魔法少女みらくる☆モッピー (幻影さん)
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プロローグ

謎の思い付きで生まれたもの。
続きを思い付ければ書きます…多分


篠ノ之束は激怒した。必ず、かの無知無能の研究者を除かなければならぬと決意した。篠ノ之束には常識がわからぬ。篠ノ之束は、高校生である。親友に甘え、殴り飛ばされながら生きてきた。けれども優秀な頭だけは、人一倍であった。

 

 

「ちくしょう!あの凡人共!何が『机上の空論〜』『妄想は勝手にやるならいいが大人を巻き込むな〜』だ!束さんの足下にも及ばない程度のお粗末な頭のクセに!」

 

 

頭だけ人一倍で常識がない篠ノ之束は学会に乗り込んで自分の作ったパワードスーツ兼宇宙服についてぶち撒けてきたのだ。

もちろん、ただの名も無き学生である篠ノ之束の言う事を聞くわけがないのだが…凡人の常識など知らない天才にはムカつくだけであった。

 

 

「学会とかやっててえらーい奴らなら少しは束さんの頭について行けるかと思ったのに、ガッカリだよ!束さんにはやっぱりちーちゃんとほーきちゃんといっくんしか居ないんだ!」

 

 

天才は決意した。世界に自分が間違っていないと思い知らせると決意したのだ。

 

 

「ま、待ってくださいうさ耳カチューシャさん!」

 

「およ?」

 

 

が、そんな決意を止めにかかる勇気ある阿呆が一匹(一人)。振り返るとスーツを着た女性であった。

よく見ればうさ耳カチューシャワンピースで学会に乗り込んだ人物と年齢は同じ程度だろうが、止めた阿呆はピッチリした黒いズボンタイプのスーツを着てTPOバッチリ。大人に見える

 

 

「何、お前」

 

「先程の発表を聞いていた一人です!」

 

 

篠ノ之束は考えた。

もしかしたら凡人がやっと理解して追ってきたのだろうかと。

そういえば相手は凡人だったね!ということは理解するのにも時間がかかるんだ!やっぱ凡人は凡人か!

 

篠ノ之束は頷いた。

だが時間が経って理解したらしい凡人は一人しか追ってきていない。もしやこの年齢かさ増し女は凡人の中でもマシ…少しは分かるやつなのかもしれない。なら御褒美に少しは話してやっていいかも

 

 

「……ま、どうでもいいや。束さんに何のよう?」

 

「貴方の話したISについて詳しく聞きたくて来たんです!」

 

「ふーん…ま、他の凡人より見る目があるね」

 

「それで、貴方が同志だと見込んでお話があります!」

 

「は?」

 

 

同志?

同志とは、こころざしや主義・主張を同じくすること。また、その人。類語は仲間

 

 

「なに、お前…この束さんが凡人と仲間だとか言うわけ?」

 

 

冗談じゃない!ありえない!自分の中、心が怒りでゴチャゴチャする。ISを笑われたのよりもずっとだ。これが怒り狂うやらキレるという状態なのだと理解した。

なるほど、凡人ではなく怒らせる天才だったのかコイツは

 

 

「はい!その格好……とてもお似合いのうさ耳カチューシャと水色のワンピース…追って追われるお姫様ですね!」

 

「……………何が言いたいのか言わせてあげる」

 

 

確かに不思議の国のアリスという御伽話のように、ちーちゃんを追いかけてちーちゃんに追いかけられるのが私だ。それを意識してないとは言わないけど、何で今言うのか分からない。凡人の思考回路なのに読めないのは初めてだ。どう考えてもISと関係ないし

 

 

「ISの力です!ふわりと飛べるんですよね!」

 

「そう言ったけど」

 

「何もない所から展開できるんですよね!」

 

「言ったけど」

 

「容量があればなんでも量子化して入れられて、展開したら最初から手に持ってたり着てたりできるんですよね!」

 

「言った」

 

「それでそれで、展開したパワードスーツで体を痛めたりしないんですよね!」

 

「…何、お前。さっき凡人たちの前で言ったことばっかりで」

 

 

束さんが折角話してやってるのに一回言った事ばっかり聞いてくる凡人に辟易する。

何だコイツは

やはり天才を怒らせる天才なのか?

 

 

「すいません!あの、あと一つだけ質問させてください!」

 

 

厚かましくも勝手に話す。もういいやと背中を向けかけた時に聞こえた言葉に足を止めてしまった。

 

 

「ゴスロリを展開できますか!」

 

 

 

 

「………束さんが凡人の言葉が理解できないのは初めてだよ」

 

凡人に思考停止させられたなどとは考えられない篠ノ之束は必死に考える。

ゴスロリ…正式名称ゴシック・アンド・ロリータ

簡単に纏めればヨーロッパ貴族のドレスを大オタク国日本のサブカルチャーが魔改造したファッション。

篠ノ之束には西洋人形のフリを人間がやるための服という認識しか無いが、否定はしない。何故なら今着ているワンピースもロリータ・ファッションの分類に入るからだ。

同志と呼ばれた理由はやっと察した。

この年齢かさ増し女はスーツでカッコイイにしていても中身はフリフリゴスゴスな格好をやりたがるオタクなのだろう。

よく観察すれば凡人顔の女は凡人なりに結構スーツが似合っている。スーツがすっごく似合うちーちゃんもゴスロリファッションへの欲求があるのかもしれない!?着せてあげなきゃ!

 

などと織斑千冬本人が聞けばブチギレそうなことを考えているとは露知らず、まだ天災を知らない彼女は言った

 

 

「待機状態でアクセサリーになり、空を飛べて、何もない所から物を出せて、姿を変えられるって…魔法少女みたいじゃないですか!」

 

 

 

「……はぇ?」

 

 

二度目の思考停止。だがそんな天才の異常事態に気が付かない凡人は語り続ける

 

 

「いえ、その…宇宙開発を目指した物だとは分かっているんです。でも!装甲を展開しておくのに特にこれといったエネルギー消費が無いのなら、常に私服を展開して、有事の際に私服はしまって戦闘用衣装に変身!なんて…その………そんな、子供の頃の夢がいきなり現実に出て来たような気がして…そ、それで、その……で、でででき…ますか?」

 

「………待って」

 

 

篠ノ之束は思考した。額に手を当て、目を瞑り、稀代の大天才は熟考した。

凡人からの問いかけでこんなにも考えたのは初めてだと困惑する思考を切り離し、問われた事への解答を自分に求めたのだ。

魔法少女については問題なく知っている。

愛しの箒ちゃんが好きなテレビ番組に『魔法少女プリプリプリティ』とかいうのがあったからだ。名前はギリギリアウトだけど、調べてみてもエッチな事はなかったから不問にしてやった。

魔法少女に必要なものはそれで理解出来ている。

①可愛いぬいぐるみサイズのマスコット

②マスコットが持ってきた魔法のステッキ(喋る)

③元々魔法が使えない女の子(小学生から中学生)

④魔法で変身したり飛んだり攻撃したり

⑤ライバルな女の子

他にも色々あるけどこんなものだろう

そして、ISに当て嵌まるのは…3つ

②③④だ

②…ISは喋ったりはしないけど意思がある。話すように教育したりその為のパーツを用意すれば話す事ができるようにする事ができるかもしれない。

③…ISのパイロットになるのは女の子だ。若くて今までは飛んだりできなかった普通の凡庸な女の子。

④…レーザービームはもうすぐ理論が組み上がるから撃てる。念話とかいうのもコア・ネットワークでプライベートチャンネルに繋いでISに学習させれば出来るようになる。単独飛行はPICを使えば慣性を無視した動きができるしハイパーセンサーがあるから自分や相手を見失ったりしない。変身は拡張領域に入れるのを装甲じゃなくせばいい。最適化で形状が変わったとしてもゴスロリな洋服をベースにするのなら覚醒したみたいだ。バリアだってスキンバリアーでGから守るしエネルギーシールドで見た目より頑丈になる。パワーアシストで怪物の腕を掴んで止めたりもできる。

 

 

あれ、あれ?

もしかして、束さんもしかして…

 

 

「ねえ凡人!」

 

「ふぁ、はい!」

 

「魔法少女ってどう思ってる!?」

 

「な、なれるならなってみたいけど年齢的にギリギリアウトかな…と」

 

「じゃあ箒ちゃんは!?」

 

「すみません!箒さんはお幾つですか!」

 

「5歳だよ!」

 

「丁度憧れる年頃だと思います!」

 

 

なんて事だ。宇宙に行きたくて作ったISが箒ちゃんの憧れの魔法のステッキだった




私、IS学園一年生篠ノ之箒!のは3つだから言い難くてもちゃんと覚えてね!
私が魔法少女ってことはクラスのみんなに内緒なの!
運命に引き裂かれた幼馴染と再会の時!?助けて、一夏くん!
魔法少女みらくる☆モッピー第1話「恋する乙女の裏事情」
来週もみらくる☆みらくる!


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恋する乙女の裏事情

前回の次回予告を改変しました。
セッシーの出番まで書けなかったんや……


遂にこの日がやってきた

重要人物保護プログラムのせいで名を変え、転校を繰り返す日々は終わる!

そう…私は篠ノ之箒!IS学園に本来存在しない推薦入学をする一般人の女の子!苗字の篠ノ之も名前の箒も珍しい名前だから要人保護プログラムが施行されてる時は一度も名乗れなかったけどIS学園は違う!

IS学園は国家が手出しできない治外法権…つまり、自分の名前を名乗れる!一夏に連絡できる!………一夏は要人保護プログラムに入っていないよな?いや、入っていないでくれ頼むから……………ひ、引っ越していないよな?電話番号変えていないよな…?

 

他の生徒よりも早く入寮する事を許され、新たに用意された私物を片付けながらIS学園の学生となる入学式を待ちわびる少女。

彼女は姉に似て他人に興味を持たず身内と認識した相手には傾倒する悪癖があった。姉妹で持っているのだからそういう家系なのだろう

それは置いておくにしてもそんな悪癖がある彼女はニュースというものに興味がなかった。

テレビ番組に求めるのはお菓子やお料理。そして気象情報。あとほんのちょっとアニメ

そして丁度良い時間だからと着けられたテレビ番組は某大地震が起こってもアニメを流し続けた豪の局。

世界を震撼させたニュースは、流れなかった

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

待ちに待った入学式当日

親元を離れ一人で暮らすことへの不安から涙ぐむ生徒

娘が時代の最先端事業に関わることがほぼ約束され涙ぐむ親

その美しい別れと進歩の涙に見向きもせずに相部屋となる少女が当分来ない事を寮長代理(山田先生)から聞かされた箒は部屋に入り、鍵を掛け、本当に誰もいない事を確認すると…

 

スキップと満面の笑みを駆使して小躍りしながらベッドに飛び込んだ!

 

 

「くふ…ふふふふ……ついに…遂にこの時が来た…!」

 

 

何やら怪しい笑みと共にベッドを縦横無尽に転がる箒ちゃんじゅうごさい

クールビューティーやら女侍やら言われ、凛々しく剣の道に励み女子にキャーキャー言われていた事もある中身がこれだ。

恋は人を変えるというが、(篠ノ之束)と言動がソックリな事を鑑みればこちらが素なのだろう。なんてことだ

 

 

「いーちーかーのーいーえーのーばーんーごーうーはー♪」

 

 

ゴロゴロ転がりながら無駄に高い動体視力と身体能力を無駄に駆使してベッドサイドから携帯電話を腕をどこにもぶつけずに掴むと暗記してある番号を入力する。

自分の携帯電話の番号はうろ覚えだが、織斑家の電話番号は完璧だ。

その道の人(ブリュンヒルデ信者)が1000万円は積むであろう番号をゆっくりと噛み締めるように入力する。

かけたい相手は世の中の女という女が憧れる絶対覇者ではなく、軽視され恨まれている……

 

 

「一夏……」

 

 

恋する少女は胸を高鳴らせる。今まで理不尽だと思い、心の奥から離れなかった怨みすら脈打つ心音と共に消え、澄み渡るような爽快な…それでいて焦るような理不尽などうにもならない感情に変わっていく。無機質な呼出音すら愛おしい

篠ノ之箒は幸せの絶頂を味わっていた

 

 

「い、いち『ただいま留守にしております。ピーという発振音が鳴りましたらお名前と御用件をお話ください。』…………そ、そうだ。一夏も、忙しいよな…」

 

 

ピーと機械音が鳴ったことも気付かず手を降ろして通話を切る。

敵など無いとおもえるほどに膨らんでいた期待は留守という現実に一瞬で割れてしまった。

涙ぐみそうな頬を叩いて時計を睨めば午後1時

アルバイトをやるにしても、友人と遊んでいたとしても、健全な高校一年生男子ならまだ外にいる時間だ。

夜にまた掛ければいい。

そう思い直しベッドに携帯電話を全力投球。

柔らかな布団に威力を殺された携帯電話を省みる事なく部屋を出る。

楽しみすぎて忘れていたが空腹を思い出したのだ。

ゆっくり食事をとってゆっくり探索をしよう。

他の新入生よりは早く入寮したがまだ全て見終わっていない。

一夏は男だからな。IS学園の中は絶対に知らない。絶対に外れない話題になるに違いない

 

 

「一夏が好きそうなものがあればいいが……そうだ、一夏も高校生だ。」

 

 

一夏の学校の設備と比べるのはどうだろう。

離れていても一夏と同じものを調べるのだ。

自分一人で調べるよりも楽しいに決まっている

 

 

「ふふふふ…」

 

 

すれ違う少女たちに不審者を見る目を向けられても気にも留めない。上の空で気付いていないのもあるが。

普段なら手は出ないだろうが、殺人魔眼と揶揄された鋭い瞳で睨み付け、気の弱い少女なら泣かせていただろう。

恋は人に余裕を与えるのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うがぁぁぁぁあああおぁあ!!!」

 

「落ち着け篠ノ之!山田君!保健室の用意を!」

 

「は、はい!」

 

 

余裕を奪い去るのもまた、恋なのだ

 

 

「ごの…ぐぞぉぉぉ!はなせぇぇぇぇえぇええ!!!!」

 

「落ち着け!私だ、千冬だ!」

 

「ぃぢぁぁああ!!!ギァアァァァアァアアア!!!」

 

「クソッ…落ち着くんだ!何があった!」

 

 

何ということはない。

ゆっくり探検して

ゆっくり夕ご飯を食べて

ゆっくりシャワーを浴びて

ゆっくり話す事を決めて

しっかり2回目の電話をかけたのだ。

呼出音すら鳴らず、速やかに声が聞こえた

 

 

『お掛けになった電話番号は現在使われておりません。………お掛けになった電話番号は現在使われておりません。………お掛けになった電話番号は現在』

 

 

折れそうになる心を奮い立たせ、番号を間違えたに違いないともう一度

 

 

『お掛けになった電話番号は

現在使われておりません』

 

 

 

「うそ…うそだぁぁぁぁぁぁぁああ!!!!」

 

 

こんな現実は認められなかった。

つまり夢だ

だから暴れた

嘘を伝える機械を投げ、踏み、蹴り、叩き、割り…思い付く限りの方法で破壊した。

なのに夢が覚めない

だから、現実を否定した

全て壊せば目が覚めて神社にいて一夏がいて、姉さんはISなんて作っていなくて、両親がいて、一夏のお姉ちゃんがいて、姉さんの友達がいて…

そんな、中学校に入る前に見るのをやめた夢をまた見てしまっただけなのだ

 

 

「大人しくしろ!」

 

「がっ!…………ぃぢ、が……」

 

 

だがそんな悲しい恋する乙女も絶対強者(一夏の姉)の一撃には全く敵わず、保健室に連行されることとなったのであった

意識を失う直前に夢から出ることに失敗した乙女は思う

『ねえさんのせいで…いちかがきえた…』

強ち間違っていない

 

 

 

そして教職員、生徒会役員の聞き込みにより

『何もない所で笑っていた』

『話しかけても無視された』

『突然暴れだした』

『壁が揺れた』

などの情報が寄せられ、『精神的に不安定で物に当たり散らす危険人物である。』と断定されてしまったのだった

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

朝。

必ずやって来る新しい物。それが朝

それが希望かどうかは不明だが朝はやってきた。

昨晩発狂して搬送された少女にも朝は等しくやって来る。どんな相手にも平等。格差があるとしてもそれは天気と立地の問題であって朝は完全に平等なのだ。

どんなに起きたくなくとも、朝の力で夢から現実に引き戻されてしまう。

 

 

「篠ノ之さん、起きていますか…?」

 

「…山田先生、どこですかここ…」

 

 

山田先生と呼ばれた童顔の女性は微笑みの裏で安堵の息を吐いた。昨晩気絶させる前と違い会話が成り立つ上に落ち着いて周囲の認識ができている事に安心を得たのだ。

寮室を一つ破壊し尽くした生徒(篠ノ之箒)への対応は担任が見るべきと職員会議で決まったものの、彼女の担任である織斑千冬は寮長として破壊された部屋の改修と怯えている隣室の生徒へのカウンセリング(という名のブリュンヒルデと一対一での会話というサービス)に職員会議と忙しい。

よって、副担任で元日本代表候補生であった山田真耶に白羽の矢が立てられたのだった

 

 

「昨晩、何があったのか覚えています?お話できそうでしたら聞いてもいいですか?」

 

「……夢じゃないんですか?」

 

「ええと…篠ノ之さんのお部屋は壊れてしまいましたので、これが今日から篠ノ之さんのお部屋になる鍵です」

 

「1025室…部屋、壊れてしまったんですか」

 

「え、ええと……その…」

 

「…すみません」

 

「え?」

 

 

狼狽える山田先生の様子とハッキリしてきた頭で何をやらかしてしまったのか察した箒は謝るが、何故かとても不思議そうに見られて首を傾げる。

なんだろうこの反応は。謝れないと思われていたのか?

 

 

「そ、そうだ。篠ノ之さんお腹空いてます?今日はここで朝食を取りませんか?」

 

「え?あ、はい。空いてます。でも、ここは保健室、ですよね?」

 

「大丈夫です。ちゃんと許可は取りましたから」

 

 

そう言い渡されたのは炊きたて白米に豆腐とワカメの味噌汁。そして焼き立ての鮭と漬物。

スクランブルエッグといった洋食の朝食が出ると思っていた箒は少し目を見張る。

焼き魚はシーツに匂いが付きそうなのにわざわざ許可を取ってきたのだと言う

 

 

「和食が好きだと聞きましたので」

 

 

屈託なく笑う副担任。

自分が面倒くさい生徒だと自覚のある箒は目頭が熱くなるのを俯くことで誤魔化す。

と、そこで聞き捨てならない事を言われたことに気が付いた

 

 

「……あの、和食が好きと…誰に聞いたんですか?」

 

「担任の織斑先生ですよ。篠ノ之さん、お知り合いだったんですか?」

 

「………………ちふゆさん…?」

 

 

入学式も担任の挨拶も愛する人に電話を掛ける事を考えて右から左にしていた。

よくよく思い出せば一度会場が歓喜の叫びで震えた気がする。その時に立っていた人が黒髪黒スーツの女性だった気もする

 

 

「千冬さんが!?」

 

 

一夏の姉が担任!

一夏の行方を知っているかもしれない!いや、そうに違いない!

天はまだ私を見捨てていなかった!神よ、姉の呪いに勝ち賜へ…

 

この朝食を勧めたのがあのブリュンヒルデである事を聞き、心底嬉しそうに食べ始める箒を見て山田先生は頷いた。

山田先生の中で箒が織斑千冬ファンの一人であると勘違いされた瞬間であった

 

 

「制服と簡単な化粧品と鞄は発掘できたのでここに置いておきますね。授業には出られそうですか?」

 

「は、はい。何から何までありがとうございます。山田先生」

 

 

本心から述べられる感謝の言葉に未だ20代前半の新米教師の心は打ち震えた。

ISという講師になれる者が極端に少ない競技を教えているのだ。織斑教諭が赴任する前までは担任も受け持っていたが、今では副担任。

生徒からは『千冬様の方が良いのに』と邪険にされ、教師仲間からも『ブリュンヒルデ様にはさせられないような雑務を任せる為の副担任』と軽んじられて早数年…

生徒からの感謝がこんなに嬉しいものだったと思い出せた山田真耶23歳の春

熱くなった目頭を隠すために目を逸らし、嗚咽が漏れそうな口を抑えて隠し先生らしい威厳を保ちながら(本人は真面目に隠してると思っている)声を届ける

 

 

「ぎょ、教師なんべすから…あだりまえでず!」

 

「や、山田先生?その、お風邪ですか?」

 

「だいじょうぶれす!」

 

 

心配されながら保健室を出た山田真耶は心に誓う

IS学園の教師として、担任かどうかなど関係なく生徒を守るのだ。と

 

誓われた側である篠ノ之箒はといえば、自分の迷惑のせいで良い教師である山田先生に負担をかけて風邪を引かせてしまったと落ち込んでいたが

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

篠ノ之箒の朝は大変だった

寝ている時も泣いていたのか瞼は赤く厚く腫れ、保健室にはシャワーも姿見も無い。

大慌てで冷やし、炎症を鎮めると化粧で誤魔化す。誤魔化している最中に瞳自体が赤く充血している事に気が付き、髪をサッと結い上げ食べ終わった食器と私物の詰まったバッグを掴み食堂へ早歩き。

礼と共に返却し、もう一度早歩きで購買へ

目薬を購入してトイレの個室に飛び込んで、やっと一息つけた

両目に数滴垂らし、目の周りが化粧崩れしていないか確認。無事

そこでやっと安心感が訪れた

 

篠ノ之箒はとある人物の妹である。

例え縁を切ろうが遺伝子は切れない。その繋がりによって篠ノ之箒に退学は起こり得ない

よって、クラスメイトと不和を起こしてどんなに気不味(きまず)かろうが逃げられないのだ。

既にやらかしている今、これ以上汚名を重ねるわけにはいかない…!

決意を新たにする箒。手遅れとは思いたくなかった。

それはともかくとして、箒はとある人物を探そうと思っていた

 

 

「一夏…」

 

 

恋する乙女は結局、恋のためなら幾らでも頑張れるのだ

 

結局、職員室に突撃するもファンの壁に阻まれ、ブリュンヒルデ信者たちと共に手酷く追い払われてしまい、クラスメイトとの付き合いに悩む時間が増えただけだったが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(だが、クラスメイトの事などどうでも良くなるとは想定外だったっ…!)

 

 

後から教室に入り注目される事と、寮室破壊犯と囁かれる空気に耐えられなかった箒は、結局人の来る前に教室に入り授業開始までの時間(一時間弱)気を鎮める…つもりだった。

箒の集中力が保たなかった訳ではない。30分以上しっかり瞑想していた。

授業開始30分前にやって来た人物。それが問題だった

 

既に入って来ていた少女達が歓声を上げ、廊下もザワザワ騒がしい

やっと顔を向けた少女の双眸に映ったのは、黒髪

それもただの黒髪ではない。少し青みがかった黒

瞳は赤みがかった茶色

そして屈託のない笑みが良く映える顔――――

 

 

 

―――髪しか見ていないのに分かった

あの人間は、一夏だ

 

 

そこまで考えた途端に顔を逸らす。美化し過ぎた妄想青年一夏と現実に突然現れた本物の一夏が合成され、その輝かんばかりの笑みを直視できなかったのだ。

 

箒は気が付いていないが数秒間思考停止して彼をぼんやり眺めており、箒に気付いた一夏が九死に一生を得たと言わんばかりの笑顔で話しかけようとした瞬間に目を逸らしており、6年ぶりに再開した幼馴染の裏切りに泣きそうになっているとは知りもしなかった




私、IS学園一年生篠ノ之箒!直訳したら竹の箒だったから調べないでね!
私が魔法少女ってことはクラスのみんなに内緒なの!
久しぶりに会った幼馴染は格好良くて惚れ直しそう!助けて、一夏くん!
魔法少女みらくる☆モッピー第2話「専用機持ちってなんの事?」
来週もみらくる☆みらくる!


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