「それで、わざわざこんな湿気のひどい日に私を呼んで何の用だ」
彼は不満を隠すつもりも無いようで、眉間に皺を寄せながらそう言った。
僕と彼は今、近所の喫茶店に居る。今時珍しいタバコの吸えるチェーン店だ。僕は大学の帰りに彼をここに呼び出した。
「今日は頭が少し痛むんだ、手短に頼むよ」
彼はコーヒーに四本目の砂糖を入れながらそう言った。
「いや今日お前を呼び出したのは他でもない、前々から言っていた旅行の計画の事だ」僕はニヤリと笑いながらそう言うと彼も顔を幸せそうに歪めた。
「そうか、やっと暇になったのか」
「いや暇では無いんだがテストもレポートも一段落付いたんでね。ここらで二日くらい休もうかなと。」
「そうなると場所は奥多摩とか埼玉か?」
「埼玉の川の近くにバンガローとバーベキューが出来る場所があって、実はもうレンタルしてある。」
「仕事が早いのは良いけど相談くらいしろよな。」
彼は少し怒った口調で言うも彼自身毎日が暇な生活。いわゆるニートなのをあまり気にしていないし、過去に僕に何時でもどこでも遊ぶと言ってしまったので強くは言えないようだ。
「それで、いつ行くんで?」
彼はそう言う。私は来週の土曜だと言った。
それから僕らは必要な荷物、集合場所や車ではなく電車で行こうなど閉店時間のギリギリまで話あった。
そして当日の集合場所の早朝の駅前。
彼は煙草の煙を目に沁みさせながら言った。「タバコはマッチで火をつけた方が上手いしフィルターは味を濁らせるから無い方が美味い。だがマッチは外で付けようとすると火がすぐ消えるしその間にタバコは唾液でグズグズになる」
彼は心を落ち着かせる為か関係の無い話を続ける。それに耐えられなかった僕は。「家にホットプレートあるから……」と言った。
彼は静かに泣いた。
その日は記録的大豪雨でキャンプ場からも危険なので本日の営業は無し、お代も要りません。と告げられた。
「私は豚は嫌いだから食わないぞ」
彼はそう言って僕とともに靴を濡らしながら歩き出した。
その後、彼は僕の家で強くもないのにチューハイを二缶も空け笑いながら。
「結局屋根と壁がある場所で食う飯が一番美味い」と、その言葉を最後に意識を飛ばした。
経った今一人になったアパートの一室で僕は真顔で肉を焼きながら呟いた。
「布団まで僕がこいつを運ぶのか……」
僕はいびきをかく彼の腕をつかみ引きずり、既に敷いてある布団に押し込んだ後、また肉を焼いて食べそして飲んだ。
若いはずなのに内臓が悪くて入院しました。
これからは一層健康に気をつけねば。
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