俺は6秒81だ。

その後も握力、立ち幅跳び、反復横跳び、とやっていき、最終種目ボール投げとなった。

 

「ふっふっふ、ソフトボール投げか……まだ一回も試してないが仕方がない。ぶっつけ本番だ。やってやる!」

 

そう意気込み、円の中に入る。

 

「『演習モード』来い、60mm迫撃砲 M2!」

 

そう、これは『ステータス確認』をした時、発見した。詳細を見ると解放条件が手榴弾を使うだった。

つまり、知らず知らずのまま、俺は試験中に迫撃砲を解放していたのだ。

 

 

 

 

円の中に迫撃砲とその砲弾、自衛隊愛用のガムテープを出現させる。

早速ガムテープでボールを砲弾の先端に巻き付ける。巻きつけ終わり、今度は迫撃砲を三脚に載せる。そして仰角を調整する。といってもどう調整すればどう当たるかなど分からない。ただ、真上に飛ばしても自分に返ってくることだけは分かる。後はボール付きの砲弾を飛ばすだけ。

砲弾を持ち、砲の入り口に砲弾の尻を入れる。

 

「砲撃よーい! 撃て!」

 

砲弾から手を離し、耳を塞ぐ。

間の抜けた音がした後、砲から煙が上がる。

 

「弾着、10秒前。…………弾着! 今!」

 

砲弾が落ちる音はした。しかし、爆発はしなかった。どうやらこの『演習モード』では恐らく、爆発物は爆発しない仕様となっているのだろう。だから以前手榴弾のピンを抜こうとした時抜けなかったのだろう。

 

先生のスマートフォンには1500メートルと表示されていた。

 

脳内でファンファーレが鳴り響く。

『条件を達成しました。野戦特科の資格を贈呈します。また、野戦特科の資格を得たことにより、拳銃の所持を認められました。P220が使用可能になりました』

 

やったぜ!

 

 

そして、次は出久の番だ。

 

「緑谷くんはこのままではまずいぞ!」

「なんでだよ? 出久には個性が現れたんだろ? だったら……」

「んなのあいつが無個性なくせに嘘をついたからだろ」

「無個性⁉︎ 彼が入試時に何を成したか知らんのか⁉︎」

「そらみたことか! 出久にはもう個性が現れたんだよ! もう無個性じゃありませーん!」

「んだと!」

 

そう俺らが雑談している間に出久はボールを投げた。

しかし、

 

「ほら、みたことか。やっぱり無個性のデクじゃねぇか」

 

「46メートル、個性を消した。それが俺の能力だ。つくづくあの入試は合理性に欠くよ。お前のようなやつでも入学できてしまう。見たとこ個性を制御出来てないんだろ? また、行動不能になって誰かに助けてもらうつもりだったか?」

 

「そんなつもり……」

 

「どういうつもりでも周りはそうせざるを得なくなるって話だ。昔、暑苦しいヒーローが大災害から一人で千人以上を救い出す伝説を創った。同じ蛮勇でもお前は一人救けて木偶の坊になるだけ。お前の力じゃヒーローになれない」

 

鷹のように凝視していた瞳を瞑る。

 

「個性は戻した。ボール投げは二回だ。とっとと済ませな」

 

何を言っているのか、蚊帳の外の俺たちには聞こえなかった。

出久は目を閉じ、ぶつぶつと口を動かす。何を考えているのか俺には分からない。出久は目を開ける。

助走をつけ勢いよく、ボールを投げた。

凄まじい速度で空を飛んでいく球。先生のスマートフォンには705.3メートルと表示されていた。

 

「なっ⁉︎」

 

「先生……! まだ……動けます!」

 

そう言う出久の人差し指は太くなり、爛れ、赤黒く変色していた。

どうやら出久は個性の制御を出来ていないらしい。いきなり強い個性が出現して一気に先を越されたと思ったが、そんな心配は無かった。

 

「どういうこったごら! 訳を話しやがれ!」

 

爆豪が緑谷に勝負を仕掛けてきた。しかし、いとも容易く先生に無力化された。

爆豪が驚愕し、襲いかかる気持ちも分からなくもない。無個性で、爆豪にとってはそこら辺の石ころという認識だった。それがいま同じ土俵にいる。プライドの塊である爆豪はそれが許せないのだろう。

 

トラブルはあったが、体力テストの全種目が終了。

 

「んじゃぱぱっと結果発表。ちなみに除籍はウソな」

 

その言葉に皆頭の上に『?』を浮かべていた。

 

「君らの最大限を引き出す合理的虚偽」

『はああああっ!?』

「あんなのウソに決まってるじゃない……。ちょっと考えてみれば分かりますわ」

 

多くのものがそう叫んだ。特に俺と出久は。ちなみに出久は最下位。俺は20位。個性には勝てなかったよ。

 

「そういうことだ。これにて終わり。教室にカリキュラム等の書類あるから目ぇ通しとけ。それと、緑谷。リカバリーガールのとこ行って治してもらえ。明日からもっと過酷な試練の目白押しだ」

 

 

俺たちは知らない。担任の相澤先生は去年一クラス全員を除籍処分していることを。

 

 

 

 

 




しかし、題名が安直だな。

まだ、能力に憲法9条等を入れてないときは個性把握テストのボールを野戦砲で飛ばしてやろうと考えてました。しかし、そんな武器をいきなり使えてはつまらない。なら武器を縛ればいいと考えました。
バランス崩壊しないレベルで自衛隊のいい武器があれば是非教えてください。

よろしかったらお気に入り登録、ご指摘、評価等お願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

5話 ビル内攻防戦!

皆さんこんにちは、昨日いつのまにか『ルーキー日間』で15位になり感動していました。

それにしてもまだこの作品を投稿してから4、5日しか経っていないのにも関わらず、ユニークアクセス数が4700回を超え、お気に入り登録者が160人を超えていることが未だに信じられません。

さて、こんかいですが、戦闘シーンなど雑なところがあるかもしれません。そして、なぜそこでそうした? と思う方といると思います。
そんな場合は何も気にせずご指摘してください。

ヒロアカの耳郎 響香可愛くないですか?



 午前の授業は必修科目の普通授業。そして、午後はヒーロー基礎学。

 

「わたしが! ふつうにドアから来た!」

 

 つまんな

 

 このヒーロー基礎学は最も単位数が多い。そして今日は実習の戦闘訓練だ。そして、各々が提出した「個性届け」と「要望」に沿ってあつらえた戦闘服(コスチューム)が届いた。それを着て、グラウンドβに集合。

 

 皆『ザ☆ヒーロー』といった見た目の戦闘服(コスチューム)。その中で異彩を放つのが俺の戦闘服(コスチューム)である。ヘルメットを被り、迷彩服に身を纏った姿。その他に要望して付けてもらった補助品等が腰のポーチに付いている。

 自分でも周りと比べて『浮いてるな』と感じてしまう。

 

 

 しかし、女子の戦闘服がエロい。八百万さんの戦闘服(コスチューム)なんて警察に捕まるレベルだ!くそっ、駄目だ、直視してると理性が消えそうだ。まずい、俺のエクスカリバーが宝具を解放しようとしている!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これから行うのは「敵組(ヴィラン)」と「ヒーロー組」に分かれての、2対2の屋内戦。

 設定は敵が核兵器を隠し持っていて、ヒーローはそれを処理するのが目的。

 勝利条件はヒーロー側は制限時間内に敵を全て捕まえる。もしくは核兵器を回収。

 ヴィラン側は制限時間内まで核兵器を守るか、ヒーローを捕まえるか。

 

 組み合わせはくじ引きで決める。

 しかし、どうしても1組だけは3人になってしまう。そこは臨機応変に対応との事だ。

 ちなみに、3人チームは瀬呂さん、切島さん、峰田さんだ。

 出久は、仲のいい例の女の子。

 爆豪は飯田とペア。このペアが一番面白そうだ。

 俺は八百万さんとペアになった。

 

「なぁ、山口ぃ……交換してくれよぉ……なぁ、山口ぃ……!」

 

 まるで、地獄の亡者のように覚束ない足取りでこちらに一歩、二歩と峰田はすり寄ってくる。

 誰が交換してやるものか! せっかく女子と会話できるチャンスなんだぞ!

 

 峰田は仲間二人に取り押さえられ連れていかれた。彼らは「よろしくな!」と意気揚々に峰田は話しかけられ、二人に両腕を掴まれていた。

 

「いやだぁぁぁ! 俺は女が好きなんだよぉぉ!」

「照れんなって、男同士、熱く語り合おうぜ!」

「くそっ! 話が全く噛み合ってねぇ!!」

 

 この熱血男切島と瀬呂は峰田の話を全く聞いていない。実戦が楽しみと浮かれている。

 ……可哀想に。峰田、君の犠牲は無駄にしない。

 

 そして、全てのペアが決まると、オールマイトが対戦相手のくじを引いた。最初の対戦相手は出久&麗日と爆豪&飯田に決まった。

 オールマイトは続々とくじを引いていく。

 俺たちの対戦相手は3人チーム……峰田、切島、瀬呂だ。

 俺達が敵役で、相手がヒーロー役だ。

 

「覚えとけよ、山口ぃ。この怨みぃ……果たさておくべきかぁぁ〜! いいかお前ら、今日の戦いはおいら達が絶対勝つぞ!」

「「おお!」」

 

 やばいどうしよう。数で不利なうえこっちは個性が使えるのが実質一人。

 

「山口さん。早速ですが作戦会議をしましょう。まず、お互いの自己紹介……個性を教え合いましょう」

「ひゃ!……はい!」

 

 声が裏返ってしまった。

 

「まず、私の個性ですが、『創造』と言い、生物以外ならなんでも創れますの。ただし、自分が知らない構造の物は創れません。そして、大きな物、複雑なものは作成に時間がどうしてもかかってしまいます。あとよく創造するものなら複雑でも普通よりは早く創れますわ」

 

 強くね?

 

「では、次は俺が……個性は『自衛隊』憲法9条により先制攻撃は出来ません。ただし、『演習モード』というものを使えば、先制攻撃攻撃が出来ます。しかし、エアガン程度の威力しかありません。攻撃するには、相手からの攻撃が必要不可欠です」

 

「そ、そんな個性でどうやって雄英に合格をなさったのですか?」

 

 なにこの人。馬鹿にせず、シンプルに疑問を抱いてる!

 

「ロボットの攻撃をわざと受けてから、攻撃しました。あとレスキューポイントですね。40ポイント稼ぎましたから」

「なるほど、では本題に入りましょう。どう防衛するか……」

 

 一通り対策を練り、どう連携するかを話し合った。そして、作戦会議が一通り終わった時、ビルから爆音が轟く。

 

「な、なんですの⁉︎」

 

 ビルのガラスは全てが割れ、一つの大きな穴がポッカリと空き、半壊していた。

 モニターを見ると、爆豪と出久が戦っていた。それだけで、何が原因でどうしてそうなったのかが容易に想像出来てしまうのが恐ろしい。

 そして、戦いは爆豪が圧倒的だった。爆豪は戦闘のセンスの塊、単純な戦いでは恐らく、A組で勝てる者はいないだろう。

 出久は滅多打ちにされ、ボロボロ。そして、ついには逃げ出した。ヒーローのすることではない。しかし、出久はそんな簡単に諦める男ではない。

 人より劣っているからと、人一倍努力し、チャンスを掴みとる。

 あいつは何かやる。最後の最後、もうだめだって観てる皆が思った時大技を出すぞきっと。

 まあ、買いかぶりすぎと言われればそうだが。

 

 出久が爆豪に向かって何か叫んでいる。観客の俺達には分からないが。

 爆豪の右手が迫り来る。

 出久はそれを避けるわけでも、反撃するわけでもなく、ただ、虚空に向かって拳を振り上げた。

 その拳の勢いが上昇気流となって、コンクリートの天井を突き破り、最上階へと達した。そして、最上階に居る麗日は出久によってへし折られた柱に触れ、空をバットのように構えた。

 上昇気流によって突き上げられたコンクリートの破片を柱バットを使って飯田へ飛ばす。

 飯田が瓦礫の散弾に気を取られている隙に麗日が核に触れ、試合終了。今回は出久たちの戦術的勝利だった。

 

 虚空へと振り上げた出久の拳は、見るも無残なものとなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とうとう俺らの番がやってきた。

 

 俺達ヴィラン側は先にビルに入って、待ち構え、ヒーローの侵攻を阻止する。

 

「やっべぇ、緊張してきた。手足は震えるし、心臓もバクバクて今にも死にそう」

「大丈夫ですわ! 作戦通りにやれば、3人相手でもなんとかなります!」

 

 本当に八百万は頼もしい。

 俺達は5分間の間出来るだけ防衛陣地を築き上げた。そして、俺はある秘策を使う事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、侵入成功……って言っても入り口ここだけだけどな」

「で、どうする。ここは死角が多い。あの山口の個性はここじゃ厄介そうだ」

「なーに心配いらねぇ、おいら達はちゃんと陣形を考えた。それに敵は二人だけだ」

「ようは核に触るだけだろ。簡単じゃんか」

「ハァ……単純だな、切島は」

 

 

 

「オラ! ……しっかし、バリケードだけで敵がいねぇってのもつまんねぇな」

「そういうなって、お前みたいな個性の奴がいなきゃ、俺達二人はこのバリケードを乗り越えるのも一苦労なんだからさ。それに油断すんなよ。敵がどこに潜んでいるかも分からねぇ」

 

 切島によって、二人が構築したバリケードはいとも容易く壊されていく。

 切島が先行し、それに二人が少し遅れて続く。最後尾の峰田は後ろ等からの奇襲を警戒、真ん中の瀬呂は2人のアシスト。

 シンプルながらも厄介な戦法だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『自衛隊』それは戦後日本を守るたった一つの砦。しかし、忌々しい憲法9条のおかげで、攻撃されるまでは何があっても攻撃出来ない。つまり、「やられる前にやる」というのが出来ないのだ。そんな憲法に狂気を感じる。侵略されているのに、攻撃するには自分が死ぬか、もしくは、戦友が死ぬのを待たなくてはいけないのだから。

 それがどれほど辛いことか。だから、自衛隊は高めた。守ることただ一点を。防衛に関して、自衛隊は他の追随を許さない。

 自衛隊は撃滅する。祖国を侵略する愚か者どもを、1人残らず。

 彼ら(ヒーロー側)はすでに、侵略行為をしているのだ。

 

 

 

 

 バリケードを続々と破壊し、侵攻する切島の足に何かが引っ掛かり、外れた。

 切島はバリケードの一部だと決めつけ、疑わなかった。金属が床に落ちる音がする。そして、数秒後、爆発した。

 

『敵の侵略を確認。専守防衛の下、これを撃滅せよ』

 

 戦いの火蓋は切って落とされた。

 

「痛たたっ、何が起きた」

 

 たしか、俺がバリケードを破った後……

『切島!』

 そうだ、何かが爆発する寸前、俺は瀬呂に突き飛ばされて……そうだ、瀬呂!

 

「おい、瀬呂! しっかりしろ! おい!」

 

 だめだ、完全に伸びてやがる……俺のせいだ。俺が何かに引っかかった感覚に何の疑問も抱かねぇで……俺の不注意のせいで俺以外が傷ついてしまった。あの時、瀬呂はトラップに気づき、訓練とはいえ、自分の身を顧みずに俺を助けた。

 瀬呂、面目ねぇ!

 

『おーい、切島ぁ! お前ら大丈夫か⁉︎』

『俺は……大丈夫だ。ただ……』

 

 次の瞬間、また爆発が起きた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺の秘策。それは手榴弾を使った簡易地雷。

 直接的攻撃は当然『憲法9条』に引っかかる。なら地雷などの防衛用の間接的攻撃はどうなるのか……だ。

 地雷に引っかかるということは、もうすでに自国領に侵略されているということ。

 結果は『憲法9条』に無事引っかからなかった。

 

 手榴弾を使ったトラップに使用する道具は手榴弾の他に糸(出来れば釣り糸などの強固で、細く、透明なものが望ましい)くらいだ。釣り糸は要望し、補助品に入れてもらった物を使用した。

 L字型のトラップをやりたいところだが、時間がないのと、張り付ける場所があまり無いため、ただ横線にしてその端に手榴弾を括り付ける単純なトラップにした。

 まず、パイプなどの糸を縛り付けられる場所を選ぶ。そしてそこに手榴弾を括り付け、安全ピンに糸を縛る。そして、その横のパイプに糸を繋げる。

 侵攻してくる敵が『うっかり』線を足で引っ張りピンが抜ける。それとともに安全レバーも外れ数秒後に爆発。

 侵攻してきた敵は手榴弾をもろに食らう。しかし、一番被害を被るのは中衛の者だ。引っかかった者は助かり、引っかからなかった者が、自分だけ巻き込まれる

 しかし、ただトラップを設置しただけではバレてしまう。だからこそのバリケード。

 バリケードをそこらかしかこに設置することにより、それ、相手の狙いはバリケードで自分たちの侵攻を遅らせようとしているのだと錯覚する。そう錯覚させるため、バリケードは一番入念に作った。

 そして、バリケードしかないと油断していたところに突然、手榴弾が彼らに襲いかかる。

 

 

 そして、作戦は第二フェイズへと移行する。

 

『C4を起爆しますわ。気をつけてください』

『了解』

 

 無線でそう会話する。

 

 第二フェイズ

 トラップに引っかかり、統率が乱れた直後に天井を爆破し、二手に分断。

 最低1人は無力化したと仮定し、二手に分かれて一対一で戦う。

 何故、2対1で戦わないのかというと俺が行っても邪魔なだけだ。

 援護射撃なんてこんな狭いところでは誤射のもと。仕方がないのだ。

 

 トラップのある真上に八百万さんが創造したC4を設置しておいた。

 もし、分断出来ないとしても、行動を制限できる。最悪、生き埋めにしてしまうかもしれないが。

 八百万が起爆スイッチを押した後、二手に分かれる。

 C4は入念に二階上の床まで設置した。これで壁の役割は果たしてくれるであろう。

 

 

 恐らく、前衛はあの切島だ。見るからに戦闘タイプ。他の2人は後衛のような見た目だ。

 八百万には切島の相手をお願いする。もし、あちらに2人以上いる場合は、手短に無線で知らせ、八百万だけ撤退し、俺はそちらに向かう。

 撤退した八百万は個性を使い、防衛陣地をさらに強固なものにしてもらう。

 俺の方に2人以上いる場合、八百万に伝え、八百万は撤退し、防衛陣地で迎撃の構え。

 俺はなるべく時間を稼ぎつつ撤退。

 もし、その防衛陣地をも突破されれば俺たちの負けは決まる。しかし、2人とも一対一に持ち込めるのであれば、これを撃滅。

 尚、この作戦は相手チームの1人が気絶していることを前提に行うものであり、3人とも意識があるのなら撤退せねばならない。

 

 爆発後、二手に分かれる。そして敵を視認次第無線で伝える。

 

『こちらに2人いましたましたわ。切島さんと瀬呂さん。しかし、瀬呂さんは気絶しております。峰田さんはこちらにおりません。恐らく分断は成功ですわ』

 

『了解』

 

 今回の室内戦では取り回しの悪い六四式では逆に不利である。そして、無いとは思うが、跳弾したら怖いため使用できない。

 だから前回解放した『P220』の出番だ。

 俺はP220片手に走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 切島のことを瀬呂が突き飛ばしたと思ったら爆発が起きて、そしてまた爆発がして分断されちまった。

 くそっ! なんなんだよ。なんでおいらばっかりこんな目に。山口め、絶対にぶちのめしてやる。

 おいらは他の通路に向かって走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見つけたぞぉ、山口ぃ!」

 

 峰田の個性であろうか。野球ボール程の黒い球がこちらめがけて飛翔する。

 相手がどんな個性かも分からないのにその個性に触れるわけにもいかないため、横の通路に身を隠す。

 

 腕だけを通路に出し、P220で牽制射撃。

 

「甘いんだよ!」

 

 突然P220が引っ張られる感覚がした。俺は何があったのかも分からず、グリップから手がすり抜けてしまった。

 

 あれは峰田のボールを瀬呂の個性『テープ』にくっつけたものである。それを峰田は拳銃だけにくっつけ、山口から拳銃を鹵獲した。

 

「まったく間抜けだなぁ、山口ぃ?」

 

 なんだあいつ、クソムカつく!

 俺は腰についている新たなサポートアイテムを取り出し、構える。そのアイテムとは『警棒』だ。

 それにしても、なぜ俺はいきなり拳銃を取り上げられた。

 奴の個性は一体なんなんだ。念力系か。

 

 とりあえず、個性使用者相手では長期戦は不利だ。一旦撤退か?

 いや、撤退するにも峰田が今いる通路を通らなくてはならない。

 それなら、

 

「ピン抜き良し! 投げ!」

 

 ソレを投げたと同時に目を瞑り突撃。投げたものの正体は八百万が創った閃光手榴弾。この通路が強い光に照らされた。

 

「うぉ、眩しい!」

 

「ヒャッハー! 俺から銃を取り上げたことを後悔するがいい!」

 

 目を開け、峰田を捕捉。ブッ叩いて無力化させてやる。

 

「や、やめろぉ! こっちにくんじゃねぇ……なんてな」

 

「ぐほっ、」

 

 突然足が止まり、勢い余って顔面をコンクリートの床に打ちつける。

 

「引っかかったな、おいらの個性は『もぎもぎ』頭に生えているボールを千切って投げれる。おいらの千切ったボールはおいら以外にならなんだってくっつくんだぜ。それはお前が通路に隠れている間に仕掛けておいた。仕返しだぜ! それに転んだ場所にもおいらの千切ったボールは敷き詰められてるのさ!」

 

 たしかに、どんなに動こうとしても動けない。しかも、下を向いているせいでいま自分がどうなっているのかも分からない。

 俺は拘束証明のテープを巻き付けられ、無力化されてしまった。

 

「はっ、勝った。おいらの完全勝利!……」

「次にお前は……」

 

「『ざまあみろ、山口ぃ! おいらを敵に回したのがいけなかったな』と言う!」

 

 無力化はされたが、俺にはまだ策があるんだぜ。峰田さんよ!

 

 峰田は浮かれ、切島達との合流を目指す。

 

 しかし、峰田の進行先にはトラップがあった。

 

「うおしゃ! 勝った勝った! 今日の夕飯はドンかつだ!」

 さあ、切島達と合流して最後の1人、八百万無力化してやる。

 その時、たまたま胸や尻に触れてもしょうがないよなぁ?

 

「待ってろ八百モモっぱい!」

 

 何か線を引っ張ったような感触が足から感じた。

 

「あっ……あっ……畜生!」

 

 峰田の計画は失敗に終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 ドーンと高い爆発音がこっちまで聞こえた。

 そして、数分後。

 

「ヴィランチームの勝利‼︎」

 

 どうやら、八百万がうまくやったみたいだな。さて、俺も戻るか……

 

「……動けない」

 

 今の俺はまさにゴキブリホイホイにかかった間抜けなゴキブリのようであった。

 

 




こんかいはどうでしたか。
戦闘シーンなど迫力等に欠ける点があったと思います。本当はもう少し自衛隊の個性を使って無双をしようとも思ったのですが、八百万さんも活躍させねばと考えた結果こうなってしまいました。

そして、なにより峰田の戦い方が全く分からずたいへんでした。そのため、納得できない点も多かったと思います。

あと、一部の方がもっと個性を強くしてほしいと言っていた為、番外編で入試試験を憲法9条、武器制限なしにして書いていたのですが、自由度が高すぎて逆に何を使えばいいか、分からなくなったり、一方的すぎてつまらなくなりました。

ぜひご指摘等お待ちしております。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

6話 日常に忍び寄る影

皆さんお久しぶりですね。
演習には実弾も使うとの意見がありましたが仕様ということでなんとかなりませんか?
あと自衛隊ってゴム弾などの非致死性兵器を使えるのでしょうか?

今回はお話を進めるのを手間取り、自分で読んだのですがやはり前話と比べると面白みに欠けるなと思います。


ある夜のこと。

人の手らしきモノを体中につけた男と、体が黒いモヤに包まれたバーテンダー服を身につけた男。そして、脳らしきものが剥き出しになった者が、バーに集う。他の者は誰1人としていない。

店内はレトロな雰囲気を醸し出し、さまざまな品種の酒が棚に飾られている。

店内には黒いモヤの男がグラスを拭く音だけが響き渡る。

 

ここは彼ら(ヴィラン)の隠れ家。

手を体中に付けた男は新聞を片手に良からぬ事を話し始める。

「見たか、コレ? 教師だってさ。なァ、どう思う? 平和の象徴がヴィランに殺されたら?」

砂漠のように乾ききった口を引きつらせて嗤う。

 

暗闇で息を潜めていた奴ら(ヴィラン)が密かに動き始めようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここ数日、マスコミが雄英付近で現れるようになった。

そう、彼らの目的は、

『オールマイトの授業はどんな感じですか?』

教師になったNo. 1ヒーロー。オールマイトだ。

 

オールマイトが教師になったことはすぐ世間に知れ渡り、マスコミは雄英生徒に取材を試みた。

彼らは雄英生徒の登下校の時間帯を狙い集まる。その光景はまるで餌に群がる鯉のようだった。

 

「オールマイトにどのような印象を受けましたか?」

 

俺にまで取材が来た。

 

「朗らかなオッサンですね……そんなことなんかどうでもいいんです! そんなことより自衛隊の素晴ら……」

 

後半はカットされた。

 

そして、取材の被害に相澤先生やA組の生徒まで。

 

「オールマイト……あれ⁉︎ 君『ヘドロ』の時の‼︎」

 

「やめろ」

 

爆豪はヴィランに襲われた事があったらしい。俺は全く興味が無かったせいで記憶に全くない。

爆豪はその日以降ご機嫌斜めだ。これはマスコミがここ(雄英)から立ち去るまで爆豪は直らないであろう。

 

「オール……小汚っ‼︎ なんですかあなた⁉︎」

 

「彼は非番です。授業の妨げになるんでお引き取り下さい」

 

先生は端的に伝え、180度回り、校舎へと戻る。

それを追いかけようと敷地内に入ろうとするメディア。しかし、雄英の警備は不法侵入者の侵入を決して許さない。

 

メディア共の前に壁が立ち塞がった。

 

「たっく、なんだよ。二日も張ってるってのによ!」

「こっちなんか五日だぞ!」

「一言くらいくれてもいいのにさ」

 

不満を漏らすメディアの背後に良からぬ者が壁をじっと見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「急で悪いが、君らには学級委員長を決めてもらう」

 

その途端、皆が我こそはと手を挙げる。

普通科なら雑務で皆やりたがらない。しかし、ここヒーロー科では集団を導くというトップヒーローの素地を鍛えられる役なのだ。

 

俺はめんどくさいのは嫌なので、やりたくない。

 

そして、いろいろと話は進んでいき、結局投票で決めることになった。

爆豪の暴走を止めてくれそうな飯田に入れておいた。彼は誰とでも対等に接っし、真面目だ。これほど委員長を絵に描いたような人物はいないだろう。

 

しかし、結果は出久が3票、八百万が2票で出久が委員長、八百万が副委員長となった。

ちなみに飯田はというと1票だった。

 

果たして出久が爆豪を制御できるのだろうか……無理。

そんなこんなで午前はあっという間に終わってしまい、今はお昼。

 

ここの食堂では格安で美味しい食事が頂けるため、ほとんどの生徒はここに集まる。

 

「いざ委員長をやるとなると不安だよ……」

 

出久はハァと大きなため息を吐く。

 

「ツトマル」

「マルマル」

 

「大丈夫さ、緑谷くんのここぞという時の胆力や判断は多を牽引するのに値する」

 

「おいまて、今聞き捨てならないセリフが聞こえたぞ。その言い草だとまるで出久に入れたように聞こえるんだが……あれだけやりたかったんじゃないのか?」

 

「『やりたい』と相応しいか否かは別の話。僕は僕の正しいと思う判断をしたまでだ」

 

「ハァッ? そんなことで入れたのか? せっかく爆豪の暴走を止めてくれそうだから入れたってのに!……ん? 」

 

「「「僕?」」」

 

「ちょっと思ったけど飯田くんって、坊ちゃん?」

「そういわれるのが嫌だから一人称を変えてたんだが……俺の家は代々ヒーロー一家なんだ。俺はその次男。ターボヒーロー『インゲニウム』は知っているかい?」

 

「知らん」

「知ってるよ!……」

 

その後、出久のMG42のような高レートのマシンガントークが炸裂。

途中途中、個人情報までも熱く語る。出久さんや、そこまでいくとヲタク魂というよりストーカー魂と言ったほうが相応しいぞ。

飯田くんも若干引いてるぞ。

 

平日、のどかな学生の昼休み。何気ない日常の風景は耳をつんざくサイレンによって壊された。

 

『セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんは速やかに屋外へ避難して下さい』

 

次の瞬間、パニックの波が押し寄せる。

出口は我先にと避難しようとする人で詰まっていた。後方からは人が押し寄せ、前は詰まり、身動きが取れなくなった。

 

皆、訳がわからず叫び出す者、前の人、後ろの人に罵声を浴びせる者。

何が起きたか分からないという恐怖が無数の恐怖を呼び、もう収集などつかない。

 

低身長の俺は人の波に攫われ、プレス、肘打ちなどが容赦なく襲いかかる。しまいには肺が圧迫され、呼吸さえ出来なくなり、酸欠に陥った。

 

脳みそが抜き取られたように頭がすっからかんになり、だんだんと視界が暗く、狭くなっていく。

意識が遠のく中、ふと天井を見上げる。

 

苦しみながら意識が消えていくのをなんとなく実感していくなか、ぼんやりと宙に浮く人影が瞳に映る。

 

麗日の個性により宙に浮いた飯田は個性を使い、人の視線が集まる扉の上を目指す。

扉の上のパイプを片手で掴み、叫ぶ。

 

「大丈夫! ただのマスコミです! 何もパニックになることはありません。大丈夫! ここは雄英、最高峰の人間に相応しい行動をとりましょう!」

 

 

 

まるで、耳になにかを詰めたかのように音が聞こえず、もう意識が消えるのだと分かった。もうさっきまでの苦痛も感じなくなった。そんな中、俺が最後に見た光景は、非常口の人のマネをする飯田の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……はっ、夢か! あともう少しでプレス加工される所だった!」

 

数十分後、俺は目が覚めた。さっきの事があった後に自分がプレス加工される夢なんて笑えない。

ベットで寝ているということは、ここは保健室だろう。時計を見る。

悪い知らせだ。後もう少しで5時間目が始まる。

俺はベットから飛び上がり、教室へ目指した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うおおお! 走れ! 走るんだ俺! いそがないと相澤先生から大目玉を喰らう!」

 

日々の自衛隊式訓練で培った体力を本当にどうしようもない理由のために使ってしまった。

 

案の定遅刻した俺は大目玉を食らう覚悟をしたのだが、相澤先生は俺の身を案じてくれていた。まったく教師の鏡だな!

尚、遅刻扱い。

 

その後、パニックの原因がマスコミと知った山口は、それはそれはお怒りだった。

 

余談だが、委員長が出久から飯田に変わっていた。

 

数日後

あの日以来、山口はマスコミを見るたび「ペッ!」と唾を吐く仕草をしたり、「あれっ? あれっ? 学校に不法侵入したやつおる? 不法侵入したやつおるのぉぉ?」

などと散々煽り散らしたため、昨日から一切マスコミは来なくなった。

 

相澤先生はやり過ぎと言っていたが『よくやった』という顔をしていた。

たしかにあれが報道されては雄英の評判が地に落ちてしまう。だが、マスコミの行動も散々ネットで叩かれまくっているため報道したくても出来ないのが現状だ。とは言っても、もう少しやり方を考えた方がいいということは否定できない。

 

 

 




シンゴジラ面白い


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

7話 ヴィラン 反攻作戦

皆様大変お久しぶりです。
何故ここまで遅れたかというと本当にこのまま原作に沿ってオリキャラを入れるだけでいいのか、敵キャラを考えねば、こんなキャラでいいのかなどと考えていました。

後は怠けていました。
ノートには続きがあるんですが打ち込む気力が……

そして久しぶりの執筆のため描写や言葉使い、会話、誤字脱字など不適切な点もあるでしょう。なので、なんの迷いもなく誤字脱字報告やご指摘お願いします。

今回も短いですがご勘弁を。

階級をちゃんとした自衛隊式にすべきか考え中。


この学校の所有する土地は本当に広く驚かされる。なんたって今から敷地内をバスで3キロも移動するのだから。

この学校でなにがあっても俺はもう驚かないと声を大にして言いたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バス内では、ささやかな雑談が響き渡る。

 

「私思ったことはなんでも言ってしまうの、緑谷ちゃん」

 

唐突に蛙吹さんは俺の隣に座る出久に言う。

 

「あっ、はい!? 蛙吹さん!」

「梅雨ちゃんと呼んで……あなたの個性、オールマイトに似てる」

 

と梅雨ちゃんは訳の分からないことを言い出す。

 

「そそそそ、そうかな? いや、でもその……」

 

出久は憧れのオールマイトに似ていると言われてなのかキョロキョロとしている。

 

「待てよ梅雨ちゃん。オールマイトは怪我をしねぇ。似て非なるものだぜ。」

 

「ほんまソレな」

 

「しかし増強型のシンプルな個性はいいな! 派手で出来ることが多い。俺の硬化は対人じゃ強ええが、いかんせん地味なんだよな」

 

「はぁ、対人? 散々人が作ったバーリケードをいとも容易く壊して侵攻しやがって! 思いっきり対物じゃん!」

 

戦車かお前は、と愚痴をこぼす。

 

「まあまあ、お前も十分強かったろ? 個性で銃を出したりとか。あの手榴弾の直撃めっちゃ痛かったぜ」

 

「ハァ? 俺の個性が強いだぁ? 俺はな!……いや、待て。そういえば手榴弾喰らったよな? しかも直撃を。体に金属片が刺さって神経だの何だのをめちゃくちゃに切り裂かれたはずだろ? 何でほんの数日で五体満足に

なっているんだ?」

 

「ああ、あれな。体に金属片があったなんてリカバリーガール先生は言ってなかったから無いとは思うぞ。肉は切れてたらしいけどな」

 

意識失ってて良かった、と他人事のように笑う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここはUSJ(嘘の災害や事故ルーム)。某大阪のテーマパークとは一切の関係はない。

そして今、13号先生からありがたいお言葉を頂いている。

 

「皆さんはご存知だとおもいますが、僕の個性は『ブラックホール』どんなものでも吸い込んでチリにしてしまいます」

 

「その個性でどんな災害からも人を救い上げるんですよね!」

 

「ええ……しかし簡単に人を殺せる力です。皆の中にもそういう『個性』の方が少なからずいるでしょう」

 

先程まで漂っていた遠足気分のような浮ついた雰囲気が消え去った。

 

「この超人社会は『個性』の使用を資格制にし、厳しく規制することで一見成り立っているように見えます。しかし、一歩間違えれば容易に人を殺せる『行き過ぎた個性』を個々が持っている事を忘れないでください。相澤先生の行った体力テストで自身の力が秘めている可能性を知り、オールマイト先生の対人戦闘でそれを人に向ける危うさを体験したかと思います」

 

13号先生のその一言一言が胸に突き刺さり、抜けそうに無い。

俺が『演習モード』の状態でさえ、眼に当たれば失明なんて簡単だ。

発砲を許可され、 初めて人に銃口を向けた時、脳裏に血を流して倒れる人の姿が永遠に再生された。

引鉄に添えた指が、手が、腕が、体が、まるで時が止まったように動かなくなった。

その永遠にも感じられた葛藤の時間は本当はほんの一瞬で、俺は引鉄を引いた。

次の瞬間、胸の中が空っぽになったようにスッキリとした。しかしそれもその瞬間だけだった。そのあとに捨て場のない罪悪感だけが胸に残った。

 

 

「この授業では心機一転! 人命の為個性をどう活用するのかを学んでいきましょう。君たちの力は人を傷つける為にあるのではない。救けるためにあるのだと心得て帰ってください」

 

ご静聴ありがとうございました、と一礼する。

今日、俺は一番尊敬できるヒーローが出来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人命救助は自衛隊の本領である(主に陸自)。ここから俺の真・山口無双がはじまる!

と思っていました。

 

空間に黒い穴が現れ、平穏な日常は消え去った。

 

「ひとかたまりになって動くな!」

 

その異常に1人気づいた相澤先生は声を荒げ、生徒に忠告する。そして自分は戦闘態勢に移行する。

 

「ヴィランがやって来やがった」

 

有象無象の(ヴィラン)が雄英に現れた!

 

 

「13号にイレイザーヘッドですか……先日()()()教師側のカリキュラムではオールマイトがここにいるはずですが」

 

「やはり先日のはクソどもの仕業か」

 

「オールマイトはどこだよ……」

 

主犯格と思える不気味な男が枯れた声を出す

 

「せっかくこんなに大衆を引き連れに来たってのにさ、オールマイト……平和の象徴が居ないなんて……そうだ、子供殺せば来るかな?」

 

体が震えた。体の先端まで。ここに居てはいけないと本能がサイレンを鳴らし続ける。

 

恐らくこの状況は逃げるべきなのだろう。奴らの目標は俺ら生徒なのだから。

分かっている。脳では分かっているのに、足から根が生えたようにこの場から動けない。ただ敵の進軍を傍観する。

 

その最中、相澤先生だけが動いた。

 

「間抜けが!」

 

弦から放れた矢の如く飛び出した相澤先生に対し、遠距離タイプと思われるヴィラン共は戦列を並べ個性を一斉発射しようとする。

 

「あれ、出ねぇぞ」

 

一時的に個性を消され、動揺を露わにする。その隙を見逃してくれるほど相澤先生は優しくない。

得体の知れない布は蛇のように敵に巻きつき、ヴィランは無力化された。

 

「ばっか! あいつは見ただけで個性を消すっつうイレイザーヘッドだ!」

 

味方に注意を促すが、巨漢達はそれを無視し、相澤先生に向かっていく。

 

 

 

「消すぅ〜? へぇ、俺らみてぇな異形型も消してくれんのか?」

「いや、無理だ」

 

 

 

立ちはだかった巨漢の顔面に右ストレートが炸裂。顔面に拳の跡が深く残った。

 

「発動系や変形系に限る」

 

 

1人また1人と瞬く間に有象無象のヴィランどもが薙ぎ倒されていく。

 

「嫌だなぁ、プロヒーロー。有象無象じゃ歯が立たない」

 

首をガリガリと掻き、頭に血が昇る様を露わにした。

 

 

 

 

「すごい……!多対一こそ先生の得意分野だったんだ」

 

「分析している場合じゃない! 早く避難を!!」

 

飯田のその言葉で雁字搦めの体がやっとが動いた。

 

「させませんよ」

 

先ほど話していた黒い靄の男が入り口の前に立ちはだかる。

さっきまでは向こうにいたはず。今の一瞬でこっちまで移動したっていうのか?

 

「初めまして、我々は敵連合。せんえつながら、この度ヒーローの巣窟雄英高校に入らせて頂いたのは平和の象徴、オールマイトに息絶えて頂きたいと思ってのことでして。本来ならば、ここにオールマイトがいらっしゃるはず……ですが、何か変更があったのでしょうか? まあ、それとは関係なく、私の役目は……」

 

彼の言葉を無視し、2人の生徒が飛び掛かった。

爆豪と切島だ。

 

 

切島は硬化した腕で横払い、爆豪は爆撃による面での攻撃。

 

「危ない、危ない……生徒とはいえど優秀な金の卵」

 

一瞬、黒い靄がほんの一瞬晴れただけでまた元の形に戻ってしまう。

 

「だめだ、退きなさい2人とも!」

 

次の瞬間黒い靄が辺り一面に広がり山口達を覆い隠す。

 

 

 

散らして嬲り殺す。

 

 

 

 

黒い靄が俺の視界を暗く閉ざされ、まさに一寸先闇だ。

次の瞬間、フワッと浮いた感覚と同時に眩い光が目に入ってくる。

 

「目がぁぁぁぁ!!!」

 

反射的に両手で目を覆う。さらに背中をなにかで強打した感覚までもが俺を襲う。

 

 

 

「いてて……ここは廃ビル?」

 

 

数秒後、視覚が回復し、辺りを見渡す。

所々ひび割れ、鉄筋が露出したコンクリート。割れたガラス。その他諸々。まさに廃ビルと言うに相応しい場所だ。

しかしここは外ではなくUSJ内のどこかだろう。

 

USJの出口はひとつのみ。さらにそこを封鎖すらできた。わざわざ外に逃がしてくれるはずがない。

あの靄男の個性はワープ系のはすだ。しかも他人も転送可能。と言うことはここにもヴィランを配置しているはずだ。

 

 

こうしてはいられないと六十四式を出そうとした瞬間、左肩に強烈な痛みが走ると同時に銃声が響き渡る。

 

「グ……!」

 

あまりの激痛に膝をつき左肩を押える。両手に握られるはずだった六十四式は床に落下し、金属音が鳴る。

 

「ほお、六十四式か……これまた随分と骨董品なものを……ええ……君は確か、山口君だったか。その個性、銃に関係したものか? いや厳密には自衛隊に関係したものだろ? 違うか?」

 

「…………」

 

「『沈黙は是なり』つまり当たりだ。まあ、そんなことは重要ではない。君が銃に関係した個性の持ち主とういうことが肝心だ」

 

無機質に笑う男に俺は恐怖を覚えた。

 

「みんな! すまないがこの少年だけは私にやらせてくれ。そのかわりほかの子をどうしようが私は口を出さんし、手出しもしないと誓おう」

 

どこかにまだ潜んでいるであろう仲間にそう伝えると、

 

「はあ……しょうがねぇな。行くぞ」

 

そう仲間が言うと俺に聞こえるように足音を鳴らして去って行った。

 

 

 

「ここで私が引鉄を引いてしまえば君は死ぬ。私は与えられた仕事を終えさっさと帰れる。しかしだ。しかしそれではちっとも面白くない。私は今日という日を楽しみにしていたのだから……30秒数えてやる。その間に逃げ、迎撃態勢でもなんでも整えてくれて構わない。

ただし、ここから逃げるなんてつまらないことはよしてくれよ。もしそんなことをしてしまったら外に配置している狙撃手が君を殺してしまう。

死にたくなかったら私を殺してみろ。さあ、戦争の時間だ」

 

 

「なにが戦争だ。こんなのただの"戦闘"だ。さっきからずっとしゃべっているが弱い犬ほど良く吠えるって知ってるか? バーカ、バーカ、ヴァーカ」

 

俺はそのセリフを言い終えた後、脱兎のごとく逃げ出した。

なお、山口は終始銃口を向けられていた。

 




これから投稿の頻度はさらに落ちるでしょうがご勘弁を。

以前主人公の個性は陸自のみでは? と言われましたが、逆に言わせてください。
人に艦砲射撃する気ですか? 市街地でジェット機使う気ですか?ガラス全部割れちまうわw
そんなことしたらむしろ主人公がヴィランになっちまうよw

はい、すいません。せっかくご意見頂いたのに調子乗ってしまって。

あとあれですよ。海自も空自も小銃は配備されているので小銃が使える地点で陸自のみではないです。
配備されてますよね?
間違ってたらすいません。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

8話 孤軍奮闘

今回戦闘シーンなど物足りないと思うかもしれません。
よろしければ、こう書いた方がいいよなど是非アドバイスしてください。

これから最低でも月一のペースで投稿できたらいいな。


「1……2……3……」

 

片手に持つ銃を大事そうに手入れしながらゆっくりと数えていく。

 

どう甚振ってやろうか。それを考えるだけで高鳴る鼓動が抑えられない。今すぐにでも走り出し、奴を仕留めたい。

 

「9……10……11……」

 

だが、ここで殺してしまうには彼は惜しい。未熟な果実がこうも魅力的だとは。

 

「17……19……20……」

 

残念だ。彼とは全く後に会いたかったものだ。

 

「28……29……30……」

 

しかし、数え終わる頃には男はもう考えるのをやめた。

さあ、楽しい楽しい戦争の始まりだ。

 

男はズカズカと歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

走って走って必死に階段を探す。

窓からは荒廃した街が見える。おそらく地震の際の救助訓練に使うのだろう。

市街地ならスナイパーの狙撃をうまく回避出来るかもしれない。

しかし、階段は瓦礫によって塞がれていた。人の力では到底持ち上がりそうにもない。

 

 

しかし、状況が状況とはいえど、六十四式の回収すらせずに逃げてしまった。

今更戻る事なんて出来ない。

ヘルメットを被り、P220を装備。

一応、六十四式を発注してみたところ出たには出たのだが、左肩の負傷と不向きな室内戦のため使用は難しいだろう。

仕方なく俺は六十四式を消す。

これで武器のアドバンテージを失った。

 

銃を見つめる。

先の攻撃で俺は実弾射撃が可能となった。

しかし、例え相手が(ヴィラン)とはいえど殺せば殺人。相手を殺すことは何があってもいけない。

今の俺は、まさに敵を殺すことのできない軍隊(自衛隊)だ。

実に皮肉なことだ。

 

 

この部屋の一番窓側にある柱に身を隠し、息を整える。

しかし、緊張、恐怖も相まってか少し動いただけでだいぶ息が上がった。

音を出さないようにと思えば思うほど呼吸は荒くなっていった。

 

 

コン、コン、コンと歩く音がする。

わざと俺に聞こえるようにやってるんだ。

きっと、どういう気持ちで俺が銃を撃つのかそれを見たいんだ。そして、俺が殺せないということもわかっているのだろう。

 

まるで俺の位置が分かっているかのように足音が近づいてくる。やはり音はだだもれだったのだろうか。

 

遮蔽物からP220だけを腰の高さで出し、やたらめったら撃った。

銃口はブレ、当たったかどうかも分からない。

 

8つの空の薬莢が床に散らばる。

マガジンを床に捨て、マガジンを再装填。薬室に弾丸が装填される。それと同時に聞き慣れたピンの抜ける音がし、カランカランと床を転がる物体。

手榴弾だ。

 

手榴弾とは反対の方向の遮蔽物に向かって逃げる。

その時、柱から顔を出し見たものは、男がこちらへ銃を向けている姿だった。

咄嗟にホルスターへ手を伸ばす。

 

 

 

彼我の弾が交差する。

 

 

 

男の弾は山口の右大腿、右下腿に計2発が命中した。

右下腿のものは肉を抉り、貫いた。しかし、右大腿のものは肉を貫くことなく山口の体に残ってしまった。

一方山口の弾丸は男の左下腿に命中。貫通せず男の中に残った。

 

 

 

これまで体験した事のない痛みが俺を襲う。

倒れてしまいたい。倒れて横になって楽になってしまいたい。だが、ここで倒れたらゲームオーバーだ。

死んでたまるか。

 

左足で地面を蹴る。そらと同時に手榴弾が爆発。爆風の力も借り、倒れながらも柱の裏に辿り着く。

しかし、手榴弾の破片が背に浅く食い込んだ。

背を柱に寄り掛け、空いた足の穴を押さえる。

 

2発も食らった。だが1発当ててやったぞ! けど痛みで立てそうにないや。

 

「惜しい! 右足と左足、両方を狙い機動力を完全に奪ってやるつもりだったが……まあ、機動力を多少は奪えただろう。それよりどうだ? 本物の銃に撃たれる気持ちは? 爆風の痛みは?」

 

男は痛みに何の反応も見せず、淡々と話す。それどころか山口が激痛で動けないことをいい事に銃の手入れすらし始めた。

 

「君は、君は実に良い! どうだ私の仲間にならないか? 君の力を思う存分振るわせてやる。きっと楽しいぞ?」

 

「嫌だね……この力は……日本の為に使うものだ。断じて……犯罪に使うものじゃない! それに……なんだルガー拳銃なんていう骨董品使いやがって……! 悪役といえばドイツみたいなノリで使ってるのか……? ふざけてるのか……?

どこぞの……少佐殿みたいな口調して。そんなに……戦争ごっこしたきゃ欧州にでも行ってこい」

 

「ほう、はやり君もあれを知っているか。君とはとことん趣味が合いそうだ。だが欧州、あそこはダメだ。日本は先進国の中でもかなり犯罪者が生きやすい国なのだぞ」

 

男は語り出した。その間攻撃されそうにないので応急措置を施すことにした。

 

銃は反社会組織や裏サイトで誰でも買える。銃刀法違反を掲げ、アメリカ等とは違うぞと言うが大して変わらない。むしろ日本の方が対処に困る。

 

日本はテロ組織に狙われない? 何をバカなことを。いとも容易くやられたではないか(ヴィラン)組織に。毒ガスを撒く個性の持ち主に地下鉄を襲われ、何十人死んだと思う?

 

社会的弱者を救うはずだった生活保護金が不正に受給され、さらに本当に困っている者にはちっとも許可が降りない。

それは今でもだ。ああ、ちなみに生活保護金は私たち(ヴィラン)組織も一つの資金源としてもありがたく使わせてもらっている。

あの時は国家ぐるみで(ヴィラン)の支援をしているのかと疑ったね。

そして、メディア共はその問題について報道を少しするだけ。警察も本腰を入れられない。

 

ああ、他にもあったな。

ハロウィンなどの日はモラルのない人間が東京を徘徊し、東京は汚され、人気のない場所では窃盗、暴力、強姦は当たり前。そしてそこには当然(ヴィラン)もいる。

ヒーローがどう対処しようが蛆のように沸いて出る。

 

日本は本当に良い(活動拠点)だ。

私も多くの国を見て回ってきたが、ここまで私達に都合のいい国は無い。

 

 

 

 

 

「さあ、応急はもう終わっただろう」

 

返事として銃弾を数発プレゼントしてやった。

弾丸は男の腹を破り、中に留まった。その時、金属と金属が擦れ合うような独特な音が耳に入る。

 

「痛いじゃないか、君」

 

「ひぃっ……!」

 

柱から身体を出した男から逃げるように手で地面を押し後ろへと下がる。

ふと電気がバチバチと鳴る音がした。男の体には所々穴が開いてはいるが、血が一切流れておらず、穴からは光が発せられ、内部の光景がほんのりと山口の瞳に映った。

 

「き、機械……サイボーグ?」

 

『残念、ハズレ! これは私の意思通りに動くロボット(オモチャ)だ』

 

奴の体の中から男の声がする。しかし、奴は口を開いていない。

 

『残念賞だ。受け取ってくれ』

 

ロボットは男の意思通り引鉄を引く。

2発の弾丸が撃ち出され、両耳を大きく抉る。

血が滴り、衣服と床を汚す。

 

「アアアッ!……」

 

痛い、怖い、死にたくない。

絶望の感情が脳を埋め尽くし、目からは大量の涙が溢れていた。

 

『どうだ? 大きなイヤリングの穴ができたぞ!』

 

こいつ……狂ってやがる。

急に体が小刻みに震え出した。

 

 

 

 

『……もう一度聞く、仲間になる気はないか?』

 

『…………』

 

 

 

ここで頷けばきっと楽になれるのだろう。プライドも信念も、なにもかもを捨てれば俺は生き残れる。

 

そうだ、信念なんてもの死んでしまえば何の意味もないクソ以下の存在だ。

俺は人間なんだ、生物なんだ。死にたい筈がない。

 

 

 

 

 

 

 

それでも、

それでも、俺の大好きな日本を裏切ることだけは俺には出来ない。

 

 

 

「……嫌だね!!」

 

『そうか……』

 

残念だ。そう男は言って山口の腹に1発撃ち込む。

腹部から赤い染みが広がっていく。

 

「ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ッ!」

 

意識がだんだん遠退いていく。

 

『なんだ、情けないやっちゃのう』

 

普段出てくる男の声ではない。彼が鬼軍曹だとすれば、この男は古参の兵士のようだ。

 

 

 

 

 

『こんな子供が日本の守護者の名を背負わされるとは、本当に嘆かわしい。どれ、身体を一旦俺に寄越せ。戦いの手本ってのを見せてやる』

 

『なんでもいい……この状況を打破してくれ』

 

『了解、しっかり見て学べよ』

 

 

 

 

 

 

次の瞬間、俺の意思では体が動かなくなり、感覚を失った。痛みも何もかも。

辺り一面真っ暗。

ただ一つ光るものがあって、その光景を見ること、聞くことができる。まるで映画でも見ているようだ。

その光景とはさっきまで俺が見ていた風景だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

体の主導権が男へと移った。

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

痛みを感じる。色彩を感じる。鉄の匂いを感じる。硬いものに触れている感覚を感じる。

懐かしい感覚。

一時的だが、俺は2度目の生を受けた。

 

 

P220を抜き、引鉄を引く。

弾丸はルガー拳銃に命中し、ルガーは破損した。

 

それにより出来た隙に、痛みを堪え立ち上がる。そして勢いに任せロボットへ飛びかかる。

しかし、ロボットは内ポケットに隠していたもう1つのルガーを抜き、構えていた。

引鉄が引かれ、弾丸は銃口を離れ、こちらへと飛翔する。しかし、弾丸は左の頬を掠めるだけで致命傷には至らなかった。

そして、接近した山口は首根っこ掴んで足をかけ、後ろへと転倒させる。

重心を崩したロボットはいとも容易く地面へと叩き落とされた。

 

両腕を踏み付ける。ロボットは強い力で抵抗し、今にも拘束が解かれそうだった。人間と機械では馬力が違う。それはどんな技量があろうが覆らない。

 

P220で両肩を撃つ。

 

最初はかなり強い力で足を退かそうとしていたロボットだったが回路を撃ち抜いたのか力が弱くなってきた。

 

 

ロボットから離れ、手榴弾を出す。

ピンを抜き、ロボットへ投げる。それと同時に安全レバーが空で外れ、数秒後ロボットは爆散した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

暗い暗い部屋。

光があるとすれば青白く光るパソコンだけ。そのパソコンを男は座ってじっと見ていた。

あたりには戦争のジオラマ、完成した戦車、飛行機の模型や異なる国の兵隊のオモチャが大事そうにガラスケースに飾られている。

 

 

 

 

「ああ、やられてしまった」

 

最後は思わず情をかけ、外してしまった。

だがこれで彼はもっと強くなる。この体験を糧にして。

 

 

「山口 弘……今後かれがどう成長し、我々(ヴィラン)にとってどれほどの障害となるか……フフ、楽しみだ」

 

 

 

 

 

 

男は新しいオモチャを手に入れた子供のように無邪気に嗤う。そしてその後ろには飽きたオモチャが飾られていた。

それは人体実験された元人間、脳無にすらなれなかった朽ちた死体。それを犬に食わせている。

犬は次第に人間の味を覚えるようになった。

 




表現するかどうか悩ましい描写がありかなり悩んでしまいました。
特にルビで「軍隊」の上に自衛隊と表記することや男が語った内容など。
もし本当に生活保護金が本当に反社会勢力に回っていたらって考えると怖いですよね。

誤字脱字があった場合、もしくはここ変だよと思ったら是非忠告ください。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

9話 満身創痍

皆さんこんにちは。
今回かなり描写を頑張ったと思っています。
それでもまだ稚拙な文章のため、ご指摘お願いします。

これは四月分ってことでいいですか?
ちなみにストックは1つ残っています。

ここまで投稿が遅い理由は、QC検定三級とかいうものの勉強をしているからです。
以前十二月に乙4という資格試験も受けました。
なのでその頃は投稿を出来ませんでした。
そして乙4を合格しました。

ガソリンなどの危険物を扱えるようになります。
なのでガソスタでバイトする場合賃金が上がるとか。
バイトしませんけどね。




『できる限り応急処置はしたつもりだ。だが足と腹に埋まった弾丸は取れないし、背に刺さった破片はどうしようもない。専門の場所で治療を受けなきゃならん』

 

『ああ、分かった。ありがとう、じゃあ……』

 

『まあ、待て。この痛みを今のお前に押し付けるのも酷ってもんだろ? ()()()()までは肩代わりしてやるよ。それにまだヴィラン? とかいうやつらがいるんだろ?』

 

『じゃあ、お言葉に甘えて』

 

『よし、まだ生を謳歌できる!』

 

おい!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

階段は塞がっていて使えない。今のこの身体では危険だがラペリングをするしかない。

 

 

 

出現させたロープを柱にこれでもかと頑丈に縛り付け、解けないか引っ張って確認もした。

その後、専門の道具を使って窓に登り、外に足から降ろしていく。

そして、スタスタと造作もなく壁を蹴って降りていく。

 

 

『うまいな』

 

「だろ?……あっ」

 

足から鳴ってはいけない音が俺にも聞こえた。

 

『やめろよ、それ俺の体だぞ!……そういえばスナイパーがどうたらとかあいつ言ってたけど今の状況かなりヤバくない?』

 

「あんなん嘘に決まってんだろ……多分」

 

彼の予想が合っているのか撃たれる事は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

ビルから降り、ロープとその他一式を消す。そして、八十九式小銃を新たに出現させる。

 

『待て、俺はそんな武器解放してないぞ!』

 

「これか? さっき解放された」

 

『通知来てないんだけど! 通知さん、仕事して!』

 

「その件に関しては後で教えてやるから」

 

今は(ヴィラン)の無力化と脱出をしなければならない。

山口の見たもの、知っているものであれば共有ができるため事情はあらかた理解している。

 

 

 

 

ビルの窓から見た広場へと歩こうとする。

その時、体が影で覆われた。

負傷した足にムチを打って前へ回避する。そして、後ろへ振り向こうとするが、視界の右端に人影らしきものを捉えた。

地面を蹴り、左へと跳ぶ。

そして、その人影の方向へ銃口をむけ、セレクターを『ア』から『レ』まで回し、引鉄を引く。

 

「ギャアアア!!!」

 

発射された約7発の弾丸の内いくつかが(ヴィラン)の肉を食い千切り胴体を貫いた。

(ヴィラン)は激痛に倒れ、コヒュー……コヒュー……と荒く息を吐く。

 

体勢を立て直し、状況を確認する。

目視できる(ヴィラン)は残り7名

タンクと思わしき者2名、遠距離型と思わしき者3名、オオカミの姿をした者1名、他1名に関しては不明。

 

遠距離型らしき3名に狙いを定め引鉄を絞る。

約8発の弾丸が弾き出された。

照準はしっかりと敵を見ている。

しかし、弾は1発も遠距離型(ヴィラン)に命中することはなかった。

 

その代わりに全身金属の(ヴィラン)の体に弾丸がへばり付いていた。

 

「残念だったな。俺の個性は磁石、近くにある金属は自然と俺に寄ってくる。お前に勝ち目なんて……」

 

「ほい、手榴弾」

 

「えっ?」

 

手榴弾は(ヴィラン)の体にへばり付き、数秒後爆発した。

爆風は彼の背後にいた(ヴィラン)をも襲い、遠距離型3名中2名が気絶し、1人は朦朧としている。

直撃を受けた(ヴィラン)は身体が金属で覆われているのか気絶で済んでいる。

 

 

残存敵勢力は4名

タンク型、遠距離型、オオカミ、そして不明

 

「お前は後方支援を頼む。他は俺と一緒に奴へ肉薄する!」

 

タンク型と思わしき巨漢の(ヴィラン)は腕をクロスし、顔面を覆いながら、突撃の魁として切り込み隊長の役を務める。

他2名も彼を盾にしながらこちらに向かってくる。

まるで戦車と歩兵だ。

 

 

 

 

切り込み隊長の(ヴィラン)に狙いを定め、引鉄を絞る。

弾き出された弾丸は全弾命中するも、全てが弾かれた。

オオカミ(ヴィラン)はタンクの背を踏み台に跳躍。

それと同時にもう1人も右翼へ展開。

タンクは以前前へと前進。

 

ダメだ。避けきれそうにない。

 

「わおおおぉん!!」

 

けたたましい雄叫びが響き、俺の鼓膜は破れた。そして、一気に降下してその鋭利な爪で俺を引き裂こうとする。

銃口を向け引鉄を絞る。

弾丸がいくつも発射され、オオカミ(ヴィラン)の胴体に穴を開けた。

 

雄叫びは直ぐ悲鳴へと変わった。

 

 

 

 

 

未だ不明な(ヴィラン)は何もない虚空に向けて腕を横に薙ぎ払う。

次の瞬間俺の体全身が引き裂かれた。そして、追撃するかのようにもうひとりの巨漢の鋭い右ストレートが腹に決まった。

 

 

「グホッ!!」

 

 

160センチのこの体はいとも容易く吹き飛ばされ、口からは胃液とドロドロに溶けた食べ物が吐き出される。

 

 

「ひゃっは! クリティカルヒットだ!」

 

 

吹き飛ばされ、頭を強く打ったがヘルメットのお陰で大事には至らなかった。

腹の奥底がズキズキと痛み、それが広がってどこが痛いのかも分からなくなってきた。

切り傷は浅く、致命傷ではないものの全身から血が抜けていく。

あれはおそらくカマイタチといったところであろう。

 

 

仰向けのままP220を出現させ、カマイタチの野郎に大方向きを合わせ、5回引鉄を引いた。

そのうちのニ発が両足に命中し、悲鳴をあげて倒れた。

 

 

あと2人。

 

 

だが、ダメージを受けすぎた。

俺はどうとでもなるのだが、この身体が悲鳴を上げている。

立ち上がろうにも言う事を聞かなくなってきた。

 

 

「ガキが、ずいぶん調子に乗ってくれたな」

 

 

首を握り締められ、持ち上げられる。

 

「が……あ……はっ……」

 

首が締まり肺に酸素が全く送られなくなる。

苦しい。

考えようにも脳の回転が遅い。

 

こいつにダメージを与える方法が思いつかない。

手榴弾はもう使えない。そもそもこの距離ではこの身体が死ぬ。

迫撃砲なんて使い道もない。

他の対物兵器は開放すらされていない。さらにそのほとんどがこの距離では死ぬ。又は使い物にならない。

 

 

首締めに対する抵抗をやめる。

P220をもう一度呼び寄せ、銃口を向ける。

 

「!?」

 

もう1人に対して。

両足を撃ち抜かれた(ヴィラン)は必死に足を押さえる。

 

 

 

「狂ってやがる!」

 

 

(ヴィラン)は今自分が追い詰めているはずの男が浮かべた笑みに自分は本当にこいつを追い詰めているのか分からなくなった。

だが、こいつは今ここで殺さなければ今後(ヴィラン)に多大な被害が及ぶ。

それはなんとしても阻止しなければならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一瞬、俺の行動に驚いたのか拘束が緩まり、肺に酸素が供給された。

しかし、それは本当に一瞬でさらに首が絞まった。

 

必死に抵抗するも指一本退かす事が出来ない。

 

 

 

 

 

「お前はいつか俺たち(ヴィラン)の大きな障害となる。今ここでその芽を摘んでやる」

 

そして、この仲間を担いでここから脱出してやる。

何が命令だ。あんな偉そうにしやがって。気に食わねぇ、死柄木 弔。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

視界の色がだんだん変わっていき、黒く、暗くなっていく。音は全く聞こえない。

あんな啖呵切っておいて情けない。

 

そのとき、複数の銃声がUSJ内に響き渡る。

その内の3発が目の前の(ヴィラン)の腕、足、腹に命中。装甲を破り体内へと弾丸は侵入した。

 

拘束が外れ、地面へと落ちる。

 

「ゲホ……ゲホ……はあ……はあ……」

 

生き返った。入ってくる酸素が美味しいと感じる。

40秒で息を整え、杖を出し、杖にして歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

くそっ、ついてねぇ!

仲間はやられるは銃で撃ち抜かれるは。

一体どんな弾使いやがった。

クソ!

 

帰る、俺は帰るんだ。

痛みに耐え、仲間を担ぎ黒霧の野郎の所へと歩き出す。

しかし、その歩みは亀よりも遅い。

そして、再び銃弾を浴びせられ、無事だったもう片足も撃ち抜かれ、その場に倒れる。

 

「くそ……!くそ……!」

 

それでも背に仲間を乗せ、腕で体を引きずる。

そして、今度は腕を撃ち抜かれた。

だが男は這い続けた。

這って這って這い続けた。

しかし、次に背に乗せた仲間を撃たれ、

男は歩みを止めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

『スマン、()()()()だ』

 

広場に着くと同時に体の主導権が入れ替わった。

 

「ぐっ……」

 

洒落にならない激痛に倒れそうになるも、杖にしがみつき倒れずに済んだ。

杖をつきながら歩く。その一歩一歩はとても遅く歩幅も短い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんて事だ……」

 

現状の有様に頭を垂らす。

 

「これだけ派手に侵入されて逃げられちゃうなんて」

 

「完全に虚を突かれたね……それより今は生徒らの安否さ」

 

 

 

……やばいな。

オールマイトは活動限界を大幅に超えている。

動こうにも指1つ動かない。

今は変身する際に発生する煙に隠れられているが、もし煙が晴れてしまったら。

その後の光景が容易に浮かぶ。

 

 

「緑谷ぁ! 無事か!?」

 

「切島くん……!」

切島少年! なんて素晴らしい心持ち!

だが今こっちに来られては……やばい、待って!

 

煙がだんだんと晴れてきた。

その時、地面が盛り上がって壁が出来た。

 

「怪我人の対処はこちらでするよ」

 

「ラジャっす!」

 

 

コツンコツンと杖の音がする。

 

「ちょっ、山口くん……何、その傷……」

 

「や、山口さん……」

 

その場に居る大体の人間が青ざめる。

当たり前だ。

服や包帯はズタボロに引き裂かれ、血で赤黒く汚れている。複数の箇所に銃弾で開けられたような穴。

そして、全身は血まみれ、切り傷まみれ。

 

そして何より、変形した耳が皆の視線を釘付けにした。

 

 

「スイ……マセン……俺の治療……も」

 

ぷつっと意識が途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

「よう、悪かったな。最後まで肩代わり出来ない挙句余計な傷まで増やして」

 

気がつくと何も無い空間に立っていた。

そして、例の男がバツの悪そうに立っていた。

 

「別にいいって……それより例の件、話してもらおうか」

 

「ああ、連射できたことか? 一応聞くけど実戦で一回でもフルオートにして撃ったことあるか?」

 

「当たり前だろ? それで出来なかっ……いや、待てよ……嘘だろ」

 

「やってなかったんだな」

 

実戦を経験する機会が全くないのもそうだが、セレクターに触れたのは『演習モード』の時の一回だけだった。

 

「プ……ふふ、実戦で単発だけとか……流石にないだろ……ハハハハハ!」

 

よほどおかしいのか地面にうずくまって床をバンバン叩く。

 

「……ふぅ、お前には課題がある。

 

その1 身長伸ばせ

その2 筋肉つけろ

その3 今度からここに来て素手での戦闘を学べ

その4 もっと武器を解放しろ!

 

以上だ。反論は認めない。じゃあな」

 

「ちょ、まっ!」

 

目の前が真っ暗なった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目が覚めると俺はベットの上に横たわっていた。

腕には点滴が打たれている。

時間を確認するため時計はないかと探す。

時計を見つけ時刻を確認する。

 

8時30分

窓の外が暗いと言うことは夜なのだろう。

 

 

 

起き上がろうとするが、体が怠く動けない。

脳の働きも鈍い。

 

「おや、目が覚めたかい……本当にひどい怪我だよ。私たちヒーローがあんなにも近くにいたってのに何も出来なかったことが申し訳ないよ……ほら、これをお食べ」

 

口の中に温かいおかゆを押し込まれる。

 

「私の個性で治してはあげられたが、それは自身の治癒能力を無理やり活性化させているに過ぎない。しっかり栄養補給しないと衰弱死してしまうよ。」

 

また、おかゆを口の中に押し込まれる。

おかゆには細かく刻まれた鶏肉などが入っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒロ!」

「ヒロちゃん!」

 

数分後血相を変えた親がやってきた。

 

「良かった、生きててよかった……! ヒロちゃんが寝込んでるときもう目が覚めないんじゃないかと……」

 

俺を強く抱きしめた母は小刻みに震えていた。

 

「お前が寝込んでいる間本当に心配だった。目が覚めて本当に良かった……」

 

いつもふざけている父の泣き顔を初めて目にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リカバリーガールのおかげで傷もほとんど治っていた。

だが、怠さは治っていない。

もっと栄養を摂取しなくてはいけない。そのためさっきから煮干しや干し椎茸、肉などを貪り続けている。

不思議と食べても食べても、食べ足りない。

余程栄養を持っていかれたのだろう。

食べ物を掴む手が止まらない。

 

 

そういえばアイツになんか言われたっけか。

課題がどうこうとか。

 

『もっと武器を解放しろ』って言ってたのはよく覚えているんだけどな。

それ以外がどうしても思い出せないな〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

変形した耳はなんとか治ったものの、銃創は痛ましく残っていた。




敵強くしすぎましたね。
あと、山口の体を操った男の名前に悩んでいます。
もしよければ名前を付けてあげてください。



感想、評価、誤字脱字報告などお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。