『凶拳』と歩むヒーローアカデミア (こうが)
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プロローグ
てな感じの軽いノリで書き始めました!まだまだ小説には不馴れで文才の無さが目立ちますが暖かい目で見てくれたら嬉しいです。
そんな感じでぼちぼちがんばります!
「なぁなぁ頼むよ、お兄さん達お金に困っててさぁ」
「は、はぁ……」
僕はある場所に向かっている途中…チンピラに絡まれ…路地裏へと連れ込まれた。
(い、急いでるのに!)
自分を取り巻く状況に僕、赤龍拳人は脳内で溜め息をつく。昔からなにかとトラブルに巻き込まれやすい体質なのが恨めしい。
「あのぉ〜僕、急いでるんですが……」
「そんなこと言わずにさ~、ほら、助けると思って」
へらへらと笑いながら迫ってくるチンピラに嫌気が差しながらも、穏便に済ませる為に笑顔を作り続ける。
同時に、頭の中に声が響いた。
『拳人よ、蹴散らしてはどうだ?こういう輩は身をもって思い知らねば止まらぬぞ』
「っ〜……それは、最終手段です。書文先生は出てこないで、僕だけでどうにかしますから」
聞こえてきた声に小声で答える。その行動が癪に障ったのか……短気そうな男に胸ぐらを乱暴に掴まれる。
「ああ、めんどくせぇ!さっさと……やっちまおうぜ?」
「あーあ、怒っちゃったよ」
「ごめんなぁ、坊や」
掴みかかってきた男の手の皮膚が変化する。刃のように鋭利な物へと変わった事から、そういう個性かぁと一人で納得する。まだこういった個性を使いしょうもないことをするバカは少なくない。
もう一度、頭の中に声が響く。
『これはやむを得んな』
「はぁ、出来ればやりたくなかったんだけどなぁ」
「何ぶつぶつ言ってやが……がっ」
胸ぐらを掴んでいた奴に拳を打ち込む。瞬間、その男は白目を向いて倒れた。その様子を見て周りにいた奴らが焦りだす。
「なっ!?お、おい、どうした!?」
「て、てめぇ!何しやがった!」
「安心してくださいよ、気絶させただけですから」
その動きに対してなのか、脳内から感嘆の声があがる。
『ほぉ、少しは様になったのではないか?』
「ははっ、書文先生のお陰です」
「っ……このガキが!!」
「あんなんまぐれだ!二人懸かりなら……がっ!?」
「それ、フラグじゃないですか?」
三流じみた台詞を吐いているもう一人に、拳をねじ込み。もちろん……気絶させる程度だ。
「て、てめぇ、なんだよ!個性の乱用は」
「僕は個性を使ってませんよ?」
「……へっ?」
「そもそもの話、あなた方にそれを言われる筋合いはないですよね?」
最後にそう吐き捨てて、拳を突きだした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「あぁぁぁ……正当防衛とはいえ、僕は入試前に何てことをぉ……」
『何、バレなければ問題ではなかろう。にしても儂も暴れたかったのだがな』
溜め息をつく僕を余所にさらっと問題発言をしつつ残念そうに書文先生が呟く。それに対して、呆れながら答えた。
「書文先生が生身の人間に拳を打ち込むのは危険です。ホントに危ないときだけ交代しますから……」
『……よかろう。どちらにせよこの体の主人はお主だ、そこいらの判断は任せる』
多少、不服そうではあるが納得してくれたようだ。ホッと胸を撫で下ろす。
さっきから語りかけてきているのは、僕の体に宿る武人、
詳しいことは……正直、僕にもわかっていない。個性が発現した時にこの人が僕の中にいる、ということをはっきりと自覚した。
(それから色々お世話になったなよなぁ……)
しみじみと過去の思い出に浸りながら、歩いていく。絡まれた場所が目的地から割と近くだったので普通に間に合った。
そして、目的地である国立雄英高等学校へと辿り着いた。
「うわぁ〜さっすが、倍率化け物の雄英。人の数が尋常じゃない」
『ほう、これだけいれば強者の一人や二人はおるであろう。呵々ッ!!少しは楽しめそうではないか!』
「か、堪忍してくださいよ……僕は書文先生みたいに戦闘が大好きな訳じゃないんですから」
今日は自分の夢であるヒーローになるための第一歩、雄英高校ヒーロー科の入試試験の日なのだ。
門の前に立つ。周りには僕と同じくヒーローを目指してここに来た人達。体が強ばりはじめる、緊張に支配されそうになっている所にいつもより穏やかな声で書文先生が語りかける。
『何を怖じけづいておる、お主はこの日のために出来ることをやってきたではないか。ならば、あとは自身の心構えのみよ。気を強く持つがよい』
「先生……はい!ありがとうございます!」
『しかし、出来れば儂にも出番があれば嬉しいのだが』
「はは、結局それですか。あ」
見渡すと、試験場に向かっている周りの人達から視線が僕に向けられていた事に気づく。
まぁ、当たり前だろう。だって周りから見たら一人でぶつぶつ呟いてるヤバイ奴だもんね。
顔を赤らめながら……門を通り、試験場へと足を向けた。
これは『凶拳』と謳われた武人をその身に宿した少年がヒーローを目指していく物語である。
オリ主
赤龍拳人(せきりゅう けんと)
赤い髪の毛が特徴的な少年。
幼少時のある出来事がきっかけでヒーローを志すようになった。
体に宿っている李書文とは師弟のような関係にある。
個性
『武人憑依』
書文を身に纏わせることができる。また、意識を丸ごと書文に譲ることも出来れば…彼の肉体の力のみを憑依させることも可能である。
書文先生かっこいいよ…書文先生!同志がいてくれたら嬉しいです。
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入試試験なんて拳一つで事足りる
てか文才なくて、すいません(泣)
『面白いものだな、にゅうしというのは。木偶を潰すだけで合否が決まるとは』
「それだけじゃ決まんないと思うけど……まぁ、内心助ってます。学科があまり得意じゃないから、ここで挽回できる!」
市街地を模したフィールドを駆け抜けながら、個性によって強化された拳でロボットを粉砕する。
プロヒーロー、プレゼント・マイクの掛け声と共に始まったヒーロー科の入試試験。
ルールは至極単純なポイント制でフィールド内にいる仮想ヴィランを破壊していき稼いでいくというもの。四種のロボットがあり一つが0ポイントの邪魔物が混じっているらしい。
「ふっ!!」
『ほう、悪くない』
調子は良好。さっきまで緊張でガチガチだった体が嘘のようだ。書文先生にあんなこと言ったけど、僕も大概らしい。
順調にロボを倒していきながら進んでいく。すると……
「くそっ!数が多い!」
「あれは?」
目線の先には、大量の仮想敵に囲まれて身動きがとれなくなっているオレンジ髪の少女がいた。
『ふむ……別に助けなくともよい場面ではあるが。さて、どうする?』
「聞かなくても分かってるくせに。行きますよ、先生」
『呵々ッ!愚問であったな!行くがよい、己の目指すもののためにな』
先生の言葉に頷き、少女の元へと駆けていく。勢いを殺さずに周りを囲っていた仮想敵の一体を拳で潰す。
「とっ!?た、助かるよ!あんたは?」
「それよりも。こいつら倒すのが先だよね」
「あんたの言う通りだ。それじゃいくよ!」
背中合わせの状態から二人で逆方向へと足を踏み出す。少女は手を巨大させ、敵を破壊していく。僕は拳を使って湧き出てくる敵達を蹴散す。
「百の奥義ではなく一の技を持って……せぇやっ!!」
即座に敵の前へと移動する。手前で止まり、足を踏み込む。地面が揺れると敵の態勢が崩れ胴体の部分ががら空きになった。無防備になった腹目掛けて豪速球で拳を飛ばす。
「すぅ〜……シッ!」
「やるじゃん、アンタ」
「まぁ、そこそこ鍛えてるから」
「そこそこねぇ。そこそこ鍛えてできる動きじゃないと思うけど」
他愛もない会話をしつつ敵を屠る。やがて、互いに敵を倒し終わると、少女が声を掛けてきた。
「助かったよ、ありがとうな!」
「当然のことをしたまでだよ。……もう行くね」
「あ、ちょいまち」
後ろからの声に足を止め、首だけを少女のほうに向ける。
「私は拳藤一佳!あんたは?」
「赤龍……赤龍、拳人」
「拳人か。おっけ、そんじゃお互い受かるように頑張ろうな!」
「あ、う、うん。が、頑張ろう」
彼女の笑顔を直視出来ずに、目を背けてしまうものの何とか返事を返しその場を後にした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『あの小娘、荒削りではあるが中々に良い功夫であったな』
「同感です。多分あの子、体術の経験があるんじゃないんでしょうか?個性も格闘向けっぽかったですし」
珍しく書文先生が他人に対してどうこう言っているので思い当たったことを言ってみた。
『言われてみればそうかもしれぬ。所で拳人よ、何故さっきから顔を赤くしておる?』
「い、いや。ほら、女子とそんなに話したことないから、その」
『そういう部分はまだ未熟なのだな』
「しょうがないでしょ、こればっかりは」
苦笑しつつも、手を止めない。仮想敵を狩っていく。こんな所で立ち止まってはいられないのだ。僕の夢を実現するために。
(後は……頑張ろうって言っちゃったしね)
突然、地面が揺れると共に地鳴りが響く。何事か音がした方を見ると、数十メートルにも及ぶ仮想敵がビルの間から顔を出していた。それを見た瞬間に周りにいた受験生達が踵を返して逃げ出していく。
「さすが雄英、こんなの出してくるのか……」
『ほう、壊しがいがありそうではないか?勿論、潰しにいくのであろう?』
「うーん、あれを倒してもメリットはないし。放っておきま」
言葉が途切れる。大型仮想敵の足元には……先ほど別れた少女の姿があった。
「まったく、もう……」
『拳人よ、お主の巻き込まれ体質とやらは天性のものだな』
少し愉快そうに書文先生はそう言う。僕からしたら、たまったものではないのだが?
「笑ってる場合じゃないですよ。彼女、身動きが取れなくなってる!」
『ならば、代われ。お主やあの小娘の功夫を見ていたら儂も血が滾ってきたわ。拳人、あれを潰しても構わないであろう?』
「いいですけど、拳藤さんの救助も忘れないでくださいよ?先生」
『おうさ。任せておくがよい!』
瞬間、僕の纏っていた雰囲気が一気に変化する。これこそ僕の個性の真骨頂である『武人憑依』。さっきまでのはあくまで肉体の力を借りていただけ。でも、今の状態は……
「呵々ッ!!久方ぶりの感覚だ、滾ってきたぞ!」
意識を丸ごと書文先生に譲っているのだ。今、この体の主導権は彼にある。
『お願いしますよ、書文先生!』
「無論、武の極致。ここで見せるとしよう」
逃げ出していく受験生達の間を音速ともとれる速度ですり抜けながら、拳藤さんの元へと向かう。
「拳人!?な、なんで……」
「ふむ、無事ではあるようだな。一佳とやら、そこから動くでないぞ?でなければ、巻き添えを食らいかねん」
「な、名前呼び!?って……そうじゃなくて!私の事はいいから!早く逃げ……」
拳藤さんが叫び声が途中で途切れる。目の前には仮想敵の巨大な手が僕の視界を遮っていた。
『正面、来てます!』
「応ッ!!…むん!!」
それを一瞬の内に、拳で破壊する。更に巨大仮想敵の後頭部へと跳躍する。地面から足が離れた時、「すご……」と拳藤さんから感嘆の声が上がった。内心でその言葉を肯定する。
(そりゃ、そうさ。だってこの人は)
かつて最強の拳法家と謳われ、魔拳士とも言われた伝説的な八極拳士。それが『李書文』というこの身に宿りし武人なのだから。
書文先生はある言葉と共に、拳を放つ。
「我が八極に二の打ち要らず――ふん!はぁッ!!!」
その拳は仮想敵の後頭部を殴り砕いた。瞬間、仮想敵は首が潰されたことにより、爆発を繰り返して残骸へと変わっていく。先ほどまでの姿が嘘のように木っ端微塵にされていた。
地面へと着地すると同時に試験終了のブザーが鳴り響く。
他の受験生達がそんな彼の姿を口をあんぐりさせながら見つめている。そんな周りの事を気にせず、赤い髪を揺らしながら書文先生が一言ポツリと呟いた。
「ふむ、ちと、やり過ぎたかのう?」
『わかってたけど、相変わらず凄いですよね……』
「呵々ッ!!そう褒めるな!なにも出んぞ?」
僕の顔で快活に笑っている李書文先生。彼はかつて人々からこう呼ばれていたという。
『二の打ち要らず』と
エクステラリンクの書文先生……宝具カッコいいですよね!?ねっ!?
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入学、そして波乱
「忘れ物ない!?全部持った?」
「大丈夫だって!もうこん中に全部入ってるから!」
母さんの言葉に反応しつつ慌てながら靴を履き、ドアノブへと手を掛ける。
「拳人!」
「今度はなんでしょうか!?」
「頑張ってきな。あんたの夢なんでしょ?ヒーロー」
「え……」
ニカッと快活な笑みを浮かべた母さんから、突然掛けられた言葉に一瞬反応が遅れる。それに対し、笑顔で応じる。
「うん、ありがとう。そんじゃ行ってきます!」
母さんの笑顔に釣られるように笑いながら、扉を開け……足を踏み出した。
通学路にある桜が咲き乱れる木が立ち並んだ道を進んでいく中で、試験から一週間後に雄英から届いた合格通知の内容とある言葉を思い返す。
『来いよ、赤龍少年!ここが君のヒーローアカデミアだ!』
No.1ヒーロー、オールマイトから言われたこの言葉。多分、僕は生涯忘れないだろう。
「絶対なるんだ……ヒーローに」
決意を固めている僕に書文先生は優しく語り掛ける。
『ほう、良い顔をしているではないか。拳人』
「そ、そうですか?いつも通りだと思いますけど……」
『呵々、自分では分からぬものよ。他人であり側におった儂だからこそ言えるのだ』
「そういうもんですか?」
『そういうものだ。ほれ、早めに到着したいのであろう?急ぐといい』
「あ、は、はい!」
先生に急かされて、駅へと向かう。予定していた時間通りに乗り、電車の中で書文先生と脳内で会話をしながら時間を潰していると、目的地に到着した。そのまま、学園へと足を向ける。
「改めて見てもでっかいなぁ……校舎も門も、でかすぎません?」
『何、あれほどの者がにゅうしに来ていたのだ。これくらい普通であろう』
僕の呟きに対して書文先生は冷静に返す。ホントにこの人は大体のことには驚かないな。ぼけーっと考え事をしていると、誰かに肩を叩かれる。
「よっ!また会ったな、拳人!」
「っ……えっ?け、拳藤さん!?」
『む、あの時の小娘か。ここにいるということはこやつも受かったのだな』
声を掛けられた方向に顔を向けると、拳藤さんがいた。こちらに向けられている笑顔が真夏の太陽のように輝いている。
「お互い受かってよかったな、これからよろしく!」
「あ、うう、うん。こ、こちらこそよろしく」
「それとぉ……ありがとう」
「へっ?何が?」
「ほら、あんた私のこと二回も助けてくれただろ?それについてお礼言ってなかったなって」
少し恥ずかしそうに頬を掻きながら、そんな事を言う彼女にドキッとする。慣れない!女の子と話すのまじで慣れない!
とりあえず教室までは一緒に向かう事になった。二人で雑談混じりに歩いていると、いつの間にかヒーロー科一年の教室にたどり着いていた。
「拳人はクラスどっち?」
「A組……かな」
「そっかぁ〜別々かぁ。私はB組」
「ま、まぁ隣のクラスだし。用があったりしたらいつでも声掛けてよ(震え声)」
「オッケー、それじゃまた後で」
「えっ、あ、うん、また」
手を振りながらB組の教室に入っていった拳藤さんと別れて…A組の教室へと向かう。
『ふむ、中々可憐な娘ではないか。なぁ、拳人よ?』
「頑張ったぁぁぁ、僕頑張ったぁぁぁ……ね?頑張りましたよね?書文先生!」
『はぁ、未熟者めが』
「なんで!?」
何故か書文先生に呆れらながらも、教室の扉を開き足を踏み入れる。まだそんなに人が集まっていないのか……手の指で数えられる位の人しかいなかった。
(そんなに人いなさそうだなぁ……)
『ほう?』
(ん?どしたんです?書文先生)
『何、気にするな。お主もいずれ気づく』
脳内でそんな会話を繰り広げていると、赤い髪の毛が逆立った少年と黒目でピンク肌の女の子が僕の方に寄ってきた。
「おお、お前は確か!入試の時の!」
「君が噂の!?」
「え、えっと〜知り合いだったっけ?」
「おっと悪ぃ、俺は切島鋭二郎!見てたんだよ、お前が0ポイント敵を拳でぶっ倒したとこ!漢らしかったぜ!」
「私は芦戸三奈!切島から聞いたよぉ〜!あのでかいの倒すなんてすごいね!!」
どうやら切島くんは僕と同じ試験場にいたらしい。にしても、なんというか、元気な子達だなぁ。
「僕は赤龍拳人、よろしくね。え、と……切島くんに芦戸さん」
「おう、よろしくな!赤龍!」
「よろしくね〜!」
二人と握手を交わす。まさかこんなにも早くクラスメイトと打ち解けることができるなんて、嬉しさで涙が込み上げてくる。
二人と親睦を深めるために様々な話をした。そんな小さな幸せを僕が噛み締めていると……。
「机に足をかけるな!雄英の先輩方や机の製作者方に申し訳ないと思わないのか!?」
「あぁ?思わねーよクソが!端役が!!」
人が集まり始めた頃、いつの間に来ていたのか。そして、なぜ言い合いしてるんだ。あの眼鏡の子と茶髪で目付きの悪い子は。
「すごいなぁ〜あの人。爆弾みたいだ」
「頭も爆発してるしな」
「聞こえてんぞ!モブ共ぉ!!!」
「君、酷いなっ!?本当にヒーロー志望か!?それと!ぼ……俺は端役ではない!飯田天哉だ!!」
爆発頭の子の発言に驚きつつも飯田くんは、それでも怯まずに注意を促している。教室の扉が開き、ボサボサ頭の少年が入ってくる。一瞬、その少年と目が合う。
向こうがペコッと一礼してきたので僕も勢いで頭を下げた。すると脳内で書文先生の驚嘆するような声が響き渡った。
『呵々ッ!!面白い!実に良いぞ!!』
(ちょっ!きゅ、急にどうしたんですか、書文先生)
『拳人よ、あの小僧のことは気にかけておくと良い!あやつは……化けるぞ』
(彼が?でも、なんだろう……あの子、『気』の流れがなんとなく)
扉の前でほんわかした女の子と飯田くんと共に仲良く話をしている緑色の髪をした少年に目を向ける。三人で仲良く談笑していたと思ったら扉の方へと目を向け、固まっていた。
急にどうしたのかと思い僕も目を向けると、そこには寝袋の中に入った小汚ない男の人がいた。その光景にさっきまでざわついていた教室が静まり返る。
「はい、君達が静かになるまで8秒かかりました。時間は有限、君達は合理性に欠くね」
それだけ告げると、寝袋の中から男がゆっくりと出てくる。
「担任の相澤消太だ。よろしくね」
(((先生!?)))
今この場にいる全員が同じように思ったんだろう。すると、相澤と名乗ったその男が青色の体育着のようなものを取りだして、僕らに指示を仰いだ。
「早速で悪いが。君らには、今から個性把握テストを受けてもらう」
突然の事態の連続に、クラス中が静まり返っていた。
(……初日から色々とすごいな、雄英)
『面白いではないか、拳人よ。所で……把握テストとはなんだ?』
僕の身に宿る武人さんだけはこの状況を楽しんでいるようだった。
日常パートの書文先生難しいですなぁ…。うまく表現出来てたらいいなぁ…。
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把握テストにはサプライズがつきもの
「にゅ、入学式は!?ガイダンスは!?」
「ヒーローになるのなら…そんな悠長な行事出る時間はないよ」
全員が体育着に着替え…外に出て早々のほほんとした女の子が担任と名乗った相澤という男に質問を投げ掛けたが一蹴されていた。
「爆豪、中学の時ソフトボール投げ何mだった」
「……67m」
「じゃあ個性使ってやってみな。円から出なければ何してもいい。早よ……それと……思いっきり、な」
そう言った相澤…先生からボールを渡される爆豪くん。円の中に入り…思いっきり振りかぶった。
「んじゃまぁ………死ねぇ!!!」
物騒な台詞を吐きながらボールを飛ばした彼を見て…僕はポツリと呟く。
(し、死ね?)
『ほう、良い殺気だ。あの小僧気に入ったぞ』
(ま、まぁ確かに。いい気迫だとは思うけど……ヒーロー志望が殺気とか出しちゃ駄目じゃないですか?)
書文先生の発言にツッコミをいれていると、相澤先生がスマホのようなものをこちらにむけてきた。映し出されているのは先ほどの爆豪くんのボール投げの記録。
「まず、自分の最大限を知る。それがヒーローの素地を形成する合理的手段……」
その言葉が告げれると共に、周りから面白そうだとか、個性目一杯使えるんだ、などのわくわくを隠しきれないといった声が多く上がった。その姿を見て、相澤先生が目を光らせる。
「面白そう……か。ヒーローになる為の3年間、そんな腹づもりで過ごす気でいるのかい?よし、トータル成績最下位の者は見込み無しと判断し、除籍処分としよう」
「ええええええええ!?」
『ほう、この男とは気が合いそうだ』
衝撃的な発言にクラス中が驚愕を隠しきれずに叫んでいる。しかし…相澤先生は聞く耳をもたず、僕らを挑発するように、言い切った。
「放課後、マックで談笑したかったならお生憎様、これから三年間雄英は君たちに全力で苦難を与え続ける。さらに向こうへ、Plus Ultraさ。全力で乗り越えてこい」
その言葉を聞いた瞬間、周りの雰囲気が一変する。確かに除籍処分はやりすぎかもしれないが…この場にいた全員が腹をくくっていた。
そんな中横にいた切島くんと芦戸さんの緊張するような声が聞こえてくる。
「マジかよ……やっぱすげえなぁ、雄英は」
「うう~緊張してきたぁ」
「大丈夫だよ、二人とも。要するに今の自分にできる全力を出してこいってことでしょ?だったらそれを相澤先生に見せればいいのさ」
「赤龍……お前、やっぱ漢らしいぜ!」
「そう、かな……思ったことを言っただけだけど」
「なんか緊張解れたかも!ありがとね!赤龍!」
「お役に立てたならよかった。それじゃお互い頑張ろうね」
「うん!」「おう!」
二人と互いの健闘を祈った。体の柔軟体操をしていると書文先生が語りかけてくる。
『儂の拳が役に立つことはなさそうだ、存分に肉体の力を使うが良い。それとしっかり体に「気」を巡らせておくのだぞ?』
「はい……すぅ」
書文先生の言葉に頷きながら体に『気(エネルギー)』を巡らせていく。これは個性の能力ではなく書文先生から教わった八極拳の一種である。
これが先生くらいの達人の領域になってくると「圏境」なんていう反則技も出来るようになるらしいが、生憎と僕にはそんな芸当はできない。精々全身に『気』を巡らせて強化するのが関の山で……あと他人の『気』を読み取れるくらい。
ある程度、クラス全員の準備が終わったところで……ついに把握テストが始まった。
それにしてもと僕は思う。さすがはヒーロー科に入学を決めた人達といったところだろう。皆が皆何かしらの競技でずば抜けた記録を叩き出している。
僕ももちろん負けてはいない。書文先生の肉体の力と『気』を心身に巡らせる方法を行使して…様々競技で、ずば抜けてはいないものの良い記録を出し続けていた。
『……テストとやらに組み手があればいいのだがな…』
(…いや…あったとしても…殺しはなしですからね?)
『…そうか…残念だ…』
脳内で残念そうに書文先生が呟く中…現在行われているボール投げで僕の前に測定していたのほほん少女が無限という恐ろしい記録を出していた。
(…僕も負けてられない!)
「せぇぇぇぇぇぇい!!!!!!」
個性で書文先生の肉体を借り+『気』で右手に力を込めボールをぶん投げる。記録は690mと爆豪くんとほんわか少女には勝てなかったものの良い記録を出せた。
(そんで…次は…)
僕の視線の先には…モサモサ頭の少年がいる。書文先生に言われたとおりテスト中の彼の動きを見ていたが…これといって目立った記録もなく…ましてや個性も使っていないように見えた。なので彼と親しくしていた飯田くんに話を掛けてみる。
「飯田くん、ちょっといいかな?」
「ん…君は…」
「えっと僕、赤龍拳人。よろしく」
「赤龍君だな、ああ、こちらこそよろしく」
「所で彼のこと知ってるみたいだけど…個性とかも知ってたりする?」
「ああ、緑谷くんのことか。ふむ…彼の個性は、俺の見た限りでは増強型のように見えたが…一つおかしな点がある」
「おかしな点?」
話によると…彼…緑谷くんの個性は使ったあとに手や足がボロボロになったりするなど…デメリットのデカイ不可解な個性だという。
(そんな個性…あるものなのか…?)
考えこんでいると…緑谷くんがボールを投げていた。しかし記録は40mという…悲惨な記録。
「な……今…確かに使おうって…」
「…個性を消した…」
緑谷くんの呆然とした呟きに答えたのは相澤先生だった。そのまま忌々しめに彼は喋りだす。
「つくづくあの入試は…合理性に欠くよ。お前のような奴でも入学出来てしまう…」
「消した!?そのゴーグル…まさか…抹消ヒーロー、イレイザーヘッド!!!」
相澤先生の目とゴーグルを見て緑谷くんが叫ぶ。その名を聞いても…正直皆ピンときていないらしく…数人がざわついていた。とりあえず相澤先生が個性を消す個性を持っていることだけは伝わった。
そうして相澤先生から指導を受けた緑谷くんはブツブツと何かを呟きながら…円の中へと入っていく。
『…よく見ておけ…拳人よ』
「…書文先生…?」
『あ奴の「気」が変わった…』
「…『気』が…?」
書文先生の言葉に耳を傾けながら…緑谷くんの方へと目を向ける。すると彼が投げたボールは飛距離をどんどん伸ばしていき…結果は705mという爆豪くんと並ぶ記録になっていたのだ。その記録に誰もが驚いてた。
だが…僕が驚愕したのはそこではない。
(なんだ…今のは!?)
一瞬だけ…緑谷くんの指の部分の『気』が一変した。さっきまで…なんら変化のなかったはずなのに…突然何かが宿ったかの如く…。そして…飯田くんから聞いていた通り…緑谷くんの指は腫れ上がっていた。
(…これが…書文先生が言ったことの意味ですか?)
『…まぁ、そんな所だ…』
その後…突然の爆豪くんの暴走やそれを止める相澤先生など、トラブルがあったりしたものの…残りの種目は何事もなく行われたのだった。
「…んじゃ…面倒なんでさっさと結果発表いくぞ…」
発表された順位を見て驚く…結果は一位だった。理由は皆のように一つぶっ飛んだ記録があるのではなく…どれも良い記録を取ったから総合的な面で皆に勝っていたんだろう。
その結果を見た切島くんと芦戸さんからは祝福されたが…爆豪くんからは何故かめっちゃ睨まれた。結果に対して様々な反応を見せている生徒達に…相澤先生が一言呟いた。
「…ま、除籍は嘘なんだけどな…」
「………………」
瞬間…静寂がその空間を支配する…相澤先生は笑みを浮かべながら続ける。
「君らに個性の最大限と全力を出させるための合理的虚偽…まぁ…サプライズってやつだな…」
「はーーーーーーーーーーーーー!?!?!?!?」
「あんなの嘘に決まってるじゃない…ちょっと考えればわかりますわ」
叫びだした面子の方を向いて…ポニーテールの女の子が呆れた様子で言った。僕は顔を手で覆いながら…呆然と呟く。
「…なんて性格の悪いことを……」
『…やはり、この男とは気が合いそうだな…』
僕も内心マジだと思っていたので…一気に脱力する。まぁ…除籍される気はまったくなかったけども…。
「とりあえず…これにて終了だ…教室にカリキュラム等の書類あるから目ぇ通しとけよ。あと緑谷…そのけが…婆さんのとこいって治してもらえ…」
相澤先生からの一言によって突然行われた個性把握テストは幕を閉じたのだった。皆が教室に戻っていく中…僕は保健室へと向かった彼のことについてずっと考え込んでいた。
「それじゃ…切島くん、芦戸さんまた明日ね」
「おう!また明日な!赤龍!」
「明日もかんばろうねぇー!」
二人と別れて教室を出ていく。なんだかんだで友達としての関係を作れたことに安堵していた。
「あ、拳人!」
「…拳藤さん…?」
ちょうどB組から出てきた拳藤さんと目が合う。すると彼女は何故か嬉しそうに…こちらに寄ってきて…
「せっかくなんだし、途中まで一緒に帰らない?」
なんて言ってくる。断る理由もないので、僕はそれを了承した。
「…いいよ。でも…僕電車でここまで来たんだけど…」
「あ、なら駅まで一緒だね!聞きたいこととかもあったし色々話しながら行こっか?」
そう言って笑顔を見せてきた拳藤さんにドキッとする。そして…やはり僕も一端の男の子…女の子と一緒に帰るというシチュエーションに少しにや…
『どうした…顔がにやけておるぞ…拳人よ?』
「わ、わかってますよ!?」
「うわっ!?きゅ、急に、どうしたんだ?拳人?」
「あ、な、なんでもないです…」
そんなこんなで…二人で駅に着くまでお互いのクラスの話をしたりしながら帰路を歩いた。
気になることは多いが……こうして僕の雄英での生活が本格的に始動したのだった。
皆さんはランサー李書文育てましたか?僕は聖杯あげてしまった!(本編とあんまり関係ない)
『気』の扱い方はちょっと独自解釈も混ぜてみました。てか普通に恋愛入ってる気が…
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どんなことも最初が肝心
相澤先生の独断によって個性把握テストが行われた、翌日からすぐに授業が始まった。
ヒーロー科と言ってもやはり表向きは普通の高校。午前中は英語や国語などといったホントに普通の授業、違うことといえば先生がプロヒーローってことくらい。
昼には拳藤さんに誘われて食堂へ、学食はクックヒーローランチラッシュ一流の料理を安い値段で頂ける。女の子と一緒に学食を食べるという状況に緊張しながらも昼食を平らげた。正直美味しすぎてビビりました、まさかあの書文先生ですらも驚嘆させるとは…さすがプロ。
あと、拳藤さんと食事している間まるで僕を刺すような視線を感じたのは気のせいだろうか?(A組の教室を出た辺りから感じました)
午後の授業では皆が待ち望んだ『ヒーロー基礎学』が行われることになっている。
そして僕らの授業を担当するのは……。
「わーたーしーがー!普通にドアから来た!!」
なんとNo.1ヒーローオールマイトだ。大物登場にクラス中から歓声が上がる。
「すげぇ!ホントに先生やってんだな!」
「銀時代のコスチュームだ!!」
「が、画風が違いすぎて鳥肌たってきた…」
「すごい気迫だ。さすがオールマイト!」
『ほう、これほどとはな。No.1は伊達ではないということか』
僕や書文先生は単純に彼の『気』に圧倒されていた。ザワザワと盛り上がっている教室を見渡し相澤先生なら睨みを利かせ黙らせそうな所を、新米教師のオールマイトは満足そうに頷くと話を続ける。
「ヒーロー基礎学!ヒーローの素地を作る為に様々な訓練を行う科目だ!!早速だが、今日はコレだ!!戦闘訓練!!!」
「おお!戦闘訓練!燃えてきたぜ!な、赤龍!」
「うん、訓練だとしても燃えるよね」
「なんか、私も燃えてきたぁー!」
切島くんの言葉に頷きながら答える。その横では芦戸さんが両手を広げながら叫んでいた。ホントに元気な子達だなぁ。
「そして!そいつに伴って…こちら!入学前に送ってもらった『個性届』と要望に沿ってあつらえた戦闘服!」
『おおお!!!!』
オールマイトの言葉と共に壁が動き出す。そこから現れたコスチュームの入ったスーツケースを皆は大事そうに抱えている。なんだかんだで僕も二人ほどではないにしろテンションが上がっていた。
「着替えたら順次グラウンド・βに集まるんだ!!いいね!?」
『はーい!!!!』
そしてこれを着た瞬間から、僕らは自覚しなくてはならない。自身らがもうヒーローとしての道を着々と歩んでいるということを。
「それじゃ二人とも、またあとでね!」
「おう!よっしゃ、赤龍行こうぜ!」
「うん!」
『ふ、ホントにいい顔をするようになった。「あの時」からは想像できんな』
書文先生の呟きが頭に響く中、芦戸さんと別れ切島くんと一緒に更衣室へと足を向けた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(どうですか、書文先生?頼まれた通りになってます?)
『呵々ッ!ふむ、中々いい出来ではないか!あの頃を思い出すぞ』
衣装に着替えて少し体を動かす。僕のコスチュームは書文先生からの要望を元に作られていて、一口にいえば中華武術家のイメージが非常に強いものとなっている。書文先生はもちろん僕もコスチュームの出来に感心していた。
「赤龍、着替え終わったか?」
「終わったよ。それじゃ行こうか」
「おう!」
二人でグラウンド・βへと向かう。その途中でお互いの戦闘服について切島くんと会話が弾む。
「赤龍のはなんかあれだな!格闘家みたいだな!」
「まぁ、それに近いかも。そういう切島くんは結構肌の露出多いけど大丈夫?」
「俺は個性の関係でこっちの方がいいんだ。何より!男らしいだろ!これ!」
すると後ろから私服のようなコスチュームを身につけた子に声を掛けられた。横には紫が特徴的なコスチューム纏った小柄な子がいる。名前は確か…上鳴くんと峰田くんだったと思う。
「お、お二人さん結構イカした格好してんな!ま、俺ほどじゃないけど!」
「男のコスチュームなんかどうでもいいわ!さっさと女共のを見せろぉ!!!」
『なんという気迫…拳人よ、こ奴は手強いぞ』
「………………」
書文先生、多分それ違う意味でだと思います。てか目がヤバイ。すると突然二人が僕の方へと視線を向けてくる。その視線はどこかで感じたことがあるような気がして…
「所で~?赤龍くんだったかな?あの食堂で一緒にいたオレンジ髪の子は誰なのかね?」
「……な、なんの話?」
「惚けんなよ、このリア充が!オイラと上鳴はずっと見てたぞ!お前があの姉御感強い女とイチャイチャしてんの!」
「イチャっ!?」
その後、二人に拳藤さんとの関係について根掘り葉掘り聞かれた。(二人とは仲良くなれたんだと思う)
グラウンド・βに到着すると女子は全員もう揃っていた。皆がそれぞれ個性的なコスチュームを身に付けている。端から見ればコスプレパーティーにしか見えない。
「皆、早い…!」
「よし、全員揃ったね有精卵共!!!戦闘訓練のお時間だ!!!」
遅れてやって来た緑谷くんを含めて授業が始まった。早速、全身装甲で包まれた飯田くんがオールマイトに質問する。
「先生!ここは入試で使われた演習場ですが、また市街地演習のような形で訓練は行われるのでしょうか!?」
「いい質問だ、飯田少年!しかし今回はもう二歩先に踏み込むために、屋内での対人戦闘訓練を行ってもらう!!」
飯田くんの言った通り、ここは入試の実技試験が行われた場所だ。随分と見覚えがあるなと思ったらそういうことか。
(屋内による対人戦か…)
『ふ、いい機会ではないか?拳人よ。ここにいるのは入試とやらに受かった強者どもだ。今の自分の実力を測るのに最適ではないか』
(確かにそうですけど、書文先生は…)
『みなまで言わなくともよい。どちらにせよ儂の拳は生身の人間に打ち込むには危険すぎる。ましてや師が弟子の夢を壊すようなことはしたくはないからな』
(…ありがとうございます)
本当は拳を振るいたくて仕方ないだろうに、先生に対し脳内で礼をしている中オールマイトの説明は続く。
「敵退治は主に屋外で見られるが、統計で言えば屋内の方が凶悪敵出現率は高いんだ。監禁・軟禁・裏商売…このヒーロー社会。真に賢しい敵とは屋内に潜む!!ので、君らにはこれから『敵組』と『ヒーロー組』に分かれて2対2の屋内戦を行ってもらう!!!」
「基礎訓練もなしに?」
「その基礎を知るための実戦さ!」
蛙吹さんだったかな?彼女の問いに対してオールマイトは力強く答える。
「ただし!今度はただぶっ壊せばいいロボじゃないのがミソだ!こういうのは人対人が一番最適だからね!!」
ある程度終わったのか、オールマイトは皆に質問はないかと投げ掛けた。すると生徒たちから怒濤の質問ラッシュが起き、重要なことから正直どうでもいいことまで一斉に質問されたNo.1ヒーローは「んぁー!!!聖徳太子!!!」と悶絶していた。やがて困り果てたNo.1は何かを思い出したかのようにポケットからカンペを取り出すとゆっくりと喋り出した。
「いいかい!?状況設定は『敵』がアジトに『核兵器』を隠していて『ヒーロー』はそれを処理しようとしている!『ヒーロー』は制限時間内に『敵』を捕まえるか『核兵器』回収すること。『敵』は制限時間まで『核兵器』を守るか、『ヒーロー』を捕まえることだってさ!!」
『気迫は大したものだが、他の面ではそうは思えんな』
(ほ、ほらまだ先生としては新人ですし(汗))
カンペを見ながらすべての台詞を終えたオールマイトを見て辛辣な言葉を吐く書文先生。しょうがないよね、だって新米教師だもん。
「コンビ及び対戦相手はくじだ!」
「て、適当なのですか!?」
「プロは他事務所のヒーローと急造チームアップすることが多いしそういうことじゃないかな?」
「そうか!先を見据えた計らい…失礼いたしました!」
「いいよ!早くやろ!」
「…………………」
一部始終を見ながら僕はある人物に視線を向けていた。
「やっぱり…似ている」
『うむ、あやつら二人の「気」の流れ…本筋はまったく違うものだ。だが…』
「はい、何故か波長に同一のものが見れます…」
「赤龍!次お前の番だぜ!」
「あ、うん」
そして皆がくじを引き終わり、合計10チームが決まった。ちなみに僕のパートナーは…
「よろしくね!赤龍くん!」
「う、うん…えとよろしくね。葉隠さん」
透明な女の子でした。名前は葉隠さん、てかコスチューム…グローブと靴だけって大丈夫なのかな?不安とか疑問とか色々多いが早速、AとD…爆豪、飯田チームと緑谷、麗日チームの戦いが始まった。
個人の主観でその戦いを一言で表すなら、僕はこう言い表そう。
『男と男のぶつかり合い』
途中からまったく目が離せなかった。二人とも何を話しているかとかまったくわからなかったけど、二人の表情は訓練では収まりきらないほどに…激しく熱い戦いだった。書文先生なんかずっと嬉しそうに笑ってたし。
結果としてはヒーローチームである緑谷くんと麗日さんが勝利という形で終わった。そのあとの講評では八百万さんが正論をぶちかましまくり教師であるオールマイトの出番はなくなったのだった。
最初からとてつもなく白熱した戦いを見せられたことによって他の皆も力が入っており、順調に訓練は進んでいった。そして次は僕と葉隠さんの番だ。
「ふぅー」
『ふ、気合いがはいっているではないか。それはそうであろうなあの小僧らの戦いを見せられれば儂でなくても血が沸きたつであろう』
「そして相手は推薦入学者…こんなの燃えないはずないですよ」
『であろうな。存分にやって来るといい』
「はい」
「誰と話してるの?は!もしかしてそこに透明人間が!?」
「あはは…」
それは君では?と突っ込もうと思ったが引っ込める。とりあえずチームなんだからと僕は手を前に出す。
「頑張ろうね。葉隠さん」
「うん!頼りにしてるよ!赤龍くん!」
そうして僕らは所定の場所へと足を向けた。やれやれ、やっぱり弟子は師匠に似ちゃうのかな?さっきからわくわくが止まらないや。
次回、赤龍、葉隠VS轟、障子!
お楽しみに!
書文先生をもっと目立たせたいぜ!ま、もうすぐなんだけどね!
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自分のことは自分が一番よく知っている
リアルが忙しく遅れました。申し訳ありません!それと評価やお気に入り登録ホントにありがとうございます!
ぐたぐたしていたらすいません…それでは!どうぞ!!
ビルの最上階にあるハリボテの核兵器の前で柔軟体操をしながら葉隠さんに声を掛ける。
「それじゃお互いの個性について確認…って葉隠さんは必要なさそうかな?」
「ひどっ!?どういうのか聞くだけ聞いてよぉ~」
透明で見えないけど多分щ(´Д`щ)カモ-ンってやってるんだと思う。個性については、姿を見ただけでだいたいわかるけど彼女のノリに合わせて聞いてみる。
「えっと、葉隠さんの個性って何?」
「よくぞ聞いてくれました!私の個性は『透明化』だよ!まぁ簡単に言えば透明人間だね!」
「あ、うん。だよね」
『まぁ、十中八九そうであろうな』
脳内で書文先生が相槌をうつ。聞いてもらえて満足したのか、今度は僕の個性について葉隠さんが聞いてくる。
「じゃあ、赤龍くんの個性は?」
「僕の個性は『武人憑依』だよ」
「ぶじん?ひょうい?どゆこと?」
見えないけど多分首を傾げている以下略。そりゃ言われただけじゃわかんないよな。
「簡単にいうと僕の体に宿っている武人さんに力を借りるってこと」
「へー!すごーい!例えばどんな感じに?」
「えーと、僕の意識を残して肉体の力だけを借りたり…勿論だけど意識を丸ごと武人さんに譲ったりとかかな」
「なるほどぉ~なら把握テストの時のパワーも納得かな!」
お互いに情報交換を終えると、無線機から暑苦し…もとい快活な声が聞こえてくる。
『そろそろ開始の時間だが、どちらのチームも準備はいいかい!?』
「よっし!赤龍くん!私ちょっと本気出すわ」
「う、うん…」
『それは、大丈夫なのか?拳人』
(触らぬ神に祟りなしってやつですよ)
葉隠さんがそう言って、手袋とブーツを外した。それを見て少し複雑な気分になる(書文先生ですらも多少動揺してる)。だってそれ透明人間としては正しいけど女の子としては…倫理的にヤバイ気がする。
『では、戦闘訓練開始だ!!!!』
オールマイトの合図によって戦闘訓練が始まる。
それと同時に僕の体に悪寒が走った。
『来るぞ!!!』
「っ!!葉隠さん!!!」
「きゅ、急にどうし」
「飛んで!!」
「え?」
「いいから!!」
脳内で、書文先生の声が響いたことによってその悪寒が気のせいでないことを確信する。そして、横にいる葉隠さんに向かって叫ぶ。動揺しながらも僕の言葉に従ってくれたのだろう。お陰で…
「こ、氷!?寒っ!!!」
「なるほどね、そういう感じか」
部屋全体を覆っている氷結に、二人が捕まらずに済んだ。にしても…さすが推薦入学者、この様子だとビル全体が凍らされているな。
「一人はこっちに、もう一人はまだ入り口付近にいる」
「え、なんでわかるの?」
「僕は人から発される『気』を感じとることができる。それで二人の位置を把握したんだ。一応言っておくと個性ではないからね」
「ほぇ~個性じゃないのにすごい!てか、寒い!」
ガクガクと擬音を声に出しながら葉隠さんが震えている(見えないけど多分そう)。
「よし、ここからは役割を分担しよう。僕は二人を応戦する、そんで葉隠さんは核兵器の守護についてくれ。君ならいざというときに奇襲を仕掛けられるからね」
「了解っ!でも、一人で大丈夫?」
「心配は無用だよ!」
そう言って僕は、二人のいる方向に向かって走り始めた。すると書文先生が語りかけてくる。
『どれ…修行の成果を見せてみろ。我が弟子よ』
「はい、見ててください。書文先生!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
一方、モニタールームでは
目の前に映し出された光景にクラス全員が驚きを隠せないでいた。そこにオールマイトが解説を加える。
「仲間を巻き込まずに核兵器にもダメージを与えず、尚且つ敵も弱体化させてしまおうということかな?」
「ビル全体氷で固めるって、最強じゃねぇか!!」
「でも見てみて!赤龍、無事だよ!」
「なんでこのクラスって、爆豪とかあいつらといい才能マンばっかりいるんだよ…少し泣けてきたわ」
芦戸の言葉に対して上鳴はそんなことを呟いている。するとモニターには赤龍が轟と対面しているのが見えた。
『お前、さっきの読んでたのか?』
『うーん、まぁ間違ってはないかな』
赤龍が答え終わる頃には轟が右手を構え、臨戦態勢へと移行していた。
『悪いが、今度こそ終わらせてもらう』
『こっちも反撃といかせてもらうね』
それに答えるように赤龍も拳を握る。画面越しでも伝わってくるほどの緊張感が部屋支配していた。
やがて、放たれた氷を合図に二人の一騎打ちが始まった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ー轟視点ー
「っ!」
足を前に一歩踏み込んで氷の柱を放つ。
(あいつの個性、詳しいことはわからねぇが増強型だろう。ならこれが最善だな)
実際に赤龍は俺との距離を走りながら縮めてきている。つまり近接が主体ということ、なら間合いに入らせなければいい。
「厄介だなぁ!それ!」
そう思っていた俺の考えは甘かった。あいつはぼやきながらも氷の柱をかわしたのだ。
「まだ、終わらねぇぞ」
間髪いれずに先ほどよりも範囲が広めの氷を出す。それを赤龍は真正面から拳で砕いた。
「かわせないなら、正面突破だ!!」
「っ…これ以上は近づけさせねぇ」
一歩後ずさりながらもう一度氷を放つ。
「よっ!」
咄嗟のことにも関わらず、それにすらもあいつは対応してくる。ならばと、連続で無数の氷を足場に向け放つ。
(これなら…)
「確かに強い。でも、言われたことない?個性に頼りすぎて挙動が大雑把になってるって!」
「っ!!うるせぇ!!!」
赤龍の言葉を聞き、自分でも何故か分からないが感情のコントロールが一瞬効かなくなる。無意識に最大に近いほどの氷を放ってしまう。
「陰に機を見出し、陽に活路を開く!はぁ!!!」
「な…」
それすらも赤龍は、掛け声と共に拳で粉砕した。粉々となった氷の中を駆け抜け赤龍が俺との距離を詰める。
「一言言い忘れてたよ」
「がはっ!」
腹部に衝撃が走ると、体に力が入らなくなる。それによって瞼が閉じていく中、ある言葉が俺の耳に入ってきた。
「君、まだ本気じゃないだろ?」
「どう…いう…」
そこで、俺の意識は途絶えたのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
轟くんを倒した僕はすぐに入り口付近へと移動し、障子くんを確保テープで捕まえた。結果敵チームである僕らの勝利で訓練は終了した。
講評では八百万さんに「正面突破にも程がある」等々の厳しい意見を言われました(的確すぎて怖くなった(泣))。
それでもよかった部分もあったようで、葉隠さんはずっと僕のことを称賛してくれて、切島くんをはじめとした面々からも「推薦入学者を圧倒するなんてすごい!!」と絶賛された。
そのあとも、特になんの問題もなく一回目のヒーロー基礎学の授業は幕を閉じたのだった。
そして放課後
皆、それぞれが今日のことを振り返っている中で僕は切島くん、芦戸さん、葉隠さんと話をしていた。
「いやーみんなすごかったな!俺は最初の緑谷と爆豪のも結構燃えたぜ!」
「確かに、あの二人の戦闘はすごかったよね!」
「私は赤龍くんの味方だからね」
「なんで、ちょっと憐れんでるの?って二人とも、噂をすれば緑谷くんが来たよー」
入り口からひょこっと顔を出した緑谷くんを指差しながらいうと、二人は相変わらずのテンションで彼のもとへと駆けていった。僕や葉隠さんもそれに続く。
「何、喋ってっか分かんなかったけど熱かったぜ、お前!」
「よく避けたよー!」
「一戦目であんなのやられたから俺らも力入っちまったよ!」
一斉に皆から話しかけられ、それに対し緑谷くんはオロオロとしており、同時に自己紹介もされたためか終始狼狽していた。僕もタイミングを見計らって緑谷くんに話掛ける。
「ナイスファイトだったね。緑谷くん」
「あ、ありがとう。えと、赤龍くんだよね?」
「そう、話すのは初めてだね。これからよろしく」
「こ、こちらこそ」
お互いに握手を交わす。すると横からほんわか少女…もとい麗日さんが心配そうに駆け寄ってきた。
「デクくん、怪我は?治してもらえなかったの!?」
「あ、えと、いや。これは僕の体力がアレだからで……。あの麗日さん……それより、かっちゃんは?」
「ああ、みんな止めたんだけど、さっき黙って帰っちゃったよ」
「……そうなんだ。ありがとう!」
礼をの述べると緑谷くんは、身を翻して走り出してしまった。
「どうしたんだろ?出久くん」
「爆豪くんを追いかけたんだと思うよ。多分まだいるだろうし見えるんじゃないかな?」
僕がそう言って窓の方を指差す方向には、爆豪くんと緑谷くんがなにかを話しているようだった。
「何、話してるのかな?」
「戦闘訓練のことじゃないか?」
「幼なじみみたいだからな。お互いになんか思ったことでもあったんじゃね?」
二人が話していると突然オールマイトも登場し、クラスの面々はさらに首を傾げていた。緑谷くんと爆豪くん、それにオールマイトでどんなことを話していたんだろう?
「あ、僕そろそろ帰るよ」
「ん?なんか用事あったり?」
「友達と一緒に帰る約束してたから、お先に失礼するね」
「おい、まさかあのB組の女子じゃないだろうな?」
「……………」
「黙りやがった!こいつ黒だぞ!上鳴!!」
「それじゃ、また明日ーー!!」
「おう!また明日な!」
「お疲れさまぁ~」
「またね!」
『待てやこらぁ!!』
上鳴くんと峰田くんの怨念を振り切って、皆に返事を返しながら教室を出ていく。一応、待ち合わせ場所は駅だけど、念のためB組の教室を覗いておく。
「B組にはもういないみたいだ」
『先に行って待っているのだろう。ほれ急げ』
「そうですね、急ぎましょう」
急いで階段を下りながら書文先生共に今日のことを、話し合いながら歩いていく。
『あの小娘の言っていたことにも一理あると言ったところだな』
「他人からだと見え方が違うんでしょうね」
脳内でそんな会話をしていると、後ろから声をかけられる。
「赤龍、ちょっといいか?」
「はい?って轟くん?どうしたの?」
声の主は轟くんだった。彼は神妙な面持ちで僕に質問を投げ掛けてくる。
「なぁ、あの時の言葉…あれはどういう意味だったんだ?」
「言葉のままの意味だよ」
「……………」
「僕が君と一騎打ちをして思ったことを言った。ただそれだけだよ」
「…そうか、急いでるんだったよな。邪魔して悪かった」
「構わないよ、それじゃあね」
轟くんの質問に端的に答えてまた歩きだすと、感心するような声が脳内に響く。
『ふ、そういうことも言えるようになったか。儂は嬉しく思うぞ』
「『あの時』の僕みたいに、他の誰かがなってほしくないですから…」
『そうか、にしても収穫であったな。弟子の成長を見れた。今日はそれでよしとしよう』
「えと、ありがとうございます」
書文先生の発言に気恥ずかしくりながらも、待ち合わせ場所の駅のある方向へと足を向けた。
そういえば、アサシン先生来ましたね。まだ僕の所には来てくれてませんが…
さてと!そろそろ、書文先生を暴れさせましょうか!!
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迫る悪意、迎え撃つは拳
すごく言い訳がましいのですが、リアルの忙しさそして久しぶりのインフルエンザに体をやられて遅れました。申し訳ありません。
とりあえず、色々と片付いてきたので更新頻度をあげたいと思っております。
こんな僕の作品を待っててくれてる皆様への感謝を忘れずこれからも精進します!!
前回、書文先生暴れさせるって言ったけどそれは次になりそうです。すいません!!
では、どうぞ!!
~とあるどこかの酒場~
「先生、見たかよコレ?平和の象徴が教師だってさ」
『どうやら、彼も焦ってきているようだね。面白いことだ。君は、どう思う?』
『見たよー先生♪面白いよね~♪』
「ちっ……なんだよ。お前もそこにいるのか」
『ひどいなぁ~弔くん。私と弔くんの仲じゃない♪』
「うるさい、黙らないと壊すぞ……」
『まぁまぁ、落ち着きなさい。君も、あまり弔をからかうものじゃないよ?』
『はーい、先生』
「でさ、どうなると思う?もし、教師である平和の象徴が殺されたりしたら……?」
『とても、面白いことになると思うが…出来るのかい?弔?』
「当たり前だよ、先生から『脳無』までもらったんだ。余裕でゲームクリアして帰ってくるよ」
『うーん、私は無理だと思うけどねぇ~』
「はぁ?」
『だってさ、雄英のAクラスには「あの子」がいるんでしょ?』
「はっ……また、それかよ」
『まったく、二人とも落ち着きなさい。黒霧』
「はい」
『弔のことを頼むよ?』
「御意に」
「ちっ、まぁいいさ。噂じゃ…オールマイトは弱ってきてるんだろ?だったら平和の象徴殺した後にそいつも殺しといてやるよ」
『駄目だよ、弔くん?あの子を殺すのは私だもん。だってあの子のことを
「やっぱ、壊しとこうかな?お前……うざいよ」
『やれやれ、困ったもんだ』
ゆっくりと、途方もない悪意は動き出していた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
今日行われるヒーロー基礎学は人命救助訓練という、ヒーローにとって肝心な部分のことを多く学べる内容となっている。
ぶっちゃけると、僕自身戦闘に関しては書文先生のお陰で充分過ぎるほど知識と技術は得ているので…そっち(レスキュー)関連のことを学べるのは僕としてもプラスになることが多いのでやる気は満々だ。
そして、今日の訓練は何時ものように学校で行うのではなく少し離れた訓練場で行われるため皆でバス移動することになった。いちいちすごいよね、雄英って。
『人命救助、か。儂とは無縁の話だな。今回も儂が出る幕はなさそうだ』
(申し訳ないです。書文先生の拳を振るう場を作れなくて)
『構わぬ。今の儂は武人である前に一人の師だからな。弟子の成長を見れる…それだけで充分だ』
(書文先生……)
書文先生の言葉を聞いて涙が出そうになるが寸前で止める。こんなところで泣いたら横にいる芦戸さんに心配されちゃう。あれ、でもやばい、ちょっと泣きそう( ノД`)
「赤龍、大丈夫?目潤んでるけど?」
「だ、大丈夫。気にしないで」
「そう?じゃあ気にしない~!」
「……」
『どうして、少し寂しそうなのだ?』
さすがの切り替えの早さだ。えっ?別に悲しくなんてないよ?その…ちょっと、さびしいけど(´・ω・`)
「私、思ったことはなんでも言っちゃうの。緑谷ちゃん」
「あ!?はい!?何、蛙吹さん!!」
「梅雨ちゃんと呼んで。あなたの個性、すごくオールマイトに似てる」
僕が寂しさに浸っている中向かいの席側から、蛙吹さんに個性のことを指摘されて慌てている緑谷くんが目に入った。
「それ、僕も思ったよ」
「赤龍ちゃんもこう言ってるわよ?」
「そそそそそうかな!?いや、でも僕はそのえー」
「待てよ、梅雨ちゃんに赤龍。オールマイトはけがしないぜ?似て非なるもんってやつだろ?」
切島くんの言葉を聞いて、確かにと納得するがなんとなくパッとしなかった。そのまま切島くんが話題を振ってくる。
「にしても、増強型のシンプルな個性はいいな!派手で出来ることが多くて羨ましいぜ!俺の硬化は対人じゃ強くていいけど…いかんせん地味なんだよなぁ~」
「僕はいいと思うけど、その個性。プロでも十分通用すると思うし」
「何、言ってんだよ!赤龍!お前は個性関係なしであんなにつええんだろ?しかもそれに個性を上乗せすりゃとんでもない強さになる。よっぽど俺よりプロに通用しそうだぜ?そんだけ強いと守れないもんなんてないんじゃねぇか?」
「そう…だね」
その言葉は聞いていて、嬉しくもあった。でも、同時に胸が締め付けられた。甦ってくるのは過去の記憶…僕は両手に視線を向けながら、静かに言葉を紡いだ。
「でも、力っていうのは……使えなくちゃ意味がないんだ。力を恐れていたら、大事なものを守れない。今は確かに、使えてる。けど……でも」
「赤龍くん?」
「赤龍ちゃん、どうしたの?急に暗いし、顔色も悪いわ」
「あ……ううん、何でもないよ」
僕のせいで少し暗くなってしまった雰囲気を、笑顔を作ってなんとか変えた。
(だめだ、やっぱり…)
『しょうがなかろう。だが、忘れるな。そうやって苦しんでいるということはお前はそれだけしっかり向き合っているということだ。恥じることではない』
(はは、なんか励まされてばっかりですね。僕)
『たまにはいいであろう?』
その後は、爆豪くんが弄られている光景を見て緑谷くんがやたら驚いていたり、上鳴くんが余分な一言言って爆豪くんを怒らせたりなど楽しい(?)時間が続いた。
やがて、バスは目的地の場所へ着いた。そこはまるで…
「すっげえー!!!USJかよ!!!!!」
「水難事故、土砂災害、火事……etc……あらゆる事故を想定し、僕がつくった演習場です。その名もウソの災害や事故ルーム!!」
ぬっと突然現れたのは救助活動専門のスペシャリスト、スペースヒーロー13号だった。生で見たのは初めて、すごく嬉しい!てか、まんまUSJなんだ。
「13号、オールマイトは?ここで待ち合わせじゃ?」
「先輩、それが…」
13号先生が相澤先生に、なにかを伝えている。オールマイトがどうとか聞こえたけど、なんだろ?少しすると13号先生がこちらに向き直った。
「えーまず、始める前にお小言を一つ二つ…三つ四つ…五つ」
(ふ、増える…)クラス全員の心が一つになった。
「皆さんご存知かと思いますが、僕の個性はブラックホール、どんなものても吸い込んでチリにしてしまいます」
「その個性で、どんな災害からも人を救い上げるんですよね」
緑谷くんの横では麗日さんが、首を激しく縦に振っていた。本当に好きなんだな、13号先生のこと。
「ええ…しかし、これは簡単に人を殺せてしまう力です。皆さんの中にも、そういう個性を持っている人がいるでしょう」
13号先生からの個性についての話は非常に胸に響くものだった。飯田くんなんかはブラボーって拍手しながらずっと叫んでる。
「にしても、『君たちの力は人を傷つけるためにあるのではない』か。いい言葉だな…」
「ああ、だな。胸に染みるぜ」
僕の呟きに横にいた切島くんが答える。すると、次の瞬間…体に悪寒が走った。
『気を付けろ、拳人よ。途方もない悪意と殺意を感じる』
(同じくです。でも、一体どこから)
「そんじゃあ、まずは…」
相澤先生が指示を出そうと動き出す。しかし、僕が目で捉えたものはその先にある何かだった。
「っ!?先生!!」
突然のことに皆が首を傾げる中、後ろを向き確認したと同時に相澤先生が僕らと13号先生に指示を出した。
「一かたまりになって動くな!!13号、生徒を守れ!!」
先ほどの悪寒は、黒いもやの中から現れた奴等の『気』だということを感じ取った僕はある確信に至った。
「なんだありゃ!?また入試の時みたいにもう始まってんぞパターン?」
「違うよ、切島くん。奴等は…敵だ」
「敵!?バカだろ!?ヒーローの学校に入り込んでくるなんてアホすぎるぞ!!」
同感だ。でも、さすがに何の策もなしに潜り組んでくるとは思えない。何より何なんだ、あの奥にいる奴等から発されてるどす黒い『気』は?
「先生、侵入用のセンサーは?」
「もちろん、ありますが…」
「どうやら、あいつらバカだがアホじゃねぇらしい。これは何らかの目的があって用意周到に画策された奇襲だな」
「だろうね。そうじゃなきゃ、こんな真似はできないはずだ」
轟くんの言葉に頷きながら答える。相澤先生は即座に僕らへと次の指示を飛ばすと、一人敵の群れの中へと突っ込んでいった。
「さぁ!今のうちに皆はこっちへ!」
「させませんよ?」
『!!』
「初めまして、我々は敵連合。僭越ながらこの度ヒーローの巣窟である雄英高校に入らせて頂いたのは…平和の象徴オールマイトに息絶えて頂きたいと思ってのことでして」
(っ!オールマイトを!?)
『なるほどな、しかし、そう簡単にあの男を倒せるとは思わんが…やはり』
(はい、奴等にはそれが実現出来るような何かがある)
すると、もやの奴が動き出す前にと切島くんと爆豪くんが動き出す。
「その前に俺たちにやられることは考えてなかったのか!?」
「危ない危ない…そう…生徒といえど優秀な金の卵」
「ダメだっ、どきなさい!二人とも!!」
13号先生の叫びが響く中、僕らの視界が黒い霧のようなものへと飲み込まれていく。
「散らして、嬲り、殺す…」
「っ!?」
視界が完璧に暗転し、次に光が射し込んで来たときには周りを敵達が取り囲んでいた。場所的には水難エリアと火災エリアの中間辺りといったところか。
「へへ、お前に恨みはねぇがサヨナラだ」
「安心しろよ、なるべく痛くねぇようにしてやるからさ」
『ふん、儂がもっとも嫌悪する部類の輩どもだな』
「同感です、さっさと方をつけましょう」
「てめぇら!やっちま……ぐぇ!?」
一番近い位置にいた敵に拳を打ち込んだ。悪いけど、こんなところで時間を食っている場合じゃない。
(書文先生)
『うむ、何やら胸騒ぎがする。相澤とやらの元に急ぐとするぞ』
(はい、先生!!)
書文先生の言葉に頷きながら一斉に飛びかかってきた敵に拳を打ち込んで気絶させていく。
もう、『あの時』の僕じゃないんだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
~緑谷視点~
「そ、そんな…」
「ケロ…」
目の前の光景に唖然とする。水難ゾーンの敵達を撃退して広場へと向かった僕、蛙吹さん、峰田くんの目に飛び込んできたのは、黒い怪物に地面へと押さえ付けられた相澤先生の姿だった。
「対平和の象徴、改人…脳無」
「ぐぁっ!!!」
「個性を消せる、ねぇ。素敵なことだけど何てことはないさ。だって圧倒的な力の前じゃそれは無個性と一緒だもの」
「あ…相澤先生が」
「や、やめろ…緑谷。あれはさすがに無理だって」
峰田くんに引き留められていると、黒霧と名乗ったもやが突然全身手だらけの男の横に現れた。
「死柄木弔」
「黒霧、13号はやったのか?」
「行動不能には出来ましたが、一名の生徒を取り逃がしました」
「は………………?はーーー」
男は苛立ちを表すかのように首の辺りをガリガリと掻き始めた。その仕草が僕らの恐怖を逆撫でする。
「お前が、ワープゲートじゃなかったら粉々にしてたよ。はぁ、さすがに何十人のプロの相手は無理だな。あーあ、今回はゲームオーバーだ。帰ろっか?」
「帰る…?カエルっつたのか今!?」
「そう聞こえたわ」
「やっ、やったぁ!助かるんだ俺たち!」
「でも、気味が悪いわ緑谷ちゃん」
「うん、これだけのことをしといて…あっさり引き下がるなんて」
あいつらの目的は、オールマイトのはず。もしこれで帰ったらただ雄英の危機意識を高めるだけになる。ゲームオーバーって言ってたけど…奴等は一体何を…
「でも、その前に…」
見えなかった、僕にはあの男がこちらに一瞬で移動してきたようにしか感じられなかった。
「平和の象徴としての矜持を少しでも、へし折って帰ろう!!」
「あ、蛙吹さ…」
間に合わない、手を伸ばしながらもそう諦めかけていると、死柄木と呼ばれた男の手が何かにはらわれた。
「お前っ!!緑谷君たちから離れろ!!」
「せ、赤龍くん!?」
「お前は…へぇ」
そこに現れたのは、赤龍くんだった。追撃を恐れたのか死柄木はその場から一歩後ずさる。
「緑谷くん、蛙吹さん、峰田くんも無事でよかった」
「僕達は大丈夫。でも、相澤先生が…」
「っ!!書文先生、交代です」
僕が相澤先生の方へ視線を向けると、赤龍くんが脳無と呼ばれた化け物に怒気を含んだ視線を向けながら何かを呟いた。瞬間、赤龍くんの雰囲気が変わる。そして、それも一瞬の出来事だった。
「…あれ?」
「な、何が起こったのかしら?」
「えっ?は?いつの間に、オイラこんなとこに?」
いつの間にか、僕らは倒れた相澤先生と共に死柄木や脳無とは少しではあるが離れた位置へと移動していたのだ。何が起きたか分からず混乱していると前から声がした。
「相澤とやらを連れてここから退くがよい。奴等の相手は儂がしよう」
「む、無茶だ!赤龍くん一人でなんて!!」
「安心せい。それよりも急げ、奴等がくる」
「でも!」
「行けと言っている。それとも、巻き添えを食らいたいのか?」
「……無事に戻ってきてね」
僕はそれだけ告げて、二人と協力しながら相澤先生を担ぎながらその場を後にした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
相澤先生、そして緑谷君たちを救出した書文先生はポツリと呟いた。
「無事に戻ってこい…か。いい友を持ったではないか」
『同感です。皆いい人たちですよ』
「弟子の大切なものは師も守らなくてはな」
僕の顔で、にこやかに微笑む書文先生。しかし、前方から発されてくる悪意と殺意を感じ取り、すぐに表情が変わる。
「なぁ、お前…赤龍拳人くんだろ?『あいつ』が言ってた通り強いんだなぁ。正直驚いたよ」
『あいつ?』
「よくわからんが、その汚れた口で我が弟子の名を呼ぶのはやめてもらおうか?」
「あ?なんだ、それ?はぁ、強いけど気持ち悪いやつだな。ま、いいか…やれ、脳無」
死柄木の指示を聞いて、動き出そうとする脳無だがその動きが完璧に停止した。
「なんだよ…何が」
「そやつの周りの空間を儂の気で満たした」
「は?」
「さて、脳無、そして敵連合とやら」
迫りくる悪意へと書文先生は言葉を掛ける。そして、拳を構えながら強く一歩を踏み出した。
「お主らの悪意、儂が正面から迎え撃ってやろう」
不敵な笑みを浮かべながら、『凶拳』は敵達を見据えた。
ちょいちょい伏線いれていくう!
あ、そういえばですね。僕、老李書文先生当てちゃいました!!(嬉しくてリビングで発狂したら、妹の二の打ち要らずに腹が殺られたのはいい思い出です(⌒‐⌒))
次も頑張ります!では!!
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過去は常に自分と共に
すいません、僕です。許してください。なんでもしますから!!
てか、本当にごめんなさい。マジ、内容迷走してました。これで良いんだろうかって悩み続けてたらめっちゃ日にちたってて…もうほんとごめんなさい。(なんか、毎回謝ってる気がする)
そんな作者の作品が総合評価1000越え………本当泣きそう( ;∀;)皆様に感謝です、本当ありがとうこざいます!!
さて、それでは本編です。
「ちっ……あーくそ。ムカつくなぁ……何なんだよ?こちとら、オールマイトを殺しに来てるんだよ。本音を言えばさ、お前なんか、お呼びじゃないんだっての」
「死柄木弔、落ち着いてください。相手のペースに飲まれてはいけません」
苛立ちを募らせる死柄木を黒霧が宥めている所を見て、書文先生が目を細めながらため息をつく。
「生憎、儂は空気を読むのが昔から苦手でな。お主ら小悪党共の都合など知ったことではない」
「あーホントにムカつくな……お前。でも、いいや……どうせ、お前もう死ぬから」
その言葉が言い終わるのとほぼ同時に、死柄木が一瞬でこちらに移動してきた。
「油断し過ぎてたなぁ?ははは……調子に乗るから悪いんだよ!」
『確かに速い、でも僕が
顔を掴もうとしたのだろう。しかし、それはただの空振りに終わる。何故なら、そこにはもう誰もいないのだから。
「なっ!?」
「ふん、二流……いや三流だな。口数が多い上に、動きにも無駄が多い。殺気も駄々漏れとはな」
「っ!!脳無っ!!!」
即座に背後に回ったことに驚いた死柄木は、脳無に指示を出す。
「!!」
先ほどまでは書文先生が気を空間に満たして、動きを止めていたが、今は注意が他にいっているため拘束が解かれる。足枷がなくなった脳無は、さっきの死柄木とは比にならない速度で腕を振りかぶりながら此方へ接近してくる。
「シッ!」
拳と拳がぶつかり、異常なほどの衝撃が風圧を伴って周りに広がる。それを見た、死柄木は余裕そうに笑いながら呟いた。
「驚いた、脳無と正面から撃ち合えるのか。確かに強いみたいだけど残念だったな?脳無には、ショック吸収の個性がある。どんなに強い力で殴ろうがダメージは0さ」
「そうか」
即座に体を反転させると同時に距離を詰め踏み込む。地が震えたことにより態勢を崩した脳無の右腕目掛けて、書文先生が拳を突き出すと、黒い腕が宙を舞った。
しかし、吹っ飛ばされた腕が急激なスピードで再生されていく。
『もとに戻った?てことはこいつ、個性を複数持ってるのか?』
「ふむ、これでもだめか」
「当たり前だろ?そう簡単に倒せるわけないさ。こいつは対平和の象徴用に作られたサンドバッグ人形だぜ?
強みを見せつけられたことで、気分がよくなったのか勝ち誇ったように笑いながら死柄木が呟く。
「呵呵呵、まだ勝ちを確信するには早すぎるのではないかな?」
「どういう意味……はっ?」
「な!?き、消えた!?」
書文先生は自らの姿をその場から消失させる。これこそ、『圏境』という書文先生が得意とする体術の一つだ。
「今度はなんだよ!?」
「まさか、透明化?いや、気配すら感じない?これは一体……」
「ちっ!脳無、早く探し出せ!!」
苛立った死柄木が、脳無に指示を出すがそれは言ってしまえば無意味なこと。この『圏境』というのは本来気を巡らせることで周囲の状況を把握するものだったらしいが、書文先生はこれを極め完全な体術によって気を支配することで、
(さて)
『圏境』を使って、奴等から視認されなくなった書文先生が、攻撃対象を見つけられずに混乱している脳無の正面へとゆっくりと歩み寄る。
(確か、こやつの個性はショック吸収とか言っておったな?)
『ええ、どうやらあいつらの切り札、つまりオールマイト対策どんな攻撃にも耐えうるってのがやつなんでしょうね』
(ほぉ、どんな攻撃にも……か)
『ちょっ、ま、まさか!?書文先生!?』
(何、心配するな、不意討ちでなければ死にはしない。それに抑えはするとも、まぁ抑えきれるかは分からんが)
そう言って不敵に笑う書文先生。そのまま、『圏境』を解かずに拳を握り、構えた。一歩踏み出す前に、先生はポツリと呟く。
「
言葉が言い終わり、一歩を踏み出す。『圏境』は解け、脳無に姿を視認される。だけど、もう遅い。
「っ!?脳無!!」
「!?!?!?!?」
「我が八極に无二打!!」
死柄木の警告を聞き、咄嗟に両手で身を守りながら、後退する脳無。しかし、爆音と共に放たれた踏み込みが地面を震わせ、脳無をその場に留める。
次に、防御のために置かれた両手が左拳によって弾き飛ばされる。よって脳無はなんの守りもない、がら空き状態になった。
残心は解かれ、標的目掛けてもう一度地面を揺るがす程の踏み込みが放たれる。同時に腰を捻り、気が高められた右拳が脳無の腹へと突き出された。
「七孔噴血、撒き死ねぃ!!!!」
爆音と、とてつもない衝撃が辺りを包み込む。
書文先生から一撃をもろに食らった脳無の体は浮き上がって一直線に飛んでいき、木々を薙ぎ倒しいく。やがて、脳無の姿が見えてきたが、体をピクリとも動かさず白目を向きながら倒れていた。
「おい、黒霧どういうことだよ?打撃は効かないはずだろ?しかも、平和の象徴対策のために調整もされてんだろ?なのに、なんで、たった一発であの最高傑作の脳無がやられてんだよ?」
「ま、まさか、こんなことが……」
目の前の光景にただ、疑問しか沸き上がってこないのか質問を繰り返す死柄木と圧倒され唖然としてしまった黒霧。
「儂に勝てん時点で、あの男を倒すことなど不可能だぞ?」
「ホントになんなんだよ、お前はぁぁ!?この、チートが!!!ムカつくなぁ、ムカつくなぁ!!?何より、ムカつくのは
苛立ちが、頂点に達したのか凄い形相で死柄木がこちらを見ている。
(拳人、頃合いのようだ。あとはお主に任せるぞ)
『了解です、ありがとうございました。書文先生』
意識が先生から、僕へと戻される。
「諦めるんだ、敵連合。もうお前たちに勝ち目はない!」
「くそぉぉぉ!!!死ねよ!!!糞ガキがぁぁぁ!!」
「死柄木弔、自棄になっては!」
自棄になった死柄木がこちらに迫って来る。そんな奴の目を真っ直ぐと見据えを、僕は一言呟いた。
「言ったはずだよ?勝ち目はないってね」
ズドンッ!!
同時に、銃声が響き渡った。そして、死柄木が僕に向けた右手は銃弾によって撃ち抜かれていた。同時に、とてつもない気を入り口の方から感じて振り返る。
「すまなかった…生徒達よ。遅くなってしまったね、怖い思いもさせてしまった。全く己に腹が立つ!後輩らがどれだけ頑張ったか!!しかし、だからこそ胸を張って言わねばならない!!もう大丈夫!私達が来た!!」
「遅くなってごめんね。すぐ動けるものを集めてきた」
「1-Aクラス委員長、飯田天哉!!ただいま戻りました!!!」
No.1ヒーローオールマイト、それだけではなく後ろには、雄英に勤めているプロヒーロー達が立っていた。
「引き上げましょう、この状況は不味い!」
「ちっ!くそがっ!」
「そうはさせん!!」
逃がさまいと、オールマイトが即座にこちらへと移動してくる。しかし、手を伸ばしたときには死柄木の体は黒霧のワープゲートに包まれ消え始めていた。
「逃がす訳には!!」
「今回は、失敗だったけど……今度は殺してやるぞ!!平和の象徴、オールマイトぉ!!!」
そして、奴の視線は今度は僕に向けられた。
「お前さえ……お前さえ、いなければ!!こんなことにはならなかったんだ!!
追撃を狙おうとした瞬間、その言葉を最後に死柄木達は姿を消したのだった。緊張の糸が途切れて、体が一気に重くなり膝をつきそうになるがなんとか踏みとどまる。
「うっ……」
『拳人!すまぬな。お主の体に無茶をさせ過ぎた』
「心配ないです、僕の鍛練が足りてないだけですから。それより、あの脳無ってやつ殺してませんよね?」
『ああ、急所は外した。途中で姿も見せたことによって完全なる不意討ちでもなかったからな。まぁ、それでも少しの間起きることはないだろうが』
「そうですか、さすがですね。書文先生」
『なに、弟子のためだ。きにするな』
書文先生の呼び掛けに答えていると、オールマイトがこちらに歩み寄ってきた。
「赤龍少年、緑谷少年や上にいた皆から事情は聞いたよ。すまなかった……私が遅くなってしまったばっかりに」
「そ、そんな、やめてください、オールマイト!!僕は自分が正しいと思ったことをしただけですから。それに、こうやってしっかりと駆けつけてくれたじゃないですか」
「それでもだよ、ありがとう、赤龍少年。ここからは任せてくれ。あとは私とプロヒーロー達がどうにかするからね!」
「了解です!」
「あ、それともうひとつ言い忘れていたよ!」
そのまま、背を向けて走り出そうとするとオールマイトに止められた。すると、No.1ヒーローは相変わらずの笑顔を向けて僕に言った。
「皆を、守ってくれてありがとうな!赤龍少年!」
「っ…!は、はい!!」
『ふっ、こういう面では見習わなくてはならなそうだな』
その言葉を聞いて、涙が溢れそうになるのを抑えながら振り向いて、皆のいる入り口の方へと向かった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「17…18…19…20人…よかった、全員無事のようだね」
死柄木達がUSJから、姿を消してからしばらくすると警察が到着し、現場確認を開始した。どうやら、クラスの半数以上のメンバーが様々な場所へ散り散りにされ、そこで敵と戦闘が起こったらしいが、皆無事だった。
「赤龍、大丈夫だったか!?緑谷から聞いたけど、とんでもねぇやつと戦ったんだろ?怪我とかしてないか!?」
「う、うん、大丈夫だよ。心配してくれてありがとうね、切島くんも大丈夫だった?」
「ああ、ちっとばっか数に押されそうになったが爆豪と協力して一網打尽にしてやったぜ!」
「そうなんだ、さすがだね」
「お前もな!」
お互いの拳を軽くぶつける。なんだかんだで、切島くんとは一番仲が良い気がするな。すると、横から刺すような視線を感じたので、そちらがわに首を向ける。
「えっと、爆豪くん。どうしたの?」
「ちっ」
「えっ?ちょっ!?」
何?なんで僕舌打ちされたの!?なんか、すごいくるものがあったんだけど(´・ω・`)。僕が軽く凹んでいると、一人の刑事さんがA組の皆の前へと歩み寄ってきた。
「とりあえず、生徒らには一度教室へ戻ってもらうとしよう。すぐに、事情聴衆っていうわけにもいけないからな」
「その、刑事さん。相澤先生は……」
「それに13号先生も……」
蛙吹さんと麗日さんが、刑事さんに先生達の安否を訪ねる。それを聞いて、悔やむ。相澤先生に関しては僕がもっと早く駆けつけていれば助けられたのでないかと、しょうがないことなのかもしれないけど思ってしまう。刑事さんは携帯を取り出し、スマホの通話をスピーカーにして全員に内容が行き渡るようにした。
『二人とも命に別状はありません。ただ、イレイザーは両腕粉砕骨折と顔面骨折……幸い脳系の損傷はなかったです。ただ目には後遺症が残る可能性があります。13号の方は背中から上腕にかけての裂傷が酷いらしいがそれ以外に目立った外傷はないです』
「だそうだ……」
「ケロッ……」
刑事さんからの話を聞いて、蛙吹さんが悲しげな声を漏らした。やがて、僕たちA組一同は警察や教師陣に守られながら雄英へと戻った。
「ねぇ、赤龍くん」
「ん?どうしたの、緑谷くん?」
皆で教室へと向かっている途中、横にいた緑谷くんに声を掛けられた。その顔にはどこか元気がない。
「あの時はありがとう。本当に助かったよ」
「いいんだよ、それよりも皆無事でよかった」
「赤龍くんもね。正直、すごく心配だったからさ」
「しっかりと約束は守れたかな?」
「うん、本当によかった」
少し、二人の間で沈黙が生まれると緑谷くんがポツリと呟いた。
「何も……出来なかったな」
「そんなことないと思うよ?」
「え?」
緑谷くんの言葉を聞いた僕は反射的に、否定した。だって、僕は見ていたのだ。
「緑谷くんは、敵に襲われそうになっていた蛙吹さんを守ろうと、手を伸ばしていたじゃないか」
「手を……」
「うん、そういうのは大事だと思うな。理屈とか恐怖とか感じる前に、そうやって手を伸ばせるって」
「そう、かな?」
「そうだよ。だから、何も出来なかったなんて言っちゃ駄目さ。なんであれ、君は守りたいものに手を伸ばしたんだから」
「赤龍くん……ありがとう」
「礼をいわれるようなことじゃないよ」
「ううん、そんなことないよ。よし!僕ももっと頑張らなくちゃ!」
そう言って、緑谷くんは自分の頬を叩いて強く拳を握りしめていた。その姿が、僕にはとても眩しいものに感じた。
(あの時の僕も……こうだったらな…)
『馬鹿者、他人と自分を比べるでない』
(す、すいません)
『確かに、過去は変えられん。ならば、その過去を背負いながら今を変えていけば良いだろう?』
(はい、本当にいつもありがとうございます。書文先生)
脳内で、書文先生にお礼する。そうだ、どんなに悔やんでいたって過去は変わらない。なら、僕はこの過去を常に背負って、今を歩んでいこう。
「負けないよ、緑谷くん」
「僕もだよ、赤龍くん」
「なんだよ!二人とも熱いじゃねぇか!!俺も混ぜてくれよ!」
「切島ーうるさいよぉー」
「男の因縁って感じやね!」
クラスの皆が僕らの会話に参戦してくる。皆気がよくて、ホントにいい人達ばかりだ。守れて本当によかった。それにしても……
(書文先生)
『なんだ?』
(奴等が言ってた
『わからん、まぁ、なんであれ今は情報が少ない。無理な詮索は避けるとしよう』
(………そうですね)
多少、渋りながらも僕は書文先生の言葉に頷いた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
~とあるどこかの酒場~
「脳無が、やられた……右腕も撃たれた。手下共は瞬殺だ……子供も、全員強かった……それに、最後に見ただけだけど…分かる…あの動き…平和の象徴は健在だった…!!何もかもが話が違うぞ先生…」
『違わないよ、ただ見通しが甘かった。そして、舐めすぎたというのもあるね。で、脳無は回収できたのかい?』
「すみません、回収を試みたのですが……その暇がないほどに追い詰められました……」
『で!?で!?弔くん、どうだったの、あの子は!?強かった?』
「ああ……ああ!!うんざりするほどにな!!なんなんだよ!!あいつは!!おい、先生!脳無はオールマイト並みのパワーにしたんだよな!?」
『ああ、そのとおりだよ』
「あの野郎、その脳無を一撃で沈めやがった!!しかも、俺じゃ触れることすら出来なかった!!くそっ!!くそっ!!あいつさえいなければ!!」
『あはは♪だから言ったんだよ~弔くんじゃ勝てないって~♪』
「うるせぇ!!くそ!ガキがぁ!!ガキぃ!!!」
『まぁ、悔やんでも仕方がない!今回だって決して無駄ではなかったはずだよ?精鋭を集めよう!じっくりと時間をかけて!』
『ん?てことは、先生!そろそろ~♪』
『ああ、君の出番も近い』
「正気かよ、先生?」
『ああ、もちろんだとも。我々は自由に動けない!だから、君のようなシンボルが必要なんだ。死柄木弔!!次こそは君という恐怖を世に知らしめろ!!』
『先生~私は~?』
『もちろん、君もね。楽しみにしているよ』
『うん!本当の本当に楽しみだよぉ~♪』
『ねぇ~♪
タグ追加しないと(´ω`)
そろそろ焼き土下座しないと許してもらえない領域まで来てる気がする……。
指摘とかあったら言ってください。今回めっちゃ迷いながら書いたんでおかしなとことかいってもらえたら嬉しいです。ご期待に添えない展開だったりしたら、ごめんなさい。
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重なる面影、来たる体育祭
今回は戦闘シーンはありません!(なんか書いてて珍しいなって自分で思った(´ω`))
それと、また遅れました。もうそろそろ焼き土下座必要かなぁ………(泣)
って、そんなことより本編です!どうぞ( ゚д゚)ノ
先日に起きた、
そして、雄英が臨時休校になった翌日の朝。
「あんたって奴は、また無茶したの!?」
「け、拳藤さん、耳元で怒鳴らないで!鼓膜が潰れちゃうから!」
『ふっ、朝から元気なものだ』
一緒に学校へと向かっている道中、僕は拳藤さんに説教を食らっていた。理由は単純、この前のUSJ事件のことについてだった。まぁ、怒鳴られているのは僕が口を滑らせて、首謀者連中と戦ったことを言ったのが悪かったんだけど……。
(元気なものだ……じゃないですよ!どうにかしてくださいよ、書文先生!)
『なぜ、儂がお主とこの娘の痴話喧嘩を止めねばならんのだ?』
(痴話喧嘩!?全然違うでしょ、これ!?そもそも、僕と拳藤さんはそういう関係じゃないし!!)
書文先生の発言に、ツッコミを入れているといつの間にか拳藤さんの顔が目の前まできていた。
「聞いてる!?」
「あ、は、はい!聞いてます!(か、顔が近い!)」
「入試の時もそうだったけどね。あんたは自分から危ないことに首突っ込もうとし過ぎだよ!もっと自分を大事にしなきゃ!」
「い、いや、でも、今回はしょうがなかったっていうか……」
「何?(ギロッ)」
「はい、すいませんでした。僕が悪かったです」
彼女の目の威圧に、やられて謝る。頭を下げると彼女は溜め息をつきながら、優しい声色で話しかけてくる。
「はぁ……まぁ反省してるし無事だったからいいかな」
「あ、ありがとうございま」
「でも、次はないからね!今度は、自分のことを優先するように!」
「はい、善処します」
『嘘をつけ、直す気などないであろうに』
書文先生のいう通り。多分、直せないとは思うけど善処はしよう。どうやら、心配させちゃったみたいだし。
そんなことを考えていると、拳藤さんが携帯に映し出された時間を見て慌てていた。
「あ、ヤバい!ゆっくり話し過ぎた!急ぐよ、拳人!」
手を掴まれて、引っ張られる。
「ちょ……ま」
言葉がそこで、止まる。何故なら、僕の手を掴んで引っぱり歩きだした拳藤さんの後ろ姿が……。
『ほら、遅れちゃうよ!急ごう、拳ちゃん!』
「……」
「拳人?どうしたの?」
「はっ……な、何でもないよ!?」
「そうか?じゃあ、急ごう!ホントに遅れる!」
「うん」
拳藤さんの言葉に頷いて、僕も歩き出す。
『拳人、大丈夫か?』
(はい、大丈夫ですよ)
そう心の中で答えたのは、良いものの学校に着くまでの間僕の手は終始震えていた。
「皆ーーー!!!朝のHRが始まるぞぉー!!席につきたまえーー!!」
「ついてるよ。ついてねーのはおめーだけだ」
皆に、相変わらずの雰囲気で指示を出した飯田くんを瀬呂くんがツッコミを入れる。そんな、いつも通りの和やかな雰囲気が教室に流れていると、教室のドアが開かれる。
「お早う……」
(えっ!?)
『ぬ?』
突然のことに、皆の動きが止まる。そこに現れたのは包帯ぐるぐる巻きのミイラ男だった。声と気から、察するに相澤先生なのは明白だ。
『相澤先生復帰早ぇぇぇぇぇぇぇぇ!?!?!?』
僕も含めクラスの皆は、かなり酷い損傷だと聞いており、まさかここまで復帰が早いとは予想していなかったからか、たまらず叫び出していた。
「先生!無事だったのですね!」
「ぶ、無事言うんかなぁアレ……」
「なんにせよ、よかったぁ」
『そうだな、正直危ういかと思ったがここまで早いとは』
さすがの書文先生も多少は驚いているようだ。まぁ、そりゃそうだ、だって僕が敵の所についた頃にはかなり深いダメージを負っていたから。
(まだ、動かない方がいいと思うけど……)
「俺の安否はどうでも良い。何より、まだお前らにとっての戦いは終わってねぇぞ」
『!?』
相澤先生の発言に皆が息を呑んだ。包帯の隙間から、覗かせる鋭い眼光と雰囲気がかなり重たい。まさか、まだ敵が……?
「雄英体育祭が、迫ってる!」
『クソ学校っぽいの来たぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!』
教室の針詰めた空気は、一変してクラス中から歓喜の叫び声が上がる。
(雄英体育祭……もう、そんな時期だったんだ!)
『たいいくさい?それは、なんだ?拳人?』
(えっ!?書文先生、前一緒にTVで見たでしょ!?)
この体育祭はただの体育祭じゃない。これは、今の日本において『かつてのオリンピック』の代わりを担うほどの重要なビッグイベントなのだ。そして、これは全国のトップヒーロー達がスカウトを目的に、目を向ける。
『ほう、かなり重要な祭事なのだな』
(そうですよ!かなりというかめちゃくちゃ重要です!)
「当然、名のあるヒーロー事務所に入った方が経験値も話題性も高くなる。時間は有限、プロに見込まれればその場で将来が拓けるわけだ。年に三回……計三回だけのチャンス。ヒーロー志すなら絶対に外せないイベントだ!」
相澤先生の覇気の籠った声色と発言に皆の目付きが、変わる。そう、これは自分の将来に繋がることだ。気合いを入れなくちゃいけない。
「なんだかんだで、テンション上がるな!な、赤龍!」
「だね、ここで目立てばプロにも見てもらえるし」
「そうだね~私も頑張るよぉー!」
「葉隠さんは……うん、頑張ろうね」
「赤龍くん?今、なんて言おうとしたの?」
「えっ?いや、別に何も?(透明だから、目立つの大変そうだなって思ってたとか言えない)」
「皆……頑張ろうね?体育祭」
『なんという、異様な気だ……このくらすは恐ろしいな』
突然、後ろから感じた異様な気に振り向くとそこには全然麗日な顔をしてない麗日さんがいた。
「どうしたの?全然麗日じゃないよ?麗日」
「もしかして、生「峰田くん、ちょっと口閉じようか?」ごふっ!?」
「ありがとう、赤龍ちゃん」
女性に対しての、プライバシーの無い発言をしようとした峰田くんにちょっと腹痛が起きる程度の拳を叩き込む。
「皆ぁ!!私頑張るぅ!!!!!」
「お、おー?」
「私!!頑張るぅ!!!!」
「オー!!って、大丈夫か!?キャラがふわふわしてんぞ!?」
なんであれ、皆体育祭に対し闘志を燃やしているようだった。もちろん、僕もだけどね。
今日は、拳藤さんが同じクラスの友達に誘われたということで、今日はなんとなく一人で食堂にやって来た。
「なんか、ごめんね轟くん」
「いや……構わない」
とはいうものの、一人で食事を食べるというのは味気ない。なので、食堂に向かっている途中に会った轟くんと一緒に食事を済ませることになった。僕はうどん、轟くんは蕎麦。
「蕎麦、好きなんだね」
「ああ、うまいからな」
「……」
「……」
(改めて、話すと……全然、会話進まない)
『まぁ、それはどうすることもできぬが。ふむ、轟だったか?戦闘訓練の時にも思ったが、中々の気ではないか』
確かに、と胸の内で同意する。轟くんは強い。発されている気も他の皆とは比べ物にならないほどのものだ。
(だからこそ、なんで
『うむ、こやつは意図的に力を抑え込んでいるようにも、感じるからな』
(ですよね、僕もそう思います)
「なぁ、赤龍」
「ん!?なに!?」
まさか、轟くんから話題を振ってくるとは思ってなかったので辺な声をあげてしまった。
「悪かった……突然話振って」
「い、いいよいいよ。それで、どうしたの?」
「ああ、お前、緑谷の個性のことについてなんか知ってることとかないか?」
「緑谷くんの個性?」
緑谷くんの個性について知ってることか。あるっちゃあるしなんとなくどういうものなのかも分かって来ているけど。確信がないし、なら言うべきじゃないか。
「いや、知ってることは特にないよ」
「そうか……悪い、変なこと聞いた」
「別いいよ。気にしないで」
意外に律儀なんだ……なんかもっと素っ気ない感じなのかと思ってたんだけど。
「にしても、体育祭気合い入るなぁ~轟くんはどう?」
「俺は……まぁ、やるだけやる」
「もし、一対一で戦う時がきたら、今度は本気でやろうね」
「……ああ」
そう、短く返事した時の轟くんの顔が僕にはとっても苦しそうに見えた。何か、悩んでいるのだろうか?
「何事だぁ!?」
「ん?なんか、外騒がしいけどどうしたの……ってなにこれ!?」
授業も、終わり放課後。入り口の方から聞こえた叫び声に反応し、僕も顔をそちらに向けるとA組の教室前の廊下が、生徒で埋め尽くされていた。
「な、なんでこんなに人が……」
「出れねーじゃん!何しに来たんだよ!?」
「敵情視察だろうが、雑魚。どけや、脳筋野郎」
「の、脳筋……野郎?てか、雑魚って!?」
「あはは、あれがかっちゃんのニュートラルだから……」
横から、緑谷くんに耳打ちされる。すごいな、あれでニュートラルって。てか、脳筋野郎って……。結構、傷つくなぁ(´・ω・`)
(自分の中では、かなり頭使って戦ってるつもりなんだけど)
『我が弟子を、脳筋呼ばわりとはいい度胸だな。小僧』
(しょ、書文先生!落ち着いて!僕は、気にしてませんから!)
『ぬ……拳人がそう言うのなら、よしとしよう』
変なところで、軽くキレた書文先生を宥めて視線をもう一度扉の方へ戻す。
「敵の襲撃耐えきった連中見ときてぇのかもしんねぇが、意味ねぇから、どけ、モブ共」
「知らない人の事を、モブ呼ばわりするのをやめないか!」
「そうだよ、爆豪くん!モブ呼ばわりはよくないって……あと出来れば脳筋ってあだ名は変えてほしいんだけど」
「何いってんだぁ!?てめぇは確実に脳筋だろうが!!」
(なんで、怒ってんの!?この人ぉぉぉ!?)
飯田くんに続くように、僕も近くにいたので注意する。しかし見事に逆ギレされた。僕の方が怒っていいとこだと思うんだけど?
「どんなもんかと、見に来てみれば随分偉そうなんだなぁ?ヒーロー科に在籍してるやつは、皆こんななのかい?」
「ああ!?」
「勘違いしないで、常に喧嘩腰なのはこの人だけだから」
誤解は生まないように、人混みを掻き分けながら現れた目にクマができている生徒にそう言う。
「てめぇはどの立場からいってんだ!?」
「お、おい!落ち着けって!爆豪!」
「はぁ、こういうの見ちゃうとちょっと幻滅するなぁ」
「……何が言いたいの?」
目の前に出てきた生徒に向かって、鋭い視線を向ける。確かに、爆豪くんが沸点低いのは認めるけど知りもしない人にクラスの仲間をそんな風に言われるのは腹が立った。
「普通科とか他の科って、ヒーロー科から落ちたから入ったやつ結構いるんだよ。知ってたか?体育祭のリザルトによっちゃヒーロー科編入も検討してくれるんだって……つまり、その逆も然りってことらしいよ」
言葉が途切れたと同時に、彼の目が僕の目を真っ直ぐ見据える。
「敵情視察?少なくとも
「へぇ……いい気迫だ、面白いね」
『ほぉ……いい気迫だな、面白い』
その時、後ろにいた緑谷、飯田、麗日。三人の心の声がシンクロした。
『『『この人も、大胆不敵だな!!!』』』
そんな緊迫状態の中、更に後ろから叫びに近い声が上がった。
「おうおう!!隣のB組のもんだけどよ!!敵と戦ったつうから、話聞こうと思ったんだがよぉ!!エラく調子づいてくれちゃってんなぁ!?オイ!!本番で恥ずかしいことんなっぞ!!」
その時以下略
『『『また、不敵な人キタ!!!』』』
そんな中でも、爆豪くんが平然とした顔で人を掻き分けて帰ろうとする。
「待てコラ、どうしてくれてんだ!おめーのせいでヘイト集まりまくってんじゃねぇか!!」
「あ?関係ねぇだろ?」
「はぁー!?」
切島くんの、言葉に対し爆豪くんは横顔だけを向けいい放つ。
「上に上がりゃ、関係ねぇ」
その言葉に、クラス中の皆が目を見開き驚いていた。
「くっ!!シンプルで男らしいじゃねぇか!!」
「上……か。一理あるな」
「中々良いこと言うな、爆豪の奴」
「お、おい、お前ら騙されんな!!無駄に敵増やしただけだぞ!?」
背後から、そんな会話が後ろから聞こえてくる。爆豪くんの言葉や、クマが出来た彼の威圧的な気迫に、感化されて拳を握りながら僕は言う。
「宣戦布告ね、受けて立つよ?だから、先生方に注意される前に、今日の所は帰ったらどうかな?僕は……いや僕達は逃げも隠れもしないから」
「おおーーい!!なんで、赤龍までそう言うこと言うんだよ!?!?」
上鳴くんから抗議の声が上がるが、今の僕は闘志に燃えている。爆豪くんの言葉で完全に火がついた。そんな、僕の言葉を聞いて、廊下に集まっていた生徒達が散り散りにりはじめる。クマができていた子も、こちらに睨みを利かせながらも帰宅していった。約一名を除いて。
「なぁ、お前が赤龍って奴だろ?」
「そうだけど、何かな?えっと、B組の?」
「そうか!名前を言ってなかったな!俺は、鉄哲!鉄哲徹鐵だ!拳藤から聞いてたぜ、お前のことは」
「えっ?拳藤さんから?」
そう言う鉄哲くんは、さっきまでの喧嘩腰な雰囲気が消えて普通に話しかけてきた。
「おう、すげぇ奴だってな。入試の時にあの大型敵を倒したとか色々な。それと、さっきは怒鳴って悪かった……あの爆発頭の言葉に我を忘れちまって」
「え、ええと……」
「鉄哲?なんで、あんたA組とこにいんの?」
「げっ!?」
「ギクッ」って擬音が聞こえて来そうなほど、体を強張らせる鉄哲くん。そんな中、拳藤さんがこちらに近づいてくる。
「お、おお、拳藤。ど、どうしたこんなとこで?」
「拳人と一緒に帰ろうと思って。あんたこそどうし……ってまさか迷惑掛けてた訳じゃないよね?」
「だ、大丈夫だよ、拳藤さん!鉄哲くんはなにもしてないよ?」
「そ、そうか?」
まぁ、怒鳴っていたけど反省しているみたいだしここは庇おう。わざわざ謝ってくれたんだし。
「まぁ、それならいいか。それじゃ拳人、一緒に帰ろう?」
「あ、う、うん。そうだね、拳藤さん」
「「……リア充死すべし」」
「おわ!?なんだ!?こいつら!?」
『ふっ、若いな』
峰田くんと上鳴くんから発される殺気の籠った視線に、ビビる鉄哲くん。てか、リア充って何!?僕と拳藤さんは、そういう関係じゃないってば!!
帰り道、拳藤さんと二人で帰路を歩く。
「そろそろ、体育祭だよなぁ~」
「えと、うん。そうだね」
朝のこともあって、僕は彼女を直視出来なかった。何故か、あの時の拳藤さんの姿が
『似ている……と思っているのか?』
(ちょっと、ですけどね)
『そうか』
書文先生も、それ以上何も言わない。なんだかんだで、僕のことを分かってくれている。考え込んでいると、朝と同じように拳藤さんの顔が近くにあった。
「おーい、拳人?大丈夫か?」
「あ、う、うん。大丈夫!で、なんの話だっけ?(ちーかーい!!)」
「体育祭だよ。今度はあんたと敵同士だなって」
「ああ、確かにね」
「悪いけど、負ける気はないから!」
「僕も、負ける気はないよ」
拳藤さんが、拳を握ってそう言う。そんな彼女の姿を見て、言葉を返しながら強く拳を握った。
あーいやーにしても拳藤さんはいいよなぁ~(^ω^)
次は戦闘シーンあるのかな?ってか日常回だと、書文先生目立たせられなくて難しいです(´・ω・`)
まぁ、とりあえず心操くん好きなんですけど分かってくれる人います?(僕の周りに同志がいない(泣))
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