月の少年と彩りの少女 (ゆるポメラ)
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第0話 出会い
この度、連載時期がきたので連載する事になりました。
相変わらず拙い内容ですが、楽しんでもらえると嬉しいです。
それではどうぞ。
突然だが、みなさんは初めての高校生活が楽しく送れると思った事がおありだろうか?
…僕の場合は、ほんとに仲が良い友達が一緒ならそれで良いと思う……
だって、そうでもないと僕自身が楽しいとは思えないから。
(…寝ちゃってたか……)
どうも。僕の名前は
月ノ丘高等学院に入学したばかりの高校1年生です。
って、誰に挨拶してるんだろ……
「あ~。ゆうくん起きた~♪」
「…ルーちゃん?」
声をかけてきたのは、同級生で幼馴染みの
マイペースで優しい女の子だ。
「ゆうくん~、昨日はちゃんと寝たの~?」
「…多分。2時間くらい?」
「それは寝てないと同じだよ~? ちゃんと睡眠を取らないとダメ~」
寝不足は確かによろしくないけど、僕の場合はそうも言ってられないからなぁ……
「ルナ、戻ったわよ。あら…ユーリ起きたのね」
「…うん、ほんの数分前に起きた」
教室のドアが開き入って来たのは、
僕、ルーちゃんの幼馴染みである
元々はフランス出身で、小さい頃に両親と日本に引っ越して来たのだ。
「入学式して1週間経ったけど、慣れないものね」
「…学校ってそんなもんでしょ? 僕は中学よりはマシだと思いたいけど……」
「ゆうくん大丈夫だよ~。わたしのお母さんが理事長だから安心して~」
「そうよ、ユーリ。ちょっとぐらいは安心しても私はいいと思うわよ?」
優しい表情で言う、ルーちゃんとティアちゃん。
…2人……正確には、ここにはもういないが、もう1人を含めた幼馴染み……3人は中学の時に僕が経験した頃を知っている。
そして先程、ルーちゃんが言ったが月ノ丘高等学院の理事長は彼女の母親なのだ。中学時代がゲロカスだったので、推薦でこの高校に入学させてもらったのだ。
「そう……だといいな……」
「……さ、そろそろ完全下校の時間だし帰りましょ?」
「…うん、そうだね……」
僕の表情を見て察してくれたのか、ティアちゃんがそう言った。
こういう気遣いは僕としても凄くありがたかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「あ~あ~、来週から本格的に授業開始か~。わたし乗り気じゃないよ~……」
「普通は入学式が終わって2~3日してからが授業開始なんだから文句言わないの。ね、ユーリ?」
「そうだね……授業についていけるか心配だけど……」
帰宅通路を歩く中、
なんでもない会話をする僕達。
入学式を終えてからの今日まではオリエンテーションが続いた。来週からは本格的に授業が始まるのである……
(帰ったら何をしようかな……?)
そう思ってた時、スマホが鳴った。
着信から察するに電話だったので、その場で足を止め通話ボタンを押す。
「…はい。もしもし」
『おお、繋がった! 水無月君、急に電話してすまないね』
電話の相手は昔、小さい頃にお世話になった芸能事務所の社長さんだった。
今でも手紙程度は送ってるので、声を聞いたのは久しぶりだった……
「…いえ。あの……僕に何か御用ですか?」
『おお、そうだったそうだった! 急で申し訳ないんだが、今から事務所に来てもらってもいいかね?』
「今から……ですか?」
『詳しくは水無月君が着いてから説明させてもらうよ。今ちょっと別の案件で立て込んでいてね……』
「…分かりました。着いたらどうすればいいですか?」
『入口にスタッフを待たせて案内させるよう手配しておくよ。私もすぐ今の案件を終わらせよう』
「…分かりました。じゃあ今からそちらに向かいます」
そう言って僕はスマホの通話終了ボタンを押した。
「…ごめん。2人共、今からちょっと事務所に行ってくる」
「うん~、大丈夫だよ~。社長さんが、ゆうくんに電話なんてよっぽどの事だしね~」
「ルナに同意ね。ユーリに何か頼み事でもあるのかしら?」
先程の電話の内容を聞いてた2人に話す。
ルーちゃんとティアちゃんも社長さんには会った事があるので、あんまり動じなかった。
家に着いたら連絡すると2人に伝え、その場で別れた後、目的地に向かった……
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
走って20分だろうか?
社長さんに呼ばれた事務所に着いた。
「すみません。社長に呼ばれた水無月悠里なんですが……」
入口にいたスタッフさんらしき人に声をかける。
「ああ。お忙しいところすみません……ご案内しますので、こちらへどうぞ」
スタッフさんの案内で事務所の中へ入る。
数年ぶりに入ったので懐かしく感じた……
「こちらになります。社長も既に中にいらっしゃいます」
「…え? さっきまで別の案件をやってたって電話で言ってたんですけど……」
「それが……その案件とはまた別の案件が入ってしまいまして……"一旦休憩じゃボケー!!"と叫びまして……」
あの人は全く……
そう思いながらもスタッフさんにお礼を言ってドアをノックして中に入る。
中に入ると、社長さんと僕と同年代と思われるピンク色の髪色をした少女がいた。
「おお! 水無月君、久しぶりだね」
「…お久しぶりです。お仕事……相変わらず大変そうですね……」
「そう言ってくれるのは、君と会長だけだよ……」
「あの……それで僕は何故ここに呼ばれたんですか……?」
そう言うと社長さんは、おおそうだったと言い、来客用のソファーに座すように促した。
…相変わらず、事務所のソファーの座り心地は違うなと思ってると……
「水無月君。こちらの彼女が……」
「は、初めまして。
「これはどうもご丁寧に……水無月悠里です」
ピンク色の髪色の少女……丸山彩ちゃんが緊張気味に僕に挨拶をする。
「はっはっはっ♪ 2人共そんなに緊張しなくても。それで水無月君。急で申し訳ないが、連絡をしたのは君に頼み事があってね……」
「頼み事……ですか?」
すると社長さんは深呼吸をした後、真剣な表情で口を開き……
「彼女の……丸山君のマネージャーになってもらえないか?」
「「……えっ?」」
突然過ぎる内容に、僕と彩ちゃんの声が重なった瞬間でもあった。
読んでいただきありがとうございます。
次回の投稿は早くても、明日辺りになると思います。
今後ともよろしくお願いいたします。
※主人公とオリキャラの簡単なプロフィールです。
容姿イメージ:『らき☆すた』の岩崎みなみ
誕生日:12月12日、いて座
血液型:A型
一人称:僕
容姿イメージ:『テイルズオブエクシリア』のエリーゼ・ルタス
誕生日:11月11日、さそり座
血液型:O型
一人称:わたし
容姿イメージ:『蒼の彼方のフォーリズム』の倉科明日香
誕生日:10月10日、てんびん座
血液型:A型
一人称:私
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第1話 よろしくね
サブタイ通りの感じになってます。はい。
それではどうぞ。
芸能事務所から歩いて約10分のとあるカフェ。
ここに少年少女がいた……。
「「…………」」
悠里と彩である。
何を喋っていいのか分からない為か2人共、黙ってしまっている……
そもそも何故こうなったかというと……
ーー遡る事、10分前……ーー
「…マネージャー……ですか?」
「そう。マネージャー!」
事務所の社長が悠里を呼び出した訳は、なんと彩のマネージャーをやってほしいという内容だったのだ。
聞き間違いかと思い、もう1度訊ねると社長は笑顔でリテイクした。
「…用件は分かりましたが何故僕なんです? その子のマネージャーならいる筈でしょう?」
溜息を吐きながら社長に問う悠里。
彼が言いたいのはこうだ。彩が事務所に所属している以上、彼女担当のマネージャーが既にいる筈なのである。
悠里が言いたい事を理解した社長は……
「君が言いたいのは尤もだよ。実は、丸山君の担当のマネージャーが体調を崩してしまってね……」
「…風邪か何かですか?」
「それもあるんだが……その状態のまま出勤して来る途中で車に轢かれてしまってね……現在絶賛入院中なんだよ」
苦笑いしながらも説明する。
そのマネージャーは恐らく仕事真面目な人間なのかなと悠里は推測した。
「次に水無月君をマネージャーに選んだ理由なんだがね。私情なんだが、君しかいないと思ったのが一番の理由だ。他にも理由はあるが一番の理由はこれかな」
それは理由になっているのか?と思った悠里だが、敢えて黙っておく事にした。
「…つまり要約すると、彼女の担当マネージャーが退院するまでの間だけの間、マネージャーを僕にお願いしたい……と……」
「そうそう! 急なお願いで申し訳ないんだが……」
申し訳なさそうな表情で頼む社長に悠里は少し考える。
断ってもいいのだが、そうした場合、彩の今後が危ぶまれる。それに別のマネージャーを探すのも一苦労なのだ。社長だって空き時間を作るのは簡単ではないと分かっていた悠里は……
「…分かりました。僕で良ければやります」
「本当かい!? ありがとう!」
「あ、ありがとうございます」
頼みを受ける事にした。
引き受けた事に対し、お礼を言う社長に彩もお礼を言う。
「こうしちゃおれん! 私はこれから会長にこの事を知らせておくよ!」
「…はぁ、そうですか。僕も今度、会長に挨拶には伺います」
「おおそうか。会長も喜ぶと思うよ。丸山君も今日は上がっていいよ」
「は、はい。お疲れ様です」
彩がそう言うと社長はドアに手をかけようとしたが……
「おっと! 危うく言い忘れるところだった。水無月君!」
何か言い忘れていた事があったかのように社長は悠里の方を向く。
「さっきの話なんだが、彼女の護衛の方もよろしく頼むよ!」
「…えっ? あ、あの……」
それだけを言い残し、部屋から出て行った。
「え~っと……これからどうします?」
「そうだね……あっ、というか敬語にしなくてもいいよ? 僕ら同年代みたいだし」
「そ、そうだね……」
「……どっか、お茶しにでも行く?」
「じゃ、じゃあ、ここから歩いて10分くらいのカフェに行かない?」
「…ん。了解」
────という事があり、今に至る。
カフェに着いてから15分くらいだろうか? ずっとこの状態である……
一応、お互いに注文するメニューは頼んだのだが……
((な、何を喋ればいいんだろう……?))
このままではマズイと思い、悠里は何かないか思考を巡らせる。
ただでさえ、彩に気を遣わせてる感があったので、それだけは駄目だと思ったからだ。
「えっと……改めまして、彩ちゃんのマネージャーになりました。水無月悠里です」
まずは挨拶だと思った悠里は自己紹介をする。
「こ、こっちこそ改めまして、丸山彩です。えっと……」
とりあえず挨拶という"話題"を出してくれた悠里を察したのか、彩も自己紹介をする。
何か言い淀んでいたが、その理由が分かった悠里は……
「…名前でいいよ? 僕も"彩ちゃん"って呼ぶから。というか既に呼んでるけどね……」
彩の呼びやすい方で良いと言った。
それを聞いた彼女は……
「うん! よろしくね。悠里くん」
安心したのか笑顔で答えた。
とりあえず先程までの空気は嘘のように無くなった。
「よろしくね。彩ちゃん」
その表情に悠里も微笑みながら答えるのだった。
読んでいただきありがとうございます。
次回も頑張りますので、よろしくお願いします。
本日はありがとうございました。
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第2話 スケジュール調整
間が空いてしまい申し訳ありません……
楽しんでもらえると嬉しいです。
それではどうぞ。
「さてと……どうしようかな……」
カフェでの一件後。
彩を家の近くまで送り届けた悠里は、そのまま家に帰宅。
自室で考え事をしていた。
それは明日からの彩のスケジュール調整である。
実は社長から、彼女の前のマネージャーが書き記したスケジュール表を預かったのである。
中身を確認した悠里は顔が引き攣ってしまう……
何故なら、過密スケジュールまでとはいかないが、それに近い内容になっていたのだ。
まぁ、前のマネージャーは真面目過ぎるがゆえに悪気はないのだが……
そこで悠里は、彩のスケジュール表を一から作り直す事にしたのである。
「…確か、彩ちゃんが通ってる高校は
慣れた手つきでパソコンのキーボードを叩き、検索ワードを入力する。
検索が引っかかったので、マウスを動かし左クリックを押す。
するとホームページが画面に開かれた。
「へぇー……彩ちゃんが通ってる高校ってかなりの伝統校なんだなぁ……」
花咲川女子学園はかなりの伝統校だと理解する悠里。
というか、自分は男子なのに女子校を調べるのはいかがなものか?と頭が過ったが、下心とかは別に無いので今の考えを忘却の彼方へ捨てる。
「…となると無難に送り迎えかな? いや…でもなぁ……」
マネージャーの仕事って送り迎えも含まれるのか?と考える悠里。
仮にそれも含まれると仮定しよう。そうなると彩が通う女子校まで行かなければならない事になる。
ただこればかりは、悠里の一存だけでは判断ができないので……
(連絡して聞いてみるか……)
スマホを手に取り、彩本人に聞いてみる事にした。
実は帰り際に彼女とメールアドレスと電話番号を交換しといたのである。
別に他意はない。無いったらない。
時刻は間もなく17時。
この時間なら電話をかけても大丈夫かな?と思った悠里は、スマホの電話帳の欄に登録されている彩の電話番号を表示させ、通話ボタンを押す。
~♪~♪~♪~
『はい。もしもし』
「もしもし。悠里なんだけど……」
コール音が3回鳴り、4コール目に入ろうとした時、電話の主に繋がった。
もし繋がらなかったらどうしようと内心悩んでいた悠里は安堵する……
「今日はどうもね?」
『ううん。こっちこそありがとう。連絡してどうしたの?』
「その事なんだけど……」
明日からの内容についてを彩に詳しく説明する。
自分がスケジュール表を新たに作り直している事、送り迎えはどうするか等々……現時点で決めてある事を彩に伝える。
「…てな感じなんだけど……」
『う~ん……お互い、学校も通ってるから、帰りの方はお願いしてもいいかな?』
「ん。分かった。花咲川って……何時くらいに学校終わるの?」
『えっと~……ちょっと待ってて? 確かここに……あった! 帰りの
彩の学校が終わる時間を手元にあったメモ帳にボールペンを走らせる。
「16時10分ね? じゃあ明日、申し訳ないんだけど、学校が終わったらメールしてもらってもいいかな?」
『うん、分かった。あ、悠里くんって学校の場所って分かる……?』
「その辺は大丈夫。今しがた調べ終わったから。それじゃあ明日、僕も学校終わったら一応メールで連絡するから。また明日ね?」
『うん。また明日ね』
また明日ねという言葉を聞いた悠里は通話終了ボタンを押す。
「…さて。とりあえず明日からの予定も決まった事だし、晩ご飯の支度をしようかな……」
明日から頑張らなきゃと意気込む悠里なのであった。
読んでいただきありがとうございます。
次回も頑張りますので、よろしくお願いします。
本日はありがとうございました。
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第3話 初めての送り迎え
短いかもしれませんが、楽しんでもらえると嬉しいです。
それではどうぞ。
「~で、あるからして……」
教師の声だけが教室内に響く。
どうやら、授業中のようだ……
真面目に授業を聞く生徒もいれば、眠気に勝てずに寝てしまう生徒いる……
「…くぅー……」
そしてここにも寝ている生徒がいた。
悠里である。
教科書を開き、ノートにペンを走らせながら居眠りという珍妙な状態だが……
「それじゃあ、この問題を……水無月、解いてみろ……って……水無月?」
悠里を指名する教師だが、如何せん彼の状態に気づいてない……
クラスのみんなも悠里の席に視線を集める。
「ゆうくん~、起きて~、呼んでるよ~」
「ユーリ、起きなさい。呼ばれてるわよ」
「ちょっと待て!? 水無月のやつ寝てんのか!?」
「「「「「「「嘘だろ!? おい!?」」」」」」」
悠里の隣の席にいる瑠菜と反対側の席にいるティアが声をかける。
その言葉に驚きの声を上げる教師とクラス一同。
「……ふぇ? あっ……呼ばれたの僕?」
『マジで寝てたんかい!?』
そして再び突っ込む教師と生徒達。
「……………………あ、魔王だ」
「誰が魔王だ!!」
未だに寝ぼけてるのか教師に向かって失言をする悠里。
その言葉に丸めた教科書で悠里の頭をハリセンのように叩く教師。
「…………パワーをメテオに」
「「いいですとも」」
「懐かしいなオイ!! 明美も如月もノリでやるんじゃない!!」
知ってる人しか分からないような単語を言う悠里。
そしてそれに合わせるように言葉を紡ぐ瑠菜とティア。
教師も、3人が言った意味を理解しているのか突っ込みながらも3人を注意する。
「まぁ、とりあえず水無月、この問題を解け…………」
「……分かりました。えっと……オヤシロ様の可愛さについて…………ですよね?」
「全然違うわ!!」
この後、教師が解かせる問題を教え、尚且つ悠里が真面目に問題を正解した事をここに記す。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
放課後になり、帰り支度をする悠里。
瑠菜とティアは、用事があるとの事で先に帰っている…………
他の生徒も部活やら何やらで、居ないので教室には悠里1人だけだった。
♪~♪~♪
(あっ……メール……)
スマホの音声が鳴り、その音声がメールだと思った悠里は画面をタップする。
新着メールの欄を見ると1通のメールが届いていた。
送り主は彩だった。
「何々……あっ、学校ちょうど終わったんだ」
メールの内容は、彩の学校もちょうど終わったという内容だった。
なので、今から迎えに来て欲しいというものだった。
「…さてと。じゃあ今から彩ちゃんを迎えに花咲川まで行きますか」
待たせては悪いと思った悠里は、鞄を持ち、教室を後にするのであった……
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(これで良し!)
悠里にメールを送り終えた後、彩は校門前で待つ事にした。
10分くらいでそっちに着くとメールに書かれていたので、今日のスケジュール表を昨夜、悠里がメールで送ってくれたので、それを読みながら待つ事に。
(あっ……今日はボイストレーニングが入ってるんだ……)
彩がスケジュール表を確認していると……
「ねぇ、あの男の人誰……?」
「あの制服って月ノ丘高等学院?」
「嘘っ!? あの月ノ丘高等学院って、あの!?」
「しかも結構カッコよくない!?」
同じ学校の生徒の会話が聞こえた。
視線を向けると、そこには悠里の姿が。
「……あっ。いたいた。彩ちゃん、学校お疲れ様」
「うん。悠里くんもお疲れ様」
彩を見つけた悠里は学校お疲れ様と言いながら、こちらに歩いてきた。
その様子を見た他の生徒はと言うと……
「「「「えっ!? 丸山さんの彼氏!?」」」」
声を揃えて言った。
…まぁ、放課後の女子校に1人の男子高校生が来たら、そう思われても仕方のないことだろう。
当然、それを聞いた彩は……
「ち、違うんだよみんな!? 悠里くんは私のマネージャーで……」
あたふたしながら否定した。
その様子を見た悠里はというと……
(……あたふたする彩ちゃん。面白い……)
どうやってフォローしようか考えつつも、この状況を地味に楽しんでいた。
読んでいただきありがとうございます。
次回もよろしくお願いします。
本日はありがとうございました。
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第4話 初仕事
短いかもしれませんが楽しんでもらえると嬉しいです。
それではどうぞ。
花咲川での誤解を無事に解き、2人は事務所に移動していた。
「うぅ~……」
「…彩ちゃん、まださっきの事を気にしてるの?」
「だって~……」
訂正。どうやら彩は、先程の一件を未だに気にしているようだ……
「…まぁ、いきなり女子校に男子が来たらあんな反応するのは僕も予想してたけどさ? 別に気にする事もないと思うよ?」
「そういうものなの?」
「…そういうもんだよ。僕が尊敬するSSVD異端審問官主席の言葉を借りるなら、"無理に考えると頭痛にならぁ"……かな?」
「えっと……つまり……気にしなくてもいいって事?」
悠里が言った意味を自分なりに解釈する彩。
その答えに頷く悠里。
つまるところ、気にし過ぎも良くないという事である……
「それで今日の予定なんだけど、彩ちゃんがボイストレーニングをしてる間に、事務所の手伝いがちょっとだけ入ってるから、終わり次第、直ぐに向かうから」
話題を変え、今日の予定を説明する悠里。
「事務所のお手伝いって……何をやるの?」
「さぁ……? 着いてから話しますしか僕も聞いてないから具体的な事は分かんない。案外、楽器とかの機材運びだったりして?」
彩の質問を推測で答える悠里。
あの事務所は、バンドが使う楽器等の管理もしてるので、予想の範囲内で答える。
実際ほんとに"手伝い"の内容は、着いてからでないと分からないので何とも言えないのだが……
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
2人で他愛もない会話をしてると、事務所に着いた。
悠里が関係者カードを見せると、スタッフは慌てて「ど、どうぞ!!」と言い、普通に通してくれた。
(なんでさっきのスタッフさん、慌てたんだろう……?)
彩は先程のスタッフの反応が気になっていた。
実は最初、彩が関係者カードを見せようと思っていたのだが、彩が出すよりも早く悠里が出していたので気にしなかった。
ただ問題はその後だ。
悠里がスタッフに関係者カードを見せた途端、目を見開きながら、悠里とカードを交互に見始めたのだ……
例えるなら、"お偉いさん……それ以上の人が来た"そんな感じの反応だった。
「さっきのスタッフさん、なんで慌ててたの?」
「……さぁ……なんでだろうーね……」
試しに悠里に訊いてみたが、気にする程度ではないような口調で返ってきたので、彩もそれ以上は言わない事にした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
彩を練習場所用のスタジオまで送り届けた悠里は、指定された場所まで足を運んでいた。
「…失礼します」
指定された場所は、楽器管理室だった。
中に入ると、10人近くのスタッフと、それを指揮しているダンディ顔な班長みたいな人が1人、合わせて11人が既に居た。
「おお! 水無月君。初日早々に呼び出して申し訳ないね……」
「お久しぶりです。いえ……僕で良ければ……」
悠里が来た事に気づいた班長が、申し訳なさそうな表情をしながらこちらに歩み寄って来た。
他のスタッフはと言うと……
「えっ? あの男の子誰……?」
「先輩、あの男の子って新人ですか?」
「バカ!! お前ら失礼にも程があるぞ!? あの子はな……」
「「えっ!? 嘘っ!? あの子が……!?」」
反応は様々だった。
小声で話してはいるが、悠里には丸聞こえなので敢えて聞こえてないふりをする……
「オホンッ!! お前ら一旦そこに並べ!!」
班長がそう言うと、スタッフは一斉に並び出した。
「今日はちょっと人手が足りないとの事で、彼に手伝いに来てもらった」
「水無月悠里です。班長さんから人手が足りないとの事で、お手伝いに来ました。若輩の身ですが、よろしくお願いします」
悠里がスタッフ一同に挨拶をする。
「相変わらず謙虚な挨拶だのう……気楽にしても構わないのに」
「いやいや、他の皆さんからしたら僕なんて、誰だオメー、ここは素人みたいな子供が来るところじゃねーぞって思われてもおかしくないですし」
「はっはっはっはっは! 暫く見ない間に毒舌属性持ちになったもんだね?」
「いえいえ……」
2人のやり取りを見ていたスタッフの大半が唖然としていた。
それもその筈。傍から見れば、高校生が自分達の職場のリーダーと対等な立場みたいな感じで喋っているのである。
「それで……人手が足りないって言ってましたけど何かあったんですか?」
「うむ。いつもだったら、30人近くでここを担当しているんだが、半分のスタッフが今日に限って体調を崩して休んでしまってな……」
苦笑いしながら悠里に説明する班長。
「ここ最近、何かで忙しかったんですか?」
「察しがいいね。実はプロジェクトの準備を進めてた上司が、無茶振りをしてね……この楽器を持って来てくれと私達に言って、いざ持って来ては、"やっぱりこれは必要ない"と言うんだよ……」
「……で、そのクソヤロウのせいで、片付けに追われたりやら何やらで今に至る……と……」
「そういう事だ」
状況を把握した悠里は溜息を吐いていた。
「お話は分かりました。……あのゲロカス、相変わらず出世の事しか考えてないな。よくクビにならないもんだよ……全く……」
悠里の毒づいた発言に度肝を抜くスタッフ一同。
「とりあえず、優先するものから始めましょう」
「そうだな。これが資料だ。水無月君には申し訳ないが、優先する順番と指示をお願いしても構わないかい?」
「分かりました。先ずは……」
こうして悠里の指揮の下、仕事が開始されたのだった。
読んでいただきありがとうございます。
次回は、彩ちゃんの誕生日に投稿すると思います。
本日はありがとうございました。
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特別編 彩の誕生日
彩ちゃん、誕生日おめでとう。
楽しんでもらえると嬉しいです。
それではどうぞ。
お手伝いを終えた悠里は、彩が練習しているスタジオに向かい、中に入ると、ちょうど練習を終えたのであろうか?
彩が荷物に練習着を詰め込んでいた。
「彩ちゃん、お疲れ様。今終わり?」
「あ! 悠里くん! お疲れ様。うん、ついさっき終わったところなんだ」
お互いに労いの言葉をかける。
「今日のボイストレーニングはどうだったの?」
「それがね~? 高音の部分でちょっと躓いちゃって……」
事務所を出て、今日の練習はどうだったかを彩に聞く。
苦笑いしながらも悠里の質問に答える彩。
「…高音の出しやすさは、1人1人違うから、頑張れば大丈夫だよ」
「ほんと!?」
「…ただし、無理をしない程度に……だけどね?」
「うう~……気を付けます。悠里くんはどうだったの?」
「…僕? 人手が足りないなりに頑張ったよ? スタッフさんとみんなで……」
少し遠い目をしながらも彩に楽器管理室での件を話す悠里。
実を言うと、班長を含めた12人で楽器の整備をしたり、ドラムスティックの本数を数えたり、楽器管理室の掃除をしたり等、色々だった。
本来なら、2時間以上かかる予定だった作業が、悠里と班長の迅速な指示により、きっかり1時間で終わったのだ。
どのくらいの速さかというと、スタッフ一同がクロックアップしてたと表現しておこう。
「た、大変だったんだね……」
「僕が言えた義理じゃないんだけど……スタッフさん達が一番頑張ってたよ、うん……」
ちなみに、作業を無事に終えて、予定より早く上がれると知ったスタッフ一同は、悠里に涙目になりながら、お礼を言ってきた事は彩には内緒だが……
「そういえば、来週の予定ってどうなってるの?」
話題を変えるかのように、彩が悠里に来週の予定を聞く。
悠里は鞄から、手帳を取り出し、予定を確認する……
「えーと……来週の予定は確か…………ないね」
「えっ? ないの?」
「…うん、ない」
間の抜けた声を出す彩に、確認させるかのように"ない"と断言する悠里。
「まぁ、理由としては適度な休みも必要って事。適度な休みね?」
大事な事なのか、悠里は2回言った。
「あっ……でも正確には、明日から休みか。今日が金曜日だし……」
「そっか。今日って金曜日だったね……」
2人して今日が金曜日だという事を思い出す。
「あっ……悠里くんって、明日って空いてる?」
何を思いついたのか、彩が悠里に明日の予定を尋ねてきた。
彼の休日は大抵、家で過ごすか、瑠菜とティアの3人で出かけたりしかない。後者の2人は、今週は予定が入ってると言ってたので……
「…うん。明日は空いてるよ?」
空いていると彩に言った。
「じゃあじゃあ! 明日、一緒にショッピングモールに行こうよ!」
「僕は構わないけど……」
「やったぁ♪」
一緒にお出かけできる事に、その場でピョンピョンと飛び跳ねる彩。
そこまで嬉しい事なのかなぁと疑問に思いつつ、とんとん拍子で集合場所は駅という感じで決まってしまった……
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そして彩と出かける事となった当日である土曜日。
集合時間は10時と昨日の内に2人で決めたので、問題は無い。
待たせては悪いと思い、悠里は15分前に駅に着く時間帯に家から出た。
(彩ちゃん……まだ来てないのかな?)
集合場所である駅に着き、彩がまだ着いてないのかと思い、悠里は周囲を見渡す。
「やめてください!!」
声がした方に視線を向けると、私服姿の彩がいた。
ところが、彩の目の前には金髪のチャラ男とサングラスが特徴の茶髪のチャラ男の2人に絡まれていた……
俗に言うナンパである。
「ねぇーいいじゃんかよー」
「そうそう。俺らと遊ぼうぜー?」
「私……人を待ってるので……」
「そう言っても無駄無駄♪ まだ来てないじゃんソイツ」
「そうそう♪ そんな奴ほっといて俺らと遊ぼうよー?」
このままだと、ほんとに彩が連れてかれるのが予想できた悠里は、ナンパって無くなんないかなーと思いつつも、彩に声をかけた。
「…彩ちゃん、おはよー。待った?」
「ううん、大丈夫」
「あァ? なんだお前?」
「俺らの邪魔すんじゃねえよ」
突如、割って入った悠里にガン飛ばすチャラ男2人。
「…悪いけど、ナンパなら、そういう系のお店でやってくんない?」
「おい。このガキどうする?」
「そうだなぁ……ガキ。俺らのお楽しみを邪魔すんなら、どうなるか分かってんのか?」
手をボキボキと鳴らしながら、挑発するチャラ男2人。
その光景を見ていた周りの人達は、ざわつき始め、彩に至っては目の前のチャラ男が怖いのか、悠里の後ろに隠れてしまう……
「……えっ? 何か言った? 三下」
「「ぶっ潰す!!!」」
悠里の一言にキレたチャラ男2人は、拳を振り上げ殴りかかって来た。
(……ムッコロフェイスで言われても、怖くないんだけど)
男2人の拳が当たる直前、悠里は回し蹴りで拳を弾き、拳を軽く握りしめ正拳突きの構えを取り拳を前に突き出す。
するとチャラ男2人は拳圧でふっと飛ばされ、倒れた。
「な、なんだこのガキ……!?」
「い、いてぇ……や、やべえよ」
悠里が加減をしておいたのか、チャラ男2人はむくりと起き上がる。
そして敵にしてはいけないやつを見るような眼で悠里を見た。
「…どうする? まだやるの? 悪いけど今度は胸骨にヒビが入るじゃ済まなくなるけど……」
「「す、すみませんでしたーーー!?」」
その言葉を聞いたチャラ男2人は、情けない声を上げながらその場から逃げて行った。
「彩ちゃん大丈夫?」
「う、うん……大丈夫……」
彩が怪我などしてないか確認しようとした悠里だったが……
「いいぞー坊主ー!!」
「かっこよかったぞー!!」
「キャー素敵ー!!」
周りのギャラリーが騒がしく、それどころじゃなかったのであった。
読んでいただきありがとうございます。
間に合って良かった……
次回は、誕生日回の後編になります。
可愛い彩ちゃんを上手く表現できるように頑張るぞい!!
本日はありがとうございました。
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第5話 お出かけ
明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
前回の誕生日回の続きになります。楽しんでもらえると嬉しいです。
それではどうぞ。
駅での一件後、悠里と彩はショッピングモールに向かっていた。
「さっきは散々だったよ……」
「あ、あはは……」
先程の一件でのギャラリーの対応に溜息を吐く悠里。それに対し、苦笑いする彩。
「そういえば、聞きそびれたんだけど……彩ちゃんって何時頃に家を出たの?」
「私? えーっと、10時には間に合うように家を出たつもりなんだけど……その……予定より25分も早く駅に着いちゃって……えへへ……」
なるほど。それならば納得だ……
要するにこうだ。本人的には、待ち合わせ時間に間に合うように家を出たつもりが、家から駅までの距離がそう遠くなかったのだろう……あくまで悠里の推測だが。
そして、彩が予想していた時間よりも早く駅に着いてしまった為、悠里が来るまで待ってたところにガラの悪い不良2人組に絡まれてしまったのだろう。
(…まぁ……彩ちゃんって、美少女っていうくらい可愛いし……ナンパされても仕方ないか)
歩きながら横目で彩を見る悠里。
どうして自分の知り合いは、こうも美少女が多いのだろうか?
不謹慎かもしれないが、試しに美少女だと思う知り合いを悠里は数えてみる。
元・子役・現在は若手女優をしてる幼馴染み、クラゲ好きな幼馴染み、王子様を演じてる幼馴染み、音楽と猫が好きな幼馴染み、オシャレさんな幼馴染み、中学1年の時に弓道部の大会で自分の努力を認めてくれた知り合いが1人、ピアノが上手で読書好きな幼馴染み、太陽のように明るく実家が和菓子屋をしてる幼馴染み、大和撫子が似合う恥ずかしがり屋な幼馴染み、チーズケーキが好きで誰にでも優しいふわふわ系な幼馴染み……等々……
そしてさらに、瑠菜やティア、そしてここにいる彩も数えるとキリがない……
(…僕……そのうち殺されるんじゃないかな? それは別に今始まった事じゃないけど……)
悠里がそう考えた途端、不意に嫌な光景が頭を過ぎる。
しかし直ぐに記憶を忘却の彼方に捨てる。
「悠里くん?」
「……えっ?」
不意に彩に呼ばれる。
その表情は不安と心配が混じっていた……
「どうかしたの? もしかして具合悪い……?」
「……ううん。そんな事ないよ?」
「それならいいんだけど……」
「心配かけてごめんね? 早く行こっか」
彩に心配をかけないように悠里は普段の表情で彼女に何でもないと言うのであった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
その後、特に盛り上がる会話らしい会話はせず、悠里と彩は目的地のショッピングモールにやって来た。
休日の土曜日という事もあってか、ショッピングモール内は混雑していた。
「悠里くんって、ここに来た事ってある?」
「…うん。ある……と言っても随分昔だけどね? 何年ぶりだろ……」
彩の質問に答えながら悠里はモール内を見渡す。
悠里が知ってるお店もあれば、見たこともないお店も様々……
「それで……最初はどこに行くの?」
「えっとね~、3階にあるお洋服屋さんに行きたいんだけど……」
「……ん。分かった。じゃあ行こっか」
彩が行きたい場所は、3階にある洋服屋。
エレベーターは混んでると思うので、エスカレーターで2人は3階まで移動する事に……
「ここが彩ちゃんが来たかった洋服屋?」
「うん♪ ここのお店、新しくできた場所でね? 私、一度でいいから来てみたかったんだぁ~♪」
嬉しそうに悠里に説明する彩。
そして早速、店内に入り、気になる洋服を一つ一つ見ていく。店内をよく見ると、この洋服屋はレディースだけじゃなく、メンズも取り扱っているようだ。その証拠に男性客も来店していた。
「彩ちゃんって、どういう基準で服を選んでるの?」
「私? 私は可愛いのがあればそっちを基準に選んじゃうかな~。悠里くんは?」
「…僕? 僕はまぁ……気に入った洋服が中々見つからないのが多いから……でも選び方としては、彩ちゃんに近いかな?」
彩の言葉に、ちょっと悩みながらも悠里は答える。
基本的に悠里は自分が気に入った服しか着ない。具体的には、シンプルで薄い長袖系の服を選ぶのが自分流……というか悠里の謎の拘り。
「そうなんだ。あ! じゃあ今から私が悠里くんに似合う洋服を選んであげる♪」
「……う"ぇ!?」
突然の彩の思いつきに変な声を上げてしまう悠里。
「そーだなぁ~……悠里くんはやっぱり黒系かな~? でも明るい系もな~………」
「………………」
彩に何か言おうとした悠里だったが、真剣な表情で悠里に似合う洋服を選ぶ彼女を見て、あっ。これは長くかかりそうだなと覚悟する悠里なのであった…………
読んでいただきありがとうございます。
次回もちょっと続きます(苦笑)
今年も自分なりに頑張りますので、よろしくお願いします。
本日はありがとうございました。
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第6話 彼女の好きなもの
前回の続きになります。
短いですが、楽しんでもらえると嬉しいです。
それではどうぞ。
「ありがとうございました~♪」
店員に見送られながら洋服屋を後にする悠里と彩。
「…なんかゴメンね? 僕の洋服まで選んでもらっちゃって……」
「ううん♪ 私も選ぶの楽しかったから気にしないで?」
洋服を選んでもらった事に対して、お礼を言う悠里。
それに対し、自分も楽しかったから気にしないでと笑顔で言う彩。
お陰で、10着くらい試着する羽目になってしまったが……
(…あんなに楽しそうな
彩が楽しそうだったので、まぁ良いかと思う悠里。
「…突然だけど、お昼ご飯、何食べる?」
「えっ? もうそんな時間?」
「うん……と言っても、あそこの時計を見て今気づいたんだけどね?」
そう言いながら悠里は、モール内に設置されている時計を指差す。
時刻は、12時30分。
お昼ご飯には、ちょうどいい時間だった。
「ほ、ほんとだ……」
「そゆこと。彩ちゃんは何か食べたいのある?」
「悠里くんは?」
「…僕? 僕は……なんでもいいよ?」
自分でも困った回答を言ってしまった悠里。
"何が食べたい?"と聞かれ、一番困る答えが先程の"何でもいい"である。そして次に聞かれるのは、"じゃあ何系が食べたいの?"である。そして仮に"ハンバーガー"と答えるとしよう。
すると、聞いてきた側は、"え~? 自分はご飯系がいい"と答えた。聞かれた側からすれば、じゃあ"何が食べたいとか聞くな"と思うのが殆どだ。
このやりとりのせいで、喧嘩に発展する人間を悠里は何度も見てきた……
「あー……僕は、彩ちゃんが食べたいと思うやつでいいよ?」
「そう? じゃあ……えっと……笑わない?」
両手の人差し指をツンツンしながら上目遣いで悠里を見る彩。
「笑わないから、とにかく言ってみなよ」
「じゃ、じゃあ……ハ、ハンバーグ……が……食べたいです」
顔を赤くしながら言う彩。
「…ん、了解。とりあえず、フードコーナーまで移動しよっか?」
「う、うん……」
彼女が何をそんなに恥ずかしがってるのか悠里には分からないので、とりあえず5階にあるフードコーナーに移動する事にした2人なのであった……
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
5階にあるフードコーナー……正確にはレストラン街に着いた2人。
「なんか、ハンバーグ専門店だけでも3店舗はあるんだけど……」
「ほ、ほんとだ……」
早速、5階フロアの案内掲示板で彩が食べたいハンバーグを扱ってそうな店舗を探す。
するとハンバーグ専門店を3店舗、発見した。
だがそれはあくまでもハンバーグ専門店。洋食レストラン等も含めると、10店舗も見つかった……
「とりあえず最初の3店舗……回ってみる?」
「そ、そうだね……」
余りにも多すぎるので、2人はハンバーグ専門店の3店舗を回ってみる事に。結果、2番目のハンバーグ専門店が高校生にも値段がリーズナブルな価格だったので、2人はそのお店に入る事にした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ご注文が決まりましたら、そちらのベルでお呼びください」
「「はい。ありがとうございます」」
店員はそう言うと、悠里と彩が座ってる席を後にする。
「どれも美味しそう~♪ 私、どれにしよっかな~♪」
目をキラキラさせながら、メニュー表を見る彩。
「もしかして彩ちゃんって、ハンバーグが好きなの?」
その様子を見た悠里は思った事をなんとなく聞いてみる。
すると、予想通りの答えが返ってきた。
「うん♪ 私、ハンバーグ大好きなんだ♪」
「彩ちゃんはハンバーグ好きっと……それにしても、このお店、色んなハンバーグを扱ってるみたいだね。専門店だけあって……」
メニュー表を改めて見ると、王道なもの、変わり種なもの、更にはマイナーなもの等と様々なハンバーグがメニュー表に載っていた。
「彩ちゃん、何にするか決まった?」
「うん♪ 決まったよ。悠里くんは?」
「僕も決めた。という訳で……ポチッとな」
お互いに注文するハンバーグが決まったので、悠里はベルを押し、店員を呼ぶ。
「お待たせしました。ご注文ですか?」
「はい。えっと、オリジナルハンバーグのAセットが1つと……」
「オリジナルハンバーグのAセットがおひとつ……そちらのお客様は何にいたしますか?」
「パイナップルハンバーグのビックサイズ。それのAセットでお願いします……」
「か、かしこまいりました。あの……お客様、ほんとにそちらでよろしいのですか?」
まるで何かを確認するかのように店員は悠里に尋ねた。
その表情を見た悠里は、店員が何が言いたいのかを理解できたので……
「…えっ? 美味しいじゃないですか。僕は基本的にそれ一択です」
真顔で言い切った。
「は、はい。で、では……少々お待ちくださいませ」
注文を受けた店員は慌てて厨房に向かった。
(あの店員さん、慌ててどうしたんだろう?)
彩が疑問に思っていると……
「店長!! パイナップルハンバーグの注文が入りました!!」
「何ィ!? それは本当か!?」
「ええ!! 確かに聞きました。パイナップルハンバーグを注文したお客さん第1号ですよ!!」
「……くっ!! この店でハンバーグを焼き続けて20年!! 今日の注文次第ではメニューから消そうと思ってたが……遂にパイナップルハンバーグを理解してくれるお客さんが!! 涙が止まらねぇッ……」
「それだけじゃありません……ビックサイズですよ!! ビックサイズ!!」
「うおおおおおっ!!! パイナップルハンバーグを注文してくれただけでもありがてぇのに、ビックサイズの注文か!? おう、お前ら!! 今日は特に気合いを入れて焼くぞ!!! 妥協は一切許さねえからな!!」
「「「「「おおおおおおおおーーーーー!!!!!」」」」」
厨房の方から凄まじい会話と気合が聞こえてきた。
(あっ……そういう事かぁ……)
なんとなく、本当になんとなくだが、店員が慌てていた意味を知る彩なのであった。
読んでいただきありがとうございます。
次回もよろしくお願いします。
本日はありがとうございました。
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第7話 中間テストの勉強にて
久しぶりの投稿になります。
短いかもしれませんが、楽しんでもらえると嬉しいです。
それではどうぞ。
休日の日曜日を過ごした翌日の月曜日。
「「…………」」
事務所の近くのカフェにて。
悠里と彩はテスト勉強をしていた。
理由は、中間テストが近いのである。
「お、終わったあ~……」
「…ん。お疲れ様」
ちょっと休憩と言い、頼んでおいたアイスティーを飲む彩。
悠里も一区切りしたので、レモンティーを飲む。ちなみに砂糖は無し。
「それにしても、彩ちゃんの学校のテスト範囲……中間テストなのに多いね?」
「そうかなー? 悠里くんのも多い気がするけど……」
「……いやいや。僕のより、彩ちゃんのが多いって」
やっぱり花咲川女子学園は伝統的な学校だからかな?と悠里は付け足す。
「しかも……テスト当日って、けっこう早いんでしょ?」
「そうなんだよ~。今月の後半辺りにやるんだよ~……」
放課後に彩が、うぅ……中間テスト当日が早いよ~と嘆いていたので、試しに今訊いてみたが、予想以上に早かった。
ちなみに悠里の学校も彩と同じ、今月の後半辺りに中間テストを行うのである。
「でもテストが終われば、また休日にゆっくりできるんじゃないの?」
「そうでもないんだよ~……」
そう言うと彩は、鞄から1枚の紙を悠里に見せてきた。
「これって……年間行事?」
紙の中身は花咲川女子学園の年間行事だった。
目を通してみると、4月には悠里と彩が現在進行形で話してた中間テストの文字が書いてあった……
「5月のほう見てみてよ……」
「……?」
言われるがまま、5月の予定を見る悠里。
そこには『花咲川女子学園 文化祭』の文字が。
「もしかして彩ちゃんが言ってたのって……これ?」
「うん。私も文化祭は楽しみなんだけど……これの準備期間とかあるみたいで……」
「確かに人によっては、テスト期間が終わった矢先に文化祭があって、それの準備ってなったら別の意味で疲れそう……」
「そうだよね……」
寧ろ、深夜テンションみたいにならないか?と悠里は思った。
「……文化祭か。いいなぁ」
「あ! じゃあテストが終わったら、文化祭においでよ!」
悠里がポツリと呟くと、彩が文化祭においでよと言った。
「…えっ? 行っていいの?」
「うん♪ 先生が家族だけじゃなく、友達もぜひ誘ってくださいねって言ってたし」
「そ、そうなんだ……」
嬉しそうに悠里に話す彩。
いや、多分その先生は他校の女友達の事を言ってるんじゃないかと悠里は思った。
しかし彩のように、聞き方によっては『男友達』でもオッケー……という風に聞こえるのだ。
「ちなみに……それの連絡事項というか、パンフレットみたいなのってある?」
流石にないかなと思った悠里だったが……
「パンフレットはまだないけど……連絡事項の紙ならあるよ!」
ほら! と言いながら鞄から取り出す彩。
いや。あるんかい! と内心ツッコむ悠里。
「えっと……ほんとだ。『家族だけじゃなく、他校の友人でも可能。ただしその場合、誰から誘われたかを言う事』この場合は彩ちゃんか……」
「うん。後は入校許可証を入口で受け取るんだって。それから……学生証かな?」
「…まぁ、学生証は納得。仮にも女子校に行くわけだし……」
ちなみに彩を初めて送り迎えに花咲川女子学園に行った時に、教師の人にも会って軽く話したが、凄く良い人だったのが悠里の印象。
「私服と制服……どっちで行った方がいいのかな?」
「どうなんだろう……? 悠里くんはどっちで行こうと思ってるの?」
「うーん……文化祭が5月の半ばだから、制服で行こうかなって個人的には思ってる」
文化祭当日は私服か制服のどちらかで行くか迷った悠里だが、彩の意見も汲んで、制服で行く予定だと言った。
「でも先ずは、テストで赤点にならないように頑張らないとね……」
「うっ……そうだね……」
「「はぁ……」」
楽しみが増えたのはいいが、先ずは中間テストで赤点を取らないように頑張らなきゃと溜息を吐きながら、意気込む悠里と彩なのであった。
読んでいただきありがとうございます。
今更ですが、月ノ丘高等学院の制服イメージを書いておきます。
もし書いてあったらすみません(多分……この作品では初)
月ノ丘高等学院制服イメージ:『けいおん!』の桜が丘高校の制服
次回も頑張りますので、よろしくお願いします。
本日はありがとうございました。
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第8話 文化祭の準備にて
久しぶりの投稿です。
短いかもしれませんが、楽しんでいただけると幸いです。
それではどうぞ。
「彩ちゃーん、そこにあるゴミ袋、捨てに行ってもらってもいいかな?」
「分かった。そこに置いてあるやつでいいの?」
「うん。教室の入口に置いてあるからお願いね?」
中間テストを無事に終えて、文化祭の準備に勤しむ彩。
クラスメイトにゴミ捨てを頼まれ、教室に置いてある袋を持つ。
「よいしょ……っと……」
ゴミ袋を持ちながら廊下を歩くと、他のクラスや先輩達も文化祭の準備で忙しいのか廊下を行ったり来たりをしていた。
まぁ何せ、自分にとっては高校生になって初めての文化祭なのだから。
ちなみに彩のクラスの出し物は『わたあめ屋』になった。
他にも色々な案がでたが、初心者でも大丈夫そうな感じがするし……という意見が殆どだった。
「ふぅ……重かった~……」
ゴミ袋を捨て終わり、すぐに教室に戻る彩。
教室に戻ると……
「ねぇ。こっちの飾りはこんな感じかな?」
「うーん、悪くないけど……もう少し何か欲しいよね……ちょっと待って。考えるから……」
「クラスの出し物の一等賞を狙うなら尚更だもんね!」
真剣な表情をしつつ、クラスメイト達が張り切りながら準備をしていた。
その光景を見た彩は苦笑いするしかない。
何故クラスメイト達がこんな状態になってるのか?
それは文化祭の出し物を決めようとした時まで遡る────
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「それではこれから文化祭で行う、クラスの出し物について決めようと思いますー♪」
「「「いえーい!」」」
中間テストを終えた後なのか、彩のクラスは盛り上がっていた。
担任の先生も、微笑みながら見ていた。
「早速だけど、何かやってみたい案はありますかー?」
「たこ焼き屋ー」
「クレープ屋がいいー♪」
比較的に彩のクラスはノリがいい人ばかりなので、これがやりたいと続々と案が出る。
「丸山さんは何かやりたいのはありますか?」
考えてる彩に担任の先生が声をかける。
「えっ? 私ですか?」
「ええ。花女の文化祭は今年から、ご家族や他校の友達も誘えるので、何かやりたい事はありますか?」
「えっと……」
担任の先生の言葉に、うーんと考え込む彩。
なんでも今年から、花咲川女子学園の文化祭は、家族だけじゃなく他校の友達も誘えるようになったらしい。
その話をしてた時の先生は、かなり嬉しそうだったのは彩も覚えてる。
そういえば、悠里とテスト勉強をしてた時に『僕の勝手なイメージだけど、わたあめ屋は文化祭でよくあるよね……』と言ってたのを思い出した。
「えっと、わたあめ屋……とか?」
「なるほど。わたあめ屋ですか。文化祭の定番ですね♪」
「あ、はい。悠里く……えっと友達が文化祭だとよくあるよねって言ってたので」
彩がそう言った時だった。
「彩ちゃんの友達って、もしかして……」
「この前うちの学校の校門前に来た男の人?」
「私見た! 遠くからだけど、凄くカッコよかったよ!」
「それ私も見た! 確か月ノ丘高等学院の制服を着てた人だよね!?」
クラスメイト達がキャーキャー言いながら、悠里の事を話しだした。
以前、悠里が彩を送り迎えに来た次の日に彩はクラスメイト達から質問攻めにあったのだ……
その日は1日中、悠里の話題で持ちきりだったのは、彩の記憶に新しかった。
「ねーねー、彩ちゃん♪ その人って文化祭に来たりとかは……」
「えっ、悠里くん? 文化祭いいなぁって、一緒にテスト勉強した時に言ってたから、悠里くんの学校もテストが終わったらおいでよって誘ったけど……」
クラスメイトに聞かれたので、彩がそう答えると……
『よっしゃー!! うちの学校にイケメンが来てくれるー!』
謎の雄叫びとガッツポーズをしながら感極まってるクラスメイトがそこにいた。
「そんな皆さんに朗報でーす。今年から、各学年で出し物の一等賞を出したクラスには、理事長からちょっとしたご褒美が出るので頑張ってくださいねー♪」
担任の先生が微笑みながら、そう付け足すと……
『よーし! みんな。出し物は彩ちゃんが提案したわたあめ屋で決定してもいいかー?』
『いいともー!』
『先生の為にも、一等賞を取るんだー!』
『おおー!』
彩が提案……というか、悠里が言ってた事を言っただけなのだが、出し物は『わたあめ屋』に決まったのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
────という事があり今に至る。
それからのクラスメイト達の行動力……というか、団結力は凄かった。
わたあめの作り方、最近だとどんなわたあめがあるのかどうか等……とにかく凄かった。
「あ! 看板まだ作ってないじゃん!」
「そーだったー!!」
「しょうがない。とりあえず看板は後! 今は飾り付けの足りない何かを考えよう!」
慌てるクラスメイト達。
自分も何か手伝える事はないかと思い、彩がふと思いついたのは……
「わたあめ屋だから……綿毛で補ったりとかはどうかな?」
『っ!!! 彩ちゃん、ナイス!! それだよ!!』
「ええっ!?」
何気なく案を出す。
それに食いつくクラスメイト達。
「そうと決まれば、早速綿毛を使おう!」
「カラーペンとか使って、可愛く表現するのはどうかな?」
「それ採用!」
文化祭の準備って、こんな感じなのかな……と、ちょっと疑問に思う彩なのであった。
読んでいただきありがとうございます。
次回も頑張りますので、よろしくお願いします。
本日はありがとうございました。
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第9話 文化祭当日の受付にて
久しぶりの投稿になります。
少し短いかもしれませんが、楽しんでいただけると幸いです。
それではどうぞ。
そして文化祭当日。
悠里は花咲川女子学園に向かっていた。
「(あー……テスト、しんどかったなぁ……)」
中間テストの結果は当分先なので、しばらくはゆっくりできそうと思う悠里。
何せ、中間テスト期間から、テスト当日まで徹夜で勉強したのだ……
テストが終わった後、瑠菜とティアにその事を言ったら……
『ゆうくん~、まさかテスト期間中、全くご飯食べてないとか言わないよね~?』
『…えっ? うん……食べてないけど。食べたら眠くなっちゃうし……』
『……ユーリ、とりあえずそこに正座して』
『なんで!?』
『『なんでじゃないっ!!!』』
といった感じで、幼馴染みに小一時間程、お説教をくらったのである。
ちなみに今回の事は、母である理事長には伝えとくからと瑠菜に言われる始末。
ティアもうんうんと頷いていたが。
そんな事を考えていると、目的地である花咲川女子学園が見えてきた。
「文化祭だけあって人がたくさん……」
そう呟く悠里。
入口の校門前には生徒の家族や友人、また私服の生徒が順番に並んでいた。
…多分、あそこで受付をやってくれるんだろう……
とりあえず『最後尾はこちらになります』というプレートを持った生徒がいたので、悠里は並ぶ事にした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ではこちらに、名前をお書きください」
「はい」
順番がようやく回ってきたので、紙に名前とその他の事を書く悠里。
書き終わったので、受付を行ってくれた生徒に渡す。
「えっと……『水無月悠里、月ノ丘高等学院』……失礼ですが、ご家族ですか?」
「いえ、友達に……丸山彩ちゃんに誘われて来ました。他校の場合は『誰かに誘われたかを受付の人に言ってね』って本人から聞いたので」
これ一応、学生証ですと生徒に見せながら付け足す悠里。
それを確認した生徒は、こちらが入校許可証になりますと言い、悠里に渡す。
帰る時に受付に返せば問題ないとの事。
「それではお楽しみください」
「どうも」
入校許可証を受け取り、制服の内ポケットにしまった悠里は校内に入るのであった……
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
校内に入ったのはいいのだが……
「……(どうしよう、迷った)」
早速の迷子である。
いや、学校の中なんだから迷わないんじゃないかと思われがちだが、校内が広すぎるのだ……
まして、文化祭当日な為か人混みが想像してた以上に凄かった……
「……あ……彩ちゃんがいる教室、何処なのか聞くの忘れてた……」
ここで悠里、彩がいると思われる教室を聞くのをすっかり忘れていた事を思い出した。
幸いな事に分かっているのは、彩のクラスは『わたあめ屋』をやる事になったというのをメールで聞いたぐらい……
「……」
花咲川女子学園には、彩の他に4人の知り合いが通ってるのを悠里は知ってる為、いずれかの誰かに遭遇できればなんとかなるかもしれないと思った悠里だが、まぁそんな上手くはいかないのが現実なのである。
仕方ない。とりあえず校内を回ってみるか。
そんな時だった……
「「悠里(くん)?」」
誰かが悠里に声をかけてきた。
しかも聞き覚えのある声。
振り返ると、そこにいたのは……
読んでいただきありがとうございます。
次回も頑張りますので、よろしくお願いします。
本日はありがとうございました。
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第10話 松原花音と白鷺千聖
今回は少し短いかもしれませんが、楽しんでもらえると幸いです。
サブタイは連載開始から決まっていたり……(苦笑)
それではどうぞ。
彩に文化祭に呼ばれて花咲川女子学園にやって来た悠里。
ところが、彩のいる教室が分からず迷子になってしまう……
そんな時……
「「悠里(くん)?」」
誰かが悠里に声をかけてきた。
しかも聞き覚えのある声。振り返ると、そこにいたのは……
「…
花咲川女子学園に通ってる4人の知り合いの内の2人、
2人は一瞬、悠里でも見たことのないくらい驚愕の表情になった後、すぐに近寄って来た……
「…とりあえず久しぶり。2人共、何してるの?」
「それはこっちのセリフ。ここ女子校よ?」
「…知人が花女の文化祭においでよって誘われたから……せっかくだから……来ちゃった」
「そ、そうだったんだ……」
千聖と花音に、自分がここに来た理由を話す悠里。
ちなみに2人とは幼馴染みなのである。
「……2人の制服姿、初めて見たけど……似合ってるね」
「「っ!? あ、ありがとう……」」
ポツリと呟きながら感想を言う悠里の言葉に頬を赤らめる花音と千聖。
彼女達と最後に会ったのは、中学2年生の時の休日だった筈……
この時は色々と面倒事や個人的にしんどかった時期が重なってしまい、精神的にもヤバかったのは嫌でも覚えてる……
「…………(ほんとゲロカスだよ)」
「悠里くん?」
「……え?」
「暗い顔だけど……大丈夫?」
「あ……うん。大丈夫、大丈夫」
花音に心配されたが、大丈夫だと答えた悠里。
そんなに暗い顔してたかと千聖に視線を向けると、してたとばかりに頷く千聖。
……なるほど。
元・子役で現在は女優をしている彼女が言うのだから、そうなのだろう。
こういう感情を隠す演技には自信あるんだけどなと内心思いながら。
「ところでさ、2人にちょっと訊きたい事があるんだけど……」
ここで悠里、当初の目的を思い出す。
せっかく千聖と花音が居るので、この学校のクラスについて聞く事にしたのだ。
そうすれば、彩のいるクラスまで辿り着くかもしれないと思ったから。
ちなみに1年生の。
「…へぇー、1年生のクラスだけでも5クラスあるんだ?」
「うん。私と千聖ちゃんは一緒のクラスなんだよ」
「そうなんだ? 中学の時も一緒だったって言ってたもんね」
予想してたより多いねと付け足す悠里。
なんでも1年生だけでもA組、B組、C組、D組、E組の5クラスに分けられてるようだ……
じゃあ、あとの2人と彩はいずれかのクラスにいるのかな?と悠里は考えた。
「…そういえば、千聖ちゃんと花音ちゃんのクラスは何をやってるの?」
「花音の提案で喫茶店よ。と言っても、ちょっと変わってるけど」
せっかくなので彼女達の教室に寄らせてもらう事にした悠里。
移動中、悠里が疑問に思った質問に千聖が答える。
それにしても変わってる喫茶店というのは、どういう意味なのだろうか?
「…花音ちゃんが茶道部だから、それに似た形式での喫茶店だったり? 例えば、来てくれた人達に自分で作って楽しんでもらうとか……」
「ふえぇ~!? なんで分かったの~!?」
「……悠里。狙って言ったの?」
「……その気は全くなかった。ほんの例えだったんだけど……」
ピンポイントで当てられ、ふえぇ~と驚く花音。
そしてジト目で千聖に言われ、そんな気はなかったと答える悠里。
単純に花音が前に茶道部に入ったんだと教えてくれたから、なんとなく言ってみただけなのだが……
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そう言ってる間に千聖と花音の教室に着いた。
教室の入り口には『紅茶と緑茶の喫茶店』と可愛いデザインで描いてあった。
早速、中に入ると……
『いらっしゃいませ~……って、イケメンだー!!』
「……」
悠里を見た瞬間、黄色い声が響き渡った……
「み、みんな、悠里くんが困ってるよ……」
「そうよ。悠里が困ってるから、みんな落ち着いて……」
「はっ!! まさか、この人が松原さんと白鷺さんが言ってた……これが三角関係!?」
「「~~~~っ!?」」
1人の生徒の言葉に顔を赤くする花音と千聖。
その反応を見て拍車がかかったのか、キャーキャーと言い出したクラス一同……
「よーし、みんな! うちのクラスにイケメンのお客さんが来たし、張り切ってもてなすぞー!」
「おおー!!」
「ついでに、松原さんと白鷺さんとの関係も聞きまくるぞー!」
「おおー!!」
「ちょ、ちょっと待って!? ゆ、悠里とは……そ、その……」
「ふえぇ~!? ゆ、悠里くんとは……ふえぇ~……」
「……」
なんか盛り上がってる生徒を見て、悠里は花咲川女子学園の生徒って、こんなにテンション高いのか?と思うのであった……
読んでいただきありがとうございます。
次回も頑張りますので、よろしくお願いします。
本日はありがとうございました。
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