個性『ハジケ』 (鴉星)
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クイズ! オールマイトでドカン! 全問正解でところてん一年分をプレゼント!!

 ちょっとした事情で投稿することになりました。ギャグがド下手なのでお目汚しではあると思いますが、よろしければどうぞ。


「さー始まりました! 始まってしまいました!! クイズ、オールマイトでドカン!! 全問正解でところてん一年分をプレゼントのコーナーです!」

 

 1人の若者がマイクを片手にハイテンションでカメラを前に笑顔を振りまく。

 

 しかし、その若者の顔には歯を見せながら笑う仮面が取り付けられており、素顔をみることはかなわない。

 

「さて、本日の回答者はオール・フォー・ワン率いるヴィランの方々でーす」

 

「てめぇ!! なんなんだここは!! いつの間に俺たちを連れ出したぁ!!」

 

「おーと、死柄木選手やる気満々のようです。意気込みをどうぞ!」

 

「殺す!!」

 

「フン!!」

 

「ゴハッ!?」

 

 若者は死柄木と呼んだ男の頭をつかんで回答席にたたきつける。

 

「司会者に対して失礼だろ。死柄木選手のポイントはマイナス100点だな」

 

 回答席に備わっている液晶画面の数字が0から-100に切り替えられた。

 

「しっかりしてください死柄木弔!!」

 

「はい、黒霧さんも他の回答者に触れたから-50ね」

 

「え!?」

 

 隣にいたヴィラン黒霧も-50が表示された。

 

「さて、色々とうるさいことが起きましたが、本日のスペシャルゲストをご紹介しましょう! 平和の象徴オールマイトです!!!」

 

「ど、どうも(なんでいきなりこんなところに、というかあれはどう見てもオール・フォー・ワン!! 生きていたのか!!)」

 

 今すぐにでも取り押さえたいところであるが、何故か体を動かすことができない。オールマイトはすぐさま仮面の若者――スマイリーを見つめる。

 

(彼の仕業なのか……)

 

 ここ最近巷を騒がせるヴィジランテチームがいることはオールマイトも知っていた。

 

 何せ、倒したヴィランや犯罪者を動画として投稿するのだ。内容としては、夜多くのヒーローが活動を終えていく中での女性を襲う性犯罪者などを叩きのめし、近くにあるヒーロー事務所の名前を挙げ、サイドキックなどと連携して夜間警備をしていれば捕らえることができたことや、屋内での違法行為をしているヴィランたちのアジトに突入して、すべての証拠と関係者たちのリストを公開するなどやりたい放題で、最後に必ず「この程度のことも解決できないならヒーローやめちまえ!」という少々過激ではあるが、ネット上では人気が高く、感謝のコメントも多い。

 

 他にもスタンダール、ジェントルという仲間がおり、大物ヴィランなどの時は三人での動画が投稿されることがある。

 

「……スマイリー、一ついいだろうか」

 

「なんですオールマイト。いくら俺があなたのファンでも得点は加算しませんよ」

 

「いや、そうじゃないよ。ただ聞いておきたくてね。ここはどこだい?」

 

 先ほどまで自分は後継者と認めたとある少年の修業を見ていたはずだ。

 

「奴らのアジトです」

 

「…………テレビスタジオが?」

 

「ちげぇよ!! 俺たちだっていきなりここに「シャラップ!!」ぐはっ」

 

 目を覚ました死柄木だったが再び黙ることになった。

 

「まったく油断も隙も無い」

 

「オールマイト……」

 

「っ! オール・フォー・ワン!!」

 

「……彼は一体なんだ?」

 

「…………なにが言いたい」

 

「先ほどからここを出る算段を考えていた。僕の力があれば、とね」

 

「…………」

 

 オールマイトは警戒しながら話を聞く。なぜならリクライニングチェアから立ち上がることができないからである。

 

「個性が使えないんだよっ! こんなことがあり得るのか!?」

 

「っ!」

 

 オール・フォー・ワンが怒りと戸惑いの声を上げている。そのことにオールマイトは混乱している。あのオール・フォー・ワンが……。そんな感想が頭を支配する。

 

「さてさて、時間も押してるんでささっと行きますよ! 第一問!!」

 

 スマイリーは何事もないかのように進めていく。そして手にもっていた紙を読み上げる。

 

「オールマイトの傷口はわたくしことスマイリーが治しましたが、果たして完治しているでしょうか? はい、早押しです! 正解したらところてんポイントを1つ贈呈しますよ!!」

 

 ところてん!

 

「なにその音!?」

 

 オールマイトはあまりにも力が抜ける音に声を出してしまった。

 

「はい、オール・フォー・ワン!」

 

「完治している」

 

 ブー

 

「何!?」

 

「残念! 実は完治していません。というより治していません」

 

「そ、そんなハズはない!」

 

 今度はリクライニングチェアから立てるようになったオールマイトは反論する。

 

「わ、私の身体は間違いなく治っている!! 君が治してくれたじゃないか!! ハジケフラッシュと言った後、間違いなく全盛期と同じ力を取り戻せているし、手術で摘出した臓器も治っている!!」

 

「えい」

 

「ゴフッ」

 

 スマイリーがオールマイトの額を叩くと、ガリガリのオールマイトが現れた。

 

「ほら、治ってないでしょ。まっ、正確には完璧に直さないほうが、スマイリーの活動を邪魔された時に脅せるかなって。てへっ」

 

(酷い……)

 

 黒霧は素直にそう思った。

 

「て、わけでオール・フォー・ワンは不正解」

 

「うっ、ぐあああああああああっ!!」

 

「っ先生!!」

 

 気を失っていた死柄木がオール・フォー・ワンの叫び声で目を覚ます。

 

「何をしやがった!」

 

「個性をはく奪しちゃった♡」

 

「何!?」

 

「といってもーいろいろな個性を持っているから全部とるのは時間がかかっちゃうの」

 

 本来は一発で個性をはく奪できるが、盛り上がらないためやらないだけである。

 

 ついでにスマイリーは唐突の女性のしゃべりになったりするが、性別は男である。

 

「さて、続いて第二問!!」

 

 苦しみ悶えるオール・フォー・ワン。口から血を少量流しているオールマイトを放置して、クイズを続投する。

 

「こちらの映像をご覧ください」

 

 用意されていた巨大液晶画面に映像が流れる。

 

『劇場版 オールマイトVSところてん』

 

「んだそりゃ!?」

 

 内容としては、大物ヴィランところてんとオールマイトの戦いを描く十分程度の短編アニメとなっている。ただ、作中のところてんは幾度となくオールマイトを追い詰めており、一般人たちの応援がなければオールマイトは敗北していたほどである。

 

 そして映像が終わる。

 

「さて、劇中で出てきた一般人の総数は?」

 

『解るか!!!!』

 

 その場にいたヴィランたちの怒号が響く。

 

「やれやれ、3万3917人だよ。数えてないと」

 

「できる分けねぇだろうが!! てめぇ殺すぞ!!」

 

「はい。ドーン!!」

 

「ぐほっ!??」

 

 再び攻撃を受ける死柄木。

 

「さて、全員不正解なので個性を没収ー」

 

『ぎゃああああああああ!!!!』

 

 ヴィラン達の苦しむ声が響き渡る。

 

「うーん。悪党を退治している感じ伝わるねー」

 

「ゴホッ……ス、スマイリー」

 

「あ、オールマイト。すんません今治しますね。ハジケフラッシュ!!」

 

「お、おおおっ!?」

 

 スマイリーから発せられる光を浴びたオールマイトの身体が急速に膨れ上がり、無いに等しい筋肉が急速に膨れていく。

 

「戻っている! ふん!!」

 

 全盛期と全く同じ力を体から感じている。

 

「スマイリー君の個性は一体……」

 

「オールマイト、それ以上聞くならもう一度……」

 

「い、いや、済まない! 聞かない。もう聞かないよ!!」

 

「さて、なんかクイズも飽きたし、そろそろこいつら捕まえようかな。来いハジケ監獄日本部署!!」

 

 テレビスタジオのセットが消え、現れたのは巨大なオールマイトの顔をしたトラックだった。ピカリと目が光りだすと、オールマイトの口がパカリと開いて中からスマイリーと同じ仮面をした男たちが盆踊りをしながらわらわらと現れた。

 

(怖え……)

 

 あまりの不気味さにドン引きしているオールマイト。そのままヴィランたちを口の中に放り投げていった。

 

「ええっと、麺の世界でいいか」

 

「なにをしているんだいスマイリー」

 

「奴らを幽閉する世界を決めてるんです」

 

「世界? あのトラックの中にかい?」

 

「トラックじゃなく監獄です。中を覗いてみます?」

 

「(怖いけど)お、お願いしようかな」

 

 精一杯笑顔を見せるオールマイトだったが、冷や汗でダラダラだった。

 

「んじゃ一名様ご案内でーす」

 

 一瞬にしてバスガイドの格好に変わったスマイリーのあとについていく。

 

「はい、こちら以前収容した死穢八斎會のいるパンの世界でございます」

 

 覗いてみると、

 

「くらえ、俺のメロンパン!!」

 

「甘いわ。あんぱーんっ!!!」

 

「ぐあああああっ!!」

 

 若頭であった治崎廻のメロンパンは返り討ちにあい、あんぱんの波が彼を襲う。

 

「…………なにこれ」

 

「このパンの世界は一流のパン職人にならなければ外に出ることができない仕様でございます。とはいえそのころにはパンを作ることに情熱を注ぎすぎて、悪事なんて考えられなくなるでしょうが」

 

「……オール・フォー・ワンも?」

 

「立派な麺職人になって帰ってくるでしょうねぇ」

 

 なぜか仮面から涙があふれてそれをハンカチで拭いているが、オールマイトは気にしないことにした。

 

「し、しかし、警察に渡さないとまずいのでは?」

 

「あ、警察にはちょっと交渉してOKもらってます」

 

「……ちなみにここから出たやつは?」

 

 オールマイトはそろそろ疲れてきていた。

 

「今では有名なシェフやってます」

 

 スマイリーが見せてきた本には三ツ星シェフとして有名な人物の写真があった。

 

「マジ!? 私、君が前に治してくれた後ここ行ったよ?!」

 

「おいしかったでしょ?」

 

「ああ、うん。じゃなくて!」

 

 ツッコミを入れたいが入れたところで無駄なのだろうと思い始めたオールマイトは頭痛がするのか頭を押さえる。

 

「ま、世の中ハジケが必要というわけですよ」

 

「ハジケ?」

 

「そ、ハジケていない奴は絶対に俺には勝てないんですよ」

 

「そ、そうかい……」

 

 ハジケがなんなのか聞きたかったが、聞いたらいけない気がした。

 

「んじゃ、そろそろ帰りまーす」

 

「あ、ちょっと!」

 

「次の動画をお楽しみにー」

 

 スマイリーはそのまま姿を消した。

 

「………………あ、オール・フォー・ワンが捕まったなら私後継者探し急ぐ必要ない?」

 

 アジトに一人取り残されたオールマイトはぽつりとつぶやいた。

 

 なおこの後、スマイリーの新しい動画として今回の物が投稿されたが、内容が何一つかみ合っていないスマイリーとオールマイトの共闘でとてつもない凶悪ヴィランを倒したという内容になっており、いろんな意味でオールマイトはスマイリーに恐怖を覚えたとか。

 

 余談だが、動画内ではオールマイトは窮地に陥っており、そこへスマイリーが手をかしたことになっていた。そして動画の最後に『オールマイトばかりに頼っていたら、いつの日かこの国は終わるぞ』というメッセージが流れ、それができないならヒーロー辞めろ。とスマイリーの言葉で締められた。

 

 

 

 

 

 

 

「さぁーて、ハジケてない奴らはどこかなー」

 

 

 スマイリーは今日もどこかでハジケている。

 

 

 

 

 

 

 




個性 ハジケ

 いわゆる「ふざけた行動」のすべてが現実になる。
 また、ハジケていない敵の攻撃はすべて無効化される。


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地獄の特訓。ハジケ海浜遊園地

最初の投稿した後

作者
「こんな作品に高い評価なんかこないよね」

友人A
「ほぉ、じゃあもしきたらどうすんの?」

作者
「そんときは一番高い評価の分だけ書くわwこないだろうけどww」

友人B
「言質はとったぞ」

作者
「だからってお前らがやるなよ?」

友人C
「大丈夫。一度も評価したことないから」

作者
「それはそれで腹立つなw」



11月18日 16時過ぎ

作者
「……………………」

友人たち
「書けよwww」

作者
「はい……」

 てきな流れがあったので投稿です。




「この物語は、スーパーヴィジランテことスマイリーとその弟子である緑谷出久の青春物語で「ちょっと待った!!」なんですオールマイト。今いいところだったんですけど、具体的には貴方が颯爽と現れて私が来た! っていう感じで」

 

「いや、スマイリー。緑谷少年は君の弟子ではないだろう。というよりここはどこだい?」

 

「どこって、見てわかるでしょう?」

 

「いやいや、私の記憶が正しければ、海浜公園にいたと思うんだが」

 

「ここは海浜公園ですよ、たった今遊園地になりましたけど」

 

「なんでだい!?」

 

 現在オールマイトは後継者と定めた緑谷出久を鍛え上げるための特訓をしていたが、なんの前触れもなく現れた目の前のヴィジランテ・スマイリーの手によって一瞬にして遊園地が出来上がっていた。

 

「やれやれ、平和の象徴というものがわからないんですか?」

 

「君の行動は絶対に分からないよ」

 

「ぶっちゃけオールマイトの指導がド下手そうなので邪魔しに来ました」

 

「いや、ひどくない?」

 

「人になにか教えた経験は?」

 

「ないけど、君だってないだろう?」

 

「ふっ、甘いなオールマイト。これを見ろ!!」

 

 スマイリーは懐から一枚の紙を取り出す。

 

「っ!? 教員免許おおおおおお!?」

 

「くくく、わーはっはっはっ!! 恐れ入ったかオールマイト!!」

 

 嬉しそうに笑うスマイリー。なぜ仮面が口をあけて笑えているのかは謎である。

 

「……そういえば緑谷少年は?」

 

 露骨に話を逸らしたオールマイトは周囲を見る。先ほどまでそばにいた緑谷出久はどこにいるのか? その答えはやはり傍迷惑な男から告げられた。

 

「ほらあそこ」

 

 指を指す方角を見ると、ジェットコースターの道の上を走る自身の弟子を見ることができた。

 

「み、緑谷少年!? なんでそんなところに!!」

 

「うわあああああああっ!!! オ、オールマイトッ! 助けてくださいいいいい!!」

 

 良く見ると後ろからジェットコースターがまるで生き物のように追いかけてくる。

 

「ちょ、スマイリー! 君の仕業だな!」

 

「ヒーローってのは足場の悪いところで戦ったり人命救助したりするだろ? その予行演習だと思えばいいんだよ」

 

「あのジェットコースターは今にも緑谷少年を食べそうだぞ?! というかなんで口があるんだい!?」

 

「安心しろオールマイト。あいつは草食だ」

 

「ああ、そうなん――――じゃないよ!?」

 

「ええい、うるさいな。んじゃオールマイトもご案内しとくか。ポチッと」

 

 どこからともなく取り出した謎のボタンと書かれた箱型のスイッチを押す。

 

 するとオールマイトの足元に穴が広がり、オールマイトが落下したと思いきや、下に敷いてあったトランポリンによって、遊園地内部のダイナソーワールドに吹き飛ばされた。

 

「うわああああ!!」

 

「楽しんでねー」

 

 暢気に手を振るスマイリーはオールマイトを見送ると、ジェットコースターのコースを懸命に走る出久を見つめる。

 

「た、助けてええええ!」

 

「楽しんでいるようでなにより」

 

「どこがですかああああああああああああ!!!!」

 

 この遊園地は基本的に楽しむ要素よりもきつい要素がてんこ盛りである。現在出久が走っているコースも人が走れるようになっている部分があるがそれ以外は邪魔な出っ張りやくぼみなど本来あってはならないコース作りになっている。そもそも人を乗せて走るジェットコースターに人が乗る場所がないのだからしょうがないが。

 

 ちなみにオールマイトが飛ばされたダイナソーワールドだが、正式名所はダイナソーメタルエンパイヤーワールドといい、スマイリー自身が掘り当てた恐竜の化石をハジケエナジーで復元。そのまま機械化させ、あらゆるヒーローの動きをインプットしており、ヒーローを見たら襲う仕組みになっている。

 加えて、壊してもすぐに再生されるようになっているため、脱出を主とした遊び場になっているのである。

 

「さて、プレオープンは成功といってもいいだろうし、来年の春ごろにはヒーロー用の遊園地として売り出せそうだな」

 

 スマイリーは満足そうに頷く。

 

「さてオープンまではまだ余裕あるし、オールマイトと緑谷少年でもいじって遊ぶかなー」

 

 この日、オールマイトが現れなかったことが夜のニュースで取り上げられ、以前投稿されたスマイリーの動画通り、彼ばかりには頼れない。というコメンテーターの発言がスマイリーの動画以降の意識が変わっていった多くのヒーローにさらなる影響を与えることになった。

 

 

 

 

 実際はダイナソーワールドから脱出できなかっただけである。

 

 

 

 




ハジケ海浜遊園地

 海浜公園に作られた特大遊園地。土地の権利はスマイリーが持っていたため問題は特にない。なおそれ以外の問題はスマイリーがしっかりちょうきょ――交渉して了承を得ている。

アトラクション一部紹介

・ちょこっと長いジェットコースター

 総距離43キロのコース。乗るのではく追いかけられるスタイル。
 コース上では個性の発動はできない。異形タイプはそれ以上の発展ができない。(葉隠などはそのまま。障子は複製腕を通常の状態のまま)


・ダイナソーワールド

 正式名所はダイナソーメタルエンパイヤーワールド
 内部は恐竜がいた時代をイメージした異空間状態なために広さが日本の本州ほど。
 恐竜たちは基本的に機械の体になっており、ヒーローを死なない程度に襲う。
 


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超級戦闘区域・ハジケ横丁 序





今回はギャグ要素薄めで真面目に書きました。





「おめでとう。緑谷」

 

「ありがとうございますスマイリー」

 

「これでお前は後継者として相応しい肉体を得た。これからも精進するがいい」

 

「はい!!」

 

「あのーそろそろいいかな?」

 

「ん? ああオールマイト。事件はもういいんですか?」

 

「いや、まぁね……というか」

 

「というか?」

 

「緑谷少年がえらい筋骨隆々なんだけど!?」

 

 オールマイトは謎の三文芝居を横で眺めていたが、スマイリーの正面に立つ自分より大きな男が自身が後継者だと認めた少年だとは最初は気がつかなかった。というよりスマイリーが名前を呼ばなければ気がつかないほどだ。

 

 たった一日仕事で来れなかっただけでここまで変わるのかと戦慄してしまう。

 

「ああ、これか。ほい」

 

「ああ!?」

 

 スマイリー針を出久に刺すとプシューと音と共に筋肉が萎む。

 

「何だ。見せ掛けだったのか」

 

 どこかほっとしてしまうオールマイト。もともとの身長に戻ったところを見てみるが、それでも出会ったころより筋肉がしっかりとつけられている。

 

(しっかりと出来上がっているな…………まぁ、あんな遊園地に放り込まれたら嫌でも鍛えられるか)

 

 二日前のダイナソーワールドでの出来事を思い出し身震いする。

 

「ああ、残念。もう少しオールマイトより高い景色が見ていたかったです」

 

「まぁ、また今度な」

 

「はい! 約束ですよ?」

 

(なんか私よりスマイリーと親しい仲になっているような……)

 

「それでオールマイト。緑谷に力の継承は?」

 

「ああ、合格。文句の言いようのない仕上がりだよ」

 

「よし!!」

 

 緑谷はその言葉を聞きたかったのか、笑顔を見せる。

 

「そういえば、彼はヘドロの時に人質になっていた子かい?」

 

 オールマイトの視線の先には、クソがあああああああ!! と叫びながらジェットコースターのコース上を走る一人の少年の姿があった。爆豪勝己である。

 

 近頃の緑谷の様子を距離を置いて見ていた爆豪は、死んでしまうのではないかという状態で学校に登校してきた緑谷になにかがあったのだと考え、後をつけた。そしてヴィジランテとして有名なスマイリーと共にいつの間にか出来上がっていた遊園地に入っていくのを目撃し、爆豪はなにか危険なことが起きていると勘違いを起こし、助ける義理などなかったのだが、ヘドロの一件が頭をよぎり、派手に助けて、雄英を受けるな! とでも言ってやろうと考え、中に入ってしまった。

 

 その後は流れるように迫力満点のアトラクションを体験させられ、ようやく開放された後に、緑谷本人から真実を語られた。

 

 最初こそオールマイトに認められたことに怒りで個性を使ってしまいそうになったが、体が動かせないほどであったため、聞くことに専念。その後はお互い言いたいことを本音で語り合い、スマイリーが無駄なおせっかいで爆豪の体力を回復させ、個性なしのガチのケンカをさせた。

 

 始めこそ遊園地で鍛えた緑谷が優勢だったが、爆豪の才能はそれを上回り、最終的には爆豪が勝利を収めた。

 

 スマイリーは爆豪を気に入り一緒に修行をしようじゃないか! と勧誘。一度は断ったが、翌日の放課後に緑谷と共に拉致され、今に至るのであった。

 

「まぁ、一人じゃ効率が悪くなってくるし、競争相手がいるほうが面白いでしょ」

 

「そうかもしれないが……うーん。大丈夫なのかい?」

 

「何が?}

 

「いや、今にも食べられそうになっているけど、本当に草食かい? 二日前に見たジェットコースターとなんだか姿が違うような」

 

「ああ、今走っているのは前に見たやつの姉だ」

 

「性別あるの!?」

 

「ちなみに肉食」

 

「マズイじゃないか!!?」

 

「平気だろ。今必死になってるし。あ、助けに行こうとしたらまた怪我人にさせるからそのつもりで」

 

「うぐっ……」

 

 ハラハラしながら見守った後、スマイリーは言った。

 

「さて、レベル1のトレーニングはここまででいいか」

 

「え……これ、レベル1なのかい?」

 

「ああ、ここは足腰などの基礎を鍛えるための場所だからな。次のレベル2は対人を想定している」

 

(足腰って言うけど、あのジェットコースター高低さ1キロとかあるし、どう考えても腕を使うしかないところもあるし……彼の設定はどうなっているんだ)

 

「さあ次に行くぞ! お次はこれ、ハジケ横丁!!」

 

 どこに隠し持っていたのかフリップを取り出した。

 

「ハジケ横丁? 聞いたことないが……まさか」

 

「ああ、うん。さっきできた」

 

「ああ、そうかい……」

 

 もはやツッコミを入れることすらオールマイト疲れていた。

 

「とりあえず概要だけここで説明すると、全長10キロほどの横丁だ。そこにはたくさんの店舗があるんだが、一件ごとにスタンプが置いてある。それを押してきてくれ。順番とか関係ないすべて押してきてくれ」

 

「それ横町ですか?」

 

「ちげぇだろ」

 

「違うね」

 

 緑谷の疑問は疲れきっている爆豪とオールマイトにばっさりといわれるが、スマイリーは特に気にした様子もなく。

 

「さて、これにはオールマイトにも参加してもらうからね?」

 

「そう来ると思っていたよ」

 

 三人はスマイリーからスタンプカードを受け取ると、突如として現れたUFOに連れて行かれ。

 

「頑張れよー」

 

 スマイリーは笑顔で見送った。

 

 

 

『ハジケ横丁。それは現代日本随一の激戦区。そこで生きる者たちは並の者たちではない』

 

「さっきできたばっかじゃねのかよ!」

 

 UFO内で流れるハジケ横丁紹介動画のナレーション(スマイリー)にツッコミを入れる爆豪。

 

「かっちゃん、落ち着いて、スマイリーさんのやることにいちいち突っ込んでいたら疲れるだけだよ」

 

「もう疲れてるわ! 散々走ったわ!!」

 

 手のひらから個性が出まくりな彼をなんとか落ち着かせようとする緑谷だったが、それは叶いそうにもない。

 

『なお、この横丁内では個性を使わないと死にます。気をつけましょう』

 

「ええっ!? ど、どうしましょうオールマイト! 僕まだ」

 

「落ち着け緑谷少年! さ、これを食べるんだ」

 

「へぁ!?」

 

 渡されたのは一本の髪の毛だった。

 

「これを食べれば継承は可能だ。さあ! 早く!!」

 

(思っていたのと違う……)

 

 そう思っていた緑谷だったが、新たなる試練はそこまで迫っている。文句は言えなかった。

 

『ご利用ありがとうございます。ハジケ横丁。ハジケ横丁でございます』

 

「電車かよ!」

 

「かっちゃん……」

 

「二人とも、本来なら個性を使うのは禁止だ。けど、スマイリーの用意した物なら話は別だ。私が許可しよう」

 

「上等だ!」

 

 獰猛な笑みを浮かべる爆豪と少しばかり不安そうな緑谷。そして笑顔を見せるオールマイトの戦いが始まる。

 

 

 

 

 

 



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破を飛ばして急に至る。そんなハジケ横丁

本来書いている奴よりも難しく考えなくていい分投稿しやすい……。

技量不足に泣きたくなる……。


「ぐあああああああああああああっ!!!」

 

『ああっとオールマイトぶっ飛ばされた―――――!! 焼き鳥屋の松が繰り出した焼き鳥流・鶴翼のワルツの前になすすべもない!!』

 

 テーブルの上に安っぽい紙で実況席と書かれ、マイクを片手に仮面が爆笑しているスマイリーが椅子に座っている。

 

『さあこのハジケ横丁名物スタンプラリーが始まりましたが、どうやらオールマイトは苦戦しているようです。おっとここで新しい映像です。どうやらタロット占いの館に行ったのは爆豪のようですね。お? おおっ!? どうやらマダム・ルーラーは爆豪が好みのタイプではないために中に入れないようです! これはタロット流・隠者企てですね。それにしても爆豪ウケルw全然ダメじゃんw』

 

 もはや仮面が本体としか言いようがないぐらい笑っている。

 

『おや、緑谷は…………ん!? なんと緑谷、堅物で有名な古書の徳之丞からスタンプを貰っているぅ! 一体どうやっ――ああっとそうだったあの爺さん意外とヒーローオタクだった! 緑谷との相性は完璧に等しい!! このハジケ横丁ではこういう運勢も必要だ! オールマイトに爆豪もがんばれよー!!』

 

 このハジケ横丁でスタンプを貰うには戦うか気に入られるかのいずれかである。爆豪のような相手にされないことは極めてまれである。

 

 鍛えるということだけを見るなら戦うことで得る物は多いだろう。しかし、このハジケ横丁ではそのような常識は無い。気に入られるだけでも影響は大いにある。それを自覚するのが少々かかるだけだが。

 

『とりあえず、あと数時間で緑谷と爆豪は家に帰すからなー。一個でもいいからスタンプ手に入れろよ爆豪』

 

「わかっとるわっ!!!!」

 

 占いの館の前で爆破を続ける爆豪。しかし、あと数時間しかないとわかった彼は、すぐに隣にあった菓子専門店に入った。

 

『爆豪、マダム・ルーラーは諦めて隣の菓子専門店を開いている大栗さんに狙いを定めたぞ!』

 

「はいやああああああっ!!」

 

『ああっとやっぱりダメだ! 大栗さんは目つきの悪い人がいるとついついぶっ飛ばしちまうから爆豪との相性が悪い! 昔なんかあったらしいけど、あんな細身の女性なのにとんでもないな!』

 

 発言と裏腹に仮面は爆笑しまくりである。

 

 

 

 その後、スマイリーの終了の合図までにオールマイトと爆豪がスタンプをとることはできなかった。ちなみに緑谷は徳之丞と話込んでいてそれどころではかった。

 

「うーん結局は緑谷の1つだけか。不甲斐ないねーオールマイト」

 

「うぐっ、焼き鳥屋怖すぎだろう……」

 

「くそ……が……」

 

「かっちゃん、大丈夫? めちゃくちゃ汚れてるけど」

 

「うるせぇ……だたのチョコだ……」

 

「大栗さんの菓子流・チョコブロック弾か。なかなか強力だからな。無理もない」

 

 スマイリーは三人を見渡すと、

 

「しかし、不甲斐ないな。こうなったら明日からは遊園地でみっちり再訓練だな。あっオールマイトは仕事しにいってね?」

 

「まぁ、そりぁそうだろうね」

 

「緑谷と爆豪には遊園地のパスをやるから好きな時に行け。俺もそろそろヴィジランテとしてお仕事しないとな」

 

 二人にパスを渡した後、スマイリーは背中から突然翼を生やし、飛び立っていった。

 

「…………めちゃくちゃですね」

 

「まぁ、スマイリーだからしょうがないかな……」

 

「てか、あんなのヴィランの一歩手前じゃねぇか。いいのかオールマイト?」

 

「……彼もまた抑止力みたいなものでね。そう簡単に捕まえることなんてできないさ。それに彼がヴィランになったら誰も勝てないね」

 

「オールマイトでもですか!?」

 

「ああ、残念ながらね。彼はそれだけの存在なんだよ。だからヴィジランテだとしてもなにもできないんだ。本当のヴィランになってほしくないからね。さあ! もう遅い時間だ。今日はもう帰ったほうがいいだろうね。なんなら私から遅れた説明を「その心配はない!!」うわっ!?」

 

 先ほど飛び立ったスマイリーが再び現れた。

 

「二人の家には遅れる理由を話しておいた。気をつけて帰れば問題ないさ。では!」

 

 それだけ言ってまたもや飛び立っていった。なぜか飛行機の翼に変わっていたが。

 

 

「………………帰ろうか」

 

「おう……」

 

「はい……」

 

 三人は疲れた足取りで帰っていった。

 

 

 

 

 この後、オールマイトは全盛期と変わらぬ動きで活躍しつつ、定期的に休みを貰いながら、ハジケ海浜遊園地で緑谷、爆豪両名とトレーニングをする日々を送ることとなる。

 

 

 

 

 

 

 そして、雄英の受験日を迎える。

 

 

 

 

 

 

 

「よしよし、潜入完了。これよりハジケ式実技試験に切り替えますかね」

 

 

 

 

 

 

 

 




ハジケ横丁一部店舗・人物紹介


・焼き鳥屋の松

 店名は鳥の松。
 焼き鳥流を修め、横丁西口の入り口に大きく立てられた店。
 味も腕も一流。ただしやけに肉がでかい。(オールマイトの顔くらい)


・タロット占いの館 マダム・ルーラー

 店名はルーラーの館。
 タロット流を修めている。少々客を選ぶ傾向にあるが、腕は本物。
 好みの男性はギャングオルカ。


・古書の徳之丞

 店名は古書の徳
 ヒーローオタクでヨロイムシャの若いころから知っている。
 古書流を修めている。


・菓子の大栗さん

 店名は世界の菓子処
 昔友人が目つきの悪い男に絡まれているところを助けに入っていらい目つきの悪い男に容赦が無くなった。もちろん無意味に攻撃はしない。
 菓子流を修めている。



○○流とは

 ハジケ横丁で店を出す人たちが体得している力。個性ではない。
 ハジケ横丁以外では使うことができない。
 極めればオールマイトとも対等に戦える。


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ハジケロワイヤル。ドキドキサバイバル試験開幕

ちょっと長め。けどハジケめちゃ薄いというか無い。


 受験生たちはある二人を除いて何がなんだか分からない状況だった。

 

 プレゼントマイクの突発的なスタートの合図がされた直後、ある二人にはウンザリするほど聞き飽きた声が各試験会場に響いたのだ。

 

 その結果、各試験会場前に巨大モニターが突如として現れ、画面には何も映し出されてはいないが、声が聞こえてきた。

 

『諸君私だ』

 

『誰!?』

 

おそらくこの時ほど、受験生たちの息がぴったりだったことはないだろう。緑谷、爆豪両名は周りと違い肩を落とした。ロクでもないことが起きると二人は確信していた。

 

『スマイリー!! 何をしているんだ!』

 

「え、スマイリー? あのヴィジランテの?」

 

 新たな声(オールマイト)が最初の人物の名前を言ったことで、周囲がざわつき始めた。

 

『あー、受験生の諸君。とりあえずこの試験はこのスマイリーが受け持つことになった。そして、本来の方法ではヒーロー科にふさわしくない人間まで合格してしまいかねなかったため、新しい物を用意した』

 

 すると、各試験会場と現れたモニターたちが突然動き出し、町を作り上げた。ついでにモニターも一つになった。

 

『題して、ハジケロワイヤル。ドキドキサバイバル試験!! だ』

 

 モニターにデカデカと文字が表示される。

 

『ルールは単純明快。町に侵略してきたロボット軍団を払いのけ、町とそこに暮らす人々を守って見せろ。ロボットに設定されたポイントは一律で1ポイント、制限時間は三十分だ。さて、用意をしな』

 

 スマイリーは散らばっていた受験生たちがいた床を動かし、一つの場所に移した。

 

『試験スタート!!』

 

 はじめこそ動かなかった受験生だが、その中から緑谷、爆豪の二人は飛び出した。

 

「かっちゃん!」

 

「うっせ! 言われんでもわかっとるわ!! あの仮面野郎のことだ、どうせなにか隠してんだろ」

 

「うん! ポイントも取りたいけど、町の人っていうのが気になるんだ。あの人なら本当にやりかねないし」

 

「あとでぶっ殺す」

 

「や、やめといた方がいいと思うよ? 前みたいに牛乳タンク一気飲みさせられるかも」

 

「うるせ!! 今度は負けねぇ!!」

 

 二人は町に入ると何も言うことなく二手に分かれた。

 

 それを見ていたほかの受験生たちも急いで会場へと入っていった。

 

 

 

 

「さて、話してもらうよスマイリー。なぜこんなことを?」

 

 オールマイトがいつにもなく怒っている。

 

「というより不法侵入で捕まえているところだぞ」

 

 オールマイトが現れたあとからイレイザーヘッドを始めとする雄英教師陣も合流しており、スマイリーを取り囲むように構えている。

 

「というか、あの程度のセキュリティーで満足してんのか? ヤバすぎじゃない?」

 

 ギャル風の格好になったスマイリーがスマホをイジりながら答える。

 

「答えになっていないぞ、あと着替えろ」

 

「だって~イレイザー君怖いんだもん」

 

「…………っ!!!」

 

 殺意を隠そうともしないイレイザーを周りが止める。

 

「落ち着けイレイザー! やつを殺すな!!」

 

「むしろ死なないだろう。問題ない」

 

「問題ですよ!?」

 

「きゃーオールマイト怖い~」

 

「……スマイリー真面目に答えてほしい。なぜ試験をめちゃくちゃに?」

 

「それは、この試験が合理的じゃないからでございます」

 

 眼鏡をかけたスーツ姿に変わったスマイリーはしっかりとした口調で答える。

 

 その言葉にイレイザーの殺気は収まりを見せる。なにせ自身も合理性に欠けると思っていたからだ。

 

「どういうことだい?」

 

「元々の試験を受けさせた場合、このような生徒が合格する可能性が著しく低下する」

 

 スマイリーは一枚の写真を見せる。

 

「この少年は?」

 

 オールマイトが訪ねる。

 

「心操人使。現在実技試験を受けている。個性は洗脳」

 

「……ふむ、確かに本来の試験では厳しいってもんじゃないね。しかしこの試験なら受かるのかい?」

 

「さあ? 本人次第だろ。体力もないみたいだし」

 

「え!? 君がこっそり鍛えてたとかは!?」

 

「ないよ」

 

「じゃあなんでさ!?」

 

「そいつは昔からヴィランみたいだって言われてた」

 

「!?」

 

「でも憧れてんだよヒーローに。ならチャンスを与えてやるのもいいじゃんか。体力がないなら入学後にきっちり鍛えればいい。能力の活かし方を指導してやればいい。サイドキックに欲しい奴は結構いるだろうからな」

 

 スマイリーは現在試験が行われている町を見る。

 

「俺がやったのはお前らが用意した試験より少々厳しいがより平等な試験だ。ま、それに気がつかないやつはポイントをちまちま取るしかないな」

 

「いつまでも俺みたいなヴィジランテがいちゃダメだろ。ちゃんとしたヒーローたちを育ててやれよ」

 

「スマイリー……」

 

「あ、でも今年から俺ここの教師だから」

 

「え…………マジ?」

 

「マジマジ。校長から許可もらったから」

 

「……脅した?」

 

「交渉と言え。てなわけで、よろしくなオールマイト」

 

「ああ、うん……嫌な予感がするなぁ……」

 

 オールマイトの呟きは教師陣全員の言葉でもあった。

 

 

 

 

「やああああああっ!!」

 

 振りぬいた右腕はロボットを破壊することは出来ずに外れる。

 

「くそっ、動きが俊敏すぎる」

 

 現在緑谷は、ロボットたちに苦戦を強いられていた。

 

「攻撃! 攻撃! 攻撃!!」

 

 手に持っていたトリモチ弾を装填した銃を緑谷に向け放つ。

 

「っ!」

 

 オールマイトから継承されたワン・フォー・オールを全身に纏い、自身の身体能力を底上げする。遊園地内で習得した体の使い方でトリモチ弾を回避し続けるが、そこへほかのロボットが回避の隙を見計らうかのように攻撃を仕掛けてくる。

 

「ぐうっ!」

 

 ロボットたちの連携によって攻撃を受けてしまった緑谷はビルの壁にたたきつけられる。安全面を考慮されているのか、壁は多少弾力性があった。

 

(スマイリーさんのことだから安全面の配慮が少ないかなって思ったけど、案外そうでもない……? なにか意味があるんだろうけど、その前にこいつらを倒さないと)

 

 目の前にいる三体はサンバを踊りながら緑谷の様子を見ている。

 

「誰かー助けてー!」

 

「っ!? この声は!!」

 

 緑谷はスマイリーが町の人役を実際に用意していたと確信。しかし、今までも戦闘が行われていたが、なぜ今になって聞こえてきたのか。その答えはすぐに分かった。

 

『残り十五分です。町の人々が逃げ惑っています。保護しましょう』

 

 あらゆるところにセットしてあったスピーカーから声が聞こえた。

 

「くそっ、まだロボットたちから1ポイントも取っていないのに……けど、仕方がない」

 

 緑谷はロボットたちから距離を取り、声がした方向へと走り出す。

 

『ミドリヤイズク、市民ノ安全ヲ優先。10ポイント』

 

 ロボットたちはそれだけ言って別々の場所へと移動した。

 

「大丈夫ですか!? 安全な場所までお連れ――――ってハジケ横丁にいた大栗さん!」

 

「あら、目つきの悪い子といた子ね」

 

「な、なんでここに……ま、まさか町の人役って」

 

「そっ、私たちよ。ささ案内して」

 

「あ、はい」

 

 緑谷は自分たちでなんとかなるんじゃないかと考えたが、言わないことにした。

 

『緑谷、1人を救助したから5ポイントだな』

 

 スピーカーからスマイリーの声が聞こえた。

 

(まだ5ポイントか、もっと頑張らないと)

 

 実際には15ポイント取っているが、そんなことも知らない緑谷は大栗さんを避難させたのち、再び町の中へと駆け出した。

 

 

 

 

 

 

『緑谷、1人を救助したから5ポイントだな』

 

 スマイリーの声は試験会場にいた者たちに聞こえており、爆豪もしっかりと聞いていた。そもそもこのアナウンスをした理由は始まってから15分が経過しているのに緑谷以外だれもポイントを取得できていないからだ。

 

 受験者たちはロボットを倒すことに意識が集中しており、ろくに避難させようとしない者たちが多い。そこでスマイリーはロボットの回避能力をさらに上げた。もともと高かったが、さらに難易度を底上げしてしまったために撃破が難しいのだ。

 

 スマイリーがオールマイトらに教えた心操人使も体力の問題が付きまとってしまい、上手く避難できずにいた。

 

「デクが俺より先にポイント取っただぁ! なにをしやがったデクゥ!!」

 

 イライラが増した爆豪はロボットたちに攻撃を仕掛けるも、ラインダンスをするロボットたちになぜか命中せずに回避される。

 

『ヘタクソ! ヘタクソ!』

 

「~~~~~~~っ!!」

 

 挙句ロボットからバカにされる始末で爆豪の怒りは頂点に達していた。だが、

 

「だれか、助けて……」

 

「っ!」

 

 か細い声が聞こえたことで、スマイリーの言葉を思い出す。『町の人々を守って見せろ』という言葉を。

 

 すぐさま爆豪は声がした方へと向かい、ガレキに足が挟まっているハジケ横丁で出会ったマダム・ルーラーがいた。

 

「なんでてめぇがいんだよ!!」

 

「私は町の住民なのよ、ほら助けなさいな」

 

「くそがぁ! さっさと行くぞ!」

 

 ガレキだけを爆破で吹き飛ばし、マダム・ルーラーの手を取る。

 

「もう少し丁寧に扱ってほしいわ」

 

「うるせ!!」

 

 やっぱりギャングオルカみたいな人がいいわ。などと言うマダムを連れて爆豪は避難場所へと急ぐ。

 

 

 

 

 

 

『残り五分だ。ボスの登場だぞー』

 

 そのアナウンスが流れると、会場でもっとも大きなビル(200m以上)よりもさらに上回る巨大なロボットが現れた。

 

「か、敵うわけねぇだろ!! 逃げるぞ!!」

 

 一部の受験者は逃走を開始する。

 

 無謀な戦いを避けるのは悪いことではない。だが、町の人々と共に避難すればまだよかったが、自分ひとりで避難するとなれば、スマイリーは容赦がない。

 

「あいつは失格。あいつも……根性がないねぇ……」

 

 どこかつまらなそうにモニターを見ながら受験生を不合格扱いにしていく。

 

「…………スマイリー。それでも何人かは無謀とはいえ、勇気を振り絞れるようだぞ」

 

 共にモニターを見ていたオールマイトは嬉しそうに笑う。映っているモニターには緑谷と合流した爆豪が話し合っている。

 

「スマイリー、声を拾えるかい? 何を話しているか聞きたいんだ」

 

「OK」

 

 リモコンのスイッチを操作して音量を上げる。

 

『ああ!? それ本気で言ってんのか!?』

 

『うん。かっちゃんはどれだけ稼いだか分からないけど、僕にはこの試験がポイントだけで済まされるとは思わないんだ』

 

『……仮面野郎の気分次第でさっき逃げたやつらが失格になるだろうな』

 

『うん。多分スマイリーさんは失格扱いにしてると思う。大事なのは町とそこに暮らす人々をどう守るかなんだ。』

 

『あれを倒した時の破片で町を壊したらポイントが減る』

 

『十分にあり得るね。それにこの試験は一人でできるものじゃないと思う。さっきまで物を浮かせる子と連携したんだけどそういう他の人とポイントを分け合えるかを見ている可能性もあるよ』

 

『けっ、あの野郎……』

 

「薄々気が付いているようだね」

 

「ま、あいつらがいるから元から難易度高めだったし、気が付いてくれなきゃ困る」

 

 この試験は元より一人でやるために存在していない。1ポイントのロボットどちらが倒すか? ではなく、どちらが倒してもこの町を守ることを優先。という考えに至ってほしかった。そのための1ポイントだ。まして避難させなくてはいけない人々がいる以上戦いだけに集中するのは愚策だ。

 

 とはいえ、スマイリーも町の人役の人数を少なくしていたミスがあるためなんとも言えない。

 

『僕があれを切るから、かっちゃんが落下してきた物を残さず消してほしいんだ。どうやら相当頑丈なバリアが張られているみたいだし』

 

『ちっ、しゃあねぇ……さっさと行け』

 

『うん!』

 

 緑谷はなぜかジャージの上を脱ぐ。

 

『その脱ぐのなんとかできねぇのか?』

 

『こっちのほうが集中できるから……』

 

『そうかよ……』

 

 呆れる爆豪を他所に、緑谷は集中する。

 

『ふぅー』

 

 鍛えられた上半身の至る所に、模様が浮かび上がる。

 

(生命力を高めろ……この状態で何かあれば、ひとたまりもない……だからこそ集中できる。ワン・フォー・オールを高めることができる)

 

 巨大ロボットは着々と緑谷たちに近づいていた。

 

『デク! まだか!?』

 

 モニターで見ているオールマイトもハラハラしていた。

 

「だ、大丈夫なのか緑谷少年は!? てか、なんで脱いでるの!?」

 

「あのほうが集中できるんだと」

 

「コスチューム必要なさそうだね……」

 

 

 

 

 

 試験会場は超巨大ロボットの出現で混乱していた。その中で逃げていく受験生を見て、避難させる人たちがいたことを思い出した心操人使は急いで自身の個性を使って、慌てている(ふり)人たちを誘導させる。

 

「よし、急いで逃げないとな」

 

 心操は少しだけこの試験が自分にも可能性があることに幸運を感じていた。

 

「絶対合格する!!」

 

『洗脳の個性でもヒーローになれるか? さぁ、俺はヴィジランテだし分かんねぇな。それができるのはその個性を持っている奴だけだしな』

 

 昔、この試験を乗っ取ったヴィジランテに尋ねた時の言葉は今も心操人使の心を支えてくれた。だからこそそのための第一歩を踏み出したい。心操は大勢の人たちを連れて避難を急いだ。

 

 

 

 

「いくよかっちゃん!」

 

「しゃあ!! ぶっ殺してやるぜ!!」

 

 緑谷は個性を利用して跳躍した。

 

 グングン上昇し、ロボットの頭上まで来た。

 

「少し高いけど……はぁぁぁぁぁ!」

 

 力を右腕に溜める。

 

(この腕は一本の剣――――)

 

「――――SLASH!!」

 

 腕を数回に渡り振る。するとロボットはスパスパと細切れになる。

 

「うおおおおおおおおおっ!!? ロボットが切れたぁ!!」

 

「やっぱり、斬撃に対してバリアが弱い」

 

 予想通りだという言葉を言う前に、急速に落下していく自分に焦りだす。

 

「あ、どうしよう……」

 

 受け身は取れないし……。などと考えながら落下していく緑谷に跳躍して接近してくる影があった。

 

 ペチンという音とともに緑谷の落下は停止した。

 

「解除……ふう」

 

 そこには先ほどまで緑谷と連携していた麗日お茶子と協力を頼まれた飯田天哉がいた。

 

「大丈夫か!?」

 

「な、なんとか……ありがとう」

 

「おい、デク! 細かすぎて処理が面倒だったぞ!! いくつか取りこぼすところだったわ!!」

 

「ご、ごめんかっちゃん」

 

『終了~これにて試験は終わりだ。お疲れさん結果はサクッと郵送しておくからお楽しみに』

 

「どうやら終わったようだな……」

 

「ふう、怖かった……」

 

 飯田と麗日は安心したのか脱力気味である。

 

「デク! あの仮面野郎をぶっ殺しに行くぞ!!」

 

「ええ~やめようよかっちゃん。絶対返りうちだよ」

 

「一発ぶち込まなきゃ気が済まねぇんだよ!! 行くぞ!!」

 

 

 

 

 このあと爆豪は返り討ちにあい、煮干し食べ放題(強制)に付き合わされた。

 



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ネギに無限の可能性を込めて……

「スマイリーの誰でもできる楽しいクッキングー! イエー!!」

 

 パチパチと雄英新入生たちがいる前で謎の発言をはじめたスマイリー。教師も在校生たちも何がなんだかわからない状況である。

 

 彼の隣には特大の鍋が置かれており、その中に大量の水を入れていた。

 

「それじゃ、まずはエンデヴァーの火で鍋を暖めます。あいつの火だとすぐに沸騰するから便利なんだよ。鍋が温かくなったら、少々固めのドラゴンの肉をこの大鍋にいれていきまーす。あ、これはリューキュウの肉じゃないから安心してね。続けてグリフォンとペガサスの翼で味付けし、吸血鬼の血でさらにとろみをつけていきます。さらに、バジリスクとコカトリスの肉を幻獣として有名な麒麟の血で漬け込んだ物を追加で入れていきます。これにより先に入れていたドラゴンの肉にも染み込み、深い味がするようになります。ここでグツグツと煮込んでいったら、クラーケンのダシを追加で入れていきます。さらにかき混ぜていくと……うん。いい匂いだ」

 

 鍋の中から紫色の煙が立ち込めてくる。どう考えてもいい匂いはしなさそうである。

 

 相澤からしてみれば自分が受け持つクラスの実力を把握しておきたく、初日からテストを仕掛けるつもりであったが、気がつけば入学式に参加させられていた。

 

 なにをするつもりか解らないが、止める必要があると判断してはいるのだが、体がなぜか動かない。

 

「さてさて、ここでクラーケンの本体をぶつ切りにしていれていくよ、食感のアクセントになるからね。でもってホークスからパクッて来た翼もついでに入れちゃってと最後にケルベロスとオルトロス、リヴァイアサンの心臓をスライスした物を入れて、最後にネギをお好みの本数入れて蓋をします」

 

 大鍋に蓋がされ、カタカタと音を立てる。その間も誰一人として動くことができなかった。

 

「さてそろそろ出来たかな」

 

 蓋を開けると、虹色に輝く煙が体育館を覆う。見た目に反して匂いはよく、だれも嫌がる素振りを見せない。

 

「はい、スマイリー特製ネギチャーハンの出来上がりー」

 

『なんで!?』

 

 スマイリーの手には一般的なさらに盛られたチャーハンであった。特大の食材を入れたはずなのに出来上がったのは、一人前程度のチャーハンである。盛られているのは米とネギだけである。その他の食材は一切確認できそうにない。

 

「さて、試食といきましょう! 試食していただくのは三年生の天喰環くんでーす」

 

「――――ッ!!」

 

 身動きできないように両手両足を固定され、布で口を封じられている天喰環は、必死に逃げようとするが、個性が使えない状況での自力での脱出は無理であった。

 

「さあ、遠慮せずに食べてね~」

 

 口にあった布を取り、ネギチャーハンを口の中にねじ込む。

 

「んんんっ!? ごほっ」

 

 遠くで自身の友人の声が聞こえたような気がする環であったが、口の中に侵略してきたチャーハンに意識が持っていかれる。

 

(美味い!? なんだこれは!!)

 

 人が食べられるのか怪しい物が大量に入れられていた気がしたが、そんなことはなく。人生で一番美味いチャーハンであった。

 

「うっ……うおおおおおおおおっ!!」

 

 しかし、彼自身の個性と実はちゃんと入っていたドラゴンらの食材は見事にマッチしていた。

 

「うんうん。リアルサンイーター計画が前に進んだね。じゃ、入学式終わりね~」

 

『ええええええええっ!?』

 

 スマイリーが去り、残されたのはドラゴンかグリフォンかホークスなのかわからない翼やら、クラーケンの足やらが発動して妙にアグレッシブルになった環とそれをポカンと見ている生徒と教員であった。

 

「あ、ヒーロー科の一年生はこのあと早速A組B組の合同で授業だからさっさと校庭に来るように。来ないと除籍するよ」

 

 もう一度顔を出したかと思いきや、とんでもないことを口走り姿を消した。

 

 それを聞いて爆豪は、

 

「デク!」

 

 とだけ言って自身は走って姿を消した。

 

「みんな! 早く行こう。じゃないと除籍はしないだろうけど、あの人のことだからトンデモないことをするかもしれない!」

 

 デクと呼ばれた緑谷は立ち上がって、ヒーロー科の生徒たちに声をかける。

 

「え、いや、どういう……」

 

 戸惑う者も当然出てくるが、

 

「ごめん。今説明している暇はないんだ! 今は急いで校庭に向かおう!!」

 

「皆! よくわからないが、今は彼に従おう!!」

 

 メガネを付けた男子生徒――飯田天哉も立ち上がり、緑谷に賛同する。

 

「そ、そうだな! よく分かんねぇけど、急ごうぜ!!」

 

 さらに立ち上がって賛同してくれた切島鋭児郎も困難はしているが、ここに座ったままハイテンションになっている天喰を見ていたくないという思いも少なからずある。

 

 ゆっくりであるが、その思いが伝播していき、最終的には爆豪を除いた39名で移動を開始した。

 

 ちなみに爆豪は遅れてくるやつがいてもいいように。スマイリーに攻撃をしかけ、自分に意識を集中させて、時間稼ぎと自身の鬱憤を晴らそうとしていたが、あっというまにネギで吹っ飛ばされていた。ちなみに平然と個性を使っているが、事前に個性を使って攻撃していいとスマイリー本人から言われている。

 

「お、来たか。……まぁ、それなりに早いから良しとしようか」

 

「よかった……」

 

 ほっと一息つく緑谷。ネギの山に埋もれている幼馴染は見ないようにしている。

 

「さて、知っていると思うが、今年から俺の勝手な権限で雄英は全寮制になっている。よって朝から晩まで楽しい楽しい授業が盛りだくさんだ。三年間楽しくいきたいと思うなら別の学校に行ってくれていい」

 

 スマイリーは40人の様子を見る。全員気を引き締めている。一人ネギの山から顔を出しているが。

 

「先に言っておくが、普通科の連中もヒーロー科を目指して厳しいカリキュラムを俺が導入した。少しでも悪い点を取ったら普通科の人間と入れ替わることを覚悟しておけ、推薦で入った4人も例外じゃねぇからな」

 

 ニヤリと仮面が笑みを見せる。

 

「さて、この授業はお前らの担任からの許可は取ってない。だが、授業単位としては含まれている。こういうことはこれからもやっていく油断すんなよ? じゃ、今からお前たちにやってもらうのは、これだ!!」

 

 校庭に突如として巨大な塔に見えるネギが出来上がった。

 

「名付けて! 〈伝説のネギを取り返せ!! わくわくタワー第一階層!!!!!〉だ」

 

(第一階層……嫌な予感がするなぁ……)

 

「ルールは簡単。この最上階にいるネギ王から伝説のゴールデンネギを誰でもいいから取り返してこい」

 

「いや、それ強奪じゃ……」

 

 ネギ王からネギを奪うのではこちら側がヴィランのように思えてくる。

 

「いやいやいや、ゴールデンネギを手にしたやつはその力によってネギ王を名乗ってんのさ、この塔もその力で出来た物だ」

 

「そういう設定か……」

 

「質問があります!! 我々は現在制服姿でありますが、もしやこのまま塔の中に入るのでしょうか?」

 

 綺麗な挙手をしながら質問するのは真面目な男である飯田天哉である。

 

「そうだ。といいたいが、今回は特別だ。……ハジケチェンジ!!」

 

 スマイリーの仮面が光ったかと思いきや、全員の制服に変化し、事前に書いていたヒーロー着になっていた。

 

「これは!」

 

「すげぇ、一瞬かよ!!」

 

「お前らが事前に頼んでいた物だ。一部こちらで改良を入れさせてもらったが、概ねお前らの注文通りのはずだ」

 

「先生! 私はグローブとブーツのだけのはずですけど、なんでスーツやヘッドギアまで?」

 

 質問してきた葉隠透は透明化の個性を生かすために、なんとグローブとブーツだけを要望書に書いていたが、スマイリーの独断で、彼女の皮膚に反応して、透明化するスーツやヘッドギアを開発。防弾、防刃に加え、耐熱、耐寒など考えられる防御手段を加えた。

 

「それに関しては後で説明するから少しだけ残ってくれ、あと心操と口田と緑谷、それからネギの山に埋もれている爆豪もだな」

 

「てめぇが埋めたんだろうが!!」

 

 怒りでネギ山から出てきた爆豪もスーツ姿であった。

 

「あ、そうそうこの授業も含めた一部の授業ではとある採点を行っている。この一学期でもしもマイナス100点を取った場合。その時点で除籍だ。ヒーロー科には相応しくない」

 

 ヒーロースーツを貰って喜んでいた生徒たちの顔を引き締まる。

 

「んじゃ、さっき言われた生徒以外はスタート!」

 

 一斉に塔の中に突入する生徒たち。それを4人の生徒は見送る。

 

「さて、葉隠。さっきの問いだが、年頃の女があんな注文をするのはさすがに見過ごせないからだ」

 

「けど、この個性を生かすとなるとこれじゃあ……」

 

「慌てんな。右腕についているボタンを押してみろ」

 

「あ、これですね。えい」

 

 すると今まで見えていたヘッドギアなどの装備品が全く見えなくなった。

 

「ええっ!!? すごい! どうなっているんですか!?」

 

「ボタン一つで簡単インビジブル! そのボタンのオンオフでお前の皮膚情報を読みとり、装備品の透明化または非透明化を選べるんだ」

 

「便利ですね!!」

 

 何度もオンオフをしながら楽しんでいる葉隠にスマイリーは珍しく真面目な表情を向ける。

 

「葉隠、お前の個性は組織的なヴィランたちのアジトに潜入することなどに向いている。あまり人気が出にくいと思うが、それでも腐らずにやっていけるか?」

 

「もちろんです!!」

 

 グッとグローブを握りしめる葉隠。その表情はきっと笑顔だろう。

 

「心操と口田もそうなんだが、お前たちのは戦闘向きではない。そこで緑谷、爆豪」

 

「はい!」

 

「んだよ」

 

「お前たちは新入生の中で俺の特訓などに付き合った人間だ。だから少しだけハンデを与える」

 

「もしかして3人と関係が?」

 

「そうだ緑谷。お前たちはこの3人のいずれかにゴールデンネギを獲得させるように動け。ただし、他の生徒を妨害するなよ?」

 

「B組にも戦闘向きじゃねぇのはいたんじゃねぇのか?」

 

「いたよ。けど今回はA組の2人だ。次は向こうの生徒たちに似たようなことをする」

 

「ちっ……」

 

 不満そうな爆豪だったが、ここで逆らっても仕方がないため我慢する。

 

「もし、達成されたらこのゴールデンネギバッチをあげよう」

 

「要らんわ!!」

 

「え、要らないのかっちゃん!?」

 

「なんでそんな反応してんだデク!?」

 

「だってあれがあると買い物で野菜が安くなるんだよ!? 母さんが喜ぶし! ね?」

 

「あれにそんな効果があんのかよ……」

 

 頭を押さえる爆豪。ついていけない3人は少々オロオロしていた。

 

「おっとそろそろ先頭集団が妨害兵士たちと出会いそうだな。お前たちも行け。条件を達成したら5点あげるぞ」

 

「……点数を得るとなにかあるんですか?」

 

「一学期中にプラス100点を取得すると、プレミアムな商品をプレゼント予定だ」

 

「絶対ロクなやつじゃねぇな」

 

 爆豪の言葉はその場にいた他の4人の感想でもあった。

 

 

 




ネギを貰ったので投稿してみました。


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ネギトロ革命

 短いですが今年最後の投稿になります。


 峰田実。

 本来ならばヒーロー科へ合格可能であった人物であるが、スマイリーの「こんなエロいことしか考えていない奴がヒーロー科に来たら女子生徒に迷惑がかかるだろう」という発言によりヒーロー科を不合格になった人物である。

 

 スマイリーは受験生すべてのプロフィールを入手しているため、このような判断ができた。だが、個性はヒーローに向いているため、スマイリーは特別に普通科で好成績を収めればヒーロー科への転科を認めると合否の際に通達していた。

 

 結果、峰田は普通科からヒーロー科を目指すことになる。

 

「うああああああああああああああああああああっ!!!!!!!」

 

 峰田は現在命の危険にあった。彼からすればそれは地獄とも言えるものであるからだ。

 

 ヒーロー科を目指すうえでの授業であると分かっているが、始業式を免除されてこのようなことをされるのは流石に酷い。と思っているが、この課題を出したスマイリーはヒーロー科の授業でいない。

 

「峰田く~ん。そんな逃げないで~」

 

「来るなああああああっ!!」

 

「私たちと、あっつーい思い出を作りましょう~?」

 

「嫌だあああああああっ!」

 

 現在峰田はムキムキマッチョな乙漢たちとトレーニングをさせられている。

 内容は彼らから制限時間まで逃げ続けることである。

 

『待ってえええええええ!!!』

 

「助けてええええええっ!!!」

 

 峰田の戦いは続く。

 

 

 

 

 

 

 先頭集団から少しばかり遅れて緑谷たち五人もタワー内部へと入っていくと、そこではすでに戦闘が終わっていた。A組B組の生徒たちが倒されているという状態で。

 

『ネギ、トロ……ネギ、トロ……』

 

 ついでにネギの被り物をしている男たちが奇妙な踊りを見せていた。

 

「……なに、あれ?」

 

 葉隠はほかの者たちが思っていたことを口に出す。

 

「みんなが倒されているのを考えるとあの人たちが倒したんだろうけど」

 

「むっ、また新たな敵か! 何人来ようと同じ事! この塔を進みたければ我らネギトロ組を倒してからにしてもらおうか!!」

 

「ネギトロ組……まんまだな」

 

 心操は驚いたようにそれだけを口にした。隣では口田が不安そうにしていた。

 

「んなもん全部ぶっ潰せばいい話だろうが」

 

 爆豪は手から爆発を起こして、いつでも戦えるように準備していた。

 

「というよりも、ネギトロってねぎ取るとか根切りとか、とにかくネギとは関係ない言葉から来たんじゃなかったっけ?」

 

「へぇー詳しいね緑谷!」

 

「あはは、色々と知識を蓄えておけってアドバイスされてね」

 

 葉隠が緑谷を褒めている最中、ネギトロ組の表情は悲惨なものになっていた。

 

「おいデクてめぇの発言であいつらショックを受けてんぞ」

 

「ええ? 僕のせいなの?」

 

 見ればネギトロ組は両手両膝を地面につけてうなだれていた。

 

「分かっていたさ、ネギトロの意味がネギとトロの組み合わせじゃないことぐらい分かっていたんだ。でも、それでも……ネギとトロだと思いたいじゃないかあああ!!」

 

「知るか!!」

 

 爆豪の先制攻撃を開始。しかし、ネギトロ組の一人が取り出したネギにより防がれてしまう。

 

「この焼きネギ剣の前では無力!!」

 

「ちっ」

 

「みんな、決めたぞ。俺たちネギトロ組はネギトロの意味をネギとトロに変えるべく戦うんだ!!」

 

「そうだ!」

 

「やろうぜ!」

 

「俺たちなら出来る!!」

 

「やるぞ、ネギトロ組始動だあああああ!!」

 

『おおおおおおおおっ!!』

 

 消沈していた少し前と打って変わって士気がとんでもなく上昇している。

 

「死ねや!!」

 

 特大威力の爆撃がネギトロ組を襲う。しかしながら焼きネギ剣でやはり防がれてしまう。

 

「無駄だ!! 貴様たちの攻撃はネギ王様から授かった名剣たちが防いでくれる!」

 

「くそがあああ!」

 

「落ち着いてかっちゃん! 突破口は必ずあるはずだよ!」

 

「ふはははは!! ネギトロ組連携殺法!」

 

 ネギトロ組の者たちが一斉に五人を囲む。

 

「ここは俺が――がはっ!?」

 

 個性を使って相手の動きを少しでも止めようとした心操は背後から接近してきていたネギトロ組の一人に切られていた。

 

「心操君!?」

 

「貴様らの個性は把握済みだ!!」

 

「あの仮面野郎! やっぱりそういうことしてんのかよ!!」

 

「ネギトロ組連携殺法その1! サザンシモニタウェーブ!!」

 

 ネギを地面に突き刺し、そこから水が強烈な勢いで噴射された。

 

 周囲から水をかけられ、爆豪と葉隠は実質個性を封じられた。

 

「そこだ。ハイパーネギスラッシュ!!」

 

「そら、食らいなネギハンマー!!」

 

「きゃあああ!!」

 

「っっっ!?」

 

「葉隠さん! 口田君!!」

 

 連携攻撃でさらに倒され二人になってしまう。

 

「まだまだ!! ネギトロ組連携殺法その2! クジョウパウンド」

 

 跳躍していた数人の敵が取り出したネギが緑谷たちを縛り上げる。

 

「ぐっ、千切れない……」

 

「無駄よ無駄! それはオールマイトでも千切るのは難しい! 柔軟なのに固い! ネギ王様から授かったフロストネギ剣に不可能はない!!」

 

「くっそ……」

 

 なんとかして脱出を試みるが、どうしても抜け出せない。

 

「終わりだ!」

 

 縛られた二人はそのまま壁に叩きつけられ、起き上がることはなかった。

 

「ふっ、大したことはなかったな。さて、この勝利をネギ王様に捧げようネギトロダンスだ!」

 

『おおおおっ!!』

 

「ネギ、トロ……ネギ、トロ……」

 

 A組B組共に全滅してしまった。かに見えた。

 

 

「まだだ……まだ戦える!」

 

 緑谷と爆豪は再び立ち上がった。

 

「ほう……いいだろう。貴様らをじっくり料理してからネギトロ革命を起こして見せよう。かかって来るがいい!」

 

「行くぞデク!!」

 

「うん!」

 

『おおおおおおおおっ!!』

 

 

 

 

 二人はネギトロ組に突撃していった。

 

 

 

 

「さて、生徒たちが戦闘を続けてるんだ。採点はまだ続けてくれよ先生方」

 

 タワーの外では雄英教師陣が巨大モニターを見ながら何かしら書き込んでいた。

 

 




 ちなみにこの小説は体育祭あたりで終わらせる予定です。敵がいないもんで。


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入学初日は翌日の授業開始まで適応されると信じたい。

遅くなって申し訳ない。いろいろあったもので。


今回は次回への導入的なものなのでハジケが薄いです申し訳ない。


 雄英教師たちによる採点。

 

 それは全教員を巻き込んだスマイリーの提案であった。

 

 学年を問わずスマイリーの気まぐれによって突如として実施されるヒーロー科の生徒を巻き込んだ授業。

 

 ヒーローの資格を持つ教師陣たちに生徒の様子をモニタリングさせ、採点。個々のプラス点とマイナス点を別々に平均化し、最後に合わせた点がその授業の成績になる。

 もちろんマイナス100点に達した時点で除籍である。

 

 教師陣が全員いるため他のクラスの授業はスマイリーお手製のスマ太郎ロボ教師モデルによって円滑に行われているため問題はない。

 

 教師全員であるため新人教師であるオールマイトも採点しているが、根が優しいためなのか、なかなかマイナス点を高くつけられないようだ。

 

「うーん。緑谷少年の動きは悪くないんだが……」

 

「オールマイト。これはあくまでも練習です。ダメなところはしっかりと点数をつけるべきでは?」

 

「わかっているんだけどね相澤くん。みんな初日なのに頑張っているから」

 

「かといって甘くしてやる必要はあいつらのためになりません」

 

「う、うむ……」

 

 相澤は手元の採点用タブレットにどんどんマイナス点を書き込んでいる。

 

「さあさあ! 採点しちゃってよー!! 今日はお試し企画だよー気にしないでいいんだよー」

 

 八百屋を営業し始めたスマイリーに教師陣はおかしな目で見るが、

 

「オラ! 採点に集中しねぇか!!」

 

 などとスマイリーがなぜかキレる。

 

 八百屋なのに売っている野菜を勝手に焼きそばの材料にしていいのだろうか? 一部の教師は考える。加えていい匂いが漂って邪魔をする。

 

「ああ、ネギの嵐でみんな倒されてしまったね……」

 

「ちょうど授業も終わるころですし、問題ないなスマイリー」

 

「OK! お疲れ様ー!! 次の授業は夜ね!!」

 

「……ん? 夜?」

 

「それじゃ! 俺は準備があるから!!」

 

「ま、待ちたまえスマイリー! 夜ってなんだい!?」

 

 オールマイトが止めようとするもスマイリーは足の裏からジェットを噴射して焼きそばを食べながら飛び立っていった。

 

『残った焼きそばは食べてね♡』

 

 教師陣の大半がイラッとした。

 

 

 

 

 ボロボロになった40人のヒーロー科生徒たち。

 

 授業が終了するものの、クリアできない悔しさに打ちひしがれていた。

 

 オールマイトらが裏で採点していたことを聞いて、多くの生徒が除籍を考えてしまったが、今回が初日であることと教師側も試験的な一面があった為に点数の増減はないという発言で、生徒たちは落ち着きを折り戻した。

 

 だが、スマイリーが夜になにか仕掛けてくると相澤が言うと、緊張が走る。

 

「そういうわけで今のうちに寮に案内しておく。いつでもスマイリーが奇襲を仕掛けてきてもいいように用意しておけよ」

 

 スマイリーが効率アップのために一時間で用意した学生寮へと案内した(他の学科にも存在する)

 

「おいでやすーようこそヒーロー科の皆さんわたくし寮母のスマ子と申します」

 

「何をしているんだいスマイリー……」

 

「出迎えに決まってんだろうに」

 

「着物を着た仮面の人間に出迎えられてもねぇ……」

 

「気にしない気にしない。さて新入生40人のガキどもよく聞けぇ!」

 

「一瞬にして軍服に着替えるなら着物は何だったんだ……」

 

 軍服に着替えたスマイリーがヒーロー科ご一行の旗を持って案内を始めた。

 

「この共同スペースを正面に右が男子、左が女子だ。だが、部屋はまだ決まっていない」

 

「ん? まだ決まっていない?」

 

「そう。と、いうわけでスーパー部屋決め大戦をはじめるぜぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 マイクを取り出したスマイリーがそのように宣言すると。寮の入口が閉じられ、周囲に戦闘ロボが展開していた。

 

「この室内でどのような戦闘をするか、もしくはしないというのもありだ。とにかく部屋の中へ入ること。こいつらはそれを阻止してくる。捕まれば補習を受けてもらう」

 

 スマイリーは生徒たちの顔を見渡す。

 

「さて、ただ部屋の中に入るだけじゃつまらん。特別ルールとして一番最初に部屋に入った者にはこの8割程度の再現に成功したエクスカリバーをプレゼントしよう」

 

「偽物なのにすごい迫力だな……本物はさぞすごかったんだろうね」

 

「そりゃすごいさ、俺の家に飾ってあるけど神々しいぞ」

 

「え?」

 

「ん?」

 

「あるの本物?」

 

「あるよ」

 

「そんなキメ顔で言われても……」

 

「それじゃスタート!! あ、昼までに終わらせるからなー」

 

 スマイリーの掛け声と共にロボたちが一斉に攻撃を開始。生徒たちも守りを展開したのち攻勢に出る。

 

「さてさて、終わるまでオールマイトの新コスチュームでも考えるかね」

 

「私のかい?」

 

「サポートアイテム制作検定1級の俺に死角はない」

 

「あったかそんなの?」

 

 相澤の疑問は最もだったが、スマイリーは当然無視する。

 

「そういえばスマイリー。夜にもなにかするつもりなのかい?」

 

「いやしないよ。眠いじゃん」

 

「ええ……」

 

「お前たちから伝えられて、勝手に警戒してくれるかなって」

 

「最低だなお前」

 

「てへ」

 

 殺意の沸く相澤だったが、我慢した。

 

「ま、あいつらが油断していたらやるかもな」

 

 カカカカッと仮面が笑い始める。

 

 このやり取りの間にも生徒たちの怒号と悲鳴が寮内に響いていた。

 

 

 ちなみにだが、部屋決め大戦で最初に部屋に入ったのは取陰切奈だった。だが、エクスカリバーはいらないから他の何かをくれと頼んだ。そこでスマイリーは恐竜エネルギーを取り込んだベルトをプレゼントした。これによって取陰の個性はさらなる飛躍を遂げることになる。

 

 

 全員が部屋へと入ることに成功したのち少々遅めの昼食を取り、食後の運動と称して相澤が本来やるつもりだった個性把握テストをA組B組合同で実施。そのあとにスマイリー企画立案のデンジャラス鬼ごっこ~捕まったら除籍だぞ☆~が始まり、緑谷たちは学校内を必死に逃げ回った。

 

 

 さらに、それが終わり次第。チキチキ通常授業でドカンという国語などの授業をわくわくタワー第二階層なる場所に送り込まれながら受けることになり。生徒たちの疲労は限界を超えていた。

 

 

「もう無理……死んじまう……」

 

 上鳴電気は机にぐったりと体を預けていた。

 

 彼だけではなく他の者たちも似たようなものだが。

 

「これが初日って……俺やっていけんのかな……」

 

 上鳴から消極的な言葉が出てしまう。それは他の者たちも思っていたことだ。だが、

 

「大丈夫だよ皆!」

 

 緑谷と爆豪は違った。

 

「緑谷……」

 

「スマイリーさんは確かに厳しいけどいつもいつもこんなことばかりじゃないと思うよ。ね、かっちゃん」

 

「ああ、まぁな。慣れちまえばこっちのもんだろ」

 

「いや、慣れるまでが問題だと思うんだけど……」

 

「平気だよ、ちょっと大変な思いをすればあっという間だから。はははは」

 

「おい、デク正気に戻れ」

 

「はっ!?」

 

 余計に不安になる一同であった。

 

 

 その夜。

 

 食事を終えた緑谷たちは共同スペースで会話を楽しんだり、部屋で過ごしたりしていた。もちろんスマイリーが何かをしてくる可能性を疑い警戒していたが、いつまでたってもやってこないため、皆が眠りについた深夜1時。

 

『ハーハッハッハッハッ!! おはようございます生徒諸君!! これより深夜の戦闘訓練を始めるぜぇぇぇぇぇぇ!!!』

 

 寮内に響き渡るスマイリーの声に全員が目を覚ます。加えて全員コスチュームに着替えさせられていた。

 

『ヴィラン共が休んでいるお前たちを襲撃してくる設定だ。ヴィランはスマキングファイターロボだから壊してくれて構わんぞ。あと、戦闘向きではない生徒はこの状況でできることを考えることも授業の一環だ。ではバトル開始いいいい!!』

 

 合図とともに寮が破壊された。

 

 

 その日の授業開始までにしっかりと体調を整えてやってきた生徒はいなかった。

 

 

 

 

 

 

 




授業内容を端折ったのはこちらの都合で書く時間が取れそうもないからです。申し訳ありません。


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全国一斉雄英体育祭テスト

 あまりにハジケていなかったので後半部分を書き直しました。

 前よりはマシな筈です。多分。


 雄英ヒーロー科の一年から三年生はだれもかれもが疲れていた。

 

 いつどのようなタイミングでスマイリーから無理難題がやってくるかわからないからである。朝だとか夜だとか食事中であろうが関係なくスマイリーの無茶苦茶な授業が始まる。

 

 中には心が折れて学校から去ろうとほんの一瞬でも考えてしまう者もいた。スマイリーからしてみればそのような奴は初めからヒーローになってもなっただけの存在であるため金の無駄だし、すぐにでもやめてもらっていいと思っている。

 

 だが、スマイリーのことを多少は理解している緑谷がみんなを必死に鼓舞する。それによってか一年生たちはクラスなど関係なくコミュニケーションをとり、自分の個性を高めたり、連携の大切さを習得していく。それが二年生、三年生にも伝わり、さらには稀にスマイリーの襲撃を受けるヒーロー科以外の生徒たちにも伝播していく。

 

 かつてないほどの結束。そう校長である根津が言うほどの雄英は強いものになっていた。

 

 

 

 

 しかしながら生徒たちはスマイリーの規格外の領域をまだ知らない。

 

 

 

 

『宣誓。わたくしスマイリーは己の力を最大限に活用して、全国のプロアマ問わずヒーローたちのさらなる躍進のために貢献することを誓います!!』

 

 それは雄英体育祭が行われる日のことである。

 

 突如として寮内にスマイリーの声が響いてきたのである。

 

 ヒーロー科の生徒たちからしてみればプロになるための第一歩となる舞台である。だが、今年はスマイリーが何かをしてくることは入学してからの日々で理解していた。

 

 それでも生徒たちは予測していなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まさか、別惑星を作り出してそこに日本にいるプロヒーローを含めた。全国の高校生たちが一斉に転送させられることなど誰が予想できようか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは……どこ?」

 

 そんな言葉を言ってしまうのは仕方がないことであるが、雄英生徒たちはすぐに警戒を始める。

 

 周囲はビルなどが建て並ぶ街で、人の姿はない。

 

「も、もしかして、もう体育祭が始まってんのか?」

 

「ありうるぜ、なんたってスマイリー先生だからな」

 

 上鳴と切島は少し焦ったようで汗が出ている。

 

 幸いなことに1‐Aと1‐Bの生徒たちはそれほど離れた位置にいたわけでなくすぐに合流。探知が可能な障子、耳郎、宍田などを中心に周囲を探る。口田は動物が見つけられるず、残念ながら協力できなかった。

 

「説明もないってことはどうゆう状況なのかも自分で探れってことか?」

 

 瀬呂は緊張しているのか表情が硬い。

 

 

 その時。

 

『あーあー、大変お待たせしました。これより全国一斉雄英体育祭テストを始めたいとおもいます』

 

 突如として空にスマイリーの映像が映し出された。

 

「全国……」

 

「一斉」

 

「雄英体育祭」

 

「テストォ?」

 

「体育祭なのかテストなのかはっきりしろや仮面野郎!!」

 

 これにはさすがに爆豪がキレた。

 

『その名の通り体育祭をしつつテストをしようと思う。ヒーローに相応しいかどうかのな』

 

「…………は?」

 

『この体育祭テストで悪い点を取った生徒は除籍確定だ。マイナスだとか関係なく除籍とする』

 

「はあぁぁぁぁぁ!? んだよそれ!!」

 

『プロヒーローもそのライセンスを持つに値しなければ、そく剥奪とし、二度とヒーローができないと思え』

 

「そ、そんな……そんなのって……」

 

『理不尽か? 世の中は常に理不尽でいっぱいだぞ? 個性があるない。個性があっても差別される。異形の姿というだけで暴力を振るわれる。そんな世界なんだ。たかが別惑星に飛ばされただけで文句を言うな』

 

「いや、言うから! 文句しかないから!!」

 

 耳郎のツッコミなど聞こえているはずもないが、言うしかなかった。

 

『そこは俺が用意した別の惑星だ。お前たちはそこから脱出する。それだけでいい。だが、当然それを妨害する連中もいる。それを倒すなり隠れてやり過ごすなりして、唯一の脱出艦に乗れ。簡単だろ?』

 

(絶対簡単じゃない……)

 

 スマイリーのやり口を知っている生徒たちの思いは一致している。

 

『細かいルールは以下の通りだ』

 

 スマイリーの姿が消え、空中にはルールが表示された。

 

 

・参加している者たちは全員で脱出しなければならない。

 

・一人でも取り残した場合、全員失格となりライセンス剥奪か除籍になる。

 

・ヒーローらしい行動をした者にはヒーローポイント略してHPが加算される。

 

・ヒーローらしからぬ行動は減点される。

 

・ヒーローポイントが高ければ高いほど失格になりにくくなる。

 

・ポイントは敵からの攻撃などでも一定値下がる。

 

・敵から致死量のダメージを受けたと判断した場合。死亡扱いとし、失格となる。

 

・この失格者は強制的に帰還され、ライセンス剥奪または除籍とする。

 

・単独行動、集団行動は自身で決めること。ポイントの加点減点などはない。

 

・スマイリーがこの体育祭のために生み出した敵がいる。

 

・この敵役は一定のダメージを与えると撃破扱いとする。

 

・雄英講師、一部のプロヒーローは洗脳されている設定で登場する。

 

・上記の者たちは一定の時間ごとに登場する。

 

・この惑星はスマイリーの合図とともに四時間後に消滅する。

 

・四時間後までに脱出していなければ全員失格とする。

 

 

 

 十分間表示されたルールが消え、再びスマイリーが現れる。

 

『ルールをもう一度確認したかったら、各々の腕に装着した専用のスマイリーフォン略してスマフォで確認してくれ』

 

「うおっ!? いつの間に!? てかコスチュームに着替えてんぞ!!」

 

 いつの間にか生徒たちの格好が、以前用意されたコスチュームに気が付くことなく着替えさせられていた。

 

「ま、まったく気が付かなかった……どうやったんだ!?」

 

 全身を覆う飯田なども気が付くことがなく。かなり驚愕していた。

 

『なお、ヒーロー科以外の者たちはこちらで安全面を高めた服装にまとめさせてもらった防御だけならヒーロー科を上回るだろうな。ああ、そうだ。この惑星の地図もそのスマフォの中に入っているから確認するといい』

 

 緑谷たちのみならず、各地に転送させられた者たちは一斉にスマフォを操作する。

 

「ひ、広すぎる……」

 

 誰かが声を漏らす。それもそのはずで、緑谷がいるスタート地点は脱出艦があるゴールまでの距離がプロアマ問わず最も遠い位置にいるからである。その距離2500㎞。

 

 個性を除いて移動手段が自分たちの足のみである彼らにとって、厳しい戦いの始まりであった。

 

『それじゃスタート!! 頑張って帰って来いよ~』

 

 スマイリーの映像は消え、代わりに時間が表示された。

 

「ど、どうすんだよ!? 絶対無理じゃねぇか!?」

 

「こんなのクリアできっこないって!!」

 

「落ち着けみんな! いくらなんでもあきらめが早すぎるぞ! 先生のことだ何かがあるんだ!!」

 

 学級委員長にもなった飯田が落ち着かせようと声を発する。

 

「何かってどういうことかしら飯田ちゃん」

 

「俺たちの位置はどう考えても遠すぎる。だから、なにかほかの事があるんじゃないかと思ってね。入学してから先生の容赦のなさには本当に心が折れそうになったからな。制限時間を見せられてもなぜか落ち着いていられるんだ」

 

「飯田、それ素直に喜べねぇぞ」

 

 切島は呆れた表情でツッコミを入れる。

 

「と、とにかくこんな場所に飛ばされたんだ。なにか「カールボーカールボー」っ!? なんだ!?」

 

 彼らの近くに歌声が聞こえてきた。

 

「っ! 何か来るぞ!!」

 

 障子が指を向けるほうをみると、四車線の道路ギリギリの大きさで緑谷たちのほうへとやってくる大きな山車であった。

 山車には大勢の人間が乗っており、中央で左右に動いている男以外はただ座っているようにも見える。

 

「な、なんだありゃ……」

 

「みんな、気をつけて!」

 

 緑谷の声に、全員が警戒態勢を取るが、すぐにあっけにとられることになった。

 

 それは、山車が彼らの近くまでやってきたと思いきや、どうやってか、急に停止して、中央で動いていた男もピタリと動きを止めた。が、

 

「カールボー」

 

 そう歌うかのように声を発すると、

 

『カールボー』

 

 周りの座っていた者たちも同じように歌い始めた。

 

「カカカ、カールボーナーラー!!」

 

『ナーラー!!』

 

「……は?」

 

「カルボナーラ?? なんで」

 

 生徒たちの疑問はそっちのけで、中央の男が忙しなく動き始めた。

 

「日本と本場じゃだいぶ違う物だけどー」

 

『だけどー』

 

「美味しいパスタのカルボナーラー!!」

 

『ナーラー!』

 

「そ・れ・は魅惑の味でー」

 

『ついつい食べちゃうー』

 

「卵とチーズが」

 

『ベストマッチ!!』

 

「今じゃアレンジ豊富でー」

 

『簡単にできるぅー』

 

「人気のパスタ――」

 

『――カルボナーラァァァァァァ!!』

 

 歌い終えた中央の男は大なべにパスタフォークを入れてパスタを取り出す。その際に緑谷たちの方を見つめて、

 

「俺はミートソース派だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

 

 取り出したパスタを緑谷たちへと放つ。

 

「うわああああああ!?」

 

「あっちいいいいいいいい!!」

 

「いきなり何しやがる!!」

 

「そうだよ! なんでミートソースなんだ!!」

 

「デクくん!?」

 

「貴様たちこそなにをしている。すでに戦いは始まっているのだぞ」

 

 男は呆れた表情をする。

 

「俺がここにいるのはお前たちを倒すためだ。そう、俺の名はペペロンチーノ男爵!」

 

「その名前でミートソース派なの!?」

 

 うっかり耳郎は突っ込んでしまった。

 

「パスタの好みは人それぞれだろうが!!」

 

 再びパスタが飛んできた。

 

『耳郎!』

 

「ゴメン! つい」

 

 みんなからの怒りの声に誤るしかない耳郎。

 

「さて、このペペロンチーノ男爵とパスタメンズがここからお前たちを通すことはない。通りたければ……」

 

 ペペロンチーノ男爵はパスタフォークを器用に使ってパスタをさらに盛る。そしてそれを頭の上に乗せた。

 

「俺を倒して見せろ」

 

「いや、今の流れなに? いる?」

 

「いるに決まってるだろう!! パスタの盛り付けだぞ!!?」

 

「頭に乗せるほうだよ! 気になったのは!!」

 

「何だそっちか、ふっ、素人が」

 

「え、なんで馬鹿にされてんのウチ」

 

「いいか、なぜ俺がパスタが盛られた皿を頭に乗せるのかというとだな」

 

「というと?」

 

「デクくん食いつきすぎや……」

 

「腹が減ったら食えるからだ」

 

「ええ……」

 

「なるほど、つまりペペロンチーノ男爵の個性のようなものであの麺を食べることで回復することもできる可能性があるわけで、いや、相手はあのスマイリー先生が用意した敵だ。なにかほかにも色々とできることがあるかもしれないハジケ横丁の人たちも規格外とも呼べるような人たちがいたし、ペペロンチーノ男爵もその一人なのかも……だとすると、一概に個性と決め付けることで視野を狭めることはしないほうが――」

 

「デク! 敵の前でブツブツ言うな!!」

 

「はっ! ご、ごめんかっちゃん!!」

 

「さて、お喋りはここまでだ行くぞパスタメンズ!! こいつらを倒すぞ!」

 

『カルボー!!』

 

「みんな! 必ず勝とう! この体育祭を必ず、必ず最後まで生き残ろう!!」

 

『おう!!』

 

「来るがいい、お前たちにミートソースの味深さを教えてやる!」

 

 

 

 雄英1‐A&B組VSペペロンチーノ男爵&パスタメンズ 戦闘開始。

 

 

 

 緑谷たちの戦いが始まった。

 

 

 

 それは各地に飛ばされた者たちも同じことである。

 

 

 

「よくきたなエンデヴァー!! 俺はピーマン大好き連合副団長のナス山三太夫だ!」

 

「……ナス?」

 

 エンデヴァーの前に立ちふさがったのは人並みに巨大なナスに人の手足と顔がある奇妙な男だった。

 

「なんだ! 俺の姿に文句でもあるのか!?」

 

「…………ナスなのにピーマンが好きなのか?」

 

「バッキャロウ!!」

 

「ぐっ!?」

 

 質問をした瞬間。ナス山は猛スピードで突進してきた。あまりの速さにエンデヴァーはガードすることはできたが、吹き飛ばされてしまう。

 

「ピーマンはナス目ナス科の食べ物だ!! トウガラシ属だけどそんなとこは気にしなくていい!!」

 

「ちっ」

 

 エンデヴァーは反撃といわんばかりに炎をナス山へと撃つ。

 

「ぎゃああああああ! 燃える! 燃えちまうううううううううう!!」

 

 苦しそうにしているナス山を見て、勝ったとエンデヴァーは確信して、自身サイドキックらを探しに向かおうと背を向けたそのとき、

 

「焼きナスヒップアタック!!!」

 

「ぐっあ!?」

 

 強烈な衝撃がエンデヴァーを襲う。受身を取れず、道路に顔面を打ち付けてしまう。

 

「ナスを舐めるなよ! 焼かれても俺はピンピンしてるぜ!!」

 

「おのれぇ!」

 

 再び炎をナス山へと向ける。しかしナス山はどこからともなくピーマンを取り出し、食べた。

 

「ピーマンパワー!!」

 

 緑色の光がナス山を包むと、エンデヴァーの炎はナス山ではなくエンデヴァー自身に襲い掛かってきた。

 

「っ、どういうことだ!!」

 

「これが、ピーマンの力だ」

 

「意味がわからん!」

 

「ならば教えてやる! 俺がピーマンを!!」

 

 エンデヴァーVSナス山三太夫 戦闘開始

 

 

 

 

「おい、Mt.レディ! お前なにしてんだ!!」

 

「す、すみません先輩方、私、洗脳されたヒーロー役でして」

 

「はぁ!? じゃあ……」

 

「はい、みなさんを倒さなきゃいけなくて……」

 

「じょ、冗談だろ!?」

 

「すみません! ちゃんと敵役やらないとあとでスマイリーさんに怒られるんです!」

 

 巨大化したレディは右腕を振り下ろす。一撃で道路を割り、衝撃破と割れたコンクリートの塊がヒーローたちを襲う。

 

「うわあああああああっ!!!」

 

「くそっ、冗談きついぞ!」

 

「どうする? 俺たちの中であいつを止められるやつはいるか?」

 

「無茶言うなよ、あいつの個性シンプルな分強力なんだぞ」

 

 ヒーローたちは何とか状況を打開しようとするが、現状のメンバーでは不可能を判断した。

 

「ここは距離を取るべきだ」

 

「よし、急いで――――あ?」

 

 空が暗くなった。先ほどまで明るかったはずなのに、急に影が差した。上を見上げると、そこには跳躍したMt.レディがいた。

 

『うわああああああああっ!!?』

 

 レディはそのまま足から着地。全体重をかけた一撃は先ほどの攻撃の比ではない。近くの建物はすべて倒壊している。

 

「ううっ、すみませんみなさん」

 

 スマイリーが作ったレディ限定使用のパワースーツを着せており、必要に応じて、無限の伸縮性。装着者の体重の増加(落下など一部の動作のみ)。装着者に負担を軽減する耐ショック性能。身体能力アップ。さらに、葉隠の物と同様の防弾などの作りにもなっており、レディは協力してくれたらこれをプレゼントするとして簡単につられてしまったのである。

 

 しかし、代償として、事前に他のヒーローがやらされているようなことを一人でやらされており、一生もののトラウマになっている。

 

『コラーMt.レディ。台本どおりの演技をしなさい!』

 

 スマイリーの顔が空に浮かび上がる。

 

「だって、私、一応ヒーローですよ!?」

 

『今は洗脳されたヒーローだけどな』

 

「ううっ、引き受けなきゃよかった」

 

『ほう。ならまたオールマイトロボ(全盛期仕様)千人組み手。逃げ遅れた人たちを守りながら戦え! をやるか?』

 

「おーほっほっほっ! さあ、次の相手はどこかしらぁ?」

 

 レディはすぐさま台本どおりの台詞を言う。

 

『うんうん。それでいいじゃ、頑張れよ』

 

 スマイリーの顔は空から消えた。

 

「…………はぁ……」

 

 後に残ったのはレディのため息だけだった。

 

 

 

 

 

 惑星消滅まで残り3時間57分。

 

 

 

 

 



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ダンス・ダンス・手羽先!

自分で何やってんだろうと思いましたが投稿です。

令和最初がこれでいいのだろうか。


「手羽ー」

 

『手羽ー』

 

「手羽先ー」

 

『手羽先ー!!』

 

 突如として脱出艦近くに現れた合唱団。その先頭に立つ男、合唱山ワルツは右腕にボロボロになったホークスを抱えていた。

 

「ホ、ホークスがやられた!?」

 

「嘘だろ!? 早すぎる!!」

 

 動揺しているヒーローたちを無視し、合唱山は歌い続ける。

 

「手羽先はー」

 

『手羽先はー!!』

 

「美味い!!」

 

『美味い!!』

 

「美味すぎる手羽先ー私の好物ー」

 

『好物ー』

 

「この声もー手羽先のお陰ー」

 

『なんですー』

 

「世界中の鳥を買い占めたいー」

 

『無理だけどー』

 

「それでもいつかは……叶えたいのー」

 

『絶対無理ー!!』

 

「シャラップ!!」

 

 突如としてホークスを合唱団の方へと全力で投げる。

 

『ホークスぅぅぅぅ!!』

 

「ああ、ホークス……なぜ手羽先じゃないのー」

 

 周りのことはお構いなく歌いだす合唱山。

 

「どうして手羽先は手羽先なのー」

 

 合唱山は突然両手に剣を出現させる。そして空より現れた巨大な鳥に乗る。

 

「どうして…………お前らは手羽先じゃないのー」

 

 鳥に乗った合唱山はとてつもないスピードで切りかかる。

 

「みーんな手羽先になればー、幸せになるのにー」

 

「うわああああ!」

 

「お、おい! しっかりうわあああああ!?」

 

 切られた者たちはどんどん鳥になってしまう。

 

「そして私がー美味しく……いただいちゃうぜ!!!!」

 

 突如として獰猛な顔を見せる合唱山。それでも歌うことはやめない。

 

「イタダクゼ、イタダクゼ! そのすべてをな! お前らなんてイタダクゼ! 全ては手羽先のため!!」

 

「バタバタバタバタすんじゃねぇぜ、お前らは俺の獲物さ」

 

「なんてったって、手羽先なのさそれがすべて」

 

 意味の分からない歌を歌いながら容赦なく切りかかる。

 

「テバテバテバテバテバテバテババババババババ! テッバー!」

 

「クルルルウルルルルテルルルバアアアアア! 手羽先ぃぃぃぃ!!」

 

「それが伝説!! ででで伝説! 手羽先伝説! こいつの前じゃいかなる名剣もかすんじまうぜぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

「伝説? 伝説? キララララララッ! 輝く手羽先ィィィィィ!! いやっほおおおおおおお!」

 

 止まることを忘れたかのように合唱山は切っていく。

 

「キュルルルルルルル炭酸弾けるイェ! ボボボボボボエンジン全開ぶっ壊れ、廃車寸前世紀末、これがこの世の現実さ、どいつもこいつも時代に合わない不適合者、俺たちゃ悪党? それもいいなぜなら俺はサァァァァァヤエンドォォォォォウ!!!!」

 

「ぽこぽこぺんぺんぽこぺんぽこぺん! 白菜伐採バンザイ!」

 

「ギリギリギリガンバレナイィィィィ! 助けられないいいいい!」

 

 途中エンデヴァーとナス山を切ってしまったが問題はない。

 

「ナッツナッツ、ナナナナナッツ世界はナッツでできていないよー」

 

「真実は一つ二つ三つあってもいいじゃない。浮気性なあなたのことだからー」

 

「エンタメエンタメそれもエンタメ、タンメンの親戚」

 

「担々麺は従兄弟なブラザー。なぜなら俺はラーメンマスター。マスターマスター神業湯切りで世界を救う」

 

「ここが最後の壇ノ浦なぜなら俺の――ガッ!」

 

 合唱山はここでなぜが舌を噛んでしまう。そしてその痛みで持っていた剣を乗っていた鳥に刺してしまい落下した。

 

「うううっ……いつもここで噛んじゃう……一体なぜ……」

 

『あきらめるのかワルツ』

 

 突如として、スーツを着たスマイリーが空中に現れた。

 

「はっ、スマイリープロデューサー!!」

 

『お前はここで諦めるようなやつじゃないはずだ』

 

「でも……」

 

『諦めるな!! ワルツ。俺がお前を最高の歌手にしてやる!』

 

「はい! 頑張ります!! あ、でもまだこの戦いは続くんじゃ……」

 

『ああ、これ? 視聴者さんがあと三時間も見てるの大変だしカットで』

 

 そこには残り時間10分と表記されていた。

 

 

 

 

 惑星消滅まであと10分

 

 

『理不尽だあああああああ!!』

 

 ヒーローたちの声は届かない。

 

 

 

 



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だたし峰田テメーはダメだ。

先月、8年5か月ぶりにスマホを機種変更しました。

そしてスマホで初めてゲームをしました。同時にちょっとリアルでいやなことがあったのでゲームに逃げてました。すみません。

まぁ、ネタが拾えたのはよかったかなと思います。


「先生は悲しい……君たちがこれほどまで不甲斐ないとは」

 

 教壇に立ち生徒たちを前にして涙ながらに言うスマイリー。

 

「けど、先生は諦めないよ! 必ずみんなを立派なヒーローにしてみせるからね!!」

 

 両拳をギュッと握りしめ決意したような表情をする仮面。怪しさ満点だが、素顔を知るものはこの場にいないのだから致し方ない。

 

「さぁーて出席をとるから大声でねー轟炎司くーん」

 

「…………」

 

「轟炎司くーん。返事はどうしたのかなー?」

 

「…………」

 

「返事せんかいゴラッ!!」

 

 どこからともなく巨大なハリセンを取り出したスマイリーはそのまま轟炎司ことエンデヴァーの頭部に叩き込んだ。

 

「ゴフッ!!」

 

「まったく、そんなことだからヒーローの資格を失うのだよ」

 

「ぐっ、キサマァ……なぜ俺やヒーローたちが学生からやり直さねばならんのだ!!」

 

「決まっているだろう。体育祭でお前たちが情けないほどの成績をたたき出したからだろう」

 

 キリッとした表情で答えるスマイリーだが、元々は制限時間を一気に短縮したことが原因である。

 

「そもそもキサマが体育祭をあんな風にしたのが原因だろう!」

 

「はっはっはっ! そんな言い訳を実際の戦いでもいうのかねエンデヴァー君。あいや失礼今はヒーローではなかったね」

 

「ぐっ」

 

「いいかね諸君。日本のヒーロー学科および高校はすべてこの雄英のみとなった。そして君たちはこれから自衛の手段を含めた様々なことを学んでもらう。ヒーローになるならないではない。今日を持って義務とする。スマイリー法第一条によって決まった」

 

「いや、知らないから」

 

「おっといかん。今日を持って雄英の校長は俺だからヨロ」

 

『軽ッ』

 

「ま、待ってくださいスマイリー先生! では根津校長は!?」

 

「ああ、ヒーローやってるよ」

 

 そういうとスマイリーは壁に取り付けてあった巨大なホワイトボードを回転させモニターを出した。

 

 そこに映し出されてたのは、体育祭の際にスマイリーにヴィラン役を頼まれていた者たちの姿であった。

 

「雄英教師と善意の協力者たちは現在ヒーローとして活躍中だ。ま、不甲斐ないヒーローたちのせいでカバーしきれないところはオールマイトロボ全盛期使用が動いているから問題はない」

 

「あれ、じゃあ……これからヒーローになる必要性が……」

 

「いいところに気が付いた緑谷くん!!」

 

「うわっ!」

 

 背後から声をかけられた緑谷。スマイリーは気が付いてくれて嬉しそうに語りだす。

 

「これからの学校生活はループします」

 

『ハァァァァァァ!?』

 

「三年間の間に卒業資格に達せなかった者が一人でもいたら時間を巻き戻して一年生からやり直しです」

 

「な、そんなことができるんですか!?」

 

「うん」

 

 スマイリーは何言ってんの? といったムカつく顔をしている。

 

「早く卒業しないと、世間からは忘れられるだろうなー、ヒーロー飽和状態とか言われてたから、そんなにいらないとか、誰? とか言われちゃうのかな」

 

 スマイリーはますますムカつく表情をする。

 

「まぁ、大丈夫。時間が戻っても記憶を持つのはこの学校にいる人たちだけだから、世界中の人たちは時間が戻っても忘れるから。あっ、でもあまりにも時間をかけすぎるとループしていることに気が付くかも? そしたら大変だろうねー特に妊婦さんとか、産んだと思ったらまた妊婦に戻ってまた産むの繰り返し、そのうち精神を病んじゃうかもしれないねー? そんなこと将来のヒーローや元ヒーローたちはしないよね?」

 

 ぞっとするようなことを言うスマイリー。完全にヴィランぽさがあるが、それを指摘したところでスマイリーが辞めるとは思えない。

 

「さぁ、授業を始めよう!! まずは熱湯カップラーメン相撲だ!!」

 

 初めての授業は意味が分からなかった。

 

 

 

 ちなみに峰田はスマイリーが用意したマッスル男子アカデミーに入学させられた。

 

 

 

 




マッスル男子アカデミーの授業内容

 裸でヒョウと戦う。

 裸で千人組手。

 一年間ヴィラン収容所の中で生活する。等々


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熱湯カップラーメン相撲ってそもそもなんだろうか?

自分で書いておいてなんですが、熱湯カップラーメン相撲って何でしょうね?

皆さんがイメージしたやつが正解ということで。



 雄英高校がスマイリーの私物化のような状態になってしまって数時間。生徒たちは阿鼻叫喚な授業を受けさせられていた。

 

 熱湯カップラーメン相撲。特大猛牛乱闘事件。へべれけ暗殺者捕獲大作戦。リアル山火事救助任務。といったものをほんの少しの休憩と食事があるぐらいで残りは授業単位を無視しまくり、ぶっ続けで行われた。

 

 こうなる前から夜間の襲撃などを受けてある種の慣れがあった緑谷たち一年もスマイリーの授業がハードになっていることに戦慄していた。

 

 当然であるがこれらに反発した元ヒーローたちもいたが、スマイリーが呼んだというヴィジランテ仲間のスタンダールとジェントル・クリミナルの手によって簡単に倒されてしまう。

 

 この結果、スマイリーはさらに厳しい授業を展開することになる。本人的には反発できる元気があるのならこれくらいやれるよね? とのことだった。

 

「まったく嘆かわしいことないザマス。こんなにも不甲斐ないなんて、日本ヒーローはここまでだなんて」

 

 無駄に煌びやかなドレスをなぜか着ているスマイリー。仮面に厚手の化粧をするのはなぜなのかと聞けるほど、生徒たちに元気はない。

 

「せっかくアテクシが優秀な講師を招いているというのになんてことザマス」

 

「いい加減そのうっとおしい姿をやめろ」

 

 スタンダールがイライラした口調でスマイリーに言うが、

 

「アーラ、スタンダールさんそんなことを言ってもアテクシのことを殺せないのではあーりませんか?」

 

 スタンダールはスマイリーによってスマイリー以外を殺すことが出来い呪いを受けており、スマイリーを殺せるまでは一緒に行動することになってしまった。

 

 ジェントルは分かりやすくスマイリーといれば名を残せそうだからである。実際知名度は高く、ヒーローたちからも警戒され、ヴィランからも恐れられている。

 

 なお、ここにはいないがラブラバと呼ばれる女性も仲間にいる。主にスマイリーたちの動画を編集して投稿している。

 

「キサマッ!」

 

「諦めたまえスタンダール。君ではスマイリーは殺すことは出来やしない」

 

「黙れジェントルその不愉快な口を動かすな」

 

「ふっ、相変わらずのようだが、それでは彼を殺すことなど夢だな」

 

「黙れと言っている」

 

 スタンダールは武器を向けようとするが、途中で弾かれてしまう。

 

「ちっ、弾性か」

 

「血気盛んなのはいいが今はスマイリーに頼まれたことをすることが大事ではないかね?」

 

「そーザマス、そーザマス!」

 

「…………これ以上は無意味だろう」

 

 三人が話している場所はスマイリーが新たに用意した演習場DXと呼ばれる場所で、三人以外の生徒たちは全員ボロボロになって倒れている。

 

 弱い個性であっても道具と組み合わせることで、強力な武器にすることができるというスマイリーの発言で、新時代犯罪者列伝回顧録なる授業で、スマイリーとともに活動する二人を全員で倒すという授業である。ただし二人はスマイリーが用意した道具を装備してあり、非常に強力になっていた。

 

「これほどの数を二人で対応できるとはな。私も驚きだ」

 

「いやー照れるでザマス」

 

「貴様を褒めてはいない」

 

「でもその道具は優れている。ならばアテクシが優れているのでは?」

 

「………………」

 

 非常にうざいスマイリーを無視してスタンダールは演習場から去る。

 

「さあさあ! 早く起きるザマス!! ループを確定させたいザマスか?」

 

 その言葉を聞いて生徒たちはよろよろと立ち上がる。

 

「おのれ……スマイリー」

 

「あらあら轟炎司さん。教師に対してその目はなんザマス? もっと経緯をもってほしいザマス」

 

「……立つんだお前たち! こんな奴に俺たちが負けていいはずがない!!」

 

 元エンデヴァーがみんなに活を入れる。

 

「俺たちはヒーローだ!!」

 

『おおおおおおおおおっ!!!!』

 

 元エンデヴァーの一言で皆が吠える(息子を除く)

 

「では、次の授業を始めるザマス! その名も――」

 

 パチン。とスマイリーが指を鳴らすと、頭上からモニターが落ちてくる。

 

「初めてのハジケ横丁お買い物奮闘記!!」

 

 緑谷と爆豪が少しだけビビっていたのは内緒である。

 



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真・雄英体育祭開幕!

あとがきのお知らせあり。


『雄英体育祭。それは……半熟卵以下の少年少女、学生に後戻りした情けない大人たちが情熱・思想・理念・頭脳・気品・優雅さ・勤勉さ、そしてなにより速さを使い卒業単位一括取得の総合一位を目指す血で血を洗うかのようなデンジャラス競技なのであるっ!』

 

 結局のところ、新体制の雄英高校において三年が経過していても卒業はできずにいる緑谷たち。卒業不可と判断された時点でループするため世界中の人間は気が付きもしないが、生徒および元雄英教師たちはループしていることを知っているので、中々辛い思いをしている。

 

 特にイレイザーヘッドはスマイリーのせいでヒーローとしての活動が大いに目立ち、知名度がめちゃくちゃ上がってしまう事態となり、スマイリーのせいで毎日放送される〈昨日のイレイザー活動報告書〉なる番組が作られてしまい(スマイリー制作)ストレスでどうにかなりそうであった。なおスマイリーがこっそり健康管理ビームを使い、活動しているヒーローたちを毎日元気にしているので病気になることはない。

 

 三年たっても卒業できないのためにスマイリーが前々から計画だけはしていた真・雄英体育祭を開催すると宣言。総合一位の者のみ卒業することができる。

 

『さあさあ、情けない生徒諸君準備はできているかぁ? 大会の運営実況進行すべてこのスマイリーが受け持った超次元体育祭の始まりだぞおおおおおおおっ!!』

 

 プレゼント・マイク風の仮面をしたスマイリーがマイク片手にはしゃいでいる。

 

『…………』

 

『元気がないねぇ、もっかいループする?』

 

『おおおおおおおおおおおおおおっ!!!』

 

『うんうん。元気があることはいいことだ。それでこそこの大会を開いた意味があるというものだ』

 

 脅しのような言葉であったが、生徒たちの元気な声が会場に轟いた。

 

『ではこれより君たちが行う十三の試練をご紹介しよう!!』

 

 特大モニターに映し出された十三の競技に生徒たちは唖然とした。

 

〈スマイリー・ボール・ラン〉

 

〈雄英ヒーロー100番勝負〉

 

〈機動新世紀スマイリーX〉

 

〈スーパーオールマイト大戦S〉

 

〈ヴィランハンター:ワールド〉

 

〈聖闘士雄英 冥王スマイリー編〉

 

〈雄英の軌跡〉

 

〈雄英高校の劣等生たち〉

 

〈真・スマイリー転生〉

 

〈スマイリーの野望 雄英〉

 

〈週刊少年スマイリー〉

 

〈スママーマ・スーママ〉

 

〈金色のスマイリー〉

 

 競技名が意味の分からないものが大半で、混乱しか生み出さない。

 

 かろうじて分かるかもしれないものもあるが、仮にそうだとすると嫌な予感しかしないのである。

 

『この苛烈な十三の試練を潜り抜け、総合一位の1人だけが、この学校から卒業し、すぐにヒーローとして活動することができるぜっ!!』

 

 スマイリーの宣言に半信半疑な生徒たちだったが、地獄のような三年間を考えると、そろそろ卒業したい。ここから出たいと考える者たちも出ている。

 

『そして残念なお知らせも一つある。総合点で最下位の者は個性を剥奪したうえで退学とさせてもらうぜ』

 

 戦慄した。

 

 スマイリーはそんなこともできるのか。と。

 

 しかし、これまでの理不尽を考えるとあり得る。そう全員の認識が一致した。

 

『それでは最初の競技は! うーんどれにするか……』

 

『決めてないのかよ!!』

 

 多くの生徒たちからツッコミを受けるが、スマイリーはうーんと考えていた。

 

『よし、その元気を今のうちにこれを行おう! 第一競技はスマイリー・ボール・ランだ!!』

 

「内容を教えろや!!」

 

 爆豪の怒声が響き渡る。

 

『分からないの!?』

 

『分かるかぁぁぁぁ!!!』

 

『これだから留年生徒たちは……簡単に言うと日本全国を回るというだけさ』

 

 絶対それだけじゃない。全員の心がまたもや一つになった。

 

『さぁさぁ! 運命の競技が始まるぜ! 覚悟はいいか!?』

 

 覚悟を決めた生徒たちはスタートライン(今しがたスマイリーが作った)に並ぶ。

 

『それでは雄英体育祭。レディイイイイイイイイイイイ、ゴォォォォォォ!!』

 

 

 

 生徒たちの戦いはこれからだ!!

 

 

 





読んでいただきありがとうございます。

突然ですが、ネタが尽きました。

読んでいただいてわかるかと思いますが、まったくハジケた内容が書けなくなりました。本当はもう少し書こうかと思いましたが、全然できないので今回で完結とさせていただきます。

本当に申し訳ありません。なにかネタが思いついたら投稿するかもしれません。


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