迷宮再走:もしくはTS幼女化■■■RTA (wind)
しおりを挟む

迷宮再走

 

 初投稿イクゾー! デッデッデデデデ!(カーン)

(言うほどRTA要素は)ないです…。


 

 

 

 

 

 

 

”便利屋”ヒューゴはその日もいつもと同じ酒場で飲んでいた。

 

 

 

いつもの席。

いつもの面子。

いつものつまみ。

 

 

俺はいつもこの鴉の止まり木亭で酒を飲み、情報を集めている。

酒場は冒険者の吹き溜まり。

今日も皆飽きもせず、迷宮の話題を続けている。

 

 

新しい迷宮が出来ただの。

面倒な敵が出て来るようになっただの。

迷宮のボスが誰かに仕留められただの。

あるいは、話題の冒険者が死んだだの。

 

 

「聞いたか?例の宝剣使い、死んだってよ。」

「おう、聞いたぜ。パーティ全員、行方不明なんだろ?」

「全滅したんなら宝剣が遺されてるかもしれねぇ、ってパッチの野郎が張り切ってたぜ。」

「んだよ、もうみんな知ってんのかよ…。」

 

 

宝剣使い。

来歴不明、出身地不明の冒険者。

最近売り出し中だった、鴉の止まり木亭期待のホープ。

 

 

だが期待の新星がそのまま消えるなど、珍しくもないことだ。

ただ新人が死んだだけ。

これも所詮は、珍しくもない普段の話題に過ぎない。

ありふれた話題、良くあることだ。

同じ酒場を使う仲であっても、こんなことで気を落とすなぞ馬鹿らしい。

 

 

「…っち。」

 

 

酒が切れた。

さっきエールを注文しているにも関わらず、まだ届かない。

 

 

「おい、メイファ!酒はまだか!」

「おいおい、今日は随分とペースが早いなヒューゴ。」

「…ザック。ちょうどいいとこに来たな。」

 

 

絡んできた飲み仲間から木のコップを奪い、一息に飲み干す。

マズい。

 

 

「…相変わらず、むやみに度数高いもん飲みやがって。」

「人の酒奪うだけじゃなく、趣味にまでケチつけんのか?」

「ふん、ナクタの火酒なんざ飲んでるのはお前ぐらいじゃねえか。」

「おうおう、さてはもう酔ってんな?…例の新人か?」

「…そんなんじゃねぇよ。」

 

 

実際、そう深い関わりがあったわけでもないのだ。

新人の頃、ちょっと関わったことがあっただけだ。

あとはこっちが勝手に目を掛けていただけのこと。

向こうからすりゃ、ただの酔っぱらいだったろう。

 

 

「…っち。酒取ってくる!」

「おう、そういうことなら飲め飲め。ついでに俺の火酒も持ってこい!」

「わあったよ!」

 

 

 

注文が二重に来ても嫌なので、注文を承った給仕のメイファを探す。

いつまで経っても酒が来ないので、こっちから取りに行くのだ。

今は酒場も、併設の探索者ギルドも暇な時間帯のはずだ。

アイツは何処でサボっているのやら。

 

 

「あん?」

 

 

酒場に居なかったのでギルドの方を見やると、カウンターで諍いの気配。

メイファの緑髪が見える。カウンター越しに子供と言い合いをしている。

 

 

「おい、メイ…」

 

「ですから!探索者は危険な職業なんです!あなたみたいな子供をギルドに迎えることは出来ません!」

「そこをなんとか!ギルドに入れないと迷宮に行けないでしょう?どうしても、迷宮に行きたいんだ!」

 

「登録希望?こんな子供がか?」

「ん?」

 

 

声に気づき、勢い良く振り返った子供が、俺にぶつかる。

身長は俺の胸程度しかない。

腕も細っこく、掌にも豆や修練の跡はなし。

…見るからにただの子供だ。髪はここじゃあ珍しい黒だが、目立つ点はそれぐらい。

鍛えてるようにも見えないし、探索者に向いているとはとても思えない。

 

 

「嬢ちゃん。探索者は遊びじゃねーんだ。ここに来るとしても、もっと大きくなってからにしな。」

「ヒューゴさん!」

「よう、メイファ。酒をくれ。」

 

「俺の頭越しに会話するの止めてくれ!それに、子供扱いもだ。俺は探索者だよ!迷宮に行ったことだってある。」

「もう、またそんなを…!この前は拾ったギルドカードまで持ってきてたし、流石に怒るよ!」

「あれは拾ったもんじゃない…!」

 

 

子供とメイファの言い合いは続く。

だが拾ったギルドカードだと?

 

 

ギルドカードは探索者にとって命の次に大事な、自身を証明するための魔道具だ。

ギルドへ登録後、見習いを卒業してから交付される高級品。

探索者の魔力とリンクされており、迷宮踏破や魔物討伐の実績もこれで管理される。

どんなに酔っぱらってもこれを手放すバカはいないし、そもそも当人にしか使えない代物だ。盗むヤツもいない。

 

 

「…おい、嬢ちゃん。ギルドカードだと?何処で手に入れた。」

「手に入れたっていうか…元々俺のって言うか…。」

 

 

見せられたギルドカード。

そこに刻まれた名前に、思わずカードをひったくる。

 

 

 

 

 

「おいお前、これ…。このカードは…。」

 

 

子供が持っていたギルドカードは、件の宝剣使いのものだった。

 

迷宮に行った、という本人の弁が本当なら、そこで拾ったものだろう。

迷宮での落とし物は、迷宮の再構築に伴い再配置される。

偶然浅い階層に配置された遺品を、この子供が拾ったのだろう。

迷宮での拾得物ならば、自分のものと主張することに何の問題もない。

 

そして、そのカードは既に探索者とのリンクが切れていた。

それはつまり―――――――その探索者の死亡を意味する。

 

 

「というか嬢ちゃんはないだろ、言って良いことと悪いことがある。俺は…!」

「………そうかい。

 なら、探索者らしく扱ってやるよ。着いてきな。」

「ちょ、ちょっとヒューゴさん!?流石に手荒な真似は…!」

「そんなんじゃねぇ。裏庭、見せてやるだけだ。…酒、持ってくぜ。」

 

 

小銭をカウンターに叩きつけ、積まれた木箱の中から酒瓶を一本取り出す。

普段なら店主にどやされる振る舞いだが、今は無性に酒が飲みたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…どこまで行く気だよ。それに、俺のカード…。」

「すぐそこだ。ギルドの裏。」

「裏って確か、花畑になってたよな?」

「ああ。そうだよ。」

 

 

ギルドの裏庭。

そこは色とりどりの花が植えられ、年中何かしらの花が咲いてる。

花々の中心部には、石碑。

周囲にはいくつかのベンチがある。

 

俺はその中の一つに座り、酒瓶の王冠を外す。

 

 

「座れよ。」

「座ったら、返してくれんのかよ?」

「おう。考えてやるよ。」

「ほんとかよ…。」

 

 

 

「お前は花畑って呼んだけどよ。あの石碑、何か分かるか?」

「周りに供え物とかあるし、神様でも祀ってるんじゃないのか。」

「違うな、全然違う。

 あれはな、死んだ探索者の墓なんだ。

 探索者ってのは死と隣り合わせの職業だ。いつ死んだっておかしくない。

 そしてパーティの仲間が居ても、死体を持って帰る余裕なんざない。墓には何も入れられねぇ。ましてやパーティが全滅した日には、死亡の確認すら出来ず、ただ粛々と酒場の名簿から消されてそれきりだ。

 ろくなもんじゃねぇ。

 人間の死に方じゃねぇよな…。

 …。

 だからさ、せめて同業の俺たちぐらいは弔ってやろうって、この墓は作られたんだ。

 そんで墓に入れるもんがねぇなら、せめて好物でも供えてやろうって酒やらつまみやら、皆置いていく。」

 

 

酒を煽る。

半分残ったそれを、嬢ちゃんへと渡す。

 

 

「飲め。」

「えっと、俺まだ酒は…。」

「そうかい。

 実はな、つい最近にも若い探索者が死んだんだ。パーティごと行方知れずさ。

 そいつもな、酒はまだ飲めないーっなんて言って、結局酒の味も知らず、逝っちまった。

 ………あいつは、俺よりも若くて実力もあった。ここの期待の新星、なんて呼ばれててよ。

 ドンドンと出世していった。

 強いヤツだったよ。すげぇヤツだった。

 俺は、アイツと一緒に飲める日を楽しみにしていたんだ…。

 きっとその頃にゃあヤツは俺より強くなっててよ、昔の貸しで良い酒でも奢らせてやろう、なんて考えてた。

 だが、ヤツは死んじまった。

 そのギルドカードの持ち主だよ。

 そいつの魔力リンクが切れてるってことは、ヤツはもうこの世にいないってことなんだ。

 …。

 ヤツの代わりに、その酒、飲んでやっちゃあくれねぇか…。」

 

「ヒューゴ…。」

 

 

俺は、石碑を見つめ続ける。

横から、ちゃぽんという水音。

 

 

「…苦い!」

 

 

「だろう?いや、実はその酒、俺も好きじゃないんだよ。」

「なんだよ、それ!」

「なんでも年を取ると美味さが分かる、らしいぜ?死んだ先輩の受け売りだけどよ。

 なぁ、嬢ちゃん。せめてもう少し、待つわけにはいかないのか。

 その酒の味が分かるようになるまで。もっと大きく、強くなるまで。

 冒険に憧れるヤツ、宝を求めるヤツ、名誉に焦がれるヤツ。

 色んなヤツがこの街には来る。でもな…この街から無事帰れるヤツは、驚くほど少ない。

 皆死ぬんだ。

 死体すら残さず。

 なぁ、そう生き急ぐこともないだろう?

 命を粗末にするなよ。

 若い奴が死んでくってのはさ、結構堪えるんだよ…。なぁ、頼むよ。」

 

 

「…。俺は…。」

 

 

俺は、相手の声色から説得が失敗したことを悟った。

まぁ、所詮は酔っぱらいの戯言だ。そんなもんだろう。

 

ああ、くそ。雨まで降ってきやがった。踏んだり蹴ったり。

 

 

「お前はさ、探索者になりたいんだろ?」

「ああ。迷宮に行きたい。」

「そうかい…。命知らずめ…。」

 

 

懐から、財布を取り出し投げ渡してやる。

どうせ晩飯代くらいは、酒場で鑑定でも請け負ってやれば稼げる。

 

 

「なんのつもりだよ、この金。」

「くれてやる。」

「突然、どういうこった。」

「良いから黙って受け取っとけよ。可愛くない新人だな。

 嬢ちゃん、装備も何も整えてないじゃねぇか。その金で防具の一つでも買ってきな。

 装備整えてりゃ、メイファも邪険にしないはずだ。

 勝手に迷宮に忍び込むよりゃ、ギルドに入った方がナンボかマシだからよ…。」

「ヒューゴ…!」

「この金は俺からじゃねぇぞ。

 ここに眠る、探索者たちとヤツからの金だ。

 いい加減、この墓も満員だろうからな…。奴らも、これ以上住人が増えて欲しくはないだろ…。」

 

 

 

「ったく。雨に降られるたぁついてねぇ。俺はもう帰るぞ…。」

 

 

 

言って、立ち上がる。

言うべきことは言った。

後はどうするしろ、嬢ちゃんが決めることだ。

ああ、くそ。

これも全部火酒の所為だ。

らしくもないことをしてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

鴉の止まり木亭に戻ると、メイファがぎょっとした目でこちら見る。

 

 

「ちょっと、ヒューゴさんどうしたの!?それにあの子は?」

「構うな、俺は泣き上戸なんだよ。嬢ちゃんは…まぁ、言うべきことは言ったさ。

 酔ったから、俺は寝る!」

「まだ夕方だよ?」

 

 

メイファを振り切り、酒場の上の宿屋へと歩を進める。

今はただ、ひたすらに寝たい気分だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

_______________________________________________________________________

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

 

 

防具を外し、倒れるように寝て、目覚めたら朝だった。

頭がガンガンと痛む。

間違いなく、火酒の所為だ。

毎度あんなものを飲むザックの気が知れない。

 

 

「…おーう、メイファ…朝飯…。」

「おはよう、ヒューゴさん。いつもの席どーぞ。あの子ももう来てるよ。」

「あん…?」

 

 

あの子…?

はて、誰の事か…。

ちょくちょく他のパーティに混ざって探索しているため、二日酔いで鈍る頭では候補が絞り切れない。

 

 

いつも座る隅の席を見ると、そこにはザックと昨日の嬢ちゃんが居た。

嬢ちゃんの手には、明らかに身の丈に合っていない両手剣。

 

 

「よう、ヒューゴ。お前も案外、面倒見の良いとこあんじゃねーか。」

「おはよう、ヒューゴさん!おかげさまで、そこそこ良い剣が買えました!」

 

 

 

防具買えっつっただろーがバカ!

 

 

 

 

こうして、嬢ちゃんの探索一日目は、買った剣をどうにか返品することから始まることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_______________________________________________________________________

 

 

 

 

 

 

◆次回予告 兼 真面目な方のあらすじ。

 

 

 

「腕力強化!脚力強化!機動加味!」

 

「出た!ヒューゴさんのマジックコンボだ!流石ッすよヒューゴさん!」

 

「(ただの支援(バフ)魔法(マジック)なんだがな…)」

 

"便利屋”ヒューゴはひょんなことから新米幼女冒険者とパーティを組んだ。

そして援護のために支援魔法をかけたところ、幼女の特異体質により効果倍増!

スーパーゴリラ幼女が誕生し、モンスターを一蹴する!

しかも幼女はそれをヒューゴのおかげだと言い、全力でよいしょする!

 

訂正しても聞かない幼女!下がる評判!痛む胃!

そして幼女に隠された恐るべき秘密!迫る魔の手!

 

次回「迷宮探索二人旅~初級編~」はそのうち書きます。

 

 




 


最終的に雌堕ち幼女が一転攻勢に出て逆レになるから。(予言)

まぁ不定期連載なんだがな…。
続きは気長に待っててほしいからよ…エタるんじゃねぇぞ…。(戒め)

◆雑なネタ使用に不快感を覚えられた方には、謹んでお詫び申し上げます。
 またお手数ですが該当箇所についてのご指摘も頂けましたら幸いです。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ぶらり迷宮二人旅:ファースト・メイズエクスプロール

 

不定期連載とはつまり、二日後に書くのも二週間後に書くのも自由ということ。

43のお気に入りと4件の感想、評価9まで頂いたら多少はね?(クロックアップ)
見たけりゃ見せてやるよ(震え声)


 

 

 

 

 

 

いつもの酒場。

いつもの朝食。

いつも座る席。

 

だが今日は、そこに見慣れぬ珍客が居る。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっはようございます!

 ヒューゴさんに貰ったお金のおかげで、中々良い剣が買えたんすよ。

 おかげさまで無事探索者登録も出来ましたっす。

 ありがとうございます!」

 

「おう、そいつぁ良かったな…。

 でもよ、俺防具買えっつったよな。命粗末にすんなっつったよな。

 なんで!武器しか!買ってないんだよ!

 

「はっはっは。朝から元気だなぁ、ヒューゴ。」

 

「おう、ザック。火酒のおかげでとても良く寝れたからな…!」

 

 

 

二日酔いで叫んだ際で、頭がガンガンと痛む。

奪った身で言うのもなんだが、間違いなくあの酒はヤバイ。

本当に人が飲んでも大丈夫な代物なのか?

 

 

 

「んで?嬢ちゃんは何しに来たんだ?」

 

「何しにって…そりゃ、迷宮探索っす!」

 

「そりゃそうだろうが、それならギルドの方でパーティの斡旋なり新人登録なりしてくれんだろ。

 俺のとこに来たってしょうがないだろうに。」

 

 

 

あるいは、探索経験者である俺にアドバイスでも貰いに来たのだろうか。

それならば良い。

そうした姿勢は大事だ。情報こそが、探索者の生命線なのだから。

変形し日々新しくなっていく迷宮に挑み、生まれる宝物を見つけ出す。

それが探索者だ。

 

迷宮は日々形を変え、探索者を苦しめる。

それは初心者用の滑石迷宮であっても、そこは変わらない。

出て来る敵、最近確認された罠、そして発見されうる宝物。

その情報を収集するのは、探索者の一番大切な仕事である。

 

欲や名誉、華やかな冒険譚への憧れのためにそうした地味な準備を軽視する新人は多い。

それに実際、滑石迷宮程度ならば敵の種類も一定で、罠も大したことがない。

情報にかける手間や金を他に回せる分、昇級も早い。

そしてより良い宝物が眠る上位の迷宮に、同じように準備不足で挑む。

その結果痛い目に遭うのが新人探索者の通過儀礼みたいなものだった。

 

 

 

「おいおい、何言ってんだよヒューゴ。冷静に考えてもみろ。

 お前が新人探索者だとして、嬢ちゃんをパーティ入れたいと思うか?」

 

「そりゃあ………。」

 

 

仮に、夢見る新人探索者だった場合。

そういった手合いは、将来性や人間性よりも職業や役割分担などを重視する。

早く迷宮に行きたがるためだ。

長い付き合いになるかも知れないパーティメンバーを、割とサクサク決めていく。

 

仮に、堅実な新人探索者だった場合。

そういった手合いは、自身の能力、相手の性格や習得したいスキルなどを鑑みる。

無論、その慎重さ故に時間はかかる。

そしてパーティ間の集散離合や分離独立を繰り返していく。

 

本来ならば、そうした需要から常に求人ないしパーティ参加のチャンスがあるはずだが…。

嬢ちゃんを見る。

 

 

細い体。

布の服。

短い手足。

ほへーっとした緩い面構え。

挙句その上、身の丈に合わぬ大剣での前衛職アピール。

 

 

 

「その、嬢ちゃん。お前さん、魔法の心得とかは…。」

 

「ああ~…。ないっすねぇ…。」

 

「仮にあっても、この年齢の探索者とパーティ組もうってやつはそう多くねぇだろうなぁ。」

 

 

HAHAHAHAとザックは笑う。

相変わらず声がデカイ。

頭に響く。

 

とりあえず、事情は分かった。

メイファが持ってきたいつもの朝飯を受け取る。

何故か三つ。

 

 

「なんだ、お前らも飯まだだったのか?」

 

「お前を待ってたんだよ。そんぐらい察しろ。」

 

「一緒に食べましょう!」

 

「…まぁ良いけどよ。」

 

 

 

鴉の止まり木亭の飯は美味い上に安い。

俺がかれこれ五年近く贔屓にしている理由だ。

あとよそでは見ないような酒類も置いている。

ナクタの火酒なんざ、まず他では見ない品だ。

ザックの他にもそうした珍酒目当ての連中が居て、宿のランクに比してベテランが居着いているため情報収集にも便利なのだ。

昔は高ランク迷宮の情報収集のため、高級宿に居たこともあったが中々に出費がきつかった。

ベッドの硬さを気にするような性質でもないので、ここで十分というのもある。

 

 

「お、今日のスープは当たりっすね。美味。」

 

「確かに。…おーい、メイファ。スープおかわり。あと炭酸水。」

 

 

二日酔いの身に温かいスープが染み渡る。

あのまま寝てしまったせいで喉がカラカラだ。

多分二日酔いがひどいのはその所為もあるだろう。

 

 

「どうぞ、ヒューゴさん。でも、大丈夫なの?」

 

「何がだ?」

 

「お金、今あるの?」

 

「…あ。」

 

 

そうだ。

財布はまるっと渡してしまったのだった。

倉庫の方には換金できる物を色々と預けているものの、手持ちがない。

…流石に、あの流れで渡した金を嬢ちゃんから返してもらうってのはダサすぎる。

 

 

「ツケにしといてくれ。」

「駄目です。」

 

 

 

 

「…見逃してくれよ。今日ちゃちゃっと稼いでくるからよ。探索なり鑑定請負なりで…。」

 

「鑑定請負、なんて言ってもヒューゴさん酒代くらいしか貰ってないじゃない。探索だって、固定のパーティじゃないし。そんな人のツケは認めません。」

 

「むぐっ…。」

 

「でももう既にお金のないヒューゴさんはご飯を食べてしまいました…。困っちゃったなぁ~。」

 

「………何をしたら、見逃してもらえますか?」

 

 

 

 

「実はね、ウチの酒場から依頼があるの!

 最近登録した探索者が、パーティ組めなくて困ってるみたいでね?フラフラフラフラ他のパーティの助っ人稼業ばかりしてる便利屋さんに、その子を助けて欲しいなって思います!」

 

「分かった分かった。で、その新人ってのは…。」

 

「あの子。」

 

 

 

指さす先には、口一杯にパンを詰め込む嬢ちゃん。

 

 

まぁ、そうだよな。

やっぱ、慣れないことをするもんじゃねぇなぁ…。

でも酔ってやったこととは言え、責任はとらにゃあなるまい。

 

 

 

「…とりあえず、嬢ちゃん。その剣、どこで買ったか覚えてるか?」

 

「ふぁい。ふぉるふぇんふぉうりふぇす。」

 

「食べきってから喋ってくれ…。」

 

 

 

 

どうせ、長い付き合いになるみたいだからよ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_______________________________________________________________________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うー…返品っすか…。」

 

「当たり前だ、バカ。防具も何もなく、武器だけ買う奴があるか。

 アイテム類ケチらなかったのは良い判断だがな。このポーチ、結構良いのだが中古品か?」

 

「まぁ、似たようなもんっす。」

 

 

 

どうにか謝り倒して大剣を返品、嬢ちゃんの装備を整える。

買ったのは大剣だけかと思っていたが、意外にも上質のアイテムポーチを持っていた。

内容量を拡大する魔法付き。しかも衝撃吸収のミニポケットもある実用的な品だ。

サイズの合わない男物のようだが、そこはまぁご愛嬌ってものだろう。

 

中身も中々ツボを押さえたラインナップ。足りないところは俺が補うとして、防具だ。

 

 

 

 

「はえ~すっごいおっきい…。」

 

「流石にこの子のサイズは、ないですねぇ…。」

 

「そうですか…。」

 

 

冷静に考えりゃ、ちびっ子サイズの鎧や脚甲なぞあるはずもない。

皮鎧やハードコートの類も探してみたが、どうもサイズが合わないようだ。

だからと言って、魔法繊維の品は高い。

高いが…。

 

 

「毎度ありがとうございますー!」

 

「ヒューゴさん、ありがとうございます!」

 

「…言ったろ、あの金は俺のじゃねえって。気にすんな…。」

 

 

たっけぇ。

相変わらず、ふんだくる店だった。

だがその分仕事は確か。あとあと微調整も請け負う、良い店だ。

防具の干渉や邪魔になる部分は、一度使ってみないと分かりづらい。

使った後でも、補修と調整できるというのはこの上ない利点だ。

まぁその分、一着が高いんだがな…。

それに初心者の頃からこんな良いもん付けるというのも善し悪し。

 

 

 

「♪~♪~

 新しい装備ってのは何であれテンション上がるっすねえ!」

 

「…コケるなよ。」

 

「ははは、子供じゃあないんすから。」

 

 

 

子供だよ。

お前はどう見ても新しいおもちゃではしゃぐ子供だよ。

 

さっきから着いてくる嬢ちゃんは、なんだかフラフラ歩いていた。

コケたりしないか気が気じゃない。

…なんだか自分の体で歩くことに慣れてないような印象。

傷一つない掌といい、何処かの令嬢だったりしないだろうな。

 

どの道鎧や防具を支える膂力があるようには見えない。

これは必要経費として飲み込む他あるまい。

 

結局全額、剣の代わりに服に注ぎ込む形になってしまった。

武器は、俺のお下がりのメイスでいいだろう。

自分の刃物で怪我するよりゃ良いだろうしな…。

 

 

 

 

 

 

 

_______________________________________________________________________

 

 

 

 

 

 

 

 

「3、2、1。はい。

 3、2、1。はい。

 うーん、相変わらず、わんこはワンパターンっすねぇ。」

 

「…マジかよ。」

 

「あ、いや今のはダジャレではないです。」

 

「別にギャグのクオリティに呆れたわけじゃない。

 …手慣れた対処だな。」

 

「まぁワンコの飛びかかり動作、分かりやすいっすし。

 タイミングは一定っすから、後はそれに合わせてフルスイングするだけっす。

 …3、2、1。

 ね、簡単でしょ?」

 

 

 

 

風切音と共に振るわれたメイスが、飛びかかるテンダーウルフにクリティカルヒット。

一撃で骨格(フレーム)を砕かれ吹き飛ばされ、地面に落ちるより早く分解されて塵へと変わる。

 

迷宮の魔物は生物ではなく、魔法的に構築された幻影にすぎないため血を流さない。

そして強度的にも大したことはなく、骨格への大損害で消滅する。

とはいえ一撃で撃破するというのは中々どうしてたいしたものだ。

 

 

「良いっすねぇ、このヒューゴさんのメイス!軽いのに威力は高い打撃武器って、なんだか妙な気分っす。付与魔法すごいですね。」

 

 

言って、嬢ちゃんはビュンビュンとメイスを素振りする。

白状すると、あのメイスには付与魔法は付与されていない。

俺のお下がりといっても、新人時代の頑丈なだけの武器だ。

ぶっちゃけ「こんなんじゃ商品にならないよ~」と買い取りを拒否されただけの、倉庫の肥やしだったものだ。

武器も防具も最初から良いものじゃ経験蓄積的によろしくないだろうと考えたためである。

 

 

代わりに、嬢ちゃん自身へ支援魔術を掛けた。

腕力強化。

筋力値を二割上げる支援魔術の一つ。倍率強化式の加味魔術だ。

その性質上、元々の筋力値が高くないと効果が下がる。

はず、なのだが…。

 

 

 

「3、2、1。はい。

 3、2、1。はい。

 うーん、パターン化出来る雑魚は良い雑魚っす。」

 

「………。」

 

 

 

眼の前でメイスを棒切れのように振り回す嬢ちゃんを見る。

俺は装備要求値(リクエスト)を満たす程度の支援のつもりだったのだが。

明らかに、過剰である。

…あの見た目で、筋力値が元々高かったというのだろうか?

 

 

「…おっと。トラップっすね。」

 

「『罠解除』」

 

「おお!」

 

 

トラップへの警戒も問題なし。

この迷宮は洞窟状で足場も岩場になっているが、足取りも問題なし。

というか下手すると、町中よりも歩き慣れているように見えるほど。

 

予想外に、嬢ちゃんが強い。

『光の一撃』(シャインスマイト)『射出光撃』(シュートスマイト)での援護も用意していたが、まったく必要なかった。

対複数戦でも淀みなく対処。

一撃一殺。

 

一応、それが可能な迷宮を選んだつもりではあった。

テンダーウルフは骨格の強度が低く物理攻撃に弱い。

また連携を考えず、一体ずつ飛びかかる習性を持つ。

とはいえ機動力、接敵から攻撃までの素早さ、そして「飛びかかってくる獣」が持つ威圧感。

そうした強みも併せ持つ、獣系魔物の練習台として最適な魔物だ。

 

被弾の一つや二つはさせるつもりで、あの防具を買った。

本来、新人がここまで一方的に鏖殺できる雑魚ではない。

 

 

 

「階層突破っと。次行きましょー!」

 

「ああ。」

 

 

早い。

早すぎると言って良い。

迷宮に慣れすぎている。

 

迷宮に行ったことがある、などと言っていたが、なるほどあれは真実だったのだろう。

だがギルドの目を盗み、そう何度も迷宮に潜れるとは思えない。

それに、あの細腕であの筋力。

…真人間ではあるまい。

竜人、鬼人、あるいは異種族とのハーフ。

嫌な可能性ばかり思い浮かび、肝が冷える。

これならどこぞの令嬢の酔狂である方が何倍もマシだった。

とんだ大仕事である。

 

 

 

「…しばらく、禁酒でもするかな。」

 

 

 

呟く。

酒は飲んでも飲まれるな。

よく聞く警句だが、人はいつも失敗からしか学ばない。

 

そういった意味では、嬢ちゃんをこのまま初心者向け滑石迷宮に行かせ続けるのも問題だ。

この実力では練習にすらなるまい。

もう少し難しい迷宮に行くべきだ。

俺が補助としてついてる内に、多少は痛い目を見て貰う必要がある。

死なない程度に。

いずれ、上位の迷宮で死なないように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_______________________________________________________________________

 

 

 

 

 

今日の幼女

 

 

◆会話イベントだけで金をせしめる

◆それを全額装備品にぶっこむ

◆強いパーティメンバーゲット

◆わらしべイベントで防具入手

◆ついでに武器も無料でゲット

◆その武器で確殺できる迷宮に行く

◆迷宮短時間クリアで、より上位の迷宮侵入イベント発生フラグを建てる

 TAS?何のこったよ(すっとぼけ)

 

 

 

迷宮&探索者のランク付けは十段階。

滑石、石膏、方解石、蛍石、燐灰石、正長石、石英、黄玉(トパーズ)、鋼玉(コランダム)、金剛石(ダイヤ)の十種です。

 

なぜモース硬度かと言うと、モースさんも異世界転生したからです(強弁)

金銀銅を十段階まで増やすのキツイからね、しょうがないね。

迷宮踏破実績でランク上昇(滑石→石膏)、同ランクの迷宮に侵入できるようになります。(石膏解禁)

ちなみにパーティメンバーの半数以上が条件を満たしていればOK。

 

 

次回、「パワーレベリング:異世界迷宮ヒモ稼業」はそのうち書きます。

そのうちTASさんに「お前の事が好きだったんだよ!」させるんで気長にお待ち下さい。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

パワーレベリング:ケアフリィ・フラッグザフラッグ

 

気付いたらお気に入りが114件突破してて、追加で11人に評価されてた(震え声)
評価10を入れてくれた人もいてとても嬉しい。感想も8件頂けました。
やはりホモは寛容…。有難み…。優しさ…。

読者さまの感想と評価が作者の燃料なんだよね、それ一番言われてるから(真理)

帰宅後急いで書いたので、誤字があっても許してください!なんでもしますから!


 

 

 

 

 

いつもの酒場。

いつもの朝食。

いつも座る席。

 

探索者は、日々のルーチンワークを大事にする。

己だけのこだわりを持ち、それを維持するのだ。

 

たわいもない日常の繰り返し。

しかしそれは、生還せねば出来ぬこと。

明日をも知れぬ探索者にとって、それは何よりも得難い勲章である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっはようございます!」

 

「はい、おはようございます。今朝ごはん持ってきますね。」

 

「頼むぜ、メイファ。あと果物の盛り合わせも一つ。」

 

「はーい!」

 

 

 

無事最初の迷宮を踏破した、翌日。

 

 

いつもの席に三人で座り、朝食を食べる。

今日のスープはトマトベース。なんだか甘い。

匙で掬うと、干しブドウが顔を出した。

ここの店主、腕は良いんだが時々挑戦的な料理を出してくる。

見慣れぬスパイスや果物やら、中々変なものも多い。

向上心や探究心があるのは結構だが、出来れば味を安定させてほしい。

まぁ食えないレベルは出てこないし、何やかんや飽きも来ないので嫌いではないけども。

 

 

「嬢ちゃん、その青い服似合ってるな。ヒューゴも中々良い趣味してる。」

 

「ザックさんもそう思います?これ、軽いし邪魔にならないし凄いんですよ!」

 

「はっはっは、服といいそのメイスといい、パーティの仲が良好みたいで良かったよ。」

 

「………なんだよ、ザック。」

 

 

ザックはなんだか生ぬるい目で俺を見てくる。

…なんだよ!

甘やかしてるってか!?

新人の教育に悪いってか!?

自覚はあるよ!

 

 

「いや、それだけじゃないってか…。

 そこで新人の今後を慮る辺りに、人の好さが滲んでるってか…。

 便利屋扱いもむべなるかなって感じだな。」

 

「いやぁヒューゴさんには良い服も良い武器も頂いちゃいまして…。」

 

「ま、昨日に関しちゃどっちも重要じゃなかったように思うがな。

 多分今ザックが思ってるより、嬢ちゃんは大分強いぞ。」

 

「この細腕前衛職が?」

 

 

ザックの訝しむような視線。

嬢ちゃんを上から下から、そしてもう一回上から視線を動かし、胸の辺りを眺め言う。

 

 

「とてもそうは見えんがなぁ…。

 まぁ、動き易そうな体はしてるがね。HAHAHAHA!」

 

「セクハラだぞお前…。」

 

 

嬢ちゃんの方に目をやると、気にした様子もなくパンを頬張っている。

もっと落ち着いて食べろよ…。

 

 

「んじゃ、そろそろ探索に行ってくるか。

 嬢ちゃんも、保護者の言うことは良く聞けよ~。」

 

「はい、ザックさん。また明日~。」

 

「誰が保護者だ!」

 

 

 

 

 

 

 

「ええい、調子の狂う…!

 まぁ、いい。嬢ちゃん、今日は一夜茸の迷宮に行こうと思う。」

 

「良いっすねぇ、キノコ!じゃけん夜行きましょうね!」

 

「まずは昼に行って下見してからだ。

 …というか、知ってるんだな夜迷宮。」

 

「そりゃ、ランク上昇の近道っすからね。サクサク行きましょう、サクサク!」

 

 

随分と気軽に言う。

夜迷宮ってのは、時間帯などの要件で魔物が顕著に狂暴化する迷宮のことだ。

昇級のための迷宮踏破実績において、狂暴化時間帯に踏破するとプラス査定が付く。

魔物や罠のラインナップも変わるため、情報収集の大事さを教える意味も込めて、滑石ランクの迷宮にもいくつか夜迷宮が含まれている。

一夜茸の迷宮はその中でも難易度上昇の幅が大きく、天狗になった新人をぶち込むには良い迷宮だった。

 

俺も昔は調子に乗って挑み、パーティメンバー共々キノコに追い回された。

くくく、今から慌てふためくであろう姿が楽しみだぜ。

このままの調子じゃ、自分一人でも迷宮探索が出来ると勘違いしかねない。

新人の鼻っ柱なぞ、早く折るに越したことはないのだ。

 

迷宮は夜12時になった瞬間変形を始め、中の探索者を追い出す。

一夜茸の迷宮を踏破するには、21時からのたった三時間しかない。

焦って進み、キノコに殴り倒されるのがオチだ。

もし仮に踏破できるなら石膏迷宮に連れて行くのもやぶさかじゃあないが、まず無理だろう。

 

 

 

 

 

 

_______________________________________________________________________

 

 

 

 

 

 

 

「ふーむ、罠もたいしたことなさそうっすね。

 ヒューゴさんの『罠解除』で一発っす。」

 

「まぁ、言っても滑石迷宮だからな。魔物も嬢ちゃんなら問題なさそうだ。」

 

 

わざと油断させるような言葉を言っておく。

俺は支援魔術の他にも鑑定や罠解除・回復魔術も使用できるが、即死されてはどうしようもない。

結局本人の防衛意識や気構えが、探索者には必要不可欠だ。

ミスっても即死しない低ランク迷宮の内に、そうした意識を養わなければならない。

 

 

「ここで半分、マッピングも粗々終わったな。そろそろ帰るか。」

 

「えー?このままとりあえず最後まで行きましょうよ。」

 

「本命は夜だからな、今の疲れ残したってしょうがねぇだろ。」

 

「まぁヒューゴさんがそういうなら…。」

 

 

巻物(スクロール)を起動し、迷宮から脱出する。

迷宮から出る分にはこれで一発だ。

再突入時にはまた最初からだが、今日はマッピングで道順を確かめたので手早く進めるだろう。

 

迷っても巻物一発で帰還できるし、一日経てば無駄になるマッピングを軽視する探索者も多い。

しかし階段や宝物を見逃さずに済むのはでかい。

それにマッピングを続けていると、なんだか迷宮の変形に対する当て勘が生まれる気がするのだ。

…気のせいかもしれんが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼過ぎ、鴉の止まり木亭に戻り昼飯を食べる。

ここのは比較的美味いが、やはり携帯食料より普通の飯の方が良い。

 

ランチは既に終わっている時間帯だったが、余っているからとメイファがランチを持ってきてくれた。

 

 

「ヒューゴさんの仕事を疑う訳じゃないけど、流石にキノコ相手はまだ早くない?」

 

「まぁ軽く戦わせて帰るだけだ。駄目そうなら早めに連れ帰る。」

 

「もっしゃもっしゃもっしゃもっしゃ。」

 

 

相変わらずせわしなく飯を食べる嬢ちゃんをよそに、メイファに事情説明。

押し付けられたとはいえ、依頼主には変わりがない。

途中経過を報告する必要がある。

ついでに一夜茸の迷宮への突入時間を伝え、夜食と携帯食料の準備を依頼。

このくらいは依頼の必要経費としてロハで出してもらう。

 

 

「むー…。分かりました。でもその分、あの子に怪我とかさせたらダメですからね!」

 

「はいはい、依頼はしっかりやりますからよ…。」

 

「キノコなんざ余裕っすよ、よゆー!」

 

 

ちょっと調子乗りすぎじゃない?

こいつ、まだ一個迷宮踏破しただけだよな?

 

こっちが仕向けた面もあるといえ、大丈夫なのかこいつ…。

 

 

 

 

 

_______________________________________________________________________

 

 

 

 

 

 

 

不安になってきたので、中央広場の自由市に向かう。

まだ服しか装備品のない嬢ちゃんのために、アクセサリの一つも買っておこうと思ったためだ。

流石にあの慢心っぷりはヤバイ。

 

 

「何か良いの、ありますかね~。」

 

「それを探すのが、自由市の醍醐味だ。」

 

「それもそうっす。じゃ、俺向こう行くから…。」

 

「おい、待て!」

 

 

いきなりフラフラ路地裏に行こうとした嬢ちゃんを引き留める。

嬢ちゃんは体力回復のために寝かせといて、その間に買ってこようとしていたが、本人がついてきた。

正直こう人の多い自由市なんかに嬢ちゃんをつれてきたら、拉致られそうで嫌だったのだが。

案の定、本人の防衛意識が低すぎる。

 

 

「いや、こういうのはちょっと路地入った所とかに、良い店があるもんなんす。

 もう昼過ぎっすよ?中心部の店からは、もう良いものは無くなってます。」

 

「(意外にも)一理あるな。」

 

「でしょー?」

 

「だが、一人で行くのは危険すぎる。俺から離れるなよ。」

 

「押っ忍お願いしまーす。」

 

 

本当に危険性分かってんのかこいつ…。不安だ、不安しかない。

 

中央広場の自由市では、簡単な登録だけで個人が商店を開くことが出来る。

迷宮産の宝物の売買や装備品の購入、消耗品のまとめ買いなど探索者とは縁深い。

もちろん売られている品は玉石混交だが、個人認証カードと獅子心騎士団の取り締まりにより露骨な悪性商人は少ない。

そういうのは地下に潜っていると聞くが、まぁそのうちに獅子心騎士団が潰すだろう。

彼らの治安維持にかける情熱は並大抵ではなく、探索者だろうが蹴散らす武力もある。

 

 

 

 

 

だから、この露骨に怪しい商店も実際には問題ない、はずだ。

…多分。

 

 

「ヤスイヨ、ヤスイヨー。」

「お嬢さん、お目が高いネ。」

「あーソレいいよ、いいものだヨー。」

 

「ほー、装備品もあるみたいっす。寄ってきましょう!」

 

「いやいやいや、怪しすぎるだろ…。」

 

「えー…。」

 

「装備品、ありますあります。お兄さん、プレゼントも男の甲斐性ヨー。」

 

「余計なお世話だよ!」

 

 

疲れる。

怪しい上に、変に押しが強い。

 

掛けられる声に追い立てられ、路地の奥へ奥へと進んでしまう。

路地裏には妙に怪しい店が多かった。

しかも後ろ暗い商品とかヤバイ人ではなく、胡散臭い系の商人。

正直こんなところで、探索に使う装備品を買う気にはならない!

 

 

 

 

 

「何なんだここ…。」

 

「なんだ?人の店の前で、随分な物言いだな。」

 

「おっと、こりゃ失礼。…あんたは?」

 

「見りゃ分かんだろ。」

 

 

突然の渋い声に驚く。

そこには簡易な椅子と茣蓙でいくつか装飾品を売る、中折帽子の男がいた。

見りゃ分かるとは言うが、体格といい筋肉といい熟練の戦士のソレである。

 

 

「こんな奥で店開いて、客は来るのか?」

 

「現にお前が来たじゃねぇか。それとも何か?冷やかしか?」

 

「いや…イヤリングとか、あるか?」

 

「あるよ。装備品と装飾品、どっちだ。」

 

「装備品の方を頼む。…出来れば、穴開けるタイプじゃない方が良いんだが。」

 

「ふん、そういう用途か。ちょっと待ってろ。」

 

 

帽子の男はがさごそと横に置いていた袋を漁りだす。

容量拡張の魔法が付与された、大きな袋。

このサイズだと、中々の高級品のはずだ。

 

 

…さっきの似非商人との対比もあってか、なんだかこの渋い男なら期待できる気がしてくる。

嬢ちゃんじゃないが、こういう路地で良い店を発掘するってのはなんだかロマンがあるしな。

そして帽子の男が取り出したのは、期待に違わぬ洒落た代物だった。

 

 

「これは、水晶っすかね?」

 

「ああ。魔法吸着の挟み込み式だ。これならお嬢さんの体に傷を残すこともあるまい。」

 

「ヒューゴさん、そこ気にしてたんすか?」

 

「…まぁな。さっきの店でピアス見てたけどよ、あそこのは穴開けるタイプだったからよ…。」

 

「ちなみに、効果は一回限りの状態異常無効だ。お守りとしちゃあ丁度良いだろう。」

 

 

しっかりお嬢さんを守ってやんな…。

人生の酸いも甘いも噛み分けたであろう、渋い声で帽子の男は言う。

中々格好いいじゃねーか。

対価を支払い、イヤリングを受け取る。

 

 

「へへ、ヒューゴさん、付けてみても良いですか?」

 

「おう。」

 

「どう、ですか。似合います?」

 

「まったく見せつけやがって。邪魔者は退散するとしよう。」

 

 

そんな色っぽい関係じゃない。

俺はそう言おうとしたが、嬢ちゃんの輝く笑顔に台詞を飲み込んだ。

まぁ、これだけ喜んでくれることに悪い気はしないのも事実だしな。

 

 

「ありがとうございます、ヒューゴさん!プレゼント、大事にしま「パキンッ」」

 

 

パキン?

見ると、嬢ちゃんの右の耳元。

先ほど買った水晶のイヤリング。

その角ばったハートが、真ん中で真っ二つに割れている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

野郎!粗悪品掴ませやがった!!!

 

 

そそくさと立ち去る、帽子野郎の腰元にタックル。

ふざけんじゃねぇよお前これどうしてくれんだよ!

 

 

「はなせコラ!一回状態異常防いだら壊れんだよ!仕様だ仕様!」

 

「ざけんな、今なんの状態異常が発生したってんだ適当言ってんじゃねぇ!」

 

「ヒューゴさん、大丈夫っす。大事なのは機能じゃなく、プレゼントに籠った気持ちっすから…!」

 

「大事なのは機能だよ!お前それ探索用の装備品だからね!?帽子、てめぇもせめて代替品置いていきやがれ!」

 

「ちっ、じゃあもう一個同じのやるよ。」

 

 

手渡されたのは、見る限りさっきと同じ水晶のハート。

帽子男を拘束しながら、嬢ちゃんの左耳に付けてやる。

 

 

…パキンッ。

やっぱり壊れてるじゃないか(憤怒)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局全然別の品を買って、鴉の止まり木亭に帰ることになった。

正直迷宮探索より疲れた…。

 

 

 

 

_______________________________________________________________________

 

 

 

 

(露骨な伏線)

(帽子の製品は粗悪品では)ないです。

 

いやぁ、ちょっとプレゼント贈られて付けてもらっただけで進行する状態異常とか怖いな~戸締りしとこ。

 

 

次回、「パワーレベリング:キノコ・イン・フレイム」は明日です(クロックアップ)

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

パワーレベリング:キノコ・イン・フレイム

 

追加で39人に評価されてる(震え声)
お気に入りも514件超えてる(震え声)
本当にありがとう!

殆ど深夜のテンションながら、二話分書けたので投稿します。

◆なお本作は「シュールギャグ」です。
◆覚悟しろ!



 

  

 

 

 

「どうしてこうなったんだ…?」

 

 

目の前の光景が理解できない。

事前にしっかりと調査はしたつもりだった。

だが、今目の前のこの光景はなんだ?

 

 

 

 

「ヒューーゴさん!ヒューゴさーーーーん!!」

 

 

 

 

傷ついた嬢ちゃんが叫んでいるのが見える。

嬢ちゃんはそのまま周りのキノコたちにもみくちゃにされていく。

 

 

 

「ヒューーーゴさーーーーーん!!!」

 

 

 

 

 

 

 

…………

………

……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつもの酒場。

いつもの食事。

いつも座る席。

 

 

とはいえ、今日はディナーだ。

周りは帰還した探索者で溢れ、皆賑やかに酒を飲んでいる。

明日への活力を得るため。

今日の、生還を祝うため。

そして、明日をも知れぬ我が身を慰めるため。

 

 

彼らは今日も酒を飲み、騒ぎ、己が生を味わう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…なんでお前も居るんだ、ザック。大人しくパーティメンバーと飲んでろよ。」

 

「なんだなんだ、随分な物言いだな?せっかく心配して来てやったってのに。」

 

「もっしゃもっしゃ。」

 

「メイファに聞いたのか?」

 

「おう。早速キノコに行くんだって?お前、自分が昔手こずったからって新人も同じ所に連れてくの止めろよ。」

 

「ふん、夜迷宮は嬢ちゃんのリクエストみたいなもんだ。まぁダメそうならすぐ戻ってくるさ。」

 

「そうかい。んじゃあ、酒でも飲みながら待ってるよ。

 嬢ちゃんも気をつけてな~。」

 

「ザックさん、行ってきます!」

 

「早!もう飯食べ終わったのかよ!もっと味わって食べろよな…。」

 

 

 

 

時刻は八時半。

 

短い仮眠と夜食を済ませた俺たちは、鴉の止まり木亭を出発した。

アイテムの補給は万全。

念のため嬢ちゃんにも巻物を持たせ、いざとなったら俺を待たず帰還するように言い含める。

新人に心配されるほど落ちぶれちゃいない。

 

 

「うーん、良い風。キノコ狩りには良い日っすね。うま味狩りっす。」

 

「…一応言っておくが、戦闘は可能な限り避けるぞ。少なくとも半分まではな。」

 

「何故!?」

 

「何のために脇道までマッピングして罠解除したと思ってんだよ…。

 時間も体力も有限なんだ、使わないに越したことはないだろ。」

 

「馬鹿な…そんなことは許されない…。」

 

「何言ってんだお前…。」

 

 

なんとなく、嬢ちゃんとの付き合い方が分かってきた。

話半分に聞くべきというか発言の八割が妄言なんだな。

とりあえず、指示には従ってくれるからいいけどよ…。

 

 

夜九時になった。

 

「はーい、よーいスタート。三時間コースっす。行きましょう!」

 

「おう!」

 

迷宮に突入。

 

 

 

 

 

 

_______________________________________________________________________

 

 

 

 

 

 

「へー、内装というか、見た目にも色々変化があるんすね。」

 

「ああ。あちこちに生えてた巨大キノコが無くなってるだろ?」

 

「印象変わりますねぇ…。キノコがねぇ、なるほどねぇ…。」

 

 

嬢ちゃんと小声で会話しながら、ゆっくり急いで気を付けながら迷宮を進む。

 

矛盾するようだが、探索者の必須技能だ。

急いで進まねば探索に時間がかかり、余計な戦闘が増える。

しかし転んだりしては悲惨だし、罠への警戒も大事だ。

魔物を呼ばないよう足音に気を付ける必要もある。

 

戦闘に関しても同じことが言える。

戦闘音はうるさく、長引けば別の魔物を誘引する結果となる。

とはいえ毎度逃げられるわけでも、手早く倒せる訳でもない。

そうしたバランス、瞬間的な攻守の判断が探索者の難しい所だ。

探索者パーティが概ね五人以下に限られるのも、この辺の理由によるのだ。

 

 

 

雷鳴玉で音を出し、キノコを引き寄せたり。

マッピング確認し、脇道で少し迂回したり。

あるいは、単純に走り回って振り切ったり。

キノコは火を嫌うため、煙幕で敵を追い払ったり。

 

様々な手段で障害を排除しつつ、先へ進む。

 

探索者は兵士でも戦士でもない。

お宝を見つけ出し、そして生還するのが仕事だ。

 

戦闘はあくまで目的を達成するための手段の一つに過ぎない。

例えば、細い道に一体だけ敵が居る場合などの。

 

 

「おお、あれがキノコですね。すっごいおっきい。

 とはいえ、一体っす。軽くボコしてやりますよ!」

 

「おう、行ってこい。」

 

 

くくく、慢心してやがる。

ここの魔物は、昼に見た内装オブジェクト:巨大キノコの数だけ居る。しかも一体一体が硬い。

迂闊に殴り掛かり、処理に手間取るとキノコが押し寄せてくるのだ。

慌てふためく姿が楽しみだぜ…!

まぁ足が短い分動きは遅いので逃げやすく、その点でも安心だ。

 

ちょっとわくわくしつつ、嬢ちゃんを送り出す。

もちろん、ちゃんと援護の準備をしておくことも忘れない。

今回は難易度高めの迷宮なので嬢ちゃんにも事前に説明し、腕力強化だけでなく脚力強化と機動加味の支援魔術も使用している。

特に機動加味なんかは事前説明なしだと、支援の所為で転びかねないしな。

 

機動加味の効果により、スーッと滑るように踏み込んだ嬢ちゃんがメイスを振りかぶる。

 

 

「たまぁとったらー!」

 

「…!?」きゅむ。

 

 

声に驚き、キノコが妙な足音を立てながら振り向こうとするが、もう遅い。

走った勢いそのまま、大上段からナナメに振り下ろされたメイスは、キノコの右手に直撃。

一撃で拉げさせる。

 

嬢ちゃんはそのまま、払うようにキノコの短い足を狙い、膝を撃ちぬく。

たまらず倒れるキノコ。

こうなってしまうと、頭に傘があるトップヘビーなキノコは中々立ち上がれない。

ましてやこのキノコの右手は、既に砕かれている。

 

ついでに嬢ちゃんは蹴りを一発。

キノコをうつ伏せにし、つるはしのように振りかぶったメイスを叩きつける。

 

 

ばこんぼこんべこん。

 

 

惨い。

なまじキノコの骨格が硬いため、凄惨な光景が続く。

キノコの三白眼と目が合い、助けを求めるように左手が延ばされる。

…嬢ちゃんがその手をメイスで叩く。

 

 

ばこんぼこんべこん。

べっこんぼっこんばっこん。ぱりん。

 

 

ようやく骨格損傷によりキノコが塵へと変わる。

 

 

「Foo↑気持ちぃ~。良い汗かきましたっす。」

 

「そう…。」

 

 

絵面は完璧に猟奇殺人って感じだったが、対処としては完璧だった。

俺の予想からも逸脱していない。

一体は倒せるが、複数だと手こずるくらいのバランス。

…というか、なんか機動加味の効き方がおかしかったような?

 

 

「さぁ、夜は短い!サクサク行きましょー!」

 

「分かった分かった。下に降りるか。」

 

 

まぁバフが良く効く分にはいいか。

この時の俺は、そんな風に甘く考えていた。

 

 

 

 

 

_______________________________________________________________________

 

 

 

 

 

 

「おらー!」

 

「!?」きゅむきゅむ。

 

 

 

マッピングした地点を超え、一夜茸の迷宮も後半戦。

流石に敵を避けきれなくなり、本格的な戦闘が始まった。

…いや、戦闘なのかこれ?

 

 

 

「フゥン!ホン!ハン!」

 

「!」きゅむきゅ…びったん。

 

 

 

流れるような連続攻撃で、キノコがまた一体引き倒される。

嬢ちゃんはそのまま倒れたキノコにキック&スタンピング。

弱ったキノコを、メイスのアッパースイングでぶっ飛ばす。

 

弱ったキノコが飛んだ先にはまた別の元気なキノコがいた。

元気なキノコはゴロゴロと転がるキノコに足を取られ転倒。

そこにすかさずメイス。

滅多打ち。

強い殺意の籠った攻撃がキノコたちを襲う。

 

 

ばこんぼこんべこん。

べっこんぼっこんばっこん。

ばこんぼこんべこん。

べっこんぼっこんばっこん。ぱりんぱりん。

 

 

「ふう。順調っすね!」

 

「そうですね。」

 

 

思わず、敬語。

昼に見たような、輝く笑顔がむしろ恐怖を呼ぶ。

怖っ。

俺が渡しといてなんだが、鈍器ってのがヤバイな。

なんか痛みの想像しやすい、リアル寄りの恐怖を生む。

後、音が嫌だ。

 

しまいには、嬢ちゃんは引き倒したキノコをメイスと足でドリブルし始めた。

次に現れたキノコへの飛び道具にしようと言うのだ。

頭おかしい…(小声)

 

 

 

 

 

「!」

「!」

「!」きゅむ。

 

「む!また三体か。嬢ちゃん、援護を…。」

 

「馬鹿野郎お前俺は勝つぞお前!」

 

 

現れた三体のキノコは、嬢ちゃん対策の陣形を組んでいた。

前の二体がうつ伏せになり、飛んでくるキノコを受け止める体制。

受け止めた後、既に立っている一体と連携して攻撃しようとしている。

さきほどボーリングのごとく、三体まとめて蹴散らされたキノコたちからの学習が伺える。

 

正直ちょっとキノコ側を応援している俺が居るぞ!

 

 

「小賢しいんだよ!」

 

「「「!」」」きゅむ。

 

 

嬢ちゃんは対抗し、弱ったキノコをアッパースイング。

キノコは勢いよく飛び、二体のキノコの頭上を越え…?

 

いや、頭上を越えて寝そべる胴体部分に乗っかった!

キノコたちは短い手足でばたばたと身じろぎするが、その隙を嬢ちゃんは見逃さない!

 

後詰めのはずのキノコが一瞬で制圧され、駄目押しのように重なるキノコたちの上に乗っけられる。

そして嬢ちゃんは、そのキノコタワーに油壷と火炎玉をぶちまけた!

 

 

「ヘヘ、キノコを焼いた後はご飯が食べたくなるっす。

 ここらで小休止しましょう。」

 

 

サイコかテメー!

 

まだぱたぱたともがくキノコたちを見ながら思う。

とはいえ、キノコたちが火を嫌うのも事実である。

ついでにキノコが焼ける良い匂いがしてきたので、俺たちは携帯食料を食べることにした。

 

 

 

キノコの焼ける匂いが染みついたからか、その後の道中にキノコが現れることはなかった。

まぁ、あれだけ暴れりゃそうもなるか…。

 

 

 

 

 

_______________________________________________________________________

 

 

 

次回、「パワーレベリング:Italian Stallion」はもう始まってる!(連続投稿)

 

 

 

読者の皆様から評価と感想がいっぱい頂けて嬉しい(小並感)

 

感想返信にはまーだ時間掛かりそうですが、全部返信します。

ノンケの非ログインユーザーからも感想受け付けてるので、「よし、じゃあブチ込んでやるぜ」って方はじゃんじゃん書いてってください。

 

 

あと連載の方と同じ評価を下さった方が、高い評価にも低い評価にも居ました。

やっぱり作風とか文体っていう、逃れられぬカルマがあるんすね。

 

両方に評価10下さった方は、本当に頭が上がりません。ありがとう!

連載の方もエタってないっす!その内更新するっす。

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

パワーレベリング:イタリアン・スタリオン

 
 
今回は、二話同時投稿です。

感想で「あくしろよ」って急かされたので頑張りました。
ホモはせっかち。

更新通知で飛んできたノンケの皆様は、前話からどうぞ。
今回は人を選ぶであろう話ですが、しょうがないね。
結局、己の作風に準じるしかないのさ…。(†悔い改めて†)


◆推奨BGM ロッキーのテーマ
      もしくはThe Final Bell



 

 

 

「なんか静かっすね。迷宮の中なのにキノコいないし、さっきとはえらい違いっす。」

 

「ああ。キノコの戦力は軒並み逃げ出してんのかもな。」

 

「まっそんなのもう関係ないっすけどね!」

 

「上機嫌だな。」

 

「そりゃそうっすよ!そろそろ最深部だし、時間も余ってるし、最後も頑張らないと!」

 

「ああ。そろそろボスか中ボスが出てきても良い頃だ。」

 

 

 

 

迷宮の最深部にはボスが居る。

とはいえ、深く潜れば毎度ボスに会える訳じゃない。

最深部でも中ボス=そこそこの宝物と遭遇する確率の方が高いのだ。

色々と仮設やジンクスはあるが、結局は運によるようだ。

ボスは良い宝物を持ち、ランク査定でもプラスが付くがその分強い。

ローリスクな中ボスの方を狙う探索者も多いと聞く。

出来れば、今日も中ボスの方が嬉しいんだが…。

 

 

 

 

 

 

 

bang!

bang bang bang!

 

 

 

 

「何!」

「ヒューゴさん!?」

 

 

突然、床の岩盤をぶち抜いて、四本の巨大キノコが伸びる。

そしてキノコの間に細いロープのようなものが張られ、正方形が形成。

嬢ちゃんと俺は分断されてしまう。

 

 

 

きゅむ。

きゅむきゅむきゅむきゅむきゅむきゅむきゅむきゅむきゅむきゅむきゅむ

きゅむきゅむきゅむきゅむきゅむきゅむきゅむきゅむきゅむきゅむきゅむ

きゅむきゅむきゅむきゅむきゅむきゅむきゅむきゅむきゅむきゅむきゅむ。

 

同時に、大量のキノコが上から現れ、俺を取り囲む!

 

 

「ヒューゴさん!」

 

「俺は探索者”便利屋”ヒューゴだぞ!こんくれぇなんてこたぁねぇ…!

 嬢ちゃんはとっとと逃げろ!」

 

 

便利屋も舐められたものだ。

 

戦闘は全て嬢ちゃんが行っていたから、ひ弱な後衛職とでも思われたのか。

この程度、苦境でもなんでもない。

サクっと全滅させることが出来る。

だが、嬢ちゃんは別だ。

流石にこの状況で援護は出来ない。出来れば帰ってくれた方が嬉しい。

 

 

「そんな…。」

 

「メイファのとはいえ、依頼を守るのも探索者の仕事だ。良いから行け!」

 

「でも!どうやら奴さんが用があるのは、俺の方みたいです…!」

 

「何ぃ?」

 

 

 

booooooong!!!!

 

 

 

鳴り響くゴングの音と共に、巨大な影が正方形の中に落ちる。

現れる、通常の二倍近い巨大キノコ!

 

一夜茸迷宮のボス!

 

 

 

 

 

 

 

きゅむきゅむきゅむきゅむきゅむきゅむきゅむきゅむきゅむきゅむきゅむ!

周りのキノコたちが飛び跳ね、足音が鳴り響く。

 

 

「おい、嬢ちゃん!流石にボスにゃあ勝てねぇぞ!とっとと逃げろ!」

 

「いいえ。俺は…逃げない!」

 

「意地張ってる場合かよ!」

 

 

しかも、ボスキノコは両手に赤いキノコを装着した見慣れぬ姿。

特殊分岐。

一定の条件を満たした場合のみ現れる特殊ボスの可能性がある。

 

 

「…!」ぎゅむぅ。

 

 

サイズと重量に合わせ、足音も迫力たっぷり。

ボスキノコは両手のキノコを誇るように掲げたあと、青い二つのキノコを投げる。

嬢ちゃんはそれを拾い、両腕に装着した。

 

 

「手を出さないでくれ!ここからは…俺の試合だ!」

 

 

きゅむきゅむきゅむきゅむきゅむきゅむきゅむきゅむきゅむきゅむきゅむ!

興奮したかのように、周りのキノコが飛び跳ねる。

 

こうして。

何か俺だけを置き去りに、ボスキノコと嬢ちゃんのタイマン勝負が始まってしまった。

とりあえずバフだけ飛ばしとこ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

_______________________________________________________________________

 

 

 

 

 

 

 

 

ロープの張られた正方形の角。

腕を回したり、両腕でロープにぶら下がったりしてウォーミングアップする嬢ちゃんに話しかける。

 

 

 

「嬢ちゃん、狙うべきは分かってるな!」

 

「ああ、ダウンだ!ダウンを狙うっす!」

 

「そうだ!アイツもキノコだ、トップヘビーなのは変わらん!

 だが太い分足にも安定性があって、手ごわい!頑張れ!」

 

「分かったっす!」

 

「よし、行ってこい!」

 

 

 

周りのきゅむきゅむ音に負けないよう、声を張る。

ついでに今までのバフに加え、体表硬化で支援する。

あんなハードパンチャーの前では無意味かもしれないが、無いよりマシだ。

 

 

てこてこてこ。

ぎゅむぎゅむぎゅむぅ。

 

 

赤と青のグローブを付けた両者が中心へと進んでいく。

中ボスの黒いキノコが、審判のようだ。

 

再度、ゴングが鳴り響く!

 

 

 

 

 

 

ボスキノコはその威圧感に反し、軽やかなジャブ。

圧倒的なリーチで、嬢ちゃんを牽制する。

 

だが嬢ちゃんも負けてはいない。

その体躯の小ささを機動力に変え、ヒットアンドアウェイの構え。

 

 

繰り返される、ジャブ。

ゆっくりと嬢ちゃんがコーナーへと追いつめられる。

ヒットアンドアウェイには、広いスペースが必要だ。

嬢ちゃんの勝ち筋がそれしかないなら、守るのでなく攻める必要がある。

 

ジャブ。

ジャブジャブ。

…ストレート!

 

ボスキノコの剛腕が唸る。

だが、些か性急な攻めだったようだ。

嬢ちゃんはギリギリまで引き付けて躱し、フックを撃ち込む!

 

カウンターだ!

 

 

「ファッ!?」

 

 

嬢ちゃんの驚きの声!

無理もない、ボスキノコはあの巨体で素早く上体をそらし、フックを回避したのだ!

 

フックへのカウンターが放たれ、そのカウンターへのカウンターが放たれる!

瞬時に激化する、パンチの打ち合い!

だが嬢ちゃんはパンチに夢中になるボスキノコの足が止まった事を見逃さなかった!

 

 

 

「暴れんなよ…。」       荒いストレートを弾くように受け流す!

「お前の其処が隙だったんだよ!」     斜めに打ち上げるアッパー!

 

 

 

アッパーが傘の下にある三白眼、そこよりやや下の人間でいう顎の位置に直撃!

ボスキノコはたまらず尻餅をつく!

 

 

きゅむきゅむきゅむきゅむきゅむきゅむきゅむきゅむきゅむきゅむきゅむ!

光の少ない、暗い会場は大盛り上がりだ。

キノコたちは飛び跳ね、黒キノコがばんばんと手を床に叩きつける。

 

ばーん。

ばーん。

ばーん。

 

黒キノコが腕を振るう度、キノコたちが静かになる。

そして、ボスキノコが立ち上がるのに合わせ、また一斉に跳ねる。

 

きゅむきゅむきゅむきゅむきゅむきゅむきゅむきゅむきゅむきゅむきゅむ!

 

 

「やったな、嬢ちゃん!」

「ああ!だがこれでヤツを警戒させちまった。この手はもう通用しない…!」

 

 

 

boooong!

 

 

またゴングが鳴り、嬢ちゃんが弾かれるように中心に飛び出す。

 

ボスキノコは両腕のキノコを掲げ、体を震わせる。

破裂音と共に両腕のキノコの球形だった傘が開き、板状になる。

 

 

「ミット?」

 

「不味いぞ、嬢ちゃん!第二形態だ!」

 

 

ボスキノコは威力を落としてでも命中率を上げることを選んだようだ。

ボスキノコの剛腕パンチをガードすることは難しい。

それ故嬢ちゃんは回避か、先ほどのような弾く迎撃を強いられていた。

だがあのようにグローブを巨大化されると、回避も腕を叩いて迎撃することも難しくなる。

 

ボスキノコは何度か感触を確かめるように素振りをし、猛然と攻撃を開始した!

 

 

 

 

 

 

 

「…!…!」

 

「!…!」ぎゅむ、ぎゅむぅ。

 

 

周囲のキノコも攻防を、固唾を飲んで見守る。

静まりかえった迷宮には、ボスキノコの足音とパンチの風切り音だけが響く。

嬢ちゃんは防戦一方で、軽口を挟む暇もない。

 

先ほどから何発か嬢ちゃんのパンチは当たり、ボスキノコのパンチは当たっていない。

だが押されているのは嬢ちゃんの方だ。

ボスキノコは先ほどから、被弾してまでも嬢ちゃんが横をすり抜けることを許さず、着実にコーナーへと追い込んでいる。

板状キノコの薙ぎ払うようなパンチは、減衰してなお嬢ちゃんの体を押しとどめる威力を持つ。

嬢ちゃんはそのパンチに苦戦し、少しずつ傷を増やしながら追いつめられていった。

 

 

「嬢ちゃん…!」

 

「大丈夫っす、ヒューゴさん…!

 …。

 打って来いよ。

 真ん中来いよ、えぇ!?真ん中来いよ!! 」

 

 

近づいてくる嬢ちゃんに思わず声を掛ける。

嬢ちゃんの声はまだ死んでいない。

 

そればかりか、両手のグローブを叩き合わせてボスキノコを挑発した!

 

 

「!」ぎゅっむぅ!

 

 

素早い踏み込み!

外に立つ俺にすら届く風圧!

恐るべき威力のボスキノコ右ストレート!

 

 

「とぉ!」

「何!」

「!」ぎゅむっ。

 

 

嬢ちゃんはその必殺の一撃を、ロープをたわませることで躱した!

さらにロープの反発を利用して跳ね、正方形を形作る巨大キノコの傘に着地!

空中からボスキノコに躍りかかる!

 

 

「!」ぎゅ、ぎゅむ!

 

 

ボスキノコの咄嗟の迎撃をすり抜け、傘を踏みつけて反対側に着地!

位置が入れ替わる!

 

今コーナーに追いつめられているのは…ボスキノコだ!

 

きゅむきゅむきゅむきゅむきゅむきゅむきゅむ!

盛り上がるキノコたちをよそに、嬢ちゃんは鬱憤を晴らすかのようなラッシュを開始!

 

こんな手品が二度三度と通じるはずもない。

このラッシュで決めるしかないのだ!

 

 

「行けーッ!嬢ちゃーん!!」

 

「ホラホラホラホラホラッ!」

 

 

怒涛のラッシュ!

 

強烈なパンチがボスキノコの右わき腹に突き刺さる!

だが!

だが、仕留めきれない!

 

振り向いたボスキノコが反撃を始めた。

キノコパンチの威力に体が押しとどめられ、嬢ちゃんのパンチから威力が奪われる!

 

 

 

 

 

 

boooong!boooong!boooong!boooong!

 

 

 

ゴングの音と共に、黒キノコが割って入る。

二人は同時に座り込み、正方形に入ったキノコに運ばれるように対角線のコーナーに戻る。

 

どうやら休憩時間のようだ。

 

ボスキノコは他のキノコに、傘の踏まれた部分を整えてもらい、傘裏のひだに霧吹きで水分補給を受けている。

なんでもキノコたちは、ひだが干からびると力を失うのだそうだ。

キノコが火を嫌うのも、ひだの乾燥に因るのだとか。

 

俺もフラフラの嬢ちゃんに水を飲ませる。

 

 

「ヒュ、ヒューゴさん…奴は…。」

 

「良いボディブローだった!効いてるぞ!」

 

「なら…なら勝てるっすね…!」

 

 

嬢ちゃんの闘志はまだ死んでいない!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_______________________________________________________________________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試合は休憩を挟み、長く続いた。

次回はいよいよ、15回目の攻防。

 

 

ボスキノコは強かった。

だが、嬢ちゃんもそこに良く食いついていた。

 

 

ジャブにはジャブを、ストレートにはカウンターを返し。

フェイントの読み合いを制し。

パンチの打ち合いで負けず。

足を止めずステップを踏み。

サブミッションを試み。

関節を狙い。

蹴ってみたり。

投げようとしたり。

ロープを駆使して空中殺法を行ったり。

 

様々な手段でボスキノコに襲い掛かった。

 

 

だがボスキノコもさる者。

パンチ。

キック。

ボディチェック。

ヒップアタック。

 

あらゆる手段で嬢ちゃんを迎撃した。

 

 

 

「嬢ちゃん。おい、嬢ちゃん!大丈夫か!?」

 

「まだ…まだ行けますっす…!」

 

 

見るからにフラフラ。

もう限界だろう。

この攻防で決着が着かなければ、降参する他あるまい。

 

 

「嬢ちゃん、そろそろ、切り札の使い時だ…!」

 

「でも…あれは…ヒューゴさんからプレゼントで…。」

 

「お前が言ったんだろ!大事なのはプレゼントに籠った気持ちってな!

 そんなに欲しけりゃ何度だってくれてやる!

 だから、勝て!」

 

「…はい!」

 

「よし、行ってこい!」

 

 

満身創痍の嬢ちゃんを送り出す。

だが、傷の多さならボスキノコも負けてはいない。

 

向こうだってフラフラだ。

キノコたちも、決着の予感に静かに正方形を見つめている。

 

 

 

 

「三回だ。」

 

「!」

「!」ぎゅむぅ。

「!」きゅむきゅむ。

 

「今から、三回の魔法で、お前を倒す!」

 

 

きゅむきゅむきゅむきゅむきゅむきゅむきゅむきゅむきゅむきゅむきゅむ!

右腕を掲げた嬢ちゃんの、撃破予告に会場が湧く。

 

 

右腕には俺たちの切り札、例の帽子野郎から買った腕輪が装着されている。

三回分、事前に込めた魔法を使うことが出来る腕輪だ。

使うと壊れてしまうため、込められた魔法は非常時用。

俺が居なくてもメイスの装備要求値を満たせるよう、『腕力強化』が込められている。

 

バフは二重にかけた場合、すぐ効果を失ってしまう。

だが、パンチを放つには数秒あれば十分だ。

出来れば不意打ちで使ってほしかったが、あれが嬢ちゃんのプライドだと言うなら止めはしない。

 

後はただ、祈るだけだ…!

 

 

 

 

 

「…!」

 

「!」ぎゅむぅ。

 

 

 

 

 

静寂の中、嬢ちゃんが進み、右腕を振りかぶる。

輝く腕輪。

小細工なし、真正面からのストレート!

 

ボスキノコもまた、右ストレートで真っ向から迎撃する!

 

 

「…らぁ!」

「!!!」ぎゅぅっむぅ!

 

 

勝ったのは…嬢ちゃんだ!

ボスキノコの右腕が大きく弾かれる!

 

もう一度右腕が振りかぶられ、腕輪が輝く!

ボスキノコ左手での迎撃!

 

 

「…らぁ!」

「!!!」ぎゅぅっっむぅ!!

 

 

利き手で防げなかったものを防げる道理はない!

弾かれる左手!

 

 

「嬢ちゃん!」

 

 

思わず叫ぶ!

ボスキノコの右手が引き戻されようとしている!

これでは三発目も防がれてしまう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、嬢ちゃんは。

そのボスキノコの動作を見て、笑った。

 

「三発じゃない、三回と言ったっすよ?」

 

そしてそのまま、腕輪が光る!さらなる踏み込み!

 

 

 

 

ホラァーーーーーッ!

 

 

 

 

突き抜けた嬢ちゃんの拳が、ボスキノコの右わき腹に突き刺さった!

 

 

 

 

 

 

 

boooong!boooong!boooong!booooooooooooong!

 

 

 

崩れ落ちるボスキノコ!

鳴り響くゴング!

 

黒キノコが手を床に叩きつけ、興奮したキノコたちが正方形になだれ込む!

 

 

「ヒューーゴさん!ヒューゴさーーーーん!!」

 

 

傷ついた嬢ちゃんが叫んでいるのが見える。

嬢ちゃんはそのまま周りのキノコたちにもみくちゃにされていく!

 

 

「ヒューーーゴさーーーーーん!!!」

 

 

叫びながら、嬢ちゃんはキノコに胴上げされ始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんだこれ。

今更だが、なんなんだこの光景? 

理解を超えた光景に、俺はただ立ちすくみ、何故か胴上げされることになった。

_______________________________________________________________________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

淫夢ネタで始まり!

オルガネタを挟んで!

ビル・コンティの「The Final Bell」(ロッキーエンディング)で締める!

 

RTA動画なんてそれで良いんだよ…!(風評被害)

 

 

 

せっかく来た読者様を振り落としていくスタイル。

人は結局、己が流儀でしか生きるしかないんやな…悲劇なんやな…。

 

ちなみに映画「ロッキー」でアポロとロッキーが戦うのは、ロッキーの「イタリアの種馬(Italian Stallion)」というニックネームがキッカケです。

このニックネームは、主演のスタローンが下積み時代に出演したポルノ映画の題名が由来なんだとか。

 

つまりロッキーが有名になったのは、ひいてはスタローンがスーパースターになったのはこのポルノのおかげだと言っても良いでしょう!(過言)

ポルノがキッカケでスターになった、竿役者。我々は彼に良く似た人物を知っていますね?

スタローン野獣先輩説!

 

 

 

 

次回、「Theヒモ稼業:迷宮不労収益獲得譚」は二、三日後?

 

流石にキーボード叩き過ぎて手首がアツゥイ!(大袈裟)(オーバーヒート)

 

その内ワンコ系パーティメンバーが追加されるので、しばらくお待ちください。

おらっ働け「ガールズラブ」警告タグ!

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

異界迷宮ヒモ稼業:アンダー・ザ・ダスク・ベル

 

お気に入り・感想・評価ありがとうございます。
おかげ様で、なんかランキングにちょっと載ってたらしいっす。
これもすべてはホモの皆様の優しさのおかげ…。

実際にお気に入り数に比して、評価と感想が多いっす(統計学)
一言でも語録でも、じゃんじゃん感想書いてってくれよな~頼むよ~。(欲張り)


◆そろそろTSちゃんの名前を決めておきます
◆よろしくね!


 

 

 

 

 

 

 

いつもの酒場。

いつも見る灯。

いつも座る席。

 

 

見慣れた酒場が、何よりも恋しくなることもある。

探索を終え、死闘を制し。

今日の成果と生還を喜ぶ探索者たちは、今日もこの灯を目掛け、帰路に就くのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…よう、ザック。なんだ本当に待ってたのか?」

 

「遅かったじゃないか。ヒューゴ、何があった?嬢ちゃんは大丈夫なのか?」

 

「ああ、寝てるだけだ。今日は死ぬほど疲れてるだろうからな…。」

 

「ったく。心配させやがって。迷宮の攻略はどうなった?」

 

「聞いて驚け、特殊分岐だ。しかも嬢ちゃん、サシでボスを倒して見せたぜ。」

 

「なんだと?サシの勝負?その間、お前は何してたんだ?」

 

「…………応援?」

 

「…………そうか。

 こっちはもう寝るが、依頼主もその説明で納得してくれると良いな?」

 

 

 

 

そんな台詞と共に、席を立つザック。

入れ替わりに、寝ぼけ眼のメイファが現れる。

 

 

 

 

「ヒュゥゥーーゴさん?私、怪我させるなって、言いませんでした?」

 

 

 

「ち、治療はしたし…。」

 

「こんなになるまで無茶させて!この時間まで何処行ってたんです!」

 

「ボスと嬢ちゃんがひたすら殴り合ってた?みたいな?」

 

「…その間、ヒューゴさんは?」

 

「取り巻きのキノコ達と一緒に応援してた?みたいな?」

 

パーティメンバーの屑がコノヤロー!

 

 

 

 

メイファパンチ!

嬢ちゃんを背負ったままの俺は、それを甘んじて受けた。

ボスキノコに勝るとも劣らない鋭いパンチが、俺に突き刺さる。

 

 

「もう!心配させて!…でも、これでチャラにしておきます。

 

 おかえりなさい、ヒューゴさん。

 探索報告をお聞かせ願いますか?」

 

「おう。

 ”便利屋”ヒューゴ以下二名。一夜茸迷宮、踏破成功だ。」

 

 

 

 

 

あ、そうだ。

ついでにボスの特殊分岐と遭遇しました。

 

そんな一言を付け加えたばかりに、この日俺は嬢ちゃんを寝かせた後、徹夜をする羽目になった。

 

 

 

 

 

_______________________________________________________________________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっはようございます!…ヒューゴさん、なんだか眠そうですね?」

 

「おはよう…。そういう嬢ちゃんは元気だな…。」

 

 

これが若さか。

加齢の実感…。

自分ではまだまだ若いつもりだったが、徹夜が地味に堪える。

 

 

「えっと、何書いてるんです?」

 

「報告書だ…。

 特殊分岐って言ってな、迷宮のボスは一定の条件で特殊タイプが登場することがある。

 しかも特殊分岐ボスは貴重な宝物を持ってることも多くてな。

 遭遇したパーティには、探索の詳細報告書をギルドに提出する義務がある。

 複数の報告書を突き合わせて、登場条件を炙り出すんだとさ…。」

 

 

ね、眠い。

あの後数時間だけ仮眠をし、ひたすら書類を書いている。

だがこの報告書を書き上げねば、ランク査定に計上してくれないらしくやるしかないのだ。

 

 

「特殊分岐っすか。

 確かに、なんかレアっぽいアイテムくれましたっす。」

 

「ああ。あのグローブというか、赤キノコな。」

 

「一応、試合前にくれた青い方のキノコもボス宝物っすかね。」

 

 

 

 

 

あの後、胴上げが一段落してから。

 

なんか普通に起き上がったボスキノコが、自分が装着していた赤キノコをくれたのだ。

冷静に考えれば、あのタイマン勝負は手加減の一巻だったのかもしれない。

周りに居るキノコは加勢しなかったし。

特殊分岐要件は、その辺かもしれない。道中もほぼすべて嬢ちゃんが戦ってたからな。

向こうもそれに合わせたのかも、なんてな。

 

まぁ少なくとも、あのキノコたちがやけに紳士だったのは確かだ。

 

 

ボスキノコは俺たちに赤キノコを渡した後、嬢ちゃんと握手をしてから消えていった。

他の大勢のキノコたちも同様に、光の粒子に解けていき、最深部には俺たちだけが残された。

 

一夜茸は一日で成長し、歩き出し、そして夜明けと共に消えていく。

話には聞いていたが、あれほど大量に居たキノコが皆消えていく光景は壮観だった。

 

きっと、あの美しい光景をみたのは俺たちが初めてだろう。

そう思えば、代償として特殊分岐初遭遇報告の書類の山を記入することも苦ではなかった。

 

 

…いや、やっぱ眠いわ…。眠い…。

探索者って体力仕事だし、12時には迷宮が変形し始めるから夜更かしすることが少ないのだ。

酒を飲んでも1時2時には寝る。

むしろ朝早くから動く探索者も多い。

通称、朝駆け隊。罠も魔物も多い代わりに宝物が手つかずで残る迷宮に突っ込む連中だ。

宝物は(ついでに罠も魔物も)迷宮内に随時補充されるため、そこまで一般的ではない。

 

だが、朝駆け隊は基本目が逝ってるヤバイ連中なので畏怖されている。

俺も書類を書きながら、久しぶりに鴉の止まり木亭の朝駆け隊を見送ったが怖かった。

 

 

「そうだ。嬢ちゃん、こっちの書類を書いといてくれ。」

 

「それも報告書っすか?」

 

「いいや、これは申請書さ…嬢ちゃんの昇級のためのな。」

 

「マジっすか!」

 

 

 

 

夜迷宮、ボス討伐、しかも特殊分岐。

ランク査定的にボーナス盛り盛りだ。

まず間違いなく、石膏ランクに昇級できる。

本来なら、教官役からの人格査定や昇級試験が存在する。

一応俺も教官役をやったことがあるのでその書類も書いているが、これだけの実績の前では不要だろう。

 

嬢ちゃんもこれで見習い卒業、ギルドカードが発行される。

流石にその書類は、嬢ちゃん自身に書いてもらうしかない。

 

 

「嬢ちゃん、書き方分かるか?」

 

「大丈夫っす。♪~♪~」

 

 

さらさらさら、と淀みなく嬢ちゃんは書類を記入していく。

やや字は歪んでいるが、これは教養云々ではなくこの国の文字への不慣れさから来るもののようだ。

…外国出身?

しかも地頭も良く、この年齢にして高度な教育を受けた形跡。

 

…やめよう。

これ以上突つくと、厄ネタが現れる予感しかしない。

俺と、嬢ちゃんは、迷宮街で偶然出会った、パーティメンバー。

自己暗示。

俺と、嬢ちゃんは、迷宮街で偶然出会った、パーティメンバー。

お互い探索者だ、余計な詮索は無しにしよう。

ついでに個人情報も、向こうから話すまでは聞くべきではない。

 

 

「流石にその書類を俺がみるのはマズイからよ。直接、あそこのギルドメールボックスに入れときな。」

 

「了解っす!」

 

「…しかし、マジで元気だな嬢ちゃん。昨日あれだけ暴れたってのに。」

 

「ヒューゴさんの『治癒促進(リジェネレート)』が効きましたっす。寝て起きたらもうすっかり元気!」

 

「いや、そんな強力な魔術じゃないはずなんだがな…?

 まぁいい。それなら午後から迷宮に行くか?」

 

「良いっすねぇ!」

 

 

嬢ちゃんはいつも、輝くように笑う。

本当に、迷宮探索が好きなんだな…。

 

 

…好きなのは本当に迷宮探索だよな?

昨日の残虐戦闘がフラッシュバック。

頼むから、魔物を蹂躙するのが好きとか言わないでくれよ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

_______________________________________________________________________

 

 

 

 

 

 

 

「見習いを卒業する前に、押さえておかなきゃならん迷宮の常識ってもんがある。

 順番が狂っちまったが、チュートリアルの時間だ。」

 

「うへー…。スキップ、スキップ手段はないっすか?」

 

「お前なぁ、まだ高位宝箱すら開けたことないだろうが。探索者の本分、大事にしろよ。」

 

「そんなこと言ったって、高位のヤツって大抵罠ありますし。『開錠』使ったら勝手に開きますし。

 これからもヒューゴさんがパパパっと開けたら良いじゃないっすかー。」

 

「なんでお前はずっと俺と一緒の前提なんだよ…。おら、文句言わず挑戦してみろ。」

 

「しょうがねぇなぁ…っす。」

 

 

もう見るからにしぶしぶ、嬢ちゃんは宝箱の前に進み出る。

 

そして、メイスを腰に巻き付けるように構え。

…なんで嬢ちゃんは、罠外すのに武器使おうとしてるんだ?

 

 

 

「ちぇりゃー!……とぉ!」

 

 

 

気合一発、居合のように振りぬかれたメイスが、宝箱の錠前を破壊!

そのまま上蓋の隅に弾くようにメイスを当て、宝箱を開ける!

 

発動するトラップ。

横に飛び退り、回避する嬢ちゃん!

飛来する矢は、虚しく虚空を貫く!

ゴロゴロゴロと転がる嬢ちゃん!

 

 

「宝箱の中身は…小銭っす!」

 

「違う、そうじゃない!何いきなり力技に走ってる!?」

 

「だって…俺の器用さで罠外しとか成功する確率の方が低いし…っす。

 その時間で戦闘した方が有意義っていうか…っす。」

 

「いや、まぁそりゃそうだし、パーティーメンバーが居るなら無理しなくても良いもんではあるが…。」

 

「つまり、ヒューゴさんが居れば解決する問題っすね。

 次行きましょ、次。

 時間は有限っす。ヒューゴさん眠たいんでしょう?」

 

 

実際、嬢ちゃんに器用な作業とかまるで期待できなさそうなので、罠外しは失敗すると思ってはいた。

そういった意味では自己認識がしっかりしている。

 

嬢ちゃんは役割意識がしっかりしてるというか、出来ること出来ないことの線引きが明確だ。

全能感に浸ったり、無暗に万能を目指しがちな新人達と比べ、現実が見えている。

だがちょっと線引きが明確すぎるというか、なんというか。

本来そういったパーティ内での仕事と果たすべき役割などは、体験してみないと分からないものなのだが。

 

 

その後も迷宮に関して、いくつかのチュートリアルを行った。

一応石膏ランク昇級用の教官指導マニュアルに沿ったものだ。

とはいえ内容は基本中の基本、嬢ちゃんにとっても既知の内容だったようである。

 

特に問題もなくサクサク進み、中ボススケルトンの背骨を叩き折って、俺たちは帰還した。

 

 

 

 

 

 

 

 

_______________________________________________________________________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「毎度ありがとうございますー!」

 

 

嬢ちゃんの防具を、買った店に修理に出す。

打撃メインとはいえ、長時間ボスとド突き合いをしたためダメージがあったのだ。

ついでに嬢ちゃんへヒアリングを行い、色々と調整を行う。

 

たった数日で防具をダメにされた店主は若干キレていたが、見送りの笑顔は華やかだ。

プロ根性を感じる。

その笑顔に免じて、なんか料金が高かったのは見逃してやろう。

 

 

「ヒューゴさん、喉渇か…喉渇かない?」

 

「ん?だがもうちょいで鴉の止まり木亭に…。」

 

 

嬢ちゃんの視線の先には、夕刻の人手で賑わう屋台群。

…なるほど。

こりゃ俺の察しが悪かったな。買い食いがしたい日ってのもある。

 

 

「そうだな、何か食べてくか。何が良い?」

 

「ビールっす!ビール!」

 

「馬鹿言ってんじゃない、とりあえずレモネードでも貰おうか。」

 

 

 

 

 

串焼き、蒸し物、見慣れぬ菓子。

 

迷宮街には様々な国から人も物も流れ込み、他にない雑多な文化を形成している。

長くこの街にいる俺ですら把握しきれているとはいえない、混沌の街。

この屋台群はその最たるものだろう。

 

常に変化し、常に入れ替わる。

まるで迷宮そのままだと言ったのは、果たして誰だったか。

目まぐるしく出会いと別れを繰り返す探索者業界では、過去を振り返ることに大きな意味はない。

 

この屋台群ですら、常に新しい店新しい品が増えている。

その陰で、古い店や昔馴染みの店が消えているのだろう。

そしてそれらが顧みられることは殆どない。皆、新しいものに目を向ける。

 

少し感傷的な気分になりながら、夕刻の屋台群を歩く。

嬢ちゃんの指示に従っていたら、結構な量を買ってしまった。

テーブルを探し、二人で座る。

 

 

 

 

 

むっしゃむっしゃむっしゃ。

相変わらず嬢ちゃんはせわしなく、だが美味しそうに飯を食べる。

 

 

 

「ふぅ、ありがとうございます、ヒューゴさん。」

 

「礼はいい。そんだけ美味しそうに食べてもらえりゃ満足だよ。」

 

「あ、いえ。ご飯だけじゃなくて…今日の探索のことっす。

 あれ、昇級試験の内容でしたよね。」

 

「…なんだ、気づいてたのかよ。」

 

「ええ。…聞かないんすか?」

 

「何をだ。」

 

「何でそんなこと知ってるんだ、とか…お前は結局何者なのか、とかっす。」

 

「ふん。聞いてほしいのか?」

 

「メイファさんは言ってなかったけど、鴉の止まり木亭の宿代払ってくれたのヒューゴさんっすよね。」

 

「……。」

 

「流石に気づくっすよ、宿泊二日目から急に新人歓迎キャンペーンで無料!とか言われても…。

 身分証の口添えについても、正直かなり助かったっす。」

 

 

ったく。メイファの奴め。

カバーストーリーが雑過ぎんだよ。

 

旅行者にすら簡易の身分証であるビジターカードを発行するこの街で、嬢ちゃんはわざわざ他人のギルドカードを持ち込んでいた。

その時点で、自分は訳ありですと叫んでいるようなものだ。

この年齢で探索者を目指したのにも、何らかの事情があるのだろうと察した。

 

だからメイファに頼み込んで、金を俺が払うからと身分証なしで泊めてもらえるよう取り計らったのだ。

メイファが出した、嬢ちゃんの面倒を見る依頼を断れなかったのもそのためだ。

 

 

 

 

「ヒューゴさん。俺は、あなたに、()()()()()()()()()()()が、あります…!」

 

 

 

 

いつものふざけた口調と異なる、真剣な声色。

夕刻の鐘が鳴る中、嬢ちゃんの眼光が俺を射抜く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「言わなきゃいけない、ねぇ…。

 …。

 嬢ちゃん、迷宮パーティの鉄則って、知ってるか?」

 

 

「いつも、ギルドと酒場に張られてる標語ですよね。」

 

「そこに書いてあったろ?俺たちは、ただこの街で偶然出会っただけの、パーティメンバーだ。

 過去の詮索はしない。」

 

「でも…!」

 

「話す義務なんてない。そんなことしなくていい。言わなくても良いんだ。」

 

「ヒューゴ、さん…。」

 

「ま、もちろん話したくなったときには聞くがね。急ぐこたねぇよ。

 それでもまだ気にするってんなら、そうだな。

 お嬢ちゃんが出世したら、高い酒でも奢ってくれ。それでチャラにしといてやるよ。」

 

「…はい!」

 

「さて、夕刻の鐘も鳴った。そろそろ嬢ちゃんのギルドカードも出来上がってるだろ。

 行くぞ!」

 

 

 

ありがとう、ございます。

立ち上がった俺の背後から、少し震えたそんな言葉が聞こえたが、俺はそのまま歩き出した。

 

少し遅れて、いつもの軽い足音がついてくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_______________________________________________________________________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おかえりなさい、ヒューゴさん!無事、報告書も受理されましたよ。」

 

「そうか、そいつぁ良かった。ギルドカード、出来てるか?」

 

「…ええ。出来てますよ。出来上がっちゃってますとも…。」

 

 

 

メイファのリアクションが妙だ。

まるでボッタクリ防具店の店主のよう。感情をプロ意識で押し殺した顔。

 

 

 

 

 

「こちら、完成したギルドカードです。

 

 …ああああ・カッコ・カリさん、確認していただけますか?」

 

 

「はい!ああああ・カッコ・カリ。今から石膏級探索者っす!」

 

 

 

 

 

 

 

 

は?(困惑)

えっ、何、その名前は…。ふざけてるの?

 

_______________________________________________________________________

 

 

 

 

 

 

幼女「◆エドガー・ドイル◆は既に使用されていますって言われたから…。」

 

冗談はよしてくれ!

 

 

 

 

読者の皆様は現状のまま、TSちゃんでもTSホモでも好きなように呼べばいいと思います。

また作中で書きそびれましたが、分岐要件は「挑戦者の資格(ボスキノコ主観)」を得ることです。

ヒューゴさんは罠解除マッピングバフしかしてなかったので、ボスキノコ的には幼女のソロ攻略扱いでした。

 

次回、「スカウトツアー:バイ・マスターカード」は明後日とかです。

仲間は、金で買える!

 

 

 

 

 

ちなみに、前話投稿後、初めて評価0を獲得しました(トロフィー取得音)

 

不都合なスタローン真実が影響したことは想像に難くありません。

ですが例え俺の口を封じようとも、いずれ第二第三の俺がスタローン真実を白日の下にさらす!

「スタローン野獣先輩説」流行らせコラ!流行らせコラ!



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

強制的なスカウト:バイ・マスターカード

 
いつも感想ありがとうございます。
ユーモアある感想、いいですねぇ!私も負けてられないなって思います。

それでは、金曜日の夜にお届け!第七話!




今回の話は、悪徳ポケモンブリーダー相手に金の力で戦う話です。(迫真)ポッチャマ…


 

 

 

 

 

 

いつもの酒場。

いつもの朝食。

いつも座る席。

 

 

幾年も続く日々のルーチン。

帰るべき平穏。馴染みのある空間。

 

しかしそれが、一夜で崩れるときもある。

覆水は盆に返らず、時計の針は決して戻らず。

 

失ったものを嘆いても、物事は決して解決しない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっはようございます!」

 

「おう、おはよう嬢ちゃん。ザックの奴は今日忙しいらしくてな、飯食べててくれってよ。」

 

「あ、そうなんすか。

 うーん、せっかくなんで肉追加しようと思ってたんすけど、一人じゃ食べきれるか不安っす。

 ヒューゴさんも食べてくれるなら追加するんすけど…。」

 

「好きに頼みな。」

 

 

 

ざわ…。ざわ…。ひそ…。ひそ…。

嬢ちゃんの登場に、少し酒場がざわつく。

 

 

 

「…。」

「どしたんすか、ヒューゴさん。なんか渋い顔になってますけど。」

「いや…むしろ嬢ちゃんは気にならないのか?すごく注目されてるぞ、俺たち。」

「まーそりゃ酒場の壁にデカデカと名前張られてますからね。そりゃそうもなるんじゃないっす?」

「この席、静かにもの食べれるから気に入ってたんだがなぁ…。」

 

 

鴉の止まり木亭の掲示板には、先日俺が書き上げた報告書を抜粋したものが張りつけられ、一夜茸迷宮の緊急探索依頼が大々的に告知されている。

 

特殊分岐ボスの宝物は特異なものが多く、低ランク迷宮産のものであっても十分に有用な事例が多い。

そのため新たな特殊分岐が見つかると、このように情報収集用の緊急探索依頼が発行されるのだ。

 

一部の宝物は魔法学的に貴重な資料になるらしく、研究者がギルドに収集依頼を出している。

彼らは日々、迷宮宝物を解析しリバースエンジニアリングを行い、社会に還元する。

風の噂では、迷宮の罠を引っぺがして持ってくことすらあるんだとか。

 

 

 

「しかし、嬢ちゃんは本気でアレで通すつもりなのか?」

「アレと言いますと?」

「…名前だよ。「ああああ」って偽名にしてももっとマシなのあるだろ。

 普通に公文書とかでも、あの名前で呼ばれることになるんだぞ。

 せっかく臨時収入もあったんだ、再発行しようぜ?」

「別にいいっすよ~再発行高いし~。」

「…むぅ。」

 

 

無理強いは出来ない。

本名を使えない事情があるのだろうし。

でも、もうちょっとこう、それっぽいのというか…。

 

ちらりと掲示板を見る。

特殊分岐発見者、「ヒューゴと愉快な仲間たち」所属「ああああ・カッコ・カリ」。

 

あほみたいな一文。

注目されまくってる原因の半分はこれだろう。

 

ちなみにパーティ名は俺が昔使っていたものだ。

俺は普段、体調不良やら帰省やらで欠員が出たパーティや、開錠・バフ・魔法攻撃要員を臨時で追加したいパーティの助っ人として活動している。

そのため本所属のパーティは存在していないのだが、時たま他のパーティであぶれた連中と一緒に探索に出ることがあった。あの名前はそうした野良パーティ用。悪ノリの産物とも言う。まさかあの名前で掲示されるとは。

 

元々はランク査定の実績加算のため、嬢ちゃんの個人名で報告するつもりだったのだが、嬢ちゃん本人の希望によりパーティ名も併記しての掲示となった。

 

 

その結果がこれだよ。

思わず、頭を抱える。

 

 

 

 

 

 

「はぁー……。」

「どうしたんすか、急にデカいため息ついて。」

「そういう嬢ちゃんは、悩みとかなさそうな顔だな。」

「失礼な!今この瞬間も、特殊分岐発見報奨金で何買おうか悩んでるくらいっすよ!?」

「へいへい、そりゃ深刻な悩みなこって。中々の額なんだろ?悩まず使っちまえよ。」

「他人事っすね。ヒューゴさんも一緒に考えましょうよ~。

 パーティでの成果なんだから、お金はヒューゴさんと半々っすよ?」

「いらんいらん、新人に金を恵まれるほど落ちぶれちゃいない。好きに使え。」

 

 

実際、一夜茸迷宮で俺ほぼ仕事してないしな。

応援した後、『治癒促進』かけて連れ帰ったくらいだ。

この上個人名で報告した特殊分岐の報奨金まで貰ったら、パーティメンバーの屑呼ばわりを否定できなくなる。

 

というか、報告書に正確な情報を記載した所為で周りからの視線が痛い。

時々「アイツ応援しかしてなくね?」とか「ヒモか何か?」みたいな呟きが聞こえる。

 

ち、違うんだ…。

あの場は何か手を出しちゃいけない雰囲気があったんだ…。

 

 

 

 

 

だが辞退する俺に対し、嬢ちゃんは非常にドヤっとした顔で酒場の壁をさし示した。

 

 

「ヒューゴさん、あそこに書いてあるの、読めます?」

「あの掲示か?ちゃんと嬢ちゃん個人名で報告しといたぞ?」

「違うっす!もっと上っす!」

 

「…迷宮パーティの鉄則?」

「そうっす!鉄則第四条!迷宮の、探索成果は、等分に!リピートアフタミー!」

「むむ…。」

 

「リピート!アフター!!ミー!!!」

「…迷宮の、探索成果は、等分に…。」

「声が小さいっす!」

「…分かった、分かったよ!受けとりゃ良いんだろ!」

 

「はい!…昨日のアレ、ちょっと感動したんすから。

 俺にだって、少しは格好つけさせてくださいっす。」

「出世払いでいいっつたろうによ…。」

「まぁまぁ、受け取ってくださいっす。今出しますね。」

 

 

 

ごしゃり。

 

 

ざわ…。ざわ…。ひそ…。ひそ…。

テーブルに置かれた硬貨袋の重量感に、酒場がざわつく。

 

 

「…多くね?」

 

「実は俺たちが入手した赤と青のキノコも、ポルチーニ男爵っていう流浪のキノコ学者が買い取ってくれたっす。

 装備品云々というより、未知の菌類としてとても価値があったのだそうっす。良くわからないっすけど!」

 

 

金額を聞くと、正直引くほど高値だった。

大丈夫?それ本当はヤバイ金だったりしない?

というか流浪のキノコ学者とは一体。

 

 

「ポルチーニ男爵だと!?」

「何?あの学者先生が、ボス宝物を買い取ってくれるって?」

「聞いたか!貴重さについて、あの男爵がお墨付き出したってよ!」

「こうしちゃいられねぇ!今すぐ一夜茸迷宮の探索準備だ!」

 

 

ええ…。(困惑)

酒場がまた騒がしくなり、メイファの下に報告書の複製閲覧を求める人が群がる。

ポルチーニ男爵は意外と有名人だった。

聞き耳を立てた結果、菌類への研究功績が認められて爵位を賜ったガチめの偉人らしい。

しかも未だ権威や功績に奢ることなく、フィールドワークを欠かさない学者の鑑なんだとか。

その関係でギルドにも採取系等依頼を出しており、探索者にも名が知られていたようだ。

 

…にしたって、この金額はビビる。

 

 

 

 

 

 

「おいおいおい、マジかよ…。」

「いやぁ、うっはうはっすね!」

「むしろビビるわ…。というか、嬢ちゃんも悩まず欲しいもの買っちゃって大丈夫なんじゃないか?」

「いや~でも高い買い物なもんでね~。」

「これだけあって足りないってことはないだろ…。というかこんな大金怖いんで是非使ってください…。」

 

「うーん、それじゃあ買っちゃいますかね!次のパーティメンバー!

 

 

 

ざわ…。ざわ…。ざわ…!ざわ…!

 

 

嬢ちゃんの爆弾発言に、酒場がまた一段と騒がしくなる!

こんな注目されてる中で、何言い出してるのお前!?

 

 

「次の犠牲者は「いいいい」かな…。」「いや「あああい」かもしれんぞ。」

「やはり人身売買か。」「弱みにつけこんだんだろうな。」

「あのお嬢さんの探索者登録に、便利屋が一枚噛んでるってそれマジ?」

「らしいぞ。」「俺、お嬢さんをかどわかして外に連れてくの見たわ。」

「うわあ…、これは有罪ですね。」

「あんな記号的な偽名つけられる幼女可哀想…。」

「その上、さっきの聞いたか?探索成果は等分らしいぞ。」

「マジか。」「報告書見ても、アイツ只応援してるだけだわ。」

「ろくに仕事もせず、上前はねてるのか…。」

「人としてマズイですよ!」「そんな情けない真似恥ずかしくないの?」

「人間の屑…。」「ヒモ…。」「女衒…。」「ロリコン…。」

 

 

 

「やめろ!冤罪だ!風評被害だ!」

 

 

誰が女衒だ!

特にロリコンは何の関係もない言いがかりだ!!

…でも仕事せず応援しかしてなかったのは事実なんだよなぁ!!!

 

 

_______________________________________________________________________

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒューゴさん、召喚獣ってご存知です?」

 

「ああ。…それならそうと早く言え!誤解を招くだろうが!ついでに買うって言うな!」

 

「いやぁ、それがあながち誤解でもないんすよねぇ…。とりあえず場所変えましょう。」

 

 

なんだなんだ、何を企んでるんだコイツ。

というか、パーティメンバーが欲しいなら普通に酒場で誘えよ。

実績を挙げた今なら、普通にパーティ組めるだろうに…。

 

 

「もう、鈍いっすね。それじゃあヒューゴさんと二人旅じゃなくなっちゃうじゃないっすか。」

「なんで俺と一緒の前提なんだよ…独立しろよ…。」

「それじゃダメなんすよねぇ…。」

「はぁ、まぁいい。召喚契約用の魔法用品でも買いに行くのか?」

 

 

召喚獣というのは、人間と契約を結んだ魔物の総称だ。

迷宮の魔物は迷宮製の幻影であり敵だが、あれは複製品だからだ。

地上にいる魔物は獣と区別され、人間種と普通に交易やら何やらを行っている。

まぁ知性があるなら交渉も商売も出来るからな。

 

召喚獣もそうした交渉の一巻であり、傭兵契約みたいなものだ。

契約魔法用の魔法用品、マスターカードを通して魔物を呼び出し働いてもらい、報酬を渡す。

マスターカードとは言っても、魔物側への強制力は薄く、呼び出し拒否も自由な帰還も可能だ。

魔力を使うのは召喚もしくは送還の瞬間なので、迷宮探索中手伝い続けてもらうこともできる。

 

ちなみにマスターカードは中々の高級かつ貴重品。買うのを躊躇するのも分かる。

 

 

「ええ。そうっす。実は売ってる場所に目星がついてましてね…っす。」

「そうか。だが、契約してくれる魔物に心当たりはあるのか?」

「そこは金を積んで、首を縦に振らせるっす。」

「言い方!」

 

「…っと、そこ曲がってください。目的地っす。」

「ん?小さいが、工房か?」

「ああ。俺の仕事場だ。渡した名刺に書いてあっただろう。」

「お前…!」

「どうもっす、帽子の旦那。」

 

 

そこには、例のピアスと腕輪を買った帽子野郎が居た。

あれ、お前が作ってたのか?

お前その見た目で職人かよ!

 

 

「…お前も他の客と同じことを言うんだな。」

「まぁ帽子の旦那、見た目は一流の戦士って感じっすからね。」

「ふん、まぁいい。腕輪の修理は終わってるぞ。」

 

「腕輪の修理?嬢ちゃん、いつの間に…。」

「昨日の夜っす。ヒューゴさんは戻ってすぐ寝ちゃったっすけど、その後男爵と交渉してました。

 そこでお金が出来たんで、腕輪を修理して貰おうと持ち込んだっす。」

「お前からのプレゼントだから大切にしたいんだとよ。まったく、お熱いねぇ。」

 

「それで旦那。例の情報は?」

「あるよ。」

「…?」

 

 

例の情報?

マスターカード売ってる店の話か?

高級品とは言っても、魔法用品店行けば普通に売ってると思うんだが。

 

 

「いや。アングラ市場にはな、まことしやかにある噂が流れてた。」

「『召喚獣を売ってくれる店がある』って噂っす。」

 

「曰く、金さえ払えば、どんな召喚獣とも必ず契約できる店。」

「曰く、そこの召喚獣は従順で購入者の言うことに良く従う。」

 

「特殊マスターカードの力らしいっすけど。」

「もちろん、そんな手法聞いたことがない。」

「誰もが、与太話の類だと思っていたっす。」

 

「だが最近、獅子心騎士団が召喚契約を扱う店にガサ入れに入るって話が出てきた。」

「おかしいっすよね。あの騎士団が出張るなんて、相当な案件っす。

 本来契約を仲介するだけの店で、言ってしまえば見合いをセッティングするだけっすよ?」

 

「そこで皆、あの噂を思い出した。」

「俺は、その調査を頼んでたっす。」

「そして見つけた。手品のタネは分からんが、実在するぞ。」

 

 

地図を渡される。

中央市場の外れ。移転前は行政施設が集中していた辺りに赤丸。

 

 

「…嬢ちゃん、まさかとは思うが…。」

 

「ヒューゴさん!召喚獣買いに行きましょう!!」

 

 

「どう考えても非合法だろ!いい加減にしろ!

 獅子心騎士団が動いてるんだろ!?どうしてそう危ない橋を渡らにゃならん!」

 

「おいおい、落ち着けよ。」

「そうっすよ。俺たちはただ、金を払って契約の仲介を依頼するだけっす。何の違法性があると言うんす?」

「ちなみにその店には常時、十数体の魔物が居るんだとよ?」

「選り取り見取りっすよ、ヒューゴさん!」

 

「なんてことを…!どう考えても監禁だろうが!んな奴隷商売やってるような店に…!」

 

「いや。」

「そこが奇妙なとこっす。」

「喋れる魔物であっても、その店への不満を漏らすことはないんだとさ。」

「魔物達は自分から契約を持ち掛け、店の客に従う道を選ぶらしいっす。」

「建前上は、召喚獣になりたい魔物のために宿泊場所を貸してる店、らしいぞ。」

「これもう分かんねぇな…っす。いやぁ、不思議な話っすね…。」

 

「建前って言ってんじゃん…。お前らも分かってんだろ?」

 

「そうだよ。だが客に法的な問題があるわけじゃないことは事実だ。」

「ヒューゴさん、逆に考えるんす。俺たちが買わなかった場合、魔物さんはどうなると思うっす?」

 

「そりゃ、その内獅子心騎士団のガサ入れで…。」

 

「救出されて解放されるかもな?」

「でも、その前に悪い商人たちに何処かに運ばれちゃうかもしれないっす。」

「だが。今、客が金を払えば?」

「少なくとも一体の魔物さんが救われるっす!」

 

 

 

 

 

 

 

「…ええい、分かった!

 だが、そういうことなら俺の金も持ってけ!一体でも多くの魔物を買ってこい!」

 

「おいおい、そんなことして面倒みきれるのか?」

「ヒューゴさん、優しさは美徳っすけど限度がありますっす。」

 

「召喚獣として需要がある魔物なんだろ!?なら自分で食い扶持稼いでもらえばいいだろ!」

 

 

「!」

「!」

 

 

その瞬間、嬢ちゃんに電流が走る!

カッと目を見開き、こちらを凝視!

ついでに帽子野郎も、驚きに身を固くしている!

 

 

「な、なんだよ…!」

 

 

「ヒューゴさん…そういうことでしたか…っす。旦那、追加で資金調達頼めるっすか?」

「ああ。そういうことなら、恐らく話に乗るヤツもいる…!周りに声をかけてみるぜ。」

 

 

「…そういうこと?」

 

 

「またまた、とぼけちゃってぇ…。

 買った魔物に働かせて、自分で稼がせるんでしょう?

 つまり、投資っす。自分で自分を買い戻させるなんて、中々思いつけることじゃないっす。」

 

「商人は在庫がはけて嬉しい、魔物は解放のチャンスが生まれて嬉しい。

 そして俺たちは騎士団のおかげで買い叩ける上、利子のリターンが見込める…!

 三方得する、絶妙な一手…!」

 

「流石ヒューゴさんっす!臨時収入に満足せず、それを増やそうと言うんすね!やりますねぇ!」

 

「圧倒的商才…!発想のスケールが違う…!

 流石お嬢さんを使って大量の不労収益を稼ぎだした男!

 これが敏腕女衒の実力…!」

 

 

 

「…おう。」

 

 

 

慌ただしく動き出す二人を見送る。

色々と言いたいことはあるが、魔物たちのために飲み込むほかない。

 

…女衒。女衒かぁ。

女衒とは、若い女性をヤバイ職業に斡旋する人買の一種だ。人身売買の仲介である。

 

今回は魔物相手だが、正直否定できる要素がない。

どうして…どうしてこんなことに…。

 

 

_______________________________________________________________________

 

 

 

 

 

 

食う者と食われる者、そのおこぼれを狙う者。

あらゆる悪徳、欺瞞、外道と無法が跋扈する迷宮街の暗黒面。

混沌の中、一人の男が、ちゃちな信義とちっぽけな良心で、昏い牢獄に金を蒔く。

鬼と出るか蛇と出るか、一天地六の賽の目に、今いくつもの命が賭けられる。

 

次回、「一攫千金不労収益:テイク・ァ・リスク・フォー・メガコイン」

 

ヒューゴ、敢えて火中の栗を拾うか。

 

 

 

 

 

 

 

どうしてこんなことに…(賢者モード)

俺はただ、金のために危ない橋を渡ってもらいたかったんです。

でもヒューゴさんが無駄に堅実な常識人だったから…しょうがなかった!

あとせっかく異世界ファンタジーだから、奴隷的な話を挟みたかった(†悔い改めて†)

 

ちなみに投資黙示録編は四話くらいで終わります。週末にももう一話投稿するのでよろしくっす。

今回はあんま語録使えなかったのが悔しいですが、次回は悪徳ポケモントレーダーさんが出るので色々使えそうです。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

一獲千金不労収益:テイクァリスク・フォーメガコイン

 
◆お久しぶりです。◆
◆一週間ぶりのお届け、第八話です◆


本作の魔物はほぼ=でポケモンと考えてください。シュバルゴ!
基本頭が良くて友好的ですが、発声器官が違うので喋れません。

でも一部喋れるヤツもいます。オウムとか魔法で音作れるヤツとか。
そういうヤツは伝説の~とか精霊獣~扱いされて持て囃され、召喚契約を結ぶことが一種のステータスになったりもします。



 

 

これまでの迷宮再走!

 

 

 

人間種と契約を結び、協力してくれる魔物を召喚獣と呼ぶ。

その召喚獣との契約ってのは本来、相互の納得が大事になる。

やろうと思えば魔物側がいつでも帰還でき、呼び出しも拒否できるからだ。

 

だが、どうにも例外があったようで…。

 

 

「アングラ市場にはな、まことしやかにある噂が流れてた。」

「曰く、金さえ払えば、どんな召喚獣とも必ず契約できる店。」

「曰く、そこの召喚獣は従順で購入者の言うことに良く従う。」

「特殊マスターカードの力らしいっすけど。」

「だが最近、獅子心騎士団が召喚契約を扱う店にガサ入れに入るって話が出てきた。」

「でも、その前に悪い商人たちに何処かに運ばれちゃうかもしれないっす。」

 

「…ええい、分かった!

 だが、そういうことなら俺の金も持ってけ!一体でも多くの魔物を買ってこい!」

 

「買った魔物に働かせて、自分で稼がせるんでしょう?つまり、投資っす。

 流石ヒューゴさんっす!臨時収入に満足せず、それを増やそうと言うんすね!やりますねぇ!」

 

 

 

そういうことになった!

目指せ!時限イベントフラグ・パーティメンバー・金の一括獲得!

 

 

 

 

 

 

_______________________________________________________________________

 

 

 

 

 

 

 

 

フォックスリバー36番地。

 

 

かつて王国の行政施設が存在し、そしてその移転により寂れてしまった地区。

迷宮とも中央市場とも若干の距離がある、人の渦巻く迷宮街の台風の目。

ここには人の流れも風の流れもなく、ただ淀んだ空気と暗い静けさだけがある。

今夜も幾人かの浮浪者が座り込み、薄暗い路地にただ漠然と視線を向けている。

 

 

Clank,ClankClankClank

 

薄暗い路地から投じられた、硬貨が落ちる音が響く。

見ればいつの間にやら、路地には一人の黒い男の影。

薄墨の闇から染み出したような、礼服姿の黒ずくめ。

 

 

Clank,ClankClankClank

 

さらにもう一枚、座り込む浮浪者の前に硬貨が投じられる。

だが浮浪者は動かず、それを拾おうとはしない。

あるいは、既に死んでいるのだろうか。

 

否。

彼の瞳には光がある。その風体には似つかわしくないほどギラついた目が。

ここが薄暗い路地でなく、日の当たる場所だったならその齟齬はひどく目立ったことだろう。

 

 

Clank,ClankClankClank

 

三枚目。

気付けば、黒ずくめの男は浮浪者の目の前に立っていた。

 

 

「店に案内してほしい。」

 

 

出し抜けに、男が口を開く。

浮浪者は答える。

 

 

「紹介状は。」

「ない。」

「なら通せねぇ。」

 

 

静寂。

 

 

Clank,ClankClankClank

 

 

落とされる四枚目。

 

 

「ハッ…買収のつもりか?こんなもので?」

「そうだ。」

 

 

男は鞄から袋を取り出し、浮浪者の前に放り投げる。

ごしゃり、と重量感のある音。

 

 

「俺は金持ちなんだ。

 それだけで店に入る資格になると思うが、どうかな?」

 

「…いいだろう。」

 

 

 

 

そして黒ずくめの男――ヒューゴはその店に案内されることになった。

 

 

 

 

 

 

_______________________________________________________________________

 

 

 

 

 

 

 

『よし、第一関門突破だな。』

『良い成金っぷりでしたっす、ヒューゴさん。』

『…それ、褒めてんのか?』

『演技の見事さを褒めてるんすよ~。』

 

 

丸一日を準備に費やし、翌日。

俺と嬢ちゃんは、例の店にたどり着いていた。

ちなみに投げた袋は回収した。浮浪者には睨まれたが、この金は魔物救出のために使いたいからな。

 

現在は短距離念話で会話しながら、二人で浮浪者の案内に従っている。

 

装備品を介した短距離念話は、発声ではなく思念での意思伝達を行う魔法だ。

射程距離が非常に短い上、相互で同じ装備品を使用する必要があるが、周りに声を聞かれないのは大きな利点だ。

 

 

『しかし…その恰好、なんとかならなかったんす?趣味悪いっすよ。』

『仕方ないだろ、キチっとした服はこれしかなかったんだよ。』

『いや、どっちかというと色味の問題っす。ほぼ喪服っすよそれ…。』

『黒、格好良いだろうが。何か問題があるか?』

 

 

アングラの怪しい店とはいえ、大金飛び交う高級店だ。

それなりの格好をせねば入店すら難しい。

そのため急遽倉庫に眠っていた礼服を引っ張り出し、ボッタクリ防具店に持ち込んで軽く手直ししてもらった。

ついでに嬢ちゃん用の服も急ぎで頼んだので、キレられたがどうにか頼み込んでやってもらった。

当然その分吹っ掛けられたが、今の俺たちには金がある。

 

服の他にも、通信用装備品を含めたいくつかの小道具を帽子野郎の店から購入している。

後ろ暗い店に行くのだ、用心はいくらしてもし足りない。

 

 

「こっちだ。地下に入る。」

「分かった。」

 

 

浮浪者――こうして立って見ると明らかだが、筋肉の量が浮浪者のそれではない。偽装だろう――の案内に従い、とある民家の扉を開けるとその家は床板がなく、そのまま地下トンネルへのスロープとなっている。

 

 

『地下の秘密通路っすか。テンション上がってきたっす!』

『頼むから迂闊な真似するなよ…。下手したらこのまま、二度と空を拝めないなんてことになりかねん。』

 

 

スロープは緩やかに続き、やがてトンネルになる。

角度は非常に浅く、斜め下というより横移動に近い。

 

 

『旦那の情報は確かだったみたいっす。』

『ああ、やはり魔物がいるのは、旧フォックスリバー刑務所みたいだな。』

 

「着いたぞ。今、壁を開ける。」

 

 

浮浪者がトンネルの行き止まりに宝玉を触れさせる。

宝玉に込められた魔力と壁の魔法陣が反応、ゆっくりと壁が左右に分かれ動き出す。

 

 

「ようこそ、いらっしゃいました。私は支配人のネッパー。お目にかかれて光栄です。」

「ああ。私も、この店に来れて嬉しく思うよ。投資家のヒューゴだ、よろしく。」

 

 

差し出された右手を握り、握手。

至近距離で、支配人と向き合う。

 

 

『…観察されてるな。』

『身なりのチェックというより、警戒っすね。やっぱ紹介状入手しといた方が良かったんじゃないっす?』

『そんな宛はない、だから代わりに小道具用意したんだろ?しっかり頼むぞ。」

『了解っす。これでも演技には自信あるんす、見とけよ見とけよ~。』

 

 

「本日はどのようなご用件でしょう?」

「この店がそろそろ畳まれるという話を聞いてね、その前に是非商談をしたいと思って来たのさ。」

「それはそれは…。」

「店を畳むなら、身軽な方が良いだろう?」

 

「そういうことでしたか。失礼ながら、そちらのお嬢さんは?」

「彼女は私の連れだ。」

「召喚獣との契約は、どちらがなさりますか?」

「私だ。だが、彼女にとっても同僚となる相手だからね。こうして連れてきた。」

「同僚…と言いますと?」

「見せてやれ。」

 

 

俺の合図に合わせ、嬢ちゃんが首の青いマフラーを少し緩める。

マフラーの下から覗くのは――――首輪。

 

 

「俺は、君たちと同業みたいなものでね。良い商談にしよう。」

 

 

 

 

 

 

_______________________________________________________________________

 

 

 

 

 

 

嬢ちゃんの首輪を見て、商人たちは明らかに警戒を緩めた。

 

 

『自分も犯罪者だよアピール作戦、成功っすね!』

『ああ。奴らは今、騎士団に追われる立場だからな。

 同じくこっちも追われる立場になんだと示してやれば、スムーズに行く。』

『向こうとしても、逃走資金は欲しいでしょうからね。客は嬉しいはずっす。

 さらにさらに、足元見て買い叩くこともできると思うっす!』

『…しかし、本当に良かったのか?』

『首輪っすか?別に良いっすよ、他ならぬヒューゴさんの頼みっすからね。』

 

 

「どのような召喚獣がお好みですかな?」

「空を飛べるものと、火を扱えるものはいるかい?」

「ええ、居りますとも。」

 

 

飛行できる召喚獣は、英雄譚や吟遊詩人でも謡われている定番の召喚獣だ。

単純に移動速度が馬の比ではなく、地形の影響を受けないので非常に便利。

また契約者が輸送の請負業を商っていることも多く、手紙や小包の輸送でお世話になる機会がある。

 

他には火や氷を扱える召喚獣も、職人たちと一緒に働いている姿をよく見る。

人間種の魔法使いよりも特化し効率化した魔法を使える魔物たちは、継続した魔法使用が求められる場面に強い。

 

 

「まずこちらの紅翼鷹。運搬可能重量は少ないですが、やはりこの速さは魅力です。

 あちらには騎乗可能な魔物がおりますので、ご案内致しましょう。」

 

 

『…想像以上だ。色々な魔物が居るな。』

『しかも、なーんか魔物さん達の様子もおかしいっすねー。怯えというより…諦観?』

『ああ。酷い目にあってるなら、抜け出すためにもっと客にアピールをしそうなもんだが…?』

『魔物の体に、目立つ傷とか調教の後とかもないっすね。』

『それはまぁ、良かった点でもあるが。疑問は増えたな。』

『…鷹の羽に、土がついてるっすね。』

『妙だな、ここは石造りの監獄だぞ?外に出る機会があるのか?』

『意外と、本当に宿泊場所貸してるだけの良い店だったりするかもしれないっす。』

『だが、そうだとすると些か設備も入店方法も大袈裟すぎないか?』

 

 

広い敷地を贅沢に使い、いくつかの監獄を繋げた広いスペースに魔物が一体ずつ居るようだ。

魔物間の距離もあり、相互に接触しないように配置されている。

 

ううーむ、入店方法といい、状況証拠だけなら完全に黒なんだがなぁ。

そもそも、魔物側が任意のタイミングで帰還できるのが召喚獣契約だ。

そして送還のための合図も、魔物側召喚者側双方が任意で決められる。

送還は転移魔法によって行われ、その妨害は容易ではない。超一流の魔法使いが十人居てどうにか、というレベル。

現実的ではない。

つまり召喚獣を売り渡すような真似をしても、魔物側が即帰還して終わるハズなのだ。

 

 

『一体どういうカラクリなんだか…。』

『まぁ、正直どうだって良いっすけどね。正当な取引で買う分には関係ないっす。

 ヌッ!大物が来たっすよ!』

 

「これは…!グリフォンか!?」

「ええ。有翼獅子、グリフォンです。騎乗も出来る飛行召喚獣として、非常に人気のある種でございます。」

 

『すげぇ!グリフォンをこんなに間近で見たの初めてだ!』

『すげぇ!グリフォン買えたら移動時間大幅削減でサクサク生活が実現するっす!

 ヒューゴさん、詳細スペックを聞いてほしいっす!』

 

『まずペイロード!』

「この魔物は、どれほどの重量を支えられる?」

「全身鎧の騎士を乗せてすら、飛行出来ます。」

 

『航続距離と連続飛行!』

「連続飛行は?」

「体調にも左右されますが、三時間は確実に可能です。」

 

『補給の確認!』

「餌は何を用意すればいい?」

「肉食です。野生では地上の獣を狩っていますので、現地調達も可能かと。」

 

『完璧っす!この子買っていきましょう!』

『おいおい、目的を忘れるなよ?』

『分かってるっすよ、こっからがほんへ、値段交渉の時間っす!値切るっすよ!

 (定価から)七割削減してやるっす!』

 

 

質問ついでに魔物のリストも閲覧。このフロアに居た十体分の魔物達の価格を確認する。

どうやら生息地がここから近いグリフォンは、安い部類のようだ。

実用性よりも、生息地からの遠さや貴重さによって価格が決定されているように見える。

 

 

 

早速地下入口近くにある応接間に移動、嬢ちゃんの指示に従う形で価格交渉を行う。

向こうとしても魔物を売って身軽になって逃亡したいだろうが、只では売ってくれない。

一体でも多くの魔物を救うためには、値切り交渉が欠かせない。

獅子心騎士団のガサ入れについてカマをかけ、相手を揺さぶる。

 

 

『はい、ここらで決め台詞っす!』

「あンた、背中が煤けてるぜ…。」

「くぅ…!分かりました、その価格で売ります…!」

 

 

緩急自在、硬軟織り交ぜた恐ろしい交渉術だった…。

召喚獣購入への躊躇の無さといい、闇商人より嬢ちゃんの方がヤバイ奴疑惑が発生してきたな…。

闇商人にガサ入れが入るって情報を聞いて、闇商人から商品を買い叩くって発想がもうアレだし。

 

 

「ではこちら、召喚獣契約済みのマスターカードです。本店のカードは特別性ですので、数点注意事項がございます。よろしいですか?」

「詳しく聞かせてくれ。」

「長時間の送還を行わないようにしていただきたいのです。」

「…何?」

「長時間の送還行った場合、召喚獣契約が切れますので悪しからずご了承ください。」

 

 

『特殊マスターカードとは聞いていたが…契約の方式からして違うのか?』

『でも今はそんな事はどうでもいいっす。 重要なことじゃない。

 まだまだ商談は終わらせないっす!限度いっぱいまでいく…!』

 

 

「ああ、注意事項については理解したよ。それじゃあ、次の商談と行こうか。」

「…?次、と言いますと?」

「言ったろう?俺は投資家だ。個人用に一体買っただけじゃ満足しないんだよ…!」

 

 

ごしゃり。

 

 

指示に従い、応接間のテーブルに金貨袋を放り投げる。

そのあまりの重量に、立派な木製テーブルが軋む!

 

 

「このリストの魔物、八種十体!すべて購入させてもらう…!」

「……!!」

 

 

『畳みかけるっす!相手が冷静さを取り戻さぬ内に決めるっす!』

『おいおい、そんな雑で良いのか?』

『さっきの価格交渉で、ネッパーの危機感は十分に煽ったっす。

 ヤツには見えている…この金こそが、救いの一手、クモの糸…!

 だから、必ず食いつきますっす!後は釣り上げるタイミング…!』

 

 

「…私どもとしても、有難い商談です。ですが、この価格ではとても…。」

「足りないってのか?グリフォンの丁度十倍の金が入ってるぞ?」

「値引きしたグリフォンの、十倍で御座います…!こんな価格で売っては、私の首が飛ぶ…!物理的に…!

 この三倍は頂かなくては、責任問題…!」

 

『よし!』

『針にかかったっす!』

 

ごしゃり

ごしゃり

 

「なんだ、その程度で良いのか。」

「へ…?」

「今投げた袋にも、同じ額が入っている。つまり丁度三倍だ。商談成立だな?」

 

 

ネッパーの視線は投げた硬貨袋にくぎ付けだ。

ぶっちゃけグリフォンは大分買い叩いたので、十倍x三倍にしてもリスト価格の総和より安い。

しかしこうして目の前に大金を積めば、その誘惑を振り切ることは難しい。

 

 

『堕ちろっす…!』

 

やがてネッパーはこの商談を受け入れた。

 

『堕ちたな。』

 

 

 

 

 

_______________________________________________________________________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに追加で投げたのは、帽子野郎が集めてきた分の金だ。

確実な回収の見込みがある、などと嘯くアイツの宣伝に中央市場の商人が乗ったらしい。

正直そんな怪しい話に乗ったヤツが居たことは驚きだが、今はどんな金でも有難い。

 

 

『いやぁ、大勝利っすね!』

『ああ、上手くいった。やっぱ目の前に大金積んだら、人間判断をミスるもんなんだな。』

『というか向こうとしても、多少の値引きは想定内でしょうっすからね。

 下手に在庫抱えるよりも、安く売り払った方が良い時もありますっす。』

『そんなもんか。ともかく帽子野郎のおかげで金も足りたし、これで気持ちよく帰れるな。』

 

『何言ってんすか!まだ金があるんなら、倍プッシュと行きましょうっす!』

『何?』

 

 

倍プッシュ?

リストに載ってる魔物は全部買ったんだ。

商品の無い商人相手に何しようってんだ?

 

 

『こんな後ろ暗い店が、客相手とは言え全部の商品見せる訳ないでしょう?

 常連向けか、何らかの事情で隔離しているか…理由は色々考えられますが、隠し玉の一つや二つあるハズっす。』

『む…。』

『とりあえずネッパーゆさぶって!ヒューゴさんやくめっす!』

 

 

追加分、九枚のマスターカードを持ってきたネッパーを問い詰める。

ネッパーは当初否認したが、追加の支払いを匂わせると白状し始めた。

…金の力ってすげぇな…。

 

 

「リスト外の魔物は居ります。ですが…リストに載せていないのにも理由がありまして。

 あの狼は狂暴で、お客様に危害を加える恐れがあるのです。」

「そうか。構わない、案内してくれ。」

「ですが…!」

「金ならあるぞ!私には支払いの用意がある!!」

 

 

ゴリ押しに根負けし、ネッパーがその魔物の居場所まで案内してくれることになった。

このフロアより二つ下、地下三階にその魔物は捕らわれているようだ。

ネッパーから、看守用の認証機器である腕輪を貸してもらう。

地下二階から先は刑務所時代の罠がそのまま機能しているらしく、それを避けるための器具だ。

 

 

『やっぱり居ましたね、隠し玉!狼ですってよヒューゴさん!』

『ああ。しかも、この店が御しかねる凶暴さだってよ。

 この店の特殊マスカーカードも万能じゃないってことか?』

『従順にするために、何らかの魔法を使ってるのかも知れないっすね。

 それが効きづらい種類の魔物さんなのかも?』

『だとすると、この店のカラクリを解き明かす手がかりになるかも知れねぇ…!』

『まぁ魔物全部買う以上、解いてもあんま意味ない気がするっすけど…。

 謎は解けなくとも、金の力で問題は解決できるっす。』

『んな身も蓋もないこと言うなよ…。』

 

 

 

 

 

 

ネッパーの指示に従い、地下二階を進む。

 

 

指定された順番でボタンを押さないと開かない門。

頑丈な施錠がなされた内扉。

罠だけでなく、厳重なセキュリティもそのまま機能しているようだった。

 

 

「この先の道が、赤と青のタイルで色分けされているのが見えますか?」

「ああ。」

「あれも罠の一巻でして、赤のタイルを踏むと下に落ちるのでお気をつけ下さい。」

 

 

見ると確かに、道が赤と青に塗り分けられている。

ほぼ一面の赤。飛び石のように、青いタイルが配置されている。

この様子では、一人ずつしか進めないだろう。

 

 

「ヒューゴ様、お先にどうぞ。」

「分かった。

 青いタイルを踏めば落ちないんだよなぁぁぁああああああ!?

 

 

バコン!

 

 

落とし穴が開き、俺の体が落下する!

 

なんで?

ちゃんと青いタイル踏んだじゃーん!

 

 

 

 

 

 

 

まさか!

咄嗟に穴の淵を掴み、ぶら下がりながら上を見上げる。

 

 

「お前もう生きて帰れねぇな?」

 

「ネッパー、てめぇハメやがったな!」

 

『ヒューゴさん、今助け――むぎゅう。』

 

「はっはー!こんなにもあっさり、自分から穴に入っていくとはな。

 どうせこの店は、明日には綺麗さっぱり掃除されるんだ!そこに人間が一人二人増えても変わらねぇんだよ!

 お前の金は、俺が有難く貰っといてやる!」

 

「ふざけるなぁああああ!『光の一撃』…発動しない!?」

 

「最後の一発くれてやるよオラ!」

 

 

淵を掴む手に、スタンピングが二発。

指の骨が折れ、体が落下していく。

 

 

「俺はそんなさ…殺すほど悪魔じゃねぇんだよ。落とし穴って言っても、死ぬような高さじゃない。

 その穴の先にあるのは、例の狼の檻さ! 狼と仲良くなれりゃあ生き残れるかもなぁー!

 はははははははは!」

 

 

はははは。

はははははは!

はーはっはっはっ!

 

 

ネッパーの笑い声が響く。

 

 

冗談じゃない!よりにもよって、狼に食われて死ぬなんざゴメンだ!

だが魔法は何故だが使えない!

指の骨は多分折られてる!

その上服も防具じゃない!

 

詰んだぁー!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_______________________________________________________________________

 

 

お  ま  た  せ

 

 

 

ふぅ…。成し遂げたぜ。

 

無事ヒューゴさんを、金のために渡った危ない橋から落とすことが出来ました。(こじつけ)

まぁ後ろ暗い店に、もう店じまいするから評判気にしなくて良いってタイミングで、大金持って訪ねた訳ですからね。

金に目が眩んだヤツにハメられて奪われちゃったりすることもあります。

 

 

次回、「プリズンブレイク:エスケープ・ビースト」は三、四日で書きます。多分。

ヒューゴさんは食われ♂ずに脱獄できるのか!こうご期待です。ケモホモも出るよ!(誇大広告)

 

 

 

◆一週間更新が遅れたのは、メガミデバイスのSOLラプターの所為です。許して?

 ゲート処理にデザインナイフ使ってて、指スパっといきました。キーボード打つと痛いですね…これは痛い…。



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。