百合地獄の迷宮 (大暴れペット)
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百合地獄の迷宮Ⅰ

ペットに転職したので初投稿です

瀕死ペイントレードカスメ並みの扱いで良いので感想が有ればご自由にどうぞ


ここは飛行都市マギニア、閉店間際のクワシルの酒場だ。

殆どの客が返った後の閑散とした店にやって来た彼は、ふと夜中に目が覚め上手く寝直すことができずにふらふらと酒場にやって来たマギニアの住人だ。

 

幸いにも酒場はまだ閉店しておらず、寝酒の一杯でも引っかけて帰るくらいのことは許してもらえるだろう。

ありとあらゆる点でルーズで適当なあの店主は、閉店間際の駆け込み客のことなど気にしないはずだ。

 

だが、彼が店に入ると店主のクワシル氏はいつもの妙に溌剌とした笑顔ではなく、珍しく困ったような苦笑いで彼を出迎えた。

もう閉店なら日を改めてまた来ようか、と彼が問いかけると、もうとっくに日は改まっちゃてるよーあっはっは、うん、日が改まってだいぶ時間が経つんだけど、彼女がねぇ。

と、店の奥に視線を向ける。

 

見ると、店の奥の暗い所にある陰気なテーブルに一人先客が座っていた。

茶色の長髪を背中に流し、黒いフリフリのドレスに身を包んだ、閉店間際の酒場には似つかわしくない美しい少女だ。

 

だが、彼女はただのか弱い少女ではなさそうだ、彼女のドレスには拷問器具である鉄の処女を思わせる独特の籠状の防具が体の要所を守るように組み込まれており、テーブルの横には禍々しさすら感じる巨大な鎌が立て掛けられた。

 

 

冒険者だ。

 

彼女は鋭く据わった目付きで、残り一口くらいにまで減ったテーブル上のエールのジョッキを恨めし気に睨みつけている。

 

 

あと一杯飲んだら帰るって言ってたのに、その一杯を飲み終わる直前で硬直しちゃってるんだよね。

 

彼女もしかしたら彼女そっくりの石像と入れ替わっちゃったのかな?

 

そろそろ叩き出そうかと思って何か叩くものを探してたんだけど、もし石像なら叩いたら壊れちゃうかもしれないし、店の前に飾ろうかハンマーを探してこようか迷ってたところだったってわけ。

 

でもひょっとすると、まだ辛うじて人間かも知れないし、会話できるようなら上手く言いくるめて帰るように言って来てくれない?

 

え、僕?

 

いやだなー、僕みたいなか弱いおじさんが、ゴーレム相手に喧嘩できるわけないでしょー。

 

お店のサービス券あげるからさー、まあ、うちはサービス券なんてやってないんだけど。だからちょっとお願いしてもいい?

 

 

などと相変わらず適当全開なことを口から垂れ流す店主に免じて、彼は陰鬱な気配を漂わせる女冒険者のテーブルに嫌々ながら相席させてもらうことにした。

 

 

彼がテーブルに着くと、女冒険者は顔を上げてジロリと彼を睨めつけた。

 

ノースリーブのドレスから露出した肩の、酒を垂らせば極上の器にでもなりそうな白い鎖骨の窪みの上を、年代物のブランデーの様な枝毛一つない艶やかな茶色の髪がするりと滑り落ちる。

だらしない飲み方で粗相したのであろう、ドレスから零れそうな程豊かな胸元に乗っていた一滴の水滴が、酒精でしっとりと上気した肌の上をとろりと流れ、胸の谷間の陰の中に消える。

アルコール臭とお摘みの油臭い臭いに混じって、視線の鋭さとは反比例するかのように甘い女の匂いが鼻に届き、彼は酒とも食欲とも違う理由で思わずゴクリと喉を鳴らした。

 

 

次の瞬間、彼は言葉にはできない不可思議な臭気を感じた。

 

恐らく物理的には存在しないであろうこの臭気に彼は僅かに覚えがあった。

親戚の葬式の時や、医療施設にお世話になった時ちらりと見かけた重病患者、道端の藪の中で死にかけている野良猫の断末魔を見た時。

 

これは死の臭いだ。気配と言い換えても良い。

 

 

彼は知らなかったがこの独特の気配こそが彼女の職業の証。

瘴気を身に纏い、その大鎌で死を振りまき、命を奪いあるいは与え、死神の如く戦場に君臨し、生き残るべき者と死すべき者とを選別する。

 

 

彼女は「リーパー」だ。……それも超一流の。

 

 

柔らかに纏わりつくような、淫靡な女の臭いと陰気な死の「臭い」に思わず込み上げてくる怖気を飲み下し

腐り落ちる死体に咲く花のような、危険な色香を漂わせる女と二人きりにさせた適当店主に、心の中で悪態を吐きながら彼は女冒険者に話しかける。

 

彼女はその容姿からは想像もつかぬ程ドスの利いたガサツな口調で彼に返事を返し、それが今夜の不思議な会話のきっかけになった。

 

 

 

……あん?何だよ、あと一杯って言っただろ。

見ての通り俺はこの一杯まだ飲み終わってねえぞ。

 

うん?見ねえ顔だな、と思ったがあんた冒険者じゃないのか。

俺は普段この酒場じゃあ、冒険者やその依頼関係者としか話さないからな、知らないのもしょうがないか。

 

あんたこの店の常連なのか?物好きだね、冒険の依頼があるから仕方なく、じゃなくて自分からあんな高田〇次モドキの店長の店に通うなんてよ。

 

あんたはここの生まれなのか?

なあ、俺に話しかけてきたってことは、ひょっとして俺と同郷だったりする?

 

そうだな、シンジュクって知ってるか?……へえ、知ってるのか!じゃあ、シブヤは?イケブクロは?トウキョウは?

 

……え?シンジュクはエトリアにある迷宮の階層の名前?

エトリア出身の冒険者から聞いた事があるだって?

なんだ、それしか知らねえのかよ…

 

知らないなら仕方ねえな。今の話は忘れてくれ、ああ、何でもない、こっちの話。

 

 

なあ、あんた、少し面白い話でも聞かせてやろうか、酔っ払いの戯言だからまじめに聞かずに右から左に聞き流してくれて良いからさ。

俺、ちょっと事情があってまだ宿に帰りたくねえんだよ。

 

……え?嫁さんがいるから遠慮する?行きずりの男相手に大胆すぎる?

 

バッカ!違えよ!クワシルのおっさんに追い出されないように無駄話で時間稼ぎに付き合えって言ってんの!

変な勘違いしない方が身のためだぞ!生きてその嫁さんの所に帰りたいんだったらな!

 

それで、なんだったけな。

ああ、そうだ、あんた、俺が他の世界からこの世界に漂流して来たって言ったら信じるか?

 

それも、もとの世界じゃ男だったのに、こうして女の体になってさ。

……馬鹿な話だって?信じなくても良いさ。

酔っ払いの戯言だって言っただろ、大真面目に信じられたら逆にこっちが困る。

 

世界樹の迷宮シリーズって言ってな、元の世界じゃ、このレムリアにあるような迷宮を冒険するゲームがあったのさ。

俺はそれなりにシリーズと長く付き合っていたプレイヤーでよ、確か、ナンバリングタイトルは一通り全部やったかな。

このレムリアが出てくるゲームは世界樹の迷宮Xって言ってな、クロスって読むんだぜ、10でもないしエックスでもない。

 

……意味不明な単語ばかりで分からない?良いんだよ分からなくても。

あんたはそこで神妙な顔して相槌打ってりゃそれで良いの!

 

それでさ、俺はその世界樹の迷宮Xを購入したわけだ。

だって今までのシリーズの要素が色々クロスオーバーして登場するお祭り作品だって聞いたからさあ、そりゃ買うだろ、シリーズのファンなら。

 

それでいざ購入してプレイしようとした時、俺、思い出しちゃったんだよ、シリーズの前の作品の、世界樹の迷宮Ⅴまだ全クリしてねえなって。

思い出したら気になってムズムズするからさ、新作の攻略wikiの情報が揃うまでの間、時間潰しにちょうど良いって、机の奥から引っ張り出して来てパパパっとクリアしたわけさ。

 

……理由は分らないけどウィキってやつは卑怯臭く聞こえるって?

 

良いんだよ、俺は攻略wiki見る派なんだ。ネタバレは避けてたけど、パーティの構成や育成方針考えたりするのに必要だったんだって!

それで、世界樹Ⅴでの俺の一番のお気に入りパーティメンバーがな、リーパーだったんだよ。もちろん女の子キャラだ、と言うか見た目は今の俺そのまんまだ。

 

やった、全クリしたぞって時に、何と言うか、そのリーパーに対してさ、お疲れさんって気持ちになって、そのキャラを引退させたんだよ。

キャラを消したとか、捨てたとかじゃなくて、そういうシステムがあったんだ。

今のキャラを引退させて、その代わり能力やスキルポイントにボーナス貰って、レベル30の新しいキャラを作るってシステムがさ。

 

つまり、古い作品の一番のお気に入りのキャラを引退させて、古い作品の締め括りにしてな。

心機一転、いざ最新作をプレイしようとした訳だよ。

そうしたら急に目の前がフワーっと白くなっていって……気が付いたら、そのリーパーの体になってこうして飛行都市マギニアに乗り込んでいたってわけ。

 

俺の主観では、いきなり目の前にこのマギニアの王女様が居て、なにお前?誰?みたいなこと言われたから焦ったのなんのって。

 

ほんと、剛毅な王女様だぜ。

自分の治める飛行都市マギニアに、世界中から冒険者を集め、都市ごと伝説の大地レムリアに乗り込んで失われた秘宝を求めようなんて、3DS媒体最後の作品に相応しいスケールだ。

それで、王女ペルセフォネ様は俺の挙動不審ぶりを見て勝手に勘違いしてくれてな、外部から来たばかりの冒険者だから色々分かってないんだろうねって感じで、軽く状況を説明してくれたのさ。

 

それで俺もトリップとか転生とか憑依とか、そういう二次創作を読んだことはあったし、そういうやつね、とすぐに状況を飲み込めた分けよ。納得したかは別だけどさ。

 

んで、その後すぐに自分の体を調べて気が付いたんだが、俺、リーパーになってたんだよ。

 

……頭悪い奴を見る目で見んなよ。聞き流せって言っただろ、真面目に聞かなくて良いんだからそうやって真面目に呆れるなよ。

 

要するに今の俺は、レベルカンストからの引退作り直しキャラで、旧作の最終装備持ち込みで、レベル30のリーパー♀としてこのマギニアにやって来たわけよ。

髪の色とか、エディットでカラー弄った部分まで正確に反映されてたくらいだから、ああ、今の俺、自分が使ってたあのリーパーなんだってのがすんなり理解できたね。

引退の設定上は俺の使ってたキャラの弟子ってことになるんだがな。

 

この体はレベル30の冒険者に相応しいドえらい身体能力で、元の体よりもずっと運動神経が良かった。

リーパーのスキルだって何の問題も無く使えたよ、ただスキルツリーがX仕様に一新されていたから取得するスキルを考えるのにちょっと時間が掛ったがな。

 

で、この世界の冒険者になっちまっていたからには、この世界で冒険しなけりゃ食っていけないわけだし、冒険するには仲間が必要だ。

 

そいで、俺はこのマギニアで仲間を集め始めたわけだが、まあ、元男らしく悪いことを考えたのさ。

女の子ばっかりのパーティーを作って全員堕として百合ハーレムを作ってやろうってな!

 

 

……そういう趣味だったのかって?そういう趣味だよ!当然だよなあ!主観ではつい最近まで男だったんだし!

 

……頭ワルワルを通り越して狂人を見る目になって来たな、良いぜ、どう思ってくれてもよ。だがこの計画は本当に成功しちまったんだぜ、信じられるか?

 

パーティメンバー探しも、ギルド設立も迷うようなことは何も無かったよ。

この世界の人間は、世界が現実になった影響か色々な格好の冒険者がいて、ゲーム時代で見覚えがあるような格好の奴は滅多に見かけなかったんだが、その数少ない例外、つまりゲームの公式サイトで見た格好そのままの奴は、見つけ次第声をかけてギルドに引き込んだのさ。

 

ヒーロー♀、ブシドー♀、ガンナー♀、プリンセス♀(プリンセス♂も作れるのがこのゲームだ、と言うか、どのキャラ絵でも性別は明記されてない)

一部服装がアナザーカラー仕様だったり、髪や瞳の色をカラーエディットしてる奴もいるが、概ね原作通りの見た目だぜ。

 

……見た目で仲間選ぶとかバカかって?

いや、逆に見た目がゲームと違う奴はちょっと声をかけ辛くてなあ、俺というサンプルを見るに、見た目がゲーム通りなら性能とかスキルとか、ちゃんと俺の知ってるゲーム準拠で再現できそうだろ?

 

でも、見た目が違う奴はどういう性能が発揮できるか予想ができないし、万が一変なイベントの登場キャラだったり、ストーリーとかに係わりのあるキャラで攻略進行中に事故を起こしちまったらたまらないだろ?

そもそもの問題として、俺がこの世界にやって来た時には飛行都市マギニアは何日も旅を続けていて、伝説の大地レムリアに到着する寸前の時期でよお、大抵の冒険者はもうギルドを作ってリア充同士仲良くしてたのさ。

 

あんな時期までぼっちを貫いていたのんびり屋はあの4人くらいなもんだったわけよ。

 

もう人間関係が固まったグループの中に後から乗り込んでいって上手くやる自信もあんまなかったし、男がいるグループとかだとなあ。

当時は女になったばっかりだったから、ガラの悪い冒険者男を見てるとよ、汁男優とか、竿役とか、種付けおじさんとか変な単語しか思い浮かんでこなかったしな。

そんなわけで、俺はゲームで見たことのある、この4人のレベル1初心者ボウケンシャーを率いて迷宮の攻略に挑んだわけだ。

 

 

彼女たちを落とすのはチョロかったよ、マギニアに乗り込んでから冒険開始の直前まで仲間を作れず、こんな胡散臭い女に声かけられてノコノコついてくるネンネちゃんグループだしな。

 

まあ、具体的には、ちょっと毎日迷宮に潜って、レベル差、装備差によるHPの高さ硬さを生かして、なるべく自分がモンスターの攻撃の的になるように動き、仲間を庇い、危険な敵は真っ先に排除し、糸持った?糸持った?と仲間に声をかけて回り、攻略wikiの記憶を頼りに仲間の装備やスキルビルドの相談に乗り、リスクがありそうなイベントには真っ先に自分が手を出して他を庇うようにしただけだ。

 

……怖くなかったかって?別に。

痛かったり、バッドステータスを喰らって苦しかったりするのは平気だ。

仲間から軽蔑されたり、信頼を失う事の方がよっぽど恐いよ。

俺は前の世界でも結構粗忽者で怪我は慣れっこだったし、元男なのに仲間が頑張ってる時に泣き言を言うのは恥ずかしいだろ。

 

それに、俺が前作で愛情持って育てた「リパ」の体はこの程度のことでへこたれたりはしねえよ。

 

……ん?ああ「リパ」ってのは俺の名前な。リーパーだから「リパ」だ、クッソ安直な名前だって?別に良いんだよゲームなんだし、それに他の仲間も似たようなもんだぜ。

 

ヒーロー♀は「ヒロ」ブシドー♀は「シドウ」ガンナー♀は「ガンナ」プリンセス♀は「リンセス」だ、こんなもんだよ。

そいで、俺は最前線で迷宮の攻略を進めると同時に、愛する仲間たちの攻略も進めて行ったわけよ。ギルドのみんなは本当に可愛いんだこれが、掛け値なしによお。

 

もともと大好きだったゲームのキャラたちが、生きて、笑って、一緒に苦難に挑み、助け合って、俺なんかを頼りにしてくれるんだ。

愛情を込めて尽くす事なんか少しも苦じゃないね、本心ではエロいことなんか何も起こらなかったとしても少しも残念じゃなかったよ。本当さ、ほんとほんと。

 

 

でもHしちゃったんです。はい、ギルドメンバー全員と。

ぶったまげたことにメンバー全員がそっちの趣味があって、はい、立ち合い強く当たって後は流れで、みたいな感じです、ええ。

 

……修羅場にならなかったかって?ならないよ。

 

何と言うかそこは俺の洗脳、もとい教育の賜物でして、パーティー内でそういう色っぽい雰囲気になった時に、こう、俺たちは命を預け合う仲間同士なんだし、なんかムラムラした時やドキドキした時は、心と体も仲間同士で委ね合って絆を育んでも良いんじゃないかと日ごろから布教してまして。

 

……うん、あんたの言う通り。俺も気の狂った暴論だと思うよ。自分で布教しておいてなんだけど、どうして受け入れちゃったのかね?あの子たち。

 

そんなこんなで、他のギルドの先陣切って、いくつかの迷宮を攻略してさ、俺たちの名が少しは知られてきた頃になると、うちのギルドはちょっとムラムラするとすぐに仲間同士で軽率に百合Hして、それでいて特定の恋人は作っていないという、風俗の乱れまくった百合の花園になってたわけだ。

 

……俺?もちろんのこと、もう大暴れよ。

なんてったって元男だぜ、女体に対する興味も、仲間に対する執着も、性欲もギルドの誰よりも上さ。

毎日のようにメンバーの誰かを部屋に連れ込んでたっぷりと可愛がってやったさ。

言っておくが天に、いや、上帝に誓って俺は無理やりなんて事は一回もしてない。

 

仲間の方から誘ってくるまでは、俺の方からそういうの求めるような素振りは絶対にしてこなかったし、そういう関係が安定してからも強引なやり口は一切なしだったね。

もっとスマートにやんのさ、日ごろから相手をよく見て気に掛ける、目が合ったら微笑みかける、ふとした日常でそっと指を絡めてみたり、偶然体が触れ合えば俺の方からは中々離れないようにする。

 

そいで雰囲気が出来てきたら相手の手に俺の手をやんわりと重ねてみたり、お互い照れるまで見つめ合ってみたり、勇気を出して腰に手を回してみたり。

来たな!と思えばそこで殺し文句を一発!なあ、もう少しだけお前と一緒にいたいんだってな!

初心なギルドのメンバーはもう少しだけ、が毎度毎度明日の夜明けまでになるのに、いつもまでたっても学習しないで無防備に宿の部屋までついてくる!

 

そんな感じで俺は百合サーの女王として我が世の春を謳歌してたのさ、しばらくの間はね。

 

 

ところでさ、ゲームってものにはレベルアップってシステムがあるもんでね、ゲームによって色々仕様が違うんだけど、普通はレベルが上に行けば行くほど上がりにくくなる。

例えばレベル30なら31に上げるには500経験値が必要だが、レベル70から71に上げるなら5000必要、とかさ。

 

まあ、俺もその辺のデータまで詳しく覚えていたわけじゃないけどね。

なあ、仮にだよ、レベル1から30までレベルを上げるのに5000の経験値が必要で、レベル70から71まで上げるのに同じく5000の経験値が必要だったとする、そんなゲームがあったとしてだ。

 

最初にレベル30だったキャラがレベル1のキャラと一緒に冒険に出て、ずっと一緒に冒険して同じだけの経験を積み上げて来たとしてだ、レベル70になった頃、二人のレベル差はどうなっていると思うよ?

 

最初の時点で経験値にして5000の差しかなかったわけだから、レベルを1上げるのに膨大な経験値を要求される高レベル帯に到達するころには、二人のレベル差は殆どなくなってるだろうよ。経験値差の絶対量は変わらないが、同じ量の価値は大きく下落するわけだからな。

 

……あんた察しが良いね。同じことが俺の身にも起きたのさ。

 

俺は別に初期能力に胡坐かいてサボってたわけじゃねえよ、大好きな仲間たちを守るために自分なりに努力は続けて来たつもりさ。

だけど、四六時中一緒に冒険して、暇さえあればHして、冒険してない間もギルドのみんなは俺と同じく自己鍛錬は続けてるんだ、圧倒的なアドバンテージを維持するなんて不可能さ、そういうレベルアップシステムの世界なんだよここは。

さっき説明したよな、俺はリーパーで俺のギルドの仲間はヒーロー、ブシドー、ガンナー、プリンセスの4人だって。

 

こいつらの中でヒーロー、ブシドー、ガンナーはアタッカー向きの職業でSTRのステータス、つまり力が非常識なくらいに強い。

リーパーはサポーター向き、RPG用語だとデバッファーの職業でSTRは平均程度でしかない。

 

ある時いつものようにベッドの上でヒーローの子とチョメチョメしてた時によお。

あれ?変だな、この子こんなに力強かったっけ?と感じてな、そこから先はもうあっという間さ。

 

以前は迷宮の中で俺に庇われていた仲間たちが、逆に俺をフォローしながら次々とモンスターを薙ぎ倒していく。最初は迷宮内の地図の書き方も覚束なかったくせに、手強いFOEや意地悪な迷宮イベントを危なげもなく捌いていく。

 

かつてはおどおどと俺の後ろを歩いていたあいつらが、危険溢れる迷宮の中で俺の前に立ってグイグイ俺を引っ張って歩くのさ、喜ばしいことこの上ないよ。

その深めた自信とたくましくなった体をベッドの上で容赦なく俺にぶつけるようにならなかったらの話だがな!

 

仲間たちが俺の強さに追い付きだしたあたりから、だんだん夜の力関係にも変化が起こりだしてな、最初は俺に身を委ねてされるがままだったあいつらが、ちょっと積極的になり始めた。

タチとネコの割合が半々になった頃までは俺もまだ油断してたんだよ、男女の関係でも多分そうだろ。恋人がエロいことに積極的になってくれるなら男としても嬉しいもんだ。

 

ところが、ギルドの仲間はそのくらいじゃあ立ち止まってくれなかったんだよ。

あいつらのレベルが上がるにつれて、俺はベッドの上でリードを取れなくなった。

俺はギルドメンバーによって毎晩のように誰かの部屋に引きずり込まれ、手も足も出せずに散々に鳴かされ、近頃じゃ真昼間の路上でも隙を見せれば路地裏の暗がりに連れ込まれてスカートの中に手を突っ込まれる始末、尻を触るくらいじゃ済ませてくれないんだぞ、あの鬼畜少女どもは!

 

しかもサブクラス、まあ、サブ職業ってとこか、それを取得してからはその傾向が制御不能なくらい暴走するようになった!

今の俺のパーティは

リーパー\メディック、ヒーロー\インペリアル、ブシドー\ハイランダー、ガンナー\セスタス、プリンセス\シノビの構成になってる。

 

ゲーム的に言うとかなり攻撃重視の編成でな、各職業のシナジーも良好で強いんだぜ。

いや、今はそんなことはどうでも良いんだ、そういう話じゃない。

 

問題は、攻撃に寄り過ぎて脆い味方を守るために俺が攻撃力の低い回復職、メディックのサブクラスを取得しなきゃならなかったことと、優れたサブクラスを取得した仲間が夜のバトルでも抜群の性能を発揮するようになっちまったことだ!

と言うか、本来モンスターと戦うためのスキルをエロに応用すんな!

 

 

ヒロ!エロいことで頭がいっぱいになると【過熱の守り】(オーバーヒート中、自身の防御力が上昇する)が発動するってどういうことだ!

俺の弱いとこ責めてる時に【コンバーター】(敵の弱点属性で攻撃した時、自身のTPが回復)発動させんな!

【残影】(自身がスキルにより攻撃した時一定確率で空き枠に残像が出現)で疑似複数プレイするな!

リンセスよりはましだが何の慰めにもならんわ!

行為中に【鼓舞】(自身がスキルにより攻撃した時味方全体のHPを回復する)の発動対象からナチュラルに俺を省くな!

「これより猛攻に移ります!(voice大和撫子)」じゃねえよ、移るな手加減しろ!

 

 

シドウ!Hの時【果たし合い】(前ターンと同じ対象に攻撃する時、与えるダメージが増加)使うのやめろ!【血の暴走】(自身のHP減少時、一定確率で反撃を行う)もやめろ!興奮し過ぎて自分で鼻血出して【ブラッドベール】(HP減少時、ターン終了まで全防御力上昇)ってどういうこったよ!

夜のバトルも【免許皆伝】とか上手い事言ってんじゃねえ!

「この身が砕けても!(voice勇敢)」とか言ってる場合か!俺の恥骨が砕けるわ!

 

 

ガンナ!お前のスキルはエロ性能高いよな!【クリンチ】(自身と敵に一定確率で頭+腕+脚封じ効果が発動)連打からの【インターバル】(自身の封じ・状態異常を回復し次のターン全攻撃力が上昇) 【怒涛】(敵の封じ・状態異常の数が多いほど敵に与えるダメージが上昇)のコンボやばいでしょ。あと【ダブルアクション】(一定確率で攻撃スキルがもう一度発動)俺に対して発動し過ぎじゃないか?迷宮でモンスターに使えや!あれ発動確率良くない(15%)のにさあ!

何が「全力でいくわ!(voice高飛車)」だ!ついでにお前【ペネトレイター】(敵への単発攻撃が一定確率で貫通攻撃になる)が怖すぎるから、大人のオモチャは今後も使用禁止だからな!アソコに突っ込まれて子宮まで貫通されちゃたまらん!

 

 

リンセス!ギルドで唯一STRが俺以下の君はエロ行為も比較的大人しくて俺の心のオアシスだったよ。昔は。

よくも裏切ってくれたな!なんでお前シノビのサブクラス取ったし!

【忍法 分身】(パーティの空き枠に自身の分身を出現させる)とか一番凶悪なやつじゃねえか!

5人に分裂して俺とお前2人しかいないのに6Pとか意味分かんねえよ!

【攻撃の号令】【防御の号令】【覇気の号令】【予防の号令】【リインフォース】【ペアオーダー】【ヒールオーダー】【ラストオーダー】【リオーダー】【王の威厳】【王の血統】

もうスキルの効果一々説明できないくらい人数の多さを最大限有効活用してきやがって!

【忍法 驚忍】(敵を一定確率で混乱状態にする)で俺の理性を飛ばして【不屈の号令】(味方の戦闘不能を一定確率で防ぎHPを回復)で寸止め地獄するのほんとやめて下さい!泣いてるリーパーもいるんですよ!

 

「ボクに任せてー!(voiceボクっ娘)」「大人しくしててね!(voiceボクっ娘)」「本気で行くよー!(voiceボクっ娘)」「力を出し切るよ!(voiceボクっ娘)」「ボクが決める!(voiceボクっ娘)」

全方位から聞こえてくるあのボクっ娘ヴォイスは今や俺にとって恐怖の象徴だよ!

ボクっ娘キャラ好きだったのにトラウマになったわ!

 

 

 

はあ、はあ、怒鳴りまくってたら喉が渇いてきたし。

ああ、でもこれ飲んじゃったら本当に帰らなきゃいけねえんだよなあ。

今夜は誰が待ち構えてんだろなぁ?今日は探索はオフの日だったから、丸一日ベッドで過ごすことにならねえように一日中こそこそ逃げ回ってたんだよ。

 

あいつら絶対欲求不満になってるぜ。捕まったら間違いなく激しい夜になるよ。

 

……断れば良いだけだろって?

それができりゃ苦労しないぜ。何せあいつら華の乙女たちにそっちの道を教え込んだのは他ならぬ俺自身だし。

 

どうも責任感じちゃってなあ、突き放すような事はしたくない。

エグイほど激しいのも愛情表現だと思えば、まあ、許すしかないよな。

 

 

あー畜生!帰るか!クワシルのおっさん、お勘定!長居して悪かったよ、またな!

 

ああ、あんたも、しょうもない駄法螺に付き合ってくれてありがとうよ。

俺も酔っぱらってたから変なことベラベラ話しちまった。

分かっちゃいると思うが、今の話は秘密だからな。他所で言いふらしたりなんかした日には……

 

 

――ただで済むと思うなよ。

 

 

女冒険者は好き放題に垂れ流していた演説をやめ、彼に顔を近づけて彼耳打ちすると店主に金を払い、後ろも振り返らずにすたすたと店を出て行った。

クワシルの酒場には静寂が戻り、彼女がここにいた痕跡はテーブル上の飲み食いの跡だけだ。

 

だが彼の鼻には顔を近づけて来た彼女の女の匂いがいつまでも残り、耳には彼女の吐息の感触がいつまでも張り付いたままだ。

脳裏には裸体の仲間に群れがられ、激しく貪られる彼女の姿の妄想が乱れ飛んでいる。

僅かな時間の会話の中で彼女が彼に植え付けた香りと感触、しっとりと上気した肌の色は妄想の中の彼女を艶やかに彩り、手を伸ばせば触れられるかと思えるほどだ。

 

下腹部に溜まった熱い滾りは今夜は彼を眠らせてくれそうにない。

 




主人公

レベル30のリーパーに憑依して世界樹の迷宮Xの世界に転移した元男性
中途半端なレベルと能力で調子に乗っていたため百合地獄に堕ちた

ギルドメンバーに百合の道を教えて人生を踏み外させたと思っているので仲間に求められると強く断れない
最大の抵抗は逃げ回ることだけ、残影や分身だと分かっていても愛する仲間に攻撃なんかできない
クリンチで取っ捕まっても突き飛ばして逃げるなんてもってのほか
仲間からは彼の逃避行はプレイの一環としか思われていない


仲間

主人公はゲーム世界と同じだから気にしていないが、世界中から腕利きの冒険者を集めたという設定のマギニアで、レベル1でゴミみたいな初期装備をまとい、仲間も持たずにウロウロしている冒険者がいるのは基本おかしい
そんな状態でいた彼女たちは何やらそれぞれ不幸な経緯があったらしく拾い上げてくれた主人公にかなり恩を感じているようだ
だから体で恩返ししていくのは当然


レムリア

今作の冒険の舞台、世界樹を中心にした4つの島に複数の迷宮が点在する
昔は国を永遠に繁栄させる宝とやらの力によって古代文明が栄えていたらしいが神の怒りとやらによって滅びた
マギニアの人々は古代レムリア人の子孫


マギニア

飛行都市、ラピュタみたいな何か、デザイン的にもファンタジーよりSFに片足を突っ込んでいる存在だが世界樹シリーズが元々そんな世界観なので問題ない
レムリアが滅びた時に生き残りのレムリア人がこれに乗って脱出した
その後新天地に植民したレムリア人はこいつの存在を長く忘れていたが、最近再発見されたのでこれに乗り込んでレムリアに戻って来た
ゲーム中の背景を見るとヨーロッパ風の洒落たタワマンが立ち並んでいて地価が非常に高そうに見える


王女ペルセフォネ

忠臣の騎士がcv大塚 〇夫であるという類稀な幸運と引き換えにその他全ての幸運を失った女
死にかけパパンのお願いを断れず今作の冒険行の総責任者にされた
古代レムリアは国を永遠に繁栄させる宝とやらを持っていたのに一瞬で滅んだのですがどう思います?


国を永遠に繁栄させる宝

マギニアの冒険プロジェクトの最終目標
古代レムリアはこれを持っていたのに滅びたことは皆空気を読んでスルーしている
過去作をプレイしている主人公はこの秘宝の効果を1ミリも信じていない


クワシルの酒場

ゲーム中にクエストの受注を行う場所
店長のクワシル氏についてはcv大塚 〇忠の高田〇次で説明できる


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