『姓』無き少女は『家族』を得て (タマモワンコ)
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第一話 捨てられたレン
この小説は、対空戦車が活躍する二次小説ってないなあという筆者の妄想からわさわさと空想が溢れかえって生まれた小説です。
頭ぐだぐだな筆者なため、独自設定やクロスオーバー等もある小説ですが、楽しんでいただけたら幸いです。
本編開始は原作アニメ開始の七から八年前になります。
「―――貴女には、才能がありません。そして才能の無い貴女はこの『田路』の家には不必要です。すぐに必要なものだけを持って出ていきなさい。」
母(だと思われる人)は、私を呼び出してそう言った。
母に逆らうつもりもなかった私は、少しの荷物と父から渡されたお金を持って、家の門を出た。
そして門を出たところで一つ、私は疑問に思った。
―――あれ、私はこの先どうすればいいのだろう。
たった今路頭に迷っている私の名は『
行く宛の無い私はとりあえず近くにあったエムドナルドに入り、窓際のカウンター席で無料Wi-Fiとノートパソコンを使ってどうすればいいのか調べてみているのだが…
「…やっぱり児童相談所なのかな…?でも家に送り返されるだけなんじゃないかなぁ…。」
どうすればいいか、さっぱりわからない。
ネットには大人向けの方法ばかりで、子供については児童相談所に連絡するといいよ!ぐらいしか書いていない。
もし私が20歳前後とか、もっと年を食っていたならすぐにでも整備の仕事を探して、なんとか食べていけるようにするのだけれど…生憎まだ私はたった
「むむむ。」
何がむむむだ!とセルフツッコミを入れつつ買っておいたポテトをかじる。
どーしてこーなったかなー。というか私がどこかで野垂れ死んだらあの家としてもマイナスだし分家とかあるんだろうからそっちに寄越すとかすればいいのに。
むー。
「隣、良いかな?」
むーむー唸っていると、後ろから声をかけられる。
振り返ると、茶色の髪をした同じくらいの年の女の子がトレイに山盛りのポテトを乗せて立っていた。………文字通り、山盛りのポテトだ。いや、山盛りというよりも山だ。チョモラマン級だ。
「あ、はい。大丈夫です。」
少々引きつつも言葉を返せば、
「それじゃあ、失礼するよ。」
そう言ってその女の子は隣の席に座った。ううむ、なぜ他にも席は空いているのに隣に…?これでは唸れないではないか。
うー、うー。
どうするかなぁ…。
うー。うーーーー!
「ふふっ。」
頭の中でうーうー言ってたらさっきの女の子に笑われた。くっ、ジト目で見てやるぐらいしかやれることがない…。じー。
「…ああ、ごめんね?何かを悩んでる君の顔が面白くてね。」
「…そうですか。」
うん、すっごいばかにしてるな…。はぁ…。
「あ、まだ名前を言っていなかったね。私は
「…いや、名前を教える意義が見当たらないのですが。」
「こんなところで会ったのも何かの縁さ。そう思わないかい?」
そうかな…?そうかも…?まあ、減るもんでもないしいいか。
「まあ、そうですね。私は蓮。ハスとかいてレンです。よろしく、風美花。」
「よろしく、蓮。それで、何を悩んでるのかな?恋愛かい?」
恋愛…生まれてこのかたそういう感情を持ったことはないなぁ…。というか今や誰とも関わりがない状態なのよね…。
「恋愛どころか人間関係と言うもの自体が今は消滅してますね。なんにせよ、この問題は貴女に話しても意味はないです。」
「いや、意味はあるさ。悩みというのは誰かに話すだけでも解決したり、踏ん切りがつくそうだからね。というわけで話してくれるよね?」
そう言いつつ風美花はイイ笑顔でこちらに圧をかけてきた。どれだけ聞きたいのさ。
「はぁ…。わかりました。長くなりますがいいですか?」
「かまわないさ。ポテトの貯蔵は十分だからね。」
「いや、明らかに多すぎると思いますが。まあいいです。」
そう言いつつも、ポツポツと話す私なのだった。
私が生まれたのは『田路』というそれなりには有名らしい戦車道の名家でした。
家元である母親…いえ、実際に母親なのかはわからないので家元とでも呼びます。なにせ母親らしいことなんて一つもされてませんから。家元は聖グロリアーナ女学院で副隊長を勤めていたらしく、教えていたのも聖グロリアーナで好まれる浸透強襲戦術、使う戦車はチャーチルとマチルダⅡ、あとクルセイダーのみといった感じでした。ですから田路流の人間の多くは皆、聖グロリアーナに入学していました。
私はその家で…んー、事実上の育児放棄を受けていましたね。5歳位までは乳母さんが面倒を見てくれましたが、小学校に入学する頃には姉の方の世話に回されてしまってそれ以降はほぼ全てが自分でやらなければなりませんでした。朝起きて牛乳を飲んで体操をして牛乳を飲んでご飯を炊いて目玉焼きを焼いて食べて牛乳を飲んで朝から晩まで牛乳を飲みつつ他の門下の人たちと戦車の練習をして、ふらふらしながらレンジで朝炊いたご飯をチンして目玉焼きを一枚つくって食べて牛乳を飲んで整備をして牛乳を飲んで寝る。そんな毎日でした。牛乳を飲み過ぎ?貴女のポテトに比べればましです。
…何故育児放棄を、ですか?父親が…あ、父は田路の家に婿入りしてきた整備士で、とても腕のいい整備士なんですよ。こっちは色々と甘やかしてくれたり、助けてくれたりしたので確実に父親です。それで父親が家元に聞いたところ…ただ一言、『才能が無いから』と言ったそうです。
…ええ、才能です。なんの才能か?大隊長の才能だそうです。いやー、ただ隊長の才能が無いだけで育児放棄された挙げ句捨てられるとか戦車道は魔境ですね。
いや、別に車長としては普通らしいですよ。ただ、家元のお眼鏡には叶わなかったのと、比較対象になる才能溢れる姉がいるらしいだけで。
育児放棄が始まってからは十両位の部隊の隊長にされて家元に課せられる無理難題を相手取る毎日でした。マチルダⅡ十両でチャーチルⅦ五両を倒せとか普通無理でしょう?二ポンド砲でどうあの75mm乗っけた馬鹿みたいに硬いチャーチルⅦを倒せと。仕方ないので森に籠って穴を掘り木を倒し崖を崩しとほぼゲリラのような戦い方をしてなんとか二両潰したところで全滅しましたよ。ちなみに姉の方は同じ条件で優雅に四両撃破したそうです。化け物め。
…ああ、すいません。少しあのときの怒りが蘇っただけです。まあ、それの後からは才能がないってんなら仕方ないってことで父に整備を習って、門下の車両の修理をしつつ家元の無理難題を受けていました。日々の癒しは牛乳と整備だけでしたね。整備も、いつも必ずクルセイダーのリミッターを外しては大破させる馬鹿が居たので治す車両には困りませんでしたし。
そんなこんなで三年間、なんだかんだと…まあ楽しく過ごしていたんですかね。父が育児放棄が始まって以降は家にいるときは常に構ってくれましたし。ただ、突然『そうだ、チャーチルをチャーチルクロコダイルに改造しよう』とか、『いい加減チャーチルにも飽きたしブラックプリンスを一から作ろう』とか、『そもそもイギリス戦車に飽きたしドイツ戦車でも作ろうか』とか、『二次大戦の戦車ばかりなのもあれだしシェリダン戦車でも作ろっか』とか、『戦車も飽きたしスピットファイアでも作ろう』とか、『せっかくだからシーファング作ろう。あ、あと空母も!』とか言い出したりして、しかも本当にやるのは止めてほしかったですね。何がどう転んだら戦車とかを一から作るという発想になるんですか…。流石に空母は止めましたよ。
え、私も一から作れるかですか?設計図と資材と設備と時間があれば多分。船はわかりませんが。
まあ、そんなことはどうでもいいですね。結局三年間平和…?に過ごしてたんですが今日遂に家元が見きりをつけて私をほっぽりだした、といったところです。
「…とまあ、話はここで終わりなのですが…風美花、どうかしましたか?」
話の途中でもちょくちょくツッコミを入れていた風美花は、今は何かを考えている…ようだ。
「…蓮、もし君が良ければ、私を頼ってみないかい?私はともかく、私のお母様ならなんとかできるかもしれないよ。」
…まじで?
「それは本当ですか、風美花?」
「ええ、私のお母様はそれなりに有名な人だからね。何かしらの手はとれると思うんだ。」
…なるほど、どうするか。助けを受けるか、受けないか。
…受けないわけないよね。だってほぼ手詰まりだし。
「…わかりました、助けてください、風美花。」
「うん。………その前にポテトを食べようか。いるかい?」
そういう風美花の目の前には、未だ山のようなポテトが積み重なっている。さっきまでがエベレストなら、今は八甲田山くらいだろうか。どうやら風美花は遭難したようだが。
「……食べきれなかったんですね?」
「ははは………まさか。」
あ、露骨に目を逸らした。
「もう…。それじゃ、いただきます。」
《視点:風美花》
―――彼女の隣の席を選んだのは、本当になんとなくだった。
戦車道の関東大会で優勝して、ホテルへの帰り道でエムドナルドを見つけたので一度やってみたかったポテトの山盛り買ってみたのが発端だ。
ポテトをもって席を探したときにふと目に入ったのが、しっぽのように後ろで一つにまとめた金色の髪を唸りながら揺らす彼女だった。
それで声を掛けて―――その碧眼に視線が吸い込まれた。俗に言う一目惚れ、というやつなのだろう。私が男ならすぐにでも告白していたかもしれない。彼女は山盛りのポテトを見て引いていたけど。
彼女の許可も下りたので隣に座って、ポテトをかじるのも忘れて彼女の顔を横目で見ていて―――笑ってしまった。
なにせ表情がコロコロと変わるのだ。見ていて面白かった。
ジト目でこちらを見る彼女に謝って、私は名前を名乗った。名字を言わなかったのは、その名を出すと皆一歩引いてしまうからだ。『島田』の名は私に友を与えてくれなかったから。
名乗られた彼女は少し名乗ることを躊躇ったが、名乗ってくれた。『蓮』、『ハスとかいてレンです』と。
とても、嬉しかった。その時初めて、対等な人間ができたように感じたからだ。
その嬉しさのまま、彼女へ私は悩みがあるのなら話すようにいった。彼女の事をもっと知りたかったし、もし私が、風美花が力になれるのならなりたかったから、尤もらしいことを言って話してもらった。
だが彼女の問題はただの風美花には解決できないような問題だった。
彼女は、捨てられたのだ。箱に積めて山に捨てるようなよくあるフィクションよりは優しい捨て方かもしれないが、それでも捨てられたのだ。
父親はともかく、家元である母親は蓮のことを娘としては見ていなかったのかもしれない。もしかすると、道具のようなものと考えていたのかもわからない。蓮の父親には悪いが、そんなところに蓮を返すべきではないだろう。
だが、私だけではどうしようもない。
ならば―――使えるものは使うべきだろう。
『島田』の力を。
たとえ、蓮と離れることになっても。
お疲れさまでした。
後書きでは、本編では話せないような設定やらを書こうと思っているので少々長くなるかもしれませんがお付き合いください。
現時点での独自設定
・島田ミカ説採用。名前を風美花とします。
・戦車道関連でちょくちょく勘当やら捨て子やらが発生する。対応するのは児童相談所だが対応の成果はあまり良くないらしい。
・田路流という戦車道の流派がある。横浜では島田流、西住流に並んで有名。英国戦車を中心とした浸透強襲戦術を得手とする。
主人公プロフィール(第一話時点)
名前:蓮(レン)
旧姓?:田路(タジ)
担当:戦車長
身長:132cm
出身:神奈川県横浜市
現住所:なし
家族:なし(母、父、姉)
血液型:B型
誕生日:6月12日(双子座)
年齢:9歳
好きな食べ物:牛乳
嫌いな食べ物:臭いのキツいもの
趣味:ネットゲームの『WarThunder』と戦車等の整備、制作。
日課:同上
好きなテレビ番組:『メーデー!:航空機事故の真実と真相』
好きな花:ハス
好きな戦車:ヴィルベルヴィンド
座右の銘:なし
見た目はFGOのアーチャーアルトリアの第二段階をちっちゃくしたもの。金髪を後ろでしっぽにまとめていて、目は碧眼。無論純粋な日本人。
性格は結構適当。ただし自分のやりたいこと、戦車の整備、それと牛乳が関わるととことんやる。
まだ9歳であるが整備士としては十分な技術をもっている。戦車乗りとしては、大隊長としての才能はなく、少なくとも戦車長としては『普通』らしい。
七歳の誕生日に父親に買ってもらったノートパソコンが宝物で暇があればネットゲームの『 WarThunder』をやっている…が、最近PCスペック不足が顕著になってきたとか。
以上となります。
次話の投稿は未定ですが楽しみにしていただけたら幸いです。
ありがとうございました。
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第二話 キレたチヨ紙
結局二人で泣きそうになりながら山を成しているポテトを食べきり、どこかに電話をした風美花に地下鉄なんかを乗り継いでつれてこられたのは
とても高そうなホテルだった。
…高そうなホテルだった。
うん、なにこれ。近くに観覧車とか見えるんだけど。
生まれてこのかた家と学校と近くのスーパーぐらいしか行ったことがない箱入り娘にはこれはハードルが高いよ風美花。
「…どうしたんだい、蓮?入るよ?」
く、こっちの気持ちを知らないのかはわからないが軽々しく言うなあ…。
「が、頑張ります…!」
「?」
き、気合い、入れて、行きます…!
ホテルで私と風美花を待っていたのは風美花と同じ茶髪で、そして風美花と似た雰囲気が時折見え隠れする女性だった。
「ただいま、お母様。」
「おかえりなさい、風美花。それでその子が…」
「は、はい。蓮と言います。」
「蓮ちゃんね。私は
「はい、よろしくお願いします。」
やはり、この人が風美花のお母さんの千代さんだった。
「それで?突然電話で『子供を一人引き取れないかい?』なんて言い出して本当に連れてきちゃったみたいだけれど………そうね、なにか面白いポイントでもあるのかしら?」
…いや、面白いってどういうことさ。面白いって。
「そうだね…まず、戦車道の基礎はある。そして戦車に限らずいろいろな物の整備ができる。そして設計図と資材と時間があれば戦車でも飛行機でも一から作れる。これでどうかな?」
いやいや、それでいいの…?
「なるほど、面白いわね。いいわ、とりあえず話は聞きましょう。」
えぇ…。いや、面白いってなにさ…。いや、それで交渉のテーブルについてくれるあたりが風美花の母親なのか…?
「よし、それじゃあ蓮、さっきの話を話してくれるかい?」
「…わかりました。」
話をしよう。あれは今から36万………
あ、これは違うや。
少女説明中……………………………………………
「…というわけです。」
風美花と大体同じ話を話したのだが、『田路』の名前が出てきたあたりからずっと千代さんはなにか考えているようだった。風美花のように途中でもがしがしと質問を入れてこない辺りは大人である証明なのだろうか…?
考えがまとまったのか『…なるほど、大体わかりました。』とどこかのもやしのようなことを言った後、千代さんは顔をあげた。
「全くあの馬鹿副隊長は…。はぁ、風美花、今日はこのホテルで蓮ちゃんと一緒に泊まって頂戴。」
…なんでさ???
「お母様はどうするの?たしか二人部屋を一つしかとってないでしょう?」
「もともと飲みに行ってくるつもりだったから問題ないわ。それじゃ、私は用事ができたからちょっと行ってくるわね!」
「どこにいくのさ?」
「そりゃあ…馬鹿なことをした副隊長を殴りに、よ!風美花は疲れてるでしょうし、今日はゆっくりしなさい。蓮ちゃんもとりあえず今日はゆっくりしててね?とりあえずどうにかなるかもしれないからね。」
「はい、わかりました。」
「了解、お母様。………あ、そういえばお昼のレシートを渡すのを忘れていたよ。はい、お母様。」
「ああ、お昼は一人で食べたんだったわね。ごめんね、一人で食べさせ…て…」
……?
何故か千代さんが固まってしまったけど、どうしたんだろう。お昼ってあのポテトだよね…ああ、なるほど。
なにかを察知した風美花が逃げ…られない。肩を既に千代さんが掴んでた。恐ろしく早い掴み、私でも見逃しちゃうね。
「待ちなさい…風美花…?このレシートに書いてある『ポテトLサイズ×35』っていうのはどういうことかしらぁ…?」
「………風が言っていたのさ、ポテトを山盛り食べろ、ってね。」
風が語りかけてくるとか風美花はすごいですね。でもポテトは食べきれてないんですよね。
「結局一人では食べきれなくて、二人して必死にポテトを頬張る事になりましたけどね。」
「…蓮、余計なことは言わないでくれ。」
やだ。
「…はぁ。この事は家に帰ってからでたっぷりと説教することにするわ。全く。」
「疲れているからそれはありがたいかな。それじゃ、私たちは部屋に行くことにするね。」
「ええ。変なことはしないようにね。」
「はーい。」
…うーむ、結局風美花と二人で一晩過ごすらしい。まあ……せっかくだし夜景とかも楽しむことにするかな。
…我ながら適当な性格だなぁ。
《視点:千代》
風美花と蓮の二人と別れた後、車に乗ってとある人物に電話を掛ける。
プルプルと音が聞こえて五回目位で彼女は電話に出てくれた。予想よりも早かったのはラッキーなのだろう。
『…もしもし。』
「―――久しぶりね、『
『ッ! 島田、千代…! 何の用ですか。下らない話なら切ります。」
「あら、なんの話か聡明な貴女ならわかるんじゃないかしら?胸に手を当てて考えてみなさい。」
『………田路流としては、今日の大会に意味があるとは考えなかったため出場しませんでしたが?』
うん、違う、そうじゃない。確かに風美花が出場していた今日の関東大会に蘭の娘の凛ちゃんが出場してなかったのは思うところはあったけど。
…蘭はこういうときに変に抜けていたりするのよね。高校生の時もブリーフィングをぼーっとしていて全く作戦を聞かないまま試合をしたこともあったりしたなぁ…。
「いいえ、違う、そうじゃないわ。…貴女の娘の事よ。」
『…娘?ああ、蓮のことですか。それが何か?』
「…これは電話で話すようなことではないわ。今からそっちに行くから。大体40分で着くけど大丈夫かしら?」
『は?別に用事はありませんが…』
「なら行くわね。それじゃ。」
『いや、待て島』
プツッ
蘭がなにか文句を言おうとしたのを無視して電話を切り、私は車のエンジンを掛けて出発した。
田路流は戦車道の流派でありながら神奈川県横浜市のど真ん中という大都市に近い位置にある珍しい流派だ。
日本戦車道の流派で特に有名であるのは私が所属する島田流と現在西住かほが家元を勤めている西住流の二つだが、けしてこの二つの流派しかないわけではない。東北に拠点を置き夜戦を得手とする玉田流、瀬戸内に拠点を置き戦車を小規模艦艇と捉えて戦う村上流、紀伊に拠点を置き自走砲部隊を砲艦と考えて近代砲雷撃戦の戦術を基に戦う熊野流など、各地に流派が存在する。
そんな中でも特に人気があるのが田路流である。他の流派が比較的交通の便が悪い所に拠点を置いているなか、田路流だけは大都市でありさらに東京からも近い横浜に拠点を置いている。それ故に取っ付きやすいため、東京と神奈川では群馬に拠点を置く島田流よりも人気があるのである。
そうだからこそ、子供を捨てるなどということは親としては当たり前として流派としても言語道断なのだ。人気があり、有名であればあるほど一つのスキャンダルが命取りとなるのだから。
「だから、蓮ちゃんを捨てたのを取り消しなさい!」
田路蘭への島田千代の説得ロール!
「嫌です。」
「聞く耳すら持たない…!」
失敗した!
「あのね、蘭。百歩、いや千歩譲って蓮ちゃんの素行があまりにも悪すぎてこうなったとかならまだしも、才能が無いので捨てましたなんてどこぞの週刊誌やらにすっぱ抜かれたりしたら家が滅ぶわよ?」
「それならばその程度だったということでしょう。なんにせよ、あの娘のような才能の無い人間は田路にはいりません。」
「…ねえ、ずっと思ってたのよ。蓮ちゃんが才能が無いっていっているけれど、蓮ちゃんって聞いた話だとかなり整備とかの才能に溢れているらしいわよ?」
戦車乗りとしては未知数だけれど、流石に戦車を作れる才能はかなりおかしいと思うわ…。
「………?島田千代、貴女は何を言っているのかしら?」
「…え?いや、だから整備とか、戦車作成の技術とか…」
「………蓮には整備など勉強させていませんし、ましてや戦車を個人で作るなんてできるわけがないでしょう。見え透いた嘘を言うなど貴女らしくありませんね。」
……………んー?まさか知らない?それか蓮ちゃんが嘘をついてる………?
たしかブラックプリンスとかシェリダンとか作ったって言っていたわよね…。確かめてみましょう。
「ねえ、蘭。三年以内に突然ブラックプリンスが現れたことってなかった?」
「ブラックプリンス?………ああ、確かにありましたね。大方夫が買ってきたのでしょうし、既に売り払ってありますが?」
「じゃあシェリダンは?」
「あのアメリカ戦車ですか。あれは戦車道でも使用できませんからスクラップにしました。」
「…じゃあスピットファイアとシーファングは?」
「ああ、あれは聖グロリアーナに寄付しました。ちょうど冬季高校陸空合同戦車戦大会に使う戦闘機が足りていなかったそうなので良いタイミングでした。」
「ことごとく処分してるわね…。そのブラックプリンスとかシェリダンとかスピットファイアとかを蓮ちゃんと貴女の夫が作ったと蓮ちゃんは言っているのだけれど。」
「まさか。さっきから一体なにを目的に下らない嘘を言っているのですか?」
「だから蓮ちゃんと田路流のためよ。だから蓮ちゃんを」
「くどい!蓮を捨てたことを取り消すことはありません!あの娘は田路の家には必要ありません!」
…いい加減に頭にきた。娘が必要ない?才能が無いから捨てる?一発殴ってやろうかしら?
「ふざけてんじゃないわよ!貴女の都合だけで蓮ちゃんを捨てるなんて勝手にも程があるでしょう!」
「あのような才能無しなど田路の面汚しでしかありません!」
「ああもう!取り消さないって言うのならもういいわ!蓮ちゃんはうちで預かります!いいえ、いっそ養子にします!」
「ええいいでしょう!その方が後腐れが無くていい!」
「言質取ったわよ!今度しっかりと養子にする件で話し合いの場を設けさせてもらいますからね!そして蓮ちゃんは絶対に、島田の名に恥じぬ戦車乗りに育ててやります!」
「できるものならやってみればいい!今日はとっとと出ていってください!」
「ええ、そうさせてもらうわ!それじゃあね!」
バタン!
………。
……………やってしまったぁぁぁぁ!
売り言葉に買い言葉、完全に勢いと怒りのみで色々言ってしまった。蓮ちゃんの意思を確認もしていないのに養子にするだなんて言ってしまった。
しかも島田の名に恥じぬ戦車乗りにするとか啖呵切ってしまったし…うう、どうしよう…。
仕方ない、蓮ちゃんには説明した上で納得してもらうしかないわね。うん。お酒飲みに行こう…。
《蛇足・W家元の飲み会》
「………はあ?つまりその場のノリと勢いだけで養子にするなどと言ったと?」
「そうなのよしぽりん~。どうしよう、娘がまた増えちゃったわー。」
「しぽりんと呼ぶな島田流。全く、貴女は昔から冷静なようですぐに熱くなるのですから。」
「うー。でも蓮ちゃんも風美花と愛理寿に負けず劣らず可愛いのよー。ええ、世界一よ!」
「ほう、私のまほとみほを差し置いて世界一などとのたまいますか。世界一はまほとみほです。」
「いいえ、うちの三人よ!可愛いところを一人百個でも言えるわ!」
「ならば私は一人二百個でも言いましょう。」
「―――やろうってのかしら?」
「―――ふん、望むところです。」
「風美花はそろそろ第二次反抗期に入るけれどなんとか親に反抗しようとして空回りしてるところとかあとご飯食べてるときの笑顔がとーってもかわいいのよあと愛理寿はまだ四つなのにとっても賢くてなんとか風美花についていこうとして後ろを追いかけてる姿とかがとってもあどけなくて蓮ちゃんは普段しなれていない人への説明をわたわたと手を動かしながら必死に伝えようとしてる姿がキュートだしあの金色の髪もとっても綺麗なんだからそうそう風美花が最近ギターとかを練習してるんだけどその時の――」
「まほは普段は感情を表に出しませんがそれ故に時折溢れ出る喜びの表情がとてもいいんです。特にみほへみせる笑顔は年相応の女子のような笑顔でとても可愛くそれでいて美しいんです。みほは最近は昔のようなわんぱくさは鳴りを潜めていますが時折溢れ出てくる時の表情がとても破壊力があって、この前のまほへのいたずらの時の笑顔はやられたまほのポカンとした表情もあわせてとっても可愛くて可愛くてたまりませんでした。それにみほはプレゼントにボコられぐまのボコをもらったときの表情が――」
二人が語り終える頃には朝日が昇りきっていたとかなんとか。
お疲れさまでした。
書きあがったら即投稿な人間なので不定期ですが、頑張って次話をリロードしていきます。
という訳でまずは今回の独自設定です。
二話時点での独自設定
・原作七年前なのでまだしほも千代も家元に就任していない。西住かほは西住しほの母親。
・風美花は健啖家。Lサイズポテトを最終的に28箱分ぐらいは食べた。
・島田千代は聖グロリアーナ卒業。先代アールグレイであり西住しほ率いる黒森峰と凌ぎを削った。
・流派の内容の設定は完全に独自設定。
玉田流は恐らくノモンハン事件において戦史上初の戦車による大規模夜襲を行った玉田美郎中将が元ネタだと思われるので夜襲を得手とするとし、中将が新潟出身であるため東北に拠点を置いているということに。知波単の玉田をこの流派とするかは現在検討中。
村上流は恐らく尾道に拠点を置き瀬戸内海で活動していた村上水軍が元ネタだと思われるのでそこからかなり適当に連想。小型武装ボート同士の戦いを連想するとわかりやすいかも。
熊野流も同じく瀬戸内海等で活動していた熊野水軍が元ネタか。こっちは熊野という重巡洋艦の名前にもある名前なので自走砲や自走榴弾砲なんかで戦艦の砲撃のようなことをして戦う流派………みたいな。大学選抜のカールの乗員もこの流派っていう設定にしようか少し迷う。
田路流は本作オリジナル。横浜市内に拠点を置いていて聖グロリアーナとの繋がりが深い。
・冬季高校陸空合同戦車戦大会とは
本作オリジナルの大会。戦闘機道は無いが戦車道内に戦闘機や爆撃機の遠隔操縦を専門とした部門がある学校がある。戦車最大十五両、軍用機最大二十機を使用でき戦車同士の戦いのみならず航空攻撃に対空防御、航空偵察など戦車道の戦い以上に実際の戦闘に近い戦いとなる。ネックなのはこの大会に参加している学校が予算や人員の都合から現状黒森峰、聖グロ、プラウダ、サンダース、知波単の五校のみであることだろうか…。
次に田路蘭のプロフィールです。
プロフィール:蓮の母
名前:田路 蘭(タジ ラン)
担当:戦車長
身長:161cm
出身:神奈川県横浜市
現住所:上に同じ
家族:夫、娘1(2)人
血液型:A型
誕生日:4月2日(牡羊座)
年齢:西住しほ、島田千代の一つ下
好きな食べ物:マヨネーズ
嫌いな食べ物:いくら
趣味:紅茶を飲むこと
日課:娘の鍛練
好きな動物:ヌートリア
好きな花:シロツメクサ
好きな戦車:チャーチルⅦ
見た目はFateのエレシュキガル。聖グロリアーナの卒業生であり島田千代の後輩にして副隊長で先代アッサム。在学中、島田千代がいる間は島田千代のせいで注目されず、島田千代が卒業した後は島田千代と比較されて微妙とされと中々に不運な目にあった結果、娘を島田千代の娘よりも凄い戦車乗りに育てて見返してやる…というどこぞのヒロアカのエンデヴァーみたいな夢を持ってしまった。
多くの人は彼女を冷静な人物だと評価する…が、実際はポンコツだったりする。ちなみにポンコツは娘にしっかりと受け継がれているとか。
以上となります。
次回は島田家での話になる予定です!
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第三話 アリス・イズ・ワンダーガール
ホテルに泊まった次の朝、私と風美花を出迎えたのは千代さんだった。昨日言っていた通り本当に夜通し友人と飲んでいたそうだが、酔っているようには全く見えない。
「…お母様、まさかとは思うけど車なんて運転してないよね?」
「…あー、うん。意外とバレなかったわ?」
「お母様…。」
まさかの飲酒運転を認めた…。あの風美花すらも呆れ顔だよ…。
「…風美花、とりあえず通報しときますか?」
「いや、一応これでも母親だからやめてくれるかな…。はぁ。それで?蓮のことはどうなったんだい?」
「ああ、そうそう!その事なんだけれど…蓮ちゃん、家の子になる、なんてどうかしら!?良いわよね、ね!?」
なんだか千代さんの押しが強い気がするが気のせいだろう…多分。
………風美花の家の子に、か。たしかこういうのを養子になる、というんだっただろうか。
昨日、千代さんと別れたあとにホテルで風美花に聞いて知ったことなのだが風美花の家である島田家は戦車道の名家、それもなんとソ連のトハチェフスキー流やドイツのグデーリアン流、そして日本の西住流などと並んで有名な流派なのだそうだ。島田流自体は知っていたが風美花や千代さんがそこの人間とは知らなんだ。
島田流が重きを置くのは連携で、その次に重きを置くのが個の技術である。他の流派ではあまり見られない単独での奇襲や一対多の戦闘もままある流派なのだが、風美花曰く『やベーやつらを育ててチーム作ってもっとやベーやつを育てて
なにかのスレッドで『島田流ってギリシアのスパルタみてーな流派だよなwww』というネタレスに『拠点防衛で三両で二万両以上の敵相手に戦って三百両も撃破したり、十両で三百両相手にほぼ無被害で完勝したりするのか…島田流やべぇな。』というマジ(ネタ?)レスが返っていたのを見て笑った記憶があるが、あながち間違ってはいなかったらしい。流石に十両で三百両撃破は無理だと思うが。
しかし…私が一応学んできた流派である田路流はどちらかというと群を主とする流派だ。方向性の違う流派で学んでいた私が島田流の娘となって良いのだろうか…。
「…その、養子になるというのはとても嬉しい話なのですが、田路流の人間だった私が島田流の家の養子になっても迷惑ではないのでしょうか?」
「ええ、迷惑などではないわ。蓮ちゃんがうちに来るだけでも嬉しいし、もちろん流派としても腕利きの整備士を抱え込めるのだから損はないわ。」
「それに、蓮が島田の家に新しい風を起こしてくれるかもしれないしね。」
「私が腕利きの整備士だなんて、そんな…」
「…蓮ちゃん、戦車を個人でまるまる作れるだけでも十分な才能だってことを理解しておくべきよ?それで…養子になる方向で大丈夫かしら?」
「はい。私などでよければ…」
「蓮ちゃんだからこそよ!よーし、それじゃあ私たちのおうちに帰りましょうか!」
「ストップお母様、また運転するつもりじゃないだろうね?」
「………ばれなきゃ犯罪じゃないからセーフよセーフ。」
「アウトだよ…。もう家に連絡して迎えをよこしてもらってるから、それに乗って帰るよ。」
「えー。」
「えーじゃない。」
「…わかったわ。それじゃ、ゆっくり待ちましょうか。」
………斯くして、私が島田家の養子になることが決まったのであった。
少しして来た迎えの車に乗り、途中でお昼ご飯を食べつつ数時間。
私は群馬県にある島田流の本家へとやってきていた。
家の中の案内もほどほどに、早速整備の腕を見せてほしいと私は風美花によってガレージに連れてかれたのだが…
結論から言おう……
こ れ は ひ ど い 。
連れてこられたガレージにはなぜか九七式中戦車がところ狭しと詰め込まれていた。それも47mm砲を装備した新砲塔チハではなく57mm砲搭載の旧チハが、である。
どうやら島田家には大きなガレージが五つと大きな倉庫?が二つほどあるようなのだが、聞くところによるとそのうち三つのガレージが旧チハで埋まり、倉庫まるまるひとつと半分がガラクタで埋まっているためまともに使える施設の方が少ないのだそうだ。
しかも、そのチハたちも数が多すぎて整備が行き渡っていないという。事実ボロボロのまま放置してあるチハも見受けられる。
「…えぇっと、なぜこんなにチハが溢れ返ってるんですかね、風美花?」
そう風美花に聞きつつ見れば、風美花は死んだ目で遠くを見ていた。
「…お母様は旧砲塔のチハを集めるのと、ガラクタを集めるのが好きでね。この可哀想なチハ達もお母様によって世界中から集められたチハなのさ。」
「い、一体何台あるんですか…。」
「…確か少し前に『やっと六十四台目のチハたんを手に入れたわ!これで一○式だって怖くないわ!』とか言っていたから、多分そのくらいだろうね。」
「えぇ…。」
いくらチハを集めようと一○式を倒すのは厳しいだろうし、そもそも整備できてないんじゃ戦えないような…。
「………とりあえず、今回は一番手前にあるそのチハのレストアなんてどうかな。設計図やパーツなんかは無駄にたっぷりとあるから大丈夫だろう?」
そう言って風美花が指差した先には、見事に大破したチハが鎮座していた。
そのチハはまだ大破してあまり時間はたっていないようだ。その表面はどうやら絵がかかれていたようだがほぼ掠れて見えず、砲塔左側面は砲弾が掠めたのか抉れており、さらに砲身は曲がり、また車体は側面が削れたり、へこんだりしている。そしてなにより、横から大口径砲の徹甲弾で撃ち抜かれたのかエンジンに見事に穴が空いていた。
明らかにまともな相手と戦ったとは思えないダメージだった。
「このチハですか…。一体何と戦ったらこうなるんですか。」
「確かM26パーシングだったかな。」
「は?なんですって?」
「パーシングさ。ちなみに相討ちだったよ。」
「…M26って実質戦後戦車、それも90mm砲搭載の重戦車ですよね。それとチハで戦って相討ちとか冗談でしょう?」
「本当さ。ギリギリだったけどね。」
「………それが本当なら乗員にあってみたいものですね。化け物か天才かのどっちかでしょう、それ。」
「ははは、天才なのは私も認めるかな。………おや、噂をすればなんとやらだね。来たようだよ。ほら。」
そう言いつつ風美花が私の後ろを指差す。チハでM26を倒すとかマチルダⅡでチャーチルⅦを倒すよりも不可能なような気がするのだが。
「はぁ…。一体どんな化け物なんですか…ね…え?」
「いた、おねーちゃん!」
風美花の指差した方を振り向くと…
そこには、風美花と同じ灰色がかった茶髪をサイドテールにまとめた―――――
幼い少女が、風美花に向かって走っていた。
そしてそのまま風美花へと走り寄っていき…
「おねーちゃん!」
「ごふぁっ!?」
風美花の腹に突っ込んだ。
…うん、突っ込んだ。かなり速度が乗っていたので絶対痛い。少女の方はニッコニコしながら風美花に顔を擦り付けているが、風美花は…顔が少々青いような…まあ、なんとか受け止めきれているようだしいいか。
「ぐふっ…ど、どうだい蓮?可愛くて才能に溢れている妹だろう?」
「そうですね、あとは体格をどうにかすればプロラグビーでも通じそうなタックルでしたね。」
「ふふ、そうだろう?」
「ん~♪あれ?おねーちゃん、その人はだれ?新しい門下生の人?」
「門下生というのもあながち間違いではないね。だけど、もっと良い人さ。」
「良いってどう?」
「ふふふ…なんと、愛里寿の新しいおねえちゃんなのさ!」
「………?大丈夫、おねーちゃん?おねーちゃんはおねーちゃんだけだよ?」
「んー、これは説明が難しいな…。養子…って言っても通じないだろうしなぁ…」
「…まあ、今まで会ったことのなかったおねえちゃんとでも。あ、私の名前は蓮です。よろしく。」
「んー…まあ、いいや!私は愛里寿!よろしくね、蓮おねーちゃん!」
愛里寿…なるほど、良い名前だ。しかしこの少女…というか幼女がチハでパーシングを倒したとかやっぱり信じられん。
「はい。それで…どうやってこのチハでパーシングを倒したんですかね?私、とても気になるんですけども。」
「チハ?あ、ボコ号のこと!?」
「ボコ号?それがこのチハの名前なのですか?」
「うん!この子で戦うといっつも相手にボコボコにされちゃうけど、いつも耐えて耐えて、それで敵をやっつけるの!だからボコ!」
「なるほど…。」
うん、確かにボコボコにされたようだが…ボコとは『ボコられぐまのボコ』だろうか。一部界隈で人気で大洗だかにボコミュージアムとかいうテーマパークもあるとかないとかいうが…たしかアニメではひたすらに悪役にボコボコにされてばかりで反撃はしてなかったような気がする。というかあの負傷具合とかかわいらしいデフォルメキャラじゃなかったら下手するとR-18Gありえるような内容だったと思う。腕もげたり首折れたり目潰れたりとか………
うん、想像したら気持ち悪くなってきたし止めよう。
「でも、少し前の戦いでパーシングにやられちゃったの。ちゃんと撃たれる時に撃ってパーシングは倒したけど…ボコ号は動かなくなっちゃった。」
「…そもそもなぜチハでパーシングと戦っているのかというツッコミは無しですかね?」
「愛里寿がこのチハ以外に乗りたがらないからさ。お母様はこれを機にまずはマチルダⅡに機種転換させようとしているけれど…私は愛里寿には好きな戦車に乗って欲しいからね。だから蓮に、直してほしいのさ。」
「え、ボコ号直るの!?」
う、愛里寿からの期待の視線が痛い。
「むむむ、恐らく直すことは出来ますが…砲塔とエンジンはまるごと入れ替えてしまった方が早いですね。いっそ新砲塔に改修してしまうのもありですが…どうしますか、愛里寿?ちょっと強くすることもできますが。」
「しかも強くなるの!?うん!蓮おねーちゃんお願い!ボコ号をパワーアップして!」
…とっても良い笑顔だこと。これはやってやるしかあるまい。うん、腕がなる。
「わかりました、やってみましょう。………ところで、装甲板とエンジンの替えと、あと…一式四十七粍戦車砲の在庫ってありますかね?」
「ふむ、前の二つはある。砲は…心当たりはあるかな。」
「では、そこに連れていってもらっても?」
「良いよ。それじゃあ、宝探しとしゃれこもうか。」
「宝探し!?私も行く!」
「わかったよ。ほら、行くよ蓮。」
「はい。」
ゆったりと歩いていく風美花を追って、私もガレージをあとにしたのだった。
《視点:愛里寿》
蓮、と金色の髪のお姉さんは名乗った。
おねえちゃんが連れてきた人だから変な人なんだろう、と思ってたらなんと私のもう一人のおねえちゃんなのだそうだ。ヨウシ、とかおねえちゃん…んー、どっちかわからないから風美花おねえちゃんと蓮おねえちゃんにしよう。風美花おねえちゃんがヨウシと言っていたけど、よくわからなかった。
蓮おねえちゃんは風美花おねえちゃんとかお母様とは違ってとっても綺麗な金色の髪に青色の目だから本当におねえちゃんなのかはわからないけど…でも、ボコ号を直してくれるっていってたしきっと優しい人なんだと思う。
しかも、直すだけじゃなくて強くしてくれるんだって。これでボコボコにされずにボコボコにできるね♪
どうなるんだろう…楽しみだな。
お疲れさまでした。
愛里寿はまだ五歳とかなので幼げ(そうでもないかも)ですが、どうですかね…?
まあいいや。とりあえずまずは今話の独自設定です。
三話時点での独自設定
・トカチェフスキー流とグデーリアン流については特になにも考えてないので登場するとしても名前だけです。
・島田流について、この作品では一に連携二に個人技術、といった感じでいきます。スパルタの例えは正直ずれているので気にしなくて良いです。
・チハが既に現存車両数より多いような気がしなくもないですが、ドイツのマウスが増殖してたりするガルパン世界なので多分大丈夫でしょう。
以外と少ない。
では次は主人公の母親(予定)、島田千代さんのプロフィールです。
プロフィール:風美花達の母
名前:島田 千代(シマダ チヨ)
担当:戦車長
身長:164cm
出身:群馬県館林市
家族:母、父、夫、娘2人 (+1)
血液型:O型
誕生日:3月31日(牡羊座)
年齢:西住しほと同い年、風美花達のだいたい20才ちょい上
好きな食べ物:さばの味噌煮
嫌いな食べ物:パクチーなどの香草の効いた料理
趣味:チハとか兵器とかの収集
日課:兵器関連のオークションを覗くこと
好きな動物:梟
好きな花:オレンジのユリ
好きな戦車:九七式中戦車(旧砲塔)
灰白色の髪をした島田流の次期家元。聖グロリアーナ卒業生であり元隊長。在学時は黒森峰の西住しほと凌ぎを削っており、戦績はほぼトントンである。
普段はおしとやかで冷静な人物だが、少々血の気の多いところもある。また、酒が入るととっても娘が大好きなただの女性になる。
兵器、特にチハを集めるのが好きであり、兵器関連のオークションではアメリカやドイツでのものであっても半数以上の出品物が島田千代によって落札されているらしい。それに応じて島田家の倉庫やガレージの占有率も上がっており、倉庫は既にガラクタだらけ、ガレージも半分以上が占拠状態という有り様である。チハはちょくちょく使ってはブッ壊しており、大破したまま放置されてしまっている車両もある。使用人や島田流の人間はそれのせいで頭を抱えているとかなんとか。
まだ島田流家元には就任しておらず、扱いとしては島田流の師範代なのだが…現家元の島田百江(しまだももえ)が娘(…それと孫にも)ダダ甘なため、それなりにやりたい放題している。娘に甘いところはしっかりと受け継がれている。
捏造設定もりもりなのは今更だから許してほしいです。
というわけで待て次回!
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第四話 三姉妹の宝探し
風美花に連れられて向かったのは、千代さんが完全に占有してしまっているという倉庫だった。それも横浜にある赤レンガ倉庫と同じぐらいに大きい。
なぜこんなにでかいのか…。
「あー………やけに大きいだろう?ここはお母様がガラクタを買いまくるせいで溢れた物達をしまっておくための倉庫なのさ。だからかなり大きいのだけれど…これでも足りなかったのさ。」
「お母様はへんなの集めるのが大好きだからね!この前も長い銃とか買ってたし。」
「長い銃ですか?」
「ああ。たしか…ロシアのライフルだったかな?」
「…なんですか、千代さんは政府とでも戦争をするつもりなんですか?朝敵なんですか?」
「はははは………そうでないことを願うかな。うん。それじゃ、入ろうか。」
倉庫の中は、予想していたほど酷くはなかった。
倉庫の床から天井、手前から奥までほぼ等間隔に並び生える棚。
棚の下の方には大きめのものが置かれ、上の方には銃や弾薬のような軽めのものが置かれているようだ。
しかし、どれもしっかりと整理されている。先程のチハの状況からもっと色々なものが山積みになってまともに使えない物ばかりかと思っていたからかなり予想外だ。
まあ、そんなところで私たち三人は宝探しもとい愛里寿のボコ号用の47mm砲探しをしている。
………というかこれ、戦車道とか関係なく集めているっぽい。だって戦闘機のP-51(?)が目の前に鎮座してるし…。
「風美花、なぜここにP-51が…?というかなんで上部にバックミラーついてるんですかこれ。」
「すまない蓮、私は飛行機には詳しくないんだ…。」
うむむむむ、warthunderではずっとドイツと日本しか使ってなかったからアメ機はあまりわからん…。でもダイブブレーキとかついてないしA-36じゃ無さそうだしなぁ…。だからといって20mm機関砲が生えてるわけではないしなぁ。むむむ。
「おねーちゃん!また飛行機見つけたよ!しかも同じの二つ!」
「もう飛行機はいらないんだけどなぁ…。私わからないし。」
「まあまあ、行きましょう風美花。」
「はぁ…。それで?どれだい愛里寿?」
「これ!」
そう笑顔で指差した先には、二機の機体が鎮座していた。
ダークグリーンの機体に、大きな一つのプロペラ。W字を描く特徴的な逆ガル翼の主翼とそこから生える前脚。片方の機体は片翼一門合わせて二門のガンポッドをぶら下げ、もう片方の機体はその主翼からその長い機関砲を覗かせている。そしてダイブブレーキと、機関砲の方は爆弾懸架装置も備えている。
つまるところ、この機体は―――
「す…スツーカだぁぁぁぁぁ!」
「うぉっとぉ!?れ、蓮!?どうしたんだい!?」
「どうって、これですよこれ!スツーカですよ!ユンカース社製、Ju-87『スツーカ』!うっわぁー!本物を見れるなんて思っても見ませんでした!しかもこれG-1型と、それよりも主翼が長いからD型後期の……うん、20mm機関砲で急降下爆撃用の爆弾懸架装置ですから恐らくD-5型ですね!うわーい!動かしたい!飛びたい!急降下したい!ばらしたーい!」
「私ものってみたーい!」
「すつー…か?でぃーごがた?ごめん、蓮、私はさっぱりわからないよ。」
「ならば教えてあげましょう!」
「おっと、いらないことを言ったかな…」
「教えて教えて!」
「よろしい!この機体は1934年にドイツのユンカース社にて設計開発が行われた急降下爆撃機、『Ju-87』です!ちなみに『スツーカ』や『シュトゥーカ』といった愛称はドイツ語で急降下爆撃機を表す『
スツーカにはいくつかのタイプと改良型がありまして、初期量産型のA型、その改良型のB型、B型の長距離型であるR型、艦載機型のC型、更なる改良を施したD型、対地攻撃用に翼下に37mm砲をポン付けしたG型などと、第二次世界大戦を通して運用され続けただけあって多数のタイプと改良型があるのです!それでこの二つは…」
「ストップだ蓮、もういいから。」
「「えー。」」
「愛里寿までかい…。既に私は情報量が多過ぎて訳がわからないんだけれど。」
「まだまだ話し足りないのに…。」
「そうだよおねーちゃん、まだまだ聞きたいよー。」
「二人とも…ここに来たのはなんの為だい?」
「え、スツーカのレストアのためでは?」
「違うよ蓮おねーちゃん、ボコ号をパワーアップするためだよ!」
「あー、そうでした。おや、あれではないですか?口径は多分47mmぐらいですが。」
たまたま目に入ったそれっぽい砲を指してみる。が
「あれは…違うんじゃないかな?あ、ラベルが貼ってあるね。『47mm P.U.V. vz.36砲』…?蓮、愛里寿、これはなにかわかるかい?」
「わかんない!」
「だろうね。でもまあ、47mm砲でもこれは違うだろうね。名前から考えるに恐らくドイツだろうし。」
「むむむむ…。では、こっちはどうでしょう?」
近くに似たようなものがあったのでそっちも聞いてみる。
「これは…あったあった。えっと、『試製九七式四十七粍砲』って書いてあるね。んー、日本の砲みたいだけど、一式四十七粍戦車砲よりも古いみたいだね。」
「むむむむむむ。もし一式の方がなかったら、調査の上で使えたらそっちを使いましょうか。」
「そうかい。」
結局一時間ほど倉庫の中をさまよったが、一式四十七粍砲が見つかることはなかった。代わりにUボート用の30mm機関砲が球状の砲塔ごとあったり、ドイツの航空機関砲であるMK103 30mm機関砲が二十基ほどあったり、そもそも戦後の砲であるロイヤル・オードナンスL7 105mm戦車砲があったり、数年前に一○式に完全に更新され、自衛隊から全車退役した74式戦車が鎮座していたりと語り尽くせないほどにさまざまなものがあったが。
そもそも、よく考えてみれば日本でかなりポピュラーなチハの砲となれば普通に売っているだろうから、変なのしかないここには無いのかもしれない。うん、きっとそうだろう。目の前に見える四式十五糎自走砲とか変なのの最たるものだろうし。
「………風美花、このホロ車、ちょっと本気で運用してみません?多分ティーガーとかでもワンパンできますよ?」
「…この15cm砲は魅力的だけど、オープントップだから駄目かな。」
「ねーねー、ボコ号の砲はー?」
「ここには無さそうですし、買いに行けませんかね?試製九七式の方が使えなかったときはそうするか…私が作るかのどっちかになりますね。」
「…え、蓮おねーちゃん、戦車の整備だけじゃなくて戦車の砲を作れるの!?」
「はい。必要なものさえあれば戦車をまるまる一つ作れますよ。」
「すごい!それじゃあ自分で戦車を設計して自分で作れちゃうんだ!いいなー!」
自分で、設計をする。
なるほど、その発想は無かった。確かに今まで戦車やら戦闘機やらを作っていたが、それは全て父に先導されて既にある設計図を元に再現されたものだ。
無論、設計者への敬意も込めて出来うる限り完璧なものを作ったが………なるほど、自分がその設計者の立場になるというのは考えなんだ。
しかし…自力で設計するとなると、それについての知識が多く必要だ。トライ&エラーで自力で詰めても良いかもしれないが、そこは先人の遺産を頼らせて貰うとして………
問題は、目標だ。
いくら技術が、知識があろうとも目標となる地点が無ければなにも成し得ない。しかし、その目標を得るには私の見聞はあまりに狭すぎる。
…………うむむ。
「設計、ですか………。愛里寿は、もし自分で戦車を作れたらどんな戦車を作りたいですか?」
「え、私が?ん~、あ!センチュリオンの砲塔をでっかいボコにしたい!きっとかっこいいよ!」
「ボコチュリオンとはまた面妖な………。」
「なるほど、ボコ…ということは好きなもの、ですか。」
好きなもの、好きなもの………うーむ、牛乳、ヴィルベルヴィント、メーデー、メーデー、メーデー、ディスイズ スイレンエア 8146、スイレンエア 8146、スイレンエア 8146、メーデー………あ、これ違う。なんでメーデーを発信してるんだ?
ふむ。
ヴィルベルヴィントなら、機関砲を30mmにしたツェルシュテーラー45とか?でも、それはあくまで改修に過ぎないし、なによりそれ以上の改造は設計者に失礼かもだしなぁ。
なら、対空戦車?
……………………なるほど、対空戦車か。それなら弾をばらまけて楽しいだろうし、見映えも良い。
でも、どんなものだろう。愛里寿にとってのボコのような………牛乳?
「なるほど、牛乳を高い水圧によって高速で空へ撃ち出す対空戦車…!」
「うん、そんな対空戦車は嫌かな。それに対空戦車じゃどんなに頑張っても大抵砲が小さいから至近距離での撃ち合いが前提になるだろうし、そもそも戦車道では自分で設計した戦車は使用できないよ?」
「なん………だと?いえ、ほら、ドイツのアハトアハトとか対空砲ですしワンチャン…」
「いや、そのアハトアハトを載っけた戦車は対空戦車じゃなくて重戦車じゃないかな?まあ対空戦車であっても戦車道に参加できるものはあるけれど、あまりポピュラーではないね。」
「ううむ…新しい発想は得れましたが、まだどうにもなりそうにないです。とりあえず、ありがとうございます、愛里寿。」
「えへへ~♪どういたしまして!」ニパッ!
そう言い、愛里寿は花のような笑顔を咲かせた。
……なるほど、これは風美花がシスコン気味なのも頷ける笑顔だわ………。うん、ロリは正義と言うのもあながち間違いではないのかも………はっ!いかんいかん、思考が変な方向に進んでいた。カット、カット!
「蓮、大丈夫かい?ぼおっとしていたようだけど。」
「あ、はい。大丈夫です。しかし…ボコ号はどうしましょうか。砲塔はなんとかなりますが、やはり砲は繊細ですしできれば正規の物が良いですけどね…」
「んー?ねえ、蓮おねーちゃん。ここにあるものはへんなのばっかりだから、ここにあったらそれも変な砲なんじゃないかな?」
「……なるほど。そのあたりどうですか、風美花?」
…おや、風美花の反応がない。一体どうしたのやら……
んん?なぜか風美花はぽかんとしている。ああ、なるほど……
「その発想はなかった、とかですかね?」
「ん゛ん゛っ゛!………ハハハハハ、ソンナワケナイダロウ?私はきっと砲塔ごとここにあると思ってたのサ!」
「言い訳は見苦しいよおねーちゃん!」
「ぐふぅ!」
「あー……うん。午後五時四十二分、ご臨終です。」
「死んでないからね!?はぁ…。とりあえず、もう少し探すかい?」
「いえ…そもそもここに来た初日に色々するのもどうかと思いますし、今日は打ちきりましょう。することは試製九七式の情報収集と、千代さんから許可を貰うことですかね。」
「許可は大丈夫だと思うかな。どうせ倉庫の肥やしだしね。おっと、噂をすればなんとやらみたいだね。」
『風美花ー!愛里寿ちゃーん!蓮ちゃーん!ご飯よー!出ておいでー!』
「ご飯!晩ご飯だよおねーちゃん!ほら、早くいこう!」
「晩ご飯………牛乳はありますかね?」
「あるんじゃないかな?ほら、蓮も行くよ。」
牛乳があるならそれは素晴らしい晩ご飯だ。ふふふ、とても楽しみだ。
《視点:風美花》
うん、どうやら蓮と愛里寿は仲良くなれているようでよかった。愛里寿は人見知りなところがあるし、蓮は…まあ事実上の引きこもりだったわけだから心配だったけど杞憂だったみたいだね。
しかし…飛行機か。私はさっぱり興味がなかったけれど、蓮や愛里寿はそうではないみたいだ。戦車一筋だから問題ないと思っていたけれど………あ、そういえば私が行く予定である聖グロリアーナ女学院に、飛行機も含めた戦闘をする大会があるんだったような気がする。たしかお母様に飛行機も多少は学んでおくべきと言われた記憶がある。
蓮に、教えを乞うか。あの…じぇーゆー八七のときの語りから考えるに多分相当の知識を持っているんだろうしね。
………ふふ。まさか最初に私に新しい風を吹きいれてくれるなんて、やっぱり蓮は面白い。
蓮も愛里寿の言葉でなにか着想を得たようだし、この先が楽しみかな。
お疲れさまでした。
リボンの武者を読んでいて気付いたのですが、西住仮面の車両に『レン』っていう乗員が居たんですね…。これは面倒かもしれない。
(追記:フェイズエリカ、ちゃちゃっと買って読みました。)
というわけで今話で登場した(?)独自設定
・陸上自衛隊の主力戦車
陸上自衛隊ではほぼ全ての主力戦車を一○式に更新済み。90式は予備役となり、74式は全車退役している。
・戦車のパーツ等について
ある程度ポピュラーな車両であれば戦車倶楽部などで色々買える。島田千代が集めているのもは大抵がそういうところに流通していないものなので本当の一点物とかもあったりする。
・自作戦車について
自作であっても、戦車道にて使用可能な戦車でありかつ戦車道連盟の認可が降りれば戦車道で使用でき、また改造なども規定の範囲内であればできる。ただし二年ごとに車検がある。
自身で設計、作成した戦車は戦車道、日本でポピュラーな日本式戦車強襲競技、欧州でポピュラーな欧州式タンカスロンのどれにおいても使用できない。しかし近年、米国において日本の野試合式の戦車強襲競技をアレンジして、10t以下の車両でありかつ安全にある程度配慮されていればどんな車両でも参加できる『オールタンカスロン(全ての戦車による競技)』、又は『オールタンカース』という競技が興っており、様々な独創的な車両が参加している。人口の少なさ故に頻度は少ないが、戦車や車両のパーツメーカー、軍需企業だけでなく米陸軍も注目しており、米軍などが主催の大会もすでに存在している。日本においてはそこまでの認知度は無いが、一部の戦車愛好家や整備士らによって細々と続いている。
・対空戦車について
基本的に全面を装甲で覆われていれば使用できる(クーゲルブリッツ等)。ヴィルベルヴィンドやM19対空自走砲などのオープントップ車は多くの国では使用できないが、日本戦車道ではオープントップであっても開いている部分を特殊カーボンで覆い、完全な乗員保護ができていてかつ戦車道連盟からの認可が降りれば使用できる。しかし昨今において認可が降りてかつ使用したのは戦車道が廃止になる前年の大洗女子学園のみであり、対空戦車が活躍しうる冬季高校陸空合同戦車戦大会においてはどの学校も対空は戦闘機頼みか全面が装甲に覆われている車両の使用のみであり、未だオープントップ車の活躍は無い。
・特殊カーボンについて
特殊カーボンは第二次世界大戦末期に日本の軍人、財政会の人間、及び政治家らの集まりである『紺碧会』及び『青風会』の研究者によって開発され、数機の襲撃機に対して装甲として使用されて多大な戦果を上げたものの日本は敗戦した。
戦後米軍がこの特殊カーボンを戦車に対して使用したことをきっかけに戦車などの装甲として使用されるようになり、その安全性から戦車道の車両にも使用されるようになった。なお、航空機に対してはある一定の高度において突然発火する現象がみられたことなどから使用されていない。
特殊カーボンはかなり安価であり費用対効果も素晴らしいため戦後第二世代の戦車以降には全ての戦車に使用されているが、それ故に対策されるのも早く現在では戦闘においては心許ない程度の装甲となっている。
なお、特殊カーボンに対しては成型炸薬弾が極めて有効であるため、戦車道連盟等では砲弾の審査を徹底している。
長くなりましたがこんなところですね。特殊カーボンの件の『紺碧会』と『青風会』はクロスオーバーポイントです。
あとはおまけの風美花プロフィールです。
プロフィール:島田流の長女
名前:島田風美花(シマダ フミカ)
担当:戦車長
身長:144cm
出身:群馬県館林市
家族:祖母、祖父、母、父、妹(妹)
血液型:O型
誕生日:11月30日(射手座)
年齢:10歳
好きな食べ物:じゃがいも
嫌いな食べ物:トマト
趣味:ピアノ
日課:散歩、戦車道
好きな動物:カピバラ
好きな戦車:マチルダⅡ
好きな言葉:明日は明日の風が吹く
行き場を失っていた蓮を救った、島田流の長女。戦車を腕はかなりのものであり、現在の関東において同世代では好敵手と呼べるのは現状田路流の田路凛ぐらいである。蓮を拾った日は、戦車道の小学生大会、関東大会の決勝戦の日であり群馬県代表として参加したが、田路凛は参加していなかったため圧勝した。
島田千代の娘であることを誇りに思っているが、島田流自体に対してはいい感情ばかりではない。
音楽が好きであり、ピアノやバイオリン、トランペットなどいろんな楽器に手を出している。今のところしっくり来た楽器はアコーディオン。
中学校は聖グロリアーナ女学院附属中学校に進学することを予定しているとか。
はい、というわけで長くなりましたが以上です。
次回、乞うご期待、です!
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