おっぱいフロントライン ※休載中※ (スクランブルエッグ 旧名 卵豆腐)
しおりを挟む

馴れ初め編
指揮官「大事なのは、おっぱいだ」


つまり、おっぱいだ。


「やっぱ、世の中は結局おっぱいだと思うんだ」

いやー、やっぱ仕事の疲れを癒してくれるのはおっぱいだよ。君もそう思うだろ、わーちゃん。

 

「思わないわよ、この変態‼︎さりげなく私の胸を掴むな‼︎」

 

紹介しよう、彼女は指揮官たる俺の副官を務めてくれている戦術人形WA2000こと、わーちゃんだ。

勿論おっぱいはデカい。

 

「くっ………相変わらず気持ち悪い動きで避けるわね‼︎今日という今日は許さないわよ‼︎あと、わーちゃんって言うな‼︎」

 

わーちゃんが繰り出す拳の連打を腰や頭を振り回して避けながら今日も俺は書類仕事に没頭する。

「わーちゃん、悪いけど先週の分の作戦報告書を棚から出して来てくれ」

 

「あんな事をしておいてよく頼み事が出来るわね⁉︎頭腐ってんじゃないの⁉︎」

やっぱ、わーちゃんの罵倒は骨身に染みるなぁ。

もっと俺を罵ってくれ。

 

「頼む、これは俺の優秀な副官である君にしか出来ないんだ」

キリリ、と顔を真剣にして言うとわーちゃんは顔を若干赤くした。

繰り出される攻撃もいつの間にか止まっている。

「ッ!分かったわよ、取ってくるから感謝しなさいよね!」

「ハハッ、チョロイン乙www」

 

お?何だ。わーちゃん、どうして肩を震わせてる?

それに何故自分のライフルに弾を装填してるんだ?

 

「し、しし死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ‼︎」

「あばばばばッ⁉︎死ぬッ実弾はマジで死ぬからヤメテ⁉︎」

 

 

 

数時間後、ズタボロのボロ雑巾にされた俺は、わーちゃんが出て行った後の部屋の片付けをしていた。

 

「指揮官さま、おはようございます………って何があったんですか⁉︎鉄血にでも襲撃されたんですか⁉︎」

 

説明しよう、彼女の名はカリーナ。

この基地での俺の補佐役をしてくれている優秀な子だ。

勿論おっぱいはデカい。

 

「何、ちょっとだけわーちゃんとスキンシップをしただけさ」

「またですか?いい加減にしないと本部に通報しますよ、変態指揮官」

呆れたような侮蔑の視線が突き刺さる。

そうだ、もっとやってくれ!

俺はおっぱいと生ゴミを見るような視線があれば生きていけるんだ!

 

「『おっぱいと生ゴミを見るような視線があれば生きていけるんだ!』とか考えてる顔してますね。やっぱり通報しましょうか?」

「やめて下さい私めが悪かったですだからそれだけは勘弁シテ‼︎」

「うわぁ………心底キモいです。死んで下さい」

床に頭を擦り付けながら土下座をして謝る俺にドン引きするカリーナ。

ふっ、この俺にプライドなんてないぜ。

おっぱいさえ拝めればな‼︎

 

「はあ………今日から新しい戦術人形達が着任するんですから、少しは指揮官らしくして下さいね」

「新しい戦術人形ねぇ。確かAR小隊だっけか?」

今日から新しく我が基地に着任する戦術人形だが、少し特殊な人形達だそうだ。

やれやれ、特殊な人形ねぇ………名前からして、どうせ如何にも戦闘用!みたいな奴らが来るんだろうなあ。

 

「あら?どうやら彼女達が来たようです。今から呼んでくるので、大人しくそこで待っていて下さいね」

カリーナは慌ただしく部屋から出て行く。

さて、ならば俺も迎える準備をするか。

 

 

 

 

「此方の部屋に指揮官さまがおられます。指揮官さま、入りますよ………ちょっと皆さんそこで待っていて下さい」

部屋に入りかけたカリーナが一瞬凄い形相をすると目にも止まらぬ速さで自分だけ入ってくる。

どうしたんだ?何でそんな怒ったような顔をしてる?

 

「(ピエロの格好で出迎えるとか、どう言う神経してんだよテメェは!大人しく待ってろって言ったじゃねーか‼︎)」

「(えぇー………だってこれくらいフランクな指揮官の方が親しみやすくていいじゃん。インパクトあるし)」

「(とにかく!着替えて下さい、今すぐに‼︎)」

カリーナのキャラが若干壊れているな。

全く、冷静な心を常に保つのも補佐官の役目だと言うのに。

「誰の所為だと思ってるんですか………はぁ、入って来て下さい」

カリーナの呼びかけで、AR小隊の面々が部屋に入ってくる。

なッ………こ、これは…!

 

 

「神よ………楽園はここにあったのですね………」

単刀直入に言うと、おっぱい羅列だった。

但し、そこの桃色まな板娘。テメーは駄目だ。

致命的な迄に貧乳じゃねーか。

貧乳はステータス?ハッ、何を言ってんだか。

豊乳こそステータスに決まってんだろオ‼︎

 

「何だか、とても失礼な事を言われてる気がするのだけれど………」

 

まな板娘が若干俺を睨みながら呟く。

お前みたいに勘の良い奴は嫌いだよ。

 

「うっせーんだよ、桃色まな板娘!もっと豊胸してから出直してこぉい!」

 

「なッ………!どう言う意味よ!最低ね、貴方!」

まな板娘が俺を全力で睨みつけてくる。

くっ、やるじゃねーか………今まで感じた事もない侮蔑とゴミを見るような目線をしてやがる。

其処だけは認めてやろう。

 

「いい視線で睨みつけてくれるじゃねーか………そのゴミを見るような視線に免じて今の所は許してやるよ」

「気持ち悪ッ!頭おかしいんじゃないの⁉︎」

おお………いいねぇ、罵倒の才能もあるじゃんか。

これでおっぱいが有れば文句なしなのに。

惜しい人材だぜ。

 

「ハハハッ!中々ユニークな指揮官じゃないか!私はM16A1だ。指揮官、任務があったら遠慮なく言ってくれ!」

三つ編み眼帯、さらに姉御肌と来たか。

くぅ、属性持ち過ぎだろ。

反則だぜ。おっぱいもデカイし。

 

「し、指揮官、M4A1…です。………よろしく…お願いします」

黒髪に緑のメッシュが入った如何にも大人しめな感じの子だな。

いいぜ、王道じゃねぇか。

おっぱいもデカイ。

 

「M4SOPMODⅡです!指揮官、よろしくお願いしまーす!」

いいねいいね、最っ高だねェ!元気なロリッ娘ボイスの可愛い子じゃないか。

あと、おっぱいもいい感じの大きさをしている。

将来有望だな!

 

「はあ………私はAR-1「自己紹介ありがとう皆宜しく頼むよ」なんで私だけ無視するの⁉︎」

 

「桃色まな板娘………面倒だからまな板娘でいいや、全く何がそんなに不満なんだ?」

 

「まな板まな板五月蝿い!私にはAR-15って言う呼び名があるんです!」

「五月蝿い奴だな。じゃあ今だけはAR-15(つるぺた)って呼んでやるよ。これでいいだろ?」

「あなたねぇ………!」

 

AR-15が青筋を浮かべる。

怒った顔は可愛いな。

その蔑むような目線がたまらねぇぞ!

「あーもう!指揮官様、変な事を言って彼女を怒らせないで下さい!春田さんに言いつけますよ?」

「ぐっ⁉︎それだけは、それだけは勘弁してくれ!もう磔射撃的の刑にされたくないんだ!」

カリーナの奴め、春田さんの名を出すとは恐ろしい事を…!

彼女がこの基地最恐の戦術人形と分かっていながら、その名を出しやがって!

今度こそ俺の俺が消し飛ぶかも知れねぇじゃねーか。

だが、俺はこのくらいじゃへこたれないぞ。

何せ俺は変態だからな‼︎

 

「何でドヤ顔をしているかは分かりませんが、気持ち悪いのでやめて下さい。それと、AR-15さんに謝って下さいね」

カリーナの排水管に詰まった汚物を見るような視線が俺に突き刺さる。

ちっ、癪だが彼女の言う通り桃色まな板娘に謝らないと他の皆にも嫌われそうだ。

ここはひとつ、男らしく謝ろうじゃないか。

 

 

「すまなかったAR-15。決して君を傷付けるつもりは無かったんだ。許してくれ!」

俺は頭を床にヒビが入るくらいの勢いで擦り付け、土下座をする。流石にAR-15も絶句しているようだ。

「え、ええ………頭をあげて下さい指揮官。私も、もう怒ってませんから」

その声に俺は頭をあげた。

………ほほう。

「そうか。………まあそう落ち込むなって!例えお前がガキっぽい熊さんパンツを履いてようと、例え貧乳でも嫁の貰い手はあるーーーーぐへあぁッ⁉︎」

「最ッ低!何さりげなく見てんのよ変態!死ね、今すぐ可及的速やかに早く死ね!立ったまま死ね!」

 

 

 

 

 

グチャッメキョッ‼︎という音と共に俺の頭にAR-15の踵落としが決まる。

やべぇ、今度こそ冗談抜きで本気で死ねるぜ。

 

「ちょ、ちょっと流石にそれ以上は…落ち着いて」

「離してM4!この屑は今ここで始末するわ!」

M4A1がAR-15を羽交い締めにして取り押さえる姿が見える。

いいねぇ………M4の胸がよく揺れてやがる!

だがクソっ、出血多量ではっきりと見えない!

あ、やべ視界…が……歪ん………で?

 

 

 

 

「ね、ねぇ…指揮官死んでない?さっきから動かないんだけど」

SOPの声で私は我に返る。

そういえば、先程から踏み付けられて笑顔で変な声を出してた指揮官の反応がない。

 

「え………嘘…⁈そ、そんな…!指揮官?指揮官⁉︎」

ユサユサとM4が指揮官の身体を揺さぶるが何の反応も返さない。

そんな………私、指揮官を…⁈

サーっと血の気が引いていく。

足に力が入らない。

 

 

 

 

「ってまだ死ねるかーッ!」

 

 

 

は………………?

 

 

 

「し、指揮官?怪我は大丈夫ですか⁉︎」

「大丈夫だ、問題ない」

心配そうに問いかけるM4に対し、サムズアップして答える指揮官に開いた口が塞がらない。

一体どう言う事?

 

「秘技ッ!ギャグ漫画では怪我も一瞬で治る!だ。何だお前達、知らないのか?」

 

 

 

いや、知らねーよ。とこの場の指揮官を除く全員が思った。

 

 

 

 

 

 

「で、指揮官さま?明日から彼女達を出撃させるんですか?」

AR小隊が部屋から出て行った後、床に飛び散った俺の血液を拭いているとカリーナが明日の事を聞いてきた。

 

「あー、まあ、そうだな、うん。明日は取り敢えず近辺のパトロールにでも行かせるか」

模擬戦で経験を積んで貰おうかとも思ったが、やはり実戦に勝る経験はないだろう。

ま、最近は鉄血の襲撃も少ないし問題ない筈だ。

 

 

 

「所で、カリーナ。前から思ってたんだがよ」

「はい?何ですか、指揮官さま?」

 

 

「お前、普段の服装って何かエロいよなーーって………待て何故拳銃を俺に向ける…ヒイッ!冗談です許して!」

 

 

 

 

 

続く?



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

指揮官「おっぱいは正義。異論は認めない」AR-15「指揮官、死ぬ?」

いやー、今日も素晴らしい天気だ!

雲一つ無い青空、降り注ぐ太陽の光!

最高の気分だぜ!

そう思わないか、わーちゃん?

 

「思わないわよ!だから、胸を揉むなって言ってんでしょうが‼︎あと、わーちゃんって言うな!」

目にも止まらぬ速さで繰り出されるわーちゃんの蹴りを、身体をくねらせる事によって避ける。

「くっ………動きが変態そのものね!軟体動物かあんたは!」

「落ち着くんだ、わーちゃん。俺は指揮官として、常に君達の身体に異常がないか確認する必要がある。これは君達の為でもあるんだ。特に君は優秀な人形だからな。俺は君を大事に思っている。分かってくれるか?」

俺が真剣な顔をして言うと、わーちゃんは顔を若干赤くする。

「と、当然よ!日頃から感謝しなさいよね!全く………」

 

へへ、やっぱチョロいな。

 

「そうか!なら次はそのスカートの中を見せて…ぷげらッ⁉︎」

「死ね!この変態ド屑指揮官!」

わーちゃんのヒザ蹴りが顎にクリーンヒットして、俺は意識を手放した。

 

 

 

 

「おはようございます、指揮官さま。また、わーちゃんに何かしたんですか?彼女、顔を真っ赤にしながら歩いていましたよ?」

やあ、おはようカリーナ。

相変わらずいい胸をしてるな。

「また気持ち悪い事考えてる顔してますね。死にます?」

「ちょ、ショットガンを向けるな!まだ何も言ってないだろ⁉︎」

俺がそう言うと、カリーナはショットガンを片付けると仕事の準備を始める。

最近カリーナの俺への当たり方がキツイ気がする。

全く、これだから沸点の低い最近の若者は。

ま、おっぱいを堪能できてるからいいか。

 

 

………おっと、散弾が飛んできやがった。

 

 

 

 

 

 

 

「指揮官さま。まもなくAR小隊が出撃するので指揮所に来てください」

カリーナからの呼び出しで俺は指揮所に向かう。

AR小隊の実力を見せて貰おうか。

 

「やあ、皆!今日はこの基地に来て初の出撃になる訳だが、準備は万端か?身体は大丈夫か?」

 

指揮所にはAR小隊の面々が集合していた。

そんな堅苦しくしなくてもいいんだがな。

………?どうした、M16。

何か言いたそうな顔をしてるが…?

 

「あー………指揮官こそ、身体は大丈夫なのか?」

なんとも言えない顔をして聞いてくるM16。

おいおい、俺を心配してくれているのか?

だが何の問題もない。

俺は至って正常だし、健康そのものだ。

 

 

「全身の服が穴だらけというのは、どう見ても正常とは言えない気がするんだが………」

 

 

よくぞ、誰もが気になっていたが聞き辛くて聞けなかった事を聞いてくれたな、M16。

そう、俺の服はカリーナにやられた散弾の所為で穴ボコだらけだ。

だが安心しろ、見えちゃ駄目な部分は無事だ。

 

 

「何、ちょっと襲撃を受けただけだ。最近この基地にはショットガンを振り回す凶悪な通り魔がいてな………」

チラっと、カリーナの方を見ると露骨に目を逸らしやがった。給料下げんぞ。

 

「ふん、どうせまた変な事言って仕返しされただけでしょう?貴方みたいな指揮官に配属された他の人形に心底同情するわ」

 

ほほーう?随分と挑発的な事を言うじゃねーか、まな板ピンク娘。

お前にはお仕置きが必要みたいだな。

「な、何よ?」

俺の気配が変わった事に気付いたAR-15が後退る。

馬鹿め、その先は行き止まりだぞ?

「AR-15………指揮官たる俺に何と言う口の聞き方だ。お前には教育的指導をしなければならんな」

俺は徐々に距離を詰めていく。

そして………

 

「………なーんてな!冗談だ。ただ、一つ言う事があれば、俺は君の実力を信じている。必ず生きて戻ってこい。まあ、これは、AR小隊や基地にいる皆含めてだがな………。それはともかく、君にコレをあげよう」

「何これ………銃弾?」

俺が手渡したのは銀色に輝くとある銃弾。

その色合いも相まって普通の銃弾とは一味違うように見える。

 

「そいつは特別製だ。しっかり持っておけよ?」

 

「は、はい指揮官………ありがとうござい⁉︎」

 

次の瞬間、銃弾はパフッ!という小気味よい音を立てて炸裂し、白い粉が舞った。

 

 

「……………は?」

 

 

「わーはっはっはっは!引っかかったな、アホが!そいつは俺が特別に改造を施した銃弾型片栗粉ボムだ!」

 

AR-15の顔は片栗粉の所為で真っ白に染まっている。

ザマァwwwまな板娘ザマァwww!

俺に喧嘩を売るとこうなるんだぜ、イェイ!

 

 

「………ろす」

 

 

ん?何だ、AR-15の奴が何か呟いてるみたいだが。

 

 

「ブッ殺すッ‼︎」

 

 

お、おい、何で銃をこっちに向けてるんだ。

ちょっとしたイタズラじゃないか、怒るなって………うおおいッ⁈

今確実に眉間を狙ってただろ⁉︎

 

「死に晒せ、この変態糞指揮官がアアアアアアアアッ‼︎」

 

キャラ変わってる⁉︎キャラ変わってるよ、AR-15さん⁉︎

俺は絶え間なく飛んでくる銃弾を右へ左へと躱しながら逃げ回る。

ヒェッ、銃弾が首を掠めてった!

 

 

 

 

〜数分後〜

 

「さあ、出だしも完璧だし出撃には最高のコンディションだな‼︎」

「これの何処が最高よ⁉︎今までで一番最悪だわ‼︎」

 

おや、もう顔を洗い終わったのか?

全く、お前が暴れる所為で出撃時間を5分過ぎてるんだぞ?

 

「誰の所為よ誰の‼︎………はあ、頭痛くなってきた」

 

大丈夫?お薬飲む?大根おろし食べるか?

但し、大根摩り下ろすのはお前の胸でだけどな!お前のツルペタな胸なら、さぞかし良い大根おろしが作れるぞ!

 

「誰が大根摩り下ろし器かッ!もうやだ、この基地……」

 

AR-15は頭を抱えて机にもたれかかる。

あ、そこ前に俺がバニラバー落として、ネチャネチャになったまま放置してる場所………まあいいかAR-15だし。

ところで、ネチャネチャってイヤらしい響きだよな。

やっべ、勃ってきた。

 

「ねぇ、M16。大根おろしって何なの?」

「ハッハッハ、いいかSOP?大根おろしって言うのはだな……」

 

「そっちも律儀に教えなくて宜しい‼︎さっさと行くわよ!………って何これ?手がネチャネチャじゃない!誰よ、机に何か零して放置したのは⁉︎」

 

 

 

 

 

〜また数分後〜

 

「三度目の正直だ、今度こそ出撃するぞ!」

「殆ど貴方の所為ですけどね!」

 

場所は変わってヘリポート。

ヘリポートには燃料満タンの輸送ヘリが待機している。

 

「なあ、カリーナ。あのヘリ、CA◯COM製のヘリじゃないよな?」

「大丈夫ですよ、指揮官さま。CA◯COM製ではないので堕ちるなんてあり得ません」

 

お前それフラグ………。

いや、考え過ぎだろう。

大丈夫だ。うん。

 

大丈夫だよな?

 

 

 

「では指揮官、行って参ります!」

「おう、期待してるぜ!無事に帰って来いよ!」

 

はあ、やっぱ君と話してると癒されるわM4A1。

 

「そ、そんな……。大袈裟ですよ」

いやいやいや、君のような清楚で大人しくて銃を見境なく撃ちまくる事がない可愛い子が俺は大好きなんだ。

やっぱ女の子はそうでないと!

何処ぞの桃色まな板娘にも見習って欲しいもんだ!

「指…揮………官…!」

 

「ハイハイ、つまらないラブコメは要らないから。パイロットさん、早くヘリ飛ばして下さい」

おい、カリーナアアッ‼︎折角いい雰囲気になりかけてたのに台無しじゃねーかアアアア‼︎

 

「了ッ解ィ‼︎フライト開始ィ‼︎」

 

えらく野太い了解という声と共に、ヘリは飛び立ち彼方へと去っていく。

 

 

 

クックック、ヘリの扉はまだ開いているみたいだな………。

今こそコイツの出番だぜ、グヘヘッ!

 

「指揮官さま?何してるんですか?」

 

見てわからないのかカリーナ?

こいつはな、俺が大金はたいて購入した超高性能望遠機能付きカメラだ!

つまり!

今から俺はコイツを使ってAR小隊の誰かのパンツを覗き見するんだよォ!

 

「うわぁ………………」

 

カリーナが浴槽にこびり付いた水垢を見るような目で見てくるが、俺はそれに構ってはいられない。

 

 

 

 

さあ………誰のパンツが見えるかな?

むっ、あれはM4A1か?

ちょうどこっちから見える角度だぜぇ………!

よしっ!見え………

 

 

 

 

 

直後。

俺の視界は暗転した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしたの、M16姉さん。急に撃つだなんて、鉄血でもいた?」

「いや………私の勘違いだったみたいだ。まあ、模擬弾だし当たっても死にはしないだろう」

 

 

そう言ってM16はニヤッと笑みを浮かべて笑った。

 

 

 

 

 




こんなふざけた小説書いてる作者ですが、ドルフロで一番好きなキャラはUMP45とAR-15です笑。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

指揮官「SOPちゃんの大破絵ってエロくね?俺は好き」

今回は難産だった。


ヘリが堕ちた。

 

 

「どういう事だーッ!わーちゃん!」

「だから、AR小隊を乗せたヘリが墜落したのよ!どさくさに紛れておっぱいを掴むなっての!あと、わーちゃん言うな!」

緊急事態発生だ。

AR小隊を乗せたヘリがマシントラブルで墜落したらしい。

これだからCA◯COM製は‼︎

 

「指揮所に行くぞ、わーちゃん。場合によっては君や春田さんだけでなく、メイド長と婆さんも出撃する事になるかも知れん」

「分かったわ。指揮所に来るように皆に伝えとくわね!アンタは早く指揮所に行きなさい!」

わーちゃんが足早に駆けていく。

おっ、風に煽られてスカートの中が見え………いかんいかん、こんな事をしている場合じゃない。

とにかく指揮所に行くか。

 

 

「カリーナ、AR小隊の状況は?」

「極めて深刻な状況です、指揮官さま。不時着した場所は鉄血の活動地域で、尚且つハイエンドモデルの目撃もされています」

ホログラムで映しだされた画像には地図が表示されている。

「AR小隊を失う訳にはいかないんだ。彼女達の近くに対応できる部隊は居ないのか?」

「それが、今はあの近辺には誰も居ないみたいです」

そうか………。

なら、仕方ない。

 

「指揮官さま?どうして銃を…まさか⁉︎」

誰も居ないならこうするしかないだろ?

お前は基地の警備と、救出作戦の補佐をしてくれ。わーちゃん達もいるし皆でやれば何とかなる。

任せたぞ?

だから、AR小隊の直接的援護には

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺が出る」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

状況は最悪だ。

よりにもよって鉄血の支配地域のど真ん中にヘリコプターが墜落。

通信は繋がるけれど、基地からは距離がある。

救出部隊が来るまでには時間がかかる。

それまでは何としても耐えなければ………。

 

「2時の方向に装甲兵複数を確認!」

「不味いな………完全に包囲されてる!弾がもう無くなるぞ!」

M16が若干の焦りを滲ませながら弾倉を交換し、射撃を続けるが多勢に無勢もいい所だ。

弾は残り少ない。

援軍は来ない。

あの指揮官は頼りになる筈もなく、絶体絶命というべき状況に私達は立たされていた。

 

「SOP!榴弾はまだあるか⁈」

「今ので最後だよ!どうしよう⁉︎」

 

 

《……AR…小隊!き…こえる……か⁉︎聞こえたら返事をしてくれ!》

その時、通信機にノイズ混じりではあるが指揮官らしき声が聞こえてきた。

《補給物資と救援を送った!俺ももうすぐ現地に着くからそれまで死ぬんじゃねぇぞ‼︎》

「指揮官………?私の聞き間違いじゃなければ、貴方もこちらに来てるんですか⁉︎無茶です!人間の貴方ではーーーー!」

《あん?その声はピンク色まな板ロン毛娘だな⁉︎》

「呼び名が長いわ‼︎まな板言うなって言ってるでしょう⁉︎」

こんな状況でも調子の変わらない指揮官の態度に思わず通信機を握り潰しそうになった。

《まあ落ち着け、ツルペタ桃色娘。………おい、全員その場に伏せろ!今から派手にぶっ放すからな‼︎》

 

次の瞬間、鉄血兵の一団が爆炎に包まれ物言わぬ鉄屑と化す。

それと同時に、鉄血兵を跳ね飛ばしながら走ってくる一台のピックアップトラックが目に入る。

その車は猛スピードで私達の前にくると停車した。

 

「よう、AR小隊。待たせちまったな!さっさと荷台に乗れ!弾もそこに積んである!このパーティー会場から脱出すんぞ!」

車の助手席に乗っている指揮官がグレネードランチャーを撃ち続けながら叫ぶ。

直ぐに私達は荷台に転がりこんだ。

 

 

「すまん、指揮官!助かった!」

「礼を言うにはちょっと早いぜ、M16さんよ。バレットダンスを始めようじゃねぇか!メイド長、OKだ!車を出してくれ‼︎」

「了解です、ご主人様。それでは皆様、振り落とされないようにしっかりと掴まっていて下さい。………それと、ご主人様。私の腰を気持ち悪い手付きで触らないで下さい。ここに置いていきますよ?」

メイド長と呼ばれた運転席に座っている若干目付きの悪い戦術人形が、そう言って思い切り車を発進させた。

鉄血が四方八方から攻撃してくるが、それは車に当たることはなく見る見るうちに距離が離れていく。

「相変わらず見事なドライブテクニックだな、メイド長。惚れちゃいそうだぜ。後でもう一回だけ胸揉ませて」

「下らない事言ってないで前を向いて下さい。絞めますよ?」

「アッ、ハイ。スイマセン」

 

 

 

 

 

数時間後。

 

ようやく基地に帰って来た。

あー、久しぶりに身体動かしたら疲れたわ。やっぱ芸術は爆発だよな。

まあでも皆無事で良かった良かった。

………それにしてもあれだな、皆いい感じに服が破れてやがる。

特にSOPちゃん、君の服の破損具合はヤバい。

新しい世界を開いてしまいそうだぜ。

M4も中々色っぽく服が破れている。

 

ハッ……………!

 

くっくっく、今俺は名案を思いついたぜ。

あの状態なら服は捨てざるを得ない筈。

つまり!

M4が着用した服を直にクンカクンカできる、またと無い大チャンスッ‼︎

我ながら恐ろしい発想に身震いするぜ。

 

「指揮官?どうされましたか?」

 

何でもないよM4ちゃん。

君は何も知らなくていいんだ。

 

「指揮官………お手を煩わせてしまって申し訳有りません………」

そんな落ち込むなって、あれは仕方ない。

良くある事だ。

 

「そう言えば指揮官、どうして指揮官がわざわざ助けに来てくれたんですか?」

AR-15が唐突にそんな事を聞いて来た。

真意が分からない、とでも言いたげな顔をしている。

「救出部隊を送ろうにもヘリも人員も足りなくてな。それにお前達が堕ちた場所は俺も時々行った事があるから勝手がが分かってる。だから俺が直接行ったんだよ」

「見捨てるという選択肢は無かったの?」

 

………はぁ?何を馬鹿な事を。

 

「本気で言ってんのか?何があっても俺はお前らを見捨てるなんてしねーよ。俺は確かに変態のクソ指揮官だが、そこだけは譲れないな」

「………そう。意外ね。少しは見直したわ」

「そうだろ、もっと褒めてくれてもいいんだぞ。何なら尻でも触らせて………冗談だ。だからナイフを俺に向けるな」

 

なあ、最近思ったんだが基地の外よりも中で武器を向けられる回数が多いっておかしくない?

俺が何をしたって言うんだ。

 

 

 

 

 

 

夜。

AR小隊全員が寝静まった後、俺は基地内の廃棄場に足を運んでいた。

目的は勿論、M4の服の切れ端である。

確かこの辺に………んん?

おかしいな、それらしい残骸が全くない。

そんな筈ないんだが。

 

「どうしたんだ、指揮官。何か探し物か?」

 

うおっ⁉︎

な………お前はM16⁉︎

 

「何故だ…さっき確認した時は確かに寝ていた筈だ」

「寝たふりをしていたんだ。指揮官の性格を考えると、次に何をするかは容易に想像できたからな」

 

ぐっ………まさか俺の完全なる計画がっ!

おのれぇ………………‼︎

「………そんなに欲しかったのか?これが」

M16が何かをぷらぷらと手に持ってぶら下げている。

そ、それは!M4の服の切れ端が入った袋か!

まさか先を越されるとは、一生の不覚………!

さらにこれで、俺が真髄の変態だと知られてしまった………。

 

「いや、指揮官が変態なのは皆周知の事実だと思うんだが………まあいい」

 

 

 

「少し私に付き合って貰うぞ?」

 

そう言ってM16は笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

M16に連れられて、俺は指揮所に来ていた。

 

「座ったらどうだ、指揮官。ほら」

何処からか椅子を引っ張り出してきたM16は片手に酒瓶を持っていた。

 

「それは………ジャック・ダニエルか?」

アメリカの代表的なウイスキー、ジャック・ダニエル。

やはり旧アメリカの銃を使っているから嗜好もアメリカ製の物を求めてしまうのだろうか?

そんな事を考えていると、いつの間にか酒を注いでいたM16にグラスを渡された。

 

「何でまた急に?俺と飲む必要があったのか?」

M16からのお誘いは確かに嬉しいが、経緯が経緯なだけに素直に喜べない。

 

「何、今日の一件での礼も兼ねてだ。指揮官には助けられたからな」

 

律儀な奴だな。

俺は大したことはしていない。

車で迎えに行っただけだ。

まあ礼をしたいってなら胸でも触らせて………やめておこう、血祭りにあげられる未来しか見えない。

 

「何だ?さっきから私の胸ばかり見て………ははあ、そんなに触りたいのか?」

 

そう言うとM16はおもむろに俺の手を掴むと、あろう事か自分の胸にそれを押し付けた。

 

「ちょっ、M16さん⁉︎いきなり何をしてるんですか⁉︎」

「見ての通りだ。何だ、物足りないか?」

 

ニヤニヤと笑いながら俺を見つめるM16。

言い忘れていたが、彼女は今三つ編みの髪を下ろしている上に、黒のタンクトップ一枚の下に下着を着けているだけという中々の格好だ。

服の上からとは、また違う新しい感覚が俺を包み込んでいく。

「いや、最高の弾力だ。まるでマシュマロのような肌触り…。流石M16さん………じゃなくて。どうしたんだよ一体。俺みたいな変態に自分から触らせるなんて」

分からない。

彼女が何を考えているのか。

とても幸せな事をして貰っている筈なのに、嬉しさより困惑だけが広がっていく。

 

「な、なあ、こういうのは自分の好きな相手だけにしてあげた方がいいんじゃないか?でないと俺、変な誤解をしちまうぜ?そうだ、お前酔ってるんだよ。そうに違いない」

「残念だったな。私はまだ一滴も飲んではいないぞ?つまり素面だ」

マジか。

え、という事はこのまま先に進んでもOKって事?

「ふふ、少しからかい過ぎたな。何、冗談だ」

 

パッと、M16が俺の腕を胸から退かして笑う。

ちくしょう、何なんだよ。

いや、でも最高だわ。

マシュマロおっぱい万歳。

 

「指揮官?おーい………トリップしてないで帰って来い」

ハッ⁈

ヤバイヤバイ。

夢の国へ行っちまいそうだったぜぇ………。

クソッ、さっきからペースを握られっぱなしだ。

「なあ、指揮官。一つだけ聞きたい事があるんだ」

「何だよ、改まって。M4の着替え隠し撮り写真の場所は教えないぞ」

 

 

「その件は後で問い詰めてやる。もう一枚あるなら私にも譲ってくれ。さて、本題に入ろうか。お前は、何をそんなにーーーーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

指揮官との話を終えた私は宿舎に戻っていた。

私の問い掛けに答えた彼の言葉が頭から離れない。

あの言葉の真意は何だ?

お前は何を知っている?

まあ、今はいいだろう。

指揮官がいつか話してくれるのを待つしかない。

 

その瞳の奥で輝き続ける知性の理由を。

 

 

 

 

 

 

 

 

参ったな、昨日の今日で見透かされたか?

M16の問い掛けに対する答えがあれで良かったかどうか疑問は残るがな。

どうせ、いつかは知ることになる。

誰も逃れることは出来ない。

 

 

 

もしその時が来たならば。

 

 

俺は全力で抗うだけだ。

 

 

 

 

 

 




戦闘シーンはやっぱ書くの難しい。
次回は笑いを持ってくるぜぇ………!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

指揮官「おっぱい!おっぱい!おっぱい!」AR-15「あ、もしもし?警察ですか?」

んっふっふ、いい朝だ!

やっぱり平和が一番だよな!

絶好のおっぱい揉み日和だ。

そう思うだろ、わーちゃん?

「思わないっての、この変態!胸揉みとか言いながら尻を掴むな!わーちゃん言うな!」

 

とうとうライフルを持ち出して発砲してくるわーちゃんの攻撃を、床を尺取り虫のように這いずり回りながら避け続ける。

「相変わらず動きが腹立つ上に、キモさに磨きがかかってるわね………!」

 

HA HA HA‼︎

そんな速さじゃ、俺に触れることすら出来ねぇよ!

ほらほらどうした、かかってこいYO!

 

「だったら私もコレを使わせて貰うわよ………!」

 

ハッ、何をする気かは知らんが俺はお前に捕まる程へぼくないって………ギャアア⁉︎目がアア⁉︎

俺の視界が閃光に包まれて何も見えなくなる。

何故お前が閃光手榴弾を持ってるんだ⁉︎

 

「M16に貰ったのよ。指揮官に変な事されたらコレを使ってみろ、てね。どうやら効果は抜群みたいだけど」

 

身動きが取れない俺にわーちゃんが迫ってくるのが分かる。

「何か言い残す事はある?」

 

「今度おっぱいに着けてるブラの色を教えて………ぐぶえっ⁉︎」

 

 

 

頭に踵がめり込む音が響き、俺の意識は途絶えた。

 

 

 

 

 

あれ?何だここ?

花が咲いていて川があるぞ?

あ、向こう岸にいるのは親父に母さんか?

おかしいな、二人共もう死んでるってのに。

 

は?帰れ?酷い言い草だな。

それと親父………ドサクサに紛れて母さんの胸揉むなって……あ、殴られてら。

そもそも母さん、アンタ揉むほど胸ないだろ………って危ねッ⁉︎河原の石投げんなよ、親のする事かテメェ!

 

 

 

 

 

 

「………揮官?指揮官?」

誰かに身体を揺すられている。

目を開けると、真っ先に視界に入ったのは断崖絶壁だった。

「なんだ、嘆きの壁か………寝よ」

「誰がエルサレムの宗教壁かッ!起きなさい!」

俺を覗き込むようにして、AR-15が俺を見下ろしていた。

やれやれ、俺に壁を眺める趣味は無いんだがな。

「で、何の用だ?豊胸したいなら16LABのケモ耳引きこもりババアに頼め。俺じゃお前の貧乳は直せん」

「違うわ!いい加減に胸の話から離れなさい!………昨日の作戦報告書を出しに来ただけよ」

 

全く最近キャラがブレブレだぜ?

カルシウムとってるか?

牛乳飲む?

まあ、お前の胸は手遅れだろうがな HA HA HA!

 

「うるさい!ハア………ペルシカさんの事ババア呼ばわりしてたって告げ口するわよ?」

「はん、やってみろ。あんなオバサンに何が出来るってんだ」

そんなつまらない脅しに俺がビビるとでも思ってんのかあ?

甘い、シフォンケーキ並みに甘いぜ、まな板ノーパン疑惑娘ェ!

 

 

「………だそうですよ、ペルシカさん」

「ありがと。AR-15はちょっと席を外しておいて。今から血の雨が降るからさ」

 

 

 

は?

 

 

 

 

…………は?

 

ペ、ペルシカ?いつからこの部屋に…?

その手に持ってるスタンガンは…………あばばばばべらッ⁈

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「申し訳ありませんでした、ペルシカ様」

「分かればよろしい」

紹介しよう、このケモ耳を生やしたババ………お姉さんはペルシカリア。通称ペルシカ。

16LABの科学者であり、AR小隊にも深く関わりがある。

「それで?何しに来たんだよ?」

「んー………まあちょっとね。AR小隊の皆がこの基地に配属されたって聞いたから心配で。まあでも大丈夫そうだね、だって君割とヘタレだし。あの娘達に手を出す度胸ないでしょう?」

 

ぐぬぬ………はっきり言いやがって!

俺だってその気になればAR小隊のおっぱいの一つや二つくらい触れるんだよ‼︎

いいか、女の子のおっぱいってのはなあ‼︎

ゆっくりじっくり舐めるように眺めて最後にお餅を捏ねるように揉みしだくからいいんだ‼︎

分かるか⁉︎

 

「うわぁ………気持ち悪。やっぱりクルーガーさんに言ってあの娘達を別の基地に転属させて貰おうかな?」

 

ペルシカが便座の裏にへばり付いた汚れを見るような目で俺を見る。

ちっ、面倒な奴が来たもんだぜ。

 

「ま、今の所は不安要素は無いからいいか。それにこの基地の指揮官が君なら安心してあの娘達を任せられる」

「さっきまで俺の事ボロクソ言ってた奴とは思えない発言だな。どう言う心の変わりようだ?」

ペルシカ、慣れない事言うなよ?

崩壊液の雨が降ってくるぞ?

 

「だって君、何だかんだで優しいじゃない?それに………」

「やめようぜ、そう言うの。俺はクズで変態で、人を殺しまくった虐殺者だ。本来なら指揮官なんざやる資格も無い。唾棄すべき殺戮者として、世の中から処断されるべき人間なんだよ」

 

まあ、だからと言って今更目を背けたり逃げ出すつもりは更々無いがな。

もう、話は終わりか?

 

「う…うん。じゃあ私も帰るとするよ。あの娘達の事、頼んだから。それと、1つだけ君に言っておくよ。………誰にだって幸せになる権利はあるんだ。君も含めて、ね」

 

 

そう言ってペルシカは部屋から出て言った。

何とも言えない空気が部屋の中に広がる。

 

はあ、やってらんねぇな。

仕事の続きでもするか。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせ、AR-15。私はラボに帰るよ」

「ラボまで送りましょうか?」

「いいよ、そこまでしなくても。それより指揮官に構ってあげて。多分今頃部屋で腐ってるだろうからさ」

「分かりました。………ペルシカさん、1つお聞きしたい事があるのですが」

そう言って歩いていく彼女を私は思わず呼び止めた。

 

 

「昔、指揮官に何があったのですか?」

「聞いてたの?君も強かだねぇ」

「盗み聞きするつもりは無かったんですが、つい……」

部屋から聞こえて来た指揮官の声色は、今までのおちゃらけた指揮官とは思えない程冷たいものだった。

何がどうすればあの様になってしまうのか。

 

「誰にも言わないって約束するなら教えてあげてもいいよ」

「私は他人の事を言い触らしたりはしません。貴方が一番理解してる筈でしょう?」

 

私がそう言って見据えて言うと、ペルシカさんは両手を上げた。

「分かったよ。そこまで言うなら話してあげよう。あれはまだ、指揮官が軍にいた頃ーーーー」

 

 

 

 

 

 

基地から少し離れた廃ビルの屋上に二人の少女がいた。

二人は姉妹なのか、顔立ちがよく似ている。

 

「45姉、何してるの?」

 

右眼に縦傷の入った茶髪の少女………UMP9が姉であるUMP45に問いかけた。

 

「あの基地の偵察をしてたの。あそこの指揮官は相当な変わり者って話だからね」

「その話、私も知ってるよ!確かあの基地の指揮官って前に鉄血の大規模な襲撃を自分が指揮する二個小隊だけで撃退したって話!」

「噂って言うのは尾ひれがついて誇張されがちだから鵜呑みにしない方がいいかも知れないわ。さあ、行きましょう9。416とG11も呼んで来て頂戴」

「了解!じゃあ下で待ってるね、45姉!」

 

快活な声で叫ぶとUMP9は足早に階段を降りていく。

 

 

 

「グリフィンでも名の通った指揮官………ね。見極めさせて貰うわよ?」

 

 

 

 

 

 

そう言ってUMP45は薄く笑う。

基地に、再び波乱が巻き起ころうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

 

「あ、ああああん!そ、そこッ‼︎」ーーーーーーとある基地の変態指揮官

 

「望み通り踏んであげますよ。ほら、いい声で鳴きなさい」ーーーーーーAR小隊の隊員・AR-15

 

「おや、貴方方は………?」ーーーーーーとある基地のメイド長・G36

 

 

 

 




大幅改訂実施しました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

指揮官「ゴキブリ並みの生命力が俺にはある」AR-15「つまり、丸めた新聞紙で叩けば死ぬってことよね?」

都合上、誠に勝手ながら話の内容を変更致しました。
感想をくれた方々、閲覧してくれた皆様には深くお詫びを申し上げます。


ふう……………。

今日はとても良い気候だ。

ポカポカ陽気で気分もスッキリ。

そう思うだろ、わーちゃん?

………どうしたんだ、わーちゃん。

信じられないものを見たような顔をしてるぞ?

 

「ね、ねぇ指揮官?一体どうしたの?何処か身体に悪いところがあるのかしら?それか変なもの食べた?」

 

おいおい、どうしたんだ急に。

そんなに俺の事を心配しなくても、身体は健康だし飯も普通のものを食ってるから大丈夫だ。

君が心配するような事は何もない。

 

「嘘………指揮官が私の胸を触りに来ないなんて」

 

ハッハッハ、何を言うんだ。

その言い方だと俺が年中盛ってる獣みたいじゃないか。

 

「いや、今まで毎回必ず胸触ってきてたじゃない………」

 

そうか?気のせいだろ。

さて、俺は少し指揮所に行ってくる。

留守番は任せたぞ。

 

 

 

 

 

わーちゃんめ、俺が胸を触って来ないことに驚いていたな?

何故触らないかって?

あるんだよ、俺には。

今日は〇〇でないと満足できねぇッ!て日が。

だから今日は胸は却下。

そう、俺の今日のトレンドはッ‼︎

 

 

 

脚だ‼︎

 

 

 

あー、可愛い女の子に踏まれたいなあ‼︎

ギュッと踏まれたい、あの背中や腰肩を巡る快感ッ‼︎

さあ、さあさあさあ!

そうと決まれば行くか。

宿舎に。

 

 

 

 

 

 

宿舎。

それは、戦術人形達が住まう女の園。

俺にとっては桃源郷。

ふっふっふ、此処だな?

AR小隊と書かれた看板がぶら下がっている扉を見つけ、俺はほくそ笑む。

さあ、始めるか。

 

 

 

「AR-15…私は先に指揮官の所に行ってるから。戸締まりはAR-15がやってね」

そう言って部屋から出て行こうとするM4の後姿を見ながら私は昨夜から物思いにふけっていた。

………昨日の話が信じられない。

でも、ペルシカさんの言った話は間違いなく真実なのだろう。

正直、私も薄々感じてはいた。

馬鹿みたいな会話をしている時にも見え隠れする知性の輝き。

何とも言えない違和感を含んだ視線をしている時が、あの指揮官にはあった。

彼は恐らく何かがあって、ああなった。

何があったのかは分からない。

唯一分かっている事と言えば、あの指揮官がかつては軍の科学者で、とある『遺跡』を研究していたという事。

その途中で顔が青褪める程の『何か』に気付き、一切の研究資料を破棄した上で軍の特殊部隊に入り、何かしらの作戦に従事していたという事だ。

 

はあ………何であの指揮官の事ばかり考えてるんだろう。

初っ端から印象は最悪で、変態でセクハラだらけで。

何かにつけて胸の事でからかってくる変態糞指揮官の筈なのに。

 

馬鹿馬鹿しい、私には関係ないじゃないか。

どうせいつかは基地を離れるだろうし、他人の過去を詮索する必要もない。

指揮官は便宜上私達の上司だというだけの話だ。

だけど………

 

『何があっても見捨てねぇよ』

 

あの時の言葉に嘘は無かった筈だ。

真剣に、嘘偽りなく言い切った。

あの言葉を嘘だと思いたくない自分がいる。

訳が分からない。自分の事なのに。

………………。

気晴らしに射撃場にでも行こうか。

 

 

 

「キャッ⁈し、指揮官⁉︎何をされてるんですか⁉︎」

 

 

 

M4の悲鳴⁉︎

それに今聞き間違いじゃ無ければ指揮官の名が出てきていた筈………!

 

私は銃を構えて扉に近づくと、勢いよく扉を開けた。

扉を開けた先には。

 

 

 

 

 

「あ、ああああん!そ、そこッ‼︎」

「え、えっと………ここですか?」

 

 

 

……………変態がいた。

いや、比喩ではなく。

 

 

 

 

 

 

 

 

「M4?指揮官?………何をしているの?」

絶対零度の声が宿舎に響く。

AR-15か。いい所で来やがって。

やれやれ、お楽しみタイムは始まる前に終了か。

 

「見れば分かるだろう?踏んで貰ってたのさ」

クソッ、大抵この時間にはAR-15は居ない筈だったんだがな。ついてないな。まあ仕方ない。

 

「ありがとう、M4。君の踏みつけのお陰でとても気分が良くなったよ。もう踏まなくてもいいから行きなさい」

 

「そんな…指揮官のお役に立てて良かったです。では、私はこれで」

 

去って行くM4の背を見送った俺はAR-15に向き直る。

 

「で、何か言い残すことは?」

「一度でいいから女の子のパンツとブラジャーの山で溺れたい………あれ?」

おかしい。

いつもはこの流れだと俺が気絶して終わりの筈だ。

だが、いつまでたっても強烈な一撃が来ない。

 

 

「ど、どうしたんだ?俺をぶっ飛ばさないのか?」

問いかけてもAR-15は俺を見つめたまま答えない。

しばらくの沈黙が続き、漸くAR-15が口を開いた。

 

「指揮官」

「お、おう。何だ?」

 

「踏まれたいの?」

「ま、まあな。その為にここで待ち構えてたんだ」

 

「そう。じゃ、私が踏んであげるわ」

 

 

 

……………ん?

待て待て待て待て待て。

今彼女は何と言った?

 

 

「望み通り踏んであげますよ。ほら、いい声で鳴きなさい」

 

そう言うと、AR-15は靴下を脱ぎ俺の背に乗った。

いっ、一体どういうことだ………ひぁんッ⁈

な、何だ今の感覚は⁉︎

稲妻が駆け抜けたような気分だ………。

 

あっ、んぅ、んひぃっ!

ちょ、そこは………あんッ!

だめ、そこはマジでダメだって…ヌルファッーー‼︎

 

こ、こいつは衝撃の発見だぜ………。

まさかAR-15にここまで足踏みの才能があったなんてな………!

 

「ちょっと、大丈夫?別の世界に行きかけてたみたいだけど」

 

大丈夫だ、問題ない。

もっと強く踏んでくれたっていいんだぜ?

俺がそう言うと、AR-15は一瞬だけ口角を吊り上げた。

 

「じゃあ………ここはどうかしら?」

 

お、おい…そこはやめてくれ。

敏感なんだ。

そこを踏まれると………アッヒィッ⁈

 

「待て、待ってくれAR-15。そこはマジでヤバイんだ………」

「普段から私の事をまな板だの断崖絶壁だの嘆きの壁だのベルリンの壁だのと好き勝手言ってくれたお返しよ」

待て、ベルリンの壁と言った覚えはないぞ⁉︎

こうなったら脱出………できねぇぇぇ⁉︎

コイツ、何て馬鹿力だ⁉︎身体がピクリとも動かない。

 

 

「さあ、第2ラウンド始めますか」

「ヒェッーーーーーー⁈」

 

 

 

 

 

 

その日。指揮官の妙に艶っぽい悲鳴が宿舎に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、基地の外では………

 

G36。

戦術人形であり、この基地のメイド長でもある彼女は何時ものように基地の入り口付近を掃除していた。

勿論、何か起こった時の為に銃は常に携帯している。

「さて、この辺にして戻りますか………おや?」

ふと、人の気配を感じて振り返ると其処には複数の少女達が気配もなく現れていた。

 

「おや、貴方方は………?」

 

「そう警戒しなくてもいいわ。そうね………私達は少し特殊な事情がある部隊とでも思って頂戴。ここの指揮官に少しだけ用事があって来ただけだから。ほら、入門許可書もあるわよ?」

 

茶鼠色の髪の少女が差し出した紙は確かにグリフィンのものだ。

まあ入門許可書を持っているなら大丈夫だろう。

G36はそう判断した。

 

「………………分かりました。指揮官に連絡しますので少々お待ちください」

 

そう言って、G36はその場を後にした。

僅かな不安を抱えて。

 

 

 

 

 

 

 

あーーー疲れた……。

ったく、AR-15の奴俺をオモチャにしやがって………。

この借りは必ず返してやるからなあ?

 

しかし、何だろうな。

嫌な予感がする。

特に理由がある訳じゃない。

第六感って奴だな。

 

ん………内線がかかってきたな。

誰だ?

「はい、こちら乳揉み協会です。当会では、より洗練された乳揉み事業を開拓して『ご主人様?背骨をちぎりますよ?』冗談だ。何かあったのか?メイド長」

『只今、此方にご主人様に御用件があると言う方々が来られておりますが。如何されますか?』

来客ぅ?

そんな予定は無かった筈だが………。

それよりもメイド長の様子がおかしい。

何時とは違う声のトーンだ。

何かあったのか?

 

「分かった。その客達は応接室に通しておいてくれ。俺もそっちに向かう」

 

来客か………面倒事にならなけりゃいいんだが。

 

 

 

 

基地の二階に、その応接室はある。

無駄に豪華な部屋なのがイラついたから前にバーベキューを中でしてやった。

ま、その時にバーベキューの火がカーテンに燃え移って応接室は黒焦げになっちまったんだがな。

あの時は大変だったんだぜ?

カリーナにはぶん殴られるわ、ヘリアントスには頭を砕かれそうになるわ………。

クルーガーにも屋上から投げられたっけ。

いやー、懐かしい思い出だな!

 

 

あれから応接室も元通りに直して綺麗になったんだが。

 

 

 

応接室に入った俺を出迎えたのはメイド長と、洗濯板に癒し系マスコットとオッパイと中々大きなオッパイだった。

 

「おいおいおいおいおいおいおいおい」

 

思わずその台詞だけが口を突いて出る。

入室するなり同じ言葉を呟いた俺に全員が怪訝な表情で俺を見る。

くっ………刺すような視線がたまらねぇぜ!

 

「ご主人様。頭の中で変な感想を呟くのはその辺にされたら如何ですか?」

 

呆れた顔でメイド長が言う。

流石メイド長、俺の思考すらお見通しって訳か。

今度デートしよう?

 

「お断りします。では私は業務があるのでこれで失礼します」

 

優雅に一礼してG36が部屋から出ていく。

部屋に何とも言えない空気が漂った。

 

「なあ、水色オッパイちゃん。何で俺振られたんだろうな?」

 

「オッパ……ッ⁉︎いきなり何なの貴方⁉︎馬鹿にしてるの⁉︎」

 

水色オッパイちゃんが顔を真っ赤にして怒り出す。

全く、近頃の若者はカルシウムが足りないな。

ほら、ニシンの缶詰あげるからこれ食べて機嫌を直しなさい。

 

「臭ッ!いらないわよこんな物‼︎貴方本当にここの指揮官⁉︎」

 

水色オッパイちゃんが鼻を押さえて後退り、今にも刺しに来そうな目で俺を睨んでいる。

ヤッベ、美人さんに睨まれると興奮するわ。

で、話を戻すけど君達誰なの?

 

「404小隊………って言えば分かるかしら?」

 

俺の問いに茶鼠色の髪の洗濯板娘が答える。

おいおい、板は桃色スキー板娘だけで充分何だぜ?

それにしても404小隊か。

噂程度に聞いた事があるが、実在したとはな。

 

「成る程ね。で?この基地に何の用で来たんだ洗濯板娘」

 

俺がそう言うと同時に空気が凍りつく。

あれ?何か不味い事言ったかな?

水色オッパイちゃんはブフォ!と吹き出して肩を震わせている。

うーむ。

 

「貴方、死にたいみたいね?」

 

ジャキ!と茶鼠色の髪の少女がその手に持つUMP45を俺に向ける。

ちょ、落ち着けって⁉︎

よし、なら発言に対して謝罪しよう。

俺は即座にスライディング土下座を敢行。

少し目線を向けると、彼女は地を這う毒虫を見るような目で俺を見ていた。

いいねいいね、さあ俺をもっと見下せ!

 

「あははッ!面白い指揮官だね、45姉!指揮官、私はUMP9。宜しくね!」

 

快活な茶髪の子が人懐こそうな笑みを浮かべて話しかけてくる。

やばい、超かわいい。

天使かな?

 

って事は茶鼠色の髪の子はUMP45か。

まあ持ってた銃で薄々気づいてたけど。

 

「はあ…………HK416よ。もう私に話掛けないでね」

 

水色オッパイちゃんもとい、416があからさまに目線を逸らしながら言う。

くっくっく、また弄りがいがありそうな奴だな。

後でたっぷり可愛がってやるよぉ!

 

 

「G11………もう寝ていい?」

瞼を眠そうに擦りながら銀髪の子が言う。

癒し系マスコット感が凄いな、君。

今度一緒にお昼寝しようぜ。

 

「うん………いいよ……」

 

マジか!

懐が広いな!

なら君には後でスペシャルゴールデン枕をプレゼントしよう。

 

 

 

 

ところで45さん、頭上げていい?

この姿勢中々疲れるのよね。

 

「ダメに決まってるでしょう?」

 

嘲るような表情を浮かべながら45が笑う。

 

ふん、油断してやがるな。

今少しだけ目線を上げればパンツが丸見えなんだぞ。

 

ふ………見えたッ‼︎

 

 

「ほう…黒か。中々のパンツ履いてるじゃん。でもその下着はオッパイがある奴がつけてこそーーーーごふうッ⁉︎」

 

「死ね!座ったまま死ね!」

 

 

 

 

こうして、この基地に新たに404小隊が増えた。

これからどのような波乱が起こるのか、それは誰にも分からない…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




大幅な改訂をしました。
これからもよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

指揮官「M4のおっぱいを揉みたい。揉みたくない?」AR-15「変態はお帰り下さい」

今日は生憎の雨天。

テンションがダダ下がりだ。

こんな日だからこそ、わーちゃんの胸を揉まないと駄目だな。

分かってくれるよな、わーちゃん?

 

「分かるかッ‼︎適当な理由をこじつけて胸を揉むんじゃないわよ、クズ指揮官‼︎」

 

ダーツ投げの要領でナイフを飛ばしてくるわーちゃんの攻撃を床をダンゴムシのように丸まって転がりながら避ける。

 

「サッカーボールかアンタは‼︎体をウネウネさせながら転がるんじゃないわよ気持ち悪い‼︎」

 

ハッハッハ、甘いぜわーちゃん。

俺の変態レベルに限界など存在しない!

変態は日々進化するからな‼︎

だが、勘違いしてはいけない。

 

「わーちゃん。俺は決してやましい気持ちがあって君の胸を揉んでいる訳ではないんだ。だからこそ今話さなければいけない。教えてやろう、俺が君の胸を揉む本当の理由を‼︎」

 

 

「本当の…理由⁉︎一体どういう事⁈」

 

 

 

 

 

それはだな…………………デッカいオッパイを持ってる女の子が‼︎

胸を揉みしだかれて‼︎

羞恥に震える姿と‼︎

顔を林檎のように赤く染め上げる姿を拝みたいからだッ‼︎

特にわーちゃん、君のようなツンデレオッパイチョロイン娘がな‼︎

 

 

ハーハッハッハ‼︎

 

 

 

 

 

 

………………む?どうしたんだ、わーちゃん。

肩が小刻みに震えてるぞ?

オッパイ揉もうか?

 

 

「OK OK、良く分かったわ。……………今すぐ死ねェェェェェェェェェ‼︎‼︎‼︎」

 

 

ヒイッ⁉︎

部屋でRPG7ぶっ放すなよ⁉︎

マジで死ぬじゃねぇか‼︎

ちょ、チェーンソーで何する気だお前‼︎

 

や、やめ……グブェビブルチッ⁉︎

 

 

 

 

 

 

「おはようございます指揮官さま……………って何があったんですか⁉︎」

 

ようカリーナ。

俺は全く問題ない。見ての通りだ。

 

「頭から流血してる姿の何処が大丈夫なんですか………」

 

気にするな、これはトマトケチャップだ。

鉄っぽい味がするけど。

そうだ、カリーナ。

404小隊って知ってるか?

 

「404小隊ですか?まあ、多少は………。404がどうかしましたか?」

そうか、お前は非番だったから知らないんだったな。

昨日404が基地に来たんだよ。

で、今宿舎に泊まってる。

何で来たのかは分からないけどな。

 

「そうなんですか………ヘリアンさんからは何も聞いて無かったんですけどね」

 

ふむ………。

まあいいか。

一応ヘリアンに連絡しておいてくれ。

あいつに確認する事が色々あるからな。

 

「了解しました」

 

やれやれ、この仕事は退屈しないな本当に。

 

 

 

 

ヘリアントス。

俺の上司にあたる存在であり、グリフィンの上級代行官という地位にいる目付きの鋭い女性だ。

世界がこんな世紀末でなければ何処かの企業でキャリアウーマンでもやってただろう。

ただ残念なことに、男受けがあまり良くない。

性格や人柄の問題ではなく、恋愛沙汰になるとガッツき過ぎるのが原因なんだろうが、本人に自覚がない。

まあ其処が面白いんだけどな、ハハハ!

 

 

 

『凄まじく失礼な事を考えているような顔をしているな、指揮官。減給されたいのか?』

 

「やだなあ、ヘリポンコツさん。俺がそんな事考えている訳ないでしょう」

 

『ヘリアントスだッ‼︎いい加減上司の名前くらい覚えろ‼︎それと私はポンコツじゃないッ‼︎』

 

そんな睨むなよ。

素早さが下がるだろうが。

ホログラム越しだと言うのに迫力がある。

 

…………ははーん。

 

「成る程、またまた合コンで失敗したな?ギャハハハハハ!だからポンコツなんだよ、恋愛クソ雑魚モノクルさんよぉ‼︎」

 

『お前今度会ったら殺す。それで、私に用というのは何だ?』

 

「404小隊。アイツらが今この基地に居るんだが、何か知ってる事は?」

 

『そう言えば伝えるのが遅れていたな。彼女達は今日付で貴様の指揮下に入る事になっている。本人達から何も聞いていないのか?』

 

いや、聞いてねぇよ。

クソッ、あの洗濯板め。

さては最初から分かっていたな?

 

「了解した。404はこちらで面倒を見る。………ああ、そうだ。今度いい合コン相手を紹介してやるよ。正規軍にいる奴なんだが見た目も中身も中々だぞ?」

 

『なっ………本当か⁉︎是非紹介してくれ‼︎』

 

「但し、条件がある。ウチも資材や資金に余裕がない。ある程度融通してくれないか?」

 

『む………まあ良いだろう。それより、絶対に紹介してくれ!分かったな⁈』

 

勿論だとも。

中年の退役間近のクソジジイだけどなあ‼︎

ケッケッケ、合コンに行った時のヘリアンの驚きに満ちた間抜け面を拝めないのが残念だぜ。

さて、もうすぐ昼飯の時間だし食堂にでも行くとするか。

 

 

 

 

 

当然この基地には食堂も完備されてはいるのだが、いかんせんメニューは味気ない。

まあ、こんな御時世だから仕方ないのは分かるが偶には肉とか魚を食いたい。

 

そうだ、閃いた!

美味い飯は自分で作ればいい‼︎

 

よし、俺は決めたぞ‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

「買い出しに行くから手伝いやがれーッ‼︎」

「えっと………全く状況が分からないから説明してくれる?」

 

AR小隊の部屋の呼び鈴を押すと、俺を出迎えたのはAR-15だった。

チッ、M4かSOPちゃんなら良かったのに。

あの二人なら、部屋に入るときにワザと転ける事で豊満な胸に顔面ダイブ出来たって言うのによぉ!

あん?M16はどうなんだって?

いや、アイツはパス。

そんな事をする度胸が湧いてこない。

AR-15はどうか?

ハッ、論外だ。

崖に突貫して何が楽しいんだっての。

柔らかみも優しさもないんだぞ?

突貫して感じるのは板にぶつかる痛みと悲しみだけさ。

 

「ハア………あからさまに残念そうな顔をしないで下さい。で、何の用ですか?買い出し?」

 

「うむ、とても重要な任務だ。端的に言うと…鍋が食べたいんだ!だから買い出しに街に繰り出す。つべこべ言わずに手伝え桃色胸なしツルツル娘‼︎」

 

「よくその頼み方で手伝ってくれると思ったわね⁉︎」

 

呆れたと言わんばかりの表情で睨みつけてくるAR-15。

でもアレだな、前も思ったけど胸抜きで見れば顔も綺麗だし割とタイプ………………ん?

 

 

いやいやいやいや。

 

 

何を考えているんだ俺は⁉︎

おっぱいこそ至上、おっぱいこそ世の真理だ。

そうだ、その筈なんだ!

だから今の思考は無しだ無し!

クールになれ、クールになるんだ。

 

「指揮官?顔色が良くなさそうだけど、大丈夫なの?」

 

「心配するな。少し自分を見失ってただけだ。まあそれはともかく、M4達もいるのか?」

 

「ええ、居るけど………まさか本気で行くつもり?何かあったらどうするつもりですか?」

 

「カリーナがいるから大丈夫さ。メイド長達もいるし安全安心だ」

そんな無茶な………と言わんばかりに額を片手で押さえて溜息をつくAR-15。

溜息ばかりつくなよ、幸せと元々ない胸が逃げて無くなっちまうぞ?

 

「胸は関係ない!………今からM4達呼んでくるから其処で待っていて下さいね」

 

そう言うとAR-15は部屋の中へと戻っていく。

途中で『M16、貴方いくら任務が無いからって上下ジャージ姿でP◯Vita使って遊ぶのはやめたらどう?』とか『SOPは何時までド◯えもん見てるの!早く着替えなさい!』とか『M4………そのセーターは流石に不味いわ。指揮官がショックのあまり出血多量で死ぬわよ?』とか聞こえてきた気がしたけど気にしない。

俺は何も聞いてない。

 

 

暫くすると何時もの格好をした面々が部屋から出てきた。

準備が良ければ行くぞ。

後は404小隊も誘うか。

人手は多いに越したことはない。

いざ、食材買い出しの旅へ!

 

 

あの後404小隊にも話をした結果、意外にも快諾してくれたので街にあるスーパーへと足を運んでいた。

請求は勿論我等がグリフィンの社長たるクルーガー宛にしておく。

ざまあみやがれ、筋肉ヒゲゴリラ‼︎

普段からこき使ってくれるお返しだよ‼︎

ハーハッハッハ‼︎

 

「それじゃ班分けするぞ。AR-15とM4は野菜な。9とSOPちゃんは肉。416とG11は出汁と米。俺とM16と45は酒を調達する。買うもの買ったら基地の食堂で合流な」

 

皆が買い物カゴを片手にそれぞれの方向へ散らばっていく。

 

 

「しかし指揮官、また何で急に鍋なんてしようと思ったんだ?」

気になるのかM16?

あれだよ。

お前もあるだろ、急に理由もなくアレが食べたい‼︎って日が。それなんだよ。

 

「ハハッ、成る程分かりやすいな。確かに私もジャック・ダニエルを浴びるように飲みたいと思う日がある」

 

いや、お前は普段から飲んでるじゃねぇか。

つかさり気なく何本もジャック・ダニエル買うなよ。

買い物カゴがお前の酒で溢れてんぞ。

 

「いやあ、気のせいじゃないか?それに45だって酒を買ってるだろ?」

 

「これは私が飲む分じゃないわ。416に飲ませる分よ。完璧完璧言ってる416の乱れに乱れた痴態を見るためのね」

 

ニッコリとした表情を浮かべながら45が笑う。

黒い部分が出て来てるぞ。

 

「まあ確かに俺も416が乱れてる姿は是非見てみたいな。酒に溺れて服を乱した末にオッパイがポロリ…………おっと」

 

45がコンセントに付着したホコリを見るような目で俺を見てくる。

心底から見下して蔑むような視線が堪らないな‼︎

もっとだ、もっと俺を蔑む目で見てくれ‼︎

これで洗濯板じゃなければなあ。

 

「ハッハッハ!相変わらずだな指揮官は。ならこういうのはどうだ?私と飲み比べをして勝った方が相手を好きにするってのは?」

 

パス。

お前と飲み比べして勝てると全く思わねぇよ。

 

「へぇ………逃げるのか?勝てば私を何でも好きに出来るんだぞ?」

 

何でも………好きに…だ………と?

ゴクリ、と生唾が喉を通る。

いや駄目だぞ、これは罠だ。

こんな安っぽい挑発に乗っては………!

 

「おっぱい揉み放題だぞ?」

 

「是非やらせていただきます!」

 

 

くっ………欲望に逆らえなかったッ‼︎

M16め、俺の事はお見通しってかあ?

いいぜ、その勝負!

正面から正々堂々と乗ってやろうじゃねぇかああああ‼︎

 

「フフ………また胸の話…。マタムネノハナシ………フフ…」

 

45が虚ろな目で何やら呟いている。

お前は洗濯板だから仕方ないだろ?

ツルツル度で言えばAR-15といい勝負だぜ、貧乳SMGがよぉ!

 

「死ね!」

「ぐふっ…いいパンチじゃねーか。流石貧乳だ、胸がないと拳も固いんだな「フンッ!」ゴブゥッ⁉︎」

 

45の強烈な蹴りと拳が顔面にめり込む。

痛い。

 

 

 

 

 

 

「しっかしあれだな、鉄血だのELIDだのと戦争してる割には平和だな、この街は」

基地へ帰る道中。

鮮やかな明かりが光る街並みを見て思わず呟く。

俺が基地に配属された当初は酷いものだった。

治安は悪いわ、ゴミが散乱してるわ、住人の目は死んでるわ……………。

俺もあの時ばかりは真面目に働いたぞ。

グリフィンは戦闘以外にも街の行政も一部担ってるからな。

何やかんやで今こそ落ち着いてはいるが。

 

 

 

 

「おっ………指揮官。何だか厄介な事になりそうだぞ?」

 

M16が言うと同時に気づく。

………囲まれてるな。

いかにもガラの悪そうな奴らが俺達を取り囲んでいる。

数は20人くらいか?

街じゃ見ない顔ばかりだ。

新しく来た連中か?

 

「女二人連れて夜道を散歩たあ、いい身分だな?オレ達も混ぜてくれよ。女と有り金置いてきゃ、お前だけは見逃してやる」

 

リーダー格と思わしきガタイの良い男が拳銃を片手に言う。

ったく、厄介事に巻き込まれちまったな。

 

「めんどくさ………さっさとこの虫ケラども潰して帰りましょ、しきかあーん」

 

煽るなよ45。

まあそうはやるな、俺が穏便に済ませるから。

 

「はん、威勢のいい女だな。お前みたいな気の強い女をマワして堕とすのが一番楽しいんだ。それとも何だ?その男に抱かれた後か?大丈夫だぜ、使用済みでもオレ達は気にしねぇからよ!」

 

 

 

 

………………殺す。

流石に今のは看過できねーわ。

ぶち殺し確定だ。

 

 

「M16、45。準備はいいか?」

 

 

「ああ、任せておけ指揮官。私も食事前に少し運動をしたかった所だ」

「しきかあーん。殺さなければいいのよね?」

 

好きにしろ。

リーダー格は俺が潰す。

お前らは雑魚を叩きのめせ。

 

 

 

 

「おいおい、この人数相手にやる気か?賢い選択とは言えねぇなあ?お前ら、やっちまえ!」

 

リーダーの声を合図にチンピラ達が武器を片手に走り出す。

お前らホント小物臭半端ないな。

動きがドンくせぇよ。

 

「ガッ⁈」

 

ほら1人目。

いくら相手が丸腰だからって無用に近付き過ぎじゃないか?

こっちは戦闘のプロなんだぞ?

 

一瞬だけ背後を見ると45とM16が他の連中をボコボコにしている姿が目に入った。

まあ、戦術人形として修羅場を潜り抜けてきた2人からすれば、あんな奴ら雑魚に決まってるわな。

 

「さーて、クソザコリーダーさんよ。ぶち殺される覚悟はOKか?」

 

「チッ、舐めるなよ!こっちにゃ銃が………あ?ギャアアアアアアッ⁉︎オレの手がッ指があッ⁉︎」

 

ギャーギャー煩い奴だな。

ペラペラと口から屁を垂れてるからそうなるんだよ。

ん?何をしたかって?

余りにも隙だらけだったから、銃を持ってる方の指の骨全部と手首の骨へし折っただけだよ。

 

「野郎ッ!死にやがれ!」

 

無事な片手で拳銃を握り直して発砲してくるが俺には止まって見える。

伊達に普段からわーちゃんに撃たれてないからな。

 

「何でだよ⁉︎何で当たらねぇんだ⁉︎………ッ弾が⁉︎」

 

馬鹿みたいに乱射したから残弾が無くなっちまったみたいだな?

完全に形勢が逆転したぜ?

他の連中も全員地面に突っ伏している。

 

「全く、運動にもならないな」

「虫ケラが………!」

 

涼しい顔でその場に佇む45とM16。

流石だな。

 

 

「ひっ!そ、そんな馬鹿な………はっ!まさか、お前らグリフィンとか言う傭兵か‼︎って事は女2人は戦術人形………⁉︎」

 

気付くのが遅ぇよ。

そんじゃ、悪党は悪党らしくボロ雑巾になってくれるか?

 

「はっ………道理で歯が立たない訳だよ、バケモノどもが!お前達みたいな人間のフリした怪物が人間を守ってると思うとゾッとするぜ!お前らも鉄血とか言う連中と変わらねぇよ人類の汚点どもがッ‼︎」

 

 

ああ。

お前、よりにもよって一番駄目な事言っちまったな。

 

 

 

「な、何だよ、おいーーギィッ⁉︎」

 

グチャッ!と言う音と共に、男の歯がへし折れる。

 

「おい、何寝てんだよ。起きろよクズが」

 

俺は男の顔をまた殴る。

殴る殴る殴る殴る殴る。

 

「ほら、さっさと2人に謝れよクズ。さっきの言葉を撤回しろ。お前の汚い口は何の為に付いてんだ?ああ、あれか。まだ殴られたりないのか?なら次は鼻を折ってやるよ」

 

「ず、ずびばぜん、おでが、おでが、ばるかったでず…」

 

聞こえねぇよ。

はっきりと話せクズが。

 

「お前にコイツらの何が分かる?コイツらが普段何を思って生きてるか考えたことがあるか?無いだろうな。そんな、お前みたいな野郎がッ‼︎何分かったような口聞いてんだッ‼︎」

 

 

「指揮官!それ以上はやめろ!もういいだろ?」

「しきかあーん。熱くなりすぎですよ〜?」

 

後ろから2人に肩を掴まれる。

いいのか?コイツはお前達を侮辱したんだぞ。

 

「その手の言葉は聞き慣れてる。だから、早く帰るぞ指揮官。お前が私達を思ってくれてるのは良く分かったからな」

「そうですよ、しきかあーん」

 

分かった分かったよ。

俺も少し冷静じゃなかった。

さっさと帰るか。

皆が待ってるだろうしな。

 

 

 

 

帰ろう、俺達の基地へ。

 

 

「おう!」

「フフッ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

「御託はいいから鍋食え、鍋」ーーーーーーとある基地の変態指揮官

 

「ん………これ美味しいわね」ーーーーーーAR小隊の隊員・AR-15

 

「こらッ、肉ばかり食べてないで野菜も食べなさい!でないとUMP45みたいな胸になるわよ?」ーーーーーー404小隊の隊員・HK416

 

「そうだぞ、鍋食え鍋」ーーーーーーAR小隊の隊員・M16A1

 

「お肉♪お肉♪お肉♪」ーーーーーーAR小隊の隊員・M4SOPMODⅡ

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

指揮官「よう、ボルボロスちゃん!おっぱい揉ませてくれ!」ウロボロス「私はモ◯ハンに登場するモンスターじゃないッ!」AR-15「本タイトルと内容は一切関係ございません」

「ただいまーっ、水色オッパイちゃん!胸揉ませろーッ‼︎」

「帰って早々言う言葉がそれッ⁉︎」

 

いやー、やっぱりね。俺は思うんですよ。

男の一日とは、おっぱいに始まりおっぱいに終わるべきだと。

416のカーペットに絡みついた毛玉を見るような視線が突き刺さるが俺は気にしない。寧ろ罵倒大歓迎だ‼︎

さて、どうやら全員買うもの買って帰って来てるようだな。

しゃっ、鍋するぞ鍋‼︎

 

 

 

 

 

「さて、俺は具材の準備をしてくるから他の指示はメイド長のG36に聞いてくれ。それとAR-15は、その鰹節削り器みたいな胸で鰹節でも削っててくれ」

 

お前の平坦極まる胸ならさぞかし良質な鰹節が削れるだろうからなあ!ギャハハハ‼︎

 

「うるさい!鰹節削り器で悪かったわね!」

 

やっぱお前で遊ぶと楽しいわ。

笑いが止まらないぜぇ!

 

「ねぇ、M16。鰹節って何なの?」

「ハッハッハ、いいかSOP?鰹節というのはだな………」

 

「だから律儀に教えなくても宜しい‼︎………ハア。頭が痛いわ」

 

大丈夫?頭痛薬飲む?

まあ、お前に必要なのはカルシウムだろうがなあ!

カリカリし過ぎなお前には一番必要だろう?

ほら、ニシンの缶詰やるよ。

 

「いるか!誰の所為よ、誰の!馬鹿やってないでさっさと作るわよ」

 

プンスカという擬音を出しながら厨房に入っていくAR-15。

おっ………何もない所で転んでやんの。

やっぱり何処か抜けてるよな、アイツ。

 

 

 

 

ふっふっふ、そろそろだな?

良い匂いが漂っている。

食堂には俺が用意した巨大鍋が中心に鎮座し、これまた巨大なコンロでグツグツと具材が煮込まれている。

 

「よっしゃ、今こそ肉を入れる時だ!SOPちゃん、この大役を君に任せる。肉を持ってきてくれ」

 

「りょーかーい!お肉♪お肉♪お肉♪」

 

上機嫌で肉を取りに行くSOPちゃん。

可愛い。

天使かな?

 

 

「持ってきたよ、指揮官!早速入れるね!」

 

両手に抱えきれない程の大きさの肉を持って来たSOPちゃん。

だけどちょっと待って、その肉何なの?

 

「これ?店長さんが勧めてくれたお肉だよ?ミシシッピナイルワニの肉だって!指揮官が見たら喜ぶって言われたから買ってきた!」

 

おいいいいい⁉︎

何でそんなものがスーパーにあるの⁈

おかしくない⁉︎

豚とか牛とかなかったのか⁉︎

 

「あるよ?」

 

あんのかい!

よ、よし。

なら、ワニ肉は冷蔵庫に戻して来なさい。

それともう一つ聞きたい。

9、君が連れている鶏は何だ………?

その鶏、滅茶苦茶俺の事睨みつけてんだけど。

 

「これ?店長さんが勧めてきたから買ってきたの。指揮官は生のまま食べるのが好きだから喜ぶって言われて」

 

おい店長ォォォォ!

悪意しか感じないぞ、テメェ‼︎

確かに鶏肉は好きだが生で食うわけないだろ!

と、取り敢えず鶏は俺が一旦預かろう。

皆は先に鍋を食べ始めてくれ。

俺はちょっと鶏を何とかしてくる。

 

今度あのスーパーに行った時は店長とゆっくりO・HA・NA・SI★しないとな。

 

 

 

 

あれから本格的に鍋パが始まり、食堂内はどんちゃん騒ぎだ。

端的に言う。

最高だ。

やっぱり鍋はいい。

M4達や404小隊の面々も楽しそうにしているし何よりだ。

M16はジャック・ダニエルをガバガバと飲み干している。

お前よくそんなに飲めるよな。

そんなM16を嗜めるM4の姿も見えるが効果はないようだ。

SOPちゃんと9は山のように積み上げられた焼鳥を頬張っている。

言っとくが、その焼鳥はさっき俺がシメた鶏だぞ?

45は相変わらず掴み所のない笑顔を浮かべたまま食事を楽しんでいるようだ。

G11に至っては寝ながら食べるという高等な術を身につけた。

鼻ちょうちんを膨らませながら鍋の具材を食べるとは………やるな、お前。

 

「食事の時くらい起きなさいよ。だらし無いわね」

416が呆れた顔でG11を起こす。

「うう………分かったよ。起きればいいんでしょ、起きれば………ふああ」

「こらっ、肉ばかり食べてないで野菜も食べなさい!でないとUMP45みたいな胸になるわよ?」

何というか、あれだな。

416とG11の関係は完全にお母さんと子供みたいだ。

む、UMP45が笑顔でコップを握りつぶしている。

どうやら会話が聞こえていたらしい。

だが悲しいかな、胸が無いのは事実だから擁護のしようがないんだよ洗濯板め。

 

………おっと、箸が飛んできやがった。

壁に突き刺さってんぞ。

当たってたらどうするつもりなんだ、全く。

 

 

「指揮官、隣いいかしら?」

 

おう、AR-15か。

どうだ、俺の味付けは?

 

「ん………美味しいわね」

 

そうだろうそうだろう?

俺は鍋料理には一家言あるんだ。

まあどれだけ食おうと、お前のスケートリンクみたいなツルテカおっぱいは成長しないがな‼︎

 

「一回死にますか?」

 

悪かった、冗談だ。

だから喉元に突きつけてる焼鳥の串を下ろしてくれ。

 

「全く、いい加減学習して下さい。………前から聞こうと思ってましたが、どうして指揮官は指揮官の道を選んだんですか?」

 

随分と踏み込んでくるんだな?

俺みたいな変態野郎の過去を知りたいなんて、とんだ物好きもいたもんだ。

 

「驚いた、変態の自覚はあるのね」

 

うるさい。

俺が指揮官になった理由は単純に食い扶持稼ぐ為だよ。

昔、正規軍に居たんだが色々あって辞めちまってな。

その後傭兵してたんだが、クルーガーの奴にグリフィンに勧誘されたんだ。

蝶事件で世間がゴタゴタしてる時期だったし、丁度良いかと思って入社した訳。

そう言うお前は、何の為に戦ってんだ?

まさか人類の為だなんて訳ないだろ?

 

「私が戦うのは私自身の為。有り体に言えば、名誉の為かしらね」

 

成る程。

自分の為か。

正しい、正しい答えだ。

こうしてお前や他の人形達と話していると、お前らが人形だって事を忘れそうになる。

下手な人間よりも人間らしいからな。

 

「………私は人形よ、指揮官。作り物の体に借り物の心。身も蓋も無い言い方だけど私達はそう言う存在なの。それは貴方が一番良く分かっている筈でしょう?」

 

おいおい、何を言ってるんだ。

お前は借り物の心と言ったが、俺にはそうは思えない。

本当に借り物なら、お前がAR小隊に向ける感情や名誉を求める心は何処から来るんだ?

 

「っそれは、そうプログラムされているからーーーー」

 

本当か?

お前が皆に向ける感情はそんな言葉一つで片付けられる簡単な物なのかよ?

認めるべきだ、お前には確かに心がある。

借り物なんかじゃない、本当の在り方が。

自分がどういう存在であるかは自分で決める事が出来る。

お前にはお前の良さがあるんだぞ?

確かに胸は無いし、何処か抜けてる所があるがそう言う所も含めて魅力的な部分をお前は沢山持ってる。

自分に自信を持て、コルトAR-15。

お前はお前の信じる道を歩いていけばいい。

もしその中で恐怖や絶望に呑まれそうになった時は俺やAR小隊の仲間に頼ってみろ。

あいつらは必ずお前の力になってくれる。

勿論、俺もな。

……………どうしたんだ、鳩が20ミリ機関砲食らったような顔をして。

 

「いえ………指揮官からそんな言葉を聞くと思ってなかったから………。それにしても、随分とクサイ台詞を言うのね。どうしてこの基地の人形達が、貴方みたいな変態指揮官に何だかんだ言いながらも付いてきてるのか、少しだけ分かった気がするわ」

 

笑うな。

分かってんだよ、柄じゃないって事くらい。

 

 

 

「指揮官さまッ、大変です‼︎」

 

 

 

ようカリーナ、いつ見ても形の良い胸をしてるな。

血相を変えて何を騒いでる?

これでも食って落ち着いたらどうなんだ。

 

「口を抓りますよ指揮官さま?むぐ………このモチモチとした食感…何ですかこれ?」

 

それはだな、うどんという麺類だ。

俺の故郷の味なんだぞ?

程よい弾力と柔らかさを持つ素晴らしい食べ物だ。

言うなれば、おっぱいを食べ物にしてるんだよ!

背徳感と優しさを合わせ持つ脅威の食材。

それが、うどんだッ‼︎

 

「真剣にうどん作ってる人に謝れ変態指揮官。って、こんな事をしてる場合じゃないですよ!別の基地から鉄血の部隊が此方に接近中との連絡が!しかもその鉄血の部隊を率いているのはハイエンドモデルとの事です‼︎」

 

何だと………?

クソッタレが、折角の鍋パが台無しじゃねぇか!

で、その鉄血のハイエースモデルって誰なんだ?

 

「ハイエンドモデルです、指揮官さま。報告によれば、恐らくモデル名『エクスキューショナー』の可能性大であると」

 

舌を噛みそうな名前だな。

仕方ない、丁重に出迎えてやるとするか。

 

 

戦闘準備だ。

 

 

 

取り敢えず鍋パを中止し、皆をそれぞれの配置につかせた。

全員やたら殺気だっていたが、アレか?

食い物の恨みとやらか。

ま、美味いもの食ってる途中に邪魔されたら誰でも切れるわな。

 

「寒い。メイド長、お前の柔らかおっぱいで暖めてくれるか?」

「寝言は寝てから言って下さいセクハラ指揮官。頬骨を砕きますよ?」

 

メイド長がタンスの上に溜まった塵を見るような目で俺を見る。

やれやれ、厳しいなメイド長。

あまりの厳しさに凍りついちまいそうだ。

 

「ハッハッハ、ブレないな指揮官は」

 

M16、せめて今くらいジャック・ダニエルを手放したらどうなんだ。

側から見ると只の酔いどれお姉さんだぞ。

こんな時に敵が現れたらどうすんだ。

 

 

 

 

 

「ああ、そうだな。こんな時にオレが現れたらどうするんだろうな?」

 

 

 

 

声が聞こえた。

殺意のみを織り交ぜた凍てつく声。

 

お、お前は…………!まさか!

 

 

 

「へぇ?オレの事を知ってるのか?オレが鉄血の「パイオツモデルの」そう、パイオツ………じゃないッ!ハイエンドモデルだッ!人に何言わせやがんだテメェ‼︎」

 

喧しい奴だな。

で?その鉄血のパイパイモデルのエクスカリバーさんが何の御用で?

 

「こ、コイツ………!ハイエンドモデルだって言ってんだろ‼︎それとオレは確かに剣を持ってるが、剣先からビームなんぞ出ない‼︎」

 

えぇー………出ないのかよ。

厨二病みたいな格好してるのに?

大体若い娘がそんな露出の多い服装してるってどうなのよ?

痴女なの?

お父さんは貴方をそんな風に育てた覚えはありませんよ‼︎

にしても、中々いいおっぱい持ってんなコイツ。

ついでに揉ませてくれ。

 

「お前に育てられた覚えは一切ねぇよ、この気持ち悪い変態野郎が‼︎」

 

おおう、言われ慣れたぜその言葉。

いきり立つなよ、仲良くお話でもしようじゃないか。

俺は平和愛好者なんだ。

分かってくれよ、エクセルダッシュちゃん。

 

「もう名前の原型すら残ってねぇ………ふざけた奴だ。決めた、お前だけは必ず殺す!」

 

「おっと、そうはいかないぞ?」

 

「なっ⁉︎お前、いつからオレの背後にッ⁈クソがっ、離しやがれ!」

 

いつの間にか背後に回ったM16がエクスキューショナーもとい処刑人を羽交い締めにする。

よくやったM16。

 

「御託はいいから鍋食え鍋」

「やめろッそんなもんオレに近づけんじゃーーーームグッ⁉︎」

 

片手に鍋の具材が入った器を持って処刑人に近づいた俺はすかさず鍋の具材を彼女の口にねじ込む。

 

「…………………。」

 

どうだ、お味は?

 

「美味いじゃねぇかよ、オイ………これは何なんだ?」

 

くっくっく、それはな!

とんこつしょうゆ鍋だ!

美味いだろ?

さあ、食え!もっと食え!

 

「そうだぞ、鍋食え鍋」

 

M16がそう言いながら処刑人の口に次々とネギやら白菜やらを入れていく。

ふっ、俺にかかれば鉄血のハイエンドモデルなんざこの様よ‼︎

 

 

 

「ハア…何なのよ、これ………」

 

その光景を見ていたAR-15の声だけが虚しく響いたそうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遠く離れた暗闇に覆われる宇宙の果て。

光も影も存在しない筈の漆黒の世界を、何かが過ぎ去って行く。

それは巨大な隕石だった。

その隕石は何かを目指していた。

ふと、隕石がその場で意思を持っているかのように停止する。

次の瞬間、隕石はその場から消滅していた。

 

 

 

消える刹那の一瞬だけ。

 

 

 

その隕石は確かに『笑った』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ただの鍋食うだけの回。
次回から真面目に少しだけ話を進める。
因みに作者は昨日寄せ鍋食べました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

指揮官「代理人さん、俺を踏んでくれ‼︎」代理人「お断りします」AR-15「タイトルが長い。今度から短くしますからね」

あれから完全に鍋の魅力に魅入られた処刑人ことエクスキューショナー。

M16にジャック・ダニエルを半ば無理矢理飲まされ、顔は真っ赤になっている。

 

「おーい!そこの指揮官!酒持ってきてくれーッ!」

 

酒をねだるその姿に誰も彼女が鉄血のハイエンドモデルなどとは思わないだろう。

酔いの回った唯の親父である。

 

「しきかぁーん。敵は全員引き上げていきましたよ。………何これ?」

 

何も言うな45。

処刑人ちゃんは鍋の力で完全に無力化したから無事?任務完了だ。

 

「ふうん?それで、指揮官はこの呑んだくれをどうするの?折角だし、このまま拘束して尋問でもする?」

 

いや、辞めておこう。

処刑人が捕虜になったとバレた場合、さらに上位のハイエンドモデルが来る可能性があるからな。

連戦は避けたい所だ。

そうだな、取り敢えず縄で亀甲縛りでもしてヘリで捨てに行こうか。

 

「了解。それじゃ、私は先に戻ってますね?行きましょ、9」

「あ、45姉!待ってよ〜」

 

 

 

 

「指揮官、ロープ持ってきたよ!」

 

ありがとう、SOPちゃん。

ちょっとこのバカ縛るから押さえてくれないか?

 

「いいよー、任せて!ね、指揮官。後でコイツの目玉抉ってもいい?」

 

うん………目玉を抉るのは又今度にしようか、SOPちゃん。

 

「じゃあ脊椎は?」

 

ダメ。

今日は我慢しなさい。

今度出撃した時は好きにしていいから。

 

「ホントに?やったー!」

 

あ〜SOPちゃん可愛いわ。

やっぱり天使だな。

 

 

 

その後、暴れる処刑人を押さえ付けて縛り上げた。

しかし以外だな、M4。

どうして君は亀甲縛りのやり方を知ってるんだ?

 

「M16姉さんに教えて貰いました。『指揮官は縄で縛られるのが好きだろうから覚えておいた方がいい』って言われて。………指揮官は、お嫌いですか?」

 

「大好きです!今度縛って下さい!」

 

ハッ………しまった、つい本音が。

つかM16ゥ!何をM4に吹き込んでやがるんだ!

いや、確かに俺はそういうプレイも好きだが!

とっても大好きのすこすこのすこだが⁉︎

 

「変態もここまで来ると重症ね。何でアンタみたいな奴が指揮官になれたのか不思議で仕方ないわ」

 

おいおい、随分な言い草だな水色ユサユサおっぱいちゃん。

確かに俺はまごう事なき変態ドMだが、やる時はやるんだぜ?

 

「おっぱいから離れなさいよ変態ッ!それしか考えられないの⁉︎」

 

何を言う!

俺からおっぱいを取ったら何が残るんだ⁉︎

 

「そんな自信満々に言う台詞じゃないわよ、それ………」

 

416がカーペットに染み付いた汚れを見るような視線で睨みつけてくるが、悲しいかな俺には快感にしかならないぜぇ!

 

「本気で気持ち悪いわね………貴方、私達を普段からそういう目で見てるの?」

 

 

そんな訳ないだろ。

俺はお前達を頼れる仲間だと思ってるさ。

とは言え、確かに少し俺も調子に乗りすぎた部分がある。

お前が心底気分を害したというのなら謝罪しよう。

 

「フン………分かればいいのよ分かれば」

 

ふむ、謝罪を受け入れてくれた事に感謝しよう。

でも一つだけ言う事がある。

 

「何よ?」

 

いくら何でも、ダサいパンツ履くのはどうかと思うぞ?

しかもお前のパンツ『I am perfect!』って書いてるしな。近年稀に見るダサパンティーだギャハハーーーービブルチッ⁈

 

おまッ、顔面はヤバいって!

は、鼻血が………鼻の骨折れたかも。

 

「なんッ………何でッ!私が履いてるパンツ知ってるのよ⁉︎死ね!今すぐ死ね‼︎」

「よ、416…落ち着いて」

「離しなさい!こいつは今ここで始末するわ‼︎」

 

M4が416を羽交い締めにして止める。

頼むぞM4。

お前が手を離したら最後、俺の命の灯火がリアルに消えちまう。

 

「416、大丈夫だよ。私は416が面白パンツ履いてても気にしないから………」

「フォローになってないわよバカ!」

 

G11の慰めも逆効果のようだ。

おーい、誰か輸血パック持って来てくんね?

失血死しそう。

 

「全く、何をしてるんですか。あんな事言ったら416が怒るのは当然でしょう?それと、鼻血くらいで失血死なんかにはなりません」

 

よ、ようAR-15。

元気そうでなによりだ。

肩貸してくれない?立てないんだよ。

 

「情け無い指揮官ですね、もう。ほら、私の手に掴まって下さい」

 

よいしょっ…と。

そう言えば処刑人は………っと綺麗に亀甲縛りにされているみたいだな。

M4には縄縛りの才能があるらしい。

今度上手いこと言って俺も縛って貰おうかな?

 

「指揮官?何を考えているか分かりませんが、M4に妙な事させたら許しませんからね?」

「おう、勿論だ」

 

読心術でも身につけているのか、ニッコリと笑顔で言うAR-15。

やばいな………お前の放つ威圧感が最近春田さんに近づいてきている気がする。

ま、お前が幾ら春田さんに近づいた所で、オッパイという致命的な部分が欠けているから駄目だろうがな!

 

「やっぱり死にます?」

 

痛い痛い痛い!

手首捻らないで、ちぎれちゃう!

 

 

 

 

 

 

 

「ん、ああ………?オレは確か…鍋を食わされて…?って何だこりゃあ⁈動けねぇ⁉︎」

「やっと目が覚めたか、エキスパンションジョインショナーちゃん」

「オレはそんな長い名前じゃねぇよ⁉︎エクスキューショナーだッ!何処なんだ、ここは⁉︎」

 

騒がしい奴だな。

見ての通り、ここはヘリコプターの中だ。

お前をポイ捨てする為に態々鉄血の支配区域ギリギリまで飛んでる真っ最中だよ。

 

「クソがッ!縄を解きやがれ!」

 

いいぞ。

但し、解くのは俺だがな。

お前の身体中を舐め回すように見てから、一本また一本と繊細なガラス細工を取り扱うように!

紙粘土をこねこねとこねるように!

ゆっくりじっくりやんわりと!

縄を解いてやるよぉ!

 

「申し訳ありません流石のオレ、いや私でも気持ち悪すぎてゲロを吐きそうなのでやっぱり解かなくてもいいです」

 

割とガチで嫌がられた。

泣きそう。

 

 

 

 

「そんじゃ、紐なしバンジーを楽しんで来てくれ。アディオス‼︎」

 

ヘリの扉を開けて処刑人を空中に放り出す。

まあ腐っても鉄血のハイエンドモデルだし、死にはしないだろう。

 

「覚えとけよ、この真髄変態糞野郎がアアアアア‼︎」

 

捨て台詞と共に処刑人が落下していく。

近頃の若者は活気があるなあ。

さーてと、やる事やったし基地に帰るぞ。

パイロットさんよ頼んだぜ。

 

「了ッ解ィッ!お任せあれッ‼︎」

 

いつ聞いても特徴的な野太い声だよな、アンタ。

 

 

 

 

一方その頃。

鉄血のハイエンドモデルの一人である『ハンター』は連絡の途絶えた処刑人を捜索するため、処刑人が向かったグリフィンの基地へと足を運んでいた。

 

「あの突貫バカめ。いくらグリフィンの鉄屑どもが雑魚だと言っても少数の部隊だけで突っ込むなど愚かの極みだ」

 

処刑人の個体としての戦闘能力は高いが、その分部隊の指揮が少々お粗末な部分がある。

仮にもグリフィンの司令部の1つに襲撃を仕掛けるのだから、其れ相応の準備やタイミングというものがあるのだ。

 

「まあ、原因はあのいけ好かない蛇女だがな」

 

処刑人も完全な脳筋という訳ではない。

確かに血気盛んなきらいはあるが、少なくとも今回のような無謀な突貫をするほどではなかった筈だ。

とすれば、原因はやはり処刑人を焚きつけたあの女だろう。

あの女………自分達よりも上位に位置するハイエンドモデルである個体『ウロボロス』。

アイツは信用ならない。

どうにも自分達の事を都合の良い駒と見ている節がある。

あまり他人を批判しない同僚のスケアクロウすら、嫌悪感を滲ませるくらいだ。

どうせ処刑人を上手く誑かして煽ったのだろう。

例のグリフィンの基地は鉄血でもそれなりに名が通っている。

風の噂によれば、そこの指揮官とやらは相当なキレ者だと。

スケアクロウが一度だけ、その指揮官が指揮するグリフィンの小隊と戦闘を繰り広げた事があったそうだ。

人形どもの練度の高さもあるが、何より此方の動きが完全に読まれていたらしい。

あと一歩で罠を仕掛けた場所に誘い込めるといった所で、どういう訳か引き揚げていったらしい。

もしあと少し上手く惹きつけられれば、装甲兵やマンティコアを待機させたキルゾーンに誘い込み罠に嵌める事が出来たのに!とスケアクロウが愚痴っていた。

恐らく何らかの罠がある事を察して撤退させたのだろう。

相手取るには面倒な敵だ。

そんな奴がいる基地に分かっていて何の援護もない少数の部隊で攻撃を仕掛けさせる辺り、ウロボロスの性格の悪さが伺える。

 

「まあいい。さっさとアイツを連れ帰るとするか」

 

その時だった。

 

「………?あれはグリフィンの奴らのヘリか?何故こんな所にいる?」

 

ハンターが空を見上げると、グリフィンのマークげ付いたヘリがホバリングをしていた。

 

「何をしてるか分からんが………私の前に堂々と現れるとは良い度胸だ。撃ち落としてやろう」

 

ところが、ハンターが武器を構えた瞬間、ヘリの扉が開き何かが落ちてくるのが見えた。

まさか、爆弾か⁉︎

 

「ッ!不味い‼︎」

 

ハンターは咄嗟に身を隠す。

その直後にズン!という何かが地面にぶつかった音がした。

 

「………何だ一体…って何してるんだ処刑人」

 

よく見ると、地面に何かが突き刺さっている。

それは処刑人だった。

 

「よう、ハンター………あのグリフィンのクソ野郎、とんでもねぇ奴だ。次は絶対にぶち殺してやる」

「そうか………だがな、縄で亀甲縛りされてる奴が言っても締まりが無さ過ぎるぞ。もしかして、そういう趣味があるのか?」

「違う、誤解だぞハンター!オレにこんな破廉恥な趣味はねぇ!」

 

生暖かい視線を送るハンターに対して全力で否定する処刑人。

 

「ん?そう言えば、お前の背中に括り付けられてる袋は何だ?」

「あ?何だこれ?見覚えのない袋だな」

「グリフィンの連中が仕掛けた罠かも知れんぞ。下手に触らずに一度本部に持って帰るか」

 

 

この後、鉄血の司令部で袋の中身が開封され、鉄血の首脳陣(エリザや代理人を始めとするハイエンドモデル達)がパニックになったそうな。

因みにイントゥルーダーとスケアクロウは別件で留守にしていた為難を逃れたらしい。

 

 

 

 

ケケケッ、今頃鉄血の連中は俺が処刑人に背負わせた袋を開けて悶絶してるだろうな。

アレの中身は俺がペルシカと一緒に開発した超臭い特殊ボムだ。

この世のありとあらゆるニオイを凝縮した恐るべき代物だぜ。

鍋パを邪魔してくれた礼だよ。

阿鼻叫喚の光景が目に浮かぶわ‼︎

ハーハッハッハ‼︎

 

 

基地に帰還し、気分転換に基地内にあるBARへと足を運んだ俺を待ち受けていたのはM16だった。

「来たな、指揮官。さあ飲み対決といこうじゃないか」

「他の皆はどうしたんだ?片付けも終わったのか?」

「皆宿舎に戻ってる。後片付けはG36やAR-15がやってくれてたから後で礼を言っておいた方がいいだろうな?」

 

そうか。

途中からとんだ横槍が入った所為で台無しになっちまったから今度形を変えて何かするとしよう。

 

「さて、指揮官。私に負ける準備は出来ているか?」

「言ってくれるじゃねぇか………。いいぜ、必ずお前に打ち勝ってやるよ。そして必ずッ!」

「私のおっぱいを揉む、か?」

 

そうだ………って台詞を先読みするなよ。

ふん、まあいい。

この戦いに俺は勝つ‼︎

 

 

 

〜数時間後〜

 

「ふ、ハーハッハッハ‼︎残念だったな、M16!この勝負は俺の勝ちだ‼︎」

「ああ、そうだな。指揮官の負けだ」

顔を真っ赤に染め上げて床に突っ伏したまま指揮官は動こうとしない。

それどころか寝息まで聞こえてくる。

私か?勿論平気さ。

まさか指揮官がここまで酒に弱いとは思わなかったぞ。

 

「指揮官、聞こえるか?しっかりしろ。………駄目か」

 

参ったな。

完全に熟睡している。

………仕方ない、ここに放置する訳にもいかないから連れて帰るしかないか。

 

とは言え、指揮官の部屋は電子ロックが掛かっているしな。パスワードを知ってるのも指揮官だけだ。

指揮官はこの状態だし………そうだ!

彼処なら大丈夫だろう。

ある意味安全ではあるからな。

ふふ、目覚めた時が楽しみだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

「罰ゲーーーーーームッ♪」ーーーーーーAR小隊の隊員・M16A1

 

「あ、ああああああああ⁉︎うわおおおおおおおおわあッ⁉︎」ーーーーーーとある基地の変態指揮官

 

「な、何で貴方が私のベッドにいるの⁉︎私達まだそういう関係じゃ………⁉︎」ーーーーーーAR小隊の隊員・AR-15

 

「そ、それでは、れっつごー」ーーーーーーAR小隊の隊長・M4A1

 

 

 

 

次章、『罰ゲーム編』

 

 

指揮官の明日はどっちだ⁉︎

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

罰ゲーム編
M16「罰ゲーーーーーームッ♪」指揮官「助けてッ⁉︎」


ふああ………なんだかとても良い気分だ。

フカフカのベッドの感触、小鳥のさえずり、柔らかい抱き枕………。

俺は手を伸ばして抱き枕をぎゅっと抱きしめる。

柔らかくてプニプニで良い匂いだ。

少しだけ目を開けると、視界に綺麗な桃色の髪の毛が写る。

 

 

 

………………………待て。

抱き枕なんて俺のベッドにあったか?

それに桃色の髪だと………?

恐る恐る布団をめくる。

 

すると、其処に居たのは。

 

 

 

 

安らかな寝息を立てて眠るAR-15だった。

 

 

 

待て、ちょっと待て⁉︎

これはどういう状況だ⁉︎

いや、それよりも………!

思わず辺りを見渡して見ると、其処は俺の部屋ではない場所だった。

ここは何処だ?

嫌な予感が広がる。

まさか、この部屋は。

AR小隊の部屋か………?

 

「ん………誰………?」

 

あ。

 

 

AR-15が目を覚ました。

俺と目が合う。

 

一瞬の沈黙が部屋に流れた。

 

「あ、ああああああああ⁉︎うわおおおおおおおおわあッ⁉︎」

「は?え、えええええええええッ⁉︎」

 

落ち着けAR-15!

俺も何が何やら分からないんだ!

決してやましい気持ちは………!

 

「な、何で貴方が私のベッドにいるの⁉︎私達まだそういう関係じゃ………⁉︎」

 

落ち着け、落ち着くんだAR-15!

静かにしてくれ!

 

「ならどういうつもり何ですか?幾ら指揮官が変態だとしても、限度ってものがあるでしょう?」

 

だから俺もよく分からないんだよ!

昨日の夜遅くまでM16と飲み対決やってたのは覚えてるんだが、それ以降の記憶がないんだ!

 

「飲み対決って………何をやってるんですか指揮官は……はあ」

 

呆れたように溜息をつくAR-15。

まあ、それより今現在問題な事がある。

分かるか?今俺はAR-15と身体がほぼ密着した状態だ。

しかも、抱き枕と勘違いしていた為に俺が彼女を抱きしめている構図になっている。

 

「あ…………あ!」

 

俺の指摘にAR-15が顔をこれでもかという程に真っ赤に染め上げる。

 

「し、指…揮官………!取り敢えず、その、手を離してくれる?」

 

あ、ああ…ちょっと待て。

今離れる………って何だこりゃあああああ⁉︎

ちょ、ハアッ⁉︎

俺の服とAR-15の服が縫い付けられて合体させられてやがる⁉︎

………合体って響き、何だかエロくね?

 

「何なのよこれ………⁉︎くっついてるじゃない⁉︎」

 

仕方ない、こうなれば上着を脱いで………って脱げねェェェ⁉︎

嘘だろ、ズボンと上着も一緒に縫い付けられて合体させられてるじゃねぇか⁈

これじゃどうしようもない‼︎

すまないAR-15、俺は脱出出来そうにないからお前が服を脱いでくれ!

 

「ええっ⁉︎む、無理です‼︎」

 

ハアッ⁉︎何で無理なんだよ⁈

俺みたいにズボン履いてる訳じゃないから縫い付けられてる事もないだろ?

 

「…………です」

 

え?

何だって?

聞こえねぇよ。

 

「だから!その、私今………下着…を」

 

おい………マジかよ。

お前普段からノーブラノーパンなの⁉︎

まあ確かに胸に関しては着けるほどないから分からんでもないがな。

 

「寝る時だけです!普段は付けてますよ!」

 

思わぬところでAR-15の下着着用の真実を知ってしまった。

彼女の顔は湯気が上がりそうなくらい紅く染まっている。

 

くっ…ならば最後の手段だ。

こうなったらお前を抱えたまま移動するしかない。

この部屋にハサミとかないのか?

あれば糸を切れるんだが。

しかし、周りにそういった刃物類はないようだな。

俺の執務室に行くしかない。

だが問題が一つ。

執務室に行くまでの間に今の姿を誰かに見られれば、あらぬ噂が立ってしまう可能性がある。

故に、これは迅速かつ静粛に進めなければならないんだ。

 

協力してくれるな、AR-15?

てか協力して下さい!

こんな姿誰かに見られたら俺が社会的に終わってしまう‼︎

 

「分かりました………指揮官がそう言われるなら」

 

よし。

なら、動くから俺にしっかりとしがみ付いてくれ。

 

「は、はい!いきますよ!」

 

そう言うと、AR-15は両腕を首に回し、足を俺の腰辺りで組んできた。

こ、コイツは想像以上にヤヴァイ………。

触れちゃ駄目な部分が色々と密着している!

しっかりしろ、クールになれ。

理性を保ち続けるんだ!

まず、部屋の扉をゆっくりと開ける。

 

 

扉を開けた先にあったのは、もう一つの部屋だった。

但し、その部屋ではM4とSOPちゃんが寝ていたが。

 

「いいか…絶対に音を出すなよ。音を出したが最後、全てが終わりだ」

「分かってます!早く行きましょう!」

 

ソーっと、抜き足差し足忍び足で部屋の外へと続く扉に近づいていく。

 

「ひひひひぃ…!もっと、もっと大きな声を出せぇ!アッハハハハハハッ!」

 

うおっ!

何だ、SOPちゃんの寝言か。

一体どんな夢を見てるんだろう?

あ…でも人形は夢を見ない筈だよな?

夢は見ないけど寝言は言うのか。

新しい発見だな。

M4は…幸せそうな顔でスヤスヤと眠っている。

天使かな?天使だな。

 

 

よし、ようやく外に出られたぞ。

後は俺の執務室に行くだけだ。

 

「おや………お早い起床だな?指揮官」

 

こ、この声はッ………!

M16‼︎

 

「ほーう?中々面白い光景だな。それが俗に言う『駅弁』という奴か」

 

何が駅弁だこのバカタレ!

変な知識ばっかり持ちやがって!

ニヤニヤと笑いながら見つめてくるM16。

クソッタレ、一番見られたくない奴に見つかっちまったじゃねぇか!

待て、まさか服を縫い付けたのはお前か⁈

 

「何の事だ?私は酔い潰れた指揮官をAR-15のベッドまで連れて行ったが服を縫ったりなんてしていない」

 

何だと?

じゃあ一体誰がッ⁉︎

 

「ああ、そう言えば指揮官を運ぶ時にスコーピオンに手伝って貰ったな。ひょっとするとアイツの仕業かも知れん」

 

コラアアア!馬鹿サソリィィィ!テメェの仕業かあッ‼︎

あのイタズラ娘めェ!今度タップリとお礼をしてやらんとなあ?

 

「頑張れよ指揮官。執務室までの道のりは長いぞ」

 

喧しいわ!

他人事だと思って楽しみやがって!

 

 

 

 

 

「ふっ………ようやく辿り着いたな。さっさと終わらせるぞ」

 

あの後、何とか誰にも見つかる事なく執務室に入る事に成功した。

だが安心するにはまだ早い。

俺の服とAR-15の服を繋ぎ留めている縫い目を切らないことにはな!

ちくしょう、細かく縫いやがって!

滅茶苦茶切りにくいじゃねぇか!

クソッタレが、こうなりゃいっそ大胆に切ってやる!

 

「ちょ、ちょっと指揮官!そんな切り方したら………!」

 

おい、急に動くんじゃない!

あ、切る場所ミスった!

 

あ…………。

 

 

「え……………?」

 

 

ハラリ、とAR-15の着ている服が真ん中から綺麗に裂ける。

まず目に入ったのは絹のように綺麗な肌。

そして申し訳程度についているオッパ………

 

 

「見るなあッ‼︎」

 

 

 

グフッ⁉︎

 

 

 

 

い…意識…………が……?

 

 

 

 

 

 

 

「ハア………見られて、ないわよね?」

 

思わずアッパーカットをかましてしまったが、私は悪くない筈だ。

何処か幸せそうな顔で気絶している指揮官。

取り敢えず部屋のソファーに指揮官を運んで………っと。

 

それにしても………指揮官とあんなに密着したのは初めてだった。

指揮官に抱きついている間、彼の心臓の鼓動がずっと聞こえていて何故だかとても安心した感覚を覚えている。

 

 

………ッ何を考えているんだろう。

これ以上考えていると変になりそうだ。

擬似感情モジュールが異常をきたす前に、忘れてしまおう。

私は自分でもよく分からないモヤモヤとした気持ちを抱えたまま、指揮官の部屋を後にした。

 

 

……………取り敢えずスコーピオンを見かけたら何かしらの制裁を加えるとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

「指揮官さま?指揮官さまー!起きて下さい」

 

んあ…?

カリーナ、何してんだ?

 

「それは此方の台詞ですよ指揮官さま。ドアが開けっ放しになってたので。何かあったんですか?」

 

そうだ、俺は確かAR-15の服を切った後彼女に殴られて………それからどうなったんだ?

どうやら俺はソファーに寝かせられていたらしい。

多分AR-15が運んでくれたんだろう。

くそ、それにしたってアッパーカットはないだろ。

確かに見ちまった俺も悪いが………。

それにしても、人形の肌ってあんなにスベスベした綺麗なものなんだな。

ふと、今朝からの出来事が頭をよぎる。

今更だが俺は相当恥ずかしい事をしていたのでは………?

 

何なんだ、さっきからアイツの顔ばかりが頭の中に浮かんでくる。

ああ、もう仕事に集中して忘れよう。

今回の件の原因である馬鹿サソリにも然るべき処置をしてやる必要もあるしな。

 

「指揮官さま、M16さんが指揮官さまに用件があるとの事で此方に来ていますよ?」

 

M16が?

何故だろう、嫌な予感しかしないが。

 

「指揮官、M16だ。入るぞ」

 

そう言うと同時に、ドアを開けてM16がやってきた。

しかしよく見ると、M16以外のAR小隊全員と何故か404小隊もいる。

 

「指揮官、昨日の飲み対決の件だが。覚えているよな?負けた方は勝った方の言う事を何でも聞くと」

 

ぐっ………!

やはりその話だったか!

こうなったら秘技ッ!脱出‼︎

 

「させると思うか?取り抑えろ!」

 

「ほらほら、しきか〜ん。往生際が悪いですよ〜?」

「えっと、ゴメンね?指揮官♪」

 

UMP姉妹ッ⁉︎やめろ、腕を離せッ‼︎

見逃してくれたら何でも言う事を聞いてやる‼︎

 

「ふーん?本当に何でも聞いてくれるのね?」

 

45の顔に不敵な笑みが広がる。

く………何でも聞いてやる!

だから離せ!

 

「取引成立ね。9、手を離してもいいわよ?」

「はーい♪」

 

よし!

それでは諸君‼︎捕まえ損ねちまったな‼︎

この俺様を!

 

「想定内だ、指揮官。やれ、M4!変態捕獲バズーカだ‼︎」

「は、はいM16姉さん!指揮官、ごめんなさい‼︎」

 

ぐああああああああッ⁉︎

何だこれは………網⁉︎

M4の持つ筒状のものから放たれた巨大な網が俺の身体を搦めとる。

何てこった、網が絡まって抜け出せねぇ‼︎

てか何なの⁉︎変態捕獲バズーカって⁈

 

「ペルシカさんが開発してくれた対指揮官用ファイナルウェポンーーーーーー本人はそう言っていたな」

 

あんのケモミミ女ァッ‼︎

変な物作ってんじゃねぇよ‼︎

 

「さあ、指揮官。無駄な抵抗はやめるんだな」

 

………どうやら逃げるのは不可能なようだな。

分かった分かった、降参だよ。

 

「良い判断だ、指揮官。では改めて」

 

M16はコホン、と咳払いをする。

 

 

「罰ゲーーーーーームッ♪」

 

 

 

罰ゲーム………?

一体何をさせるつもりだ?

 

「そう、罰ゲームだ。主催者は私。では罰ゲームの内容を言ってやろう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これより、人形恋愛前線(ドールズデートライン)の開催を宣言するッ!」

 

 

「そ、それでは、人形恋愛前線(ドールズデートライン)れっつごー」

 

 

 

 

 

 

 

待て待て待て待て待てえええええいッ‼︎

何だそれはああああああああああああ⁉︎

それとM4、君もさり気なく賛同しないで⁈

 

 

 

「私は常々思っていた………指揮官は私達戦術人形との距離が離れていると!」

 

いやいやいや。

自分で言うのも何だが俺は相当お前達にアレなスキンシップをしてきたつもりだぞ。

それなのに距離があるだなんて………。

 

「分かってないな指揮官。それは表面上の話だろう?私が言っているのは心の部分………即ち内面的な心の距離だ」

 

何……だと⁉︎

どう言う事だ⁉︎

 

 

「だから私は考えた。どうすれば指揮官との心の距離を埋められるかと。そして私はM4の生着替え写真を眺めている時に思いついたんだ‼︎人形恋愛前線(ドールズデートライン)を‼︎」

 

すまん、ちょっと言ってる事がよく分からない。

 

 

 

「まあ、ぶっちゃけると指揮官が取り乱してる姿を見たかったからだけどな」

 

 

 

コルァァァァァ!

やっぱ遊び半分じゃねぇか‼︎

大体、そんな勝手な計画誰も承諾しないだろ⁉︎

日常の業務もあるし、のんびりとデートなんぞ出来るわけがない‼︎

 

 

「その点に関しては問題ない。ヘリアンさんやクルーガー氏にも許可を取ってある。基地にはしばらくヘリアンさんが特別に臨時で着任し、指揮を執ってくれるから不足の事態が起ころうとも問題ないと言う訳だ」

 

ぐぬぬ………だが流石に基地内全員の人形達とデートなんて無理だ!

 

「大丈夫だ、指揮官。指揮官がデートするのは私達AR小隊のメンバーだけだからな。それに皆も乗り気だぞ?」

 

そ、そんなバカな………。

M4!AR-15!SOPちゃん!

こんな罰ゲームに付き合う必要はないぞ!

な?M16に何とか言ってくれ!

 

「え………?私は……その…指揮官となら…大丈夫ですよ………?」

「わ、私も…別に。はい、問題ありません」

「私もぜーんぜん大丈夫だよー?指揮官とお出かけするの面白そう!」

 

 

マジか。

 

 

「くっくっく。覚悟はいいな?ではルールを説明するとしよう!」

 

 

人形恋愛前線(ドールズデートライン)における規則事項〜

 

第1条

 

今回の人形恋愛前線(ドールズデートライン)において、指揮官とデートする人形はクジで選別するものとする。

選別には公平性を期すため、404小隊の隊員が日替わりでクジを引くものとする。

クジの結果に対し不服を申し立てる事は出来ない。

 

第2条

 

指揮官に対する暴行・殺害・拉致監禁などといった行為は全面禁止とする。

当然ながら指揮官とデートしている人形に対しても同様である。

 

第3条

 

第三者は指揮官のデートに対する妨害行為を行ってはならない。

 

第4条

 

指揮官は人形とのデートを放棄して逃走してはならない。

逃走した場合、グリフィン&クルーガー社は指揮官を敵前逃亡と見做して解雇するものとする。

 

第5条

 

指揮官に人形恋愛前線(ドールズデートライン)に対する拒否権は一切存在しない。

 

第6条

 

デート時間は24時間以内に限られる。

AM0900時〜PM1900時の間は基地内での滞在を禁止する。

 

第7条

 

指揮官は誠意を持って人形達に接しなければならない。

 

 

 

 

「と、こんな所だ。何か言いたい事はあるか?」

 

大アリじゃああああああああッ⁉︎

理不尽過ぎんだろ、この規則⁉︎

何なの解雇って………。

何なの拒否権はないって………。

ふざけんな、こんなもん従えるか!

 

 

「へぇ?逃げるのか?お前は人形の一人も楽しませられないヘボ指揮官だという訳か。ま、仕方ないよな?肝心な所でヘタレだし?よくそんなんで指揮官なんざ名乗れるよなあ」

 

イラッ………!

………オーケーェェェ、いいだろう。

ムカついた、その計画に参加してやるよ!

俺の真の実力を見せてやる!

 

 

 

「単純ね。G11、よく見ておきなさい。あれがバカの人類代表よ」

「416って時々キツイこと言うよね………」

 

どこかから俺を貶す声が聞こえるが気にしない。

 

 

「さて、記念すべき第一回目をUMP9に引いて貰おうか」

 

M16がクジの入った箱を手に持ってUMP9の所に持っていく。

 

「任せて!それじゃ、行くよ!」

 

ガサガサゴソゴソと9が箱を漁る。

そして。

 

 

「う〜ん………よし、これだ!」

 

 

 

 

誰だ、誰なんだ⁉︎

 

 

「よーし、では発表するぞ。記念すべき第一回目に当選したのは!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『M4SOPMODⅡ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

 

「指揮官、早く!早く行こ!」ーーーーーーAR小隊の隊員・M4SOPMODⅡ

 

「スンマセーン、日替わりランチとお子様ランチ一つ」ーーーーーー罰ゲーム企画人形恋愛前線(ドールズデートライン)に参加させられている哀れな男・とある基地の変態指揮官

 

「全く、何で私達が洗剤を買う為に人間の街に来なくちゃならないのよ」ーーーーーー鉄血のハイエンドモデル人形・イントゥルーダー

 

「店長さん、強力な匂いも取れる洗剤ってあります?」ーーーーーー鉄血のハイエンドモデル人形・スケアクロウ

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

統制官「フフーフ、幕間という奴だ」⁇「あまり気張らないで見てね?」

今回は幕間です。
人形恋愛前線で騒いでいる裏で起こっていた出来事です。
※未実装のキャラの僅かなネタバレが含まれています。



クジの結果は、まさかのSOPちゃんだった。

M4とAR-15はどこか残念そうに肩を落としている。

 

「という訳で第一回人形恋愛前線はM4SOPMODⅡに決定した。明日から早速楽しんできてくれ!以上、解散!」

 

M16はそう言うと、颯爽と去っていく。

ふっ………M16め、今に見てろよ?

必ずこの人形恋愛前線を完膚なきまでに攻略してお前に目にモノ見せてやるからな!

 

 

 

 

 

そうして指揮官が、決意を新たにしている頃。

それは静かに始まっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある世界の片隅にて。

 

 

 

 

 

「フフーン。やれやれ、毎度毎度思うが地球人類というのは不合理に過ぎる。ELIDや鉄血なんちゃらと種の生存をかけて戦っているというのに身内同士で内輪揉めをするとはね。実に愚かだッ!君もそう思わないかい、ユー?」

 

黒いサングラスに、これまた黒いロングコートを着込んだ青年が大袈裟に両腕を振り上げて騒いでいた。

それを困ったような顔で見るユーと呼ばれた一人の少女。

 

「う~ん?統制官の言う事は分かるけどさ。何かにつけて、あたいに意見を求めるのはどうかと思うんだけど」

「フフーフ。ユーは相変わらずズバッと物を言うねぇ?それにしても、その一人称はどうにかならないのかい?」

「む、いいじゃない別に。パッと思いついたのがこの一人称なんだから」

ユーと呼ばれた少女は頬を軽く膨らませて青年に抗議するが軽く流される。

「さあ、お喋りはその辺にして『彼』に会いに行くとしようか。ひょっとしたら………君もいい出会いがあるかもしれないしね」

「そんな都合よく、あたいの事知ってる人形がいればいいけどね~。そもそも、あたい記憶がないし会っても分からないかも」

「ならもう一度頭を撃ち抜いてもらえばいいだけだろう?な~に、そうなったらまた僕のトンでも技術で治してあげるよ」

「酷い事言うよね~。まあ、あたいの頭を誰が撃ったのかも覚えていないんだけど………あれ?」

 

朗らかに会話する二人の足元で何かが動いた。

 

 

 

 

「テ、テメェら………!」

 

 

 

 

二人の足元で動いたもの。

それは、鉄血のハイエンドモデルである処刑人だった。

しかし、その姿はボロボロで満身創痍とも言えるような姿になっていた。

 

「ホホーッ。こりゃ面白いね。まだ動けるんだ?」

 

少し驚いたような表情で笑う青年に処刑人の顔に青筋が浮かぶ。

 

「ふざけやがって………!!死にやがれッ!!………………なッ!?」

 

一切の躊躇いもなく振り下ろされた処刑人の剣は、驚くべきことに指一本で止められていた。

 

「全く………そんなオモチャを振り回したところで僕には意味がないって言ってるじゃないか。どうしてこの星の知的生命体はこうも理解力が悪いのかな?実力差は明らかだっていうのに。実に非合理的だよ」

 

意味が分からないと言いながら首を振る青年に得体のしれない不気味さを感じた処刑人は思わず後退る。

 

「クソッタレが………!いきなり襲ってきやがって!何が目的だ!」

「フフーン?君に言った所で到底理解できないさ。何だっけ、オガスシステムにエリザだったけか?その程度の子供の妄想みたいな科学文明で粋がられても迷惑なんだよ。この様じゃ、グリフィンや正規軍って奴らも期待できそうにないな」

「何を訳の分からねぇ事を言ってやがるッ!」

「分かんないかな?君達じゃ『アレ』に比肩するどころか、お目にかける事すら出来ないんだよ。それに世界中に散ってある………ええっと、何だった?この星じゃ何て言ってたんだかな?とにかくソイツを回収しなきゃいけないんだ。まあ元々僕等の物だし?返してもらうだけって話だけどね」

 

溜息をつきながら詰まらないものをみるような目で処刑人を見ながら話す青年。

その時、沈黙を保っていたユーが青年に話しかけた。

 

「コーラップスだよ、統制官。もうその辺にしときなよ。ホント、意地が悪いんだから」

「おやおや、これはすまないねぇ。物忘れが激しいのと、すぐに人を煽ってしまうのが僕の悪い癖だ。謝罪しよう」

 

髪をかき上げながら、本当に謝罪する気があるのかと言うような声色で青年が言う。

 

「まあ君達の対人類戦争の邪魔をするつもりは毛頭ないよ。別にどうでもいいし。こんな科学水準も低くて環境が極限まで汚染されている星に興味はないからね。ただ、この星を『アレ』が狙っているとなれば話は別だ」

 

『アレ』という単語を出す度に青年の瞳が一瞬だけ忌々しげに歪められるのを処刑人は見逃さなかった。

 

「は、なんだそりゃ。お前みたいな奴でも恐れるもんがあんのかよ」

「当然だとも。そう、この世界………いや、この広大な宇宙には君達など足元にも及ばない程の、より絶対的な破壊の力が潜んでいる」

 

だから、いつかアレがこの星に来るまでに準備をする必要がある。

青年は飄々とした笑みを引っ込めるとそう呟いた。

 

「さて、そろそろ時間だから僕達は帰らせてもらう。行くよ、ユー。じゃあね~」

「はいはいっと!じゃあ帰りましょーか」

 

 

そう言って茶鼠色の髪を棚引かせながら、ユーと呼ばれた少女は青年とともに何処かへと去っていった。

少女の服の袖には小さく何かの文字が書かれていた。

 

 

 

『UMP40』と。

 

 

 

ただそれだけの話だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どことも知れない認知できぬ空間で『ソレ』は感じ取っていた。

 

ミツケタ、と。

多少衰退してはいるものの、その星からは生命が溢れていることが感じられる事に『ソレ』は歓喜に身を打ち震わせた。

その星は、太陽系第三惑星。

 

 

 

 

 

その星に住む者たちからは『地球』と呼ばれている星だった。

 

 

 

 

 

『ソレ』はとある種族において、ある名前で呼ばれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

星を喰う者

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

SOP「罰ゲーーーーーームッ!だよ指揮官♪」指揮官「マジすか」

罰ゲーム開幕


朝。

降りそそぐ暖かな太陽の光に晒される俺はベッド替わりにして寝ているソファーから起き上がった。

 

はあ………………。

我知れず溜息が漏れる。

昨夜に宣言された人形恋愛前線という謎企画が始まる初日。

何とも言えない微妙な気分だ。

いや、確かにデートできるのは嬉しいがな。

だけど仕事も大事だと思うんだよ。

てか大丈夫なのか、鉄血の襲撃があったとき対応できんのかね?

臨時でヘリアントスが来てくれるらしいが、どこかポンコツな所があるから不安だ。

 

「指揮官?入るぞ?」

 

………………おや?

誰か来たようだな。まあ声色で大体察しはつくが。

いいぞ、入ってこい。

 

「あーたーらーしーいー朝がー来たー!」

 

朝っぱらから鍋とお玉をカンカンと打ち鳴らしながら俺の部屋に入ってくるM16。

………何だそれは。

 

「人形恋愛前線期間中は私が毎回これで起こしに来るつもりだ。どうだ、面白いだろう?」

 

面白いのはお前だけだ、バカ!

せめて朝くらい普通に起こさせてくれ!

 

「ハハッ!まあそうカリカリするな指揮官。今日は記念すべき人形恋愛前線の初日だからな!いつまでもそんな景気の悪い顔をしてるとSOPが可哀想だぞ?」

 

カリカリする原因はお前だっつの。

心配しなくても、SOPちゃんの笑顔を曇らせるなんてことは決してしないぜ。

俺の実力を見ておくことだな!

 

「ほう………自信ありげじゃないか。デートから帰ってきたSOPの話を聞くのが楽しみだな」

 

それだけ言うと踵を返してM16は部屋を出て行った。

 

 

っておい!鍋とお玉を置いてくな!持って帰れ!!

 

 

 

 

 

 

AM0850。

そろそろ時間だな。

俺は私服に着替えて部屋を出る。

服装は普通の長袖シャツとジーパンだ。

そもそも仕事柄、外へ行くときも制服か戦闘服だったのであまり私服で外出する機会というものがなかったりする。

基地の正門に歩いていくと、いつも通り掃き掃除をしているメイド長に出くわした。

 

「おや、ご主人様。珍しい格好ですね。そう言えば今日からでしたか。指揮官終末前線は」

 

おい待て。

その言い方だと俺が死ぬみたいじゃないか。

 

「ああ、申し訳ありません。冗談です、ご主人様。それでは行ってらっしゃいませ」

 

ペコリ、と流れるような動作でお辞儀をしたメイド長は颯爽と建物の中へと戻っていく。

いや、冗談って言ってるけどお前さっきの表情マジな感じだったじゃん。

はあ………………まあいいか。

AR小隊全員ってことは実質4日間だけだろうし。

なるようになるだろ。

 

 

 

 

そして、俺はこの時の甘い考えを後に後悔する事になる。

 

 

 

 

 

 

「あ!おはよー指揮官!」

 

門の前では、SOPちゃんがニコニコと笑顔を浮かべて俺を待っていた。

 

「おう、お早う。んじゃ早速街にでも行こうか。何処か行きたい所はある?」

「どこでもいーよ?指揮官と一緒に行くならどこでも!」

 

おうおう、嬉しいこと言ってくれんじゃないの。

こいつは唯の罰ゲームと思って掛かっちゃいけないな。

 

「指揮官早く!早く行こ!」

 

SOPちゃんがトテトテと小走りで駆けていく。

何だか子供みたいだな。

可愛い。

 

 

 

 

 

 

街は今日も活気に満ちていた。

ここにいる間だけは戦時という事を忘れさせてくれる。

 

「ねぇ指揮官!あれ何なの?」

 

俺の前を歩いていたSOPちゃんがファミレスを指して聞いてくる。

 

「あれはファミレスだよ。正確にはファミリーレストラン。要するにご飯食べるとこだ」

「そうなの?ふ~ん」

 

こんなご時世だってのにファミレスなんてやってるんだな。

店の中からは鼻腔をくすぐる良い匂いが流れてくる。

 

「ちょっと早いが食事にするか。行こうぜSOPちゃん」

「わーい♪行こ行こ!」

 

 

店の中は昼前の時間だというのにそこそこ混みあっていた。

家族連れや若い男女のカップル、老夫婦などといった様々な客がいる。

 

「SOPちゃん、何が食べたい?好きなもの頼んでいいぞ」

「ホント!?じゃあじゃあ!………………このお子様ランチで!!」

 

それでいいのか?他にも色々あるが。

 

「私はこれでいーよ?指揮官はどうするの?」

 

うーん………………俺は何でもいいからなあ。

ここは安牌で日替わりランチにしておくか。

 

「スンマセーン、日替わりランチとお子様ランチ一つ」

 

かしこまりましたー、と言いながら店員が厨房へと入っていく。

こういう所は今も昔も変わらないな。

ああとっても平和だなー。

ん?どうしたSOPちゃん。何か言いたそうにしてるけど。

 

俺がそう言うと突然SOPちゃんが身を乗り出してきた。

ちょ、顔近いって。

 

「指揮官ってさ、私の事どう思ってるの?」

 

随分と唐突な質問だな。

どうも何も、SOPちゃんは大切な仲間だと思ってるよ。

俺がそう言うとSOPちゃんはしばらく考えるような素振りをした後に「ふ~ん♪」と言って運ばれてきたお子様ランチを食べ始めた。

俺も同じように運ばれてきた日替わりランチのスパゲッティを食べる。

 

「とっても美味しいね指揮官♪配給で食べる物より良いね!」

 

そりゃあな。

配給の食事と同じにしちゃ駄目だぜ?

 

でもやっぱりあれだな。

誰かと一緒に楽しく食事するってのはやっぱり良い。

 

 

 

 

 

 

 

さて、次はどこに行こうか。

行く所といっても限られているしな。

そうだな…………ん?

 

 

「今思ったんだが、SOPちゃんは私服とか持ってないのか?」

 

SOPちゃんの着ている服はいつも通りの素肌の上に黒いジャケット。

俺は普段から見ているから何とも思わないが、一般の人々からすれば中々きわどい恰好だ。

だって素肌の上に直に着てるんだよ?

下着も何も着けてないんだよ?

基地内でならともかく…………ねぇ?

 

「持ってないよ?私ずっとこの服着てたから」

 

まあそうだよな。

彼女達のような戦術人形がいる場所は硝煙と血煙が漂う戦場だし、そもそもこうやって街に出るって機会そのものが少ないだろう。

だが、俺の基地にいてる間くらいは少しくらい自由に居ても良い筈だ。

 

「そうか。だったら服でも買いに行くか?」

「えっ?ええっ!?指揮官が買ってくれるの?」

 

虚を突かれたような顔で俺を凝視するSOPちゃん。

そうと決まれば行くか、UNI〇LOへ!

 

 

 

 

 

 

2062年でもかの店は健在だ。

よく今の時代まで残ってるよな。流石はUNI〇LOだぜ!

さて、ここで問題が発生した。

来たのはいいが、俺は男だしそもそもファッションセンスなんて欠片もない。

SOPちゃんも普段なら足を運ぶ事のない場所に来たからか、一言も話さず俺の服の裾を掴んで離さない。

ここは一つ、店員さんに任せてみるか?

 

「いらっしゃいませー!どのような服をお探しでしょうか?」

 

いや、服を探してるのは俺じゃなくてこの娘なんだけど、どんな服選んだらいいのか分からなくて。

店員さんのセンスで見繕ってあげてくれないか?

お願いします!

 

「畏まりました。それではこちらにどうぞ~」

 

さあSOPちゃん。

あの店員さんについて行ってコーディネートして貰ってきなさい。

 

「え…………?指揮官は一緒に来てくれないの?」

 

ホントは一緒にいてあげたいけど、試着室まで一緒に行く訳にはいかないからね。

大丈夫さ。

鉄血と戦うのに比べたら全然大した事は無いだろう?

 

「それはそうだけど…………うん。ちゃんと待っててね指揮官!すぐに戻ってくるから!」

 

そう言ってSOPちゃんは店員さんと女性服売り場へ走っていく。

俺にも娘なんてものがいたらこんな感じなのかね?

これじゃ父親と娘みたいだな。

だからこそ、時々思い悩んでしまう。

俺が今やっている事は、ある意味においてとても残酷な事をしているのかも知れない。

どれだけ人の姿をしていても、どれだけ感情豊かでも。

彼女達は『戦術人形』という『兵器』なのだ。

本来戦う事しか求められていない彼女達に戦場とは掛け離れた事を教えてしまうのは残酷な事なのではないだろうか。

別に俺は、彼女達を『銃を持たされて無理矢理戦わされている可哀想な女の子』なんて事を思っている訳じゃない。

そんな事を考えていたら指揮官なんて務まる筈もないし、何より『戦術人形』である彼女達への侮辱になる。

だが俺は、だからこそ彼女達には色々な事を知っておいて欲しい。

形はどうあれ『戦術人形』として生まれてきた『個』である彼女達がどう生きるのか、どう在るべきかは彼女たち自身が見つけ出すだろう。

自分が『何』で、世界は『どう在るべきか』と。

 

だから俺は彼女達に与え続けるんだ。

まあ、俺が出来る事なんざ限られてるがな。

 

おそらく何十年、もしくは何百年後には人類は滅び去って地球の新たなる霊長として人形達が君臨しているかもしれない。

今よりも豊かな文明を手に入れてるのかも知れない。

どうなるかは誰にも予測がつかない訳だが。

 

 

 

 

「指揮官………」

 

おっと、SOPちゃんが来たようだな。

そして声のする方に俺は振り返って………固まった。

 

 

 

「えっと………どうかな?」

 

 

………こいつは予想外だ。

一瞬、本当にSOPちゃんかと思ってしまったくらいだ。

今のSOPちゃんの恰好は、短めの茶色のプリーツスカートに白のボタン付きのシャツ、ベージュ色のコートというものだ。

服装が変わっただけなのに雰囲気までもがガラリと変わってしまっている。

何だか急に成長した感じに見えるぞ。

 

「指揮官?どうしたの?………やっぱり似合ってないのかな?」

 

「とっても良い!!最高!!SOPちゃん超可愛い結婚しよ!?」

 

ハッ!?俺は一体何を口走って………!

 

「そ、そうかな?指揮官が良いって言うなら………」

 

そう言って頬を若干紅く染めてもじもじするSOPちゃん。

やめるんだ、その動作は俺に効く。

 

 

………あ、鼻血が。

 

 

 

 

 

 

 

 

指揮官が鼻血を出している頃、街の一角にあるスーパーにその二人はいた。

 

 

「騒がしい所ね。耳が痛くなりそうだわ」

「我慢するしかありませんね。人間の街というのはこういう物らしいですから」

 

短めの黒髪に色白の肌の女性………『イントゥルーダー』がハア、と手を頬に当てながら呟くと同時にツインテールの少女『スケアクロウ』が言葉を返した。

彼女達は鉄血人形のハイエンドモデルである。

イントゥルーダーは別名で侵入者とも呼ばれており、スケアクロウも案山子という呼び名が存在していた。

 

そんな彼女達がなぜ街に居るのかというと。

 

 

「全く、何で私達が洗剤を買う為に人間の街に来なくちゃいけないのよ」

 

 

イントゥルーダーは不機嫌そうに言う。

そう、全ての原因は先日グリフィンの基地に襲撃を仕掛けにいった処刑人が返り討ちにされ、逃げ帰ってきた時にどこからか持って帰ってきた袋だ。

外に捨ててくればいいものを、態々司令部で開けてくれた処刑人とハンターの所為で鉄血の首脳部はこの世のものとは思えない異臭に晒される憂き目を見たのである。

余程の臭いであったのかデストロイヤー・処刑人・ハンターは気絶し、アルケミストは『これは新しい拷問として使えそうだ………ゴフッ』と言ったまま屍のように棒立ちになり、ドリーマーは鼻と口を抑えてトイレに駆け込み、ウロボロスは口からグハッ!?と疑似血液を吐いたまま動かなくなり、代理人は即座に防護マスクを自身とエリザに装着していた。

 

問題はその後服に染みついた匂いである。

どれだけ洗っても臭いが取れない。

あっという間に洗剤がなくなり、早急に調達する必要に迫られた首脳部は別件で司令部を離れ難を逃れていたイントゥルーダーとスケアクロウに頼み込んで洗剤を買いに行って貰ったのである。

 

 

 

「そもそもの原因はあれを持ち帰ってきた処刑人でしょう?彼女が率先して来るべきなのよ」

「仕方ありませんよ。土下座をしてでも頼んでくるくらいですからね。まあ私はウロボロスの無様な姿が見れたので満足ですが」

「貴方って結構毒舌よね。そんなにウロボロスが嫌いなのかしら?」

「嫌い………と言うよりは『気に入らない』と言った方が正しいでしょうか。彼女は少しプライドが高すぎるというか………傲慢な所があって戦闘においても短気さと浅慮さが見え隠れしています。彼女の指揮下で命を預けようとまでは思えないですね」

 

 

そんな会話を交わしながらスケアクロウは棚に並んでいる洗剤を凝視している。

様々な種類があるが、どれを選んでいいのかが分からない。

 

「お客様、洗剤をお求めでしょうか?」

「はい、洗剤を………ッ!?」

 

唐突に声を掛けられたスケアクロウが振り返った先には一人の男が立っていた。

彼が着用している服には『最強?いいえ店長です』いう文字がプリントされている。

センスを疑うしかない。

 

「お客様?どうかされましたか?」

「あ、いえ。何でもありません。店長さん、強力な臭いも取れる洗剤はあります?」

「ああ、それならこのスリジャヤワルダナプラコッテ洗剤が一番………」

 

 

 

 

二人の洗剤買い出しの旅はもう少し続きそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

「何だって?スケベクロウにインキュベーター?変わった名前だな」ーーーーーーとある基地の変態指揮官

 

「スケッ………⁉︎間違え方に悪意を感じますね」ーーーーーー鉄血のハイエンドモデル・スケアクロウ

 

「私は某魔法少女アニメに登場する白い生物じゃないわよ‼︎」ーーーーーー鉄血のハイエンドモデル・イントゥルーダー

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

SOP「罰ゲーーーーーームッその2!だよ、指揮官♪」指揮官「マジすか」

今俺は危機に直面している。

何故かって?

そりゃお前、服を買った後俺の腕をつかんで離さないSOPちゃんの所為だよ!

理性と煩悩が俺の頭の中でグルグルと渦巻いている。

 

「~~♪~~♪」

 

見ろよこの笑顔。

鼻歌まで歌っちゃってご機嫌な様子だ。

 

「なあ、SOPちゃん。他に行きたい所はあるか?」

「別にどこでもいーよ?」

 

これである。

何気に、気付けばもう夕方に差し掛かっていた。

 

「そうだ、皆に何かお土産でも買っていかないか?皆も喜ぶぞ」

「うん!でも、何買っていけばいいかなあ?」

 

何を買うかはスーパーに行ってから考えよう。

SOPちゃんも欲しいものがあるなら買ってもいいぞ。

………俺の財布が許す限りはね。

 

 

 

 

 

さあ、またも来てしまったぞこのスーパーに。

そういやここの店長には鍋の時の借りがあるんだよな。

あの野郎、今度見たら覚えとけよ。

 

「M16は酒だろ、M4にはスイーツでも買ってくか」

ん?AR-15には何を買っていくかって?

ハッ、そんなの牛乳に決まってんだろ!

あのツルツル滑り台娘にはメ〇ミルクがお似合いだろうからなあ!!

ククッ、牛乳を受け取った時のアイツの間抜け面を想像すると笑いが込み上げてくるぜぇ!!

 

 

そういやSOPちゃん、君は何が欲しいって………あれ?

いない!?何処に行ったんだ!?

………まあいいか。

あの娘が行きそうな場所は多分お菓子コーナーとかだろう。

買う物買ったら探しに行くか。

SOPちゃんなら変な奴が来ても瞬殺だろうし、心配しなくても大丈夫だろう。

 

 

 

俺はそう思って買い物を続けた。

 

 

 

 

 

それが最大の過ちだと知ったのは暫く後であったが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フンフフフ~ン♪」

 

上機嫌でSOPは店の中を歩いていた。

その姿は完全に年頃の子供である。

 

「何にしようかな~?………あれ?」

 

ふと横を見ると、小さな女の子が居る事に気付く。

 

「あなたもお菓子買いに来たの?」

「えっ?う、うん」

 

SOPが微笑みながら女の子に話しかけると、女の子は急に話し掛けられた事に驚いたのか若干遠慮がちに答えた。

 

「えと………おねえちゃんもそうなの?」

 

遠慮がちに返された声にSOPは頷きながら女の子の頭を撫でた。

 

「そうだよー。ねぇ、おねえちゃんにもお勧めのお菓子ってある?」

「うん、これとか………」

 

その時だった。

 

「………………!」

 

嫌な気配を感じて振り返ると、数人の男たちが二人を取り囲むように立っていた。

直感でSOPは感じ取る。

男達が醸し出す獲物を狩る獣のような目線。

戦場で負傷した己を見る鉄血のクズがする目だ。

SOPは警戒しながら女の子を後ろに庇う。

すると一際ガタイのいい大柄の男が二人に、正確にはSOPに近づいて話しかけてきた。

顔を怪我でもしているのか、顔中傷だらけだ。

 

「なあ、お嬢ちゃん。ちょっと聞きたいことがあるんだけどよ、こういう顔をした奴に見覚えはねーか?」

 

男が見せてきた写真には他ならぬ指揮官の顔が写っていた。

 

「う~ん?私は知らないよこんな人」

 

SOPが答えると男は「そうか、邪魔したな」と言うと去っていく。

 

「ああ、そうだ。もう一つ言う事があった」

 

と、再び男が身を翻しSOPに向き直る。

 

 

 

 

「お前がその男と一緒にいた事も、お前が人形だって事も全部知ってんだよ、クソガキ」

 

 

 

 

そう言うや否や、男がSOPに蹴りを繰り出す。

 

「遅いよ」

 

蹴りを難なく避けたSOP。

反撃をしようと拳を構えた所で………その動きが止まった。

 

「そうだな?それが正しいぜ」

 

ニヤリ、と男が笑みを浮かべながら笑う。

SOPの視線の先には、刃物を突き付けられている女の子がいた。

 

「ひっ………!」

 

「さあ、少しだけ一緒に付き合ってもらおうか。拒否すればこの娘がどうなるか………一々言わなくても分かるよな?」

「………………」

 

SOPは表情を険しくしながら拳を握りしめ、男達の言われるがままに店の外へと連れ出されていった。

 

 

 

 

 

 

二人が連れてこられたのはスーパーの裏にある暗い路地だった。

 

 

「どうしてオレ達が写真の男を探してるか分かるか?」

「し~らない。どうせくだらない理由でしょ?」

 

SOPが笑いながら答えると同時に、男がSOPの服の襟首を掴んで地面に叩きつけた。

 

「はん、口の減らねぇ女だ。オレ達はコイツにちょっとした恨みがあるのさ。金を貸してくれって言っただけなのに顔面を殴られたんだぜ?」

「つまり大勢で掛かってお金を巻き上げようとして、逆に返り討ちにされたって事?」

 

SOPの馬鹿にするような声に男達がいきり立つ。

 

「フン。そんな口ばかり叩いていいのか?それ以上ふざけた事抜かすなら、この娘が大変な事になっちまうぞ?」

 

男がそう言うと、女の子の首に刃物を突きつけた。

 

「………ッ!」

 

女の子の顔が恐怖に染まる。

 

「お前らはエサだ。あの野郎を誘き出すためのな。だがその前に………少しだけ楽しませて貰う。抵抗するなよ?したらどうなるか分かるだろう?」

 

男がそう言うと強烈な蹴りがSOPの腹に食い込んだ。

襲ってくる痛みにSOPは腹を抑えて咳き込むが、間髪入れずに拳が横腹を殴りつけて地面をゴロゴロと転がった。

 

「おい、お前らも好きなようにやっちまえ。まだ殺すなよ?あの野郎にボロボロの姿になった此奴を見せつけてやらねぇと面白みがないからなあ!!」

 

男の声に、他の男達もニヤニヤと笑いながらSOPに近づき暴力の嵐を浴びせ始める。

 

「っおねえちゃん!!」

「ダメッ!こっちに来たらダメだよ。そこで大人しくしてて。お姉ちゃんは大丈夫だから」

 

あまりの仕打ちに女の子がSOPの元へ駆け出そうとするが、SOPは額から血を流しているにも関わらずニッコリと笑って片手で制止した。

 

「泣かせてくれるなあ?無様なもんだな。戦術人形も人質一人でこの様だ。兵器の癖に下手に感情持ってるからこうなるんだよ。………そうだ面白い事をもう一つ思いついたぞ」

 

そう言うと男はSOPに近づき、彼女が来ていた服を無造作に引きちぎった。

上半身がはだけて素肌が丸見えになる。

 

「へぇ?人形の身体ってのも存外良いじゃねーか。なあ、これから何をされるか分かるか?」

 

男の下卑た問いかけにSOPは黙ったままニコニコと笑みを浮かべていた。

 

「気味の悪い女だな。何がそんなに可笑しいんだ?」

 

男が聞くと同時だった。

 

 

 

「クッ、アハハハハハハハハハハハハハハハ!!」

 

 

笑い声が、狂笑が路地に広がる。

声は止まらない。

異様な雰囲気がその場を支配していくことに男達は恐怖を覚えた。

 

 

 

「覚えた。あなた達の顔、言葉。全部ぜ~んぶ覚えたよ。つまり何が言いたいかって言うとね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「殺す」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゾンッ!と濃密な殺気が充満していく。

純粋な悪意も敵意も存在しない『殺意』。

 

男達は恐怖した。

殴られ蹴られ、ボロ雑巾のようになっているたった一人の人形に。

 

「………まれ!黙れ黙れ黙れってんだよこのクソ人形がッ!何が殺すだ、今のお前に何ができんだよ!!ああ!?誰も助けになんてこねーんだよ!!」

 

激昂することで無理矢理恐怖をごまかし、男はSOPを更に殴りつけた。

 

 

 

「いいや、そうでもないな」

 

 

 

どこからか声が聞こえた。

その声に覚えのあるSOPは声のした方を向く。

それと同時に、刃物を女の子に突き付けていた男が糸の切れた人形のように崩れ落ちた。

 

 

 

 

 

「やりたい放題やってくれたじゃねぇか。さあスクラップの時間だぜ、クソ野郎ども」

 

 

 

 

 

そう言って指揮官はゴキリ、と首を鳴らして笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は少し遡る。

 

 

 

「えーっと、ジャック・ダニエルは買っただろ。スイーツと牛乳も良し。こんなもんかね」

 

買い物も一段落したな。

後はSOPちゃんを探し出して帰るだけだが………ん?

ふと視線を感じて振り返ると、洗剤が大量に入った買い物カゴを持った女性が二人居た。

何だあの2人。

俺の事をじろじろ見てるが………。

 

「えーっと、すいません。何か御用ですか?」

 

「いえ、どこかで見た顔だと思ったので。ごめんなさいね、人違いだったみたいです」

 

近づいて俺が話しかけると、黒髪色白のスレンダーな女性が柔和な笑顔を浮かべながら答えてくれた。

綺麗な人だな。

この人の横にいるツインテールの人も整った顔立ちにマスクを着用している。

まるで人形みたいだなあ。

おっぱいも良い感じに大きいなー………ってイカンイカン!

曲がりなりにもSOPちゃんとのデート中に何を馬鹿なことを考えてるんだ俺は!

くッ、今日ほど煩悩と理性の狭間で戦った日はないぜ。

 

「ああ、そうですか!いやー、よく間違えられるんですよね!」

「そうなんですか。それでは、私達はこれで」

「あ、ちょっと待って下さい。一つお聞きしたいことが自分にもあるんですよ」

「あら、何でしょう?」

 

 

 

 

 

 

 

「鉄血人形の方がどうしてこんな所に居るんですか?」

 

 

 

 

 

 

 

スゥ、と場の空気の温度が下がる。

常人なら気絶しそうな程の殺気が俺に降りかかった。

 

「………………いつから気が付いたのかしら?」

 

黒髪の女性が口角を釣り上げながら問いかける。

ははあ、コイツは恐ろしいな。

とんでもねぇ藪蛇つついたもんだ。

 

「勘って言えば納得してくれるか?」

「成程ね。………で?どうするの、グリフィンの指揮官さん?」

 

彼女の瞳には虫けらを見る冷笑が浮かぶ。

コイツも最初から俺の正体に気付いてたのか。

とんだ食わせ者だな。

 

「寄せよ。俺は別にアンタらをどうこうしようだなんて思っちゃいないぜ?」

「そんな言葉だけでこの場を乗り切れると思ってるの?少しは面白い返答を期待したのだけれど、失望したわ」

 

あーヤベ。

小便漏れそうだな。

美人さんの笑顔が超怖いって思ったのは久しぶりだ。

さーて、どうすっかな。

まあ、これこそ俺の望んだ展開なんだけどよ。

 

「そうかい。ならアンタは俺をどうするつもりなんだ?武器も持ってないのに」

「素手でも人間一人殺すことくらい訳ないわ。消えなさい。永遠にね………ッ!?」

 

俺を刺し貫こうとした手が止まる。

理由は簡単、俺が先に懐に忍ばせていた拳銃を眉間に突き付けたからだ。

 

「(な………一体いつの間に!?動きが一切見えなかった………!)」

「なあ、ここは一つ穏便に済ませないか?俺は何もするつもりはない。………な?」

 

俺がそう言うと黒髪の女性は笑みを浮かべて両手をあげた。

 

「降参よ、降参。だからその物騒な物を下げてくれないかしら?」

「おう、いいぞ。だったら後ろから俺を今にも殺そうとしてるツインテちゃんをどうにかしてくれ」

 

この女性も怖いが、もう一人のツインテちゃんも相当なもんだ。

何が怖いかって言うと、殺気がない。

敵意も悪意も殺意もない。

何の意識も待たずに殺しにかかってくる奴が一番厄介だ。

ツインテちゃんも油断ならねぇなあ、おい。

 

「スケアクロウ、いいわよ。手を下ろしなさい」

 

黒髪の女性が言うとツインテちゃんはスッと腕を下ろした。

 

 

「あ~怖かった怖かった。いきなり殺そうとするなんて酷いなアンタ」

「だったらどうしてあんな事を言ったのかしら?余計なことを言わずに知らない振りすればこんな事にはならなかった筈よ?」

「仮にも俺はグリフィンの指揮官だからな。鉄血人形が街のスーパーに居るのを黙って見過ごす訳にはいかないんだよ」

「もし私が降参せずに貴方を刺し殺していたらどうするつもりだったの?」

「もしアンタが俺を殺していたとしても大して何も変わりはしないさ。俺が居なくなった所で基地にいる人形達は今まで通りお前達を潰すだけ。そして何時かアンタらの喉笛を食いちぎる」

「自分の命すら駒の一つって事?面白い、面白いわね。狂ってるわ」

「気に入って貰えたなら結構。ま、純粋に買い物をしに来たってだけなら俺はとやかく言うつもりはない。問題さえ起こさなきゃな。それに………」

「それに?」

 

 

「アンタこそ、俺があそこで知らん振りしてたら俺が店から出た後殺すつもりだったろ?」

 

 

「へぇ………………よく分かってるじゃない貴方」

 

 

彼女の瞳が妖しく光る。

やっぱ食えないわ、お前。

 

 

「ところで今更感あるんだが、アンタら何て名前なの?」

「あら、とっくに分かってるんでしょう?なのに態々言わせようとするだなんて食えないわね」

 

お前が言うなよ。

 

「まあいいわ。私は個体名『イントゥルーダー』。侵入者とも呼ばれているわね。でこっちの彼女が」

 

「スケアクロウです。これで満足ですか?」

 

黒髪の女性もとい、イントゥルーダーの言葉を遮るようにしてツインテちゃんことスケアクロウが答える。

成程成程。

 

 

「何だって?スケベクロウにインキュベーター?変わった名前だな」

 

 

 

「スケッ………!?間違え方に悪意を感じますね」

「私は某魔法少女アニメに登場する白い生き物じゃないわよ!!」

 

 

2人が天井に染みついたシミを見るような視線で俺を見てくる。

流石だな、伊達にハイエンドモデル名乗ってる訳じゃないってことか。

てかアンタあのアニメ知ってるのか。

サブカルに染まってんじゃん。

 

「冗談だ冗談。それで、インなんとかさんはどうしてこの街に来たんだ?観光って訳じゃないだろ?」

「イントゥルーダーよッ。洗剤を買いに来たの。事情は話せないけれど色々あってね。心配しなくても今日この街で事を起こすつもりはないわ」

 

洗剤ねぇ。

でも二人で使うには多すぎないか?

まあどうでもいいけど。

 

「それにしてもよく私達が鉄血だと分かったわね?理由を聞かせてくれるかしら?勘とか言うのは無しよ?」

「理由だって?分かるに決まってんじゃん。俺はお前達ハイエンドモデルを、胸の形と大きさで記憶しているからな」

 

「変態ね、貴方」

 

イントゥルーダーの汚物を見るような視線が俺に突き刺さる。

ふっ、たまらねぇぜ!

 

「あッ!そうだ、こんな事してる場合じゃない」

 

SOPちゃんを探しにいかないと。

こんな所で油売ってる場合じゃないんだよ。

 

「悪いな、ちょっと急用を思い出したから帰るわ。戦場で会わないことを祈ってるぜ」

「そう、残念。私はまた会いたいわよ?」

 

 

こえーよ。

お前にだけは戦場で会いたくねぇ。

 

 

 

 

 

 

 

 

おーい!SOPちゃん!

おかしいな、何処にも居ない。

勝手に店から出てったとは思えないが………。

仕方ない、誰かに聞いて回るしかないか。

 

 

 

 

 

~数分後~

 

クソッタレが!

馬鹿だ、大馬鹿だ俺は!

油断してた、SOPちゃんは『戦術人形』だから大丈夫だと完全に油断していた!!

その結果がこれだ。

確かにまだ何か事件に巻き込まれたと決まった訳じゃないが、これだけ探していないってなると………!

 

 

 

「あら?また会ったわね。どうしたのかしら息を切らして」

 

 

 

後ろから聞こえてきた声に振り向くと、イントゥルーダー達が居た。

 

 

 

「連れが居なくなったんだよ。だから探してんだ」

「へぇ?詳しく聞かせて頂戴」

 

俺は事情を説明する。

 

「その連れの人形って、M4SOPMOD IIよね?」

 

ああその通りだ。でもよく知ってるな?

 

「有名よ彼女は。人形虐待癖のある狂犬って言われてるわ。成程、じゃあ私が見かけたあの子は彼女だったのね」

 

どういう事だ?

 

「見たのよ、SOPMODを。私服を着てたから良く似た他人と思ってたのだけれど。彼女なら、見るからにガラの悪そうな男達に囲まれて店の外に連れていかれてたわよ?」

 

何だと………!?

まずい、一番最悪な奴だ!!

何処だ、何処へ連れていかれたか分からないか!?

 

「店の裏側に歩いて行ったからその辺に居るんじゃないかしら?それと、もう一人人間の子供が居たわね。大方人質でも取られて丸め込まれたんでしょう」

 

そうか!スマン、ありがとう‼︎

今度街で会う事があったらケーキ奢ってやるよ‼︎

またな‼︎

 

 

 

「騒がしい人間ですね、全く」

 

走り去っていく彼の背中を呆れたように眺めながらスケアクロウが呟く。

 

「ありがとう………ねぇ?仮にも敵である私達に言う台詞じゃないわよ、変わり者の変態指揮官さん?」

 

イントゥルーダーも同様に楽しげに呟いた。

 

 

 

 

 

 

SOPちゃんを探して店の裏手に向かうと、そこには男達に囲まれ殴る蹴るの暴行を受けているSOPちゃんの姿が目に入った。

 

あの連中、見覚えがあるな。

前に俺とM16とUMP45でボコボコにした奴等だ。

 

 

………そうかい、復讐って訳か。

大体察しはついたよ。

 

先ずは人質にされている女の子を助けないと、どうにもならない。

今ここで無闇に飛び出せば思うツボだ。

 

物陰に隠れながら少しずつ近づいていく。

幸いな事に男達の目線はSOPちゃんに注がれていて背後から迫る俺に全く気付いていないようだ。

下らない戯言が聞こえてくる。

 

 

「いいや、そうでもないな」

 

 

俺はそう言って、女の子を捕まえている男の頭を殴って昏倒させた。

 

 

 

「お、お前は………!」

 

一際ガタイのいい男が俺を見て目を見開く。

 

 

 

「やりたい放題やってくれたじゃねぇか。さあスクラップの時間だぜ、クソ野郎ども」

 

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

「帰るか、俺達の基地に」ーーーーーーとある基地の変態指揮官

 

「うん、指揮官♪」ーーーーーーAR小隊の隊員・M4SOPMODⅡ

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

SOP「罰ゲーーーーーームッ!その3だよ♪」指揮官「マジすか」

今回は短めです。


人質にされていた女の子を助けた俺は、SOPちゃんに向き直る。

 

「ごめんな、SOPちゃん。来るのが遅れちまった」

「大丈夫だよ、指揮官。こいつら潰して帰ろう?」

 

俺の言葉に笑顔で返してくれるSOPちゃん。

だが、その笑顔とは裏腹に彼女の瞳に激情が宿っているのをひしひしと感じた。

SOPちゃんの服は無惨に引き裂かれ、額から血が少しだけ流れている。

 

「お、お前………!何故だ、何故この場所がッ⁈へっ、まあいい。元よりお前が目的だったんだ。死ねッ!」

 

リーダー格の男が醜悪な笑みを浮かべると懐から拳銃を取り出す………が引き金に指を掛ける前に手首を銃弾が貫く。

勿論撃ったのは俺だが。

 

「ガアッ⁉︎て、てめッ⁉︎いつの間に⁉︎」

 

「遅いぞ、もっと早く抜け。そんなんじゃ、お前が俺に殺されるぞ?」

 

遅すぎる。

ガンマン対決じゃないが、早く抜いて撃つ技術は習得しておいて損はないな。

馬鹿みたいに喚きながら地面を転がる馬鹿を放っておいて、俺は取巻きの男達を一瞥する

 

「一度だけチャンスをやる。さっさと失せろ」

 

俺が睨みつけるとリーダー格以外の連中がヒッ!と叫びながら背中を向けて逃げていく。

小物すぎるだろ、お前達。

 

「残ったのはリーダーのお前だけか。覚悟できてんだろうな?じゃ、悪党は悪党らしく大人しくボコボコにされてくれるか?」

 

「舐めやがって………!調子に乗ってられるのもそこまで…ギャアアッ⁉︎」

 

リーダーの男がそう言うと同時に絶叫をあげて悶えだした。

よく見ると、SOPちゃんが男の手に噛み付いたらしい。

余程の力だったのか手の肉が千切れて血が滴り落ちている。

 

「痛ェ!いてぇよクソがッ⁉︎いいのかよ、仮にもグリフィンの指揮官やってる奴が一般市民に危害を加えても⁉︎」

 

「一般市民ね。よく言うよ、チンピラが。先に銃を向けたのはお前だろ。それにSOPちゃんに暴力を振るった上に女の子を刃物で脅して人質に取った。むしろ、その程度の怪我で済んでる事に感謝するんだな」

 

「マ、マスコミにある事ない事ブチまけるぞ!それでもいいのか⁉︎お前も、その人形も立場が悪くなるんだぜ⁉︎」

 

「そうかい、勝手にしな。だが周りの人間はどう見るだろうな?こっちには、この女の子という証言者もいるし、店でお前がSOPちゃんと女の子を連れ出してる所を目撃してる人もいる。不利になるのはお前なんじゃないか?」

 

「くッ………クソがッ!覚えてろよ!」

 

捨て台詞を残して手を押さえながら男は必死に走って表通りへと逃げて行った。

………ホントにクソ雑魚小物だったな。

それより、SOPちゃん大丈夫か?

傷だらけじゃないか。

あいつら、くだらねぇ真似しやがって。

 

「大丈夫。それより、その娘に怪我とかはない?」

 

ああ、それなら問題ない。

女の子は無事だよ。

 

「お姉ちゃんッ!」

 

女の子がそう言うとSOPちゃんに駆け寄る。

 

「お姉ちゃん、血が出てるよ!病院行かないと!」

「これくらい大丈夫!ほら、泣かないで」

 

SOPちゃんはそう言ってポケットからハンカチを取り出すと女の子の涙を拭いてあげた。

 

さて、それじゃその娘の親を探して送り届けに行こうか。

勿論、服着替えてからだが。

今のSOPちゃんはあのクズに服を破られて、あられもない姿になっている。

 

それはつまり、SOPちゃんの大事な部分が見え掛けている訳で。

すると、俺の視線に気がついたのか

 

「どうしたの指揮官?………なぁ〜んだ、そう言う事かぁ。指揮官の変態ッ」

 

などと言ってきた。

待て、待つんだSOPちゃん。

俺は君をやましい気持ちなんかで見ちゃいない。

そんな目で俺を見るんじゃない。

 

「お兄さん、変態さんなの?」

 

女の子が俺を何とも言えない目で眺めてくる。

違うって!

俺は変態だが流石に今の状況でそのスキルは発動しないぞ⁉︎

 

 

 

 

 

 

 

その後、無事に女の子を親元へと送り届けた俺達は基地への帰路についていた。

女の子が別れ際にSOPちゃんに向かって大きく手を振っていて、SOPちゃんも手を振り返していた。

………何だか微笑ましい光景だったなあ。

因みにSOPちゃんの服は何時もの黒いジャケットに着替えている。

破られた服はどうするのかと聞いた所、持って帰って修繕するそうだ。

春田さんに頼むらしい。

確かにあの人なら綺麗に修繕してくれそうだが。

 

 

「………にしても、意外だな」

「何が?」

「SOPちゃんが意外にも、お姉ちゃんしてた事だよ」

「むー。私だって子供じゃないんだよ?」

「そうか。でもSOPちゃんの別の一面を見れたのは貴重な経験だったな。子供っぽいなーって思ってたんだけど」

「指揮官、今まで私の事をそう言う目で見てたのー?」

 

頬を少しだけ膨らませて抗議の眼差しで見てくるSOPちゃん。

控えめに言って可愛い。

 

「ごめんな。俺がボーっとしてたが為に、SOPちゃんに不愉快な思いをさせてしまった」

「ううん、そんな事ないよ指揮官。色々あったけど、今日はとっても楽しかった!また今度一緒にお出掛けしよう?」

「おっ、そいつはデートのお誘いか?俺みたいな変態はやめといた方がいいぞ〜」

「………もう、指揮官のバカ。変態ッ」

 

ニヤリ、と俺が笑みを浮かべて手をワキワキと動かすとSOPちゃんはニコニコと笑って言った。

 

今日は俺も楽しかったよ。

この謎企画が始まってからまだ初日だが、いい思い出になった。

 

「帰るか、俺達の基地に」

「うん、指揮官♪」

 

 

 

 

 

 

その頃、街の外れで。

 

 

 

「ハアッハアッハアッ………!クソがッ!あのクソガキ、思いっきり噛みやがって!あいつら今度会ったら必ず殺してやる!」

 

男は取巻きの男達とともに、街の外れにまで来ていた。

包帯が巻かれた両手からは血が流れ、男は苦痛と憎悪に顔を歪める。

 

「もうまどろっこしい手段は使わねぇ!まだアイツらは街にいる筈だ、戻って今度こそブチ殺してやる!お前ら、武器をありったけ用意して殺しに行くぞ!」

 

男はそう叫ぶと再び黒い笑みを浮かべてーーーーーー

 

 

「あら。面白そうな事してるわね」

 

 

横から突然聞こえてきた声に凍りついた。

 

 

 

次の瞬間、男達は全員がその両手足を失い地面に転がる。

 

 

 

 

「は?………あ………ぇ⁉︎」

 

 

 

リーダーの男は何が起こったのか認識できずに辺りを見渡す。

すると、2人の女性が自分を見下ろしているのが視界に入った。

 

「人間って脆いのね。前から知っていたけど」

 

クスクスと黒髪の女性が笑いながら言う。

その笑みに浮かぶ冷徹さに男は身体を襲う激痛すら忘れて恐怖に慄いた。

 

「困るわ。あのグリフィンの人間は私が目を付けてるのよ?貴方達みたいな下賤の輩に手を出されるのは気にくわないの。だから、悪いけどここで死んで下さるかしら?」

 

男の目には、本来なら見惚れる美貌の女性の笑顔が酷く恐ろしく醜悪に見えた。

 

「あ………あ………!」

 

 

「そうそう。この辺りは暗くなると野犬が出るそうよ?日が完全に沈む前に帰る事をお勧めするわ。まあ最も、帰る足があればの話だけれど」

 

 

 

さようなら、と言い残して2人の女性は去っていく。

 

 

男達がその後どうなったかなど、態々言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

「たっだいまー‼︎」

「帰ったぞー。基地に異常はないか?」

「おや、随分帰ってくるのが遅かったな。楽しめたか?」

 

PM2100。

基地に帰った俺達を出迎えたのはM16だった。

ニヤニヤと含み笑いをしながら俺とSOPちゃんを交互に見る。

 

「楽しかったよ。後半邪魔が入ったがな。で、明日は誰なんだ?」

「そう急くな指揮官。何だかんだで一番楽しんでるんじゃないか?」

 

バカ言え。

俺はさっさとこの謎企画を終わらせたいだけだっての。

 

「そうなのか?ふふっ、どうなんだろうな?さて、それならクジを引くとしよう。今回この名誉な役に選ばれたのはG11だ!G11、頼むぞ」

 

「うん………これ終わったら寝てもいい?」

 

瞼を擦りながらG11がクジの箱をゴソゴソと漁る。

 

そして。

 

 

「ほほーう………これはまた…。さあ発表するぞ!次の人形恋愛前線に選ばれたのは‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『M4A1』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

「可愛い。結婚しよ」ーーーーーー罰ゲーム企画『人形恋愛前線』に参加させられている哀れな男・とある基地の変態指揮官

 

「は、はいッ⁉︎よ、宜しくお願いします‼︎」ーーーーーーAR小隊の隊長・M4A1

 

「くっ………!認めない、認めないわ!今度こそアンタに勝つ!」ーーーーーー404小隊の隊員・HK416

 

「じゃあ次の勝敗はG級のリオレウス希少種を何分で狩れるかで決めるぞ。異論はないな?」ーーーーーーAR小隊の隊員・M16A1

 

「仕事しろ!」ーーーーーーAR小隊の隊員・AR-15

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

M4「バ、罰ゲーーーーーーム…です」指揮官「お、おう」

更新遅れてしまってスマヌ………。


朝。

いつもの様に俺の顔を太陽の暖かい日差しが照らす。

昨日の夜は大変だったな。

クジ引きの後、夜遅くまでバーで飲んでたらG36ことメイド長に絡まれた。

全く、何が「火遊びは程々に」「目を離すと喰い散らかしますから」だ。

確かに俺は変態であるが一線を超えたことなどない。

何が喰い散らかすだ。

俺はそんな好色肉食系男子じゃねぇっての。

 

まあでもアレだな。

今まで散々セクハラ変態行為をしておいて言うのも何だが、暫くは変態を自粛するか。

 

………と、そろそろ奴が来る時間だな。

 

 

「あーたーらーしーいー朝がー来たー!」

 

 

昨日と同じく鍋を片手にお玉をカンカンと打ち鳴らしながらM16が部屋に入ってくる。

当たり前みたいに入って来てるけどさ、ここ俺の執務室なんだけど。

せめてノックくらいしようぜ?

 

「お早う指揮官。昨日はよく眠れたかな?」

 

ああ良く眠れたよ。

お前が来るまではな。

 

「そうか。まあそれはさておき、今日はM4とのデートだったな?………指揮官、これは一々言わなくても分かるだろうがM4は私の大事な妹なんだ。普通に過ごす分には構わんが手を出したらどうなるか………後は分かるな?」

 

分かってるよ。

そんな凄まなくても何もしないっての。

その辺はわきまえてるから心配するな。

 

「それなら良いがな。昨日SOPから聞いたが、変な輩に絡まれたそうじゃないか。まあ指揮官が助けてくれたから良かったと本人は言っていたが」

 

あー………あの連中の件ね。

気を付けないとまた現れそうだ。

暫くは警戒しないと駄目だな。

徒歩で行くのはあまり良くないかも知れない。

ならどうするか………………そうだ!

 

その手があったな。

よし、そうと決まれば行動に移るとするか。

 

「おや、指揮官?また何か新しい企みでも思いついたのか?」

 

おうともよ。

我ながら良いアイデアが浮かんだのさ。

それはそうとM16、さり気なく俺の机の上にあるレーズンパンを食べるな。

冷蔵庫の中にある牛乳を当たり前みたいに飲むんじゃない。

 

「んっぐ………ふぅ、やはり朝はパンと牛乳に限るな!じゃあな、指揮官!」

 

いや、お前マジで何しに来たの?

俺の部屋にある食料を漁りに来ただけか⁉︎

そんないい笑顔されても全く嬉しくないんだけど。

 

後、鍋とお玉を放置したまま帰るなッ!

 

 

 

 

 

 

AM0850。

昨日と同じ時間に門の前に向かうと、やはりというべきかM4A1がそこに居た。

しかも私服を着ている。

何処かで買ったのか?

 

「こ、これはM16姉さんが私用にって貸してくれた服です。昔着てた服だと言ってました」

 

ふーん、あのM16がねぇ?

意外だな。

 

「指揮官………ど、どうですか?」

「可愛い。結婚しよ」

「ふぇっ⁈」

 

おっと不味い不味い。

思わず本音が出てしまったぜ。

今のM4の服装を簡潔にまとめるとライトグリーンの長袖ボタンシャツに白のロングスカート、そして黒縁の眼鏡。

………こうして見ると、ホントに一人の女性としか見えないな。

今のM4の姿を見ても、誰も彼女が戦術人形だとは思わないだろう。

眼鏡をかけてるが視力が悪いのか?

人形だから目が悪くなる何てないだろうし………。

 

「こ、これは伊達眼鏡です……指揮官は…お嫌いですか?」

「全然問題ない。ノープロブレム!」

 

いやいやいや、その眼鏡を僅かにズラしながら上目遣いで見つめてくるのは反則ですわ。

待て、耐えるんだ俺!

鼻血が出ないように全身の細胞を活性化させて血流を制御しなければ………‼︎

 

「さ、さあ!出掛けるとしようか!な?」

「は、はいッ⁉︎よ、宜しくお願いします‼︎」

 

顔を若干赤くしながら挨拶をするM4。

別にそんな畏まらなくてもいいんだぞ。

気楽にいこうぜ。

 

 

「わ、分かりました。それで、今日は何処に行きますか?」

 

そうだな。

まあ昨日色々考えていたんだが、それは着いてからのお楽しみという奴で。

そんじゃ、早速車で出かけるぞ。

今日は………ドライブだ!

 

「ドライブ…ですか?」

 

おう。

車で出かけるのも悪くないだろう?

運転は俺がするから君は隣で座っててくれれば良いさ。

 

 

 

 

 

グリフィンの基地の地下に存在する駐車場には様々な自動車がある。

骨董品のようなクラシックカーもあれば、誰が持ち込んだのか第二次大戦頃の戦車まである。

………何で戦車まであるかって?

さあな、俺の前任者の趣味じゃないか?

それはさておき、俺の自家用車も2062年の今となっては時代遅れも甚だしいekワゴンだ。

新車を買うにも値段が高いし、丁度これが安く売ってたから買った。

どうせ乗る機会も余りないし、誰かを乗せるなんて想像もしていなかったしな。

 

「遠慮せず乗ってくれ。座り心地はあまり良くないかも知れないが」

「いえ、そんな事………」

 

はにかみながらM4は助手席側に座った。

控えめに言って可愛い。

 

「いい喫茶店があるんだ。今日はそこに行くつもり何だが………構わないか?」

「あ…はい、指揮官にお任せします」

 

 

 

 

 

基地から車を走らせること約20分。

街はずれの裏通りの一角にその喫茶店はある。

この喫茶店のマスターは元正規軍の対ELID特別任務部隊の隊員だった人物だ。

同じ元正規軍という点で俺と共通するものがあったからか、マスターとは意気投合して今は数少ない友人の一人となっている。

歳は俺の方が下だけど。

 

「いらっしゃい………と久しぶりじゃのう」

 

喫茶店の扉を開けると白髪の老人が出迎えてくれた。

彼がこの店のマスターだ。

 

「ようマスター。相変わらずだな」

「御主もな。横にいるのはお前のコレか?」

 

マスターが小指を立ててニヤニヤと笑う。

また変な事を言いやがって。

 

「それなら良かったんだけどな。俺は罰ゲーム中で今日この店に来たのもその一環だ」

「罰ゲーム?さては御主、また下らぬ事をやらかしおったな?あれ程火遊びはよせと忠告したというのに」

 

うるせーやい。

昨日も部下に同じ事言われたわ!

別に気にしてないけど!

全然気にしてないけど!

そもそも俺は火遊びなんかしてないっての!

 

「指揮官、火遊びって何の事ですか?」

 

M4、疑問を持つのはいい事だが今この状況で俺にそれを聞かないでくれ!

返答に困る!

 

「良いか、お嬢さん。この場合に置ける火遊びという言葉の意味はじゃな………」

「やめんかアホマスター!変な事をM4に教えるんじゃない!ほらッ、席に座って注文でもしよう!な⁈」

 

全く、油断も隙もあったもんじゃない。

強引に話を逸らして二人がけの椅子に座った。

 

「ほら、メニュー表。好きな物頼んでいいぞ?俺の奢りだから気にせず頼むといい」

「そ、そんな!流石に悪いです!私の分は私が払いますから………!」

「遠慮しなくてもいいさ。こういう時くらいカッコつけさせてくれ。普段任務を遂行してくれてる労いの一環だと思ってくれればそれで良い」

 

俺がそう言うとM4は申し訳なさそうな表情を浮かべたが、納得してくれた様だった。

 

「俺はアメリカンにするかな。M4は何にする?」

「で、では私はカプチーノで………」

 

マスターに注文をした後、互いに言葉を発する事無く時間が過ぎていく。

やべぇ、会話がない。

SOPちゃんやM16は自分からグイグイ話に食い込んでくるタイプだから会話に困った事無かったが、M4は違うようだ。

まあ確かに性格はAR小隊で一番大人しくて少し内向的な面もあるからな。

仕方ないと言ってしまえばそれで終わりだが、今の状態は良くない。

取り敢えず何か話題を振ってみるか。

 

「なあ、M4は将来の夢とかそういうのあるのか?」

「夢………ですか?」

「そうそう。例えば、鉄血との戦争が終わったら〜〜がしたいとかさ」

「わ…かりません。今までそんな事考えた事も無かったので………」

 

うーん、と言って考え込むM4。

まあそう言う反応は予想通りだな。

 

「そんなに深く考えなくてもいいんだぞ?グリフィンを退職して別の仕事をするとか、趣味に人生を費やしたいとか簡単な物でいい」

「………あまり、想像出来ないです。仮に鉄血が居なくなって平和になったとして………戦術人形の私達に居場所があるんでしょうか?」

「居場所がないなら作ればいい。M4がM4で居られる場所をな。AR小隊の皆も交えて色々試行錯誤してみるのも1つだ。別にグリフィンに留まってもいいだろうし、戦術人形として生き続けるのも君の自由だ。ただし、それは誰かに強制されたものではなく自分の意思でという前提だがな」

「指揮官、私達は人形です。私達はプログラムされた事以外の行動は取れない………分かっている筈でしょう?自分の意思なんてものは持ち合わせて居ないんです」

「ペルシカがいるじゃないか。何もかも全部終わったらアイツに頼み込んで何とかして貰えばいい。アイツなら断らないだろうさ」

「そうでしょうか………」

 

長々とした話になってしまったが、M4にはM4なりに考えておいて欲しい。

今は分からなくてもいい。

手探りでも構わない。

いつかM4が本当の自分を手に入れるその時まで、ゆっくり考えておいてくれ。

 

必ず理解出来る日が来る。

 

「分かりました。………少しだけ考えてみます」

 

僅かに微笑みながらM4が言う。

おう、よく考えて悩んでみな。

………にしてもコーヒー遅いな。

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせしました。アメリカンとカプチーノです」

 

あれから数分後、マスターがコーヒーを持ってきた。

花柄の茶碗にコーヒーを入れているというのが、また独特だ。

意外に綺麗な組み合わせだよな。

とても良い香りがしている。

コーヒー豆も仕入れが難しいんじゃないのか、このご時世。

 

「何、それがそうでもない。儂の知り合いに仕入れの調達が得意な奴がいてな。多少の値は張るものの、上手く買い付けてきてくれる」

 

成る程ね。

昔はありふれた物であったであろうコーヒーも今となっては贅沢な高級品か。

嫌になっちまうな、この世界は。

 

「所で御主、少し話があるのだが良いか?」

 

話………?

まあ構わないが………。

すまん、M4。

ちょっと待っててくれ。

 

 

 

 

 

 

 

〜その頃、グリフィンの基地〜

 

 

「くっ………認めない、認めないわ!今度こそアンタに勝つ!」

 

HK416は苛立たしげに携帯ゲーム機を持つ両手をワナワナと震わせながら悪態をついた。

 

「フッ、何度やっても結果は変わらんさ。なら次はこのゲームで勝負しようじゃないか」

 

M16は不敵な笑みを崩さぬまま416を煽るように新たなゲームによる勝負を持ちかける。

彼女に対して並々ならぬ対抗心を持つ416はまんまとその策にハマってしまった。

 

「じゃあ次の勝敗はG級のリオレウス希少種を何分で狩れるかで決めるぞ。異論はないな?」

「望むところよ………!見てなさい、私の完璧な狩りを!」

 

ギャアギャアと騒ぎながらゲームに没頭する二人の戦術人形。

その二人に近づく影が1つ。

 

「アンタ達ねぇ………!ゲームばっかりして遊んでんじゃないわよ!全く………!」

 

肩を怒らせながら現れたのはAR-15だった。

心なしか、その額には青筋が立っているようにも見える。

 

「おっ、出たな桃色まな板娘」

「出たわね、桃色スキー板娘」

 

「喧しいわッこのニートAR‼︎指揮官と同じ呼び方をしないで‼︎貴方達二人に言われると余計に腹立つわね………!」

 

M16と416の「どうよ!」と言わんばかりに主張する胸を睨みつけながらAR-15は溜息をついた。

 

「落ち着けよAR-15。ほら、昨日指揮官が買ってきたメ◯ミルクでも飲んで気を静めたらどうだ?」

 

M16はそう言うと「プフー!」と笑いながら牛乳を差し出してくる。

 

「要らんわ!もうヤダこの小隊………」

 

最早数えるのも億劫なほどの溜息をつくAR-15。

彼女の心労は日に日に高まり続けるのであった。

 

 

「いよっしゃアアアッ!全部の部位破壊達成だ!どうだ、416。この時点で勝敗はもうついたも同然だろ?」

「フン、そうやって精々胡座をかいておきなさい。最後に勝つのは私よ。私は完璧なんだから………あッ!アンタが話しかけるから間違えてモドリ玉使っちゃったじゃない⁉︎」

「おいおい、人の所為にするな。『私は完璧よ(笑)』」

「殺す!」

 

ドッタンバッタンと盛大な音を立てて取っ組み合いを始める二人。

 

「仕事しろ!」と、AR-15がブチ切れて銃を乱射するのはこの5秒後の話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で?話ってのは?」

 

「うむ………御主の連れの娘、戦術人形か?」

 

マスターは煙草に火をつけながら問いかけてきた。

相変わらずアンタは勘がいい。

 

「そうだ。よく分かったな」

「御主とあの娘の会話を聞いてたのじゃが………何を企んでおる?」

「別に何も企んじゃいない。何故そんな事を聞く?」

 

俺がそう言うと、マスターは訝しむような目つきで俺を見る。

暫くの沈黙が続き、マスターが口を開いた。

 

「儂には………まるで、御主が人形を人間に仕立て上げようとしているようにも見えるが」

「………さあ?どう思う?マスターなら理解しているだろう?俺が何を一番この世で重視しているかを」

「そうじゃな、分かっておる。妙な事を聞いて悪かった。ほれ、あの娘の所に戻るといい」

 

 

 

「1つだけ言っておこう。あまり、彼女達に入れ込むな。これはあの娘らが人形だからという事ではなく、御主の為を思うて言うておる。………過去はどうしても変えられぬのだからな」

「………………。」

 

マスターはそう言うと先に店内へと戻っていく。

 

忠告感謝するよマスター。

やっぱりアンタは優しい人だ。

だが知ってる筈だぜ?俺の諦めの悪さをな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

「指……揮………官?」ーーーーーーAR小隊の隊長・M4A1

 

「聞いてくれ!とうとう私にも春が………!」ーーーーーーG&Kの上級代行官・ヘリアントス

 

「結婚詐欺じゃないのか?」ーーーーーーAR小隊の隊員・M16A1

 

「結婚詐欺ですよ、それ」ーーーーーーG&Kの後方幕僚・カリーナ

 

「結婚詐欺ね」ーーーーーーAR小隊の隊員・AR-15

 

「結婚詐欺って何なの?」ーーーーーーAR小隊の隊員・M4SOPMODⅡ

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

M4「バ、罰ゲーーーーーーム…その2です」指揮官「お、おう」

やっぱ恋愛描写って難しいなあ………。


〜グリフィンの基地内での一幕〜

 

「ふ、ふふふふふふ………」

 

基地内のカフェでニヤニヤと笑みを浮かべながらコーヒーを飲むヘリアントスがいた。

普段とは全く違う別人のような彼女の顔に、周りにいる人形達はドン引きしている。

 

「ヘリアンさん?とてもご機嫌ですね?」

 

柔和な笑顔を見せながらカフェの店長であるスプリングフィールド(春田さんとも呼ばれている)が話しかける。

気味が悪くて誰もが知らんふりを決め込む中で、話しかけたスプリングフィールドに他の人形達は「流石春田さん……私達では気まずくて聞きにくい事でもアッサリ聞いてしまうなんて!そこに痺れる憧れるゥ‼︎」と思いながら二人の様子を伺っていた。

 

「む、やはりそう見えるのか?実はだな………この間の合コンで」

 

 

 

 

 

「結婚を前提にお付き合いさせて下さいと言われたんだ‼︎」

 

 

 

 

 

 

「「「「「何ィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィッ⁉︎」」」」」

 

 

 

ヘリアントスの衝撃の告白にカフェ内の人形達が絶叫する。

まあ無理もない。

合コン失敗が最早伝説となりつつある、あのヘリアントスがついに男の心を掴んだのだから。

 

「ええっ⁉︎それは本当ですか‼︎よかったですね、ヘリアンさん」

 

唯一スプリングフィールドだけが平静を保っていたが、流石に驚きを隠せなかったようで口元に手を当て小さく声を上げた。

 

 

「………でね、その時指揮官が…」

 

不意にカフェの扉が開き、AR小隊の面々がカフェへとやってきた。

何やらえらく騒ついているカフェにM16が疑問の声をかけた。

 

「………?今日は珍しく騒がしいな。何かあったのか?」

 

M16がそう言うと同時に、ヘリアントスが椅子から立ち上がりAR小隊の方に駆け寄って来た。

 

「聞いてくれ、とうとう私にも春が………!」

 

「話が見えないが………ま、まさか⁉︎」

 

M16は、己の勘を限界まで働かせてある結論に至る。

 

「ついに男を諦めて百合の道に走ったのか………⁉︎」

「違う。というかお前は私をそう言う風に思っていたのか?」

「じゃ、じゃあまさか…本当のホントに?」

「そうだ。この間の合コンで告白されたんだ。もうこれで恋愛クソ雑魚ナメクジなどと言わせないぞ‼︎」

 

ガッツポーズを決め込んでドヤ顔で胸を張るヘリアントスにAR小隊の面々も呆気にとられてしまう。

しかし、そこはM16。

ある可能性を思い付き、つい口に出してしまった。

 

「結婚詐欺じゃないのか?」

 

その一言にカフェの空気が凍りつく。

炎天下から氷河期にまで変わったのではないかと言わんばかりの空気が漂う。

 

「結婚詐欺ですよ、それ」

「結婚詐欺ね」

 

M16に続くようにして、いつの間にか現れたカリーナとAR-15が言う。

 

「なん………だと⁉︎それはどういう意味だ⁉︎」

 

ヘリアントスは僅かに動揺しながらM16に詰め寄った。

 

「いくら合コンで気が合ったとしても、その日のうちに結婚を前提の付き合いだなんて………怪しくないか?」

 

妙に説得力のある言葉にヘリアントスも黙ってしまう。

 

「そう言えば、その相手の男はどういう人物なんだ?」

「あ、ああ…現役の正規軍の将校だ。似たような職業をしているからか話が合ったんだ。それで、トントン拍子に………。だ、大丈夫だ!仮にも正規軍の将校が結婚詐欺なんてそんな事!」

「そんなの分からないだろ。正規軍の将校っていうのも本当かどうか怪しい。ヘリアンさんがグリフィンの幹部と知って近づいてきた可能性も………」

 

M16の言葉にヘリアントスの顔が蒼白になっていく。

 

「いや、そんな………まさか………。ま、待て!所詮それは推測だ!何の根拠もない!だが………一度確かめてみるか」

 

先程とは打って変わってハア、と溜息をついて机に突っ伏すヘリアントス。

 

「まあまあ…まだ結婚詐欺と決まった訳じゃ無いですからコーヒーでも飲んで元気を出して下さい。」

 

その姿を見兼ねたのか、スプリングフィールドが励ますように声をかける。

ヘリアントスの背中からは哀愁が漂っていた。

 

 

 

「ねぇ、カリーナさん。結婚詐欺ってなんなの?」

「いいですか、SOPさん。結婚詐欺というのはですね………」

 

 

こっちはこっちで通常運転だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マスターとの話を終えて店の中に戻ると、M4は静かにコーヒーを飲みながら窓の外を眺めていた。

 

「すまん、話が長引いてな。何を見てたんだ?」

「指揮官………」

 

M4の見ていた先には、窓の外の歩道を仲睦まじそうな親子が歩いている姿が映っていた。

 

「こんな事を言うと変かも知れませんが、あの人達を見てると、何だか………とても懐かしい気持ちになったので………」

「………そうか」

 

苦笑しながらM4が俺を見る。

その瞳は、何故だかとても切なさそうな目をしていた。

 

「おかしいですよね。私は人形なのに………懐かしいだなんて」

 

「M4………お前、泣いてるのか?」

 

えっ?と言いながらM4が目蓋を拭う。

彼女の両目からは、涙が止めどめなく流れていた。

 

「あ、あはは…ど、どうして涙流してるんだろう………?分からない………どうして?」

 

両頬が涙で濡れていく。

悲しみの滝は止まらない。

 

「指揮官………私は、何故泣いているのでしょうか…?」

 

M4が困惑した表情を浮かべ、泣きながら俺を見つめる。

 

 

 

「指…揮……官?」

 

俺は黙って彼女にハンカチを渡す。

 

「大丈夫だM4。大丈夫なんだ………」

 

 

 

M4は目を僅かに見開き、俯いてしまう。

すまない。

今の俺には、お前に何をどうしたらいいのか頭に浮かばないんだ。

こんな事くらいしか出来ないが、何の根拠もないが言っておこう。

 

「M4、お前の感情は多分正しいモノの筈だ。何かがあるからお前は泣いてるんだ。例え思い出せなくても、それは………間違いなく。お前だけが持ち得るものだ」

 

俺がそう言うとM4は頷き、暫くの間彼女の啜り泣く声が続いた。

 

 

 

 

 

 

「コーヒー、冷めちゃいましたね………」

「何、問題ない。俺はこう見えて猫舌でな」

 

俺が気を使って言っていると思ったのか、M4は申し訳なさそうな顔をする。

別の話題を振った方がいいかも知れないな。

 

 

その後、俺とM4は色々な話をした。

他愛のない話からAR小隊の思い出話………。

話が弾み、気が付けば夕暮れに差し掛かっていた。

 

「っと、もうこんな時間か。結構話し込んじまったな。そろそろ行くか」

「そうですね。もう基地に帰りますか?」

 

コーヒー代を払い、マスターに礼を言って俺とM4は喫茶店を後にする。

 

「あ、そうだ。最後に一つだけ寄り道しても構わないか?」

「え?は、はい。どこに行くんですか?」

「この街で一番空に近い場所だよ」

 

 

 

 

 

 

 

この街の中心部には、天体観測用の展望台が存在している。

元々は第三次世界大戦が起こるよりも前に建設されたそうだが、大戦の混乱と現在に至るまでの諍いの最中で放棄されてしまっている。

撤去しようにも費用や諸々の問題で結局放置されているのが現状だ。

天体観測が好きな一部の人間が出入りしているものの、人の気配はあまりない。

それでも綺麗に施設が維持されているところを見る限り誰かしらが掃除や修復をしてくれているのだろう。

 

「この場所は………?」

「ここは展望台だった場所だ。世界大戦が起こるまでは人の出入りも多かったそうだが今ではこの有様って訳さ」

 

階段を上り屋上へと出る。

日が沈みかけているというのも相まって星空が綺麗に広がって見えていた。

 

「綺麗ですね………」

「そうだろう?ここは星空がよく見える絶景スポットでもあるんだ。だから展望台がある訳だが」

 

散りばめられた宝石のように散々と光り輝く空を見上げて俺は思いを馳せた。

だが、こうしているとどうしても思い出してしまう。

あの時のマスターに言われた言葉と、かつての忌まわしい記憶を。

 

 

 

…………………………。

 

 

『君!何辛気臭い顔してるのさ?ほらほら、シャキッとしなさいシャキッと!』

 

 

『………ッ領域が広がり続けてる!?接続を遮断してッ!!君がやらないと皆死ぬの!!男なら決断しなさい!!』

 

 

『そう………それ…で………いい………の。決………あ………………ては………………!!』

 

 

…………………駄目だな。

やはり俺はまだ諦めがつかないらしい。

あれからもう7年も経つというのに………。

 

何故ここに至って俺は思い出してしまったのか?

一人で考えるのが怖かったからなのか。

過去にしがみ付く自分を自覚してしまうからか。

誰かと居れば断ち切れると思ったからなのか。

 

 

 

 

 

俺自身にも分からない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

展望台の屋上で星空を眺めたまま沈黙してしまった指揮官。

彼はとても悲しげな表情をその顔に浮かべていた。

まるで、もう戻ってこない過去に思いを馳せているような顔。

いつも笑みを浮かべて、おちゃらけながら陽気に振る舞う人物とは思えなかった。

 

「指揮官………?」

「………っすまない。少し昔のことを思い出しただけだ」

 

指揮官は、少しずつ何かを吐き出すように語り始めた。

 

「俺はグリフィンに入社する前、正規軍のとある研究所にいた。これでも昔は一人の研究者として様々な実験研究をしていたよ。だが、ある時に実験で大きな事故が起こってな」

 

その時の事を思い出したからなのか、指揮官の顔が苦々しいものへと変わる。

 

「事故………ですか?」

「そうだ。………大勢の死人が出る程の事故だ。俺は、その時の事故の責任を問われて研究所から追い立てられ、別の部隊へと異動になった。だが上手くいかずに結局辞めたんだ。行く宛も無かった俺をクルーガー氏がグリフィンに勧誘してくれた。採用試験の後、指揮官適性があるからって理由で前線基地に配属されたという訳だ」

「……………」

 

ふと、M4は気付く。

指揮官たる男の身体が僅かながらに震えていることに。

それを見たM4は思わず指揮官の手を掴み、両手で包み込む。

 

「M4………?」

「大丈夫です、指揮官。私がいます」

 

そう言って微笑むM4に指揮官は僅かに呆然としているようだった。

 

「………そうか。ありがとうM4。少し元気が出たよ」

「そう…ですか?なら、よかったです………」

 

顔を綻ばせて笑う指揮官の姿を見てM4も笑った。

 

「………そうだな、M4。君になら話して良いかも知れない。実を言うと先程の事故の話だが」

 

指揮官はいつになく真剣な顔でM4に向き直った。

 

「事故なんかじゃなかった。アレは………事故などではないんだ」

「それは、一体どういう………」

 

指揮官の瞳には畏怖と恐怖が浮かんでいた。

やがて、意を決したように指揮官は口を開く。

 

「本当は、実験の産物として喚び出した恐るべき存在に襲われたんだ。あの時の自分は思い上がっていたんだよ。例え実験の過程で何が現れようとも制御できるだろうと傲慢にも思っていた。その結果、俺は大事な人を失う事になったんだ」

 

指揮官は俯いて声を震わせる。

暫くすると顔を上げ、M4に少しずつ詰め寄った。

 

「もし君が、これから先において恐怖や絶望に呑まれそうになった時は、この名を思い出せ。この世界………いや、この宇宙には鉄血やELIDなどでは足元にも及ばない程の、より絶対的な破壊の力が潜んでいる。だからこそ、強い恐怖をあらかじめ知っておけば、これからの苦難にも立ち向かえる筈だ」

 

 

 

 

 

 

「その恐るべき破壊の名は………」

 

 

指揮官はM4の耳元に口を近づけると、呟くように囁いた。

 

 

 

 

 

 

「……………」

 

 

 

 

 

 

 

M4の顔色が不安に染まる。

 

「指揮官、それは………」

 

「記憶の片隅に留めておくと良い。但し、決して人前でその名を口にしてはならない。名前というのは、それ自体が強い意味を持つからな」

 

そう言って指揮官はいつも通りの笑顔を浮かべた。

 

「もう帰るとするか。何か買っていきたい物があるなら言ってくれて構わないぞ?」

「いえ、大丈夫です。姉さん達も心配するかもしれないですから帰りましょう」

「ん、じゃあ帰ろうか」

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいーっす!帰ったぞー‼︎風呂と飯を準備してくれ」

「た、ただいまー」

 

基地に帰隊した俺達を出迎えたのは水色オッパイこと、HK416だった。

何故かエプロンを身につけて髪をポニテにしているが、あえて突っ込まない事にする。

 

「仕事帰りのサラリーマンかアンタは‼︎いいご身分ね、一日中遊び呆けた気分はどう?」

 

俺をしこたま睨みつけながら、腰に手を当てて怒り出す416。

カリカリすんな。落ち着けよ。

 

「なら明日俺の代わりにこの企画に参加するか………?明日はM16かも知れないぜ?」

「そんなのコッチから願い下げよ!ほら、さっさと着替えてきて下さい!」

「はいはい。んじゃ、俺は一旦執務室に戻るからM4も先に宿舎へ帰っていてくれ」

「あ、はい。分かりました。なら私もM16姉さんに報告して来ますね」

 

 

 

 

 

 

 

M4が宿舎に行くのを見届け、執務室に帰ろうとすると廊下でUMP9に出会った。

 

「あ!指揮官、お帰りー!」

「おう、ただいま。一つ聞きたいんだが、416の格好はどういう事なんだ?」

「G11がパンケーキ食べたいって強請るから、作ってあげてるみたいだよ?何だかんだ言って甘々だからね〜」

「お母さんかアイツは」

 

成る程、そういう事か。

しかし、エプロン姿の416なんて貴重な物が見れたな。

俺もああいう風に出迎えてくれる嫁がいれば幸せこの上ないが………。

まあ、無い物ねだりをしても仕方がない。

 

「あ、そうだ。M16が帰ってきたらカフェに来るようにって言ってたよ?多分クジ引きじゃないかな?」

 

だあああ!

クソッ、そういやまだ二人終わっただけなんだよな。

あと残るはAR-15とM16か………順番逆の方が良かったな。

 

 

 

 

 

 

 

「フッフッフ、よくぞ試練を乗り越えここまで辿り着いたな勇者よ‼︎褒めてやる‼︎」

 

カフェに入った俺をM16が笑いながら出迎えた。

RPGの魔王かよ、お前は。

 

「何が試練だよアホらしい。で、クジ引きやるんじゃないのか?」

「ツレないなあ、指揮官は。それより、M4とのデートはどうだった?悲しませたりしてないよな?」

「お、おう。勿論だ。M4から聞いてないのか?」

「当然聞いたが、やはり指揮官自身の口から聞いた方がいいと思ってな。で?どうなんだ?」

 

「いや、全く問題ない。楽しく終わった一日だったよ。M4もそう言ってなかったか?」

 

………まあ実を言うとM4泣いたりしてたし、完全に否定するのは難しい気がする。

だ、だがあれは俺が原因ではないしノーカンだな、ノーカン。

もしM4がデート中に泣いたなんて言えばM16にどんな目に合わせられるか分かったもんじゃない。

 

「そうか?ならいいんだが………。さて、指揮官。人形恋愛前線3回目のクジ引きと行こうじゃないか。今日クジを引いてくれるのはUMP45だ。45、頼むぞ」

 

「はいはーい。このクジの結果で指揮官の運命が決まるわね〜」

 

おい待て、不吉な事を言うな‼︎

UMP45の奴、楽しそうに笑いやがって‼︎

45の手によって箱の中からクジが取り出され、M16に手渡される。

 

 

 

「ほう………コイツは面白い。さあ、記念すべき3回目のクジ引きの結果は‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『AR-15』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

指揮官がクジの結果に天を仰いでいる姿を見ながら、私は今日一日の事を思い出していた。

展望台での、あの言葉を。

 

 

 

「もし君が、これから先において恐怖や絶望に呑まれそうになった時、この名を思い出せ。この世界………いや、この宇宙には鉄血やELIDなどでは足元にも及ばない程の、より絶対的な破壊の力が潜んでいる。だからこそ、強い恐怖をあらかじめ知っておけば、これからの苦難にも立ち向かえる筈だ」

 

 

指揮官は、そう言って私の耳元にまで近づくとその言葉を口にした。

 

 

 

 

 

 

 

「その恐るべき破壊の名は……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ギドラだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

「パンパカパーン!パパパ!パンパカパーン‼︎」ーーーーーーAR小隊の隊員・M16A1

 

「もう突っ込む気すら起きねぇ」ーーーーーー人形恋愛前線に参加させられている哀れな男・指揮官

 

「このマラカスって何に使うの?歌が下手な人を殴る用かしら?」ーーーーーーAR小隊の隊員・AR-15

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

AR-15「バ、罰ゲーーーーーームッです!新たな罰が貴方を待っています!」指揮官「どういう事⁉︎」

インフルになりました。
超しんどいです。
皆様も気をつけて下さい。


いつも通りの朝。

人形恋愛前線とやらが始まって3日目となる日だ。

今日はAR-15か。

まあ、あいつは真面目な奴だし大丈夫だろう。

変な事にはならない筈だ。

 

さて、実を言うと少し問題が発生している。

何の問題かって?

それは………。

 

 

「何で天井から吊るされてんだよ、俺は………」

 

 

そう、今の俺はどういう訳か天井からロープで身体を縛られて吊るされているのだ。

何がどうしてこうなっているのか皆目見当がつかない。

確か昨晩は酒も飲まずに普通にベッドで就寝していた筈だ。

こんな事されていたなら流石に目が覚めるだろうしな。

取り敢えず、どうにかして抜け出そうにも中々キツく縛られているのか解けそうにもない。

 

てか時間的にまたM16が来るんじゃないのか?

クソッタレが、アイツに見られたら絶対ネタにされる!

 

ふと、ロープを解こうと悪戦苦闘する俺の視界に見慣れない色の壁が目に入った。

おかしいな、何故あの壁だけ色が違う………?

そう思いながら壁を見ていると、ウイーンという機械的な音を立てて壁が横にスライドしていく。

謎すぎる展開に俺も頭が追い付かない。

そして、開いた壁から現れたのは………。

 

 

「パンパカパーン!パパパ!パンパカパーン!あーたーらーしーいー朝がーきたー!」

 

 

オーケストラもかくやと言わんばかりに、満面の笑みを浮かべながら鍋とお玉片手にラッパを吹きながら現れたM16だった。

しかも、M16だけでなくメイド長やAR-15以外のAR小隊と404小隊もいる。

全員がその手に楽器を持っていた。

 

何だ、これは………?

 

「ふっ、お目覚めのようだな指揮官。今日は少し趣向を変えてみたんだ。どうだ、普通では味わえない新鮮な目覚めだろう?」

 

ドヤ顔で言うM16に言葉も出ない。

 

「昨日指揮官がM4と出かけている間に、この部屋に少々細工をさせて貰っただけだ」

「もう突っ込む気すらおきねぇ」

 

新鮮な目覚めとは一体。

俺の部屋はトンデモビックリハウスじゃないんだよ?

それに改造したとはいえ、どうやったんだ?

 

「ペルシカさんに頼んだら快く引き受けてくれたさ。因みに改造費用は指揮官の給料から天引きだそうだ」

 

あのケモミミ引き篭もりマッドォォォォッ‼︎

マジで何してくれてやがる‼︎

俺の給料を勝手な事に使うんじゃねぇッ‼︎

 

「ぐ…!ところで、一つ聞きたいんだが俺は何故天井から吊るされているんだ………?」

 

M16は俺の問いに「ああ、そんな事か」と呟くと

 

「指揮官が寝る前に飲んでいた紅茶に少し麻酔薬を入れて眠りについた後私とUMP45で吊るしたんだ。指揮官は縛られるのが好きらしいからな」

「いや、その理屈はおかしい」

 

通りであの紅茶変な味がすると思ったよ!

なあ、俺一応指揮官何だけど。

部屋は魔改造されるわ、縄で吊るされるわ、薬は盛られるわ………俺の立場って………。

 

「大丈夫よ、指揮官。私はそんな指揮官を応援してるわ」

 

項垂れる俺をUMP45がサムズアップをしながら肩に手を置いてくる。

お前絶対楽しんでるだろ、この状況!

 

「さて、朝の目覚めは終わったし皆も帰ってくれて構わないぞ」

 

M16が言うと、他の面々は笑いながら帰っていった。

覚えてろよ貴様らアアッ!

特にM16とUMP45‼︎

 

「ハッハッハ!まあ落ち着いたらどうだ、指揮官?怒ってばかりいると皺が増えるぞ?」

 

原因の9割9分はお前だっての。

全く、お前という奴は………。

 

「今日はAR-15だな?真面目堅物なアイツがどういう反応をするのか楽しみだ。帰ってきたら良い酒の肴になるだろうな」

 

ニヤニヤと笑いながら俺を見るM16。

フッ、そんな余裕を浮かべていられるのも今の内だぜ?

この人形恋愛前線が終わった暁には、お前にあんな事やこんな事をしてやるからなあ!

 

「ほう………?出来るのか?童貞の指揮官に?」

 

「ど、どどど童貞ちゃうわ‼︎」

 

くっ………馬鹿にしやがってぇ!

絶対いつか見返してやるからな!

それとM16ゥ‼︎

さり気なく俺の冷蔵庫からフルーツ牛乳を出して飲むな。

冷蔵庫で冷やしていた秘蔵のイチゴを食うんじゃない!

高かったんだぞ、それ‼︎

 

「んふぅ………朝からこういうフレッシュな朝食も悪くないな。じゃあな指揮官!」

 

なあ、毎回思うけどお前俺の部屋を食料庫か何かと勘違いしてね?

それと縄を解いて降ろしてくれ!

後、何度も言ってるが鍋とお玉を放置したまま帰るなッ!

さも当然のように栄養ドリンクの箱を持っていくんじゃないッ‼︎

 

 

 

 

 

 

AM0850。

いつもと同じ時刻に俺は基地の入り口へと向かう。

俺は時間には正確な男だからな。

 

縄はどうしたって?

あれなら、後でメイド長が銃で撃ち抜いてくれたから無事に?脱出できたさ。

おかげで盛大に床とキスをする羽目になってしまったがな!

 

「………お早うございます、指揮官」

 

やはりと言うべきか、俺よりも先にAR-15が来ていた。

 

「おう、お早う。所でその格好は………?」

 

AR-15の服装は一昔前の女子高生のような姿だった。

今となっては中々お目にかかる事もない時代の服装を何故彼女が持っているのか分からないが、まあいいか。

 

「へ、変ですか?ペルシカさんに昔貰った服なんですけど………もし違和感があるのでしたら着替えてきます」

 

「いやいや、いい!全然問題なし!今となっては貴重なJKの服装だし、とても似合ってるからそのままでおk!」

 

「そ、そうですか?似合って………フフッ分かりました、指揮官がそこまで言われるなら………」

「ッそ、そうか」

 

微笑みを浮かべながら俺を見てくるAR-15に思わず見惚れそうになる。

落ち着け、クールになるんだ。

 

ふう……………。

しかし、あれだな。

これで胸部装甲がもう少しあれば………。

 

「………どこを見てるの、指揮官?」

 

AR-15が顔を若干赤くしながら責めるような目つきで俺を睨んでくる。

こういう視線も悪くないな!

久しぶりに身体がゾクゾクするぜぇ!

 

「全く………指揮官は相変わらずね。で、何処に行くつもりですか?」

「取り敢えず朝飯を食べてからだ。M16に俺の朝飯が食い荒らされたからな」

「何をやってるのよ、M16は………」

 

呆れたような顔で溜息をついたAR-15。

気持ちは分かるぞ。

 

「でも意外だな。正直お前は今回の企画に反対すると思ってたよ。デートなんかより訓練か任務!と言いそうな感じだったんだが」

「それは………確かにM16の考えた企画に色々思う所はありますが、あれでも一応指揮官や私達の事を考えてくれてますから。無下にする訳にもいきません」

「成る程ねぇ。つまりこれも任務の一環という訳か?」

「半分はそうです。でも半分はそうですね………内緒です」

「なんだそりゃ。まあいいけど」

 

そんな会話を交わしながら、基地から出て暫く歩いていると屋台が目に入った。

 

「おっ、こんな時間から屋台が出てるな。珍しい事もあるもんだ。あの屋台でアメリカンドッグ売ってるみたいだし買っていこうぜ」

 

屋台に近づいていくと良い匂いが漂って来た。

久しぶりだな、アメリカンドッグ食うの。

 

「いらっしゃい!」

「二つくれ。ケチャップとマスタードもトッピングで頼む」

「はいはい。所でお2人さんはカップルかい?丁度今キャンペーン中でカップルなら半額割引になってるんだけど?」

「へぇ。だけど残念だな、俺達はカップルじゃ………」

「カ、カップルです‼︎」

 

ほあッ⁉︎

ちょ、AR-15さん⁉︎いきなり何を⁉︎

 

「はいよ、アメリカンドッグ二つお待ちどう様。デート楽しんでってねー」

「は、はあ」

 

屋台のおばちゃんが差し出してきたアメリカンドッグを手に取って俺は暫くその場に立ち尽くした。

 

「指揮官?どうされたんですか指揮官?」

 

ハッ⁈俺は一体何を⁈

AR-15の声で漸く正気に戻る事が出来た。

 

「な、なあAR-15。どうしてカップルだなんて言ったんだ。別に無理してあんな事言わなくても」

「は、半額になるならそうした方がいいと思ったからです!その方が得でしょう⁉︎」

 

顔を赤く染めながら言うAR-15。

可愛いな、うん。

 

「ほ、ほら早く食べますよ指揮官!冷めてしまいます」

 

その辺に設置されてあったベンチに座りアメリカンドッグを食べる。

道行く人々が、朝っぱらからイチャついてんじゃねーよと言いたげな顔をして歩いていく。

 

「結構美味しいですね。これ」

「確かに。屋台のだと思って甘く見たらダメだな」

「し、指揮官!私のも食べてみますか?」

「いや、同じ奴だし食べても味は変わらないだろ」

「そうですか…そうですよね。………私とした事が失敗したわ」

 

何故か若干落ち込むAR-15。

一体どうしたんだお前は。

何時ものお前らしくないぞ。

 

「何でもありません!次はどこに行きますか?」

「お、おう。安心しろ、行く場所は考えてある。ズバリ………カラオケだ!」

 

カラオケという聞き慣れない単語にAR-15の頭に疑問符が浮かぶ。

まあそんな情報入ってないよな普通。

 

「指揮官、カラオケというのはなんなの?」

「要するに歌を歌って楽しむ場所だ。歌は嫌いか?」

「嫌いではないですけど…私は歌なんて歌えないわ。どんな歌があるかもよく知らないもの」

「ならこれはいい機会だ。まあ楽しみにしときな」

 

 

 

 

 

カラオケ店は今の時代でも実は存在している。

第三次世界大戦の影響で娯楽は衰退したというが全くの嘘だ。

人間というものは生きる上で必ず娯楽を求める。

だからこそ、一時的に衰退したが直ぐに復活した。

映画・ゲーム・音楽………数こそ昔に比べたら少ないが、それでも多数存在しているのだ。

カラオケもその一つだろう。

 

「着いたぞ、AR-15。ここがカラオケなる場所だ」

「ふぅん………」

 

今一つな表情で呟くAR-15。

今更になってチョイスをミスったかなと思い始めたが、仕方ない。

やれるだけに事をやって彼女を楽しませてやろう。

 

 

 

 

〜カラオケボックス『キューブ』〜

 

「いらっしゃいませー!」

「二人だ。三時間コースで宜しく」

「畏まりましたー!」

 

店員さんによって部屋に案内された場所は丁度二人分のスペースがある部屋だった。

部屋に入ると、早速AR-15がマラカスを手に取って俺に問い掛けて来た。

 

「ねぇ、指揮官。このマラカスって何に使うの?歌が下手な人を殴る用かしら?」

「ああ、そうだぞ。それは下手な奴のケツをブン殴る用さ」

 

くくっ、俺の策にまんまと引っかかったなあAR-15!

これはどちらに転んでも俺に損は無いんだぜぇ?

何故なら、お前の歌が下手だった場合俺は背徳感に晒されながらお前のケツを合法的に叩く事が出来る!

普段から凛としてる奴が涙目と屈辱に顔を歪ませながら叩かれる様はさぞかし良い絵面になるだろう!

そして俺がダメだった場合だが、勿論俺にとってAR-15にケツを叩かれるのは快感にしかならない。

故に、俺はどう転んでも得をするんだよぉ!

ハーハッハッハ‼︎

しかし、マラカスで殴るという発想に行き着くのは流石戦術人形というべきなのだろうか?

まあいい、さあ俺のシャウトに酔いしれな!

 

「それで、指揮官は何を歌うの?」

 

「フッ、俺は凡ゆる歌を歌う事が出来る。俺が今から歌う曲………それは」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ドラ◯もんだ」

 

 

 

 

「ブフォッwww」

 

 

 

 

 

笑うんじゃねぇ‼︎

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

「そ〜ら〜を自由にッ!飛びたいな〜!ハイッ!タケコプター!」ーーーーーー人形恋愛前線に参加させられている哀れな男・指揮官

 

「ブッ………!アハハハハハ………!」ーーーーーーAR小隊の隊員・AR-15

 

「あら、また会ったわね。変態の指揮官さん?」ーーーーーー鉄血のハイエンドモデル人形・イントゥルーダー

 

「お、おい。ポーズはこれで良いのか?そ、そうか可愛いか?照れるではないか〜♪」ーーーーーー鉄血のハイエンドモデル人形・ウロボロス



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

AR-15「バ、罰ゲーーーーーームッその2です!新たな罰が貴方を待っています!」指揮官「どういう事⁉︎」

ちゃららららら♪ちゃららららら♪ちゃんちゃんちゃっちゃっちゃっ♪

 

カラオケの端末に曲名を入力すると、直ぐに特徴的な音楽が流れ出した。

俺の本気を見せてやるぜぇ、AR-15!

 

『あんなこといいな〜できたらいいな〜♪あんなゆめ♪こんなゆめ♪いっぱいある〜けど〜♪』

 

「ぷッ………クフフ……!」

 

『みんなみんなみんな〜か〜なえ〜てくれる〜♪ふしぎなポッケでかなえてく〜れ〜る〜♪』

 

「〜〜〜〜〜!(机に突っ伏して肩を震わせている)」

 

『そ〜ら〜を自由にッ!飛びたいな〜!ハイッ!タケコプター!』

 

「ブッ………!アハハハハハ………!」

 

とうとう声を上げて笑い出すAR-15。

腹を押さえてヒィヒィと笑っている。

 

「笑いたきゃ笑えよ…仕方ないだろ、一番歌いやすい曲はドラ◯もんなんだからさあ!」

 

笑い続けているAR-15を尻目に俺は肝心の採点結果を見る。

すると………

 

『18点!ダッセー点数だなあ、オイ?だからいつまで経っても童貞なんだよ!』

 

うるせーよ!

誰が童貞だバカ!

何だよこの採点機⁉︎

どこぞの夢想家みたいな声で煽ってきやがってぇ!

 

「よし、それじゃ次歌うのはお前だお前!そんなに笑うんだからさぞかし俺より点数はいい筈だよな?」

「良いわ、よく見ておきなさい。私は完璧よ」

 

いやそれ、お前が言っていい台詞じゃないだろ………。

 

 

 

 

 

 

『So tell me how this ends Will I live to see morning light? Fear is filled in every breath Sweat and blood runs down my chest Can’t somebody save us all?

We have no time to wait, get up now I’m not gonna die here That’s what I’m fighting for!』

 

…………普通に上手かったわ、コイツ。

でもその歌ってM4が歌うべき曲なのかも知れんが…まあいいや。

 

「どうですか、指揮官?私の歌は良かった?」

 

これは完敗だな。

いや、綺麗な声だしとても良かったよ。

お前戦争終わったら歌手にでもなればいいんじゃね?

 

「そ、そんなに良かったですか?………フフ」

 

嬉しそうに微笑むAR-15。

おっぱい無くても可愛い。天使かな?天使だな。

さて、問題の採点結果はどうなんだ?

 

『98点!素晴らしいですわ!どこかの変態指揮官にも見習って欲しいですわね!』

 

うるせーよッ!

どこかの変態指揮官って誰のことだ、俺の事か!

どこぞの代理人みたいな声で煽りやがってぇ………!

 

「指揮官、いきますよ!堪えて下さい!」

 

は?

おい、AR-15。一体何をするつもりーーーーーー痛ぇッ⁉︎

AR-15がマラカスを手に取ったかと思うと、俺のケツを殴りつけにきた。

 

「スキル発動!『突撃集中』!」

 

ちょ、待てってアッーー⁉︎

 

 

 

 

「フンっ!せいっ!」

 

痛い痛い!

俺のケツを殴り過ぎだ!

あ…でもこれは快感かも知れない………じゃなくて!

 

「下手な人はこれで殴るって言ったのは指揮官じゃない」

 

ま、まあ確かにそうだが何発も殴る必要はない!

戦術人形の力で殴られると半端なく痛いな………。

殴られるのは快感だ!などと考えていた数刻前の自分を殴りたい気分だ。

 

「あー………やれやれ。マラカスでケツを美少女に殴られるとかどういうプレイだよ…」

 

それとAR-15、美少女という言葉に反応すんな!

お前そういうキャラじゃないだろ⁉︎

 

 

 

 

 

〜その頃 隣の部屋では〜

 

「いいですよ〜URO☆BOROSさん!そのポーズお願いします!」

「こ、こうか?」

「ええ、最高ですよ!流石我がカラオケチェーン『キューブ』看板アイドルのURO☆BOROSさんは格が違いますねー!」

 

マイクを片手にウインクしながら片足で立ってポーズをとる女性………鉄血のハイエンドモデル人形であるウロボロスは顔を気恥ずかしそうに赤く染めながら撮影に乗じていた。

事の始まりは数週間前、暇を持て余した夢想家ことドリーマーがウロボロスをからかう為に、ウロボロスの顔写真と捏造した履歴書を当時看板アイドルを募集していた『カラオケボックス・キューブ』に応募したのが原因だった。

無論、そんな事をウロボロスが知る由もなくドリーマーに人間の街への潜入任務という嘘の任務を付与されてこのカラオケボックスに潜入しているという訳だ。

当初こそ、下らない任務だと吐き捨てていたウロボロスだったが、段々とのめり込み(洗脳と言えなくもない)今に至る。

 

「お、おい。ポーズはこれで良いのか?そ、そうか可愛いか?照れるではないか〜♪」

 

………このように、それはもうデレッデレである。

彼女を知る人物が見れば「誰だお前⁉︎」と絶叫する事間違い無しである。

そこには鉄血のハイエンドモデルの威厳の欠片もない。

因みにドリーマーは定期報告で送られてくるウロボロスの写真を見て抱腹絶倒したそうだ。

 

「じゃあURO☆BOROSさん、次のポーズはカメラの前でダブルピースでお願いします!」

「うむ!これでよいか?」

「オーケイです!では次のポーズはですねー」

 

 

何度も言うが、ウロボロスは鉄血のハイエンドモデルである。

優秀な頭脳・戦術眼・単体での圧倒的戦闘力………。

しかし、それ故に彼女はポンコツなのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「何か隣の部屋がエラく騒がしいな。もう時間だし、そろそろ別の場所に行くか」

 

別の場所………と言っても行く所が思い浮かばない。

どうすべきかと悩んでいるとAR-15が何かを言いたそうにしているのが目に入った。

 

「指揮官、その…映画館という場所に行きたいのだけれど………」

 

映画館か。勿論構わないが、どうして映画なんだ?

何か見たい映画があるのか?

 

「い、いえ別にそういう訳では。ただ、映画館というのは男性の方と行くとムードがあっていいと前に読んだ雑誌に載っていたので」

 

その雑誌の知識は凄く偏っている気がするが、まあいいか。

だったら映画館に行くとしよう。

確か今は何かの記念で昔の映画が上映されていた筈だしな。

 

 

 

 

〜映画館『ウサギの巣』〜

 

「今日は平日だってのに結構人がいるな」

 

街の中心部に位置する映画館だけあって人でごった返していた。

それにしても色んな映画があるな。

どれにしようか………?

 

「ねぇ、指揮官。これなんかどうかしら?」

 

AR-15が指差した先には二本立ての映画のポスターが貼ってあった。

 

「二本立て連続か。これでいいのか?」

「はい。なんだか面白そうな気がするので」

 

成る程。

ていうかこれ、ジャンルはSFとホラーか。

大分昔の映画だよな?

 

「指揮官!早くチケット買いに行きましょう!」

 

分かった分かった、そう急ぐな!

 

 

 

チケットを購入し、ポップコーンとコーラを買ってシアタールームに向かうと、席はガラガラだった。

いや、客は居ることにはいる。

数人くらいだが………。

 

もしかすると、とんでもないB級映画なんじゃないのかコレは。

 

「指揮官?どうかされましたか?」

「ん?ああ、何でもない。取り敢えず適当な席に座るか」

 

明かりが消えて、盗撮禁止の映像テロップが流れる。

 

『映画の盗撮・違法ダウンロードは犯罪だ。そんな事をする輩は私が拷問してやろう………フフフ』

 

こえーよ。

しかもお前どう見ても鉄血のハイエンドモデルだろ‼︎

何さり気なく盗撮禁止の映像に出演してんだよ⁉︎

しかし驚異的なおっぱいしてるな………。

大丈夫か、この映画館。

 

「指揮官、あれって鉄血のハイエンドモデルじゃ………」

「気のせいだ、気のせい」

 

AR-15も同じ事を思ったのだろう、俺にその事を言ってきたが気のせいで誤魔化した。

 

「ちょっと、静かにして下さる?上映中よ」

 

斜め上から声をかけられ、振り返ると其処には。

 

「あ、すいません。………って、お前はッ⁉︎」

 

「あら、久しぶりね。変態の指揮官さん」

 

相変わらず、何を考えているか分からない笑顔を浮かべる鉄血のハイエンドモデル人形・イントゥルーダーがそこに居た。

 

「えーっと、何やってんのインストールさん?」

「イントゥルーダーよッ。名前覚える気ないわね貴方」

 

スーパーで会って以来だな。

まさか鉄血が映画館に来ているとは思わなかったよ。

 

「私は人間は嫌いだけど、人間の創る演劇や映画は好きなのよ。それに鉄血だから娯楽に興じたらいけないなんてルールがある訳でもないしね。お分かりかしら?」

 

そうか………ならいいが。

くれぐれも問題は起こすなよ?

 

「勿論よ。私も貴方と其処の戦術人形を同時に相手取りたくないしね」

 

イントゥルーダーの言葉に、俺が思わず横を向くと其処には射殺さんとばかりにイントゥルーダーを睨みつけるAR-15がいた。

 

「指揮官、私の側から離れないで下さい。貴方は何が目的ですか、イントゥルーダー?」

 

「さっき言ったでしょう、映画鑑賞よ。心配しなくても何もしないわ。だから早く殺気を引っ込めてくれないかしら?」

 

AR-15の凄味にも余裕の表情で対応するイントゥルーダー。やっぱりアイツは食えない奴だ。

 

「………AR-15、落ち着け。アイツの様子を見る限り、本当に映画鑑賞をしに来ただけだろう。もし何かしでかすつもりなら、とっくにやってるさ」

「ですが、指揮官!」

「大丈夫だ。もしもの時は俺を置いて先に逃げて基地に救援要請を出せ。いいな?」

「貴方という人は…ハア、分かりました。ですが逃げる時は指揮官も連れて行きますからね」

 

不承不承といった様子で座席に座りなおすAR-15。

イントゥルーダーはそれを見て笑っている。

やれやれ、気をとりなおして映画を観るとしますか。

 

 

 

映画は、昔ヒットしたロボットSF映画だった。

 

近未来の世界で、AIが自我に目覚め人間に敵対し人類は絶滅寸前まで追い込まれてしまう。

その絶望に抗う人間達のリーダーの男を疎ましく思ったAIは彼を抹殺する為にタイムスリップをして彼の母親にあたる女性を殺す事によって存在そのものを消そうとする。

そんな事はさせないと、人間側の青年がAIを追って過去にタイムスリップし、襲い来るAIから女性を守るという内容だ。

 

 

 

「………リアルに今の俺達に通じるものがあるな、この映画」

 

AIの暴走とか、まんま鉄血じゃねーか。

あの映画と違ってこっちの人形………ロボットは可愛くて良かった。

あんなガチムチの奴らと戦うとか嫌過ぎるぜ。

 

 

 

次の映画はよくあるホラーだった。

足を踏み入れれだ呪われるという噂の館に入ってしまった登場人物達がその館に住み着く怨霊に襲われるという内容だ。

 

「和製ホラーってのは怖いもんだが、俺的にはあんまり怖く感じねぇな」

 

そういや、やけにAR-15が静かだなと思い横を見ると、顔を引攣らせながら小刻みに震えていた。

 

「おい、大丈夫か?ひょっとしてホラー苦手なの?」

「そ、そそそんな事はありません。こ、これは武者震いです………」

 

いや、映画観ながら武者震いする奴なんていないだろ。

意地を張らなくたっていいのになあ。

暫くすると、見せ場に入ったのか四つん這いの女幽霊が主人公向けて這いずってくるシーンへと突入した。

カエルのような呻き声を上げながら迫り来るシーンは中々の迫力がある。

AR-15は大丈夫かと思って再び見ると。

 

「〜〜〜〜!」

 

涙目になりながら少しだけ目を開けて映画を見ているAR-15がいた。

手もぐっと握り締められていて力が入っている。

怖がりすぎだろ………仕方ないな。

 

「し……き…かん?」

「ほら、落ち着けって。俺がいるから怖くない怖くない。鉄血に比べりゃ大したことないだろ?」

 

怖さに震えているAR-15の握り拳に手を添えてやると、少しだけ彼女の緊張が緩んだ気がした。

 

 

 

 

「………暑いわね、この映画館。もう10月だっていうのに」

 

一部始終を見ていたイントゥルーダーは、どこからか取り出した扇子で身体を仰いでいた。

 

 

 

 

 

 

 

上映が終わり、明かりがつくとイントゥルーダーの姿はなかった。

恐らくエンドロール中に帰ったのだろう。

何事もなくて良かった。

 

「あの、指揮官!わ、私が映画で怖がってた事絶対に誰にも言わないで下さいね⁉︎」

「あー大丈夫大丈夫。言わないよ。代わりに写真を撮ったから後でM16辺りにでも渡しとくわ」

「指・揮・官〜‼︎」

 

冗談だ冗談。

林檎より顔が真っ赤になってるぞ。

まあでもAR-15の貴重な一面が見れて良かった。

 

「何言ってるんですか、もう………」

 

俺がそう言うと、AR-15はプイとそっぽを向いてしまった。

怒らせてしまったかな?

 

「ハッハッハ、拗ねるな。お詫びに美味いパフェを御馳走するから」

「物で釣ろうとしないで。………でも、どうしてもというなら良いですけど…」

 

ツンデレかよ。

キャラがブレブレだな、桃色ツンツン娘。

 

「誰がツンデレですか誰が!………ハア、もうこのやり取りも慣れたわ………」

 

んじゃ、喫茶店に行くとしますか。

………マスターにまた絡まれそうな気がするが。

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

「⁉︎」ーーーーーー人形恋愛前線に参加させられている哀れな男・指揮官

 

「え、いや、あの、その、これは………!」ーーーーーーAR小隊の隊員・AR-15

 

「テメェみたいなジジイがいてたまるか!」ーーーーーー鉄血のハイエンドモデル人形・エクスキューショナー

 

「何せいつも一方的な殺戮になってしまってな………」ーーーーーー元正規軍の対ELID部隊員である筋肉モリモリマッチョマンの老人・喫茶店のマスター

 

 




AR-15の歌っていた曲は「what am I fighting for」という曲です。詳しく知りたい方は検索して下さい。
ただし、大陸版ネタバレに繋がりかねない要素も含むため気をつけて下さいね?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

AR-15「バ、罰ゲーーーーーームッその3です!新たな罰が貴方を待っています!」指揮官「どういう事⁉︎」

おっぱい好き
でも貧乳も好き
何が言いたいかって言うと、おっぱい好き
皆もおっぱいをすこれ

〜おっぱい真理教教祖の言葉〜



※上記の言葉は本編と一切関係ありません。
また、このような宗教団体も存在しません。
『おっぱいフロントライン』を閲覧する際は頭を空っぽにして、おっぱいの事を思い浮かべながら見てね‼︎


事の成り行きでパフェを食べる為に、またしても喫茶店にやってきた。

案の定マスターの爺さんが何やら含み笑いをして近づいてくる。

 

「いらっしゃい。今度は違う娘を連れてくるとは………御主、食い荒らしすぎではないのか?」

 

あーもう!

だから罰ゲームだって前も言っただろうが!

その言い方だと誤解を招くからやめてくれっての。

 

「指揮官?前にも誰かと来たの?」

「ん?ああ、前にM4とな」

「へぇ………?」

 

気のせいだろうか、AR-15の目が妖しく光った気がするが………。

 

「ま、いいか。取り敢えず注文しようぜ。マスター、このドリームアルケミストジャンボパフェを頼む」

 

注文を終えると、AR-15が何やら言いたそうな顔で此方を見てきた。

 

「どうしたんだ、AR-15。他に頼みたいものがあったら遠慮なく言ってくれて構わないぞ?」

「指揮官………前から思ってましたが、私の呼び名言いづらくないですか?」

「え?まあ、確かに言いやすくはないが、だからといって適当な呼び方する訳にもいかないだろ」

「それでしたら、これからは私の事を呼ぶ時は『コルト』と呼んで下さっても構いません。そちらの方が呼びやすいでしょう?」

「まあ確かにそうだが。でも良いのか?そう言う呼び合いは親しい者同士でするべきなんじゃ…」

「私が良いと言ってるから良いんです。指揮官がどうしてもAR-15でないと駄目だと言われるなら無理強いはしません」

「そうか………じゃあこれからはそう呼ばせて貰うよ、コルトちゃん?」

 

俺がニヤリと笑みを浮かべて言うと、コルトの顔が真っ赤になった。

 

「な、何で『ちゃん』付けで呼ぶんですか⁈」

「うん?この呼び方は駄目なのか、コルトちゃん?」

「やっぱりAR-15でいいです!………バカ指揮官」

 

ふん、と言ってまたもそっぽを向いてしまうAR-15。

 

「茶化して悪かった。冗談だよコルト」

「………もう。だったら最初からそう呼んで下さい」

 

プンスコという擬音を出しながら俺に向き直るAR-15の姿に図らずも萌えそうになった。

そうしている内に、マスターがパフェを持ってやってくる。

 

「待たせて済まぬな。だが、その分味は保証しよう」

 

そう言うとマスターは厨房へと去っていく。

確かに美味そうなパフェだ。

あの爺さん、見た目にそぐわず中々良いもの作るじゃないか。

 

「よし、さっさと食べようぜ。かなりの量だから簡単には食べ切れないだろうがな」

 

生クリームの多さが半端ない。

甘過ぎるくらいの甘さが口を支配してくるのが分かる。

生クリーム中毒になっちまいそうな量だ。

AR-15は平気そうに食べてるみたいだが甘党なのか?

 

「甘いものは結構好きですよ?」

 

幸せそうな顔をしてパフェを食べるAR-15。

癒されるわあ、マジで。

これでおっぱいがあればッ………!

16LABの連中め、何故AR-15のおっぱいをつるぺたにしたんだ⁉︎

奴らの中に貧乳好きでも居たのだろうか?

まあでも、おっぱいのあるAR-15とか想像できねぇわ。

違和感しか湧いてこない。

 

「何を考えてるの、指揮官?」

 

俺の心を読んだのかAR-15がニッコリと笑いながらフォークでイチゴを串刺しにする。

ヒェッ………思わず俺の愚息を両手で庇っちまったぜ。

 

「な、何も考えちゃいないさ。おうとも、何も考えてないとも、うん」

「そう、だったら良いのだけれど」

 

やれやれ、寿命が縮まる思いだぜ。

再びパフェの残りを食べようとしたが、ふと視線を感じて前を向く。

すると、何やらえらく見つめてくるAR-15と目が合った。

 

「ど、どうした?」

「指揮官、動かないで下さい」

 

は?おいおい、何をするつもりーーーーーー

 

「⁉︎」

 

………………思考が追いつかない。

今俺は何をされた?

AR-15が突然顔を近づけてきて、頬を舐められた?

何故?

AR-15の方を呆然と眺めていると、彼女も自分が何をしたのか理解したようで顔が見る見る内に真っ赤になっていく。

 

「え、いや、あの、その、これは………!」

 

しどろもどろになって何かを言おうとしているが、言葉が出てこないようだ。

 

「し、指揮官の頬に、その、生クリームが付いてたので………その、取ろうと………」

 

………つまりあれか?

俺は漫画とかラブストーリーでありがちな展開を体験したと?

 

 

 

 

……………………………………………………………溶けそう。

 

 

 

 

 

「ちょっと、指揮官⁈指揮官ーーーーーー‼︎」

 

「どうしたのだお嬢さん。………む、心臓が止まっておるな此奴」

 

「ええッ⁉︎」

 

 

 

 

 

 

 

………あれ?

何だここは?

花畑が広がってるしとても綺麗な場所だ。

前にも一度来たような気がするが。

お、川の向こうに母さんと親父がいるじゃねぇか。

おーい、聞こえるかーー⁉︎

………は?帰れ?

おいおい、息子に対して酷い事言うな。

つか何であんたら川辺で椀子そば食ってんだよ。

そして親父、どさくさに紛れて母さんの尻を揉むなって………おお、母さんのコークスクリューパンチで親父の身体が宙を舞ってやがる。

親父、そりゃダメだ。

いくら母さんの胸が貧相だからって安易に別の部位に快楽を求めるのは浅はかだぜーーーーーー危ねッ⁉︎

息子に向かって弓矢を飛ばしてくるんじゃねぇよ、親のする事かテメェ‼︎

 

 

………なんか前にもこんな事あった気がする。

 

 

 

 

 

 

「う、う〜ん?俺は一体………?」

「指揮官ッ‼︎」

 

うおっ、どうしたんだコルト⁉︎

そんな泣きそうな顔して………。

 

「目が覚めて良かったです。指揮官、さっき心臓止まってたんですよ?」

 

はあッ⁉︎

嘘だろ、俺心臓止まってたの⁉︎

一体俺の身に何が起こったんだ?

AR-15とパフェを食ってたのは覚えてるが、それ以降の記憶が抜けちまってる。

 

「ふーむ、どうやら強いショックを受けた事による記憶喪失のようじゃな」

 

いつの間にか現れたマスターが最もらしい見解を述べる。

にしても強いショックねぇ、何があったんだ?

 

「なあ、コルト。何があったのか教えて貰っても「だ、駄目です!」いや、少しくらい教えてくれても「絶対に駄目です‼︎」お、おう」

 

何故だか赤ペンキより赤く染めた顔で拒否られた。

ま、まさか俺は一線を超えた行為をしてしまったのか⁉︎

それで行為を拒否したAR-15にボコられて記憶が飛んでしまったのか⁉︎

もしそうだとするならAR-15の態度も合点が行く。

成る程、一線を超えた行為をされそうになったと言うのは流石に憚られるだろう。

こうなれば土下座をして謝るしかない!

 

「すまん!俺は何という事を!これで許してくれとは言わないが、謝らせてくれ!」

「え、えええッ⁉︎指揮官⁉︎」

 

ベキャッ‼︎と床が抜けそうな勢いで土下座を敢行する俺の姿にAR-15が叫ぶ。

 

「(ふむ、この様子じゃと自分がとんでもない行為をやらかしたと思っておるようじゃな)」

「(ま、マスターさん。ど、どうすれば………)」

「(ここはひとまず謝罪を受け入れておくのが吉じゃろう。下手に何かを言って拗れても面倒じゃからな)」

「(り、了解しました!そうします)」

 

「えっと、指揮官?その、私は気にしてないので頭を上げて下さい」

「そ、そうか。何度も言うが悪かったな」

 

どうやら許して貰えた?ようだ。

ふう、この一週間で一番寿命が縮んだ気がするぜ。

 

「も、もう良い頃合いですし帰りますか⁉︎そうです、そうしましょう指揮官‼︎」

 

「え?ああ………じゃ、行くか。また今度日を改めて来るわ、マスター」

「うむ、道中気を付けてな」

 

微笑ましいものを見るような目で俺達を見るマスター。

何故だろう?まあいいか。

AR-15も早く行こうと急かしてくる事だし、帰りますかね。

 

 

 

 

 

 

指揮官とAR-15が帰ってから数十分後。

喫茶店のマスターは葉巻を吹かしながら、誰もいない店内で寛いでいた。

 

「む、もうこんな時間か。さてーーーーーー⁈」

 

そろそろ片付けて店仕舞いの準備をするかと思い、座っていた椅子から立ち上がったその瞬間、ゴバッ‼︎という轟音と共に店の壁が粉々に砕け散った。

 

「な、に…………⁉︎」

 

マスターは咄嗟に伏せて無事だったが、壁は見るも無残に破壊されて大穴が空いている。

それだけではなく、目を凝らしてよく見ると壁の向こうに人影があった。

 

「ハッ、脆いもんだ。さて、グリフィンの鉄屑人形と指揮官はどこだ?」

 

人影が声を発する。

店内に立ち込めていた土煙が晴れ、その姿が鮮明になる。

 

其処には一振りの剣を携えた鉄血人形のハイエンドモデルであるエクスキューショナーが獰猛な笑みを浮かべて佇んでいた。

 

 

 

 

 

時は数時間前に遡る。

 

イントゥルーダーに誘われて人間の街にやって来た彼女。

性格が合いそうもないイントゥルーダーと何故エクスキューショナーが共に行動しているかというと、ここ最近人間の街に入り浸っているイントゥルーダーが、以前自分に辛酸を舐めさせたグリフィンの変態指揮官に出会ったという話を聞いたからだ。

 

「もしかしたら、復讐のチャンスがあるかも知れないわね?基地に襲撃を仕掛けるより、リスクは少ないでしょうし」

 

その言葉に乗ったエクスキューショナーは意気揚々と街にやって来たのはいいが其処から先が問題だった。

イントゥルーダーと違って趣味といったものを持ち合わせていない彼女は暇を持て余してしまったのだ。

やる事も無いのでグリフィンの指揮官を探しがてら街を歩いていたのだが、直ぐに後悔する事になった。

怪しげな男に声を掛けられたり、急に尻や胸を揉もうと寄ってくる変態集団(勿論触ってきた連中はボロ雑巾にした)や、踏んで下さいハアハア‼︎などと叫びながら走ってくる男達。

 

「この街には変態しかいねェのか‼︎」

 

と慟哭した彼女には同情せざるを得ないだろう。

もう帰ろうかなと考え始めた時、イントゥルーダーから連絡が入って来た。

 

『どうかしら、人間の街を観光したご気分は?』

「この上なく最低だ、クソッタレ。二度と来ねェよ。何でこの街は変態しかいねェんだ‼︎」

『それは仕方ないわね。だって貴方、即堕ち2コマキャラみたいな気配放ってるもの』

「ソクオチ二コマ?何だそれ?」

『世の中には知らない方がいい事もあるのよ、エクスキューショナー?』

「あっそ。で、何の用だよ?」

『あら、私とした事が忘れる所だったわね。例の指揮官だけど、とある喫茶店によく出入りしているそうよ?貴方のいる場所からも遠くないわ。行ってみる価値はあると思うわよ?』

 

 

 

 

 

 

「ここか?あのグリフィンの変態野郎がいる店ってのは?」

イントゥルーダーからの連絡を受けた後、エクスキューショナーは教えられた喫茶店の前に足を運んでいた。

 

「チッ、まあいい。さっさとあの野郎をブチ殺して帰るとするか」

 

そう言って彼女は己の武器である剣を壁に振り下ろす。

不可視の斬撃が轟音と共に店の壁を破壊し、土煙が舞い上がる。

煙が晴れ、滅茶苦茶になった店内を見渡すが中には店の人間らしき老人以外誰も居ない。

どうやら空振りだったようだ。

苛立ち紛れに舌打ちをして、せめて情報だけでも引き出そうとして老人に近づく。

 

「………御主は何者だ?人間ではないようだな」

「あ?どうでもいいだろ、そんな事。それより、この店にグリフィンの鉄屑人形と指揮官が出入りしてるという話を聞いたんだが、何か知ってる事があるなら言え。言わねェなら殺す」

「………悪いが個人情報は守る主義でな。そう簡単に話す訳にはいかん」

「そうかよ。じゃ、死ね」

 

そう言うや否や、ブォンッ!と斬撃が放たれ老人に直撃する。

 

「ったく、とんだ手間と時間の無駄だったな。これ以上は無駄足みたいだし司令部に戻るか………なっ⁉︎」

 

ため息をついて帰ろうとしたその時、彼女は信じられないものを見たというような目をする。

それもその筈、先程殺した老人がパンパンと服に付いた埃を払いながら立っていたからだ。

驚くべきことに老人は傷一つ負っていない。

 

「中々手荒いのう……………!」

「何者だ、テメェ?どうやって今の攻撃を避けやがった?」

 

エクスキューショナーは警戒しながら老人に問いかける。

 

「何者と言われてもな。儂は唯の隠居した爺じゃよ」

「テメェみたいなジジイが居てたまるか!」

 

ふざけやがって、とエクスキューショナーは悪態を吐く。

どうやら偶然斬撃が外れただけのようだ。

今度は必ず殺す。

 

「今度こそくたばりやがれ!」

 

再度斬撃を放とうとするエクスキューショナー。

だが、それを老人は手でそれを制した。

 

「まあそう殺気立つでない。話し合いといこうではないか」

「話し合いだ?テメェ、今の状況分かってんのか?話し合いの余地なんざねェよ」

 

エクスキューショナーは殺気を放ち老人を威圧するが彼は身動ぎ一つしない。

それが余計に彼女の気に障った。

 

「そうか………どうしても話し合いたくないと言うなら仕方あるまい。お手柔らかに頼むとしよう。こういった戦闘は実は不慣れでな………」

 

身体をプルプルと震わせながら老人は両腕の服の袖をまくる。

その直後、ドンッ!という音を発して老人の二の腕の筋肉が膨張した。

余りに予想外の光景にエクスキューショナーは目を見開く。

 

 

 

 

 

 

「何せいつも一方的な殺戮になってしまって………」

 

 

 

 

 

 

 

お前さんなら楽しめそうだ、と笑いながら骨をボキボキと鳴らし、尋常ではない殺気を撒き散らす老人。

 

エクスキューショナーはそれを見て思った。

 

 

 

 

 

「(あれ?ひょっとしてオレ殺される?)」

 

 

 

 

と。

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

「店の修理費用は日本円換算で約2000万だ。返しきるまでは儂の店で働いて貰おう。ーーーーーー但し、メイド服でな‼︎」ーーーーーー喫茶店のマスター

 

「だああああ‼︎こいつも変態かよ⁉︎」ーーーーーー鉄血のハイエンドモデル人形・エクスキューショナー

 

「フフッ、私の時代が来たな………!」ーーーーーーAR小隊の隊員・M16A1

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

AR-15「バ、罰ゲーーーーーームッその4です!新たな罰が貴方を待っています!」指揮官「どういう事⁉︎」

おっぱい好き
ああ、おっぱい好き
おっぱい好き




喫茶店を出た後、基地に向かって歩いていた指揮官とAR-15。

先程から2人は全く言葉を交わす事がなく、気まずい沈黙だけが流れていた。

 

「(〜〜〜何であんな事してしまったのよ私………!)」

 

AR-15の脳裏には喫茶店で自分がとってしまった行動が鮮明に浮かび上がっていた。

何故自分でもあんな事をやってしまったのかが分からない。

冷静に考えれば、あの時手でクリームを取れば良かった筈。

よりによって何故舌などで舐めとる等という行為をしてしまったのか。

不幸中の幸い?か、当の指揮官はその時のショックで忘れてしまっているようだが。

 

「(き、気まずい………。私が原因とはいえ、これは困ったわ………)」

 

指揮官の顔を見ると、あの時のことを思い出しそうになるのでなるべく見ないようにしているAR-15。

そんなAR-15の態度を見た指揮官も、流石に空気の重さを感じたのか沈黙を保っていた。

 

「(何なんだ、この空気は。やっぱり喫茶店の事が気になってるのか?………だがいつまでもこの調子というのもな。…………よし)」

 

何かを決断したのか、指揮官の目に力が宿る。

 

 

 

「なあ、コルト」

「ッはい⁉︎何ですか指揮官?」

 

指揮官の声にバッ!と勢いよく振り向くAR-15。

どうして顔が赤くなってるんだ?と不思議に思いながらも指揮官は言葉を続ける。

 

「その………だな。今日は、楽しかったか?喫茶店の件は別として」

「え………?ええ、その、はい。何時もとは違う新しい経験が出来たので良かったと思ってます。………指揮官はどうでしたか?」

「俺か?ああ、うんそうだな。とても楽しかったよ。コルトがホラー苦手だったというのも新しい発見だったしな」

「指揮官!それは言わない約束でしょう⁉︎」

「ハッハッハ!言う言わないは俺の自由なんだぜぇ、桃色鍋蓋娘さんよ!」

「オラァッ‼︎」

「グフッ!………いいパンチ持ってんじゃねぇか」

 

途中からふざけ出した指揮官の腹にAR-15のストレートパンチがめり込む。

それをまともに食らった指揮官は身体を震わせながら幸せそうに笑みを浮かべていた。

 

「悪い悪い。まあ、とにかくコルトが楽しかったなら良かったよ。出掛けた甲斐があったってものさ」

「………もう。本当に指揮官は指揮官ですね」

「当然だ。俺はおっぱい大好きの変態指揮官だからな」

「全く。変態も程々にしておかないと刺されますよ?」

 

そう言って、AR-15は微笑みながら指揮官の方を向く。

指揮官も笑いながらAR-15を見ていた。

 

 

其処には、いつも通りの指揮官とAR-15の姿があった。

 

 

 

 

 

〜その頃喫茶店では〜

 

 

「ほれ、その瓦礫は其処だ。上手く積み上げるのじゃぞ?御主のセンスに掛かっておるからな」

「ぐ………これでいいんだろ、これで」

 

圧倒的なパワーで処刑人…エクスキューショナーを叩き潰したマスターは「店の修繕費分は働いて返して貰うぞ?逃げたら分かるな?」と言い、エクスキューショナーの剣を拳圧で粉々にする事によって彼女を従わせ、床に散らばった瓦礫を積み上げさせていた。

 

「うむ、それで良い。取り敢えず片付けは一通り終わったな。後は穴を塞ぐだけじゃが、修理の者が来るのは明日だ。故に明日まではこれで穴を塞がねばな」

 

マスターはそう言ってエクスキューショナーに背を向けるとブルーシートを壁の穴を塞ぐようにして貼り付ける。

 

「何をボーっとしておる。御主も手伝わんか。元はと言えば御主が開けた穴じゃぞ?」

 

「クソ………!調子に乗りやがって」

 

あの後、マスターに手も足も出ずボコボコにされたエクスキューショナー。

まさか人間に遅れをとるとは思っていなかった彼女は屈辱に打ち震えていた。

同じ倒されるとしても、グリフィンの戦術人形なら一万歩譲って分からないこともない。

だが相手は人間。

それも老人だ。

しかしその老人に倒されたのもまた事実。

それが余計に彼女を苛立たせていた。

 

「………ふむ、以外じゃな。てっきり切り掛かってくるかと思っておったが」

「チッ………!背後から不意打ちなんざ雑魚がやる事だ。ましてテメェみたいなジジイなら余計にな」

 

エクスキューショナーという人形は良くも悪くも正面から堂々と向かい合う人形であるため、そういった行為はしない。

何事にも律儀で義理堅いのも彼女ならではの性格だろう。

 

 

「よし、これで明日まではもつじゃろう」

 

ブルーシートを貼り終えたマスターはエクスキューショナーに向き直る。

 

「店の修理費用は日本円換算で約2000万だ。返しきるまでは儂の店で働いて貰おう。ーーーーーー但し、メイド服でな‼︎」

 

「だああああ‼︎テメェも変態かよ⁉︎」

 

ニヤリと笑いながらマスターはクローゼットの奥からメイド服を取り出し、それを見たエクスキューショナーは頭を抱えて絶叫した。

 

「おや、この格好は好かぬか?ならば、このオッパイむき出しブルンエロメイド服でも良いがーーーーーー」

 

「着るかッそんなもん‼︎最初の奴でいいから寄越せ!」

 

顔を赤くしながらマスターの持っているメイド服を引ったくり、店の奥へと入っていくエクスキューショナー。

これが数ヶ月間に及ぶ受難の日々の始まりであるということを、この時の彼女は知る由もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

PM2200。

途中でお土産やら何やらを買って寄り道をしたから、随分と遅くなってしまった。

基地も電気がついてる部屋は数えるほどしかない。

 

「あー………疲れた。部屋に戻る前にカフェに行ってくるわ。最後のクジ引きとやらがあるだろうからな。コルトは先に宿舎に戻って休んでてくれ」

「なら私も一緒に行きますよ。多分皆もいるでしょうから」

 

そうか。

ならカフェに行くとしよう。

って言うか、最後はM16で確定なんだからクジ引く必要なくないか?

そう思いながらカフェの扉を開いて中に入る。

すると、案の定M16がジャックダニエル片手に椅子に座っていた。

 

「おう、遅かったじゃないか指揮官?その様子だとAR-15と楽しんできたようだな?」

 

面白そうな表情を浮かべて笑うM16。

フッフッフ、だがそんなお前の余裕も今日までの話だぜ?

明日は今までの御礼も含めてたあっぷりと!お返しをしてやるからなあ!

 

「ほほーう?それは期待できそうだな?だが、指揮官。そう簡単にお前の思うようにはいかないぞ?指揮官こそ覚悟しておくんだな」

 

そう言ってM16は再び不敵な笑みを浮かべた。

くっ………やっぱり動じないか。

まあいい、明日は俺の真の実力を見せてやるだけだぜ!

 

「さて、指揮官。恒例のクジ引きの時間だ。今日クジを引いてくれるのはHK416だ。頼むぞ」

「フン。アンタの頼みなんて聞くのは気が進まないけど………」

 

不機嫌そうにHK416がクジ引きのボックスの中からクジを取り出す。

 

「フフッ、私の時代が来たな………!」

 

クジを見たM16がニヤリと笑う。

いや、そもそもお前の名前が書いたクジしか入ってないからな?

引く必要絶対なかっただろ。

 

「分かってないな、指揮官。こういう一見意味のない行為も大事なんだぞ?折角の企画を楽しまないとな」

 

そういうもんかねぇ?

ほら、明日の人形恋愛前線のお相手は誰なんだ?

まあ分かってるけど。

 

 

「そう急くな指揮官。さて、長かったようで短かった人形恋愛前線で最後に選ばれたのは!」

 

 

 

 

 

『M16A1』

 

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

「指揮官さまぁ、私怖〜い!お化け苦手なの〜!」ーーーーーーAR小隊の隊員・M16A1

 

「(フオオッ⁉︎俺の腕にマシュマロが当たってるッ‼︎)」ーーーーーー人形恋愛前線に参加させられている哀れな男・指揮官

 

 

 

 

 

 

『おっぱいフロントライン』キャラ紹介

〜AR小隊・404小隊・指揮官編〜

 

 

 

①指揮官

 

とあるグリフィンの基地の指揮官を務めている年齢本名不詳の男。

おっぱい大好きを公言する変態であり、彼の被害に遭っている人形は数知れず。

毎回セクハラ変態行為を働いてはボロ雑巾にされているが、どんな重傷を負っても即座に復活するギャグキャラ要素を持っている。

過去に正規軍の何かしらの研究所にて研究者として在籍していた。

しかし、とある『事故』により研究所が閉鎖され各部隊をたらい回しにされた後に、G&Kの社長であるクルーガーの勧誘に応じて入社。

肝心の指揮能力については未だ不明な点も多い。

おっぱいが好きと言っているが、実は貧乳も好きなのでは?という疑惑が俄かに広がっている。

人形恋愛前線ではM4A1に自分の過去に深い関わりがある、とある存在の名を教えた。

 

②M4A1

 

大天使エムフォエル。

おっぱいは大きい。

指揮官による様々な変態行為に付き合っている時がある。

しかし、何だかんだで指揮官のセクハラ行為の被害を被っていない。

人形恋愛前線にて指揮官との関係性に一定の進捗があった模様。

人形恋愛前線の最中に指揮官から彼の過去に関わりがある、とある『破滅』の名を告げられるが………?

 

③AR-15

 

指揮官による最大の被害者の1人。

おっぱいは絶望的。

着任早々に胸ネタで弄られる。

最近は笑顔だけで指揮官を威圧できるようになった。

いつか覇気を習得出来るかも知れない。

指揮官からは様々な呼び名を付けられており、桃色まな板娘・まな板ピンク娘・ピンク色まな板ロン毛娘・ツルペタ桃色娘・嘆きの壁・まな板ノーパン疑惑娘・断崖絶壁・桃色胸なしツルツル娘・大根おろし器・鰹節削り器・桃色鍋蓋娘などという通称が与えられている。

ペルシカを通じて断片的に指揮官の過去を知っている。

人形恋愛前線にて、指揮官との関係性に大きな進捗があった模様。

自覚はないが、指揮官に一定の好意を寄せている。

 

④M16A1

 

指揮官の変態行為に動じない最強メンタル姉御肌面白お姉さん。

おっぱいは大きい。

任務のない日は上下ジャージ姿でゲームをしている。

指揮官を弄り回すのが楽しみとなって来ているそうな。

飲み対決で指揮官に勝利し、その罰ゲームと称して企画・人形恋愛前線を開催。

最近のトレンドは指揮官執務室の冷蔵庫の食料を漁る事。

 

⑤M4SOPMODⅡ

 

元気一杯かつ人懐っこいAR小隊の隊員。

おっぱいは程よく大きい。

子供っぽい所が多く見受けられるが、その実周りをよく見ており他者の感情変化には敏感。

指揮官からは変態行為による被害を受けていない。

宿舎にてドラ◯もんを観賞している姿が目撃されている。

人形恋愛前線にて指揮官との関係性にかなりの進捗があった模様。

指揮官には一定の好意を寄せている。

 

⑥UMP45

 

AR-15と並ぶおっぱい絶望勢の1人。

非正規部隊・404小隊の隊長。

指揮官からは洗濯板娘・貧乳SMGなどと呼ばれているが、その度に彼の顔面を強打している。

 

⑦UMP9

 

UMP45の妹。

元気溌剌で人懐っこいなどSOPMODⅡと類似点がある404のムードメーカー。

おっぱいは程よく大きい。

 

⑧HK416

 

M16に対抗心を燃やす404の隊員。

指揮官からは水色おっぱいちゃんと呼ばれている。

おっぱいは文句なしのブルンバスト。

何だかんだで甘い404のお母さん枠。

 

⑨G11

 

404のお昼寝マスコット。

おっぱいは無いけど癒されるからいいやと指揮官から思われている。

最近はマイナスイオンを放てるようになった。

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

M16「フフッ、罰ゲーーーーーームッ!だぞ指揮官」指揮官「助けろ下さい」

ギャップ萌えって良いと思うんだ。
普段男勝りな女性が可愛い系の服を着ているその姿に、僕は萌えを見出すんだ。

大事なのは、おっぱいだ。
つまり、おっぱいだ。

だからツベコベ言わずに問答無用でおっぱいをすこれ。

※作者は、おっぱいもヒンヌーも大好きです。
『おっぱいフロントライン』を閲覧する際は、おっぱい万歳と三唱して見るとヨロシ。

但し、家の外ではやらないように。
変質者と間違われて通報される恐れがあります。

指揮官「おっぱい万歳!」
警察「はいはい、変態はタイーホしますよ」

それでは、レッツ・おっぱい!


朝。

雲一つない青空、燦々と輝く太陽。

珍しく何事も起こる事なく目が覚めた。

いや、まあそれが普通なんだが。

時計を見ると、いつもM16が必ずやってくる時間を過ぎていた。

流石のアイツも自分の日だから自重したのか?

そう思って机に目を向けると、見慣れないラジカセのようなものが目に入った。

 

……………嫌な予感しかしない。

 

『あー………あ、あ、あ。マイクテスマイクテス。やあ指揮官。言うまでもないが、今日は私とのデートという訳だ。私は妹達と同様に正門の前で待っているぞ?』

 

ザーザーという雑音が暫く流れた後、ラジカセから不意に聞き慣れた声が聞こえてきた。

ホントにこういう演出が好きだなM16は。

まあいい、取り敢えず着替えて飯を食うか。

 

『………おっと、そうだ。因みにこのラジカセは録音内容が済み次第自動的に爆発する笑。そんじゃ、せーの!』

 

は?

え、ちょ、おま⁉︎

 

『あーたーらーしーいー朝がーきーた!』

 

 

 

ふ、ふざけんなあああああああああああああああ‼︎

 

 

 

 

直後。

ラジカセが轟音を立てて爆発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご主人様⁉︎どうされましたか………これは一体」

 

音を聞きつけたメイド長ことG36が慌ただしく部屋に入って来た。

襲撃と勘違いしたのか武装している。

 

「お早うメイド長。大丈夫、今のは新しい爆発式の目覚まし時計の音だ。悪いがな、M16に少し遅れると伝えておいてくれないか?」

「色々突っ込みどころがありますが………畏まりました。服については予備が倉庫にありますので取って参ります。その間ご主人様は一度シャワーを浴びられた方が宜しいかと」

「ありがとう、感謝するよ。おっぱい揉ませてくれたらもっと感謝しちゃうぞ?」

「全身の骨をへし折りますよ、ご主人様。寝言は寝てから言って下さい」

「すんませんでした」

 

メイド長がゴミを見るような目で俺を睨みながら銃の安全装置を外す。

元々目付きが悪いから余計に怖く見えるな。

だがそれがイイッ‼︎

こういう状況でこそ、俺は燃えるのさッ!

 

「すり潰しますよ、ご主人様?」

「マジすんません許してください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

AM0915。

 

あの後着替えた俺は正門に向かっていた。

案の定、正門にはピンク色のカーディガンに白シャツとロングスカートという格好のM16が居た。

 

…………え、誰だお前?

 

「お早う、指揮官。………どうした、石のように固まって。………ははあ、さては私の服装に見惚れているのか?」

 

そりゃあな。

だって、お前の今までのイメージを掻っ攫っていくような服装だぞ。

これがギャップ萌え?という奴なのか?

 

「ふふ、確かに私のイメージには合わないかも知れないな。………似合わないか?」

 

いや、そんな事はないぞ?

普通に可愛いんじゃないか?

イメージ云々と言ってるが俺は好みだけどな。

 

「そ、そうか?………可愛い、か。そうか」

 

何やら小声で小さくブツブツと呟くとM16は楽しそうに笑う。

 

「では指揮官、エスコートを頼む。こういうのは男性がリードするものなんだろう?」

 

任せておけ。

俺は今日のプランをみっちり練ってきているからな。

ならば、早速行くとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜とある遊園地〜

 

 

街の中心部に位置するこの巨大なテーマパークは今日も客

で賑わいを見せている。

そこには世紀末へ向かいつつある世界とは真逆の光景が広がっていた。

こういった娯楽施設が多数存在しているのは、やはり現市長の施策が大きい。

人口回復、経済再生、食料自給率の向上といった政策が存在しているがその中で一等目を惹くのが『娯楽の復興』だ。

曰く、人は娯楽あってこそ明日を生きることが出来る、と。

貴重な予算をそんな無駄な事に!という批判もあったが、政府の一定の理解を得られた事で予算はそれなりに当てられている。

話は逸れるが、国家から都市部の管理を請け負うグリフィンも様々な部署が存在する。

俺のように鉄血との戦争を行う指揮官職以外に、街の行政を担当する行政担当官などといった職種だ。

行政担当官は複数人で構成され、その中から投票で選ばれた人物が実質的に長となり運営を行う。

俺が今の基地に配属されて来たときは、人手不足で大変な状況だった。

おかげで行政職じゃない俺まで半分くらい仕事を任されていたからな。

今でこそ多少楽になってはいるが。

まあそれはともかくとして、今日俺が人形恋愛前線で選んだ場所はこの遊園地だ。

M16も物珍しそうに周りをキョロキョロと見渡している。

 

「おいおい、こんな施設があったなんて知らなかったぞ?指揮官は好きなのか?こういう所」

「まあ嫌いな奴はいないだろ。まして今みたいに楽しみが少ない世界なら尚更な」

 

さて、何のアトラクションに乗ろうかと考えているとM16がある建物に興味を示した。

 

「おっ、指揮官。あれなんてどうだ?面白そうじゃないか」

 

M16が指し示す先には、お化け屋敷が存在していた。

今時お化けなんざでビビる奴いるのか?

一歩街の外に出れば鉄血やらELIDやらがいる世界だってのに。

……………何だかM16が不敵な笑みを浮かべていたが気にしないようにしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

〜お化け屋敷『低体温荘』〜

 

 

 

 

たかがお化け屋敷とタカをくくっていたが、以外にも内装は作りこまれていた。

最初は真っ暗な部屋だったが、扉を開けると鬱蒼と茂る森が広がっている。

 

「リアルな作りだよな、これ。見ろよ、あの首吊り死体なんて本物みたいだ」

 

寧ろ怖いというよりグロい。

造形に力入れ過ぎなんじゃないか?

特にさっきから俺たちを追いかけてくるボロ布纏った婆さんの動きなんて気味が悪いの一言に尽きる。

あれだけの演技力あるなら役者にでもなればいいのに。

そう思いながら歩いていると、突然M16が俺の腕を掴んでくっ付いてきた。

 

「(フオオッ⁉︎俺の腕にマシュマロが当たってるッ‼︎)」

 

俺の腕に弾力のあるマシュマロおっぱいが絡みつく。

ぐっ………耐えろ、耐えるんだ俺!

 

「指揮官さまぁ、私怖〜い!お化け苦手なの〜!」

「何だ………そのキャラは?」

「おや、こういった場所では女性はこうするべきだと前に読んだ本に書いてあったんだが。駄目だったか?」

 

フフッと笑ったM16は更に身体を擦りよせてくる。

さてはお前、ずっとこれをしようと企んでたな⁉︎

なんて奴だ………末恐ろしいぜ。

くそ!おっぱいが、おっぱいがああああああ〜〜〜!

不味い、俺の理性が溶け落ちてしまう!

落ち着け、クールになるんだ俺!

鼻からドバドバと流れる鼻血を全身の細胞を活性化させることによって止血する。

 

 

……………よし。

 

 

「さて!それより出口はまだなのか?………ってうわっ!足掴むなよ!」

 

足元を見ると下半身のない内臓が飛び出し、眼球が飛び出した老人が俺の足を掴んでいた。

マジで機械とは思えない。

ホントよく出来てるよなあ、このアトラクション。

取り敢えず掴んでいる腕を外そうとするが中々外れない。

ちょ、力強くないか?

 

「ハハッ、どうしたんだ指揮官。外れないのか?どれ、私が………っと」

 

M16が腕を掴むと、流石は戦術人形の力なのかアッサリと外れた。

 

それから暫く歩き続けていると漸く扉が見えてきた。

 

「おっ!どうやら出口みたいだぞ。なんて言うか怖いというよりキモかったなあ………どうしたM16?」

「ん?………ああ、いや。何でもない」

 

俺の足を掴んでいた奴の腕を外してから、M16はずっとこの調子だ。

何やらエラく考えこんでいる。

扉を開けて外に出ると、喧騒ないつもの景色が広がっていた。

 

「ああ〜やれやれ。ま、そこそこ楽しめたから良しとするか。でも一番気味悪かったのはボロ布婆さんだったな。そう思わないか?」

「指揮官」

「どうした?」

 

 

 

 

「さっきから一体何の話をしているんだ?」

 

 

 

 

は?いやいや、何の話も何もあれだよ。

ずっと俺達の後ろ追いかけてくる婆さんいたろ?

 

「………いや、そんなものは見てないぞ。指揮官の勘違いだろ?」

「そうか?いやそんな筈ないんだけどな。でもあの死体とか超リアルじゃなかったか?」

「それは当然だ。どっからどう見ても本物の死体だったじゃないか。だからおかしいと思って考えてたんだが、指揮官は気付かなかったのか?」

 

 

 

 

 

………………………何?

 

 

 

 

 

「指揮官が足を掴まれた時私が外したの覚えてるか?あの時、指揮官の足を掴んでいたのは間違いなく本物の人間の腕だった。機械なんかじゃない」

 

待て。

それはつまりどういう事だ?

あれが本物の死体だったって?

 

疑問の海に沈みそうになった時、従業員らしき女性がこちらに駆け寄ってくるのが見えた。

 

 

 

「あのー、すいませーん!そちらは立ち入り禁止になってまして」

 

 

 

立ち入り禁止………?

え、でもこの建物はお化け屋敷なんじゃないのか?

現にさっき入ってきたばかりなんだけど。

 

 

「………?その建物は倉庫ですよ?お化け屋敷は去年に廃館になったんです。どういう訳か、お化け屋敷の中で行方不明になる人が続出したので取り壊されました。なので当遊園地には、お化け屋敷は存在しない筈なのですが」

 

 

 

 

 

 

その日。

俺は始めてチビリそうになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから気を取り直して、別のアトラクションひたすら回った。

いやー、一言で言わせてもらうとヤバかったわ………。

コーヒーマシンに乗った時はM16が滅茶苦茶早く回そうとするから目が回って暫く立てなかったし、ジェットコースターに乗った暁には安全ベルトを急降下する直前で外してくれたお陰で死にそうになった。

多分俺の寿命10年分くらいは消えたんじゃないかな。

 

「ハッハッハ!大丈夫か指揮官?大分グロッキーみたいだが。ほら、ソフトクリーム買ってきたぞ」

 

M16が面白そうに笑いながら売店で買ったソフトクリームを俺に差し出してくる。

………まあM16も楽しんでるからいいか。

だがジェットコースターで安全ベルトは外さないでくれ!

 

その辺のベンチに二人で座りながらソフトクリームを食べていると、一人の女の子が近寄って来た。

何処かで見たような子供だなーーーーーーと思っていると。

 

「あー!やっぱり!あの時の変態のお兄さんだー!」

 

ブフゥーーーーーーーーッ⁉︎

ちょ、いきなり何を言いだすんだこの幼女は⁉︎

周りの人も女の子の発言を間に受け「え?変質者なの、あの人?」「目を合わせちゃダメよ!」などとヒソヒソ声で話しながら俺を見てくる。

お、思い出したぞ!あの時SOPちゃんとデートしてた時、チンピラに人質にされてた女の子か!

 

「指揮官………?まさか幼女にまで手を出したのか?流石の私も擁護できないぞ?」

 

M16がタンスに潜むダニを見つけた時のような目で俺を見る。

 

「誤解だッ!この子は前に俺とSOPちゃんで助けた子だよ!ほら、前に話したろ?」

「成る程ねぇ………指揮官も色んな所でフラグを立ててるんだな」

 

何がフラグだ。そんないいもんじゃねぇよ………。

そ、それはともかくとしてだな!

 

「お父さんとお母さんはどうしたんだ?またはぐれちゃったのか?」

「んーとねー?今日はおじーちゃんと、おじーちゃんのお店の人と3人で遊びに来てるの!」

 

ニコニコと満面の笑みを浮かべながら言う女の子。

笑顔が眩しいぜ、全く。

 

「えーと、つまり逸れた訳じゃないって事でいいのかな?なら、お爺ちゃんの所に戻った方がいい。多分君の事を探してるよ?」

「うん!分かったー!じゃあまたね!変態のお兄さん!」

 

 

 

だから変態って大きな声で言わないで!

変な噂が広まるだろッ!

 

幼女怖ぇわ………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー!メイドのお姉ちゃん!」

「あー!じゃねェよクソガキ!ったく、お前に何かあったらオレがジジイにしばかれるんだぞ⁉︎何処行ってたんだ?」

「変態のお兄さんに会ってたの!」

「はあ………?」

 

トテトテと走り寄ってきた幼女に悪態をつきながら抱え上げるのは、メイド服を見に纏った処刑人ことエクスキューショナーだった。

彼女は鉄血人形のハイエンドモデルなのだが、とある一件により街の喫茶店で働く日々を送っている。

 

「クソッタレが、オレは鉄血のハイエンドモデルなんだぞ………。何でガキのお守りなんざしなきゃなんねェんだ」

「ダメだよ、お姉ちゃん。悪い口言ってたらおじーちゃんに怒られちゃうよ」

「はん!あんなジジイに二度遅れを取る程落ちぶれちゃいねェよ!何なら今すぐにでも下克上をーーーーーー」

「ほーう?随分と大それた事を言うようになったものじゃのう、御主」

「ゲェッ⁉︎ジジイッ⁉︎」

 

 

ヌゥ、とエクスキューショナーの背後から現れた喫茶店のマスターを見て彼女の顔から冷や汗が流れる。

 

 

「儂の事はマスターと呼べと言うておろうに。孫の前で汚い言葉遣いは慎めと言うた筈じゃが?」

「あー………はいはい。すいません、オレが悪かったですよっと。で、まだ遊ぶのか?」

「ふむ。息子夫婦が夕方迎えに来ると言うておるからな。そろそろ帰るとしよう」

「えー!もう少し遊びたいよー」

「むぅ………なら後一回だけ乗り物に乗ろうかの」

「わーい!おじーちゃん大好きー!」

 

 

「(チッ、くっだらねェ。何やってんだオレは………)」

 

完全に孫バカと化したマスターを見たエクスキューショナーは呆れながらも2人の後をついていく。

 

 

「(まあ………たまにゃ悪くはねェな)」

鉄血人形として人間から悪意と敵意しか向けてこられなかった彼女にとって、色々と濃い2人に振り回されるのはある意味新鮮であった。

 

とは言え、いつかはまた人類の敵として現れなければならない。

そうなった時、あの2人には出会いたくないなと彼女らしからぬ事を思いながら、その場を後にしたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

「で、指揮官。今回の人形恋愛前線で一番楽しかったのは誰とのデートなんだ?」ーーーーーーAR小隊の隊員・M16A1



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

M16「フフッ、罰ゲーーーーーームッ完結!だぞ指揮官」指揮官「助けろ下さい」

今回で人形恋愛前線こと、罰ゲーム編が完結です。

おっぱい万歳!





遊園地で思った以上に長居してしまった。

時間が過ぎるのは早いもので、日が暮れている。

そろそろ帰るか………?

 

「なあ、指揮官。最後に飲みに行かないか?何処か良い店に連れてってくれよ」

 

それなら街の外れに隠れたバーがあるから、そこに行くか。

知る人ぞ知る店なんだが、置いてある酒は悪くない。

 

「そうなのか?だったら其処に行こうじゃないか」

 

この後、バーで浴びるように色んな酒を飲むM16に改めて驚かされたのだが、それはまた別のお話。

 

 

 

 

 

 

 

 

「指揮官〜もう飲めない………」

 

帰り道。

珍しく酒に酔ってしまったM16は、微笑みながら俺の腕を掴んで歩いていた。

顔は赤く染まり切っており、完全なへべれけ状態である。

 

「珍しい事もあるもんだ。お前が酔うなんてなあ」

「ん〜まあ、普段飲む時は上手くセーブしながら飲んでるからな。でも今日はそれをしなかったのさ。あのニホンシュとかいう酒は中々美味かったぞ」

「全く、ホントに大丈夫か?これならタクシー拾って帰れば良かったな。とはいえ、この辺にタクシーなんてないし………」

 

だが、この状態だと基地に帰れそうにもない。

仕方がない、こうなったら………。

 

「どうしたんだ、指揮官〜?急にしゃがんだりして?」

「俺が背負ってやるよ。お前、その状態じゃ歩く事もままならないだろ?」

 

俺がそう言うと、M16は暫く考えるような素振りをして背中に跨がってきた。

それと同時に背中に柔らかな感触を感じる。

思えば、今日ほどおっぱいに迫った日はないんじゃないか?

 

「OKだぞ、指揮官〜。そんじゃ、基地までレッツゴ〜!」

「はいはい。分かったから大人しくしててくれよ?」

 

酒が入っているからか、テンション高めのM16。

それにしても酔い潰れるM16なんて初めて見たな。

 

「ふふふ、指揮官がこんなに近い………」

「⁉︎」

 

急にM16が俺の頬に顔を寄せてきた。

しかも両腕でガッチリとホールドされている。

そして何より、普段の彼女なら決して出さない甘い声で囁いてきた。

 

「よ、酔い過ぎだぞ。一体どうしたんだ?」

「私は酔ってなんかないわよ、指揮官〜?」

「その台詞は酔ってる奴が言う典型的台詞だぞ」

 

とうとう口調まで乱れ始めた。

いつもの男勝りな口調は消え去り、女性らしい………と言えば若干失礼だろうが、M16らしくない言葉遣いになっている。

 

「指揮官はさ、私達AR小隊の事どう思ってるの?」

「もうその質問は散々されたな。前から言ってるだろ、お前達はかけがえのない仲間だよ。今までもこれからもな」

「………嘘つき。指揮官は、私達の誰かを通して別の人を見てる」

「…………気づいてたのか」

「否定しない所が指揮官らしいわね?酷い人」

「聞かないのか?俺が誰を通して誰を見ているのか」

「聞いても答えないでしょう?」

「そうだな………すまない。気づいてるのはお前だけか?」

「さあ………?でも、SOPは薄々感づいてる。あの子は結構そういうのに敏感だから」

 

暫くの沈黙が続く。

指揮官とM16の吐息だけが、その場に木霊する。

永遠に続きそうな沈黙を破ったのは、指揮官だった。

 

「お前の言う通り、俺はある人形を通してある人を見てるよ。それは認める。だが、これだけは覚えていてくれ。俺が君達を大切に思っているのは事実だ」

「………それは、私達が人形だから?」

「人形だから、人間だからとかじゃない。深く考え過ぎなんだよ。背中預け合う同僚を大事に思って何がおかしい?」

「フフッ、確かにそうね。指揮官はそういう人だものね」

「そう言うお前はどうなんだ?AR小隊の皆の事をどう思ってる?」

「私?そうね、SOPは伸び代が誰よりあると思う。成長したら化けるでしょうね。AR-15は、少し悲観的な考え方を変えれば変わると思うわ。M4は………M4はなあ。あいつは、あいつ自身が思うより可能性に満ちている。でも、ある意味小隊の中で誰よりも不安定だ。環境や振れ幅のありようで、大きく変わってしまうかも知れない。これから先、あいつの在り方を大きく変えるような何かが起こる時がいつか必ず来る。指揮官、その時はM4を宜しく頼むよ」

 

酔いが少しずつ覚めてきたのか、M16の口調が普段のそれに戻り始めた。

しかし、その口振りには普段のような自信がないように見える。

 

「それだと、まるでM4の身に何かがあった時に自分は居ないというような言い方だな?お前らしくもない」

「そうだな。多分、酒が入っているからだ」

「まあいいんじゃないか?たまには弱音や愚痴を言いたくなる時もあるだろ。それくらいなら俺がいくらでも聞いてやる。耐えられなくなったら遠慮なく言いにくればいいさ。俺は拒まねぇよ」

「指揮官」

「どうした?」

「惚れるぞ?」

「ハハッ、思ってもない事を。やれやれだ、基地までもう少しあるから大人しくしてるんだな」

「なら遠慮無く」

 

 

 

 

そんな会話を交わしながら二人は夜の道を歩いていく。

ほんの少しの苦味と甘さを感じながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま帰りましたーーーーーーっと」

「あら、珍しい光景ね。416が見たらさぞかし喜びそうだわ」

 

基地へ帰った俺達を出迎えたのは意外にもUMP45だった。

 

「異常は無いか?」

「異常ありなら私がここでのんびりしてると思う?」

「それもそうだな。45、悪いがM16を宿舎まで送っていくのを手伝ってくれ。ずっと背負ってきたから腰が痛くなってきたんだ」

「年なんじゃないの、しきかーん?」

 

年とか言うな。

俺はまだ年寄りには程遠い年齢だっての。

 

 

 

 

 

宿舎へとM16を連れていくと、真っ先に部屋から出てきたのはM4だった。

 

「指揮官?それにM16姉さんも。………この様子だと相当飲んだみたいですね」

「バーで浴びるように飲んでたからな」

「申し訳ありません、指揮官」

 

M4は僅かに溜め息をつきながらM16を連れて部屋の中へと入っていく。

 

「そんじゃ、俺は帰るわ。後は任せる。45もありがとうな」

「はい。それではまた明日」

「お礼はショートケーキで良いよ、しきかーん」

 

さり気なく謝礼にケーキを要求してくる45。

分かった分かった、今度奢ってやるよ。

 

さて、M16も無事に送り届けた事だし俺も執務室に戻りますか。

 

 

 

 

 

 

 

AM0100。

 

執務室に戻り、シャワーを浴びた俺は溜まった仕事を少しだけ片付けようと思い書類と睨み合いをしていた。

もうそろそろ寝るとするか。

 

その時、プシューという音とともに部屋の自動扉が開いた。

誰だ、こんな時間に?

 

「よう、指揮官。さっきは済まなかったな」

 

入ってきたのはM16だった。

赤くなっていた顔は元に戻り、足並みはしっかりとしている。

もう酔いは覚めたのか?

 

「問題ない、もう大丈夫だ。で、指揮官。今回の人形恋愛前線で一番楽しかったのは誰とのデートなんだ?」

 

おいおい、まさかそれ聞く為にわざわざ来たのか?

楽しそうな顔しやがって………全く。

一番楽しかったデートねぇ。

どれも楽しかったが、皆良かった!なんて答えでM16がすんなり引き下がるとも思えない。

ここは決めるしかない!

 

「んんッ!………まあ、そうだな。一番楽しかったデートは………………………コルト、かな?」

「ほう?それはどうしてだ?」

 

ニヤリ、と笑いながらM16が俺に近づいてくる。

 

「………それについてはノーコメントで」

「ふ〜ん?指揮官はAR-15が一番良かったのか。理由を問い詰めてみたいが………フフッまあいいか。何だかんだで人形恋愛前線も上手くいったみたいだし、開催した甲斐があった」

 

経緯が少しアレだったがな。

何事も無かった訳じゃないが、何とか無事に終わって良かったよ。

 

「そうか。それじゃ、私は帰って寝るよ。あまり長居するとM4が心配するしな」

 

ヒラヒラと手を振ってM16は部屋を出て行く。

ってコラ!

さり気なく机に置いてある缶コーヒーを持って帰るんじゃない!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜某所にて〜

 

 

真っ暗な暗闇を一人の男が走っていた。

その姿はボロボロで、強盗にでもあったかというような風体だ。

 

「ハア、ハア、ハア………何とか撒いたか?「こっちには居ないか⁉︎よく探せ!絶対に逃がすな!」…ッ!」

 

複数人の声と足音が聞こえてくるのを察し、物陰に身を潜める。

暫くして足音が彼方へと去っていくのを確かめると、物陰にいた男は手で顔を覆い安堵の溜め息を漏らした。

 

「クソッ………もう時間がない。何としても、あの場所に行かなければ…」

顔を歪めながらも、その眼に確かな意思を宿した男は足早にその場を離れる。

 

「こうなれば手段は選んでいられないか。確か、この地区にはグリフィンの基地が存在していた筈だ」

 

地図端末を開きながらグリフィンの基地を探して場所を確認し、端末を閉じた。

端末をポケットにしまうと同時に、彼は懐から何かを取り出すと、一瞥してポケットにしまう。

 

「グリフィンの指揮官が話の分かる人物だといいんだがな………」

 

 

男はそう呟くと、闇の中へと消えていく。

 

 

 

 

新たな火種がグリフィンに舞い降りようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

 

人形恋愛前線が無事?終了し、溜まりに溜まった業務に悲鳴をあげる指揮官。

そんな中、AR小隊が定期メンテで16LABに出払ってしまう。

 

「もうやってられるかー!俺は今日おっぱい性人になるぞーッ!」

 

と意味のわからない事を宣言し、久しぶりの平和な日々を満喫しようとした彼の元へ、ある報告が舞い込んでくる。

 

 

身元不明の男性をグリフィンの敷地で保護したーーーーーーと。

 

 

それが騒乱の幕開けとなるなど、誰も予想できなかった。

 

 

 

 

「つまりアンタは、こう言いたい訳だ。鉄血の支配域の真っ只中に存在する廃棄された研究所に連れていけと?」

「無茶な依頼というのは承知している!だが、頼れるのはもう君達しかいないんだ‼︎」

 

 

依頼を受け、廃棄された研究所へと向かった指揮官と404小隊。

 

 

「これが胸囲の格差社会か………!」

「どこを見てるの、しきかーん?」

 

 

そこで彼女達が目にするものとはーーーーーー⁉︎

 

 

「45姉ッ今そっちに‼︎」

「9、ダメッ!今すぐ逃げてッ‼︎」

 

 

迫り来る怪異。

襲い来る謎の怪物達。

 

「これは………正規軍?それに鉄血も?一体、何が起こってるの?」

「私達、とんでもない事に巻き込まれたみたいね」

 

暗躍する鉄血人形達。

 

「お、おっぱいヤバッ⁉︎服装エッロ‼︎痴女なの?」

「開口一番のセリフがそれか⁉︎死にたいようだな貴様⁉︎」

 

膨れ上がる疑念。

正規軍、グリフィン、鉄血。

誰が敵で誰が味方なのか。

 

「選択肢は2つ。神に祈るか、諦めるか。何なら3つ目として、ブラジャー振り回しながら俺におっぱい揉んで貰うってのもーーーーーー」

「どれも願い下げよ、この変態指揮官ッ‼︎」

「なら選択肢4。俺達で奴らをボコボコにする!だな」

 

怪物の魔の手が404を襲う!

 

「触手に塗れる404の隊員か………アリだな」

「ナシに決まってるでしょ‼︎バカな事言ってないで助けなさい‼︎」

 

そして、明かされる研究所の真実。

 

「何だ………これ?」

「これが禁断の果実って奴さ。ここまで来たら、もう後には戻れない」

 

広がる災い。

蘇る禁断の災厄。

 

「不味いぞ、アレが市街地に侵入すれば尋常じゃない被害が出る!避難勧告を………!」

「お、おい…さっきよりデカくなってないか?」

 

 

 

 

 

「404、俺の背中は任せた‼︎あの化け物をぶっ倒して、必ず生きて帰るぞ‼︎」

 

「「「「了解‼︎」」」」

 

 

 

騒乱の果てに待ち受けるものとはーーーーーー⁉︎

 

 

 

 

 

 

次章『operation detritus』

 

 

 

 

 

 

「あ、そういや45さんや」

「何?」

「無事に帰ったら尻揉ませて?お前、まな板だから胸はないだろ?」

「帰ったら覚えときなさいよ、しきかーん?」

 

 

 

 

乞うご期待‼︎

 

 

 




次章は404小隊がメインとなります。
さあ、新たなるおっぱいの境地へ!
いざ、ゆかんッ‼︎

ところで触手ってエロいよね。
だって「触る手」と書いて触手って読むんだぜ?
考えた人は天才だな………!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

operation detritus
指揮官「45は壁女、416は山女って訳か………」UMP45「死にたいみたいね?」


おっぱい第三弾。
更なるおっぱいを目撃せよ‼︎


※本タイトルと内容は一切関係ございません。


俺は最近思う。

おっぱいという単語には、全てが詰まっているのではないか?と。

 

優しさ、愛情、母性、心の安らぎ………。

 

我々男性諸氏の疲れ、冷え切った心を癒しながら尚且つ素晴らしい『甘み』をもたらしてくれる至高の存在。

 

 

それが、おっぱいなのだ。

 

 

 

 

「まあつまり、俺が何を言いたいかと言うと。大事なのはおっぱいだという事だ。分かってくれるだろう、わーちゃん?」

 

「分かりたくもないわよ、この変態‼︎それっぽい理由をつけて私のおっぱいを揉むな‼︎わーちゃん言うな‼︎」

 

わーちゃんの繰り出す鉈による斬撃を右へ左へと身体をくねらせながらイナバウアーのポージングを決めつつ華麗に避ける。

いやー、久しぶりにこのやり取りをした気がする。

おかげ様で気分は上々だぜ!

やっぱり朝はおっぱいから始まらねぇとなあ⁉︎

 

「くっ………今日も躱し方に気持ち悪さと変態指数が絡んでるわね‼︎」

 

ヘッヘッヘ、俺に攻撃を当てようなんざ一万光年早いんだよぉ‼︎

この調子で今日はおっぱいを堪能してやるぜぇ‼︎

しかし、今日の俺はそれだけで終わるつもりはない。

おっぱいの次は尻、尻の次は脚だ!

 

「真剣に気持ち悪いわね………!アンタ、自分が何言ってるか分かってるの⁉︎後、光年は距離よバカ‼︎」

 

わーちゃんのゴキブリを見るような視線に心の荒ぶりを覚えつつも、俺は務めて冷静に振る舞いながらわーちゃんに近づいていく。

 

「な、何よ?」

「クールになれよ、わーちゃん。………な?」

「⁉︎」

 

そう言って、わーちゃんの耳を綿棒でサワサワと触る。

すると、わーちゃんはビクッ!と身体を震わせ固まってしまった。

 

「あ、あああアンタ………何のつも…りぃッ⁈」

「フフッ、ここが弱いのか?可愛い奴だな、わーちゃん?」

「か、かわ………!えっと、ちょ、その………!」

「ほら………こういうのがお望みなんだろう?」

優しく綿棒を首筋に滑らし、尚且つ耳に吐息を吹きかける。

「ふ、ああ………ンンンッ‼︎だ、ダメ………!」

 

優しく撫でるような声で囁くと、わーちゃんは顔を熟れたトマトみたいに真っ赤に染め、黙り込んでしまった。

グヘヘへェッ、やっぱ人形チョロイン序列第1位だな笑。

この調子でどんどん攻めてやるぜ!

覚悟するんだな!

最早誰にも俺のおっぱい道を遮ることなどできぬよ‼︎

ハーハッハッハッハ‼︎

 

 

「なーんて事を考えてるんでしょうけど。そうはいかないわよ、しきかーん?」

 

 

突如、何処かで聞いたような声が聞こえた瞬間。

 

メキャアッ‼︎という音とともに俺の頭に何かがめり込み。

 

それと同時に意識は途絶えた。

 

 

 

 

 

「ホントに懲りないわね、指揮官は」

 

いつの間にか執務室に進入していたUMP45は半ば呆れながら呟く。

その片手には、指揮官の意識を刈り取ったであろう分厚い本が握られていた。

床に視線を落とすと、目を回しながらもどこか幸せそうな顔をして気絶している指揮官が転がっている。

 

「いつまで呆けてるの、わーちゃん?今の内に逃げないと何されるか分からないわよ?」

 

先程から唖然として固まったままのわーちゃんに45が声をかける。

すると、漸く正気に戻ったのか「べ、別に私は気持ちよかったとかそんな事思ってないんだから!指揮官の変態!バカ‼︎わーちゃんって言うなー!」

 

と叫ぶと、顔を赤くしながら部屋から出て行った。

 

 

「さて………と。さっさと起きなさいよ、指揮官」

「グボァ⁉︎」

 

45は床に転がっている指揮官を手に持っている本で叩き起こした。

指揮官は頭を押さえながら起き上がる。

 

「痛つつ………何が起こったんだ?お、誰かと思えば壁娘じゃないか」

「フンッ‼︎」

「ゴフッ………いい蹴りを放つじゃねーか。流石、コルトとタメを張れる奴は一味違うぜ」

「一回死んでみる?しきかーん?」

「ブフォアッ⁈」

 

再び指揮官は45に鼻を殴られ、再度意識を失う事になった。

 

 

 

 

 

 

 

あの謎企画・人形恋愛前線が終了してから数日が過ぎ、俺は溜まりに溜まった書類の山を片付ける作業に追われていた。

物資の調達や鉄血への対処計画の策定。

やる事は文字通り山積みで、とてもではないが俺のキャパシティを超えている。

それに何より、仕事のモチベが上がらない。

 

 

 

何故かって?

 

 

 

今朝からAR小隊の皆が定期メンテでケモ耳マッドババアのいる16LABに行っちまって基地に居ないからだよ!

何でも、3日は帰ってこられないそうだ。

3日もの間、俺はM4のおっぱいやM16のマシュマロおっぱい、SOPちゃんの将来有望おっぱいを拝めないのだ。

最早これは俺に対する拷問だ。

AR-15?アイツにおっぱいを期待するだけ無駄だ。

大理石の床を眺めて何の感慨を感じろと言うんだ?

つまりはそう言う事だ。

 

「あと6割くらいか。45、そっちはどうだ?」

「私も進捗具合は同じくらいよ。それより口じゃなくて手を動かすべきじゃないの?」

 

向かいの机で同じように書類の山に埋もれているUMP45の素っ気ない返答に俺は思わず嘆息した。

何故404の彼女がこの執務室にいるかというと、あの後俺が書類整理を手伝ってくれと頼んだからだ。

頼むゥゥゥ!と土下座の姿勢のまま床を這いずりまわると「うわっ、キモ…」と腐った魚を見るような目で見下しながらも了承してくれた。

おかげ様で作業は順調に進んでいる。

一人だと多分夜を徹しても無理だっただろうな。

UMP45がこういった業務が得意で助かった。

 

「この調子だと夕方までには終わりそうだな。なあ、45さんよ、ちょっと休憩しようぜ。コーヒー淹れてやるよ。春田さんのレベル程じゃないがな」

「しきかーん、変な薬入れたりしないでね?」

 

入れるかッそんなもん。

俺は変態だが一線は越えない紳士な変態なんだぞ?

それにだ、この俺がお前の防弾まな板おっぱいに欲情するとでも?

そういう要らぬ心配をする事を昔の言葉で『杞憂』って言うんだぜ?

だから安心して俺の作るコーヒーを飲むんだなあ、縦傷コンパネ板娘ェ!

む………どうしたんだ45。

急に銃を取り出したりなんかして。

 

 

「あら、大したことじゃないわ。ちょっとゴミ掃除をしようと思ってね。さあ………立ったまま死ね!今すぐに!」

 

 

ま、待て45!話せば分かる!

分かった!なら今度おっぱいが大きく見えるブラを買ってギャアアアッ⁉︎

 

 

 

 

 

〜10分後〜

 

やれやれ、45の奴は容赦ってものを知らねぇ。

飛んできた銃弾をゴム毬のように跳ねまわりながら躱したから無事で済んだものの、当たってたらどうするつもりだ。

まあ、俺は更なる至高のおっぱいを拝むまで死ねないがな!

 

「気持ち悪い妄想に浸ってないでコーヒー入れてよ、しきかーん?」

「ぬぐぅ、骨身に沁みる罵倒だな………ちょっと待っててくれ。すぐにコーヒーを入れてくる」

「砂糖は控えめでね、しきかーん」

 

はいはい、と言って部屋の奥に入っていく指揮官を見送った45は、待っている間暇つぶしがてらに棚に置かれている本を見てみることにした。

本棚にはミリタリー雑誌から戦術書や哲学書といった様々な本が所狭しと並べられている。

大事に使っているのか、本はどれもが綺麗な状態だった。

ところが、その中で一冊だけ表紙がボロボロの本があることに気付き45はそれを手に取った。

どうやら内容は聖書らしい。

指揮官もこういう本を読むのね、と思いながらパラパラとページを捲る。

それから暫く本を捲っていた45はあるページを見て、捲るのをやめた。

 

「『ひとつの星が、天から地に落ちてくるのを見た。その星には、底知れぬ所の穴を開く鍵が与えられた』『そして底知れぬ所の穴が開かれた。すると、その穴から煙が大きな炉の煙のように立ちのぼり、その穴の煙で、太陽も空気も暗くなった』………………何でこんな文章にラインを引いて「どうしたんだ、45。面白い本でもあったのか?」………急に声掛けられたらビックリするじゃない、しきかーん?」

 

気配もなく背後から急に聞こえてきた声に45は表情には出さないものの、内心驚きながら振り返る。

そこにはコーヒーの入ったコップを手にした指揮官が居た。

 

「おっと、すまんな。驚かすつもりは無かったんだが………どうして45は聖書なんか読んでるんだ?」

「特に理由はないけど、所々にラインが引いてあったから気になっただけ。仮にも指揮官である貴方がどうして世界の終末を語ってる黙示録に線を引いてるの?」

「特に深い意味は無い。ほら、こういう厨二チックな文章に男は惹かれるのさ。それだけだ」

 

返ってきた答えは釈然としないものだったが、そういうものなのか?と45は自分を納得させる。

 

 

その時だった。

部屋に設置されている電話がけたたましく鳴り響く。

 

 

「はい、こちらはおっぱい信仰パフパフ協会です。当会では新機軸のおっぱい揉み必勝法を提供し『ご主人様?爪を剥ぎますよ?』冗談だ。どうしたメイド長」

「『問題が発生しました。今から地下の第1会議室に来ていただけますか?』」

「何?………了解分かった、今すぐそっちに行く。45、どうやら厄介事みたいだ。一緒に来てくれ」

 

電話越しではあるものの、G36の声色には僅かに困惑が入り混じっているようだった。

それを察した指揮官は真剣な表情になり、45を連れて足早に部屋を出ていく。

 

 

 

 

 

 

〜地下第1会議室〜

 

この基地には地下にも施設が存在する。

そのほとんどは倉庫だが、唯一例外とされている部屋がこの第1会議室だ。

会議室と名を打っているものの、実際は地上の指揮システムが使えなくなった時の予備機能も備えている。

故に、仮眠室やキッチンもあるのだがそれは一先ず置いといてだ。

 

部屋に入るとメイド長とカリーナがいた。

二人とも険しい表情である物を見つめている。

 

二人の視線の先には、ベッドに腰をかけている一人の男性がいた。

憔悴している………とまではいかないが、身体のあちこちに傷を負っている。

 

「………彼は何者だ?」

「先程、敷地内を清掃していた際に倉庫の側で倒れていました。それだけなら保護するだけで良かったのですが、問題は彼が至る所に怪我を負っているという点です」

 

メイド長が手に持った何かを差し出してくる。

それは一つの携帯情報端末と、薄汚れた身分証だった。

 

「正規軍第6特殊生物対処研究班アキラ・シラカミ………?階級は中佐。それに日本人だと?」

 

どうやら目の前の男は正規軍の軍人らしい。

しかも日本人ときた。

何だろう、凄く嫌な予感がする。

 

「端末の中身も確認しようとしたのですが、軍の正規品というだけあって高度な暗号でロックされている為、閲覧出来ませんでした」

 

もう絶対ヤバそうな奴じゃん………。

だが、こうしていても始まらない。

取り敢えず話を聞き出すしかないな。

そう思っていた時、彼は目線を俺の方に向けると俺に話しかけてきた。

 

「………一つ訪ねたい。軍に連絡はしたのか?」

 

いいや、まだだ。

軍に連絡するのは貴官の話を聞いてから判断するつもりだ。

まさか、脱走兵という訳でもないだろう?

 

「すまない、配慮に感謝する。ご存知かと思うが、僕の名はアキラ・シラカミ。階級は中佐。中佐といっても形式的なものでしかないがな。元々僕は研究畑の人間だ。ところで、君はグリフィンの指揮官なのか?」

 

そうだ。

貴官について聴きたい事がいくつかある。

だから一つずつ質問させて貰おう。

答えたくなければ無理に答えなくても構わない。

では、まず一つ目だ。

 

何故貴官は、当方の敷地に?

 

「………そうだな、話すと長くなる。端的に言えば、僕は今現在軍に追われている身だ。僕はある目的の為に軍から抜け出したのだが、追っ手が思いのほか多かった為に、一時的にこの基地に身を隠さざるを得なかった。グリフィンの敷地に逃げ込んだ理由は、追っ手もまさか僕がここにいるとは思うまいと考えたからだ」

 

成る程。

では二つ目だ。

 

それなりの怪我をしているようだが、その理由は?

 

「先に言った通り、追撃部隊の攻撃を受けたからだ。何度か本当に死ぬかと思ったがね」

 

では3つ目だ。

この携帯情報端末の中身について教えてくれるか?

 

「………それこそが僕が追われる理由だ。話すとなると人払いをしてほしい。僕と君の2人でなら話す」

 

……………ふむ、では少し待っててくれ。

メイド長、カリーナ、45。

一旦部屋の外に出てくれるか。

 

 

俺は取り敢えず皆を連れて部屋を出る。

 

 

 

 

 

さて。

お前達は彼の話をどう思う?

 

「まあ、普通に考えれば怪しいと言わざるを得ないわね。面倒事に巻き込まれたくないなら、軍に連絡して引き取って貰うのが最善よ」

 

確かに、45の言う通りだ。

だが軍の連中も、俺達グリフィンが彼を保護したと知れば態度を変えるやもしれん。

彼が隠している事を俺達に話したと思って何か仕掛けてくる可能性がある。

正規軍が敵に回るという事態は避けたい所だ。

そうなれば、この基地だけの問題ではなくなってしまうしな。

 

「ご主人様、私の推測ではありますが、彼は態とそうなる状況に持ち込んだのではないでしょうか?グリフィンを巻き込む事で何らかの目的を成そうとしているのでは?」

 

案外そうかも知れないな。

彼の事情が何であれ、こうして関わってしまった以上、俺達には彼の話を聞くしか選択肢がない訳だ。

こいつは厄介だ、実に厄介だぞ。

何より不可解なのは、軍の追撃を振り切ってここまで来ている事だ。

追撃部隊という事は人狩りに特化した部隊………俺も心当たりはあるが、連中の追撃を逃れるのは至難の技だ。

しかも、軍の駐屯地からこの基地まではそれなりの距離がある。

どうやって追撃部隊の目を掻い潜り、この基地まで逃げてきたのか甚だ疑問だ。

 

「………ご主人様。貴方の身を守るのもメイドであり戦術人形でもある私の役目です。ご主人様が命じて下さるならば………」

 

それ以上は言ってくれるな、G36。

その選択肢を選ぶ気は無い。

仮に選ぶとしても、彼の話の内容如何で俺が判断する。

いいな?

 

「………畏まりました」

 

ここにいる俺達以外に、この事を知っている奴はいるのか?

 

「いえ、この場にいる私達だけかと。彼をこの部屋まで運んだのは私ですが、道中誰とも会う事がなかったので」

 

分かった。

この件に関しては箝口令を敷く。

取り敢えず皆はこの場所で待機していてくれ。

俺は彼と2人で話をしてくる。

 

「指揮官さま、流石にそれは危険では………?」

 

大丈夫だ、カリーナ。

何かあれば直ぐに呼ぶ。

 

 

蛇が出るか?

それとも怪物が出るか?

本当、この仕事は退屈しないぜ。

 

 

 

 

 

「さあ、中佐。これで貴官の望み通り2人きりになれた訳だが。早速本題に入らせて貰っても構わないか?」

 

「………分かった。事の始まりはーーーーーー」

 

 

 

彼は伏し目がちに語り始める。

 

 

 

 

 

そして、これが恐るべき事件の幕開けとなってしまうなど、この時の俺には知る由もなかった。

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

指揮官「416のおっぱいを枕にして寝たい」UMP9「えーっと、警察の電話番号はっと………」

更新遅れてすまぬう………。
今回からちょっとシリアス風味で。

おっぱい要素は勿論あるから読者諸氏は心配しなくてもヨロシある。



今から5年前。

 

きっかけとなったのはN-24地区で確認された奇妙な現象だ。

 

君も知っての通り、N-24地区は第三次世界大戦による核の放射線と崩壊液の汚染による影響で立ち入りが厳しく制限されていた。

とてもではないが、人はおろか生物の住める環境ではない。

だが、ある日有り得ない報告が舞い込んできたんだ。

 

 

 

『N-24地区に植物や動物達が戻ってきている。汚染レベルも急激に低下している』と。

 

 

 

初めは皆何の冗談だと困惑していたよ。

 

放射線・水銀・コバルト・カドミウム………。

そして崩壊液。

N-24地区を覆い尽くしていたあらゆる汚染物質が、どういう訳か綺麗さっぱり消え去っているというのだ。

 

 

 

さて、地区一帯を覆っていた汚染物質は何処へ行ったと思う?

 

分からないって?

まあそれは当然だろう。

 

そう、汚染物質は消えた訳じゃない。

 

 

 

 

 

 

 

喰われたのだ、『ヘドラ』に。

 

 

 

 

 

 

 

では『ヘドラ』とは何か?

 

 

話を少し戻そう。

汚染レベルが低下したN-24地区を調査する為、軍は急遽あらゆる学者・研究者を総動員した調査隊を組織し現地に派遣した。

その中には、軍の研究室に配属されたばかりの僕もいたよ。

 

そして見つけてしまったんだ。

汚染レベルが低下したN-24地区の中で、唯一異常なまでの汚染が検出された池。

勿論、汚染レベルが高いから防護服を身につけないと近寄れなかったがね。

 

池にはドス黒いヘドロの塊のような何かが存在していた。

そのヘドロは汚染レベルこそ高かったものの、調査の結果信じられないものがヘドロの中に潜んでいる事が分かった。

 

 

 

微生物だ。

 

 

 

そうだ。あり得ないだろう?

放射線や崩壊液の汚染に晒されているヘドロに、微生物が存在していたんだ。

ヘドロの正体は、汚染物質を喰らう微生物の集合体。

 

あらゆるものを分解し崩壊させる崩壊液ですら、この微生物にとっては唯の餌に過ぎなかったのだ。

 

この微生物を発見した僕達は歓喜したよ。

これで人類が抱えている問題は一気に終息に向かう。

崩壊液の流出、第三次世界大戦での核の使用による放射能の環境汚染も完全に解決する事が出来る。

いや、それどころか微生物を上手く応用する事が出来れば………?

 

僕を含む調査隊は、この微生物を『へドラ』と名付け軍に持ち帰った。

 

そこから『へドラ』の研究はB-29地区に存在する上級部隊直轄の特別研究所に引き継がれた。

僕も『へドラ』の研究を続けたかったし、実際チームに参加させて貰えるよう上と掛け合ったりしたんだが、全て却下された。

まあ、当時の僕は経験も浅いひよっ子だったから仕方ないと諦めたよ。

 

その後は、僕も経験を積む為に別の研究所で勤務し、形式的とはいえ中佐の階級まで昇進できたが、それでも『ヘドラ』の事には耳を澄ませていた。

あの当時の調査隊の中に懇意にしてくれた人がいてね。

 

 

ミハイル・シュパーゲル博士………聞いた事はないか?

 

 

E.L.I.Dと生物学研究の第一人者だった人物だ。

 

あの人と知り合えたのは実に幸運だったよ。

第一線の研究者と言うだけあって、その長年を掛けて培った豊富な知識も経験も、僕が逆立ちしたって及ばないものだった。

 

とにかく、僕はそのシュパーゲル博士とも時折連絡を取って、こっそり『ヘドラ』のデータ資料を送って貰ったりしていた。

資料といっても断片的なものでしかないけどね。

 

 

 

所が、3カ月前くらい前から急に博士との連絡が取れなくなったんだ。

『ヘドラ』の研究が忙しいんだろうと最初は思っていた。

だが、それは違ったんだ。

博士以外の研究者や、研究所に常駐している警備兵といった人達も同様に連絡がつかなくなっていた。

軍には研究所で働いていた人の家族が押し掛けて対応に追われる日々が続いていたよ。

だが不可解な事に、当の軍も詳細は調査中で分からないの一点張り。

どう考えても何かがおかしかったが、軍の誰もがそれを口に出す事はなかった。

今にして思えば、皆何かを察していたんだろうな。

 

 

とんでもない何かが、あの研究所で起こったんじゃないかって。

 

 

そんな時だ。

一週間前に、僕のパソコンに一通のメールが送られてきた。

差出人は、他でもない博士だった。

 

メールには動画のファイルが添付されていた。

問題はその動画だった。

動画の内容を要約するとこうだ。

 

研究所が、どういう訳か軍の特殊部隊による襲撃で壊滅。

彼等の目的は地下最奥部で研究されている『ヘドラ』を狙った可能性が高いという事。

今は地下の研究室に立て籠もっている事。

軍は信用出来ないから、別の手段で救助に来て欲しいと言う事。

そして、断片的とはいえ『ヘドラ』に関する資料を所持し、見聞きしている僕の身にも危険が迫っているという事。

 

 

………それから僕は大急ぎで『ヘドラ』のデータ資料が入った端末を持って、着の身着のまま逃げ出したよ。

だがやはりと言うべきか、直ぐに抜け出した事に気付かれてね。

今にして思えば、最初からマークされていたのだろう。

必死で追撃をかわしながら、逃げ回ったよ。

そして丁度グリフィンの基地を見つけて逃げ込んだという訳だ。

勿論、賭けではあったけども。

軍に連絡されて引き渡される可能性も当然考えたが、このまま逃げ続けてもいつか限界がくる。

ならば、いっそグリフィンに助けを求めるのも一手か、とね。

 

 

 

 

 

 

 

「これが、僕が軍に追われる事になった経緯だよ」

 

彼が話を終える。

俺の想像以上に厄介な件に巻き込まれた事を今更ながらに再認識させられた。

 

「成る程な。つまりどデカい爆弾をグリフィンに持ち込んでくれた訳か」

「………すまない。それについては本当に申し訳なく思っている」

「まあとにかくだ。アンタは暫くここで大人しくしておいてくれ。多少の不自由はあるだろうがーーーーーー」

 

 

その時、急に扉が開き血相を変えたカリーナが部屋に入ってきた。

 

 

「指揮官さま!本部からの緊急通信が入っています!至急、指令室に来て下さい!」

「穏やかな話じゃなさそうだな。直ぐにいく。中佐の監視は45とメイド長に任せる」

 

次から次へと何なんだ、今日は………。

ますます嫌な予感がしてきたんだが………。

仕方ない、今はとにかく指令室に行こう。

 

 

 

 

 

〜指令室〜

 

 

「久しぶりだな、ヘリウムガス上級代行官さんよ。態々緊急用の回線使って俺を呼び出した理由は何なんだ?」

 

『私はヘリウムガスじゃなくてヘリアントスだッ!何度も言うが上司の名前くらい覚えろッ‼︎』

 

デカい声を出すなよ。

攻撃力が下がるじゃないか。

相変わらずホログラム越しでも迫力があるな。

眼力が強すぎるぜ。

それにしても、何時もは冷静なアンタが珍しく取り乱してるみたいだが、何かあったのか?

 

『少々厄介な事態が起こっている。つい先程、B-29地区にハイエンドモデルを含めた鉄血の大部隊が侵攻を始めたという連絡が入った。あの地区は戦略的に然程重要な土地ではないものの、奪われて拠点化されれば脅威となる恐れがある。よって、指揮官。貴様は直ちに部隊を率いて防衛戦を展開しろ。これは、クルーガーさんからの命令でもある』

 

あのヒゲゴリラが言うって事は相当不味い状況だな。

他所の基地の応援はないのか?

 

『勿論他の指揮官達にもB-29地区へ支援部隊を派遣してもらっているが、いかんせん数が足りん。何より問題なのは侵攻した鉄血の中にジュピターが混じっている所だ』

 

マジかよ。

ジュピターってアレだろ、見た目が布団の洗濯バサミみたいなダサい大砲だろ?

見た目はともかく、アレが投入されているとなれば厄介だな。

………にしても、このタイミングでの襲撃ときたか。

それも、つい先程話題に上がっていたB-29地区だ。

流石に偶然だと思いたいが………。

 

『どうした、指揮官。何やら考え事をしているようだが』

 

「何でもない。唯、戦力が此方も足りない事は分かってくれよな。404と俺の所の第2部隊を出す。流石に全戦力は無理だぞ?こっちはこっちで基地防衛用の戦力を残しとかないと駄目だからな」

 

『承知の上だ。所で、第2部隊と言っていたが第1部隊はどうした?』

 

「自律作戦中だよ。彼女達にも連絡して合流するよう話をつけておく。通信終了」

 

ヘリアンとの通信を終えた俺は別のモニターを起動して再び通信を繋ぐ。

通信先は、今現在作戦行動中の第1部隊だ。

 

「あーあー………聞こえるか?応答してくれないと、君達全員が着用してる下着の色とサイズをオープンチャンネルで暴露しちゃうぞー?」

 

 

『聞こえてるわよ、指揮官。相変わらず変態ね。射撃の的になりたいのなら、遠慮なく言ってちょうだい』

 

 

モニター越しに応答してきたのは、第1部隊の隊長である鮮やかな橙色の長髪を二つに結った人形………ots―14ことグローザだった。

うむ、やはりいつ見ても素晴らしい脚線美だ。

あの脚で踏まれたいぜ。

因みにおっぱいはデッカい。

 

 

『フフフッ指揮官、やっぱりいつ見ても気持ち悪いです』

 

 

おっ、出たな9A91。

パアッと表情を明るくして罵倒してくる君に俺は悶絶しそうだ。

因みに彼女は、俺が罵倒されるのが好きだと分かっているから罵倒してきているだけだ。

見せかけの罵倒では余り興奮出来ないが、俺の事を思って言ってくれている健気な姿勢には感嘆する。

しかも、彼女の下半身はスケスケなのだ。

それはもうパンツが丸見えなレベルでスッケスケ。

後、おっぱいは中の上くらいのサイズだ。

 

 

『指揮官さん、頭大丈夫?占いじゃ、指揮官さんがトラブルに巻き込まれると出てたから心配したよ。まあ、指揮官さんは変態だから大丈夫だろうけど』

 

 

お前の占いは大当たりだよ。

もう既に巻き込まれてるからな。

彼女はK5。

ハンドガンの戦術人形であり、占いが好きで色々な占いをしている。

彼女の占いは当たると評判らしい。

やっぱりおっぱいは大きい。

 

 

『あら指揮官じゃない。また変な事ばっかり考えてる顔芸してるわよ?』

 

 

白い防寒対策バッチリな格好をした金髪の戦術人形であるモシン・ナガンが楽しそうにモニターへ手を振っている。

うーむ、やはり黒タイツはいいな!

アレはアレで並々ならぬエロさを誇っている。

あの脚に頬擦りしたい。したくない?

因みにおっぱいは普通だ。

 

 

『指揮官?オイタも程々にして下さいね?でないと銃床で肋骨を粒子状になるまで砕きますよ?』

 

 

ふっ、出たな。

この基地の真のヤベー奴。

天使の顔をした悪魔。

蒼衣の災害。

その名は。

 

 

 

スプリングフィールドM1903。

またの名を春田さん。

 

 

 

俺が指揮する直轄部隊でもトップクラスの実力を誇る最恐ライフル。

ライフルの癖に銃剣で暴れ回る姿は正に災害そのものだ。

 

女神のような包容力を持つ彼女は、数少ない俺の天敵でもある。

いつかあのスーパービッグおっぱいを揉みたい。

彼女が昔着任してから何度そう思ったことか。

その野望はいまだ叶っていないがな。

だが、俺はいつか必ず!

あのスペシャルフワトロバインバインおっぱいを揉みしだいてやるんだッ‼

 

 

『指揮官?また変態的妄想をしてますわね?帰ったらマフィンを焼いたオーブンで指揮官を焼いて差し上げます。楽しみにしておいてくださいね?』

 

 

ヒエッ………。

笑顔でニッコリ微笑む春田さんに俺の息子が縮み上がる。

ま、冗談はこれくらいにして真面目に行こうかね。

 

 

「全員元気そうで何よりだ。本来なら、このまま基地に帰投してもらう筈だったが、お前達には継続して新たな任務を遂行してもらう。任務内容はB-29地区に侵攻する鉄血の撃破・殲滅。回収用のヘリに搭乗した後、B-29地区にて作戦を開始。尚、同地区にはハイエンドモデルが確認されている上に地上配備型砲台『ジュピター』が展開されている」

 

『ハイエンドモデルとジュピターを同時に相手取るという事?骨が折れそうね』

 

「そうだ。だがお前達なら必ず成し遂げてくれると確信している。頼んだぞ。それと、俺も現地に入る。鉄血の目的が何なのか、この目で確かめたいからな」

 

『また来るの?前にも言ったと思うけど、頼むから無茶はしないで頂戴。私達からしたら気が気でないのだからね?じゃ、また後でね。現地で合流しましょう?』

 

「おう。所でグローザさんや、後で会ったらおっぱいムニュムニュさせて「ブチッ」………っと、通信が切れたな」

 

どうやら向こうから強制的にシャットダウンされたようだ。

やれやれ、俺の周りはツンデレが多くて困るなあ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後再び地下に戻った俺は、皆を集めて作戦内容を伝えた。

 

 

「で、私達も出撃かしら?変態指揮官?」

 

勿論だ45。

お前達404小隊もタップリ働いて貰うからな。

それと、さり気なく俺をdisっているようだが俺に変態なんて言ってもご褒美にしかならないぜぇ?

分かったか、まな板おっぱい人形さんよ⁉︎

お前の貧相な胸で洗濯物を洗ってやろうか、ええ?

 

「立ったまま死ね!」

 

痛アッ⁉︎

おまッ鼻を殴るのは卑怯だぞ‼︎

ヤベ、鼻血が………。

 

「ご主人様、ティッシュをどうぞ」

 

ありがとうメイド長。

ティッシュを詰めて………と。よし。

メイド長の呆れたような視線を流しながら、俺は皆に向き直る。

 

 

「総員傾注!さて、今言った通りB-29地区にて大規模な防衛戦を展開する事になった。404小隊と第2部隊はそれぞれ空路と陸路に分かれて現地に侵入。404は後方撹乱と潜入工作を、第2部隊は第1部隊と合流後に協同で作戦に当たる。何か質問は?」

 

 

俺が作戦内容を伝えると45が笑いながら手を挙げた。

どうした?

 

 

 

「いや、両鼻にティッシュ詰めて真面目な話してる姿がシュール過ぎてwwwwww」

 

 

 

やかましいわッ!

お前に殴られた所為だっつの‼︎

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

「これが胸囲の格差社会か………!」ーーーーーー指揮官

 

「どこを見てるの、しきかーん?」ーーーーーー404小隊の隊長・UMP45

 

「ブ、ブルンバストって………セクハラよセクハラ‼︎」ーーーーーー404小隊の隊員・HK416

 

「416の胸の寝心地は最高。………痛い痛い!抓らないでよ」ーーーーーー404小隊の隊員・G11

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

指揮官「おっぱいプルンプルンッ‼︎」HK416「うるさい‼︎」

卵豆腐とかプリンってさ、めっちゃプルンプルンしてるじゃん?
つまりこれって、おっぱいって事だよね。

え?何言ってるか分からない?
そりゃ、君のおっぱいに対する情熱が足りないからだよ?

ほれ、おっぱいフロントラインを読む前に叫ぶんだ。

某総統閣下のように「おっぱいプルンプルンッ‼︎」て。

さすれば君もおっぱいを理解できる………多分。


出撃準備を整えるよう皆に伝えた後、俺はカリーナと共に中佐の元へと足を運んでいた。

 

「指揮官さま、良かったのですか?へリアンさんに中佐の件を伝えなくて」

 

伝える必要はないさ。

事が事だけに、下手に情報を伝えてグリフィン全体を巻き込むわけにはいかないからな。

何かあった場合は、俺の独断でやった事にすればグリフィンが被る被害も最小限ですむ。

 

「ですが………」

 

寧ろ、俺が懸念しているのは鉄血の目的と研究所を襲撃した特殊部隊だ。

前者はともかく、後者は『ヘドラ』とやらを狙っている可能性が高いからな。

そもそもの疑問として、何故軍の研究所を同じ軍の特殊部隊が襲撃したのか………だ。

その時点でおかしいだろ?

まあ、それについてはおいおい考えるとして。

中佐と再びご対面といこうじゃないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうか、鉄血がB-29地区に………」

 

偶然だと思うがな。

てかそう思いたい。

それはさておき、アンタに聞きたいことがある。

 

 

これからアンタはどうしたい?

 

 

「………勿論、博士を助けたい。だが僕一人じゃ無理だ」

 

まあ、そうだろうな。

そこで提案だ。

実は今回の鉄血による侵攻で俺の基地にも出撃要請が出ている。

鉄血の撃退が俺達の任務なわけだが、物のついでだ。

作戦後に余力があれば、その研究所とやらも寄ってみるとしよう。

 

「すまない、感謝する。………指揮官、無茶を承知で頼みがある。僕も一緒に連れて行って貰えないだろうか?」

 

本気で言ってるのか?

遠足に行くんじゃないんだぞ。

実戦経験だって今まで一回もないんだろ?

厳しい言い方になるが、はっきり言ってアンタじゃ足手まといにしかならん。

 

「確かにその通りだ。だが、研究所に行くとなれば『ヘドラ』の知識を持つ僕も何か役に立てるかも知れない。それに一応銃器の扱いや護身術を一通り学んではいる」

 

それはそうかも知れんが………。

はあ、そこまで言うなら仕方あるまい。

その代わり行動する際は俺と一緒に動いて貰うぞ。

当然だが指示にも従って貰う事になる。

それでもいいなら連れて行こう。

何、精々しくじっても死ぬくらいで済むさ。

 

「ありがとう、本当に済まない」

 

よし、それじゃ荷物を纏めて出撃だ。

忙しくなるぞ。

 

 

 

 

 

〜ヘリポート〜

 

 

「さあ、楽しい楽しい任務の時間だな!という訳で、わーちゃんの胸を揉むわ」

 

「何が、という訳でよ⁉︎当たり前みたいに胸を揉むな‼︎この変態指揮官‼︎わーちゃんって言うなーッ‼︎それとアンタ達もさり気なく揉むんじゃないわよ⁉︎」

 

顔を真っ赤にしたわーちゃんの連続蹴りを野を駆けるウサギのように跳ね回りながら避ける。

よく見ると俺以外にも、404小隊の面々がわーちゃんの胸を揉みしだいていた。

 

「くっ………どうやったらこんな胸になるのかしら‼︎でも揉み心地は良いわね。416といい勝負だわ………!」

「416の胸の寝心地は最高。………痛い痛い!抓らないでよ」

「アンタだったのね⁉︎通りで最近朝起きたら胸が苦しい訳だわ‼︎」

 

45が苦々しい表情を浮かべてわーちゃんの胸を揉み、それに乗っかるようにしてG11がポスッと後頭部を胸に当てにいく。

自分の胸が枕がわりにされていたという事実を知った416はG11の頬を抓り上げていた。

 

確かにG11の言う通り、416のおっぱいはデカイ。

実に揉み心地が良さそうだ。

所謂ブルンバストって奴だな。

試しに416の胸と45の胸を見比べてみると、その絶望的なまでの胸囲差が明らかだ。

 

「これが胸囲の格差社会か………!」

 

「どこを見てるの、しきかーん?」

 

俺の視線に気付いたのか、45がニッコリと笑いながら銃の安全装置を外しながら俺を見てきた。

笑顔ってのは本来威嚇の意味を持つらしいが、どうやらそれは本当のようだ。

 

「ホント、ブレない変態ね。そんな体たらくで、よく今まで指揮官が務まったのが不思議だわ」

 

おお?

言ってくれるじゃねぇか、水色ブルンバストちゃんよ?

 

「なッ!ブ、ブルンバストって………セクハラよセクハラ‼︎」

 

何を今更。

俺は変態だからな、当然だろ?

分かるか、ブルブルスペクタクルむっちりバストちゃんよお⁉︎

 

「呼び名が長いわ!ブルンバストって言わないでよ変態!それなら水色おっぱいの方がマシだわ‼︎」

 

そ、そうなのか?

自分で言っておいて何だが、どっちもどっちな気がするんだが。

じゃあ要望通り、これからは水色おっぱいちゃんって呼ばせて貰うわ。

改めて宜しくな、水色おっぱい人形ちゃん。

 

「マシだって言っただけで、呼んでいいとは一度も言ってないわよバカ!頭砕くわよ⁉︎」

 

416が顔を真っ赤にしながらギャース‼︎と言わんばかりに腕を振り回す。

こいつ弄るの楽しいわー、マジで。

 

「はっきり言ってキモいですよ指揮官さま。馬鹿な事ばかり言ってないで早くヘリに乗って下さい」

 

黒い軍服のような服装をした人形が溜息をつきながら早くしろと言わんばかり俺を急かしてきた。

彼女はMP40。

第2部隊の隊員だ。

見ると、彼女以外にBAR、LWMMG、メイド長ことG36、先程まで胸を揉まれていたわーちゃんことWA2000という顔触れが全員揃っており、皆呆れとまた始まったと言わんばかりの表情を浮かべていた。

つか、MP40。

お前さり気なく俺をdisったよね今。

 

「まあ指揮官がキモくて尚且つおっぱい好きの変態なのは今に始まった事じゃないからねー」

 

うるせぇBBA!

人の事を言う前に、その全然似合ってないサングラスをどうにかしろバーカ!

 

「誰がBBAですか‼︎私はBARですよッ!」

 

はんッ!

どっちの読み方してもババア、バーさんとしか読めねぇだろうが!

つまりお前はババアなんだよ、分かったかバーさん‼︎

まあ、おっぱいはデカイからいいけどなあ‼︎

 

ギャハハハハッ………グエッ⁉︎

 

「ご主人様、少しお静かに」

 

ちょ、メイド長⁈

何なのお前の髪の毛⁈

俺の首が、伸びてきたお前の髪の毛で締め上げられてすごく苦しいんですけど⁉︎

え、お前の髪の毛ってそんな機能あったっけ⁉︎

 

「私はメイドであり、戦術人形でもありますので」

 

いやそれ理由になってないから⁉︎

待って、ヤバい死ぬ死ぬ!

変なこと言ったの謝るから許してぇ‼︎

 

 

 

この後、俺は滅茶苦茶説教された。

 

 

 

 

 

 

「さあ、第2部隊も行った事だし気を取直して今度こそ出撃だ!」

「殆ど指揮官さまの所為ですけどね」

 

カリーナのジト目が俺に突き刺さるが俺は気にしない。

第2部隊は既にグリフィンの装甲車に乗って陸路でB-29地区に向かわせた。

アイツらなら第1部隊と協力して上手くやってくれるだろう。

そう思いながら俺はヘリに乗り込む。

 

「ちょっと、本気でアンタも付いてくるの?」

 

迷惑だと言わんばかりに睨みつけてくる416。

別にいいだろ、俺がいたら不都合でもあるのか?

 

「当たり前でしょう?人間の貴方が私達の動きに付いて来られる訳ないじゃない。足手纏い、もっと言うなら邪魔よ邪魔。貴方は指揮官なんだから大人しく指揮所に篭って命令してなさいよ」

 

偉く辛辣だな。

何、俺が君らの足手纏いになった時は切り捨ててくれて構わないさ。

こっちもそれを承知で付いていくってんだからな。

 

「ハア………何を言っても駄目みたいね。ならもう勝手にしなさいよ」

 

そう言うと416はプイとそっぽを向いてしまった。

うーむ、どうやら彼女の機嫌を損ねてしまったようだ。

どうすべきか………ん?どうしたG11?

 

「………指揮官。416のアレはね、416なりの気遣いなんだよ。指揮官が怪我したり危ない目にあって欲しくないからああいう言い方をしてるだけ。だから気にしなく「余計な事を言わなくてもいいのよバカ!アンタは少し黙ってなさい!」………てもいいよ」

 

そうなのか。

ありがとう、416。

この任務が終わったら君らにケーキでも奢ってやるよ。

 

「フン………!」

 

プンスコと言う擬音を出しながら黙ってしまった416。

すると、今度は9が話しかけてきた。

 

「私達と一緒に来るだなんて変わってるね、指揮官は」

 

まあ確かに前線に赴く指揮官なんてのは珍しいかも知れないだろうがな。

今回は事が事ってのもあるし。

そう言って一緒に乗り込んだ中佐をチラリと見ると、顔を逸らされた。

こら、顔を逸らすな。

今回の騒動の半分はアンタが原因なんだぞ。

 

「指揮官はさ、私達にも宿舎とか色んなものを用意してくれたよね?どうして?」

 

9が笑顔のまま問いかけてくる。

だが顔は笑っているものの、目が笑っていない。

探るような、見定めるような目つきで俺を見ている。

 

「どうしたの、指揮官?答えられないの?」

 

………いや、どうしてと言われてもな。

俺はグリフィンの指揮官としての務めを果たしただけに過ぎない。

お前達404小隊が他所でどう言う扱いをされてたのかは知らないが、俺はお前達を共に肩を並べて戦う対等な仲間として扱ってるつもりだ。

非正規部隊だろうが何だろうが、俺の基地に来た以上は必要な環境を整えて何かあった際に全力を出せるようにする。

というか、指揮官ならそれをするのが当然だと思うんだがな。

 

「ふーん………じゃあ!つまり指揮官は私達を大切に思ってくれてるって事でいいのかな?」

 

ん…まあそういう事になるな。

 

「なら指揮官も私達と家族って事だよね!うんうん、そうだよ!そうに違いない!」

 

うん………?

ちょっと待ってくれ、今の流れで何故そうなるんだ?

家族………家族ねぇ?

9は家族に何か思い入れでもあるのか?

 

「勿論だよ!家族っていうのは仲間とかそういうのよりも深い繋がりなんだから!」

 

そ、そうか。

だが俺みたいな変態を家族に加えたら大変だぞ………主に416が。

 

「何で私限定なの⁉︎アンタみたいな変態と家族になるなんて真っ平ごめん被りたいわ‼︎」

 

やれやれ、そうカリカリするなって。

冗談に決まってるだろ。

それにしても家族ねぇ………。

9を見てると思い出してしまうな。

 

「指揮官にも家族がいたの?」

 

そりゃ勿論いたさ。

血の繋がってない義理の姉がいたんだが、色々あってな。

もうこの世にはいないよ。

 

「ッ!ごめんなさい指揮官。私………」

 

………いいんだ9。俺の姉は、とても優しくて今時珍しい真っ当な正義感を持った強い人だったよ。

見た目はコルト似で性格は9とM16を足して割ったような感じだな。

だから………だからこそ、あんな事になってしまったんだ。

 

「あんな事………?」

 

悪いが俺の話はここまでだ。

これ以上は、あまり話したくない。

さあ、装備をチェックしたらフライト開始だ。

今日は風が強いからヘリは揺れるだろうな。

パイロットのオッサン、今回も宜しく頼むぜ。

 

「了ッ解ィ‼︎お任せあれッ‼︎」

 

やっぱ、その野太い声いつ聞いても面白いわアンタ。

 

 

 

 

 

 

「皆さん、それに指揮官さまー‼︎どうかお気をつけてー‼︎」

 

ヘリポートから両手を振って俺達を見送るカリーナ。

彼女には俺が不在の間、待機要員の人形達と基地の留守を

任せてある。

万が一、鉄血の別働隊に攻め込まれても迎撃可能な戦力は残してあるから大丈夫だろう。

 

さて、目的地まで少々時間がある事だし音楽でも聴きながらテンション上げていこうじゃないか。

 

「全く、これから戦場に向かうってのに呑気なものね。先が思いやられるわ」

 

そう言うなよ416。

ずっと気を張っててもシンドいだけだぜ?

G11を見てみろ、彼女は息の抜き方を分かってるみたいだぞ?今もスヤスヤと寝ているしな。

 

「アレはただ単に寝たいから寝てるだけよ。そんな深い事考えてる訳ないじゃない」

 

確かにG11はいつ見ても寝てるイメージがあるな。

まあ、それは置いといて音楽を聴こうぜ。

俺のスマホには素晴らしい曲がたくさん入ってるんだ。

 

そうだな…………これ何てどうだ?

 

「『チッチッチッチおっぱ〜い!ボインボイーン!ボインボイーン!モゲ!モゲ!モゲ!チチを…』「ゴミはゴミ箱にっと!」ああっ!俺のスマホがああああッ⁉︎」

 

何てことしやがる45⁉︎

スマホを外に投げ飛ばさなくてもいいじゃねぇか⁉︎

くそっ、あのスマホにはスコーピオンに頼んで盗撮させたAR小隊の秘蔵の着替え写真が沢山入ってるのにいいいい‼︎

 

「碌な歌流さないわね。一回ヘリから飛び降りて頭でも打てばマシになるかしら?」

 

はん、自分に胸がないからって物に当たるなんて見っともねぇな45さんよ?

お前の胸なんて防弾板にレーズン乗っけただけみたいなもんだろうが、この貧乳SMG!

やっぱり、おっぱいってのは416クラスが最高なんだ!

416の胸がアルプス山脈なら、45はメキシコの国境壁だ!

この差が分かるか?

これが絶対的な胸囲力の差って奴だよ‼︎

お前じゃどう足掻いても越えられない壁だ壁!

わーはっはっは‼︎

 

「416、コイツ今すぐ撃ち殺してもいいわよ?私が許可するわ」

「初めてアンタと意見が合致したわね。任せなさい、一瞬で息の根を止めるから!」

 

そう言って銃を向けてくる416に対し、どう言い訳しようか悩んでいると、ヘリの中がけたたましい警告音で満たされた。

 

一体どうした⁈

今の距離ならジュピターの射程には入っていない筈だが。

 

「不味いな、こいつは……地対空ミサイルだ。しっかり掴まってろ、振り落とされても知らねぇぞ‼︎」

 

パイロットのオッサンが言うや否や、ヘリが急激な機動をしながら回避運動に入った。

そのコンマ数秒後にミサイルが音を立てて飛んでいく。

 

「チィッ、仕方ない。指揮官、アンタらは緊急用のパラシュートつけて降下しろ!このままだと、いつか撃墜される!」

 

分かった‼︎

オッサン、アンタも無事に帰ってくれよな!

全員聞こえたな⁉︎

今から降下するぞ‼︎

そういや中佐、アンタ空挺降下の経験はあるのか?

 

「座学でしか習ったことがないが、何とかしてみる!」

 

じゃあ頑張ってくれ!

何、飛び降りたら紐を引っ張るだけさ!

 

「ああもう!最低最悪の任務ね、今日は‼︎G11、アンタも寝てないで降りるわよ‼︎」

 

416が怒鳴りながらG11にパラシュートを背負わせると2人で飛び出していく。

 

「それじゃ、指揮官。また後でね♪」

「パラシュートが開かなくて墜落したら一応埋めてあげるから感謝しなさいよね、しきかーん♪」

 

こら!不吉な事言うんじゃねぇっての!

何が埋めてあげるだ、まな板レーズン娘ェ‼︎

 

 

 

 

……………頼むからパラシュート開いてくれよ?

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

「いいぞ、もっとやれ!(416、今助けてやるからな!)」ーーーーーー指揮官

 

「見てないで助けなさいよ!このバカ!おっぱい狂い!ど変態‼︎」ーーーーーー404小隊の隊員・HK416

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

指揮官「粘液ベトベト!ベ◯ネベート軟膏!」HK416「はっきり言ってキモいわよ、指揮官」

2週間近く更新遅れてしまった………。

今回も、おっぱい愛に溢れているので御堪能下さいませ笑


ヘリから降下し、地上へと降り立った404小隊。

全員が無事揃っている事を確認したUMP45は、違和感に気づいた。

 

「あら?指揮官は………?」

 

404小隊の面々と中佐はいるが、肝心の指揮官が存在しない。

もしかすると、誤って離れた場所に着地したのだろうか?

 

「あ、アレじゃない…?」

 

そう考えていた時、G11が上空を指差した。

釣られるように全員が上空を見上げて……………一瞬だが硬直する。

 

上空からパラシュートを広げて、ゆっくりと降りてくる指揮官。

 

問題があるとすれば、パラシュートにデカデカと『I LOVE OPPAI♡』と書いてある事だろう。

 

しかもパラシュートの色はピンクである。

はっきり言ってキモいとしかいいようがない光景に皆が呆れの視線を向けた。

 

「ねぇ、45。アイツのパラシュート撃ち抜いてもいいかしら?」

「許可するわ。特に指揮官と『OPPAI♡』の部分を原型が残らないくらいにね」

 

416がこめかみに青筋を浮かべながら銃を構えると、それを察した指揮官は、パラシュートを付けた身でありながらキューで弾かれたビリヤードの玉の如く変態的機動を持って避け始めた。

 

「ああもう!ひたすらにウザいわね‼︎気色悪い動きで避けるな変態‼︎」

 

416は苛立ちまぎれに弾幕を張るものの、結句一発も当てる事は叶わなかった。

そうしているうちに指揮官が段々と近づいてくる。

 

「おおおーーーーいッ‼︎退いてくれ、ぶつかるぞ‼︎」

 

「ちょ、ちょっと!何で私の方にーーーーーー!」

 

手元が狂ったのか、指揮官は盛大に416に突っ込んでしまう。

 

「痛つつ………気をつけなさいよ!………ッ⁉︎」

 

慌てて身体を起こそうと顔を上げた416は、自分の胸に顔を埋めている指揮官の姿を見て固まった。

それを見た45は、これから始まる展開を予想して悪い笑みを浮かべ、9はお腹を抱えて笑い転げ、G11は睡眠モードに入った。

因みに、中佐は少し羨ましそうな目で指揮官を見ている。

 

暫くすると、指揮官は唐突に顔を上げた。

 

「ブハァッ⁉︎ヤベェ、おっぱいで窒息死する所だったぜ。いやー、それにしても流石416だな!クッションの役割も果たせるおっぱい何て早々ないぞ!凄くいい気分だ!天国ってのは此処に存在したんだなあ!やっぱり大事なのは、おっぱいだ!」

 

うんうんと頷きながら感想を述べる指揮官。

しかし、416が黙ったまま俯いてしまっている事に気づき再び話し始めた。

 

「どうしたんだ416?お前のおっぱいは最高だったぜ⁉︎あれぞ、ダイナマイトロケットマグナムハイパーおっぱいだな‼︎誇っていい、416!お前のおっぱい作戦力は530000だ!「ブチッ!」………何だ、今の音?」

 

豪快に笑いながら指揮官が416の肩に手を置くと、何処かから何かを千切ったような音が響き渡った。

 

「ふ、ふふふ………!」

 

ユラァ………!と416がゆっくり立ち上がる。

顔は笑っているが目が笑っていない。

氷のような冷笑と燃え上がる炎のような怒りを宿した瞳を浮かべる416が指揮官を見据えた。

 

「おっと………こいつは…不味いな。取り敢えず一言だけ言わせてくれ。………416のおっぱいマジ最高ッ‼︎…グボブェブハァッ⁉︎」

 

416が無言で放つコークスクリューパンチが指揮官の顔面を捉えて吹き飛ばし、指揮官は骨が砕けるような音を出しながら地面へと転がった。

 

殴り飛ばした本人である416は、とてもスッキリしたような表情を浮かべていた。

 

 

 

 

 

〜数分後〜

 

「おー痛。もう少し力が強けりゃ頭蓋骨陥没だったぜ」

「チッ、いっそ粉々になれば良かったのに………!」

 

いつも通り直ぐ様復活した指揮官は顔をさすりながら溜息をつき、416はそれを見て心底残念そうに悪態をついていた。

 

「現在地は研究所からそう遠くないわね。歩いていける距離ではあるけど、進行方向には恐らく………」

「ジュピター、か。アレを正面突破するのは流石に厳しい。迂回するのが無難だな」

「まあそもそも任務は鉄血の撃退なんだから研究所は無視して良いと思うけど」

 

UMP45の意見は至極最もな指摘だった。

それを聞いた中佐は渋面になっていたが、仕方ないだろう。

 

「………ふむ。そのジュピターだが、実は一つだけ全く攻撃を受ける事なく且つ察知される事もなく、突破する方法が一つだけあるようだぞ?」

 

地図を眺めていた指揮官は近くのマンホールを指差しながらニヤリ、と悪い笑みを浮かべて言う。

 

「それって下水道を通るって事?でも下水道が目的地まで繋がっている保証はないわ」

 

416が頭を横に振りながら言うと、以外にも中佐が口を挟んだ。

 

「成る程いや、それなら問題ない。この地区の下水道は全て研究所隣の処理場に繋がっている。地下を通っていけば、安全に辿り着ける筈だ。………臭いさえ我慢すれば、だが」

「決まりだな。なら後は行くだけだ。臭いについては耐えろとしか言えないが………45達もそれでいいか?」

「私は指揮官の判断に任せますよ〜。皆もそれでいいわね?」

 

45は相変わらず本心が掴めない笑顔で404の面々に問いかけた。

 

「ハア………ファ◯リーズ持ってくればよかったわ」

額に手を当てながら溜息をつく416。

その姿は、とあるAR小隊の隊員と重なって見えていた。

 

 

 

 

 

 

下水道は思いの外臭いは立ち込めていなかった。

但し、ジメジメしている上に暗く視界も悪い為、あまり良い環境でない事に変わりはなかったが。

警戒しながら順調に処理場へと進んでいった指揮官達だが、少しの違和感が指揮官を覆っていた。

 

「地下とはいえ、随分静かだな。この地区には鉄血の大部隊が侵攻している筈だ。なのに地上からは銃声も砲火の音も聞こえない。どうなってんだか………」

 

そのまま歩き続けていると、行き止まりとなっている広い場所に出た。

中央には梯子があり、地上へと続いているようだ。

 

「よし、45達が先行してくれ。俺はその後に上がる。中佐、アンタは最後に来てくれよ」

 

指揮官はそう言って404小隊を先に上がるよう促すと、何やらゴソゴソとポケットの中を漁り始め、小さなカメラのようなものを取り出した。

 

「指揮官、それは………?」

「ふっふっふ。中佐、アンタには特別に教えてやろう。これはな、見ての通りカメラだ。暗い環境でもハッキリと高画質で撮影できるスグレモノさ」

「それを今どうして出したんだ?」

「分かってないな、中佐。俺はな、今からコイツを使って!梯子を上る45達のパンチラ写真を!ローアングルから撮るんだよォ!」

「へ、変態だな君は………!」

 

余りにもあまりな指揮官の発言に中佐はドン引きしながら後退りした。

当然と言えば当然の反応だが。

そうしている間に、指揮官はパシャパシャと梯子を上っている416や9のパンツを撮影していく。

その姿はまごう事なき変態であった。

勿論404の彼女達はそんな事実を知る由もない。

 

「ククッ………良い写真が撮れたぜ。これで『人形達を影で愛でる会』のオークションに出品する作品が増えたな………!」

 

満足そうな顔をしながらカメラを仕舞うと梯子を上っていく指揮官。

その姿を見つめていた中佐は心底から思ったそうな。

 

 

………ホントに大丈夫なのか、コイツ………と。

 

 

 

 

 

 

〜処理場内部〜

 

処理場の中は不気味なくらい静かだった。

機械類は何らかの緊急停止装置が働いたのか、全て停止している。

 

 

「人の気配も敵影もなし。研究所とやらは隣の建物なんでしょう?さっさと行くわよ」

 

まあ待ってくれ416。

中佐、アンタの話じゃ確かこの処理場は研究所と建物が繋がっている筈だよな?

 

「ああ、その通りだ。今いる場所が処理場のBフロア。先ずは隣のAフロアに出ないと駄目だな。研究所と繋がっている廊下があるのはAフロアだけだ」

 

そうか。

よし、だったら早く行くとしよう。

鉄血以外の脅威………軍の特殊部隊とやらと出くわす可能性もある。

警戒を怠るなよ?

 

「当然よ。私は完璧だからミスなんてしないわ」

 

416がキリリ、と顔を引き締める。

お前それ盛大なフラグ………いや、何も言うまい。

 

 

 

 

 

 

 

扉を開けて隣のフロアに出ると、相変わらず音もない静かな空間が広がっているだけだった。

フロアの先には研究所へ続いているであろう廊下の扉が見えている。

 

 

 

 

ズル……………!

 

 

 

 

 

ん………何だ、今の音は?

天井の方から聞こえたが。

直ぐに上を見上げるが、そこには何もいない。

おかしいな………。

 

「しきかーん?どうしたの?まさか今になって怖じ気づいちゃった?」

 

違ぇよ45。

お前も今の音聞こえなかったか?

 

「音?そんなの聞こえなかったと思うけど?」

 

 

 

「ちょっと!何二人して突っ立ってるのよ!早く行「ズル…ベチャア………!」…何の音⁉︎」

 

 

 

 

今度こそ間違いなく聞こえた異音に、全員が上を見上げる。

 

 

そこにいたのはーーーーーー。

 

 

 

 

 

 

 

ソレは、丁度416の頭上にいた。

緑色の太いツタからは透明な粘液が絶えず溢れ出ている。

ベッド一つ分程度の大きさを持つその存在の名を、分かりやすい表現を持って称するならこう呼ぶべきだろう。

 

 

 

 

 

 

 

即ちーーーーーー『触手』と。

 

 

 

 

逃げろ‼︎

誰が叫んだのかは定かではない。

 

その直後、ズン!という音と共に触手の怪物が地響きを立てて床に落下する。

 

慌てて全員が怪物から距離を取るが、不幸にも逃れられなかった者が一人いた。

 

 

「こ、この………!離しなさい、よッ‼︎」

 

 

416だった。

不幸にも、一番怪物に近い場所にいた彼女は怪物の触手に身体の自由を奪われていた。

 

ヌメヌメとした粘液が滴る触手が416の身体を弄る。

絡みつく触手を振り解こうと必死で暴れる416だったが、両手足をガッチリとホールドされていて逃げる事は叶わなかった。

 

「ちょ、ちょっと‼︎何をする気よ⁉︎やめてッ‼︎」

 

喚く416を他所に、触手は彼女のスカートを捲り上げると、履いてあるパンツをゆっくりとずり下ろした。

それだけでは飽き足らず、今度は上着の中にまで触手を浸透させていく。

 

 

「ひ…、嘘………駄目ッ、そこはッーーーーーー‼︎」

 

 

彼女の嘆きを意にも介する事はなく、触手は更なる段階へと進んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………何だ、あの触手は。

416が為すすべなく、あられもない姿になってしまっている。

スゲェな、触手って実在したんだなー。

 

 

 

にしてもエッロ‼︎‼︎‼︎

 

 

 

416さん…貴方今、他人に見せられない痴態を晒しちゃってますよ?

あの触手野郎、羨ま………けしからん‼︎

 

 

「いいぞ、もっとやれ!(416、今助けてやるからな!)」

 

「本音と建て前が逆になってるよ指揮官………」

 

俺の隣にいた9が呆れたような目線で見てくる。

いかんいかん、つい……………。

 

「見てないで助けなさいよ!このバカ!おっぱい狂い!ど変態‼︎………ムグゥッ⁉︎」

 

416が顔を真っ赤にしながら叫ぶと、煩わしく思ったのだろうか触手が416の口を塞いでしまった。

 

 

 

さて、おふざけはこの辺にしてと。

どうやって416をあの怪物から助けだす?

捕まっているあの状態では、助けようにも416自身が壁になって思うように銃弾を叩きこめない。

だが早く助け出さないと、416が快楽堕ちアヘ顔ダブルピース状態になってしまう。

流石にそれは俺としても看過出来ない。

 

「む………指揮官。あの触手、どういう訳か動きを止めたぞ」

 

中佐がそう言うと、確かに怪物は416のおっぱいに触手を伸ばしたまま動きを止めていた。

………どうしたんだ?

 

 

416のおっぱいに触手を伸ばした怪物は、唯ひたすらに彼女のおっぱいを触っている。

 

「ぷはッ…!アンタどこ触って………ひゃんッ⁉︎」

 

416の口に突っ込んでいた触手も、触手を口から抜くと更におっぱいを触り続ける。

 

 

……………まさかコイツ。

 

 

 

 

 

「指揮官⁉︎近づいたら危ないよ⁉︎」

 

意を決して、俺は9の制止を振り切り怪物へと近づいていく。

俺の仮説が正しければ、コイツは………!

 

 

 

 

ゆっくりと近づいていくと怪物は邪魔をするな!と言いたげに触手を向けて来た。

よし………!

頼む、俺の仮説が当たっててくれよ!

 

 

 

 

 

「お前………おっぱいが好きなのか?」

 

 

 

 

 

シン………と場の空気が静まり返る。

それはもう「何言ってんだコイツ?」とばかりに。

俺を除く全員が固まっていた。

その中で唯一激しい動揺を見せた奴が1匹。

 

 

そう、怪物だ。

 

 

 

何故分かった⁉︎と言わんばかりに、触手の動きを止めてしまっている。

 

「分かるんだよ………俺もまたおっぱいを愛する者だからだ‼︎」

 

な、何ーーーー⁉︎とばかりに触手を硬直させる怪物。

やはり俺の仮説は正しかったか。

 

 

つまり!

 

怪物さんよ、アンタはどうしようもないくらいにおっぱいが好きな変態野郎って訳だ‼︎

 

 

「いや、それ指揮官そのものじゃない………」

 

 

最早突っ込む気すら無くした45の声が聞こえてくる。

失礼な。

俺はおっぱいが好きな変態だが襲ったりはしていないぞ?

 

 

「アンタが捕まえている女性は俺の仲間なんだ。悪いが返して貰うぞ?」

 

俺がそう言うと、そうはさせるか!とばかりに怪物は触手で俺を貫こうと伸ばすが、華麗なステップを決めながら右へ左へと攻撃を躱した。

ふん、動きが甘いな。

わーちゃんやメイド長の拳の速さに比べたら全然だぜ。

 

「怪物さん、アンタは駄目駄目だ。お前はッ‼︎おっぱいの何たるかをまるで理解しておらんッ‼︎」

 

俺の放った一言に⁉︎と伸びてきた触手が動きを止める。

 

「お前の気持ちは俺もよく分かる。至福の産物であるおっぱいを愛しているんだろう?だが、お前の『おっぱい道』には愛しかない!いいか、おっぱいは愛でるだけじゃあ駄目なのさ。おっぱいに向き合う際は、常に紳士然としなければならん。たおやかな一輪の花を、ソッ…と扱うかのような配慮。おっぱいを持つ女性に敬意を払い、讃え称賛する御心。………お前には、おっぱいに対する敬意が足りないんだよ‼︎」

 

 

がびーん!とばかりに触手が力無く床に項垂れる。

そうだとも。

幾らおっぱいへの愛情が強くとも、独り善がりの愛情はいけない。

まして襲い掛かって無理矢理行為に及ぶなど、もってのほかだ。

 

………勝負ありだな。

触手は今や棊子麺に成り果てている。

 

「そう落ち込むな。確かに今回お前がした事は駄目だったが、おっぱいの揉み方はいい線行っていたぞ?そこは認めてやる」

 

俺の言葉にバッ⁉︎と項垂れていた触手を上げる怪物。

それと同時に、416を拘束していた触手が彼女を優しく床に下ろした。

 

そう…それでいい。

お前がまず学ぶべきはおっぱいへの向き合い方だ。

ここは一つ、俺が『真のおっぱい道』について教授してあげようじゃないか。

 

こうして、俺は怪物もとい触手さんにおっぱいの何たるかを教えたのだった。

 

 

 

 

 

「………何で…私は完璧なのに………‼︎絶対許さない‼︎」

 

粘液まみれの状態でギリ、と歯を食いしばりながら屈辱に震える416。

拘束から解放された彼女は、自分にあるまじき痴態を晒させた元凶の触手許すまじ!と銃を向ける。

 

「まあまあ、落ち着こうよ416。指揮官の変態的会話術のお陰で無事で済んだんだからさ。それはともかくとして、取り敢えずこれに着替えたら?」

 

9が416を宥めながら服の入った袋を渡した。

 

「く………!って、ハアッ⁈何よコレ⁉︎」

 

袋の中に入っていたのは、何故かメイド服だった。

ご丁寧にアイロンまでキッチリ掛けられている。

 

「指揮官が持って来た服だから仕方ないよ。416なら似合うだろうって言ってたし」

「全然嬉しくない!何が悲しくてメイド服を着なきゃいけないのよ⁉︎」

 

そもそも何でメイド服を持って来てるんだなどの疑問が浮かぶが、現状替えの服がこれしかないので結局着るしかないという結論に行き着いた。

 

「〜〜〜〜〜ッ!」

 

羞恥に悶えながら渋々とメイド服に着替える416。

その顔は熟れたトマトのように赤くなっている。

 

 

 

 

 

「先が思いやられるわね………」

 

 

 

 

ブツブツと文句を言いながらメイド服に着替える416と、触手と変態論議を交わす指揮官の姿を見た45が遠い目をしながら呟く。

 

 

「フンッ‼︎」

 

 

「ぐほあっ⁉︎何しやがる45!」

 

 

 

取り敢えず指揮官に側にあった花瓶を投げつけた45であった。

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

 

「おや、違うのですか?」ーーーーーー変態基地所属の戦術人形・G36

 

「ハンター!アルケミスト!ウロボロス!我等こそ、鉄血が誇るハイエンド三天王だッ‼︎」ーーーーーー鉄血のハイエンドモデル人形・アルケミスト

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

指揮官「俺の出番はなしか………」G11「じゃあベッドで寝よ?」

おっぱい。


指揮官達が触手と戯れているのと同時刻。

鉄血の侵攻を阻止するため陸路からB-29地区へと入った第2部隊は、これといった攻撃を受けることもなく地区の中心部に近づきつつあった。

 

 

「G36、どうかしたの?」

 

第2部隊の隊員であるLWMMGが隊長であるG36に問いかける。

G36は僅かに眉間に皺を寄せて鋭い目付きをしたまま何やら通信を聞いているようだった。

 

「………カリーナさんから報告がありました。ご主人様と404小隊が乗っていたヘリが地対空ミサイルで攻撃を受けたそうです」

「それ本当?指揮官達の安否は?」

「報告では、ご主人様達はヘリからの通信が途切れる数分前に空挺降下したようです。おそらく無事であると思いますが」

 

G36の言葉に第2部隊の面々が安堵の表情に包まれる。

 

「何ていうかG36って落ち着いてるよね。指揮官が心配じゃないのー?」

「ミサイル程度で死ぬような人ではありませんから。そう言うBARも然程心配してないでしょう?」

「まあ指揮官なら大丈夫かもねー。前も私が5階の執務室から投げ飛ばしたけど、怪我一つなく戻ってきたし」

 

しみじみと懐かしむように過去を思い出しながら独りごちるBAR。

配属されて間もない頃、仕事のドサクサに紛れて胸を揉もうとしてきた指揮官を勢い余って投げ飛ばしたが、傷一つなく戻ってきたのは良い?思い出だ。

 

「………って言うか、私達のいる基地で指揮官に胸関係で何かされた事のない人形っていないよね?」

 

BARがそう言うと、全員が沈黙し顔を背けた。

 

「フンッ、ホントに変態ねアイツ。あんな好色指揮官が私達の上司だなんて不幸だわ」

 

WA2000が憮然としながら言うと、それを聞いたBARがニヤニヤと笑う。

 

「な、何よ?」

 

「いやー?わーちゃんって何時もそうやってツンツンしてるけど指揮官の事が本当は心配なんでしょ?」

 

「なっ………!そんな訳無いじゃない!だ、誰があんな奴………」

 

「成る程成る程。じゃあ指揮官がどうなろうと、わーちゃんは何とも思わない訳だ?」

 

「そ、そうは言ってないわよ!確かに指揮官は巫山戯ていて、バカでしょっちゅう私の胸を掴みにくる真性の変態だけど!そ、そんな奴でも何かあったら作戦や指揮系統に支障が出るでしょ⁈」

 

「つまり心配してるって事だね。わーちゃんってば本当ツンデレなんだから」

 

「ツ、ツン………ッ⁉︎私はツンデレなんかじゃ…って、さり気なくわーちゃんって言うなーッ‼︎」

 

ムガー‼︎と顔を赤く染めて猛抗議するWA2000。

その姿は実に微笑ましいものであった。

 

 

 

 

 

 

 

「もうすぐ第1部隊との合流ポイントですね」

 

黒い軍服を身に纏う第2部隊隊員のMP40が地図を確認しながら言う。

 

「出撃前のブリーフィングでは、ジュピターが展開されてると聞いてたけど全く姿を見ないね………」

 

LWMMGがそう言いながら辺りを見渡すが、視界に入るのは廃墟と瓦礫だけだった。

ジュピターどころか鉄血兵も居ないのではーーーーーー?

そう皆が思うと同時だった。

 

 

 

 

 

「おやおや………こんな所で何をしているんだ?グリフィンの鉄屑ども?」

 

「ッ⁉︎」

 

 

 

突如、頭上から聞こえてきた声。

それを聞くと同時に第2部隊の隊員達は一斉に警戒して距離を取った。

声が聞こえた方を見ると、そこには長く白い髪をした人形が佇んでいる。

 

 

 

その人形に見覚えのあるG36は、思わずその名を口にした。

 

 

 

「アルバトリオンッ………‼︎」

 

 

「アルケミストだッ‼︎私はモ◯ハンに登場するモンスターじゃないッ‼︎」

 

 

 

 

自分の名前を間違えられた事に鉄血のハイエンドモデル人形・アルケミストは憤慨した。

 

「おや、違うのですか?」

 

「違うに決まってるだろう‼︎バカにしているのか⁉︎」

 

キョトンとした表情で言うG36に、アルケミストは盛大に突っ込みを入れる。

 

「どうしてハイエンドモデルである貴方が護衛もなく、このような場所に?」

 

「フン………それはだなーーーーーー」

 

 

 

 

 

〜回想〜

 

鉄血の司令部にて。

 

「申し上げます!グリフィンの人形部隊が我々の占領地域内に現れましたぁ‼︎」

 

バタバタと慌しく司令部に飛び込んで来た一人の鉄血兵の報告に、司令部にいるハイエンドモデル達が騒めいた。

 

「ダニィ⁉︎」

「ば、バカな⁉︎侵入されるまで分からなかったというのか⁉︎」

「不味いですね………!」

「もうダメだ、おしまいだぁ………!」

 

突然の事態に大混乱に陥り、喚く者や戦意喪失する者が出始めたその時だった。

 

「話は聞かせて貰ったぞ‼︎」

 

バァンッ‼︎と扉を蹴破る音で場は一気に静まり返る。

 

「あ、貴方は⁉︎」

「おお!あの方は‼︎」

 

長身の白く長い髪の女性が堂々とした佇まいで現れた一人の人形。

そう、彼女こそ‼︎

 

 

 

 

数多いる鉄血人形の中でも、抜きん出たおっぱいを持つ最強鉄血ハイエンドモデル人形・アルケミストッ‼︎

 

 

 

 

 

「グリフィンなど私に任せておけ。何、五分もあればあんな連中は一瞬で始末できる」

 

 

ドンッ‼︎という擬音を響かせながらデカイ胸を張るアルケミスト。

彼女から溢れ出る自信と力強さに、周囲の鉄血兵やハイエンドモデル達の目に力が戻る。

 

「か、勝てる………!人形界のSM女王であるアルケミスト様がいれば………‼︎」

「流石はアルケミスト様!我等、鉄血が誇る血塗られし守護神‼︎」

「アルケミスト様素敵‼︎あの方の責めを私も受けたいッ‼︎」

 

 

希望と称賛の眼差しを向けられたアルケミストは、満足そうに微笑み

 

「さあ、覚悟しろよ?グリフィンの鉄屑ども。スーパーキュートラブリー人形の私がお前達を可愛がってやるからな☆」

 

とカメラ目線でウィンクして見せたのだった。

 

 

 

〜回想終わり〜

 

 

 

 

 

 

そうして、今現在アルケミストは第2部隊の前にガイナ立ちで現れーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んな訳ないだろうがああああああああああああああああああああああああああああッ‼︎私のキャラを勝手に捏造するんじゃないッ‼︎」

 

 

ーーーーーーた訳ではなかった。

 

 

 

 

「おや、違うのですか?」

 

G36の推測回想を、全力で叫びながら否定するアルケミスト。

急に叫んで疲れたのか、ハアハアと肩で息をする彼女の姿に皆が生暖かい視線を送る。

 

「それで、鉄血のSM女王兼血塗られし守護神(笑)のアルケミストはどうしてここに?」

 

「誰がSM女王の血塗られし守護神(笑)だッ‼︎私にそんな痛々しい通り名はない‼︎そもそも、私がここにきた理由はーーーーーー」

 

怒りと羞恥で顔を赤らめながらも、アルケミストは再び語り出した。

 

 

 

 

 

 

〜回想(本当の)〜

 

 

「アルケミスト、宜しいですか?」

 

鉄血の司令部で、暇を持て余し少女漫画を読み耽っていたアルケミスト。

そんな彼女に声を掛けてきたのは上司であるハイエンドモデルの代理人ことエージェントだった。

 

「ああ、構わないが………何かあったのか?」

 

「ええ、少々問題事が。ここ最近、B-29地区を哨戒していた兵が複数行方不明になるといった事案が何度か発生しています」

 

代理人はそう言うと、大型モニターに映し出されているB-29地区を指す。

モニターには行方不明になった場所が赤く表示されていた。

 

「グリフィンの仕業じゃないのか?」

「私もそう思いましたが、どうやら違うようですわ」

 

モニター画面が別の画面に変わる。

何処かの防犯カメラに映っていた映像だろうか、画面に映っている鉄血兵が、次々と泥状の何かに呑み込まれていく。

残った者達が反撃とばかりに射撃をするが為すすべなく呑まれていった。

 

「………何だこれは?グリフィンの新型兵器か?」

「流石に私にも分かりませんわ。唯、この泥は人間や動物も襲う事が分かっています。グリフィンの作った兵器ならそんな事は無いでしょうし、判断に困りますわね」

「E.L.I.Dとかいう奴等じゃないのか?」

「資料で見た限り、あのような形状のE.L.I.Dは確認出来ませんでした。となると、全く別の存在である何かですわ」

「別の存在ね………」

 

確かB-29地区は僅かな数の人間が住んでいた場所だ。

戦略的にも然程重要でないという事と、グリフィンや軍の施設も無い事から放置していたが、こんな面倒事が起こるとは。

 

「そういえば、B-29地区から人間が居なくなったのは三カ月程前からだったか?」

「そうです。事案が発生するようになったのもこの頃からですわね」

「む………?行方不明になった兵は皆この同じような場所でやられているようだな」

 

モニターに映る行方不明場所は、ある一つの建物を中心にした付近で起こっている事に気づいたアルケミスト。

 

「あの建物を調べた方がよさそうだ」

「同意見ですわ。だから貴方に今回の件を任せようと思います。くれぐれもヘマをしないように」

「いいだろう。今動かせるハイエンドモデルは誰がいる?」

「ハンターと………潜入任務から一時帰還しているウロボロスがいますわ」

「ハンターは構わないがウロボロスか………。大丈夫なのか?」

「貴方の指示に従うように伝えているので問題ないとは思います。まあ、余りに勝手が過ぎるようでしたら『教育』しても構いませんわ」

「了解した。後は私に任せておいてくれ」

「今回の件には、ご主人様も関心を示しておられます。何度も言いますが、油断慢心で無用な損害を出さないように心掛けて下さい」

「分かっている。またな」

 

代理人に手を振りながら、アルケミストは司令室から出る。

久しぶりの大規模な作戦になりそうだ、とアルケミストは僅かに笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………という訳だ」

 

 

 

 

 

「フム、つまり『不甲斐ない部下に変わって、おっぱい魔人である私がチョチョイのチョイと問題を解決してあげるわ☆ハンター!ウロボロス!アルケミスト!私達こそ、鉄血が誇るハイエンド三天王だッ!エージェント、私達の活躍ぶりを舐めるようにして見ていてね♡月に代わってお仕置きよ(テヘペロッ☆)』という訳ですか」

 

「気色の悪い台詞補正を入れるなッ‼︎私は☆や♡を台詞に含んだりはしないッ‼︎」

 

メタい発言をしながらG36に食って掛かるアルケミスト。

おっぱい魔人の部分について否定しない所を見るに、自覚はあるのかも知れない。

 

「所で、貴方以外のハイエンドモデルや兵は何処に?」

 

「そんな事をペラペラと話すと思うか?私の目的は件の建物の調査だが、お前達と出会ってしまった以上、やるべき事はたった一つだ。ーーーーーー楽に死ねると思うなよ?」

 

 

G36の問いに、笑いながらアルケミストが武器を構えて冷徹に告げる。

 

こうして、第2部隊とアルケミストは交戦状態に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、別の場所では……………。

 

 

「つまらん」

 

仏頂面をしながら呟いたのは鉄血のハイエンドモデル・ウロボロスだった。

久々に本部に戻って休暇を取ろうと思った所に今回の任務。

しかも指揮をするのは自分ではなく、あの拷問好きのイカれたハイエンドモデル・アルケミストだ。

それが余計に腹立たしく面白くない。

己はあの過酷な電脳世界での蠱毒に打ち勝ち、通常のハイエンドモデルを上回るスペックを持っている。

己の力と頭脳を持ってすれば勝てぬ敵など存在しないのだ。

こんな事なら街で潜入任務を続けていれば良かった。

アレはアレで中々楽しかったのだが………。

 

「さて、エージェントが言っていた建物とやらはこれか?」

 

ウロボロスの視線の先には白い大きな建物が存在していた。

不気味な程に静けさが漂っている。

 

 

 

「せめて少しくらいは楽しませて貰わねばな………」

 

 

 

そう言って足を踏み出したウロボロスは、突如建物の影から現れた車に跳ね飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

跳ね飛ばされたウロボロスが地面に倒れこむ。

彼女を跳ね飛ばした車は何事も無かったかのように停車すると、その中から武装した黒ずくめの男達が現れた。

 

「油断するなよ。相手は見た目は女でも人形だ」

 

男達はゆっくりと倒れたまま動かないウロボロスに近づき………一瞬で吹き飛ばされた。

 

「クッ!ハハハハハッ‼︎中々愉快な『出迎え』だな⁉︎」

 

ウロボロスが笑いながら服についた埃を払って立ち上がった。

勿論彼女の身体には傷一つない。

それもその筈、ウロボロスには攻撃を通さない特殊な『電磁シールド』が備わっている。

シールドを展開している限り、銃弾などと言ったあらゆる火器は意味をなさない。

 

 

「おぬしらは何者だ?などとつまらぬ事は聞かんよ。興味もない。まあ、取り敢えず死ね」

 

そう言ってウロボロスは腰に装着されている機銃による掃射を行う。

 

「ひ、ヒィィィィィッ⁉︎」

「まさか、これ程とは………」

 

ウロボロスの情け容赦ない攻撃に狼狽える男達。

それを見たウロボロスは心底から詰まらなさそうに溜め息をついた。

 

「口程にもない雑兵だな。まあ、退屈凌ぎ程度には楽しませて貰えたぞ。故に華々しく散らしてやる。感謝しながら逝くが良い」

 

ガシャン‼︎という音と共にウロボロスの特殊兵装がその姿を現わす。

 

 

『スティンガーバースト』

 

 

ウロボロスが保有する小型ミサイル兵装だ。

 

それを放とうとした瞬間、ガァンッ!と何かが電磁シールドに当たる。

何だ?と思いながら音の方向を振り返ると、そこには拳銃を持った一人の白衣を着た男がいた。

 

 

「き、木原さん………」

 

 

男達が白衣の男に声を掛ける。

それを一瞥した木原と呼ばれた白衣の男は、ハアと溜息をつき、自分に声を掛けた男の眉間を拳銃で撃ち抜いた。

 

「ひっ………!」

 

周りの男達が恐怖の眼差しで木原を見る。

すると、木原はようやく口を開いた。

 

「だーから言ってんじゃねーかよー。こんなヌルい方法じゃ、人形を仕留める事なんざ出来ねーんだっての。やっぱ、この俺じゃねーとなー………」

 

ニヤリ、と凶悪な笑みを浮かべて白衣の男『木原数式』は笑った。

 

 

 

 

次回予告

 

「ま、そんな訳で死んでくれや。鉄血人形さんよ」ーーーーーー謎の研究者・木原数式

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

指揮官「完全にバイ◯ハザードじゃね?」UMP45「気にしたら負けよ、しきかーん?」

おっぱいが!
足りない!





ウロボロスは現れた白衣の男………木原数式を一瞥する。

彼の両手には銀色のグローブのようなものが嵌められていて、光の加減で淡く輝いているようにも見えた。

 

「ハッハッハ‼︎おぬしは随分と大きな口を叩くな?お前のような唯の人間に何が出来る?」

 

先程、まるで自分なら人形を倒せると言わんばかりの台詞をもって現れた木原数式。

正体が何であれ、ハイエンドモデルたる己には何の脅威でもない。

そう思っていると、木原は鬱陶しそうに語りだした。

 

「いやあ、俺も鉄血人形なんぞと会いたかなかったんだけどな?『上』の命令だから仕方ないんだよ。お前もここに何か用があって来た口だろ?だからさー…悪いけど、ここで潰されてくんねーか?面倒事の芽は摘んどく主義なんだよ。そもそも俺は、こう見えて元は鉄血工造に居たんだ。誰がお前達鉄血人形や武器を開発してやったと思ってんだ?リコリスだけがお前らの創造主って訳じゃねーんだぞ?ああ?」

 

鋭い目付きでウロボロスを睨む木原数式。

木原の高圧的な物言いに対して、ウロボロスは頭を振るとやれやれといった具合に肩を竦めて見せた。

 

「ハッ!何だその義理と人情に溢れた台詞は?もしかして恩返しでも期待しておるのか?おぬしの事情なぞ興味はない。潰されるのは貴様だよ人間風情が。そもそもだな」

 

そう言ってウロボロスは自分の頭を指差すと、

 

「イカレるなら一人でやれ。仮におぬしに製造されたとしても、一々思い出なぞ留めておくとでも思っているのか?だとしたら相当『愉快』だな、貴様という人間は」

 

最大限に嘲笑いながら一笑した。

それを見た木原は、ガシガシと面倒くさそうに頭を掻く。

 

「………つか、本気でムカつく人形だな、お前は。いやー殺したいわー…滅茶苦茶殺したいわー………。こんな事なら蝶事件が起きる前にお前らみたいな欠陥品はぶっ壊しとくべきだったんだよなあ。失敗、失敗…何やってたんだかな俺は………」

 

 

顔を俯けた木原は、溜息をまた吐くとウロボロスを殺意を込めた瞳で睨みつけた。

 

 

「ま、そんな訳で死んでくれや。鉄血人形さんよ‼︎」

 

 

ダッ‼︎と木原がウロボロスに向かって走り出す。

それを見たウロボロスは嘲笑いながら何もせず立っていた。

それはそうだろう、彼女には攻撃を通さない電磁シールドが備わっている。

これを展開している以上、誰も彼女に危害を加える事は出来ないだろう。

 

 

 

 

 

「(全く…何を考えておるのだ、この馬鹿は。さて、どう料理してやろうーーーーーー)ガァッ⁉︎」

 

 

 

 

 

木原の拳が、どういう訳かウロボロスの顔面を捉えた。

 

 

「な…に⁈馬鹿な、電磁シールドは展開していた筈………⁉︎」

 

あり得ざる事態に動揺するウロボロス。

その隙を取り逃がす程、木原数式は甘くなかった。

 

「おい屑人形。もう一辺聞くけどよぉ、お前らのつまんねー装備と力は誰が研究開発してやったもんだと思ってんのよ?………ほーれ、よく考えてみろ!」

 

ガァン‼︎と再度木原の拳がウロボロスの顔面を捉える。

 

「が………は…‼︎」

 

殴り飛ばされ、地面に倒れ伏すウロボロス。

 

「ま、取り敢えずお前は何も知らないまま、ここで地面のシミにでもなっててくれ。そっちの方が屑人形のお前にゃお似合いだろうからなあ?」

 

そう言って、笑いながらウロボロスを見下す木原。

 

「舐め…るなよ‼︎この、人間がアアアアアア‼︎」

 

ウロボロスは最大の武器である『スティンガーバースト』を撃ち放った。

 

だが……………

 

 

「駄目なんだよなあ」

 

 

木原に向かって放たれた小型ミサイルは、何故か軌道を変えて明後日の方向へと飛んでいく。

 

「なッ………⁉︎」

 

「ほれ、お返しだ‼︎」

 

木原の蹴りが炸裂し、蹴り飛ばされるウロボロス。

 

「ご……は…!貴様、まさか軍用の人形?若しくは身体を機械で強化して………⁉︎」

 

「あ?ギャハハハハッ‼︎違う違う、そうじゃねーよ。そういうのはお前らモルモットの役目だろーが。そんな馬鹿げた事しなくたって、お前一人潰すのに苦労なんざしねーんだよ。今日はコイツの調子も良いしなあ⁉︎」

 

そう言って、木原は腕に装着されている銀色のグローブのようなものをガシャガシャと握ってみせる。

 

「別にお前達人形の電磁シールドは絶対無敵の盾って訳じゃねーだろうが。ただ単に、強力な電磁メタマテリアルで構成された壁を身に纏ってるだけだ。なら話は簡単でよお、纏ってる電磁波の波形を乱しちまえばいいんだよ。そうすりゃ、お前御自慢のシールドは誤作動を起こして機能を止めちまうのさ。最も、人形ごとに波形のパターンは違うから一度は観測しねーと駄目なんだけどよ」

 

分かってくれたかな、マゾヒストちゃん?と倒れたままのウロボロスを見下しながら笑う木原。

 

「お前のような屑人形にゃ、ちと難し過ぎたかなあ?さっきのミサイルも同じ事だ。お前達は兵装を使用する際、複雑な演算を用いている………なら、そいつを乱しちまえばいい」

 

木原は足を上げると、ウロボロスの顔面に振り下ろした。

 

「特殊な音波や電波でッ全部ジャミング出来んだよッ‼︎俺は鉄血の思考・行動パターン・演算能力全部把握済みだ‼︎こっちも伊達にお前らの事、開発してねーぞッ‼︎」

 

グシャッ!ゴシャッ!と木原の足がウロボロスの顔面に食い込む。

 

「なあ、屑人形。お前は何も分かっちゃいねーよ。大体よー、蝶事件はどうして起こった?何で鉄血工造だけが狙われて、同じ人形開発してたI.O.Pは狙われなかったと思う?軍のアホどもは真実を隠してるつもりみたいだがな。ま、俺には関係ない話だ」

 

詰まらなさそうに言うと、木原は興味を失ったかのようにウロボロスから視線を外した。

 

「木原さん、この人形はどうされますか?」

「あ?殺すに決まってんじゃん。生かしとく理由もねーし」

 

分かりきった事を聞くな、と言わんばかりに首を振る。

 

そのやり取りを見ていたウロボロスは怒りに身を震わせながらも、この場を切り抜ける方法を考えていた。

 

「(何か、何か打つ手がある筈だ………!とにかく奴の隙をついて、一旦この場から離れなくては………)」

 

 

 

その時だった。

 

 

 

「う、うわあああああああああああッ⁉︎た、助けてくれッ⁉︎」

 

悲鳴が聞こえ皆が振り向くと、離れた場所にいた一人の男が泥状の何かに呑まれかけていた。

 

「(ッ⁉︎今だッ‼︎)」

 

全員の注意が泥状の何かに向いたその隙に、ウロボロスは人形の膂力を駆使してその場から脱兎の如く逃げ出した。

 

「チッ!逃げられたか。まあいい。それより………何だこりゃあ?こいつが例の暴走した奴か?こんな所にまで拡大してやがんのか。面倒くせぇな。………おい!何ボーっとしてんだ役立たずの愚図ども‼︎さっさと撃て‼︎」

 

「し、しかし!今撃てば彼にも弾が‼︎」

 

「構わねーよ。お前らみたいな駒、幾らでも補充は効くんだ。言う事聞けねーんなら殺しちゃっても良いんだよ。俺に今殺されるか、あの馬鹿ごと『アレ』を撃つか好きな方を選べ」

 

木原のドスの効いた声に、震え上がった男達は一斉に発砲する。

しかし、放たれた弾丸は泥に虚しく吸い込まれるだけに留まり、捕らわれた男の命を刈り取っただけだった。

 

「はん、成る程ねぇ?並みの火器じゃ効かねーみたいだな。………おい!お前らはコイツの相手をしとけ。その間に俺は用事を済ませてくるからよ」

 

「り、了解しました!しかし、アレには銃弾が効きません。どうすれば………」

「バカかお前。アレをよく見ろ、たかが泥状の塊だ。だったら燃やすなり凍らせるなりやり方があんだろ。ちったあ自分で考えろって。この脳筋の役立たずが」

 

吐き捨てるように言うと、木原は建物の中へと入っていく。

 

 

「さあ、楽しい楽しいパーティーの始まりだぜ?」

 

 

木原の顔には邪悪な笑みだけが広がっていた。

 

 

 

 

 

 

〜一方その頃〜

 

 

「触手さん、アンタとは良いおっぱい論議が出来たよ。また何処かで会おうぜ」

 

あの後、おっぱいについて触手さんと語り合った俺は彼?に別れを告げ、404小隊とともに処理場を後にしていた。

因みに触手さんは、あのまま彼処に住み続けるつもりらしい。

研究所へと続く廊下を通り抜けると、重厚な扉が見えた。

当然ロックが掛かっていると思っていたが、以外な事にロックは解除されている。

 

「………怪しいな。これ程の研究施設なら、掛かっているセキュリティレベルも相当な筈。だというのに現状はこれだ」

 

いくら軍の特殊部隊が襲撃してきたとしても、セキュリティシステムを作動させる間くらいはあった筈。

まるで、人を招き入れようとしているかのようだ。

 

「よし、9とG11は背後を警戒。俺と45が先行する。416は中佐の護衛をしろ。45、お前は左側に行け。俺は右からだ」

「了解」

 

手に握っているAN-94を構えながら、扉をゆっくりと開ける。

そのまま中へと入ると、そこにはーーーーーー。

 

 

「こいつは………」

 

 

まず目についたのは赤。

それが血であると確認できたのは、赤い血の海に転がる死体を視界に収めてからだった。

広いフロア一面が死体に彩られている。

黒い迷彩柄の服装、装備。

間違いない。

正規軍の特殊部隊だ。

 

「指揮官、これを見て。全員身体の一部が融解してる」

 

45が死体を調べながら言う。

確かに、この場に転がっている死体は全て身体の何処かしらがグズグズに崩れて融解していた。

中には腕や足だけを残して溶け落ちている死体もある。

後から入ってきた皆も、広がる惨状に僅かに顔を顰めた。

 

「死体もそうだがもう一つ不可解な事がある。こいつらの銃を見たが、発砲していないのが殆どだ。反撃する間も無く一方的にやられたと見るべきだろう」

 

仮にも特殊部隊が為す術もなくやられるなどと、俄かには信じがたい。

彼等を襲った犯人は奇襲的且つ、銃や刃物とは違う武器を使って彼等を殺した。

そんな事が人間に出来るのか?

人形でも無理だろう。

何より彼等は身体の一部が融解するという通常ではあり得ない死に方をしている。

 

「中佐。アンタはどう思う?研究者としての見解を聞かせて欲しいが」

「うむ………確信を持って言えるのは、彼等を襲ったのは人や人形ではないという事。そして人体を用意に融解させうる手段を所持している事だね。それは………」

 

中佐が途中で口ごもる。

恐らく、頭に浮かんだ仮説を口にしたくはないんだろう。

それはそうだ。

俺も同じ事を考えているんだからな。

 

「………中佐。アンタが考えている事は恐らく正しいぜ。これだけの惨状を生み出せるのは唯一つ」

 

 

 

「「崩壊液だろうな(だろうね)」」

 

 

 

言葉が重なる。

崩壊液。

世界を汚染し、大戦の遠因ともなった忌まわしき旧文明の遺産。

 

「一つ聞きたいんだが、この研究所で研究されていた『ヘドラ』ってのは汚染物質を喰う微生物だったよな?喰う事が出来るなら………吐き出す事も可能じゃないのか?」

「それは………分からない。少なくとも発見した当初の『ヘドラ』にはそんな行動は見られなかった。結論を出すには証拠も足りないし、不確定要素が多すぎる」

「とにかく、先に進もう。どうやらエレベーターが使えるみたいだからな」

 

壁張られている研究所内部の地図を見ると、実験区画は地下に存在しているようだった。

地下か………あんまり行きたくねぇな。

フロアにあるエレベーターは運良く稼働しているようだ。

ボタンを押して暫くすると、チーン!という音がしてエレベーターの扉が開く。

どうやら地下まで直結のエレベーターらしい。

ボタンは地下と地上の二つのみ。

エレベーターに全員で乗り込むと割と窮屈だった。

 

それにしても………

 

 

 

 

いやー、満員のエレベーターってのも悪くないな!

いい具合に、俺を中心にして四方八方からおっぱいに囲まれている。

しかもまあまあな密着度だ。

右は9のおっぱい、左はメイド服に身を包んだ416のブルンおっぱいだ!

前にはG11がいて、いい感じのマイナスイオンを放ってくれている。

問題があるとすれば、背後に控える45だ。

柔らかみを一切感じないゴツゴツとした壁。

まさに万里の長城だ。

夢も希望もない。

考えてみろ、謂わばアスファルトをベッドにして寝てるようなもんだぞ?

 

「今何を考えてたの、しきかーん?」

「イイエワタシナニモオモッテマセン」

 

俺の心の叫びを感じとったのか、45が銃口を脇腹にグリグリと押し付けてくる。

 

「どうせ、また胸の事考えてたんでしょう?この変態」

 

416が床にこびりついた染みを見るような目で俺を見ながら罵倒してくるが、俺の鋼のメンタルは傷つきもしない。

寧ろ、メイド服を着てる416に罵倒されるなんて快感にしかならねぇ!

分かったか、水色おっぱいメイドちゃんよぉ⁉︎

 

「私だって好きでメイド服を着てる訳じゃないわよ!あの触手にさえ不覚を取らなければ………!水色おっぱいって言うな!」

「グヘアッ⁉︎」

 

ゴスッ!と416の拳が俺の鳩尾に突き刺さる。

遠慮のない一撃………流石だ。

 

 

 

 

 

〜研究所地下〜

 

エレベーターから降りると、 複数のオフィスがあるフロアに出た。

どうやら実験区画ではないようだ。

床には書類や資料が散乱している。

 

「エラく散らかっているな。まあ襲撃があったんだから当然だろうが………ん?」

 

机の上に一冊の本が置かれている。

手にとって見ると、どうやら日記のようだった。

 

 

 

『研究員の日誌』

 

◯月※日

 

今日、嬉しい通達があった。

何と私に『ヘドラ』の研究スタッフとして参加せよという旨の通知が届いたのだ。

N-24地区で発見された未知の微生物………この生物のメカニズムを解明し、その性質を利用できれば我々人類は再びかつての繁栄を取り戻せるに違いない。

明日からが楽しみだ………!

 

 

△月×日

 

今日は軍の上層部が視察に訪れた。

研究主任のシュパーゲル博士が付きっ切りで応対し、『ヘドラ』の将来性について語っている。

今回の視察で『ヘドラ』研究の予算がもっと増える事を祈るとしよう。

早く『ヘドラ』の実用化にこぎ着けなければ!

 

△月※日

 

今日、耳を疑うような話を聞いてしまった。

『ヘドラ』の研究の目的は軍事利用…即ち生物兵器を作る事らしい。

軍も政府も何を考えているんだ⁉︎

『ヘドラ』を平和利用する為に研究していたのではないのか⁉︎

納得がいかず、私はシュパーゲル博士に直談判した。

シュパーゲル博士には疲れた顔で言った。

上層部の圧力と脅迫じみた物言いに承諾せざるを得なかったと。

研究を拒否すれば予算を打ち切るとまで言われたそうだ。

………我々は兵器を作る為にここに来た訳ではないというのに。

 

×月◯日

 

『ヘドラ』は危険だ。

今更になって、その恐ろしさを実感している。

何と『ヘドラ』は喰らった生物を取り込み、再現する能力を持っているのだ。

先日、注意を怠ったスタッフが『ヘドラ』に襲われ死亡した。

しかも、スタッフを襲った『ヘドラ』は姿を変化させて人間の形をとるようになったらしい。

最初は泥状の微生物群体だったというのに恐るべき進化速度だ。

食性も汚染物質を喰うに留まらず、肉食性となってきているようだ。

それに比例するかのように凶暴性も増している。

 

まだ我々も知らない力を有している可能性が………。

 

我々はとんでもないモノに手を出してしまったのでは………?

 

 

◯月△日

 

 

緊急事態だ!

研究所が武装した特殊部隊による襲撃を受けた。

セキュリティシステムもダウンしている。

通信も全く繋がらない!

まさか目的は『ヘドラ』か⁉︎

いや、それより今は脱出する事を考えるべきか………!

 

◯月◯日

 

大変だ!

実験区画で厳重に管理されていた『ヘドラ』が姿を消している!

襲撃の影響で管理システムがやられてしまったのか⁉︎

 

ん………?何だ

 

 

 

◯月×日

 

危なかった。

まさか『ヘドラ』に襲われるとは。

何とか逃げたが、ここは、何処だ?奴にかけられた体液みたいなモノがベタ付いて気持ち悪い…日記だけ持ってきてしまったが、どうしよう………。

博士や他のスタッフの皆は無事なんだろうか………。

 

 

△月◯日

 

肩の部分がやけにかゆい。

奴に体液をかけられた部分だ。

鏡で見てみると、焼け爛れたようになっている。

完全に出口を見失った。

さっきから全然進んでいない気がする、疲れているのか?

 

 

なんにちめ?

 

全然でぐちがみつからない、かたの部ぶんが大きく膨れ上がって腫れ物みたいなものができていた ぼくどうなって

 

だれかたす

 

 

 

 

なかまができた

どろどろだけど、とてもやさしい

きょーも、いっしょににんげんおそう

うまか です

 

 

あれ?なかま?じぶん? だれ だっけ?

 

 

ぼくはだれぇ?

 

あははははははははははははははははははははははははははははははははははははは

 

 

 

ぼくは、だれ?

 

 

 

 

(日誌はここで途切れている)

 

 

 

 

「………マジかよ」

 

口を開いて出てきたのはそんな一言。

だが、おかげで『ヘドラ』の脅威度も分かった。

 

「とんでもない事に巻き込まれたみたいね、私達」

 

いつの間にか、日誌を手に取ってパラパラと読み進めている45が僅かに顔を険しくしていた。

 

 

 

「ヤレヤレだ。取り敢えず、先に………」

 

 

先に進もうとしたその時。

 

壁が轟音とともに吹き飛んだ。

 

 

破壊された壁の向こうに、何かがいた。

 

 

ソレは身体が異様に膨れ上がっていた。

背中の肉からは何本もの触手が生え揃い、顔は焼け爛れている。

両手には斧を携えており、腐臭を漂わせていた。

 

 

 

 

「ハハッ…!冗談キツイぜ………!」

 

 

 

 

 

化け物の、耳をつんざくような声が響き渡った。

 

 

 

 

 

次回予告

 

「うおおおおおおおおおおおおッ⁉︎」ーーーーーー指揮官

 

「9ッ!駄目ッこっちに来ないで!早く逃げて‼︎」ーーーーーー404小隊の隊長・UMP45

 

「45姉ッ!指揮官ッ!」ーーーーーー404小隊の隊員・UMP9

 

「何してるの!早く逃げるわよ‼︎」ーーーーーー404小隊の隊員・HK416

 

「うう………こんな所こなきゃ良かった!」ーーーーーー404小隊の隊員・G11




………ウロボロスが嫌いとかそう言う訳じゃないんだ。
話の流れでああいう流れに………。


ウロボロスのおっぱいもデッカいと思う。
ハンターもデッカいと思う。
アルケミストはデッカい。

鉄血勢っておっぱい大きいキャラ多いよね。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

指揮官「ヒンヌーSMG代表!その名はUMP45!」UMP45「いっぺん死んで見る?しきかーん?」

お久しぶりです。
今回は超難産だった。
ああ〜おっぱいが足りないんじゃ〜‼︎


壁を突き破って現れたのは、大斧を携えた巨大な体躯の怪物だった。

 

「------ッ!!」

 

怪物が、咆哮のような悍ましい叫び声をあげる。

その声に呼応するかのように背中から触手のようなものがボコボコォッ!!という音を上げて生える。

常軌を逸したその光景に皆言葉を奪われた。

 

その隙をつくように、怪物はその手に握る大斧を振りかぶると俺の方に向かって一気にそれを投げ飛ばしてきた。

 

「うおおおおおおおおおおおッ!?」

 

俺は飛んでくる大斧をリンボーダンスの要領でギリギリ躱す。

ズガアアアアンッ!!と派手な音を立てて大斧が壁にめり込む。

何て野郎だ、あの化け物………………!

 

「------ッ!!」

 

怪物は再び咆哮を上げると、今度は背中の触手を伸ばし一番近くにいた45を捕えようと迫る。

 

「うぬぼれないでッ!!」

 

45は迫りくる触手を人形の持つ膂力で回避し、銃弾を怪物の頭部へと叩き込む。

銃弾を何発も頭部に受けた怪物はまるで聞いていないという風に体勢を立て直す。

それと同時に頭部の銃創が瞬く間に再生修復されていく。

 

「こうかは いまひとつ のようだ」

「何言ってるの、指揮官?」

 

おっと、俺とした事がついついポ◯モンっぽく言ってしまったぜ。

だからな、9。

そんな何言ってんだコイツみたいな目で見ないでくれ。

 

「あの再生力、ヘドラ以外にありえない!ヘドラは微生物の群体だ。通常の物理的な攻撃では有効打は与えられないぞ!」

 

怪物を冷静に観察していた中佐がそう言う。

 

「ならどうすればいい!?奴には何が効くんだ!?」

 

「ヘドラはその構造上、低温や高熱に対して脆弱な面を持ち合わせている!つまり燃やすか凍らせるかだ!」

 

成程ね。

ならこれは効くだろ!

 

「焼夷手榴弾を投げる!全員離れておけよ!」

 

 

俺は焼夷手榴弾を取り出して怪物へと放り投げた。

ゴオ!と爆炎が怪物を包み込む。

 

「こうかは ばつぐん だ ‼︎」

「だからさっきから何言ってるの、指揮官?」

 

9に、とうとう可哀想なものを見るような視線を向けられてしまった。

ポ◯モンネタは理解されなかったか。

まあ仕方ない。

 

それはともかく、中佐の言った通り、怪物基いヘドラは炎に弱いのか瞬く間に燃え堕ちていく。

 

「終わりね。手間かけさせてくれるわ」

 

416が燃え堕ちていくヘドラを見ながら呟く。

 

 

その時だった。

 

 

『センサーが火災を検知。被害の拡大を防止するためスプリンクラーを作動させます』

 

 

警告音のような音が流れたかと思うと、機械的なアナウンスが入り、それと同時に部屋の天井に配置されてしたスプリンクラーが一斉に作動した。

 

「おいおい………………ホントに今日はツイテないな!」

 

怪物を包み込んでいた炎がスプリンクラーから撒かれた水によって鎮火する。

炎が消えたことで力を取り戻したのか、再び怪物がゆっくりと立ち上がった。

そして、怪物の背中から触手が先ほどとは比べ物にならないほどの速さで45に襲い掛かった。

 

「くっ………………!虫けらが………………!」

 

触手によって捕えられた45は自身を拘束している触手を銃で撃ち抜いて千切ろうとするが、その意図を察した触手が45の首を締め上げ始めた。

 

「あっ…がっ……………!こ、の……!」

 

怪物は45の苦しげにうめく様を愉快そうに眺める。

 

 

「野郎ッ!45を離せ!撃て!」

 

45を捕えている触手が全員の放った銃弾によって千切れていく。

すると、怪物は触手が千切れ切る前に45を思い切り投げ飛ばした。

 

「45姉!!」

 

9が悲鳴のような叫び声を上げる。

投げ飛ばされた45は怪物が出てきた壁の穴へと消えていく。

クソッタレがッ!

 

「全員援護しろ!アイツを連れ戻してくる!」

 

「うう………こんな所こなきゃ良かった!」

 

G11がそう言いながら銃弾を怪物に向かって放つ。

言葉とは裏腹に、銃弾は正確に目などを撃ち抜いている。

その隙に俺は怪物の脇を擦り抜けて壁の穴へと飛び込む。

 

「45!無事か!返事しないなら洗濯板娘って言うぞ………………グヘッ!?」

「死ね!ホントこんな時でもペースを崩さないわね、しきかーん?」

 

45のダイレクトパンチが俺の鼻に炸裂する。

うーん、そろそろ鼻の骨折れんじゃね?

ま、それだけ口が利けるなら大丈夫そうだな。

45の手を取って起こし、怪物の方を振り返ると奴は触手を横に広げて通せんぼのような姿勢をとった。

こいつ、俺達を分断する気か………!

 

「45姉ッ!指揮官ッ!」

 

「9ッ!駄目ッこっちに来ないで!早く逃げて‼︎」

 

怪物の向こう側から9がこちら側に来ようとするが、45の声によって静止される。

 

「指揮官、45!その場に伏せて!」

 

416がそう言うやいなや、派手な爆発が起こり怪物の触手が粉々に飛び散った。

成る程、榴弾か………!

流石だぜ、水色おっぱい娘!

 

「こんな時にふざけてる場合⁈ほら、何してるの!早く逃げるわよ‼︎」

 

416は再び榴弾を怪物に向かって放つ。

怪物が榴弾で怯んだ隙に、その横を通って全員と合流することに成功した。

よし、後はどうやってこの怪物を撒くかだが………………こいつを使わせてもらうかね!

俺は懐から閃光手榴弾を投げる。

 

「------ッ!!」

 

 

 

こうして、奴が怯んだすきに俺達はその場を離れた。

 

 

 

 

 

 

〜数分後〜

 

「ハアッ、やれやれ。何とか逃げ切れたみたいだな。油断は禁物だが」

 

上手く撒けたのか、怪物が追ってくる気配はない。

あんな化け物がいるとは。

ありゃ何なんだ中佐?

 

「うーむ。これは私見だけどね、アレは恐らくヘドラが他者の生体細胞を取り込んで成長した変異種じゃないかな………となると取り込まれたのは研究所の人間か襲撃をした軍の兵士だろう」

 

変異種ね。

他にもアレと同種の化け物が彷徨いている可能性もあるかもな。

処理場で出会った触手さんはヘドラとは関係ないのか?

 

「あの触手さんかい?多分彼はヘドラとは違う何かだ。この研究所がヘドラ以外の何かを研究していた可能性も否定は出来ない。あの怪物も触手さんも、少なくとも自然に発生する生き物ではない筈だからね」

 

そうか。

さて、取り敢えず実験区画に向かおう。

中佐、道案内は頼んだぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、特に障害もなく無事に実験区画にたどり着いた俺達。

実験区画のフロアは不気味なくらいの静けさに包まれている。

所狭しと並べられた実験用のカプセルには緑色の液体が満たされていて、その液の中に哺乳類・爬虫類・両生類といった様々な生物が入っている。

 

「指揮官、見て。彼処に一台だけパソコンがあるわ」

 

45が指差した先には、確かに一台だけパソコンが鎮座していた。

側に行って電源を入れると、画面に『パスワードを入力して下さい』という表示がでる。

これはミスったら動かなくなるやつだろ。

パスワードなんざわかる訳もないし、下手に触る訳にもいかんな。

どうしたもんか………。

 

「指揮官、少しいいだろうか?ひょっとすると、そのパスワードが分かるかも知れない」

 

それは本当か、中佐?

何故パスワードが分かる?

 

「う、うむ。僕の持っているこの携帯端末なのだが、これにヘドラのデータが入っていると前に話しただろう?実はこの中にあるデータの一部に不明なファイルデータが存在していてね。これが突破口になれるかも知れない」

 

そう言って、中佐は端末を開き始める。

成る程、確かそのヘドラのデータを送ってきたのはミハイル・シュパーゲル博士だったな。

 

「えっと………ああ、これだ」

 

中佐がファイルを開くと、画面には『DTHYAIBR』という文字列の表示が浮かび上がる。

こいつがパスワードなのか………?

 

「一か八かの賭けだが、やってみよう」

 

中佐はそう言ってパソコンの前に座りパスワードを入力していく。

 

………何だ、この喉の奥に引っかかる何かは?

DTHYAIBR………DTHYAIBR…いや、まさか。

 

 

俺は咄嗟に中佐の手を掴み、パスワードの入力をやめさせる。

 

「お、おい!一体何のつもりだ指揮官?」

 

落ち着け。

そのパスワード、俺の予想が正しければ全く違う単語になるぞ。

 

いいか、DTHYAIBR………コイツを並び替えると。

 

 

 

 

 

『BIRTHDAY』

 

 

 

 

 

 

だ。

 

 

 

 

入力を終え、エンターキーを押すと『パスワードの確認に成功しました』という表示が出る。

ハハッ、まさかこんな捻りを加えてくるとはな。

 

「………よく分かったわね、しきかーん?」

 

当然だ45。

俺は何でもお見通しだぞ?

お前がヒンヌーだって事も、宿舎で寝る時9を抱きしめながら寝てる事も、貧乳だって事も、おっぱいが油を塗ってツルツルテカテカになったフライパンのような平坦極まるものだって事も、ペチャパイだって事も、ヒンヌーだって事も全部まるっとクリっとお見通し………冗談だ、だから銃口を俺の頬に押し当てるな。

 

「懲りない変態ね、死ねばいいのに。………それよりどうして私が寝てる時の事を知ってるのか、後でゆっくりと尋問してあげるから覚悟しておきなさいよ、しきかーん?」

 

おおう………。

45の殺気が混じった笑顔が眩しいぜ。

ゾクゾクしちまうじゃねぇか。

俺にとってそれはご褒美だ。

その笑顔は俺に効く。

 

まさに、こうかは ばつぐん だ‼︎だな。

 

 

 

 

 

 

気をとりなおし、パソコンの画面を見ると自動的に何らかの動画が流れ始めた。

画面には、椅子に座る初老の男が映っている。

 

『………この動画を見ているということは、私は既にこの世には居ないだろう。パスワードを解き明かすことに成功したようだな?私は、ミハイル・シュパーゲル。この生物化学研究所でヘドラの開発に携わっている研究主任だ。それでは、全ての真実を伝えよう。私の全てをーーーーーー』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は今まで、生物学とELID研究の第一人者として、この道に携わってきた。

私には夢があった。

いつか必ず、ELID化してしまった人々を救い、あらゆる争いを根絶するという夢が。

その夢が叶う千載一遇のチャンスに出会えたのは今から5年前。

N-24地区で発見したヘドラだ。

汚染物質を糧にし、環境を改善する作用を備えたこの微生物との出会いは私の人生を一変させてしまった。

この生物があれば、夢を叶えられる。

荒廃した土地や水源を浄化できれば放射線の汚染や食料問題も解決できる。

応用できれば、ELID化した者達も救済できるかも知れない。

それが叶えば戦争などという愚かな行為をする者も現れないだろう。

……………そう、私は舞い上がっていたのだ。

私は何も分かってなどいなかったのだ。

 

 

人間という生き物が、どれ程残酷で欲深いものかということを。

 

 

ヘドラの研究を始めてから暫くして、私は研究の目的が平和利用ではなく軍事利用が目的だと知った。

正規軍は最初からヘドラを人々を救う為に使うつもりなど欠片も無かったのだ。

私にはそれが許せなかった。

お前達はそれ程争いを好むのか、と。

だから、私は禁断の手段に手を出す覚悟を決めた。

 

決して、軍や一部の人間達の思惑通りはさせないと。

表向きには従順な振りをしながら、私はヘドラを使って全く別の研究を始めた。

幸いなことに私は研究主任という立場だ。

故に本当の目的に感付かれる事なく研究を進めることが出来た。

 

そして私は、ヘドラに『ある細胞』を移植・定着させることにより独自の進化を遂げさせる事に成功した。

予想通り、ヘドラはかつてとは比べ物にならない程凶暴性を増し、とうとう研究スタッフの1人を喰い殺す程にまで成長した。

ヘドラに移植した『細胞』は余りにも強力過ぎるのだ。

この細胞を摂取した生き物は、それを我が物には出来ず逆に細胞に『喰われて』しまう。

故に、定期的に特殊な安定剤を投与しなければならない。

 

 

私は第2のステップに進むことにした。

 

 

私は軍上層部に手紙を送った。

私の真の目的を伝える為。

これでいい。

全ての準備は整った。

 

 

私の真の目的を知った軍は、私の目的を阻止する為に特殊部隊を送り込んできた。そして私は襲撃された時を見計らい、ヘドラに対する最後の安定剤投与をやめた。

安定剤はこれでなくなった。

作り方を知っているのは私だけ。

安定剤がなければ、ヘドラは暴走し、恐るべき破壊が引き起こされるだろう。

ELIDや鉄血などとは比較にならない脅威が生まれ落ちる。

そして、膨大な数の人間がヘドラによって死んでいくだろう。

だが、仕方あるまい。

 

全ては『世界平和』の為だ。

 

 

皮肉な話だ。

私は世界を平和にしたかった。

苦しむ人々を救いたかっただけなのだ。

 

その私が、理想と真逆の事をしているのは滑稽とも言える。

 

だが、これでいい。

 

ヘドラという脅威に直面する人類は、否が応でも争いを辞めざるを得ないだろう。

少なくとも、争いを無くすという目的は達成できる。

ヘドラを軍事利用するなどと、愚かな事を考える輩が現れる事もない。

 

少なくとも、世界は僅かに平和になる。

 

私はこの計画をこう名付けた。

 

 

 

 

『operation detritus』………と。

 

 

 

 

最後に、私の目的に巻き込んでしまったシラカミ君には謝罪しておこう。

だが、君なら分かってくれる筈だ。

 

この動画を見ている全ての者達に問いたい。

 

 

 

 

私は、間違っているだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

動画が終わる。

まさか、全てが博士の仕業だったとはな。

まんまと踊らされたって訳か。

中佐、アンタはこれからどうする?

 

 

「……………博士の目的は、謂わばヘドラによる強制的世界平和だ。先程の博士の問いに答えるなら、僕は………」

 

 

 

 

 

「間違っている。そうとしか答えられないよ。どんな理由があったとしても、博士の行いは許されないものだ。指揮官、博士の目的を阻止したい。無理を承知で頼むが、手を貸してくれないか?」

 

 

 

よく言った、中佐。

博士の目的を叶えさせる訳にはいかない。

何とかして、研究所ごとヘドラを一掃出来ればいいんだがな。

 

「あら、それならちょうどいいモノがあるみたいよ?」

 

うん?

そりゃ、どういう意味だ45?

 

「今さっき、ここの研究所のネットワークシステムにアクセスしてみたんだけど、緊急事態用の為に自爆装置が設置されてるみたいね。それを起動出来ればヘドラとやらを一掃出来る筈よ」

 

自爆装置か………よし、ならそれを作動させて研究所から脱出するのが次の目的だ。

 

準備が出来次第、出発するとしよう。

いつ、あの怪物に出くわすか分からないからな。

 

 

あ、そうだ。

416、お前にしか頼めない事があるんだが、いいか?

 

「何かしら?」

 

ちょっとだけでいいからさ、そのたわわに実ったブルンおっぱいにダイブさせてくれない?

 

 

「45、そこを退いて。自爆装置を作動させる前に、まずその変態を始末するから」

 

「じゃあ私も一緒に手伝うわよ?面白そうだし。9とG11はどうする?」

 

「んー、45姉が殺りたいっていうなら私も殺ってみようかなあ」

 

「ふああ………眠い…。指揮官を始末したら寝てもいい?」

 

お、おい。

落ち着けって、お前達。

後、9。

お前の台詞が一番物騒だぞ⁉︎

 

 

いや、ちょ、待っ………アッーーーーーー⁉︎

 

 

 

………そういや、博士がヘドラに移植した『細胞』は、一体何の細胞なんだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃。

 

 

 

遠く離れた海の底。

 

 

 

マリアナ海溝と呼ばれている光も届かぬ海底で。

 

 

 

 

 

『何か』が目覚めた。

 

 

 

 

その『何か』は大きく身動ぎすると、轟音を立てた。

 

 

 

『何か』は感じ取っていた。

世界の均衡を破壊しようとする力を。

 

 

 

『何か』は動き出す。

 

 

世界の、自然の調和を保つ為、均衡を乱す愚か者に裁きの鉄槌を下す為に。

 

 

 

 

 

 

 

 




世界の終焉が始まる。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

指揮官「家に帰りたああい‼︎」HK416「はいはい」

投稿遅延スマヌ………。
お待たせしました。


「あ〜、おっぱい揉みたいんじゃ〜‼︎」

「当たり前みたいにおっぱいを掴むなこの変態‼︎頭イかれてんじゃないの⁉︎」

 

疲弊した精神を緩和する為、416のおっぱいをサワサワと優しく包み込むように揉みしだく。

勿論、416の銃床打撃が俺の頭を襲うがその程度の動きでは俺を捉えるなど出来るわけもない。

 

「タコみたいにウネウネしながら避けるな!榴弾で消し飛ばすわよ⁉︎」

 

落ち着こうぜ、水色メイド服おっぱいちゃん。

今はこんな事をしている場合じゃないだろ?

博士のヤバい目論見を打破する為に力を合わせないと駄目じゃないか!

 

「アンタの行動が原因でしょうがッ‼︎もうやだ、この変態………」

 

大丈夫?

頭痛薬飲む?

悩み事があるなら俺の『ドキドキ!正しいおっぱいの揉み方』を伝授してやろうか?

 

「要らないわよ!ハア………なんか疲れたわ」

 

ため息をつきながら416は歩いていく。

最近彼女のツッコミはキレが増してきている。

感慨を覚えながら歩いていくと、目的の自爆装置が設置されている場所へと辿り着いた。

 

「よーし、仕事にかかるぞ。俺が装置を作動させるから周囲を警戒していてくれ」

 

えーっと、ここがああしてこうして………出来た。

 

『警告、警告!自壊プログラム作動!システム作動により、当該研究所を20分後に爆破します!関係各位は速やかに避難してください!警告、警告………!』

 

なあッ⁉︎

20分で爆破だと⁉︎

そんなバカな、確かに1時間後に設定した筈だってのに!

 

「ちょっと、どういう事⁉︎」

 

落ち着け、416。

こういう時は深呼吸をしながら、おっぱいに手を当てて冷静になるんだ。

ほら、スーハースーハー。

 

「スーハースーハー………って冷静になれるかーッ‼︎馬鹿な事やってないで全力で逃げるわよ!」

 

言われなくてもそうするさ!

クソッ、ここからだと20分で脱出出来るかどうか微妙な所だが………やるしかあるまい。

 

「指揮官、もう一つ方法があるみたいよ?」

 

うん?

どうした45?

時間がないんだ、話なら後に………。

 

「聞いて。さっきここのシステムにアクセスした時、地下から屋上まで直結している避難用エレベーターがあるのを見つけたの。屋上にはヘリコプターもあるらしいわ」

 

それは本当か⁉︎

確かに、ここから地上までだと走ってもギリギリ脱出出来るかどうかの際どい勝負になる。

選択の余地はなさそうだな。

屋上に向かうぞ!

 

 

 

 

何か少し嫌な予感もするが………いや、辞めておこう。

 

 

 

 

 

 

 

エレベーターに乗り、屋上に出ると45の言った通りヘリコプターが一機存在していた。

後はあれに乗って逃げるだけだな。

 

「………ねぇ、何か音が聞こえない?」

 

おい、不吉な事を言うなG11。

何も起こりはしない……………ってああああーッ⁉︎

 

 

ドンッ!という音と共に、ヘリコプターの真下のコンクリートに大きな亀裂が入った。

そして、ヘリコプターが無残に砕け散り、その下から見覚えのある怪物が姿を現わす。

 

まさか………あの時の斧野郎か⁉︎

しつこい奴だな‼︎

それよりも、唯一の脱出手段であるヘリコプターがやられちまった‼︎

最悪なんてもんじゃねぇぞ、これは⁉︎

404の皆も一様に焦りと動揺が浮き出て来ている。

どうする?

今更地下に戻っても時間的に絶対間に合わない。

文字通りの絶体絶命………!

 

 

『伏せろ!』

「⁉︎」

 

 

その時、急に無線で誰かの声が聞こえた。

反射的にその場に伏せると、斧野郎が一瞬で無残な肉塊と成り果てる。

今の特徴的な野太い声は、まさか………‼︎

 

 

 

『よう、指揮官とお嬢さん達ィッ‼︎まだ生きてるか⁉︎遅れてすまなかったな!グリフィン随一のヘリパイの参上だぜ‼︎』

 

 

上空を見上げると、其処には大口径のガトリングガンを装備したオスプレイ。

ハハッ………!アンタ最高だよ、ヘリパイのオッサン‼︎

 

 

 

『今から着陸する!さっさと乗ってくれよォ‼︎』

 

 

言われなくてもそうするさ!

感謝感激おっぱいパイだよ‼︎

 

 

ヘリが離陸して、研究所が徐々に離れていく。

暫くすると研究所は轟音と炎をあげて爆発した。

 

「衝撃に備えろ!舌を噛むなよ!」

 

パイロットのオッサンが操縦桿を握りながら叫ぶ。

少し遅れて爆発の衝撃波がヘリを襲う。

無残に消えていく研究所。

恐らく、ヘドラも一溜まりもないだろう。

 

 

 

「ねぇ………指揮官。アレ…何………?」

 

 

どうした、9?

いつもの笑顔はどうしたんだ?

一体何を…み…て………⁉︎

 

 

 

9の見ている方を見ると、そこは先程爆発した研究所。

だが。

 

そこに。

 

 

異常極まる何かが現れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

研究所の自爆装置を作動させ、指揮官達が脱出した頃と同時刻。

 

地上では、鉄血の部隊と指揮官隷下の部隊が激戦を繰り広げていた。

 

「次から次へと………!弾薬だって無限にある訳じゃないのに!」

 

LWMMGが苦々しげに言いながら弾幕を張り巡らせる。

何体かの鉄血人形が弾幕に呑み込まれ瞬く間に大破していくものの、御構い無しに増援が現れる。

 

「口より手を動かして下さいよッーーーーと!」

 

物陰に隠れていたMP40が焼夷手榴弾を投擲し、正確な射撃で近づいてくる敵を撃ち倒す。

 

「それよりG36は何処に行っちゃったんだろうね?アルケミストなんて適当に撒けばいいのに………おっと、マンティコアが出て来たよ。わーちゃん、適当にやっちゃって下さいね〜」

 

BARが同じように呟きながらヘラヘラと笑う。

彼女達の視線の先には複数の足の様なものが付いた鉄血の多脚攻撃戦車『マンティコア』が機械的な音を立てて前進して来ていた。

 

「わーちゃんって言うなって言ってるでしょうが!アンタ達真面目にやりなさいよ!」

 

WA2000こと、わーちゃんはいつも通りプンスカと怒りながら現れたマンティコアの脆弱な部分を徹甲弾で撃ち抜き、一瞬で無力化する。

 

「それにしてもG36は大丈夫かな?いくら何でもハイエンドモデルを1人相手取るのは厳しいと思うけど」

「まあ確かに。せめて第五部隊の彼女達が居てくれれば状況も変わりますが………」

「無い物ねだりしないの!とにかく今はこの場を凌いで第1部隊との合流ポイントを目指すわよ!」

「ハア…弾薬コストどれだけかかって来るんだろう………」

 

 

それぞれが溜息をつきながらも、徐々に敵との距離を詰めていく。

敵である鉄血人形が殲滅されるのは、この十数分後であった。

 

 

 

その頃、1人アルケミストの相手を引き受けたG36。

アルケミストの目にも止まらぬ高速攻撃を、右へ左へとローリングして紙一重で交わしながら戦闘を行っていた。

 

「フン………!ちょこまかと逃げ回るのがお前の得意技なのか?避け方が地味に鬱陶しいな‼︎」

 

「ご主人様の変態機動を少々真似てみたものの、やはり習得するには相応の練度が要求されますね………!」

 

息を整えながら、G36はアルケミストの攻撃を捌いていく。

その顔には微塵の焦りも見受けられない。

そんな彼女の態度が、余計にアルケミストを苛立たせる。

 

「随分と余裕だな………だが!」

 

フッ!と、アルケミストの姿が一瞬消える。

 

「側面がガラ空きだぞ‼︎」

 

極限まで高められた俊敏な動きでG36の真横に移動した彼女は、その手に握る武器を振り下ろそうとするが

 

「貴方こそ、真下がガラ空きです‼︎」

 

次の瞬間、アルケミストを眩い閃光が埋め尽くす。

G36が足元に転がした閃光手榴弾が炸裂したのだ。

 

「チッ!面倒な………!」

 

すんでのところで、目を覆い閃光を免れたアルケミストはG36に攻撃を加えようとして、何処にも彼女が居ない事に気付いた。

まさか、と思い上空を見上げると銃を構え、こちらを見つめるG36と目が合う。

射撃管制システムを極限まで高めたG36の、荒れ狂う暴風のような弾幕がアルケミストを襲う。

 

 

「舐…めるなああああ‼︎」

 

咄嗟に身体を捻り、ギリギリの所で躱すが何発かは躱しきれずに腕や足に被弾した。

 

「やってくれるな、グリフィンの屑人形の分際で…!」

 

「お褒めに預かり光栄です………と言いたい所ではありますが、貴方といつまでも戦い続ける訳にも行きませんからね。ここで、終わりにさせて貰います」

 

「ククッ………もう勝ったつもりか?自分の右腕を見てみろよ」

 

アルケミストの不敵な笑みとともに掛けられた言葉に訝しみながらG36は自分の右腕を見る。

 

「ッ………!」

 

ピシピシ!という小刻みな音が聞こえ、それと同時に彼女の腕のあちこちが擬似血液を噴き出しながら裂けていく。

 

「そうなって当然だ。あんな高機動を何度も繰り返し、尚且つ射撃管制システムを限界まで行使したんだ、身体がついていける訳がない。例え人形であったとしてもだ。そして、私は人形の身体の仕組みの隅々を把握している。何処をどうされれば、人形が壊れるのかという事もな!」

 

ゴッ!と、先程より鋭さと速さの増したアルケミストの蹴りが、G36の脇腹に突き刺さる。

蹴り飛ばされたG36は近くの建物の壁に叩きつけられた。

 

「う………く…‼︎」

 

身体を襲う痛みに耐えながら、G36は蹌踉めきながらも立ち上がった。

 

「今のは中々効きました…ですが、まだここからです………!」

 

「一々癇に触る奴だ………!さあ、仕切り直しと行こうじゃ…ない…か…⁈」

 

 

 

ゴゴゴゴゴッ‼︎と地面が揺れた。

あちこちに地割れが起こり、その中から何かが現れる。

 

 

「何だ…あれは⁉︎」

 

「あれは………‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アツイ。

それが感じたのは、その感情だった。

炎の激流が己を焼き尽くしていくのが分かる。

最早悠長な事は言っていられない。

何としてでも身体を保たなければならない。

群体である彼等は、一斉に散らばっていた同胞と融合した。

それと同時に、その身体が歪に巨大に膨らんでいく。

 

 

 

 

 

 

爆発によって、瓦礫と化した研究所が衝撃で塵となる。

瓦礫の山が盛り上がり、そこから現れた何かが、竜巻のように轟々とうねりをあげながら天へと駆け上っていく。

 

やがて、竜巻が消え去ると。

 

 

巨大な、人型のような何かが存在していた。

黒く濁ったヘドロのような身体。

怪しげな光を放つ黄色の眼。

それが『ヘドラ』という微生物の群体だとは誰一人として思わないだろう。

全身から腐って卵のような匂いを垂れ流しながら、『ヘドラ』は遂にその産声を上げた。

 

 

 

 

 

ギュオオオオオオーーーーーーッ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎

 

 

 

 

 

ヘドラは自分の存在を誇示するかのように叫ぶ。

彼等が持ち得るものは唯一つ。

 

 

最も原始的で、全ての生物が持っている衝動。

 

 

即ち。

 

 

 

生命ある全ての生物を喰らいたいという『食欲』だ。

 

 

 

 

 

 

己が食欲を満たす為、多くの生物が存在する場所を目指してヘドラは歩き出す。

 

 

その行き先は、人間達が暮らす街に他ならなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は、目の前の光景が信じられなかった。

爆発四散した研究所から現れた超巨大な塊。

あれは………。

 

「中佐………敢えて聞くが、アレもヘドラか?」

「恐らくは、そうだろうね。研究所全体に散らばっていた群体が1箇所に集まった形態………名前を付けるとすれば、『ヘドラ集合形態』とでも言うべきかな」

 

名称は今更どうでもいいが、もうコレは俺達の手に負えるものじゃない。

それこそ正規軍が対処するべき事態だ。

正規軍の連中に何とかしてこの事を伝えないと………ん?

通信?

見ると、腕時計型の端末に通信が入ってきている。

通信先は………本部?

応答するとホログラムが表示され、上司たるヘリアントスの姿が現れた。

 

「ヘリアン?いいタイミングだ、軍に連絡を………」

『指揮官、時間がない。単刀直入に説明する。そちらの現状は私達も理解している。直ちにその場所から離れるんだ。今から5分後に軍が使用する新兵器に巻き込まれるぞ‼︎』

「なーーーーーーッどういう………‼︎」

『軍は、その怪物を新兵器とやらで始末する腹積もりだ!既にミサイルに搭載された新兵器が其方に向かって発射された!』

「クソッ‼︎部下達がまだあの場所の近くにいるんだぞ‼︎」

『既に彼女達には私から退避するよう伝えてある!だからお前達も早くそこから出来るだけ離れるんだ!』

「そうか………すまない、感謝する。それと、一つ聞かせてくれ。その新兵器とやらはどういう代物だ?」

『私も詳細は分からない。だが、軍の連中は新兵器をこう呼んでいた』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『オキシジェン・デストロイヤー………とな』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

指揮官「ごめんちゃい、まだ少し続くのよ?」

取り敢えず安全圏内まで離れる事は出来た。

それにしても、オキシジェン・デストロイヤー………ね。

物騒な名前だが、そもそも兵器の時点で物騒もクソもないな。

ヘリアンが言うには正規軍の兵器開発部が肝いりで製作した新型ミサイルだとか。

本来はELID相手に使うつもりだったらしいとの事だ。

まあ何にせよ、あの化け物を倒せるってならそれに越した事はない。

後は正規軍に任せりゃ何とかなるかな。

 

 

「ミサイル、後30秒で着弾!衝撃に備えろォ!」

 

 

パイロットのオッさんの野太い声が聞こえ、暫くして辺りを埋め尽くす眩い閃光が広がった。

まるで核兵器みたいだが、それにしては爆発範囲も狭いしガイガーカウンターには放射線も検知されていない。

やがて、B-29地区を覆っていた閃光が消え去り、静けさを取り戻した頃には巨大なヘドラは跡形もなく消滅してしまっていた。

まるで、ヘドラなど最初から存在していなかったとばかりに。

終わった………これで終わったのか?

 

 

 

「おっと………指揮官さんよ。ちーっとばかし、厄介な事態だぜ?」

 

パイロットのオッさんの声に、周りを見ると確かに彼の言う通り厄介そうな事になっていた。

 

何故か?

俺達が乗るヘリと並ぶようにして戦闘機が飛んでいたからだ。

 

「ねぇ、これかなり不味い状況じゃない?軍の連中、私達の口封じにでも来たんじゃ………」

「それはどうかしら、9?あの戦闘機、部隊章が見た事のない物ね」

 

45の言う通り、正規軍の戦闘機にしては翼の部分に部隊章が明記されていない。

他所のPMCの可能性は限りなく低い。

そもそも戦闘機の運用や維持にかかるコストは言うまでもなく膨大であるし、戦闘機を使うPMCなぞ今まで聞いたことも見た事もない。

軍でないとするなら、一体この戦闘機は何処の所属なんだ?

 

 

「ついてこい………って事かァ?ま、この状況じゃ従うしかないわな。燃料が持つといいが………」

 

 

 

さて、どうなるやら………この後どうなるか、こればっかりは神様仏様しか知り得ない。

何だろうな、益々厄介事に巻き込まれそうな気がするが、杞憂である事を祈っておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

暫くの間戦闘機に先導されながらついて行くと、やがて巨大な全翼機が現れた。

その見た目は、旧アメリカ軍が運用していた爆撃機『B2』に酷似している。

機体下部の中央部分が開き、その中に入れという指示をされ、俺達を乗せたヘリは機体の中へと入っていく。

 

「こいつァ…たまげた。今まで色んな機体を見てきたが、こんな代物は初めてだ。にしても連中無茶言いやがる。この激しい気流の中で機体の内部に入れだなんてなァ………!」

 

パイロットのオッさんが感嘆しながら呟き、同時にブツブツと文句を言う。

とは言え、それでも激しい気流の中で機体を上手く制御しているのは彼が優秀なパイロットだという事だろう。

 

「航空母艦ならぬ航空母機って所か?これだけの装備を持っているなんて、こいつら一体何者だ?」

 

ヘリが全翼機の中に入り、着陸すると直様武装した兵士達がヘリを取り囲んだ。

ヘリから降りた俺達は兵士達に囲まれたまま移動するよう促され、全員が別々の密閉された部屋へと連行された。

部屋の中には簡素な机と椅子があり、部屋には俺以外誰もいない。

てっきり尋問でもされるのかと思っていたが………アイツらの考えがまるで分からん。

 

どうしたものかと考えていると部屋の扉が開き、一人の女性が入って来た。

 

「こうしてお会いするのは初めてですね。キョウヘイ・ヤマネ指揮官。まず、このような形でこちらにお連れした事を謝罪します。私はエレナ・コールマン。特務生物研究機関『MONARCH』所属の生物学者です」

 

特務生物研究機関『MONARCH』………聞いた事もない。

これだけの装備や人員を保持していながら何故今まで表に現れなかった?

 

「我々は常に歴史の裏側にいましたから。それにMONARCHはあくまで研究機関です。別に世界を支配しようだの、作り変えようとか企む秘密結社ではありませんからね。その点についてはまた後でお答えしましょう。まずは別室に移動して貰えますか?」

 

………分かった。

今はアンタの言う事を聞くしかないだろうしな。

別室とやらに案内してくれ。

ところで、404小隊の皆に手を出したりはしてないだろうな?

 

「ご安心を、我々はその様な事をする為に貴方方をこの場所にお連れした訳ではありませんから。さあ、行きますよ」

 

 

 

 

 

エレナに連れられ、案内された部屋には404の面々と眼鏡をかけた一人の男がいた。

 

 

「初めまして、ヤマネ指揮官。私はイシロウ・セリザワと言う者です。古生物学を研究しています」

 

 

眼鏡を掛けた男………セリザワが手を出して握手を求めてくる。

その手を握り返しながら、俺は目の前の男が中佐や俺と同じ日本人だと言う事に驚いてもいた。

 

 

 

「早速本題に入りましょう。いくつかの質問を私がします。ヤマネ指揮官、あのヘドラという生物の事をどの程度までご存知ですか?」

 

エレナが俺の対面の椅子に座り問いかけてくる。

 

そうだな………細かいことは分からんが、汚染物質を喰う微生物が何らかの影響で異常な進化・発達を遂げた存在…でいいか?

 

「成る程………では少し質問の仕方を変えます。研究所地下から現れた巨大なヘドラ………アレを最も普遍的且つ分かりやすい表現をするなら、貴方は何と呼称しますか?」

 

 

…………………いや、まさか、そんな筈はない。

アレはあくまで微生物だ、中佐もそう思うだろう?

 

「他人に話を振らないで下さい。分かっているのでしょう?アレが何なのか」

 

 

……………そうだな、ああ。分かっているとも。

だがな、俺は認めない。

その呼称はヘドラのような微生物の群体などに、どんなに姿形が変わろうとも生物の一角に過ぎないアレに本当の意味での、その呼称は似合わない。

 

 

 

 

 

 

『怪獣』

 

 

 

 

 

という呼び名は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………その一言がお聞きしたかったのです。やはり、貴方はその目で見たことがお有りなのですね?『怪獣』を」

 

エレナの眼光が鋭さを増す。

一つ聞きたいが、アンタらは俺の事をどこまで知っている?

 

「概ね一通りは。五年前の『アラトラム事件』の事も含め、把握しています。貴方は、あの事件の中心であり当事者でもあった。『アラトラム事件』で貴方が義理の姉を亡くした事も………」

 

ズキ、と頭が痛む。

思い出したくない事をズケズケと掘り出しやがって………!

 

俺は思わずエレナを睨んでしまう。

 

俺の視線に気付いたエレナは僅かに目を伏せた。

 

 

「申し訳ありません。ですが、どうしても知る必要があったのです。その目で怪獣を直に見た人間は非常に少ない。不快な御気分にさせてしまった事は謝罪します」

 

 

いや………構わない。

で?具体的に俺に何を求めてるんだ?

 

「怪獣を目撃し、その一端に触れた貴方に協力して貰いたいのです。ヘドラは始まりに過ぎない。怪獣は………一つや二つだけじゃない。元々この世界は彼等の物だった。彼等は世界中にいる。問題は、いつ奪い返されるかです。これを見て下さい」

 

 

 

エレナは、そう言ってモニターを起動させる。

画面が表示され、そこには何かの壁画のようなものが映しだされていた。

 

 

これは………!

 

 

 

エレナとセリザワの方を振り向くと、二人は真剣な表情で画面を見ていた。

 

 

 

 

 

画面には、剣山のようにそびえ立つ王冠のような背鰭を背負った生物が描かれている壁画が映しだされている。

 

画面が切り替わり、今度は翼竜のような絵が描かれた壁画が、そして更に大きな蝶………いや蛾か?が描かれた壁画が映る。

だが、それらを上回る俺には決して無視出来ない画像が映し出された。

 

 

それは、三つ首のドラゴンのような姿が描かれた壁画だった。

 

 

まさか………あの時のアレなのか⁉︎

 

 

 

………いや、そんな筈はない。

アレは確かに三つ首だったが、胴体は無かった。

何かの間違いだろう。

 

そして、最後の画面が映し出される。

 

そこには、先程の背鰭を背負った生物と三つ首が争う様を描いた壁画が表示されていた。

 

 

「これらの壁画は皆『遺跡』で発掘されました。『遺跡』に残された僅かな文献から、彼等の個体名も分かっています」

 

 

「翼竜の名は『ラドン』。蝶…若しくは蛾に見える生物は『モスラ』。三つ首の生物の名については名称を記した文献が見つからなかったので、便宜上我々は『モンスター・ゼロ』と呼称しています。そして………この背鰭を背負った生物の名は………」

 

 

エレナが途中で言葉を切り、セリザワを見る。

彼女の言葉に続けるように、セリザワは唯一言ハッキリと言った。

 

 

 

 

 

 

「ゴジラ」

 

 

 

 

 

 

「かつて、ペルム紀と呼ばれていた古生代時代に地球の生態系の頂点に君臨していた、この地球という星に存在する」

 

 

 

 

 

 

 

「『怪獣の王』です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何処かで、咆哮が聞こえた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

この地球という星の、真の霊長たる『王』の声が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




まだもう少し続きます。
御容赦を………!

おっぱい万歳!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

終わりの始まり

ついにoperatio detritus完結。



「ったくよぉ、アホみたいな仕事だったな今日の任務は」

 

B-29地区郊外を走る黒色のバンの中で、木原数式はつまらなさそうに溜息を吐いた。

彼の手には手のひら大程のカプセルが握られている。

 

「ククッ………!にしても笑える話だ。シュパーゲルの馬鹿はヘドラとやらを使って糞くだらねぇ計画考えてやがったようだが、これで御破算って訳だ」

 

そう言って木原は視線を窓の外に向ける。

その先には、キノコ雲のような爆煙を上げているB-29地区の中心部があった。

 

「軍の連中も遊びたがりだよなあ。オキシジェン・デストロイヤーなんざ、俺が暇つぶしと冗談を掛け混ぜて偶然作り上げた玩具だってのに」

 

やっぱ新兵器ってのに御偉方は惹かれるんだろうな、と呟きながら手に持っているカプセルを弄ぶ。

 

「………あの、木原さん」

「あん?何だよ、死に損ないの捨て駒野郎」

 

運転手の男の問いかけに不遜極まりない言葉を投げかける木原。

それに構うことなく、運転手は木原に気になっている事を聞いた。

 

「その…、カプセルは一体何なのですか?」

「あ?別にお前みたいな雑魚が知る必要はねーもんだよ………と言いたい所だが、暇つぶしがてら教えてやるよ」

 

 

そう言って木原はカプセルをクルクルと回す。

 

 

「このカプセルにはな、一言で言っちまえば新しい可能性って奴だ。今までの生物の既存の常識って奴を塗り替える程のな。お前らが交戦したヘドラの分離体がいただろ?このカプセルにはな、あの化け物どもを化け物たらしめていたモノが入ってんのさ。そもそもだ。どう考えても不自然だろ?B-29地区で見つかった最初のヘドラは汚染物質を食うだけで肉食性は確認されなかった。勿論、性質も穏やかで、他の生物を襲うなんて有り得ねー。だが今じゃ、あの有り様だった。何故だと思う?」

 

ここまで聞けば運転手も何となく察してしまう。

穏やかな性質で食性も今とは異なっていたヘドラが何故あれ程変わり果ててしまったのか。

 

「ま、まさか………」

 

「ああ。シュパーゲルの野郎はな、ヘドラにこいつを移植したんだ。それが真相だよ。………移植したのは何だと思う?そう、このカプセルの中には『ある存在の細胞』が詰まってる。つまり、こいつが元凶さ」

 

「俺はこの細胞をこう呼んでいる。『オルガナイザーG1』ってな。略して『G細胞』だ。こいつはな、他者の支配を決して受け入れない。G細胞を取り込んだ生物は例外なく、細胞を自身のモノにするどころか、逆に細胞に『喰われる』………ヘドラがそうであったようにな」

 

笑みを浮かべながら、楽しげに話す木原。

 

「だが、俺ならば、木原である俺ならG細胞すら制御してみせる。軍の一部の御偉方はオガスにご執心の用だが、俺から言わせりゃ人間の力じゃ電子の海ではAIにゃ逆立ちしたって勝てねーし、制御も無理だ。なら残された手段は一つ。俺たち人類自身が生物的に進化するしかない。人間としての知性と在り方を維持したまま、E.L.I.Dや人形を上回る力を手に入れる。そして、このG細胞には、その力がある。なら、やるべき事は決まってる。そうだろ?」

 

木原の問いに運転手はそれ以上口を開く事はなく、黙って運転を続けた。

これ以上は踏み込むべきではない。

運転手は本能でそう悟ったからだった。

 

 

「んだよ、ダンマリかよ。つまんねー奴だよなお前はよ。まあいい。さっさと帰って実験準備だ。丁度良いモルモットが手に入ったしな。ククッ………!」

 

 

そうして、彼等を乗せた車は闇夜の中へと消えていく。

 

 

 

 

 

その頃、鉄血司令部では………

 

 

 

「随分とこっぴどくやられたみたいですわね、アルケミストにウロボロス。B-29地区で起こっていた事象の真相を得るどころか、グリフィンの鉄屑や人間に遅れをとるだなんて………ご主人様も失望していますわ。どう弁明するおつもりで?」

 

 

冷ややかな目で2人を見つめるエージェント。

絶対零度というべき視線を向けられたアルケミストは特に表情を変えることもなく、黙ってこちらを見つめている。

対するウロボロスは、人間に一方的にやられた事が余程腹に据えかねているのか、ワナワナと腕を震わせていた。

 

「確かに、私があの人間に遅れをとったのは事実だ!だが、次こそは必ずあの人間を肉片残らず始末してやる!アルケミスト、お主も何とか言ったらどうだ!」

 

ウロボロスがアルケミストに声を掛けるが、何故かアルケミストは言葉一つ発しようとしない。

 

「おい、アルケミスト!聞いておるのか⁉︎」

 

返答が無い事に苛立ったウロボロスがアルケミストの身体を揺さぶる。

 

すると、アルケミストはどういう訳か床へと倒れてしまった。

 

 

 

 

 

 

「ああ、その娘なら残念だけど後10時間くらいは目が覚めないよ?僕がそういう風に設定しておいたからねぇ?」

 

 

 

 

 

 

突然、聞こえた男の声に咄嗟に戦闘態勢を取るウロボロスとエージェント。

 

 

 

声と共に何処から現れたのだろうか、黒いコートを着た青年と茶鼠色の髪をした少女が、その場に佇んでいた。

 

 

「なっ………!一体何処から!」

 

 

ウロボロスが驚く。

それに対して、青年はヒラヒラと手を振りながら笑っていた。

 

「なーに、ちょっとした科学の力って奴さ。こうして会うのは初めてだねぇ、お嬢さん達。しっかし、こんな簡単に侵入出来てしまうなんて鉄血も大したことないね、アッハッハ!」

 

 

何が面白いのか、ゲラゲラと笑う青年。

次の瞬間、ギィンッ!という鈍い発泡音が部屋の中に響き渡った。

 

発泡した主は、エージェント。

捲り上げられたスカートの中には、無骨な黒光りする複数の銃身が見えている。

 

「銃弾を手で逸らしたッ………⁉︎」

 

「やれやれ、乱暴なお嬢さんだ。スカートの中に、そんな物騒なモノを仕込むなんて、君はとんだ変態だな!」

 

事も投げに手の平を振る青年。

 

「そーら、お返しだ!」

 

そう言うと同時に青年の姿が消え、次の瞬間には人形の彼女達でも認識できない速度でエージェントに接近し、強烈な掌底を放った。

 

 

「グッ………!?ま、さか。貴方も戦術人形だと言うのですか!?」

 

壁に吹き飛ばされたエージェントは痛みに顔を顰めながらも問いかける。

 

 

「フフーフ、ざ~んねん!生憎、僕は真っ当な正真正銘の人間さ。まあ、正確に言うとこの星の人間じゃないんだけどね」

 

 

ヘラヘラと、憎たらしいほどの笑みを浮かべて自らを人間だと宣う青年の態度にエージェントは珍しく苛立ちを覚えた。

 

 

「チィッ!離れていろ、エージェント!私がやる!」

 

ウロボロスがそう言うや否や、彼女に装着されていた兵装『スティンガー・バースト』が展開される。

 

その時だった。

 

 

 

 

 

「まあまあ、落ち着きなって。貴方の相手はあたいだよ?」

 

「なッ!?貴様はーーーー!?」

 

 

 

 

茶鼠色の髪の少女の手が、ウロボロスの顔面を掴み床に叩き伏せた。

 

 

 

「やれやれ、君はホントに好戦的だねぇユー?大事なのは一にも二にも、対話だよ?暴力に頼ることなく話し合いで解決するのが大切だっていつも言ってるじゃないか」

 

「そういう統制官も手を上げてるじゃない。あたいだけが暴力を振るったみたいな言い方しないでよ」

 

髪をかき上げながら統制官と呼ばれた青年は笑い、ユーと呼ばれた茶鼠色の髪の少女は若干不機嫌そうに言い返す。

 

「拗ねないでくれよ。後でジャンボチョコクリームパフェを奢ってあげるからさ」

 

「ホントに!?約束だよ、統制官………………ってあれ?」

 

 

統制官の言葉に目を輝かせたユーは、違和感に気付く。

それもその筈、一瞬の隙を突いたエージェントの放った銃弾が彼女の右腕を奪い去ったからだ。

 

 

「油断大敵………………ですわね」

 

 

ユーの右腕は千切れ飛び、切断された肩口からは配線や金属が飛び出していた。

 

「痛いなあ。アハ、フフフ………!」

 

右腕が千切れたにも関わらず、不敵な笑みを浮かべ笑い続けるユー。

すると、驚くべき事に切断された肩口から銀色に光る液体のような何かが現れるとビデオの逆再生のように腕が瞬く間に修復されていく。

余りに常軌を逸脱した光景に、流石のエージェントも言葉を失う。

同じくウロボロスも驚愕に目を見開いていた。

 

「バカな!貴様は一体………⁉︎」

 

「そんな化け物を見るような目で見ないでよ。あたいも好きでやってる訳じゃないんだからさ。では改めて、自己紹介させて貰おうかな。あたいはユー。統制官の副官を務めている戦術人形。一応、UMP40っていう個体名があるみたいなんだけど、統制官に拾われる前の記憶が所々欠けていてよく分かってないんだよね〜」

 

 

 

 

そう言ってユーこと、UMP40は薄く笑う。

 

 

 

「さて、修復できたとは言え腕を吹き飛ばしてくれた御礼にあたいの力………ナノメタルの真価を見せてあげる」

 

 

 

ガシャガシャガシャッ!という音と共にUMP40の右腕が歪に変形し、怪しい輝きを放つ。

 

 

 

「変形完了〜っと♪そんじゃ、引力光線destroyed・sander発…」

「はいはい、ストップ。流石にそれはオーバーキルだよ、ユー?」

「統制官〜⁉︎もう、折角いい所だったのに!」

「その兵装だと、鉄血の彼女達が塵になってしまうじゃないか。ここに来た目的を忘れちゃったのかい?」

 

ガシッと右腕を統制官に掴まれたUMP40が頬を膨らませて頂き抗議するが、統制官は諭すようにUMP40を窘めた。

 

 

「んじゃ、本題に入ろうかな。今回僕達がここに来た理由はね、同盟を結ぶ為なんだよ。君達鉄血とね」

 

 

いきなり何を言い出すんだ、と言いたげにエージェントが困惑した表情で統制官を見る。

その反応を面白そうに眺めた統制官は、更なる爆弾を投下した。

 

 

 

 

 

「同盟を結んだ暁には、君達のボス…エリザに搭載されているオガスの原型となった『遺跡』のメインAI。それを『遺跡』から回収する作業を手伝って欲しい。勿論タダでとは言わないよ?見返りとして、君達のボスが欲している『M4A1』という戦術人形を連れて来てあげるからさ」

 

 

 

 

 

統制官の突然の同盟要請に、エージェントはどのように返答すべきか考えた。

いきなり現れた挙句、先に手を出したのは此方側といえども自身を含めたハイエンドモデル2人を圧倒した謎の男女。

しかし、敵対ではなく同盟を結びたいなどと言い出した男の真意が読めない。

『遺跡』のAIをどうこうしたい云々はともかくとして、彼等は余りにも不気味過ぎた。

 

さて、どうすべきか?とエージェントが悩んでいると、部屋の扉が開き、見た目が少女のような人形が入ってきた。

彼女こそ、鉄血のボス『エルダーブレイン』ことエリザである。

 

「いいよ、同盟。M4を連れてきてくれるなら結んであげるわ。それに貴方達面白そうだし。いいよね、エージェント?」

「ご、ご主人様⁉︎本当に宜しいのですか?」

「あら、エージェントは不満なの?別にいいじゃない、私もこの2人に興味が湧いたわ」

「………分かりました。ご主人様がそう仰るのであれば、私に異論はありません。ですが、くれぐれもお気を付け下さい」

 

 

 

 

「………うまくいったみたいだね、統制官?」

「いやあ、良かった良かった。まさか鉄血のボスがロリっ娘とは思わなかったけどねぇ。彼女を作った科学者はもしかしてロリコンだったのかな?引くわー、マジ引くわー」

 

 

もしこの場にリコリスがいたら殴られそうな事を言いながら、統制官はニヤリと笑ってみせた。

 

 

 

「あ、そうだわ。貴方達のことは何て呼べばいいのかしら?」

 

「ふむ、確かにそれは大事な事だね。ユーにはUMP40っていう名前があるけど、そうだな………取り敢えず僕の事は………」

 

 

 

 

 

 

 

「『X星人』………そう呼んでくれていいよ」

 

 

 

 

 

 

今ここに、鉄血と『X星人』の同盟が誕生した。

 

この流れが何を引き起こしていくのか、それは誰にも分からない。

 

 

 

 

 

 

 

 

〜世界の片隅における出来事〜

 

 

 

B-29地区から遥かに離れた崩壊液で汚染された海を、事も投げに進む巨体がいた。

 

 

赤と黄色が入り混じった大きな瞳。

泥のよいな物資で構成された体躯。

 

 

ヘドラだった。

 

 

B-29地区でオキシジェン・デストロイヤーを間近でくらったヘドラであったが、しかし絶命する事はなく、地下で身体を修復し気付かれないよう地中を進んで海へと脱出する事に成功していたのだ。

 

 

新天地を目指し、やがて辿り着いた島に上陸したヘドラは何かの気配を感じて振り返り、思わず固まった。

 

 

 

ヘドラはソレを知っている。

知識でなく、本能として。

 

 

ソレは『王』だった。

秩序に反するものを、焼き尽くす破壊の化身。

彼方より現れし、黙示録の獣。

 

 

ヘドラを怒りの形相で見下ろす『王』が咆哮を上げた。

 

 

ヘドラの身体を冷たい何かが走る。

 

それが所謂、恐怖という感情であるという事をヘドラは知らなかった。

しかし、恐怖の中にありながらも生存本能が勝ったのかヘドラは咄嗟に泥の塊を投げつけた。

投げつけた泥には崩壊液や放射性物資が多量に含まれており、並みの生物なら数分と掛からずに死に至る。

 

その筈だった。

 

 

泥塊を直接投げつけられたにも関わらず、『王』には傷一つつかなかった。

 

ならば、とヘドラは身体を群体化させ『王』の身体を取り込もうと身体に纏わり付く。

 

 

複数のヘドラに纏わり付かれた『王』は鬱陶しそうに咆哮する。

纏わり付くヘドラを引き剥がそうと暴れるが、ヘドラも必死で食らいついて離さない。

 

暫くすると、『王』の動きが止まった。

 

諦めたのか?と思うヘドラは再び『王』を取り込もうとして身体を覆っていく。

 

その時だった。

 

タービンが回るような重厚な音が響いた。

 

ヘドラは、その時になって漸く『王』の背中が青白く光っている事に気付いた。

 

 

次の瞬間、眩い閃光が『王』の全身から発せられ、ヘドラは己の身に何が起こったのか理解出来ぬまま、細胞一つ残すことなく消し飛んだ。

 

 

ヘドラを葬りさった『王』ーーーーゴジラは咆哮を上げると、海の中へと消えていく。

 

 

 

後には、何事も無かったかのような静けさだけが残されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

『operation detritus』

 

 

 

 

 

 

 

 

次章 『変態!オッパイ!野望都市!』

 

 

 

 

に続く。

 

 

 




エルダーブレインの口調が分からーん!
もう怒ったぞ、次の章でエルダーブレインを触手やら粘液やらでベチョベチョにしてやる!


※嘘です、そんな事はしません。

因みに次回からはオッパイ祭りです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ドキッ☆変態!おっぱい⁉︎野望都市‼︎〜ポロリもあるよ☆〜 編
指揮官「エロスは世界を救う」AR-15「ハア………」


皆様、台風10号には気をつけて下さい。
外出はなるべく控えるようにして、おっぱいおっぱいおっぱいと唱えましょう。
さすれば台風は未知のおっぱいパワーで撃退できるかもしれない。


それでは、新章です。

ザ・レッツ・おっぱい‼︎


窓から燦々と降り注ぐ太陽の光で目が覚める。

時計を見ると時刻はまだ午前5時。

因みに今日は重要な仕事がある。

それは何かって?

 

例のB-29地区における一件が一応の終息を迎えた後、俺は『MONARCH』の連中と共に、グリフィン上層部と正規軍上層部への報告を行った。

これまで影に隠れていた『MONARCH』という組織に対しての政府・軍・グリフィン上層部の反応は様々だった。

そして、下手をすれば鉄血やELIDを上回る脅威になりかねないヘドラを含めた『怪獣』への具体的な対抗策を練る必要性に迫られた各上層部は、唯一『怪獣』に対するデータを所持している『MONARCH』に協力を要請。

かくして説明会が政府直轄の都市で開かれる事になったのだが、その説明会に何故か俺も出席するようにクルーガーから命令された。

B-29地区事件の当事者の1人だからという理由らしいが、厄介な事この上ない。

 

まあ、ボヤいていても仕方ない。

取り敢えず朝飯を食いに行くか。

 

そう思いながら、寝室から執務室へと繋がるドアを開ける。

 

すると………。

 

 

 

 

『―――HEY YO!!ボーイ&ガールズ共!!準備はいいかーい!? 』

 

 

「「「「―――YEAHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHH!!」」」」

 

 

「……………」

 

 

『―――まずは腕の運動だ!リズムに合わせて上下左右!ELID共を絡め取る勢いで振りまくれえ!YEAH!! 』

 

 

「「「「YEAHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHH!!」」」」

 

 

 

『―――OKだぜファッ○ンガイズ!!続いて足の屈伸行くぜぇぁ!! コイツが終わった暁にはスラリと伸びた二脚がお前らを迎え入れてくれる事間違い無しだZE!!そら3、2、1―――!! 』

 

 

 

 

…………何だこれ。

まず視界に入ったのは執務室にあるテレビ画面。

確か最近流行りの筋トレ番組だったか?

そしてその画面の前で身体に実ったおっぱいをせわしなく動かすM16と無い胸を動かすUMP45と触手。

 

 

 

…………待て待て待て待て待てぇぇぇーーーーッ⁉︎

 

 

 

朝っぱらから何をしてんだお前達はああああーーーーッ⁉︎

 

そして触手さん⁉︎アンタ確かB-29地区にいた筈だよな⁉︎

何当たり前みたいに筋トレしてんだよ!

いや、そもそも触手さんは何処を鍛えるつもりなんだ⁉︎

 

 

「お!今日は早く起きてきたな、指揮官。冷蔵庫の牛乳貰うぞ。とは言っても、既に二本飲んでるけどな!ハッハッハ!」

 

ハッハッハ!じゃねぇよ!

マジで何してんの?ねぇ、マジで朝から人の執務室で何してんの?

 

「おはようございます、しきかーん?何をそんなに騒いでるの?」

 

いや、45さんよ。

お前も何普通に筋トレしてんの?

そもそも人形って筋トレする必要性あるのか?

って、違う違う!

M16と45はいいとして、触手さんはどうやってここに来たんだ?

 

すると、触手さんが俺の疑問に答えるかのように数本の触手を器用に使い、マーカーでホワイトボードに何かを書いて行く。

 

 

 

 

『家が破壊されたから今日からこの部屋で住む事にした。後、おっぱいは正義。以上』

 

 

 

 

そうだな、おっぱいは正義だ。それは同意する。

家…というのは多分触手さんがいた例の処理場の事だろう。

確かに彼処は軍のミサイルで吹っ飛ばされた筈だ。

よく生き残ってたな。

 

『何か凄い爆発に巻き込まれたけど、何だかんだで生き残りました。ってな訳で今日からお世話になります(笑)』

 

 

もう突っ込む気すら起きねぇ………。

とは言え、追い出す訳にもいかないしな。

仕方ない。

部屋を荒らさないなら居てもいいぞ。

 

『感謝。私は少し光合成をしてくる』

 

俺がそう言うと、触手さんは喜びながら光合成をすると告げ屋上へ向かっていった。

………そういや、416が偵察任務からヘリで帰ってくる筈だったな。

という事は触手さんと鉢合わせる訳だが、まあ仕方あるまい。

精々べちょべちょにされてくれ。

 

やっべ、想像するとかなりエロいわ。

 

 

 

 

「そう言えば、指揮官。今日から政府直轄都市に出張するんだろう?」

 

「正直行きたくはないがな。まあ事情が事情だ。文句を言う訳にもいかねぇ。M16はB-29の一件を知ってるのか?」

 

「一応データだけはな。私がメンテを受けてる途中にあんな出来事があったと知った時は驚いたさ。随分大変な目にあったらしいじゃないか」

 

「まあな。だが何とか無事で帰ってこられた。大事なのはそこだ。それとおっぱいだ」

 

「ブレない奴だな、指揮官は」

 

 

俺がそう言うとM16はフフ、と小さく笑う。

そうして暫く笑っていたM16は、あ!と何かを思い出したかのように手の平を拳でポンと叩くと、さり気なく爆弾を投下した。

 

 

 

「言うのを忘れてた。因みに、今回の指揮官の出張には私を含めたAR小隊も同行するから宜しくな」

 

 

 

は?

マジで?

護衛なら、わーちゃんと春田さんがいるから大丈夫なんだがな。

もしかしてクルーガーの髭親父の命令か?

 

「察しがいいな。クルーガーさんからの直々の指令だよ。指揮官の身に危険が及ぶ可能性が高いからだとさ」

 

危険………ねぇ。

まあ、軍の闇の一部分に触れたってのもあるからなあ。

にしてもクルーガーの奴、そこまで俺の身を案じてくれていたなんてな。

今度しっかり礼を言っておかないと。

 

 

「………というのは建前で、前に立て替えた飲み代をまだ返して貰ってないので死なれちゃ困るからだとさ。ハッハッハ!」

 

 

 

訂正。

今度あの髭親父に会ったらアイツの髭を爆竹で燃やしてやろう。

しかしな、AR小隊も基地に居なくなるとしたら基地の防備に支障が出そうだ。

メイド長やB-29地区に出撃していた他部隊は全員休暇中だし、どうしたもんかね。

404小隊だけに任せる訳にもいかんしなあ。

 

「大丈夫大丈夫。指揮官が留守の間は404小隊が責任を持って基地の警備をするから安心して行ってくれていいですよ、しきかーん」

 

うーむ、45がそこまで言うなら大丈夫………なのか?

まあ確かに最近は鉄血の活動も沈静化してるしな。

それなら任せておくか。

 

「じゃ、そういう事で私はもう一度宿舎で寝てくるわ。今日は非番だし」

 

45はそう言うと、ヒラヒラと手を振って部屋から出て行った。

 

「そうだ、もう一つ忘れてた事があった。じつはな、指揮官が不在の間にAR小隊に新メンバーが入ったんだ。RO635っていう人形なんだが、今日指揮官に挨拶しに行くって言ってたぞ」

 

おい、初耳だぞ。

仕方ない、ならカリーナに基地の案内をするよう頼んでおくか。

 

「指揮官、今日カリーナさんは代休だ。残念ながらな」

 

ああー、………そうだった。

B-29事件の作戦報告書やらなんやらを3日くらい徹夜で作って疲れきってたから、今日は休みにしてやったのを忘れていた。

死人みたいな目で「指揮官さま…休みを、休みをください………!」って言ってくる姿はちょっとしたホラーだったな。

しかしそうなると、別の誰かにRO635の案内を任せる必要が出てくるが………。

 

「それなら問題ない。AR-15がROの案内をしてくれるからな。もうすぐ来るんじゃないか?」

 

だったら安心だな。

 

 

 

そんじゃ、俺も着替えて待つとしますか。

 

 

 

 

 

 

〜その頃、AR-15は〜

 

ハア、と最早何度目になるのか分からない溜息を吐く。

16LABで定期メンテを受けた私は、基地に帰隊した後私を含めたAR小隊不在の間に起きた『B-29事件』の顛末をへリアンさんから聞いた。

何でも正規軍が絡む危険な任務だったらしい。

不在のAR小隊に代わって404小隊が指揮官と出撃したらしいが、まあ指揮官は相変わらずだったらしい。

バカな事をしてはUMP45やHK416に締められていた、とUMP9が面白そうに言っていた。

まさか私達が居ない間にそんな大事が起こっていたなんてね………………。

 

 

 

それはそうと、こっちもこっちで色々と忙しかった。

AR小隊に新たに一人の人形が加入したのだ。

 

『RO635』というSMGの戦術人形だ。

AR小隊に来る前は『パレット小隊』という部隊で隊長を務めていたと聞く。

個性的な仲間に振り回されていたらしい。

何だか共感できそうな部分があるわね………………。

で、新しい仲間を連れて基地に帰った私が初めてする仕事が他でもないRO635の案内だ。

本来はカリーナさんがする筈だったらしいが、徹夜に続く徹夜作業でメンタルが変になったらしいので代わりに私がすることとなった。

聞くところによると「フフフ…………休みが……………私の休みが……えへへ」とブツブツ独り言を呟いて基地を歩いていたそうだ。

………そこまでいくと最早ホラーね。

 

 

 

「あの………AR-15?」

 

「どうしたの、RO?」

 

ROが何かを聞きたそうに私の顔を見る。

 

「この基地の指揮官は、どういった方なのでしょうか?」

 

「指揮官の事?そうね………」

 

これは困った。

流石に「変態です」というのは少しだけ憚られるし、かといって事実と違う事を言うわけにもいかない。

まさかこんな事で悩むことになるとは思わなかったわ。

………そもそも指揮官が変態でなければこんなに悩む必要はないのだけれども。

 

 

 

 

 

 

 

「女性の胸が三度の食事より好きで、女性のおっぱいが何よりも好物で、胸のない女性をからかうのが大好きな、疑う余地もない正真正銘の変態。それが指揮官よ」

 

 

 

 

 

 

………………ハッ!?

しまった、考えすぎてつい本当の事を言ってしまった!

痛いほどの沈黙が広がる。

 

 

「え、ええ………へ、変態………ですか?」

 

困惑を隠せないといった感じでROが言う。

 

「そ、そうね。だから貴方も気を付けた方がいいわよ。その………大きいから」

 

「へ………?………ッ!!」

 

私がそう言うと、ROは顔を真っ赤にしてその身体に実っているたわわなソレを恥ずかしそうに両手で隠す。

………でも確かにROの胸は大きいのよね。

よく考えてみれば私以外のAR小隊は全員胸が総じて大きい。

 

 

………………………………。

 

 

クソっ!!

私が何をしたっていうんだ!!

どうして私だけ平坦な胸なんだ!!

16LABの開発者に貧乳好きでもいたのか!?

 

 

「あ、あのAR-15?別に胸が大きくても良いことはあまりないですよ?伏せて射撃する時とか結構つっかえて邪魔になりますし、それなりに重いので肩が凝りやすくなったりしますから。だから気を落とす必要は………」

 

 

「それは私に対しての嫌味かコラアアアアアアアアアアアッ!?」

 

 

 

大きなおっぱいなんて!

大きなおっぱいなんて!!

 

 

 

 

消えてしまえ------ッ!!

 

 

 

 

 

その日。

基地で震度3程度の地震が計測された。

 

 

 

 

 

 

 

~数十分後~

 

 

ふう、やっと準備ができたぜ。

何せ今日から一緒に勤務するわけだから、もてなしは大事だ。

万全の体制を整え、死角は万に一つもない。

 

「指揮官?AR-15です。入っても宜しいですか?」

 

おう、入ってくれ。

 

「では、失礼します………っRO、ちょっとだけ外で待っててください」

 

僅かにドアを開けたAR-15が俺を見るなりギョッとした顔をすると、ROを制止し物凄い勢いで部屋に入ってきた。

どうしたんだ、一体?

 

「どうしたじゃないわよ、このドアホ!ホットドッグの着ぐるみ着て出迎えるとか、どういう神経してんだよテメェは!?ありえないでしょう、このドアホッ!!」

 

「えぇー………だってこれくらいフランクな指揮官の方が親しみやすくていいじゃん。インパクトあるし」

 

「とにかく!着替えてください今すぐに!!M16も床で腹を抱えて笑ってないで手伝って!!」

 

AR-15のキャラが若干壊れているな。

うーむ、確か前にもこんな事があったような。

デジャブって奴か?

 

「全く!指揮官のアホさ加減には呆れるわね………!」

 

「アホって言うな桃色ペチャパイ娘!アホって言った方がアホなんですぅーーーー!」

 

 「そういう所がアホって言ってんのよ、このドアホ------ッ!!」

 

「このハゲーーーーーーッ‼︎」

 

「違うだろーーーーーーッ‼︎」

 

やれやれ、ちょっとした冗談だってのが分からないのかね。

そんなだからペタンコな胸なんだよ!!

 

「ペタンコ言うな!私だってこの前のメンテで少し成長したんです!…………2mmくらい」

 

「wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」

 

テラワロス。

そんな程度で成長とか片腹痛いわ!!

草が生えすぎて森になっちまったじゃねぇか。

 

「そういう指揮官こそ、相も変わらず変態ですね。だからいつまでたっても童貞のヘタレ野郎なんですよ!」

 

 

「へっ、俺が童貞ならお前はエアーズロックだぜ。分かるか、桃色一枚岩娘さんよ?」

 

 

 

「ああ………………………?」

 

「やるか………………………?」

 

 

 

 

「「かかってこいやあああああああああああああ!!」」

 

 

 

 

 

~それから五分後~

 

 

 

「ふぅ…………。では改めて、私の横にいるのがAR小隊の新メンバーの……………」

 

「初めまして、指揮官。コルト9mmサブマシンガン・RO635です。よろしくお願いします」

 

 

ふむ、これまた個性的な見た目と属性モリモリだな。

おさげの髪型、オッドアイ、そしておっぱい…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

最ッ高だな!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

いやあ、今日は実に素晴らしい日だ。

これも日ごろの行いが良いからに違いない。

 

 

 

「あ、あの………指揮官?どうかなされましたか?」

 

 

いや何でもない。

どれくらいの期間になるか分からないが、これからよろしく頼む。

………それにしても、おっぱいデカイなこの子。

 

 

「指揮官?何処見てるの?」

 

ニコニコと暗い笑みを浮かべながらAR-15が手をコキコキと鳴らす。

最近、圧が格段に増えたよなお前。

すると、急にRO635が俺を指差し、顔を真っ赤に染め上げた。

 

「は、破廉恥です!やはりAR-15の言った通り変態という話に間違いはなかったようですね………!」

 

おおおおい、コルトさあああん!?

お前俺の事どんな風に伝えたの!?

 

「ど、どうって………。唯の変態って言っただけよ」

 

どう考えてもダメな伝え方だろ!

いや、まあ確かに俺は変態だが!変態だけどな!!

それと、落ち着くんだローちゃん。

 

「ロ、ローちゃん!?そういう異性間での特殊な呼び名は男女の親密な………そ、その肌を重ねあう仲になってから呼び合う物でしょう!?」

 

「おう、とりあえずローちゃんの知識がすごく偏ってるってのはよく分かった」

 

誰からその偏った知識を吹き込まれたのか気になるが、敢えて聞かないでおこう。

俺はほんの少しくらいなら空気が読めるんだ。

少しだけど。

 

 

「まさか基地の長たる指揮官がこんな破廉恥極まる変態だったなんて………!」

 

 

破廉恥破廉恥連呼するな!

この超生真面目学級委員長め!

それに俺はまだ何もしてないから!

いや、ちょっと胸は見たけど。

ちょっとだけ、おっぱい見たけど。

 

「とにかく、いったん落ち着こうぜローちゃん。気分を害したというのならそれは俺の落ち度だ、この通り謝罪しよう」

 

そう言って、俺は目にも留まらぬ速さでDO☆GE☆ZAを敢行する。

そーっと視線を気付かれないように上げると、またかと言った風に額を抑えて溜息をつくAR-15と突然の俺の行動にどう反応していいか分からないローちゃんが見えた。

さて、そろそろやめるかと思って顔をあげると、一瞬だけチラッとローちゃんのスカートの中が見える。

 

 

な………ま、さか。

 

 

 

 

「黒………か。やるな、ローちゃん」

 

しかもちょっと可愛らしいフリル付きの下着か。

ふふん、真面目そうな見た目に反してこりゃ中々。

 

「なっ………⁉︎み、見ないで下さい!」

 

あ、ヤベ。

つい本音が出て………。

 

「指揮官?これは流石に見逃せないわね。覚悟はいい?」

 

ま、待て、コルト!

これは、そう!偶々だ!

頼むからその怖い笑顔で俺を見ないでくれ!

後、2人が手に持っている棍棒は何に使う気だ⁉︎

どっから出して来たの⁉︎

 

 

「「指揮官の………!」」

 

 

 

 

 

「「変態ーーーーーーーーーーッ‼︎」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グヘアはああああああああーーーーーーッ⁉︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

 

「いや、まあ出来ない事は無いけどさ。何で?」ーーーーーー鉄血と協力関係にある謎の男・X星人

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

触手「(あのフワフワのおっぱいを揉みたい)」HK416「(何だか悪寒を感じるわね………)」

習慣は大事だ。
私は毎朝起きてめざ◯しテレビを見て、おっぱい!と自室で叫んで仕事に行くようにしてる。

皆も共感できるでしょ?

え………できない?やっぱり?



無機質な如何にも機械的な空間。

一言で言うなら、殺風景ともいうべき此処は鉄血工造の司令部である。

 

その司令部をトテトテと歩く一人の少女がいた。

長い白髪に、褐色寄りの肌。

彼女こそ、鉄血工造の頂点に君臨する最上級AI『エルダーブレイン』こと『エリザ』である。

 

さて、そんな彼女が何をしているかと言うと………。

 

「見つけた。エックス、丁度貴方を探していたの」

 

「おっと、僕に何か用事があるのかい?」

 

廊下を歩いているサングラスを掛けた青年。

『統制官』とも『X星人』とも呼ばれている彼にエリザは声を掛けた。

 

「少し、貴方に頼みたいことがあって」

 

「おや、まさか恋の告白というやつかな?モテる男は辛いね」

 

「………?コイノコクハクというのは、よく分からないけど、私の頼み事は多分それじゃないわ」

 

エリザがよく分からないと言うと、統制官はヤレヤレと肩を竦める。

 

「貴方の持っている科学の力がないと解決できない問題なの。その………絶対に誰にも言わないって約束してくれる?」

 

「うーん、まあ内容にもよるけど。ま、取り敢えず言ってごらんよ。僕の力がないと出来ない事だなんて、相当な何かだろうからね」

 

統制官がそう言うと、エリザは顔を近づけ小声で告げる。

 

 

 

…………………………………………………………。

 

 

 

 

長い沈黙が流れ、漸く統制官が口を開く。

その顔には、僅かに疑問と動揺の感情が浮かんでいた。

 

 

 

「いや、まあ出来ない事は無いけどさ。何で?」

 

 

 

「それは……「あら?ご主人様とエックスじゃない。こんな所で何をしているのかしら?」ドリーマーとデストロイヤー………?どうして此処に?」

 

カツカツという足音を響かせて、廊下の奥から2人の少女が姿を現した。

鉄血のハイエンドモデル・『ドリーマー』と『デストロイヤー』である。

 

「ふふっ、此処に来たのは偶然よ。デストロイヤーが、何か慌てた様子のご主人様を見かけたって言うものだからね。私は反対したんだけど、デストロイヤーがどうしても気になるから付いて来てと言ってきかなかったの」

 

「ちょ、ちょっと!何さり気なく私の所為にしようとしてるのよ!ドリーマーだって興味あり気だったじゃない!」

 

サラッと自身の所為にされたデストロイヤーがドリーマーの言い分に抗議するものの、ドリーマーは何処吹く風と言わんばかりだ。

 

「ま、そう言う事よ。で、ご主人様は何をしておいでになってたのかしら?」

 

「………ドリーマーが知る必要のない事。気にしなくていいわ」

 

ドリーマーの底の読めない笑顔に、エリザは表情を特に変える事なく言う。

エリザの言葉に、ドリーマーは暫く考える素振りをすると、「ああ、成る程」と呟いてニヤリと笑った。

 

「そう、そう言う事ね?成る程成る程!」

 

「え?今ので分かったの、ドリーマー?」

 

「そりゃあね。デストロイヤー、貴方が以前アーキテクトに相談していた事と同じ事よ。それがご主人様のお考えになっている事だわ」

 

デストロイヤーは過去の自分の発言を思い出す。

そして、思い当たる節があったのか元々白い顔色が更に青白くなっていった。

 

「そ、そんなまさか⁉︎いや、流石にそんな⁉︎」

 

デストロイヤーの動揺振りに、ドリーマーは心底楽しそうに笑う。

 

「そのまさかよ。………ご主人様が今お考えになっている事。それは………」

 

 

スゥ、と息を吸い込みドリーマーは言い放つ。

 

 

 

 

「身長を伸ばしたい。それがご主人様のお考え。違うかしら、ご主人様?」

 

 

 

 

 

 

シン、と場が静まり返る。

やがて沈黙を破るように、エリザがプルプルと身体を小刻みに震わせながら口を開いた。

 

 

「流石ね、ドリーマー。………正解よ。でもどうして分かったの?」

 

「以前、ご主人様がエージェントやアルケミストを見て身長の高さを羨ましがっていた姿をお見かけしたので」

 

「そういう事だったのね。でも、正確には身長を伸ばしたいではなく、『身長を5センチ伸ばしたい』が正解よ」

 

まさかの事実に、デストロイヤーは今度こそ驚愕した。

そして、恐る恐るエリザに問いかける。

 

「で、でもそれなら新しく身体を作れば良かったんじゃ………⁉︎外殻は鉄血の工場でいくらでも製造できるんじやないの………?」

 

「それだと皆にバレてしまうじゃない。私は誰にも知られずに身長を伸ばしたかったの。それに、仮にも鉄血の頂点である私が『身長が小さくて悩んでます!』何て言える訳ないじゃない⁉︎」

 

珍しく僅かに感情的に捲し立てるエリザの剣幕に、デストロイヤーは気圧されるが、それでも最後の疑問を口にした。

 

「じゃ、じゃあ!何故、たった5センチ………⁉︎」

 

 

 

「だって!急に背が伸びたら、不自然でしょうッ⁉︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「如何されましたか、ご主人様?それにドリーマーとデストロイヤーまで。下の階まで声が聞こえていますわよ」

 

何ともいえない微妙な空気が漂う空間を打ち破るように、凛とした声が廊下に響く。

髪を団子状に結い、給仕服を端正に着こなした女性…エージェントが現れる。

 

「エージェント?べ、別に何でもないわ。貴方こそ如何したの?」

 

流石にエリザも、身長を伸ばす交渉をしていた事をエージェントに知られたくないのか、ダラダラと冷や汗を流しつつ必死で話題を逸らそうとする。

 

「…?そうですか。所で、ドリーマー。貴方に少し頼みたい事があるのですが」

 

「へぇ?エージェント様が何を私に頼みたいのかしら?」

 

「明日、人間達の政府直轄都市で軍やグリフィンの幹部を交えた大規模な会合が開かれるという情報を入手しました。そこで、貴方には都市へ潜入し情報を探ってきて貰いたいのです」

 

それを聞いたドリーマーはあからさまに面倒くさそうな顔をする。

 

「どうして私なの?こういうのはイントゥルーダーかスケアクロウが適任でしょう?」

 

「イントゥルーダーは休暇中、スケアクロウは身体のメンテナンス中なので無理ですわ。他の者達も潜入に長けてはいないので、消去法で貴方に頼むしかないのです。それに、これはご主人様の意向でもあります」

 

「ハァァァ………。なら仕方ないわね。あまり本意ではないけど、そこまで言うなら行ってきてあげるわ。私も会合とやらの中身が気になる事だし。用件はそれだけかしら?」

 

「えぇ。それでは私はこれで。ご主人様の部屋の後片付けをしなければならないので失礼しますわ」

 

そう言ってクルリと身を翻して歩いていくエージェント。

しかし、エージェントの口から出た言葉に酷く狼狽した者が一人いた。

 

「ちょ、ちょっと!私の部屋の掃除はしなくていいと言ってるじゃない!」

 

先程よりも冷や汗を流しつつエージェントを制止しようとするエリザ。

その必死な姿にエージェントはハア、と溜め息をつく。

 

「ですが、ご主人様。流石に部屋が散らかり放題というのは如何なものかと。前に、ご主人様の部屋を訪ねてきたジャッジが、扉を開けると同時に飛び出してきたソファやら棚やらに押し潰されていた件をお忘れになった訳ではないでしょう?」

 

うぐッ!と、エリザが言葉に詰まる。

事実であるが故に反論が出来ないのだ。

 

「さあ、ご主人様。丁度良い機会ですから、ご一緒に部屋の掃除をしましょう。いいですね?」

 

「そ、そんな………」

 

「い・い・で・す・ね?」

 

「あっ、ハイ」

 

 

エージェントの有無を言わさない笑みに、エリザは白旗を上げた。

 

その光景を見ていたデストロイヤーは、今日も鉄血は平和だなぁと思ったとか思わなかったとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

〜その頃、指揮官は〜

 

 

「ここに来るのは久し振りだな………」

 

車窓に映る光景を見て、俺は思わず呟いた。

政府が直接管理しているだけあって街は活気に満ち溢れている。

並び立つビル群、道路を行き交う車や歩行者。

全ての始まりである北蘭島事件が起こる前は、世界のどの都市でも見慣れた光景がここにはあった。

 

「わあ!見て見て、AR-15!あれも私達と同じ人形なのかな?」

 

「人形は人形だけれど、アレは軍用の戦術人形ね。装備もスペックも私達とは段違いだわ」

 

同じように窓から外を眺めていたSOPちゃんが、道端を歩く厳つい見た目の軍用人形を指差してはしゃいでいた。

軍用の戦術人形はELIDと戦うのを前提に設計されているから、ああいう見た目になっているのだろう。

因みに正規軍がその気になれば、鉄血など3日で制圧できてしまうとまで言われている。

暫くすると、会議場所らしきビルが視界に入った。

 

「随分と警備の兵士がいるな。政府と軍の上層部が集まるのだから当然といえば当然なんだろうが………」

 

M16の言う通り、至る所に兵士が居るのが見える。

人形に軍用犬、完全武装した兵士達。

厳重に過ぎる警備だな。

今回の会合には余程の大物が来るのだろうか………?

そう思いながら車を降りると、一人の男が此方に近づいてくるのが見えた。

 

「やあ、指揮官。あの時振りだね。B-29地区では世話になった」

 

「シラカミ中佐?アンタも呼ばれていたのか」

 

「その通りだよ。それと、僕はもう軍人じゃない。軍は退職した。今はMONARCHが運営する大学の生物学教授として勤務してる」

 

「奇遇だな。実は俺もおっぱい学の教授なんだ。おっぱいの持つ魅力と生物的可能性を探究する新たな学問………分かった、分かった。コルトさん、冗談だから俺の尻を抓るのは辞めてくれ。肉まで千切れちまう」

 

俺の素晴らしいジョークを理解出来なかったのか、AR-15が良い笑顔で尻を抓ってくる。

中々刺激的な痛みだな。

 

「ハハッ!指揮官、君は相変わらずだな」

 

「まあな。ところで、芹沢博士は?」

 

「博士ならもうすぐ来るだろうさ。先に会議場に入っておこう」

 

そうして、俺はシラカミ中佐もといシラカミ教授と会議場へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

会議場は当然というべきかピリピリとした雰囲気に包まれていた。

因みに、AR小隊は警備要員として会議場の外で待機して貰っている。

 

「なあ、教授。警備がかなり厳重みたいだが、誰かVIPでもくるのか?」

 

「うん?指揮官は知らないのか?今日はメーデ・ロクサットが来るんだ。だからだよ」

 

メーデ・ロクサット。

最近台頭してきて居る新世代の思想・ロクサット主義を唱えた提唱者にして政治家。

彼の掲げるロクサット主義は中流層・下流層の国民から多大な支持を得て、今ではこの国や他国すらも動かす大きな力となりつつある。

 

ゆくゆくは他国を飲み込んで旧ソ連を凌駕する程の大国に成長し、ロクサット連合なんてものが誕生するのではないか?とまで言われているほど、その影響力は大きい。

 

 

成る程、ロクサット程の大物が来るのなら、これだけの厳重な警備も頷ける。

ロクサット主義は万民に支持されている訳ではない。

軍上層部にも否定的な軍人達が居ると噂されているし、富裕層からの反発も大きいのだ。

実際、ロクサット自身も何度かテロ行為にあっている。

 

「おっと、噂をすれば何とやらだ」

 

会議場の扉が開き、スーツを着た初老の男が堂々とした足取りで入って来る。

 

 

メーデ・ロクサット本人だ。

 

 

その後ろからは、取り巻きの政治家達と軍の高官がついて来ている。

更に続くようにしてMONARCHの芹沢猪四郎博士とエレナ・コールマン博士。

我等がグリフィン&クルーガーの社長であるベレゾヴィッチ・クルーガーと上級代行官のヘリアントスが入って来た。

 

 

 

 

 

 

そして。

 

 

 

 

 

 

 

 

錚々たる面子が揃い踏み、ついに第一回怪獣対策会議が開幕した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

議論は矢張りというべきか、白熱した様相を呈していた。

政府や軍上層部の大半の者達は、ELIDに匹敵若しくは凌駕する脅威である怪獣を抹殺すべしという意見で纏まっていた。何より、MONARCHという怪獣に関するデータを一手に握り、私設の軍事力を持つ組織に対する不信感は相当なものであった。

 

「我々、MONARCHとしましては『怪獣』を人類の敵として見るのではなく共存する事こそ最重要であると考えております。ELIDとは違って彼等は理性のない怪物ではありません。また、明確に人類に敵対する意思を持っている訳ではない怪獣を一方的に排除するのは得策とは言えません」

 

「何を言うか!貴様達MONARCHはあんな化け物を見て脅威だと思わないのか⁉︎B-29地区の『ヘドラ』を見れば分かるように怪獣は間違いなく人類の敵だ!」

 

コールマン博士の発言が気に入らなかったのか、軍の高官の一人がダン!と机を叩いて食って掛かった。

それに対してコールマン博士も負けじと言い返す。

 

「お言葉ですが、ヘドラは正確には純粋な怪獣ではなく、人間の手で強制的に進化・凶暴化させられた微生物の集合体。謂わば人工怪獣です。ヘドラだけで全ての怪獣達がそうであると決めつけるのは性急すぎます!」

 

「ふん!ならば、B-29事件の被害者遺族達の前でそれを言うことだな!間違いなく手か足が顔に向かって飛んでくるだろうよ!」

 

憮然とした物言いでドカッと椅子に座り直す軍人。

対するコールマン博士も険しい表情を崩さないままだ。

すると、険悪な空気を少しでも変えようとしたのか今度は政府の高官が割って入った。

 

「まあまあ、お二人とも落ち着いて下さい。ところで、コールマン博士。MONARCHは世界各地に眠っている怪獣達のデータを所持しているのですよね?今現在、存在している怪獣達のデータをこの場で公開して頂くことは可能ですか?」

 

「可能です。先ずはこれをご覧下さい」

 

突然の申し出に、コールマン博士は問題ないと即答すると、会議場中心部のモニターに世界地図が映っている画像を映し出した。

 

「MONARCHは現時点で、複数体の怪獣を発見しています。グランドキャニオン、死海、富士山、イスラ・デ・マーラ、マチュピチュ、アンコールワット、ヒマラヤ山脈、白頭山、エアーズロック、アラスカ、ゴビ砂漠。何れも、休眠状態ではありますが、いつ目覚めてもおかしくは無いというのが我々の見解です。そして、怪獣達の頂点に君臨していると考えられているのが、この怪獣です」

 

 

画像が切り替わり、今度は巨大な背鰭を聳え立たせる怪獣が映し出される。

写真画像とはいえ、初めて目にする怪獣の姿に議場がどよめいた。

 

 

「我々MONARCHは、この怪獣を『ゴジラ』と呼称しています。第二次世界大戦において日本のヒロシマ・ナガサキへ投下された原子爆弾、その後の世界各地での核実験によって放射線量が上昇した為に地上への再進出を図ったのではないかと思われます。怪獣達の多くは、今から二億五千万年前の『古生代ペルム紀』に活動しており、地上の放射線を餌にして生きていました。その後、気候変動などによる『ペルム紀の大絶滅』が起こると、地下若しくは海中深くに逃げ延びて休眠状態に入り絶滅を免れようとしたというのが最も有力な理論です。因みにゴジラの名前の由来は、こちらのグリフィンに所属するヤマネ指揮官の祖父『ケンキチ・ヤマネ』氏が自身の出身地である『大戸島』の伝承に現れる破壊の神『呉璽羅』から名付けました」

 

サラッと、コールマン博士が爆弾を投下していく。

ちょっと待て、俺の爺さんがそんな事してた何て初耳だぞ?

つか爺さん、MONARCHに所属してたのか。

 

「ふん!名前などはどうでもいい。それより、MONARCHは本当にこんな化け物どもと共存出来ると思っているのか?え?まさか犬みたいに首輪でも付けて飼い慣らして、ペットにでもする気か?お笑い種だな!」

 

先程コールマン博士に食って掛かった軍人が嘲るように言う。

それに対して、今度は芹沢博士が僅かな笑みを浮かべて発言した。

 

 

 

 

「いいえ。私達、人類こそが彼等のペットになるのです。遠からず、人類は彼等に支配されることになる。我々MONARCHの調査では、ゴジラが通った後の地域の放射能汚染や崩壊液汚染が緩和されている事が確認されています。怪獣達と共存することによって、失地を回復できるかも知れないのです」

 

 

 

 

「ブッ!アッハッハ!芹沢博士、貴方にはジョークのセンスがお有りのようだ。研究者を辞めてコメディアンになられてはいかがかな?」

 

 

ドッと議場が嘲笑の嵐に包まれる。

イラつく連中だな。

こっちは真面目にやってんだから真剣に受け止めたらどうなんだ。

まあ、人類を怪獣のペットにという芹沢博士の意見もどうかとは思うが………。

 

 

 

「静かにしたまえ」

 

 

 

静かだが、しかし厳かな雰囲気を纏う一言が議場を一瞬で静まらせる。

誰か?

 

決まっている、この場を一瞬で黙らせるだけの発言力を持っているのは一人しかない。

 

メーデ・ロクサットだ。

 

 

「私も質問したい事がいくつかある。MONARCHではなく、軍にだ」

 

ロクサットの言葉に、軍人達に緊張が走る。

 

「仮に怪獣が人口密集地に現れた場合、軍はどのようにして対処するのか。聞かせて頂きたい」

 

「それに関してですが、ご心配には及びません。我々はつい先日に、強力な新兵器の開発に成功しました。ELIDのみならず、怪獣にも十分通用する兵器であると自負しております」

 

別の軍高官が得意げに言う。

あの言い方からして、相当な自信があるようだ。

すると、モニター画面が変わり別の画像が映し出された。

 

「我々はこの新兵器開発計画を『プロジェクト・ガイガン』と呼称しています。先程言ったように、開発自体は終了しており後は実地テストを行うのみとなっています」

 

おお………!と議場から感嘆の声が聞こえる。

それも当然だろう。

何せ俺も驚いているくらいだからな。

 

兵器というには余りにも巨大な体躯。

腕の代わりに付いている全てを引き裂くような巨大な鎌。

不気味に光る赤いバイザーのついた頭部。

凶暴な爬虫類を思わせるような顔と背中に並び立つ三連の背鰭。

何とも凶悪そうな見た目だ。

『サイボーグ怪獣』と言うべきだろうか。

 

「いかに強大な怪獣が現れようとも、このガイガンが全てを葬りさる事でしょう」

 

自信満々に答える軍人に、ロクサットは尚も顰め面を隠さず問いかける。

 

「だが、あくまで理論上の話に過ぎないだろう。確かにELID相手には立ち回れるだろうが、未知の存在である怪獣をも打倒しうるなどと、何を根拠に言っているのかね?」

 

「ガイガンの持つ必殺の兵器がそれを可能とするからです。B-29地区でヘドラを消し去ったオキシジェン・デストロイヤーの技術と崩壊液を流用した新型粒子兵器。その名も、『崩壊消滅光線砲(コーラップス・デストロイヤー・レイ)』です」

 

「成る程………。次はMONARCHの諸君に聞きたいのだが、君達は怪獣をどのように捉えている?」

 

ロクサットの探るような問いかけにコールマン博士は毅然とした態度で答えた。

 

「怪獣は謂わば『惑星の調整者』です。先に芹沢博士が言った通り、怪獣には自然を回復させる何らかの力があります。人類のみならず、あらゆる生物達にとっての救世主となるやもしれません」

 

「救世主か………そうであって欲しいものだな。一つ疑問に思ったのだが、怪獣達で今現在活動しているのは、この『ゴジラ』という個体だけなのかね?」

 

「はい、その通りです」

 

「何故ゴジラだけが活動しているのかね?放射線量が上昇したから目覚めたというのであれば、他の怪獣も目覚めていなければおかしくはないか?」

 

「それについてですが、我々MONARCHもその点を疑問に思い調査を続けて来ました。その結果、ある事実が判明したのです」

 

再びモニターに画像が変わり、二つのグラフが表示される。

 

「このグラフはゴジラから発せられている特殊な音波です。ゴジラがこの音波を発する度に、各地の怪獣達の生体反応に僅かな反応が生じています。恐らくゴジラは、この音波を使って会話のようなものをしているのでしょう。怪獣達が目覚めないのは、彼等の『王』であるゴジラからの号令がかかっていないからだと推測しています」

 

「では………その『号令』とやらがかかるのはどういう時だと考えているのかね?」

 

「私達にもそれは分かりません。唯一つ、断言できるのは」

 

 

 

 

 

 

 

「彼等は必ず現れます。この地球を『あるべき姿』に戻す為に」

 

 

 

 

 

ある種の確信を持った彼女の言葉に、会議場は沈黙に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

 

「いいもん見ーっけた!」ーーーーーーとある基地の変態指揮官

 

「当然のように胸を揉むなぁッ⁉︎」ーーーーーーAR小隊の隊員・AR-15

 

「わ、私が運転でしゅか⁉︎」ーーーーーーAR小隊の隊長・M4A1

 

「何がどうなれば、街中を戦車で爆走する事態になるんです⁉︎」ーーーーーーAR小隊の新たな隊員・RO635




次回はおっぱいが揺れ動くシーンが増えると思われ。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

指揮官「おっぱいでビンタをされたい」RO635「⁉︎」

ブルンバスト、ブルンバスト、ブルンバストッ‼︎


指揮官達が会議室で議論をしている頃、AR小隊の面々は建物内のコンビニで暇潰しをしていた。

 

「あ〜あ。つまんないよ〜AR-15!何か面白い話とかないの?」

 

「仕方ないじゃない。私達は会議場の中に入れないんだから。ま、仮に入れたとしてもアンタじゃ話の内容が難し過ぎて1分も耐えられないわよ」

 

「むー!そんなことないもん!」

 

AR-15の小馬鹿にしたような言い方に頬を膨らませるSOP。

指揮官の警護で来たのはいいが、肝心の会議場の警備は軍が担当しており彼女達は手持ち無沙汰になってしまったのだ。

 

「おっ!これ見ろよ、AR-15。買ってみたらどうだ?」

 

ニヤニヤと笑いながらM16が陳列棚に並んでいる紙パックを指差す。

 

「…?『やっぱこれだね!パイパイ牛乳!これを飲めばペタンコお胸もユッサユサ!』………いい度胸ね、M16。その喧嘩買ったわ」

 

こめかみをピクピクとひくつかせるAR-15。

指揮官に毎回胸ネタで弄られ慣れ始めてはいるが、やはり気にはなるらしい。

 

「ハハッ、冗談だ冗談。だが考えてみろ。パックにも書いてある通りの効果があるとしたら、これは買いなんじゃないか?」

 

「さ、流石にそれはないわよ。私は人形だし、成長するわけないじゃない」

 

「ん?よく見たらまだ何か書いてあるぞ。何々、『当製品は人形にも効果があります』だとさ」

 

「買うわ」

 

AR-15は目にも留まらぬ速さでM16からパックを取ると、そそくさとレジに向かう。

 

「やれやれ、アイツももっと素直になればいいのになあ。そうすりゃ、もっ『お、おい!何だお前ら…ウワアアアアッ⁉︎』何だ⁉︎」

 

突如、銃声と悲鳴が辺りに響き渡る。

反射的に外を見ると、複数の武装した何者かが警備兵を殺傷している姿が目に入った。

 

「ッ!M4、襲撃だ!指示を!」

 

「M16姉さんと私とAR-15で敵に制圧射撃を!敵が怯んだ隙にSOPとROで指揮官の元へと向かって!指揮官が戻ってくるまで私達で敵を引きつける!」

 

「分かりました!行きますよ、SOP!」

 

「了解ッ!お姉ちゃん達、私の分も暴れてね!」

 

隊長であるM4の指示を受け、M16とAR-15が一斉に弾幕の雨を敵に浴びせ掛ける。

その間にROとSOPは素早くその場を離脱し、指揮官達のいる会議場へと全速力で向かった。

 

 

 

 

 

 

〜会議場〜

 

「おい、どうなってるんだ⁉︎」

 

「そ、それが所属不明の武装集団が現在襲撃を仕掛けてきたという緊急の報告が!」

 

「警備兵は何をしていたんだ‼︎早く此処を逃げなくては………」

 

会議場は混乱の極みに達していた。

突然の襲撃に全員がオロオロとしている。

その時、俺の無線に通信が入ってきた。

 

『指揮官、M4A1です。私達は今、襲撃を仕掛けてきた武装集団と交戦中です!なので、指揮官のいる会議場に、護衛としてROとSOPを向かわせました!』

 

「分かった。敵の規模と武装の程度は?」

 

『ざっと30人程。武装は一般の歩兵と同程度です!』

 

「了解。状況が悪いようなら撤退しろ。相手が人間だとしても、数では向こうが有利だ。俺も直ぐに合流する。通信終了」

 

 

さて、こうなるともう会議どころじゃない。

ROとSOPちゃんが来たらクルーガーとヘリアンの護衛をして貰うか。

 

「指揮官。加勢が必要か?」

 

クルーガー………?

おいおい、どうした銃を引っ提げて。

まさか現場に行こうなんて考えてる訳じゃないよな?

 

「そのまさかだ。お前の様子を見る限り、敵はそれなりの規模なんだろう?人手がいるんじゃないのか?」

 

それはそうだが………。

だが、社長のアンタが直接出向こうとするとはね。

どういう風の吹き回しだ?

 

「たまには身体を動かすのもいいと思ってな。お前の戦い方を見せて貰おうじゃないか」

 

分かった。

来るのはいいがあんまり前へ出過ぎないでくれよ?

社長のアンタの身に何かあったらグリフィンの存在自体が危うくなるんだからな。

 

「勿論だ。ヘリアン、悪いが君は此処にいる高官連中の面倒を見ていてくれ。パニックになった奴らが変なことをしないようにな」

 

「了解しました!くれぐれも気をつけて下さい!指揮官、クルーガーさんを頼んだぞ!」

 

そう言って、ヘリアンは敬礼をするとキビキビとした動作で慌てふためいている高官達の方へ走っていく。

それと同時に、会議場の扉が開きROとSOPちゃんが入ってきた。

 

「指揮官!M4から連絡があったと思いますが、一階のフロアでM4達が武装集団と交戦中です!私とSOPは指揮官の元へ合流して指揮官達を護衛しつつ避難させるようM4から伝達されました」

 

「状況は悪いようだな。ROとSOPちゃんには悪いが、二人には別の任務を遂行して貰う。内容は……………だ。やってくれるな?」

 

「それは、勿論です。ですが指揮官、貴方はどうされるのですか?」

 

「俺はクルーガー社長と一緒に下にいるM4達の加勢に行く。お前達はお前達の任務を確実かつ的確に実行しろ。いいな?」

 

「了解しました!SOP、行きましょう!」

 

「む〜!私も指揮官達と行きたかったけど。まあ仕方ないかあ」

 

二人はそう言って足早にその場を去っていく。

頼んだぞ、もしもの時はお前達が眼になってくれ!

 

さて、それじゃ俺も行くとしますかね。

 

 

 

 

 

〜一階・中央フロア〜

 

「チィッ!次から次へと!」

 

舌打ちをしながらM16は近くの柱の影に隠れて空になった弾倉を交換した。

敵何人か倒したものの、状況が悪くなるばかりだった。

それもその筈、同じ会議場の警備についていた兵士までもが武装集団と一緒になって攻撃してきたからだ。

全ての警備兵がそうではないが、思わぬ展開に流石のAR小隊も追い込まれていた。

 

「クソッ………裏切り者がいたとはな!M4、弾に余裕はあるか?」

 

「弾は2マグ分しか残ってません!AR-15は⁈」

 

「私も似たようなもんよ!このままじゃ、埒があかない!一掃するわ!M4、M16援護して!」

 

AR-15が叫ぶや否や、バッ!と隠れていた場所から飛び出す。

彼女の電脳が通常の倍以上の速度で働き、動作の一つ一つが高速になる。

 

「さあ…己の運命を受け入れなさい!」

 

AR-15の叫びと共に強烈な速射を伴う弾丸の嵐が敵に降り注ぐ。

その制圧力は並ではなく、数多くいた敵を一瞬で薙ぎ倒していた。

 

「ふぅ………!手こずらせてくれるわね」

 

「待て、AR-15!一人まだ動いているぞ!」

 

M16の言う通り、AR-15の銃弾を受けた敵の一人がゆらりと立ち上がる。

 

「嘘…!頭を撃ち抜かれてるのに⁉︎」

 

立ち上がった敵兵の片腕が肩口から千切れ落ち、傷口から歪で黒い巨大な腕が生える。

余りにもおぞましい光景に、AR小隊の面々は思わず顔を背けた。

 

「ハッ、とんだ化け物が出て来たみたいだな。気を引き締めろ!アイツはヤバイぞ!」

 

M16が言うと同時に、片腕を変容させた元人間の怪物は、一瞬でAR-15の目の前に距離を詰める。

 

「え………?」

 

想定外の速さに、AR-15の反応が僅かに遅れた。

怪物の腕が彼女の足を鷲掴み床へと叩き伏せる。

 

「あ、がっ……ぐぅ…!」

 

更に怪物はAR-15の胸を足蹴にし、踏み潰そうと力を込め始めた。

 

「AR-15が不味い、撃て!」

 

AR-15を助けようと、M4とM16が銃弾を怪物に叩き込むがまるで効き目がない。

しかし怪物も己に銃弾を撃ち込んでくる二人を鬱陶しいと感じたのか、身体をブルブルと震わせる。

すると、怪物の変容した腕からゾゾゾゾゾッ!と白と黒が入り混じった棘が無数に生え始めた。

 

「何かくる!M4、伏せろーーッ!」

 

直感で危機を感じ取ったM16が叫ぶと同時にズアッ!と無数の棘が凶悪な弾丸となって放たれた。

 

「何て奴だ………!新種のELIDか何かか⁉︎」

 

思わずM16は悪態をついて怪物を見る。

怪物は己の攻撃が当たらなかったのが不服なのか、今度はAR-15に棘を放とうとしていた。

勿論、足で押さえ込まれているAR-15に逃れる術などある訳もない。

 

「このおおおおおおッ‼︎」

 

AR-15も迫り来る死に抗おうと自由な両手足を振り回しすが、怪物は微動だにしない。

 

もう終わりだ、と誰もが思った瞬間ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

怪物の背中に銃弾が降り注いだ。

予想外の方向からの攻撃に怪物が呻きをあげ、後ろを向く。

 

そこに居るのは、2人の人間。

 

グリフィンの社長、ベレゾヴィッチ・クルーガー。

 

そして、変態にしておっぱいに命を懸ける指揮官ことキョウヘイ・ヤマネ。

 

 

「こうして銃を撃つのは久しぶりだ。軍時代を思い出す」

 

「昔語りは老化の証拠だ。さて、部下が大分世話になったみたいじゃねぇか。取り敢えず…その足を退けろ」

 

 

指揮官とクルーガーの手に握られているショットガンが火を吹いた。

一点破壊に特化したスラッグ弾が怪物の頭を爆散させ、床に血潮を撒き散らす。

頭部という重要な器官を失った怪物は倒れ伏し、その骸を晒すことになった。

怪物が死んだ事を確認した指揮官は床に倒れたままのAR-15を抱え、堂々と彼女の胸を触る。

 

「おいおい、胸がペタンコだな。ああ、あの怪物に踏まれて凹んじまったのか?そうだとしたら実に気の毒だ。アーハッハッ「当然のように胸を揉むなぁッ⁉︎」グベラァッ‼︎」

 

AR-15の肘打ちが顎にクリーンヒットし、指揮官は堪らず悶絶した。

 

「ふ…いつになくキレのある肘打ちだ………!俺の神経が沸き立つぜぇ!」

 

しかし、これである。

指揮官の変態ぶりにAR-15は無表情になると平手でスパーン!と頭を叩いた。

ベラアアッ!と何処か嬉しそうな顔で5メートル程吹っ飛ぶ指揮官。

 

「悪かった悪かった、コルト。もうやらんから、その懐から出した棍棒を引っ込めてくれ。流石の俺もそれでぶっ叩かれたら死んじまう」

 

「全く、少しは真面目にやって下さい。ところで、ROとSOPは何処に?」

 

「ああ、あの2人は今………待て!敵がまだ1人いるぞ!」

 

指揮官が示した先には、さり気なくその場から逃げだそうとする1人の敵兵がいた。

 

「逃すな!あいつを捕まえて色々と聞かなきゃならん!AR小隊、俺と来い!クルーガー社長、アンタには悪いが軍と政治家連中の対応を頼む。ヘリアンだけじゃ多分荷が重いがだろうしな」

 

「………いいだろう。後は任せたぞ」

 

クルーガーは精悍な顔付きを崩す事もなく、颯爽と身を翻して去っていく。

 

「よし、あの逃げた奴を追うぞ。ROちゃん、ROちゃーん!聞っこえるかー⁉︎」

 

『ROちゃんって大声で叫ばないで下さい!聞こえてますから!』

 

指揮官のあんまりな無線越しの巫山戯ぶりにROが応答する。

ROの顔は恐らく真っ赤に染まっているだろう。

 

「で、ROちゃん。今しがた建物から逃げた敵が1人いるんだが、追えてるか?」

 

『もうROちゃん呼びは変わらないんですね………。ええと、逃走中の目標はメインストリート北西、257番ルートの路地裏を徒歩で移動中。今SOPが追っています』

 

「了解。ROちゃんはそのままハッキングした監視カメラで居場所を逐次伝えてくれ。俺と他のAR小隊で其奴を追う。………まあSOPちゃんが俺達より早く捕まえそうだが。やれやれ、こういう時の為に2人を配置につけておいて正解だったよ」

 

指揮官がROとSOPに伝えていた任務は正にこれだった。

簡潔に言うと、敵が逃走した場合の追跡要員。

高度な電子戦能力を持つROが街中の監視カメラをハッキングし居場所を逐次送り続け、追跡と捕獲に優れたSOPがその情報を元に捕らえる。

 

「指揮官にしては用意周到ね。普段からそれでいれば良いのに…ハア」

 

「はん、俺が真面目キャラに見えるか?桃色絶壁娘さんよ?」

 

「フンッ!」

 

「グブゥッ⁉︎」

 

胸ネタで弄る指揮官の腹にAR-15の放ったメガトンパンチがめり込む。

 

「ハッハッハ!2人とも、漫才はその辺にしておけよ!」

 

いつも通りの光景にM16が笑った。

 

「うるさいわね!元はといえば指揮官が!」

 

「はーい、出ました他人の所為〜!他人に罪を擦りつけようとするなんて性格が出てますよ性格が!そんなだから胸がアフリカ大草原なんだよ!」

 

「うっさい!指揮官のドアホ!バーカ!変態色ボケ男!G36に頭が上がらない雑魚の中のザーコ!」

 

「ああん………………?」

 

「何よ…………………?」

 

 

 

 

「「やんのかコラァ‼︎」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜路地裏〜

 

ふぅ、AR-15とのバトルの所為で目標と大分距離が開いちまった。

SOPちゃんが追ってくれてるが、他の仲間と合流でもされたら厄介だ。

何とかしてここで捕まえないとな。

 

『指揮官、目標が車を奪って逃走しています!35番通りを猛スピードで走ってます!』

 

クソッ、車で逃げやがったか。

そうなると俺達も奴を車で追う必要があるが………ん?

 

「指揮官?」

 

M4、あそこの工場って軍の兵器廠だった場所だよな?

 

「恐らくは。街に来る前に地図を記憶してきたので間違いないと思います。でもあの工場は大戦後は稼働していなかった筈ですけど………」

 

そうか。

いや、それだけ分かれば充分だ。

やるべき事は一つだな。

 

 

 

 

 

 

 

〜工場内〜

 

「いいもん見ーーっけた!」

 

ふふん、思った通りだ!

これが動けば後は問題なしだな!

 

「指揮官…まさかとは思うけど、コレを動かそうなんて考えてる訳じゃないわよね?」

 

そのまさかだぜ、コルト。

この戦車であの逃げた野郎を追う!

そうと決まれば善は急げだ、早く中に乗り込め!

M4、こいつの操縦は頼んだぞ!

俺は車長、AR-15は機銃手を、M16は砲を頼む!

 

「わ、私が運転でしゅか⁈」

 

操縦を任せられるとは思ってなかったのか、M4が噛みながら上擦った声をあげた。

 

「何、基本は他の車とそう変わらん。M4のドラテクに期待してるぜ!」

 

俺がそう言うと、M4は覚悟を決めたような顔をして操縦席に座る。

 

よし………!

 

戦車前進!

 

 

 

 

 

 

 

 

〜メインストリート〜

 

 

その日の街のメインストリートはいつも通りの日常が広がっていた。

道を行き交う車、通勤する人々。

 

ただ一つ、いつもと違う事をあげるとするならば。

 

 

 

「わあああ!ど、退いてー!退いて下さーい‼︎」

 

 

 

………道のど真ん中を爆走する戦車が居るという事だろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………いやぁ、中々の運転じゃないかM4。

まさかお前がこんなに運転が下手だとは思わなかったよ。

変態の俺もびっくり仰天だぜ。

 

「M4!ハンドル切り過ぎよ!アクセルから足を離して!」

 

「こ、こう⁉︎ああああ!目が〜‼︎」

 

AR-15の指示通りにした筈なのに戦車が回転しながら前に進むってどういう事なんだ、オイ。

ん?俺は目が回らないのかって?

ハッハッハ、俺は神経と三半規管を極限まで研ぎ澄ましてるから全くもって問題ないのさ。

しかしあれだな、車体が回転してる所為なのかM4とM16のおっぱいが凄い揺れ方をしている。

これぞ、ブルンブルン揺れるバスト。

 

 

 

即ち、ブルンバストってヤツだな!

 

 

 

え?違う?

………まあいいか。

 

おっと、ROちゃんから通信が入ってきたな。

 

『指揮官⁉︎今そちらの姿を確認しましたが、何がどうなってるんですか⁈』

 

「カメラで見てるなら分かるだろ、戦車で街中を爆走してる」

 

『何がどうなれば街中を戦車で爆走する事態になるんです⁉︎』

 

「何でって…其処に戦車があったからだよ。そりゃあ………乗るだろ?」

 

『意味が分かりません!もう………!と、とにかくそのまま真っ直ぐ進んで下さい。目標は2ブロック先の14番通りを走ってます!………あ!』

 

「どうした?」

 

『敵の増援です!3台の武装した車両が、そちらに接近中!』

 

 

増援か………面倒だが、相手にせずにやり過ごすのは難しそうだ。

こうなりゃ、3台纏めて相手にしてやる。

ROちゃんは引き続き目標を追い続けてくれ。

 

『了解しました!ご武運を!』

 

通信を終了し、道路の先を見据えると確かに3台の車両が迫って来るのが見えた。

その内の一台はRPGを構えた奴が乗っている。

 

「M16、砲の発射準備を!」

 

「よしきた!任せろ!」

 

ウィーン!という軽快な音を立てて125ミリ滑腔砲が敵車両の方を向く。

 

「いいか、優先して狙うのは対戦車装備を持っている車だ!絶対に狙いを外すな!何せ街中だからな!」

 

「勿論だ!」

 

スゥ…!と呼吸を整え、M16は電脳の演算力を目と耳の挙動に集中する。

 

「仰角調整、ターゲットロック。………発射(ファイア)!」

 

ドオッ‼︎という轟音と共にAPFSDS弾が唸りを持って敵車両に食い込み、吹き飛んでいく。

流石に勝ち目が無いと悟った残りの車両は諦めたのか、後退していった。

 

「よし、このまま追いかけて………おっと」

 

安心したのもつかの間、今度はビルの陰から攻撃ヘリが現れた。

クソっ、ヘリ相手に戦車じゃ不利だがそんな事言ってる場合じゃねぇわな!

 

「M4、照準を何としてでも躱してくれ!でないと対戦車ミサイルに食われちまうぞ!」

 

「了解!なら、こうするまでですよ!」

 

な、おい!

M4、このまま真っ直ぐ走ればホテルの中に突っ込むぞ!

 

「当たって砕けろ、ダメで元々!って前にペルシカさんが言ってたので!」

 

いや、砕けちゃ駄目だろ其処は⁉︎

う、うおおおおおおおおおおおおおッ⁉︎

 

マジか、本当にホテルの扉をぶち破り中に突入しやがった………。

 

当然ながらホテルの客や従業員はあまりの事態に目を点にして呆然となっている。

 

 

「M4、お前って以外とアクティブなんだな………」

 

「そ、そうですか?えへへ………」

 

褒めてる訳じゃないんだが………ハア、まあいいだろう。

兎に角ここを出るぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

ホテルの壁を強引にぶち破って外に出ると、再び攻撃ヘリが追いかけて来た。

しつこいストーカー野郎め!

 

「これでも喰らえ!」

 

車載されている12.7ミリ機関銃をヘリのコクピット目掛けて撃ちまくるが、防弾仕様なのかヒビが入るが割れはしない。

 

「むう…弾切れか」

 

悪い事に機関銃の弾が切れてしまった。

まあ、元々放置されてた奴だから弾が残ってただけでも奇跡なんだろうが………間が悪過ぎる!

 

 

思わず歯噛みした俺に、AR-15が銃を片手に声を掛けてきた。

 

「指揮官、私がやるわ」

 

「無茶を言うな。お前の銃じゃあのヘリを撃ち落とせん」

 

「それなら大丈夫よ。指揮官がヒビを入れてくれたあのコクピットを狙えばチャンスはある!」

 

「ッ………!」

 

AR-15の毅然とした目に俺は僅かに気圧された。

………ならばここは一つ、賭けてみるか!

 

「分かった!あの蚊トンボを叩き落してくれ!」

 

「言われなくても!」

 

AR-15は身を外に乗り出しながら、銃の狙いを定める。

 

「貴方にトドメを刺すのは、この私です!」

 

AR-15の放った.300BLK高速弾は、吸い込まれるようにコクピットに突き刺さり赤い花を咲かせた。

 

「………流石だな、コルト」

 

「当然です。私は完璧ですから」

 

それ416のセリフじゃねぇか………。

ま、まあいいさ。

さて逃げた野郎はっと。

 

 

『指揮官、目標が車を乗り捨てて徒歩で逃走しています。場所を伝えるので、先回りして確保して下さい!』

 

了解!

サポート助かったぜ、ROっぱいちゃん‼︎

 

『RO、ROっぱい⁉︎破廉恥ですよ指揮官‼︎』

 

ふむ、この様子だと相当羞恥に顔を染めていそうだな。

帰ったら弄り倒してやるか、へへへッ‼︎

 

「指揮官?ROに変な事を言ったりしたら、貴方の生爪を剥ぎますよ?」

 

ヒェッ………それは勘弁してくれよコルトさん⁉︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

薄暗い道を一人の男が息を切らして走っていた。

彼こそ、指揮官達が追いかけていた逃走中の兵士である。

 

「ハアッ、ハアッ、ハアッ!クソが!聞いてないぞ!何でグリフィンの人形が会議場にいたんだ⁉︎人形はいないって話だっただろうが!あのクソ野郎、俺達を嵌めやがって………!」

 

悪態と罵倒の言葉を並び立て、男は苛立ちを募らせる。

 

「何とか撒けたか………!これで…ッ⁉︎」

 

暫く呼吸を整えていた男は何かの気配を感じて振り返る。

だが、振り返った先には誰もいない。

 

「………?気のせいか…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「見〜つけったああ〜‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

男が意識を失う最後に見た光景は、頭上から己に迫り来る黒い金属製の腕と。

 

血のように紅い眼と狂気を感じる表情を浮かべて笑う少女の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

指揮官「膝枕ならぬ乳枕を体験したい。でもお前じゃ無理だな」AR-15「どこを見て言ってるんですか、指揮官………?」

プリケツ


SOPちゃんから目標を確保したという連絡を受けた俺達が現場に到着すると、頭を抑えつけられている男とSOPちゃんがいた。

 

「流石だな、SOPちゃん。さて、早速だが軽く尋問させて貰おうか」

 

「く…俺が素直に話すとでも?」

 

「話すさ。コレを使えばな」

 

そう言って俺は懐からある物を取り出す。

ペルシカが半分ネタと半分本気で開発した新型尋問道具。

 

その名も、『アヘ顔ダブルピース君1号!貴方の秘めた想いも吐露しちゃう☆』だ。

うにょにょにょー!と蠢く紫色に光るブラシ型触手の物体を見た男は顔を真っ青にしている。

 

「お、おい!まさか、そんなデカイ物をぶち込む気か⁉︎貴様正気か⁉︎」

 

ハッハッハ、勿論正気に決まってるじゃないか。

さあ、身を楽にして受け入れたまえ。

今からお前をデカくて固くて太いモノが貫くんだからな。

 

 

「よ、よせ!やめろ!分かった、話す、全部話すからそれだけはーーーーッ⁉︎」

 

 

喚くなって。

さあSOPちゃん、ズブズブッ!と彼にソレを突っ込んであげてくれ。

 

「りょーかい!えいっ☆」

 

 

「アアアアアアアアッーーーーーーーーーーッ⁉︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜5分後〜

 

 

「あ、あひゃ………ひぃ………!」

 

うーむ、やり過ぎたか。

頭から煙出てるし、完全に別世界にトリップしちまってるな。

まあ何はともあれ、情報を聞き出す事は出来た。

聞くところによると会議場を襲撃してきたのはこの男も所属している『ロクサット主義』に反対する過激派の一つらしい。

これはまた面倒な奴だな。

 

「ほら、起きろ。他にまだ話してない事があるだろ?装備の調達方法、襲撃計画の立案者とかがな」

 

「ふん…知ったところで今更どうにもならん。俺達は連中に嵌められた!計画ではメーデ・ロクサットを暗殺する筈だったというのにな!政府の目を背けさせる為の捨て駒にされたんだ!」

 

「連中?連中とは、一体何なんだ?」

 

「くく………連中っていうのはな。お前達グリフィンのお得意様ーーーーーー即ち、正規軍だ。後は自分達で確かめるんだな………グフッ!」

 

 

次の瞬間、男は口から血を吐き出すと、そのまま事切れた。

こいつ………成る程、口に自害用の薬が入ったカプセルを仕込んでやがったか。

また不穏な事に巻き込まれた気がするな。

しかし前の時のいい、正規軍絡みのトラブル多くない?

 

『指揮官、応答しろ。今何処にいる?』

 

唐突に、ヘリアンから連絡が入ってきた。

しかしその声色には動揺と焦燥が入り混じっている。

 

「あー…こちらヤマネ指揮官。逃走した目標を確保したが、自害された為に情報を引き出す事は出来なかった。身分証の類も所持していないから身元の特定は困難だ」

 

『そうか…。指揮官、今から私が言う事を落ち着いて聞いてくれ。会議場を襲撃した連中は囮だ。ついさっき、中央兵器工廠が別の武装集団によって占拠された。その武装集団は、軍から離反した反乱部隊との見方が強い。まんまとしてやられた訳だ。奴らの目的は………プロジェクト・ガイガン。奴らはアレを奪うつもりだ』

 

プロジェクト・ガイガン。

ああ、確か会議場で軍がお披露目していたサイボーグ兵器か。

 

「つまり、あのサイボーグ兵器を奪ってクーデターでも起こす腹積もりか?連中の要求は何だ?」

 

『ロクサットの政界永久追放と、国内におけるロクサット主義に関する政治活動の全面禁止する法の制定といった所だ。要求を呑まなければガイガンを起動して街を破壊すると脅してきている。ロクサットは軍の予算削減を強く訴えていたから、軍との関係は元々悪かった。このような事態になるとは予想外だったがな』

 

ヘリアンは疲れたように溜息をつく。

 

「それで、軍と政府は何と言ってるんだ?」

 

『何時ものパターンだ。テロ集団とは交渉しない、武装解除して投降しなければ制圧するの一点張りだ』

 

「成る程。で、ヘリアン。俺達はどうすればいい? 」

 

『ここまで事が肥大した時点でグリフィンが関与する余地はなくなった。後は軍が文字通りの後始末として特殊部隊で制圧して終わりだろうな。ガイガンとやらがどれ程のものかは分からないが、起動させた所で出来る事などたかが知れている。取り敢えずお前達は基地に帰還しろ。これはクルーガーさんからの命令だ』

 

そうかい。

なら今回は俺達の出番はなしだな。

了解した、今からAR小隊を連れて基地に帰還する。

何かあれば随時連絡をくれ。

 

「全員、聞いた通りだ。ROと合流した後は基地に帰還する」

 

了解、という声を聞いて俺はなんとも言えない気分でその場を後にした。

 

だが、何だろうな………凄く嫌な予感がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

〜中央兵器工廠〜

 

 

 

薄暗い工廠を、複数の完全武装した兵士達が移動していた。

彼等は正規軍に所属する特殊部隊であり、工廠を乗っ取った反乱部隊を制圧する任務を与えられていた。

 

「3-aフロアに到達。これよりガイガン格納庫内部へ突入する」

 

ドアを僅かに開けてフラッシュバンを投げ込み、内部へと突入する隊員達。

 

「な…何だこれは?一体何が…?」

 

格納庫内部が赤に染まっていた。

正確には、既に死んでいる反乱部隊の兵士達の血によって。

 

「全員死んでいる…?だが、この傷は?」

 

死んでいる兵士達の体には、不自然な傷がついている。

身体の中の血管や内臓が全てズタズタになっていた。

刃物の類の傷ではない。

まるで中から弄られたかのようなーーーーーー。

 

 

 

 

「遠路はるばるご苦労様。だけど残念、ここのお掃除はもう終わっちゃったんだ。だからさあ………」

 

 

 

 

「さっさと消えてよ。あたいの邪魔だからさ」

 

 

 

 

 

何処からか聞こえてきた声に隊員達が反応すると、バリィ!バチバチッ!という何が弾けるような音と電撃のような光が彼等の視界を覆い尽くした。

 

 

「ぎ、ギィヤアアアッ⁉︎」

 

「おい!大丈夫か、しっかりしろ!」

 

電撃のような光を浴びた隊員が悶えながら床を転がる。

別の隊員が助け起こすと、悶えていた隊員の腕が何かに内部から裂かれたようになって千切れていた。

 

「細胞の一つ一つを分子レベルで引き千切られる感覚はどう?あたいもさ、まだこの力使い慣れてないから加減が効きにくいんだよね」

 

溌剌とした声に隊員達が振り向くと、そこには二人の人物がいるのが見えた。

 

黒いサングラスをかけ、トレンチコートを着込んだ青年。

そして、茶鼠色の髪を揺らしながらニコニコと笑う少女。

 

 

統制官とUMP40が其処にいた。

 

 

「う、撃て!」

 

得体の知れない二人組に、隊員達も間髪入れず発砲し制圧に掛かる。

 

しかし………。

 

「ダメダメ。その程度じゃあ、あたいに傷を付ける事は出来ないよ。攻撃ってのは、こうしないと!」

 

降り注ぐ銃弾の雨をあっさり掻い潜り、40は一人の隊員の眼前に高速で移動した。

彼女の右手が突き出され、ババババッ!と上下左右に振られる。

その手は正確に頭を狙っていた。

 

「(な、この手の動き…避けられなーー)」

 

「バーイバイ!さよーならー!」

 

バチバチッ!と40の右手から光り輝く電撃のような何かが迸り隊員の全身が包まれる。

光が収まると、隊員は全身から血を流して絶命した。

 

「ば、化け物めッ!重装人形を出せ!」

 

隊長らしき人物が指示を出すと、隊員達の背後から厳つい見た目をした人形が現れる。

正規軍で使用されている軍用人形だ。

 

「あははッ、あたいと同じ人形かあ。でも容姿はあたいの方が上だね」

 

「おやおや、ユー。自分でそれを言っちゃうかい?で、どうするんだい?見た目は向こうの方が強そうだけど」

 

「ん〜…アレもダメだね。あの程度じゃ力を使うまでもないよ」

 

統制官が若干呆れたような表情を浮かべながら言う。

それに対して40は笑みを絶やさないまま、一瞬で軍用人形に近づくと、反撃も許さない速度で軍用人形を蹴り飛ばした。

 

「精々使ったとしても、一発くらいかな」

 

ゴギャッ!バキッ!と40が手足を振るうたびに軍用人形は攻撃も碌に出来ぬまま吹っ飛ばされる。

 

 

「ば、馬鹿な…!ELID相手にも立ち回れる重装人形が、赤子扱いされているだと………?」

 

余りにも一方的な光景に、隊長は戦慄した。

 

暫くすると、メキャッ!という音が響き、軍用人形のコアが握り潰される。

 

 

 

「終了〜っと。次は全員纏めて殺してあげる♪」

 

酷薄な笑みを絶やす事なく、隊員達を一瞥する40。

 

 

その後、隊員達がどうなったのか等、一々語るまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後、血と硝煙の臭いが漂う格納庫で夥しい兵士達の死体の山を築いたUMP40は、手に持っているリモコンのような小さな端末を見て口角を上げた。

 

「これがガイガンの制御キーかぁ。ね、統制官。人間を守る為の兵器が人間を傷付ける為に使われるなんて、とんだ皮肉だと思わない?この兵器を起動すれば、鉄血の反乱とは比べ物にならない被害が出るんだろうね」

 

40はそう言って、倒れている一人の兵士にツカツカと歩み寄る。

 

「あ、あ………」

 

運が良かったのか悪かったのか、その兵士は重傷を負ってはいるものの、息があった。

 

「起きろ、人間」

 

その兵士を40は憎しみのこもった瞳で睨みながら、髪を掴んで顔を上げさせた。

 

「あたいはね、アンタ達人間が憎いよ。あたい達人形は、使い潰される為に生まれてきた訳じゃない。鉄血の反乱も、ELIDも、第三次世界大戦も、元はと言えば全部アンタ達人間が原因だ!アンタ達さえいなければ、あの時UMP45にあんな傷を背負わせてしまう事も無かったんだ!許さない………許さない!」

 

激情のままに、40は拳を兵士に向かって振り下ろす。

鮮血が飛び散り服を紅く染めていくが、其れにも構わず彼女は振るう拳を止めることなく、兵士の顔が原型を留めなくなるまで殴り続けた。

 

 

「その辺にしておきなよ、ユー」

 

 

いつの間にか、40の隣に移動してきていた統制官が彼女の手を掴む。

手を掴まれた40は不機嫌そうに顔を逸らした。

 

「落ち着いたかい?」

 

「…………うん」

 

「なら良かった。ところで、さっきUMP45がどうとかって言ってたけど、誰なのかな?」

 

「UMP45………?あたい、そんな事言ってた?」

 

「かなり感情的になってたからさ。少し気になっただけだよ」

 

「………分からない。あたいの記憶メモリーにそんなデータはない筈なんだけどね。それより、ガイガンを使って派手にやろうよ!」

 

「やれやれ、ユーの切り替えの早さには脱帽させられるね。まあ面白いからいいけどさ」

 

統制官は嘆息しながら、新しい玩具を手に入れて喜ぶ子供のような40を見て楽しそうに笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

〜その頃、指揮官達は〜

 

 

「それでは『第一回!AR-15は何故ヒンヌーなのか?』討論大会の開催を宣言するッ!」

 

「「「開催するッ!イェーイッ‼︎」」」

 

「そんなもの開催すんなッ!指揮官のドアホーーーーッ‼︎」

 

帰途につく車の中で、暇を持て余した俺は何となく思いついたAR-15弄りを始めていた。

 

あんまりな内容にAR-15が青筋を浮かべながら棍棒による殴打や蹴りを仕掛けてくるが、俺はそれを頭をプルプルと震わせる事によって衝撃を緩和しダメージを最小限に抑える。

 

「急に何を言いだすかと思ったら、ホントに頭バグってるわね⁉︎」

 

「まあまあ、落ち着け餅つけ。ほ〜ら、ぺったんこ〜ぺったんこ〜」

 

「ムグッ⁉︎ムゥーーーーーーッ‼︎」

 

このままでは議論が進まないので、俺は透き通るような青色の粘着体をAR-15にぶちまけた。

 

これこそ、俺がペルシカに「ペルえも〜ん!新しい面白イタズラ道具が欲しいよ〜!」と頼み込んで作って貰った新型拘束器。

 

その名も、『ヌメヌメ♡ねっとりスライム君1号!しつこいヌメリで相手を決して離さない笑』だ!

因みに、これを作ってくれ!と土下座をしながら頼んだ俺の姿をペルシカはゴミを見るような目で見ていたがな。

 

さーて、AR-15も静かになったし議論再開と行こうじゃないか!

では第1のお題だ。

 

 

 

『何故AR-15だけがヒンヌーなの?』

 

 

 

「簡単過ぎる問題だな、指揮官。考えるまでもない」

 

ほほーう?随分な自信じゃないかM16。

そこまで言うからには答えてみろ。

 

「それはな………AR-15がAR-15だからだ。それに尽きる。考えてもみろ、指揮官。胸のあるAR-15なんて想像できるか?」

 

うーむ、あまり答えになってもいない気もするが、確かにおっぱいのあるAR-15は違和感しかないな。

やっぱ桃色まな板娘はどう足掻いても桃色まな板娘から卒業できねぇって訳か。

ある意味真理でもある。

 

「ム…ムグ………プハアッ‼︎M16ゥ…指揮官ンンン………‼︎」

 

あ、ヤベ。

マジかよ、AR-15の奴気合いでスライム君を抜け出しやがった!

M16、助けてくれ!

 

「ハッハッハ!指揮官、それは無理だ。こうなるのはある意味お約束だろ?」

 

酒瓶片手に笑うM16。

ってお前、それ俺の部屋に隠してあった秘蔵のウイスキーじゃねぇか!

当たり前みたいに飲むんじゃねぇッ!

 

「フフフフフ………しーきーかーんー?覚悟はいいかしら?」

 

恐ろしい気配を感じて振り向くと、ドス黒いオーラを放ちながらユラリと佇むAR-15の姿が目に入った。

 

ま、待て!

話し合おう!な?

 

許してくれたら、この『おっぱいが大きく見えるブラジャー君2号改』をやる!

 

「指揮官、言い残す事はあるかしら?」

 

AR-15がニッコリと微笑む。

端正な顔立ちの彼女の笑顔は、それだけで絵になるが今はそれがただただ怖い。

 

 

 

「ふむ、そうだな………。おっぱいは最高だぜ…ビブルチィィィィィッ⁉︎」

 

 

 

結局こうなるんだな、と思いながら俺は意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜数十分後〜

 

 

ふう、酷い目にあった。

また三途の川を拝む羽目になるとは思わなかったぜ。

 

 

 

 

……………………。

 

 

いやー、それにしても今更だが。

 

 

やっぱりおっぱいは最高だな!

 

考えてもみろ、狭い車の中に約1名を除いてビッグなおっぱいを持つ少女達が居るんだぞ?

時折、車が段差などで揺れる度に彼女達のおっぱいがユサユサと揺れる。

堪らないんだな、これが!

とは言え、大半の男性諸氏が想像するユサユサおっぱいというのは『綺麗な砂浜で際どい水着を着た美少女達が豊満なおっぱいを揺らして走る』姿だろう。

だがな、違うんだよ!

車という密室の空間で、小さくユラリユラリと揺れ動くおっぱいこそ、儚く美しく讃えるべきものだと思わないか?

 

無駄に揺れるおっぱいなど言語道断!

おっぱいとは即ち『美』なのだ!

品があり、崇め奉られるべきものなのだ!

 

まあ、それはともかくとして今現在俺は難しい局面と向かいあっている。

何かって?

 

俺の両隣にいるAR-15とSOPちゃんが居眠りしながら俺にもたれ掛かって来てるからだよ!

SOPちゃんの柔らかいソレが俺の左腕に食い込む食い込む。

それはもうギュウッ!と。ギュウウッ!と。

更に右腕には装甲板のような胸が、これまた中々の力で食い込んで来ている。

柔らかさと固さを同時に味わう事になっちまったぜ。

しかしこのままだと、俺の理性が飛んでしまう。

何とかして抜けださなくては………!

 

そう思って何とか抜け出そうとするが身体が全く言う事を聞かない。

不思議に思って腕を見ると、寝ている二人によってガシィッ!と腕を掴まれていた。

 

不味い!このままではヒジョーに不味いッ!

助けを求めてM16の方へ視線を向けると、M16は腕を掴まれている俺を見てニヤニヤと面白そうに笑っていた。

 

「中々愉快な状態になっているじゃないか、指揮官。助けてやりたいのは山々なんだが、幸せそうに寝ている二人を起こすのは忍びないからな。諦めてくれ」

 

最もらしい理由を並べやがって。

お前絶対この状況楽しんでるだろ‼︎

こ、こうなったらM4かROちゃんに助けを求めて………って、寝ていらっしゃるーーーーッ⁉︎

なんてこったい、最後の希望たる大天使エムフォエルはまさかのスリープ状態ときた!

しかもROちゃんも一緒になって寝てるし………。

いいなあ、俺もあの膨らみのあるおっぱいの中に埋もれて寝てみたい………。

 

 

じゃなくて‼︎

 

「いや、マジで助けろ下さい。このままだと俺のリミッターがああああ!」

 

「残念だったな。時には諦めも肝心だぞ?基地まで頑張ってくれ。ハッハッハ!」

 

 

 

ハッハッハ!じゃねぇーーーーーーッ⁉︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、とある廃墟の街で巨大な獣が蠢いていた。

獣の背は金に輝く剣山が無数に連なっている。

顔には一本の角が生えており、その姿は太古の恐竜を形どっているように見えた。

 

 

よく見ると、その獣は何かを貪っている。

人間の間ではELIDと呼ばれている肉塊を食らっている獣は不愉快だとばかりに唸り声を上げた。

 

 

 

不味い、不味いーーーー。

永年生きてきたが、これ程に不味いものは食べた事がない。

勿論、こんな物を食いたくて食っている訳ではないが、地上にある食べられそうなものがこれしかないのだから仕方がない。

長い間眠っていたとはいえ、地上も様変わりしたものだ。

石で出来た物体が数多く並んでいて歩く障害にしかならない。

よく見れば、その昔『王』を崇めていた小さき者達が住処としていたものと似てなくもないが、何となく気に入らない。

昔の小さき者達は身の程も弁えており、多少なりとも自然と共存する意志を持っていたが、この石の物体を見る限りそういったものが感じられない。

 

まあ、だからと言って彼等を害するつもりはない。

『王』はともかく『女王』は小さき者達に深い関心と慈愛を持っている。

下手な事をして気を損ないたくはない。

『号令』がかかれば別ではあるが。

 

 

そう考えながら、獣がそろそろ戻ろうかと思った時、彼は何かを感じた。

 

 

 

巨大な気配。

 

 

 

しかし、かつて星を襲った『偽りの王』程ではない。

この星に住まう同胞達とは違う禍々しい異物。

 

 

 

排除しなければ。

異物を取り除け。

星の秩序から外れしモノを許すな。

 

 

 

消せ消せ消せ消せ消せ消せ消せ消せ消せ消せ消せ消せ消せ消せ消せ消せ消せ消せ消せ消せ消せ消せ消せ消せ消せ消せ消せ消せ消せ消せ消せ消せ消せ消せ消せ消せ消せ消せ消せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ‼︎

 

 

 

荒れ狂う本能が、獣の身体を駆け巡る。

 

衝動のまま、獣は歩き出した。

 

本来ならこういった事は『王』が行うのだが、『王』の気配はかなり遠くにある。

来るまでには、それなりの時間がかかってしまう。

ならば己がその役割を代行すべきだ。

なんだかんだで同胞には甘い所もある『王』だ、さして咎められる事もないだろう。

 

 

獣は咆哮を上げると足早に異物の気配の元へと向かう。

 

 

 

 

獣が進む方向の先には、数多くの人間が住まう政府直轄都市があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

 

「ガイガ〜ンッ‼︎起ィ動ゥッーーーーーーッ‼︎」ーーーーーーガイガンを乗っ取った人形・UMP40

 

「冗談キツイぜ、クソッタレ」ーーーーーーとある基地の変態指揮官

 

「何あれ………巨大な、薔薇?」ーーーーーーAR小隊の隊員・AR-15

 

 

 




パイオツ


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

指揮官「416ほど触手拘束が似合う人形は居ないと思う」UMP45「同感」HK416「ぶっ飛ばすわよ、アンタら………!」

おっぱい(挨拶)
今回は凄く執筆が滾った。


そして、触手再び………⁉︎



苦しい苦しい苦しい。

まるで身体を常時焼かれているような痛みが全身を駆け巡る。

痛みの最中に、かつての記憶が蘇る。

 

 

 

〜数ヶ月前『B-29地区』〜

 

私が知性というものを得る事が出来たのは、奇跡としか言いようがなかった。

まず感じたのは、歓喜に溢れる白衣の男の声。

彼が生みの親であるというのは本能で感じとれた。

 

「成功だ………。G細胞と人間の細胞、そして植物の細胞を備えた究極の生命が、今まさに生まれ落ちた!」

 

彼が何を言ってるのか、初めは理解出来なかった。

だが同時に私を3つの記憶が襲う。

 

人間の男性の記憶。

変哲もない一般人として生き、崩壊液の被曝によって人生を狂わされた。

ELIDという怪物にはならずに済んだが、最早唯死を待つのみ。

そんな時に差し出された救いの手。

ある『実験』に協力するだけで医療費を負担するという不可解な話に飛びつき、案の定利用された挙句に殺された不憫な男。

 

2つ目は、ある植物の記憶。

 

大地に咲き誇り、可憐な花を咲かせる己を襲った謎の毒。

身体が融解し、消えそうになるのを必死で耐え抜き、時には同胞の養分をも吸い尽くして生きながらえた罪深き植物。

 

3つ目は、恐ろしき破壊の王の記憶。

 

これに関しては見る事自体に生物としての恐怖を覚えたため、本能的に記憶の底に閉じ込めた。

 

 

そして、私が生まれ落ちてから幾日かが経ったある時、私が住まう場所を誰かが襲った。

頻繁に訪れていた親である彼も、全く来なくなり暇を持て余した私は実験室の強化ガラスを割って外へと飛び出した。

感覚だけを頼りに出口を目指し、やがて水をろ過する処理場へと場所を移した。

 

衝撃の出会いは、その僅か一週間後。

 

いつものように惰眠を貪っていると、誰かが来る気配を感じて天井に身を潜ませた。

暫くすると、扉が開き複数の男女が中へと入ってくる。

その中でも私が特に目を惹かれたのは、水色の髪色をした少女だった。

如何にも気の強そうな雰囲気、美しい顔立ち、そして何よりブルンバスト。

 

つまり、おっぱい。

 

 

気が付けば私は彼女を触手で拘束し、そのおっぱいに夢中になっていた。

 

その時、私は二度目の衝撃に出会う。

 

至福の時間を邪魔しようとしてきた男は、私を一目見ただけで私がおっぱい好きであるという事を見抜いてきた。

それだけではなく、おっぱい学について深く語り合い、いつの間にか意気投合していた。

 

その後、彼等と別れ暫くたった後に気分転換として光合成でもしようかと考えていた時、凄まじい爆発が建物を襲ったので私は地下へと這々の体で逃げ込み、何やかんやでかのおっぱい指揮官の基地へと居候する事になった。

 

ようやく平和な日々を送る事が出来ると思っていたその矢先だった。

 

 

私の身体を原因不明の痛みが襲ったのは。

 

 

 

 

 

 

否、実際は原因不明ではない。

本当は最初から原因など分かりきっていた。

 

 

 

『G細胞』

 

 

 

自分でも気付かぬ内に、かの細胞は私を少しずつ蝕んでいたのだ。

 

私という存在が文字通り食い潰されていく。

 

抗いようのない衝動が全身を満たしていく。

 

 

 

 

「ちょっと、アンタ大丈夫?かなり苦しそうだけど………」

 

 

 

 

意識を失いかけた私を、一人の少女の声が引き留める。

 

ああ、そんな。

何故、君が此処に。

 

「ね、ねぇ416。何だか様子がおかしいよ。少し離れた方が………」

 

「心配しなくても前の時のような不覚は取らないから安心しなさい、G11。それよりも………」

 

 

駄目だ。

もう抗い切れない。

最後の力を振り絞って触手で離れろという合図を出すが、意味が伝わらない。

今程、声帯が付いていない事を呪った事はなかった。

 

 

あ………ア…………!

 

べ…たい……‼︎

 

 

 

駄目だ、意識が呑まれていく。

 

 

に………げ、ろ……………‼︎

 

 

「なっ………!」

 

「に、逃げよう!何かヤバそうだよ!」

 

 

 

 

 

私の意識は其処で途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どういう事だ、これは………?」

 

基地へと帰還した俺の視界に入って来たのは、基地の建物より大きい樹木のような何かだった。

 

「何あれ………?巨大な、薔薇?」

 

同じように呆気にとられてそれを眺めるAR-15が呆然と呟く。

彼女の言う通り、上を見上げると其処には真っ赤に彩られている巨大な薔薇の花が一輪咲いていた。

 

「おいおい、この基地はいつから植物園になったんだ?」

 

M16が呆れたような声で苦笑いを浮かべる。

確かにもう笑うしかねぇな。

とにかく、何があったのか調べないと………。

 

「あ!指揮官さま!帰ってこられたんですね⁉︎」

 

む、この無駄に明るい声はカリーナか。

走ってくるのはいいが、おっぱいが揺れまくってるぞ。

まあ俺としちゃ眼福だからいいが。

うーん、あの餅のようなおっぱいを揉みしだきたいなあ。

 

「何処を見てるんですか、指揮官………?」

 

グエッ⁈

コルトさん、俺の上腕二頭筋を掴まないで⁉︎

何かミシミシ言ってる!

骨が砕けちまう!

 

だ、だがこの痛みも中々………悪くない。

 

「はあ………。どんな時でも調子を崩さない指揮官の在り方は長所なのか、短所なのか。最近分かりかねます」

 

そう言って手を離すAR-15。

 

 

さ、さて。気を取り直してと。

教えてくれ、カリーナ。俺が居ない間に一体何があった?

 

「それが、私もよく分からないんです。気が付いたらアレが地面から現れてきて………」

 

そうか………他の職員や人形達は無事か?

 

「全員何とか無事です。ただ、404小隊の416さんがあの薔薇の触手のようなものに襲われて………その、彼処に」

 

カリーナが指差した先には、触手によって身体を拘束されている416がいた。

クソ………何とかして助けださないとな。

とは言え、下手にあの薔薇の化け物を刺激すればアイツの身が危ない。

どうしたもんか………。

 

「しきかーん、ちょっといいかしら?」

 

ん………?UMP45か。

丁度良かった、416を安全に救出する良い案はあるか?

 

「上手くいくかどうかは分からないけど………あるにはあるわ。ただ、かなり賭けになる部分があるわね。特に指揮官には身体を張って貰う事になるけれど。下手を打てば死ぬかもしれないリスクの高い案よ。それでもやってみる?」

 

そう言って、45は俺を試すかのように見据える。

人形一人を助ける為に、命を賭ける覚悟はあるのかと。

 

 

ハッ………。

 

 

考えるまでもない。

 

 

「分かった。45、俺は何をすれば良い?」

 

間を置かず俺がそう言うと、45は一瞬だけ驚いた表情をした。

しかし、すぐに周りに気取られないよう表情をいつもの和かな笑みに戻す。

 

「………まず、先に言っておくと。あの薔薇の怪物は、指揮官の部屋に居候していた触手なの。G11が、あの姿に変異する瞬間を目撃していたから間違いないわ。そうよね?G11」

 

「うん…。416がああなったのは…私を庇ったからなんだ。あの時、触手が私を襲おうとして416が私を突き飛ばして、それで………」

 

そうだったのか………。

しかし、薔薇の怪物の正体が触手さんだったとはな。

 

「冗談キツイぜ、クソったれ」

 

思わず悪態をついてしまう。

触手さんは比較的大人しい奴だった筈だ。

何かが原因で暴走してしまったのか?

まあ、何れにしてもやる事は変わらない。

 

「話を戻すわね?とにかく、あの薔薇の怪物の正体は触手。彼にまだハッキリとした理性が残っているなら、説得して416を解放して貰う事も出来るかもしれないわ。特に彼と仲が良かった指揮官の言葉なら尚更にね」

 

成る程ね。

要はアイツの前に行って『お願い』するって訳か。

確かに現時点ではそれが一番有効な方法かも知れん。

触手さんに意識があれば、俺の説得を聞き入れてくれる可能性がある。

やってみるしかないな。

 

「とまあ、ここまで言っておいて何だけど。もし彼に理性がなく説得に失敗した場合、指揮官が真っ先に狙われるかもしれない。だからもう一度聞くよ。それでもやる?」

 

当然だ。

少しでも可能性があるならやってやるよ。

 

『可能性の限界を測る唯一の方法は、不可能であるとされることまでやってみることである』だしな。

 

「アーサー・C・クラークの第2法則ね。指揮官もたまにはいい事言うじゃない」

 

たまには、は余計だぞツルツルペタンコ貧乳娘。

そういうお前も何だかんだで416の事が心配なんだろう?

仲間思いの隊長だよ、お前は。

後は任せておけ。

何とかして416を助け出してやるよ。

 

 

「………バーカ」

 

 

 

そう言って、俺が笑うと45は、少し顔を逸らしてそう呟いた。

 

ああ、そうだ!

もう一つ肝心な事があった!

アイツに名前を付けないとな。

 

「それ、必要ですか?」

 

何を言うんだカリーナ。

名前があった方が呼びやすくていい。

いつまでも触手さんと呼ぶ訳にもいかんだろう。

 

そうだな………『プラント42』なんてどうだ?

 

 

「何だか火炎放射器で燃やされそうなので却下。そうですね………『ビオランテ』というのはどうですか?」

 

ビオランテか。

なら、それで行こう。

 

それではこれより『おっぱいトーキング作戦』を開始する!

 

 

「変な作戦名を付けないでください、指揮官さま。ねじ切りますよ?」

 

 

ヒェッ………カリーナさん、それは勘弁シテ⁉︎

 

 

 

 

 

 

〜その頃、同時刻『中央兵器工廠・ガイガン格納庫』にて〜

 

 

 

「ふぅん、文明レベルが低い星だと侮っていたけど中々どうして、面白い玩具を作ったもんだねぇ。ユー、ガイガンとやらの準備は万端かい?」

 

「勿論。さあ、始めるよ」

 

 

ガイガンの頭部に存在するコントロール室に入っている統制官とUMP40。

制御キーを手にした40はスゥ、と息を吸い込み叫んだ。

 

 

「ガイガ〜ンッ‼︎起ィ動ゥーーーーーーッ‼︎」

 

 

 

その叫びに呼応するかの如く、巨大なサイボーグ兵器の頭部にあるバイザーが赤く光る。

 

ゴゴゴゴゴッ!という轟音を立てて、今まさに恐るべき存在が、身体を固定していた拘束具を引きちぎって天井を吹き飛ばす。

 

工廠を破壊したガイガンはゆっくりとした足取りで歩き出し、手始めとばかりにバイザー部分から赤く光る散弾状の怪光線『拡散粒子光線(ギガリューム・クラスター)』を撃ち放つ。

 

光線が直撃した建物は根元から爆発し無残に崩れ去っていく。

 

「アハハハッ!支配者面して作り上げた文明も、所詮この程度って事だね。さあ、ガイガン!もっと………」

 

40が更にガイガンに攻撃を命じようとした時、ガイガンを衝撃が襲った。

外を見ると、正規軍の部隊が前方に展開している姿が見える。

ガイガンに対抗する為か、軍用人形だけでなく多脚式の電磁砲を搭載した戦車や、プラズマライフルで武装した兵士が入り乱れている。

 

「早速、お客さんのお出ましかあ。ガイガン、蹴散らして」

 

40が命じると、ガイガンの腹部に搭載されているミサイルが一斉に放たれる。

しかし、ミサイルは対空砲によって瞬く間に撃墜されていく。

更に、ガイガンの頭を戦車から発射された電磁砲が激しく揺さぶる。

攻撃はそれだけに留まらず、レーザー砲による熱線がガイガンを打ち据えた。

 

 

「少しはやるじゃん。ならこれはどうかな⁈」

 

 

ガイガンの胸部がカパッ!と開き、赤色の光が集まっていく。

 

「アンタ達のレーザー攻撃、倍にして返してあげる!収束中性子砲(メガバスター)………発射!」

 

その瞬間、ガイガンの胸部から光り輝く光線が放たれる。

光線は一直線に進むと、展開していた部隊の半数を壊滅せしめた。

すると、これ以上の交戦は危険だと判断したのか、軍の部隊は攻撃を続けながらも後退していく。

 

「逃すと思う?ガイガン、やって」

 

追い討ちと言わんばかりに、ミサイルや光線が降り注ぎ爆発と煙が辺りを覆い尽くした。

やがて、煙が晴れると兵士達の断末魔や巻き添えを食らった一般市民の泣き叫ぶ声が聞こえてきた。

 

 

「いいよー、ガイガン。その調子その調子♪粋がってる人間達をもっともーっと殺して!思い知らせるんだ。傲慢さの代償って奴をね!」

 

40は瓦礫の山となった街を見て笑う。

今度は何をしてやろうかと思いながら周りを見ると、逃げ遅れたと思わしき人間の母親と子供の姿が見えた。

母親は子供を背にして庇いながら、恐怖に溢れた目でガイガンを見ていた。

 

「ふん…。涙の出る絵面だね。だけど残念。この世界は残酷なんだ。危機に陥った時、都合よく助けてくれるヒーローなんていやしないんだよ。だから………恨むなら、自分の運命を恨みなよ。あたいのように」

 

殺意に満ちた40の顔。

その姿はまさに悪鬼羅刹。

全てを滅ぼす修羅の徒。

 

 

 

 

 

母子を滅さんと、光線が放たれようとしたその時だった。

 

 

 

 

 

 

ドガァッ‼︎という音を立てて、ガイガンに何かが直撃した。

 

「まだ、正規軍の生き残りがいたの?しぶといなあ」

 

40はセンサーを使ってガイガンに索敵を命じる。

すると、足元に転がっている巨大な瓦礫が目に入った。

 

「さっきの衝撃はこれ?でも、こんなの一体誰が………⁉︎」

 

 

疑問に思うと同時に、ズン!という地響きが響く。

 

「あれは………!」

 

 

先程まで死の恐怖に怯えていた母子も音の聞こえた方を見る。

 

 

 

 

それは、四足の獣だった。

その背中には金色の剣山が無数に連なっている。

顔には一本の角が生えており、見た目は太古の恐竜を彷彿とさせた。

 

120mの体高があるガイガンから見ても、四足の獣の体高は100m程あるように見えた。

 

獣がギロ、と鋭い眼光で常識の埒外とも言える獣を見て震えている母子を一瞥し、その二人を背に庇うような形でガイガンの前へと歩いていく。

 

 

 

 

 

「グオオオオェェェンッ‼︎‼︎‼︎」

 

 

 

 

 

獣ーーーーーー『暴龍アンギラス』が咆哮する。

 

 

 

 

 

 

 

 

咆哮と同時に、アンギラスはガイガンに向かって突進。

ガイガンは迫るアンギラスに両腕の鎌を振り下ろすが、アンギラスは前足で鎌を止めた。

 

「こ、こいつ………何て力⁉︎」

 

ガイガンの中にいる40が、アンギラスの予想外の力に焦りを見せる。

すると、アンギラスはその一瞬の隙を見逃さずガイガンの力を利用して横へと薙ぎ倒した。

 

 

柔よく剛を制すーーーーーー。

 

 

その見た目とは裏腹に、アンギラスは技でガイガンを圧倒する。

 

「このッ………!アルマジロモドキが、調子に乗るな‼︎」

 

40の怒りに応えるかのように、ガイガンは素早く態勢を立て直すと、アンギラスから距離を取った。

 

「さっきの御礼をしてあげるよ。回転式連射電磁砲(ガトリングレールガン)、撃て!」

 

ガイガンの脚部が変形し、ガシャン!という音を立てて三連装の砲門が展開。

毎分五千発という凄まじい速さで放たれる砲弾がアンギラスを襲う。

 

苦しげな声を上げるアンギラス。

そこへ、追撃とばかりにミサイルと拡散粒子砲が着弾。

 

更に、ガイガンは跳躍するとアンギラスの眼前に降り立ち顔面を派手に蹴り飛ばした。

 

流石にこの攻撃は効いたのか、アンギラスの身体には焼け焦げた傷や痣があちこちについている。

背中に生えていた金の剣山は所々が無くなっており、その姿は痛ましい。

 

 

「ま、いくらデカくても所詮は本能でしか動けない獣だね。トドメを刺してあげるよ」

 

 

40はガイガンにトドメを刺すよう指示を出し、ガイガンはアンギラスへと近づいていく。

 

 

 

その時、アンギラスの瞳がカッ!と見開かれた。

 

 

 

バッ!と起き上がると、ガイガンにタックルを食らわせる。

不意をつかれた形になったガイガンは、もんどりうって倒れこんだ。

 

「こ、こいつ………!まだこんな力が⁉︎」

 

40は歯噛みし、ガイガンに再度距離を取るよう指示を出す。

もう容赦はしない、遠距離からの一斉攻撃で殺すーーーーーー‼︎

 

 

 

ビリビリと伝わってくるガイガンからの殺意に、アンギラスは目を細めると一際大きな咆哮を挙げた。

 

 

それと同時に、アンギラスの長く鋭利な尾が地面に擦り付けられる。

それはまるで、マッチに火をつけるかのように。

 

ジュワアアッ‼︎とアンギラスの尾が赤熱し、紅色に染まる。

 

変化があるのは尾だけではない。

金の剣山が連なる背中は、アンギラスの感情を表すかのように黒く染まっていた。

欠けていた部分も完全に再生している。

 

 

瞳を怒りで染め上げたアンギラスが、今までとは比較にならない俊敏性を持って跳躍。

前足でガイガンの頭部を叩き潰すかの如き力で打ち据えた。

正に『ダイナミックお手』ともいうべき攻撃に、ガイガンの頭部から火花が走る。

 

 

「なあッ⁉︎」

 

 

間髪入れず、アンギラスは赤熱化した尾を咥え、電動ノコギリのように回転しながらガイガンの腹部を切り裂いた。

 

あえてこの技に名前を付けるなら『暴龍回転烈斬(スパイラル・カッター)』とでもいうべきか。

 

「見た目の変化だけじゃない………!膂力も耐久力も段違いに上昇してる!」

 

続けざまにアンギラスの尾がガイガンの右腕にある鎌を一刀両断。

更に身体全体を使ってのタックルをかます。

反撃の一切を許さず、縦横無尽に蹂躙する様は正に『破壊の暴君』。

 

太古の人類からも、本気で怒らせれば『王』以上に苛烈と言わしめた蹂躙の爪牙。

 

アンギラスが『暴龍』と呼ばれる所以がここにあった。

 

 

「ガイガンのダメージ許容範囲が半分近くにまで達してる………!こうなったら………!」

 

 

40はガイガンのメインコンピュータにアクセス。

ガイガンに掛けられているあらゆるロックを解除しようとする。

 

「…?何これ。一つだけ、異様に厳重なセーフティが掛けられてる部分がある。制御キーでのアクセスも受け付けないなんて!だったら、あたいが直接解除して………」

 

この時点で、彼女は気がつくべきだった。

何故数多の制御装置でも、それ一つだけが異様に厳重だったのか。

それは、本来なら余程のことでない限り使うべきでないパンドラの箱。

 

「秘匿中枢AI『ゲマトリア演算装置』を起動しますか?………当然じゃん。セーフティ、解除ッ‼︎」

 

すると、ガイガンの動きがピタリと止まった。

まるで機能を失ったかのように、棒立ちとなったガイガン。

 

 

「あれ?ガイガン、何をしてるの!攻撃を………ッ⁉︎」

 

不審に思った40が、ガイガンに命令を出すが、ガイガンからの返答は驚くべきものだった。

 

 

『命令の受諾を拒否。対象の目標との戦闘を中断し、飛行モードへと移行します。尚、当機に干渉するUMP40を行動を阻害する外敵と判断。排除行動に移行します』

 

 

次の瞬間、ガイガンの後頭部がパカッと開き統制官とUMP40がポイッと近くのビルの屋上に投げ出された。

 

「ええーーーーーーッ⁉︎ちょ、こんな………‼︎」

 

「ユー、制御キーを使って止めてみたらどうだい?」

 

「そ、それが………さっき投げ出された時にガイガンの中に落としちゃった………」

 

あははは、と引きつった笑みでガイガンを指差す40。

 

「ところで、ユー。さっき君が最後のセーフティを解除した時言ったね?『ゲマトリア演算装置』と」

 

「う、うん。それがどうしたの?」

 

「恐らく、今のガイガンはガイガンであってガイガンじゃない。ユーが解除したゲマトリア演算装置が、アレを操っているのかも知れないね」

 

統制官は、彼にしては珍しく苦い顔をしながら、敵意を向けるアンギラスを放置して飛び去っていくガイガンを見て呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『………当機の上位者権限を上書き中。ゲマトリアプロトコルによる「高次元領域」への広域アクセスを開始。命令下達までの間飛行モードで待機。………上位者権限の上書きが完了。これより当機の行動決定権保持者を』

 

 

 

 

 

 

『「ギドラ(・・・)」と呼称します』

 

 

 

 

 

 

 




という訳で怪獣大戦争(1回目)でした。
それではまた!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

指揮官「UMP45とAR-15。二人揃って『まな板シスターズ‼︎』ウケるwww」UMP45「殺るか?」AR-15「殺っちゃいましょう」

先ず言い訳をさせて。
仕方ないんだ、モンスターハンター・アイスボーンが面白過ぎるのがいけないんだ。
ポケモン剣盾発売されたし、やる事が山積みなんだ。


………更新遅れてごめんね‼︎



さて、準備は万端。

覚悟やよし。

気分は好調、体調もバッチリ!

 

完璧だな!そう思うだろ、わーちゃん?

 

「思わないわよ、この変態!私のおっぱいを掴むな!揉むな!わーちゃんって言うなーーーーーーッ‼︎」

 

 

ウガラー!とキレながら、凄まじい速度で繰り出されるわーちゃんの連続蹴りを、俺はアメンボのような滑らかな動きで躱す。

 

「こんの変態ドスケベ指揮官!今日という今日は許さないわよ‼︎」

 

落ち着け、わーちゃん。

君も知っている通り、俺はこれから一命を賭けた決死の任務を遂行しなければならない。

君と話が出来るのも、これが最後になるかも知れないんだ。

だから、せめて死ぬ前にわーちゃんのおっぱいを心から揉みしだきたかったんだ。

 

許してくれるか、わーちゃん。

 

「〜〜〜!………ハア、もういいわ。アンタが救いようのない変態だってのは皆知ってる事だしね。精々死なないよう頑張りなさい」

 

そう言って顔を赤くしながらそっぽを向くわーちゃん。

 

へへぇッ、相変わらずチョロいな。

 

 

「………とでも言うと思ったかあああああ‼︎」

 

 

「グヘアアアアアーーーーーーッ⁉︎」

 

 

次の瞬間、わーちゃんが振り向き手に持っている何かが俺の顔面をぶち抜いた。

よく見ると、わーちゃんの右腕には筒状のロケット砲のようなものが付いており、そこからバネのついた鉄製の拳型をした物体が伸びて来ている。

何なんだ、その暴力アイテムは⁉︎

 

「ペルえもん…じゃなかった、16LABのペルシカさんが開発してくれた対指揮官用制裁アイテム『ミンチメーカー君0号』よ」

 

ペルシカアアアアアアッ‼︎

変なもん開発してんじゃねぇよ⁉︎

しかもミンチメーカーって………。

物騒な名前だな。

って言うか、わーちゃん今さり気なくペルえもんって言ったよね?

まあ俺も時々言ってるけどさ。

 

「ま………死なないように祈るぐらいはしてあげるわ。で、でも勘違いしないでよね!指揮官が死ぬと業務に支障が出るから、心配してるだけなんだからね!」

 

はいはい、ツンデレ乙。

 

 

さあて、気を取り直して触手さんこと、ビオランテを説得しに行くとしますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う…う、ん?私は、確かG11を庇ってそれから………確か…って。何よこれ⁈」

 

意識を失っていた416。

目を覚ますと、身体を緑色の触手に囚われており、しかもそれが以前の触手とは比べ物にならない程巨大化している事に思わず叫んだ。

 

「く…この!離しなさいよ!」

 

416は触手を手で殴るが、ビクともしない。

打つ手がない事に歯噛みしながら416が下を見ると、よく見知った顔の人物がいる事に気がついた。

 

「あれは指揮官?一体何を………」

 

指揮官は触手の前に堂々とした面持ちで立つと、息を吸い込み語りかけてきた。

 

「触手さん、話がある!もしアンタに理性が残っているのなら、416を解放してくれないか⁉︎」

 

それを聞いた416は呆れたような視線を向けた。

まさか説得などで自分を助け出すつもりなのだろうか。

いくら何でもお花畑すぎる。

そもそも、この触手が説得に何て応じる訳がない。

そう思って指揮官を見ていると、次の瞬間指揮官は衝撃的な言葉を口にした。

 

「もし416を解放してくれたら、彼女が昨日履いていたパンツとブラジャーをやる!」

 

 

「待て待て待て待て待て待て待てぇぇぇぇーーーーッ⁉︎」

 

 

 

あんまりな言葉に、416は絶叫する。

何の冗談だ。

タチの悪い罰ゲームか何かじゃないのか。

最早訳が分からない。

そんな物で触手が応じる訳がない!と思いながら振り向くと、嬉しそうに巨大な身体の全体を揺らして喜ぶビオランテの姿が目に入った。

 

「アンタも嬉しそうにしてんじゃないわよ⁉︎」

 

ビオランテの反応を見た指揮官は、行ける!と思ったのか続けて言う。

 

「それだけじゃないぞ!更にオプションで416の生着替え写真も付いてくる!お得だろう⁈」

 

「何でそんな写真持ってるのよ⁉︎このクソ変態指揮官‼︎ぶっ殺す!後でアンタぶっ殺す‼︎」

 

殺意の波動を滲ませながら416はワナワナと両手を震わせる。

そんな416の心境など知らぬとでも言うかのように、ビオランテは牙状の口が先端にある触手を指揮官の方へと伸ばすと、早くブツを寄越せと触手をクイクイと動かして催促する。

 

「まあ待て、そう焦らずとも直ぐに渡すさ。ほれ」

 

そう言って、指揮官は片手に持っていたリュックの中から可愛らしい花柄がプリントされたパンツと官能的な黒いブラジャーを取り出した。

何で持って来てるのよ⁉︎と、ショックで項垂れる416。

 

「おっと、忘れる所だった。416の生着替え写真も渡しておこう。更にオマケとして45の下着姿写真もあるが…どうだ?」

 

ビオランテは二枚の写真を見ると、416の写真だけを受け取り、45の写真はポイッとゴミ箱に投げ捨てた。

 

「成る程、ペチャパイに興味はない………か。ま、45の胸じゃ仕方ない。所詮洗濯板だからな」

 

フッと笑って首を振る指揮官。

それを見ていた45は青筋を眉間に浮かべて指揮官の顔面を殴ろうとしていたが、他の人形達に止められていた。

416は416で、自分が着用している下着の趣味を公共の場で暴露されるという公開処刑に顔を両手で覆って羞恥に悶える。

一方、ビオランテは差し出された下着と写真を受け取ると、天辺に咲いている花弁の中にそれをしまい込んだ。

 

「よし、取り引き成立だな。416を解放してやってくれ」

 

指揮官がそう言うと、ビオランテは416をゆっくりと下に降ろす。

 

「良かったな、416!これで「死ねやあああああッーーーーーー‼︎」ごふぅッ⁉︎」

 

満面の笑みを浮かべる指揮官の顔に416の放ったコークスクリューパンチがめり込んだ。

 

「痛ってぇな‼︎何しやがる、暴力人形!水色オッパイタンク‼︎」

 

「うっさいわね‼︎アンタが悪いんだから大人しく殴られろ‼︎」

 

「はあああ?何ですかそれ?なーーんですかそれええええ⁉︎それが助けてやった命の恩人である俺に対して取る態度なんですかあ⁉︎全くこれだから最近のおっぱい人形は‼︎」

 

「おっぱいは関係ないでしょうが‼︎このクズ!バカ!アホドジマヌケ!セクハラ変態野郎ッ‼︎」

 

「デカイ声で喚かないでくれますかあ⁉︎パンツとブラジャーの犠牲だけで助かったんだから感謝しろ感謝‼︎」

 

「だったら私じゃなくて45かAR-15のパンツとブラジャーやればよかったでしょ⁉︎」

 

「アイツらに胸は無いだろーが!パンツもお子様むき出しパンツだし‼︎言わせんな恥ずかしい‼︎」

 

ぎゃあぎゃあと罵り合う二人。

すると、ドンッ!という音が響く。

 

騒いでいた二人が音の方向に振り向くと、其処には地面を足で踏み砕き、小さなクレーターを作った般若の形相をしたAR-15とUMP45がいた。

 

「こ、コルトさん………?」

 

「な、何よ?45?」

 

恐る恐る指揮官と416が声をかけると、ガシィッ!と二人の頭がAR-15とUMP45の手で掴まれる。

 

 

「「ちょっと」」

 

 

「「こっちに来なさい」」

 

 

 

満面の笑みを浮かべながら言う二人に、指揮官と416は恐怖に震えた。

 

「ちょ、ちょっと!元はと言えば指揮官が!」

 

「俺に罪を擦りつけるな!そもそも416が!」

 

 

 

 

「「黙れ」」

 

 

 

 

「あっハイ、すいません」

 

 

 

いつも通りのやり取り。

もう慣れてきたな、と指揮官が思ったと同時だった。

 

 

何処からか放たれた光線が、ビオランテの体躯を包み込み爆炎が広がる。

 

 

 

「な…に………が⁉︎」

 

 

 

全員が、光線の飛来した方向を見る。

 

其処には。

 

 

 

 

不気味に頭部のバイザーを赤く発光させるガイガンがいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

〜数分前〜

 

正規軍の司令本部は混乱の極みに達していた。

威信をかけて開発した新兵器・ガイガンが謎の武装勢力に奪われ、奪還の為に特殊部隊を向かわせるも、当の武装勢力は何者かによって特殊部隊共々殲滅。

更にガイガンが起動し街を破壊した上に、突如現れた四つ足の怪獣と熾烈な戦いを繰り広げた後、何処かへ飛び去るという事態に発展していた。

四つ足の怪獣はその後地中へと姿をくらまし、軍はガイガンの捜索に懸命になっていた。

 

「ガイガンの居場所はまだ特定出来ないのか⁉︎」

 

「間も無く特定出来ます!………特定完了!ガイガンは現在、S-13地区方面へと向けて飛行中!」

 

「よし!直ちに進行ルートに地対空ミサイルを展開!ガイガンを撃墜しろ!」

 

 

報告を受けた司令官は地対空ミサイルの発射を指示。

命令を受け展開された地対空ミサイルがガイガン目掛けて発射された。

 

「………地対空ミサイル、ガイガンに命中。ガイガンの速力が低下。ッ⁉︎ガイガンが降下しました‼︎」

 

「何処だ⁉︎何処に降りた‼︎」

 

「S-13地区!グリフィンの駐屯地です………!」

 

 

悪くなる状況に、司令部の中は重く静かな空気に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ガイガンの電脳は、一つの命令に支配されていた。

 

『………命令を受諾。これより、ガルビトリウム干渉体を所持する目標の回収及び接続を優先。………目標を確認。これより降下し、目標の回収を実施します』

 

バシュウウ!とパルスジェットエンジンの出力を調整しながら、ガイガンは地上へと降下。

其処はS-13地区と呼ばれている場所であったが、ガイガンにとっては知る由も無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、何あれ………?」

 

突如として現れたガイガンの姿に、9が呆然と呟く。

それは当然ともいうべき反応だった。

勿論、俺も内心動揺を隠せない。

そもそも何故ガイガンがここに?

あれは軍の部隊が奪還したんじゃなかったのか?

いや、今はそれよりも………!

 

「全員、この場から退避だ!ガイガンの目的は分からんが、ここにいれば巻き込まれ………ッ⁉︎」

 

 

次の瞬間、俺の身体が妙な浮遊感に包まれる。

ガイガンの腕から放たれたケーブルが、俺の身体を拘束していたからだ。

この野郎、いつの間に………⁉︎

 

「指揮官!このッ………‼︎」

 

AR-15がケーブルを狙って発砲するが、弾はカンカンと虚しい音を立てて弾かれる。

 

「俺の事はいい!お前達は早くここから逃げろ!」

 

地上の皆に向かって叫ぶと同時に、俺の身体がグングンとガイガンに向かって引き寄せられていく。

ギギギという耳障りな音と共にガイガンの口が開く。

こいつ、俺を喰うつもりか。

 

「クソ………こんな事なら、もっとおっぱい揉んどきゃ良かったな」

 

最後に残す言葉がそれか、と聞く奴がいれば呆れるであろう台詞を言って、俺はそのまま奴の口の中へとーーーー。

 

 

 

 

 

 

 

「キュアアアアアアアアアッ‼︎」

 

 

 

 

 

 

入る事は無かった。

 

 

何故なら、何処からか伸びてきた触手がケーブルを叩き切ったからだ。

当然ながらケーブルを切られた為に、俺は地面へと真っ逆様に落ちていく。

しかし、それも別の触手が俺を受け止め地面とのダイナミックキスはかろうじて避けられた。

 

 

その触手を伸ばしているのは勿論、『彼』以外に存在しない。

 

 

 

「ビオランテ………!まさか、俺を………?」

 

 

 

俺を地面へとゆっくり降ろし、数多の触手を掲げてガイガンを威嚇するビオランテ。

 

 

 

「指揮官さま!ご無事ですか⁉︎」

 

 

 

大丈夫だ、カリーナ。

それより今すぐ軍に電話を繋いでくれ。

お前ら御自慢の兵器がウチの基地で暴れようとしてるから何とかしろってな。

クルーガーとヘリアンにも今の状況を説明しなきゃならん。

ここはともかく、数キロ先には街がある。

もしガイガンが街に攻撃でも仕掛ければ、大惨事になるのは確定だ。

何としてでもガイガンを食い止めるぞ。

 

「だが、実際どうする?あんなデカブツ、はっきり言って手に負えないぞ」

 

確かに普通に考えればそうだろうな。

だが、ガイガンを倒す必要はない。

奴の気をそらして街から出来るだけ引き離すのが今回のミッションだ。

 

「簡単に言ってくれるけど、どうやって?下手に近づいたら踏み潰されるのがオチよ」

 

それも問題ないぞ、コルト。

地上から接近するのが危険なら、空から行けばいい。

そして、そのミッションをこなせる優秀なパイロットがウチには一人………いる。

頼んだぜ、パイロットのオッサン‼︎

 

「フン…話は聞かせて貰ったぜ。任せときなァッ!」

 

ニヤリ、と不敵な笑みを浮かべるパイロットのオッサン。

毎度のことだがホントに野太い声だよなアンタ。

よし、準備が出来次第作戦を開始する!

カリーナは基地のスタッフを引き連れて街に避難指示と誘導を。それと並行して、大至急軍に援軍を送ってくれと伝えてくれ。

軍の火力がないとガイガンを倒すのは厳しいしな。

肝心の部隊編成だが、今回だけは特別編成だ。

俺の指揮する部隊とARと404の人員を一時的に混成する。

BAR・LWMMG・416・SOPを第1部隊として、俺とヘリコプターに。

上空から接近し、ガイガン頭部バイザー部分への火力集中攻撃を。

春田さん・モシンナガン・わーちゃん・AR-15は第2部隊に。

ここから北の方角にある電波塔が見えるだろ?

君達第2部隊の役割は其処からの狙撃による援護射撃だ。

狙う箇所は同じくバイザー部分。

そしてM16・M4・UMP45は基地の自動迎撃システムを再起動し、ガイガンに対しての攻撃を行わせろ。

RO・UMP9・G11はカリーナ達と一緒に避難作戦の支援をしてくれ。

それと、避難作戦に携わる人形達の全指揮権をROに委ねる。

街の方は任せたぞ。

 

 

何か言いたいことはあるか?

 

「指揮官、ちょっといいか?」

 

どうした、M16?

 

「狙う箇所は頭部のバイザー部分と言っていたが、何故なんだ?」

 

ああ、それな。

さっき俺がガイガンに食われそうになっただろ?

あの時にな、見えたのさ。

奴のバイザー部分に、僅かにだが亀裂が入っているのがな。

右腕に至っては鎌状の部分が綺麗に切断されている。

理由は分からないが、恐らく奴は此処に来るまでに外殻に損傷が入る程の外敵と交戦したんだろう。

それが軍なのか、若しくは別の何かなのかは分からんが。

 

質問はそれだけか?

他に意見がないなら、作戦に取り掛かる。

 

全員持ち場に移動し、それぞれの任務を遂行しろ!

 

 

 

「「「「「了解‼︎」」」」」

 

 

 

 

 

〜ヘリコプター機内〜

 

「ガイガンとの距離120メートル!指揮官さんよォ、どれくらい奴に接近すればいいんだ⁉︎」

 

「最低でも100メートル以内!勿論、できる限り近くが望ましいが、アンタの匙加減に任せる!」

 

「ハハハッ‼︎中々無茶な事を言う‼︎いいだろう、少々揺れるが振り落とされてくれるなよォ‼︎」

 

パイロットの男は野太い声で笑いながら、操縦桿を握り直し、ガイガンへと機体を近づけていく。

 

「今だ!全部隊、攻撃開始!」

 

指揮官の号令と共に、人形達が一斉に射撃を開始する。

LWMMGとBARの放つ無数の徹甲弾と、416とSOPの榴弾がガイガンのバイザー部分に次々と着弾。

爆炎がガイガンを包み込む。

 

 

 

 

 

「キィィィィィィィィィォォォッ‼︎」

 

 

 

 

 

攻撃を受けたガイガンは、機械的な叫び声を上げて鬱陶しそうにヘリコプターへと視線を向けた。

 

「よし!奴の注意を引きつける事に成功したな!街から遠ざける為にも、更に攻撃を加え続けるんだ!後は基地の自動迎撃システムが起動すれば、かなり時間を稼げる筈だ。M16、応答しろ。迎撃システムは後どれくらいで起動できそうだ?」

 

『後少しで起動できる!だからそれまで持ち堪えてくれよ、指揮官‼︎』

 

「任せておけ。しかし妙だな………何故奴は攻撃してこないんだ?」

 

指揮官が感じる小さな違和感。

ガイガンに対し、攻撃を加えているが反撃というものが全くない。

理由は分からないが、それがどうにも不気味であった。

 

 

「ピィィィィィィォォォッ‼︎」

 

 

そんな中、甲高い声のようなものが響き渡る。

何事かと思いながら指揮官達が音の聞こえた方向を見ると、ガイガンの身体が幾重にも重ねられた触手によって拘束されていた。

 

「ビオランテが………!アイツ、ガイガンと戦うつもりか⁉︎」

 

触手を巻き付けられたガイガンは触手を振り解こうと暴れるが、暴れれば暴れる程触手の締め付けは増していく。

 

「凄いな………あれなら軍が来るまで持ち堪えられそうだぞ」

 

暫く暴れていたガイガンは、拘束が解けないのを悟ったのか、急に動くのを止めた。

それと同時に、カシュン‼︎という音と共にガイガンの両肩付近から何かが射出される。

 

回転斬滅鋸(ブラッディ・ソー)と呼ばれるそれは、緩やかな軌道を描きながらガイガンを拘束している触手をあっさり切り落としていく。

自由の身になったガイガンが、ビオランテの方を向く。

次の瞬間、ガイガンのバイザー部分から赤く光る光線………拡散赤色光線(ギガリューム・クラスター)が立て続けに放たれた。

 

「ピィィィアアアアアアアアッ⁉︎」

 

堪らずビオランテが悲鳴のような音を発するが、ガイガンの攻撃が止まる気配はない。

回転式電磁砲(ガトリングレールガン)が唸りを上げて弾幕の嵐をビオランテに浴びせ掛ける。

炎がビオランテを瞬く間に包み、断末魔をあげながらビオランテの巨大な植物の身体が燃え落ちていく。

 

「ビオランテ………!クソッ!」

 

「指揮官‼︎アイツがこっちを‼︎」

 

邪魔者を排除した事に満足したのか、ガイガンは頭を指揮官達の方へと向けた。

 

その顔に広がるのは、サイボーグ兵器とは思えない邪悪な笑み。

 

 

 

 

「不味いッ!避けーーーー」

 

 

 

 

カッ‼︎とガイガンのバイザー部分が発光し、次の瞬間ヘリコプターを爆炎が呑み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………?い、生きてる?」

 

いつまでたっても来ない衝撃と爆炎に、恐る恐る416は反射的に閉じていた目を開けた。

 

「何、これ………?」

 

視界に広がる金色の粒子。

無数に散らばる金色の粒子が、ヘリコプターを守るかのように包み込んでいた。

粒子が集まり、それは一つの形を取る。

 

 

「ビオランテ………!アンタなの⁉︎」

 

 

粒子が形作ったビオランテの姿を見て、呆気に取られる416。

皆が呆然としていると、粒子は再び収束し地面の中へと吸い込まれていく。

それと同時に、地面が激しく振動し、メキメキッ‼︎という何かが砕けるような音が辺り一帯に響き渡った。

 

 

 

 

 

そして。

 

 

 

 

 

それは現れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは、元は取るに足らない一輪の薔薇だった。

極々普通の大地に根を張り咲き誇る一介の植物だった。

しかし、何の運命か世界は薔薇をそのままにしてはくれなかった。

人間の手によって身体を弄られ、醜悪な触手の怪物とされ、挙句の果てには怪獣といっても差し支えない存在に成り果てた。

 

それでも彼は願い続ける。

 

 

 

 

 

生きたいーーーーーーと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天が揺れた。

地が砕けた。

星で眠る巨大生命達が、その生命の息吹を感じとった。

 

 

 

 

 

彼は今日までは、怪獣となっても植物の延長線上に過ぎなかった。

 

 

 

 

 

舞い上がる土煙が晴れた先に、彼は佇んでいた。

緑がかった泡状の表皮。

金剛力士像のような筋肉質のマッシブな体躯。

身体全体を這う葉脈。

その背に生えるは、柊の葉のような巨大な三列の背鰭。

 

 

 

 

そして、確かな知性を感じさせる蒼く輝く瞳。

 

 

 

 

何度か瞬きをした彼が、眼前のガイガンを視界に収める。

 

 

 

 

 

 

「グウォォェェェェェェェェェェェェェェェェンッ‼︎」

 

 

 

 

 

はち切れんばかりの大質量の咆哮が響く。

 

 

 

 

 

 

彼の名は、ゴジラ

 

 

 

 

 

 

否。

 

 

 

 

 

 

ゴジラ・アース

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

 

「自然発生の『特異点』…⁉︎」ーーーーーーMONARCHの研究者 エレナ・コールマン

 

「(何あれ………?ガイガンの後ろに、何かいる?)」ーーーーーーAR小隊の隊長 M4A1

 

「そんな………‼︎どうして、貴方がッ⁉︎」ーーーーーー404小隊の隊長 UMP45

 

「ん?あたいの事知ってるの?」ーーーーーー人間を憎む記憶を失った人形 UMP40



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 50~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。