――それはこの世に産み落とされた、
産まれるはずのなかった命。
血に呪われた黒い肉体。
遠くを見定める炎の隻眼。
闇を染め上げる金緑のひかり。
見届けよう。
これは、誰も知らない、
知ることのない、
流れ星が見た夢の物語。
★★★
どんよりとした鈍色の雲から細かな雨の降りしきる中、故「聖騎士」藤本獅郎の葬儀は静かに執り行われた。
時間はすでに夕暮れ時。ひしめくように葬儀場を埋め尽くしていた参列者もそのほとんどが姿を消し、真新しい墓石に寄り添うように立っているのは最早、彼一人だけになっていた。
奥村雪男。獅郎が神父を務めていた教会で育った、彼の養子だ。
憂いを含んだ青い瞳で、彼は雨に濡れる父の墓を見下ろしている。長年自分を、息子としても祓魔師としても立派に育て上げてくれた父親が、兄を守って命を絶った――その胸に去来する想いがどんなものであるか、それを知ることは誰にもできない。
と、小雨の奏でるさらさらという音に、ばしゃりと大きな水音が混じった。
「雪男」
低く、胸に直接染み渡るような不思議な響きを持った女の声に、俯いていた雪男は少し顔を上げて振り返った。青い瞳がほんの少しだけ、見開かれる。
「昴さん」
雪男の視線の先には、真っ黒な傘を頭上に差した女がひとり、立っていた。
年の頃は雪男と同じくらいだがすらりと背が高く、長身の雪男と比べてもそこまで身長差はない。体躯は女性にしてはやや細身だが、肌は暗く曇った空の下でも白く輝くようだった。刃のような鋭く美しい顔立ちをしているが、顔の左半分は何故か黒いベリーショートの髪の下に隠れてしまって、顔全体を視認することはかなわない。
雪男が「昴」と呼んだその女は、気づいてもらえたと分かると愛おしそうに切れ長の目を細めて、静かに微笑んだ。
「わざわざ寮から来てくださったんですね……すみません、忙しい時期なのに」
「何言ってんの。こんな大事な時に……もしかして、私は世話になった恩人の葬式にも来ないような冷血漢に見える?」
「ち、違います! そんなつもりで言ったんじゃ……」
「やだな。冗談だよ、冗談」
慌てふためく雪男を見て、女はくすり、とおかしそうに笑みをこぼした。古苔のような深い緑色をした瞳孔が、しっとりと濡れた光を放つ。
彼女の名は朝比奈昴。奥村兄弟と共に、教会で藤本神父の保護を受けていた孤児で、兄弟にとっては姉も同然の存在だ。歳こそ彼らと同じだが、その大人びた仕草や性格のせいか、教会内では「昴は姉」という認識が定着していたし、昴自身もまた奥村兄弟のことを実の弟のように慈しみ可愛がっていた。
彼女が中学2年生の時、聖十字学園の附属中学校に編入し寮に入るまでは、何をするにも3人一緒だった。寮に入るため教会を離れた後も、2週間に1回は養父である藤本神父に顔を見せに教会に戻っていたのだが――。
次の帰省日を待たずして、藤本神父は死んだ。
しかも、燐をあの、虚無界を統べる凶王・魔神(サタン)の魔の手から守って。
「――あの人らしいね」
「え?」
横手にある真新しい墓石を見下ろしながら、昴は言った。
この物語の主人公登場です。
不幸で、頑なで、まっすぐで、家族思いな子です。
どうぞ末永く見守っていただければ幸いです。
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第1章・葬式②
「藤本神父は強かったし、こんなあっさり死ぬような人じゃないはずだった。皆も、もちろん私もずっとそう思ってた。けどね、どこかしっくり来てるような気もしてね。燐を……息子を守って死ぬなんて、世話焼きなあの人らしいっていうかさ」
静かな、うたうような声だった。伏せられた深緑の瞳は涙をこぼすことはないが、滴るような深い哀愁をはらんでいる。そのどこまでも静謐な表情を、雪男は黙って見つめていたが、やがて何かを決心したように口を開いた。
「……こんなこと、今更だとは思うんですけど」
「うん?」
墓石に落とされていた昴の視線が、傍らの雪男に向けられる。
「神父(とう)さんは何故、昴さんに兄さんがサタンの子どもであることを教えたんでしょう。僕は当事者ですから、分かります。でも昴さんは一般人で……兄さんの秘密を教える理由はないように思うのですが」
「私、一般人じゃないよ。祓魔師だもん。あ、「元」祓魔師か。剥奪されちゃったもんね」
「……」
何でもないことのように話す昴とは裏腹に、雪男は目を伏せて痛みを堪えるような表情を浮かべた。
「保険だよ、多分。燐の炎が抑えられなくなることを見越して、一緒に教会で育てられていて、且つ手騎士(テイマー)の才能を持っていた私が祓魔師になれば、いざという時応急処置でも任せられると思ったんじゃないかな。私が純血竜(ピュアリニアル・ドラゴン)を喚び出せば燐を押さえつけとくくらいのことはできただろうし、実際、もしものことがあったら頼むって言い含められてたしね」
昴は墓石から視線をはずし、重く澱む灰色の空を見仰いだ。顔の左側を隠す前髪の一房が、湿気に耐えかねたようにずるりとこめかみの方に滑り落ちる。
その隙間から覗くものを――彼女の左の顔に遺るものを、雪男は知っていた。けれどまじまじと見る勇気はなくて、視線を不自然にさまよわせることしかできなかった。
見れば思い出してしまうから。あの時のことを。
「でもあんなことになっちゃって、教会を出て行かなくちゃならなくなって……あの時はほんとに迷惑かけたな。一度も怒らないで見送ってくれたの、まだ昨日のことみたいに思い出せるのに……」
昴は雪男と同じく、史上最年少の13歳で祓魔師の試験に合格した優秀な手騎士兼騎士(ナイト)だった。雪男と並んで天才と称され、将来は聖騎士も夢ではないと大人達からもてはやされていたのだ。
ある「事件」を起こして審問にかけられ、すべての称号(マイスター)を剥奪されるまでは。
「私は燐を守る役目を放棄した。そういう意味では藤本神父を殺したのは私だとも言えるだろうね」
「そんな、やめてください! 昴さんは何も悪くない!!」
遠い目をした昴のその呟きに、耐えられなくなって雪男は叫んだ。彼女はいつもこうやって自分を責める。慰めや同情の言葉を欲しているわけではない。純粋に、何の他意もなく、自分がすべて悪いと思いこんでいるのだ。だからまるで明日の天気のことを語るような調子で、神父を殺したのは自分だとのたまってしまう。平気でその重すぎる責務を自分だけで背負おうとしてしまう。
雪男や燐と兄弟のようにして育ったはずなのに、学園には少なからず友人もいるはずなのに、昴はいつも独りで生きているようだ。そういう、野生動物のような、一生かかっても心から分かり合うことはできないような、手のかからなさが雪男は嫌いだった。
「大声を出して、すみません……でも、違います。昴さんのせいじゃありません。あれは事故だったんです。だから……」
だから、何だろう。次にかけるべき言葉が思いつかなくて、雪男は口を噤んだ。今は昴の悪癖を問いつめるような場面ではないし、実際問いつめてみたところで、ただ黙って困ったように微笑まれるのがオチだ。だから。
滅多に聞かない雪男の荒れた声に、昴はしばらくその隻眼を見開いて驚いていたが、すぐに表情を笑んだ形に戻した。雪男が見たくなかった、困ったような、申し訳なさそうな色が貼り付いた笑顔だった。
「……ありがとう。雪男は優しいね」
「何言ってるんですか。優しくなんかありません。何も……」
雪男は一度深く俯き、意識して息を強く吐き出した。まだ春になったばかりの冷たい外気に、こぼれ出た息はひどく熱く感じられた。
冒頭から色々と過去を匂わせてまいります……。
雪男、敬語で喋っていますが夢主のことは非常に信頼しています。
夢主の負担になりたくないのでつとめて自分が自立できていることをアピールしているのです。健気!
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第1章・葬式③
雪男は一度深く俯き、意識して息を強く吐き出した。まだ春になったばかりの冷たい外気に、こぼれ出た息はひどく熱く感じられた。
「……問題は兄です。炎を抑えられなくなってしまった」
「そうだね。あのままじゃあ正直どうにもなんないだろうなぁ。日本支部で匿っていられるのも時間の問題、ちょっとでもヘマをすればバレて殺される。今のところはあのいけ好かないクソ悪魔に頼るしかないね」
昴は傘の柄を握ったまま器用に腕組みをして言った。その顔には隠しきれずにじみ出る嫌悪の表情。――と言うのも、彼女は聖十字騎士團の日本支部長、メフィスト・フェレス卿をやけに嫌っている。理由は雪男も知らないが、あの常に人を馬鹿にする食えない悪魔を嫌う気持ちはよく理解できる。
しかし、どうにもならない。確かにそうだ。燐のサタンの炎は、もはや降魔剣では完全には抑えきれなくなってしまった。剣が折れれば燐はその肉体に宿った青い炎にたちまちにして意識を呑まれ、人も悪魔も関係なく灼き殺してしまうだろう。フェレス卿の気まぐれがなければ、今すぐこの場で殺されていてもおかしくはなかった。まあ、今生き延びられたとしてもその場しのぎでしかないわけだが。
本当に馬鹿だ。サタンの息子が祓魔師だなんて。笑い話にもならない。そんなことをして生き長らえて何になる? 炎を扱えるようになったところで、父が帰ってくるわけでもないのに。
雪男のこわばった表情を見て、昴はそのほっそりとした手を雪男の肩の上に置いた。骨の髄まで凍っているかのような冷たい冷たい手。幼い頃、高熱を出すたびに昴が添い寝してくれたことを思い出す。体温の低い彼女が傍にいると、熱にうなされる身体がひんやりとして気持ちよく、とても楽になったものだ。
「大丈夫だよ雪男。燐も、雪男も、殺させたりなんかしない。絶対に」
そしてその冷たさと裏腹に、深い森の色の目は強い決意をはらんで燃えていた。瞳孔の奥の方からは微かに、稲穂のような金と緑の光がちろちろと揺らめいている。昴はいつも、何か覚悟を決めるときにこういう目をするのだ。
殺させたりなんかしない。彼女も雪男と同じように、燐を守る覚悟があるのだ。誰を敵に回しても、どんな犠牲を払っても、きっと彼女はそばにいてくれる。そうやって疑いもなく信じられることが、雪男は何より嬉しかった。
「祓魔師の資格も取り直すし、そうしたら、また私が二人を守る。だから安心して。ね?」
「……はい」
母親のような優しい声で言う昴に、雪男は神妙にうなずいた。
雨足も強まってきたので、そろそろ行こうか、と二人して踵を返す。
「おぉわっ」
昴が間抜けな声を上げた。この長雨でできたぬかるみに足を取られたのだ。バランスを崩した彼女の身体を支えたのは、すっかり男らしい体つきになった雪男の腕だった。
驚いたように振り返る昴の視線を受け止めて、雪男は不敵な笑みを浮かべる。
「守られるのも吝かではありませんが、少なくとも僕は守られっぱなしでもいられません。最年少で祓魔師の資格を手に入れたプライドがありますから」
鼻でも鳴らしそうな態度の雪男に、昴はやられた、とばかりに片目を歪めて微笑んだ。雪男の一番好きな彼女の表情だった。
「ふふ、頼もしいねえ。さすが私の弟といったところかな」
「当然ですよ、『姉さん』」
昴は雪男の精神的支柱です。が、果たしてこの先どうなるか。
色々展開を考えているのでお披露目する日が楽しみです。乞うご期待!
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第1章・葬式④
「はぁい、燐」
「……昴」
昴が片手を上げて近寄ると、燐は俯いていた顔を少しだけ上げて、すぐにまた元のように俯いた。
教会の裏口に設けられた小さな階段、屋根が少し張り出してぎりぎり雨をしのげる場所に、燐は座っていた。そういえば喧嘩や不登校のことで藤本神父に叱られると、頭を冷やすためによくこうやって座り込んでいたっけ。思い出し笑いをしながら、昴は燐の隣のわずかなスペースに滑り込むようにして座った。
「帰ってきてたのか」
「そりゃこんな大事があればね。ただいま」
言いながら横目で燐の表情を伺ってみたが、前髪に隠れてよく分からない。触れ合った肩は湿っていて、少し前までずっと雨に打たれていたことが伺い知れた。
「雪男とちょっと話してきたよ。そろそろ行こうって」
やはり返事はない。昴は息をつくと、視線を鈍色の空へと差し向け思案した。他に何か話しておくべきことはないだろうか。
(雪男はまだ自分が祓魔師だってこと燐に言ってないみたいだし、私がしゃべるわけにはいかないな)
雪男は若干7歳という幼さで祓魔師の世界に身を投じながら、燐に祓魔師関連のことは一切話さなかった。そうすることで、何も知らずに脳天気に生きている兄と、幼少から祓魔の道をひた走る自分との区別を濃くして、プライドを保っているようだった。まったく見上げた負けず嫌いだ。
まあつまり、話すことが何もない。昴は暇そうに足をプラプラさせ始めた。
「……」
「……」
沈黙が流れる。雨の降るさらさらとした音だけが、空を覆って屋根を伝い、鼓膜へと優しく流れ込んでくる。
「……お前、大丈夫なのか」
「え? 何が?」
突然低い声で発せられた質問に、昴は聞き返した。
「傷だよ。目んとこの。まだ痛むんじゃねえのか」
「はあ」
呆れたように息を吐く。まただ。燐は昴が教会に帰省するときまってこの質問をする。
「もう痛くないよ。てか毎回その質問するよね。1年以上経つのに」
「1年……もうそんなに経つのか」
燐が少しだけ顔を上げて、その美しい青い目で遠くを見やった。その視線の先には、今しがた棺におさめられて埋葬された、藤本神父の眠る墓地がある。
「お前、あの時死んじまうんじゃねえかって顔してたから。今でも昨日のことみてーに思い出せる」
昴は思わず笑った。体温を奪い去る冷たい春の雨の底で、お腹と喉があたたかく震えるのを感じた。
「何だよ、おじいちゃんみたいなこと言っちゃって。ばかだなあ」
そこで、燐の目がはじめて昴の方を見た。青く茫とひかる、火蜥蜴の吐息のような瞳に射すくめられて、身体が一瞬寒さを忘れた。
燐と対面する場面です。
雪男の前では割とかっこつけたがる昴ですが、燐といると結構調子崩されます。良い意味でも、悪い意味でも。
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第1章・葬式⑤
「ばかはお前だ」
顔の左半分を隠す長い前髪に、何かが触れた。燐の指。骨の太さをありありと感じる、無骨な指だ。
「女がカオに傷つくって、大丈夫なわけあるか」
昴は目を見開いた。深緑の瞳の奥で、いくつもの金緑色の星がぱらぱらと散った。それと同時に、嬉しいような、泣きたいような、胸がきゅうと締め付けられるような気持ちが襲ってきた。父と慕っていた人間を失ってなお、彼が人に分け与えようとする優しさが、その痛々しさが、どうしようもなく切ない感情を彼女の心臓から引きずり出してきた。
(こういうところだよねぇ。まったく嫌になる)
燐は自分を家族のように慕ってくれる。嬉しいことがあれば自分以上に喜んでくれるし、悪いことをすれば叱ってくれる。傷ついたら寄り添って、どんなにはねのけても見限らずに、黙って遠くから見守ってくれる。そのことが、燐にとっては当たり前であろうそれらのことが、昴にはずっと涙が出るほど嬉しかったし、同時にとても申し訳なかったのだ。
――この教会に来たときから、昴が幾重にも嘘を塗り重ね守っている「真実」を知ったら。
燐は、雪男は、それでも自分を姉と慕ってくれるだろうか。
すべてが明るみになる時。いつか必ずやってくるそれは想像するだに恐ろしく、昴は恐怖を振り払うように勢いよく立ち上がった。燐が驚いたように昴を見上げている。
「燐。生きなよ」
「……は?」
今度は燐が聞き返す番だった。昴は燐の方を見ない。霧雨に白くけぶる教会の裏庭で、まっすぐ前を見つめた瞳が煌々と金緑色にひかっている。
「悲しくて悔しくて、押しつぶされそうだって思うかも知れないけどさ。どんなことがあっても、生きることだけは諦めちゃいけないよ。死ぬことは逃げだよ。本当に藤本神父を悼む気持ちがあるなら、生きるんだ。何があっても、どんな手を使っても」
昴はとりつかれたように言葉を並べ立てた。彼女がしゃべるたびに熱い吐息が白く立ち現れて、霧雨の中に溶け消えていく。
「支えられてるんだ。私たちが何も知らずのうのうと生きている、その裏で。どれだけの人がどれだけの犠牲を払って自分を守ってくれてるのか、私たちは思い知らなくちゃならない。この身に刻みつけなくちゃならない。それができないなら――……」
「昴……?」
昴の、静かに忍び寄るような独特の剣幕に気圧され、燐はおののくように彼女の名を呼んだ。その声に昴は夢から醒めたようにはっとして、燐を見た。その隻眼に宿っていた金緑色が、夕陽が山の端に落ちていくように、すうっと深緑の奥に消えていく。
「……ごめん。何でもない」
昴は笑った。今にも泣き出してしまいそうな微笑み。燐はそれが彼女が何かを誤魔化そうとしている時の表情だと知っていたが、とてもそれを指摘する気持ちにはなれなかった。昴も彼女なりに藤本神父の死を悲しみ、苦しんでいるのだと、痛いほどに感じ取れたから。
ぱしゃり、と雨飛沫を立てて、昴の足が水たまりを踏みつける。屋根の外側に出た彼女の身体を、霧雨が優しく包み込むようにして迎え入れた。
「まあ何はともあれさっ、あんまくよくよするなって! 生きてりゃそのうち良いことあるでしょってこと! 藤本神父も、燐が笑って生きてくれるようにって願ってるだろうからさ!」
両腕を広げて振り返った昴は、そう言って笑った。もう泣きそうな顔はしていない、明るくにこやかないつもの彼女だ。
「……ああ」
燐は顔を歪めるようにして微笑み、頷いた。早々に感情を隠してしまった昴に、それくらいしかしてやれることがなかった。
雪男も、昴も。もっと感情をさらけ出してもいいんじゃないのか。泣いて、怒って、当たり散らしてもいいんじゃないのか。父と慕っていた人間がいなくなったのに、彼らは泣くこともなく、少なくとも表面上はとても穏やかだ。
誰も燐に藤本神父が死んだ経緯を聞かない。聞かれたところで真実を教えてやれるわけではないけれど、それにしたってどうしてあんなふうに誤魔化したりして、うまく本心を隠してしまうのか燐には分からなかった。
……家族なのに。
「雨、まだ降るね。そろそろ行こうよ」
鈍色の空に向けて手をかざし、霧雨を全身で受け止める昴に、燐は曖昧に頷いた。
それだけじゃない。疑問は他にもあった。彼女に対する長年の疑問が。
教会で娘のように育てられ、燐と雪男と姉弟のように育ってきたのに。
――どうして昴は、藤本神父のことを「父さん」と呼ばないのだろう。
その理由を、隠された彼女の秘密を、彼が知るのはもう少し先の話。
はい!実はもうストックありません!この先書いてません!(涙
物語の始まりというところで止まってしまいすみません……プロフや小説説明にある通り私はかなり遅筆なので次更新するのはかなり時間がかかると思います。
更新楽しみにしてくださっている方には非常に申し訳ない……。
みんなすごいよなー!!すごい更新頻度じゃん!?それでそんな面白い話書いてんの!?ずるくない!!!????(嫉妬)
……文句は程々にして。書きます。頑張ります。幸いお気に入りしてくださっている方もいて、とても励みになっております。色々考えているネタはたくさんあるので、少しずつでも形にしていきたいです。
昴の物語はまだまだこれから!
年内には必ず!更新しますので待っていてくださると嬉しいです!
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