FAIRY TAIL 孤独の女剣士の物語 (じゃじゃ丸)
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序章 プロローグ

「行くよ!」生きの良い掛け声が辺り一帯に木霊する。

 

 

「言われなくても!」「あいよ!」「りょーかいっ!」

それに呼応するように次々と答える。

 

 

4人は前に向き直り、目の前の強大かつ最悪の敵と対峙する事に集中する。次々と斬り掛かり、ダメージを蓄積させていく、小一時間程斬り付け、至る所から出血し、倒す事に成功した。

 

 

「お疲れー!」と茶髪の少女と、同じ身長の白髪の少女が互いの疲れを労うようにハイタッチをする横で、高身長の男2人が微笑む。

 

 

「さて、取り敢えず終わった事だし、帰るとするk…」

男が帰るために3人を集めようとする、が。

 

 

辺り一帯が一瞬にして黒く染まった。

 

 

 

「な…に……この…とてつもない圧力は……」

 

 

「わからない、だが……、俺等は確実に死ぬぞ……。」

 

 

「お…、おいおい……、悪い冗談はそれくらいにしようぜ?いくらお前の予知魔法の的中率が高いからって……なぁ?んな事ある訳ないよな?」

 

 

「ねぇ……私達本当に死んじゃうの?」白髪の少女が茶髪の少女にすがりながら聞く。

 

 

「多分……、でも……、方法はあるんでしょ?」予知魔法で察知した男に聞く。

 

 

「あぁ……、だがな……、その……」と俯きなが話す。

 

 

「お前だけなら生き残る事が可能だ。」

 

 

「は………?それじゃ意味ないでしょうが!全員で生き残る方法は無いの!?」あまりの事に、理解できずに聞き返す。

 

 

「駄目みたいだな、諦めろ、せめてお前だけでも生きろ、ここで全員死ぬより良いだろ?」もう一人の男が半ば諦めた顔をしながら説得する。

 

 

「ゴメンね……、本当は一緒に生き残りたかったけど、それは無理なら……アナタだけでも生きて……」笑顔を見せるが、その目からは涙が溢れていた。

 

 

 

「ダメっ!行っちゃダメ!自分1人だけ生き残るなんてそんな……そんなのあんまりだよ!」泣きながら訴える。そんな彼女を宥めるように

 

 

彼らは彼女に魔法をかけた。

 

 

生き残るために、この先、楽しい事、苦しい事もあるだろうけど、生きて、生きてこの先の未来を見ろ、そういう思いを込めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつ見ても嫌な夢だ。

 

 

夢では無い、現実だった事だ。自分にそう言い聞かせベッドから這い出る。

 

 

下着姿のままキッチンに向かい、水を一杯ぐびっと飲み干す。

 

 

タンスから服を取り出し、手早く着替えを済ませ、前日に準備しておいた荷物を拾い上げ、棚に掛かっている2本の銀色の剣を取る。慣れた動作で背中に担ぎ、棚の上にある写真立てに向かって

 

 

「行ってくるね、みんな。」

 

 

そう言い残し、家を後にした。



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第一章 収穫祭 BOF編 収穫祭前日

 目的地はそう遠くない……と、思っていたのだが、思いの外遠かったようだ。途中で疲れてしまい、草むらに座り込む。

 

 

「はぁ…、本当に体力無いなぁ…、身長も無ければ胸も無いし………」その先もあったが、自分で言ってて悲しくなってきたので、言わない事にした。

 

 

「それよりも早く行かないとなぁ…、一番近い町は……マグノリアか、取り敢えずそこに行こうかな」

休憩を十二分にとったので、再出発する、近いと言っても、一時間はかかる、若干憂鬱な気持ちを振り払い、歩みを進める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マグノリアの町は思いの外賑わっていた。

収穫祭と重なったのもあるが、人の多さを見ると、日頃から賑わっているのが想像できる、丁度昼時だったので、手頃な店で食事を済ませる事にした。

 

「アンタ、見ない顔だけど何処から来たんだ?」

スキンヘッドの店主が聞いてくる。

 

「えーっと、マグノリアの北の方、ブルーペガサスとの間にある村です、徒歩だったんで結構時間かかっちゃったんですけどね」と、パスタを食べながら答える。

 

 

「そりゃぁまた、ゆっくりしていってくれ、騒がしい町だが、毎日が楽しい、いい町だ」店主が嬉しそうに話す。

 

 

そうですか、と答え、パスタを食べ終え、店主に何か見ておいた方が良いところはあるか聞く

「このマグノリアで来たからには見ておいた方が良いところってあります?」

 

 

「そうだねぇ……、やっぱりカルディア大聖堂かな、後はフェアリーテイル、明後日にはミスフェアリーコンテスト、略してミスコンがあるからな、なんと優勝すれば賞金50万J!夢があるよなぁ…、でも俺は男だから女たちをみて目の保養をするだけだけどな」ガハハハハハ!と笑いながら話す店主に別れを告げ、店を出る。

 

 

腹一杯になったので、どこかの公園で休もう、そう思いやたらデカくて目立つ木の公園にやってきた、だが、休憩をしようにも、金髪の大柄な男が3人組と思われるグループと、その前に立つツンツンした髪型の奴がいて、殺気だっている為、一般人は怖くて近づけない様子だった。途端に大柄な男が「うるせぇ!!!」と、怒鳴り3人組と、もう一人の男目掛けて魔法を放とうとしている。

 

 

「あぁもう!だから魔道士って嫌いなんだよっ!」剣を引き抜き、地面を蹴って雷を落とそうとしている男と、3人組の間に入る。落ちてきた雷を剣で反射させる。

 

 

「お前、何処のどいつだ」金髪の男が睨みながら聞いてくる。

 

 

「私はモナーク、にしても、紋章からしてアンタ達同じギルドでしょ?何仲間内でゲバってるの?傍から見たら一方的な暴力なんだけど、私が防いだから良いものの、これが直撃してたらどうするつもりだったの?」男を睨み返す。

 

 

男は舌打ちをして、去っていった。

 

 

「いやー、危なかったね、大丈夫?」3人組の特に小さい青い髪の女の子に話しかける。

 

 

「あ……うん、大丈夫、その……ガジルが庇っててくれたから」ガジルと呼ばれる男を見ながら言う。

 

 

「そっか、取り敢えず傷の手当……って居ない!何処行ったぁ!」周りを見渡すが何処にもガジルの姿は見当たらない。

 

 

「その……モナークさん?よかったら、ギルドに来てくれます?」

 

 

「いいよ、そうだ、名前聞いてなかった、名前は?」

 

 

「レビィよ、よろしくね!」

 

 

足早にフェアリーテイルに向かった。

 



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バトル・オブ・フェアリーテイル 開幕!!!!

主「感想来ないなぁ……まだ3話目だししょうがないか(諦め)」

モナーク「もっと投稿頻度上げろ」

主「死ねと申すか」

モナーク「聞かなきゃ分からない?死ねって言ってんの」

主「まさに外道」


レビィに連れられ、フェアリーテイルに到着したモナーク達。

 

 

「た、ただいまー!」とレビィが扉を勢いよく開ける

 

 

「お邪魔しまーす」と続くモナーク。

 

 

「マスター、新しい人!」とモナークの背中を押し、マスターと呼ばれる老人の前に出される。

 

 

「ほぅ、お主魔道士のようじゃな、どうじゃウチに入らんか?」何も話していないのに魔道が使える事を見抜かれ、この爺さんは結構強いと確信するモナーク。

 

 

「うーん、そうですね、今日1日考えさせて下さい」と返答する。

 

 

「よく考えるが良い、今日1日このギルドに過ごしてみるか?」と勧められたので断る理由も無いので、そうします、と返事をした。

 

 

「なぁなぁ!お前つぇーのか!?」と横から桜髪の少年が質問してくる、横から「ナツ、落ち着け、すまないなうちのナツが」と緋色の髪の女性が出てくる、鎧を着ているが、あるな、と確信した。

 

 

「大丈夫、んでその…ナツ?強いのかって言われたら強い部類には入ると思うよ、まぁ半分この剣のおかげなんだけどね」と背中に背負っている剣を指しながら言う。

 

 

「ん?その剣、見してはくれないか?」

 

 

「いいよ、はい」と背中のホルダーから剣を外し、エルザに渡す。

 

 

「この剣……もしかしてミスリルソードか?」

 

 

「!……そうだよ、よくわかったね、片方が反射(リフレクト)、もう片方が充填(チャージ)&放出(ショット)」と説明する。

 

 

「チャージ?ショット?」とナツが首をかしげるので、「ナツ、ちょっと私に魔法で攻撃してみてくれる?」と、エルザから充填(チャージ)&放出(ショット)の剣を受け取る。

 

 

「いいのか?なら……火竜の咆哮!!!」とモナークに向け一直線に炎が放たれる、モナークに当たる直前にまるで剣に吸収されるかのようにナツの炎は消えていった。

 

 

「ななななな何だ今の!?!?」と驚くナツに説明する。

 

 

「これがこの剣、ミスリルソードの能力、チャージ&ショット、今ナツの炎はこの剣の中にある、そしてこのナツの炎を剣から放ったり、剣に纏わせたりするの、もう一つの剣はリフレクト、反射だね、今ここでやると建物が燃えかねないからやらなかったけど、跳ね返す魔法と剣の角度によって反射させる向きを変えられる便利なヤツなんだ、因みにレビィちゃんを助けた時に使ったのはこの剣、あの時は殆ど真上に跳ね返したんだけどね」

 

 

能力を淡々と説明し終えると、何が何だかわからないという顔をしているナツと、驚いたような顔をしているエルザ、そして当事者であるレビィは、絶対に剣の能力だけじゃない、あの距離から私達の場所まで跳躍するモナークの身体能力の高さを知った。

 

 

「そろそろ、コンテストの開催時刻じゃな、大金は誰の手になるんじゃろうかね」とマスターことマカロフが話す。

 

 

「うーん、女の私にはあまり……その……自分との差を感じてしまうというか何というか……」と落ち込み気味のモナーク。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、ついに、コンテストが開始される。

 

 

まず最初の演技はカナであった。

 

 

カードで身体を隠し、カードが晴れた頃には水着姿となり、その身体の美しさを存分にアピールしていた。

 

 

次のエントリーは、ジュビア。

 

 

こちらも水を使い身体を隠し、飛沫をあげ水が散った時には青が基調の可愛らしい水着姿となり、ほんのりと赤らむ頬が可愛さをアップしていた。

 

 

お次は優勝有力候補の1人、ミラジェーン。

 

 

だが彼女は何故かここでその天然さを発揮し、顔だけハッピーという奇怪な姿になり、優勝候補から外れた。

 

 

そして、エルザ、レビィにビスカと続き、参加者の殆どが自分より大きかったので、かなり落ち込み、心がグロッキー状態となっていた。

 

 

そして、ルーシィの出番となった。

 

 

「その輝きは星霊の導きか!

 

ルーシィ・ハー……「だぁー!! ラストネームは言っちゃだめぇー!!!」」

 

 

司会者にラストネームが呼ばれる前にステージへと飛び出たルーシィ。

 

 

観客から笑いが出ると、ルーシィは恥ずかしがりながら前に出て、星霊と踊る事にしていた。

 

 

そして、ルーシィのアピールタイムが始まろうとした……その時────

 

 

「エントリーNo.9 ……」

 

 

ルーシィの番を無視し、女の声が会場に響く。

 

 

「っちょ! まだあたしのアピールタイムが……!」

 

 

「妖精とは私の事、美しさとは私の事……そう、全ては私の事……優勝はこのエバーグリーンで決定ー!ハーイ、くだらないコンテストは終了でーすっ 」と、ステージに現れたのはエバーグリーンだった。

 

 

「エバーグリーンっ!?」

 

 

「帰ってたのか!?」とギルドのメンツから驚きの声が上がる。

 

 

「ちょっと! 邪魔しないでよ!! これにはあたしの生活がかかってんだからね!!」

 

突然登場したエバーグリーンに大声で文句を言いよるルーシィ。だが……

 

 

「ルーシィ!! そいつの目を見るなっ!!」

 

グレイの声が響くが、ルーシィはグレイの忠告に逆らい、エバーグリーンの目を見てしまう。そして、その瞬間エバーグリーンの魔法により身体が石像へと変えられてしまった。

 

 

「「ルーシィっ!!!!」」ナツとグレイの声が響く。

 

 

「何をするエバーグリーン!? 祭りを台無しにする気か!!」

 

 

マカロフの怒鳴り声が響く。だが、それにもエバーグリーンは気にせず……ステージの幕を取り払う。

 

 

「お祭りには余興がつきものでしょ?」

 

 

取り払われた幕の裏には石像となったエルザ達が居た。

 

 

「なっ…!控え室にいた奴等が全員石にっ!?」

 

 

「エルザやミラまでっ!?」

 

 

「バカタレが!! 今すぐ元に戻さんかっ!」マカロフの声が響いた時、ステージに雷が落ちる。

 

 

「よぉ……妖精の尻尾の野郎共……祭りはこれからだぜ?」雷が収まると、ステージにはラクサスと残りの雷神衆が立っていた。

 

 

「ラクサス!!」

 

 

「フリードにビックスローもいるのか!?」

 

 

「遊ぼうぜ……じじぃ」

 

 

「バカな事はよさんか、ラクサス!! こっちはファンタジアの準備も残っとるんじゃ……今すぐ皆を元に戻せ!」マカロフのドスの利いた声にも臆さず……クククと笑うラクサス。

 

 

「ファンタジアは夜だよなぁ? さぁて……一体、何人生き残れるかねぇ……!!」

 

 

その言葉と共に、ルーシィの真上へと雷が落ちる。

 

 

「ばっ! ラクサス!! よせぇ!!」

 

 

突如としてマカロフの横からモナークが消え、落とされた雷は、寸前でルーシィから逸れてステージを破壊する。

 

 

「まーたアンタなの?やたら無抵抗の女の子に暴力を振るのが好きみたいね」と剣を払いながらラクサスの前に立つ。

 

 

ラクサスはモナークを無視し「この女たちは人質に頂く……ルールを破れば一人ずつ砕いていくぞ? 言ったろ……これは余興だと!」と高笑いしながら言う。

 

 

「冗談ですむ遊びとそうはいかぬものがあるぞ、ラクサス……」

 

 

マカロフの警告にも耳を貸さないラクサス。

 

 

「無論俺は本気だ……じじぃ、ここらで妖精の尻尾最強は誰なのか……、ハッキリさせようじゃないか……つぅ、遊びだよ」そう告げるとステージの方に瞬時に移動する。

 

 

「ルールは簡単だ、最後に残った者が勝者だ……!!」

 

 

その言葉にマカロフが声を荒げようとした、その時……突然、テーブルが吹っ飛ぶ。

 

 

吹っ飛んだ場所にいたのはナツだった。

 

 

「いいんじゃねえの? 分かりやすくて、燃えてきたぞ!」

 

 

「え?」と振り向くモナーク、と同時に

 

 

「ナツ……俺はお前のそういうノリのいいとこは嫌いじゃねえ……」ニヤリと笑うラクサス。

 

 

「ナツ……」

 

 

「祭りだろ?じっちゃん……行くぞ!!」

 

 

ナツは一直線に、ラクサスへと飛び込むが、一瞬で雷の餌食となり、返り討ちにされる。

 

 

「だか……そういう芸の無いとこは好きじゃねぇ、だがよぅ…落ち着けよ? ナツ……」

 

 

ぷすぷすと焦げるナツを気にせず、エバーグリーンが告げる。

 

 

「制限時間は三時間ね? それまでに私達を倒せないとこの子達……砂になっちゃうから」と派手なうちわで仰ぎながら話す。

 

 

「ラクサス……」ステージにいるラクサスの事を殺気立ちながら睨みつけるモナーク。

 

 

「バトルフィールドはマグノリア全体……そして、俺たちを見つけたらバトル開始だ!」

 

 

「バトル・オブ・フェアリーテイル B・O・F……

 

 

開幕だ!!!」

 

 

そう言って、ラクサスは閃光を放ち姿を消し……闘いの火蓋が切って落とされた。




主「髪の毛長すぎて困るンゴ」

モナーク「よし、そこに直れ、年末だし頭ごと断捨離しようか」

主「遠回しに死ねって言うのやめて」


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モナークVSエバーグリーン!

 ラクサスの去った後、大半のギルドメンバーは我先にと、ラクサスと雷神衆を討つべく、ギルドを飛び出して行った。

 

 

「むむむっ……ワシが……ワシが止めてやるわ! 糞ガキがァッ!!」

 

 

他のメンバー同様、マカロフもまた同じ……ラクサスを討つべく、ギルドを飛び出そうとしていた。だが……

 

 

ゴチーーーーンッ!!!!

 

 

「っ!!!!」マカロフはギルドを飛び出そうとした瞬間、見えない壁にぶつかり、外へは出られなかった。

 

 

「おい、何やってんだよじーさん!?」最後に出て行ったグレイがマカロフに気づき戻ってくる。

 

 

「何じゃこれは!? 進めん! 見えない壁じゃっ!!」マカロフの言ったことが理解できなかったグレイははぁ? と言った呆れた表情でマカロフを見下ろす。

 

 

「こんな時にどーしちまったんだよ、じーさん……見えねぇ壁なんてどこにもねぇーだろ?」

 

 

そう言い、グレイはマカロフを抱え引っ張る。だが、マカロフの身体が外へ出ることはなく、確かに見えない壁に邪魔されているかのような感覚がする。

 

 

すると、マカロフとグレイを挟むかのように、空中に文字が浮かび上がる。

 

 

「これは……まさか、フリードの術式か!?」

 

 

“フリード” とは、雷神衆の1人、文字や術式を使った魔法を得意とする男だ。

 

 

「術式?」マカロフの言葉に怪訝そうな表情を浮かべるグレイ。

 

 

「結界の一種のようなものじゃ。術式に踏み込んだものにはルールが与えられる……それを守らねば出ることは出来ん……見よ」

 

 

そう語り、マカロフの指差した先に書いてあった文字は……

 

 

ーールール:80歳を越える者と石像の出入りを禁ずるーーと、書いてあった。

 

 

「何だよこれ……この言ったもん勝ち見てぇな魔法はっ!?」

 

 

「術式を書くには時間がかかる……故に、クイックな魔法には向いとらんが、罠としては……絶大な威力を発揮する……」マカロフは苦々しい表情を浮かべ、語る。

 

 

「こんな魔法のせいで……じーさんだけ出られねぇってか? くそ、じーさんでも壊せねぇのかよ!?」

 

 

「術式の決まりは絶対じゃ!! しかも、 “年齢制限” と “物質制限” の二重術式とは……フリードめ、いつの間にこんな強力な魔法を……」

 

 

マカロフの言うところつまり、どう足掻いてもマカロフがギルドの外へ出て闘いに自ら参加することは出来ない、という事だ。

 

 

その言葉を聞き、グレイはマカロフに背を向ける。「初めからじーさんを参加させる気はねぇって事か……用意周到だな、たく。 こうなった以上、俺たちがやるしかねぇな……」

 

 

グレイの言葉を聞き、ほんの少しマカロフの目が見開く。「グレイ……!」

 

 

「あんたの孫だろうが容赦はしねぇ……俺はラクサスをやるっ!!」

 

 

グレイはそう言い残し、街中へと走り去って行った。

 

 

その後ろ姿を見つめ、深いため息をつくマカロフは背後でガタッと何かが動く音に気づき、振り返った。

 

 

「ごあぁああああっ!!!!!」

 

 

背後から爆発音と共に大きな叫び声が聞こえた。マカロフは何事かと振り返ると、先ほどラクサスにより気絶させられたナツが起きていた。

 

 

「あ、やっと起きた」とモナークがナツに近寄る

 

 

「あれっ!? ラクサスどこ行った!?つか誰もいねぇーし!! どーなってんだじっちゃん!?」

 

 

騒ぐナツを見つめ、こ奴ならもしや……と考えついたマカロフは「祭りは始まっておる!! ラクサスはこの街のどこかにいる……早く探し出し倒してこい!!」

 

 

マカロフの言葉を聞き、燃え上がるナツ。「おっしゃぁあああっ!!! 待ってろラクサスぅううううっ!!!」

 

 

ラクサスを追い、ギルドを飛び出そうとするナツ。

だが……

 

 

ゴチィーーーーーンッ!!!!!

 

 

「おごっ!?」

 

 

「え……」

 

 

「「「えぇえええええっ!?」」」

 

 

何故かマカロフ同様、見えない壁に阻まれたナツにマカロフ、ハッピー、モナークは目を見開き驚愕する。

 

 

ナツは決して石化しているわけでも、80歳を越えている訳でもないにも関わらず。

 

 

「どーなってんじゃぁあああっ!? ナツ!お前80歳かっ!? 石像かっ!?」

 

 

マカロフのツッコミが炸裂するもナツはうがー!と見えない壁に体当たりしながら吠える。

 

 

「知るかぁ!!! うぉぉおお!!何で出れねぇんだよ、くそぉおおお!!!」

 

 

どんなに頑張ってもギルドの外へ出られないナツ。すると……

 

 

「あれ何?」見えない壁を見上げていたモナークが何かに気づき、一同がそちらを見上げると……

 

 

「何じゃ……バトル・オブ・フェアリーテイル 途中経過速報?」

 

見えない壁に浮かび上がった文字を怪訝そうに見つめると、さらに文字は増え……

 

 

「なっ……【ジェットVSドロイVSアルザック 戦闘開始】 じゃと!?」

 

 

「なんで!?なんであの3人が戦ってるの!?」

 

 

「あ、また増えた、なになに…【勝者・アルザック】 【ジェット&ドロイ 戦闘不能】」

 

 

その速報の内容にマカロフたちは困惑していた。

 

 

「どうして皆が戦ってるの!? 敵はラクサスでしょ!?」ハッピーの辛そうな声に拳を握りしめ、マカロフは憶測を語る。

 

 

「恐らく、フリードの術式にはまったのじゃろ……クソ、彼奴らめ!」悔しそうにそして、苦しそうに顔を歪めるマカロフ。

 

 

愛する我が子同然子同士が争うなど……マカロフにとっては耐え難い苦痛なのだろう……

 

 

「ナツも出られ無いとなると私が出るしか無いね」と剣を背中にかけたモナークが術式の前に立つ。

 

 

「しかし……お主は……」とマカロフが躊躇いを見せるが……

 

 

「大丈夫ですよマスター、私が全員倒してきます」と言ってモナークは町の方に走り去っていった。

 

 

「あのモナークって人強いの?」とハッピーが若干心配そうに言う。

 

 

「わからん……じゃが、グレイと同じく我々の希望でもある」と空中に浮かぶ途中経過を見ながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギルドから出て暫く、術式を踏むのは嫌なので、飛行しながら移動するモナーク、「まだ高速移動は無理かなぁ…」と呟いていると……ど派手な服をきた女が見えてくる。

 

 

空に駐留する緑色の服装に身を包んだ眼鏡をかけた女性。ご丁寧に背中には翼らしきものを6枚ほど誂えており、いかにも自分がここにいることを自慢しているような感じを醸し出している。

 

 

「エバーグリーンだっけ?皆を石化させたのは」

 

 

「そう、私よ、身体も心も子供なアナタにこの美しき私が倒せるかしら?」とモナークを完全に挑発しにかかるエバーグリーン

 

 

「は?」とカチッと何かのスイッチが入ったモナークはハインドで姿を消し、更に上空に移動する

 

 

「悪いけどおばさん1人にかけてられる時間も無いの、あと、私一応20歳だから!!」と言うが、エバーグリーンからは姿が見えないので、完全にどっから声が聞こえるのかわからない状況となっている。

 

 

「っ……何も出来ないじゃない!」と1人悪態をつくエバーグリーン。

 

 

「あなたの魔法は目と目が合ったら石化するけど、条件としてあなたが対象を視認しなければ発動しない、つまりあなたは詰み」モナークに自身の魔法の弱点とも言える条件を言い当てられ、更に混乱するエバーグリーン。

 

 

左手の剣の中にあるナツの炎を剣に纏わせる、上空から急降下し、左の剣でエバーグリーンに一撃を与える

 

 

「くらえ……、魔力撃っ!!!」

 

 

回避などできる訳もなく、もろに魔力撃をくらったエバーグリーンは地面に叩きつけられ、跳ね上がった。

 

 

「更に……もう一撃!!」2撃目をエバーグリーンの横腹に直撃させる。エバーグリーンは声も出ずに地面を転がって行き、しばらくすると止まった。

 

 

「さて……石化を解除してもらうわよ……って気絶しちゃってるじゃん、やり過ぎたかな?」白目を剥いて倒れているエバーグリーンを横に剣を仕舞う、一度ギルドに戻った方が良いか、と思考を巡らせていると……

 

『よぉ、聞こえるか? じじぃにギルドの奴ら……』と映像型のラクリマにラクサスの顔がデカデカと映し出された。

 

 

『ルールが1つ消えちまったからなぁ……今から新たなルールを1つ、追加する』ラクサスはそこで一度言葉を切る。

 

 

『ククク……この、バトル・オブ・フェアリーテイルを続行するため……俺は “神鳴殿” を起動させた』

 

 

突如空からラクサスの声が聞こえたので周囲を見渡すがその姿は見当たらない、恐らくはラクリマかなんかで発信しているのだろう。既に空にはラクリマが円形状に浮かび、不気味なオーラを放っていた。一度ギルドに戻る事にしていたが、どうやらラクサスを仕留めに行かなくてはいけないらしい、そう思い、町の1番目立つ建物、カルディア大聖堂に向かった。



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神鳴殿

【モナークVSエバーグリーン】【勝者モナーク】【エバーグリーン戦闘不能】

 

 

モナークの勝利を知ったナツたち。

 

 

「勝った!! モナークが勝ったんだぁ!!」ハッピーやその他メンバーが飛び上がり、喜ぶ。

 

 

初めは訳の分からなかったルーシィや他のメンバーもマカロフやハッピーから説明を聞き、現状を理解する。

 

 

「あの人……強いとは思ってたけど……そんなに強かったなんて……」とレビィの発言に対してルーシィが質問する「モナークって人、レビィちゃんは何処で知り合ったの?」「っとね……、ラクサスに雷落とされたんだけど雷を弾いて助けてくれた」と説明すると、一部を除いて驚いた。

 

 

「あ、あのラクサスの雷を弾き返したの!?」とルーシィ

 

 

「やっぱりアイツ強いのか!」と喜ぶナツ。

 

 

「レビィ、この術式、書き換えられるか?」とエルザが装備を整えた姿で出てきた。

 

 

「うん!少し時間かかるかもしれないけどやってみる!」と早速術式の書き換えに取り掛かるレビィ

 

 

「エルザとモナーク、2人が今唯一の希望じゃ、頼むぞ!!」

 

 

『よぉ、聞こえるか? じじぃにギルドの奴ら……』

 

 

ナツ達や町で未だに戦っていたメンバーの目の前に魔水晶映像に映るラクサスがデカデカと現れた。

 

 

『ルールが1つ消えちまったからなぁ……今から新たなルールを1つ、追加する』ラクサスはそこで一度言葉を切る。

 

 

『ククク……この、バトル・オブ・フェアリーテイルを続行するため……俺は “神鳴殿” を起動させた』

 

 

「神鳴殿じゃとぉっ!?」ラクサスからの宣言を聞いた時、マカロフはプルプルと震え、青筋を立てラクサスを睨む。

 

 

ラクサスの映った映像が消えた瞬間、マカロフの怒声がギルドに響く。

 

 

「何を考えておるんじゃラクサスゥ!! 関係の無い街の人達まで巻き込むつもりかぁ!?」と、大声をあげた……その時────

 

 

ドグンッ!!

 

 

突然胸が痛み出すマカロフ。「うぐっ……!?」

胸を抑え、倒れるマカロフ。

 

 

「「マスター!?」」

 

 

「じっちゃん!!」

 

 

「大変!いつものお薬……!」

 

 

突然倒れたマカロフに慌てふためくナツたちと奥の部屋へ、発作時のお薬を取りに戻るミラ。

 

 

マカロフはルーシィたちが現在、介抱を始めた。すると、奥へ薬を取りに行ったミラがどこか慌てた様子で戻ってきた。

 

 

「皆大変!! 空に何か……!」

 

 

「「「空……?」」」ミラに続き、ナツとシクル以外のメンバーがギルド2階のバルコニーから空を見上げると……

 

 

「……何、あれ……」マグノリア全体を囲うように空中に浮かぶ球体の何か……魔水晶のようなそれ……

 

 

近くには説明文のようなものが書かれており、それによると制限時間になると街を魔水晶から発せられる雷が襲うというものだった。

 

 

「そんなことさせないっ! スナイパーライフル換装!!」ビスカが銃を換装し、魔水晶へ向け2発の弾丸を射つ、弾は一直線に飛び、ラクリマに命中、ラクリマを破壊した。

 

 

「ビスカだめ!! それを壊したらっ!!」と、術式を書き終えたレビィが大きな声で叫んだ。

 

 

「えっ……」だが、時既に遅く……破壊から数秒、時間が開き……ビスカの身体を強い衝撃が襲う。

 

 

「あぁあああああああっ!?」

 

 

「「「ビスカっ!?」」」

 

 

「何、今のっ……!!」

 

 

ビスカの身体を強力な雷が襲い、その瞬間、ビスカは倒れてしまう。

 

 

「あれを壊しちゃダメ! あれには生体リンク魔法が掛けられている……壊したらこっちがかみなりにやられちゃうのっ!」

 

 

「んじゃどーすんだよ!?」

 

 

「ラクサスを倒せばこのラクリマも無くなる……と思うけど……」と予測を語る。

 

 

 

 

 

 

 

 

一方モナークは。

 

 

「はぁ…はぁ…はぁ…やっぱ体力無いわ…ちょっと休憩……」とフラフラしながら建物の壁によりかかる

 

 

「にしてもあのラクリマ、絶対にヤバイヤツだよねぇ…」上に浮かんでいるラクリマを見上げながら1人呟く。

 

 

「ふぅ……、そろそろ行かなきゃ」と立ち上がり、再びカルディア大聖堂に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「モナーク!!これを300個破壊できるか?」

 

 

「片っ端から切ればいいんでしょ?任せて」

 

 

カルディア大聖堂に着いたモナークはラクサスの事をナツとガジルに任せて、神鳴殿の破壊にエルザと共に専念する事となった。

 

 

エルザは既に剣を幾つも召喚し、破壊の準備をしていた。

 

 

「任せて!! じゃあ私が300壊すから残りの300……よろしくね!」と剣を引き抜き神鳴殿と同じ高度まで飛翔する。

 

 

東をモナークが、西をエルザが担当することになりモナークは剣を構え、一直線に凪ぐ準備をする。

 

 

隣では200まで剣を出しきるも魔力が不足し、膝をつくエルザ。

 

 

「エルザ! 大丈夫!?」モナークが心配し、声をかけるがエルザは気合で立ち上がった。

 

 

「大丈夫だ! 問題ない……だが、このペースでは発動前に300破壊が……」

 

 

「だったら残った100も追加で破壊する、エルザは無理しないでね」

 

 

「あぁ…助かる、大丈夫なのか?」

 

 

「200個分のダメージは剣に吸収させる予定なんだけど……250個分は受ける事になるね」

 

 

「そうか……よし!モナーク!行くぞ!!」

 

 

「あいよ!!」

 

 

掛け声と共にエルザは魔法を放ち、モナークは飛行しながら神鳴殿を半分に切断していく。

 

 

そして、神鳴殿600個の破壊に成功する

 

 

神鳴殿がひとつ残らず、崩壊していくのを見つめ、微笑む一同……そして……生体リンク魔法が襲いかかる……。

 

 

「ぐぅっ!!?」

 

 

「うっ………!!」

 

 

神鳴殿破壊から数分、動く事ができなかった。

 

 

「エルザ……大丈夫?」

 

 

 

「あぁ……大丈夫だ……モナーク、行くのか?」エルザの問いかけにコクリと頷く。

 

 

「うん、あの2人じゃ勝てるか五分五分だから」そう言い、シクルは重い身体を起こし、立ち上がる。

 

 

「……無理はするな、モナーク……」

 

 

心配気なエルザを見下ろし、ニッコリと微笑むと「大丈夫!」と言いきる。

 

 

そして、大聖堂へ向け再び走り去るモナークを見つめる。「……頼んだ。」




実は神鳴殿の数ってビスカが破壊した1個を入れれば599個なんですよね()
細か過ぎてもなんか嫌だったので600個にしました


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実力の差

 神鳴殿の破壊に成功し、痛む身体を無視し大聖堂へと走るモナーク。

 

 

途中、意識を失いかけるが、なんとか意識を引き戻し、再び走り始めた。

 

 

そして、大聖堂についた時……目の前ではラクサスに隠された本当の力、 竜の力を使いナツと共闘していたガジルに向け強力な魔法を放つところだった。

 

 

「消し飛べぇ!! レイジングボルトォ!!」

 

 

もう殆ど発動しかけており、剣を引き抜き2人を完全に反射の範囲に覆うのは無理だと瞬時に判断したモナークはナツとガジルの前に立ち、庇った。

 

 

「ガハッ……!!」

 

 

「モナークっ!?」

 

 

「てめぇ……なんでっ!?」

 

 

モナークの小さな身体はラクサスの魔法を受け、前から倒れ込んだ。

 

 

「はぁ…はぁ…、流石に……キツイなぁ……」

 

 

ラクサスの雷をもろに受けたにも関わらず、なんとか立ち上がる。

 

 

「けど…まだ……やれるっ!!」剣を持ち、ラクサスに突撃する。

 

 

が、ラクサスに頭を殴られ、地面に叩きつけられる。

 

 

ドゴォッ!!

 

「がっーーー!」頭を殴られた衝撃も伴い、目の前が揺れ、意識が朦朧とするモナーク。

 

 

「モナーク!!」

 

 

「お前!!」

 

 

ガジルとナツの声が響く中、立ち上がれないモナークの頭をわし掴むラクサス。

 

 

「部外者が口出してるんじゃねぇ!!!」そう叫ぶと同時にモナークの腹を殴り飛ばす。

 

 

「かっは!うっ……このっ……!」と、朦朧とする意識の中、右足でラクサスの腕を蹴り上げる。

 

 

「調子に乗るんじゃぁ……ねぇ!!!」とモナークを宙に放り投げ、壁まで蹴り飛ばす。

 

 

壁に激突し倒れ、動かなくなった。

 

 

「ウソ……だろ……?」

 

 

「フッ……ハッハハハハハ!!!!!死にやがったぞ!!!全く、弱い癖に口を突っ込むからだ!!!」と腹を抱え高笑いするラクサス。

 

 

「はぁ……、全く荒んだ心だね。人の死を笑うなんてね。」

 

 

「「「!?」」」死んだと思っていたラクサスは特に驚いていた。

 

 

「テメェ……何故あれだけの攻撃を受けておいて生きている……」

 

 

「ん?むしろあれだけの攻撃で死ぬと思ってるの?」と埃を払いながら言う。

 

 

「テメェ……舐めてんのか?」と目が本気「はぁ…まだやるの?もうアンタに勝ち目は無いよ?」とラクサスが言う。

 

 

「まぁ、そうかな。戦い慣れているが、自分の力に慢心している。それじゃあ私には勝てないよ。何故なら………。」姿を魔法で消し、真っ直ぐラクサスの前に近寄る。ラクサスは必死で視界から消えたモナークを探すが、見当たらない。それどころか、気配すらも感じない程にだ。

 

 

警戒を一瞬だけ緩めるラクサス。しかし、一瞬でも緩めてはいけなかったのだ。その緩めた一瞬、ラクサスの眼下にはとびっきりのしてやったと言わんばかりのドヤ顔みたいな顔があり、モナークの左手には凄まじい魔力が込められた銀剣が握られていた。

 

 

「時には下も見た方がいいよ?下だと思ってた奴が意外と近くに居たりするから!!」モナークの無慈悲な“魔力撃”は、ラクサスの顎に突き刺さり、強力な衝撃波ともに彼はカルディア大聖堂の天井に叩きつけられる。

 

 

なんとかその後、着地したもののラクサスの目はすでに本気になりかかっており、モナークは意地悪くラクサスを挑発する。

 

 

「来なよ、叩き直してあげる!大きく成りすぎたその鼻を軽々とへし折ってあげるよ、ラクサス!」

 

 

モナークの挑発が確実にラクサスの気に触ったであろう時から、すでに5分弱が経過していた。未だに戦況は一歩も譲らない。

 

 

しかし、ナツとガジルには何かが可笑しく見えていた。

先ほどから両者は負けず劣らずの攻防を繰り返し、互いに傷つけているように見える。

 

 

だが、モナークが時々見せるあの余裕はなんだろうか?口許の片隅を上げ、ニヤリと不適に笑い、それでいて疲れが全くと言っていいほどに見えてこない。

 

 

一方のラクサスは徐々に攻撃するタイミングやスピードを確実にずらしていっているが、未だに決定打とも言える強攻撃をモナークに当てることが叶わなかった。

 

 

遅れて、エルザがやって来て空中で殴りあっている別の二人を見て、目を疑った。 

 

 

ラクサスとモナークの二人が戦っているという現場のことだろう。ナツは羨ましそうにしているが、エルザは完全に驚いている。

 

 

多分ラクサスに勝てるような者がギルダーツの居ない今で誰一人として居ないと思っていなかったのだろう。そんな三人の目の前で、ラクサスが突然咆哮する。

 

 

「ちょこまかとかわしやがってええええ!!!レイジングボル……」

 

 

彼がよく使用する魔法の一つ、レイジングボルト。強力な雷の魔力の塊が、モナーク目掛けて襲う……はずが、途中でラクサスが空中で動きを止める。

 

 

「大丈夫?関節がだいぶ痛いと思うけど」

 

 

気がついた頃にはカルディア大聖堂の床にラクサスが倒れており、モナークはつまらなさそうに欠伸をしている姿が目に入る。

 

 

あのラクサスがモナークに圧倒され、敗北の兆しを見せているのだ。その姿はエルザやナツからもあり得ないものであろうが、現実に過ぎない。

 

 

しかし、やはりラクサスはここで終わらなかった。少しずつ立ち上がって、怒りを顕にしており、今にもモナークに襲いかかろうとしていた。

 

 

────が、モナークにその攻撃は何故か当たらない。スカッスカッと空中で彷徨い、モナークは余裕綽々の様子だった。

 

 

「もう疲れてるだろうし、楽にしてあげるよ」バックステップでラクサスから距離をとる。

 

 

「ポゼッション、ファイヤ!」モナークの足元に赤色の魔法陣が現れる、その上では炎を身に纏ったモナークが立っており、まさに今ラクサスにトドメの一撃を放とうとしていた。

 

 

ラクサスもモナークに対抗して、レイジングボルトの為に魔力を溜める。

 

 

先に動いたのはモナークだった、一瞬にして姿を消し、ラクサスに近寄る。

ラクサスもそれに合わせてレイジングボルトを放つ。

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」二刀はラクサスの横腹に吸い込まれる用に撃ち込まれ、ラクサスは体勢を崩し、大聖堂の壁を貫通して、落下していった。

 

 

「ふぅ……、久しぶりにこれ使ったなぁ、あ、エルザ来てたんだ。」

 

 

「な、なんだ…さっきの戦いは…」

 

 

「俺も戦わせろー!!」」

 

 

「うるさいぞ、ナツ!!」

 

 

「ご、ゴメンナサイ…」

 

 

ナツがエルザに叱られ、静かになる

 

 

「うっ………」ふらつきながら出口へ向かうモナーク、途中でエルザが肩を貸してくれた。

 

 

「ちょっと無理しちゃったなぁ…、暫く筋肉痛だな…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回  ファンタジア



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ファンタジア

バトル・オブ・フェアリーテイルから一夜明けた次の日、ギルド内は落ち着きを取り戻し、街も多大なる被害はあったものの今は落ち着き、普段と変わりなく過ごし、先延ばしとなったファンタジアへ向け、準備が進められていた。

 

 

ギルドに戻ると予想した通り、やはりお祭り騒ぎのメンバーにクスリと苦笑を浮かべる。

 

 

「今年は全員参加だからなぁ」

 

 

「えぇ!? そ、それじゃあジュビアも参加なんですか……?」

 

 

「待って!? それじゃああたしも参加なの!? うそっ!」

 

 

グレイの言葉にジュビアとルーシィは声を上げ驚きを見せるがその表情はどこか嬉しげだった。そんな2人にグレイは苦笑を浮かべ、クイッと後ろを指差す。

 

 

「まぁ、あんなんファンタジアに参加できねぇからなぁ」

 

 

グレイの差す方には包帯でグルグル巻きにされた超重傷のガジルと同じく包帯グルグルの口まで包帯で覆われているナツの姿だった。

 

 

「あんなのって言うなよ……」

 

 

「ふぉへあはんがふんがっ!!」

 

 

唇を尖らせ拗ねたように文句を言うガジルと何を言ってるのか全く分からないナツ。誰もが聞き取れない中ガジルだけはその言葉を理解し……

 

 

「無理だね。参加できるわけねぇだろ」と、会話をする。

 

 

「ふぉあえばふぅがふぅがばお!!」

 

 

「それは関係ぇねぇだろ!? 子供かてめぇは!!」

 

 

 

「なんで分かるんだろ……」

 

 

「きっと似たもの同士だからだよ……」

 

 

「だねぇ……」

 

 

 

ガジルとナツの会話に苦笑を浮かべ、乾いた笑いをするルーシィ、ハッピーと。

 

 

他にも怪我をしているのに騒ぎ回るせいで傷が開き痛みに呻くものやそれを見てワタワタするもの、笑い転けるもの……

 

 

その様子をギルドの入口から眺めていたモナークはつい、プフッと笑った。

 

 

そして、その笑い声に騒がしい中、全員がモナークの帰りに気づいた。

 

 

一斉にこちらへ向かれる視線にビクッと肩を揺らすモナーク。

 

 

「あ! モナーク!! お帰りなさい!!」

 

 

「お! やっと戻ってきたな!」

 

 

「モナークも飲もーぜ!!」

 

 

「……ごめん、私今日は……」

 

 

「え!? ちょ、モナーク!!」

 

 

「もう帰んのかよ!?」

 

 

「待てって!!」

 

 

「ごめんね、まだ私はギルドの一員じゃないんだ」

 

 

そう言い、引き止める声に聞こえないふりをし、ギルドを去ろうとする。

 

 

その時────

 

 

ドンッ!

 

 

扉の前で何かとぶつかるモナーク。

 

 

「っ! ったぁ〜……」

 

 

何かにぶつけた鼻を抑えながら前を向くと……

 

 

「……ラクサス」モナークを見下ろすラクサス。その身体はナツやガジルよりは少ないものの包帯が巻かれていた。

 

 

ラクサスはほんの少しモナークを見下ろすとその横をスッと通り過ぎて行く。

 

 

振り返った先では、ラクサスにギルド内から文句の声が上がっていた。

 

 

「よさないか、お前達!!……行け」

 

 

声を荒らげるメンバー達はエルザの一喝で静まり返る。そして、ラクサスは再び足を医務室で休んでいるマカロフの元に進めると……

 

 

 

「ふぁぐあぐー!!!!」

 

 

ナツがその前を立ち塞がった。

 

 

「……ナツ」

 

 

ラクサスを前にプルプルと身体を痛みに震わせながら、息を荒くし、立ち塞がるナツ。

 

 

「ふぁぐが!! ふあがふぁんがふぉんぐがうがばうが!!」

 

 

全くなんといっているか分からない言葉を発するナツに一同がポカーンと唖然とする。

 

 

「……通訳よろしく」ルーシィの一声で、はぁ……とため息をつくガジル。

 

 

「 2対1でこんなんじゃ話にならねぇ 次こそはぜってぇ負けねぇ……いつかまた勝負しろラクサス!! ……だとよ」

 

 

「え……でも、戦いには勝ったんでしょ?」ルーシィの問いかけに首を横に振るガジル。

 

 

「俺もあれを勝ちとは言いたくねぇ……あいつはバケモンだ……あの怪我も、ほとんどあの女との戦いで作った傷だ……もし、ファントム戦にあいつがいたならと考えたら……ゾッとするぜ」

 

 

そして、そのバケモノに傷を負わせたあいつも……ガジルはそっと、気づかれないように入口で突っ立っているモナークに視線を向ける。

 

 

一方、ナツにその言葉を告げられた張本人、ラクサスは……暫くナツを見つめると何も言わず、その横を通り過ぎる。

 

 

「っ……!! ふぁぐあぐー!!!!」無視されたことに腹を立てたナツが振り返り、声を荒らげると……

 

 

ラクサスは静かに右手をあげた。

 

 

「っ!!!」それをみたナツは一瞬驚きに目を見開き、パァッと笑みを浮かべた。

 

 

ギルドを後にしたモナークはマグノリアを一望できる丘の上にそびえ立つ、大きな樹木の上に寝転がっていた。

 

 

空を見上げ、はぁと沈んだ様子を見せるモナーク。

 

 

そして、ラクサスが破門を言い渡された次の日、ファンタジア当日……

 

 

街中はパレードで大賑わいだった。

 

 

ルーシィやレビィ、ビスカ達によるダンスやグレイとジュビアの共演、エルザの剣による舞、重傷の身体を無視しながらパレードに参加したナツは演出の途中でむせ込み、辺りから笑いがこみ上げる。

 

 

そんなパレードの最後は、マスターマカロフのファンシーな踊り。

 

 

見物客からは多くの笑いと歓声が響く。

 

 

そんな影でじっとパレードを見つめる大男……ラクサスの姿があった。

 

 

ラクサスは奇妙なダンスを踊るマカロフを見つめるとフッと微笑み……その場を去ろうとする。

 

 

だが……

 

 

「っ!?」視界の隅で映った光景に目を疑い、パレードを振り返る。すると……

 

 

ギルドメンバー全員が、右手を上げ、人差し指を天高く、掲げていた。

 

 

それは、昔幼い頃にラクサスがマカロフにしたある合図……

 

 

“例え……姿が見えずとも……

 

 

どんな遠くにいようとも……

 

 

ずっとお前のことを……見守っている”

 

 

言葉にせずとも、マカロフからのそのメッセージが心に届いたラクサスは、目に涙を浮かべ……

 

 

「じじぃ………」

 

 

ラクサスはそれを最後に、パレードを振り返ることはなく……立ち去っていった……。

 

 

その後、ナツからの大抗議を受けるマカロフや、責任を取りマスターを辞めると大騒ぎになった妖精の尻尾だが、フリードの丸刈り坊主という古い反省の意の示し方に、その場は収束した。

 

 

そして………

 

 

「……そうか、オヌシを歓迎するぞ!」

 

 

ギルドのメンバーが歓迎する中で、モナークの頬はほんのり紅く染まっていた。

 

 

 

 

 

 

次回、ニルヴァーナ編

 

 

予告

 

 

 

 

また会えた!………お姉ちゃん!!

 

 

 

 

アンタに………やらせはしないっ!!!

 

 

 

 

無駄な事を……、お前には守れないのだよ!!



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第二章 ニルヴァーナ編 結成!連合軍!

ファンタジアから約一ヶ月、ギルドはいつも通り、依頼をこなし、ギルドではバカ騒ぎをして過ごしていた。

 

 

そして、今しがた来たばかりのモナークはその光景に苦笑を浮かべていた。

 

 

「うわぁ……いつも通りだなぁ…」

 

 

ふと、モナークはギルドのカウンター前が異様にざわついており、人が集まっていることに気づいた。そこにはナツやルーシィたちもいた。

 

 

「……なんだろ」そう言いカウンターに近づく。

 

 

集まるメンバーの中央では空中に光筆で描いた闇ギルドの組織図が描かれていた。

 

 

「お? よー! モナーク!!」

 

 

「おはよ、ナツ……これ何やってるの?」

 

 

「あ、モナーク! これからね、ミラさんが闇ギルドについて教えてくれるのよ」モナークの問いかけに答えたルーシィのその言葉にふーんと空中に描かれるその図を見上げる。

 

 

「あ、ミラさん。そこの1列全部消しちゃって下さい、全部潰しちゃいました。」とモナークが突然トンデモない発言をするので、カウンターに集まっていた一同が

 

 

「「「はぁあああああああっ!?」」」

 

 

「あらあら、そうなの? じゃあ書き換えないとね」

 

 

モナークの言った発言にルーシィとハッピー、グレイは声を上げ驚愕し、ミラは何でもないかのようにモナークの言ったギルドを消していった。

 

 

「て、ちょっと待って!? それまさか全部一人でやったの!?」

 

 

「まぁ……うん。絡まれて……。」と嫌そうな顔をしながら答えるモナーク。

 

 

「あ、なんかごめんね。」

 

 

「そ、それより!! その組織図の3つにくぎられた大きな枠組みは何なんですか?」話題を変えるようにルーシィは組織図を指差し問う。

 

 

「あぁ、それはね……」

 

 

「闇ギルド最大勢力、バラム同盟……」ミラの言葉を遮り言ったモナークに視線が集まる。

 

 

「そうそう。バラム同盟は、3つのギルドから構成されている闇ギルドの最大勢力でね?それぞれが直属のギルドを持っていて、闇世界を動かしているのよ」

 

 

モナークの言葉に頷き詳細を説明するミラに、へぇ……と興味あり気に組織図を眺めるルーシィ。その視界にあるギルドが目に入る。

 

 

「あ……! 鉄の森って……!?」

 

 

「あぁ……以前ララバイをの力を悪用しようとしたギルドだな……六魔将軍(オラシオンセイス)の傘下だったのか」

 

 

「気にするこたァねェさ、噂じゃこいつら……たった6人しかいねぇらしーしな」グレイの言葉に1度は納得するメンバーもいたが……

 

 

「6人でバラムの1角を担っているって事は、相当に強いって事よ、1人1人がエルザくらいかそれ以上のレベルよ、それに……噂だとこの6人は全員、たった1人で一つのギルドを潰せる力を持ってるって話よ? 多分相手にするなら……一筋縄では行かない」とモナークが話す。

 

 

全員が、緊張した表情でその場に突っ立っていると……キィ、と重い音を立て、ギルドの扉が開き……

 

 

「……その、六魔将軍(オラシオンセイス)じゃがな……我等が討つこととなった」と、今戻ったマカロフが神妙な表情で告げた。

 

 

「「「は……はぁあああああああっ!?」」」

 

 

「あら、マスターお帰りなさい」

 

 

「強ぇやつと戦うのか!?」

 

 

「ちょ、ミラ? 今それどころじゃない言葉が出たと思うんですけど? あとナツは嬉しがらない」

 

 

「マスター……それは一体? どういう事ですか?」エルザからの投げかけに、はぁとため息をつき、顔を上げるマカロフ。

 

 

「今言った通りじゃ……先日の定例会で、六魔将軍(オラシオンセイス)が何やら動きを見せていると報告があってのぉ……六魔将軍を討つことになったのじゃ」

 

 

「じーさん……あんた、貧乏くじ引いたな……」グレイからの指摘にうむ……と俯くマカロフ。

 

 

「ま、まさか……私たちだけで!?」

 

そんなの怖すぎるぅ!! と悲鳴を上げるルーシィ。だが、マカロフは首を横に振り告げる。

 

 

「いや……今回は相手があのバラム同盟、最大勢力の一角じゃ……一つのギルドで戦って勝利したとしてもその後、闇ギルドの連中から逆恨みを受けないとも限らん……その為……我々は、連合を組むこととなった」

 

 

「連合?何処と組むんだろ……」とリンゴジュースを飲みながら言うモナークの疑問にマカロフが答える。

 

 

「連合軍は、我等妖精の尻尾(フェアリーテイル)青い天馬(ブルーペガサス)蛇姫の鱗(ラミアスケイル)、そして……化猫の宿(ケットシェルター)、この4つのギルドで各々精鋭を数名だし、力を合わせ討つのじゃ!」

 

 

化猫の宿(ケットシェルター)の名が出た瞬間に、モナークはジュースを吹き出し、咳き込む。

 

 

「はぁぁぁぁ!?!?」

 

 

「どうしたんだモナーク、そんなに大声出して」

 

 

「い、いや、何でも無い……(まさかとは思うが……いやいや、あの子はまだちっちゃいから……多分。)」

 

 

 

 

 

 

そして、マカロフからの衝撃告白から1夜明け……

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)からは最強チームが選出され、現在馬車で指定の場所に向かっているところだった。

 

 

「なんで私まで討伐メンバーに入ってるのよ……めんどくさいなぁ」

 

 

「……モナークはいいじゃない……強いんだし……それよりも、なんであたしがこの作戦に参加するわけー!?」

 

モナークのため息とルーシィのいやぁああっ!! という悲鳴が響く。

 

 

それを聞き鬱陶しそうに眉を歪めるグレイ。「うっせぇなぁ……俺だってめんどくせぇんだ、ぶーぶーいうなっての」

 

 

「マスターの人選なのだ。私たちは、その期待に応えるべきではないか?」

 

 

エルザのご最もな言葉に再びはぁ、とため息をつきながらルーシィの膝の上に頭を乗せ既にグロッキーなナツを見下ろす。

 

 

「……う、ぅぷ……き、もち……わ、りぃ」

 

 

「はいはい……もーちょっとで着くから……お願いだからキラキラ出さないでよ」そう言い、小さく微笑みナツの髪を撫でるルーシィ。

 

 

(それより………、心配事が多すぎる……、こりゃ……、制限とか言ってられないなぁ…)と馬車の壁によりかかりながら考えていると、集合場所が見えてくる。

 

 

今回の集まりの場は青い天馬(ブルーペガサス)が持つ別荘の一つであったが……

 

 

「……おい、ほんとにここで合ってんのか?」

 

 

「あ、あぁ……ここで間違いはないと……思うが」

 

 

「け、結構……個性的な、建物……ね(てかこれはないわ)」

 

 

その建物はピンクの大きなハートが外見につけられたどこか乙女チックだが……あまり中へは入りたいと思えない外見だった。

 

 

「う、ぷ……まだ……つかねぇ……の、か?」

 

 

「ナツー、もう馬車じゃないよ」

 

 

「ナツー? もう着いたよぉ?」

 

 

ルーシィに支えられ吐き気を堪えるナツにハッピーが頬を叩きながら声かける。

 

 

ナツの様子にため息をつきながらも、建物の中へと入っていくグレイたちを追い、モナークも中へと入る。

 

 

すると、出迎えたのは……

 

 

「ようこそ、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の皆さん。お待ちしておりました」

 

 

「我ら、青い天馬(ブルーペガサス)より選出されしトライメンズ」

 

 

3人のスーツを着た男が出迎えた。

 

 

「うわぁ……」

彼らを見て、モナークはあからさまに嫌な表情を浮かべる。そんなモナークに気づく様子もなく……

 

 

「百夜のヒビキ」

 

 

「聖夜のイブ」

 

 

「空夜のレン」

 

 

モナークの周りに3人の男は集まると……モナークをいつ用意したのかわからないソファへと座らせる。

 

 

「いつ見ても変わらぬ美しさと可愛らしさ……」

 

 

「さ、お姫様……こちらへ」

 

 

「ほ、惚れ直してなんか……ねぇからな」

 

 

「……はぁ」

 

 

モナークの周りでは青い天馬(ブルーペガサス)の面々がすでに囲み、お茶やらお菓子やらをだしもてなしていた……

 

 

「な、何……こいつら」

 

 

「トライメンズ……それなりに実力のある面々だ」

 

 

ルーシィとエルザにも目がいき、結局トライメンズの3人はモナーク、ルーシィ、エルザをソファへと座らせ、同時にもてなす。

 

 

「色々突っ込みたい事があるんだけど……」

 

 

まだ戦いも始まっていないのにすでに5割ほど疲れを感じているモナーク。

 

 

すると……

 

 

「君達、その辺にしておきたまえ」

 

 

また新たな声が1つ……その瞬間

 

 

ゾクゥッ!!

 

 

「ヒッ!? こ、この……こ、声、は……」

 

 

エルザが震え上がる。

 

 

その視線の先には……マカロフと同じくらいの身長のとてもイケメンとは思えない……男が1人……

 

 

彼にトライメンズの面々は膝をつき、頭を下げる。

 

 

「「「一夜様」」」

 

 

「……一夜?」

 

 

その名を聞いたことのないルーシィや、グレイ、モナーク、ハッピーは首を傾げるが……

 

 

「む!? この香りは……あぁ! 貴女は……愛しのエルザさん!!」

 

 

エルザへと意識を向け、エルザに飛び付く

 

 

「ヒィ!? こっちに来るなぁ!!!」

 

 

ボガァ!!

 

 

「ごふぅ!?」

 

 

飛んでくる一夜に即座に反応、回し蹴りを決めるエルザ。

 

 

そして、蹴り飛ばされた一夜は扉の方へと飛び、丁度建物に入ってきた何者かがその頭をわし掴んだ。

 

 

「こりゃあ……随分ご丁寧な挨拶だな」

 

 

その人物は……

 

 

「貴様らは、蛇姫の鱗(ラミアスケイル)に上等か?」

 

 

「リ、リオンっ!?」  

 

 

まさか連合軍のメンバーに兄弟子が来るとは思わなかったグレイは目を見開き驚く。

 

 

そして、相手も弟弟子のグレイがいるとは思わず、「グレイ!?」と声を上げる。

 

 

「つかうちの大将に何しやがるっ!!」レンの言葉でやっと一夜がリオンの魔法により、凍らされているのに気づく。

 

 

「酷いや!!」

 

 

「男は全員帰ってくれないかな?」

 

 

作戦前から雲行きの怪しい空気がその場に流れる。そこに……

 

 

「あら? 女性もいますのよ?」

 

 

新たな声が……

 

 

「え?」声の方を振り返ると……

 

 

「人形劇 カーペットドール!!」

 

 

「て、うそ!? ちょ、きゃあっ!?」

 

 

ルーシィに向けて魔法が襲いかかる。

 

 

それも、いつか見たことのある魔法……

 

 

「こ、この魔法って……まさか?」

 

 

ルーシィはふるふると震えながら振り返る……。振り返った先にいたのは……

 

 

「あ……シェリー!!」

 

 

「……ふん、お久しぶりですわ」

 

 

「なんで!?」シェリーのルーシィを見る目は少し険しく、睨みつけている。

 

 

そしてリオンとグレイは変わらず睨み合いを続け、トライメンズの3人もリオンを険しい目で睨んでいた。

 

 

「やめぇい!!!」

 

 

その声に、一同はピタリと動きを止める。

 

 

「あ……」

 

 

建物に入ってきたのは……聖十の称号を持つ1人……

 

 

「ワシらは連合を組み、六魔将軍(オラシオンセイス)を倒すのだ……仲間割れしている場合か?」ジュラが建物に入りながら言う。

 

 

そして……

 

 

「さて……これで、3つのギルドが揃った……後は、化猫の宿の連中のみだ」

 

 

冷静にメンバーを見回しそう言うジュラに氷漬けから開放された一夜が口を開く。

 

 

「連中というか……化猫の宿(ケットシェルター)は1人と、聞いているが……」

 

 

「「「なっ!?」」」

 

 

「1人!? こんな危険な作戦に!?」

 

 

「ちょっとちょっと!! どんだけヤバい奴が来んのよー!?」

 

 

ルーシィが怖いぃぃ!!と声を上げる横で、モナークは何か落ち着かない様子だった。

 

 

そして、この建物に駆け寄ってくる小さな影。それは段々と大きさを増し、次には完全に人の形を帯びていく。ゆっくりと…、ゆっくりと…、そうやって迫ってきて……

 

 

「わぁ!?」

 

 

という可愛らしい悲鳴をあげ、転んだ。それも綺麗に前へと倒れ込む形で。ビタンっという音でも立てそうな転び方をした少女は痛そうにしながらも立ち上がって言う。

 

 

「あの……。遅れてすみません…、化猫の宿(ケットシェルター)から来ました、ウェンディです。あの…よろしくお願いします…」

 

 

華奢で気の弱そうな少女――ウェンディを見つめる一同。その見つめる目は驚きを帯びており、周囲からは「女?」や「女の子?」という声が上がっていく。

 

 

目の前にいたウェンディを見て目を疑った。

 

 

「う、ウェンディ……?」

 

 

「お、お姉ちゃん……」

 

 

お互いを知っているかのような雰囲気を醸し出す二人とは違い、ナツたちは不思議そうに顔を見合せていた。そんな中、急に目尻から涙を溢れ出させるウェンディ……とモナーク。

 

 

そして……

 

 

「お姉ちゃん!!」

 

 

そう言って目の前にいたモナークを抱き締めるウェンディ。ギュッと抱き締めるウェンディに抵抗せず、抱き締められたモナークは嬉しそうにする。

 

 

「それにしても……、この大がかりな作戦にこんなか弱そうな女の子1人をよこすなんて……化猫の宿(ケットシェルター)はどういうおつもりですの?」

 

 

ウェンディを見て、怪訝そうに表情を歪め言うシェリーにウェンディはビクッと体を揺らす。

 

 

「何?別に問題無いでしょ?ウェンディはアンタより強いからね?」とシェリーを睨みながら反論するモナーク。

 

 

「んなっ……そ、そもそも貴方もなんですの?妹のお守りに来たんなら帰ってくれますの?」とシェリーが反撃するが

 

 

「へぇ……、いい度胸だね。六魔将軍(オラシオンセイス)とやる前に先にアンタとやる?いいよ、相手になってあげるよ?オバサン」と背中の剣に手をかけながら言う、既に殺気だっており、一触即発の状態であった。

 

 

「両者やめい!」ジュラの一声でシェリーは渋々といった様子で引き下がり、モナークは剣から手を離したものの、いつでも剣を引き抜ける体勢のままであった。

 

 

 

シェリーとモナークの間が邪険になっている中

 

 

「あ……あの、私……戦闘は全然出来ませんけど……皆さんの役に立つサポートの魔法なら、いっぱい使えます……だから、仲間はずれにしないでくださいぃ……!」

 

 

ウェンディはやや涙声でそう声を上げた。

 

 

「そんな弱気だから貴女は舐められるのよ!」辛口な言葉を発するシャルルに「だって……」と俯くウェンディ。

 

 

「すまんな…少々驚いたがそんなつもりは毛頭ない。よろしく頼む」

 

 

フッと微笑みながら、ウェンディの頭を撫でるエルザを見上げ、ウェンディは頬を赤らめる。

 

 

そして、シャルルを腕に抱き上げ

「わぁ! 見て、シャルル!! 本物のエルザさんだよっ!!カッコイイなぁ」と、感激の声を上げる。

 

 

「ふぅん……思ってたよりいい女ね」ウェンディの腕の中に抱かれているシャルルも頷きながらエルザを見つめている。

 

 

それはともかく、先程からモナークは完全にウェンディを守る態勢に入っているらしく、常に警戒したままになっている。

 

 

トライメンズの3人はモナークのせいでウェンディに近づけない状態になっていた。

 

 

そして……、一夜から作戦が説明される……。




アレーオカシイナーモジスウガアホミタイニオオイゾー()


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作戦開始!!

 「さて、全員揃ったようだな、それでは作戦を説明する」メェーン! と決めポーズを取りながら話を始める一夜。

 

 

「そのポーズって必要なのかしら……」もうツッコミ疲れた……と言った様子のルーシィ。

 

 

「まず、六魔将軍の奴らが集結している場所だが…………と、その前にトイレのパルファムを!」

 

 

「そこにパルファムつけるな!!」ルーシィからのツッコミをスルーし、一夜は奥の部屋へと一度消えていく。

 

 

そして、一夜が戻ってくると作戦の説明が再開された。

 

 

「さて……まず、集結の場所だが……ここから北に行くと ワース樹海が広がっている。古代人たちはその樹海にある、協力な魔法を封印した。その名も、 ニルヴァーナ」

 

 

一夜の言葉から発せられたその魔法というものに一同はざわつく。

 

 

「ニルヴァーナ……?」

 

 

「聞かぬ魔法だな」

 

 

「ジュラ様は?」

 

 

「……いや、わしも知らんな」

 

 

「ニルヴァーナ……」

 

 

「なんか知ってんのか? モナーク……」

 

 

「……いや」

 

 

「なんか知ってるー? てか、お魚いる?」

 

 

「結構よ!」

 

 

「懲りないねぇ……ハッピーてば」

 

 

一夜やトライメンズの3人も眉をしかめ、語る。「僕たちも、古代人たちが封印するほどの破壊魔法……ということまでは把握しているんだが」

 

 

「どんな魔法かまでは分かっていないんだ」

 

 

「でもきっと、六魔将軍が樹海に集結したのはきっとこの ニルヴァーナを手に入れるためなんだ」

 

 

「そして我々は、それを阻止するため…」

 

 

「「「「六魔将軍を討つ!!」」」」キラーン! と青い天馬の全員で決めポーズをし、告げた。

 

 

「やっぱりポーズ……」

 

 

「俺はもうツッコまねぇぞ」

 

 

ルーシィ、グレイが諦めたため息をつく。

 

 

次に説明が始まったのはその六魔将軍のメンバーについてだった。

 

 

「こっちは13人敵は6人」

 

 

「だけどあなどっちゃいけないよ」

 

 

「この6人がまたとんでもなく強い」

 

 

そして、ヒビキの魔法、 古文書(アーカイブ) で六魔将軍のメンバーについての説明が始まる。

 

 

毒蛇を使う魔導士、コブラ ……

 

名前からして恐らくスピード系の魔法を使うと思われる レーサー……

 

大金を積めば一人でも軍の一部隊を全滅させると言われる天眼の ホットアイ ……

 

 

心を覗けるという女エンジェル ……

 

 

情報は少ないが彼らからはミッドナイト と呼ばれる男……

 

 

そして彼らの司令塔ブレイン……

 

 

「彼らはたった1人でギルドの1つくらいは潰せるほどの魔力を持つ。そこで、我々は数的有利を利用するんだ」

 

 

今回の作戦の大まかな部分が説明されると……そろぉりとルーシィが手を上げる。「あ、あのぉ……あたしは頭数に入れないで欲しいんですけど……。

 

 

「わ、私も……! 戦うのは苦手なんです」

 

 

「ウェンディ!! 弱音吐かないの!」ウェンディも涙声でそういい、シャルルに叱られる。

 

 

「安心したまえ……我々の作戦は戦闘だけにあらず! 奴らの拠点を見つけてくれればいい」一夜が震えるルーシィとウェンディに決めポーズをしながら告げる。

 

 

「拠点……?」

 

 

「あぁ、そうだ……今はまだ奴等を補足していないが……恐らく、樹海には奴らの仮説拠点があると推測される」

 

 

「そこで、君たちには出来ればその仮説拠点に奴らを全員集めてほしい」

 

 

「どうやって?」

 

 

「殴ってに決まってんだろ!!」

 

 

「殴るだけじゃダメでしょ……でも結局戦闘は避けられないみたいね」

 

 

「集めてどうするのだ?」

 

 

一斉に質問を受けるが慌てる様子はなく冷静に説明を進めるトライメンズの3人と一夜。

 

 

「我がギルドが大陸に誇る天馬……その名も “クリスティーナ” で拠点もろとも葬り去るのだ!!」キラーン!とポーズを取り、宣言する一夜。

 

 

「それって…… “魔導爆撃艇” の事?」首を傾げ、問いかけるルーシィに頷く一夜。

 

 

「てか、人間相手にそこまでやる?」ルーシィが大げさな……と呟きながらそう言うと……ゴォ! と音を立てジュラから気が溢れる。

 

 

 

「そういう相手なのだ!!」

 

「ひっ!?」

 

 

「あー……ジュラ殿? あんまりうちの新人怖がらせないでくれると…」

 

 

ジュラの気に竦むルーシィを見て、はぁとため息をつきながらジュラに一言言うとジュラもそれに気づき、「すまん……」と素直に謝る。

 

 

「だが……よいか? 戦闘になっても決して1人で戦ってはいかん。敵1人に対して必ず2人以上でやるのだ」強めの言葉で忠告するジュラにルーシィたちは、コクリと頷く。

 

 

そして……

 

 

「おっしゃぁー!! 燃えてきたァ!!」雄叫びを上げ、建物の壁を壊し飛び出していくナツ。

 

 

「6人まとめて俺が相手してやらぁ!!」

 

 

「あ、ちょ!? ナツ!!」

 

 

「全く……あいつは」

 

 

「てかあいつ話聞いてねーだろ!?」

 

 

「それがナツです」

 

 

飛び出していったナツを追い、妖精の尻尾のメンバーを中心に建物を飛び出していく面々。

 

 

最後に残ったのは……ジュラと一夜、そしてモナークだった。

 

「ジュラ、トイレにいる一夜を迎えにいってくれるかな?」

 

 

「なに? 一夜殿ならここにいるではないか?」

 

 

「そうだぞ、モナーク君。わたしはちゃんとここに」

 

 

ずいっと前に出てきて弁論する一夜。モナークはそれを無慈悲に剣で切り裂いた。狂気染みたその行動に目を疑うジュラだったが、すぐさま突然ボフンっ!という音とともに煙が一夜から吹き出て、気がつけばそこには二体の人形のような何かが倒れていた。

 

 

「まったく……ジュラも油断しすぎ。さっきまでの一夜は六魔の星霊。本物はどうせトイレでブルボッコにでもされて、気絶してるはずだ。ジュラ、起こしてきてくれ」

 

 

「わ、分かった。そちらも気を付けるのだぞ」

 

 

「さて……、出てくれば?そこに居るんでしょ?」剣を抜き、戦闘体勢をとる。

 

 

そう言うと後ろの草むらから一人の女性が姿を現した。中々に特徴のある寝癖のような髪。少々胸が見えている服装。変に人を見下したような態度。片手にもつ黄金の鍵。

 

六魔将軍(オラシオンセイス)の一人である相手の心を読むという女、エンジェルだ。

 

余裕を見せ続けそうな表情をしていた彼女は、少々嫌な顔をしてモナークに言った。

 

 

「なんで分かったんだゾ?」

 

 

「いや、あの六魔が私達に妨害なりしないなんてあり得ないでしょ?もし情報を収集するなら作戦を立案した奴等から集める、それで一度トイレに行った一夜が怪しいって思った訳、まぁ半分賭けだけどね」

 

 

「ふ~ん、気に入らないゾ」

 

 

 

「気に入って貰う筋合い無いな、闇ギルドの頭の一角風情には」

 

 

わざと挑発をしかけるモナークに嫌気が差したか……あるいは気を悪くしたか、エンジェルは即座に別の星霊を呼び出す。

 

 

次に呼び出したのは何とも機械的な小型の星霊で、こちらに向いた目らしきところはどうみてもレーザービーム的な光線が放てそうに見えた。

 

 

「アイツを殺すんだゾ!」そう命令する彼女通りに動き、光線を放つ機械型の星霊。飛び交う光線が後ろの建物に損傷を増やしていくが、肝心のモナークにはかすりすらしない。

 

 

そして……

 

 

めしゃぁ!!!

 

 

という機械がぶつれたような音とともに星霊は吹き飛び、姿を消していく。あまりのことに驚く彼女にモナークは小さく呟く。

 

 

「……これなら手抜きでも勝てるかな」

 

 

「な、なんてヤツだゾ……」

 

 

少しずつ後ずさるエンジェル。

 

 

「次を出しなよ、これからだよ……?」

 

 

六魔狩りが、今始まる……。



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同郷者

……完敗だった。それ以外の何ものでもない、そんな気持ち。己の力は全くと言って良いほどに届かず、ただこちらがやられるだけやられただけに過ぎない。

 

 

主力たる三人のジュラ、エルザ、一夜のうち、何故か二人が来ない。それもそうだろう、すでに片方の一夜はトイレで気絶し、ジュラはそれを迎えにいったのだから。

 

 

しかし、こちらの彼らはそれを知らない。さらにはエルザと同等、またはそれ以上の実力を持っているはずのモナークすらも来ない。

 

 

その上にこちらの作戦はすでに相手側たる六魔将軍たちには伝わり、それを逆に利用されてこの有り様だ。戦えないウェンディとシャルル、それにハッピー以外は全員が敗北した。

 

 

それが今の連合軍の有り様だ。なんとも空しく、ただ出てきて速攻でやられただけの出オチでしかない。

 

 

そして目の前では彼ら六魔将軍のリーダーたるブレインが止めを指さんとしていた。一同はただ思う。「ここまでか……」、あるいは「畜生……」のどちらかだ。

 

 

たった5人にやられた10人の妖精と蛇姫、天馬と化猫。ただ這いつくばる他ならなかった。終わりを迎える光の者たち、ただ誤算が一つだけあった。

 

 

そこに天空の巫女がいたということだ。ブレインはニヤリと悪趣味な笑いを浮かべ、その少女を連れ去った。……ついでに青猫一匹も。

 

 

用が済んだらしき彼ら六魔将軍。ブレインは今度こそナツたち連合軍へ止めの一撃を見舞おうとした。

 

 

────だが、その時は来なかった。

 

 

となりの草むらからボロボロの状態で現れた六魔将軍(オラシオンセイス)の一人、エンジェル。すでに満身創痍の彼女の姿はブレインたちに衝撃をもたらした。

 

 

その後から現れたのは、傷一つ付いていないモナークだった、だがその眼は紅く染まっていた。

 

 

「……なにこの有り様。ナツ、グレイ、ルーシィ、エルザ。アンタ達はその程度なの?」

 

 

そう仲間すら見下すかのように冷たく冷酷な声がモナークの口から発せられる。それにカチンと来たらしきナツとグレイは突っかかろうとしたが、あることに気がついた。

 

 

自分たちの知らない魔力の強大さ、微かだが地面が揺れているということ、その二つに。そのあと二人は無意識に身体が震えていることに気がついた。

 

 

それからすぐに理解する。目の前にいるモナークがどれほど強大な力を持ち、それを遺憾なく発揮させようとしていたことに。

 

 

すると、モナークは再び口を開く。

 

 

「アンタ達……ウェンディをどこにやったの?」

 

 

ただそれだけしか言っていないのにナツたちの身体には途方もないプレッシャーが突き刺さり、身体の震えが増していく。そんな中で、エルザが苦しげに言った。

 

 

「そこに…いる…ブレインに…ウェンディは…」

 

 

「……へぇ、そうか…」

 

 

それだけが伝わっただけなのにモナークはもう聞く気がないようにブレインたちに向き直る。

 

 

「やぁモナーク、見ない間に姿が変わったね」ブレイン達の後ろから声がする。

 

 

「その姿は……、人間の真似事かい?そんな格好になったって、貴女は人では無いのにね……」そう言いながらブレインの横に現れたのは……

 

 

「インヴィンジブル……」

 

 

「ブレイン、あの娘は私にやらせてちょうだい」

 

 

「ふん、好きにするがいい」

 

 

「じゃあ遠慮なく」と、瞬時に剣を引き抜きモナークに斬りかかる、その速度はブレインにも霞んで見える程速く、レーサーのスピードなど、比べる必要も無い程遅く見えた。モナークは反応こそしたものの、受けきる事が出来ず、2撃目を右横腹に受けてしまった。

 

 

すかさず追撃をするインヴィンジブル、剣が当たった感触がしたが、剣はモナークの手前で止まっていた。

 

 

「そんな簡単に元に戻れるなら速く戻ればよかったのに」

 

 

土煙がはれると、そこには少し姿の変わったモナークが立っていた。頭には先の黒くなっている狐のような耳が生えており、腰の部分にも髪と同じ色のふさふさとした尻尾が生えていた。

 

 

「ハイペリオン!!」そうモナークが叫ぶと手元には今まで持っていたミスリルソードでは無く、刀身が透き通っている水色の二刀の武器だった。

 

 

少し驚いた顔をしながらも、右手にある大型の剣を構えるインヴィンジブル。

 

 

2人は同タイミングで動き出した。インヴィンジブルの上段切りを両手の剣で受け止め、弾き返す。インヴィンジブルはすかさず追撃を仕掛けるが、一歩速くモナークの強撃がインヴィンジブルに命中した。

 

 

「はぁ……はぁ……流石最強の名を意のままにした程の事はあるわね……でも……」

 

 

ドクンッ!!!

 

 

「うぐっ……あっ……!ああっ!!!」突然モナークは苦しみだし、心臓の当たりを抑えて倒れ込む。

 

 

「突然力を使った影響ね、貴女は20年もの間その姿にはなっていない。突然力を使えばどうなるかよく分かってるわよね?」少しずつ倒れているモナークに近づきながら話す。

 

 

動けないモナークを剣で切り上げる。モナークの身体は空高く吹き飛び、そのまま崖の下へと落下していった……。

 

 

「ごめんなさいね、モナーク。これも仕事なの。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

六魔将軍、仮説拠点にて

 

 

「きゃあ!」

 

 

「うわ! お、女の子には優しくするんだぞ!」

 

 

ウェンディ達は、仮説拠点に着いた途端、放り投げられる。

 

 

「ブレイン……此奴等は何なのだ?」

 

 

「ニルヴァーナに関係あるのか?」レーサーとコブラからの問いかけにブレインはウェンディを見つめ……

 

 

「此奴は天空魔法……治癒の魔法を使う」と言った。その言葉にコブラたちは目を見開き驚く。

 

 

「治癒魔法っ!? この娘が!?」

 

 

「これは、金の匂いがしますね……」

 

 

「もしかしてこいつに……」コブラたちの視線を受け、ブレインは頷く。

 

 

「あぁ……奴を復活させる」

 

 

「奴って誰だ!?」

 

 

「よく分かりませんけど……私、悪い人たちになんか……手は貸しません!!」

 

 

身体を少し震えさせながらブレインを睨みあげるウェンディ。だが、そんな睨みに怯む訳もなく……ブレインはニヤリと笑う。

 

 

「貸すさ……必ず。うぬは必ず手を貸す……そして、奴を復活させる……」

 

 

「はいはい、そんなに女の子を怖がらせないの」

 

 

「インヴィンジブルか、奴は始末したのか?」

 

 

「あの娘は放っておいてもその内死ぬわ、そうだ、レーサーが来るまでの間、この子と話しててもいいかしら?」

 

 

「好きにしろ、余計な真似はするなよ」そう捨てるようにブレインは言い、奥のほうに歩いていった。

 

 

「さて……ウェンディちゃん、だっけ?」怯えるウェンディの前にかがみながら話しかけるインヴィンジブル。

 

 

「は、はい…」

 

 

「大丈夫、私はインヴィンジブル、モナークの友人、まぁ同郷者ね」

 

 

「お姉ちゃんの……お友達…?」

 

 

「そう、あなたはモナークの義理の妹ってところのようね」

 

 

「あ……あの!お姉ちゃんの事……知ってる事を話しててくれませんか……その……お姉ちゃんの事何も知らないので……」

 

 

「良いわよ……でも、その前にモナークと私の正体を話さないとね。」目を瞑りながら話し始める。

 

 

「私とモナークは人間とは違う、獣人と呼ばれる種族なの」

 

 

「獣人……?」

 

 

「獣人は人の形をしているけど、耳が生えていたり、尻尾が生えていたり、嗅覚が人間より優れていたりするの、それと、人間より寿命が遥かに長いのも特徴ね、後は……一人一人能力を持っている事ね」

 

 

「モナークは獣人の中でも珍しい部類の狐の獣人、それ故に最初はあまり信頼されなかったのだけれど、仕事を成功させていく内に、周りには人が集まっていたの。そうしてモナークは獣人世界でそれなりに良い地位に立つ事が出来たの。」

 

 

「お姉ちゃんは昔『私…実は王女になるかもしれなかった』って言ってたんですけど……、それって何か知ってます?」

 

 

「知ってるわ、あの娘は獣人世界に慣れて、交流関係も広くなったの、そんな中当時獣人界の王子であるルシュトゥンテントが、モナークに一目惚れしちゃったのよね、んで、暫くしたあと、2人は付き合い始めた。」

 

 

「以外……モナークって恋とか興味無さそうだったのに」すっかりリラックス状態のハッピーが言う。

 

 

「実はああ見えて、結構女子なのよ、甘い物とか大好物だし!えっと、話がズレたね。付き合い始めた2人は結構仲が良かったらしくて、噂では、夜の営みも……」とインヴィンジブルが少し悪い顔をしながら言うので、すかさずウェンディが

 

 

「そ、そういうのはいいです!」と先を話そうとするインヴィンジブルを制止した。

 

 

「でも……ルシュトゥンテントとモナークの関係を快く思わない連中がいたの、ルシュトゥンテントの事を狙っていた貴族のお嬢様だったの、そのお嬢様がモナークに色々難癖付けたり、遂には水を掛けたりの重度の嫌がらせに発展していったの。」

 

 

「そして、事態は急変するの、2人で街を歩いていると、周囲を何かの兵団に囲まれて、モナークは結界によって閉じ込められるの、兵団の中からお嬢様が出てきて、無抵抗のルシュトゥンテントを斬り殺したの、それも残酷なやり方で。」

 

 

そんな……と反応するウェンディと酷いや!と反応ハッピー。

 

 

「実は私はその様子を遠目から見ていたのモナークは……」と話の続きを話そうとすると、そこに……

 

 

大きな棺桶を運んできたレーサーが帰ってくる……。

 

 

「「「っ!?」」」

 

 

「参ったぜ……思ったより時間かかっちまった……こんなに重けりゃ、スピードも出せねえよ」汗だくになり、呟くレーサーの肩を叩くブレイン。

 

 

「何を言うか……主より速い男など存在せぬよ」

 

 

「……あ、れは」

 

 

棺桶を見つめるウェンディ

 

 

「ウェンディ……貴様にはこの男を治してもらう」

 

 

「わ、私……! 絶対、やりません!!」その言葉に……クククと笑うブレイン。

 

 

「いや……お主は必ず治す……治さねばならぬのだ」

 

 

そう言い、ブレインが魔力を棺桶に送ると……その蓋が溶けていく……。

 

 

 

「……え?」

 

 

「な……に?」

 

 

棺桶の中から出てきたのは……

 

 

「……ジ、ジェラー……ル?」

 

 

眠りにつく、ジェラールそのものだった……。



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ニルヴァーナ

目の前で大切な人が切り刻まれている………

 

 

止めたいのに………

 

 

助けたいのに………

 

 

護りたいのに………

 

 

狭い空間に閉じ込められた彼女が壁を叩き、大粒の涙を流す

 

 

嘲笑うような笑い声

 

 

少しずつ、身体の中で湧き上がる衝動が強さを増す

 

 

殺せ………

 

 

目の前にいるのは誰だ………

 

 

愛する者をお前から奪った者だろう?

 

 

さぁ………殺せ………欲望と衝動のかぎりに………

 

 

………………………。

 

 

遠い過去の記憶。途方もないくらい絶望的な状況で愛する者を失った少女は持てる全ての力を使って、殺戮の限りを尽くした。

 

 

頭を切り飛ばし、四肢を切り裂き、心臓を滅多刺しにし、周りには死体の山が築き上げられていた。

 

 

血に塗れた彼女は、亡き思い人の形見であ

る剣を拾い上げて、1人闇に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

崖の下にある小さな、と言っても人間の身長からしてはとんでもなく大きな泉のそば、少女はゆっくりと目蓋を開けた。

 

 

眩しい光が眼球の奥を釘で叩いたようなつんざく痛みが襲う。それに顔を一瞬だけしかめたあと、身体を起こそうとするが、全くと言っていいほど身体が動かない。

 

 

「暫く動けそうにないなぁ………、まぁ生きてるだけ万々歳なんだけど………」

 

 

『モナーク君、聞こえてるかい!?』

 

 

なんだか聞き覚えのある声だった。しかし喉元まで出掛かっているのに出てこない。必死に思い出そうとしていると相手から名乗ってくれた。

 

 

『僕は青い天馬(ブルーペガサス)のヒビキだ。聞こえたら返事してくれ!』

 

 

 

「天馬の……ああ、聞こえてるよ」

 

 

『良かった、さっきナツ君も応答してくれたんだ。聞いてくれ! ナツ君がウェンディちゃんを発見し、救出した』

 

 

「え……ほ、本当なの……」

 

 

あまりのことに声が掠れ、目尻が少しずつ熱くなってくる。大切な妹のような存在たるウェンディが連れ去られてから先程の悩みとともに自分を苦しめていたことの一つだったことが、仲間のナツによって救出されたと聞き、ウェンディが無事という事実がモナークの嬉しさが込み上げさせた。

 

 

ジーンときていたモナークに突然頭の上に謎のマークのようなアイコンが姿を現し、ロード中と示されていた。

 

 

すぐにロードは完了し、その直後頭の中にヒビキたちとの合流地点までの地図が表記される。

 

 

どうやらそこにナツもむかっているらしい。つまりウェンディがそこに現れるということだ。

 

 

それだけなのに……嬉しくて仕方がない。その高揚感が先程までの不安を打ち消してくれる。

 

 

しかし……

 

 

「駄目だ………身体が動かない………」

 

 

だがここで何もしない訳には行かないので、忘れかけていた記憶を少し思い出すことに集中した。

数分後、手元に………それも1番近くに解決方法があるのを思い出し、直ぐに実行に移した。

 

 

「ハイペリオン、エターナルヒーリング」と言うと、剣の魔力を使った回復魔法が発動する。回復魔法である程度動けるようになったモナークは泉から上がって、合流地点では無く、ある場所に向かって歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナツ達はヒビキとルーシィと合流し、ウェンディはエルザの治療にあたっていた。

 

 

「ふぅ………、取り敢えず毒は完全に消えました、暫くしたら目を覚ますと思います!」

 

 

「サンキューな、ウェンディ」

 

 

「うん、ありがとう、ウェンディ」

 

 

「確かに。これだったら大丈夫そうだ」

 

 

「近すぎ!!」

 

 

エルザの額にくっつきそうなぐらいに近づき、馬乗りしかかっていたヒビキにツッコミを入れるルーシィ。ナツもエルザが大丈夫だと分かると安心した様子を見せ、ウェンディも良かった…と胸を撫で下ろした。

 

 

「そうだ………、六魔将軍(オラシオンセイス)とは他に、モナークと戦っていた敵が居ただろう?その敵の特徴に見覚えがあって、検索して見たんだけど……」アーカイブをナツ達の前に持っていき、結果を表示する。

 

 

「恐らく、あの敵は獣人だと思う」

 

 

「獣人……?」

 

 

「聞いた事ねぇな」

 

 

「…………………」

 

 

黙り込むウェンディを見ながら、ヒビキはこう言う。

 

 

「ウェンディちゃんには悪いんだけど、モナークも獣人の可能性が高い」

 

 

「ウェンディ……、話さないの…?」と、横からハッピーがウェンディの顔を覗きながら言う。すると……

 

 

「全部話します……、お姉ちゃんは……、モナークさんは獣人です………」

 

 

どこか悲し気なウェンディの顔から視線を外してヒビキが「獣人は、評議院によって、密かに命令が出ているんだ。捕縛か、抹殺の指令が。仕事なら殺しも、虐殺も厭わない種族は、我々人間にとっては害だからね」と淡々と説明する。

 

 

「そんな………お姉ちゃんは!お姉ちゃんは人を殺したりは……」しない、と言うつもりだったが、洞窟内での話を思い出し、言葉を詰まらせる。

 

 

「じ、じゃあ!モナークを評議院に連れ渡すって事!?」

 

 

「んな事させるか!そうなったら評議院諸共全部ぶっ壊してやらぁ!!」

 

 

「評議院がここに来て、モナークの姿を見れば、何としても連行しようとする、もうどうしようもないんだ…」暗い雰囲気になっていたが、次の瞬間、天高く伸びる黒い光の柱が辺りを照らす……。

 

 

 

「え……?」

 

 

 

「何……あの、光……黒い」

 

 

ハッピーが震えながらその光を見上げる。

 

 

 

「あれは……ニルヴァーナ……」

 

 

静かに告げたヒビキの言葉に驚くナツたち。

 

 

「まさか……まさか、六魔将軍に先を越されちゃったの!?」ルーシィが慌てて、立ち上がり、その光を見上げる。

 

 

「は……あの光……あの光のところに、ジェラールがいるかもしれない!!!」

 

 

「「「っ!?」」」

 

 

「あ……私の、せい……だ!」

 

 

「会わせるわけにはいかねぇ!! エルザには……あいつは、俺が潰す!!」

 

 

そう言うとナツは「うぉおおおおお!!」と雄叫びを上げ、光の元へと走り出す……。

 

 

「ちょ!? ナツー!!! (あのバカっ!! また突っ走って……)」

 

ルーシィが手を伸ばすも、それはナツに届かず……そして、問題はナツだけではなかった……。

 

 

「あ、あれ!? ちょっと……エルザがいない!!」ルーシィの言葉に全員がエルザが寝ていたはずのところに、視線をやる。

 

 

だが、確かにそこにエルザの姿はなかった……。

 

 

「あ……あぁ」

 

 

「っ! ウェンディ……!」

 

 

頭を抱え、ふらつくウェンディを支えるルーシィ。

 

 

「何なのよ、あの女!! ウェンディにお礼も言わず……!」

 

 

「まさか……エルザ、ジェラールって言葉を聞いて……」

 

 

「あんな身体で!? 無茶しすぎよ……」

 

 

「どうしよう……私の、せいだ……私が、ジェラールを……治したせいで……ニルヴァーナが見つかっちゃって……エルザさんや……ナツさんが……」

 

 

頭を抱え、自責の念に苛まれるウェンディ……その姿を見て、ウェンディにヒビキが突然、攻撃魔法を発動させ、ウェンディは気絶した。

 

 

「ちょっと!!何してるのよ!」

 

 

「事情は後で説明するから!今はナツを追おう!」

今はナツを……と、ヒビキの言葉で一同は頷きウェンディをヒビキが背負い、走り出した。

 

 

その道中、ニルヴァーナについて語るルーシィとヒビキ。

 

 

「じゃあ怒りは!?怒りはどうなの……」

 

 

ルーシィの脳裏には怒りに走り去ったナツが過ぎる。

 

 

「多分あれは大丈夫だと思う……誰かを思う怒りなら、それは闇とは言えないと思うから……」安心して、というヒビキの言葉に不安が消えるルーシィ。

 

 

「間に合え……」今はそう願うしかなかった。



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獣に落とされる竜

黒い光の発生している場所に最大速度で向かう、近づくにつれて周りには黒いもやが漂っており、嫌な感じだった。

 

 

光の根本、

そこには彼女の因縁の相手……ジェラールが立っていた。

 

 

「………ジェラール」

 

 

「エルザ…」

 

 

呆然としながらも互いの名を呼ぶエルザとジェラール。

 

 

そしてその様子を、コブラが物陰から窺っていた。

 

 

「(エルザ!!?復活したのか!?くそ!!このオレが接近に気づかねえとは……ニルヴァーナの本体が起動するまでは、ジェラールはやらせんぞ)」物陰から様子を窺いながらエルザを睨みつけるコブラ。

 

 

「お……お前……どうして…ここに…」

 

 

「わからない」エルザの問い掛けにそう即答するジェラール。そんな彼に、エルザは複雑そうな表情を浮かべる。

 

 

「エルザ…エル…ザ……その言葉しか、覚えていないんだ」

 

 

「え?」

 

 

「!?」

 

 

ジェラールのその言葉に、エルザだけでなく、物陰に隠れているコブラも驚愕する。

 

 

「教えてくれないか? オレは誰なんだ? 君はオレを知っているのか?」苦しげに頭を抱えながらそう問い掛けるジェラール。

 

 

「エルザとは誰なんだ? 何も思い出せないんだ」何も思い出せない……ジェラールの口から出てきたその言葉に、エルザは涙を浮かべた。

 

 

「(コイツ…記憶がねえのか!?)」その言葉を聞いて、コブラはジェラールが記憶喪失だと悟る。

 

 

「ジェラール…」

 

 

「く……来るな!!」

 

 

つかつかと歩み寄ってくるエルザに、ジェラールは怯えるように彼女に魔法を放つ。しかし、魔法を喰らったエルザは額から血を流しながらもしっかりと立っていた。

 

 

「く……来る…な…」

 

 

「ならばお前が来い。私がエルザだ。ここまで来い」凛とした姿でしっかりと立ちながらそう言い放つエルザ。

 

 

「お前の名はジェラール。私のかつての仲間だ。だが乱心したお前は死者を冒涜し、仲間をキズつけ、評議院さえも破壊し……シモンを殺した」淡々とした口調でエルザは目の前のジェラールに、彼自身の事を語る。

 

 

「それを忘れたというつもりなら、心に剣を立てて刻み込んでやる!!!ここに来い!!! 私の前に来いっ!!!!」

 

 

そんなエルザの叫びを聞いて、ジェラールは小刻みに体を震わせる。

 

 

「オレが…仲間を…そんな……」しかしその震えは恐怖によるものではなく、自身の事を聞いたショックからであった。

 

 

「オレは……なんという事を……オレは…オレはどうしたら……」片手で顔を抑え、涙を流し、自己嫌悪するかのように言葉を漏らすジェラール。

 

 

ジェラールのその姿を見て、エルザ自身も、体を小刻みに震わせていた。

 

 

「(これが……あのジェラール? まるで……)」

 

 

──昔のジェラールに戻ったようだ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

太陽が沈んだ後、その空を占めるかのように今度は月が昇ろうとしている最中、3人と2匹の猫は足が6つあるクラゲのような何かが向かう先を見て、言葉を失っていた。滅龍魔道士の少女の眼にはこの先に大きな湖があるのが見えていた。

 

 

開拓された土地には猫のような形をしたテントがたくさん張られ、それらの回りには小さな光が点々と輝いている。

 

 

おそらくは焚き火などで起こせる炎の輝きだろう。しかし、それは人間以外の生き物にはなかなか起こせるような代物ではない。

 

 

あれこそが、その光景をみながら立ち尽くしている少女と猫の、ウェンディとシャルルが所属している知名度のなさそうな魔導士ギルドであるである。

 

 

だが、そこへと向かうクラゲのような何かは現在4つのギルドが連合を組んで阻止しようとしていた“超反転魔法ニルヴァーナ”そのものだ。

 

 

それを操縦している者、それこそが今回の目的たる六魔将軍(オラシオンセイス)そのリーダー、コードネーム“ブレイン”だ。

 

 

彼を止めぬ限り、作戦の成功もなければ、このままでは地獄絵図が完成してしまうだろう。

 

 

「ウソ……」

 

 

「……そんな……わたしたちのギルドが……」

 

 

「う、ウェンディ……急いでみんなに伝えましょ!!」

 

 

シャルルがこれからの目的を纏めるとすぐに、座り込んでしまったウェンディを起き上がらせようとする。そんな瞬間ときだった。

 

 

すぐ後ろの方で砂煙が立ち上げ、衝撃波を具体的に現してくるような突風が吹き荒れる。どうやら、誰かが戦っているらしい。

 

 

その突風、その範囲、その砂煙。それらが現す連合軍の魔導士と言えば……

 

 

「お姉ちゃん………」

 

 

「ウソ!?モナークってやられちゃったんじゃないの!?」

 

 

「いや、一応通信は通じたんだ、動けないって言ってたけど……」

 

 

「と、とにかく私達もニルヴァーナに向かいましょう!」

 

 

 

 

 

 

 

砂煙発生地点、ナツ&ハッピーVSコブラ&キュベリオス

 

 

「クソッ、さっきから身体が言うこと聞かなくなってやがる……!!」

 

 

「お、オイラも……」

 

 

「へえ、まだ動けんのか? お前、意外とタフじゃねえか」

 

 

「シュルー……」

 

 

先ほどの毒ブレスを浴びてしまったナツとハッピーはすでに身体が毒に汚染され、動きが少しずつ鈍くなっている。それとは違い、コブラは両手を毒々しい鱗で纏い、平然と空飛ぶ毒蛇キュベリオスの上で余裕を見せていた。

 

 

どうみても完全にナツが劣性だが、ここで諦めるようなナツではないだろう。まあ、それも身体が動けるのならであるが……。

 

 

それに現在ナツはニルヴァーナの上では立つことすら出来ない。それも乗り物酔いのせいなのだが、結構ナツの方は激しい乗り物酔いのため、動くことすら儘ならなくなる。

 

 

「さあて、そろそろ終わらせてやるよ、旧世代!!」

 

 

「んなろー、調子に乗りやがって……」

 

 

「あ、アイぃ……」

 

 

すでにハッピーは結構毒が回ってしまったのか、苦しそうにも見える。しかし、ハッピーもナツには迷惑かけまいと耐え続け、現に彼の体重を支えたまま飛行を続けていた。

 

 

一旦回りの安全を確認しようと思ったのか、ハッピーは辺りをキョロキョロと見渡す。そんな時だった。突然、ナツたちから見て東の空から何かが飛んでくる。

 

 

コブラも飛んでくる何かを遅れて捕捉したが、気づいた時にはすぐそこにまで迫っており、次の瞬間コブラは強い衝撃と共に森に叩き落とされた。

 

 

「クソっ……!なんつぅ威力だよ………」

 

 

「……………」

 

 

「おい!インヴィンジブル!!!コイツは始末したんじゃないのか!」とニルヴァーナの上に立つインヴィンジブルに対して聞くが

 

 

「うーん、死んだと思ったんだけどね〜」と笑いながら答えられたコブラは怒りを顕にした。

 

 

「調子に乗るんじゃねぇ!!」とモナークに突進するが、途中で何かに切り刻まれ、吹き飛ばされる。

 

 

吹き飛ばされたコブラはなんとかキュベリオスに乗り直し、体勢を建て直すが、身体には無数の切り傷が生まれていた。

 

 

モナークの周りには青い刀身の様々な形状の武器が浮遊していた。

 

 

「神器開放状態、ハイペリオン本来の力を引き出した状態よ、アナタごときが勝てる相手じゃないわよ」

 

 

「ハイペリオン!!!」

 

 

「グァァァァァァァァ!!!」

 

 

モナークの周り浮いていた武器全てが1つに纏まりコブラの体を貫き、その衝撃でキュベリオスも何処かへと吹っ飛んでいった。

 

 

ふらつくモナークの隣に駆け寄り、肩を貸すインヴィンジブル。

 

 

「後は私に任せて、貴女は少し休みなさい、全く……元の姿に戻って直ぐに神器開放状態なんかつかうモンじゃないわよ」とニルヴァーナにある建物の壁にモナークを寄りかからせながら言う。

 

 

「その感じだと仕事は………」

 

 

「ニルヴァーナの起動まで、こっから先はもう自由行動、残ってる六魔将軍(オラシオンセイス)を片っ端から倒していくつもり」

 

 

「どーせ、上にニルヴァーナの破壊でも命じられてたんでしょ」と言いながら苦笑するモナーク。

 

 

「それは終わったら話すわよ、取り敢えず今は休んでなさい」

 

 

インヴィンジブルは背中の大剣を引き抜き、残りの六魔将軍(オラシオンセイス)を倒す為に走り出した。



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エクスカリバー

更新クソ遅くてホントすみません。



「ちっ……!」

 

 

突然現れたインヴィンジブルを目掛けて襲い狂う怨霊のような複数のエネルギー。それを咄嗟に避けるために、高めのジャンプを繰り出して怪しげなエネルギーを回避する。

 

 

 

「ブレイン……」

 

 

「裏切ったのかインヴィンジブル!!」

出てきたブレインは血管が浮き出る程怒っていた、まぁ裏切られたのなら当然だろう。

 

 

「裏切ったも何も、私の仕事はニルヴァーナの起動まで、それから先は私の自由でしょ?」挑発するようにブレインに話す、更にキレさせれば動きが単調になって楽になるからである。

 

 

「き……キサマ……!!!」インヴィンジブルの挑発にモロに乗っかってきたブレインは常闇回旋曲(ダークロンド)をインヴィンジブル向けて放つが、軽々と避けられてしまう。

 

 

「はー本当に単調ね、遊んでる時間も無いし……速攻で終わらせるわよ」そう言うと地面を勢いよく蹴り、ブレインに突撃する。

 

 

それに対抗してブレインも常闇回旋曲(ダークロンド)を放つが、インヴィンジブルの大剣が常闇回旋曲(ダークロンド)を切り裂き、そのままブレインを吹き飛ばした。

 

 

「クソッ……!!!キサマ!!なぜ我々の願いを邪魔する!!」 

 

 

「願ぃ?こんなモンが願いな訳無いでしょうが!!」

 

 

インヴィンジブルの怒鳴り声にブレインは恐怖し、こう思った。

 

 

殺される(・・・・)と。

 

 

剣を振り上げ、ブレインに振り下ろそうとしたその瞬間、後ろから声がした。

 

 

「インヴィンジブルさん!!」

声の正体はウェンディだった、後ろにはナツやルーシィが驚いたような顔をしていた。

 

 

「あぁ、状況は後で説明するから」

驚いた顔をしている原因は自分自身なので後で説明しよう、そう思ってブレインに向き直ろうとした瞬間、身体に強い衝撃と共に壁に吹っ飛ばされた。

 

 

常闇奇想曲(ダークカプリチオ)、全てを貫通する魔法だ……これをくらって生きていた者は居ない」

 

 

「インヴィンジブルさん!!!」

 

 

「大丈夫大丈夫、咄嗟に剣で防いだから」と土煙の中から無傷のインヴィンジブルが埃をパタパタと払いながら出てきた。

 

 

「バ…バカな……常闇奇想曲(ダークカプリチオ)は全てを貫通する魔法だ……そんな剣ごときで防げるはずは……」

 

 

「この剣は……モナークの神器、ハイペリオンと同格の神器、エクスカリバー、闇の魔法でこの聖剣が砕けるとでも?」

 

 

説明を聞くとブレインが先程よりも数倍驚いた顔をし、後ずさりしていた。

 

 

「安心しなさい、殺しはしないから」

 

 

殺しはしない、その単語を聞いたブレインはその先が予想できてしまった。

 

 

殺しはしないと言ったな、あれは嘘だ。

 

 

と。

 

 

 

 

だが、インヴィンジブルは何も言わず顔面蒼白のブレインを剣で無慈悲にも横一文に薙ぎ払った。

 

 

「インヴィンジブルさんって……割と怖いんですね……」

 

 

「う、ウェンディ?そろそろ説明して欲しいんだけど…」

 

 

剣を収納したインヴィンジブルがウェンディの後ろに立って、こう言った。

 

 

「私はモナークの親友、ウェンディちゃんから見たら私はお姉さん枠ね」

 

 

突然の発言にナツやルーシィは「「はぁぁぁぁぁ!!!」」と叫んだ。

 

 

「まぁ驚くわよね、説明すると長いのよ……獣人は色々複雑だから…」と頭を抱えるインヴィンジブル。

 

 

「まず獣人について説明するわね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……という訳よ」

一通り説明し終わると訳がわからんといった顔をしているナツと、ポカーンとしているルーシィ、そしてなんとなく理解した感じのジュラ。

 

 

「それにしても……止まる気配が無いわね」

 

 

未だに動き続けるニルヴァーナ、てっきりブレインを倒したら止まると思っていたが、考えが軽すぎたようだ。

 

 

「このままじゃ化け猫の宿(ケットシェルター)が…」

 

 

「どうにかして止められないの!?」

 

 

「俺がぶっ壊してやらぁ!!」

とナツが部屋から飛び出そうとするのをジュラがマフラーを掴んで止める。

 

 

「この巨大なニルヴァーナをどうやって破壊すると言うのだ」

 

 

「聖十の魔道士でも難しそうね……私はまだ神器開放状態は扱いきれてないから……」

 

 

「そんな……」

 

 

「モナークなら……否、無理はさせられないわね……」

自分がやるしかない……そう決意したインヴィンジブルは、ウェンディ達に向き直って

 

 

「……貴方達はこのニルヴァーナから離れなさい、ニルヴァーナは私が破壊する」

破壊する、と言っても破壊できる自身なんかこれっぽっちも無かった。頼みの神器開放は扱いきれず、モナークには無理をさせられない。

 

 

「一人で行くなよ」

 

 

ナツの言葉がインヴィンジブルを引き留めた、『一人で行くなよ』昔に聞いた言葉だった。

モナークが敵の中枢下に取り残された時、一人で助けに行こうとした事があった。

その時私は焦っていたと思う。

モナークが死ぬかもしれない、そう考えると怖くて、一刻も早く助けに行きたかった。

その時私を止めたのは誰よりも早く助けに行きたいはずの、ルシュトゥンテントだった。

「一人で行くなよ」肩を叩かれながら言われ、冷静さを取り戻せたと思う。

 

 

「今になって昔の事を思い出すなんてね……」

 

 

協力してニルヴァーナを破壊しよう、頭の中で作った即席の作戦を説明しようとした瞬間、ニルヴァーナが突然動きを止め、前方に強大な魔力を蓄積させ始めたのだ。それに気がついたるー、が叫んだことによってインヴィンジブル達に焦燥感が募っていく、急いで外にでてよく見れば前方にはウェンディたちのギルドが見える。

 

 

もう……間に合わない。それを知るとウェンディはズルズルと座り込んでしまう。

 

 

「いやぁ……、止めて……」

 

 

ウェンディの悲痛な声が少しずつ漏れていく。目尻に涙が溜まっていく…

 

 

もう打つ手無しか……そう思っていたが、インヴィンジブルが突然ニルヴァーナの前門、発射前の反転魔法の前に立ちはだかっていた。

 

 

ナツ達がそれに気がついた時、丁度反転魔法は放たれる。

 

 

インヴィンジブルは剣を構えて神器開放をしようとするが、剣が反応しない。

 

 

やっぱり私には……

 

 

ドンッ!!

 

 

突然身体が押された、一体誰か……目の前には傷だらけで満身創痍のモナークが居た、そのまま私は魔法の射線から外れたが、モナークは魔法をその小さな身体に受けた。直後に大爆発。

 

 

「モナーク!!!」

 

 

「インヴィンジブル!!!覚悟(・・)を決めろ!!」

 

 

モナークの言葉を聞いて、目が覚めた。今なら・・・・・。

 

 

「エクスカリバーぁぁぁぁ!!!!!!」

インヴィジブルの声に呼応するように剣が光を放つ、その光は次第に剣の形を形成していき、最終的には20mクラスの超大剣になった。インヴィジブルはその剣を身体の後ろに持っていく、その動作は重さを全く感じない程に軽かった。

 

 

「奥義・・・・天地断ち!!!!!」

 

 

インヴィジブルが剣を横一門に薙ぐ。斬撃が発生し、ニルヴァーナの胴体と足の付け根から切断した。

ニルヴァーナは音をたてて崩れた。

 

 

「やった・・・・・・」

全身から力が抜け、浮く事もままならなくなる。

 

 

崩れゆくニルヴァーナを朦朧とする視界にとらえて安心し、静かに目を伏せた。

 

 

 

 

 

 

次回、ニルヴァーナ編最終回。



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別れ

ニルヴァーナが崩壊した後、モナークとインヴィンジブルを回収し、連合軍一同は開けた場所に居た。

 

 

「モナーク! 良かった!!」

 

 

「お姉ちゃんー!!」

 

 

「たく……心配かけやがって」

 

 

「ともかく、無事で何よりだ……」

 

 

飛びついてくるウェンディを抱き留め、その場に座り込むモナーク。

 

 

「モナーク、大丈夫?」

心配そうに隣へ歩み寄り、モナークの身体を支えるインヴィンジブル。

 

 

「うん、大丈夫……インヴィンジブルこそ大丈夫?」

ニコッと微笑むモナークだが、その表情に力はない。

 

 

「魔力を一気に使い過ぎて一時的に気を失っただけよ、それと……ありがとうね」

背中の剣を触りながらインヴィンジブルは照れくさそうに言う。

 

「とにかくこれで、一件落着だな!」

 

 

「はい! ナツさん……本当に、ありがとうございます!」ぺこりと頭を下げるウェンディにきょとんとした瞳を向け……フッと笑みを浮かべるナツ。

 

 

「みんなの力があったからだろ? んじゃ、元気に……ハイタッチだ!」

 

 

「っ……はいっ!!」

 

 

パンッ! と、ナツとウェンディは元気にハイタッチをした。

 

 

「とにかく、全員無事で何よりだね」

 

 

「皆、本当に良くやった」

 

 

「これにて、作戦終了ですな!」

 

 

「んで? あれは誰なんだ?」

と、グレイはジェラールを指した。

 

 

「あんな人いたっけ?」

 

 

「あれは、ジェラールだ」

 

 

グレイとルーシィの疑問にエルザが答えた。すると2人は目を見開き驚く。

 

 

「何!?」

 

 

「この人が!?」

 

 

「だが、私達の知っているジェラールではない……記憶を失っているようだしな」

 

 

「いや……そう言われてもなぁ」エルザの言葉に納得のいかない様子のグレイ。そんな彼に苦笑を浮かべながら、ウェンディが声をかけてくる。

 

 

「大丈夫ですよ、ジェラールさんは本当はいい人ですから」ウェンディがそう言うとグレイは渋々ながらも、納得したようだ。

 

 

その横ではエルザがジェラールに歩み寄り、何かを話している。その様子をちらりと見ながら、ため息をつくモナーク。

 

 

「お姉ちゃん……やっぱり少し回復を……」

目を伏せるモナークを見て、心配そうに声をかけるウェンディだが……

 

 

「ん? あぁ、大丈夫大丈夫……少し休めば回復するし、それに、今日はもうウェンディだって魔法を使いすぎちゃったでしょう?」

 

 

無理しちゃダメだよと、モナークは微笑みながらやんわりと断った。

 

 

そこに……

 

 

「メェーーーン!!」

 

 

「っ、何?」

 

 

突然、変な奇声をあげ、鼻上を抑える一夜が……

 

 

「どうしたんだ、オッサン」グレイが怪訝そうに問いかける。

 

 

「トイレのパルファムをと思ったら、何かにぶつかったのだァ!!」

 

 

そう叫ぶ一夜を尻目に、ふと地面に目をやると……

 

 

「何……地面に文字が?」

 

 

「こ、これは」

 

 

「「「術式っ!?」」」

 

 

グレイたちは声を上げる。そして……コツッと、靴を鳴らす音が聞こえ、そちらを向くと……

 

 

「誰だコラァ!?」

 

 

「どうしてあたし達を閉じ込めるのよ!」

 

 

「漏れるぅうううう!!!」

 

 

「やめてぇ!?」

 

 

「手荒な事をするつもりはありません……しばらくの間、そこを動かないで頂きたいのです」眼鏡をかけた男を中心に、数人の人間に囲まれていたモナーク達。

 

 

その服装と紋章を見てモナークは険しい表情になる。

「……もしかして」

 

 

「私は新生評議院、第四強行検束部隊隊長、 “ラハール” と申します」

 

 

「新生評議院!?」

 

 

「もう発足していたのか!!」ラハールと名乗った男の言葉に驚くルーシィとグレイ。

 

 

「我々は法と正義を守る為に生まれ変わった……如何なる悪も、決して許さない」

 

 

ラハールのその言葉に、ビクッ! と身体を揺らすナツとハッピー。

 

 

「お、オイラたち何も悪いことしてないよ!?」

 

 

「お、おう……!!」

 

 

「存じております……我々の目的は六魔将軍の捕縛……そこにいるホットアイをこちらに渡してください」

 

 

その言葉に驚愕するナツ達。

 

 

「ま、待ってくれ! 彼は……」

 

 

「いいのデスネ、ジュラ」説得を試みようとしたジュラを微笑みながら止めたホットアイこと、リチャード。

 

 

「例え善意に目覚めても、過去の悪行は消えませんデス……私は一からやり直したい」

 

 

そう告げたリチャードに、ジュラは心が折れ、代わりにリチャードが探す弟を見つけ出そうと約束をした。

 

 

「弟の名は何というのだ?」

 

 

「弟の名はウォーリー……ウォーリー・ブキャナン」リチャードの口から出たその名に、ナツ達は目を丸くした。

 

 

「「四角ぅー!?」」

 

 

「その男なら知っている……私の友だ。今は元気に仲間と大陸中を旅している」

 

 

エルザのその言葉を聞き……リチャードは涙を流す。

「これが、光を信じるものだけに与えられた奇跡と言うものデスか……ありがとう! ありがとう……ありがとう」

 

 

リチャードは最後に、晴れ晴れとした表情で評議院の人達に連れられ、去っていった。

 

 

だが、ラハール達はその場から離れようとしない。

 

 

きっと彼らの目的は……

 

 

「も、もういいだろう! 術式を解いてくれ! 漏らすぞ!!」

 

 

「だからやめなさいっての!」

声を荒らげる一夜をハッ倒すルーシィ。

 

 

「いえ、私達の本当の目的は六魔将軍ごときではありません」

 

「へ?」

 

 

「それって……」

 

 

ラハールは1人を睨み……告げた。

 

 

「評議員への潜入・破壊、エーテリオンの投下……もっととんでもない大悪党がそこにいるでしょう……貴様だジェラール! 来い!それと……

 

 

抵抗する場合は抹殺許可も降りている!!」

 

 

「「「っ!!!」」」

 

 

「そんなっ!」

 

 

ジェラールを指さし、告げたラハールに驚愕の眼差しを向けるナツたち。

 

 

「ちょっと待てよ!」

 

 

「その男は危険だ、2度とこの世界に放ってはいけない……絶対に!」

 

 

そして、ナツ達が反対をする中……ラハールはジェラールを連れていこうとする……。

そんな後ろ姿を見つめ、エルザはギュッと拳を握る。

 

 

(止めなければ……私が、止めなければジェラールが行ってしまう……折角、悪い夢から目覚めたジェラールをもう1度暗闇の中へなど行かせるものか……!)

 

 

「死刑か無期懲役は免れないぞ。2度と誰かと会うこともできんだろう」

 

 

「っ!?」ジェラールとの会話の中でラハールの放ったその言葉にエルザは目を見開き、止めようと動こうとした……その瞬間───

 

 

「行かせるかぁー!!」

エルザよりも早く、声を荒らげ、ナツがラハール達に突撃していた。

 

 

「何してるの!?」

 

 

「そいつは仲間だ! 連れて帰るんだぁ!!」

ナツのその言葉にグレイ達も動かされ……ラハール達を相手に、反抗を始めた。

 

 

「お、お前たち……」

その光景を後ろから見つめ、身体が動かないエルザ……

 

 

「全員捕えろォ! 公務執行妨害及び逃亡幇助だぁ!!」

 

 

「行くな!! ジェラァアアル!!!」

 

 

「もういい!! そこまでだっ!」

エルザの止める声が響き……ナツ達は動きを止めた。

 

 

「騒がせてすまない……責任は全て私が取る……ジェラールを、連れて……行け」

 

 

「エルザ!? なんで……」

 

 

エルザに突っかかろうとしたナツ……だが

 

 

「ナツ……分かってあげな、一番苦しいのはエルザだよ…」

ナツの後ろからモナークが立ち上がって言う。

 

 

ジェラールは抵抗もせず、連行される……その時、ふと足を止めエルザを振り返った。

 

 

「エルザ……お前の髪の色だった」

 

 

「っ!!」その言葉を聞き、エルザは目を見開き、ジェラールを見つめる。

 

 

「……さようなら、エルザ」

 

 

「……あぁ」

 

 

その会話を最後に……ジェラールは護送車へと乗り込み、姿は見えなくなった。

 

 

「さて……私達も連れてく気でしょ、ラハールさん」

モナークがラハールを睨みながら言う、その言葉に場の空気が一気に冷え込んだ。

 

 

「あぁ、本来ならな……我々が今回受けている命令は“六魔将軍”と“大罪人ジェラール”の連行、獣人の抹殺は命令に入っていない」淡々と説明するラハール、話が終わるとそのまま馬車の中に入っていった。

 

 



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本当の仲間

ニルヴァーナの阻止が成功し、リチャードとジェラールが評議院へと連行されてから数時間後……モナーク達はウェンディたちのギルド、化猫の宿で祝の宴を開催しながら、傷ついた体を癒していた。

 

 

集落の中心に位置する広場でナツやグレイを始めに、皆でわいわいと盛り上がっている中……2人、その席から外れ、小高い丘の上で寝転ぶモナークとインヴィンジブル。

 

 

「まぁ、神器持ちが2人も居るのにあの戦力で殺そうなんて無理があるわね」

 

 

「神器持ちねぇ……古代魔法一つ止められないなんて情けないったら……」

モナークの横に転がっているハイペリオンを見ながら溜息を漏らすモナーク。

 

 

「そういえば……ミスリルソードはどうしたらいい?本国に持って帰る予定だけど」

 

 

「それで良いよ、もう正体もバラしちゃった事だし……」

 

 

「わかった、後一つ言っておく事があるわ………あの人達は……ニルビット族の末裔なんかじゃない、本物のニルビット族よ……ただそれも1人……魔力だけでこの世に留まり続けている状態だけどね……多分もうそろそろ限界なんじゃないかしら」

 

 

「………………」

 

 

「モナーク……」

 

 

「わかってる!!何となくわかってた、村に入った時から違和感があった……ウェンディにはあの気持ちを知ってほしく無いの!!」

 

 

「モナーク、あの娘はモナークが思ってる以上にしっかりしてる。大丈夫、あの娘はちゃんと前に進める、それに……遅かれ早かれ知る事になるのだから……」

 

 

「ごめん……」

 

 

「じゃあ私そろそろ行くね、報告とか色々しなきゃいけない事もあるから」

そう言うとインヴィンジブルは立ち上がってからこう続ける。

 

 

「なるべく早く帰ってきなよ、みんな心配してんだから」

 

 

「うん……じゃあね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういやモナークは?」

ガツガツ肉やら焼き魚やらを食べていたナツがいきなり食べるのを止めて話す。

 

 

「モナークならさっきあの丘の上でインヴィンジブルと話てたわよ」

ルーシィが近くの丘を指す。

 

 

「私、お姉ちゃんの事見てきます!」

ウェンディが手に持っていたコップをテーブルに置き、立ち上がって丘の方へと走っていった。

 

 

「ウェンディとモナークが姉妹だなんてねぇ」

 

 

「にしてもあんな小さいのにバカ強いとはねぇ」グレイがちゃっかりモナークの悪口を言っていると……

 

 

「だーれが小さいってぇ…?」

悪口が聞こえたのか、丘からキレ気味のモナークが出てきた。ウェンディも一緒に居たが、怒る姉に完全に怯えている様子だった。

 

 

「す、すまねぇ……」

すかさずグレイが謝罪した事によってモナークの怒りは取り敢えず収まったようだった。

 

 

そんな中、化物の宿(ケットシェルター)のメンバーたち、さらにはマスターであるローバウルも合流し、やっと全員が揃った。

 

 

「“妖精の尻尾(フェアリーテイル)”。“蛇姫の鱗(ラミアスケイル)”。“青い天馬(ブルーペガサス)”。そして……ウェンディとシャルル。見事“六魔将軍(オラシオンセイス)”を倒し、ニルヴァーナを止めてくれた。地方ギルド連盟代表として礼を言わせてもらおう。ありがとう。なぶら、ありがとう」

 

 

そう感謝を告げるローバウル。だが、そこに……

 

 

「いえいえ、これもわたしたちの役目。激戦に次ぐ激戦。消して楽なものではありま……」

そう言いながら飛び出し、まるで自分も大活躍したような雰囲気を醸し出す一夜。そんな一夜をさらに目立たせようとするトライメンズの三人に……

 

 

「……アンタ、最初の時普通に闇ギルドに捕まってたよね」

 

 

「ガァーン……」

畳み掛けるモナーク。その顔は意地悪そうでニヤニヤとした悪魔のような笑みだった。

 

 

「……とりあえず、一旦落ち着け。ローバウルさんの話途中だろ?」

 

 

「アッハイ」

 

 

「メェーン……」

 

 

思いっきり(言葉で)叩かれ、撃沈した一夜。それの原因を作ったモナークを見てゾッとするルーシィとグレイ、エルザ。

 

 

「ま、確かにここにいる全員で果たした戦果だし、意外と連合軍ってのもいい機会だったと思う。それに……私はそのお陰でウェンディと再会出来た。それで戦果なんか十分、一夜達がどう格好つけようとどうだっていいし」

 

 

「け、結構がっつり言っちゃうのね」

どうだっていい、と言われた一夜は更に落ち込み、トライメンズの3人も言い返す言葉も無く、仲良く4人とも落ち込んだ。

 

 

それを見ていたらしきローバウルは少し微笑むと、話を再開する。

 

 

「……皆さん、ニルビット族のこと……隠していて、本当に申し訳ない」

 

 

「そんなことで空気壊すの?」

 

 

「そんなん、全然気にしてねぇのになぁ?」

 

 

「あいっ!」

ナツの言葉に頷くハッピーとルーシィ。

 

 

「マスター、私も気にしてませんよ?」

にっこりと微笑み、ウェンディもローバウルにそう告げた。

 

 

だが、ローバウルの表情は晴れず……

 

 

「皆さん、ワシがこれからする話をよく聞いてくだされ……まず始めに、ワシ等はニルビット族の末裔などではない」

 

 

「……え?」首を傾げ、ローバウルを見つめるウェンディを横目に、悲しそうな表情を浮かべるモナーク。

 

 

「末裔などではない……ワシは、ニルビット族そのもの……400年前、ニルヴァーナを造ったのはこのワシじゃ」

 

 

「な!?」

 

 

「何……!?」

 

 

「嘘……」

 

 

「400年前!?」

 

 

「はぁ!?」

 

 

ローバウルの告げた事実にナツたちは目を見開き、驚く。

 

 

「400年前……世界中に広がった戦争を止めようと善悪反転の魔法、ニルヴァーナを造った……ニルヴァーナはワシ等の国となり平和の象徴として一時代を築いた。

しかし、強大な力には必ず反する力が生まれる……闇を光に変えた分だけニルヴァーナはその “闇” を纏っていったバランスをとっていたのだ……人間の人格を無制限に光に変えることはできなかった闇に対して光が生まれ、光に対して必ず闇が生まれる」

 

 

ローバウルの言葉に

 

 

「そう言われれば確かに……」

と、頷くグレイ。

 

 

「人々から失われた闇は我々ニルビット族に纒わりついた」

 

 

「そ、そんな……」

 

 

ローバウルは目を伏せ……言葉を告げていく。

 

 

「……あれは、地獄じゃ。ワシ等は共に殺し合い……そして、全滅した」

 

 

「「「っ!!」」」

 

 

殺し合い、全滅の言葉に驚愕が抑えられないナツたち。

 

 

「生き残ったのはワシ一人だけじゃ……否、今となってはその表現も少し違うな。我が肉体はとうの昔に滅び、今は思念体に近い存在……ワシはその罪を償うため……また、力なきワシの代わりにニルヴァーナを破壊できるものが現れるまで、400年……見守ってきた。今、漸く役目が……やっと……終わった」

そう言い、顔を上げたローバウルの表情は晴れ晴れとしていた……。そして

 

 

「そ、そんな話……!」

震えるウェンディ……そんな彼女の目の前から……次第に化猫の宿(ケットシェルター)の者が消えていく……。

 

 

「っ! マグナ!? ペペル!! 何、これ……」

 

 

「ちょ……アンタ達!!」

 

 

「ど、どうなってんだこりゃあ!?」

 

 

「ウェンディ……シャルル……騙していてすまなかったな……ギルドのメンバーは、皆……ワシの作りだした幻じゃ」

 

 

「な、なんだとぉ!?」

 

 

「人格を持つ幻だと!?」

 

 

「何という魔力なのだ……!」

 

 

あのジュラでら、ローバウルのその言葉に、目を向いた。

 

 

「ワシはニルヴァーナを見守るためにこの廃村に1人で住んでいた。長い長い時の中……7年前1人の少年がワシのところに来た」

 

 

「1人の……少年」

 

 

「少年のあまりにまっすぐな眼に、ワシはつい承諾してしまった……1人で居ようと決めていたのにな」

 

 

そう語ったローバウルだが、その表情には確かな愛情が現れていた……。

 

 

「……ウェンディのために作られたギルド」

 

 

「そんな話っ! 聞きたくない!! パスクもナオキも消えないでよ!!」ローバウルの語る話に耐えきれず、耳を塞ぎ涙が溢れるウェンディ。その隣では、シャルルも拳を握り震えていた。

 

 

「ウェンディ……シャルル……もうお前達に、偽りの仲間はいらない」そう呟くと、ローバウルはモナークやナツたちの方を見つめ指差す。

 

 

「本当の仲間がいるではないか……」

そして、ローバウルの身体も光だし……次第に、その姿が消えていく……

 

 

「マスターっ……!」

 

 

「ウェンディ……シャルル……お主らと過ごした7年間……実に、幸せな日々であった……愛しておる……お主らの未来は、始まったばかりじゃ……」

 

 

そして……ローバウルはニッコリと微笑み……もうその姿はほとんど見えなくなっていた。

 

 

「マスター!」

消えゆくローバウルに駆け寄るウェンディ。

 

 

「皆さん、本当にありがとう……ウェンディとシャルルを……頼みます……」

 

 

そうウェンディとシャルルを託すと……ローバウルの身体は完全に消え去ってしまった。

 

 

光の粒となり、天に昇るローバウルの魂……

 

 

「マスタァアアアアッ!!!!」

 

 

泣き叫ぶウェンディ。微かではあるが涙を見せるシャルル。それはそうだ。何年も……長い間、ともに暮らした者たちだ。悲しくないわけがない。

 

 

その悲しみを知るのは、ここでは恐らくエルザとヒビキ……そして……。

 

 

誰もがその姿に……悲痛な表情や、同じく悲しみの涙を流す中……

 

 

ウェンディの後ろから手を回し、優しく抱くモナーク。

 

 

「……お姉ちゃん……」

 

 

「ウェンディ、ウェンディの中にある思い出……、ローバウルさん達との思い出ってさ。偽物なの?」

 

 

「ううん……、本物だよ……暖かかったもん……」

 

 

「それなら、良かった。ならさ、ウェンディがローバウルさん達を覚えててあげるんだ。そしたら……ローバウルさん達はウェンディがいなくなるまで、ずっと忘れ去られることはないんだ」

 

 

「あ……」

 

 

「でも、ローバウルさんは自分達を偽物って言ったけどさ……。私も彼らは本物だと思う。家族って言うのは……想いがあるからこそ家族なんだ。なら……その想いを繋ぐのも大事な役目。だから……一緒に来ない? 私達のギルド、妖精の尻尾(フェアリーテイル)に」

 

 

 



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第三章 日常編 ようこそ!妖精の尻尾に!

「あ〜…… 電車ってこの窓から入ってくる風が気持ちいぃんだなぁ」

 

 

「良かったねー、ナツ」

 

 

「何その間の抜けた声……」

 

 

現在、モナーク達妖精の尻尾メンバーは、新たな仲間、ウェンディとシャルルと共に、電車でマグノリアへと帰還中だった。

 

 

ナツは電車に乗る前にウェンディからトロイアの魔法をかけてもらっていたため、乗り物酔いを起こすことなく、窓から入ってくる風を感じのんびりしていた。

 

 

「乗り物っていいもんだなぁー!!」

 

 

そんな時……

 

 

「あ」

と、ウェンディの声が聞こえ……

 

 

「そろそろ、トロイアの効果が切れますよ」

と、ナツを見て告げた瞬間……

 

 

「おっふっ! うぷぅ……」

バタリ、と崩れ落ち一瞬で乗り物酔いを起こすナツ。

 

 

ナツは床を這いながらウェンディに近づき……

「も、もうい、っかい……かけ……て、うぷ」

と、懇願するが……

 

 

「何度もかけたら効くものも効かなくなるわよ、どうせいつもに戻るだけなんだから我慢して」

 

 

「は、はくじょぉ……ものぉ……うっぅぷ」

 

 

「放っとけよ、そんな奴」

 

 

「あっははははは!」

 

 

吐き気に耐えるナツを見て、グレイは呆れた様子でルーシィは笑いが止まらない様子……

 

 

「それにしても、本当にシャルルも妖精の尻尾に来るんだね」

 

 

「私はウェンディが行くって言うからついて行くだけよ」

 

 

「よろしくぅ、シャルル」

 

 

ぷいっとそっぽを向くシャルルに二ヘラと微笑みながら声をかけるハッピー。

 

 

「そういえばモナーク、なんでその姿なの?」

ルーシィが席の反対側に座るモナークに聞く、六魔将軍(オラシオンセイス)の戦いの時には真の姿になって戦っていたのだが、町に向かう際に前の姿に戻っていたのだ。

 

 

「なんでって…あの姿を一般人に見られると色々と面倒事が多くて困るの、ギルドにも迷惑かけたくないしね、それに…」

 

 

「それに?」

 

 

「耳とか尻尾とかを触りたがる奴が出てくるだろうから…あんまり触られるの嫌なんだよね」

 

 

「そ、そっか」

 

 

その後、電車は駅に到着し、そこから馬車に乗ってマグノリアへと帰り、無事妖精の尻尾(フェアリーテイル)へと帰還を果たした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、言うわけで……ウェンディとシャルルを妖精の尻尾へ招待した」

 

 

連合軍であった事などをマカロフに報告し、最後にウェンディたちを紹介したエルザ。

 

 

その影からひょっこりと姿を現し、マカロフやギルドメンバーと対面するウェンディとシャルル。

 

 

「よ、よろしくお願いします!」

 

 

「ふん……」

 

 

少し恥ずかしそうに一礼するウェンディとぷいっとそっぽを向くシャルル。

 

 

そんな新たな仲間に、ぞろぞろと集まる人だかり。

 

 

「かわいー!」

 

 

「ハッピーのメスがいるぞ!」

 

 

「お嬢ちゃんいくつ?」

 

 

「ルーちゃーん!! おかえりー!!」

 

 

「レビィちゃん!!」

ルーシィに抱きつくレビィ。

 

 

「グレイ様……ジュビアは心配で心配で……目から大雨がっ!!」

 

 

ダバー! とジュビアの目から涙が流れる。

 

 

「ぎゃー!! グレイ止めろぉ!」

 

 

「おぼぼぼっ!溺れるぅ!!」

 

 

「ンで俺がっ!?」

 

 

「わぁ! 見てシャルル! 本物のミラジェーンさんだよ!! 綺麗だね!」

 

 

「こんにちわ、ウェンディ、シャルル……これからよろしくね?」

モナークから離れ、ウェンディとシャルルににっこりと笑みを向けるミラ。

 

 

「そういえば、シャルルの魔法は多分ハッピーと同じだと思うけど……」

 

 

「何ですって!? ちょっと、オスネコと同じ扱い!?」

 

 

「でも実際同じだよなぁ」

ハッピーと同じ扱いなのをシャルルは納得いかないようだ。

 

 

「わ、私……天空魔法使います。天空の滅竜魔導士です!」

 

 

ウェンディがそう少し大きな声で言うとギルド内はしぃん……と、静まり返った。

 

 

誰も声を発さず、目を見開く一同を見てウェンディはふっと暗い表情を浮かべる。

 

 

「っ……(信じて貰えない……かな)」

 

 

珍しい魔法だから……仕方ないか、と目を伏せるウェンディ。

そんな彼女の肩をポンッと叩く人物が……

 

 

「ふぇ……」

 

 

顔を上げるとウェンディの隣にはモナークが立っており、ウェンディと目が合うとにっこりと微笑んだ。

 

 

 

「大丈夫だよ……ほら」

モナークが呟いた次の瞬間……

 

 

「「「うぉおおおおお!!! すげぇ!」」」

 

 

ギルド内から歓声が上がった。

 

 

「ふ、ふぇ!?」

 

 

「滅竜魔導士だぁー!!」

 

 

「すげぇ!! こんな可愛い子があんますげぇ魔法使うなんて!!」

 

 

「ガジルもいるからこのギルドに3人も滅竜魔導士がいることになるぞ!!」

 

 

「すげぇすげぇ!! 本当に珍しい魔法なのにな!」

 

 

ワラワラとウェンディに群がるギルドメンバーたちにオドオドするウェンディ。

 

 

そこへ……

 

 

「はいはい、そんなに大勢で群がったらウェンディが潰れちゃうでしょ?あと、ウェンディに変な事したり吹き込んだら地面に埋めるからね」

 

 

ウェンディを押し潰しそうな男達の前に立ち、ニッコーリ……とした、完全に笑ってモナークを見て首を縦へと勢いよく振り了承する。

 

 

「よっしゃー!! 今日は飲むぞー!!」

 

 

「今日は宴だー!!!!」

 

 

「「「おぉおおおおおおっ!!!!」」」

 

 

宴の一声とメンバーからの歓声から始まった宴。既に出来上がっていたメンバーも新しく酒を飲み始める。

 

 

「ミラちゃーん!! こっちにもビール!」

 

 

「はいはーい!」

次々に飛び交う注文をせっせと受けるミラ。

 

 

「シャルルー、オイラのお魚いる?」

 

 

「いらないわよ!」

 

 

「好き嫌いダメだよぉ? シャルル」

 

 

「うぉおおおおおっ!! 燃えてきたァ!」

 

 

「きゃー!? あたしの服ー!!」

 

 

「グレイ様……浮気とかしてませんよね?」

 

 

「何だよそれ……」

 

 

「大丈夫だよ、ジュビア。 グレイはずっとジュビアのことを考えてたよー」

棒読みで言う、こうしておけばジュビアは更にグレイに付きっきりになるし……何より面白い。

 

 

「おいモナーク!? 何言って……「本当ですか!?」おいっ!」

シクルの言葉を聞き、ジュビアはキラキラとした瞳でモナークに迫る。

 

 

「ホントだよジュビア。いいねぇ……愛されてますなぁ」

 

 

「グレイ様……ジュビア感激っ!!!」

そう叫び、グレイに抱きつくジュビア。

 

 

「バカヤロぉおおおおおっ!!」

 

 

最後に聞こえたのはグレイの絶叫だが……モナークは気にもせず笑いながら1人質問攻めから解放され椅子に座っていたウェンディの元へと向かう。

 

 

「どう? ウェンディ……ここは」

ウェンディの隣に腰掛け、目の前を通ったミラに飲み物を注文しながら声をかける。

 

 

「はい! 楽しいところですね! ここは……凄く、楽しいです!」

にっこりと笑い、そう言ったウェンディの答えに「そっか」と満足げに微笑む。

 

 

「私、ここに来て良かったです!!」

 

 

「そう言ってもらえてよかった」

ミラから飲み物を受け取りながらウェンディの横に座る。

 

 

「な!モナーク!お前尻尾とか生えてるもんな!」

ナツの突然の発言に口に含んだ飲み物を勢いよく吹き出してしまう。

 

 

「ちょっ…何バラしてんのよ!」ナツの目の前まで移動し、小さな声で話す。

 

 

「良いじゃねえかよ別に、ハッピーだって羽生えてんだから」

 

 

「あれは魔法!私は元から!!」

はぁ…、と溜息をつくモナーク、諦めたのか変身魔法を解除し、本来の姿に戻った。

 

 

一瞬ギルドが静まったが、直後

「「「うぉおおおおお!!! マジかよ!!」」」

 

 

「オレ獣人とか初めて見たぞ!」

 

 

「獣人ってもっとゴツい奴らだと思ってたけどモナークみたいな可愛い奴も居るんだな!」

 

 

「すげぇ!すげぇ!なぁ!触らせてくれよ!」

 

 

「あっ…ちょっ…触らないでって!」モナークの耳と尻尾を触ってくる男達の山からなんとか抜け出したモナーク。

 

 

「はぁ……ちゃんと私の本当の自己紹介するわね、名前はモナーク・ドミニオン、年齢は20歳、身長は……最近測ってないからわかんない、なんか聞きたい事ある?」

 

 

すると、エルザが「モナークが使ってるその剣は神器と聞いているが、本当なのか?」

 

 

「うん、本当だよ。神器ハイペリオン、私の生まれ故郷であるプレロマ王国の7つある神器の1つ、あとはインヴィンジブルのエクスカリバー、アルテミス、ソルディス、ククルカン、ユコンヴァジュラ、ヘイレム、この7つがプレロマ王国の神器よ、あとは稀にダンジョンの奥深くに魔剣もあったりするんだけど、正直危険過ぎて誰も挑まないわ、私も何回かチャレンジしたけど全く歯が立たなかったの」

 

 

「モナークでも歯が立たなかったって…とんだけヤバイダンジョンなのよ…」

 

 

「オレ行ってみてぇ!」ナツが興奮気味に言う、モナークは「その内連れてってあげるよ」と言った。

 

 

新たな仲間、ウェンディとシャルルを迎え、妖精の尻尾はまた、賑やかとなった。

 

 

マグノリアの町を襲う脅威は、確実に近づきつつあった。



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悪夢再来

「何これ…こんなに散らかってたのね、誰だこんな状態にした奴……」

 

 

「ごめんなさい、お姉ちゃん、私の手伝いなんて」

 

 

そこでは2人の少女が色々な本などが仕舞われている書庫にて、書類整理のようなことをしていた。

 

 

青く長い髪を持つ少女――ウェンディ・マーベルは化け猫の宿(ケットシェルター)が事実上消滅してしまったので、誘われたこのギルドに所属することになった。

 

 

姉のような存在であるモナークは妖精の尻尾(フェアリーテイル)に来る前に稼ぎに稼いだ多額の貯金がある為、仕事に行く必要がないため、妹のような存在であるウェンディの手伝いをしている訳だ。

 

 

「別にわたしのお手伝いなんて大丈夫ですよ? わたしだってこれぐらい出来ます」

 

 

「あー、それに関しては心配してないんだけど、もしなんか変な魔導書とかがあったら危ないでしょ?」

 

 

筋が通ってはいるが、内心は2割だけである。ほぼ8割はウェンディを心配してのことである。少しの間であっても、ウェンディと暮らしていたことがある分、彼女がどれくらいドジなのかぐらいは把握している。こんなところで梯子から落ちられたら、洒落にならないと思ったのだ。あくまでそれが本音であるが、それを本人が知ると傷ついてしまいそうで黙っておく。

 

 

ギルドに入ったばかりのウェンディにマスターであるマカロフから言い渡されたのは、小さな依頼とギルドでの環境に馴れることだった。

 

 

そのために、ギルドの中にある施設やら何やらを知るために、書庫の整理を任されている。ちなみに現在シャルルの方は、ルーシィやエルザ達と上でミラのケーキを食べている。

 

 

モナークが居れば、危ないことには巻き込まれても無事だと思っているのだろう、確かに下手なボディーガードよりも強固な壁がここにいるのだ。恐らく並の魔導士……いや、並のS級魔導士だろうと、普通に圧倒し、追い払うような実力の化け物であるためだろう。

 

 

本人は「私なんか下の下の下だよ」といつも遠慮ぎみなのだが……。

 

 

「ウェンディ、その本はちょっと上の方じゃない?」

 

 

「あ、はい。えーっと……」

 

 

本の位置のパターンが見えてきたモナークは素早くウェンディに指示を回し、本を次々と整理し終えていく。そんなモナークに影響されたのか、ウェンディも大体覚えてきた。

 

 

ここ最近、モナークは時々ウェンディが時間がある時に、魔法の練習の相手になっている。ついこの間は、覚えたばかりの“天竜の咆哮”を繰り返し練習していた。

 

 

ウェンディは梯子に登って、モナークは魔法で宙に浮いて作業をしているそんな時だった。

ウェンディが整理のために本を一冊引いて、入れ換えようとした時、一枚の紙がヒラヒラと宙を舞って落ちていくのが、目に見えた。

 

 

それに気がついたウェンディは梯子から降り、その紙を拾い上げる。

 

 

「ウェンディ、それは?」

 

 

「なにかの依頼書でしょうか?えーっと……なんですか?これ」

 

 

ウェンディはよくわからない文字が書かれたその依頼書をレインに渡す。それ受けとるとモナークは首をかしげるが、そのあとに「これ何処かで見たことがあるような……」と呟いた。

 

 

結構喉元まで出掛かっているのだが、中々思い出せない。そう思っていると、ウェンディがその依頼書を見てからあるところを見て、言った。

 

 

「ここ読めそうです、えーっと……ウゴ・トゥル・ラス・チ・ボカラニ……」

 

 

そうウェンディが言った瞬間、モナークはある悪夢の一端を思いだし、咄嗟にウェンディがそれを詠唱するのを止めようとした。が、結局間に合わず、ウェンディが最後の言葉を読み上げてしまった。

 

 

すると、その場にいたモナークとウェンディが虹色の光に包まれていく。咄嗟に叫ぼうとしたが、突然の変な感覚のせいで喋ることが出来なかった。

 

 

そうして、虹色の光が消え去ると、ウェンディは呟いた。

 

 

「さっきのなんだったんでしょう?」

 

 

そう言いながら、モナークのいる方向へと振り返る。だが、そこには誰もいない。逆の方向へと振り返ってみれば、そこにはウェンディが居た。

 

 

「あれ?わたし?」

 

 

「ウェンディ、読んじゃったのか……」

 

 

モナークは呟くが、実際に呟いたのはウェンディ。それに気がつくと、ウェンディはみるみる内にビックリ仰天と言ったような顔をして、叫びそうになる。

 

 

――が、目の前にいるウェンディ(多分モナーク)が頭を抱えているのが見えたので、そっちに驚き、声が結局出なかった。

 

 

「多分、私達入れ替わったと思う……。さっきの依頼書、前に悪夢をもたらした《チェンジリング》だ……」

 

 

「え、えーっと、それはつまり……わたしがお姉ちゃんの身体で……。お姉ちゃんがわたしの身体ってことですか……?」

 

 

「うん……、視線が少し低い。それと体重が軽く感じる……。いつもより少し軽めな気がする」

 

 

「わ、わたしの方は……視線が高くて……、少し身体が重たいです……。えーっと、鏡ありました?」

 

 

「これ?はい、ウェンディ……」

 

 

モナークが一応置いておいた机の上にあった鏡をウェンディに手渡す。急いで鏡を見るや、ウェンディは固まり、呆然として無言になる。

 

 

どこからどう見ても、鏡に映っている自分の姿は、狐色の髪を持つ耳の生えた少女。逆にモナークはと言えば、緑色に着色された民族衣装のような服装の青く長い髪を持つ少女だ。

 

 

「確か、使える魔法が中途半端に……あれ?」

 

 

そう言っていると、モナークは適当に左手に魔力を集めて、ナツの見様見真似で“天竜の鉄拳”を用意しようとしてみる。すると、何故か普通に使用できるほど、形がしっかりしており、安定していた。

 

 

「……魔力撃の要領と同じなのね、魔力をその場に留まらせるのは同じみたいだし」

 

 

「なるほどです。じゃあ、わたしも使えたりしますか?」

 

 

「うーん、剣とかなら振れると思うけど、ハインドとかは多分使えないんじゃないかな?」

 

 

「そろそろ、マスターを問い詰めなきゃいけないわね」

 

 

「あわわわ……」

 

 

大慌てになるウェンディ。と言っても慌てているのはモナークの身体。逆に今にも怒ってしまいそうなモナークはウェンディの身体でメラメラと燃え上がりそうになっている。

 

 

 

 

 

 

 

ギルドにある酒場のカウンター席に座る一人の老人。その老人こそが、このギルドの三代目マスターなのだが、普段はごく普通のお爺ちゃんにしか見えない。

 

 

杖を片手にお酒をグビクビと飲み、プハァ~と言う姿は見慣れている者たちが多いはず。そんな事はさておいて、そんなマカロフの近くにいるウェイトレスの女性、ミラジェーン。みんなからはミラと呼ばれている彼女はいつも通りに皿を洗ったり、注文をさばいたりしている。

 

 

そんな彼らの近くで食事をしているのが、最強チームと呼ばれているメンバーの一人、ナツとグレイ、ルーシィとエルザ、ハッピーだ。それと今回はシャルルもいた。

 

 

ナツはいつも通りに肉やら野菜やらを手当たり次第に口のなかへと詰め込んでいく。グレイは軽めにサンドイッチやらの食事を取り、ハッピーは魚を頂いていた。シャルルはナツやハッピーに呆れながらドリンクを飲み、エルザはケーキを、ルーシィはパスタか何かを食べていた。

 

 

「そういや、ガツガツ……、モナークとウェンディ、ガツガツ……、は何処に行ったんだ?」

 

 

「アンタねえ、食べるか喋るか、どっちかにしなさいよ……」

 

 

「ウェンディはモナークと一緒に書庫の整理よ、あの子張り切ってたわ」

 

 

「なるほど、ウェンディも姉のようなモナークと一緒なのは嬉しいのだな」

 

 

「まあ、モナークもそれで暇潰せてるんだからいいんじゃないのか?無駄に強いから、飽き飽きしてそうだったしな」

 

 

「今度、ガツガツ……、しょうぶして、ガツガツ……、ぜってえー、ガツガツ……、かぁーつ!!」

 

 

そんな中、書庫の方から出てきたモナークとウェンディを見て、シャルルが声をかけようとするが、様子がおかしいことに気がついた。

 

 

ウェンディがマカロフの元に辿り着くや否や、突然……

 

 

胸ぐらを掴んだ。

 

 

「「「「え……?」」」」」

 

 

思わず状況分からないナツたちがそれぞれポロッと口から何かを溢したりするが、一番驚くべきことはマカロフの胸ぐらを掴んだウェンディだ。

 

 

あんなにピュアで優しく健気な子が……と思った途端、近くにいたモナークが泣き始める。

 

 

「うぅ……なんでこんなことにぃ……」

 

 

その泣き方はウェンディそのもので、しゃがんだまま涙をポロポロと溢していた。一方のウェンディはというと……

 

 

「マスター、なんであれを本に挟んでるんだ!!!」

 

 

「どうえええええええ!!!???」

 

 

完全に酔いが冷め、びっくりするマカロフ。高々と持ち上げられ、ジタバタジタバタともがく。掴んだまま、持ち上げているウェンディの眼は途方もなく怖く、まさにキレた時のモナークそのものだった。

 

 

「…ま、まさか……、《チェンジリング》なのか……?」

 

 

「「「「ちぇ、《チェンジリング》って確か……あの時の……」」」」

 

 

ナツたちはあの時の悪夢を思いだし、それぞれで呻いた。30分経ってしまった時の絶望、その後戻れた時に感じたその魔法への恐怖感。

 

 

それが一気に四人(猫一匹を含む)に甦る。他にも食事や依頼を選んでいた魔導士たちもそれぞれで嫌な顔をし、後退りをする。

 

 

すると、ウェンディ(中身モナーク)が手を離し、ドシンと腰を打ったマカロフの前に依頼書をドン!と叩きつけて、詰問した。結構目が本気だ、教えなければ殺すといつ目だった。

 

 

「マスター……、まさかとは思うけどこれ。本のしおりとかにしてないよねぇ?」

 

 

「し、しておら………、……………」

 

 

黙り混んだ。マカロフは黙り混んだ。どうやら思い当たることがあるようで……。

 

 

「やっぱり、なんかの魔導書読んでるときにしおりにしたわね?」

 

 

「しゅ、しゅましぇーん(すいませーん)……」

 

 

「マスターぁぁぁ……」

 

 

と悲鳴のような声を出すモナーク(中身ウェンディ)。座り込んだモナークのそばにより、慰めようとするウェンディ(中身モナーク)。完全に二人は入れ替わっていると分かるや否や、シャルルは二人に駆け寄り、先に告げる。

 

 

「アンタ」

 

 

「ん?」

 

 

「妹だからってウェンディの身体に触らないようにね」

 

 

「なんで女の私に言うの!?それどころじゃないし!」

 

 

「お姉ちゃぁん……わたし、どうしたらぁ……」

 

 

「泣かない、泣かない。まずは出来ることからすればいいんだよ、ウェンディ」

 

 

そこに駆け寄ってくるナツたち。それぞれが状況を完全には飲み込み切れてはいないが、どうやら大体は分かったらしい。

 

 

「えーっと、そっちがモナークで……、こっちがウェンディ?」

 

 

「うん」

 

 

「はい……」

 

 

「んで、今んところ、モナークとウェンディの二人だけが入れ替わってるのか……」

 

 

「えぇ」

 

 

「そうです…、多分…」

 

 

「ところで、魔法はやっぱり中途半端なの?」

 

 

「いや、私は似たような原理の魔力の使い方してたから天竜の鉄拳だけ使える」

 

 

「私はなんにも使えませんでした…」

 

 

などとそれぞれ尋ねてくるナツたち。それはともかく、ウェンディ(中身モナーク)はすぐにマカロフを捕まえ、みんなの目の前に出すと、軽く一睨みする。

 

 

普段は怒るだろうが、今の状況の原因はマカロフにあるので本人は縮み上がる。まあ、それも仕方ないことだ。まさかしおりのように危険物を処理せずに扱ってしまっていたのだから。

 

 

それはともかく……

 

 

「これどうにかしないと……」

 

 

「そうね、アンタがウェンディのままだと変だし」

 

 

「こ、これって解けるんですよね、ルーシィさん……」

 

 

「う、うん……。前は30分とか言われたせいで凄く焦ったけど……、なんとか解ける。レビィちゃんがいないけど……」

 

 

そう言うルーシィ。確かにレビィは今日の朝にシャドウギアのメンバーと依頼に出掛けてしまっている。そうなると、術式とかで詳しいフリードしか他にはいない。

 

 

「前はエメルが居たからなんとかなったけど……」

 

 

「前?」

 

 

モナークの発言にルーシィが聞く。

 

 

「うん、まだここに来る前、まだチェンジリングの存在を知らない時に今回みたく読んじゃったわけ、そんときはエメルの絶対強制解除(アブソリュートキャンセル)で解除出来たんだけど……あぁもう…どうしよう…」

 

 

頭を抱えるウェンディ(中身モナーク)はある事を思い出したのか、モナーク(中身ウェンディ)のコートの中から一本のナイフを取り出した。

 

 

「お姉ちゃん、これは?」

 

 

「ポインターナイフ、これで座標を指定すると、これの親機と指定座標間で瞬時に移動できるの」

 

 

「でもこれでどうすんだ?レビィの居るところにでも瞬間移動するってのか?」

 

 

「いや、確かもう一つの家に魔法解除(スペルキャンセル)のマジックアイテムがあった気がするから、ウェンディに私の家に瞬間移動してもらって、取ってきてもらうって寸法よ」

 

 

「で、でも私その魔法使えないです…」

 

 

「大丈夫、この魔法は結構簡単だから、念じるだけで行けちゃうから」

モナーク(中身ウェンディ)の肩に手をかけるウェンディ(中身モナーク)

 

 

「わかりました……」

目を瞑り試しに念じてみる、すると一瞬違和感を感じたが、次に目を開けた時にはギルドではなく、一軒家のリビングに立っていた。

 

 

「ここは……お姉ちゃんのギルドに来る前の家…?」

辺りを見渡すとモナークの私物と思われる物が多数置かれていた。

 

 

「これは……」

机の上の写真立てを手に取る。

写真に写っていたのは四人が笑顔で仲良く肩を組んでいる光景だった、一人はすぐにモナークだとわかった、耳が無いところを見ると、まだ自分を隠していた時期なのだろう。

 

 

「お姉ちゃん……」

写真立てを元の位置に戻し、部屋を探索する。

勝手に見たりするのはよくない事だというのはよくわかっているが、自分の知らない姉の事を知りたい、その思いでクローゼットや棚を開ける。

 

 

クローゼットには服がきれいに仕舞ってあった、その殆どがグレーで統一されていたが、モナークがこんな色の服を着ていたのは一度も見た事が無い。

 

 

「なんだろうこれ……」

グレーのロングコートをクローゼットから取り出してよく見ると何かの階級章が襟と肩の部分についていた。

試しに着てみるとサイズはピッタリで、膝の辺りまであるコートはなんだか様にっていた。

 

 

「あっ…探さなきゃ…」

慌ててコートをクローゼットに仕舞い、本来の目的のマジックアイテムを探す。

 

 

「お姉ちゃんは机の引き出しの中って言ってたけど……あ、これかな?」

引き出しを開けると、中には様々な書類や、物が入っており、その中に革のケースに入った鍵のような物を見つける、ケースの裏には“エメル製”と書いてあり、これがモナークの言っていたマジックアイテムなのだと思った。

 

 

「そろそろ戻らなきゃ」

マジックアイテムを手に、再び目を瞑り念じる、二度目の違和感を感じ、目を開けると妖精の尻尾(フェアリーテイル)のギルドの中だった。

 

 

「ウェンディ、あった?」

 

 

「はい!これですよね?」

マジックアイテムをウェンディ(中身モナーク)に手渡す、ケースから鍵の形をしたマジックアイテムを一本取り出した。

 

 

「じゃあ解除するわよ……魔法解除(スペルキャンセル)!」

入れ替わった時のような光に包まれた、光が消えると、2人は元に戻った。

 

 

その後、無事に《チェンジリング》が記された依頼書は焼却処分されたらしい……。



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第四章 エドラス編 最強の帰還

「どう? 2人ともこのギルドに慣れてきた?」

 

 

「本当に入ってよかったです、妖精の尻尾フェアリーテイル」

 

 

「そうね、女子寮があるのは気に入ったわ」

 

 

「そう、それはよかった!」

 

 

ルーシィの問い掛けに化猫の宿ケット・シェルターからの移転組の2人がそう答え、それを聞いたウェンディは微笑みながらそう返した。

 

 

「そういえばルーシィさんは何で寮じゃないんですか?」

 

 

「女子寮の存在、最近知ったのよ。てか寮の家賃って10万Jよね……もし入ってたら払えなかったわ今頃……」

 

 

「ルーシィ家賃7万でも毎月ヒーヒー言ってるもんね。真面目に仕事すればすぐに溜まる額なのに」

と、モナークがもぐもぐと何かを食べながら話す。

 

「あたしが真面目にやっても、ナツたちが色んなモノ壊すから報酬金が減らされるのよ!!」

 

 

「だったら1人で行けばいいのに」

 

 

そして彼女たちがそんな会話をしていると……。 

 

 

急にマグノリアの街全域にほとんどのギルドのメンバーを含め、街の住人たちなら聞き覚えのある鐘の音が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

その音を聞いたギルドのメンバーはみんな口を揃えて、こう言った。

 

 

 

 

 

「ギルダーツが帰ってきた!!」

 

 

その多くの声の中、一番喜びを感じていそうな声はナツから発せられていた。

 

 

ナツはギルダーツとは親子のように親しく、よく戦いを申し込んではコテンパンにやられ、ボロボロになっていたらしい。

 

 

それはさておき、ギルドの入り口から聞こえる街のアナウンスは確実にいつもとは違う雰囲気を持ちながらだった。

 

 

『マグノリアをギルダーツシフトに変更します。町民の皆様は各自、所定の位置に移動してください。繰り返します』

 

 

そのアナウンスを聞いた途端、あれが来るんだなと思うメンバーたち。ウェンディ、ルーシィは恐らくこれから起こることを知らないだろう。

 

 

「ギルダーツ・クライヴ。このギルド最強の男と呼ばれる魔導士でな、三年前に100年間達成されなかった100年クエストに出掛けている。今帰ってきているってことは大体3年かかったけど、クリアしたんじゃないか?」

 

 

「そ、そんなに凄い人が……。どんな人なのかなぁ、シャルル」

 

 

「そうね、意外と怖い人だったりして」

 

 

「えええ!!??」

 

 

シャルルの冗談を鵜呑みにしたウェンディが少し怖がる。

 

 

街の方からすごい物音がする中、その音がやっと止まった。

 

 

すると、少しずつモナークにも分かるぐらいにギルダーツの魔力が感じ取れる距離内に入った。

 

 

多分もうすぐでこのギルドへと入ってくるだろう。少しだけ彼が変なことをしないか、注意を向けながら彼を待つ。

 

 

すると、ギルドの入り口に立つ一人の男が見え、ゆっくりと顔つきも分かるようになっていく。少しずつギルドの中へと入ってくるギルダーツ。

 

 

その彼がついに口を開いた。のだが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お嬢さん、このあたりに妖精の尻尾(フェアリーテイル)っていうギルドがあったはずなんだが……」

 

 

迎えに言ったミラに向かってこう訊ねる始末だった。

ミラはクスリと笑いながら、ギルダーツに伝えた。

 

 

「ここよ。それにわたし、ミラジェーン」

 

 

「ミラ?お前、随分変わったなぁ! それにギルド新しくしたのかよ」

 

 

まあ、確かに間違えても仕方ない。ギルドのメンバーの顔写真を見てみたが、三年前のミラはもっとガラが悪く、結構露出も多い格好をしており、今とは似ても似付かなかった。

 

 

すると、待っていましたとばかりにナツがギルダーツに向かって急襲するのだが……

 

 

「ギルダーツ!!勝負だああああ!!!」

 

 

「あぁ、ナツ。あとでな」

 

 

そう言うと、片手でナツを掴むとお手玉のようにクルクルと回転させてから天井に適当に放り投げた。

 

 

一瞬で倒されるナツに、驚愕して声が出ないルーシィとウェンディ。そんな彼女らは一旦さておき、ギルダーツはマカロフの元まで行くとクエスト報告を行った。

 

 

「で、ギルダーツ。どうだったのじゃ?」

 

 

マカロフのその問いに、ギルダーツは笑いながら答えた。

 

 

「いやぁ、わりぃ、無理だったわ」

 

 

その途端、ギルドのメンバーたちは驚愕する。彼らが知るなかでギルダーツは最強の魔導士である。恐らく、このフィオーレ広しと言えど、彼以上の魔導士はいないだろう。

 

 

「そうか…主でも無理か…」

 

 

「スマネェ、名を汚しちまったな」

 

 

「いや……無事に帰ってきただけでよいわ。ワシが知る限り、このクエストから帰ってきたのは主が初めてじゃ」

 

 

「オレは休みてえから帰るわ。ひ~疲れた疲れた」

 

 

 

そう言ってギルダーツは自宅へ帰ろうと歩き始める。

 

 

「ナツ、後でオレん家ち来い」

 

 

「!」

 

 

「みやげだぞ~っ、がははっ」

 

 

「?」

ナツは疑問符を浮かべながらも、みやげという言葉に期待の籠った表情をする。

 

 

「んじゃ失礼」

 

 

「ギルダーツ!! 扉から出てけよ!!」

 

 

そしてそのままギルダーツは何故かギルドの壁を破壊しながら出て行ったのであった。

 

 

「へへっ、みやげって何かなぁ? 楽しみだなーっと!」

 

 

「あんたもマネするなバカナツ!!」

 

 

そう言ってナツもギルダーツのマネをして壁を破壊し、ギルドから出て行った。

 

 

「ハッピー、早く行くぞー!」

 

 

「あいさー!!」

 

 

「私も気になるし行ってみようかな〜」

 

 

そう言ってモナークもナツの後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みやげって、外国の珍しい炎とかかなぁ」

 

 

「何だろうね」

 

 

「みやげ話って事じゃないの?」

 

 

そんな会話をしながらギルダーツの家へと向かうナツ、ハッピー、モナークの3人。

 

 

「つーか、何でモナークも付いて来たんだ?」

 

 

「妖精の尻尾フェアリーテイル最強の魔導士って呼ばれてるギルダーツにちょっと興味があってね」

 

 

「ふーん」

 

 

そんな会話をしているうちに、ギルダーツの自宅へと到着した。

 

 

「よォ」

 

 

「「おじゃまします」」

 

 

「来たか、ナツ、ハッピー。ん? そっちの小せェのは?」

 

 

「小さいの言うな、私はモナーク、よろしく」

 

 

「そうか、オレはギルダーツだ。よろしくな」

 

 

「で、みやげって何だ?」

 

 

「それはともかく……オメェ、結局リサーナとはどうなんだよ」

 

 

「はぁ?」

 

 

「てぇ~れやがってぇ、がははははっ」

 

 

そう言って意地の悪い顔をしながら笑うギルダーツだが、ナツは冷静に告げた。

 

 

「……リサーナは死んだよ、2年前に」

 

 

それを聞いたギルダーツは笑うのを止め、絶句する。

 

 

「………マ…マジかよ………そっか…それでミラの奴……うおお……ス…スマネェ、ナツ」

 

 

「そんな話なら帰んぞ」

 

 

「ナツ」

 

 

「ナツってば」

 

 

すっかり興をそがれたナツはそう言って出て行こうとする。するとその時……ギルダーツがゆっくりと口を開いた。

 

 

「ナツ……仕事先で、ドラゴンに会った」

 

 

「「!!」」

 

 

その言葉に、ナツだけでなくモナークも反応する。

 

 

「お前の探してる赤い奴じゃねえとは思うがな。黒いドラゴンだ」

 

 

「……ギルダーツ」

 

 

「………」

 

 

「教えてギルダーツ、アクノロギアは何処にいるの…」

 

 

「霊峰ゾニア、ただし行っても無駄足だぞ。とっくのとうにヤツは移動しちまってる」

 

 

「ありがとう、ギルダーツ」

そう言って、モナークはギルダーツの家をあとにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いっかい国に戻るかなぁ……」

ギルダーツの家をあとにしたモナークは、寄り道をしながら、家路についていた。

 

 

途中の八百屋で買った果物を食べながら帰宅し、昔の事を思い出しながら、一日を終えた。



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消失した街

モナーク「一ヶ月も更新しないとはどういった理由だコラ」

主「いやちょっと色々大変だったんスよ……」

モナーク「内容を聞こう、内容次第じゃ許すから」

主「WTとHoi4やってました」

モナーク「はい死刑」



本当に遅れてすみません


「ふぅ……こんなもんかな」

モナークはマグノリアから程遠い場所にひっそりと佇む小さな村にある自宅に居た。

 

 

近いうちに本国に戻ると決めたので、早めに荷物を纏めしまいたかったのだ。

 

 

「これを着たのもいつぶりだろうなぁ」

クローゼットからグレーのロングコートを取り出し、羽織る。そんな事に感慨にふけていると、マグノリアの方向から巨大な魔力を感じたと思えば、数秒後には魔力を殆ど感じなくなった。

 

 

「今のは……」

ウェンディやギルドが心配になり、家から飛び出してマグノリアに向かって全力疾走した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、マグノリアの街では……。

 

 

気がつけば、そこには何もなかった。

 

 

始めて来たら間違いなく迷ってしまいそうなマグノリアの大きな街は全く見当たらなく、目の前にあったはずのうるさく騒がしく、それでいて元気が有り余っている魔導師たちのギルドの姿さえも。

 

 

全てが何もない真っ白な世界、そう思えるほどにマグノリアの街は消滅した。衝撃で少々頭がフラフラするが、すぐに本調子を取り戻す。

 

 

「あれ…?ギルドのみんなは…?」

 

 

周りを少し歩き回って誰か居ないかを探してみるが、人一人見つからなかった。

 

 

自分以外誰も居ない状況に泣きそうになるウェンディ。

いつも頼っているモナークですら見当たらない中、遠くから何かが高速で近付いてくる。

 

 

目を凝らして見てみると、つい先程まで居なくなったと思っていたモナークが低空飛行でこちらに向かってきていた。

 

 

「お姉ちゃん!」

 

 

「ウェンディ!!」

モナークはウェンディを確認すると、姿勢を変えて靴底でブレーキをかけ、止まった。

 

 

「大丈夫?ウェンディ」

 

 

「うん……わたしは大丈夫だけど……ギルドのみんなが……」

 

 

モナークが周囲を見渡すと、辺り一面真っ白の世界だった。何も存在しないだだっ広い場所。

 

 

ウェンディも辺りをもう一度見渡した。本当に誰もいない。そう思うと、自然に涙が溢れそうに……

 

 

その時だった。ウェンディの横の地面がひび割れ、何かが蠢き始めた。驚き、すぐに後ろへ下がるウェンディの前に立ち、モナークはソレを怪しげに見た。

 

敵ならすぐに叩き潰す、そう頭に刷り込みながら。すると、そこからは見覚えのある桜髪の魔導師が姿を現した。

 

 

そう、彼だ。滅竜魔導師のナツ・ドラグニル。

 

 

「ナツ!?」

 

 

「ナツさん!?」

 

 

「び、ビックリしたなぁ、おい……。ってモナークにウェンディか!」

 

 

この感じ、モナークは即座に理解した。彼は状況を理解していない。恐らく寝ていたんだろう。そう思うや否や、面倒になる前に状況説明をすることにした。

 

 

「えーっと、多分上のデカイ穴にマグノリアの街が吸い込まれた感じ」

 

 

「か、簡単にしすぎじゃ……」

 

 

「……モナーク、お前、頭打ったんじゃねえのか?」

 

 

ナツがモナークを重病患者のような目で言った途端、ナツを地面に更に深く埋めた。流石に事実を述べたが、理解されていないことに腹が立ったのだろう。

 

 

ウェンディはすぐさま埋められたナツを掘り起こし、周りを見せた。

 

 

その光景を見て、流石のナツも信じたらしく、モナークたち三人はある共通点に気がついた。

 

 

「2人とも滅龍魔道士(ドラゴンスレイヤー)だから助かったんじゃない?」

 

 

「それじゃあ、わたしとナツさんとガジルさんだけなんですか!?」

 

 

「ガジルも何処かに埋まってるんじゃない?まあ、今はそれよりも……」

 

 

「何が起こったか……それが先じゃない?」

 

 

モナークがその先を言おうとしたその時、三人ではない声が割り込んできた。しかし、その声は聞き覚えがあり、ウェンディは真っ先に声の主を言い当てた。

 

 

「シャルル、無事だったんだね!!」

 

 

「ええ、そうね」

 

 

不機嫌そうな顔をしながらシャルルが周りを見渡しながら寄ってくる。どうやら彼女も無事だったらしい。

 

その直後、ハッピーも姿を現した。つまり……、生き残っている、と言っていいのかは不明だが、モナーク、ウェンディ、ナツ、ハッピー、シャルル、この三人と二匹だと言うことだった。

 

 

「うーん……前に聞いた別世界の仕業なのかなぁ…」

 

 

「ええ、そうよ、この世界とは別の世界がね」

 

 

モナークとシャルルの話に着いてこられないまま、ウェンディとナツ、ハッピーは現実を突きつけられる。

 

 

そして……モナークたちはもうひとつの世界のことを知ることとなったのだった……。

 

 

 

 



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もう一つの世界

エドラス。

そこは今現在モナークたちがいるアースランドとは別の世界である。

その世界では魔力は有限とされ、半永久的に使用できるアースランドと違って、使い続ければ無くなってしまう。

アースランドでは空気中にエーテルナノが含まれているお陰で、自然と使われた魔力は補充される。

その違いは魔法自体の違いでもある。

 

アースランドの魔法はエドラスでは使えない。ある特殊なケースを除いて確実に行使することは不可能である。

 

逆にエドラスの魔法――つまり使い捨て魔法の場合は、アースランドでは行使できず、それぞれ互いの世界の魔法は自らの世界でしか使用は出来ないとされる。

 

その事を知らずにエドラスに突入した魔導士三人と猫二匹は当然、その影響を受けてしまっただけのである。

 

 

「うわああああああ!!!???」

 

 

「きゃああああああ!!!???」

 

 

「え?」

 

 

突然二人の魔導士、ナツとウェンディを運んでいたハッピーとシャルルの持つ魔法、(エーラ)が消滅し、モナークの飛行魔法は発動しなくなり、ナツとウェンディ、モナーク、ハッピーとシャルルは重力に従って落下していく。

 

 

「うーん、これ大丈夫かなぁ」

 

 

「お、お姉ちゃぁん!?!?」

 

 

「大丈夫大丈夫、下にクッションになりそうな巨大キノコあるし」

 

 

それを伝えた途端、モナークたちはその巨大キノコの上に落下し、次々とキノコを粉砕していくが、最後の最後でキノコの上で勢いが止まり、ナツは頭からキノコに突き刺さり、ハッピーとシャルルは身体半分がキノコへ、ウェンディはうつ伏せに、モナークは華麗に着地して、落下は終わりを告げた。

 

 

「うぅ……」

 

 

「全員無事?……ナツは頭からキノコに突き刺さってるけど」

 

 

「むぐむぐむぐぅ……、ぷはっ!し、死ぬかと思ったぁ……」

 

 

「まあ、これくらいじゃ死なない鍛え方してるでしょ、ナツは。他はともかくって話になりそうだけど……」

 

 

「お、お姉ちゃんはなんでそう…落ち着いてるんですか?」

 

 

「前に似たようなことを経験したからね。まあ、致命傷になるような状態だったら全員無傷に助ける用意してたし」

 

 

「…えーっと…、もっとマシな落ち方あったんですね……」

 

 

ウェンディが苦笑するのを見ながら、モナークは周りを見渡した。どう見ても森林……いや、キノコの群生地帯だろう。

 

 

と言っても、ちょっと進めば森林地帯になる。それに空を翔んでる最中に見えた“空中に流れる川”も対して遠くはないだろう。

 

 

いざとなれば、そこで魚やキノコ、木の実とかで食べられるものを収集し、野宿も出来る。まあ、ウェンディとシャルルがそれに慣れているかは分からないが、仕方ないだろう。

 

 

「さて、全員無事だし、探索開始するしようかしら。目的はギルドの仲間の居場所ということにして」

 

 

「そうですね」

 

 

「おっしゃああああ!!燃えてきたぞ!!」

 

 

「アイサー!!」

 

 

「それで、これから何処に向かってみるの?」

 

 

全員がやる気十分なその時、シャルルがまず一番最初の問題を提示した。恐らくだが、ここではアースランドにはないものがわんさか存在する。

 

 

つまり言えば、ナツの強化されたドラゴンの鼻による嗅覚が役に立たない可能性が高い。

確信を持って進むことは今は出来そうにもない……ということはだ。

 

 

「適当に歩いてれば、なんとかなるだろ!」

 

 

ナツの適当な案に賛成する他ない。一応モナークは周囲の気配を僅かでも良いから感じ取れるように耳をすまし、周りを警戒しながら、ナツたちの列の先頭を努めることを選んだ。

 

 

ここは別世界だ、という事は恐らく国家が存在する。

そこに別世界から移ってきた大量の魔道士が出撃したとなればどうだろう、国は警戒、もしくは魔力を吸収して魔力源として………。

 

 

そんな事を考えていると、シャルルが急にこんなことを言い出した。

 

 

「まず思ったのよ。わたしたちの今の格好、怪しまれるんじゃないかしら?」

 

 

確かにそうである。恐らくだが、アースランドとエドラスでは格好が違うかもしれない。さらに言えば、今モナークは全身グレー、いわゆる軍服のようなモノを着ている訳だ、更に腰に剣を帯刀しているので、万が一エドラスの軍に見つかれば恐らく怪しまれるどころではない、拘束しようと攻撃を仕掛けてくるだろう。

 

 

思えば、そういうことも視野に入れて行動しなければならないのでは?……とモナークも考え始めた。すると……

 

 

「んじゃあ、これなんかどうだ!」

 

 

ナツが取り出した、いや、持ってきたのは周囲に落ちていたり生えていたりした草や花。つまり、彼はこれを自分の服装に被せたりなどをして何処ぞの民族衣装に仕立てろと言っているようだった。流石にモナークとしてはお断りである。

 

 

「却下」

 

 

「んだと、モナーク!それじゃあ、なんかいい案あるのかよ?」

 

 

「うーん、試しにそのマフラーを顔に巻いてみたら?」

 

 

「おお!!モナーク、やるな!!」

 

 

「うーん、他をどうするべきか、だなぁ……」

 

 

結局モナーク以外はナツの提案通りの服装になった訳だが、やっぱり格好悪く、(ハッピー)それでいて恥ずかしいらしい。(ウェンディ)

 

 

まあ、一人ほど目的としては悪くないと言うシャルルがいたのだが。それは今、重要かどうかは不明な点でもある。

 

 

 

 

それから結構歩き回ったのだが、時折会った人々には散々怖がられる始末となってしまった。一人目はナツとその格好に怖がってしまい、何処かに逃げてしまい、二人目と三人目は何故か、ハッピーとシャルルを見た途端に青ざめ、これまた逃げてしまった。

 

 

その際に気になる言葉、「エクシード」が何やらと言っていたのだが、ボソボソ声であったためによくわからなかった。

 

 

その最中もまた、ハッピーはお腹を鳴らし続け、それをそのたびにシャルルに咎められていた。途中途中ナツもお腹を鳴らしたりしていたのだが。

 

 

そうして現在は大きな湖がある場所に来ていた。どうやらお腹が鳴る頻度が増えていくハッピーはずっとその湖を眺めており、「お魚いないかなぁ…」と呟いている。

 

 

「うーん、ここまで食べれそうな物が全く見つからないなんてね……逃げた人たちの後を追うべきだったかなぁ」

 

 

「お魚……」

 

 

 

「アンタねぇ……」

 

 

「……というかハッピー。生魚食べられるのは多分ハッピーだけだろうし、火はどうするの?この中で唯一火が出せるナツは使い物にならないし」

 

 

「なんだとー!

 

 

「ナツさん、落ち着いて……」

 

 

「だよね…、あ~あ、お魚いたら後で困らないのになぁ……。……あ!見てみて、みんな~。あそこにお魚いる……どぅええええ!?!?」

 

 

とんでもなく変な悲鳴をあげるハッピー。すぐにそっちへと振り返り、察した。先ほどハッピーが見ていたお魚。ただのお魚かと思えば、いざ全長を見せてみれば巨大なオオナマズであったのである。

 

 

まあ、美味しいのかどうかは別として……、見た目だけならかなりの食料になるだろう。

 

 

すると、ナツがやる気が出たのか、前に進み出る。

 

 

「んじゃ、あれを倒して食べるか!!」

 

 

「ナツさん!!今は先に行かないと!!」

 

 

そう忠告するウェンディ。しかし、ナツは「あんなの三秒あれば楽勝だ!」と言って襲いかかった。この時点でモナークは先にあることに気がついた。

 

 

魔法が使えないということに。

 

 

ポスッ…と空しい音を立てたナツの鉄拳。もちろん、いつもの火竜の鉄拳ではないために、敵には全くのダメージとならず、そのまま敵に湖へと叩き落とされてしまう。

 

 

「な、なんでだぁ……」

 

 

「エドラスで魔法は使えないんだよ……」

 

 

「じゃ…、じゃあ…このパターンって」

 

 

青ざめたウェンディ。どうしようもない敵が目の前にいるこの状況、この場合考えることはといえば……

 

 

「逃げる一択……?」

 

 

ハッピーがその答えを言ったその瞬間、モナーク以外大ナマズから全力逃走する。

ウェンディが1人その場に留まるモナークを呼ぼうとしたその瞬間、モナークが消えた、と思えば背後の大ナマズは細切れになって湖に消えていた。

 

 

「別に逃げる事無いのに」



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