勇物語 (夏目ユウリ)
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プロローグ

阿良々木君というキャラクターをなんとか書きたかったのが始まりです。

彼のモノローグとかすごい好きです。

つまり西尾さんは天才。まじパナイの。


勇者とはなんだろうか。最近僕はふとそんなことを考えてしまう。

 

釈明しておくと決して遅まきながらの厨二心に目指せたとかそんなことではなく、(というか僕にそんな時期はなかった………たぶん)

 

話を戻そう。

 

この高校三年生の大事な夏休み。普通の受験生ならば分け目もふらずに勉学に勤しむのが当たり前であろう。無論戦場ヶ原や羽川のお陰で勉強の方も進んでいないわけではない。宿題はしてなかったけど。

 

しかし、決して普通の人がしないような体験も僕はしてきてしまった。それこそ春休みーーー地獄のような春休みと僕は今まで形容してきた春休みと同等の怪異体験をしてきた。

 

蜂に刺された大きい妹ーー阿良々木火憐

 

不死鳥そのもの小さい妹ーー阿良々木月火

 

『栂の木二中のファイヤーシスターズ』というなんだそりゃと言わざるを得ない異名で呼ばれているこの二人は正義の味方そのもの。具現者である、らしい。

 

もっとも僕から言わせればそれはただのごっこ遊びであり、正義でもなんでもない。ただの自己満足なのだ。

 

………まぁこの手の話は本家偽物語で散々したからここでいちいち語り直すのはよすとして

 

冒頭でも言った通り『勇者』という存在は果たしてなんなのだろうか。こんなことを他の人に話せば勇者は勇者でしょ。この一言で済まされてしまうだろう。

 

それを否定するつもりは一切ない。

 

だらかこそ僕は勇者とはなんなのか、もっとわかりやすく言うとどうすれば『勇者』のようなカッコいい正義の味方になれるのか。

 

ということを考えているのだ。

 

それこそ火憐、月火たちと同じ頃、もっと言えば幼稚園、小学校の頃であろうか。

 

僕は『勇者』に憧れていた。いわゆるゲームやアニメ、それこそ絵本なんかに出てくる勇者に。

 

どうして憧れたのか。理由は特に覚えていないし、おそらくそんな大した理由があったわけでもないのだろう。僕はそんなやつだ。今でも、未だに。

 

でも僕は勇者を憧れてはいたけれど知ってはいなかった。

 

もっと言うと果たして勇者が一体どんなことをする人なのか、よくわかっていなかった。

 

現実にはドラゴンや魔王なんていないしそれこそどっかの爺さんや婆さんがいきなり現れて「お前が勇者になるのだ」なんて言ってくることはない。

 

今のこのーーー曲がりなりにも、あくまで表面上はきっと平和であるこの世の中わざわざ勇者なんてものが働くタイミングもないし、必要もない。いらない存在。

 

 

愚かでろくに考えることもしない僕はだからーー人助けをすることにした。

 

なりふり構わない無尽蔵の人助けをしようとした。今でこそ信じられないし、信じたくもないが当時の僕は本当にそうすることで自分が憧れていた勇者という存在に、正義の味方みたいなやつになれるとはいわなくとも、せめて近づくことぐらいはできると思っていた。

 

しかしより現実を知ったことで、世の中にはできることとできないことがあると知ったことで、むしろそんな過去の自分がなんだか無性に滑稽で第三者から見たらなんか無駄に必死なおかしな奴だった僕が嫌になった。

 

僕の今の人格を形成している人よりも捻くれている部分はそういうところの残り香みたいなものだ。

 

あとは直江津高校の勉強についていけなくなって普通に落ちぶれたってのもあるけど。

 

要するに中途半端なのだ。

 

高校三年生にもなった僕は現実をある程度、少なくとも過去の僕よりは知っていて、それでもまだ、未だに、性懲りも無く、それこそ未練たらしくもそういうものに対して何か捨てきれないものが心の何処かにあるのもわかっている。

 

 

その結果がこの高校三年生の春休みから夏休みまでの過程なのだ。

 

 

そして僕はきっとこれからもこの中途半端さを抱えて自己嫌悪に陥りながらも、失敗しながらも、苦しみながらも、失いながらも

 

 

 

きっと、行動することをやめられない。

 

 

 

彼女たちを

 

 

 

勇者たちのことをただ眺めていられるほど

 

 

 

僕は人間ができていないのだから。




前途多難。


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阿良々木暦は転生者である。其ノ壱

サブタイトルが思いつかない……

なんかいいなと思ったのあったら変えるかもです。


異世界転生なんて言葉を最近よく聞く。

 

なんの変哲も無い人畜無害の一般人の少年が突如異世界に転生されて神さまからもらった特典だなんだを使って無双だのなんだの、はたまた死んだら一定の時間にまで戻るとかなんとか。

 

まぁ色々だ。ちなみに僕は結構ラノベも読む。異世界ものも転生ものも嫌いじゃない。もっとも最近はそれも種類が増えに増えてきてなかなか選別が難しいものではある。面白そうと思ったものをいちいち買っていたのではバイトもしていない親からの小遣いでやりくりしている高校生は速攻で破産である。

 

最近の出費の半分近くを時にはそれ以上を占めているのが忍のミスド代というのもあるのだが。

 

というか忍のやつドーナツはミスド以外邪道だみたいなこと言ってなかったっけか?こないだたまたまクリスピードーナツを買ってったら文句言いながら食べてやがったからなあの金髪幼女。

 

自分の言ったことを平気で曲がるなよ。キャラ変更を安易に行えるのは斧乃木ちゃんだけで十分だ。

 

 

 

閑話休題。

 

 

 

いかん、いかん。

 

すぐにどうでもいいことを考え始めてしまうのは僕の悪い癖だ。悪癖だ。巷で噂の幼女趣味以上の悪癖だ。(そもそも僕は認めていないのだが)

 

異世界だ。異世界。

 

そうだった。そうだった。全く本当に困ったことだ。現実は現実として受け入れなければならないってこないだ戦場ヶ原に言われたばかりじゃぁないか。

 

何事もまずは受け入れるところから始まるものだ。そこから咀嚼して飲み込んで。身体中に浸透させる。

 

そうして行動に出るのが大事だなのだ。

 

状況把握。冷静沈着。

 

明鏡止水のごとく心を研ぎ澄ませるのだ。そして高らかに叫ぼうじゃないか。

 

叫び声には定評のある僕だが、今回は特にいい叫び声が生まれそうである。いやはやいやはや。何事も経験しておくものだ。人生何があるかわからないものである。

 

今の僕は普段以上に吸血鬼性が高いけれども。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここどこだよっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

異世界転生していた。

 

 

 

 

さて、簡単に事の顛末を話しておくこととしよう。夏休みが終わるのに夏休みの宿題が終わっていなかった。そこで忍の力を借りて時を数日遡ろうと考えたのだ。さながらドラえもんのタイムマシンのように。そう、ノブえもんだ。やっぱ中の人、それも初代っぽいな。

 

それで数日前に戻ってきたはずだったのだが

 

なんか全然違う世界に来ていた。

 

それもいわゆるベタな異世界ものの中世ヨーロッパ風な感じ、獣人があるとか荷馬車が後を立てて走っているとか、衛兵風の人がいたとかそんなんじゃない。

 

その名の通りの異世界。この世の理に反している世界。

 

木やつるなどの植物と思わしきものがそこらかしらに生えておりサイズも色もおかしい。平気で人のでかさを悠々とこすサイズ感に奇妙な色合い。

 

空の色もなんだか不気味で仕方がない。夜といえば夜のようだがそれでもどこか明るい。

 

上を見上げれば空が遠く感じる。というのも実際に僕が今いる地面が低いのだ。

 

通常ではあり得ないような高低差。

 

そして、何よりきになるのは

 

 

「………星…?」

 

暗い空にうっすらとではあるがポツポツと点々のように何かが見える。これも普段以上の吸血鬼化による賜物だろうが。

 

「いや、あんな星あるか?それになんかどんどん数増えてる気がするし」

 

なんだ。一体何がなんだかわからない。状況把握能力向上の術を羽川にもっと教わっておくんだったか。

 

流石の羽川でもこんな状況に陥ったら流石に困惑するだろうか?

 

実際問題困惑しているのは僕だけど。

 

「歩いてみるか…」

 

人間何事も足からと誰かが言っていた気がする。とにかく歩いてみよう。フィールドワークだ。

 

ふむ。それにしたっておかしな光景だ。空は相変わらず星に埋め尽くされてるししかもなんか動き回ってないか?

 

おまけにその一つが落ちてきてるし。

 

ん?

 

星ってそんなやすやすと落ちてきていいもんだっけ。

 

親方!空から女の子が!

 

じゃあないんだから。某ジ○リ監督もびっくりである。てかあの人こそロリコンだろ。僕は女性の範囲年齢が比較的、他社よりも、多少広いだけの青少年である。

 

だいいち彼女があんなんだし。ロリのロの字も無いような女の子だしなぁ。

 

 

それにしてもーーーーー戦場ヶ原以来だろうか。上から降ってくる女の子を抱きとめるというのは。

 

勢いが違いすぎだけど。というか戦場ヶ原はめちゃくちゃ軽かったしな。

 

 

隕石が落ちてくるときっとこんな音がするのだろう。大地を穿つように一本の筋が降り注ぎ地面をえぐり轟音が響いた。

 

僕からしたら音どころではないのだが。死にそう。

 

「いっ……………………っぁ……………………」

 

人間本当に困惑した時、痛い時などは声が出なくなるものだというがあれは本当だ。今僕が証明した。

 

強いて言うならうめき声なら出た。

 

 

 

 

 

 

 

「いてて…早く戻らないと!」

 

 

 

 

 

そんな状態の中少しずつ意識が再覚醒していく中で声が聞こえてくるのがわかった。

 

僕とは違ってその声はとても覇気に満ちていて、よく通る声だった。

 

というか落ちてきた女の子だった。

 

え、まじでラ○ュタ?シータってこんなんだったっけ?

 

「勇者は根性!」

 

しかも、そんな掛け声とともにその少女は飛び去ってしまった。文字通り。ものすごいジャンプ力だった。

 

あれシータめっちゃ元気じゃん。やっぱりジ○リ特有の元気系少女ヒロインだったのか。

 

「というか…僕、置き去りか…」

 

パズーの立場としてはなんだか複雑なものだった。

 

てか勇者とかなんとか言ってたような。まさかとは思いたいが、吸血鬼性が増している今の僕は普通なら聞き取れないような音もある程度聞き取ることができる。

 

「勇者、勇者…?」

 

もうしばらく聞いてこなかった単語だった。正義の味方に明け暮れているあの二人ですら使わない、子供じみた称号。

 

本来なら、なんか痛い子がいるな。程度で済む話なのだが、あいにくそれを聞いてしまったのは僕なのだ。

 

かつては正義の味方、そのトップに立つと勝手に思い込んでいた『勇者』に憧れていた阿良々木暦だったのだ。

 

そんな未だに子供じみたものを引きずっているのか、それすらもわからないが、とにかく僕は出会ったのだ。

 

この世の闇を振り払う存在に。光として人々を守り導く

 

「勇者」に

 

僕はーーー巡り合ったのだった。

 

 

 

 

 

 




阿良々木君の一人語りが多くなるなぁ。のわゆキャラたちとの会話が待たれるところ。


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阿良々木暦は転生者である。其ノ弐

ちょっと遅くなっちゃいましたね。

マジでクロスオーバーってむずいですね。


いやそうじゃないだろ。

 

 

というか何も解決していない。

 

 

そもそもあの子は誰だ?なんかとても人間とは思えないジャンプ力で飛んでったけど。貴重な第1村人に話を聞くことすらままならないとは……

 

「さて、どうしたもんか……………あ」

 

そうだ、そうだ。こんな時に頼れる相棒か僕にはいたじゃないか。周りに誰も頼れる人がいなくともこいつにだけは頼れる、そんなまさしく一蓮托生な相棒が。

 

金髪幼女の吸血鬼 忍野忍がいたんだった。

 

やれやれ、全くだ。春休みからの経験で僕も少しは成長して落ち着いた対応が取れていると思ったけれどどうやらまだまだかもしれないな。

 

六百年生きている吸血鬼の怪異である忍ならこんな意味不明の状況に対してもなんらかの経験談からアドバイス、又は解決策を提示したくれるかもしれない。そもそも事の発端は忍がタイムリープを提案してくれたことが始まりなのだし。

 

それに忍は僕の陰に潜んでの生活の前はあの学習塾跡の廃ビルで妖怪変化のオーソリティを自称する忍野メメから数々の怪異譚を聞いているはずだ。その中に役に立つ知識があるかもしれない。

 

そうと決まれば善は急げ。

 

僕は自らの体から伸びる影を見下ろしながら話しかける。

 

「おーい、忍。ちょっといいか?」

 

 

 

………………………………………

 

 

 

返事がない。ただの屍のようだ。吸血鬼だけど。

 

 

忍のやつもしかして寝てるのか?

 

たしかに忍は基本的に寝ている時間が多い、正確には日中は寝てあることが多いがそもそも今が夜なのか、どうかすらこの状況ではわからない。

 

「まぁ、呼びかけ続ければそのうち気づくか」

 

というわけで根気強く呼びかけることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………あれ?」

 

おかしい。いくら呼びかけても全く、これっぽっちも反応がない。普段だったらいくら日中でもこれだけしつこく呼びかければ否が応でもでもそれこそ渋々出てくるはずだが。

 

奥の手のドーナツあるぞ作戦も不成功に終わるし。

 

一体どういうことだ。……というかそもそも忍はもしかして影の中にはいない…?この世界のどこか別の場所に離れて飛ばされてしまったとかそういう感じか?

 

だが僕と忍はペアリングでつながっているはずだ。つまり忍は僕の陰から離れることはできないはず。

 

「いや、御託を並べても仕方がないか。とにかく今は忍とも連絡がとれないんだ。…だったら現地人に話をこちらから聞きに行くしかないな」

 

そう思った矢先だった。

 

先程から見えていた星?みたいなものがいくつかこちらに向かって迫ってくるのが見えた。

 

吸血鬼化が高まった目でその星?をよく見つめる。

 

 

「へぇ知らなかった。星って顔と口がついてるのか」

 

おそらくこんなこと、星に詳しい戦場ヶ原や『なんでもは知らないわよ。知ってることだけ』の羽川でさえも知らない新事実だろう。

 

 

 

「ッ!!!」

 

 

 

僕はとっさに走り出した。何も急に気がおかしくなったとかではない。ただーーー察知しただけだ。なんとなく。根拠もないが

 

 

あれは危ないと。

 

 

普段以上に吸血鬼化している体をフルに使って走る。

 

「っくそ!」

 

思わず悪態を吐く。星かと思っていたものがまさかのわけのわからない化け物だったのだ。しかもかなりのスピードで僕を追いかけてくる。

 

チラチラと後ろを確認するが間違いなく少しずつだが距離が詰められている。追いつかれるのも時間の問題だ。

 

改めて忍が不在なのが痛い。彼女がいてくれたらどれだけ心強かったか。というか物理的に強いしな。あいつ。

 

「ええい!ままよ!」

 

今いないやつのことを考えていても仕方がない。腹を決めて体に急ブレーキをかけて化物と向き合う。僕も化物なのは変わらないが。

 

化物は何匹かの集団で一直線に襲いかかってくる。そこにフォーメーションとか陣形みたいな概念は感じられない。

 

とにかく全部とまともに戦おうとしないでまずは退路を確保する。それからあの第1村人(勇者)の女の子を探し出す!

 

そう覚悟を決め不格好ながらも戦闘態勢をとる。僕が止まったことによって化物たちとの距離は一気に縮まる。

 

 

そして肝心の戦闘方法だが、ーーーなんてことはない。

 

 

「吸血鬼パンチーーーーー!」

 

 

拳で十分だ。というか拳しかなかった。だがそこは伝説の吸血鬼の眷属パワー。先頭の化物を文字通りぶん殴り吹っ飛ばす。

 

 

だが化物はまだまだいる。全然全く油断はできない。化物たちは我先にと突撃し噛み付こうとしてくる。

 

てかこいつら噛んでくるのかよ…!怖ッ!

 

化物たちの攻撃を紙一重になんとか避けながら応戦ーーーしたいのだがそう簡単にうまくいかなかった。

 

一匹一匹を撃退しようとすればさらにもう一匹にやられる。普段以上に吸血鬼化している今の僕の回復力がどの程度のものなのか定かではないが、回復を待ってくれるはずもあるまい。

 

となると何か戦い方を考えなければならない。

 

僕はそのチンケな頭で考えを巡らす。

 

どうせ僕に高度な技術なんて発揮できないし、戦術も戦略もない………だったら単純明快にやるしかない!

 

「ッらぁ!」

 

片足を軸にしてバランスをとりながら片腕をぶん回す。さながら吸血鬼スピンだ。…名前のセンスは許してくれ。

 

センスはともかくとして周りの化物たちを一気に攻撃することには成功した。

 

すると化物たちは攻撃するのを躊躇し始めた。

 

しかしそれは新たな危険を表している。化物たちが僕の周りを取り囲み始めたのだ。

 

取り囲まれるのはまずい。そもそも僕はさっさと離脱したいのだ。

 

とっさに逃げ道を探す。そして見つかった。

 

「躊躇してる暇はないか…!」

 

僕は顔を持ち上げ天を見上げる。そこはまだ化物たちに塞がれていない退路だった。

 

意を決して膝をぐっと屈め一気にジャンプする。包囲を向け出すことに成功した。

 

「って飛びすぎたぁぁぁ!?」

 

自分が思っていたよりも飛んでしまい焦りに焦る。というかあの化物たちは空を飛べるんだからこのままでは普通に追いかけられて食われる。

 

さらにバツの悪いことになぜか目の前に突如として馬鹿でかい板のようなものが現れた。

 

このままじゃ化物の餌になる前に衝突死不可避だ!!

 

こうなるとやれることはただ一つ。

 

吸血鬼パンチであの馬鹿でかい板をぶち割るしかない!!

 

さながらピッコロ大魔王を倒した時の悟空のように!

 

僕はサイヤ人でもなんでもないがな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一回で効かないなら…百回だって千回だって叩き続ければいい!」

 

あれ?この声…どこかで……というかついさっき聞いたような…。

 

「千回ぃーーー!連続勇者パーーーーンチ!!!」

 

僕のかざした拳よりも先にその板を攻撃する拳があった。しかもその拳は一回ならず、文字通り本当に千回ぐらいあるんじゃないかと思わせるほどの連続パンチで板を叩き割った。

 

ガラスのようにバラバラに砕け散り僕が板に正面衝突するなんてことは免れた。

 

しかしそこには側から見たら攻撃しようとして空振り、体が宙に投げ出され、落下していくなんともダサい男の姿があった。というか僕だった。

 

「どわぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!?!!」

 

なんとか着地を…!

 

と、思ったのだが不安なことに僕の体は背中を地面に向けて落ちていってる。この体勢では無事に着地などできやしない。

 

そしてそのまま重力に従い僕の体は背中から地面に激突ーーーーーすることはなかった。

 

突然体が落下から再び浮上する独特の感覚を覚えあたりを目だけで見渡す。

 

「大丈夫ですか!?どこか怪我は!」

 

僕は先ほど僕に激突してきます女の子とはまた違う子に抱きかかえられる体勢で受け止められていた。というかこれは完全にお姫様抱っこの体勢だった。

 

そんな…………まだ彼女にだってしたことないのにぃ!!

 

そんな僕の気持ちなど露知らず、女の子はさぞ心配そうな顔で僕の顔を見つめてくる。

 

「あ、えーっと。うん。怪我とかは特に」

 

「そうですか…よかった………………ところで貴方は…」

 

女の子の表情が安堵から疑惑、又は困惑にすぐに変わる。

 

いや、僕からしても君は一体どこ誰で何者なんだと言いたいところなのだが、状況が状況だ。

 

それに僕は今この子に助けられたのだし。

 

後々のことも考えてとりあえず名前ぐらいは名乗っておいても差し支えないだろう。

 

挨拶は大事だ。古事記にもそう書いてある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「僕は阿良々木暦。見たまんまの男さ」

 

 




まさかのこんな序盤で終物語でのセリフが登場してしまうとは…

ま、いっか。(考え無し)


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阿良々木暦は不審者である。其ノ壱

ほんと不定期で申し訳ないです…

やる気とかひらめきとかそういうのに左右されやすすぎる…


私こと乃木若葉と四人の勇者たちの戦いが始まった。

 

 

 

敵が侵攻してきたことによって起こった樹海化の中でバーテックスと私たち勇者は戦った。

 

初めは変身できない者、変身できても戦うことができない者もいた。だが、仲間からのアドバイスもあり無事に皆が戦線に参戦することができた。

 

そのまま順調に敵の数を減らしていくと何体かのバーテックスが集まり進化体となった。

 

我々の攻撃が効かない中、切り札の使用を迷っていたところを友奈がいち早く飛び出し切り札『一目連』の使用により進化体を無事に倒すことに成功した。

 

そして我々四国勇者の初陣は無事に勝利で終えることができ

 

 

 

 

ーーーーーーーーたのだが。

 

 

 

なぜが人がいた。この樹海の中には私たち勇者以外の人間はいないはずだし、樹海化している時は外の時間は止まっているはずだから外から入り込んでくることもできるはずがない。

 

しかし私の目にははっきりと叫び声をあげながら宙を舞い落ちていく人の姿が見えた。

 

「危ない…!」

 

私はとっさに飛び出しその人を空中でキャッチすることに成功した。

 

その人は男の人で、私の腕の中でなぜが悔しそうな表情を浮かべていた。

 

そして名をこう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「僕は阿良々木暦。見たまんまの男さ」

 

 

 

 

私はおかしな人だと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

始めたあった人との会話において何より大事なのはやはり自己紹介なのだと僕は思う。

 

僕は自慢じゃあないが友達が少ない。(マジで自慢じゃなく少ない)

 

だがそれはいい。友達の多さをあたかも自らの戦力の高さかのように表現する奴は僕が嫌いなタイプだ。何が偉いのかわかったもんじゃない。

 

まぁこれでも春休みの頃までは『友達はいらない。人間強度が下がるから』なんてことを言っていたことを鑑みると多少はまともになったと思いたいのだが、それにしたってやはり僕はなんというか、友達作りとか対人関係のスキルがまだまだ低いんだなと思わざるを得ないのだ。

 

そうでなきゃ普通初対面の女の子に見張られ、おまけに鎌を突き出される状況などにはならない。ーーのかもしれない。

 

 

 

 

「えーっと、喋ってもいいかな……?」

 

椅子に座らされた状態で恐る恐る口を開く。

 

すると黒髪の伸ばした女の子に冷たい目で睨まれたまま無言の「NO」をいただいた。

 

やめてくれ。Mに目覚めたらどうする。ただでさえ僕は知り合いの女子に冷たい目を向けられがちなんだ。

 

ちなみに僕はMじゃない。冷たい目を向けられたり冷たく話しかけられたりして興奮したり喜んだりしない。

 

そんなの八九寺オンリーだ。…忍と斧乃木ちゃんも追加しておこう。

 

「ぐんちゃん…あんまり睨まないであげて。ね?」

 

赤毛の少女が隣で黒髪の子をいさめようとしてくれている。有難い。この子はまだ話が通用しそうだ。

 

「高嶋さんがそう言うなら………」

 

どうやらこの子は赤毛の子に対して弱いようだ。あからさまに態度が変わった。もうグルングルン。神原でもここまで露骨じゃないぞ。

 

「すみません。我々としてもこんなことは本意ではないのですが」

 

先程僕を助けてくれた子が申し訳なさそうに一言。先程からの会話を聞いている限りどうやらこの子が集団のリーダーのような存在のように思えた。

 

「若葉ちゃん、大社と連絡が取れました。迎えが来るまで拘束した状態で見張っていてくれとのことです」

 

「そうか…ありがとうひなた」

 

「いえいえ」

 

おぉ……リーダー格の子ともう一人の紫髪の子のこの会話はなんだ。一見ただの会話にしか見えないが、そこに見え隠れするまるで結婚何十年目かの熟練夫婦のような雰囲気。

 

というかなんか物騒なワードが聞こえてきたんだけど。拘束?

 

え、また?ついこの間彼女にされたばっかりなのに?手錠って思ってた以上に鬱陶しいんだよなぁ。あれ長い時間されるの結構憂鬱なんだけど。

 

僕はちらっと視線を逸らして窓ガラスに向ける。そこには先ほどとは打って変わった空模様があった。もっともこっちの空が僕が知っているごく普通の空だが。

 

あの後ーーつまり僕が金髪の子に抱きかかえられた後あの不思議な光景は崩壊し通常の世界が戻ってきた。

 

そして僕はそのままなぜがお城の中に連れてこられ、そしてなぜがあった教室の中で現在椅子に座らされている。別に強制的に脅されてるとかじゃないが、状況的にはそう言って差し支えないだろう。

 

「どこを見ているの………逃げようとしているのなら…」

 

「ぐんちゃん!ストップ、ストップ!」

 

…どうやら目線も動かさない方がいいようだ。

 

「にしても本当に不思議だよなぁーなんだ勇者でもないのに樹海の中で動けるんだ?」

 

変わった髪型をしている小さめの子に頬を指で突かれる。

 

「ちょっとタマっち先輩……危ないよ…」

 

「なんだよ杏。平気だって。な?これだけ勇者がいるんだ。反抗なんてできやしないさ」

 

「でも…」

 

「わーかった。わかったよ。杏は心配性だなぁ〜」

 

大人しそうな子に言われて突っつくのをやめる変わった髪型の子。てかマジで初めて見るな。月火ちゃんで結構いろんな髪型を見てきたつもりだったんだけど。あいつすぐ髪伸びるし。

 

「別に構わないよ。頬を突かれるのには慣れてるからね」

 

「無駄な発言は許可していないわ」

 

怖。更生前の戦場ヶ原も思い出すようだった。

 

「…阿良々木さんと言いましたか」

 

リーダー格の子がどこか訝しげな視線を向けながらも一歩踏みより一言。どうやら名前は覚えていてもらっていたようだ。

 

「あぁ、あってるよ。僕の名前は阿良々木暦だ」

 

「そうですか。誠に申し訳ありませんが阿良々木さん、あなたをこれから迎えに来る大社に引き渡さなければいけません。それまでの間あなたにはここでおとなしくしていてもらう必要があります」

 

初対面の人に対する敬意を忘れないとともに不審者である僕……僕としては認めたくないが不審者とされている僕に甘さを見せないようにしているのが伝わる。

 

よくできた子だ。うちの妹たちに見せてやりたい。あとは後輩とかにも。

 

「それはわかった。どうやら僕はこの状況ではかなり怪しい存在らしいからな。ーーーただ僕個人としては何も君達と対立したいわけでもないし特別何か企んでいるわけでもないんだ」

 

「そんなの簡単に信じられるはずがないじゃない」

 

まぁ…ですよね。言葉で言うのは簡単だからな。でも今の僕には言葉で言うしかない。それしか方法がない。

 

たいしゃ?とかいう組織か何かに連れていかれる前に少しでもこの世界のこと、そしてこの子達のことを知っておいた方がいい気がするのだ。

 

とても人間とは思えない動きをし、化物を倒していた彼女たちはきっと何か特殊な事情を知っているーーーーーんじゃないかという希望的観測をしているのだ。

 

今僕が何より気をつけなければいけないのは身の振り方。とにかく敵意がないことを示すことができればいいのだが…

 

どうも僕に対する感情は三者三様というか…

 

「とりあえずまずは君達の名前を教えてくれないか。会話をする上で相手の名前を知っておくことは大事だろう?」

 

対話をする上で互いの名前を知ることはとても大事なことだといつぞやのアロハのおっさんが言っていた気がする。あいつこそまさしく不審者な気もするんだが。

 

「それはーーそうですね」

 

一瞬悩みながらも承諾してくれた。なんとか次のステップに進める。

 

「乃木さん…そんな簡単にこの人の要求をのんでいいわけ…?」

 

「千景、気持ちはわかる。だが私たちとしても情報が欲しいのは山々だ。まずはとにかく互いのことを少しでも知る努力をしなくてはいけないと私は思う」

 

「……それが何かの罠だとは考えないわけ?」

 

僕めっちゃ狡猾な奴だと思われとるやん。そんな貝木みたいなまどろっこしいこと僕には不可能なんだけどなぁ。

 

「もちろんそういう危険性も考慮した上での対話だ。内容は選ぶさ」

 

「千景は気にしすぎだって。とにかくやってみないと何も始まらないぞ。な、杏?」

 

「え…う、うん…」

 

「ぐんちゃん。私もそう思うな。とにかく話してみないとさ、相手がいい人なのか悪い人なのかもわからないよ。それに大丈夫!きっと阿良々木君は良い人だよ!」

 

「友奈さんはどうしてそう思うんですか?」

 

「うーん………なんとなくかな!」

 

「ふふ、友奈さんらしいですね」

 

「どうだ千景?まだ何か不満があるか?」

 

「……わかったわよ」

 

「ありがとう。そしていざとなった時は頼む」

 

「…えぇ。一瞬で切り刻んでやるわ」

 

今の僕の不死性どれくらいなんだろうなぁ……首チョンパされたら戻るのだろうか…まぁそれはともかくとして

 

「ありがとう。感謝するよ」

 

「じゃあ私から言うね。どうも!高嶋友奈っていいます!14歳です。好きな食べ物はうどんです。よろしくね」

 

「じゃあ次はタマだな!タマは土居球子だ!タマも14歳だぞ。よろしくな〜あとアウトドアが趣味でうどんが好きな食べ物だぞ」

 

「えっと…じゃあ次は私で。伊予島杏です。14歳で趣味は読書で好きな食べ物はうどんです…よろしくお願いします…」

 

「では次は私が。初めまして、上里ひなたといいます。私も14です。それから…そうですね、趣味と言えるかわかりませんが家事は結構好きですね。それから好きな食べ物はうどんですね」

 

「ではーーー私は乃木若葉といいます。歳は14で好きな食べ物はうどんです」

 

「………郡千景……14歳…うどんは好き…」

 

 

 

 

 

へぇ…………………………ん?

 

うどんの人気高すぎやしないか?そんな白米レベルで国民食だったか?別に僕も好きだけど。

 

というかみんな14歳かぁ。……中学生かぁ。僕が知ってるまともな中学生が千石ぐらいしかいないせいでなんだか不思議な感じだ。いや…言っちゃなんだか千石も多少変わった子ではあるのか?月火ちゃんと仲良いくらいだしな。

 

「なるほど、えーっと高嶋ちゃんに土居に伊予島ちゃんに乃木に上里さんに郡ちゃんか。よし覚えたぞ」

 

どうでもいいけど乃木って斧乃木にちょっと似てないか?

 

「なぁ阿良々木」

 

「ん、どうかしたのか?」

 

「なんで6人の呼び方がちょくちょく違ったりするんだ?」

 

「…………なんでだろうな?」

 

「理由ないのかよ!」

 

「まぁなんとなくだな。特にこれといった理由はないよ」

 

「ふーん。そんなもんか」

 

「そんなもんだ」

 

「じゃあそんなもんだな!」

 

「何言ってんだ」

 

「なんでだ!?」

 

なんかこいつちょっと火憐ちゃんみたいだな。サイズ感がだいぶ違うけど。頭が撫でやすそうなところにありやがる。妹たちがもっと小さかった時のことを思い出すようだ。あの頃は良かった………そうでもねぇや。あいつらあの頃から生意気だったわ。

 

「………」

 

「? なんだよ?」

 

ぽん

 

なでなでなで

 

「……………」

 

「……………」

 

互いに黙った状態のまま数秒の時が流れる。土居は状況を理解できていないのかぽかんとした顔をしている。ふむ、性格の割にはちゃんと髪のケアをしてるんだな。もしかして伊予島ちゃんあたりにやってもらってるのかもしれない。

 

僕はこれでも火憐ちゃんや月火ちゃんの髪はいじったことや洗ったこともあるし、少し前には羽川のあの神々しい三つ編みを恐れ多くも僕の手で切らせていただいた。

 

女子の髪に関しては一言提言するぐらいの経験は積んできてる。

 

そして無事に初めてこの世界に来てから確かな情報を手に入れることができた。…なんかこんな言い方すると本当に僕が何か悪いことを企んでるみたいだな。

 

とはいえいい調子ではある。こうして普通に会話ができているのは僕としてもやりやすいし。

 

 

 

 

「おい…」

 

しかしこうなると僕側からも何か言っておいた方がいいか?

 

「おいって…」

 

一方的に僕に対して情報をくれるとは思わないし、少しでも信頼を勝ち取るためにはやはりこちらの手の内もある程度見せねばなるまい。

 

「なぁ…」

 

しかし一体何を話すべきか。まさかいきなり別の世界から来ましたとも言えないしなぁ。

 

 

 

「あのぉ……」

 

 

 

視界の外からふと声をかけられる。伊予島ちゃんだった。なんだか苦笑いを浮かべている。まるで何か指摘しにくいことを指摘しようとしているような。

 

「どうかした?」

 

「えっと…あの…手を」

 

「手?ーーーあ」

 

そこでようやく気がついた。うつむいた状態でなおかつ僕のことを睨む土居の顔に。

 

「さっさと離せバカぁぁぁーーーーーーーー!」

 

前言撤回。そんないい調子でもないかも。

 




阿良々木君とのわゆキャラたちの会話が出てくると文字数も増えてきますね。

早くいろんなキャラ同士を絡めたい。


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阿良々木暦は不審者である。其ノ弐

会話書いてたら重要な話一切書かずに終わってしまった…これが阿良々木君の力か。


女子の頭を撫でるのに別段抵抗はない。結局は慣れなのだ。

 

僕の場合は幼少期から火憐ちゃんや月火ちゃんの頭を撫でてるし、幼女、少女、童女こと忍、八九寺、斧乃木ちゃんの3人もいる。

 

だから僕にとっては何も特別なことじゃないし、決して深い意味はないのだ。もっとも女子の頭を撫でることにじゃあ興味はないのか?と聞かれたらはっきりとNOと答える。

 

まだ僕は多くの人材を残しているからな。戦場ヶ原や羽川なんてどう攻略すればいいか見当もつかない。

 

この際直接『撫でさせてくれ』と言えば済む話なのかもしれないがやはりそこはもう少しスマートにいきたいものだ。

 

でも僕、こないだの眼球舐めたい発言で羽川に少し警戒されてしまったんだよなぁ。

 

というか今の状況のままじゃそもそもあの二人に会うこともままならないわけか。

 

これはどうしたものか。髪を切ってイメチェンした彼女と恩人の姿をじっくり眺めることもできないとは、くそっ!一体全体誰の仕業なんだ!この転生騒動は!

 

僕はただ夏休みの宿題がしたかっただけなのに!

 

「やれやれだぜ。全く」

 

「タマの方がやれやれだぞ…」

 

「なんでだよ?そんな嫌だったか?」

 

「別にそういうわけじゃないけど……どう反応すればいいのかわからなかったんだよ」

 

「でもタマちゃんちょっと気持ち良さそうだったように見えたよ?」

 

「伊達に女子の頭を撫で続けてはいないよ」

 

「どんな人生だよ。てか気持ち良いなんて思ってないぞ!?」

 

「土居。無理しなくていいんだぞ。僕はいつでもウェルカムだ」

 

「タマの方がウェルカムじゃない!だったら友奈の方を撫でてみろよ!」

 

「え?私?うーーーん。わかった!」

 

え?いいの?(歓喜)

 

これでより僕の経験値が増えるぜ。マイスターへの道は近いな。

 

「た、高嶋さん!?ダメよ!絶対ダメ!」

 

「え、何で?」

 

「こんな得体の知れない不審者……何を企んでるかわからないわ」

 

「人聞きが悪すぎるわ!!!」

 

「黙りなさい。不審者」

 

「やめろ!ただでさえ最近僕のことを変態呼ばわりしてくるやつが多いんだ。これ以上増やしてなるものか!」

 

「そこまで言われてるんだ……」

 

「若葉ちゃん。私の頭も撫でてみませんか?」

 

「いきなり何を言いだすんだひなた!?」

 

「冗談ですよ♪」

 

「ぐんちゃんごめんね。ちょっと気になってるかも…」

 

「よし、じゃあ失礼してーーーーーー」

 

「たかしまぁぁぁぁぁぁんーーーーー!?」

 

 

なでなで。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

呆気にとられた表情のまま固まってしまった郡ちゃんを尻目に高嶋ちゃんの頭を撫でる。途端に周りが静かになるのは何故だろう?

 

そのせいで何かいけないことをしているみたいだ。千石のブルマ姿を思い出すな。しばらくの間神原と語り合ったのはいい思い出だ。

 

今もそのブルマは阿良々木家に羽川のパンツとともに家宝としてしっかりと保管されている。

 

てかそろそろいいか。

 

僕は手を高嶋ちゃんの頭から手を離した。ちなみに僕としては大満足だった。いい仕事をした気分だ。

 

「ぁ…」

 

「ん?」

 

なんか今聞こえなかったか?

 

「どうだ友奈?どうだった?」

 

土居が高嶋ちゃんに詰め寄る。お前どんな立場なんだよ。

 

「へ……あ、うん」

 

高嶋ちゃんはどこかぼーっとした感じだった。もしかして僕の腕から電磁波とか出てた?ポケモンさながらの電気ショック流れてたらする?

 

「どうしたの高嶋さん!!どこか具合でも悪いの!?やはりあの不審者に何か……!」

 

「なんもやってないって!頭撫でてただけだって!」

 

「友奈さん?どうかしましたか?」

 

「何かおかしなことがあったのか?」

 

「ううん。違うのひなちゃん、若葉ちゃん。えっとなんかね、難しいんだけどこう……ふわぁぁ〜〜〜って感じだったんだ」

 

「あ、そうそう、それだ!タマもそう思ったんだ!それだぞ友奈!ふわぁぁ〜〜〜だ、ふわぁ〜〜〜」

 

「タマっち先輩それって、気持ちよかったってことなんじゃないの?」

 

「え?そうなのか?う〜〜ん。わからん!」

 

「一種のマッサージのようなものなんでしょうかね?若葉ちゃん」

 

「なんらかのリラックス効果があるのかもしれないな」

 

「何を呑気に解説してるのよ乃木さん!こいつは不審者なのよ!?素性も知れないこんな男が高嶋さんの大事な体を触るなんて……………許せない……」

 

郡ちゃんに向けられる視線がどんどん鋭さを増していく。くそ!八九寺にもっと冷たい目で見られ慣れとくんだった!

 

「それに貴方も貴方よ……自分が今どんな状況なのかわかっているのかしら…」

 

たしかに僕は今拘束されてる状態なんだった。一応。あと鎌やめて。

マジで先端部分当たりそう。

 

「あれはあくまで土居に煽られた結果であって決して僕個人としての趣味嗜好は含まれていないよ。……だからどうか鎌を下ろして改めて対話をしよう。僕たちはまだ分かり合えるはずだ」

 

でもたしかに郡ちゃんの言うことももっともではある。どうやらおしゃべりはここまでにしてここらかはマジな対話モードに切り替えた方が良さそうだ。

 

どうも僕にはあまりシリアスなイメージがもたれていないようだけどそんなことはない。シリアスもできるってところを見せてやろうじゃぁないか。

 

「さっきは僕が君たちの名前を教えてもらったからね。今度は君たちが何か聞いてくれて構わないよ」

 

良好な信頼関係を築くためにもギブアンドテイクを心がける。一方的なのはどちらにせよよくない。羽川が言ってた。

 

ちなみに戦場ヶ原は『でも聞き出せるだけ聞き出してあとはさっさとトンズラできるならその方が良くないかしら?』とか言ってやがった。あいつ本当に更生したんだろうな。

 

「はいはい!」

 

土居が元気よく手をあげる。いや、手を挙げられても僕にさす権利ないんだけど。

 

「若葉ちゃんどうします?」

 

「そうだな……では一人一回質問していってそれを回していくことにしよう?大社が来るまでそう時間もないだろうしな」

 

「じゃ、タマからだな。学年は?」

 

「中三だ」

 

「え、年上だったのか」

 

「バリバリ年上だ」

 

「ふーん、ま、別にいっか」

 

「おう、ちゃんと先輩って言えよな」

 

「えーー阿良々木先輩って呼ばなきゃいけないのか?」

 

「おぉいいじゃないか。よしそれで頼む」

 

よし、これで神原成分が多少なりとも補給できる。ちなみにめちゃくちゃ普通に嘘ついたのは少しでも年齢差をなくそうと思ってのことだ。流石に高校三年生と中学二年生というのは彼女たちからしても僕からしても間に溝ができやすい気がした。

 

今溝がどうとか言ってるけど嘘をついていることが一番溝を作る要因じゃないかとも思ってきた。早速選択をミスったかもしれない…

 

 

 

 

 

「じゃぁ…あの…趣味はありますか……?」

 

「なるほど、趣味か……」

 

「あの…そんな無理に答えてくれなくてもいいですよ…?」

 

「いやいや、大丈夫だよ。そうだね…本は比較的読むほうかな。あとはアニメとかもそれなりには」

 

「どんな本を読みますか!?小説は?!ジャンルは?!恋愛系って……………………ぁ…………」

 

伊予島ちゃんはそこから顔を真っ赤にして俯いたまま黙ってしまった。なぜか土居にめっちゃ睨まれた。僕悪くなくない?

 

どうやら伊予島ちゃんは本がかなり好きみたいだ。確かに彼女の物腰柔らかで落ち着いた雰囲気には合っているように思える。そう考えると見た感じ正反対の土居と仲が良さそうなのはどういうことなのだろうか?

 

 

 

 

 

「では次は私ですね。先程若葉ちゃんにお姫様抱っこをされていましたが…感想のほどはどうでしょうか?」

 

「おいひなた?!」

 

「最高だった。危うく惚れるところだったぜ」

 

「阿良々木さん?!」

 

実際あれはかなりイケメンだった。僕に戦場ヶ原というおっかない彼女がいなかったら危なかったかもしれない。

 

 

 

 

 

「次は私が。…好きな麺類は?」

 

ん?麺類は確定なの?好きな食べ物とかじゃなくて?

 

「まぁラーメンとかかな」

 

何もラーメンが一番とか他の麺類が好きじゃないとかじゃないけど、なんとなく出てきたのがラーメンだった。勉強で疲れたりすると食べたくなるのだ。

 

「なっ………!?」

 

そんな驚かれるとは思わなかった。

 

 

 

 

 

「次は私だね。う〜んどうしよう…」

 

「遠慮は無しだぜ。僕に答えられることならなんでも聞いてくれ」

 

「!……そうだ。質問じゃないんだけど…もっかい頭撫でてくれないかな?」

 

「僕としてはまったくもって構わないというか喜んでって感じだけどいいの?」

 

「あのふわぁ〜〜〜感じが何か知りたくて!」

 

「よしわかった。任せておけ!」

 

結局またふわぁ〜〜〜だった。

 

 

 

 

「……………………」

 

「郡ちゃん。次は君の番だけど」

 

「……………………」

 

むぅ…無言で冷たい目線を向けられている。この子に関しては僕に対する態度が一変として変わらない。これでもかと敵意を振りまいている。

 

「千景、何か質問しないのか?」

 

「乃木さん、あなたは黙っていて」

 

「ぅ……すまない…」

 

乃木が一番かわいそうだった。

 

 

 

さて彼女たちに自己紹介してもらって今度は僕が一人ずつの質問に答える形式でそれが一巡したわけだけど

 

 

 

これこの世界のこと何もわかってない気がした。




ただの自分の考えすぎだとは思いますが…もし感想書いたりとか評価をすることを躊躇している人がいるなら是非してやってください。

自分、めちゃくちゃ単純なんでそういうのですごくモチベーション上がったりしちゃうんです。マジで嬉しい。


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阿良々木暦は終末世界を知る。其ノ壱

何故だ…話がなかなか進まないぞ…

まぁいいよね(よくない)


結局特に収穫のないまま中学生勇者?たちとの邂逅は終わってしまった。

 

そして今、僕は大社とかいう謎の組織の迎えのバスに揺られながら窓の外を眺めている。

 

「驚きました?」

 

「…そりゃね」

 

このバスには僕以外にももう一人同乗者がいる。僕の隣の席で柔らかな笑みを浮かべている上里さんだった。

 

そして驚くというのは十中八九アレのことだろう。

 

「アレが大社の方々の正装なんです。確かに驚くのも無理はないですよね」

 

迎えが来たと思ったらそれがまさかの仮面野郎だったのだ。いや仮面て。しかも話し方も妙にかしこまっててなんだか気味が悪かった。服装だってアレはまるで…

 

「神主みたいだったけど、なんなんだい?あの人たち」

 

「私の口から詳しいことを話すのはできませんけれど……それはある意味正解です」

 

「?じゃああの人たちは神社に勤めてる人ってことか?にしたってあそこまでのはよっぽどみないと思うけど…」

 

なにせ巫女さんのバイトがある時代だ。戦場ヶ原が言うには年末年始なんかは結構いい待遇が受けられるらしい。

 

「そういうのも諸々含めてきっとお話がありますよ」

 

「諸々…ね。君たちのこともあちらさんから教えてくれるって事でいいのかな」

 

色々と、というか気になるところがありすぎるけど、その中でも彼女たち六人の中学生のことは今一番の謎だ。大社の仮面やろうからこれでもかというぐらい持ち上げる口調で話されていた彼女たちは皆『勇者様』と呼ばれていたのだ。

 

そして去り際には『世界をお守りくださり大変感謝いたします。今後ともどうか私たち、そして神樹様をお守りくださいませ』なんて事を言っていた。

 

守る?世界を?果たして何から…

 

おそらくはあの白い化物たちからだとは思うがそもそもあの化物たちはなんなのか…ここはどこなのか。あの空間は一体何か。神樹様とは…

 

今の僕にはわからないことだらけで思うように頭の整理もできやしない。

 

「はい。相手から情報を得ようと思ったらまずはこちらがある程度の情報を提示するのが礼儀ですから」

 

「……」

 

うん…何も間違ったことを言ってないと思うしそれこそ僕自身が先程それをしようとしていた。(まったくうまくいかなかったけど)

 

だけどこの子はきっとそういうのが上手い子だ。決して中学生だからとか女の子だからみたいな理由で侮ることはできない。できやしない。

 

こんな僕でも危機察知能力ぐらいは正常にあるいは普通以上に働いていると思いたい。てかほかに欠陥部分が多いのだからそのぐらい働いてくれ。

 

「ただーー私の身分だけでもとりあえず話しておこうかと思います」

 

「……」

 

何故?と言いたくなるのを抑えて彼女に視線を向ける。教えて貰えるものは教えてもらっておこう。

 

 

「私は初代勇者『乃木若葉』の導き手でありーー巫女の一人です」

 

 

上里さん……大社でバイトしてんの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうもっと。安芸真鈴です。あなたが噂の不審者もとい阿良々木暦さんですか?」

 

「ツッコミたいところはあったけど確かに僕が阿良々木暦なのは間違いないよ。ツッコミたいところはあったけどね」

 

その後バスは無事に目的地にたどり着き僕は広めの個室のような部屋に移された。少なくとも僕の部屋よりは広い。

 

ちなみに僕は無一文で所持品すら何もない状態なので結構空き時間暇だったりした。

 

そして数分後

 

亜麻色の髪を三つ編みにし、そばかすが特徴的な安芸真鈴さんはいきなりそんな人聞きが悪いことを言いながら入室してきたのだった。

 

そして彼女は巫女装束のようなものを着ていた。君も大社でバイトしてるの?

 

「ツッコミたいところって…どこよ?」

 

「不審者の部分だよ。まぁこの状況じゃ無理なことだとはわかってるけど、僕自身としてはやっぱり否定しておきたいところではあるからね」

 

そして即効だタメ口になってきやがった。今の僕は中学三年って事でサバ読んでるから仕方ないけど。

 

「でも初対面の女子の、それも怪しまれてるはずな側が頭を撫でるなんて不審者だと思わない?」

 

「それはお互い合意の上でのやりとりだったよ。ウィンウィンのやりとりだったわけさ」

「ふーん」

 

訝しげな目を向けられる。しかし郡ちゃんとは違って本気で思っているわけではなさそうだった。

 

「ま、今は別にいいか。てなわけで改めて自己紹介。大社の巫女で勇者『土居球子』『伊予島杏』の導き手ってことになってる安芸真鈴ですよ。よろしく」

 

「あぁよろしく安芸。……それにしても巫女ってなんなんだ?導き手ってのもよくわからないし…バイトとかのじゃなくてガチの巫女さんなのか……?」

 

「ガチもガチ。大マジですけど?」

 

「マジかよ!!!」

 

さっき上里さんが言っていた時には唐突だったこともあり今思えばバイトかな?なんて失礼なことを考えてしまった。

 

まさかマジの巫女さんだとは…

 

「別にそんな驚くことでもないでしょうに」

 

「いやいや、安芸。お前は何を言ってるんだ。巫女さんだぞ?メイドさんと並び立つコスプレの二代王道の一つで可愛い女の子に来てもらいたい服ランキングにおいて長年トップに君臨し続けているあの巫女さんだぞ?」

 

「君こそ何言ってんの?不審者というかただの変態じゃない」

 

「おいおい僕は世の健全な男子たちの心の声を代弁しているだけだぜ?」

 

「世の男子ってみんなそんなこと考えてるの?」

 

「当然だろう」

 

「そんな堂々と言われてもねぇ……大社には結構な数の巫女がいるけど」

 

「聞き捨てならないセリフだな。ここは桃源郷か何かなのか?」

 

「桃源郷ではないけど、神樹様のお側って意味では多少はあってるのかもね」

 

数多くいるという本物の巫女さんたちに想いを馳せつつあった僕は『神樹様』という言葉に耳を反応させた。それは僕を迎えにきた大社仮面が言っていた言葉もあった。

 

『神樹様と私たちをお守りください』

 

僕はこの言葉にこの世界のことを読み解く鍵があるのではと考えた。そして今再び安芸の口から神樹様と言う言葉が出てきた。少々強引だがここからーーー

 

「安芸、僕は記憶喪失なんだ。この世界の常識を何も知らない。だから君が教えてくれないか?」

 

この世界の謎を解き明かそうじゃないか。

 

 

 

 

 

「ふぅん。ま、いいけどね」

 

「いや驚けよ!?」

 

せっかく僕が自力でシリアスを作ろうとしたのにまたやり直しじゃないか!

 

「驚いてるわよ。驚いてるけどそれよりもこの人変態だなぁって思ってそっちの方を心配しちゃってさ」

 

「記憶喪失の方を心配しろ!」

 

僕が頑張って腹芸してる意味をなくすな!不審者から進化してるじゃねーか!

 

「あ、あとそのアホ毛なんなの?めちゃくちゃ動き回るけど神経通ってるとか?」

 

「人の話を聞け!それからこれは阿良々木家の遺伝子だ」

 

「変態の印とかじゃないの?」

 

「そんな印あってたまるか!」

 

「わかったわよ、阿変態君」

 

「人の名前を「あら、大変」みたいに噛むな!…というかそれは八九寺の芸風じゃねーか!」

 

「誰よそれ」

 

「僕が愛する小学五年生の少女だ」

 

「やっぱり変態じゃない」

 

「愛に年齢は関係ないんだぜ?誰がなんと言おうと僕のこの気持ちを止めることはできやしない!」

 

「誰かが何か言う前に法が許さんわ」

 

「くそっ!斯くなる上は法に代わってもらうしかないようだな…」

 

「記憶喪失宣言するとき以上のガチな顔しないでよ…気持ち悪いなぁ」

 

「そんなに褒めないでくれ」

 

「変態でドMとか救いようがないじゃない。マジでこのまま何も教えずに警察に突き出した方がいい気がするんだけど」

 

「おいおい自慢じゃないが僕はそれなりに警察にお世話になったことがあるんだぜ?」

 

「マジでなんの自慢にもならないじゃない。本気のやばいやつじゃない」

 

「断っとくが別に逮捕されたわけじゃないからな」

 

「信じられるとでも?」

 

「頼む!僕とお前の仲じゃないか!」

 

「初対面ですけど」

 

「友達に時間は関係ないって僕の恩人が言ってたぜ?」

 

「その恩人はなんでこんな変態に恩を与えちゃったのかしら」

 

「羽川に文句があるなら黙っては聞けないな」

 

「だから誰よ、それ」

 

「人類最高のおっぱい委員長だ」

 

「死ねば?」




阿良々木君と真鈴さんの会話めちゃくちゃ書きやすかったんですけど…なんででしょう?


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阿良々木暦は終末世界を知る。其ノ弐

今回は説明回でしたね。相変わらずおふざけがあるのはご愛嬌で。

ほら阿良々木君ですしね。


僕はここ最近少女趣味、いわゆるロリコンというものだと思われている節がある。

 

全く心外だ甚だしい。しかしこれはあくまで僕のことであって世の男性の方々の趣味嗜好を否定する意図は一切ない。

 

しかしこれは小さい女の子が嫌いとか苦手とかそういうわけでもない。言ってしまえば好きだ。可愛い。あと尊い。

 

この世の宝なのは間違いない。ただあくまでそういう対象にならないというだけで。

 

八九寺は結婚したいと思うこともあるけどそれもいわゆる性的な意味じゃないし、忍はパートナーではあるけどそれもやっぱりそっち系の意味じゃない。風呂には一緒に入るけどね。斧乃木ちゃんは言ってしまえばただの友達?だし。なんか困った時とか窮地に陥った時に颯爽と駆けつけて助けてくれるタイプの友達。

 

ほら、やっぱりロリコンじゃない。

 

そして彼女たちの外見年齢は忍8歳、八九寺10歳、斧乃木ちゃん12歳だ。実年齢は僕よりも年上だったりするのは無視するとして皆んな小学生までの年齢で構築されているのが僕の生活の中に根付く小さい女の子たちなのだ。

 

つまり何が言いたいのかというと

 

 

 

中学生ってロリコンの対象になるのか否か。

 

 

これは性的な意味ではなくとも小さい女の子を愛している僕からしたらとても大事な、由々しきといってもいいぐらいの問題だ。

 

「それで僕の恩人である羽川に前に聞いたことがあるんだ。ロリコンの定義ってなんなんだ?ってな」

 

「その羽川さんって女性なんだよね?」

 

「あぁ、三つ編みメガネ委員長の名をほしいままにしていた最強委員長だ」

 

「なんてこと聞いてんのよ」

 

「いや、だって羽川だしさ」

 

「…私はその羽川さんのこと知らないからさ、君とその羽川さんの関係は詳しくは知らないし聞こうとも思わないけど…ねぇ……」

 

「まぁ待て。お前の言いたいことはなんとなくわかる。僕だって良識を持ち合わせた青少年だ。条例で保護されている」

 

「保護されなくていい気がする」

 

失礼な物言いは綺麗にスルー。これも話術の一つだ。戦場ヶ原が言ってた。

 

 

 

『そうだね、簡単に言っちゃうと13歳以下の女の子がその対象なのかな。もっともこれはアメリカの精神医学の診察基準なんだけどね。だから一概に決めちゃうのはなかなか難しいんじゃないかな』

 

『なるほど。さすが羽川、お前はなんでも知ってるな』

 

『なんでもは知らないわよ。知ってることだけ』

 

 

 

「つまり医学的には中学生はロリコンには含まれないってことだ」

 

「でも中1って13歳でしょ?」

 

「そこはまぁ臨機応変に対応って事で」

 

「便利な言葉ね」

 

「つまり何が言いたいのかというとな、僕だけの意見じゃやっぱり決めつけられないから他の人の意見も聞きたいと思ったわけなんだよ」

 

「ふーん」

 

「で、どうだ?1女子中学生として意見を聞かせてくれ」

 

ほんとは男子高生の僕からしたら妹以外の女子中学生からこんな意見を聞ける機会など滅多にないことだ。こんなチャンスを逃す機会はない。

 

「あのね」

 

「あぁ」

 

「知るか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃ、とりあえず簡単に説明しようかな。不本意だけど」

 

「女子に冷たくあしらわれるのは慣れている。どんとこい」

 

「…もうツッコまないから。………この世界の今の現状はわかる?」

 

「さっぱりだ」

 

「うーん…そこからか」

 

「まずかったか?」

 

「いや、いいよ。えとね簡単にいうと今世界は終わりかけてるの」

 

「あぁ」

 

「…驚かないのね」

 

「あんな化物を見せつけられたんだ。少しは耐性もつく」

 

ここに来る前の数ヶ月の間でいろんなことが起きすぎていたしな、いいこともあれば、悪いこともあった。未だに未解決なものもある。

 

「これは三年前突如として空から人類の敵『バーテックス』が飛来してきたから」

 

「バーテックス…」

 

それがあの白い化物たちの名前か。確か意味……頂点とかそんな感じの意味だったはず。少し前の僕なら確実に知らなかった単語。羽川万々歳だな。

 

「それはまた、皮肉のこもったネーミングだな」

 

「まね、それはアタシもちょっと思うよ」

 

苦々しい顔をする安芸。どうやら意味はそれであっているぽい。

 

「んで世界中の人類は当然対抗しようとした。でも従来の兵器がバーテックスに効くことはなく人類たちは蹂躙されていった」

 

「でも蹂躙されるだけではなかった。一部の土地の土地神がバーテックスから身を守る結界を張って身を守ることができる地域ができた。それが今アタシたちがいる香川県を含めた四国の四県ってわけ」

 

「え、僕今四国にいるの?」

 

「え、そこ…?」

 

「僕自分がどこにいるのかもよくわかってなかったから」

 

「そりゃまぁ…重症ね」

 

「というか本当に四国だけなのか?ほかの都道府県とか、ほかの国は…」

 

「あるにはある。長野県の諏訪というところに一人の勇者と巫女がいてそこを守っていた」

 

「守って…いた……?」

 

「諏訪先程の戦闘の少し前に通信が途絶えたの。結界が破られてバーテックスの大軍勢が押し寄せた。大社は諏訪を正式に陥落したとしたわ」

 

「…その勇者と巫女っていうのは…」

 

「あの子達や私と同じ中学生の女の子よ」

 

「……」

 

握っていた拳に力が入り思わず顔を背ける。

 

中学生の女の子が一人で………そんなのって。

 

「変態のくせに優しいわね」

 

「何も言ってないだろ」

 

「わかりやすいのよ」

 

ポーカーフェイスは未だに苦手みたいだ。今度特訓しておくことにしよう。

 

「あとは北の大地と南の島から微かな生存反応があるって話だけど今のところ確かめる手立てはなし。生存反応があるってことは勇者がいる可能性が高いって話だけはあるけどね」

 

「なぁ安芸」

 

「なに?」

 

「勇者ってなんだ」

 

「…神樹様が選んだ清らかな心を持った少女だけがなれるバーテックスに唯一対抗することができる人類を守る存在……ってとこかな。そしてその神樹様の声を聞くことができるのが私や上里ちゃん巫女ってわけ。もっとも声を聞くってのもなにか直接語りかけてくれるみたいなことじゃなくて頭の中にポツンと降ってくる感じなんだけどね」

 

「頭がパンクしそうだ…」

 

「無理もないよね」

 

「上里さんにも言われた」

 

「へぇ上里ちゃんが」

 

「なにかおかしいのか?」

 

「阿良々木君みたいな不審者とよく話したなぁーって」

 

「お前はなんてことを言うんだよ」

 

「あの子結構しっかりしてるところはしっかりしてるからね。大切な人達の前に急に現れた不審者の阿良々木君がなにを及ぼすか警戒してるんじゃないかと思って」

 

…………まぁ警戒はされてたよな。たしかに。郡ちゃんの警戒心が強すぎてあの時はそこまで感じなかったけど、ここにくる時のバスの中でもちょっと探りを入れられてる気もしたし。

 

「それで、ほかに聞きたいことあったりする?」

 

「あの…なんて言ったか……樹海とかいうのは」

 

「バーテックスが四国全土を覆う結界を超えてきたときに神樹様が創り出すバトルフィールドみたいなものよ。樹海のおかげで結界を超えてきたバーテックスが一般人や街を襲うことを阻止することができるし、樹海がある間は樹海の外の時間は止まっているから生活の影響もないってわけ」

 

「あの不思議空間はそんな便利なもんだったのか」

 

鮮明に脳裏に焼き付いているあの見たこともない光景、あんなの普通に生きてたら見ることなんて絶対にないはずだ。

 

僕に普通なんて今更かもしれないけど。

 

「便利っちゃ便利だけどね…」

 

「なにか悪いことでもあるのか?」

 

「樹海がバーテックスの攻撃で大きく傷つけられたり損傷したりするとそれが現実の世界にも影響するのよ」

 

「さっき生活への影響はないって言ったのに」

 

「言葉の綾よ、綾」

 

「影響ってのは」

 

「不自然な事故や災害が起きる、みたいなことは聞いてるけど詳しいことは私も」

 

「…なるほど」

 

漠然とではあるが一応状況把握をすることができた。なんだかより問題が増えた気もするけど。

 

そしてもう一つはっきりさせておきたいことがある。

 

「安芸ーーー僕はどうなる」

 

僕の今後の立場だ。

 

真剣な顔してなんだけどぶっちゃけ結構心配だったりする。郡ちゃんとか安芸じゃないけど僕だいぶ不審者なんだよなぁ。

 

「……………………………」

 

そんな真顔になる?俄然不安なんだけど。マジで警察行きとかないよね?

 

ね?

 

「ま、そこらへんは大社のお偉いさん方が決めることだからね。アタシからはなんとも」

 

「ふぅてっきり警察に突き出されるかと思ったぜ」

 

「私個人としてはそれもいいと思うけど、大社が絶対にそんなことしないでしょうね。あなたを手放すことはないでしょうよ」

 

安芸個人がそう思っているのは置いておくとして……

 

「なんでそう思うんだ?」

 

「一つは情報漏洩を恐れてかな。こんなご時世だから勇者のことなんかは世間一般にも比較的知られてるけどバーテックスとか神樹様、樹海のことなんかは知られていないことも多い」

 

「それを僕が知ってしまったーーーと」

 

「そゆこと。言ってしまえば今四国は大社による情報操作が働いてくるからね。四国トップの組織ってわけ。下手に口外しようとしたらどうなるかわからないわよ?」

 

「安心しろ。口外するような友達がいないからな」

 

別に友達が全くいないわけじゃないのになんか知らない世界に来てしまったせいでそもそも物理的に不可能なのだ。悲しい。女子中学生の知り合いが増えたって八九寺に自慢してやりたいのに。

 

「…………」

 

「おいこら。黙るな」

 

「んでもう一つが戦力増強ってところかな」

 

スルーしやがった。

 

ん?戦力?誰が?

 

「僕を大社がとどめておくことでなにか戦力増強につながるのか?」

 

僕にできることなんてたかが知れてるけど。というかできないことの方が絶対多いし。

 

「普通に君自身が戦力なんだけど」

 

「は?」

 

「は?と言われましても」

 

「なんで?」

 

「だって君樹海の中で動けるし、聞いたところバーテックスとも戦ってたわけでしょ」

 

脳裏に浮かぶのは吸血鬼パンチや吸血鬼スピンをしながら逃げ惑う僕の姿。お世辞にも戦えているとは思えないのだが…

 

「言ったでしょ。そもそもバーテックスと戦ってダメージを与えられている時点で貴重な戦力なのよ。それでどうしてから知らないけど君にはそれができる」

 

「あー…………」

 

おそらくというか十中八九忍のーーー鉄血にして熱血にして冷血の吸血鬼の怪異の王としての力のおかげなのはいうまでもない。

 

流石に口に出しては言わないけど。

 

自慢じゃないけど(ガチで自慢じゃない)僕戦ってロクに勝った試しがない気がする。特に最近は影縫さんと戦った時なんて今よりも吸血鬼性が戦ったのにそりゃもうボロボロにやられてたし。

 

正直ちょっとトラウマだったりする。ハートキャッチ(物理)をやられた時は流石にビビったぜ。ハトプリを見る目が変わっちまったらどうしてくれる。

 

「君がどれだけ強いとか弱いとかは知らなけどね…酷なこと言うと悪いけど選択肢はないんじゃない?」

 

「選択肢?」

 

「君大社の庇護を受けずに生活していくあてあるの?」

 

「……」

 

無一文はつらいよ。




原作で出番が少ないから真鈴さんのキャラをつかむのがちょっと難しかったりします。会話は相変わらず描きやすいんですけどねぇ。

感想、評価共々待ってます。

頼みます!(切実)


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阿良々木暦は終末世界を知る。其ノ参

変態要素が着々と増してるなぁ…かっこいいところもあるんですけどね、阿良々木君って…


「知らない天井だ」

 

あの時のシンジ君はこんな気持ちだったのだろうか。……言葉にできないけど確かにわかる不安というか辛さというかーーーよりありきたりに言うとストレスとかそのようなものである気もする。

 

要は疲れたということだけど。

 

「…はぁ」

 

思わずため息が出る。あのあと僕は上里さんと一緒に夜も更けてから帰途についた。

 

帰途、と言っても僕は始めてきたようなものなのだけど。

 

四国は香川県丸亀市、丸亀城。

 

僕は決して歴史が得意ではないし、城マニアでもないのでこの城に関しなにか思うことはない。せいぜい石垣が立派だなぁぐらいだ。

 

これに関してはマジで立派だけど。昔の人ってのはすごいもんだ。

 

忍がいたら色々と感想も聞けて面白かったかもしれない。

 

上里さんの話ではここを改築して六人の女の子たちが暮らせるようにしたらしい。学校設備も備わっているみたいでちゃんと毎日授業もあるらしい。

 

世界を守る勇者でも義務教育には勝てないわけか。

 

上里さんから自分の部屋になるらしい鍵を受け取って多少の躊躇もありつつ部屋へと入った。まぁ普通のワンルームって感じ。

 

寮制の学校だったらこんな感じの部屋なのかもと思ったりした。

 

そして部屋に入って完全なるプライベートな空間を得たことによってだった疲れが出てきたらしい。思わずベッドに背中から寝転がってぼーっと天井を見上げる。

 

で、冒頭に戻ってくるわけだ。

 

エヴァの最終章が公開するまでに戻れるだろうか…?一時期真希波の可愛さに心を苦しめられどうにか結婚する方法を模索していた僕としてはなんとしても見たい。

 

真希波が実年齢は結構おばさんとかそんなの知ったこっちゃない!むしろ萌えるじゃねぇか!

 

「風呂入って寝よ」

 

問題は山積みだし色々と考えなければならないこともある。しかしそれも急速あってのものというもの。……実際は普段以上に吸血鬼化してるのもあってこの状態で徹夜するぐらい大したことはないのだが、体と心の疲労は必ずしも規則的ではない。

 

 

 

『阿良々木君昨日徹夜したでしょ?』

 

「え、なんでだよ』

 

『表情には出てないんだけどね、ここ最近ずっと阿良々木君の家庭教師してるからね。不思議とわかるんだよ』

 

『おいおい羽川。そんな家庭教師もののAVみたいなこと言って僕を悶々とさせてそれを糧に勉強の集中力をアップを図る作戦なら通用しないぜ。なにせ僕はそもそも羽川にマンツーマンで勉強を教えてもらっているこの段階で既に悶々としてるからな』

 

『とりあえず集中してね?あと徹夜禁止。いくら吸血鬼性のお陰で夜が強いからってダーメ」

 

『羽川の言いたいことはわかるけどさ…僕は周りに比べてかなり不利な状況のわけじゃん。だったら使えるものは使っていかなと』

 

『阿良々木君、体と心は比例しないんだよ?』

 

『僕は今こんなにも悶々としてるのにか?』

 

『帰ろうかなぁ?』

 

『さぁやろう。あと夜はきちんと寝るべきだよな。僕もそう思ってたところなんだ』

 

 

 

 

羽川の助言に基本間違いはないからな。大人しく聞いておくのが吉ってもんだ。

 

というわけでサッとシャワーを浴びて用意されていたパジャマに着替える。用意いいこった。

 

勇者様様といったところか。……それは違うか。

 

流れで歯磨きもする。ふとこのあいだの火憐ちゃんとの歯磨き対決を思い出した。まさかの僕も妹と一線を超えかけるとは思わなかったぜ。

 

危うくあいつのはじめの相手が僕になるところだった。八九寺と一線を超える事よりも危ない事案だ。

 

歯磨きも終えて再びベッドにゴロンと横になる。

 

寝よう、そう決めたはずなのだが皮肉にも「心と体は比例しない」という羽川の有難いお言葉がここでさえも現れてきてしまった。

 

「勇者……か…………」

 

そうーーーーー僕は勇者になった。

 

成り行きで、なんだかんだで、いつのまにか。

 

結局あのあとーーー安芸との話の末僕は一戦力としてあの子たちとともに戦うことを了承した。

 

その見返りにこうしてここで生活をしかも無償でさせてくれることとなった。

 

有難いのやら迷惑なのやらはたまた有難迷惑なのやら。

 

 

『選択肢はないんじゃない?』

 

 

安芸の言葉を脳内で反復させる。僕に選択肢はない。その通りだ。

 

ひょっとしたら僕がアホでバカなだけで他にやりようはいくらでもあったのかもしれない。選択肢もやり方も、戻り方あるいは帰り方といった方がいいかもしれない。

 

でもそんな機転が利くことはなかった。もうこれは正直期待すべくもないけど。

 

やるしかない。やるかやらないかじゃない。やるしかないんだ。

 

…なんだかカイジみたいになってる気がする。人生一発逆転までもをかけてるつもりはないけど。

 

しかしせめて糸口でも少しずつでも何か得られるものがきっとあるはずだ。ここで生活しながら色々と情報を知っていってそれからまた考えればいい。

 

まずはこの環境になじまなければならない。となると…………やっぱりあの勇者五人と巫女一人との関係がなによりも重要になってくると思う。

 

彼女たちと交流をして信頼を得ることができれば自然と多くの情報も入ってこよう。なにせ彼女たちは世界を守る最後の砦だ。

 

「みんないい子そうだったよな」

 

ふとそう呟いた。正確には呟いていた、だが。

 

乃木生真面目で委員長タイプ。委員長といっても羽川とはまた全然違うタイプっぽい。

 

上里さんは柔らかい雰囲気を醸し出したおっとり系幼馴染。ギャルゲーのヒロインかよと突っ込みたくなる属性だぜ。

 

土居は天真爛漫元気はつらつなおかつうるさい感じ。お調子者でノリのいいやつ。たぶん。

 

伊予島ちゃんはふんわりとして落ち着きのある雰囲気だ。彼女自身が言ってたけど図書室とか本屋とかで本を読んでる姿がよく似合いそうだ。

 

高嶋ちゃんも土居と似て元気いっぱいて感じだけど土居とはまた少し違う気もする。しかし何が違うのかと言われたらそれもよくわからない。つまりよくわからん。

 

郡ちゃんは…………嫌われてるな。その一言に尽きる。女子に暴言を言われるのにはそれなりに慣れている僕ではあるがそれが年下の女子ともなると傷つくときとは傷つく。……ちょっぴり興奮しそうな時もある。ちょっぴりだけな。マジで。

 

安芸は…いいや別に。とりあえず今度あった時感謝しとけばいいか。何だかんだこの世界のことを大まかにしれたのはありがたかったのも事実である。

 

 

「やっぱりみんないい子そうだよな」

 

結局そこに行き着くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お兄ちゃん!朝だよ!おきて〜〜〜!」

 

「兄ちゃん兄ちゃん!朝だぞ!お・き・ろ!」

 

妹たちの声が聞こえる。というかうるさい。やかましいわ。寝かせろ、僕はここを出る気はない。

 

目覚まし時計とか貝木の次に嫌いだわ。

 

「早く起きないと戦場ヶ原さんにいじめてもらえないよ?」

 

「早く起きないと羽川さんのおっぱい揉めなくなっちゃうぜ?」

 

別に早く起きても羽川のおっぱいは揉めないし、更生したから(たぶん)戦場ヶ原にも罵倒を食らうことはない。

 

「ほらほら起きろ!はい♪起きろ!はい♪」

 

可愛いじゃねーか。

 

「早く起きてくれないと鼻の穴から殺虫剤くれちゃうよ〜♪」

 

殺す気じゃん!ハリポタのクルーシオじゃないだから、せめて苦しませずにアバダケダブラにしてくれ。

 

「早く起きないと肩甲骨をへし折るぞ!」

 

随分とピンポイントで難しそうだな!

 

「お兄ちゃん!」

 

「兄ちゃん!」

 

これ以上口で言っても無意味だと察したのか布団を掴んでおもいっきり揺さぶられる。

 

…そろそろだんまりを決め込むのも無理があるか。

 

「まて妹たちよ」

 

「あ、お兄ちゃん起きた」

 

「ったくようやくかよ。全くこれだから兄ちゃんはダメなんだよ」

 

「いつもありがとう。なんだかんだでお前たちには感謝してる」

 

「「えへへ〜」」

 

ちょろすぎ。

 

「そしておやすみ」

 

「「……」」

 

再び優雅に布団の中に潜り込む僕。そしてポツンと顔を見合わせる妹たち。感謝してるの自体は事実だから、うん。

 

 

 

 

「「起きろ!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ–––––––––––––––––––––さ–––––––」

 

「らぎ––––––––––––––––––––––––––––」

 

「お–––––––て–––––––––––––––––––––」

 

肩のあたりを触られているのが何となくわかる。誰かに声をかけられている。ふむきっと妹たちだな。

 

朝起きようとしない僕を起こすのはあいつらの役目だし。

 

にしても今日は随分と穏やかな起こし方をするものだ。

 

あいつらも先の件で少しは大人になったということか。やれやれだぜ。全く。

 

–––––––唐突にいたずら心が湧いてきた。なんてことはない、ただの兄妹のじゃれ合いみたいなもんだ。さわやかな朝を互いに迎えるためにも効果的なアロマセラピー。滋養強壮剤とも言える。

 

 

 

おっぱいを触ろう。

 

 

 

僕ともなればたとえ見えていなかろうが妹のおっぱいの位置程度完璧に理解している。

 

寝返りをうったと見せかけてそのままアタック。

 

まるで僕が妹に対して意識してるだなんて思われたくないしな、ここは速攻でカタをつけてしまおう。

 

悪いな月火ちゃん!今日の犠牲者は貴様だ!

 

 

 

 

むにゅ

 

 

 

 

あーーーーーセラピーでてる。

 

 

むにゅむにゅ

 

 

てかちょっと触らない間にあいつ結構大きくなりやがった。僕としたことが妹のおっぱいの成長速度をバカにしていたぜ。

 

むにゅむにゅむにゅ

 

 

 

ーーーーーん?

 

とっさに目を開いた。あいつのおっぱいってこんな羽川みたいな感じゃなかったよな?どちらかというとそれは火憐ちゃんの方で。

 

 

「……………………」

 

 

「……………………あはよう。上里さん」

 

挨拶は大事だ古事記にもそう書いてある。

 

ここから僕はどうするべきだろうか?とりあえずもう一回だけ揉んでおいた方がいいかな?

 

むにゅ

 

「ぁっ………ん………」

 

…………神さま、神樹さま、おむねさま……お陰で僕は今日も頑張れそうです。

 

 

 

 

香川の朝に甲高いビンタ音が鳴り響いた。そこには朝イチに女子中学生の胸を妹の胸と勘違いして揉みしだいている男子高校生がいた。というか僕だった。




感想やら評価やら待ってます。


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