喰われたようです (ざいざい)
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喰われたようです



適合率は並のようです


 

 

 

「携行品が…!」

 

「使え!」

 

回復錠を飲む。

 

脇腹の痛みが和らいだ

 

まだ戦える

 

時間を稼がなければならなかった

 

要請を受けた神機使いが来るまであと10分

 

稼いだ時間は4分

 

雷が迸る

肉が焦げ、耳を膿ませたような臭いがこびりつく

 

スナイパーの男だ。先の戦いで負傷し、弾切れで反応する間もなく逝った

 

この中で二番目に神機使いとして長く生きていた男だ。

 

後援に届かない様に注意を引きつける前衛

 

ヴァジュラが引っ掻いた

 

ショートブレードで切っていた女の顔がぺろんとめくれる。

 

血管が切れる

 

黄色い筋やピンク、赤い筋が敷き詰められて、横に裂かれた白い眼球が嵌め込まれている

 

気さくで初めて入ってきた時にも話しかけてくれた。

 

心無い一言を言われた隊員に真っ先に周りの士気が落ちないように気を使っていた人だ

 

おかげで意気消沈して死ぬ人が数人だけで済んだ

 

「に…」

 

風が顔を苛む

 

顔の剥がれた女は、片手からスタングレネードを落とした

 

閃光

 

ヴァジュラが怯む

 

ひとまず地点に離れないまま隠れた

 

 

残り時間5分

 

ヴァジュラの咀嚼音を背景に、拾った仲間のアイテムを確認する

 

回復錠2個

 

スタングレネード1個

 

ホールドトラップ1個

 

封神トラップ1個

 

回復球や柱はクアドリガの討伐で無くなっていた。

 

負傷した時の治療費、生活費。残った費用で武器とアイテムを取り揃えても2桁分は買えない

 

隠れて襲撃する。

 

ヴァジュラの顔を破壊した

 

残り4分

 

アサルトがバレットを撃ちだしていく

 

 

 

順調なわけが無かった

 

なぜなら2人とも負傷していたからだ

 

適合率が高ければ治った傷も塞がらない。

 

回復錠を使っても痛み止めと止血になるだけ

 

体は確実にガタが来ていた

 

 

年長はかばった。

 

火傷だらけ、爪傷だらけの体。

 

前に立ってガードする

 

装甲が壊れた

 

後ろにいるのを巻き込まないように、吹っ飛ばされないように踏ん張って、腹から絶え間ない肉が溢れる

 

剣が破損しても、引き付けて動く。

 

「行け……!」

 

眼光が衰えることは無い

 

走って隠れる。

 

が、血が出ていた。

 

それが地面に垂れていた

 

回復錠を飲もうにもストックが無かった。

 

体力も僅か。じりじり減っていることからもう生きて帰ることは無理だと分かった

 

だから足掻こう

 

 

ホールドトラップを自分の下に置いた

 

血の臭いを嗅ぎつけてヴァジュラが飛びかかる

 

銃声がした

 

残り1分

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

援軍は二人。偵察兵の男と衛生兵の女。

 

他の人員は討伐、防衛、警備に回っていた

 

援軍の男は5年という歳月を神機使いとして過ごしていた。生き残るために、不本意だが色んなやり方を吸収してきた。

 

足音を殺すことも、トラップの運用も、隠れ方も。

 

もう片方の女は神機使いになって1年経っていた。潜在能力の高さもあり、討伐数は平均よりやや多い。射撃自体が下手なのが玉に瑕だった

 

 

二人は一年以上を生きてきた

 

生きて戦ってきた

 

だから守れなかった民間人と、一緒に戦ったり、救援に向かった先の神機使いが死ぬ様をずっと見てきた。

 

 

 

 

 

遮蔽物を利用して、足音を消し救援対象を探している。

 

「シュンさん」

 

女が声をかける。討伐対象の聴覚はそこまで鋭くないが奇襲することに神経を使っていた男にとって好ましく無かった

 

「んだよ。……」

 

女が示した方には神機使いがいた。救援対象だ。

 

だが、出血量が酷く、内蔵が飛び出ている。

片腕の肘から先が無くなっていた

幸いにして赤い腕輪のある方では無かった。それでも絶望的だった。

 

女が神機使いには見えないように目で無理だと伝えていた

 

欠損度合いが、リンクエイドや回復弾で治る範疇を越えていたからだ

 

「ヴァジュラはどうなった。」

 

まず聞かなければならない事だった

 

顔、けつごと唇が動く。

 

「なにか言い残す事は」

 

風が通るような音が喉から鳴る

 

「さい、ご…け取って、ください」

 

口から血泡を出し、濁り声で不明瞭だ

男は頷いて、差し出した手からアイテムをとった

 

動かなくなった

女は神機使いの目を閉じさせる

 

「あとでまた、来ますから」

 

待っててください

 

 

 

 

 

 

ヴァジュラを討伐した

 

神機使いの腕輪と神機の回収。

 

スナイパー、ショートブレード、壊れた神機と破片、アサルト

 

赤い腕輪四つ

 

女が遺体を運んだ

 

車に死臭が充満する

 

 

帰還した。

 

 

男が報告を済ませると、噂があった。

 

 

「弱いやつから死ぬ。それだけだ」

 

フードの男がポツリと呟いた

 

男は冷ややかに声の主を睨みつけた

 

 

「隊長がしっかり指示をしないからでしょう。だから対処が遅れたんですよ」

 

新しく入った新型の女が言った。

 

 

 

 

 






神機使いは道具を繋ぐようです


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