ぐらさい日記 (長之助)
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団長相談室、おめぇもよく飽きねぇよなぁ

不意に書きたくなりました。適当ですいません。


騎空艇グランサイファー。団長グランを始めとする、数々の色々な種族や性別の団員が乗っている多種多様な騎空艇である。

当然、騎空艇に乗っている以上彼らは騎空団であり、その長にグランという少年を置いている。

団員全てが、グランに何かしらの感情を抱いていた。尊敬、恋慕、友情等々……友情や尊敬に関しては、グランはある程度察知できるが恋慕だけはどうしても察知できない。だが、それもある意味で正解なのだろう。察知してしまえば一気にバランスが崩れてしまうかもしれないからだ。

閑話休題……そんな、色々な団員が色々な感情を持っている空間が成立しているグランサイファー。そんな中で、団長のグランはある一つの決断をした。

 

「話し合い、しようか」

 

それは、ふと出た一言。その突然の一言に彼の隣にいた長年の相棒であるトカゲ……ではなく、ドラゴンのような見た目をしているビィは、突然のグランの言葉に困惑を浮かべるしかなかった。

 

「なんだぁ?いきなりどうしたんだよグラン」

 

「いや、俺ずっと思ってたんだけど……グランサイファーの皆とちゃんと話し合えてないと思って」

 

「そうかぁ?ちゃんと団員達のことを考えてたりするじゃねぇか」

 

「いやいや、それはちょっと……今の状態はスキンシップが足りないすぎる……」

 

「言葉おかしくなってんぞ」

 

「……ともかく、今の団のみんなと話し合いしてみたいと思ったんだよ」

 

「………」

 

グランの言った言葉に絶句しているビィ。正直『頭でも打ったのか?』と思ってしまったが、ただ団員達の事を考えての台詞だろうと考えたので、流石にこれは失礼だと思って言葉は出さない事にした。

 

「……で、話し合うってどうするんだよ」

 

「ほら、グランサイファーの1番下の部屋で、1個まだ使われてない部屋あるじゃん?」

 

「え、いやそんな部屋知らねぇけど……つうかまだ部屋余ってるのかよ、グランサイファー」

 

「まぁあるんだよ、そういう部屋が……で、まぁその部屋に出来れば1人ずつ団員呼んで、会話のスキンシップをしようかと。

実はあの部屋、いろんな場所に声届くような面白い仕組みになってるからね。そのまま……」

 

そこまで言って、グランは少し黙ってしまった。そして、ビィは一つ考えたことがあった。わざわざ船の通信管を使わなくても、音声と映像を届けるような設備自体は、この船にもあるのだからそれを使えばいいだろうと。

そして、その考えはグランもしていた。

 

「……うん、やっぱり設備使った方がいいよね?」

 

「まぁ、いいんじゃね?許可取れりゃあなんだっていいだろうし」

 

「うん、団員同士での繋がりはあると言ってもやっぱり、全員は無理だしね……というか知り合いが乗ってたことに長い間気づかないことあるし、グランサイファーって」

 

「ローアイン達が言ってたなぁ」

 

「……うん、ならラカムとかにも頼んで色々してみよう」

 

「まぁ、面白そうだしいいんじゃねぇか?」

 

グランは立ち上がって、やる気を見せていた。そしてその傍らでビィは他人事のように眺めていた。どこまでその企画は続くのだろうか、と。

 

「流石に全団員の部屋に映像を写す設備載せるのは難しいし、まぁみんなが集まりそうな場所でいっか」

 

「で?どうするんだ?」

 

「……団長相談室とかって名付けよう」

 

『オイラが言いたいのはそういう事じゃねぇんだけどな』という言葉は飲み込んだ。ビィは、グランの決めたことはなるべく彼自身に行ってもらえればいいと思っていた。

最悪、巻き込まれなければいいと……そう思っていた。

そして今、団長相談室という名のグランサイファー限定番組が始まろうとしているのであった。



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美少女錬金術師、こういうのが好きなのか?

「……というわけで、団長相談室第1回のゲストはカリオストロです」

 

「おい待て、いきなり部屋に連れてこられたかと思ったらなんだこれ」

 

「団長相談室」

 

「いやだからそれがなんなのかって話をだな……あぁていうか音楽うるせぇ!切れ!」

 

 グランサイファーの一室に、グランとカリオストロがそれぞれ椅子に座って対面していた。テーブルを挟んで対面しており、それぞれ喉が乾かないように飲み物まで置いてくれている親切設計である。

 先程まで音楽が流れていたが、カリオストロの一喝により音は無事に切られた。

 

「……で、何だこれ」

 

「いやぁ、グランサイファー内広すぎて一緒に乗ってたことに気づかなかった!みたいなあるあるがあるらしくてさ、それを解消するためにこうやって面と向かって軽く駄弁ろうかと思って」

 

「あぁ……まぁ確かにあるあるだな」

 

 グランの言うことに少し納得したカリオストロ。新しく来た団員を紹介するにしても、ここは色々と多すぎるのだ。団員それぞれの予定だったり広すぎて会えなかったり。

 

「というわけで、自己紹介をどうぞ」

 

「世界一の美少女錬金術師、カリオストロだよっ☆」

 

「はい、自己紹介どうもありがとう」

 

 スイッチのON/OFFが激しいのがカリオストロの特徴だが、もはやそれに慣れてしまったグラン。カリオストロを知っているグランサイファー団員も、カリオストロのそういう所に慣れてしまっている。

 

「それで、いい機会だからカリオストロに聞きたかった事があるんだけど」

 

「んー?何かなぁ、団長サン☆」

 

「錬金術って魂とかの説明があるけどさ、精神ってどうなるの?」

 

「……というと?」

 

「いや、カリオストロって元々男だったわけじゃん」

 

 一瞬カリオストロの後ろに彼女の所有している生物、ウロボロスが現れたがグランは見なかったことにした。

 

「元々男だったけど、今は美少女……カリオストロの魂はカリオストロ自身で構成されてるんだろうけどさ、精神的に見たら男女のどっちに精神が傾いてるのかなって」

 

「……そうだな、だったらこの場を借りてお勉強会……にはならないが、ちょっと説明といこうか」

 

 そう言って、カリオストロは置かれてあった紙とペンを手に持って絵と文書を書いていく。そして、その書かれた紙を映像に移すかのように見せる。

 

「まず、そもそも自分の性別ってのは、環境とかで意識が変わってくるもんだ」

 

「というと?」

 

「そうだな……例えば、男が女として育てられたり女が男として育てられたりした場合、一部を除いたら自分が育てられた性別だと、第二次性徴期まで、そうやって認識する。

 それが第1前提」

 

「第1前提」

 

「で、次に自分の肉体的な性別を認識する事で自分の性別を確固たるものにする、それが第2前提」

 

「……どういうこと?」

 

 カリオストロの説明に、グランは首を傾げる。カリオストロは紙を見せながら、口でさらに追加の説明をする。

 

「男と女の肉体的な特徴を言ってみろ。あぁ、第二次性徴期からの特徴な。種族別でも答えてもらおうか」

 

「うーん…女の人は胸が大きくなる、男の人は筋肉質になる…とか?

 ドラフとかだと男の人は滅茶苦茶でかいけど女の人は俺より身長は小さいよね」

 

「まぁそんな感じだ。で、お前は自分の性別がなんなのかわかるか?」

 

「え、男だけど」

 

「なんでそう思った?」

 

「そりゃあ……男についてるアレがあるし、自分の体も筋肉質だと思ってるから……あぁ、そういう事」

 

 納得したかのようにグランは手を叩く。カリオストロは椅子に深く腰掛けて、自慢げな顔になっていた。

 

「肉体的な性別ってのは、そういう事だ。でまぁ、その2つの前提から人間は自分や相手の性別が何なのかを無意識に想像し、理解する。さっきも言ったが、1部は除くぞ」

 

「……一部って?」

 

「簡単に言おうか、ファスティバみたいな奴だ。

 まぁあれはまた別の要因がある気もするが……ともかく見た目と中身の性別が違う奴もいるってのは、覚えておけ」

 

「うん、わかった」

 

 カリオストロの言うことに頭を縦に振るグラン。話がズレたためか、カリオストロは一旦咳き込んで元に戻すことにした。

 

「……とまぁ、寄り道はしちまったが要するにさっき言った2つの要因で、性別が認識される。肉体的なものは……ドラフ以外だと割と操作出来るからな、例えば男の割に華奢な体してる奴とかもいる訳だしな。」

 

「なるほど」

 

「で、だ。その理論を使うと俺様は何の性別に見える?」

 

「……初対面だったら女の子って思う」

 

「初対面じゃない今は?」

 

「……正直判定しづらい……あ、これが環境とかで意識が変わってくるって事?」

 

 先程と同じように、納得して手を叩くグラン。教える楽しみがあるのか、カリオストロは自慢げな顔を続行したままグランに説明をしていた。

 

「そういう事だ。俺様を知らない奴は、俺様を美少女だと思うだろう?けど俺様を知っているグランや他の奴らは、俺の事を見た目は美少女だと言うが中身で混乱する……って事だ」

 

「なるほど……で、カリオストロの性別は?」

 

「今は美少女って事にしとけ、というかしろ」

 

「はーい」

 

「精神性の話も似たようなもんだ、全く同じ人間でも成長過程で変わってくるんだから、精神ってのは明確にグループ分けできるもんじゃねえ。そこら辺は魂と似たようなもんだ」

 

 カリオストロはそう言って椅子に座り直す。先程までの自慢げな顔はどこへやら、一転して真面目な顔になっていた。

 

「……ん?ならカリオストロはカリオストロの事を━━━」

 

「美少女だと思ってるよ☆」

 

「だよね……ん?」

 

 ここで、グランはある一つの結論に達した。環境で変わってくるという話ならば、男だった時代よりも女だった時代の方が長いカリオストロは、その環境要因的に『女』ではないかと。

 成長過程で、ある程度精神が成熟するのは自分の肉体もまた大きくなって成熟するからである。だが、カリオストロは所謂負けず嫌いなところがあり、少々子供っぽい性格をしているともグランは思っていた。

 ならば、文字通りカリオストロの精神は今『美少女』なのではないか?という結論に達した。

 

「どうした?」

 

「………ん?いやなんでもないよ」

 

 そう返事するが、今グランの頭の中ではカリオストロの精神性の立証でいっぱいになっていた。

 カリオストロが美少女なのは内外ともに間違いがないだろう。しかし、彼女が生娘的な反応をするのか、メーテラのように男と遊ぶことに慣れている反応をするか……という疑問に立っていた。

 だが、プライドの高いカリオストロの事である。決して他の男達と遊んでいるような美少女では無いだろうと考えて、グランは生娘的な反応が帰ってくると考えていた。

 

「……お前、変なこと考えてねぇだろうな?」

 

 だが、実際どうなるかはわからない。それを確かめる為には女性が恥ずかしがるようなことをすれば、判明するのだろうとグランの思考は明後日の方向に飛び始めていた。

 

「……ねぇ、カリオストロ」

 

「な、なんだよ」

 

「ちょっとスカート捲ら━━━」

 

 瞬間、グランの床下が開いてグランは部屋から強制退出を食らう。その一瞬の出来事で、カリオストロは反応出来ずにグランが居なくなって困惑してしまっていた。

 

「……え、ちょ、おい……グラン?グラーン!?」

 

 因みにここはグランサイファー最下層部に位置する部屋である。つまり、ここから真下に落ちたということは、グランはそのまま外に投げ飛ばされてしまっていることになる。

 

「うわっ!?マジで空に投げ出されてるじゃねぇか!!い、今助けて━━━」

 

「その必要はありません」

 

「うぉ!?り、リーシャかよ……というかグランが落ちたんだが!?」

 

「安心してください、下に独立飛行が可能なメンバーを配置していたので無事です」

 

「あぁそうだったのかそりゃよかっ……おい待て、つまりお前が落としたのか?」

 

 本を構えながら、カリオストロは構える。目を離した隙に、空いた床は自動で勝手に閉まっているのだが、それを気にしている余裕はなかった。

 

「私……ではありますね。この番組を企画した際に、密かに団長さんが位置する場所を自動で開閉する様に改造したんです。勿論手伝いもありましたが」

 

「な、何の為にそんなことを……」

 

「今のように団員にセクハラ行為、または発言等を行った場合にあぁやって団長さんに罰を与えることにしています。」

 

「そ、そうか……」

 

 別にグランだったら構わない……と考えているカリオストロだったが、それは口に出さない。自分の方が強いはずなのに、今はリーシャに勝てる気が何故かしないからである。今下手なことを言えば、何をされるか分かったものでは無い。

 

「でもあいつ、何だかんだああいう自分に起こるハプニングは、番組的に美味しいとか思ってそうだが」

 

「……それはそれで困りますね、他の女性団員にセクハラしては駄目なんです」

 

『他の』という言葉で引っ掛かりを覚えたカリオストロだったが、それはもうある意味いつもの事なので華麗にスルー。グランがいなくなっているので、既にもうこの部屋に用はないのでそのまま帰ろうとした……時である。

 

「あぁ、今回の初回の感想は艇のメンバーに自由記入のアンケートで出す人だけ出していますので、カリオストロさんの部屋に送らせていただきますね」

 

「おう」

 

 感想は『カリオストロまじ美少女』みたいな意見か自分が今以上に美少女になる意見以外求めていないが、まぁ後で拝見させてもらおうと思ったカリオストロであった。

 後今から個人的な理由で、密かにグランの部屋に行こうとも思っているのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……感想ってこれか」

 

 後日、カリオストロは受け取ったアンケートを手に取っていた。かなりの団員がいたが、そのほとんどが書いていたようでまるで辞書のようになっていた。

 

「……まぁどれもこれも差し当たりない意見ばっかりだな…ん?」

 

 全員が差し当たりのない変わらない意見の中、カリオストロは1枚のアンケート用紙に目をつけた。

 紙は無記名なので、本来は誰が書いたのかわからないはずなのだが、それだけは誰が書いたのか一目瞭然だった。

 

『師匠、結局グランにスカート捲らせたの?』

 

「……クラリスか。あいつ無記名アンケートに何質問書いてんだ…うわ、このアンケート質問ありな上に、されたら返さねぇといけねぇのかよ……」

 

 カリオストロは正直どう書くか迷ったしなんなら面倒だと思ったが、それでも何と回答したものかと悩んでた。そして、1つの答えに達した。

 

「『既に風呂も一緒に入った仲だから問題は無いよ☆』で良いだろ、嘘だけど」

 

 そこまでの仲にはなっていないのが、悲しい現実である。だが、何となく弟子に先を越されるというのは、嫌だったので嘘でも既成事実として広めておいてやろうと、カリオストロはそういう結論になったのであった。

 

「……で、これどうすれば…あぁ扉のポストに入れときゃ勝手に回収してくれんのか」

 

 便利なものだと適当に考えながら、自分の部屋のポストにカリオストロはアンケートで質問があった用紙全てに返事をして、それらを全てポストに入れた。

 

「さて……今日もグランのとこ行くか」

 

 そして、そのままグランの部屋に向かうカリオストロなのであった。因みに、あの後カリオストロがグランに落ちた感想を聞くと『なんかすごい気持ちよかった』と答えているのであった。




特にシリアスも何も無い1話です。
内には土カリオストロはいませんが、闇オストロとハロオストロがいるので書きました。
内のグラン君は無意識でセクハラしようとします。リーシャは若干るっ!化してます。でも団長さん大好きです。


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灼脚の麗姫、あたし着いていけてる?

「第2回団長相談室、ゲストはアリーザさんです」

 

「どうもー!!アリーザです!!誰かあたしと勝負してみない!?」

 

「はい騎空艇で暴れないでね、この団で暴れるメンバーみんな強すぎて、船が本当に壊れちゃうから」

 

 第2回団長相談室、部屋に招かれたアリーザは元気よく大声で自己紹介していた。それを、グランは冷静に流していた。第1回の時と同じく、BGMが流れているが、アリーザはそれを気にしない。

 

「で、前の時に思ったんだけどいい?」

 

「え、何?」

 

「これってさ、団長相談室って名前だけど団長『に』相談するんじゃなくて、団長『が』相談するってこと?」

 

「よく気づいたな正解だ。特に何もやれないけど」

 

 アリーザは元気よく話しているが、グランは淡々と進めていた。相も変わらずBGMは鳴り止まずに流れていた。

 

「ていうかこの音楽何?」

 

「なんか、『無茶振りしても許されるBGM』らしい。魔法的なものはなくて、ただそう言われてるだけだが」

 

「それ多分BGMじゃなくて、人の問題だと思うな」

 

 椅子に座って、置いてある飲み物を直ぐに飲み干してアリーザは元気に座り直す。グランは、相変わらずアリーザから視線を外さずに淡々としていた。

 

「で、呼ばれたってことはあたしに何か聞きたいことがあるって事?」

 

「うん、いやというか多分さ……アリーザと組んだ人達から男女問わずに来ている質問なんだけどさ」

 

「うん」

 

「なんでパンツ隠さないの?」

 

 グランの淡々とした質問、だが先程まで活発になっていたアリーザまでもが沈黙してしまう。いや、沈黙というよりはいきなりの質問で思考が追いついていないという方が適切である。

 

「……パンツ?」

 

「パンツ」

 

「……あ、蹴る時?」

 

「蹴る時」

 

 短い単語で会話をする2人、しかしアリーザは今のやりとりで納得したのか安堵の息を漏らしていた。

 

「あぁ、あたし下に履いてるのアレパンツじゃ……あぁいや下着じゃないよ」

 

「え、そうなの?でも服の下に履いてるじゃん」

 

「スパッツみたいなものだよ、本当に見せちゃあいけない下着が見えてたら大変だよ〜」

 

「あぁ確かにそうだもんな、下着なんて見えてたらやばいもんな」

 

 下着みたいな格好している団員もいるし、なんなら下着付けてますか?と聞きたくなるような格好の団員もいるので、見える見えない以前の問題なのだが。

 

「というか前回は第1回だったからな、第2回ということもあってかいろんな団員のいろんな質問を受け取っている」

 

「どゆこと?」

 

「まぁ、要するにアリーザ宛に質問が来ているって話だ。」

 

「へー、どんな質問が多いの?」

 

 グランが取り出した小さなダンボール箱。その中には束になっている紙がいくつも入っており、グランは無作為にその中から1つを取り出して読み上げていく。

 

「んー……じゃあ1つ目『そんなに活発に動き回って胸痛くならないの?』」

 

「え……あぁいや、ちゃんと胸固定出来るものは付けてあるよ?というか誰、これ質問したの」

 

「名前を知られたくない時は仮名か無記名だが……あ、これソーンって書いてある」

 

「ソーンさん……」

 

 同性だから気になっていたのか、ソーンからの質問に俯くアリーザ。ドラフ族特有の体型は、他の種族の者達も気になっているようだ。

 

「えー、じゃあ2つ目……『パンツが気にならない蹴りの仕方を教えてほしい』これシルヴァだね」

 

「うーん、さっきも言ったけど、これ本当のパンツ見せないようにするためだしなー

 予定が合ったら今度一緒にそういうの買いに行こうね〜」

 

「えー、まぁとりあえずこれで一旦最後にしてみよう。『どうやったらそんな風に大きくなれるのでありますか!?』……ってシャルロッテ騎士団長さんが悩んでますけど」

 

「いや、種族的な体型はもうどうしようもないんじゃないかなぁ……」

 

 シャルロッテからの質問に、アリーザはゲンナリしながら答えていく。そして、完全に突っ伏しながら顔だけを上げてグランの方に視線を向ける。

 

「うーん…身長が小さいから、胸が大きいのって案外結構しんどいんだよ?」

 

「それ、他のドラフ以外の女性の前で言ってみな。多分すごい目で見られると思うから」

 

「そういうものかな?」

 

「他の種族、ってのは分かってるだろうけどそれでも羨ましくはなるもんだろ?俺だって、ドラフ男性の身長の大きさとか筋肉の付き方とか、結構羨ましいと思ってるしさ」

 

 グランの言葉に、アリーザは少々納得していないようだが、ドラフ男性の体格のことを出されて思う部分があったのか、どうやら概ね納得してくれたようだ。

 

「まぁ、そういうものなんだって言うのは理解出来たかも」

 

「理解出来たならよろしい」

 

「……そう言えば、今回は落とされないんだね?」

 

「あ、パンツの話の時に?」

 

「うん」

 

 自分が質問されることはあまり考えてなかったのか、グランは意外そうな顔になっていた。

 アリーザも、そこが気になっているのか姿勢を直してグランの事をじっと見ていた。

 

「いや、あれリーシャも気になってた話題だったんだよね」

 

「あ、そうだったんだ……にしても皆気になるなら聞けばいいのにね」

 

「え」

 

「え」

 

 驚いた声を上げるグランに対して、アリーザも意外そうな声で返していた。そして今そこでなんで驚くのか、と言わんばかりの表情をグランに向けていた。

 

「いや、お前さすがにそれはないわ」

 

「え、なんで?」

 

「え、じゃあ逆にスタンがアリーザ以外に『今日何色のパンツ履いてますか?』とか聞いていいの?」

 

「そんなのいい訳ないじゃん」

 

「そういう事だぞ?」

 

「ん?……あ、もしかして普通にセクハラ?」

 

 全くその可能性に行き着いていなかったのか、アリーザは意外そうな顔でそう答えていた。

 グランは少しだけ呆れていたが、しかしそこがまたアリーザらしいと言えばアリーザらしいので、あまり強く言わない方がいいとそれ以上のツッコミは控えた。

 

「逆になんでお前セクハラになんないと思ってたの?」

 

「いやぁ、いつも見せてるものに対して聞かれることがセクハラになるとは……」

 

「アリーザからしてみればいつも見せてるものだろうけど、他の人達から見たらパンツ見えてるよ、って言うに言えない状況だからな」

 

「え、なんで?」

 

「パンツ見えてるって意外と言えないもんだよ、異性には」

 

「男って不憫だね」

 

「単純に性別の問題だから男どうこうって話じゃないけどな、隣の芝生は青いって奴だ……使い方違うなこれ」

 

 自分で言ってから悩むグラン。その様子を眺めながら、お代わりしたジュースをアリーザは飲み干していた。

 

「……そう言えば、ドラフ族って寝る時どうしてんの?」

 

「寝る時?」

 

「いや、角があるから横向きになれないじゃん?かと言って男はともかく女性はうつ伏せもキツそうだし」

 

「あー、やっぱりそう思うんだ」

 

 明るく微笑みながら、アリーザは深く座り直す。そして自分の角を指さしながら答え始める。

 

「まぁほとんとその通りなんだよね。確かに、うつ伏せなんて出来るのはほんとに小さい時だけだよ」

 

「ヤイアですらあれだからな……ドラフ女性って成熟しやすいのか?」

 

「そうなんじゃない?他の人の意見も聞いてみないとわからないけどさ、ハーヴィン族よりは大きいとはいえ、ヒューマンの10代前半くらいの身長しかないから肉体的にはかなり早く早熟するんだろうね」

 

 ヤイアの例もあるので、早熟しやすいと言われればそういう物なのだろうと納得はできる。

 グランはこの団にいる色々な女性ドラフの事を思い出しながら、うんうんと頷いていた。

 

「あ、話題戻していい?」

 

「え、何?」

 

「胸固定出来る下着って割と頑丈なやつ?」

 

 何故か下着のことを聞き始めるグランに、アリーザは目を点にした。もしかしてそういう趣味があるのか?と思ってしまうほどに頭が混乱していた。

 

「え、何でそんなの聞くの?グランも付けるの?」

 

「なんで俺がつけるんだよ……そうじゃなくて、この間依頼に行った時にソフィアとシルヴァの下着が壊れたって話してたからさ、できれば教えてあげて欲しいなって」

 

「それくらいならいいけど、ちょっとビックリしちゃった」

 

「オーダーメイドじゃない限りは、出来る限りいいお店は紹介しあった方がいいしな

 強制はしないけど」

 

 グランのその言葉に、3杯目のジュースを飲み干したカップを置きながら、アリーザは少し疑問を持った風でグランに喋り始める。

 

「グランってさ、その辺ドライだよね〜

 まぁみんな好きに出来てるのはそれが理由なんだろうけどさ」

 

「まぁなかよしこよしを押し付けたらダメだと思うしさ。これだけ大きな団になってくると、全員が全員手を繋いでお店に行こう……なんて出来るとは思ってないよ

 皆違って皆いいって奴」

 

「ふーん……まぁ、いろんな人乗ってるから価値観の違いすごいよねここ」

 

「王族から村人まで、老人から子供まで……色んな人がいるな、確かに」

 

 色々な団員を思い出していきながら、グランはこの団の多種多様性を改めて思い知っていた。自分が団長ということも忘れて。

 

「価値観が違うから、他種族間の恋愛とかの話も聞く時あるからね〜」

 

「1番の例がお前達だけどな」

 

「あ、そういえばさっきの体型の話に戻るんだけどさ」

 

「お前が戻すのか……」

 

 急に話を戻すアリーザ。苦笑いしながらも、グランは話を聞くことにする。すると突然、アリーザは自分の胸を両手で持ち上げ始める。

 

「ドラフの女性ってみんなこんな胸大きいけど、他の種族から見てどう見えてるの?」

 

「どう、見えてる、とは?」

 

 グランは、ポヨンポヨン弾んでいる胸を見ながらアリーザの問いに問いで返していた。というか、話を聞いていられるほど冷静になれていない。

 

「だってさ、ドラフ男性ってこの胸に余り興味が湧いてないんだよね」

 

「何だと!?」

 

「ど、どっちかというと控えめな方が興奮する?とかなんとか」

 

「お前それどこで知った」

 

「この騎空団に入る前まで、お見合いが多かったけど……その時にいた人の1人かな」

 

 グランはつい立ち上がって大声を出してしまったが、アリーザの言葉を聞いて席に着く。そして、少し思考し始める。

 興奮する、というのは自分とは違う部分……もしくは間違いを犯すということを意識することで初めて興奮材料たり得るのだ。つまり、エルーンはもしかしたら着込んでる人が好みなのかもしれないし、ハーヴィンは大きい人が好きなのが多いのかもしれない。あくまでグランの予想であるが。

 

「……そうか、なるほど…ドラフ男性ならまぁ分からなくもない。見慣れたものには興奮しないからな…」

 

「そういうもの?」

 

「そういうもの……だと思う」

 

「ふーん……」

 

 アリーザは素っ気なく返事をする。『そういうもの』だと言われれば確かにその通りなのかもしれない。自分と同じ所に惹かれるのは、ナルシストみたいでどうにも落ち着かない感じがしたからだ。

 そして、グランは何を思ったのかアリーザの胸を凝視しながらすごく真面目な顔つきで、喋り始める。

 

「というわけでアリーザ、俺がちゃんと興奮できるかどうか確かめる為に胸をm━━━」

 

 そこまで喋ったところで、グランの姿が急速に下に動く。セクハラを働き掛けていたので、別室にいるリーシャがスイッチを押したのだ。

 アリーザは一瞬驚いたが、テーブル越しにグランが落ちた穴を見て苦笑いをする。

 

「うわぁ、本当にこれ空に投げ出されるじゃん……」

 

 今回はリーシャは現れないようで、しばらく待っていても現れなかった。仕方なく、最後にお代わりで入れたジュースを飲んでカップを置いてから、アリーザは部屋から出ていくのであった。

 

「……あれ?そう言えばポットも何も無かったけど……あのジュース、誰がお代わり入れてたんだろ……他に、誰もいなかったよね……?」

 

 ……少し、考えて怖くなったのでアリーザはそのことに関しては特に何も考えないでおこう……と、思ったのであった。




見せパンって下にパンツ履かないらしいですね。でもアリーザは履いてることにしました。


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絢爛の紡ぎ手、フレキシブルにいけるかしら?

「ハッピーエンド以外認めない、コルワよ。服のデザインのことなら私に任せて頂戴」

 

「……はい、というわけで先行されましたが、コルワさんです。服の修理とかのことならほんとにすごいからこの人。でも、ちゃんとお金は払おうな」

 

「別に団内料金でもいいのよ?」

 

「嫌ダメだから……特別扱いだめ、絶対」

 

 グランは渋い顔をしながら、両腕で×印を作る。コルワは頭の耳を動かしながら、クスリと微笑んでいた。

 

「……で、コルワ的に俺ってハッピーエンド出来そう?」

 

「未来予知なんて出来ないわよ?」

 

「あぁいや、そうじゃなくて……何かあるじゃんほら、『この人結婚できなさそうだなぁ』とかそう言うの 。主観でいいから教えてくれない?」

 

「なら……」

 

 そう言ってコルワは考え込み始める。グランは何だかんだ言っても団の皆に慕われている。友情、愛情……そして劣━━━

 

「いやいやいやいやいやいやいやいや!」

 

「うわっ!?どしたの……そんなに俺ダメ?」

 

「へ!?あ、えっと……ちょ、ちょっと妄想がすぎただけよ」

 

 笑って誤魔化すコルワだが、いやらしい妄想をしたために、赤面している事までは隠せない。無論、自分とグランでした妄想である。

 しかし、殆どの女性団員が彼のことを慕っている。愛の文字がつき、恋で慕っている。

 

「周りが認めれば凄く大きくて多いハッピーエンド、認められなかったら……戦争ね」

 

「え、何それ怖いんだけど……因みにコルワは認める派?」

 

「……ハッピーエンドに迎えるから認め……あぁでも……」

 

 悩み始めるコルワ。この話題を軽く振ったはいいものの、どうやらコルワにとってかなり集中しなければならない事案らしい。とりあえずこのままではただの思考映像なので、話を変えることにした。

 

「コルワ、とりあえずコルワに対していっぱい質問来てるから何枚か読んでいい?」

 

「あ、いいわよ?」

 

「ん、じゃあまずは……『お仕事で困った事ありますか、誰かに手伝いを頼んだ時はありますか』……無記名だから誰か分からないな」

 

 その質問に対して、コルワは考え込んでいた。自分の記憶を辿っているのだろう。どうやら、無いことは無いらしい。

 

「そうね、何かの絵を服に描いてくれ…って言われた時はどうしようかと思ったわね。

 だから基本、私はそういった仕事は前までパスしてたわ」

 

「絵描けないの?」

 

「そういうわけじゃないのだけれど……ほら、私の性格がね?」

 

「あ、本気でやりたいからこそ断ってたんだ……って、前まで?」

 

 今はそうではないのか、とグランは問いただす。コルワ少し考えた後に、唇の前に人差し指1本を立てて『秘密』という合図を送る。

 

「確かに、この団に入ってからそういった仕事はしているわ。けれど相手から『名前を出さないで欲しい』って言われちゃってるのよね。あ、仕事内容を話すのもダメって言われてるから、言わないわよ?」

 

「なら聞かない。嫌な事を聞かれるのは、誰だって嫌だしね。当たり前の話だけどさ」

 

「そうそう、当たり前当たり前」

 

「というわけで次の質問は〜……」

 

 ガサゴソとダンボール箱の中身を弄りながら、グランは無作為に一枚を取り出す。そして、手に取ったそれを読上げていく。

 

「えーっと……『この団内で気になる人はいたり?』これは…ヘルナル……」

 

「気になる人、って言うと……」

 

「ん?俺?」

 

「……そうじゃ、ないわよ!!」

 

 一瞬ぽかんとしたコルワだったが、直ぐにまた顔を真っ赤にする。なぜ真っ赤になるのかわからないグランは、首を傾げていた。そして、コルワは思い出したように喋り始める。

 

「あ、そうそう!あの子達よヴィーラちゃん達!」

 

「達…って言うとカタリナも?」

 

「それに、ローアインとファラちゃんもよ」

 

 意外な人選だと、グランは軽く驚いていた。コルワはそのまま気になる理由を語り始めていく。

 

「あの子達って恋の三角形どころか、四角形じゃない?どういったハッピーエンドに転がるか、気になってしょうがないわ」

 

 その四角形が血で血を洗っている以上、単なるハッピーエンドで終わるわけがない…とグランは思ったが、楽しそうに語っているコルワを見て追求をやめた。

 

「ローアインといえば……彼ら、貴方のこと滅茶苦茶慕ってるわよね」

 

「カタリナ目当てで入ってきたと思ってたんだけど……いや、いつの間にかかなり尊敬されてたんだよね。飯も美味いし性格もいいから、結構慕われてるのが素直に嬉しかったり」

 

「慕われる、って言うのはいい団長の証拠よ」

 

「ありがと、じゃあ次のお便り……とりあえずこれで……『種族ごとでやっぱり服の作り方って変えてますか?』、匿名希望です」

 

 質問の言葉に、苦笑いを浮かべるコルワ。やっぱり来てしまったかと言わんばかりの表情である。

 

「どしたの、その顔」

 

「うーん、確かに種族ごとで服が違うのは当たり前なのよねぇ……」

 

「やっぱりそういうものなの?」

 

「そういう物よ〜」

 

 そう言いながら、近くにあった紙にスラスラと何かを書き込んでいくコルワ。どうやら、各種族が好んで着る服の特徴を書いていってるようだ。

 

「例えば私達エルーンだと、背中や脇が空いているでしょう?」

 

「そうだね、凄く気になる」

 

「それと同じで、ハーヴィンは小さな服が好まれるのよ。場合によっては、1番作るのが難しいとも思っているわ」

 

「そりゃあ一体どうして?」

 

 純粋に質問するグラン。コルワは先程書いた紙の裏に、今度はある一つの服のデザインを書き込んでいた。ヒューマンが着るような服である。

 

「例えばこの服ひとつ取っても、4種族分で作るとなるとかなりデザインがここから変わってくるわ」

 

「ハーヴィンはそのままのデザインで、寸法を小さくしてもバランスが変わらないように……エルーンは脇や背中を空けるように……ドラフは?」

 

「ハーヴィンとは逆、大きくしないといけないの。女性だった場合、胸囲の方で服がきつくなる可能性もあるわけだし」

 

「男性だと身長2m超えてるのばかりだから……確かに大きめに作らないとダメだね」

 

「そ、ドラフは問題ないのだけれどハーヴィンの場合、デザインを小さくするからデザインがおかしくなる時があるのよ」

 

「それだったら大きくするドラフも同じなんじゃ…?」

 

 グランは詳しくないためか、申し訳なさそうに疑問を呈する。コルワは少し考え込んでから、いい例えが思いついたのか指を鳴らした。そして、笑顔でグランに向き直っていた。

 

「例えば、この服には色々な花が描かれたデザインにして欲しいって頼まれたとするじゃない?」

 

「うん」

 

「大きく見せる場合は、花を追加したり描く花を大きく描いたりすることも出来るけど……」

 

「あ、小さくすると極論花が小さすぎて描けないとか?」

 

「そんな所よ、花は花びらだけの存在じゃない。ちゃんと花と認識できるパーツが見えないと、それは花にならないのよ」

 

 なるほど、と頷きながらグランは納得していた。それに満足したのか、コルワはどこか楽しげな表情を浮かべていた。

 

「……そう言えば、これも前気になってたことなんだけどいい?」

 

「何かしら?」

 

「エルーンって背中と脇丸出しの人多いけど女性って下着つけてるの?あれ」

 

「エルーンはエルーン専用の下着があるのよ」

 

「そんなのあるんだ……まぁ、女性下着専門店なんて入ったことないし、見たことないのもあたりまえか…」

 

 顎に指を当てて考え込むグラン。ザンクティンゼルでも、ちゃんと女性自体の下着はあった。所謂ご近所付き合いで、干してあるのを見かける程度であり、別にそれを見て思春期の劣情が暴走したとかそういうのはないが、それを基準で考えてしまっているためにエルーンの下着がどうなっているか気になっているのだ。

 

「背中空いてるけど、どうやって付けてんの…?」

 

「エルーンってね、ショーツとブラが1つになってるのよ、背中で固定する代わりに、二の腕やショーツと繋がって胸を固定してる感じね。

 勿論、ちゃんと背中でくっつけるタイプもあるから、そっちを選んでいる人も多いわ」

 

「そんな感じなんだ……」

 

「いざと言う時、知っておかないと困るわよ?」

 

 いつもの流れで言ってしまったコルワだったが、後から言ったことを少し後悔していた。これではまるで、エルーンと付き合うことが前提の言葉ではないかと顔を真っ赤にした。

 しかし、グランの返答はどこかズレた回答となっていた。

 

「え、女性用下着をつける機会なんて結構無いよ?」

 

 無論、誰かと付き合うからみたいな解答が返ってくるとはコルワも考えていなかった。しかし、グランの言い方はまるでどこかで下着をつけたことがあるかのような言い方になっていた。

 

「……今のは、聞かなかった事にしてあげるわ」

 

「……?」

 

 コルワの態度にグランは首を傾げたが、直ぐに何かを思いついたかのように、座り直した後にコルワに真剣な表情を向ける。

 

「ねぇコルワ、気になるから見せてくれない?」

 

「へ?何を?」

 

「エルーンの下着」

 

「見、見たいの?」

 

「うん、というかほんとに形だけ結構気に━━━」

 

 瞬間、グランの体が真下に向かって消えていく……と思われたが、グランは両腕を広げて何とか自分が落ちようとするのを回避していた。つまり、空いた床に対して両腕を広げることで、つっかえ棒のような状態にしているのだ。

 

「さ、流石に三回目ともなったら慣れてくるに決まってんでしょうが!!」

 

「……そ、そんなに見たいの?」

 

 コルワはしゃがみ、テーブルを挟んだ向こう側のグランに対して話しかける。正直、見せるくらいならどうって事ないと思ってはいるのだ。しかし、グラン相手となるとコルワはまともに思考が働かない状態になっているのだ。

 

「気、気になるんだよ!だからその上の服を一旦脱い━━━」

 

 しかし、つっかえ棒にされることくらいは予想済みだったのか、グランが乗せている腕の部分だけが更に開いて、やはりと言うかなんというかグランは空に向かって落とされるのであった。

 

「あ……やっぱり落ちちゃったのね…」

 

 少し残念そうにしているコルワだったが、下の方でアンチラがグランに抱きつきながらも救出してるところを見て、少し羨ましいと思ったり少し嫉妬しちゃったり。

 

「……まぁ、後で形だけなら見せてあげましょうか…」

 

「駄目ですからね?」

 

「うわぁあ!?い、いつから居たのよ……」

 

 突然聞こえてきたかと思えば、背後にはいつの間にやらリーシャが立っていた。幾らそちらに注意を向けていなかったからと言っても、ドアの音すら立てないで入ってきたことは恐怖でしかない。

 

「団内の風紀を乱すことは許しません。例え、下着を見せるだけであってもその下着を着ている状態を見せることは、団内最悪の事態を巻き起こすことになります」

 

「……最悪の事態?」

 

「最終的に、団内には団長さんの子供だらけになります……母親は皆別で」

 

「あのね、リーシャちゃん。流石にそれは飛躍しすぎよ?服を作ったら失血死した、ってレベルで明後日の方向にぶっ飛んでるわよ?」

 

 コルワは、リーシャがこんな思考が明後日の方向にいってる少女だっただろうか?と思ってしまった。もっとまともなタイプだと思っていたが、団長が絡むとどこかおかしくなるようだった。

 

「まぁ……団長さんモテるものね」

 

「……はい」

 

 コルワが苦笑しながらリーシャの頭を撫でる。それで少し落ち着いたのか、リーシャは落ち込みながら素直に撫でられていた。

 

「じゃあ、私部屋に戻るわ」

 

「あ、はい……あ、質問とかの回答お願いしますね」

 

「えぇ、分かってるわよ〜」

 

 そう言って、コルワは部屋から出ていく。そしてその後リーシャは空いた床を元に戻していくのであった。

 因みに、落ちるのが3回目ともなって慣れたのか、グランは落ちることに対してあまり驚かなくなっていたし、落ち方も考えておこうとか思うようになっているのであった。




という訳でコルワさん回です。全員呼び捨てかそれとも何人かは敬語にするかは目下考え中です。


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神託の妖童、共に歩めるのかい?

「はい、というわけで今回はアルルメイヤさんです」

 

「よろしく」

 

「椅子の高さあってる?」

 

「心配しなくとも、水晶の上に乗ってるから」

 

「あぁ、あのでかいヤツね」

 

 最初から軽い会話をしながら、グランとアルルメイヤは会話を行っていく。アルルメイヤはハーヴィンなので、椅子の高さがほかの種族と比べて合うかどうかが分からなかったからだ。

 

「アルルメイヤってさ、未来予知出来るんだよね」

 

「まぁね、私はあまり行おうとは思わないが」

 

「水晶で見るんだよね」

 

「……?あぁ、と言っても見えるのは私だけで他の人には見えないよ?」

 

「その角は?」

 

 グランの質問により、アルルメイヤは沈黙する。未来を見るのに、水晶を透して見るのならば、一体頭につけてる角のような飾りは一体何なのか。グランは前からそれだけが気になっていたのだ。

 

「……ほら、雰囲気でるだろう?」

 

「え、ほんとにそんな理由?」

 

「冗談だ。オシャレだよオシャレ」

 

「そっちの方がいいよ、いや俺の個人的な考えだけどさ」

 

 少しだけ安堵したかのような息を出しながら、グランは椅子に座り直す。そしていつもの如く質問箱をいじって中から無作為にお便りを取り出す。

 

「というわけで急ですが、質問コーナーです」

 

「どんどん来たまえ」

 

「『私、結婚できそうか?』ってイルザさん……何故こんな……」

 

「悪いが、私は個人のための未来予知はしないんだ。だから、自分で掴み取ってくれという他ない」

 

 苦笑をしているグランに変わって、アルルメイヤは淡々と進めていく。無論、妖艶な微笑はちゃんと出してはいるのだが。

 

「はい次『この前グランの部屋に入ってきましたが、何か用事でもあったのですか?あんな真夜中に』……これ、ヘルエスだけど…」

 

 ヘルエスからの質問。無作為に取り出したので、全く何かを意識した訳でもない。あまりの不意打ちの質問にグランとアルルメイヤ、両名珍しく焦って訂正をし始める。

 

「待ってくれ……ヘルエス、君は何か勘違いをしている。確かに真夜中に入っていったことは確かだが、あれは本当に用事があったんだ……」

 

「そうそう、アルルメイヤはうちの団のハーヴィングループリーダーその1だからね。偶にそうやって報告させてもらってるんだよ、うん。もう次行こう次」

 

 後でヘルエスに弁明するとして、グランは次のお便りを取り出す。先程みたいな質問は、なるべく引き当てたくないところではあるのだ。

 

「お、これは……『未来予知してみようかな、と思った個人っていますか?』……匿名希望か」

 

「まぁ、個人に対しての未来予知をしようとは思っていないが……敢えて言うなら、自分だろうか」

 

「自分?つまりアルルメイヤ自身って事?」

 

「あぁ……自分に降りかかる厄災、と言うよりかは自分のこれからを見てみようと思ったことは、今でもあるね」

 

「へー、どういうこと見たいと思ったの?」

 

 アルルメイヤは少し考えながら、カメラの方に目線を一瞬だけ移す。無論、すぐに戻したがグランにはバッチリと気づかれてしまっている。

 

「……いや、ここでは言わないでおこう。というか、言えるようなものでもないからね」

 

「そっか、ならいいや」

 

「いつもは三通だが……テンポが早いせいで凄く早く終わったように思えるな」

 

「まぁ、ほんとにテキパキ進んでいったからね……アルルメイヤに聞きたいことって、実はあんまり無かったりするし」

 

「私は眼中に無いかい?」

 

「そういう言い方は反則だよ。アルルメイヤで気になることを聞いたら、大体すぐに教えてくれたり、気になってることを察して教えてくれるじゃん?だからだよ」

 

 手で静止のようなポーズをして、アルルメイヤを少し叱るグラン。それが彼女にとって何か気に入る要素があったのか、彼女は微笑んでいるだけだった。

 

「そう言ってくれるだけでも嬉しいよ……あぁそうだ、君に少しだけ聞きたいことがあるんだ」

 

「お、逆パターン……何何、どんどん聞いてって」

 

「ハーヴィンの女性は恋愛対象かい?」

 

「……えらくストレートに聞いてくるね。ハーヴィンの女性かぁ……」

 

 ウンウンと考え始めるグラン。アルルメイヤはその様子をじっと見つめていた。

 

「……うーん、そもそも好きになった女性が自分のタイプだと思ってるんだよね。だから、ハーヴィンだとかドラフだとかエルーンだとか……そういうのはあんまり意識してないかも」

 

「そうか、ある意味安心したよ」

 

「ていうか、今の質問って……」

 

「いや何、君はなにぶん女性に好意を持たれやすいからね。ハーヴィンの女性から告白される時もあると思った迄さ」

 

「なるほど……まぁ俺がモテるかどうかはともかくとして、まぁそう言ったことも限りなく低いけどありそうな……」

 

 微笑んだまま、アルルメイヤはじっとグランを見つめていた。そして内心、グランは自分の事に関してはとことん自己評価が低いと確信していた。

 

「君はもう少し自分に自信を持ったらどうだい?」

 

「とは言っても……みんな、俺の実力とか人柄を認めてくれてるけど……それが恋愛的な意味での好意に繋がるかは別じゃない?」

 

「めんどくさいね、君」

 

「はっきり言われた……」

 

「まぁ、この場合示さない方も悪いといえば悪いだろうけど……ところで、最近異性とどんな過ごし方をしていたんだい?」

 

  「異性?うーんと、ちょっと待ってここ一週間の記憶辿るから……」

 

 そう言って、グランは再び考え始める。団長が相談室する場所だったはずなのだが、どうやら今回に限っては立場が逆転していると2人ともうっすらと考えていた。

 

「1週間前は?」

 

「えーっと……ゼタと出かけて、服一緒に見に行ったりした。その後にベアトリクスと一緒に団の子供達用のケーキを作って、その後にイルザさんと2人でカフェに行った……かな」

 

「六日前」

 

「早朝にヴァジラとお散歩して、朝にマキラと一緒に機械のパーツを買いに。昼にはアンチラと一緒にお昼寝……で、夜にアニラの持ってる羊のぬいぐるみの洗濯が終わったから、部屋に行って渡してきたついでにいくらか話した」

 

「五日前」

 

「朝から夕方までユエルとソシエと一緒に出かけてた」

 

「四日前」

 

「依頼を受けてたから、フィーナとカルバ、それにマリーと一緒に出かけたかなぁ…やたら変なトラップが多い場所でさぁ、皆でやたら水被ったりしてた」

 

「……三日前」

 

「ヴィーラとファラが料理対決してたから、審査員やってた」

 

「一昨日」

 

「ベルセルクのジョブで、ナルメアとフォルテと3人で稽古してて……その後に街の武器屋とかに寄ってた」

 

「昨日」

 

「一日中クラリスとカリオストロと一緒に勉強してた、錬金術の」

 

 ここ一週間の予定を聞いても、アルルメイヤは微笑みを崩さない。だが、その内心は羨望と嫉妬が少しだけあった。無論、その対象はグラン相手ではなく彼らと過ごした女性達に対して、なのだが。

 

「……最近私に構ってくれていないね」

 

「じゃあ、明日1日アルルメイヤに付き合うよ?」

 

「……本当かい?」

 

「うん」

 

「言質は取った、ならば明日は……いや、日付が変わった瞬間から私に付き合ってもらうよ」

 

「随分ときっちりしてる事で……まぁ、別にいいけどね」

 

 やけに嬉しそうなアルルメイヤを見て、グランもまた嬉しくなっていた。が、直ぐにその気持ちは消えていた。何故ならば、リーシャがドアの隙間から凄まじい眼光を飛ばしていたからだ。

 

「……」

 

「グラン?」

 

「い、いやなんでもないよ……」

 

 風紀が乱れている、と言われてしまえばそれだけで済むのだが、どうにもそれだけじゃないような気がしているのだ。しかしその原因が詳しくわからない以上、グランもあのリーシャを無視する他ないのだ。

 

「……?」

 

「そ!それより、さ……アルルメイヤって偶に未来予知してくれるよね

 どう言ったことなら個人のための未来予知をしてくれるの?」

 

「基本的にその人物に危険が訪れる場合だね。例えば、君が今から吹き飛ばされる未来を見た場合、私は吹き飛ばされないように君の立ち位置を変える……なんてことも出来る」

 

「因みに今の俺が吹き飛ばされる、って言うのは?」

 

「無論、ただの例え話さ」

 

「ならよかった」

 

 落ちるのでは無く、吹き飛ばされるという状況とその光景がわからない以上、グランは吹き飛ばされるのならば安心は出来ないと考えていた。普通、落ちることも不安に感じるものなのだが、慣れてしまっているグランにとって落ちることは不安を煽るものでは無いのだ。

 

「ところで……ふと気になったことだが」

 

「何?」

 

「ハーヴィンに性的な要素は求めるかい?」

 

「待って待って、え、どういうこと?」

 

「いや……いつもならば、そろそろセクシャルハラスメントの1つや2つやり始めている頃だと思ってね」

 

「それを言われてセクハラをするほど俺は大胆な男だと思ってるの?」

 

 真顔で返すグランだったが、アルルメイヤは表情一つ変えずにさらにそこから切り返していく。

 

「目の前にヘルエスがいて、今のような話題を振られたらどうする?」

 

「背中を指で撫で━━━」

 

 そして、グランは落下した。まさか自分ではなく、この場にいないヘルエスに対するセクハラで落ちるとは、アルルメイヤも分からなかったのだ。と言うよりも、予知しなくても落ちること自体は分かっている話なのだが。

 

「やはり、運命は変えられないか……」

 

 虚空を見つめるアルルメイヤ。その瞳には何を見据えているのか……それは、彼女だけにしかわからない事である。

 少しだけ虚空を見つめたあと、アルルメイヤは椅子から降りてそのまま部屋を出ていった。既にグランのいない部屋は、彼女にとっている必要のない場所である。

 

「アルルメイヤさん、ひとついいですか」

 

「リーシャかい?一体どうしたんだい?」

 

「団長さんの部屋に、夜行っているという話について聞きたいので部屋まで同行願います」

 

「……私の運命も、変えること能わず…か……」

 

 そしてそのままアルルメイヤは、リーシャに引っ張られて自分の部屋とはまた違う部屋へと連れていかれるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やれやれ、まさか3時間の拘束とはね……秩序の騎空団は恐ろしい……」

 

 アルルメイヤは、自室に戻ってからぐったりとして横になっていた。しばらく、思考を回さずにベッドで横たわりながらぼーっとしていたが、ふとあることに気付いて起き上がる。

 

「……もしかして、私はセクハラをされる対象ではないということか?」

 

 本来、女性はそのようなことは望まないはずなのだが、自分だけセクハラをされなかったことがどうにも気になってしまった。そして、自分が女性として見られていないのでは?という考えも持った。

 

「最初はハーヴィンはそういった対象に入らないと思っていたが……シャルロッテやルナールは、彼からかなり愛されて……愛されて……?」

 

 シャルロッテやルナールがグランと関わっている事を、ふとアルルメイヤは思い出していた。だがよく考えてみれば、グランが2人と関わる時はシャルロッテはまるで我が子のような扱い方であり、ルナールはまるで我が子を見るかのような母親のような目で見ていることが多かった。

 

「……やはりハーヴィンは恋愛対象では無いのか…?少し確認に……」

 

 そうして、グランに聞きに行こうと思ったアルルメイヤだったが、部屋の扉を見た瞬間にその考えは改めた。何故ならば、リーシャがドアの隙間から覗き込んでいたからだ。

 

「……今度にしよう」

 

 そうして、アルルメイヤは全てを頭の中から捨てて眠りに没頭し始める。正直ドア付近が恐怖の塊そのものなので、全く寝られないのだがそれでも寝ようと没頭するのであった。




アルルメイヤよりリーシャが目立ってきている……


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醒竜姫、私迷わないかな?

「はい、段々と色々慣れてきたところで第五回目のゲストはグレアさんです」

 

「よ、よろしく」

 

 いつものBGMが流れながら、グランとグレアはお互いに座っていた。グレアの尻尾が妙にソワソワしているかのような動きが、まるで犬を連想させるのでグランはとてもグレアが愛らしく思えていた。当然、自分の娘が可愛いとか姪が可愛いとか……そう言った類のものではあるが。

 

「早速だけど、まず1つ」

 

「何かな、団長さん」

 

「グレアってスカートに尻尾用に穴あけないの?」

 

 首を傾げて聞くグランに、グレアは困ったかのように目を逸らして頬を掻いていた。その反応に、グランも更に首をかしげていた。

 

「ど、どうしてそう思ったのかな?」

 

「いや、ユエルとかソシエは尻尾あるけど穴開けたりして、そこから尻尾通してるから……でもグレアはそうじゃないみたいだし……」

 

「……笑わない?」

 

「そういった話では俺は笑わないよ」

 

 少し顔を赤くしたグレア。そして、さらに顔を真っ赤にしながらボソボソと呟き始める。

 

「……が……から……」

 

「ん?」

 

 グランは耳を近づけて、聞き取れないグレアの声を聞こうとする。グレアはそれを察してくれたのか、もう一度……最早ゆでダコなのではないかと思えるほどに顔を真っ赤にして、何とかグランに伝えようとする。

 

「あ、穴を開けたら……スカートがちぎれちゃったから……!」

 

「……あー」

 

 グランは納得しながら離れた。ここで1つ、ユエルやソシエとグレアの違いを述べよう。

 まず、前者の2人は尻尾の大半が獣のように毛で出来ている。あの二人の尻尾はもふもふだが、それは毛の塊に空気が入っているからである。そして、毛の塊であるならばある程度尻尾が小さくても通せるのだ。狭いところを通る猫のようなものである。

 対して、グレアは竜と人間のハーフである。その尻尾は竜のものであり、それには毛が存在していないのだ。多少の小さいものはあるかもしれないが、どちらかと言えばグレアの尻尾には鱗が多い為に、猫や犬のように多少小さくても通る……と言った事が出来ないのだ。

 つまり、グレアの来ているマナリアの制服でグレアの尻尾用の穴を開けると、スカートがちぎれやすくなってしまうということである。

 

「そんな理由なら仕方ない……とは言っても、スカートの下から尻尾通すのって下着見えない?」

 

「そもそも尻尾が大きすぎるから見えないよ」

 

 という事は下着は履いていないのだろうか、と真面目な顔をしてグランは考えていたが、さすがにそれを今ここで言うと早速落とされそうな気がするので辞めておいた。

 

「そう言えば、私には質問のお便りは届いているの?」

 

「あるよー、割といっぱいだけどランダムで三通だから選ばれなかった人は嘆かなくてもいいよー……っとまずは一枚目」

 

 グランはいつも通りダンボール箱を手に取り、そこから無作為に1枚を取り出していた。

 

「『何食べればそこまで大きくなるの?』……イオからだ」

 

「大きく…?えっと、イオは成長期だからいっぱいご飯食べれば、身長は伸びると思うよ」

 

 そうじゃない、聞いているのは驚異的な胸囲の話だろうとグラン内心でツッコミを入れた。知っている人は知っているだろうが、この娘はかなりの純情である。

 

「グレア、そうじゃない」

 

「へ?」

 

「Bの話」

 

「びーのはなし……?」

 

 やんわりと伝えたが、伝わらなかった。グレアは首を傾げてしまって、なんのこっちゃと言いたげな表情を浮かべていた。

 

「……あぁいや、後でイオから直接聞くといいよ。というわけで2通目いってみようかな……『ツバサ君のことはどう思ってますか?』アンからだよ」

 

「ツバサ……って確かあの乗り物に乗っている男子だよね……見た目はアレだけど……でも、いい人だと思う。エルモート先生みたいに、素直じゃないタイプなのかもね」

 

 微笑みながら返すグレア。存外仲良くなれそうだとグランは感じていた。そして、そのまま三通目へと移る。

 

「『みんなのクリスマス衣装についてどう思いますか?』匿名希望」

 

「寒そうな人が多いよね……もっと厚着したらいいのに、って思うかも。特にクラリス……」

 

「あぁ、本人はあれもう気にしてないみたいだけどね。やる気でカバーしてる」

 

「団長さんは……どう、思うの?」

 

「眼福」

 

「……そう、私も考えておく」

 

「……ん?今なんて━━━」

 

「そんなことより他の話題って何かある?」

 

 グランの言葉を遮ってグレアは新しく話題を振る。お題三通のノルマは既に叶えているので、新しく話題を振ろうとするが、尻尾の話も既にしてしまっているので、新しく振る話題を考え始める。

 

「……あ、そう言えば団長さん」

 

「ん?どうしたの?」

 

「団長さんって、マナリアに通おうとは思わなかったの?」

 

「……うーん、魔法は一応使えないことも無いけど……」

 

「え、あれだけ使えて『一応』の範囲内なの?」

 

 グレアは心底驚くような表情をした。今度はグランが頬を掻く番となっていた。グランも、自分が手を出すもの手を出すものを次々マスターしていく事に驚いているのだ。

 

「いや、本職と比べるとね……って考えちゃって」

 

「……充分すごいと思うけど…」

 

 自慢の剣を始め、魔法を使うようにすれば各属性の魔法を使いこなし、拳主体で戦うようになれば、並の格闘家では歯が立たないほどの筋力を持ち始め、神官になればありとあらゆる傷を回復させることが出来る。

 しまいには獣の本能を持ち始めたり、魔法とは違う忍術を使いこなし始めたり、刀や銃…そして弓矢などもプロ顔負けには使いこなし始めている。

 

「……団長さんの言葉を聞いたら、他のプロの人達泣きそうだよね」

 

「え、なんで?」

 

「多分、そういう所で……」

 

 グランは頭に疑問符を浮かべていたが、しかし追求しては行けないような気がして、そのまま話を終わらせることにした。

 そして、別の話題をふりはじめる。

 

「あ、そう言えばグレアはこの団に慣れた?」

 

「あ、うん……皆優しい人ばかりだしね」

 

「そっか、それは良かったよ」

 

「あ……後コルワさんに服作って貰えるようになったんだよ?」

 

「そうなんだ、凄いでしょ?コルワの作る服って」

 

「うん!」

 

 グランが微笑み、グレアが微笑み返す。グレアがこの団で楽しく暮らせていることに、グランも喜んでいるのだ。彼女は竜と人間のハーフである、人間は自分とは違うものを排除しようとする者が多いが…この団ではそれがないというのがグレアにとっては良い環境となっているようだ。

 

「あ、部屋にピアノ置けた?」

 

「前に団長さんが買ってくれたピアノのこと?あれならちゃんと置けたよ」

 

「まぁ、マナリアにおいてあるやつとは違うけど……」

 

「それでも、嬉しかったよ。私の入団祝いにくれたのは……本当に嬉しかった」

 

「気に入ってくれたようでよかったよ」

 

「団長さんって、他の人達にもこういう事ってしてるの?」

 

「プレゼントって事?頼まれたら基本してるよ」

 

 グレアは納得しながら少し遠くを見るような表情になっていた。それだけ、グランが人に好かれる理由がわかったからである。無論、好かれて嬉しい気分にはなるが、複雑な気持ちにもなる。

 

「皆にプレゼントをあげるって、お金大丈夫なの?」

 

「その分稼いでるしね、依頼をいっぱいこなせばこなすほどポケットマネーも増えるし」

 

「団長さんも、団自体にお金を入れてるんでしょ?」

 

「そうじゃないとダメに決まってるしね」

 

「基本的に、騎空艇の中にいたり買い出しする人達とかのお小遣いだったり、必要な物資とか買うため……とかだよね」

 

「そうそう、とは言っても待機組も依頼を受けることあったりするんだよね」

 

「え?そうなの?」

 

 意外な事実に、グレアは驚いた声を出していた。てっきり、魔物と戦うことが出来なかったりする人達もこの団にはいるので、そういった人達は依頼を受けないものだとばかり思っていたからだ。

 

「……あ、もしかして勘違いしてない?」

 

「へ?」

 

「依頼と言っても、魔物と戦ったりするだけじゃないんだよ。例えば『コックの数が足りないから料理得意な人は手伝ってくれ』みたいな依頼があったりするし、災害が起こった土地に行って救助活動したりするよ」

 

「そうだったんだ……」

 

「まぁ、今言った2つだと活躍することが多いのはローアインとファラだけどね」

 

「料理上手なんだよね、その2人って」

 

「これがまた、すんごい美味いの。グレアも食べた事ある?」

 

「ないかなぁ……そもそも、この団っていっぱい人いるのにご飯みんな食べに来るよね、食費ってどうなってるの?」

 

「平均1日20~30万……多分もっといってると思う」

 

「……もう一種の施設だよね、ここ」

 

「シェロにも言われたよ……『団長さん達の団は金の羽振りがいいですね〜』って」

 

 無駄に似ている声真似を披露しながら、グランはため息をついていた。団長という立場になると、色々仕事があるのでそれによるため息なのだろう。

 

「……でも実際お金すごい動かしてると思うよ?」

 

「まぁ、そうだろうね……この団に所属してくれている以上、依頼達成料から残るお小遣いとは別にお給料も上げてるし…」

 

「あ、偶に色んな人がお金入った袋を渡しに来るのって、そういうことだったんだ……」

 

「よくよく考えてみると、よくお金溜まってるなって思ってたりするよ……もしかして、お金徴収しすぎてないかな……」

 

 心配するのはそこなのか、とグレアは苦笑していた。しかし、自分よりも団員のことを心配してくれるからこそみんな着いてきてくれているのだ。

 

「団長さん」

 

「ん?」

 

「いつも仕事しっぱなしだし偶には休んでみたら?」

 

「休むって……具体的には?」

 

「……一日中寝るとか?」

 

 趣味は鍛錬、暇があればナルメアやジャンヌなどといった、猛者達と戦っているようなグランの休み。考えてみれば、趣味以外で休めることなんてそうそうないし、新しく探すにしても疲れてしまっては元も子もない。

 故に、少し考えてから提案したグレアの意見はただの惰眠を貪ることだった。

 

「流石に一日中は……」

 

「だ、だよね」

 

「あー、でも……皆でピクニック行きたいなぁ…」

 

「……なら、今度二人で行ってみる?みんなが行けるような場所の下見……ってことでさ」

 

「いいね!じゃあ今度二人で出掛けようか!」

 

 グランは指を鳴らして楽しそうにし始める。グランは気づいておらず、またグレアが狙った事なのだが、これはつまりデートなのである。あわよくば……みたいなことをグレアは内心考えている。当然、グランはグレアがそんなことを考えているなんて微塵も思っていない。

 

「ふふ……その時は、草原の上で寝てもいいかもね」

 

「それもいいなぁ……あっ」

 

 唐突に、何かを思い出したかのように間抜けな声を出すグラン。グレアは突然どうしたのだろうかと首を傾げていた。

 

「ところでグレアってさ、寝る時どういう寝方してるの?」

 

「へ?仰向けだと尻尾が邪魔になるし……うつ伏せだと胸が苦しいから、基本的に体は横向きにしてから頭を上に向けて寝てる感じかな…」

 

「なるほど、つまり寝ながら抱きついた時いい感じに胸に当たる事、がァ!!」

 

「っ!」

 

 突然大声を出すグラン。原因は、開いた床に足を当てて落ちまいとしている姿だった。段々と落ちるタイミングが分かっているようで、グラン自身対処し始めているのだ。

 だったらセクハラをしなければいいんじゃないか?という結論が出ないのはご愛嬌である。

 

「だ、団長さん……引っぱってあげようか?」

 

「あぁうんお願いグレア」

 

 股が180を超えているかのような開きっぷりを、グランは見せていた。人体構造としてソレはどうなのかと思いながら、グランはグレアが差し伸ばしてくれた手を掴んで━━━

 

「グレアさん、そういうの番組的にどうかと思います」

 

「きゃああああああああああ!!!!?!?!?」

 

「あっ」

 

 突然現れたリーシャに驚き、グレアはそのまま腕を勢いよく振ってしまった。グレアが振ったのは、竜の血が濃く出ている腕の方……簡潔にいえば『力の強い方』である。そして、グランが掴んだのもそっちの腕である。

 そして、グレアはグランの腕を掴んでいないので、当然振り回せばグランの手はグレアからすっぽ抜けて勢いよく飛んでいく。

 グランサイファーを勢いよく飛び出し、放物線を描きながらグランははるか遠くまで飛んでいきながら、落下し始めていく。

 

「「━━━だ、団長さぁぁぁぁぁぁぁぁあああああん!!」」

 

 腕を振ってしまったことを後悔しているグレアと、流石に驚かすのはやりすぎたと後悔しているリーシャ。2人の叫びは空に消えていくのであった。




グレアって寝てる時本当どうしてるんでしょうね……


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相談室のおやすみ

「……」

 

 グランは目を瞑ったまま、目を覚ましていた。と言うのも、意識が覚醒した時から身体が動かないのだ。

一体全体、何故動かないのかが分からないが、どうにも何かにのしかかられている感覚と両腕を掴まれている感覚があるのだ。そう、まるで腕ごと抱きしめられているかと言わんばかりに。

 

「……」

 

 目を開けたい、しかし目を開けてそこにお化けとかいたら、正直トラウマになってしまうとグランは困っていた。今までそういったもの達は面と向かい合った時は、よく剣で倒せていたのだが……こういった呪い系となるともはや対処が思いつかない。

 だが、グランは一つ気になっていることがあった。先程からやけに強いにおいを感じているのだ。例えるなら、というか臭ってきているのは香水そのものの匂いで……

 

「━━━ってこの匂いカリオストロか!!」

 

「やったー☆団長さんは、カリオストロの事分かってくれてるんだぁ☆!」

 

「一瞬新手の金縛りかと思ってヒヤヒヤした!!」

 

「あ?なんだ、金縛りにあってたのか?」

 

「カリオストロが抱きついてたからそう勘違いしただけだけどな!!」

 

 息を荒らげながら、無理やり笑みを作ってるグラン。別にカリオストロに怒っているわけじゃなく、ただ安心したから大声出して突っ込んでいるだけである。

 

「……って今日何か出かける約束してましたっけ?カリオストロさん」

 

「あ?オレ様の記憶にねぇしそんなのしてねぇだろ?」

 

「……今太陽上がったばかりっぽいけど、というかなんで珍しい露出過多……それクラリスのクリスマス服だな!?」

 

「おう、寒いからベッドに入れてくれ……もちろんお前付きで」

 

「ハイハイ風邪ひかないと思うけど、風邪ひかない様に被せてやる」

 

 そう言って入れ替わるようにして、グランはカリオストロをベッドで寝かせて自分はベッドから降りる。早朝の朝は、この時期寒いのだ。ベッドから出たくなくなるほどに。

 

「……で、なんで珍しい露出過多の服きてるんですか、カリオストロさん」

 

「夜這いだよ」

 

「随分とストレートな事で……」

 

「……ま、まぁ今のは冗談として……」

 

 自分で言ってて恥ずかしくなったのか、カリオストロは顔を真っ赤にしていた。そして、今言ったことを忘れたいのかそのまま別の話題に移していく。

 

「こ、この服……似合ってたか?」

 

「んー……まぁ似合ってるよ?」

 

「何か歯切れの悪い言い方だな……そりゃあ、胸はあいつよりちいせぇけど……」

 

「いや、そうじゃなくて」

 

「ん?」

 

 グランは首を振って訂正する。実際、カリオストロは綺麗で可愛いので比較的何着ても似合うのだ。グランが作った、特製のクソダサTシャツを着せても可愛かった。

 

「カリオストロは、いつものカリオストロの格好の方がいいよ。クリスマス衣装も、カリオストロがいつも着ている方がいいと思うし……あぁ、いつものって言ったけど前の赤中心の服も今の青中心の服も可愛いよ」

 

「……お、おう……あ、ありがと……」

 

 小声で消え入る様に、カリオストロはグランに礼を言う。しかし、不意打ちのグランの言葉に顔を真っ赤かにして、本気で照れているためその声は本当にグランにすら届かないほどに小さかった。

 

「さて……じゃあちょっと素振りしてくる、この時間帯に起こしてくれてありがと、カリオストロ」

 

「あ、おい!……別に、オレ様は寒い暑いを感じないようにしてるけどな……」

 

 そう言ってカリオストロは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。勿論、既成事実の為でしかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふん!ふん!!」

 

 朝早い、未だ気温の低い寒空の下でグランは素振りを行っていた。1振りする事に、気合を入れ直しては直前の一振よりも強い一振を出していく事を繰り返していた。

 

「あ!おーいグラーン!!」

 

「アリーザ?この時間帯に起きてるの珍しいな?」

 

「いやぁ、目が覚めちゃってさ〜」

 

「……このまま模擬戦行くか?」

 

「お!いいねー!ルールはどうするの?」

 

「どちらかが膝をつくか、または首か胸か頭で寸止めされたら負けの三本勝負」

 

「よし!いっくよー!!」

 

 開始の合図も特になく、グランとアリーザはそのまま模擬戦に突入していく。グランの得物は剣、アリーザは自慢の足である。無論、ちゃんとした装備をアリーザはつけている。じゃないと剣がまともに捌けやしないためである。

 そして、2人が戦っているところを一人の女性が観察していた。

 

「ふふ、あの二人は張りきっているね……」

 

 アルルメイヤである。早起きしていた彼女は暇で騎空艇内を散歩していたのだが、2人の戦っている音を聞いてここまで足を運ばせたのである。

 

「いっくよー!!」

 

「存分に!激しく!!動いてこい!!」

 

 グランはよく分からない注文をしていた。アリーザは特に気にすることも無いが、そもそも昨日の自分どころか1分前1秒前の自分よりも早く強く激しく動こうとしているため、その注文は勝手に叶えられていた。

 

「はぁ!!」

 

「いい動きだ…!」

 

 そういうグランの視線は1点に集中していた。跳ねて揺れて動き回る2つのものを凝視するために、アリーザを無駄に動かさせていた。そんな下衆な考えを、アリーザは悟った訳では無いが━━━

 

「灼龍炎牙!!」

 

「ちょ!?それ打つのは流石にげふぃ!?」

 

「あ」

 

 アリーザの奥義の蹴りが、グランに向けて放たれる。剣でギリギリガードできたものの、勢いは止められないのかそのままグランは変な声を出しながら吹き飛ばされて……騎空艇の柵を壊して自由落下を始めた。

 

「ぐ、グラァァァァァァァァァァァァァン!!」

 

「これは……どうしようもないね」

 

 天罰である、とアルルメイヤはふと考えた。この世の中は、残酷なのだとグランは悲しんでいた。特訓と男の欲望、2つを求めるものは何故救われないんだと落ちながら下唇を噛み締めるのであった。

 そもそも、セクハラ目的で行動しているのが悪いのだが、それを辞めることはおそらくないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「団の女性達が一部を除いて全員漏れなく、バッドエンドなしでハッピーエンドを迎えるためには、どうすればいいと思う?」

 

「まーた、急にどうしたの?」

 

「……団長さん、自分のことをもう少し客観的に見られるようにした方がいいよ」

 

 それから何やかんやあって助かったあと、グランはコルワとグレアと一緒に出かけていた。グレアの新しい服の見立てる為だが、コルワがインスピレーションを得たいからと着いてきたのだ。

 

「え」

 

「そうねぇ、出来れば皆が認めてくれるのなら構わないかもしれないけれど」

 

「待って待って、マジで急になんの話?」

 

「……確かに、唐突だったかしら?」

 

 コルワが苦笑しながら首を傾げていた。少しだけ乗っかっていたグレアも、同じく苦笑してグランだけがよくわからないと言った表情をしていた。

 

「……というか着いてくるのはいいけど、俺服のこととかよく分からないよ?」

 

「あら、1人のプロから選ばれるより、プロアマチュア含めたいろんな人の意見を取り入れるのが、実は一番いいのよ?」

 

「そういうもの?」

 

「そういうものだよ、団長さん」

 

「だからグレアちゃんの新しい服、ちゃんと選んであげましょうね」

 

「団長だし、一人の男としても選ばせてもらうよ」

 

「えへへ……」

 

 嬉しそうな顔をするグレアに、コルワはうんうんと頷いていた。売店で買った飲み物を手に、3人はぶらりぶらりと歩いていた。

 

「そう言えば、今回はどうやって助かったのよ?」

 

レギンレイヴ++(バハムートソード・フツルスの奥義)を推進力に空飛んだらギリ助かった、なんかこう……うまい感じに操縦したら元の場所に着地できてた」

 

「いつも思うのだけれど、貴方マトモな人間じゃないわよね」

 

「いやいや、俺なんて十把一絡げだよ」

 

「全てが間違えてる気がするよ……」

 

 苦笑するどころか、完全にドン引きしながらグレアは飲み物を流し込んでいた。今は太陽も完全に真上に来ており、昼時なので多少の腹も減ってくるというものである。

 

「あ、グレアちゃんちょっといいかしら?」

 

「何ですか?」

 

「貴方ちゃんとしたやり方で下着つけてる?」

 

「コルワ、慣れてるとはいえ男の目の前で下着の話を持ち出される10代女子の気持ちを考えてやって欲しい」

 

「……ごめんなさい、でもグランにも言えることなのよ?」

 

「え、男はパンツ履くだけだよ?」

 

「は?ちゃんと付けないと大きくならないわよ?」

 

「明確にどこが?なんて聞けないのが辛い……というか成人女性からこんな話振られるの初めてだよ」

 

 くわっ!という擬音でも付きそうなほどに目を見開いて、コルワは熱弁をし始める。要約すれば、下着もちゃんとしたのを付けないといけないし、付け方もきちんとしないといけない……という事らしい。

 

「……わかった?」

 

「……は、はい」

 

「……」

 

「グラン?」

 

 考え込んでいるグラン、その真面目な顔にコルワも少し緊張しながらグランに話しかける。一体どこから、真面目な考えをしているのだろうかと思ってふと話しかけるが━━━

 

「よく分からなかったんで、ちょっと騎空艇でちゃんとした履き方のレッスンを男女ともに同室で」

 

「セクシャルハラスメントで逮捕します」

 

「待って……リーシャ待って……」

 

 キリッとした顔で凄まじいことを言おうとしたグランだったが、突如現れたリーシャによって手錠をかけられて連行されていく。2人はその光景を呆然としながら見守る事しか出来ないのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさかこの時間まで正座させられるとは恐れ入った」

 

「君の足壊死していないかい?」

 

 夜、グランサイファーのとある一室でグランとアルルメイヤが一緒にいた。そのとある一室とは、簡単に言えば団長……つまりグランの部屋なのだが、今アルルメイヤはそこにいるのだ。

 

「それじゃあ、いつもの頼むよ」

 

「よしきた、俺の準備はいつでも万端だ」

 

 そう言って、グランはベッドの上で胡座をかいて、自分の膝を軽く叩いていた。

 アルルメイヤは、グランの膝の上に頭を置いて横になっていた。無論、頭につけてる角のような髪飾りは今はつけていない。

 

「まったく……最近リーシャがいて、あんまり来れてなかったもんな……アルルは大丈夫だったか?」

 

「いや……少し、寂しかったけどね……」

 

 予め断っておくが、この2人は別に付き合っている訳では無い。アルルメイヤの過去、それを教えられたグランはアルルメイヤと二人きりの時は定期的に甘えさせるようにしているのだ。

 好意的かと言われれば是だが、恋愛対象としてみているかと言われれば返答を返さないと言ったところだろう。未来を予知出来るアルルメイヤは、その能力上街の人から敬われることが多い。しかし、一人の人間として見られることは少なく、そうやって見てくれているグランに甘えることが多いのだ。

 

「こうしてないと落ち着かないんだもんな」

 

「私の性格が問題なんだろう……最近は、マシになってきたとも思えるが……」

 

「……寝れてたか?」

 

「寝れてたさ、さすがにそこまで子供じゃない……それに、別にずっと1人だったわけじゃない」

 

「リーシャを嫌わないでやってくれよ?彼女も彼女でちゃんとしたルール敷いてるんだしさ」

 

「あぁ、そもそも彼女のルール自体は私は賛成しているんだ。恋愛自由、血を見るような争いだけはご法度……その原因となる行為もご法度。当たり前の話しさ

 こうやってないと寂しく感じる、は私も恥ずかしいから言えないし」

 

 頭を撫でられながら、アルルメイヤはグランの膝の上に手を置く。ズボンの上からでもわかる筋肉の硬さが、逆にアルルメイヤに安心感を持たせていた。

 

「……そうだな、確かに言いづらいな」

 

 そう言いながら、グランは部屋の外……ドアの隙間から見えるものに視線を移していた。

 そこには、少なくともカリオストロ、コルワ、グレア、アリーザの4人がいるのだ。つまり、覗かれていた。

 

「………」

 

 さてどうしようかと頭を悩ませるグラン。アルルメイヤとしては、この秘密は2人のものにしていたかっただろう。彼女達がそれを他に吹聴するとは全く思わないが、知らず知らずの内に増えてしまった秘密の共有者をどうするか。

 

「……?」

 

 だが、向こうもこちらが気づいたことに気づいたのか、それぞれ反応を示していた。コルワは親指を真上に立ててサムズアップ、グレアとアリーザは顔を真っ赤にしながら食い入るように見ており、カリオストロは両手を合わせて頭を下げていた。珍しく謝っているな、とグランは苦笑いを返していた。

 それが通じたのか、ゆっくりと音を立てないように扉は締められて彼女達はそれぞれの部屋に帰っていく。

 

「グラン?どうしたんだい?」

 

「ん?明日のご飯、どうしようかなぁって」

 

「……ふふ、そうだね。寒い日だから温かいものでも食べたい気分だ」

 

 そんな他愛もない話をしながら、グランはアルルメイヤの頭をまた撫で始めるのであった。




ハーレム的な話を作りたくて頑張った例がこちらです。えぇ、酷い有様ですよう……


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西の守護神、くっくどぅーどぅるどぅー?

「少しの合間を挟みまして、はい多分第五回目団長相談室……ゲストはマキラさんです」

 

「どうぞよしなに……」

 

「突然だけどまだ余ってたゴリラTA飲む?」

 

「勘弁……前に録画されたの見せられた時、凄く恥ずかしかったんですよ」

 

「ウホウホ言ってるの可愛かったけど?」

 

「……」

 

 かなりの弄りから入った団長相談室。マキラは顔を真っ赤にしながら俯いていた。それがまた可愛いとグランは強く頷いていた。

 

「そう言えばさ、お役目の時に着る服あるじゃん?白と赤の」

 

「はい……それが?」

 

「お役目交代の時に着てる服ってさ、みんな白と茶色の服になってるのって偶然?」

 

「もふもふは暖かいので……」

 

「……確かに暖かそう」

 

 思い出しながら、グランは頷いていた。マキラは今はお役目交代をし終えている状態なので、モフモフの方である。

 

「……そう言えばさ、マキラって俺落ちてる時いっつも担ぐ訳だよね、今日は代替えでもいるの?」

 

「プロトバハムートが待機、と……」

 

「ルリアめ……プロトバハムートはさすがに硬いから怪我しちゃうぞ……それほどまでに俺に女体を触らせないつもりか……」

 

「嫉妬、ですか……」

 

「まぁ、それがルリアの可愛いところでもある……と、話を戻そう。マキラってルナールと仲良いよね」

 

「おこたの民です」

 

「暖かいもんなあれ……前の同人誌制作の時も一緒にいたもんね」

 

「……あれは、途中から記憶がないということに……」

 

 再び顔を赤く染めながら俯くマキラ。ゴリラには、いい思い出がないようだ。しかし、それをひたすら弄って赤面させようとしているのがグランである。

 

「……お便りの方を…」

 

「ゲストの頼みなので、団長さんは聞いちゃうぞー……という訳で第1通目『あの鳥ってどのくらい速度が出るんだ?』ミュオンから」

 

「流石に貴方の相棒よりは遅いですね……」

 

「というか最速が早すぎるわアレ……しかも弄り大好きグランサイファーの面々に調整という名のレベルアップされてたぞこの前」

 

「え、どうなったんですか」

 

「初速300キロ」

 

「死にますね……」

 

 そんな速度でいきなり走り出したらほぼ確実に死ねると思うが、ミュオンはどうやって生き残ったのだろうか……とマキラは不気味に思いながら疑問に感じていた。

 

「ともかく2通目、『鳥以外に好きな動物はいますか』」

 

「基本的に色んな動物が好きですよ、しかし最近は羊、犬……も好きになってきてたり」

 

「それ、理由としてはアニラとヴァジラ…というか、ガルの影響でしょ?多分」

 

「全く持ってその通り……背中に抱きついてると、柔らかいので…ついついウトウトと……」

 

「まぁ1回触らせてもらったことあるけど、柔らかいもんね羊とか犬って」

 

「はい」

 

 アニラの周りには羊が、ヴァジラには相棒にガルという犬がついている。マキラはハーヴィンなので体が小さく、羊や犬に抱きつくとなると恐らく体全体で抱きつくことが出来るのだろう。

 

「じゃあ三通目、『随分と、胸元の露出が激しいんだね』……アルルメイヤだ」

 

「胸元……お役目の時の格好のことですかね……」

 

「あぁ、確かにサラシみたいな赤いの1枚だけつけてたもんね」

 

「あの季節にあの格好は少し寒かったですよ」

 

「少しで済むあたり、ルリアの系譜かなにかで?」

 

「……?彼女がどうかしたんですか?」

 

「いや、ルリアって年中あのワンピースなんだよね。寒い時はあれにマフラーと偶に耳あてってくらい」

 

「……新陳代謝が盛んなんだと思います」

 

「なるほど確かに……って、ハーヴィンってもしかして皆そうなの?全体的に新陳代謝が高いから寒さがあまり気にならないとか?」

 

 首を傾げるグランに対して、マキラも同じように首を傾げていた。どうやら、その辺のことはマキラもよく分かっていないらしい。今この話を続けようとしても、恐らく続かないままに終わってしまう可能性があるため、グランは咄嗟に話を変えようとする。

 

「あー、そうだ。今年ももう終わりが近づいてきてるけど、次は亥だけどどんな子なの?」

 

「……それは、あってからのお楽しみです 」

 

「そっかぁ、まぁ会える迄待ってみようかな」

 

 亥……つまりは猪なのだが、どんな子かを予想しながらグランは首を縦に降って、連続で頷き始めていた。結構シュールな光景だが、グランは直ぐに正気に戻ってトークを続けていく。

 

「……そう言えばですね、私ちょっと気にしてることがあって」

 

「と言うと?」

 

「お酒、勧められるんですよ」

 

「お酒?飲めないの?」

 

「うーん……ほら、私って一応20歳以下なので……遠慮したいんですよ」

 

「あ、そう言えばそうか」

 

「何故か、20歳以上だと見る団員さんも多くて……いえ、怒ってる訳では無いんですけど」

 

「16歳だもんね、マキラ」

 

「はい、未成年です」

 

 西の守護神マキラ、彼女の年齢は16歳である。しかし、そのゆったりとした喋り方のせいか、未成年ではないという見方をする団員もいるようで、それについて少し困っているのだという。

 

「ルナールの作業手伝っている時も、1部の手伝いだけだったんだよね?」

 

「はい、何故か見せられないと叫ばれながら見てないシーンの方が多かったです」

 

「まぁ、俺たち未成年だしさ……そこはしょうがないと言えばしょうがないよ」

 

「そうですね」

 

 サラッと言っているが、グランも未成年なのかとマキラは内心突っ込んでいた。そう言えば、ほぼ同年齢だという話を入団時にしていたような気がするということも思っていた。

 

「……団長君って、どんな修羅の世界に生きていたんですか?」

 

「え、なに急に」

 

「普通の……少なくとも戦うことをしようとしてる未成年は、ありとあらゆることジョブの経験値を、直ぐに達人レベルまで上げることなんて不可能だと思うんです」

 

「その話前もされたんだけど……別にザンクティンゼルは平凡な村だよ」

 

「平凡な村にはあんなに強いお婆さんとか、強力な星晶獣が眠る祠とか……無いと思うんですけど」

 

「あー、どうしよう今ものすごい正論が来た気がする」

 

 返答に困るグラン。言われてみれば、平凡な村にあるものでないものばかりである。

 

「というか、戦う際にちょっとワープしてますよね……」

 

「確かに気づいたら変なところにいるよね、星晶獣と戦う時って」

 

「そう言えば、ルナールくんが言ってたことなんですが……」

 

「ルナールが?」

 

「星晶獣の中で、誰が一番好きか……と 」

 

「うーん……そうだなぁ……」

 

 考え込むグラン。ぶっちゃけ、男の浪漫としてはコロッサス・マグナを推したい所なのだが、ティアマト・マグナやユグドラシル・マグナ……そしてセレスト・マグナやシュヴァリエ・マグナも推したいところなのだ。

 リヴァイアサン・マグナもすきではあるが、しかし残念なことに候補には上がらなかった。

 

「多くて決めきれないかも……因みにマキラはなんて答えたの?」

 

「私はティアマト・マグナです」

 

「そりゃまたどうして?」

 

「飛んでいるからです」

 

「なるほど……確かに自分で飛行してるもんね」

 

 ティアマト・マグナ自身がというより、あれは竜に乗っている為飛んでいるように見えるのだが、マキラはどうもそこに親近感を覚えているようなのだ。

 と、ここまで話してから1つグランは気づいたことがあった。

 

「なんか今日星晶獣の話ばっかしてる気がする」

 

「そうですね……でも、こうやって団長君とお話出来るのは楽しいので……問題なし、です」

 

「そう言って貰えると、団長冥利に尽きちまうぜ……嬉しくなったので番組終了時には何でも言う事聞いちゃう」

 

「……では、あとで膝の上に座らせてください」

 

「ん?その程度でいいの?」

 

「はい、私にとってはとても嬉しいことなので……」

 

「よーし、なら後で俺の部屋でゆっくりと━━━」

 

 ここで床が開く。落ちるグラン、眺めるマキラ、目を開くグラン、咄嗟に持っていた武器の一つ、バハムートソード・フツルスを抜剣して咄嗟に奥義を放つ。今の彼はファイターであり、使える力には奥義を一瞬で放てるものがある。ウェポンバーストである。

 それを使い、剣の力を解放……奥義であるレギンレイヴを真下に打つことで落下をせず、グランはその場で浮遊し始める。

 

「……って訳で、後で俺の部屋でゆっくりと……」

 

 トントン、とグランの後ろで肩を叩く者がいた。グランはその時はその手を優しくどけて後ろは見ていなかった。代わりにマキラが珍しく青ざめた顔をしているが。

 しかし、肩を叩く者は諦めず何度も何度もグランの肩は叩かれる。流石のグランもちょっとイラッときて、後ろを振り向いてしまう。

 

「……なんだよ、ちょっとしつこいぞ一体誰だよ俺の方を触ってるのは━━━」

 

 後ろにいたのは、体が緑色であり腹が黄色とピンクの縞模様でできている生物だった。

 

「……はい、律儀に落ちます」

 

 グランは奥義を解き、自由落下を始める。その生物はそのままゆったりと部屋から出ていき、扉は無慈悲に閉められる。

 

「……真の仲間」

 

 ぼそっと呟かれた言葉は、小さかったものの確実に音を拾っていた。マキラは例に乗っ取って部屋から出る……と、部屋を出てすぐそこには何故か廊下で倒れているリーシャがいた。

 

「どうせ……どうせ私なんて……」

 

 ポスターに自分がいなかったとか、めっちゃ団離れてるじゃんと言った言葉は彼女を傷つけるのだ。先程の生物の存在は、リーシャにとっては見るだけで泣き出したくなるほどの存在だったのだ。

 

「………」

 

 マキラは黙って倒れているリーシャに対して両目を閉じて、手のひらどうしをくっつけてお祈りをする。きっとこれから救われる展開が来るのだろうと、どこかで思いながら彼女はリーシャも部屋も後にして自室へと戻っていく。

 結局、この日はあの生物を誰も目指することは出来なかった。聖夜の奇跡などという名目をひっさげて現れた、奇跡(ツッコミ役)なのだから。

 

「あぁ……そうだ。まだメリークリスマスは……全員には言えてませんでした」

 

 しかし既にクリスマスイブは過ぎているのだ。 言ったところでもう終わってるよと言われてしまうのがオチだろう。

 

「……お役目交代のお手伝い……しに行ってあげましょう」

 

 本来は1人でするべきことだが、別に手伝っては行けないという訳でもないので、ヴァジラのお役目終了のお手伝いをしようと思ったマキラ。アンチラやアニラも誘って、ヴァジラのお手伝いをしてみんなでどこかで温かいものを食べに行こう……そう考えたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガチ〇………ピン………モード……魔境……はっ!?」

 

 そしてグランは目を覚ました。何故か自分が見覚えのない綺麗な虹の石を捧げて、武器や星晶獣や魔物などを手に入れようとしており、それを300回行おうとしている夢を見たのだ。随分と酔狂なことをしているもんだと、グランは夢の中の自分の事を笑っていた。どうにも、他人事のような気がしないが気にしたら負けである。

 

「……朝起きたら武器が増えているのは、まさか()()()()()()()()()()()()()()()()()……?」

 

 グランは頭を振る。今のは、恐らく知ってはならない真実のような気がしてならないからだ。部屋で目を覚ましたグランは、次なるゲストを招くために部屋から出て相談室のセットを行うのであった。




昨日ガチャピンモードが来ました。だから記念に緑の恐竜さんが現れました。
1日遅れですがメリークリスマスです。
今年のクリスマスボイスは女性キャラがみんな積極的なんで驚いています。もはや告白してるのが何人いることやら……


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西南西の守護神、この世の理を知らない?

「はい、今回のゲストはアンチラさんです」

 

「やっほー」

 

「よく起きれたな」

 

「え、酷くない?」

 

「起きなかったら起きるまでハグしてた」

 

「……直ぐに起きなかったらよかったかも」

 

 最初にある程度の会話を行い、ちゃんと話せるかどうかの確認を行う。そして、その後に手を鳴らして序盤の会話を終了させる。

 

「というかマキラは私服で来てくれたんだけど、アンチラはお役目の時の服なんだな」

 

「こっちの方が好きでしょ?」

 

「あぁ、実に大好」

 

 いつもより早く、床に穴が開く。自由落下し始めるグランだったが、アンチラ……の分身が両脇から支えてくれたおかげで落下せずに済んだ。

 

「今日は実に早いな」

 

「確かに早いかも……今のって駄目なんだね」

 

「さすがに好きな服の話で落とされたら堪んないぞー、リーシャー」

 

 その声が届いたのか、床は一旦閉じる。再度降ろされてから新たな椅子を用意し、グランはそれに座り直してトークを続けていく。

 

「まぁ、リーシャが落とそうとしたのも分からんでもない」

 

「え、なんで?」

 

「いやだって、お役目の時のアンチラの服って凄い色々見」

 

 再び床が開く、アンチラの分身が支える、グランがリーシャを説得する、床が閉じる、座り直す。今回、既に2回も扉は開かれてしまっていた。

 

「いや、タダの注意じゃん?え、何……マジで今回厳しいぞ」

 

「何でだろうなー」

 

「………アンチラって何歳だっけ?」

 

「10歳だよ?」

 

「それでか……」

 

「へ?」

 

「いや、今一つの解を見出しただけだ。気にしないでくれ」

 

 真面目な顔で何かを悟るグラン。アンチラは首を傾げながらも、言われた通りに気にしない方向でいくことにした。

 

「さて、十二神将2人目という訳でね。色々聞いていこうかなと」

 

「ふっふーん、何でも聞いてくれていいんだよ?」

 

「まず、勘違いされやすいからこそこの話題からいってみよう」

 

「ほうほう?」

 

「みんな!アンチラはエルーンだからな!!」

 

「そうだぞー、エルーンなんだぞー!」

 

 グランに便乗するかのように、アンチラはグランの言ったことを復唱する。自分の尻尾をチョロチョロ動かしながら、実に楽しそうに叫んでいた。

 

「そうなんだよねー、僕って女の子だしエルーンなんだよ」

 

「前に尻尾は自分でつけてるのか、みたいな事聞かれてたからね」

 

「生前から付いてるよー」

 

「いや、生前だったらお前前世も尻尾付きになっちゃうからな。せめて生まれつきと言いなさい」

 

「はーい」

 

 グランに軽く注意され、アンチラは笑顔を浮かべながら返事を返す。このやり取りだけでも、十分楽しいようだ。

 

「まぁでも、頭の上に耳が無いからな。勘違いされやすいと言われればそうなのかもしれない」

 

「エルーンにもドラフ並に分かりやすい特徴があれば……それが耳なんだよねぇ。ちゃんと横だけどケモノ耳着いてるよほらほら」

 

 自分の猿のような耳を指さして、アンチラはそれを強調していく。この耳さえ隠してしまえば、確かにただの小さなヒューマンの子供である。

 

「耳を隠すっていえばさぁー」

 

「うん」

 

「フォリアいるじゃん?」

 

「フォリアがどうかしたのか?」

 

「帽子取るまでヒューマンだと思ってたよ、僕」

 

「分かる」

 

 グランが大きく頷きながら同意を返す。フォリアは基本的に帽子を被っているため、露出がちょっと多めの少女にしか見えないのだ。

 

「俺も前に部屋に来た時に初めて帽子脱いでくれてさ、その時初めてエルーンだって分かったんだよ」

 

「へぇー、そんな経緯があったんだ」

 

「おう、そういう経緯が」

 

 3度、さすがに慣れてきたのかアンチラの助けを必要とせずに、開く床に瞬時に力を込めて壁に飛び移って、落下を免れる。というか今回アンチラは分身をださなかった。

 

「待って、今なんで落とされかけたんだ俺」

 

「え、いたいけな少女に手を出したから現行犯で極刑って意味じゃあないの?」

 

「まて、決して俺はそんなことをしていない。というか来たのは団に入ったばかりの頃で、部屋にはビィとルリアもいたぞ」

 

「……まぁ、その2人がいるんなら本当にそうなんだろうね」

 

 微妙に膨れっ面のまま、グランは閉じた床に改めて座り直して再びトークを再開する。

 

「とりあえずなんだ、お便りを読むからな。1つ目『分身ってどのくらいまで出せるの、アンちゃん』」

 

「あ、マッキーからだ。でも……うーん、何体まで僕分身出せるんだろ?」

 

「え、限界までやった事がないの?」

 

「そもそも分身をそこまで使わないし……分身で1軍隊作れたとしても、作るよりジークフリートさん一人連れてきた方が早いよ」

 

「言いたいことは分かる」

 

 ジークフリートはこの団においては、上位に食い込むほどの強者である。よくシエテと特訓している光景が見られるが、明らかに本気の戦いにしか見えないというものもチラホラといる。

 

「でも分身を作って、分身に何かやらせたい……みたいな人もいる訳だが、した事ないのか?」

 

「しても多分僕だし……」

 

「全員で寝てるか」

 

「どう頑張ってもそうなる未来しか見えないから、僕自身の力で頑張るか本当に他人の力を借りるしかないんだよねぇ」

 

「まぁなんだ、とりあえず自分で早寝早起きするくらい頑張れ」

 

「はーい」

 

 アンチラは再び手を挙げて、返事をする。どうにもやるのが楽しいようだった。

 

「では2つ目…『そんなに飛び回って下着が見えぬのか?』」

 

「アニラお姉ちゃんからだ!」

 

「でまぁ、確かにアンチラって棒高跳びみたいな攻撃多用してるよな」

 

「凄いでしょ、僕のバランス能力と如意棒の力は」

 

「確かにすごいが……で実際にどうなの?」

 

「うーんあんまりその辺気にしたことないんだよねぇ、見えたところで何か変わる?」

 

「少なくとも俺が気になる」

 

「んー……」

 

 アンチラはグランを見て虚空を見て、再びグランを見てを繰り返し始める。考え事をしているのだろうが、今何を考えているのかグランは気になっていた。

 

「まぁ、グランになら見えてもいいかなぁくらい」

 

「ほうそれはまた何」

 

 床が開いた。

 

「びっくりしたわ……俺が即座に天井に掴まれる技術がなかったら即死だった……」

 

「どうやって天井にくっついてるのそれ」

 

「気合いで」

 

「時々思うけど君って星晶獣だったりしない?」

 

「天井や壁に貼り付ける星晶獣なんてものがいたら、俺は星の民をこれから暇人と呼ぶことにするぞ」

 

 溜息をつきながら、グランは床に着地する。ここまで慣れてしまえば、不意打ちで開けられようとも落ちることは無いだろう。

 

「慣れたら番組的に面白くなくない?」

 

「とは言っても進行も何もしないまま落ちたらそれこそグダグダになってしまうじゃないか」

 

「確かに」

 

「という訳でね、三通目行きましょう。『君の部屋を掃除している時に、ガルがグランのパンツを持ってきたんだけどどういう事?』」

 

「……」

 

「………アンチラ、弁明を」

 

「い、いやぁ……干してるのが飛んで行ったのが見えてさ……筋斗雲使って拾って来て……渡し忘れて……」

 

「そうか……」

 

「だ、大丈夫!僕それ以外の用途で使ってないからね!?」

 

 アンチラが両手を動かしながら、弁明しようとする。グランは真面目な顔でじっとアンチラを見つめた後に、手を叩いていた。

 

「呼びましたか?団長さん」

 

 それと共に、リーシャが扉を開けて入ってくる。アンチラの顔が青ざめていくのが、グランにはハッキリわかった。

 

「アンチラに……話を聞いてやってくれ……」

 

「待って!本当だから!本当に洗濯物拾ってきただけだから!!」

 

「……実はな、アンチラ…」

 

「へ?」

 

「俺の下着……特にトランクスが……1日置きで無くなっていくんだ…1週間もしたら…帰ってくるんだけど……」

 

 その話を聞いて、アンチラは咄嗟に目を伏せた。それが、無くなっている原因を知っている者の反応だと、グランは判断した。

 

「リーシャ、アンチラだけじゃないだろうから……アンチラと同じような事をしている団員の情報を出させて」

 

「分かりました……それで、あの…犯人が判明した場合は……?」

 

「いや別に?そのパンツ持っていっても良いしなんなら俺をお持ち帰りしても」

 

 床は開く。グランは落ちる。リーシャの手にはボタンがひとつ。本日の回収要員ではメーテラがいるので、ちゃんと拾ってくれることだろう。面倒臭がりだが、彼女がとても優しいことをみんなは知っているのだ。

 

「……そのボタンで、開くんだね」

 

「開け、と言うだけでも開きますよ。なんだったら念じれば開きます」

 

「あの床はどんな改造してるのか気になって怖い……」

 

「という訳で、同業者のお話を聞かせてもらいますよ」

 

「はーい……って待って?今同業者って言った?もしかして君も」

 

「行きましょう、大急ぎで」

 

「あっ!ちょっと待ってー!!」

 

 リーシャは早歩きで先へ進んでいく。それについて行くように、アンチラもついて行く。リーシャが連行する立場のはずだが、ただの同行者のようになってしまっているのはご愛嬌。

 既に閉じた床は、開くことは無くグランはメーテラに回収されて今は船首にいる。それもまたいつも通りなので、誰も気にすることは無いのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ビィ」

 

「何だぁ?」

 

「俺の部屋のタンス……鍵つけようかと思う、南京錠の」

 

「そりゃあ構わねェけどよぉ、つけたところで多分変わらねぇと思うぜぇ?」

 

「え」

 

「えっ」

 

 グランは素っ頓狂な声を出す。ビィは逆になんでそう思わないのか全く疑問に思わないのか、と思ってしまう。

 

「つーかよぉ、別に取られてもいいんだろぉ?」

 

「いや、買ったリンゴを強奪されるのと買ったリンゴを渡すのとではまた話が違うだろう?」

 

「まぁ、そりゃあそうだけどよぉ」

 

「そういう事だよ……」

 

 ビィは、どうせ部屋の鍵を変えようが部屋のタンスや押入れに鍵をつけようが、その鍵がとんでもなく複雑なものだろうが、結局関係なく開けられては取られるというのがオチな気がしてならないのだ。

 

「ともかく……俺はタンスに鍵をつけるからな」

 

「まぁ、好きにしたらいいんじゃねぇかぁ?黙って付け替えることは出来ねぇから、ちゃんと相談しろよー」

 

「そこら辺はラカムやノアと相談するよ」

 

 恐らくその2人も今のビィと同じ事を言うのだろう、とビィは呆れ顔で考えていた。実際、このあと相談しに行ったらラカムとノアに微妙な顔をされてグランはビィに言ったことと、同じ事を言う羽目になったのであった。

 そして後日、グランは自分の部屋に置いてあるタンスに鍵をつけた。が、今度は騎空艇の湯浴び場の更衣室に置いていたパンツが取られるようになったというのは、また違う話なのである。

 そして、とある昼間。

 

「……団長君が部屋から出てきません」

 

「という訳で、部屋の前まで来ました」

 

「そして……この全自動万能鍵開け機(羅生門研究所に屁理屈捏ねて作らせた機械)を使えば……」

 

 グランの部屋の前にいるのは、マキラとアンチラである。昼間から来ないグランに少し疑問を感じて部屋まで来ていた。

 

「3秒で開きます」

 

「さすがマッキー!」

 

 そうして開かれたグランの部屋の扉……そこに居たのは、大量のトランクスに囲まれたグランの姿だった。

 

「何これ」

 

「朝気づいたらこんな事になってた……まだ片付け終わらない……というかなんで100個以上取られてんの俺……」

 

「……失礼します」

 

 顔を真っ赤にして、マキラは部屋から退散して行った。アンチラは苦笑いしながら、1歩ずつ後ずさっていく。

 

「じゃー、僕も退散するねー」

 

「あ、待って!!せめて片付け手伝って!無理そうなら男手呼んできてぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 騎空艇にグランの叫びが谺する。しかし悲しいかな、トランクスに囲まれた男を救う人物は、男女ともに誰もいないのであった。




十二神将の中で1番やばい格好だと思います。


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西北西の守護神、須らくこの声を聞いてくれんのか?

「今回はヴァジラさんです、いつも一緒とのことなので例外として相棒ガルジャナも連れてきてもらいました」

 

「がおー!」

 

「まぁ、とりあえず一言いい?」

 

「む?」

 

「1年間お役目ご苦労様でした、なんか最後に余計な目に遭ったけど」

 

 お役目の交代のときを思い出すグラン。ヴァジラもそれに釣られて、あの時のことを思い出していた。

 

「いやぁ、あの時はびっくりした」

 

「まさか、よくわからん女が、よくわからん機械を使ってよくわからん攻撃方法で辺り一面火の海にしたからな」

 

「休みだなんだと言ってるのにも関わらず、ワシ達の家を燃やそうとしたからの」

 

「チビ達大丈夫だった?」

 

「大丈夫!まぁちょっと家が元通りになるまでの間に、騎空艇に居座らせてもらってるけど」

 

「あんな可愛らしい子達を酷い目に合わせるのは頂けんぜ」

 

 グランは珍しく少し不貞腐れながら愚痴を零していた。要約すると、フライデーと名乗る女が謎の機械、エビフライを使ってヴァジラ達の家を燃やしたということがあったのだ。無論、ちゃんと懲らしめたのだが反省せずそのままどこかに消えてしまっていた。

 

「グランには可愛がってもらってるからなぁ、みんなグランのこと気に入ってるみたいだよ」

 

「そりゃあ良かった……というか、今はその着物なんだな」

 

「まぁ、寒いし」

 

「そりゃそうか……っと、とりあえず序盤の挨拶が終わった所でお便りを読上げてみよう」

 

「わーい!」

 

 可愛らしく両手を上げて喜びながら、ヴァジラはワクワクを隠しきれないようで、耳をピコピコ揺らしていた。

 

「まず1通目『ガルジャナとはどのように意思疎通を図ってるんだい?』シロウだね、嫁さん大事にしろよ」

 

「意思疎通?」

 

「まぁ第三者から見たら、ガルはあまり吠えないからな。ガルが吠えてない時でも、完璧な意思疎通が出来てるしそこが気になったんだろうし」

 

「とは言っても……長い間一緒に暮らしてきたから、としか言い様がない」

 

 困ったかのように首を傾げながら、ヴァジラはずっと耳をピコピコさせていた。グランはそれをずっと眺めており、ヴァジラに気づかれない程度にソワソワしていた。

 

「ずっと一緒に暮らしてきたから、相手の考えていることが分かると?」

 

「グランにもそう言った人いるでしょ?」

 

「……確かに、ビィと一緒にいたらお互いなんとなく相手の考えがわかったりしてる場面が幾つかあるなぁ……」

 

「表情を見るだけで分かったりする、そういう物じゃないかな」

 

「なるほど……」

 

「次行ってみよう!」

 

「んー……『撫でさせて欲しい』……ユーステスか」

 

「ワシをか?」

 

 キョトンとした顔をしながら、ヴァジラは自分を指さしていた。言葉が足りないせいで、余計な誤解を招いてしまっているとグランは思った。あとからイルザやゼタ達に弄られるのは目に見えている。

 

「多分ガルとチビ達の事だと思う。ユーステスって犬が大好きだから」

 

「ガルがいいのなら、撫でてもいいぞー」

 

「あくまでもガルの気持ちを考えないといけないからね」

 

「ワシ以上にイチャイチャし始めたら嫉妬するかもしれないけど!」

 

 明るく笑い飛ばすヴァジラ。相変わらず耳が動いており、知らず知らずのうちに手を伸ばしてしまいそうだと、グランは自分の右腕を見ていた。

 

「ガルって大きいからさ、小さい子なら乗れそうだよね。特にハーヴィン族」

 

「急ぐ時とか、載せたりしてたりするよ」

 

「ちょっと羨ましいかもしれない……」

 

 ガルのフカフカしてそうな体に触れた事があるであろうハーヴィンに、グランは少し羨ましがっていた。何だかんだ、動物は好きなのだ。

 

「とりあえず3つ目行くか……『カミオロシしている時、やはり性格変わるのじゃな』……アニラだ」

 

「まぁ、あれワシじゃないし……」

 

「神様ってどんな人?」

 

「人…?なのかよく分からないけど、でも少なくとも概念的なものに近いから、説明がしにくいかもしれない…」

 

「外見とかない?」

 

「ない、かなぁ……」

 

「なら諦める」

 

「それがいいと思うよ」

 

 明るい笑顔を振りまくヴァジラ。ついに我慢が出来なくなったのか、グランはヴァジラの頭をよしよしと撫でていた。

 

「グ、グラン?」

 

「いやぁ、あれだけ目の前で耳を動かされたら頭撫でたくなっちゃうよ」

 

「や、やめろぉ……」

 

「そう言う割には笑顔だな ……やはり犬か」

 

「わ、ワシは犬じゃないぞぉ!!」

 

 そう言いながらもヴァジラは満面の笑みを浮かべており、両手を顔の高さまで上げて猫の手のような形をしていた。完全に主人に服従した犬である。腹を上にして寝転ばないだけ、まだマシなのかもしれない。

 

「んー?でもこうされるのがいいんだろー?ほれほれ」

 

「や、やめろォ!なんかこういい感じに撫でるなぁ!!」

 

「おーおー、耳がピコピコしているぜ……お主はそういう所が可愛いのじゃ……ふぉっふぉっふぉっ」

 

「じ、爺さんになってる……あぁクソぉ!撫でるのすごいウマいぃ!!」

 

 まるで甘えん坊のペットと主人のイチャつきである。これを見せられている者達は、恐らく謎の虚無感に襲われている事だろう。

 

「あぁ、そう言えば前にユーステスがチビ達に餌をやろうとしてたな」

 

「チビ達が?でもそんな話聞いてないぞ?」

 

「そりゃあ目もくれず、菓子作ってるベアトリクスの方に向かって歩いて行ったからな、その後何とかしてベアトリクス止めたけど……いや、犬に甘さたっぷりのお菓子はまずいって」

 

「食べたことないが、そんなに甘いのか?」

 

「いやー、もうほんと素晴らしいくらいに甘い。何作らせてもとんでもなく甘い」

 

 過去に一度だけ食べたことがあるグランは、遠い目をしながらその時のことを思い出していた。

 何故かおにぎりを作らせても激という文字が付く程には、甘さの境地に達している。

 

「あれほんと1種の才能だよ」

 

「それだけ言われると少し気になるなぁ……後で頼んでみるか」

 

「止めとけ、1口食べたグランサイファーお姉様組が涙を流しながらお菓子を食べていたのは凄惨な光景だったから」

 

「……あれだけ動いている面々でも太るのか…」

 

「俺は気にしない、なんて無責任な事は言えないからな……俺も太ったからレスラーになった迄ある」

 

 レスラーの体型を思い出して、つい吹き出すヴァジラ。あの顔であの立ち方は彼女にとって笑いのツボを刺激するなにかだったらしい。

 

「レスラーと言えば……急に脱ぐのやめてくれんか、びっくりする」

 

「ダクフェからでも0.5秒あれば、レスラーになれるぞ?」

 

「早着替えの達人だな」

 

 あの複雑そうな鎧をすぐさま脱げる、という所に恐ろしさ半分尊敬半分のヴァジラ。少なくとも慣れていたところで、0.5秒は流石に無理だろうと思っているので、少しは盛っているだろうとも思っていた。

 

「む……その目は信用していないな?なら、見せてやろう……俺の力を!!」

 

 その場でいきなり服に手をかけるグラン。そして、そのまま上の服を脱ごうとしたところで━━━

 

「秩序の騎空団だ、逮捕する」

 

「なんでモニカさんおるん……?入団してないよね…?」

 

「リーシャに呼ばれてな、とりあえず逮捕だ」

 

 手錠をかけられて無残にも連行されていくグラン。ヴァジラはその光景を見ているしかなかった。

 早着替えが本当にできるなら、それを見てみたいと思ったのだが、それよりも誰にも気付かれずに部屋に入った上に、即座に手錠をかけることが出来たモニカのすばやさも正直なところ評価したかったのだ。

 

「……なぁ、ガル……人間って凄いなぁ……」

 

 凄くどうでもいいことで、人間の可能性を魅せられたヴァジラ。早着替えや早逮捕なんて絶対にすることがないし、されることも無いだろうがそれでも軽く尊敬の念は抱いていた。

 

「さて、チビ達が部屋で待ってるだろうし帰るかガル」

 

 ガルはそのままヴァジラについて行くことになった。その際にふと部屋の中を覗いてから、再びヴァジラの方を向いて彼女の後ろをついていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まぁ、エヴィカツ丼でも食べようじゃないか」

 

「これ美味いっすね、タルタルソースが意外にもご飯とエヴィにベストマッチ」

 

「ふっ…前にリーシャがオススメしてくれた店からお持ち帰りしてきた」

 

「この時期冷めそうなのに……」

 

「そこはちょっと頑張った」

 

「服の中にでも入れたんですか?」

 

 エヴィカツ丼を食べながら、グランはモニカと楽しそうに話をしていた。ちゃんと喋る時は、口の中のものを飲み込んでから話しているので、なんら問題はない。

 

「いや入れてないが……何故服?」

 

「だってモニカって1部に大きな膨らみがおっと危ない」

 

 いつもなら落とされるところだが、生憎ここは秩序の騎空団の本拠地アマルティア。代わりにグランの顔のすぐ横にモニカの剣が通り過ぎる。

 

「秩序の騎空団にセクハラをするとは無謀極まりないな」

 

「んな事言っても秩序の騎空団団員は、日夜あんたの話で盛り上がってるぞ」

 

「……え、どんな話?」

 

「『お酒あげたい』『飴玉上げたい』『一緒にお風呂入りたい』『○○で××をしてその後に△△したい』『××で○○を△△して□□した後に☆☆したい』」

 

「も、もういい!!」

 

 顔を真っ赤にして、モニカはグランを静止する。その様子がとてもグランの心に来た為、グランはそのまま話を続行する。身長はともかく、心とスタイルは既に成人しているというのに赤面するその様子は、グランのいらぬ嗜虐心に火をつける。

 

「いーや、まだまだ続けるね!ヴァジラの太ももについての話題を触れられなくなった腹いせに、耳元で無駄に低い声で言いまくって━━━」

 

 グランは、言葉を言い終える前に鎖で体を雁字搦めにされていた。もう1つ言うのであれば、そのままよくわからない金属製の椅子に固定されていることも付け加えられる。

 

「団長さん、今日はここなので落とせませんが……代わりに飛びましょう」

 

「飛ぶって何……?」

 

「大丈夫です、年越しは私の部屋で過ごしてもらうだけですから」

 

「リーシャ……たまに思うけど君俺より強━━━」

 

「ではまた後で」

 

 リーシャは手持ちのボタンを押す。その瞬間、グランを乗せた椅子は轟音を立てながらそのまま天井へと飛んでいく。だが、その天井はまるでその椅子が飛ぶことを設計されているかのように、次々に開いていく。そうして、グランは1度アマルティア上空まで飛んで行った後にアマルティアにあるリーシャの部屋まで飛んで行ったのであった。

 

「……何故君の部屋なんだ、リーシャ」

 

「団長さんと一緒に過ごしたいからです……」

 

 赤面しながら、少し喜んだかのような表情を見せるリーシャ。モニカは、既に始めてもいないツッコミを放棄して、ただ一言『そうか』とだけ付け加えて開いた天井を見ていた。

 

「……私も一緒に過ごしたかったんだがなぁ……」

 

「へ?モニカさん何か言いましたか?」

 

「い、いや?なんでもないぞ?」

 

 珍しく慌てながら、モニカはそそくさと部屋を出る。リーシャは不思議そうに首をかしげていたが、特に気にすることも無くそのまま気分を高揚させながら部屋に向かう。

 

「……」

 

 自分と一緒に年越しを過ごしたいという願いは、恐らく団員以外でも持っている人は多いだろう。

 都合上、グランサイファーに乗ってみるのもいいかもしれないとモニカは思いながら一人部屋へと戻っていくのであった。




あけましておめでとうございます。今回はヴァジラです。
ほんとに彼女は14歳なのでしょうか。
途中モニカです。本当に彼女は30を超えているのでしょうか。
年齢というのは簡単にはわからないものだと思いますね。因みにお正月ガチャチケットはクレイモアでした。


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南南西の守護神、そんなにジロジロ見たいのかの?

「こんにちは、今回のゲストはアニラさんです」

 

「よろし━━━」

 

「お役目マント外してもええんやで?」

 

「なぜ急に言葉遣いが変わるのじゃ……まぁそうじゃの、そこまで寒くもないしのう。今回限り、脱がしてもらうとするかの」

 

 アニラは、そう言われて羽織っているマントを外す。そして畳んでから荷物置きの籠の中に丁寧に置いてから再びグランに向き直る。

 

「改めて……南南西の守護神、アニラじゃ」

 

「アンチラが申年、マキラが酉年、ヴァジラが戌年……で、アニラは未年の十二神将……ということで1つ」

 

「なんじゃ?」

 

 指を1本だけ立てて、一つ目の質問ということを明確に表すようにしてグランはアニラに問掛ける。

 

「羊の肉って食べていいの?」

 

「ううむ……まぁ、食べる訳にもいかんじゃろうて」

 

「まぁ、流石にまずいもんね……んじゃあ話題変えるためにもう一つ質問」

 

「ほう」

 

 そこから二本目の指を立ててさらにグランは質問を重ねていく。

 

「アニラのラム肉を堪能させてもらっても……落ちるかぁ!!」

 

 質問をした直後に、グランはその場から飛んでアニラと自分を挟んでいたテーブルの上に着地する。アニラは驚きながらもその場で拍手をしてしまっていた。

 勿論、先程までグランがいた場所は床が開いている。

 

「必死じゃの……」

 

「リーシャが落とす感覚が最近掴めてきた気がする」

 

「それ覚えたら駄目なやつではないかの」

 

「まぁまぁ、騎空士になれば10回くらいは船とか自分が落下するから慣れておいて損は無いよ」

 

「普通はそこまで落ちないようにするもんじゃがな……」

 

 苦笑するアニラに対して、グランは小さいダンボール箱を取り出すいつも通りのお便りダンボール箱である。

 

「そういうもんかな?とりあえずお便り行ってみようか……一つ目『団長君の膝枕は柔らかいですか』……マキラだね」

 

「なぜ膝枕してたことを知っておる……」

 

「どっかで見てたんじゃない?偶に視線感じるし」

 

「……すまぬ、それについては返答は出来ぬ…」

 

 顔を真っ赤にするアニラに対して、グランは何かを感じとってそのまま2通目を探し始める。そして、取り出してから読み始める。

 

「2つ目『アニラお姉ちゃんのあのモコモコって何で出来てるの?』」

 

「毛ではないのか?」

 

「なんの毛か、って事じゃない?」

 

「……多分羊の毛じゃないのかのう?」

 

「暖かい?」

 

「少なくともこんな格好を外で出来ておるんじゃし、かなり暖かいと思うのじゃ」

 

「ちょっと後で堪能させてよ」

 

「構わんのじゃ」

 

 アニラは少し言葉の噛み合わなさを感じ取ったが、今はそこを追求するべきではないので何も言わないことにした。

 グランはそのまま三通目のお便りを手に取る。

 

「3つ目『後で羊の1匹を貸してください、マキラ』ってこれ質問お便りっていうかただのお手紙…」

 

「別に構わんがの、嫌がらん限りは」

 

「割と人懐っこいよね、アニラの羊って」

 

「団長殿も、抱きしめてみるか?」

 

「後でね、纏めて一緒に」

 

「欲張りじゃのう、しかし気持ちは分からんでもないのじゃ」

 

 グランは内心アニラは絶対勘違いしていると考えていた。グランはアニラと纏めて、アニラは呼び出した大量の羊をまとめて抱きしめるものだとそれぞれ考えているのだ。

 

「というわけでお便り紹介が終わった所で、談笑と洒落こもうか」

 

「そう言えば、最近新たに色々団員が入ってきたのう」

 

「そうだね、星晶獣なんかもいるし」

 

「星晶獣と言えば……多腕の……シヴァ、と言ったか?」

 

 アニラが、最近入ってきた新団員についての話題を振る。その中でも、本当につい最近仲間になったシヴァという人物の名を上げる。

 

「彼がどうしたの?」

 

「いやぁ……前に一緒になることがあっての、少し話したんじゃが…」

 

「天然だったでしょ?」

 

「いや、神秘的な雰囲気があるのう……と言いたかったんじゃが……」

 

「天然って言っても怒らないよ、むしろどんな意味か聞いてくるし」

 

「悪意がないように言わねばいけないのではないのかの?」

 

「どうにも、悪意事態は本人が感じ取れるみたいでね。星晶獣みんな感情に対してすごく感じ取れるみたいなんだよね」

 

 団内に居る星晶獣達のことを思い出しながら、グランはウンウンと頷いていた。アニラも目にはするが、余り関われないためどのような人物達かは知らないのだ。

 

「他に仲良くなった人とかいる?」

 

「そうじゃのう……同じ槍使いのよしみで、ヘルエス殿やゼタ殿と良くしてもらってるのう」

 

「なるほどねぇ、確かに同じ槍使いだし仲良くなることは容易か……」

 

「まぁ、船の中じゃとあまり激しく特訓出来んのが残念じゃが」

 

「まぁぶっ飛んじゃうしね」

 

 この騎空艇の中にいるメンバーの中には、グランサイファーですらも破壊できてしまうほどの強者がいるのだ。そのせいか、軽い特訓や試合などは構わないのだが、船を破壊する程にやる気を出していけないという制限もある。

 

「あの制度、ラカム殿が作ったのかの?」

 

「いや、俺……まぁ理由としては色々あるんだけどね」

 

「色々…?船の中で特訓して船が壊れた、という話があったからではないのか?」

 

「いや、まぁそれもあるけど……『特訓で本気出すのはダメ』じゃなくて『本気出すのはダメ』っていう言い方をしてるのが理由だよ」

 

「むー…?」

 

 よく分かっていないのか、アニラは首を傾げながら困惑してる表情を見せる。それを感じとったグランは、紙とペンを取り出してサラサラと書き込んでいきながら説明をしていく。

 

「例えば、清潔に保たれてるからそんなこと絶対にありえないんだけど、害虫が発生したとする」

 

「うむ」

 

「そこにサラーサを呼んだ団員がいました。サラーサは頼まれたので『本気で』虫を潰しました。さてどうなる?」

 

「サラーサ殿はとても大きな剛力の持ち主……となると…」

 

 少しアニラは想像する。そこには、害虫1匹のためにメテオスラストを打つサラーサの姿があった。そんなことをすれば、グランサイファーは一溜りもなくなってしまう。

 

「……なるほど、確かに『本気出すのがダメ』じゃな」

 

「そういう事。もし本気出した人がいた場合は、始末書書いてもらいます。勿論、それは俺も例外ではない訳で」

 

「修理の費用はどうするのじゃ?」

 

「団のお金から出します」

 

 ふむふむと、納得しながらアニラは頭を縦に降って頷いていた。そして、恐る恐る手を挙げながらグランに尋ねる。

 

「……因みに、始末書を書いた人物はいるのかの?名前までは言わなくとも良いが」

 

「もちろん居るよ、何人か」

 

「ふむ、妾も気をつけねばならんのう……しかし、そんな制限があると魔物と遭遇した時はちと辛いのではないか?」

 

 騎空艇で飛んでいる時でも、飛行する魔物の群れと遭遇してしまう場合は、グランサイファーではよくある事である。なるべく避ける時もあるが、やはり見つかってしまえば襲われる事も多々あるのだ。

 

「流石にそこはルール適応外だよ。けどまぁ、出来る限り壊さないで貰えるとありがたいかな……だから魔法や銃なんか持ってる人は、結構手伝って欲しいかも」

 

「なるほど……近接武器よりもそちらの方が船の上で闘う上で良いのか」

 

「まぁ……魔法とかで闘うにしても限度っていうものがあるけど」

 

「……と、いうと?」

 

「……勢い余って船が爆破される時ある、別に魔物と戦って出来るキズだし良いんだけど……」

 

「……」

 

 ふと、1人だけ思い当たる人物がアニラの頭の中に思い描かれる。クラリスである。彼女は、調子が良くなってくると手当たり次第に分解の錬金術を放ち始めるのだ。

 無論、仲間がいる方向に打たないだけマシなのだが、前に襲われた時に甲板に人1人が落ちてしまいそうな程には大きな穴が空いていたのだ。

 

「……修理費用が嵩むとか、そういうのは気にならないんだよ。そういうの気にしてたらダメだし」

 

「じゃの」

 

「けど……船落ちる可能性だってあるからね……だから船飛ばしてる時とか魔物の群れとぶつかりたくないなぁ、と思ってヒヤヒヤしてる……」

 

 苦笑するアニラ。言いたいことも、今のグランの気持ちもよく分かってしまうのがやはり仲間だということだろうか。と思っていたのだが、突如グランは笑みを浮かべて立ち上がる。

 

「けどもうそんに心配はない!!何せ、ここには頼れる仲間がいるから壊される心配も特に無くなった!!」

 

「そう言えば……最近、アテナという名の星晶獣と親密になったという話を聞いておるが……」

 

「ふふふ……基本的に星晶獣がいる場所、住処と決めた場所は星晶獣の加護が与えられるんだ……つまり!!加護だらけのこの船は安全ということSA☆!!」

 

 守護の女神アテナ、ユグドラシル、ティアマト、サンダルフォン、アザゼル、ゾーイ……この船には様々な星晶獣が乗り込んでいる。それら全ての加護をグランサイファーが受け継いでいるとなると、確かにこの船はそう簡単に落とせやしないのだろう。

 

「そもそも、本気出したらだめの制限なんて、ほとんど息してないしね!船が頑丈になりすぎて困っちゃうよ全く!!」

 

 鼻が伸びる、とはこの事なのだろうかと思う程にグランは声高々として笑っていた。

 

「……しかし、それでも壊れるのじゃろ?」

 

「……うん、色々星晶獣がいて大概の攻撃で怯みすらしなくなってるのは本当だけどさ……防御貫通はダメなんだ…」

 

 防御無視の攻撃というのはいくらでもこの空には溢れている。それを考えると、いくら硬さがあると言ってもその程度としか言い様がないのだ。

 

「まぁ、どうしようもない時はほんとにどうしようも無いからのう。そこは、操舵手に任せるしかないのじゃ」

 

「ラカムの腕は全空一なんだ……誰にも負けるわけがないんだ……」

 

 壊されることに何かトラウマでもあるのか、グランは顔を両手で隠して俯いていた。乙女か何かか、とアニラは心の中で突っ込んでいた。

 

「……ま、まぁまぁ…そんなに気を落とさんで良いじゃろ、どうせならこれが終わり次第2人で街に出かけるかの?」

 

「っ!!いく!なんだったら朝までずっと付き合ってくれ━━━」

 

 グランの下にある床が開く。既に慣れ切っているグランは避けようとその場をジャンプしようとする。

 しかし、同時に開いた天井から大きめの金属の塊が降ってくる。全くそちらの方向を予期していなかったグランの背中に、その金属の塊がクリーンヒットする。

 

「びゃ゙ぐれ゙ん゙!!」

 

 謎の声を発しながら、グランは落下して行った。鉄の塊は回収出来るようになっているのか、ロープで括りつけられていてゆっくりと上に戻されていっていた。動きが手作業で戻している風では無かったので、機械か何かで戻しているのだろう。

 

「むぅ……しょうがないのう、また後で…と言うか、何故落とされたのじゃ?」

 

「未成年は夜までに帰るようにしてください。団長という立場であっても、それは変えられません」

 

「なるほどのう」

 

 突然現れたリーシャに驚くことも無く、アニラは溜息をつきながら部屋から出ていく。朝までコースでも、別に構わないと言うのが彼女の本音なのだが、今この場で言ったところでしょうがない話なのである。

 

「……」

 

 ひとまず、グランの部屋に向かおうと心に決めた後にアニラはそのままグランの部屋に直行するのであった。




十二神将全員集合!っていい言葉ですよね


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北北西の守護神、道はどこに出来るの?

ガチャにいるキャラは名前だけ出てきます。
持ってるキャラクターはちゃんと出す予定です。


「な、なんだか照れるな……」

 

「て事でクビラさんに来て頂きました」

 

「だ、団長?これ本当にやらないといけない?」

 

「無作為の結果、こうなったので……というか別に拒否することも出来たんだから、拒否してもよかったんだよ?」

 

「こ、断れるわけないじゃん……団長の頼みだし……」

 

少しだけ顔を赤くしながら、クビラは目を逸らして俯いていた。その仕草自体はとても可愛いが、後ろにあるクビラの得物が気になってしょうがなかったので、あまり見ていなかった。

 

「……あ、1ついい?」

 

「え、何?」

 

「終わるまでネガティブな事を言ったら、その数分晩御飯にお肉が出てきます」

 

「……豚肉?」

 

「いや、牛肉」

 

「私にとってはご馳走だよ……いや、別に食べたらダメみたいなのはないと思うけどさ……」

 

「まぁたまに豚肉混ぜるかもしれないけど」

 

「それは止めて……」

 

グランの肩を掴んで、クビラが精一杯懇願する。テーブル越しなので、腰を曲げないと手が届かない距離なのだが、その際にクビラのドラフ的特徴がいい感じにいい感じしている、とグランは全くない語彙力で感想を心の中で述べていた。

 

「まぁ、流石に冗談」

 

「ほっ……」

 

「って訳で……とりあえず色々聞いてから、お便りに今回は移っていこうかと」

 

「何か聞きたいことでもあるの?」

 

「まぁ、その後ろの武器かな……」

 

「あぁ、猪突・上宝沁金ノ撃の事?」

 

「ちょと……なんて?」

 

「猪突・上宝沁金ノ撃」

 

「……ごめん、覚えられない」

 

「うん、正直覚えられないと思う」

 

部屋の中の機材を壊さないように軽く振り回しながら、クビラはあっけらかんと答える。本人も、かなり覚えにくい名前だと思っているようだ。

 

「軽く振り回してるけどさ、それ本当は滅茶苦茶重いんだよね?」

 

「んー……というより、重さを自由に変えられるから重さなんて言ってもそこまで差がないと思う」

 

「重さを自由に変えられるって結構やばいよね、破壊力はかなり有るし」

 

「うーん、団長の方がやばい気がするけど……」

 

「何で皆俺をそんなに持ち上げるの?」

 

ちょっと疑問を持って、グランは首を傾げる。彼からしてみれば、自分をそこまで持ち上げてくれることは嬉しいが、あまり自分が強いという自覚は無いようだ。

 

「団長が謙虚すぎるだけなんじゃ……」

 

「十天衆とか、カリオストロとか、ジークフリートとか、ガンダゴウザとか……見てたら俺なんてまだまだ弱すぎる部類だよ。というか、これでも1部なんだけど」

 

「この団って多分今いる人達だけで世界掌握出来そうだよね、やらないだろうけど」

 

「いやぁ、そんなこと出来るほどこの世界は甘くないよ」

 

「いや、結構簡単に出来ちゃいそうなんだけど……」

 

グランはサラッと答えるが、クビラからしてみれば何故ここまで謙虚になるのかよく分かっていなかった。グランより強い人物が大量にいるのが原因なのだろうが。

 

「……そんなに強いの?」

 

「強いも強いよ、例えばジークフリートなんてその内車輪のように回転しながら切ってくるんじゃないかな」

 

「横回転?」

 

「いや縦回転で、一国の軍隊相手にできるんだしいけるでしょ」

 

本来、どれだけ強くても人間は一国の軍隊を相手にして無事なはずが無いのだが、ジークフリートは体力の消耗以外では特に目立ったダメージは見受けられなかった。

とは言うものの、グランもそれを成し得るのではないのか?とクビラは少し疑問に思っていた。

 

「その人本当に人間?」

 

「いや、正直人間だと思うけど強すぎてやばい。前に剣持たせてもらったけど全然持ち上がらないくらい重かった」

 

「えぇ……」

 

「それに、俺ヨダルラーハにも勝てないんだよね」

 

「あぁ、あのハーヴィンのお爺さんだよね」

 

茶色の髪に茶色の髭、ハーヴィンという種族でありながらもその強さは折り紙付きという程の剣士、それがヨダルラーハである。

 

「すんごい手数で攻めてくるんだよね。こっちは防御で手いっぱいになる」

 

「へぇー……」

 

「ヨダルラーハの本気の連撃を防げれば、帝国とかが使いそうなガトリング砲とか全部捌けそうな気がする」

 

「それをしたら、多分団長は人間を超えた何かになってると思うよ、確実に」

 

「そんな過剰に褒めるな褒めるな、照れちゃう」

 

「今更そんな柄でもないでしょ?」

 

「バレたか……」

 

顔を両手で隠すグラン。しかし、クビラが言い放つと途端に手を退けてそこから真顔が飛び出してくる。真顔な事に少し驚いたが、そのままクビラは談笑を続けていく。

 

「他にもそんな人っているの?」

 

「十天衆の皆は……まぁ当然のことながら全員強いから置いておくとして、それ以外だと……イングヴェイとかかな」

 

「あの機械の人?」

 

「そ、あの機械の腕の渋いイケメン……本人も滅茶苦茶強いからね」

 

「ちょっと手合わせしたいかな……」

 

「いやぁ、この団って強いやつはホントみんな俺より強いからねぇ」

 

嬉しそうに笑いながら、グランは団の者達を語っていく。それがクビラにとっては少し羨ましかった。まるで自分の事のように、嬉しそうに語ってくれる……という事が。

 

「でもさ、この団にいる十天衆って1度は団長と手合わせしたんでしょう?つまり、団長に勝てる人達は十天衆より強いってこと?」

 

「んー……というより、十天衆と戦うときは大概天星器を使っての戦いだったからなぁ……あれを使って勝てるってことは、つまり素だと負ける可能性が高いかも」

 

「そんなに強いんだ……」

 

「俺だって、負けるつもりは毛頭ないから特訓してるけどね?それでも流石に十天衆と言うべきか……凄まじい強さなんだよね。1人で一空域くらいは支配できると思うよ」

 

十天衆の強さを語りながら、グランは強く頷いていた。道具ありきとはいえ、そんな者達に勝てるのはやはり恐ろしく強いじゃないか、と内心でクビラは突っ込んでいた。

 

「あ、そう言えば前に十天衆のシエテさんとジークフリートさんが戦った〜みたいな話してたけど」

 

「あぁ、ぶっちゃけあれ多分互角だよ?本当に……」

 

「と言うと?」

 

「単純に戦い方が全然違うからね、あの二人。シエテは自分の力で手数を補っていくタイプだし、ジークフリートはあの剣1本で全て薙ぎ払っていくタイプだし」

 

「手数と力が互角なんだ?」

 

「んー……シエテがどんな剣を模倣して生み出したとしても、単純な腕力の差でジークフリートが上回ってるみたいなんだよね。

でも、シエテは素早く動いてすかさず決めに行くタイプ。まぁジークフリートの持ってる剣みたいな大剣を振り回したりすることもあるけど……そっちの方が、しょうに合ってるとかなんとか」

 

「ふーん……拮抗してるんだね」

 

「そうなんだよね……まぁ十天衆に近い実力を持ってるジークフリートが強すぎるって話なんだけど」

 

そう言って目を瞑るグラン。この団にも、十天衆に近しい実力を持つ団員はいるのだ。

十天衆が最強とは言っても、それと同等の力を持つものは必ずどこかに居るということなのだろうか?とふと疑問に思うグランだった。

 

「十天衆と言えば……最近ソーンさんと仲がいいんだよね」

 

「へぇ、馴れ初めは?」

 

「んー……1人で朝練してる所を見てたみたいでね、それで声をかけられたとかそんな感じ。

あの人弓使いだから教えられることは少ないけど、一緒に組むことがあった時のために……って事で最近はよく特訓も兼ねて一緒にいるよ」

 

「良きかな良きかな……」

 

まるでおじいさんのように頷きながら微笑むグラン。その反応に苦笑しながらも、お茶を飲んで一息ついてからクビラは続けていく。

 

「そのおかげかな…最近は、色んな人と組んでどんな癖があるかって言うのを、よく見たりするようになったかも」

 

「最近の発見は?」

 

「んー……秘密」

 

「へ?まぁ、いいんだけどね」

 

クビラは楽しく笑いながら、誤魔化していた。実は思いついた話はクラリスの事である。ただ、よくグランと一緒にいる時はグランのことをよく見ているという話なのだが、これを言うのは少しクラリスに悪いような気がしたからだ。

 

「あ、そうだ。クビラって温泉が好きなんだよね?」

 

「へ?好きだけど……どこかいい温泉でも見つかったの?」

 

「いや、単純にザンクティンゼルに温泉1個だけあるから行こうって話」

 

「へー……団長の故郷だよね?温泉あるんだ」

 

「まぁ、村の人達が集まって一緒に体洗ったりする場だから……24時間365日ずっと混浴だけど」

 

グランは体を捻りながら床をジャンプする。床が開く気配がしたからだ。そして前回は、上から落ちてきた物体に反応できずに落とされたため、今回はそれを回避するために体を捻って上を見るようにしたのだ。

だが、今回は上から物が降ってくることは無かった。降ってきたのは、1人の星晶獣だった。

 

「我、穢れを浄化せん…!」

 

「あ゛つ゛ッッッッッッッ!!!」

 

突如飛来したシヴァが、グランを抱擁しその体を燃やし始めた。シヴァの炎はただの炎ではなく、穢れを浄化する炎なのだ。よって、殺そうとしない限りは肉体が燃えることがないように調節が可能なものなのである。無論、熱さはちゃんと感じるらしいが。

そして、そのまま燃えながらグランは落下していく。ただ穢れを浄化されているので、穢れを持たない者は触れても大丈夫なので、ちゃんと拾われることだろう。

 

「……だ、団長ー!!生きてるー!?」

 

「生きてるー」

 

下から声が聞こえてくるので、ちゃんと拾われているのだろう。そこに安心したクビラだったが、いつの間にかシヴァがいないことに気づいた。特に目立った用事はないのだが、いつの間にか姿を消すその姿はまるでリーシャのようだと、クビラはふと思ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「僕ねー、グランって言うのー」

 

「燃やされた結果がこれか……」

 

ビィは、グランの部屋で燃やされた結果のグランを見ながら呆れていた。簡単に言うと、グランは絶賛幼児退行中なのだ。

 

「まさか穢れを浄化された結果……穢れを知る前の子供の頃に戻るなんてのは、オイラも予想外だったぜ……」

 

「えへへー」

 

つぶらな瞳、そして子供のようなその仕草は紛れもない子供そのものである。これで団員に対するセクハラが減ってしまえば、ある意味いいのではないだろうか……とさえ思っていた。

 

「……あぁいや、これはこれで不味いかもなぁ」

 

グランのことを恋愛的な目で見ている女性達から、変な知識を教えこまれたりすれば大変である。そうなると、精神年齢でかなり子供なのに、変な性癖を覚えてしまうかもしれない。

 

「しょうがねぇ、何とかして戻すか」

 

ビィは呆れながらも、グランを元のグランに戻そうと考える。セクハラを行うとは言え、何だかんだ団をまとめていたのは彼だったのだから、幼体化したままではだめだろう。

 

「……セクハラする有能から、セクハラしない無能に変わっちまうって……今度、丁度いい均衡にしてグランをセクハラしないだけの状態にしてもらいてぇなぁ」

 

そう呟くビィだったが、世の中そんなに甘くないことは知っているので、仕方なく戻るために頑張り始めるのであった。




穢れ燃やし担当シヴァさんです。


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十二神将の宴

何やかんやあってグラン君は元通りになりました。


 その日、グランサイファーの一角ではかるた大会が行われていた。とは言っても、参加メンバーは十二神将達とグランの合計6人なのだが。

 

「ここじゃっ!!」

 

 グランがカルタを読んで、全部読み切った後にそれぞれの持ち札を確認。その枚数によって順位を付けて、最下位を外してもう一度!というのを繰り返していき、完全な順位をつけていくという遊びである。

 因みに、1度順位が決定した後にグランがそれぞれのメンバーと対決して、勝ったところで順位に割り込む形となる。

 かなり時間がかかる遊びだが、要するに今回は皆暇なのである。

 

「ここっ!!」

 

 そして、今現在ツートップでアニラとクビラが対決をしていた。その際、グランは次に読む札を完全に暗記したあとで読んでいた。それは何故か?

 2人の動くさまを眺めていたかったからである。2人のドラフが、激しい動きをしながら札を獲る。それをただ見たかっただけなのだ。

 

「クビラ姉もアニラ姉も凄いなぁ」

 

「そうですね……」

 

「2人ともー!頑張れー!!」

 

 既に敗退しているアンチラ、マキラ、ヴァジラの3人は2人の対決を観戦していた。因みに、この3人が敗退した理由としては基本的にドラフの2人による胸囲アタックのせいだとも言える。激しく動くために揺れ、そしてそれが凄まじい一撃を伴って3人を吹き飛ばす……とまではいかないが、どうしても邪魔になってしまっていた。無論、3人もそれは了承済みで行っている。

 

「じゃあ次読むぞー『か━━━』」

 

 まだ一文字目なのにも関わらず、2人は即座に動いていた。残り枚数が少ない事、そしてこのカルタをほとんど暗記しているという前提なので、ほとんど読んでいなくても動いていく方がいいと二人は結論づけたのだ。

 

「ここじゃっ!!」

 

「くっ……!!負けた……!」

 

 そして、ラストの一枚を取り終えたところで勝負は決した。このカルタの枚数は奇数なので、必然的に接戦していても最後に取ったアニラの方が1枚多くなってしまうのだ。

 事実、枚数を確認のために数えてもクビラの方が少ないので、やはりクビラの敗北となっていた。

 

「さて……こちらは終えたぞ?」

 

「やろうか、団長!」

 

「望むところだ。」

 

 アニラとクビラの不遜な笑みに、グランもまた自信たっぷりに笑みを返していた。

 その自信はどこから来るのか、そもそもカルタをするやる気がちゃんとあるのかなどと言う疑問を誰も持っていない辺り、やはりグランサイファーに乗るような人物はいい者達ばかりなのだろう。

 

「じゃあ、僕が読むねー」

 

 アンチラが読み札を手に取る。そして、適度にシャッフルしてから1番上にある札を読み始める。

 1文字目、瞬間的に2人は動いていた。アンチラが呼んだ札は、グランの目の前にあった。つまり、向かい合って座っているアニラからしてみれば、一番遠い場所なのだ。

 

「ここ━━━」

 

 アニラがその札目がけて飛び込んでくるかのように、手と体を伸ばす。そして、それに合わせるようにしてグランも自分の手を真下に向けて下ろしていく。勢いよく、それでいて豆腐を扱うかのように優しいタッチを心がけて腕を動かす。

 ここまで言えば伝わるだろうが、グランは札を取りに行っていないのだ。その凄まじい反射神経と、その反射神経についていける肉体を持ってして、アニラの胸を触ろうとしているのだ。

 

「ふ━━━」

 

 グランは笑みを浮かべる。

 正面から堂々と触りたいところだが、カルタ内でそれを行う事は不可能に近いだろう。ならばどこでもいいから触ろうということで、上から触るような形にすればカルタ内でも、物理的に触ることは可能だろう。

 顔に無理やり当てられに行く、手ではなく腕に当たるようにする……などと無駄に思考を費やして、胸を触りたいがために2桁を優に超える作戦をグランは立てていた。

 

「取っ━━━」

 

「ここだ━━━」

 

 アニラは札を取りに行き、グランは男の欲望を叶えようと動く。2人の目的がどちらも叶いかけた…その瞬間、どこからともなく笛の音が鳴り響く。

 

「団長君、アウトです」

 

「何…だと…?」

 

「どさくさに紛れて、アニラ君の胸を触ろうとしていましたね。私達の目は誤魔化せても、この特製『絶対見逃さないカメッスル君』の目からは逃れられません」

 

 そう言って出てきたのは、小型のカメレオンのような機械だった。どうやら、不正しないように予め懐にしのばせていたのだろう。

 

「カメッスル君目いいんだな……」

 

「団長君の事です、2人の胸を触ろうとしているに決まってました」

 

「ほう」

 

「にゃっ!?」

 

 アニラはニヤニヤと笑みを浮かべ、クビラは胸を隠して顔を真っ赤にしていた。恥ずかしかったのか、変な言葉が出てきていた。

 

「我らが団長殿は、どっちの胸を積極的に触りたかったのかの〜?」

 

 ニヤニヤしながら、アニラはグランに擦寄る。クビラとは違い、団長ならばと言わんばかりの急接近である。

 しかし、これはアニラの年上の余裕と言うやつである。そのようなものは、グランにとっては壁にもなりえない。

 

「どっちの胸も積極的に触りたいに決まってるだろ」

 

「にゅっ!?」

 

 グランはアニラの片手を両手で握り、ずずいと顔同士の距離を近づけて言い放つ。言っていることは、はっきり言うとセクハラなんて生易しいものでは無い。

 しかし、それでも嬉し恥ずかしと言うやつだったのか、アニラは顔を真っ赤にして俯いてしまう。そして、目を逸らしながら自分の人差し指同士をくっつけたり離したりし始める。

 

「すごい発言……一応僕まだ10歳なんだけど触るつもりだったの?」

 

「え、何触って欲しかったのか?」

 

「……触るほどあるのかな」

 

 そう呟きながら、アンチラは自分の胸を軽く触っていた。まだまだ育ち盛りなのだが、グランからは否定の言葉が一切出てこなかった。

 

「この中で2番目に大きいから大丈夫だと思う」

 

「マッキー、多分それ下から2番目ってことだよね」

 

「ハーヴィンはどうやっても大きくなれないし……」

 

「あー……」

 

 アンチラが納得してしまったのか、言葉を出してしまう。多少の盛りはあるかもしれないが、一般的にハーヴィンの体型で胸があるということは余りないことである。

 マキラは、目立たない方である。あるかないかは誰も心の中ですら、言及しようとはしなかった。

 

「あっ、ということは真ん中は……」

 

「……ワシ?」

 

 ヴァジラが苦笑いを浮かべながら、頬を掻く。あまりこういう話題をしたことがないのか、反応に困っている様子だった。

 

「いやでも……なんか嬉しくないなぁ」

 

「へ?どうして?」

 

「真ん中とは言っても……上位2人がトップクラスすぎる……」

 

「「あー……」」

 

 マキラとアンチラが同時に声を上げる。上位2人であるドラフのクビラとアニラは、確かにこの中では見えている世界が違う、と言わんばかりの盛り盛りようである。

 

「何なら大きくしてやろうか」

 

「出来るのか!?」

 

「何でも揉めば大きく…なる……と………」

 

 グランが手で何かを握るような仕草を取りながら、ヴァジラ達に近づいていた。しかし、その視線は部屋の扉へと吸い込まれていった。そして、少しずつ青ざめ始めたグランに疑問を抱き、十二神将達も一斉に扉の方に目線を向けていた。

 そこにはリーシャがいた。

 

「……ここで何を?」

 

「カルタです」

 

「カルタなのに揉むんですか?」

 

「揉みません」

 

「なら今の動きはなんですか?」

 

「マッサージです、胸の」

 

 揉まないと宣言しておきながら、胸のマッサージを行おうとする団長グラン。十二神将達は固唾を呑んで見守っていた。

 

「それ、揉んでませんか?」

 

「揉んでます、はい」

 

「なぜ揉もうと?」

 

「いや胸小さいの悩んでるから、団長だし助けてあげようかと…」

 

「団長が触る必要性あるんですか?」

 

「……」

 

 ついに何も言い返せなくなってしまうグラン。その顔色はゾンビよりも悪い色になっていた。

 

「ないです」

 

「そうですね、そういう事をしたいのならまずは付き合ってから行うべきでしょう」

 

「はい、仰る通りです」

 

「あ、じゃあここにいる全員でグランと━━━」

 

「そうなった場合団長さんには秩序の騎空団に所属してもらうことになりますね、50年ほど牢屋で」

 

「10代と付き合った時の罰が凄まじく重い……」

 

「恋は人それぞれですが、法律という名のルールは守りましょう」

 

「はい……」

 

「ところで胸を触られると大きくなるというのは誰情報ですか?」

 

「イオがロゼッタから聞いたっていう話をして……ロゼッタはメーテラから聞いたみたいな話してた」

 

「なるほど……情報提供ありがとうございました。とりあえず団長さんは逮捕です」

 

「あぁ畜生、逃げられると思ったのに……」

 

 グランはそのまま手錠をかけられて、連行されていく。一体この光景も何度目だろうか、と十二神将達は顔を見合わせて苦笑していた。

 

「あの者の言うこともわかるがのう」

 

「全く!失礼しちゃうよ!僕はもう大人です!」

 

「……私が原因では?」

 

「いやぁ、ワシはただの嫉妬だと思うけど」

 

 そして、そのままグランに対しての談義が始まる。今までも何度かやってきたが、いい意味でも悪い意味でも話のネタに尽きないグランは、やはり十二神将達のいい話の材料となり、なぁなぁで終わったカルタの代わりとして、談義が彼女たちを夕飯まで楽しませたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「流石によォ、全員と付き合うのは駄目だと思うぜ?こういうのは1人に絞らなきゃいけねぇだろ」

 

「んなこと分かってるよ……というかそれが原因で逮捕されたわけじゃねぇよこのトカゲめ……」

 

「オイラはトカゲじゃねぇ!!」

 

 アマルティア島にて、グランは秩序の騎空団特別牢に入れられていた。そして今、面会時間ということでビィが彼の話を聞いていた。

 

「でもよォ、どっちにしろ胸揉もうとするのは犯罪じゃねぇか」

 

「……え、アンスリアとかは未遂で終わるけど偶に触らせようとしてきてくるから、いいものなのかと……」

 

「いやまぁ、ぶっちゃけ悪い気はしてねぇだろうけどよォ……人としてどうなんだァ?」

 

「めっちゃ反省してる……あー、全空の美少女達と付き合っても問題ない星晶獣とかいねぇかなぁ……」

 

「そんなもん、いる訳ねぇだろ……」

 

「んなこと言われなくてもわかってんだよ……」

 

 グランは机に突っ伏しながら、ただただ愚痴を零していた。余程逮捕されたのが堪えたのだろうか。

 

「で?今回いつまでだ?」

 

「反省文書いたら出してくれることになった……」

 

「ほー、良かったじゃねぇか」

 

「とりあえずリーシャとモニカ褒めちぎっておくわ……」

 

「ん?何でだ?」

 

「何か、照れた時の顔が可愛かったんで……」

 

「お前はもうしばらく、頭を冷やしておいた方がいい気がしてきたぜ」

 

 ビィは諦めのため息をつく。この男はどう足掻いても、こういうことに関しては反省をしないのだろうと思ったからだ。

 

「もっかいシヴァっとくか?」

 

「何シヴァっとくか?って……そんな動詞初めて聞いた……」

 

 面会時間でもただ駄弁るだけのグランとビィ。見張り役の秩序団員は、新人なのか腕時計とグランを交互に見て、オロオロしていた。

 

「どうやら時が来たみたいだな……」

 

「なんだお前」

 

「だが、俺はまた復活する……絶対にな!!」

 

「おう、とりあえず出てきたら連絡寄越せよな。気が向けば迎えに行くからよ」

 

「偶にお前めっちゃ辛辣だよね……」

 

 そう言って、グランはそのまま部屋の奥へと戻っていく。ビィは溜息をつきながら、同じように部屋の外へと出る。

 今度戻ってきた時には、リンゴでも奢らせようと考えていくのであった。




こんな感じで小説を進めていこうと思います。
団長相談室に関連性のあるキャラクターを呼び、それが全員集まったら全員集合パーティと言った具合に。


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竜殺しの騎士、我が剣で魔を断つのか?

「えー……なんと今回のゲストは元黒竜騎士団団長、ジークフリートさんです」

 

「どうも、不得手ながらも頑張っていこう」

 

「とりあえず一ついいすか」

 

「何だ?何でも言ってくれ」

 

 指を1本立てながら、グランはジークフリートに話しかける。その顔はとてもとても真面目なものだった。

 

「何でそんなに頭が良くて強いの?」

 

「ありがとう、でも俺はそこまで強くない……と言えば謙遜になってしまうな。質問されている以上、謙遜で返す訳にもいかないか」

 

「答えられる範囲でいいよ」

 

「とは言っても……人一倍頑張った、としか言い様がないな。何か特別なことをした、という意識は俺にはないよ」

 

「これが真の強者の言葉か……」

 

 グランはしみじみと感じとっていた。ジークフリートとの間にある、絶対的な何かを感じとっていた。

 

「それに、俺は一人で行動することに慣れているからな。皆が何かしている時は、俺が独自に動いてサポートするだけさ」

 

「パーさんのお兄さん……アグロヴァルの事件の時とか?」

 

「そうだな、直近で言えばそれが目立つだろう」

 

「確かにあの時のサポートは凄かった……」

 

「さて、お便りとやらは俺にはないのか?」

 

 ジークフリートが穏やかな笑顔で、お便りの読み上げを催促してくる。ちゃんと体は大人だが、こういう自分が体験したことの無い物に対しての好奇心は子供の様だと、グランはふと考えながらお便りを探していく。

 

「んー……じゃあこれ!『受けですか?攻めですか?』」

 

 どう考えてもルナールである。しかも、お便りに書かれている文字がとんでもなく歪んでいる。恐らく、これを書くだけで彼女は天命を全うしているのだろう……そう思えるほどに字が歪んでいた。

 

「そうだな……」

 

「素直に答えるんだ……」

 

「俺は基本攻めていくな。しかし、武器の大きさを利用して相手からの攻撃を全部受け止めることも出来る……そう考えると、『攻め』なのだろうな」

 

 今、おそらくルナールが部屋で悶絶しているのだろう……とグランは予測していた。下手をすれば、今のジークフリートの一言で精神が肉体から乖離する程には喜びで心が満ちているだろう。

 

「とりあえず、2通目行ってみよう……お、これとか『今使っている武器以外で使ってみたい武器はありますか?』匿名希望」

 

「武器か……確かに、この団にいると色々と気になるものもあるな。」

 

「例えば?」

 

「かの銃工房の、娘さんの最近使い始めている武器だな」

 

「娘さんと言うと……」

 

 グランの知っている銃工房で、なおかつ娘がいるところはククルやクムユがいる工房のことを指しているのだろう。しかし、娘と言っても二人いる為どちらのことを指しているのか、少々迷ってしまう。

 

「姉の方だ」

 

「……あー、あのガトリング」

 

「あれを両手に持って使ってみたいな」

 

「反動で肩があらぬ方向に曲がりそうだ」

 

「そこまで反動があるなら、その反動を利用して空を飛べそうだな」

 

「??????????」

 

 ジークフリートは、偶によく分からないことを口走っている。ガトリングの勢いだけで飛べるなら、今頃ククルの肩はあらぬ方向に吹き飛んで空の彼方に辿り着いていることだろう。

 

「反動があると言っても、流石に空は飛べないのでは……」

 

「ん?俺は剣を動かす時の勢いで5秒ほど飛ぶぞ?」

 

「めっちゃ飛んでる……」

 

 秒数制限があるとはいえ、流石に今のは盛りすぎなのではないだろうか?とグランは半信半疑だった。それをジークフリートも察したのか笑顔で立ち上がる。

 

「ならば、試してみるか?」

 

「試す?今から?」

 

「あぁ、丁度いい機会だ。前から俺の剣技を見たいという者達がいたのでな……前から見せられなかった者達もいるから、今ここでカメラ越しにとはいえ見せてやろう」

 

 ふむ、とグランは考え込む。番組としてはただ駄弁るだけの番組なので、ガチ指南の番組になるのはあまり好ましくない。

 しかし、ジークフリートの言う通り見たいと思っている人物が多いのもまた事実。2つの事柄を合わせて、そしてひとつの結論まで持っていく。

 

「……よし、ならカメラ越しに見せてあげてよ。何なら俺が相手でガチ目の特訓行っちゃう?」

 

「団長が望むなら、そうしよう」

 

 グランは、ジークフリートの笑顔を見てふと思ったという。『それにしてもこいつ、笑顔が似合いすぎだろう』と。ルナールのHPは尽きていないだろうか。

 ともかく、こうして異例の相談室を抜け出しての相談室が行われることになったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、行くぞ?」

 

 恒例のフルフェイスの兜を被り、文字通り全身真っ黒な姿となるジークフリート。黒竜騎士団団長という肩書きは、伊達ではないのだ。

 

「いつでもどうぞォ!!」

 

 大してグランは、ベルセルクのジョブで挑むことになった。単純なパワーならこちらがいいだろうと思ったからである。何故か、妙にテンションが高くなっているが、ジョブで着ている衣装のせいである。

 

「なら……フッ…!」

 

「ぐげっ…!?」

 

 10mほど離れてたにも関わらず、ジークフリートはその間を一瞬で詰める。そして、上から振り下ろされる一撃をグランは装備していた武器で受け止める。

 

「重っ……うぉ!?」

 

「まだまだだ!」

 

 しかし、ジークフリートは器用に剣を動かして武器を滑り込ませてグランの得物を下から上に弾き飛ばした。当然、ほぼ不意打ちの形なのでグランの得物は物の見事にグランの手から離れて、空中に身を乗り出す。

 

「フンッ!!」

 

「うぉっと……ま、参りました」

 

 そして、さらにまた即座にグランの首に武器を迫らせてチェックメイトとなる。今回は、グランの完全敗北である。

 

「随分とすぐに決まったな」

 

「いや……ジークフリート本気で決めに来てたでしょ…今の動き今までの特訓でやった事なかっただろうし」

 

「そんなことないさ……あの動きを出来るか疑問に思ったからな……案外やれば出来るものだな」

 

「今の1連の動き、10秒どころか下手したら5秒も経ってない気がするけど?」

 

「あぁ、出来るだけ早く動きたかったからな」

 

 やはり、ジークフリートは化け物なのだと今更グランは理解した。分かっていたことではあるが、未だに成長を続けている辺り、そのうち本当に十天衆のシエテなどに勝てるのではないだろうか?とさえ思えてくるほどである。

 

「やっぱりおかしいよお前……」

 

「褒められるのは悪い気がしないな」

 

「……いやまぁ、本当に褒めてるからいいんだけどさ」

 

「さて、部屋に戻るか」

 

 そう言って、たった数秒で終わった特訓は更に数十秒の会話により幕を引いた。後日、ジークフリートの元には大量の挑戦者が団内で現れたようだが、ある意味自業自得である。ジークフリート本人は嬉しそうではあるので、問題ないのだが。

 閑話休題……その場を後にしたグラン達は再び部屋まで戻ってきていた。

 

「そう言えば、空飛んでた?」

 

「……いや、踏み出してから団長の武器を弾くまでは飛んでいたはずだ」

 

「武器弾いてる時に、どうやって腰に力を入れているのか謎だった……けどそれ一瞬だよね、決着が早かったし」

 

「……また今度、な?」

 

「まぁ、いいよいいよ大丈夫だし。予定が合えばお願いします」

 

「あぁ……と、まだ一通余ってなかったか?」

 

「そう言われれば確かに……んじゃま、最後のお便り読んでみますか。『ご飯作れるなら、グランサイファー内で定期的に行われる料理対決に参加してみます?』質問ではあるけどこれで聞くことじゃないね!!匿名希望だから誰かわかんないけど!!」

 

「……そのような催しがあるのか?」

 

「ん……まぁ、ある事はあるけど」

 

 グランサイファーに乗っている料理が得意な者達が集まる会合がある。とは言っても、自分の作った料理を提出して食べてもらうだけの会なのだが。

 

「なら、俺も参加してみようか」

 

「前にフェードラッヘのレストランで、俺たち手伝ってたもんね」

 

「あぁ、また今度行きたいものだ」

 

「それにしても魔物のプリンはどうなんだろうか……」

 

「なかなか美味かっただろう?」

 

「魔物って知らなかったら、確実に美味いと叫ぶほどには」

 

「ゼリー状の魔物を使ってゼリーも作ってみたいな……」

 

 ジークフリートは、どうやら探究心が強すぎるようでゲテモノ料理を作りたい欲求があるようだ。グランは苦笑いしながらもあのプリンは美味しかったので正直馬鹿にできないことはある。

 肉や魚をちょくちょく買ってきてはいるが、団員が多いので食費も馬鹿にならないのだ。

 

「前にレフィーエに怒られたしな…」

 

「ん?どうした?」

 

「いいや、質素姫に倹約して欲しいって言われたこと思い出して」

 

「食料事情はあまりいいとは言えないかもな、それでも俺達が満足して食べられる物があるのは素晴らしいが」

 

「ローアイン率いる料理得意組が頑張ってくれてます……」

 

 リュミエールなりローアインなりカタリナの後輩なりなどの料理が得意な人選が、グランサイファーの食料事情を担っている。魔物の肉もいいかもしれないが、こちらもプロではないのであまり勝手に捌けないのだ。

 

「ちゃんと下処理できる人見つけた方がいいのかなぁ」

 

「いや、案外皆そういう知識を嫌でも身につけていると思うぞ」

 

「それはいいような悪いような複雑な気持ちだ……」

 

「慣れておいた方が、今からでも問題は少なくなるだろう」

 

「なるほど……確かに考えたら、人っぽい見た目してる奴以外は皆食べてるしな」

 

「今まで食べた中で1番美味しかった魔物は?」

 

「アルバコア」

 

「星晶獣じゃないか……」

 

 星晶獣と言う割には、夏になれば決まって捕獲されるただの生物のような気がするが、そこをあまり気にしていてはしょうがないだろう。どっちにしろ、美味しいものは美味しいのだ。

 

「しかし……アルバコアは確かに美味しいな…」

 

「ジークフリートは、食べてみたい肉ってある?」

 

「リヴァイアサン、どんな味がするのか気になる」

 

「……あれって魚?それとも蛇?」

 

「蛇のような見た目をした海にいる星晶獣だろう」

 

 真顔でわかり切っていることをジークフリートは言うが、どちらにせよ今ここで食べられかけているリヴァイアサンからしてみれば、食べないでくれと思うのが本音であろう。

 

「……ちょっと今度魔物狩り行こうか」

 

「よし、パーシヴァル達も呼んでどの肉が食べられるか確かめてみよう」

 

「毒があるかもしれないし、毒抜きできる人も探さないとね」

 

 何故か珍味探しの方向に話が進んでいる相談室。もうそろそろ時間が迫っていることを認識したのか、グランは話を締め始める。

 

「……ってわけでね、そろそろお時間となって参りました」

 

「いつもならば、団長はそろそろ落ちているか秩序の騎空団に連れていかれてるな」

 

「けど今回はどうしようもないでしょ、さすがに男にセクハラするほど俺も酔狂じゃないさ」

 

「あまり、女性陣たちを困らせることはしないようにな」

 

「はーい……という訳で、今日の団長相談室はここまでです。ご視聴ありがとうございました」

 

 元気よく返事を返すグラン。そして、そのまま番組を終わらせてカメラの電源を落としてから、一つため息をついた。

 

「ふぅ……とりあえず、ご飯の話してたらお腹減ってきた」

 

「そうだな、何か作って小腹を満たすとしようか」

 

 そう言って、2人は部屋の外に出てくる。しかし、その場で確認した光景で固まってしまっていた。

 

「歩いてください、ルナールさん」

 

「はい……」

 

「━━━━ルナァァァァァァァァァアアアアアル!?」

 

「これは一体どういうことだ……」

 

 驚きながらも、グランとジークフリートはリーシャと連行されているルナールに近づいていく。

 

「あ、団長さん。実は……ルナールさんの部屋に大量の耽美絵が置かれていたんです」

 

「いつもの事じゃん……」

 

「いえ、えっと……ジークフリートさんと団長さんのものだったので、肖像権の侵害ということで逮捕しました」

 

「言わないでぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええ!!!!」

 

 涙を出し、大声を上げて叫ぶルナール。しかし、その言葉に対してジークフリートもグランも何ら気にしていない様子だった。

 

「いや、まぁ妄想するのは悪くないしね。それで物販し始めたら流石に不味いけど、書くだけなら別にいいんじゃない?」

 

「団長さん…!」

 

「趣味嗜好は人それぞれだ。特に、絵というものは他人にインスピレーションを得て描くものだからな。

 団長の言う通り、物販した場合は少し問題だが……そうでないなら、大丈夫だろう」

 

「……ジークフリートさんが言うなら、しょうがありません。しかし、反省文自体は書いてもらいますよ。描いてる時の声が響き渡ってましたから」

 

「……はい」

 

 こうして、ルナールは連行された。彼女はまた戻ってきたら耽美絵を描くのだろう。それで逮捕されないことを、祈るばかりである。




設定上の強さ的な意味で、カリオストロやガンダゴウザに並ぶと思うんですよね。

※すいません、カツウォヌスとアルバコア完全に間違えてしまっていました。
ニワカ晒してしまった……訂正しときます。


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炎帝、消し炭にしてやろうか?

「今日のゲストはン我が主君……ことパーシヴァルさんです」

 

「よろしく頼む……ところで、何だ今のは」

 

「今のって?」

 

「主君の言い方だ」

 

「いや何となく……なんか、こういう言い方をした方がいいのかと思ってさ」

 

「長い付き合いだと思っているが、未だにお前の知らないところを俺は発見しているような気がする」

 

「人って言うのは、案外長い付き合いでも知らないことが多かったりするもんだよ」

 

「そういうものか……」

 

 そう言って考え込むパーシヴァル。たまに適当な事を言っても、こうやって考え込むくせがパーシヴァルにはあるが、それは単にパーシヴァルが思慮深い王と言うだけの話である。

 

「さて、前回はジークフリートと話をしていたな」

 

「パーシヴァルはどんな話したい?」

 

「俺は特にないな……可能ならば、王とは何たるかという話をしたいところだが…」

 

「そういう話し合いじゃないからねぇ」

 

「俺とて、時と場所は考えるさ……とは言うものの、案外思いつかないものだな…」

 

「うーん……なら、最近パーシヴァルが気になっていることの話でもしてみる?」

 

「気になっていること、か……そうだな…お前と、マギサについてだ」

 

「ありゃ?なんか意外なところから聞くもんだね」

 

 パーシヴァルからマギサの単語が出てくるとは、グランは夢にも思っていなかったのだ。因みにマギサとは、ヒューマンであり使い魔にモラクスを使役している女性である。特徴としては、魔女のような格好と帽子と胸囲が著しく大きいことである。

 

「あの女、やけにお前にくっついているようだが……交際しているのか?」

 

「あぁいや、そうじゃないよ。付き合ってるわけじゃないけど、ちょっとプライベートな問題かな」

 

「ふむ、そうか……ならば聞く訳にもいかないな…それと、もう1ついいか?」

 

「はい?」

 

「お前は妙に鈍感になる時があるが、わざとか?」

 

「…え、待って何の話?」

 

 パーシヴァルが言ったことの意味がわからずに、聞き返すグラン。しかし、今のグランの言葉だけで納得したのかそれ以降何も聞くことは無かった。

 

「……と、とりあえずお便りいってみよう…『兄弟仲良くしていますか?』ティナだね」

 

「あのゴブリン狩りの男の妹だったな……仲良く、か…出来ているはずだが……いや、傍から見てどう思われているかはわからないな」

 

「何か、変な仲の良さはあると思う。何というか、王族特有の高貴な仲の良さというか……」

 

「……そうか?俺と兄上は仲がいいか?」

 

「仲良いと思うけど……」

 

「……そうか」

 

 簡素な返事だが、少しだけ声音が優しくなっているのをグランは見逃さなかった。だが、その事を口に出すほど彼も無粋ではない。

 

「では2通目『パーさん、イチゴ使ったスイーツで一番好きなのあります?』意外なところからだね、ローアインだこれ」

 

「あぁ、あのよくわからない言葉を使う3人組か……料理の腕がとてもいいと評判だったのでな、試しに食べてみたが……」

 

「気に入った?」

 

「……かなり」

 

 ローアインの料理は地位の差を感じさせないものだったらしい、流石である。本人達は、リュミエールメンバーの料理には負けると言っているが、あれは料理とはまた別次元の存在だろう。

 

「…イチゴのスイーツだったな。基本、好き嫌いはないように育てられている……だが、敢えて言うならばショートケーキやタルトが食べたいな」

 

「あぁ、美味しそうだね……特にショートケーキ」

 

「そうだろう……団長はチョコ派だったな?」

 

「そうだね。まぁビィと二人でザンクティンゼルに住んでたから、デザートも料理も卒無くこなせるくらいだけど」

 

「得意なデザートはなんだ?」

 

「チョコプリンwith低カロリー」

 

「……今度作ってみてくれないか?イチゴと一緒に、大きいのを」

 

「それ最早パフェだけど別にいいよ、ローアイン達と一緒に作ってみる」

 

 こう言いながら、グランは何故かまたルナールが暴走している気がしていた。ルナールの耽美絵……無論全年齢のだけだが、そういうのを読みすぎたせいだろうか。

 団長という立場上、どうにも閲覧しなければいけないらしい……というのがリーシャの見解である。

 

「あぁ、楽しみに待っている」

 

「……というわけで、3つ目言ってもいい?」

 

「構わん、俺も存外楽しんでいるしな」

 

 そう言いながら微笑むパーシヴァル。ルナールの様な女性が増えるのは、あながちこういう事をするイケメンがいるからではないだろうか、とさえ思えてくるグランであった。

 

「さて、3つ目は……『この団にいる各国の王や軍の隊長を見て、印象に残ったことはありますか』これは匿名希望だね」

 

「印象か……」

 

「ある?」

 

「あるにはある、が……フェードラッヘの白竜騎士団は除外させてもらう。よく知っている国ということもあるしな」

 

「あぁうん、多分基準がそれかパーシヴァルの実家だもんね」

 

「あぁ」

 

 そして、パーシヴァルは少し考える。グランサイファーには、あまりにも王様やそれに属する身分のものが多く、そしてランスロットやヴェインの様な軍の隊長なども乗船している。

 よく考えて見なくても、色々な意味で恐ろしい団である。

 

「……そうだな、アイルストは個人的にも勉強になったな」

 

「昔は王政の国だったけど、今は国民が議会を作って動かしている国だもんね」

 

「あぁ、王という国の1番頭を立てずに国民同士で話し合いを進めていきながら、今後の国の指標を決める……国としては、良い国だと俺は思っている。無論、王政が悪いとも思わんが」

 

「どっちにも利点欠点はあるからね。一概にどっちがいいとかって言うのは、国で違ってくるだろうし」

 

「そうだな」

 

 パーシヴァルは嬉しそうに語る。諸国を旅して、王とは何たるかということを考えて行く……自国の民のためにそこまでするパーシヴァルは、やはり王たる器を持っているのだろう。

 

「それに、一概に王政と言ってもまた色々違ってくるよね」

 

「その通りだ。王自体が戦闘能力を持つ場合と、持たぬ場合がある」

 

「ジュリエットとか……そうだね」

 

「彼女は持つ部類の方だな……しかし、それだけで過信せずに国のために出来ることをしてくれる、彼女もまたいい王だろう」

 

 グランは、ジュリエットの後にロミオ……神王モンタギューの名を上げかけていた。しかし、これを今口から発することは許されない。というか、ロミオが乗っている事は内密にせねばならない。ロミオからのお達しである。

 

「さて、読み上げてたところで……」

 

「ん?」

 

「また一つ、質問をいいかな?」

 

「構わん」

 

「この団で国を作るとしたら、パーシヴァルならどんな配置にする?あ、名前を知っている人だけでいいよ」

 

「この団で、か……ふむ……」

 

 そう言って考え込むパーシヴァル。なんの意味もない、興味だけの質問だが、パーシヴァルは『適切な人員を配置するために必要なこと』といった風に考えていそうだとグランは少しだけ面白がっていた。

 

「……王なのは、まず騎空団団長であるお前だろう。」

 

「嬉しい評価だよ」

 

「そして、その王に必要な副官……所謂秘書には、カレンを置くべきだな」

 

「カレンって……オイゲンの姪っ子の?」

 

「そのカレンだ……王に成り変わろうとする野心を持ち合わせているやつほど、王の仕事を請け負った時のために王のスケジュールを綿密に組んでくれるだろう。それに、彼女は性格がいい……そのスケジュールを悪用することもないと考えて、その人選だ」

 

「なるほど……」

 

 人を見ているパーシヴァル。グランでさえもついつい頷いて感心してしまうほどだった。

 

「次に、街の工業に関してだが……これはガラドアが良いだろう。金属の扱いに関しては、この団の中でもトップクラスだ」

 

 ドラフの男ガラドア、鉄を愛し鉄に愛された男。彼の金属推しは確かに団の中でもトップクラスである。

 

「商業に関してはカルテイラ、軍部の扱いに関してはイルザと俺は思っている」

 

「その理由は?」

 

「この団ではシェロカルテに並ぶほどの商業が出来るのは、カルテイラだけだと考えた為だ。

 軍部の方に関しては……まぁ、彼女の部下のしごきをみていれば、ちゃんとしている軍だろう」

 

「確かにね」

 

 カルテイラは、エルーンの少女である。シェロカルテの同期であり、その商売の腕はシェロカルテにも負けてはいない。

 イルザは、星晶獣を1人で倒すことの出来る武器、封印武器を持ち合わせている『組織』のメンバーであり、ゼタやベアトリクスなどもしごきあげた腕利きである。しかし、offの時は1人の恋に恋する乙女といった女性でもある。

 

「あと他に国に必要な部署って合ったっけ?」

 

「料理関係だな」

 

「料理関係……」

 

 料理と言われてまず出てくるのは、リュミエール聖騎士団に所属しているセワスチアンである。リュミエールグルメを作ることが出来る彼は、この団に置いては破格の料理スキルを持っているが……

 

「リュミエール聖騎士団ってありの方向なの?」

 

「この団に所属しているのは間違いないとはいえ、彼らはあくまでもリュミエール聖騎士団だ。と考えるならば……抜いた方がいいだろう。あくまでも、どこの組織にも所属していないかつこの団にいる者が好ましい」

 

「となると……」

 

 残っているので目立っているのは、ファラとローアインである。カタリナ思いの2人だが、ファラは帝国を抜けている為に今は無所属の扱いとなっている。

 

「代表としては、ローアインになるのかな?」

 

「そうだろうな、一般人とはいえあの料理の腕は評価しておきたい」

 

「……こんな所かな?」

 

「まだまだ決めたい部署があるが……時間が無いようだな」

 

「というわけで匿名希望の人!答えは出たので参考にするなりなんなりするように!!」

 

 グランはカメラに向かって、そう告げる。パーシヴァルもそれで終わることを確認したのか、すっと立ち上がる。

 

「というわけで今回の団長相談室はここでおしまいとなります、次のゲストを待っててくださいね〜」

 

 カメラの電源を切り、グランもまた部屋を出るために扉のドアノブに手をかけながら、パーシヴァルと話をする。

 

「そう言えばさ、その鎧カッコイイけどどうやって脱ぐの?」

 

「気になるか?」

 

「というか、鎧来てる面々がどうやって脱いでるか気になる」

 

「手入れの問題もある、俺の部屋で見せてやる」

 

 といった雑談をしながら、部屋を出て廊下を歩く二人。しかし、その平凡な時は一瞬にして崩れさる。

 

「━━━ァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

 

「うおおお!?」

 

「何だ今の大声は……」

 

 突如2人の歩いている廊下の部屋の一室から、大声が出される。流石に只事ではないと感じた2人は、その部屋に急行する。そして、その部屋の住人が誰かの確認を取らないままに、その部屋の扉を開ける。

 そこに居たのは━━━━

 

「はぁ、はぁ……しゅ、しゅごい、ネタが……」

 

 ━━━鼻血を吹いて倒れているルナールの姿だった。グランはまたお前かとか思っていた。しかし流石にハーヴィンの体から出る鼻血の量にしては異常なものを感じているので、とりあえずソフィア辺りに持っていこうとルナールに手をかけた瞬間。

 

「だ、団長さん……」

 

「……何?」

 

「ど、どっちが……攻め、なの………」

 

 そして、そのままルナールは尊死した。彼女の妄想力は、一体どこまで進んでいきどこまで飛んでいくのか。それは誰にもわからないが、今この場にいるグランとパーシヴァルの2人にだけ、わかる事がある。

 それは、今のルナールの顔がただただ安らかで穏やかな顔だったという事である。

 

「……今日は、書かなかっただけ褒めてあげるから…とりあえず医務室行こう、な?」

 

「ひゃい……ありがとう…」

 

「血の処理は俺がしておいてやる……通りがかった船だしな」

 

「すいません……」

 

 こうして、ルナールはグランサイファー医務室に運ばれていった。医務室はソフィアとファスティバの管轄なので、ルナールは流石に落ち着けるだろう。




団長は落ちルナール、オチにルナール。
ルナールオチ2回目でした。


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俊英の双剣士、白竜の刃と散れるか?

「今日は白竜騎士団団長ランスロットさんにお越しいただけました」

 

「よろしく頼む」

 

「まぁまぁ、そんなに固くならないで。簡単に喋ってもらうだけだから」

 

「そ、そうか?」

 

 少し緊張気味のランスロット。ジークフリートやパーシヴァルは、綺麗に座れていたが、どうにもその2人と比べて堅苦しいような印象が漂っていた。

 

「さて……色々あるけど、実はランスロットに1つ謝りたいことがあるんだ」

 

「謝りたいこと?この場でか?」

 

「いや、別にこの場じゃなくてもいいんだけど……謝りたい、って言うか相談?」

 

「ん……?」

 

「10月31日、12月24日もしくは25日、1月1日……そんで俺の誕生日…その日の夜、決まって俺は夢を見るんだ」

 

 深刻そうな顔をして、グランは語り始める。今挙げた日は、いずれも何かしらの行事が存在する日である。そしてそれはランスロットも気づいており、その夢に自分が関係しているのだと思っていた。

 

「夢…?」

 

「10月31日、去年のハロウィンで見た夢は……ランスロットが牢獄で閉じこめられすぎて未来予知を覚えた夢だった」

 

「……え、えっと…」

 

「いやごめん……ほんと自分でも何言ってんのかわからないんだけど…」

 

 申し訳なさそうに、しかしこれは事実なのだとグランはランスロットに言い聞かせていた。見てしまっているのだから仕方ないとまでは言わないが、グランはどうしてもランスロットに言いたかったのだ。

 

「じゃ、じゃあ……12月24日1、12月25日…クリスマスだと?」

 

「……去年のは、グランサイファーの甲板に出たら幽体離脱したランスロットの夢を見たんだ」

 

「……何故、幽体離脱だと?」

 

「あの時の、夢の中のランスロットが言ったんだ……『体は牢獄にあるけど』って……」

 

「そうか……」

 

 最早グランも、何を言っているのか全く理解出来ていなかった。そもそも、何故こんな夢を見ているのかすらよく分かっていないのに、説明し始めるとより一層意味がわからなくなってくるのだ。

 

「1月1日……元旦では?」

 

「体があるのか、それとも幽体離脱したままなのかは分からないけど……民衆に崇められている存在になっていた」

 

「済まない、だいぶ過程が省かれたように感じるのだが」

 

「ごめん、でもこれ割とそのまま語ってるんだ……」

 

「そう、か……団長の誕生日では、夢の中の俺は何を渡したんだ?」

 

「……本?」

 

「い、いきなり無難になったな……いや待て、本?牢獄の中でか?」

 

 ランスロットはふと怪訝に思ってグランに問いただす。グランも語りづらそうな表情をして、唇を噛み締めてしまっていた。

 

「……牢獄内での、自筆の……」

 

「いやもう、済まない夢の話はやめよう……頭がおかしくなりそうだ」

 

「……そうだね、もうやめにしよう」

 

 少し気分が落ちていたので、グランは静かにお便りダンボール箱を取り出してシャカシャカと振り始める。無作為化のための必要な過程なのだとかなんとか。

 

「さて、気分転換にお便りいってみよう……因みに、ランスロットは自分にどんな質問来るかとか考えてたりする?」

 

「そうだな……案外、騎士団のこととか聞かれそうだな」

 

 グランは心の中でそのセリフの後に『主にルナールが』という単語をつけ加えていた。というか、既に2度やらかしているのでそろそろ心臓に負担をかけるのは止めて欲しいとグランは切に願っていた。

 

「さて、1つ目は……『フェードラッヘでの知り合いの中で1番一緒に戦いやすい相手は誰ですか?』」

 

「ヴェインだな」

 

「わかっていたけど即答だね」

 

「昔からの付き合いで、癖も知り尽くしているからな」

 

 どこからか、何かが破裂したような音が聞こえたが恐らく気にするほどのことでもないだろう。大方、どこかのハーヴィンが鼻血を吹き出した音に違いない。

 

「ヴェイン戦斧、ランスロットは二刀流だったよね……癖を知り尽くしているとはいえ、相性っていいもんなんだね」

 

「あぁ、そもそも俺が二刀流による手数での攻撃、ヴェインが強力な一撃を叩き込むというのが主流だからな。主に俺が敵の目を引き付けてから、ヴェインがトドメを刺すというやり方が多い」

 

「確かにそう考えると凄く相性がいいんだ……」

 

「団長はそういう相手いないのか?」

 

「うーん……正直に言うと、グランサイファーの全員と相性がいいみたいな所あるかも」

 

 事実、グランは団長という立場のせいもあるかもしれないが、団員の殆どと連携が取れるのだ。ある程度の個人練習を行っているが、それでも異常な程に全員と連携を結ぶことが出来る。

 

「改めて考えると素晴らしい才能だな……」

 

「そうかな?」

 

「そうに決まっているだろう?誰とでもコンビを組めるのは、立派な才能だと思う」

 

「そう褒められると悪い気はしないな……というわけで2つ目……っと、さっきもこれも匿名希望だけど…同じ人かな?『フェードラッヘ組以外でコンビを組める人はいますか?』」

 

 質問は真逆だが、しかしほぼ真逆の質問が行われるという辺り同じ人物のを引いてしまった可能性も否めない。とは言っても、1人1通とは決めていなかったのでグランは気にしていなかったのだが。

 

「ヴェイン以外でか……」

 

「誰かいる?」

 

「……シルヴァ、さんかな」

 

「あー、狙い撃ってくれるから?」

 

「あぁ、敵に囲まれた時とかはかなり助かってるよ……しかし、少しだけ言うことがあるとすれば……」

 

「ん?」

 

 珍しくランスロットが、女性に対して悩んでいるところを見たような気がするので、グランは少し気になって前のめりになっていた。ランスロットはその勢いに少し押されたが、ボソッと一言だけ言い放った。

 

「あのスカートは……その、色々と危ない……」

 

「……あー」

 

 シルヴァは狙撃手である。しかし、インファイトも一般人以上にはできるので、偶に魔物を蹴り飛ばしたりすることがあるのだ。しかし、格好としては彼女はいわゆるスカート……それもミニスカの類である。当然、蹴ればその中身が現れるということもある。

 

「……まぁ、最近はスカートじゃなくなってきているから助かっているが」

 

「あ、そっか。最近ズボン履くようになってきているもんね」

 

 最近シルヴァ……もとい、シルヴァ、ククル、クムユの銃工房三姉妹関連で少々問題が起きていたのだ。その問題を解決すべく、色々と奔走していく内に彼女にも心の整理が着いたのか、最近ようやく今までと趣向が違う服を着るようになったのだ。

 ただし、以前の青が目立つ格好と現在の黒が目立つ格好では、へそや胸が目立つということはあまり違いが出ていないのだが。

 

「まぁ本人言われるまで意識してなかったみたいだから」

 

「そうだったのか」

 

「というわけで3つ目『この団に入って新鮮だったことはありますか?』今回全員匿名希望だったよ」

 

「色々とあるが……そうだな、一つ上げるとすれば、団員が皆同じ立場で親しくしようとしてきているところかな」

 

「え……白竜騎士団って実はギスギスしてるの…?」

 

 ランスロットの言葉を聞いて意外そうな顔をするグラン。しかし、直ぐにランスロットが謝りながら訂正を加える。

 

「そうじゃない、済まない言葉が悪かったな。騎士団ではヴェイン以外は皆敬語で接してくれるからな。

 この団でも、敬意を込めて敬語で接することはあるが、それでも俺と皆同じ立場にいてくれる……それが新鮮だったんだ」

 

「なるほど、そういうこと……確かに、騎士団所属とかは敬語同士で話し合ってるところよく見るよ」

 

 シャルロッテやバウタオーダなどを見ていて、グランはうんうんと頷いていた。そもそもバウタオーダは根っからの真面目なので、誰に対しても敬語なのがデフォルトなのだが。

 

「色々面白いでしょ?この団」

 

「あぁ、騎士団は皆同じようにしているが……この団は秩序がきちんと整っているのに、皆自由にやれている……素晴らしい団だと思う」

 

「まぁ、ある程度無法だと思うところもあるがしれないけど……そこはちゃんとウチにもいるMS秩序がいるからさ」

 

 遠回しにリーシャのことを言っているのだが、伝わっているつたわっていないはどうでもいいのだ。ただ、言っておかねばならないと思っていただけである。

 

「なるほど、秩序の騎空団団員がいるなら安心だ」

 

「あ、そう言えばさ」

 

「なんだ?」

 

「ジークフリートを除いたフェードラッヘ3人組って誰がいちばん強いの?」

 

「……そういえば、考えたこと無かったな」

 

「まぁ単純な俺の疑問だってだけだからさ……」

 

「これからのコンビーネーションの為にも、1度手合わせしておくべきか……」

 

 実力は、いつまでも伸び続けるものである。適度な手合わせをすることで、どんな時にどんな動きを行えばいいかがよく分かるのだ。

 

「……っと、そろそろ時間のようだな」

 

「じゃあ、今回の団長相談室はここまでにしておこう。皆さん、ご視聴ありがとうございました〜」

 

 促されるままに電源を落とし、番組を終わらせるグラン。そして、そのまま部屋から出ていく。

 

「ところで、最初の夢の話は本当なのか?」

 

「嘘語ったところでしょうがないじゃん……ん?」

 

 ふと、グランの目の前をルナールが横切った。平然としており、前回前々回のような失態は、まるで犯していないように思える。

 しかし、だ。それが逆にグランの疑問を煽っていた。今回の放送で、何事もなく平然とルナールが出てくるわけがないのだ。

 

「ルナール…?」

 

「あ、団長さん。番組面白かったわよ」

 

 ニコッと、微笑み返すルナール。耐性がついて鼻血を出さなくなったと考えればある意味喜ばしいといえば喜ばしいのだが、その清々しい顔はあまりにも違和感があった。

 いつものイケメンを見た時の反応や、耽美絵の妄想をしている時のような顔や雰囲気は一切見られなかった。そして、その清々しい顔はグランはどこかで見たことがあるような気がしていた。

 

「あ、あぁ」

 

「それじゃあ私はこれからご飯食べに行くから……ランスロットさんもどうですか?」

 

「そうか?なら、一緒に行こうか」

 

 そして、まさかのランスロットをご飯を誘うというやり方までしてきたのだ。これはもう謎が謎を呼ぶ急展開でしかなかった。グランは2人を見送ることしか出来なかったが、ふとここでソフィアのいる救護室が近いことを思い出したので、グランはそこに向かっていった。

 

「あ、ルナールさんですか?」

 

「なんかした?」

 

「あぁ……先程、団長さんの番組が始まる前にこの部屋に来たんですよ」

 

「ほう……まぁここにも映像映し出す奴は置いてあるから…見れないことも無いか」

 

「そしたら途中で鼻血がとんでもない量出てきて……」

 

「出てたのか……」

 

「メタノイアさせました」

 

「あの清々しい顔をどこかで見たような気がしていたが……そうか、ソフィアのメタノイアの効果か……」

 

 つまり、こういう事である。

 ルナールは前回前々回の反省から、救護室でソフィアの回復を即座に受ける事によって、自分たちに迷惑がかからないようにとソフィアに説明したのだ。

 ソフィアはOKを出して、ルナールは番組を閲覧……案の定鼻血を大量に出したのでソフィアが蘇生。

 そして、蘇生されたかつ妄想も極限を迎えた状態だったので、その時点で既にネタ帳に書き込んでいく。

 そして、その後でここを後にしてグラン達と鉢合わせた……という事なのである。

 

「……必死だな、あいつ」

 

 しかし、耽美絵師であるルナールは悪くないのだ。悪いのは、それっぽい言葉をついつい吐いてしまう自分とフェードラッヘ組なのだから…




SRランスロットはネタが多いですね。
ルナール先生今回で何回尊死したのか自分でも数えてません


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不撓不屈の騎士、この一瞬に全てを賭けようか?

すいません、更新場所間違えました


「今回のゲストはヴェインさんです」

 

「ランちゃーん、見てるー?」

 

 カメラに向かって手を振るヴェイン、実に楽しそうはしゃぐその姿はまるで子供のようにも見える。

 

「今までこうやって見てきたけど、案外この部屋って広いのな」

 

「え、うんそうだけど……何、狭いと思ってた?」

 

「皆の鎧がごっついからなー」

 

「あー、ジークフリートとか凄いもんね。よく考えたら映像越しだと分からないこともあるか……」

 

 ランスロットやヴェインはともかく、パーシヴァルやジークフリートは鎧がかなり装飾過多だったり分厚いものだったりと如何せん面積を取っている。そこを考えれば、カメラ越しだと狭く感じるというものだろう。

 

「というか、何でフェードラッヘ組は鎧着てんの?脱いできてもよかったのに」

 

「まぁー、そこは気を引き締めるため?ってな!!」

 

「へー……そう言えばヴェインは、あの中で料理が1番できるよね」

 

「そうだなぁ、ランちゃんが料理できないからさ。ジークフリートさんやパーさんは料理できる方だし」

 

「俺パーシヴァル料理できないと思ってたよ……」

 

「誤解されがちだけど、パーさんは学ぼうと思ったものはきっちり勉強していくタイプだからなぁ……料理も多分実家の侍女さんにでも習ったんじゃないか?」

 

 パーシヴァルが料理しているところを思い出して、グランはウンウンと頷いていた。この団にも料理好きはいるので、勉強していくのだろう。

 

「そうそう、料理といえばさぁ」

 

「ん?足りない食材でもあった?」

 

「いやいや、俺ずっと思ってたんだけど……リュミエール聖騎士団のバウタオーダさんいるじゃん?」

 

「あぁうん……彼がどうかしたの?」

 

「歌いながら料理しててさ、あの低い声で歌うもんだからすごくフライパンとかに振動が行くんだよ」

 

「う、うん」

 

「だからなのかさ、同じ調理の仕方同じ具材を使っても全く味が変わるんだよなぁ」

 

「……そうだったの?確かに作ってもらったことある炒飯はすごくパラパラしてたけど……」

 

 意外な事実をヴェインから告げられて、驚くグラン。あの低音で歌うことに、まさか調理そのものに影響を与えるとは思っていなかったのだ。今度から、頑張って低音で歌ってみようと思うグランであった。

 

「でもなぁ、多分俺らには難しいと思うんだよその調理方法」

 

「え、なんで?」

 

「ドラフの男性ってさ、殆ど声が低いんだよ……しかもよく響くっていう共通点もある」

 

「………まさか、ドラフ男性の新しい特徴を見つけちゃった?俺達…」

 

「そうかもしんない……これランちゃんに言っても、何かよく分からないみたいな顔されたけど」

 

「いや普通そんな反応になるわ……いやでも、そうかぁ……種族の差で料理に区別がつくのかぁ……今度団内で、各種族別の料理自慢大会でもやって見る?同じ具材同じ調理方法で同じ料理を作ってもらう感じで」

 

「お!?それ楽しそうだなぁ!やろうやろう!」

 

 グランの提案に楽しそうに乗るヴェイン。にっしっしと笑うその姿は、グランから見ても白竜騎士団の隊長副隊長が人気の理由がわかるものであった。

 

「だからモテるんだなぁ」

 

「ん?持てるって何が?」

 

「ん?いや、ランスロットもヴェインも女性からモテるからさ……そういう所が人気の秘訣なのかなぁって」

 

「俺もランちゃんも、女の人に持たれるほど軽くないって!むしろ逆で俺達の方が持っちゃうかもな!あ、何なら俺ランちゃんまで担ぎあげちゃうかも」

 

「……ん?」

 

「ん?」

 

 何故か微妙に会話が成立していないような気がしたグラン。しかし、あまり気にしていると頭が痛くなりそうだったので、ここらで序盤の雑談は切上げて置こうと思うのであった。

 

「さて……そろそろお便り行ってみよう」

 

「待ってました!!」

 

「さてさて……『団内で料理を作れるメンバーの中で、教えてもらったり逆に教えたりすることはありますか』匿名希望」

 

「うーん、全員!!」

 

「え、それってどっちの意味で?」

 

「どっちの意味もだなぁ……って言うのもさ、俺達が作る料理って微妙に違うものなんだよね、同じもの作るにしても」

 

「ん?例えば?」

 

「そうだなぁ……ローアイン達と俺の料理だと、レストランとかの売店で売る料理の作り方、俺は騎士団に振舞ったりする料理の作り方……って感じかな?」

 

「何となくわかるようなわからないような……」

 

 要するに、何もかもが同じでもどういった料理を作るか…料理を作る癖が無意識に染み込まされているということなのだろう。

 

「だから、全員で教えあってるって状態なんだ」

 

「へぇ……」

 

 素直に感心するグラン。同じ料理でも、そこまで違いが出るのなら自分も教えて貰いたいものだ、と考えるのであった。

 

「とりあえず、2つ目行こうぜー」

 

「よし来た……2つ目は…『自分の武器以外の武器を使ってみたいと思ったことはありますか?』」

 

「うーん……」

 

「ないならないでいいと思うよ?」

 

「いや、むしろ多すぎるんだよなぁ」

 

「え、そんなにあるの?」

 

「剣も槍も弓矢も銃も何もかもを1度は使ってみたいと思ってる、騎士団のみんなとかランちゃんの為になることなら、なんだってしたくなるしさ」

 

 根底にあるのは、白竜騎士団に対する気持ち。それがあるからこそ、ヴェインは色々は武器を使ってみたいと思うのだろう。無論、自分自身に対する興味もない訳では無いのだろう。

 

「でもヴェインは、何となくだけど重たそうな武器を使ってるイメージがあるかも」

 

「え、なんで」

 

「……いつものイメージ?」

 

「あっちゃあ……そうかイメージかぁ…一応、俺だってククルちゃんの使ってる武器とかは使ってみたいとか思ったことあるぜ?」

 

「あれは特注だからねぇ……まぁでも、使ってみたいと思わなくもない」

 

「団長ならきっと使えるって」

 

 謎の励ましだが、グランは褒められて悪い気はしていなかった。しかし、あれはククル専用の武器なので、自分が使うには自分専用のを作ってもらう必要があるだろう。

 

「そうだといいけど……と、とりあえず三通目行ってみようか」

 

「よーし、ラストだな!」

 

「『よく子供たちと一緒に居ますが、子供が好きなんですか?』」

 

「子供かぁ……大好きだぞ?」

 

「よく遊んでくれてるしね……俺が構ってやれない分、団の大人達が子供たちをちゃんとお世話してくれてるから俺達もちゃんと動くことが出来ます」

 

 この団には、子供だけが乗船しているというパターンがある。ヤイアや、アレクなどがいい例である。

 

「おかげでいい子に育ってきてます…!」

 

「おいおい、随分と子沢山の父親だなぁ」

 

 グランのことを父親と言いながら、楽しそうに笑うヴェイン。それほどまでにグランの顔が父親のように見えたのだろう。

 未だ少年の身で団長になっているような人物なのだ、いくらか早熟であってもおかしくはないだろう。

 

「あぁそう言えば、偶に白竜騎士団のみんなに頼んで、子供たちの親とかの様子を見に行ってもらってる時があるんだよ」

 

「あ、ヤイアのお父さんとか?」

 

「そうそう、子供の心配とかしてる人もいるし……逆に、今ご両親がどんな状態なのかを報告しに行ってる」

 

「助かるよ」

 

「いいよいいよ、それにこれ白竜騎士団だけがやってる訳じゃないんだよな」

 

「え、そうなの?」

 

「リュミエールも、他の騎士団だってみんなこの団の役に立とうとしてる。この団に救われたと思っている人も多いってことさ」

 

「……人徳ってやつ?」

 

「人徳ってやつ」

 

 ヴェインのその言葉に破顔する程に笑みを浮かべるグラン。自分が褒められるということが、彼にとってはかなり嬉しいことなのである。とはいっても、毎日褒め倒されているような気がしなくもないヴェインなのであった。

 

「さて、お便り全部読み終わったわけだけど……実際、この番組どう思う?」

 

「楽しいと思うぞ!俺もずっとこの団にいるけど、まだまだちゃんと知らない人とかいたりするしな。ちゃんと知り合えてこそみんなで食べる飯がさらに美味くなるってもんさ!」

 

「そうそう、元々知らない人同士が知り合える機会を作るのがこの番組の目的なんだから」

 

「の割には、女性団員にセクハラ働いてないか?団長」

 

「それは言わないで欲しいかなぁ」

 

 苦笑いをしながら、グランはあさっての方向に視線を向ける。男の欲望に忠実すぎるのも、如何なものかという話だが……グランはどうにも辞められないようだ。

 

「ま、本人達が本気で嫌がるようなことはしないのは分かってるしな、団長は……そこら辺のボーダーライン見極めるの上手じゃないか?」

 

「そうかな?確かに本気で嫌がることはしたくないけど……」

 

「まぁ普通、セクハラはしちゃあダメなんだけどな」

 

「ごもっとも……」

 

「まぁ何度も落とされてるのに、セクハラやれる不屈の精神は逆にすごいと思うぞ」

 

 同意を求めている訳では無いが、しかしそれでも言ってしまうことがあるのはしょうがないだろう。というのがグランの弁解である。10にも満たない子供でも、もう少し我慢はできるそうなものだが。

 

「……っと、時間大丈夫か団長」

 

「あぁ、もうそんな時間か……」

 

 そして、気づけば番組終了の時間が迫ってきていた。やはり、話し込むと時間が経つのがとても早く感じてしまう。グランはもう少し長めにやれないかと思ったが、それは冗長になりかねないので自分自身で即座に頭を降って否定した。

 

「さて、今日はこの辺で終わりにしたいと思います。皆様ご視聴ありがとうございました、また次回おあいしましょう」

 

 そう言ってから、グランはカメラの電源を落とす。そう言えば、今日はルナールが引っかかりそうなことを言っていなかったな、と自分の基準でグランはそう思っていた。

 何が琴線かはわからないが、おそらく今回は大丈夫だろうとグランは踏んでいた。

 

「あ、団長俺これからランちゃんとパーさんと出かけるから、また後で」

 

「あ、うん了解。じゃあまた後でね」

 

 そう言って、一旦部屋の外に出てから別れるグランとヴェイン。その後、グランは何となくルナールの部屋の前に来ていた。

 

「鼻血やら前もって医務室にいるやら……段々と悪化して行ってたが…今回は大丈夫だろう、今回は……」

 

 溢れる嫌な予感を抑えながら、グランはルナールの部屋の扉をノックする。返事は帰ってこない、留守なのだろうか?

 

「……ルナールー?居ないのかー?……ん?」

 

 ドアをノックしているうちに、グランは気づいた。ドアに鍵が掛かっていないのである。この団では、一応部屋の扉にはそれぞれ鍵を設けている。殆どの団員がノックしてから入るため、あまり意味を為していないが、プライバシーを遵守する……主にルナールが鍵を使用しているのだ。

 

「……ルナールが部屋を開けてる…?お邪魔しまーす…」

 

 本来、いようがいまいがルナールは部屋に鍵をかける。耽美絵を見られたくないからだ。それと、未成年には見せられないのものとかもあるのでそれを見せないようにするための保護として、である。

 だからこそ、開いているわけがないのだ。

 

「ルナールー…はっ!?」

 

 ドアを開けた瞬間、そこにはルナールが倒れていた。それも、まるで天寿をまっとうしたかのような笑みを浮かべていた。

 

「ルナール!!お前なんで死んでるんだ!!」

 

「……」

 

「ん?何だ?」

 

 ルナールの口から漏れている言葉、それを逃すまいとグランはルナールの顔に耳を近づける。

 

「めっちゃ……尊い………」

 

「お前……尊さが……」

 

 つまりはこういうことである。ヴェインのランちゃんの連呼で、それだけで尊さが彼女の中で振り切ったようなのである。

 グランはこの後泣きながらソフィアの元へと連れていった。そして、ちゃんと蘇生してもらってからルナールは自室へと戻って行ったのであった。その時のソフィアの困惑した表情は、グランもルナールも忘れることは出来ないであろう。




ヴェインはサブに入れておけば多分なんとかなる感じのSSRだと思います


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眠れる輝竜、舐めると痛い目を見るよ?

「はい、今回のゲストは白竜騎士団見習いのひよこ班アーサー君です」

 

「よろしくお願いします」

 

「えー、ゲスト紹介の時に何故この団に居るのか?という疑問を持った人もいると思うので、解説をどうぞアーサー」

 

グランはカメラに向かって手を伸ばす。アーサーはその方向に目線を合わせて、体を向けて体を強ばらせながらもハキハキと喋り始める。

 

「は、はい!えっと……ランスロット…さんが言うには、この団にいる事で騎士団生活で自分がどのように過ごすかの練習……と聞きました!」

 

「って事です、因みにここでは団員全員差がないように俺が徹底してるので、団長だとか隊長だとかで優劣をつけないようにしています。

別に団長とか隊長って呼ぶ分には構わないんだけれど……ランスロットはそこら辺凄まじく徹底してるので、呼ばせないようにしています。敬語でようやく許されました」

 

「えっと……団長はどうなんですか?」

 

再びグランを向き直り、首を傾げながらアーサーは問う。グランサイファーに乗船している団員は、軽く100は有に超えている。これだけの大きい団を従えているグランは、団長と呼ばれることにどう思っているのか……それを聞こうとしていた。

 

「どうって何が?」

 

「自分が団長と呼ばれる事に」

 

「うーん……まぁ、実際団長だから受け入れてるよ?」

 

「本音は?」

 

「俺を尊敬してくれて嬉しいけど、呼ばれるのめっちゃむず痒い……皆もっと俺の事名前で呼んで欲しい、フランクにいってもいいんだぜ?」

 

「そこまで行くのはどうかと思いますけど……」

 

「ま、こんな本音はこういう時だからこそ…言えるもんなんだよね。偉い人と会う時とか、グランって呼ぶ人は皆団長呼びになる」

 

「公私分けて接している、という事なんですね」

 

「ま、そんな所だね……さて俺の話はさておいて…アーサーの話に行こうか」

 

「あ、すいません……話逸らせちゃって」

 

少し申し訳なさそうにするアーサーに、苦笑しながらグランは大丈夫だと一言言う。そこまで気にしていることでもないし、そもそも談笑する番組なのだ。なんら問題がある訳では無い。

 

「いいよいいよ、気にしないで。って訳で……今回代表としてアーサーを読んだ訳だけど、実はアーサーの所属しているひよこ班は全員ここに所属しています

この団の生活はどう?」

 

「結構楽しんでますよ、色々勉強になることも多いし……ただ」

 

「ん?」

 

「ランスロット…さんは『騎士団にいるよりこっちの方が生活が濃密だ』と言っていたんですが……それがよく分からなくて」

 

「あー……」

 

「団長さんはどういう意味かわかりますか?」

 

「分かる、分かるけど……よし、簡単に…説明しよう」

 

「は、はい」

 

グランの勢いに押されて、アーサーは再び体を強ばらせてグランの話を真面目に聞こうとする。再三申し上げるが、別にそこまで真剣なことは言うことはほとんどない。

 

「騎士団とこの騎空団が共通していることはみんなが同じ生活、同じ規律で生活する空間……って言うこと、それは分かるよね?」

 

「はい」

 

「けど、騎士団は自分だけじゃなくてある程度他人も含めた共同生活……こっちはプライベートや趣味丸々持ってきてもらってるから1人部屋なんだよ、そこに違いが出てくる」

 

「……えっと、例えば?」

 

「人には見せられない趣味がし放題……あ、犯罪はダメだよ?」

 

どの口が言うのかはわからないが、グランはカメラ越しに注意する。どこぞの女騎士の部屋の前に立って、観察する元アルビオン領主が幾度となく確認されているので遠回しすぎる注意である。

 

「犯罪じゃない範囲で人に見せられない趣味……?」

 

「極論女装とか」

 

「……確かに見たら関係がギクシャクしそうだなぁ…」

 

アーサーは渋い顔で反応を返す。頭の中で誰かが女装していたのだろうか?それを問う気も起きないグランであった。

 

「さて、場も温まってきたことだしお便り行ってみよう」

 

「お、俺にあるんですか!?」

 

「あるよー?あるある……さて1通目…えー……」

 

チラッと『攻めですか?受けですか?』の質問が見えたが、グランはそれを華麗にスルーして別のを取り上げる。そろそろ賢者モードにぶち込んでやらないとだめだろうか、とルナールの顔を思い浮かべながら内心渋い顔をしていた。

 

「『騎士団では剣を扱いますが、この団でも剣の使い手は沢山います。誰かを目標にしていますか?』」

 

「そうだなぁ……確かに、この団には剣の達人が多いですよね」

 

「そうだね、アーサーは誰か勉強になると思ったことはある?」

 

「やっぱりヨダルラーハさんやアレーティアさんですよ!」

 

「あの二人から教わるのは至難の業じゃない?」

 

教えて貰えるには教えてもらえるかもしれないが、あの二人は達人を飛び出た何かなので、単純に見たり聞いたりする場合では確実に勉強にならないと……グランはそう思っているのだ。

 

「いえ!2人の心意気や剣を使っている時の感覚などを聞くのも勉強です!!」

 

「まさかの精神論の方を学んでいたとは……」

 

剣の使う道ではそれも確かに重要なのかもしれないが、そちらの方がよっぽど習うより難しいのではないだろうか?

 

「まぁ、この団には他にも色々な剣の使い手はいるからね。ただ武器として振り回すんじゃなくて、演舞として舞うための剣の使い道なんかもある」

 

「ガイーヌさんやユエルさんですね……」

 

「ん?2人となんかあった?」

 

「い、いえ……その、色々と凄いなぁと思ってて……」

 

そういうアーサーの顔は真っ赤である。未だウブな少年の心から見ると、あの二人の格好は色々と刺激的すぎるようだ。グランはもう慣れているので、寧ろこっちから攻めていくが。しかし、そんなことを少年に言えるはずもなく……

 

「確かにねぇ……さて、2通目いってみよう」

 

誤魔化すしかないのである。そして、そのまま流れるように別のお便りを読もうとハガキを漁る。アーサーも、それで話が流れたので何も追求することは無かった。

 

「『騎士団では料理も食べますが、この団の料理で驚いたことはありますか』」

 

「驚いたこと、かぁ……むしろ、料理が得意な人がこれだけいること自体が驚きのようなものですかね」

 

「ん?そうなの?」

 

「はい、しかもどれも絶品な美味さなんで……」

 

「多分騎士団だと料理作るのって給仕の人がやってくれると思うんだけど……」

 

「どっちかと言うと僕らの味はヴェイン……さんの方ですかね」

 

「あぁ、美味しいよねヴェインの作るスープ」

 

豆を煮込んで作るスープ、単純だが質素且つ美味しいという大変お財布にも優しいスープはグランの心を蕩けさせているのだ。実際美味しいものなのだから仕方が無い。

 

「ヴェインのスープ……じゃなかった、ヴェインの料理以外で印象に残ってる人の料理とかある?」

 

「んー……セワスチアンさんの…」

 

「やはりリュミエールグルメか……まぁ確かに美味しすぎるのがいけないんだけどね」

 

恐らく団最高の食事は、リュミエールグルメが支配しているだろう。あれを突破することは愚か、肩を並べることすらも難しいレベルだとグランは考えていた。

これからもこんなのを食べられ続けるリュミエール聖騎士団が、グランはとても羨ましかった。

 

「俺が女だったらセワスチアンに結婚申し込んでる」

 

「え、何の話ですか急に」

 

「いや、リュミエールグルメずっと食べ続けてたいなぁって……」

 

「料理で結婚相手決めますか……」

 

「料理は必要なファクターさ……っと、話逸れた…三通目『騎士団生活では他の人と相部屋になるので、趣味を持つことは難しいです。そんなアーサーさんの趣味はなんですか?』」

 

「その流れで趣味を聞くんですか…?」

 

「正直俺もびっくりした……まぁとりあえず趣味ってなんかある?」

 

「うーん……鍛錬ですかね?」

 

「もっといろんな趣味持とうぜ!って俺が言えたことじゃないか、俺も趣味が鍛錬……というか学ぶ事?」

 

「団長さん色んなことやってますし、あれ全部趣味なんですか?」

 

「訳分からんくらい強い婆さんと戦うことは、趣味のうちに入らんぞ。ほんと何だあの婆さん」

 

「でも強いひととは戦っていきたいです、強くなりたいですから」

 

少し前のめりに意見を言い放つアーサー。彼の飽くなき強さの探究心は、これほどまでに強いのである。

 

「うんうん、その気持ちをこれからもちゃんと持っててくれよな……っと、もうこんな時間か」

 

「話し込んでると時間ってあっという間ですね」

 

「そうだな、まぁ別に何か重要な話をするような場じゃないし……こんなもんだよ」

 

「こんなもんですか」

 

終わりの時間が近づいてきたことで、少しだけ名残惜しくなっているアーサー。しかし、当然のことながら別段大切な話はしていないとグランは改めて説明をし直す。

 

「さて、今回の団長相談室はここまでとなります。皆さんご視聴ありがとうございました。」

 

そうしてカメラの電源を切って、アーサーとグランは部屋の外に出る。アーサーは自前の剣……無論鞘に収めたままのものだが、それを見せてグランを誘う。

 

「団長さん、この後1戦どうですか?」

 

「お、鍛錬か?いいよいいよ、十分に付き合ってあげるから」

 

グランも今装備している武器を見せながら、いい笑みを浮かべる。ふと、今の会話をルナールが聞いていたらどうなっていただろうと思ったが、流石に今回は放送中にそういうルナールが聞いたら尊死する様な単語や文章を発した記憶はないので大丈夫だと、グランは少しだけ油断していた。

 

「……いやでも、この流れだと…」

 

「……団長さん?どうかしましたか?」

 

「ん?いや……ごめん、ちょっとだけ待っててくれない?」

 

「へ?は、はい……」

 

アーサーを置いて、グランはとある部屋に向かっていく。無論、ルナールの部屋である。前は鍵が開いていたので、簡単に中に入ることが出来たが、今回は鍵がかかっているらしくキチンとドアは開かないようになっていた。

 

「……ルナール、いるのか…いないのか……何か音がするし、多分いるなこれ……」

 

中からは奇妙な音が聞こえてきていた。グランはその音に聞き覚えがあった。それは、大急ぎで書類にサインしてる時に出るペンと机がぶつかり合う音だ。今回は、それを更に激しくしたかのような音量になっていた。

 

「……ん?なんか声も…」

 

「ふ、ふふ……ショタ同士…滾るわ……!」

 

「……」

 

グランは正直、ドアがあったらそっ閉じしたい気分になった。恐らく今の自分の顔は、真顔を通り越して死んでいることだろう。それほどまでに感情が死んでしまった。

 

「そ、それを敢えて寝取らせて…!?そしておじさんのハーレム……うーん、偶にはそっちもいいかもしれないけど…無しね」

 

そのおじさんはどこから出てきたのかとか、何故ダメだったのかとか、そもそもハーレムっておじさんなにしてんのとか、色々と突っ込みたいところはあったが、抑えるまでもなくグランの口からそのツッコミが出ることは無かった。

 

「……帰ろう」

 

グランは、ルナールを今回は放置することにした。ペンが動かせている以上、唐突に死んだりしない限りは大丈夫だろうという考えである。本音を言えば、今の状態のルナールにはあまり関わらない方がいいという教訓があるので、関わり合いたくないということである。

 

「さて、アーサーとの特訓に行くか」

 

そしてそのまま、グランはアーサーと特訓に行ったのである。後日発見されたルナールは、何かをやり遂げたかのように凄くいい笑顔で眠っていたという。

無論、未成年をそういった青年本に出すのは駄目である。仮にランドセルを背負っていようが、18歳以上にしなければならないのである。そのせいで、ルナールはリーシャオリジナルの懲罰房行きになったのであった。




色々とオリジナル設定です


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フェードラッヘの騎士達の任務

 グランとフェードラッヘの騎士達は、グランサイファーに寄せられた依頼の一つである魔物退治を請け負っていた。

 その依頼では、魔物が大量発生しているために数を減らして欲しいというものであり、ある程度強力な人手を募って行くことになったのである。そして、ある程度班分けをして四方八方から攻めることで魔物達を減らしていくという作戦で行くことになり、グラン達も別れて行くことになった。因みに、ひよこ班のメンバーも参加しているが、それはヴェインに全員ついていくことになっている。ほかは、全員一人での参加である。

 

「……とは言ったけどさぁ!!こんなに多いなんて聞いてないけど!!!」

 

「いやぁ、しょうがねぇだろ?森の入口から既にすんげぇ数いたんだからよォ」

 

「私も手伝います!!」

 

「ありがとう全体攻撃してくれて!!!」

 

 グランはビィとルリアを連れてきていたが、正直なところ魔物の数が多すぎるためにルリアの方が数を倒しているという結果になっている。プロトバハムートは強し。

 

「うおおおお!!」

 

 切って切って切りまくって、グランは逆に冷静な思考を手に入れていた。『あー、この剣後で洗うの面倒だなぁ』だとか『血の匂いキツすぎてエルーン達から嫌われるんじゃね?』だとか色々なことを考えながら、ひたすらに魔物を討伐して行った。

 

「GYAOOOOOOO!!」

 

「ヒドラです!!」

 

「うるせぇぇぇぇえええええ!!!」

 

 かつて1度殺されたヒドラだが、正直今相手になることは決してないのである。一撃あれば十分だと理解している。

 既に、ヒドラは絶命していた。

 

「ビィ!!他のみんなの様子見てきてくれ!!こっからでも見れると思う!!」

 

「おう!!」

 

 ビィに他の者の観察を任せて、グランはそのままルリアと共に進んでいく。プロトバハムートの一撃は確かに強力だが、ルリアの体力の問題もあるので乱発することは出来ないだろう。

 

「ん?」

 

「どうしたァ!!」

 

「ジークフリートのいる方角だけどよォ、ウルフが空を飛んでるぜぇ」

 

「流石ジークフリートさんだ!!空を飛べないはずの魔物を空に飛ばせるなんてなぁ!!」

 

「GYOOOOO!!」

 

「ヒドラです!!」

 

「またかよ!何体いるんだよここの島!!最早ここヒドラ捨てられた説あるだろ!!」

 

 叫びながら、血潮を飛ばして魔物は討伐されていく。死屍累々となった道と共に、グランの体はトマトのように真っ赤に染っていく。こうは言っているが、別段何かある訳でもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「倒したはいいけどどう処理すんだよこの魔物達!!グランサイファーの食料庫入れとく!?」

 

「だったら干し肉にしないとな、ひとまず一種類ずつ食べてみたが…そのまま食べるに適さない魔物もいるから、気をつけよう」

 

「え、ジークフリートあれ食べたの?一種類ずつでも何体いると思ってんの?」

 

「サバイバルは慣れっこだ」

 

「違う、その回答は俺の求めているものと違う」

 

 他愛ない話をしながら、グラン達は魔物の肉の処理を考えていた。いくらなんでも多過ぎると村からも渋い顔をされた。これでも村で8割引き取ってくれた辺り素晴らしくいい村だろう。

 

「いやまさか一人で100体以上倒す羽目になるとは思わなかった」

 

「そして倒したのはいいが、ジークフリートが他のヘルプに回れるほど余裕があったことも驚いている」

 

 パーシヴァルが困った顔をしながらそう呟いていた。ジークフリートは首をかしげていたが、そこがおかしい所なんだぞとグランは叫びたくなっていた。

 

「ていうか日を増す事におかしくなってない?今日どうやって移動してたのジークフリート」

 

「ん?地面を歩いていると、上からの奇襲に気づきづらいことに気づいてな、枝から枝に飛び移りながら移動していた。無論、時折移動する最中に攻撃も加えながらな」

 

「頭おかしい……」

 

「実は星晶獣か何かじゃないのか、お前は」

 

 パーシヴァルでさえそう突っ込まざるを得ないほどに、ジークフリートはおかしなことをしているのだが、ジークフリートはそれに気づいていない。

 

「……まぁ、とりあえずもっと乾かすか」

 

「団長、何日滞在するんだ?」

 

「んー…5日くらいかな。その間に出来るだけ干し肉にしちゃおう、他は……まぁ物を凍らせることが出来る人達に肉を凍らせてもらって、保存が効くようにしよう」

 

「そうだな、それがいいだろう」

 

「はー、疲れた疲れた……ん?どったのひよこ班の諸君」

 

 グランは、よく考えたら一言も喋ってないひよこ班の面々のことが気になって声をかけていた。それを代表するかのように、モルドレッドが一言だけ発した。

 

「基準がおかしくないですかね、団長達」

 

「……え?ジークフリートじゃなくて?」

 

「普通これだけの魔物は、100人とか200人の兵でやるものだと思うんですが」

 

「……?」

 

「今回、何人で終わらせましたかこれ」

 

「えー……俺でしょ、パーシヴァルでしょ、ランスロットでしょ、ジークフリートでしょ、ヴェインでしょ、ルリアとひよこ班の4人で……10人だね」

 

「おかしくないですかね、しかもその内俺ら1割も狩れてないと思うんですが」

 

「大丈夫大丈夫、ぶっちゃけ俺と同い年の頃だと俺そんなに強くなってなかったよ?多分俺より強くなれる素質あるからさ皆」

 

「違う、そうじゃない」

 

 グランの勘違いに辟易するモルドレッド。モルドレッドはあれだけの大量の魔物を、自分達4人を抜いた6人で倒しきれるわけがないと話しているのだが、グランは『力が及ばず全く倒せなかった』と勘違いしていた。

 

「……でも、これどうやって持ち帰る気ですか?」

 

「そうだなぁ……半分以上村が貰ってくれたとはいえ…それでも食料庫が魔物の肉だらけになってしまうな」

 

 ランスロットとアーサーが話し合っているが、あまりいい案が思い浮かばなかった。事実、山のように積まれた魔物の肉をどう処理するかは問題なのだ。保存するとは言っても、量が量である。

 

「……よし、なら団から助けを呼ぼう…そして突発的だけど肉だらけのバーベキュー大会だ」

 

「まぁ、突発的に英気を養えると思えば……」

 

 というわけで、何だかんだでグランサイファーで肉の処理を行うことになったのであった。それでも、一体どれほど食べればいいのかは全くわからないが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか、先に風呂に入ってこいと言われるとは思っていなかった」

 

「いや、寧ろなぜ言われないと思っていたんだお前は……」

 

 現在、グランサイファー備え付けの浴場施設で一同は体を休めていた。血の匂いを落とすために、せめて石鹸の匂いになってこいと団員の殆どから言われたためである。

 

「もう血の匂い染み付きすぎたから、あえて誰も言わないんじゃないかと……」

 

「いやぁ、それはちょっと無理だろ」

 

「だよねぇ」

 

「俺達も……しばらく鎧は着込めないな」

 

「あぁ、綺麗に手入れしてやらないとな」

 

「ランちゃんの鎧真っ赤だったもんなぁ、パーさんみたいになってた」

 

 ヴェインが、魔物の血塗れになったランスロットの鎧を思い出しながら体を洗っていた。

 黒い鎧のジークフリート以外は、全員服や鎧が真っ赤に染っていたのは最早仕方の無いことである。

 

「うーん……俺の服も取替えないとなぁ…青色が真っ赤になってたし」

 

「寧ろあの修羅場でよくルリアちゃんを守れてたよなぁ、団長」

 

「返り血一滴も浴びてませんでしたね……」

 

「匂いすら染み付いてなかったけど…どういうことなんですかね…」

 

 ルリアの体の匂いからは、血の匂いは感じ取れなかったのだ。彼らの鼻が麻痺しているだけでなく、唯一そのままバーベキュー大会に参加し始めているというのが明確な証拠である。

 

「星晶獣の力でしょ」

 

「便利っすね……」

 

「まぁ、早く体洗ってバーベキュー大会行かないとね」

 

 そう言いながら、グランは男風呂の前におそらく鼻血を出して倒れているであろうルナールを思い浮かべる。偶然浴場の入口で鉢合わせしたのだが、一緒に風呂に入ると言った途端謎の奇声を発していたのだ。ハンサム・ゴリラでも飲んだのだろうとグランは脳内解釈をしておくことにした。仮に倒れていたとしたら、バーベキュー大会に参加していないメンバーが介護してくれているだろう。

 何だったら、ジャミルが助けているだろう。

 

「……そう言えば、ジャミルも風呂入れば良かったのに」

 

「んー?どうした団長ー」

 

 ヴェインが顔をのぞき込む。『なんでもない』と一言だけ言ってそのまま体を洗い終えたあと、よく体を拭いてバーベキュー大会へと乗り込む準備をするのであった。

 因みに、鼻血のあとすらも残さずルナールは消えていた。ジャミルだろうか。

 

「あー、バーベキューバーベキュー」

 

「いっぱい食おうなぁ、皆ァ!」

 

「流石の俺も空腹が過ぎている……」

 

「あぁ、魔物の肉とはいえ食べれるのも多かったからな」

 

「……ヒドラから得た肉は美味しそうだったな」

 

 それぞれ思い思いの言葉を言いながら、甲板へと向かっていく。グランサイファーで行われている突発的なバーベキュー大会は、突発的だったにも関わらずほとんどの団員がその肉を頬張っていた。何人かは、体重を気にしていたが。

 

「おらおら!ひよこ班の君らもいっぱい食べろよ!?騎士団にしても騎空団にしても、体が資本だからな!!」

 

「「「「はい!!」」」」

 

 綺麗に揃った返事は、流石は白竜騎士団の見習いと言ったところだろう。その元気な声を聞きながら、グランは肉を頬張っていた。他の者達も遠慮なくガツガツと食いはじめる。

 

「ふむ……タレが美味いな」

 

「確かに……何を使っているんだろう」

 

「これあれだなぁ、多分……まぁ作った人に聞いてみっかぁ」

 

 ヴェインは肉のタレの味を噛み締めながら、タレの味を作ったものを思い浮かべる。恐らくはローアインやバウタオーダのどちらかだろうと踏んでいた。リュミエールグルメだと、ohmyリュミエール!と叫んでしまいかねないからだ。

 

「はー……にしても…」

 

「ん?どうかしたか団長?」

 

「……仕事おわった後の飯は美味いなぁ」

 

 そう呟いたグランの顔はとても穏やかな顔をしていた。あれだけ多くの敵と戦い、そして終わらせたのだ。皆の協力があったとはいえ、疲れるものは疲れるのである。

 

「……もっと食うぞぉ!!」

 

「「「「「「おー!!」」」」」」

 

 周りにいた団員達が、グランのその声と共に大声を出す。パーティなので騒がしくて当たり前なのだが、そうやって騒がしくしていられることにグランは嬉しさを感じて、そのまま肉をひたすらに頬張り続けるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ルナールさん、最近失血し過ぎですよ」

 

「尊さが……」

 

「はいはい、尊いのは分かったので……私の蘇生も確定じゃないので、多少のきついのは我慢してくださいね」

 

「え?」

 

「実はあれ失敗すると余剰エネルギーが体を駆け巡って、すごく痛いですから。

 今まで1度で成功していたのでルナールさんは、知らないでしょうけど」

 

「あ、待って、自分で立てるからちょっと待っ」

 

 この日、医務室からルナールの叫び声が1度だけ響き渡ったという。因みに、ソフィアの蘇生には別に余剰エネルギーだとかそういうのは存在しない。あまりにも頻度が高いので、これ以上厄介にならないようにソフィアが着いた冗談である。

 ルナールはそれを鵜呑みにしてしまったせいで、無駄に大声を張り上げてしまったようだが。




色々とオリジナルです。


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不滅の群青、私に任せろよ?

「はい、今日はベアトリクスさんに来ていただきました」

 

「ふふん、私に任せな」

 

「その場合お前から目が離せない」

 

「はぁっ!?」

 

 グランの唐突に放った一言により、ベアトリクスは顔を真っ赤にする。グランとしては『無謀すぎるから』『危険すぎるから』などといった理由からの拒否である。

 しかし、ベアトリクスは意味そのままに受け取ったのか、はにかみながら指で遊んでいた。

 

「い、いやぁ……い、いきなりそんな事言われても……こ、公開告白ってやつかこれが…!」

 

「え、何言ってんの?」

 

「え?」

 

「ベアトリクスから目を離したら、いつも何か起こってるから……そういう意味での目が離せない、なんだけど」

 

「な、なんだよぉ……!私ひとりで恥ずかしいみたいじゃんかぁ…!」

 

 今度は照れではなく、羞恥によって顔を真っ赤にしていたベアトリクス。1人で勝手に突っ走るところは、こういうトークでも変わらないようだった。

 

「ま、とりあえず世間話でも……ベアトリクスはお菓子作りが得意なようで…カロリーが凄まじく高いみたいだけど」

 

「ふふん、私は料理が得意なんだ。見直したか?」

 

「いやぁ、料理をしてもお前が作る料理は全部お菓子になるんですけどね。その辺、どういう解釈をしたらいいんですかね」

 

「うぐっ……あ、あれは本当になんでなんだろうなぁ……」

 

「それはともかくとしても……まぁ、ホットケーキくらいならまともだったよな」

 

「あ、前にこっそり焼いた時か?あれもうちょっとちゃんとしたの作りたかったんだけど」

 

「縁は黄色くて中心は茶色くできている以上、立派なホットケーキだと思うんだがなぁ……どうやってあれ以上にちゃんとする気なんだ」

 

「クリームとか果物でデコレーションしたかった」

 

「なんで君パティシエやってないの?」

 

 純粋な疑問をぶつけるグラン。ベアトリクスもそのことに気づいたのか、ハッとした顔になっていた。

 

「……まぁ、組織に入ったのは別にいいことだったと思ってる。パティシエでも、やっていけてたのかは分からないしな」

 

「まぁ、ドジだしなぁ」

 

「だ、誰がドジだぁ!!」

 

「よーし、ならお前の体を亀甲縛りでガチガチに固めて」

 

 久しぶりに、グランは落下した。久々の女性団員とのトークなので、ついつい早いところからセクハラを始めてしまった、というのが彼の言い訳である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま」

 

「きょ、今日はそのまま続けるんだな」

 

「リーシャに『流石に落ちるのが早すぎる』って怒られた」

 

「……確かに早すぎたな」

 

 平然と部屋に戻ってくるグラン。久しぶり過ぎて対処できなかったのは、ある意味彼は自分の失態だと卑下するだろう。

 

「とりあえず、お便り行ってみよう」

 

「誰から届いてるかなぁ」

 

 ワクワクとした気持ちを隠しきれずに、ソワソワするベアトリクス。その様子を微笑ましく見ながら、グランは1通目の手紙を覗いていた。

 

「まず1通目『ねぇ、何であんた本当に作った食べ物全部甘くなるの?』ゼタからです」

 

「そ、それは私にもわかんないんだってぇ……」

 

「……ん?よく見たら裏面に何か……『というのは冗談で、何でそんなに家庭的なの?』」

 

「ゼタァ……!」

 

「家庭的って言うと……お菓子作りを初めとして、裁縫もそれなりに出来るよね」

 

「あ、あぁ……新衣装も自分で作ったものだしな」

 

 ちょっと嬉しさで涙目になりながら、ベアトリクスはグランとの会話を進めていく。彼女の意外と家庭的な所は、案外周知されていないのだ。

 

「そうだねぇ、これで料理もちゃんと上手く出来たらもう立派な嫁に行ける娘になっちゃうよねぇ」

 

「よ、嫁って……」

 

 3度顔を真っ赤にするベアトリクス。照れ芸、恥ずかしがり芸、そしてキレ芸と、顔を真っ赤にする手段には事欠かないなとグランは内心で苦笑していた。

 

「まぁそれ以上のドジっ娘属性をとうするかだな」

 

「わ、私だって上手くやれればいける!!」

 

「亀甲縛り……の話は落ちるし、今度本当にドジっ娘って言われないように特訓でもするか?」

 

「ふ、2人で……だよな?」

 

「いやもうこの番組で言ってる時点で無理でしょ」

 

「うぅ……そうだよなぁ……」

 

 泣いたり笑ったりと、忙しい人だなとグランは思っていた。ところで、彼女はグランよりも一応歳上である。これを見る限り、逆に彼女が年下見えてしまいかねないと、グランは謎の焦燥感を感じていたが。

 

「という訳で無慈悲に2通目『どうして鎧がそんな薄いんですか』ルリアから」

 

「私のはゼタモチーフだからなぁ……って言っても、そもそもあんまり分厚い鎧は着ていけないんだよな、私達」

 

「って言うと?」

 

「そもそも分厚い鎧なんて着てたら、戦う際にちょっと面倒だしな」

 

「あー、星晶獣と?」

 

「星晶獣と」

 

 そう、ベアトリクス達……つまりは『組織』に入っている者達は、全員1人で星晶獣と戦える程の力を持っている。

 ベアトリクスでさえ、1人で星晶獣を倒せる力を持っているのだ。そして、星晶獣の一撃は並の魔物の一撃と比較にならないほどの強力な攻撃である。となれば、あえて体を軽くするために装甲を薄くする方が無難という事である。

 

「でもそこまで露出激しくすることも無くない?」

 

「しょ、しょうがないだろ?一応鎧なんだからできる限り薄くしたいんだよ」

 

「……そう言えば、ユーステスもイルザも普通に服だったな…」

 

 組織メンバーの中で、鎧を着ているのはゼタとベアトリクスである。現在諸事情(Second Advent)によってベアトリクスは鎧を着ておらず自家製のスーツを着ているが。

 

「でもさ、私思うんだよ」

 

「何が?」

 

「国とかが使ってる鎧って、割りと意味成してない時あるよなって」

 

「え、それまたどうして?うちの団にも鎧着ている人はいっぱいいるけど?」

 

「だってさ、全員直接攻撃は当たらないように避けてるか攻撃に対して反撃するとかじゃん……鎧に攻撃が当たったところなんて、見たことないぞ?」

 

「……ん?あれ、ほんとだ……!?」

 

 白竜騎士団の面々や、リュミエール聖騎士団の者達は鎧を着込んでいる。しかし、その鎧が相手の攻撃を防いだ……と言ったのを見た事がない。

 そもそも、偶に帝国軍と戦っていた時だってグランですら帝国軍の鎧…それも兜を凹ませたりして倒していたのだから、人間同士の戦闘ですら、鎧が役に立っていないということになる。

 

「まぁ、騎士団とかのだと由緒正しいとかなんとかで着てるんだろうから、そこら辺の事情は仕方ないんだろうけど」

 

「まぁ、そうか……」

 

「にしても、グランは最初ゼタと会ってたんだよな?」

 

「まぁ、うん」

 

「……その、ゼタってどんな印象だった?」

 

「強いて言うなら……ちょっと年下の男の子にイタズラしてる近所のお姉さん」

 

「そ、そうか……私とか、教官は?」

 

 何故か急にそんなことを聴き始めたベアトリクス。グランはそこまで疑問に思わないまま、ひとまず答えていく。

 

「ベアトリクスは……おっちょこちょいでドジだけど、けど真っ直ぐな印象……ドジだけど」

 

「そ、そうか…!……ん?私今サラッと馬鹿に」

 

「イルザは表面上厳しいけどめっちゃ女の子らしい人」

 

「……え、マジで?」

 

「offの時に前会ったもんで、その時色々と話してた」

 

「で、デートしてる……」

 

 ガックリと項垂れるベアトリクス。グランは首を傾げるが、しかし何となくフォロー入れておこうと考えていた。入れておかねばならない気がしたからだ。主に、相談室のドアの隙間から覗いているリーシャの視線が怖いから。

 

「……偶然出会っただけじゃデートになんないって、結局数言話した後に色々あってすぐ別れたし……10分も経ってないと思う」

 

「ほ、本当か?」

 

「本当本当」

 

「そ、そうか…!」

 

 嬉しそうにするベアトリクス。そしてそれと共にリーシャの気配がいつの間にか消えていた。グランは安堵した。

 

「……っと、そろそろ三通目行くか『初めて見たものでも調理できるんだな、鉄砲玉』」

 

「きょ、教官……」

 

「そう言えば、確かに魚とかキノコとか初めて見た割には滅茶苦茶上手に料理できてたよね。お菓子だったけど」

 

「まぁ…鱗取るくらいはわかるよさすがに」

 

「いやいや、それが結構難しいって話してるんだけどな」

 

 ベアトリクスは、作るものが大体お菓子の味になる代わりに、料理だけは初めて作るものであっても、プロ顔負けの見た目にすることが出来る。味は完全にお菓子の味なのに、滅茶苦茶美味しいという奇妙な料理になってしまうが。

 

「そういうもんか?」

 

「そういうもんだよ……」

 

「……ふふん、そうかそうか!」

 

「天才なのは誇っていいと思うけど、調子乗ったらまた酷いしっぺ返しを食らうことになるぞー」

 

 褒めると調子に乗り、褒めなくても手柄を立てると調子に乗る。何だかんだ頼まれた仕事は完遂することも多いので、組織を続けていられるのだろうと、グランはふと察した。

 

「……ん?もしかしてもう結構時間経ってるか?」

 

「おっと、ほんとだ……結構時間経ってるな」

 

「落ちないのか?」

 

「いや、まるで俺が落ち芸を取得してるみたいな言い方するのはやめてくれよ…あながち間違ってないか」

 

 満更でもない表情をグランはするが、ベアトリクスはそれを華麗にスルーして締めにかかる。

 

「じゃあ皆!今日はありがとうな!!」

 

「あ、ちょっ……司会進行役の俺が切るのが定番だと思っていたんだけどなぁ……いや、こういうのもありか?」

 

 ベアトリクスがカメラの電源を切り、番組を強制的におわらせる。『もう終わりの時間』という所だけを認識していたので、グランの言葉にベアトリクスは頭に疑問符を浮かべていた。

 

「……にしても、戻ってくるのはありなんだな」

 

「さっきも言ったけどリーシャに戻されてなぁ……まぁ、俺も早すぎたと思うけど」

 

「ところで、私が縄抜けを出来ないほどだと思ってるのか?」

 

「出来てたら捕まった時なんて勝手に抜け出せるでしょ」

 

「うぐっ……あ、あの時は油断してただけだ!!ちゃ、ちゃんと冷静ならできるさ!!」

 

「ほーう?」

 

 グランの目が怪しく光る。自分の言ったことは撤回しないベアトリクスだが、グランのその瞳を見て一瞬たじろいでいた。

 

「リーシャー、リーシャー!!」

 

「はい、何でしょうか団長さん」

 

「こう、ベアトリクスをいい感じにギッチギッチに締め上げてくれ。縄抜けが出来るか見てみたい」

 

「分かりました、ベアトリクスさんには秩序の騎空団仕込みの『えげつない拘束』をしてあげましょう」

 

「え、拘束するだけだよな?縄だけだよな?ま、待っ……あー!!」

 

 ベアトリクスの無慈悲な叫びがこだまする。リーシャに結ばれるベアトリクスというくんずほぐれつな場面を見ながら、グランは真顔でただ頷くだけである。

 

「あ、忘れてました」

 

「ん━━━」

 

 グランが疑問に感じるよりも早く、リーシャは自分が持っていたボタンを押す。そして、その瞬間にグランの足元の床が開き、グランは本日2度目の落下を味わう。

 

「え……きょ、今日はもう一回落ちてたんじゃあ……」

 

「別に一日の落下回数に制限はごさいませんので」

 

「あー……」

 

 ベアトリクスは、グランが落ちた穴をただ覗く事しか出来なかった。リーシャに何故か全く抵抗出来ずに、ただふん縛られてがっちりホールドされるのを、ただ気にしないようにしかできなかったのだ。

 その後、ベアトリクスが縄から抜け出すのに約3時間ほど掛かったという━━━




最新組織イベント後のベアトリクスです。


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真紅の穿光、その力を示してみる?

「今回はゼタさんでーす」

 

「よろしくねー」

 

「ってわけで早速1つ」

 

「ん?何いきなり」

 

「バザラガが前に言ってた言葉発音できるようになった?」

 

 グランが苦笑しながら尋ねる。前、とは組織関係でゴタゴタした(Second Advent)時に、組織で扱われている『武器』を解放する特殊な言語の事である。それをバザラガが発しており、ゼタもそれが可能だと判明したのだが、あまりにも発音に難がありすぎたために結局言えない結果となっているのだ。

 

「いやいや、あれ発音出来るわけないじゃん。未だにあれ何言ってるかわかんないのよねぇ」

 

「だよねぇ、俺も何言ってるかよくわかんないよアレ」

 

「しかもあれ、むやみに発音するわけにもいかないのよね……下手に言っちゃったら私もアイツみたいになっちゃうわけだし……あ、そう言えばちょっと訂正しときたいんだけど」

 

「え、何を?」

 

「あの時ベアが言ったことよ!流石にあればっかりは怒りたくなったわ!!」

 

「……?」

 

 グランはいまいちピンときていなかった。が、ベア……つまりはベアトリクスが言ったことは、バザラガによる対抗心やその他諸々の感情により、彼女の持つアルベスをグロウノスの様に解放できる……と言った時である。その時ベアトリクスは、『夫婦じゃん!!』と言ったのだ。それがどうも、ゼタは気に食わないらしい。

 

「あいつとは!そんな関係じゃ!!ないから!!!」

 

「わ、分かったから……一旦落ち着きなさいな」

 

「……ふぅ、よし落ち着いた!!」

 

「ならよし」

 

 どう見ても落ち着いていないからこそ、今ここでその話題を出したのだが、ゼタはそこまでに至っていなかった。

 

「……で、今日はいつ落ちるの?」

 

「落ちるのを期待されてるのか…?」

 

「いや、何だかんだ助かってるし……あんた、最悪空飛べるじゃない…勢いで」

 

 事実、バハムートウェポンの力によって落ちるのを回避した事例はあるが、流石に空を飛ぶほどのものではない。

 

「あれは別に空飛んでるわけじゃないしなぁ…重力に逆らって、浮くのが限界」

 

「それがおかしいって話してんだけどなぁ……まぁいいわ、気にしてたらしょうがないし」

 

「なら番組を進行させてもらおう……って訳でお便りコーナー」

 

「余計なやつとか入ってないといいけど……」

 

「1通目『ゼタ、俺もそこまで考えていない』バザラ━━━」

 

 お便りを貫き、器用に壁に刺さるアルベスの槍。奇跡的にも、顔や体からずらした位置で読んでいたので、どこも傷つくことは無くお便りだけが突き刺さっていた。

 

「今のなしで」

 

「うぃっす……『なんでパンツ見せてるんですか』ルリア……からです」

 

「パンツ?」

 

「パンツ見せてるって言うか……そもそもゼタのスカートってほんとにスカートの役割果たしてないよね」

 

「いやもう…あんまり気にしたことないのよねぇ……え、もしかして目に毒?」

 

「いえ別にそのまま続けてくださいゼタ姫」

 

「次に姫とか言ったら、アルベスの槍であんたの槍潰すわよ?」

 

「女の子がそんなこと言っちゃ……あ、ごめんなさいなんでもないです」

 

 いつの間にか抜いた槍をグランの下半身に向けながら、ゼタはそのまま座り込む。しかし、ゼタにもその意識がなかったのか頬をポリポリと掻いていた。

 

「いやぁ、でもあんまり深く考えたことないわ。そもそも見られようがそんな気にしないし……あ、でも体は別」

 

「何故またそのような思考に」

 

「だって星晶獣との戦いがメインなのよ?スカート履きたいって思ってても見えるし破けるじゃない」

 

「だから初めから見えるようなデザインに……?」

 

「ま、そんな感じじゃない?……自分でも最近意識してなかったから、理由がうろ覚えだけれど」

 

「というか、何でルリアちゃんがそれ気にしてるのよ」

 

「たまに俺が目線で追ってるせいかもしれない」

 

「……毒?」

 

「薬」

 

「……ぷっ、あははははは!!じゃあしょうがないわね!」

 

 薬といえば笑うゼタ。その後唐突に笑いがなくなり、槍を突きつけられる……と言ったことも無いままそして三通目…ではなく2通目に入る。

 

「『槍使いも多いこの団ですが、ゼタさんはどの位置にいると思いますか』」

 

「1番!……って言いたいけどねぇ」

 

「いいじゃん、じゃんじゃん言っていこうよ」

 

「いやいやいや、言えるわけないでしょ……どんだけ槍使い多いと思ってるのよこの団に」

 

「自分は1番!くらいに表明していた方がいいと思うよ?特に槍使いは」

 

「ん?なんか妙に含みがある言い方ね……」

 

 グランの言い方に少し違和感を感じるゼタ。その後急にグランの顔が険しくなり、両肘をテーブルに立てて両手を組みそれで口を隠すように顔を重ねる。

 まるでどこかのサングラスをかけた司令官のようなポーズを取りながら、グランは騙り始める。

 

「槍使いは……まだいいんだよ。剣となると……」

 

「あぁ……難所すぎるわね…」

 

 剣を使う人物達を列挙していくと、十天衆ですら3人いるのだ。さらに、星晶獣などの人外も入ってくる他……十天衆並に強力な剣士もこの団には所属している。

 

「考えてみたら、なんでそれでアンタ舐められてないのか不思議だわ…この団いい人ばかりよね本当」

 

「分かる……めっちゃ良い人いい子が多い……」

 

 しみじみと思いながら、グランは改めて三通目を取り出す。というか取り出さなければ、アルベスの槍が飛んでくるのがわかっているからだ。流石のグランでもあれに刺されば大ダメージである。

 

「『同業の人達に対してどんなイメージを持っていますか』」

 

「同業?」

 

「組織メンバーじゃない?」

 

「なるほど……まぁいい機会だし言っておきましょうか、別に深いとこ語らなければ大丈夫でしょ」

 

 そう言いながら、ゼタは少し唸りながら考えていく。そしてそれをどこから取り出したか、紙にペンで書きあげていく。そうした方がわかりやすいと思ったのだろう。

 

「じゃあ、ベアのイメージ言ってみましょうか」

 

「ベアトリクスのイメージ……って言っても前からの付き合いなんでしょ?」

 

「そ、だからイメージというか…あの子の印象かなぁ……」

 

「まぁ、とりあえずどうぞ」

 

「負けず嫌いで、ちょっとドジが入ってて……なんでも自分で背負おうとするけど、いい子…それがベアに対するイメージかな」

 

「画面の向こうで嬉し泣きしてそうだな」

 

 かなり素直なので、恐らく本当に嬉し泣きしているだろう…とグランは予測していた。そしてそのままゼタは次の人物のイメージを語り始める。

 

「教官に対するイメージは…いい人だと思う、onの時は確かに厳しくて言動が荒っぽいけどね。あれでも面倒見が良くて、色んなお店知ってるから上司としても女の先輩としても尊敬出来る…そんなイメージよ」

 

「信頼してるんだね」

 

「ベアは未だに怯える時あるけどね……まぁ、怒られるのは自業自得よ」

 

 いつぞやの時に、ベアトリクスが極寒の地の湖に自身の武器を落とした時のことを語ると、大目玉を食らっていたことをグランは思い出した。offとのギャップが激しい人物とも、私情と仕事を分けて生活している人物とも言える。

 

「バザラガは……あんまり口開かないし、口を開けばお節介、しかもまるで嫌味を込めるかのような言い回し、本人にはそんな気がなくとも私を煽ったりしてることなんて多々あったり……」

 

「本音は?」

 

「…まぁ、悪い奴ではないのはわかってるわよ。自分1人で背負い込むのはベア以上に酷いから、私がちゃんとしてなきゃ…ってそんなイメージよ」

 

「何だかんだ、信頼してるよねぇ」

 

「ばっ……まぁ、信頼はしてるわ。何度も言うけど、あれに異性として見てるってのはないわよ。」

 

「まぁ、見てる見てないは俺らにはわかんないけど…どうしてそこまで怒るのか」

 

「……失礼、じゃない?」

 

「失礼?」

 

「仲間の信頼、って奴があるのにそれ以上の感情持ち込むのはなんかね……多分、全員が全員…同業に恋愛感情なんて持ち合わせてないと思うわ」

 

「なるほどね」

 

 バザラガに対するイメージ……だが、そのイメージを聞いてグランは何となくあそこまで怒る理由も理解は出来ていた。納得もしていた。

 

「最後はユーステスね……」

 

「さて、どういうイメージ?」

 

「寡黙だけど……多分私達の中では一番熱いわよ?それに犬好きだし…あ、これ言ったらまずかったかしら」

 

「いやもうみんなにバレてることだし……」

 

「それもそうね…あぁえっと続きだけど。熱血漢、犬好き、それらを隠すクールさを兼ね備えた仕事人間……かしら?」

 

「随分とカッコいい要素を兼ね備えているねぇ、そう聞くと」

 

 実際かっこいいのだから困る、とグランは思っていた。クール系は若干の憧れがあるのだ。自分にはおそらく真似できないレベルのクールさなので、自分らしさを売りにしていくことは変わらないが。

 

「……っと、ここまでかしら?」

 

「そうだね、そろそろ時間だし……それでは皆さんご視聴ありがとうございました。またお会いしましょう」

 

 そう言いながら、グランはカメラの電源を落とす。そして、ゼタに向き治してからとある違和感に気づく。いつもとは違うパターンだと、そう感じとった後に、その違和感の原因に気づいた。

 

「……落ちてないよね、俺」

 

「あ、ほんとね……パンツのくだりで落ちなかったのなんで?」

 

「お便り関係だったからじゃないか…?落ちないのは意外だったな」

 

「あんたいっつも落ちてるもんね……」

 

「まぁ、落ちて変なことが起きないよりマシかな……」

 

「それもそうね……じゃ、戻りましょうか」

 

「うん……あ、そう言えば前気になってたんだけどさ」

 

「え、何?」

 

 ふと、思い出したかなようにグランはゼタに尋ねる。番組以外で聞きたいことがあるというのは、ゼタは意外だったらしくキョトンとした顔をしていた。

 

「パイポジって何」

 

「……あんた、それをどこで…」

 

「いや、前にゼタの部屋通りがかったら聞こえてきてさ……気になってたから本人に聞くのが早いかなぁって」

 

「……アルベスの槍よ!!」

 

「え、ちょ、待っ」

 

「プロミネンスダイブ!!」

 

「熱い!!」

 

 ゼタの一撃により、グランは部屋の窓から飛び出していった。後日、グランは『思ってたより熱かった、もっと特訓して耐えれるようになりたい』とか言っていた。

 

「……あー…!あれ聞かれたかぁ……!」

 

 そして、吹き飛ばした直後のゼタは顔を赤くしながらうつ伏せになっていた。どうとも思っていない者達に見られるのは構わないが、グランだけはどうしてもダメらしい。

 他の者になら聞かれても、彼女は気にしないという自信があった。

 

「パンツのくだりめっちゃ恥ずかしかった……」

 

 顔を赤くしながら、ゼタは手足をバタバタと動かす。嬉し恥ずかし…といった感情が入り交じっているのか、ちょっと笑みを浮かべながらも恥ずかしがっていた。

 

「……後で謝ろう」

 

 結局、勢いで吹き飛ばしてしまったことについてはゼタは謝った。グランは大して気にしていなかったため、1日二人きりでお出かけで荷物持ちという軽い罰をゼタに与えるだけで済ましたのであった。

 尚、あまり罰になっていないのはゼタ本人が1番理解していた……が、黙って置くことにした。理由は、面倒だから……である。




ゼタさんのパンツが丸見えなの実は最近気づきました。


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峻厳な鬼教官、私のしごきが必要か?

「本日のゲストはイルザさんです」

 

「イルザだ、よろしく頼む」

 

「……off?」

 

「いや、流石に仕事の時の口調にはしないさ……あ、甘いものあるか?」

 

「色々買ってきたんでどうぞ」

 

「これは……プリンだな、頂こう…はむっ……」

 

 開幕早々プリンを頬張り始めるイルザ。その食べ方は上品な食べ方であり、彼女を初めて見た人がいれば簡単に惚れてしまうだろう。グランはよく見ている光景なので、『綺麗』としか思わないが。

 

「……っと、済まないな。私と談笑する物だったというのに」

 

「いえ、綺麗だったので問題ないですよ」

 

「そ、そうか……」

 

 顔を赤くしてそっぽを向くイルザ。帽子が小さいので、深く被ることすら出来ないから顔を隠せないという状況になってしまっている。

 

「そ、それで……私とどういう話が…」

 

「まぁただの談笑ですよ。どう言った話をするかは、お便りや俺たちの気の向くままってね」

 

「……あぁ、そう言えば…君は身を固める気はあるのかな?」

 

「身を固める……」

 

 ここでグラン、身を固めるの意味を理解しているがこのままボケで返すか、素で返すかの2通りで思考していた。

 ボケで返す場合『あ、メデューサにいつもされてますよ』と返す気になっていた。しかし、この答えの場合イルザに天然が入って『結婚と離婚を繰り返しているのかこのクソ未満のカスがァ!!』みたいなことになりかねない……いや、流石にないだろうがグランはそう考えていた。

 もしくは『…無理やり結婚させられているのか…?』と返されるパターンも考えている。

 どちらにせよ、ボケで返すのはあまり得策でないと言える。ボケと気づかれて罵倒されかねないからだ。つまり、最善手はそのまま答えるということである。

 この間、1秒未満である。

 

「少なくとも、今はそんな気がないですかねぇ」

 

「……そうか、いや…君もまだ子供だものな……うん、まだ早いのかもな……」

 

「まぁ団内で決めるんだったら……と思うことはありますけど」

 

「ほう!?」

 

 いきなり前のめりになって、グランに詰寄るイルザ。恋バナが好物の彼女は、どうやら食いついているようだ。

 

「まだ特に決めてはいないですよ?もし決めるなら…って話ですし」

 

「因みに、何故そういった考えになったのかな?」

 

「んー……父親のせいかも」

 

「君のお義父さんの?」

 

「文字がおかしい気がしたけど……まぁいいか…」

 

 少し気にかかったグランだったが、構わず話を進めていくことにしたのだ。今気にしてたら、おそらく話が一向に進まないだろうと感じたためだ。

 

「いやぁ、俺はビィと二人っきりで過ごしてきたし……あぁやって残されるくらいなら、家族で船乗りながら過ごしたいなぁって」

 

「……」

 

「代わりに再会した時思いっきり殴りますけどね(減衰までのダメージ叩きだしてやる)

 

「ある意味素晴らしいな」

 

「まー、会えたら…の話ですけどね。『待っていな、イスタルシアで、ボコ殴り』的な」

 

「それもまた親子の愛情というものなのだろうか……」

 

「ある意味違うかもしれませんけど……とりあえずお便りいってみましょう」

 

 父親の話を一旦終わらせて、グランはダンボールの中からお便りをひとつ取り出す。

 

「1通目『スナイパーライフルのことはどう思っている?』シルヴァからです」

 

「ふむ……遠くから獲物を狙う銃…中々素晴らしいと思うが、特訓してどうこうなるような武器でもないだろう。センスがいる武器だと私は思っているよ」

 

「使ってみたいとかは?」

 

「使う機会があれば、使っていたのかもしれないな。私の使っているのは調停の銃ニバス…二丁拳銃だからな。一応、他の者達とは違い私は武器の力を戦闘で生かすことは余りないが」

 

 そう言えば、とグランは思い直していた。ニバスがなくとも、彼女は戦えるように特訓しているのだ。無論、ニバスの力自体は使っているものの、それはおまけ程度であり、彼女の技の一つである『バーストイレイザー』はニバスがなくとも使用できていたからだ。

 

「しかし……うん、使ってみたいとは思う。純粋にカッコイイじゃないか」

 

「分かる」

 

「では、2つ目にいってくれ」

 

「はいはい……2通目『年下の旦那がいたら、欲しいですか?』ヘルエス様からです」

 

「…欲しい、というか結婚したい…」

 

 恋バナが好きな彼女だが、一応結婚したいという欲求も存在している。周りが結婚ラッシュしているという噂まではびこっている。

 

「年上……じゃ、ダメなんですか 」

 

「いや…年齢的に……あぁでも……」

 

 頭を抑えて仕事モードである普段からは考えられないほどに、イルザは迷っていた。

 

「あー……ま、まぁ年下年上は好みの問題だろうし…あんまり気にすることじゃあ……」

 

「やはりそう思うか!?」

 

「OKOK、一旦深呼吸して落ち着いてみましょう」

 

 明らかに結婚の話題になってから、情緒不安定になっているイルザ。欲求に飢えすぎているのも、些か問題なのではないだろうかとグランはため息をついていた。

 

「あ、あぁ……すまない……」

 

「話題転換のために、さっさと三通目いっちゃいましょう……『どういうハッピーエンドを迎えたいかしら』コルワさんです」

 

「ハッピーエンドか…彼女らしい発想だが、結婚するまではまだエンディングだとは私は思っていないよ」

 

「……と、言いますと?」

 

 イルザの言葉に、首を傾げながら意味を尋ねるグラン。イルザは調子を取り戻したのか、年上の余裕のようなものをチラつかせながら、語り始めていく。

 

「結婚が終わりだと思っていたら、直ぐに関係が破綻しかねない……そうだなぁ、もうここはいっそ孫に囲まれる老後までをゴールにするべきじゃないか、と私は思う」

 

「孫……そりゃまた、長い話ですね」

 

「当たり前さ……色々と、あるかもしれないしなぁ……」

 

 何故か遠い目をするイルザ。その瞳は一体何を見ているのだろうかと、グランは疑問に感じたが、今ここで問いただしてしまうと恐らくさっきの二の舞になりかねないので止めておいた。

 

「まぁ、その色々とやらを乗り越えてこそハッピーエンドがあるってことですね」

 

「そういう事だ!というかだな、君は一体誰と身を固めるつもりだ!?」

 

「……ん?」

 

「10代でフラフラしているのも構わないが、20代になってから焦っても遅いんだからな!!」

 

「イルザさん?」

 

「何だったら全員と身を固めるか!?それだったら━━━」

 

 ここから、映像が途切れている。別にカメラが壊れたわけとかではなく、グランがちょっと危険を感じたので映像と音声を差し換えたのだ。因みに、差し替え先はグランサイファーから見える一番いい景色の窓の映像と、その音声である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……すまなかった、頭が痛い」

 

 5分ほどしてから、イルザはテーブルに突っ伏しながら寝ていた。グランはその際に、形の変わっているイルザの膨らみ2つを視界の中心に起きながら、イルザにクリアオールを掛けていた。

 

「いや……何でアルコール入ってたんですか」

 

「恐らく先程食べたプリンだろう……カクテルが入っているのが売りだと聞いたが、ゆっくり食べるものなのだろうな……本当は……」

 

「そんなプリンあるんですね……」

 

「一部の人に人気のスイーツだからな……」

 

「なるほど……」

 

 先程暴走していた理由は、プリンの中に含まれるアルコールが彼女を酔わせたことが判明した。しかも、プリン本体に含まれるものではなく、冷ましたあとのカラメルに混ざっているものであり、それが今頃になって効いてきたようだった。

 

「頭まだ痛いなら、継続してクリアオール掛けておきますよ」

 

「済まない、助かる……」

 

「カメラはまだ回してないんで……復活できそうですか?」

 

「……精神的なのが混ざって、今日はもうだめそうだ…部屋で甘やかしてくれ……」

 

「まぁ、それくらいならいいですよ」

 

「助かる……」

 

 イルザはグランに背負われて自室へと運ばれていく。その際に、やたら背中に体を押し付けられていたので、グランは溜息をつきながらどうやって寝かせるかを考えながら運んでいくのであった。

 

「……何をしてる、グラン」

 

「それはイルザか?」

 

「あ、ユーステスとバザラガ……どしたのこんな所で」

 

「いや……暴走気味だったから少々心配になったのでな……その様子では、酒が入っていたか」

 

「ご名答……今から部屋に運ぶところ」

 

「災難だな」

 

「この程度のことなら日常茶飯事だし……問題ない問題ない」

 

 そのままグランはイルザを運んでいく。本来、このような場面を見られたら何かしらの反応があるはずなのだが、どうやらイルザは爆睡してしまっているようだった。

 泥酔では無いだけマシだと考えるべきだろう。

 

「んん……」

 

「はいはい、今部屋に運んであげますからね」

 

 今はこの船にいるから問題ないものの、彼女の部下などにこの姿は見せられないだろう。あくまでも、うちの団限定での姿ということになる。

 

「……そう考えると、レアなものを拝ませてもらってるんだな…にしても、あのプリンのアルコール度数はどうなっているんだ…」

 

 落ち着いたとはいえ、あのイルザがここまで酔うのはよっぽどの事である。後でこのプリンを提出した誰かを、叱るべきだろう。そう言えば、そもそもあのスイーツは誰からの差上げだったか。

 

「……俺やん」

 

 最序盤に自分で言っていたにも関わらず、忘れていたグラン。自分に反省を促しながら、イルザを部屋まで運んで行った。

 無論、ちゃんと寝かせる時に仰向けにして寝かせて、着替えとかは同性であるゼタに任せて、自分はその場を離れるのであった。

 

「……流石に、寝てる異性の服を勝手に脱がすのは……ねぇ?」

 

「オイラに言われても困るんだけどよォ」

 

 呆れた顔をしながら、グランの愚痴に付き合うビィ。愚痴、と言う割には誰かに対する罵倒や、汚い言葉遣いが全く出てこないが、代わりにどれだけこの団の女性陣が刺激的な格好をしているか……ということが度々言われていた。

 

「いやいや、理解してくれよビィ…お前にしか喋れないんだよ……」

 

「オイゲンやラカム辺りでいいじゃねぇか」

 

「どっちも『男なら全員娶っちまえ』って帰ってきたんだからな」

 

「ダメ大人じゃねぇか!!」

 

「まともな相談相手がビィしかいねぇ……」

 

 セクハラはする癖に、意外とマメだったり紳士的だったりするのは少しおかしい話なのだが、それでも恋愛対象として見ている女性が未だに居ないというのは、ある意味鋼の心だ……などと思いながら、グランは大きなため息をつくのであった。

 

「……あ、今度二人きりになった時に背中の感触の感想語ってみようか」

 

「お前ほんっっっっっっっっっと、そういう所だからな?」

 

「ビィさん口調変わってますぜ」

 

 ちゃっかり、今回の話でも落ちていないというのが、ある意味奇跡だとも言えるのだが……その事に、グランとビィは気づいていないのであった。




5周年記念チケットで取りに行きます、水着の彼女。
あるのかは分からないけれど


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地砕の霹狼、平穏を望むか?

「今回のゲストはユーステスさんです」

 

「……」

 

「出来れば何か喋って欲しい……」

 

「……勝手がよく分からないからな、そちらに任せる」

 

「あ、はい……まぁただ雑談と質問コーナーするだけだからね……とりあえず、これどうぞ」

 

「…?っ!!」

 

 ユーステスはグランに渡されたものを、確認しながら受け取る。そして、受け取った直後にその目を見開いて即座にグランの方に視線を向け直す。

 

「……いいのか?」

 

「あげるよ、今回出てくれたお礼」

 

「……そうか、受け取ろう」

 

 そう言って、受け取った物をユーステスはポケットに丁寧にしまい込む。因みに渡された物は1枚の紙なのだが、その紙には『ワクワク触れ合いアニマル広場1日無料券』と書かれていた。

 要するに、動物に惹かれただけである。俗に言う買収である。

 

「ユーステスの武器はフラメクって名前だけど……イルザと同じ銃型の武器なんだね」

 

「あちらとこちらでは、用途はまるで違う。そもそも、俺達の立場が違うから当たり前の話ではあるな」

 

「そう言えば同期なんだっけ?」

 

「あぁ、昔は仕事の時に今のような言葉遣いをする事は無かった。だが、今の言葉遣いにしてからの方が部下の生存率は、目に見えて高くなったと聞く」

 

「要するに、汚い言葉を使って反骨心を鍛え上げてるんだと思うよ。まぁ、部下の人達の場合反骨心というか、尊敬の方が上回ってる節があるけど」

 

 仕事の時にはクソクソ言い放つイルザ。しかし、本来は下品なことは嫌いな性格なので、実を言うとちょっとだけ丁寧な罵倒になっているのだ。

 

「ベアトリクスは、イルザのことがトラウマになっているな。あいつが罵倒を言い始めた後に組織に入ったから、当たり前と言えるが」

 

「そう言えば、ペア組んでるんだよね二人で」

 

「あぁ……お前達と最初に出会ったのは、ノースヴァストだったな」

 

 極寒の地、走るソリ、やたら騒ぐ世紀末風味なハーヴィン達。オダヅモッキーを壊滅させるために、ベアトリクスとユーステスはペアを組んでいたのだが、初めてグラン達と出会ったのがその任務だったのだ。

 

「前から思ってたんだけどさ……イルザ以外皆個人個人で思いのままに動いているよね」

 

「基本的に、組織から与えられる任務以外で組織の施設に赴くことは少ない。俺達が基本的にこの船にいるのは、そういった理由もある」

 

「あー、確かにずっと居るよね。魔物退治をその武器でやっても、文句言われないの?」

 

「文句を言われるのならば、わざわざ貸出はしないだろう。上層部は……武器に対しては凄まじい程に慎重だからな」

 

「あー、確かに」

 

 使用者よりも、武器の回収が最優先などというのが組織の上層部である。グランが大嫌いな部類の一つである。

 

「……お便り、とやらは?」

 

「急に振ってきたね……まぁならいってみよう……何が出るかなー」

 

 ガサゴソとダンボールを漁り、グランは1つの紙を取り出してそのまま書いてあるのを読上げていく。

 

「『今まで戦った星晶獣、または話に聞いた星晶獣の中で戦うのが辛かった、または辛そうな相手はいますか?』」

 

「星晶獣か……組織の任務で狩ったのは、一応喋らないようにしておこう。つまり、お前達が今まで倒した星晶獣の聞いた話をすることになる」

 

「それでも構わないよ〜」

 

「まずは……そうだな、天司達だろう」

 

 天司、この空における島の浮遊を保たせている星晶獣達のことであり、それぞれ4種いるのだが……それとは別の天司がいるのだ。その中で戦った天司と言えば……

 

「サンダルフォンとかだね」

 

「あぁ……単純な戦闘能力の高さでは、かなり厄介な相手だったと聞く」

 

「そうだねぇ、かなり苦戦した記憶があるよ」

 

 それでも倒せているのだろうと、ユーステスは珍しく笑みを浮かべてグランを見守っていた。

 

「もう1つ上げるとするならば……オネイロスだな」

 

「あー……」

 

 星晶獣オネイロス。夢を司る星晶獣だが、厄介なことにあまりにも現実味のある悪夢を見させることにより、夢と悪夢の認識を入れ替える力を持つ。しかも厄介なことに、そのまま衰弱させたり長い眠りにつかせることだって可能なのである。

 

「まあ、もうそんな心配はないけどね」

 

「そうだな……しかし、夢か…」

 

 ふと考え込むユーステス。夢になにか思うところでもあるのか、その瞳はかなり真剣なものとなっている。少し様子が気になったグランは、ユーステスに話しかける。

 

「ユーステス?どうしたの?」

 

「……いや、瑣末なことだ」

 

「……?」

 

 ユーステスは言えなかった。『毎晩動物と触れ合う夢を見させて欲しい』などと一瞬でも思ったことを、喋る気にはならなかった。

 

「まぁいいけど……他にも強いって思った星晶獣はいる?」

 

「……そうだな…色々いるが、俺が感じたのは主にその2体だと言っておこう」

 

「なるほどねぇ……なら、次いってみよう。『銃使いとして、戦ってみたいまたは特訓などで戦っている相手はいますか?』」

 

「俺はあまり、武器を用いた特訓はしないな」

 

「あれ?そうなの?」

 

「肉体の鍛錬を行っている……そもそも、武器を手放す時がある可能性もあるからな、なるべく武器を選ばない戦い方を覚えた方が楽だと感じた迄だ」

 

「……確かに、いざと言う時いろんなもので戦えたらいいよね」

 

 他人事のように言い放つグランだが、ごく稀に水風船やトレピリなどと言った明らかに武器ではないものまで、武器として扱っているのだから彼も人のことを言えた義理ではない。

 

「お前は少々規格外だ……兎も角、俺は銃使いとあまり戦わない…そもそも、フラメクやニバスのような類の武器ならばともかく、実弾のみを使う武器の場合、資材がもったいないだろう」

 

「……あー…」

 

 銃弾を特訓として使うには危ない以前に、そんな撃ち合っていたら確かに弾薬が勿体ない事にグランは気づいた。

 近接武器や銃身そのものならばともかく、火薬に関してはあまり買い占められないのだ。

 

「あの三姉妹も少しぼやいていただろう」

 

「ククル達ね…どうしても市販の火薬類って国が優先されやすいからなぁ…」

 

 買えないこともないが、一騎空団が所属する分を補えるほど買えるという訳でも無い。故に基本的に火薬の素材を買ったり採掘したりして、ククルとクムユが弾薬と火薬を作るという状況である。

 

「……ま、シェロカルテにはあまり強く言えないけどククル達が作ってくれる方が質がいいから俺は好きだよ」

 

「……お前のそういう所が、修羅場を産むと本で読んだことがある」

 

「……修羅場?」

 

 一体何の本を読んだのか問いただしたかったグランだが、それに時間を割いて居られないので、とっとと三通目にいくことに決めたのであった。

 

「『組織の中でペアを組んで1番相性がいいと思える人はいますか?』」

 

「ベアトリクスだ」

 

「即答……なんで?」

 

「……というよりも、恐らく1番組みやすいのがアイツだ」

 

「ベアトリクスが…?」

 

 あのドジっ子が全員と相性よく戦えるほど器用だっただろうか、と明らかに失礼なことを考えたグランだったが、ユーステスはそのまま解答を言い放つ。

 

「あいつは武器の力もあるが、攻撃力に関しては1番の強みを誇る」

 

「…あ、エムブラスクって窮地に追いやれば追いやるほど強くなるんだっけ」

 

「あぁ、特に俺やイルザの場合……銃弾があいつの頭を掠めると窮地に追いやれる」

 

「まさかの無理やりピンチに追いやる戦法…!?」

 

「……冗談だ」

 

 一切の表情を変えずに冗談を言われても、中々信じられないものなのだなとグランは思い知った。さすがにユーステスも悪いと思っているのか、ちょっと耳が垂れていた。

 

「突破力があるんだ、あいつは」

 

「あぁ、そっちだよね……うん」

 

「俺やイルザ、ゼタやバザラガではなし得ない突破力だ……ゼタは、ベアトリクスの次にあるようだが」

 

「エムブラスクの力、なのかな」

 

「さぁな、俺はあいつの性格や資質そのもののおかげだと思っている」

 

 相変わらず表情を変えずに言うが、やはり信頼事態はあるのか客観的ながらも彼女をちゃんと褒めていた。年上のクール男がモテやすい理由がグランはわかったような気がした。

 

「……少し喋りすぎたな」

 

「そんな、バザラガじゃないんだから…」

 

「……」

 

 照れ隠しなのか、バザラガのような事を言うユーステス。そもそもバザラガのあの言葉もグランは照れ隠しの1種だと思っているので、組織の男達はどうにも照れ隠しの印象が強くなってきていた。

 

「……もう、時間だろう」

 

「あ、ほんとだ……もう終わりの時間だった。では皆様ご視聴ありがとうございました、また次回お会い致しましょう」

 

 そう言ってカメラの電源を落とすグラン。落とした後、ユーステスと一緒に部屋から出る。

 ふと、グランはルナールの存在を思い出した。今回は、全く意識していなかったため何かが地雷になっているのかの可能性があるのだ。

 

「……いや、流石にもう大丈夫だと思うけど…」

 

「どうした」

 

「い、いや……別に」

 

「…?そうか」

 

 ユーステスは一瞬不思議そうな顔をしたが、グランが何も言わないのなら、とそれ以上の追求をすることは無かった。そのまま2人が歩いていくと、目の前にほんの少しドヤ顔をしているベアトリクスが現れる。

 

「お、なんだユーステスじゃないか!」

 

「……やけにご機嫌だな」

 

「ふふん、これからも私を頼ってくれよな!!」

 

 どうやら、番組内で言った一言がベアトリクスを調子に乗らせたらしい。ユーステスは呆れて、グランは苦笑いをしていたがベアトリクスはそんなことには気づかないで2人の前を通り過ぎる。

 

「……あいつは、また何かやらかしそうだ」

 

「まぁ、ベアトリクスだからね……何かやらかすのは分かりきっているというか」

 

 グランとユーステスの妙な信頼は、このすぐ後に的中する事となる。2人も、ベアトリクスもその事には気づかないのだが。

 

「ふんふふんふーん!」

 

 調子に乗って鼻歌を歌うベアトリクス。しかし、彼女がとある部屋を通り過ぎた瞬間に、いきなり扉が開いて何かが現れる。

 

「うわああああ!?」

 

「バウッ!!」

 

 それはスカルの飼っているペットである。オダヅモッキー時代からの相棒らしく、いきなり部屋の扉から現れたベアトリクスは馬乗りにされていた。

 

「ちょ、おまっ!待っ!!あー!どこに連れていくんだ!ちょっと待って!ほんと何だ何なんだー!!」

 

「……あれ、助ける?」

 

「いや、別に大丈夫だろう」

 

 犬に首根っこ掴まれて、拉致されていくベアトリクス。その光景は実にシュールなものであり、別段危機感を煽るようなやばいものでもないので2人はそこまで助ける気にもなれなかった。

 

「あれはじゃれているだけだ」

 

「へぇ、凄いねユーステス。そんなこと迄分かるなんて」

 

「見てないで助けてくれよ2人ともー!!」

 

 船の中でベアトリクスの声が響き渡る。仕方なくベアトリクスは救出されたが、どうにも腹が減っていたようだったので、グランが何故か持っていたビーフジャーキーを与えることで解決したのであった。

 因みに、主人のスカルは勝手に食料庫から肉を持っていこうとしたので、リーシャにこってり絞られていた。

 後日、その事を本人は完全に忘れていたのだが。




2016年以来に来たらしいですよ延長メンテ


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冥闇の剛刃、見たいのか?この顔が?

「今日のゲストはバザラガさんです」

 

「……」

 

「デジャブ」

 

「勝手が分からん、それ以前に……俺はあまり喋らない」

 

 一体何を言っているのだろうか、とグランは思った。確かに、他の組織メンバーに比べれば喋らないかもしれないが、それでも人並みにはバザラガは喋っているのは明白である。

 

「まぁ……それもまた番組らしさだろうし、いいかな」

 

「助かる」

 

「あぁうん……あ、そう言えばバザラガってさ…」

 

「……?」

 

「どうして鎌なの?」

 

「……それは、どういう意味だ?」

 

 鎧の中の眼光が光る。正直、他にもこのような目には散々合わされているので、バザラガの目が中から光るくらい大して驚く要因にはなりえなかった。

 

「いや、前にアルメイダに武器を作ってもらった時…大鎌だったじゃん?アルメイダが勝手に武器を作るとは思えないし、バザラガの指定だよね、あれ」

 

「あぁ……グロウノスが使い慣れていたからな。下手な剣や斧を振るうよりは鎌の方が、慣れてきる分使い勝手がいいと考えた迄だ」

 

「あぁ……結構鎌って特殊な武器だもんね」

 

 基本、鎌というのは内側に刃があるものだ。その特性上、鎌の内側でないと切れない為に他の武器よりも特殊な動きをしなければならない。それの動きに、バザラガは慣れてしまっているのだろう。

 

「それに、下手な武器では簡単に壊してしまいそうでな」

 

「力強いもんねぇ……」

 

 ドラフの男性の宿命と言うべきなのか、バザラガの体はとても強靭な体になっている。

 それに加えて、彼は体のあちこちを改造しているために下手な攻撃では怯まないうえ、恐ろしく強力な一撃をもたらすことも出来るのだ。

 

「皮肉だが、グロウノスのおかげとも言えるだろう」

 

「体の調子はどう?」

 

「グロウノスは、今のところ暴走する傾向はない……だが、いざと言う時は俺を」

 

「はいストップ、それ以上言ったらゼタとイルザ交えて正座させて怒るよ」

 

「……済まない、癖だ」

 

「ほんとにゼタが言う通りだよね……背負いすぎだからさ、ちょっとは頼って欲しいよ」

 

「俺としては頼ってるつもりなのだがな、どうにも頼り方を間違えているようだ」

 

「……もしかしてだけどさ、冗談言ってる?」

 

「何故そう思った」

 

「妙に流暢に喋ってるし…そういう時、バザラガ冗談言ってること多いじゃん……自分の顔ネタにしてる時とか」

 

「……」

 

 どうやら図星だったようで、バザラガは黙る。グランはムッとした表情をするが、それが面白かったのか小さくバザラガは笑い始める。

 

「ククッ……団長、お前は優しいな。しかし、俺をどうするかまでは言ってないぞ?」

 

「え、でもあの流れだと……」

 

「俺を……殺してくれと言うと思ったか?そこまで俺も愚かではない」

 

「……あー、もうからかうのやめてほしい」

 

「済まないな……しかし、こういう冗談を言う場だろう?」

 

「むっ……」

 

 バザラガに一本取られたのが悔しいのか、グランはさらにムッとした表情を取る。そして、しばらくそのまま考え込んだ後にお便りのダンボール箱を漁り始める。

 

「おい、団長」

 

「罰として、お便り箱の質問に答えてもらいます。きっちり三通!」

 

「……くく、ならばその罰は受けるしかないな」

 

 まるで我が子を見守るかのような、そのような笑みを浮かべているであろうバザラガ。その雰囲気につられてか、グランもついつい笑ってしまう。

 

「と、とりあえず1通目!『結局身を固める気はあるのか』イルザさんです」

 

「……どういう事だ?」

 

「え、そのままの意味じゃないの?」

 

「俺に、恋人を作れと?」

 

「作れ、というよりそういう気持ちある?って程度じゃない?」

 

「……今は考えられないな、気が変わればまた別かもしれんが…」

 

「というと?」

 

「人間、恋愛すれば変わる可能性があるからな。恋に恋する…という柄でもないが、俺がそういう気持ちが固まれば相手が見つかるかもしれないな」

 

 鎧の兜をカンカンと指で軽く叩きながら、バザラガは思考する。少なくとも、今は恋愛に関しては気持ちが動いていないようだった。

 

「今は好きそうな相手が見つかってない?」

 

「俺が気づいていないだけの可能性はあるがな……だが、今は身を固める気は無い。それもまたいいかもしれない……と思うことはあるがな」

 

「ふーん……」

 

「俺よりも、お前のことだ団長。身を固められる相手は多いだろう」

 

「なぜ急に俺に振る……いやいや、そもそもこの話前にしたから!!」

 

「ふっ……それもそうか」

 

「はぁ……」

 

 急に前にしたのと同じ話を振るバザラガ。歳が倍近く上なのがあるせいか、どうにもグラン相手にはまるで親のように振舞っている節がある。グラン自身も、そのことには気づいていた。

 

「……とりあえず、二通目いくね『いつも兜を被っていたり包帯を顔に巻いていたりしますが、お風呂の時はどうしているのですか』」

 

「……聞きたいか?」

 

「……正直、俺も気になる。兜被ってる時と、包帯とフードの時あるよね……兜は錆びるし、包帯は湯気で取れそうなものだし」

 

「ここで回答したら、俺の顔見たさに俺と一緒に風呂に入ろうとする奴らがいるだろう」

 

「多分居るね」

 

「……ならば却下する。無用なトラウマを植え付ける訳にも行かない……それに、俺自身に変にストレスがかかる」

 

「……まぁ、顔覗いてトラウマになるとかならないとかは兎も角、勝手に覗きに行くのは迷惑かかるね。

 というわけで、迷惑かけないようにしてあげてくださいねー」

 

 カメラに向かって、グランがそう話す。基本的に良い人物ばかりなので、好き好んで誰かの迷惑になりに行くようなことはしないだろうが、一応の注意である。

 

「まぁ、好き好んで覗きに来てもガッカリするだろうがな」

 

「え、なんで?」

 

「グロウノスの侵食のせいか、こちらの好きなタイミングで兜が生えてくる」

 

「え、待ってそれすごい気になる」

 

「……冗談だ」

 

「……ほんとに?」

 

「本当に冗談だ」

 

 言葉がおかしくなっているが、一応兜が生えてくるというのは冗談らしい。しかし、グランは冗談だとわかっていてもその事ばかりが気になって、ソワソワしてしまっていた。

 

「……ひとまず、3つ目に行ってくれるとありがたい」

 

「あ、うん……『ご飯食べる時っていつ食べてるんですか』」

 

「鎧の時は……隙間に入れられるからそこまで疑問ではないだろうな」

 

「偶に顔に包帯巻いてる時あるよね……あの時は?」

 

「ずらして食っている。だったそれだけの事だ」

 

「まぁ、普通にそうなるよね」

 

 実に単純明快な答えである。しかし、ずっと顔を隠しているために気になっている団員がいたのも事実である。ある程度答えは決まりきっているようなものなので、これはすぐに終わる質問だった……のだが。

 

「……兜は兎も角として、包帯の時いつずらして食ってるの?」

 

「さてな」

 

 兜の場合、隙間から通すだけなのでさほど問題でもないのだが、包帯の場合一々巻いているのをずらしてから食べて、そして戻す……などと言ったことをするにはあまりにも面倒な手間がかかりすぎているのだ。

 

「……まぁ、いいか別に」

 

「……俺が言うのもなんだが、あまり回答が出来ていないな」

 

「まぁ無理にプライベートな所迄答えさせるっていう趣旨じゃないし、別に問題ないよ」

 

「そう言ってくれると助かる」

 

 大きく座り直すバザラガ。言葉だけでしか判断出来ないが、グランはバザラガが落ち着いたように見えていた。

 

「さて、これでお便りは全部だけど……何かバザラガの方から言いたいこととか聞きたいこととかある?」

 

「……いや、特にないな。せいぜい風呂に入る時は俺と被らないように気をつけろ…と言うくらいだ」

 

「まぁ、そこは大事なことだしね」

 

 何度も伝えるようにするグランとバザラガ。それは本当に大事なことな為に、伝える必要があるのだ。そして、これを言った後に2人はふと考える。

 

「……これ、言っちゃうと気になって見に行く団員がいるんじゃないの?」

 

「……カシウスだな」

 

 最近団員になったカシウス。彼は大雑把に言えば月に住んでいた元『組織の敵』であり、彼は気になることはなんでも調べたがるタチなのだ。そして、この空の世界では彼の知らないものがそれこそ恐ろしい数存在しているので、興味を持ってしまえばそれを知ろうとするだろう。

 

「いや、流石に本人が嫌だと言ったら諦めるよカシウスは」

 

「だといいがな」

 

 元々組織の敵だったということもあり、他の団員達と比べて組織の者達は皆カシウスに何らかの警戒があった。ベアトリクスはそんなことも無いが、それも彼女だけである。

 それも、最近は薄まってきてはいるが……やはり、完全になくなるにはいまだ早いようだった。

 

「さて、今回の団長相談室はここまでとなります。ご視聴ありがとうございました」

 

 そして、終了の時間だということを理解してからグランはカメラの電源を切る。

 

「お疲れ様、バザラガ」

 

「あぁ……しかし、俺をこういう場に呼んでよかったのか?」

 

「え、なんで?」

 

「俺は喋らない。そして、喋ったかと思えば冗談か冗談じゃないかわからないことを言う……到底、こういう場には向いているとは思えわないがな」

 

 バザラガの鎧の奥にある瞳が、グランを見たような気がした。グランはそのまま少し考えた後にこう言い放つ。

 

「俺は別に、盛り上げたくてやってるんじゃないよ。みんなに、全員の事をちゃんと知ってもらういい機会だと思っただけだよ」

 

「つまり、喋ろうが喋るまいが……」

 

「全然関係なし!勿論、完全に無視されるくらいなら喋って欲しいけどね?そんなこと絶対にありえないだろうし」

 

「ふっ……団長に信頼されている分、これからも頑張らねばな」

 

 バザラガは鎧の中で微笑んでいた。そして、ゆっくりと立ち上がってそのまま部屋の外にグランと一緒に出ていた。

 

「俺は今からイルザ達と集まり、少々話し合いだ。団長、済まないがここで一旦別れる」

 

「ん、分かった。夕飯の時間までには終わらせてね」

 

「あぁ、他の者たちも重々承知していることだろう」

 

 そう言ってバザラガは、一旦グランから離れて別行動をとる。組織メンバー同士での話し合いだ、団長のグランであっても聞かれたくないことなどがあるのだろう。

 

「……にしても、鎧のせいもあるかもしれないけど…声、響いていたなぁ……」

 

 ふと、グランはバザラガが去った後にそう呟いていた。バザラガは元々声が低く渋いタイプであり、それが鎧を被っていることによりいい感じに響いていることが実は内心ずっと気になっていたのだ。

 

「……俺も歳食ったらあんな感じの声出せるかな?」

 

「いやぁ、そいつは無理だと思うぜぇ?」

 

「いきなり来たかと思えば、俺の未来の否定か……ビィ」

 

「いや、何でそんなに深刻に捉えるんだよ……めんどくさい奴かよお前」

 

「冗談だって……しばらく組織メンバー達は話し合いっぽいから、適当にお菓子でも食べて待っておこうか」

 

「おう」

 

 そして、グランもまたいつの間にか居たビィを連れて、自室へと足を運んでいくのであった。この後、特に何も用事がないため久々に部屋でゴロゴロするつもりである。




あと2日でバレンタインですけどバレンタインの話書くかはわかりません


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月よりの使者、興味深いか?

「はい、今日はカシウスさんです」

 

「……最初こそは非合理だと思っていた」

 

 最初に出た発言。カシウスは合理的な事を好み、思考することを好むが感情論などはあまり好みではなく、苦手の部類としている。

 

「え、何が?」

 

「このように、まるで見せしめであるかのように顔を晒してまで未だ顔を合わせたことの無い団員に自己を紹介する、という事がだ」

 

「最初は、ってことは今は?」

 

「このような機会を設けることにより、自己紹介を行う回数が減らせるという利点がある。ふむ、存外合理的だと今は思っている」

 

「納得してくれた?」

 

「あぁ」

 

 内心グランは、『実はそこまで合理的に考えていなかった』と思っているが、それを言い出さなくてもいいかと口に出すことは無かった。

 

「さて、改めて自己紹介といこうか。名はカシウス…月から来た異邦者だ」

 

「まぁこんなこと言ってるけど、色々知らないこと多いので皆さんどんどん教えてあげてくださいね……という訳でカシウス」

 

「なんだ」

 

「この船は楽しい?」

 

「感情論はあまり得意ではないが…しかし、未だいくつもの発見があるという意味では、それは楽しいと思っているのだろう」

 

 つまり、嫌な思いはしておらず退屈も特にしていないという事なのだろうとグランは自己解釈を行った。カシウスは未だ語り足りないのかどんどん喋っていく。

 

「しかし、不満が無いということも無い」

 

「それは何?」

 

「あのカタリナという騎士の料理だ」

 

「……え…あれ食べたの…?」

 

「恐らくあの騎士は俺を嫌悪、または警戒しているのだろう。『仲間になったのだから食べるといい』などと言って」

 

「あ、ごめんカシウスストップ」

 

「何故だ」

 

「それについてはまた後で話そう」

 

「……理解した。今ここで話すべきではないという事か」

 

 カタリナは、自分の料理が下手だという自覚がない。しかし、自覚がないからこそ厄介なものもあるということを、グラン達は知っている。というか、いつ教えるべきか未だに悩んでいるというのが本音である。

 

「しかし、フォッシルの民は自分のことを理解していない者もいるのだな」

 

「少なくとも、感情論が少しでも入ってしまうと本当の意味での客観的な意味で見れなくなるんだろうね」

 

「……いや、考えてみれば月にいた頃は自分のことを理解する、ということさえ頭になかったな」

 

「そうなの?」

 

「自分の意味は、上から与えられることだけだ。成果を上げて、そしていい飯と部屋にありつく。待遇が良くなればなるほどに、自己自由時間も増えていく……合理的ではあるシステムだ」

 

「ちょっと息苦しそうだけどね」

 

「そういう事すら、まず月の民は考えつかない」

 

「ふーん……」

 

「それに比べれば、自己を発達させる事が可能な空間というのは合理的であり、非合理的だと言うべきか」

 

「矛盾してない?」

 

「そうだな……自己を発達させるのは1部の、才能のある者達が行うべきだ。それ以外の、一定数値未満の者は自己を発達させず月のように限られた空間、食事、娯楽を楽しめる程度であればいい……それが一番合理的だろう」

 

「1部の者達だけに出すシステムって非合理じゃない?」

 

「俺は感情論が苦手だが……しかし、感情の与える力がとてつもないものだということも知っている。自己を発達させるのは、それを磨くという事にほかならないだろう」

 

 グランとカシウスの合理的か非合理的かの会話が続いていく。完全に二人の空間となってしまっているが、ふとカシウスは思い出したかのように会話をいきなりストップさせる。

 

「カシウス?どしたの?」

 

「団長、非合理だ。このままでは、お便りとやらを読む時間がなくなってしまうぞ」

 

「おっとそうだった……ありがとねカシウス。んじゃあまずは早速1通目……『好きな事はなんですか』」

 

「未知への研究だ。自身の知らないことを知り、学んでいく。月にいた時には味わえない様なことばかりだ。井の中の蛙大海を知らずとは、この事を言うのだろうな」

 

「何それ?」

 

「東洋の言葉らしいな、『世間が狭い者は自分の世界が全てだと思い込んでいる』という意味があるらしい」

 

「へぇ、誰から教わったの?」

 

「金色の髪をした……確か、ミリンと言ったか?ジンという者からも聞いた覚えはあるが」

 

「流石侍2人組……東洋に関しては向こうが知ってるだろうからなぁ…」

 

 どちらも東洋に関する装いと、そして行事を知っている2人である。こういったことも知っているのかもしれない。

 

「2通目『好きな食べ物はなんですか』」

 

「好き嫌い、と言うやつか……生憎だがそういったものはあまり意識していない」

 

「あ、そうなんだ」

 

「調理の仕方によって、味が変わるのは当たり前の話だ。例えばピーマンという植物があるな」

 

「あぁ、よく子供が苦手な野菜に上がるよね」

 

「あれは細かく刻んで料理に混ぜ込むだけで、栄養素を簡単に補給できる。多少切り刻んだ程度では、あの苦味を回避することは難しいだろう」

 

「でも切り刻んでも、緑色はなくならないよ?」

 

「故に、色の濃い料理に混ぜ込めばあまり気付かれずに出来るだろう」

 

 確かに、とグランは考えていた。色と味が濃い料理ならば、ピーマンの存在を完全に消し去ることが可能だろう。そうそうあの緑色を消し去る方法なんて言うものがあるとは思えないが。

 

「どうしてそんな調理方法を知ってるの?月で習った?」

 

「いや、こちらの本で学んだ」

 

「あぁ、調理本も読んでたんだ」

 

「好きな事が未知への研究だからな、手当たり次第に知識を吸収していきたい」

 

「……本、整理してる?」

 

「あぁ、俺以外も読みそうな本は団の書庫に寄贈してある……にしても、よくこの船に書庫を置こうと思ったな」

 

 カシウスが、ふと呟いた。そう、この船には書庫が置いてあるのだ……と言ってもそこまで大きなものでは無く、本の管理を任せられる人物こと叡知の殿堂の司書であるアルシャに任せているのだ。

 

「まぁ本を読むにしても、個人の部屋で置いておくにも限界があるからね。他の人も読めそうな本は、本人の自由意思で寄贈してもらうことにしてるよ」

 

「ふむ……しかしこれだけの団員がいて、それでも他の施設をおけるスペースを確保出来ているのは素晴らしいな……この船の部屋割り状況はどうなっている?」

 

「そりゃあ、もう……星晶獣の力でちょこちょこっと…」

 

「そんな力を持つ獣がいたのか?」

 

「……」

 

 話がストップした。少し考えた後に、グランは早口で説明をしていく。星晶獣の能力ではなく、星晶獣の力とか能力とかをフル活用&応用を組み合わせていくことで、何やかんや船が広くなっているとかそんな感じの話を延々と続けていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「団長、話を戻して欲しい」

 

「……ごめんね、要するに企業秘密なんだ」

 

 どれだけ長く語っただろうか?理性を取り戻したグランはすっかり顔を俯かせて項垂れていた。

 

「あれだけ語っておいて、結論がそれなのは少しばかりようやく出来なさすぎではないか?不合理だ」

 

「どっちかと言うと理不尽とか不条理とかじゃないかなぁ…俺が言う言葉でもないけど」

 

「それで?3つ目はなんだ?」

 

「三通目『あんた、ベアのパン食べたの?』ゼタから」

 

「あぁ、あのやけに糖分過多の穀物加工食品か」

 

「……あはは」

 

 名称としては合っているのだろうが、しかし素直に『クソ甘いパン』と言えばいいものを、わざわざめんどくさく言うのは彼の性格ゆえなのだろうか。

 

「あれは確かに甘い……が、消化が早く尚且つ栄養素を取り入れられるのはいい事だ。それに、甘いものは疲れを緩和させることが可能だからな…携帯用食品として、あれだけ適しているものは無いだろう」

 

「要するに、サバイバル食品って奴だね」

 

「が、あまり取りすぎると体に不調を来たしてしまう故、あまり連続して食べることはオススメしない1品とも言えるな」

 

 あの甘いパンを、連続して食べる。確かにお菓子のパンとしては、団随一と言っても過言ではないほどに美味なベアトリクスのパンだが、あれは一つ二つ食べるだけで十分なのだ。何個も食べていたら、本当に体を壊していまいかねない。

 

「しかし、あの甘さはともかくとしても美味だと感じるものは早々ないな」

 

「そうなの?」

 

「あぁ、月では甘味は娯楽の1種だからな……いや、こちらの様に綺麗に盛りつけるということ自体が、かなりの娯楽だ」

 

「え、月では何食べてたの」

 

「栄養素をふんだんに詰め込んだ、ブロック状のものだ。食べやすく、栄養素も豊富になっている。腹持ちもいいため、月では娯楽食品を除いてはよく食べられているものとも言えるな」

 

「……え、ほんとに?」

 

「さて、どうだろうな?団長達が月に来る機会があれば判明するだろう」

 

 珍しく、ジョークを言うカシウス。不合理なことは嫌いだと言っていたはずなのに、何故ジョークを言ったのか。

 

「……冗談、というのはなるほど…こういった時に使えば確かに、多少の趣があるな」

 

「……今のも、未知への研究?」

 

「あぁ、再三言っていることだが……感情論は苦手だ。しかし、苦手だからと言って敬遠するのはまた別の話だろう」

 

 カシウスはそう言い放つ。要するに、食わず嫌いや知らないままただ嫌うのは違うだろうと言いたいらしい。

 

「そうだね……というわけで、お時間がやって参りました。次回の団長相談室をお楽しみください、ご視聴ありがとうございました」

 

 そして、グランはカメラの電源を切った。そして、そのままカシウスと共に部屋の外に出る……と、カシウスがグランに向き直る。

 

「そう言えば団長」

 

「ん?何?」

 

「有り余る程の急激な血糖値の向上に気をつけろよ」

 

「へ?う、うん……」

 

 それだけを言って、カシウスはグランから離れる。一体何が言いたかったのだろうか……とグランは思っていた。

 そしてふと、カレンダーに目を向ける。そこには2/14と書かれている文字が目に入ってきた。

 

「あ、そうか今日はバレンタインだったのか……」

 

 ふと、去年のバレンタインを思い出すグラン。去年は、確かチョコの食べすぎで倒れ、そして体重と血糖値の上限値が上がったかのような爆上がりだったことも思い出した。

 

「……今年は、生きて帰れるかな」

 

 それでも、全員分食べる上にホワイトデーには全員3倍返しで挑む所存である。

 その為に、その為だけに……貯めたお小遣いを使っているような気がしてならないが、それで皆が幸せになれるのなら……とグランは天を仰ぎながら目を細めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「思ってたより、エグいチョコあるなぁ…」

 

 渡された等身大ドロシーチョコレートや、既製品のはずなのに何故か毒々しい見た目となっているカタリナのチョコレートを見ながら、グランはそれを頬張って行くのであった。

 3時間ほどかけて全部食べたが、しばらくグランの理性は戻らなかったそうな。




145個のケーキ&チョコレートと、1つの野菜セットを全部食べました。


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組織の日、団長の死

「一応…蘇生は続けているんですけど……」

 

「復活出来なさそう…?」

 

「少なくとも……しばらくは寝たきりかと……」

 

「う、うぅ…なんでだよ団長ォ……!」

 

 ベッドで寝たきりのグラン。悲しそうな顔をしているゼタ、悲しそうだが、それでも説明を続けるソフィア、そして何も言わないイルザ。

 

「なんで、どうしてこんなことに……」

 

「……食べ過ぎ、ですね…」

 

 そう言って、ソフィアは今や立ち入り禁止となっているグランの部屋に視線を向けていた。

 何故立ち入り禁止となっているか……それは、2/14がバレンタインだったこと…そしてグランは100を超えるチョコを貰っていたこと…それら全てが部屋に存在したことで、吐き気を催す程の甘ったるい匂いの空間になってしまっていること…それらの要因が合わさった結果である。

 

「それに、カタリナさんのチョコも食べてましたし…」

 

「ヴィーラがちょっと同情してたわね…」

 

「彼女もしばらく寝込んでましたが…せいぜい数時間でした…」

 

「なんで、既製品を買ったのに……あんな事になってるのよ、他の子はとめなかったの?」

 

「……同じものを、買ってる人もいました」

 

「……」

 

  カタリナは、触れたものを毒素に変える力でも持っているのだろうか?とゼタは思ってしまった。しかし、それがトドメであるだけで過程の中で大量のチョコを食べたことも要因なのだ。

 

「薬草を取ってきたぞ」

 

「……実に非合理だな、食べられないのであれば言えばいいものを」

 

「それが彼のいい所、なんだろうな…」

 

「……まったく…」

 

 外からカシウス、バザラガ、ユーステスが帰ってくる。グランの体を治すための、薬草を取ってきてくれたのだ。

 

「ありがとうございます……これで少しは体調も良くなるかと…」

 

「う、うぅ……!」

 

「ベア、あんたいつまで泣いてんのよ……」

 

 泣いているベアトリクスの肩を抱くゼタ。ソフィアは薬草を煎じて、それをグランの口の中に流し込んでいく。

 

「それ、そのまま流し込んでもいいの?」

 

「これ、液体にするとかなり早い時間で気化してしまうんですよ……ただ、必要な栄養素を気体にして肺に流し込んで血管内の赤血球に運んでもらう…という方法が取れるので……」

 

「あー、うん。不思議薬草ハイハイ」

 

 適当な返事をするゼタ。というか、泣いているのはベアトリクスだけであり、他の面子は呆れていたり同情してただけである。ゼタは前者6割後者4割である。

 

「それで?いつ復活するの?」

 

「さぁ……あれだけのチョコを食べたんです…血糖値がまともな値に戻るまでは……」

 

「せめて、薬が飲めるほどに回復してくれるのが合理的なのだがな」

 

「そうは言うが、団長も人だ…いや俺ですらあの量を食う気にはならん」

 

「……そう言えば、クラリス泣いてたわね」

 

「あぁ……」

 

『折角勇気出したのにこの結末は酷くない!?』と、泣きながら誰に八つ当たりするでもなく叫んでいたクラリス。流石のカリオストロも、これには慰めていた。

 

「バレンタイン……今年は1層おかしなものを出している人が多かったらしいわね」

 

「可笑しなものというか、お菓子なもの…というか…少なくともその類に位置するのはカタリナさんと、ドロシーさんくらいです」

 

「自分の等身大のチョコレートだなんて、どうやって作ったのかしら……」

 

 自身の等身大チョコレート、などというおかしなものを作りあげたドロシー。流石のグランも、彼女の愛の重さにちょっと驚いていた。

 

「まぁ、ウイスキーボンボンを食べさせられなかっただけマシかもね…」

 

「確か、アルコールが入ったチョコだったな…酒の勢い……なるほど……」

 

「おい、イルザ。それ以上の事を考えれば俺も相応の対応を取らねばならんぞ」

 

 妙に嫌な気配がしたせいか、ユーステスはイルザに注意を行う。イルザは軽く舌打ちをしたが、ユーステスは冷静に秩序の騎空団を呼ぶ為の準備を整えていた。

 

「流石に、酒を飲めない歳の子供に酒を飲ませるのはまずいだろう」

 

「バザラガ……そういう話じゃないからちょっと黙ってて」

 

「……喋りすぎたか」

 

「しかし、実際問題彼がいなければ船は動かないぞ?」

 

 団長であるグランが倒れる。それ即ち団を動かすものがいなくなる…という事でもある。

 しかし、カシウスが追求した事は予測できていたのか……何故かベアトリクスが自慢げに答え始める。

 

「ふふん、そう思うだろう?けどな、いざと言う時のためにグランは客観的な判断を取れる人物達にコンタクトを取って、そいつらで団を動かせるようにしているんだ」

 

「因みに、その内の一人は私だ」

 

 そう言って、イルザが軽く手を上げる。組織メンバーの中では、一応上司に当たる人物なので一組織を動かすのに最適な人物だとも言える。

 

「何人ほどいる?」

 

「さぁな、私が覚えている限りでは10人はいたはずだが…この船にも新しい仲間が続々と増えている。今の時点では、そこから増えているかもしれないな」

 

 イルザは思い出しながら指折り数えていた。200人ほどいるこの団には、確かに最適だと言っても過言ではない人数ではある。

 

「私は聞いていないが、他に彼からこれから行う行動を聞いている者もいるかもしれない」

 

「ふむ、なるほどな……だが、今この船にはまともに人数がいないようだが?」

 

「そりゃあね……動かせる、って言っても皆団長大好きとかいう集まりよ?」

 

「なるほどな……」

 

「まぁ、食糧の買い出しとシェロカルテとの相談…それに子供たちの面倒も見ないといけないし……あぁそれと解決できそうなら、依頼を解決し続けたりもしてるわね」

 

「……それは、いつも団長が行っていることか?」

 

「へ?そうだけど?」

 

 ゼタが『今更何を?』と言いたそうな顔をしていた。しかし、カシウスは思っていた……『1人に任せすぎでは?』と。しかしそこは、グランの性格というかなんというか、彼は自分がやれる範囲のことは全てやろうとするタチなのだ。セクハラはするが。

 

「……ひとまず、我々はしばらく休めるというわけか」

 

「そうですね…薬草はこれだけあれば十分でしょうし……」

 

「にしても…いつからこうなんだ?」

 

「いつからって?」

 

「バレンタインデーなるもので、食べ過ぎによる昏倒だ」

 

 ゼタ、バザラガはこの団では比較的古参の方である。2人は顔を見合わせるが、少ししかめっ面になっていた。

 

「うーん…少なくとも私達が一緒に行動し始めてから…の時点ではまだ倒れてなかったような気がするわ」

 

「自信はないがな…今のように昏倒する時間が長かった、というわけではなかったかもしれないのだからな」

 

「ふむ……何故団長が倒れる事態に発展しているのにも関わらず、バレンタインデーが禁止にならないか疑問だな」

 

「は?」

 

「……」

 

 ゼタの比較的マジトーンな声に、カシウスは目を瞑って黙る。こういう時は黙ってやり過ごすのが1番合理的だと、判断したのだろう。

 ゼタはしばらく睨んでいたが、すぐさま視線を外してグランに向き直る。

 

「……ねぇ、思ったんだけどさ」

 

「どうしたんだ?ゼタ」

 

「……寝たきりの団長さん襲えば既成事実できるんじゃない?」

 

「ゼタ、お前にそんなことが出来るわけ」

 

 バザラガが苦言を呈そうとした瞬間、ゼタの持つアルベスの槍が炎を吹き出す。瞬間、バザラガは思った『あぁ、こいつ理性飛んでるわ』と。

 

「待ってください、流石に寝たきりの人と既成事実作るのはちょっと…体力的に……」

 

「あ、そっか……」

 

「そもそもだな……お前の場合恥ずかしがって出来ないだろう?前に胸直してた時の話振られただけで、顔を真っ赤にしていたくせに」

 

「ちょ、教官それ言うの反則……」

 

 バザラガ、もとい組織男子メンバー+カシウスはそのまま黙って部屋を出る。女3人よれば姦しいなどと言う事もある。下手に薮蛇をつついて破局を食らうより、そもそもバトルを受けなければいいのだ。

 

「……それで?幾らなんでもずっとこのままって訳には行かないでしょう?」

 

「はい…シャオさんにもお薬は作ってもらって、飲ませたんですけどね…甘いものを食べすぎた弊害としか……」

 

「1週間?それともそれ以上?」

 

「さぁ……団長さんの気力次第という事しか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あれ、ここどこ?」

 

 グランは、目が覚めると知らない場所にいた。それは綺麗な河川であり、そこの見えない深い川と、辺り一面に敷き詰められている小石が特徴的な場所だった。

 霧が深く、そして自分のいる場所…そこから川を挟んだ反対側には、赤くて綺麗な花畑が存在していた。

 

「……とりあえず川を渡ってみよう。話はそれからだ」

 

 ふと、顔を上げて川の向こうの霧を見つめる。しかし、ある程度見つめてからグランはとあることに気づいた。誰かがいるのだ、川の向こうに。

 

「だんちょ〜」

 

「ローアイン?なんでそんな所にいるんだ?」

 

「いやさぁ、キャタリナさんのチョコ貰ったから馬鹿スコーンって勢いででモリモリ食べてたわけよ。いつもよりちょーっと刺激的な味だったと思ったらさぁ……」

 

「なるほど、ここにいたと……というかここどこ?」

 

「三途の川」

 

「……ごめん、もう1回言って?」

 

「SansRiver」

 

「……マジか、ここ三途の川なのか…」

 

 絶望に打ちひしがれるグラン。まさか、チョコの食べすぎで死んでしまうとは思っていなかった。

 

「いや、だんちょマダマダ生きてるよ。RiverってかLiver」

 

「あ、ほんと?……ってそっち側にいるローアイン達は…」

 

「あ、俺らヴィーラちゃんに刺されたりとか、キャタリナさんのチョコ食べてたらいつもこうなってて、なんかもう行き来出来るようになってんで大丈夫っす」

 

「え、マジで?お前そういう能力手に入れちゃった?」

 

「いやぁ、こんな能力要らないっすわ」

 

「俺だっていらないと思うよ。正直お前不憫過ぎない?」

 

「まぁしばらく遊んだら帰りますわ」

 

「……そう言えばトモイとエルセムは?」

 

 いつも3人一緒のローアイン達。いつもどんな時でも一緒だが、今回彼らは被害に遭わなかったのだろうか。

 

「何かぁ、エルっちは川の上流見てくるって言って泳いでいって、トモちゃんは閻魔大王と飲みに行ってさぁ」

 

「え、なにそれ大丈夫なの?トモイ後で処刑されない?」

 

「いやぁ、流石に大丈夫っしょ。めっちゃ話わかりますよあの人、何か凄いから」

 

「あ、待ってローアイン。閻魔大王とかいう話はNG、めっちゃややこしくなるから」

 

 恐らくその閻魔は、Fから始まってRで終わるような世界の話になってしまったり、ヤマがザナしてドゥーする人だったり、何か普通に地獄一の強さで鬼の灯の人の攻撃受け止められたりだったりする人とか色々いるのだ。ここはお空の世界なので、そう言った話はちょっとNGです。

 

「そういうの知らない人もいるから」

 

「……?まぁ、そうっすね…とりあえずしばらく遊んだら戻るんで」

 

「わかった、夕飯までには戻ってこいよー」

 

「うぃーっす」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「死ぬかと思った!!!!」」」」

 

 数時間後、ローアイン達とグラン…カタリナのチョコを食べて昏倒していた者達が復活した。

 ヴィーラは数時間で復活したとの事だったが、ローアイン達の場合カタリナの(自称)失敗したチョコを沢山食べていたらしく、それで一時的に死にかけていたという。

 団長の復活は喜ばれ、ローアイン達は自分達で肩を組んで生還を喜んだという。

 今回の教訓としては、やはりカタリナのチョコは避けるべしということだろう。




最後の閻魔大王ネタは自分の知ってるやつだけ入れました。鬼さんの灯の方はちょっと名前だけだったんで間違えてたらすいません。
というか他作品のネタを使うなって話なんですけどね?


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ガンパウダーミキサー、こんちくしょーです?

「今回のゲストはクムユさんです」

 

「ぴゃああああ……!」

 

「……フード取れそう?」

 

「が、頑張ってやるですよコンちくしょー!!」

 

 顔を隠す程に深く被っていたフードを、一気に広げるクムユ。勢いが着いたので、その勢いのせいで揺れた2つの大きな砲弾にグランの視線が向かう。しかし、すぐさま視線を戻していた。

 

「よし、じゃあ続けようか」

 

「は、はい…!」

 

「クムユはとある銃工房の育ちで、姉としてククルやシルヴァがいるんだよね」

 

「は、はいです……シルヴァ姉ちゃんも、ククル姉ちゃんも優しくてお父ちゃん達と同じくらい好きです…!」

 

 大好きな人を語っているからか、クムユは少しキョドりながらも年相応の柔らかそうな笑顔を向けていた。

 

「ククルは銃を作ってたけど…クムユは銃弾の火薬を調合してるんだよね」

 

「クムユは、お父ちゃん達から教わったのを実践してるだけです。で、でも……いつかは、ククル姉ちゃんやシルヴァ姉ちゃん専用の銃弾を作ってみてーです」

 

「いいね……あ、俺には無いのかな?なんて」

 

 ちょっとした冗談を言ったつもりだったのだが、何故かその瞬間クムユの顔が真っ赤に染まり、目が凄まじい勢いで泳いでいた。これこそ、目がぐるぐるしていると言うやつだろうかとグランは思ってしまう。

 

「ぴゃ、ぴゃ、ぴゃ…!?い、いきなりそんな事言われても恥ずかしーに決まってるです!!てやんでー!!」

 

「……もしかして、俺なんか変な事言っちゃった?」

 

「お、お母ちゃんが言ってたです!男に渡していい銃弾は結婚指輪と同等だって!!」

 

 銃工房、クムユやククルのお母さんというのはかなり肝が座っている女性なのだが、まるで山賊などの仲間にいる女性のような特徴しかない。いい人なのだが、肝が強い事と偶に冗談とは思えない冗談を口走ることがある。

 

「……銃工房の常識が分かんないから、女将さんの冗談かどうかがわからない…」

 

「て、てやんでー……だ、団長さんは…クムユと結婚してーですか…?」

 

「していいの?」

 

「は、はわわ……!」

 

 少し楽しくなってきてしまいそうだが、流石にこれ以上乙女の純情を弄ぶ訳にはいかないと、グランはダンボール箱を取り出す。それはお便りの入った箱でありいつもの様に掻き回していた。

 

「とりあえず、お便り読みあげようか。クムユはどんな質問が来て欲しいとかある?」

 

「へ、へ?そ、そう言われても……クムユ、ビビりなのを治すためにこれに参加しただけで…よくわかんねーです」

 

「ふむ……とりあえずこれいってみよう。『銃工房で暑い時は脱ぐらしいですが、火花とか当たった場合火傷しないのです?』アステールだね」

 

「い、いつも脱いでるので気にしたこと無かったです…それに、火傷も…クムユは身長が足んねーと言われて、触らせてもらうことが少ねーです。だから、火傷はお父ちゃん達もクムユもした事がねーです」

 

「あれ?ククルが銃作ってる時って、鉄の形整えるためにカンカン叩いて火花出てたけどあれは?」

 

 少し前、銃工房のいざこざが少々起こった際にグランはククルの作業を少しだけ覗き見たことがあった。

 無論、部屋の温度管理とかもあるらしいので中に入って黙って見ている程度だったが、その時は程よく火花が散っていたような思い出があった。

 

「ククル姉ちゃんは、ちゃんと自分に当たらねー様に距離を離していたです。お父ちゃん達も同じようなものです。けど、クムユは身長と腕の長さが足んねーから…力もみんなと比べて弱ぇですし……」

 

「……持ち上げるのが大変?」

 

「け、けどあくまで昔の話です!今はクムユも立派な職人……になるために頑張ってる見習いですー!」

 

「ふふ、ごめんごめん」

 

 プンスカ、という疑問が似合いそうな程に頬を膨らませて両手を上下に振るクムユ。その勢いで2つの大きな砲弾が上に下に勢いよく動いているので、グランの言葉は尻すぼみになって行き黙ってそれを眺めている状態になってしまった。

 

「……」

 

「だ、団長さん?何か顔がこえーです……」

 

「おっとごめん……2通目いって大丈夫?」

 

「クムユは全然問題ねーです!!」

 

「んじゃあ2通目いってみよう…」

 

 ガサゴソと箱の中を掻き混ぜいていき、そしてその中から無作為の1枚を取り出す。

 

「2通目『銃工房はいつもあんなに皆軽装なのか?』アレク」

 

「工房の中は熱いから、薄着じゃないと倒れてしまって……」

 

「あー……かなり薄着にしててもすごく汗かいてる時あるよね。前のククルの時とか」

 

「お父ちゃんも薄着だし、気をつけてさえいれば火傷はしねーですみます。だから、あんまり厚着することがねーです」

 

 そう言えば、とグランは銃工房一家の格好を思い出していた。とりわけ、目の前で見ている分ククルの格好が1番イメージに近い格好なのもあった。

 かなりの薄着、厚着してそのまま加工なんてやった日には、熱さで水分不足になる可能性が高いと言わんばかりの薄着。

 

「クムユも作業の時は薄着になるの?」

 

「は、はい。けどクムユは、あんまり薄着になったことがねーです」

 

「今はふわふわって感じ(R土クムユ)の格好だもんね。前の格好(R火クムユ)はかなり薄着だったけど」

 

「クムユが作業するとなると、あれくれーの格好になると思うです。流石に上着は脱ぐでしょーが」

 

 入団当初は、まるで姉御肌!と言った感じの服を着ていたクムユだったが、後で母親から貰った服はフリフリのふわふわな感じの服だったので、年相応の可愛さが目立つ服装になっていた。

 

「水着は?」

 

「あれはまた用途がちげーですし……そもそも足を見せるのは、危ねーです。薄着になると言っても、流石に足の方は危ねーんで分厚いズボンを履いてるです」

 

「そう言えば、ククルもズボン分厚かったね」

 

「はいです」

 

 ただの薄着ならば、男性は最早下着で良くなってしまう。しかし、上半身はともかく下半身は守っておかねばならないのか、よくよく考えたらククルはそういった格好になっていた。

 

「なるほどねぇ……」

 

「早くクムユも、ククル姉ちゃんみてーな格好をしてお父ちゃん達のお手伝いをしてーです」

 

「銃工房の女将さん達も、こんな親思いな娘がいて大層感動してるんだろうなぁ……」

 

「く、クムユはまだそんないい子じゃねーです!ビビりだし…」

 

「ビビりと言っても、それは大分改善されてきたじゃないか。最近大きな物音がしてもビックリしなくなっただろ?」

 

「そ、それはそーなんですが……」

 

「大丈夫大丈夫、クムユの思いは親御さん達に伝わっているからさ」

 

 そう言いながら、グランはクムユの頭を撫でていた。その行為に赤面するクムユ。まるで仲のいい姉妹のような風景だった。グランは赤面するクムユが可愛いと思い、そのまま撫で続ける。それに比例するかのようにクムユの顔も真っ赤に染まっていく。

 

「……おっと、このままほのぼの映像を流し続けていたいところだけど、そうなるとちょっとまずい事になってしまう。三通目に行こう」

 

「そ、そう言いながらなんで頭を撫でるのを止めねーんです!?」

 

 グランは片手でクムユの頭を撫で続け、そして器用にダンボールを脇で抱えながら余った腕でお便りを探す。

 

「ほい『銃使いの団員の弾を作っていたりするんですか』」

 

「流石にそこまでのことは、クムユに任せたら駄目じゃねーかと思うです」

 

「まぁそれは確かにそうだけど……理由は?」

 

「銃に一人一人の癖が染み込んでるのと同じように、弾丸も一人一人の癖が詰まってるから……って感じです」

 

「弾丸に?」

 

 イマイチピンと来ないグラン。銃ならば理解できるが、銃種に合った弾を選ぶというのならばともかく、使い手の癖が詰まっているというのがイマイチ理解出来ていなかった。

 

「弾丸ってーのは、銃が同じでも使い手の使いやすさによって、変わってきちまうんです。それに、弾を込めたら銃の総重量も変わってくるんで……あんまり自分に合ってない重さの弾丸だと、重心がブレる可能性だってあります」

 

「はー……なるほど。確かに使える銃によっちゃあ、複数の弾丸を使用することも出来るしね」

 

「だから、無闇にクムユが使うよりは1番自分に合っていると思う弾丸を作ることが重要、ってー考えです」

 

「シルヴァやククルの弾丸は?」

 

「シルヴァ姉ちゃんは、狙撃銃のスペシャリストなんでクムユの作った弾丸も使ってくれます!ククル姉ちゃんのはちょっと特殊なものもあったり……だから、クムユが関わっている場合とそうじゃねー場合があるんです」

 

「なるほどねぇ……」

 

 グランはシルヴァの狙撃銃と、ククルが使っているオリジナルの銃を思い出していた。

 ククルが最近使っているものは、大量の弾を一気に撃ち続けると言った方式のものであり、狙撃銃とは違って大量の敵を掃射するのに適している銃である。

 

「っと……そろそろ時間だ」

 

「そう言えば、さっきから気になってる事がありやがるんですが」

 

「え、何?」

 

「団長さん、さっきからクムユのどこを見てやがるんです?」

 

「そりゃあ勿論おっ」

 

 久しぶりの落下である。というか13歳の少女に対して、胸を見ているというのは最早セクハラ以上の犯罪なのではないだろうか。

 そして、あまりにも久しぶりすぎてグランもそう言えばセクハラしたら落とされる…というのを完全に忘れていた。

 

「だ、団長さん!?」

 

 自然な落下、一応下で待機してる者達がいたためギリギリで落下死する事は免れているが、いきなりだった為クムユはついつい驚いてしまう。

 

「そろそろし始める頃なんじゃないか、と思ってましたよ」

 

「ぴゃあ!?」

 

 そして唐突に隣に現れるリーシャ。追加で驚くクムユ。突然人が隣にいたら誰だって驚くだろう。

 

「こ、こんちくしょー!!!」

 

 そして、何故か叫びながらクムユは部屋から大慌てで出ていった。その顔には半泣きのせいか、涙が少しだけ溜まっていた。どうやら、驚き過ぎてキャパオーバーしたようだった。

 

「……え、あれ…今のもしかして私のせいですか?」

 

 そして、困惑したリーシャの質問に答える者は誰一人として居ないのであった。

 その後、グランの部屋に大泣きしているクムユが入ってきて、暫くあやすことになったのだが……グランはその時に、クムユを慰めるとは別でいい思いをしているのはまた後日の話である。

 

「団長さんは意地悪ですぅ…! 」

 

「え、まだ俺なんもしてないけど!?」

 

 ボロ泣きクムユをあやしながら街に出る訳にも行かず、何故かリーシャに真後ろを着いていかれながら、グランは何とかクムユをあやしきったのだった。

 その時にリーシャが言っていたのは、『お胸が豊かな小さな少女を泣かしている男の図』のようにしか見えないという事だった。

 グランは反論しようとしたが、リーシャには反論が許されないというのも思い出して、そのまま泣き寝入りをする子のごとく、黙ってリーシャが着いてくるのを我慢するしかないのであった。




水着クムユの隣でSRの水風船をレスラーで割りたいだけの人生でした。


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創意の銃設計士、それじゃあいっちょ頑張ってみる?

「今日のゲストはククルさんです」

 

「はーい、みんなのお悩み聞いちゃうよ?ククルお姉ちゃんでーす」

 

「ククルはクムユのお姉ちゃんで、銃工房の跡取り娘でもあります。今や使うのは自分が作り出したオリジナルの銃、シルヴァや俺達の力になってくれると物凄くありがたいです」

 

「やだなー、褒めすぎだよ団長ー」

 

 照れながら頭を掻くククル。褒めるのは得意なのだが、褒められるのはあまり慣れていないようだった。

 

「お悩み聞いちゃうよ?って言ったけど、そんなククルはなんか最近悩みがあるって聞いたけれど?」

 

「え、それって誰から?」

 

「ルリアに聞いたんだよ。前に話してた時になんか言ってたから、詳しく聞こうと思ったんだけどどうにもはぐらかされちゃってさ」

 

「あ、あー……」

 

 グランが聞くと、目を明後日の方向に向けるククル。グランが直接聞いても話しづらいのか、言葉が出てきていなかった。

 グランも、話しづらい話題を降ったのだろうかと思ったのだが、嫌そうという訳では無いのが、余計に彼の困惑を買っていた。

 

「もしかして変に言いづらい事聞いちゃった?」

 

「う、うーん……その、団長にはあまり…というかできれば男性には話したくないなぁ…って……」

 

 ここでグラン、ピンと来ていた。自分と言うよりも男性という括りである以上、恐らく悩みは女性的なことだろう。つまり、自分が何を言ってもアドバイスにならない可能性もあるし、下手をすれば的外れの見当違いを起こしてしまう可能性もある。

 

「そっか、なら聞かないでおくよ」

 

「ご、ごめんね?本当に言いづらいことでさ…」

 

「ううん、こっちが無理に聞き出すわけにもいかないしね」

 

 グランはそれでその話題を終わらせた。因みに彼女の悩みとは、シルヴァとクムユの間に挟まれたことによる、胸囲の話題である。ルリアに言った時は、彼女の目が死んでしまっていたということもあり、中々言い出せない話題となっていた。

 

「さて、それじゃあ……ククルはこの団に入って良かったと思ったことってある?」

 

「うーん…いっぱいだなぁ。クムユにも会えたし、シルヴァ姉にも会えた。それに私の中で今の所最高の銃も出来上がった、ソーンさんにも出逢えたし……何より団長にも出逢えた」

 

「俺に会えたのはいい事?」

 

「うん!とってもいい事だと私は思ってるよ。運命なんて、ガラじゃないかもしれないけれど……私はそういうのを感じとったくらいには、とってもいい事」

 

「そっか、そう言って貰えると俺も嬉しいよ」

 

 お互いに微笑むグランとククル。姉弟と言うには、あまりにも似ていないかもしれないが、今この時はそういった雰囲気は出していた。

 

「……っと、そろそろお便りを読んでいこうかな」

 

「じゃあ、よろしく!」

 

「お言葉に甘えて……1通目『この団にはガラドアさんみたいな鉄を加工する人もいますが、そういった人達と合同で作業することはありますか?』」

 

「そうだねぇ、ガラドアさんには前にお世話になったけど…うん、うちの銃工房に来てくれたりして、鉄の加工の仕方とか教えてくれたりするよ」

 

「へぇ、そうだったんだ」

 

「うん、だってあの人の加工技術は凄いからね。エアロバイスさんも、よく手伝ってくれてるし……でも基本的には1人で、というかウチの銃工房は銃工房で……私一人の時は私一人のときで作業したりするよ」

 

「あれ、ちょっと意外かも?」

 

 この団で仲良くなっているから、グランはてっきり合同で作業することも増えたのだろうかと思っていた。しかし、どうやらそうでも無いらしい。

 

「だって私のことは私ひとりで…銃工房のことは銃工房の中で収めていかないと駄目だからね。

 勿論、意見を聞くことくらいはあるけど……私はなるべく1人で出来ることをしていく性格だから、余計にガラドアさん達の手助けを請おうとは思ってなかったよ」

 

「なるほど、どっちかと言うと見守るために来てるってことだね」

 

「まぁそんな感じだね」

 

「ふむふむ……とりあえず答えは出たので2通目に……『銃を作る時に気をつけなきゃいけないことってありますか?』」

 

 2つ目の質問は、銃の加工の際の質問だった。ククルは顎に指を当てて少しだけ考えていたが、直ぐにその答えを出していた。

 

「そうだねぇ……やっぱり熱さかな、汗もかくし喉が渇く。慣れてくると、どのタイミングで水分を補給するかって言うのが分かるけど、慣れてないと倒れちゃうこともあるからね」

 

「やっぱりそういうことなんだね、絶対暑いもんねあそこ」

 

「何が厄介かって、あんまり暑すぎると汗自体直ぐに蒸発しちゃうからさ……思ってた以上に水分が抜けてる時あるんだよね」

 

「あんまり暑いとそうなっちゃうのか……」

 

「ファータ・グランデにはそこまで暑い気候の島が無いからねぇ……他の空域にはあるのかもしれないけとさ」

 

 確かに、とファータ・グランデにある殆どの島を思い出していたグラン。1番それらしいと言えばアウギュステかもしれないが、夏に海に行く程度なのであまり灼熱とは言えないだろう。

 

「あ、バルツとかは?」

 

「確かにあそこも暑いけどさ、汗がすぐ蒸発する程じゃないでしょ?もしそういった気候なら、水不足が深刻化してたかもしれないね」

 

「ふむ…確かに」

 

 暑いといえば暑いが……と言ったところだろう。勿論、島の場所によってはそういった場所もあるかもしれないが、そもそもバルツは火山もある島なので、暑いのは当たり前なのだが。

 

「まぁ、ちょっと話がそれちゃったけど…とりあえずそんな感じかなぁ」

 

「なるほど……水分補給っていうのはいついかなる時でも大事なんだなぁ」

 

「じゃあ次行ってみよう!」

 

「はーい……3通目『中身を見てみたい銃等はありますか?』」

 

「……中身?」

 

 質問の意図がイマイチ理解できなかったのか、ククルは首を傾げる。グランは何となく予想が着いたのか、その予想を口に出す。

 

「要するにバラしてみたいって事じゃない?」

 

「あぁなるほど……でもまぁ、他の人の銃を勝手にバラすのもなぁ…」

 

「まぁほらそこは……あくまでも仮定でね?『もしも中身を見れるなら誰の銃を見たいですか』みたいな」

 

「なるほど……」

 

 グランの言葉に理解と納得を示すククル。そして少し考えた後に、思いついたのか名前を上げていく。

 

「十天衆の…」

 

「え、ソーン?」

 

「ううん、ソーンさんじゃなくて。エッセルさん、っていたでしょ?」

 

「あぁ、彼女の銃を見てみたいの?」

 

「うん、手入れは自分で出来るらしいから見せてくれることは無いんだけどね?」

 

 十天衆が1人、エッセル。桃色の髪のエルーンであり、銃を主な武器として戦っている。十天衆という名の通り、少なくとも銃使いの中ではトップクラスに強い猛者である。

 

「あれ、そうだったんだ」

 

「信用してくれてない、って訳じゃないけどね?誰だって自分の武器を他人に渡すのは仲が良くても躊躇すると思うよ?

 シルヴァ姉の銃は私が作ったものだから、私しか見れないんだけどね?」

 

「へぇ……他にはいる?」

 

「うーん…イルザさんのニバスとか、ユーステスさんのフラメクとかかなぁ……あれはもう、特殊武器すぎて私の手には負えないだろうけどさ」

 

 イルザ、そしてユーステスの武器。どちらも、彼らの属する組織から配られたものであり、はっきり言えば中身を見せることが許されない武器である。

 仮に任されたとしても、銃の形をしたまた別の武器なので自分では手に負えないと考えているのだろう。

 

「あれはね……むしろ、あれバラしたら凄いことになりそう」

 

「武器の自己防衛本能みたいなのが働いて……」

 

「船の中でそれは勘弁…」

 

「だよねぇあはは」

 

 苦い思い出である。組織から配給された武器は、皆別の姿を持っているのだが、それはまた別の話だったりするので割愛しよう。

 

「あ、そう言えば今日シルヴァ姉の銃のメンテだった!」

 

「え、ほんと?」

 

「別に時間は特に指定してないからいいけどね?バラして組み立て直すだけの簡単なお仕事なのです。だからと言って、集中しないといけないけどね」

 

「ふーん……あ、ならさ」

 

「ん?」

 

「俺の銃も」

 

 瞬間、グランの姿は掻き消えた。またもや下に落下したのだ。いや、落下することは構わない。彼にとってそれは日常茶飯事なのだから。しかし、なぜ落とされたのか…彼にはその理由が全くわからなかった。

 ただ、自分の銃もメンテナンスして欲しいと言いたかっただけなのだが……と、ここまで考えたところで気づいた。

 あぁ、言い方の問題だったのかと。ならしょうがねぇな……と思いながらグランは自由落下に身を任せるのであった。

 

「……え、なんで今落ちたの…?」

 

「『俺の銃』なんていう事を言うのは、セクハラでしょう」

 

 ククルも疑問に思っていたが、リーシャが説明をする。リーシャの説明を聞いて、意味がわからなかったのか首を傾げながら考えるククルだったが、少し考えて意味が理解出来たのか顔を真っ赤にしていた。

 

「あっ……」

 

「……そういう事です」

 

「あ、あはは……団長は別にそういった意味で言ってるんじゃ無いと思うけど……」

 

 真っ赤になりながらグランのフォローを入れるククル。内心、それはそれでありかもしれない……なんていうことを考えていたが、それは口に出さず心の中に留めておいた。

 

「……確かに、よく考えずに落としてしまいましたね…」

 

「で、でしょ?」

 

「後で団長さんに謝っておきます」

 

 リーシャがククルの言葉で少し考えたが、よく考えずに落としたようであり、それを反省してから部屋を出ていった。

 ククルはそれをしばらく見ていたが、リーシャが部屋を出てしばらくしてから、まだ顔を赤くしながらモジモジと体を動かしていた。

 

「だ、団長の銃……ね…」

 

 そんな言葉を、ククルはぽつりと呟く。しかし、その後に続くであろう言葉を言うことはなく、そこから先どう思ったのかは彼女しか知りえないことなのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ……」

 

「見事にバラバラだなぁ」

 

 戻ってきてから、グランは模型の銃をバラしていた。影響を受けたというか、ちょっとやりたくなったお年頃なのである。しかし、本当に武器をバラして部品が無くなれば困るのは自分なので、まずは模型から……ということになったのである。

 

「ここからまた組み直すわけか」

 

「思いの外模型でもパーツが多いもんだなぁ」

 

「うし、なら一旦組み立てるとしますか」

 

 そう言ってグランは模型の銃を組み立てていく。一心不乱に黙々と続けられるその作業に、ビィも何も言わずに羽を羽ばたかせているだけだった。そして、しばらく時間が経った時にようやく組み立てが終わったのである。

 

「おわったー!!」

 

「結構時間かかるんだなぁ……もう夕方だぜぇ?」

 

「これからもっと早く組めるようにならないといけないなぁ」

 

「まぁいざと言う時、直せた方が楽だもんなぁ」

 

 そう言っていたグランだったが、しばらくすると時間が段々と短縮されていくわけであり……今回は数時間かかっていたが、次回は1時間短縮、その次は1時間での組み立て終了、そして5回もこなす頃には1時間は余裕で切っていた。

 

「おいおい、もうマスターしたのかぁ?」

 

「いや、まだまだ……これから本物の銃に取り掛かる」

 

 グランの底知れない探究心を見て、ビィは感心しながらも呆れていた。因みに、しばらくすると本物の銃でもプロであるククルと遜色ない修理タイムを叩き出したので、完全にマスターしていたのであった。




今月ククルをサプりました。


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奮励の儁秀、好機はいつ来るのか?

諸事情により投稿遅れました


「今日のゲストはシルヴァさんです」

 

「よろしく頼む」

 

「今日はそっちの格好(光Ver.)なんだね」

 

「違う方が良かったか?」

 

「いやいや、そういった意味じゃないよ。ただ着分けている時多いなって」

 

 今のシルヴァの格好は、スーツのような格好だが、へそ周りの腹が出ている格好であり、胸は白い布地で隠している。そういった格好である。

 

「まぁ私としては、どちらの格好も好きだが……こちらの方が仕事着らしいだろう?」

 

「まぁたしかに……けどいつも思ってるんだけどさ」

 

「ん?」

 

「何でいつもお腹露出してるの?」

 

「…へ?」

 

 まさかそんな質問が飛んでくるとは思わなく、シルヴァは少し意外そうな顔をしていた。それに対してグランは、逆に意外そうな顔で返していた。

 

「いや、その格好もお腹が出ちゃってるし……いつもの格好もお腹出してるからさ。ずっと気になってたんだよそれ」

 

「そ、そんなにか?」

 

「いや、シルヴァって結構恥ずかしがるタイプなのに、珍しいなぁって思っただけだよ。スカートの話振ったらめっちゃ赤くなってたじゃん前」

 

「うっ……その話はちょっと…」

 

 顔を赤くして俯くシルヴァ。スカートの時と言い、今の時といいどうやら彼女は自分が男達に取って、痴女か何かに見えているのだろうか?とも思わないのだろうか、とグランは思っていた。

 痴女は言い過ぎだが、しかしそれでも男達が視線を逸らす事ばかりである。

 

「わ、私としては……あまり意識していなかったんだ。可愛かったり…これいいなぁって思ったものを着ているだけで……」

 

「……露出とかは一切?」

 

「考えていない……」

 

 赤くなっていた顔がさらに赤くなるシルヴァ。見ていて面白い反応ではあるが、しかしあまりからかっても居られないのでここで一旦格好のことは切り上げることにしたグランであった。

 

「まぁシルヴァの格好は置いておくとして……さて、いつものお便り箱です」

 

「あ、あぁ!さぁどんどん来い!!」

 

 少し焦りながらも、シルヴァはグランに同調する。じゃなければ、いつまで経っても格好のことで話が終わらなくなりそうな気がしたからだ。

 

「さて、1通目……『戦闘をする時に、自分が組みたいと思う団の人はいますか?』」

 

「そうだな……私としては、お互いに攻撃を阻害しないような組み合わせが好ましい」

 

「と言うと?」

 

「私の戦い方は狙撃銃による一撃必殺だ。ククルの武器の様に大量にいる魔物の相手をするのは、あまり向いていない武器だ」

 

「なるほど、確かに」

 

「ソーンと組めば、また話は別なのだがな。彼女は私よりも遠い位置から、敵の大軍を殲滅することが出来る」

 

 十天衆ソーン。常軌を逸した視覚を持ち、スコープから覗いて遠くを撃てるシルヴァと違い、彼女は裸眼で彼女よりも遠いところを見ることが出来る『魔眼』を持っている。

 そして武器は、魔力を矢として放つ魔導弓である。これにより、一度に大量の矢を放つことが可能となるのだ。

 彼女にも弱点はもちろんあるが、それはまた別の機会である。

 

「ソーンを連れ出すのは……」

 

「…まぁそうか、彼女は誰と組んでも強いからな」

 

「彼女以外はどう?」

 

「うーむ……この団には、近接が多いからな。それも、大概が手練の者達ということも考えると、私としては誰と組んでも遺憾無く実力を発揮できると思っている」

 

「ククルとかクムユも?」

 

「あぁ」

 

「なるほど」

 

 確かに、彼女の戦闘スタイルは余程のことがない限り味方を阻害するということは無いだろう。

 一撃必殺、群れのボスや味方の後ろから攻撃してきそうな魔物を排除するのが役目なのだ。

 そういう点を考えれば、他対戦をする場合シルヴァやクムユのような周りに弾丸をばらまく戦い方をする者達との噛み合わせはいいほうなのだろう。

 

「ユーステスとかイルザみたいなのは?」

 

「彼らも私と上手く噛み合う戦い方だな。まぁ私以外狙撃銃を使う者が居ないというのが、一番の理由なのだろうけど」

 

「ふむ……とりあえず、誰と組んでも問題ないってことだね」

 

「そういう事になるな」

 

「では話題がいい感じになったところで2通目に行ってみよう。『何故そんなに大きいんですか?』」

 

「……?身長の話か?」

 

「いやぁ、多分そっちじゃないと思うなぁ」

 

 グランは、お便りの主が何を言いたいのかよくわかっていた。要するに、胸の話である。

 しかし、体の話題というのは本人も困るものなので、笑って誤魔化すだけになっていた。

 

「体の話題は、本人にも答えられない事があるんで……」

 

「…?そうだな、確かに私の身長の話をしようにも食生活や普段何をやっているか……以外にも理由があるかもしれないしな」

 

 シルヴァも、少しズレてはいるが理解してくれたようで頷いていた。グランはこれは無効だと考えて、改めて新しい2つ目の意見を出していた。

 

「えーっと…『銃工房の人達と仲がいいと聞きましたが、銃の話以外にどんな話をしたりするんですか』」

 

「銃以外、か……」

 

「あ、無い?」

 

「いや…あるんだ……確かにあることはあるんだが……」

 

 どうにも歯切れの悪いシルヴァに、グランは首を傾げる。もしかしたら、ククルと同じように体の話題を上げている可能性もある。それを危惧したグランは、無理に答えなくてもいい……そう伝えようとしたが、その前にシルヴァが語り始める。

 

「その、ココ最近は結婚の話ばかりされるんだ……」

 

「…結婚?」

 

 何かと答えづらい話題かと身構えていたグランだったが、いざ聞いてみると全く別方向の話題が飛んできていた。

 

「私もいい歳だ、いい相手はいないのか?と色々聞かれてな……付き合っている相手はいないと1度は言ったのだが、そうするといい男性を紹介すると銃工房の女将さん達からの相手の写真を見せられるんだ」

 

「『こんな見た目の男だけどそれでもいいかい?』みたいな?」

 

「まぁ大体そんなところだ……」

 

 なんと、お見合い話とまでは行かないがそれに近い話題をシルヴァは振られていたわけである。確かにそれは、少し答えづらい話題ではあるとグランは苦笑いしながら納得していた。

 

「女将さん達が、私の為に相手を見繕ってきてくれるというのは……まぁ感謝している。私が…その、付き合いたい男性がいるという話をしたら、それ以降『その後の調子はどうだい?』みたいな感じでしょっちゅう聞かれるようになったが」

 

「やっぱり銃工房の女将さん達ってさ……」

 

「ん?」

 

「シルヴァの親だよね、ほんとに親にしか感じないよ」

 

「……そうだな、確かに私にここまで世話を焼いてくれるのは、母親や父親という役割くらいだろう。あの人達は世話焼きなんだ、と改めて知ったよ」

 

「でも、嬉しいでしょ?全然嫌そうじゃないし」

 

「あぁ、私のもう1人の両親だ…」

 

 そう言って微笑むシルヴァ。その笑顔には、銃工房の人達に対する親愛と家族愛のようなものが入り交じって居るようにグランは感じた。

 

「 ふふ……」

 

「ん?どうした?団長」

 

「いや?シルヴァもいい人達に恵まれてるんだなぁって」

 

「あぁ、あの人達は私の中で一番に登るくらいいい人の集まりだと思ってるよ」

 

 グランとシルヴァはそれぞれ微笑んでいた。しかし、ずっと微笑んでいては番組が進行しないので、グランはシルヴァに了承を取ってから三通目に移行する。

 

「三通目、『何故ミニスカートなんですか?』」

 

「……やっぱり気になってる人多いのか?」

 

「そりゃあ、銃を撃つだけならともかく……蹴るじゃん、シルヴァ」

 

「拳でも戦えるようにしておいた方がいいのだろうか……?」

 

「そこまでしなくていいと思うけど……まぁでも、ミニスカートではシルヴァとチームを組んだ男性陣はまず戦いづらいと思う」

 

 シルヴァは今の黒い服と、青い服の2着を持っている。前の仕事着は後者の服だったのだが、この服はミニスカートであり、シルヴァはそのミニスカートがある状態で蹴りを主としたインファイトを行う場合があるのだ。

 そして、当然ミニスカートで魔物などを蹴るのでミニスカートの中である所に男達は視線が行くだろう。中につける短パンを履け、という話なのだが目の前で真っ赤になっているシルヴァがいるので、グランは当然履いていないのだろうと結論づけた。

 

「中になんか履けば問題ないと思うけど……」

 

「それが簡単に出来たら苦労はないんだが……服にもバランスがある、それを簡単に潰してしまえば、今度は銃工房の人達から何があったと心配されかねない…」

 

「あぁ……」

 

 もし外からわかるくらいの短パンを履いていた場合、シルヴァが少し面白おかしい格好になってしまうのは間違いがないだろう。『ならそもそも長いのを履け』と言うだけの話なのだから。

 

「…さてと、こんなもんかな?」

 

「ん?もう終わりなのか?」

 

「まぁ簡単な話し合い程度だしね」

 

「ふむ……なら仕方ないか。少し名残惜しいところだが……」

 

「というわけで皆さんご視聴ありがとうございました、またのご視聴をお待ちしております」

 

 いつもの宣言を終えて、グランはシルヴァと共に部屋を出る。そして出てから気づいたのだが、シルヴァはよく見たら肩から銃をかけていたのだ。何故気づかないのか。

 

「その銃、ずっと持ち歩いてるの?」

 

「まぁな、いざというとき武器を携帯しておくのは間違いではないだろう?」

 

「まぁ確かにね」

 

 少し興味をもったグランが手を伸ばそうとする。シルヴァは寧ろ、もっと見てほしいと言わんばかりに見せようとするが……突如、その足元に黒い例の虫が通りすぎる。

 

「━━━ひゃう!?」

 

 驚くシルヴァ、咄嗟に後ろを向きながらバックステップを取る様は慣れたものであり、1秒と経たずして戦闘態勢に入る。

 

「がふぅ!?」

 

 そしてその際にシルヴァの自慢の脚で行ったジャンプ、それの体当たりと銃の持ち手がそれぞれグランに激突する。1つはみぞおち、もうひとつは股間部である。

 

「あっ!?」

 

「な、ナイスバトルチェンジ……後太もものライン綺麗っすね━━」

 

 悶絶しながら、グランは落ちていった。番組が終わったというのに、部屋から出たというのに、リーシャが設置した落下罠はまだ生きているようだった。

 

「え、えっ…!?」

 

 先程の驚きはどこへやら、グランが落下したことによる驚きと困惑がシルヴァを襲っていた。

 そんなことをしている間に、開いた扉は締まりグランは落とされた穴からは戻ることが不可能となった。どうせ拾われているので、大丈夫だろうけど。

 

「……な、なんだったんだ?」

 

 その後、グランが無事だとシルヴァは聞き安堵した。因みにシルヴァの足元を通った黒い例のアレは、シヴァが跡形もなく燃やし尽くしたことによって、団内に平穏を取り戻したのであった。

 落ちたグランは、その後なんとか拾われて戻ってくることが出来たが、流石の部屋外での不意打ち落下は心臓に悪かったという。ただちょっと気持ちよかったらしい。




シルヴァさんは大人可愛い。


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銃工房嫁騒動

 グラン達は今、ククルの銃工房へと来ていた。銃のメンテナンスと、山に入ってくる侵入者の退治や、街に降りようとする熊や魔物などを森に追い返す仕事だったりと色々あるのだ。

 しかし、今回はそれが終わった後偶然にも時間が出来たので、グラン1人が銃工房夫婦に呼ばれて二人と向き合っていた。なぜ呼ばれたのかわからないグランだったが、部屋に入った瞬間に広がる空気の重さに息を呑んでいた。

 

「よォ、団長さん」

 

「ほんとお世話になりっぱなしで悪いねぇ」

 

「いや、俺らもここにお世話になってますし……正直、いつも助けられてると思っています」

 

「まぁ、何だ座りな」

 

「あ、はい」

 

 促されるように座るグラン。その隣に、夫婦が挟み込むように座る。表情は笑っているが、目が笑っていなかった。

 

「なァ団長さん」

 

「な、何でしょうか」

 

「……誰と結婚するんだい?」

 

「……Why?」

 

 親父さんから放たれた言葉を、つい聞き返してしまうグラン。しかし、親父さんはそんなグランを無視して話を進める。

 

「シルヴァはいい子だ…優しくてよォ……血は繋がっちゃあいねぇが、あの子も俺らの娘だと思ってる。銃持ってる時は、子供みてぇにはしゃいでなぁ…俺らもついつい力になりてぇって思っちまうんだ」

 

「あ、あの…?」

 

「クク坊も我が娘ながらイイ子でなぁ……技術力じゃあもう俺の上をいってるかもしんねぇ……発想力も技術力も、腕も頭も確かで……しかも可愛いと来た、こりゃあもういっぱい支援するしかねぇわけよ」

 

「えっと……」

 

「クム坊はまだビビりだけどよォ……そこがまた可愛いんだ…俺らによく似てきたし、心も成長してきてる。ありゃあ将来俺らみてぇに……いや俺ら以上に立派になるだろうよ」

 

 突如始まる親父さんの娘自慢大会、娘の実況は親父さん、解説は特に喋っていないが女将さん、そしてたった一人の観客にグランを添えて、笑顔が渦巻く重苦しい3人大会が今ここで開かれていた。

 

「で、だ……団長さん。アンタはうちの娘3人から誰を選ぶ…ってぇ、話を今してる訳よ」

 

「く、クムユ、ククル、シルヴァの3人から……ですか」

 

「あぁ、俺らの自慢の三人娘だ」

 

 グランの肩を抱く親父さん。今ここでグランの思考は、プロトバハムートやその他の強力な星晶獣と戦う時並に思考を高速化させていた。

 ・選択肢1:1人を選ぶ

 

「シルヴァですかね」

 

「ククルとクムユを選ばねぇってかァ!?」

 

「ヒンッ」

 

 駄目である。そもそも三人娘を全員等しく、そしてとんでもなく大きく愛しているのが親父さんだ。例としてシルヴァになったが、恐らく他の2人を選んでも似たような事になるだろう。

 ・選択肢2:全員選ぶ

 

「俺だって騎空団の団長ですよ!?全員と結婚してみます!!」

 

「てめえそんな節操なしなのかアァン!?」

 

「ヒンッ」

 

 論外である。全員選ぶというのは、つまりはクズ野郎のすることなのだ。とグランは考えているが、セクハラしている時点で大概がクズ野郎である。

 ・選択肢3『誰も選ばない』

 

「まだ俺は結婚は考えていなくて…」

 

「ウチの娘達が気に入らねぇってかァ!?アァン!?」

 

「ヒンッ」

 

 駄目だった。グランの思考は今本人が気づいていない内に、ネガティブ化している。その為、何を考えても悪い方向にしか働いていない。流石にこれで怒られるのは、理不尽である。

 ・選択肢4:実は付き合ってる人がいる

 

「実は俺付き合ってる人がいて〜」

 

「既に恋人がいながら、俺らの娘を誑かしたのァ!?アァン!?」

 

「ヒンッ」

 

 もはやこれに至っては、何故怒っているのかよく分からない迄ある。だがこれ以上選択肢は思いつかない。フルスロットルでどれだけ回転させようが、ネガティブな思考ではどんなことを考えても悪い方へと考えてしまうのが人間である。

 

「まぁまぁ、あんたちょっとは落ち着きな。団長さんも困ってるじゃないか」

 

「女将さん…!」

 

 先程まで親父さんと一緒だと思われていた女将さん。しかし、グランは今彼女を救いの天使かなにかなのでは?と思っていた。その希望は直ぐに容易く壊される。

 

「で、誰と結婚するんだい?」

 

 逃げ場はない、二人しかいないのに四面楚歌なこの状況をグランはどう回避するか頭をグルグルさていた。その内、緊張とストレスによって口から破局が出てしまいそうなくらいには体調が急激に悪化していた。

 自分を助けてくれる者はいないのか、いや2人からしてみても結構深刻な問題なのは分かっているが、しかしそんな事を全く考えていない時に、その質問は答えられないのではないだろうか?とかを考えながら脂汗をグランは大量に流していく。

 と、そんな時だった。

 

「ちょ!?なにやってんのさ二人とも!!」

 

「く、クク坊!?それにクム坊とシルヴァまで……」

 

「お、お父ちゃん!団長さんをいじめたらめっ!です!!」

 

「あの、その…」

 

 突然の娘達登場で困惑する夫婦。グランがまるで捨てられた子犬のような目をしていたため、すぐに3人に回収されていた。

 

「とりあえず、団長は向こう行ってて」

 

「うぃっす」

 

 そう言って一旦部屋から追い出されるグラン。ククルに感謝の念をドア越しに飛ばしながら、彼女達が部屋から出るのを待ち始めるのであった。

 

「……私達、まだ団長と付き合ってすらないのにその話は早すぎるよ…」

 

「3段くらい飛んじゃってますよ……」

 

「すまねぇ……ただ、あの人くらいじゃねぇと…俺らも安心できねぇんだ…」

 

 結果的には、迷惑をかける形となってしまった。しかし、何処の馬の骨かもわからないような男と、全空の中で最早上位を取っているような騎空団の団長、しかも性格もよく困っている人は軒並み助けていくと来れば、最早これに勝る男は早々居ないだろう。

 

「まぁ、お父ちゃんの言うこともわかるよ?でもさ、人に迷惑をかけるなんて……」

 

「うぅ…俺はなんてことを……」

 

「で、でもクムユ達のためにやった事…って考えたら……」

 

「まぁ……私達もいつまで経っても進展がないから駄目なんだろうけどさ…」

 

 少しだけ顔を赤くしながら、ククルは頬を掻く。グランとの結婚というのは、全く考えていなかったことであり突然そんなことを言われて、嬉しさやら困惑やらが入り交じってしまっているのだ。

 

「……ところで、お父ちゃん的には団長にどうして欲しいの?」

 

「そりゃあお前、男なんだからよー…まぁ自分に惚れてる女全員囲えるくらいには……」

 

「……ウチの団長なら、全員と結婚してもちゃんと全員愛してくれそうだから困る……」

 

 ただでさえ200人以上いる様な団で、その全員のクリスマスやらハロウィンやらの予定に付き合ったり、バレンタインでは女性団員全員から手渡されるチョコを全て食し、そして3月14日にはちゃんと全員にお返しを作って渡すのだ。

 セクハラ発言と行為が問題ではあるが、しかしこうして見てみればきっちり甲斐性はあるのだ。しかも異常なレベルで。

 

「まぁ、それをするためには色々とやることがあるんだよ」

 

「色々ってえと…」

 

「馬鹿、あんた年頃の娘から何言わせようとしてんだい」

 

「…?お、おおう……すまねぇ」

 

 親父さんは先程までの勢いはどこへやら、すっかり女将さんに尻に敷かれていた。

 女性にしかわからない問題があるのだろうと、親父さんはこれ以上の追求をするのを辞めていた。

 

「まぁとりあえず……私達は大丈夫だから!!」

 

「そ、そうか……まぁ本人達の好きなようにさせるのが1番って言うしな……」

 

「そういう事だよ、ほら早くあたしらは団長さん謝るよ」

 

 その後、銃工房夫婦からの懇親の謝罪により事件は収束した。あれはあまりにも子供溺愛しすぎていた夫婦だったからこそ起こった事件であり、悪気がなかったというのもグランは知っていた。

 謝らなくても正直怒ってはいなかったし、別に気にしてもいなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「とは言うものの、だ」

 

 それから数日たったある日、銃工房三姉妹と共にとある依頼を受けていたグラン達。

 その道中突然口を開いたシルヴァに、他2人の姉妹の視線が集まっていた。

 

「実際……ククルやクムユはまだ時間があるかもしれないが、私は…」

 

「し、シルヴァ姉……?急にどうしたの?」

 

「……もういっその事私達で既成事実作るか?」

 

「え、待ってシルヴァ姉。その話せめてクムユが居ないところで…」

 

「きせいじじつ…?」

 

 グランは魔物の気配を探るために先行しているため、三姉妹がなんの話しをしているのかは聞こえていない。

 何やら言い争いをしている事だけは、少し離れた位置にいるグランにも理解出来ているのだが……

 

「……済まない」

 

「皆何で数段飛ばしで考えてるの…?」

 

「……?」

 

 クムユだけが、一体なんの話しをしているのかわからずに首を傾げていた。しかし、シルヴァもククルもクムユにはまだ早いと言って教えてもらうことは無かった。

 

「と、とりあえず!この依頼を終わらせよ、ね!?」

 

「そ、そうだな」

 

「あいです!」

 

「おーい、なんの話ししてんのみんなー」

 

 魔物がいないことはとっくに確認済みなので、グランが3人を迎えに来る。ククルとシルヴァの2人は、なんの話しをしてたかを誤魔化していた。クムユは理解出来ていないので、そもそも話せなかった。

 

「ま、魔物がこの先いないなら行こうか!」

 

「わ、私も先に行くよ」

 

「そう?ならみんなで行こうか、シルヴァには先の方を見てもらいたいし」

 

 そう言ってグラン達は依頼解決のためにずんずん進んでいった。グランは話を聞いていないのでこのことは直ぐに忘れて、クムユも話がよく理解出来ていなかったので特に印象に残ることも無いままに、忘れてしまうのであった。

 

「……ところで団長ってハーレムってどう思う?」

 

「ハーレム?してもいいような、しなくてもいいような……まぁ結婚する人によるよね。俺はまだ、恋愛のれの字も知らないような男でもあるし」

 

「……それを親父さんに言えば、直ぐに話し合いは終わっていたのでは?」

 

「いやぁ、焦ってたしネガティブ思考に陥っていたし……そうそう簡単に思いつくことなんてないよ」

 

「ふーん……」

 

 ククルがなんとなく聞いたハーレムの事、グランは否定派では無い為に今からでも、案外なんとか自分達と結婚させようと思ったらできるのではないだろうか…と、ククルは考えていた。

 

「まあ、俺恋愛してる暇あるのかなぁって感じだし」

 

「好きなことか気になる子いないの?」

 

「みんな魅力的だと思うけど…イスタルシアまで行ってから考えないとねぇ、あと親父は殴り飛ばす」

 

 グランの言葉に少しだけ笑うククル。どんなことよりも夢を優先するのは、結構損な性格のようにも思えてしまうが、こういうのがまた人を引きつけるのだろうとククルは思い、そのまま絶対にグランについて行こうと考えるのであった。




クムユ13歳くらいらしいですね


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未完の錬金術師、派手にやっちゃお?

諸事情により、これから感想は全部返信出来ないです。申し訳ございません。


「はい、今日のゲストは錬金術師クラリスさんです」

 

「……」

 

「チョコ美味かったぞ」

 

「いや、うん……ありがと……」

 

顔を真っ赤にしながら、気まずそうに顔を背けるクラリス。しかし、グランはクラリスの顔をじっと見ながら、会話を続けていく。

 

「な、デートな……いつ行くんだ?」

 

「待って待って……今それ言うのは待って……」

 

「なぜに」

 

「いやほんと……ウチが言ったことだけど…」

 

その後の言葉が聞き取れないほどに小さかったクラリス。グランは軽く首を傾げるが、クラリスはいつもとは打って変わって大人しくなっていた。

 

「仲良くなるためのデート、って言ってたな」

 

「ほんと、ごめんほじくり返さないで……言葉をもうちょっと選んだ方がいいっていうのは分かってるから……」

 

「男女が出かけるんだから、それはもうデートなのでは…?」

 

「……あれ?そうなるの?」

 

「え?」

 

「……え?」

 

「「え?」」

 

お互いに声が重なり合うグランとクラリス。その時、ようやくグランとクラリスの目が合ったが、それに気づいたクラリスがすぐさま目を伏せてしまう。

 

「いやまぁ、うん……こ、今度…ね……」

 

「わかった……ところで今日全然元気ないな」

 

「いや、あの……ちょっとグランに聞きたいことがあると言いますか…」

 

「ほう、俺に?」

 

「えっとあの……何人から告白された…?」

 

「……告白?なんの?」

 

「……へ?」

 

再びキョトンとするクラリス。実を言うと、バレンタインの日にチョコを渡し、そしてデートの約束を取りつけたはいいものの、ほかの女性団員から告白されているグランの姿を何度か目撃していたのだ。

それを見て、少し今気分が落ち込んでいる……と言った状況である。

 

「え、いやだって……ディアンサとか……」

 

「あー…えっとまぁ、確かに好きだって言ってくれたけどさ……」

 

「……え、グラン意味理解して言ってる?」

 

「……何のことやら」

 

『あ、こいつはぐらかしたな』とクラリスは直感的に感じとっていた。そして同時に、クラリスはグランには複雑な感情があるということも理解することが出来た。

 

「ま、まぁわかんないならいいんだよ!!」

 

「そ、そうか!!」

 

強制的に終了させられた話。だが、こうでもしないと番組が進行しないのだから、仕方が無いとも言えるだろう。

 

「とりあえず、お便りを読んでいこう。1通目『クリスマスでなんで水着着てるんですか』」

 

「あれ水着じゃないもん!!」

 

「いやぁ、あれは水着だわ。布面積完全に水着だわ。じゃなかったら下着だわ」

 

「そ、そんなに酷い?」

 

今の(水SSR)ユエルの方が布面積がある」

 

「ゆ、ユエルに布面積で負けた…?」

 

ちょっと前のユエルと比べればどっこいどっこいだっただろうが、少なくとも今のユエルとクリスマスの時の衣装を着ていたクラリスを比べれば、どちらが布面積が多いかなんて言うのは簡単にわかることだろう。

 

「というかあれ寒くないのか?」

 

「まぁ……やる気?」

 

「お前のやる気どうなってんだよ」

 

ファータ・グランデではクリスマスは冬である。そして、クラリスは水着や下着同然の格好をそのクリスマスに行っているのだ。場所によっては凍結しかねない。

 

「それにクリスマスの衣装で言うんだったら、他の子達も結構露出多いじゃーん」

 

「少なくともお前の格好よりはマシだ」

 

「そうかなぁ……そう言えば、クリスマス…」

 

「ん?クリスマスになんか嫌な思い出でもあったか?」

 

「嫌な思い出というよりは……その、お母様から『孫の顔見せて欲しい』って言われたことあったなぁって…」

 

「お前のお母さん随分と直球なこと聞きますのね」

 

「お父様微妙に尻に敷かれてるから……止められなかったんだと思う」

 

そう言えば、1度自分を連れて帰ってこいと言っていたなとグランは思い出していた。

団の仕事もあるために顔見せ程度で済ませたが、恐らくあの時だろうか。

 

「とは言っても随分と直球な…」

 

「案外、お母様ってししょーの方に似てる気がしてきた…」

 

「性格が?」

 

「性格が……思い立ったら吉日!と言わんばかりに行動派なのに、すごく頭使って行動してるし…」

 

「それに関しては、クラリスが頭を使わないで行動することが多いからじゃないのか」

 

「う、ウチだって考えてる時くらいはあるよ!!」

 

「例えば?」

 

「……どうやって、どっかーん✩ってするかとか…」

 

「それはもう相手からしたらただの拷問ではないだろうか」

 

クラリスは錬金術師である。しかし、始祖であるカリオストロと比べて彼女は『ものを作り出す』ことにおいての錬金術の才能はからっきしである。

そうやって普通に錬金術を使おうとすると、どこかで綻びが出来て爆破する……それくらい『普通の』錬金術が向いていないのだ。

しかし、彼女の真髄は『分解』という一点においてカリオストロ以上の才能を持っている。それこそ、不要なものだけを分解して取り除くと言ったことも可能なのだ。

 

「だ、大丈夫だよ……ただの爆破するから」

 

「爆破でも十分怖いからな」

 

「……確かに」

 

逆になぜ今まで気づいていなかったのか、グランはそれがよく分からなかった。とは言っても四肢が弾け飛んだりする程でもなく、ただ爆破して吹き飛ばす物だから気にしたことがないのかもしれない。

 

「まぁいいや……話ズレてきたので2通目に行こう。『団内で尊敬する人はいますか?』」

 

「尊敬……ししょーとか?」

 

「カリオストロもそうだけど……他にいたりはしないの?」

 

「とは言ってもなぁ…みんな偉いなぁって思うのが尊敬だったら、みんなを尊敬してることになると思う」

 

「なるほど……じゃあ、最近こういうところ尊敬しましたよって人いる?」

 

「尊敬、尊敬…」

 

クラリスは言葉を反芻させながら、色々な人物を思い浮かべていく。そして、ある程度の候補に目星をつけた後に口を開く。

 

「うーんと…ウチ的にはコルワさんとか…?」

 

「あら意外な人選……何故また?」

 

「何というか、人をハッピーにしたいって言う気持ちで色んなものを作れるって才能だよねぇって」

 

「確かにね、コルワは自分の気持ちを素直に仕事に表してるもんね」

 

ハッピーエンド以外は認めない、そんなコルワが作るのは服だった。服という一点において、彼女もまた才能が突出している人物である。

 

「後はイオちゃんだよね」

 

「どういう所が尊敬できたの?」

 

「あの歳で宙に浮けるっていうのがね……才能の塊だよね、ほんとに」

 

空の世界において、個人単位で空を飛べる人物は数少ない。それこそ十天衆であるソーンや、ウーノクラスでないと当てはまらないだろう。例外として、メーテラが十天衆でもないのに自由に飛行しているが。

 

「まぁウチが最近尊敬したのはその2人かなぁ」

 

「なるほどねぇ……因みにグランサイファーで1番可愛いのは?」

 

「勿論ウチが最かわっ☆」

 

「はいありがとうございます、じゃあ三通目行くか」

 

「え、振るだけ振っておいて!?」

 

クラリスのいつもの言葉を何となく言わせたところで、グランはそのまま3通目に移る。今のセリフを言わせた意味は、全くないと言っていいレベルである。

 

「『オレ様が1番かわ』」

 

「それししょーのだよね!?それ本当に質問!?」

 

「うん、これ質問じゃねぇや。次行こう……『何でみかんが好きなんですか?』」

 

「え……お、美味しいからじゃ駄目?」

 

「まぁ、好きな食べ物なんてそれぞれで決まるからなぁ……ただ気に入った食べ物だったり、昔からよく食べてたりとかって理由も様々だし」

 

「そ、そうだよね!別にただ美味しいってだけでもいいよね!!」

 

みかんが好きでも嫌いでも構わないが、しかし語呂合わせのためだけにみかんが好きだと言っていない限りは、まったく問題ないだろうとグランは思った。未完の錬金術師はみかんが大好きである。

 

「後でみかん使ったデザートでもなんか作るか」

 

「え、グラン料理できるの?」

 

「元一人暮らしだぞ?基本色んなもの食べたかったから、料理は習ったし色々学んだよ」

 

「……ちょっと、みかんのデザート気になる」

 

「後でスフラマール先生に手伝ってもらって、みかんの粒入りアイス作ってやろう」

 

「わーい」

 

そう言えばみかんの在庫あったかなと、グランはふと思った。この際、足りないものを色々買い足していくのも悪くない……とも思いながら、後で向かう買い出しメンバーを頭の中で決めておくのであった。

 

「……あれ?でもアイスって固めるだけだよね?」

 

「おいおい、アイス作りは過酷なんだぜ?」

 

「そ、そんなに?」

 

「ただ凍らせるだけじゃあダメだからな、まぁ作り方見せながらやろうか」

 

「わ、わかった!!」

 

覚悟を決めたかのように目付きを変えるクラリス。ふと、そこまで来てグランは時間が迫っていることに、ようやく気がついた。

 

「では、時間が来ましたので今回はここまでとさせていただきます。ご視聴ありがとうございました」

 

そしてそのまま電源を切って、番組を終了させる。軽く背伸びをして、立ち上がる。クラリスも一緒に出ようと思ったのか、立ち上がる。

 

「……さて、出るか」

 

「そうだね〜」

 

クラリスと一緒に部屋を出るグラン。ふと、ここまで来てクラリスは気がついたことがあった。

 

「そう言えばさ、グラン」

 

「んぁ?どした?」

 

「女性団員にセクハラしてるけどさ、ウチにはしないの?」

 

クラリスの言葉に固まるグラン。クラリスも何故固まったのか分からない、という感じで首を傾げていた。

 

「え、何セクハラされたいの?」

 

「え、いや、あの」

 

「はい言質取ったー、もう言い逃れは出来ないぞ!」

 

「え、え……」

 

「ぐへへへ、言葉責めだけじゃあ終わらさねぇぞクラリスゥ?」

 

「キャラが!!キャラがまるで違うよグラン!!」

 

手をワシワシさせながら、グランはクラリスに迫っていく。まるで手の動きだけ作画枚数が違うのでは、という感覚を抱かせる程に滑らかに手が動いていた。

 

「覚悟しなァ!!」

 

「やぁぁぁぁぁ?!」

 

まるで子供の遊びのような光景だが、正直犯罪的な場面にも見えかねない。

グランがクラリスに後一歩迫ろうとした……その時であった。

 

「……あれ?グラン?グラーン?わっ!?」

 

「……ったく、何となく通りがかったらこんな状態になってんのかよ」

 

「し、ししょー…?」

 

通りがかったのは、カリオストロだった。グランはカリオストロが召喚したウロボロスに、頭だけを軽く咥えられてぶら下がっている状態になっていた。

 

「さ、帰んぞ」

 

「う、うん」

 

その場で離されて、地面に落ちるグラン。カリオストロはクラリスと共に戻り、その場にはグランだけが残されていた。

倒れたグランを見ながら、クラリスは少し勿体ない気持ちになりながらも、その場を離れるのであった。

 

「それとな、クラリス」

 

「ほぇ?」

 

「さすがにクリスマス衣装は水着だぞあれ」

 

「ししょーまでそういうこと言うの!?」

 

錬金術師師弟は、歩きながらしょうもないことを話しつつ、そのまま部屋へと戻っていくのであった。




バレンタインクラリスとかいうチョコを渡しすぎたいが為に時間を歪める女


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千年を探す者、ウチに任せてみいひんか?

「今日はユエルさんです」

 

「よろしく頼むでぇ〜」

 

「今日は露出がない方(水SR)だね」

 

「何かなぁ、ロゼッタに言われたんよ。『前の格好(火SSR)は見ただけで危ない、今の格好(水SSR)も危ないからこれ着て』って」

 

「前のならばいざ知らず、何故今の格好も…?」

 

「さぁなぁ……ウチには分からんわ」

 

 今のユエルの格好は、赤い着物のような格好であり、下もキチンと丈の長いズボンを着込んでいるために、いつものユエルからしてみれば圧倒的厚着と言われても仕方ないくらいには着込んでいた。

 

「何かなぁ『子供達が歪む』とか言うとったんよ、よう分からん」

 

「歪む……」

 

 グランは今とは違う格好……今見ているものとは違う、また別の格好を思い出していた。上は白い布を前掛けのように付けており、唯一スカートだけが腰周りを覆っていた。胸囲周辺は、黒い編み目のようなものをつけており、胸だけが綺麗に下着のように覆われていた。そこまでは見ただけでわかるが、もうひとつの下着…要するにスカートの中身がよく分からない状態だった。別段、グランは無理やり見ようとはしないが。

 因みに、膝下まで布でおおわれているが、踵とつま先だけが出ていた。

 

「いつものは、まぁ前のと比べたらあれだけど……一応露出はあったからね」

 

「やんなぁ、なんでなんやろうか」

 

 恐らく、付け根のギリギリのところまでしかないスカートが原因だろうとグランは思ったが、特に言うべきことでもないので自重した。

 

「こんな事言うのもアレなんやけどな」

 

「ん?」

 

「ウチよりロゼッタの方が色気あると思うねん」

 

「自分の格好を客観的に見てから言った方がいいぞ」

 

「グランまでそないなこと言うんか……確かに前の格好は、ちょっと露出してたかもしれんけど」

 

 ちょっと所ではない。胸はほとんど出てるし下はパンツ一丁、太ももの途中まで布で覆っているだけで、それ以外は何も着込んでいない。それをちょっとと言い張るのはどうだろうか。

 

「というか前の格好でちょっと疑問だったんだけどさ」

 

「ん?」

 

「胸を被ってた布はどうやってあれを維持してたんだ」

 

 前の格好、先程も言った通り露出が激しい格好だが……その格好がグランサイファーにおいての七不思議の1つとなっている。因みにもう1つヘルエスの格好も七不思議に入っているが、また別の話である。

 

「え、どうやってってどういう事?」

 

「いや、胸周りを布で覆うのはわかる、わかるんだ。けどさ……普通下着みたいに横向きにぐるっと1周してると思うんだが」

 

「…?」

 

「いやいやいや、要するに胸にあった布二枚をどうやって支えてたか気になるんだが」

 

 初めてあった時のユエルの格好。太ももの布は置いておくとしても、胸を覆っていた布だけは、グランはどうしても気になっていたのだ。

 何故なら、下着のように胸全体を覆っているものでは無い。縦向きにそれぞれの膨らみに布をかけているだけである。それを固定するためのものは、一切何も無いのだ。

 風が吹けばめくれてしまいかねないレベルなのだが、実はそういったことは一切起きていなかった。

 

「胸かけてたあれ?」

 

「胸かけてたあれ」

 

「あれなぁ……実は挟んどったんや!!下乳に!」

 

「よく取れないな!?」

 

「嘘や、冗談に決まっとるやろ」

 

 ニシシと笑いながら、ユエルは誤魔化していた。これはあの格好の秘密を言うことは無いだろうと思い、仕方ないのでお便り箱を取り出してその中からお便りを3通取り出す。

 

「話が長引きそうなので、ここで質問お便りのコーナー行ってみよう」

 

「待ってたで!うちがそういう立場になんのは楽しみやわぁ」

 

「何が出るかな、何が出るかな、何が出るかはお楽しみ……っと『アンスリアさんと、ユエルさんの舞の違いってなんですか?』」

 

「それは……なんかもう、別モンとしか言い様がないわ」

 

 この団には、何人か舞を踊る者達がいる。そう言った者達の中でも、アンスリアは有名な者であり、そのアンスリアとユエルの踊る舞はどう言った違いがあるの……という話をしているのだろう。

 

「まぁ、どのくらい違うのかって話をしたらいいんじゃない?」

 

「うーん、素人目からしてみたら分からんことなんやろうし…せやなぁ、例えて言うんやったら……いちごパフェと普通のバナナくらい違うと思うわ」

 

「分かりづらい」

 

「うーん……せやかて、ウチもなんて言うたらええかわからんのよ。全くの別ものとして考えて欲しい、って事しか言えんよ」

 

「ふむ……まぁそれでいいとしよう。実際俺もどう違うか、って言われても答えられないことなんてあるし……悪いけど2通目にいかせてもらう」

 

「質問してくれた人、ごめんな〜」

 

 カメラに向かって両手を合わせるユエル。その際に耳がピコピコ動いているのを見て、グランは無性に触りたくなる欲求に駆られていた。

 

「2通目は……『どうして最近厚着してるんですか』」

 

「厚着?」

 

「今みたいな格好をどうしてし始めたんですか、って事でしょ」

 

「いや……この格好も、最近してるいつもの格好も……儀式用って奴やしなぁ…今着てるんはソシエが用意してくれた大切なもんやし」

 

「そうだったよね、確かその格好ソシエのお下がりだっけ?」

 

 今着ている衣装、赤い色が目立つ着物のような格好はソシエのお下がりだった。つまり、ソシエにはもう着られない服ということになる。それは、ソシエが成長したため着られなくなった…というのが正しいと思われるが……

 

「……あれ?今更気づいたけど、ウチってソシエより体小さいってことにならへん?」

 

「え、小さいの嫌なの?」

 

「出来ればソシエと同じが良かったわぁ…そうなると胸の大きさ負けてるやん!!」

 

「ぶふっ」

 

 突然そんなことを言うので、グランは不意打ちで吹いてしまった。ある意味逆セクハラである。意味は全く違うが。

 

「まぁウチはグランが気にいるんやったら、どんな格好でもええけどなぁ」

 

「でも初めてあった時の格好は、好き好んで着てたやつだよね」

 

「いやぁ、あれくらい身軽の方がええやろ?」

 

「身軽すぎて逆に危なそうだけど」

 

「そうやろうか?って、さっきもこんな話したような気がするわ」

 

「まぁまぁ……でもまぁ、1番初めの格好を知ってる人からしてみれば、今は確かに厚着だよね」

 

 あくまでも比べてみれば、の話である。レスラーの格好をしているグランに比べたら、他の格好は大概厚着に見えるような…そのようなものである。

 

「ウチよりヘルエスの方が露出が多いような━━━」

 

「絶対にそれは無い」

 

「背中丸出しやん、いつ鎧が前倒しになるか分からんであれ」

 

「自分の格好も基本背中丸出し…というかエルーン全体がそうでは?」

 

「……せやったわ!!」

 

 耳と尻尾がユエルの反応と同期しているかのように、ピンと上に向く。素直な犬のように見えるのは、やはりユエルの元来の性格だからだろうか。

 

「まぁ、そろそろ話が脱線してきたし…三通目行くか」

 

「せやな」

 

「んー……『尻尾ってどうやって洗ってるんですか』」

 

「しっぽ?」

 

「そのいかにも、モフモフしてそうな尻尾の事だろうな。触っていい?」

 

「アカンで〜?言葉だけならともかく実力行使は、秩序の人に晒し首にされるで〜」

 

「そんなスプラッタなことをする人は、ウチにはいません」

 

 ユエルの尻尾。実を言うと、尻尾を持っているエルーンは数が少ないのだ。基本的に、特別な力を持つエルーン等が尻尾持ちなことが多い。グランサイファーに乗船しているメンバーの中では、ユエル、ソシエ、アンチラ、ヴァジラの4人である。

 その内、ユエルとソシエは狐の尻尾のようなモフモフである。

 

「確かに、この尻尾実を言うと洗いにくいのよなぁ」

 

「まぁ、見るからに水を吸い取りそうだもんね」

 

「そうなんよぉ、いざ洗おうと思ったら…その、結構いい感じに長いブラシが必要でなぁ…ソシエとウチの自主制作したブラシを使うて、毛の内側まできっちり洗わなあかんのよ」

 

「水落とす時ってどうしてるの?振ってる?」

 

「振られへんくらい重なるんよなぁ…」

 

「そりゃあ大変だ、じゃあどうしてるのさ」

 

「こう、ソシエに絞ってもらってるわ…ただあんまり強うしすぎると痛いから、優しぃく絞ってもらってんねん……アンチラやヴァジラが羨ましいわぁ」

 

 モフモフであるが故に、ユエルとソシエは尻尾で四苦八苦しているようだ。アンチラの尻尾は、猿のようにモフモフしたものではないので、あまり水を吸い取る等といった不便は起こっていないようだった。ヴァジラはその中間であり、犬のような尻尾なのだがグランは別段そういった事で悩んでいるという話を聞いた覚えがなかった。

 

「尻尾付きのエルーンって少ないからね…」

 

「だから色々と珍しがられるし、尻尾洗う道具も不足してるんよなぁ」

 

「そう言えばさ」

 

「ん?なんや?」

 

「尻尾触っても」

 

 セリフが終わる前に、グランは吹き飛ばされていた。突然壁から飛んできた鉄球に当たり、そのままの勢いで壁に吹っ飛ばされていた。

 因みに、いつも床が開く様にその壁も開く事で、グランは凄まじい勢いのまま船の外へと吹き飛ばされたのだ。

 

「……場外ホームランやなぁ…まぁ、そないに気になるんやったらちょっとくらい触らせてもええかもしれんなぁ……」

 

 随分と遠くに吹き飛ばされたグランを眺めながら、ユエルはポツリと呟いていた。

 ちなみに、尻尾を触りたいというのはセクハラ発言になるのか?という話だが、こればかりは当人達しかわからないことなので、グランは今度から尻尾触る発言はしないようにしないといけないと思っていた。

 しかし、あのモフモフは1度味わってみたいと思わなくもない……とも思っていた。

 この矛盾が、彼をただただ悩ませるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は?尻尾?」

 

「うん、触られるのどう思う?」

 

「オイラは別に気にしねーけどよォ、あいつらみてーに毛はねぇし鱗だから触るといてーぞ?」

 

「え、鱗って触ると痛いの!?」

 

 あまりにも気になったので、グランは何を血迷ったのかビィに触られることを、どう思うか聞いてしまっていた。

 当たり前だが、ビィの尻尾ではユエルやソシエみたいにふわふわしたものでは無いので、当然触っても何も思えないというのが正式な回答である。

 アンチラは、よく触っている……というか腕にぶらさがってる際に嫌でもしっぽが腕に触れているので、今更感があるのだ。

 

「くっ……」

 

「そんなに触りてぇならよォ、本人達に頼めばいいじゃねぇか」

 

「ダメ元で頼み込めばいけるか!?」

 

「いやぁ、オイラはそんなん知らねぇよ。あいつらに聞けって話だしなぁ……それよりも、あっちにアンチラがいるぞ」

 

「はい?」

 

 ビィが指をさした先には、確かにアンチラがいた。しかし、膝をついてめそめそと泣いている姿なのだが。

 

「なぜ泣いている……」

 

「団長が尻尾浮気するなんてぇ……」

 

「尻尾浮気」

 

「他の尻尾に惑わされるなんて、酷いよォ……」

 

 グランは困惑した。尻尾浮気という聞き覚えのない単語を口にされたばかりか、何故かアンチラが泣いている姿が心に刺さったからだ。

 これも、あのフワフワのもふもふを触ろうとした天罰なのだろうか……とグランは考えた。

 しかし、触りたいという気持ちもあった。しかし、泣いているアンチラが…尻尾が…アンチラが…泣いている尻尾が……と思考がループしていった後……

 

「……」

 

「…あれ?おーい…」

 

「……困惑しすぎて思考がぶっ飛んじまったな、こりゃあしばらくは元に戻らなさそうだぜ」

 

 ━━━グランはその内、考えることをやめたのであった。




何故ユエルなのかって話しです。
バレンタインに新しく何か追加された組です。後もふもふしたい。

※2019/03/09
2時34分追記

ヴァジラ忘れてましたすいません……というか尻尾あったことに気づかなかった…失態でした…


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千年を継ぎし者、堪忍な?

「今回のゲストはソシエさんです」

 

「よ、よろしゅう……な」

 

「肩の力抜いてリラックスリラックス」

 

「肩の力、抜いて…すー……はー……」

 

 顔を朱に染めながら、ソシエは深呼吸をして自分を落ち着かせようとする。何度か深呼吸を行い、落ち着いたか?とグランが考えた瞬間━━━

 

「グ、グランはん…カメラあるから言うたって、グランはんと二人きりは…かなわんわぁ……」

 

 結局落ち着けなかったのか、顔を先程以上に真っ赤にしてソシエが悶えていた。余程、グランと二人きりで一緒にいるというのが彼女にとっては耐えられないらしい。

 

「二人きりになる事なんてまぁまぁあるから、まぁココアでも飲んで落ち着いて、な?」

 

「お、おおきに……」

 

 ソシエは耳を激しく動かしながら、グランから手渡されたココアをゆっくりと飲んでいく。両手で支えながらゆっくりと飲むその姿は、彼女の育ちの良さを十二分に見せつけてくれる良いものであった。

 

「落ち着いたか?」

 

「ちょ、ちょっとだけなら……」

 

「ならよし、まぁ初めは多少の雑談とかして気を紛らわせていこう」

 

「そ、そうや……グランはん…」

 

「ん?どした?」

 

「尻尾触りたいんやったら……触っても、ええよ?」

 

 グランは先程まで、ソシエをリラックスさせるために笑顔だったのだが、ソシエの顔を赤くしながらのその発言に、レスラー並の真顔ぶりを発揮していた。

 

「尻尾?」

 

「う、うん……ユエルちゃん時もそうやったけど、別にウチら…気にしてないから、な?」

 

「いやまぁ、俺としては触りたいんだけどな」

 

「な、なんかあったん…?」

 

「アンチラに、尻尾浮気はしちゃいけないと泣きながら怒られた」

 

「そ、そらどうしようもない、わ……」

 

「どうしようもないのか……尻尾はお一人様1名までなのか…」

 

 よくわからないことを口走りながら、グランは頭を抱えていた。最早彼自身が何故頭を抱えているのか、それすらも分からないままに頭を抱えてしまっていた。

 

「す、好きな人には……自分だけを触ってもらいたいから…ね…」

 

「好きな人、ねぇ…」

 

 その言葉の意味がわからないほど、グランもアホではないとソシエは思っていた。唐変木とまではいかないが、それなりに人の心を機敏に感じ取れるだろうと。

 まぁ、ここでそういう話題を出すのは少し卑怯だとは彼女自身思っていたが。

 

「……そ、そのグランはん?」

 

「ん?」

 

「番組……進めよか…」

 

「せやな!!!」

 

 グランはお便り箱を迫真の顔で漁っていく。表情の迫真さと、体の地味な動きのギャップがツボったのか、ソシエは声を殺しながら笑っていた。不意打ちだったが、耐えられてしまったことにグランは少し不服であった。

 

「という訳で切り替えて1通目『着物は重くないんですか』」

 

「重くはない、かな…けどどっかの島にはすごい重い着物がある言う話なら知っとるよ…」

 

「まぁ見た目が凄いからね、モフモフの極みというか…その島の重い着物ってどんなやつなの?」

 

「文献で調べたことある程度やけど……なんでも、着物を12枚重ね着するらしいんよ」

 

「それで重くなるの?」

 

「そうみたい…」

 

 実際に見たことがないために、グラン達はその重ね着がどれほど重いのかは想像出来ないが、しかし言うからにはすごく重たいものなのだろうと言うことだけは理解出来ていた。

 

「仮にそれだけ重いとなると、舞は踊れそうにないね」

 

「そ、そう見たい…それに何回も脱いだり着たりするのが面倒やから…しばらく着続けるみたい」

 

「…それってつまり、ずっと着たまま風呂にも入らずって事…?」

 

「……ほんまや、そうなるんだ…」

 

 ソシエも気づいていなかったのか、驚いた顔でグランと目を合わせていた。特にソシエは尻尾のあるエルーンの為、自分の体の匂いなどには敏感なのである。放置していると、尻尾に汚れが溜まっていくのだそうで。

 

「……む、昔の人て…体臭いの気にならんかったんかな…?」

 

「気にならないわけが無いだろうし…なんかで誤魔化してたのかもしれない」

 

「な、なるほど……」

 

 ソシエは耳を激しく動かしてグランの意見に聞き入っていた。その仕草が、とても子供っぽい可愛らしさを出していることにグランはにやけ顔が止まらないでいた。

 

「ぐ、グランはん…?なしてそないに顔が崩れてるん…?」

 

「いや、ソシエって子犬みたいだなぁって」

 

「う、うち…ワンちゃんなん…?」

 

 なぜ急にそんなことを言われたのか。それをソシエは今一理解していなかったが、グランが人を貶すようなことは言わないと信じているので、きっと褒め言葉なのだろうと解釈していた。

 そして、褒め言葉だと認識した途端心が暖かくなるような嬉しさも覚えていた。

 

「何かさ、ソシエの反応と耳の動き見てたらついね」

 

「あ…ウチ、耳動いてた?」

 

「そりゃあもう、空に羽ばたくんじゃないかってくらい」

 

「…空飛べるくらい?ウチが空飛んだら…ユエルちゃん喜んでくれるかな…?」

 

「いやそれはわかんないけど……まぁとりあえず2通目行こう。『寝る時の体勢ってどうしてますか?』」

 

「…?寝る時…ウチは横向いて寝てるよ」

 

 多少首を傾げながらも、ソシエは少しの言葉で会話をおわらせる。横向きとなると、尻尾と胸がどちらも上にも下にも向いていないということになる。

 

「やっぱり、尻尾に体重かかるの辛い?」

 

「そ、それもあるけど……毛に癖ついてまうんよ…」

 

「あぁ…」

 

 睡眠時間がいかほどかは知らないが、仰向けで寝た場合寝返りすることを含めても、1時間かそこらはずっと尻尾が下になるために、潰されてしまうのだ。そうなると、毛に癖が残って翌日からのケアが大変だということである。

 

「うつ伏せは…」

 

「呼吸しづらくて辛いんよ…」

 

「だろうね」

 

 ソシエもユエルも、それなりのものを持っているからね。とグランは言葉を出そうとしたが、出した瞬間落とされてしまいそうな気配を感じたので喋ることは無かった。こんなタイミングで落とされたら、番組が終わってしまう。

 

「他の子はそんなことないみたいで…羨ましいわぁ」

 

「尻尾ついてる間柄でそういう話題ってやっぱりあるの?」

 

「ウチらでしか共有出来ひんし……コウ君に聞いても、うつ伏せで寝てることあるらしいわ…」

 

 コウ。それはユエルやソシエと同じ尻尾付きのエルーンの少年であり、彼女達2人の関係性を示す『九尾』関係の少年でもある。現在はとある島に住んでいるという話がある。

 

「まぁ彼は男の子だしね」

 

「そういう時…男の子にちょっと憧れるわ……もしウチが男の子やったら、ユエルちゃんも守れるかもしれんのに…」

 

「ソシエが男……」

 

 今のソシエを男にしても、グランはピンと来なかった。純粋で天然な少年になるだけでは?と、グランは思ってしまっていたからだ。

 

「……そ、そないに変かな…?」

 

「いやまぁ、ちょっとイメージしづらかっただけだから気にしないで」

 

「そ、そう…?それやったらええんやけど…」

 

「じゃあラスト、三通目『なぁソシエー、ウチの事大好きー?』…ユエルだこれ」

 

 質問と言うよりも、まるで友達か恋人にするかのような軽い疑問。しかし、それでもユエルから来たものは嬉しかったのかそその表情はまたとても嬉しそうなものへと変貌していた。

 

「う、ウチは…ユエルちゃんの事大好き…あ、後…」

 

「ん?」

 

 ソシエがグランを見た瞬間、グランは自分に指を指す。見たことがバレて恥ずかしかったのか、ソシエは手で持っていた扇で自分の真っ赤になった顔を隠していた。

 

「ほ、ホンマにみんな…大好き、やから……」

 

「ここにユエルがいたら、ソシエに抱きつきながら頭撫でそうだ」

 

『ウチもソシエのこと大好きやでぇー!!』と言いながら抱き着く姿を、グランとソシエの2人は容易に想像していた。ユエルならやりかねないと、いい意味で予想して2人で顔を合わせてつい笑ってしまう。

 

「…ふふ、確かにユエルちゃんならしてそう…」

 

「でしょ?ユエルのスキンシップって、親しくなればなるほど激しいからね」

 

「た、多分そういうことすんのは……ウチと、ルリアちゃん…ビィに…グランはんだけやと思うわ……」

 

「他にはしそうな人いないの?」

 

「せ、せいぜいコウ君くらいやないかな……でも、ユエルちゃんは自分が大好きな人くらいにしか、ホンマにスキンシップせえへんから…」

 

 誰とでも仲良くなるスキルを持っていそうなユエルだが、それでもあまり過剰なスキンシップはしていないとソシエは言う。おそらくそれは男性限定で、女性に関しては抱きつく人は多いのでは?とグランは思っていた。実際のところ、どちらなのかは2人にもよくわからないままなのである。

 

「さて…今日はここまでかな」

 

「あ……もう、時間なん?」

 

「そうそう、まぁ案外短く感じるよね」

 

「せやなぁ……もっと、グランはんと二人きりでおりたかったわ……」

 

「はは、俺の私室まで二人き」

 

 毎度の事ながら、グランは落とされていた。最近雑に落とされすぎじゃない?とか思っているが、しかしまぁ今のは落とされてもしょうがないとは思っていた。

 流石に今のベリアルばりのセクハラは頂けなかったのだろう。

 

『特異点、そういう時はこう言うんだ』

 

「ベリアル、お前…死んだはずでは…!?」

 

『いやこれは特異点の妄想だし』

 

 グランの心の中のベリアルが、何故か語りかけてきていた。因みに今のグランのセリフは、言いたかっただけである。

 

「それで?落下している俺が言うべきセリフとは?」

 

『決まっているだろ?特異点、君もよく聞いてるはずだ』

 

「はっ……まさか…!?」

 

 グランは、妄想の中のベリアルが何を言いたいのか理解した。そして、妄想の中のベリアルと同時に、そのセリフをグランサイファーの底面に向かって言い放つ。

 

「『俺と姦淫しないか?』」

 

「グラン、その誘い方はないわ」

 

「あ、はいすんませんでした」

 

 因みに、既にメーテラに拾われているので今のセリフはガッツリメーテラに聞かれていた。

 ちょっとまんざらでもなさそうだが、メーテラはそれを口に出さない。

 

「ほら、いつも通り船に戻しとくから」

 

「あぁ、うんありがと」

 

「…あんた、頭おかしくなってんなら休みなさいよ?」

 

 メーテラにまで頭の心配をされてしまったので、グランは仕方なく今度病院に行くことになってしまった。

 そこまでおかしいことを呟いていただろうか?と、グランは思っているが、正直なところ頭の中に妄想のベリアルがいるという時点で立派な精神病である。

 

「……明日、団全体を休みにするかな…」

 

 余談だが、次の日のグランサイファーは一切仕事をせず、とある島で1日休んだり遊んだりをする団員で溢れかえったという。

 グランもその中の一人だったのだが、休んでいる時に来てくれたソシエにこう言い放ったという。

 

「なぁソシエ、休みの日って何すればいいんだ…?」

 

「……う、ウチとユエルちゃんと一緒に出かけるとか?」

 

「……そうだな、ユエルも誘って出かけるか」

 

 多少呆けながらも、グランはとりあえず2人と出かけたのであった。




ソシエの背中触りたいという欲望があるのは自分だけでしょうか


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ホワイトパーリナイ

「特異点!姦淫しよ」

 

「光の刃ァ!!!」

 

「がふっ」

 

「オラさっさと立てベリアルゥ!!戦果と金貨と銀貨落とさんかいワレェ!!」

 

「おいおい、俺のマゾヒズムをくすぐるのは止めてくれよ。興奮で達してしまうだろう?」

 

「ベリアル語録はもういいんだよ!!アズラエルとイスラフィルのこと許すと思ってんのかゴラァ!!!」

 

「はっはっは、既に満身創痍の俺にまだ攻撃を続けるとはね。特異点はサディズムの塊じゃないか?」

 

 どこともしれない赤い空の下で、メカニックとなっているグランはシュヴァリエマグナの力が宿った銃で、ベリアルを殴っていた。言葉にして表してみると至極単純なことだが、持ち手の方でぶん殴っているのでベリアルの頬に凄まじいダメージが入っている。

 

「なんだったらもっかい錬金術とドリルとメイド達のコンビネーション味わせてやろうか!?」

 

「えっ」

 

「おいおい特異点、後ろの女達が驚いてんぜ?あとそれやられるとまた俺達してしまう」

 

 何かの括りで分けられた全員の怒りを代弁するかのごとく、怒り狂ったグランはベリアルを殴っていく。

 

「おうお前あと1ヶ月くらい殴り続けてやるからな!!」

 

「おいおいそんな長時間のプレイをする気か?ずっとせめてばかりじゃ飽きるだろうし、途中で交代しよう…そしたらマゾヒズムとサディズムを両方満たすことが出来るぞ?」

 

「うるせぇ!!」

 

 赤い空の下でグランの叫びがこだまする。彼の怒りはもはや誰にも止めることが出来ないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ…!?夢か……ん?」

 

「っ…!?」

 

「……やぁクラリス、何故君は寝ている俺の顔にそこまで顔を近づけているのかな?俺の顔がよく見えないという話なら、眼鏡をつけるといい」

 

「ち、違うから!?ウチは別にそこまで目が悪くないから!?」

 

 目が覚めると、グランの顔の数センチ先にクラリスの顔があった。真っ赤にした顔と、慌てふためく姿が存在しているこの異常な状況が、グランの寝ぼけた頭をそれなりに回転させてくれていた。

 

「ふぁ……あ、もしかして寝過ごしちゃってる?」

 

「いや、そこまで寝過ごしてないと思うけど……珍しくグランより早く起きれたから、ちょっと様子見に来ただけだし」

 

「あぁそうだったのか……あぁそうだった、クラリスちょっとこっちおいで」

 

 起き上がってから、グランは手招きしてとある部屋へとクラリスを招く。

 入った瞬間に、凄まじいほどのチョコの匂いがクラリスの鼻腔に入ってくる。

 

「こ、このチョコのにおいは……」

 

「はい、これバレンタインのお返し」

 

「……あ!今日ホワイトデー!!」

 

「何だ今気づいたのか。だったら話は早いな……はい、これクラリスの分だから存分に味わってくれ」

 

「この部屋、チョコの匂いがかなり凄いけど……私のお菓子もチョコなの?」

 

「何人かはチョコじゃないけどな……お前にはミカンを使ったビスケットだ」

 

 クラリスが丁寧に包装された箱を開けると、そこにはグランの言う通りみかんの香りが漂うビスケットが入っていた。

 

「うわ凄い……1人で作ったの?」

 

「当たり前だろ?作ったのは俺一人だよ…あぁそうだ、これからみんなにお返ししにいかなくちゃいけないんだったな 」

 

「……団全員の子にお返しする気なの…?」

 

「え?そうしないと失礼だろ?」

 

 クラリスはそういうことが聞きたいのではなかった。この場にあるお返しのお菓子は、全員分なのだと考えたらグランはいつこれを作ったのか…それが気になるのだ。

 

「因みにグラン、昨日何してた?」

 

「昨日?うーん…まぁいつも通りだったな。朝昼夕方ずっと依頼だったよ、合間合間に船に帰ってきてたから、お返しのお菓子はその間に作ってた」

 

「合間合間……?」

 

 そんな合間、一体どこに存在していたのだろうか。クラリスは聞きたかったところだったが、あまりにも不思議かつある意味で恐怖だったので、これ以上の追求はしないことにしたのであった。

 

「まぁとりあえずお返し返してくるから……あ、なんか用事?」

 

「う、ううん……本当に部屋覗きに来ただけ」

 

「ならごめん、俺は行ってくるよ」

 

 そう言ってグランは、部屋から大量のチョコを担いで出ていく。1人ぽつんと残されたクラリスだったが、顔を赤くしながら、自分の人差し指を唇に当てて、ちょっとだけ後悔を感じているのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?グランはん…?どないしたんその大きい荷物…」

 

「…甘い匂いするけど、それお菓子?」

 

「お、正解。という訳で2人にもバレンタインのお返しを配ります」

 

 グランは出会ったユエルとソシエに1つずつお菓子を渡す。2人には、自家製のお饅頭である。

 

「……え、これグランはんの手作り?」

 

「凄いなぁ……もうこれお店で出せる味やで?」

 

「うんうん…すっごく美味しい」

 

 貰ってから、グランに許可をもらって直ぐに食べ始めるユエルとソシエ。本当に美味いお饅頭を、彼女達は美味しそうに食べていた。そして、その光景をグランは楽しそうに見ていた。

 

「もしかしてそんなかのお菓子、全部グランの手作りなん?」

 

「おう、そうだよ?今日の間に、女性団員全員に返すつもりだからさ!」

 

「今日の間にて……依頼でおらん人は除いてなん?」

 

「いや、今日は依頼で出かけてる人も予定だと帰ってくる日だし、今日出るような依頼受けてる人はいないんだよね」

 

 サラッと発言したグランだが、そのセリフにユエルとソシエは首を傾げる。団長なのである程度の予定は把握しているだろうが、今の言葉をそのまま受け取ると本当に全員の予定を覚えていることになりかねない。

 

「……ぐ、グラン?」

 

「ん?何?」

 

「ほんまに全員の予定覚えてんの?」

 

「そうじゃないと団長務まらないでしょ?」

 

 改めて、2人はグランの凄さを思い知っていた。おそらく並大抵のことでは覚えきれないものをなんとかして覚え、鍛錬も欠かさず行い、そして団員達とのコミュニケーションも忘れない。

 団長になってからなのか、はたまたそれよりも前からこうだったのかは2人には分からないが、少なくともグランは並大抵の団長には出来ないことをしていた。

 

「あ、お饅頭また作って欲しかったら言ってね。合間があればいつでも作ってあげるから」

 

「ほんまに!?じゃあまた今度作ってな!!」

 

「そんなに気に入ってくれたら嬉しいなやっぱり」

 

「ぐ、グランはん…」

 

「ん?どうしたんだ?」

 

「あ、厚かましくて悪いんやけど……ウチにもお願い、な…」

 

「気にしなくていいよ、いっぱい作ってあげるからさ」

 

 嬉しそうに、耳と尻尾を動物のように動かす2人。彼女達はグランよりも歳上だったはずだが、グランも自分自身歳上であっても親しい間柄のように、敬語を使わない方針のために偶に年上と年下の区別がつかなくなってきているところであった。

 

「他誰かに渡したん?」

 

「いいや?寝起きにクラリスが部屋にいたからさ、とりあえずクッキーをクラリスに渡して、その後で全員に渡しに行くって言うの伝えて先に出てきたんだよ。

 ユエルとソシエは、部屋から出て初めてあった女性団員だよ」

 

「……あれ?ルリアは?」

 

「ルリアには今みたいに隠しながら……みたいな事が出来ないからねぇ」

 

「へぇ、そうやったん?初めて知ったわ」

 

「魂分け与えてるせいか、感情も大雑把に移っちゃうんだよね。ルリアが悲しかったら俺も悲しくなるし、俺が嬉しいとルリアも嬉しくなる…みたいな」

 

 ルリアには、サプライズが出来ないと愚痴るグラン。確かに、心がある程度通じあっている相手では、サプライズでチョコを渡すことは不可能に近いだろう。

 それこそ、お菓子を作りながらほかの全く関連性のないものを考えなければならない。流石にそれはいくらなんでも不可能なので、グランでも出来ないのだろう。

 

「不便?」

 

「いや?全然そんなことないよ。それに感情が伝わると言っても、そんなに事細かく伝わるわけじゃないから、多分わかったとしても…『何かを渡してくれるかな?』くらいだと思う」

 

「それの根拠は?」

 

「俺がそうだから」

 

「なる程なぁ」

 

 グランとルリアにしか分からないこと。この二人の仲は、かなり硬いものでありそれが例えグランの家族や、仮にできたとしても恋人以上に繋がっていられるのだろう。

 彼らの繋がりは、グランを好いている女性陣からしてみれば羨ましさ半分、ルリアだからこその安心半分と言ったところである。

 

「……あ、俺そろそろ他の子達にも渡しに行かないといけないから行ってくるね」

 

「頑張ってな〜」

 

「おーう」

 

 そう言ってグランは2人から離れていく。やけに大きな荷物を抱えているにも関わらず、グランは変わらずいつもと同じように動いていたのであった。

 

「……あれ、重さどれくらいあるんやろうなソシエ」

 

「多分……ウチらには想像つかんくらい重たいと思うよユエルちゃん……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ、ようやく全員に返し終えたぜ」

 

 全員にチョコを返してきたかつバルルガンにチョコを渡してきたあと、グランは部屋に戻ってきていた。

 その時点で既に夕方になっており、チョコを渡すのに奔走しすぎたと自分でも思ってしまっていた。

 

「もうちょっと早く配るべきだなぁ」

 

「いやいや、早すぎんだろ」

 

「おやビィ君、いたのか?」

 

「ひでぇなぁ、朝から部屋にいたってのにお前オイラをおいてけぼりにするんだもんよォ」

 

 ビィはグランの頭の上まで飛んでいき、その小さな体を乗せる。グランは『悪かった』と言いながらビィの頭を撫でていた。

 

「つーかよぉ、朝から居たのになんでわかんねぇんだ?」

 

「いやぁ、クラリスがいきなり目の前にいた事とか今日がホワイトデーだって事を忘れててさぁ」

 

 朝のことを思い出しながら、グランは苦笑いをしていた。グランの言葉に、ビィはため息をついていた。

 

「ったくよぉ……まぁ、今日はオイラもルリアと一緒に色々してたから良いんだけどよ」

 

 そう言いながらため息をつくビィだったが、実は彼は見ていたのだ。朝からわざわざ部屋にこっそりと侵入し、誰もいないこととグランが寝ていることを確認してからキスをしようとしていたクラリスの姿を。

 呼びかけようと思ったが、直ぐにグランが目を覚ましてしまったため、声をかける間もないままここまで来てしまったのだ。

 因みにグランは全く気づいていないが、ドアの鍵はぶっ壊されていた。

 

「さーて、あとは事務処理だけ終わらせて今日は寝るかぁ」

 

「おいおい、今から仕事すんのかぁ?」

 

「書類仕事だけだし、それなら1時間もあれば終わるでしょ」

 

「まぁそうだけどよォ」

 

 ビィはグランの仕事量をいつも見ているが、ビィ自身が寝るまでの間にグランが休憩した所を確認したことがない。無論、昼食等や依頼途中の休憩は除くが。

 

「そういやよぉ、ルリアにはお返しは渡したのか?」

 

「うん、街中で前に見たすんごい縦に長いホールケーキ。あれ作った」

 

 それはホールケーキではなく、もしかしてウェディングケーキなのではないだろうか。ビィはそう突っ込みたかったが、今突っ込んだところでどうしようもないので━━━

 

「とりあえずオイラもできることがあるなら手伝うぜ」

 

 グランの仕事を手伝う事にしたのであった。




ベリアルはいい悪役でしたね。僕は好きです。
でもそれ(アズラエルとイスラフフィルのことに対する怒り)とこれ(ベリアル大好き)は話が別なので殴ってました。


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狂恋の華鎧、お姉様お姉様お姉様ァ!!

「怒っていいですか」

 

「何で急に怒るんですか、本日のゲストのヴィーラさん」

 

 本日の相手はヴィーラ、カタリナにご執心の一途な女性である。但し、最近は他の者とも付き合うようになったため、基本的な態度は軟化している。

 

「まず初めがお姉様では無かったことに対してです」

 

「いや、まぁ……1番初めって緊張しやすいから、なるべく破天荒な人物の方が良かったって話」

 

「…まぁ、確かにお姉様は清く正しくそして高潔であるお方です。その判断は、間違ってないと言えるでしょう」

 

「まぁカタリナもいずれやる予定だよ、本人がいいならね」

 

「……その言い方だと、まるで本人に断られたパターンがあるようですね?」

 

「と言うよりもまぁ……本人の顔が出せないパターンかな、あと名前とかね」

 

 グランは名前を言うことは無いが、例えばどこかの英霊使いの元国王だったりは顔も本名も明かせない存在なので、この番組には出せなかったりする。

 

「そうなんですか……所で団長さん、1つご提案…というか話したいことがあるのですが」

 

「ヴィーラから?そりゃまた珍しい……俺が出来そうなことなら手伝いますよ」

 

「では遠慮なく……お姉様と一緒の部屋に」

 

「駄目です」

 

「……出来そうなことなら手伝うと言ったのはあなたですが?」

 

「団長はなんでも知ってます、それが叶えられるかどうか自分の心にちゃんと聞いてください」

 

「……くっ」

 

 ヴィーラは日記を書くのが趣味である。その日記の内容としてちょっとカタリナの事に中心になっている事が問題なので、団長であるグランとしては『何か暴走しそうな気配がある』ため却下せざるを得ない。

 

「まぁいいでしょう……所で、これは1人同士の話し合いですよね?」

 

「基本的には……ね。場合によっては、複数人と同時に話し合うこともあるよ」

 

「そうですか……」

 

「今ローアイン達のこと考えなかった?」

 

「何故私が?」

 

「今物凄い殺意と笑みを見たからだけど。殺し合いダメ、絶対」

 

 手で大きくバツを作るグラン。基本的には男は苦手なヴィーラだが、最近ではグランにはカタリナ並に心を開いてきていた。

 

「ところで団長さん」

 

「はい何でしょうか」

 

「お姉様のチョコは如何でしたか」

 

「刺激的な体験ができたよ」

 

「そうですか、私もです」

 

 目を合わせるグランとヴィーラ。この2人は結構絡みも多いが、カタリナの作る料理等は2人にとって、絆を深める結果にしかならないことが多い。

 

「そう言えば、ヴィーラって料理出来るの?」

 

「領主だった時はさせて貰えませんでしたけどね……この団に入ってから、料理の練習をする事が増えたのでまぁそれなりに…と言った所でしょうか」

 

「今度デザート作ろうか」

 

「……二人きりでですか?」

 

「人が少ない方が好みなら、二人でやるけど?」

 

「……団長さんって、罪な人ですよね」

 

「まぁ最近少なくなったけど、秩序の騎空団の檻に入れられることがあったから罪人だよね、うん」

 

「そういう意味も含めてですよ」

 

 変な事実があるために、妙な解釈をされるとこうなるという見本である。何故これが団長なのか、とヴィーラは思わなくもなかった。

 

「お便り、読んでくださいません?」

 

「あぁ、うん……さてでは早速引いてみよう。1通目『一時期凄い格好になっていたっすけど、あれ何でっすか?』これファラからだね」

 

「何故彼女に……まぁいいでしょう、あの時の格好(闇SSR)だけを見て変な勘違いをしていた者もいるようですしね」

 

「あの時は…確かシュヴァリエが着いてきたことが発覚したんだよね」

 

「えぇ、シュヴァリエの力を顕現させるとあのような格好になっていました」

 

「……シュヴァリエが考えたってこと?あの衣装」

 

 背中やへそが丸出しであり、『それ下着じゃね?』と思えるかぼちゃパンツのような何か。彼女の格好はシュヴァリエが原因だったのだが、シュヴァリエのセンスが問われる問題のような気がしていたグラン。ヴィーラも、今ここで言われて、初めて気にしたようであった。

 

「……今度、聞いておかねばいけないのかもしれませんね」

 

「ひとまず、あの時の格好はシュヴァリエが自分の意思で作り上げた格好です。まぁ、シュヴァリエの力の一端を使えるあたり凄かったよねあの力は」

 

「そうですね……仮にも星晶獣なのですから」

 

 無論、今でも行使可能な力である。元々城塞都市アルビオンの星晶獣として君臨していたシュヴァリエだったが、ヴィーラのことをシュヴァリエ自身が気にいり、そこからは彼女を主としてシュヴァリエはグランサイファーに乗っていた。

 

「にしても…私のあの格好…今にして思えば……」

 

「ん?」

 

「腹立たしく思えてきました」

 

「え、待ってなんで?」

 

「あのチャラ男や彼女に見られてしまっていたことが、です 」

 

 ヴィーラとファラ、そしてローアインは恐ろしいと言わんばかりに仲が悪い。但し、シュヴァリエ無しであってもパワーバランスはヴィーラが1番上であり、1番下なのがローアインというアンバランスになっているためそれが余計に仲の悪さを深めていた。

 と言っても、ヴィーラが一方的に嫌っているだけであり、ローアイン達は嫌っていると言うよりは尊敬や羨望の眼差しを向けることもあるが。

 

「ま、まぁ……しょうがないと言えばしょうがないよ。制御しようと思ってできていたものでもないしさ」

 

「それは……そうなのですが……」

 

「とりあえず…2通目に行こう…『生霊出てるってローアインくん達言ってたけど?』コルワから」

 

「は?」

 

 グランは、初めて本格的な死を覚悟した。傍から聞けばいつもと同じ、ヴィーラの声が少し不機嫌になっている程度だと認識出来るだろう。しかし、グランは今の彼女の声がまるで地獄からの声のように聞こえてしまったのだ。

 それほど、殺気が込められていた。

 

「何ですか生霊って」

 

「い、いや……俺じゃなくてローアインが言ってる事ね?」

 

「……ではあのチャラ男達が何を言ってるのか…知っていますか?団長さん」

 

「……まぁ、大まかには伝えられたよ。だいぶ前にコルワが合コンしてたって話…覚えてる?」

 

「あぁ、懇親会でしたっけ……団からの出費を出す訳には行きませんでしたが、彼女達が自分で行っていたあれですか…あれがどうかしたんですか?」

 

「あの時に言ってたらしいんだよね、ローアイン達がヴィーラの話題を出すと何故かヴィーラに睨まれたかのような感覚になるって」

 

「は?」

 

 何故一々殺気を向けられねばならないのだろうか、とグランは吐きそうになっていた。戦うことには慣れてしまっているが、しかし彼女からの殺気はただただ『殺す』という意思しか感じられないのだ。

 

「だ、だから俺を睨むのをやめて……ローアイン達が言ってたことなんだからさ」

 

「あのチャラ男共…1度本気で……」

 

「まぁ、真面目な話」

 

「……はい?」

 

「シュヴァリエの防御機構でも働いているんじゃないの?」

 

 シュヴァリエは今や、ヴィーラという個人に力を貸している存在である。ヴィーラが敵と認識したものを、シュヴァリエもまた敵と認識している為に起こっているのではないか?とグランは予想していた。

 

「さぁ……幾らシュヴァリエでも私個人があの男達を睨んだ時の感覚なんて再現して何の得になるのか……という話になりませんか?」

 

「む……それを言われるときついな……」

 

「……いやでも、私の生霊ですか…」

 

「……」

 

 何かを企んでいるなとグランは思ったが、何だかんだで一線は超えていないので恐らく大丈夫だろうと考えることを放棄した。また何か口を出して殺気を出されたのでは……おそらく吐いてしまう自信があったからだ。

 

「三通目『団の中で1番だと思える男性はなんでありますか!?』ペンネーム顎男爵さんからです」

 

 初めてペンネームを使われたとグランは思った。しかし、この名前は…1人しか思い当たらないのだが、タイアーがこんなことを聞くだろうかとも思っていた。

 

「団長さんです」

 

「……意外な返し」

 

「あら、これでも団長さんは尊敬しているんですよ?私の考えていることや、他愛のないことでも話してくれる魅力的な方だと思っています。

 ただ……」

 

「ただ?」

 

「女性で無いのが残念です」

 

 女性だったらどうなっていたのか、グランは怖くて聞けなかった。可愛い物好きも、大概にしておけよヴィーラ……と言えたならどれだけ精神が図太くなれるだろうか。

 

「しかし……全員が全員団長さんを目指すという訳にも行きませんからね」

 

「全男性グラン化計画なんて碌でもないな」

 

「そんなことをしている暇があるのなら、もっと魅力的になれるように自分を磨くことだけをやって欲しいものです」

 

 言っていることは至極まともなのだが、なぜだかヴィーラがいうと別の意味に聞こえてこなくもない。

 果たして、自分磨きをしたところで男性は彼女に相手にされるのだろうか。

 

「まぁ、冗談なんですけどね」

 

「ヴィーラが言うと冗談に聞こえないんだけど」

 

 冷や汗を流すグラン。そして、ふと時間を確認するとそろそろ終わりが近い事がわかった。

 

「……さて、今日はここまでにしよう」

 

「そうですね、いい時間ですし」

 

「皆さんご視聴ありがとうございました、またこの番組でお会いしましょう」

 

 そう言ってグランはカメラの電源を切る……と同時に扉が大きく開かれる。

 

「秩序の騎空団だ!御用改である!!」

 

 突如入ってくる秩序の騎空団所属であるモニカとリーシャ。突如入ってきた2人に、グランは驚いていた。

 

「え!?待って俺まだ何も悪いことしてねえよ!?」

 

「いや、今回は彼女の方だ」

 

 そう言って、モニカはヴィーラの方に指を指す。ヴィーラは何も言わずにモニカを見ていた。

 

「とある筋からの情報だ。どうやら、カタリナ・アリゼの部屋から星晶獣の気配がしたそうだ。詳しく調べてみると……彼女の部屋のベッドの下から、星晶獣シュヴァリエが発見されたらしいな」

 

「なるほど……もうバレてしまいましたか」

 

「えっ、えっ…」

 

「盗撮の疑いで現行犯だ…」

 

 そう言ってヴィーラはそのまま連れていかれる。彼女は一切の抵抗なく、また何かを恨むようなことも一切なかった。ただ、やり切った顔でそのまま連れていかれたのだ。

 

「……一体全体、何がどうなっているのやら…」

 

 その場に残されたグランは、ただそう呟く事しか出来なかった。自分が逮捕されなかったことも、ヴィーラがシュヴァリエを盗撮カメラ扱いしていたことも、そして何故かやり切った顔をしていたことも……全てが彼にとっては困惑の材料となり得るものだった。

 

「…とりあえず、部屋に帰ろう」

 

 恐らくいつもの自分のように、ヴィーラは解放されるだろう。というかシュヴァリエを盗撮のカメラのように使って、リアルタイム生中継を自分の目だけで見れるようにするとは……

 

「……という事は、俺とルリアの視界も繋がる可能性が…ん?」

 

 手元からなる金属音。ふと気になって見てみれば、自分の手には手錠がつけられていた。そして、隣には先程モニカと一緒に戻ったはずのリーシャが立っていた。

 

「盗撮未遂で逮捕です」

 

「してないのに…」

 

「する気満々だったでしょう」

 

「ふ……負けたよ」

 

「エリクシールは使えないので、リベンジボーナスだけで耐えてください」

 

 そして、何だかんだでグランも一緒に連れていかれるのであった。因みに、本当にルリアと視界が共有できるかどうかは知らない。




個人的にはグランとカタリナが好きなヴィーラが好きです。
ジータとカタリナが好きなヴィーラはもっと好きです。


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騎士修行中、やれるっすか?

「はい、ファラさんです」

 

「何か雑じゃないっすか!?」

 

「んなことない、んなことない……というか今日はラフな格好(風SR)なんだね、寒くない?」

 

「大丈夫っす!この程度全然寒くないっすよ!!」

 

 現在のファラの格好、ノースリーブである。いつも来ている鎧は、今日は着ていないのだそうな。

 

「えー、ファラは騎士修行中の身……なんだよね一応」

 

「なんすか?何か足りないところでもあったっすか?」

 

「いや……ファラって料理上手というか、家事上手だから騎士というよりも主婦目指した方が…って考える時あるよ」

 

「あはは、褒めても何も出ないっすよ団長。ただ出来ることをやっているだけっす」

 

 ファラの料理の腕は、ローアインやほかの厨房メンバーも舌を巻くほどである。それに加えて、旅に出たばかりのグラン達の厨房係も務めていた事もあった。

 さらに、洗濯も掃除も上手となれば最早主婦である。

 

「そう言えばさ、俺ずっと思ってたことあるんだけどいい?」

 

「なんすか?」

 

「帝国の騎士ってさ、ちゃんと男女いるんだよね?」

 

「当たり前じゃないっすか、寧ろなんでそんな当たり前のこと聞いてくるんすか?」

 

「だよなぁ、普通そうだよなぁ」

 

 グランがこんなことを聞いた理由。それは、帝国兵にカタリナやファラ以外の女騎士をまともに確認した記憶が無いからだ。七曜の騎士などはともかくとして、一般兵で声だけで判別できる範囲内では見たことがないのだ。

 そんなに女性騎士が少なくて、本当にいるのだろうか?と疑問に感じているのだ。

 

「あぁでも、ファラと一緒の班は別の意味でヤバそうだなぁ」

 

「どういう意味っすか?」

 

「いや…料理洗濯といった家事が出来る女性……甘えちゃいかねない」

 

「……?」

 

「魅力的な女性って話だ」

 

「成程!団長はそういう女の子が好きって話っすね?」

 

 少し話がズレてしまうファラ。しかし、ここでふとグランの悪戯心が働いてしまう。別に他意はないが、ファラのような性格の女の子はからかってみたくなるのだ。

 

「そうだね、ファラとなら結婚できるよねって話」

 

「……はっ!?」

 

 不意打ちで顔が赤くなるファラ。冗談で言ったつもりだったのだが、真面目に反応されるとボケ殺しになってしまうため、グランまで素っ頓狂な顔をしてしまっていた。

 彼が望む反応としては軽くスルーされるか、ヴィーラのような殺意を向けられるかの二択のつもりだったのだが。しかし、ファラにヴィーラ並の殺意を向けられたら、軽く死ねるほどの絶望を味わってしまうという面倒くささがついて回っているが。

 

「ななな、何言ってんすか急にぃ!?」

 

「いや、それくらい魅力的って話なんだけゔぉ」

 

 上から降り注ぐ理不尽な武器の雨あられ。ザックリザクザクという軽快な音を立てながら、グランの上から床と垂直になるように武器が降り注ぐ。トドメと言わんばかりに、上からウロボロスが降ってきて押し潰す。

 

「ちょ!?団長ー!?」

 

「あぁうん大丈夫大丈夫、生きてる生きてる」

 

「え、生きてんすかそれ!?」

 

「ギリギリ生きてる。ファランクスとかで生き延びてる」

 

「ファランクス凄いっすね!!」

 

 70%カットしても確定で死んでそうな事になっているが、ファラはもう突っ込む気にもなれなかった。

 瓦礫の山から生えるかのようにグランの腕が出てきて、ダンボール箱を探してお便りを取り出す。

 

「じゃあお便り読み上げていこうか」

 

「え、そのままやるんすか?!」

 

「あ、確かに今のままだと読めないな……ちょっと待って今出るから」

 

 何事も無かったかのように、グランは武器の山を掻き分けて出てくる。出血もまるでしておらず。よくある武器の形をした玩具だったのではないだろうか…とファラは思考を放棄した。というか、しないとやっていけないと直感で感じ取っていたのだ。

 

「はいはい1通目…『カタリナさん以外からは、剣を教えて貰ってますか?』」

 

「ししょーっすね!!」

 

「確かヨダルラーハに教えて貰ってたよね」

 

「はいっす!!」

 

 グランも後から知ったことだったのだが、どうやらファラとヨダルラーハはいつの間にやら師弟関係となっていて、それなりに剣の教えをしてもらっていたようだった。

 とは言っても、ヨダルラーハレベルになってくると教えも上手いのか最近はかなり腕が上達してきているが。

 

「団長は師匠に教えて貰ったんすか?」

 

「いや、剣自体は独学だったよ。俺が教わったのは…せいぜい極意とかくらいかな」

 

「仲間になった時点で、既に教えられることはないほどに強かったんすね」

 

「んー……いや、そうじゃないと思う」

 

「ほぇ?どういう意味っすか?」

 

 ファラが不思議そうに聞くが、説明しづらいのかグランは考え込みながら言葉を発していく。

 

「んー…多分、だけど…独学が過ぎた、とかじゃないかなぁ……」

 

「……と言うと?」

 

「うーん……ファラってさ、ランスロットの剣術とジークフリートの剣術は一緒だと思うか?」

 

「ランスロット卿は二刀流の手数主体、それと違ってジークフリート卿の剣術は一撃特化のように思えるっす」

 

 ジークフリートは、あの1本で手数を表現し始めるからこそ恐ろしいのだが、今言いたいのはそういうことではないので割愛をする。要するに『剣術の違い』というものを言いたかったのだ。グランは。

 

「まぁヨダルラーハの剣術と、俺が独学で学んだ剣術はお互いに違ってるものだったって事だよ」

 

「……うーん」

 

「……説明ムズいんだよ、俺だって」

 

「いや、言いたいことは理解してるっす。カタリナ先輩がジークフリート卿から剣術を教わっても、違いが大きすぎて教えにならない…みたいな話っすよね」

 

「あぁうん、まぁそんな感じ……ってあれ?今何が疑問だったの?」

 

「いや……そもそも団長はある意味で模倣の達人みたいな所あるから、剣術が違うから…みたいなこと言われてもピンと来なかったっす」

 

 自分の得意分野である趣味の圧倒的追求力。それがまさか、こういった所で足を引っ張るとは思ってもみなかったグラン。確かに、二刀流使うジョブとかあれば自分はそれを学んでいるのかもしれない。

 

「そもそも手数の話をするなら、前に言ってた剣豪や侍がそうじゃないっすか」

 

「あ、ほんとだ」

 

 一体何回コロッサスマグナに奥義を打ち込んだだろう。最早見慣れた景色レベルまである。閑話休題。

 

「まぁ……団長はあんまりにも趣味で色々しすぎているからこそ、教えられなかったのかもしれないっすね。固定観念が着きそうな気がするっす」

 

「そうかな……そうかも……」

 

 そういった事にしておいた2人。時間が推しているのでさっさと2通目に行こうとしてお便りを取り出す。

 

「2通目『カタリナさんに向けているのはLove?それともlike?』」

 

「どういう意味っすか!?」

 

「恋愛か友愛かということじゃないかな」

 

「ふふん、そういうことならLove一択っす!!」

 

『それは絶対ない』と心の中で断言するグラン。Loveだと言い張るならば、最低ユエルやソシエのクラスにまで登り詰め無ければならない。そのクラスに行くためには、まだファラには経験値が足りていなかった。

 

「はい答えが出たので三通目に行こう」

 

「もっと会話を広げて欲しいっす!!」

 

「いやこれ以上この話題続けたくないし」

 

「何でっすか!?」

 

「え、何?後ろにいるヴィーラに刺し殺されたいの?」

 

「三通目行くっす!!」

 

 先程から負の念を送り続けているヴィーラ。なぜだか負のオーラを感じとってしまったので、グランには恐怖の対象でしかない。

 ファラにもそれを感じてもらえて何よりである。

 

「三通目『団内で「あー、自分でも意外だな」と思える尊敬出来る人物を上げてください』」

 

「ローアインっすね」

 

「本当に意外なチョイス…どして?」

 

「いやぁ、よくめげないなってところがっすね」

 

「なるほど」

 

 撃沈回数が光の速さで増えていっている、という噂を持つローアイン。しかしそれでもめげずに、ひたすらに策を練っては告白を繰り返し続けていた。確かに、あのガッツは見習うべきものがあるだろう。

 

「まぁそれ以外は料理の腕くらいなだけで……あんまり尊敬できるってわけじゃないっすけどね」

 

「酷い言われ様だ…」

 

「そもそも頭の中の妄想で、女性を機械化させるって割とどうなんっすか」

 

「ファラちゃんそれ言っちゃあいけないやつぅ」

 

 果たしてキャタピラの事なのだろうか、それともメカヴィーラの事なのだろうか。どうでもいい話題だが、そこだけを追求したくなったグランだった。

 

「……これ最後急ぎ足になっちゃったな」

 

「まぁ時間がないんで仕方ないっすよ」

 

「……まぁというわけで、今日の団長相談室は終わりです。ご視聴ありがとうございました」

 

 そう言ってからカメラの電源を切るグラン。切った後に、ファラと一緒に部屋から出ていく。

 

「そう言えばさ、ファラって白と青好きだよね」

 

「突然なんすか」

 

「いや、鎧は青色だけど普通の服とか着てる時って白色多いなぁって」

 

「そうっすか?」

 

「今もそうだけど……水着とかさ」

 

 歩きながら、他愛のない話をしていくグラン。ファラは楽しそうに話を続けていくが、ふと何かを思い出したかのようにファラがピタッと止まる。

 

「ファラ?」

 

「忘れてたっす!!今から先輩と一緒に修行っす!というわけで団長、また後でっす!!」

 

 そのまま一瞬で走り抜けるファラ。1人置いてけぼりにされたグランだったが、まぁ今日はファラの脇が何度も見れたのでよしとした。何がよしなのかは分からないが、良しとしていた。

 

「じゃあ逮捕ですね」

 

「ねぇリーシャさん、さすがにそれはキツくない?」

 

「秩序の為です」

 

「秩序のためかぁ…ならしょうがないなぁ…」

 

「というか本当に脇だけ見てたんですか?」

 

 突然現れては手錠をかけるリーシャ。別段、グランは手錠をかけることは何ら気にしないのだが、リーシャのふとした質問は答えずに顔を逸らしていた。

 

「……団長さん、素直に答えてください。さすがに本気でしばきますよ」

 

「え、俺しばかれるの?」

 

「はい、シヴァかれます」

 

「あ、発音的にやばいやつそう」

 

「シヴァさんに焼かれるのと、サラーサさんにホームランされるのとどっちが好みですか?」

 

「流石にどっちも本気で痛いからやめて欲しいかな……」

 

 痛いで済むのか、とリーシャは呆れ顔だがこの2人のコントを聞かされている周りの部屋の住人達は、なんだコイツらと疑問顔にもなっていた。

 

「あ、そうだ」

 

「なんですか唐突に」

 

「今日の晩飯アマツタケにしよう、ファラ見てて思い出した」

 

「団長さんの出費ですか?」

 

「……団の出費に」

 

「出来ると思ってるんですか?」

 

「デスヨネェ……」

 

 アマツタケは高級食材である。主に繁殖している島の住人の民度があれだが、それでも高級食材である。食材の味だけは嘘をつかないのだ。値段はぼったくり価格だが。

 しかし、それを団1つで補おうとすると当たり前だがとんでもない出費となるだろう。

 

「……やっぱりイノシシ鍋で…」

 

「出費はどうするんですか?」

 

「……狩ってきます」

 

 こんなやり取りをしながらも、本日のご飯のためにグランサイファーは秋の味覚が素晴らしく美味しいであろう島に向かうのであった。




苗床化、その言葉が当時の僕の心を揺るがした。
実際はキノコにされるだけですけどね、設定的に。


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スウィンガートリオ、マジパネーション?

「今日のゲストはなんと3人」

 

「ちぃーっす、エルセムでーす」

 

「うぃーっす、トモイでーす」

 

「うぇーい、ローアインでーす」

 

 少し茶色がかった肌の色、そして金髪銀髪となっている3人組。ローアイン、エルセム、トモイ…3人合わせてチームローアインである。

 いつもは1人なのにも関わらず、何故か今回は3人組である。その理由だが……

 

「えー、団長権限によりこの3人は揃ってないとなんか会話1/3位の内容で終わりそうだと思ったので3人にしました」

 

「ちょ、ダンチョ酷くね?」

 

「いや実際君ら3人の魅力って、君らの独特な話し方と3人いる時のテンションの上がり方だし」

 

「……あれ?もしかして結構褒めちぎられてるパティーン?」

 

「マジで?」

 

「マジで」

 

「やっぱダンチョ素敵だわ男だわ。俺ら一生ついていくわ」

 

 感動しているのか、真面目な顔でウンウン頷いているローアイン。それに釣られてかエルセムとトモイも頷いていた。

 

「まぁ、ローアインはファラと一緒に専らキッチン仕事させてるけど…なんかキッチンに不満ある?」

 

「あー、火力がちょーっとデンジャラスな時あるっすわ」

 

「え、マジで?そんな危険なことになってんの?」

 

「なんつーか…ココ最近、グラサイめちゃんこボロボロになってる弊害っていうか……0か100しかねぇピーキーな火力っつうか」

 

「やばいな…外装とかエンジンに負担かけすぎて気づかなかった…1回グランサイファーガチで修理しないといけないか……」

 

 よく考えなくても、サンダルフォンの時の災厄や天国の門への到達、そしてつい最近決着の着いたベリアルの時なども含めて、グランサイファーは幾度となく修理と改修を尾施されていた。

 しかし、その際に1番被害の大きかったエンジンや外装にばかり手をつけていたせいで、他の部分に手が回ってないことも多かったという。

 

「それでも、クッキングできるんで問題はまぁねぇんすけどね」

 

「いやいやいや……大問題だわ。言ってくれてありがと、修理費出さないとな……」

 

 グランは大真面目な顔でメモしておく。後でラカムに伝えるためでもある。

 ローアイン達はそんな彼の様子を見て、真面目な顔をしていた。メモを書き終えた時、グランは3人が見ていることに気づいて首を傾げていた。

 

「…どしたの?」

 

「いや、やっぱりダンチョは器でかいわ」

 

「マジそれな、俺ら言わなかったのが悪ぃのに感謝されたし」

 

「いやいや、そこで感謝以外何が出るの?」

 

「っべぇよ、マジやべぇよ。これ俺女だったらまず惚れてたわ」

 

「「分かるー」」

 

 なんのことだが分からずに更に首を傾げるグラン。ローアイン達も、グランがそれを天然で行っていることを知って、さらに尊敬を抱いていた。

 

「元々はさァ、キャタリナさんのためにグラサイ乗ろうと思ってたけどォ…いい人ばっかでマジバビッたのよ」

 

「分かるわ、そん中でもダンチョは1番聖人」

 

「マジそれな」

 

「聖人って……そんな俺人に好かれるような事したかな」

 

「ダウト」

 

「ダウター」

 

「ダウテスト」

 

「え、なにそれお前ら息ぴったりかよ」

 

 ローアイン達が1人ずつビシビシとグランに指をさしていく。幼馴染で腐れ縁だと聞いているので、長い間つるんでいたらここまでの連携プレイを出すことが出来るのだろうか、とグランはしみじみ思っていた。

 

「まぁ?ダンチョとビィさん並には一緒にいると思いますし?」

 

「…確かに俺とビィも結構以心伝心してる時あるかも…」

 

「まぁ2人の絆はやべぇってのは知ってるけど、さすがに絆では負けたくないっすわ俺ら」

 

「多分一番仲いいよねグランサイファーの中で」

 

 何せ、K.B.S.Nなる技を使ってくるのだ。しかし、ここまでイケメンで料理ができて他人を思いやることができるにも関わらず、何故か彼らはモテない。

 理由は前述の騎馬戦だろうと、グランは笑顔の裏でそう考えていた。というか、それが理由なのは明白なのだが何故か気づいていないようなのだ。

 

「そう言えばカタリナにアプローチ続けて、今何回目?」

 

「この間でぇ…万超えたっすよ」

 

「だはっ!桁を盛るんじゃねぇよ桁を!」

 

「おめー1日何回アタックしねぇと万超えるか分かってんのか」

 

「は?ンなもん100回以上アタックすれば簡単じゃん」

 

「え、マジで?100回でいいの?」

 

 3人のお馴染みの漫才が目の前で繰り広げられていた。グランはそれを見ながら、苦笑を漏らしていたがふと思い出したかのようにダンボールを取り出す。

 

「お、いつもの出しちゃいますパティーン?」

 

「そうそう、そろそろお便り読んでいかないとね…時間がね……というわけで1通目『何故ノイシュさんは無事だと思います?』」

 

「それ俺らに聞く?」

 

「ダンチョ、それ混じったやつじゃね?」

 

「……いや、これローアイン達宛だよ」

 

「マジで?それ書いた人答えられるってなんで思ったんすかね」

 

「さぁ…?」

 

 ノイシュ…彼らと絡んだことがない、という訳では無いが彼らよりは、ヘルエスやセルエルの2人の方がまだ答えられるだろう。

 アイルスト王国側の人間のはずなのに、特に料理という観点でしか絡まないのに何故送られてきたのか。

 

「無事ってぇと……」

 

「あれでしょ、刺激物に対する耐性の高さでしょ」

 

「だよね……」

 

 ノイシュは、どんな料理でも基本的に美味しいと言ってくれる。そう、たとえそれがカタリナの用意した料理であっても、本当に心の底から美味しそうに食べるのだ。それで腹を下したこともないので、彼の胃袋の丈夫さは事情を知っているものからすれば、恐らく人類1だろう。

 

「ヴィーラちゃんですら、倒れる時は1発のものを本当に美味そうに食べてくれるっすからねぇ」

 

「あれほんと謎」

 

「ヘルエスも言ってたなぁ…毒味役として凄く役に立てないって…」

 

 カタリナの料理を美味いと言えるのならば、当然それと同等の刺激物も彼ならば美味しく頂けるということである。アイルスト王国の騎士だった彼だが、そこ以外はほぼ完璧と言っても差し支えがない。

 逆に言えば、そこに関してはまず任せられないということになる。

 

「……まぁ、バレンタインの時なんかは皆頼ってるけどね」

 

「キャタリナさんのチョコ…食べてるからなぁ…」

 

 ローアイン達もウンウンと頷いているが、結局の所何故彼があそこまでの味覚音痴なのかは…考えない方がいい案件な気もすると、この場の4人はそう感じとっていた。

 

「次行こう」

 

「ウェーイ!」

 

「2通目『3人の好みの女性は何ですか?』」

 

「無論キャタリナさん」

 

 この手の質問において、ローアインは既に心に決めた人がいるのだ。まず、迷うことなくカタリナを彼は宣言するだろう。

 

「んー…フーちゃん」

 

「ゆぐゆぐ!」

 

 少し言い淀んでいたが、エルセムとトモイも同じく答える。グランは知らないが、フーちゃんとは帝国にいる宰相であるフリーシアのことであり、ゆぐゆぐとは星晶獣ユグドラシルの事である。

 

「フーちゃんって?」

 

「あー、ほらあの、帝国宰相の」

 

「あぁ、フリーシア……帝国の人だけどあの人綺麗だよね」

 

「おっと?もしかしてダンチョの好みもフーちゃんパティーン?」

 

「あはは、綺麗だけど恋愛対象かどうかはわからないや」

 

 グランは笑ったが、まぁ好みのタイプという反応でもなかったのでローアイン達は同じように笑って、その場を誤魔化す。というか、下手なことを言ってしまうとグラン自身の身が危ないことを皆知っているのだ。

 

「ゆぐゆぐって、ユグドラシルの事?」

 

「そうっす」

 

「……可愛いよね」

 

「Do感」

 

 ユグドラシルは可愛い。ルリアの中にいることが多いが、一度姿を表した時に時折彼女は笑顔を見せるのだ。星晶獣とはいえ、女の子らしい趣味を持っていると言っても間違いではないので、グランサイファーでもかなり人気の高い女子である。

 

「エルっち、1回ゆぐゆぐとデカさ一緒になったとかって妄想してたんすよ」

 

「そうそう、ギガントエルセムとか言ったロボット」

 

「え、彼女機械関係苦手だよ?」

 

「「「……は?」」」

 

 このことを3人は知らなかったのか、グランのぽつりと言った一言に目を見開いていた。

 そう、ユグドラシルは機械が苦手なのだ。自然豊かなルーマシーにいる星晶獣のためか、自然豊かな環境を好みこそすれ、人が多く発展した産業などが多い環境を、彼女は好んでいなかった。

 真逆の位置にあるものなので、当たり前といえば当たり前かもしれないが。

 

「おいおいおい…まさかの速報だぞコレ!」

 

「おいおい…これは悲しい事実だわ…」

 

「……ゆぐゆぐ…」

 

 悲観する3人だが、別に巨大化しなくてもユグドラシルとは一緒にいられるのだ。そもそも、星晶獣に取って大きさというものはあまり意味をなさないものらしいからだ。

 事実、その身の大きさを変えているのも何人かいるためである。

 

「フーちゃんも…そういうのあんのかな……」

 

「あ、トモちゃん病み始めた」

 

「っべぇわ、病院案件再びだわ」

 

「病院?」

 

「トモちゃん、フーちゃんの事考える度に病んでんすよ」

 

「ワーさん達と会した時とか、俺らですらドン引きだったし」

 

 遠い目をするトモイだが、正直時間もまともにないので仕方ない話だがグランは3通目に移行……しようとした時。突然ドアがノックされる。

 

「ん、あれ?今撮影中なんだけど……誰ですかー…」

 

 グランが席を立って扉の前に行く。途中まで目で追っていたローアイン達だが、ふと視線を窓の方に移すと……何故かシュヴァリエがふよふよと浮いていた。窓の外に。

 

「……あれ、ヴィーラちゃんの…」

 

「ぱひっ!」

 

 シュヴァリエを見つけた瞬間に、グランが素っ頓狂な声を上げる。瞬間的に視線を後ろに移すローアイン達。

 そこでは何故かグランをお姫様抱っこしているヴィーラが立っていた。

 

「ちょ、ちょちょっ!?」

 

「な、なんでヴィーラちゃんがここに!?」

 

「俺らなんか余計な事言った!?」

 

「いえ、ただ……居場所がわかっている分やりやすい……いえ、殺りやすいと思いまして」

 

 言い換えられているが、発音的には何ら変わりのない言葉。しかし、ローアイン達はその言葉にある殺意を明確に感じていた。そして、それが当たり前のように自分たちに向けられていることも、理解していた。

 

「言い換えられてないのに言い換えられてるパティーンだわ!!」

 

「殺意溢れてるわ!!」

 

「俺……最近油っこいもの、駄目なんだよね…」

 

 遠い目をするトモイ。この状況が、彼が現実逃避をするには十分なほどえげつない状況だというのは理解出来ていた。その現実逃避も、無駄な話なのだが。

 

「なんで今それを━━━」

 

 シュヴァリエがカメラの前まで行き、向きを変える。ローアイン達を映さないようにして、窓の外だけを映す様にする。

 しかし、その綺麗な青空とは裏腹に画面の外では赤黒い現場が繰り広げられていた。

 

「「「ぎゃー!!!」」」

 

 ローアイン達の悲鳴がこだまする。何が悪かったのか、何が行けなかったのか。今回三通目まで行けてないのだけどそれでいいのだろうか。

 と、色々突っ込みたいことは山ほどあるのだが、しかし外に向けられたカメラはヴィーラの手によってoffにされて、そのままグランはヴィーラに持ち運ばれていき、ローアイン達はその場に放置されているのであった。

 その構図は、さながら選択肢を間違えた結果の死亡…つまりは、物語で言うところのBADEND。

 因みに、グランはちゃんとヴィーラの手によって団長室に運ばれて行ったのであった。ローアイン達も、きちんとメタノイアをかけられたのであった。




BADEND NO.37564『放送事故』

ローアイン達……結構難しいねんな……


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料理対決

「さぁ始まりました、グランサイファー団内料理対決。実況は私グランと解説にビィさんをお迎えしております」

 

「なぁ、これってなんの」

 

「まずは選手の紹介を致しましょう、NO.1ヴィーラ選手です。真剣な表情をしていますね、専用のエプロンを纏っていることからもそのやる気が伺えます」

 

 突如始まった謎の料理対決。ビィは理由も説明されずに連れてこられたため、グランに大して説明を求めようとするがグランはその言葉を遮って、選手の説明に入り始める。

 

「なぁ、話を」

 

「NO.2ローアイン選手です。本日はトモイさんとエルセムさんを連れてこずに、1人で戦うと言った所存でございます。大会開始前に言った一言は『ダチは巻き込めない』でした」

 

「おい」

 

「NO.3ファラ選手です。いつもの鎧姿ではなく、ノースリーブの上からエプロンを羽織っています。その姿はさながら、配給のおばちゃんの格好です。ギャップが可愛いですね」

 

 ここで一旦、グランが黙った。ようやく話を聞いてくれるのかと思ったビィだったが、真っ青になって冷や汗で襟元を濡らしているグランを見た瞬間に、言葉を失っていた。

 

「……そして、最終NO.……カタリナ選手です」

 

「なんで姐さんが参加してんだァ!?」

 

「料理と言ったらこの人、この人と言ったら料理。彼女から料理を抜けば剣の腕だけが残ります」

 

「じゃあ剣の腕で戦って欲しかったぜ……」

 

 呆れたかのような表情をするビィ。自分にも被害が及ぶ可能性を考慮したが、既に逃げられないことを悟ってしまったためその現実から必死に目を背けていた。

 

「ルールの説明をします。今から4人には、それぞれ料理を作っていただきます。

 そして、それらの料理を作った選手以外が食べ、そして1番美味しいと思った選手の札をあげる仕組みです。それで1番標数の多かった選手の優勝となります」

 

「……?そのルールだと同数になった時とかどう済んだよ」

 

「いい質問ですね解説のビィさん。しかし、その問題は既に解決しているのです。

 因みに、料理を作る順番はもうクジで決定致しました。ここにボードを張り出します」

 

 グランの取り出したボードに、それぞれ料理を作る順序が書かれていた。1番カタリナ、2番ローアイン、3番ヴィーラ、4番ファラ……の順となっていた。

 

「……おい、姐さんが1番って…」

 

「さて、作ってもらいましょう。まずはカタリナ選手、調理お願い致します」

 

「おいおい、大丈夫かよ……というか、ほんとに発端はなんなんだ?」

 

「……実はな━━━」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「━━━グランサイファーで1番料理が上手い人物は、誰なんだろうな?」

 

「キャタリナさん?どうしたんすか急に」

 

「そうっすよ、珍しいっすね。先輩がそんなこと言うなんて」

 

「ああいや……ふと気になっただけなんだ。忘れてくれ」

 

 今から約2日ほど前、突然カタリナかそんなことを言い始めた。その時、キッチンにいたローアインとファラが物珍しそうに、カタリナを見ていた。

 

「なんか気になることでもあったんすか?」

 

「この団には料理上手がたくさんいるだろう?しかし、よく考えてみたら全員が納得するような味を作れるものばかりだから、1番があるのなら知ってみたいと思ったんだ」

 

「……そう言えば…」

 

「考えたこと無かったっすね。実際どうなんすかね」

 

 ローアインとファラは顔を見合わせる。あまり考えたこともなかったが、良く考えればそういった事を今まで思いつかなかったのが不思議である。

 

「だったら、ダンチョに相談して料理対決とかしてみるのも良さそうっすね」

 

「おお、それは名案だな。よし、ならば私も参加しよう」

 

「「えっ」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「という事なんだ」

 

「悪ぃ、オイラには一切理解できなかったぜ。というか、開かなかったらいいだけの話じゃ無かったのか?」

 

「いや、俺が聞いた話の時は料理対決するから的な事しか聞かなかった。後からカタリナが参加することを知った」

 

「おいおい……参加メンバーくらい聞いておこうぜぇ?」

 

「普通回避したと思うだろうが……」

 

「つーかよう、そういう話だったら……」

 

 ビィはヴィーラに目を向ける。そう、今の話ではヴィーラは一切出てなかったのだ。なのに何故参加することになっているのだろうか。

 

「あぁうん……ダメもとでカタリナも出るって言ったら……出場決めてくれたよ」

 

「あぁ……」

 

「……因みに、カタリナの作った料理は残りの3人が食べる訳だが、参考で俺も食べることになった」

 

「何でそんなことになってんだよォ…」

 

「……団長だし、さ。さすがに団員が自分から毒を食べに行ってるのに、俺一人が食べない訳には行かないだろう?」

 

 遠い目をしながら、グランはそう語る。ビィは呆れながら選手達の様子を目で追うが、カタリナ以外全員がもれなくグランと同じように遠い目をしていた。

 

「………さて、カタリナ選手が料理を作っている中で他の選手達の意気込みを聞いてみましょう。

 ヴィーラさん、やる気はどうですか?」

 

「…そうですね、2日あれば問題ないと思います」

 

「おいおい、食べてから2日の間昏倒してるじゃねぇか……」

 

 ヴィーラのコメントに、ビィが突っ込む。しかし、いつもならば睨みつけるはずのヴィーラも、この時はビィにむける意識すらないのかただ小さく優しい笑みで微笑んでいるだけだった。

 

「なるほど、どうやら自信満々みたいですね」

 

「今のコメントからやる気を感じられるなんて、お前どうかしてるぜ」

 

「ありがとうございます。では次はファラ選手に聞いてみましょう。ファラ選手、意気込みの方や如何に?」

 

「そうっすね……こっちも2日あれば……いや、1日半でいけるっす」

 

「何で微妙に張り合ってんだよ…それでも1日は昏倒してるじゃねぇか……」

 

 ビィがまたもや突っ込むが、ファラもまた気にしていなかった。カタリナが料理を作っている間、ファラはどうして空は青いのかを考え始めていた。

 

「お二人共、やる気に満ちあふれついるコメントありがとうございます。では最後にローアイン選手、やる気はどうですか?」

 

「ポジティブ思考すぎるな……」

 

「そうっすねぇ……俺のマジ硬キング胃袋がどこまで持つか…それが分かれ目っすねぇ。俺も、他の2人と同様に…イヤ、半日で復活してみせますよ」

 

「なるほど…素晴らしいコメントありがとうございます」

 

「今のを素晴らしいと言えるお前の脳みそはちゃんと機能してんのか?」

 

 ローアインは覚悟を決めた目をしていた。それは、彼が(妄想の中で)マッチョを狩る時と同じを目をしていた。グランはその覚悟を、きっちりと感じとっていた。

 

「ていうかよぉ、自然治癒で直す気なのかぁ?」

 

「例えすぐさまメタノイアをかけたとしても、直ぐにまた気絶させられるのは目に見えているからな。だったら、自然治癒に任せた方が治りやすいと踏んだ迄さ!」

 

「何でそんなにキメてんだよ……」

 

 もう何度呆れたことだろうか、ビィは最早自分が何回呆れたのかを数える程には呆れているような気がしていた。

 しかし、ふと思ったことがあった。それは、『何故自分がここにいるか』という事である。

 

「なぁグラン、オイラは何したらいいんだ?」

 

「終わった時に、こっそり助っ人呼んできてくれ。さすがに4人も倒れて、いざと言う時に船が傾いて、いい感じに落ちる可能性があるから」

 

「あぁ……てっきりそんなことだろうと思ったぜ…呼ぶのは誰でもいいのかぁ?」

 

「出来れば二人以上を同時に担げる人が好ましいかな…その方が人数割かなくて便利だしさ……」

 

 出来れば筋肉がある人が好ましいと、グランは付け足す。理想的な案としては、ファスティバが彼は1番理想的だと考えていた。しかし、そのファスティバは今日はいない。

 

「ファスティバが1番よかったんだけどな……」

 

「今日いねえのかぁ?」

 

「カジノに行ってるよ……今日はデュエルの当番らしいからさ、少なくとも明日まで帰ってこない」

 

「じゃあ他のドラフに任せるしかねぇんだなぁ……」

 

 幸い、ドラフの男性はみな筋肉質で力持ちである。そしてこの団にも、いっぱいドラフの男性はいるので、助っ人には困らない……と考えていた。

 

「……あれ?」

 

「どうしたぁ?」

 

「バザラガは組織メンバーで仕事、アギエルバも仕事…その他の男性ドラフ達皆今日は依頼や、個人の用事でいない可能性がでてきた」

 

「えぇ……」

 

 グランは真顔のまま内心とんでもなく焦っていた。しかし、ビィが何とかしてくれるだろうと直ぐに思考を切りかえた。今日の彼は、最早諦めが早い性格なのではないかと疑うほどに、切り替えが早くなっていた。

 

「さて、そうこうしている間に料理が完成しそうですね」

 

「早すぎねぇか?」

 

「さて、カタリナ選手…改めてお聞きしますが……何を作っていらっしゃるのでしょうか」

 

「そうだな……今回はあえてシンプルにオムレツを作ってみた。卵と、塩コショウという最低限だけで勝負を挑もう」

 

 そういうカタリナの作っているオムレツだが、色が水色だった。それも、鮮やかな水色ではなく、何やら紫色の煙を発している毒々しい水色だった。

 

「姐さん……ほんとにそれその3つだけなのか?」

 

「あぁ、卵も高いものだが……市販のものを使っている。何か、まずかっただろうか?」

 

 きっとまずいのは料理だけでは?なんてツッコミは野暮だろう。カタリナは市販のチョコが、何故か劇的に不味くなる才能の持ち主なのだ。普通の卵が変色するくらいよくあることだろう。

 

「おい、あれほんとに食う気かぁ?」

 

「何をゲホッ…言う、ゲホッゲホッ…実に刺激的な見た目と、香りゲホッではないか…ゴホッ...ヴ...ゲホッゴホッゴホッ...」

 

「目を真っ赤に充血させながら、咳き込みまくってるせいでまるで説得力がねぇぜ……」

 

 そして、人数分のオムレツが出来上がり……それぞれの席へと置かれていく。

 既に皆死にかけの表情である。

 

「ヘヴンみえらぁ……」

 

「私…これを食べ切れたら、団で白いモフモフの犬を飼いたいと思いました…」

 

「それ、死亡フラグっすよ……」

 

「では、いただきます」

 

「「「いただきます」」」

 

 そして、全員が全く一緒のタイミングでカタリナオムレツを口に入れる。瞬間、訪れたのは━━━色とりどりとなった視界だった。グランの視界は歪み、色々な色へと変色していく。

 自分の体が溶けていき、この空へと一体化するかのような感覚も味わっていく。この感覚をもって、ルリアは大丈夫かとふと考えたが…そもそもよく考えたらカタリナの料理を食べれる人材だった。

 意識は飛んで、ありとあらゆる可能性を見て行った。それが現実なのかはたまたま走馬灯なのか。ただの妄想なのか現実逃避なのか。誰にも分からなかったが、ただ1人……グランだけはとある境地へと至った。

 世界の仕組み、それを理解したような気分になった…グランは麻薬もびっくりの境地へと至ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ、ここは…」

 

 グランは再び訪れていた。バレンタインの時にそういえばここ来たなぁとか思いながら、川の石を積んでは崩して積んでは崩して……それをただ繰り返していき、復活までの暇つぶしを行うのであった。




この3人と来たら、と考えたら料理対決になりました。
ごめんなさいカタリナさん出すしかなかったです。


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天稟の射手、快楽の先、行ってみたい?

「いつも貴方のすぐ側に、何だかんだいつも落ちた俺を助けてくれる救世主ことメーテラさんがゲストです」

 

「はぁい、メーテラだよ〜」

 

 そう言いながら、胸を強調させつつ投げキッスをするメーテラ。さすがに良い子の性癖がねじ曲がる可能性があるので、これ以上はグランがさせなかったが。

 

「実は存外意外なんだよね」

 

「は?何が?」

 

「いや、メーテラってこういうの面倒くさがるもんだと思ってたから」

 

 基本的に、メーテラという女性は彼女自身が面倒臭いと思ったことは、絶対にやらない性格である。そう考えると、グランが落下した時のために下に待機させられるのを彼女が良しとしているのもまた意外である。

 

「……まぁ、あんたの為って言うだけよ。あんたじゃなかったらやらないわ」

 

「……」

 

 その言葉に対して、グランは真面目な顔で思考し始める。その言葉の意味を、ちゃんと理解するために思考を繰り返していく。

 

「何よ」

 

「それが本音かどうか、考えてる」

 

「あんた鈍くない?」

 

「そもそもカリオストロとか、メーテラみたいな性格の女性達が『団長大好き!』をした直後に『冗談だよ』ってやらされすぎてるから、単純に信頼の問題だと思う」

 

「……」

 

 メーテラは申し訳無さそうに首を背けていた。そう、たとえ本当に心の底から好きだとしても、それを普段冗談で使っていたらその類に関しては信用がなくなるのは彼女も理解しているのだ。

 

「…いや待って、カリオストロがあんたに好きって言ってたの?」

 

「猫被ってたら大体そんな事言ってるぞ」

 

「じゃあ猫かぶってないときは?」

 

「……」

 

 顔を背けるグラン。猫を被っている時のカリオストロの『好き』は信用していないが、猫を被っていない時の彼女の反応は…彼にとっては珍しくて案外信用出来ているのかもしれない。

 

「あちゃあ…アタシも普段猫被っとくべきだったか……」

 

「いやいや、メーテラはそれが魅力だから」

 

「は?じゃああんた本気でアタシに興味ないの?」

 

「少なくとも暇だから『いい男居ないかなぁ』とか言ってて特定の異性を愛してるって効かないと思う」

 

「……あー、うん…確かにそうだわ……ごめん、それに関してはあんた何も間違ってないわ」

 

 顔を抑えるメーテラ。さすがに照れ隠しなのか、顔が真っ赤になっていることがグランでも理解出来ていた。

 そして、グランその間にダンボールを取り出してお便りを探し始める。

 

「それ、いつものお便り箱よね」

 

「そうそう、何かこういう質問とか来そうだなぁってのある?」

 

「……何でアタシが天才で美しいのか、とかありそうよねぇ〜」

 

「実際にあると思うけどね……スーテラ辺りから送られてきそう」

 

「……あの子、本気で送ってそうだわ」

 

 スーテラとは、メーテラの妹である。メーテラとはほぼ真逆と言ってもいいほどの性格をしているが、スーテラはメーテラに心酔していると言ってもいいレベルなので、偶にメーテラですら怯ませることがある。天然は強し。

 

「さて、それじゃあ1通目行ってみよう。『何故いつもあんな服きてるんですか』」

 

「動きやすいからに決まってるじゃない」

 

「解決!!って訳にも行かない……スカートとか履かないの?」

 

 グランの質問に対して、メーテラは髪を弄りながら答えていく。枝毛を見つけたのか、ちょっとしかめっ面になっていた。

 

「一時期は履いてたわよ?それこそスーテラやアステールみたいにね」

 

「じゃあなんで今は履いてないの?」

 

「邪魔だったのよ、空飛ぶ時に」

 

「…邪魔?」

 

 邪魔、というのがイマイチ理解できないグラン。空を飛ぶのに、どうしてスカートが邪魔になりうるのか。

 

「スカートってさぁ、下から風吹いたりするとめくれるのよねぇ。アステールみたいな服だったら、もうやばかったわ絶対」

 

「アステール…がふっ」

 

「アステールで妄想したら殺す」

 

「イェスアイマム……」

 

 魔導弓で腹を殴られながらも、グランは少し抑えながら話す程度だった。何だかんだ、妹達が好きなので不埒な妄想をしたら流石に理解してしまうようだった。

 

「……後、五月蝿い」

 

「何が?」

 

「下にいる奴らが」

 

 グランはすぐには理解できなかったが、空を飛んでいる時の話だというのを少ししてから理解した。

 そう、スカートで空を飛べば当然下にいる人達が気づいてこぞいて覗こうとするだろう。

 

「あぁなるほど……で、結局今みたいな格好になったってわけ」

 

「ちょっと肌寒いけどねぇ」

 

「ズボン…というかパンツ履く気は?」

 

「いやよ、デザインはいいの多いかもしれないけど…動き易いの選びたいし」

 

 どうやらお気に召していなかったようだ。まぁ、短パンなどを履かずにいる時点でそういった類のものを身に付ける気は無い、というのは分かりきっていた話なのだが。

 

「じゃあ2つ目…『いつから空飛べるようになってたんですか』」

 

「気づいたら」

 

「えぇ……」

 

「だってアタシ天才だし?なんか『飛べる気がする』とか思ったら飛んでたって感じ?」

 

 自分のことを棚に上げるが、事実自分一人の力で宙を浮遊することが出来るのは限られたもののみの特権である。それこそ、全空に名を轟かせている十天衆並でないと行えない芸当なのだ。

 この団にも自分の力だけで飛べる人物が何人かいるが、その誰しもが団内でも有数の実力者である。

 

「まぁ、メーテラって確かに天才だもんねぇ」

 

「まぁ、スーテラもかなりの天才よ。アタシが規格外すぎるだけで」

 

 この流れで唐突にスーテラを褒める。スーテラの事はなんだかんだ言っているが、仲がいいのはご愛嬌である。本人は口では否定しているが、態度でバレバレである。

 

「規格外の天才だよねぇ、ほんと。自由奔放だけど」

 

「アタシを押さえつけたいなら、それだけの価値をアタシに示して欲しいわ。村のしきたりとか、アタシを抑えるには魅力がまったく足りなかったけど」

 

「そう言えば、アステールのことはどう思ってるの?」

 

「え?アタシより劣るけどあの子も天才じゃない?」

 

 身内にはかなり甘い判定の姉上。今この場で褒められている2人は、恐らく手を振り首を振り否定するかもしれないが、事実スーテラもアステールも弓の腕はかなり良い方である。アステールは、まだ小さいため弓ではなくボウガンを使用しているが。

 

「なるほどねぇ……じゃあ三通目行こうか」

 

「何そのニヤケ笑い……いや、聞いたら薮蛇っぽいし何も聞かないけど…」

 

「『ソーンさんと関係はありますか?』」

 

「ソーン……ってあぁ、十天衆の…」

 

「あれ、もしかして関わったことない?」

 

 ソーン、十天衆の内の一人だがメーテラと同じく弓使いである。そして、十天衆である以上その強さは折り紙付きであり、2人が折り紙付きの弓使いであることを考えれば、かかわり合いがどこかで発生する……と考えていたのだが、そうではないらしい。

 

「関わったことないっていうか……アタシが避けてる」

 

「どうして」

 

「だってほら……何か、入りづらい雰囲気だし」

 

「……シルヴァと?」

 

「うん……というか、同じ弓使いの天才ってだけでそこまで関わることもないと思うわ」

 

 ソーンはシルヴァと仲がいいが、メーテラはどうやらその2人の間に入ることを拒んでいるらしい。シルヴァが苦手…という感じでもないため、本当に2人が放つ独特の雰囲気に入りづらくなっているのだろう。

 

「そんなもんかな」

 

「そんなもんよ」

 

 メーテラは呆れているかのように言い放つ。人との関わりを、彼女はあまり気にせずに行うのかと思いきや、そうではないようだった。

 

「なんていうか、距離感間違えてる感じの友達よねアレ」

 

「言いたいことは分かる」

 

『見た目がイチャイチャしすぎてる』という話だが、おそらく本人達はそんな気は全くない…筈。グランはあくまでも予測しか出来ないので、これ以上追求するのは難しいのだが。

 

「まぁー、良くもあんだけイチャイチャ出来るもんだわ」

 

「羨ましい?」

 

「は?」

 

「いや、別にそういった風に見える程仲良いのが羨ましいのかと」

 

「別に?スーテラとはいい感じの付き合い方出来てるし?」

 

 一切スーテラの話題は出ていないが、やはりどこか仲良く出来ていないと思っているのだろう。

 2人が仲良くしていたら、グランは嬉しいのだ。普通の意味でも裏の意味でも。

 

「まぁ、ならそういうことにしておくよ」

 

「はいはい……で?もう終わりなの?」

 

「そうだねぇ…ちょっと早いけどもうそろそろ時間だし終わりにしようか」

 

「あっそ、ならアタシ帰るわ。後片付けよろしくねぇ」

 

 そう言いながら、メーテラはそのまま部屋を出ていく。ここまで付き合ってくれたのだから、グランは文句を言う気は起きなかった。

 ……だが、ふとメーテラの背中を見ると変な欲求が生まれてしまう。ユエルやソシエの尻尾を見たらモフりたくなるように、背中丸出しの格好を見ると、ついつい指が伸びてイタズラをしてしまうのだ。

 

「えい」

 

「きゃうんっ!?」

 

「ギルティ」

 

「ぎゃふんっ」

 

 グランが指を伸ばしてメーテラの背中に触る、メーテラが聞いたことないような高音を出す、リーシャが現れて鳩尾に右ストレートを入れる、グランが悶絶する。

 まるで予め決められていたかのごとく、これら1連の動作が行われてしまった。

 

「さ、流石リーシャだ……的確な一撃を入れてくれる……」

 

「団長さん、セクハラダメ絶対」

 

「ふ…触りたくなるような背中をしていたから、ついね……」

 

「あ、アタシの魅力が凄すぎたってやつだわぁ……!」

 

 顔を真っ赤にしながら震えているメーテラ。流石に背中に触られるのには、慣れていないようだ。

 

「はい、ひとまずメーテラさんはこれを着てください」

 

「何これ」

 

「ジャージです」

 

「え、ダサっ」

 

「着ろ」

 

「…う、うん……」

 

 そして、メーテラはメーテラでどこからともなくリーシャが取り出したジャージを着せられる。緑色だったが、リーシャの圧が凄かったので何故か断ることが出来なかった。

 

「……じゃあ、もう問題ないですよ」

 

「…じゃあ、アタシ部屋に戻るわ。アンタも無事に行きなさいよ」

 

「うぃっす」

 

 その後、メーテラが部屋から出た後に謎の断末魔が聞こえてきたのだが……特に知りたいとも思わなかったので、そのままスルーして戻っていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「姉様…?その格好はどうしたのですか?」

 

「何か、着せられた……」

 

 道中、妹のスーテラと出会うメーテラ。スーテラは、いつもの露出度高めの格好をしているメーテラを見て、困惑の表情を浮かべていた。

 頭からつま先まで目線を動かして、よりその困惑の表情を浮かべていた。

 

「随分と……露出が減りましたね」

 

「……もしかして、あの秩序の人それが目的…?」

 

 今となっては聞くことが出来ないが、リーシャがこれをメーテラに着せたのはそれが目的だったのか…?とメーテラ自身がそう考えた。しかし、後日それを脱いでいつもの服装にしても、特に何も言われなかったのでメーテラはより困惑を深めるしかないのであった。




火メーテラって上着てるんですかねと思ったあの頃


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神箭の射手、お見せいたしましょうか?

遅れました


「今日はスーテラさんです」

 

「どうも、スーテラです」

 

 キリッとパリッと。姉のメーテラとは違い、スーテラは真面目に自身の自己紹介を行う。しかし、これでも姉に心酔している辺り姉妹仲は本当に良好と言えよう。

 

「スーテラって真面目だけどさ」

 

「はい」

 

「ローアイン達に聞いたけど、懇親会やったんだよね。あの3人と、スーテラとコルワとラムレッダの3人で」

 

「そうですね……姉様に女子力を鍛えてこいと言われてきましたので」

 

「女子力……」

 

 ここでグラン、ボケるか素直に話すかの2択を迫られていた。1つは女子力を何らかの『力』だというボケ、もう1つはまともなやり取りをするだけ。

 考えていた時間は1秒にも満たないが、その思考の時間がグランにボケる機会を奪わせる。

 

「よく分からなかったのですが、姉様が言う通りならば私は強くなったと思います!」

 

「おっと本格的に勘違いしてたよこの子」

 

「えっと……何か間違えていたでしょうか?」

 

「女子力って、そんな何かの力とかじゃないんだけど…」

 

「なんと…!?では、一体どのような力なのでしょうか」

 

「女子力っていうのは━━━」

 

 女子力って……何だ?グランは笑顔のままそう思考した。そもそもグランは男である。女子力というものを、ふんわりとしか理解していないのだ。ファッションセンスや、おしゃれなどの『なんか女子っぽくて可愛いもの』としか認識していないのだ。

 いや、グランですら理解していることをスーテラは理解していないので、相当な天然が入っているのだが…はっきり言って説明するならば、グランでは無く姉のメーテラやコルワなどに任せた方が確実な気がしていた。

 つまり、この場での回答はただ一つ。

 

「━━━俺に聞くより、メーテラやコルワに聞けば確実なものがわかるよ」

 

「なるほど…では後程姉様達から聞いてみます」

 

「それがいいと思うよ」

 

「コルワ殿といえば…あの人は色々な人と仲が良いのですね」

 

「まぁファッションデザイナーだし……おしゃれを気にする人だったら、多分大体の団員が話をつけてると思うよ。

 イルザでさえ、面識あるくらいだから…多分人と相談することも仕事としてあると思う」

 

「そのような事が…」

 

 水着の1件で、イルザはコルワと知り合うことが出来た。というか最近、団の中でグランに聞けばどんな有名人が団員として入団したか…と言ったことを聞けばわかると思っている団員がちらほら居る。

 実際、入団しているもの達で王族や騎士団などもいるために何も間違ってはいないのだが。

 

「さて、そろそろお便りに行きましょう。1通目『懇親会でギャップ萌えをされたってあったけどマジで何したの?』メーテラからです」

 

「姉様にはそのことを何度も聞かれました…」

 

「言ってないの?」

 

「と言うよりも、多分伝わっていないのだと思います」

 

「……どゆこと?」

 

「それが━━━」

 

 度々出てくる懇親会。『どんなシチュエーションで恋人を作りたいか』という話題になったそう。その中で、スーテラはメーテラのように男を誘う…という事を伝えたそうな。

 それを妄想した一同は、ギャップ萌えという話題になった…という物である。因みに、スーテラのシチュエーションでは『男を逆ナンして、狩りに誘う』というギャップ萌えの中に野性味を突っ込んだよく分からないものだった。

 

「逆ナンはスーテラがやると、良心が無くなる」

 

「へ?」

 

「あの村長さん、凄い顔になりそう」

 

 村長とは、メーテラやスーテラがいた村の村長ことである。そこは外界とほとんど隔絶されており、スーテラはそこで村のしきたりとして守り人として仕事をしていたのだ。

 そして、この村長はスーテラ達の父親であり…当然の事ながら真面目だと思っていた娘が男を誘って狩りに出る…などというよくわからないことを提案した暁には、恐らく頭を抱えることだろう。いや、これで頭を抱えない方がおかしい。

 

「大丈夫です!ちゃんと村の猪を狩れる実力は伴っています!」

 

 そして、スーテラはこの返しである。天然さだけでいえば、メーテラすら唖然とするほどの天然っぷりなので、恐らく彼女達の父親もスーテラの勘違いやその他諸々のことを説明するのに時間を要するかもしれない。

 

「そういうことじゃないんだけど…」

 

「へ…?」

 

 しかし、天然真面目キャラは可愛いのでグランはそれを眺めていたいと思うようになった。単なる趣味である。

 

「さて、話題はこの程度にして次のお便りの紹介にいこうか」

 

「はい!楽しみです!」

 

「2通目は〜……『スーテラちゃん、好きなタイプはいるのかにゃあ?』ラムレッダからです」

 

 ラムレッダ、水色の髪が特徴的などラフである。元シスター見習いなのだが、とある事情により酒にハマってしまったため教会を脱走…酒飲みのドラフだが、最近グランはクビを持ち出してきている時がある。

 

「好きなタイプ……団長殿のような人でしょうか」

 

「うわっ、素直に嬉しい……とは言うけど、あくまでも『俺のような』って事でしょ?俺じゃないんだよなぁ…」

 

「なるほど……これが唐変木と言うやつですか」

 

「はい?」

 

「いえ、姉様が団長殿は唐変木の人たらしと言ってましたので」

 

「メーテラに言われるのはなんか釈然としない…」

 

「それと……」

 

「ん?」

 

「同性愛者を疑ってました」

 

「事実無根の嘘だよそれ!!」

 

 事実無根とは言っても、友人関係を超えているのではないか?と言わんばかりのスキンシップを行っているのは、グランの方である。偶にルナールが鼻血を出しているので、それが基準となっている時がある。

 

「しかし、これだけ女性がいて…1人の恋人もできないというのはそう疑われてもしょうがないのでは?」

 

「言わないで欲しい」

 

「女性の気持ちに気づきにくいのも、異性に興味が無いからでは?」

 

「そんな事は無い」

 

「女性にセクハラするのは、本命の男性から自分を遠ざけるため…」

 

「待って待って…俺メンタル弱いからそれ以上スーテラに言われると死んじゃう…」

 

 グランは椅子から転げ落ちて、床に突っ伏していた。冗談めいた感じで言われるよりも、真顔で淡々と言われ続ける方がどうやらメンタルに響くようである。

 既に顔が真っ黒になっており、グランはこの世全てに絶望しているかのような表情になっていた。

 

「も、申し訳ございません…どうやら言い過ぎてしまったようです」

 

「許すけど心がぴょんぴょんしない…赤き地平の世界にまで落ちる…」

 

「えぇ…?」

 

 困惑しきっているスーテラ。当たり前である。目の前で男が意味不明なことを言いながら、自分の前で倒れているのだから。

 

「……」

 

「……あの?団長殿?何故私のことをじっと見ているのでしょうか?」

 

「……いや、もうちょっと前に移動してるあぁっ!?」

 

 グランの目の前に突き刺さる剣。随分と見覚えのあるその剣は、秩序の騎空団のものだった。

 結構な速度で飛んできて突き刺さったためか、揺らしながら独特の音を立てつつ剣は落ち着いていく。

 

「……DIEorDIE」

 

「その選択肢は死しかないぞリーシャさん」

 

 ゆっくりと起き上がって、目の前に突き刺さった剣を抜いてから部屋の外にいるリーシャに返すグラン。その間、謎の言語を発しながらリーシャはグランを見ていた。睨みつける、というより目を見開いて観察していると言った方がぴったりの表現である。

 

「あ、あの今のは……」

 

「気にするな、グランサイファーにたまに現れる秩序の精霊だ」

 

「随分と黒い殺気を放っていた精霊ですね…」

 

 スーテラは、グランに精霊の定義を聞きたくなったところだったが…しかしあれに触れるのは何かの黒さが遺伝するような、そんな感じがしたので触れることは無かった。

 

「はい、というわけで三通目に行こうか」

 

「は、はい…」

 

 既にリーシャはいなくなっているので、安心してグランは三通目に移行するのであった。

 

「『もう少し自分のハッピーをまともに考えてもいいかもしれないわよ』どう考えてもコルワだこれ」

 

「ハッピー……ですか」

 

「まぁ、要するに結婚しないのって話だよね。コルワの話ってそういうのだし」

 

「私が幸せになる……少し、思いつきづらいですね」

 

「んー……守り人の仕事しすぎてるのかな。それで頭が硬くなってるんじゃない?」

 

 アステールは、まだ小さいために恋に恋すると言った状態だが、スーテラは恋ということそのものを知らないために、メーテラに置き換えるくせが、少しばかりでているようにグランは感じ取っていた。

 

「硬くなってる、ですか…」

 

「だって、何かにつけてスーテラはメーテラの話してるんだよ?気づいてた?」

 

「……いえ、私はそんなにしているつもりは」

 

「別に悪いことって言ってるわけじゃないよ。というか、仲良いところどんどん見せつけて欲しいんだ」

 

「それはまた…仲がいいのは、もちろんいい事だと思います。私も姉様と仲良くしていたいですし」

 

「……とまぁ、話ズレちゃってるけど…」

 

 グランが、ズレた話を戻すために一旦区切る。ハッピーというのが、人によって変わってくる定義なため、コルワの定義を使って考えるがやはり思いつかないようだった。

 

「恋、というのが何度説明されても私には理解できなくて…」

 

「まぁ、気持ち的な問題だしね」

 

 恋をたとえ今スーテラがしていたとしても、恐らく気づいていないだろう。姉であるメーテラや、妹分のアステールなどを優先する事が多い…というか、スーテラが他人を尊重しすぎる性格なのも相まって、自分のことは特におざなりになってしまうのだ。

 

「申し訳ありませんが、私にはその質問は答えられないということに…」

 

「ま、しょうがないよ」

 

 結局、コルワの質問には答えられなかった。しかし、別に正確な回答を求めるようなものでもないので、グランは気にしていなかった。

 

「さて、では今回はこのくらいにさせていただきますご視聴ありがとうございました」

 

「……あ、団長殿ちょっといいですか」

 

「ん、何?」

 

 カメラの電源を落とそうとした寸前、スーテラがグランを静止させる。今ここで止めるということは、何か言うつもりなのかもしれないが……グランはスーテラが何を言うのか全く理解できなかった。

 

「━━━私のこと、イイ男の人は誘ってねぇ」

 

「ぐはっ!!」

 

 突然のメーテラのモノマネ。ダメージがでかかったのか、グランは血を吐いてその場に倒れてしまっていた。

 

「だ、団長殿!?」

 

「だ、ダメージカットが通じなかった…まさか、無属━━━」

 

「団長殿!?今の遺言はなんですか!?」

 

 いい顔をしながら倒れるグラン。困惑し、叫ぶスーテラだったがすぐさまメタノイアをさせるためにグランを担いで、運んでいくのであった。

 運ぶ形式が米俵を担ぐタイプだったので、役得とばかりにグランはスーテラの背中に顔を押し付けていたが、当然のことながら復活した瞬間にリーシャに秩序されたのであった。




スーテラがメーテラみたいな男の漁り方してたら、故郷のオヤジさんが血反吐吐きそうなんて思ったり


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頴悟の射手、任せて欲しいのです?

「はい、今回のゲストはアステールさんです」

 

「が、頑張るのです!」

 

「アステールは、メーテラとスーテラの妹分なのだけれど、使う武器は2人とは違ってボーガンを使用してます」

 

「わたしにはまだ弓を引けるほど力がないのです…」

 

 自前のボーガンを取り出しながら、少しだけアステールは俯く。その頭を撫でて、グランは無言で彼女を慰める。そして、ボーガンを手に取ってカメラに写しながら眺めていく。

 

「にしても、ボーガンなんて考えたよねぇ……」

 

「は、はい!ちゃんと認めてもらえてよかったのです」

 

「案外、守り人の条件ってそこまできつくないのかもしれない…やることはきついけど」

 

「そうなのです…」

 

 星晶獣マルドゥーク。メーテラ、スーテラ、アステールの3人の故郷にいる星晶獣である。守り人であるスーテラとアステールは、その星晶獣によって凶暴化した魔物の退治などを行っている。

 しかし、つい最近だが━━━

 

「倒したんだよね、マルドゥーク」

 

「はい、一時的に故郷に戻っている時にメーテラ姉様と一緒に」

 

 実は、一時的にスーテラ達はこの船から離れていたことがあった。その時に、偶然にもメーテラまでもがその島に戻っていて色々あってマルドゥークを完全に倒したという話になったのだ。

 

「おかげでメーテラ姉様は大忙しです」

 

「やることなくなったようなもんだからねぇ」

 

「島の人達も、外に出てこれて嬉しそうだったのです…ただ」

 

「ただ?」

 

「怪しい男に引っかかるなと逐一言われたのです、私とスーテラ姉様まで」

 

 スーテラとアステールの思考は、どちらかと言えば故郷の村の人たちよりである。つまり、今まででたことの無い外の世界にとんでもなく期待をしている…という事である。

 

「スーテラはともかく…アステールはまだ1人で外に出ちゃだめだよ。変な人に連れていかれるから」

 

「む…私はそこまで不用心じゃ無いのです!!」

 

「飴ちゃんあげる」

 

「わーい、ありがとうなのです……はっ!!?」

 

 グランが唐突に取り出した美味しそうな飴を、アステールはなんの疑いも無く手に取って口に運んでいた。少しの間美味しそうに舐めていたが、すぐに冷静になって顔を赤くしていた。

 

「……」

 

「……ちょ、ちょっとだけ不用心だったのかもしれないのです」

 

「ちょっと?」

 

「う…かなり、なのです……」

 

「まぁいじるのはこの程度にしておこう。そろそろお姉さんの魔導弓から仕返しの攻撃が飛んできそうだ」

 

 もう1つ飴を渡しながら、グランはアステールの頭を撫でる。口の中でコロコロと飴を転がらせて、頬を膨らませたり凹ませたりするその姿は紛うことなき子供っぽさが現れていた。

 

「さて、アステールに一つ質問をします」

 

「質問、なのです?」

 

「うん。まあ難しいものじゃないし、ただ聞きたいだけだからリラックスお願いします」

 

「は、はいなのです」

 

「じゃあ聞きます……グランサイファーにいるの、楽しい?」

 

「っ…!はいなのです!!」

 

 グランが微笑みながらその質問をすると、アステールもまた嬉しそうに頬を緩ませながら肯定する。守り人という使命があると言っても、未だ12歳の子供なのだ。子供は子供らしく遊んでいるべきなのだろう。

 

「さて、そんなグランサイファーを楽しんでいるアステールにもまた、お便りが届いています」

 

「う〜…ドキドキするのです」

 

「1通目『よく遊ぶ子はどなたですか?』スーテラからです」

 

「クムユちゃんや、サラちゃんとよく遊んでもらっているのです」

 

「クムユとサラ」

 

 サラは9歳なのだが、かなり大人びている少女である。手を出そうものなら、保護者一同と彼女の守護をしているグラフォスにぶっころぽんぽんマンだろう。

 

「編み物や…どこかの島に降りた時は、船の近くでかけっこをしている時もあるのです」

 

「クムユがかけっこ」

 

 クムユはドラフの少女である。走った時の光景が、まるで走馬灯のようにグランの頭の中に広がっていた。それを、一切の鼻の下を伸ばすことはせずに真顔で考えていた。

 

「実に楽しそうだね」

 

「そうなのです!」

 

「ぬうぅ……眩しい…これが若さゆえの純真さか…!」

 

「…?団長さんとアステールは、そんなに歳は変わらないと思うのです」

 

「そんなアホな」

 

「アステール、何と12歳なのです」

 

「出会ったのいつだっけ?」

 

 年齢の話題を、簡単にきりだせる。他の女性にこのようなことをしようものなら、細切れの後からのミンチだろう。

 そして、グランはついつい聞いてはいけないことを聞いてしまっているが、アステールはそれを華麗にスルー。それは、世界的に答えられない事である。

 

「次に、行こうか」

 

「はいなのです」

 

「2通目『服装は風でめくれないんですか?』これか…俺も気になってたんだよね、実際のところどうなの?」

 

 アステールが着ている服はワンピースのような服装である。つまり、上と下が一緒くたになっているために風が吹いてしまってスカートがめくれてしまった場合、一気に上までめくれあがる可能性が高いという事である。

 

「抑えておけばどうとでもなるのです」

 

「まぁそりゃそうか……1箇所抑えておけば、余程の強い風じゃ無い限り上まで持ち上がらないはずだもんな」

 

「大体そういう感じなのです…ただ、ポートブリーズは風が強い日が結構あるのです」

 

「確かに……」

 

 ポートブリーズ諸島、ティアマトが守護している島でありいつも穏やかな風が吹いているのだが、スカートが一気にまくれ上がるほどの風ならば割と定期的にめくれることが多いこともある。

 そういうグランは、いつも皆にスカートの下に短パンを履かせてから移動している。

 

「まぁそこら辺は俺がいつも注意喚起してるし…めくれても下着は見えないと思うから、安心して━━━」

 

「……」

 

 何故か顔を赤くして俯いているアステール。喋っている途中だったのだが、グランはつい言葉が紡がれないまま止まってしまう。まさか、1度下に短パンを履かないで出かけたのかアステール、と。

 

「……アステール」

 

「……その、ラスティナさんの話なのです」

 

「え、この流れでラスティナ?」

 

 ラスティナはドラフの女性である。特徴として、大きな爆発を起こすことも出来る武器を持っているが、とんでもないレベルでのドジをほぼ毎日起こしている。その度に、殺せと言われるので最近そのセリフを言う度にグランはどうしてやろうか考えている。

 

「その、風でスカートが捲れあがったのです」

 

「彼女が履いてなかったの?」

 

「いえ、履いてたのです」

 

「…?」

 

 履いていたのなら、ラスティナであっても問題は無いはずである。そこから脱げたとかでもない限り。

 

「けれど、風に驚いてころんじゃって」

 

「あっはっは、ラスティナらしいなぁ」

 

「そのまま何やかんやで鎧が全損、服もほとんど破れてあられもない格好に……」

 

 真っ赤にして再び俯くアステール。しかし、グランは男としての反応よりもまず、過程が知りたかった。風でスカートが捲れあがって、どうしてそのような事になってしまうのか。あいつはマジシャンかなにかなのか。そう思わずにはいられなかった。

 

「まぁこれ以上聞くのは、ラスティナの名誉に関わるので辞めておこう。というわけで三通目いってみよう」

 

「は、はいなのです」

 

「『グランサイファーで探検をすることもあるそうですが、最近あった面白いことってありますか?』……って、探検なんてしてたんだ?」

 

「危険なところなどには寄ってないのです…けど、毎日新発見があるのです」

 

「へぇ……例えば?」

 

「最近隠し通路を見つけたのです」

 

「マジで!?」

 

 隠し通路、男としてはロマンの塊だろう。しかし、まさかこのどれだけ広いかも分からないグランサイファーに、隠し通路があるのはグランも驚きながらも興味を惹かれていた。

 

「ど、どんなやつ!?」

 

「カタリナさんの部屋と、団長さんの部屋に繋がってる通路だったのです」

 

「…ん?」

 

 ここでグラン、少しだけ嫌な予感がしていた。別に、グランの部屋とカタリナの部屋はそこまで近い訳でもない。かつてこれにグラン達以外の人が乗っていたとして、そうやって部屋を結ぶ利点もない。

 となると━━━

 

「その隠し通路、ヴィーラ━━━」

 

 グランの横に何かが通り過ぎる。通り過ぎたそれは、後ろの壁に刺さって左右にぶれながら独特の音を奏でていた。無論、それは剣である。よく見て、グランも見なれている……ヴィーラの剣である。

 

「お怒りに触れてしまったようだ。後でお鎮めしなければ」

 

「…?」

 

 頬に掠って、血が出ると言ったことは無かったのでそこは安心である。かすり傷というのは、血が出ると跡が残りやすいのだ。

 

「とりあえず、今日はこんなところかな…皆さんご視聴ありがとうございました。またこの番組でお会いしましょう、さようなら」

 

「なのですー」

 

 カメラの電源を切って、グランはアステールと共に部屋から出る。アステールをリードするために、彼女の肩を抱いて部屋を出て歩いていくのだが……まぁ、はっきり言ってその状況の見た目が良くなかった。

 

「団長、いつものだ」

 

「はいはい、今日は一体なんの罪だ」

 

「幼女暴行」

 

「ふっ……ていうか今回はてっきりヴィーラが来ると思ってたぜ……」

 

「彼女は今ちょっとメカってる」

 

「メカってる…?」

 

 謎の会話をしながら、グランはアステールを置いてモニカに連行されていく。アステールは困惑も何もしていなかった。彼女は純粋なのだ、手錠も何もされずに連れていかれたグランは、きっと秩序の騎空団のお手伝いをしに行ったのだと……なんかそれっぽいことを考えていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、今回オチ雑じゃない?」

 

「オチ?なんの事だかわからんが団内始末書をまとめてきたから読んでくれ」

 

「ほう、脚に重石を乗せられている拷問状態でか?」

 

「そのままパジャマに着替えて寝ようとしてる君が言えることじゃないな」

 

「そんな馬鹿な……」

 

 グランはパジャマに着替えていた。脚に重石を乗せられたままだったが、しかし動くことに一切の支障は無いことの証明だった。

 グランは始末書報告を読みながらモニカと談笑していく。

 

「にしても、最近団の女性達からのアプローチがキッついぜ」

 

「それはもしかして私も含まれているのか」

 

「いやぁ、まさか拷問監禁されてまで俺を独占したいなんて……モテる男は辛いなぁ」

 

「拷問されているという自覚はあるんだな……」

 

「あ、ベアトリクスまた壁に穴開けてやがる……あいつだけ今度お菓子屋でもやらせて稼がせてやろうか」

 

「それは彼女からしてみれば本望なのではないか?」

 

 他愛のない談笑をするには、絵面があまりにもシュールすぎるのだが、モニカも諦めたのか一切のツッコミをすることは無いまま、グランと談笑を続けていた。

 そして、談笑が終わって団長としてのグランの仕事が終われば、グランはそのまま眠りについた。眠れるのかと突っ込んだが、グランには一切関係がなく……少なくとも開放されるまではその状態が続いてたという。




アステールって打つと、何故かアステールプラザが出てきます。


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守り人ブラスター

「とんでもなく遅れたエイプリルフールイベントだゴラァ!!」

 

突如襲いかかる筋肉質なビィ。身長は成人したドラフの男性よりも高く、そしてより筋肉質になっていた。羽は可愛い時の面影はなく、とても長くなっていた。

 

「うるせぇ!死ね!!!!!!!!」

 

そして突如現れる金髪の少女。ピンクのスカートが特徴的な彼女は、そんなマッスルビィを一撃で粉砕していた。

 

「今日からこの話は『ジータの百合百合パラダイス☆』になるんだよ!!R-18に染めてやるから覚悟しておけ!!!

まずはベアトリクスが相手だ!!立派な犬に仕立ててやんよォ!!」

 

そして唐突に叫び出す。しかし、彼女は気づいていない。自分の騎空団に所属しているのがオッサンばかりだということに。

そして、まだもう1つ……弊害があるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!?なんだ、夢か…」

 

今のがグランの夢であるということである。因みに、ジータが実際にいるかどうかは秘密である。ここでは特に関係もないので、割愛させて頂く。

 

「団長殿、夢を見ていたのですか?」

 

「うん……とても、とても変な夢だったような…」

 

「女の子口説くのに変な夢はないでしょう」

 

「じゃあここでもしメーテラの夢を見てたって言ったら?」

 

「……」

 

現在、とある島の宿屋でメーテラ、スーテラ、アステールの3人と共にグランは駄弁っていた。別に一緒の部屋に泊まっている訳では無いが、朝迎えに行くとグランが未だに寝ていたのでこうして様子を見ていたというわけである。

 

「あれ?メーテラ姉様、顔が赤いのです」

 

「う、うっさい!!とりあえず早く依頼片付けに行くよ!!」

 

今日の依頼は魔物退治…簡単なものである。だとすれば、メーテラが着いてきているのは珍しい話だが、どうやらここの村にある化粧品が目当てだったようだ。

 

「そういや、化粧品は買ったの?」

 

「依頼終わらせてからの方がいいでしょ、そーいうのは」

 

「まぁそうだけど…まぁ今回の依頼はすぐ終わるもんだし、先に買っといても……」

 

「壊れたりしたら嫌じゃん」

 

「確かに」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ」

 

「はい」

 

「魔物退治って言ったわよね」

 

「言いました」

 

「目の前にいるの明らかに星晶獣なんだけど?」

 

目の前にいるのは、星晶獣である。砕かれるために生まれてきた…と言われてもおかしくないような、そんな星晶獣達がいたのだ。悲しき存在である。

 

「なんでいるのかなぁ…って僕も思ってました、はい」

 

「ルリアどこ行ったの」

 

「今日は船でミックスパイを食べてます」

 

「……あれ倒すの?一体2体じゃないのよ?」

 

「……頑張ります」

 

「改めて考えたら、星晶獣倒すのに『頑張ります』って言えるのおかしいわ」

 

ご最もな意見だが、少なくともこの場には星晶獣を単独で倒せるのが二人はいるのと、そのうちの1人がメーテラ自身なために全く説得力がないのが悲しい現実である。

 

「えーっと…6体くらい?」

 

「大体そのくらい、メーテラ達が苦手そうな奴等もいるからそっちは俺がやるよ」

 

「あっそ……で、今何持ってるのそれ」

 

「刀と鰹」

 

「ジョブは剣豪なのね……」

 

二人で話し合っているが、残り2人はついていけてないのか会話に混ざれなくなっていた。しかし、やらねばならない時もある……2人は自分の得物を構えて準備だけはしていた。

 

「姉様、団長殿」

 

「ん、スーテラ達も準備できたみたい」

 

「じゃあメーテラ達はあっちの方、俺は向こうの方やるよ。数多いし」

 

「じゃあ任せるわ。もしアタシらより遅かったらペナルティね」

 

「俺の方が早かったら?」

 

「……きょ、今日1日なんでも聞いて━━」

 

「っしゃオラいくぞぉ!!」

 

「えっ早っ!?」

 

メーテラが言い切るよりも早く、グランは星晶獣の群れに使って突っ込んで行った。そして、アステールは思っていた。

ここまで星晶獣が溜まっている島は、なんなのだろうか…と。

 

「まずは2体ィ!!」

 

「あんたやる気出しすぎじゃない!?」

 

そして、わかりやすい餌をぶら下げられた為かとんでもなくやる気を出しているグランを見てから、自分の胸に手を当てていた。

 

「アステール?どうしたのですか?」

 

「スーテラ姉様、やはり男性は胸が大きい方が好みなのでしょうか」

 

「…団長殿の事ですか?」

 

「はいなのです……」

 

「大丈夫ですよ、アステール」

 

「ほぇ?」

 

「団長殿は、小さな子供にも興味のある大変心の広いお方ですから」

 

明らかに言い方に語弊があるような感じだが、しかしアステールは何故かその言葉で嬉しそうにしてしまっていた。

 

「ねぇ!今何か凄く誤解されてる気がするんだけど俺!!!」

 

「気の所為でしょ!!ほら早く倒す!!」

 

「あ、はい!!」

 

叫びながらも、グランは星晶獣をひたすらに片っ端から倒していく。暴れるのでしょうがないしょうがない、と思いながら淡々と倒していく。その間、頭の半分ほど使って全く別の事を考えているのだが、そうやって別のことを考える度に吹き飛ばされていた。

 

「ぐへぇ!!」

 

「あんたもう何回吹き飛ばされてんのよ!!」

 

「大丈夫だ!破局食らってたらこんなの屁でもねぇ!!」

 

「ほんとサルナーンとかに感謝しなさいよ!?」

 

2人して会話をしながら、サラッと倒され続けていく星晶獣達。気づけば、その数もかなり減っていて残り一体となっていた。

 

「さっさと終わらせるわよ!」

 

「しかし姉様!この星晶獣大きいです!」

 

「いいから!やらないといけないのよ!」

 

「だったら、4人で合体技なのです!!」

 

「は?合体技?」

 

「はいなのです!スィール君がロマンだと言っていたのです!!」

 

グランは思った。確かに合体技とロボットは男のロマンであると。ならば、年頃の子供であるアステールとスィールがそんな感じの話をしていてもおかしくはなさそうである。

 

「てか、合体技って何すんのよ」

 

「まず私のボーガンを巨大化させるのです!」

 

「そして、私がそのボーガンの先を支えます。姉様はボーガンの上に乗り、団長殿は抱きついて下さい」

 

「えぇ……」

 

ドン引くメーテラだが、スーテラに言われた通りに行動する。何故かグランはメーテラの腰に抱きついていたが、メーテラは敢えてスルーしていた。

 

「行くのです!」

 

「守り人ブラスター、シュート!!」

 

「技名ダサっ!!」

 

グランとメーテラは打ち出される。そして、敵に届く直前にメーテラはグランを弓にかけて、流星の如く一直線にグランを打ち出す。

過剰に増した速度はグランの体に突風を与え、貫通力を与え、破壊力をもたらした。

結果星晶獣は撃ち抜かれて、依頼は無事完了したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「夢、だと……」

 

ベッドで起きるグラン。今まで現実だと思っていたら、途中からおかしくなって夢だとあとから気づくパターンである。見てる時は、一切夢だと気づいていないのがよくある話だが。

 

「随分と楽しそうな夢見てたんだなぁ」

 

「ビィ…俺寝言でなんか言ってた?」

 

「いや別に……それよりもルリアが呼んでたぜ」

 

「ルリアが…?」

 

自分の場所はある程度分かると思うのだが、わざわざ呼び出すあたり二人きりで話がしたいとか、そんな所だろうか?グランはひとまず、ルリアの気配を辿りながらグランサイファーの中でも人気のない所を訪れることとなっていた。

 

「ルリア?どうしたんだ?」

 

「それが……私の中の星晶獣達が、ボロボロになってるんです」

 

「え、全員?」

 

「いいえ、1部だけです」

 

グランはふと、やけに鮮明に覚えている夢の光景を思い出していた。自分の中の夢とはいえ、何体か星晶獣を倒しているのだ。

少しだけ、グランは冷や汗をかいていた。

 

「グラン?どうしたんですか?」

 

「ん?いや……ちょっと気になることと言うか……」

 

「気になること…?」

 

グランは考えた。言うべきか言わないべきか。正直に言うべきだと、グランは思っている。しかし、ルリアが今まで力を吸収した星晶獣だったのならば、多少の見覚えはあってもおかしくないはずなのだ。

グランには、夢の中で見た星晶獣達にその見覚えを感じなかったのだ。もしかしたら、全くの別件かもしれないと思い始めていた。それでも、中々冷や汗は止まらないが。

 

「どうしたんですか?」

 

「ん?いや……今日夢で星晶獣と戦う夢を見たなぁって…ただ、見覚えはないから別なのかなって……」

 

「うーん……多分、私とグランが繋がっているせいで少しだけそちらに流れたんだと思います。それが、グランの夢の中で現れてしまった」

 

「夢、ゆめか……」

 

いくらなんでもできすぎている気がしなくもないが、グランは気にせずに夢関連のことに関してのエキスパートを呼ぶことにした。彼女達も星晶獣だが、まだどうにかしてくれるだろうと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「流石に私もそんなアホな夢を見る団長だとは思ってなかったわ」

 

「そんなきついこと言わないでくれよ……」

 

グランは、メーテラにドン引きされていた。当たり前である。夢の内容をそのまま話した結果、何故か自分達が変な必殺技を使っていたと言われれば誰だってこうなってしまうのだ。

 

「いやぁ、守り人ブラスターはないわ」

 

「え、そっち?」

 

「どっちもに決まってんでしょ」

 

「うぃっす」

 

どっちもの意味が通じているからこそ、グランはさらに小さくなっていた。しょぼんと肩をすぼませている姿を見て、これを団長だと思うものは誰一人としていないだろう。

 

「こんなのスーテラとかアステールに話せないわ、幻滅されるわよ幻滅」

 

「あの二人に幻滅されたら待っているのは死では…?」

 

冷静に意味不明なことをグランは言っているが、メーテラは華麗に無視をした。

その頬は朱に染まっていたが、グランは気づくことは無い。

 

「……夢に出るって言うのは、それなりに脈アリって事じゃん…」

 

「メーテラさんメーテラさん」

 

「ん、何よ」

 

「今日の依頼一緒に行くことは変わらないでしょうか」

 

「守り人ブラスターとか言い出さなければなんでもいいわ」

 

「うぃっす」

 

そう、この2人…アステールとスーテラの2人を加えて依頼に行くのだ。まるで、グランが見た夢と同じように。

 

「メーテラ姉様ー!」

 

「お、きたきた……ってやけに上機嫌じゃん、アステール…どしたの?」

 

「聞いてください姉様!今日はスィール君に面白い技をおしえてもらったのです!!」

 

ふと、グランは嫌な予感がしていた。というか、頭の中ではリーチがかかっていた。あと一つ揃えばトリプルビンゴをしてしまうと言わんばかりに、頭の中で警鐘が鳴り響いていた。

 

「……へ、へー…」

 

メーテラも同じことを思ったのか、その額には汗が滲んでいた。彼女もまた、嫌な予感に縛られているのだ。

 

「私達も、スィール君達と同じように合体必殺技を使うべきだと思うのです!」

 

「アステール、1回落ち着こう?」

 

「もう技の名前も決めてるのです!」

 

「アステール、お願いちょっと━━━」

 

「技の名前は━━━」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!?」

 

一体何度目だろう。夢と思って起きればまた夢…悪夢の連鎖は続くのだ。一体どこから夢でどこからが夢ではないのか。

特にシリアスは求められていないので、この謎は永久に解決することは無いだろう。

そう、オチはないのだ。




主に使ってるスマホがイカれたので遅れて投稿です。
特に夢オチに理由はないですし、夢関係のあの二人もこの話では出しません。


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マナリアプリンセス、魔力漲ってる?

「今日はアンさんです」

 

「はーい!というか、団長さん酷いよ」

 

「え、何が?」

 

「グレアを先にした事だよ!!」

 

「やはり文句を言われたか……いや、その時アンとオーウェンはしばらく戻ってこない状況だったし……」

 

「まぁ、そうだけどさぁ……」

 

 アン、マナリア学園に通う女生徒でありグレアとはとても仲のいい関係を築き上げている。オーウェンはマナリア学園に通う際に、付き添うことになった騎士であり、彼は1歩引いた位置でアン達を見守っている。

 

「折角グレアの可愛い姿が見れると思ったのに!」

 

「まぁまぁ、そこら辺の埋め合わせをしてあげるからさ」

 

「ほんとに!?じゃあ今度グレアと合わせて3人で出かけよ!」

 

「別にいいよ」

 

 オーウェンは、誘うつもりなのかはたまた勝手についてくるからと初めから来るだろという予想だけで言ったのか、グランは強く聞くことが出来なかった。

 

「とりあえず、例のヤツやってよ例のヤツ!!」

 

「例のやつ……というのは、やはりお便りの事かな」

 

「そう!私が答えれることなら、なんだって答えてもいいという凄いもの!」

 

「そんなに凄いもの?」

 

「自分の言葉で語れるんだからね、そりゃあ凄いよ?あ、別に実家で私に発言権が無いとかそういうのじゃないから」

 

 直ぐに訂正を入れてくるアン。しかし、オーウェンという気のいい紳士が送られてきているのだから、アンの実家がそういったものでないことは、十分に理解している。

 

「じゃあ……1通目『アンさんの制服、グレアさんの制服、オーウェンさんの制服、ツバサさんの制服、なぜ4つとも細部が違うのですか?』」

 

「あれ?違ったっけ?」

 

「結構違う……まぁ、男女で違うのはしょうがないとして、同じ性別でもみんな結構違ってたりするんだよね」

 

 そう、マナリア学園には制服がないのだろうかと言わんばかりに、この団に所属している生徒達は制服が変わっている。細部が違うと言われているが、パッと見てその違いが一目瞭然の部類なので最早細部が違うどころの話ではないだろう。

 

「まぁそもそも私達が代表として言われてるけど、そもそも立ち位置結構浮いてるよね」

 

「ん?そう言われてみると……」

 

 アンは、お姫様である。そしてオーウェンはそれに仕える騎士。当然一般生徒かと聞かれると首を横に振るまでは行かないにせよ、首を傾げる者もいるだろう。

 そして、グレアは竜と人とのハーフである。当然その立ち位置も違うし、何より制服の形が彼女の背中の羽や尻尾に合わせているため、違うのは当たり前である。

 そして、ツバサは不良である。校則に背いているのに、制服のルールは守っている……という訳でもないのだ。

 

「なるほど、確かに全員立ち位置が特殊だ」

 

「でしょ?そもそもマナリア学園って制服の縛りそんなに強いわけじゃないと思うよ」

 

「まぁ、確かに」

 

 ツバサはよく先生などに怒られているらしいが、その理由もケッタギアやテストの点数、出席日数などが理由であり制服や髪型に関しては特に言われていることも無いようだ。

 

「さて、こんなところかな?」

 

「結構真面目に答えてくれたし、俺も納得したしで…」

 

「ふふん、これでも話は上手くなるように努力してるんだよ」

 

「目標は?」

 

「喋りと言ったらこの人!っていうレベル」

 

「志が高すぎる」

 

 それの範囲が、ファータ・グランデなのかそれとも全空に知れ渡らせるつもりなのかは、グランは敢えて聞くのをやめておいた。フンスッと胸を張っているアンを見ているだけで心が幸せになるからだ。

 

「さて、じゃあ2通目に行くか」

 

「はーい」

 

「『アウギュステで授業があったらしいですが、水着は現地買いですか?』」

 

「ううん、マナリア学園の近くにあるんだよ実は」

 

「団長さんにも手伝って貰ったもんねぇ……というか、ごめん1ついいかな?」

 

「はいなんでしょう?」

 

「マナリア学園じゃなくて、マナリア魔法学院だから」

 

「はい、というわけで皆さん間違えて学校の名前を覚えないようにしましょう」

 

 マナリア学園ではなく、マナリア魔法学院。それが正式名称である。因みに、グランを含めて『別に意味伝わるしよくね?』って思ったのがかなりいたりする。

 アンも、実はマナリア学園の方がわかりやすいから、そっちの方が好みだと言うことを偶に思っている。

 

「で、本題に戻るんだけど……」

 

「水着の話だね」

 

「珍しいよね、海もないのに水着の販売なんて」

 

「まぁね……でも需要があるから売れるんだよ」

 

「なるほど、確かに」

 

 海での授業は、マナリア学園…もといマナリア魔法学院では恒例行事である。つまり、その度に水着の販売が行われるということになるので、その分需要が大きくなる……という事である。

 他の島などでは、こうはいかない。

 

「ザンクティンゼルとかなら兎も角、ファータ・グランデの主な島々は水着の販売なんてしないからねぇ」

 

「水浴びする時とかどうしてるの?」

 

「ザンクティンゼルは……」

 

 グラン、ここでふと思考に入る。よく考えたら、自分の島は田舎である。他の島とほぼ交流がないと言わんばかりに、各島を行き来する定期便の騎空艇が来ない程である。

 ルリアやカタリナが来なかったら、今もあの島で修行を行っていたのかもしれない。

 とまぁ、そんな話は置いておき……それほどまでの田舎の島での常識、下手をすれば引かれるのではないだろうか?

 

「アンの実家のところはなかったの?」

 

 そう思い至ったグランは即座にアンに話を振る。引かれるのは別にグランとしてはまったくもって問題ないのだが、番組が放送事故を起こすのは問題なので回避出来るところは回避していかねばならない。

 

「え、私?私の実家は特にそういう事は無かったなぁ……だから、あんまり海って言うのと関わる機会がなかったんだよね」

 

 あまり焦ることなく、アンは自分のことを語っていく。その頭からは既にザンクティンゼルのことは抜けきっているようだった。

 

「で、水浴びする時とかどうしてるの?」

 

 訂正、忘れているなどといったことは一切起こっておらず、普通に聞き返してきていた。

 グランは放送事故を起こさないようにしなければならないので、ここで頭を高速でフル回転させなければならないのだ。

 

「ザンクティンゼルは特にそんな感じのはなかったかな。足は水に付けてる程度でさ」

 

「ヘー…他の島のことは分かる?」

 

 グランは安堵した。事実は語っているが、語っていないこともあるだけなので嘘つきと言われても嘘は言っていないので、これでなんら問題ないと、グランは判断した。

 

「さぁ……少なくとも、水浴び程度ならどこの島でもあるんじゃないかな?」

 

「ポート・ブリーズの辺りは無さそうな気がするけどね!」

 

「あー、確かに。あの島、熱くもなく寒くもなくで適度に涼しい風が吹いてるから夏でもそこまで汗で不快なことにはならないんだよね」

 

 風の島、ティアマトが守護する島だが、ティアマトの加護なのかポート・ブリーズ諸島は結構涼しいことになっている。ちなみに、ルリアの中にいるティアマトと、団員としてこの船に乗船しているティアマトとはまた別なので気をつけよう。

 

「バルツは…」

 

「あそこはそもそも水分が空気中に少ないんじゃないかな…ジメッとした暑さじゃなくて、カラッとした乾いた暑さというか」

 

「なるほど…」

 

「アルビオンはわかんないけど…ルーマシー群島は多分木々が多いから日陰が多くて涼しくなってる気がする」

 

 と、自分の推理をとりあえずファータ・グランデの島々で説明していくグラン。本当はもっと色々な島のことを語っているのだが、今回はここまでとして割愛させて頂くことにした。

 

「さて、3つ目と行こう……『グレアさんとよく仲がいいですが、他に仲のいい人はいますか?』」

 

「これって学院の事?それともこの船でのこと?」

 

「船のことでお願い」

 

「じゃあツバサ君!」

 

「え、結構意外……」

 

 別段、交わらない訳では無いと思うが、ツバサの方から積極的に向かうことは基本ないだろう。つまりアンが積極的にツバサに話しかけていってるという事になる。

 物怖じしないその性格は、グランも見習わなければいけないと心の中でそう決めていた。

 

「そう?でも、彼結構面白い話聞かせてくれるんだよ!」

 

「例えば?」

 

「ケッタギアの話!私あれ乗ってみたい!」

 

「ケッタギアにのるお姫様……」

 

 正直、パワーワード感が強すぎるが、あまり突っ込まない方がいいのだろうと、グランは思った。光景もシュールなので突っ込みたくなったが、所謂ツッコミに対してボケが過剰供給されている状態なので、どこから突っ込んだらいいのか分からないのだ。

 

「オーウェンが止めそうだけどね」

 

「確かに!でもオーウェンも乗ればきっとわかるよ!風になるって多分いいものだし!」

 

 完全に魅了されてしまっているようだった。それだけ、新鮮なことは彼女の好奇心をそそるのだろう。

 微笑ましいとも言える。

 

「……っと、悪いけど今日はもう時間だね」

 

「うーん、短かったなぁ」

 

「まぁまぁ、個人的な話なら後で俺の部屋にぃっ……」

 

 純粋にただ普通に落ちた。今のグランの様子を言葉にするならそれに尽きるだろう。最近回りくどい方法が多かった様にも思えるので、この程度が案外問題なかったりするのだ。

 

「……え、あっ…え!!?!?!??!?!」

 

 アンも反応がつい遅れてしまい、一瞬何が起こったのか理解出来ていなかった。グランが落ちたと認識した時にようやく反応ができるようになっていた。

 

「……びっくりしたぁ…」

 

 アンが確認した時、グランはすでに空を飛べるもの達によって拾われているので、その時点で既に問題はなくなっていた。落下した本人であるグランも、あまりにも綺麗に落ちたために自分が落ちたことを認識していなかったほどなのだから。

 

「…とりあえず、今から団長さんの部屋に行こっと」

 

 恐らくグランも部屋に戻るだろうと予想したアンは、先にグランの部屋で待っておくことにした。誘われているのだから、行っても問題ないだろうという考えである。

 まぁ、考えも何もグランが今さっき誘っていてなおかつ『あとで』と言っているのだから、ほとんど何も問題がないように感じるのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ツバサ君、どうするっすか?」

 

「っべぇよ…マジマブだべ……」

 

「そうだなぁ……とりあえず、姫様ん為にケッタギアそれっぽいの作ってやろうぜ」

 

「「うぃーっす」」

 

 そして、グランサイファーの別の一角ではアンの為に不良達がケッタギアを新しく作ろうとしているのは、また別の話である。

 

「あ、グレアちゃんのはどうするっすか?」

 

「……」

 

「ツバサ君?」

 

「ヘルメット入んねぇから駄目だ」

 

 そして、さりげなくグレアが話題に上がっているが、不良らしからぬルール遵守による乗り物乗車拒否も、きちんと行っていた。

 しかし、不良とは名ばかりで彼らが元々いいところの学校の生徒でそれなりのルールや規範はあるということを……忘れてはならない。

 




制服の基準どうなってんですかねあの学校


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マナリアナイト、今まで以上にお役に立てるでしょうか?

「今日はオーウェンさんです」

 

「オーウェンです、趣味は鍛錬を行う事などです」

 

「いやぁ、分かっていたけどオーウェンは真面目だね」

 

「そ、そうでございましょうか?」

 

 グランに言われて、戸惑いながらも背中をきっちりと正すオーウェン。そういう所が真面目なんだぞ、と言いたくなるような真面目さである。

 

「趣味が鍛錬って言うのは、俺と一緒だね」

 

「しかし、団長殿の腕前は相当な鍛錬の成果です。私も、それほどの量を出来るようにならねば…と思っています」

 

「うん、マジで真面目だよね」

 

「あまり、そう言われても……私としましては、普段と変わらぬ態度なので」

 

 ローアイン達ほど、とまでは言わないがもう少し砕けていても問題は無いだろうと、グランは苦笑いを浮かべていた。実際問題、それで問題が起きていないのだから、強く言うのは間違いなのだが。

 

「団長殿はどういった鍛錬を行っているのですか?」

 

「と言われても簡単なことばかりだけどなぁ……あぁでも、やっぱり強い人と戦い合うって言うのは強くなれると思う」

 

 団内にいる、グランよりも強い者達のことを思い出しながら、グランはそう語る。それを参考にするつもりなのか、オーウェンはきちんとメモを取っていた。

 

「普段どういった人達と鍛錬を行っておられるのですか?」

 

「基本団内全員だからなぁ……まぁあくまで戦えるメンバーに限定するけどさ……例えば十天衆とか?」

 

「全空最強と名高い七曜の騎士と肩を並べる十天衆……確かに、この団に所属していることは知っていますが、団長殿と特訓をしていたとは」

 

「まぁ、そんなこと言われてるけど十天衆達も人間だよ。みんなで競い合えばみんなで強くなれる!って訳じゃないけど、強くなろうとはしてるんだよね、俺も含めて……全員」

 

「強くなろうとしてる……」

 

 グランのその言葉に納得しつつも、驚いた表情をしているオーウェン。やはりそれをメモすることも忘れていなかった。

 

「…とまぁ、こんな感じで世間話しながらゆるゆるとしていくから、もうちょっと肩の力抜いてもいいよ」

 

「かしこまりました」

 

 本当にそれ肩の力抜いてんのか、と突っ込みたくなったがグランはそこを堪えながらお便りダンボール箱を取り出す。やはりというかなんというか、お便りもいっぱい来ていた。

 

「はい、という訳でお便り紹介のコーナー。1通目『普段誰と鍛錬を行っていますか?それはいつ行われていますか?』」

 

「普段は、朝に行っております。姫様が起床される数時間前に起床し、腕立て伏せなどの一般的なトレーニングを行ってから、一緒に鍛錬を行う感じです」

 

「一緒にって……誰と?」

 

「相手は選んでおりません。鍛錬室に訪れる人は様々ですので、その人と行うようにしております」

 

「なるほど、相手は選んでないんだね」

 

「そういうことですね」

 

 相手は選ばない試合。それは相手を固定化しないことによる、戦闘慣れが広い範囲で行われるというメリットがある。無論、相手がいなければ鍛錬が行えない、バランスが難しいなどといったデメリットもあるが、いろんな人間がかなりの数存在しているこの団では、あまり起こらないデメリットだろう。

 

「最近戦ってて、驚いた人物って居る?」

 

「そうですね……ヴィーラ殿でしょうか」

 

「あれ?でも前に強いからこそ鍛錬相手に云々みたいな事言ってなかった?」

 

「いえ、私は剣の腕だけで判断しておりました。そして、剣の腕は私の予想以上であり、同時に星晶獣の力をあぁも使いこなせていることに驚いたのです」

 

 ヴィーラは、体内にシュヴァリエが存在している。故に、シュヴァリエの力とも言えるビットを、自分の手足のように扱うことが出来るのだ。

 

「なかなか相手にできない戦い方してたでしょ」

 

「はい……しかし、彼女と相対することはとても有意義であったのは間違いありません。何せ、高速で動く火器を持った大多数の人間を相手にしているようなものなのですから」

 

 中々のポジティブだが、そんな人物達がいるのかどうか甚だ疑問なグラン。しかし、動体視力を鍛えるという名目であれば、確かにヴィーラは中々の相手になるだろう。シエテ等も、剣拓を飛ばして戦ったりするので闘うことは出来るはずだが。

 

「まぁオーウェンが馴染んでいるようで良かったよ」

 

「ここの人達が優しいおかげですね」

 

「オーウェンもその中の一人に入るんだけどね」

 

「ありがとうございます、団長殿」

 

 謙遜をせず、褒められたら素直に受け入れて感謝を述べる。しかし、謙遜するところは謙遜する。それもまたオーウェンの魅力なのだろう。

 

「さて、2つ目に行こう……『マナリア学院で武器の持ち込みというのはOKされているのですか?』」

 

「基本的にはOKされていたはずです……まぁ、一部の生徒のみですが」

 

「一部、というと」

 

「簡単に言えば、私や姫様のような特殊な立場に置かれているものならば…ということです。それであっても、私は基本的に抜かないのを前提として許されています」

 

 つまりは、生徒個人の良心が信頼されているということになるのだろう。そうでなければ、魔導書以外は基本的に許されないはずだ。グレアのような、さらに特殊な体質も存在するために本当に良心に任されているのだろう。

 

「なるほど、確かに普通なら許されるとは思えないもんね」

 

「まぁマナリア魔法学院に通っている生徒は皆礼儀正しいもの達ばかりですから。故に、見た目にあまりこだわられない様になっているのです」

 

 確かに、例として上げるならば幽世からの敵のせいで自分に魔法の才能がないと感じ、未来に不安を抱いた者達が素行不良を起こし、特殊クラス等という所に入れられている生徒達でさえ、武器を持ち込んでいなかった(はず)。そう考えれば、皆根はいい子達ばかりなのだろう。

 

「なるほど、マナリア魔法学院はそれなりに自由な校風という事だ」

 

「それでも、厳しいところは厳しいというきちんとした一面も持っています。しかし、そう言ったところがマナリア魔法学院のいい所なのでしょう」

 

「うーむ、きれいにまとまった。まさか2題続けてこんな綺麗にまとめられるとは思わなかった」

 

「ゆくゆくは全空に『話す人と言ったらこの人』を目指している姫様のサポートをするつもりですから」

 

「まさか夢が合致するとは思わなかったぜ……」

 

 オーウェンがアンに合わせたのだろうが、本人が本当にそれをやりたいと思っているのならば、グランにそれを止める権利は一切ないのだ。故に、驚くには驚くがそれ以上グランは言うことがなかった。

 

「ではそろそろ3つ目といこう……『好意的に見てくれる女性がいたらどうしますか?』」

 

「……申し訳ありません、あまりに回答に困る質問です」

 

「前提が曖昧?」

 

「…はい……」

 

「なら前提を設定しよう」

 

 グランは『マナリア魔法学院の生徒のパターン』と『生徒でないパターン』更にそこから『好意的に見れる女性』と『見れない女性』という4つの前提を作りあげた。最後の項目は性格、見た目ととりあえず何でもいいので好意的に見れないものとして扱う、という前提とした。

 因みに、アンを見守ることが仕事だが今回はその前提は外させてもらう。あくまでも一介の生徒という扱いである。プラス、相手は同い年だ、

 

「なるほど……」

 

「じゃあ、パターン組み合わせ1『生徒』で『好意的に見れる』」

 

「……そうですね、受けると思います」

 

「ポジティブな意見ありがとう…次は『好意的に見れない』」

 

「ふむ……」

 

 少し考え込むオーウェン。もう少し絞った方が良かったかとグランは思ったが、その前にオーウェンは回答を行った。

 

「……それでもうける、と思います」

 

「お、意外」

 

「女性に対して差別は行わないと言うつもりなので。しかし、その女性が犯罪などを犯していた場合は自首を勧めますし、別れを切り出されればそれを素直に受け入れるつもりですが」

 

「君ほんと紳士やね……『生徒でない』『好意的に見れる』」

 

「私と時間を合わせる事ができるならば、という質問をさせて頂くことになるやもしれません。生徒でないのならば、生徒である私と時間を合わせるのが苦痛になるかもしれませんので」

 

 こうもポンポンとそれなりに紳士の回答をされていると、グランは申し訳なくなってくる。セクハラばかりしているためである。ならばやめろ、という話なのだが。

 

「最後『生徒でない』『好意的に見れない』」

 

「2つ目と、3つ目の回答を組み合わせたものですね」

 

 要するに、注意するべきところは注意する時間が合わせられないことを苦痛と思うのならば……という事なのだろう。

 というか全部受ける前提で考えてんな、とグランは思った。まぁあくまでも、相手を傷つけない…かつ犯罪や悪いことをしているのならば注意する、という前提なのだろう。

 

「なるほどねぇ……というか全部受ける前提だよね」

 

「まぁ、初めから『断る』という選択肢では話が進まないと思いましたので」

 

「そんなところまで考えてたのか……」

 

「さて、団長殿……もうお時間です」

 

「おっともうこんなお時間か……というわけでご視聴…」

 

「…団長殿?」

 

「……いつも言ってるから以下略!!」

 

 言うことに飽きたのか、グランは唐突にそう宣言した。ある程度時間が経てばまた言うかもしれないが、今回はそんな気分だったのだろう。

 

「オーウェン!」

 

「は、はい!」

 

「解散!!」

 

「はっ!!」

 

 何故かキビキビとオーウェンに指示を出してテキパキと片付け始めるグラン。オーウェンもそれに乗っかって、動いていた。ササッとカメラの電源は落とされ、後片付けも行われ、そして1分未満の内に2人は部屋の外へと出ていた。

 

「あ、そうだ……この後訓練で1戦やろうか」

 

「分かりました、団長殿が言うのでしたらやりましょう」

 

「ぶっ!?」

 

 軽く訓練の約束を取りつけたグラン。しかし、その直後に謎の声が聞こえてきたので、その方向に目を向けた。そこにはルナールが倒れていた。偶然ここを通りがかったのだろうか、それとも狙っていたのだろうか。

 オーウェンは瞬間的に、ルナールをお姫様抱っこして医務室まで運んで行った。その最中、それを見守っていたグラン。

 

「……なんか、やけにスピーディーに事が進んだなぁ…」

 

 何故自分はあんなテキパキとオーウェンに指示を出せたのか、また何故一切のツッコミもなく急にこんなことになったのか。

 もしかしたら、オーウェンの紳士ぶりに当てられて自分のやっていた行為に罪悪感を感じて、早く話を終わらせたかったのかもしれない。

 しかし、それはグランにも答えがわからないことである。何故なら、特に考えず行動していたためだから。

 

「……つかルナール!大丈夫か!?おーい、ルナール!!」

 

 そして、勢いのままにルナールを抱き抱えたオーウェンをグランは追いかけるのであった。




最後は勢いのない勢い


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ピカピカ☆マナリア魔法学院

「……あれ?アン…?どうして団長さんの部屋に?」

 

「グレアこそ…どうしてここに来たの?」

 

 グランサイファー、団長室。ここに今2人のマナリア魔法学院の生徒がいた。部屋の主であるグランはここにはいないが、お互いに何故ここにいるのか、何故ここに来たのかが気になってしまったのだ。

 

「いやぁ、団長さんから呼ばれてたんだけど……いなくて」

 

「私も呼ばれたんだけど……あれ?」

 

「グレア?どうしたの?」

 

 何故ここに来たのかを話していたが、唐突にグレアが部屋の隅で何かを見つける。それは一枚の小さな紙だった。

 グレアはそれを拾って読み上げていく。

 

『古戦場、思ってたより早く始まったわ。ごめん』

 

「……古戦場…?」

 

「朝早くから何人か出て行ったと思ったら……そういう事だったんだ……」

 

 色々なメンバーが、今グランサイファーから抜けている。無論、団長たるグランもその例に漏れないが、グランが選出したメンバーがグランサイファーの運用を行っているので、特に動かせないということは無い。

 

「うーん……まさか本人がいないなんてね…」

 

「結局用事ってなんだったんだろう…?」

 

 恐らくしばらくは帰ってこないだろうと、2人は思った。というよりも、この時期グランはしばらく船から離れるのだ。戻ってこない故に、仮に用事があるものは待たなければならない。急ぎでない限り、基本的に内々的に終わらせるためグランにはあまり相談されることが少ないが。

 

「戻ってこないなら…うん!グレア、お出かけしよっか!」

 

「え?今から?」

 

「ちょっとその辺の野原を散歩するだけだよ!ご飯までに戻ればいいし!」

 

「う、うん」

 

 こうして、急遽2人は出かけることとなった。散歩する事はよくあるが、二人きりで出かけるのは久しぶりなので二人ともどこか楽しそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう言えば、アルビオン学園…だったよね?ヴィーラさんとカタリナさんが元々通っていた学校って」

 

「へ?急にどうしたの?」

 

「んとね?あそこって町ぐるみで魔物を放してるらしくてさ、街中で魔物との戦闘が行われるんだって」

 

「へぇ……」

 

「でね、マナリアも同じことしたらみんな魔物との戦いに自信がつくんじゃないかな!?」

 

「アン、多分それは間違ってる」

 

 多分どころか、アルビオンの様なことをして成り立っているのは町ぐるみで行われているからだ。普段でそれを行おうとするのは、中々に賭けだろう。下手をすれば、街一つが社会的に崩壊する。物理的に崩壊する可能性も無くはないが。

 

「そう?」

 

「流石にマナリア魔法学院で同じ事をするのはね…」

 

「まぁ……よく考えたら、やることが全然違うから成り立たないのか」

 

 そう、アルビオンは騎士道を学ぶ学園であるのに対し、マナリア魔法学院は魔法を学ぶ場である。運動と研究という全く別のものでは、同じことをしても成り立たない場合が多い。

 

「でも、いざと言う時におどおどばかりしてられないよ」

 

「それは……」

 

「たとえ戦えなくても、人の避難とか…冷静に対処できる人がいたら、戦える人達は安心出来ると思うんだ」

 

 守るべきものが周りにいて、敵が誰を狙うかわからない状況で戦うよりも、敵が自分だけを狙う状況を作り出せたら確かに安心して闘いやすいだろう。グレアは一時前の、力を制御できない自分を思い出しながら、そう思っていた。

 

「……ってなんか真面目な話しちゃったね、せっかくグレアと二人きりで出かけてるのに」

 

「じゃあ楽しい話しよっか」

 

「そうだねぇ……あ、そう言えば前から気になってたんだけど…」

 

「何?」

 

「グレアってさ、前に水着きた時…尻尾どうしてたの?」

 

「へ?」

 

「だって、水着って下着程度の面積しかないのに、グレア普通に水着着てたからちょっと気になって」

 

 水着を着ていたグレア。面と言われると彼女は恐らく赤面するだろうが、彼女の尻尾はかなり太い。その尻尾が外に出たまま水着を着るというのは、どういう原理なのか……アンはそれを質問しているのだ。

 

「え、えっと……答えなくちゃだめ?」

 

「ダメ」

 

「う、う……あ!あそこに団長さん!」

 

「え、嘘!?」

 

 一瞬アンが後ろを向いた瞬間、グレアは猛ダッシュで逃げていた。どうやって逃げるかをテンパリながら、ひたすらに走って逃げていた。

 

「あ!待ちなさいグレアー!!」

 

「ま、待てって言われてまつ訳ないよ!」

 

「尻尾のこと聞くのってそんなにダメなのー!?」

 

「ダメー!!」

 

 赤面するグレア。尻尾を見せることはなんら問題ないのだが、どうやら尻尾に関係することだと、彼女の中の羞恥心が刺激されてしまうようだった。

 そう言えば…とアンは前にグレアの尻尾が大きくなっていた事を思い出した。太ったとグレアは思っていたが、要するに体が成長するに合わせて尻尾も適切な太さになっていたという話なのだが……要約すると、尻尾はいろんな意味で彼女の弱点である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ど、どこまで逃げるつもりだったの……」

 

「そ、それは……」

 

「と、というかここどこだろ……」

 

 あれからひたすらに爆走していた二人。ついにアンがグレアを捕まえたと思われていたが、気づけば見知らぬ場所に立っていた。

 

「島だから…多分真っ直ぐ走ってたと思うし、戻れば辿り着けるかな…」

 

「……ごめんなさい」

 

「どうしてグレアが謝るの?追いかけたり、聞いたら行けないこと聞いた私が悪いんだから」

 

「でも……」

 

「ほら、グレアは気にしないで?早くグランサイファーに戻ろ?」

 

「うん……」

 

 手を繋いで来た道を戻る二人。戻ると言っても、真後ろに方向転換して歩くだけなのだが。

 しかし、手を繋いでもグレアの顔は沈んだままだった。

 

「……まだ気にしてる?」

 

「だって、私のせいだし……」

 

「もー、グレアのせいじゃないって言ってるよー?」

 

 アンは苦笑しながらグレアを励ます。アンはグレアに対して怒っている、と言ったことも全くないし落ち込んでいるグレアを見て純粋に励まそうとしていた。

 

「……ありがとう、アン」

 

「ううん、どういたしまして」

 

 そのアンの心が伝わったのか、グレアは笑みを返してまたアンも笑みを返していた。

 

「それにしても、のどかだねぇここは」

 

「そうだね」

 

 2人で手を繋ぎ、並びながら景色を見つつ歩いていく。こんな綺麗な景色を2人で見れると考えたら、案外道に迷ったのも悪くない……とグレアは考えていた。

 

「そう言えば…オーウェンは?」

 

「オーウェンは今日はいないよ。普段私から離れることなんて滅多にないんだけど……今度の学園での健康診断関係みたいだったから」

 

「え、なら私達も…」

 

「男子のことは男子にしか分からないってやつだよ」

 

「そういう……ものなのかな?」

 

「そういうものだよ」

 

 そんな話を続けながら、2人は歩き続ける。それなりに離れていたのか、歩くにつれて日が段々と沈んでいく。お昼を食べる前に戻るつもりだったが、彼女達がグランサイファーを発見した時にはもう既に夕方になっていた。

 

「いやぁ、晩御飯が楽しみだ!」

 

「そうだね……けど、団長さんはまだ戻ってきてないみたい」

 

「本当にしばらく居ないみたいだねぇ……結局、何の用事だったんだろ?」

 

「うーん……わかんないなぁ……」

 

 グランが帰ってくるのは、まだ先の話である。そして、その間グレアとアンはゆったりまったりとグランサイファーの中で過ごそうかと予定を立てるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁぁぁぁぁぁああああ!!」

 

「うおおおおおおおおおおおおおお!」

 

 そして、場所は代わり。現在グランはリーシャと共にそこそこ大きな魔物を殴り倒し続けていた。

 しかし、倒せど倒せどその数は一向に減らないでいた。

 

「多くない!?」

 

「古戦場ですし!!ところで団長さん!!」

 

「何!?」

 

「今回の目的は!?」

 

「二王弓!!」

 

「分かりましたいきます!!」

 

 こちらも他愛ない話をしながら、魔物を切り倒し続けていた。時折星晶獣が出ているような気がするが、そんなことを気にする余裕もないままただひたすらに倒し続けていた。

 

「ニオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

 とりあえず叫びながらグランは倒し続ける。一体何体倒したか……そんなことを考えている間があるならば、2匹は倒せる。弱くはない、魔物達も並の騎空士ならば倒されてしまう可能性があるものだ。

 しかし、今のグランの気迫は魔物達を圧倒していた。ひたすら剣を振り回し、切り刻み、消し飛ばす。まるで嵐のように動き回るグランを見て、本能的に危機を察知しているのだ。故に群れ全体で対処しなければならない。

 何故か月末になると、大量の騎空士達によって乱獲される彼らだが、存外しぶとい種族のようで未だにその数は減らせていなかった。

 

「ところで団長さん!」

 

「何ですか!!」

 

「久遠の指輪ってあるじゃないですか!!」

 

「はい!!」

 

「付けてください!」

 

「ないです!!!!」

 

 その瞬間、たった一瞬だったが空気が凍りついたような感覚にグランは襲われていた。

 背筋が冷え切って、心臓どころか背骨とかほかの色々な所全てを握られたかのような……そんな感覚に陥っていた。

 

「え?」

 

「いや、ないよ」

 

「何でですか?」

 

「ヒヒイロカネを作りたいから……」

 

「……分かりました、じゃあ街中で500ルピくらいで売ってる玩具のやつでいいです」

 

「えぇ……いやまぁ、それくらいならいいけど」

 

「言いましたね!?約束ですよ!?言質取りましたからね!!」

 

 グランは思った。『あ、これ絶対に拒否っとかないとやばいやつだったんだ』

 まさか500ルピで、ここまで迫真になるとは思っていなかったからだ。これは、指輪を付けるだけでは済まないだろうなとしかめっ面をしながらグランは考えていた。

 

「え、ていうかいつ!?」

 

「これ終わってからです!!」

 

「そっかぁ!!」

 

 グランは考えるのはやめた。考えるよりも、今は目の前にいる魔物を狩って時間を進めていたかったのだ。今は古戦場、時間があるなら回して数を稼がないといけない。

 そう、数は大事なものなのだ。稼がないといけない。

 

「うおおおおお!!!」

 

 本来、こういうのはシリアスな雰囲気で行われるものかもしれないが、そういうのは一切なくグランはただ仲間と共に狩り続けるだけである。

 血を頭から被り、匂いがこびりついてしまったせいで段々と魔物が近づかなくなってくるが、それでも追って殺す。星晶獣が出たら、とりあえず殺す。それくらいの勢いでやらないと、古戦場では生きていけないのである。

 

「キュベレーだ!!下のライオンを今日の晩飯にすんぞ!!」

 

「またですか!?朝昼晩連続してますけど、何回目でしたっけ!?」

 

「知るか!数えるくらいなら殺して食うぞ!!」

 

 正直、グランをここまで変貌させている古戦場に、仲間たちは戦慄していた。ただ変態であっても優しい団長なら良かったのに。セクハラするクズだったけど優しい団長だったのに。

 でも、古戦場だといつもの事なので仲間たちはすぐに考えるのをやめて魔物狩りに勤しむのであった。




サポート団っていいですよね


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小さな騎士、自分に任せるでありますか?

「今回のゲストはシャルロッテさんです」

 

「団長殿」

 

 グランと、テーブルの上から覗く金色の王冠。グランはそれを手で指し示して『シャルロッテ』と言った。知らない人が見たら、自分の顔を出さない人物の様に思えるだろう。

 

「顔が映っていない様に見えますが、ちゃんと写っているのが真実ですのでご安心を」

 

「団長殿」

 

「さて、ではシャルロッテさんの簡単な自己紹介から━━━」

 

「団長殿!ちょっといいでありますか!!」

 

「……どしたのシャルロッテ、ちゃんと番組始まる前の君の要望聞いたじゃない」

 

「うぐっ……き、木箱を取ってくるのであります」

 

 そう言って、王冠は姿を消す。さて、何故こんな事になっているのか…簡単な説明を行おう。

 番組が始まる前、シャルロッテは自分がよく使う木箱は今回使わないと伝えた。理由としては、誤魔化すのは問題だからだと。

 グランはそれをやめておいた方がいいと注意はした。しかし、意思の硬いシャルロッテを簡単に曲げることは難しいので、そのまま始めた方が効果的だと思ったのだ。

 因みに、木箱がない場合丁度頭だけが隠れるようになっている。視点によっては、頭髪が極稀に見える。

 

「取ってきたであります」

 

「ほら、ちゃんと椅子の上に載せろよ?」

 

「載せたら椅子に乗れないであります」

 

「大丈夫だって……俺が載せるから」

 

 そう言ってグランはシャルロッテを脇から抱き上げて持ち上げる。ハーヴィンなので、グランからしてみれば持ち上げるのは容易いだろう。実際、肩車しても恐らく苦にはならない。

 

「……団長どにょ!!」

 

「どした急に」

 

 顔を真っ赤にしたシャルロッテ。その性格と、お子様ランチが好きだという所からよく子供扱いされるが、彼女はこれでも20歳を超えた成人女性である。

 サラの方が大人っぽいなんて言う話はしていない。

 まぁそんな成人女性の体に触れて持ち上げるというのは、かなり問題がある行為である。

 

「いきなり触られると驚くのであります!!」

 

「宣言したら?」

 

「……それは、まぁ…覚悟決めるのであります…」

 

「とりあえず載せるよ」

 

 そして、グランはシャルロッテを席に載せる。そして同時に、その手首に手錠が掛けられる。

 

「流石に今の普通にアウトですけど」

 

「やっぱり?やましい気持ちはなかったんだけど」

 

「無くてもアウトです、後本人の前でそういうのやめておいた方がいいですよ」

 

 手錠をかけた人物と、軽く話をするグラン。ちゃっかり、グランの台詞で女性として見られてないと思ったシャルロッテが、ショックを受けていた。

 

「あの、ところで君誰…?」

 

「リーシャさんの部下です」

 

「リーシャは?」

 

「古戦場の後始末しに行ってます」

 

「そっかぁ……」

 

 そのまま連れ出されるグラン。シャルロッテは少しショックを受けていたが、それ以上にそのまま連れていかれたグランに驚きを禁じえなかった。

 

「え、これ……進行不可というものでは……」

 

「ご安心を」

 

「うわぁ!?」

 

 突然、影から現れる人物。黒い肌に細身ながらもがっちりとついた筋肉。彼の名前はジャミル、グランを主として使えている人物である。

 

「ここからは私が進行させて頂いてもらいます」

 

「よ、よろしくであります……」

 

「いざと言う時、私に全てを任せてくれました。主がいない今、私がその力を振るう時」

 

「振るうところ間違ってるであります……というか、失礼でありますがこういう事はやったことがあるのでありますか?」

 

 シャルロッテは、ジャミルにこういったトーク関係のことをした経験がないと感じた故に、このような質問をぶつけていた。実際問題、ジャミルのことを知っている者達であれば少し不安になることもあるだろう。

 しかし、ジャミルはそんな不安を払拭するかのように口角を上げて笑みを浮かべていた。

 

「勿論あるはずがないでしょう」

 

「え、その笑みは何でありますか」

 

「無くても、どうにかしなければならないのが私の役目…故に、こういう時は逆に自信を持てと主に教わりました」

 

「団長殿…色々間違っているであります」

 

 しかし、続行されるものはやらねばならない。お互いに真面目な性格故に、ボケはあってもツッコミがない…という酷い状況になってしまっていた。

 

「では、続けましょう……確かこちらの方にお便りがあるのでしたね。ではそちらを読んで言って、進行してもらいます」

 

「……分かったのであります」

 

 ため息をつくシャルロッテ。しかし、先程も言った通り彼女もまた真面目な性格なので、この番組は進行してしまうのだ。

 

「さて……確か無作為に3枚ほど取るのでしたね…これでいきましょう」

 

 手でかき混ぜた後、適当な1枚を掴んでからジャミルはお便りを取り出す。

 

「『どうしてその王冠は、そんなにバランスがいいのですか』」

 

「頭につけてるこれのことでありますね」

 

「恐らくそうでしょう、確かにそれは結構長いのに中々落ちるところを目撃したことがないですね……頭に縫いつけてたりするんですか」

 

「そこまでしていないのであります……」

 

 シャルロッテと言えば、頭の上にある特徴的な王冠が目印である。彼女の身長を、これでもかという程には強調してしまっているが、シャルロッテはそれに気づいていない。

 

「では、何故落ちないのですか?」

 

「特訓の成果であります。頭の上にこれを乗せながらでも、戦って落とすことがないようにしておくくらいに、バランス感覚を鍛えたのであります」

 

「そうですか」

 

 ジャミルは突っ込まなかったが、しかし内心『そうではない』と突っ込んでいた。シャルロッテは、それなりに大きな剣を使って戦っているのだが、それのせいか戦い方は自分を軸に剣を振り回して相手を斬ることが多い。

 そう、回転しているのに王冠は落ちないのだ。故に『そうではない』

 

「では2通目に参りましょう」

 

「え、今の終わりでありますか」

 

「何か問題でも?」

 

「団長殿はもう少し会話をしていたであります」

 

「はっきりと申し上げると、これ以上聞くと明らかに尺が足りなくなってしまいます。残念ですが、この話題はここまでにします」

 

「む、むぅ……」

 

 確かに、これ以上聞くのは中々時間が長くなってしまう。シャルロッテもそれは分かっているため、ジャミルの言うことに反論をすることがなかった。それを確認してから、ジャミルは改めて新しくお便りを取り出す。

 

「『この団にいるハーヴィンの人達と戦ったことはありますか』」

 

「ヨダルラーハ殿と特訓でなら、何度か戦ったことであります」

 

「他の人物はいないのですか?」

 

「いるでありますが、ハーヴィンで剣士という共通点があるのであくまでも例として挙げさせて貰ったであります」

 

「なるほど……因みに、ヨダルラーハどのは器用さと手数が特徴的な戦い方ですが……」

 

「自分も、それなりに闘えているつもりはあるであります。あくまでも、自分の主観なのでこれで満足するつもりは毛頭ないでありますが」

 

 シャルロッテは大きな剣の一刀流、ヨダルラーハは刀の二刀流。同じ剣士と言っても、武器の少しの違いで戦い方はまったく変わってくるのだ。

 

「なるほど……そういった努力の積み重ねで強くなっていったのですね」

 

「そんな所であります」

 

「では三通目『どうしてお子様ランチをよく作ってもらっているのですか』」

 

「バウタオーダ殿が、理由をよく話してくれるであります」

 

「あれは子供を成長させるに必要な栄養素が、多く含まれている食材で構成されています。さらに、子供が喜んで食べるためにゼリーなどの甘味や、旗などといったものまで付いている……」

 

 お子様ランチの特徴を上げていくジャミルだったが、ここまで言ってから『やはりシャルロッテは子供では?』と疑念を抱くようになった。

 見てしまったら確かにそう思うのもわからなくもないが、しかし大人だである。合法だ。

 

「今自分のことを子供だと思ったでありますね」

 

「いえ、そんなことは無いですよ」

 

 全く自然に、一切の表情を変えることなく、顔の筋肉を動かすことなく、ジャミルはガチで誤魔化していた。シャルロッテは訝しんでいたが、しかし時間も時間なので仕方なくここはスルーを決めることにしたのだ。

 

「まぁ、今言ったことがお子様ランチの大体の特徴であります。けれど、自分は身長を伸ばしたいのであります……ですから、牛乳もセットにして、よく運動してからよく寝る生活を続けているのであります」

 

「ハーヴィンですから、それ以上は伸びないのでは」

 

「壁は超えるために存在するのであります、自分はそうやって努力で壁を超えてきたのであります」

 

「なるほど」

 

 ジャミルはなにか思う所があったのか、今のシャルロッテのセリフをメモしていた。キリッとしているシャルロッテだが、その顔はどこか嬉しそうで若干にやけていた。

 

「さて、そろそろお時間ですね」

 

「おや、もうそんな時間でありますか。相手が今回はジャミル殿でしたが名残惜しいのであります」

 

「それは褒められている、と受取りましょう……さて、ご視聴ありがとうございました。恐らく次回は主殿が復活する予定ですので、画面で主殿を見たい方は安心してください」

 

「自分との剣の勝負も受けて立つであります」

 

「ではまた」

 

 瞬時に消えるジャミルの姿、その瞬間カメラの電源が落とされて番組は終了していた。シャルロッテは真面目同士もう少し語ってみたいような気がしたが、それはまたの機会ということにしておいてそのまま部屋から出ていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アマルティア島。はっきり言うと、グランは今取調室にいた。目の前にはアマルティアのお菓子が出されているが、一切手をつけていなかった。

 

「食べていいんですよ?」

 

「身内ならともかく、明らかに個人の私物だよねこのお菓子。君の懐から出したヤツだよねこれ、というか目の前で出されたんだけど」

 

「人のものだってわかると、さすがに手を出しづらいんだけど」

 

 ちょっとクシャってなってる包み紙のせいで、より懐に割と長い間入っていた感が強くて、グランは余計に手が出せなくなっていた。

 

「いや、流石に出して困るようなもの出してたら秩序の騎空団やっていけないよ」

 

「いやまぁ、そうなんだけどさ……つかいつリーシャ戻ってくんの?」

 

「後始末終わったらですよ」

 

「後始末ねぇ…?こんな長いことかかるもんなの?」

 

「流石に魔物の死体そのまま放置してたら、結構やばいんですよね実は」

 

「まぁそれはわかるんだけど……そんなに連れて行ってないの?人」

 

「そういう訳でも━━━」

 

 いまさっき知り合ったと言っても、過言ではない程には面識が薄い目の前にいる秩序の騎空団団員の人。その人と適当にだべりながら、グランはリーシャを待っていた。

 しかし、リーシャを待ち続けていたのはいいのだがその後リーシャが戻ってきたのはまさかのその日を超えた……というオチであった。

 要するに、グランは唐突に丸一日秩序の騎空団にお世話になっていたと言うだけの、そんな話なのであった。




シャルロッテ1回書いてなかったっけという錯覚に襲われ続けて書いてました。
書いてたらすいません。


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正義の騎士、日々研鑽していますか?

「えーっと…見慣れた人からはちょっと驚くかもしれませんが、今回のゲストはバウタオーダさんです」

 

「団長殿、今の言葉の意味は一体…」

 

「……いや、鎧着てなくて兜も外してるせいで誰かわからなくなりかけてるってのが……」

 

「なんと……」

 

「だって貴方兜できっちり髪の毛隠す上に鼻上あたりまで兜の真ん中のあれがあるじゃないすか…」

 

 今回のゲストはバウタオーダ、いつもは分厚い鎧を着ているのだが、今回はいつぞやのリュミエールグルメの時の格好だった。何故コックの格好をしているのか謎である。

 

「私の印象は鎧なのですか……」

 

「ちょっと例え話しようか」

 

「?」

 

「俺がもし初めてあった時から、つい最近までレスラーの覆面をつけてました。そして先日、気がつくとその覆面を脱いで普通に話しかけてきました。

 その時、俺の自慢の仲間は俺を俺と認識するでしょうか」

 

「……声だけだと、ちょっと判別しづらいかもしれませんね」

 

「つまり、そういう事だよ……」

 

「何も無い時くらいはせめて兜は外しておくべきでしたか…」

 

 グランの例えでも理解出来たのか、バウタオーダは遠い目をしていた。実際、グランも『本当に同一人物か?』と、初めて見た時は疑いがなかなか晴れなかった。

 

「というかあの兜ってどうやって被ってるの?バウタオーダってドラフだから、角が邪魔になりそうな気がするけど」

 

「今の鎧は新しくなっているものですが……基本的なことは何も変わらないのですよ、ちょっと持ってきますね」

 

 そう言って、一旦バウタオーダは部屋から出ていく。グランはしばらく待ち、5分ほどしたらバウタオーダが戻ってくる。

 

「さて、この形はいつも私が被っている時と同じですね」

 

「これだけ見ると角が引っかかりそうなものだけど……?」

 

「まずは、この顎にかかる部分…ここを上げます」

 

「あぁ、それ持ち上げられるんだ」

 

 バウタオーダが実際に兜で実践してくれる。顎にかかっている部分は、根元が角に引っ掛けて使うものなのでそういう仕組みになっているのだろう。しかし、それでもまだ終わらないらしい。

 

「次に、このままだと角がまだぶつかってしまうので後頭部を守る部分を少しだけあげるように後ろに下げます。あとはこれを被り、締めて取れないように固定すればいつもの私です」

 

「さっき言ったこと根に持ってる?」

 

「いえ?私が私たる所以を披露したのみです」

 

「そうですか……いやほんとすいませんでした」

 

「ふふ、冗談ですよ団長殿」

 

 少し皮肉を言うバウタオーダだったが、冗談が過ぎるのもいけないと感じたのか、苦笑を浮かべて軽く謝罪をする。グランも少し安心をしてため息をついていた。

 

「と、というわけでお便りの方いこうと思います」

 

「なんだかんだ、楽しみですよ」

 

「1通目『リュミエールグルメを教わろうと思っていますか?』」

 

「そうですね……出来れば作りたいところです。しかし、私があれを学ぶ域に達しているかどうか……」

 

「騎空団の一員として依頼を受けながら厨房までやってくれているのに、その料理の腕もほかの料理人達に負けず劣らずの腕を持っているバウタオーダがその域に達していない…?」

 

 グランは自分で言っていて、その言葉の意味が全く理解出来ていなかった。確かに、リュミエールグルメはただの料理ではなく文字通り『精気を養う料理』である。美味すぎる、というのもあるが食べれば元気と活力が即座に湧いてくる料理なんて、調理方法が秘密であってもおかしくない。一応、レシピこそあるがグラン達が作るとただの料理になってしまうのだが。

 だがしかし、バウタオーダの料理も相当なものである。豪快かつ繊細な味というものを表現しているのだ。そんなバウタオーダの料理でさえも、リュミエールグルメを作ることに達していないなどという言葉は本当に彼にとっては理解が不能だった。

 

「というよりも、唯一料理を作れる人材が料理の鉄人すぎるというのが主な話な気もしますけどね……しかし、いつか作れるようになろうと思っていますよ、リュミエールグルメは」

 

「頑張って欲しい…そして俺は食べてみたい……2通目『どうして騎空団に入ったのですか?』」

 

「自分の正義が奮えないのならば、騎士団にいる意味が無いと当時は思っていたからです」

 

 現在、リュミエール聖騎士団のメンバーが5人在籍している。その内、バウタオーダは自分の正義のために聖騎士団を抜けているのだ。しかし、聖騎士団団長が身長の問題で抜けていることを知った時渋い顔をしていたが。

 

「まぁこれに関しては俺は知ってたけどね」

 

「団長殿はあの時一緒にいましたからね」

 

「正直なこと言うと、感動してたりするんだよね」

 

「…というと?」

 

「まぁ、当時の帝国の騎士達に追われてたからね……頭では違う人、と分かっていても……どうしても騎士って人に苦手意識が湧いてた時もあったよ。

 あ、勿論別にそれで信用していなかったなんて事ないよ?わざわざこっちの団に来てくれた人もいるしね」

 

「なるほど……確かに、大きな国の騎士団ともなると何かを勘違いした騎士が出てくることもありますね」

 

 帝国。グラン達は当時彼らに追われていたのだが、グランも一応は帝国の兵達も仕事でやらされているとは分かっていた。しかし、どうにも追う者達の柄が悪い事が結構多かった為、一時期騎士という役職に苦手意識を少しだけ持たされたことがあった。

 無論、それで仲間の騎士達が信用出来なくなったとかや同じように苦手になった……ということは無かった。

 

「……まぁ、中には面白い人もいるって思ってたから…結局中身までガラの悪い人が苦手なのかも?」

 

「中身まで?」

 

「ほら、口悪くても性格がすごくいい人がいるじゃん……エルモートとか」

 

「確かに…彼の面倒みの良さは団内随一ですからね」

 

 エルモート。炎を使う赤髪のエルーンの男性である。口が悪いが面倒みは物凄くいい。この事を本人は否定するが、団内で彼を知っている人は彼がいい人だということを知っているのである。

 

「さて、そろそろ三通目……『リュミエール聖騎士団、ちゃんと動けてます?』」

 

「……」

 

「……これに関しては、本当に一言ある」

 

「はい」

 

「大丈夫か?リュミエール聖騎士団」

 

 現在、リュミエール聖騎士団から来ている者達は5人である。その内、団長がいるのだ。そしてバウタオーダは部隊長、残り3人の内、セワスチアンも重要な人物である。

 

「まぁ、それだけ団長殿が魅力的な人物だと言うことなのでしょう」

 

「そう言われると悪い気はしない。けど、悪い気がしないだけで流石に心配になってくる」

 

 無論、リュミエール聖騎士団だけという訳では無い。白竜騎士団団長と副団長もいるし、なんだったら元帝国兵も何人かこの船に乗船しているのが事実なのだ。

 

「……しかし、よくよく考えてみれば…」

 

「ん?」

 

「グランサイファーに乗船している中で、何人が元または現騎士団…そして王族関係なのでしょうか」

 

「それはグラサイ七不思議の内の一つだ」

 

「え…いや、団長殿の誘いに乗っているためでは…?」

 

 グランサイファーで、王族や騎士団が何人仲間になっているか…という話はある意味禁句である。ごく稀にここで会談をしたりしているのを、グランは定期的に確認している。しかし、それを止められるほどメンタルは備わっていない。

 

「まぁ、うんそうなんだけど……いつの間にかこんな重要な船になってるなんて思わないじゃん」

 

「まぁ、確かに……あまりこの船で王族や騎士団の話をするのもどうかと思いますし……」

 

「それはいいよ、うん。そういうのって多分大事だし、仕事ほっぽってまでここに乗って貰うと、逆に俺の胃が壊れちゃう」

 

 真顔で返事するグラン。バウタオーダも、これ以上はあまり話題に出さない方がいいのかと感じ取ったのか、それ以上お互いに話題に出すことは無くなった。

 

「さて、そろそろ時間かな」

 

「ふむ…確かに話していると、時間が経つのが早く感じますね」

 

「それだけ楽しんでもらえたってことだからね、この番組を立ち上げた身としては嬉しい限りだよ……さて、ご視聴ありがとうございました、またこの番組でお会いしましょう……さようなら」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エヴィのチャーハンです」

 

「いただきます……美味い…!」

 

 番組が終わってから、グランはバウタオーダにチャーハンを食べさせてもらっていた。新しく味付けを変えたらしく、それの試食の為に番組終了後、キッチンに来ていたのだ。

 

「前のと違って、辛味が効いてるよね」

 

「少し雑誌で見たのです、少しくらい辛い方が食欲も増すと」

 

「なるほど、確かに」

 

「にんにくも使わせてもらいました」

 

 バクバクと食べるグランに対して、チャーハンの説明をするバウタオーダ。素材の説明を聴きながらも、グランは飯を食べる手を止めていなかった。いや、止めたらむしろ料理に失礼だと言わんばかりに咀嚼していた。

 そして、あっという間に食べ切っていた。

 

「……いやぁ、やっぱりバウタオーダの料理は美味い。流石リュミエール聖騎士団団長の胃袋を掴んできただけある」

 

「お褒めに預かり光栄です」

 

「これでもまだリュミエールグルメを作れないなんてなぁ…」

 

「セワスチアン殿の腕が良いのですよ」

 

 最早美味すぎてグランに取っては『滅茶苦茶美味い』か『とんでもなく美味いか』でしか判別できなくなっていた。最早リュミエール聖騎士団で飲食店を経営できるレベルである。

 

「とりあえず…ご馳走様でした」

 

「お粗末様でした……そう言えば、団長殿は料理はなされるのでしたね」

 

「まぁ、一応ビィと長い間二人きりだったからね。出来ないことも無いけど…正直なこと言うと、ここの料理メンバーに勝てる気がしないんだよね」

 

「ふふ、それでも貴方の料理を食べてみたいと思う人はいるようですよ」

 

「ルリアとか?」

 

「彼女もそうでしょうけど……」

 

 そう言いながら、バウタオーダは一瞬だけ目線を後ろに飛ばしていた。グランも倣って、ほんの一瞬だけ後ろ……ドアの方面を確認する。するとそこには、キッチンの近くに在籍している女性メンバー達がドアの隙間からこちらを覗いていた。

 

「というわけで、偶には団長殿が料理を振舞ってみても良いのではないでしょうか」

 

「……まぁ、普段みんなに頑張ってもらってるし……やるか!」

 

 こうして、グランは突発的にバウタオーダが見守る中女性団員達に料理を振る舞うことになった。それでもかなりの人数がいるので、作る料理が増えに増えて……久しぶりに団の食料庫を使い切ってしまう結果となった。

 久々に空になったグランサイファーの食料庫を見て、グランは少しの達成感とこの後の飯をどうしようかと頭を悩ませることになったのだが……それはまた別の話なのである。




兜取ったら誰か分からなくなったというのが初見の印象です


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ディリジェントナイト、とことん頑張るのです?

「今回のゲストはブリジールさんです」

 

「よろしくお願いします、です!」

 

 ブリジール、元リュミエール聖騎士団の一員だったが、脱退して今はグランサイファーに在籍するハーヴィンの女性である。ハーヴィンなので子供っぽく見えるかもしれないが、シャルロッテ同様成人女性である。声が色っぽいのが、成人女性である分かりやすい証明なのかもしれない。

 

「一日十善をモットーに、掃除洗濯が趣味とのことで」

 

「はいなのです、休日もお掃除とお洗濯を率先してやるのであまり遊んだことは無いのです。けれど、あまり剣の方は…」

 

「そっちはあんまり無理して語らなくていいよ、苦手な事の一つや二つあるんだろうし」

 

 彼女は、あまりにも体力と力がない。剣も数回振ればバテてしまうために、その事を気にしてバウタオーダに剣の鍛錬の師をお願いしているほどだ。

 

「でも、騎士団に在籍しているのに……」

 

「どこに在籍してても、苦手なものは変わらないよ。問題なのはそれに取り組んでいるかどうかだし」

 

「団長さん…」

 

「ブリジールはちゃんと剣の鍛錬してるじゃない。バウタオーダからちゃんと報告も受けてるし……そうやって努力をしている事が、重要だと思うよ」

 

 グランはそう語っていて、途中ブリジールを見てから気づいた。感動した目でこちらを見ているのだ。

 

「ありがとうございます!!」

 

「うん、どういたしまして……という訳で話が一段落したところで、そろそろお便り紹介いってみようか」

 

「はい!」

 

 いつもの様に、グランは箱を取り出すある程度掻き混ぜては中身の上下を変えるようにひっくり返したりして、無作為性を上げていく。そして、1通目の手紙を取り出す。

 

「という訳で、まずはこのお便りから……『一日十善と聞きますが、まずはどのようなことをしているのでありますか?』シャルロッテからだね」

 

「シャ、シャシャシャ……シャルロッテ団長から…!」

 

「ステイステイ、大きく息を吸ってー」

 

「すー…」

 

「吐いてー」

 

「はー……」

 

 シャルロッテのものからだと言われた瞬間に、ガチガチに緊張し始めたブリジールだったが、グランは深呼吸を促してなんとか落ち着かせようとしていた。

 

「緊張の糸はほぐれたか?」

 

「は、はい……なんとか……」

 

「で、一日十善は主に何をしているかって話な訳だけど…」

 

「主なこと、と言えば人のお手伝いなのです」

 

「なるほど、ブリジールらしい」

 

 一日十善、文字通り1日の間に良い事を10回行うというものである。無論、ブリジールはそれ以上…下手したら倍以上を毎度行っている可能性があるが。

 

「ただ、力仕事は1度行うと……」

 

「あぁ……」

 

 彼女は、先程も言った通り力がない。剣が振れないほど、と言うよりはシャルロッテのような身の丈にあっていない大剣なんて、持ち上げることはほぼ不可能な程である。

 

「力はなんとか付けようと思っているのですが、何故か今以上の体力と力が中々付かないのです……」

 

「んー…まぁ成人しちゃうと、どうしても筋肉も成長しづらいのかもしれないしねぇ…」

 

 ハーヴィンの体躯だから、という言葉は出てこなかった。というのも、この団に在籍しているハーヴィン達のことを考えると、あまり腕力が育たないというのが、種族特有のものでは無い気がしていたからだ。

 

「そういうものなのですか…」

 

「あくまでも、多分だけどね……人の手伝いって言うけど、毎日違った人の手伝いをしてるの?」

 

「はいなのです、ただナルメアさんだけは毎日手伝ってるのです」

 

 ナルメアは、ハーヴィンを全体的に子供として見ている。見た目が完全におじいちゃんのヨダルラーハの様なものならばともかく、彼女からしてみればハーヴィンは皆子供のようなものだと思っているのだろう。

 ブリジールが手伝っているのが、もしかしたら彼女の目には子供が母親のお手伝いをしている図のように見えているのかもしれない。

 

「他に毎日してるメンバーっている?」

 

「うーん…あまりいないと思うのです。連続して、というのはありますけど平均的に考えたら、基本的にほぼ平等くらいにできていると思うのです」

 

「なるほど…ブリジールは皆のアイドル的存在なのかもしれない」

 

「あ、アイドル?ちょ、ちょっと照れるのです…」

 

 はにかみながら、顔を軽く赤面させるブリジール。声のせいも相まって、ギャップ的な可愛さが存在していた。グランも、心の中で親指を立てていた。主にサムズアップ的な意味合いでの。

 

「でもまぁ、そうやって誰かのために動けるというのはとても素晴らしいし、俺はいいと思うよ」

 

「そう、そうですか?」

 

「うん、まぁこの団だと基本的に皆誰かの手伝いしてるっぽいけど、それでもブリジール並に誰かの手伝いをしている人なんて全然いないよ」

 

「え、えへへ…」

 

「さて、一応解決したっぽいので2通目行きましょう。『自炊するのですか?』

 ブリジールって確か、ご飯作れたよね」

 

「なのです、騎士団では自炊係をしていたのです」

 

 あまり話題にならないが、ブリジールも料理を嗜んでいる。こちらもかなり美味しい料理なのだが、ハーヴィンでは料理をするのがキッチンの高さ的に難しいのか、あまりしているところを見たことがない。無論、料理人のエルメラウラは例外としているが。

 

「ハーヴィン用のキッチン作るか」

 

「えっ!?急にどうしたのです!?」

 

「いや、作れるならもっと作る機会増やした方がいいかなと思って」

 

「大丈夫なのですよ?ただちょっと、こちらの体力の問題といいますか……」

 

「あぁ……」

 

 そもそも忘れてはならないのが、この団に居る料理人の中には依頼を終えて帰ってきてから、料理を作る者達もいる。その依頼は、基本的に魔物退治のことを指しているのだが、そんなことをする猛者がいるのでブリジールが自分の体力を低く見ているのだ。高いかどうかは別として。

 

「でもまぁ、キッチンたまに使う時台を使ってるでしょ?それはさすがにどうかなと思うわけで」

 

「まぁ…台を使わずに済むのなら、確かに楽に調理できると思うのです…けど、それはきっと楽な道にただ逃げてるだけなのです」

 

「ブリジール……」

 

「私は作られても、恐らく普通のキッチンを使うのです」

 

「そこまで覚悟が決まっていたなんて……しょうがない、キッチンの件はまた検討しておこう」

 

「はい、ありがとうございますなのです」

 

 ブリジールの懇親の笑顔が、グランの心にグサリと刺さる。眩しい笑顔が邪な心を浄化しているかのような、そんな眩しさを誇っている笑顔だった。

 

「ブリジールって大人のお姉さんだよね」

 

「なのです、これでも20歳は超えてるのです」

 

『ハーヴィンという種族をこれほどまでに生かしたギャップが他にあっただろうか、アルルメイヤがいたわ』とグランは思った。その後心の中でアルルメイヤに謝罪をしながら、次の話に移ろうとする。

 

「さて、最後の1通、三通目…『コーデリアさんとは仲がいいんですか?』」

 

「なのです、同期の仲なのです」

 

「いつも仲良さそうにしてるもんね」

 

「です、コーデリアちゃんはとても優しくていい人なのです」

 

 コーデリアの話題を出すのが嬉しいのか、ブリジールは満点の笑顔を向けていた。仲がいいのは、周知の事実だが同期というのはリュミエール聖騎士団員達と、グラン達ぐらいしか知っていない情報だろう。

 

「コーデリアの方はいつもブリジールのやることなすことに目を光らせてるけどね」

 

「そうなのです?」

 

「凄いよ、うん」

 

 正確にはブリジール本人ではなく、ブリジールに近づく者達に対して目を光らせているのだが。ブリジールは、あまり人を疑うことはしない上に、直ぐに信じてしまう癖がある。その上怒鳴られたら驚いてしまうため、チンピラとかに絡まれたらとても大変なことになってしまう。

 時折そういうことが起こってしまうので、コーデリアは目を光らせて観察していることが多いようだ。

 

「コーデリアちゃんは私の事になると、途端に大袈裟になるのです」

 

「いやぁ、多分大袈裟じゃないと思うなぁ」

 

「私はこれでも…元…聖騎士団の一員なのです、そんな簡単にやられたりしないのです」

 

 元の所だけ小さく呟いて、ブリジールはすぐにグランに向き直る。きっちり聞こえているので、何ら問題は無い。

 

「じゃあ俺が今から言うことやることにNOを叩きつけてみて」

 

「はいなのです」

 

「うん、じゃあまずは飴ちゃんあげる」

 

「わーい、なのです」

 

 そのまま飴を受け取って、懐にしまうブリジール。既に言われたことを達成できていないのだが、それに気づいていないのかワクワクと緊張がおりまぜになった表情をグランに向けていた。

 

「ブリジール、ブリジール」

 

「?」

 

 念のために確認を取ろうとしたが、ブリジールは名前を呼ぶとキョトンとした顔をしていた。『あ、これ本当に気づいてないパターンだ』とグランも完全に気づいて、1度この話題を区切った方がいいと確信した。

 

「そろそろ時間だし、続きは後でやろうか」

 

「あ、はい、分かったのです!!」

 

 ブリジールは何も疑うことなく、純粋にグランの言葉を受け入れていた。『終わったらネタばらしをしよう』と、グランは考えていた。無論、その時の反応がどうなるのかというのが彼はとても気になってしょうがないのだが。

 

「と、というわけでご視聴ありがとうございます。また次回この番組でお会いしましょう」

 

 お決まりの言葉を言ってから、カメラの電源を落とす。その後、ブリジールと一緒に部屋を出ながら、どうやってブリジールにこの簡単なゲームをクリアさせるか…むしろその方に躍起になっているのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……」

 

「…?ブリジール、どうしたんだい元気がないじゃないか」

 

 撮影からそれなりに月日が経ったある日、ブリジールは船の甲板で黄昏ていた。そこに、コーデリアが声をかけていた。

 

「コーデリアちゃん……実は、体重が増えていたのです」

 

「体重が…なるほど……」

 

「でも、理由が全く分からないのです……」

 

 コーデリアは知っていた。ブリジールが太ったのは、団長であるグランが事ある事に、飴やらパンケーキやらをブリジールに食べさせているのだ。

 番組内で行われていた例の遊び、あれは未だに続いておりその度にグランはブリジールに甘いものを食べさせていたのだ。

 

「何故……」

 

「…何故だろうな」

 

 コーデリアは、どちらを怒るべきか悩んでいた。太った理由が理由なため、グランを叱るべきなのだろうが……甘いものの食べすぎで太っていることも伝えるべきなのかというのも考えているのだ。

 

「とりあえず、動かないと痩せられないのです」

 

「そうだな、私も手伝おう」

 

 そしてコーデリアが取った選択肢は、『助言はしない』ということだった。彼女もまた、ブリジールの純粋性ではいずれ危ない目に遭うと知っているのだ。

 

「……まぁ、それはそれとして団長とは1度話し合わなければならないのかもしれないな…」

 

「コーデリアちゃん?どうしたんです?」

 

「いいや、何でもないさ」

 

「ふふ、とりあえず一緒に雑巾がけするのです!」

 

「足腰を鍛えるには丁度良さそうだ」

 

 友人として、そして仲間として……コーデリアはブリジールのサポートをするだろう。とりあえず、最近騙そうとする度に出てくるものの料理が派手になっていくグランは、1度きっちりと話し合っておくべきだと思いながら、コーデリアは腰に帯刀している剣を構えるのであった。




SR化して……


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シークレットナイト、正義を問うか?

「今回のゲストは、リュミエール聖騎士団遊撃隊最後の切り札こと、コーデリアさんです」

 

「よろしく頼む」

 

「一応言っておいて欲しいとの事なので言いますが、彼女は女性なのでそこのところよろしくゥ!!」

 

「ありがとう団長、しかしそこまでメインで発表するとは思わなかったよ」

 

 凛々しい顔で少し微笑みながら、コーデリアはグランに少し注意を入れる。女性だが、可愛いと言うよりも凛々しさが勝っているために、イケメンという言葉がよく似合っている女性である。

 

「さて、ここで紹介の際に行った『遊撃隊って何?』って人もいるかもしれないので、紹介しましょう」

 

「遊撃隊というのは、大まかに言えば主力部隊の補佐をする部隊でね。情報収集は勿論のこと、場合によっては工作員のようなことも行う。戦闘の際には、哨戒や撹乱なども行う部隊のことを指すんだ」

 

「という事らしい……やること多くない?」

 

「まぁね、サポートというのは元来やる事が多いのさ……まぁ私の場合、正義審問を行う立場もある」

 

「シャルロッテが倒れた時のとかね」

 

 正義審問、簡単に言えばリュミエール聖騎士団の者にちゃんと正義が自分の中にあるかを問うものである。と、簡単に言えば楽そうだが場合によっては剣を抜く場合もある……どころか、基本剣を抜く羽目になる。何せ、そのようなことになっている時点でリュミエール聖騎士団から疑われているということになるのだから。

 

「しかし、正義審問って名前は堅苦しいイメージがあるけど、結構やっていることは物騒だよね」

 

「まぁ、上から疑われているとなるのだから物騒なのも当たり前だと思うけどね」

 

「確かに……前の時の理由は何だったっけ」

 

「リュミエール聖騎士団を抜ける者が多いので、示しが付かなくなってきた。だからちょっと聞いてこい……という理由だったかな、簡単に言えば」

 

「まぁ普通そうなるよね……普通考えたら、頻繁にポンポン人が抜けるような騎士団って、人からあんまりいい印象持たれなさそうって思う」

 

「上の方もそう考えたのだろう。その上、抜けたのがリュミエール聖騎士団団長なのだから、尚更だ」

 

 そんな事態になっているのに、あまり重要な扱いをされてないあたり、上層部はあまり好かれていないのではないだろうか…とグランはふと思った。それを察したのか、コーデリアはただ1度だけ頷くだけだった。

 

「とまぁ、やることが多くて仕事で疲れてるコーデリアさんに対して、お便りの発表を行います」

 

「こういう事をやっていても、多少の息抜きにはなるのでね……頼らせてもらうよ、団長」

 

「ご期待に応えられるように頑張るぞい……1通目『女性相手の仕事が多いのですか?』」

 

「あぁ多いよ。特に、私のような見た目だと女性に好かれやすいらしくてね。私自身が女性ということもあって、喜ぶ手段が男性よりわかりやすいだろうと言う判断さ」

 

「まぁ理論的にはわかるし、筋も通ってるんだけどさ……」

 

「何だい?」

 

「普通そういうのって、優先的に男に回しそうなもんだよね。いなかったの?」

 

「さぁね、私に回ってきたということは、上層部のお眼鏡に叶うようなものはいなかった……ということじゃないかな?」

 

 リュミエール聖騎士団の男性諸君が、グランはとても不憫に思えた。いや、恐らくコーデリアがいる時点で回ってくるのは明白なのでもしかしたらイケメンがいるかもしれないが。

 

「そもそも上層部がどういう構成してるのやら……」

 

「それは残念だが、流石に言えない。この場だと結構口がゆるくなってしまいかねないけどね」

 

 少しだけ微笑みながら、コーデリアは自分の指をグランに軽く押し当てて、言えないという意思表示をする。こんなことをされたら、確かに女性達は堕ちるのが分かると、グランは理解した。

 

「そういうのされるとギャップで惚れるぞ」

 

「…ふふ、そういうのは冗談でも言うべきじゃないよ」

 

 少し間があったことに、グランは気づいていなかった。そこまで間がなかったからかもしれないが。

 

「とりあえず、2通目を頼むよ」

 

「ほいさ……『趣味は何ですか』」

 

「…あまり口外したくないな」

 

「俺は知ってるんですけどね、まぁ本人が言いたくないと言っても言えないようなことが趣味ってわけじゃないですよ。ただ言うのが本人の性格的に言えないって話なだけで」

 

「まぁ、そのくらいしか言えないとだけ言っておこう」

 

 彼女の趣味は、所謂乙女趣味と言うやつである。別に隠している訳では無いが、彼女の性格が何となくその趣味のことを話したがらないと言うだけの話である。

 

「ブリジールに私が可愛いと言われるのは、そこが由来なのかもしれない」

 

「そういう時は『お前の方が可愛い』とかなんとか言ってやりな」

 

「それをブリジールに言うと、他の女性と同じように勘違いして…いや、ブリジールならいつもの私だと流すか…?」

 

 本気で考え込み始めるコーデリア。ブリジールの事になると、いつもこうなるのかとグランは思った。しかし、よく考えてみればブリジールと長い付き合いなので、心のどこかで過保護なものが芽生えているのかもしれない。実際、見てないと何が起こるかわからないのだから。

 

「おーい、コーデリアさんやー」

 

「っと……すまない、考え込んでしまった」

 

「正直見てたらかなり心配になるのは分かるけど、今は番組を進行させるんで、思考の切り替えお願いしまーす」

 

「……すまない、いやほんとに」

 

「ってわけで三通目『コーデリアちゃん、どうしていつも心配してくれるのです?』ブリジールから」

 

「逆にブリジールを知っているものからすれば、何故君が心配にならないと思わない?」

 

 実際その通りである。一日十善、その行いのために彼女は街に出ては人を助けるために一生懸命である。

 しかし、人を助けるその行動の合間合間で不幸に見舞われているような、もしくはドジを踏んでいるような、そんなことが起こっている気がしてならないのだ。

 

「とりあえずチンピラを追いかけては、怒鳴られて驚いてるをやってる気がする」

 

「最近は、チンピラ程度だと驚かなくなってきたけどね…」

 

「まぁ最近、誰をどうチーム分けするか…って言うのを分かってきたから…最近というか、メンバーが一気に増えた辺りから」

 

「いつからだろうな、急激に仲間が増えるようになったのは」

 

「夢で緑の恐竜が現れた時くらいかな…最近は赤いモッp」

 

「団長、何を言ってるのかわからないが……モップではなくおそらく雪男だ、どんな見た目をしているのかは知らないが」

 

 そんな夢の話は頭の隅に置いておき、グランは最近よくブリジールと組んでいる…というか組ませている者達を想起していた。

 まずはクムユだ、肝っ玉担当。ブリジールと同じように、仲間になった当初はビビりだった……が、今はなんとか肝っ玉になりつつある。そこを利用して、ブリジールに年上の威厳を見させてやるという気持ちにさせるのだ。

 次にスフラマール先生だ、大人の余裕しかない。同じハーヴィンなので、コミュニケーションが取れやすいとも言える。

 そして最後に、レスラーの格好をしたグランだ。ただ黙って後ろからついて行くだけの存在、スフラマール先生以外の2人からは怖がられている。

 

「レスラーってこういう時便利だよね」

 

「あれに後ろに立たれるのは心臓に悪い」

 

「そんな怖い顔してる?」

 

「団長、どんな恐ろしい顔よりも真顔で無言なのが1番怖いんだ」

 

 どこかで経験があるのか、コーデリアは迫真の顔でそうグランに諭していた。グランはコーデリアの後ろに立った記憶がなかったが、何故か自分が原因のような気がしていた。

 

「さて、話を戻そう……そうやって組ませてくれる間はいいが、何かしらの用事や体調不良でブリジールが前に出る、または1人になる場合がある」

 

「そういった時に、心配でついて行くんだね……後ろから」

 

「あぁ、別にそんな時だけという訳では無いが」

 

「えっ」

 

「あっ」

 

 闇を垣間見た気がしたので、グランはこの話を即座に終わらせた方がいいと判断した。時すでに遅しと言うべきか、口から出た言葉は他人が知るまで二度と戻ってこないと言うべきか……今のでコーデリアの印象が恐らく180度くらい変わってそうだ。

 

「……まぁ、話題の転換も何ももう時間なんですけどね」

 

「……そうか、もうそんな時間なのか」

 

「というわけで皆さんご視聴ありがとうございます。次回またこの番組でお会いしましょう……ではまた」

 

 そしてカメラの電源が落とされる。そして、直後にコーデリアがテーブルに突っ伏していた。

 だが、そんな時である。突如扉が大きく開かれたのだ。

 

「大変です団長さん!!」

 

「リーシャ!?どうしたんだ!?」

 

「ブリジールさんがこの島の1番大きなマフィア組織に絡まれてます!!」

 

「どうしてそんな事に!?船にいてコーデリアのを見るって言ってたよな!?」

 

「その前に買い物に行って、飲み物片手に真剣に見ようとしていたらしいんです。しかし、途中でお婆さんが困っていてそれを助けていたら、マフィアの下っ端に絡まれてしまったらしいんです」

 

 ちなみにこの説明を行っている時点で、コーデリアは既にいなくなっているのだがそのことに2人は全く気がついていなかった。

 

「その光景を目撃したランドルさんが、マフィアとの喧嘩に発展したらしいです。しかし、それを偶然見かけてしまったフェザーさんが入ってきて状況はさらに悪化」

 

「……」

 

「下っ端が上の者を呼び、さらに呼んで言って…今じゃあマフィア側は数百人いる状態です」

 

「えっと、ここにリーシャがいる理由と……ブリジールがいない理由を…」

 

「ブリジールさんは『自分が原因だから』と残ってます、数が多いので驚いていましたが、一人一人の戦闘力はそこまででもないのでブリジールさんも普通になぎ倒していってました。

 私がいる理由は、同じように参戦しようと思ったのですがブリジールさんにいい顔で『団長さんを呼んで欲しい』と言われました」

 

「まぁ、何だかんだブリジールもかなり強くなってるもんね…」

 

 状況が混沌としているせいで、ブリジール連れて帰ってきた方が良かったのではないか?と思わなくもなかったが、しかしまぁさっさと迎えに行った方がいいと思い、グランもさっさと準備を行い始める。

 

「…ん?ランドル、フェザー、ブリジールの3人だけ?」

 

「いえ、カリオストロさんにソリッズさん…ブローティアさんにアテナさん、サラーサさんにエッセルさんとカトルさんもいます」

 

「なんだその過剰戦力!!マフィア側が全滅なんてルート決められたら、とっても面倒なことになるじゃないか!!」

 

 さっきまでブリジールの心配をしていたが、この明らかなまでの過剰戦力を聞かされたらブリジールよりもマフィア側が心配になってしまう。

 皆、誰かを殺すようなことは無いと信じてはいるが、人間がアリと遊んで殺さないなんてなかなか稀である。というか、追いかけてくる奴らにマフィアが追加されるのが恐ろしく面倒なだけである。

 

「とりあえずさっさと行こう!!」

 

「はい!!」

 

 因みに、向かった先では既に全滅させられていたので、仕方なくグランはボロボロのマフィアのボスと『お話』することで追いかけられずに済むようになったのであった。

 その後、全員で戦闘場所の補修作業に入ったのだが……

 

「…そう言えば、コーデリアは?ブリジールは?」

 

「ブリジールなら、私が連れて帰ったよ」

 

「コーデリア…いたのか……」

 

「先程ブリジールをこの場所から離してグランサイファーに連れて帰っていたのさ。そして、団長が入れ替わりでここに来たというものだからまた来た…という話さ。

 私も補修作業、手伝うよ」

 

 手伝われることは嬉しいが、グランが全速力を出してもここに来るのに数分はかかるというのに、コーデリアはどのくらい速度が出ていたんだろうか…そう思ったが、グランは聞く気も起きなかったので……そのまま一緒に戦闘場所の補修作業に入ったのであった。




もっと2人でイチャコラして欲しい


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義に篤くお嬢様想いの老紳士、潔くお逝きになってはどうです?

「今回のゲストはセワスチアンさんです」

 

「はっはっは、この老獪を出してくれるとは嬉しいですよ」

 

「自分のことを老獪って言う人は、多分まだまだ元気じゃないかな」

 

「団長さんも、だいぶ毒されていますね」

 

 この団には子供も多いが、逆に老人が少ないという訳では無い。寧ろ老人も子供と同じくらいに多いのだ。セワスチアンもその一人だが、グランは元気な老人の姿ばかり見てるので感覚が麻痺していた。

 

「さて、セワスチアンはリュミエールでも屈指の料理人。有名なリュミエールグルメを作ることの出来る1人なわけで」

 

「特殊なことは何もしておりませんよ、ただ技術のみなのでこの団でもレベルを上げることが出来れば、作ることが可能なものです」

 

「少なくとも、食材の栄養素を200%引き出せるなんて料理はとんでもない練習量を積まないとできないのでは……?」

 

「どんな事も簡単にはできません、練習を積んでこそ出来るものばかりなのです。今我々が地に足をついて歩いていられるのも、赤子の時に練習したおかげなのですよ」

 

 ほっほっほと、笑いながら語るセワスチアン。言っていることは、グランは理解もできるし納得もできるが、この団にいる数々の料理人達ですらまだその領域に達していないのだから、とんでもない練習量があるのはその通りだと思っていた。事実、セワスチアンは練習量が多いことは否定していないのだから。

 

「元々は荒れてたんだって?」

 

「ええ、まぁその通りでございます。若い頃はそれはもう荒れに荒れておりました。まぁ、私が若い頃の話ですよ……それに、その時や今と比べても多少『行き過ぎた時代』という物もございました」

 

 過去、リュミエール聖騎士団は『清く、正しく、高潔に』というモットーが行き過ぎた時があった。本人の素行だけでなく、血縁者の素行までも調べあげていたのだ。駄目なら、もちろんその者は退団である。

 

「まぁ、あまり湿っぽい話は無しに致しましょう」

 

「そうだね……そう言えば、シャルロッテとは彼女がリュミエール聖騎士団に入る前からの付き合いなんだよね」

 

「えぇ、まぁ。お嬢様が小さい頃からの付き合いでございます。料理も、その時に培ったもので御座います」

 

「もしかしてシャルロッテも料理が出来る?」

 

「はてさて、彼女は剣を握ることを選んだのです。料理が出来るかどうかは、考えたこともございませんでしたな」

 

 知らないという事実か、それとも知っていて誤魔化しているのか。老獪と自分で言う部分を見せてきたセワスチアンだが、これに関しては本人に聞けばいいので、グランはそれ以上の追求を行わなかった。

 

「さて、お便りに行ってみましょう」

 

「ほほ、楽しみですよ」

 

「1通目『今でも剣は使えるんですか?』料理をしているところをよく見るからこそ、この質問なのかもね」

 

「勿論でございます。握れなければ、騎士ではなく給仕係と何ら変わりませんからな」

 

「ただの給仕係は、国の式典に自分の料理を出すとは思えないんだけど」

 

「確かに、その通りでございます。まぁあくまでもものの例えですよ」

 

 事実、剣を握れば恐ろしく強い。剣が重いという類ではなく、技術面において器用な剣の動かし方をするのだ。

 ただ一撃が重いという事よりも、ある意味厄介なものである。

 

「ま、セワスチアンは剣は握れるし凄く強い……って結論になるね」

 

「団長さんには敵いませんよ」

 

 本心なのだろうが、グランからしてみればセワスチアンは実力を隠しているような気がして、しょうがないのだ。

 

「まぁいいや……とりあえず2通目『お子様ランチはよく作るのですか』」

 

「そうでございますね……お嬢様の分ではよく作ります。ここに入る前に行っていた『ゲリラ炊き出し』でも、器さえ足りていれば子供たちに振舞ったりもしていましたよ」

 

「ゲリラ炊き出し……?」

 

「突発的に、村や町で炊き出しを行うのです。ご飯を食べれば、皆笑顔で元気になる……その顔を見るのが楽しくてしょうがないのですよ」

 

「清く、正しく、高潔に……モットーが綺麗だから純粋に人の為に動けるんだね。凄いと思うよ」

 

「人の為に自らを捨てる覚悟で動ける団長さんも、中々のものだと思いますけどね」

 

「俺はまだ若造だしね、突っ走ることしか出来てないよ」

 

 グランの回答に、セワスチアンは頬を緩ませて笑みを浮かべているだけだった。まるで、お爺さんが孫を眺めているようなそんな表情である。

 

「……その表情を見ると、こうなんかモヤッとする」

 

「それは恐らく、お嬢様と同じような気持ちでしょうな」

 

「お嬢様というと……シャルロッテ……?」

 

 シャルロッテとなると……という感じに連想ゲームを始めるグラン。そこまで長い時間思考するのも駄目なので、素早く頭を回転させる。そのおかげで直ぐに答えに行き着く。

 

「あぁ、これが子供扱いされた時の気持ちか……」

 

「まぁ、お嬢様は本当に成人していらっしゃいますが、団長殿は実際未だ子供ですがね」

 

「うぐっ……確かにまだ20にもなってないひよっこだけど……」

 

「しかし、実力はかなりのものです。恐らくこの団にいる強者達も、あなたの歳ではまだ貴方並に強くなかったでしょう」

 

「なんか、褒められてんだか褒められてないんだか分からない……でもまぁ、そうやって褒められたら嬉しいややっぱり」

 

「ふふ」

 

『そういった素直さが、子供の様に好感が持てる』とセワスチアンは内心思っていた。が、これを口に出すとまた変に拗ねる可能性があったので、これ以上は特に触れることもなかった。

 

「その笑みでまた何か考えてそうだけど……何か会話が泥沼になりそうだから、切り上げておこう。

 じゃあ、三通目行ってみようか。『騎士の鎧は使わないのですか?』そう言えば、スーツというか……執事が着るような服きてるよね」

 

「あくまでも、お嬢様の執事ですからな。リュミエール聖騎士団の騎士でもありますが、それ以上に執事……いや、爺やでいたいのですよ。

 それに、鎧は纏わなくても戦うことは可能ですからな」

 

 グランにも思い当たることがあった。最近使ってるジョブの中にも、鎧を使わないジョブが多くなってきているような……そんな気がするからだ。

 

「もしかして、鎧って強くなっていくと着なくなってくる……?」

 

「どうでしょうねぇ……『殴られる前に殴る』と『肉を切らせて骨を断つ』という2つの戦法が主なものですが、そのうち後者をメインで使う者は、さすがに鎧が必要になってくるでしょう」

 

「セワスチアンは……まぁ前者だよね」

 

「お嬢様もですな」

 

 シャルロッテ、というよりもハーヴィン全体がそのような傾向にあるだろう。一応、鎧をつけているハーヴィンもいるが軽装だったりする。それこそ、ブリジールなどがいい例である。

 但し、何事にも例外は存在するのだ。

 

「そう言えば……エルーンも軽装が多いような……」

 

「さすがにそれは気の所為で御座いましょう、鎧を付けているものも多い。ただ、この団には先程申した2通りの戦い方の内、前者を主にしている者が多いというだけでございましょう」

 

「そういうものか」

 

 そもそもエルーンの服装が、背中と脇がガッツリ空いているものが多いので、元々布面積がヒューマンの半分以下というのもざらである。

 とんでもないレベルになると、最初の出会った頃のユエルなどになってくるが。

 

「さて、そろそろお時間ではございませんか?」

 

「んー、ちょっと早い気もするけど……いや、中途半端な時間になるよりマシなのかもしれない」

 

「では、最後におひとつよろしいですかな?」

 

「珍しい……一体何事」

 

「お嬢様との事です」

 

「何も、おかしな関係にはなっておりませぬが……」

 

「いえいえ、ただ……私、誠に申し訳ありませんがお嬢様が本当に悲しんでいる時に、少々我を忘れてしまうことがありまして」

 

 グランは冷や汗をかいていた。セワスチアンが言わんとしていることは、ちゃんと彼に通じていた。通じているからこそ、グランは下手なことが言えなくて腹に穴が空く思いをしていた。

 

「さて、話を戻しましょうか」

 

「はい」

 

「お嬢様が泣いている時、背中にはお気をつけください」

 

「はい」

 

「では、代わりに私が締めると致しましょう。皆さんご視聴ありがとうございました、またこの番組で団長殿とお会い出来ますよ。

 では、お元気で」

 

 そう言って、セワスチアンはテキパキとカメラの電源を落として、後片付けをして既に部屋から出るだけの状態に収めていた。その間、グランは顔が青を通り越して藍色に染まっていた。

 

「おやおや、随分と体調が悪そうですな」

 

「HAHAHA、そんなことないよ……うん、そんなことない」

 

 原因を生み出したのはどこのどなたやら、そんなツッコミを入れても目の前の自称老獪は、軽やかに流すだけだろう。故に、グランはこれ以上この話題を続けるのは不毛だと感じていたし、これ以上ここに居ると胃に穴があくどころかそれ以上のことが起こりかねないとさえ思っていた。

 

「さて、そう言えばそろそろご飯の時間ですな」

 

「あ、確かに」

 

「子供達もお腹を空かしていることでしょう、ついでにいつもの料理体験会をしますか」

 

「え、何そんなことしてんの」

 

「えぇ、まぁ。子供たちに料理の美味しさ、そして調理をすることの楽しさと同時に、危険性を学ぶにはいい機会ですからな」

 

 グランも、正直それに混ざりたかった。ただ、この場合の子供達というのは恐らく自分よりも年下……良くてクムユやアレクなどの年齢の子達になるだろう。

 よく考えたら、あの子達とそこまで年は変わらないのだ、この団長は。

 

「……料理ができる子供って、ヤイアとかだよね」

 

「そうですね、彼女はとても腕がいい。そして何より、料理にかける思いが違う……彼女もまた、リュミエールグルメを作ることが出来る逸材なのかもしれませんな」

 

「ヤイアのリュミエールグルメ……」

 

 彼女がいつも作るチャーハンのせいか、妄想してもチャーハンを作っている絵しか浮かんでこない辺り、相当なイメージがこびりついてしまっているように思える。

 実際問題、チャーハンをかなりの頻度で作っていることは間違いないのだが。

 

「団長殿も参加しますかな?」

 

「え、いいの?」

 

「えぇ、構いませんよ」

 

「なら参加する」

 

 突如、団内で開催されている料理体験会に参加することになったグラン。しかし、かれはまだとある事実に気づいていなかったのだ。

 主催者は、言わなくてもわかる通りセワスチアンである。そして、セワスチアンが定期的に開いている以上……それを教えられている子供たちの腕も、メキメキと育っているという事になるのだ。今、彼らがどのレベルにいるのかグランはまだ分かっていない。

 後日、そこには一心不乱に料理を作り続けてルリアやアーミラ、そしてレッドラックの胃袋に延々と料理を送り込ませるグランがいるのだが……それはまた別のお話。




グランサイファーに住んで延々味見係をしていたい人生だった


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リュミエールクライシス

 今グラン達はとある島に来ていた。というのも。この島で大型の魔物が現れたという話があったからだ。ついでに言うと、この島では過去人間達が争っていたという形跡があり、歴史的にもそこそこ価値のある場所である。

 何故そこそこと言ったか、それは価値がある以上にこの島では貧困が凄かったからだ。正確に言うならば、貧富の差というものがとても大きかったからだ。もっと言うならば、それを加速させているのは富裕層、そして加速させている結果貧民層の者達は20歳まで生きれば上等とされている。

 そんな中、その状況を改善しようと1人の少年が依頼を出した。依頼を出した時にかかる仲介料が本来発生するが、シェロカルテはそれを特別に無しとして密かにグラン達に依頼を回したのだ。極秘に回さないと、周りがうるさいというのもあるが。

 

「よーし、じゃあ作戦説明を各メンバー唱和開始」

 

 目の前にいるのは、リュミエール聖騎士団の者達。今回、やれる事が各自で違ってくる者達を連れてくる必要があったのだが、主な作戦をこのメンバーで行うことになった。

 

「自分は富裕層東地区の制圧であります」

 

「私は西地区ですね」

 

「んでもって俺が南と北担当、北に関しては終わった者が順次行うこと」

 

 富裕層、この島のこの村ではかなり小さな規模である。故に、1つの地区を制圧するのも1人で充分だと判断したのだ。

 因みに、富裕層は全員貧民層から無茶苦茶な労働などをさせているので、それで逮捕しまくるので制圧するのと何ら変わりない……故に制圧と言っているのだ。

 

「私は貧民層の街で炊き出しです、広いので先に出向いているグランサイファーキッチンメンツと合流して行う、そうですな」

 

「私も同様なのです」

 

「私はブリジールの警護だ」

 

 セワスチアン、そしてブリジールは貧民層で炊き出しである。しかし、貧民層は島の99%を占めているのでとても数人ではカバーできない。ひとまず、料理をひたすら作って貰うためにキッチンメンツも先にこの村に来ているのだ。

 

「んでもって、他のリュミエール以外のメンバーはいざと言う時のために待機。白竜騎士団と雷神卿も場合によってはこちらに参戦して手伝ってくれるので、その連絡は俺が向こうにいるルリアに何とかして送る」

 

「各々で問題が発生した場合は、各自握っている信号弾を発射…団内で高速で飛行が出来るものがその場に向かう……でしたな?団長殿」

 

 セワスチアンが確認を取り、グランは確認する。作戦開始まで少しあったので、疑問がある者がこの時間で質問する時間帯となった。

 

「私たち3人で足りるでしょうか?」

 

「そこん所は、頑張るしかない。あんまり大勢で来ると警戒されるかもしれんし、せいぜい富裕層の所に来て各自別れる程度がベストだと判断した」

 

「場合によっては、反抗されるかもしれないのであります。確認なのですが、その場合護衛は」

 

「殺さないで何とか倒せ。殺すと俺らがやってるのが本当に侵略と変わらないと判断される可能性もある」

 

「そう言えば…この島には司法は無いのです?」

 

「元々この島がやばいってのは、各国や他の島々も判断してたよ。けど、今まではのらりくらりとかわされていたのさ。国で駄目なら、個人で動くしかない……案外、依頼として出されたのは好都合だったかもな」

 

「というと……」

 

「俺らが、どの国にも属さない騎空団だったからだ。しかも、それなりに強いと評判で人数も多いと来た」

 

「つまり……あまりにもちょうど良かった、という事ですか」

 

「失敗しても縁切り尻尾としての役割ができるし、成功したら俺らに報酬丸々入る。そういう面で見ても、各国からはちょうど良かったのかもな」

 

 そうこうしてる間に、時間が来た。グランは時間を再度確認して、全員の作戦をもう一度確認させてから……この島そのもののシステムを破壊するために、動くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「誰だ貴様!!」

 

「自分はリュm……っと、今はただの騎士であります!!」

 

 国の名前を出すのは大いに不味かった。自分達が失敗するとは到底思えないが、不安の芽を消すためにシャルロッテはなるべくいつもの口上は言わないようにしていた。

 

「ふん!ハーヴィンの騎士なぞ恐るるに足りぬ!!衛兵!であえであえー!」

 

 その声とともに、どこからともなく大量の衛兵が現れる。この富裕層は、どうやらハーヴィンを舐め腐っているようだった。それに気づいたシャルロッテは、スっと落ち着いて傍目から見てもわかるほどに雰囲気を変える。

 

「ハーヴィンだから……それで舐めていては、負けるのは貴殿らの方でありますよ?」

 

「多少腕がたつようだが…自分の身長ほどもある大剣を、ハーヴィンが振り回せるはずがない、どうせこけおどしだ!やれ!!」

 

「「「うおおおおおおお!」」」

 

「仕方ないでありますね……」

 

 迫り来る衛兵たちに、シャルロッテは落ち着いたままである。そして、衛兵の1人が武器を振り上げた瞬間……()()()()()()()()()()()()

 1人目の武器を弾き、その瞬間剣で殴り飛ばす。そのせいで後ろにいた他の衛兵たちも何人か巻き添えで飛ばされて、その時点で気絶して終わり。そのまま自分を軸に武器を回転させて2人目の頭から剣で殴って気絶させる。

 その勢いで一気に移動して、同じように剣で殴りながら3人目、4人目と進んでいく。

 

「な、なんだこいつ……」

 

「この程度でありますか」

 

「ひぃぃぃぃぃいいいいいいい!?」

 

 10人ほどいた衛兵は、30秒も掛からずに全滅。文字通り『この程度』なのである。所詮、雇われ騎士なのだったらこの程度なのかもしれない。何せ、貧民層に脅しで使う程度でしか使ってこなかったのだから。

 

「さて、どうするでありますか?」

 

「て、抵抗しないから殺さないで!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、ご飯が出来ましたよ」

 

「わぁ…!お爺ちゃん!これ食べていいの!?」

 

「えぇ、どんどんお食べなさい」

 

 一方その頃、セワスチアンは貧民層の村で炊き出しを行っていた。最早料理対決を一人で行っているのか、と言うくらいに大量の調理器具を取り出して、その場で調理を行っていた。

 

「凄い…こんな食べ物見たことがない……」

 

「ほほ、遠慮しなくていいんですよ」

 

 

 子供たちと会話しながら、セワスチアンは作る料理を決めた。お粥である。何故お粥?という話になるだろうが、それは今の会話で子供達が具材の食料の事を『見たことがない』と言い放ったためである。

 食料もまともに見た事がないレベルとなると、あまり本腰を入れて作った料理を、胃が受けつけないかもしれない。となると、消化が早くて食べやすいお粥をベースに色々な味付けを行っていった方が、子供達のためになると判断したのだ。

 

「と、なると白米が大量に必要になりますね……」

 

 そう考え込むセワスチアン。信号弾に関しては、どんな些細なことでも使っていいとも言われているので、躊躇わずに打ち出そうとする……が、その前にセワスチアンの目の前に1人降りてくる人物がいた。

 

「その必要はないわ、セワスチアンさん」

 

「貴方は…十天衆のソーンさんでしたな」

 

 降りてきたのはソーンだった。全力で飛ばしてきたのか、その額には汗が浮かんでいた。それと一緒に、山積みになった袋詰めの白米も持ってきていた。

 

「今の話は全部聞かせてもらっていたわ、お米が必要なのよね?持ってきたわ」

 

「手際が良すぎて怖いくらいですな……しかし、貴方は耳がいいとは聞いたことがありませんが…?」

 

 そう、ソーンは魔眼を持っているがそれはとんでもないくらいの目の良さ…というものなのだ。それと同等の聴力を持つという話は、セワスチアンは聞いたことがなかった。

 

「セワスチアンさん、読唇術って知っているかしら?」

 

 なるほど、とセワスチアンは十天衆の規格外をこんな所で感じ取っていた。そして、同時に持ってきた大量の米を見て、これなら子供達の分どころか大人達の分までも補える…そう確信したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、グランサイファー全員で力を合わせるっていい事だね」

 

「そうなのです!」

 

「いやぁ…ブリジールは凄かったよ。大量に並べられた鍋を、一人で管理してとても美味しいスープを作っていた」

 

「私も、少々大人気ないところを見せてしまう程に…この島の富裕層に説教をしてしまいました」

 

 そして、依頼を完了した後に全員で打ち上げを行っていた。楽しそうに飲み食いしているのを見ながら、キッチンメンツも全力で楽しんでいた。

 

「あの富裕層達はどうなるのです?」

 

「違法なレベルでの税の徴収を行っていたみたいだし、見事に全員お縄さ」

 

「全員、秩序の騎空団に送られましたよ」

 

「お、リーシャ……仕事お疲れ様」

 

「ありがとうございます、それと貧民層の人達の為に各国が力を上げてあそこを発展させるようですよ」

 

「定期的に様子見に行かないとなぁ」

 

 そんないい感じのことを話しながら、グランはグランサイファーから島を見ていた。これからどのようにあの島が発展するのか、それを考えて少しだけ楽しみな感情と、安心感が入り交じっていた。

 

「団長殿、ローアイン殿がチャーハン作り対決を挑んできたので審査員をお願いできますか?」

 

「チャーハン……食べる!!」

 

 まぁ主な目的なヤイアのチャーハンを食べるためなのである。無論、それもバウタオーダも分かっているので、ヤイアのチャーハンに負けないようなチャーハンを作ることを心がけている。事実、彼はヤイアのチャーハンが自分のよりも美味いと思っているからだ。

 

「ふふ、グランサイファー内での幾度とない料理対決……今日こそは勝ってみましょう」

 

「カタリナが参加しないことを、祈っておいた方がいいと思うよ」

 

 参加させてしまったら、対決なんてかなったものでは無い。そこは他のメンバーが何とかして、彼女を遠ざけてくれる事を祈っておくしかないのだ。

 

「あ、具材…というか食材残ってる?依頼で大半使い果たしたような…」

 

「ご心配なく、シェロカルテ殿がいい売り場を紹介してくれまして……そこで購入していこうと考えております」

 

「よし、許した。というわけで早速美味しい美味しいご飯対決といこうじゃないか」

 

「えぇ、絶対に負けるわけにはいきません……審査員として誘った私が言うのもなんですが、団長殿は参加しないのですか?」

 

「いやぁ、俺はいいよ」

 

 ぶっちゃけ、自分の腕も食べられるほどのものではあると思っているグラン。しかし、相手が相手なので勝てる気がしないというのが本音である。

 料理を副業または本業として行なってきた者たちに、せいぜい飯食えたらいいわ程度でしか料理を嗜んでこなかったグランが勝てるとは、彼自身思っていないのだ。

 後、セワスチアン参加するので100%勝てる気がしないということもある。

 

「なるほど、では参りましょうか」

 

「はーい」

 

 その後、チャーハン対決は盛り上がりに盛り上がった後、サプライズとしていつの間にか作っていたカタリナのチャーハンを、彼は団長権限で全部食べたのであった。




書いてから気づいたんですけど
今回リーシャが真面目なんですよね


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スピアナイト、突進しかないのか?

「本日のゲストはデリフォードさんです」

 

「よ、よろしく頼む…痛っ……」

 

「……筋肉痛?」

 

「き、昨日の依頼で…」

 

「昨日の依頼、キツかったもんな」

 

「後で、カリオストロが薬師達と一緒に作った湿布あげるから、それ貼って…」

 

「もう貼ってある……」

 

「……」

 

 黒い鎧に身を包んでいるデリフォード。湿布を貼っていながらも、筋肉痛に悩まされるその姿はグランには妙に他人ごとのように思えない節があった。

 

「……えぇ、はい。見てわかるけどデリフォード筋肉痛らしいので、ササッといきましょう」

 

「おじさんでもおっさんでもないのだ……これでもまだお兄さんなのだ……」

 

「30代でその言い訳はちょっときつい」

 

「えっ」

 

 団内でも、おっさんまたはおじさん呼びを嫌う人物はいる。わかりやすい例としてアルベールが挙げられるが、彼は一応まだ20代後半という括りにすることが出来る。

 しかし、完全な30代は流石にお兄さんで通すことは難しい様に思えている。

 

「いやいや、30代でもまだまだ頑張れる。40代からなのだおじさんというのは……」

 

「40代になっても、同じこと言ってないって自信はありますか」

 

「……言ってそうだなぁ、私」

 

「でもほら、自分がお兄さんだと思える時が1番お兄さんなんだよ」

 

「……なるほど、自分の最盛期は自分で決めるか」

 

「うん、まぁそんな感じじゃないかな」

 

 何故か意味が通じているこの会話。グランもフォローしたまではいいが、彼本人も30代はおじさんだと思っている。

 

「ならば、私は未来永劫お兄さんだ」

 

「……」

 

 妙にロゼッタが言いそうなことを言っている、とグランは思った。背中に植物の棘が飛んできて刺さったが、血は出てないので良しとしよう。

 

「未来永劫はちょっと…」

 

「なぬっ!?」

 

「まぁ、うん……そういう人がいてもいいんじゃないかな」

 

「……やはりカリオストロ殿に頼んで美少女にしてもらうか…?」

 

「え、何そんなこと言われてんの!?」

 

 今までの会話から、突然飛び起きたかのようにデリフォードに詰寄るグラン。一応絡みがあったことはグランも知っているが、そのような会話をしているとは驚きだったのだ。

 

「あぁ…錬金術師の一件の時にな」

 

「はぇー…あぁ、クラリスの両親助けに行った時か」

 

「そう、あの時にカリオストロ殿に言われたのだ。『錬金術で作った体になれば、筋肉痛に悩まされない』と。ただ、美少女限定だと言われてしまったのだ」

 

「カリオストロらしい気の利かせ方だ」

 

 団を辞めたデリフォードに対して、あの時のカリオストロは妙に敵意を抱いていた。気を利かせる事は、それが理由でありえないと思っていたが…筋肉痛を解消する代わりに、美少女の体になるなんていう捻くれた気の利かせ方をするのはカリオストロらしいと言える。

 

「って、あんまり世間話してる訳にはいかないや」

 

「お便りだったな」

 

「はい、大量に届いております。1通目『帝国兵って辞めても問題ないんですか』」

 

「退職金は出ないが…まぁ私には仕事と割り切って、子供を襲おうとする事は出来なかった、という話か。それに、私が辞めたところで帝国にはあまり痛手になっていないだろう」

 

「言っちゃあなんだけど…1兵士だもんね」

 

「それこそ、リュミエール聖騎士団の様な状況にでもなれば、相当な痛手なのだろうが…」

 

 元帝国兵で、一番位が高いのはグランの知る限りカタリナである。しかし、辞めた人達は軒並み裏切り者となってはいるが……

 

「よく考えたらさ、デリフォードって辞めたんじゃなくて…」

 

「…うむ、上司と折り合いがつかず解雇されている…」

 

「かっこいいこと言ったのはすごいと思う」

 

「いや、私だけ解雇されて職場がないから着いてきた、じゃあ示しがつかないと…」

 

 そう、デリフォードはグラン達とあった時既に帝国兵では無かったのだ。ではなんだったのかと言うと、仕事を探すことに翻弄している30代の男である。

 

「まぁ、夢は見るべきだけど見栄は張らない方が…」

 

「な、何故だかわからんが今日は団長がやけに辛辣なように思える……」

 

「さ、2通目行こうか。『槍の名手と言われているのは本当ですか?』」

 

「あぁ、百人将ダリルとゼシード…我ら3人は同期なのだが、何かしら噂されたものだよ」

 

「ゼシードって、一時期上司だった人だよね……」

 

「我ら3人、貴族の出でもなければ学があるわけでもない。この身一つで兵士となりのし上がってきた身なのだ」

 

 ゼシードと百人将ダリル。共にデリフォードの旧友だが、一時期デリフォードが帝国軍に戻る際に二人とも口添えをしてくれた人物である。だが、結局仲違いしてグランサイファーに戻ってきたのだが。

 

「けど、お給料は向こうの方が良かったんでしょ?」

 

「……まぁ、その辺りはどうとでもなる。それに、帝国軍と違ってこちらはのびのびと過ごせるのだから一長一短だ」

 

 時折帝国兵がやめたりしているのは、軍がキツすぎるからでは無いだろうか…と思うのはグランの勝手な妄想である。しかし、カタリナはともかくとしてもユーリやファラが辞めているところを見ると、明らかに帝国兵という立場の優先順位が低すぎる気がしなくもない。

 

「まぁ、俺はデリフォードの意志に従うよ。無理強いさせるわけでもなんでもないからね」

 

「けど、槍かぁ…」

 

「団長も使えるだろう?それも、私と同等に……いや、なんなら同等以上か」

 

「まぁ周りから教えられて覚えていってるからね……おかげでごちゃ混ぜになった我流の槍術だし」

 

「我流でいいのだ、他人の技を教えてもらったとしても、それを自分の技に昇華できなければ意味がない」

 

「教えてもらわなければ意味が無い、かぁ…」

 

「どうした?」

 

「いや、なるほどと思ってさ。確かにその通りかもしれないね」

 

「納得して貰えると、こちらも嬉しくなるな」

 

 デリフォードはニコニコと微笑みながら、グランを見ていた。まるで親が子供を見るかのような視線だが、そういうのを含めておっさんとかおじさんとか言われるのではないだろうか……とふと考えてしまっていた。

 

「……」

 

「団長?どうした?」

 

「いや、デリフォードって結婚してるんだよね?って思って」

 

「あ、あぁ…結婚してるが……」

 

「奥さん大事にね…」

 

「あ、あぁ……」

 

 何故か年下に妻を大事にしろと言われる始末。デリフォードは訳が分からず混乱していた。色んな意味で。

 

「さて三通目『鎧を脱げば筋肉痛もマシになるんじゃないですか?』」

 

「……?これは、どういう…」

 

「慣れてて忘れてるかもしれないけどさ、鎧って重たいんだよ」

 

「あぁ、それは知って……なるほど、脱げばその重さが無くなる分筋肉の疲労も少なくなるということか……」

 

「多分そういうことなんだろうね」

 

 帝国軍に復帰前の彼の鎧は、丸みが目立つ銀の鎧だった。そして彼は、片手に槍もう片方の手には大きな盾を持って戦闘行動を行う。鎧よりも、大きな槍と盾が筋肉痛の原因という可能性もある。

 

「……いやしかし、私はこちらの戦い方で慣れきってしまってるからな」

 

「変えるとなると、ヘルエスみたいに綺麗に回しながら回避しつつ突くって戦法になるのかな?」

 

「……私には難しそうだ」

 

「いっその事羅生門研究所で、自動防御してくれる盾でも作ってもらう?」

 

「やるやらないより、そこまで行くと純粋な好奇心で見たくなるな…」

 

「多分羅生門研究所なら作れる気がする」

 

 防御を捨てる戦法は、どうやらデリフォードにはまだ難しいようだ。そもそも30代なので、避けて戦う戦法を若い時から身につけておかないと、今更そんな戦法に鞍替えしたところで全く育たずに終わってしまうだろう。

 

「となると…やっぱり今の戦法?」

 

「そうだな…結局の所そうなってしまうのだろうな……若い時から、もっと動いておくべきだったか…?」

 

「やっぱりカリオストロに義体作ってもらった方が早いんじゃ…」

 

「いやしかし……美少女だぞ!?妻がいる身でそれは…」

 

「奥さん複雑な心境だろうね」

 

 ある日、帰ってきた夫が何故か美少女になって帰ってきた。それは妻からしてみれば、ただただ困惑する状況だろう。一体何をどうしたらそんなことになるのか、カリオストロという存在を知らない限り、分かるはずのないことである。

 

「……いや待って、もし結婚してなかったらいいの?」

 

「……」

 

「え、デリフォード?」

 

 筋肉痛が辛すぎるから、美少女になっても構わないから回避したい…だから何も言わないのだと、グランは考えるようにした。正直、仲間がいきなり美少女になるのはグランも困惑するからだ。

 

「……さて、今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました、また次回この番組でお会いしましょう……さようなら」

 

「…」

 

 グランは話を切った。なぜだかこれ以上この話題を続けておいたら、成人男性の変な覚悟を聞くことになりそうな気がしたからである。

 

「じゃあ、俺…仕事に戻るから……」

 

「うむ…私も、依頼がないか探してくるとしよう…」

 

 そして、まるで気まずい空気から逃れるかのように、二人は部屋の前で別れていた。グランは団長としての仕事を、デリフォードは依頼がないかをシェロカルテに確認しに行くこと。

 二人とも、これ以上この話題を持ち出すことは無くなりこの話は自然消滅したのだ━━━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう言えばカリオストロって、美少女限定で義体作ってくれるんだよね」

 

「あぁ、デリフォードのおっさんには言ったな」

 

「む…」

 

 とある日、カリオストロとグランが話しているところをデリフォードが見かけていた。

 すぐさまもの陰に隠れていたが、盗み聞きは良くないと思いつつついつい聞いてしまっていた。

 

「あれって俺のも作ってくれるの?」

 

「いや、グランのは無理だ」

 

「え、なんで」

 

「無理というか、俺様の気分がむかねぇ」

 

「えぇ……」

 

「…私の時は気分が向いていたのか…?」

 

 まったくそんな事は無い。ただ、グランは男でないとダメだとカリオストロが思っているだけで、気が向かないとかそういう話ではないのだ。

 

「わからん…わからん……」

 

 しかしデリフォードはそれに気づくことは無い。自分の美少女化のことでただひたすらに複雑な感情を抱きながら、その場をこっそりと離れて悶々とするだけなのである。

 

「え、じゃあデリフォードの時はなんで美少女化させようと思ったのさ」

 

「元々冗談のつもりだったんだがな、よく考えたら他人の義体を作ったことがなかったんで、試しにな。まぁもうする気はねぇよ、あの時はあのおっさんに対してちょっとキレてたしな」

 

「え、なんでキレてたの」

 

「まぁ、俺からしてみたらあのおっさんはあの時裏切り者の可能性があったしな…俺様は、仲間を裏切る奴には容赦ねぇんだ」

 

「……なるほど、ありがとうカリオストロ」

 

 ただ、この場を離れるのは正解だったかもしれない。何故ならば、あのまま居続けていたら、この2人の無駄に甘い空気を吸うことになっていたかもしれないのだ。

 妻がいる身だが、無自覚の癖に甘い空気を出す女たらしとそれに好意を寄せている少女の若さはデリフォードにとっては危険だっただろう。

 まぁ、デリフォードにはそこまで考える余裕が無いのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なぜだろう」

 

「グラン?どうした?」

 

「今回、オチらしいオチを付けられていないような気が……」

 

「は…?」




おっさんさん


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焦熱の帝国魂、突撃しかないか?

「今日のゲストはユーリさんです」

 

「よろしくお願いします」

 

「えーっと、ユーリはファラと同期の元帝国兵なんだよね」

 

「はい、ファラを久しぶりに見かけた時はまぁ…驚きましたよ」

 

「だろうね、同期が何故か指名手配してる奴と一緒に居るんだし」

 

 この指名手配というのは、グラン達のことである。ユーリと初めてあった時は、そんな事もあった…という雰囲気でしか話さないほどにはネタになりかけているが。

 

「親父さんが帝国兵なんだっけ」

 

「はい、立派な帝国軍人になろうと思ってました。今は帝国兵では無いですが…今は、親父の顔に泥を塗らないようにいるつもりです」

 

「信念を持つことはいい事だ…」

 

 うんうんと、まるで歳上であるかのように頷くグラン。言うほど歳は変わらないはずなのだが…とユーリはふと疑問に思ったが、褒められていることは素直に嬉しいと直ぐに思い直していた。

 

「まぁデリフォードとかよりは、結構帝国軍人ってわかりやすいんだよね」

 

「そう…でありますか?」

 

「初めてあった時は帝国兵の鎧着てたしね、デリフォードは帝国兵って一瞬分からなかったもん」

 

「成程…しかし、デリフォード殿は団長達と出会った時点では既に帝国兵を辞められていましたし、鎧も自分で買ったものになっていたのでは?」

 

「ま、そっちか帝国にあのタイプの鎧を貰ったか…だろうね。とりあえずそろそろ談笑は終わらせて、お便り紹介といこうか」

 

 例のごとく箱を取り出して中を漁る。かき混ぜつつ、グランが直感的に1枚のお便りを、箱から取り出していた。

 

「……1通目『帝国兵になったばかりは、皆同じ任務をすると聞いたのですが本当ですか?』」

 

「まぁ本当ですよ、最初は全員荷物運びです」

 

「それって物資を届けるとか…そういう役割ってことだよね」

 

「はい」

 

「確か任務効率がよかったんだっけ」

 

「えぇ、その部隊の隊長が指示をする。それに従って規律正しく動く、適度な緊張感を持ちつつも心の重荷にならない精神的負担の軽さ……まぁ色々最初としては結構いい任務なんですよ」

 

 部隊によっては、談笑しながら行われるらしい。ユーリは真面目だったが、この任務では肩の荷を下ろしている者もいるのだとか。それだけ最初の任務ということで、比較的楽なものを選ばせているのだろう。

 

「結構効率がいいんだなぁ……」

 

「騎空士にはそういうものはあるのですか?」

 

「うーん……初心者の騎空士達にはこれ!って言うのは思いつかないかなぁ…多分、シェロカルテに聞いたら何かわかるかもしれない。帝国兵は指針があるけど、騎空士はやりたいことによっては各々で指針が違うからそこが違いなんだろうね」

 

「成程……」

 

「多分効率がよくて、初心者向けのものってなったら……偶に屋敷の草むしりとかあるし、それかなぁ個人的には」

 

「そのようなものがあるのですか?」

 

「まぁ偶に掃除し忘れた屋敷のお偉いさんが、その依頼を出してくる程度だけどね。それでも滅多にないよ」

 

「ふむ…」

 

「まぁ、グランサイファーではほかの簡単そうな依頼にまずはついて行かせる…っ感じかな、戦闘できるメンバーに関しては…だけど」

 

「戦闘できるメンバー?」

 

「ヤイアとか…後ローアインもだね、戦えないけど他でやれることはあるよ?って人はその仕事を任せてたりするし、その特技を活かせる依頼に行ったりしてるよ」

 

「成程…」

 

 ユーリは勉強会でも来ているかのように納得しては、それをメモ書きしていた。これではまるでどちらがインタビューされているか分からないし、そもそもこの番組で勉強すると以降のメンバーが萎縮してしまいかねないので、堅苦しいのは禁止にしてあるのだ。

 

「さて、勉強会は程々にして……2通目『ファラさんは帝国兵の時はどんな人だったんですか?』」

 

「今とあまり変わらない、それだけですかね」

 

「あっさりしてるねぇ…元々カタリナ追いかけてたり、転びやすかったり料理が得意だったりしてたの?」

 

「はい、ただ料理が得意なのが一人いるだけで…大分心が楽になるって話があるんですよね」

 

「へぇ、そうなんだ」

 

「俺らの時は…偶に野生動物を狩っては捌いて焼いてましたね」

 

「……携帯食糧とか、無いんですか?」

 

「基本的に携帯食糧を使うのは、本当にその辺に食べられるものがなかった場合ですね。携帯食糧って…まぁ基本肉なんですけど」

 

 干し肉などが主な携帯食料だが、ユーリはあまり食べなかったらしい。それよりも、野生動物を捌いて食っていた方が彼としては好みなようだ。

 

「でまぁ、話を戻すんですけど…ファラって結構調味料とか持ってるんですよ」

 

「鎧の中に?」

 

「鎧の中に」

 

 ファラらしいといえば、ファラらしいものである。料理選択掃除等の家事を得意とする彼女は、常にまずい飯を食うのが嫌だったようだ。

 

「生肉焼いて食うより、塩とか胡椒かけた方がやっぱり美味いらしくて」

 

「なるほど…今度から依頼行く時ファラ連れていこうかな……」

 

 ファラを連れて行けば、料理が華やかになること間違いなしである。グランも料理はできるから、可能な時は基本的にやっているが…やはり手は欲しいものである。

 

「団長殿は、野営する時はどんなものを作ったことがありますか?」

 

「あー…基本的にそっちと一緒だけど、木の実とか食べられるものを潰してソース作ってたなぁ」

 

「ソースですか…」

 

「ま、果実とかになってくると、基本的に甘いソースしか作れないんだけどね」

 

「酸っぱいのとか、なかったんですか?」

 

「いやぁ、記憶にないかなぁ…1番いいのは胡椒とか塩だよやっぱり……って話だいぶ逸れてきたな」

 

 ふと気がつくと、ファラの話から野営時の食べるものの話になっていることに気がつくグラン。話を変えるために、最後の3通目の手紙を取り出す。

 

「3通目『盾は持たないんですか?』」

 

「盾は基本的に帝国兵士は持たないですよ」

 

「そう言えば、剣を両手持ちが基本だよね」

 

 戦っている帝国兵や、ユーリの姿を見て思い出しているグラン。帝国兵は基本的に剣1本で戦っている様だった。カタリナも、レイピアとは言え剣1本で戦っていた。

 

「デリフォードが例外な感じなのかな」

 

「まぁ、一般的な鎧があれなだけですし…功績を積めばそれなりに自由は貰えますし」

 

「なるほど…まぁ槍の名手だなんて呼ばれてるし、功績は凄かったんだろうなぁ…」

 

「デリフォード殿は1から頑張っていたようですしね」

 

「確かに…」

 

 よくよく考えてみれば、功績を詰んでるであろう異名を持っている帝国兵は、皆どこか武装が他と違うというパターンが多かった。とは言っても、全て帝国兵から始まっている訳では無いだろう。そうなると、帝国幹部が何人かおかしなことになるから。

 

「帝国って、兵士以外にも軍に入れるルートあるの?」

 

「まぁ、余程の例外か…それとも指揮能力に長けていたら直ぐに指揮官クラスには抜擢されると思いますよ」

 

「フュリアスとかそのルートなのかなぁ」

 

 フュリアスを見る限り、指揮能力は見ても人格などはあまり重要視されていないらしい。結構問題行動は多いように思えるのだが、大丈夫なところを見ると本当に人格はどうでもいいらしい。

 

「フュリアス将軍ですか…」

 

「帝国内だとどんな噂なの」

 

「口が悪い同僚が言ってたことですが、『有能なガキ』らしいです」

 

「マジで口が悪いなその同僚…」

 

「というのも、見た目では無く言動やその性格からそう言ってたらしいですが…」

 

「まぁフュリアスも口は悪いけど、あの立場でいたんだし本当に将軍クラスでいいくらいには強かったんだろうね…遠慮無くえぐいこと出来る性格というのは、恐ろしい」

 

 口こそ悪いが、躊躇してしまうようなところを遠慮無く行える、冷酷とも言える冷淡さ。それがフュリアスの強みだろう。無論、自分の思い通りにいかないと偶に癇癪を起こす所は子供っぽいと言われても仕方ないと思えるが。

 

「まぁ、正直なことを言うと帝国内でもあまり評価は良くなかったですね……あくまでも、一兵士達の間で…ですが」

 

「ま、俺は軍にいた訳じゃないからよく分からないけど…あれが『嫌味な上司』ってやつなのかな…」

 

「団長殿、恐らくそれは全く違うと思われます」

 

「あ、マジで?」

 

「はい」

 

「そうか、違うのか…」

 

 嫌味な上司所ではないのだが、如何せんいきなり騎空団の団長をやっているので、どうにも想像がつかないようだ。そもそもグランサイファーに嫌味な人なんていないのだから。

 

「まぁ違うなら違うでいいけど……そろそろ時間なので終わるか」

 

「おや、もうそこまで…」

 

「そこまで進んでましたよ、はい。というわけでご視聴ありがとうございました、また次回この番組でおあいしましょう。さようなら」

 

 電源を切り、番組を終わらせるグラン。ユーリも、席から立ち上がってササッと片付けをする。

 

「ところで団長殿」

 

「どしたの」

 

「この後何か予定はありますか?」

 

「あと1時間もすれば依頼かなぁ、一緒に来る?」

 

「あ、行きます」

 

 このあとの予定を軽く会話しながら、グランとユーリは部屋から出る。部屋から出た後は特に重要でもない話題を話しながら、予定の島につくまで時間を潰す。

 

「そう言えばさ」

 

「はい」

 

「帝国兵ってみんな共通して武器は剣なの?」

 

「というか剣が1番扱いやすいですし…次に銃とか、ボウガンですかね…ただ、こちらも剣に比べたら技術がいるので…」

 

「まぁ、剣はとりあえず振っておけば勝手に技は決まってくるしね…」

 

「団長殿が言ったら、妙に説得力ありますね」

 

「そう?」

 

「まぁ、ええ」

 

 独学で剣術を覚えているグランは、はっきり言えば才能の塊だろう。簡単に色々な武器や技、それに術なんかを会得しているのだから。

 

「まぁそれ言ったら、この団にはそういう人多すぎるからね…」

 

「確かに……」

 

 どんな武器でも、必ずそれ1つに絞ればとんでもなく強かったり才能があったり…そんな人物がいる。それに関しては、十天衆がいい例だろう。

 無論、グランは一時的にとは言えその十天衆に勝っているのだが。

 

「自分も、いつか団長殿の様に強くなりたいですね」

 

「俺を目指すより、両手剣ならジークフリートを見習ってくれ」

 

「……そんなに凄いのですか?実は、一緒になったことがないので…」

 

「なら丁度いい。今から行く依頼はジークフリートが来るからその時に見てみるといい……すごい驚くぞ」

 

 実際、その後ユーリを連れてジークフリートと共に依頼に向かったが、曲芸士や軽業師もびっくりのアクロバティックかつ器用な動きを披露しながら、魔物を屠っていくその姿にユーリは驚きしかなかったという。

 その時、ユーリが言った言葉が『本当に人間ですかあれ』だった。

 正直なことを言うと、ジークフリートは実は星晶獣の力を埋め込まれた元人間だよ、と言っても通じそうなくらい彼は強いのだ。

 

「ま、本当はただの人間なんだけど……本当に人間?」

 

「一応、人間だ」

 

「人間の限界って何処なんだろうなぁ……」




SR風ユーリは強い


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元帝国兵達のレクイエム

「どうして……こんなことに…」

 

「デリフォード殿…!」

 

 悲しむグラン、倒れ込むユーリ。その彼ら2人の目の前にあるもの……それは、ベッドで倒れて眠っているデリフォードの姿であった。

 彼は安らかな顔をして眠っていた。だが、時折苦しそうな表情をしていた。その顔を見て、さらに2人は悲しさを加速させていた。

 

「なんで、こんな……」

 

「まさか、まさか……筋肉痛で気絶して倒れてしまうなんて!!!」

 

「…申し訳ないが…筋肉痛じゃなくて腰をやったのだ…」

 

「あ、起きてた」

 

「いや、ここまで騒がれて寝ていられるわけにも……」

 

「つか何でこんな事になったのかユーリ知ってる?」

 

「実は━━━」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は少し遡る。デリフォードは、少しだけ船の外で運動をしていたのだが、帰ってくると食料庫の前でユーリが大量の荷物を乗せた台車を引っ張っていたのだ。

 

「おや…ユーリ殿、その大荷物はどうした?」

 

「これはデリフォード殿!実は、団長殿が荷物を受け取ったらしいのですが…あまりの多さにその場にいた団員全員で手伝うことになったのですよ。

 俺は、ここに荷物を入れて欲しいと言われたので…ここにいるわけです」

 

「なるほどな…よし、ならば私も手伝おう」

 

「え、いや悪いですよ」

 

「いやいや、これも運動の一環だと思ってやれば問題ないだろう……ところで、かなり多いが主に何が入っているんだ?」

 

「干し肉と野菜、それにアウギュステで取れたカツウォヌスの干物らしいです」

 

 台車から滑り落ちそうな程に積み込まれた荷物。ユーリ1人に任せているあたり、自分でも持てそうだとデリフォードは確信していた。そうして、ユーリの代わりに台車を引っ張ろうとするが…

 

「あ、それいきなり腰に力込めると結構ガッツリいくんで━━━」

 

「ふぬぁっ!?」

 

「で、デリフォード殿おぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおお!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ユーリ注意してんじゃん」

 

「面目無い…」

 

 呆れているグラン。申し訳なさそうに謝るデリフォード。それを見て、ユーリもデリフォードに同情の目線を向けていた。

 

「はぁ……自分で何日くらいかかると思ってる?治るの」

 

「明日までには…」

 

「カリオストロとかシャオに見てもらって、ソフィアとかにも様子見てもらって…後で一応俺も様子見てあげるから、経過見次第だけど3日は重たいもの持たないこと。槍も禁止だからね」

 

「そんな!?」

 

 槍すらも禁止されて、驚くデリフォード。背中の痛みがひどいので起き上がれない為、少し返事をするのがきつそうである。体制的に、寝たままというのは辛いのだろう。

 

「で、では私はこのまま数日寝たきりでいろと!?」

 

「丁度いいからこの際だ、筋肉痛もある程度治してこい」

 

「言葉がきつい!!い、いや筋肉痛はないのだ!!」

 

「いや今起こっているとかじゃなくて、恒常的に起きないようにしてもらえって意味」

 

「それは最早不可能なのでは…!?」

 

 グランのあっさりとした態度に困惑しきっているデリフォード。だが、休めるというのは彼にとっても悪い話ではなかった。

 

「いや、永久にってわけじゃないけど…ある程度なら矯正はできそうだよ」

 

「……というと?」

 

「ファスティバにマッサージしてもらうといいよ、すっごい効くから」

 

「なんと…!?」

 

 今までデリフォードはその可能性を考えていなかった。そうだ、マッサージのプロに矯正してもらえばいいのだと、ここで思い至ったのだ。

 

「それに、デュエリストとして体を作ってるファスティバの意見を聞けば、健康面でも参考になると思う」

 

「おぉ…おぉ…!!」

 

 感涙しているデリフォード。今までその可能性に思い至らなかったのか?とグランは思ったが、よく考えてみればデリフォードはどこか諦めているところがある。年齢の事を気にしているが、それもどこか諦めているところがあったのだろう。

 

「ファスティバには俺が話つけておくよ」

 

「感謝するぞ団長殿あだぁ!?」

 

「もう、起き上がるんじゃないよ!!腰を悪化させたいのかい!?このあほたれ!!」

 

 こうして、何やかんやでデリフォードの体作りが本格的に始まったのであった……とは言っても、マッサージを受けつつ湿布を貼りつつ様子を見つつ……ある程度回復してからでないと、試せないものばかりなのは言うまでもないことなのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれから1週間…」

 

「ファスティバ殿は大丈夫だとおっしゃっていましたが…」

 

 そんなことがあってから1週間、デリフォードの様子を見に来たグランとユーリこの1週間の間、本格的かつ集中的にデリフォードを治療をしていたらしいが……その結果が今でたということなのだ。

 

「デリフォード、いる?」

 

「おぉ、その声は団長殿か。入ってきても構わんぞ」

 

「…元気そうですね、声も前聞いたデリフォード殿の声だ」

 

 万に一つの可能性として、カリオストロの手によって女体化していたり魔改造されていたり…そんな可能性も考えていたが、声だけならば普通だった。少なくとも女体化はされていないようだった。

 

「じゃあ入るよー」

 

「……」

 

 生唾を飲み、緊張するユーリ。そうして開かれた扉の先にいたのは……いつもと変わらない、ただラフな格好になっているだけのデリフォードだった。

 

「……ちゃんと、デリフォード殿ですね」

 

「あぁ……どんな姿になっていても動じないようにしてきた心が無駄になった」

 

「一体どんな姿になっていると想像していたんだ……」

 

「……で、まぁ…体の調子はどう?」

 

「あぁ、素晴らしいな。筋肉痛に悩まされていた体が、嘘のように軽い!これが若さか!!いや、私は今でも若いのだが!!」

 

 まるで別人にでもなったかのように、デリフォードはその場で反復横跳びをしていた。なかなか速い。それに感心して、無意識に拍手をしてしまっていた。

 

「本当に、純粋に治ったんですね」

 

「あぁ!ただ、食事生活や運動なども、なるべく維持し続けていかなくてはならない」

 

「まぁ、それはそうだろうね」

 

「それで確実に、私はこの慢性的になる筋肉痛を……治す!!」

 

 まさに覚悟の表情というのを、2人は目撃していた。前々から筋肉痛にならないように、試行錯誤していたデリフォードだったが…今回はそれが実ったようだと実に感心していた。

 

「良かった良かった……じゃあ、俺らは今から出かけてくるから」

 

「あぁ、私はこの後ファスティバ殿と再びトレーニングの時間を行う……何かあったら、呼んで欲しい」

 

「あぁ、その時は頼らせてもらうよ」

 

 そうして、2人は扉から出ていた。そして、そのまま()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「いやぁ、あんな状態になってるとは…」

 

「にしても、やはり不思議な空間ですね……夢、なんですよねこれも」

 

「うん、さすがに1週間じゃあ多分まだ治ってないだろうから……無理言って夢から様子見させてもらってよかったよ……ありがとうヴェトル」

 

 そう言って視線を動かした先には……紫の髪をした少女が現れる。ヴェトル…今は人間の少女のような姿をしているが、これでも一応夢を司っている星晶獣である。他人の夢の中に他人を送り込んだりすることも可能だ。

 

「……ううん、貴方の頼みだから…けど、条件忘れてない…よね…?」

 

「条件?団長殿、何か交換条件を出していたのですか?」

 

「うん、でも忘れてないけど?」

 

「じゃ、じゃあ……今日から1週間…添い寝……して、いい?」

 

 赤面するヴェトル、その光景を見ながらユーリは思う……『団長に好意を寄せている女性は、種族の壁が完全にない』と。人間ならともかく、星晶獣まであんな少女のような表情にできるのだから、相当である。

 

「いいよいいよ、カモンベイベー」

 

「やった…!」

 

「……ところで、デリフォード殿本人は?」

 

「まだろくに動けてないよ」

 

「夢を見させて…イメージが、体に追いつく様にしてる…私の夢は…見すぎたら夢の方に体と意識が引っ張られる、から…」

 

「……つまり?」

 

「デリフォードがあの夢を見せられてる限り、暫くは問題ないってこと」

 

「なるほど…!」

 

 因みに、ヴェトルの能力によって過去ラカムとカタリナが被害に遭ったことがある。ヴェトルが仲間になる前の話だが、その時見せられた夢によってカタリナはグランを怖がり、ラカムはおじいさんのように老け込んでしまっていたのだ。

 

「……団長と、添い寝…ふふ…」

 

「……団長殿」

 

「ん、何?」

 

「夢でもしかして治るのを早めているのですか?」

 

「あんまり動かないでいると、筋肉も弱っちゃうしね。しょうがない措置だよ」

 

「そうですか…」

 

 ユーリは静かにはしゃぐヴェトルを見ながら、グランと共にこの夢から覚めることになったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぬおおお…!」

 

「…何故だ…」

 

 そして、そんなこんなで1ヶ月くらい経った頃……デリフォードは筋肉痛で苦しんでいた。その光景を見て、グランもユーリも困惑しきっていた。

 

「デリフォード殿…一体何をしたのですか……」

 

「ちょ、調子に乗って働き続けていたら……再発した」

 

「…何っでだよ…!」

 

 グランの心からのツッコミが、デリフォードの心に突き刺さる。今日だけのものならばともかく、恐らくまた前と同じようになってしまっているだろう。

 

「ぬうう…私はまだ若いのに…」

 

「若いかもしれないけど…デリフォードはお兄さんじゃないよ……」

 

「…すまぬ…流石に今回は私が悪い……」

 

「そ、それよりも……何をして筋肉痛に…?」

 

「魔物の群れを1人で討伐していたのだ……昨日は…朝気づいたらこうなっていた……」

 

 それでも何だかんだで、群れを1人で討伐出来ているので…槍の名手という名は、伊達ではないということだろう。何だかんだ言っても、デリフォードはかなり強い方なのだから。

 

「まぁ…これからはあんまり無茶しない様にね?」

 

「あ、あぁ……」

 

 グランの言うことを素直に聞くデリフォード。こういう状態の時は、デリフォードが落ち込んでいる時とかによく見られる状態だ。何を言われても反論せず、自己嫌悪の材料として使ってきまう時のデリフォードである。

 

「……とりあえず治ったら、しばらく奥さんのところいたら?偶には会ってやりなよ」

 

「……そうだな、休暇をしばらく貰おうか…」

 

「奥さんと一緒にいてあげた方が、案外薬になるかもね」

 

「そうかもしれんな」

 

 ユーリはグランとデリフォードが話し合っている中、1人考えていた。群れを1人で討伐している辺り、デリフォードは相当な強者だということと、いずれ自分もそこに追いつきたいという考えである。

 

「あの、デリフォード殿」

 

「む…?どうしたのだ?」

 

「強くなれる秘訣…教えてくれませんか?あ、勿論時間が空いているときで構いません」

 

「そうだな……私が休暇から帰ってきた時でいいか?」

 

「は、はい!」

 

 ユーリ、彼は未だ強くなるために努力を積み重ねていく。デリフォードも、未だ現役でいるために強くあろうとする。グラン、言わずもがななので省略。

 男3人、強くあるためにここで心の中で固い結束で結ばれた……様な気がするのであった。




ゼノコキュートスやりすぎて心が筋肉痛になりました。皆さん今日は休みましょう。
島ハード、マグナ、天司、アーカルムその他諸々やりながらも休みましょう。


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夢見の双子、貴方が見るのはどんな夢?

「今回のゲストは、いつも二人揃ってるんで2人出しますよ。モルフェさんとヴェトルさんです」

 

「よ、よろしくお願いします!」

 

「よろしく〜」

 

「モルフェとヴェトルはよく安眠作用のハーブティーとか、寝るために必要な道具を揃えてくれてるので……よく寝たいなぁって人は1度相談するといいよ」

 

 眠そうに椅子に座っているヴェトル、そして規律ただしそうに座っているモルフェ。この2人の正体は、ヴェトルは星晶獣オネイロスであり、モルフェはオネイロスに作られた存在である。しかし、今は姉のヴェトルと弟のモルフェとしてグランサイファーに乗船しているのだ。

 

「あの、姉さんが最近添い寝し始めたって聞いたんですけど…」

 

「同意の上の…合意だから…大丈夫」

 

「姉さん、それでもあんまり団長さんに迷惑をかけたらだめだよ?」

 

「いやいや、そこまで迷惑かけられてるわけじゃないし…気にしないで気にしないで」

 

「ほら、グランもこう言ってる」

 

「本音でも建前として聞かないと……団長さんも、あんまり姉さんを甘やかさないでくださいね?」

 

「むー…モルフェの馬鹿……」

 

 膨れっ面になるヴェトル。彼女がグランの事をどう思っているかは明白ではあるが、グランからしてみればヴェトルはルリアやサラ等という所謂『妹的存在』に近いので、異性として認識されてないからこその添い寝許可なのだ。

 

「もう……」

 

「はいはい、姉弟喧嘩は後にしてね。番組内で喧嘩されたら俺リーシャにシメられるから」

 

「グラン…お魚になるの…?それとも鶏…?」

 

「どこで魚や鳥をシメるだなんて言葉を覚えてきたんですか、お父さん貴方をそんな子に育てた覚えはありませんよ」

 

「グラン…お父さんじゃない…」

 

 ゆったりながらも、冷静にツッコミを入れてくるヴェトル。モルフェは逆に愛想笑いだけをしていた。どうやらあまりツッコミの才能はないようだ。

 

「さて、そんなお2人にもお便りがありますので紹介していこう」

 

「僕達2人なんですけど、時間足りますか…?」

 

「ちょっと減るかもねぇ…ま、そこはそこで…というわけで1通目『団員の夢の中に潜り込んだりする時はありますか?』」

 

「僕達2人に関しての質問ですね」

 

「した事ある?」

 

「頼まれたり、緊急時の時以外はやらないようにしてます。特に、夢の中なのでプライベートなことを覗いてしまう危険性もありますし」

 

「まー……グランに言われたら、どんな夢でも教えてあげるけど…」

 

 少し複雑そうな表情を見せるヴェトル。グランはあまり教えたくないため、渋っていると思っているが……実際ヴェトルが考えていることは、ほかの女の子の夢の内容を教えたくないし見たくない……という考えだった。まぁ、要するに男なら普通に教える位のことはするという話である。

 

「なるほど、夢の中のことは他言無用なわけだ」

 

「はい、先程も言いましたがプライベートな部分が強いですから…その人の弱みや、叶えたい夢…今やりたいこと等を夢で見ている可能性があります。それを喋るのは、当人達にとって不利益なことにしかならないと思うんで」

 

「なるほどなるほど……モルフェ、もっと砕けた感じで喋っていいんだよ?」

 

 あまりにも、モルフェが堅苦しく喋っているように感じたグランは少し提案をするが、モルフェはなんの事だかわからずに少し首を傾げていた。彼からしてみたら、これでもまだ砕けている方なんだろう。

 

「だ、団長さんが言うのでしたら……ローアインさん達にみたいに喋ります!」

 

「あそこまでしなくていいから」

 

 モルフェがローアインのように喋るのは、それはそれで需要が無いことも無いだろうが…如何せん、モルフェも大人ぶっている子供感があるので、グランは父性をガンガンに働かせてしまってモルフェには絶対あの話し方はさせないと心に誓っていた。

 

「そ、そうですか?」

 

「モルフェがそれで砕けてるなら、モルフェはモルフェらしく喋ればいいんだよ」

 

「わ、わかりました!!」

 

「モルフェ……単純〜」

 

「ヴェトル、俺特製の飴ちゃんをあげよう」

 

「わーい……はっ…!」

 

 渡された直後に、ヴェトルは気づいてしまった。グラン特製と言うだけで、簡単に飛びついてしまった自分の単純さに。

 

「ぐ、グランは……狡猾…そうやって、女の子を落としてきた……」

 

「わぁお、すっごい人聞きの悪いこと言われた」

 

 顔を真っ赤にしながら照れるヴェトルに、グランは軽くツッコミを入れる。雨を貰ったのがそんなに恥ずかしかったのか、ヴェトルは顔を真っ赤にしたままだった。

 

「とりあえず2通目『夢の中で夢を見る、というのは実際にあるんですか?』」

 

「うーん……」

 

「あれ、なんか悩む質問?」

 

「実は、夢の中で夢を見るっていうのはあんまりないんですよね」

 

「というと?」

 

「確かに、凄く深いところで眠っているのならともかく……基本的には『夢から目覚めたという夢を見てる』って言った方が正しいかもしれません」

 

 グランはモルフェの言ったことを、頭の中で反復させながらどういうことかを考える。そして、辿り着いた結論が1つ出てきた。

 

「つまり、初めに夢を見ててその夢が終わったあとに『自分が夢から覚めるという夢』を見てるってこと?」

 

「大体そんな所です、少しわかりづらいんですが……」

 

「いやぁ、まぁ確かに納得できる答えではあるよ」

 

 夢の中で夢を見ていた、というのは中々実証できない。何せ、実際見ていたのは『夢から覚めている自分の夢』なのだから。その答えでグランは、納得してうんうんと頷いていた。

 

「でも……本当に、夢の中で夢を見る…はあるよ…」

 

「実際、そんな状態になってたら危ないって聞くけどどうなの?」

 

「すごく深い眠りに着いてて、尚且つ基本的に『自分が目覚めたくない』って思ってたら見ている時がありますね」

 

「基本的に、って言うと?」

 

「大体、夢の中で夢を見ている場合…その夢の中の夢というのは、本人にとっての悪夢が多いんです。勿論、悪夢じゃない場合もあるので一概に『目覚めたくない』って思っている人じゃないですが」

 

「なるほどね」

 

「悪夢の場合、自分が現実を受け入れたくないために『これは夢だったんだ』という錯覚を起こさせる為の夢…とも取れます」

 

 モルフェの説明に、グランは理解を深めていく。実に分かりやすい説明をしてもらっているので、本当にグランの夢に対する理解が深まっていくような気がしていた。

 

「なるほど、グダグダ話すつもりがここまでの勉強会になるとは思いもよらなかったけど、案外ためになるかも」

 

「団長さんの為になっているのなら、良かったです」

 

「いえいえ、こちらこそどういたしまして……というわけで基本的にはラストの3通目『ハーブには詳しいんですか?』」

 

「ハーブティーの調合は僕の趣味ですね」

 

「私は…夢の話を聞くのは好きだけど…」

 

「なるほど、ハーブティーはモルフェの趣味ってことか」

 

「モルフェは……真面目、だから…」

 

 にっこりと微笑むヴェトル。顔を赤くしてはにかんでいるモルフェ。仲のいい姉弟を見せつけられて、グランの顔もニッコリと微笑んでいた。

 

「ハーブティーの調合っていうのは、安眠作用とか?」

 

「主にそれですけど……後は気持ちをおちつけたり、リラックスする事が出来るハーブティーもありますよ」

 

「ハーブティーって、俺触ったことないからよくわからないけど…モルフェに教えて貰ったら、結構知れることが多いかも」

 

「……むー」

 

 何故か少しだけ頬を膨らませているヴェトル。飴をもう1つやっても機嫌は治らなかったので、飴ではダメなようだった。因みに、飴は普通に食べていた。

 

「ヴェトルー?どうして不機嫌なのかなー?」

 

「グラン…モルフェとイチャイチャしてる…」

 

「その発言は一部の人間に多大な影響を及ぼすのでやめて欲しいかな!!」

 

 そんな発言をされてしまうと、一部の別の意味で腐ってらっしゃる人達が反応するのだが、それを恐れたグランは即座に否定を入れる。

 

「……広めさせたくないなら、後で一緒にお昼寝…」

 

「何時間でもしてやるぞ」

 

「…やった…」

 

 それで機嫌が治ったのか、ゆったりと微笑むヴェトル。いつの間に、ここまで他人を動かすことに慣れてしまったのかグランは少し悲しくなっていた。まるで娘のように接していたのだから。

 

「姉さん……わざとそんな態度とったでしょ……」

 

「勝利者は…私……」

 

 Vサインをするヴェトル。ヒソヒソと話している2人に対して、グランは声が聞こえていなかったので、さらに追加で疎外感を味わってしまっていた。

 

「……と、とりあえず…今回はここまでです…皆さんご視聴ありがとうございました、また次回この番組でお会いしましょう。さようなら」

 

「夢に関しては…私達に、相談…だよ……」

 

 最後にヴェトルが宣伝をして、カメラの電源が切られる。切られた瞬間、ヴェトルはグランに思いきり抱きついて顔をグランの腹あたりで擦りつけていた。

 

「えへへ…」

 

「ヴェトルは甘えん坊だなぁ…」

 

「……あれ…?」

 

 ふと、モルフェは思ってしまった。ヴェトルと添い寝するという事を、ヴェトル自身の口から番組放映中に言っているのだ。そして、団長たるグランは少なくともこの団の女性達から好意を持たれている。

 そして、この番組はこの船全体で流されている。それが一体どう言ったことを指し示すのか……モルフェは考えようとして、止めて、そして部屋から勢いよく飛び出していた。

 

「……?モルフェはどうしたんだ?」

 

「…さぁ……?」

 

 飛び出したことには理由がある。1つ、今回に関しては自分は全く関係がないからだ。いや、ヴェトルが関係しているからそれを言えば関係してると言えなくもないが、自分はグランに添い寝するわけじゃないからだ。

 2つ、それでも姉を守りたいので来るであろう方向から、道を塞がねばならない。あの部屋は一方通行でしか来れないので、1つ道を塞げば来れないとモルフェは判断したのだ。

 

「姉さん達は…僕が守らないと……」

 

 しかし、モルフェは…純粋なモルフェは気づかなかったのだ。新しい通路が、作られていることに。しかも、よりにもよって部屋の前ではなく部屋の中に直接行けるような道が、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「うわっ!?ちょっとリーシャ!?急にどうした!?」

 

「天井から、現れるなんて……」

 

「えっ」

 

 部屋の中から急に現れた声に、モルフェは振り向いていた。まさかこんなに早く、しかも直接部屋から現れるとは思っていなかったのだ。

 

「え、ちょっ!?姉さん!?団長さん!?」

 

「流石に子供と寝るのはアウトです」

 

 因みに、人間年齢で言うとヴェトルとモルフェは11歳だ。星晶獣であろうとも、人間的な事を言えば精神年齢は子供同然なのだ。それでもヴェトルは、それを利用してくるのだが。

 

「一緒に寝るのダメなの!?」

 

「団長さんだとちょっと絵的に…」

 

「酷い!!」

 

「え、なんで開かないの…!?」

 

 外からガチャガチャとドアノブを弄り回すモルフェ。部屋の内側ではリーシャがドアノブに手を添えているので、それで開かなくなっているのだ。

 

「まぁ、とりあえず……反省室で反省文書いてもらいますよ」

 

「……俺だけだよね?」

 

「ヴェトルさんにもちょっと来てもらいますんで」

 

「ヴェトルは甘えてるだけなんだ…だから慈悲を……」

 

「駄目です」

 

 そして、それっきり部屋から声がしなくなっていたかと思えば、既に部屋はもぬけの殻になっていた。

 

「い、一体何がどうなっているんだ…」

 

 モルフェはそれだけしか呟くことが出来なかった。何が一体どうなってこうなっているのか……彼には、全く理解できないのであった。




ヴェトルをひたすらに甘やかしたいだけの人生だった…


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異界の艇人、懐かしいかい?

「今日のゲストはノアさんです」

 

「よろしく、こういうのに出るのは少し気恥しいね」

 

「いつもと表情が変わらないように思えるけど……まぁでも、多少緊張してくれても話すのに支障が出なければ問題ない問題ない」

 

「そうかい?そう言ってくれると多少気が楽になるよ」

 

 星晶獣ノア、彼は艇造りの星晶獣である。それ故に、艇自身と話せたり艇に合う材質の木材を選んだりと…能力の応用法は多岐に渡っている。彼自身は、過去にラカムと一緒にいた事があった。1度は離れたものの、今また一緒に団内にいて艇を飛ばす為にラカムの力になってくれていた。

 

「団長さん、少しいいかな?」

 

「はいはいなんですか?」

 

「僕が入った時は、全くと言っていいほど人がいなかったのに…グランサイファーも随分賑やかになったよね」

 

「確かに…」

 

「それに、人間だけじゃなくて多種多様な種族を乗せてる。人間に関しても、4種族以外の種族の人種も乗せてるし…本当に賑やかになったね、グランサイファーも楽しそうだよ」

 

 ヒューマン、ドラフ、エルーン、ハーヴィンの4大種族に加えて、星晶獣や動物、4大種族以外の種族の人間と、グランサイファーは多種多様な種族の者達が乗っている。その事を話しているノアは、実に楽しそうに語っていた。まるで、自分の事のように。

 

「そう?グランサイファーが迷惑がってなくてよかったよ」

 

「艇というのは、乗られることで喜びを見出すものだよ。誰もいなくて…人の声が聞こえない艇なんて、寂しいと思わないかい?」

 

「確かにね…厳格だけならともかく、人の話し声がしないなんて寂しいよ」

 

「グランサイファーは、毎日がお祭り騒ぎなのが気に入ってるみたいだよ?人が多いと…それだけ、人を祝ったりすることが多いからね」

 

 確かに、とグランは頷いていた。ほぼ毎日誰かの事を祝っていてもおかしくないのだ。無論、皆で盛り上げていくので何ら問題がある訳では無いのだが。

 

「……ノア自身も楽しい?」

 

「もし楽しんでいなかったら、僕はラカムに言って団長さんに文句を言ってもらうつもりだから」

 

「えっ」

 

「冗談だよ、ちょっとからかってみただけさ。大丈夫、僕はちゃんと楽しく過ごせているよ」

 

 笑顔でサラリと冗談を吐くノア。その事にグランは苦笑いでしか返すことが出来なかった。

 

「さて、いつもの通りだとお便りというのがあるんだよね?」

 

「そうだね、ノアにもいっぱい届いてるよ」

 

 ガサゴソと、箱の中をかき混ぜるグラン。そうして、1枚を取り出して読み上げていく。

 

「1通目『ノアさんって女ですか?男ですか?』」

 

「一応男だよ」

 

「まぁ正直ノアは顔綺麗だし間違えることもある……のか!?」

 

 ノアは、はっきり言うと美男子である。それに加えて話し方や肌の白さ、そしてイケメンと言うよりかは可愛い系統の整った顔立ちをしているので、まぁ美少女という風に見える人もいるにはいるのかもしれない。

 

「僕はあまり気にしないけどね」

 

「気にしたほうがいいぞー」

 

 性別不詳というのはいるにはいるが、ノアをその括りに入れると色々と危険な香りがするので止めておいた。

 

「あまり性別には拘っていないよ」

 

「星晶獣ってそういうものなの?」

 

「星の民がそうしたのか、それともそういう風に偶然できてしまったのか、はたまた僕だけなのか分からないけど……まぁ、少なくとも僕は気にしてないよ」

 

 ふと、ノアのラカムへの態度を思い出すグラン。あまり性別を気にしていないとなると、スキンシップが比較的落ち着いている方であろう彼の方が、助かる。

 因みに、ノアは基本的にラカム以外と積極的に絡みに行こうとしないので、ラカム以外での態度があまり思いつかないというのが理由でラカムが選ばれている。

 

「でも考えたら…メデューサは性別を気にしてるというか、意識してる方だもんね」

 

 メデューサには2人の姉がいる。そして、その姉のことをメデューサ自身が姉と認識している以上、少なくともメデューサは男女の違いの区別はつけているようだった。

 

「そうだね、彼女や彼女に近しい星晶獣達のことを考えたら、僕の方が少し異端なのかもしれない」

 

「……」

 

「団長さん?どうしたの?」

 

「やっぱり星晶獣って呼び方してるけど、人間と何ら変わらないよねぇ…ただ大きさが自由に変えられるって人達がいるくらいで」

 

 星晶獣というのは、基本的にでかい。そりゃあもう果てしなくでかい。しかし、ティアマトやユグドラシルは人と同じような背丈になって今はグランサイファーに乗船しているので、そういうものなのだと解釈することが出来る。

 無論、人並みのサイズだったりそれ以下のサイズでしかあったことがないような星晶獣もいるにはいるのだが。

 

「そうだね」

 

「ノアも大きさ変えられるの?」

 

「さて、どうだろうね?少なくとも僕はこの姿だったからこそ、ラカムや団長さん達と出会うことが出来たとも言えるわけだし」

 

 ノアは誤魔化したが、大きさを自由に変えられない星晶獣もいるかもしれないので、もしかしたら『そういうもの』だという認識をどこかでしておく必要があるのかもしれない。

 アテナやメデューサでさえ、人並みのサイズで生活しているのだから。

 

「っと、話結構逸れちゃってたね。というわけで2通目いってみよう。『今まで騎空艇を見てきてどんなのが気に入った?』ラカムからだね」

 

「多分、グランサイファー以外の話かな?」

 

「そうじゃないかな?」

 

「うーん……そうだね、僕はグランサイファーとよく似た船を知ってるよ。誰が乗ってたか、どんな船だったか……それは言わないでおくけどね」

 

「え、なんで?」

 

「大っぴらに話すことでもないからね。でもまぁ、団長さんには後でこっそり教えてもいいかもしれないね。ただ一言言うのであれば…船も乗っている人も、お互いを信用しているようないい関係だったと思うよ」

 

「ノアにそこまで言われてるんだから、相当いい人なんだろうなぁ……」

 

「ふふ、そうだね。とてもいい人達が乗っていたと覚えているよ」

 

 微笑みながら少しだけ語るノア。まるで親が子を見守るかのような表情で微笑んでいるが、ふと思い出したかのようにグランは話を戻し始める。

 

「他には印象的には船ってあった?」

 

「そうだね…配達艇、っていう名目で素早い速度で飛ぶ騎空艇なら見た事があるよ」

 

「どれだけ早いの?」

 

「最高速度だと……まともに甲板に立ってられないとか、合ったりするね」

 

「それ船として成り立ってる…?」

 

「まぁそれを防ぐために色々ほかの騎空艇とは、形が違ってたりしてたけど……」

 

「世の中にはいろんな艇があるんだなぁ…」

 

 しみじみと語るグラン。ノアの話を、偶には長々と聞いてみるのもいいかもしれないと、ふと考えていた。

 

「さて、そろそろ3通目に行こうか……『最近グランサイファーで思うところはありますか』」

 

「…というと?」

 

「多分なんでもいいんじゃない?実際、グランサイファーがどうなってるのかとか……団長として聞いておく方がいいだろうし」

 

 少し考え込むノア。そして、しばらく考え込んでから思い出したかのように口を開いていた。

 

「最近、補修作業が多くなってきたから1度大きなメンテナンスをしておいた方がいいかもしれないよ」

 

「なるほど、じゃあ1回ガロンゾに寄った方がいいなぁ……」

 

 ガロンゾに寄るのは資材を集めるためなのだが、最近技術力がある団員もそれなりにいると気づいたので、グランは1度グランサイファーの団員だけで治すのもいいかもしれないと考え始めていた。

 

「その方がいいかもしれないね」

 

「やっぱり職人に任せた方がいい?」

 

「それでもいいかもしれないけど……グランサイファーを自分たちの手で直したい、って団長さんの思いはグランサイファーにもちゃんと伝わってると思うよ」

 

「ありゃ、ばれちゃってたか……でも伝わってくれてたら嬉しいなぁ」

 

 職人に任せた方が確実なのは確かだが、自分達の艇は自分達手で直したいという思いも皆あるのだ。それを否定せず、肯定することでノアはグラン達の考えは決して間違いではないと遠回しながらに伝えているのだ。

 

「…あ、もうそろそろ時間みたいだ」

 

「ふふ、こうやって最近団長さんと話す機会も減ってきてたから、新鮮だったよ」

 

「俺もだよ、やっぱりこうやって一対一の話をするのは楽しいもんだよ」

 

 団員が多くなってくるということは、一人一人との取れる時間が減ってくるということでもある。それでも皆、ちゃんとグランに着いてきているので信頼関係はきちんと構築されているのだが。

 

「では、ご視聴ありがとうございました。また次回この番組でおあいしましょう、さようなら」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここの部分の素材は?」

 

「さっきと同じだよ」

 

 番組が終わってから、グランはグランサイファーの修理に使う素材をノアに聞いていた。同じ艇と言っても、場所によって使われる素材が違ってきていたり、グランサイファーその物が気に入る素材で作らなければならないという制限が少しある。その為、ノアに聞くのが手っ取り早いという事になったのだ。

 

「艇を修理するには素材から、素材を知るにはノアから聞くのが1番……やっぱり間違ってなかった」

 

「団長さんは、判断を間違えることはあまりないよね。けど、聞くだけじゃあ駄目だからね」

 

「分かってる、木材の加工の仕方とかも覚えないといけないし」

 

「この騎空団には、鉄の扱いが上手な人達がいたね。鉄と木じゃあまるっきり変わってくるけど、つなぎとめるために必要な釘なんかは、彼らに頼むといいよ」

 

「木材に関しては……」

 

「種類を聞くならユグドラシル、加工方法は…僕に聞くのが手っ取り早いかな」

 

 ユグドラシルはルーマシー群島にいる星晶獣、鉄の加工が得意な人というのはガラドア等のことである。ノアに聞いても問題は無いが、艇造りの星晶獣なので簡易的に木材や鉄のことは分かっても、プロフェッショナルに聞いた方がいいというのがノアの判断である。

 

「分かった!聞いてみる!!」

 

「うん、行ってらっしゃい」

 

 早速聞きに行くために走り出すグラン。ふと、その後ろ姿を見てノアは考える。グランが自分でグランサイファーを直せるようになった場合、彼の新