灯火の星 (道端の小石)
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灯火の星

 タブー率いる亜空軍と戦士達の全てを賭けた最終決戦から10年、タブーと戦いに勝利しみんなと凱旋を謳った崖に再び戦士達は集結していた。

 

 タブーを倒したあとのキラキラと海に輝く夕焼けの景色は昔も現在も変わらない、しかし綺麗な風景とは裏腹に空にはおびただしい量の創造欲の化身であるマスターハンド達が漂っている。

 

 

「今日こそ決着をつけてやる‼︎」

 

 

 フォックスはマスターハンドを睨みつけている戦士を背に、そのマスターハンド達に囲まれながら中心部分に鎮座しているコア、光の化身キーラに向けてフォックスはブラスターを向けながら声を張り上げ叫ぶ。

 

 

 戦士達が思い出すのは亜空間での戦い、あの時は呆気なくタブーに倒されたとはいえ今の相手はあくまで創造神であるマスターハンドと、それを従えている光の化身キーラ。

 

 

 マスターハンドは昔の戦士達なら何も出来ずに叩き潰される程いるが、戦士達は昔と違い実力も戦士達の人数も上回っている、つまり大量のマスターハンド達との戦いに必ず負けるわけではないと、僅かながらも勝機を見出していた。

 

 

「それにしても多いな……、一人10体ぐらい倒せばいけるか?」

 

 

 目の上に手を置きながら目を凝らし、いち早くマスターハンドの数を把握したマルスが話しだす。

 

 

「ここまできたらやるしかないでしょう」

 

 

 微かに震える手を握りしめ、ゼルダは逃げずに立ち向かう決意を露わにする。か弱い女の子なんかじゃない、ここではゼルダもれっきとした戦士なのだから。

 

 

「僕たちならきっと勝てる!」

 

 

 ゼルダの言葉に返すように、横に並んでいたピットが武器を構えながらそう口を開き、それを合図にある者は剣を、ある者は銃をと、戦士達は各々の武器を構え始める。……いよいよ、戦いが始まる。

 

 

 __そう、誰もが予想し精神を研ぎ澄ませていた。しかし、肝心のマスターハンド達の徐々に動きが鈍くなっている。どうにも様子がおかしい。

 

 

「……?」

 

 

 戦士達が疑問に思う中、サムスはズームされたバイザー越しに異変を感じ取り後ずさる。

 途端、マスターハンド達は裸眼でも見えるほどパチパチと激しく光り、プラズマの様な青い光を包んでいた輪郭部分が破られた紙のように分解されキーラに集まって行く。それと共に再び構える戦士達。

 

 

 そして全てのマスターハンドがキーラに集まると、キーラは羽根の造形物の様な形からブラックホールのような形に姿を変え、異様な雰囲気を醸し出し始める。

 

 

「……ッ‼︎」

 

 

___________

 

 

 

 シュルクはビジョンで数秒先に起こる光景を目にしていた。ビジョンが終わると同時に、仲間達の方へ振り返る。

 

 

「みんな……‼︎」

 

 

 シュルクはすぐさま戦士達にビジョンの事を説明しようとしたが、どうにもみんなの様子がおかしい。おそるおそる戦士達が向いている方向を見ると数秒先に見た光景が今まさに始まろうとしていた。

 

 

 先程までブラックホールの形で固まっていたコアは急激に膨張し、高エネルギーのせいか大気の色を様々に変え、ビーム状の強力な光を放ちながら収縮していく。

 

 

 キーラが放った光はヘビのようにクネクネとカーブを繰り返しながら、津波のように群を成し、戦士達がいる場所に向かってくる。

 

 

「はあぁぁっ‼︎ ……‼︎」

 

 

 リンクは盾でビームを数回逸らしたが、光を正面から受けた衝撃で後ろによろめく、その隙にビームを浴び跡形もなく消された。

 

 

 先程までリンクが立っていた場所を通過する光に警戒しながら、サムスは光を撃ち落そうとミサイルを放つ。しかし意味がないと気がついたサムスはパワービームを放ち再び撃ち落そうとするが、光は一切動きを鈍らせることなくサムスを飲み込んだ。

 

 

 ゼルダとミュウツーは、ネールの愛や念力を使って光の反射を試みたが反射されることはなく、驚きを顔に出す前に光に包まれた。

 

 

「ピカッ…………!」

 

 

 ソニックは躓いたピカチュウに手を伸ばそうとスピードを落としたが、あと僅かで届かずピカチュウは光に飲み込まれた。ソニックも背後から近づいてきている光を避けることができず飲み込まれてしまう。

 

 

 ベヨネッタは光に包まれる寸前、身体をコウモリに変えあたりに散らばって回避。しかし、コウモリを収束させ身体に戻す僅かな瞬間、その一瞬の隙を突かれ光に当たってしまう。

 

 

 ポケモントレーナーが率いたポケモン達は、迫りよる光に向かって三位一体の波状攻撃を仕掛け、クッパがその横でリザードンに負けないような炎を吐く。しかし、その圧倒的火力にもかかわらず、光の勢いを衰えさせることは出来ずクッパ達は光に包まれた。

 

 

 一人、また一人と戦士達が光にやられていく中、キャプテン・ファルコンは心苦しいが生き残れることを最優先とし、自らの愛機ブルーファルコンに乗り込み逃げようとしたが、愛機もろとも光に包まれチリとなってしまう。

 

 

 ルカリオは迫ってきた光を瞬間移動で躱し、偶然ゲッコウガの後ろに避けた。しかし、次々と正確に飛んで来る光を避けきることが出来ず飲み込まれてしまう。

 光が自身の体に到達する寸前に垂直跳びで躱したゲッコウガは、ルカリオが光を避けきれず消えた事に驚愕しながら、空中で呆気なく飲み込まれてしまった。

 

 

 走りが得意ではないインクリングの二人は光が届くまでの間に、地面にインクを塗り潜伏していたが、関係ないと言わんばかりに光は地面を抉りながら二人を消した。

 

 

 ファルコはキャプテン・ファルコンの様に逃げようとアーウィンに乗りこんで空に逃げたのだが、光は予測していたかのようにアーウィンの死角から迫りより、避けきることができず飲み込まれてしまう。

 

 

 ファルコが消された更に上空では、ピットとブラックピットが飛翔の奇跡を使いながら光から逃げ続ける。

 その後方には我が部下を護ろうとするパルテナが立ちはだかり、今まさに向かってくる光をじっと見据えながら杖を振った。

 

 

「……反射板‼︎」

 

 

 パルテナの振った杖はオレンジ色に輝く反射板を目の前に張ったが、ゼルダ達の様に反射することが出来ず貫通しパルテナを飲み込む。

 

 

「うわ……っ‼︎」

 

 

 パルテナが消滅したため、ピットとブラックピットがパルテナから受けたいた飛翔の奇跡がなくなってしまう。ピット達は自らの羽で再び羽ばたこうとするが、バランスを崩してしまった状態では体を安定させることができず、地面に叩きつけられる前に光に飲み込まれた。

 

 

 スネークは見つからないように、と隠密性に優れた装備"ダンボール"に隠れていたが、そのまま光に飲み込まれてしまった。

 

 

 ロゼッタはパワースターの力を使い空に向かって翔び立ち、それを追いかけるようにディディコングは背中に着けたタルロケットで飛び立つが、圧倒的なスピードを持つ光の前に呆気なく飲み込まれる。

 

 

 むらびと、ダックハント、wiifit トレーナー達は逃げられるわけでもなく、かといって光を防ぐことができるわけもないため。慌てたり、目を隠したり、立ち木のポーズをしたり思い思いの行動をとったまま光に飲み込まれた。

 

 

 飲み込まれ、消え、飲み込まれ、消え、飲み込まれ、消え、飲み込まれ、消え、飲み込まれ、消え。

 

 

 そんな光景の中、ワープスターは小さな星とエンジン音の代わりにキラキラという音を立てながら遥か上空を飛び続けている。

 

 

 光から避けて、避けて、避け続けるワープスターから出てくる音は、今までに聞いたこともない音だけどスピードを緩めるわけにはいかない。

 

 

 しかし、突然ワープスターは限界を迎えたかのように破裂した。その際一回り大きな星をばら撒きながらワープスターは消え、カービィとワープスターがいた場所を大量の光が通過する。

 

 

 

 

 

 

 今この瞬間この場所から希望は消えた。

 

 

 光は残ったフィギュア達を包みながら、やがて惑星、銀河を包んだ。

 

 

 

 

 

 光に飲まれたキャラクター達はただただ空中を漂うだけの存在『スピリット』と化し、フィギュアにも、現実世界にも戻ることが出来ず、荒廃した世界をあてもなく彷徨っていた。

 

 

 その時、暗雲が立ち込めた空の彼方からしっかりとした軌道を維持し続け、キラキラと音と光を放ちながら地面に向かって飛んでくるワープスターが、カービィを乗せて再びこの地に現れた。

 

 

 ワープスターは地面に接触すると共に小さな星となって消え、カービィが地面に投げ出される。

 そう、ワープスターは消えたのではなく、カービィを護るため音速を超え、光速を超え、ワープしたのだ。

 

 

【とりどりの色たちが】

 

 

 カービィは顔を上げ、荒廃してしまった地に立って周りを確認することなく走り出した。まるで、どこにみんながいるかわかっているかのように。

 カービィは振り返らない、変わり果ててしまった世界に泣いているのか、怒っているのか、それすらも見せず。ただひたすらみんなを探す為にカービィは振り返ることなく走り続ける。

 

 

【つむぐ炎の螺旋】

 

 

 どれぐらい走っただろうか、たった一人歩き続けていたカービィもとうとう疲れで歩みを止めてしまう。しかし、突然一陣の風が優しくカービィの体を撫でた。ふと風が吹いてきた方へ顔を向けると……光があった。

 

 

【果てしなく続いてく】

 

 みんなを消し去った『光』ではなく全てを暖かく照らす『光』。

 そんな、誰もいないはずの荒野の中、カービィは微かにみんなの助けを求める声を聞いた気がした。

 カービィは再び駆け出した。消えたみんなを助ける為、みんなとご飯を食べる為。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【遥かから受け継いだ光】

 

 

 今日も星の戦士は一人、闘い続ける。

 

 



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