一ノ瀬学園の名物教師 ((TADA))
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一ノ瀬学園の名物教師
注意事項:安心のキャラ崩壊、法律とはなんだったのか、キャラの口調が迷子、『桐須先生可愛いヤッター!!』
上記が大丈夫な方は下にスクロールをどうぞ
「う〜ん」
一ノ瀬学園3年B組の教室で1人の男子生徒が頭を抱えている。少年の名前は唯我成幸。家が貧乏な上に父親は5年前に他界、さらには母と妹弟の5人暮らしの家計が苦しいというラブコメの主人公にしていいのかと作者が突っ込みたくなるような少年である。だが、少年はそんな逆境にもめげず、家族に楽をさせるために一ノ瀬学園の特別なシステムである『特別VIP推薦』を狙っている健気な苦学生である。
「凡人の俺にどうやってあの天才共に勉強を教えろと……!!」
唯我が悩んでいるのは学園の理事長から『特別VIP推薦』と引き換えに数学・物理にかけては天才な『機会仕掛けの親指姫』と呼ばれる緒方理珠と、現代文・古文・漢文にかけては天才な『文学の森の眠り姫』と呼ばれる古橋文乃にそれぞれの不得意科目を教える『教育係』になってしまったのだ。
最初は唯我も楽観的に考えていた。それぞれの科目で天才というかドン引きするくらいの才能を持っているのだから、不得意科目くらい楽勝だろうと思っていたらまさかの正反対。2人ともそれぞれの不得意科目は凡人が頑張って秀才レベルになった唯我の半分にも満たない成績だった。
普通なら諦めさせるのが一番簡単な解決方法である。しかし、そこはラブコメ主人公。考えることも一味違う。
「『できない』ってすげぇ悔しいもんな。『天才』だからって本当にやりたいことが『できない』んじゃ幸せじゃないと思うし」
この発言である。これはラブコメ主人公ですわ。
「どうかしたの? 成ちゃん」
そんな唯我に話しかけてきたのは唯我と小学校時代からの親友である小林陽真。イケメンで気配りができるまさしくギャルゲー主人公の親友ポジションが似合うナイスガイである。
そんな小林を唯我が真剣な表情になって見つめる。その視線に気づいたのか自然と小林の表情も真面目になった。
「なぁ、小林」
「なんだい、成ちゃん」
「大森に彼女ができるように手助けできたら特別VIP推薦をあげるって学校側から言われたらどうする?」
「せめてチンパンジーが東大に合格する方が簡単だから『チンパンジーを東大に合格させるからそっちで許してください』って頼むかな」
「君ら失礼すぎない!?」
2人の会話に完全な流れ弾を食らった男子学生がいた気がするが2人はスルーした。普段から大森の扱いはこんな感じだ。それでもテスト対策のノートを作ってあげたりする唯我はツンデレの才能があるのかもしれない。
小林が爽やかに笑いながら唯我の前の席の女子生徒から椅子を借りて唯我の前に座る。
「それで? 何かあったのかい? おそらくは三日前くらいの特別VIP推薦の面接のことだと思うけど」
「小林ってエスパー?」
「成ちゃんがわかりやすいだけだと思うよ」
とりあえず褒められたと納得した唯我は学園長から命令された邪智暴虐なる命令を伝えると、小林は爽やかスマイルを浮かべて「あの2人だったら不得意科目も上の中……酷くても上の下でしょ」と言ったので、唯我がそれぞれの不得意科目の模擬テストの結果を見せると爽やかな笑顔が引きつった。唯我は「小林の爽やかフェイスが引きつるの久しぶりに見たなぁ」と1人頷いている。ちなみに前回見たのは父親が亡くなったことを伝えた時である。
「ちょっと待って……え? これ? えぇ〜……」
小林からの「冗談だよね? むしろ冗談だよって言ってくれなきゃ成ちゃんの将来やばいよ?」というアイコンタクトを受けた唯我は力強く頷く。
「緒方と古橋の不得意科目の点数だ」
小林は涙した。邪智暴虐なる学園長には必ずや正義の鉄槌を下さねばならぬ。小林に大人の事情はわからない。しかし、ただでさえ苦労人な成ちゃんにさらなる苦難をぶち込んだ理事長には必ずや報復をしなければならない
「それで。どうすればいいと思う?」
唯我の問いかけに小林は唯我から見えない位置で高速フリック操作で理事長の悪評をばら撒きながら少し考える。
「……う〜ん。先生に教育方法を聞いてみるとか?」
「俺も考えたけどさ。先生方もみなさん忙しいだろうから俺個人の事に巻き込んでいいのかと思ってさ」
「なんだよ成ちゃん天使かよ」
「は?」
「いや、なんでもないよ」
思わず溢れてしまった本音を爽やかスマイルで流す小林。『唯我=天使説』は小林の中では万有引力の法則と同じくらいの当然の定説である。
そこで小林は考え込む。できる限り話しかけやすくて唯我自身の心労が減りそうな人選。
小林の頭の中が超高速で一ノ瀬学園教師一覧が捲られていき、1人の男性教師のところで止まった。
「塩見先生とかいいんじゃない?」
小林の言葉に唯我が止まる。その反応に小林は首を傾げる。
「あれ? 教え方も上手いし、結構僕らの話も聞いてくれるいい先生だと思ったけど」
「いや、それはわかるんだ。確かに教え方もすごい上手いし、俺たちの相談も親身になって聞いてくれる。だが……」
唯我はそこまで言って一度言葉を切る。
「現代文の授業だったはずがいつの間にか日本史の内容になったりする先生だぞ?」
「あ〜、すごいよね。僕も古文の授業でサンスクリット語が出てくるとは思わなかったよ」
「しかもあの人脱線に脱線を重ねて最終的に目標地点に到着するからな」
「一限の授業のはずなのになぜか内容が現代文・世界史・日本史・古文が詰め込まれたこともあったよね」
「授業聞いてるうちは楽しかったけど、授業後にノートを確認したら何の授業かわからなくなったからな」
唯我と小林は一ノ瀬学園1の名物教師に話がスライドする。なにせこの教師はやることが無茶苦茶だ。授業が脱線は当然として、なぜか現代文の授業が体育になったり、古文の授業がフルマラソンになったり、漢文の授業がヤのつく自由業の方々の事務所へのカチコミになるなど行動が意味不明である。問題行動を起こす度に大学時代から振り回されている桐須真冬教諭が胃を痛めているそうである。
だが、そんな型破りでキチガイな教師だからこそ生徒達からの受けはよく、教え方も良いので一ノ瀬学園非公認の『教わりたい教師ランキング』に毎回1位を飾っている。同時に『身内に持ちたくない教師ランキング』でも毎回1位でついに殿堂入りしたのは完全に余談である。
「まぁ、でも塩見先生だったら何かしらのアドバイスくれるんじゃない?」
「……そうかなぁ」
懐疑的な唯我に爽やかスマイルで促す小林。そんな親友の言葉に唯我は席から立ち上がる。
「あれ? 小林も来るのか?」
「せっかくだからね。それに『風雲!塩見城!!』にも興味あるし」
「桐須先生が『不許可。生徒は絶対に入室不許可』って言ってたけどな」
「僕、前に一度あの部屋から炎出てるのを見かけたんだけど」
「あそこ『図書準備室』だよなぁ!? 火元なくねぇか!?」
小林と唯我は2人揃って1つの扉の前に立つ。そこには『図書準備室』の文字が消されて『風雲!塩見城!!』と書かれたプレートがかかっている。
「どうしよう小林。今すぐ回れ右したい気分にかられたんだけど」
「わかるよ成ちゃん。なんだろうねこの扉から溢れ出る本能から出る危険信号は」
なぜか扉から禍々しい気配を感じる。中にいるのは一ノ瀬学園の名物教師だけのはずだ。それなのに何故こんなに危険信号を感じるのか。
唯我は一度頬を叩いで活を入れると扉を開く。ノックをしないのはこの部屋のルールが『ノックをしてはいけない』だからだ。このルールを忘れた可哀想なとある男子学生は死にたくなるレベルの黒歴史をこの部屋の主人によって学園中にバラされた。
「失礼し……ま……は?」
唯我の言葉は途中で途切れて呆気にとられた言葉が漏れる。隣の小林も唖然と中を見ている。
中では全裸で土下座をしているこの部屋の主人である塩見周斗教諭と、その頭に足を乗せてものすごい威圧感を出している塩見周斗教諭の後輩であるはずの桐須真冬教諭だった。
「これだけ頼んでもダメでしょうか!!」
「不許可。というか何故全裸なのですか?」
「裏表のない誠意を示すためです!!」
土下座しながら力強く叫ぶ塩見周斗教諭(しかし全裸である)。というか桐須真冬教諭もどう考えてもあえて頭を踏む必要がないのに踏んでいる。
桐須は呆れたようにため息を吐く。
「論外。大学時代のノリをここで出しても無駄。無意味。論外」
「ですが大将!!!」
「論外」
絶対零度の言葉を続ける桐須。そして初めて2人に気が付いた様子になる。
「……貴方方は?」
「あん? おぉ、3—Bの唯我成幸に小林陽真じゃないか」
「唯我……そう、あなたが……」
桐須が何やらシリアスな雰囲気を出そうとしているが、流れるように全裸土下座に腰掛けている時点で全てが台無しだった。
「あの、塩見先生は何を頼んでいたんですか?」
「おお!! 聞いてくれるか唯我!!」
「聞きますんでとりあえず服を着てください」
唯我の言葉に仕方なさそうに服を着る塩見。
「先輩の全裸は大学生時代のサークルのせいなので気にしない方がいいわ」
((大学ってこわ!!))
桐須の言葉にとても間違った大学のイメージを持ってしまう2人。少なくとも進路希望から塩見と桐須の母校の名前が書かれることはなくなった瞬間である。
「それで? 塩見先生は何を桐須先生に頼んでいたんですか?」
「聞いてくれ唯我に小林!! 真冬に『せっかくの学校だから教師も制服にしよう!!』と言ってこの提案をしたのに却下されたんだ!!」
そう言って塩見から渡されたデザイン画(無駄に上手いのムカつく一品)。そこには男性教師はモヒカン半裸に肩パッド。女性教師は聖闘士が身にまとう聖衣のような格好だった。
唯我と小林は2人で力強く頷く。
「「否定されて当然だと思います」」
「何故!?」
驚愕する塩見の方に2人が驚愕である。むしろ何故これが通ると思ったのか。相変わらず頭のネジを閉め忘れているとしか思えない人物だ。
「まぁ、いいや。2人は何か俺に相談があって来たんだよな?」
「あ、はい」
「だったら生徒用のソファーに座ってくれや。今、飲み物を用意してやるからよ」
唯我が止める間も無く塩見は隣に(増設された)給湯室へと入っていく。仕方なく唯我と小林は来客用と思わしきソファーの入り口に近い方に座る。向かいのソファーの端には桐須が座った。
そこで唯我と小林は部屋の中を見渡す。ここに常駐している塩見が文系科目だから当然として、半分入り浸っている桐須の影響もあってか本棚には専門書や参考書がびっしりと詰まっている。
(すげぇ量の本だな。しかも種類も豊富……下手な図書館より多い、うん?)
見渡していた唯我の視線が一箇所で止まる。
そこにはM134機関銃を始めに、M26 MASSアンダーバレルショットガン、S&W M29リボルバーが綺麗に並んでいた。
唯我は一度メガネを取り、目をこすってからメガネを拭き、再度メガネをかけてみる。
そこにはさっきの光景のすぐ近くに狙撃体制が整っているモシン・ナガンM28が鎮座していた。
唯我と小林は視線を合わせて力強く頷く。
「あの桐須先生。あれは……?」
小林の問いに目を通していた書類から視線を上げ、小林の指先を見る桐須。そして「あ、いつもど〜も」と言わんばかりに鎮座しているモシン・ナガンM28を見てから一度頷く。
「安心してください」
「そ、そうですよね!!」
「いくら塩見先生でも本物は手に入れないですよね!!」
絶対にやらないと言い切れないのが塩見の恐ろしいところだが、桐須が受け入れているということはモデルガンだと判断した2人。だから続く桐須の言葉に叫んだのも仕方ないことなのだ。
「安全。捕まったとしても先輩だけだから」
「「本物じゃないですか!!!」」
2人が考えている以上に一ノ瀬学園の名物教師は危険人物だったようだ。
「お〜、なんだなんだ。ずいぶんと元気だな」
「いや!! 元気だなじゃないっすよ!! なんでスナイパーライフルが置いてあるんですか!?」
給湯室から戻ってきた塩見に唯我が掴みかからんばかりに詰め寄る。それに塩見は不思議そうに首を傾げる。
「なんでって俺が天文部の顧問だからだが?」
当然のように言い切る塩見。深まる沈黙。そして唯我がようやく口を開く。
「え? それだけですか?」
「え? だって天体観測に必要だろ? スコープ」
「天体望遠鏡使えよ!!」
「持ち運びに不便だろうか」
「その前に法律違反ですけど!?」
唯我の当然の言葉も塩見は華麗にスルーした。
「まぁ、とりあえず座れ。ほれ、烏龍茶でいいか?」
そう言って唯我と小林の前に烏龍茶の入ったグラスを置く塩見。唯我と小林も気分を落ち着けようと思ってグラスを持とうとする。
「制止。2人とも少し制止」
「え?」
「桐須先生?」
桐須の言葉に飲もうとしたグラスを元の位置に戻す2人。それを確認してから桐須はテーブルに置いてあったライターを烏龍茶に近づける。
すると烏龍茶に綺麗な火が点いた。
驚く2人を他所に桐須は塩見を締め上げていた。
「憤怒。あれほどPuB式の烏龍茶を出すなと言ったはずですが?」
「いやいや、ちゃんと烏龍茶の色しているだろ?」
「飲料の識別方法を色以外も覚えろとあれほど……!!」
女性の細腕で長身の塩見を締め上げる桐須。ガチギレの様子である。だが、塩見は気にせずに言葉を続ける。
「まぁ待て。落ち着け。この部屋に備え付けの給湯室を使うのは俺と真冬だけだ。そして真冬は基本的に飲み物を持ってくることを考えれば冷蔵庫の中身は酒だけになるのは当然だろう?」
「反省の色なし。説教」
桐須はそのまま塩見を正座させて説教を始めた。
それを見ていた唯我と小林は視線を合わせて会話して立ち上がる。
「「お邪魔しました」」
「待て!! 唯我に小林!! 相談!! 相談があったんだろ!? 待て真冬!! 流石に石抱きは」
唯我と小林は塩見の叫びを最後まで聞かずに扉を閉めて中と外の境界線を閉ざしてしまう。
「俺、自分でいい方法考えるよ」
「僕もそれがいいよ思う」
部屋の中から漏れ出てくる塩見の断末魔を背にしながらそんな会話をするのであった。
塩見周斗
オリ主先生。科目は現代文とかの設定。やることなすこと頭がおかしい一ノ瀬学園の名物教師。そのレベルは近隣住民にも有名なほど。
ちなみに京都出身で妹はアイドルをやっているそうである。クロスオーバータグが追加されたら作者のアイマス小説で大変お世話になっている彼女の出演の可能性がワンチャンあるで
桐須真冬
みんな大好き桐須先生!! 塩見先生の後輩設定は作者の完全な趣味です。ですがキチガイな先輩のおかげでフィギュア以外のことも色々と知れたご様子。しかし持病に胃痛を持ってしまった。
唯我成幸
原作主人公。なんか原作読んでて面倒見良すぎだろ、と作者は思った。
小林陽真
書いている途中でなんかホモ臭くなった。悪意はないんだ。ただ、書いている時に『唯我の親友ポジションを確定的にしなきゃ!!(使命感)』の結果なんだ。
そんな感じでぼく勉の小説が少ないなら増やせばいいじゃない理論で書いてみました。ラブコメ漫画原作の二次小説にも関わらずヒロインの登場が1人だけという愚行。だが私は謝らない。文句を言うんだったら自分で書いてクレメンス!! というかぼく勉小説増えて!! あとついでにぐらんぶるも!!
続く予定はありません。
ありませんよ?
ネタが浮かんで時間ができてその気になったら投げる可能性もありますけどね!!
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