黒ずくめの組織はヤベーところ (小野芋子)
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黒ずくめの組織はヤベーところ

一発ネタの思いつきです。
ツッコミどころ満載ですが、軽い気持ちで読んでいただければ幸いです。
それと、短編でありながらショートショートです。


 最近になって、工藤新一が学校に来なくなった。幼馴染の毛利蘭さんが言うには、難事件を解くために暫く学校を休むとのこと。

 学校舐めとんのか。

 思ったが口にはしない。席が前後ということもあって、それなりに仲の良かった間柄だ、普通に心配だってする。

 今の発言だって、それで進路は大丈夫なのかという意味で他意はない。

 まあ、そのうちひょっこり帰ってくるだろうし、その時は変わらずに接してやろうと思う程度には、俺も工藤のことを気に入っているのだ。

 

 

  ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★

 

 父親の誘いで、やって来たパーティー会場。

 アメリカの有名な女優、クリス・ヴィンヤードとか、その辺りの有名どころが集まるような場所にどうして俺がいるのだろうか?

 うまい飯が食えるという言葉に騙された俺がバカだったよ。やっぱり裏がありやがった。

 何でも元々は父では無く別の人宛だったのが巡り巡って父に来たらしい。

 そんな招待状を誰かに渡す人も人だが、それを受け取って出席する父も父だ。肝が座りすぎていてちょっと引く。

 そして俺を巻き込んだことは絶対に許さない。

 

 とは言ったが、所詮俺のような一介の高校生何ぞを見ている人もいないわけだから、肩身は狭いが結構楽だ。飯がうまい。

 母さん用にタッパーに入れていくつか持ち帰ろうかな?流石にマズイか?

 なんて考えながらウロついていたら、俺と同じくこの場では少し浮いている少年少女がいた。

 

 これ幸いと声をかける。

 

 少女は警戒して少年の後ろに隠れ、少年はえ?なんでお前いんの?って目で俺を見た気がするが気にしない。俺がこの場にふさわしくないのは俺が一番知ってる。

 

 自己紹介をしたところ、少年は江戸川コナン、少女は灰原哀というらしい。因みに俺の自己紹介は却下された。なんでや。

 なんでも江戸川くんは毛利さん家に居候しているらしく、また工藤の親戚というのもあって俺のことを知っていたのだとか。へー。

 他にもいくつか会話したあと、流れで一緒に行動することになった。正直、ちょっと肩身狭かったから嬉しい。

 

 さて、時折子供二人が好きそうな食事をとってあげたりしながら時間を潰しているのだが、なんか視線を感じる。

 俺を見ているわけではない。多分俺の足元にいる二人だ。まあ、俺と違って見た目麗しい将来有望な美少女美少年だからね。子役かなんかだと思って見てるのかな?

 そう思い視線の元を辿ればそこにいたのは桝山会長とかいう偉い人。

 あんな人でも子供に興味があるんだ、とちょっと失礼なこと考えて、なんとなく違和感を覚えた。

 なんというか、興味本位で見ている割には目が血走ってるっていうか、かっぴらいている。

 しかも桝山会長が見ているのは灰原ちゃんの方だ。

 いや、別にだからどうってわけじゃない。同い年くらいの孫がいて重ねているのかもしれないし、何か思うところがあって見ているだけかもしれない。

 ただ、目が血走っている。

 パソコンみたいなの開いてめっちゃ検索している。

 何かヒットしたのか、薄気味悪い笑みを浮かべている。

 そして今度は捕食者の目で灰原ちゃんを見た。

 

 いや、別に何でもない。

 最近見た漫画で、金持ちが女子供を金で買うような悪役が出て来たな。とか、考えてない。

 ああいうのをロリコンって言うのかな、とか思ってない。

 ホントだよ?嘘じゃないよ?

 

 まあ、一応。本当に念のために、灰原ちゃんの近くを離れるのはやめておくけど。

 アレだよ?迷子になったら危ないよねって意味だから。他意はない。

 

 そんな感じで、ちょっと警戒心を強めながらまた色々ウロついてたら急に人の波ができた、理由は分からないけど、なんかイベントが始まるらしい。

 それに巻き込まれて江戸川くんが流されていった。灰原ちゃんはまだ近くにいる。

 なんとか手を伸ばそうとして、灰原ちゃんの背後からハンカチを口に当てようとしているロリコン(枡山会長)が目に入った。

 蹴りを入れたのは、ほぼ条件反射。

 

 蹴られて盛大に尻餅ついた変態を指差して、コイツ誘拐犯ですって叫んだ俺は悪くない。

 

 

 後で聞いたが、事情聴取したらクロロホルム染み込ませたハンカチと、拳銃が変態の持ち物から見つかったらしい。

 変態(枡山会長)はそのまま逮捕されたとか、ニュースでやってた。

 え?なんで現場じゃなくてニュースなのかって?逃げたからだけど、何か悪い?大丈夫、灰原ちゃんは連れて逃げたから。あれ?これじゃ俺が誘拐犯じゃ……。

 

 ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★

 

 母さんが借りてた本の期限が今日だったとかで、どうしてか俺が図書館まで返すことになった。

 因みに両親は仲良く旅行中。お土産期待してます。

 現在俺は図書館に行くためにバスに乗っている。休日だけど、結構空いてたから一番後ろの窓際に座っている。バスって基本二人席だからボッチには辛いぜ。

 

 バス酔いしないよう窓の外見てたら、少し先のバス停にいつかの美少年美少女がお友達と、保護者であろう小太りのおじさんと一緒に立っていた。

 灰原ちゃんと一瞬目があったような気がするが、まあ気のせい気のせい。仮にあったしても俺との思い出=変態に襲われたって感じで思い出しそうだから、関わらない方がいいだろう。

 

 元気よく乗車して来た子供たちは何が楽しいのかテンションが高い。聞こえた会話から判断するに、これからスキーに行くのだろう。

 子供たちは元気にスキー。俺は図書館。成る程、これが年をとると言うことか。感慨深いね。

 

 また暫く揺られていると、次のバス停に着いた。乗車して来たのは、何人かの大人と、そして我が校の教師であらせられるジョディー先生と保健室のイケメン新出先生の二人。咄嗟に身を隠したから、多分俺の存在はバレてない。

 別にやましいなにかをしているわけではないけど、教師のデートに生徒が遭遇するとか、お互いに気まずいだけだからね。隠れるのが吉です。まあ、目があっても向こうが俺を生徒と判断するかは知らんけど。

 ほら、俺私服で印象変わるから。決してクラスじゃ目立たないとか、そんな理由じゃない。決してね。

 

 脳内で言い訳を繰り返していたが、それは突然の発砲音に遮られた。どうやらバスジャックらしい。本、今日中に返せるかな。

 

 

 バスジャック犯に携帯没収されて、本当にやること無くて周りをさり気なく見ていたら、お隣に座っているニット帽の目つきの鋭い男性の目が一瞬だけ細められたのが見えた。

 視線の先には江戸川くんと灰原さんが座っていた座席が、窓ガラスで反射して写っていた。

 まさか、ね。

 そんな訳はないと思うが、なんせあの二人だ。前例はある。

 勿論それはあくまでも推測だし、なんなら妄想だから、疑っているわけではない。

 無いんだけど、この男性、ちょっと笑ったんだよね。それも嬉しいって言うより、危ない感じで。

 前門のバスジャック犯、となりのロリコン(もしくはショタコン)、俺史上例を見ない地獄が幕を開けた。

 あっ、ロリコンって言っちゃった。

 

 

 

 バスジャックは見事失敗に終わった。なんか最後爆発したし、腰が抜けたのか取り残された灰原ちゃん抱えて逃げたら見事に巻き込まれて全治1ヶ月の大怪我をしたけど、まあ問題は無かった。

 心配する両親に子供を庇ったって言ったら困った顔されたけど、まあ、見捨てるよりマシだよね。俺超頑張った。

 

 ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★

 

 漫画の新刊が出るらしいので、大型スーパーに自転車で買い物に来た。あんまり来ない場所だから本屋を見つけるのに少し手間取ったが、お目当ての漫画は手に入った。家に帰ったら早速読もう。

 なんならこのまま昼食も食べて行こうかと食事処を見て回っていたら、なんかジョディー先生と毛利さん、鈴木さんがいた。

 クラスメイトに休日に遭遇、しかも昼時は確実に気まずい。そう思い気をきかせた俺は颯爽と降りエスカレーターに乗り込んだ。

 アレだよ?別に顔合わせて向こうが俺を知らなかったらどうしようとか、そんなことは考えてないよ?ほんと、気を使っただけだから。女性の園に足を踏み入れない紳士なだけだから。

 

 ただ、焦っていたせいか、また道に迷って気づけば地下駐車場まで来ていた。

 まあ、外に出ればどこも同じだし、そんなに気にせず改札まで歩いていたら後ろから猛ダッシュで少年が走って来た。ってか江戸川くんだった。

 よほど余裕がないのか、命令口調だったが、要約すると人が死んでたから出入り口を塞いでおいて欲しいとのこと。

 成る程、それは確かに一大事。口調の荒さは焦っていてついついそうなったのだろう。あまり気にする事はせず、言われた通り出入り口に陣取りついでに警察に連絡をいれておいた。

 もしかしたら既に電話しているかもしれないけど、呼ばないよりはマシだろう。

 

 

 

 さて、警察関係者がいっぱい来たが既に俺はお役御免だ。駐車場で俺が見たことは既に全部伝えたし、興味本位で殺人現場に居残るほど酔狂な性格でもない。大人しく自転車拾って帰ろうとして何故か小太りのおじさんに声を掛けられた。

 なんでも今日この場に来たのはデパート内の病院に病人・灰原ちゃんを連れてくるためだったが病院は閉まっていて、ようやく知り合いの医者・新出先生に連絡がつき自宅で見てもらえるようになったが、車がエンストして動かないとかどうとか。それを江戸川くんに相談したら俺が自転車で来てるだろうからその荷台にでも乗せて送ってもらえと言われたらしい。

 なぜ俺が自転車だとばれた。聞けば工藤が何か教えたらしい。まあ、お得意の推理だろう。もはや予知みたいになってて怖いが。

 

 で、流石に荷台に病人はあれだから、おじさんこと阿笠さんの車にある椅子を利用して簡易的なチャイルドシートを作って送ることになった。

 そこは阿笠さんがやってくれるそうなので、取りあえず俺はダッシュで薬局まで行って冷えピタとかマスクとか、スポドリとか買いまくった。途中ジョディー先生達に声をかけられたような気もするが総スルーだ。緊急事態だから仕方ない。態度悪い奴と取られても文句は言わない。

 

 地下駐車場に戻れば既に改良された俺の自転車がそこに、既に灰原ちゃんも装備されている。流石に仕事が早い。

 流石に外は寒いから汚いが俺の着ているコートとマフラーも灰原ちゃんに装着して、いざ出発。

 鍵は貸してもらったし、工藤の家の隣なら場所も分かる。後ろに負荷がかからないように細心の注意を払い、丁寧に漕ぎ始める。

 そう言えば、江戸川くんが新出先生には十分注意して欲しいと言ってたのはなんなんだろう?

 

 

 

 

 大体十分くらいが経過して、漸く目的地に到着した。足が滅茶苦茶痛い。ペダルも若干壊れた。まあ急いでたからね、しょうがない。

 玄関前にはすでに新出先生がいたのでそのまますぐに布団まで運んだ。なんか新出先生の歩みが淀みなかったが、今は気にしない。

 結構複雑な阿笠さんの家で迷わず進めるってどうなのとか思ってない。多分、頻繁に来ているんだろう。家主の許可を取ってるかは知らないが。

 

 

 診察が始まったので一度部屋から出る。相手は子供とは言え少女だ。紳士としての行動、大事。

 だが、部屋を出る直前に見えた新出先生のあの顔。完全に獲物を見据えた目をしていたんですが。

 え?違うよね?そんなわけないよね?

 なんだか二人きりにすると危険な気がしたのでドア前にスタンバってわざとらしいくらいに咳き込んでやった。

 

 新出先生が医者になった理由って……。やめよう。これはあくまでも妄想だ。江戸川くんが変なことを言ったせいだ。おかげでロリコンにしか見えなくなったぞ!

 

 

 結局、江戸川くんと阿笠さん、あと何故かジョディー先生が帰って来たので俺は帰ることにした。因みに新出先生は診察以外は何もしていない。部屋から出てきた時本当に一瞬だけ苛立った目を向けてきたのは果たして俺の咳がうるさかったからか、別の理由か。前者だと信じたい。

 阿笠さんにはゆっくりしていけと言われたけど、俺がここにいても出来ることないし、普通に邪魔だから帰るしかないよね。あと、真冬の外を薄着で自転車トばしたせいで…ね?

 

 どうでもいいが、新出先生が江戸川くんを見る目も随分アレだったんだけど。何と言うか、愛おしいものを見る目だったんだが。もしかして新出先生はショタコ……いや、何でもない。

 あと、阿笠さん家を出て家まで自転車押してたら駐車している車が見えたんだけど、運転席に座ってたのがいつか見たニット帽に鋭い目つきのロリコ…おじさんだったんだが、偶然だよね?

 ………ストーカーじゃないよね?

 

 

 あ、もちろん翌日は風邪で倒れました。やった!これで新出先生と顔を合わせずに済むぞ!(ポジティブ)

 

 ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★

 

 父に頼まれて、父の友人の家に荷物を届けに来た。木馬荘とかいうアパートの大家らしい。…木馬って聞くとつい叫びたくなるのは俺が決闘者だからだろうか。木馬アアアアア!

 

 地図アプリを頼りに歩みを進めること数十分、漸く見えたそこは、燃え尽きていた。なんでや。

 刑事さんがいたから事情を聞いてみれば、何でも昨夜放火されたらしい。マジかよ。

 取りあえず入院している病院だけ聞いたのであとは父にでも連絡しようとしたところ、急に袖を引かれた。

 何気なく下を見れば何故か満面の笑みを浮かべた江戸川くんがそこに。もしかして……地縛霊?

 などと冗談を言っている場合ではない。なぜここにいる江戸川くん?それによく見てみればバスの時の子供達もいるし、それと灰原ちゃんも。

 

 なんでも、詳しく理由を聞けば大家さんの息子さんに昨日依頼を受けて今日来てみれば燃え尽きていたのだとか。

 大家さんの息子か、確かミニカーが好きなんだっけ?あれ?それは大家さんの趣味だっけ?

 何気なく思い出したことを呟いてみれば、なんか江戸川くんがハッて感じの顔をした。何か閃いたみたいだな。確か工藤も閃いたら似たような顔してたし。

 

 さて、じゃあ俺は帰るか。と、今度こそ立ち去ろうとすればまた袖を引く感覚が。

 まだなんかあるのかと見れば、そこには江戸川くんではなく灰原ちゃんがいた。

 何やら言いにくそうに俯いているためその真意は分からないが、何かあるのは間違いないだろう。

 なんだろ、ついにロリコンによる実害が出たのかな?それは俺に相談されても困るんだけど。

 

 そう言えば、灰原ちゃんが近づいてきたことでそれを目で追ったのだろう、俺にも視線が突き刺さっているため、誰かが灰原ちゃんを見ていることに気づいた。

 視線のもとを辿ればそこにはアパートの住人らしい三人の男性が。うち二人は明らかに別の方向を見ているため、こちらを見ているのは消去法的に薄目の眼鏡の男性だ。

 雰囲気は知的な感じだが、いや、寧ろ勉強し過ぎておかしくなったのかな?目を細めていればバレないとでも思っているのか、ガッツリ灰原ちゃんを見ている。

 どう考えてもロリコンなんだが、これも俺の被害妄想なのか……?だが近くに警察いるし一応言っておいた方が…。

 少しだけ迷っていると灰原ちゃんに声をかけられた。なんだ、やっぱりこの子も気づいているのかな?

 けど大人に相談も出来ないし、友達にはもっと相談できないから高校生(丁度いい距離)の俺に相談する気なのかな?

 

 と、思ったが内容は特にそんなことは無く。何故か礼を言われた。

 

 なんの話?

 

 聞いてみたら、色々だって。俺、なんかしたっけ?普通に覚えがないんだが。

 いや、正確には灰原ちゃんと出会ったときは高確率で別のことに意識を割かれる(変態とエンカウントする)から覚えてないだけか。

 とは言え子供が精一杯感謝を述べているのに、それを突っぱねるほど俺はゴミ屑ではない。笑顔で答えておいた。

 ……何故か例の眼鏡の男性(ロリコン)の視線が強くなったが、気にしない。気にしないったら気にしない。

 

 

 

 事件はあっさり解決した。江戸川くんが工藤みたいにかっこよく解いてみせたのだ。

 ただ、問題はその後のロリコン(眼鏡の男性)の発言だ。なんか阿笠さんに興味があるから家に連れてけガキども(一部ねつ造あり)とか言い出しやがった。

 こいつ……まさか、灰原ちゃんの居場所を探る気か……!?

 いや、もちろん俺の勘違いの可能性は普通にあるけど、でもこの人スゲー怪しいんだよ。

 子供たちの中にいたもう一人の少女に向ける視線と灰原ちゃんに向ける視線が明らかに違うし。なんなら江戸川くんに向ける視線も違うし。

 怪しい、怪しすぎるぞ…!

 流れに乗って俺も阿笠さんの家に行くべきか…?いや、そもそもこの人がロリコンだと決まったわけでは…。だがここで帰って後でニュースで誘拐事件とか見るのも嫌だし…。

 

 で、結局ついて行った。もともと灰原ちゃんが俺にお礼がしたいらしかったからそれを理由にした。寧ろ灰原ちゃんが理由を作ってくれた気がしないでもない。やはり彼女も気づいているのか?怯えた目でみてるし。そしてそんな彼女をみてニヤリと笑うロリコン。実害が無い以上通報しても煙に巻かれるだけか…。クッ、これが法で裁けない悪か…!

 

 

 灰原さんに作ってもらったケーキは旨かった。あ、どうでもいいけど灰原ちゃん呼びは却下された。江戸川くんは爆笑してたけど本人的には気に入らなかったらしい。そしてちゃん呼びした時目ん玉かっぴらいたロリコンェ。マジで通報したい。

 あと、そのロリコン(大学院生←大丈夫か日本の未来)は図々しくも阿笠さん家に住まわせろとか宣ったから110番しかけた。11くらいまで入力したところで江戸川くんに止められたから通報できなかった。ナズェジャマスルンドェス!!エドガワサン!!

 その場は工藤邸を貸すということで決着がついた。哀れ工藤。久々に帰ったら壁一面に少女の写真が貼られていないことを祈ろう。

 

 ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★

 

 最近転校生が来た。名前は世良真純。本人曰く高校生探偵らしい。どうでもいいけど、それって職業なの?探偵だけじゃダメなの?

 その世良さんだが、俺の右斜め前の座席。つまりは工藤の右隣りの席に座っている。

 俺が窓側の一番後ろとかいう最高の座席だから、結構端の方だ。なぜその席にしたのかは知らないが。

 一応俺の隣は一列空いてるんだよ?人数が5で割りきれないから俺の座席だけ飛び出てて寂しいんだけど。

 

 閑話休題

 

 そういう座席の関係もあって、世良さんはよく俺に話しかけてくる。なお、内容はすべて工藤についてだ。

 まあ、同じ高校生探偵としては気になるんだろう。いいライバル意識だ。こいつは伸びるな(上から目線)

 とは言え俺が知っている工藤はただの高校生の工藤だ。たまに学校で起きるちょっとした事件をどや顔で解くこともあるが、基本探偵の工藤に関して俺は知らない。

 だが、そんな俺目線の工藤だからこそ新鮮味があるのか、しつこいくらいに聞いてくる。何この子怖い。

 しかしそんな彼女も職業女子高校生探偵(女子高校生が職業になるかは知らない)であるため放課後は忙しいらしい。だからこのしつこい追及も放課後になれば終わるのだ。

 

 

 

 そんなことを考えていた時代が僕にもありました。現在放課後、世良さんは俺の隣で工藤談義で一人盛り上がっております。

 傍目から見ればクソリア充に見えなくもなくなくないわけでもないかもしれないが、実際甘さなんてものは微塵もない。誰かぁあ助けてー!

 そんな声が聞こえたのか、突如として世良さんは黙り込んだ。もしかして俺の願いが通じたのか。そう思ったが、よく見れば世良さんの目は先ほど以上に輝いている。獲物を見つけた野生の目ともいう。

 視線の先を追えば、そこには江戸川くんの姿が。

 おい、まさか、お前も……!?

 そんなバカな。そう思いながらも俺の経験はそう(・・)であると告げている。

 そして事実として、世良さんは駆けていった。

 その様は、友達のもとに走って向かう女子高生ではなく、縄張りに入った獲物に向かう、肉食動物であった。

 

 などと軽く現実逃避をしている場合ではない。このままでは江戸川くんが危ない。

 彼にもしものことがあれば、俺は両親に顔向けができないぞ。

 そんなわけで俺も全力ダッシュ。

 何やら自宅に来ないかと江戸川くんを勧誘している危ない女子高生と、明らかに警戒している顔つきでそれを見ている江戸川くんの間に割って入る。

 

 何やらぶつくさ文句を言う世良さんを無視して連行する。

 大丈夫、まだ高校生だから、大丈夫。

 

 

 寧ろ高校生で既に年下趣味に目覚めているのはやべーんじゃねえの?

 一瞬だけそう思ったが、直ぐに思考の隅へと追い払った。

 大丈夫。世の中にはもっとヤベーのがいるから。うん、大丈夫。ダイジョウブナンダ。

 

 ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★

 

 父の頼みで喫茶ポアロに向かっている。なんかポアロのマスターに本借りっぱなしだったから返して来てって言われた。

 なんで俺が、と思ったがコーヒー代貰ったから大人しく従っておいた。

 喫茶店で一人コーヒーを嗜むのってカッコいいけど恥ずかしいからね、その理由を作ってくれた父には本当頭が上がりませんわ。

 道中女子高校生らしい写真をにやにや眺めながらシェリーシェリー言ってる銀髪で長髪のヤベー奴がいた気もしないでもないが、きっと気のせいだ。

 

 少し歩いて到着した喫茶ポアロ、出迎えてくれたのは噂の看板娘……ではなく金髪褐色のお兄さん。なんだろう?バイトの人かな?

 案内されるままに席に着き、注文を聞いて来たので先に要件を告げた。

 残念ながら今マスターは買い出しに行っていて不在だとか。その為俺はコーヒーを飲みながら時間を潰している。

 バイトの人は渡しとくと言ってくれたが、ここは俺が直接渡すのが礼儀だろうと断った。

 

 …礼儀なら父が渡せとか言わない。お互いに社会人だから忙しいんだよ。うん、そういうことにしておこう。

 

 さて、美味しいコーヒーに舌鼓を打っているとふとバイトの人から不穏な気配を感じる。

 何気なく視線を向ければ何やらテレビを睨んでいた。

 因みにテレビでは今話題の歌手がアメリカに来い来い歌っていた。

 そしてそれを親の仇のような目で睨むバイトの人。

 

 これはFBIの陰謀か?日本のほうが素晴らしいに決まってる。おのれ赤井ぃぃぃ!と何やらぶつぶつと呟いているが。

 どうしたんだろ?疲れてんのかな?

 

 カランと鈴が来客を告げると直ぐに笑顔を作っていたあたり仕事熱心ではあるっぽいし、やっぱ疲れてんだろうな。顔も整ってるからもしかしたらそっち方面で面倒事でも起きたのかも。

 まあ、人間色々あるしな、と自分を納得させて客に目をやれば、なんと江戸川くんがいた。

 江戸川くんも俺に気づいたのか、一瞬だけ驚いた顔をしたが直ぐに笑ってこっちまで走って来た。なぜかその笑顔に恐怖を感じたが。

 

 そのまま流れで相席することになったから、丁度持ち合わせもあるしケーキを奢ってあげた。何やら気を使われたが、なに、気にすることはないよ。

 

 ……ただ、江戸川くんにちょっと妙な視線を向けるバイトの人が気になっただけだから。

 江戸川くんが視線を向ければ笑顔を見せるんだけど、ちょっと視線を逸らせば食い入るように見てるんだよあの人。

 一挙手一投足まで見逃すまいとしているみたいで正直滅茶苦茶怖い。モテそうな外見なんだから女にいけよ!

 だが、それに気づいていないのか江戸川くんは笑顔で俺に話しかけてくる。そしてその度に聞き逃すまいと耳を傾けるバイトの人。

 なにこのカオス空間。帰りたい。

 

 ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ 

 

 親戚の家に荷物を届けてきたら日が暮れてしまった。

 しかも運の悪いことに財布の残金が行の交通費しかなかったために歩いて帰るはめになった。

 距離的にはそこまで遠くないがまず間違いなく9時は過ぎるだろうな。明日の宿題がまだ残っていることを考えると正直気が重い。

 両親は出張で今日は帰ってこないため迎えが呼べないのは痛いな。いっそ自転車でくれば良かった。

 

 夜の米花町を眺めながら歩いていると、明らかに速度超過なスピードで大通りを一台の車が隣を過ぎ去っていった。

 なんだなんだと目で追うと、交通事故が目の前で起きた。

 マジか、やっぱ米花の夜は世紀末だな。

 

 ふざけている場合ではないだろう。俺同様に事故現場を見ていた人間は興味深そうにそれを眺めているが、良くて野次馬、悪ければただの通行人だ。事実スマホで写真を撮っている人間はいても通報している人はいない。

 正直それに苛立ちはあるが今はそれどころではない。急いで119番通報をして要件を告げ終え、次は警察に通報だと110番をうつのとほぼ同じタイミングで世良さんがバイクで人を吹っ飛ばした。

 

 おいおいマジか。俺は同級生を通報しなければならないのか。

 だが、同級生だからこそ見過ごすわけにもいかない。

 

 俺の中の天使と悪魔が小競り合いを始めたが、それは何処からか湧いて出てきた江戸川くんに頬ずりをする世良さんを目撃するとともに終結を迎えた。

 よし、通報しよう。

 これは通報しなければならない。

 よく見てみればあのバイトの人も大学院生もいるから一斉検挙出来るかもしれない。

 これで日本も少しはマシになるだろう。

 

 

 なお、結局警察が逮捕したのは吹っ飛ばされたおばさんだった。

 なんでや!もっとヤバい奴おるやろ!後ろ!後ろの大学院生捕まえて!

 

 ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★

 

 父に連れられて家族三人でベルツリー急行とかいうのに乗っている。

 なんでも都合が悪くなって行けなくなったお得意さんが、どうせならって譲ってくれたらしい。

 いつも思うが父の交友関係はどうなっているんだろう?

 どうせ聞いても分からないから聞かないけど。

 

 そんなわけで俺はベルツリー急行を満喫していた。時に景色を楽しみ、時に食事を楽しみ、そしてゆったりとした空間で読書を楽しむ。

 やばい、俺の休日充実し過ぎッ!

 途中騒がしくなった時もあったが、ベルツリー内では推理ゲームをするらしいから多分それだろう。

 ゲームに参加する気のなかったうちの家族は特に気にすることなくまったりとした時間を過ごしていた。

 

 そう言えば、電車内を見てなかったな。

 ふと思いついたので、その直感に従いちょっとした冒険をすることにした。

 男は何歳になっても冒険が大好きなのだ。

 

 

 いくつかの車両を見て回っているが、ほとんどの構造は同じみたいだ。

 食堂車は少し変わっていたが、それくらいだろう。

 何か面白いことはないのか、期待しながら次の車両のドアを開けると、軽い衝撃が襲ってきた。

 なんだろうと見てみれば、尻もちをついている灰原さんがいた。凄く怯えた顔をしているが、何があったんだろう?

 ふと、奥を見てみればニヤついた顔をした大学院生がいた。

 

 こ い つ だ

 

 俺がスマホを取り出すのと、大学院生(ロリコン)が蹴りを繰り出すのはほぼ同時。

 右手を痛みが襲い、スマホが弾き飛ばされた。

 

 このロリコン、戦闘も出来るとかふざけてんの?

 

 だが、だからといって逃げるわけにはいかない。目の前で子供が襲われているのに見捨てるなんて、出来る筈もない。

 体育の柔道くらいでしか対峙した経験はないが、足には自信がある。

 最初から戦う気はない。灰原さんを抱えて車掌のもとまで辿り着けば俺の勝ちだ。

 ポーズだけは戦闘の体勢をとって、狙いには気づかせない。

 どうせ隙なんて見せやしないから、無理やりこちらで作る。

 

 

 結論から言えば、俺の企みは成功して失敗した。

 大声出せばビビるだろうと息を吸い込んだら、予想通り焦った顔して近づいて来たからその顔面にチョコレートを投げつけてやった。ポケットに入っててよかった。

 一瞬だけひるんだからその隙に灰原さん抱えて逃げて、そしたら大人の女性と出会ったから通報してくれと頼もうとして、そこで俺の意識は途絶えた。

 ガスみたいなのぶっかけられたから、もしかしたらあの女性もグルだったのかもしれない。

 目が覚めたのは何処かの個室だった。急いで外に出ようとしたが、火事があったとかで人の渋滞が出来ているせいで身動きが取れない。

 俺一人しかいない個室はやけにだだっ広く、少女を変態から救えなかった無力な俺を責めた。

 

 

 と、シリアスで終わる筈だったが、そうは問屋が卸さない。

 電車が止まったので人ごみに紛れて下車していると、なんと灰原さんが阿笠さんに背負われているではありませんか。

 驚いて二度見すると目が合った灰原さんに笑われた。阿笠さんには苦笑いされた。

 手招きされたので近寄ると、落としていた俺のスマホを渡してくれた。

 それと、あの大学院生とは鬼ごっこをしていたのだと説明された。

 正直その説明で納得するのはきつかったが、そういうことにして欲しいと懇願する灰原さんを疑うのも心苦しいのでそういうことにしておく。

 まあ、次に見かけたら容赦なく通報するけど。

 

 ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★

 

 いつもと変わらない教室、だと思ったがよく見れば席が一つ多い。また転校生でも来るのだろうか?まあ、別にいいけど。俺の隣の席はやめて欲しい。緊張するじゃん。

 人もまばらに増え始め、にわかに騒がしくなり始めた教室内をボーっと眺めていると、何やら廊下が騒がしくなってきた。

 何事かと視線を向ければ、まるでそれに合わせたかのようなタイミングで開くドア。

 

 その先に立っていたのはいっそ懐かしさすら感じる端正な顔立ち。自信満々な顔で、幼馴染の毛利さんと軽口をたたき合う名探偵。まだ一年も経ってはいないのに、既に数年はあっていない気がするのは果たして何故か。ダイジョウブ、カンチガイデス。マダ、イチネンモタッテマセン。

 なんか頭が痛くなったがまあいい。

 迷いなく俺の前の席に荷物を預けた工藤は、また少しだけ毛利さんと話すと、大人しく席に座った。

 

 俺から何かを言うことはない。所詮俺と工藤は席が前後程度の仲だ。有名人の工藤とクラスに一人はいる準ボッチの俺。久々に登校して周りにワチャワチャされている工藤に、そこに割って入ってでも声をかける気はない。

 まああれだ、昨日まで前の席が空席だったせいでこっそり寝ることも出来なかったから学校に来てくれて嬉しい。だって寝れるし。他意は無い。ツンデレでもない。

 

 鳴り響くチャイムに工藤に群がっていたクラスメイト達は蜘蛛の子を散らすように席に戻る。乱暴な歓迎が終わりもみくちゃにされた工藤はといえば、ふてくされたように、めんどくさそうに、それでも嬉しそうに笑っていた。多分、それは俺しか知らない。馬鹿め、後ろの席というのは意外と見えるものなんだぞ。ばれないように喜ぶならもっと周囲に気を払え。注意力が足りんのだよ。

 意外な一面を見たような気がして、けど所詮俺がそれを知っても意味はない。鈴木さん辺りが知ればからかうだろうが、それは俺のキャラじゃないし。大人しく脳の片隅にでも保存して、そしてその内忘れよう。

 少しだけ温かい気持ちになっていると、ドアを開けて先生と、その後ろをなんか茶髪の美人さんが入って来た。あー、あれが転校生か。

 

 朝の挨拶を軽く済ませた先生は、少しだけ場を盛り上げて転校生を紹介した。名前は、宮野志保。誰もが見惚れるような綺麗な顔で簡潔に自己紹介を終えた転校生は、そのまま空いていた席、俺の隣の座席についた。途中工藤とアイコンタクトみたいなのとってたけど、もしかして知り合い?

 これは転校生と幼馴染間で修羅場が勃発するかも。やべー、次の休み時間は急いで避難せねば。

 くだらない計画を立てながら、窓の外を見る。鬱陶しいほどに澄み渡った空に興味はないが、逆をむけばあの綺麗な転校生が座ってるからね、こっち見るしかない。

 まあ、どうせ俺との間になにかはない。あるとすれば工藤くらいだ。クラスメイトの男子数名は狙ってるみたいだが、うん。身の程を弁えろ(辛辣)。

 

 「…ねえ」

 「ん?」

 

 聞こえた声に振り返りながら返事をして、そこで漸く声をかけてきたのが転校生だと気づいた。やっぱり綺麗な顔をしている。モデルでもやってんのかな?サイン……をもらう勇気はねえな。

 その転校生は、ほんの少しだけ言いづらそうに視線を逸らして、けど、直ぐに覚悟が決まったのかまっすぐにこっちを見て

 

 「あなたの名前を、聞いてもいいかしら?」

 




それぞれの物語。

原作24巻 アニメ176~178話「黒の組織との再会」

原作29巻 アニメ230~231話「謎めいた乗客」

原作41巻 アニメ338~339話「4台のポルシェ」

原作60巻 アニメ509~510話「赤白黄色と探偵団」

オリジナル

オリジナル

原作76巻 アニメ671~674話「探偵達の夜想曲(ノクターン)」

原作78巻 アニメ701~704話「漆黒の特急(ミステリートレイン)」

オリジナル 組織崩壊後


(主人公から見た)黒ずくめの組織

ジン:女子高生の全裸妄想してポエム作るヤベー奴
ベルモット:小学生を執拗に付け回し、電柱破壊する女子高生をエンジェルとか素面で言ってのけるヤベー奴
ピスコ:少女誘拐未遂犯
ライ/赤井秀一/沖矢昴:少女をビビらせ、その怯え顔を肴にバーボン嗜むヤベー奴
あの方:ロリショタな同胞を集めて組織を結成したヤベー奴

因みに主人公がアポトキシンの存在を知った時の反応
「ああ、ついに養殖のロリショタに手を出したか」
これは酷い

バーボン/安室透/降谷零:ピスコが少女誘拐未遂で逮捕されたと知ってファッ!?てなった人。その後女子高生にご執心のジン、小学生を守れとパワハラしてくるベルモットをみて組織に長居をするとやべーことになると察した。
なお、主人公に自分も同格だと思われていることを知ったら泣く。
世良真純:女子高生にしてすでにショタに目覚めたヤベー奴。


江戸川コナン/工藤新一:変態どもに狙われる可哀そうな子。と思われているなんて微塵も思っていない名探偵。踏み込み過ぎず離れ過ぎずな距離にいてくれる主人公のことは工藤新一時代から気に入っている。友達だと思っている(一方通行)
灰原哀/宮野志保:変態どもに狙われる可哀そうな子。と思われていることにはなんとなく気づいている。何かと助けてくれる主人公のことは気に入っている。




 ――ここから先飛ばしていいです――




主人公:裏設定で中学2年の時、病弱だった当時小学校三年の妹を亡くしたというのがある。彼にとって年下が守るべき対象なのはこのため。
また、僅かな動作から思いを読み取ろうとしてきたため観察眼は高い。ベルモットクラスの表情の変化を見抜けたのはこのため。ただし導き出される答えはおかしいのが玉に瑕。
両親がよく彼を外に連れ出すのは、一時期ショックのあまり引き籠ったから。それを知っているため主人公も親に感謝している。

主人公のテーマは見返りを求めない献身。
妹に笑いかけて欲しかったわけではなく、妹に笑って欲しかった。その願いが人格形成に関わり、見返りを求めないようになった。ある意味迷惑なやつ。
死にたいわけではないのに子供が危険な目に合っていれば躊躇わず飛び出すのも危険視されている。
単独行動を好む人。

因みに、実はピスコの逮捕に関わったために組織から狙われていた。灰原さんたちが主人公に近づけなかったのはこのため。
銃とかは使わずあくまで交通事故という体で殺されそうになったが、さらりと全部回避していた。車?電柱を使えば回避余裕でした。
これに対して主人公
「やっぱ米花は事故率たけーな」
などと供述しており、気づいている様子はない模様。


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黒ずくめの組織はヤバいところ。前編

続きを望む声が多かったのでしゃーなしで書きました。
嘘です、予想以上の高評価・感想にテンション上がって書きました。

それぞれの目線、今後の展開、灰原さんとのイチャイチャ。
色々な要望があったので、一話に纏めました。


因みに作者はこういうイメージでキャラクターを書いているというのをラブレターを貰った際の反応で表してみました。

名探偵:好きな人いるからって断る。流石原作主人公、カッコいい。

科学者:あなたのこと知らないからって冷たくあしらう。我々の業界では(ry

女子高生探偵:まず秀兄笑わせてこい。え?それなんてムリゲー?

トリプルフェイス:にっこり笑顔で後腐れないように上手く断る。なお内心では…。

スナイパー:取り合えず付き合う(あとで別れる)。これだからアメリカかぶれは…!

主人公:で、誰に渡せばいいの?流石我らの主人公、そこにシビれる!あこがれるゥ!


 テスト終了を告げるチャイムが鳴り響く。

 それと同時にカリカリとうるさかったシャーペンの音も止まり、代わりに前後の席でのお喋りが始まった。なんだよ、うるせーの変わんないのかよ。

 ぼーっとしながらそれを眺めていると、前の席の工藤が何故か心配そうな顔で俺を見てきた。

 どうやら俺の目の下にくっきりと出来た隈が気になるらしい。そのくらいご自慢の推理で当ててみろと言いたいが、まあ普通当てっこないので面倒だが説明してやろう。

 

 それは昨日のことだ、テスト最終日の今日の試験科目は基本的に暗記科目で出来てる。そのため12時くらいまで勉強して後は朝早く起きてから試験勉強に取り組もうと考えていたのだが、そこで事件が起きた。

 なんと俺の家の近所で火事が起きたのだ。それが大体12時過ぎのこと。

 突然の火事騒ぎに慌てた俺は急いで家を出ようと玄関のドアを開けた。その際にガンという音がしたから驚いて外を見てみれば人が伸びていたのだ。

 最早わけが分からないが、一応は不法侵入だ。両親が不在である以上家を守るのは俺の役目。そういうわけで通報した。

 人の家の前で寝ていただけだから警察の注意くらいで終わるだろうと思っていたのだが、なんとそいつが放火犯だと警察は言うではありませんか。

 結果、なぜか俺も警察に同行させられそこで何が起こったのかを洗いざらい吐かされた。

 

 これが事件その一。

 

 次の事件は家に帰る最中に起こった。送っていくという警官を断って家に向かっている途中、喉が渇いたので近くのコンビニに寄ったのだ。そこでコンビニ強盗に遭遇した。

 幸いにしてコンビニには京極真とかいうKARATEの有段者がいたので強盗は秒で制圧されたが、どうやらこの京極さんお忍びで日本に帰って来ていたらしく、自分がいたことは内密にして欲しいと言うじゃありませんか。

 まあ、こちらとしても助けてくれた人が困っているのを見逃すことも出来ず、店員と協力して警察が来る前にこっそり逃がしておいた。

 結果、その日二度目の事情聴取を受けるはめになった。あの時店内にいたの俺と店員と京極さんだけだからね、しょうがない。

 

 以上が事件その二だ。

 

 漸く家に帰ったのが朝の7時。当然睡眠などとれる筈もなく俺は最悪の体調でテストを受けることになった。これだから米花は…!これだから米花は……!!

 

 という経緯を懇切丁寧に説明してやったところ工藤はドン引きしていた。なんでや。事件遭遇率でいえばナンバーワンはお前だぞ。

 とは言え俺も工藤の立場ならまずドン引きするから、ってか工藤から事件の話を聞くたびにドン引きしてるからここは甘んじて受け入れよう。ほら俺、大人だから。

 

 その後も適当に話していたら元気な足音をたてながら世良さんが、ゆったりとした足取りで宮野さんがこちらの席まで来て話の輪に加わった。なんでこっち来たの?十中八九工藤が目当てだろうけど。

 そんなわけで突然人口密度が増えた俺の周囲だが、まあ顔面偏差値が高い。工藤は言うに及ばず、世良さんも宮野さんも嫌味なくらい顔が整っているのだ。そしてその中に交じる俺、完全な引き立て役ですね。

 いや、引き立て役ならまだいいんだ。それは立派な職業だと俺は思うから。

 ただ問題は周りが美形ぞろいなために俺までかっこよく見られてしまうことだ。ほら、イケメン集団に属している奴はフツメンでも何故かかっこよく見えるだろ。あれと同じ。

 そして俺単体で見た時に、あれ?やっぱ大したことないなって落胆するっていうね。酷くない?

 少しだけ居心地の悪い思いをしていると、そんな俺の変化に目ざとくも気づいたのか世良さんがにっこり笑顔で何があったのか聞いて来た。八重歯が可愛いね。これでショタコンじゃなければ完璧だったのに。神様って残酷ね。

 何もかも明け透けに言うのも感じが悪いので、美形に囲まれて辛いと遠回しに言ったらキョトンとする三人。何?自分が美形の自覚なかったの?それ、俺じゃなかったら嫌味と受け取られるかもしれないから注意してね。

 そう思ったが違ったらしい。どうやら世良さん曰く女子間では俺も美形集団の仲間入りをしているとのこと。あー、そっちパターン来ちゃったか。メンタルが辛い。

 あと、自分はそんなこと気にしないと少し照れたように笑って付け加えた世良さんだが、なぜか宮野さんに睨まれていた。まあそうだよね。世良さんは気にしないよね。だって世良さんの恋愛対象って…(遠い目)

 あれ?そう言えば世良さんで思い出したが最近は江戸川くんや灰原さんに会ってないな。別に深い仲でもないが、いろいろな意味で印象に残る子供達だったから少し気になる。まあ印象に残ってるのはあの二人というよりその周囲の大人なんだけどね。

 確か江戸川くんの親戚の工藤に聞いてみるか。結構電話とかして話してたらしいし、そういうのも聞いてるだろうから。

 

 で、聞いてみたところ江戸川くんも灰原さんも海外の両親のもとまで帰ったそうだ。まあ日本は変質者多いからね、正しい判断だと思う。

 因みについ最近まで工藤邸に住んでいた沖矢昴とかいうロリコン大学院生も海外に行ったらしい。興味ないんだけど。

 あれ?でも灰原さんが海外に帰った時期と被るような…。え?まさか……違うよね?ちょっと鳥肌立った。

 

 そんな俺を置いて会話は進む。どうやらこの後工藤の家で一緒に昼食をとるらしい。まあテスト最終日の今日だ、部活をしていない工藤達からすれば午後が丸々休みになるわけだから自由に過ごすのだろう。仲のいいことで、少し羨ましい。

 どうでもいいけど、その会話俺を囲んでしないでくれないかな?滅茶苦茶気まずいんだけど。しかたない、空気を読んで席を外すか。

 重い腰を上げると宮野さんと目が合った。相変わらず綺麗な人だと思うが今はこの場から去ることが最優先、そっと視線を逸らして歩き出すと工藤に呼び止められた。何故だ。

 

 その工藤曰く、どうやらこの食事会に俺も参加させられるらしい。え、嫌なんだけど。

 だが俺程度が工藤相手に口で勝てる筈もなく、気づけば工藤邸にて昼食をとることが決定していた。ああ、俺の平凡な日常は何処に行ってしまったのだ。私は悲しい。

 

 

 

 ホームルームも終わり工藤邸へと向かう。道中遭遇したひったくり犯に工藤の殺人シュートが決まったりしたが、まあ日常茶飯事だし。気にしない気にしない。

 そのままおいしい昼食を頂いたのでさあ帰ろうと思うのだが、非常に眠い。

 なんでこんなに眠いんだろう?まあよく考えずとも今日一睡もしてないからなんだけど。

 

 そういわけでウトウトしていると、気を利かせた工藤がソファーで寝ていいと言ってくれた。

 人の家で寝るのは気が引けるが、正直そんなこと言ってられないくらい眠い。思考回路もまともに働かないような気がする。

 本来なら家帰って読みかけの小説でも読みたいが、まあ仕方ない。お言葉に甘えてソファーを借りるとしよう。

 

 おやすみなさい

 

 ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★

 

 「寝たか?」

 「寝たみたいよ」

 「寝たみたいだね」

 

 独り言のように新一が呟けば、志保と真純がすぐさま答えてくれた。相変わらず二人ともよく見ている。まったく、その興味関心を他の奴に回せばもっとクラスに馴染めるだろうに、特に宮野。思ったが新一は口にしない。

 一時期江戸川コナンとして生き、その過程で毛利蘭という馴染みの家に居候をした身としては一人暮らしで食べる自分の作った料理のなんて味気ないこと。

 そういった経緯で現在夕食を阿笠邸でお世話になっている新一は、宮野志保にだけは頭が上がらないのだ。

 しかしそこは密度の濃い時間を新一と共にした相棒だ。僅かな表情の変化で新一の言わんとすることを察したのだろう、絶対零度の視線で新一を睨む。

 

 「なにか?」

 「いえ、何でもないです」

 

 弱い。こんな新一の姿は見たくなかった。おそらく現在眠りこけている青年が見れば大爆笑確実な引き顔を浮かべた新一は、江戸川コナン時代に磨き上げたスキルを利用して青年を盾に志保の視線から逃れる。

 それに一瞬だけ眉を顰めた志保であるが、彼女とて気になる異性にそんな顔を見られたくはない。ため息を一つ吐くと怒りを抑えた。今夜の夕飯は新一の嫌いなレーズンを入れようと決意して。哀れ工藤。

 

 「それにしても、まさかこう寝るとは思わなかったな」

 

 そんな二人を知ってか知らずか、暢気に言いながら真純は青年の頬をつつく。柔らかい頬の感触が楽しいのかえいえいとつつく真純は室温が2,3度下がったことに気づいていない。

 

 「まあな、ソファー貸すって言ってんだから大人しく横になればいいのに」

 

 新一は隣で座って眠る青年を見る。そう座っているのだ。確かにこれまで新一が江戸川コナンとして眠らせて来た探偵役はもれなく座っていたが、まさか青年も座って眠るとは。律儀というか馬鹿というか、それともこれが米花の基本なのか。謎は深まるばかりである。

 余談だが実は一度だけ青年も探偵役にされそうになったが、その時は時計型麻酔銃を躱したという経歴がある。もっとも青年は小学生の言葉だからと無視するような人間でもない、探偵役は無理だったがコナンの推理を聞いてそれをやんわりと犯人に伝えて自首を勧めたのだ。小学生に気づかれるようでは警察が気づくのも時間の問題だと。

 実際はコナンくらいしか気づいていなかったが。まあそこはそれだろう。

 

 閑話休題

 

 ぐっすりと眠る青年は真純につつかれようとなんのその、まるで起きる気配がない。それが面白くない真純が更につつこうとするが、それは流石に新一に止められた。

 せっかく眠っているのを起こすのも悪い、というのが建前で本音は嫉妬の表情が一周回って笑顔になった志保を恐れてのことだ。弱い。

 

 「それにしても随分ぐっすりね。目の隈も酷いし、なにかあったのかしら?」

 「ああ、それなら昨日の夜に事件に巻き込まれたとかで眠れなかったらしいぞ」

 「……それ、彼は大丈夫なの?」

 「無事じゃなかったら学校来てねーだろ」

 

 そう言うわけじゃないんだけど。言いかけて志保は止めた。事件大好き小僧の新一と志保では僅かに価値観が違う。青年が起きていたら志保の味方をしただろうが残念ながらぐっすりだ。そうなれば起きているのは探偵二人と志保のみ。どう足掻いても少数派に勝ち目はない。聡い志保は口を噤んだ。

 

 「相変わらず彼は巻き込まれるのが好きみたいね」

 

 代わりに出たのは青年が聞けば憤慨必至の皮肉のみ。青年からすれば名誉棄損もいいところだ。眠っているために気づきはしないが。哀れ。

 

 「そう言えば、君たち二人っていつ彼と出会ったんだい?」

 「「?」」

 「ほら、二人とも彼が事件に巻き込まれたって聞いても平然としてるだろ?だから初めて会ったときも何かに巻き込まれていたのかなって」

 

 言われてみれば二人が真純に対して彼との出会いを話したことは無かった。わざわざ話すほどの内容でもないというのもあるが、色々と濃いために時間がないと話せないというのもある。

 だがどうせ今日の午後は暇だ。三人とも適当に読書しながら過ごそうと思っていたのだ。なら、その時間を青年についての会話に使うのもいいかもしれない。

 そうと決まれば早い、志保がコーヒーを淹れにキッチンに行ったのを尻目に、新一は正面のソファーに真純が座るのと、隣で青年が眠っているのを確認すると記憶を頼りに青年との物語を語り始めた。

 新一が江戸川コナンになり、志保が灰原哀になってからの長いようで短い、それでも確実に濃かったと思える物語を。

 

 ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★

 

 青年と江戸川コナン、灰原哀が初めて出会ったのはとあるパーティー会場だった。実際はとある有名映画監督を偲ぶ会であるが、そこはそれやってることはパーティーと相違ないんだからパーティーでいいだよ精神で乗り切る。少なくとも青年からすればパーティー以外の何物でもなかったのでパーティーだ。

 そんなパーティー会場にやって来た二人であるが、そこには当然ながら目的があった。なんでもピスコと呼ばれる組織の人間がある人物の暗殺任務でパーティー会場に潜伏しているという情報を事前に入手していたのだ。

 二人の目的は暗殺の阻止、そしてピスコの特定。組織との接触を恐れた灰原は当初こそコナンの意見に反対だったが、結局は折れる形でついて行くことになった。

 とは言え精神はともかく肉体は子供な二人だ、いくら人数の多い会場とは言え目立っていた。そんな二人を気にかけて声をかけてくれたのが青年だった。

 

 「あの時は驚いたぜ、まさかこいつがいるとは思わなくてな」

 「へー。でもなんで彼がその会場に?」

 「父親に連れられたんだと。そう言えばあの時の灰原の怯えようと言えば、こいつの何が怖いのかね」

 「うるさいわね。組織の人間がいる会場でいきなり話しかけて来たんだから警戒するのは当たり前よ」

 

 新一の言う通り、その時の灰原の怯えようは凄かった。

 もっとも基本的に誰に対しても警戒心の強い灰原だ、初対面で好印象という方が珍しいのだろうが。

 だが、そんなことを気にする青年でもなかった。コナンが工藤新一の親戚だと知るや否や、二人と行動をともにしてくれたのだ。

 子供二人なら恐ろしく目立つが、そこに高校生の青年が加われば兄妹と見えなくもない。事実周りからは気のいい兄が甲斐甲斐しく兄妹の世話を焼いているように見えていた。

 ただ一人を除いてであるが。

 

 ピスコこと本名桝山憲三は、あの場で目立っていた灰原哀の存在をただの子供だとは思わなかった。その容姿から過去にピスコが見たことのある組織の一員の少女を連想していた。

 数か月前に組織から抜け出し、その後消息が途絶えていた組織の科学者・宮野志保(シェリー)を。

 

 それからすぐに機器を用いて灰原とシェリーの過去の写真を比較してみたところ、ほぼ100%の一致。ピスコはひっそりと笑みを浮かべた。

 暗殺任務を放棄する気は欠片もない、だがシェリーを捕らえることは組織での自身の地位をより強固なものにするためにも役に立つ。

 本来の目的を後回しにして、ピスコは行動に出た。欲をかいたともいう。

 

 灰原の周りには確かに二人の子供がいた。だが所詮は子供、そう油断して、視線があったのだ。明らかにピスコを警戒した顔つきで睨む青年と。

 これにはピスコも酷く動揺した。今回の行動は確かに彼にしては珍しくなんの準備もない即興のものだ。

 それでも長く生きてきた、否、その業界で長く生き抜いてきたピスコが立てた計画だ。一介の高校生が邪魔なんて出来る筈もない。

 それにピスコ自身何か青年の警戒を買うような行動をした記憶もない。

 だからただの偶然、もしくは見間違いだと判断し、その結果、ピスコは本当の意味での地獄を見た。

 

 彼はその瞬間を生涯忘れないだろう。人の波を利用してシェリーの背後からクロロホルムを染み込ませたハンカチを押し当てようとした時、それより早く繰り出された蹴りの重みを、痛みを、そして何より青年の蔑んだようなゴミを見るような視線を。

 同時にピスコは、青年こそが組織にとって最大の脅威になりうることを悟った。

 

 ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★

 

 「「こいつ誘拐犯です!」」

 「へ?」

 

 疑問符を浮かべる真純を無視して二人は笑みを浮かべる。

 それはあの場でピスコを、組織の幹部逮捕の決め手となった勇気あるセリフだった。

 

 「ピスコを指さしながらこいつが言ったんだよ。最初はみんな何事かと思ったけどあんまりに必死だったから警備員が調べてみれば、桝山会長の懐から拳銃が出てきて大騒ぎだったよ」

 「あら?そうだったの。私は彼に連れられて外にいたから知らなかったわ」

 

 流石に経済界の大物と言えど大衆の前で拳銃を見られて誤魔化すことは出来ず、銃刀法違反そして

 

 「少女誘拐未遂で逮捕だっけ?その辺どうなんだよ、灰原さん?」

 「うるさいわね。調子に乗ると明日から毎日レーズンにするわよ」

 「ごめんなさい」

 

 弱い。そんな新一を置いて志保は青年に連れられた後を思い出す。

 男らしい武骨な拳が自身の腕をとり、それでいて怖がらないように優しく握ってくれていたのだ。道中何度も励ましの言葉もかけて貰った。本当に優しい青年だと思った。

 

 「あの場にはベルモットやジン、ウォッカがいたからな、今にして思えば灰原を連れ出して外に出たのは正解だったな」

 

 それとも、そこまで分かって行動したのか。

 今もなお青年が組織の存在を知っていたのかは分からない。さしもの新一とはいえ全てが分かるわけではないのだ。とは言え青年の人間観察能力が異次元なのも気づいている。もしかしたらあの会場でピスコ以外の不審な人物を見つけたがゆえに灰原を連れて逃げていったのかもしれない。

 考えても詮無いことではあるが、探偵としての性かどうしたって気になってしまう。

 少なくともあの桁外れな人間観察能力の秘密だけは聞いておこう。そう密かに決意して、新一は次に青年と出会った出来事を思い出していた。

 

 

 「次にこいつと出会ったのはバスだったな。その時滅茶苦茶落ち込んでた灰原を元気づけようとスキーに行こうって博士が決めてよ、その為に利用したバスの中にこいつがいたんだよ」

 「落ち込んでいた?」

 「ああ、ピスコの一件で助けて貰った礼を言おうとこいつの家に向かったら…」

 「組織の人間がいたのよ」

 「え?」

 「だから、私のせいで彼は組織に狙われるようになったのよ」

 

 驚くのも無理はない。なんせそれはある意味で矛盾しているのだ。真純とて組織の恐ろしさは兄や母から聞かされている。そんな組織に狙われていたのなら、どうして目の前で青年は眠っていられるのか。

 疑問を口にしようとして、それより前に別の声がその答えを口にした。

 

 「組織だけでなく各国警察の人間も彼に目を付けていたからですよ、世良さん」

 「降谷さん!?」

 

 驚く三人ににこりと微笑んで、公安のエース・降谷零は悠々とリビングに現れた。

 

 「どうして降谷さんがここに?」

 

 当然の疑問を口にする新一に、今日は午後から丸々オフになって、と答えになっていない答えを返す降谷。違うそうじゃない。

 言おうとして、新一は諦めた。彼がはぐらかすのならどう問い詰めようと無意味だ。

 言うべきことは言うが、逆を言えば言う必要のないことは何も言わない。降谷零と言う人間はそういう男だ。

 それでも何も言わないのもしゃくだ。

 

 「これ、不法侵入者じゃないですか?」

 「チャイムを鳴らしたのに反応がなかったんだ。試しにドアノブを捻ってみればドアが開いたから何かあったのかと思って入って来ただけさ。これに懲りたら玄関の施錠はしっかりした方がいいよ、新一君」

 

 嫌味を言ってみたが三倍にして返された。鍵を閉めたところでピッキングして入ってくる可能性のある男に施錠に関してとやかく言われるのはいくらの新一と言えど腹が立ったが、そこは大人の余裕で飲み込んだ。多分、言ったらまた二倍くらいにして返ってくるから。

 

 「それよりも随分興味深い話をしているね、良ければ僕にも聞かせてくれないか?」

 「まあ、いいですけど」

 

 不貞腐れたように呟く新一を他所に、志保は新たな客人の為にコーヒーを淹れに行った。もはやこの場に新一の味方はいない。諦めた新一は続きを語り始めた。

 

 ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★

 

 青年と二人の二度目の会合はあるバスの中でのことだった。

 関係ない一般人が自分の所為で組織に狙われたと自身を責める灰原を何とか励まそうと、灰原の保護者代わりである阿笠博士が知恵を振り絞った結果、二人を含む少年探偵団をスキーに連れていくことになった。

 これには博士の子供達と楽しい時間を過ごして欲しいというあくまでも灰原を心配する気持ちが見えた為に、さしもの灰原も無下にすることは出来ず、彼女はついて行くことにしたのだ。

 

 本格的に冷え始めた町はバス停で待つだけでも一苦労であったが、子供たちの持ち前の明るさに随分救われた。

 少しずつ元気を取り戻し始めた灰原にコナンも喜んでいた時だ、彼らの待ち望んでいたバスが、青年を乗せてやって来たのだ。

 それに二人が驚くのは一瞬のことで、直ぐに二人は喜んだ。生きていたと、無事だったと。

 確かに安否確認ならコナンが居候先の毛利蘭にでも聞けばいいが、それだってそう何度も尋ねれば怪しまれる。

 それに青年の無事をその目で確かめなければ本当の意味では安心なんて出来ない。

 だからこそ青年が無事な姿で現れたことに安堵して、そっと視線を逸らされたことにショックを受けた。

 

 自分たちが青年を覚えていても、青年が自分たちを覚えているとは限らない。

 それは確かにそうだが、それにしてもコナンはともかくピスコの一件があって灰原のことを覚えていないなんてそうそうない。それに青年のことをよく知っているコナンに言わせれば青年の記憶力が残念であるという可能性だってない。

 だとすれば考えられるのは何かのショックで忘れたか、もしくは、青年が成り代わられているか。

 

 「まあ、結局その心配は杞憂だったんだけどな」

 「どういうことだい?」

 

 問いかける真純の声を無視して新一は続ける。この先を聞けば分かるさと、笑ってみせて。

 

 青年の身に何かあったのかもという不安、そして次のバス停で乗車してきた乗客の中に潜む組織の影。どういう偶然か現れたバスジャック犯。

 もはや呪われているのかと言いたい不幸が二人の身にかかったが、バスジャック犯に関してはコナンの機転により何とか無力化することが出来た。

 

 問題はその後に起きた。なんとバスジャック犯が用意してきた爆弾のスイッチが運の悪いことに作動してしまったのだ。

 突然の出来事にパニックになる乗客だが、辛うじて全員が外に逃げることが出来た。

 いや、正確にはある二人(・・)を除いてであるが。

 

 灰原哀は、爆弾騒ぎがある中逃げださなかった。組織に狙われ続けることへの不安。自身が犯した罪の意識。何より、自分の所為で誰かが傷つけられる事実。

 それらすべては少女一人が背負うには余りに重すぎて、ついには死ぬ決意をしてしまった。

 いや、本来であれば灰原哀という少女の人生はそこで終わる筈だった。

 馬鹿な青年さえいなければ。

 

 「彼、私が取り残されたとでも思ったのかしら。抵抗したのにそんなの知らないって顔して、最後には爆発に巻き込まれて大怪我して」

 

 無事でよかった。そう言って笑う青年に灰原がどれだけの衝撃を受けたか、それを彼は知らない。自分の無事を喜んでくれる人間がいる、その事実に灰原がどれだけ勇気づけられたか、きっと彼は気づきもしない。

 気づけば傍にいて、ヒーローみたいに簡単に助けてしまう。そんなもの嫌いになれる筈もない。

 

 ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★

 

 「全治二か月だっけ?確か医者にそう言われたそうなんだけど実際は一か月くらいで治してさ。すげー驚いたのを覚えてる」

 「驚くのはそれだけじゃないぞ、ボウヤ。彼はあのベルモットの存在に気づいていた」

 「赤井さん!?」

 

 またも突然の来訪者に新一の驚きの声が響き渡る。

 一方で赤井絶対殺すマンな降谷はと言えば、恐ろしい笑みを浮かべて笑っていた。流石は犬猿の仲の二人。組織壊滅の為に手を取り合ったはずなのにこれだ。二人の溝は深い。

 

 「おや?なんのようですか赤井?それよりも不法侵入ですね。現行犯で逮捕しましょう」

 「それは残念だな降谷君。俺はボウヤから合鍵を預かっている、つまりは不法侵入ではないんだ」

 

 にっこり、にこにこ、にこぉ、効果音を付ければ見事な笑顔なのに降谷さんが怖い。新一のライフはすでにゼロに近かった。

 

 「喧嘩するなら今すぐ出て行って貰うわよ」

 

 しかし残念、この場には二人にとって絶対に無視出来ない存在であるところの志保がいる。赤井にとっては絶対に守ると約束したのに守れなかった恋人の妹、降谷からすれば昔お世話になった今は亡き先生の子供だ。どう足掻いても逆らえる相手ではない。

 大人しく席に座り直した降谷と、真純の隣に腰を下ろした赤井を見て志保はまたコーヒーの用意をするためにリビングへと向かった。

 

 「それで、赤井さんはどうしてここに?」

 「合鍵を返し忘れていたのを思い出してな。ポストに入れておくのも悪いと思い直接渡しに来ただけだ」

 

 嘘だ。直感で理解した新一であるが追及はしない。どうせ聞いてもはぐらかされるだけだ。なら聞くだけ時間の無駄。それに万一それで隣の青年を起こそうものなら、彼の睡眠を邪魔した新一は志保に消されかねない。

 メリットデメリットを冷静に秤にかけて、新一は黙った。

 

 「それより秀兄、ベルモットの存在に気づいていたってどういうこと?」

 

 黙りこくった新一の代わりに真純は疑問を口にする。

 確かにそれは無視できることではない。組織の幹部それもボスのお気に入りにして変装の達人であるベルモットに気づくなど、ただの高校生に出来ることでは無いはずだ。

 

 「どうもこうもない、彼はベルモットの姿を見た瞬間に顔色を変えて座席に身を隠したんだ」

 「え?」

 

 あの時、FBIとしてベルモットを追っていた赤井は、青年の行動を見て度肝を抜かれた。

 ベルモットが変装した新出という町医者の死を偽造したのはFBIだ。そんな彼らだからこそ新出がベルモットの変装だと知っていたが、逆を言えばそれを知らなければ、まず気づくことは無かっただろう。

 ベルモットの変装はそれほどまでに完璧だった。

 その彼女の変装を一目で看破したのか。或いは、学校生活の中での新出という保健医の僅かな変化に疑問を持っていたのだろうか。

 どちらにせよだ。青年がベルモットの変装に気づいたのはまず間違いない。

 

 だからこそ赤井は驚き。驚いた赤井を見て青年は赤井すらも警戒した。

 

 「大した子供だ。是非ともFBIに入って欲しいくらいだ」

 「冗談はニット帽だけにして貰えませんか?彼は僕の日本国民です。彼の将来は警察庁の公安と決まっているんです」

 「喧嘩かしら?」

 「「……」」

 

 あわや喧嘩かと思われたがそれを許すほど志保は甘くはない。冷ややかな目で二人を見ると手元のコーヒーに口を付けた。

 対する二人も何が第一優先かを履き違えるほど馬鹿では無い。

 赤井は最初からマイナスな好感度を少しでも上げようと口を噤み、降谷はバーボン時代にやらかしたことを自覚しているために何も言えなかった。

 実際降谷の口調は本来こんなに優しいものではない。もっときついことを口にするし、一人称だって俺だ。

 それが若干安室透を意識しているのは降谷なりの印象回復の苦肉の策なのだが、残念ながら意味を成してはいないようだ。

 

 閑話休題

 

 高校生相手にボロカスにやられている尊敬する大人、という図から目を逸らし。ついでに言えば自分もボロカスにやられる側だという現実からも目を逸らして新一は話題を次に持っていく。

 自分たちとベルモットの間に起きた事件に。隣で寝こける青年が覚えていない出来事に。

 

 ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★

 

 バスガス爆発事件がリアルに起きてから一か月と少し経過したころ、灰原が熱で伏せた。

 もともと季節の変わり目ということもある、風邪の一つくらいとも思われたがそれが思っていたよりも深刻であったために急遽病院に連れていくことになったのだ。

 その時には既にドクター新出に組織の一員ではないかと疑惑を持っていたために彼に頼ることも出来ず、仕方がなく大型デパート内にある病院に連れていくことになったのだ。

 だがどういう因果かデパート内の病院も定休日で、頼るあてのなかった博士は新出に電話を入れた。

 あくまでも疑惑は疑惑。それよりも灰原の身を優先したがための行動だ。コナンに責めることは出来ない。

 それにこれは博士とコナンの間にあった組織への危機感の違いでもある。それを理解したがためにコナンは何も言わず、代わりに自分が傍にいることで灰原の身を守ろうとした。

 

 だが運命というものは何処までも残酷で、博士のビートルを停めていた地下駐車場にて殺人事件は起きた。

 目の前で起きた殺人事件を無視することも出来ず、かといって熱で苦しむ灰原をこの場に放っておくことも出来ない。かといって博士一人に組織の人間である疑惑のある人物と会わせるわけにもいかない。

 そうなれば、今度は博士が目を付けられる。

 八方塞がりかと思われたその場に、しかし救世主(青年)は現れた。

 すでに組織に目を付けられており、その実今なお生きているということは組織と渡り合うだけの何かがある。

 それでいて灰原を確実に守ってくれるという信頼のある青年。それが彼だった。

 

 最初こそコナンや博士の言葉に戸惑っていた雰囲気だったが、直ぐに事態の異常性に気づいたのだろう。一も二もなくコナンの言葉に了承すると博士が自転車を改造している間に薬局まで走っていったのだ。

 その後も誰よりも灰原を気遣う青年を見て、コナンもまた青年を巻き込む覚悟を決めた。

 

 新出先生には注意して。

 

 その一言に全てを託して、博士の家まで自転車を飛ばしていった青年を見送った。

 もちろん全てを丸投げするわけではない。青年が警察に伝えていた地下駐車場の様子から疑問に思った点を整理して、その事件はすぐさま解決し、コナン自身もすぐに阿笠邸に向かった。

 

 「で?実際どうだったんだよ?ベルモットに何かされなかったか?」

 「何もされてないわよ。彼、ドア前に自分がいることをわざと伝えていたみたいだから、何もできなかったというのが正解かもね」

 

 医者である新出相手に雑音をあえて出すなんて普通はしない。それをするのはただの馬鹿か、或いは新出は本当の医者ではないと見抜いているのかのどちらかだ。

 

 灰原は意識が朦朧としていたために気づいていないが、その時のドクター新出(ベルモット)の表情は随分不機嫌だった。

 一介の高校生に変装を見破られたから、というのもある。だが何より、ベルモット相手に自分はその正体に気づいているとあからさまに伝えたことが彼女の癇に障った。

 そのせいで青年がベルモットの標的になったのだが、多分そんなこと彼は気づいていないだろう。

 

 ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★

 

 「まあ、その翌日こいつが学校休んだって聞いて生きた心地しなかったけどな」

 「そうね。ただの風邪だと聞いたけど、もしかしたらがあるもの」

 

 今でこそ暢気に言っているが当時の二人の焦りようはそれはもう凄かった。具体的には二人の焦りようにあてられた博士が三回転半して倒れる程度には凄かった。

 一応その時には既にコナンとして電話番号を交換してしていたために電話も出来たが、仮に彼が組織に消されたのなら下手に連絡を入れることも出来ない。

 なんせ関係者すべてを殺す非情な組織だ。彼の電話番号に連絡したことがバレればどうなるかなんて考えるまでもない。

 

 だが焦る二人を待ってはくれず、ついにベルモットからコナンに向けて一つの手紙が届いた。工藤新一宛に届けられた江戸川コナンに向けられた手紙。それが意味するところを分からない二人ではない。

 それは警告。江戸川コナンが工藤新一の幼児化した姿であると、それに気づいていると暗に告げられたのだ。

 

 決戦の日は来た。十全に準備を整えたコナンは灰原を巻き込むまいと眠らせて地下室に閉じ込めると、灰原に変装してベルモットの誘いに乗ったのだ。

 更に一つ、念のために手を打って。

 

 「あの時は驚いたわよ。やっとの思いで地下から抜け出して外に出てみれば彼がいたんだもの」

 「まあ、俺や博士の言葉じゃ聞かねえだろうと思ってな。けど、こいつの言うことなら聞くだろ?」

 

 実際には青年の言葉でも止まることなく灰原はコナンを追いかけた。青年は何も言わず、代わりに灰原のそばを離れなかった。

 と言えばカッコいいが、実を言えば青年はその日まだ熱が完全に治っていない状態で、それでもコナンの頼みということで無茶して家を飛び出してきた為に喋る余裕すらもなかったのだが、そんなこと当然誰も知らない。

 黙って灰原の意思を優先してくれた。それでいいのだ。

 

 「人が死ぬ覚悟まで決めたっていうのに、あんなに心配されたら死ねないじゃない」

 

 だが、結果として青年の存在は灰原を助けた。

 ベルモットにコナン、それにFBI捜査官であるジョディーと組織の一員カルバトスが一堂に会した港に遅れて到着した灰原と青年であるが、それはベルモットからすれば好都合以外の何物でもない。

 だから即座に灰原を射殺しようとして、それよりも先に青年は動いた。

 即座にベルモットに接近すると、手に持っていた拳銃を蹴り飛ばし、そのままベルモット自身にも蹴りを入れようとして、そこでカルバトスの放った銃弾が彼の動きを止めたのだ。

 その後は一方的だ。遠距離から重火器を用いて襲い掛かるカルバトスにさしもの青年も打つ手はなく、数発その身に受けて近くのコンテナに身を隠した。

 もちろん灰原を回収した上で。

 

 その後はその場に現れたFBI捜査官赤井秀一の手によってカルバトスは無力化、ベルモットを撤退まで追い込んだが、その時には既に青年にも灰原にも意識はなかった。

 

 因みに、青年目線で一連の出来事を見れば、気を失っているコナン君をめぐってショタコンの外人二人が修羅場をつくり、そこに新たに現れた第三の刺客同級生灰原。そして同級生というアドバンテージを危惧した外人の一人が銃を使って脅しをかけたとなる。外人が銃を持っていることへのツッコミはない。米花在住の外人は大体銃を持っている。これは青年にとっての当たり前だった。

 もっとも、ただでさえ熱でうなされているというのにこれだ。流石の青年もキャパシティーオーバーして気を失った。ついでに言えばこの日の出来事も忘れた。

 

 これが真相だが、そんなこと当然誰も知らない。

 勇敢な青年が身を挺して灰原を助けた。それでいいのだ。




このままいけば三万文字を超えそうなので一旦切って投稿します。
続きは来週あたりかな?
因みに前編後編の予定です。

新たなキャラ紹介

ジョディ―:ベルモットとコナンをかけて銃撃戦を繰り広げたヤベー奴

主人公:米花の外人が銃を持たないわけがないと思ってる。


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黒ずくめの組織はヤバいところ。後編

祝!短編小説累計トップ10入り!ありがとうございます!それに誤字報告も、本当に助かりました。

そんなわけで後編です。これでこの作品の投稿はラストかな?


因みに作者はこういうイメージでキャラクターを書いてるというのを似ている動物で表してみました。

名探偵:犬。絶対にヒロインのもとに帰ろうとする忠誠心と事件を嗅ぎ分けるところから。

科学者:猫。警戒心の強さから。

女子高生探偵:犬。まあこれだよね。

トリプルフェイス:ゴリラ。……許せ。

スナイパー:狼。孤立してるから。ボッチだから。

主人公:猫。炬燵で丸くなる的な意味で

それと、組織の最優先排除対象について

赤井秀一>>主人公>シェリー>>(越えられない壁)>>毛利小五郎

若干二名おかしいのがいる?気にしない気にしない。


あ、座席はこういう感じになってます。

     降
     谷

    机机 工藤
世良  机机 主人公
赤井  机机 宮野

顔面偏差値の暴力!目覚めた主人公のメンタルや如何に!
なに?主人公のメンタルはもっと別のところでダメージを負う?ああ、そうだね(目逸らし)


 既に冷めたコーヒーを飲み干して、新一はチラリと時計を確認した。時刻はすでに十六時過ぎ。隣の青年が眠ったのが大体十三時半ごろだったので、もう二時間半近くが経過していた。未だに青年に起きる兆しはない。まあ、一日だけとは言え徹夜したことを思えばそう不思議なものでも無いが。

 随分と濃い時間を過ごしたように思う。それでも青年と過ごした時間を思えばまだ話し足りないくらいだが、さしもの新一も話してばかりでは疲れる。

 別の話題に変えようかとして、少しだけ気になったことを尋ねてみた。

 

 「俺や宮野から見たこいつについては結構話しましたけど、赤井さんや降谷さん、それに世良から見たこいつってどうなんですか?」

 

 興味深そうにうなずいたり、時折疑問を投げかけたりしてくることはあったが詳しいことは余り聞いていない。

 会話にフェアも何もないがこれまた探偵としての性か聞かれっぱなしでなんの情報も得られないというのも面白くない。

 そう考えての質問だったが、尋ねられた三人はと言えば特に気にした様子もなくあごに手を当てて思い出していた。

 

 同級生でありクラスメイトでもある真純ならともかく、片や組織に潜入捜査をしていた公安のエース。片や組織が最も恐れ、新一の手伝いがあったとはいえ死の偽装までして姿を眩ませたFBIきっての切れ者だ。正直あまり接点があるようには思えない。

 それでも今新一の話を真剣に聞いているのだから、当然二人とも青年を高く評価している。だが一体何がそこまで二人の気を引いたのか、その具体的なエピソードまでは新一も知らない。それどころでは無かったとも言える。

 だからこそ、今この場で聞いてみたかったのだが。

 果たして、最初に口を開いたのは赤井だった。

 

 「先ほども言ったが、俺が彼に目をかけたのはベルモットの一件があったからだ」

 

 だが、と続けた赤井は一度だけ真剣なまなざしを青年に向ける。その目に一瞬だけ羨望の色を混ぜて。

 

 「俺が彼を本当の意味で評価したのは、やはり沖矢昴として初めてボウヤや志保君の前に現れたときだろう」

 

 ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★

 

 赤井がコナンと結託し組織に死んだと誤認させて暫く、新たに沖矢昴と名乗り組織壊滅のための情報を集めながら灰原の護衛を行っていたのだが、そこで思わぬ事故が起きてしまい、もともと住む予定だったアパートが全焼したのだ。

 また、たまたまそのアパートの大家の息子にある調査を依頼されていた少年探偵団と、それに同行していたコナンや灰原も運悪くその現場に居合わせてしまった。

 コナンからすれば灰原の護衛を任せていた赤井の身に起きたまさかの出来事だ。表面上は取り繕っていたが内心はひやひやものだった。

 赤井が火事に巻き込まれたかもしれない、という不安ではない。そんなものに巻き込まれるほど赤井を低く評価してはいないし、その程度なら灰原の護衛など頼むはずもない。どちらかと言えば、赤井と灰原の接触を危惧してのことだった。

 本来であれば灰原にばれないようにと取り付けた護衛の依頼。それは組織の目を気にしてというより灰原が赤井と、もっと言えば実の姉の元恋人と面識を持つことを恐れたという意味合いが強い。

 

 灰原にとって姉がどれ程大事な存在か、それを知らないコナンではない。その姉に、組織に潜入するという目的があったとはいえ利用する形で近づいたのが赤井だ。それを灰原が知っているのかは別として、出来うることなら二人の接触は避けたいのが本音だろう。

 だからこそ予定外の出来事に肝を冷やし、ひっそりとメンタルクラッシュを起こしかけていたコナンからすれば、その場にたまたま現れた青年は救世主以外の何物でもなかった。

 

 現状、灰原が阿笠やコナンといった彼女の事情を知るもの以外で心を開いている唯一の存在。ベルモット含む組織の人間と渡り合える独自の何かを持っているただ一人の高校生。

 そんな彼が現れて、果たしてコナンが喜ばないことがあろうか。いや、ない。

 打算とか、庇護欲だとか、子供の振りだとか、そういったずる賢い思考全てを地平の彼方まで投げ捨ててコナンは青年のもとまで走った。彼にしては本当に珍しい満面の笑みを携えて。

 

 「あん時はマジで助かった。多分こいつがいなかったらどっかで歯車が狂ってたと思う」

 「そうね。彼のおかげで私も随分気が楽だったわ。何処かの誰かさんが意味もなく人にプレッシャーをかけてくるんですもの」

 「それは本当に悪かったと思っている」

 

 赤井自身別に冗談やおふざけで灰原にプレッシャーをかけたわけではない。未だ組織が灰原を執拗に付け狙う中で危機感を失うことはそのまま死に直結する。そう考えての行動だ。悪意や敵意があってのことでは無い。

 もっともその行為も想定外の人物に、そして予想通りの人物によって遮られたが。

 

 「あの時だ。あの時俺は彼を本当の意味で恐れた。僅か17かそこらの高校生が、俺のプレッシャーを受けて正面から睨み返して来たんだからな」

 

 その衝撃がどれ程だったか。組織すらも恐れる赤井の睨みを受けて平然と睨み返すなど、ましてやただの高校生がだ。辛うじて顔には出さなかったが、内心では舌を巻いたことをよく覚えている。

 同時に赤井は思った。彼がそばにいる以上灰原に、赤井にとって命に代えても守りたい大事な恋人の妹に危険はないだろうと。

 

 どころか

 

 「得難い人材だ。あの場にいたのがただの大学院生の沖矢昴ではなくFBIの赤井秀一であれば、手を尽くしてこちらに引き込んでいただろう」

 

 大した子供だ。

 その経歴を赤井はすでに知り尽くしている。その出生も、家族関係も、すべて。少なくともデータとしては得ていた。

 なのに、青年は上をいった。当たり前のように、普通のことのように、平然と、遥かに高く想定していた筈の赤井の予想すらも笑って飛び越えて。

 

 

 「その後の博士の家での灰原ちゃん呼びは衝撃的だったけどな。思わず爆笑したぞ」

 「レーズン」

 「すいませんでした」

 

 弱い。そして懲りない。もはや何度目かも分からないやり取りをした新一は、それでも懲りずに思い出し笑いをして睨まれた。

 

 あの後、火事が人為的なものだと判明し犯人逮捕までこぎつけたコナン一行は、赤井こと沖矢昴の頼みを聞いて阿笠邸まで沖矢を案内した。

 とはいえそこは警戒心の強い灰原だ、見ず知らずの男が自身のテリトリーに入ってくることを恐れて咄嗟に青年を巻き込んだが。

 それには沖矢もコナンも驚いた。あの灰原が人を頼った、それがどれ程衝撃的なことだったか。

 確かに灰原が青年に懐いていることは知っていたがまさかここまでとは思っていなかったのだ。因みにそれをぼそりと呟いたコナンは足を踏まれた。馬鹿な男だ。

 

 途中で探偵団と別れて阿笠邸まで辿り着いた四人は、そこで灰原が焼いたケーキを食べた。当然沖矢の分はない、コナンの分も青年に比べれば微々たるものだ。しょうがないよね。

 そして、そこで起きたのが青年の灰原ちゃん呼び事件だ。

 子供扱いされていたのは気づいていた。

 もちろんそれはコナンや灰原を軽んじての行動ではない。話をすれば目を合わせて真剣に聞いてくれるし、質問すればふざけずに答えてくれる。

 ただ何か起きた際に、青年は常に二人を優先して守った。二人は子供だから、ただそれだけの理由で。自身もまた子供であることを棚に上げて。

 そういった意味での子ども扱い。それでもまさかいくら外見小1の女の子とは言えあの灰原をちゃん呼びするとは、いったい誰が予想できるだろうか。

 堪らず沖矢は瞠目し、コナンは爆笑。灰原は羞恥で顔を真っ赤に染めた。

 

 その後いいじゃん可愛いじゃんとぶーたれる青年に顔を真っ赤にしてやめて欲しいと懇願する灰原がいたが、そこは彼女の名誉の為に詳細は省く。

 その様子を高性能ビデオカメラで録画している阿笠博士がいたとかいなかったとか。

 

 ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★

 

 「俺が彼の評価を改めたのはその時だ」

 「へー。やっぱり凄いんだね。まあ、僕も彼の凄さは知ってるけどね」

 「ホー。ではその話を聞かせてくれるか、真純」

 「いいよ!」

 

 兄妹らしい暢気なやり取りを終えると、真純は自身が青年に興味を抱き始めた過去を思い出す。

 とは言え真純は赤井のように何か衝撃的な出来事があったから青年に目を付けたわけではない。彼女が彼に目を付けたのは、もっと単純でありふれている日常からだった。

 

 転校してきたばかりのころ真純には当然のことながら知り合いはいなかった。

 いや、正確には偶然とある事件で一緒の現場にいた毛利蘭と鈴木園子がいた為に知らない顔だけという事態は防げたが、それでも真純に友達がいないことは事実だった。

 もともと母の仕事の関係で何かと転校の多かった身だ、そこまで重く受け止めることなく適当に学校内だけでも仲良くできる存在を作ろうと考えて近場の席にいた青年に声をかけたのだ。

 ほんの軽い気持ちだった。親しくなれるとも思ってはいなかった。

 だからなんとは無しに振った工藤新一の話題で青年が独特の見解を述べた時、素直に驚いたのだ。

 ほかの誰とも違う、高校生探偵の工藤新一ではなくただの高校生工藤新一について青年独自の見方で語る様は、真純をどこまでも惹きつけた。

 

 確かに彼女は工藤新一について探ろうとしていた。それは同じ探偵として、母の幼児化の秘密を知ろうとして、そして何より昔抱いた憧れから。だがそれも長い時間をかけて細かな下調べをしたうえで漸く一歩を踏み出せると考えてのこと。

 たった一人の青年からそこまでの情報を聞き出せるとは微塵も思ってはいない。

 だからついつい気が急いてしつこいくらいに詰め寄ってしまったが、それでも真純ならばまだ誤魔化せる範囲でのことだ。

 

 なのに、青年は工藤新一について尋ねる彼女を見て納得がいったように笑ったのだ。ああ、それが目的かと呟いて。

 真純が転校先にわざわざ新一が通っていた高校を選んだのは、確かに新一について探りを入れるためだ。

 それでもそれを表に出すほど彼女は愚かではないし、そんな直ぐに見抜かれる程度で探偵を名乗りはしない。

 だが、青年は気づいた。当たり前のように真純の思惑を見抜き、その上で気にした風もなく新一について自分の知りうることを話す彼を見て、彼女が感じたのは少しの恐怖と、そんなもの帳消しにするほどの興味だった。

 青年は別に探偵を名乗っているわけではない。にもかかわらず未熟な彼女の思惑を一瞬で看破するだけの観察力を見せ、その上で情報を提示する器を見せた。それは真純がそれまでの人生で出会ったことのない在り方で、だからこそ興味を抱かざるを得なかった。

 

 「面白いやつだと思ったよ。それに大人だとも。出来ればもっと早く出会いたかったかな」

 

 その後も出来るだけ青年のそばにいた。そうすれば何かが見つかるような気がして。少しだけでも自分が成長できるような気がして。

 事実真純は成長できたように思う。少なくとも積極的に事件に絡みに行く性格は大人しくなった。

 おかげで事件現場であれこれ動くコナンを客観的に観察し、学ぶことが出来るようになったのだ。青年には感謝しかない。

 

 

 

 

 

 

 さて、では唐突だがここで考えて欲しい。可愛い転校生が話しかけてきたと思ったら、その話題が前の席のイケメン男子についてだったとある準ボッチの青年の心境はどうだったのかを。ああ、それが目的か。青年は自己評価が頗る低かった。

 

 ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★

 

 「今にして思えば、僕がコナン君に絡みに行くのを止めたのも僕が危ない橋を渡ろうとしているのを防ぐためだったのかもな」

 

 しみじみと呟きながら、真純は目の前で寝こける青年を眺める。それにつられて全員の視線が刺さるが、起きる気配はない。そのくせ体幹がしっかりとしているのか、左右にぶれる様子はないのだから恐ろしい。密かに青年が倒れることを期待して隣に腰かけていた志保からすれば面白くないだろうが。

 

 「それじゃあ、最後は僕かな」

 

 そんな志保の様子にこっそりと笑みを溢して、降谷は真純の後に続いた。

 このメンバーの中で唯一組織の目線で青年について話すことが出来る存在。そんな降谷が選んだのは、当然ながら組織絡みの話題だ。

 だが、いきなりその話を振るわけにはいかない。それを話すにはいくつか踏むべき手順が必要になる。

 だから前段階として、降谷はある事件について話し始めた。

 

 「君たちは、大岡という名前を知っているか?」

 

 突然の質問に疑問符を浮かべる新一と真純。その中で唯一動じることのなかった志保が口を開いた。なお、赤井に解答権は与えられていない。

 

 「知ってるも何も、彼の名前でしょ?大岡(おおおか) 紅葉(こうよう)。宮野志保として初めて彼に会ったとき、そう自己紹介してくれたもの」

 

 当然のように答えた志保はその日の出来事を思い出しているのかほんのり頬が赤い。灰原哀の時は彼を見上げることが多かったが、宮野志保になることで初めて同じ目線で会話できた。その当たり前は、彼女に何とも言えない幸福感を与えたのだ。

 灰原の時も目線合わせて貰ってたじゃねーか。ぼそりと呟いた新一は懲りていない。おそらく今後一週間彼の食事はレーズン尽くしになるだろう。同情の余地はない。

 

 降谷はそんな相棒二人のやり取りを微笑を浮かべて流すと、ええそうですと続けた。

 

 「彼の母親は京都の大富豪、大岡家の次女。そして彼の父親は鈴木財閥で高い地位についているそうです」

 

 それがどうかしたのか、口よりも雄弁に物語る新一の不満顔を見てやはり子供だなと降谷は少し笑って、その表情を消した。

 

 「大岡家は古くから続く伝統ある家系です。それ故の太いパイプもありますから、いくら組織と言えど下手にここに手を出せば日本での行動が制限される恐れがあります」

 

 だからこそ、暗殺するにあたっても目立つようなことは出来ず、あくまでも不運な事故という体を装わなければならない。

 また、青年の父親が警察関係者と深いつながりがあるという情報も得ていた。だからこそ余計に青年の暗殺は隠密性を求められたのだ。

 

 もっとも、当初は青年の暗殺計画に対する反対意見も多かった。もともとピスコは自身に与えられた命令を無視して独断専行の末の逮捕だ。切り捨てられてもおかしくない。

 かくいう降谷も、当初それを聞いた時はついに気でも触れたのかと思ったものだ。今でこそそこにシェリーの捕獲という目的があったことが分かっているが、情報のないあの時はただの少女誘拐。

 寧ろピスコの暗殺計画が進められなかったことが不思議でならない。

 だが、一応は組織にもメンツがある。ただの青年が組織の重鎮の逮捕に関わったと聞いて無視するわけにもいかない。

 それに、もしかしたらであるがその青年が警察関係者で、ピスコ逮捕の為に罪状を作り上げた可能性だってあった。

 結局、組織は青年の暗殺を決定したのだ。

 

 コードネーム持ちが青年の暗殺に赴くこともなく、名もない下っ端が与えられた暗殺任務。それは当然のように成功に終わり、誰もがすぐに忘れるものだと思われた。

 だが、実際は違った。送り込まれた組織の刺客は次々と躱されついぞ暗殺は成功しなかった。

 メンツを保つ為に下っ端とは言え組織に所属する人間を送り込んだのだにもかかわらず、すべてが返り討ち。

 これは明らかにおかしい。裏に何かあるのか、或いは青年はやはり警察関係者だったのか。

 色々な推測が飛び回り、ついには一人のコードネーム持ちが彼の暗殺に名乗りを上げたのだ。

 

 「コードネーム・アイリッシュ。ピスコが手塩にかけて育てた優秀な工作員です。その彼が青年の暗殺に加わった」

 

 そこまで言い切って、たまらず降谷は噴き出した。彼にしては珍しいその行動に新一たちに困惑するが、そんなものお構いなしだ。

 一度だけ咳払いして表情を引き締めると、降谷は少しだけ震えた声で続ける。

 

 「その事件のことを、我々公安は『ピスコの肩たたき事件』と呼んでいます」

 「は?」

 

 ピスコの肩たたき事件。

 青年暗殺を目論んだアイリッシュが色々な策略を巡らせたが、その悉くが青年の運と速度と回避能力の結果失敗し、最後に捨て身の策として『タンクローリーだ!』とでも叫びそうな勢いで青年に突撃をかまし、最強の守護者電信柱に敗れ去ったことが始まりだった。

 もはや意識朦朧、満身創痍の状態でそれでもなお青年を殺そうと這う這うの身で青年に近づき、しかし最後には殺すに及ばず「ピスコのか…た……き」と気を失ったアイリッシュを見て、青年が救急に「ピスコの肩たたきといって気を失いました」と通報したことから名づけられたものだった。

 おかげでアイリッシュは青年暗殺に臨む非情な暗殺者から一転、お世話になったピスコという人に少しでも親孝行しようとスピード違反してでも急いで向かい、結果として大怪我を負ったお茶目な人に早変わりした。

 そのせいでアイリッシュは病院関係者からは生暖かい目を向けられ、ピスコの名を聞き飛んできた降谷の部下の風見には同情するように見られたという悲劇の事件である。

 

 説明を受けた新一は可哀そうなものを見る目をして、それ以外は全員噴き出した。あの赤井すらもだ。

 

 「まあ、僕からすれば笑いごとですが組織からすればそうではない。なんせコードネーム持ちすらも返り討ちにあったんですから」

 

 その後の組織の混乱は凄かった。青年はやはり警察関係者だったのか、実は赤井秀一の隠し子では無いのか、元組織の人間かもしれない。

 噂が噂を呼び、また青年の同級生に鈴木財閥の御曹司・鈴木園子がいたことから実は青年が鈴木財閥が秘密裏に雇った凄腕のボディーガードなのかという噂まで流れ始めたのだ。

 他にもピスコ逮捕のあの現場にシェリーがいた可能性があったというウォッカの一言でついにはスクール時代のシェリーの恋人という話まで出た次第だ。

 

 そして、そうなれば黙っていないのが一人。案の定その男はウォッカの一言に目の色を変えて、青年の暗殺計画に名乗りを上げた。

 

 「組織の殺し屋、ジンが遂に彼の暗殺に乗り出しました」

 

 騒然とする周囲を他所に、あくまでも降谷は淡々と事実を述べる。

 当たり前だ、この場にいるほとんどはジンにたいして少なからず因縁がある。ジンというのはそれほどまでに驚異的な存在なのだ。

 

 「志保さん、大丈夫ですか?」

 

 中でも最もジンにトラウマを抱えているであろう志保に念のために声をかけるが、彼女は不自然なくらいに落ち着いていた。

 不思議に思い様子を見て、なるほどと降谷は納得する。

 志保がすでにある程度トラウマを克服しているというのは新一を通して聞いていた。だがそれでも根底に宿る恐怖というのはそう簡単に消えてくれるものでは無い。

 だから降谷は言葉を尽くして少しでもそれを和らげようとしていた。だがふたを開けてみればどうだ。

 降谷や赤井、それに新一だとしても、恐らくは無理なそれをあっさりとやってのける人物がいた。

 まだ完全にトラウマを乗り越えられていない志保は、そっと青年の裾を握ることで恐怖に耐えていたのだ。

 ただそこにいるだけで人を安心させる。それがどれ程稀有な存在なのか、眠る青年は気づかない。

 

 それにまた一度だけ笑みを浮かべて、降谷は先を話す。

 

 ジンが青年の暗殺を行うに当たり、舞台を整えるのは降谷(バーボン)の仕事だった。

 理由は彼が最も米花に精通しているのと、組織への忠誠を確認するため。それ故に降谷も下手な真似は出来ず、事前に得ていた安室透としてバイトをしている喫茶店『ポアロ』のマスターが青年の父親と親しくしている、また本の貸し借りがあったという情報を利用して青年がポアロに来るように誘導した。

 その道中にジンが待ち伏せして、青年を殺す。あまりに単純で、だからこそ抵抗のしようがないものだった。

 念のためを想定し前もって喫茶店からマスターと看板娘の梓を避難させ、来るはずもない青年の為にコーヒーの準備をして少し。

 震えた携帯に、降谷は暗殺計画の成功を疑わなかった。

 暗殺は成功した。飾り気のない簡素な言葉でそう告げられるのだろうと予想して、それに合わせたバーボンとしての反応を適当に想像して画面を開き、電話口から聞こえるジンにしては珍しい少し焦ったような口調に思考が止まった。

 

 「『暗殺は失敗した。やつは俺の存在に気づいていた』それだけ言って電話は切れました。全く恐ろしい子供ですよ」

 

 あのジンが暗殺を失敗した。それが何を意味するのか理解できないものはいない。

 組織でもっともあの方に忠誠を誓い、あの方の障害となるもの全てを排除する冷酷な殺し屋。それがジンだ。

 これまでだっていったいどれだけの人間が彼に殺されてきたのかは分からない。計画的で残忍で、それでいて場を冷静に見るだけの賢さを揃えた警察機関が最も警戒する男。

 そのジンが失敗した。否、そのジンを上回り失敗させた。ただの青年が、一介の高校生が。

 

 「あの場を見張っていた別の組織の人間が言うに、彼はジンのテリトリーの外からジンに気づくと即座に姿をくらましたようです」

 

 そして、それは正解だ。

 もし仮にもう少し接近していたら。或いは青年が実力を見誤りジンに接敵すれば。

 関係のない一般人まで巻き込んでの殺しになっていたことだろう。それを避ける為にあえてジンを捕らえることを優先せずに逃げに徹した。

 状況がよく見えている。いや、最早見えすぎている。それこそ千里眼や未来を見る目を持っていると言われても納得がいくほどに。

 

 「彼がポアロに来た時、僕はこの目を疑いましたよ。幽霊ではないかとね」

 

 何事もなかったかのようにポアロに入り、何食わぬ顔でコーヒーを口にする青年を見て、降谷が抱いたものは何だったか。それを言葉で言い表すことは出来ない。

 その後すぐにポアロに来たコナンのせいで考える時間がなかったとも言える。

 あの時はまだコナンは降谷が公安の人間とは知らなかったために必要以上に警戒していたので、少しでもボロを出すまいと考え事に耽る余裕が無かった。

 それでもコナンと青年二人を観察していたところを見るに、降谷もなかなかの食わせ物だが。

 

 

 

 

 因みに、外人、銀髪の長髪、ガタイがいい、全身真っ黒、目つきが悪い。またその時のジンは青年がシェリーに繋がっていると信じて疑っていなかった為に漸く会えるぜシェリー、的なことを呟きながらニヤニヤしていた。こんな怪しい人間に青年が近づく筈もないのだが、恐らくそこに気づく人間はここにはいない。

 多分組織の所為で常識が崩壊しているのだろう。流石は黒ずくめの組織。なんて恐ろしい。

 

 ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★

 

 「以上が僕が彼を認めたエピソードですかね」

 

 読めない笑顔で締めくくり、降谷は一度だけ青年を見た。

 少しあどけない寝顔は正しく降谷の守るべき日本人のそれで、心が温まるのを感じている。

 

 この他にも青年に関する話題は尽きない。

 新一がコナンとして、志保が灰原として、赤井が沖矢として、降谷が安室として、そして世良が、青年が。この場に居合わせるメンツが一堂に会した事件は過去に二度ある。

 一つがコナンが誘拐された事件、もう一つがベルツリー急行の一件だ。

 

 コナン誘拐の事件では青年は表だっては動いていないため詳細は省くが、それでも遠距離からその様子を見張っていたベルモットを牽制する働きを見せた。

 バーボンに対して連絡を入れたベルモットの背後で警察に連絡を入れたのだ。その目でしっかりとベルモットと、そしてバーボンを睨んだうえで。

 

 一方で本格的に動いたベルツリー急行での一件。

 ベルモットからの脅しを含んだメールを受け、周囲を巻き込むまいと同じくベルツリー急行に乗り込んでいた少年探偵団や毛利蘭達から距離を取った灰原の前に現れ、その心の闇を払拭してみせた。

 少しの勘違いがあり、沖矢昴をベルモットの味方だと認識して攻撃してきたが、それも灰原を思う上での行動だと思えば納得もいく。

 事実青年のその行動に勇気付けられた灰原は生きる為に動いた。それは自らの死を受け入れていたこれまでの灰原にはない動きで、青年の影響であることは一目瞭然だった。

 

 このように青年に関する話題は底が見えない。それでも本当の意味で青年を語るのならば、決して外すことの出来ない伝説がある。

 各国警察機関の悲願にして、赤井や降谷にとっての大きな目的。即ち、組織壊滅。

 

 ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★

 

 各国警察機関が協力して行われた組織関係者の一斉検挙。多くの時間、多くの人間。そして多くの犠牲のもとに行われたそれは組織に潜入捜査中のバーボン、そして同じく潜入中のキールの二人の誘導のもと予定通りに進んでいた。

 組織関連の研究者や職員、果ては幹部にボスの腹心ラムを捕らえながらも組織中枢に攻め入った警察であるがしかしそこには組織のボスの姿だけは発見できず。最後の最後で一歩先を行かれ逃げられた。

 

 辛酸を舐めさせられ大人たちが絶望に顔を曇らせるなか、ただ一人コナンだけは違った。

 工藤新一としての生きてきた経験、コナンとして得た知識。それらすべてを惜しむことなく利用して、組織のボスが潜伏しているであろう場所を突き止めた。

 唯一失敗があったとすれば、それはコナンが急ぎ過ぎたこと。最後の最後で今なお組織の施設内部で捜索を続けていた降谷や赤井の帰りを待たずして動いてしまったことだろう。

 

 ある資産家が有する私有地。そこに狙いを付けたコナンは相棒である灰原を連れたって最大の難事件の、その真犯人を捕らえる為に動いた。

 鬱蒼と生え盛る竹林を抜けて辿り付いた錆びた一軒家、そこにはコナンの予想通りに初老の男性が待っていたのだ。

 

 僅かな問答の果て、ボスの真意を聞いてなおそれでも許せないと吠えるコナンに僅かに呆れた表情を見せた男性は次の瞬間にはコナンを無力化していた。

 何が起こったのか分からない。腕時計型麻酔銃もキック力増強シューズすらも使う間もなく制圧されたコナンは、そこで初めて自らの失策に気づいた。

 確かに目の前の男は年を取っていた。だからこそコナンはおのれ一人で十分だと油断したのだ。だが果たして組織が開発していたものは何だったか。コナンの相棒が開発を強制されていたものの正体は何だったか。

 優秀な頭脳は直ぐに答えを出して、けれどそれは遅すぎた。組織のボスは肉体改造を施していた。そんな当たり前の事実に気づいた時には既にコナンの身体は言うことを聞かない。

 最後の最後で、子供の体であることが邪魔をしたのだ。

 後悔に顔を歪めるコナンの前で男は灰原に手をかける。組織を裏切った優秀な研究者、ある意味で組織に最も貢献した元コードネームもち。その最後をせめて自身の手で終わらせてやろうと。

 馬乗りになって首を絞める男に抵抗することも出来ず、最後に一人の青年を思い浮かべて死を受け入れる灰原。

 それを救ったのは一発の蹴りだった。

 灰原にかけられていた体重が一瞬にして消え去り、少しの間をおいて響く人が地面を滑る音。

 そして、力強く、蹴りぬくように地面を踏みしめる足音。

 息も絶え絶えに見上げた灰原の視界に映ったのは、待ち焦がれていた青年(ヒーロー)の見慣れた背中だった。

 

 ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★

 

 周囲がうるさいから目を覚ますと何故か宮野さんと工藤に挟まれていた。何を言っているか分からないと思うが俺も分からない。催眠術だとか(ry

 まあ冗談は置いておいて、一旦状況を整理しよう。目が覚めたら二人に囲まれていた。それは分からない。あれ?初手から詰んでる。

 だが今は無理やりそれに納得しておこう。確か俺は工藤の家で寝させてもらったのだ。それを考えれば二人に囲まれるのも、分からなくはない……かな?

 まあ分かったとして、問題はそれ以外だ。目の前に世良さんがいるのは分かる。その隣だ。ニット帽の目つきの鋭い人がいる。いや、何故いる。

 そして工藤の奥に金髪褐色の人が見える、いや、だから何故いる。

 

 この二人に俺は見覚えがある。ニット帽の人は灰原さんのストーカー疑惑がある人で、金髪の人はショタコンの疑惑がある人だ。冷静に思い出してみるがそれってヤバくない?

 もう一度考えよう。ここは工藤の家で、隣にはもともと灰原さんが居候していた阿笠さんの家がある。

 その工藤邸にいる灰原さんのストーカーかもしれないニット帽の人に、ショタコン(しかも江戸川くんに目を付けている)疑惑のある金髪の人。通報しなくちゃ(使命感)

 思い立ったら即行動。すぐさまスマホに手を伸ばして、その手が誰かに拘束されていた。ってか宮野さんが何故か俺の手を握っていた。なんで?

 いや、本当になんで?そういう行動をされるとですね、馬鹿な男子は自分に好意があるのではないかと思いあがるんですよ。だから離して欲しい。マジで。だってさっきから熱いし。

 いやー、ちょっと工藤の家暖房効き過ぎじゃない?凄い熱いんですけど。

 なんて馬鹿なことを考えていたら流石に俺が起きたことに気づいたのか宮野さんがこっちを向いた。その顔は何故か笑顔を浮かべていて、正直心臓に悪い。

 

 そして宮野さんにつられてみんなこっち見て来た。変態どもはコッチ見んな。アッチ行け。工藤邸を出て直ぐ右曲がって真っ直ぐ行けば交番あるからそこに行け。

 だが俺の心なんて分かる筈もなく、微笑まし気な顔でこちらを見やがる。なに?今度は宮野さん目当てなの?お前ら守備範囲広すぎだろ。

 そんな二人にまるで気づかない工藤が何やら俺に質問してきた。おい名探偵。自慢の観察眼はどうした。

 質問の内容を要約すると竹林で俺が老人に蹴りを入れたことについてだ。どうやら江戸川くんに聞いて興味が沸いたらしい。

 

 竹林での事件。それは俺がタケノコ狩りを行っていた日に起きた最悪の事件だ。

 色々な場所を散策しタケノコを掘っていた俺は、しかし途中で足を滑らせて崖から転落した。

 その時は近くに生えていた竹のしなりを利用してどうにか難を逃れたが落ちた先が悪かった。俺が落ちたのは何処かの資産家の私有地だったのだ。

 前もってその話は聞いていたしフェンスで区切ってあるから大丈夫とも知っていたが、まさか崖から落ちて侵入してくることは想像していなかったのだろう、そこだけ唯一フェンスがなかった。

 不慮の事故とは言え侵入したことは事実。一応私有地内では何もしていないことを証明するためにスマホのビデオ機能で俺の行動を録画しながら資産家が住んでいる一軒家に進み始めて暫く、漸く辿り着いたそこでは老人(変態)が灰原さんに馬乗りになっていたのだ。

 一瞬で目の前が真っ赤になって、気づけば全力で蹴り上げていた。

 その後は何故か元気な老人が貴様ぁぁあとか言いながら襲い掛かってきたが知ったことでは無い。

 確かに動きは機敏だったが偶にテレビで見るKARATEの世界大会に比べれば全然大したことない。冷静に狙いを定めてその顔面にタケノコを食らわせてやった。

 

 その後は、男性に性的暴行を受けそうになった灰原さんに男の俺が近づくのも憚られて江戸川くんに任せようとしたのだが、どういうわけか灰原さんがくっついて離れなかったために声を小さくして警察に通報した。

 内容は当然老人が少女に馬乗りになって暴行を働いていたというもの。たまたまとはいえ証拠の動画もあるのはラッキーだった。

 一応目印として老人の顔と腹にタケノコを置いて、さて帰ろうとその場を離れると今度はシェリーシェリーとイカレタ目で呟くガタイのいい長髪の外国人が。

 当然そんな危険人物に恐怖を感じて震える灰原さんと江戸川くん。いつもの俺なら怪しいだけの人間ならスマホをチラつかせて脅すに留めるのだが今回はタイミングが悪い。

 ただでさえ人に怯えている灰原さんにこれ以上恐怖を与えるわけにもいかず、しゃーなしでタケノコスパーキング×5を食らわせてご退場して貰った。

 その後はその外人にも目印の為に顔と腹にタケノコを置いてその場を去り、数分の散策の末私有地から脱出することに成功したのだ。

 だが、この事件は灰原さんの身に起きたことを考えれば周りに言える筈もない。誰に言うこともなく自らの心のうちに留めていたのだが流石は江戸川くん、小学生だからデリカシーがない。

 

 まあ、そう言う事情もあるために工藤の質問に対する答えは沈黙だ。断固として口を割る気はない。この問題には仲のいい悪いは関係ないのだ。

 そんな俺の態度を見て何を感じ取ったのか、工藤はお前は凄いなと呟くと大人しくなった。宮野さんからは何故かお礼を言われたが。え?なんで?

 そして俺を見てフッて感じで笑う変態二人。何故か目を輝かせてカッコいいと宣う世良さん。なに?どうしたの?

 

 

 

 

 あっ、結局その後は夕飯までお世話になりました。大変美味しかったです。

 それと食事中に工藤が黒ずくめの組織とか言う中二病の妄想みたいな話をしてきたんだけどあれ何だったんだろ?父親にならって小説家にでもなるの?感想とか求められてんの?

 期待した眼差しで見られたから頑張って感想考えたがあれだな。

 

 

 黒ずくめの組織はヤベーところだな。




主人公:本名大岡 紅葉(こうよう)
苗字や名前から察してもらえるように大岡紅葉(もみじ)とは従妹の関係。
組織壊滅に大きく貢献した各国警察官の英雄。彼の将来にほぼすべての人間が注目している。なにそれ怖い。
恋愛ごとに関しては自身のめんどくささを理解している為に消極的。多分この後宮野さんにガンガン押されてそのうち堕ちるかも。
主な武器:蹴り技 タケノコスパーキング(シルバーブレット)


タケノコ:組織崩壊の決め手となった世界最高の武器。真の勇者がそれを手にした時その真価を発揮する。


主人公父:工藤優作にその実力を認められ、黒羽盗一の共犯者で、毛利小五郎の飲み友にして日本警察にその動向を注目される人。また鈴木財閥の信頼も厚い。過去主人公母を助けた関係でそのまま婿入りした。
Q そんなに凄い人なんですか?
A 勘違いは遺伝する


主人公母:多分一番勘違いしている人。息子の活躍を聞いても流石私たちの子供ね程度。なお父親は大体を察して密かに涙する。流石は俺の息子だ(泣)


大岡紅葉(もみじ):本作未登場なのにおまけで名前が出た人。主人公が美人を見ても美人だなとしか思わないのはこの人のせい。
原作通りせやかて工藤にご執心。ことある毎に主人公に電話をしてはなんやと工藤について話す人。
もろたで工藤と結婚できなかった場合は主人公と結婚する可能性が高かったが、本人的にはまあ主人公だしいいかと思っている。くたばれ主人公。
冗談抜きで書くと一時期妹を失ったショックで荒れていた主人公を根気強く慰めてくれた人。そのため主人公が唯一頭が上がらない。
多分主人公の一番の理解者で、主人公と付き合う際の最大の障壁。


主人公妹:主人公のトラウマ。生きていれば主人公の在り方も少しは変わったのかもしれない。が、よく考えたら生きてた場合妹を守ろうと今以上のチートになってたから勘違いが酷くなるだけだと気づいた。流石主人公。


沖田総司:過去主人公が荒れていた時期、励まそうとした紅葉が主人公を連れ回して京都を散策していた時に遭遇した人。その後この女とデートなんてお兄さん正気か?と尋ねたところ主人公にガチギレされた。哀れ。タイミングが悪かった。
それからは軽いトラウマ。主人公に会うたびにちょっとビクってする。そしてそれを見た周囲が主人公を沖田すらもビビる剣士だと勘違いしてそこからは噂が噂を呼んでの大混乱。
主人公、ここでもまさかの勘違い。


周囲から見た主人公

名探偵陣営

名探偵:ずば抜けた人間観察能力と、高い状況判断能力を持つ親友。将来的には自身が開く探偵事務所で助手をして貰いたい。組織のボスを捕らえておきながらそれを誇示しない様は尊敬の一言。

トリプルフェイス:尋常ならざる危機察知能力と、全体的な視点で物事を見ることに長けた逸材。是非とも部下に欲しい。

FBIの切れ者:異次元の洞察力と人並み外れた度胸を有する得難い人材。彼を向かい入れる準備は万端。

女子高生探偵:独特の価値観と揺れることない信念を持つ面白いやつ。一緒に探偵やるのもいいなと思ってる。

科学者:太陽のような温かさと誰でも助ける気概をもったヒーロー。傍にいられたらそれでいい。

因みにこれを主人公が聞いた場合。
「え?誰それ?」
またまた、ご謙遜を(笑)。

黒ずくめ陣営

ジン:シェリーと繋がり深い謎の男。赤井に匹敵する組織への脅威。タケノコの恨みは晴らす。

ベルモット:シェリーを守る忌々しいナイト。その一方でその実力は認めている。

ピスコ:いずれ組織壊滅を招く災厄。

アイリッシュ:絶許。あとで便所裏来い。

あの方:完全なるイレギュラー。計画の全てを狂わされた元凶。そしてロリコンにしたことは許さない。

因みにこれを(ry
「だから誰だよそれ?」
またまた、ご謙遜を(哀)


組織残党:
「ボスがやられた!」「主人公を殺せ!」「復讐だ!」「報復だ!」「組織の再復興だ!」
実は組織のボスは少女に性的暴行を加えようとして捕まったんだって
「「「「「失望しました、組織辞めます」」」」」
こんな感じで組織の残党のモチベーションを完全に潰したので主人公の活躍はデカい。流石は主人公さんやで。



本当のあとがき

これにてこのシリーズはおしまいです。
他にもいくつか妄想はありましたが、文章にするのが大変そうなのでここで切ります。ロリコンになりたくなくて必死になって自分の罪を自供するあの方とか、それを知って、まさかここまで読んで!?って勘違いを深める警察関係者とか書きたかったけど無理でした。文才がないんじゃぁ…。


とにもかくにも思い付きで書いたような滅茶苦茶なこの作品に目を通していただいたこと、心より感謝を申し上げます。お付き合いしていただきありがとうございました。


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