Nemesis~世界最強の戦争屋~ (BIGBOSS0514)
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File01 部隊紹介

こんにちは。
CoDMW3のキャンペーンみてたら書きたくなりました。


・部隊紹介

 

 ネメシス<Nemesis>

 

2001年の同時多発テロ以降、対テロ特殊部隊の強化に力を入れていたアメリカ国防総省<ペンタゴン>は2004年、当時”世界最強の傭兵”と謳われていた中央情報局<CIA>お抱えの殺し屋、赤城透をアドバイザーに招き、どのような環境下でも任務を遂行できる兵士を作るための訓練プログラム”EESP-X<Extreme Environments soldier program-X>”を開始する。陸・海・空軍や海兵隊から腕に自信のある精鋭軍人が多く集まったが、彼らの殆どがその過酷さにリタイア、若しくは途中で命を落として脱落してしまった。アメリカ軍はこれ以上の損害を避けるために当プログラムを中止し、透を解任した。しかし、透の手によって民間事業として引き続き行われることとなったこのプログラムは世界中の軍隊からも注目を集め、世界各国から多くの軍人がこのプログラムへ志願する事となる。しかし、やはりその殆どが途中でリタイア若しくは命を落とした。見事に生き残った数名の兵士を率い、透が結成した傭兵集団がNemesisである。

 

現在、透を含むEESP-Xの修了者8名と、彼がスカウトしたパイロットや航空要員、透の親戚である赤城隼人を含めた計22名で活動している。

 

国連における五大国間で結ばれた秘密協定において、国連の秘密部隊として運用されている。

 

公用語は英語。部隊のメンバーはそれぞれお気に入りのメインウェポンやサイドアーム、コールサインを使うが、もちろん任務によって変える。MH-60Lのカスタム機体とAC-130Uのカスタム機体を保有しており、地上作戦を支援する。

 

 

 

・メンバー紹介

 

 赤城透<あかぎ とおる> 性別:男 歳:36歳

 

メインウェポン:H&k416Dカスタム サイドアーム:FNP40 SAA×2

 

ネメシスの創設者であり、リーダー。格闘、狙撃、破壊工作等、あらゆる面で世界トップレベルの実力を持つ。1990年代における戦争市場に突如として現れた傭兵で、どんな困難なミッションでもたった一人で成し遂げる事から、”世界最強の傭兵”と渾名されるようになったが、その名をより一層轟かせたのは2003年のイラク戦争の際であった。イラク軍の激しい抵抗を受けていた連合国側は、作戦区域における配置を知るイラク軍高官が前線に来ているという情報をキャッチする。現地に割ける戦力がなく、本国から特殊部隊を送るのは間に合わないと判断したアメリカ統合参謀本部<JCS>から、クートからバグダードへ抜ける道中にある、イラク軍が拠点としている集落にいる軍高官を生け捕りにした上で、集落を制圧してほしいという依頼を受けた透は、現地時間0300にアメリカ陸軍の手配したMH-60L<ブラックホーク>に乗り込み単身で強襲、アメリカ空軍のAC-130H<スペクター>の航空支援を受けながら、駐屯していた約300人のイラク兵と戦車・装甲車等合わせて16輌を殲滅、軍高官を拘束し、作戦を1時間足らずで成功させた。後に名付けられたこの<死の鎌>作戦によって、彼の名は大きく広まる事となる。

 

 

 

 ミレーナ=ホウジョウ 性別:女 歳:29歳

 

メインウェポン:ARX160カスタム サイドアーム:M9A1カスタム

 

女性で唯一EESP-Xに合格したメンバー。米海軍NavySEALsチーム6<DEVGRU>出身で、身軽な身体を生かした潜入任務を得意とする。イラク戦争にも参加しており、多大な戦果を挙げた。兄のクレイグは同じく傭兵家業を営んでいる。チームの数少ない女性の一人ではあるが、性格が男勝りなため、あまり女性と見られることがない。なお、顔立ちは美人。

 

 

 

 赤城 隼人<あかぎ はやと> 性別:男 歳:18歳

 

メインウェポン:H&k417カスタム サイドアーム:USPタクティカル

 

チーム最年少で、透の甥にあたる。幼少期に両親を亡くしたところを透が引き取り、当時SASで内勤だったデッカードに預けられ、ソルジャーとしての教育を施された。スローイングナイフを得意とし、8人くらいなら同時攻撃も可能。また、視野が広いため、偵察任務やヘリ内での前線オペレーターとしても活躍する。若さゆえに、メンバーからよくいじられる。

 

 

 

 デッカード=ロー 性別:男 歳:41歳

 

メインウェポン:SCAR-H サイドアーム:M1911カスタム

 

EESP-Xにおいて最年長合格者であり、チームではサブリーダーも務める。英陸軍特殊空挺部隊<SAS>として、数多くの作戦に参加してきた古参兵士。近接格闘を得意とし、世界中の武道を体得している。透とは彼が傭兵として活躍し始めた頃から面識があり、透の最も信頼のおける人間の一人である。隼人に戦いを教えた師匠である。

 

 

 

 梁 俊熙<リョウ ジュンシー> 性別:男 歳:24歳

 

メインウェポン:P90 サイドアーム:Five-seveN

 

中国人民解放軍総参謀部情報第三部の内勤組だったにも拘らず、持ち前の高い運動神経と無尽蔵の体力でEESP-Xに合格したメンバー。サイバー分野においては世界トップの実力を持ち、装備一式さえあれば北米航空宇宙防衛司令部<NORAD>やペンタゴンのシステムでさえ容易にクラッキングできる。

 

 

 

 オットー=カリウス 性別:男 歳:29歳

 

メインウェポン:G36 サイドアーム:P226

 

ドイツの名門大で機械工学の修士課程を経て、ドイツ連邦陸軍に入隊、特殊戦団<KSK>に配属された経歴の持ち主である。彼の改良したドローンは様々な任務でとても役に立っている。EESP-Xもかなりのスコアで合格しているため、まさに文武両道のメンバーである。

 

 

 

 ユーリ=ケレンスキー 性別:男 歳:33歳

 

メインウェポン:AK-12 サイドアーム:マカロフPM

 

スペツナズの中でも最高位である、ロシア連邦軍特殊作戦軍の出身である。チーム内でも屈指のパワータイプで、普段はAK-12を使うものの、大抵の場合ジャベリンやスティンガー、又はAA-12などを携行している。体力面だけでなく、知力面でも高い能力が求められるEESP-Xをゴリ押しでクリアするとかいう、透曰く”最強の脳筋”である。

 

 

 

 マナセ=イツァーク 性別:男 歳:32歳

 

メインウェポン:マイクロタボール サイドアーム:デザートイーグル

 

イスラエル軍の特殊部隊<サイェレット・マトカル>出身で、EESP-Xをトップスコアで通過した実力者。破壊工作<サボタージュ>の為に爆薬について研究し、今や専門家並みの知識と技術がある。本人曰く、装備と素材があれば核兵器も製造できるとの事。ドイツ人のカリウスに強い対抗心を燃やしている。

 

 

 

 アルド=エドガルド 性別:男 歳:35歳

 

メインウェポン:M24E1 ESR サイドアーム:Vz61

 

イタリア憲兵隊<カラビニエリ>の特殊介入部隊<GIS>出身で、狙撃においては2㎞級を容易にこなす程の凄腕スナイパー。また、気配を完全に断つ事ができ、狙撃位置に着いた彼の姿を捉えるのは、事前に位置を知っている者でさえ困難を極める。ただ、お国柄か女性の前では気配が駄々洩れの模様。

 

 

 

 レオン=アッシュ 性別:男 歳:23歳

 

メインウェポン:MP5SD6 サイドアーム:レイジングブルModel454

 

フランス国家憲兵隊治安介入部隊<GIGN>出身で、EESP-Xに最年少で合格した。普通車はもちろん、特殊車両や航空機の操縦免許も保有しており、メンバーの移動時に最大の真価を発揮する。実戦経験が少ないため、隼人と同様によくいじられる。

 

 

 

 マイク=フロスト 性別:男 歳:28歳

 

アメリカ陸軍第160特殊作戦航空連隊<ナイトストーカーズ>所属に所属していたヘリパイロット。その腕は隊内随一と評され、<死の鎌>作戦の際には透を集落に無事送り届けた後、飛んでくる無数のRPGを全て躱しながら支援攻撃を行うという超絶技巧を見せた。ネメシス結成後に透からスカウトされた。なお、AH-64<アパッチ>やCH-47<チヌーク>、CV-22<オスプレイ>等の操縦も可能。

 

 

 

 ジョン=ハワード 性別:男 歳:52歳

 

チーム内最年長のメンバーで、アメリカ空軍第1特殊作戦航空団に所属していた。<死の鎌>作戦の際ではAC-130Hの機長として航空支援に当たった。透からのスカウトを受け、クルーも一緒に軍から引っ張ってきた。以前はアメリカ空軍特殊作戦コマンド<AFSOC>にも籍を置いていたという事も踏まえ、現在は主操縦士ではなく、機長とAC-130Uカスタム機に搭載されている特殊作戦ユニットでの作戦指揮官を兼任している。

 

 

 

 サラ=アンディション 性別:女 歳:26歳

 

チーム内で数少ない女性メンバーの一人で、アメリカ空軍第1特殊作戦航空団に所属していた。ハワードに誘われてネメシスに参加。<死の鎌>作戦時はAC-130Hの火器管制官だったが、カスタム機の電子機器積載により、戦闘システム管制官と改称された。ミレーナと比較して、こちらは女性として扱われる。

 

 

 

 ニコラス=ウィルソン 性別:男 歳:27歳

 

アメリカ空軍第1特殊作戦航空団に所属していた。サラと同様に、ハワードに誘われて参加。<死の鎌>作戦時のAC-130Hの副操縦士だったが、現在ハワードがカスタム機の機長と作戦オペレーターを務める事となった為、主操縦士を務めている。AC-130Hに乗る前はB-52<ストラトフォートレス>のパイロットを一時期務めていた。

 

 

 

 オペレーター TV・赤外線オペレーター1名

        電子戦担当官1名    

        レーダー担当官1名

 

 航空要員 砲手4名

      ロードマスター1名

      副操縦士1名

 

(9名全員が男性)

 

 

 

・運用機体

 

MH-60L(DAP)カスタム仕様

 

グラスコックピットを廃止して統合化ヘルメット・表示標準システム<IHADSS>を採用。また、操縦士用暗視装置(PNVS)や目標捕捉・指示照準装置(TADS)、射撃管制システム<FCS>なども常時搭載する事になった。両側にあるドアガンのM134Dは固定武装となり、パイロットのIHADSSと連動させて可動式とした。ETS翼に搭載されるハイドラ70ロケット弾やヘルファイア対戦車ミサイルも同様にFCS統制によるIHADSSとの連動が可能になり、対地支援能力が格段に向上した。さらに、エンジンを従来のT700-GE-701Cエンジンから上位交換のYT706-GE-700エンジンに換装し、出力もさらに向上した。

 

 

 

AH-130Uカスタム機

 

機長と主操縦士を別々の人間が担当する形となっている。ベースはC-130Jであるが、武装はAC-130J型ではなくU型に近い。25mmガトリング砲1門、35mm機関砲1門、105mm榴弾砲1門の他に、電子戦用の機器や各種レーダー等を備えている。アビオニクスルームと射撃管制ルームを統合した特殊作戦ユニットを積み込むことにより後部ハッチ周辺のスペースを確保し、HALO降下やフルトン回収といったMC-130としての要素も盛り込むことが可能となった。




戦闘ものです。がんばります()


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File02 Red Wing

さあてと、ちゃんとブリーフィングから書きますか・・・
基本3人称視点です。

一応、調べがつく職の人間は実名で出しますがフィクションである事をご理解下さい。

けど、書いてるうちにこれってミッション難易度的にさっさと終わりそうな予感したので戦闘シーンは今回はありません。次回から激しく・・・ね?


2005年6月26日、20:29(EST)

アメリカ、ワシントンD.C.

 

 

 

ホワイトハウスのウエストウイング地下にあるシチュエーションルームは、数時間前に夕方の定時報告を終えたのにもかかわらず、人の出入りでごった返していた。

 

一人の男が入ってきたのを見て、着席していた全員が起立して彼の方を向き直った。

 

 

 

「挨拶はいい、それよりも状況が知りたい」

 

 

 

その男ー第43代アメリカ合衆国大統領ジョージ・W・ブッシュは足早に席に着いて言った。

 

 

 

「大統領、アメリカ中央軍司令部と繋がりました。モニターに出力します」

 

 

 

モニターにはアメリカ中央軍司令官のアビゼイド陸軍大将が映し出された。

 

 

 

「将軍、状況は?」

 

 

 

ブッシュ大統領が緊迫した面持ちで尋ねる。

 

 

 

「SEALsの即応チームは全滅、最初に派遣された4名の内1人は死亡が確認されています。現在、衛星をアフガニスタン上空に待機させ生存者を捜索していますがまだ見つかっていません。周辺の第3海兵師団から捜索部隊を編成、待機させていますが護衛につけるガンシップが確保できません」

 

 

 

アビゼイド大将が淡々と状況を説明する。

 

 

 

「アメリカのために戦っている者達を他国に置いていくわけにはいかない、何が何でも救出するのだ!」

 

 

 

「落ち着いてください大統領、彼らは必ず救出します」

 

 

 

興奮するブッシュ大統領を右側2番目の席に座っているアメリカ統合参謀本部議長のマイヤーズ空軍大将がなだめる。

 

 

 

「大統領、パターソン国連大使からです」

 

 

 

ライズ国務長官が報告する。

 

 

 

「国連だと?今更なんだこのタイミングで、後にしろ!」

 

 

 

ラムズフェルド国防長官が声を荒げる。

 

 

 

「ですが、緊急の案件だと・・・」

 

 

 

「分かった、繋げ」

 

 

 

大統領は回線を繋ぐよう指示する。

 

 

 

モニターにニューヨークの国連本部にいるパターソン大使が映し出される。

 

 

 

「大統領、先程ロシア主導による安保理の緊急集会が行われ、これ以上アフガニスタンでの軍事行動を認めないという決議案が提出されました。これについて我が国以外の常任理事国が賛成を表明しています」

 

 

 

「否決だ!今国連に構っている暇などない!!アメリカの為に戦っている兵士たちの命が懸かっているのだぞ!!」

 

 

 

ラムズフェルド国防長官はいきり立っている。

 

 

 

「丁度、その件についても話が出ました。もし、この決議案をアメリカが呑むのなら国連安保理は”ネメシス”を中心とするSEALs隊員救出チームを30分以内に出動させられるとの事です」

 

 

 

「”ネメシス”ですって!?」

 

 

 

今度はライズ国務長官が素っ頓狂な声を上げる。

 

 

 

「ダメだ、これは国連が首を突っ込んでくる事ではない、アメリカの問題なのだ!自国の兵士を自国で救えないなどとなったら、士気が下がるどころか、この国の威厳は失墜するぞ!!」

 

 

 

ラムズフェルド国防長官が猛烈に反対する。

 

 

 

「大統領、恐れながら、護衛のガンシップを用意して捜索を開始するまでにあと最低10時間はかかります。アメリカ本国から特殊部隊を派遣したとしても同様です。彼らの命を最優先にされるなら、国連の決議案を承認されるのが得策かと思います」

 

 

 

マイヤーズ空軍大将は軍の状況を確認し、冷静に大統領に助言をする。

 

 

 

「大統領!もしこのような決議案を呑めば、アメリカは末代まで笑い者になりましょうぞ!!」

 

 

 

ラムズフェルド国防長官がなおも食い下がる。

 

 

 

「大統領、ご決断を」

 

 

 

パターソン大使が催促する。

 

 

 

「・・・分かった、国連決議案を呑もう」

 

 

 

「大統領!!!」

 

 

 

ラムズフェルド国防長官が叫ぶ。

 

 

 

「ラムズフェルド君、私は決したのだ。これ以上何かあるのなら私は君を解任せざるを得ない」

 

 

 

大統領の有無を言わせぬ口調に、流石のラムズフェルド国防長官も黙らざるを得なかった。

 

 

 

「パターソン君、至急国連安保理にこの事を通達したまえ」

 

 

 

「了解しました。大統領のご英断に感謝します」

 

 

 

パターソン大使はそう言ってモニターを切った。

 

 

 

「ふぅ、これで片付くのだろうか・・・」

 

 

 

ブッシュ大統領は大きなため息をつく。

 

 

 

「ええ、きっと彼らは完璧に任務を遂行するでしょう」

 

 

 

ネグロポンテ国家情報長官がオブザーバーで参加していたゴスCIA長官を見て、皮肉交じりに同意する。

 

この時、新設された国家情報長官とその配下に入る事となったCIA長官との間には軋轢を生じていた。

 

さらに、CIAは以前”ネメシス”にパラミリチームを全滅させられていた為に、彼らの活躍はあまり面白くはない事なのである。

 

シチュエーションルームに重い空気が流れていく―。

 

 

 

 

 

2005年6月27日 05:12(AFT)

アラビア海

 

 

 

朝日に照らされたアラビア海上に、空母『シャルル・ド・ゴール』率いるフランス艦隊が展開していた。

 

空母『シャルル・ド・ゴール』は2001年に新造されたばかりの原子力空母で、アメリカ以外では初の原子力空母という事で世界中から注目を集めていた。

 

その艦内にある、食堂兼ブリーフィングルームには多くの人が集まっていた。

 

 

 

「艦長、統合参謀本部から作戦"ブラックスパイダー"の実行許可が降りました!」

 

 

 

若い下士官が部屋に飛び込んできて報告する。

 

ブリーフィングルームにいたのは、艦長、航空長、飛行隊長と”ブラックスパイダー”と言われた作戦に参加するパイロットの他に、フランス出航時から随行していた海軍コマンドーのメンバーであった。

 

 

 

「よし、”ネメシス”に回線を繋いでくれ」

 

 

 

艦長が近くにいた通信士官に命じる。

 

暫くして、部屋のモニターに大きな作戦テーブルと、それを取り囲む黒の戦闘服や飛行服に身を包んだ兵士達が映し出された。

 

 

 

「こちらシャルル・ド・ゴール。”ネメシス”聞こえるか?」

 

 

 

艦長がフランス語で呼びかける。

 

 

 

「ああ、艦長。良好だ」

 

 

 

テーブルの中央にいた男―ネメシスのリーダーであり、”世界最強の傭兵”である赤城透がフランス語で呼びかけに応じる。

 

 

 

「君達も知っている通り、先程国連から”ブラックスパイダー”作戦の許可が下りた。こちらにいる海軍コマンドーの出撃用意はいつでも整っている。指示を乞う」

 

 

 

「作戦の説明はハワードにしてもらう、ハワード」

 

 

 

ハワードと呼ばれた男が透と入れ替わりで中央に立つ。

 

 

 

「作戦を説明する。なお、作戦伝達及び現地での指示は全てフランス語で行う。フランスチームはアフガン時間0530に、”ネメシス”チームは0830に拠点を出撃、1030でB2地点とD1地点にそれぞれヘリボーンを敢行する。それに先駆け我々のAC-130が出撃し、作戦地域の監視又は支援に当たる。フランスのヘリチームはヘリボーン完了後、一度作戦空域を離れて米軍の空中給油を受けろ。地上部隊は分隊ごとに行動し米軍の生存者及び遺体を探せ。細かい指示は作戦中に上空のAC-130から出す。フランスチームには発信器が渡してあるはずだ。もし米軍兵の遺体を見つけたらそれをつけておけ。生存者だった場合は近くの開けた場所を指示する、そこまで彼を移送しろ。我々のヘリで回収する。遺体を全て発見出来次第、撤収し回収作業を米軍に引き継ぐ。質問は?」

 

 

 

「遺体の判別が困難な場合は?」

 

 

 

フランスのコマンドー部隊員が聞く。

 

 

 

「その場合はその周辺に発信器を置いておくだけでいい。他には?」

 

 

 

他に誰も質問をする者はいなかった。

 

 

 

「よし、ではこれより”ブラックスパイダー”作戦を開始する」

 

 

 

透の号令と共に全員が動き出した―。

 

 

 

 

 

2005年6月27日 04:12(EST)

アメリカ、ワシントンD.C.

 

 

 

「はい、了解しました」

 

 

 

昨日の重苦しい雰囲気のまま一夜を越したホワイトハウスのシチュエーションルームで、マイヤーズ大将が緊張した面持ちで受話器を置いた。

 

 

 

「何か進展はあったのかね?」

 

 

 

丸一夜寝ていないのでブッシュ大統領の表情にも流石に疲れが見える。

 

 

 

「・・・ネメシス・フランス海軍合同チームがSEALs隊員1名を救出し、即応チームを含める19名の遺体全てを発見しました。先程、第3海兵師団が遺体の接収作業に入りました」

 

 

 

マイヤーズ大将が苦悶の表情を浮かべて報告する。

 

 

 

「そうか・・・一人は助かったんだな」

 

 

 

ブッシュ大統領が呟く。

 

 

 

「しかし、あまりにも大きすぎる代償です」

 

 

 

ライズ国務長官が嘆く。

 

 

 

「全くだ、多くのアメリカ人が死んだ」

 

 

 

ラムズフェルド国防長官が先程とは打って変わって沈んだ声でライズ国務長官に同意する。

 

 

 

「それにしても、よくこの短時間で・・・まだ作戦開始時刻から3時間程だぞ」

 

 

 

ネグロポンテ長官が話題をネメシスの事に移す。

 

 

 

「ええ、これ程早く見つかるとはこちらも想定していませんでした」

 

 

 

マイヤーズ大将が冷や汗をかきながら同意する。

 

何せ統合参謀本部の見積もりでは生存者の発見まで丸一日以上、遺体の回収も含めたら一週間はかかると予想していたのである。

 

これでは、軍の無力さを露見させてしまっているのと同義である。

 

しかし、幸いにもブッシュ大統領を始め国家安全保障会議のメンバーがそれに気づく事は無かった。

 

 

 

 

 

2005年6月27日 12:59(AFT)

アフガニスタン上空

 

 

 

「あ〜あ、今回も大した事無かったな」

 

 

 

着々と撤退準備の進むアフガンの米軍基地で給油後、南南西へ向けて飛び立ったAC-130U機内の特殊作戦ユニットで隼人がぼやく。

 

 

 

「ほ〜んとそうよ〜ハワードちょっとアンタ殺り過ぎよ!私たちの出番なくなっちゃったじゃない!!」

 

 

 

ミレーナも同意し、ハワードを責める。

 

というのも、降下時刻1030の直前にフランス軍のヘリボーン地点周辺にSEALsを襲ったと思われるゲリラを発見し、AC-130Uの火器を以ってこれを全滅させてしまったのだ。

 

これにより、全チームは生存者及び遺体捜索だけに従事する事となったのだ。

 

 

 

「まぁそう怒るな。お前らだけならまだしもフランス軍兵士の命も預かっているのだ。お前達の楽しみは次の仕事に取っておけ」

 

 

 

ハワードが苦笑しながら二人をなだめる。

 

 

 

「ボス、国連本部から通信です」

 

 

 

戦闘システム管制官のサラが報告する。

 

 

 

「・・・分かった、出よう」

 

 

 

後ろの方にいた透が席を立ち、渡されたヘッドセットを装着する。

 

 

 

「作戦おめでとう、透」

 

 

 

「何だお前か。仕事の話か?」

 

 

 

電話の相手は今作戦で留守番となり、ニューヨークに待機していたメンバー、デッカードだった。

 

 

 

「ああ、ボス。緊急事態だ。」

 

 

 

「・・・なにがあった」

 

 

 

「さっきヨーロッパ各地で自爆による同時多発テロが起きた」

 

 

 

「!?・・・それで」

 

 

 

「犯行声明はまだ出ていないが、被害国情報部はアルカイダの仕業だと断定している。再び安保理が招集され、今回のテロについて非難すると共に、五大国の協議でアルカイダ本拠地の制圧と親玉のウサマ・ビンラディン殺害を決めたんだ」

 

 

 

「それで、俺達の出番と言う訳か」

 

 

 

「ああ、そうだ。必要な物資や兵員は全て手配すると言っている」

 

 

 

「承諾したと伝えておけ。それと、お前もこっちに早く来い」

 

 

 

「ああ、じゃあまた後で」

 

 

 

回線は切れた。

 

 

 

「サラ、散らばっているメンバーをフリゲート島に集めろ。緊急だ」

 

 

 

「了解」

 

 

 

サラがすぐに実行に移る。

 

 

 

「ボス、何かあったのですか?」

 

 

 

先程の内容を聞いていないハワードが尋ねる。

 

 

 

「欧州で同時多発テロだ、犯人はアルカイダ。連中の殲滅が今回のミッションだ」

 

 

 

その場にいた全員が息をのんだ。

 

テロの事もそうだが、結成以来、本格的な殲滅戦はこれが初めてとなるのだ。

 

その事に全員がプロと言えど緊張したのである。

 

 

 

「・・・多くの罪のない人々が死んだ。これは到底許されるべきではない。”ネメシス”の力を以て奴らを地獄へ送り届ける」

 

 

 

透のこの言葉に全員が落ち着きを取り戻し、自分の使命を自覚した。

 

かくして、彼らは後に”海神の槍”と呼ばれる作戦に従事していくこととなるのだった。

 

 

 




一つ時代錯誤の点で説明しておきますと、ミレーナは設定でSEALs出身となっていますが、女性がSEALsに入隊できるのは2015年からです()


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